【FBI失踪者を追え】ダニー・テイラー萌え【小説】
NHK-BS2で放送中の海外ドラマ「FBI失踪者を追え」
ダウンタウン出身ダニー・テイラーを元にしたエロネタ小説のスレ
現在、書き手1と書き手2にて創作中。
新しい書き手の参加も大歓迎です。
ダニー・テイラー役、Enrique Murciano HP
http://www.imdb.com/name/nm0006663/ [約束]
・荒らしと叩きは相手にしないようにしてください
・アンチを見つけてもスルーしてください
・このドラマの他の関連板に感想などを書くのは控えてください
2 :
fusianasan:2005/08/15(月) 21:02:36
「ダニー、この前のモーテルに19時だ」
「了解っす。また交代すればいいんすか?」
「ああ、だがノックせずに黙って入れ、このことは内密にな。
マーティンにも絶対に言うんじゃないぞ」
ダニーは一瞬不可解な表情を浮かべたが頷いた。
マーティン驚かそうっちゅう魂胆やろか?
まあええわ、あいつと一緒におれるんやし。
ダニーは19時になるのが待ち遠しかった。
5 :
書き手 2:2005/08/15(月) 21:16:19
ボスとマーティンは一足先にモーテルに着いた。
ボスは全裸のマーティンに目隠しをすると、
四つんばいにさせ全身にローションを塗った。
アナルには特に念入りに塗りこみ、ほぐすように嬲る。
マーティンは目隠しのせいで、何をされるのかわからない恐怖と
思いがけない快感に身をよじらせていた。
ボスの指が直腸検査のように隅々までくまなく動き回る。
「ぁぁん、ボス・・・」突き出すように腰を上げる。
「どうした、マーティン?」機械のような手は動きを止めない。
「ぁっぁっ・・僕、もっもう・・・」
「なんだなんだ、もう音を上げたか?もう少し辛抱しろ」
ボスは時計を見ながら少しだけ手加減した。
6 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:17:20
18:58、そろそろだ。
「よーしマーティン、イキたかったらおねだりしろ。
私に入れてもらえるように頼むんだ!!」
「あぁぁ、ボス、僕のアナルにぶち込んで下さい・・・早く・・」
「入れるだけか?動かさなくていいんだな?」
その時、音を立てずにドアが開いてダニーが入ってきた。
「いっいえ、激しく突いてください・・もうイキそう・・・」
ダニーは目を見張った。何やコレは?!!
「なっ、マ、マーティン?、お前・・何やってんねん!!」
ダニーの声に驚き、慌てて目隠しをとる・・・。ダニーが何故ここに?!!
7 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:18:05
「ボス、これは・・・これは一体どうゆうことなんですか?」
マーティンの痴態を目の当たりにし、さすがのダニーもパニクっていた。
「見てのとおりだ、ダニー」ボスはいつもと変わらない。
「マーティンは、副長官殿に黙っているかわりに人身御供になったのだ」
マーティンは顔を上げずに泣いている。
「いつからこんな・・・」マーティンを見ながら訊ねた。
「ダニー、マーティンはお前と別れるのだけは避けたいそうだ。
ボンボンの割りに健気じゃないか」
「もうコイツにこんなことさせるの止めて下さい」
「それがな、私には慰み者として重宝してるんだよ」
「それやったら・・オレが代わりになりますから」ダニーは必死だった。
8 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:18:54
「どうかな、マーティンの体は最高だからな。お前のはどうだか」
ダニーは黙って服を脱ぎ捨てるとボスの前に晒した。
「ダニー、マーティンの前で犯されてもいいのか?」
「ええ、仕方がないっす。どうにでもやって下さい」
ボスはペニスを出すとしゃぶらせた。
マーティンより下手だが、屈辱にまみれた表情が嗜虐心をそそる。
9 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:19:50
「次はお道具を拝見といこう」アナルをゆっくりと弄る。
「マーティン、お前も傍で見てろ」
しくしくと泣いているマーティンを侍らせ、さらに嬲った。
ダニーはマーティンに見られるのは屈辱だった。
あいつの前でこんなことされてるなんて・・・。
10 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:20:35
「・・・んっ・・・く」ダニーは声を上げないように歯を食いしばった。
だが、さすがにペニスの勃起だけはどうにもならない。
散々嬲られ、イキそうになっていた。
「なんだマーティン、感じてるのか?」ボスの声に振り向くと
マーティンが勃起したペニスを隠すように手で覆っていた。
「ダニー、入れてやれ」「えっ、オレが?」
「かわいそうじゃないか、早く楽にしてやれ」
ダニーは渋々マーティンのアナルにあてがった。
すでに限界が近いらしくヒクついている。
「あぁん、ダニー」ダニーは腰を引き寄せると突き上げた。
ダニーが動くたびにマーティンがすすり泣く。
11 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:21:19
ボスはマーティンがイキそうなのを見て取ると玉をつかんだ。
「うっ・・・」焦らしプレイに突入だ。このままではイクにイケない。
「ボス、オレはどうすれば?」ダニーは困惑して聞いた。
「私が射精するまでお前らが持ちこたえたら、今後一切手出しはしない。
だが、私より先にどちらかが果てたら、その時は二人とも慰み者だ」
ボスはそう言うと玉から手を離した。
「続けろ」ダニーは再びピストン運動を開始した。
12 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:22:04
ダニーはマーティンがイキそうになると玉を掴み、肩を噛んだ。
五分ほどたった頃、ダニーのアナルにボスが挿入してきた。
「あぁぁー、んっんん」思わず声を上げる。
ボスの挿入でペニスが硬度を増し、マーティンも恍惚となる。
ダニーは前も後ろも責められ、限界を感じた。
あかん、オレがイってしもたらオレら二人ともおしまいや・・・。
ダニーは舌を噛んだ。口の端から血が流れる。
13 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:22:49
ボスはダニーの穴の締りのよさに酔いしれていた。
激しく動き、グラインドする。
そのたびに適度な弾力が締め返してきた。
これはすごい、予想を遥かに上回る快感だ。
ダニーの体は震えていた。それが余計に感じさせる。
マーティンが振り向くとダニーが苦痛に呻いていた。
口に血がついている。ダニー・・・・マーティンは思いっきり自分の玉を握った。
ものすごい痛みに悶絶しそうになるが、射精する気分は吹き飛んだ。
14 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:23:36
だが、その収縮が引き金となり、ダニーは射精しそうになった。
「うっ、ああっ」アナルのひくつきが最高潮になり、ボスも思わず喘いだ。
「くっあぁあ、ダッダニー」どちらが先に果てる?
ダニーの体がびくんと跳ねた瞬間、ボスはイった・・・・。
だが、ダニーもまた跳ねた瞬間、果てていた。
15 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:24:20
はぁはぁはぁ・・・荒い息をせわしなく吐きながら三人は折り重なった。
誰も何も言わない、三人とも疲れ切っていた。
それぞれこれからのことを考えていた。
「ボス、ほとんど同時やったと思うんですけど、オレらどうなるんすか?」
「あーほぼ同時か・・・同時の場合なんて想定してなかったな・・・。
それにしてもお前たち、よくやったな。特にマーティン、えらいぞ」
ダニーはマーティンを抱き寄せた。腫れた睾丸が痛々しい。
「時々3Pするというのはどうだ?もちろん副長官には言わない」
ダニーとマーティンは視線を交わし頷いた。
「それでいいっす。絶対に秘密が条件で頼みます」
マーティンはダニーの血を舐めるとそっとキスした。
16 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:25:11
ダニーの部屋に帰ってくると二人はベッドに倒れこんだ。
「なぁマーティン、何で黙っとったん?」
「だって・・ダニーには言うなって・・・言ったらばらすって・・・」
「それやったらしゃあないな。とにかくお前も解放してもらえてよかった。
ハァーめっちゃ疲れた・・・もう寝よか?」
ダニーは氷を取ってくると、マーティンを寝かせ睾丸に当てた。
「腫れが引いたらいっぱいイかせたるからな、おやすみ」
言うが早いか、ダニーも横になるとすぐに眠りについた。
17 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:27:50
以上、前スレの最後のあらすじ
つぅ・・・んっあっ・・いっ・・・ハァハァ・・くっ。
ダニーは妙な声で目が覚めた。
なんやいやらしいなぁと寝ぼけたまま体を起こす。
マーティンがヒキガエルのようにベッドの端に転がり
唸りながら体を起こそうともがいていた。
「マーティン?どうしたん?」
「ダニィ・・トイレに行きたいんだけど足が痛くて・・僕もう漏れそう・・」
「ええっ、ちょっと待て、連れて行ったるわ」
ダニーが起こそうとすると、マーティンは苦痛に声を上げた。
「ほら、これ」ダニーはジュースの空ボトルを渡し促す。
「ええー、こんなの嫌だよ。恥ずかしい・・・」
「漏らすよりマシやろっ!!」
「もうっ・・・じゃあ見ないでよ・・」マーティンは仕方なくボトルに用を足した。
ジョボジョボジョボ、情けないような音を響かせトイレタイムは終わった。
20 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:31:01
「ちょっと見せてみ、腫れが引いたか見たるわ」
マーティンの睾丸の腫れはますますひどくなっていて、しかも玉が一つしかなかった。
「腫れもひどいし、片っぽが中にめり込んでしもてるなぁ・・・」
「えっ1個しかないの?・・・どうしよう、僕・・」
「なくなったわけやないで、めり込んでるだけや。病院行くか?」
マーティンは激しく首を振った。こんなの見られるなんて最低だ・・・。
21 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:32:00
ダニーに手伝ってもらい立ち上がったもののよろよろとしか歩けない。
「お前、今日休めば?熱もあるみたいやで」心配そうにダニーが見つめる。
「いや、今日休んだらボスに根性がないって思われちゃう」
ダニーは苦笑しながら着替えさせてやった。
コイツ、こうゆうとこ頑固やから困るわ。
マーティンを車で送っていくことにし、フレンチトーストを作ってやった。
22 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:32:52
支局に着くとサムとヴィヴィアンが寄ってきた。
「マーティン、どうしたの?フラフラしてるじゃない」
「コイツな、痴漢に間違われて、股間思いっきり蹴られたんや!」
「えっ?悲惨〜。まさか本当に痴漢してないでしょうね?!!」
「痛っ、そんなことするわけないじゃない。ひどいなぁ・・・」
ミーティングが始まり、ボスは二人の顔を見ると一瞬口元が緩んだ。
だが、次の瞬間にはいつものボスに戻っていた。
23 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:33:43
スロー再生のような勤務がやっと終わり、夕食の買い物をして帰って来た。
「今日のボスの表情見たか?お前のこと認めたみたいやったで」
マーティンの好きなペスカトーレを作りながらダニーは話しかけた。
「うん、ちょっと嬉しい」
「なんや、ちょっとだけか?オレはめっちゃ嬉しかったけどなぁ」
「ダニー、ボスって普段は冷静沈着でクールだけど・・・」
「だけど、何?」「あのさ・・実はすっごい変態なんだよ!!」
「へっ?変態って?」「コスプレとかバイブとか使うんだよ・・・」
「ウソやろー?あのボスがマジで?!!」
「うん、本当。だから3Pの時気をつけてね・・・」
24 :
書き手2:2005/08/15(月) 21:34:39
「コスプレって例えばどんなん?」ダニーは心配になり尋ねた。
「・・・チアガールとか、女の下着とか・・・あとフリフリのワンピースみたいな・・・」
「げぇー、そんなん絶対嫌やな。お前、かわいそうにそんなん・・・」
マーティンの話を聞いてダニーは気が滅入った。
それと同時に今まで一人で耐えていたマーティンを思い心が痛んだ。
「バイブはともかく、コスプレだけは突っぱねるで!!」
自分に言い聞かせるように宣言すると、マーティンも頷いた。
25 :
書き手1:2005/08/15(月) 23:34:52
「ほなお先にな」
ダニーとマーティンは二人で残業をしていたが、交わす言葉はなかった。
マーティンが意を決して言葉を放った。
「ダニー、僕、話したい事があるから、一緒に帰れないかな。」
「昨日の事か。」「そう。」「ほな一緒に帰ろか。」
26 :
fusianasan:2005/08/16(火) 01:33:00
test
まぶたの腫れた男と結膜炎の男、見るからに冴えないビジネスマンの容貌で
二人はミッドタウンを歩いていた。
「ダイナーでも行くか?」ダニーがぽつんとたずねる。
「いや、話しにくいことだから、僕の家でもいい?」「ああ、ええで。」
タクシーを広い、アッパーイーストサイドへ上った。近くのダイナーで
ビーフケバブサンドとペパロニピザを買う。
28 :
書き手1:2005/08/16(火) 01:35:15
ジョンが驚いたように「これはお二人お揃いで。」と笑顔で迎えてくれる。
「ああ、ジョン、ただいま。」マーティンはうつむいて挨拶した。
部屋に入ると、ダニーは「はぁ。」とため息をつき、ジャケットを脱いで
ソファーに腰掛ける。マーティンは冷蔵庫から冷えたクラブソーダを出し
バカラのグラスに注いだ。「それで、話って何や。何でも聞いたるで。」
29 :
書き手1:2005/08/16(火) 01:35:50
「実は、セックスセラピーに通っているんだよ。」
「セックスセラピーい!?」
「ダニーに冷たくされて、それでブッキングしたんだ。」
「何や、身体が求めたってことかいな。」ダニーははき捨てるように言った。
「違う!そんなつもりなくって、関係修復の糸口を見つけようとしたんだ。」
「それで?」ダニーの態度はまだ冷たい。
30 :
書き手1:2005/08/16(火) 01:36:25
「結論は、僕の君への気持ちが君が僕を思う気持ちより大きすぎて、不均衡に
陥っているって。」
ダニーは、しばらくその言葉を考えていた。確かに、マーティンを疎んじた
のは、彼の気持ちが重くのしかかってきたからだった。その精神科医の見立て
は正しい。
31 :
書き手1:2005/08/16(火) 01:36:55
「何やら難しい心理学用語はわからんけど、それは分かるわ。
お前の気持ちが重かってん。だけど、お前と距離を置くほど
心の中にぽっかり穴が開いたような気がしてな。それで、
昨日、ここで待ってたんや。」
「そうだったんだ。それなのに僕は・・・」
「いや、お前の行動の一部は正しい。精神科医の診断に頼りたい気持ちも
俺自身がそうやから、よく判る。でも、セックスセラピーまでやるか?」
ダニーは自分を棚に上げてマーティンを責めた。
32 :
書き手1:2005/08/16(火) 01:37:32
「だから!謝るよ!!僕は自分の気持ちをもっとコントロールする。
ダニー、まだ、僕たち、付き合えるよね。」
マーティンは必死だった。ダニーを失うかどうかの瀬戸際だったからだ。
ダニーはマーティンと別れるなど考えもしていなかった。これ位の修羅場は
以前の恋愛で何度も経験している。だがマーティンが相手だと、女相手とは
違って、何だか自分自身も追い込んでいくような具合だ。
33 :
書き手1:2005/08/16(火) 01:38:07
「あぁ、ここで別れたらおもろないやろ。まだまだ俺たちお互いを知らなさ
すぎるで。」
「はぁ〜!」マーティンは大きなため息をついた。
「良かった!!」気がつくと頬を伝わる涙が止まらなかった。
「マーティン、そな大げさすぎるから、やめい。愛おしくて抱きたくなるわ。」
「抱いて、セックスセラピーなんかに頼った汚れた僕を抱きしめて!」
34 :
書き手1:2005/08/16(火) 01:39:30
ダニーはシャツを着たままマーティンを抱きしめた。考えてみれば、こういう
格好で二人で抱き合うのは初めてだった。
なんかゲイやら何やら知れんけど、やることは男女と同じやな。
ダニーはそんなことを考えながら、マーティンのネクタイを取り、シャツを
脱がせて、首輪のような緊縛の後に唇をはわせていった。
35 :
書き手1:2005/08/16(火) 01:40:09
ダニーも自らシャツを脱ぎ、全裸になって、マーティンをベッドへ誘った。
マーティンは犬のようにうれしそうについてきた。
おなじみのキングサイズのベッド。ベッドサイドにはココナッツオイルが
置いてある。
「何だか、そのあざ、犬の首輪のようやな。俺、欲しいなぁ、大きな犬。
お前が飼うてた犬より大きい、6フィートの犬。」
すぐに意味を察して、マーティンは犬の鳴き声を始めた。
「キャイーン、バウワウワウ!!」
36 :
書き手1:2005/08/16(火) 01:40:49
「さぁ、犬のチンチンはどうなってるか、見たろ。」
マーティンの局部はすでに期待で先走りの汁をしたたらせていた。
「うほ〜、この犬嫌らしい奴やなぁ。じゃぁ、手で遊んだろか。」
ダニーが手でしごくと局部はさらに反り返り、ひくひくと先端を動かした。
マーティンも我慢できなくなり、自分からココナッツオイルをつかむと
菊門に塗りこんだ。ダニーの硬くなったペニスの先を押し当てると、
後背位で一気に滑り込ませた。
37 :
書き手1:2005/08/16(火) 01:41:51
マーティンの背中がうねる。ダニーは特にこのドギースタイルが好きだった。
マーティンの肩甲骨が美しい線を描き、動き出すからだ。
こいつ、本当はあそこに目に見えない羽根を生やしてるやないやろか。
そう、天使や、マーティンは、天使だったんや。
ダニーは久しぶりの喜びに、マーティンの中に自分の精をほとばしらせていった。
その勢いで、マーティンも「キャーン!」と鳴いて、射精した。
38 :
書き手1:2005/08/16(火) 01:42:32
マーティンは、メイドの給料を一ヶ月500ドル上げた。NYでも破格の給与
だ。それも全て、自分が出来ないモノの始末をしてくれて、口にチャックを
するという条件つきだ。NYは金が物を言う。金が無くても暮らせるが、暮らし
方が桁はずれに違うのだ。経済的に苦労をしたことのないマーティンには
分からないことだが、ダニーのブルックリンのアパートは確かに自分の
ドアマン付きアパートと違っている。そのあたりも、ダニーが気にしてるんじゃ
ないかと気にしているマーティンだった。でも、それほど彼の過去も経済状態も
知らない自分が口惜しかった。
39 :
書き手1:2005/08/16(火) 01:43:13
ダニーの生活はいたってシンプルだった。シャツやスーツを近くの腕のいい
チャイニーズのクリーニング屋に頼んだり、デリで簡単な食事を買って食べる。
そんな毎日だったのに、突然、アッパーイーストに住んでいるマーティンとの
付き合いが始まってしまった。給与は同じだろうと思うが、後ろに控える
ファンドの大きさに慄然とすることもあった。
さすがFBI副長官の息子や。金で困ったことなど全くない人生だったん
やろうな。
かつあげや窃盗を繰り返してきたティーンエイジャーを過ごしてきたダニーは
漠然と、二人の将来を考えていた。俺が隠してきた過去をあいつが知ったら
俺は切り捨てられるんやろか。ダニーはダニーなりに、二人の絆になるものを
求めているのは確かだった。重さを感じる反面、確証も欲しい。
こんな関係、今までになかったな。
今までの泡沫の恋愛関係に終止符を打って、ダニーも落ち着きたいと思い
始めていた。特に、今晩のマーティンの涙を見てから、彼は自分の気持ちの
動きに驚いていた。
40 :
書き手 39の続き:2005/08/16(火) 01:52:42
マーティンはまた泣いたせいでまぶたの腫れはとれないし、ダニーも
ストレスから眼底出血で目がウサギのように白めの部分が真っ赤になって
支局に出勤した。すかさず、サマンサが声をかける。
「2人とも、種馬の年齢なのは分かるけど、仕事場に雰囲気をもって
こないでよ。」かなり怒っている。
「すまんなぁ。お年頃なんやから大目にみてや。」ダニーはいつもの
ようにヘラヘラとその場を取り繕ったが、マーティンはかなり弱って
いるようだった。一言もなくコーヒーを取りに給湯室に向かった。
41 :
書き手1:2005/08/16(火) 01:56:38
ボスが2人を呼び出した。あまりないことだった。
ボスの個室に入るなり、ドアを閉めるように命じられた。
「2人ともなんて顔で出勤してるんだ。」
「すんません。」「すみません。」
「私は君たちの仲を理解しているつもりだ。しかし、家のチーム
には、女性二人がいる。二人とも勘がいい。察知されるのだけは
避けたいんだ。」
「よう分かりました。」マーティンは言葉もない。ボスに知られて
いるなんて。
42 :
書き手1:2005/08/16(火) 02:00:02
「それでは、マーティン、分かってるだろうな。クイーンズのモーテル
の張り込みの件を」「はい。」「ダニーにも加わってもらおう。」
「は?」マーティンとダニーは二人同時に声を上げた。
「ダニー、くれば分かるさ。さあ仕事だ。」
ボスの威圧的な雰囲気は絶対的だった。尊敬できる上司でもあり、
プレイイングマネージャーとしても最高の指揮官であるボスに
誰が異論を唱えられようか。サマンサを別として。
ダニーとマーティンはクイーンズのダイナーにいた。
ボスとの約束の時間まであと一時間。今日はボスとの3P初日だ。
「ダニー、今のうちに何か食べようよ」
「ああ・・・そうやな」
マーティンはターキーサンド、ダニーはクラムチャウダーをオーダーした。
いつもどおり食欲旺盛なマーティンを見ながら、ダニーはスプーンを置いた。
「いんけつや・・・」マンハッタンスタイルのチャウダーは苦手だ。
それにこの後のことを考えると食事どころではなかった。
マーティンにスープを譲るとそれっきり喋らなかった。
44 :
書き手2:2005/08/16(火) 03:27:38
約束の時間になり、二人は指定されたモーテルにチェックインした。
小花模様のロマンチックな部屋に辟易する。
「マーティン、これはボスの趣味なんか?落ち着かへんわ」
「うーん、たぶんそう。かわいいのが好きみたいだよ」
そうこうするうちにボスが到着した。
「それじゃ始めるか、まずはマーティンからだ。脱げ!」
ボスは椅子にマーティンを座らせ手と足をそれぞれ縛りつけた。
さらにブリーフケースからアイマスクを取り出した。
マーティンは慣れているのか無抵抗のまま従っている。
見ているダニーのほうが嫌悪感を感じ目を逸らした。
45 :
書き手2:2005/08/16(火) 03:28:54
マーティンは完全に拘束され、目隠しまでされている。
「次はダニーだな。おい、なんて顔してるんだ?
これからがお楽しみだってのに。まあいい、お前らしいな」
ダニーが全裸になるとボスも脱いだ。
「マーティン、今から順番にフェラチオしてもらう。
ただ舐めればいいわけじゃない。どっちがダニーのか当ててもらおう」
46 :
書き手2:2005/08/16(火) 03:29:57
ボスはそう言うとダニーに入れさせた。
マーティンは一生懸命奉仕する。
何度か順番が入れ替わったところでボスが尋ねた。
「さあ、今のはどっちだ?」
「ダニー?」恐る恐る答えるマーティン。
「違う、お前の大好きなダニーのがわからないのか?
さあ、最初からやり直しだ!ダニー、やれ!」
47 :
書き手2:2005/08/16(火) 03:31:01
それからさらに間違い、マーティンは必死だった。
ボスの独特の苦味を感じ、やっとダニーを当てることができた。
「マーティン、いい子だ。ご褒美をやろう」
ボスはマーティンの目隠しを外した。
「ダニー、マーティンの膝に手をつけ。マーティンよく見てろよ」
ダニーとマーティンの距離は20cmほど。もう少しでキスできそうだ。
マーティンの心配そうな目が見つめる。
48 :
書き手2:2005/08/16(火) 03:32:06
ボスはダニーのアナルにローションを塗りたくった。
間髪いれずに指でねちねちと弄ぶ。
「んっく、ぁぁ」ダニーは声を押し殺そうとするが耐えられない。
奥までゆっくり挿入すると、中で指をしゃくるように動かす。
「ボッボス・・あふ、くっあぁー」とうとうダニーは声を上げた。
「ダニィ・・」マーティンはダニーの様子を見て欲情した。
「さあダニー、マーティンのを咥えろ!!」
ダニーは目の前にあるペニスを咥えると、ひたすら上下した。
49 :
書き手2:2005/08/16(火) 03:33:36
「はぁはぁ、んぁぁ、ダニー、もぅ・出る・・ああー」
マーティンはダニーの咽喉の奥に大量に射精した。
「バカっ、マーティン!、もっと辛抱しろ!」ボスの叱責が飛んだ。
「お前には楽しむということがわからないのか?
まったく・・・もういい、お前はそこでじっとしてろ!」
ボスは執拗にダニーを責めはじめた。
50 :
書き手2:2005/08/18(木) 00:29:48
ボスは指を二本に増やし、挿入を繰り返す。
アナルのヒクつきを楽しみながら、絶妙の動きで中を擦る。
「くっ・・・あぁ・・・・ぁぁん」ダニーの抑えた喘ぎがせわしなくなってきた。
そろそろイキそうだな、ボスはニヤッとした。
マーティンの目の前でイカせて自尊心を砕いてやる。
ヤツに悶え狂う様を見られたらダニーも私に従うだろう。
51 :
書き手2:2005/08/18(木) 00:31:11
マーティンは苦しそうなダニーを見ていた。
喘ぎ声とは裏腹に完全に怒りの表情だ。
「マーティン、目閉じるか、下向いといてくれっ」
ダニーが怒鳴った。
「いいや駄目だ、しっかり見て記憶に焼きつけろっ!!」
マーティンは下を向きかけたが、ボスの命令に逆らえず、ダニーを見つめた。
「そうだ、そのままよく観察しろ。それがお互いのためだ」
52 :
書き手2:2005/08/18(木) 00:32:01
なんでオレがこんなん見られなあかんねん・・・。
ダニーは悔しさと情けなさで打ちひしがれた。
気を緩めると精液と一緒に涙まで出そうだ。
その間にもボスの嬲りは続く。前立腺を探られ射精寸前だ。
「っ・・・あっ・・んっくっ」もうこれ以上は我慢できない。
ボスは射精の気配を察すると指を抜いた。
53 :
書き手2:2005/08/18(木) 00:32:49
「はぁ・・はぁ・・ボス?」
「さあ、騎乗位でイカせてやろう。自分で腰を振れ」
ボスはペニスをしごきながら仰向けになった。
「もしもオレが拒否したらどうします?」
「拒否などできん。それはお前が一番わかっているはずだろう」
ダニーは顔を覆った。マーティンを一瞥するとボスの上に跨った。
「あっぁぁ」ボスのペニスが入ってきた。指よりも何倍も感じる。
「私は動かないから、自分で好きなように楽しめ。
マーティン、ちゃんと見てるか?後で感想を聞くぞ」
54 :
書き手2:2005/08/18(木) 00:33:35
ダニーは自ら腰を振るなんて出来なかった。
マーティンに見られているのだから尚更だ。
アナルにボスのペニスを入れたまま、自分のモノを擦り始めた。
「んっ・・・あっぁあ・・ぃっイクー」ボスの臍にぶちまけた。
呆気にとられるボスとマーティン・・・。
55 :
書き手2:2005/08/18(木) 00:34:26
「ダニー、お前・・私に逆らったな?どうゆうつもりだ?」
「好きに楽しめと仰ったじゃないですか?ボスのも入れたままやったし・・」
「小癪な!後ろを向けっ!!!」ボスはペニスを突き立てた。
狂ったように突いて突いて突きまくる。
「くっ・・・んっ・・」ボスはイキそうになるとペニスを抜き、ダニーの口にねじ込んだ。
そのまま頭を押さえつけ、二、三度腰を振ると射精した。
「ハァハァハァ・・ダニー、今度こんなことをやったら許さん、よく覚えとけっ!」
ボスは素早く着替えると、怒り心頭のまま出て行った。
56 :
書き手2:2005/08/18(木) 00:35:28
ダニーは椅子からマーティンを解放するとベッドにひっくり返った。
「ダニィ・・どうしよう・・パパに言うかな?・・・」動揺しているのか目が泳いでいる。
「今日のところは大丈夫やろ、でも今度は・・・」
ダニーにはわかっていた。次回からは完全に言いなりになる必要がある。
さもないとマーティンとは永久にお別れだ。
「マーティン、もう後がない。ボスを完全に怒らせてしもた。
だから、今度からオレが痴態晒しても軽蔑せんといてくれるか?」
「僕のせいなのに軽蔑なんてするわけないよ、
本当に役立たずでどうしようもないね・・・僕・・・」
57 :
書き手2:2005/08/18(木) 00:36:06
ダニーはモーテルを出ると一人でアパートに帰った。
今夜はどうしても一人になりたかった。
ボスから受けた屈辱にすっかり心を侵されていた。
恥辱にまみれた自分の姿が思い浮かび、必死に打ち消すがイメージは消えない。
その時、ふと女を抱きたくなった。
ダニーはそのまま夜の街へと消えていった。
わーまたダニー買春しちゃうの?
いつになったら、二人は幸せになれるんだろう。
59 :
fusianasan:2005/08/18(木) 00:52:09
下がったんでageます。
書き手2さん、最高!
ダニーはブロンクスでストリートガールを買った。
誰でもよかったが、あえて白人は避けアジア系を選んだ。
$150を$100に値切り、近くのモーテルへ。
不法滞在なのか、挙動不審でおどおどしている。
今のダニーには絶好のカモだった。
61 :
書き手2:2005/08/18(木) 23:52:01
「いっしょにシャワー浴びよか?」
言葉がわからないのか、にこにこしながらついてきた。
「あー、えーと、英語わかる?え・い・ご?」
はにかんだようなあいまいな笑顔を返すと、女はダニーのペニスを口に含んだ。
ダニーは仁王立ちのまま女を見下ろした。
女はただひたすらにフェラチオを続けている。
ダニーは制止するとベッドへ誘った。
62 :
書き手2:2005/08/18(木) 23:52:54
ダニーが仰向けになると、女が跨ろうとした。
慌ててコンドームをつけ、念のためにもう一枚つけた。
手招きし、上に跨らせる。さっきのボスと同じだ。
ダニーはじっとしたまま、女が腰を振るのを冷めた目で見ていた。
「んんっ、ええで、ええ感じや。もっと激しくしてくれ」
久しぶりの膣の感触を存分に味わうと、心が落ち着くのがわかった。
63 :
書き手2:2005/08/18(木) 23:53:43
ダニーは体を入れ替えると思いっきりピストンした。
体が小さいせいか、女は少し痛そうな表情で耐えている。
ダニーは激しく興奮した。「痛いんか?」「・・・・・」
あかん、何言うても通じひんわ、その分そそるなぁ・・・。
ダニーはイキそうなのをこらえながら、何度も何度も突き上げた。
「ぁっ・・・く・・」苦痛に歪む女の顔・・・もうあかん・・「くっぁっ・・ハァハァ」
ダニーはこらえきれずにイッた。ペニスが数回ビクンと痙攣した。
64 :
書き手2:2005/08/18(木) 23:54:32
「ごめんな、痛かったやろ?」ジェスチャーを交えて謝る。
女が理解したのか不明だが、笑顔でNOを連発した。
「そやそや、お金渡さんとな。はい、これ」
ダニーは値切ったもののやはり$150渡し、女と別れた。
妙な高揚感に包まれながらアパートへ帰り、バスタブにつかる。
バブルバスに身を委ね、すっかりリラックスしたところでハッとした。
65 :
書き手2:2005/08/18(木) 23:55:34
「マーティン!!」
急いでバスルームから出ると、マーティンの携帯に電話する。
「ダニィ?・・」一度も鳴り終わらないうちにマーティンが出た。
「オレやけど・・・大丈夫か?」
「ああ、うん・・・。へーきと思う・・」とてもまともとは思えないような様子だ。
「何してたん?」「何もしてないよ・・ダニーは?」
「オレか?オレはその辺ブラブラ散歩してた・・・」
「そう・・・僕も散歩しようかな・・・」力なく答えるマーティン。
「もう遅いから散歩はやめとき。今から行こか?」
「ううん、本当に平気だから・・・もう寝るね。ダニィ・・ずっといっしょにいてね」
66 :
書き手2:2005/08/18(木) 23:56:25
マーティンのストレートな告白にドキッとした。
オレは、またお前のことを裏切ってるんやで・・・。
どないしたらええねん?オレって最低や・・・。
「ああ、また明日な。」
やっとの思いで、それだけ言うと電話を切った。
マーティンはダニーに事の経緯を全て話した。これまで挙動不審だった間、
ずっとボスに性的な奉仕を強制されていたことを。
ダニーは今まで以上にマーティンを庇護する気持ちが盛り上がるのを感じた。
俺が代われるならマーティンの代わりにいくらでもなろうと。
68 :
書き手1:2005/08/19(金) 00:17:49
ダニーは初めてボスとマーティンとの3Pを体験させられた。
今まで権力に屈さず、自分のルールで生きてきたダニーにとって、
初めて守る者を持った痛みを痛感した晩だった。プライド以上に誰かを
守ってやりたいと思う気持ち、人生初めての感情だ。
しかし、自分の粉々にされたプライドはどう保つ?
その不屈の精神が彼をブロンクスの売春宿街と導いたのだった。
69 :
書き手1:2005/08/19(金) 00:20:04
男としての自尊心と他者を愛おしく思う気持ち、そのぶつかり合いは、
ダニーの心に大きな摩擦を起こしていた。
アラン・・・
あのアッパーウェストの医師の事を思い浮かべてしまうのはどうしてだろう。
しかし、ダニーは明日アポイントの申し入れをすることを決めた。
70 :
書き手1:2005/08/19(金) 00:23:33
翌日の勤務は地獄だった。ダニーとマーティンの一挙手一投足をボスが見張っている
ような気がして、二人ともぎこちなくデスクワークに没頭した。
いつも同様、サマンサもヴィヴィアンも帰った静まり返った事務所に二人
残業していた。
「ダニー、一緒に帰る?」マーティンがおずおずと聞く。
「すまん、俺、シュリンクとアポがあんねん。」
「そうか、じゃあ僕、家に帰るね。電話待ってるね。」マーティンも
身支度をして、帰っていった。
ダニーも足早に別のエレベータに乗って階下のタクシースタンドで車を
拾った。
71 :
書き手1:2005/08/19(金) 00:26:26
「やぁ、ダニー、何だい、今日はレイプされたような顔して。」
なんでこいつはこんなに鋭いんや。アランの指摘にダニーは苦虫を噛み潰した
顔をせざるを得なかった。
「実際、レイプされたんや。それも男に。それも恋人の前で。」
「うわぁ、今までの中で一番重たいお題を持ってきたってか。」
アランはイータラのグラスにクラブソーダをついでダニーの手元に運んだ。
72 :
書き手1:2005/08/19(金) 00:31:04
「君は今までの経験からSだとばかり思っていたのに、それでどうした?」
「たまらなくなって、チープな女を買うてヤってしもうた。」
「ふーん、自尊心の回復期だね。君はプライドを粉々にされた。男として。
だから女が欲しかったんだ。」
「でも、付き合ってる奴には理解されないだろうし、言うつもりもない。
俺は、今までの俺でいたいのに、状況がそうさせてくれない。
アラン、どうすれば、俺は俺でいられる?」
「過度の刺激は、レイプの事実を君に思い出させるだけだよ。街で女なんか
買わないで、ここにおいでよ。僕は君より年上だよ。ゆりかごにだって
なれるさ。」
「じゃあ、俺を慰めてくれるってか?」
73 :
書き手1:2005/08/19(金) 00:33:40
「ああお安い御用だとも。精神安定剤と睡眠薬を飲むといい。今日はここで
休んでってかまわないから。」
「ありがとな、アラン。俺、めちゃ疲れてるねん。」
すでにアランはクラブソーダに強い睡眠薬を溶かしていた。ダニーの理性は
もうトロトロのはずだ。
「じゃあ、スーツを脱ごうな。」「ん」ダニーは素直に従い、アランの
広いキングサイズベッドへとダラダラ歩いていった。
74 :
書き手1:2005/08/19(金) 00:36:46
さらにアランはダニーに薬を飲ませ、ボクサーショーツ一枚にしてベッドに
横たわらせた。
「ん、眠い。」「ああ、良く眠るといい。」
今日だけは何もしないでやろう。それにしても、あの堅物マーティンの前で
ダニーを犯した相手は誰だろう。いやぁ、この二人の関係からは目が離せ
ない。ずっと介在していきたいものだ。
アランはひとりごち、ダニーの身体に沿って自分の身を横たえた。
75 :
書き手1:2005/08/19(金) 00:40:36
ダニーは目覚まし時計で目が覚めた。8時だ。アランの姿はない。
歯を磨きに行くと洗面台の鏡にポストイットが貼ってあった。
「寝顔があまりにキュートだったから、目覚ましで起きるといい。僕は早番
だ。A」
しまった、この時間だとアパートに戻って着替える暇がないわ。
アランのアパート前にタクシーを呼び、ミッドタウンの支局へ向う。
近くのスタバでサンドウィッチとダブルエスプレッソを買って席に着く。
「あ〜、ダニーったら、昨日と同じスーツだよ。」ヴィヴィアンがほくそ笑む。
それを冷えた目で見つめるマーティンだった。
76 :
書き手1:2005/08/19(金) 21:39:13
マーティンは、書類をわざとダニーの足元に落とし、ダニーの身体に顔を
つけるようにして、拾うふりをした。
あ、この香り。バニラとシダーが混じった香り。どこかで遠くない過去に
僕もかいだ香りだ。どこでだっただろう。
明らかにダニーのつけているフレグランスと違う香りがダニーの身体から
匂ってくる。マーティンは胸をかきむしりたい思いにかられた。
77 :
書き手1:2005/08/19(金) 21:43:02
ダニーからは昨日、電話しなかった話はなかった。
マーティンは、ランチタイムにオフィスを抜け出し、ヘンリーベンデルの
香水売り場へと駆け込んだ。
「贈り物をお探しでしょうか?」愛想のよい上品な店員が声をかけてくる。
「いや、自分用のフレグランスを捜してるだけど、よく判らなくて。」
「それでしたら、ご自由にテスターでお選びください。ご自分用でしたら
お気に召すものが一番お似合いになるものですよ。」
有難いことに店員はすっと離れてくれた。さすが行き届いた接客だ。
マーティンは、男性用の棚の上段の香水を手にとり、片っ端から、香りを
試した。
78 :
書き手1:2005/08/19(金) 21:50:46
ダニーの香りを見つけた。クリスチャン・ディオールの「ファーレンハイト」
だ。その香りに包まれると、まるでダニーに抱擁されているようで、しばし
マーティンは桃源郷をさまよう心地になった。
いけない、いけない、ここは百貨店なのに、僕ったら。
捜していた匂いに行き当たった。シャネルの「エゴイスト」。間違いない。
これって・・・・。
マーティンも思い当たる人物を思い出した。やっぱりドクター・ショアだ。
僕にセックス・セラピーを施した医師。
ダニーは、セラピーを受けるような柄じゃない。ひょっとして浮気?
「お決まりですか?」呆然と立ち尽くすマーティンに店員が話しかける。
「いや、今日はやめておくよ。」
「お客様、エゴイストがお気に入りのご様子なので、サンプルをどうぞ。」
エゴイストのミニチュア瓶をヘンリベンデルの袋に入れてもらい、
マーティンは店を後にした。来た時よりもさらに悪い予感を胸に秘めて。
79 :
書き手1:2005/08/19(金) 21:58:47
「わっ、ヘンリーベンデルだ。マーティン、誰かにプレゼント〜?」
サマンサが黒白の縦じまの袋に気がつき、すかさずチェックを入れる。
「母へのプレゼントだよ!」マーティンは声高に答えて席に着く。
ダニーからはまだ言葉がない。席でチキンとカッテージチーズのピタサンドを
がっついている。
あ、僕、ランチ忘れちゃった。
支局のカンティーンで冷えたピザを買い、席で食べる。
80 :
書き手1:2005/08/19(金) 22:04:44
「マーティン、ちょっとええか?」ダニーが今日初めて声をかけた。
「ああ、いいよ。」二人してトイレに向う。
「連れション?変な二人!」事件がなくて暇なサマンサが二人の背中を
見ながら言った。
トイレに入ると、他に誰もいないのを確認してダニーが話し始めた。
「昨日と同じスーツ、気になるやろ。」「まあね。」マーティンはそれほど
気にしていないふりをして強がる。
「昨日、疲れとってな、そのままギリギリまでソファーでがー寝や。
着替える暇なく家から飛んできた。」
「なんで、説明なんかするのさ。」マーティンは段々腹が立ってきた。
「いや、お前が妙な妄想するかと思うてな、蛇足やったかな。」
そう言うと、ダニーはトイレを後にした。
ダニー、どうして僕に隠し事を・・・・・。
81 :
書き手1:2005/08/19(金) 22:09:24
珍しく事件のない一日が終わり、定時で皆が帰り始めた。
「マーティン、晩飯でもいくか?」ダニーが気を遣っているのは明白だ。
僕と違う男の残り香を持ったダニーとの食事?!冗談じゃない!
僕にもプライドがある。
「いや、今日はちょっと家で用事があるから。」
呆然とするダニーを残し、マーティンはオフィスを後にした。
82 :
書き手1:2005/08/19(金) 22:16:46
ダニーは顔見知りのアフリカン・キッチンでチキンのクスクスを買い、
アパートに戻った。まず、シャワーや。
ジャケットとシャツを脱いだ時、ダニーはアランの香りを感じた。
うわー、強い匂いやな。えっ、ま、まさか、マーティン!
ダニーは、今日のマーティンの不自然な態度にやっと合点が行った。
この匂いに、奴は気がついたんや。どないしよ。でも昨日は
何もせいへんかったのに、やっぱ、浮気と同罪かな。
考えが千路乱れる。
83 :
書き手1:2005/08/19(金) 22:22:10
とりあえず電話だ。ダニーはマーティンの携帯に電話をかける。
「ただいま電話に出ることが出来ません・・・・」冷たい留守電の声が響く。
自宅に電話をする。「フィッツジェラルドです。留守にしています。」
マーティン、どこにいるんや!
その頃、マーティンはミッドタウンのシングルズバーにいた。ダニーと
付き合い始めてから一度も足を踏み入れていない古巣だ。
84 :
書き手1:2005/08/19(金) 22:27:10
いかにも毛並みの良さそうなルックスのマーティンは男女ともの目を引き、
お誘いが何度もかかった。無視していたが、一人だけ面差しがダニーに
似ているダーク・ハンサムの男と会話することにした。スペイン大使館の
一等書記官だという。ウサを晴らしたいマーティンは相当酔っていた。
エンリケと名乗る外交官は、そんな様子を虎視眈々と狙っていたようだ。
「どこか別のところに行く?」「あぁ、いいね〜。」
85 :
書き手1:2005/08/19(金) 22:32:22
気がつくと、マーティンはエンリケの自宅にいた。それもジャケットと
シャツが消えている。頭がグラグラする・・・。エンリケはクラブソーダを
持ってきた。それを飲むと急にマーティンはダニーを思い出し、帰ろうと
ソファーから起った。
「何焦ってる?君が来たいといったんだよ。」
エンリケは強引に、マーティンを引き寄せると、唇を重ねた。
「な、何をする!」「お互い合意の上だろ。FBIさん。」
「なんでそれを?」「IDは分からないところに閉まっとくべきだね。」
ニヤっと笑う笑顔もダニーに似ている。マーティンは覚悟を決めて、
このワンナイト・スタンドを楽しむことにした。
ダニーだって、ダニーだって、昨日は・・・。
86 :
書き手1:2005/08/19(金) 22:37:55
エンリケはマーティンの服を手際よく脱がせると、シャワルームへ誘った。
二人でバブルソープだらけになりながら、よく身体を洗う。エンリケは
力なく下を向いているマーティンのペニスを咥えると絶妙の舌技で奮い起た
せた。「あぁ、ん、ん、ダニー・・・」思わず、名前を言ってしまう。
「ダニー、悪い奴だ、こんなに可愛い恋人を一人街に放つなんて。」
エンリケは半立ちの自分を手で立たせ、バブルソープで滑りやすくなった
マーティンのアヌスに一気に突き入れた。「ああああ、ダニー!!」
マーティンは絶叫と共に果てた。
87 :
書き手1:2005/08/19(金) 22:43:38
エンリケは力の抜けたマーティンをバスタオルでくるむと、間接照明の
ベッドルームへと連れて行った。
「これからがお楽しみだよ。」エンリケはクロゼットから黒い小さなスーツ
ケースを持ち出すと、中から手錠と首輪を出した。
ベッドでのびているマーティンを緊縛するのは簡単だった。首輪の先には
ちょうどペニスを縛る小さな輪が付いていた。これで完璧だ。
「アメリカ人のブロンド、ちょろいね。」エンリケは、マーティンの口を
開かせ、自分のどす黒く起ったペニスをねじ込んだ。
「うぐ、ぐ、苦し、い。」「そうかな、君のペニスはそう言ってないよ。」
確かにマーティンのペニスは一度果てたにもかかわらずまた立ち上がろうと
していた。先走りの汁が出始めている。
88 :
書き手1:2005/08/19(金) 22:49:42
「さあ、四つんばいになって」マーティンは言うとおりにした。
まるで性の奴隷に慣れているようだ。エンリケは感嘆した。
自分が相手しているのが、FBI副長官のマナ息子とも知らないで、ただただ
エンリケは美しいマーティンを陵辱することに興奮し切っていた。
「いくよ。」「あぁ、ダニー、来て。」マーティンの意識はアルコールと
ホットシャワーで混濁していた。エンリケはペニスを突き立てた。
「あぁ、いいよ、ダニー、そのまま僕の中に来て!」
あまりに締まりのいいマーティンの律動する直腸にエンリケはすぐさま自分の
精を放った。
89 :
書き手1:2005/08/19(金) 22:57:29
次に意識が戻るとすでに外は明るくなっていた。
僕、どこにいるんだろう。
マーティンは周囲をきょろきょろ見回した。見慣れないベッドルーム。
隣りには、黒髪の男が眠っている。
うわぁ、やっちゃった。どうしよう!
マーティンは、急いでそこかしこに散らばる自分の服を集めると身につけ、
なぞの黒髪の男のアパートから出た。見慣れた光景が目の前にあった。
国連ビル?ここはミッドタウンか。とにかく家に帰ろう。
マーティンは、その日、午前休して、午後から出社した。
心なしかダニーの目線が冷ややかだ。
90 :
書き手1:2005/08/19(金) 23:00:26
二日酔いと昨夜の出来事で頭の冴えないマーティンを尻目に、ダニーは
続々と失踪者の手がかりをボスに提出していた。
「おい、マーティン、どうした?お前らしくないな。」
ボスも疑惑のまなざしでマーティンの様子を見つめている。
「はい、ちょっと風邪を引いたようで。すみません。」
「それなら、今日は早退しろ。明日はしゃきっとして出てくるように。」
ダニーに一言も声かけられることなく、オフィスを後にしたマーティンだった。
91 :
書き手1:2005/08/19(金) 23:04:33
マーティンはすごすごと自宅へ戻るとシャワーを浴び、ベッドに横になった。
いつの間にか転寝していたようだ。電話がなる。ダニーだった。
「ダニー、今どこ?」「どこって、お前のアパートの1階におる。行って
いいか?」「うん。上がってきて。」
ダニーはブランデーと卵とミルクを持ってきた。
「これからエッグノック作ったるから、寝とき。」
「ああ、ありがと。」ダニーの優しさが心にしみこむ至福の時間だ。
92 :
書き手1:2005/08/19(金) 23:09:03
ダニーはステアしたエッグノックをバカラのグラスに入れ、マーティンに
手渡した。「ありがと。」「お前、また例のセラピーに通ったな。」
「え!何で」「首輪の跡ついてるで。」「この間、自分の気持ちをコントロール
するって言ったやんか。その約束はどこへ行った?」ダニーは低い声で
つぶやくように言う。マーティンも自分の怒りを思い出した。
「ダニーだって、自分以外の誰かの匂いつけて出勤したじゃないか!」
マーティンは我慢できなくなって、ダニーに殴りかかった。
全く予期せぬ攻撃にダニーはKOを食らい、床に倒れ昏倒した。
93 :
書き手1:2005/08/19(金) 23:11:06
「ダニー!ダニー!起きてよ!ダニー!!」
ダニーが起きる気配がない。マーティンはとっさにアラン・ショアの事を
考えたが、奴が嫌疑の相手だ。頼ることは出来ない。でも、このままダニーが
意識不明だったら・・・・
マーティンはアランの携帯を鳴らした。
94 :
書き手1:2005/08/19(金) 23:19:44
「ショアですが」出てくれた!
「マーティンです。ドクター。家に来てください。救急キットを持って
お願いします。住所はパークイースト・・・・」
アランは、15分でマーティンのアパートに着いた。
また、これはこれは、何たる光景!
アランは、笑い出しそうになるのをこらえるのが必死だった。
「この人は、同僚だったよね。ERで手当てしたことがある。今日はどうした?」
「転んで頭を打ったんです。そのまま失神してしまって。」
明らかにマーティンはうろたえている。それに顔の痣は誰かに殴られたことを
ものがかっている。
いいねえ、痴話喧嘩か。
アランが脈を取ったり、眼光を調べている間中、後ろでマーティンは右往左往
していた。「マーティン、氷はあるかい?」「はい。」「じゃあ、ビニール袋に
入れて、彼の頭を冷やしてくれ。」「はい。」
「見たところ、脳に損傷はないと思うし、脈も正常だ。もし明日、本人が
不調を訴えるようだったら、ERに来てくれ。CTを取ろう。それと
ここに寝せておくわけにはいかないから、ベッドに運ぼう。」
アランが初めて足を踏み入れるマーティンのベッドルームだった。
アーリーアメリカン調の家具でホーミーな雰囲気のする部屋だった。
ここで、この二人は睦みあっているのか。いいねえ。覗き趣味心をそそる。
アランは今日のところは退散することにした。きっと明日、ERにダニーは
来るに違いない。
95 :
書き手1:2005/08/19(金) 23:43:09
書き手2さん、バトンタッチです。
よろしくお願いします。
96 :
fusianasan:2005/08/20(土) 00:02:36
ダニーは久々にウクレレを弾いていた。そこへ携帯の邪魔が入った。
「・・はい、テイラー」
「ダニーか?、私だ。
今、マーティンと一緒なんだが、この前のモーテルに来てくれないか?」
「了解、すぐ行きます」ボスか・・・嫌やなぁ・・・。
ダニーは気持ちを奮い立たせるとモーテルへ向かった。
前回の3Pで怒らせてからというもの、この日が来るのを恐れていた。
98 :
書き手2:2005/08/20(土) 00:15:36
わざと平気なフリでドアをノックする。
満面の笑みでボスが迎えてくれた。
「早かったな、ダニー。今日は楽しもうじゃないか」
「ええ、そのつもりっす」ダニーも負けていない、今のところは・・。
「そうか、ちょっと趣向を凝らしてみたんでな、お前にも楽しんでほしいんだよ」
趣向ってなんやろ?、ますます嫌やわ・・・。早よ終われ・・・。
内心は泣きながらも、ダニーは笑みを絶やさず部屋に進んだ。
99 :
書き手2:2005/08/20(土) 00:16:43
ベッドの上に何かが置いてある。
一体それが何なのかわからないので近づいてみると、
さくらんぼ柄のパジャマを着せられ、泣き疲れて眠ってしまったマーティンだった・・・。
「えっ!?マーティン、なっ、何で・・ええーっ、ボス?」
たちまちパニクってしまい、動揺して言葉がもつれた。
「マーティンに聞いたぞ?お前は女も好きなんだってな。
女たらしの癖に、男とも寝るとは贅沢なんじゃないのか?」
「・・・・・」先日女と寝た手前、言い返すことができない。
「だから望みを叶えてやろうと思ってな。かわいいだろ?」
「で、オレはどうすれば?オレもこんなん着るんですか?」
「いいや、女を抱くようにマーティンを抱くんだ。私の前で実演してくれ。
女たらしのテクニックを教えてもらおうと思ってな」
ボスはニヤッと笑うと、マーティンの頬をペチペチ叩いて起こした。
「マーティン、さあ起きろ♪大好きな彼氏が来てくれたぞ♪」
マーティンは目をこすりながら起き上がった。
「ダニィ・・・」いつもの困ったときの呼び方でダニーを呼んだ。
「マーティン、お前は女の役で、オレはその彼氏やねんて。
だから今からええことするんや、じっとしてたらすぐに終わるからな」
ダニーはあやすように語りかけ、やさしくキスをした。
ゆっくりとパジャマのボタンに手を掛け、外しながら愛撫する。
ボスはご丁寧に下着までつけさせていた。驚きを隠しながらそれも外す。
女とするように全身を舐めあげ、乳首を吸った。
マーティンの息がだんだんと荒くなる。
ボスは固唾を呑んで見守っていた。ダニー、いいぞ、最高の見世物だ。
ダニーが挿入しようとしたとき、待ったを掛けた。
「ダニー、穴を舐めてやらないと女は喜ばないだろ?さあさあ」
ダニーは渋々アナルに舌を這わせた。マーティンのペニスがピクピクする。
「ぁぁん、ダニィ・・・ぁぅん・・」そろそろやな。
ダニーは足を持ち上げると、屈曲位で挿入した。
わざとボスの目に触れるように大きくスライドさせる。
「んくっ・・ぁぁはぁ・・いっいぃぃ」マーティンは快感に浸っていた。
ダニーは足の指を一本ずつしゃぶりながら挿入を繰り返す。
「ぁぁぁー、ゃっいいー」マーティンが精液をぶちまけると
ダニーも動きを早めた。「マーティン、中で出すで・・・くっぁぁ・・」
ダニーは中出しすると、キスをして離れた。
「マーティン、どうだ?よかったか?」猫撫で声でボスが問いかける。
マーティンは伏せ目がちに黙って頷いた。
「そうか、じゃあ同じことを私にしてくれ。ダニーはこっちで見てろよ」
ボスはダニーと入れ替わりにベッドに横たわった。
ダニーはマーティンの頬にキスすると、ソファーに座った。
マーティンがボスに奉仕するのを眺めていた。
見ているのが辛かったが、目を逸らす訳にはいかない。
いつのまにか、ブロンクスの娼婦のことを考えていた。
あの女はまだいてるやろか?あの苦渋に満ちた顔・・・。
言葉の通じん相手があんなにおもしろいとはな・・・。
遠慮せずに快感だけを得られるんや。
ダニーは、知らず知らずのうちにニヤけていた。
ボスは、ダニーを手に入れたと思い、ほくそ笑んだ。
必死に奉仕するマーティンは、ダニーの様子に気づいていない。
気づかせてやろうか?、いや、このボンボンの自我が崩壊しかねん。
コイツにも慣れる時間が必要だろう。
気を抜いたせいか、ボスはいきなりマーティンの口腔に発射した。
「うわぁー」マーティンは突然のことにむせた。
ダニーはその声で現実に引き戻され、精液を舐め取るマーティンを見つめた。
「マーティン、今日はもういい。お前たちには十分に楽しませてもらったからな」
ボスは、服を着るとパジャマと下着を回収した。
「ダニーにも何か着せたいが、お前に似合いそうなのがなかなか見つからないんだ」
「オレはブルーかパープルが好きっす」ダニーは笑いながら応じた。
「そうか、じゃあ考えておくよ。じゃあ、今日は解散!」
ボスが出て行った瞬間、ダニーはため息をつきながら顔を覆った。
「ダニィ・・・今日は一緒にいたい。ギュってされたいよ」マーティンが甘えてきた。
「ああ、早よ帰ろ。こんなとこに長居は無用やで」
本当はブロンクスに寄りたいダニーだった。
ごめんな、マーティン。オレはやっぱり女とも寝たいんや。
二人は足早にモーテルを後にした。
帰り道、ダニーは何度もブロンクスを通りたい衝動を抑えた。
いくらなんでも正反対のルートを通れば怪しまれるだろう。
「ちょっ、マーティン危ないから!!曲がられへんやん」
それでもマーティンはダニーの右手を握って離さない。
思い通りにならないことと重なって、乱暴に手を振り払った。
「痛いっ!ダニー、何でそんなことするのさ?」
「危ないやろっ、何べんも何べんもおんなじこと言わすな!!」
マーティンは拗ねてそっぽを向いた。
ダニーのアパートに着くが、マーティンは降りない。
「降りひんの?」一切無視。
「はぁーあ・・・ほな先に上がるで?」それでも無視。
「じゃあ自分ちに帰るか?送っていくわ」
ダニーは、マーティンを送った後に、ブロンクスへ寄ろうとしている自分に気づき驚いた。
もう一度エンジンを掛けようとすると、何かが聞こえた。
「ん?えっ何?」「今日はギュってしてくれるって言ったじゃない!」
「あ、ああ、だから降りって言うてるやん?無視したんお前やろ?」
マーティンは黙って車から出ると先にアパートへ入っていった。
ダニーは釈然としないまま続いた。
ダニーのストレスはピークに達していた。
ボスへの愛想笑いと性的な服従、マーティン、女への衝動・・・・
うんざりするほど渦巻いている。それでも苛立ちを隠さなければならない。
せめてこんな時に酒でも飲めたらなぁ・・・。
「マーティン、お風呂入ってギュってしよか?」
「・・・うん」嬉しさを隠しながらマーティンが寄って来た。
バスルームでマーティンの体を海綿で拭っていると
お尻に赤い手形がついていた。「ん?!!」
「マーティン、ここ・・ボスか?」恐る恐る聞いてみる。
「うん、下着つけるのを嫌がったらやられた・・・それも思いっきり」
「ボスやばいなぁ。あれが原因で別居とちゃうか?」
「体を舐めたとき、吐きそうだったよ。あー今でもダメだ、僕」
お互いに愚痴をこぼすと、少しは気持ちが落ち着いた。
ベッドでマーティンを抱きしめ、背骨をなぞっていた。
しばらくそうしているうちにマーティンは眠ってしまった。
ダニーは起こさないよう、そっとベッドから抜け出すと
クローゼットを開け、隠していたAVを取り出した。
そのまま抜き足差し足でリビングへ向かう。
警戒しながら再生し、食い入るように画面に見入った。
ダニーはペニスを取り出すと、息を殺したまま手を動かした。
「んふ・・・ん・・・ハッハッ・・」だんだん手の動きが早くなる。
画面の女がイクのと同時に、ダニーも射精した。
「はぁっはぁ・・・ふぅ」息をつきながら、手についた精液を洗うため立ち上がった。
手とペニスをざっと洗い流しながら自己嫌悪に陥る。
ボスとするたびにこんな惨めなことせなあかんのかな・・・。
マーティンに気づかれたら最悪や・・・あいつは女と聞いただけで怒るから・・・。
自分が100%ゲイではないことを受け入れてもらうにはどうしたらいいのだろう?
