阿部「三橋!もっかい握ってみろ!」

このエントリーをはてなブックマークに追加
168fusianasan
ちくしょう、また寝落ちしたあああああああああ

http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/eromog2/1190819006/873
「おいす」
講義が終わって帰ると、家の前に栄口がいた。手にはグローブと硬球。
「なんだよいきなり」
「待ってたんだ、帰ってくるの」
栄口はパンと乾いた音をさせて、手にしたボールをグローブに収めた。
「待ってたって」
いつ帰ってくるかも分からないのに。
「キャッチボールしよう。グローブ、まだあるんだろ?持ってこいよ」
あるけど、手入れなんかしてない。卒業してから触ってもいない。
「でも、手入れもしてないし」
力の抜けるような表情で、栄口が笑った。
「ちょっとだけだからさ、付き合ってよ」
ずるいと思う。わざわざこんな所まできて、そんな言い方されたら断れない。
「待ってて」
そう言うと、栄口は頷いた。
部屋に戻って荷物を置く。
机の一番下の大きい引き出しを開けると、2年前までは毎日使っていたグローブがある。
皮の匂いが、少し懐かしかった。
正直、触るのが怖い。しばらくグローブを見たまま、動けなかった。
そっと、手に取って、嵌めてみる。
あっけないほど、それは手に馴染んだ。