永遠神剣第二章 聖なるかなでSSスレ

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1名無しさん@初回限定
☆1.聖なるかなネタで2次小説を書こうという方向けの派生スレです。
聖なるかな関係の事柄や人物を含まない場合は雑魚スピスレをご利用ください。
2.次スレは950レスまたは480kbを基本に、臨機応変に立ててください。
重複防止のため、宣言と無理だった場合の報告を徹底するようお願いします。
3.荒らしや煽り、気に入らない人物・作品については、お互いのためにもスルーしましょう。
かかわる人も同類とみなされます。
また、職人も、鬱ものなど読み手を選ぶ作品については
注意事項の投下やNGワード指定などを徹底しましょう。
4.職人が投下途中の際などの割込み防止の為、
書き込み前などにはリロードするなど、予防を心がけてください。
また、職人も投下レス数が分かるような配慮をお願いします。
5.妄想やネタ振りは構いませんが、頻度によっては乞食扱いされるかもしれません。
また、ネタ振りにもならないような妄想は自重するようお願いします。
※挿絵を除くCGなど2次制作に関係ない事柄については各種専門の板へ。
※その他基本的なルールやマナーはネタ業界板及びエロパロ板のロカルーに準じます。

※関係スレ
 メーカースレ
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1185620000/
 本スレ
永遠のアセリア/スピたん/聖なるかな 第54章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1187187262/
 派生元
永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 27
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1185277607/
2名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 01:06:33 ID:yck0k7Sp0
>>3は永久童貞。
3名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 02:00:42 ID:QJk1mma90
うおおおおおお!>>3に宿った神名をネームブレーカー!!
4名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 02:05:00 ID:zwGxTXTJ0
雑魚スピスレでは、聖なるかながNGだったので立ててみた

しかし、需要ないんだろうか…。
5名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 02:12:05 ID:WnNMqt4L0
いやいきなり投稿あったら逆に怖いわw

確か書いたけど雑魚スピで上げられず困ってた人いたし、マターリいこうぜ
6名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 02:27:15 ID:zwGxTXTJ0
>>5
マターリいく事に関しては同意だし、いきなりだと吃驚するけど、
DAT落ち回避をどうしたものかとw

7名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 02:30:15 ID:ty/Kva8X0
というかネタバレおっけーなくらいやりこんだ(ほぼ全員クリア)人がどれくらい居るかって話だよな。
俺?まだ50時間程度しかやってないわ。
8名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 02:36:14 ID:zwGxTXTJ0
>>7
自分なんか、とりあえず資金繰りができてないうえ
地元店では売り切れらしく、購入し次第やり始めるところなんだが…
あくまでも、雑魚スピスレでダメなら立てておこうかと思っただけで。
しかし、理由がネタバレ可能な期間が取れてないからとかだったらどうしたものか
…気にする人も多いだろうしな。
自分はネタバレ気にしない方だから良いんだが。
9名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 02:57:09 ID:5I9GY01W0
   ヘ@^`⌒ヘ@ヘ
  ノリjノ(从ハリ))ヾゝ
    |!(i| ゚ヮ゚ノ|   <>>1さん!お疲れ様です!
    ( ノt)£し)     まだ皆ゲームに夢中な頃だろうから、のんびり待ちましょう。
<(Ξ=U_l__i|>==
     く_|し'ノ」
10名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 03:24:07 ID:5I9GY01W0
    _
  ,'´ ヘ ヽ
 ノ((从ハ从
  イノ! ゚ヮ゚从   <即死心配なら、こういうプチキャラAA貼ってもいいかな?
  と ) 乂 )ρ   いつネタが尽きるかわからないけれども。
   )|ノ弋」 宣   SSスレだということなら自重します。
  ん~しソ
11名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 03:32:43 ID:zwGxTXTJ0
>>10
聖なるかなのAAや挿絵などCG(但し角2等へ行くべきものは除く)は
今後はこっちでという方向で。
12名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 05:10:32 ID:cquItZSx0
よっしゃキターッ!!
ttp://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1170517418/l50

392-402にSS放り込んでるんで ひまなら読んでくだせーぃ

今日中に次の話書いてくるぜーぃ
13名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 05:17:29 ID:QJk1mma90
>>12
イヤッホオオオオオウ!いきなり大本命クリスト!GJ!
俺も何か書こうかね…
14名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 05:17:42 ID:zwGxTXTJ0
>>12
GJ!
今後はこちらでどうぞー
15名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 07:18:49 ID:d2Ylipwk0
>>1
まだ聖なるかなやってないけど応援カキコ
1612:2007/08/16(木) 07:59:36 ID:NCdoKMsj0
うす
なんか眠れんかったんで、夜仕上げるつもりだった分一気に仕上げてきたw

>12と同様にクリストねた
各所各地の設定は、前作SS引き継いで 完全に妄想と幻視の類であることをここにお断りしておきます。
楽しんでくれたら、幸いで、す。
 物部学園は現在夕食時である。
 かなりの長期間、閉鎖空間での生活を強いられ、娯楽に飢えている生徒一同にとって、食事は毎日の特に大きな楽しみになっている。
 学園の一室を間借りして暮らしているクリストたちにとっても、それは全く同じだった。
 もっとも、生徒たちとは少し理由が違い、単純に未知の食事を楽しみたいというのが第1の理由である。
 クリスト部屋のちゃぶ台には、丁度男子生徒1人分程度の分量の食事が並べられている。
 本日のメニューは、剣の世界産・牛に似た生き物の照り焼肉をメインに、精霊の世界産の各種野菜・山菜のごたまぜサラダ、とろみの効いたコーンスープ、デザートにはいちごのコンテンスミルク和えと、なかなかの品揃えである。
 茶碗の中にはきれいに炊けた白米の飯が、てんこ盛りに盛られている。これでちょうど5人分。
 各自クリストサイズの食器を手に手に取って、バイキング形式での夕食だ。
 クリストサイズの小皿の数がそんなに無いというのもあるのだが、それ以前の問題として、彼女たちにちょうどいいサイズに取り分けて配膳すること自体がかなりの難題であり。
 約1名有り得ないほどの大食娘がいるのもあって、なら定食1人分出したほうが手っ取り早いんじゃないのという結論に至り、今のスタイルが確立されたのだった。
「それでは、ミゥ姉さんには悪いですが、先に頂いてしまいましょう。冷めてしまうとおいしくないですからね」
 ポゥが、読んでいた本を床に置いて言った。本が傷む伏せ置きではなく、ちゃんと栞をはさんで閉じているところに性格が現れている。
 物部学園に派遣されてきて以来、暇さえあれば男女間の機微や恋愛模様を描いた小説・物語の類の本を読み漁って、自身にとって全く新しい概念である、男というもう1つの性のことについて、あれこれと学んでいるポゥであるが、唯一食事時だけはその例外だ。
 生まれ育った世界には無かった料理・食材の数々。調理法の違いによって生まれる大きな刺激。これもまた、ポゥにとって大いに興味をそそられる分野なのである。

 両手を合わせていただきますと、ポゥの号令が下るやいなや、真っ先にワゥが照り焼肉の皿へと直行する。ナイフとフォークを右手に、取り皿は左手に。
 一番乗りと喜んで、けれどナイフが伸びた先には別のナイフがすと出され、刃と刃がぶつかり金属質の音を立てる。
「んっ!」「むっ」
 明らかに意図しての妨害行為。手を出したのはゼゥである。
 2人とも食べ物の好みが似通っているため、毎食のようにより美味しそうな部分を確保せんと、鍔競り合いが繰り広げられているのだ。

 5人中随一の大食であるルゥは、2人が焼肉皿をはさんでにらみ合うのもまるで気にしない。
 米と野菜をたっぷり取って、箸使いも美しく、丁寧にしかし恐るべき速度で口に運び始める。
 質より量――というわけではない。単に好みの違いというだけだ。肉類よりも野菜類。特に白米の触感と味が、ルゥの嗜好にぴったり合っているのだ。
 一番遅れてポゥが動き、まずはスープに手を伸ばす。冷めたら顕著に味が変わるものから、というのが彼女の選択理由である。
 わきゃわきゃと騒がしく取り合い鬩ぎあいの年少組2人。挙動は常に落ち着いて、しかしものすごい勢いで腹に物を満たしていくルゥ。我関せずとばかり、あくまで自分のペースでゆっくりと食べていくポゥ。
 4者4様。食事時の行動にこそ、その人の真が現れるとは誰の言葉であっただろうか。

「あーっ! 最後の一切れっ!」
「べ。ワゥが遅いのが悪いんだから」
 フォークの先に刺さった肉のかけらを、これ見よがしに見せびらかして、ぱくりと口に放り込むゼゥ。
 おのれと瞳に炎を燃やし、どう仕返ししてくれようかと思案をめぐらせるワゥ。
 サラダ皿はほとんどルゥが1人で食べきり、スープも既にほとんど空。最後の米の一塊を、ルゥが椀によそっている。
 となれば、勝負はデザートの!

 2人は同時にデザート皿に。赤と白のコントラストも美しく、クリストには食い出がありすぎるほど大きないちごを前に、それっと飛びつきかじりつく。
 ポゥはこの展開を予測していたのか、自分の分は早々に確保済みだ。ルゥもルゥで茶碗の米を掬い取るように食べている。どうせ全部なんて食べ切れるものじゃないと踏んでいるのだ。
 いつの間にか早食い大食い勝負のような流れになっているが、2人にそれをどうと思う余裕も余力もありはしない。ただ相手より早くこの甘くておいしいものを食べつくそうと必死である。
 普段なら、この辺りでミゥが止めに入って落ち着くのだが、ルゥは基本放任主義、ポゥは止めたものかしらどうかしらなどと思い悩んでいるだけで、この場を収める役には立たず。
 と。
「んひゃあっ!?」
 突然、ワゥがすっとんきょうな悲鳴を上げた。その拍子に手に持っていたいちごを床に取り落としている。
 コンテンスミルクの白が、体や服のあちこちにこびりついて、その。なんだ。いろいろ見た目にまずい。
 同様に、白いミルクと赤い果汁が口回りやら黒のワンピースのそこここやらに垂れているのを、まるで気にもしていないゼゥ。その周りには、収束されたマナの残滓が漂って。

「い、今何したっ!? ゼゥっ!」
「何のこと? ゼゥは知らないよ」
 とぼけたところで食らったワゥが一番良く分かる。今のはたぶん、威力を極小に抑えたカオスインパクト――ゼゥのやつっ、そっちがそうならこっちだって!
 取り落としたいちごを拾いなおしている間に、ゼゥは手持ちを食べ切って、次のいちごに手を伸ばす。
 ゼゥの場合は当たっても、威力の加減さえしておけば、まだしゃれですむ範囲。
 けどボクの場合はそうはいかない。よーく狙って誤るな。効果半径を絞り切れ。与える被害は最小限に。掲げる戦果は最大限に――

 ゼゥがいちごを皿から持ち上げて口へと運んでいくその途上で
「ときゃぁぁっ!!??」
 赤いいちごは一瞬で炭に。持ち主には傷1つつけることなく。ワゥ必殺のライトニングファイア、数千度の炎の槍が、一撃のもとにいちごを炭化させてのけたのである。
「ラ。ら、ら、ライトニングファイアは無いだろっ! めちゃくちゃビックリしたじゃないかっ!」
「何のこと? ワゥは知らないよ」
 先に手出したのはそっちだもんね、とばかりにぷいと笑ってうそぶくワゥ。肩をふるわせ怒り模様のゼゥ。
 これはそろそろ止めないと、とポゥが2人に声をかけようとして腰を浮かせる。
「ねぇ、2人と」「ゼゥ、ワゥ」
 一瞬遅れて言葉をさえぎり、箸を置いて立ち上がったのはルゥである。いつものように表情は薄く。けれどその瞳には明らかな怒りの色。
 う、と2人は後悔して黙り込んだ。ルゥがこれほど怒りを顕わにするのはかなり珍しいことだ。少し暴れすぎたかな、と今更のように思っても後の祭りでしかない。

「そんなに暴れたいなら、食べ終わってからやって」
 けれど、ルゥは叱責するのでも止めるのでもなく、煽り立てるようなことを言い始める。
「ルゥ!?」
「ポゥ。黙って。ミゥは今日は希美についてるだろうから、今晩は多分戻らない。なら、いまのうち、言いたいこと全部言って、吐き出したいもの吐き出してくれば。
 毎食同じようなことが続くなら、1回の大騒ぎで、全部終わらせたほうがいい」
 年少2人をにらみつけながら言う。最初は萎縮していた2人だが、それもそうかもとだんだん思い始めて。

「よーし、っ! ワゥ、勝負だ!」
 と、ゼゥがびしりと指差して、赤い髪の妹に告げた。指先からいちごの果汁がぽとり。ワゥの鼻先からはミルクの白がたらり。
「望むところだよゼゥっ! 負けたほうは、勝ったほうが食べ終わるまで、食べ始めちゃいけないってことでどう!?」
「期間は?」
「永久っ」
「永久……」
 さすがにそれはちょっと厳しいかも、と黙り込んでしまうゼゥ。
「どうしたの? 勝てる自信がないならボクの不戦勝にしちゃうけど良い?」
「だっ、誰もそんなこと言ってないっ。いーよ、絶対勝ってワゥを泣かせてやるんだから!」
「それはこっちのせりふっ! ゼゥをボクにすがりつかせてあげるからね!」

 うーっ、とにらみ合って、一歩も引かぬと威嚇しあう2人。うん。とうなずき勝負方法を決めようと議題を進めるルゥ。
 ただ1人、先の展開を悲観して、でも何とも言い出せず、これでいいのかしら? かしら? と1人おたつくポゥだった。
「――で、行方不明ですか」
 翌朝、クリスト部屋。現在は午前6時過ぎ。昇ってきたものべー太陽の日差しも明るく、部屋の中を照らしている。
 結晶体置き場には5色が勢ぞろい。けれど、ならば部屋はクリストたちも5人揃っていなければならないはずなのだが。
 ルゥが床の上に正座して、顔も少しうなだれ気味に。ミゥは腰に手を当てて、仁王立ちに次姉を睨み据えている。

「まったく、人が一晩いなかっただけでこんな騒ぎなんて。ルゥ、どうして煽るようなことを言っちゃうんですか」
「ん……ごめん。食べ物が無駄になったのを見て。つい頭に血が上った」
 しょんぼりとして言うルゥ。返す言葉もないとはこのことである。今思っても不思議だ、どうしてあんな無茶な勝負内容に許可を出してしまったんだろう。
 「ふぅっ……とにかく、急いで探し出さないと」
「ん」

 ポゥが2人から少し離れたところで、集まっている『旅団』組数名ならびに早起きの生徒たちに事情を説明している。
 昨夜夕食時からの一連の流れを話終え、いよいよ肝心な、何が問題なのかの説明に入るところだ。
 2人が選んだ勝負内容とはすなわち――

「結晶体を使わずに校内一周して帰って来るですってぇ!?」
 沙月が思わず叫んでいた。クリストたちの生態・事情について最も良く知っているうちの1人である彼女には、それがどれほど無謀なことかすぐに理解できたのである。
「はい……どうしてだか、そういうことになってしまって。夕食の片づけが終わった後、すぐに飛んで行っちゃったんです」
「そして、かれこれ10時間ちょっとしても帰って来ないと。どう考えてもまずいじゃない!」
「先輩、なにがどうまずいのかさっぱり分からないんですけどー」
 と男子生徒の声がする。うんうん、と頷く大勢。おまけに加えて、旅団組のくせに良く分かってないソルラスカ。
 えーと、と少し考えて。ポゥ、説明お願い、と振って、私は校内放送かけてくるから! と部屋の外へ飛び出して行く。
 振られたのを受けてポゥ、大勢の、自分より遥かに大きい種族に見つめられてかなり緊張しながらも、彼らの目の高さまで浮かび上がって、説明を開始する。
「私たちは、えーと、いろいろあって、自分たちの住んでいた世界を失ってしまいました」
「そうなんだ!」
 と、これはルプトナである。下手をすれば自分たちの世界もそうなっていたかもしれないと、すこしぞっとする。
「わたしたちは本来、その世界でしか生きていけなかったんです。故郷の大気に含まれるマナがないと、生存を維持することが出来ないんです。
 この部屋はものべーさんのおかげで、同じような状態が保たれているから、こうして普通に出ていることが出来ます。
 けど外に行くには、ここの空気が封入されたあの結晶体に乗っていないといけないんです」
「じゃ、もしあれに乗らずに外に出たらどうなるの?」
「体内に備蓄されている分でしばらくは動き回れます。けど、補充ができませんから。燃料の切れた車と一緒です。そのうち動けなくなって」
「なって?」
「体内のマナ残留量と、外での使用量にもよりますが……だいたい15時間から、長くても24時間程度で、生命活動が停止します」
 一気にざわめき。それってつまり死ぬってことか!? 大変じゃないの! すぐ探さないと! 

「はい。ということで、お手伝いをお願いしたいんですけど……良いですか?」
「もちろんだぜ、なぁお前ら!」
 とソルラスカが煽りたて、おぉぉぉっす! と体育会系の連中が、一糸乱れぬ歓声を上げる。他の生徒たちも、異口同音に賛同を返し、どこを探せばいいのかと問いかける。
「この部屋から校内を右回りに一周して――でよかったですよねルゥ? え、逆? はい、左回りに一周して、先に帰って来るというのが勝負内容でしたから……」
「なんなのよそのアバウトな内容は! 要するに、校内全部引っ掻き回して探せばいいってこと?」
 腕組みをしてタリア、むすっとした表情で言う。あぅ、ごめんなさい。と思わず謝るポゥ。

 と、突然校内放送開始の音楽が部屋に流れ、生徒会長の斑鳩沙月です、との声が、校内全部に流れ始める。
 体調不良の人。絶対に外せない用事がある人。昨夜の当直組だった人以外は、できるだけ捜索に協力してください。事態は一刻を争います。どうかお願いします。
 一連の事情を速やかに、必要な部分だけ伝えて終わる。それが、クリスト部屋に集まっていた生徒全員への合図ともなった。
 捜索は難航していた。
 何せ2人の身長は、それぞれ15.6cmと14.5cm。ちょっとした隙間にも軽く潜り込んでしまえる大きさでしかない。
 そんな隙間を丹念に捜索していかねばならず、当然、時間もたっぷりかかってしまう。

 各教室の窓枠の間、額縁の裏、ロッカーとロッカーの間、机の中、チョーク入れの中、掃除用具入れ、ゴミ箱の中、etcetc。
 廊下の傘置きと壁の間、階段の角のところ、踊り場の窓枠、昇降口の靴入れの中などなど。
 学校中に数名ずつのパーティが、各部屋各教室廊下にトイレに屋上に。校庭の砂場、体育倉庫、花壇に菜園に裏の物干し場まで。
 さすがにそれは無いだろうと全員から突っ込まれたソルラスカの、トイレ排水溝奥に手を突っ込んでの捜索も実らず。
 いったいどこにいるのやら、まったく見当たらずに時間だけが過ぎていく。

「うん、音楽室周りにもいないのね」
 沙月は生徒会室で総指揮に当たっている。机一杯に校内全図を広げて、探し終わったところに次々マークをつけていく。
 結晶体を駆るクリスト3人は、各パーティ間の連絡と連携の維持のため、校内を文字通り飛び回っている。今はルゥが報告に帰還、次の指示を待っているところだ。

「は、希美ちゃんが起きててくれたらなー。ものべーに頼めば簡単に見付かると思うのに」
 大きくため息をつく。間の悪いことに、校内全ての出来事を知っているという神獣ものべーの主である永峰希美は、一連の騒動が始まって以来の心労やら疲労やらが積み重なった結果なのか、現在風邪をこじらせ寝込んでしまっている。
 カティマと望、ヤツィータの3人が、昨日から交代に世話をしてきた結果、最初に比べれば症状は軽くなって、穏やかな寝息を立てているところではあるのだが、それでも無理に起こせる容態かといえば決してそんなことはなく。
 クリスト部屋室長であるミゥが、昨夜部屋にいなかったのも、何かの手伝いになれば、と保健室にて一晩中動き回っていたためだ。
 それを考えれば、まったく本当に間の悪いというか、なんというか、やるせない気分に包まれる沙月だった。
「後探してないのは……体育館の周辺と、部活棟の上のほうか……
 ねぇルゥ、こういうときのための発信機とかそういうのはついてないわけ?」
「ん。腕のブースターとか、足の飛翔補助具とかには、そういう機能もついてるんだけど」
 ルゥが、自分の腕輪や篭手、太ももから下の足全体を覆っている仰々しい機械を指差しながら言う。
「ブースター?」
「腕のは、マナの吸収・放出を補助するためのもの。足のほうは、空気を圧搾して貯めておいて、飛翔時の補助推進剤として使えるようにするもの」
 有ると無いとでは随分違うから。と付け加える。

「そ、それってそんな機能があったんだ……じゃなくて! ならどうしてそれで探さないの?」
「ん……2人とも、自分本来の技術と出力で対抗したいからって。能力向上系の道具は全部置いていっちゃった」
 無理にでもつけさせておくべきだった。と見るからにしょんぼりした風体で、下を向き向き口にする。
「そんなに落ち込まないの。大丈夫、みんなで探してるんだからきっと見付かるわよ」
 結晶体の上のほうを軽くぽんぽんと叩いて励ます沙月。頭なでたいところだけど無理だしね。

「ん……でも、もし見付からなかったら、手遅れだったら、全部わたしのせいだから。
 後悔しても仕方ないけど、止められたはずのものを止められなかったのは、これで2回目だから。
 うん。自分は、結局何も変わってないんだって。そう思うと、くやしくて。ちょっと」
 結晶体の中でルゥ。自分の体を抱きしめるように小さくなる。はぁ、と泣いているような吐息。
 さしもの沙月もかける言葉が見当たらず、部屋の中がしんと静まりかえる。
 と、そこに。
「おーっと沙月ぃ、窓から失礼っ!」
 いったいなにから驚けばいいのか。突如としてソルラスカが、なんと窓から部屋の中へと飛び込んできたのである。
「ちょ、あなたどこから」
「細かいことは気にすんな! それより2人とも見付かったぜ、部活棟の屋上だ! 今、緑のと白いのが急いで部屋に運んでる!」
 ほんと! と抗議するのも忘れて色めきたつ沙月。その傍らで机に落下する青い結晶体。中では小さくすすり泣く声。

「ルゥ、大丈夫?」
「ん。安心したら制御失った。うん。大丈夫。このくらいの衝撃なら壊れたりしないから」
「そ、良かったね」
「うん。……ん。謝りにいかないと。うん。行ってくる」
 ふわ、と浮力を取り戻して、床上1mほどのところで移動を開始。無言で見守っていたケイロンが、扉をそっと開けてやる。
「俺たちも行くか?」
「容態を確かめておかないといけないしね。ちょっとだけ」
 邪魔しないように気をつけてよね、とソルラスカに一言言って、そりゃどういう意味だよ、と抗議の言葉がそれに続いた。

 クリスト部屋は前代未聞の人口密度であふれかえっていた。
 校内全部を巻き込む大騒ぎを演じさせた張本人2人の様子を一目見ようと、見付かったと知った全員がどっと押しかけているのである。

 ちなみに、この大捜索中にはさまざまな挿話が生まれている。
 何故か地面から掘り出された2年前の弁当箱。ある生徒の名が明記された酷い点数のテスト解答用紙の束。
 あちこちで回収された小銭や札。ねずみが通ったような小さな穴の発見。
 ある男子生徒は、下級生との密会現場に押し入られ、そのまま三角関係の大騒動へと発展もしたり。
 そのほか多数の喜悲劇を、一気にまとめて生み出した根本原因の2人は、今部屋の中でぐったりと眠っている。
「位置から考えると……最初は素直に競争していたはずが、どちらかが先に、相手を撃墜したほうが確実に勝てると考えたのかしらね」
 ミゥが2人を、毛布代わりのハンカチでくるみながら沙月たちに言う。
「廊下にあった焼け焦げた跡や、倒れていた椅子などの様子を見ると……2階で戦闘状態に突入、そのまま屋上へ。多分広い場所でやろうということになったんでしょうね。
 そこで火力の応酬になって急速に消耗、揃って体内マナの枯渇を起こし、倒れてしまった、と。そんな感じだと思いますね」
 口調こそかなりあきれたものだが、見守る視線は優しげに。ほんとにまったくこの娘たちは、と優しい姉の目つきである。

「それで、2人は大丈夫なの?」
 と、手を上げて発見者の女生徒が聞いた。これにはポゥが応える。
「はい。皆さんで言うなら……栄養失調で動けなくなっているような状態ですね。ここの空気を吸っていれば、すぐに目を覚ましますから。大丈夫大丈夫です」
 にこりと笑ってポゥ、1人1人にお礼をして回る。大半の生徒は笑って受け答え、男子組の一部は、薄い胸とかあちこちむき出しの小麦色の肌とかきれいな手足とかに、一瞬見ほれてどぎまぎと。

「はーい、みんな。こんなにがやがやといたら病人に悪いわよ。大丈夫って分かったんだから、一端解散して、後でまた見舞いに来て上げてちょうだい。
 それじゃ、みんなご苦労様でした。今日の夕食はちょっと豪華に行きましょうか」
 生徒会長のこの言葉が、朝っぱらからの大騒動の幕切れになった。――ごく一部、遺恨残りまくりの連中を除いて。
 鉄板の下で炎が赤く燃え盛り、肉の焼ける食欲を誘う香りが、学校中に広がっている。
 ものべー太陽もかなり西に傾いて、代わりにものべー満月が、東から上がってきつつある。
 校庭では今朝の騒ぎの慰労にと、クリスト5人が給仕するバーベキューが行われているところだ。

 昼ごろにはすっかり回復したワゥは、いくつもの鉄板の火力調整をまとめて行っている。マナさえあればガスいらずの点火線代わりというところか。
 ポゥは木串を自在に操り、焼けた食材をどんどんと大皿の上に運んでいる。生徒たちはただ、皿に並べられていく焼肉を勝手に取って食べていけばいいだけだ。
 ゼゥは闇の刃でもって、食料庫からどっさり運びだされた肉の塊をどんどん切り分けている。包丁よりも鋭く、刃こぼれひとつしない名刀である。
 運んでいくのはやはりポゥの木串と箸。自然物を操るという彼女の特性は、木製品全般への完全制御としても有効なのだ。
 本数が少し多いので大変だけれど、喜んで礼を言ってくれる生徒たちの声が、とてもうれしく心に響く。

「ところで、結局勝負はどっちの勝ちになったの?」
「えーとですね。2人とも勝ちを主張しましたが、沙月さんの判定で、両者KOということで引き分けです。
 ミゥがしっかり諭していましたから、しばらくは大人しくしてくれると思うんですけど」
 と、話しかけてきた女生徒の言葉に答えるポゥ。木々を操る手練はそのまま、軽く汗ばんで結晶体の中に腰掛けている。

「そうなんだ。ところで、そのミゥちゃんと、青い子はどこに行ったの? 準備のときはあちこち飛び回ってたのに」
 あぅ、とポゥが少し顔を赤らめる――外からは良く分からないが。少し言葉を選ぶように口をもごもごさせて、
「えっと。もうここは3人で大丈夫ですから。ルゥはミゥに、部屋で、その、お説教されてるところです」
「そうなんだ。ま、お説教ですむあたり、仲良いのね、あなたたち」
 あはは……と愛想笑いでごまかすポゥ。ちらり、とクリスト部屋のほうへ目をやって、しっかと閉じられたカーテンを見た。


「うや、っ。にゃ、うやゃあああっ!」
「ルゥ、まだまだお仕置きはこれからです、私がいないときの監督責任の大事さ、体にしみこませてあげますから」
「あぅ、ふあぁぁぁ……りょうほうどうじなんて、そんな、きっつい、ようぅっっっ!」
 闇に閉ざされたクリスト部屋。白と青の結晶体が、いつもの置き場にもたらせかけられ。
 ちゃぶ台の上には土鍋が1つ。中には全裸の少女が1人。
 ミゥの操るオーラフォトンの触手が、土鍋を、青い少女を埋め尽くすほどにあふれてうねくりかえり。
 お説教の名の下に、つるぺた細腕すら足な、ルゥの体を縦横無尽に蹂躙していた――
 ごめん。またしても酷いオチでしたw
 だってねー! オーラフォトンバリアってミゥのスキル見た瞬間に思っちゃったんだもん!
 あ、この子も出せるんだ って!
 ちくしょーなんでそーいうシーンが作中に無いんだよぅ。

 はい、というわけで第2話でありました。
 なんかもう、脳内で5人の物語が、あふれんばかりに蠢いておりまして。
 あい。きっとまた近いうち、続き投げに来ると思いまつ。
 
 そのときにまたお会いしませう。
31名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 09:45:17 ID:0G77NGyL0
乙です。
よくぞあのプロフィールからここまで…
32名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 09:59:52 ID:uybTekSVO
つまらん。
33名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 10:41:39 ID:n0vJdSoF0
かつて勢いで似たような二次創作スレを押っ立ててしまったこともある私から敢えて言わせてもらおう
>>1>>30もGJと。

出張先にまで糞重いノートPC持ち込んでやってるけど、まだ終わらない……
枯れかけていた創作意欲を炙られまくりだというのにorz
34名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 15:32:30 ID:ml/UKRmG0
>>1>>30乙。
ミゥの真価はマナリンクにこそあると思う俺。
アタッカー絶・無名の太刀、ナーヤがフォース9999全体バリア、ミゥがマナリンク。
これでクリスト族もラスボス戦に参戦可能。
まあ普通はユーフィーやスバルにやらせると思うんだがの。
他にもっと上手いクリスト族のラスボス戦での使い道あるかのー。
35名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 18:45:12 ID:aoOqjq550
スレ立て乙。
クリストは決戦向きではないけど掃討向きなのでプレイを快適に進めるには必須。
36名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 19:18:55 ID:rlWmSgJ10
>>1
スレ立て乙。
若干早漏気味な気がしなくもないけどもw
>>30
早速の投下GJ!
次も楽しみにしてます。
37名無しさん@初回限定:2007/08/16(木) 20:26:47 ID:rlWmSgJ10
sageついでに本スレの次スレ↓
永遠のアセリア/スピたん/聖なるかな 第55章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1187262424
3812:2007/08/17(金) 06:35:54 ID:eEQUiEaH0
(=゚ω゚)ノぃょぅ

知り合いの絵師をちょっと締め上げてね
この娘(ルゥ)の触手絵描いてきやがれと言ってみたらですね
小一時間でこんなのが
くたばれハゲ
との文言付きで帰ってきたのでですね
うpしてみますた
携帯だからちょっと汚いけど許してくださぃ

ttp://rainbow.sakuratan.com/data/img/rainbow51509.jpg
39名無しさん@初回限定:2007/08/17(金) 06:47:18 ID:BLiP2IbV0
>>38
その絵師に言っといてくれ
 G J とだけ
40猫耳大統領の改造プラン:2007/08/17(金) 12:04:18 ID:eaC5Wtag0
思い立ったが吉日
わらわのクロウランスを見たレーメが、ドリルはついてないのかと問うたのでついてないと答えた。
そのところ、学園内のアニメ・特撮研究同好会とかいうところに連れて行かれた。
そこで「ぶいすりゃー」とかいう機械人間の仲間のマスク男に関しての記録ディスクを見せられた。
他にも「死ねぇ!」と叫ぶ銅鐸サイボーグやら「だいくーまりゅー」やら色々見せられた。
わらわが一番気に入ったのは巨大敵性生命体とも互角に渡り合える海底軍艦「ごーてんごー」だった。
早速、その日から新たにクロウランス改造プランを練り始める。

魔改造はお好き?日
クロウランスがドリルになった。
頭から足のつまさきまで、何もそこまでというくらいドリルになった。
「ごーてんごー」に変形も出来るし、異空間から新たに巨大なドリルを呼び出し装着する事も可能になった。
レーメに見せてみたら、何故かクロウランスに対して青ざめて泣きながら土下座して謝罪してきた。
クロウランスはこんなに喜んでおるというのに、おかしな奴じゃと思った。
そこへナナシがやってきて、足りないものがあるとか言う。
ナナシにパソコン研究同好会とかいうところに連れて行かれ、そこで「でもんべいん」なるゲームをやらされる。
西博士の作品は芸術だと思った。
足りないのは魔導書その他もろもろ。まずはサレスからどうにかしてあやつの神剣を強奪しないと。
パイロットは…サイズ的にクリストたちでいいじゃろう。
41猫耳大統領の改造プラン:2007/08/17(金) 12:04:50 ID:eaC5Wtag0
クロウランスは科学の子!日
ナルカナが乗り気で協力してくれたおかげでサレスの神剣を入手でき、心臓部に無理やり組み込んだ。
何故か怯えるクリストたちもパイロットとしてクロウランスに乗り込む事を快く承諾してくれた。

……
………
あらかた完成したところで、ものべーが敵の襲撃を受けた。
わらわもクロウランスもここぞとばかりにはりきった!
「逃がさんぞ!クロウランス、狙いをつけいっ!」「クロウランスよ、炎獄の王たる証を示すのじゃ」
戦闘の後、のぞむをはじめクロウランスの過剰な火力のまきぞえ食って黒コゲになった皆に怒られた。
渋々クロウランスをもとに戻すことになった…もったいないのう。

42名無しさん@初回限定:2007/08/17(金) 12:10:17 ID:eaC5Wtag0
雑魚スピスレから邪魔しますよ。
クリスト分がほとんど無くてすまんです。
クロウランス見るたびに、自分でカスタマイズできたらなあ…と思ってやまず。
そういや、クリストたちが乗り込んでる(?)結晶体も彼女らにとっては機動兵器みたいなもんなんだろうか。
43名無しさん@初回限定:2007/08/17(金) 14:46:56 ID:KPJjOun/0
>>40
乙つー。
しかし神獣の改造って実際どうやってるんだろうな
44名無しさん@初回限定:2007/08/17(金) 16:11:36 ID:gbG5qiU30
新スレ立ったので報告
永遠のアセリア/スピたん/聖なるかな 第56章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1187322030
>>40
GJ
45名無しさん@初回限定:2007/08/17(金) 20:44:36 ID:7QqsAo+F0
>>40乙〜
日記系は地味に好きだ。

>>44
工作のスレ追わなくていいだろw
46名無しさん@初回限定:2007/08/17(金) 23:15:34 ID:gbG5qiU30
>>45
工作的なレスが全く有り得ないとは言わないが、
スレ自体は工作でないからw
47名無しさん@初回限定:2007/08/18(土) 06:05:15 ID:zYQSPIaa0
一応張っとくぜー
永遠のアセリア/スピたん/聖なるかな 第57章
http://idol.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1187377646
48名無しさん@初回限定:2007/08/18(土) 06:19:11 ID:dBrY9b4R0
>42
乙ー
クリスツが乗ってるのは兵器じゃないと思うんだよね
兵器っつーことはつまり
人工物&量産可能&一般人が扱える = 兵器でミニオンとやり合えるならそれ使えば一般人でもある程度やれんじゃね? って話になると思うんす

やっぱクリストたちがミニオンとやりあってるのは自力だと、種族特性だと思うわけで。

まぁそんな感じで、クリストたちの日々第3話投下いたしますよ。
 今日も今日とてものべーは、学校1つ背に乗っけ、次元の狭間をすり抜けて、世界から世界への飛行を続けている。
 総勢100人以上になる生徒たち。当然ながら、霧や霞を食って生きていけというのは無理な話である。
 全校生徒がローテーションで、皆に食わす3度の食事を用意するために、毎日毎日せっせこせっせこと料理にいそしんでいるのだ。 
 その主舞台である家庭科室は、今日も喧騒の巷だ。所狭しと運び込まれた食材があちこちに置かれ、一部は廊下にまではみ出している。
 中からは女子の叫び声と男子の悲鳴、完成の叫びと歓声、その他悲喜こもごもな声声声が、いつものように激しく響いている。

 最初は料理上手の生徒たちが頼み込まれてやっていたものだが、連日のハードワークにだんだんと飽き・疲労が蓄積されて不満が爆発。
緊急に開かれた全校集会での議論の結果、全員参加のローテ制に再編されてからはや幾星霜。
 包丁を握ったことさえ無かった一部生徒も参加させられて実地訓練の日々、今では全員がすっかり料理の基本をマスターし、

中には、帰ったら本気で料理の勉強を、などと決意するものまで現れる始末だ。
 そんなこんなで、以前に比べればずいぶんと1人頭の負担は軽減されているが、それでも校内で最も重要かつきつい仕事であることに変わりはない。
特に料理の経験・知識が豊富な一部生徒で編成された、料理班専任メンバーにしてみれば、もういつでも猫の手でも借りたい状況です、というのが本音である。

 さて、猫の手というわけではないが、校内には生徒以外にも、助けになりうる存在がいくらか生活している。
 その一方の雄が『旅団』のメンバーである。タリアは優秀になんでもこなすし、ルプトナもさすがは野生児、植物を捌き、
食べ方をひねり出す点においては誰の追随も許さない。
 だがやはり筆頭は、全身これサバイバル要素で構成されているソルラスカだ。刃物の扱いの巧さもさることながら、
見た目通りの荒々しさで、生徒たちが思いもよらない方法の味付けや調理法を駆使、奇妙奇天烈な創作料理を日々生み出している。
 もちろんたまには大失敗に終わってブーイングを浴びもするが、全体としてみれば成功する割合のほうが高いため、概ね頼もしい戦力として認識されている。

 そしてもう一方の重要集団が――
「ルゥちゃーん、ちょっとこれ切ってくれる? 固くて包丁の刃が入らないんだよ」
 呼ぶ声に応えて青い結晶体がふわりと飛んでいく。家庭科室の中をがやがやと絶え間なく人が動き回っているが、
上空3mばかりまで浮上して移動すれば何の問題も無い。
「どれ?」
「ここ、すぱっといつものようにやっちゃって♪」
 これと指差されたものは、まな板の上に鎮座した、固く分厚い皮を持つ果実だった。何度か刃を突き当てた痕跡が表面に残されているが、
なるほどこれなら刃がたたないのも仕方がない。
「ん、分かった」
 ルゥは少し意識を集中、体内のマナをエネルギーに変えて、結晶体外に存在する水蒸気に干渉していく。
「真っ二つでいい?」
「それでおっけぃよぅ」
 じゃ、と一言。音も無く振り下ろされる氷の刃。高速高圧で放たれる、紙ほどの薄さの氷の刃が、あれほど苦労した果実の皮をものともせず、
一撃の下に両断していた。

 あの焼肉パーティーでも分かることだが、クリストたちの能力は、さまざまな面で日常生活に応用可能である。
 闇の刃を駆使するゼゥは、固いものの切断に大いに重宝されているし、ワゥは校内設置のガスコンロでは到底発揮不可能な火力をやすやすと操ることができる。
 ルゥは今のように、氷の刃を使用しての切断や、水や冷凍保存しておきたい食材を一瞬で凍りつかせたり、
さらには冷房代わりの空気冷却――実はこれが一番有難がられている――など、あれやこれやで活躍している。
 ポゥの包丁やら箸やらなんやらを何本もまとめて操る手腕が、どれだけ重宝するかなどはいちいち言うまでも無く。
 基本的に皆気さくで快活、微妙に会話がかみ合わない部分もあるにせよ、クリストたちはすっかり生徒たちの間に溶け込んで、

ポゥなどは図書室でなければ家庭科室だといわれるほどに入り浸っている。

 ちなみに、室長のミゥは実際作るほうではなく、献立を考える側である。能力的にもあまり調理に役立つものは持っていないし、
クリストの好みも取り入れてあげようという計らいもあって、定期的に開かれる今後の献立会議には必ず席が与えられている。
 ミゥも好意を有難く受けて、毎回積極的に発言を行っているという。
 普段はあまり感情を表に出さないルゥだが、この日は妙に疲れた顔をしていた。
 いつもならおいしそうな果物や、それを使ったデザートなどを見れば、結晶体から飛び出しかねないほどに見つめているものだが、
今日に限ってはそれもなく、結晶体の中に座り込んで、呼ばれるに応じてふわふわと漂っている。

「どこか調子悪いの? ルゥちん?」
 先ほどの果実ぶった切りからさらに何度か呼ばれ、あっちで切ったりこっちで凍らせたりとしていたルゥ。様子が少し違うことに気付いた女生徒が、心配そうに声をかける。
「ん……大丈夫。別に病気とかじゃないよ」
「何かあったの?」
 ん、と素直に答えかけて、あ、こういうことはあまり言うものじゃないんだ、と思い出し、口をつぐんで首を振る。
「うん、大したこと無いから。少し疲れてるだけ」
 そう、ならいいけど。女生徒は調理を再開する。

 と同時に、がらりと音を立てて家庭科室の前扉が開き、料理班名誉班長の称号を持つ、風邪ひきのぞみんが姿を現した。
「あれ、永峰じゃない。もう大丈夫なの?」「風邪は治りかけが肝心なんだから無理しないでよ」
 などと口々に声がかかる。希美はにっこり笑って答え、
「うん、もうだいぶ良くなったから。ずっと寝てたからお腹空いちゃって、何か無いかなって見に来たんだけど……」
「そうなんだ。それじゃー、えーっと、今日の朝の残りでよければ持って行ってよ」
 と、とある女子が希美の手を引いて冷蔵庫の方へ。すれ違う皆からいろいろに声をかけられて、うんうんと答えながら歩いていくと――
「!」
 同じく声をかけに来たルゥと出くわしたのである。
「あ、あぅ、あわ」
 何故か数歩たじろいで、かーっと赤面していく希美。どうしたのかな、とルゥが近づくと、その分希美も後退する。さっぱり