ダニーは模索していた。
116 :
書き手1 94の続き:2005/08/20(土) 22:22:50
ダニーが心配でマーティンは一睡も出来なかった。が、昨日ボスに強く言われた
手前、休むことが出来ない。ベッドの中で逡巡していると隣りでダニーが
うなった。「うぅんん、痛ー、なんやこの痛みは!」「ダニィ・・大丈夫?」
ダニーはびっくりして飛び起きた「あ、いつつ!マーティン、ここどこや?」
「僕の家だよ。昨日はごめんなさい!!」
ダニーはまだ状況を把握していない様子だ。
「昨日は・・・そや、お前に殴られたんや。おい、何でや!痛い!」
相当頭が痛むらしい。やっぱり今日は病院に行った方がいい。
「ダニー、手短に言うね。僕が悪かった。でもまだ話したい。
けど今朝は時間がない。病欠の電話を支局に入れて、市立病院の
ERでCT取ってもらって。」
そこまで一気に言うと、マーティンはシャワーを浴びにバスルームへ
駆け込んだ。ダニーはその様子をぼーっと見つめていた。
何やらわけわからん。けど痛っいわ〜、頭動かせんわ。
のろのろと立ち上がり、支局に電話をかける。ヴィヴィアンが出た。
「ダニー?どうしたの?」
「どうにもこうにも、風邪ひいたみたいで、熱が高うて。
今日、休みますよってボスに伝えてください。」
「そうなの。マーティンも風邪だし流行ってるのかね。わかった。
お大事に。」
118 :
fusianasan:2005/08/20(土) 22:35:53
マーティンが後ろでバタバタと着替えをしている。
ダニーはまたベッドに戻ると、はぁ〜と大の字になった。
「ダニー、絶対に病院に行ってね!CT取ってもらうんだよ!」
「ああ、分かったから、もう行けや。遅れるで。」
「うん、帰ってきたら、話そうね。」「ああ、分かった。」
マーティンはブリーフケースを掴むとドアをバタンと閉めた。
「うわ、いつつ!あいつ、ドア静かに閉める位気ぃきかせーよ。」
病院か、面倒臭いなぁ。あ、そや、ここからアランん家は近かったな。
電話してみよ。
ダニーはアランの携帯に電話をかけた。
「はい、ショアです。」「アラン、ダニーなんやけど、今どこ?」
「おはようの挨拶もなしかい、ダニー。これから出勤だよ。」
「俺を乗せてってくれない?病院に・・・」
アランは笑い出しそうになるのを必死でこらえた。きたきた。
「どうしたんだい?」「頭打ってな、吐き気がするし痛いし。」
「分かった、君は今どこだい?」ダニーはマーティンのアパートの
ストリートアドレスを言うと電話を切った。
イーストサイドに二度目の出動だ。アランは声をあげて笑った。
アパートの前まで行くと、青白い顔のダニーが立っていた。確かに具合が
悪そうだ。車を寄せ、助手席を開けると、ぼーっとダニーが乗り込んだ。
「大丈夫かい!」「分からん。頭痛いねん。」「わかった、じゃぁ、
ボルボの救急車、出発!」
病院の駐車場に車を泊め、ダニーに肩を貸してER入り口に向う。
「ショア先生、どうしました?」看護師の声に
「自宅で転んで昏倒。頭痛がひどいのでCTのオーダーだ。」
「はい。」
俺、自宅で転んだなんて言うたかな?まぁええわ。CTCT。
CTの後、ERの医務室で点滴を打ってもらっているダニーに、
白衣のアランが声をかけた。
「脳に出血は見られなかったよ。大丈夫。でも後頭部を強打している上に
顔に痣があるのは、ほっておけない状態なんだが。ダニー、君、
DVの被害にあってるのかい?」
「いや、そんなんじゃないっす。昨日は友達とちょっと口論になった
だけで。手を出すような奴じゃないんで。警察呼ばんといて下さい。」
「確かにFBIの捜査官がDVで被害届を出すようじゃ世も末だよな。
点滴終わったら帰れるから、あと15分待つように。」「はい。」
自分が情けなくて穴があったら入りたいダニーだった。
点滴が終わって退院の手続きを取る。その背中をアランがポンと叩いた。
「送ってやるよ。」「え、いいっすよ。」「どうせ休憩時間だ。」
「じゃあお言葉に甘えて。」またシルバーのボルボに乗り込む二人。
「パークイーストかい?」何気なくアランが尋ねる。
「いや、ブルックリンにお願いしますわ。」
アランはほくそ笑んだ。これで二人の自宅に入れることになるな。
ダニーは自宅前で降ろしてもらい、そのまま自分で歩こうとしたが、
まだ足がよたついている。アランは、やれやれという顔をしながら、
「家の中まで送っていくよ。」と言って肩を貸した。
「ありがとう。」いつになく素直なダニーが愛らしい。
あの鼻っ柱の強いダニー君も本当はこんなにいい子なわけか。
ダニーの部屋に入ると、アランは一瞥した。掃除の行き届いた部屋だなぁ。
ダニーがベッドルームへと歩いて行く。北欧調の清潔なベッドルームだ。
「それじゃ、帰るよ。これ以上いると、君を襲いたくなるからね。」
アランはダニーに軽くキスすると、部屋を出た。昨晩、描いた通りの
展開にアランは自然と口笛を吹き出した。人生は楽しい事だらけだ。
一方のダニーは、頭痛薬を飲んで、ベッドに入った。
エゴイストの香りが身体中に染み付いているのに気がつかずに。
「ダニー、ダニー、起きてよ。」身体を揺り動かされ、また襲う頭痛で
ダニーは目を覚ました。「痛い!あ、マーティンか。」
「もう、僕の家にいるかと思ったら、自分の家に帰ってるなんて。
で、CTどうだった?」「脳出血なし。たんこぶと顔の痣の事を
聞かれたけど、はぐらかしたわ。」
「ごめんね。でも、今日も聞きたいことがあるんだ。」
マーティンは手をぎゅっと握り締めわなわなしている。
「何やねん。尋問は優しくお願いしまっさ。」
「じゃあ、聞くね。身体から匂う香りは何?」
「ん?」ダニーはブランケットの中の香りに気がついて、はっとする。
アランの香りか、くー今日もこの話か!
「お前の家に呼んだタクシーの運転手が俺を病院の中まで運んで
くれたんや。その時付いた匂いやろ。」
「タクシー運転手が、60ドルもする香水つけるもんか。」
「ほんとやて。お前に俺がウソついたこと、あるか?」
言いながら、自己嫌悪に陥るダニー。ウソだらけの俺・・・
「ほんとにほんとに、タクシー運転手だね?」「そうや。」
「今日のところは許してあげる。殴った僕が悪いし。」
マーティンは腑に落ちないながらも、ダニーを許した。
ダニーの事となると抑制が効かなくなる自分を恥じてもいた。
「ダニー、僕の事、許してくれる?」「もうKOパンチはなしやで。」
「うん。分かった。」マーティンは服を脱ぐとベッドに入ってきた。
「今日はエッチはなしな。」「うん。でも一緒に寝ていい?」
「もう寝てるやんか。」ダニーはマーティンの前髪をくしゃっとした。
「へへへ。」「ははは。」久しぶりに晴れた顔で笑いあう二人だった。
126 :
115の続き 書き手2:2005/08/21(日) 00:17:55
ダニーはあれ以来、例のアジア系娼婦と二度関係を持った。
次に会った時、彼女のすれた態度に幻滅し、買うのをやめた。
あの女も搾取されるうちに、人を信じられんようになってしもたんやな・・・。
自分もマーティンを裏切っている状況だ、何も言うことはできない。
ボスからは、月に三度のペースで呼び出されているが
最近は3Pではなく、二人で会うことが増えていた。
これがまた苦痛だ。ダニーの苦悩は続いていた。
「マーティン、週末どっか行かへん?」
ダニーは環境を変えてリフレッシュしたかった。
「うん、行く。ダニーと遠出するのって久しぶりだね」
「えーっとそうやな、ほな決まり!水着用意しといてな」
「泳ぐの?」「たぶんな、あっもしかして泳がれへんの?」
「まっさかー、いくら僕でも泳げるさ」マーティンは嬉しそうだ。
それを複雑な思いで見つめるダニーだった。
本当はカミングアウトするために誘ったのだから・・・。
前回ドライブした、ニュージャージーのケープメイに着いた。
ダニーはボートとホテルを予約していた。手続きとともに食料を調達する。
係りの女の子はマーティンを見て頬を染めた。マーティンは気づかないフリだ。
「おいおいマーティン、そんなに照れるなや!なぁ?」
ダニーは女の子にウインクしながらからかう。
マーティンも愛想笑いで応えたが、後で仕返ししようと決めた。
ボートは風を切りながら順調に進んだ。
ダニーが操る横で、マーティンはチョコミルクを飲んでいた。
「そんなもん酔うんとちゃう?」「ううん、へーき」
「お前って、いっつも何か飲み食いしてる気がするわ」
「そうかなぁ?」言いながらチョコミルクを飲み干した。
ダニーはボートを泊めた。少し先に岩場がある絶好の場所だ。
「マーティン、泳ごう。先に行くで!!」
ダニーは先に飛び込んだ。オレンジの浮き輪を振り回し、マーティンを挑発する。
マーティンもすぐに後を追った。
一時間ほど海の中で戯れ、二人は楽しんでいた。
ダニーは浮き輪につかまってプカプカ浮いている。
マーティンはこっそり潜ると、ダニーの水着を下ろした。
「どわぁぁぁー!!」慌てふためくダニー!
「さっきのお返しだよ〜」爆笑しながらダニーをからかった。
「あー疲れたー、そろそろ上がろか?」「え〜もうちょっとぉ〜」
ダニーは先にボートに戻った。濡れた水着を脱ぎ、着替える。
マーティンも渋々倣った。着替え終わり、前に移動しようとした途端、
「わぁー」バッシャーン!と大きな水音がした。
「なっ、どないしたん?えっマーティン?」
マーティンが服のまま海に!!驚きながら手を差し伸べる。
パニックと放心状態でボートに上がったマーティン。
「そんなにもう一回泳ぎたかったんかいな?」
「違うよっ、ダニーの水着に滑って、はまったんだよっ!!」
「ええー、くっくくく・・あっははは」ダニーはたまらず笑い出した。
「笑いごとじゃないっ、もしかしたら死ぬとこだったんだよっ!」
「ごめんごめん、オレの水着で滑った?あーっはっはっは、もうあかん・・・」
謝りながらも、笑いが止まらないダニーだった。
ロブスターのディナーを楽しみ、ホテルに戻った。
マーティンの機嫌は直ったものの、ダニーは思い出すたびに笑いそうになった。
だが、本来の目的を忘れるわけにはいかない。
カミングアウトだ。ダニーの気は自然と引き締まった。
そう、そのためにこんなとこまで来たんやから・・・。
マーティンはキャラメルポップコーンを食べながら「13日の金曜日」を見ている。
「へぇー、犯人はジェイソンのママだったんだ〜、知ってた?」
「ああ、そんなん常識やで!、知らんの?」ダニーは言いながらデコピンした。
「ダニーは誰がタイプ?」「オレはニコール・キッドマンかな」
「え・・・ニコール・・・」マーティンが怪訝な顔をした。
うわっ、思わずまともに答えてしもた・・・。
「それと、あー、キアヌ・リーブスも・・・」慌てて付け足したが時すでに遅し。
マーティンは、無言のままキャラメルポップコーンをぶつけるとベッドに入った。
「なぁマーティン、こっち向いて」目は開いているが合わせようとしない。
こんなんで怒るんやったら、時々女と寝させてくれなんて言われへんやん・・・。
思い切って今すぐ言おか・・・ダニーは迷った。
「ダニーは、やっぱり女性の方が好きなんだね・・・」
マーティンの丸い真剣な目が自分を射抜いていた。
「・・・もしそうやったらどうする?」
「もう君とは付き合えないだろうね」
二人とも視線を逸らさない。逸らしたほうが負けだ。
「それ本気か?」ダニーは真意を図った。
「ああ、僕は僕だけを見てくれないと嫌なんだっ!」
しばらく沈黙が続き、ダニーはやっと口を開いた。
「わかった、はっきり言うわ。オレはお前が好きやし、何よりも大切やと思てる。
けど、女もたまには抱きたい。オレはバイやから・・・」
「前に娼婦を呼んで僕にバレた時あったじゃない?
あれからも、その、買春してたってこと?」
「・・・そうや、でも理由があっ・・」いきなり突き飛ばされた。
話を遮って出て行こうとしたマーティンをねじ伏せて言った。
「頼むから、最後まで聞いてくれよ・・・頼むわ・・」
「オレは、お前に犯されるまで、男と寝たことなんかなかったやろ?
いわばお前が初体験や。それは別にええんやけどな・・・。
ボスとの一件で精神的におかしくなりそうやったんや。
どうしようもなくって・・・それで女を買うてしもた。でも好きとかそんなんとちゃうで。」
マーティンは黙ったままだ。
「お前だけを見てるのは断言できる。ただ、今は女と寝るのも止められへんと思うんや」
「ボスと寝ずに済めば、女はあきらめられるの?」
「わからんけど、多分。いや、それでもたまにはしたくなるかもしれん・・・。
今は・・この状況では何とも答えられへん」
「そう、わかったよ。ダニーはもうボスと寝る必要はないんだ。
僕がなんとかするから・・・その後でもう一度話し合おう」
マーティンはきっぱり言った。
ダニーは、マーティンに責任を押し付けたような、後味の悪さを感じていた。
翌日大痣のある顔で支局に出勤したダニーには、局員からの喝采が待っていた。
「また、荒っぽい事に巻き込まれたんだね。あんた、いい年なんだから
いい加減にしなよ。いくらダウンタウン・テイラーでも女にもてなくなるって」
ヴィヴィアンが呆れたように言う。ホワイトカラーが中心の支局にあって、
所謂鉄砲玉的存在は、ダニー位しかいないのだ。衆目が集まるのも仕方が
ないことだった。
ボスが早速ダニーを呼んだ。ボスの個室に入る。
「ダニー、今度はSMか?お前はいつになったら大人になる!」
「すまないっす、ボス。でもこれは純粋な喧嘩でSMプレイとは違うっす。」
「そうか、私はまたお前と新しいプレイが出来ると思って期待したんだが。」
「誤解っすから。話はそれだけすか?」「ああ。席に戻っていい。」
朝から、胸糞の悪い。ダニーは時差をつけて出勤してくるマーティンを
待った。
マーティンが自分用のラテとダニー用のエスプレッソを買って、出勤してきた。
「はい、出前!」「ありがとな。」二人とも自然と微笑みあってしまう。
するとマーティンに内線が入った。「はい、フィッツジェラルド。はぁ?
わ、わかった。上がってもらってくれ。」「何や。マーティン。」
「客だよ。」そこへエレベータから、エンリケが降りてきた。
「マーティン!マーティン!」うわ〜、すさまじいラテン男の登場だ。
サマンサがエンリケの姿を捉えた。
「何、あの人、ダニーのドッペルゲンガーみたい。そっくりじゃない!」
ダニーも振り向いて声の主を見た。確かに自分に似ている。
「サマンサ、じゃあ、俺はあと数日の命だって?」
「ダニー、そんなの信じるんじゃないよ。」ヴィヴィアンが諭す。
マーティンが急いでエンリケに駆け寄る後姿をダニーの目はずっと追った。
「ちょっと兄弟に挨拶でもしてくるか。」ダニーがやおら立ち上がり、
エンリケとマーティンが立ち話している所へ向う。
ダニーは流暢なスペイン語でエンリケに話しかける。驚くマーティン。
「シー、シー、エージェントテイラー、お会いできて光栄です。」
英語とスペイン語を交えてエンリケが挨拶する。
鼻先で「フン」と言い席に戻ってきたダニーに、サマンサが興味津々で話かける。
「で、あのドッペルゲンガー君は誰?」
「スペイン大使館員だとさ。国連ビルでマーティンと知り合ったそうだ。」
「大使館員が何の用?管轄が違うじゃない。」「ただの挨拶だけらしいで。」
エンリケは帰っていった。心臓が口から出そうになっているマーティン。
ああ、ダニーに何て言おう。真実を告げる方がいいのかな。
それにしても、ダニーはスペイン語で何て言ってたんだろう。
「ダニー、スペイン語が達者なんだね。」
「お前なぁ、俺はマイアミ出身やで。スペイン語話せなきゃ暮らせんわ。」
「で、何だって?」「国連ビルの件ではお世話になりましたとさ。」
「ふーん。」マーティンは分かっていた。今晩、ダニーから詰問があるのを。
その日も大きな事件がなく、経費精算やらレポート作成に追われるマーティン達。
定時になって、皆が帰り支度を始める。
「ダニー、ちょっと相談に乗ってくれるかな。」
「ダニーの恋愛相談なら1時間200ドルで乗ってもええで。」
サマンサとヴィヴィアンが大笑いしながら、帰って行った。
ボスも夫人と離婚調停の件で午後から休みだ。
「じゃ、いくか。」「うん。」
マーティンの提案で、トライベッカに新しく出来た韓国料理店に行くことになった。
今、NYでは日本料理に続けとばかり、新しいタイプの韓国料理店の開店が
後を絶たない。バーコーナーで、席が空くのを待っている間に、ダニーは
そこのフロアマネージャーの美しい韓国娘に心を奪われていた。
いかんいかん、今日はエンリケの事を問い詰めるんやった。
やっとレストランの席が空き、フロアマネージャーに通される二人。
ダニーにとっては韓国宮廷料理は初めて。マーティンも同じだった。
ニューヨーカーのグルメ特集で紹介されていたから来たというのと、
料理でダニーの尋問をかわそうというのが、マーティンの作戦だった。
キムチと牛肉のカルパッチョをつまみながら、マッコリを飲むマーティン。
酒なしじゃ、話せない。
一方、クラブソーダで、次から次へと運ばれてくる一口アペタイザーを
平らげるダニー。
「それで、あのエンリケとは長いんか?」
「何が長いの?」「知り合ってからに決まってるやん。」
「ううん、先週ちょっと国連ビルに用事があって行ったら、彼が中で
迷っていたから、道案内したんだよ。」妙に説明口調になるマーティン。
「あまりに俺に似てるから、サマンサも笑ってたで。ドッペルゲンガー
だってな。」「そんな・・・偶然だよ。」
「お前、俺のこと、俺の人種で好きになったんか?」
「そんなことないよ。ダニーはダニーだから好きになったんだよ。」
「エンリケはお前ともっと親しくなりたそうやったで。あと、ダニーを
捜してたから、俺がダニーやと言うてやったわ。」
「ええ、そんな会話してたの?」「何か悪かったか?」
「そんなことないけど・・・・」
メインディッシュのサムゲタンが運ばれてきた。
「ダニー、これって心身ともに元気になるんだってさ。だからこれでさぁ。」
ダニーもやっと強面から顔をくずして、「お前ってエッチな。」と一言いい
サムゲタンのチキンの解体を始めた。
その晩は、マーティンの家で二人とも、このところのうっぷんを晴らすかの
ように戯れた。まだ頭を振ると頭痛のするダニーだったが、マーティンが
罪滅ぼしのように奉仕してくれた。ベッドに寝転がるダニーのペニスを
思う存分楽しんだ後、自分から騎上位になり、腰をグラインドさせ前後、
上下にマーティンは動かした。
「あぁぁ、マーティン、ええで〜。このままイってもええか。」
「ん、くぅ〜、ダニー、来て!」ダニーが精を放った瞬間、マーティンも
ダニーの腹に存分にミルクをぶちまけていた。
「はぁはぁ。」「ええ運動やったな。」「うん。ダニー、大好き。」
「何や藪から棒に。」「言ってみただけ。」「バカ!」「バカだもん。」
エンリケの存在を気にしながら、ダニーは、このボンは俺のもんやと実感していた。
149 :
書き手1 :2005/08/21(日) 22:42:58
書き手2さんどうぞお願いします。
「ボス、相談があるのですが・・今日いいですか?」
マーティンはボスを呼び止めた。
「仕事の件か?それとも?」
「後者のほうです。大事なことなんで」
いつもと違う、気迫に満ちたマーティンにボスは驚いた。
「わかった、18時に地下駐車場に車を回しておけ」
「はい」去っていくマーティンの後姿を探るように見つめていた。
「ダニー、今日、ボスと話をつけることにしたよ」
周りをキョロキョロ見回しながら、小声で話しかけた。
「えっ?ほな、オレも行くわ」こんなに真剣なマーティンは珍しい。
「いや、これは僕一人で片をつける。後で必ず行くからね」
マーティンは本気だった。ダニーを女になんかとられてたまるか!!
ダニーは僕のものだ!!!例えボスでも、指一本触れさせない!!
17:45、マーティンはすでに待機していた。
緊張しているせいか、汗でハンドルが滑る。
あっあれはボスだ、マーティンは深呼吸して気持ちを整えた。
「マーティン、今日は何だ?股間が疼いたのか?」
「いっいえ・・そのこれからのことで・・」早くも動揺している。
「そうか、じゃあいつものところへ行け」
「クイーンズの?」ボスは頷くといつものように目を閉じた。
そのころ、ダニーはアパートで、意味もなくうろうろしていた。
カエル王子を握りしめながら、マーティンの身を案じていた。
オレのせいで、マーティンがひどい目に遭っているかも・・・。
やっぱりオレも行こうかな・・・。でもあいつを信頼してないみたいやし・・・。
ああ、どないしよう、こんなん体に悪いわ・・・。
「ボス、着きました」「早かったな、なかなか快適なドライブだったぞ」
チェックインすると、マーティンはすぐに話を切り出した。
「ボス、ダニーは二度と呼び出しに応じません」
「ほほう、なぜだ?」ボスはおもしろそうな表情を浮かべた。
「僕が来させたくないからです」
「そんな権限はお前にはない!」ボスは言い放った。
「どうしたんだ、マーティン?私たちは今までうまくやってきたじゃないか」
「僕はダニーを失いたくないっ、このままじゃ・・僕たちは・・・」
「何だ、ちゃんと説明してみろ。場合によっちゃ考えてやる」
「ダニーは・・ボスと寝るたびに女と寝てるんだ・・・」
悔しそうにマーティンが言った。
「あいつには他に付き合ってる女がいるのか?」とぼけるボス。
「いっいえ、そういうのじゃなくて・・その・・・」
「で、それを止めさせるために、お前が身を差し出したわけか・・」
「・・・はい、僕だけで勘弁してください。何でもしますから・・」
ボスはマーティンの首を掴むと、服を脱ぐよう命じた。
両手・両足をベッドにそれぞれ縛りつけ、動きを封じると
怪しげなチューブを取り出し、ペニスとアナルに塗りつけた。
ムズムズとした痒みがゾワっと這い上がってくる。
まるでアリンコ100匹の行進のようだ。とにかく擦って欲しくてたまらない。
「ボス、痒いー、掻いて、早くー」叫んでもボスはニヤつくだけだ。
おもむろにマーティンの携帯を取り出すと、ダニーに電話した。
「マーティン?」ダニーは速攻で出た。
「ダニー、私だ。ヤツじゃなくて残念だろ?」
「ボス!・・・あのマーティンは?」不安が一気に増大した。
「まあ待て、いいものを聞かせてやろう。ほら、」
ボス、早く何とかしてー、あぁぁーボスぅー・・・・・
マーティンの切羽詰った声が聞こえる。
「ダニー、聞こえたか?ちょっと待て、今代わるよ」
「マーティン!、オレや」
「ダニィ・・ぁっぁあー・・来ちゃダメだよ、絶対に来ないでー」
「ダニー、来るならいつものモーテルだ。それまでコイツが持つかな?」
唐突に電話は切れ、ダニーはその場に取り残された。
呆然としていたダニーだったが、正気に戻るとモーテルへ向かっていた。
来るなって言われて、はいそうですかってほったらかしになんかできるかっ!
マーティン、待っとけよ!それにしてもあのおっさん、どこまで変態やねん!!
ダニーは悪態をつきながら、夜の街を疾走した。
ダニーは、部屋の前で深呼吸した。
音を立てないよう、そっとドアを開ける。
「あっああー、やめ・・いや・・そっそこ・・ぁああー」
ベッドの軋みとマーティンの叫びが聞こえてきた。
「マーティン!!」ダニーはたまらず飛び出した。
ボールペンを手にしたボスが振り返った。
「やっとご到着か、間に合わずに残念だったな、ダニー。
ちょっとペンで突っついたら、この始末だ」
精液にまみれたマーティンが荒い息を吐いていた。
「もう一分早かったら、イクとこが見られたのに・・・」
ボスは、ボールペンでさらにアナルをチクっとした。
「うっぁぁんー」ビクンと仰け反るマーティン。
白い内腿が小刻みに痙攣している。
ダニーは訝しげに見ながらボスに訊ねた。
「コイツ、様子がおかしいみたいやけど、麻薬かなんか?」
「さすが経験者は語る!か、いいや媚薬の一種で無害だ」
「何でそこまで・・・。ボス、ちょっとやりすぎちゃいますの?それに麻薬なんてやってないっすよ」
「おいおい、元はと言えば女を買ってるお前の責任だろ?
かわいそうに、この世間知らずが自分だけで堪えてくれって頼んできたんじゃないか」
「・・・・・」ダニーは言葉を失った。確かにオレのせいや・・・。
「さあ、どうするダニー?このままじゃ終われないぞ?今すぐ返事をもらおう。
お前が来ないなら、マーティンは毎週この調子だ!いや、これ以上かも・・・」
ボールペンのチクチクがマーティンを責め、喘ぎに似た悲鳴が響く。
「それだけは・・・オレも来ます。だから・・・許してくださいっ!」
ダニーは必死で懇願した。
「よしっ!、マーティン、よかったなぁ。ほら、とどめをやろう」
ボスはペニスを取り出すと、アナルに擦りつけ挿入した。
「んっんん、あっああー」マーティンの頬が紅潮した。
ボスの巧みな腰使いで、マーティンはトロけそうになっている。
出したばかりで萎えていたペニスも持ち上がってきた。
ダニーは複雑な心境で見つめていた。
「ボ、ボスーあっああー」マーティンは大声を上げると果てた。
ボスも遠慮なく、そのまま中出しした。
「じゃあな、次回が楽しみだ。マーティン、楽しかったよ」
ボスは満足そうに出て行った。
ダニーはベッドで俯いているマーティンの横に座った。
「ダニィ・・・どうして来たのさ?・・・来るなって言ったのに・・・」
精一杯の強がりを言うマーティンに、ダニーはデコピンした。
「あほっ、お前をほったらかしにするわけないやろ!
こんなに大切にしてるのに・・・本気やねんで」
「でも・・ボスとの関係は続くんだよ?やっぱ女とも寝るよね・・・」
「いいや、もうやめる。少なくとも努力するわ」
「えっ、本当?!!あーでも・・そんなの無理だよ、ゲイじゃないんだもん」
「でも、とにかくやめる!お前を失うのは嫌や。でも、AVだけは許してくれ」
「んんっ、AV?そんなのいつ見てたのさ?」
「時々・・・ごめんな」謝るダニーに逆デコピンするマーティンだった。
翌日は待ちに待った週末だった。久しぶりの運動が効いたのか、二人とも
午前中ぐっすり眠っていた。ダニーがごそごそと起き出す。
「腹減ったなぁ。ボンが寝てるうちにベーグルでも買ってくるか。」
簡単に着替えて、ストリートのパン屋へ向うこと15分。
帰ってくると、携帯に向かって怒鳴っているマーティンがいた。
「もう、しつこいよ。電話切るからね!!」
ダニーが立っているのに驚くマーティン。身体がビクっとはねた。
「何や、間が悪かったかな。でなおそか。」「君の家じゃない・・」
「あ、そやったな。頭打ってから俺アホになってん。」
ボケでどうにかごまかしたが、ダニーはマーティンの隠し事が、あの
エンリケに関係あることを察知していた。何かあったな、あの二人・・・
「マーティン、ほら朝、もう昼やな、昼ごはん作るで。」
例によって手際よくスモークサーモンのスライスとデイルの葉を
クリームチーズを塗ったベーグルではさむダニー。シェフみたいだ。
マーティンはいつもダニーの料理の腕に感嘆していた。一人暮らしに慣れて
いない自分は、外食かピザの出前がほとんどだ。
いつかダニーみたいに食事を作って、ダニーに食べさせたいな。
それは、捜査で手柄を一つ挙げるよりも困難なことに思えた。
ダニーは次にコーヒー豆を挽き、コーヒーメーカーで挽きたての香りを
部屋中に漂わせていた。
ダニーの家はファミリーの匂いがする。
マーティンはフィッツジェラルド家の格式ばった食事を思い出していた。
マーガレットの作る三食、毎日が晩餐会のような肩苦しさ。学校の友達を
誕生日に呼んでも、あまりの窮屈さに皆が辟易し、翌年から誰も来なくなった。
孤独な子供時代をまた思い出し、しばし心がさまよってしまった。
パン! 「おーびっくりした!何だよ、ダニー!」
「いや、お前が心ここにあらずやったから、誰かの事を思い出してるかと
思うて、脅かしてみた。」
二人はダイニングテーブルに座ると、がつがつとベーグルにかじりついた。
さすがに昨晩の後だ。空腹でマーティンの腹がぐぐぐるると鳴った。
「なんや、子供みたいやな、ははは。」「バカにしないでよ!」
ダニーは何気なく昨日から気になっている事を尋ねた。
「なぁ、昨日のスペイン人、なんでダニーはどの人かって聞いたんかな?」
「そ、そ、それは・・・」マーティン口ごもった。
「あ、国連ビルで彼をダニーと間違えて、僕が声をかけたからだよ!!」
「だいたい、お前、国連ビルに何の用時があったん?」
「僕のタレコミ屋と会うためさ。」思わず出たうそ。こんなハードボイルドな
事、ぼんぼんのマーティンが出来るはずがない。
「ああ、そうかいな。それで俺に似ているあいつと会ったと、ふーん。」
「まあ、ええわ。あいつ、俺にも携帯番号くれたしな。俺もスペイン語が
しゃべりたくなったら、話し相手になってもらうことにしよ。」
「え、それって!!」「何や、問題でもあるか?俺がいない方がいいか?」
いつになく執拗なダニーの詰問にマーティンは言葉に窮してしまった。
あの晩のことをエンリケに口止めしないといけない!
マーティンはパニックに陥って、急に身支度を始めた。
「どうした?帰るんか?」「うん、用事思い出して・・・ごめんね。ダニー」
食べかけのベーグルを残して、マーティンはダニーのアパートを出た。
「食いしん坊の奴がベーグル残すっちゃ、相当焦ってるな。怪しいなぁ。」
その頃、ブルックリンのストリートに出た瞬間、エンリケの携帯に電話を
しているマーティンだった。「ハロー。」訛りが少し残ったはっきりした
発音の返事。「マーティンだけど。」「もう電話来ないと思ったね。」
「ごめん、これから会えるかな。」「はぁ、さっきは断っておいてどうしたね。」
「話したいことがあるから。」「じゃあ、僕の家分かる?」「いや・・・」
「仕方ないね。国連ビル前で待ってる。」「うん10分で行く。」
タクシーを拾いミッドタウンへと急ぐ。エンリケはすでに来ていた。
よく見ると、エンリケはダニーをさらにワイルドにしたような感じだ。
体躯も逞しいし、髪の毛も少し長い。しかし似ている!!
この間は酔っ払ったあまり全く覚えていないエンリケのアパートは国連ビルの
並びにあった。エンリケはマーティンの手を引くと、部屋まで案内した。
「ようこそ、僕の城へ、ブロンドのお姫様。」「お姫様なんて・・」
「それで今日はどうしたの?」「実は、昨日支局で会った・・・」
「ああ、君の彼氏の事だね。問題あったか?」「疑われてる。」
「当たり前だよ。疑いではなくて事実というんだよ。英語わかる?」
「お願いだから、ダニーには君と関係を持ったことを黙ってて欲しいんだ。」
「ふーん。」エンリケはシャンパングラスにカバ(スペインのシャンパン)を
ついで、マーティンに渡した。「条件つけてもいいか?」「条件にもよる。」
「僕と月に1回付き合って欲しい。ブロンドの犬が欲しかった。アメリカに
来て初めて僕の首輪が役立ったね。うれしかった。」
ボスから受けている屈辱をレベル8とするならば、レベル4位のリクエストだ。
「分かった。約束する。だから絶対にダニーには言わないでね。」
「ああ、じゃあ、今日から始めようか。」「えっ!」
マーティンは仕方なくシャンパングラスを置くと、服を脱ぎ始めた。
「ブロンドに白い輝く身体、きれいだ。」エンリケの目が血走っている。
全裸になって、エンリケの前に晒す。不思議なことにそれほど嫌がっていない
自分に気がついたマーティンだった。まさかエンリケにも惹かれている?
エンリケも服を足元に落とし、二人全裸で立ち尽くしていた。お互いの身体を
舐めるように見る。ダニーよりさらに褐色の身体はよく焼けていた。
「ヨットやるから、日焼けした。」エンリケの言葉少なな英語が何故か
マーティンを燃えさせた。「じゃあ、しようか。」「ああ。」
マーティンは首輪プレーに突入していた。今日はお願いして痣がつかないように
タオルを巻いてもらった。これもダニーの目から隠すためだ。
「でもペニスには巻かないよ。」例の四つんばいの格好にさせられた。
後ろからスペインのエクストラバージンのオリーブオイルを塗りこまれる。
「あぁぁん、くぅ〜。」マーティンのペニスは立ち上がり、ひくついている。
エンリケも自分の屹立した浅黒いペニスにオイルを塗りこむとずぶっと
一突きした。「あああぁん、いい〜!!」ダニーより少し太く短いペニス。
短い分太さがマーティンのアヌスにずぶずぶと入り込んでくる。
「うはぁぁんん、いく〜。」「まだまだ。」
エンリケはペニスリングを絞った。「ああ、痛い!」「痛みがじきに喜びに
変わるよ。」エンリケは突くたびにペニスリングを絞り、マーティンを封じた。
「エンリケ、もういかせてよ。僕死んじゃうよ。」20分は続いただろうか
エンリケはマーティンのリングを取った。瞬間マーティンは精を思いっきり
放った。それを見たエンリケもマーティンのバックに思いっきり中出しした。
175 :
書き手1:2005/08/23(火) 00:06:43
書き手2さんどうぞ!よろしくお願いします。
すみませんが、朝から実験が入っているので今夜は寝ます。
また明日、書きますね。
ダニーは、支局から帰るとすぐにシンクを磨いていた。
今朝、汚れを見つけてから気になっていた。
ここのとこ、いろいろあったからなぁ、掃除どころやなかったで・・。
黒ずみが、まるでボスからの屈辱かのように、ゴシゴシとこすった。
夢中で磨いていると、「ただいまー」と声がした。
「ダニィー、おみやげ!ん?一体、何やってるの?」
「そーじや、掃除!!おみやげって?」
「ベリータルトとアップルタルトだよ。いっしょに食べようよ」
「もうちょっと待って、あと仕上げ磨きだけやから」
ダニーの背中に、ピトっとくっつきながら腰に手を回した。
「いつも一人でこんなことやってるんだ?ちょっとずるい」
言いながら、パンツに手を入れて布で刺激する。
「マーティン、やめっ。オレは今忙しいんや!」
への字口のまま、マーティンは手を洗いに行った。
後ろで、お皿とフォークを持ったマーティンがうろうろする。
「よっしゃ、マーティン終わったで。何飲む?」
「レモネード!!」「またまた〜、子供のフリしよって」
「本当にレモネードだよ、ダニー」心外と言わんばかりに抗議する。
ダニーは半分呆れながら、レモンを絞り、レモネードを作った。
レモネードて・・・ほんまかいな?こんなもん久しぶりやで。
「このタルト、めっちゃおいしい!!」ダニーが絶賛した。
「こんなもんばっかり食べよったら、鼻と違て腹が伸びるで!!」
「鼻?って・・・またピノキオ〜?、それ返してっ!もうあげないから!!」
ダニーはかわしながら、タルトを平らげた。
二人はピザを食べながら、ニュースを見ていた。
画面には、飛行機におんぶされたスペースシャトルが映っている。
「うわぁー、これはすごいなー!」ダニーは釘付けになった。
「オレ、時々自然史博物館行くんや。あそこ、ほんまに最高やで」
「えー僕も行きたいな、今度行く?」
「いや、あそこは人目があるからな・・・。まぁ無理やろ」
「そうだよね・・・」マーティンはがっかりした。
「よし、今からシャトルごっこしよ!!お前、飛行機な」ダニーはベッドに誘った。
うつぶせのマーティンに、上から乗っかる。
「ダニー、前より軽いけど?痩せた?」心配そうなマーティン。
「あー、ちょっと痩せたかもな・・」ボスのストレスで、近ごろ食欲がない。
「ちゃんと食べなきゃダメだよ。またタルト買ってくるね」
「ほんま?オレはアップルな」「んー・・僕とは好みが合わないのかな?」
首をかしげるマーティンに、ダニーは硬くなったモノを押し付けた。
「マーティン、早く続きしよ」「うっうん」
お互いの服を剥ぎ取るように脱がすと、激しくキスした。
汗臭いダニーの体を舐めまわし、咽喉仏を執拗に責めた。
「ぅぅん、ぁぁ」ダニーは思わず声を上げた。咽喉仏がダニーのポイントだ。
ダニーは手を伸ばすと、マーティンのペニスに触れた。
すでに硬直している。わざと手を離すと、ダニーは焦らした。
マーティンは耐え切れず、ダニーの太腿にペニスを擦りつけてきた。
それでも無視すると、腰まで振っている。
「ダニィ・・このままイッちゃうよ?いいの?」
「あかん」マーティンの足を思いっきり広げると一気に挿入した。
「あっぁぁ」マーティンの締め付けに合わせるように動かす。
「ええで、マーティン・・・よう締まるわ・オレのほうがイキそうや・・・」
ダニーはそう言うと、なぜか急にペニスを抜いた。「はぁはぁ・・どうしたのさ?」
「ごめん、何か急に怖くなった・・・」頭を振りながら、もう一度挿入した。
マーティンの腰に両手をつけ、引き寄せるように動かす。
「んっあっああ、ダニィ・・そこ、あっあぁぁー」マーティンは精液をぶちまけた。
ダニーはそのまま腰を振り続けたが、イキそうな気配は感じられない。
機械的に無理やり動かすと、反動で射精した。
「はっはぁっはぁ・・・」ダニーはマーティンの背中にしがみついた。
荒い息を吐きながら、何ともいえない不安な気分に陥っていた。
マーティンが寝ている横で、ダニーはそっとペニスを握った。
ふにゃっとしたペニスをしごいてみる。少しずつ硬くなってきた。
ダニーは、マーティンの寝顔を見ながらペニスをしごいた。
あどけない顔で眠っている。よだれを垂らしそうな口に思わず笑みがこぼれた。
手のスピードが上がり、絶頂が近づいてきた。今度は大丈夫みたいや。
「んっ・・・くっ・・ぁっ・・はぁはぁ」ダニーはイッた、マーティンを見ながら。
「ダニー・・・このスケベ!」マーティンがニヤリとしながら目を開けている!!
「なっ、見てたんか?うわぁー恥ずかしい・・」ダニーは顔を覆った。
「いいもの見ちゃった〜、ダニーってば、や〜らしい♪」
ダニーは精液でベトベトのペニスを、マーティンのペニスに擦りつけた。
「もう一回したくなっても知らないよ?」
「ああ、一回でも、何回でもするで!!」
ダニーは、不安を打ち消すように、マーティンとじゃれあった。
アパートに戻るとドアマンのジョンが挨拶しながらこう尋ねた。
「テイラー様は大丈夫でしたか?」
病院に行った日のことだとすぐ分かり、「ああ病院に行ったらしいよ。」
「あの日は驚きました。銀のボルボが迎えに来られましたし・・・」
え、銀のボルボ? タクシーで病院に行ったって言ったのに!
マーティンの猜疑心にまた火がついた。一体誰なんだ、そいつは!
やっぱりエゴイストの奴は、ダニーの知り合いだったんだ!
それも弱っている時に頼れるような親しい奴・・・許せない。
きっと突き止めてやる。それに、ずっと隠しているダニーがもっと許せない!
マーティンの創造力はとどまるところを知らない。
自分で自分の嫉妬心にガソリンをやっているようなものだ。
部屋に入ると留守電が点滅していた。「用件は3件です。」
「マーティン、ダニーやけど、手が空いたら電話してくれ。」
「マーティン、俺やけど、まだ留守か。」
「俺や、今夜会いたかったんやねんけど、無理そうやな。おやすみ。」
なんだよ、誠実そうなメッセージ残して!僕をずっと欺いているんじゃないか!!
気がつくと悔し涙がほほを伝わっていた。
僕は君との関係を続けたいから、エンリケにも身を預けたというのに
ダニー、君は浮気してるんだ!!
一方、マーティンのコールバックに待ちくたびれたダニーは、思いつきで
アランに電話をかけた。先日のお礼をきちんとしておきたかった。
「はい、ショア。」「ダニーやけど、アラン、今日暇?」
「ああ、珍しく暇してるよ。ダニー、またDV被害かい。」
くくくっと笑っている声が聞こえる。
「おい、からかわんといて!この間のお礼に食事でもと思ってな。」
「おぅ、ありがたいねえ。男やもめの悲しい週末の食事が一気に明るく
なったよ。」「じゃあ食材買って、アランの家に行くわ。」
「ああ、待ってるよ。」
外食は目立ちすぎる。特にアッパー地区ではいつマーティンに会うかも
分からない。かといって部屋に入ってもらう親密さはもっと危険だ。
ダニーは、今日のメニューを頭にイメージし、ストリートへ降りて行った。
新鮮なピーマンと玉ねぎ、ズッキーニとなすを買い込み、次はミートマーケットを回る。
チキンの胸肉を二枚買い、マスタングの助手席に乗せると、アッパーウェストに
向って車を走らせた。「今日はチキンカチャトーレや♪」実は料理が大好きな
ダニーだった。それも人のために調理するのが彼の娯楽と言えた。
アランの携帯に電話し、アパートの地下駐車場のキーを開けてもらう。
さぁ、これから腕の見せ所や。
アランは着心地の良さそうな部屋着を着て、迎え入れてくれた。
ER勤務がきつかったのか裏家業のプライベートプラクティスのせいか、
目の下にクマがくっきり浮かんでいる。
「アラン、疲れてるようやな。大丈夫か?」「ああ、もちろんだとも。君が
来てくれたんだからねえ。で、今日の献立は何だい?」
「チキンカチャトーレとラタトゥユの組み合わせにクスクスライス。」
「まさにパーフェクトな晩餐だ。じゃ、白ワインを開けようか?」
「いや、俺はアルコールは飲まない主義やから。」柔らかく退ける。
「じゃあ、私は勝手に飲むよ。」「ああ、俺クラブソーダ。」「はいはい。」
ダニーが生活臭のないアランのキッチンに立つ。腕が鳴る。クラブソーダを
一口飲んで、さあショータイム! アランが後ろから近付き、腰を押し付ける。
「おいおい、アラン、食事が遅れるだけやで。」「それで、今日のデザートは
君かい?」「・・・ま、とにかく20分だけくれ。考えるから。」
「そうか、期待に胸がはちきれそうだなあ。」アランは退散し、リビングへと
向った。
大型のプラズマTVでアランは、MLBを見ていた。メッツ対ドジャーズ戦だ。
メッツファナティックのダニーも気を取られながら、野菜を一口大に刻み、
肉叩きで胸肉を薄く叩く。アランの冷蔵庫にあったトマトを拝借する。
あとはぐつぐつ煮込み、クスクスを水で戻す。それで終わりだ。
ぴったり20分後、またアランはキッチンへやってきた。
「ああ、うまそうな香りだ。君はFBIよりレストランを開業した方が
稼ぎがいいんじゃないかな。」「そうかもな。」うれしそうにフンと鼻を鳴らす。
アランは疲れのせいかすでにワインで少し顔を赤らめている。
そんなアランの姿を見るのが新鮮で、ダニーは少しうれしくなった。
このドクター・パーフェクトも人の子やったんやな。
二人でリビングで並んで、チキンカチャトーレに立ち向かう。
ダニーのクラブソーダは3杯目だった。
4杯目あたりから、効き目があるかな?
例によって裏ルートから手に入れた媚薬を溶かし込んだクラブソーダを
おいしそうに飲み干すダニー。
ああ今すぐに押し倒したい。
アランの癖で、疲れすぎた日は必ず性感が高まり、誰かが欲しくなる。
娼婦を買うこともあるが、最近はダニーとマーティンという獲物を得て、
その癖はなりをひそめていた。
「まだ飲むかい、ソーダ。」「ああ、サンキュ。喉渇いたわ。」
私も喉も身体も渇いているよ、ダニー。
ダニーの料理はプロはだしの腕前だった。アランは感嘆した。
「さぁ、デザートの時間だよ。」「んんぅん、なんかアラン、だるいわ。」
「そうだろう、少しベッドで休むか。」
アランに誘われるままベッドへと身を横たえるダニー。だるいのに、身体の
中心に火がついたようにほてっている。気がつくとダニーはパンツの前を
膨らませていた。
「ダニー、これはデザートということだね。」「んん、アラン・・何か俺」
「もう言わなくていいよ。君の身体が言葉以上に語ってくれている。」
アランは容赦なくダニーに飛び掛った。
アランはダニーをまるで女性のように扱った。額から唇にかけて柔らかな
キスを繰り返し、ダニーをじらす。以前の即物的なセックスとは全く違った。
唇から首筋、そして両乳首を舌でころがし、腹へと下がっていく。
「ああぁん、アラン、早う咥えて!」我慢できずダニーはせがむ。
「まだまだ。」へその周りをぐるりと舐め、ペニスを敢えて避けて脚へと
向う。指の一本一本を咥え、甘噛みを繰り返す。「アラン・・ああ、アラン。」
ダニーのペニスはもう一杯一杯になっていた。先走りの液でテラテラと
光っていた。「じゃあ、行くよ。」「ああ、来て、アラン。」
あえて正常位にこだわるアラン。今日は徹底的にダニーの中の女性を引き出そうと
いうのが彼の作戦だった。
アランは細長いペニスをダニーに突っ込んだ。
「うぁ、口から出そうや!」「我慢するんだ、ダニー、腰を振れ。」
従順にもダニーは従った。自分のペニスをアランの腹に擦り付ける。
「もうイクで〜!うぁあ〜!」ダニーは絶叫した。その声に満足し、
アランもダニーの中へ精を放った。
隣りで正体もなく眠りこけるダニーの寝顔を見ながら、アランは満足しきって
いた。この誇りたかいダニー君も私の手にかかれば赤子同然だな。
それにしても、マーティンとの痴話喧嘩のおかげでこんなご褒美が手に入る
とは、彼に感謝しなければ。サンキュー、マーティン。
199 :
書き手1:2005/08/24(水) 03:27:52
書き込み終わりましたので、ageておきますね。
他スレにまぎれこまないように。
200 :
fusianasan:2005/08/24(水) 16:29:44
「またダメだったの?・・・」マーティンが心配そうに覗きこむ。
「ああ、ごめんな・・・」ダニーはそれだけ言うとベッドルームから出て行った。
ダニーが勃たなかったのは、これで何回目だろう?
ぽつんとベッドに置いてきぼりにされ、マーティンは唇を噛みしめた。
どうしたんだよ、ダニー・・・、せめて相談してくれればいいのに・・・。
ダニーはバルコニーで夜風にあたっていた。
対岸のマンハッタンは、今夜も最高の眺めだ。
クラブソーダのボトルを手持ち無沙汰にいじくりながら、ぼんやりとしていた。
いつの間にか、マーティンが横に立っていた。
「綺麗だね・・・」「ああ」それ以上、言葉が出てこない。
マーティンは気遣うように、そっと手を握った。
リビングに戻ると、マーティンが切り出した。
「ダニー、その・・AV見れば?気分転換になるかもしれないよ」
ダニーは驚いたが、マーティンは本気だった。
「いや、そんなん見たくない・・・。無理すんなや、マーティン」
「ううん、僕は向こうに行ってるから。ドアも閉めておくよ」
マーティンは、そのまま立ち上がった。
マーティンがいてるのに、AVなんか見られへんやん・・・。
あーあ、オレのチンチンどないなってんねん?
イクどころか勃たへんわ・・・。
ダニーは、ペニスを恨めしげに睨むと、思いっきり振り回した。
遠心力で少し勃起した。こっこれは!!
ダニーは嬉しくて、マーティンの元に駆け込んだ。
「マーティン、早よ見て!」ダニーの声が弾む。
「うっうん・・・」マーティンは寂しそうにペニスを撫でた。
「マーティン?どうしたん?」ダニーには意味が分からない。
「ううん、よかったね・・・」やっとそれだけを言うと、シーツにくるまり黙りこくった。
「ん?、全然嬉しそうちゃうやん?」そこで初めて気づいた。
あーっ、コイツ、AVに反応したと勘違いしたんか!!
何でこんな・・・あーもう、ややこしい!!バカマーティン!
「マーティン、AVと違うで。ほら、遠心力!」言いながら、さらにペニスを振り回す。
「それに、あれから五分も経ってないのに、AV見る暇なんかなかったやん?」
ダニーはマーティンのシーツを奪うと、顔にペニスをピタピタと擦りつけた。
「痛いよぉ、ダニィ・・」泣き笑いのような照れくさそうなマーティン。
ダニーはココナッツオイルをたっぷり塗ると、マーティンのアナルに入れた。
「ちょっ・・ダニー前戯は?」「早よせな、萎えそうなんやー」
オイルで無理やり挿入し、何度か出し入れした。
半勃ち程度の勃起だったが、マーティンを嬲るには十分だ。
ダニーはマーティンのペニスにも手を出した。
挿入にあわせて、上下に擦る。
「ダニィ・・あぁぁん、いぃ」マーティンは快楽に身を委ねた。
ダニーは根元を押さえて硬度を維持した。
せめてマーティンがイクまでは持ちこたえやな・・・。
「ダニィー、僕もう・・ダメっ、あぁぁー」言うが早いか射精した。
ダニーはビクンと痙攣するペニスを弄るフリをして、こっそり精液を手に取った。
「マーティン、オレもイクで・・あっぁぁー」ダニーはイッたフリをして息を荒げた。
ダニーは、素早くマーティンのアナルに、さっき取った精液を塗った。
マーティンは全く気づいていない。「ダニィ♪」何も知らずに甘えてくる。
「シャワー行こ」ダニーは証拠隠滅のため、何気なくマーティンを急かした。
ホワイトリリーのバブルバスにつかり、二人はリラックスしていた。
マーティンはダニーとのSEXの余韻にひたっている。
イッたフリか・・・こんな手は次から通用せんやろなぁ・・・あーどないしょ・・・。
無邪気なマーティンを前に、ダニーは悩んでいた。
「ダニー、今度スカッシュしない?」唐突にマーティンが話しかけた。
「えっ何?、聞いてなかった」
「スカッシュだよ、一緒にしよう」じれったそうに繰り返すマーティン。
「ん〜面倒やな・・・」それどころやあらへん・・・。
「教えてあげるよ、ラケットもあるし。ねっ?」マーティンもしつこい!
「ああ。しゃあないな、嫌やけど付き合うたるわ」
さっき騙した、せめてもの償いにと、ダニーは渋々承知した。
ダニーは捜査の帰りにチャイナタウンに寄った。
漢方薬を試そうと思い、ドラッグストアで相談中だ。
中国人の老主人は、淫靡な笑いを浮かべながら粉末を薦めてくる。
「これの原料は何?」ダニーは怪訝な顔で聞いた。
老主人はおもむろにカラカラのヘビを取り出した。
「うひゃぁー、ヘビ?こんなん嫌や!!」
「これ効く、推奨、推奨」
「もっとこう・・・んー、そうや、植物性のとかは?」
「ダメダメ、効果薄い。ヘビ、コレ最強!」
ダニーは迷ったものの丁重に断り、店をあとにした。
ヘビの干物の粉?、冗談やない!!、そんなもん飲まれへん。
ダニーは病院に行くか迷っていた。バイアグラは処方箋が必要だ。
その時、携帯が鳴った。「はい、テイラー」
「ダニー、私だ。今夜、空いてるか?」
「いえ、今夜はちょっと・・・」ダニーはとっさにごまかした。
「どうしても外せないのか、ダニー?」
「ええ、ちょっと無理っす」インポのままでは会うに会えない。
「そうか、そのまま帰っていいぞ。それじゃ」
ボスの言い方が気になったが、ダニーはホッとしていた。
「マーティン、今夜は二人っきりだ。ダニーは用があるらしい」
ダニー、何も言ってなかったのにどうしたのかな?、マーティンは首を傾げた。
マーティンの様子を見ながら、ボスは今夜のプランを素早く練った。
久しぶりにヴィクターの息子を辱めてやるか!!
「お前、馬に乗れるか?」ボスはいきなり聞いた。
「ええ、一応乗れますけど?」警戒しながら答える。なんか気持ち悪いな・・・。
「そうか、じゃあ15分後に地下駐車場で」ボスは言い残して消えた。
マーティンは、不安な気持ちでエレベーターに向かった。
マーティンが地下で待っていると、ボスが現われた。
「今日は場所が場所だからな、私の車で行く。さあ、乗れ」
ボスの操るクライスラーは、怪しげな通りをいくつも通り抜けた。
「お前は、車は買わないのか?ハマーなんてどうだ?あれ、かっこいいぞ」
「ええ、いつかは車をと思いますが、僕、運転下手なんで・・・」
ボスはククッと笑うと、スピードを落とし怪しげなビルに入った。
「さあ、今日はおもしろいぞ」ボスはマーティンを薄暗い部屋に入れた。
ダウンライトの灯りの中に、動物のシルエットが浮かんでいる。
「ボス・・まさか動物と寝ろとは言わないでしょうね?・・・」
マーティンは上ずった声で尋ねた。緊張で冷たい汗が背中を流れる。
「ハハッ、こんなところで生き物なんて飼えるわけがないだろう?近寄ってよーく見て見ろ!」
恐る恐る近づくと、正体は木馬だった。
但し、背中にシリコンの突起と、鐙に鎖がついているアダルト仕様だ。
「こっこれ・・・あっ、乗馬ってまさか?!!」
「そう、楽しいぞ。乗馬が出来るなら尚更だ。さぁ始めよう」
ボスは楽しそうに木馬を消毒すると、コンドームを何枚も被せた。
「ここは会員制で消毒もされてるらしいが、そんなもんは当てにならんからな」
それはどうも・・・マーティンはボスを恨めしげに見つめた。
「よーし、準備完了!うん?どうした、何突っ立ってる?早く脱ぐんだよ」
ボスに促され、のろのろとシャツを脱ぎ始めたものの気が進まない。
ぼんやりしていると、ボスに丸裸にされた。
ボスは前回のチューブを取り出すと、アナルに塗った。
さらに木馬の突起にもたっぷりと擦りつける。
また例の痒みが襲ってきた。「あぁーボス、痒いー」
ボスは木馬に乗るように命じ、マーティンが鐙に足をかけると素早く鎖で固定した。
「ゆっくりと跨れ、そう、そっとな」言われるままに腰を落とす。
うわー気持ちいいー!!マーティンは自然と腰を上下に振りはじめた。
「ぁぁん、ボス〜あぁー」マーティンは狂ったように擦り付けている。
傍から見ると、本当に乗馬をしているように見える。
ボスは満足そうに目を細めた。ダニーがいたらよかったのに、もったいない・・・。
だが、コイツの反応ときたら・・・$200の使用料なんて安いものだ。
マーティンは一度イった後も、まだ木馬にしがみついていた。
僕は車より、これが欲しくなっちゃったよ・・・。
射精の後の気だるさの中で、そんなことを考えていた。
「マーティン、そろそろ降りろ」ボスの声がしてハッとする。
いつの間にか、鐙の鎖は外されていた。
気まずそうに降りると、ボスは帰り支度をしていた。
「ボス、もう帰る・・の?」ボスは耳を疑った。
「ああ」そっけなく答えた。
「ボス!、もっとここにいたい!あれに乗りたいよ・・・」
マーティンは呆気にとられるボスの前に跪いた。
「マ、マーティン!!?・・・」今度はボスが驚く番だった。
ダニーは肌に馴染んだシダーとベチパーの香りで目が覚めた。
このフカフカのウォーターベッドは家じゃない!
昨日の事を思い出せるところまで頭に浮かべた。
アチャー、夕食の後、アランとまたヤってしもうた。どうしていつも
誘惑に勝てへんのやろ。このドアホが!
自分をどついていると、バスルームのドアが開き、アランがベッドに
戻ってきた。「起きたかい、ハニー。」額にチュっとキスする。
「アラン、昨日は・・」「昨日の事などもう過去の遺産でしかない。それより
今日の事を話そうや。」「今日の事?」「ウォルドルフ・アストリアで
シャンパンブランチを予約したんだ。一緒に行くだろう?」
ウォルドルフ・アストリアは花嫁失踪事件で行っただけの、ダニーにとっては
高値の花の場所だ。マーティンちっくやな。
しかし、ダニーのシェフ心に灯がともってしまった。「当たり前やがな。」
「じゃあ、スマート・カジュアルな服を調達しに出かけよう。」
出かけた先はバーニーズ・NY本店だった。アランは迷いもなく階上のメンズ
フロアへと脚を進める。「ショア様、お久しぶりで。」顔見知りの店員が
満面の笑みを浮かべて近寄ってくる。相当常連の様だ。
「今日は僕の友達に一式見立ててくれないかい?」ダニーは少しおじけずき
ながら、軽く会釈した。
これじゃ、パトロンに連れてこられた坊やみたいやな〜。
店員はダニーの背丈を目測し、プラダの細身のジャケットとプラダスポーツの
コットンタートルとパンツを持ってきた。サイズはぴったりだった。
ダニーは鏡に映る自分に思わず見ほれてしまった。
これが俺?スーツはメーシーズ、カジュアルはヴィレッジのヴィンテージと
決めていたのに。
会計はしめて3500ドル。アランはダニーお気に入りのモカシンのシューズは
許してくれた。店員もモカシンに似合う色合いを揃えてくれている。
「それじゃ、そろそろ11時30分だから、出かけようか。」「ああ。」
またアランに借りが出来てしもうたわ。身体で返すか。
不思議な事に、プライドを踏みにじられた感覚がなかった。今まで欲しかった
兄に買ってもらっている弟のような気持ちが一番近いだろうか。
ウォルドルフ・アストリアでも1Fのレストランの特等席に案内され、
シャンパンブランチが始まった。名前の通り、シャンパンから始まる。
バーニーズと服装で魔法がかかってしまったのか、ダニーは思わず
シャンパンを一口飲んでしまった。「僕らの未来に」「チアーズ!」
フォアグラのテリーヌ、オシュトラのキャビア、新鮮な野菜サラダ、
各種チーズ、パスタなどなど50種類以上の料理が並ぶビュッフェ。
今日のメインは子羊のローストとオマール海老のスモークだった。
その一つ一つのレシピーを紐解くように食べるダニーにアランは思わず
微笑んだ。
やっぱりハングリー精神と知的探究心が旺盛な子だ。まだまだいじると
面白そうだ。
ドン・ペリニオンが不思議な位早いペースで消費される。しかしダニーの
自制心はどこかへ飛んでいってしまっていた。アル中の過去を知っている
マーティンはここにはいない。
不思議な事に酔いが回ってこない。食事と一緒に飲んでいるからだろうか。
ダニーは油断して、アランに勧められるままに2本めのドンペリを開ける
ことに同意した。ブランチは、11時半から4時までだらだらと続いた。
その間、二人は、孔雀のように着飾った上流階級の女性たちが、自分たちに
熱い視線を送るのを面白がって見送った。ダニーはしばし、マーティンが
属している世界を楽しんだ。 これがあのボンの世界なんやな〜。
二人は年齢の比較的高いクライアンテールの中で、異彩を放っていた。
ブロンドに眼鏡のいかにも知的な白人と、ワイルドな香りを放つヒスパニック。
あからさまに、部屋の番号をナプキンに書いてくる女性まで現れた。
「アラン、俺たち、ジゴロに間違われてる?」「さあどうかな。試すかい?」
「いや、今日はもう全てにお腹一杯の雰囲気やねん。家に帰りたい。」
「家ってどっちの家かな。」「出来れば、アランの・・・」
「じゃあ帰るとしよう。」
アランのシルバーのボルボを正面に回してもらい、二人はアッパーウェストへと
帰った。ダニーは、さすがにシャンパンでトロトロになっている。
これじゃ、セックスは無理だな。まぁ、いい。今日が調教の第一ステージだ。
アランは、従順なダニーの服を時間をかけて脱がせ、ペニスをちょっと咥えると
ベッドに寝かしつけた。寝ているにも関わらず、ダニーはペニスを屹立させている。
アランはスプーンポジションで後背位でダニーのアヌスにオイルを塗りたくると
自分の硬くなったものを押し付けた。ダニーのペニスに手を沿え、動かすと
「うぅんん。」と言って、ダニーは射精した。アランはダニーの腰に手をかけ
上下左右に動かし、思う様に射精した。
翌朝、目覚ましで目覚めたダニーだった。8時。また家に着替えに帰れへん。
アランはコーヒーを飲んでいた。「私は今日は遅番なんでね。」
「アラン、すまんけど、Yシャツとネクタイ貸してくれへんか。」
「ああ、連邦捜査局は遅番などなかったね。失敬。クロゼットから適当に
選んでいいよ。」「サンキュ」
ダニーはサイズが一回り大きいYシャツとレジメンタルストライプのタイを
借り、昨日見立ててもらった、プラダの上下に合わせた。
なんか変な具合やけど、仕方ない。今日はこれで出勤するか。
「アラン、ありがとう。いろいろ。またこの借りは返すから。」
「いいよ、いつでも君からの電話は着信拒否にしないから。」
ダニーは地下駐車場からマスタングを出し、支局へと急いだ。
スタバでダブルエスプレッソを買って、支局の席に着く。マーティンは
すでに出勤していた。
「ねぇ、ダニー、今日、すごくお洒落なんだけど、どうしたの?」
すかさずサマンサがちゃちゃを入れる。
「絶対ブランド品だよね、その上下。今日は本気デート?」
「まぁ、そんなもんや。」
マーティンの目が異様に冷たい。ダニーは戦慄した。
そうや、俺、土日と外泊が続いてしもうた。マーティン、チェックしたやろか。
「ダニー、デートなら僕にもセッティングしてよ。ダブルデート。」
「あぁ?お前、ブラインドデートに興味あるねんか?よし今度な。」
そう言うのがやっとのダニーだった。罪悪感が胸にザワザワと広がる。
その日は一日捜査の打ち合わせでも二人は目を合わせず、仕事に没頭した。
マーティンが何も言わずに帰宅したので、ダニーもあえて追わず、家路を
急いだ。家に戻ると、土日の留守電が15件溜まっていた。全部マーティン
からだった。どないしよ。電話返すのがええのか、わからんなってきた。
一応挨拶しとこか。携帯に電話する。ワンコールが終わらないうちに
電話が出た。「マーティン、俺やねんけどな、お前に言っとくことが
あるねん。」「ふーん、何さ。」ふてくされたマーティンの顔が浮かぶ。
「今から会えへんかな。」「今日は会いたくない。」「さよか。」
「俺、兄貴がNYに来てんねん。週末は兄貴と買い物したり食事したりしてた。」
「へぇ〜、ダニー、お兄さんがいたんだ。紹介してくれる?」
切り込むようなマーティンの質問に「いや、もうマイアミに帰ってん。」
「そうなんだ。今度は紹介してよね。」「分かった。ごめんな。」
「じゃあ、僕、寝るから、明日ね。」つっけんどんのマーティンに驚かされた
ダニーだった。やっぱりバレてんのやろか。
ボスは驚きながらも、足元のマーティンを抱き寄せた。
「ボスー」しがみつくマーティンを、とりあえずベッドに座らせる。
とうとう自我が崩壊したのか?いやいや、何か理由があるのかも。
「どうした?お前はダニーが好きなのに、私に鞍替えしたのか?」
「・・・っ・・・っ」泣き出しそうなのを我慢しながら、首を振る。
「てっきり私のことを好きになったのかと思ったよ」
「キスして・・・」しなだれかかり、ボスにせがんだ。
「いや、それはできん・・・すまない」
ボスはやさしく、マーティンの肩をポンポンと叩いた。
ボスは困惑していた。もはや帰るに帰れない状況だ。
「何かあったのか?」マーティンは首を振るだけで埒が明かない。
ボスは意を決してキスをした。ただ軽く触れるだけのキスだ。
「ボス!僕・・・激しく抱いて・・お願い・・」
ボスは不安定なマーティンを放っておけなかった。
そのまま押し倒すと、いきなり挿入した。
痒い!、しまったー、コイツに薬を塗ったのを忘れていた・・・。
ボスはペニスの痒みに襲われ、何度も激しく突いた。
「はぁっはぁ、マーティン・・ぅぅっ」
「んんっ、ああん、あっぁぁ」ペニスの動きに呼応するように声が漏れる。
「あぁ、もうイキそうだ・・・んっくっ・・・ハッハァハァ」ボスは射精した。
ボスの絶頂を目の当たりにし、マーティンは興奮した。
「あぁボス・・僕も・・ああー」
ボスはマーティンの精液を舐めてやった。驚くマーティン・・・。
ボスが僕のを舐めてるなんて・・・こんなの初めてだ!
