三橋「もはや何も望むまいよ」

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38影法師
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ログ読んでたらいつの間にかこんな時間に

練習試合を3日後に控え、熱のこもったミーティングを終えると今日は解散となった。
いつものように、家の方向が同じ者同士数人ずつに分かれて帰宅する。
田島は家までチャリ1分のくせに、暇なのか俺たちにくっついてきていた。
正しくは三橋にくっついて、というべきだろう。
なにが楽しいのか、三橋とぎゃーぎゃー騒いでいる様はまだ中学生みたいだ。
これで、野球に関してはチームいちの戦力なんだから、人間見た目じゃわかんない
もんだよな。
三橋は田島と話しながら、俺の方をちらちら見ていた。
何か言いたいことがあるらしい。
「あ、あの、田島君、オレ、サインのこと で、阿部君と相談あるから…」
自分の家の方に向かう分れ道まで来たとき、三橋は田島にそう言って暗にここまで
でいいと仄めかした。
「あ、そう、んじゃ阿部よろしく!また明日なっ」
くるりと方向転換してすごい勢いでチャリをとばす田島を見送って、俺と三橋は2人
きりになった。
「あいつ、体力ありあまってんなー」
「あの、阿部君、迷惑だった?」
「は?」
おどおどと俺を窺う三橋に軽く苛立ちを覚えながら、何気なさを装う。
「なんで?用事あるんだろ、別に構わねえよ」
「先に、言わなくて、ごめんなさい。うち今日 オヤ帰るの、遅い…」
たったこれだけを言うのも、多分三橋にとっては大変なことだ。
「うん、それじゃ寄らしてもらう」
話が通じたのにほっとしたのか、三橋の表情が明るくなった。
もしも、どうやって誘うかずっと考えていたのだとしたら、相当に切ない。
「行こうぜ」
角を曲がるともうすぐ三橋の家が見えてくる。