事情が分からない周りの生徒は、なにごとですかと困惑するばかり。
「ん、どうかした?」
「は、ルゥ、ちゃん、その、えっとね、ぅぅ」
 何か言いたそうででも口に出せず、顔の赤みはますます増すばかり。
「永峰?」
 と誰かの手が、よろばう希美の肩を支えた。その瞬間びっくぅと全身をゆるがせるや、
「え、えっと、ごめん、私、やっぱり良い!」
 とまくしたてて、逃げ出すように走り去っていってしまう。神剣能力まで引き出しての猛ダッシュ、誰もいない道筋を選ぶ理性が残っていたのが幸いである。
「……何事?」
「……なんだろ?」
 後には、目を丸くして呆然と立ち尽くす、大勢の生徒と1人のクリストが残されていた。

 
 素朴な疑問を抱いて、望は生徒会室へとやってきた。この時間だと中には沙月先輩だけのはず。話も切り出しやすいだろうと踏んでのことだ。
「失礼します」
 ノック2つ。中から声が返って来、扉をあけて中に入る。予想通り沙月が1人、今日も書類に埋まっていた。
「あら、望くんじゃなーい。何何? 何か用? もしかして手伝いに来てくれたとか?」
「そういうわけじゃないんですが。ちょっと聞きたいことがあって」
 明らかに失望の表情を浮かべて、もう、またそんなつれないことを〜、などと愚痴られる。また対応間違えたかな、と望は少し後悔するも後の祭り。
「ま、どうせ一区切りついたところだし、いいってことにしておくわ。それで何が聞きたいの?」
「今更こんなこと聞くのは遅いかもしれませんが……その。クリスト、って何なんでしょう」
「それってどういう意味で?」
 沙月は両手を組み、その上にあごを乗せて、ふっふーんと実に楽しそうな目線を、愛すべき後輩の方へ送る。
「例えば、神剣無しでミニオンと戦えるのはどうしてなのか、とか。神剣を持っていない者は、神剣を持っているモノには太刀打ちできないはずなのに。
それにあの、こないだの、あの話。あんな、性的な話題を堂々とやれるのは、どういう精神構造なのかな、とか」
「それを今頃聞きに来るわけ? かなり今更って気もするけど」
 望は少し目を伏せ、気まずそうに理由を言う。
「……俺も、自分のこととか、絶のこととかで、頭一杯で。今思うと、どうして今まで気にならなかったのか分からないです」
 沙月、にっこり笑って。
「はい、望くんに70点をあげましょう。少しは落ち着いて、自分の周りを見てみることも大切なんだからね」
「……はい」

「えーとね。クリストたちは、今は滅びた『煌玉の世界』で栄えた種族だって言うことは知ってるわよね?」
 はい、と答える望。2人は差し向かいに座り、前には紅茶が湯気を立てている。レーメは例によって頭の上に。興味深そうに話を聞いている。
「元々ね。煌玉の世界で、クリストは決して優れた種族というわけじゃなかったの。知能は良く発達していたけれど、何せあのサイズだからね。
 他の大型の霊長類や、敏捷な肉食獣に追い掛け回されながら、細々と生きていたんですって」

 クリストは、特に生命体として優れているわけではない。
 体は小さく、力も弱い。特にすばしこいわけでもなく、知恵は回るがそれだけだ。唯一彼女たちを絶滅から回避させていたものは、
単為生殖により全固体が妊娠・出産が可能であり、効率よく増え続けることが出来た、というただその一点のみである。
 当時は現在より遥かに頻繁に生殖可能期がやってきていたという。妊娠中の固体を守るために集落を築き、だがそれは大型肉食獣の襲撃で破壊され、
それでもなんとか若いものは逃がし、逃げた者は小型肉食獣の脅威におびえながらも生殖し、妊娠し、生み育て、数を必死で保っていく。
 そんな生活を長く続けていたのだとされる。
 その過程において、現在に通じるクリストの精神性が発達していった。
 例えば。個々の事情よりも種族全体の利益を重視すること。性的行為への忌避感や嫌悪感の完全な喪失。常に連携して困難に立ち向かう知恵。
道具の積極的かつ徹底的な利用。新規なもの、未経験のことがらを常に取り入れていく積極性。
 その全ては、ただ1つ。生き残るために培われたものである。

「望くんもこの間聞いてたでしょう。えーと……あの、ほら。あの子達の性生活の一端」
「ああ、はい」
 思わず顔を赤らめてしまう2人。なんじゃなんじゃ怪しいぞ2人ともー、とレーメの茶々が飛ぶ。
「あれもね。そういうことなのよ。妊娠して子供を作るのが最優先、恥ずかしがったりしてなんかいられない。妊娠する可能性を増すためなら何でもOKで、
それがどんな手段であれ何と思ったりもしない。
 私たちが1対1の関係にこだわるのは、突き詰めれば、自分の遺伝子を確実に残したいから、っていうことがあるわけよね。
 でもあの子たちはそうじゃない。個体ではなく種族を優先する。誰の子供でも変わらず育てるし、誰に産ませても誰のを産んでも気にしない。
ひょっとしたら自分直系の子供はどこかでどうにかなっているかもしれないけれど、それをなんと思うこともない。
 私たちが、知能を育て、文明を持ち、社会を発展させていくうちに失っていったそういう衝動を、あの子たちは連綿と受け継いでいるってわけ。
 ま〜これには、私たちと違って男女の別が無いっていうのもあるんでしょうけど」
 例えば。信助がどこぞの女生徒に、裸を見せてくれと叫んだりしたら、きっとぶん殴られて終わりだろう。
 だがクリストなら、きっと何とも思わずに見せてくれるし、それを恥ずかしくも何とも思わないということか。

「ほら、ミゥやルゥが、下の子たちを妹って言うじゃない。あれって結構誤訳か意訳っぽくてさ。クリスト語本来の意味合いでは、
年下の同族、って程度の意味しかないんだって。
 なにせ古代からあっちこっちで混血しまくって、誰が誰の一族で、誰と血が繋がってて、なんていう事柄に意味が無くなって。
 だから、年下はみんな妹だし、年上はみんな姉なわけ。分かる?」
「ええ。なんとなくですが。要するに、クリストって種族全体が1つの家族……みたいなものだと思えばいいんでしょうか」
 あ、それは言い当て妙かも、と少し笑い、紅茶を少し口に含んで、のどを湿らせた。

「それで。ね。これはクリストたち自身の間でも誰が、いつ、どこでとかはさっぱり分からないらしいわ。
 とにかく、ある日、誰かが、自分たちの身に宿る力に気付いたのね。外界にあるマナを取り込んで莫大な力を得るって能力。

 炎を操り、雷を落とし、空気を凍らせて、空に舞い上がる。そういうことが可能だと、誰かが気付いたのよ」
 それが、誰か1人だったのか、それとも集団だったのか、あるいは種族全部に身についたものなのかも分からない。
 とにかく重要なのは、その力を手に入れた瞬間、クリストは世界の覇者となるべく運命付けられたということだ。
「そりゃ当たり前よね。下位神剣と同レベルの力だもの。猛獣なんて目じゃないし、私たちくらいの霊長類だって敵じゃないわ。
あっという間に脅威になり得る種族全部滅ぼして、晴れてクリストたちは太陽の下を大手を振って歩き回れるようになったってわけ」

 化石記録によれば、煌玉の世界にも、ヒトの先祖と同じ程度に発達した霊長類が多く生息していたようである。クリストの異常進化が無ければ、
おそらくはやがて世界を支配していただろう原人たちを、全て、一切合財、容赦なく絶滅させることで、クリストは世界の覇権を手にしたのだ。
 それ自体は良くある生存競争の結果である。ただ、手段が異常だっただけだ。
「それは、誰かの陰謀とか、作為の結果とか、ですか?」
「さぁね? そうかもしれないし、ただの偶然かも。ひょっとしたら私たち、生物全てに宿っている力なのかも知れないわ。ただ使い方に気付いていないだけで。 
 まぁとにかく、クリストがミニオンと渡り合えるっていうのはそういうことよ。あの子たちは、生まれついてそれが可能な力を持っているんだもの」
 あー、長くしゃべると疲れるわ。と息を吐いた。望も深く頷いて、紅茶のカップに手を伸ばす。
「あ、それなら戦闘中に、結晶体を覆っているものは?」
「あれはただの装甲なんだって。飛行補助くらいの機能はついてるらしいけど。兵器とかそんなんじゃないわ。
 だってそうでしょ? 科学技術で生み出した武器の力でミニオンと渡り合えるようになるんなら、誰も苦労しないじゃない」

 扉が小さくノックされた。沙月が何かを思い出したように時計を見て、あ、もうこんな時間、と席を立つ。
「どうしたんです?」
「噂をすれば何とやら、って言うじゃない?」
 振り向き様にウインク1つ。すぐに向き直って扉を開くと、そこには書類の束を光る腕で抱え持っている、白い結晶体の姿があった。

「昨日の焼肉パーティで使った食料・燃料その他のリストをまとめてきました。ちょうど時間くらいですよね? さつき」
 と、ミゥが言う。うん、冗談みたいにぴったりだわ、と沙月が笑って応じ、書類を受け取って自分の机に置く。
 沙月はそのまま席に座って内容の確認を始め、ミゥも部屋に入って作業が終わるのを待つ。
「のぞむはどうしてここに?」
 と、ただ待つのが暇になったのだろう。ミゥが望に顔を向けて聞いた。君たちのことを聞きに来ていたんだ、と答えるのもどうかと思い、なんと言うべきか言葉に悩む。
「ん……えっと」
「あー。望くんがね、私に相談に来てたのよ。あなたに愛の告白をしたいんだけどどうすればいいでしょうか? って」
 思わず噴き出す望。な、何言ってるんですか先輩! と食って掛かるもただけらけらと笑ってごまかされるだけだ。
「あら? のぞむは、わたしみたいな小さいのでも良いんですか?」
 と、ミゥが問いかける。少し頬を赤らめているように見えるのは、錯覚か、それとも。
「いやだから、沙月先輩の冗談なんだって!」
 もう無様なほどに慌てて否定する望。レーメもそうじゃそうじゃ、のぞむはそんな変態ではないぞ! と援護射撃を展開する。
「多分」「多分!?」

「そう、残念。わたしは、相手と自分がどんなに違っても全然気にしないのに」
 この言葉に鋭く反応したのは望よりもむしろ沙月である。なんですってと立ち上がり、2人の側へと飛び寄って行く。
「ミゥっ!? まさかあなたまで望くん狙いなのっ!?」
「ふふ、さぁどうでしょう。まぁ、決して嫌いなタイプというわけじゃありませんけど」
 絶句2人。いやいや落ち着け、これはきっとミゥのジョークだ。ほらさっきも言ったじゃないか、クリストはそういう話題を気にしないって。
 いや、相手が誰でもいいというのなら、サイズ違いもアリなのか? いやいやそんな馬鹿な! だって、まず、入るわけが。

「望ちゃんっ!」
 と、さらにここに闖入者の参上である。肩で息をし頬赤らめる希美が、扉を音高く張り開けて突入してきたのだ。
「希美?」
「ご、ごめん、ちょっと用事があって。手伝ってほしいことがあるから来てほしいの!」
 と叫ぶや否や、有無を言わさず望の手を取り無理矢理ひきずっていく。
「おい、ちょっとなんなんだよ」
「良いからっ! ミゥちゃんと一緒にいたら危ないんだから!」
 はぁ!? という言葉が、2人がくぐりぬけた後の閉じられた扉に阻まれて消えた。
58名無しさん@初回限定:2007/08/18(土) 08:01:34 ID:wztcLMdo0
支援
59名無しさん@初回限定:2007/08/18(土) 09:41:24 ID:Y0C9K8IX0
支援
60ごめん 規制待ちしてるうちに寝落ちしてた:2007/08/18(土) 12:03:34 ID:dBrY9b4R0
「……何でしょうか、今のは」
「さぁ……って、それよりさっきのはどういう意味よ、ミゥっ!」
 じろ、と見据えて沙月。事と次第ではこの場でケリをとも見える半戦闘態勢である。
「もう、冗談に決まってるじゃないですか。のぞむにそういう感情を抱いてしまうほど、付き合い長くないですし。
 むしろ――さつきのほうが、わたしには好ましいですよ?」
「……はい?」
 今度はミゥが前に出る。沙月とちょうど同じ目の高さ。じっと目を見て語り出す。表情はにこやかに、だけどどこか熱に浮かされたように。
「だって、さつきは、わたしを助けてくれました。わたしたちを助けて、いろいろと手配りをしてくれました。
 ここに来てからも、わたしや妹たちに良い環境であるようにと配慮してくれました。
 あなたの優しさは、そうですね。さつきに、わたしの子供を産んでほしいな、って思うくらいには、わたしの中に響いてるんですよ?」
 わたしのこどもをうんでほしい。
 その言葉の意味を理解した瞬間、沙月、ずざーっと下がって距離を置き、机を飛び越え盾にする。
 顔は一瞬で真っ赤に染まり、口をパクパクと、何を言うべきなのか言葉が見付からずという有様だ。

「あ、いや、ちょっと、それは」
「いけませんか? まぁ、さすがに子供を作るのは無理でしょうけど。でも、わたしはさつきのことが、そういうこと思っちゃうくらいには好きですから。
 ときどきね、思うんですよ。あなたを縛り上げて、挿れて、動いて、犯してやれば、どんな可愛い顔を見せてくれるのかな? どんな声を聞かせてくれるのかな? って」
「お、おかすっ!?」
 さらに下がる。壁際まで下がる。ミゥは静かに追撃を。
 瞬く間に零距離になり、2人はまた至近距離で見詰め合う――いや、ミゥが熱っぽい目で見つめ、沙月は思わず目をそらす。
「わたしも、ポゥほどじゃないですけど、あなたたちのことは勉強しているんですよ。
 体の構造も良く似ているから、あとはサイズの差にさえ慣れてしまえばなんとかなるはずなんです」
 わたし、こう見えても巧いですから、とミゥ。う、巧いって何が!? と問い返す沙月。
「性的遊戯、って言えばいいんでしょうか。まぁそういう行為です。
 昨日も、ルゥを思いっきりいじめてあげたんですよ。あの娘、普段はあんななのに、されてるときは本当に良い顔をしてくれるんです。
いつもあんまり表情を変えないのに、イってるときの顔は本当に魅力的で、きれいで。何回でもやってあげたくなって。結局ルゥが失神するまでやっちゃいました」
 もはや言葉も無い沙月。つい昨日、という言葉が何度も頭の中をリフレインする。つまり、あの焼肉大会の間、ずっと2人はそういうことを、していたわけで。
 
 そう。校庭で皆が楽しく焼肉に興じていたおよそ2時間あまり。
 ルゥはその間延々と、ミゥの触手にいじり倒されていたのだ。前で10回後ろで7回、両方同時だともう何回なのか数え切れないほどに絶頂を繰り返し、
最後はひときわ激しく出し入れされて、夜空に星が瞬くように、愉悦と快楽に意識を失い、気付いたときにはお湯を張られた鍋の中で、ミゥに優しく体を洗われていたのだった。
 おかげで今日は朝から足腰立たず、頭はぽぉっと紅潮して働かず。それでも調理班当番だから、と頑張って家庭科室へ赴いていたのだ。
 そんなけなげさがますますミゥの被虐心と、ちょっとゆがんだ愛情に火をつけることに気付いているのかどうか。

「ちょ、ちょっと待ってよミゥ!? その、してた、ってあなた今繁殖期じゃないでしょ!?」
「そうですね。でも、生えて無くてもやりようなんていくらでもあるじゃないですか。性器を直接擦りあわせるのでもいいですし、指や舌や足とかでもいけるでしょう。
 まぁ昨日は触手だったんですけど」
「しょ、しょくしゅっ!?」
 触手といえばあれですか。あのうにょうにょでにょろにょろっとしたものですか? それで何をどうするって? というかミゥはどこからそんな? って、まさか。
「その顔は気付いたみたいですね。はい、オーラフォトンをちょっといじって、わたしの思うままに操れる光の触手を生み出しちゃえるんです。
 操れるようになるには結構練習もしましたけど、今ではすっかり手足と同じです」
 ですから。太さも大きさも自由自在、さつきサイズにも全然対応できるんですよ。と。さらに追い詰めながら、ささやくように告げる。

「い、いやでもっ! あなたにはルゥってパートナーがいるんじゃ」
「こういうことのパートナーは多いほうがいい、っていうのがわたしたちの考え方ですよ、さつき。
 ポゥにもしたことありますし、ゼゥとワゥも、くす、しっかり狙っているところです。
 そもそも、あなたたちが1対1に固執していることが、わたしたちには良く分からないんです。確実に子孫を残し、遺伝子の多様性を求めるなら、
多対多の方が良いに決まってるじゃないですか
 ねぇ、さつき。わたしとあなたは完全に異種族です。なにをしても子供が生まれる気遣いはありませんし、後腐れとか、そんなのを残すつもりもないです。
そもそもそういう感情自体が良く分からない概念ですから。
 何も気にせず、わたしに身をゆだねてみませんか……? そういうことで息抜きをするのも、たまには必要ですよ。さつき」
 あう、あう、と理屈で反論しようと言葉を捜すがまるで出てこず、興味が全く無いわけじゃないのもまた事実で、
でも最後にはやはり倫理と常識の壁が沙月の目をミゥから背けさせる。

「ふぅ、まぁそう答えるとは思ってましたけど」
 目を完全にそむけたのを確認し、ミゥが沙月の側から離れていく。
「わたし、無理矢理って好きじゃないんです。やっぱり気持ちよくなってくれないと嫌じゃないですか。だから、嫌がるのを無理にやったりはしないんです」
 沙月は顔を真っ赤にして、ミゥを恥ずかしそうににらんでいた。
「もし気が向いたら、いつでも言ってくださいね、さつき。わたしはいつでも待ってますから」
 さ、書類処理の続きをしましょう、と声をかけるが、沙月はまだしばらくの間、腰が抜けたように床にへたり込んでいた。
 追記。
「な、おい、希美って!」
 どこまでひきずられていくのかと、いい加減手を離してくれと叫ぶ望。はぁ、はぁっと荒い息をついて、もういいかと足を止める希美。
「いったいどうしたんだよ」
「だ、だって、ものべーがね、望ちゃんとミゥちゃんが一緒の部屋にいるって教えてくれたから」
 ぽぇぇ〜、とどこからか現れたちびものべーが鳴く。
「それが何かまずいのか?」
「ま、まずいに決まってるよっ! もう、望ちゃんは分かってないんだから!」
「だから何が?」
 そ、そんなこと、言えるわけ無いよっ! と心の中で叫ぶ。

 ものべーは、校内で何か面白そうなことがあれば、希美に喜んでもらおうと逐一教えてくれる。
 だが、今回ばかりはいらないお世話、としか言いようが無い。
 普段なら、興味の無い話題・プライベートな出来事に関しては、慌ててシャットダウンするものだが、何せ昨日は意識朦朧と寝込んでいたわけで。
 おかげで数時間の間夢うつつに、ミゥとルゥの余りに激しく淫蕩な時間を、生中継完全放送で見る羽目になってしまったのである。
 もう、しばらくルゥちゃんの顔まともに見れないよ。今度からあーいうことは、絶対に中継しなくていいからねっ!
「ぽえぇぇぇ〜〜」
64おしまい:2007/08/18(土) 12:18:45 ID:dBrY9b4R0

 はい、つーわけで3話をお届けします。
 何か、書いてるうちにどんどん筆が滑って、いつの間にかミゥ姉さまがえらいえろいことになってしまいました。
 おかしいですね。

 次回予告は――ここまで影の薄いワゥとゼゥが、また騒動を巻き起こします。
 いよいよミゥさまのおしおきの手が年少組2人に及ぶのか?
 それともいい加減そろそろ誰かが止めに入るのか?
 つーかゼゥのむねぽちはあれやばいよね? 
 ついでにルゥは無さ過ぎますよね?

 まぁそんな感じで。ではまた数日後に。 

 ……っちゅーか、連投規制がきついです。書き込み待ち20分越えってどういうことですかOTL
65名無しさん@初回限定:2007/08/18(土) 12:53:05 ID:zYQSPIaa0
>>64
乙&GJ
ものべー中継自重w
ところで、ミゥ姉の属性が黒に見えてきたんだが…あれ?客が来たみたいだ
66名無しさん@初回限定:2007/08/18(土) 15:56:22 ID:P+fULku90
>>64
GJ!
プレイ中は全く眼中に無かったのに萌えてきたぁ!
67名無しさん@初回限定:2007/08/18(土) 16:55:56 ID:Y0C9K8IX0
>>64
GJ!そして連投規制の中乙でした。
(ちび)ものべー自重w

一応、1の
>投稿レス数がわかるような配慮
の具体例を纏めてみました。今後はぜひお願いします。
・名前欄または本文最初の行に総レス数の目安を書く
・注意書きなどを添える際におよそのレス数を書く
等です。あくまでも考えられ得る具体例のごく一部ですが、
徹底していただければ、突然レスがぱたっと止まった時に
連投規制されたのかなって察しがつきますし。
68名無しさん@初回限定:2007/08/18(土) 19:36:15 ID:MKz7QGyN0
何この妄想
頭おかしいんじゃねえの
チラシの裏に書いてろ
69名無しさん@初回限定:2007/08/18(土) 19:37:22 ID:MKz7QGyN0
あ…、本スレと勘違いしてた。すんません
存分にやって下さい
70名無しさん@初回限定:2007/08/18(土) 20:32:06 ID:ANjwSMMp0
71名無しさん@初回限定:2007/08/18(土) 21:24:16 ID:IkGElD4W0
>>64
毎度乙であります。
ミゥ姉えろいよミゥ姉
次回はポゥにも活躍の場を!
72名無しさん@初回限定:2007/08/19(日) 00:01:14 ID:CmqwsYm20
ここはクリスト系SSだけ?
73名無しさん@初回限定:2007/08/19(日) 00:06:30 ID:+w7XitXr0
スレタイ的になるかな関連ならなんでもいいんじゃない?
ユート達とノゾム達の邂逅妄想SSとかまでいくとどうかしらんが
幻の??ルート考えてみたとかならいいんじゃね?
74名無しさん@初回限定:2007/08/19(日) 04:02:02 ID:bh+QbbFv0
むしろ旅団メンバーの補完したくて仕方がないんだが
75名無しさん@初回限定:2007/08/19(日) 04:26:00 ID:5dVMZsqH0
>>74
wktk
76名無しさん@初回限定:2007/08/19(日) 11:35:36 ID:FgNksXfg0
>74
wktkwktk


と言うか>73の無印となるかなキャラの交流とか蝶みてぇ
77名無しさん@初回限定:2007/08/19(日) 11:39:11 ID:cI0aT53F0
とはいえな
ゴリア世界はエターナルでも突破できない結界が2800年にわたり存在してるというネックが
外にいるエターナルならおbsn初めどうにかなるけどさ
78名無しさん@初回限定:2007/08/19(日) 13:57:03 ID:PbYuDwYS0
いや、悠人なら外にいるでしょ。ヨフアル以外。

それにナルカナで、時間関係はギリシャ神話みたいに前後しても構わないというメーカーお墨付きがw
蓋してたら別なのかしらん。
79名無しさん@初回限定:2007/08/19(日) 18:18:19 ID:wYKbeNTp0
阿川美里ルート補完したくてしょうがない俺が通りますよ
誰かが書いてくれれば楽できるんだがなぁ…w
80名無しさん@初回限定:2007/08/19(日) 20:39:43 ID:PbYuDwYS0
ソルとタリアの補完を希美。

ノベル番が出たら、二人のエロ有りそう。
81名無しさん@初回限定:2007/08/19(日) 22:00:31 ID:bh+QbbFv0
おk。
ならば、第一弾はスバルとショウだ。
82名無しさん@初回限定:2007/08/19(日) 23:32:32 ID:CMIxLmrj0
アッー!
8312:2007/08/19(日) 23:45:05 ID:cYY+e14w0
>65-66 >71
ありがたうございます。その言葉が何よりの栄養剤であります。

>67
あ、なるほど。今までこんな連投したこと無かったからわかんなかたす。今回からそうしますな。

>78
どこまで行っても妄想だし、良いんじゃないのかな。
つうか、理由考えてうなってるより、とりあえずネタ投下しちゃうほうがきっといろいろ良い感じと思。

つーことで、今から第4話。多分総レス数は13個くらい。
孔明ワゥの大活躍みたいなお話です
84クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/19(日) 23:46:52 ID:cYY+e14w0
 深夜。当直の生徒数名と旅団員1名以外は、全員寝静まった静かな夜。
 ごそごそと、廊下に蠢く影1つ。15cm程度の小さな姿である。赤い髪は闇にまぎれているが、白い肌は逆に浮き上がっている。
 ワゥは単身、周りの気配を探りながら、ゆっくりとある場所を目指して進んでいた。
 
 クリストたちが乗る結晶体は、乗員の意思ではハッチの開閉をすることができないようになっている。
 外に出るときも中に入るときも、絶対に自分以外の誰かに、ハッチの開閉を行ってもらわなければならないのだ。
 それは普段なら、特に何の支障も無い事項でしかない。クリスト部屋には大抵誰かがいるから、その誰かに開け閉めしてもらえばいいだけのこと。
 何か急ぎの用事があって結晶体に乗り込みたいが、部屋に誰もおらずにどうしようもない。そんなことも稀にはあるが、
それならそれで、部屋の前を通った誰かに呼んで来てもらうなりすれば良い。
 結晶体への出入りが問題になるのは、ただ1つのシチュエーションのみ。
 
 すなわち、何か1人で後ろめたいことをしているときのみである。

 もぞもぞと、小さなワゥの体が、ぎりぎり通る程度の隙間を潜り抜ける。数日前の校内一周レースの際に見つけた隠れ道だ。
 ここを越えればもう目的地はもうすぐそこ。時間にもまだ余裕がある。よし、もう少しだ頑張ろう。
 突然頭に小さいが鋭い痛みが走る。髪の毛がどこかに挟まって抜けたらしい。慌てて回収。証拠は残すな。よし問題ない問題ない。
 先に待つものをどう楽しむか、少し顔ににやけが浮かび、おっとまだまだ油断は禁物、と厳しい表情に早戻す。
 何せここは、夜でも常に3人の当直が見回っているあたりだ。足音を聞き漏らしたりしたら大変なことになる。
 よーし、あとちょっと、もう少し、箱をほんの少しだけ、音も無く開けて

「ワゥ、こんなとこで何やってんのよ」

 突然背後からかかった声に、瞬間その場で横転した。
85クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/19(日) 23:48:08 ID:cYY+e14w0
「うーん」
 生徒会長斑鳩沙月は今日も今日とて、生徒会室に立てこもり、世界間航行中の物部学園運営に伴うさまざまな事務処理に追われていた。
 たとえば以前の世界で仕入れた食料の在庫確認。書類内と実量が合致しているかどうか?
 たとえば衣類・縫製品の残量状況。使用届けの出された分量と実際の使用量が同値にあるやいなや?
 たとえばトイレットペーパーやナプキン、石鹸に歯磨き粉、果ては生理用品等の日用消耗品。使用制限を出すほどに減っているものはありはしないか?
 そのたもろもろ、机の上には書類がどさりと乗っかって、早く処理せよと無言の圧力をかけている。

 なんでわたしがこんなことしなくちゃならないのよ! と癇癪起こしても仕方ない。ほかにやれる者がいないのだ。
 残っている僅かにいる教員たちは生徒の指導で手一杯。『旅団』員はそれぞれの役目に追われている。
 生徒たちも炊事洗濯掃除に庭木の手入れや本分たる授業の受講など、決して暇にしているわけではない。
 そんなこんなで、大きくため息ひとつつき、さきほど見つけた謎について頭を悩ませているのである。

「あ、ケイロン、お帰り。在庫はどうだった?」
「は。確かに、ほんの僅かですが、書類上と比べて実量が減っておりました」
 透明化して倉庫を確認に行っていた沙月の神獣――ケイロンが生徒会室に戻ってきた。報告を行いながらコーヒーメーカーの方へ移動し、
疲れている様子の主人のために濃いのを一杯入れていく。
「うーん、やっぱりねぇ……過去さかのぼってみたけど、書類に不備は無かったわ」
「やはり、誰かが隠密裏に?」
「あんまり考えたくないんだけどね。仲間を疑うのはあんまり好きじゃないしさ……ありがと」
 ホットコーヒーをブラックで。最近カフェイン依存かなぁなどと思いつつ、忠臣手ずからの一杯をゆっくりと一飲み。頭を休ませる大切な時間。

「――それじゃ、ちょっと調査と行きましょうか。うーん、せめて望くんが一緒ならなぁー」
「では呼んで参りましょうか?」
「いやそれもさすがに、ね」
86クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/19(日) 23:50:01 ID:cYY+e14w0
――同時刻 クリスト部屋
 
「ひゅぃいぃ……」
 ぜは、ぜは、と肩で息をしているワゥ。あきれ返った目で見つめているのはルゥとポゥの姉2人。
 あの校内大レースからこっち、ワゥは外を生身で歩き回る面白さに目覚めたと言い、毎日のように姉たちの目を盗んでは、
結晶体を部屋に置き去りにして、単身放浪の旅を繰り返している。
 それで制限時間内に戻ってくるのならばまだ許せないこともないのだが、何故か毎度毎度間に合わず、
帰還途上で力尽きたと思われる状態で発見されるというのがパターン化されている。
 今日もまったく同じくで、今度は美術室前でふらふらになっていたところをたまたま通りがかったルゥが発見。
 たった今、ため息つきつつ連れて帰ってきたところである。

「あはは……美術室の中って面白いんだよ? いろいろ変なものがあってさ、触ったりいじったり眺めたりしてたらつい時間経つの忘れちゃって」
 大分息が落ち着いてきたワゥが、ごまかし笑いもあからさまに言い訳を始める。ポゥ、ぺしんと妹の赤い頭を軽く叩いて、
「前は音楽室でしたよね? もう、あんまり酷いようなら、お姉ちゃん本当に怒っちゃいますよー?」
「ん。ミゥにはまだ知られてないけど。こう続くようだとそのうち隠せなくなる。私たちと違ってミゥは厳しいよ」
「う……ごめんなさい」
 肩を落としてしょんぼり、素直に謝るワゥ。捨てられた子犬みたいな目をしている姿は実に可愛くいとおしく、姉2人もついつい笑って許してしまうのだ。

「もう、ほんとにほんとに、これが最後にしてね、ワゥちゃん」
「何か直に触ってみたいものとかがあれば、この部屋に持ってきてもらうこともできる。無理して出歩くことない」
「はぁい」
 てへ、と、してやったりという表情を僅かに浮かべる。姉2人の反応を予測し、狙ってやっている辺り、タチが悪いというか。
87クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/19(日) 23:51:27 ID:cYY+e14w0
「ところで、ミゥねぇとゼゥはどこに行ったの?」
「ミゥはこの時間だと、屋上で洗濯の手伝いだったはず。ゼゥも一緒だった?」
「そうですよ〜。皆さんと一緒に、お洗濯お洗濯で運んだり干したり干されたり、はしてませんね。とにかく上にいると思います」
 え? と怪訝な表情を浮かべるワゥ。
「あれ? でもさっき倉庫棟のほうでゼゥを見かけたよ?」
「倉庫棟ですか?」
 倉庫棟とは、この旅路が始まった後、ある校舎を丸々1つ倉庫代わりに使うようになって、自然発生的に言われるようになった呼び名である。
元々は1年教室といくつかの特別教室が入っている、何の変哲も無い校舎だ。
 もちろん、この校舎の屋上で洗濯にいそしんでいるはずのゼゥが、いるはずのない場所である。

「見間違い?」
「見間違える相手がいませんし……」
 と首をかしげる2人。何かが足りなくて倉庫に取りに行った? ゼゥが? そんなわけないですよねぇ。普通男の人が行きますよねぇ。
「ねぇ、ちょっと探してみない? 何か怪しくない?」
 と、ワゥが何故か妙に意気込み、目を輝かせての提案である。姉2人顔を見合わせ、弱み握りたがってるのかな? かもしれませんね、などと小さく言い合う。
 ただもし、倉庫でゼゥが何かやましいことをしていたとして、もしそれがミゥにばれたりしたら。
「……自業自得かな」
「いやいやいやルゥ、それはちょっとまずいですよ」
 そうなった場合何が起こるか理解している2人が意見交換。ワゥは何の話ぃ、という顔。
「そうかな」
「そうですよ。それに何より、ワゥちゃんとゼゥちゃんまで渡すわけにはいきませんし!」
 ぐ、っと握りこぶしを作ってポゥ。ああ、と頷くルゥ。む、と顔をしかめてワゥ、
「ポゥねぇ、何か不穏なこと言わなかった?」
「いえ、別に。とにかくですね。私たちだけじゃなくて、みんなの迷惑になることかもしれないんですし」
「ん。……調べておいたほうがいいか」
「そうだよ2人とも!」
 何故か妙に喜んでいるワゥ。2人は違和感を覚えつつも、ルゥは倉庫に、ポゥは屋上に、それぞれ向かっていった。
 ちなみにワゥは、まだ疲れてるでしょうから、とお留守番である。
88クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/19(日) 23:53:41 ID:cYY+e14w0
「ゼゥですか? ちょっと倉庫棟の方に行ってもらってますよ?」
 ぱたぱたと洗濯物が風にはためく屋上で、ミゥは空の籠を集めたり外れかけている洗濯ばさみを付け直したりとせわしなく動き回っていた。
 基本的に頭脳労働タイプのミゥであるが、こうして動き回るのも嫌いというわけではない。むしろ勤勉さは姉妹たち随一と言って良い。
いつもえろいことばかりやっているわけではないのである。
 今も集中していたせいで、しばらくはポゥがやってきたのにも気付かず、声をかけられてやっと気付いたものだ。
「あれ、そうなんですか?」
「ちょっと洗剤が足りなくなってしまって。ゼゥが行ってくれたんです」
 
人間勢が倉庫棟に何かを取りに行こうとするなら、屋上から1階まで降り、倉庫棟の2階にある日用品倉庫まで登って洗剤を引っ張り出し、
そこからまたこっちの校舎まで戻ってきて屋上まで上がってくる、という非常に面倒な過程が必要になる。
 本来なら、最初に必要なもの全部運び込んでから始めるのだが、準備段階で誰かが洗剤持ってくる量を勘違いしたらしく。
 じゃぁ誰が取りに行くんだという話になり、当然誰もが面倒くさがって行きたがらず、じゃんけんで、となりかけたところに、ゼゥが志願してくれたのだそうだ。
「飛んでいけば早いし、って言ってくれてさー。助かっちゃったよホント」
「でもちょっと戻ってくるの遅くない? やっぱり運ぶのに苦労してるんじゃないかしら」
 そんな声が周りからかかる。じゃ、ちょっと見てきます、とポゥ、ゼゥが飛んでいったコースと同じルートで、倉庫棟へと向かっていった。

「そういえば、結局何しにきたのかしら?」
 ミゥが少し頭をひねるが、まぁ大したことではないでしょうし、と判断。いそいそと洗濯物干しの続きに取り掛かったのだった。
89クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/19(日) 23:55:18 ID:cYY+e14w0
「あれ、ルゥ?」
「沙月。珍しいところで会うね」
 倉庫棟に来てみたは良いものの、そういえばどこを探せばいいんだろう、と当ても無くうろうろしていたルゥ。たまたま1階の廊下で、沙月と鉢合わせしたものである。
 お互いにどうしてここにいるの? という状態だ。少し考えて沙月なら話しても問題ないだろうと判断、まずはルゥが事情を説明する。

「ふぅん、それで探しに来てるんだ」
 頷く。何故か微妙に頬は赤く、目線は定まらずに気まずそうな風体である。
「ん。何かあったら悪いから。……沙月、私になにかついてる?」
「え、ううん、別に、何も?」
 といいつつも沙月、ちらちらと目線を右往左往させるのを止められない。ミゥに迫られたあの日からもう何日も経っているが、あのときの衝撃はまだ根強く残っている。
 ミゥにめちゃくちゃにされたというルゥを、いまいち直視しがたいのもやむなしというところか。

「えーっと、ね。私のほうは倉庫管理でね。書類上の量と、実際の量にズレがあるみたいで、ちょっと調べに来たのよ」
 でも頑張る沙月。恥ずかしがっててもしょうがないんだから、と自分に言い聞かせて、こちらの事情を説明していく。
「ズレ?」
「そ。果物の在庫が少しおかしいのよ。ほんの数個だから大したことじゃないんだけど、こういうのって見過ごしたら、後から大事になったりするから」
「うん。どんな頑丈な建物も、崩れるときは小さなヒビからって言うし。……果物が少し?」
「そう。果物が少し」
 何か引っかかったらしく、ルゥの声が少し低くなる。
「どの部屋だったかな」
「あっち、左の隅」
 無言のまま移動を開始するルゥ。どうしたのかと思いつつ、沙月もその後に続いた。
90クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/19(日) 23:58:15 ID:cYY+e14w0
 倉庫部屋の中には山ほどのダンボールや木箱が積まれている。窓には完全に目張りがされているため光が入りこまず、実際以上に狭く見える。
 沙月が壁際のスイッチを手探りで押し、天井の灯りをつける。とたんに部屋全部が照らし出されて、実際混み合っているのは手前側だけで、
奥のほうには結構隙間があることが分かる。
「あ、沙月、電気、良いって言うまで消しておいて。ちょっと調べたいことがあるから」
 そう言われては別に断る理由も無い。沙月はすぐ電気を消し、青い結晶体が部屋の奥に潜り、隅のほうを這うように移動している姿をしばらくぼーっと見つめていた。

「あった。もう電気つけていいよ。こっちに来て」
 と、ほどなくして木箱の陰から上がってきたルゥが、声を張り上げて沙月に言う。言われるままに、何を見つけたのかと寄って行って、
「何、穴?」
「ん。何かが壁に穴開けてたらしい」
 おそらくネズミか何かが開けたのだろう、小さな穴が部屋の隅、気付きにくい位置に開けられていた。穴の向こうは裏庭に直結している。
「ネズミかな。ってことは、果物をこっそり食べて生活してる?」
「ん。多分違う。だったら、学園が飛び始めてからずっと量が狂ってるはず。それに果物だけっていうのも変」
「じゃあどういう……まさか」
 ここで沙月の脳内でも配線が繋がる。倉庫棟で目撃されたゼゥ。減っている果物はほんの少し。そして外へ通じる穴。
「……ゼゥ?」
「……多分。ここから入って果物を盗んでいって、どこかに保管しておく。私たちの部屋に誰もいないときに運び込んで、こっそりと」
「あー。……どうしようか」
 2人揃って頭を抱える。状況証拠だけならほぼ確定だが絶対の証拠は見当たらない。問い詰めても吐きはしないだろう。
「とりあえず、本人を見つけないと」
 と沙月が妥当な提案をし、ルゥもそれに同意した瞬間。

「こんなところでっ! 何をっ! やってるんですかぁぁっ!!」

 校舎の外から、ポゥらしき少女の大喝が聞こえてきたのである。
91クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/20(月) 00:01:38 ID:7bzoBBrl0
 大急ぎで怒り声が連発で聞こえてくる場所へ走る沙月と、そのポケットに突っ込まれているルゥ。2人がたどり着いた先には、
結晶体から湯気が出るんじゃないかというほどに怒っているポゥと、結晶体の中で正座させられているゼゥの姿があった。
 ゼゥの前にはりんごが1つ、皮を向かれて適度に切り分けられて置かれている。もはや証拠も何もあったものではない、完璧な現行犯逮捕である。
「……ゼゥ」
「ル、ルゥねぇまで……も、もしかして、嵌められたっ!?」

「んもうっ! ミゥ姉さんの手伝いをしているのかと思えば、こっそりつまみ食いの下準備なんてっ! お姉さんは悲しいですよっ!」
 ぷんすか、という擬音がぴったり似合う怒り方のポゥである。ゼゥが何か口に出そうとするのを聞こうともせず、
良くこんな大声が出せるなというほどの声量でもって怒りのお説教を叩きつけている。
「ま、まぁポゥ、少し落ち着いて。そんなに大声出してると、どんどん人が集まってきちゃうじゃない」
「良いんですっ! ゼゥちゃんのこの恥ずかしい姿を皆さんに見てもらうんですからっ! 盗み食いなんて、そんなことをする子に育てた覚えはありませんよぅっ」
 沙月のとりなしも聞こうともしない。ゼゥはもう言葉も無く小さくなっているほかはなく、ルゥもさすがにかける言葉を見つけられずに沈黙するしかない。
 結局、ポゥのお叱りワンマンショーは、余りにゼゥの帰りが遅いため心配になって見に来たミゥが、この場に到着する10分後まで、延々と続き。
 その光景を目にしたミゥも、ポゥに負けず劣らずの勢いで大噴火することになったのだった。
 沙月とルゥはただ苦笑いと、ため息をつくほかになすことはなかった。