「さあ、そろそろ帰る用意をしろ。今日はシャワーを浴びないとダメだな」
ボスはバスルームへ。マーティンも慌ててついていった。
白い体が薄い桃色になっていく。熱いシャワーで全身がさっぱりした。
「マーティン、よく洗っておけよ」ボスは先に出た。
今日はマーティンもダニーも様子がおかしい。
明日からじっくり二人を観察する必要がありそうだ。
「マーティン、どこに送ればいい?」
「あの・・・自宅にお願いします」ダニーに会いたいけど、ボスには言えないよ。
「最近パパとはどうなんだ?上手くいっているのか?」
「いえ、滅多に会うこともないし、話も特にしないので・・・」
「ゲイのことは言わないのか?」ボスは何気なく訊いた。
「僕に言えると思います?そんなこと、無理ですよ・・・」
「そうだな・・・」それっきり会話は途絶えた。
「マーティン、いつでも話を聞くぞ」別れ際にボスが言った。
マーティンはぎこちなく頷いた。「じゃあな」走り去るボス、佇むマーティン。
今日のボス、なんだか前のボスみたいでやさしかったな・・・。
僕の尊敬してたボスだ・・・。なんだか嬉しくなり、マーティンは家に入った。
留守電にダニーからのメッセージはなかった。
また女でも買ってるのかも・・・でもそれを止める権利は僕にはないよね・・・。
さっきの木馬の余韻に浸りながら、真っ暗なベッドに飛び込んだ。
「あ痛ーっ」ダニーの声がした。慌てて飛び起きるマーティン。
灯りをつけると、ダニーが痛そうに背中を擦っていた。
「マーティン!痛いやん、何すんねん!」
ボサボサの頭と、ほっぺのシーツの跡が眠りの深さを物語っていた。
「ダニィ?何だよ、真っ暗じゃわからないよ!!」
浮気じゃなくてよかった・・・マーティンは、内心ホッとしていた。
「ずっと寝てたの?」
「ん。気になってたんやけど、いつの間にか眠たくなってな。そうやっ、ボスどうやった?」
「うん、今日はすっごくやさしかった。心配ないよ!」
嬉しそうなマーティンを、怪訝な顔で見つめるダニーだった。
「おなか減ったー、何か食べるね」
「飲茶買ってきたんやけど、とっくに冷めてしもてるわ。温めなおしたろか?」
「ううん、自分でできるよ」マーティンはチャイニーズカートンごとレンジに入れた。
「うわぁー」ダニーが駆けつけると、レンジの中で火花が散っていた。
「あほやなぁ、持つとこの金具は外さんとあかんで!!」
やれやれと思いながら、処理に当たるダニーだった。
それから2週間、マーティンはダニーと会話しない掟を自分に課したようだ。
ダニーが話しかけようが、はぐらかして逃げていく。取り付くしまのない
様子にさすがのダニーも根を挙げた。
これやったら捜査で容疑者吐かせる方が簡単やなぁ。こういうとこだけ
頑固やからな、ボンは。
ダニーは、まだYシャツとネクタイをアランに返していないのに、
ふと気がつき、クリーニング屋からピックアップすると、アランに電話した。
「はい、ダニーかい?」「ああ、アラン、今どこ?」「珍しく家だよ。」
「この間借りた洋服返しに行きたいやねんけど、いいかな?」
「もちろんだとも。」「食事はした?」「いや、まだだけど。」
「じゃあ、また何か買っていくわ。」「おおうれしいねえ。グレートシェフの
お出ましとは。」
今日はD&Dでベジタブルラザニアとトウフサラダを買って
アランの家へと向う。
いつもの笑顔でアランは迎えてくれる。何だか第二の家に帰ってきたみたいだ。
「はい、この間のブランチのお返し。」「ああ、うれしいねぇ。D&Dか。」
アランはカリフォルニア産のスパークリングワインを用意していた。
「今日は飲むだろう?」「あ・・・俺・・」「この間あんなに楽しんだじゃ
ないか。」「じゃあ、一杯だけ。」
シュワーという音がイータラのグラスを彩る。
ベチタブルラザニアは思いのほかアランに好評だった。デリのトウフサラダに
初挑戦というので、しょうゆソースに面を食らったようだったが、美味しく
たいらげてくれた。
「じゃあ、これ、ちゃんとクリーニング出したから。」
Yシャツとネクタイをアランに渡す。
「おいおい、今晩はこれだけじゃないんだろう。何か悩み深い顔してるよ。
今日は精神科医として話を聞いてあげようじゃないか。」
「んん、例のマーティンの事や。まだアランとは気がついてないんやけど、
俺の浮気を疑ってる。」「浮気か・・。これは浮気なのかい?」
アランはダニーが座っているソファーの隣りに腰を掛け、ダニーのうなじに
手を伸ばす。ダニーの性感帯だ。「こそばゆい!」
アランは唇にダニーの顔を引き寄せた。ダニーはすでに目をつむっている。
二人の情熱的なキスが始まった。これで終わるわけがない。
二人は手をつないでバスルームへと向った。
アランは子供の身体を洗うようにダニーの身体すみずみをスポンジでこすった。
念入りにペニスとアヌスを洗う。ダニーのペニスはすでに期待で屹立していた。
「ダニー、こんなに欲しいのかい。」「んん・・・欲しい。」
「もっと大きな声で言ってごらん。」「アランが欲しい!」
「よしいい子だ。じゃあベッドに行こう。」
それからは蜜月のカップルのような甘い時間だった。時間をかけてアランが
ダニーの身体のすみずみを愛撫する。こんなに優しく愛されるのは初めてだ。
確かにマーティンも愛してくれているのは分かる。しかし、愛の技がアランに
比べると稚拙で、ダニーがイライラすることも少なくなかった。
そこへ行くとアランのかゆいところに手が届くような愛撫は、ダニーを心から
とろけさせた。ああ、このままここにいたい!
先日と同じように正常位でお互いに射精した二人は、しばしまどろんだ。
ダニーは携帯が鳴っている音で目が覚めた。着信を見るとマーティンだった。
アランを起こさないようにベランダで話始める。
「ダニー、今どこにいるのさ。」「自宅で眠っとたわ。お前はどこや。」
「ダニーの自宅の下。どうしてセキュリティー開けてくれないの?」
ま、まずい!!!
「今日、俺、めちゃ疲れてんねん。悪いけど寝かしてくれるかな。」
「そう、じゃあいいよ。バイバイ!」ふてくされたマーティンの顔が浮かぶ。
マーティンはせっかくブルックリンに来たんだから、程遠くないエンリケの
アパートに行こうとタクシーを拾った。
程なく、国連ビル並びのエンリケの家に着いたマーティン。
エンリケに電話を入れる。「はい、マーティン!うれしいね。今どこ?」
「君のアパートの1階。」「じゃ、迎えに行くよ。」
エンリケは3分もしないうちに飛んできた。「マーティン!僕のお姫様!」
路上で抱擁しようとするエンリケを制して、マーティンはアパートの中に
入った。
「マーティン、どうしたね。元気ないね。カバ飲む?」「うん。」
エンリケのリビングは書類が散乱していた。「仕事してた?」
「ああ、対アメリカ市場戦略が僕の担当だから。投資とか提携とか。」
「ちゃんと仕事してるんだね。」「君だって連邦捜査官じゃない。」
「ああ、でも僕の仕事は世界を相手にしてないから。」
「まあ、これでも飲んでくつろいでよ。」カバを飲みながらマーティンは
ため息をついた。「また、セニョールテイラーの事だね。」
「あいつの名前なんて聞きたくないよ!」声を荒げるマーティンにエンリケは
驚いた。ブロンドのアメリカ人、結構気短かだね。
「で、今日はどうする?」「エンリケ、君が思ったように僕をいじって。」
「えぇ、いいの?」「ああ、僕を蹂躙してもかまわないよ。」
「そういわれると、逆に気持ちそぐね。今日は普通にしようよ。」
エンリケはマーティンにシャワーを浴びるよう促した。
マーティンがシャワーから出ると、エンリケはすでに全裸になって、
シャンパングラスを片手にベッドサイドへと誘った。
「エンリケ、まぶしいよ。」ダニーのドッペルゲンガー。正視できない!
「じゃあ先にベッドに入るから、おいで。」「うん。」
エンリケの愛撫はこの上なく情熱的だった。身体中にキスマークをつける。
夢中で受けているマーティンは気がついていない。自分を大切にしてくれている。
そういう気持ちのこもった愛撫にマーティンは身を任せた。
二人が屹立したペニスをお互いこすりつけ、挿入することなくイケたのは、
その前の愛撫が効いたのだろう。マーティンは、この2週間の禁欲期間の
全てを吐き出すように射精した。エンリケはその精液を舐め取り、マーティンにも
同じことをさせた。不思議と嫌な気持ちのないマーティンだった。
ダニーは早朝、アパートに戻った。
途中でH&Hベーグルに寄り、朝食を調達した。
昨夜のマーティンの様子が引っかかっていた。
陵辱されてるのに、なんであんなに嬉しそうやったんやろ?
オレがインポで欲求不満なんかな・・・。
やっぱヘビパウダー飲むか・・・あーでも嫌やなぁ・・・。
ダニーは、訳の分からない物は絶対に口にしない。
気持ち悪いものが大嫌いだ。
虫嫌いのせいで、掃除好きになったダニーだった。
支局でミーティングが始まった。マーティンはやけに張り切っている。
ボスも一見いつもと同じだが、言葉の端々がやさしいように感じられた。
ダニーは、昨日行かなかったことを後悔していた。
よし、帰りにヘビパウダー買うてみよ。マーティンのためや!
ダニーは、ボスの襟足を見ながら決意した。
「ボス、この案件でちょっと意見を・・・」マーティンはボスの部屋に入った。
「どうした、マーティン?」やはり来たか、ボスは何気ないフリで観察した。
夕べ錯乱したマーティンを抱いて、なぜか不憫に思ったのも事実だった。
「あの、昨日のことですが・・・」マーティンはもじもじしている。
「ああ、よかったよ」ボスはニッコリと笑いかけた。
「今度もあそこに行きたいんです。その・・僕一人で・・・」
「一人?ああ構わん。だが、あそこはちょっと高いからな・・毎回という訳にはいかないぞ」
「はい・・・ごめんなさい・・・」マーティンは思わず謝った。
「何も謝ることはない。また予約できたら連絡するよ」
ダニーは勤務が終わると、一目散に昨日のドラッグストアへ行った。
老主人はダニーを見ると、愛想よく迎えてくれた。
「昨日の?ヘビね?」確認しながら、ヘビ粉末を取り出した。
「ああ。これ、ほんまに効き目あんの?」ダニーは気持ち悪そうに粉末を見つめた。
「すごく効く!絶倫・回春・終わりなし!!」おっさん・・・適当ちゃうんか?
「なんぼ?」疑いながらも、買うしかないのが実状だ。
「二回分で$99ね!」例の淫靡な微笑を浮かべている。
「一回分のお試しセットってない?効果見てから買いたいんやけど・・」
「んーそうねぇ・・・わかった、小分けにしてあげるよ、特別ね!」
「おっちゃん、ええとこあるなぁ。よかったら、また買いに来るわ」
ダニーは大事そうにポケットにしまい、効き目に期待した。
マーティンに見つからないよう、粉末の隠し場所を探す。
キッチンのスパイス入れに入れたかったが、食品と一緒にしたくなかった。
やっとのことで洗剤の後ろに隠すと、空腹に気づき冷蔵庫を開けた。
ドアポケットにマーティンのパワーバーが置いてある。
ダニーは空腹のあまり、一口食べてみた。
「何やこれ、まっずうー・・・」言うが早いかゴミ箱に投げ入れた。
箱の味みたいや、食べんほうがマシやな・・・、ダニーはうがいした。
近所のデリで、ブリトーとバッファローウィングを買って来た。
冷蔵庫にあったセロリスティックとブルーチーズを添える。
マルホランドドライブを見ながら、夕食にがっついた。
映画はよくわからない内容で、眠気を誘う。
そのうち、ヘビパウダーの効果が気になりだした。
「よしっ、試しに飲んでみよ!!」
ダニーは粉末を取り出すと、ちょこっと舐めてみた。
うっわー苦い・・・おまけにくっさー・・・。
ダニーはオレンジジュースで一気に流し込むと、効果が出るのを待った。
何も起こらない・・・。くそっ、あのおっさん!ペテンやったんか!!
ダニーは、バカバカしさと虚しさで情けなくなった。
さっきから顔に何かが触れてくすぐったい。
それに体が熱くてジンジンする。ダニーは目を覚ました。
ぼんやりした視界の先に、苦しそうなマーティンが見えた。
よくよく見ると、ネクタイが顔にかかっていてくすぐっている。
「マーティン?」「あっぁぁ、ダニィー・・すごいよ、んっんん」
がばっと起き上がると、ペニスがものすごく勃起していた。
どうやら、マーティンは我慢できずに挿入したらしい。
ダニーは体を入れ替えると、バックから激しく突いた。
久しぶりの快感、動きにも力が入る。
「ダニィ、もうイクよ・・・あっぁぁー」
「まだまだいけそうや・・・ああー最高ー」ダニーは手を弛めない。
ひとしきり激しく上下すると、中に射精した。
イッたにもかかわらず、ダニーはまだ動き続ける。
ダニー、発情期のサルみたいだ・・・マーティンは気になったが、自分もまた勃起していた。
お互いに動物じみた咆哮を上げながら、快楽をむさぼる。
顔も体も床までも精液にまみれている。
精液特有の匂いが部屋に充満していた。三度も射精して、やっと二人は離れた。
「ダニィー、今日のはすごかったね」マーティンが甘えながらささやいた。
「ああ、久しぶりやったし、お前もかわいかったからかな」とぼけるダニー。
おっさん、疑ってすまん!!また行くからなー・・・ダニーは心の中で叫んでいた。
だが、根本的な解決法ではないことも、頭の中ではわかっていた。
マーティンとダニーは、朝一番からボスの部屋へ呼ばれた。
二人とも目をあわすことなく、部屋へ入る。ボスが口を開いた。
「最近、君たちが会話しないのは、どういうことかな。」
「・・・・」「・・・・」
「くれぐれも言っておくが、私はこのチームを家族同様だと思っている。
仲たがいだけは、やめて欲しい。何かお互いに言うことがあるなら、
ここで言いなさい。」
「話すことはないっす。」ダニーが口火を切った。マーティンも頷く。
「そうか、取り越し苦労だったのかな。もう席に戻っていい。」
ダニーはそろそろマーティンと話をしっかりしたいと思っていた。
二人が話さなくなって、4週間がたっていた。
ダニーはマーティン宛にメールを送った。「捜査報告希望。8:00?」
すぐさまマーティンから返事が来た。「ラジャー、1階8:00」
例によってサマンサとヴィヴィアンは先に帰宅をし、二人とボスが残された。
ボスは二人の様子を伺っている風だった。気にせず、ダニーは席を立った。
5分遅れでマーティンも席を立つ。言葉もなく、ミッドタウンのダイナーに
立ち寄る二人だった。
「久しぶりやな、元気か。」「ああ、ダニーは?」「ぼちぼちや。」
マーティンはバーガーを、ダニーはチリビーンズを注文した。
「ボスに言い当てられてしもうたな。」「うん、さすが鋭いね。」
「ボスは可愛がってくれてるか?」「うん、前より優しいよ。」
会話が途切れる。「ダニー」「マーティン」同時に名前を呼び合った。
「ああ、ややこしいなぁ。単刀直入に言うわ。お前、あのスペイン人と
つきおうとるのか?」「・・・ダニーの代わりだよぅ。」泣きそうになる
マーティン。「ああ?俺の代わり?」「だって、ダニー、家にいないじゃ
ないか〜。一緒にいて欲しい時にいなかったじゃないか〜。」
ああ、あの外泊の事か、ダニーは合点がいった。
「だから、言うたやろ、兄貴が来てたんやて。」「お兄さん、シルバーの
ボルボに乗ってるの?」「あん?」「シャネルのフレグランスつけてるの?」
ダニーは、そこまで「捜査」されているかと観念した。
マーティンも捜査官やもんな。俺が見くびってたわ。
「マーティン、怒らんで聞いてくれ。俺と言う人間は、孤独で死ぬだろうと
ずっと思っとった。そこへ、お前の登場や。人生が変わったわ。だけど、
その変化が怖かってん。他人と人生を分かち合う準備なんか出来とらん。
お前はその天真爛漫さで俺の人生にどんどん入って来よる。」
「それがいけなかったの?」「善し悪しの問題やない。俺にはついていけなかった
んや。それで逃げ出した。」「どこへ?」「怒るなよ。違う相手にだ。」
マーティンは紙ナフキンを握り締め下を向いた。「好きなの?その人のこと。」
「好きとかそういう関係やないんや。信じて欲しい。俺の心の99%はお前の
ことばかりや。でも俺には残りの1%を残しといて欲しいんや。」
「じゃあ、僕とこの先も付き合う前提で話すと、1%残せばいいの?」
上目遣いで、ダニーを見るマーティン。しかし目は逸らさない。射るような
目で見つめている。「俺もお前がええと言うなら、付き合っていきたい。
わかってくれるか。」「・・・・・分かったよ。それがボルボの人だね。」
「そうや。安心してくれ。悪人とかそういうんやない。前のピーター、
覚えてるか?」「うん。」「ああいう奴とは違う全うな大人や。」
「ふーん。じゃあ僕にも1%残してくれる?」「はあ?」
「あのスペイン人との付き合いだよ。彼、すごくいい人なんだ。」
次はダニーがだまる番だった。俺のドッペルゲンガーかいな。しゃくに障る。
「マーティンがそれでいいんなら、ええで。」「そうか!よかった!じゃ、
ご飯食べよう!」
何か釈然としないダニーだったが、目の前で特大バーガーにかぶりつく
マーティンを見ていると、これ以上何も言えなかった。
「そうだ、今度4人で食事しようよ!」どこまでも天真爛漫なマーティン。
そういうことやないんねて、1%を残すっちゅうのは!!
ダニーは静かにチリビーンズを口に運んだ。
その晩、4ヶ月ぶりに二人はベッドインした。マーティンが記念だからと言って
フォーシーズンズの一泊725ドルのダブルにチェックインした。
「なんや、俺のアパートより広そうやな。」「明日はここで朝ごはん食べよう。」
こういう世界になると、マーティンの独壇場だった。ルームサービスで
クラブソーダとシャンパンをオーダーする。
「おいおい、明日も勤務やで。」「いいじゃん。大丈夫だよ。」
マーティンはダニーがアルコール復帰したことを知らないでいた。
クリストフルのワインクーラにギンギンに冷えたシャンパンとクラブソーダが
運ばれてきた。「じゃあ、これからの僕らに乾杯!」「乾杯!」
マーティンは特大バーガーを平らげた上に、GMからのサービスのカナッペに
かぶりついていた。キャビア、サーモン、フォアグラ。
なんや、アランの世界と一緒やなぁ。
マーティンは、よほどうれしいのか、シャンパンを続けざまに飲み、一人で
歌を歌って踊り、疲れたのか、ベッドに大の字になってイビキをかき始めた。
俺の将来を握っている人物が、こんなんだとは想像してなかったわ。
ダニーは、そそくさとマーティンが食い散らかした後片付けをし、マーティンの
隣りに横たわった。
ボスは悩んでいた。マーティンと二人で会うべきかどうか。
ダニーが何かを隠しているのは確かだ。
それは、マーティンの様子から容易に想像できる。
一体、ダニーは何を隠しているんだろう?
今回は懐も寂しいしな・・・よし、ダニーも入れて3Pだ。
ボスはそう決めると、早速二人を呼び出した。
「マーティン、一緒に行こか?」
「ああ、うん・・・」マーティンはなんだか浮かない顔だ。
ダニーは、例のヘビ粉末を買いに行く時間がないことに気づき焦っていた。
どないしょ・・・遅れる訳にいかんし・・・。今日は遠心力だけが頼みやな・・・。
時間が刻一刻と迫ってくるにつれ、ダニーの不安は大きくなっていた。
マーティンもまた、ボスと二人きりで会えない寂しさを感じていた。
「遅かったな、先に始めてるぞ」バスタオルを腰に巻いたボスがドアを開けた。
二人は顔を見合わせると、部屋に入った。
「順番にシャワーを浴びて来い」ボスはいそいそと促した。
マーティンは言われるまま、バスルームに消えた。
ダニーは順番待ちの間、ボスの様子を観察していた。
今までより明らかに楽しんでいる。不可解なダニーの視線にボスは気づいていた。
マーティンが出てきて、ダニーと交替する。
マーティンはもじもじしながら、ボスの側に近寄った。
「マーティン、お馬ちゃんは次回にな」先回りするボス。
「えっ・・ええ。ボス、このことはダニーは知らないんです。どうか内密に・・・」
「ああ、もちろんだとも。私たちだけの秘密の逢瀬だ」
ボスにそっと肩を抱かれ、マーティンはもたれかかった。
ダニーが出てきた。いよいよ宴の始まりだ。
ボスはマーティンをベッドに誘い、ダニーには見学するよう命じた。
ボスはマーティンに舌を絡め、情熱的なディープキスを施す。
マーティンも、とまどいながらも、応えるように舌を絡めた。
ダニーは唖然とした。陵辱なんかやないっ、普通の恋人同士みたいや・・・。
ボスは続いてマーティンのペニスを口に含んだ。やさしく舐めながら愛撫する。
「ぅぅん・・ぁぁ」マーティンの切ない喘ぎ声。
ボスはダニーを盗み見た。動揺しているのが手に取るようにわかる。
見せつけるように、さらに激しく咥えた。
ダニーは心底焦っていた。まるで恋人を寝取られたような感覚だ。
その間もボスの愛撫は続く。ローションをアナルに塗ると、手馴れた手つきで滑らせた。
やさしく愛撫され、マーティンは夢見心地の状態だ。
よくよく見ると、二人は左手を繋いでいる!!何やこれ、どないなってるんや?!!
ダニーは混乱していた。ショックで何も考えられない。
「ボス・・・」「うん?もう我慢できないのか?」
「入れて・・」「ああ、好きな体位は何だ?マーティン」
「今日は対面座位がいいな・・」「よしよし、じゃあ上に来い」
ボスは椅子に座ると、マーティンを跨らせた。
「あぁぁーボス・・・」マーティンがしがみつきながら声を上げる。
ボスは口を塞ぐようにキスをしながら、しっかりと抱きしめ下から突き上げた。
くぐもった声が部屋中に響き渡る。
ダニーは二人の様子に度肝を抜かれた。
それと同時に、自分のペニスが激しく勃起しているのに気づき驚いた。
自力で勃起するのは久しぶりだ。
ダニーは思わずペニスに手を掛けた。萎える気配はまったくない。
オレっておかしいのとちゃうやろか、こんなん見て勃つなんて最低や。
それも最近ずっとインポやったのに・・・。
自分の女を抱かす、そこらのポン引きと変わらへんやん・・・。
ダニーは自分の内面を見たようで、打ちひしがれていた。
「んん、ぁっん、あっぁぁあー」マーティンはボスのおなかに射精した。
ぐったりとするマーティンを、ボスはやさしく抱きしめる。
「マーティン、気持ちよかったか?」マーティンは黙って頷いた。
ボスはペニスを抜くと、マーティンを寝かせ精液を舐めはじめた。
ダニーの頭は爆発寸前だ。キレそうなのを必死で堪えていた。
すっかり舐め取ると、ボスはまたキスをした。
褒められた子供のような嬉しそうなマーティン・・・。
「ダニー、交替だ!こっちに来い」さっきまでと豹変している。
ダニーはのろのろとベッドに座った。
「四つんばいになれ」ローション片手に命じた。
ダニーは言われたとおり、四つんばいになった。
冷たいローションがアナルに塗りこまれる。
「お前、私たちを見て勃起してたろ?マーティンが他の男にヤラれてるのに」
ボスはねちねちと嬲りながら、言葉でも責めてくる。
「そっそれは違うっ・・・オレは・・そんなんじゃないっ」
「じゃあこのチンポは何だ!何も違わないじゃないかっ!!」
一旦抜きかけた指を、何度も激しく出し入れされ、ダニーは思わず声を上げた。
「この前はなぜ来なかったんだ?」中指で内壁を擦りながら問い詰める。
「実はインポになってしもて・・・見られるのがイヤやったんす・・・」
容赦ないせめに、とうとうダニーは正直に白状した。
「私をバカだと思ってるのか?インポ?そんな症状は出ていないぞ」
「いえっ、本当に勃たなくなってて・・・今はその・・ようわからん状態で・・」
ダニーはしどろもどろに説明するが、信憑性に欠けた。
「マーティン、今の話は事実か?」ボスが振り返った。
マーティンは何度もそうだと頷いた。
279 :
fusianasan:2005/08/28(日) 22:19:08
「そうか、じゃあ治った記念に褒美をやらないとな」
ボスはダニーのアナルに挿入すると、マーティンを呼んだ。
「前の口にも入れてやれ!!」マーティンはおずおずと咥えさせた。
ボスが後ろから突くたびに、マーティンのペニスも咽喉の奥へと当たる。
「うっうぐ・・ぁぐ・・」ダニーは心底惨めだった。
前からも後ろからもペニスを入れられてる・・・このオレが?!!
ボスのペニスが激しく動いた時、気持ちに関係なく射精した。
かなりの量の精液がシーツに飛んだ。
「もうイッたのか?じゃあ私もそろそろ出すぞ」ボスはダニーの背中に射精した。
「はぁっはあっ、マーティン、これを舐めろ」マーティンは黙って舐めた。
「じゃあ、また今度な」ボスはさっさと着替えると出て行った。
しばらくベッドでぼんやりしていた。それぞれの思いに耽っていた。
「お前、さっきの何?めっちゃ嬉しそうやったやん」ダニーが口火を切った。
「そんなことないよ、従わないとパパに電話されちゃうからさ・・」
「いいや、嬉しそうにしやがって!そんなにボスがええなら専属にしてもらえ!!」
「なっ・・ちょっと何でそんなこと言うのさ!いくらダニーでもひどいよっ」
「なんや、ほんまのこと言われて怒ってんの?」ダニーは挑戦的な目で見据えた。
マーティンはキッと睨み返すと、ドアをバターンと閉めて出て行った。
ダニーは追いかける気にもなれず、一人で車に乗った。
大音量でEdvin MartonのStrings 'N' Beatsをかけるとスピードを上げた。
ストラディバリウスの透明感ある音色がささくれ立った心を癒す。
落ち着いて考え直すと、確かに言い過ぎたかもしれない。
インポのせいで、精神的にも肉体的にも満足させてやれなかった。
それでも、さっきのボスとマーティンのセックスは許容範囲を超えていた。
二人のディープキスが頭をよぎり、ダニーはさらにスピードを上げた。
test
ある土曜日の昼下がり。アランの居間のソファーに寝転びながら、GQを
読んでいたダニー。「ああ、これ欲しいなぁ。」思わず一人ごちた。
キッチンでサイフォンを使ってコーヒーを入れていたアランがすかさず反応
する。「何をだい?」「ああ、聞こえてた?これなんやねんけど。」
アランに見せたのは秋冬もののグッチのスーツのグラビアだった。
「じゃあ、コーヒー飲んだら5番街に繰り出そうか。」
「ええ、買うてくれるん?!」「ああ、今日はお願いがあるんでね。」
にやっと笑うアラン。何やろ、変なお願いやねければええねんけど・・・
アランはコーヒーは必ずサイフォンで入れると決めていた。何でも男の性欲の
象徴だとか、難しいことを言っていた。「逆にコーヒーメーカーはとろとろ
だらだら女の性欲をシンボライズしていると言えるね。」
精神科医はすぐに何でも結び付けたがる、ややこしい人種やな。
アランと月に週末1回過ごすようになってから、アランの「変人」たる部分が
相当見えてきたダニーだった。でも居心地がいいのはなんでやろか。
俺も「変人」やから? ま、さか〜。ま、ええねん、コーヒーコーヒー。
コーヒーを飲み終えると二人はアランのボルボで5番街へと繰り出した。
ブティックのセキュリティーに20ドル札を握らせ、不法駐車を黙認して
もらうと、アランはわが場所のごとくメンズ売り場へ脚を運ぶ。
ダニーもバーニーズ以来、随分アランのショッピング作法に慣れて来ていた。
アランはモデルかと見まごうような男性店員とこしょこしょ内緒話をする、と
あのGQのモデルが着ていたスーツ上下がダニーの前に現れた。
「試着してごらん。」「ああ。」店員がダニーの頭の先から脚の先まで舐める
ように見下ろす。俺の事値踏みしてんのかいな、腹立つな。
スーツはどこも直すところなくダニーの身体に張り付くようにぴったりだった。
これ、ぴっちりすぎるわ。特にパンツがきっつー。
ダニーの自慢のモノが形まで分かりそうに突き出ている。
「アラン、これでええの?」ダニーは困り果てて尋ねた。
「ぴったりじゃないか。これにしよう。」
アランは光沢のあるダークグレイの上下に合うよう黒のタートルも包んで
もらった。 今日は何のお願い事やろなぁ。心配になってきたわ。
「さぁ、じゃ一旦家に戻って支度だ。」「う、うん。」
家に戻るとすぐにシャワーを浴びるように命じられた。ダニーは承諾する。
やっぱりセックスやな。そんならええわ。
シャワーを上がると、次にアランが入る。
ややこしいな、一緒に入れば早いのに。
アランが出てきて言う。「さぁおめかししなさい。」
言われるままにさっきの戦利品たるグッチで身を固めるダニー。
アランはエメルネジルド・ゼニアで決めている。
「アラン、今日は何の日?」「医療関係のチャリティーだよ。君も苦しむ
アメリカ国民の役に立てる日さ。」チャリティーにおめかし???
捜査官としてはダウンタウンで鼻がきいても、アップタウンじゃ全く方向が
分からないダニーだった。
再度ボルボで出かけた先はフィリップ・スタルクが設計を手がけたことで
一躍セレブの人気スポットとなったハドソンホテルだった。駐車係りに
鍵を預けると、「さぁ、行くよ。」とアランは胸を張ってロビーに入る。
こういう時のアランって男でもほれぼれするわ。俺もいつかああいう
振る舞いが出来る男になりたいなあ。
バンケットフロアは人でごった返していた。ダニーでも知っている俳優や歌手
も混じっている。「アラン、これ何?」「HIV患者救済のチャリティーだよ。」
シャンパンをアランがもらいにいっている最中、あからさまに何人もの手が
ダニーの身体に触れてきた。
これ、ほんまにチャリティー???
「ほら、ドンペリ飲んでしゃきっとしろよ、ダニー。」「ああサンキュ。」
「君の出番はもうすぐだ。」うん??
司会はHIV救済基金の理事長自ら務めていた。すぐさまゲイと分かる身のこなしだ。
「お集まりの皆さま、それでは、今夜のチャリティーのメインイベントと
いきましょう。」群集がどよめき、歓声を上げる。
「まず、JD様から出品のこの男性です。さて一晩のデートにお幾ら寄付
して頂けますか?」「1000ドル!」「2500ドル!」「3000ドル!」
まるで授業中の小学校低学年生のように手が挙がる。
なんや、これじゃ、前にやった家畜プレイと同じやないか!
アランに文句を言おうとした瞬間、ダニーは壇上に連れて行かれた。
「AS様からの出品。これは今日の出物です。さて寄付額は?」
「3000ドル!」「5000!」「8000!」
「8000ドル、ありがとうございました。」
8000ドルの声の主は初老の紳士だった。嫌な予感がする。
「ダニー、さすがだな。8000ドルとは多分今晩一番の額になるよ。」
アランも心なしか興奮している。「じゃあご挨拶といこうか。」
初老の紳士は車椅子に座っていた。「初めまして。こちらダニーです。」
アランが握手を求める。紳士は上品に握手を返すとダニーを見上げた。
後ろにいる看護師らしき男が「ご主人様は舌ガンで声を無くされまして。」と
言葉少なく語った。「それは失敬。」ダニーも促されて握手した。
廻りが羨望の目で車椅子の紳士を見つめる。
「ご主人様は今日はここのスイートを押えておられます。あがりましょう。」
看護師はすいすいと車椅子を人ごみの中でコントロールし、VIP用のエレ
ベータへ向う。後を着いていくダニーとアラン。
何や、アランも一緒やん。
ダニーは勇気が出た。それにここはホテルだ。秘密クラブじゃない。
部屋に入って、ダニーは動揺した。全面鏡張りだ。
「ご主人様が今晩のために改装させたものです。見事でしょう。」
さすがのアランも度肝を抜かれていた。これはすごいことになりそうだ!
看護師は紳士を車椅子から特製チェアに運んだ。キーボードとディスプレイが
付いている。筆談で会話をするようだった。電源をONにすると、壁の一つが
ディスプレイになった。
一体一晩のために幾ら使うてるねん、このじいさん!俺が8000ドルなんて
安いんちゃうか!
金額の感覚が麻痺し、思わず悪たれをつきそうになるダニー。
急にディスプレイに文字が浮かび上がる。
「ようこそ。さぁ、服を脱ぎなさい。二人とも。」
アランがついに言葉を発した。「僕も?」「そうだ。君の出方次第で、
寄付金を倍額にしてもいい。」
アランとしてはこの基金で顔を利かせるためには1万6000ドルは欲しい額だった。
「よし、ダニー。いつもの調子でいこう。」「ア、アラン、ほんまに?」
二人はぎこちなくお互いの服を脱がせ、ベッドに上がった。キングサイズより
大きなベッド。部屋全体に裸の二人が映し出される。「さぁ、はじめなさい。」
筆談にもかかわらず、老人の言葉には威厳が感じられた。二人はまず69に
なり互いのペニスを咥え、口を上下に動かした。アランがノッてきて、裏や
玉にも舌を這わせる。「あぁ、んうん、アラン〜。」ダニーが思わず声をもらした。
すると部屋に「ひーひーひー」という引きつった声が響いた。老人が笑ったのだ。
二人は思わずぎょっとしたが、始めてしまったものを止めるわけにもいかない。
ダニーも負けずにアランの玉を口に含み吸ってみた。「うぅっ、ふぁ〜。」
普段聞けないアランのよがり声にダニーは興奮した。ディスプレイが動いた。
「お互いオナニーしながらイキたまえ。」この部屋では老人の命令は絶対だった。
二人は向き合いお互いを見つめあいながら、自分のペニスに手を沿え、前後に
動かした。二人ともイクまいと我慢して苦渋の顔をしている。
「ひーひーひー」また老人が笑った。
「だぁだめや〜。」ダニーが先に精を放った。それを待っていたかのように
射精するアラン。二人はお互いの精液で身体が光っていた。
「舐めなさい。」普段なら決して自分の精液を舐めないアランも、今晩は
別人のようだった。ダニーの身体についた精液を舐めながらダニーを愛撫する。
鏡に映った数百人のアランがダニーを愛撫する。ダニーもアランに口ずけし
精液を舐め取る。「後背位でブロンドがブラウンを犯しなさい。」
アランは言うがままにダニーの後ろに回り、精液で濡れたアヌスに半立ちの
ペニスを押し付けた。「ダニー、いくよ。」静かにアランがささやく。
「うん、はよう、来て、アラン。俺もうだめや。」
「ブラウン、我慢だ。」老人の命令。アランが先に果てた。すると老人は
キーボードにこう打ち込んだ。「ブラウン、私の口でいきなさい。」
アランに促されダニーは老人の前に立つ。アランの刺激で、ダニーのペニスは
射精寸前まで屹立している。老人は口を明けた。そこは、歯もなく舌もない
洞穴のようだった。老人特有の口臭でダニーの鼻はもげそうだった。
うわぁ〜、アランでイっとけばよかったな。
ダニーは看護師に押され、老人の口にペニスを咥えさせた。
まさにディープスロートだった。老人が息を吸い込むたびダニーは嗚咽の声を
もらした。 ええわぁ、すごいわぁ。
数回老人が息を吸い込むとダニーは思い切り射精した。 ごくりごくりと
喉を鳴らして、ダニーのザーメンを飲み込む老人。満足したのか、次に
キーボードが動いた。「2万ドルを寄付する。」
看護師はまた老人を車椅子に乗せ、次の間へと連れて行った。
看護師だけ部屋に戻ってきた。
「小切手はAS様に送りますので、寄付をどうぞ。
さぁ、バスにつかってください。今日はご主人様のためにありがとう
ございました。これだけ楽しまれたのは久しぶりです。」
看護師も出て行き、二人だけが残された。
「アラン〜、聞きたいことあるんやけど。」さすがのアランも目の下にクマを
作っている。「俺と違う相手とここに来たことあんの?」「いや、初めてさ。」
「ほんまかいな。ときたまアランが分からのうなってん。俺。」
「おいおい、僕はそれほど悪人じゃないさ。楽しかっただろう。一晩で2万ドル
これで、何人のHIV患者にワクチンを打てるか、考えたことあるかい?」
「いや〜、俺の脳みそはそういう計算に慣れてないねん。」
「とにかくバスにつかろう。あとどこかで食事して帰ろう。」「ああ。」
ダニーとアランの最初の冒険は幕を閉じた。
ダニーは一睡も出来ずに朝を迎えた。
目を閉じると、ボスとマーティンの痴態が浮かぶ。眠るどころではなかった。
あの嬉しそうな顔、それにあの繋いだ手・・・キス・・・思い出すとまたムカムカしてきた。
オレはお払い箱っちゅうことやな・・・ダニーはそう解釈した。
手当たり次第にオレンジを切り刻み、ジューサーに放り込んだ。
適当にしたせいで皮が混じっていたのか、苦い・・・。
ダニーは一気に飲み干すと、グラスを乱暴に置いた。
いつもより早めに家を出て支局に向かった。マーティンやボスより先に着いていたかった。
まだ誰もいないオフィスで新聞を広げていると、マーティンが来た。
「・・・おはよ」「あ・・おはよう」それっきり交わす言葉もない。
そのうちサマンサが加わった。
「なぁ、サマンサ。今度オレとデートせえへん?」
「はぁ?朝っぱらから何?寝ぼけてんの?」
「いいや、本気で誘うてんの!おもしろいで、オレは!」
「い・や・だ。また今度ね」あっさり振られた。
マーティンが睨んでくる。ピノキオも顎スコンてなってるわ。
ダニーは挑発するように、流し目で返した。
ミーティングが終わると、ダニーはすぐにボスの部屋へ行った。
「ダニー、何だ?」「大事なお話があるんです」ダニーはドアを閉めた。
「一体何だ?それに目が充血しているぞ、寝てないのか?」
「それどころやないんです。オレはもうあいつとは付き合いません」
「ほぅ・・」ボスは値踏みするようにダニーを見据えた。
「昨日の様子でわかったんですわ。あいつが求めているのはボスやということが」
ボスは何も言わない。ダニーは続けた。
「もう呼び出されることもないですから、そのつもりでお願いします」
ダニーはそれだけ言うと出て行った。
キスしたのが不味かったか・・・ボスは困惑したが、仕事に頭を切り替えた。
マーティンがちらちらと様子を窺っている。ダニーは一切無視した。
勤務が終わり、ダニーは急いで帰るとベッドにもぐりこんだ。
あっという間に眠りに落ち、規則正しい寝息だけがあたりに響く。
電話も何も、まったく気づかずに眠っていた。
不意にトイレに行きたくなり、目を覚ますと深夜の二時だった。
おなかをかきながらトイレに立つ。
「ふぁーあ」大きな欠伸をしながら、冷蔵庫を開けると中にアップルタルトが入っていた。
「ん?マーティン・・・来たんか・・」ダニーはタルトを見つめた。
あいつなりの意思表示?、もうオレには関係ないことやけどな・・・。
ダニーはタルトを手づかみで食べた。ふと思い出し、レモネードを作る。
だらしなく食べながらリビングへ、いつものダニーなら考えられない行動だ。
「僕が同じことをしたら、すっごく怒るのにさ!!」マーティンの声がした。
「なっ、お前、いてるんやったら早よ言えや!びっくりするやろ!」
ダニーは、きまりの悪さをごまかすように言った。
「ずっとここにいたよ、見てないのはそっちじゃない!」
マーティンは、ダニーがタルトを食べたのが嬉しかったが、わざとそっけなくした。
「何しに来たん?ボスが忙しいからか?」
「ううん、君に会いに来た。ダニー・テイラーにね」
「僕らの関係は終わったって、そうボスに言ったんだって?」
「ああ、言うたで。ほんまのことやろ?」
「僕は終わらせたつもりはないよ。ろくに話もしてないのに・・・」
「お前、昨日ボスに抱かれながら喜んでたやん。それもあからさまに。
どぎついチューまでして、手ぇ繋いで、あげくに対面座位がいいなぁ?あほかっ!!」
ダニーは、思い出してまた怒りが沸々と湧いてきた。
「それは・・その・・とにかく違うんだよ。ボスとはそんなんじゃない・・・」
「へぇー、ほな、どんなん?」ダニーは小バカにしたように問い詰めた。
「その・・うまく説明できないけど・・愛してるのはダニーだけだよ」
マーティンは途切れ途切れながらも気持ちを伝えた。
ダニーはトランクスを下ろすと、ペニスをしごいた。
「対面座位、やったろうやん。こっち来いや!」
マーティンはダニーを見つめたまま動かない。
「どないしたん?早よ来いよ。オレを愛してるんやろ?」
ダニーはマーティンの手を引っ張った。
「イヤだっ」手を振り払うマーティン。
「やっぱりボスのほうがええんやな、わかったわかった」
「ダニー・・・最低!どうかしてるよ!」マーティンは立ち上がった。
「逃げるんか?オレじゃ役不足やからなぁ、ボスに慰めてもらえ!!」
マーティンはそのまま無言でベッドに入った。
「何?ごまかすために、オレに抱かれるんか?」ダニーの嫌味は続く。
「もう遅いから寝るんだよ、このまま帰ったらまた疑われちゃう」
ダニーを無視して歯を磨くと、さっさと寝る支度をして目を閉じた。
マーティンは情けなかった。気づかれないように枕で声を殺し、密かに泣いた。
ダニー、どうしてわかってくれないんだよ・・・ひどいよ・・・。
途方にくれるマーティンだった。
オレってほんまに最低や・・・ダニーは自己嫌悪に陥っていた。
マーティンが泣いていることも察していた。
嫉妬の塊の自分に出来ることは、そっとしておくことだけだ。
ダニーはタルトをもうひとつ食べると、食器を片付けた。
さっきまで寝てたので、ちっとも眠くならない。
手持ち無沙汰なダニーは、テレビを見ながら引き出しの整理を始めた。
だが、集中できない。何をどうしたいのかもわからなくなってしまった。
そっと近づくと、入り口からこっそりマーティンを見ていた。
ボンボンともお別れか・・・今まで楽しかったで、マーティン。
いつかは別れなあかんのや、ただ急な話で気が動転してるけど・・・。
これからしばらく寂しくなるなぁ・・・。
なす術もなく、ただただ見つめているダニーだった。
ダニーはそのままソファーに寝転び、いつしかまどろんでいた。
初めてマーティンと寝た夜もここやったな・・・。
そんなことを考えているうちに、浅い眠りから覚めた。
夜が明けたばかりで、マーティンはまだ眠っている。
ダニーはベッドの横に座り、マーティンの寝顔を見ていた。
ボスに大事にしてもらえよ・・・ダニーはそのままキッチンへ行った。
最後の晩餐やないけど、最後の朝食やからな。
アイツの好きなもん、作ったろ!!
ダニーは考えたものの、フレンチトーストしか思い浮かばない。
あと何が好きやったっけ?ベーグルも食べよったけど・・・。
あんなに一緒にいてたのに、好物すら思い浮かばへんなんて・・・。
こってりしたもんが好きなんは確かやねんけど・・・。
ダニーはフレンチトーストとカリカリベーコン、野菜スティックを用意した。
ついでにブルーベリーのスムージーも作ると、マーティンを起こした。
「マーティン、起きろ!遅れるで」ダニーは体を揺すった。
「ダニィ?僕のこと許してくれたの?」眠そうな顔で体を起こした。
「・・・あー、とにかく朝メシにしよ」ダニーはごまかした。
「とにかくって?じゃあまだ怒ってるんだ・・・何だよっ、自分だって女と寝てるくせに!
僕は浮気なんてしてないっ!ボスにちょっとやさしくされただけじゃないかっ!!」
マーティンは吼えた。こめかみの青筋がセクシーなぐらい、くっきりとしている。
「君はヤキモチ焼いてるんだ!嫉妬なんてみっともないよ!!」
「そんなんとちゃう!お前の態度が気に入らんだけやっ」
「それがヤキモチだって言ってるんだっ、自分だってボスにやさしくされたいんじゃないの?」
「なっ・・・もうええわ、勝手にせい!!」ダニーはキッチンへ。
「僕は休むからね!」マーティンはそのままブランケットにくるまった。
一人でさっさと朝食を済ませると、そのまま支局に向かった。
オレがボスにやさしくされたい?、アホらしいこと言うなっ!・・・。
こんなことぐらいで休むなんて、へっ、ボンはやっぱり気楽なもんや。
「ボス、マーティンは欠勤ですわ」ダニーはこっそりボスに耳打ちした。
「そうか、適当にごまかしておこう。夕べ、何かあったのか?」
「いえ、今朝・・そのちょっと・・・」ダニーはしどろもどろ説明した。
「朝っぱらからそんな話とはな・・かわいそうに・・酷なことするなよ、
相手は世間知らずのお坊っちゃんだぞ」
やっぱりマーティンを気に掛けてるんやな・・・ほな大事にしたってくれよ。
ダニーは憮然としたまま席に戻った。
「ダニー、ちょっと来い」午後、ボスのオフィスに呼ばれた。
「今日の勤務の後、ちょっと付き合ってほしい」
「ボス、オレはもう別れた身ですよ?付き合う必要なんてないんとちゃいます?」
「バカ、お前のせいでマーティンが欠勤したんだろ!身代わりだ!!」
「そんなにあいつがええなら、家まで迎えに行ったれば・・・」
「うるさい、とにかく付き合え!!」ダニーは承諾するしかなかった。
ボスは、三日前から木馬の部屋を予約していた。
ダニーを連れて部屋に入る。度肝を抜かれるダニーを見て、笑いそうになった。
「ダニー、始めるぞ。シャワーを浴びてこい」
その間にボスは木馬を消毒し、突起にコンドームを被せた。
コンドームの上から、たっぷりと媚薬を塗る。ダニーはコレ初めてだったな。
ボスはククッと下卑た笑いを漏らした。さあて、あのダニーはどんな反応を示す?
ダニーが出てきた。ボスはダニーのアナルに媚薬を塗った。
「ボスっ!!何これ、かっ痒い痒いー」ムズムズした痒みで狂いそうになる。
「馬にゆっくりと跨れ、痒みが治まるぞ」ダニーは鐙に足を掛けると言われたとおり従った。
「あぁー、ボスー、こっこれ〜ああっあー」ダニーは激しく腰を振った。
楽しむ暇もなく、あっけなく射精する・・・。
「ダニー・・・お前、えらく早漏だな・・・」ボスは呆れたように呟いた。
「ボス、ハァッハァッ・・もう一回イってもいいっすか?」ダニーが頼んだ。
「ああ、何度でもイっていいぞ」許可を得ると、ダニーはまた腰を振り始めた。
「ん〜ぁぁー、んっく」トロンとした目をして、完全に木馬の虜だ。
しまいには自分でペニスをしごきながら、女の騎上位のように上下していた。
大量に射精すると、ぐったりと木馬に抱きついている。
ダニー、どうだ?よかったか?」ボスは背中に手をやりながら聞いた。
「あぁーもう最高っす!!」ダニーは満足げに答えた。
「だが、残念ながらお前と寝るのはこれが最後のようだ・・・」
「ボス・・・」「ベッドでかわいがってやろう、降りて来い」
ダニーは渋々、木馬から降りると、ベッドに仰向けになった。
「ダニー、キスしてほしいか?」ボスが唐突に訊いた。
ダニーは黙っていた。頼んでまでキスなんてされたくない。
ボスは何も言わずにキスをした。舌を絡められ、固まるダニー・・・。
「ダニー、どうした?嫌がってるのか?」ボスは聞きながらも愛撫する。
「いっいえ、ぁっそこは・・んぁっく」ボスの手が亀頭を擦った。
ボスは巧みなテクニックで、ねちっこく性感帯を探り出す。
ダニーは、とうとう我慢が出来ずに挿入をせがんだ。
ボスはニヤッとしながら正常位で挿入した。
今回は、痒みも覚悟している。。激しく突き上げ、声を上げる。
「ぅっああー、ダニー・・いいぞ、あっぅん、ああー」
ボスの喘ぎ声はダニーをそそった。
「ボス、オレ・・もうあかんっ、あぁー」ダニーもまた射精した。
ボスはダニーの精液も舐めてくれた。「ボス・・・」
「ダニー、体を洗うぞ」ボスがバスルームに誘ってる?オレを?
ダニーは訝りながら、いっしょに入った。
ダニーはボスの車で、心地よい疲れに身を委ねていた。
「なぜか私がキスをすると、相手が本気だと勘違いするらしい」
「でも、この前のマーティンとのセックス・・・あれは本気や・・・」
ダニーはボソッと呟いた。
「じゃあ、今日の私たちは?あれも本気か?」「・・ようわからん」
「お前たちには共通点があるのを知ってるか?」「・・・・」
「二人とも親の愛情に飢えている。もちろん、育ちは違うがな。
私に認められたいと思うだろ?仕事だけじゃなく」
ダニーは押し黙ったまま考えた。そう言われるとそうやな・・・。
「前回、やさしく抱いたからといって、次回もそうとは限らん。
油断してたら鞭でパチンかもしれんぞ、マーティンの泣き顔は一見の価値ありだ」
ボスは一人で想像に耽っている。卑猥な笑いを浮かべる、変態そのものだ。
ボスならやりかねん・・・。今日の馬にもびびったし・・・。
それに、オレだってあいつの困った顔見るの好きや・・・。
えっ?もしかして、オレも変態か!?ダニーはギクリとした。
ボスに礼を言って車を降り、ダニーは階段を駆け上がった。
「マーティン?」部屋は真っ暗で人の気配がなかった。
ダニーはがっかりしたが、こんな時間までいるはずもない。
灯りをつけて驚いた。部屋の中が散乱している!
ピザの食べ残し、床に散らばったキャラメルポップコーン、ドリトスの空袋・・・。
DVDや読みかけの雑誌、使った後のティッシュ・・・まるでゴミためのようだ。
「何やこれ?!」思わず素っ頓狂な声が漏れた。
ベッドルームに入ると、マーティンがポップコーンを食べながら寝転んでいた。
「ダニー、おかえり。遅かったね!」いたって普通の態度だ。
「お前、何してんねん?仕事も休んで・・・それに、ここでモノ食べるなって言うてるやろっ」
「うん、知ってるよ」平然と返すマーティン。
ダニーは、ネクタイもシャツも放り投げ、ソックスも丸まったまま放置した。
「どうゆうつもりや、仕返しか?」
「そうさ、ダニー理不尽だもん。だってさ、僕は悪くないんだ。
説明してもわかってくれないし、これ以上どうしたらいいのさ?」
ダニーは黙って片付け始めた。床のポップコーンを拾い、ゴミ箱に入れる。
マーティンはわざとポップコーンを投げた。拾う、投げる、拾う、投げる・・・。
「やめろやっ!!」ダニーはとうとうキレた。
袋ごとひったくると、ゴミ箱にぶち込んだ。
「もう帰れ!!」「嫌だっ、僕はどこにも行かない、行くもんか!」
ダニーはマーティンを引きずり出そうとした。
「あっこの香り・・・ボスの車だ・・・ん?乗馬?」驚きを隠せないダニー・・・。
「自分だって楽しんでるじゃない!僕ばっかり責めて!・・ひどいよ・・」
マーティンは嗚咽を漏らしながら、またブランケットにくるまった。
ダニーは強引にブランケットを剥ぎ取ると、体を押さえつけた。
ジッと睨みつけるマーティン。
「・・その・・あー・・えーっと・・・ごめんな」ダニーは謝った。
マーティンはまだ睨んでいる。「その・・オレが悪かった・・」
「何が悪かったのか説明して」「えっ・・嫉妬したこと・・かな」
「それだけ?他にないの?」仕返しのように責めるマーティン。
「話を聞かんかったことも・・・それと、サマンサを誘ったことも・・・ごめんな」
「わかればいいんだよ、バカダニー!」マーティンはやっと謝罪を受け入れた。
「そやな、バカマーティン!」ダニーもデコピン付きで返した。
マーティンはダニーが最近、妙に洗練された雰囲気を身につけてきたのが
気になっていた。前は寝癖でも平気で出勤してきたのに、今はウォーター
ムースでちょっとツンツン立ったようなトレンディーなヘアスタイルだし、
それにフレグランスの香りがきつい。これも1%の影響なのかな?
自分で容認してしまったものの、1%の重みを今更ながらずっしり実感する
マーティンだった。
それに比べて自分1%はどうだろう。エンリケは国際会議の準備とかで
会ってくれないし、どうせダニーの代替品だ。ダニーでなければやっぱり
自分はだめなんだと思い知らされ、打ちひしがれた。
そうだ、今日はダニーを家に呼んで食事しよう!
作れる訳のないマーティンは、家に近い「アガタ&ヴァレンティナ」で
BBQビーフと新鮮なシーザーサラダのデリバリーを予約した。
マーティンはダニーにメールを打った「作戦会議8:00に1階」
ダニーからはなかなか返事がこない。見ると電話で聞き込みに夢中だった。
それから3時間、まだ返事はなかった。やっとメールが来た。ダニーから
ではなく、サマンサからだった。「今日食事しない?8:00」
うぁあ、タイミング悪いな。断ると女はいじわるになるし・・・
断腸の思いで、サマンサにメールした。「すまない。先客あり。」
サマンサからのメールにマーティンはなぜか胸の動悸が激しくなった。
まるでプロムに誘われた高校生みたいじゃん、僕。
ゲイになる前の生活をふと思い出し、思い出にふけった。そこへ、メール。
ダニーだ!!「作戦会議OK」やった〜!!!今日は二人だけのディナーだ!
8:00の5分前にマーティンは、がさがさ書類を重ねると、1階へ急いだ。
「あぁん、マーティン、彼女いるのかなぁ。」サマンサがダニーに尋ねる。
「ええ、何で?」「今日、ちょっと誘ってみたんだ。」「ええ!サマンサ、
マーティンに気があんの?知らんかった。だから俺は振られたんか!」
「悪くとらないでね。ほら、お父さんがあの人だから、ちょっと探り入れたい
わけ。」サマンサもダニーと同じ野心を持っているというわけか。
「俺も今日デートやから帰るわ。」「もてるわね、うちのボーイズ」
サマンサは残念そうに見送った。こりゃヤバいなぁ。マーティンが狙われとる。
1階で二人は目配せをし、少し歩いたところでタクシーを拾った。
「今日は家でディナーだよ。」「珍しいなぁ。久しぶりやしなぁ。」
「うん、家の近くに出来たデリのご自慢の一品を調達したんだ。」
またデリバリーかいな。ダニーはてっきり手料理が食べられると思っていた。
アランは、思いがけず器用で色々な食事を作ってくれる。寿司が出てきたときは
本当に驚いた。街の寿司屋よりずっと美味しいのにも驚かされた。
ああ、あかん、アランと比較しとるわ。
「これはテイラー様、御機嫌よう。」「ああ、ジョン、元気か!」「はい。」
マーティンの世界。アランの世界。同じようで微妙に違う。自立しているか
否かの違いなんだろう。それだけにアランの世界がダニーには自分が目指す
もののように感じられた。「フィッツジェラルド様、デリバリーが届いて
おります。」「ああ、ありがとう。」
よく来ていたマーティンの部屋、妙に久しぶりのような違和感を感じた。
マーティンはデリバリープレートのアルミホイルをとらずに、電子レンジに
いれようとしていた。
「マーティン!また火花散るで。それならレンジじゃなくてオーブンがええよ。」
「知ってるよ、それ位!」マーティンはぷっとむくれるとオーブンに入れた。
着替えもせず、腕まくりして、サラダに挑むマーティン。
見ちゃおれんわ。「マーティン、着替えしてきいな。俺の着替えも
持ってきといて。」「うん、わかった!」出来ることを言われて、
うれしそうにクロゼットへと消えたマーティン。部屋着に着替えると、
ダニーのTシャツ・ジャージを持ってきてくれた。
ダニーのおかげで、デリの料理は最高に美味かった。特にシーザーサラダに
ダニーが少しオリーブのみじん切りを足したことでアクセントが付いた。
「ダニーって料理が美味いよね。」「そうか?まぁかあちゃん亡くしてから
自分で作ってきたようなもんやからな。」「それに最近雰囲気違うよね。」
「ああん?何や、雰囲気って。」「なんかよくいうメテロセクシャルって
いうかさぁ。前あんまり身の回りに気を遣わなかったじゃない?」
ダニーはドキっとした。つい最近、アランに勧められて床屋からヘアサロンに
変えたばかりだったし、アランに買ってもらったものが増えるにつれ、支局にも
着ていくようになっていたからだ。「そうか?前はむさかったか??」
「そうじゃなくって、かっこよくなっちゃってさぁ。僕なんか一緒にいたら
かすんじゃうよ。」「あほやな〜。お前には生まれながらの品位があるやろ。
俺にはそんなん無縁やから、外見勝負なんや。」「ふーん。」
マーティンは重い口を開いた。「それって1%の影響?」
今度はダニーが重い口を開いた。「それもある。」「いい人なんだね。」
「兄貴みたいな人やねん。年も上やしな。」「そうなんだ・・・」
「ごちそうさま」珍しく大食漢のマーティンがBBQビーフを半分残した。
「食欲ないんか。風邪か。」「そんなんじゃない。」
マーティンはベッドルームに行って、羽毛布団にくるまってしまった。
なんや誘っておいて、ふて寝かいな。
ベッドルームを覗くと、マーティンは本気で寝ていた。ほおには涙の後が
残っている。 俺はどうすりゃええねん。アランに会ってしまった以上、
もう後戻りはできない。しかしマーティンを愛していることには変わりなかった。
ダニーは食卓を片付けると、マーティンを起こさないように部屋を後にした。
マーティンははっと目が覚めた。11時だ。ダニーの姿はない。
ダイニングキッチンは綺麗に片付いていた。 またやっちゃった。
こんな僕、ダニーのお荷物だけなんじゃないか。捜査でも随分助けてもらってるし、
ダニーが付き合ってくれてるのは、憐憫なんじゃないか?
