http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1195306509/380 ※鬱注意 暴力的な表現注意
投下と出会えないもうひとりの俺はまだ起きてるだろうか。いそいで書けてる分をもってきた
暗くてひずんだオレの願望。
どうして三橋の泣き顔が見たいなどと思うのだろうか。
友達なら、仲間なら、笑っていてもらいたいと思うのが普通じゃないか。
オレはこれから三橋に会って、いったい何を話すつもりなのか。自分で自分の行動が把握できない。
はっきりしない思いを胸の奥に隠して、三橋の家へ向かって自転車をこぐ。今日はミーティングだけだったから、日はまだ高い。
青空の下、風を切って坂道を下れば、向かい風に洗われて、心の余分なものがそぎ落とされていくように思えた。
今は何も考えないことにしよう。考えれば考えるほど深みに嵌るだけだ。
垣根のわきに自転車を止めて、三橋の家のチャイムを押した。が、反応はなかった。
しかし家の中からかすかに雑音が聞こえてくる。話し声かと思い、図らずも耳を澄ましてしまったが、どうやらテレビの音のようだった。
テレビがついてるってことは無人じゃないはずだと思い、ドアノブに手をかけてみたが、しっかりと鍵が閉まっている。
試しにと思って携帯に電話をかけても、やはり水谷の言う通り電源を切っているらしく、無機質な女の声が流れてくるばかりだ。
どうしようかとしばし悩んだ。
水谷から渡された教科書の返却なら、ちょっとしたメモでもつけてポストに入れておけばことたりる。
けれどそうすることは気が引けた。そんなことをするなら、わざわざ三橋の家に来た意味がない。
不謹慎かと思いつつも、庭に回り込んでみることにした。
湿った土を踏みしめ、茂った緑の庭木の中を進んでいくと、リビングが見える位置に辿り着いた。
テレビの音もリビングからのもののようで、玄関先よりもさらに大きな音を外に漏らしている。
やはり家に居るのか? チャイムはテレビの音で聞こえなかったのか?
そんなことを考えながら何の気なしに家の奥を覗き込むと、レースのカーテンの奥で、なにかが揺れているのが目に入った。
それはまるで映画のスクリーン。音のない無声映画。
オレの暗い思いが、黒い粒子になって映し出された世界。
そこで三橋は泣いていた。オレが思い描くその顔で。