阿部「三橋、お前の穴は俺のもの」

このエントリーをはてなブックマークに追加
381
試験的に改行幅揃えてみた。どっちのが読みやすいかね
※色々捏造注意

http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1192429030/311

夕餉の膳が下げられた頃、窓の外は紫から群青へと、次第に色を変え始めていた。
夜が、来る。
少年は無意識に、着物の前を掻き合わせる。陽が沈んでしまった今、この空間は薄暗さ
を増し、少年に得体の知れない覚束なさを与える。
夜が来る。宴の時間が迫っている。夜は怖い。少年は確かに、恐れを抱いていた。しかし
それよりも、孤独の恐怖が上回る。一人で、置き去りにされてしまうことへの恐怖。気がつ
いた頃からたった一人、この狭い空間に置かれていた少年に、そのような感情を植え付け
たのは他ならぬ叶だ。
一人は、怖い。少年はいつものように膝を抱き、ひんやりとした漆喰塗りの壁へ背を預けた。
見上げた先、何も嵌まっていない四角の窓から見える空は紺色。夜が来る。
ほどなくして、膳を下げた叶が戻ってきた。手には大きな木製のタライを抱えており、それを
見て少年は、ああ今日も宴が始まるのだ、と窺い知る。
「最近は日が暮れるのが早いな」
誰にともなく呟くと、叶は抱えていたタライを狭い三和土の上に静かに置いて、袂からマッチ
を取り出しつつ少年の元へと歩み寄る。慣れた仕草でマッチ棒を擦ると、それで灯台に火を
入れた。
ぼんやりと明るくなる視界。少年の見守る中、叶はまた外へと出て行き、今度は湯気の立つ
桶を両手に提げて戻ってくる。それをタライの中へと移し、湯を張り始めた。
叶は何度かこの場と外とを行き来して少年の為の風呂桶を作り、最後に行李を畳に載せると、
その蓋を開けながら「廉」と一言、少年の名を呼んだ。
それを合図に少年は立ち上がり、着物の帯をほどく。どこか遠くで鳴き始めた秋虫の声に、軽
い衣擦れの音が重なった。
するりと、肩から着物を落としてしまえば、秋の夜の空気がひやりと肌を撫でる。少年は思わず
肩を竦めた。見兼ねた叶が「ほら」と三和土から手を差し伸べる。
男の声に、少年は着物を畳へと落とし、ひたり、と土間へ素足を載せた。