マーティンの頭は混乱した。そうだ、ドクター・ショアの予約を取ろう。
すぐさま電話する。「はい、ショア。」「僕です、マーティンです。
明日、予約したいんですけど。」「じゃあ7時に来たまえ。」「はい。」
「ダニー、君の恋人から予約が入ったよ。」アランの居間でごろごろしていた
ダニーは、さもありなんと思った。「アラン、どうするの?」
「おいおい、僕に患者との守秘義務を破れっていうのかい?令状はあるか」
はははとアランは笑って、ごろごろするダニーの隣りに寝転がった。
335 :
fusianasan:2005/08/31(水) 02:17:23
書き手さんたち最高です。
ドラマが終わっても続けてもらえるんでしょうか?
336 :
書き手1:2005/08/31(水) 23:54:54
マーティンは7時ちょうどにアランのアパートにやってきた。
「今日は連邦捜査局も暇だったのかい?」「うん・・・僕が出来ることは
終わったから。」「じゃあ、セッションに入ろうか。」「うん。」
「じゃあジャケットとネクタイはずしてくつろいで、ソファーに横たわって。」
言うとおりにした。心なしかダニーの香りがしたような気がした。
僕の頭の中はダニーで一杯だ。情けない。
「今日は何から話したい?」「僕と恋人の事なんだけど・・・」
「前と同じ恋人かい?」「うん。最近、すごく感じが変わって。すごく
大人っぽくなった感じなんだ。それに、僕、彼が出来ることが何一つ
出来なくて、お荷物なんじゃないかと思って・・・」
「ふーん、そうか。彼は君の前を歩いているわけだね。それなら前を歩かせれば
いい。お荷物なんて考えるんじゃないよ。彼はそれを嬉しく思っているかも
しれないだろう?」「それが信じられれば、ここにこないよ。」
「それが信頼できない?」「うん、急にかっこよくなっちゃって、
すごく変わったんだよ。」「誰かの影響だと思うかい?」
「うん。二人で決めたんだ。99%はお互いのため、1%は自分の
ためって。」「そうなんだ。」アランも考えた。
僕の1%は相当影響力があったようだな。ほくそ笑んだ。
「君の1%はどうなの?」「恋人にすごく似てる人と一緒にいることを
増やしたんだけど、物足りないんだよ。」
「やっぱり、彼氏じゃないとダメと。」「うん。それを実感したんだ。」
「それなら、そうぶつけてみればいいじゃないか。君はどうやら、
追いかけ続ける性格のようだね。前は僕を代替品にすればと
オファーしたけれど、それは無理だったようだね。」
「ごめん、アラン。」「謝ることはないさ。人には相性がある。」
「わかった。僕、彼に言ってみるよ。ありがとう。」
アランはこれから、マーティンとダニーがどのような関係を築くか
楽しみでならなかった。それにもまして、ダニーと過ごす週末が
待ち遠しくてならない自分の感情に、驚いてもいた。
僕がダニーに恋してる? まっさかなぁ。
いずれにしても、明日、ダニーは電話してくるだろう。
それが楽しみでならなかったアランだった。
支局へ出勤したマーティンは、ダニーがまだ来ていないことを確かめると
捜査資料の間にポストイットを貼り付けた「話がしたい。今日。M」。
そこへ携帯が鳴る。「マーティン!!電話返さないで悪かった。今日、暇?」
エンリケだ。「うう、うん、暇だよ。会おうか。」「シー!いいね〜。
アッパーイーストでいいメキシコ料理屋見つけたから、そこに行こう。」
電話を切り、ポストイットをはがすマーティン。
アランはああ言ったけど僕にだって1%の意地があるんだ。
それを確かめるんだ。
ダニー他チーム全員が出勤してきて、いつもの一日が始まった。
マーティンは夜が待ちきれなかった。自分自身の「踏み絵」の夜だからだ。
「マーティン、えらいサクサク仕事してんな。なんかええ事でもあるみたい
やな。」「そんな事ないよ。いつも通りだよ。」「そうか〜?」
訝るダニー。定時きっかりに支局を出るマーティンの後姿をずっと見つめていた。
レストラン「サマリタス」はLA風の上品なメキシコ料理屋で、二人はワカ
モレチップスとファヒータスをお腹一杯食べ尽くした。国際会議が終わって、
肩の荷が降りたのか、いつにも増してエンリケは饒舌だった。
「で、会議はうまくいったの?」「3歩進んで2歩下がるだったけど、
君の国も関税障壁の一部を撤回してくれたから、うれしかったよ。」
「エンリケの手柄なわけ?」「僕が原稿書いたからね。」いばって鼻をフンと
鳴らすエンリケ。 そんな癖までダニーとそっくりだ。
「エンリケって世界が舞台なんだね。」「外交官になるのが夢だったから、
かなって幸せ一杯だね。最初の駐在がアメリカというのはエリートの印
なんだ。」「僕もCIAになるべきだったかな。」「マーティンがCIA
だったら、こんな仲になれなかったよ。」エンリケはテーブルクロスで
隠れたつま先で、マーティンの股間をノックした。「お、おい!」
「顔が紅いよ、マーティン、僕のお姫様。本当にかわいい。」
ダニーがこんなにスウィートな言葉を言ってくれたことなんてない。
マーティンはエンリケの一挙手一投足をダニーと比べていた。どれをとっても
エンリケの方が勝っているような気がした。ワインのせいだろうか。
「そろそろ帰ろうか。」アメックスのブラックカードで支払うエンリケ。
「ええっ外交官ってブラックカードなの〜?初めて見たよ。」「シー。」
満足そうなエンリケだった。
そうだ、今日は家に誘ってみよう。
マーティンはレストランから程近い自分のアパートへエンリケを案内した。
「お姫様のお城が見られる。最高の気分だね。」ドアマンのジョンが「テ、」
と言って「お帰りなさいませ。」と言い換えた。さすがジョン、有難い。
「ジョン、エンリケ・トレスさんだよ。」「セニョール・ジョン、初めまして。」
礼儀正しくエンリケは挨拶した。「ようこそ、トレス様。」
「お姫様、門番つきのお城。ドキドキするね。命を守る騎士もいるかもね。」
エンリケは大笑いしながらエレベータに乗る。ジョンは二人の後姿を見送った。
粗相をしなくて良かった。それにしてもテイラー様にそっくりだ。
エンリケはマーティンの部屋に入ると、ジャケットとタイを取り、ソファー
に座り込んだ。「マーティン、ワインはある?」「ああ、カリフォルニア産で
良ければ。コッポラの赤がある。」「フランシス・フォード・コッポラ!
シー!!それ開けよう!!」二人はレストランですでに2本空けていた。
すっかり宴会気分の二人は、ダニーが買っておいたブリーチーズとウォッシュ
チーズで酒盛りを始めた。
気がつくと二人とも下着一枚の裸になっていた。ベランダでブリーフだけの
エンリケが吼えている「うぉーん!!」「エンリケ、だ、だめだよう。
近所が騒ぐから。」「じゃあ、お姫様を食べちゃう狼だぞ〜!!」
もう何がなにやらわからなくなってきた。雄たけびをあげるエンリケを
引っ張って、シャワールームに入れると、ウォーターシャワーを浴びせた。
「うわ〜、気持ちいいね〜。お姫様もおいで。」ぐいっと腕をつかまれ
引きずり込まれる。「うわ〜、冷たいよ!!」その口を自分の口でふさぐ
エンリケ。情熱的なキスの始まりだ。
もつれるようにシャワールームから上がると、身体も拭かず、エンリケは
ベッドルームを捜す。「こ、こっちだよ。」声をはずませ、マーティンが言う。
「もう狼、我慢が出来ないよ。お姫様を食べるね。」そう言うやいなや、
濡れたトランクスの上からマーティンの半立ちのペニスを優しく噛んだ。
「あぁぁん、いい。脱がせて・・・」エンリケはマーティンの身体に張り付いた
トランクスを脱がせ、自分のビキニブリーフも急いで脱いだ。
エンリケのペニスはすでにいきり立っていた。早く中へいきたいと叫んでいる
かのようだ。 ダニーのより大きい・・・思わずじっと見つめるマーティン。
「早く咥えて欲しいよ、マーティン・・。」口に入れると、息が出来ないほどだ。
鼻で深呼吸する。「舌を使って。そう、そう!」エンリケは自分の希望をどんどん
口にする。マーティンは言われるままにエンリケを貪った。
「エンリケ・・今日はあれしないの?」「ん?」「コックリング・・・」
マーティンが恥ずかしそうに言う。「して欲しい?」「うん・・」「首輪は?」
「首輪も・・」エンリケはリビングに置いたブリーフケースから道具を持ち出した。
「ねぇっ、いつも持って歩いてるの?」「まさか!今日お姫様に会うと決まって、
家に取りに戻ったよ。」
首輪とコックリングにつながれたマーティンは自ら進んで四つんばいになった。
ベッドサイドにあったココナッツオイルを手に取るとエンリケは急いでペニスと
マーティンのアヌスに塗りこんだ。「じゃあ、入れるよ。」「うぅん、早くぅ。」
最初の一撃でマーティンは失神した。エンリケは容赦せずマーティンの腰を
つかんで前後させる。マーティンのコックリングがぎりぎり締まる。
「ふはぁ〜。」気がつくマーティン。自分が最大限に勃起しているのを見て
驚く。「エンリケ、ぼ、ぼく、もうだめだよ。」「じゃあ一緒にイこう。」
「うん。」二人は同時に爆発した。身体がぶるぶると弛緩する。
「お姫様、よかった?」身体についた精液を舐めながらエンリケが尋ねる。
「うん、すごかった。目から星が出たよ。」「お姫様は首輪とこれが好きだね。」
うなだれたペニスにかろうじて張り付いているコックリングをつついた。
「恥ずかしい!」「僕、本当にアメリカに来て良かった。心からそう思う。」
エンリケも感無量のようだった。遊び人のようでいて、それほどでもないのかも。
マーティンはふと思った。それに比べて、娼婦も買うような遊び人なんて
最低だ!! また考えがダニーの方へ振り子のように動いた。
ぐったりするエンリケに、ダニーのストックのクラブソーダを持って来た。
「グラーチェ。セニョリータ。」「もう、お姫様はやめてよ。僕だって
セニョールだよ。」萎えたペニスでエンリケのお腹をぺちぺち叩く。
「ははは。そこが可愛いよ。またキスしていい?」返事も聞かず、フレンチ
キスを繰り返すエンリケ。じゃれあっているうちに、二人とも疲れて
深い眠りに入っていった。
ダニーとマーティンは、寄り添いながらベッドに入った。
マーティンが甘えるように抱きついてくる。
自然と手がダニーのペニスに触れた。
「今日はもう、チンチンカラッポやで」ダニーが恥ずかしそうに言った。
「あの木馬いいよね、ちょっと欲しいんだ、僕」
「えっ・・・買うんはええけど、置くのに困るで」
「そうなんだ。人に見られたら恥ずかしくて死んじゃう・・・」
本気で悔しがる様子を、ダニーは呆気に取られて見ていた。
「明日は休みやし、ゆっくり寝よ」ダニーは大欠伸をした。
「ええー、今日一日こもってたから、どっかに行きたいよ」
「面倒やなぁ・・・しゃあない、ほなどっか行こう」
マーティンは、行き先をあれこれ考えながらくっついた。
ダニーはいつの間にか、もう眠っている。
「よし、決めた!」マーティンは楽しそうに目を閉じた。
ダニーとマーティンはスカッシュをしていた。
しつこく誘うマーティンに根負けして、仕方なくだ。
「ダニー、ぼんやりしないで!後ろからも来るんだよ」
「ああ、ああ、わかってるって・・・あーしんどい」
マーティンは初心者用に手加減している。
ダニーはフラフラだった。こんなに疲れるとは・・・。
目の前をボールがかすめた。「はぁはぁ、ちょっと休憩や・・」
ダニーが休んでいる間、マーティンは一人でプレーしていた。
マーティンは黙々とボールを打っている。
いつものトロさはまったく見当たらない。機敏で、まるで別人のようだ。
二人はプレー後、ゲータレードを飲みながら休んでいた。
視線を感じて顔を上げると、女の子が二人、こっちに来るのが見えた。
「ハーイ、もう帰るの?」なかなかかわいい、ダニーの好みのタイプだ。
「ああ、もう疲れてしもてな」ダニーはニッコリと微笑んだ。
「私たちもこれから帰るんだけど、一緒に食事しない?」
マーティンのほうを見るのが怖い。くそっ、チャンスやのに・・・。
「いや、オレら既婚者やねん。早よ帰らんとあかんから・・・」
ダニーは丁重にお断りした。かわいかったのに、もったいないなぁ・・・。
「ダニー、鼻の下伸びてるよ!」マーティンが冷たく言った。
「んなわけないやろっ、邪推はやめてもらおか。それより何食べる?」
ダニーは何気なく話題をすり替えた。マーティンはおなかと相談中。
「んー、ステーキかな。いつものとこの」
「よし、ほな行こう。もう腹ペコやで」
そのまま、ブルックリンのステーキハウスに直行した。
マーティンは上機嫌だった。今日のダニーはとってもやさしい。
わだかまりも消え、燻っていたモヤモヤがどこかへいってしまった。
帰りに、ダニーはアダルトショップを見つけた。
「マーティン、ちょっと見てみ、エロそうなもんがいっぱいや!入ろか?」
「えっ、二人一緒に?大丈夫かなぁ?」
「大丈夫、オレがついてるんやから。おもしろそうやで」ダニーは車を止めた。
中に入ると、ボンデージスーツやバイブ、鞭、蝋燭が所狭しと置いてあった。
「わぁー、すっげー!!」マーティンは興奮してキョロキョロしている。
ダニーも、珍しいものや、使用方法がまったく分からない物を見て驚いた。
マーティンがローションを選んでいる間、ダニーは愛用のコンドームを見つけた。
こっそりコンドームと、新作のDVDをいくつかカゴに入れる。
さらに店の奥に進み、媚薬入りチョコと低温蝋燭も買う。
バイブは、迷ったものの買うのをやめ、二人は店を後にした。
アパートに着くと、マーティンが早速チョコを食べた。
「どうや?」「まだよくわかんない、ダニーも食べれば?」
ダニーもチョコを食べた。あんまりおいしくない・・・。
「うーん・・・あかんな。女物やろか?」「・・・かなぁ?」
二人は顔を見合わせると、ひとしきり笑った。
「ねー、さっきコンドーム買ってなかった?」さりげなく聞くマーティン。
「買ったで、オレの好きな銘柄」ダニーは普通に答えた。
「どうして?」「バイブも買うつもりやったから。つけんと不衛生やん」
「そっかー」マーティンは納得したらしい。ダニーは胸をなでおろした。
バスルームから出ると、マーティンは蝋燭のことを思い出した。
「ダニー、蝋燭使ってみようよ」興味津々のマーティン。
「熱かったらやめよな」ダニーもワクワクしながらライターを取ってきた。
「どこに垂らすんやろ?」「とりあえず背中とか?」「よっしゃ、それでいこう!」
ダニーは四つんばいになった。あードキドキするわ・・・。
マーティンは蝋を一滴垂らした・・・「どわっ熱っ」飛び上がるダニー!
「あかんわ、こんなん無理や!」ダニーは背中をさすった。
「じゃあ次は僕だ」交代して、腰の辺りに一滴垂らした。
「んあぁー・・・熱いけど、我慢できそう。もう一度やってみて」
「ほんまに大丈夫か?ええの?」「ああ、やって」
ダニーがそっと蝋を垂らすと、「うっぁぁー」マーティンが仰け反った。
「もうやめとこ、オレなんか怖いわ」マーティンの反応に正直びびっていた。
「えー、もうちょっとだけ。ねっ」ダニーは渋々蝋を垂らした。
ビクンと仰け反るマーティン。ペニスからは透明な液体が流れている。
「ダニィ・・もう入れてほしいよ」
「えっ、でも・・オレまだ勃ってないねん・・・」
マーティンはペニスを咥えると、一心不乱にしゃぶった。
次第に硬くなるペニス。ダニーもその気になってきた。
「もうええで、入れよう」ダニーはローションを塗りたくるとゆっくり挿入した。
「んんっダニィー、もっと激しくして・・」ダニーは速度を上げない。
「ダニィ・・早く突いてよ・・ねぇってば」マーティンの弱々しい声が切なく響く。
ダニーは嬲るように、ゆっくりとしか動かない。
マーティンはペニスをしごこうとしたが、ダニーは両手を掴んで離さない。
「ダニィ・・僕もうだめだよ、何とかしてよ・・イキたいんだ」
ダニーは正常位に体位を変えると、マーティンを見つめた。両手の自由も奪ったままだ。
「ダニィ、早くなんとかして、頭がおかしくなっちゃう!!」マーティンは金切り声を上げた。
切羽詰った表情がダニーを刺激する。ダニーはニヤリとした。
ええぞ、マーティン!最高の表情や。
ダニーが激しく突くと、マーティンはあっけなく果てた。
ヒクつくアナルを楽しみながら、ダニーはマーティンの中で激しく動いた。
「んんっ、あっぁぁー」ダニーは精液をマーティンのペニスにかけた。
そのまま上に倒れこむ。ピチャピチャと卑猥な音が響いていた。
マーティンはダニーの腕枕にもたれていた。
「ダニー、このローションどう?ピーチなんだけど」
「ああ、別にええやん。ミントとかもスースーしてええかもな」
「オイルとどっちがいいかな?」「どっちもいけるで」
「お前、本気で蝋燭に感じたん?」ダニーは気になっていたことを聞いた。
「うん、熱いけど、なんだか気持ちよくなってきちゃった」
「でもな、蝋燭はもう止めや」「どうして?僕なら平気だよ?」
「オレが嫌やねん。お前に痛みなんか与えたくないんや・・・」
「ダニィ・・・」マーティンは照れくささを隠すように、ダニーの脇に顔をうずめる。
「こらこら、くすぐったいやん!」ダニーは髪をくしゃっとしながら引き離した。
367 :
ファンです:2005/09/02(金) 02:19:54
きゃあ〜本放送が終わっても続けてくださるんですね!
うれしい〜。ダニー萌えだったけど、このスレ読んでいてマーティンも
好きになりました。アランやエンリケも怪し〜い雰囲気で気になる!!
あたしもずっとファンですw
でも最近、1さんのも2さんのも、マァティンがうざい…いや、可愛いと思うんですけど、どちらかと言えばあたしはダニィ寄りなんで、ちょっと我儘かなぁって思ったりする…って感情移入しすぎですかね!?
この先、どんな展開になるのか、2人は幸せになれるのか、超楽しみですww
感想に深く御礼申し上げます。
今日は待ちに待った週末。ダニーはバケットとお手製のガーリックバター、
イベリコ豚のハム、チーズを持って、車をアッパーイーストに走らせて
いた。 ぼんを驚かしてやろう。ほんの遊び心だった。
俺のバケットサンドは他のデリに負けない味やから、驚くで〜。
その頃、マーティンはエンリケの腕の中で眠っていた。
昨晩はアルコールとお遊びが過ぎたせいで、玄関のブザーがなっても
二人は目を覚まさなかった。
「テイラー様、まだお休みのようでございますから、今日のところは
お引取りを・・」事情を知っているジョンが必死で抵抗を試みる。
「ええんや、入れてえな。俺が合鍵持っとんの知ってるやろ。」
ダニーは持ち前の俊敏さでジョンを出し抜きエレベータへと走った。
玄関のドアをノックする。「マーティン、俺や!もう朝やぞ!!」
「うぅん・・・え、だ、ダニー!大変だ!!エンリケ、エンリケ、起きて!」
「んん、お姫様・・まだ早いだろ・・・」「違う、ダニーが来たんだ!」
エンリケが事態を理解するのに数分かかった。「え、ダニーが!」
時はすでに遅かった。バケットの入った紙袋を落とすダニー。
ベッドの中で羽毛ふとんにくるまるマーティンとエンリケ。
凍てついた時間が通り過ぎる。その沈黙を破ったのはダニーだった。
「朝ご飯まだやろ?俺作ったるから、二人ともシャワー浴びたらどうや。」
紙袋を拾い、ダニーはキッチンへときびすを返した。
顔を見合す二人を残して。
俺が言い始めた1%の出来事や。
半ばパニックに陥りながら、プライドがダニーの叫びだしたい気持ちを
押さえつけていた。 俺が許した1%の出来事や。
残された二人は無言のまま、順番にシャワーを浴びた。エンリケにマーティンは
自分のTシャツとジャージを手渡す。
ダニーはせっせとコーヒーミルで豆を挽き、コーヒーメーカーの支度をする。
挽き立ての豆の香りが普通の朝を思わせた。バケットを食べやすい大きさに
切り、ガーリックトーストとハム&チーズサンドを手早く作る。
まるで機械のようだ。顔からは何の感情も読み取れない。
俺が言い始めた1%や。しゃあない。
二人がのろのろとダイニングにやってくる。
「なんや、ゾンビみたいやな。起きてますかあ!!」ダニーは無理に笑みを
浮かべると、二人を椅子に座るよう促した。
気まずい三人の朝食の始まりだ。
エンリケがスペイン語で何かダニーに言った。ダニーもスペイン語で返す。
ぽつんと残されるマーティン。「ねえ、ここはマドリッドでもマイアミでも
ないんだから、スペイン語はやめてよ。」二人は会話をやめない。
仕方がないので、マーティンはひたすら食べる事に専念した。
「うわ、このサンドウィッチ、美味しい!」こんな時なのにマーティンの
お腹は絶好調の様子だ。ガーリックサンドにも手を伸ばす。
突然、ダニーとエンリケが立ち上がり、ハグをした。
驚いて、コーヒーを吹きそうになるマーティン。「い、一体、何なの?」
ダニーが「兄弟の契りや」とやっと英語で答える。「シー!」とエンリケも
うなずく。
よく判んないけど、殴り合いにならなくて良かった。
もぐもぐ口を動かしながら、マーティンは二人を見守った。
食事が済むと、エンリケはスーツに着替え、ダニーとまたハグすると、
ブリーフケースを持って帰っていった。
マーティンは聞きたい事が山のようにあった。
それはダニーも同じだった。
ダイニングにダニーが戻るやいなやマーティンは口を開いた。
「ダニー、何話してたの?」「首輪の跡の事!」はっとするマーティン。
「お前、俺と1%の約束する前からあいつと寝てたやろ。」「・・・・」
「あいつ言うてたで。お姫様は緊縛プレイが大好きやって。」「・・・・」
「でもこうも言うとった。お姫様を愛している。俺に負けないとさ。
だから、同じ人間、愛しとる者同士、仁義をきったんや。」
「それがあのハグの意味?」「そうや。俺があいつと抱き合いたいと思うか?
胸糞悪い!俺の出来損ないみたいな奴やで。」「そうだったんだ。」
マーティンの胸に響く言葉があった。同じ人間、愛しとる者同士・・・
初めてではないだろうか。ダニーがマーティンを愛していると言ったのは。
ダニーは急に立ち上がると、マグカップを持って、ベランダへ出た。
すると階上から女性の金切り声が響いてきた。
「ねぇ、そこの貴方、夜騒ぐのだけは止めて頂きたいわ!」「はぁ?」
「貴方よ、昨日遠吠えしたでしょう!うちの可愛いブロンディが怯えて
一晩中震えていたのよ!!今度やったら訴えますからね!!」
「はぁ、すんません。」とりあえず謝るダニー。
「何や、あいつ、何やったん!?」マーティンに怒鳴る。
「昨日、飲みすぎて、ベランダで吼えてた・・・」
「そんな、狼男やあるまいし、何やヘンな奴やなぁ。」
くっくっく・・思わぬ展開にダニーは笑い出した。つられてマーティンも
笑う。「あいつの代わりに怒られるとはな。今度おごってもらわにゃ〜」
「ダニー、怒ってないの?」恐る恐る尋ねるマーティン。
「これがお前の1%やろ。俺に怒る権利なんかないわ。最初はびっくり
したけどな。俺が知らない奴やったら、どうなってたかは判らん。
でも、エンリケ、結構ええ奴やん。力が抜けたわ。」
「ダニィ・・ありがと。」「もうええっちゅうに!それより、お前疲れ
とんのやろ。早う起こしてごめんな。俺、帰るわ。寝とき。」
「うん、ありがと。朝ご飯もありがと。」「また夜電話するわ。」「うん。」
「ジョン、さっきは悪いことしたな。ええ仕事しとるな。」ダニーがジョンに
声をかけた。先に出て行ったトレス様といいテイラー様といい、どうなってるんだ。
ジョンには全く不可解な出来事として記憶に残った。
車に乗るやいなや、ダニーはアランに電話した。「はいショア。」
「おはようさん。」「ダニー!どうした?」「これから寄ってもええ?」
「もちろんだとも、早くおいで。」
そこにはいつものアランの笑顔があった。砂色のまなざしにしばし釘付けに
なるダニー。「ほら、入った入った。」「朝から寄ってしもうて・・・」
「君ならいつでもウェルカムだって言ったろう。今コーヒーを入れたんだ、
飲むかい。」「あ、頂くわ。」
ダニーは自分の1%を行使しようと決めていた。
アランのベチパーとシダーの香りをかぐと、癒される気持ちがした。
家に帰ってきたような? ダニーにはこれまでの人生、家というべきものが
なかった。11歳で両親をなくして以来、転々としてきた身だ。
この懐かしさは何やろう?
アランがコーヒーを手渡しながら、額にキスをする。
アランも、もうダニーの飲み物に薬物を入れるような小細工は止めていた。
彼の気持ちがこちらに傾いているのは明白だった。
「今日はどうする?ダニー君。ピエールのブランチにでも行くか。」
「や・・なんかアランの家でごろごろしてたい。」「そうか。話があるなら
聞くよ。」
「マーティンな、俺が思ってたずっと前から浮気しとったん。」「ほう?」
意外な告白にアランの眉が上がった。「相手は知ってる奴かい?」「ん。
一度支局に来てな、俺、挨拶したん。その時にはもうあいつ浮気してたんやな。」
ダニーはしゃべりながら段々泣き声になっていった。
アランが驚くことばかりだった。思わず、ダニーを抱きしめる。
「アラン、俺、何ちゅうか、悲しいねん。俺を一人ぼっちにしないで欲しい。」
「僕がここにいるよ。ほら、見て。」アランはダニーに顔を上げさせる。
「僕がこ・こ・に・い・る。確かめてごらん。」アランは唇をダニーに寄せた。
ダニーがむさぼるようにアランにキスをした。マーティンの部屋で我慢していた
ダニーの感情が、嵐のようにダニーを突き動かしていた。
「ほら、おいで。ダニー。ベッドで話そう。」「ん。」
ダニーは誘われるまま、アランのベッドにたどり着く。一人で黙々と服を
脱ぐと、ベッドに入った。アランはセックスをするつもりはなかった。
今、折れてしまいそうな彼のプライドを包んであげたい、そんな抱擁を
施したい気持ちだった。アランも裸になりベッドに入る。
ダニーは静かに泣きながら、アランにしがみつく。抱きとめるアラン。
「そうだ。涙は感情を浄化させるんだよ。ダニー、ゆっくり泣くといい。
覚えておいてくれ、僕はここにいる。」
ダニーはただただ子供のように泣いた。こんなに泣いたのは子供の時以来だ。
アランの広い胸板が全てを包んでくれるようだった。
ダニーはそのうち深い眠りについた。
ダニーが目を覚ますと、あたりはすでに夕暮れだった。涙の跡がほおに
ついている。アランの姿はない。キッチンでガタガタ音がする。
ダニーはトランクスだけはいて、キッチンへと向った。
「あぁ、ハニー起きたかい?よく眠れたようだね。今、マカロニチーズを
作っているから、シャワーでも浴びておいでよ。」
無言のままシャワーに向う。 ダウンタウン・テイラーともあろう者が、
男の胸で泣きじゃくり眠るとは、自分でも信じられなかった。
しかし、不思議と寝る前まで渦巻いていた嫉妬と悲しみの気持ちは消え去り、
ひたすら、おなかがすいていた。
ダニーはシャッキっとするといつものダニーに戻った。
「へぇ、アランもマカロニチーズなんて作るんや。新鮮やな。グルメだと
ばっかり思うてたわ。」「チーズに秘密があるんだよ。バーグドルフ・
グッドマンのチーズショップのだからね。」「どうりで、うまそうな
匂いや。」「僕のTシャツを着ておいで。」「ん。」
ダイニングに着くと、照れくさそうにダニーは言った。
「アラン、さっきは・・・」「僕は過去は嫌いだって言ったろう。これからの
ことを話そうよ。」どこまでも大人のアラン。身近で大人の男といえば、
ボスしかいないダニーにとって、別の意味での包容力を見せてくれたアランに
どう感謝していいか、言葉が見つからなかった。
「マーティンから聞いたよ。君たちの1%の約束。」「ああ・・・」
「僕が君の1%なんだろうね。」「・・・・・」「なぁ、ダニー、その1%が
もっと増えるような可能性はないんだろうか?」「え?」
「僕は自分が思っていた以上に君に惹かれている。それをもう隠すつもりはない。」
「急に言われても・・」「そうだな、考えておいてくれ。それは別にして、
いつでもここに来ていいからね。」「サンキュー、アラン。」
アランにとっても賭けだった。アランは誰とも深い関係を持たずにやってきた。
少し興味が湧いた相手がいて、相手がアランに振り向くと「自分には好きな相手
がいる。それは自分なんだ。」と相手を傷つけるのが常だった。
それが、このヒスパニックの男を目の前にして、どうだろう。思わず、
愛の告白をしてしまったようなものだ。アランも自分の変化に驚いていた。
「今日、泊まるだろう?何もしないから。」「いや、俺、家に帰るわ。
何かえらい長い一日で、頭がぐしゃぐしゃやねん。」「判った。ただ
もう一度だけ言うよ。僕はいつでもここにいるからね。」
「うん、サンキュー、アラン。」ダニーはアランを強く抱きしめキスをした。
車を走らせブルックリンに戻る。今日は難儀やったな。めちゃ疲れたわ。
ダニーはマーティンに電話すると言った言葉を忘れてベッドに倒れこんだ。
私もずっと旧スレから読んできたファソです。マーティン確かにうざいけど、マーティンが
いないと物語も始まらないと思うんで、このまま書いて欲しいです。ボスとかアラン、エンリケみたいな
サブキャラが立ってきて、ますます毎日楽しみにしてますw
400 :
fusianasan:2005/09/03(土) 10:11:10
私も最初からずっと読ませて頂いているファンの一人です。以前の様な生々しい
性表現より今回の書き手1さんの心理的模写もかなり萌えました。
今回のダニーの涙に共感して思わず書き込みしてしまいました。これからも書き
続けて下さい。毎日本当に楽しみなんです。
>>399 同意。
マーティンがいるからこそ、ダニーの長所が出てるのもあると思う。
サブキャラもいい働きしてる。
本当に感想ありがとうございます。励みになります。
そろそろ創作に入ります。
日曜日、目が覚めるとダニーにぴとっとくっついて眠るマーティンがいた。
驚いて飛び起きるダニー。「あぅぅん、ダニィ・・」「なんや。」「・・・」
ボンは夢見てるみたいや。あーびっくりした!こいついつからいたんやろ。
ダニーは歯磨き、シャワーと朝の儀式を終え、音を立てないようにキッチンへ
向った。 何で自分んちで抜き足差し足せにゃならんのや。
コーヒーを挽く音でマーティンが目が覚めぬようにタオルで撒いて動かす。
今日はベーグルと昨日の残りのイベリコ豚のハムで朝ご飯やな。
昨日・・・・アランの言葉がまるで催眠術のように頭に浮かぶ。
「僕はここにいるよ。」いや思い出すのは止めよう。俺が好きなのは
マーティンや。「ダニー、ダニー!!」ベッドルームから叫ぶマーティンの
声が響いた。
「なんや、マーティン!虫か?」「あぁ〜、よかった!ダニーがいた!!」
「どうしたん?」「ダニーがどっかにいっちゃう夢見たんだよぅ。」
泣きべそをかきそうなマーティンの顔を見て、大笑いした。
「ガキじゃあるまいし。それよりいつからここにいたん?」
「だって、昨日電話くれるって言ったじゃない!くれないから夜中に来た。」
ぷいっと膨れるマーティンの顔にさらに大笑い。
「すまん、すまん。昨日、ほら色々あってんな。わかるやろ。寝てしもうた。」
「もう怒ってない?」怒っていないといえばウソになる。現にマーティンの
首の周りには首輪とおぼしきアザがくっきりと浮かんでいるのだから。
「あぁ、大人は過去を振り返らんのや。」アランのマネをする。
「なんかダニー、昨日と変わったね。」「そうか?」まさかアランの胸で
涙に掻き暮れたことなど言えやしない。「それより朝ご飯食おう。」「うん!」
「知ってるか、このハムの豚なぁ、どんぐりしか食べへんのやて。」
「へえ〜。どんぐりって栄養あるのかなぁ。」
「なんか知らんけどスペインじゃ有名らしいで。」スペイン・・・・
まずい禁句だ。気まずい雰囲気が流れた。マーティンはもぐもぐするばかり。
ダニーはコーヒーをすすった。
「お前さぁ、マジな話。明日の勤務、その首で行くん?」
「え?そんなにひどい?」「首吊り自殺の生き残りみたいやで。」
「やだなぁ。困ったなぁ。」「じゃ、買い物いこか。」
「何買うの?」「俺も昔大喧嘩してな、アザつくってん。その時付きおうてた
彼女のファンデーション借りて塗りつぶしたら、うまく隠れたで。」
「ふぅん、彼女ねぇ。」「ほら、またお前は。昔のことやから許してや。」
「じゃあ化粧品売り場に行くの?僕やだよう。」「そや、俺ら俳優ってことに
せえへん?俳優なら化粧するで。それと俺が首隠れるシャツ貸したるから。」
ダニーはクローゼットへ行って、プラダスポーツのタートルを持ってきた。
もちろんアランに買ってもらったものだ。
「やっぱりダニー、前と違うよ。プラダスポーツ?いつからブランド物が
好きになったの?」「そんなことええやん。首隠れるからな〜。」
「ダニー、おやじのお稚児さんにでもなったの?」マーティンのねちねち
詰問が始まってしまった。まずい、朝から。ダニーはしまったと思った。
「そんなんやない。ただチャリティー活動に熱心な人やから、TPOに合う
服をくれただけや。」「ふーん、そうなんだ。随分気前がいいんだね。」
「確かにな。」「僕もチャリティー行きたいな。」「おい、お前、お互いの
1%の約束覚えてるやろ。」「・・・・」「質問はそこまでな。」
「・・・・ダニーのいじわる。」
ダニーは初めて理解した。マーティンは1%の意味を真に判っていないのだと。
それも含めてダニーを知ろうとしている。それでは、1%の意味がないでは
ないか。これを判らせるのは無理なのかもしれない。ダニーはため息をついた。
「さ、はよ食うて、買い物行くで。」「うん。」懸命に口を動かすマーティン。
二人はサックスフィフスアヴェニューへと出かけた。
化粧品売り場は女性特有の甘ったるい香水の香りでむせかえるようだ。
ダニーは一番売り場がスタイリッシュなMACのカウンターへと向った。
「すんません。ファンデーションが欲しいんやけど。」女性店員が訝りながら
「はい、お色は?」と応対した。「こいつに合う色を。こいつ、コネチカット
から出てきたばかりで、明日オフブロードウェーのオーディションなのに
吹き出物が出来てな、困ってるんですわ。」するすると言葉が出てくる。
「はぁ、それではお客様、お座りください。」マーティンはメイクチェアーに
座らされた。3色位のファンデーションの瓶を持って、店員が戻ってくる。
「吹き出物はどちらに?」「・・・」だまりこくるマーティンをにらみつつ、
「それが・・・・」店員は顔を真っ赤にして「それでしたら手をお出しください。」
マーティンは言うとおりにした。やっと合う色が見つかり、お勘定する。
「ねぇ、ダニー、吹き出物はどこって言ったの?」買い物が終わって
マーティンが尋ねる。「ケツや。前衛的な芝居でヌードシーンがある設定や。」
「えぇ〜!恥ずかしいよ。」「あほ!ほんまに脱ぐわけじゃあるまいし、
世の中口八丁手八丁やぞ。よく覚えとけ。」「うん、判った。」
お腹がすいたとマーティンが騒ぐので、8階のカフェに向う。
カフェはほぼ満席だった。その時「やだ〜、ダニー、マーティンも一緒に
どうしたの?」良く知っている声が響いた。サマンサだった。
「買い物や、買い物。」「うちのボーイズ、やっぱりお洒落。SFAで
買い物か〜。それじゃ、また明日ね!!」サマンサは買い物袋を2つ提げて
出て行った。「やれやれ、NYは狭いな。」「ほんとだね。」
マーティンはラムのロースト、ダニーはワイルドライスのサラダをオーダーした。
「ダニー、もっとカロリーあるもの食べないとだめだよ。」
まさかこの間のグッチのスーツのためにダイエットしているなどと言えない
ダニーは「お腹それほど減ってないんや。」とごまかした。
「それにしても、お前は良く食うな〜。」
「エネルギー補給しとかないと、後で使うでしょ?」にっと笑うマーティン。
ダニーの家に戻り、早速マーティンはMACのファンデーションを首に
塗り始めた。「ねぇダニー、消えてる?」「ああ、ええ感じやな。」
「だめだ、後ろが塗れないよう。ダニー明日塗ってくれる?」
「ええけど、お前着替え持ってきたんか?」「うん!!」予定内の行動か。
ダニーは、このベタベタ感に違和感を感じるのだと判り始めた。
午後はマーティンはニューヨーカーを読み、ダニーはCDで好きなキューバ
音楽を楽しんで過ごした。時々マーティンがペトっと隣りに来てはキスをする。
「ねぇダニー、今日、ヴィレッジバンガードでボズ・スキャッグスが演るよ。
行こうよ。」「あ?AORのボズか?マーティンがいいならいいで。」
「よし!決まり!!チケット予約するね。」電話をかけるマーティン。
なんや今日はマーティンの日やな。ほんまなら俺が尽くして欲しいわ。
昨日、浮気現場を目撃されたとは思えないマーティンの天真爛漫さ。
ダニーはうらやましかった。俺はどうあがいてもああはなれん。これが奴と
俺の育ちの違いか。ダニーはむしょうにアランと話をしたくなった。
いかん、俺の99%はマーティンや!!!言い聞かせるダニー。
グラマシーのインド料理屋でカレーを食べ、ヴィレッジヴァンガードに行く。
マーティンは十分に楽しんだようだった。ダニーにとっては懐メロでしかなく、
クラブソーダのお代わりばかりをしていた。家に帰ると、案の定、マーティンが
セックスをねだってきた。そういえば二人が寝るのは久しぶりのことだった。
行為全てが予定調和のようで、ダニーは何故か空しくなった。勃起もしたし
射精もしたが、ただただ空しかった。 何やろ、この気持ち。
正体なく眠りこけるマーティンを起こさないようにしてダニーは起き上がり、
ベランダへ出た。携帯をかける。アラン・ショア。
「はい、ショア。」「ダニーやけど。」「判ってるよ。名前が出るからね。」
「何しとった?」「F1のレースを見ていたよ。僕も次に買う車はフェラーリ
にしようかな、なんてね。」「そか。」「元気かい?」「うん、まぁ。」
「次はいつ会えるのかな。」すぐにでも会いたいと思っているダニーがいた。
「もしアランが暇なら次の週末。」「よし、楽しみにしてるよ。ハニー。」
アランは一人微笑んだ。ダニーは確実に自分の下に近ずいている。
自分だけのものにするためには、邪魔なマーティンをどうするかだ。
一案練らねばなぁ
アランは一人アパートで声を上げて笑っていた。
ダニーとマーティンは、深夜、急にボスに呼び出された。
疲れていて、あまりセックスしたい気分じゃない。
「ファーア、たまにはのんびりしたいなぁ」
ダニーは欠伸をしながら首を回した。ゴキッと鈍い音がする。
マーティンは目がトロンとしていて、半分寝ている状態だ。
「ボスが来るまで寝とこか」言うが早いか、ベッドに寝転んだ。
モーテルのベッドはマットが硬く、寝心地はあまりよくなかった。
「おい、二人とも起きろっ!」突然の大声に飛び起きる二人。
ボスの目が据わっている。足元がふらついていて泥酔状態だ。
「ボス、大丈夫っすか?」ダニーが近づくと、かなり酒くさかった。
「ああ、何でもない、何でもないぞー」がなるボス。
「あ・・今日はえらい遅い時間ですけど・・今からするとか?」
「当然だ、私がしたい時はするに決まってるだろ」
ボスはネクタイを外すと、ベッドに放り投げた。
「ぼんやりしてないで、お前たちも脱げ!!」ボスは次々に服を脱いだ。
ダニーとマーティンも慌てて続く。眠気はすでに消えていた。
「何だそれ?、マーティン」ボスは背中の火傷痕を見つけた。
「あっあの・・ちょっと」しどろもどろのマーティン。
「む?ダニーもか・・・」ボスは突然笑い出した。
「お見事!ここまでやるとは!!ダニー、坊ちゃんにヤイトか?
傷物にしたらダメじゃないか!副長官が泣くぞー」
ボスの笑いは止まらない、しまいには咳き込んでむせた。
「マーティン、私は今すぐヴィクターに電話したくてたまらない!!」
ダニーとマーティンは顔を見合わせた。マーティンは怯えている。
ボスはベッドに仰向けになると、二人に愛撫するよう命じた。
体からは、酒と女のきつい香水が強烈に漂っている。
「ボス、さっき女と寝たんとちゃいます?
それやったらオレ舐めたくない!病気が怖いわ」
「予防はちゃんとしたぞ・・・それに相手の身元もきちんとしている・・」
「なんぼなんでも無理ですわ、そんなん気持ち悪い!」ダニーは断固拒否した。
「マーティン!お前も嫌か?」無言のまま、しきりに頷くマーティン。
「お前だけは素直に従うと思ってたのに・・・」
ボスはブツブツ言うと、そのまま寝てしまった。
「ダニー、寝ちゃってるよ・・どうしよう?」
「ここに置いて行くに決まってるやろ、気持ち悪いこと言いやがって!!」
「でも、酔った勢いで電話するかも・・・」マーティンはためらっている。
「チッ!あーもう・・・しゃあない、連れて帰ろう。
そっち抱えてくれ。オッサンの車、運転できるか?」
「うん、大丈夫」マーティンはポケットから車のキーを取り出した。
ダニーは手早く服を着せた。両方から抱え、部屋から出すとボスを車に乗せた。
「マーティン、部屋の支払い頼むわ、ほんまに迷惑な!」
ダニーは乱暴にドアを閉め、ボスを睨んだ。
ダニーのアパートに着き、ベッドにボスを寝かせる。
「疲れた〜、ボスすっごく重いよぉ」マーティンもダニーもヘトヘトだった。
「今夜、どこで寝よう?どっちか一人がソファーやで」
「ボスと一緒なんて怖いよ、何かされそうじゃん・・・」
「ほんまやな。ソファーで二人は無理やし・・・」
「ベッドで三人で寝れば大丈夫だよ、ダニー!」
「狭いけどなぁ・・しゃあないな。ボスは端っこや」
ボスはベッドのど真ん中で寝ていた。動かすにも動かせない。
二人は仕方なく、不本意ながらボスの両側に寝転んだ。
ガーガーうるさいいびきに、酒臭い息、妙にセクシーなフレグランス・・・。
「あーもう、やかましいっ」ダニーはボスを突っついた。一瞬だけいびきが止まる。
横を見ると、マーティンは寝付いたようだ。ようこんなんで寝てられるなぁ・・・。
ダニーは恨みがましい目で、マーティンとボスを見た。
こんなんじゃ寝られへんわ、ダニーはこっそりリビングへ抜け出した。
窓を開け、空気を入れ替える。ボスは誰と寝たんやろ、オレみたいに買春やろか?
考えながら、ソファーに横たわる。
早目に起きてベッドに戻らんと、ダニーは言い聞かせるように眠りについた。
「ダニー、ダニー、起きてよ、ダニー」いきなり体を揺さぶられ、ダニーは目を覚ました。
「ぅーん、何や・・もう朝か・・・ファーア」体の節々が痛み、顔をしかめる。
「何でここにいるのさ!僕なんて、抱きつかれて目が覚めたんだよ!」
「あぁ、すまんすまん。いびきがやかましいてな、寝られへんかったんや」
「じゃあ、僕も呼んでくれればいいのに・・・」マーティンは口を尖がらせた。
「ボスは?」「まだぐっすり寝てるよ、当分起きそうもない」
「そうか・・痛っ!腰と背中が痛いわ・・。風呂に熱めの湯、張ってくれる?」
「うん、待っててね」
マーティンがバスルームに行っている間、ボスの様子を見に行った。
部屋中に澱んだ臭気が立ちこめ、ダニーは吐きそうになった。
少しだけ窓を開け、ボスに布団をかけ様子を見る。
しばらく観察していたが、そのうちバスルームへ行った。
マーティンはバスタブに座り、お湯が溜まるのを待っていた。
「もう入れるよ」「ああ、ありがとう。いっしょに入るか?」「うん」
ダニーはゆっくりとお湯に浸かった。マーティンはダニーの肩に触れた。
肩も首もガチガチに凝っている。オイルを塗ると、ゆっくりマッサージした。
「ううーん、ええ気持ちや・・・あっそこそこ、そこ痛いねん・・・」
マーティンは言われるまま、献身的にに凝りをほぐした。
ここはどこだ?ボスは目を覚まし、辺りを見回した。
どこにいるのかもわからない。頭がズキンと痛んだ。
部屋はきちんと整頓されていた。ますます訳が分からない。
物音がしたので、行ってみるとダニーとマーティンが風呂に入っていた。
「あっボス!すぐに出るよって・・・」
「いいや、ゆっくり入ってろ。で、ここは一体どこなんだ?」
「オレの家です。泥酔してはったんで連れてきました」
そうか、ボスは頷きながらベッドに戻った。
昨日すごいものを見たような気がするが・・・思い出せないな・・・。
「ボス、シャワー空きましたよ」マーティンが呼びに来た。
「ああ、すぐ行く」ボスはゆっくり立ち上がるが、足元がおぼつかない。
マーティンが慌てて手を貸す。「すまない・・まだ酔いが冷めてないらしい」
マーティンは黙ったまま、ボスをバスルームに連れて行った。
服を脱ぐのを手伝い、体を流す。「介護みたいだ・・・」ボソッと呟いた。
熱めのシャワーを浴びると、ボスもシャンとしてきた。
「まだそんな年じゃないぞ!」仏頂面のボス。
「ボス、ダニーを木馬のとこに連れて行ったでしょ?僕もまた行きたい」
「あ、ああ。またそのうちにな」ボスはマーティンの背中を見ていた。
マーティンのシャツを借り、野菜ジュースを飲む。
小さくてボタンが留められないので、前を肌蹴たままだ。
「おい、コーヒー!」すかさず手渡すダニー。もうすっかりいつものボスだ。
「さてと、昨日はすまなかったな。あまりよく憶えてないんだが・・・」
「女とヤッたあとを、オレらに舐めろって言うたんですよ?それも憶えてないんですか?」
ダニーは呆れていた。「それに今日も休みが半分つぶれてしもたし・・・」
「そういえばそんなことも・・・悪かったな、お前たち。この埋め合わせは必ずするから」
ボスはきまり悪そうに詫びた。
ダニーが洗濯してくれたシャツを着ると、ボスは二人にキスをして帰っていった。
「ダニー、埋め合わせって何だろうね?」喜ぶマーティンを不審そうに見つめるダニー。
「お前、またあの部屋に行きたいんとちゃう?相当エロやなぁ」
「会員制だって言ってたけどさ、僕らも入ろうか?」
「お前なぁ・・・」ダニーは前々からマーティンの性癖を怪しんでいた。
コイツ、絶対Mっ気あるよな・・・。いじめられたいんかな?
いきなりマーティンの乳首を捻った。「痛いっ、何だよ!」
あれ?ダニーは笑いそうになりながら、拍子抜けした。
謝りながら、もう一度捻った。「痛いってば!これ、ゲームか何か?」
「いいや、ちょっと実験や。さあ、もうちょっと寝るでー」
ダニーはマーティンの手を引くと、ベッドに向かった。
「お馬さんになったるわ」ダニーは壁にもたれて座ると、足を伸ばした。
「普通、背中に乗るんじゃないの?」
「大好きな突起がなくてもええのんか?別にオレは背中でもええで」
マーティンは、ダニーの太腿に座った。ダニーの瞳をじっと見つめる。
「ダニー、無理してない?」「ん?なんで?」
「僕と付き合ってなきゃ、こんな面倒や嫌な思いすることもないじゃない」
「うーん、それは確かにな。でも何もかもひっくるめて考えたら、マイナスじゃない。
もうオレの一部みたいになってるから」ダニーは考えながら話した。
「ヘンなこと言うから、チンチン寝てもたやんか。バカマーティン!」
「じゃあ、今日は背中にしとくよ、乗せて!」マーティンはダニーを裏返した。
あざが消えるまでの1週間、マーティンはダニーの家に泊まりこんだ。
さらにマーティンの持ち物やワードローブが増え、せっかく買った
IKEAのクロゼットももはや一杯だった。
「なぁ、マーティン、少し家に持って帰ったらどうなん?マーティンの
物で家があふれそうやで。」
「いいんだよ。マーキングだもん。」マーティンは頑固だ。
「そういや、お前のエンリケはどうしてる?」
「連絡取ってないから、わからないや。」
「どうして連絡取らないのや。」
「だって、ダニーと一緒にいられたもん。」
やはりダニーの予感は的中した。自分さえ傍らにいれば、彼はいいのだ。
それは1%の約束と根本的に違う次元の話だった。
「今日、エンリケと3人で食事せいへん?」
「え、いいの?そんなことして。。」
「ああ、かまへんで。俺の兄弟分やし。」
マーティンは携帯で連絡を取った。どうやらエンリケも今晩は暇らしい。
「今日、大丈夫だって。楽しみだなぁ。どこ行く?」
「チェルシーに出来た日本料理屋に行くか?フェスティバルって意味の
名前の店や。」「うん、そうしよう。」
3人はチェルシーではやりの「祭り」に居を構えた。
「へい、らっしゃい!」3人にはわからない日本語の挨拶だ。
エンリケが日本人のウェイトレスと片言の日本語で話しをする。
「てんぷら、照り焼き、刺身お願いします。」「はいかしこまりました。」
ダニーはエンリケのコスモポリタンぶりに驚いた。
こいつ何か国語しゃべれんのやろ。
スペイン語でエンリケに聞く。エンリケはマーティンに遠慮してか英語で
「5カ国語ですね。外交官試験厳しいですから。」
ウェイトレスは、正直なところダニーの好みの体格をしていた。
華奢なダニーが上に乗ってもさらに華奢で小さい女性が好みだった。
刺身が運ばれてきた。3人で、鯛、マグロ、サーモンに舌つずみを打つ。
「次はシーフードのフリッターね。」エンリケは自分が持てるだけの日本食の
知識を二人にひけらかした。
「美味しいよ、エンリケ!」マーティンは満足そうだった。
ダニーは普段決して飲まない日本酒を、お気に入りのウェイトレスの勧めで
始めていた。エンリケもマーティンもジョインする。
「最後は〆でそばにしよう!」エンリケは叫んだ。
そば、そばって何やろう。
気持ち悪いものは口にしないダニーはどきどきしていた。
そばは程なくやってきた。 なんやヌードルの一種かいな。
エンリケがそばの食べ方を教える。見よう見まねで食べるマーティンと
ダニー。エンリケは自分の国際的な知識がアピール出来て、マーティン争奪戦を
先に1歩出た思いだった。
酒も久保田、越の寒梅、八海山など日本の名酒ばかりを飲んで、3人とも
だんだん声が大きくなってきた。典型的な酔っ払いリーマンだ。
エンリケが口火を切った。「だ・か・ら〜、マーティン、お前はどっちが
いいんだよ〜。」ろれつが回っていない。「そうや、毎週月曜日に
二人がジャンケンして勝った方が、マーティンとデートする、どや?」
「それいい!セニョールテイラー。君のことは気に入らないけど、この案には
乗った!」「おいおい、僕はじゃんけんの賞品なの?」
マーティンの抵抗は酔っ払い二人の声でかきけされた。
「じゃあ今週の番やろうやないか。」「おう。」
「最初はグ、ジャンケンポン。」双子のように同じ手を出してしまう二人。
しまいには店中が二人のジャンケンを見つめていた。
「ジャンケンポン!」エンリケがパー、ダニーがグーだった。
エンリケサイドの客が拍手する。ダニーは完敗の一礼をすると、久保田を
あおった。「今週末はマーティンの面倒を僕が見るんだね。」
マーティンはあっけに取られていた。この二人、仲がいいんだか、悪いんだか
判らなくなってきた。
人身売買みたいじゃないか!
「ねぇもう二人とも。何やってるの!僕はどっちにも行かないからね。」
「お姫様、機嫌悪いね。きっと酒が足らないんだろう。」
ダニーがマーティンの空いたグラスに自分の久保田をどくどくついだ。
3人はほとんど意識がなくなるまで祭りで飲み明かした。
次にマーティンが気がつくと、マーティンとダニーにはさまれるように
自分のベッドで眠っていた。 はぁとりあえず自分の家か。あ、出勤!
すでに午後1時を回っていた。 今電話するとボスはカンカンだろうなぁ。
心が重くなるマーティンだった。二人は全く目覚めない。
昨日は3Pしたんだろうか。全く覚えてないや。
マーティンは目をこすりこすり、バスルームへ向った。
次に目覚めたのはエンリケだった。わぁ、自分がいる!
ダニーの寝顔を見て改めて驚くエンリケ。マーティンはどこだ!
「あ、エンリケ、おはよう。もう1時だけど大使館に連絡しなくて
いいの?」「困る。電話する。」エンリケも起き上がった。
さて、最後はイビキぐーぐーのダニーだ。
「ダニー、起きてよ。もう昼過ぎだよ。僕たち無断欠勤だよ。」
「あ、マーティン、何やて?」「無断欠勤!」
ふわぁ〜、大あくびしながら、起き上がるダニー。
「シャワー借りるわ。」「あ、今、エンリケが・・・」
言うが早いか二人はシャワールームで出くわした。
裸同士で会うのは初めてだ。
二人はお互いを比べるような状態になった。
俺のよりモノがでかいな。 ダニーは悔しさをかみしめていた。
エンリケの方は体格もペニスの大きさもダニーに勝っているのを確認し
悦に入っていた。
「二人とも、早くシャワーから出てよ。コーヒー冷めるよ!」
マーティンが騒いでいる。
マーティンは目がくらむようだった。僕の大事なダニーが二人いる!
それだけ二人は似ていた。二人はマーティンが入れたインスタントコーヒーを
がぶ飲みすると、またスペイン語で会話し始めた。
「ねえ、僕がわかるように話してよ!」マーティンがいらいらしてテーブルを
叩いた。
「今日は午後から大使館出るんやて。もうすぐエンリケとお別れやぞ、
キスしないでええんか?」わざとダニーは聞く。
エンリケはスーツを着始めている。マーティンは近ずいてネクタイを直してあげる。
エンリケはダニーとマーティンにそれぞれハグし、出て行った。
「ねぇまた、スペイン語で何話してたの?」
「昨日、エッチしたかどうかやねん。俺もあいつも記憶がなかった。」
それはマーティンも同じことだった。3Pなんて変態っぽくて嫌いだ。
「エッチしてないよ。僕きれいだったから。」「そうか。よかった。」
ダニーは胸をなでおろした。しかしこの状況がそう長く続かないことを
予期していた。
馬鹿な間違いしました。訂正します。
次にマーティンが気がつくと、エンリケとダニーにはさまれるように
自分のベッドで眠っていた。 はぁとりあえず自分の家か。あ、出勤!
すでに午後1時を回っていた。 今電話するとボスはカンカンだろうなぁ。
心が重くなるマーティンだった。二人は全く目覚めない。
金曜日の夜、ダニーとマーティンはダニーの家で食事していた。
「お前の荷物、すこしだけ箱に入れといたから、明日、車で運んだる。」
「えー、置いておいちゃだめなの?」「お前かて家があるんやから、ダメ!」
「いじわるだなぁ、ダニーは。」「それに今週末はエンリケと約束しとるんやろ。」
「うん・・」しぶしぶマーティンは返事した。
「まさか酒飲んだ挙句のじゃんけんで僕の保護先が決まるなんて、
本気じゃないと思ってたよ。」
「酒の上だろうと何だろうと、男の約束は約束やさかいな。守らんと。」
ダニーの方は、アランとの逢瀬が控えているため、小躍りしたい気持ちだった。
「ダニーは週末何するの?」急な質問で思わずミートローフを落としそうになる。
「あ、片付けやら色々や。この1週間、誰かがいたから、掃除も出来へんかったしな。」
「何か僕、邪魔者みたいじゃない。僕の事愛してるよね?」
「も、もちろんや。そうでなきゃ1週間も他人といられる俺やないねん。」
「ほら、もっと豆食うか?」ダニーは話の矛先を変えようと必死になった。
「豆、嫌いだからいらない!」「子供やなぁ。豆は身体にええんやで。」
「いやだ!」「お前、いっつも肉ばっか食うてるけど、お通じはええのんか?」
「うん、好調だよ。」「俺なんか食物繊維食べないとあかんねん。それだけ
繊細ってことなんやな。」一人うなずくダニー。
結局豆を残したまま「ご馳走様ー!」とマーティンはリビングへ移動した。
皿洗いも俺かい! ダニーの中で何かが鬱積し始めていた。マーティンは
知る由もなく、HBOで「デンジャラス・ビューティー」を見始めた。
「これってさぁ、うちのサマンサでも出来そうじゃない?ビューティー・
コンテストに出るFBI捜査官。」「そやな。」片付けに余念がないダニー。
「そういえば、お前、サマンサに食事誘われたんやて?」
一週間後、ボスは二人をオフィスに呼び出した。
「この前の埋め合わせの件だが、やっと予約が取れたぞ」
マーティンは口元が緩むのを押さえきれない。
「19時に、イースト・ビレッジのスタニスラス教会の斜め向かいのビルだ。
初めてじゃないからわかるだろう。予約したウォルシュの連れだと言えば入れてくれる。」
「ウォルシュ?ボスは来ないんですか?」
「私は用があるので、後から行く。お前らも偽名でな」
二人は顔を見合わせた。
申し訳ない、あとで来ます。
ガバっとマーティンは起きる。「何で知ってんの?」「サマンサから聞いた。」
「今頃何だろうね、サマンサ。ボスとの仲だって怪しいじゃん、あの二人。」
ダニーは既にサマンサとボスの事は知っていたが、ボンは知らないらしい。
「そういう邪推は良くないで。ボスはともかくサマンサに失礼や。」
「そうだね。サマンサ、今付き合ってる人いるのかなぁ。」
「何や、興味あるんか?聞いといてもええで。」「いいよ。僕忙しいもん。」
すみません。錯綜しました。
皿洗いを終えて、リビングに戻ると、マーティンは転寝をしていた。
そのまま、お姫様だっこでベッドに運ぶ。「重いな、こいつ。」
背丈はダニーの方が高いものの、身体のつくりが全く違う。アングロサクソン
特有の頑丈さがマーティンの身体にはあった。「俺も筋トレでもしようかな。」
ベランダへ出てアランに電話をかける。明日の打ち合わせだ。
「もしもしアラン?」「はぁい、あなた誰〜?」思いがけず女の声が出た。
「この携帯はアラン・ショアさんのものですか?」「そうよ、アラン〜、電話〜!」
「はい、ショア。」「アラン、今の誰やねん。」
ダニーは身体が震えるほど怒っていた。
「いやぁ、今日、医師会のパーティーがあってね、そこで知り合った人だよ。」
「今、どこ?」「アッパーウェストのストーンローズだ。」
この間ニューヨーカーで見かけたラウンジ・バーだ。
「君も来るかい?」「いや、やめとくわ。明日また電話する。」
「ああ、それじゃあ。」
ダニーはどうして、自分がこれほど怒っているのか判らずにいた。
俺を口説きながら、女も口説きよる。ダニーは近親憎悪だということに
気がつかず、ただただ、むかついて、思わず、マーティンが持ってきた
ラムを瓶ごと飲んでいた。
466 :
書き手1 :2005/09/04(日) 23:47:48
書き手2さん、どうぞ!!!