 ワゥが1人留守番をしていた部屋に、姉4人が打ち揃って帰還してきた。ゼゥはぐったりと憔悴しており、ミゥ・ポゥはかなりのお怒りモード、
ルゥは相変わらずの無表情の中に、少しだけ哀れみの色が伺える。
 そんなゼゥの姿を見て、この騒動の仕掛け人は、表ではなにがあったのと問いかけつつ、内心で思いっきりガッツポーズをかましたのだった。
92クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/20(月) 00:04:20 ID:7bzoBBrl0
 さて。元々、あのネズミ穴を発見したのはワゥである。見つけたのはあの校内一周レースのときだ。
 以来、1人でこっそり隙を見て、倉庫に忍び込んで果物を頂くのがワゥの楽しみになっていた。
 ここ数日、連日のように廊下で倒れていたのは、そのほとんどが倉庫からの帰還途上のことである。
 取った果物をどこかに隠したり、部屋に持ち帰ったりとするのでは途上でトラブルが発生する可能性がある。校舎裏でこっそり食べ、

食べられなかった分は倉庫の奥の奥に隠し、次来た時はその残りを、というローテーションで、日々の楽しみを得ていたのである。
 ところが2日前、夜中に侵入しようとして、たまたま倉庫棟の巡回当番に当たっていたゼゥに見付かってしまったのがケチの付き始めである。
 倉庫の中でごそごそしていたところを発見され、どこから入り込んだのか教えないとミゥねぇたちにばらすよと脅され、
ワゥは秘密の道のありかを吐かされる羽目になってしまったのだ。
 
 とりあえずその場はそれで収まったものの、弱みを握られていることに変わりはない。ゼゥとの間で何かあれば、ワゥはすぐさま窮地に追い込まれることになるのだ。
 そこでワゥは一計を案じた。
 まずゼゥに、今後のことを校舎裏で焼きりんごでも食べながら話そうよ、と持ちかけた。
 2人揃えば結晶体のハッチ開閉が出来るので、一旦出て、食べて、入り直し、素早く部屋に戻ってマナを封入しなおせば誰にバレることもない。
そう言ってゼゥを誘い出したのである。
 ワゥは先遣して倉庫の中からりんごを1つ外へ引っ張り出し、それを後からやってきたゼゥが皮をむいて切り分けておき、結晶体に乗り直してやってくるワゥを待つ。
 後はワゥがりんごに火を通し、歓談しつつ交渉を――となるはずだったのだが。

 ゼゥが校舎裏で待機しているはずの時間帯に、姉たちがそこに向かうように仕向けておいて、ワゥは1人部屋でお留守番。
 現行犯でとっ捕まったゼゥが何を言おうと、知らぬ存ぜぬで押し通せば、証拠不十分で逃げ切れると。そういう算段である。
 壁の穴はふさがれてしまうかもしれないけれど、ゼゥに弱みを握られ続けることを思えば充分我慢できる代償である。
 果たして、ゼゥは目論見どおりに現場を押さえられて、姉3人に部屋に連行されてきたのだが。
93クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/20(月) 00:06:24 ID:7bzoBBrl0
「――ワゥ。事情を説明してもらいましょうか」
 ぴしゃりと音を立てて扉が閉じられた。部屋の中にはクリスト5人のみ。唯一現場に居合わせた人間である沙月は、量も大したことないし、
別にいいんじゃないの? と軽く許してくれたのだが。
 ミゥとポゥのお怒りはそれとはまた別問題である。罪を犯したものには相応の罰を。量がどうこうという問題ではない。やったということが重要なのだ。

「事情って何のこと?」
「ゼ、ゼゥひとり嵌めようったってそうはいかないんだからねっ! 姉さんたちにもう全部ばらしちゃったんだから!」
「……今のうちに全部言っておいたほうがいい。言い逃れしようとしたらますます後がひどくなるよ」
 ルゥの忠告も、どうせ証拠なんて出てくるわけないし、とタカをくくっているワゥ。あくまでも白を切り続ける。
「だからボクは何にも知らないってば。ゼゥ、人に罪かぶせようなんてちょっとひどいんじゃない?」
「な、なにをっ! ゼゥはうそなんかついてないもんねっ」
「2人とも、少し黙りなさい」
 ミゥ姉様の、雷のごとき重厚な一言が2人を一瞬で黙らせる。1つ大きくため息をつき、
「ワゥ。これが最後の機会です。白状すればよし、さもなければ、さらに罰がひどくなりますがいいですね?」
 うわこれは本気で怒ってるよ、とルゥの背すじが震える。ワゥ、ワゥ、無駄な抵抗はしないほうがいいよ。
 けれど次姉の願いは、ミゥの本気を知らないワゥには届かない。まるで自分の逡巡を跳ね除けるように、思いっきり首を振って、
「知らないってば」
 と、自身の死刑宣告書にサインをした。
 
 ルゥが大きくため息をつき、ミゥがポゥに小さく頷く。
「ワゥちゃん、これを見てください」
 ミゥの促しを受け、ポゥがすっと、全員に見える位置に何かを差し出した。赤く短い髪。明らかにワゥの髪の毛である。
「ボクの髪の毛?」
「これはですね。ワゥちゃん。倉庫棟1階の、果物置き場の、りんごの入った段ボール箱の中から出てきたんですよ」
 ワゥの表情が凍りついた。
94クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/20(月) 00:08:21 ID:7bzoBBrl0
「さて質問です。ワゥちゃんは、そんなところで生身で何をしていたんですか〜? というかそもそも、どうしてそんなところにいたんですか?」
「あ、あの、それは、それ」
 だから言ったのにと、額に手を付きルゥ。ざまーみろぉ! と快哉を叫ぶゼゥ。無言でミゥ。
「そ、そう、ほら、こないだの校内一周のときに、ちょっとだけ隠れてたんだよ。その、ゼゥを撒くために」
「これが出てきた箱はですね。あの日にはまだ、別の箱の下に埋もれていたものなんですよ、ワゥちゃん」
 あう、と口をあけて黙り込む。もはや言い訳のネタは思いつかぬ。まさに万事休す、逃げ場はどこにも存在しない。
「さて、それではもう一度聞きますね。ワゥちゃんは、いったい、あの箱の中で、何をしていたんですか?
 ああもちろん、誰かに頼まれてりんごを取りに行っていたんだっていうのは無しですよ? 
 この数日、ワゥちゃんが倉庫棟に入った記録は残っていませんから」

 倉庫棟への人の出入り、物品の搬入・搬出は全て当直生徒の立会いの下で行われ、どんな些細なことでも記録される。
まさにワゥのようないたずら心の盗人をシャットアウトするための機構である。
 厳しいという不満の声が生徒の内に上がることもあるが、長期航海において物品の管理はきわめて重要である。
生徒会および教師一同は徹底して記録を欠かさないよう指導している。
 そのしわ寄せは書類の分量として、生徒会長の下へどっと流れ込むことになるのだが、それもまたやむを得ないのである。沙月は大変だが。

「あ、あわ、あの、えっと、その。
 ご、ごめんなさーぁぁい!」
 ワゥ、陥落。泣いて謝るももはや手遅れ。ミゥとポゥ、顔を見合わせて告げる。
「言ったでしょう、罰はひどくなりますよ、って」
「今更謝っても手遅れです。ふふ……ねぇ、2人とも。今日の夜は楽しみですね。うふふふふ……」
 がくがく震えるワゥ。やったみたかざまーみろワゥめとひとしきり喜んだゼゥだったが、
「あなたも同罪なんですよゼゥ! 今晩までに覚悟を決めておきなさい!」
 と一喝されて轟沈。床に崩れ落ちてへこたれた。
95クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/20(月) 00:11:28 ID:7bzoBBrl0
「る、ルゥねぇっ、おねがい、助けてっ!」
 ワゥがルゥの下に駆け寄り、膝に取りすがって助けを求める。もはや無駄と知りつつも、一縷の希望にかけての行動だ。
 けれど、ルゥは今日何度ついたか分からないため息を、また1つついて。
「ワゥ。2人がとても怒ってるから、そう見えないかもしれないけど」
 膝の手を払いのける。
「私も、充分に怒ってるってこと、忘れないで」
 当たり前である。単に表に出ていないだけで、ルゥも姉として、妹の所業に腹を立てていて当然なのだ。

 完全に消沈して床に手を着くワゥ。ルゥはその頭にそっと手を乗せて、励ましの言葉をかけてあげる。
「でも大丈夫。2人とも怒ってるけど、でもやっぱり優しいから。本当にひどいことはしないと思う」
「ほ、ほんと?」
「うん。だから頑張って。慣れてくれば、きっと気持ちよくなれるから」
「へ、気持ちよく、って?」
 夜になれば分かるよ。と。静かに告げたルゥの視線の隅。
 ミゥとポゥは2人、どういう手段でもって"お仕置き"してくれようかと、くすくす笑いながら算段を巡らせていた。
96クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/20(月) 00:13:45 ID:7bzoBBrl0
  ――深夜。生徒たちのほとんどが眠りにつき、ほんの数人が当直として起きているだけの、静かな夜。
 クリスト部屋の扉の前に、青い結晶体が番人のごとく浮かんでいる。
 廊下に面した窓には全てぴっちりとカーテンが張られ、中の様子をうかがうことは出来ない。
 僅かに、カーテンの隙間から漏れる明かりだけが、中の住人がまだ起きていることを知らせていた。

 世界崩壊後、クリストたちの間では、過度の人口増加を防ぐために、一定年齢に達する以前の生殖行為は禁止されている。
 方法は至って単純、各生殖器を刺激して、生殖可能な状態を作り出すホルモンの分泌を抑制する薬を、定期的に飲むだけだ。
 ゼゥ以降の世代は、成人前からずっとその薬を飲み続けている。当然まだ「生えた」ことはないし、より年上の、
生殖可能世代による「挿れ、注ぐ」行為も禁止されているため――ゼゥより年下のワゥは、当然その手のことを経験したことは一度も無い。
 ゆえに、ミゥは、こう告げるのだ。

「今日は始めては奪わないから。前は触るだけ。後ろで、思いっきりおしおきしてあげる」

 あなたの始めては触手になんかもったいない。いつか、新しい世界が見付かってから、私自身で貫いてあげますと。
 そうミゥは告げたのだった。

「ゼゥちゃん、良く見て、良く聞いておきなさい。これはあなたへの罰でもあるんですから。大丈夫、我慢できなくなったら私が相手をしてあげます」
 ポゥに抱きかかえられ、口かせに手かせをされているゼゥは応えるすべを持たない。小さく首が縦に振れたように見えたのは意図したものかそれとも錯覚か。
 ――ちなみに、それは嘘である。ひたすら見せ付けて、ゼゥには何の刺激も与えない、それがゼゥへの罰なのだ。
 基本的に強がっているけど、本当はさびしがりでかまってほしがりのゼゥには、これが一番効く罰じゃないかと。2人の間で結論に至ったのである。
97クリストたちの日々――ワゥの陰謀:2007/08/20(月) 00:15:46 ID:7bzoBBrl0
「で、でもミゥねぇ! ボクたちくらいの年齢相手のこーいうことって、法律で禁止されてるんじゃないの!?」
 全裸で鍋の中に転がされているワゥが叫ぶ。なんとかこの状況を打開できないかとの悪あがき、当然ミゥには論破するに充分な材料がある。
「あら、でも見て、ワゥ。私には今生えてないですよ。私だって生殖禁止世代ですから、そういうことをしたくてもできないようになってるの」
 
 現状、法と薬物によって禁止されているのは『生殖行為』のみだ。過度の暴力や虐待に通じるほどでなければ、性的行為まで禁止されているわけではない。 
 年頃の子、薬で抑制しているとはいえ、どうしてもむらっと来ることはある。それをただ抑えるばかりでは碌なことになりはしない。それが法律制定時の判断である。

「で、でも、ならどうやって、その」
「ワゥ? 分かっているのに分からないフリをしても何の解決にもならないんですよ?」
 ぶるり、とまた1つ震えが来る。ミゥが操るのは光の腕。ミゥの意思のままに動き、思うままに形を変える、オーラフォトンの触手の群れ。
「それじゃ、覚悟はいいかしら。まずは古式にのっとって始めることにしましょうか」
 と最後に通告し。ミゥはワゥに強く口付けをした。


 この夜。ワゥは後ろのはじめてを失って、その後5時間以上にわたって延々と責められることになった。
 体中がとろんとろんになるまで責め立てられ、前も後ろもぐちゅぐちゅに濡れて潮を吹き。涙とよだれで顔もぐちゃぐちゃになって。
 ゼゥはその声と姿に、ぱんつが濡れて使い物にならなくなるほどに出来上がって、でも誰にも触ってもらえずおねだりの声を上げるばかり。
 そんな姿にミゥはますます興をかきたてられ、ポゥはその顔をうっとりと見つめて陶然と悦にいたる。
 結局終了したのは夜明け前。そろそろ早起きの人が起きてくる、というルゥの忠告によるものだった。
 2人は、土鍋のお風呂で体を優しく洗われながら、初めての余韻と収まりきらない興奮に酔いしれたのだった。
98調教 完了:2007/08/20(月) 00:16:48 ID:7bzoBBrl0
 やっぱり最後は例によってえろオチで。
 ついに年少組2人も食べられてしまい――あ、ゼゥはまだ大丈夫ですね。大分手遅れ気味ですが。
 つうかこれってお仕置きなんですかね? 

 ポゥさんはどちらかというと、自分が積極的にするより誰かがされてるのを見てる方がお好きなご様子。
 つつましくおしとやかな姿が目に浮かびますね。

 あ、ちなみに今回はものべー通信は受信機熟睡中につき発動せず、でありますのでご安心ください。

 次は魔法の世界を超えて文化祭。クリスト部屋での出し物と、その日の過ごし方について描きます。
 今度はきっとえろいの無しで。多分。
 ではまた。
99名無しさん@初回限定:2007/08/20(月) 00:24:22 ID:L1U8MS9+0
もう来なくていいよ。才能無いから。
↓ID変えて自己擁護乙。
100名無しさん@初回限定:2007/08/20(月) 00:50:16 ID:PPcY3ZwU0
101名無しさん@初回限定:2007/08/21(火) 06:36:18 ID:cGsk+ASy0
うぉい丸一日書き込みなしですか
つーことで空気読まず燃料投入ですよ

ttp://rainbow.sakuratan.com/data/img/rainbow51909.jpg

こんどはワゥ描いてもらいましたよ と
きっとアレですね ねーさまたちのお仕置きがらみでどっかの世界で拾ってきた虫さんたちに責められてる図とかそんな感じですかね
前に入り込もうとした輩は即座に引っこ抜かれるわけですね

どうでもいいけどパッチ1.4でクリストが増えたわけですが
これは俺にとっての福音ですか?
102名無しさん@初回限定:2007/08/21(火) 08:16:27 ID:5Cwc9NXw0
>>101
GJ!
いや〜、何か書いて投下しようとは思ってるんだが中々まとまらなくてな
なるべくオリジナルのキャラを壊さないように思い通りに動かすのって難しいもんだね
てか、改めて望が動かしにくいキャラだと悟った…どういう発言させるのがベターなんだこいつはw
103名無しさん@初回限定:2007/08/21(火) 08:19:11 ID:J/Wovw670
小手調べに10k〜20k程度の短編書こうと思うんだけど、
こんなのが読みたいって「お題」をぼしうしてみる。
104名無しさん@初回限定:2007/08/21(火) 08:42:40 ID:5Cwc9NXw0
>>103
望とレーメが絡んでる話がいいです(・ω・)ノ
もしくは作中ではなかった男連中だけの話とか
105名無しさん@初回限定:2007/08/21(火) 08:52:13 ID:J/Wovw670
>>104
さんきう

望とレーメの掛け合いは本編でもわりと豊富だから、
女っ気0な話を書いてみますわ。
ちょいと待ちなー
106名無しさん@初回限定:2007/08/21(火) 15:41:51 ID:WoiDHtGW0
絶とサレスの将棋話とかw
でもこれじゃあナナシたんが出てきちゃうよね
107名無しさん@初回限定:2007/08/21(火) 18:43:46 ID:AKxhlMbP0
エヴォリア救済ルートを希望してみる。
雑魚スピスレで各雑魚スピとユート様をくっつけて一緒にエタ化しようとしてたみたいに。
108名無しさん@初回限定:2007/08/22(水) 00:16:54 ID:TSi07RIn0
>>102に16時間遅れで禿同。
望ってどう動かせばいいのやらさっぱりわかんねえorz

>>106
あー、なんかいいなーそれ、望いないってのが特に。
絶がノーガードの超急戦なのに対して、サレスはガチのアナグマンだったり
しそうなイメージだけど、逆だったりしても面白そう。

ナナシには棋譜の読み上げでもやってもらいましょう。

>>107
今周回中の人が、そのうちネタを引っ提げて投下してくれるかもね。
長編が書ける人がウラヤマスィ。
109名無しさん@初回限定:2007/08/22(水) 06:36:04 ID:m/DlXAe10
1.04パッチのクリスト増殖の件で思いついた――というかどっかから受信した電波を形にしてみた。
5レス分くらいの完全ネタ掌編。

一部キャラがぶっ壊れてるのは気にするな。むしろ気にしないでくれ。
ちなみに参考資料

ttp://up.spawn.jp/file/up43147.jpg
ttp://rainbow.sakuratan.com/data/img/rainbow51906.jpg

ちょっとでも笑ってくれたらうれしい。
1101/5:2007/08/22(水) 06:38:22 ID:m/DlXAe10
 星天のエト・カ・リファを倒し、時間樹は救われた。俺たちはついに成し遂げたのだ。
 みんな笑ってる。誰もが笑ってるハッピーエンド。これで全部終わり。やっとあの日常に帰れる。
 そう、みんなそう思っていた。けれど……
 
 むず、むぐ。起きろ、と。遠く俺を起こす声が聞こえる。この声はレーメか? なんだかいつもより声が近いような。
「起きろっ! どうしてこんなところで寝ているのじゃっ! ノゾムをどこへやったのじゃっ!」
 なんのことだよレーメ、俺はここにいるじゃないか……
 布団を跳ね除けて起き上がろうとする。けれど、妙に布団が重い。なかなか持ち上がらず、仕方なく這い出ることにした。
「なんだよ……レーメ、何かあったのか?」
「む? その声は、ノゾムかっ!?」
 寝ぼけ眼をこすり、1つあくびをして声のほうを向く。瞬間、
「うわっ!? な、なんだレーメ、なんでそんなにでかくなってるんだっ!?」
 目の前に大写しのレーメの顔。寝ぼけているのか何なのか、ほとんど同じサイズに見える。あの小さなレーメが。そんな馬鹿な。
「何を言っておる! 吾がでかくなったのではない、ノゾムがおかしくなっているのじゃっ! 鏡を見てみろっ!」
 促され、慌てて鏡のほうを向く。そこには俺が……写っていない。代わりに写っていたのは、小さな姿。クリストのミゥだった。
「んなっ!?」
 隣にはレーメも写っている。同じ位の大きさ。ぺたぺた、と手を動かして体を触ってみる。触り慣れた感触はどこにも無く、代わりに柔らかい女の子の手触りがした。
「これ、俺?」
「……やはり、おぬしがノゾムなのか」
 俺とレーメが揃って呆然としてつぶやく。何が起こったのか。何がどうなったのか。何もかもが頭の中をぐるぐる回る。
「望くん! 望くん! 起きてる!?」
「この声は、沙月先輩」
 そうだ、とにかく他の誰かに会ってみよう。1人で悩んでいてもどうしようもないじゃないか。
「はい、起きてます先輩! あの、ちょっと扉を開けられないんで、勝手に入ってきてもらえますか!?」
「開けられない!? こっちもこんな高いとこのノブなんて手届かないわよ!」
1112/5:2007/08/22(水) 06:41:00 ID:m/DlXAe10
 ノブが高い? どうして、普通のノブじゃないか。
「待て待て、吾が開けて来る。吾なら飛べるからな」
「悪い、頼む」
 レーメが飛んでいき、ノブをよいせっ! と気合を入れてまわす。ぐい、と妙に重たくドアが開き、そこには――
「望くん……も、か。やっぱり、全員揃って同じ目にあってるみたいね」
 そこには、先輩の声でしゃべる、青いクリスト――ルゥの姿があった――

 聖なるかな外伝〜みんなクリストになった日〜

 生徒会室には生徒全員が集合していた。にもかかわらず、スペースには余裕がたっぷりある。それも当然、何せ――
「それじゃ、集計するわね。……ルゥ20人。ミゥ20人。ゼゥ20人。ポゥ20人。ワゥ20人……ユーフィー1人。全101人。
 完璧ね。1人を除いて、全員がこの部屋に揃ってることになるわ」
 沙月先輩の声が、沈黙に包まれた室内に響く。周りにいるのは全員クリスト。同じような姿がそこらじゅうにある。
「ってことはやっぱり、俺たち全員がこの姿に!?」
 男子生徒の声がした。そう、今朝起きたら、何故か生徒全員が、1人残らずクリストたちと同じ姿、同じ大きさになっていたのだ。
 理由も原因も一切不明の大珍事。沙月先輩やナーヤたちは、起きて早々大慌てで全員の安否を確かめに走り、全員をこの部屋に呼び集め、
物部学園にいたはずの人間とクリスト、その全員が、今ひとつの部屋に揃っていることを確認したのである。ただ1人を除いて。
「いない1人っていうのは……誰ですか」
「……サレスよ」 
 タリアが――ルゥの姿をしたタリアが――その声に卒倒した。慌ててゼゥの姿をしたソルラスカが駆け寄って肩を支える。
 誰が誰だか見分けがつくのは、神剣組にはその神獣が同程度の大きさになって側についているからだ。それ以外の一般生徒は声の違いでしか区別がつかない。
全く完璧に同じ容姿である。というか、本物のクリストたちが誰なのかさえ分からない。
 ただ1人、サイズこそ小さくなっているが元の容姿を保っているのが、ユーフォリアだ。何故か彼女だけは被害を免れている。
「……この状況では安易には言えぬが……いなくなっている者が何らかの事情を知っていると見るのが妥当じゃな」
 ワゥの姿をしているナーヤが言った。それに同意する皆。唯一タリアだけが、違う違うと首を振る。
1123/5:2007/08/22(水) 07:09:13 ID:m/DlXAe10
 突然、どこからともなく笑い声がした。
「何!?」「テレビだ!」「生徒会室にテレビなんかあったっけ?」
 全員がテレビのほうを向く。あんなところにテレビがあったような記憶は無いが、あるんだからあるんだろう。誰もスイッチに触れていないのに受像機に光が点り――
「くくくくく、はーっはっはっは! おそろいのようですね、皆さん」
「サレス!」「サレス様!」
 そこには、玉座かと思われる豪奢な椅子に腰を下ろし、高笑いを上げるサレスの姿があった。
「この状況は、やはりあなたが?」
「はいその通りです。やれ、みなさんは実に私の思い通りに動いてくれました……理想幹神を滅ぼし、南天神を滅し、ついにエト・カ・リファまでつぶしてくれた。
 星天の力はいまや私のもの。最後に止めを刺した私が! 星天の力を全て受け継いだのです! そう、私はエターナル、慧眼のサレスとでも名乗りましょうか!
 全て、私の計算通り。ありがとう、望、沙月、皆さん。私の宿願がついにかないました……くっくっく」
 全員が呆然として言葉も出ない中、ナルカナが前に進み出て、昂然と胸を張って――ワゥの胸なので真っ平らだが――問いかける。
「それで、何なのよこの状況は! あなたいったい何をたくらんでいるわけ?」
「決まっているではないですか……私の野望。世界に住む者全てをクリストに! その薄い胸、平たいお尻、小さな背丈……! 見ているだけで興奮してきますね!
 そう、醜い男など、年老いた女性など世界には必要ないのです。皆が美しくあればいい。みんな小さくあればいい! 
 これが私の望む理想の世界、理想の時間樹! 私の理想郷!  クリストの、少女の美しさに魅せられた私には、これ以外の世界など考えられない!」
 ――狂ってる。そう全員が思った。こいつは止めなくてはならない。なんとしても。しかしどうやって? この小さな体のどこにそんな力が!?
「しかし、ユーフォリア、あなたの存在はイレギュラーだ。あなたにはこの時間樹の理が通用しない……なので、物理的に排除させてもらいます。
 皆さん、抵抗しないでくださいね。その美しい姿を傷つけたくはありませんから。抵抗しなければ、後でゆっくり可愛がってあげます。抵抗するなら、仕方ありません」
1134/5:2007/08/22(水) 07:14:18 ID:ievGbL/10
 突然、部屋の中に数名のミニオンが姿を現した。今まで数え切れないほど屠ってきた相手だが――今はサイズで10倍、戦力比では何倍になる? 
「それでは、すみませんユーフォリア。あなたには退場していただきます。その体も一度体験してみたかったのですがねぇ……くっくっく」
 ユーフォリアが、同サイズに小さくなっている神剣を構える。10倍のサイズの相手にも、怯まず立ち向かおうというのか。
「く、来るなら来なさいっ! 小さくなったって、私は負けませんから!」
 叫ぶ。――そうだ。彼女には神剣がある。なら俺には? レーメは隣にいる。持ち手の姿は変わっているが、神剣は確かにそこにある!
 神剣使いは全員気付いた。戦う力はあるのだと。まだ絶望するには早いのだと。それぞれに神剣を抜き払い、囲むミニオンに相対する。
「……何」
 画面上のサレスの顔には明らかに焦りの色が。ミニオンの数がさらに増勢される。20人……厳しいか? 
「――サレス。あなたのことは嫌いじゃなかったんですけど」
 と、誰かの声がした。ふわりと浮いてくる影――オリジナルのミゥ、その周りには4人のクリスト。
「ん。みんな、気付いて。私たちはみんな同じ。私にできることは、みんなにも同じく出来るはず」
 ルゥが言う。その周りにはいくつもの氷の刃が。
「私と同じ姿をしたみなさん。恐れずにその姿を受け入れてください。そうすれば、きっと力の使い方は分かります」
 ポゥ。その周りには石片が回る。
「いい!? こんなやつら、ゼゥなら1人で片付けるよ!」
 ゼゥ。闇の力がその体を覆っている。
「ゼゥに任せるまでもないね。ボク1人で充分さ。多数相手の戦いがボクの本領なんだから」
 ワゥ。炎の槍が、今にも発射可能な状態でたたずんでいる。
 生徒たちは徐々に現状を受け入れる。今戦わねばどうなる? 一生この姿? 冗談じゃない! 
 気付いたものから宙に浮かぶ。オリジナルを中心に、1人1人また1人。戦う術はその身に宿り、戦い方はオリジナルが教える。
「なるほど、クリストたちは神剣無しに、ミニオンと同レベルの戦闘能力を持っている。それを忠実にコピーしたんだから……」
 受像機の中、サレスの顔には明らかな驚愕が。こんな計算はずれがあっていいのかと、自分がどこで誤ったのかと。
1145/5:2007/08/22(水) 07:18:10 ID:ievGbL/10
「待ってなさい、サレス。今からあんたを、ここのみんなでタコ殴りしに行ってやる! ボコボコにして、絶対元に戻してもらうんだから!」
「く、くくくく! やれるものならやってみるがいい! 私の操るは星天の力! 世界の全てが貴様らの敵に回るだろう! 我が力もて、身も心も屈服させてやるわ!」

 かくて、その姿を現した真の敵、慧眼のサレス! 立ち向かうは100人のクリストたち+1名! 
 立ちはだかる無数のミニオンと、操られている各世界の住人を蹴散らし叩き潰しなぎ倒し、サレスの座する世界樹の深奥を目指すのだ!
 だが慌てるな! 敵はミニオンばかりではない。クリストたちにとっては余りに広い世界がその前に立ちはだかるだろう。
 クリストが生存できる環境は限られている。各自の行動限界を把握せよ! それを過ぎれば命が無いぞ!
 ものべーに帰ればマナが充填され、行動可能時間が回復する。巧みに部隊を進退させ、戦線を維持しつつ前進せよ。
 ものべー内部に敵の侵入を許してはならない。奇襲には常に注意するのだ!
 食糧管理も注意点の1つだ。ルゥタイプのクリストたちを戦わせるには莫大な食料が必要になる。豊かな世界を手中に収め、安定した食糧供給を確立せよ!

 もちろんお色気イベントも満載だ! 一緒にお風呂? 一緒にプール? 甘い甘い! 何せ自身がクリストだ! 周り全員がクリストだ! 
 お着替え、おトイレ、その他多数! ちょっとした行動全てが色めいたものになるだろう!
 そして描かれるオリジナル5人との恋愛模様。戦乱を潜り抜けるうちに芽生える信頼関係。クリスト同士ならばサイズの問題だって関係ないのだ。
 レーメ? ナナシ? ユーフィーたん? いっしょにまとめてヤっちまえ!

 あらゆる難題をクリアして、最後に立ちはだかるはエターナル・慧眼のサレスと、その心意気に打たれた仲間たち。
 あの男が、ロリと触手をこよなく愛するあの男が、最強の敵としてクリストたちの前に立ちはだかる!
 負ければまとめて触手陵辱!? 叫べユーフィー、負けるなユーフィー、今こそ彼女を呼ぶときだ!

 変態討伐SRPG クリたん〜101人クリスト大行進〜
 20009年2月29日 発売
115名無しさん@初回限定:2007/08/22(水) 07:23:33 ID:OJkM52wv0
>>114
乙GJ
なんという
アセリアVSソゥユート
116名無しさん@初回限定:2007/08/22(水) 08:44:09 ID:Ga4tssCF0
>>114
乙GJ!
なんというセレス…w
117名無しさん@初回限定:2007/08/22(水) 09:59:55 ID:/uM0ZTKi0
>>114
乙GJ!!!
参考資料のサレス画像を作った者ですがまさかこんなネタにして頂けるとはw
118名無しさん@初回限定:2007/08/22(水) 12:11:09 ID:ebSTnVO+0
>>105
俺はいつまで待てばいい?
教えてくれ五飛・・・俺はあと何回F5を押せばいいんだ!?
119名無しさん@初回限定:2007/08/22(水) 12:16:03 ID:XTZhMLdO0
>>114
我を敬え!我を称えよ!!我が名はレザーーーーード・サレス!!
120名無しさん@初回限定:2007/08/22(水) 22:17:11 ID:TSi07RIn0
>>118
望の書き方を教えてくれれば、すぐにでも


いや、本当に望が掴み所なくてなorz
121名無しさん@初回限定:2007/08/22(水) 22:19:49 ID:Lp+Nd5li0
望は本編でもころころ変わってるから
適当でいいんじゃね
122名無しさん@初回限定:2007/08/23(木) 00:01:23 ID:ievGbL/10
>120
分かる
むしろ雰囲気出すには望より周りのキャラしっかり書くのがよさげ
望はうっすいから適当でえーでしょ ほんと
123名無しさん@初回限定:2007/08/23(木) 01:38:54 ID:KevmV8Ew0
ロティのように冷めてるのか、悠人のように熱血なのかいまいちわかんないよな、望。
わかるのは、自分自身からも他人からも距離を遠くとってる部分が強いということだけ。
あと、ころころと変わるのは周りつうか対人関係においての急激な環境の変化に流されやすいのかもしれないと解釈してる。
なんつか、物事を考えるときに自分を主観におくんじゃなくてかなり客観的においてるようにも思える。
全部コンプリートしたわけじゃないから、わかってるわけじゃないんだろうけど。
124名無しさん@初回限定:2007/08/23(木) 04:33:36 ID:fCEv7p/F0
なんつか、ノリの悪いツッコミ役って感じ>望
放置はしないけど膨らませない、拾うだけのユーザー視点担当。
125名無しさん@初回限定:2007/08/23(木) 09:43:47 ID:54EoVxJs0
ヤバイ、>>114見てワラタw
危うくPCがコーヒーまみれになるとこだったw
126名無しさん@初回限定:2007/08/23(木) 09:56:20 ID:4UpTip510
>>121-124
アドバイスさんくす
それぞれ一家言あって参考になった
もうちっと頑張ってみるよ


しかし、サレスは「おbsn」並みの勢いで「ひんにゅうフェチ」が定着しそうだな
127名無しさん@初回限定:2007/08/23(木) 10:53:48 ID:HqJI3p490
やあ、私はサレス フリーの旅団団長さ!
128名無しさん@初回限定:2007/08/23(木) 11:02:27 ID:WFaBQsoP0
>>124
お前のせいで望がキングコングの西野にしか見えなくなった。
129ショートショート:2007/08/23(木) 12:53:36 ID:SIPHBRVO0
森信助の目前には信じられない光景が広がっていた。
彼は確かに「生徒会室」という名前の部屋に入ったはずである。
部屋の入り口の上に設置されているプレートがそれを証明してくれている。
何の用事でその部屋に向かうことになったかというと、有り体に言えば校内の雑用である。
校内中のトイレットペーパー、蛍光灯をチェックし、全ての工程が終了したことを斑鳩沙月に報告しにきたのだ。
しかし、今はそんなことはどうでもいい。自分の目に飛び込んできた状況を理解するほうが先だ。
結論としては斑鳩沙月は不在だった。彼女がいつも占拠している椅子と机には人影はない。
問題はその手前の長い机に向かい合わせで座っている人物。
彼、森信助のクラスメイトにして親友である世刻望と暁絶。

目が合ってしまった。
静寂が部屋を包み込む。

信助はその空気に耐え切れず、咄嗟に
 「何してんのお前ら」
と口を開いてしまった。
 「「……」」
二人は沈黙しながらこちらを見るばかりである。
 「ごめん、俺の目にはお前らが…」
信助は一拍置いて言い放つ。

 「…すんげー真面目な顔してお人形さんの服を縫い繕ってるようにしか見えないんだが…」
130ショートショート:2007/08/23(木) 12:57:16 ID:SIPHBRVO0

 「…何が望みだ信助…金か?」
 「それとも地位か?権力か?」
二人は目に見えて気が動転している。正直、見ていて愉快だ。
 「いや、俺は何をやってるのかと聞いただけなんだが…」
と言いつつもつい頬の筋肉が緩んでしまう。
 「…お前、解って聞いてるだろ?」
 「クッ…一生の不覚だ。集中しすぎて部屋に近付くヤツの気配を察知できないとは…」
滝のように汗を流しながらこちらを睨みつけてくる望と、この世の終わりとばかりにorzのポーズをとって落ち込んでいる絶。
やばい、面白いぞこいつら。まぁ望の言ったとおり何をやってるのかぐらいは想像できるが。
 「たまーにレーメちゃんやナナシちゃんが違う服着てると思ったら…お前らの自作だったのか」
二人は諦めたように体制を整え、信助を椅子に座らせた。
 「しっかし、お前ら手先器用だな。ていうか、裁縫するようなキャラじゃないだろお前ら」
 「色々事情があるんだよ…仕方ないだろ?レーメがたまには違う服を着たいとか言うんだから」
 「は?何でそれがお前が裁縫する理由になるんだ?学校に残ってた連中に手芸部所属もいたはずだったが…」
そう言うと望は顔を真っ赤にして反論してきた。
 「手芸部の連中に頼め、って言いたいんだろ?そんなことしたら俺は次の日にはレーメを着せ替えさせてグヘグヘしてる変態っていうレッテル貼られるのは目に見えてるだろ!」
 「…あー、まー女はその手の噂流すの得意だしな…で?絶は?」
絶は眉間に手を当て、間を置いてから重々しく口を開いた。

 「…察してくれ」
131ショートショート:2007/08/23(木) 12:58:57 ID:SIPHBRVO0

 「「……」」
俺は絶句して開いた口が塞がらない。望は生暖かい目で見守っている。
 「ま、まぁ人の趣味に口出すほど俺も大層な趣味もってるわけじゃないしな…」
さりげなくフォローを入れておく。これ以上弄ると袈裟斬りされかねない雰囲気だ。
 「あー、で、だ。信助…いや、信助様。出来ればこのことは内密にしておいて欲しいんですが…」
望が妙に低姿勢で話しかけてくる。ここまで卑屈にならなくてもいいような気がするが、気分がいいので言わないでおく。
 「ああ、大丈夫大丈夫、親友のよしみで黙っておいてやるよ」
二人ともホッとしたように息を吐く。
 「おいおい二人とも、話はまだ終ってないんだなこれが…一つだけ条件を提示させてもらうぜ?」
俺の提案に二人は特別警戒することもなく
 「ああ、それぐらいは覚悟の上だよ」
 「…見られた俺たちに落ち度がある。その要求、呑もう」
 「まぁまぁ、全然難しい事じゃないって。なーに、新作が出来た時は俺に真っ先に見せてくれよ?勿論、着せた状態で」
 「「……」」

その日、俺たちは義兄弟の杯を交わした。

Fin
132名無しさん@初回限定:2007/08/23(木) 13:01:11 ID:SIPHBRVO0
あー…こういうときなんていうんだ?
そうだ
やっちゃったZE☆ か
まぁ一時間で書いたし、オチ弱いのは許してくれ
この稚拙な文章が起爆剤になってみんなも投下してくれることを祈る(´;ω;`)ゞビシッ
133名無しさん@初回限定:2007/08/23(木) 14:04:13 ID:fzHUDogt0
>>132
GJ!小一時間で書いたとは思えない、乙。
最初の
”向かい合わせで座っているry”
のところ、『アッー』かと思ったw
134名無しさん@初回限定:2007/08/23(木) 15:06:20 ID:I7xfIkSr0
>132
察してくれ が何故かドツボに入った……w
光景想像したらますますつぼに入った……www
ナイスジョブ
135名無しさん@初回限定:2007/08/23(木) 16:45:22 ID:54EoVxJs0
>>132
ヤベエ、あんた最高だよw
136名無しさん@初回限定:2007/08/24(金) 00:53:47 ID:+HY2sFvH0
>>132
GJ!

>最初の
>”向かい合わせで座っているry”
>のところ、『アッー』かと思ったw

俺も思ったYO!
137名無しさん@初回限定:2007/08/25(土) 18:29:51 ID:jlEFVbDh0
>>132
GJと言っておこう。

ただし、起爆剤ではなく、凍結剤になってしまっているのが残念だが。
138名無しさん@初回限定:2007/08/25(土) 23:26:44 ID:CYdByvqC0
というかナナシってノーマルサイズの服着れるんじゃ・・・
139名無しさん@初回限定:2007/08/25(土) 23:42:42 ID:Qucsy7ks0
それは言ってはいけない
マスターがわざわざ作ってくれるのを申し訳ないと思うと同時にうれしいナナシの心を思うんだ
140名無しさん@初回限定:2007/08/26(日) 00:30:07 ID:tmkrqAXl0
>>138
普段はレーメと同じ位のサイズだから…
まぁ、両方のサイズの服を持ってるんじゃないかと。
141名無しさん@初回限定:2007/08/26(日) 00:39:02 ID:hMDbYrgU0
一方そのころ。
レーメ「ノゾミー、サツキー! 今日も吾の愛らしさを振りまきに来てやったぞ」
希美「わぁ、いいなー、レーメちゃん。すっごく可愛いよ、そのおニューの服」
沙月「ほんと、今ここにカティマがいたら、間違いなく絞め殺してしまいかねない勢いね」
レーメ「うぐっ……そ、それはなんとしてでも避けねば……吾のお気に入りを台無しに
     するわけにはいかん」
希美「あはは。でも、望ちゃんもだいぶ腕を上げたんじゃない? ほら、ここのフリルなんて
    手縫いだよ」
沙月「どれどれ……確かにいい仕事してあるわねー。配色のセンスも悪くないし。
    これでサイズが人間のだったら、私が没収してるところだわ」
ナナシ「……」
レーメ「ん? どうしたナナシ、さっきから物欲しそうな目で吾の可憐な姿を見つめているが。
     ふふん、いくら見つめても駄目だからな? これはノゾムが一針一針吾への想いを
     込めて縫い上げた、世界に一着しかない逸品なのだからな!」
ナナシ「あなたに誂えてある服を、私が着れるはずがないでしょう。バカも休み休み言いなさい」
レーメ「な……なんだとーっ!? ははーん、さては汝、吾を僻んでおるのだな?」
沙月「もう、喧嘩しないの、二人とも。
    そう言えば、ナナシっていつも同じ一張羅よね。暁君は、望くんみたいに作ってくれないの?」
ナナシ「世刻は世刻、マスターはマスターです。そのような比較に意義があるとは思えませんが?」
希美「あ、あはは……でも、暁君は生活力あるし手先も器用そうだし、作ってみたら
    望ちゃんのよりも上手かったりして」
ナナシ「……ええ、世刻のなんかより、ずっと洗練されてますから(ボソ)」

嬉しさのあまり、主の心神獣知らずのレーメと、主の体面を慮って、人前では決して着替えない
ナナシ、という対比の図が浮かんでついつい蛇足。

希美「いいなー、私もものべーにあんな可愛い服、作ってあげたいなー」
沙月「……そっか、みんな私とは発想が違うみたいね」
ケイロン「沙月様、パーティー用のドレスのスリットは、どの程度にしましょうか?」
142名無しさん@初回限定:2007/08/26(日) 00:42:12 ID:UlAfgsOH0
マジに考えると空間を弄って見た目のサイズを変えてるだけだから
服を貰っても自分と同じ空間に取り込むと同率で縮んでしまいそうな気が。
143名無しさん@初回限定:2007/08/26(日) 01:00:06 ID:tyFwFbx30
そこはそれ適度に調整するのさ
144名無しさん@初回限定:2007/08/26(日) 02:30:25 ID:AsNc/Oh20
きっと自分の体からミリ以下のオーダーで空間制御しているのですよ。
人前でびっくりしたりして制御ミスったら服も縮んでびりびりになるけど。
145名無しさん@初回限定:2007/08/26(日) 05:06:32 ID:pKlCb+7H0
>>141
うまい。
確かに沙月まぜるとそうなるなw
146名無しさん@初回限定:2007/08/26(日) 11:46:27 ID:uvtNvwBy0
>>141
ケイロン乙としか言い様がないwwwwwww
147ばんn:2007/08/26(日) 13:19:50 ID:3obFq5Ik0
万能執事
148名無しさん@初回限定:2007/08/26(日) 18:36:21 ID:XIayzaP60
さっき
夢の中にクリストが揃って出てきて
猫化して延々にゃーにゃー鳴いてた……

俺の深層心理ってどうなってんですかね
149名無しさん@初回限定:2007/08/26(日) 20:19:09 ID:qj5wJl2P0
イビルルート書きたいけど。ナルカナが設定上強すぎて難しすぎ。
150名無しさん@初回限定:2007/08/26(日) 21:06:49 ID:wu+XkSYl0
二次創作なんだし、ナルカナ様をなかったことにすればいいじゃん
151名無しさん@初回限定:2007/08/26(日) 21:19:48 ID:tyFwFbx30
おbsn役でいいんじゃない
最後にオチつけるデウスエクスマキナ
152名無しさん@初回限定:2007/08/26(日) 22:45:15 ID:iB8eT93+0
仲間に入る前から話はじめりゃ良いじゃん

結局の所、ナルカナ様自身に手を出せない事になっちゃうけど
153名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 00:36:15 ID:J6D19ulF0
ユーフィーSS書きたいんだが、絡む相手は望じゃないとやいやい言われるんだろうか?

