阿部「三橋!そーれ!くるくる〜」

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放課後部室で着替えていると、9組の面々が入ってきた。
「…ぃぃぃっくぅっっ」
俺は後ろを振り返った。案の定三橋が口を押さえている。
「三橋、お前まだしゃっくり止まってなかったのか?
「う、うん、止まったと思ったらまた出てくる…」
「おれもさー、後ろからおどかしてみたりいろいろやってみたんだけど、ダメなんだ
よなー」
「田島はやり方がバレバレなんだよ」
泉があきれたように言った。
「そういえばさ、しゃっくりって100回したら命が危ないんじゃなかったっけ」
「おれは100万回って聞いたけどな」
「いや、3日間止まらなかったら、だよ」
おいおい、現代っ子とは思えない会話だな。
「それは迷信だと思うよ。しゃっくりって横隔膜のケイレンだから、息を大きく吸って
横隔膜を固定したらいいいんだよ、それでできるだけ息を止める」
おお、さすが西広だぜ。
「三橋、やってみ?」
「う、うん」
息を吸って止めた三橋をみんなが見守る。
…30秒、40秒、50秒…
三橋の顔が真っ赤になってきた。
1分20秒すぎ、三橋がぷはっと息を吐いた。
「どうだ?」
「あ、と、止まったみたい」
「やったー!西広すげー」
「あれ、そういえば三橋、先生に呼ばれてなかったっけ?」
「え、あ、忘れて……ひぃぃぃっくっ…」
「あ……」
三橋には気の毒だが、大方のヤツは笑いをかみ殺していた。
正直俺もこの時点では、大して問題を重要視していなかったんだが…。
>165

次の日練習に出てきた三橋は明らかに調子が悪かった。
いつもより球に力がないし、全力投球以外でもコントロールが時々乱れる。
これはめったにないことなので、俺は怒るより心配になった。
「どうしたんだ?今日すげー調子悪いな」
「あ、ご、ごめん」
「謝んなくていーからさ、体調悪いのか?」
「…え、う、ううん」
見ていると三橋の肩が時々不自然に揺れる。
「…っく」
「お前、もしかしてまだしゃっくり止まってねえの?」
「…止まってるときもあるんだけど…」
「なあ、ちょっと病院行ってみたほうがいいんじゃないか?お前、寝てないだろ」
「あ、だ、大丈夫だよ、寝てる」
大丈夫、と言い張る三橋に少し違和感を覚えたが、ちゃんと投げると言うのでそれは
見過ごすことにした。
…なんか病院行くのが嫌な理由でもあんのかな。
その後は三橋の投球もなんとか戻り、定時で練習を終えた。
「あ、雨降ってきたね」
台風が近づいている影響で、雲行きが怪しかった空から雨粒がぱらぱら落ちてきた。
「明日練習できっかな」
次第に強くなっていく雨足に、俺たちはあわてて帰り支度をするため部室に走った。

土曜日、いよいよ台風が北上してきたので、とても外で練習できる状態じゃなかった。
屋内でできるメニューをこなした後、モモカンとシガポから明日の練習試合について
台風の進路によっては中止になるかもしれないと話があった。
「連絡網で回しますので、しっかり確認するように」
はーい、と返事して今日は解散となる。
三橋はと言えば、無理しているのが見え見えで俺はイライラする。
必死に隠そうとしているが、しゃっくり止まってないし。