一週間後、ボスは二人をオフィスに呼び出した。
「この前の埋め合わせの件だが、やっと予約が取れたぞ」
マーティンは口元が緩むのを押さえきれない。
「19時に、イースト・ビレッジのスタニスラス教会の斜め向かいのビルだ。
初めてじゃないからわかるだろう。予約したウォルシュの連れだと言えば入れてくれる。」
「ウォルシュ?ボスは来ないんですか?」
「私は用があるので、後から行く。お前らも偽名でな」
二人は顔を見合わせた。
「楽しみだけどさ、すごく怪しいね。偽名か〜」
「フィッツジェラルドなんてバレバレやもんなぁ。よしっオレ、クルーズにしよ」
「トムかよ!僕は、んー・・ウィリアムズは?」「ええけど、お前忘れるなよ」
マーティンは苦笑した。確かに、僕は忘れかねないな・・・。
早く仕事終わんないかな・・・そわそわしていて何も身に入らない。
事件がなかったのが、せめてもの救いだった。
食事を済ませると、いよいよイーストビレッジに向かった。
ボスに言われたとおり、ウォルシュの連れを名乗ると部屋に通してくれた。
「わぁー、この前の部屋よりすっげー!!」感嘆の声を上げるマーティン。
木馬だけじゃなく、病院の診察室が一式揃っている。
「これ分娩台ちゃうん?こっちは外科用のベッドか・・・きもいなぁ」
「ダニー、これ見て!!診療用カートにエッチなおもちゃが詰まってるよ!」
「触らんとき、消毒せな危ないで。オレ、一応持ってきたんや」
ダニーはブリーフケースから、消毒薬とガーゼ、医療用グローブの箱を取り出した。
「使い捨てやから安心やで」「ダニー、そんなのはめるとイヤらしいね」
「あほっ、安全第一やからな」ダニーは器具の消毒を始めた。
ひととおり消毒が終わると、二人はシャワーを浴びた。
「ダニー、どれから試す?」「どれでもええがな・・・」
「目移りしちゃってさー、迷うなぁ」遊園地の子供状態だ。
「オレ、バイブって使ったことないなぁ」「じゃあ、それに決まり!」
「マーティン、ちょっとそこに寝転んで」ダニーはバイブにコンドームをかぶせた。
分娩台におっかなびっくりのマーティン。足を広げて固定され恥ずかしくてたまらない。
スイッチを入れると振動とともにクネクネ動く。「おぉー、何これ!!」
ダニーはアナルにローションを塗ると、そっとバイブをあてがった。
「ひゃぁ!ぁぁん」マーティンが思わず声を上げた。
「痛いんか?」慌てて引き抜くダニー。「ううん、痺れそう〜」
鈍いモーター音に混じって、マーティンが叫ぶ。
「ぁぁー、奥まで入れて〜」ダニーは浅くしか挿入しない。
スイッチを強弱しながら、マーティンの反応を見ていた。
ダニーのペニスは興奮でおなかにくっつきそうなぐらい勃起している。
「マーティン、このまま入れてもええか?」「ああ、早く来てー」
ダニーはペニスを挿入すると、バイブを真似てグラインドさせた。
「ぅぅーん、ハァん・・んん」マーティンの腰が動きを合わせて来る。
「マーティン、ちょっと抜くで」「ハァハァ・・どうして?このまま動いてよ」
「あぁ、オレもイきそうなんやけど、他のも試したい・・ぁぁ、もう抜かんと出そうや・・・」
「僕もイキそうだから、このまま来てっ」マーティンは腰を振った。
「あっ、んんぁぁーいっイクー」思わずダニーはそのまま射精した。
そのまま二、三回擦ると、マーティンも痙攣しながら果てた。
「ここ、すごいな!ボスを見る目が変わってしもたわ」
「僕だってそうさ。ボスは筋金入りの変態だよ」
二人は、一度射精して落ち着いたのか、部屋中を探索していた。
壁には磔台が設置されているし、木馬もダウンライトの光の中で異彩を放っていた。
「ボス遅いなぁ・・・」ダニーはそっと木馬を撫でた。
「ダニー、ちょっと来て!早く早く」マーティンが興奮して手を引っ張った。
「何や、どないしたんや」案内された先には、チンツ張りの赤い椅子がぽつんと置いてあった。
普通の椅子と違うのは、真ん中にペニスの張形がついていることだ。
よくよく見ると皮の手枷・足枷もぶら下がっている。
「ダニー、見てて」マーティンがスイッチを押すと、張形が上下し始めた。
「強制射精マシーンか!怖っ!」これって拷問やん!ボスの好みそうな機械や・・・。
「おいおい、それは女が使うもんだぞ。まぁ、男も使えるがな」ボスの声がした。
「ラブチェアーって名称だ、ダニー」いつから聞いてたんやろ・・・。
ボスはニヤニヤしながら、二人のペニスを見た。
「すでにお楽しみ済みか。おい、次はどれにする?」
ボスは楽しそうに部屋をうろうろした。「ダニー、外科で診察はどうだ?」
「えっ、ええ。いいっすよ」ダニーは外科用ベッドに座った。
「白衣や衣装もあるけど触るなよ、汚いかもしれないからな」
「マーティン!」ボスはいつもの媚薬のチューブとコンドームを投げた。
「お前は、お馬ちゃんに遊んでもらえ」「イヤだ、僕も一緒に診察してもらう」
マーティンはダニーの横に座った。
ボスはダニーを診察ベッドの上で四つんばいにさせた。
指サックをつけた人差し指が、うねうねと中を探る。
「ダニー、どうだ?バイブも試すぞ」「初めてやから、そっとですよ・・」
ボスはアナル用のバイブにローションを塗り、ゆっくりあてがうとスイッチを入れた。
「ぁぁー」ダニーは仰け反りながら声を上げる。マーティンは興奮でゾクゾクした。
ボスはマーティンにバイブを持たせた。「イカせないように嬲れ!」
マーティンが奥まで入れると「ぅぅ・・・んぁぁあー」ダニーは身震いしている。
驚いて引くマーティン。もう一度ゆっくり挿入した。
ダニーの両手はシーツをきつく握り締めている。
ボスはペニスを掴むと先っぽに媚薬を塗った。
「うわぁぁぁぁー」強烈な痒みとアナルの快感で気を失いそうになる。
ボスはマーティンの手からバイブを取った。
「ダニー、ラブチェアーに移動だ」
「嫌や、あんなん怖い、やめてくれ」ダニーは必死に抵抗した。
「ボス・・もうやめて、こんなに嫌がってるよ!」マーティンも止めた。
「うるさいっ!!」ボスは無理やりダニーを連れて行く。
さっとコンドームをかぶせるとダニーを座らせ、手枷と足枷をはめた。
「いくぞ」ボスがスイッチを押すと、張形がアナルの中で上下しはじめた。
「ぁぁあー、ボッボス〜んぁっくふぅ・・」ダニーの両足がガタガタ震えだした。
「マーティン、見てろ!噴水みたいになるぞ」ボスは興奮していた。
ダニーの全身がブルブルと震えると、ビクンっとペニスが痙攣し精液が飛んだ。
天を仰ぎ、荒い息を吐くダニー・・・。マーティンは生唾を飲み込んだ。
ダニーは体を解放されると、ふらりと木馬のたてがみにもたれた。
性的な気分は消え去り、空虚な思いだけしかなかった。
マーティンのなまめかしい声が聞こえ、耳を塞ぐ。
涙がツーっと流れた。ダニーは腕で乱暴に涙を拭うと、鞭を取ってきた。
木馬に跨り、がむしゃらに鞭を振るう。ピシッ、空を引き裂くような音が響いた。
「ダニー、カウボーイか?」ボスの問いかけも無視し、鞭を振るう。
「どうした、降りて来い」さらに無視していると、ボスが登ってきた。
後ろから抱きしめられ、思わず手が止まった。
ダニーは木馬から飛び降りると、いきなり鞭でボスを打った。
「痛いっ!」ボスが叫んでも止めようとしない。
聞きつけたマーティンが飛んできた。「ダ、ダニー・・ちょっと止めなよっ!!」
ボスの体には、すでに赤い線がいくつも走っている。
マーティンは体当たりすると、ダニーから鞭を奪った。
「ダニー?」なんだか様子がおかしい。目がうつろでぼんやりしている。
「ボス、どうしよ・・・ダニーがヘンだよ」マーティンは慌てていた。
ボスは体をさすりながら、ダニーの頬を叩いた。
ハッとはしたものの、まだぼんやりしている。
「マーティン、大丈夫だ。家まで連れて帰ってやれ」
マーティンは不安でたまらなかった。
ダニーは押し黙ったまま、流れる景色を眺めている。
「もう少しで着くからね」様子を窺いながら、そればかり繰り返していた。
ようやくダニーのアパートに車を止め、ドアを開けた。
ガンッ・・・あー、ポールに当てちゃったよ・・・。白いドアに濃紺の傷!!
とにかく、助手席のドアを開け、ダニーを降ろす。
「お前、今ぶつけたやろ?」えっ?マーティンは耳を疑った。
「う、うん、ごめん。あのダニー?大丈夫なの?」
「ああ、おかしなったフリして、オッサン鞭でしばいたった」舌を出すダニー。
「ええーっ・・・何だ、もっと早く言ってよ!本気で心配したよー」
「そうや!ドア、ちゃんと修理してもらうで!」「あ、ああ、前にもぶつけたしね!」
マーティンの肩を抱き、ダニーは笑いながらアパートに入った。
うっかりニアミスしてしまいました。
書き手1さん、続きをどうぞ。
ダニーはラムのストレートで脚をふらつかせながら、バスにお湯を張り、
ティーツリーのアロマオイルを垂らした。ティーツリーは心を清めてくれる。
身体をお湯に沈める。 アランをゲイと思ったことはなかったが、つい
1週間前に自分に告白したばかりなのに、もう女を口説くなんて信じられない。
ダニーは娼婦を買ってしまう自分を棚に上げて、ひたすらむかついていた。
明日のデート、キャンセルしたら、アランどう思うやろ。
しかし、ダニーはアランに会いたくてたまらなかった。あの砂色の瞳、
ぷっくりした唇、そして卓越したセックスの技術。思い出しただけで、
身体がほてり、ペニスが立ってきた。ダニーはペニスに両手を添えると
オナニーした。こんなの高校生やん。空しい射精を終え、バスローブで
ベッドルームへ行く。マーティンは大の字で眠っていた。
484 :
fusianasan:2005/09/05(月) 01:20:12
ほんま、こいつには悩みなんてあるのかいな。
ダニーはベッドの端っこに寝転がり、アランのことを考えながら
眠りについた。
翌日は朝からマーティンの荷物運びだ。
「おはよう・・・ダニィ、キス。」おはようのキスをせがむマーティン。
「はいはい。」額にチュッとキスする。「お前、朝ご飯食うやろ。」
「うん!」いつもマーティンの腹時計は正確だ。
「今日は残りもんのパスタサラダでええか?」「うん!」
トーストを焼き、コーヒーを入れる。予定調和の世界。
もしかして倦怠期の夫婦ってこんなんじゃないやろか。
「ご飯終えたら、お前の引越しな。」
「ええ、本当に荷物持って帰らなきゃだめなの?」
「お前のクロゼット、一杯やん。もう許容範囲超えてるで。」
「・・・・判ったよ。」ぷいっと横を向くマーティン。
「今日のエンリケとの約束はちゃんとしたか?」
「何で気にするの?」「当たり前やん。」「夜、リトルイタリーで
食事だよ。」「そか。」「ダニーは何すんの?」
「俺も夜、食事かな。その前に部屋の掃除と買い物や。」「ふーん。」
マーティンが真顔で言う。「今週一週間、僕、うざかった?」
正直そういう気持ちはある。しかし傷つきやすいボンにはいえなかった。
「そんな事ないで。愛してるから一緒にいられるって言うたやん。」
「そうなのかな。何かダニーがだんだん遠くに行っちゃうような気が
してさ。不安なんだよね。」「職場も同じなのにか?」
「うん杞憂だってことを何かで証明してよ。」「じゃあティファニーで
おそろいの指輪でも買うか?」「ふざけないでよ!」マーティンは
何故かいらだっていた。二人離れての週末だというのに、ダニーがうきうき
しているように見えるからだ。「じゃ、今度の週末、遠出しよか。」
「本当!うん!!それならいいよ。荷物運ぶね。」現金な奴。
ダニーのマスタングはアッパーイーストに向った。
段ボール箱3つにマーティンの洋服が詰まっている。二人はそれを
マーティンの部屋に運びいれ、別れを告げた。「じゃあ月曜日にな。」
「うん、ダニーも元気で。」「何言うてんのや、たった2日間やで。」
「そうだね。バイバイ。」世話の焼けるボンや。
ダニーは車に乗り込むやいなや、すぐさまアランに電話した。
「おはよう、ダニー。」よかった。いつものアランの声だ。
「朝からごめん。昨日遅かったん?」「いや、お開きは11時だったな。」
「今日、どうする?」「そうだな。グリニッジヴィレッジにでも行こうか。」
すると後ろから女の声がかすかに聞こえる。「アラーン、戻ってきてよ。」
「誰か一緒?」ダニーの予感は的中した。アランは女と一緒だ!
「お取り込み中みたいやから、また電話するわ。」
電話を切り、しばし呆然とする。気がつくと頬を涙がつたっていた。
俺ってマーティンといいアランといい浮気され男の典型やな。
俺の何が足りないっちゅうのや!!!
思わずステアリングをバンバン叩くダニーだった。
車をそのままコニー・アイランドに走らす。シーズンオフでアトラクションは
全てクローズしていたが、散歩するにはもってこいだ。
自問自答する。「俺はマーティンとアランのどっちが大事なんやろ?」
FBI捜査官らしく、二人が人質にとられた場合を想定して考えてみた。
どっちも助けたい。甲乙なんてつけられへん。
492 :
fusianasan:2005/09/05(月) 01:46:26
ランチを屋台のホットドッグで済まし、ダニーは家に戻った。
郵便受けに封筒が入っていた。裏を見るとAと書いてある。
アランや!
待ちきれず、エレベータホールで開ける。
「誤解しないように。僕は君のためにいるよ。今晩ヴィレッジで
食事しよう。迎えに行く。8時。A」
ダニーは子供のように喜んだ。ウソでもいい。本心から嬉しかった。
8時が待ち遠しくてたまらないダニーだった。
どこに行くか判らないので、プラダのジャケットとグッチのインナーを
あわせて、スマート・カジュアルに着替えた。8時フラットにアランは
迎えに来てくれた。ところが、助手席に女性が乗っている!
「やぁダニー、こちら、クリステン、ドイツから来た形成外科医さんだ。」
「初めまして。」ダニーは面食らいながらも丁寧に挨拶した。
「今日は3人で食事だ。ヴィレッジのチョウ・バーに行くぞ」
クリステンはブロンドを短くショートヘアにしたボーイッシュなタイプだった。
アランと同年代のように見える。「クリステン、NYは初めてですか?」
「ええ、エキサイティングな街ですわね。」丁寧な英語だった。
「クリステンはNYを知らないから、今日は最先端の場所に行くよ。」
アランは張り切っていた。
チョウ・バーは所謂アジアン・フュージョンでこの数年話題をさらっている
レストランだった。予約もなかなか取れないはず。アランの顔を見て、
支配人が寄ってきた「ショア様、お久しぶりで。」「今日はドイツから
お客様を連れてきたからお任せでお願いしたい。」「はい。」
ダニーも気後れするようなトレンディーなクライアンテールの集まり。
アランと付き合うようになっても、まだ慣れるには至っていない。
「Dr.ショアは本当に紳士ですわ。」席につくなりクリステンは言った。
「ドイツでも女医は少ないので、セクハラも多いんですよ。それなのに
昨日は酔いつぶれた私を看護してくれて。」「それは紳士たるもの
当然の行いですよ。」いつものアランとは違い、いかにも上流階級の医師らしい
応対にダニーは驚いていた。
とりあえずエッチはなかったんやな。アランってそういう奴
やったのか。
ダニーはひとまず安心した。料理は日本、中国、タイ、インドネシアの
フュージョンでダニーが食べたことのないものばかりだった。
クリステンも楽しんでいる。
ワインでほろ酔いのクリステンをウェスティンに送ると、アランは
ダニーに言った。「君も女性の扱いに慣れてるね。ゲイではないと
思っていたが、バイなのかい?」「男相手にするようになって、
まだ日が浅いねん。クリステン、いい人やったな。」
「あぁ、セックスも最高だったよ。」驚くダニー。やっぱり!!!
「昨日相手した女と食事させたんか!冷血漢!!」
ダニーはボルボの助手席で暴れた。
「待て待て、家についてから話そう。」アランは顔色一つ変えない。
それが悔しいダニーだった。また泣いてしまいそうだ。
アランの家に着き、無言で部屋へ入る。
「飲むかい?」アランがフィンダリアウォッカを振り上げる。
「ん。」ダニーは脱力して、アランのリビングのソファーに横になる。
イータラのグラスにウォッカが光っている。
「ダニー、誤解しないでくれよ。僕だって男だ。その場の雰囲気で
そうなることもある。だが、僕の気持ちは君にあるんだからね。
君だってマーティンとの腐れ縁を続けているじゃないか。
それを僕が漫然と受け入れていると思うかい?」
「・・・・」「だからこれは君へのお仕置きだ。僕もそんなに待って
いられないからね。さぁバスに入ろう。」
アランがバブルバスを用意し、ウォッカを持ってきた。
「別にセックスがどうということはないんだよ。ダニー。僕だって
人に自慢できるような清廉潔白な人生を送ってきたわけじゃない。
ただ、君とはこのまま一緒にいたいと思うようになってね。」
バブルバスの気持ちよさとウォッカの酔いでダニーは心が溶けそうだった。
「アラン、愛してる。」思わず、口に出てしまった言葉だ。
「やっと言ってくれたね。ダニー、うれしいよ!」
アランはバスタブの中でダニーを抱きしめた。ダニーはそのまま
気を失った。
気がつくとダニーはアランの腕の中で眠っていた。
もう夜明けが近い。ウォッカの飲みすぎで頭痛が酷い。冷蔵庫から
ペリエを出して飲み干す。アランが「ぅんん」とうなって寝返りを
打った。なんか昨日の記憶がおぼろげやなぁ。ダニーはシャワーを
浴び、朝食の調達に朝のアッパーウェストサイドへ出かけていった。
ベーグルにオリーブ・クリームチーズを塗ってもらい、スモークサーモンの
フィリングをオーダーする。アランはこういうオーソドックスなものが
好きだろう。ベーグルはセサミを選んだ。家に戻ると、アランがキッチンで
コーヒーを入れていた。
「おはよう、ハニー。」アランがダニーにキスする。
なんや、アラン、ハッピーそうやな。
ダニーは昨日の記憶がすっかり欠落しているのを二人とも気がついていない。
「ええ香りやな〜、この豆なに?」「ブルーマウンテンだよ。」
「やっぱブルマンか〜。アラン、ベーグル買ったで。」「サンキュー、ハニー」
「そのハニーってやめてくれん?こそばゆいわ。」
「だって君は名実ともに僕のハニーになってくれたんだから、呼んでも
いいだろう、ハニー!」「?????」
ダニーは訳がわからなかった。いつもの皮肉屋アランと違って、今日は
全身から幸せの甘い雰囲気が漂っている。
何かいい事あったんかいな。あのドイツ女とのセックスがそんなに
良かったんかなぁ。
「ダニー、今日、良ければ、ちょっとしたパーティーに行かないか?」
「この間みたいなチャリティーはごめんやで。」アランは、はははと笑い
「今日は身内の集まりみたいなもんなんだ。いいかい?」
「ウソはなしやで。」「判ったよ、捜査官様。ウソはなしだ。」
ダニーがベーグルにかぶりついていると、じっと見つめるアランと目が合った。
「何?顔になんかついとる?」「いや〜、君は実にハンサムだよ。」
「今更、今日アランおかしいで。何かあったん?」「いや、いいんだ。」
とにかくアランは上機嫌だ。機嫌がいいに越したことはない。
着替えもあるので、ダニーは一旦自分の家に戻ることにし、アランに送って
もらった。「じゃあハニー、8時にピックアップするからね。」
ダニーは、家に着くやいなや、昨日の疲れが出て、また転寝を始めた。
目覚めるとすでに夜の7時。「あかん!シャワーや!!」
脚をもつれそうにさせながら、シャワーを急ぎあびる。
おそらく今日は少しフォーマルが良かろうと例のグッチの上下に、GAPの
VネックTシャツを合わせる。携帯に電話だ。マーティン?
「ダニィ・・元気?」「おう、お前は?」「まあまあ。」「エンリケに
可愛がってもらってるか?」「優しいよ。」「用は何や。」「何してるかと
思って。」その時玄関のブザーが鳴った。「すまん、お迎えや。出かける。
じゃあ明日オフィスでな。」「あ、ダニィ・・」「何や?」「なんでもない。」
「切るで。」「うん、バイバイ。」心なしか元気のないマーティンの声。
気になるが、下のアランを待たせるわけにはいかない。急いで、エレベータに
乗るダニーだった。
アランはエンポリオアルマーニでカジュアルに決めていた。
「俺、決めすぎやろか?」ダニーは恐る恐る聞く。「いや、まぶしい位似合うよ。
今日のパーティーにぴったりだ。」「何か不安やな。」
場所はソーホーの「ミッション」というクラブだった。業界人御用達の
ラウンジクラブだ。ヴァレットパーキングの係に車の鍵を預けると、
二人は早速、中に入っていった。「アラン!」「アラン、久しぶり!!」
クラブはすでにかなり込んでおり、二人が歩いて奥に行こうとするたび
アランに声がかかる。「アラン、人気者やな。」「君もじきにそうなるよ。」
ラウンジの奥のソファーにアランは陣取った。周りにアランの友人らしき
人たちがわらわら集まってくる。次々に自己紹介が始まる。
フォトグラファー、デザイナー、医者、弁護士、エディター・・・
まさに業界人の巣窟だ。ダニーは連邦捜査官というのが恥ずかしくなってしまった。
デザイナーのいかにもゲイと判るビルという人物がダニーの頬をなでる。
「これがアランがずっと秘密にしていた子ね。僕らと遊ばなくなったと
思ったら、こんな可愛い子とハネムーン!焼けちゃう!!」
アランはただただ笑っている。「で、職業は何?」エディターのジュリアンが
尋ねる。「FBIやってます。」消え入るような声で答えた。
全員が歓声を上げた!「フェッツ!!!この集まりには始めてだわ!!」
「きゃあ、逮捕されちゃう!!」「身体差し出すから許して〜!!」
「今日は非番すから、逮捕せいへんよ。」また歓声が上がる。
「可愛い〜南部なまりがたまらないわ〜。アラン、どこで会ったの!!」
質問の嵐だった。一体何のパーティーなんだろう。
ウェイターがシャンパングラスを皆に渡す。アランがモンブランのボールペンで
グラスを叩く。「今日お集まりの僕の最愛の皆さん、今日を持ちまして、
僕、アラン・ショアのバチェラー生活に終止符を打とうと思います。その相手が
このダニー・テイラー君であります。どうか仲間として温かく迎えてください。」
拍手の嵐。 なんやてバチェラー生活に終止符???
ダニーに皆がキスを求める。何だか判らないうちに、ダニーは皆にハグされていた。
「アラン、これ何?」アランは皆の祝福を受け、悦に入っている。
次から次へとピンチョスがテーブルに置かれる。スペイン風のオードブルだ。
イチジクの生ハム巻き、パテ、オリーブ、マッシュルームのソテー・・・
シャンパンがどんどん進む。アランから説明を受けないまま、ダニーは
パーティーの中心にいさせられている。まさにパーティーの華だった。
すると音楽が80年代ヒット曲に変わる。デッド・オア・アライブだ。
皆がダンスフロアーへと駆け下りていく。ダニーはやっと座ることを許された。
「アラン、これ何?」もう一度尋ねる。「何って、婚約パーティーかな?」
「誰の?」「僕たちだよ。ダニー。」アランがダニーの顔を自分に向け
ディープキスをする。ダンスフロアの仲間たちが歓声を送っている。
「俺たち、そんな仲やないやろ?」「ほう?昨日の告白をウソだとは言わせないよ。」
「告白?」ダニーのおぼろげな記憶。俺、告白したんか?
とりあえずこの場はアランの顔を立てて話に合わせよう。
ダニーの処世術の一つだ。目立たずかわす。
弁護士のギルバートがフロアから戻ってきた。「二人はどこで会ったんだい?」
アランは大笑いしながら、「ERだよ。」と答えた。
「この子が、全身の血液を4分の1も失って運ばれてきた。全身ムチの跡だらけでね。」
「ひゅう!顔に似合わずハードプレイが好きなのか、ダニー?」
「囮捜査中の事故や。アランに命救ってもらった。」
「まさに運命的といえるよ。」アランはこの世の春のような顔をして
シャンパンを飲んでいた。「僕もそんな出会いがしたいよ、アラン。
うらやましい。」そういうとギルバートはダニーのお尻をキュっとつねった。
「痛て!」アランがピザを取りに席を立つと、医者のトムが戻ってきた。
ダニーをじっと上から下まで見つめる。「本当に、今までのアランの相手とは
全然違うタイプだな。」「どんなん?」「君はアランの本命だよ。ああ見えても
これまでアランも騙されたり裏切られたりしてきたからね。大事にしてやって
くれ。同僚からの言葉として聞いて欲しいよ。すぐ仕事に出る奴だから。」
アランが戻ってきた。「おいおい、トム、もう口説いてるのかい?」
「おお、くわばらくわばら。」トムはまたフロアに降りていった。
曲はフランキー・ゴー・トゥー・ハリウッドの「リラックス」に変わった。
「ダニー踊ろう。」アランに連れられてフロアに下りる。ダンスは得意なダニーは
自然とビートに身体をあわせ、踊り始めた。意識していないが相当官能的な動きだ。
皆が息を飲む。アランは、自慢するようにダニー一人に踊りを任せた。
「FBIにこんなセクシーな人がいるなんて、紹介して欲しいわ。」ビルが
ダニーに釘付けになって、ため息をつく。そんな喧騒の中、ヴァニティー・
フェアの取材がやってきた。ダニーは全く気がつかず、ビートの渦に身体を
任せていた。
アランが家に送ってくれたのは夜中の2時。ふぁ〜、何や難儀な一日やったな。
あと5時間で起きにゃ〜。ダニーは上着とパンツを脱ぐとベッドに倒れこんだ。
2週間後、支局で経費精算していると、バンと机にヴァニティーフェアの
最新号が置かれた。サマンサだ。「ダニー、すごいわよ。ポストイットの
ページ見てみて。」「ふん?」ページを開いてダニーは戦慄した。
クラブ「ミッション」の紹介記事で、ダニーが踊り狂っている写真が
一面に出ている。それもかなりきわどいポーズをとっているショットだ。
「あちゃ〜!何やねん、これ!」「これってダニーでしょ。女性スタッフの
間じゃ、もうウワサで持ちきりだからね。」そこへマーティンが出勤して
きた。「ねぇ、マーティン、見てみて。家のスターの写真!!」雑誌を
ダニーの手から奪うとマーティンに見せる。「これって・・・・・」
マーティンは絶句した。「違うんや。」「違わないでしょ。」サマンサは
「掲示板に張っちゃえ」と鼻歌歌いながら歩いていった。
マーティンはわなわな震えると男子トイレに駆け込んでいった。
後を追うダニー。誰も入っていないのを確認すると、マーティンが入っている
個室をノックする。「マーティン、マーティン、聞いてえな。」
「聞かなくても写真が語ってくれてるよ。証拠に聞くのが僕らの鉄則だろう。」
「誤解やねん。」「口でなら何でも言えるよ。」人が入ってきたので、
ダニーは外へ出た。この修復はどうすればいいのだろう。ダニーは頭痛がした。
ダニーは次の日、ズル休みをした。
マーティンも一緒に休みたがったが、それでは怪しまれる。
「ボスに病院に行くからって言うんやぞ、わかったか?」
「うん・・・」「どないしたんや?」「何でもない、行って来るね」
「ああ、気をつけてな」ダニーはキスをすると送り出した。
「ファーァ、今日は何しよ?やっぱ命の洗濯やな!」
ダニーは、お気に入りの自然史博物館に行くと決めた。
ついでに買い物リストも作る。
朝食の後片付けを済ませると、さっそく出かけた。
ローズ宇宙センターのプラネタリウムは、何度見てもまったく飽きない。
惚れ惚れするような天体の美しさにうっとりした。
ダニーは満喫すると、ギフトショップでシャトルグッズを買い込んだ。
ランチを適当に済ませ、ソーホーのアディダス・オリジナルに寄る。
そろそろジョギングシューズがボロくなっていた。
レッドとグリーン、どっちにしよ?迷うなぁ。んんっ、デッドストックのジャミロクワイモデルもあるやん!
うーん、どれにしよ・・・。ダニーは散々迷った末、グリーンに決めた。
ついでにスカッシュのシューズも見に行く。前回、靴擦れしたためだ。
「高っ!二度とせーへんかもしれんのに・・」思わず、独り言を呟いた。
近くにいた女の子と目が合う。
「あれっ?この前の?」スカッシュコートで話した女の子だった。
「偶然やな、靴買いに来たん?」「うん、ちょっと見に来ただけだけどね」
「この前はせっかく誘ってくれたのに悪かったな」「そんな、別に気にしてないから」
ダニーはチャンス!とばかりに話しかけた。
「オレはダニーや」「ダニーね、スーザンよ。でも、あなた既婚者でしょ」
「うん、残念ながらな。そっちは?」「私も彼がいるの。お互い様かな」
二人は顔を見合わせ、いたずらっぽく笑った。
「コーヒーでもどうや?」「ええ」ダニーはウキウキしながらカフェに向かった。
久々に普通の女の子と、ただ他愛無い話をしただけで、ダニーは心が躍っていた。
スーザンとは、帰りに携帯の番号を交換した。
スーザンか〜、なかなかおもろかったなぁ〜、運転しながら思い出し笑いをした。
買い物リストを手に、食料品を買い込むとアパートに戻った。
そうや、電話してみよう。ダニーはスーザンに電話した。
「ハロー、スーザン?」「ダニーね、掛けてくると思ってた」
嬉しくてニヤけるダニー。「それはそれは光栄やな。気に掛けてくれてたんや」
ひとしきり話すと、電話を切った。マーティンにバレんようにせんとな・・・。
ダニーが夕食を作っていると、マーティンから電話が。
「今日はこのまま自分の家に帰るよ」「へっ?何で」
「うん・・・ボスに呼ばれてるから・・・」それだけ言い残し切れた。
ダニーはさっきまでの幸福感が失せるのを感じた。
何もかも面倒なことばっかりや!一難去ってまた一難・・・。
他人の手の中で駒にされるのは気に食わない!!
ダニーは乱暴に料理を続けた。
手荒に作ったせいか、夕食は雑な味がした。
アイスクリームをカップごと抱えると、ダニーは貪った。
パイントを丸々食べ終え、そのままソファーにひっくり返る。
こんな時、以前なら女を買っていたが、今は性的なことから遠ざかりたい気分だ。
ダニーは急に思い立ち、サマンサに電話した。
「サマンサ?ダニーやけど・・・」「ダニー?もう体の具合は大丈夫?」
「ああ」「それで、何か用?」「用っちゅう訳やないけど。ちょっと話がしたくて・・・」
「はぁ?さっき帰ったとこなのよ。おなかもペコペコだし」
「そうか、すまんな。ごめん、ほなまた明日」ダニーは電話を切った。
だが、すぐに掛け直し食事に誘った。
リトルイタリーのビストロで、サマンサがラビオリを食べるのを眺めた。
食べながら、今日の事件のことや出来事を、おもしろおかしく話すサマンサ。
次から次へと頼もしいほどパクパク食べるのを見ているうちに、
ダニーもチーズをつまみながら、話に夢中になっていた。
ジェラートを食べ終わる頃には、憂鬱な気分は消えていた。
「で、本当は今日どうしたの?」「ん?ちょっと気が滅入っててな・・・」
「ダニー、変わったね。心の中なんて、以前は絶対見せなかったのに」
「・・・・・」「恋人の影響かしらね?そういうことってあるから・・・」
ダニーはサマンサのほっぺにキスした。驚くサマンサ・・・。
オレはお前の彼氏と寝てるんやで・・・嫌々やけどな。
「送るわ」ダニーは席を立った。
サマンサを家まで送り届け、マーティンに電話したが留守電につながった。
まだ帰ってないんか・・・ダニーは途中でガソリンを入れ、アパートに戻った。
買ってきたシャトルグッズを飾り、もう一度電話するがまだ帰っていなかった。
お土産の宇宙食を、クルクルと手の中でもてあそぶ。
ダニーはあきらめて風呂に入り、早めにベッドにもぐりこんだ。
思いっきり手足を伸ばしてベッドを占領する。自分の香りがする、安心で安全な空間。
ダニーは自分の体を抱きしめ、いつしか深い眠りに包まれた。
早朝、昨日買ったばかりのシューズを履き、ジョギングに出かけた。
朝の冷たい空気を思いっきり吸い込み、体の目覚めを促す。
一時間ほど走ると、汗でTシャツが背中にはりついた。
ダニーは途中で朝食を買うと、シャワーに駆け込み、慌しく出勤の支度を始めた。
さあ、ボスと顔合わせるんや!しっかりせなあかんで、オレ!!
ピシャリと頬を叩き、気合を入れた。
気合を入れて出勤し、新聞を片手にみんなを待った。
サマンサがごちそうさまとささやき、横をすり抜けていった。
ダニーは茶目っ気たっぷりにウインクを返した。
そういえばマーティンの姿がない。あいつ、寝過ごしたんかな?
とうとう、ミーティングが始まった。
「ボス、マーティンは?」サマンサが聞いた。「風邪を引いたらしい」
ん?、何でオレに電話くれんのやろ・・・ダニーは気になったが、まずは仕事だ。
ボスの首筋に赤い蚯蚓腫れが覗いている。思わず目を逸らした。
「ボス、ちょっとすんません・・・」ダニーはボスのオフィスに入った。
「ああ、何だ?」ボスの目が、眼鏡の奥で冷たそうに光っている。
「一昨日のことですが、なんやちょっとおかしくなってしもて・・・申し訳ありませんでした!」
「まだあちこち痛むぞ。風呂も沁みるし・・まったく!」
「・・・・・」ダニーは下を向いた。痛がるボスを思うと、笑いそうになっていた。
「まあいい、今度したら、鞭打ちはお前だからな。仕事に戻れ!」
「昨日マーティンとお会いになったと聞きましたけど、欠勤と関係ありますの?」
「クッ、ハハハ、さあな。帰りに様子でも見に行ってやれ。」
ボスの言葉に、冷たい汗が噴き出すのを感じた。
その日、何度か家にも携帯にも電話したものの、マーティンは不在だった。
ダニーの不安はどんどん大きくなる。まさか死んでる?、いやいやそれはない。
自問自答も限界に達した頃、やっと仕事が終わった。
急いでマーティンの部屋に駆けつける。「マーティン、マーティン!どこや!」
全部の部屋を見て回ったが、家の中には誰もいなかった。
くそっ、どこにいてるんや・・・。ダニーはパニック寸前だった。
仕方なく、自分の家に戻ると、留守電にメッセージが入っていた。
「ダニィ・・・今、ワシントン・・・。今夜はこっちに泊まるから・・心配しないでね・・・」
マーティンの蚊の泣くような頼りない声だ。
ワシントン!!副長官!!、ボス・・・まさか!!!
ダニーはすぐにボスの携帯に電話した。「ただいま電話に出ることができません・・・」
一本調子のアナウンスを聞くと、余計に悔しさと虚しさと怒りがこみ上げてきた。
こんなことなら、昨日休まんかったらよかった・・・。女とデレデレしてたなんて!!
怒りのあまり、思いっきりテーブルを蹴飛ばし、電話を放り投げた。
ダニーは自分の不甲斐なさに、どうしようもなく打ちのめされた。
538 :
fusianasan:2005/09/06(火) 01:11:20
以前からファンでROMってました。お二人ともすごいストーリーテラーですね。
これからも目が離せません。がんばって続きを書いてください。お願いします。
その後1週間の間、ダニーは何度もマーティンと連絡を取ろうとしたが、
携帯も家の電話も留守電だし、支局でも目をあわすとはずらせる毎日が
続いていた。ボンもほんま頑固やからな。自分が納得出来ないことすると
こういう仕打ちするんかいな。 ダニーはほとほと手を焼いていた。
支局で聞く携帯の様子からエンリケと頻繁に会っているような様子が見て
とれた。 俺の役割の補完をしてくれる相手がいて良かった・・んやろか。
ダニーはマーティンの自分に対する愛情に少しずつ疑惑の目を向け始めていた。
俺がアランといるのが心地よいようにマーティンもエンリケといる方が
心地よくなってるんちゃうか。
そう思うと、ダニーの嫉妬の炎は心の片隅でチリチリと燃え盛るのだ。
日課となったマーティンへの電話。珍しくマーティンが出た。
「マーティン・・久しぶりやな。「本当にね。」「どうしてる?」
「エンリケの家にいる。」「そうか・・・」「ねぇダニーお願いがあるんだけど、
僕とエンリケをこの間ダニーが写真取られたクラブに連れてってくれない?」
「ああ?行きたいんか?」「うん、すごく興味が湧いた。」
「よし金曜日に行こうか?」「判った。約束だよ。」
金曜日の夜10時に約束をした。エンリケがBMWでダニーの家に迎えに来た。
助手席にマーティンが乗っている。「やあ、エンリケ。」「ダニー、久しぶり。」
「マーティン。」マーティンは返事をしない。3人の気まずいドライブ20分で
ソーホーの「ミッション」についた。鍵をエンリケが預けている間、
ダニーとマーティンは二人きりになった。「元気か?」「ダニーほどじゃないけどね。」
皮肉がいつもよりキツイ。
ダニーを先頭にクラブに入ると、アランの知り合いのジュリアンとビルが
踊っていた。「ダニー!!」両頬にキスをする。面くらうマーティン。
ウェイターがダニーをこの間と同じラウンジに案内した。頼まないのに、
ドンペリニョンのロゼが運ばれてくる。「これって?」「ダニー様が来られたら
必ずお出しするようにアレンジされております。」
エンリケは大喜びだった。ぐいぐいシャンパンを飲み干す。
今日は日本式のオードブルが出てきた。卵焼き、吹き寄せ、サーモン、マグロ。
エンリケはうれしそうにパクつく。マーティンは余り食欲がないようだ。
「食べないの?」エンリケが尋ねる。「後で。」そこへ、MR.ミスターの
「ブロークン・ウイング」がかかった。エンリケはワオ〜と叫ぶやいなや
ダンスフロアへ出て行った。「マーティン、行かないのかい?」
「僕はダンスうまくないから。誰かみたいに。」 まだ怒っている。
「なぁもうお互いいい年なんやから、いい加減仲直りせいへんか?」
「仲直りのしるしに何してくれる?」「今日、エンリケを置いてここを出るって
どうや。」「よし、判った。エンリケなら一人でも楽しめるだろうしね。」
マーティンは数週間ぶりに笑った。ダニーも心の中がぽっと明るくなった。
マーティンはダンスフロアで女性に囲まれて悦に入ってるエンリケの耳元に
何かささやくと、エンリケがOKのしるしを出してくれた。
夜中のボワリーSTでタクシーを拾うのは並大抵のことではなかった。
二人は近くのダイナーで、コーヒーを飲むことにした。
気まずい沈黙。「ダニー、僕さ、寂しかったんだよね。どんどんダニーが
前に進んじゃって、ニューヨーカーになっちゃうしさ。僕は所詮ワシントン
DCのお堅い育ちが抜け切れない。距離を感じたよ。」
「そんな、たまたま雑誌に取材されただけやん。俺は俺や。ダウンタウンが
似合っとる下町育ちやぞ。生まれは変えられない。」
「でも自分のこれからの人生変えられるよ。」「それならお前も変えろよ。
あの親父さんの庇護から離れて、自立してみいな。」「・・・・」
「ごめん。言い過ぎた。」「いいんだよ。本当のことだから。」
「そろそろタクシー拾うか。」「うん。今日はダニーの家に行っていい?」
「ああ、ええで。」マーティンは嬉しそうに頷いた。
家に着くと、ダニーはバブルバスを用意した。クラブでのタバコとアルコールの
香りが身体中に染み付いていた。マーティンはすでに裸になっている。
「マーティン、またやったんか。首輪プレイ!」「ああ。もう日課だよ。」
「なんでお前とこんなに遠くになっちまったんやろな。」「1%の約束だよ。」
「ああ、あれやな。始めは。」「もう止めない?」「・・・・」
「やっぱりダニーは1%を残して欲しいんだ。」「すまん。俺、今混乱してるんや。」
「僕はもう1%なんて糞食らえだ。エンリケじゃダメなんだよ!!」
「そんな・・俺を困らせないでくれ。マーティン。一緒に風呂入ろう。」
二人は無言のままバブルバスに入った。ダニーはマーティンの背中を
海綿で静かにこする。「うぅん。」マーティンは気持ち良さそうだ。
二人で身体を洗いっこしているうちに、セックスに移行した。
向かい合ってお互いのペニスを触りあう。久しぶりの感覚だ。
二人とも限界まで屹立したところで、ベッドに移動する。
よく見るとマーティンの身体はキスマークだらけだった。
「これ、エンリケか?」「そう、キス、好きみたいだよ。」
「ダニーは身体綺麗だね。」「こそばゆい、いつもの俺や。」
ダニーがマーティンを四つんばいにさせ、ローションを塗ると、一気に押し入る。
「あぁぁん、ダニー、いい〜。」「マーティン、締めるな。行きそうや。」
「だって我慢できないよ!」ダニーはマーティンのペニスに手を伸ばすと
前後に動かした。すぐにマーティンは降参した。マーティンの麻痺するアヌスの
動きにダニーも射精した。
「一体、どういうことだ、マーティン!!」さっきから父が怒鳴っている。
「妙なヤツと付き合ってるようだと、ジャックから電話をもらった時は
顔から火が出そうだったぞ。相手はどんな女だ?」
「・・・・・」「黙ってないできちんと説明しないかっ!!」
「・・・違います、ボスの勘違いなんです・・・・。
たまたま話してただけで、どこの誰かも知らない・・・付き合ってなんか・・」
「お前はフィッツジェラルド家の跡取りなんだぞ、もっと自覚しろっ!」
父が怒鳴り散らすのを、冷めた目で見ていた。
「わかったな、よく憶えておけ!!」「はい、父さん・・・」
マーティンは自分の部屋に行った。僕は口答え一つできやしない。
部屋の主がいなくなっても、毎日掃除され清潔な部屋・・・。
マーティンは、どさっとベッドに寝転んだ。
どんな女だって?、女じゃないよ、男だよ・・・。僕はゲイなんだ。
ボス・・・本当に電話したんだ・・・脅しじゃなかったんだ・・・。
マーティンは唇を噛みしめた。心の底から尊敬してたのに・・ボス。
ダニー心配してるかな・・・早く会いたいよ・・・ダニィ・・・。
ここで泣くのは嫌だ、マーティンはグッとこらえた。
誰かがノックしている。マーガレットがディナーに呼びに来ていた。
だだっ広いテーブルに、寒々としたディナー。お仕着せそのもの。
父の怒りが寒々しさに拍車を掛ける。
無言で食事を口に運ぶが、砂を噛むような惨めさは消えない。
「そろそろ見合いでもしたらどうだ?何人か候補がいるんだが」
突然、父が切り出した。あーやっぱり来たね・・・予想通りだ。
「いえ、今はまだ仕事に専念したいんです。」
対策を練っていたため、すらすらと答えることができた。
「そうか?なかなかいいお嬢さんばかりだぞ。家柄も申し分ない。」
「その時はちゃんと言いますよ、父さん」
父の残念そうな顔が目に入る。永遠に来ないけどね、心の中で続けた。
虚しいディナーが終わり、マーティンは早々に引き上げた。
マーティンは部屋に戻ると荷物をまとめた。
一分一秒でも早くNYへ帰りたかった。ダニーの元へ。
この家にいると、生きる気力がなくなりそうだ。
この世から消したいヤツリストがあれば、父の上位入賞は間違いない。
物心ついた頃にはすでに父の本質を見抜き、いい子の演技をしていた。
僕の中身なんて、何も知らないくせに!!
マーティンは目覚ましをセットするとベッドに入り、無理に目を閉じる。
ダニーもまた、眠れぬ夜を過ごしていた。
ボスの携帯に何度も電話したが、一切連絡がつかない。
ボスが副長官に連絡したのは間違いない。
どっか地方に飛ばされるかもしれへんな・・・下手したらクビや・・・。
オレ、もう二度とマーティンに会われへんかもしれへん・・・。
ダニーは、自分にとってマーティンがかけがえのない存在になっているのに気づいた。
やがて、寝るのをあきらめ、リビングを片付け始めた。
蹴飛ばしたテーブルを元の場所に戻し、散らばったものを拾う。
頑丈なオーク材のテーブルは無事だったが、AT&Tの子機は壊れていた。
ハァ〜、やってもうたー・・・。ダニーは、力任せにゴミ箱に投げ込んだ。
睡眠不足丸出しの充血した目と、浮腫んだ顔で出勤した。
ボスが来るのを、今か今かと待ち構えていた。
「ボス!夕べ何度も電話したんすよ!!ワシントンに電話したんとちゃいます?」
「挨拶もなしで一体何なんだ?ダニー、声を落とせ、人に聞かれるじゃないか」
ダニーはイライラしながらも声を落とし、もう一度聞いた。
「さあな、私はお前のことなんて、一言も話してない。マーティンに聞けばいいじゃないか」
「マーティン、帰ってくるんですか?それすら、オレにはわからん・・・」
「私にもわからん。さあ、仕事だ仕事!」ボスは楽しそうにオフィスに消えた。
ダニーはその場に取り残された・・・・・。
マーティンはラガーディア空港から、タクシーでまっすぐ支局に向かった。
「今度悪い噂を聞いたら、即連れ戻す。見張ってるぞ、マーティン!!」
父の言葉が頭の中でグルグルと回っていた。
ボスに逆らったら、今度こそおしまいだ。僕はいいけど、ダニーが・・・。
早くダニーに会いたい反面、辛い報告もしなければならない現実が
マーティンの足取りを重くしていた。
マーティンが着くと、ダニーが机に突っ伏してうたた寝していた。
顔色が悪く、手つかずのベジサンドが置かれたままだ。
「ダニー」辺りを確かめ、そっと突っついて起こす。
「ンガ・・・マーティン?」ガバっと起きるダニー。
「今帰ったん?」「ああ、空港からまっすぐ来たんだ」
「どうやった?」「うん、帰ってからゆっくり話すよ」
「コレ食べるか?」ダニーはベジサンドを差し出した。
がっつくマーティンを見て、ダニーは胸をなでおろした。
「マーティン、後で私のオフィスに来い」ボスが通りすがりに声をかけた。
「はい」マーティンはダニーと視線を交わすと、ボスのオフィスへ行った。
「どうだった、ワシントンは?」ボスは何もなかったように訊ねた。
「ええ、おかげで厳しく叱責されました。見合いも勧められましたしね」
「で、上手く交わしたって訳だ。お前も少しは成長したじゃないか」
「薄皮一枚で繋がっているようなもんですよ、ボス」
「そうか、じゃあこれ以上言わなくてもわかるな?」ボスは畳み掛ける。
「はい・・・」「よし、もう行っていいぞ!」ボスは電話に手をのばした。
「ダニー、後で行くよ。一度家に帰らないといけないから」
ダニーはマーティンを喜ばせたくて、帰りにスーパーに寄った。
デリの惣菜より、手料理のほうが好きらしい。
グリルドチキンとアスパラのソテー、シュリンプカクテル、好物のペスカトーレを作る。
そうや、土産の宇宙食も付けたらんとな。
ダニーは、早くマーティンを抱きしめたくてウズウズしていた。
料理が出来上がる頃、マーティンが来た。
「お前の腹時計はほんまに性格やなぁ!!」感心するダニー。
「何言ってんだか!ダニーが合わせてるんじゃないの?」
二人は食事を始めた。マーティンが宇宙食に気づいた。
「何これ?宇宙食・フリーズドライ?」「本物やねん!、お前にお土産や」
「へぇー、食べたことないよ」言うなり頬張る。「ん?ううーん・・・」
口をあんぐりとするマーティンに、ダニーは笑い転げた。「一応ピザ味やで」
ソファーに並んで座ると、ダニーはマーティンを抱き寄せた。
遠慮がちにくっつくマーティンに、ダニーはワシントンのことを訊ねた。
「あのさ、ボスが父にヘンな女と付き合ってるって電話したんだ。
それで呼ばれてた・・・。」「ヘンな女?女?って言うたんか!」
ダニーはホッとした。オレらのこと、バレてないやん・・・。
「でも、もう後がないんだよ、今度は即連れ戻すって言われちゃったから・・・」
「ボスの電話か・・・今度電話されたら終わりやな、何もかも・・・」
「うん・・・見合いも勧められた・・・」ダニーはマーティンを見つめた。
「結婚できるんか?お前」「ううん、僕にはできない。体に触るのも嫌だもん」
「ほなどないするんや?」「んー・・・死ぬかも・・・」ダニーはそのまま固まった。
「何も死ぬことないやろ」やっとのことでそれだけ言った。
「どうかな、僕にはわからないよ」マーティンはポツリと呟いた。
二人はそれっきり黙った。沈黙が痛い。
「もっと自分を大事にせなあかんで」ダニーはマーティンの肩を強く抱いた。
「ダニー、今日はもう疲れた」
「ああ、オレもや。もう寝よ」
ベッドに横たわるなり、マーティンはいびきをかいている。
ダニーもマーティンの髪をなでるうちに、あっという間に眠りについた。
マーティンは久しぶりにアラン・ショアとアポイントを取った。
「やぁマーティン、元気かい?」「元気だったらここに来ませんよ。」
「ははは、それはそうだね。さぁ座って。」ソファーに座るマーティン。
「何か飲むかい?」「それじゃ、水を。」アランが手渡したのは、ダニー
お気に入りのサン・ペリグリーノだった。 ダニーと同じだ・・・
「また恋人のことだね。例の1%のルールはどうなった?」「僕、もう我慢
出来ないんです。やっぱり100%相手のことを見ていたい。100%僕
のことを見て欲しい。これって無理なんでしょうか?」
「君の恋人が距離が欲しいと言ったんだろう?逆効果になるぞ。疎まれても
いいのかい?」「嫌です。でももう無理するのが出来なくなって。」
「道は二つに一つ。疎んじられるのを承知で自分の気持ちを告げるか、今の
ルールでしばらく歩むかだ。どうする?」「・・・・疎んじられたくない。」
「それなら、しばらく1%ルールを続けたらどうだい?君だって他の誰かと
ほっとする時間を持ちたいと思っていないのか?」「もう、十分なんです。
僕はダニーじゃないとだめなんです。」
やれやれ、この子のダニーへの気持ちは尋常じゃないな。
アランは、とりあえずは1%ルール継続を勧め、その間に自分とダニーの
スペースを作ることを画策していた。
アランが見せたいものがあるというので、仕事が終わるとダニーはアランの
アパートを訪れた。「やあダニー、誕生日には早いけど、僕の気持ちだよ。」
見るとリビングの一番いい場所にスタンウェイのピアノが置いてあった。
「アラン・・こんな高いもん、もらえんわ。無理無理!」
「そう言わないで。君の家に運ぶと例の恋人君が何か言うと思ってね。
ここで好きなだけ弾くといい。」
こんなんされたこと、親にもないわ。
ダニーは自分が泣いているのに気がついた。アランが抱きとめる。
「さぁさぁ、ピアニストさん、僕に何か聞かせておくれ。」
ダニーはスタンウェイの前に座ると、アルペジオを数回手慣らしで弾き、
やおらエリック・サティーの「ジム・ノペディー」を弾いた。
続いてドビュッシーの「月の光」、ショパンの「別れの曲」・・・
アランが拍手喝采を送る。「別れの曲は洒落にならなかったが、君は本当に
FBIなのかと思う時があるよ。素晴らしい、ダニー。ありがとう。」
「俺こそ、こんなん俺・・・」言葉を失うダニー。
「さぁ、湿っぽくなるなよ。食事にでも行こう。」
「ん。」涙を拭いて、ダニーはうなずいた。
その晩は二人で4ブロックほど歩いたところにあるギリシャ料理「ニコス」に
寄った。近所ということもあって、アランはここも常連だった。
ギリシャ人の主人がにこにこ対応してくれる。
アランと行くところは皆温かく迎えてくれる。 ダニーはぼんやり考えていた。
ムサカ、ケバブプラターと主人貯蔵の特別なギリシャワインで晩餐。
ワインが進むにつれ、いつものダニー節が戻ってきた。今日支局であった
出来事を面白おかしく話している。「そうだ、ヴァニティー・フェアの
反響はどうだった?」アランがくくくっと笑いながら尋ねる。
「どうもなにも。今週のスタッフNO.1に選ばれたわ。掲示板に張られて、
恥ずかしゅうて・・」「でもあれが君の内部の一面でもあるんだよ。
FBIはどちらかといえば影の存在じゃないか。特に君の任務は目立つ
ものじゃない。君にはどこか脚光を浴びたいという欲望があるんじゃないか?」
「そうなんかなぁ。」「そうだ、今度家でパーティーをやろう。」「え?」
「ピアノを買ったことだし、僕だけが観客じゃつまらないだろう?」
「でもレパートリー、そんなにないで。」「君が弾くことに価値があるんだよ。
はい、約束。」無理やり、アランに約束をさせられてしまったダニーだった。
支局のマーティンの手元に一通の招待状が届いた。
アラン・ショア?何だろう。 他でもないホームパーティーの招待状だった。
ふーん、行ってみようかな。そうだ、エンリケも誘おう。
NYに友達の少ないエンリケは大喜びだった。
「精神科医?アメリカの縮図だね。楽しみにしているよ。」
精一杯1%ルールを守ろうとしているマーティン、隣りで仕事している彼が
そんな事を考えてるとはダニーは知る由もなかった。
ホームパーティー当日、アランはピエールのシェフに出張をお願いし、
調理をしてもらっていた。ダニーはうろうろうろうろ部屋を歩き回っている。
今日の服装は乳首が透けて見えてしまいそうなグッチのTシャツとプラダの
パンツだった。アランは珍しくLLビーンでカジャアルに決めている。
「ダニー、今日もセクシーだよ!」頬に軽くキス。ピエールのシェフも
そういう光景には慣れたもので見て見ぬふりをしている。
夜も7時になり、招待客がそろそろ集まり始めた。総勢50人ほどになろうか。
もちろんミッションで一緒だった、ビルやギルバート、トム、ジュリアンも
その日の相手を連れてやって来ていた。手持ち無沙汰のダニーは、スタンウェイを
開き、ビリージョエルの「ニューヨーク・オン・マイ・マインド」を弾き始めた。
ビルがたちまち反応する。「キャア〜FBIの演奏会よ〜!!」人だかりが出来る。
その頃だった。マーティンとエンリケが到着した。アランの広いアパートが
人で溢れている。いい音色のピアノが聞こえる。「へえ、ピアノの生演奏か、
趣味いいね。」マーティンはエンリケに耳打ちする。誰が弾いているとも
知らずに。曲は「ピアノマン」「オネスティー」とビリー・ジョエルが続き
ニューヨーカーは大喝采を送っていた。エンリケがマーティンにシャンパンを
渡す。
そこへエディターのジュリアンがエンリケに近付いた。「君、ダニーの兄弟?」
「良く言われるけど、僕スペイン人。大使館のエンリケです。」「ほう、
そっくりじゃないか。」マーティンは耳を疑った。今、ダニーって言った?
「ダニー、いるんですか?」ジュリアンに尋ねる。「ホラ、ピアノ弾いてるよ。」
ダニー!!何でここにいるんだよ!!
5曲弾いたところで、アランが音楽をCDに変えた。コールド・プレイの
「静寂の世界」だ。ダニーのところに行こうにも人が多すぎて、ピアノに
近付けないマーティン。エンリケがマーティンに「ローストビーフ食べよう。」
と皿を運んできてくれる。仕方なく口にするマーティン。
人と人の間から、アランが首に手を回しダニーを抱きしめているのが垣間見えた。
やっぱりダニーの相手はアラン??
ダニーがピアノから離れてクラブソーダをとりに行く。組んだエンリケの腕を
ほどき、マーティンがダニーに近付く。「ダニー・・」「マーティン!!
なにやってんや。」「何って招待されたんだよ。」「エンリケも一緒やろ。」
「うん・・」「俺は今日はピアニストや。リクエストなら受けるで。」
そう言うとダニーは弁護士のギルバートと医者のトムのところに行ってしまった。
ダニー、何してるんだよぅ。。涙が出そうになった。
ギルバートは今日は日系企業のクライアントを連れて来ていた。
ダニーは敬意を表し坂本龍一の「戦場のメリークリスマス」と「シェルタリング
スカイ」を立て続けに弾く。エキゾチックなメロディーに皆が耳を傾ける。
ダニー、僕には弾いてくれたことないのに・・・
エンリケがそばにいるだけに孤独感が一層高まり、マーティンはいたたまれなくなった。
「エンリケ、僕、帰る」「マーティン、パーティーこれからだよ。僕は残る。」
「じゃあまたね。」エンリケはニューヨーカーの仲間入りが出来たようで
有頂天になっていた。彼の訛りが皆を笑わせ、いい雰囲気になっていた。
ダニーの馬鹿!僕の気も知らないで。何がピアニストだ!