いや、別にエロくするつもりはないんだけどね。
154名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 00:41:27 ID:p0IWRASBO
>>153
エロ書くとノヴァとリムーバー飛んできそうだ……
155名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 00:46:25 ID:P0d4ajCQ0
ひとりHならその危険は少ない
156名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 00:50:30 ID:irhxlWui0
>>154
ユーフィーの純潔はそいつらに散らされていると信じて疑わない。

>>155
……ああ、ゆーくんという手があったか。
157名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 02:00:17 ID:irhxlWui0
ヤツィータで書こうとしているのは俺だけ
158名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 03:48:47 ID:Ps1VlFbA0
ヤツィータの学生つまみ食い日記だな
159sage:2007/08/27(月) 07:34:56 ID:k+YJ9sSE0
>>153
オレ的には望相手でも全然問題ないが。
160名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 07:36:08 ID:k+YJ9sSE0
sageって…。
間違えたああああああ!!
161名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 07:50:27 ID:SaAf8Uhl0
レイプでもレズでも望でもゆーくんでも問題なし
だけど近親相姦は簡便な
というのが個人的な思い
162名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 12:15:56 ID:nYVAA45B0
レイプでもレズでも望でもゆーくんでもセルフオーラフォトン触手でも近親相姦でもなんでも来い!
というのが個人的思い
163名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 13:20:10 ID:s/uRAdx60
レズでも望でもゆーくんでもセルフオーラフォトン触手でも近親相姦でも問題なしだけど
愛のない行為は簡便な
というのが個人的な思い
164名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 18:46:19 ID:XNK6pfxg0
ちょ、セルフオーラフォトン触手って
何娘に教えてるんだソゥユート
165名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 18:52:34 ID:SaAf8Uhl0
いや待て
だれもソゥユートが教えたとはいってないぞ
後ろにいる自称17歳実年齢1300歳+αかもしれない
166名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 19:36:56 ID:h/nPpB9j0
また大規模な次元振動が上の方から観測された
167名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 20:07:44 ID:s/uRAdx60
>>141
先輩の発想とケイロンの真意がイマイチ分からない…www
168名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 22:12:18 ID:J6D19ulF0
つまり、ユーフィーに関するみんなの個人的な思いを最大公約数的に満足させると、だ。

やはりエロを書かないのが最善ということで。
169名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 22:14:39 ID:XNK6pfxg0
まあ正直、あと5年欲しい
外見年齢的に
170名無しさん@初回限定:2007/08/27(月) 23:00:45 ID:k48PwUEj0
ちなみにユーフィーは外見年齢変え放題らしいぞ。
171名無しさん@初回限定:2007/08/28(火) 00:54:04 ID:qX4iH2p60
人間の女の裸を見るのが大好きなバラスターダを主役に抜擢することにした
172名無しさん@初回限定:2007/08/28(火) 01:40:51 ID:mcVTFsd/0
>171
おーけぃ、何故か行く先々で望キュンが居る光景が即効浮かんだ、なぜだw
173名無しさん@初回限定:2007/08/28(火) 17:56:32 ID:jQ92B52Z0
>>114を見てて思ったんだが
「ロリと触手をこよなく愛するあの男」ってソゥユートよりも
どっちかつーと人丸のことじゃないか、コレ?w
174名無しさん@初回限定:2007/08/28(火) 21:32:10 ID:NpMFo5b00
>>172
それはつまり、自分の代わりに望にターゲットを脱がせようということか。
175名無しさん@初回限定:2007/08/29(水) 00:18:51 ID:4b63YaOt0
光をもたらすものがものべー襲撃して
人質にした生徒がヤツィータの「治療」でハァハァしまくりで片っ端からのぞみんアッパーで蹴散らされて
ものべー触手に捕まったエヴォリアが散々いたぶられるそんな妄想してみたけど
テキストにおこすのって大変だね(´w`*)
176名無しさん@初回限定:2007/08/29(水) 02:03:12 ID:TYjXBink0
主語と述語だけの短文を羅列するだけなら簡単

あとは、それを小説風に清書できればSSの完成だ
177名無しさん@初回限定:2007/08/29(水) 22:36:07 ID:K46Idgf90
>173
気付いてくれて嬉しい 実はそっちのつもりで書いたんだw

というわけで久々に投下はクリストたちの日々第5話
なんかえらい難産だった

13・4レスくらい
1781/13:2007/08/29(水) 22:38:19 ID:K46Idgf90
「ぶ、ぷふっ、やだ、レーメ、何その格好、くくくっ」
「が、我慢されるほうが悔しいぞサツキっ! 笑うなら素直に笑えっ!」
 レーメの可愛い怒声が生徒会室に響く。窓の外からは夕焼けの赤。もうそろそろ夕食時という時間帯の学園は、だが学園祭開催に向けての喧騒に包まれている。
 例によって生徒会長は今日も大忙しだ。魔法の世界で合流した後、いつの間にか校長室を占拠・陣地化してしまったサレスが書類整理の一部を引き受けてくれるようになったとはいえ、
学祭準備関連での点検・見回り・スケジュール作成などなど、しなければならないことが山と積まれて忙しさは目の回るほど。
 そんな中に持ち込まれるお笑い話は精神的栄養たっぷりの清涼剤だ。誰か怪我したの喧嘩したのとかいう騒ぎには程遠いお間抜けな姿に、ついに耐え切れず机に突っ伏し笑う沙月である。
「沙月さん、そんなに笑ったりしたら、レーメさんに悪いですよぅ……ぷくく」
 沙月の傍らで、なにやら紙の束を2人で見ていた緑結晶のポゥも、結晶体の底にうずくまってお腹を抱えている。

「で、くくくっ、何があったわけ?」
 しばしの後、笑いをこらえつつ沙月が聞く。本人はぷいっと顔を背け黙して語らず、背ける拍子に頭の上から粉が舞う。帽子は主人の傍らに、無残な姿でほっぽりだされている。
 レーメは現在、定位置である望の頭の上ではなく、その両手にささげもたれた箱の中に座り込んでいる。色は白。頭の上から足の先まで、白い粉で全身覆われてまっちろに染まっている。
 顔の周りだけは何かで拭われたらしく、見て聞いてしゃべるのに不都合はさしあたり無いようだが、ときどき髪の毛から降って来る粉のせいでむせたりくしゃみしたりと実に大変そうである。

「学園祭の準備の手伝いで、体育倉庫で探し物をしてたんです。そしたらこいつが、あの校庭に線を引くやつ、あるじゃないですか。
 よそ見して飛んでてあれに衝突して中身を頭から……」
 だんまりのレーメに代わって望が説明していく。説明途中で再び2人揃って辛抱たまらずもうひと笑い。
「な、なんだそれってラインパウダーなんだ。くく、危ないものじゃなくて良かったわね」
「1つ間違えてたら大怪我でしたねレーメさん……怪我無くてよかったです……ぷ」
1792/13:2007/08/29(水) 22:40:27 ID:K46Idgf90
「笑いすぎじゃ2人ともっ……むぅぅっ」
 羞恥と怒りで顔を真っ赤にして怒るレーメだが、迫力も何もあったものではない。きーきーとうなるたびにあちこちから白い粉が舞う。
「それで、こいつを風呂に入れてやりたいんですけど。使用許可もらえますか?」
「あ、それを言いに来たんだ。いや、こんな馬鹿な話がありましてーって見せびらかしに来たのかと思っちゃった」
「そんなわけがあるかっ! 性格悪いぞサツキっ!」
 けらけらと笑う沙月とぷんすか頭から湯気を立てるレーメ。まぁまぁとなだめるポゥと望。実に平和な光景だ。
「でもお風呂はちょっとね。ほら、準備でみんな結構汗かくじゃない。運動部中心に、予約で一杯になってるから――ちょっと待ってね――2時間待ちくらい見てもらわないといけないかも」
「2時間もか、それはちと長いのぉ」
 風呂は宿直室にあるものと、剣の世界に居た頃に、校舎裏に掘っ立て小屋を作って仕立て上げたものとが現在稼動中だ。
 1人頭の利用時間をできるだけ縮めてもらうことで、なんとか毎日、1人1度は入れるようになっているが、順番に関しては早い者勝ちの予約制だ。
 特にここ数日は、皆が準備で汗をかいているため、利用予約が朝の時点で既に出されているほど。今現在も、準備を一段落させた誰かが利用している頃合だ。

「ていうか、底の深いお皿とかにお湯を入れれば立派なお風呂になるんじゃないの?」
 沙月がそんな提案をする。実際これはクリストたちが使っていた方法だ――彼女らは鍋だが。
「それはそうなのだが……場所の問題がな。変なところだと周りを濡らしてしまうし、誰かに見られはせんかと気になりもするし……いまいち落ち着けん」
「それなら、私たちのところに入りに来たらどうですか?」
 一連の事情を聞いたポゥが、レーメにそんな提案をした。なるほど確かに、サイズ的にもちょうど良いし何よりすぐに入れるというのが好材料である。
「おお、それは思いつかなかったな。2時間待つよりずっとマシじゃ」
 レーメはぽんと手を打って喜び笑い、その拍子に手の周りの粉がぱっと舞ってまたむせる。望もそれなら良いか、と頷くが、沙月は何故か微妙な顔を見せる。
1803/13:2007/08/29(水) 22:42:15 ID:K46Idgf90
「まぁ、うん、大丈夫……よね。ミゥだけじゃないんだし」
 何か不安そうにしばらく思い煩い、緑の姿と白いレーメを何度か見比べて、自分を納得させるように小さく頷く。
「あの、何考えてたんですか?」
「ううん、なんでもないなんでもない。ポゥはどうするの? 一緒に戻る?」
 傍らで転がっている結晶体に顔を向け、声をかける。横転している中で寝そべっていたポゥが顔だけ上げて、ちょっと考えたあとに答える。
「そうですねぇ、とりあえずもうすることないですよね?」
「そうね、後は先生に見せるだけだし。許可降りるにしてもダメにしても、今日中には結果出ないから。……その格好はすこしだらしなさすぎない?」
「浮いてるだけって結構疲れるんですよ。それじゃ、私も望さんたちと一緒に戻ります」
「はーいお疲れ様。望くん、しっかりエスコートお願いね。」
 ぱたぱた、と手を振りつつ、ふわり浮き上がって望たちのところへ飛んでいくポゥを見る。ふと少しやらしげな笑みを浮かべ、
「そうそう、望くん、間違っても居座り、覗き、それに類する行為はしちゃだめだからね。いくらポゥたちが気にしないって言っても」
「しませんよ」
 悪い冗談に口をゆがませる。では、と一礼し、小さいの2人を伴って部屋から出て行った。

 3人が去ってから少しして、ふと思う。
「……鍋とかお皿とか使ってないってことは、あの2人いつもはお風呂どうしてるのかしら」
 人間サイズの湯船にレーメ1人はどう考えても危ないし。まさか、一緒に入ってる?
 脳内に取り付く疑惑。まさかそんなことはないでしょう、と首を振るも、一度浮かんだ疑念は消えることなくたたずんでいた。
1814/13:2007/08/29(水) 22:45:16 ID:K46Idgf90
「ところで、さっき沙月先輩と何の話をしてたんだ?」
 生徒会室からクリスト部屋への移動途中、ふと望が切り出した。
 学園祭の準備もたけなわ、夕方でも生徒の通行量は結構多い。誰かとすれ違うたび、白レーメの哀れな姿に皆が吹き出していくため、加速度的に不機嫌になっていくレーメの意識を少しでも逸らさんとしてのことである。
「あ、あれはですね。今度のお祭りで、私たちの間に伝わる物語を1つ独朗することになったんですけど」
「1人で? そりゃ大変だな」
「他の4人はあまり本とか物語とか読まないので仕方ないんです。正直恥ずかしいんですけど、がんばるつもりです。
 えっと、それで、その原稿を持っていったんです。中身を見てもらわないと、私たちの感性で面白いものでも、皆さんにはどうなのか少し不安ですし」
「ふぅん。でも、いつも図書館の本読んでるのは面白いからじゃないのか? あれを面白いと思えるんなら、お互いの感性なんて似たようなものだと思うけどな」
「面白い……というと意味が少し違うかもです。何ていうんですか、色恋沙汰のあれこれとか、恋愛譚とか、そういうのを主題にした物語は、私たちの中では存在しない概念ですから、凄く興味深いのは確かなんです。
 けど、お話として面白いかどうかってことになると……うーん、って感じです。つまらなくはないんですけど」
 すみません、あんまりうまく伝えられてませんね、と結晶体の中でえへへ、と照れ笑いを浮かべるポゥ。ふぅん、と望は軽く頷き、続きを切り出す。
「どんな話なんだ? ポゥがやろうとしてるのって」
「古典です。子供に夜読み聞かせるような物語です」
 ああ、日本昔話とかそんな感じの? えーと、昔話なのは確かなんですけど……と、続きに困って沈黙。双方ともに意思疎通の齟齬を感じて少し深呼吸。この際あらすじ話すほうが早いか、とポゥ、唇を少し湿らせる。
「えーと、ですね。私たちがまだ、空を飛んだり炎や水を操ったり、そういうことが出来なかった頃、古い古い時代のお話なんですけど」
182名無しさん@初回限定:2007/08/29(水) 22:45:30 ID:4b63YaOt0
    _            _
   ゝ\.  ,ィT~ ̄~ヽ、 ,ノノ'ァ
    ゝヾミっVJ'  ° ゥ kヽ彡'  >>連投支援
     ̄ ソノJ      ルノ
         zゝ  v  ,.v'
        ケ^ー ''"
1835/13:2007/08/29(水) 22:49:44 ID:K46Idgf90
 古い時代。クリストは日々他の生き物に食料として追われ、苦しい生活を余儀なくされていた、そんな時代のお話。
 あるところに大きな集落があった。繁殖期近くになり、大勢が自然集合して出来上がったものである。
 そこの住人に、特に頭が良く、容姿に優れている者がいた。狡猾な罠を仕掛けて大型獣すら狩れる知性と、誰からも好かれる快活さと容姿を兼ね備える優秀な個体だった。
 彼女はもちろん繁殖期でも大人気であり、今回のパートナーに選ばれようと、年頃の皆が彼女の気を引こうとさまざまなアプローチを仕掛けていた。

「あれ、クリストって色恋沙汰には疎いんじゃないのか?」
 階段を降りつつ望が問いかける。レーメはいつの間にか話に引き込まれており、話の腰を折るなと文句を言う。
「優秀な個体の遺伝子を受け継ぐための努力は多くの生物がやってるでしょう。自分の優秀さを誇示して気を引いたり、何か贈り物をしてみたり。
 気に入った相手と一緒にいたいとか、好きな人の子供をほしいとか、そういう感情は私たちにもあります。相手が誰だって良いわけじゃないんですよ?
 ですけど、皆さんの場合だと、そういうことで頭が全部埋まっちゃって周りが見えなくなるとか、そんな強い執着になっちゃうじゃないですか。
 私たちのパートナーは基本的に毎回変わりますけど、望さんたちはただ1人にずっとこだわるでしょう。それが私たちにとって理解しにくい事柄なんです」
 両種族の考え方の違いを目の当たりにし、とにかく頷く望。とりあえず続きを頼む、レーメがこっちにらんでるんで、と促した。

 その日がいよいよ近くなり、皆の股間がうずうずと疼き始めたある日――そこはもう少しぼかした表現で――
 その彼女が狩りに失敗した挙句に、猿人に捕えられたという報告が集落に届いた。
 皆は瞬間彼女のことを諦めた。助けに行こう、などと思うものは誰も居ない。行ったところで勝ち目のあるわけがないのだ。
 1体の猿人ならば集団でかかれば何とかなることも多い。けれど囚われた誰かを助けに行くとなれば相手も多勢、どうしようもあるわけがない。
1846/13 ぽえーワラタ:2007/08/29(水) 22:51:15 ID:K46Idgf90
 だが、そんな中で1人、助けに行くべきだと気炎を上げる若者が居た。彼女と特に相性が良く、前回の繁殖期には彼女の子を授かっている若者である。
 若者は集落全員の反対を押し切り、我が子を仲間に託して単身猿人の住処に向かった。

「なんだ、良い話じゃないか。それで彼女を助け出して、無事結ばれて終了、って展開だろ?」
 別校舎に移動し、階段を登りつつ望が言う。レーメも何度か頷いて賛意を示すが、結晶体の中ではポゥがぷるぷる首を振る。
「あー、望さんたちの流儀だとそうなるかもです。でも私たちの場合ですと――
 苦闘半日、ついに住処にたどり着いた時には、既に彼女は猿人の腹の中。若者も空しく捕まって翌日の朝ごはんになりました。で、終了です。
 このお話の教訓は、成功の算無き無謀は厳しく慎みましょう。若気の至りはしばしば死を招きますよ、と。そういうお話です。
 私たち流ですと、こういう単身突撃系はまず間違いなくバッドエンドでおしまいです」

 主従、揃ってげっそりと肩を落とす。なんじゃそりゃー! とレーメが叫び、望は大きく首を振る。
「いや、それは駄目だ、学園祭でやっていい話じゃない。もっと明るいハッピーエンドじゃないと」
「あ、やっぱりそう思います? 実は沙月さんにも同じこと言われたんです。お祭りなんだから明るい話じゃないと、って。
 でも、こういう話のほうが皆さんと私たちの考え方の違いが良く分かっていいかなって思って。そしたら沙月さんもとりあえず先生に話してみるって言ってくれたんですけど」
「さすがに駄目だろう……いや、話の展開自体はそれはそれでアリかもしれないけど、場を考えたらいくらなんでも」
 いや、でも考え方の違いを示す、って発想は良いのか。学園祭だからただ楽しけりゃ良いってわけでもないし……
「そうだ。それなら、原典は文章で印刷しておくんだ。で、朗読のときはハッピーエンド改変版をやって、興味を持ってくれた人にはそれ配って読んでもらえば良いんじゃないか? 
 それならみんな楽しめて、ポゥの目的もある程度は果たせるだろ」
「あー、それは良いかもです。駄目だったときの次善の策でもらっておきますね」
1857/13:2007/08/29(水) 22:53:32 ID:K46Idgf90
「ところで、お2人はどう思いました? 登場人物の取った行動とか、結末とか」
「んー、救いは無いがあれはあれでアリなんじゃないかのぅ。そういう展開の話が無いわけではないし」
 うんうん、と頷きあいながら主従の意見が一致する。では、と続けてポゥ、
「どのような展開が、あのお話の最善だったと思います?」
「ふむ。1人で無理だったのなら、集落の皆を説得して、全員で押しかけたら良かったのではないか?」
 答えるはレーメ。望も同じ意見であるが、ポゥは小さく首を振る。
「いえ、猿人の住処にたどり着くまでの間に、既に彼女は死んじゃってます。だから、助けに行くこと自体が無駄なんです。
 最善の判断は、誰も助けに行かないこと。そうすれば犠牲は1人だけ。助けに行ったら多かれ少なかれ犠牲が増えてしまいますから」
「……確かにそうじゃな。命を数で計るならばそれは間違いなく正論じゃ。理解は出来る。納得は難しいがな」
「けど……その決断をあっさりは下せないな。うん、きっと凄く悩んで、悩んだ末に結論付けると思う」
「そうですか。やっぱり、皆さんはそうなんですね」

 校舎4階まで上り終え、クリスト部屋までもう少し。話の流れで望、ふと浮かんだ疑問を口にする。
「ところで。原稿って俺たちの言葉で書かれたものなんだよな?」
「はい。書き出すのに結構苦労しましたよー」
「どうやって書き出したんだ? 俺たちの言葉を紙に書くのってサイズ的に凄く難しいと思ったんだけど」
「ノートパソコンを借りました。キーボードを打つのに慣れるまでが大変で、全部書き出すのもまた大変で、紙をプリンターに入れるのはさすがに無理で、信助さんに手伝ってもらいました」
 今度何かお礼をしないといけないんですけど、何が良いでしょう? と聞くポゥだが、望の意識はその前の発言で止まっている。
1869/13:2007/08/29(水) 22:55:14 ID:K46Idgf90
「ノートパソコン、って、そんなの使えるの?」
 そう、問題はそこだ。サイズの問題もさることながら、発言を聞く限りパソコンの操作自体は問題なくこなしたらしく。
 どこでそんな知識を手に入れたのか、それが望の気になるところである。
「望はあまり詳しくないからのぅ。勝手にあんまり使えないんじゃないかと思っていたポゥらに、実は使いこなされていたのが悔しいわけか」
「ぐ、心の中読むなっての!」
「あはは、ソフトの使い方さえ理解しちゃえば簡単ですよ。まぁいろいろ不便なところもありましたけど、それは仕方ないですし」
 仕方ないって何が? と思いつつ、ようやくたどり着いたクリスト部屋の扉を開けると

「……は?」

 いつの間にか、部屋の中にはわけの分からない機械装置が、いくつも運び込まれていた。

「ただいまー。どんな調子ですか?」
 結晶体置き場に向かって降下していくポゥ。早速開けにやってくるのは青い姿。
 部屋の中にはカーペットの上に、いつものちゃぶ台と小さなたんす。そんな見慣れた殺風景はすっかり様変わりして、窓際壁寄りにはいくつもの装置が並べて置かれている。
 サイズはどれもまちまち、高さは膝下程度から胸の辺りまでと、望の身長に届くものは無い。縦横幅もばらばらだが、どれにしても学習机ほどの大きさは無い。それでもクリストの視点ではかなり大きな装置だろう。
 なるほど、そりゃコレらに比べたらノートパソコンなんか大したこと無いだろうな。

「ん、おかえりポゥ。今のところはどれも問題なく動いてるよ。いらっしゃい望。レーメ。……レーメ?」
「ぎ、疑問形なのはどういう意図あってのことじゃっ! 白いからといって吾が吾じゃないとでも言いたいのかっ!」
「ん……いや。白かったから。ごめん」
 ルゥがぺこりと謝る。いつも着けている足の飛翔補助具だとか、耳についてる大きな何かだとか、そういうものは全て外してあり、今はあの水着っぽいボディースーツ一枚の姿である。
 良く見れば、室内に揃っている4人全員がボディースーツに着替えて何かの作業中のようだ。ミゥはまだしもだが、ゼゥのそんな格好は結構やばい。と思わなくもない望である。具体的には胸まわりとか。
1879/13 8飛ばしたOTL:2007/08/29(水) 22:56:54 ID:K46Idgf90
「ところでこれはなにをしているのだ?」
「わたしたちは運び込んだ機材の稼動テストと装具の総点検ですけど……レーメさんこそどうして真っ白に?」
 浮き上がってきたミゥが、箱の中のレーメを見て言う。笑おうとしないのは年長の余裕か、表情操作の巧みさゆえか。
「いろいろあったのじゃ……」
「ミゥ姉さん、レーメさんをお風呂に入れてあげたいんですけど、大丈夫ですか?」
 結晶体から出て再び浮き上がってきたポゥが長姉に問いかける。言いつつも足のものをあちこちいじって外し、頭についている6本の棒状のものも外していく。
「もちろんかまいませんよ、テストのついでですし。んー、ついでに洗濯もしておきましょうか? 望さんたちの服と一緒だと色々面倒でしょう」
「それは助かるけど……洗濯? 洗濯機もあるのか」
 部屋の中にあるいくつもの装置をぐるり見渡して言う。どれが何の機械やら、見てもさっぱり分からない。
 そーいや。魔法の世界でクリストたちの母船と会同したとき、何かいろいろ運び込んでたけど。これだったのな。

「ゼゥ、お風呂の準備をしておいて。ワゥはポゥの結晶体を検査機に入れちゃってちょうだい。
 とりあえず服脱いでください、レーメさん。この箱は今後も必要なものですか? 違う? ならこれは後で処分ですね。脱いだ服はこのかごに入れてくださいね」 
 てきぱきと指示を出していくミゥ。はーい、おねぇちゃん、とゼゥの声がし、特に隅のほうに置かれた円柱形の装置に近づいていく。あれが風呂? 
 サイズは直径1mほど。高さは30cmくらいだろうか。中心部が大きくくぼんでいる。ゼゥがタッチパネルをなにやら操作すると、窪みの内部に水が瞬く間にたまっていく。
「温度はどのくらいにするー?」
「熱いのが好みじゃな」
「あ、私と一緒ですね」
「じゃぁポゥねぇ好みくらいにしておくよ」
 さらに数度パネルにタッチ。今度はいい感じで湯気が出てくる。1分もかからずに入浴準備完了。すげぇ、と望は素直にそう思う。
18810/13:2007/08/29(水) 22:57:52 ID:K46Idgf90
「……ノゾム。沙月に言われたじゃろ、いつまでも居座っておるでない」
 と、ここで呆然と見ほれていた望に、上下脱いで、かぼちゃぱんつと肌着だけの姿になったレーメが忠告した。
「あ、あー。そうだな。んじゃ俺はどっかで適当に時間つぶしてるから。迎えがいるなら呼んでくれ。
 それじゃ、みんな、レーメをよろしく頼む」
 レーメ箱を床に置いて、どうせならあの浴槽前まで運んで行けー、と言われてまた持ち上げ、運んで、今度こそしっかり置いて、望は部屋を去っていく。
「はい、お任せあれ、ですよ」
 装置を全部外し終え、まとめてかごに入れてワゥに押し付けてきたポゥが、これまたボディースーツ1枚の姿で、ひらひらと手を振っていた。

「それじゃ一緒に入りましょうか」
 ちょっと頬を赤らめつつポゥが言った。何? と問い返すレーメ。肌着も脱いで、もはやかぼちゃぱんつのみのあられもない姿である。
「だって、1人だと装置の使い方分からないでしょう? お湯の継ぎ足し方とか、泡の出し方とか」
「そりゃそうじゃが。良いのか?」
「私は全然かまいませんよ。一緒に入っちゃったほうが、時間もエネルギーも節約できますし」
「一度冷めちゃったら、あっため直すのに結構無駄な燃料使うからね。入るならさっさと入っちゃってよ。次はゼゥたちの番だからさ」
 浴槽の逆側で、なにやらかちかちといじりながらゼゥが言う。
「どうせならゼゥちゃんも一緒に入っちゃいましょうよぅ。一度に3人くらいは入るんですから」
「い、や。今日は、ゼゥが、おねぇちゃんと、一緒に入る日だから。ねー」
 ねー、と、レーメの洗濯物を回収しにきたミゥに言う。ここでレーメに1つ違和感。おぬし、以前はミゥねぇと呼んでいなかったか?
 問うた瞬間ゼゥの顔が真っ赤になって、ミゥがくすりと笑って、ワゥが遠くでなにやらうなり声を上げた。
「いーじゃん! ゼゥがおねぇちゃんのこと何て呼んだってっ! ち、ちょっと心境の変化があったからっ。ねっ」
「……まぁ、そりゃそうじゃが」
「それより! 早く入っちゃってよ。ほんとに冷めるよ」
 押し切られるようにレーメ、最後のぱんつも脱いでミゥに渡し、側面の階段を上って浴槽に向かう。ポゥも速やかにボディースーツを脱ぎ捨てて、その後に続いた。
18911/13:2007/08/29(水) 23:00:51 ID:K46Idgf90
「おお、結構深いんじゃな」
「辛いんでしたら床上げますよ?」
 レーメに続いてポゥも湯の中に。軽くジャンプして飛び込んだせいで、たゆんと胸が小さく揺れる。階段口横にあるリモコンを手にとって、ボタンを一押し、全天を覆うように半透明の壁がせりあがった。
「いや、立ったままというのもたまには良いかな。タオルか何か無いのか?」
 おおー、と、その機構に感心しつつレーメが聞く。はいはい、と備え付けの棚の中からスポンジのようなものを3個ほど取り出して、渡す。
「ごしごしやっちゃってください。大抵のものは取れますから。髪の毛のは私がやっちゃっていいですか?」
「んー、やってくれるとありがたいな」
 では失礼して。レーメの金髪は、今は解かれて長く湯に溶けている。ひと房手にとって、おぉ、っとため息。
「枝毛とかぜんぜん無いんですねぇ。さすが神獣、髪の毛1つとってもきれいです」
「んむ、吾はあまり意識したことが無いからのぉ……うひゃっ」
 ぺた、とうなじから首筋にかけた辺りを触られて、変な声を上げる。
「ほくろとかも無いんだ……すべすべお肌うらやましいなぁ、うらやましいですねぇ、いいなー」
 ぺたぺた、と首筋、背中、脇腹とかを触られて、くすぐったさに身じろぎするレーメ。やめんかっ! と笑いながら振り向く。
「あまりあちこち触るでない、くすぐったいではないか、ひゃっ」
「そんなこと言われても、きれいなものってぺたぺたしたくなりません? ほら、私なんか結構ほくろとかあちこちありまして、そいうの気になるお年頃ですしぃ」
 対面になったをいいことに、こんどは胸や鎖骨の辺りをぺたぺたと。文字通りぺたぺたなのが哀愁をそそる。むに、とかむにゅ、とかではなく。ぺたぺた。ぺた。
「あんまり触るなっ」
「どーしてですー? 女の子同士だし良いじゃないですかー」
「おぬしは厳密に言えば女の子じゃなかろうっ!」
 手を振り払って逆サイドの壁際に退避。ちえー、と寂しそうなポゥ。今度はしませんからー、許してくださいよぅ、と近寄っていく。
「んむ……よーし、なら」
 今度は吾に触らせろっ! とレーメが反撃の手を繰り出す。きゃーっと実に楽しそうな悲鳴を上げて、敢えてその手に身をさらすポゥだった。
190名無しさん@初回限定:2007/08/29(水) 23:01:07 ID:4b63YaOt0
    _            _
   ゝ\.  ,ィT~ ̄~ヽ、 ,ノノ'ァ
    ゝヾミっVJ'  ° ゥ kヽ彡'  >>連投支援
     ̄ ソノJ      ルノ
         zゝ  v  ,.v'
        ケ^ー ''"
19112/15 思った以上に長かった:2007/08/29(水) 23:05:21 ID:K46Idgf90
 しばらくじゃれあっているうち、一瞬ポゥの目が本気になりかけたが、レーメが湯舟に沈めて落ち着かせて大笑い。
 またリモコンを操作して、床から椅子状の円柱をせり上げて2人座る。
「この浴槽は実に多機能じゃなぁ」
「床ごとせり上げもできますし、ほら、レーメさんについてた粉もすっかり無くなってるの、気付きません?」
 言われて湯の中を見渡してみる。確かに、こそぎ落とされたはずの白い粉は、底に溜まるでも湯に溶けるでもなく綺麗さっぱり無くなっていた。
「原理は良く知りませんけど……老廃物も抜けた髪も、全部まとめて排水溝から出て行って、足の下の分離層で分離され、水分だけが循環してるんです。
 分離された固形物は一番底に送られて、バクテリアが食べつくして綺麗さっぱりにしてくれます。分解できないものだけは定期的に手動で掃除しないといけないんですけどね」
「それでも大したものだ。皆が毎日湯舟の掃除をしておる姿を見ているからなぁ」
 しゃべりながら、ポゥはレーメの髪をこすこすと洗っている。柔らかな手触りとスポンジのような何かが、レーメの髪の毛と頭皮を優しく擦って、しつこい汚れをことごとく拭い取っている。
「ん……同じサイズの誰かに洗ってもらうのは初めてじゃから、何かくすぐったいな……でも落ち着くな。うん。これも悪くないぞ」
「あ、そっか……私たちと入ったこともないですもんね。それじゃ、折角ですし体も洗ってあげましょうか」
「ん……では、その。洗いっこ、というのをやってもいいだろうか。吾はそういうのをやったことがないのじゃ」
「もちろんです♪」

 2人対面でお互いにこしこしと。放出された泡が水面をすっかり覆って、2人の体も泡だらけになっている。にこにこと笑う2人。仲の良い姉妹のような光景である。
「服の上からでは分からなかったが、ポゥ、意外と胸あるんじゃな」
「んふふ、これでも一応姉妹5人の中では2番目です♪ 1番なのはゼゥちゃんなんですけど」
「では無いのはワゥか?」
「残念、ルゥです。ワゥちゃんはふくらみ分かるくらいにはありますよ。ルゥはぺたんこです。レーメさんと同じくらいです。私はそのほうが好きですから良いんですけど」
19213/15:2007/08/29(水) 23:07:07 ID:K46Idgf90
「……複雑じゃな。というか、さっきから吾の胸を執拗に洗っているのはそれが理由か!?」
「はい正解です。良いじゃないですか減るもんじゃないしー、綺麗綺麗でーすよー、ね?」
 くすくす笑いながら胸ぺたぺた。むずむずと居心地悪そうながらも、仕方ないのぅというような柔らかい表情で、手の動きを見やりつつ、
「でもそろそろしつこすぎるの」
 右手を伸ばしてポゥのやらかい頬をむにーっと引っ張った。
「ふにー、分かりました分かりました止めますから離してくださいー」
「先に手ぇ離せぃ」
「はぁい。……ふふ、なんだか、レーメさん、昔のルゥみたいです。ルゥもぺたぺたされるのあまり好きじゃなかったんですよねー」
 手を離す。まだ物足りなさそうではあるが。それを受けてレーメも頬の手を離し、背中を向けろと促す。

「そういえば、ルゥだけは呼び捨てなんじゃな?」
 ごしごしと力強くポゥの褐色の背中を洗いながら話しかける。……人のことを綺麗じゃ綺麗じゃと言っていたが、自分だって充分につやぴかではないか。
「ルゥとは同い年の幼なじみですし、子供作ってもらった仲でもありますし。逆にちゃんとか付けるほうが違和感……ってどうしました? 手が止まってますよ?」
「いや、子供作ってもらった、じゃと?」
「はい。気も合いましたし、お互いに初めてくらいのときから良くやってました。ルゥは2回目で大当たりだったんですけど、結局私は6回やって当たり無しでした。運無いんです、私」
「あ、ああああそうか。そうじゃな。おぬしらはそうだったんじゃな。そのように明け透けに言われるのにはどうも慣れん」  
 何度か自分を納得させるように頷いて、背を洗う手の動きを再開させる。少し頬が赤らんで複雑そうな表情である。ポゥは少し肩を落とし、小さく息をついて首を振る。
「あー、ごめんなさい。気を抜くとつい地が出ちゃいますね。これからずっと異習俗の中で生きていかないといけないのに、うん、慣れないといけません。いけません」
「ずっと、じゃと?」
 何か言葉の端に変な感触を受け、怪訝に問い返す。
19314/15:2007/08/29(水) 23:13:29 ID:K46Idgf90
「だって私たちの世界は無くなってしまいましたから。ミゥ姉さんや小さい子たちは、まだ私たちが生身で過ごせる世界を見つける希望を持ってるみたいですけど、私やルゥ、ううん、ほとんどの仲間はもう諦めてます。
 だって、もう魔法の世界を拠点にかれこれ……5年は探してるのに、私たちの世界に似た世界は全然見付からないんです。なら後は、なんとかナーヤさんたちの世界に溶け込んで生きていくしかないじゃないですか。
 今部屋に持ち込まれてる装置も、そのために作られたものなんです。私たちの体を、通常のマナ内でも生存可能なように作り変えた後、外の世界で少しでも楽に暮らせるように」
「作り変えるって、そんなことができるのか?」
 いつの間にか手はまた止まっている。ポゥは再び体を半回転させて、レーメと正対する。

「今生きている私たちには難しいみたいですけど、私たちの子供世代には間に合わせたい、ってところみたいです。私はあまり詳しくは知らないんですけど。
 遺伝子レベルで色々組み替えるのか、でなければ体の機械化か。いずれにしても今生きている私たちには難しいことばかりです。でも、それは仕方ないことなので。
 なんとか私の子供たちが、外で生きていけるための土台作りが出来れば、って思います」
 にこっと笑うポゥ。それで良いと受け入れている、穏やかだけれど少し悲しげな微笑。
「ポゥは、それで良いのか」
「はい。もちろん私が、私たちにあったサイズの世界を、結晶体無しで動き回れるようになるなら、それに越したことはないんですけど。でも、そんな僅かな希望にすがってばかりじゃダメですから」
19415/15:2007/08/29(水) 23:14:59 ID:K46Idgf90
 じーっとポゥの目を見つめる。僅かな悲しみの色。けれど、先の運命を受け入れている意思もそこにはあった。
「おぬしらは……諦めが良いんじゃな」
「そういう言い方もできますね……でも、私たちは理想を追いかけるだけじゃ生きていけない、小さくて弱い存在なんです。
 ミゥ姉さんも口には出しませんけど、自分が正しいのかってずっと考えてます。
 これこそあの話がいさめる若気の至り、最後は出先で我が身を滅ぼすだけに終わるんじゃないかって」
 そう小さく、つぶやくように言う。レーメの目には、ポゥがとても小さく見えた。
「みんながいるときにこの話はしないでくださいね。また喧嘩になっちゃいますから」
 レーメはしばらく何か、諭すべき言葉をいくつか口の中で数える。けれど何を言うべきかついに結論できず、ただ静かに押し黙った。

 お湯が全部抜かれ、浴室内では温風が強く吹き付けている。2人は床に立って、体表面の水気が飛んでいくのを感じていた。
「結構きついのぅ!」
「水の1滴でも無駄にしたくないってことらしいです! でもこれはちょっと強すぎるかもです! 改良申請しておきますね!」
「そうじゃ、さっきの話じゃがな!」
「なんですか!?」
「ポゥは諦めてしまったのかもしれんが! 吾が、吾やノゾムが! おぬしらに最高の結末が訪れるのを願うくらいは! 別にかまわんのだろう!?」
 一瞬何を言われたのか意味を理解できずに目をぱちくり。強い風に体をあおられて危うくバランスを崩しかけてふらりとした後、レーメに向かって満面に笑いかける。
「はい、もちろんですレーメさん! 私だって、最高の結末を望んでないわけじゃないんですから! 期待して無いだけで!」
「そうか! ならおぬしらが願わない分だけ、吾が願っておいてやる!」
 そう叫びあって、2人とも最後に思いっきり大笑い。やがて今度こそポゥが完全にバランスを崩して倒れ掛かり、レーメの体にもろに激突、くんずほぐれつに床へ転がった。
「ぷ」
「くく」
 床に大の字に寝転がりながら、温風が止まったのに、なかなか出てこない2人を気にしたルゥが様子を見に来るまで、2人はずっと笑っていた。 
195余談:2007/08/29(水) 23:18:39 ID:K46Idgf90
「望くん」
「は、はいっ?」
 レーメを送っていった後、ケイロンによって生徒会室に呼び出された望。沙月と、何故かいる希美の2人に前後を挟まれている。
 2人の口元には実に良い笑み、しかし目元は笑っておらず、これは尋問かそれとも拷問かと身を振るわせ声がひっくり返る。
「レーメちゃんのお風呂って、いつもどうしてるわけ?」
「……え、っと……」
「まさか一緒に入ってるってことは、ないよね? 望ちゃん」
「えーっと……その」
 どう答えるべきか、どうしたら逃れることが出来るかと、頭を全力回転させる。けれどろくな答えは浮かばず、ただ沈黙。
その様子にますます笑みを深くした沙月が駄目押しに一言。
「一緒に入ってるんだ?」
「……はい」
 その後、2人ステレオで小一時間にわたる説教を食らった望は、今後レーメのお風呂はクリスト部屋のを使わせてもらうこと、という宣誓書を書かされることになる。
 もっとも、そのおかげでレーメとクリストたちの仲が加速度的に良くなっていったのは、誰の予想にもなかったことであった。


