浜田「三橋ー、服作るからサイズ測らせてくれよ」

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216fusianasan
島崎捏造注意

http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1191499565/575

予備校に模試を申し込んだ帰り道、道端に転がる蝉の死骸に、ふと島崎は足を止めた。
空は高く、日差しも相変わらずまだ強い。だけどいつの間にか、蝉の声は聞こえなくなりつつある。
夏が、ゆっくりと過ぎ去ろうとしていた。
今朝、島崎は三橋を自転車に乗せて、西浦のグラウンドに送った。あんな暗いうちに起きるのは本当に久し振りだった。
三橋を乗せて走るうちに、暗かった空から星が少しずつ消え、空が濃い紫色から徐々に白く明けてゆく。
澄んだ空気が、気持ちよかった。
三橋を送り届けた時の、西浦ナインの反応がおかしかった。まあ確かに、いきなり他校生の自分が現れたのだから、ちょっとした騒ぎにもなるとは思ったが。
グラウンドで見る彼らの顔は、試合の時とは全然違っていた。その元気で屈託のない様子に、入ったばかりの一年達を思い出した。
そして自分もこうだったのだろうと、懐かしく思う。
三橋に手を振った後、自転車に乗ったがすぐに帰ったわけではなかった。裏手に回って自転車を止め、少しだけ練習風景を覗く。
早朝から練習に励む彼らの姿に、ほんの数週間前の自分達の姿を思い出した。
たった数週間前なのに、フェンスの向こうは遠い世界のようだった。
その向こう側の世界で、ユニフォーム姿の三橋がマウンドに立って投げていた。
相変わらず球は遅い。だけど見事に弧を描いて、球は捕手が構えたところに落ちてゆく。
こうして見ていても、やっぱり何の変哲もない遅い球にしか見えない。だが、その投球に自分は最後まで振り回されてしまった。
投げ続けていた三橋に、やがて捕手が駆け寄ってきた。
投球終了を告げられると三橋は一瞬残念そうな顔をしたが、すぐに満足そうに微笑んだ。
そうだ、三振を取った時、三橋はいつもこの笑顔を見せていた。笑顔の三橋が、あの試合の日の三橋に重なる。
その瞬間、目の前で何かが弾けた気がした。