セントラルパークを横切りながら、悪態をついているマーティンだった。
真っ暗な部屋に戻るとマーティンは声を上げて泣いた。シャワーの中でも
ベッドの中でも。そのうち疲れて眠ってしまった。
パーティーのほうはまだまだ宴もたけなわ。ダニーに次から次へとリクエストが
入る。さすがに「タイタニックのテーマ」には辟易したが、難なくこなすと
エンリケがビルを有名なシーンのマネをして周囲を笑わせていた。
ダニーはさり気なくマーティンを捜したが、姿が見えなかった。
気持ちが動いたのを察してアランがまたCDに音楽を切り替えた。
MOBYの「ホテル」で少し皆を踊らせようというのがアランの魂胆だ。
ピエールのシェフまでもがエディターのジュリアンに誘われて踊っていた。
「大盛況だね。」ダニーはアランに言った。「くたびれてないかい?」
「少しね。でも捜査よりはマシだよ。」「君のおかげだよダニー。愛してる。」
アランはダニーに軽くキスすると食べ物をとりに出かけた。
「はい、君の好物のキャビアといくらのオードブルだよ。」「サンキュ。」
11時になり、そろそろゲストが帰り始めた。ピエールのシェフも後片付けを
始めた。アランはホストらしく、全員とハグし、見送りをした。
ダニーは脱力していた。マーティンの事が気にかかっていた。エンリケはと
いうと、ソファーで居眠りしている。「おい、エンリケ、マーティンどこや。」
ダニーは揺り動かすととエンリケは目が覚めた。「先に帰った。」またまどろむ。
アランはダニーに尋ねた。「このドッペルゲンガー君が君の代替品かい?」
「ああ、外交官で怪しい人物じゃないで。マーティンがつきおうてる。」
ははん、これじゃあマーティンのダニー熱が収まるわけがないな。
アランは一人ごちた。これでは本当にダニーの代替品だ。さぁ今日のパーティーが
吉と出るか凶と出るか、しばらく様子を見よう。「ダニー、エンリケを起こして、
帰ってもらいなさい。」「うん。」「エンリケ、起きて。お開きや、お開き!」
「ん、ごめん。今日、ここで寝かせて。」「アラン、だめだ。」
「じゃあ、明日の朝帰ってもらうか。ダニー、泊まるだろう。」
ダニーはマーティンの事が気にかかっていたが、アランの所に泊まることに
した。どうしたもんか。ダニーの心は複雑だった。
アランがハワイに伝わるロミロミというマッサージを施してくれた。
温めた石を身体のつぼの上に乗せ、コリを取ったあと、ひじと手のひらで
優しくマッサージしてくれる。いつしかダニーは眠ってしまっていた。
僕ともあろう人間が、こんなに一人に入れあげるとは。
他の誰でもないアランこそが一番自分の変化に敏感だった。そろそろヤキが
回ったということかな。でもダニーは手放したくない。最初は遊びだったのに。
ダニーが「うぅん」とセクシーな声を出して寝返りを打った。
今日は我慢だ。坊やは疲れてるんだから。アランはダニーの顔を至近距離で
まじまじながめるると、満足したように、唇に軽くキスをして目を閉じた。
翌日、ダニーはマーティンのアパートへ、自分の荷物を取りに行った。
着替えや歯ブラシなど、副長官のもしもの来訪に備えてだ。
「ダニー、ごめんね。」「ああ、気にすんな。荷物いうてもこれだけやんか」
「うん・・・」「おっと、ローション!これが一番ヤバいやろ」
ダニーはローションを箱に放り込むと、部屋を点検した。
「これで大丈夫や。優等生の部屋完成!!」
マーティンは気まずそうに部屋を見た。
「そんな顔すんな。ほな、オレ帰るな」「えー、もう少しだけ」
「アホ、こんな時にもし来たらどうするねん、当分ここで会うのは無理や」
「じゃあ、ダニーの家に一緒に帰ってもいい?」
「そらええけど・・・電話に出んかったら怪しまれへんか?」
「うん・・・わかった、また明日ね」「ああ、おやすみ」
ダニーが家に戻り、荷物を置いた途端、電話が鳴った。
「はい」「ダニー?僕」マーティンからだ。
「なんや、どないしたん?」「声が聞きたくってさ・・・」
「さっきまで一緒におったやん!」「うん・・そうなんだけど・・・何してた?」
「荷物置いたとこ。お前は?」「別に・・今から何するの?」
「トイレや!」「じゃあ一緒に連れて行ってよ、音が聞きたい」
「#%&変態か、お前は!」「いいじゃない、早く早く」
「あのなぁ・・・それに、連れて行きたくても無理なんや。子機が壊れてしもたから」
「何でさ?」「なんでもないわ、漏れそうやから。ほな切るで」
ダニーはやれやれと思いながら、トイレで用を足した。
風呂から上がり、クラブソーダを片手に夜風にあたっていた。
また電話だ。「はい・・・」「ダニー、僕だよ。何してるの?」またかいな・・・。
「もうちょっとしたら寝るとこや。なんなんや、一体!」
「ただ声が聞きたくて・・・」「あーもう鬱陶しいなぁ。もうええか?」
「あのさ・・今ベッドの中なんだ」「ああ、もう寝るんか。うん、わかった」
「じゃなくって・・・テレフォンSEXしようよ」「はぁ?酔うてんの?そんなんイヤや」
「聞くだけでもいいから、ね?」「ああ」ダニーは渋々承知した。
「ダニーもベッドに行って目を閉じてね」「はいはい」だから、子機がないんやって!
「いい?じゃあ聞いててね・・・んっぁっ・・ん」ダニーは驚きながらも耳を傾けた。
「くっあっはぁはぁ・・・・んっあっああっああー・・・ハァハァ」
ダニーもマーティンとのセックスを思い浮かべた。いつの間にかペニスを擦っている。
「マーティン・・・オレ・・くっあっぁあー」ダニーも射精した。せわしない息遣いが行き交った。
「ダニーもイッた?」「うん、早くお前に会いたいわ。今度は目の前で出したい」
「僕も。ダニー、僕のこと好き?」「当たり前やん」
「どれくらい?」「いっぱいや、いっぱい」
「ありがと、じゃあ・・おやすみ」「おやすみ、また明日な」ダニーはそっと電話を切った。
今日も行方不明者の捜査に当たっていた。失踪したのは17才の女子高生。
わざとかどうか、ボスはダニーとマーティンを組ませない。
ダニーはサマンサと、マーティンはボスと聞き込みに当たった。
「マーティン、パパさんから電話はあるのか?」
「ええ、すっかり信用がなくなっちゃって」
「フフン、じゃあデートもままならない訳だ」ボスはペニスをつかんだ。
「ぁん・・ボッボス?」「慰めてやろうか、マーティン?」「今は仕事中ですよ?」
「ああ、それなら心配ない。家出だったとサムから連絡が来たよ」「ええーっ!」
思わずマーティンは急ブレーキを掛けた。驚くボス・・・。
「バカッ!何やってんだ!!」幸い追突も怪我もなかったが、ボスの機嫌を損ねてしまった。
ハーレムのモーテルに行かされ、部屋に入るなりベッドに押し倒された。
服を脱がされ、マーティンはあきらめてされるがままになった。
「なんだ?今日は勢いがないな」ペニスをグッと掴むと勃起を促した。
「んっぁん」ボスの手の中で躍動するようにペニスが硬くなった。
ボスはマーティンにフェラチオをさせた。頭を掴んで強引に揺さぶる。
「いい子だ、後ろをかわいがってやろう」
四つんばいにされ、ローションで滑らかに動く指に思わず反応してしまう。
アナルがヒクヒクしているのが自分でもわかった。
ボスはペニスを口に咥え、アナルの動きに合わせてしごき上げる。
「ぁぁー・・ボス・・出ちゃう・・」「イキそうなのか?」「もうダメ、早くして」
ボスはさっと指を抜いた。「ボス・・入れて、早く、あぁーもう僕・・」
ボスはペニスを挿入すると、携帯を取り出した。
「副長官、マローンです。ええ、どうも。マーティンですか?戻ってから一生懸命です。
ええ、ええ。はい、本人に代わります、マーティン」ボスは携帯を渡した。
マーティンの様子を見ながら、ゆっくりとペニスを出し入れする。
「はい。えっええ、ちゃんと・・し、してますよ・・。んっ・ぁ、はっはい。それじゃ」
マーティンは電話を切ると、ベッドに携帯を落とした。ボスの動きが早くなる。
「うっぅぅ、ぁぁん、イッイクー」マーティンはあっけなく射精した。
「ああマーティン、お前の電話の応対ったら・・締りが最高潮だったぞ・・くっ」
ボスもそのまま中に射精した。ペニスを抜かないまま覆いかぶさるボス。
耳たぶを甘噛みしながら、ボスはささやいた。
「興奮しただろ?すごくよかったぞ」「ボス、ひどいよ・・・僕は・・僕は」
マーティンはしゃっくり上げた。「私に逆らうとこうなるんだ、ワシントンに行きたいか?」
駄々っ子のように首を振るマーティン。「パパにヘンに思われてなきゃいいけど・・・」
「大丈夫だ、まさか私と寝てるなんて予想だにしないだろうよ」ボスは乳首を摘まんだ。
「ぁん」「おとなしくしてれば、このままダニーと甘い生活だ。私と寝るのは嫌か?」
「うーん、いい時もあるけど・・・」「はは、正直だな。やっぱりダニーか?」
コクンと恥ずかしそうに頷くマーティンにボスは言った。
「同性愛は病気じゃない、治療法なんてないんだ」
「ボス・・・」マーティンは驚いてボスを見つめた。
ボスはやさしくキスをすると、ゆっくりペニスを抜き、バスルームへ消えた。
宴の後はさんたるたる状態だった。スタンウェイのグランドピアノの上には
飲みかけのシャンパングラスが6つ。リビングのソファでは一人エンリケが
おおイビキをかいて寝ている。ダニーはいつも同様アランの腕の中で目を覚ました。
コーヒーでも入れよ。キッチンでコーヒー豆を捜しているとアランも
目を覚ましてきた。「おはよう。」唇に優しくキス。「おはよ、アラン。
コーヒー豆どこやろか。」「僕がやるよ。シャワーしておいで。」「うん。」
アランはエンリケを起こした。「・・・・」スペイン語で何事かつぶやくと
やっと重い目を開けた。「ここは?」「君はパーティー最後の客だよ。
もう朝だ。」「おぅ!申し訳ない。シャワー借りていいかい?」
アランは画策した。ここで二人が出会えば、自分とダニーの仲はマーティンに
知れるだろう。「ああ、どうぞ。」
「うわ〜、エンリケ、またかい!」ダニーは驚いた。素っ裸のエンリケが
突如目の前に現れたからだ。「お前の身体の方がいいのはもうわかったから
早ようでてってくれ。」「ひどいなぁ。兄弟。一緒に浴びてもいいだろう?」
「ダニーも昨日、ここで寝たわけだね。」「ああ、ピアニスト大変やったから。
ベッド借りた。」アランと一緒に寝たことは絶対エンリケに知られたくない。
「それよりマーティン、どうしてるかいな?あいつが早く帰るのは珍しいで。」
「それなら僕に任せて。後でアパートに寄るから。」あえて自分で行くとは
いえないダニーだった。二人の仲はこんなに離れてしまったのか・・・。
「二人とも早く出ておいで。コーヒー入ったから。」それぞれにバスタオルを
渡すアラン。二人の裸体を見て目がくらみそうだった。
ダニーが二人。はさまれて寝てみたいものだ。
エンリケはコーヒーを一杯だけ飲むとそそくさと出て行った。きっとマーティンの
アパートに行くつもりだろう。ダニーはほぞを噛む思いだった。
「ダニー、何考えてる?」「昨日のパーティー。盛況やったな。」
「うそつかないでも判ってるよ。マーティン君の事だろう。」「・・・・」
「マーティンは君が死んでも墓場までついていくだろうね。」
「そうやろか。あいつにはエンリケがいるし。」「彼は君の代替品なんだよ。
マーティンの心は120%君にある。君がそれをどう思うか、精神科医と
しては非常に興味深いんだがね。それに僕らだって付き合ってるから、
僕に嫉妬心がないといったらウソになる。」「・・・・」
「アランはどうしたいん?」「そりゃ君と一緒に出来るだけ長く多くいたい。
恥ずかしながら、こんな恋愛は初めてだよ。」アランはダニーの額にキスをした。
「とにかく片つけようや、アラン。これじゃくつろげない。」「そうだね。」
アランはダニーの掃除の腕に舌を巻いた。効率的かつ完璧に片つける。
荒っぽいヒスパニックと思っていたらこんなに几帳面なのか・・・
「俺、H&Hのベーグルがめちゃ食いたくなってん。一緒に行かへんか?」
「散歩がてら歩くか。」「おう。」土曜日のさわやかな朝だった。
アッパーウェストサイドは小さい路地に入ると瀟洒なビストロが並ぶ
グルメタウンになっている。デリもゼイバーズ始め有名無名が立ち並ぶ
激戦地だ。ダニーはオニオンベーグルにクリームチーズ、アランはセサミに
トマトクリームチーズを塗ってもらった。フィリングはいつも同様サーモンだ。
「昨日の君はまさにセンセーショナルだったよ。」「そう?」
「本当にピアノで稼ぐ気持ちはないのかい?ヴィレッジのライブハウスに
口を利いてもいいよ。」「遠慮しとくわ。いつ出張するかも判らんし。」
「ああそうだね。FBIはNYだけの犯罪を追うわけじゃないもんな。
それにしても残念だ。あの才能が埋もれるなんて。」
ダニーもまんざらではなかった。勤務が定時で終われるような事務方なら
ライブハウスに立ってもいいと思っていた。
これが、アランの言うてた俺の一面なんかな。
その頃、マーティンは腫れた瞼にアイマスクを乗せて腫れを取っていた。
ジョンから内線が入る。「トレス様がお越しですが。」ダニーじゃないのか。
「上がってもらって。」「はい。」ほどなくエンリケが上がってきた。
シャワーしたものの声が鼻声で明らかにアルコール過多のエンリケだ。
「マーティン!おはよう!!腹減らないか?」「・・うん、そうだね。」
「じゃあH&Hベーグルに行こう。一度行ってみたかったんだ。」
エンリケのBMWで出かける。マーティンたちが着いた頃、ちょうど
ダニーたちが朝食を終え、歩いて帰るところだった。車窓から二人を垣間見る
マーティン。 やっぱりあの二人は付き合ってるんだ!!
食欲がうせたマーティンだった。エスプレッソだけを頼んで、がつがつ
ベーグルを食べるエンリケを見つめる。
「昨日、僕が帰った後どうだったの?」「すごい盛り上がった。ダニー、
ピアノうまいね。そういえば、ダニー、アランの家に泊まってたよ。」
決定打だった。マーティンは瞼がまた潤むのをエンリケに隠しながら
エスプレッソをすすった。
アランは上機嫌でダニーとアパートに戻った。そろそろエンリケから事実が
マーティンに知らされているだろう。これからが楽しみだ。二人を別れさせ、
ダニーを自分のものにしたい欲望は日に日に高まっている。
ダニーはまた、スタンウェイの前に座り、ぽつんぽつんバッハを弾いていた。
「トッカータとフーガは弾ける?」「長年弾いてなけど弾けるかな・・・」
第一音から完璧だった。ダニーも思い出すのがうれしいのか調子に乗ってきた。
そこにダニーの携帯が鳴った。ヴィヴィアンからだった。
「ダニー、土曜日なのにごめん。事件発生。支局に来て。」
ほぼ同時にマーティンにもボスから電話が入っていた。
着替える間もなく、アランにお礼を言うと、タクシーで支局に向うダニー。
マーティンとほぼ同時に支局に着く。
「マーティン、おはよ。」「ああおはよう。」次の言葉が出ない。
ボスもノーネクタイで出勤していた。「今日の失踪者はストックブローカー。
ダニーは金の流れを追え。マーティンは通話記録。サムは私と自宅へ。
ヴィヴィアンは勤め先を洗ってくれ。「はい。」いつもの一日の始まりだ。
ただ、支局に残された気まずいマーティンとダニーを除いては。
土曜日ということもあり、出勤者は今のところマーティンとダニーだけだった。
ダニーがさくさく失踪者の預金の流れを突き止めているのに対し、マーティンは
上の空だった。「おい、マーティンどうなっとる?」「ちょっと待って。」
「そんなんじゃ見つからないで。」「判ってるって!!」いらだつマーティン。
「何怒ってるんや。俺何かしたか?」「判ってるくせに。」
「アランの家に泊まったくせに。」「知ってたんか。」「エンリケから聞いた。」
「おしゃべりめ。」「ねぇ、アランと付き合ってるの?」「・・・」
「ねぇ、ねぇったら!答えてよ!!」「ああ、付きおうてる。でもお前とは
違うんねんで。」「何が違うの?セックスだってしてるでしょ?」
「じゃあ、お前はどうなん、エンリケとエッチしとるやないかい!!」
支局なのにも関わらず、二人は取っ組み合いの喧嘩になった。
そこにヴィヴィアンが帰ってきた。「何やってんの!二人とも離れなさい!!」
ダニーがアドリブで「俺がいいと思ってた女にちょっかい出したんやで、こいつ!」
マーティンも話をあわす。「ダニーがそう思ってったの知らなかったもん。」
「はいはい。二人とも、大人なんだから、職場に恋愛は持ち込まない。ね。」
ヴィヴィアンの言葉は重みがあった。しかし、どっぷりの二人には馬の耳に
念仏のようなものだった。
ダニーはソファーにひっくり返ったまま、携帯でスーザンと話をしていた。
まだ寝ていなかったが、数回デートしていた。彼女もまんざらでないようだ。
「ただいまー」マーティンの声・・・「ほな、また今度」慌てて電話を切った。
「ダニィ?誰かと話してるの?」「いいや、お前遅かったなぁ。何してたん?」
「うん、ボスに連れ込まれちゃって・・・だから」もじもじするマーティン。
「なんや、今日はオールナイトの予定やのに・・・」ダニーはムッとした。
「ごめん、でも、ちゃんとできるよ」「もうええわ、したくなくなった!!」
ダニーはそのままキッチンへ行った。
「ねーダニー、ダニーってば!」マーティンがキッチンに入ってきた。
「んー」「本当にごめん、だから機嫌直して、ねっ」
「ああ」ダニーが卵を割ろうとすると、マーティンが手を出した。
「手伝うよ、割るんでしょ?」「んー」ダニーは卵を渡した。
そうっと卵を割るマーティン。ダニーは片手で次々パカンと割った。
得意げにマーティンを流し目で見る。マーティンも意地になった。
グシャン・・・ダニーはやっぱりという顔をした。「その顔やめてくんない?」
「どんな顔やねん?」「やっぱりとか、だからって顔だよ!」
ダニーは笑いながら、スパチュラでマーティンのほっぺをペチペチ叩いた。
マーティンにOXOのサラダスピナーを押させ、フライパンに火を点けた。
ダニーはオーブンからスペアリブを取り出した。
表面がこんがりして、ジュワジュワと脂が滴っている。
「うわー、おいしそう!!」マーティンははしゃいでいる。
「まだ食べたらあかんで。全部出来てからや」ダニーは釘をさした。
スパニッシュオムレツとサラダも並び、テーブルに着いた。
「このサラダ、さっき僕が回したヤツ?」「うん、いっぱい食べてな」
「ダニー、僕も料理したい。前みたいなのじゃなくて、即興で作れるようなの」
「ああ、手を切った時のな。うーん、即興はなかなか無理やろなぁ・・・」
「でもさ、料理教えてくれる?」「どうしようかなぁ、ボンが料理ねぇ・・・」
「ボンじゃないっ、ねぇ?」「うーん、考えとくわ」ダニーは答えを保留した。
食事が終わると、マーティンはリビングのレシピ本を眺めていた。
ポストイットを片手に唸りながら、作りたい料理に貼っている。
「ん、何だろ?」本の間に背表紙を裏返した本が隠してあった。
何気なく開くと、「男同士のHOW TO SEX」だった・・・。ダニィ?
マーティンはこっそりと中を見た。体位のところに赤線や書き込みがしてある!
クスクス笑いながら、本を読んでいた。
「どないしたん?」「何でもないよ!」マーティンは咄嗟に本を隠した。
「ヘンなヤツ」ダニーは何気に後ろに回りこみ、本を取り上げた。
「あちゃー、えらいもん見られてしもたー」ダニーの顔が赤くなっている。
「それ、僕のため?」「ん」マーティンはダニーに飛びついた。
お風呂の中でも、マーティンはずっとニヤニヤしていた。
「いつ買ったのさ?あんなの」「付き合ってひと月ぐらいかな・・・」
「どうして?」にやけた顔で追い討ちをかける。
「ああ、もう・・・やり方に自信がなかったからや!次に聞いたらどつく!」
ダニーは、足を伸ばしてペニスをグイっと押した。
「んんっ」慌てて足を押さえるマーティン。ペニスがムクムクと反応した。
「まだ怒ってる?」「いいや、しよか?」
マーティンはダニーのペニスを咥え、熱心に舌を這わせた。
丁寧にタマも転がすと、アナルにも手を伸ばした。
ダニーの好きなミントのローションをたっぷり塗る。
中を捏ね繰り回され、ダニーはとうとう音を上げた。
ダニーの手を窓枠につかせ、背後から挿入した。
「ああっ!」弓なりになったしなやかな背中に、舌を這わす。
ダニーは感じすぎて鳥肌が立っている。
マーティンは腰を掴むとリズミカルに突いた。
「ぁぁぁー、マーティン!!うっくっっあっぁぁー」ダニーの精液が窓に飛んだ。
「ダニー、エッチすぎるよ・・ぁぁ、我慢できない・・」
マーティンは激しく動くと中で果てた。
ダニーは窓についた精液を見ていた。早く拭かんとこびりつくかも・・・。
マーティンの精液が流れてきてシーツを汚した。だが、動く気にならない。
ボンはくっついたまま眠っている。あどけないように見えるが、本当はそうじゃない。
ダニーは、マーティンが抱えている問題を思うと心が痛んだ。
オレが真性のゲイやったらまだマシやったのにな・・・。
ダニーはマーティンに布団を掛けてやると、目を閉じた。
昨日の疲れのせいか、二人はぐっすりと眠っていた。
太陽は高く昇り、すでに昼前になっている。
突然携帯の着信音が鳴り響く。ダニーは寝ぼけたまま携帯を見た。
オレのとちゃう・・・マーティンのんか・・・誰やろ?
着信画面に父・携帯と出ている!!!ダニーはマーティンを揺さぶった。
「何?なんなのさ・・・ファーァ」おなかを掻くマーティンに携帯を渡した。
「うわっ、父さん・・・」マーティンは何度か咳払いをしてから出た。
「はい、マーティンです」「今どこにいるんだ?」
「ちょっと買い物に・・・」「そうか、今、ジャックと会ってるところだ」
「ボスとですか?・・」「ああ、お前のことをよく頼もうと思って来たんだ」
「ええ、ボスにはいろいろと教わってます」
「それとテイラー捜査官にも会いたいと思ってな、お前の教育係だとジャックから聞いたぞ。」
「えっ、ダ、テイラー捜査官にもですか?」ダニーが困惑した顔で見つめる。
「ああ、だが、休日で連絡がとれないらしい。これから食事はどうだ?」
「いえ、その・・」「何だ、せっかくニューヨークに来たんだ。付き合え!」
「はい、一時間後に。ええ、わかりました」マーティンは絶望の眼差しを向けた。
「ダニー、僕、急いで行かなきゃ!」「なぁ、テイラー捜査官って?どこ行くねん?」
「ミッドタウンのジャン・ジョルジュ」ヒュー、ダニーは口笛を吹いた。
「ええやん、相手がオレならもっとよかったのに」
「バカッ!!ダニーにも会いたいけど連絡がつかなかったって」
「ボスか・・・。ええっ?ボスも一緒に食事するんか!!うわっ、最悪やん、それ!」
ダニーの携帯が鳴った。ボスからだ!
「はい、テイラー」ダニーは慎重に電話に出た。
「ダニーか?今、副長官殿がお見えで、お前に会いたいと仰ってるんだが」
「えっオレが副長官に?!!何でまたオレなんか」ダニーはとぼけた。
「マーティンのことで、直々にお礼を言いたいと仰られてな。」
「了解っす、すぐに参りますよって」ダニーは場所を聞くと電話を切った。
「ダニー?」「大丈夫や、さあ着替えよか」
途惑うマーティンを尻目にダニーは支度を始めた。
「はじめまして、副長官。ダニー・テイラーです。本日はお招きいただきありがとうございます。」
ダニーはマーティンの父を目の前にして、胸の高鳴りを覚えていた。
「やあ、テイラー捜査官。マローン捜査官から君の話を聞いてね、どうしてもお礼が言いたくなった」
「いえ、そんな。僕は何も。フィッツジェラルド捜査官の、斬新なアイデアに驚くこともしばしばです。」
「そうか、足手まといになってなきゃいいが。なぁ、マーティン?」副長官はマーティンを見やった。
「えっ・・ええ・・・」マーティンの心臓はバクバクしていて酸欠寸前だ。
ボスはそんな二人の様子をつぶさに観察していた。
コースが進み、ダニーと副長官は話し込んでいる。
よどみなくしゃべるダニーの話に、副長官は引き込まれた。
時折笑い声が響く。マーティンは黙って楽しそうな二人を見ていた。
ボスは料理に舌鼓を打ちながら、適当に話を合わせていた。
「いやぁ、今日は楽しかったよ、テイラー捜査官」
「こちらこそ、お目にかかれて光栄でした、副長官」ダニーは握手を交わした。
「ジャック、それにテイラー捜査官、これからもマーティンを頼む。」
副長官は上機嫌で帰っていった。
ハァ〜、三人はほぼ同時に溜め息をついた。
「あー疲れた〜、妙な言葉遣いは肩凝るわ」ダニーは首を回した。
「ダニー、副長官と楽しそうだったじゃないか?なぁ、マーティン?」
「うん・・・」マーティンは凹んでいた。あんな風に父と話したことなんて一度もない。
「どないしたん?オレ、何かまずった?」「ううん、ダニーは完璧だったよ・・・」
ボスは、マーティンの肩をあやすようにポンと叩いた。
「ボス、これからどうします?もう帰ってもいいんですか?」
「そうだな、お前は帰れ。私はマーティンともう少しいる」
「ボス?」マーティンは驚いて顔を上げた。
「じゃあオレも・・・」「いや、お前はいいんだ!」
ボスはマーティンを車に乗せると行ってしまった。
ダニーはしばらく呆然としたが、やがて自分のアパートへ向かった。
「ボス、どこに行くの?」困ったマーティンが尋ねた。
「どこでも。お前の好きなところだ。どこがいい?」ボスはやさしく訊いた。
「僕は別に・・・」「じゃあ、ダニーの家に送ってやろうか?」「ううん・・・いい」
マーティンはなぜかダニーに会いたくなかった。
父とダニーの会話、借り物の服を着ているような、居心地の悪さにすっかり意気消沈していた。
ボスを盗み見ると、右のほっぺが膨らんでいた。
「ん?ほら!」マーティンの視線に気づくと、ポケットから飴玉を出した。
マーティンは一つ受け取ると口に入れた。コーラ味のキャンディー・・・。
ボスってば・・・なんだかおかしくなって、マーティンは笑った。
「落ち着いたか?マーティン」「うん」
「じゃあ送ろう」ボスはマーティンをアパートへ送った。
「さぁ、着いたぞ」「ボス、上がってコーヒーでも?」「うーん・・もらおうか」
ボスがマーティンの部屋に入るのは初めてだ。
「さすが、いいとこに住んでるな。うちとは大違いだ」ボスは部屋を見て回った。
金持ちらしいセンスの部屋だ。この前のダニーの部屋とつい比べてしまう。
「何だ、コレ?」飾り棚を指差す。「メディチ家の絵皿ですよ」
「フィレンツェの?お前の好みか?」「いえ・・・」「うん?何で置いてるんだ?」「さあ?」
ボスは信じられないというように、マーティンを見た。
「好みじゃないなら片付けろ、お気に入りに囲まれて暮らすほうがいいぞ。人も物もな」
「人も?」「そうだ、仕事がはかどるし、目の保養にもなる」
「僕も?」「ああ、もちろん。お前は特別だ」うぅっ・・・マーティンはボスの胸で泣いた。
「よっしゃぁー!♪」ダニーは鼻歌を歌いながら窓を拭いていた。
今日の副長官との会食に、確かな手応えを感じていた。
オレもいずれ幹部候補になるで!!もっともっと出世するんや!!
このままダウンタウン・テイラーなんかで終われるかいっ!!
洗い立てのパリッとしたシーツを張りながら、自分の未来を思い描いていた。
その時のダニーは、マーティンのことを忘れていた。
インターフォンが鳴り、ダニーは浮かれたまま出た。
「はい?」「私だ」げげっ、ボスかいな!ダニーは仕方なく部屋に通した。
「ダニー、さっきはえらく紳士だったな。いつものお前と正反対だ。」
「そら相手が副長官やし、ましてマーティンの親父さんやから・・・」
「フーン、敬意を表したってわけか。いやいや、見事だったな」
ボスは、ダニーの手首を掴んで横に座らせた。不敵な笑いを浮かべる。
突如、後ろ手に手錠をかけるボス!「ちょっ、な、ボス!やめてっ!!」
嫌がるダニーの口にペニスをねじ込むと、咽喉の奥まで押し込んだ。
「うう・・ぅ・・ぉぇ・・」ダニーは苦しさのあまり、涙目になる。
そのまま数回扱き立てると、顔に精液をかけた。
とろりと流れる精液を満足そうに見ると、鍵をソファーの下に投げ入れた。
「じゃあな」ボスはそのまま出て行った。
「ボス、ボスー!」どうやら本当に帰ったらしい。
ダニーはなんとか床に這い蹲り、鍵を取ろうとしたが届かない。足は攣る寸前だ。
ダニーはあきらめて電話まで這い、マーティンに電話した。
「はい・・・」どんよりしたマーティンが出た。「マーティン、すぐに来てくれ・・頼む」
「ダニィ?どうしたの?」「何でもええから早よ来い!!」
マーティンは事情が呑み込めないまま、ダニーの家に向かった。
マーティンが行くと、脂汗をかいて床に転がるダニーがいた。
「一体どうしたのさ?病気?」「いいや、ソファーの下に鍵があるから取ってくれ・・・あぁ」
マーティンがソファーの下を探ると手錠の鍵があった。急いで外そうとするが外れない!
「あれっ、おかしいなぁ・・」何度もカチャカチャするものの手錠は外れなかった。
「ダニー、これ鍵が違う。外れるわけないよ」
「え、マー・・あっあー」ダニーは焦って張りつめていたものが切れ、失禁してしまった。
足を伝って床に広がる液体・・・。さっき磨いたばかりの床・・・。
前を濡らしたダニーは怒りに震えていた。
マーティンは黙ってパンツを脱がせようとした。
「お前、ボスに余計なこと言うたんか!」「僕が?何も言わないよっ」
「ほな、何でこんなことされなあかんねん?」憎々しげに睨みつける。
「知るもんか!!ダニーが・・・ヘラヘラしてたからじゃないの?」
「ヘラヘラってなんやっ」ダニーは痛いところを衝かれた。
「お世辞があんなに上手いなんて知らなかったよ。ダニー携帯鳴ってるよ?」
マーティンが着信画面を見るとスーザンと出ていた。
「はぁ〜あ、スーザンだって。どこの娼婦さ?」「ええから、貸せ!」
「手が使えないのに?」マーティンは電話に出た。
衣服を整え、席に座るマーティンとダニー。
ヴィヴィアンに電話だ。「はい、はい、ボス。了解です。」
「失踪者が犯罪者に変わったわよ。無記名債権を持ち逃げ。ダニー、
一番最後のカードの使用場所は?」
「カリフォルニア、サンノゼっす。」「マーティン、通話記録の方は?」
「あの、えーと、えーと・・・」「まあいいわ、ボスに報告する。」
ヴィヴィアンはボスに電話をして指示を聞いている。
サンノゼ警察に連絡をとり、ダニーが突き止めたカード使用記録にあるモーテルに
まだ宿泊と判明。ボスはマーティンとダニーに出張するよう命令した。
「はい。」「了解っす。」久しぶりの出張命令で緊張する二人。
しばらくの間は、恋愛のいざこざはお預けとなった。
失踪者は観念したのか、ダニーとマーティンが現場に着く頃には、
自首してきていた。二人ともせっかくカリフォルニアまで飛んできたのに
拍子抜けしてしまっていた。「なんだかね。」「なんだかなあ。」
「せっかくだから食事でもして帰るか。」ダニーがボスに連絡を取る。
「飛行機もないし、泊まっていいっていうてるで。」「じゃあそうする?」
「そやな。」気まずい二人。
エアポートホテルにチェックインし、食事に出ることにした。
「サンノゼじゃ美味しいものなさそうだね。」「ステーキにしよか。」
ホテルのレセプションに聞き、一応有名だというステーキハウスに向った。
赤ワインを頼んだものの、話がはずまない。やっぱり例の話をしなければ、
前に進めないことをお互いに判っていた。
「エンリケはあの通り面白い人だよ。」マーティンがぽつんと始めた。
「そりゃエッチもあるけど、僕がダニーに会えない時の穴を埋めてくれるんだ。」
「・・・・」アランの言うた通りや。こいつ、俺の代替品で会うてるんや。
「ダニーはどうなの?」
「アランは俺の精神科医や。それにERで命を救ってくれた人や。恩義感じてる。
今は、兄みたいな存在やな。」
「それで・・・僕ら、前みたいに付き合えるんだろうか。」
「お前、エンリケを切れるか?」マーティンは大きく頷いた。「もちろん。」
「ごめん、マーティン。俺、アランを切れんのや。」
ステーキを前に見る見るうちに瞳に涙を浮かべるマーティン。
「でも、お前との付き合いとは違うんや。判ってもらえんかもしれんけど、
とにかく違う。保護者みたいなやつなんや。俺、今まで一人やったから。」
マーティンはだまったままだ。
「知ってるやろ。俺11歳で一人になってん。それから肉親って感じられる
愛情を注いでもらったことなかったんよ。それが、不思議とアランといると
それを感じるんや。もしかしたら、お金のマジックにかかってるのかも
しれん。でもしばらくはそうさせて欲しい。これが正直な気持ちや。」
「判ったよ。話しにくいこと、ダニー、ありがとう。じゃあ、僕もエンリケと
付き合い続けるよ。ダニーの穴埋めにね。」
その後の食事は、砂を噛んでいるようなものに変わってしまった。
ホテルへ戻り、お互いの部屋に帰る。どちらも何も言わない。
その夜はそのまま、二人とも眠りについた。
NYに戻り、いつもの生活が始まった。変わったことといえば、二人ともが
カミングアウトした事で、やましさが消えたということだった。
まるで互いの浮気を認めてる倦怠期の夫婦みたいや。
ダニーは自分たちの感情の動きを不思議に受け入れていた。
マーティンの方は違っていた。
彼にとってはとにかく全てがダニー中心なのだ。
アランがマーティンを招いて食事しようと言い出した。異論はないダニーは
マーティンを誘う。「うん。ありがと。」心の中はともかくOKするマーティン。
場所はアランの家。アランとダニー、二人のシェフが食事を用意することになった。
マーティンはディーン&デルーカでコッポラの赤ワインを買い、セントラル
パークを横切る。「こんなに近くに住んでるんだもんなぁ。」ひとりごちる。
アランの家に着くとすでにキッチンからいい香りがしていた。
「いらっしゃい、マーティン。」ダニーはキッチンから手を振っていた。
ダニーがトルティーヤを焼いている。マーティンはアランにワインを渡すと
キッチンに入った。サルサソースが出来ている。
アランがアボカドを取り出してハラペーニョのみじん切りと合わせ、
ワカモレディップを作っていた。
息の合ったコンビネーションに、マーティンは打ちのめされた。
「僕ら負けず嫌いでね、どっちが料理の腕がいいか、いつも競争だよ。」
アランが笑いながらいう。ダニーも微笑みながら「俺に決まってるやん。」
僕なんか卵も割れないのに・・・ マーティンの劣等感は最悪状態になった。
アランがマリネードしている牛肉を取り出し、野菜を敷き詰めたグリルに
入れる。「今日はビーフファヒータが主食だけれど、いいかな?」
「も、もちろん。」マーティンはそう答えるしかなかった。
「アラン、トルティーヤ、20枚焼いたけど、足りるやろか?」
「それ位で大丈夫じゃないか?」「うん、じゃあ出来上がりっと!」
僕が入る隙間がないや。マーティンはさらに孤立した。
ダニーがダイニングに出来上がったトルティーヤ、サルサソース、
ワカモレディップとコーンチップを運ぶ。
アランがワインとワイングラスを並べている。
グリルから取り出したビーフにワインをふり、火をつけるアラン。
ダニーが歓声を上げ拍手する。つられてマーティンもまねする。
「さぁ、出来上がりましたよ。皆さん。」「腹ぺこや。早よう食おう!」
「まずマーティンからの差し入れのコッポラの赤を開けよう。」「賛成!」
マーティンは仲のよい夫婦の家に招かれている錯覚に陥っていた。
フィッツジェラルド家にない暖かさと心地よさがここにあった。
「それじゃあ、友情に乾杯!」アランの音頭。「乾杯!!」「乾杯・・」
ワインを思わず飲み干してしまったマーティンだった。
「マーティン、今日は調子が良さそうだね。」アランがちらっと見ながら言う。
「ダニー、ディップを取ってくれないか?」「ほいっ!」アランに渡す。
マーティンはひたすらワインを空けはじめた。「おい、マーティン、ちと
ペース早いんやないかい?」ダニーが心配して尋ねる。
「そんなことないよ。やっぱりコッポラは美味しいね。」
「特にこのクラレットのカベルネ・ソーヴィニオンはいい。マーティン、
さすがだね。」アランも賞賛していた。ワインに詳しくないダニーは、
飲めれば何でもいい口だったが、アランと付き合ううちに少しずつ、味わい
の違いを理解し始めていた。「ビーフにぴったりやな。ヘヴィーやし。」
「ダニーも言うようになったね」「へへへ」「ははは」
まただよ。この二人。僕を妬かせるためにやってるのかな。
マーティンは、トルティーヤにビーフとレタスを入れすぎ、破ってしまった。
「マーティン、俺が巻いたの食っとき。」さっと皿を出すアラン。
マーティンが破ったトルティーヤを皿に乗せるダニー。完璧なコンビだ。
「アラン、コッポラ空いてしもうたで。どうする?」
「もっと飲もう!飲もう!」マーティンが騒ぐ。完全に酔っている。
「じゃあモンダヴィのリザーブでも飲むか。」アランがワインセラーを開けて
ワインを選んでいる。
「マーティン、大丈夫か?」ダニーが心配して聞く。
「大丈夫、だいじょう〜ぶ〜!ワイン〜!!!!」
アランが気を利かせて水を持ってきて、マーティンに飲ます。
「そんな優しそうな顔して僕を毒殺するつもりだな、ア・ラ・ン!」
「マーティン、そんなん言うもんやないで!」さすがのダニーも怒り出す。
「酔っ払いのたわごとだよ、ダニー。静かに。」アランが諭す。
マーティンは水で少し落ち着いたようで、静かになった。
ダニーはマーティンをにらみつけ、ワカモレディップをつまんだ。
「マーティンには刺激が強すぎたかな。」アランは静かに言う。
「ん?何がや?」気がつかないダニー。
「この雰囲気だよ。マーティンの家は確か名門だろう。きっと、こんな
カジュアルでアットホームな空気で育ってこなかったんだろう。」
ダニーはやっと理解した。自分がこの空気を渇望していたのと違う理由で、
マーティンもまたこの雰囲気を欲していたのだと。そして、それを今まで
彼に味合わせていたのが、ダニーであり、ダニーの家でのくつろぎやじゃれあい、
食事やセックスだったのだと。
ダニーは自分が涙ぐむのを感じた。しかしアランの目の前では泣けない。
「ちょっとオシッコしてくるわ。」トイレでひとしきり泣いた。
ダイニングに戻ると、アランがぐったりしたマーティンをリビングに
運んでいる最中だった。「とうとう寝てしまったよ。」「そか。」
「どうする、これから?」アランが探るような目で尋ねる。
「俺、まだ腹減ってるから、ファヒータ食うで。」「じゃあレンジで温めよう。」
食事を終え、ダニーが片つけている間、アランはマーティンの様子を見ていた。
「急性アルコール中毒じゃないが、かなり飲んだな。今日は動かさない方が
良さそうだ。」「俺、じゃあ、帰ろかな。」「何で!?」怪訝そうなアラン。
「だってボンがいるのにアランと一緒のベッドでなんか眠られへん。」
「もうここまでカミングアウトしているのに。それに明日、起きた時、
君がいた方がいいと思うけどね。僕がマーティンを襲わなかった証拠として。」
「アラン、襲うつもりあんの?」アランがマーティンとも寝ていた事を知らない
ダニーは驚いて尋ねた。「まさか!僕の最愛の君を前にして、そんなこと
出来るわけないじゃないか。」「いなかったら?」「し・な・い!」
「約束できる?」ダニーは何故自分がこれほどしつこいか判らなかった。
もしかして、嫉妬? 「ああ、約束するとも。」「わかった。」
「俺、とうもろこしの粉臭いからシャワーするわ。」「ああ、入っておいで。」
ダニーは自問していた。マーティンとアラン、どっちが大事なのか。
何度も聞いた質問だが、一向に答えが出ない。
「神様、助けてえな。俺、訳わからんなったわ。」すると、アランが入ってきた。
「え、あ、アラン、ルール違反やぞ!」「坊やならぐったりだから大丈夫だよ。」
アランがダニーの後ろに立ち、両手でダニーのペニスを掴んで前後させる。
「うぅふふん、ああ、ええ気持ちや。」アランはダニーが十分屹立したのを
見て、自分のペニスを触らせる。すでにアランのペニスはぎんぎんに立っていた。
ダニーは思わず口に含んで上下させる。「あぁあ、ダニー、いいよ。」
二人ともマーティンが同じ家にいるということで、いつもより興奮していた。
ダニーはアランが先走りの汁を出し始めたのを確かめると、自ら菊口に
アランのペニスを当て挿入した。「うぁあ〜、す、すごい!!」
アランはダニーの腰をつかみ前後させる。ダニーもグラインドさせながら、
一番感じる部分にペニスがぶつかるようにして悶えていた。
「いくよ、ダニー!」「ああぁ、きて!!俺もいく〜」二人同時に果てた。
そんな二人の様子、一部始終をシャワーブースの外から見ていたマーティンだった。
二人がシャワーを終わりそうなのを察して、ソファーで寝たふりをする
マーティン。背もたれの方に顔を向けて、泣いていた。
二人して、僕を馬鹿にして!どうせ、僕なんか何のとりえもない
ボンボンだ!!
アランは、マーティンの背中が動いているのを横目で見ながら、ささやき声で
「さぁベッドに行こう、ダニー。」と誘った。
翌日、マーティンは腫らした目ととんでもない頭痛で起き出した。
アランとダニーはすでに起きて、ニューヨークタイムズを読んでいた。
「僕、昨日は面倒かけてごめんなさい。」自我を殺してアランに謝るマーティン。
「とんでもない。大丈夫かい?タイレノールあるけど。」
「ください。頭が痛い。」
ダニーがミネラルウォーターを渡す。「大丈夫かいな。心配したで。」
頭をなでようとするダニーの手を思わずふりはらうマーティン。
ダニーは驚いた。 なんや手負いの動物みたいや。こいつ。
「アルコールの取り過ぎには水が一番だから沢山飲むように。あと
熱い風呂に入って汗を出すこと。アルコールが抜けるよ。」
医師らしくアランはてきぱきと指示を与える。「はい・・ダニーお願いが
あるんだけど・・」「何や?」ダニーはてっきり家へ送れということかと
思っていた。「エンリケに電話してくれる?「「はぁ?」
「判った。」ダニーは携帯で電話する。スペイン語で話すダニー。
「すぐ迎えに来るって言うてるで、いいか。」「うん。」また電話で話す。
ダニーが何を言っているか判らないがファーマシーみたいな発音が聞こえて
来たから、きっと薬のことでも話しているんだろう。
エンリケが飛んできた。寝癖ヘアーのままだからまだ寝ていたのだろう。
アランはまたダニーと二人を見比べた。ダニーに5キロ足した位がエンリケだ。
まさにドッペルゲンガーだな。国籍を超えてこんなに似ている人間がいようとは。
アランはエンリケにも触手が動いていたが、ダニーと付き合い始めてから、
極力浮気をしないように強いていた。「僕のお姫様、お世話になりました。」
ペコンとおじぎすると肩を貸しながらふらふらのマーティンを運ぶエンリケ。
複雑な気持ちで見送るダニーだった。
車の中でエンリケが尋ねる。「どうしたね。君らしくないよ。マーティン。」
「二人の毒気にやられた。気持ち悪いよ。」「僕の家に来る?」「うん。」
エンリケは車をミッドタウンに向けて走らせた。
悔しいがアランに言われた事をエンリケに伝える。エンリケはミネラルウォーターと
熱いお風呂を用意してくれた。お風呂には少しだけマージョラムのオイルを入れた。
疲労回復に効くらしい。
その日一日、エンリケは健気な看護を施した。おかげで夕方には、マーティンの
頭痛は去り、空腹を感じるようになった。エンリケが何かをキッチンで作っている。
なんで僕以外のみんなは調理が出来るんだろう。僕がヘンなんだろうか。
エンリケはキンキンに冷えたガスパチョと、オジャを持ってきてくれた。
オジャはスペインでいうリゾットだ。
お腹に優しいエンリケの手料理で、少し元気が出てきたマーティンだった。
ここにもアットホームな雰囲気がある。昨日見聞きしたことを思い出し、
涙ぐみそうになるマーティンだったが、ぐっとこらえて、エンリケにお礼を言う。
「エンリケ、グラシャス。」「お姫様、何を言う。僕はいつでもお姫様の
そばにいるから。出来ればダニーからじゃなくて、マーティンからの
電話の方がいいけどね。」「ごめん・・・」「そうだ、今度はお返しに
ここでホームパーティーやろうよ。」「え?僕何も作れないよ。」
「君はソムリエね。僕シェフ。決まりだ。」エンリケの決意は固かった。
673 :
書き手1:2005/09/10(土) 01:05:09
書き手2さん どうぞ!
すみません。書き溜めてしまったので、アップしておきます。
書き手2さん、ごめんなさい。
エンリケは着々とホームパーティーの準備をしていた。
マーティンは、スペイン大使館農水省の人と一緒にワイン選びをする
毎日だった。
何だか事が大事になってるような気がする。
不安が隠せないマーティンだった。
招待客は80人にもなった。大使館関係者、スペインと関係あるアメリカ
企業、エンリケがアランのパーティーで仲良くなった、ビル、ジュリアン、
トム、ギルバートも入っていた。もちろんアランとエンリケも招待客の一人だ。
支局で、気になったダニーはマーティンに尋ねた。
「今度のパーティー、どないなってるん?」
「何だか対アメリカ戦略の一部みたいだよ。でも僕ソムリエだから。」
ボンが満足してればええか。そう思うダニーだった。
当日、エンリケはアシスタント3人と完璧にホームパーティーの
食事を用意して待ち構えていた。
678 :
修正です。:2005/09/10(土) 03:32:05
招待客は80人にもなった。大使館関係者、スペインと関係あるアメリカ
企業、エンリケがアランのパーティーで仲良くなった、ビル、ジュリアン、
トム、ギルバートも入っていた。もちろんアランとダニーも招待客の一人だ。
メニューはイベリコ豚とハモンセラーノの生ハム。イチジクとメロン添え。
スペインオムレツ、ガスパチョ、ウナギの稚魚のトマト煮込み、エビと
マッシュルームのガーリックソテー、牛トリッパの煮込み、魚介類の
スープ、パン、チーズ。全てスペインが揃っていた。
ミッドタウンのアパートは結局100人に近い人でにぎわっていた。
招待状の有無を見るような厳密さはなく、エンリケは皆を迎え入れて
いた。駐米のスペイン大使すら姿を現した。エディターのジュリアンは
早速セレブ担当の記者を携帯で呼び出し、取材することにした。
肝心のアランとダニーは、30分遅れてアパートについた。
681 :
fusianasan:2005/09/10(土) 03:40:11
アランはスペインに表してダニーとおそろいのロエベのシャツとジャケットを
着ていた。ネクタイが好きなアランはシビラのタイを合わせて着用していた。
エンリケがアランとダニーを歓待し、スペイン大使に紹介する。
「お会いできて光栄です。」ダニーがよどみないスペイン語で挨拶すると
大喜びの大使はフォトグラファーを呼んで、写真を取らせた。
「何だか今日は雰囲気違うね。」ダニーがちょっと臆して言った。
「ああ、取材も入ってるし、かなりセレブだな。」アランも言った。
「とにかく腹ごしらえや。」「そうだね。」二人で食事を取りに
ダイニングに向かう。エンリケはすっかり悦に入っていた。
これでダニー・テイラー出し抜くこと決定だね。
どの料理もどこのスペイン料理レストランで食べるより美味しかった。
ダニーは改めてエンリケの力量を見せ付けられた形になった。
マーティンは何してんのやろ。
マーティンはエンリケと大使と一緒に取材を受けていた。笑みを浮かべている。
なぜか嫉妬を感じるダニーだった。
アランは大喜びのジュリアン、トム、ギルバート、ビルと話をしていた。
女性たちが次々に話かけてくる。「困ったわ。お呼びじゃないのに〜。」
ゲイであることを隠そうとしないビルがあからさまに嫌がった。
クロゼットゲイのほかの皆は愛想笑いを浮かべてかわしていた。
ダニーも中に戻ると、皆でスパニッシュオムレツが何たるかを論じる
仲間となった。
「結局ポテトの薄切りよ。」ビルが結論を出した。
確かにアメリカのオムレツにはポテトは入らない。リオハの赤ワインで
乾杯する仲間。ダニーは、段々心地悪さを感じていた。
俺がマイアミからNYに来たのはこんなことのためかいな。
部屋の奥で取材を受けているマーティンと目が合った。
辛そうだった。
アランもスペイン人の女性に囲まれて話をしていた。
そのすきにダニーはマーティンのそばに寄った。
「お前、疲れてないか?」「うん、大丈夫だよ。それより聞いて。
今日のワイン、僕が選んだんだよ。」「そうか、いい仕事したな。」
二人だけの乾杯。いつから二人ともこんなに距離が空いたのだろう。
二人で窓辺で話しているとフォトグラファーが1ショット取った。
あっという間だった。 エンリケが大使のスピーチだと叫んでいる。
二人とも直立不動でスピーチを聞いた。「・・・とにかくアメリカと
スペインがこのような協調体制でいられることは世界平和へ繋がる
ことであり・・・」延々と10分は続いた。皆が終わると拍手喝采した。
ホストのエンリケも紹介される。ダニーは、国際舞台に出ているエンリケに
激しく嫉妬した。 俺、勝ち目ないかもしれん・・・。
「ダニー。」アランが呼びに来た。「じゃあまたな。」「うん。」
別れる二人。アランはスペイン大使館員からアポイントの予約を
取っていた。「商売になってるやん。」「まあな。」
「俺も精神科医になればよかった。FBIなんて皆嫌いやもんな。」
「何言ってるのよ、ダニー。貴方は私たちの日常を守ってくれてるのよ。」
ビルがなぐさめてくれる。
パーティーもお開きとなり、皆が帰り始めた。ダニーもアランと帰ろうと
していたところ、エンリケが呼び止めた。
「どうです、今日4人で飲みませんか?」
思いがけない申し出だった。すでにカバで意識朦朧のダニーは、アランに
従うことにした。「ああ、いいですとも。」
招待客全員を送り出したのが午前1時。かなり疲れている。
エンリケは律してアルコールを取らなかったので、シラフだ。
他の3人はかなりアルコールが来ていた。
「アラン、貴方はダニーを愛してますか?」まっすぐな質問だ。
「もちろんだとも。」アランは眠たい目をこすりながら答えた。
「ダニー、僕はマーティンが好きだ。このまま進んでもいいですか?」
わざと堅苦しい英語で尋ねるエンリケ。
「マーティンがええと言うならええで。」エンリケも眠気がきていた。
「じゃあマーティン、今、誰といると一番楽しいですか?」
マーティンは思わず答えた。「エンリケ!」
エンリケはその答えに満足すると、皆にミネラルウォーターを振舞った。
翌々週出版されたヴァニティー・フェアにパーティーのショットが見開きで
紹介されていた。仲睦まじく写真に収まるエンリケとマーティンの写真が
目立っていた。ボスはマーティンを呼び出した。
「マーティン、私生活に何これいうつもりはないが、これは大事だ。
ワシントンDCからも連絡が入っている。君にはしばらく捜査を
はずれて広報をしてもらうことにするから。」
「え、でもたった1つの写真でですか?」
「こんな写真を取られた捜査官が囮捜査出来ると思うか?」
ボスの言葉は絶対だった。
「はい」「あっダニー、この前はどうもありがとう」
「あの、僕はダニーじゃないんだ。彼、今ちょっと手が離せなくってさ」
「あら、ごめんなさい。それじゃまた掛け直します」
「ちょっと待って、君はブロンクスの人?」「え?いいえ、違うけど・・」
「そう、どこに行けば君に会える?」「え?・・・・」
「僕も君に会いたいんだ・・あ痛っー」ダニーがマーティンの向う脛を蹴った。
向う脛を押さえて片足でケンケンするマーティン。
「ちょっと何?なんなのよ!」ダニーは電話を切りたくても手が使えない。
「痛いなぁ、蹴るなよ!・・・君はどこのストリートのスーザン?」
「ストリート?」「娼婦だろ?僕もお金持ってるよ」ダニーの蹴りを交わす。
「娼婦?・・・ダニーとセックスなんてしてないけど!!!あんた、さっきから失礼じゃない!」
「え・・・あっあの・・」「セクハラとか名誉毀損て言葉知らないの?」
「ごめんなさい・・・」「もう結構よ!!二度と電話しないからっ!!」
スーザンの剣幕に呆然と佇むマーティン・・・。
ダニーはため息をついた。あーあ、スーザンともこれでパーやな・・・。
「お前、僕も会いたいって・・・体もよう触らん癖に」ダニーは悪態をついた。
「娼婦と勘違いしたことは謝るよ。でも浮気相手なんじゃないの?」
「違うわ。スーザンもマジ切れで否定してたやろが!」
「じゃあ誰さ?」「靴屋で会うただけや、それ以上知らんがな」
「携帯の番号知ってたじゃない、登録までしてるしさ」
「わかった、スカッシュの時の子や。アディダスで偶然会うて番号交換しただけ。
また一緒にしよかってな。ただのそれだけやないか!」
「それだけで終わらないくせに・・・もういいよ、帰る」
「待てっ、勘違いしたまま帰るな!!」ダニーは必死に止めた。
尿が伝った部分が徐々に痛痒くなってきた。「悪いけど、服脱がしてくれ」
マーティンは放っておけず、パンツとトランクスをいっしょに下ろした。
恥ずかしそうに隠そうとするダニーを、バスルームに連れて行き
全裸にすると、シャワーをかけた。丁寧にボディーソープで洗う。
「あーさっぱりした」ダニーは痛痒さから解放され、少しは落ち着いた。
バスルームから出ると、マーティンの携帯にボスから電話が!
「はい」「マーティン、ダニーの家か?」「ええ」「私からの贈り物は見たか?」
「贈り物?」「そう、拘束されたダニーだよ」「あっあの鍵が合わなくて・・・」
「当たり前だ、違う鍵を投げ込んどいたんだから。一晩中、好きにしていいぞ!」
「ええっ、そんなこと言われても・・・」「テーブルの上にいつものを置いといた」
「あっこれ・・・でも僕はそんな気分になれないよ・・・」
「そうか、じゃあそのまま放置プレイだ。漏らすのを見るのも悪くない」
「えっ!見てたの?」「クッ、はっはっは、すでにお漏らしした後か!」
「ボス、鍵はどこ?」「また明日だ」ボスは電話を切ってしまった。
「ボス、何て?」ダニーは必死だった。
「うん・・・また明日だって」「アホかー、あのオッサン!拷問か!!」
「お前、手に何持ってるんや?」マーティンは例のチューブを見せた。
「そんなもん、いつの間に置いたんやろ?」ダニーはブツブツ言っている。
「それより床を三回水拭きして、そのあと乾いたんで磨いといてくれ」
「うん」マーティンは床の尿を拭き始めた。
「もっと力いれて!」「うん」マーティンは一生懸命拭いた。
「匂いが残らんようにしっかりな」「ああ」ちゃんとやってるのに・・・。
「そこ!まだ拭けてないやん」「あーもう、うるさいっ!ちょっと黙れよ!」
マーティンは雑巾をダニーの顔にぶつけた。
「放っといて帰ることだってできるんだ!何だよ、えらそうに!!
お世辞ばっかで疲れたからって、僕に当たらないで!!」
マーティンはイライラを吐き出した。
「スーザンだってそうさ!僕が気づかなかったら寝てただろ?僕はそこまでトロくない!」
「何もしてへんやろ!親父さんのことかてそうや、話したら普通の人やんかっ!
お前が陰気臭い、いんけつな顔してるから会話も弾まへんのや!!」
「何だよ、ペラペラペラペラ!フィッツジェラルド捜査官の斬新なアイデアって何?