終わりっす。思った以上に長かった! 
次は文化祭当日 その次はレーメにクリスト服着せてみようかなーとか思ってます
SFちっくなガジェットがざくざく放り込まれてるのは完全な趣味なのでよろしく
196名無しさん@初回限定:2007/08/30(木) 01:07:33 ID:UykokdRT0
>>195
GJ乙、待ってた。…望、難儀だなww
197剽窃:2007/08/30(木) 12:49:56 ID:j/WhLSz20
2人にガミガミ怒られている間、望の頭にある疑問が浮かんだのであった。
(……絶はどうしてるんだろう?)
「ちょっと、望くん聞いてるの?」
「あっ、はい聞いてます!」
お説教はまだ終わらない。
198名無しさん@初回限定:2007/08/30(木) 17:40:28 ID:boGCYmtv0
>>195
乙&GJ。中々こないと思ったら長いもん書いてたからだったのねw
しかし、他にもSS職人の人が欲しい今日この頃
バリエーションはあればあるほどいいしねぇ
199名無しさん@初回限定:2007/08/30(木) 18:05:39 ID:6ZldrLRB0
いいだしっぺの(ry
まあ俺も書けないから大きな事は言えんがな
200名無しさん@初回限定:2007/08/30(木) 19:35:47 ID:C+RDmZR90
書いた、書きたいけどうpする度胸というかそいうのがないって人は多そう気も
201名無しさん@初回限定:2007/08/30(木) 22:49:13 ID:boGCYmtv0
>>199
自己主張することもねーんだが、一応>>129-131の人間ですw
短時間ではあるが自分なりに頑張ってあの程度の文章なわけで…
クリストの人は目下の目標なわけですよ(・ω・`;
202名無しさん@初回限定:2007/08/31(金) 00:05:48 ID:K7fEytsk0
SSは時間が掛かるし、小ネタとかもじりとかもっとフリーダムでもいいと思うんだ。
と、>>201氏の尻馬にのっかったこともある俺も言ってみる。
203名無しさん@初回限定:2007/08/31(金) 05:19:32 ID:SYcehKcC0
>>197
絶はなんか、普通に一緒に入ってそうなイメージが。

「ナナシ、風呂に入るか」
「はい、マスター。お背中お流しします」
「ああ、ありがとう」
とか。

適当にSS書こうかと思ってWord開いたのはいいものの、
最近は同梱版アセリアばっかやってるから、なるかなのキャラの
性格忘れてきた('A`)
204名無しさん@初回限定:2007/08/31(金) 09:06:48 ID:K7fEytsk0
ユーフィーの外見年齢詐称能力について

望相手なら巨乳に、サレス相手ならひんにゅうにしようと思っております
205名無しさん@初回限定:2007/08/31(金) 15:28:03 ID:8MlOlO4F0
まぁ待て
確かにユーフィには外見年齢の操作する能力があるという設定だ
だが彼女はヒンヌースキーであるソゥユートとひんぬーであるアセリアの子
10歳だろうと14歳だろうと18歳だろうとずっとひんぬーさ
むしろダイジェスト版の6歳バージョンが一番カップ数大きいというオチ
206名無しさん@初回限定:2007/08/31(金) 16:31:10 ID:9aYmx/bP0
相対比較じゃ別に小さくないので却下とする
207名無しさん@初回限定:2007/08/31(金) 17:08:40 ID:snG+SRN00
ユーフィも自在に変化させられるんじゃなくて
精神年齢にあわせて自然に(無意識的に)変化するんじゃないか?
設定資料集見るとどっちとも取れそうな文章ではあるが・・・

大人→ロリに戻るとかやるのは何かキャラに合わん気がする
208名無しさん@初回限定:2007/08/31(金) 20:55:50 ID:xVK1wUpa0
>205
ダイジェスト版持ってないんだが
>ダイジェスト版の6歳バージョン
ここんところくわしく
209名無しさん@初回限定:2007/08/31(金) 21:03:00 ID:8MlOlO4F0
ダイジェスト版の内容自体がアセリア正史を膝の上のユーフィにソゥユートが語るという物
最後に6歳は言いすぎだがなるかなの時より幼い年齢のユーフィがCG付きで出てくる
どういうわけかアセリアEDやなるかなの時と比べて明らかに胸が出っ張ってる
一部ではゆーくん7変化の一つ胸パッドといわれてるが
210蒼穹の誰だっけ:2007/08/31(金) 23:37:21 ID:2vofKqch0
 希美さんの料理の献立は原則的にその時にある材料次第で決まる。しかし、滞在している分枝世界次第、つまり材料の心配がない時はしばしば皆にリクエストを聞く。
「今日の夕飯は何が食べたい?」
「んー、俺は何でもいいかな。希美に任せるよ」
「わらわは先日写しの世界で食べたハンバーガーとやらをもう一度食べてみたいぞ」
「私は久しぶりにカレーが食べたいかなー」
「わ、私はスパゲティ・ナポリタンが食べたいです!」
と、こんな感じにそれぞれが思い思いのメニューを挙げる。
「あ、材料買いに行くなら、私の分のお酒もお願いね」
「俺はうまい物なら何でもいいぜ!」
「僕は…「あんたはどうせ何食べても味なんか分からないでしょ」
「何だとテメェ!」
 自分の世界にいた時は考えもしなかったけれど、ここでは夕飯のリクエストを伝えるだけでも戦いなのである。少なくとも、僕にとっては。



「悩みがあるなら相談にのるよー、青年。今なら格安で」
 何となく、空が見たくなって屋上に出ると、制服姿のナルカナさんから声をかけられた。
「いえ…まぁ、別に悩みって程でもないんです」確かにこれは悩みと呼べるほど大それたものではない。「気にしないで下さい。本当に大したことではないので」
「まぁまぁ、そう言わずにこのナルカナ様に話してみなさいって。小さなことから大きなことまで、何でもこう、ががーっと、ばばーっと一発解決間違いなし!ささ!」
 本当に大したことじゃないんだけれどな。
 だが、期待に目を輝かせたナルカナさん相手に僕などが抵抗できるわけがない。この人は多分、屋上で誰かの相談に乗る、とかそう言うシチュエーションが好きなのだろう。僕はそう考えることにして、諦めて一通りの僕の置かれた状況を話すことにした。
211蒼穹の誰だっけ:2007/08/31(金) 23:40:16 ID:2vofKqch0
「うん、うん。そうね。それは大変ね」とナルカナさんはしたり顔で僕の話に相槌を打つ。取り合えずは真剣に話を聞いてくれているように見える。いや、例えそれがフリだったとしても、
誰かにちゃんと自分の話を聞いてもらうというのは悪い気分はしない。未来の世界を飛び出して以来、僕にはこういうことがほとんどなかった気がする。形はどうであれ、救いと言う物は常に他人との関係の中にあるのかもしれない。

「なるほどね。大体の話は分かったわ」僕が一通り喋り終わると、ナルカナさんが神妙な顔をして頷く。「残念だけれど、今の私にはあなたの助けになれないわ」
「え、そうなんですか・・・?」何を言われるか身構えていた僕はいささか肩透かしを食らった気分で答えた。
「うん、今の話を聞いた限りでは、私にはあなたがまず旅団の中で自分自身の立ち位置を把握しきれていないように思えた。結局ね、こういうものは他人に言われても分からない。
自分の意思で新しい環境に飛び込んだんだから、自分自身で何とかそれに気付くしかないと思うのよ」
「確かに・・・その通りだと思います」この人はちゃんと僕の話を聞いてくれていたのだ。僕は誰かに話せただけで十分などと失礼なことを考えていた自分を恥じた。
「私が言える事はこのくらいね。私が言える事は。けどね、私はあなたに同じ悩みを抱えている人を紹介することはできるわ。彼らと話をしてみなさい。それで自分のどこに問題の原因があるか考えてみなさい」
「ありがとうございます。そうしてみたいと思います」と僕は頭を下げた。

「うんうん。よしよし」ナルカナさんは微笑むと「それじゃあ、はい」と手のひらを上に右手をこちらに向ける。意味が分からない。
「・・・はい?」
「はい?じゃないわよ。出す物出してもらわないと。格安とは言ったけれど、タダにするって言った覚えはないわ」
 何てことだ。僕は裏切られた気分がした。愕然としながら僕はポケットの中の財布を探る。
「・・・で、おいくらですか?」
「んー、まぁ今回は初回限定スペシャル割り引きって事で2000円でいいよ。良心的でしょ?」
 2000・・・円?
212蒼穹の誰だっけ:2007/08/31(金) 23:42:34 ID:2vofKqch0
 しまった、と僕は思った。望君や沙月さんならともかく、僕は写しの世界のお金など持っていない。
「す、すみません・・・払えません」
「何い?たかが2000円を払えない?アンタ、確かいいとこの坊ちゃんだったわね。このくらい払えないなんてわけないでしょ!?」
 急にナルカナさんの口調が変わる。
「え・・・っと、僕はこの世界のお金は・・・」恐る恐るナルカナさんの表情を見上げる。正直、怖い。
 しばらくの気まずい沈黙の後、僕をにらみ続けるナルカナさんはようやく口を開いた。
「なら、腕出しなさい、腕。それで勘弁してあげる」
「腕ですか・・・?そんなもの一体何に・・・?」
「アンタみたいな機械を高く買ってくれるルートがあるのよ。本当は頭の方が高く売れるんだけれど、今回はそれで我慢してあげるわ。
ほーらー。分かったら早く出しなさい」
「ツケとかは・・・」僕は最後の一縷の望みをかけて言う。
「無理」
即断。
「ジャンク扱いですね。僕の腕」と微笑み、震える左手で右腕の接続を切り離す。間違いなく今の僕の顔は引き攣っているだろう。賭けてもいい。
これが僕にできる精一杯の強がりだった。
 ショウ、君が言っていた通り、僕は夢を見ていた方が幸せだったんだろうか。
213蒼穹の誰だっけ:2007/08/31(金) 23:45:42 ID:2vofKqch0
「なるほどな。お前の気持ちはよーく分かるぞ。同志よ」と森君は言った。
 夕食の後、僕は多大な犠牲を払った情報を頼りにたどりついたとある空き教室にいた。ここは望君や希美さんのクラスメイト達がよく溜まり場にしている。
 僕も何度か手土産のお菓子を持ってここにお邪魔したことがある。
 普段なら神剣組の誰かしらが果物やジュースの缶を片手に彼らの輪に混じっていることが多いが、
幸いにも今日は誰もいないようだった。僕は少しほっとしていた。
「最近、俺も思うんだ。世界は俺のいないところで回る、なんてな」と森君は笑った。
「まぁ、私は面白い写真が取れればそれでいいけどねー。ちょっと前まではデジカメで撮った写真をものべーじゃプリントできないことが不満だったけれど、
写しの世界に来てそれも解決したしね。あ、これ今までの旅をまとめたアルバム。ちょっと見てみる?」
「ありがとう」
 僕は左手で阿川さんからアルバムを受け取りぱらぱらとめくってみる。意外にも校内で撮ったらしい写真は少ない。
前半は普段のものベー内の生活風景もそれなりの割合を占めているようだが、それも文化祭を境に数が目に見えて数が減っていき、別世界での観光がメインになっていく。
ここでの生活が長引くに連れて、阿川さんにとって撮影対象としての興味が薄れてきたのかもしれない。それにしても、僕、ほとんど写ってないな。
「お前は気楽だよなぁ。俺は写しの世界に来て逆に困ったよ」と再び森君が話す。「俺、元の世界を出た日にあんまり学校に金持ってきてなかったんだよ。
今まではそれでも良かったんだけど、使う機会が来たらその事が響いてきたぜ」
「あー、それ分かる!」別の生徒が同意する。「俺、5分だけでいいから元の世界に戻って机の引き出しから小遣い取って来たいぜ」
 生徒たちがどっと笑う。話題はもし5分だけ元の世界に戻れるとしたら何をしたいかについてへと変わる。
214蒼穹の誰だっけ:2007/08/31(金) 23:48:32 ID:2vofKqch0
「俺、向こうに彼女残してるんだよなー。少しだけでもいいから顔見たいわ」
「それで電柱の影からそっと、この旅が終わったらあれこれ、って言うんだな」
「バカ。変なフラグ立てんなよ。俺を殺す気か」
 再び教室がどっと沸く。皆、タフである。少し羨ましい。よし、僕も見習おう。
「でも、帰る場所があるって良いですね。僕なんかは帰る世界が滅んじゃいましたから」
「じゃあ、逆に元の世界に好きな子を残してきた俺は、その5分をフル活用して彼女に熱い想いを伝えるぜ!」別の生徒が立ち上がる。
「おおー!!」
「誰よ?誰よ?」
 生徒達のとりとめのない会話が続き、学園の平和な時間が流れる。僕は再びスルーされる。
 それはそうと、誰も僕の腕のこと気付いてくれないんだなぁ。ショウ、僕は泣いてもいいかな?



 あまり遅くならないうちに僕は皆に別れを告げて、ナーヤさんの部屋へ向かった。腕がこのままでは戦闘に差し障りが出るだろう。
ナルカナさんを説得するべきかと考えたが、直した方が早い気がした。保健室に足が向きそうになったが、これは生身の人の怪我ではない。
現実的に考えてやはり頼れるのは彼女くらいしかいないだろう。
「遅かったな。入るがいい」
「お邪魔します」
 ナーヤさんの部屋は教室を丸ごと一つ使っている。机や椅子は必要最低限のみが残り、大方はどこかへ片付けられているようだ。
スペースは二つに分けられ、片方はここに来る時に持ち込んだと言う本がきちんと整理されて並んでいる本棚や、読書や書き物をするための机、
服などが入ったクローゼットなどが並び、部屋の隅には畳まれた布団が置いてある。家具はどれも金属製でどことなく、味気のない印象を与える。
もう半分は彼女の工房である。僕の世界でも見たこともない機械や端末が所狭しとならび、クロウランスのメンテナンス用と思しき工具が散乱している。
天井にはさまざまなパイプやケーブルが設置され、教室の外へと伸びている。一体何に使っているのだろう。
「腕のことじゃろう。ナルカナがわらわの元へ持ち込んできたぞ。まったく、あやつめがふんだくりおって。
おぬしの腕をわらわが貰ってしまうわけにはいくまいに」ナーヤさんは大体の事情を知っているのだろう。ため息をつく。
215名無しさん@初回限定:2007/08/31(金) 23:48:58 ID:6BZu4fV40
シエーン
216蒼穹の誰だっけ:2007/08/31(金) 23:51:42 ID:2vofKqch0
「えっと、ちなみにいくらで買い取ったんですか?」
「それを聞いてどうする?」と彼女が僕を睨む。
「い、いえ、僕にできる範囲なら何かおかえしができたらと思いまして・・・」
「ふむ、良い心がけじゃ」とナーヤさんは頷き、「ならば今度食堂の手伝いをする時にでも、鮭缶をひとつ貰って来てくれ」
「分かりました。ありがとうございます」彼女の心遣いは素直に嬉しい。一つとは言わず、二つか三つくらい持ってこようと僕は思った。
「で、早速じゃが、腕の話じゃ」ナーヤさんは工房スペースに無造作に置かれた椅子に座るように僕を促す。
「解析ついでにこれからの戦いで役に立つようにわらわが少々改造を施してやった」
「改造ですか・・・?」嫌な予感がする。
「何。心配はいらん。悪いようにはしていない。見かけは元の腕と変わらないものであるし、使い勝手は以前よりも良い筈だ。さて・・・」
 ナーヤさんは手際よく作業をしながら新しい腕についての説明を続ける。
「まず素材の9割をザルツヴァイ製の物に変えることで腕力、耐久力、ガード性能が格段にアップ。
右腕一本で抗体兵器の攻撃を受け止めることができる」
「おおっ!」
「そして、ここにおぬしの蒼穹をはめ込むことにより、神剣との同調性を部分的に強化した!
ここから放たれるオーラフォトンの矢の一撃はまさにオーラフォトンブレイクとも呼ぶべき威力!
一撃でマナゴーレムの中隊を消し炭に変えられる。使用可能な回数はあまり多くはないという欠点はあるがな」
「おおおっ!」
「更に更にっ!」段々と興奮してきたナーヤさんが続ける「オーラフォトンのアレの性能も今までとは桁違い!
持久力(?)、拘束力共に以前の3倍じゃ!あんな締め付け方もこんな結び方も思うがままじゃ!
しかも!微妙に!震える!」
「よく分からないけれど凄い!」
「おぬし!わらわが仲間いて良かったな!感謝するがよいぞ!
わらわ以外にこんなことができる者はおらん!ザルツヴァイの科学は時間樹一イイイイ!!」
ふぉぉぉ!と興奮するナーヤさんを見ていると不思議と色々なことがやれそうな自信が沸いてくる。
今度こそ、僕の時代が来たに違いない。ショウ、僕は頑張るよ。
217蒼穹の誰だっけ:2007/08/31(金) 23:54:08 ID:2vofKqch0
 そして・・・。

「敵だっ!みんな気を引き締めろっ!!」
「みなさん、全力でいきます!」
 ふいに現れたエターナルアバター達の一群が僕達を囲む。
「よし、今じゃ!おぬしの力を見せてやれ!」
 精神を集中させて力を集める。
「マナよ、僕らに有利な力を!インスパイアッ!!」
「ありがとうございますっ、後は私達に任せて!」
 僕は頷き、言われたとおりに場所を譲る。

 この戦いが終わったら僕は一人で旅に出ようと思う。自分探しの旅へ。
218補足:2007/08/31(金) 23:58:01 ID:2vofKqch0
空気読まずに空気ネタを投下。
空気よろしく華麗にスルーしてくれ。

この物語はフィクションの二次創作です。
都合によりメンバーは全員揃っていますが、何章のどこ?とかはなしの方向で。
一応ものべーは、写しの世界の出雲に滞在しています。

空気扱いされることが多いけれど、スバルは嫌味のない良いキャラですな。
219名無しさん@初回限定:2007/09/01(土) 00:18:03 ID:n0UFquJA0
>>218
乙GJ。

ところで、このSSの主役って、誰だっけ?
220名無しさん@初回限定:2007/09/01(土) 00:34:14 ID:G2O38bG10
>218
嫌味はないけど味もないキャラなのだが、この話は美味かった。
うん、スバルというキャラを良く引き出しているよ。オチもいかったw

腕を取り返しに茨木童子にでもなればキャラ立ちもいいのではw 絶辺りに斬られますか。
221名無しさん@初回限定:2007/09/01(土) 06:22:23 ID:XA1Sc6D70
>218
スバル不憫すぎ(´・ω・`) でもなんかそんな風に扱われてそうなのがさらに(´・ω・`)
がんばれきっと一番良い人

>198
いやまぁ……途中で筆が滑ってお風呂場内でポゥ暴走レーメたん襲われるみたいな展開になっちゃったりしたせいで
自分でも何がなんだか分かんなくなってしばらく頭冷やしてたのもあるんよ(´・ω・`)
エロ心抑えるのって難しいよね(´・ω・`)

あとオチをどうつけるかってのも難しい。ついいくらでも書き足したくなっちまうから


そんなわけで自分のエロ心放出および気分転換にひとつ1レス物
本スレの「いつもの人」風味にやってみた
実際書いてみたらあの人のすごさが良くわかるというか、なんというか
毎日欠かさず書いてくるあの精神力を俺にも分けてください(´・ω・`)
222いつもの人風味?:2007/09/01(土) 06:24:14 ID:XA1Sc6D70
ちからつきて転がってるワゥたんをお仕置きしたい
具体的にはまず素っ裸にひんむいてはちみつを思いっきりぶっかける
そんでとろとろになってびっくりしてるワゥたんを口の中に放り込むの
もちろん窒息しないように首から先は出しておくんだよ? 
それで、暴れるワゥたんを舌で押さえつけて、はちみつと汗の混じった甘い味をまず楽しむの
ワゥたんが疲れてきたら舌で小さな乳首とか甘い味の脇の間とかちょっとぽっちが目立つ股間とかをじっくりとっくり楽しんで
あふれてくる汗とか、恐怖で鳥肌立った肌の感触とか、滲んでくるらぶじゅーすの味とかをお口全体で感じるんだ
だんだん快感が我慢できなくなってきたワゥたんが良い声を上げ始めたら口から出してあげて、小指でおすじちゃんをいじりたおしてあげるの
あ、もちろん爪が危ないから指サックつけてあるんだよ?
でも中には入れてあげないの。かわいそうだから。いくら我慢できなくっておねだりされても絶対に入れてあげないの。
すじとぽっちだけで気を失うまで何回もいかせてあげて、最後に俺の熱いリビドーを何度もぶっかけて、赤いのを俺色に染めてあげる
そうして失神したワゥたんをクリスト部屋に運んであげて、おなべのお風呂で懇切丁寧に体中キレイにしてあげるんだ
そこに登場したゼゥたんが、なにごとがあったのかと事情を聞いてくるの。もちろん一部始終を説明してあげちゃう
そしたらゼゥたんってば顔真っ赤にしちゃって、俺のこと変態変態って罵ってくれるんだ
でもよく見たら自分もやってほしそうな顔しちゃってるの。だから俺は罵られても平気。逆に笑顔を浮かべてゼゥたんをつまみあげて――

ってパッチはまだですか? (´・ω・`)
もし出たら金出してでも買いますよ? (´・ω・`)
223名無しさん@初回限定:2007/09/01(土) 07:52:29 ID:9jXErYK40
>>218
ねぇ、ドリルはー? ドリルはついてないのー?w
ナーヤなら絶対つけると思うんですがw
ともあれ、うまく料理されてますね。GJ!
224名無しさん@初回限定:2007/09/01(土) 08:23:30 ID:espK3ntM0
ドリルはボディの方に標準装備だろう
225名無しさん@初回限定:2007/09/01(土) 13:50:39 ID:h+gMlf950
>>222
寧ろ、最終的には望の方がポゥとかミゥにry

226218:2007/09/01(土) 21:10:15 ID:eSeY/LjC0
感想をありがとう。

>>219
主人公は「僕」です。悪しからず。

>>220
スバルをスバルのままでということを心がけて書いたのでそれは嬉しい。ありがとう。
正常な精神状態だと中々はっちゃけてくれないのが悲しいところ。
スバルはマスィーンなのでぶっ壊れて暴走して毒を吐きまくるというのも考えたけれど、それはしたくなかった。
個人的な理由なのだが、別の場所で既に同じようなネタを使ってしまったからだ。

>>221
参考になるか分からないけれど、俺はオチのある話を作りたい場合はまずオチから考えます。
それから内容を考え、書き始め、方向がずれたならその部分を書き直す。
落ちが思いつかない時はそもそも書かない。
こういう風に書くから一発ネタしか書けないんだろうけれどorz(スレチ
それにしても毎度ながら冷静な頭に戻って読み返すと、まるで酔ってうpした自分の菊門の写真を次の日に見返す気分だorz

>>223
ブレイクとグラスプに頭が行ってて思いつかなかったぜ。
左腕がなくなった後はきっとドリルに。


どうでもいいことなんだが、公式設定のスバルはスバル自身がこうなりたいと考えてる自己像という気がしてきた。
227名無しさん@初回限定:2007/09/01(土) 22:47:34 ID:h+gMlf950
>>195の人のと>>197を読んでいるうちに電波を受信したので、ちょっと書いてみようと思います。
完成するのは明日以降になりそうですけど…orz
228名無しさん@初回限定:2007/09/02(日) 01:22:47 ID:stm2dXro0
ユーフィーと望のラブエロSS書いてみたけど、寝かせて次の日読み返したら、
自分の菊門の写真を見返した気分になったので封印しとく
229名無しさん@初回限定:2007/09/02(日) 03:53:23 ID:FNaqCJFu0
>ドリル
それどこの戦闘機人かとww
まあ実際なのはStSとのクロスも面白そうではあるが
230名無しさん@初回限定:2007/09/02(日) 03:57:48 ID:3d5BPgMs0
野暮なこと言うけど、ここでクロスは勘弁なー
231名無しさん@初回限定:2007/09/02(日) 15:19:01 ID:QWOcs+gH0
>>228
その発言をした以上、君にはそのssを公開する義務がある!!!!!
232名無しさん@初回限定:2007/09/02(日) 16:08:02 ID:8Tmj4OGQ0
>231
そうは云うても自分のエロ妄想を垂れ流しにするのはかなり根性いるぞw
一番趣味が現れるところだからなw
俺もポゥ×レーメだのルゥ・ミゥのラブラブ慈しみ愛だのクリスト5人くんずほぐれつだのなんだのと書き溜めてるけど
それうpする度胸はさすがにねーやw
233名無しさん@初回限定:2007/09/02(日) 20:26:43 ID:CZXWfXFs0
どストレートにエロから入るから度胸が要るんだ。
日本には伝統の「お色気」という領域があるのだから
まずはその枠に収めて発表してはいかがか。
234名無しさん@初回限定:2007/09/02(日) 20:33:03 ID:w/pIxuTN0
シュリンカーなエロSSが出ることを楽しみにしてます。ハイ
235名無しさん@初回限定:2007/09/02(日) 21:57:32 ID:aUKULj9a0
>>232
妄想を文章化してるだけでも十分度胸ある
胸を張れ
236名無しさん@初回限定:2007/09/03(月) 00:13:24 ID:XzvJ6p4I0
3年後、あの時胸を張った己に童貞フラッシュバック現象で悶死する>232の姿があった
237名無しさん@初回限定:2007/09/03(月) 07:37:00 ID:IAtZZk1q0

           _
         , ´   丶
        (((从ノ)ノ)
         ||、゚ヮ゚ i ||  <白です。
          ⊂(`.゚.´)⊃
         ノノ<_|廿|_>八
             ∪∪


     ___   _    __
     \メ∨´   ∨ツ/
      ハイ从ハ从トトヾヘ
      // 从、゚-゚ i从 ハ  <・・・黒。
      |i.! ⊂ (iÅi)⊃ !i|
      |i!   / !Ψ!ヽ  }|
      ヾ   ~∪∪~  ソ


・・・結晶省略
238名無しさん@初回限定:2007/09/04(火) 02:38:22 ID:mD3NDbxA0
         )   (
         ( . , ⌒ 丶)
         (((从从))
          ノ! ゚- ゚i)l/  <赤よ。
          ⊂i). o .(i⊃
           ノノ|`V´|
             .し ソ

          , ´  ̄ ヽ
         <|!リ!リハリ!|>
           リ! ゚- ゚ i)|
          ⊂i)i.ф.i (i⊃、 <あお
           ノノ|`V´|( | )
          (((.し ソ  )))


赤クリストはショートカットなのか。
それともポニーテールなのか。
腰の左あたりの部分が結晶の模様なのか、
それともポニーテールの先なのか。
誰か教えてくれ・・・。
239名無しさん@初回限定:2007/09/04(火) 03:00:44 ID:mD3NDbxA0
          , ´  ̄ ヽ
         爪イ((i i i))爪
         //ノ! ゚ヮ゚ リヽ\    <緑ね
        / /⊂( .ioi. )⊃\\
      //  /|`V´| \  ) )
     ( (   (( ∪.∪ ..) )ノノ
240名無しさん@初回限定:2007/09/04(火) 17:30:33 ID:g98YM56d0
>237-239
ナイスジョブ
さすがに結晶はAA化無理だろうw

ワゥのあれは……なんだろうな。髪の毛にしては付き方が明らかにおかしく見えるし
かといって模様というには形がはっきりしてるような
何か知ってるのはおそらく世界で人丸御大だけかと思われ
241名無しさん@初回限定:2007/09/05(水) 02:27:20 ID:Ukv9O9Wn0
「…………」

「このままじゃダメだ、なんとか希美を元に戻す方法を考えないと」
「ノゾム、吾に任せろ。いい手があるぞ」
「本当か!?」
「実はな、……ゴニョゴニョ」
「……なにィ!?」
「まあ物は試しだ、やってみようではないか」
「ぐっ……でもやるしかないか」


「おーいノゾミ、ノゾミ!」
「……?」
「ついこの間のことなのだがな」
「……」
「なんとタリアが編み物をしていたのだ!」
「しゅげぇーっ!」

「…………」
「…………」
「…………」

「……………………クスッ」
「「やった!」」


はっぴーえんど
242227:2007/09/05(水) 05:42:15 ID:1rc/tpJB0
エロ描写やその他描写の方法を模索中ですが、
とりあえず『1〜2レス』の超短編が1本書けたので投下します。
NG指定ワード:勘違い
注意点
・ユーフィに頑張ってもらいました。
・望に対しての呼称がいまいちつかめないので、「望さん」で統一してます。
・触手コキ+αですが、本番は悩んで無しにしました。
補足
・地の文のうち、閑話休題より前の望の心情描写以外は
第三者視点になるように頑張ってみました。
243ユーフィの勘違い―性的な意味で― その1:2007/09/05(水) 06:39:32 ID:1rc/tpJB0
――どうして怒られなければいけないんだろう。
――先輩たちは、自分の神獣に対して邪な気持ちでも抱いてると思っていたんだろうか。
――それとも、単に勝手に想像してヤキモチ妬いていただけなんだろうか。

そんなことをふと疑問に思い、神獣と風呂に入る事について、ユーフィに相談した時の事。
何人かの組に分かれて食料や必要な物資を補充しに出かけた折、
たまにはユーフィも誰かに甘えたいだろうと、
ソルラスカと絶が望たちの分の荷物を引き受けて一度ものべーに戻っていった時の事。

「そうですね、私も一緒に入りますよ。……ところで、望さん。」
何故か、望の右腕に抱きつく。
普段とは違いいくらか大人びた姿に見とれつつ、
漫画なんかでよくある、普段の姿は力の浪費を防ぐためとかなのか?等と望が考えているうちに、
頬を染めつつ、細めのオーラフォトンの触手を伸ばす。
「大事なのは、時には発散して、自分のするべきことに影響が出ないようにする事、そして」
「時には自らの本能に正直になることです。あまり我慢しすぎても、身体に悪いですよ? 」
……どこをどう勘違いされてしまったのか、どうも、発散できない欲望に悶々としていると思われているらしい。
しかし望は、夕食の準備までに時間は十分あることを確認した上で、そのまま身を任せることにした――

――閑話休題――
244ユーフィの勘違い―性的な意味で― その2:2007/09/05(水) 06:41:46 ID:1rc/tpJB0
森の中、偶然見つけた倉庫らしき建物。鍵がかかっているようなので、その影で、唇を重ねる。
「望、さん……」
逸[はや]る気持ちを抑えながらも、交わすたびに淫靡な音を立てるのを気にもせずにキスを続ける。
まるで、喉の渇きや唇の乾きを癒そうと、お互いのマナをマウストゥマウスで交換するかのように。
息継ぎのために離れる頃には、透明な糸を引くほどになっていた。
「少し、待ってもらえますか?」
一度呼吸を整え、少しずつ素肌を晒しながら、触手で望の欲望を昂らせていく。
特に、裏筋や雁首、そして、男にとっての秘所――文字通り、ここを刺激される事は稀である――前立腺付近を丹念に。
「ママが……。この辺り、パパ、喜んでくれる……って」
ユーフィも冷静さを残してはいるが、理性が飛びつつあるのか、呂律が危うくなってきている。

ほぼ産まれたままの姿になった所で、望のモノから触手を外し、手で扱き始める。
どことなくぎこちなさを感じさせるものの、ユーフィのそれは初めてとは思えなかった。
再びキスを交わしてから、望のモノを包む手にマナの溶けた体液を落とし、滑りを良くする手際も、
望の提案を受け、普段よりは大きいもののどちらかと言えば控えめな胸で懸命に扱いてくれる仕草も、
望を一層昂らせ、初めは違和感を感じていたものの、異物感と共に感じる刺激はすさまじく、
15分も経たないうちに、理性はあってもないようなものになり、
白くまぶしいマナの光の中にいるような感覚を味わいながら――止め処なく精を放ったのだった。
245ユーフィの勘違い―性的な意味で― 終:2007/09/05(水) 06:42:55 ID:1rc/tpJB0

近くにあった井戸で水を汲みつつも、一向に洗うそぶりを見せない望に、
「確信犯ですか?」とでも言いたげな眸を向けながらも、モノに口付け、丁寧に舐め取ってくれる。
望も、そんなユーフィの健気さに、思わず頭を撫でた。

その後、身なりを整え、うがいと口直しをしたユーフィと、再び唇を重ねる。
そっと、惜しむように離れ、透明な糸が切れたところで、改めて望の背中に抱きつき耳元で囁く。
「…本当に、気持ち良かったの、ですね。普段、あんなに躊躇してるの、嘘みたい、です。」
――その声も、普段の幼さの残る声ではなく、どこか艶めいていた――
普段の望なら不可能ではないが、ぬくもりと柔らかさが惜しい上、
触手や手指で懸命にユーフィがくれていた刺激で理性を失いかけているので、振りほどくはずもない。

そのうち、空気を読んでいたかのように戻ってきたソルラスカと絶と合流し、ものべーに戻ったのだった。

そして――
その夜、偶然部屋の入り口にあった置き手紙を見た希美達の嫉妬のせいか、
危うい目に遭いかけた望だったが、 ユーフィの機転のおかげで『半殺し』や『臨死体験』からは無事逃れたのだった。

『望さんへ 
 てっきり、発散できなくて悩んでいるのかと思ってしまいました。
――思わずやりすぎてしまった気がします。ごめんなさい。
でも……あんな眼で見られたら、誰だって勘違いしてしまうと思いますよ?
ユーフィより 』
246名無しさん@初回限定:2007/09/05(水) 06:56:38 ID:1rc/tpJB0
以上です。
十分推敲したつもりですが、見落としなどありましたらお願いします。
再度推敲して書き直してるうちに、1時間近くたっていた事、
そして、思いの他加筆しすぎて2レスで収まらなかった事
ちょっとユーフィのキャラがおかしい事については反省はしています。ごめんなさい.
247名無しさん@初回限定:2007/09/05(水) 22:18:57 ID:l+05pVlK0
>246
吾もユーフォリアに手をつける勇気は認めるが、うむ、うむ、うむぅ〜。
227〜もう少し「らしさ」を重視した方が良いと思うぞ〜。

>241
さすが吾であるな。
小姑でさえ吾にかかれば微笑ましくなると言うものだ。うむ。
ソルの奴は信じなかったがな。
248名無しさん@初回限定:2007/09/05(水) 22:24:42 ID:JxiQwEnQ0
>>246
GJ!!&乙!!
性格がちょっとアレになるのはしょうがないさ
それがSSってもんだ…
249名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 01:02:55 ID:kkOA3Nlr0
遅くなってごめんなさいorz
>>237-239
なんという表現力……。
>>241
和みました。GJ!
…ただ、望のそのシャレはちょっと…w
250ちっちゃいもの倶楽部1/9:2007/09/06(木) 12:59:17 ID:7IeK+AiH0
 ある日のクリスト部屋の前にて…

「…どうして私まで来なくてはならないのですか。ミゥに相談を受けたのは貴女だけでしょう」
「まぁそういうなナナシ。特別に貴様も吾らプリティミニサイズ同盟に加えてやろうというのだ」
 文句を言いつつ引き摺られてきたナナシはため息一つ。
(本来私は人並みなサイズなのですが…黙っているのが優しさですか)

「?なんだ、その哀れむような視線は」
「いいえ、なにも。…さぁ、さっさと用件を済ませましょう」
 納得いかないようなレーメの視線を無視して、扉をノックする。
 それに応える声と共に器用に取っ手を捻って出てきたのは、クリスト達のまとめ役であるミゥだった。
「あぁ、レーメ様、それにナナシ様まで!この度はお呼び立てしてしまい申し訳ありません。
 散らかっておりますが、丁度皆出払っておりますので……あ、どうぞお掛けになって」
「うむ、くるしゅうないぞー。うむうむ!」
 言いつつも上機嫌に踏ん反り返るレーメ。

 ナナシはそれを横目に呆れつつ、適当な場所に脚を揃えて座った。
251ちっちゃいもの倶楽部2/9:2007/09/06(木) 13:00:28 ID:7IeK+AiH0
「それで貴女、何か相談があると聞きましたが」
 座に着くなりナナシがミゥを促す。
「ええ、そうなのですが…えぇと、取り敢えずお飲み物でも如何でしょう。
 ルゥが好きなものですから、果実を搾ったものなども幾つか御座いますよ」
「おぉ、気が利くではないか。ならば吾はりんごジュースが欲しいぞ!」
 ナナシは身を乗り出すレーメを冷ややかに見つめる。
「りんごジュース。……今更レーメに神獣としての威厳を期待しようとは思いませんけれど。
 世刻の苦労が目に見えるようです」
「な、なんなのだ!?別に吾はだなぁ!……くぅぅっ、ミゥ!ジュースは止めだっ。ちゃ、茶をくれっ」
 視線に耐え切れずにレーメは声を荒らげる。
 丁度小さめの冷蔵庫の扉を体全体を使って開けたミゥは、そんなレーメの様子に微笑ましそうに頷く。
 そして小さなペットボトルに作り置きしてあるお茶を引っ張り出した。
「以前訪れた分枝世界で分けていただいた茶葉が残っておりましたもので。
 これは甘みのあるお茶で、苦いものが嫌いなワゥも喜んで飲むのですよ」
「う、うむ。そうか」
 ミゥはクスクスと笑いながら、動揺を隠そうとするレーメからナナシへと目を向ける。

「ナナシ様は何をお飲みになりますか?」
「そうですね、私にはみかんジュースを」

「うおおぉおおいナナシィィィイイ!?」

252ちっちゃいもの倶楽部3/9:2007/09/06(木) 13:01:14 ID:7IeK+AiH0

「それで、相談というのはポゥに関することなのです」

 暴れるレーメを宥めたミゥは、疲れた様子で告げた。
「ポゥ…あの緑の娘ですか。よく図書室で見かけますね」
 ナナシが思い浮かべたのはキラキラと輝きながら図書室を飛び回る緑の結晶体の姿。
「ふぅむ。吾はあの娘とよく話すが、どうにも肝が細いというか気が弱いというか。
 まぁ色々悩みの多そうな娘であるな」
 レーメの言葉にミゥは重々しく頷く。
「はい。レーメ様の仰るとおり、最近のあの娘はなにかに思い悩んでいる様で…。
 近頃は借りてきた本を読んでいる他は物思いに沈んで、そうかと思えば窓から熱心に校庭を眺めていたり。
 私ではポゥの心中を察してあげることも出来なくて」
 溜息をつくミゥの深刻な様子に、レーメも腕を組んで悩み始める。
「いやドラマであればここはイジメというのが相場なのだがな。そういった噂はこれまで聞いた事もないし、
 そもそも早苗や沙月も目を光らせている事だろうしなー」
「はい。一般の学園生の方々も旅団の皆様も、私達にとても良くして下さいます…」

 膝を突き合わせて考え始める二人を他所に、部屋を見渡していたナナシは部屋の隅にあるものに気付く。
 それはある一定の傾向が見られる本の山。

「こらナナシ!折角連れてきてやったのだ。貴様も頭を働かせろっ」
「連れて行ってくれと頼んだ覚えはないのですが……まあいいとして。…あれではないのですか?」

 ナナシが指差したもの、それはポゥが運んできては溜め込んでいる恋愛小説の山だった。
253名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 13:05:24 ID:tBK1g98+0
支援?
254ちっちゃいもの倶楽部4/9:2007/09/06(木) 13:06:26 ID:7IeK+AiH0
「つまりはあの娘が…その、なんだ。こ、恋…をしているのではないかと、そう言いたいのだな?」
「ええ」
 恥ずかしげに訊くレーメに、恥らう様子も無く答えるナナシ。
 それに憮然とした気持ちを誤魔化すように、
「な、何を言い出すかと思えば、随分と短絡的ではないか。
 それではなにか?恋愛小説の読む者は皆恋をしているとでも言うのかこのうつけもの!!」
 慌てて挑発してくるレーメには取り合わず、ナナシはミゥに向き直った。

「…まぁ確かに推測の域を出るものではありませんが。ですが此処にある小説は恋愛小説なら手当たり次第といった様子。
 彼女がそういった色恋沙汰に大きな関心を抱いていることは間違いないと思われます。
 実際彼女が何かに悩んでいるなら、ここで因果関係を疑うのはそう的外れではないでしょう?
 ええ、『恋に恋する文学少女』が…といった所ですか」
 今度はこちらも話している内に気恥ずかしくなってきたのか、早口に一息で言い切る。
 それを聞いてミゥは首を傾げつつ考え込んだ。
「あの子が恋を、ですか。けれどナナシ様、ポゥは私達の中でも特に内気な子です。
 それに部屋と図書室と食堂くらいにしか出歩かないものですから、あまり人と接点があるとは思えないのですが…」
 考え難そうに首を振るミゥに、我が意を得たりとばかりにレーメが頷く。
「そーだそーだ、この下世話神獣めー!」
 
 しかしそこを華麗にスルーしてナナシは言葉を続ける。
255ちっちゃいもの倶楽部5/9:2007/09/06(木) 13:07:00 ID:7IeK+AiH0
「そう決め付けたものではありません。あの一般人達とは接点がなくとも、神剣使いとなれば話は別かと。
 共に戦場に立つ身です。望む望まないに関わらず多少の交流はあってもおかしい事はないでしょう」
 その言葉に、無視されて膨れていたレーメが反応する。
「おぉ!そういえば美里に聞いたぞ。危機に対面した事による心拍上昇をトキメキと勘違いしてしまうという。
 あれだ、『吊り橋効果』というヤツだな!」
「いえ…まぁ、私が言うのもなんですが、そこまでいくと流石に牽強付会にも聞こえますね」
「むぅぅぅ…」

 相変わらず刺々しい二人の間の空気に慌てて割って入りつつ、ミゥも賛意を示す
「そ、そうですね!確かに考えられない事ではありません。本当にそうだというなら、それは喜ばしいことですもの。
 ですけれど、そうなるとその…お相手というのは、何方になるのでしょう…?」
 おずおずと発言するミゥ。それにナナシが造作もなく答えた。
「取り敢えず世刻あたりから疑うのが自然な流れでは?」
「ちょっと待てぃ!取り敢えずで吾の主を真っ先に挙げるな、何が自然な流れかっ」
 レーメは騒ぎ立てるが、ナナシは構わずに冷ややかだった。呆れたように続ける。
「ですが実際問題として女性関係といえば世刻、世刻といえば女性関係です。世界の壁を越えて女を侍らせているのです。
 種族の壁など今更でしょう。まぁ、しかし実際に彼女達に手を出すとは……存外変態趣向なのですね?」
「だっ誰がじゃあああぁあああ!!」
 
 もはや(一方的に)取っ組み合いに発展しつつある横で、ミゥはもうすっかり諦めていたのだった。
256ちっちゃいもの倶楽部6/9:2007/09/06(木) 13:08:01 ID:7IeK+AiH0
「世刻様ですか。少し…考え難い様に思われますねぇ。
 ポゥにしてみると、何かにつけて騒ぎの中心にいらっしゃられる世刻様に対しては、どうも腰が引けてしまう様で…。
 失礼な事ですけれど少々避けている節も御座いますし」 
 跳びかかるレーメに身を翻してかわし続けるナナシ。
 それにもう我関せずを決め込んでいたミゥは、二人が息も絶え絶えに疲れ果てたのを見計らって口を開いた。
「はぁ…はぁ。そうか、うぅ…げほっ。まぁそうだな、ひぃ…ひぃ。…ノゾムには吾というパートナーが、居るのだからな。
 ……オェッ!」
「ごほっげほっ……ぅ。…そうですか、流石に、あの喧騒の渦中に、飛び込むほど、愚かではありませんか。
 ……ゥグッ…」
 
 疲労困憊な上に息切れで大変な事になっている二人も、ようやく落ち着きはじめる。
 レーメは今度こそ仕返しとばかりに、
「は、それならばこやつの主はどうだ。あれは性格を口も悪いが、顔だけならソコソコ見れたものだろう?」
「…成る程、レーメ。上等です…かかって来なさい」
 ミゥも最早余計な部分には取り合わず、考えを巡らせる。

「今度は暁様…。いえ、でもそれなら寧ろポゥよりもゼ……ッッ……ゲフンゲフン」
 レーメを睨み付けていたナナシは、訝しげに向き直る。
「ゼ…?……ゼゥ、ですか?貴女のところの黒い娘がなにか?」
「いっ、いいいぃぃぃえええぇぇぇ!別に暁様にお会いするとあの子が落ち着かなくなったり
 お声をかけられても素直に応じられなくて後で落ち込んでいるなんて事は全然、ちっともありませんですよっ!?」
 慌てるミゥに、段々と冷えて既に絶対零度の視線を送る。

「ほほぅ…」
257ちっちゃいもの倶楽部7/9:2007/09/06(木) 13:20:07 ID:7IeK+AiH0
「…あの黒いの…。女性の転生体は大抵世刻に靡くのでマスターは安全かと思っていれば、なんて意外な伏兵…。
 は!?もしや黒くて小さい事を利用して私を追い落とそうと!?」
 
 物騒なことをブツブツと呟くナナシを、一転して今度は生暖かく見守るレーメ。
(不思議だな…今のナナシとなら吾はどこまでも解かり合えそうな気がする…)
「…?なんですか、その生暖かい視線は」
「いいや、何でもないぞ。…いいのだナナシよ、吾もかつては通った道よ…ふふふ」

「えぇっと!今はポゥの好きな殿方の話ですよお二人ともっ、ねっ?団長様、それともあの、えーと白い方でしょうか?
 ど、どちらしょうね?」
 ミゥは必死に話題を元に戻そうと声を上げる。
「うむ〜?サレスにスバルか〜。ま、安牌なのではないか〜」
「……はずれも当たりもなしの籤が面白いかは疑問ですが、妥当なところでしょう」
 既にやる気の無い二人は生返事気味に応える。
「ううぅ、そんな投げやりな。…これでは特定までには漕ぎ着けられません。あの子の力になってあげられるのか…。
 !!いけません、あの子が戻って参りました!?………え、あら。これは」
 緑の力と共に別の反応が扉の外にやって来て止まる。そしてノブを捻って現れたのは、

「うおっ、なんだ。ちっこい奴らの溜まり場になってんのか。お前らがマスターの側を離れてるなんて珍しいな!」

 本の山を抱えたソルラスカだった。
258ちっちゃいもの倶楽部8/9:2007/09/06(木) 13:20:58 ID:7IeK+AiH0
「おーい、これはこの本の山に加えときゃいいのかー」
 ソルラスカの後をついて入ってきたポゥはそれに返事をしながら、二人の客に気付いた。
「あ、ソルラスカさまぁ!はぁい、おねがいしまぁすっ…あの、どうぞ、ご…ごゆっくり」
 慌てて結晶体から這い出してきてペコペコと頭を下げる。
「「「………」」」

 自らの結晶体を片付けたポゥは、そそくさと荷を降ろしているソルラスカの方へ寄っていく。
「あ、あの、あのホントにすみません…。この間も手伝ってもらっちゃたのに、また…」
「あぁ、別に構いやしないって。困ってるヤツを放っといたら漢が廃るってもんだ。
 お前ら体が小さいんだからよ、こういう事位他人に頼ったっていいんだぜ。俺もまぁ、本だって運ぶくらいは出来るさ」
 ゴツゴツした手を被せるように、とんとんとポゥの頭を叩いた。
 ポゥは真っ赤になりつつ、指の隙間からソルラスカの顔を見上げる。
「えっと…あ、それじゃぁまた、た…頼んじゃっても?」
「おう!ま、そん時はお手柔らかに頼むぜ?」
 アバヨ!とばかりに去っていくソルラスカ。それを熱を込めた視線でポゥが見送る。
「はぁ……素敵」

「「「………」」」
259ちっちゃいもの倶楽部9/9:2007/09/06(木) 13:21:38 ID:7IeK+AiH0
「よりによってあのイノシシとは…」
「私としては外れのみ、といったところです」
「す、素敵な方だと思いますよ?……何といいますか、あまりにもミスマッチで候補からは外してしまっていましたけど」
 額をつき合わせていた三人は、意を決してポゥに話しかける。
「一つ訊くのだがな、ポゥはアレのどこに惚れたというのだ?」
 
 ぽぅっと扉の方へ視線を送っていたポゥは慌てて我に返った。
「はぅぁあ!?っそんな、ほほほ惚れたなんてっ!!…ただぁ、あの…ね、時々困っているとあんな風に助けてくれたり、
 それに前にあったガクエンサイ?で、文句言いながらとっても丁寧に土仕事してるとこを見て、
 その…かっこいいなぁ〜なんて、きゃ!」
「「「………」」」

 真っ赤な顔を抱えて怪しい踊りを始めだすポゥ。
 レーメ・ナナシ・ミゥの三人は、それが叶わぬ恋であることを誰が告げるべきか、必死に擦り付け合っているのだった。





「しかしどいつもこいつも本当に趣味が悪いな」
「レーメが言えた義理ですか!」
260名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 13:59:58 ID:kkOA3Nlr0
>>250-252,>>254-259
GJ、そして乙です。
ソルラスカが可哀想…w
261名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 17:15:49 ID:O6JEj9zpO
GJ!
ソルはストーリー上の扱いはともかく、客観的にみれば一番良識ある常識人
ルプトナもそうだけど頭が悪いほどマトモな精神をしているようですな
やっぱソルが一番有望株だよな……手に職あるし
262名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 18:42:36 ID:EWEHH+yj0
手に職ってアーティファクト自力で建ててんのかw
263名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 18:43:00 ID:69FrgC6W0
GJ! ぐ、グッジョブじゃないんだからね! ぐっとくるジャーニーなんだから!

ゲーム本編じゃ定型文の如くソル苛めが毎回挿入されんのよな、割とまともなこと言ってるのに。
ライターはあれを面白いと思ってるのかと小一時間…
264名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 18:51:37 ID:cJ30nhJN0
ソル兄貴は土方
265名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 18:58:43 ID:oXYgCyVx0
げ、原作再現なんだからねっ、別に安易なオチで妥協したわけじゃないんだからね!


御免ね…妥協しました
ああ、ソルは良い男だよな
カティマとかはソルを妙にボロクソに貶すから気の毒過ぎる
こんなオチしか付けられなくてちょっと自己嫌悪だ
266名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 19:02:04 ID:kkOA3Nlr0
>>261
確かにw
ただ、ユーフィっていう例外もいるし、
先輩ものぞみんもまともな部類な気がします。
>>262
土方系の仕事は自力で建築するばかりじゃないでしょうw
設計とか、設計t(ry
267263:2007/09/06(木) 19:14:01 ID:69FrgC6W0
すいません、一応自分のレスの補足。
「ライターはあれを面白いと思ってるのかと小一時間…」 →
「聖なるかなのシナリオライターはソル苛めの毎回挿入が面白いと思ってるのかと小一時間…」

>>266 設計? そう言われて見れば! まさかソルはバリバリの理系人間!?
268名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 19:17:07 ID:zFhQ8sxK0
具現化系の・・・




いえ、なんでもないです
269名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 19:21:44 ID:WXmQemvG0
一応作中の建築はアーティファクトの召還儀式のはず



アレ?
何か余計にソルのイメージから乖離した気が
270名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 19:25:24 ID:kkOA3Nlr0
>>267
イメージ的に、建築家志望で建築系の専門学校卒のような感じかとw
271名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 20:16:52 ID:9H+o30HW0
>>267
実は全部直感じゃないかな
ここをこうしてこう組めばこっちは絶対崩れないみたいな感じで
叩けば反発で強度がわかるスキルがも便利だ
マキ割りをさせれば「最も燃焼効率の良い形」で作ってくれるに違いない
272名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 22:07:43 ID:avV2Lk/e0
(=゚ω゚)ノぃょぅ 
文化祭話製作は順調に難航中……例によって話の締めがつかねぇ……
どうオチつけるか書いて捨てて書いて保存して書いて入れ替えてしてるうちに
ゴミの山の中からふと浮かび上がってきた3レスばかりの小話を投下
時間稼ぎとか現実逃避とか言うな。言われなくても分かってる。

1 望・スバル・ユーフィーの白(水色含)3枚はグラスプが使えるのにミゥ姉さまは使えない
2 本スレ第57スレの370前後におけるグラスプ関連の諸レス
3 例によってエロ心

の3つの要素とヒントを取り混ぜて、1つ。

>241
今やっと意味が分かった……! 駄洒落だったのか……っ!

>265
ああ、これが普通だよね。色々汚しちまったおいらの心が少し痛いよ。
ナナシ良いキャラしてんなぁw 随所の毒っぷりが実に素敵だw

しかし、男性キャラ組の中ではどう考えてもソルが一番まともな性格だよなー。スバルも普通だけど普通過ぎて空気だし。
今度元世界と妹との話1つ考えてみようかしら。なんかザウスの思惑に踊らされてる気がせんでもないが。
2731/4:2007/09/06(木) 22:11:38 ID:avV2Lk/e0
 深夜。クリスト部屋。静かな寝息の三重奏。
 5人のうち年下のほうから3人は、毛布1枚カーペットの上に敷いて、
かたや普通に潜り込み、かたや上で大の字になり、かたや隅っこで蓑虫様にくるまり、と思い思いの格好でぐっすりと眠っている。
 そんな部屋の奥隅。このところすっかりレーメのお気に入りになりつつある全自動浴槽が、夜中にもかかわらず小さな稼動音を立てていた。

 水音。裸2人。柔らかく抱き合うミゥとルゥ。お互いをむさぼるように口付けをかわしながら、全身を密着させて互いの感触を味わいあう。
 抜けるような白い肌が闇の中に浮かび上がっている。明かりは窓から漏れてくるものべー満月の光と、小さく発光しているタッチパネルのみ。 
 床面に横たわって2人、震えるように声を上げながらまた1つ小さく身を振るわせ、くたりと脱力して大きく息をついた。
 荒く息をつきながら顔を見合わせる。互いの両腕は互いの背中に回されたまま、コトが終わった後の余韻と心地よい気だるさに包まれている。

「ミゥ。……また何か悩んでる?」
 しばらく息を整えた後、そんなことをルゥが聞いた。外の3人を起こさないようにささやき声。少し不安の色が混ざった声。
 そんなことないよ、と答えるミゥ。汗にまみれた体も、まだ愉楽の残滓が残る表情も、全てがいとおしくて少し強く抱き寄せた。
「でも、なんだか気もそぞろっていうか。別のことに気を取られてるような、そんな感じがした」
「どうしてそんなこと? わたしはいつもと変わらないつもりだったけどな」
2742/4:2007/09/06(木) 22:12:56 ID:avV2Lk/e0
 ミゥも同じくらいの声量で答えた。いまだ濡れそぼつ秘所が、ルゥの太ももあたりと意図せず接触して柔らかい刺激。ん、と鼻にかかった声が思わずこぼれる。
「ん。だって、もう何回も肌合わせてるし……感じが違ったらすぐわかる。このくらいのほうが私は好きだけど、でも」
 静かな口調の中に疑義の色。何かまた心惑わせることでもあったのかという気遣い。そんなルゥの心を聡く察して、ミゥは微笑み首を振る。
「そんな顔しないの。大丈夫、ルゥの可愛い顔はいっぱい見られたから、わたしもおなか一杯胸いっぱい」
 ぺろ、と首筋に流れていた汗を1つ舐め取る。奇襲にふぁっと声を上げるルゥ。首筋から鎖骨あたりにキスの雨。心地よさそうなとろけた顔。
「ほら、その顔。その顔が見られたから、わたしも満足してる。――ちゃんと気持ちよかったし。ね」

 2人の関係は長い。
 ルゥにとってははじめての相手であり、ミゥにとってもそれに近い相手である。こうして睦みあうこと幾度目か、すでにお互いの体を、本人以上に知り尽くしているほどである。 
 大抵は年上のミゥがリードする形でコトに及び、興が乗れば触手が飛び出してルゥはただ翻弄されるばかり。最後は愉悦と快楽のるつぼの中で身も心も蕩けきることになるのだが……
 ルゥはそれが好みではない。
 一方的にされるのが嫌というわけではない。肉の悦楽に浸りきるのも嫌いじゃないし、激しくされるのにももう慣れている。
 けれど、やはりちゃんと肌と肌を合わせて、時間をかけてゆっくりと、2人一緒に気持ちよくなろうよというのがルゥの主張である。
 何分、ミゥの触手制御はかなりの集中を必要とするため、操っている間は、ミゥ自身は肉体的快感を得ることができない。
 そんな刺激を受けようものならすぐさまに集中途切れ、オーラフォトンは速やかにマナに返って空中に消えてしまうのだ。
 だからこうしてときどきは、小道具無しで静かに肌を合わせることもある。2人溶け合うように、ゆるやかに淫らに。互いの心のつながりを確かめ合うように。
 もっともそういう状況でも、ミゥが攻めてルゥが受け気味になるという展開に変わりはないのだが。
275名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 22:13:39 ID:iKVlrBTB0
           ; ; ;   ; ; ;   ; ; ;
         ; ; ; ;  《 ⌒ )); ; ;  ; ; ; ;
        ; ; ; ; ; ; ;.))    ))山  ; ; ;
        ; ; ; ( (  ; ;  ,.'´ヨ盃E ; ; ;
       ; ; ; ;   )(  Я!ミ!リ!リ!リ) )〉; ; ; ; ;
      _____)) _ヾ ||゚ ‐゚ノ|_ ((  ; ; ; ; ; ; ;  <連投支援
       ヾ二二二二((二}/ヽ) y_》(ヨ=0=80O ; ; ; ;   規制は嫌な物だな。
      ; ; ; ; ; / ̄ .ノ)/i ; i|!.!|i 〉; ; ; )〉  ; ; ; ;
      ; ; ;   ,ゞ-----′ ミ|Α| \.ノ/  ; ; ; ;
       ; ; ; ; \___ジ.ーヾ二)); ; ; ; ;
2763/4:2007/09/06(木) 22:14:21 ID:avV2Lk/e0
「ん……っ。も、ごまかさないで、ミゥ。やっ、もうっ!」 
 珍しくルゥが怒声に近い声を発した。みじろぎしてミゥの口撃から逃れ出て、むっとした、けれど芯には欲情の色が濃く残る、そんな顔でミゥの目を見る。
「はふ……ん。ミゥ、私には嘘ついてほしくない。ごまかそうとしたってだめだから」 
「ん……もう、ルゥにはかなわないなぁ。ごめん。でも、大したことじゃないから。ほんと」
 少し悩んだ後、小さなため息をついて素直に謝罪の言葉。
「それでも。ミゥは1人で抱え込みすぎるから。私も、みんなも、もう子供じゃないよ」
 こつん、とおでことおでこを合わせて少しだけお説教口調。ミゥも今度はごまかそうとせず、もう1つごめんとつぶやいた。

「気になることってね、あの新しく加わった子、ユーフォリアのことなんだけど」
 何故か微妙に恥ずかしそうな表情を浮かべつつ語り出す。いつしかどちらともなく体を離して仰向けに転がり、顔だけを向け合っている。
「良い子だとは思うんだよ? 別に何かされたってわけでもないんだけど、でも、側にいるとどうしてか落ち着かないっていうか、圧迫感を感じるというか……」
「ん……私は別になんとも思わないけど。みんな、普通に対応してるし」
 想定していた答えと全く違うものが返ってきたせいで少し戸惑い。もっと深刻なものだと思っていたんだけど。
「だから大したことじゃないって言ったでしょ? でも、なんでだろう。初めて顔を合わせた時から、ずーっといつでもあの顔が頭の中にちらついて、何にしても集中できないの、最近。
 そうだ、もう1つ謝らないと。そんなことで気をそらしちゃってごめんね、ルゥ」
「ううん、それは気にしてない」
 微笑して首を振る。少し沈思。ユーフォリアについて知っていることを頭に並べるけれど、ミゥがそこまで意識するような理由は特に思いつかない
277名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 22:15:46 ID:9H+o30HW0
とんでもない法則を発見した!
黒くて速くてちいさい娘は必ず2本の触覚を持っている!!
2784/4:2007/09/06(木) 22:16:21 ID:avV2Lk/e0
「ん……でも分からない。どうしてそんなに気になるんだろう」
「わたしも分からない。考えすぎか意識しすぎだと思うんだけどね。……もうやめよ。答え出せないことだし」
 そうだね、とルゥも頷く。体を再びミゥのほうに回して、頬にそっと手を伸ばす。
「それじゃ……もういっかい。今度は私だけを見てほしい。普段はみんなに目を向けてていいから……今だけは、私だけ」
 少しの羞恥と大きな興奮で赤く染まった頬。緑の子にレーメ並みと評された薄い胸では、桃色の突起がぴんと立って自己主張している。
 そんな姿を目の当たりにして、ミゥに異論のあるはずもなく、もちろんと答えて両手を伸ばす。
「うん。今度はルゥだけ、あなたのことだけ考えるよ。
 ……ね、今の言葉、凄くきゅんって来ちゃった。もう一回言ってほしいな」
「……恥ずかしいから、やだ」
 そして、また2人。腕と足絡めて混ざり合う。ゆるゆると柔らかくうねくり動く。艶めいた声は途切れることなく、小さく響いていた。

 ――ちなみに、ミゥの違和感の正体が判明するのは、とある戦いのとき。
 来襲したミニオンたちとの混戦の中、ユーフィーが操るオーラフォトンの縄が、4人ばかりをまとめて縛り絡め取り、それを維持しつつ悠久で別の敵と打ち合ってみせたときである。
 そのあまりに大きな制御力の差を見せ付けられて、ミゥは思わず呆然自失、同時に疑問は全て氷解した。
 なるほど。同じオーラフォトン使いとして、これだけの能力の差を無意識のうちに感じ取っていた、と。そういうこと。ね。
 ミゥもこのあとしばらく、なんとかオーラフォトンの制御を保ちつつ、他のことに意識を向けられないか、と練習を繰り返すのだが、結局どうにもならず。
 その一方で、望とスバルはユーフィーにコツを教えてもらうやあっさりと使いこなしてみせてさらに意気消沈。
 やっぱり根本的な出力の差はどうしようもないよ、とルゥが止めをさし、ミゥはその後数日ずっと肩を落として過ごすことになるのだった。
 はぁっ。
279名無しさん@初回限定:2007/09/06(木) 23:50:40 ID:kkOA3Nlr0
>>272
GJ、そして乙です。
そう言われてみれば……不思議です。
280名無しさん@初回限定:2007/09/07(金) 03:46:17 ID:iEPBNIgN0
>>272
確かにグラスプないw
SHの終盤とかにこっそり覚えてくれたりしたら面白かったかも。

>>277

   ,'^》フ⌒´ヽ》ヘ
   ( ノ i」」」」」〉))
   ノノ(!リ  ノリ((  <順当に考えてそれは私の事ですね。
  (( ⊂!|lv28|!つ リ
  -===く/|_|〉lj= 
      (フフ
281名無しさん@初回限定:2007/09/08(土) 04:00:41 ID:r3HDunCG0
    |,p、
    |,,),)) スッ
    |ノノ_i|
    |_-ノ|
    | i.!|
    |. ノリ
    | (

    | ======,p、 サッ
    |ミ   , ;(,,),)),、
    |    | ! !_ノノ_i|
    | .  | | -_-ノ|
    |   | |   i.!|
    |   リリ   ノリ
    |  ((

    | ======,p、 カッ
    |    , ;(,,),)),、
    |    | ! !_ノノ_i|
    | .  | | ゚ -゚ノ|  <一応、こっちが神剣だ。念のため。
    |   | |   i.!|
    |   リリ   ノリ
    |  ((

    |
    |
    |    サッ
    | 彡
    |
    |
282名無しさん@初回限定:2007/09/08(土) 07:30:37 ID:Q3oLrfnz0
絶対なる戒かwww
283名無しさん@初回限定:2007/09/08(土) 07:38:46 ID:Ds8yTb2l0
カイーーーーー!!!w
284名無しさん@初回限定:2007/09/08(土) 10:35:55 ID:m+zTDmJN0
281、乙。
…戒だったのかw
285名無しさん@初回限定:2007/09/08(土) 16:43:03 ID:3rOc69a60
思いつきでやった。
今では反省している。
時間が経てば経つほど適当に作った腕の部分がUFOキャッチャーにしか見えない件orz
286名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 03:37:50 ID:1OoSRM9T0
「サレスの……貧乳フェチーーーーーーッ!」
新世界の空に希美の魂の絶叫が響く。

その時、不思議な事が起こった!

「な、なんかボクの胸が……うわぁぁぁぁっ!?」
「どうしたのです、んくっ……!?」
「ちょっと何が起きてるのよ!?」
「にょわーっ!ノゾム、なにがどうなったー!?」
女性陣があちこちで悲鳴を上げる。そう、これは……
「大変だ望!なんか女の人みんなのおっぱいが小さくなってる!」
学園の皆はおろか保健室にいたエロい人や食堂でヤケ食いしていた裸族さんも被害にあったらしい
「……って大丈夫か希美!?」
「う、うん。私は平気みたいだけど」
「おかしいぞ、なぜノゾミだけ無事なのだ?」
当然の疑問、それは俺も気になるところだ。原因はおそらくサレスだろうが……
「永峰はその、なんだ……胸を大きくしたかったんだよな?」
「暁君?」
「……これはあくまでも推測なんだが」
「ど、どうなったのじゃ!?」
「世界中の女性の胸を小さくすることで、相対的に永峰を巨乳に分類させられるようにしたんじゃないか?」
「……一応希美の願いは叶ったのか」
「サ、サレスの裏切り者ーっ!ぶちーっときた、こうなったらもう戦争だよーっ!」

『サレスの……貧乳フェチーーーーーーッ!』
新世界の空に学園内全女性の魂の絶叫が響く。
星天坂殴りこみ部隊が結成されるのにそう時間はかからなかった……


287名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 03:48:45 ID:lw3507ZO0
ここまで酷い話は見たことが無い
288名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 03:49:44 ID:1OoSRM9T0
     __     ☆
  「,'´r==ミ、 /
  くi イノノハ)))/)
   | l|| ^ヮ゚ノl|/ ←無事だった
   j /ヽ y_7
  (7i_ノ卯!
    く/_|_リ
289名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 07:49:40 ID:ioJVBfemO
おbasnは貧乳どころかまな板だもんな
290名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 09:19:43 ID:WmCzzg1Y0
これによって、時間樹のマナ寿命は格段に延びたらしい。 
世界を救った救世の女神のぞみん!

        _        
       , '   ヽ     
       i i人从リヌ         ト   
      ノリji)゚□゚ノl    サレスを殺るよっ!                 
      /ヽ y_7i\       ∧         
   ==(7===ρ===〇≡≡>  
       く/_|_リ        ) }       
                   ノ ノ                   
                //
                ´
291名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 10:19:05 ID:KvqSDUAJ0
緑同士だから相当長い戦いになりそうだな
292名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 12:05:38 ID:qiB0RGyyO
>>291
のぞみんは高%技持ちだからあっさりケリつくだろ
293名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 12:33:36 ID:WmCzzg1Y0
おっと巫女服のままだったw

294名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 19:19:32 ID:DIpp5nBG0
  |,__
  |r==ミ、
  |ノハ)))
  | ゚ヮ゚ノl|  個人的な恨みでイャガを狩ったのは内緒。
 =⊂)/i !
  ||リ/l_」
  |'_
295名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 20:09:49 ID:dEeVp52C0
個人的な恨み=胸
296名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 20:25:19 ID:WmCzzg1Y0
>294
みんなしってる。
297名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 21:24:48 ID:ivlUKtx/0
     __   ,、
  「,'´r==ミ、 ^      ______________________
  くi イノノハ)))o 、   <仕方ないじゃないですか!                |
   | l||."□ノl|ノO ヽ    |もう2,3年後だったらって私だって思いますよ?   |
   j /ヽ y_7 ニ〇 )    |これでもギリギリまで粘ったんです。          |
  (7i__ノ卯! ヽO ノ     |選択の余地なんてなかったんです。          |
    く/_|_リ .゚´      |その辺りを考慮してくれたっていいじゃないですか?.|
                ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


  とある戦巫女の主張
298名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 21:30:30 ID:v8NK9spE0
「薄胸」の神名をネーム無礼カーで破壊してもらえば?
299名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 21:43:58 ID:JMZwLwwj0
>>298
ただでさえ薄い胸が「無胸」になってしまうぞ。
300名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 22:27:37 ID:Oh1ccAY00
ナルカナはおっぱいだから
きっとナル化マナ取り込めば大きくなりますよ
301名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 22:42:23 ID:KvqSDUAJ0
ほんとおっぱいだよな。そのためだけ
302名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 22:46:41 ID:692x1vfE0
後の二人目のナル・ハイエターナルである。
303名無しさん@初回限定:2007/09/10(月) 23:49:51 ID:e7BbVx6B0
そういえばおbsnとナルカナの絡みはゲーム本編でも皆無に等しいな
性悪のおbsn VS 俺様体質のナルカナ。タイムシフト VS 1位神剣
時間樹オワタ\(^o^)/
304名無しさん@初回限定:2007/09/11(火) 00:03:12 ID:QAzaKs+20
[真実]
           ; ; ;   ; ; ;   ; ; ;
         ; ; ; ;  《 ⌒ )); ; ;  ; ; ; ;
        ; ; ; ; ; ; ;.))    ))山  ; ; ;
        ; ; ; ( (  ; ;  ,.'´ヨ盃E ; ; ;
       ; ; ; ;   )(  Я!ミ!リ!リ!リ) )〉; ; ; ; ;   うーむ、また>295-303方面で次元震か。
      _____)) _ヾ ||゚ ‐゚ノ|_ ((  ; ; ; ; ; ; ;  更に枝が失われてしまったようだ。
       ヾ二二二二((二}/ヽ) y_》(ヨ=0=80O ; ; ; ;   急がねばな…。 
      ; ; ; ; ; / ̄ .ノ)/i ; i|!.!|i 〉; ; ; )〉  ; ; ; ;     
      ; ; ;   ,ゞ-----′ ミ|Α| \.ノ/  ; ; ; ;
       ; ; ; ; \___ジ.ーヾ二)); ; ; ; ;
305名無しさん@初回限定:2007/09/11(火) 01:12:51 ID:qyyk/twb0
リファ萌えSSきぼん
306名無しさん@初回限定:2007/09/11(火) 02:28:54 ID:dXbj0xue0
            、, _
          〃^  ^ ヾ
          リ从ハ从リト
         ヾk! ゚-゚ノ!  < 世刻望!
         《 /`〒´!}  
          (7.|≠iくiソ
         // |=i
          ヾ-しソ
307名無しさん@初回限定:2007/09/11(火) 02:30:10 ID:dXbj0xue0
            、, _
          〃^  ^ ヾ
          リ从ハ从リト   <ナル・ハイエターナル!
         ヾk! ゚-゚ノ!  、  
         《 /`〒´!}つ}]三三三ヲ
   -======[}(7|≠.iくi`.  ´
          // |=i
          ヾ-し'ソ
308名無しさん@初回限定:2007/09/11(火) 02:30:57 ID:dXbj0xue0
            、, _
          〃^  ^ ヾ
          リ从ハ从リト   <全て無くなっても、俺は諦めない!
        ♀ヾk! ゚-゚ノ!  、
        Q《 /`〒´!}つ}]三三三ヲ
.        T |≠.iくi`   ´
. . .         |// |=i
.          ! ヾ-しソ
309名無しさん@初回限定:2007/09/11(火) 02:40:03 ID:dXbj0xue0
望ちゃんorジルオル&叢雲のノゾム
感じ出てるかな?
310名無しさん@初回限定:2007/09/11(火) 07:56:25 ID:JGnck0fC0
>>286
一人だけ希美よりも貧乳なヒロインがさらに貧乳になってるな
311名無しさん@初回限定:2007/09/11(火) 08:27:15 ID:Hf8g6nnJ0
>309
望ちゃんカッコイイよ望ちゃんっ。

312名無しさん@初回限定:2007/09/11(火) 08:44:29 ID:CyXc2GFA0
>>309
gじょぶ
313名無しさん@初回限定:2007/09/12(水) 15:46:02 ID:f5qVvU+L0
なんと、クリストは死に台詞だけはあったのか
思いっきり無視して書いてしまった
314名無しさん@初回限定:2007/09/13(木) 11:19:30 ID:NbSMjXCg0
てST
315名無しさん@初回限定:2007/09/13(木) 22:58:37 ID:IR3J/O040
低調なスレになったな
まるで、なるかなの出来を暗示しているようだ
316名無しさん@初回限定:2007/09/13(木) 23:29:39 ID:nCKrdXpL0
プレイ時間が長すぎて、多角的にネタを拾えるほどプレイしきれてない人が多いと見た。
かくいう俺も正直言うと>>307-309でネタバレ踏んでしまいぐんにょり中。
317名無しさん@初回限定:2007/09/14(金) 00:43:17 ID:i45Nf3C10
まだ4週目。
全部終わるまでネタなんて書けねぇよ。
リトバス、AF、うみねこも平行してやってるし。
ぬぅ、何故こんなに新作が集中したんだ…
318名無しさん@初回限定:2007/09/14(金) 01:49:32 ID:+fIOuccZ0
>>314のテストってなやっぱエロゲ系板の不調のことかな。
ああ、俺も神剣wikiの群雲の〜で先輩ルートネタバレくろうてぐんにゃりしたなぁ
319名無しさん@初回限定:2007/09/14(金) 02:07:27 ID:9uvBPQti0
そんなことより、世界中の再構成が始まろうとしてますよ、おまいら。
ああ・・・どうなるんだ・・・
320名無しさん@初回限定:2007/09/14(金) 02:08:12 ID:9uvBPQti0
世界中って何だorz
321名無しさん@初回限定:2007/09/14(金) 02:16:23 ID:+fIOuccZ0
>>319
いい事を思いついた。おまえ、星天のケツの中にションベンしろ
322名無しさん@初回限定:2007/09/14(金) 21:56:46 ID:tBJ8z/OM0
戦闘スキップパッチはマダー?
323名無しさん@初回限定:2007/09/14(金) 22:20:02 ID:QfTDT/rYO
( ゚Д゚)
324名無しさん@初回限定:2007/09/15(土) 01:00:50 ID:gsS5zQoV0
Xuse(ザウス)避難所
http://xgame.dojin.com/vhwiki/test/read.cgi/test/1189703688/

作品別のスレから流れてきた人はこちらへ。
ぼちぼち人が集まり始めてる。
325名無しさん@初回限定:2007/09/16(日) 15:19:01 ID:Qky9ntrD0
10日ぶりに(=゚ω゚)ノぃょぅ

丸1日以上書き込みがないけどこのスレはまだまだ終わらせんよ!
エロゲ板が死んでいたってこっちは終わったりしないんだよ!

ということで20日ぶりに新作投下。くそ長いす。
5人5様の1日書こうとしたら30レス分は超えそうになって破棄
色々シェイプアップしてみたら今度は支離滅裂
サルベージと再構成と再構想繰り返してたらいつの間にか20日も経っちゃった(´・ω・`)
廃棄テキストが本編の1.5倍分くらいあるってどういうことよ?(´・ω・`)

ということで文化祭の「半日」 投下開始。
多分20レスくらい。長いけど許して。
3261/20:2007/09/16(日) 15:20:30 ID:Qky9ntrD0
 物部学園がものべーに乗って次元間航行を始めてからかれこれ何日が経過したか。この日、学園は開始以来最高の活気に包まれていた。
 学園祭の当日。校内にいる人数こそ100人余りだが、個々の勢いは普段以上。彼らが発する生気と精気が学園全体を包み込んで、
茫洋と飛び続けるものべーまでもがいつもより楽しげである。
 校庭で暴れまわるルプトナとソルラスカ。煽り立てる周りの生徒たち。体育館では演劇やライブが立て続けに行われて大喝采と大歓声。
 校内各所で開かれている模擬店では、日々の生活で鍛え上げられた料理の腕が存分に発揮されており、さまざまな製品が店頭を賑やかに飾っている。
 中には調理中に誤って指ごと焼いてしまったり、包丁で軽い切り傷を負ったりと、何人か負傷者が出たりもするが、それもまた祭りの一興と、
保健室に集まってはヤツィータもろとも大笑い。
 使われていない教室も、各階段も廊下も隅々までいろいろに飾り付けられて、色とりどりにみなの目を楽しませている。
 そんな廊下の一角を、いつものようにレーメを頭に乗せて、望が1人で歩いていた。
 2人できょときょと廊下のオブジェや飾り付けを見て回りながら、のんびり目指すはクリスト部屋だ。
 パンフレットによると、同室でルゥの氷菓子屋なる模擬店が開かれているらしく、それは一体何モノなのかと気になって、早速見に行くことにしたのである。

 けれどたどり着いたクリスト部屋は、扉がぴたりと閉じられて、店をやっているという雰囲気ではなかった。扉には何やら落書きらしきものが書かれた紙が一枚、
でかでかと貼り付けられている。
「なんじゃこれは?」
「なんだろうな?」
 首をかしげる主従。とりあえず入ってみるかと問い、うむと返答。鍵は閉まっておらず、引き戸はからりと手ごたえも軽く開いて一歩中へ入り、
「あーっ! 入ってきちゃダメだって書いてあるでしょーっ!」
 瞬間、中から甲高い叫び声と黒い何かが飛んできた。
3272/20:2007/09/16(日) 15:22:03 ID:Qky9ntrD0
「お、お、ゼゥかっ!?」
 すっとんきょうな声を上げるレーメ。飛んできたゼゥは問答無用とばかりに、望の胸を両手でえいえいと押して、部屋から押し出そうとしている。
「な、何? 何で入っちゃ駄目なんだ?」
「いいからっ! 外にっ! ぜはっ、出てっ。ぜぇっ。何でこんなに重いのよぅっ」
 力を思い切り入れているのに全くびくともしない。するわけがない。大きく息をつくたびにツインテールが左右に揺れる。
「そりゃサイズが違いすぎるからの」
 ジト目のレーメがつぶやく。とにかくこれでは話にならないと、数歩下がって部屋から出る。望がいきなり下がったせいで、
勢いあまったゼゥも釣られて外に飛び出して、同時に扉が閉じられた。
「ぁぅあわわっ。下がるなら下がるって言ってから下がりなさいよぅ」
 弾みで空中で姿勢を大きく崩し、位置を見失って墜落寸前になるもなんとか復帰。小さく悪態をつきながら、絡まったツインテールを指で弾いて常態に戻しつつ、
望レーメの視線の高さまで浮上してくる。

「んで、いったい何事なんだ?」
「そこに書いてあるじゃない。読めないの?」
 びし、と扉の落書きを指差すゼゥ。2人釣られて紙を見る。何度見てもどうみても落書きである。
「……何これ」
「立入禁止って書いてあるじゃない」
 読めて当然みたいな語調で言い返してくる。どう答えればいいものかと少し悩んで、直裁に答えることにした。 
「いや、クリスト語は読めないんだけど」
「――あ」
 沈黙。やっちゃったという表情。やっぱクリスト文字だったんだと当て推量での正答に一安心の望。
 一方のゼゥは恥ずかしさに顔は瞬間沸騰、瞬で空中旋回し扉の前に飛び行くや、張り紙を両手でびりりと破り捨てた。
 空中で起用に地団太踏んで照れ隠しとばかりにひと叫び。
「だっ! だってっ! あんなたくさんの表意文字っ、1個1個覚えられるわけないじゃないのっ! だからついゼゥたちの言葉で書いちゃったのよ文句あるっ!?」
 うなる。しかしいくらあがこうと正当化不能なうっかりである。レーメはにへらと良い笑みを浮かべているが望は笑う気になれず、哀れを催して手を差し伸べる。
「……書き直してやろうか?」
「うー…………お願い」
3283/20:2007/09/16(日) 15:24:31 ID:Qky9ntrD0
「これで良し、と」
 扉に、画用紙一杯にでかでかと書かれた立入禁止を貼り付けて、これで良いかとゼゥに問う。
こんなの書けるわけ無いわよとぶつぶつ言いつつ肩を落としているゼゥ。望をちら見てぽそりと一言。
「……ありがと」
「誠意が足りんぞー」
「まぜっかえすなよレーメ。ところで、どうして立入禁止なんだ? 中で何かやってるのか?」
 また話を脱線させかけたレーメを抑えて、やっと当初の疑問に立ち返る。ゼゥは落ち着き無くふわふわ漂いながらそれに答える。

「おねぇちゃんが体調不良で寝込んでるの。なんていうんだっけ。めんかいしゃぜちゅ
 面会謝絶中、だから、誰も入ってこないように張り紙しておいたわけ。読んでくれなかったみたいだけど」
「読めないものを書いておいて何を言う」
 一端噛んで言い直したのに思わず吹き出しそうになり、そうしたらきっとまた話がこじれると予測してなんとか堪えた。
ゼゥの発言の一部を聞きとがめて、強い語調で問いかける。
「待て、面会謝絶じゃと? ミゥはそんなに悪いのか?」
「寝かせてるだけで大丈夫なのか? ヤツィータあたりに見てもらったほうが」
 2人の問いかけに、しかしゼゥは何言ってんのかねこの人たちはとでも言いたげな表情を浮かべ、ひとつ鼻で笑って答える。
「いーの。あんなエセ医者に見せなくても、部屋には、ちゃんと医療系機器も運び込んであるんだから。薬飲んで、ゆっくり寝てれば治るよ。
 あんたたちとは種族違うんだから。おねぇちゃんの病気がどんなのなのか、ヤツィータが診たってまともに判断できるわけないじゃない」
 そりゃそうだな、と頷く2人。外見は同じように見えても中身は色々違うわけだし――とまで考えたところで、揃って顔を少し赤らめる。
329名無しさん@初回限定:2007/09/16(日) 15:24:44 ID:GSJAvpYd0
    _
  ,'´ ヘ ヽ
 ノ((从ハ从
  イノ! ゚ヮ゚从    連投支援
  と ) 乂 )ρ
   )|ノ弋」 宣
  ん~しソ
3304/20:2007/09/16(日) 15:25:47 ID:Qky9ntrD0
「何赤くなってんのよ」
「いや。別に。
 えー、じゃ、せめてお見舞いくらいさせてくれよ」
「だから面会謝絶だって言ってるでしょー。さっき寝付いたところなんだから、お見舞いなんかで起こさないでくれる」
 けんもほろろに断られた。ゼゥはいつの間にか扉の前に移動して、仁王立ちに構えている。
 絶対に通すもんですかという気迫が目に見えるほど漂って――実力行使の準備に入っているようにすら見える。

「ああ、うん、そうだな。それじゃ別のところに行くことにするよ」
 妙に強硬なところが気にはなったが、言っていることは正論である。別にわざわざ起こすほどの用もないわけで、
なら元気になってから快気祝いに何か持ってこよう、と考えた望だった。
「そーして」
 けれどゼゥはまだまだ臨戦態勢、一歩でも近づけば噛み付いてきそうな様相だ。この分だと後で氷菓子屋を訪ねてきた連中は――っと。
「あ。ところで、ルゥはどこで店開いてるか教えてくれないか? このパンフだとここになってるんだけど……ミゥが寝てる横で店やるわけにいかないもんな」
「そゆこと。えーっと、おねぇちゃんが店員やる予定だったどっかの模擬店で一緒にやることになったって言ってた。どの店かは知らないよ」
 ミゥの店員姿じゃと? それは見てみたかったな、というレーメの思考が伝わって、まったくだと同意を返す。まぁとりあえず、のんびり回ってみるか。
「そっか。それじゃ適当に探してみる。んじゃな」
「はーい。今日はもう来なくていいからね」
 それぞれに反転。ゼゥはよっこいしょっ、と扉を開けて、中に戻り、また閉めようとして、そこで望がふと気付く。
「てか、鍵閉めとけば良いんじゃないか?」
 またしても沈黙。扉の動きも硬直。数秒の後、うがー、なる奇声が廊下に響くのだった。
331名無しさん@初回限定:2007/09/16(日) 15:27:03 ID:iPs46RzkO
支援
3325/20:2007/09/16(日) 15:29:35 ID:Qky9ntrD0
「お帰りなさいませ。ご主人様ー」
 ウェイトレスたちの合唱も高らかに、また1人の客が店内に迎え入れられた。入ってきたのは我らが生徒会長だ。
 連れはおらずただ1人、朝から立て続くあれこれの雑事処理に、少し疲れた様子である。
 喫茶悠久はただお昼時というだけではない盛況振りだ。そろそろ店の評判が学内に知れ渡りつつあるものか、店内は男子生徒で半ば埋まっている。
 忙しそうに立ち回るメイド姿の女生徒たちと、その姿にぽぉっとなっている男子の群れ。そんな店内をほほうと眺めつつ、窓際の席に腰掛けた。