そんなアイデア出したこともない。いつも足を引っ張る僕への当てつけかよ!!」
マーティンはランチを思い出し、怒りが爆発した。
ボスの例のチューブを手に取ると、ダニーのペニスに塗りつけた。
さらにアナルにもたっぷり塗ると、転げまわるダニーを押さえつけた。
「僕に丁寧に頼め、ダニー。じゃなきゃいつまでもこのままだ」
マーティンは怒りで豹変した。冷静さが逆に恐ろしい。
「なっ・・・誰が頼むか・・・んぁぁ」マーティンがアナルをなぞった。
「あぅ・・ハァハァ」指を入れるがすぐに引き抜く。「くぁぁー」ダニーが叫んだ。
「どうする?このままか、それとも僕に頭を下げるか?」
「・・・・・」ダニーも口を割らない。マーティンはペニスの根元を紐できつく縛った。
「じゃあね、ダニー。いつまでも苦しんでろ!」マーティンはソファーに座ってAVを見始めた。
犯された花びらだって、趣味悪い・・・。男二人が、前後から女を串刺しにしている。
ダニーのペニスはすでに反応してピクピクしていた。
ダニーの切ない吐息が聞こえる。マーティンはそれをじっと見ていた。
「ぅぅん・・ぁぁ・・」マーティンはダニーの上に跨った。「どう?頼む気になった?」
ダニーは頷いた。「そんなんじゃだめだ!ちゃんと僕に頼め!!」
「何とかしてください」ダニーの泣きそうな声。
マーティンは興奮したが、冷たく言った。「もっと丁寧に、父に言ったようにだ!」
「フィッツジェラルド捜査官、どうかこの痒みを静めていただけませんか。
僕はもう耐えられそうにありません。お願いします・・・」ダニーはもう限界だ。
マーティンはコンドームをつけるとダニーのアナルに挿入した。
ダニーより先に射精したくない。存分に嬲ってから放出だ。
「ぁぁん、もっ、もっと強く擦って」ダニーの啜り泣きが響く。
「そんなに欲しかったら自分で動けよ」マーティンは仰向けになった。
ダニーに手を貸し、騎乗位にさせると下から見上げた。
「あぅぅ・・・ぁぁ・ぅぅん」ダニーが狂ったように打ち付けてくる。
マーティンは腰を掴むと、体を入れ替え、足を持ち上げて激しく挿入した。
「うっ・・」マーティンは射精してしまった。ダニーはまだだ。
くそっ、マーティンはペニスを抜くとコンドームを取った。
白濁した精液が中に溜まっている。
「ダニー、これを飲め!」ダニーの口に流し込んだ。
咳き込みながら飲みこむダニーを見て、また勃起した。
「さあ、もう一度だ」マーティンはバックから突き上げた。
「あぁ、マーティン・・紐を外してくれ」「誰に言ってんだ!」
「ぅぁぁ・・・紐を外してください・・・フィッジェラルド捜査官」
「名前を間違えるとは失敬な!」マーティンはさらにペニスをきつく握った。
「ぅぅぁあー・・・申し訳ありません・・フィッツジェラルド捜査官」ダニーはもう限界だった。
マーティンが紐を取ると同時に精液が飛んだ。
精液を指ですくうと、嫌がるダニーの口に擦り付けた。
マーティンの携帯に、またボスから電話が掛かってきた。
「はい・・・」「マーティン、その様子じゃお楽しみは終わったようだな」
「ええ、ボス。でも・・・後味がよくないというか・・」「わかった、今から行くよ」
「はい・・・」マーティンは電話を切ると、ダニーに告げた。
「もう普通に喋ってもええの?それとも、もうお話してもよろしいでしょうか?」
「ああ、もう普通でいいよ」落ち込んだままのマーティンに戻っていた。
「ありがとうございます、フィッツジェラルド捜査官。身に余る光栄でございます」
ダニーはわざと言った。「もういいんだよ、ダニー」ため息をつくマーティン。
「オレも悪かった。ごめんな。でも、スーザンとはほんまに何もないで」
「うん、現時点ではね・・・でもさ、浮気する気だったんでしょ?」「・・・・・」
「答えがないのが答えだね・・・」マーティンはさらに落ち込んだ。
ボスが来た。玄関のドアを開けるなり抱きつくマーティン。
「どうした?ん?とにかく入るぞ」ボスは抱えるようにリビングへ進んだ。
全裸のダニーが押し黙っている。ボスは鍵を取り出すと、マーティンに渡した。
「外すかどうか、お前が決めろ」マーティンは鍵を見つめて動かない。
「ボス!」そのまましがみつくマーティン。ボスもダニーも困惑した。
「ダニー、お前まだ何かしたのか?」「・・・・まだ未遂ですわ」
「よしよし、パパと帰ろうな」ボスはマーティンを抱きしめた。
「ちょっと、パパて・・・。えーっ?ボス?マーティンも・・・」
「いいんだ、ダニー。黙ってろ!」マーティンはじっとしたまま動かなかった。
「ボス、帰るってどこに帰るんですか?やばいっすよ、そんなん・・」
「お前のベッドルームにだ。さあ、パパと行こうな」ボスはマーティンを連れて行った。
ボスはマーティンを寝かせると、横に添い寝した。
「いい子だ、マーティン。愛してるぞ」ボスはマーティンを赤ん坊のようにあやした。
すっかり身を委ねるマーティン。ボスに背中をなでられ寝てしまった。
ボスは握っていた鍵を取ると、ダニーの元へ戻った。
「あー疲れた、こんなん二度と嫌ですよ。それよりもマーティンや、頭狂たんやろか」
ようやく解放され、体を伸ばしながら訝った。
「あいつがなぜあんなに落ち込んでいるかわかるか?」
「・・・・」「あいつから親父を取り上げたんだよ、お前は!」
「お前はいつもそうだ!自分以外の人間が傷ついても気づかない。いい加減大人になれ!!」
ボスの叱責は衝撃的だった。
自分でも認めたくないことを言い当てられ、ダニーは困惑した。
マーティンがヴァニティー・フェアのグラビアを飾って3週間過ぎた。
ボスもそろそろよかろうと、マーティンをデスクワークだけから、
通常の勤務に戻した。
「よかったじゃない!マーティン。おかえり。」サマンサが声をかける。
潜伏期間3週間、じっとしていたマーティンはダニーと同じフィールドワーク
に戻りたくてたまらなくなっていた。
マーティンはダニーに尋ねる。「今のヤマは?」「何もないねん。」
そう思ってみてみると、ヴィヴィアンもサマンサも机の整理や経費
精算をしていた。「そうなんだ・・・」「それだけ平和ってこっちゃな。」
ダニーがちゃかして言った。
その頃、エンリケはアランにアポイントを申し入れていた。
「はい、あー、マーティンの友達のエンリケさんですね。判りました。
明日の夜7時ではいかがです?」
アランは電話を切るとほくそ笑んだ。とうとうタッグが組めるだろうか。
エンリケがアランのアパートを訪れた。
「あらためて初めまして。エンリケ・トレスです。」
「そう固くならないで、ソファーに腰掛けて。」
アランの人をリラックスさせる話術は実に多彩だった。エンリケも
すぐさまリラックスする。
「お悩みはどういう事かな。」「僕の恋人のことです。」
「申し訳ないが、君たちを見ていたから、それはマーティンという
人物のことかなあ。」「シー、その通りです。」
「で、何が望みなんだい?」「彼は僕に全身で向き合ってくれていない。
いつもエージェントテイラーがいるんです。」
「それは物理的に?」アランにも大切な質問だった。
「いえ、精神的に。マーティンはダニーといつも一緒にいる。」
「それでその絆を断ちたいと思っているのかい?」
「当たり前です。愛している人、自分を愛す当たり前。他の人を愛す
それは間違い。」エンリケも興奮して英語がたどたどしくなっている。
「君はとにかくマーティンに余りある愛情を注ぎなさい。彼の出方を
待つしかなさそうだね。」「はい。判りました。」
アランはエンリケを送り出しながら、マーティンの相手がこんなに
切なくマーティンを思っていることに驚いていた。
それなら、簡単なんだがな。ダニーが複雑な奴だから・・・・
アランの心にひらめくものはあったが、少し難しそうだった。
毎週月曜日のジャンケンは冗談で始めたものの、続いていた。
「なだ万」で今回はダニ−とエンリケは勝負していた。
「なだ万」は鉄板焼きコーナー、寿司コーナー、アラカルトのテーブルと
分かれており、今回はアラカルトのテーブルに座る3人だった。
結局、ダニーが今週末、マーティンと過ごすことが決まった。
エンリケは握手を求め「どうか大切にして欲しい。」とスペイン語で
言った。「もちろんだとも。」スペイン語で返すダニー。
「ほら、また二人でスペイン語会話じゃん。僕わからないよ。」
「悪いようにはならない。安心して。」エンリケがマーティンの額に
キスをした。
二人はアトランティック・シティーに行くことにした。
ケープ・メイもよかったが、二人だけの沈黙が怖かったのだ。
カジノではマーティンがケノ、ダニーがブラック・ジャックに挑んでいた。
マーティンは5ドルの勝ちだったが、ダニーが500ドルの勝ちを勝ち取って
いた。
「これからどうする?」ワクワクするマーティンに
「部屋へ行こう。」と言うダニー。
「だってせっかく500ドル勝ったんだよ!」
「そんなのは泡沫の夢やぞ。部屋で仲良うやろうや。」
マーティンも依存はなかった。ダニーと一緒の夜だ。
カジノがスイートを用意してくれていた。子供のようにはしゃぐ
マーティン。ダニーはシャンパンとオードブルをオーダーし、ベッドに
寝転がった。「ねぇ、ダニー、シャワーすごく広いよ!」「よかったなあ。」
ルームサービスが来た。明らかにチップをねだる。ダニーは20ドル札を
握らせて退散してもらった。
ヴーヴクリコで乾杯する二人。思えば、さんでぃえごに最初に出張させて
もらった時は、二人とも自分の部屋で酒飲んでたんやな。
ダニーは感傷にふけった。シャワーを浴びて気分爽快のマーティンは
シャンパンをアイスペールからとって、「さすがスイートだね。」と
満足そうだった。
「お前、今、幸せか?」唐突にダニーが尋ねた。
「そりゃ色々あるけど、まぁ幸せかな。」マーティンは頬を紅くして
シャンパンを飲んでいる。
ボンが幸せなら俺の首も繋がってることやな。
ダニーは自分の保身も常に考えて行動するタイプだった。マーティンには
あからさますぎて、見せられない姿の一つだ。
「で、500ドルどうするの?」マーティンが尋ねる。
「そうな〜。フォーシーズンでブランチなんてどうや?」
「乗った!すごい豪勢だね。楽しみだよ。」
マーティンはベッドの弾み具合を確かめているうちに寝てしまった。
フォーシーズンのブランチは、アランと過ごしたウォルドルフアストリア
と同様だった。二人に興味を持つマダムたちが部屋番号を渡したり、
ドリンクを差し入れたりしていた。
「ダニィ・・これって何?」「無視すればいいんや。それが肝心やで。」
フォーシーズンのフロアマネージャーに、ダニーはそれ以降の差し入れを
お断りするようお願いした。
「何だかすごいね。」「女の欲望は激しいでえ。」
「女に詳しいテイラー先生の教えか。」「俺、そんなに詳しくないで。」
しばし喧嘩する。しかし今日のマーティンはおおむね上機嫌だった。
ダニーは安堵する。 いつからこんなにマーティンに気を遣わなきゃ
いけなくなったんやろ。
二人の経てきた道をしばし回想するダニーだった。
ダニーは猛烈に一人っきりになりたい衝動に駆られた。
アトランティックシティーから帰って、ダニーはアランにも
マーティンにも連絡を取らず2週間を過ごした。
エンリケからダニーに電話が入った。
「ダニー、話したいことがある。」「じゃあ今日8時にオイスター・バーで
どうやん?」「シー。判った。」
ダニーは席の隣りであくせく書類の整理をしているマーティンを見つめていた。
727 :
fusianasan:2005/09/10(土) 06:11:45
エンリケは時間通りにセントラル・ステーションに現れた。
ダニーは予約席に彼を案内すると話し始めた。
「マーティンに何かあったのか?」「シー。2週間連絡なし。僕も
プライドあるから追い回すのは好きじゃない。」
ちょうど自分が連絡を絶った頃からだ。
「支局には毎日来ているから、安心していいよ。何かあったら、
他でもない君に言うだろう。」ダニーはエンリケを安堵させた。
マーティン、引きこもりか・・・・
翌日、ダニーはマーティンを誘って、ディナーに出かけた。
二人でよく通ったミッドタウンのダイナーだった。
「僕の伝言聞いてくれた?」「ごめんな。俺、たまらなく一人に
なりたくなって、誰にも連絡とらなかったん。」
「アランにも?」「アランにもや。実はエンリケが心配して連絡
してきたんや。」「エンリケが?」「あいつ、お前が思っている
以上に真剣やぞ。どうする?」「わからないよ。」
二人が頼んだクラムチャウダーが来た。ダニーはトマトベースの
マンハッタン風、マーティンはクリームベースのニューイングランド風
だった。生牡蠣のプラターを食べながら、話を続ける。
「僕は前にも言ってるように、エンリケはダニーがいない時の替えでしか
ないんだ。判ってよ。」
「申し訳ないんやけど、俺にはその替えっていうのが判らんのや。」
「それならいいよ。替えが正式品になっちゃうかもしれないし。」
「何か物騒やな。」「だってダニー、君がやってることの結果だよ。」
ダニーは自分の何気ない日常の繰り返しが、マーティンにこのような
変化をもたらしたとは、思ってもいなかった。今すぐ抱きしめたい!
そんな気持ちが胸を一杯にした。「マーティン・・・」「でも、アランを
切れないんでしょ。もう判ってるから。チャウダー飲もうよ。」
「すまん。俺が煮え切らなくて。」「いいよ。ダニーも良く考えて。」
それだけ言うとマーティンはクラムチャウダーに取り掛かった。
父ヴィクターは、マーティンがNYの社交界で話題になっているのが、
嬉しくてたまらないようだった。早速ジャックに電話を入れる。
「家の子が活躍しているようで、ワシントンでもウワサで持ちきりだ。」
「はぁ〜、その代わり囮捜査に出られなくなりました。」
「囮捜査なぞ、例のテイラー捜査官にやってもらえばいい。とにかく
息子はつかの間だがセレブなんだから、そのように対応してくれ。」
「はい、わかりました。」
ボスはマーティンに次の2週間デスクワークを命じた。
NYでのハイライトはそれ位の長さだろう。
「ボス、まだマーティンは外回りできんでしょうか?」
ダニーが部屋に入るなりそう言った。
「俺一人じゃとうていまわれない数よって。」
「我慢してくれ。クアンティコの指示だ。」「了解っす。」
ダニーも何だか知らないが、何かが蠢いているのを察知していた。
マーティンの2度目のセレブ扱いもやっと終わり、チーム全員が揃った。
ボスが全員を集めて会議を開いた。
「前回のダニーはさておき、マーティンの今回の騒ぎもやっと収まった。
皆のプライバシーまでは干渉しないが、くれぐれも自分たちの職務を
わきまえた行動をとるように。」チーム全員頷く。
ダニーとマーティンは、目配せをした。
トイレで二人だけで話しする。
「ボス、僕たちのプライバシーめちゃくちゃ干渉してるのに良く言えたよね。」
「まったくなぁ。」
その夜、珍しくエンリケがダニー、マーティン、アランを食事に誘ってきた。
4人で飲んだことはあっても、食事は初めてのことだ。
集合場所はヴィレッジのベルギー料理「カフェ・ド・ブリュッセル」
ザガットでも点数の高い店だ。
とりあえずベルギービールで乾杯する。「僕らの友情に!」「乾杯!」
バケツ一杯のムール貝の白ワイン蒸しと、フレンチフライをつまみながら、
エンリケが本題に入った。「皆、HIV検査受けよう!」
アランが笑い出した。「この中で誰かが浮気してるとでもいうのかい?」
マーティンがダニーを横目で見る。ダニーはアランのクリステンとの情事を
思い出していた。
「僕ら4人、運命共同体だから、この輪をくずさないようにするために
検査は必要。」エンリケは力説した。
「そこまで言うなら、受けようやないか。異論ある奴おるか?」
「ないよ。」アランはポーカーフェイスで即座に返事した。
「僕も・・」ボスとの危ない遊びを気にしながらマーティンも答える。
「じゃあ、2週間後にまたここに集合する、いいね。」
その後の食事はなごやかなものだった。事情を知らない人が見たら、
仲のよい4人の男性がビジネスディナーを取っているように見えるだろう。
しかし、実のところは愛憎がごちゃごちゃに絡まっている4人なのだ。
4人は自然とアランとダニー、エンリケとマーティンという二組に分かれた。
ダニーとマーティンの目線が交錯する。
アランが「さぁダニー帰ろう。」とすっとエスコートする。マーティンも
諦めたようにエンリケの腕を取って、二手に分かれた。
「HIV検査か。僕はリスクが大きいなぁ。」アランが言う。
「何で?アラン、遊んでるんか?この間のクリステンみたいに?」ダニーが
驚いて聞く。「いや、医者だからだよ。」「あ、そうか。」
「検査、トムに頼もうか。」「そうやね。事情知ってるしな。」
マーティンは尋ねた。「なんで急に検査なんて言い出したの、エンリケ?」
「親友がHIVで死んだんだ。マドリッドだから葬式にも行けなかった。」
「そうだったんだ。」「マーティンは信用できるけれど、ダニーとアランは
危ないと思う。」エンリケは断言した。「そう?」「勘だけど二人とも
バイセクシュアルだろうから、リスク大きいよ。」
僕も危ない遊びをさせられてるんだよ、エンリケ・・・
告白できない秘密をマーティンは心の中でつぶやいていた。
果たして2週間後、同じレストランに4人は顔を揃えた。
それぞれ診断書を持って来ていた。そして、乾杯!!見事全員がネガティブだ。
「ネガティブに!」「ネガティブに!」金曜日なので、全員ピッチが早い。
食事を終えて、ライブを聞きに「カフェ・ワ?」まで歩くことにした。
ここはホーム・バンドが最新&懐かしのヒットソングをライブで聞かせる店だ。
クリストファー・ストリートが近いのでゲイのカップルも多い。
「カフェ・ワ?」は週末のため超満員だった。押し合いへし合い中に入り、
スタンディグテーブルを確保する。エンリケは音楽がかかると一層生き生きとし、
踊り始めていた。「ダニーは踊らないのかい?」アランが尋ねる。
「俺?この間のミッションで懲りたわ。」しかし実は踊りたくてうずうずして
いるダニーだった。「アランが踊るなら踊るで。」「じゃあ行こう。」
3人はマーティンを残してフロアに降りていった。
残されたマーティンはドライマティーニを飲みながら、3人の楽しそうな様子を
見ていた。 僕、踊り出来ないからなぁ。みんないいなぁ。
「寂しそうだね。」肩に手をかけられた。「はあ?」見ると、ピアズ・ブロズナンに
面差しの似た紳士がグラスを片手に隣りに立っていた。「そうでもないよ。」
マーティンは振り払おうとしたが、込んでいてうまくいかない。
その時、フロアのエンリケが、マーティンの様子に気がつき、飛び出してきた。
「僕の連れに用ですか!」「ああ友達連れだったのか、すまない。」
「マーティン、僕から離れない、これ約束!」エンリケは明らかに怒っていた。
形相が険しくなっている。アランとダニーは全く気がつかず踊りに熱中していた。
ダニーは女性とは数え切れぬほどダンスしたことがあったが、男性とは
初めてだった。しかしアランもなかなかの名手で、上品なステップで曲に
合わせている。ダニーの方は生来の官能ダンスを披露しており、フロアは
いつしか二人を取り囲む形でひとだかりが出来ていた。
ダニーは何でも出来るんだなぁ。僕って何でダメなんだろう。
マーティンはここでも孤独感を深めていた。
エンリケは必死でマーティンを躍らせようと手取り足取り教えていた。
少しずつ固かったマーティンの身体がリズムに乗るようになってきた。
「うまいよ、マーティン。その調子!」マーティンも何とか皆に合わせて
踊れるようになってきた。うれしさに思わず「ダニー!見て!僕、踊れるよ!」
と叫んでいた。凍てつくエンリケ。
ダニーはエンリケの様子を見て取り「うっまいなぁ〜先生がええと違うなぁ〜」と
エンリケを立てた。はっと気がつくマーティン。
今日の僕は何をやってもエンリケを怒らせちゃう。厄日かな。
ブレイク・タイムに入りバンド演奏が止んだ。バーカウンターで休む4人。
「楽しいなぁ。ええエクササイズにもなるし。」
ダニーはエンリケとマーティンを気にし、話を盛り上げようと口火を切った。
「おじさんにはちょっときついよ、ダニー。」アランが笑いながら言う。
エンリケは急にマーティンに説教を始めた。「知らない人と話しちゃだめ!」
「うん・・・」子供のように小さくなるマーティン。
「何があったん?」「マーティン、知らない男に肩抱かれてた。僕がしかった。」
感情が高まると英語がたどたどしくなるのがエンリケの特徴だった。今がそれだ。
「マーティン、そんなんしちゃダメやで。エンリケが心配するやん。」
ダニーは心配してくれないの? マーティンの心の叫び。
場の空気を読んで、アランが「シャンパンでも開けようか!」と言う。
「賛成〜!」ダニーもそれに答える。エンリケも表情を和らげ頷く。
ヴーヴクリコのイエローラベルがワインクーラーに入って目の前に現れる。
「それじゃ、あらためてネガティブに乾杯!」アランは大人だ。
ダニーが見惚れているを目にし、マーティンはさらに落ち込んだ。
僕、アランとダニーの取り合いしても勝ち目ないや・・・
4人とも飲んでは踊り、飲んでは踊りを繰り返し、ぐでんぐでん状態になった。
車で帰るのは危険ということで、タクシーに乗り込む。「じゃあまた!」
「ばいばい!」皆ろれつが回らない。アランはダニー、マーティンはエンリケと
タクシーに乗って、アッパー方面へ向かう。
事は翌日発覚した。アランもマーティンもお互いの相手を間違え、
アランがエンリケ、マーティンがダニーを連れて、家に帰っていたのだった。
気がついたのはアランだった。スペイン語の寝言で起こされたからだ。
「おい、おい、君はダニーかい、エンリケかい?」「シー、エンリケ・・・」
うわぁ、エンリケと寝てしまったのか・・・
その頃マーティンも起きていた。「エンリケ、手が重いよ。」
「エンリケやないで、ダニーや・・うぅん。」「え、ダニーなの!」
マーティンは小躍りしたい気持ちでダニーを抱きしめた。
アランはとるものもとりあえずシャワーし、コーヒーを入れた。
エンリケはまだベッドで寝返り打っている。アランは考えた。
エンリケと二人きりになることはめったにない。よし!
はははと声を立てて笑いながら、フリーザーからベーグルを二個取り出すと、
ハム&チーズサンドを作り始めた。
ダニーは飛び起きた。
「俺、何でお前とおるねん!てっきりアランと帰ったはずやったのに。」
「間違えちゃったみたいだよ。4人ともすごく酔ってたし。」
「じゃあ、アランの家にはエンリケがいるってわけや。」
ダニーの心の中は複雑だった。二人は寝たのだろうか・・・
「ダニィ・・もう少し寝てようよ〜」久しぶりのボンの甘え声。
ダニーはベランダへ出て、アランの家に電話する。「はいショア。」
「アラン、俺やけど。」「マーティンの家かい?」「うん。エンリケおるの?」
「まだぐっすり眠ってるよ。」「それで・・・」「君が心配しているような
ことができる状態だと思うかい?家に帰ってバタンキューだよ。」
ダニーはそれを聞いて安心した。「今日はマーティンのそばにいてやりなさい。」
「うん、そうするわ。また連絡する。」「じゃあ。」
とりあえず一安心したダニーだった。マーティンがチラチラこちらを見ている。
「君のエンリケはアランの家でまだ寝てるそうだよ。」
「僕のエンリケって何さ。」「言葉のアヤや。」「・・・」
「僕たち、どうしてこんなに遠くなっちゃったの?」「おい、やめようや。
土曜日の二日酔いの朝話す内容じゃないで。」「・・・」
「それよりH&Hベーグル食いに行こう。」「判ったよ。」
その日は一日、機嫌の悪いマーティンの世話を余儀なくされたダニーだった。
アランは快活な態度でエンリケと話を進めていた。
二人とも目的は同じ。ダニーとマーティンを引き離し、二人のものに
するためだった。「でアランどうすればいい?」「僕が出来るだけダニーを
拘束する。その間君はマーティンに心からの愛情を注ぐんだ。」
「シー、スペイン人、それは得意だから任せて欲しい。」
「僕の方も出来るだけ二人が会わないように画策するから。」
「シー。ディール・イズ・ダンだね。」「ああ。」
翌週は事件も起こり、チーム全員が引き締まった状態で仕事に没頭していた。
キャリアウーマンの失踪だった。私生活は相当孤独だったらしい。
「付き合ってる人なし。社交性のない人で仕事一筋だったみたい。」
サマンサが報告する。「自殺願望はあったんかいな。」ダニーが続ける。
「仕事はうまく行ってるみたいだから、それはないんじゃないかな。」
ヴィヴィアンが付け足す。「じゃあ、いつもと同じ手順で捜査開始だ。」
ボスが告げる。
マーティンは何故か仕事に没頭できなかった。ダニーが自分といる時、
妙に他人行儀になることが気になっていたからだ。
僕はお荷物なんだろうか。アランのほうはいいんだろうか?
不安は膨らむばかりだった。
アランの方は、やれチャリティーディナーだ、ホームパーティーだと
ダニーの夜の時間を拘束し、マーティンとの交流を妨げていた。
エンリケは日に何度もマーティンの携帯に電話をよこし、気遣っている様子を
見せていた。思わず甘えてしまうマーティン。夜はほとんど、エンリケと
過ごす日が続いていた。
ボスに言われたことを考えながら、ソファーに寝そべる。
父親と笑い話すらしたことのないマーティンにとって、
昼間の自分の態度は残酷だった。さらに浮気疑惑も・・・。
まさにボスが言うように、父親を奪ったといっても過言ではない。
マーティンは静かな寝息を立てている。傍らにはボスが寄り添うように横たわっていた。
心なしか、いつもより悲しそうなマーティンの寝顔。
利用してるんやないんや・・・ダニーの罪悪感は、またもや自己弁護していた。
ボスは、必死に自分に抱きついてきたマーティンを思い出していた。
自分を慕う部下、それ以上の感情はない。
あのムカつくヴィクターの息子を、慰み者にして満足していたはずなのに。
あいつの知らない息子の一面を私は知っている。オーガズムのポイントも。
だが、寝かしつけたときのことが忘れられない。
パパか・・・そろそろ家族が恋しくなってきたのかも・・・。
私は一体どうしたいんだ?自問自答を繰り返すボスだった。
「おはよう、ダニー」マーティンはダニーを起こした。
「んー・・・おはよう、痛たた」ダニーは肩の筋肉が痛んだ。手錠プレイの後遺症だ。
「大丈夫?手貸そうか?」「ああ、頼むわ」
心配そうに見つめるマーティンに起こしてもらい、そのまま抱きしめた。
「ごめんな、いろいろと・・・」ダニーは謝った。
「ん、もういいんだよ。いつものことさ」マーティンは無理に笑おうとしたが、余計にぎこちなくなってしまった。
「そういえばボスは?まだ寝てんの?」「ううん、朝早く帰ったよ」
違和感を感じ、ポケットに手を入れると飴玉が入っていた。
マーティンは気づかれないようにそっと手を戻した。
「僕も今日は帰るね」「なんか用事あるんか?」
「うん、父から連絡があると思うから」「そうか・・・わかった、送ったろ」
「いいよ、一人で帰れるよ」「ええねん、オレの気持ちや」
ダニーは素早く着替えると車のキーを取った。
寝癖のボサボサ頭を隠すためにキャップを被ると出発だ。
ダニーに送ってもらい、アパートに入ると携帯がなった。ボスだ。
「はい」「マーティン?今から行ってもいいか?」
「今から?いいけど、僕も帰ったばかりで」「知ってる、ダニーに送ってもらったろ」
「えっ?見てたの?!!」慌てて下に下りるとボスが来た。
「やぁ、マーティン!」ボスは紙袋を抱えていた。
「飴玉入ってたろ?食べたか?」「ううん・・・後で食べるよ」
「ボス、今日はどうしたの?」「お前と遊ぼうと思ってな、ずっと待ってたんだ」
「僕と?僕ならもうへーきだよ」「そうか、まあいいじゃないか。メシはまだか?」
「うん」「よーし、一緒に作ろう。手伝え!」ボスはキッチンへ行った。
マーティンに卵を割らせ、パンケーキミックスと混ぜさせた。
さらにオレンジを取り出し、洗って八つに切るように言った。
マーティンは四等分したものの、これ以上は手を切りそうで固まった。
「どうした?」「怖いよ・・・」ボスは笑いながら残りを切った。
一通り出来上がり、ボスとマーティンは食べ始めた。
「なんかクレイマー・クレイマーみたい」マーティンが言った。
「ああ、ダスティン・ホフマンの。父子家庭の朝メシ風景だったな。
マーティン、私をパパって呼んでもいいぞ。」
「えっパパ・・・・」「あー嫌なら今まで通りボスでいい」
「あの・・・パパ・・」マーティンは照れくさそうに呼んだ。
後片付けが済むと、マーティンはチェスを持ってきた。
「パパ、チェスしようよ」「チェスか、久しぶりだな・・」
マーティンは嬉しそうにゲームを始めた。
ボスの最後の砦のポーンを取ると「チェックメイト!」
「負けた、強いなぁマーティンは」ボスはよしよしと頭を撫でた。
嬉しそうなマーティン。ボスは複雑な思いで見つめていた。
ダニーは車からスーザンに電話した。「ダニーやけど・・・」
「ダニー?どこのダニー?名前も職業も知らないダニー・ドー?」
けんもほろろの剣幕・・・。「オレ、謝ろうと思って・・・」
「謝る?いいえ、もう遅いわっ!二度と掛けてこないで!!」
乱暴に電話は切られてしまった。やれやれ、ダニーはため息をついた。
仕方なく家に帰ることにし、途中で食料を調達した。
マーティンとボスは、レンジでポップコーンを作り、シザーハンズを見ている。
そこへ、ダニーから電話が掛かってきた。
「ダニィ、今、パパとシザーハンズ見てるとこ」「パパって?親父さん来てはるんか?」
「うん、ポップコーンも作ってくれたんだ」はしゃぐマーティン。
「そうなん・・・ほな、また」ダニーは電話を切ると、急いでボスに電話した。
「ただいま電話に出るこどができません」くそっ、またか!!電話ぐらい出ろや!!
ダニーは憤ったが、行くわけにはいかない。また父親を奪ったと思われたくなかった。
ボス、一体何を考えてるんや?ダニーには見当もつかなかった。
ボスから電話が来た。「はいはいはいっ」慌てて出るダニー。
「ダニー、何て電話の出方だ、驚くじゃないか!」「すんません、待ちかねてたんで・・」
「まあいい、何か用か?」「マーティンのことっす。またパパて呼んでるから、心配になって」
「心配?私に任せておけ!悪いようにはしない」「でも、ボス・・・」
パパーと呼ぶマーティンの声がした。「ああ呼ばれてる、じゃあなダニー」
無情にも電話は切られてしまった。ダニーは気が気でなかった。
パパと呼ばせといてセックスしたら、性的虐待とちゃうんか・・・。あぁ、キモい。
ダニーは、すぐにでも駆けつけたい気持ちを抑えた。
ボスはベッドでマーティンを待っていた。
パジャマ姿のマーティンがベッドに入ってくる。
「マーティン、こっちにおいで」「うん、パパ」素直に従うマーティン。
「明日は仕事だ、覚えてるな?」「うん、もちろんさ」
「支局ではちゃんとボスって呼ぶんだぞ、わかったな」「うん」
マーティンはボスに寄りかかり、おなかに手を乗せている。
可愛い・・・ボスはパジャマを脱がせたい衝動を必死に抑えた。
「パパ」マーティンがいたずらっ子のような顔でボスを見た。
手はいつの間にかペニスを掴んでいる。
「マーティン・・・」ボスはマーティンのパジャマに手を掛けた。
「だめだ、今日はできない」ボスはボタンを掛けなおすと抱き寄せた。
「なんでさ・・・」ふくれっ面のマーティンを慰め、寝かしつける。
「もう寝る時間だから。マーティンはいい子だ」ボスは背中をトントンとした。
「パパ・・・」マーティンは眠ってしまった。
ボスは見届けると、自分のアパートへ帰っていった。
ダニーはアランとの時間が増えるにつれ、居心地の良さと暖かさに包まれる
反面、心のどこかに必ずマーティンを心配する気持ちがあることを、実感する
ようになっていた。
そろそろボンとじっくり話そう!
久しぶりに暗号メールを送る。「捜査打ち合わせ8:00OK?」
マーティンから間髪いれず返事が来る。「OK!」
ダニーは場所をブルックリンのリバーサイドカフェに決めた。
これまで何度もガールフレンドとの修羅場を修復した場所だ。
験を担ぐわけではないが、なぜかあの場所がふさわしいと直感したのだ。
例によって5分の間を置いてオフィスを出る二人。1階で待ち合わせ、
タクシーに乗る。「ダニー、久しぶりだね。」心なしか固くなっている。
「元気やったか?」「まぁね、ダニーは?」「くたくたや。まぁ話は
着いてからにしよ。」「うん。」
そよそよと気持ちのよい風が吹くリバーサイドカフェのテラス席に陣取り、
ダニーはロブスタービスク、マーティンは豚肉のトマト煮込みを頼む。
「相変わらずお前、肉食やな。」「動物性たんぱくは身体を元気にするから。」
沈黙する二人。ダニーが口を開く。「お前と付き合い始めてどれ位になる?」
「1年2ヶ月と13日だよ。」「よう覚えてんなぁ。」
マーティンが頬を染める。
「1年過ぎたか〜。俺の最長記録やで。」「そうなの?」
「うん、誰とつきおうとも半年も続かへんかったなぁ。」
「僕が我慢強いからだね。」ちょっと威張るマーティン。
「俺が成長したんかもしれんで。」フンと威張り返すダニー。
二人は顔を合わせて大笑いした。こんなに気持ちよく二人だけで笑ったのは
いつぶりだろう。
「色々お互いあるけど、俺ら、付き合っていけるよな。」ダニーは急に真顔に
なってマーティンに尋ねる。
「僕が望んでるのは、まさにそれだよ、ダニー。ありがとう。」マーティンは
すでに目を潤ませている。「また、泣き虫ボンが!」「ボンて呼ぶなあ!」
「もっと二人の時間を増やそうな。」「うん。」「一緒にいような。」「うん。」
思わずダニーはマーティンにキスしたくなったが、料理が運ばれてきたので
居住まいを正した。「はぁ、お腹すいちゃったよ!」「お前、いつもそれな。」
「だってダニーから沢山いい言葉聞いたから、カロリー消費しちゃった。」
「お前ほんまに可愛いな。」マーティンの前髪をくしゃっとするダニー。
あかんあかん公衆の面前で、やってしもうた。
食べなれているはずのロブスタービスクがいつもより美味しく感じるのは
なぜだろうか。 俺、今、すごい幸せやん。やっぱりマーティンや。
マーティンも目の前でとろとろに煮込まれた豚肉をぱくぱく食べている。
「ダニィ・・、今日、家にいってもいい?」上目使いのマーティン。
この表情の時、マーティンが望んでいることは決まっている。
「ああ、早よ食って、家に帰ろう。」「うん!」マーティンは口いっぱいに
豚肉をほおばった。
家に着くと、マーティンはさっさと服を脱いで、シャワールームに行く。
「ダニー!早く!!」おいおい、盛りのついた猫みたいな奴やな。
「はいはい。」後を追うダニー。お互いの身体のすみずみを丹念に洗いあう。
まるでアランとエンリケの跡を消すように。
二人じゃれあうようにシャワールームから出ると、そのままベッドへ直行する。
アランはいつになく積極的だった。69スタイルになり、ペニスを口いっぱいに
ほうばる。「ま、マーティン、がっつくなよ、あぁ・・うぅん。」ダニーは
すでにマーティンの口技で果てそうになった。ぐっと我慢する。ダニーも
負けずにマーティンの裏を攻撃する。「くふん・・あん、ああぁ。」
マーティンがすかさずダニーの後ろに回りこみ、ベッドサイドのミントローションを
ダニーのアヌスに塗りこんだ。「うぁあ!」ダニーはマーティンの挿入の勢いに
悲鳴を上げた。「マァーティン・・激しすぎるで!はぁ、はぁ・・」
「今日は、容赦はしないよ、どうだ!」どんどん腰を打ちつける。
「はぁ〜、もうだめや、イク〜!」ダニーが果てた。ダニーのぴくぴくする
動きに刺激され、マーティンもダニーの中で果て、背中に倒れこんだ。
「重い〜、つぶれる〜」ダニーが下でもがくが、マーティンはどかない。
「ダニーは僕のものだ!誰にも渡さない!!」「わかったから、つぶすな!」
やっとマーティンがダニーの隣りにごろりんと横になった。
「水っ飲むか?」息を切らしながらダニーが聞く。「うん。」
クラブソーダを二人並んで飲む。こんな瞬間も久しぶりのことだった。
「お前、攻めがうまくなったな。」「えっそんなことないよ。」
「お前の方が身体大きいんやから、手加減せえよ。」「ご、ごめん。」
「でも、気持ちよかったな。」「うん!やっぱりダニーが一番だよ。」
「おい、誰かと比べるなよ!」めっという顔をするダニー。「ごめん。」
「今日、泊まるか?」「いいの?」「ええで。」「ありがと!」
まるでアランとエンリケが二人の人生に登場する前のダニーとマーティンに
戻ったようだった。マーティンが安心したように、すやすや寝息を立て始める。
ダニーは歯を磨いてシャワーしてから、ベッドにもぐりこんだ。
その頃、アランの家ではアランとエンリケがベッドで話していた。
「ダニーがどんな風なセックスするか、知りたい。マーティンをもっと
喜ばせたい。」「じゃあ、教えてあげよう。」
アランのセックス指南が始まっていた。
翌朝、マーティンが目を覚ますと、ダニーがいた。
マーティンは寝たふりをして、薄目でダニーを見ていた。
ゴミ箱をのぞいたり、パジャマにそっと手を掛けたりしている。
ウーン・・・マーティンは寝返りを打つふりをして、足を投げ出した。
ダニーが股間に手をやると、思わず吹きだしてしまった。
「マーティン!いつから起きてたんや!」照れくさそうに問い詰める。
「さっきから。そっちこそ、何やってんのさ?」
「いや、別に・・・」ダニーはしどろもどろだ。
「何もなかったよ」マーティンは平然と答えた。「あーよかったー」ホッとするダニー。
「まだ朝早いんや、だから、な」ダニーはマーティンのパジャマを脱がせた。
朝立ちでびんびんのペニスに触れる。「ダニィ・・・」
ダニーも服を脱ぎ捨てると、マーティンにキスしてのしかかった。
お互いのペニスが当たり、ゾクっとするような快感が走る。
キスをしたまま、しばらく二人は抱き合った。
やがてダニーは我慢できなくなり、マーティンの中に挿入した。
すでにぬるぬるのペニスは、すんなりとアナルに滑り込んだ。
「ぁぁん、ダニィ・・いつもより大きいよ」「ああ、きつくて最高やで・・・」
ダニーは徐々に動きを早めた。「ぁぁーっ、いぃぃダニィ」
「オレも・・くぁ・・あっイキそう・・マーティンは・・」「僕も・・イッイクー」
「んっああー」マーティンがイッた直後、ダニーも射精した。
「マーティン、よかったで。一緒にシャワー浴びよう」
じゃれあいながら、二人はバスルームへ。
「なぁ、スーザンのことやけど、ほんまに縁切れたから・・・」
ダニーは髭を剃りながら、マーティンに告げた。
「うん・・・僕の電話のせいだね」「いや、そんなに親しくなかったから構へん」
「マーティン、髭剃ったろ。こっち向いてみ」ダニーはシェービングフォームを塗った。
「じっとしとき」マーティンはドキドキしていた。切られたらどうしよう・・・・。
「はい、終わり」ハァー、深く息を吐くマーティンを見て、ダニーは苦笑した。
ダニーお手製のミネストローネとベーグルサンドを食べ、
マーティンはいつものマーティンに戻った。。ダニーの罪悪感も少しは消えた。
「ほな、オレ先に行くから」「あっ、いっしょに行こうよ」ダニーは仕方なく了承した。
「人に聞かれたら、さっき会うたとこって言えよ」おなじみのセリフ。
「もうっ、いつも言わなくてもわかってるよっ」マーティンは口を尖がらせた。
ダニーにデコピンすると、即座に二発返された。ますます口が尖がるマーティン・・・。
「もう行くで!」ダニーは何事もなかったかのように玄関へ向かった。
「ダニー、副長官から電話だ」ボスの声に振り返るチーム全員。
「はい、テイラーです。」ダニーは内心とは裏腹に落ち着いて出た。
みんなの、特にマーティンの視線が背中に集中しているのを感じる。
「やあ、テイラー捜査官、この前は楽しかったよ。」「はい、ありがとうございます。」
「今週の週末なんだが、鴨を撃ちに行かないか?」
「今週末ですか・・・、生憎、どうしても外せない用がありまして・・・今回は・・・」
「どうしても無理かね?」「ええ、申し訳ありません、副長官」
「いや、それならいいんだ。手間を取らせて悪かったね。」
「いえ、こちらこそ、ご要望にお答えできずに申し訳ありません。失礼いたします。」
ダニーは行きたかったが、泣く泣くあきらめた。
「ちょっとダニー、副長官が何の用なのよ?」詰め寄るサマンサ。
「うん、鴨撃ちに行かへんかって」「何でダニーに?」「知らんがな、そんなこと」
「何で断ったのよ、もったいない」「用があるんやからしゃあないやん・・・」
「マーティンは行かないの?」「僕は、鳥なんて殺すの嫌だよ」
「あんたらしいね・・・」とヴィヴィアン。ボスは何も言わない。
「ダニー、副長官のお誘い断るほどの用って何よ?」
「従兄弟の結婚式があるんや。外せんやろ」ダニーは嘘をついた。
「マーティン、ちょっと」ボスが呼んでいる。
「失礼します」マーティンはボスのオフィスに入った。
「マーティン、昨日はよく眠れたか?」「はい・・・」
「どうしたんだ?電話のことを気にしているのか?」「いえ・・・」
ボスはマーティンに近づくと小声でささやいた。
「今夜もパパと寝るか?」コクンと頷くマーティン。
「じゃあ、勤務が終わったら地下駐車場で待ってろ」「うん」
マーティンの後姿を見ながら、ボスは思案していた。
ダニーはマーティンを見たが、視線をかわされた。
オレ、何で避けられなあかんの?ちゃんと断ったやん・・・。
どうしても腑に落ちないまま、ちらちらと見るが避けられたままだった。
話すきっかけもないまま、時間だけが過ぎた。
ダニーは携帯に電話してみた。着信画面を見て、そのまま戻すマーティン。
なっ!何やアイツ・・・マーティンの態度にムカつくダニーだった。
マーティンは、地下駐車場でボスを待っていた。
ボスの車が来ると、素早く乗りこんだ。
「さあ、帰ろう。メシでも食っていくか?」ボスは尋ねたが
マーティンは首を振った。「早く帰りたい・・・」
「そうか」ボスはマーティンのアパートへ向かった。
マーティンは窓の外を眺めたまま、ぼんやりしていた。
ダニーは、ひとり空しくドーナツを食べていた。
四個も食べるとさすがに胸焼けしたが、惰性で食べていた。
副長官、オレのこと目に掛けてくれたんや!
鴨撃ちやて・・・金持ちがしそうな殺生なことや。
マーティンも親父さんとの距離が縮まったら、オレのこと恨まんかもしれへん。
どないかならへんやろか?・・・。ダニーの脳はめまぐるしく働いていた。
ボスはマーティンのキッチンで、オイルサーディンを缶ごと火にかけた。
グツグツ煮たつと火から下ろし、たっぷりレモンを絞る。
「こんなもんしかないが、まあ食べろ」ボスは勧めた。
冷蔵庫をあさり、モンラッシェを抜いた。「酒はいいのが揃ってるな・・・」
チーズとプリングルズを並べると、ワインを注いだ。
「デリバリー頼むか?」「ううん・・・」マーティンはグラスをあおった。
「これなら僕にも出来そうだ」オイルサーディンをつまむ。
ボスはワインを飲みながら頷いた。
「パパ、今日は朝まで一緒にいてくれる?」酔ったマーティンが尋ねた。
「朝までは無理だが、お前が眠るまではいるよ」
「じゃあ僕は寝ない!!」ボスは仕方がないという風に肩に手をやった。
二人じゃれあうようにシャワールームから出ると、そのままベッドへ直行する。
マーティンはいつになく積極的だった。69スタイルになり、ペニスを口いっぱいに
ほうばる。「ま、マーティン、がっつくなよ、あぁ・・うぅん。」ダニーは
すでにマーティンの口技で果てそうになった。ぐっと我慢する。ダニーも
負けずにマーティンの裏を攻撃する。「くふん・・あん、ああぁ。」
ダニーとマーティンが氷解した週末、マーティンが「料理をご馳走する」と
言い張るので、ダニーは期待10%心配90%の気持ちで、電話を待っていた。
18時になっても19時になっても、マーティンからは連絡がない。
とうとう待ちきれず、ダニーが電話をかける。
「こちらフィッツジェラルドですが、ただ今電話に出られません・・・」
「何やて!」ダニーはマスタングのキーを持って飛び出していった。
「ジョン、こんばんわ。マーティンおるか?」「はぁ、今日は一日こもって
おいでですが。」「ありがとな。ほな入るで。」マーティンの部屋へ急ぐ。
エレベータを降りた瞬間からフロアが何やら焦げ臭い。「まっさかあいつ・・」
インターフォンを押し「ダニーや、マーティンおるか!」と叫ぶダニー。
しばらくしてドアが開いた。エプロン姿のマーティンが泣きそうな顔をしている。
部屋中がこげ臭い、キッチンからは煙が上がっている。
「お前何やってんのや。」「何って料理だよぅ。」「この煙何や。」
「カレー・・・」「はあ?」急いでダニーがキッチンに向かう。
いつもは整然としているキッチンが、まるで軍隊の最前線の調理場のようだ。
野菜と牛肉が鍋の中で焦げている。急いで水を鍋に入れるダニー。
「ジュウ〜!!」さらに煙が上がる。「うぁあ。」マーティンが驚く。
「お前、油敷いたか?」「へっ?油?だってカレーは液体じゃない!」
「まず、鍋に油敷いて、肉と野菜を軽く炒めるんや。カレーは。そんで
カレー粉をまぶしてさらに炒める。」「うん。」「水入れて、ブーケ・
ガルニ入れて、ブイヨン入れる。」「それから?」「カレーの特別なルー
ちゅうもんがあるからそれを入れる。それで煮込むんや。」
「へぇ〜、そんなに手がかかるんだ。」「お前、レシピ本買ったるから
基本から勉強せいよ。」「う・・ん。」「せっかくの材料が台無しやな。
お前の事だから、またディーン&デルーカで買うたんやろ。」「う・・ん。」
「今日はお前の気持ちでお腹一杯や。グラマシーの本場のカレー食わしたる
から、支度せい。」「うん!!」まるで悪さを見つけられた子供だわな。
20分後、二人はグラマシーの「カレー・イン・ハリー」にいた。
「ここはな、タクシーの運ちゃん多いやろ。高級店やないけど、それだけ
うまいってこっちゃ。よく味わってみ。」マーティンはすでにナンを
ほうばっている。「美味しいよ。ダニー、これがカレーの真髄だね!」
「さっきまで赤い目してた奴が生意気言って!」ダニーはマーティンの前髪を
クシャっとした。「子供扱いするなよぅ。」「ほっぺたにカレーついてるで。」
ダニーは人差し指ですくい取り、その指を舐めた。「ダニー、人前だよ!」
「あ、そやったな。」二人で笑う。「何か昔に戻ったみたいだね。」
「そやな。」「色々あったもんね。」「二人で死に掛けたりなぁ。」
「あ、それ禁句だよ。」二人とも意識的にアランとエンリケにつながる
話題を避けるようになっていた。
「今日、お前んとこ泊まってくわ。」「うん!」「ちゃうで、片付けのためや。」
「そうか。」「いくらお前でもメイドにあれを見せたらあかんで。」
「わかったよ。ダニーにまかせるよ。」「あと明日リツォーリに行って本、
買ってやるわ。」「料理本だね。」「少し位、自立しろよ。」「う・・ん。」
翌日、ゆっくり目を覚ました二人は、H&Hベーグルズで遅めの朝食を取り、
セントラルパークを散歩して下りながら、リツォーリに着いた。
「クッキング」のコーナーで目を見張るマーティン。「何選んでいいか、
判らないよ!」ダニーはひょいと一冊を手に取ると「お前はこれからや。」
題名は「COOKING FOR DUMMIES(バカでもわかるクッキング)」
はははと笑ってレジに行くダニーをマーティンは睨み続けていたが、
終いには自分でもおかしくなって、笑い出した。
昼はずっとパンケーキ作りを練習し、4時間後にいびつながらも焼き色の
均等なパンケーキが焼けた時には、二人で抱き合った。
「俺、完成品の試食な。お前、失敗作の始末な。」ダニーは綺麗に焼けた
パンケーキにメープルシロップとバターをたっぷり塗りつけパクついた。
ダニーはそれから二週間、精力的に仕事に取り組んだ。
おかげで事件の解決に大きく貢献し、ボスの株も上がっていた。
マーティンとは支局で普通に接するものの、それ以上の付き合いはなくなった。
ボスは添い寝はしてくれるものの、性的なことはしてくれない。
マーティンは苛立ちが募るのを感じていた。
「あ・・・」マーティンの視線の先に副長官がいた。
ダニーは気づかないフリをして、捜査報告書を書いていた。
副長官は、ボスのオフィスに入っていくと、ボスを伴って出てきた。
「マーティン、調子はどうだ?」「ええ、なんとかやってます。」
「テイラー捜査官、最近の目覚しい活躍は私の耳にも届いているよ。」
「恐れ入ります、副長官。」ダニーは言葉少なめに返した。
「今から四人で食事に行こう。どうだ?」
「申し訳ありませんが、僕はまだ仕事が残っているので。」ダニーは断った。
「マーティンは?」「僕もまだ・・・その」
「ジャック、少しぐらいいいだろ?」機嫌が悪くなる副長官。
「ええ。二人とも、後で書けばいい。」
仕方なくディナーに付き合うことになってしまった。
ミッドタウンの最高級チャイニーズレストラン。
会話のほうは、ダニーがマーティンやボスに話を振り、円滑に進んでいた。
副長官も、今日は息子の話を楽しげに聞いていた。
出てくる料理は、味は申し分ないが、材料が気味の悪いものばかりだった。
カエル、ヘビ、北京ダックの顔の不気味さ、ダニーもここまでは辛抱して食べられた。
サソリの唐揚げが形そのまんまで出てきた時、ダニーの箸は止まってしまった。
「テイラー捜査官、どうかしたのかね?」「いっいえ、何でもありません」
ダニーはサソリを口に入れた・・・バリバリバリ、殻の砕ける音に身震いする。
何とか飲み込んだものの、顔面蒼白の状態だった。
副長官が席を外した時、マーティンがダニーの様子に気づいた。
「ダニー、大丈夫?顔色が悪いよ」マーティンが心配して聞いてきた。
普通に話すのは久しぶりだ。「ああっ早く吐きたい・・・」「ええっ?」
「ボス、どうしよう?」「ダニー、先に帰れ。ここで吐くよりはマシだ」
「でも、副長官に何て・・・」「急な仕事だと言っておく、急げ!」
ダニーは後ろ髪を惹かれる思いで、店を後にした。
家に帰り、思う存分トイレで吐き、何度も歯を磨いた。
まだ気分の悪さは消えないが、全て吐き出したということで気持ちは落ち着いた。
冷たい水を飲むと、ベッドに横になった。
副長官、あの後オレのことどう思ったやろか・・・。
ダニーは自分の失態を悔やんだものの、後の祭りだった。
目を閉じるとアヒルの顔とサソリが思い出され、また気持ち悪くなってしまった。
ガタン、バタバタ、騒々しい音がする。誰やねん、うるさいなぁ・・・。
ダニーはうとうとしていた。「ダニー?」マーティンの声がする。
幻聴やな、ダニーは無視して夢の世界に戻りかけた。
冷たい手が額に当てられ、ぼんやりと目が覚める。
「ダニー、ちょっと熱っぽいよ」「んん・・・」夢うつつのダニー。
マーティンはアイスパックを取ってきて、額に当てた。
火照った体に心地よい。ダニーはそのまま眠ってしまった。
マーティンは、しばらく来ていなかったダニーの部屋を見て回った。
相変わらずきちんと整頓されている。
仕事部屋のデスクの上の書類だけは乱雑に置かれていたが、
ここのところの活躍から見ると当然のことだった。
どこにも誰かを連れ込んだような形跡はなかった。
脱ぎ捨てられたままのシャツが目に留まり、匂いを嗅いだ。
ダニーの匂いがする。マーティンは勃起した。
ペニスを引っ張り出し、シャツごし上下させた。
「ぁっぁぁ・・・」ダニーに抱かれているようで興奮した。
「うっ・・く・はぁはぁ・・・」マーティンはそのまま射精すると、余韻に浸っていた。
シャツには、溜まりに溜まった濃厚な精液が付着している・・・。
やばっ、怒られちゃう・・・慌ててシャツを濯ぐとランドリーバッグに放り込んだ。
次に目を覚ますと、もう翌朝だった。吐き気も治まり、微熱も下がっていた。
マーティンの姿はなく、アイスパックだけがマーティンの痕跡を残していた。
夢と違うかったんや・・・サンキュ、マーティン!ダニーは感謝した。
水を飲んで咽喉を潤すと、ダニーは生き返った。
バナナとオレンジジュースだけ摂ると出勤した。
既に、ボスもマーティンも来ていた。
一緒に来たんやろか?ダニーは訝りながらあいさつした。
「ダニー、具合はどうだ?もう平気なのか?」「ええ、大丈夫っす!」
「今夜久しぶりにどうだ?三人で集まろうじゃないか」
マーティンはあれ?というような顔をしている。
「パ・・ボス、僕と寝るのはやめたんじゃないの?」小声で聞いた。
「今日はパパはお休みの日だ。どうだダニー?」
ダニーは体調が不安だったが、休日の前なので渋々了解した。
翌日の月曜日、ダニーに内線が入った。「上がってもらって、ええで。」
マーティンが様子を伺っている。果たしてやってきたのはアラン・ショアだった。
「アラン!久しぶりやね!」サマンサがすかさずマーティンに聞く。
「あの知的な紳士誰?」「市立病院のドクターだよ。」
「へえ〜ドクターなんだ。」「サマンサ、興味あるならダニーに紹介してもらいなよ。」
「うん、そうよね。ダニーの知り合いってハンサムが多いよね。」
サマンサは飛んでいった。
「ダニー、紹介して!」「あぁ、こちらドクター・ショア、俺の命の恩人や。」
「あ、もしかしてあの事件の? 私、サマンサ・スペードです。」
「初めまして、スペード捜査官。貴方のような美しい方がFBIとは・・」
アランはサマンサの手を取り、甲に軽くキスをした。
それだけで、頬を染めるサマンサ。 サマンサを気にしてボスまで個室から出てきた。
よどみなくボスにも自己紹介をするアラン。如才ないことこの上ない。
ボスもマーティン、ダニーが続けざまに世話になったお礼を述べていた。
「それで今日はどんなご用で?」ボスが尋ねる。
「同じ支局の捜査官の方を手当てしましたのでね、職場見学でもさせて
いただけるかと思いまして。」「ダニー、案内しなさい。」「了解っす。」
「ドクター・ショア、こちらが僕らの席ですわ。一般の捜査官は個室なし。
スクワッドの指揮官になると個室があてがわれます。この広いテーブルは
捜査会議用。」他の女性捜査官もアランを見ている。アランの如何にも
堂々とした態度とゼニアのスーツの威力は女性には絶対だった。
まだまだ俺には太刀打ちできんわ。
マーティンもまた、レベルの違いを見せ付けられて落ち込んでいた。
一通り案内も終わり、ダニーはアランを1階まで送るためエレベータに乗った。
二人だけの個室。すぐさまアランがダニーにフレンチキスをする。
「な、何!」「今日は家においで。サプライズがあるから。それを言いに
来たんだよ。」「もうホームパーティーは嫌やで。」
「ははは、退屈したか。さすがFBIだ。もっと君の仕事寄りだよ。」
ダニーは何故か嫌な予感がした。
マーティンの手前断るべきだったのかもしれないが、好奇心にもかられて
ダニーはアランのアパートを訪れた。リビングに通されるとエンリケが
マーティンと仲睦まじく話していた。「マーティン?!」
「驚いただろう。君がエンリケと瓜二つと同じように、このラルフ君も
マーティンのドッペルゲンガーだと思わないかい?」
アランが快活に話す。ダニーはまだショックから立ち直れないでいた。
「エンリケが師承にもダニーのセックスを習いたいというので、ラルフ君に
登場願ったわけだ。ただし僕の知り合いの整形外科医に少しばかり、
いじってもらったがね。そっくりだろう。」エンリケは上機嫌でラルフと
話をしている。「そ、それで俺は何をすればいいんや、アラン、わからへん。」
「まぁクラブソーダでも飲みながら話そうじゃないか。」久しぶりに
チャイナタウンで手に入れた上物の媚薬を混ぜている。
エンリケは明らかにコカインをやっていた。ラルフも同様だ。
アランだけがシラフで3人の変化を見届けようとしていた。
「ダニー、久しぶり、兄弟。ラルフ紹介するね。」すでにエンリケはハイに
なっている。ラルフは「うは、そっくりじゃん。ほんとに兄弟?」
いかにもストリートで拾ってきた話し方をする。マーティンとは正反対だ。
ダニーは段々と局部がむず痒くなってきていた。
「ダニー、さぁシャワーを浴びておいで。」媚薬で朦朧となったダニーは
言われるままにアランに連れられシャワーブースへと駆け込む。
「アラン、俺、ラルフとはしたくない。アランとしたい。」
「うれしいことを言ってくれるね。でも今日のサプライズはラルフ君だから
君とエンリケで3Pをやるんだよ。」「3Pは嫌や。」
「じゃあ、4Pするかい?」「早く〜、むず痒い!!」ダニーは悲鳴を上げた。
アランは思わぬ展開に喜びながら、ダニーをベッドに連れて行った。
ソファーではすでにエンリケとラルフが69になってお互いのペニスを
口にほおばっていた。「俺、アランとしかせいへんで。」媚薬に犯されながら
も最後のプライドだった。「わかった、わかった。じゃあ、始めよう。」
初めてダニーに対してアランは緊縛プレイを行った。パシャミナのスカーフを
首に巻いて極限まで追い詰め、ダニーがイキそうになるのを止めては緩めを
繰り返した。「あぁあ、もう俺死ぬ〜。」アランがダニーをギューっと絞り
アヌスの麻痺をとことんむさぼった。「一緒に行こう」「ああ、イク〜」
ダニーとアランは同時に果てた。
ダニーにとっては初めての経験であり快感だった。ぐったり横になるダニー。
アランはシャワーを浴びると、コカインのやりすぎでソファーで伸びている
エンリケとラルフに水を飲ませた。「エンリケ、今日はお開きだ。ここで
寝ていくか?」「・・・」ラルフも言葉もない。
アランは若干自分の描いたシナリオと違う結果になったが、ダニーとの極限の
緊縛プレイに十分満足して、ダニーの隣りに横たわった。
翌日の午後、ダニーは目覚めた。 ここはどこや。
周りを見渡すと、見慣れた光景。 アランのとこ来たんやったな。
それから・・・それから・・・・ おぼろげな記憶の中を探ろうとシャワー
へいく。 アランはリビングでヘラルド・トリビューンを読んでいた。
「おはよう、ハニー。」「あぁ、アラン、俺・・」
「話は後だ、シャワーしておいで。」「ん。」
冷水シャワーで頭をしゃっきりさせるダニー。走馬灯のように、エンリケと
マーティンのセックスの光景が浮かぶ。それから、首を絞められ、快感に
もだえる自分を見つめる砂色のアランの瞳とクリーム色のパシュミナ。
「俺、変態か!」ボコっとシャワールームの壁を蹴飛ばす。
しかし、あの快感はそう簡単に忘れられそうもなかった。
シャワーから出るとふかふかのタオルを用意してアランが立っていた。
くるまれて、ダイニングへと運ばれる。いい香りのコーヒーが置いてあった。
「入れたてだよ。」アランが座ったダニーの後ろに立ち、抱きしめる。
「昨日の君は最高だった。」「・・・」「あんなにあのプレイに反応するとは
正直驚きだったよ。今日、買い物に行こう。」
耳元でアランが囁く。「ヘンな買い物なら嫌やで。」やっとダニーが口を開く。
「良かった。ご機嫌斜めならどうしようかと思ったよ。腹へってないか?
バケットサンド作ったんだが。」「腹へった。」
食べながらダニーは尋ねる。「昨日のエンリケとマーティンもどきは?」
「エンリケが家に連れて帰ったよ。今日は一日遊ぶんだろう。」
くくくっとアランが笑った。「なんであんなんと俺を会わせたんや。」
「ジョークだよ、人生楽しまなくっちゃね。」
ダニーは改めてアランという人間に恐怖を覚えた。一人の人間の顔を変えて
人生をも変えてしまうような行為を平気で行える。
「どこから連れてきたんや、ラルフって奴。」
「窃盗で刑務所に入っていた醜形恐怖症の男でね、カウンセリングで知り合ったんだ。
新しい顔を気に入ってくれているよ。」
「あんた、鬼や。」「おいおい、それはないだろう。あんなに喜んだくせに。」
「・・・・」「それにエンリケがラルフに満足すれば、君のマーティンとは
寝なくなるって思わないかい?」「わからんわ。」サンドウィッチを
ほうばるダニー。 ここにいると何が常識で何が非常識なのかわからんなるで。
「それより、明日、勤務に出るのに首輪の後を消さないとね。」
はっとするダニー。鏡見てへんかったわ! シャワールームに急ぐ。
マーティンの時よりはひどくなかったが、くっきりと首の周りにアザが
ついていた。「俺もおしろい買わんといけへんなったわ。」
アランがプラスティックの瓶を持ってきた。「これをつけるといいよ。
メイクアップアーティストに君の肌の色の調合をしてもらったクリームだ。」
「いつ、俺に会った奴?」「ホームパーティーさ。」
アランのやる事なす事、全て計算済みなのか。ダニーは驚嘆すら覚えた。
この男が犯罪者やったら俺、逮捕できるやろか・・・
「そうだ!昨日、エンリケたち、コカインやってたやろ。DEAの知り合い
に報告せんと!」アランは声をあげて笑った。「ほう、それで君はそんな
二人を見ながら、ベッドでよがってましたって言うのかい?それに
エンリケは外交官だ。やっかいな事になるよ。」
「鬼!悪魔!」ダニーはほぞを噛んだ。「さぁさぁ悪態ついてないで、
着替えなさい。買い物に行くんだから。」ダニーはとんでもない事に
巻き込まれたことを悟った。麻薬常習者を見て見ぬふりをしなければならない
FBI捜査官・・・。アランが洋服を持ってきた。「俺のは?」
「FBIのねずみ色のスーツで買い物は、僕の趣味ではないからね。」
ロエベのブラウンスウェードのジャケットとポロシャツ、カーキ色のパンツだ。
「君の肌の色に映えるよ、ハニー。」アランも同じくロエベの黒のジャンパー
にダークグレーのパンツだ。二人が向かったのは、バークドルフ・グットマン。
女性の服飾品のコーナーに向かう。「???」ダニーには判らない。
女性の店員がニコニコと近付く。二人からはドルの匂いがするのだろう。
アランが口を開く。「彼の妹に合うパシュミナが欲しいんだが。肌の色は
彼を参考にしてくれ。」「はい、かしこまりました。」店員はライトブルー
パープル、ピンクの3色を持ってきた。「パープルがいいかな。」
アランはダニーの首にまいてみる。ダニーは自分の顔が赤くなるのを感じた。
「これにしよう。プレゼント用に包んでくれないか?」「はい、ただいま。」
「あら、ダニー!」聞き覚えのある声がした。またしてもサマンサだ。
「あ、ドクター・ショア、こんにちわ。」サマンサは頬を染めた。
「スペード捜査官、こんにちわ。どうかアランとお呼びください。」
「は、はい、アラン。私もサマンサと。今日はお買い物?」
そこへギフトラッピングしたボックスを持った店員が現れた。
アメックスのエメラルドカードで支払うアランをじっと見つめるサマンサ。
「ダニー、誰かへのプレゼント?」「アランの彼女へや。」「なーんだ、
彼女いるのか!」ふたりがこそこそ話をしている。これ以上、サマンサを
アランに近付けるのは危険すぎる。煙幕を張ったダニーだった。
支払いが済み、「それではサマンサ、ごきげんよう。」「チャオ!アラン、
あ、ダニーもね!」
ボルボを走らせながらアランは尋ねる。「ハニー、ユキオ・ミシマを知ってるかい?」
「ん?日本人?」「彼は作家でね。彼の時代はゲイをカミングアウトするのを
よしとしなかったんだ。最期には自決するんだが。彼の代表作に「禁色」と
いうのがあってね、それは日本ではパープルを指すんだ。君も表の顔は
ヘテロセクシュアルだろう?だからパープルを選んだのさ。」
ダニーはアランの博識ぶりに驚かされた。「これからあのプレイをする時は
このパシュミナを使おう。昨日のは前の相手のものだったから、君には
失礼なことをしたよ。ハニー、すまない。」ダニーは再びアランの世界に
飲み込まれそうだ。スカーフ1枚に600ドルも払う男。禁色。
確かに俺の色やな、パープルは・・・
月曜日、ダニーは首輪の跡を塗りつぶすのに時間がかかり遅刻した。
「ダニー、月曜日からたるんでるぞ!」ボスの叱責が飛ぶ。
「すんません!」心なしかマーティンの目が冷たい。
席に座りダニーはマーティンに「おはよー。」と小声で言う。返事がない。
PCに向かうとマーティンからメールが来ていた。
「バーグドルフ・グットマン。ドクター・ショア」
くそっ!サマンサの奴、マーティンに言うたんや!!