「あら、斑鳩じゃない。休憩?」
「そ、お昼どきだしね。この後はのぞみんのライブ見に行って、それからはまたあれやこれやの後始末よ。タリアのほうはどんな調子?」
 備え付けのメニューをぱらぱらとめくりながら、接客に出てきたタリアと会話に興ずる。朝から店内で走り回っているタリアの方も、
かなり疲れた様子である。主に精神的に。
「最悪。こんな店だって知ってたら手伝いなんて受けなかったわ。男どもの視線が気になって仕方ないったら」
「でもそれって、それだけ似合ってるってことじゃないの? なんなら変わってあげようか。1人さびしく雑務やってるよりずっとマシそうだし」
「もう、そういうの苦手だって知ってるくせに。いいわよ、どうせもうちょっとで交代だから。ところで注文は? 早くしてよ、こっちも忙しいんだからね」
 接客態度がなっていない、と言うのは野暮というもの。このつんけんした態度にこそ惹かれて集まる倒錯男子もいるのである。
 今も2人組が、タリアを指差しなにやらにまにまと笑っているところだ。会話内容も僅かに届く。冗談交じりにタリアの話題。
3336/20 支援感謝:2007/09/16(日) 15:31:44 ID:Qky9ntrD0
「そうねー、ホットケーキとアイスコーヒー。それにあなたのスマイルを1つ」
 にんま、とその2人組よりよほどいやらしい笑顔でタリアに告げる。うなり声。作り笑いもあからさまに、かしこまりましたと叩きつけるように答えて、
足早に裏手へ去っていく。
 見た今のツンっぷり。あれデレさせてみたいと思わね? ばっかお前じゃ高嶺の花、俺に譲っとけ。んだとこのやろ、などという不毛な会話が沙月の耳に届く。
 まーデレとまでは行かないまでも、もう少しは余裕持った方が良いわよね、と内心思いつつ、注文が届くまでの時間つぶしにと、店内をぐるりと見渡してみる。
 忙しく歩き回っている数名のウェイトレス。皆少し疲労気味か。綺麗に飾り付けられていたはずの店内も、昼時ともなれば多少そこらが取れたり汚れたりして、
少し精彩がなくなっている。
 と。

「あれ、おーい、望くーん」
 入り口のところに見慣れた姿が1つ。頭に体長18cmの少女を乗せて歩いている輩が、2人も3人もいるわけがない。
 どうも予備知識なしで入ってきたらしく、店内の様子と出迎えるウェイトレスたち――ユーフィー可愛すぎ――の姿にかなり動揺している様子である。
「先輩?」
 視線が絡まった。ぱたぱたと手を振ってみる沙月。相席してよーと誘いの声。瞬間望を襲う羨望と嫉みの視線。いやそれって凄く今更じゃない?
「あ、席あんまり空いてないんで、良ければ相席でお願いします。良いですか? それではご案内いたしますね」
 ユーフィーがどうぞー、と先導して望を席までご案内。タリアと違って律儀である。ぴこぴこゆれる頭の羽根飾り。
かなり際どい制服姿が、幼げな容姿と良いミスマッチを展開している。

「はぁい望くん。ユーフィーも元気そうね?」
「はい。こういうのは初めてですから、すごく楽しいです。沙月さんはもうご注文されました?」
「さっきタリアにね。はいメニューね。私はホットケーキだったから、望くんは別のにしてほしいなー」
「勝手に人の注文制限しないでくださいよ」
 苦笑しながらメニューを受け取り、開く。頭上のレーメにも見えるよう心持ち高く掲げて、ぺらぺらとめくっていく。
 ふんふん、と頷きながら吟味していくレーメ。メニューに並ぶ色鮮やかな甘味類の写真たち。どれもこれもおいしそうに見えて、うぬぬとうなって悩み出す。
3347/20:2007/09/16(日) 15:32:56 ID:Qky9ntrD0
「ところで、探してたんですよ先輩」
 こりゃ時間かかりそうだなと見極め、自分の注文を決めてから沙月に話しかけた。 
「ん? 何か用――もしかして一緒に回りませんかってお誘い?」
「違いますって。……ルゥの氷菓子屋がどこに行ったのかってずっと探し歩いてたんです。先輩なら知ってるはずだと思って、

生徒会室とか行ってみたんですけど」
 沙月の目がきらりと輝いてすぐに消える。なーんだとつぶやいて、ふと首をかしげた。
「ルゥの氷菓子屋って……場所変わったことアナウンスしたはずよ。校内放送で」
「え、そうだったですか?」
「そうですよ、望さん。お祭りが始まってすぐに、いくつかアナウンスあったじゃないですか」
 注文待ちでもにこにこ笑顔なユーフィーが言う。あちゃ、と苦笑して望、完全に聞きそびれてました、と謝った。

「それじゃ、移転先はどこに?」
「ここよ」
 こともなげに答えて、ほら、と指差す先には、見慣れた青い結晶体がふわらかふわりと飛んでいる。
「元々はミゥがここの手伝いする予定だったんだけど、風邪じゃしょうがないからね。
代わりにルゥがこっちに回って、氷菓子をメニューに加えて、ってことに急遽なったってわけ」
「はい。ルゥさんの氷菓子って結構人気なんですよ。私も後で頂こうかなって思ってます」
 にこにこと元気良くさりげなく宣伝誘導。うむ、と頷いてレーメ、メニューから顔を上げて注文を告げる。
「では、吾はその氷菓子をもらおうか。後は望から少しずつ分けてもらう」
「それじゃ俺はこのサンドイッチセットとカフェオレ、それに氷菓子も。折角だしな」
「はい、分かりました。それではしばらくお待ちくださいませー」
 笑顔のままに一礼し、とととと走って裏手へ急ぐ。実に愛らしい姿である。反面混み合っている店内の、
人の隙間をかいくぐって行く身のこなしは、やはり只者ではないと感じさせた。
3358/20:2007/09/16(日) 15:35:58 ID:Qky9ntrD0
 注文が届くまでの待ち時間、世間話に興じる3人。沙月がゼゥのうっかりの件を聞いてけらけらと笑っている。
「っははははっ、ゼゥらしいわ。それは生で見たかったわねー」
「ところで、ミゥは本当に大丈夫なんでしょうか?」
「もし大事なら、他の3人も部屋に立てこもって全力看病体勢取ってるわよ。クリストたちの医療技術ってすごく発達してるからね。
 寝てれば治るっていうんなら間違いないでしょ」
 ちう、と先に届いたアイスコーヒーを、ストローで吸い上げる。店内をきょときょと見渡していたレーメが、やっときたな、と手を振り迎える。
 天然猫耳ウェイトレスのナーヤと、良く見ればきちんと制服着用のルゥの2人が、お盆を手にやってきたのだ。

「待たせたな、のぞむ、さつき。注文の品を届けに来たぞ」
「ん。いらっしゃい。注文ありがとう、2人とも」 
「うわ何ルゥ、ちゃんと衣装も一緒なんだ」
 感嘆の声。思わず凝視する3対の目。ナーヤのそれと見比べれば、寸分たがわぬ縮小版と分かる。
 サイズを考えれば間違いなく手製なわけで、なんというか無駄に凄まじい手練である。
「ん。昨日手芸部の人が、一晩かけて作ったぞって叫んでた。本当はミゥが着る予定だったから、私だと少し布が余って。朝から合わせるのにちょっと苦労した」
 似合う? と聞いてくるり一回転してみせる。似合ってる似合ってると答える声。服装ひとつで見た目の印象がまるで変わる典型例だ。
 結構露出度が高い服のはずなのだが、けれど普段着より布面積が遥かに多いというのがある意味問題ではあるが。
336名無しさん@初回限定:2007/09/16(日) 15:36:43 ID:GSJAvpYd0
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3379/20:2007/09/16(日) 15:38:39 ID:Qky9ntrD0
「ところで、氷菓子とはどれなのだ? どんなものかさっきから気になって仕方ないのだが」
 望の前に置かれた皿には、ベジタブルサンドとハム卵サンド、それに分厚いカツサンド。3点セットで1人分。
 早く吾の分を切り分けてくれ、と急かしたかと思えば、今度はそんなせりふをルゥに言う。
 食い意地ばっか張ってるな、と望は僅かに思い、とたん髪の毛がぐいと引っ張られる。
「く。食い意地ではないぞ、これはルゥの友人としての気遣いじゃ! ルゥが作ったものがどんなものか、早く見てみたいのは当然であろう!」
「いて、痛いって、だから人の心勝手に読むなって!」
 いつものやり取りに笑う他3人。笑いながら、ナーヤが盆からコップを取ってテーブルに置いた。中には薄く色のついた水が一杯に入っている。

「この水はなんじゃ?」
「うむ。わらわとルゥが3日かけて開発した果汁エキス入りのものべーのおいしい水だ。
 5種類の果実から搾り取った新鮮天然果汁をベースに、何種かの調味料で味付けしてあるのだぞ」
「本当なら私1人で作れるんだけど。ここだと結晶体から出られないから。誰かに手伝ってもらわないと」
 うむと頷いたナーヤが、同じく盆の上に乗せてあった割り箸とつまようじを取り上げる。
「あ、なるほど。それをこの場で割り箸ごと凍らせて引っ張り出すんだな。アイスキャンデーみたいなもんか」
「ん。私たちの夏の定番。でもただ凍らせるだけじゃない……それだとコップが破損する」

 ん。と集中。マナがエネルギーに変わり、外界へ干渉を始める。少しの間。コップの中の色付き水が浮き上がり、空中で球形を取る。
「どんな形にする?」
 ルゥがそう問いかける。意味を把握できずきょとんとする2人。言葉が足りなすぎるぞ、と苦笑したナーヤが横から補足に入る。
「ルゥ、それではさすがに理解できまい。つまりじゃな、ルゥは水気を自在に操れるわけじゃ。
 なら、この水の塊も自由自在な形を取らせることが出来る。のぞむが望む――洒落ではないぞ? ――形を作り、それを割り箸に突き刺す形で固定して、凍らせれば」
「あぁなるほど、そうしたら好きな形で食べられるわけか。遊び心があって面白いな」
 レーメともども納得。さてどんな形にしてもらおうか?
33810/20:2007/09/16(日) 15:40:06 ID:Qky9ntrD0
「吾の分はそのつまようじでじゃな?」
 考えている望を置いてレーメが聞く。頷くルゥ。先に作る? という問いに頷き返して、にやりと笑みを浮かべて形をリクエストする。
「では小型のノゾムを所望するのだ」
「な」
「ん」
 人間組は揃って絶句し、ルゥは小さく再び頷いてまた少し集中。水の塊から僅かな量が分離し、小さな小さな望の形を取っていく。
 形の微修正を少しして、ナーヤが持っているつまようじへと移動。ルゥがもひとつん、と気合を込めると、水が凍結して固定される。
「できた」
 満足げにさらにもう1つ頷く。絶句したままの3人をしり目に、レーメが飛び立ってナーヤの手から小さな氷望をひったくる。感嘆の声。
「うむ、見事じゃルゥ! ノゾムが見事に再現されておるな」
「ん。モデルが目の前にいるから、楽だった」
 つまようじには見事な100分の1スケールの望の姿。何故か腕をびしりと立てた、妙な決めポーズを取っている。
 人の目では小さすぎていまいちわかりにくいが、レーメは大満足の様子である。

「それ、食べるの?」
 微妙に羨望こもった視線で沙月が問うた。無論じゃ! と即答で返す。
「頭の先から足の先までしゃぶりつくしてくれる。んっふっふ、どうじゃーノゾムー、吾にかじられる気分はー、ふふふっ」
 前から後ろから、上から下からじっくりと造形を見定める。早く食べないと溶けてくるよ、とルゥの忠告が入り、では。と気合一閃、頭からぱくりと口内へ。
「ほむほむ。ほむ。うむ。自然な甘さが良いのぅ。良い仕事じゃ。何よりノゾムを丸かじりにしているというこの感覚がたまらん!」
 満面の笑みでもむもむとほおばる。うらやましそうな目の沙月とナーヤ。目を伏せて怒り気味だった望、不意に決然と顔を上げてルゥに自らのオーダーを下す。
「ルゥ、水の量さえ足りればサイズも自由だよな?」
「ん。大きければ大きいほど疲れるけど、私の等身大くらいまでなら、なんとか」
「なら」
 すぅ、と息を吸う。本当に言うのかと自分に問い。いいともやっちまえと脳内からの返信。よし。
33911/20:2007/09/16(日) 15:41:57 ID:Qky9ntrD0
「レーメの形を。等身大で。材料が足りなければ補充頼む」
「なんじゃとっ!?」
「俺を食いながら抗議か!? お前がそういうことするなら俺もやり返すまでだ!」
 うぬ、と反論に詰まる。想像。自分と同じ形をしたものがノゾムにかじられる光景。望以外の全員が揃ってその光景を幻視する。瞬時の幻想。顔色悪化。
「いや、ちょっといい望くん。それってさ」
「のぞむ。落ち着いて考えるのじゃ。その光景は」
「おそろしく変態っぽいぞ、ノゾム」
 合唱3連。ジト目の3人。今度は望が言葉に詰まる。大きさにしておよそ18cm、おそらくに口の中には入りきるまい。つまり外からぺろりぺろりと舐めていくというわけで。
「うわぁ」
 顔を青くして手で目を伏せた。あまりの光景に頭痛を発したらしい。それは間違いなく、全校生徒から変態扱いされても文句は言えぬ絶望的な姿である。

「ん……こんなもんかな」
 その間にもルゥは細かく微修正を行って、それを完成させている。集中していたのか額には少し汗。そして集中切らさないために周りの話も聞いていなかったらしい。
 その甲斐もあってか、宙には見事な水製等身大レーメの姿。完璧な出来ばえである。実際に見るとインパクトはさらに増してダメな幻視もより現実感を増す。
「いや。ごめん、ルゥ、そのオーダーは取り消しで。うん。すまんレーメ、冗談が過ぎた」
 そう、と何事も無く答えてもとの球に戻すルゥ。一気に疲労した望は、しばらく無言で天井を見上げていた。 
 
「で、結局普通の棒状なのね」
「他にどんな形も思いつきませんよ……っていうか」
 つい、と、忙しく立ち働いているナーヤとルゥのコンビを指差す。物珍しさが気を引くのか、氷菓子は確かに人気のようで、あちこちで頼まれているらしい。
 けれど、注文者の表情と顔色を伺っていれば、望と同じような思考経路をたどってげんなりしているらしい男子生徒がそこかしこに見受けられる。
340名無しさん@初回限定:2007/09/16(日) 15:43:11 ID:GSJAvpYd0
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34112/20:2007/09/16(日) 15:44:22 ID:Qky9ntrD0
「んー、さすがに頼む度胸のあるバカはいないみたいね」
「ここにいるじゃないですか1人」
「誰がバカじゃ!」
 レーメは既にすっかり舐め尽してご満悦。今はテーブルの上に直座りで、切り分けてもらったサンドイッチに舌鼓を打ちながら、そんな怒りの抗議をする。
「女子が男子のを頼む分にはまだ良いと思うんだけどね。その逆は……」
「さすがに、いくらなんでも、無理ですね。精神的に」
 あはは、と渇き気味の笑い2人。はぁ、と続いてため息1つ。賑やかな店内に入ってくるまた新しい声。聞き覚えのある声に、ふと入り口の辺りを見た。

「うわ、混んでますね。えーと、ルゥはどこにいるでしょうか?」
「ルゥねぇー、どこー」
 赤と緑の結晶体が、行き来する人々の邪魔にならないようにと2mほどの高さまで浮上して、青姉を探して移動している。
 間悪くルゥはつい数秒前に裏手に戻っていったところ。店内を探して見付かるはずが無い。
 沙月が高く手を上げて、ぱたぱたと振って合図する。向こうもそれに気付いたか、3人のほうへふわりと飛んでくる。途中すれ違ったタリアとエールの交換。

「はぁい2人とも。時間からすると、独演会終わらせてきたところかしら?」
「こんにちは、沙月さんに望さんにレーメちゃん。さっき終わったので、ルゥとお昼一緒にしようと思って呼びに来たんです」
「でも何この人だらけ。もしかしてルゥねぇのお菓子効果?」 
 テーブルの中央付近に並んで着陸、固定。ポゥはなぜだか妙に表情暗く、いつも以上に覇気が無い。
34213/20:2007/09/16(日) 15:45:33 ID:Qky9ntrD0
「む、なんだ、もう終わってしまったのか? もぬもぬ」
 もにゅもにゅとサンドイッチの切れ端をもぐつきながらレーメが言う。見に行きたかったのだがなぁ。
「午前の部最後の出し物だって言ったじゃないですか、もうレーメちゃんってば忘れてたんですね?」
「学園中回って食べ歩きしてたからな。食い意地のせいだ、許してやってくれ」
「食い意地ばかりなのはノゾムも一緒ではないかー!」

「でも忘れてたんだよね?」
 ワゥの突っ込みが入り押し黙るレーメ。俺は何も聞いてないからな、と我冠せずな望。しょんぼりしているのは緑の子。まぁ

まぁ、と仲裁に入るのは生徒会長の役目である。
「でもレーメ、忘れてたならちゃんと謝らないと、ね」
「うむ……すまなかった、ポゥ」
 さすがに食い手を止めて謝る。ポゥは仕方ないですね、と微笑して頷いた。
「代わりに、今度また一緒にお風呂入ってくださいね?」
「うむ。それくらいで良いのなら何度でも入ってやるぞ」

「それで、独演会はどうだった? うまく行った?」
 ホットケーキにフォークを突き刺して沙月が聞いた。今度はポゥが気まずそうに目を伏せ、ごまかし笑いをあははと小さく。
「途中まではみんな楽しそうに聞いてくれてたんだけどねー」
 とワゥが言いはじめる。彼女は今日の学園祭で特に役柄無しの1日自由行動組。朝から体育館にずっと篭って、ライブや演劇鑑賞を楽しんでいた今日のここまでである。
「って、話しても良いかなポゥねぇ?」
「自分で言える元気ないですよぅ」
 そんなやり取りに、これはただごとではない何かがあったものと確信した人間2人と神獣1人、食べる手を止めてワゥの話に聞き入った。
34314/20:2007/09/16(日) 15:49:59 ID:Qky9ntrD0
 ポゥの独朗会は体育館の出し物、午前の部の最終組に入っていた。観客の中には神剣組からカティマとヤツィータの姿もあり、
全体的にも意外なほどに客足が良く、ポゥはがちがちに緊張してしまっていた。
「最初はもうほんとに縮こまっちゃっててさ、つっかえつっかえやっとこさ、って感じの立ち上がりだったよ」  
 それでも、小さい体で頑張ってます、という姿に観客が共感。頑張れ頑張れと暖かい声援を受け、だんだんと硬さが取れてきた後が凄かった。
 元々読書家で語彙が豊富なポゥである。ある程度乗ってきてからは手持ちの引き出し全て使っての名調子を展開していった。

 マナの結晶樹が林立する古代煌玉の世界の様相。古クリストの生活感。猿人の元へと向かう若者が直面した、さまざまな難問難題困難など、
物語を巧みに明快に語り出し、表現し、活写してのけた。
「多分、同じことやれっていわれてももう二度とできないと思います……」
 観客もすっかり物語世界に取り込まれ、終盤猿人の住処から、囚われの彼女を救い出すシーン――結局ハッピーエンドにしようよということになった――では、
共感のあまり泣き出す女生徒も現れる始末。

 文句なしの大成功かと思われたが、ラストシーン、2人が永遠の愛を誓うなる、本来のエンドとは違う創作シーンに突入したところで、
しり上がりに調子を上げていたポゥの表現力が、ついに臨界突破の大暴走を開始。
 生々しくかつ濃厚に、2人のラブシーンを1からじっくり語りはじめて、聴衆揃って大困惑、会場は大混乱。
 全員揃って顔真っ赤、別の意味で泣き出す子もいれば、前かがみに会場を逃走していく男子生徒の姿もあったり。
 ついに物語完結前に、早苗先生他数名が演壇に突入し、ポゥを説得退場させるという、とてつもない幕切れを迎えることになったのだった。
34415/20:2007/09/16(日) 15:52:22 ID:Qky9ntrD0
 もはや返す言葉も無く絶句の3人。責める訳にもいかずさりとて褒めるのも難しく、肩を落としてしょんぼりしているポゥの姿がなおのこと哀愁を誘う。
「まぁそういうわけで、成功したのか失敗したのか良くわかんない結果になっちゃった、ってこと」
「はぅぅ……途中から自分で何言ってるのかわかんなくなっちゃったんですよぅ」
 要するに、緊張は解けていたのではなくむしろ逆。緊張の極でパニックに陥っていたけれど、周りにはそうと見えていなかっただけだということか。
 揃ってそう察し、3人同時に大きなため息をついた。

「なんていえばいいのか……言葉が浮かばない」
「うむ……まぁ、ご苦労じゃったな、ポゥ」
 沙月は無言のまま、ぽんぽんと緑の結晶体を、頭をなでるように撫でてあげている。
「うう、ありがとうございますレーメちゃん。沙月さん。あ、でもですね、おかげで冊子は全部捌けてくれたんですよ」
「冊子? ああ、原作を書いてあるほうね?」
「はい。一応私の目的は果たせたのかな、って思います」
「当初の予定とは随分違っちゃったけどねー」
 ワゥが混ぜ返して、立ち直りかけたポゥがまたへこむ。余計なこと言うでない、とレーメが叱責する。
「うん……ごめんポゥねぇ。でもさ、そんなにへこんでもしょーがないよ、終わっちゃったことは取り返せないんだから、さ!」
 励ます。うんうん、と他3人も同調する。おかげでまた少し、ポゥに立ち直りの気配が見えてくる。

「ん? 2人とも、来てたんだ」
 そこにふらりとルゥが飛んできた。今回はナーヤを伴っていない。制服は着たままだが、表情は接客中だった先ほどと比べて僅かに弛緩している。
「あ、ルゥねぇ。うん、一緒にお昼食べようって誘いに来たんだよ。忘れてた」
「そうなんだ。ん、今から休憩だから、部屋に戻ろうか。ポゥも?」
 頷く。ポゥも頷く。何か元気なさげな姿に小首を傾げるが、後で聞けばいいかと思い直し、じゃぁ行こうと妹2人に声かける。
345名無しさん@初回限定:2007/09/16(日) 15:53:18 ID:GSJAvpYd0
            、, _
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34615/20:2007/09/16(日) 15:54:08 ID:Qky9ntrD0
「行くの? なら3人とも、ミゥにお大事にって伝えておいて」
 俺からも、と吾からも、という声が2つ直後に重なる。うん、と答えるのはルゥ。浮き上がっていく赤と緑。何食べようか? 途中で適当に考えよ、などという会話。
「それじゃ、3人ともまたね。私たちは体育館で希美ちゃんのライブを見に行くつもりだから」
「分かった。ボクも行くつもりだから、また後でね」
「約束忘れないでくださいねレーメちゃん♪」

 手を振って別れる。飛んでいく3人。途中ナーヤとすれ違ってまたエール交換を行っていく。さて俺たちも食事終わらせて、と残りのサンドイッチに手をつけようとして、
「しまった」
 コップに突っ込んでおいた氷菓子が、色々話をしているうちにすっかり溶けてしまっていたことにようやく気付き、やっちまったと舌打ちひとつ。
「あーあ、もったいないのうノゾムー」
「追いかけてってまた凍らせてもらえば?」
 少し考える。それもなんだか情けないしなぁ。……いいや、飲んじまえ。
 コップを手に取り傾ける。口の中に溢れるさわやかな甘み。
「……これはこれで結構いけるな」
「何か間違っておるような気がするのは吾だけか?」
 良いじゃん。と答えて残り一気に飲み干した。
34717/20 16飛ばしたOTL:2007/09/16(日) 15:57:12 ID:Qky9ntrD0
 昼の日差しもカーテンに阻まれて届かない。薄暗い部屋の中、扉が音もなく少しだけ開いてすぐ閉じた。
 毛布を二つ折りに重ねて、その下で埋もれるように眠っている金髪の娘。その傍らにゼゥが静かに近寄って、
手に持った水入れがから布を取り出し、ぎゅっと何度か絞ってから、額の上の温まったそれと取り替えた。
 冷たさにミゥの体が反応する。目じりが微動して、開く。

「あ、ごめんおねぇちゃん、起こしちゃった?」
「ゼゥ……おはよう。もしかして、ずっと見ててくれたの?」
「うん。だってみんな出てっちゃうんだもん。あ、まだ寝てなきゃだめだよおねぇちゃん」
 ひとつふたつとまたたき。半身を起こそうとして、ゼゥが慌てて止めに入る。
「もう、そんなにひどい風邪じゃないんですから、心配しなくても大丈夫ですよ。せっかくのお祭りなのに。遊びに行かなくて良かったの?」
「うん。だっておねぇちゃんが心配だもん。遊びになんて行ってられないよ。行っても心配で楽しめないよ。ゼゥは、おねぇちゃんがいないとだめなんだよ」
 だから、ちゃんと治るまで寝てなきゃだめだよ、と起き上がろうとする肩を少しだけ抑える。ゼゥの気遣いに従って、また身を横たえた。

 額に乗った冷たい布に手を当てて、ゼゥの看病に感謝の言葉を贈ろうとする。けれどそこでふと気がついた。
「ゼゥ、もしかして外に水を汲みに行きましたか?」
「え、ん……うん。行ったよ。お風呂のは温くて使えないし……」
「もう、駄目じゃないですか。外に行くなら結晶体に乗っていかないと。何かあったらどうするの?」
 感謝は一転諫言に。他の3人が揃って出て行っている以上、水を汲みに行ったということは結晶体に乗らずに外に出たということだ。
 今度こそ半身を起こして、じっとゼゥの目を見る姉。心持ち小さくなって上目使いに姉を見るゼゥ。
34818/20:2007/09/16(日) 15:59:25 ID:Qky9ntrD0
「でも。……おねぇちゃんが心配だったからっ。それで」
「でも、です。良いですか? ゼゥがわたしを心配してくれるように、わたしもゼゥが心配なんです。
 水を替えてくれなくてもわたしは問題ないですけど、外で何かあったらゼゥが大変でしょう?
 ね? 気持ちは良く分かりますから怒りませんけど。でも、外に出るならちゃんとしていかないと」
 ね、と諭して、頬を右手でさらりと撫でる。ゼゥは身をぴくりと縮こませ、小さくはい、と返事をした。

「もう、そんなにしょんぼりしないで」
 ミゥは今度はにっこり笑って、妹の肩をそっと抱き寄せた。ぁぅ、と小さく何かささやいて、ミゥの風邪がうつったのかというほどに顔を赤く染める。
「ゼゥがわたしのことを心配して、そうしてくれたのは分かってますから。それには凄く感謝してるんですよ」
 ゼゥの顔はさらに紅潮して、言葉もなく嬉しそうに恥ずかしそうに頷くばかり。そんな妹をミゥはさらに引き寄せて、きゅっと抱きしめる。
 汗まみれの体がぺたぺたと肌に張り付くけれど、そんなもの全然気にならないくらい、ゼゥは有頂天の心持ち。
抱きしめ返していいものかどうかの判断すらつかずにいる。 

「だから大丈夫だから。おねえちゃんは、ゼゥに新しい世界を見つけてあげるまで何とかなったりしないから」
「おねぇちゃん?」
 会話の潮が変わったことを察して怪訝な声を上げる。ミゥはさらに力を込めて、ゼゥの肩に額を当てた。
「ゼゥは、わたしのことなんて心配しないでいいの。それより自分を大事にしていて。きっとわたしが、あんなものが無くても飛び回っていられる、
広い世界をきっと見つけ出してみせるから。
 だから。それまで待っていてね。ゼゥ。わたしは絶対、最後まで諦めたりしないんだから」
 最後は涙声。ゼゥに体を預けて少しだけ肩を振るわせる。ゼゥに語り聞かせるという雰囲気ではなく、独り言のような言葉の羅列。
 ゼゥはやっと自分のするべきことに気付いたように、両腕をミゥの背中に回した。
 言葉の真意は良く分からないけれど、何か大好きなおねぇちゃんがとても小さく見えて、そうするべきだと思ったのだ。
34919/19:2007/09/16(日) 16:01:25 ID:Qky9ntrD0
「あーっ! ゼゥ何やってんのっ!」
 抱き合う2人の背中に、突然別の声がかかった。声色は末妹のもの。いつの間にか扉が開いていて、残る姉妹3人が戻ってきていたのだ。
「あ、ワゥ」
「あ、じゃないよ! ゼゥずるい! ミゥねぇー、ボクもぎゅってしてよーぅ」
 大急ぎで結晶体から降り、2人のところへかっ飛んで行く。ねーねーと、ミゥの横手についておねだりの声。ゼゥはどっかいけーと拒絶の声。
「ワゥちゃーん? おねぇちゃんで良ければいくらでもぎゅってしてあげますよぅ?」
「や」
 一刀両断である。道中で大分立ち直っていたポゥがまた別方向にへこんで、その崩れ落ちた頭をルゥがなでる。
 ふふっと笑ってミゥ、ゼゥの背に回していた腕を解き、期待に満ちた顔をしたワゥの方に体を向けた。
「残念だけどワゥ。これはわたしの看病をしてくれたお礼なんです。だから、今日はあなたには無しなんです」
「えー」「べー」
 不満のうなりと馬鹿にしたように舌を出す顔。たちまち2人はにらみ合い、どちらともなく両手を伸ばしてほっぺたの引っ張り合いに突入する。
 
「ミゥ、もう体は大丈夫なの?」
「まだちょっと本調子じゃないですね。でも今日一日寝ていればなんとかなると思います」
「ん。お昼ごはんはどうする? いろいろ貰ってきたけど」
「脂っこくないものだけにしておきます」
 むにー、うにー、と涙目になりながら子供の喧嘩を続ける2人はすっかり放置されて、年長組の2人が机の上に食べ物を並べていく。笑い声。涙声。
 賑やかにじゃれ合う4人の妹たち。外から僅かに聞こえてくる活気に溢れた喧騒。
 ミゥは暖かな布団の中で、安らいだ時間を噛み締めていた。
350名無しさん@初回限定:2007/09/16(日) 16:05:04 ID:LUEupVhJ0
わお
351終わり:2007/09/16(日) 16:05:47 ID:Qky9ntrD0
おお 20の大台に乗らずに済んでよかった……w 

残り半日の話はなしでつ。
次は未来の世界でのごたごたが終わった後。ナナシを一行に加えて小さい子連盟の人数が増えたところのお話を1つ。
ではまた
352名無しさん@初回限定:2007/09/16(日) 16:09:36 ID:GSJAvpYd0
           _
         ,,' ´, 、ヽ
        〃/ノノハリ
        | jノ| ゚ヮ゚ノ|
        |《} j=\=)i〉   >>351 お疲れ様でした。
          "b/ヲ:|:ヘd
             ~ヒヒ!~
353名無しさん@初回限定:2007/09/16(日) 22:09:08 ID:ySmJxB7g0
>>351
GJ、そして大作乙です。
投下を躊躇われている残りの半日も、
日を改めて投下してもらえると嬉しいです。
354227:2007/09/16(日) 22:18:30 ID:ySmJxB7g0
では、自分も短編を1本。
たまには練習の一貫で模擬戦闘とかやってるんじゃないかと思い書いてみました。
注意点
・前半のみ。中後編は加筆修正及び校正中です。
・前中後編、目安として8レス程度。本番は中編以降に入れる予定です。
・例によって触手あり。
・シーン描写については模索中のため地の文多めです。
・NG指定:倉庫
355227:2007/09/16(日) 22:20:04 ID:ySmJxB7g0
――模擬戦のために外出したルプトナとユーフィに、夕食の準備ができたと伝えに行ったときのこと。

ユーフィが触手を伸ばしているのに気づき、前のユーフィとのことをつい思い出してしまう望。
グラスプを使った特訓でもしているのだろうと考えを切り替えようとしつつも
前に、ユーフィに勘違いされたまま、流されるまま身体を重ねた倉庫の蔭の近くだったので
思わず妄想を膨らませてしまう。

深呼吸して、改めて声をかけるが、

「2人とも、そろそろ……」

巫女装束のような戦闘服姿のルプトナに巻きつき――両手首と両脚の付け根を縛り――
ルプトナの大きく形の良い胸と秘泉を刺激しているという、
どう見ても触手プレイと思わず勘違いしてしまうような光景が目に飛び込んできて唖然としてしまう。

「……えと、その……もうそんな時間ですか? 」

それでも、望と目が合って、勘違いされてるんじゃないかと慌ててつつ触手をひっこめるユーフィの様子が、

「ユーフィ、や、やめ……って、もうご飯? 」

誰かに呼びに来てもらえないか頼んでおいたのか、それとも予め聞いていたのか、
妙に暢気なルプトナの様子とはあまりに対照的で笑ってしまうのだった。

夕飯の準備が出来た旨を伝えると、
「……身支度整えてきますから待っててくださいね? 」と、ルプトナを連れて着替えに向かう。

「望さん、ちゃっかり覗いてたりしませんよね…? 」
「ボクはそんなに気にしないけどな〜」
無論覗いてはいないのだが、耳をそば立てると聞こえてくる声と衣擦れの音に思わず悶々としてしまう望だった。
356ユーフィと模擬戦 前編その2:2007/09/16(日) 22:28:33 ID:ySmJxB7g0
――閑話休題

珍しく慌てた様子だったユーフィも、
水筒で持ってきたお茶を3人で飲み、落ち着いた所で仕切り直した頃には、
(頬は赤いものの)普段通りになっていた。

「……続きはご飯の後になっちゃうね。でも……ユーフィとのキスが、デザートか、良いかも。」

ルプトナが、そっと抱きしめ、耳元で囁きながらユーフィをからかう。
その様子は、大きな犬が飼い主にじゃれているようにも見えた。

「ルプトナさん……もう、後でお仕置きですよ? 」

そう言って不機嫌ですと言わんばかりに言い放つユーフィの言葉も、
食事後の『続き』を楽しみにしているルプトナには通じるはずもなく、
思わず苦笑していると、
ふと目と目が合ったユーフィーに
『望さんもいかがですか?』と言いたげな眸で見つめ返されたので、
後のことは後で考えようと、思わずOKしてしまう望であった。
357名無しさん@初回限定:2007/09/16(日) 22:33:34 ID:ySmJxB7g0
前編はこれで終了です。1レスで収まったなぁ…orz
前に投下した243-245となんとなく繋がりを持たせてみました。
他の作者さんの投下も増えると良いなあと思いつつ
習作を書いて比較的マシなものを支援投下する事にした227でした。
358名無しさん@初回限定:2007/09/16(日) 23:34:22 ID:Qky9ntrD0
>353
いあ 残り半日は躊躇ってるんじゃなくて存在してないだけw
359名無しさん@初回限定:2007/09/17(月) 00:22:55 ID:yX+7MJZg0
>>353じゃないけど、勘違いしてた。
削除か、残念w

そして>>354も乙
360名無しさん@初回限定:2007/09/17(月) 12:41:17 ID:dOmY9foL0
>>357
乙です。続きに期待。
361名無しさん@初回限定:2007/09/17(月) 22:26:12 ID:+h+5jJ/lO
ここはエロなしでも投下おk?
それともフルボッコ?
362名無しさん@初回限定:2007/09/17(月) 22:33:29 ID:YV/hTi7s0
レス全部読めばわかるだろ
363名無しさん@初回限定:2007/09/17(月) 22:45:54 ID:0vgpGzgb0
住人全員で熱烈にフルボッコにして歓迎してやるぜ

正直言うと、エロを欲しがってるようにすら思えないぜ!
364名無しさん@初回限定:2007/09/17(月) 23:28:00 ID:HQdhUY520
正直なところ、なるかなの場合エロ分の補完よりも
メインストーリー部分の補完が欲しかったりするわけで
365名無しさん@初回限定:2007/09/17(月) 23:33:58 ID:yX+7MJZg0
>>361
ゲーム本編にエロが少ないから妄想補完したりしようとする人も多いわけで。
流石にフルボッコにはされないだろうけど、あった方が無難w
…マジレスすると、個人的解釈は「あるに越した事はないがなくてもOK」という感じ。
エロなし禁止だとしたら「エロSSスレ」とか書くだろうしなw
366名無しさん@初回限定:2007/09/17(月) 23:49:49 ID:t3f4wVhE0
若いな、>361
俺達は、エロが欲しいんじゃぁ無い

ただ、萌えられればそれだけで……それだけでいいんだ!