せっかく氷解した二人の世界が、音を起てて崩れていくのをダニーは感じていた。
ダニーはサマンサを呼び止める。「昨日のこと、マーティンに言うたやろ。」
「いいじゃない!まぁさ、いい男が二人お洒落してBGで買い物してるなんて
相当怪しい雰囲気あったけどね。ダニーの女たらしはつとに有名だし。」
「そうなんか?」「最近すごくお洒落になったって評判よ。きっとスタイリスト
か何かと付き合ってるんじゃないかってウワサ!」「そうか。」
俺の色はやっぱり禁色や・・・
ダニーはどうマーティンと修復しようかと考えたが、頭が真っ白で
全く考えが浮かばなかった。
しばらく静かにしよう。アランとも会わへんようにせんとな。
しかし、ダニーの理性と別の片隅にはあの時に得た快感が忘れられずに
いるのだった。
昼休み、ダニーはマーティンをランチに誘った。
「昨日は来てくれて助かったわ。ありがとう」ダニーは礼を言った。
「ううん、そんなの気にしなくてもいいよ。僕こそお礼を言わないとね」
マーティンはベーコンチーズバーガーをパクつきながら言った。
「お礼って?」「ダニーが会話を振ってくれたことさ」
「・・・ああ、そのことか」「あんなの初めてだったから嬉しかった」
「ほな、ボスパパはもう卒業か?」「うーん・・・パパはやさしいよ・・・」
「うん?」「ううん、何でもない」マーティンは言葉を濁した。
ダニーは食べかけのフィッシュサンドを置いた。
「どうしたの?」「うん・・あんまり食欲ないんや。昨日のことがな・・」
「父のこと?それなら気にしなくていいよ、パ、ボスがちゃんと説明したから」
「いいや、そうじゃなくて。まだなんか気持ち悪いんや・・・」
「今日の約束、キャンセルしようか?」「いいや、また親父さんに電話されたら困るから」
「ダニー、ごめんね。僕のせいで」「もうええって、コレ食べるか?」
ダニーは、グレープフルーツジュースだけ飲んでランチを終えた。
「すまない、急用ができた。今夜はキャンセルだ」ボスが廊下で話しかけてきた。
ダニーは思わずガッツポーズしそうになった。
「マーティン、今日は二人で過ごそか?」「ん、ずいぶん会ってなかったもんね」
「よし、帰りに買い物や!」ダニーは急に空腹を感じ、食料の調達に行った。
ジャンバラヤの材料や、スペアリブ、グリーントマトなどを買った。
ダニーはジャンバラヤを火にかけると、スペアリブに下味をつけ冷蔵庫にしまった。
「それは焼かないの?」「これは明日の。味がしみひんやん」「ふーん」
ダニーはグリーントマトの衣付けをマーティンに手伝わせた。
ワクワクしながら手伝うマーティン。指もフライ衣のようになっている・・・。
揚げる段階で、マーティンはそそくさとリビングへ退散した。
ジャンバラヤとフライドグリーントマトを堪能しながら、
二人は離れていた分を取り戻すかのように会話した。
お互いセックスしていなかったことを知り、大いに驚いた。
「てっきりボスに可愛がられてると・・・」「僕だって、また娼婦と寝てると思ってたよっ」
「ボス、意外やなぁ」なんか魂胆があるんやろか?ダニーは疑った。
「ねぇ、ダニー・・一人遊びは?」マーティンがやんちゃな顔で聞いた。
「それはしたけど・・・お前は?」「僕は・・やっぱ言えない」
「怪しいなぁ、何か教えて」ダニーはマーティンを押さえ込み、くすぐる。
「わかった、言うよ。ダニーのシャツでオナニーした・・・」「えっ、何やそれー」
「昨日我慢できなくなって・・・」「ほいでそのシャツは?」「ランドリーバッグに・・・」
「げぇー・・・今日クリーニングに出してしもた・・・」青ざめるダニー・・・。
「お前が取りに行けよな」ダニーは即刻マーティンに言いつけた。
お風呂の後、全裸のままウクレレを弾いた。
マーティンのリクエストはデスペラードだ。揺れるペニスに笑いまくる。
突然、インターフォンがなり、二人は顔を見合わせた。
「はい?」出るとボスだった。慌てて服を着る二人。
ドアを開けると、仏頂面のボスが立っていた。
ボスの体から、なんとなく憶えのある香水の香りがした。
マーティンは思い出せなかったが、ダニーがバン・ドーレンと呟いたのを聞いた。
「ダニー、サムとデートしたらしいな、事実か?」いきなりボスが聞いた。
「デート?いや、ただメシ食っただけですけど・・・」
「目撃者がいるんだよ、かなり親しげだったと聞いたぞ」
「ほんまに違いますってば。サマンサに聞いてくださいよ」
ダニーは必死に説明したが、ボスは納得しない。
「ダニー・・・サマンサとそういう関係だったんだ・・・」マーティンも疑いの眼差しを向けた。
「違う、お前がワシントンに行く前の日に、晩メシ食っただけやって」
「ボス、目撃者って誰ですの?そんなええ加減なこと言われたら迷惑ですわ!」
「バン・ドーレンだ、寝物語に聞かされたよ」ボスは事も無げに言った。
「バン・ドーレン!!あの人とも関係してるんだ・・サイテー」マーティンは呆気に取られた。
「とにかく、サマンサとは何もないんです。信じてください!」
「うるさいっ!」ボスはダニーを押さえつけた。
「マーティン、おいで。さあ、帰ろう」ボスがマーティンを呼んでいる。
マーティンはうろたえていた。どうすればいいのかわからない。
「ええで、マーティン。もう帰り、オレに遠慮はいらん」
「でも・・・」「マーティン、早くおいで」ボスが促した。
「僕、ダニーと一緒にいるよ。いたいんだ」マーティンは残ることに決めた。
「そうか・・・。ダニー、明日は時間を空けておけ!場所は後で連絡する」
ボスはそのまま出て行った。
「ボスと一緒に帰ってもよかったのに・・・無理すんなや」
「僕はダニーを信じてるもん」「そうか・・・」ダニーは無理に微笑み、
両手で顔を覆ってうなだれた。ため息ばかりが洩れる。
「もう寝るわ」そう言うと、横を向いた。
言いようのない重圧に、押しつぶされそうなダニーだった。
翌日の目覚めは最低だった。いやいや着替える。
メールをチェックすると、ボスから添付ファイル付きメールが来ていた。
開くと、ブロンクスの待ち合わせ場所の地図だった。
裏通りのスラム街地区だ。治安もかなり悪い。
マーティンを置いていこうとしたが、一緒に行くと言って聞かない。
「オレの側から絶対に離れるなよ」ダニーは言い聞かせた。
待ち合わせ場所のモーテルは、まさに最低だった。
外廊下のライトに蛾がたかっているのを見て、ダニーは凍りついた。
「ダニー、大丈夫だよ。こっちには来ないから」
マーティンはダニーの手を引き部屋まで連れて行った。
何がオレの側から離れるなやねん・・・オレが誘導されてるやん!!
ダニーは情けなかったが、虫の類だけはどうにもならない。
部屋に入るが、いつまともに掃除したのかわからないような状態だ。
埃っぽくて咽喉がイガイガする。座るのも嫌で二人は突っ立っていた。
ダニーが一歩踏み出すと、黒いものが動いた。ゴキブリだ!
「ヒャアッ」言うが早いか椅子に飛び乗るダニー。
「ダニー?ただの虫だよ」「それはゴキブリやっ、病気になるで!」
「へぇー、病気になるのかぁ・・・」どうやらゴキブリを初めて見たようだ。
ダニーは急いで帰りかけたが、運悪くボスと鉢合わせした。
ボスは無言でダニーをベッドに押し倒すと、片手をサイドテーブルに繋いだ。
「ボス、やめて!あああああー」ダニーの目は恐怖に見開かれていた。
「外してくれー、早くっ早くー、もうやめてー」とうとう泣き叫んだ。
暴れるたびに手錠がガチャガチャ音を立て、手首には血が滲んだ。
「ボスっ、早く鍵貸してよ」マーティンが半泣きで叫んだ。
「お前がダニーをイカせたら鍵をやろう」ボスは鍵をちらつかせた。
「何言ってんの?こんなんでイクわけないっ!早く渡して」
「じゃあさっさっとイカせる努力をしろっ!」ボスは性悪そうな笑いを浮かべた。
床にはゴキブリ、ベッドにはダニか蚤がいるのか痒くなってきた。
「ダニー、じっとしてて」ダニーは半狂乱のまま叫びっぱなしだ。
マーティンはペニスを引っ張り出そうとしたが、暴れるので上手くいかない。
「ボス・・・」マーティンはボスを拝むように見たが、顎で続行の合図しか出さない。
やっと出たペニスは縮こまっていて、勃起どころではなかった。
マーティンは口に含み、一生懸命奉仕したが何の変化もなかった。
仕方なく前立腺を刺激することにしたものの、服を脱がそうとして蹴られた。
マーティンは泣きながらダニーを押さえつけ、無理やりパンツを下ろした。
ボスは二人の様子を楽しんでいた。
マーティンはともかく、ダニーの泣き叫ぶ顔に興奮していた。
異常に掃除が行き届いていると思ったが、やっぱり虫嫌いだったか・・・。
此間、会食で席を外したときも普通ではなかったしな。
ボスはゴキブリをわざとベッドのほうへ追い立てた。
「やめろやっ、こっちにやるなっ!!」ダニーはさらに暴れる。
マーティンが前立腺を指で擦ると、少しだけペニスが反応した。
「ダニー、目を閉じて。虫なんていないよ」なだめながら必死に指を動かす。
マーティンはペニスを咥えて上下しながら、擦るとやっとペニスが勃起した
小刻みな律動でそこだけを執拗に責めた。条件反射でもいいから、早くイッて・・・。
「うっ・・」ダニーのペニスが射精した。「ボス、鍵、早く!!」
ボスはわざとノロノロしながら鍵を取り出した。
鍵をひったくるように奪い、ダニーを解放する。
涙と鼻水でぐしゃぐしゃのまま、ダニーは部屋を出て行った。
マーティンは後を追いかけようとしたが、ボスが腕を掴んで放さない。
「ボス、放して!放してったらっ!」マーティンは手を振り払った。
急いでダニーを追いかけたが、既に姿は消えていた。
肩を叩かれ振り向くと、ボスが立っていた。
「帰るぞ」」無理やり車に乗せると走り出した。
ボスと別れ、ダニーのアパートへ急いだ。
中に入ると、バスルームのシャワーの中でダニーが放心状態でうずくまっていた。
「ダニー!」マーティンは濡れるのもかまわず、ダニーを抱きかかえリビングへ運んだ。
ダニーはぽつりぽつり話し出した。
「マーティン、もう・・オレあかんわ・・・。お前と付き合うの、もう限界や・・」
「ダニィ・・・」「もうこれっきりにしてくれ、頼むから・・・」
ダニーはそれっきり床を見つめたまま何も言わなかった。
マーティンもしばらくは呆然として動けなかったが、やがて鍵をテーブルの上に置くと出て行った。
その日からマーティンのストライキが始まった。全く目も合わさなければ、
言葉も交わさない。こうなるとマーティンは頑固だ。携帯によく電話が
かかってきているのは、エンリケだろうか。ダニーには確かめる術がなかった。
二人で過ごした日々があまりに充実していたので、一人アパートに帰っても
空疎な気持ちで、ピアノを弾いたり、ウクレレを弾いたりしていた。
プルルル・・ダニーの携帯が震えた。 まさかマーティン!
着信画面を見ずに出るダニー。「もしもし、マーティン!」
「ブブー、残念ですが20ポイントダウン。」アランだった。
「あぁ、アランか、何の用?」「随分な挨拶だねえ。今、家に誰がいると
思う?」「どうせエンリケかマーティンもどきやろ?」
「ブブー、さらに20ポイントダウン。スペード捜査官だよ。」
「ええ!サマンサ!!アラン、彼女に何した?」
「答えが知りたければ、今から僕の家へ。」ガチャン。電話は切れた。
ダニーは急発進でマスタングを駐車場から走らせ、アッパーウェストサイドへ
向かう。アランのアパートの駐車場の門は、まるでダニーを待ってるように
開いていた。「ダニーや!アラン、開けて!」「やぁやぁ、15分か。
なかなかいい走りしてるね。」「サマンサは?」「ソファーでお休みだ。」
見るとリビングのソファーで転寝をしている。ローテーブルにはワイングラス。
「また薬もったんか?」「いや、彼女は呑み助だなぁ。一人で2本あけて
このざまだよ。」
「アランが誘ったんか?」「僕のハニーは君だと言ってるだろう。彼女が
今日ERに尋ねてきたんだよ。積極的だったよ、サマンサは。食事の
約束を有無をも言わさず僕から取り付けたんだからね。僕も強気の女性は
好みのタイプだから、ちょっとナイトキャップに連れてきたら、こうなったのさ。」
「それでどうする?」ダニーはサマンサが起きるのではないか気が気ではなかった。
「ハニー、君の出方によるよ。この間のプレイを一緒にするなら、サマンサには
手を出さない。しかし、断ったり、抗ったりしたら、どうなるかな。」
「アラン、もう止めてくれ。俺をこれ以上悪い立場に置かんで欲しい。」
「うぅぅん。」サマンサが目を覚ましそうだった。急いでベッドルームへ
隠れるダニー。サマンサとアランが話している声が聞こえる。
どうやらタクシーを呼んで、サマンサは帰るらしい。ダニーはほっと胸を
撫で下ろした。しかし、この後、自分に待っている責め苦を考えると、叫び
出したい衝動にかられた。
「出ておいで、ハニー。サマンサ姫は無事ご帰還だ。」うつむきながら
ベッドルームからダニーは出て来た。
「それで俺は何すりゃいいねん。」「ハニー、喧嘩腰になるなよ。抗ったり
したら、次回サマンサはどうなるか・・・ダニー次第だよ。」
「それでは私は何をしたらいいのでしょうか。」
「いいねぇ。ダニーの標準語。僕に頼むんだ。あのプレイをして欲しいと。」
ダニーは唇を噛んだ。強く噛んだせいで血が出ている。
「アラン、あのプレイをしてください。」「もっと詳細に!」
「アラン、パシュミナで私の首を縛ってください。」「よく出来ました!」
観念してダニーは自ら服を脱ぎ全裸になった。アランがシュっといわせながら
パープルのパシュミナを用意する。全裸のダニーをリビングに立たせたまま
アランはゆっくり時間をかけて自分の衣服を脱ぎ捨てた。
「さて、ベッドに行こうか。」ダニーは目に憎しみをたぎらせてアランを睨む。
しかし抗えば、サマンサに何が起きるか判らない。
奴隷のようにアランの後に従いベッドルームへと重苦しい行進をするダニー。
前回は媚薬をもられてのプレイだったが、今回は正気も正気、ダニーの意識は
冴え冴えとしている。アランはダニーが緊縛プレイに耐えられるか楽しみで
思わず微笑んだ。「アラン、やるなら早うやって。」「ほら、言葉使い。」
「やってください。」ダニーは四つんばいになり首を上向きに差し出した。
シュッ、シルクの衣擦れの音がする。とダニーの首の周りにパープル色が
巻きつけられた。「じゃあ始めるよ。」
柔らかなシルクが段々と締め付けられて縄のようになってくる。
「うぐっ!げほっ!く、苦しい。」アランは左手でパシュミナを締めながら
右手でダニーのペニスを弄ぶ。「ほら、ハニー、君の分身は正直だ。もう
首をもたげているよ。」ついに先走りの液でぬらぬらと光り始める。
その様子にアランのものもきつく屹立した。右手についたダニーの精液を
アヌスに塗りたくると、アランはパシュミナをさらに締めながら挿入した。
「うわぁ〜すごい締め付けだ!ダニー、いいよ。もっと行くぞ!」
さらにパシュミナを締める。と同時にダニーのアヌスもぎゅっと締まった。
「うぅぅ、あ、アラ・・ン、俺、死んでまう!」「あぁ、ダニー!イク〜!」
アランはひくひくと蠢くダニーの中で果てた。ダニーのペニスは一気に
勢いを増し、次の瞬間、はぜた。
うつぶせでダニーは涙を流していた。その隣りに横になるアラン。
「君はやっぱりセンセーショナルだったよ。僕のハニー。」
ダニーの頭を子供のようになでる。「うっくっくっ・・・」
「泣くなよ、ダニー。今日は君の自尊心を粉砕したが、次からは快感になる。
このプレイの肝はそこなんだ。」アランは耳元で囁く。
「アラン、アランは俺にどうして欲しいんや。」涙をぬぐってダニーが尋ねた。
「僕だけのものになって欲しいということかな。」「そんなの無理や。」
「いや、いつかは君は僕だけのものになるんだよ。」自信満々でアランは
宣言した。この男のエゴはどこまで強大なのだろう。
「俺がアランの言うこと聞いたら、サマンサには手を出さないって約束
するか?」「ああ、男に二言はないよ。」
「それにしても、ダニー・テイラー、君のプライドは超一流だ。脱帽するよ。
同じプレイをしてもマーティンはすぐ音を上げたのに。」
「ええ!何やて!」「あぁ、言ってなかったか。マーティンも実は僕の患者で
カウンセリングをやっていたんだよ。」「この〜!!」ダニーは思わず
アランに殴りかかったが、簡単にかわされてしまった。それだけダニーの
体力の消耗は激しかった。
またダニーはつっぷして泣き始めた。今度は号泣だ。
「刺激が強すぎたかな。まぁそうしてしばらく泣くといい。ネガティブな
感情が流れ出ていくからね。」アランはシャワールームへと消えた。
泣き疲れて、ダニーは胎児の格好で眠っていた。
アランは頬に軽くキスをして、キッチンに行き、ブランデーをグラスに
注いだ。「やっぱりいいセックスの後はルイ13世だな。」ガウン姿で
ベランダに出る。セントラルパークとその後ろにそびえるアッパーイースト街。
あそこにダニーの最愛の君が住んでいるわけだ。世間は狭い。
しかし、サマンサはよく網に引っかかってくれたものだ。有難い駒だ。
声をあげてアランは笑った。
翌朝、ダニーは顔に冷たさを感じて目覚めた。アランがアイマスクを乗せて
くれたのだ。「腫れを少しでも引かさないとね。勇敢なFBI捜査官の顔が
台無しだ。」ぷいっと横を向こうとするダニーの顔を抑え、キスをする。
「そろそろ出勤準備だろう。こういう時のために君のサイズのアルマーニを
買っておいたよ。」ダニーはやっと口をきく気になり尋ねる。「今何時?」
「7時半だよ。」「大変や!」「シャワーしておいで。コーヒー入れておくから。」
出勤してもダニーの頭の中は逡巡していた。昨晩の残酷なアランと今朝の
優しさに満ちたアラン、一体、彼の正体はそのどちらなのだろう。いや、
その両方、それがアラン・ショアなのだ。そして、自分はそのアランに
惹かれているのか、憎んでいるのか。それは何度も自問した。しかしまだ
答えが出ない。もしかして、その両方なのかもしれない。
サマンサが午後から出勤してきた。きっとまだ二日酔いでふらふらのはずだ。
しかし、ダニーは安堵した。少なくともアランから俺はサマンサを守ったんや。
代償は大きかったが、サマンサはダニーにとっては大事な仲間なのだから。
相変わらずマーティンは口を利かない。ダニーがブランド物スーツで現れたの
だからなおさらだ。 アランと買ったスーツなんか着て、ダニーの馬鹿野郎!
ヴィヴィアンが見るに見かねて間に入る。「あんたたち、まだこの間の続き
やってるならボスに報告するよ。チームスピリットを忘れるに!」
「ヴィヴ、すまんこって。気を遣わせて。」「これ以上気を遣わせないことだよ!」
マーティンはまだそっぽを向いていた。「ほら、マーティン、ダニーと握手!」
ヴィヴィアンが無理やり二人の手を取って握らせた。交錯する二人の視線。
二人とも視線をはずした方が負けとばかりににらめっこした。
「とりあえず、これで終わりにしなね。」ヴィヴィアンは去っていった。
「マーティン、昼でも一緒に食わへんか。」「そうだね。ヴィヴに免じて。」
二人お気に入りのダイナーに行く。マーティンはいつもの特大チーズバーガー。
ダニーはライスサラダをオーダーした。
「マーティン、正直に聞かせてくれ。お前、アランと寝たんやて。」
衝撃の顔をするマーティン。「どうしてそれを・・」
「アランが話してくれた。出来ればお前から聞きたかってん。」「・・・・」
「昔の事だよ。ダニーが1%をいい始めた頃だよ。」「そうか。」
「俺も昨日アランと寝た。」みるみるマーティンの顔が怒りで赤くなる。
「話せば長くなるけどな、サマンサがアランにちょっかい出してん。
サマンサを守るためにはしゃーなかったんや。許してくれ。すまん。
だから、お前も出来るだけサマンサに目かけて注意しといてやって
欲しいんや。あいつ、ボスとこじれてから、ちょっと焦燥気味やから。」
「うん、わかったよ。ねぇ、ダニーはサマンサと寝てないよね。」
「当たり前やん!お前、そこまで俺を疑うか。」「言ってみただけさ。」
気まずいランチが終わった。無言で支局に戻る二人。やはり元のダニーと
マーティンに戻るにはまだ時間が必要だった。
マーティンの怒りは一日が終わってもおさまらなかった。
いくらサマンサのためとはいえ、アランと平気で寝るんだ。
洋服も買ってもらって食事もいいレストラン行って、
まるでパトロンつきのジゴロみたいだ。そんなダニーは
僕の好きなダニーじゃない!
マーティンは思わず、エンリケに電話をしていた。
「ブエノス・ノーチェス」うぁスペイン語だよ。
「ソイ、マーティン」覚えたての言葉で名を名乗る。
「マーティン!!元気してる?」「ノー・ビエン」(元気がない。)
「マーティン、家来るかい?今食事作ってるよ。」
「うん、グラシャス。寄らせてもらうよ。」「じゃあね。」
マーティンがエンリケの家に着くといい香りがしていた。サフランだ。
「今日はチキンとマッシュルームのパエリアとエスカリバータね。」
「エスカリバータって何?」「ベジタブルのマリネ。」「うまそうだ。」
そこへ「エンリケ、デ・パルタ・デ・キエン?」(誰さ?)と登場した人物を見て
マーティンは腰を抜かしそうになった。ぼ、僕?
「マーティン、紹介するよ。ラルフ。君の兄弟。」「どういうこと?」
マーティンはすっかり混乱した。ここにいる二人はダニーと自分のそっくりさんだ。
「あんたか、マーティン・フィッツジェラルド。俺のそっくりさん。
へへへ、確かによく似てる。俺、あんたの顔、めちゃ気に入ったんだよ。」
「君、誰?」「俺、ラルフ・ウェイレン。よろしくな。長い付き合いになりそうだぜ。」
勘弁だよ。マーティンは即座に思った。
「エンリケ、ごめん、僕、帰るよ。」「今来たばかり。食事も出来てる。どうして?」
「とにかく、ごめん。」
エンリケに慰めてもらおうとした自分の愚かさに、マーティンは涙が出て来た。
それにしてもあのラルフって男、いかにも育ちが悪そうだったな。
エンリケに失望したマーティン。もう自分には誰もいない。
孤独がこれほど染みる夜ななかった。
マーティンは夜中にも関わらずDCの実家に電話した。父が眠そうに電話に
出る。「父さん、僕、マーティンです。」「どうした、事件か?」
「いえ、そうではなくて・・・言い出しにくいことなんですが、僕に双子
いますか?」「何だ夜中にそんなくだらん事で電話してきて。いるわけ
ないだろう。フィッツジェラルド家の跡取りはお前だけだ。」
「わかりました。おやすみなさい。」「ああお休み。」
どうやら血のつながりはなさそうだ。では、どうやってあいつは出現したんだろう。
マーティンの捜査官心に火がついた。
ようやくダニーは立ち上がり、さっきまで身に着けていた物を全てゴミ袋に入れ
しっかり口を縛ると階下に捨てに行った。
戻ってから床を拭くと、もう一度シャワーを浴びた。
左の手首に痛みを感じ、見てみると擦り傷から血が出ていた。
傷を見て、さっきのゴキブリを思い出し、身震いした。
上がってすぐに消毒する。傷に沁みたが、逆に浄化されているような気がした。
またニアミスしてしまいました、スマソ。
先にどうぞ。
いえいえ、もう今日はおしまいですので、続き楽しみにしてます。
テーブルの上に合鍵が置いてあるのに気づいた。
ダニーは、無造作にデスクの引き出しにしまった。
今は誰のことも考えたくなかった。
何かしていないと余計なことを考えてしまいそうで、
昨日のスペアリブと、ポテトとオニオンを皮付きのままオーブンに入れた。
焼けるまで90分、ダニーはクラブソーダを持ってソファーに座った。
MTVでノラ・ジョーンズ特集をやっているのを見ながら、
焼き上がりを待っていた。クラブソーダでは物足りない・・・。
冷蔵庫の奥に、ずっと前に買ったまま入れっぱなしにしている
安物のカリフォルニアワインを思い出し、さっそく取りに行った。
コルクを抜くときためらったものの、結局開けてしまった。
恐る恐る一口飲んでみる・・・うーん、飲めんこともないな・・・。
タイミングよくオーブンのタイマーも鳴った。
ダニーは、料理をリビングに運ぶと食べ始めた。ワインもどんどん進む・・・。
「うまいっ、マーティンにも食べさせたいわ」思わず独り言を言うダニー。
気づいてハッとする。ノラ・ジョーンズの物悲しい歌声が心に染みる。
気まずさを打ち消すように、グラスを重ねていった。
翌日、ダニーは起きられなかった。
久々のアルコールは、体の細胞を全て溶かしてしまったようだ。
日曜日なのをこれ幸いと、一日をベッドの中で過ごした。
水を飲んではまどろみ、また水を飲むのくり返し。
だらだらと時間だけが過ぎていった。
マーティンもまた、アパートに引きこもっていた。
何も口にせず、布団にくるまったまま塞ぎこんでいた。
月曜日、ダニーが出勤するとエレベーターでボスと一緒になった。
「おはようございます、ボス」「ああ、おはよう」
ダニーは努めて普通の態度で接した。弱みを握られたと思いたくなかった。
「昨日マーティンと会ったか?」「いいえ」「そうか・・・」
ボスは自分のオフィスへ入っていた。
マーティンはデスクでコーヒーを飲んでいる。いつもと同じ風景だ。
「おはよ」あいさつだけ交わすと自分のデスクに座った。
てっきり泣き腫らしてるかと思ったけど、大丈夫みたいやな・・・。
ダニーは安心したものの、少し寂しさを感じた。
マーティンが嫌で別れたわけではないのだから・・・。
ミーティングが終わり、それぞれ仕事に取り掛かった。
現時点では失踪者はいない。
裁判用の調書の見直しや、修正第四条にかからないかチェックしていた。
マーティンに副長官から電話が入った。
「はい、ええ、ええ。大丈夫ですよ。はい・・・もう分かってますったら!
父さん、僕をいくつだと思ってるんですっ!そんなことはしていただかなくても結構!
忙しいので切ります」声を荒げ、乱暴に電話を切る。
しつこいんだよっバカっ!!悪態をつくマーティン・・・。
サマンサとヴィヴィアンが顔を見合わせた。ダニーは書類に視線を落とした。
ダニーは倉庫に書類を取りに行くのに、マーティンを付き合わせた。
「さっき何やったん?」ダニーは恐る恐る聞いた。
「別に、大したことないよ。昨日、連絡がつかなかっただの何だのうるさいんだ」
「そうか・・・。そうや、鍵返さんと・・・」ダニーはマーティンの家の合鍵を返した。
「うん・・・ダニー、僕、NYに友達いないから持っててよ。もしもの時のためにさ・・」
「でも・・・」ダニーは断ろうとしたが、出来なかった。「ああ、わかった」
「もう大丈夫?」「なんとかかな・・・」
「本当にごめんね、もう迷惑掛けないから。今度、荷物取りに行くよ」
「そやな・・・」二人は書類の箱を見つけると、倉庫を後にした。
仕事が終わると、ボスはマーティンを呼び出した。
「ヴィクターから電話をもらったぞ。お前が反抗期だってさ!」ボスは笑った。
「とうとう逆らったってわけか?」マーティンは黙ったままだ。
「どうしたんだ、マーティン?ブロンクスの件で拗ねちゃったか?」
「・・・・・」「何とか言ったらどうだ?黙ってちゃわからん」
「僕たちはもう関係を清算したんだ!」マーティンはドアをバタンと閉めて出て行った。
マーティンは翌朝、ダニーに声をかけた。ダニーの方がびっくりする。
「ねぇ、ダニー、今日、捜査会議しようよ。」「ああええで。お前のいい時間に
どっか予約しとくわ。」「出来ればダニーの家がいい。」「そか。」
二人は7:30に仕事を終える約束をして、仕事に没頭した。近頃、事件が
ないので、皆定時にオフィスを後にする。ボスも帰ったのを見計らって、
二人でエレベータに乗る。
近くのデリでマーティンはラムチョップ、ダニーはペンネのバジル和えを買う。
「そんなに食べないと、もっと痩せちゃうよ。」「食欲ないんや。この間の
中華以来、胃が正常に働かん。」「ごめん。」「お前の謝ることちゃうで。」
「それで今日の捜査会議の議題は何や。」「エンリケが連れてる僕のドッペル
ゲンガーのこと。」「お前、会うたんか?」「昨日エンリケの家にいったら
我が物顔でくつろいでたよ。スペイン語も出来るし。」
「あいつはな、刑務所からアランが釣り上げた獲物や。お前そっくりの
整形手術施してな、エンリケが遊びの道具にしとる。」
「そんなの人権侵害じゃないか!」「でもあのラルフって奴は楽しんでそうやで。」
「何のため?」「・・・・」「言いなよ!ダニー」「アランは独占欲の強い男や。
俺を手に入れるためにお前と俺を引き離そうとしとる。」
「何だか複雑なプロットで良くわからないよ。」
「要はな、俺のあれのテクニックをエンリケに教えて、ラルフでエンリケは
試してんのや。お前の顔してたら、エンリケも本気になるやろ。それで
俺の代替品からエンリケを正規品に変えようって魂胆や。」
「な、何て事だ。僕らのつながりってセックスだけじゃないよね。」
「俺かてそう思うとるで。お前とは魂がつながってるんや。」
「じゃあ、怖がる必要ないじゃないか。」「おいアランを甘く見るなよ。」
「アランとダニーはどういう関係なの?」「だから兄弟やて。」
「兄弟でも寝るんだ。」「勘弁してくれ。俺もう頭ぐちゃぐちゃやねん。」
「今日のところは許してあげる。だから一緒に寝よう。」
「そうやな。まず腹ごしらえや。」ダニーは作り起きのスペアリブと
グリルドベジタブルを食卓に乗せる。「わぁ豪華だ!」「テイラー家秘伝の
ソースやで。味わってみ。」かぶりつくマーティン。
「うわ〜、美味しい!」「そうやろ。おれの母ちゃんの味や。」
二人につかの間の至福の時間が訪れた。
「デリで買った奴は明日のランチにしよ。」「うん。」
二人はセックスすることなく、ベッドに横たわった。
お互い、優しいキスを繰り返し、髪の毛をいじる。
「ダニーの身体の匂いがたまらないよ。」「臭いか?」
「違うよ、あそこが立っちゃうよ。」「あほ!はよ寝よ。」「うん。」
921 :
fanです:2005/09/15(木) 04:57:00
書き手2さんの話が切なすぎて、眠れなくなりました。
早く二人を復縁させてください。
はじめはダニー萌えで読み始めたのに、今は二人萌えですw
>>921さん
感想ありがとうございます。
まだ手探りの状態なので、どうなるのか自分でもよくわかりません。
頼りなくて申し訳ないですね。
翌朝、マーティンは珍しくダニーより早く目が覚めた。
ダニーの寝顔を見惚れていたが、はだけたパジャマの首元の赤いアザが
目に入った。 僕の奴と同じだ。ダニー、そんなことまでしたのか・・・
ショックで眠気が消え去った。ダニーを揺り動かす。
「うぅぅん、今、何時や・・・」また眠りに入ろうとするダニー。
「ダニー、起きろよ!」段々乱暴に揺り動かす。「うわ、何や。驚いたわ!」
「首のアザ、何だよう。」マーティンはダニーを睨みつける。
眠気まなこのダニーはまだはっきりしない意識のようだ。
「ああ?あぁ。これか。サマンサ守った代償や。」
「かっこつけるな。ダニー、感じたんじゃないの?イったでしょ?」
「お前なぁ、おはようもなしに、いきなり始めるのは卑怯やぞ!」
ダニーも怒り始めた。
「そうや、お前やて付けられた跡やないか。気分悪いわ。」
ぷいっとダニーはシャワールームに消えてしまった。
また、やっちゃった。昨日、ダニーは正直に話してくれたのに。
マーティンはダニーの事となると自分が抑えられない。一人っ子で、
感情を押し殺すのを小さい時から身に着けていたというのに。
「ダニー、ごめんよ。許して。」シャワーカーテンごしに許しを請う。
するとダニーが急にカーテンを開け、パジャマを着たままのマーティンを
引きずりこむ。「うわぁ!」ダニーがマーティンに情熱的なキスを施す。
シャワーを止め、仁王立ちになるダニー。「これが素の俺や。首の跡も
含めて。ダニー・テイラーや。受け入れられないなら一緒にいられへん。」
ぬれねずみになったマーティンは思わず跪き、ダニーのペニスを口に含む。
「僕は君なしじゃ、生きていけないよ。ダニー・テイラー」
ダニーはマーティンを立たせてパジャマを脱がせる。そして改めてシャワーを
開き、モーニングシャワーの続きを行った。
マーティンは初めてダニーの身体に宿る崇高とも言える孤高の魂を見たような
気がしていた。
シャワーからあがると、いつものダニーに戻っていた。
「マーティン、俺の首にクリーム塗ってくれへん?うまく隠してや。」
「うん!すごいね、リキッドクリームだ。ダニーの肌の色ぴったり。」
「・・言いたかないけど、アランからのギフトや。俺用やて。」
「・・・そうなんだ。アラン、本当にダニーの事愛してるんだね。」
「あいつの本心は判らん。もうこの話やめよう。」「そうだね。」
二人は昨日買ったままのデリの包みをランチバッグにして、時間差をつけて
出勤した。オフィスに着くなりダニーにサマンサが聞いてくる。
「ねぇ、ダニー、アランと親しいんでしょ。」「まぁな。」「彼女って
どんな人?うまくいってるみたい?」「サマンサ、あいつはやめとき。
ほんま、ひどい女ったらしやで。」「そうなんだ・・・」
明らかにがっかりしている。 サム、もう近寄るなよ。俺のアザが増える!
ダニーは心の底から祈っていた。
マーティンが出勤してきた。「おはよう。」「おはよ。」
二人の様子を見てヴィヴィアンが微笑んでいた。「仲直りしたようだね。」
「ヴィヴィアンのおかげや。ありがとう。」ダニーがいつものおどけた態度で
お礼をいう。「どういたしまして。」いつもの朝の支局の風景だ。
アランが来るまでは・・・
「サマンサ、お客さん。」ヴィヴィアンが席を離れていたサマンサの代わりに
内線をとっていた。「朝から、誰だろう?」現れたアランを見るなり、
サマンサは輝くような笑みを浮かべて走っていった。ボスが個室から出てきて
サマンサの様子を伺っている。
「アラン、今日はダニーに用事じゃないの?」わざと聞くサマンサ。
「いや、サマンサ、この間の晩の事を謝りたくてね。僕も酔っていたから
君を家まで送らずタクシーで帰すなんて無粋な事をしてしまった。」
「そんなこと言う為に来てくれたの?電話でもいいのに。」
「君の顔を見に来た。なんて言ったら迷惑かな。」「そんな迷惑なんて!」
ダニーが割って入る。「やぁアラン、この間のプレゼント、彼女喜んだやろ。」
アランがにやっとして「ああ、おかげさまで助かったよ。ありがとさん。」
サマンサが退散する頃合と理解して、「それじゃ、アラン、ご馳走さま。」と
席に戻っていった。「アラン、約束が違うやろ。」ダニーが小声で言う。
「言論の自由を阻むのかい?話位いいだろう。じゃあまた連絡するよ。」
アランが去っていった。後ろではボスがサマンサを個室に呼び出していた。
「ボス、何ですか。」「ドクター・ショアとはどんな仲だ?」
「ボスに報告する義務があるの?だって私たち・・・・」「どんな仲だ!」
ボスが苛立っている。「食事しました。それだけです。失礼します!」
サマンサの後ろ姿を見送るボス。 この腹立たしさは何だ。
しかし次の瞬間、いつものボスに戻っていた。
次はマーティンに内線だ。「上がってもらって。」マーティンが迎えに行くと
エンリケがエレベータホールに立っていた。ダニーが横目で見ている。
「エンリケ、僕・・」
「マーティン、ごめんなさい。僕、君に悪いことした。埋め合わせ、今晩
食事しよう。」「二人だけで?」「シー。二人だけ。」「わかった。」
マーティンはラルフの事を調べるため承諾した。
ダニーに暗号メールを打つ。「トレス書記官と二人で打ち合わせ。」
ダニーは複雑な気持ちで返事を打つ。「了承。注意せよ。」
その日も目立った事件はなく、暇なチームだった。
「これだけ暇だと身体がなまっちゃう。」サマンサが伸びをしながら言う。
「それだけアメリカが平和ってこっちゃ。」ダニーが軽口をたたく。
「じゃあ、お先に。」マーティンが先に席を立った。
エンリケは運転手つきのリンカーンを支局の前に付けて待っていた。
マーティンはあらためて彼が外交官だったのを思い出した。
「今日はヴィレッジに行く。僕が行きたかったレストラン。」
着いたのは、グリニッジ・ヴィレッジの「ゴッサムバー&グリル」だった。
「よく予約が取れたね。」マーティンは驚いていた。
「僕の名刺、効き目あるからね。」ウィンクするエンリケ。そんなところも
ダニーそっくりだ。
なんとシェフのポーターレ氏自ら挨拶をしにくる。
うわ、ニューヨーカーで見た写真の人だ! 出てくる料理はすでにエンリケが
オーダーしておいたものらしい。次から次へと運ばれる料理はどれも見た目
味ともに素晴らしく、さすがのマーティンも驚きの連続だった。
こんな中じゃ、ラルフの事、聞けないや。
口火を切ったのはエンリケだった。「この間、家にいた男ね、びっくりしたでしょう。」
「うん、鏡見てるみたいだったよ。」「可愛そうな男。スラムで育って、
ろくに学校も出てない。その上、醜形・・」「醜形恐怖症?」マーティンが助ける。
「そう。それで人前に出られなかった。アランが助けてあげた。」
「でも、何で僕とそっくりにしたの?」
「それは・・・僕、寂しいね。マーティンはダニーとお似合いだから。
アランからのプレゼント。」「何だかシュールな世界だなぁ。」
「彼、スペイン語しゃべれる。住むところない。だから僕の家に今住んでる。」
「エンリケ、君はそれでいいの?」マーティンは思わず情にほだされてきた。
友達もいない国に自国の命を負って派遣されてきた外交官。どれだけ孤独だろう。
「マーティンと住むこと出来ない。だから仕方がない。」
「僕がもっと君と一緒にいたら、彼をどうする?」「うーん、一人で暮らさせる。」
「わかった。話してくれてありがとう。」エンリケはほっとしたようだった。
帰りもリンカーンでマーティンのアパートまで送ってもらう。
「寄って行く?」思わず尋ねるマーティン。「いや、今日はここで。じゃ、
もっと電話していいか?」「うん。エンリケ、誰かと話したくなったら
僕に電話して。」「シー。エストイコンテント!」「何?」
「思わず言った。沢山うれしいということ。」「じゃあお休み。」「お休み。」
根がまっすぐなマーティンは気がついていない。これもすべてアランが
お膳立てしたことなのだと。マーティンは人助けをしたような気持ちになり
口笛を吹きながらジョンに挨拶した。「ご機嫌ですね。フィッツジェラルド様。」
「ああ、いい事すると気持ちがいいね。おやすみ。」「おやすみなさいませ。」
明日、ダニーに報告しよっと。今日も安眠できそうだ。
家に着くとたちまち携帯がなった。エンリケからだった。
「言うの忘れたから、電話で言う。僕、マーティンを愛してる。おやすみ。」
「あぁ。おやすみ。」マーティンは初めて自分が今日したことを反芻してみた。
果たしてよかったのかな。とにかくダニーと話しなくちゃ。
留守電にはダニーからの簡単なメッセージが入っていた。
「エンリケを連れ込まないで一人でいい子で寝るように。おやすみ。」
「そうしてるよ!」マーティンはぷぅっとふくれてシャワーへと向かった。
マーティンが支局から出ると、ボスが先回りして待っていた。
無理やり乗せられ、走り出すボスの車。
「ボス、僕は一人になりたいんだ。降ろしてください」
「他人行儀な言い方だな、マーティン」
「・・・どこに行くの?」ふくれっ面のまま聞く。
「家だよ、お前の家」ボスはマーティンのアパートに向かっていた。
家に入ると、ボスは部屋の点検を始めた。
「ちょっと、何やってんの?」怪訝そうなマーティン。
ひととおり見て回ると、ボスは携帯を取り出した。
「マローンです、副長官。いえ、何も異常はありません。
ええ、取り越し苦労ですよ、ハハハ。マーティンに代わりましょうか?はい、では失礼いたします。」
「親父さん、妙な女を連れ込んでないか確かめろってさ・・・」ボスは爆笑している。
マーティンは無視して手を洗いにいった。
着替えていると、ボスが入ってきた。
「マーティン、ダニーと別れたって本当か?」
「ああ、もう僕とは付き合えないって・・・」泣きそうなのを隠すマーティン。
「なぜだ?お前に見切りをつけたのか?」いびるボス。
「違うっ、そんなんじゃないっ!!ボスの・・ボスのせいじゃないかっ!!」
「私の?なんのことだかさっぱり」マーティンはボスを突き飛ばした。
「あんなひどいことしといて・・・よく言うよ!!」とうとう、ポロポロ涙がこぼれた。
「ひどいって?あいつが虫を怖がるなんて知らなかったんだ、嘘じゃない」
ボスは必死に知らなかったと力説した。徐々に信じ始めるマーティン・・・。
「本当?ほんとにわざとじゃないの?」
「ああ、そんなひどいことするわけないじゃないか、信じてくれ」「うん・・・」
トロいお坊ちゃんだ、コイツとあのヴィクターが親子だとは到底思えん。
もっともヴィクターも相当親バカだがな・・・ククク。
マーティンを抱きしめて慰めながら、ボスは心の中で笑い転げていた。
ダニーは夕食の後、ソファーに寝そべっていた。
アイツ、オレの他に友達いいひんて・・・そんなん孤独やなぁ・・・。
同じキーホルダーに付けている、マーティンの鍵と自分の鍵とを重ねた。
今頃どうしているのか気になり、携帯を開けたり閉めたりしていた。
そのうち、きっぱりとあきらめ、バスタブに湯を溜めるため立ち上がった。
その時、携帯が鳴った。慌てて着信画面を確認するが見慣れない番号だ。
「はい」「テイラー捜査官?」「はい、そうです」「ヴィクター・フィッツジェラルドだが・・」
ふっ副長官から電話や!!ダニーは焦る心を静めた。
「副長官、こんばんは。テイラーです。この前は途中で退席しまして、大変失礼いたしました。」
「いやいや、仕事なら仕方ない。夜分遅くにすまないね、息子のことでちょっと。今、話せるかね?」
「ええ、もちろん大丈夫です。フィッツジェラルド捜査官のことといいますと?」
「ああ、様子がちょっとおかしいので気になってね。」
ダニーの心臓は破裂寸前だ。動悸がする・・・。
「以前、マローン捜査官から妙な交際相手がいると聞いて以来心配でね、
その時は誤報だったんだが、あの子が急に反抗的になってしまって」
「いえ、僕が知る限り、交際しているような相手はいないと思います。
今はキャリアを積むのに一生懸命ですよ。お父上が目標なんじゃないでしょうか?」
「そうか。たまたま虫の居所でも悪かったのかもしれんな・・。
ありがとう、テイラー捜査官。助かったよ、また四人で食事でもどうかね?」
「はい、ありがとうございます。ぜひご一緒させてください。」
「ああ、近々また会おう。」
「はい、副長官。お会いできるのを楽しみにしております。失礼いたします。」
ダニーは恭しく電話を切ると、フゥーっと息を吐いた。
これがまた火種になるねんなぁ・・・ダニーは気が重くなった。
ダニーはすぐにマーティンに電話しようとしたが、時計を見て止めた。
23:30、また眠れない夜を過ごさせるのも、かわいそうな気がした。
明日オフィスで言うほうがええな。ダニーはどっと疲れを感じ、
バブルバスはやめ、シャワーだけにしてベッドにもぐりこんだ。
しばらく寝返りばかり打っていたが、やがて眠りについた。
マーティンはボスに抱きしめられていたが、急に腹が立ってきた。
「わざとじゃなくても、やっぱりボスのせいだ!!」
「私が悪かったよ、マーティン。ダニーにも謝るから・・・」
「いまさらそんなこと・・・。もうここには来ないで!」
「わかったよ、今日は帰る。おやすみ、マーティン」
キスしようとするボスを撥ねつけた。ボスはそのまま帰っていった。
マーティンは冷凍庫の中からシュリンプグラタンを取り出した。
ダニーが作り置きしておいてくれたものだ。
レンジで温めると食べ始める。一口食べるごとに泣けてきた。
ダニィ・・・今すぐ会いたいよ・・・でも・・でも我慢しなくちゃ!
マーティンは腕で涙を拭うと、グラタンを口に運んだ。
次の日はハードだった。三ヶ月前の少年失踪事件の目撃情報が入り、
チーム全員が情報確認に追われた。
ようやく見つけたときには覚醒剤を打たれ、男娼としてこき使われていた。
「この子は別人なんじゃ・・・」頬がこけ、目には光がない少年を前にみんな息を呑んだ。
軽い気持ちで出会い系サイトで知り合った男に会いに行き、
廃人同様にされてしまったのだ。犯人はその場で自殺した。
見つかったものの、手放しでは喜べない事件の結末だった。
みんなが帰った後、マーティンは一人オフィスに残っていた。
やっと一段落つき、帰ろうとすると土砂降りの雨が降っていた。
まいったなぁ・・・マーティンは窓の外を見つめ佇んでいた。
携帯が鳴っている。ん?ダニーからだ!マーティンは急いで出た。
「マーティン、今どこなん?」「今から支局を出るとこ。ダニーは?」
「買い物の帰り。五分ぐらいしたら着くけど、送ったろか?」「ほんと?」
「うん、ほな五分後に角を曲がったとこな」「了解!」マーティンは踊りたい気分だった。
マーティンが待ち合わせ場所に着く頃には、雨はいっそう激しくなっていた。
ダニーのマスタングに素早く乗り込み、ジャケットを脱いだ。
「ほれ、頭びしょびしょやんか」手早くタオルを渡され苦笑いした。
「さすが!、だね」マーティンは感嘆した。用意周到=ダニーだ。
「ちゃんと拭いとけよ、もう夏も終わりなんやから」
「ん。ダニー、何買いに行ってたの?」「いろいろ。歯ブラシとか」
ダニーは嘘をついた。本当は迎えに来たなんて、口が裂けても言えない。
「これは?」「バンブー、日本の竹やて。ええやろ」
「うん」マーティンは竹の包みをそっと後ろのシートに戻した。
あっという間にマーティンのアパートに着いた。
「じゃあな、早よ着替えろよ」ダニーの言葉に渋々頷くマーティン。
「ねぇ、寄って行かないの?」「ああ、今日は帰るわ」
「家に食べ物がない」「え?なんて?」
ダニーは、何を言っているのか一瞬わからなかったが、意味が分かると笑いをこらえた。
「これ、食べてええで」さっきデリで買った夕食を渡す。マーティンの泣きそうな困った顔。
「しゃあないなぁ、食べたらすぐ帰るで」ダニーは車を停めた。
翌朝、マーティンが出勤してPCを立ち上げると、もうダニーから暗号メール
が届いていた。「報告待つ。」マーティンも即座に返信。「8:00Mにて」
Mとはマーティンの家という意味だ。昨晩早帰りをしたマーティンは書類整理
に手間取り、ダニーの方が先に支局を後にした。
「ジョン、こんばんわ〜。マーティンと約束してんねんけど、よろしいか?」
「はい、テイラー様。フィッツジェラルド様からご連絡ありましたので、どうぞ。」
ボンにしては今日は気がついたもんや。少しは成長したかな。
合鍵でマーティンの部屋に入る。一応、キッチン、ベッドルーム、
バスルームを確認する。エンリケが寄った形跡は見当たらなかった。
よっしゃ! ダニーは冷蔵庫からサン・ペリグリーノを取り出すと
一気に飲んだ。
マーティンの携帯に連絡する。「今どこや?」「まだオフィスだよ。」
「何してんねん?」「ボスが報告書上げるように指示してきてさぁ。」
「ボスは?」「もう帰った。」「なら家でやろ。手伝ったるわ。」
「わあい!じゃあすぐ帰るから。」マーティンはがたがたPCを片付け、
オフィスから走り出た。
ダニーはデリで買ったミートローフの付け合せにと、トマトのカポナータを
作ってマーティンを待った。「はぁ、はぁ、」ドアが開き、息を切らせた
マーティンが入ってきた。「おかえり。」「はぁ、はぁ、た、ただいま〜」
ダニーに抱きつくマーティン。「何や、何があったん?」
「だって、ダニーがおかえりって言ってくれたもん。」
子供の頃学校から帰ると迎えてくれるのは、いつもマーガレットだった。
母親に抱きしめられた事すらない。ダニーといると家庭の匂いがするのだ。
「今日はミートローフと野菜のカポナータやけどええか?」
「カポナータって何?」「野菜のトマト煮込みや。」「美味しそう!」
「お前、ほんまに家庭料理の名前知らへんのな。」
「いいじゃん。僕の担当は食欲だよ。」マーティンは冷たい家庭の様子を
ダニーに知られたくなかった。
マーティンはモンダヴィのジンファンデルを開けた。「ええワインやん。」
「へへへ。ワイナリーから直送してもらったんだ。」マーティンは胸を張る。
「それで、昨日はどやった?」「それがさぁ・・・」口ごもるマーティン。
「エンリケが何考えてるか、判ったんやろ?」ダニーは待っている。
マーティンは話し始めた。エンリケが孤独を癒そうとラルフと住んでいると。
「お前、そんなん信じたんか?」
「え、だって知らない国に一人で来てるんだよ。寂しいじゃない。」
「あいつ、パーティーアニマルやで。友達もぎょうさん出来たみたいやし。」
「週末のミッションに行ってみ?4人で行って以来はまったらしいで。」
「・・・そうなんだ。友達多いんだ。・・・」ミートローフをつつくマーティン。
「まぁ、それがお前のええとこなんやろな。俺は好きやで。マーティン。」
「じゃあラルフを何でそばに置いてるんだろう?」「当たり前やん。お前の
代わり。お前が手に入ったら、ポイ捨てするで。きっと。」
「ラルフ、可愛そうだ。」「ほらほら、また同情する。」
「じゃあこれからどうする?」「そやなぁ。」それを言われるとダニーも
答えがない。自分の中でアランを拒絶出来る自信がまだないのだ。これは
マーティンに絶対知られてはならないことだ。
「俺はアランがサマンサに近寄らないよう見張るわ。」「ふぅん。僕は?」
「ラルフ、ええたちの男やないで。エンリケから引き離せ。」
ダニーは二人のコカインパーティーを思い出していた。
「何だか二人で囮捜査してるみたいだね。ワクワクするよ。」
お前はまっすぐでええな、マーティン。俺はもっと腹黒いで。
ダニーは心の中でそうつぶやき、ジンファンデルを一飲みした。
マーティンが誤解して「かんぱーい!」とやりだした。「乾杯!」
ダニーもグラスを合わせて、マーティンの気持ちを汲んだ。
食事の後、マーティンの報告書の手助けをしているうちに夜中になって
しまった。二人ともタイプスピードはそれほど速くない。
24:30になってやっと仕上がった。「マーティン、明日も勤務やから
今日はこれでお別れな。」「えっダニィ・・泊まらないの?」
「だからぁ、明日も勤務やいうてんやん。」「判ったよ。」ぷいっとするマーティン。
ダニーは流しのタクシーを拾ってブルックリンに向かった。
家に着くとダニーはドキリとした。ドアの下から明かりが漏れている。
ドアの鍵も開いている。とっさに拳銃を手にし、ドアを蹴破る。
「おいおい、素手の相手を撃ったら起訴されるよ。」アランだった。
「どうして、入れた?」「大家さんはいい人だなぁ。ドクターバッグ見せたら
鍵を開けてくれたよ。」どこまでも悪知恵の働く男だ。ダニーは舌を巻いた。
「マーティンがラルフと会ったんだって?」アランが笑いながら聴く。
「ああ、マーティン、ショックだったみたいやわ。」「想像つくね。」
ダニーはぐったりとダイニングチェアに腰掛けた。
「何だい、僕の隣りが空いてるってるのに、随分だね。」
「俺、残業で疲れてんねん。今日は帰ってくれへん?」
「OK。じゃあ今週末は、我が家で過ごそう。」「あぁ、判った。」
アランはうつむいているダニーの額にキスをするとドアから出て行った。
俺、一体、何やってんのやろ。めちゃ疲れたわ。
ダニーは立ち上がると、着替えのためにクロゼットに歩いていった。
週末、ダニーは胸に砂が詰まったような重い気持ちでアランの家に出かけた。
一応の用意のためプラダのパンツとグッチのTシャツ、ロエベのスェード
ジェケット着用だ。家に着くと、パーティーの真っ只中だった。
ジュリアンやトム、ギルバート、ビル以下いつものメンツも揃っている。
エンリケも来ていた。連れているのはラルフの様だが良く見えない。
アランがダニーとおそろいのグッチのTシャツを着て、ダニーを迎えた。
「アラン、今日は何?」「僕の友人の誕生日だ。紹介するよ。マーク、
ダニーだ。」マークは分厚い眼鏡をかけ、どうにもイケてない服装の
冴えない男だった。「ダニー、よろしく。マークだ。」おどおどしている。
「彼はメディカルスクール中退して、IT企業を起業して、今や億万長者だ。
僕も出資した関係で恩恵に預かってるというわけさ。」
ダニーはこれで納得した。一介の医師の給与ではとてもこの暮らしを賄える
わけがないと、前から犯罪の影を捜していたのだ。ストックゲインだったのか。
「ダニィ・・」後ろから聞き覚えのある声がした。「マーティンか!?」
「そう、エンリケに連れて来られちゃったよ。」
「ラルフは?」「来てるよ。」見るとラルフは女性たちに取り囲まれて
悦に入っていた。「みんなが兄弟かって聞くんだよね。」「話し方聴けば
違うってあきらかやん。」「それがラルフ、言葉使いが変わってきててさ。」
また、アランか!アランを睨むと笑いながらシャンパングラスを掲げて
乾杯のマネをしている。
「ダニー!ちょっとこっちへ!」アランに呼ばれた。「行くで。エンリケから
離れるなよ。」「うん。」「ダニー、マークのために誕生日の歌を弾いて
くれよ。」スタンウェイを開き、アルペジオを二度ほど弾くと、皆の会話の
声が静まる。弾き始めたのは、スティーヴィー・ワンダーの「ハッピー・
バースデー」だ。皆がダニーの曲に合わせて歌う。冴えないマークが顔を赤くして
聞いている。
アランは奴も利用したんやな。どこまでも食えない男や。
ダニーは1曲で演奏を止め、キッチンへ行きクラブソーダを取ってきた。
「アプローズ!」アランが近寄ってくる。「君はどこまでも素晴らしい。
ダニー。誇らしいよ。」デザイナーのビルも寄ってくる。
「全く、おそろいのTシャツなんか着ちゃって。部屋の温度が5度位上がったわ。」
ビルはダニーに耳打ちする。「あんたはアランの本命よ。絶対に別れないでね。」
そういえばアランの同僚のトムにも同じ事を言われた。一体何なんだろう。
マーティンを見るとエンリケとラルフと3人で話し込んでいた。
気にはなったが中に入る気にはなれなかった。どうせ皆にはやし立てられる
のが落ちだ。マーティンはラルフと並んでまんざらでもなさそうに話している。
あいつ、何やってんねん。守るのはエンリケやって言うてるのに!
弁護士のギルバートがアペタイザーを取りに来たので、ダニーは尋ねる。
「なぁ、ギル、アランの前の相手ってどんなんやったん?」
「それを聞いてくるか。いつかは聞かれると思ってたけどね。色々いたけど
アランが夢中になった唯一の相手が君と同じエスニシティーでね。
結局、アランの金を持ち逃げしたんだよ。それでアラン、しばらく
薬物中毒になって停職になるし、荒れるし大変だったんだ。」
「そやったのか。」「だから君にはアランを落胆させて欲しくない。友人
全員からの心からの願いだよ。ダニー、よろしく。」
マーティンじゃないがダニーも思わずホロっときた。
愛する相手に裏切られる程心に深い傷を負うことはない。
アランも人の子やったんや。
ベランダに出て、一人ソーダを飲んでいると、アランがやって来た。
「今日はどうしたんだい。いつもの陽気なテイラー捜査官じゃないのかい?」
「俺かて感傷的になる時位あるわい!」「夜風が冷えるから中に入ろう。」
中に入ると皆がクラッカーを二人に向けて鳴らした。
「今日の素晴らしいホストであり幸せ一杯のカップルであるアランと
ダニーに乾杯!」グラスの合わさる音が続く。
ダニーはマーティンに目を向けた。するとマーティンは目をそらせ下を向いた。
アランは満面の笑みでダニーの身体を自分に向けると熱烈なキスをした。
皆の拍手が止まない。 まるで結婚式や。
ダニーはほんの1分の出来事なのに数分間であるかのように耐えていた。
マーティンがとうとうトイレに駆け込んだのが見えた。エンリケが後を追う。
音楽がシガー・ロスに変わっていた。荘厳なメロディーだ。
アランは皆に手を振りながら「まだパーティーは続きます。どうぞ、料理も
ワインもまだありますから、ご歓談ください。」と仕切った。
ビルが泣いていた。「ダニー、ありがとう!アランを幸せにしてやってちょうだい!」
エディターのジュリアンも「ダニーがFBIじゃなかったら社交欄に載せたい位
絵になってるよ。二人とも。」と祝福している。
トムが「やっぱり君は本命だったね。おめでとう。」と声をかける。
はめられた! ダニーは思った。これはマークの誕生日パーティーじゃない。
自分たちをさらに公のカップルにし、マーティンに知らせるための策略だ!
目を赤くしてマーティンがトイレからエンリケに付き添われて出て来た。
ラルフが如才なくシャンパングラスをマーティンに渡す。一気飲みする
マーティン。 あいつ、あの調子じゃ今日やばいわ。どないしよ。
ダニーのそばには次から次へと祝福の人が訪れる。アランも全く拒んでいない。
「どうだい、ダニー、NYの社交界は?」「俺のいる所やない。」
「すぐ慣れるよ。君は順応性があるから。」ダニーもシャンパンが飲みたくなり
行こうとするとアランに止められる。「ハニー、僕の役目だ。」
気がつくとマーティンとエンリケ、ラルフが消えていた。
ダニーも去ろうとすると、アランの友達全員に止められた。ビルが言う。
「聞いたわよ。元彼がここに来てたんでしょ。今日は帰さないわよ〜。」
アランがシャンパンを持ってきた。また乾杯が始まる。ダニーも目まぐるしい
出来事の連続で一杯で酔いがきた。
新スレ立ったからこちらに感想を書き込もうと思いまーす。
1さん、2さん!!
この先ダニーとマーティンはどーなるんでしょうか!?
二人には幸せになってもらいたーい!!
お願いだから妨害入らないでー!!
と、思いながら読んでいます。以前マーティンがうざいと書いた私ですが、そのうざさは女心に近いモノなんですよね(笑)
まぁ、難関がなきゃ話は成り立たないと思いますが、ダニーに余りヒドイ事しないで〜とお願いしてみたりして。
何はなくとも、毎晩楽しませて戴いてます!!この先も頑張ってください!!