って、じっちゃたちが言ってた!
367名無しさん@初回限定:2007/09/18(火) 00:39:38 ID:00S6pQl30
>>366
(・∀・)人(・∀・)
ただ思うがままに萌えればいい。萌えは童貞(ユメ)を裏切らない。

ってばっちゃたちが逝ってた!
368名無しさん@初回限定:2007/09/18(火) 03:30:14 ID:+Spiz2xJO
>>361
むしろエロありのがフルボッコにされそうなのは何故なんだぜ?
369名無しさん@初回限定:2007/09/18(火) 04:13:59 ID:9dUcXhYg0
エロゲネタではあるけど、エロパロ板じゃないからじゃないかな。
俺はどっちでもいいけど。
370名無しさん@初回限定:2007/09/18(火) 04:17:36 ID:uRLvgrb60
エロあろうがなかろうがネタが投下されれば問題ないと思ってるのがここの住人。
だが、いざ投下されると反応が妙に鈍いのもここの住人の特色であるキガスw
371名無しさん@初回限定:2007/09/18(火) 04:25:14 ID:CGx+TmG60
なるかなのキャラを描く練習をしたいので
絵を投下してもいいですか、とか聞いちゃダメですか?
もしオッケーならネタフリがあると非常にありがたいです。
372名無しさん@初回限定:2007/09/18(火) 04:28:12 ID:uRLvgrb60
>>371
どうぞどうぞ。
と言うか、是非是非。
373名無しさん@初回限定:2007/09/18(火) 11:31:45 ID:kFokJU/10
たりあぶるま
374名無しさん@初回限定:2007/09/18(火) 18:52:44 ID:TJk8ti9F0
(=゚ω゚)ノぃょぅ

>365
ごめんね、お母さんエロ無いとモチベーション保てない体質だからどうしてもエロ書いちゃってごめんね
>370
ぜひともクリスト5人娘をry

>359
削除ってか 一応昼〜夜パートの文章もあるんだけど 色々断片的過ぎて使い物にならんのよw
また何かに使えるかもしれんと置いてあるんだけど

で、その置いてある分から一部サルベージして、ひとつ小ネタが出来たので投下
2レス分 文化祭準備中のときのお話
375>370じゃなくて>371じゃったOTL:2007/09/18(火) 18:54:44 ID:TJk8ti9F0
 文化祭前日の夕暮れ時。喫茶悠久の開店準備は最終幕、何人かの女生徒が、明日の料理の下ごしらえをまさに終えようとしているところだ。
「トマト切り終わったぞ」
 ナーヤがボール一杯のトマトを渡す。ほいよー、と受け取って冷蔵庫へ。傍らではワゥが、この土壇場でぶっ壊れてくれたガスコンロの代わりにと狩り出されている。
「いい感じの焦げ目……ってこれくらいで良いの?」
「あー、良い出来良い出来。そんな感じでお願いねワゥちゃん」
「分かったー」
 無論報酬無しではない。今日の内に完成しているクッキーを、いくらか下げ渡すからという条件付きだ。
 ミゥの目もあり張り切るワゥは、頼まれごとをテンポ良く、過不足無くやり遂げている。

「次はどれ焼けばいい?」
 またひとつ作業を片付けて、横にいる生徒に問いかけた。彼女は現在りんごを切り刻んでいるところ。思わずそのりんごに目線が行く。
「えーっと、とりあえず少し休憩しててもらって良いよ。次の準備できたら呼ぶから」
「うん……分かった」
 と答えつつも目線はまな板にのった丸々したりんごに。皮がつるりと剥かれていくのに釘付けになり、真っ二つにされて芯が外される光景にのどを鳴らす。
「ん? ほしいの?」
 じーっと見られているのに気付いた包丁娘がそう聞いた。ちなみに彼女の隣では、ナーヤがとうもろこしをばらしている真っ最中である。
「欲しい」
「でも中から出ちゃだめなんだよね?」
「う……ん」
 ちらりと横目に、ミーティング中のミゥを見る。あけてくれるわけないしなぁ。
376終わり:2007/09/18(火) 18:55:58 ID:TJk8ti9F0
 見るからに未練たらたら物ほしそうな目のワゥに、ここで女生徒少しいたずら心を出し、切れ端をひとつ取り上げて、ほーらほーらと右に左にゆらゆら揺らす。
 それを追いかけてワゥの目線も右左。その様子にくすくす笑う。馬鹿にされてるのを理解しつつも、どうしたって目が離せず、ひとつうーっと唸るワゥ。
 いつの間にかその微笑ましい光景に、周りの皆も気がついたようで、いくつもの視線が2人に集められている。
 ワゥには子猫を見るように優しげな、女生徒にはいたずら好きなんだからと苦笑交じりに。
 と。

「にぅっ!」
 突然横合いから飛び出した手が、掛け声一閃りんごを秒で奪い取った。とうもろこしを踏みつけて、机の上に飛び乗っているのは。
 一同氷結。遠間でミーティング中だったウェイトレス組も呆然。数名はその瞬間を目撃しておらず、何がどうなったのと困惑して周りに問いかける。
「あ」
 両手にりんごを引っ掴んで尻尾をぴんと立てていたその当人は、ようやくここで我に帰る。自分が今何をやらかしたのかを思い返し、みるみるうちに顔を紅潮させて。
「ち、違うのじゃ! これはその、違うのじゃ!」
 何を言おうともはや手遅れ。その姿はまさに猫。ゆらゆらゆられるりんごを見て、思わず本能のままに飛びついてしまったナーヤであった。

 幕
377名無しさん@初回限定:2007/09/19(水) 00:16:30 ID:5mCJrth8O
保守
378名無しさん@初回限定:2007/09/19(水) 14:18:26 ID:borLodcq0
>>376
乙、そしてGJ
ナーヤ…w
379名無しさん@初回限定:2007/09/19(水) 18:53:10 ID:CXjvcHnh0
>>373
ttp://www.uploda.org/uporg1025841.jpg.html

クリストは現在描き中。ディテールがぜんぜんわからない(笑)
380名無しさん@初回限定:2007/09/19(水) 19:15:44 ID:FdOsHdvv0
>379
秒で保存した
タリアもさることながら後ろで(=゚ω゚)ノぃょぅ してる漂う泡にも萌えた

ところでこれは 着ているのか脱いでるのかそれが最大のもんだga
381373:2007/09/19(水) 20:42:25 ID:+fD5hnL10
>379
キタコレ。
いや殆ど冗談だったとか言ったらやっぱり体育倉庫に連れ込まれるのかぃょぅ(=゚ω゚)ノ

次回作「泡ちゃんの新妻たりあリー」はまだですか!! ハァハァ
382名無しさん@初回限定:2007/09/20(木) 00:33:49 ID:im52bWYX0
(=゚ω゚)ノぃょぅ

>379
即保存は大前提として。
これはどういう状況かとつらつら考えてたら何か溢れてきたのでタリアと漂う泡のSS書いてみた
断片的情報から妄想するのって楽しいよね。
多分3レス……で収まると思う もしかしたらぎりぎり4かも

クリスト描いてくれてるktkrwktk
どんなものが出来上がってくるのか正座して待ってますよますよますよ? よ?
3831/3:2007/09/20(木) 00:35:30 ID:im52bWYX0
 たりあ。たりあ。
 ――声が聞こえる。
 たりあ。たりあ。
 聞きなれた声。優しい声。もう耳になじんだ、うっとおしくさえある声。
 たりあ。たりあ。たりあ。たりあ。たりあ。たり
「うるっさいわね泡!」
 飛び起きる私。横にいる、何か知らないけれど、さっきから延々私の名前を呼んでいた、漂う泡をにらみつける。
「何よ、泡。折角寝付いたところだったのに……ふぁぁ」
 ひとつあくびして背伸びをする。それでほぼ完全に目が覚めてしまった。
 自慢ではないが、私の寝起きは悪くない。世間には、低血圧で朝が辛いのだとか軟弱なことを言ってる馬鹿が多いけど、そんなのはただの言い訳だと思う。
 要は気の持ちようよ。

「えっとね。たりあ。……」
 沈黙する泡。何本もある蝕腕の一本を、頭(?)のほうにさしのべて、ぽりぽりと掻いている。例によって例のごとくか。
「なんだっけ?」
「なんだっけじゃないでしょこの馬鹿っ! 思ったことはちゃんとその都度メモしておきなさいっていつも言ってるじゃない」
 漂う泡は私の神獣。もうどれくらいの付き合いになるだろう。どこからどう見てもくらげのくせに、空気中でも平然と過ごせる変なやつだ。
 見た目どおりののんびり屋で温厚、だけどこれで頭は悪くない。筋道立てて考える能力は、悔しいけどたぶん私より上だと思う。
 けれどこいつの欠点は、とことん記憶容量が足りないこと。
「考える端から零れ落ちるんだから。何か大事なことがあればちゃんとメモしておきなさいっての」
 言われたことはそれなりに覚えてる。周りの人間のこともそんなには忘れたりはしない。けれど、どうしてだか、「思考」したことは確実に、次から次へと忘れてしまうのだ。
 例えば今のように、何かをしてほしいと思って私を起こそうとする。けど起こしている間に、何をして欲しくて私を起こそうとしたのかってことを、ぽろっと忘れちゃう。そんな厄介な性質。
 そういうことがあるたびに、私を苛つかせてくれるけれど、それ以外はまぁ、付き合いやすいうちに入る神獣だと思う。
 世の中には、持ち主の心を無理矢理支配してしまう、呪いのアイテムみたいな神剣もあるって話だしね。
3842/3:2007/09/20(木) 00:38:02 ID:im52bWYX0
「ああ、それだよたりあ。それ。めもようしがなくなっちゃったんだ」
 ぽむ。と両腕(?)を叩いて言った。ほら、と蝕腕が1本、泡のメモ用紙入れを指す。なるほど空っぽだ。
「なんだそんなこと? じゃあ誰かからもらってくれば良いじゃない。紙くらいどこにでもあるんだから」
「んん。だめ。だれかにあいに、いどうしてるあいだに、どうしてあいにいこうとしたのか、わすれてしまうよ。たりあ」
「……そうね。ええその通りね。ええいもう厄介なやつなんだから!」
 仕方ない。斑鳩あたりに言えば、メモ用紙の10束や20束くらいはすぐ手に入るだろう。起き上がって体を少しほぐす。うん、いい調子ね。
「泡も着いて来なさいよ。私1人じゃ持ちきれないかもしれないから」
「……どこに?」
「おい」
「じょうだん。じょうだん。うん、もちろんついていくよ。たりあもおんなのこだからね。ちからしごとはむいていない」
「な、なによ、いきなりそんなこと言ってもう」
 ああだめだ、私はこういうせりふが苦手なのだ。一瞬前までの怒りが氷解して、別の感情が心を覆っていく。泡から背けた顔が、少し紅潮してるのが自分でも分かる。
 もう。これだからこいつを嫌いになれないんだ。

「たりあ、きがえないの?」
「わ、分かってるわよ。見ないでよ? あんたも一応雄なんだから」
「わかってる。わかってる。うしろむいてるから。よういできたら、よんで」
 壁際に寄ってへばりつく。太い蝕腕が目に当たる部分を隠して、後ろを向いた。それを確認して私も動き出す。
 実際のところ、普段なら見られたからってどうということはないんだけど、でも今だけは少しまずい。さっきの言葉は予想以上のクリティカルヒットだったみたいで、頭が変な方向に回ってる。
 ああだめだめ。思考終了。カットカット。泡と私は繋がってるんだから、あまり考えすぎるとあいつにも伝わっちゃう。
3853/3:2007/09/20(木) 00:39:22 ID:im52bWYX0
 色んなものが転がっている床の上を移動して、クローゼットの前に。とりあえず制服でいいかな。
 この体操服というやつは、見た目はともかくどうにも着心地が良くて、つい着っぱなしになってしまう。最近部屋で過ごしてるときはいつもこれだ。
 泡からはだらしないって言われるけれど、どうせ誰か来るわけじゃなし。1人のときはどうでも良いじゃない。
 上着の裾に手をかけて、一気に脱ぎ捨てようとしたそのとき。

「おーっすタリアー! 起きてっかー!」
 豪快に部屋の扉が開いた。――右手に酒瓶、左手につまみを持ったソルがそこに立っている。
 見るからに酔いどれた様子。ヤツィータ辺りに誘われて酒盛りでもしていたのだろうか。
「おー起きてるじゃねーか、くらげも元気そうだなっはっはっは! 保健室でヤツィータたちと盛り上がってんだよお前もこねーか?」
 下品に笑うソル。のんきにぃょぅと返事をしている泡。手近にあるものを引き寄せる私。
「こっ、このっ」
「あん? っておま、そのかっこ」
 私がどういう状態にあるかやっと気付いたのか目を見開くソル。その瞬間に浮かんだかすかなにやけ。――死刑決定。
「出てけっ!! この大馬鹿っっっ!!!」
 投じたのは分厚い辞書。飛翔したそれは狙いたがわずソルの顔面を直撃。奴は満足そうな笑みを浮かべたまま、そのまま廊下側に崩れ落ちた。

「はぁっ、はぁっ! まったく、ノックくらいしなさいよこの馬鹿ソルっ!」
 ふわり、と移動して馬鹿の様子を見ている泡。首(?)をかすかに振った。
「かんぜんにのびてるね。たりあ。やりすぎじゃないかな?」
「いいのよ、人の着替えを覗いたのにふさわしい罰ってやつだわ!」
 部屋の中に残っていた馬鹿の足を外に放り出して、扉をがっちり閉めた。
 はぁ、と大きく息をつく。最後の瞬間のあいつの顔が脳裏になぜだか焼きついている。あの満足そうな笑いは、つまり、私の着替え姿をみてそう思ってくれたってことなわけだから。
「あーあーあーあーあー! もうやめやめやめ! 泡っ! 誰か入ってこないように扉ガード! 誰か来たら遠慮なくしびれさせて!」
「わかった」
 良く分からない感情が頭の中をぐるぐる回る。結局しばらく身動き取る気も起きず、ぼぉっと過ごした私だった。
386名無しさん@初回限定:2007/09/20(木) 00:46:29 ID:im52bWYX0
1 驚いてるかつ恥ずかしそうなタリア
2 のんきな泡
3 お着替え中っぽ

=誰かが着替え中に飛び込んできたのではないかと。
それはタリア1人の場面であり、多分飛び込んできたのは男子であると。
となれば飛び込ませるのはソルしかいねーよな。んでタリアが体操服ってどういう状況なら発生しうるかな?
とかいう思考連鎖でこんなんなりました。
どんなもんじゃろか。

ところで自分で書いといてなんだけど。
タリアってこんな娘だったっけな?w
387名無しさん@初回限定:2007/09/20(木) 09:50:18 ID:cs5rPuMgO
>>386
GJ

俺もタリア書いてた……被ったw
388名無しさん@初回限定:2007/09/20(木) 20:58:15 ID:UicMWV4F0
>>386
GJ!

泡かわいいよ、泡w
389名無しさん@初回限定:2007/09/20(木) 22:35:46 ID:KBOC40Tt0
>>386
GJ
ソル×タリアものってまだ少ないよな。

>>379
くそう、getし損ねたぜorz
次回作に期待するんだぜ
390名無しさん@初回限定:2007/09/20(木) 23:38:03 ID:6KyJHilm0
美少女ゲームアワードで、なるかなが月間シナリオ1位の栄誉に!



ログを書き換えたのはやはりサレスか?
391名無しさん@初回限定:2007/09/21(金) 00:50:05 ID:u9cSynXC0
シナリオ以外も総なめ状態だな。
100%サレスだろうな。
392名無しさん@初回限定:2007/09/21(金) 00:54:32 ID:zgAREYhd0
一体どういう集計したのか気になるな、さすがに。
贔屓目にみたところで褒められたシナリオじゃないと思うだけに
393名無しさん@初回限定:2007/09/21(金) 01:58:03 ID:hYIcuYfNO
>>386
雄でも萌えキャラか、泡!
この萌え力……レーメ、ナナシに匹敵する!!
394名無しさん@初回限定:2007/09/21(金) 02:07:19 ID:iSXZEOVo0
あれって恋姫無双が出た時もほとんど一位総なめしてた
んじゃなかったっけ?
信用できるものじゃないかと。
395名無しさん@初回限定:2007/09/21(金) 04:20:48 ID:QpYdjXqT0
まぁ、単純にハガキのコードの絶対数が多かったと。
396名無しさん@初回限定:2007/09/21(金) 04:34:37 ID:/J2Z9p5C0
ダメな子ほどかわいいということだ
397名無しさん@初回限定:2007/09/21(金) 13:32:06 ID:xcf1pv8M0
他部門なら見ない振りできるが、シナリオが1位ってのは無いだろ。
398名無しさん@初回限定:2007/09/21(金) 13:42:51 ID:lNqjnaSYO
つーか言っても月間1位だろ?
同月に出た他のんとの相対評価なんだから
399名無しさん@初回限定:2007/09/21(金) 13:44:04 ID:lNqjnaSYO
つーか言っても月間1位だろ?
同月に出た他のんとの相対評価なんだから
ランキング入りしてる他作品と比べないと何とも言えんだろ
400名無しさん@初回限定:2007/09/21(金) 18:21:21 ID:tyLjKhBJ0
age
401名無しさん@初回限定:2007/09/22(土) 00:56:20 ID:SBk+6Jdm0
祖父倫が情報操作してるゲームアワードなんかより
キャラ投票に参戦しようぜ!

ttp://www.xuse.co.jp/product/narukana/anqindex.html

チェック項目にレーメがいないとは…いい度胸だなxuse
402名無しさん@初回限定:2007/09/22(土) 08:15:53 ID:CxqJd9eg0
男はまとめてその他かよ、と
403名無しさん@初回限定:2007/09/23(日) 21:09:56 ID:6wxNCnXP0
アンチ票の−がないんだから売り上げで大体決まるんだよ
fateが抜けたゲームとか入ってるんだぞ
404名無しさん@初回限定:2007/09/23(日) 21:10:41 ID:W+Pr8Y180
アセリアと同じくらいのシナリオだったしこんなもん
405名無しさん@初回限定:2007/09/23(日) 21:26:04 ID:+wtgPhYb0
そもそも2chの評価を基準にしたら有名ゲーの半分以上は糞ゲーになるなw
406名無しさん@初回限定:2007/09/23(日) 21:44:47 ID:jZJ1oCQP0
シナリオはアセリア並だが、キャラ立てはアセリア以下
407名無しさん@初回限定:2007/09/23(日) 22:24:10 ID:4t04dFjL0
なるかなは、登場人物の言動に芯が通っていなかったから読んでいて疲れた
408名無しさん@初回限定:2007/09/23(日) 23:55:56 ID:UsykVN/M0
シナリオはアルティメットハンターなみにどうでもよかったなぁ
主人公側の行動原理がのりと勢いだけだし、先輩ルートのラストは素でなにこれって思ったよ
アセリアでのユートの義妹と仲間との永遠の離別の感動を投げ飛ばされました
409名無しさん@初回限定:2007/09/24(月) 00:24:20 ID:RMH0OQCA0
ライター 「俺良いこと考えた、こうすれば記憶なくしても復活しね?  ナルカナEDとの変化もバッチリだ、ビバ俺!」
410名無しさん@初回限定:2007/09/24(月) 03:24:23 ID:TvCoi7hd0
本スレでやろうぜ。
気持ちは分かるが二次創作スレでやって気分のいい話じゃない。
411名無しさん@初回限定:2007/09/24(月) 03:47:23 ID:VELkZwGh0
そういや、ここ二次創作スレだったっけ
412名無しさん@初回限定:2007/09/24(月) 09:14:38 ID:RMH0OQCA0
>>410
失念してたよ。
忠告サンキュ
413名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 17:00:45 ID:r4/3HfNV0
今さら気付いた。
ここって「聖なるかな専用SSスレ」だったんだな
414名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 17:42:23 ID:ffHeRlqr0
別にSSだけじゃない総合ネタスレでいいと思うぜー
つーかSSだけじゃネタが続かん 墓場寸前とか言われてんだから
415名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 19:30:58 ID:wBf/xYfOO
アセリアの方は『雑魚スピ分補充』の一環でSSがあるからな
こっちもそれとおなじでいいと思う
ネタ話してたらそれを題材にしたSSだってくるかもしれん
この前のタリアと泡の話やクリたんの話なんかみたいな
それが膨れて広がっていくのが理想
416名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 20:35:57 ID:q7l9Fiiw0
じゃ、次スレからこっちもクリスト&なるかな分補充スレとかにする?
ちょっと芸がないけど。
417名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 20:49:04 ID:SvQh2rD90
1さんは結構排他的に考えてるようですけど。
まあスレなんて住人が作るもんだ。


ネタって言っても……アセリアだと色々考えられたけどなるかなは出てこないな。

ア:詰所ってどういう作りなんだろう、どんな生活なんだろう?
な:ものべーでなんでもあり。

ア:そろそろ季節的にエスペリアも生き返ってくる頃かな?
な:ものべーの太陽つまみをちょっと絞ろうぜ。

ア:緑スピってあれだからやっぱニムにも期待もてるんじゃね?
な:…ぼえー(それは我が力を越えている。無理っす)

ア:ツンデレさいこーーーひゃっほう。
な:ツンギレの奴最近調子に。

ア:炉理スピ最高だぜ!
な:ユーフィのエロなどお父さんは許しません!
418名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 21:59:41 ID:+TdqKsCX0
多分アセリアでいう雑魚スピに当たる存在が、クリストじゃなくて物部学園の生徒なら良かったと思うんだ。
なのにみんなして名前も無ければ物分り良すぎて無個性じゃん。
それこそ全員、実は頭に小さい傷があるとか、耳の中のぞいたら小さいものべーが
鼓膜の傍でぶつぶつ呟いてるんじゃないかとか邪推しちゃうぐらい。
いくらものべーが快適で生徒会長や先生が頑張ったって言っても、あの状況で暴走しない奴が現れないのはおかしいだろ?
先行き見えないだけじゃなく、昨日まで対等だった知り合い、もしくは後輩だった奴が絶対的な力を手に入れて、
そいつの一方的な庇護対象になるんだぞ? DQNで無くてもプライドある奴なら絶対暴れるって。
せめて、序盤で食料持って脱走する奴が数人出るぐらいのイベントはあった方が良かったと思う。

んで脱走した先で鉾に遭遇、望達が駆けつけた時には惨殺済。
既に肉片状態なので、遺体は持ち帰らずに生徒手帳と食料だけ、持ち帰る望達。
で、ものべーに帰ったらさぁ大変、脱走した奴の姉に血だらけの手帳と食料を担いだ望を見て発狂。
「嘘よ…あんたでしょ!あんたがあの子が殺したんでしょ!?返してよ!弟を返してよ!この人殺し!」
すかさず姉の友人がフォロー。
「世刻君…ごめん、ほらこの子も疲れてるから、(小声で)だめ、逆らったらあんたも殺されちゃう…」
でも聞こえちゃった望。
「いや…、俺、そんな事…」
「え…、あ、違うの!そういう意味じゃないの!あの、その、ごめんなさい!殺さないで、なんでも言う事聞くからぁ!!」
で、それを見ていた別の女生徒がパニくって絶叫。
「二人とも!逃げてェェェェ!!!!!」
それを聞きつけ、さらに広がるパニック状態。
喧騒の中、一人動じることなく、女王の威厳で一喝するカティマ。
なんとかパニックは収まる物の、神剣組と一般生徒の間の溝は致命的に深くなり…。

ぐらいの状態から信頼関係築き上げた方が、途中の文化祭イベントやADVのお気楽ムードもまるで違う物に感じられたと思うんだ。
無駄に長文だが、ここはSSスレなので謝らない。
419名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 22:02:30 ID:+TdqKsCX0
あと>>1の制限がちょっときつすぎるので、もうちょっと自由度高くしたほうがいいと思う。
420名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 22:17:07 ID:X55tmNT20
>>418がシナリオ書けばいいんじゃね

言うとおり暴走しないのが1人も居ないのはどう考えてもおかしいよな
そもそもあいつらが原因で異世界に吹っ飛ばされてるし
マジいい迷惑
421名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 22:22:24 ID:ffHeRlqr0
(=゚ω゚)ノぃょぅ

>415
書き手がこれ言っちゃうのはまずいかもしれんけど……SSもネタ振りではあるんだから、そっから話膨らませてくれないかなーってのはあるね。
泡のアレも初期反応だけで止まっちゃったしね。何か妙に評判だったから、これは神獣ネタの起爆剤になるかなってちょっと期待してたんだけど。

>416
なるかな総合ネタスレで良いんじゃなかろうか? 雑魚スピスレと違って、クリストメインってわけじゃないんだし(俺が言うのもあれだが)

>417-418
まぁ確かに、アセリアんときよりしんどいけど。でも、ゆるい雰囲気と学園という舞台を積極的に肯定すれば、それはそれで、
ファンタズマゴリアではやりにくいシチュエーションが生まれると思うんだぜ
要は料理の方法次第と違うかなぁと思うわけだ。

つーわけで阪神6連敗こんちくしょう記念に、ひとつ野球ネタで勝負。多分3レス。もしかしたら少しだけ4まではみでるかも
ユーフィーにあのせりふ言わせたかっただけちゃうんかってのは言いっこなしだぜ
4221/3:2007/09/25(火) 22:24:57 ID:ffHeRlqr0
 ぱきぃぃぃーん
 乾いた金属音ひとつ立てて、白球が空高く舞い上がった。打った当人はっちゃーと声を上げて一塁方向に残念そうに歩いていく。
 高々と上がったフライはすんなりと二塁手のグラブの中へ。ワンアウト。
「何やってんだ信助ー! 甘い球だったろーが!」
「うるせー! こちとら素人だ文句あるかー!」
 ベンチの野球部員と罵声を浴びせあいながら、金属バットを次の打者に渡す。体操服を腕まくりひとつ、よっしゃと向かうのは旅団の猛牛ソルラスカである。
「ソル兄、よろしくお願いしまっす!」
「任せとけ! 望ー! 手加減しねぇからなー!」
 ぶんぶんと、みようみまねに素振りを繰り返して右打席へ入る。よっしゃー! と大きく叫んで、マウンド上の投手をにらみつける。
 にらみつけられたは投手押し付けられた世刻望である。頑張ってー、と、校庭に希美と沙月の声が響き、打たれたら承知せんぞと脅しに近いレーメの声がそれに重なる。
 
 ちなみに、特に何か大きなイベントというわけではない。世界間移動中の暇をつぶすのが主目的の草野球だ。
 学園に残っている野球部員は僅かに2名、しかし道具は倉庫にたっぷりと。図書室に保管されていた野球漫画を読んで、見事にはまったソルラスカが、ぜひ一度実際やってみたいと沙月に頼み込み。
 野球好きの一般生徒とルールを知っている神剣組、初めてだけどやってみたいと名乗りを上げたカティマとスバルら、志願者がなんとか2チーム分揃い、ここに実現したお遊びである。

「ソルー! 適当に討ち取られて良いからねー!」
「舐めんなー! かかって来いや望ぅ!」
 煽り立てられヒートアップにヒートアップ、打席の中で力入りまくりの素振りを繰り返し、審判のサレスからとりあえず落ち着けと制止される。プレイ!
 望、小さく振りかぶって、右投げによっこいせ、とでも表現すべき投球フォームで1球目を投ずる。 コントロール大きく外れる外へのボール球、しかし力みまくっているソルは、
選球眼も何もあったものじゃない豪快な空振りして無念の雄たけび。
 結局、ストライク1球も必要なく、完璧なボール球3つ振ってあえなく三振。金属バットがへし折れるかという勢いに地面に叩きつけて、
しかしルールには素直に従い次打者のスバルに交代する。ツーアウト。
4232/4:2007/09/25(火) 22:27:25 ID:ffHeRlqr0
「当たらねーもんだなー」
「力入れれば良いってものじゃないっスから」
 実に悔しそうな顔のまま、ベンチに腰を下ろしたソルに、野球部員の片割れが声をかけた。そうこうしている間にも、スバルも野球初体験の大苦戦を演じて、2ストライクと追い込まれている。
「はい、ソルラスカさんお水です」
「おう、サンキューユーフィー、って、なんで体操服なんだ?」
「私も参加してますから。えっと……スバルさんの2人後に打席が回ってきますね。守備位置はライトです」
「あれ、そうだったか。お、スバルの奴出やがったか」
 などと話している間に、投手経験ほぼなしの望もストライクが入らず、フォアボールでスバルを塁に出す。さすがマシン、学習が早い。

「次は誰だ? っておお!?」 
 驚くソルの視線の先には、打席に入りきらないクロウランスの巨大な姿。ベンチ前ではこれまた体操着姿のナーヤが、自信満々に指示を出している。
「クロウランス! 炎獄の王たる力を見せてやるのじゃ!」
 がーがーがー、と返答なのか何なのか良く分からない駆動音を立てて、胴体から伸びた腕の一本が、バットをぐりっと握って構える。
 望もさすがにこれには唖然として、捕手の絶から投げ返されたボールを受け取るのも忘れて叫ぶ。
「それってアリなのかー!?」
「ちゃんとすたーてぃんぐめんばー表に書いてあるじゃろうが! 4番ファーストクロウランスじゃ! この日のためにカスタマイズされたクロウランスの力、甘く見るでないぞ!」
「ぎーがーがー!」
 クロウランスも嬉しそうに、バットを振り振りかかって来いとばかりに挑発してみせる。ほんとかよ、おい。と大きくため息をついてボールを拾い、構える。
「それじゃ、私も準備してきますね」
 そんな2人のやり取りを見ながらユーフィーが立ち上がって、ソルが頑張れよーと声をかける。
4243/4:2007/09/25(火) 22:31:01 ID:ffHeRlqr0
 プレイ!

 さすがにこれには投げにくく、1球2球と大きく外に外れるボール球を投ずる望。それを苦もなくキャッチして、さらに一塁へ牽制球を放る絶の姿は、本職の捕手さながらである。
 スバルが牽制を受けて、慌てて頭から一塁に滑り込む。ぎりぎりセーフ。
「ストライク適当に投げておけよ。どの道お互い素人だ、打たれて当然くらいの気分でな!」
「ちぇ、俺も初めてみたいなもんなんだから、投げとけったって簡単に投げられるか」
 ボールを受け取ってひとつ息をつき、サレスのコールを受けてまた振りかぶり、よっこいせっ! と放る。ど真ん中。見逃すクロウランスではない。

 豪快を通り越して破壊的な打撃音ひとつ。打球は瞬く間に内野の間を抜けてレフト前に。スバルは二塁ストップ。嬉しそうに主人に手(?)を振るクロウランスが一塁に。
「ホームランでなくて良かったのぅのぞむ!」
「ちぇ。あれは反則だと思うけどな。ユーフィー! 悪いけど確実にアウトにさせてもらうからな!」
 続いて打席に入るのは、ブルマ姿が実に良く似合っているユーフィーである。左打席の後ろでひとつスイング。妙に鋭いスイングを見て、先ほどの言葉と裏腹に、何かいやな予感を覚える。

 プレイ!

 絶はどの道コントロールなんて出来るわけ無いんだからとど真ん中に構え、望もどうせコントロールなんて効きゃしないんだからとサインも見ずにセットポジション。
 ユーフィーは何ゆえか、恐ろしく落ち着いた様相で打席に入り足場を慣らし、金属バットを体の前でぴたりと構える。隙無し。
「ユーフィーなんてちびっ子に打たれたら情けないわよ望くーん!」
「沙月の言う通りなのだー! 打たれたら後で仕置きなのだー!」
 観客席からかかる声にプレッシャーを覚えつつ、鋭い目のユーフィーから異様に圧迫感を感じつつ、まぁ、とにかく、投げないとなと、意を決して投球に入る。

4254/4:2007/09/25(火) 22:33:26 ID:ffHeRlqr0

 初球。大きく手前でワンバウンド。絶がこれもまた見事に止めて、走者の進塁を許さない。
 望の投球動作のタイミングと、左打席のユーフィーが足を上げるタイミングがぴったり合っている。どこで覚えたものやらと、絶は小さく苦笑い。

 2球目。外に僅かに外れてボール球。サレス厳しいぞー! とレーメとナナシが見事に声をそろえて野次ひとつ。
 これもまたタイミングは見事に合っている。フォームはさながら中日立浪。体が小さいところも似通っている。
 
 3球目。プレイ!
 最大の力を――
 投球動作開始。望の足が上がるのがスローモーションで見える。タイミングをあわせてこちらも足を上げる。
 最高の速度で――
 腕がゆっくりと出て来、ボールが放たれる。球道予測。もらいますっ!
「最善のタイミングっ!」
 
 爽快な打撃音が校庭に響く。見事に美麗な打撃フォームのユーフィーが、ライトの頭上遥かに超えていく特大ホームランをぶっ放した音である。
 望応援団は黙り込み、ソルラスカはベンチから滑り落ち、野球部員はあんぐりと口をあけ、ユーフィーはわーい当たっちゃいましたー、などと小躍りしながら塁を回ってホームイン。
 ま、なんとなくこうなる気はしたよ。と絶が小さく1人ごち、望もまぁ、なんかいやな予感はしたんだ、と苦笑いしながら、ナーヤとブルマコンビのハイタッチしているユーフィーを見守る。
「攻撃もバッティングも、大事なのはタイミングなんですっ!」

 投げっぱなしで幕。
426名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 22:44:36 ID:kV+ogw6n0
>>414-416,>>419
>>1のスレを立てた経緯が雑魚スピスレ357にあったので転載。
あと、向こうの199と220も1によるレスらしい。
>343-344
>完全に個別スレ扱いでっていうよりも、
>聖なるかなネタは自粛してください云々が、こっちがサブスピ分補完スレだからなのか、
>聖なるかなが発売されたばかりだったからか分からなかったから一応。
>両方の意味でなんだろうけど。
>当初、クリストについてはこっちでもよさそうじゃないか?って思っていたのは今だから言える話。
とあるし、
また、クロスオーバーは注意書きを入れた上でこっちに投下した方がよさそうともあるし、
聖なるかなSS中心の永遠神剣ネタ総合スレとして考えても構わないかと。
むこうの358じゃないが、次をどのように立てるかを決める方向で良いんじゃないか?
向こうは、いわゆる雑魚スピ関連の場合という方向で。
427名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 22:46:35 ID:kV+ogw6n0
おっと危ないorz
>>421
GJそして乙。
ユーフィのあのセリフ、何となく可愛いですよねw
428名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 22:55:22 ID:DiONPTqO0
>>422-425
乙。
文化祭があるなら球技大会もやるべきですな。

>>418
そしてお姉ちゃんは憎みつつも、自分達の為に戦い傷つき続ける望の姿に心惹かれていく主人公嫌悪型のツンデレになると。
せめて生徒に名字と目無し絵があれば色々広げることもできたのにね。
429名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 23:04:27 ID:SvQh2rD90
>418
「ち、おいソル。みんなまとめて体育館に押し込めとけ」
「わかったぜ。おらキリキリ歩け!」
イービルルート開幕ですかw?

そこまでやってくれた上で信頼を築くシナリオなら望きゅんもユーザー相手にフェロモン捲けたのにね。
望の窮地を無力なはずの一般生徒が身を捨てて救うとかね。

泣きじゃくる望と、泣き腫らした目で周りを囲む生徒達。
黎明を地面に突き立ち上がり、一度だけ振り返ると望の横顔を夕日が照らす。
堪らず、背中に誰かが叫んだ。「帰ってこいよー」
シルエットが、右手を伸ばし親指を立てる。

悲しみを噛み締めた望達。神剣に囚われた若者達は仲間達を安全の地に置いて、
ものべーの背で飛び立つのだった。

最後の最後で繋がりあえた俺達は、創世神だろうが負けない負けるわけがない。

背負ってきた空虚な現実は望の心の虚像に過ぎない。だけどもう、ジルオルという鏡は砕け散った。
背中に担うのは仲間。そして全ての分枝世界。共鳴する何本もの神剣達が望の心を静かに奮い立たせ続けていた。


>425
ソルさんソルさん。猛牛は結局一度も日本一になってないんですよw
苦労ランスは走るとどうなるんだろうw
ユーフィー押してもきっと倒れない。宿直室の畳がいつの間にかぼろぼろにw


ぼくの! すごい! ひっさつまきゅう!
「ちゃんと振ってよーナーヤー」
「馬鹿者。飛び上がって投げるのはボークというのじゃぞ」
430名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 23:08:04 ID:+TdqKsCX0
>>421
乙っす。
確かにプチコネクティドウィルが活躍しそうw

結局、無い事を嘆くより、用意された食材の調理方法を考えるのが一番正しいんでしょうな。

>>426
じゃ、ここは全体を扱っていくような感じになるのかな。
431名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 23:13:01 ID:+TdqKsCX0
>>429
そういう路線でシナリオが進行したら神だったのに、とかどうしても無い物ねだりをしてしまうなw
なんていうか、素材は良かっただけに惜しいよな。

もう、みんなで作るか?w
432名無しさん@初回限定:2007/09/25(火) 23:38:42 ID:kV+ogw6n0
>>417
失礼、飛ばしてた。
向こうのスレでの1の発言(詳細は>>426)見てもらえば分かると思うけど、
とりあえず、永遠神剣ネタ総合(聖なるかな中心)のスレと考えてもいいのでは?
無論、雑魚スピに関しては現状通り向こうでという方向で。
1のレス見てると、スレの方向性を模索しているような感じだから、
どうしても排他的に見えるかもしれないな、確かに。
433名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 00:45:53 ID:YVHizROEO
>>431
スーパーハードシナリオモードか
いいかも

「何で……何であんな目で俺たちを見るんだよ……」
「……彼等の反応は、至極当然のものなのです」
「何でだよ! 仲間じゃないか!」
「仲間だったら、無条件に信頼できますか」
「……当然だろ」
「それが自分を腕一振りで殺せる相手あっても」
「そ、そんな事する訳ないだろっ!」
「しかしそういう事が可能なのですよ、私たちは」
「…………」
「恐れられて当然なのです。たとえそれが味方であろうと、仲間であろうと、家族であろうと」
「……カティマ」


こんな葛藤プリーズ
434名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 01:03:13 ID:+Ws2rAE60
>>433
それだけでカティマの評価うなぎ上りですな。
望君に足りなかったのは逆境の中での葛藤だったよね。
徹底的に追い詰められた状況下で、悩みに悩んで、時に阿川や森等に助けられつつ、
最終的に掴んだ居場所がこのお気楽の日常なら、物凄いカタルシスが生まれて、
ユーザーもスタンディングオベーションで「君になら娘をやっても」だったろうに。

現実は「お任せジルオル先生」の乱発と「どうしても帰りたいって奴は俺等の前で挙手してみろ」だもんな。
435名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 01:18:56 ID:p5t1/Ose0
(`・ω・´)ノシ



(´・ω:;.:...


実際のカティマさんは、一将功成りて万骨枯るを気にしない人に思える。
望に会うまではいい人だっただろうに……w 
436名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 02:07:23 ID:FpNY7LPB0
なんか一般生徒のヒロイン物書きたくなってきたなぁ。
437名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 11:57:42 ID:p5t1/Ose0
スバルの弓道シーンは何故ないのですか?
きっと一般女生徒の黄色い声が充満するはず。
438名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 17:32:27 ID:o5bsnmCP0
>>437
そう言われてみれば実にありそうだな。
スバルが入った辺りから名実ともに学園生活が空気になるからまったく意識してなかった。
439名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 17:46:31 ID:mhSoiKIZ0
>437-438
スバル「ちょっと弓の練習をしたいと思うんですが、弓道場はどこでしょう?」
サツキ「あーごめん、うちって弓道場無いのよ。屋上とか校舎裏とか、適当なところでやってくれる?」
スバル「(´・ω・`)」
440名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 18:22:46 ID:4ZK/PwO/0
>>439
ノゾム「今の誰?」
サツキ「さあ、誰だっけ?」
441名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 19:32:19 ID:odsFkM9N0
>>438-440
ちょw
スバルカワイソスw
442名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 20:22:53 ID:o5bsnmCP0
ユーフィ、天然エターナル
ルプトナ、劣化逆エターナル
スバル、エアエターナル
443名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 20:33:40 ID:p5t1/Ose0
しゃーねえ、そうくるならタリアで薙刀部だ。
きっと部の女生徒どもが野太い絶叫に駆逐されるぜ。

でもね、ちょっと孤立し始めたある日。
帰りに公園で編み物を始めたところ部の後輩に見つかって、意外に話が弾んでうち解けていくのさ。
そして……
「ねえ、それってやっぱりソルさんにあげるんですか?」
「んなわけないわ。私が使うの」

   r‐-- -┐ 
  / /゙・ 皿・_ヽ
   ノノ从リハ)) 
  (ノ「(#゚ -゚ノ|、
  (Y日)!鬥!)y)
   ノ)ノ甘> ))
   く_ノ.し'ノ 

444名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 20:38:14 ID:xFV/JAOw0
永遠空気存在
445名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 20:42:31 ID:KaY3ZZZY0
>>443
やっぱりナポリタンはあの世界の最先端ファッションなんだな
446名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 21:25:32 ID:blZTH5RQ0
スバルは空気キャラとしてポジションを得ているので、ある意味恵まれてるのでは。
447名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 21:37:29 ID:YVHizROEO
>>446
確かに、
゚ー゚
↑こんなAAしか無く、しかもそれできちんと通じる空気よりは恵まれてる
448名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 23:07:31 ID:g9zItJVh0
ていうかもうさ誰か再構成してくれね?

何、お前が書け?書けたら提案なんかださねーよ('A`)
449名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 23:20:45 ID:Osk+sKFz0
>>448
誰か某DEあたりにでも投稿してくれたらそれだけを見にあの魔境に踏み込むんだが
450名無しさん@初回限定:2007/09/26(水) 23:50:49 ID:p5t1/Ose0
なんでDE。
焼け野原の後バラックが点々な場所で……。

しかし、アセリアだとオリなんて言語道断だったけど、
なるかなだとそれほどでもない気がしてしまう。
完成度の差なのかな。
451名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 00:12:35 ID:1lJ+aNuv0
なるかなは未完成なんだな
452名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 00:26:50 ID:flbOFHwC0
上に出てきたツンデレ姉みたく、オリキャラ生徒描いて物語再構成したらバランスよくなりそうな気がする。
正直旅団メンバーだけだとつまらんよ。
453名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 00:34:39 ID:k6yO39h/0
ひとりくらいガチでソルに恋する生徒がいても良かったかも。
そんでタリアがものに当たって、希美がものべーをけるなーって。
これだけでタリアの評価が鰻登り。

要するにのぞみんED後のふたりの関係をだな。
454名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 01:18:04 ID:Uck7krNy0
タリアのHが「氷解」ってタイトルだったんでソルが相手と錯覚したのは俺だけか?
455名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 01:38:52 ID:itNt+fo4O
>>453
つ園芸部員
456名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 01:51:11 ID:rbRqnbcU0
>>421
ある種アセリアの方が状況的に悲惨だと思うぞ?
いきなり変なとこに飛ばされてスピにいろんな意味で襲われ、言語は通じない、王様はあんなんで妹は人質で強制的に戦争参加
その後妹さらわれるし、一週目では見つかった親友は強制的に死亡
最終的にルートに入ったヒロイン(+おばさん)以外からは忘れ去られる

対して望は
先輩ルートだとエターナルになっても皆覚えてる(多分、ナルカナルートでもナナシが残ってるのなら覚えてるんじゃね?)
つかエターナルになることに関して一切悩みなく決めてるな(全体的にある乗りと勢い)
親友は普通に仲間になる、さらわれた幼馴染はさっさと回収される、前世に乗っ取られる不安感がない(つか、あんな説得で和解かよ、ナルカナルートだと望への試練になってるしな)
前世さんが前面でたときも大したしてないしな。全体的に悲壮感が一切伝わってきません
457名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 01:54:05 ID:HDXo1kzx0
>>456
独り相撲乙。
458名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 02:11:33 ID:7lp3v4kQ0
>>456
しんどいというのはネタ的にという意味で、状況や雰囲気は前述の通りと思われる。
459名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 02:45:51 ID:gaS4mr4A0
「しんどい」と言う言葉は実にしっくりくるな。
それぞれのキャラが確立しすぎて、うかつに動かせない感じがした。
キャラクターを創った人間以外には元々あるものを踏み越えさせるのは難しい。
下手をすると別人になっちゃう。

雑魚スピは情報が少なかった分、それを補完するって言う事が目的だったから好き勝手にやれたが、
なるかなは「総合的な一個の人物」としてが浮かびにくい割りに「キャラ性のみ」が確立しすぎていて他人が手を加えるとなると、
かなり限定されちゃう。
その辺りを折り合いをつけるのが難しいから何をやろうとしても難産になる。
SS書こうと思っても投げる人が多い理由だろうな。
460名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 05:45:08 ID:IvtxFXtM0
>456
何言われてんのか分からんかった ネタをひねり出すのがしんどい って意味な

>459
うん ある程度長いのを書こうとするとどうしてもその陥穽に嵌まり込んじまうな
別人にならないように注意して書いてたら どうしたって長いのは書き辛い

といって長いの書いて ストーリー全体の補完とか、本編ルートなしキャラの補完とか考え出したら
キャラを動かす前段階に あちこち説明不足すぎてる、世界設定そのものの、抽出固定再構築から始めなならん
で、それやり始めたら時間なんぼあっても足りないし、どこまでやっていいものか どこまでなら受け入れられるかってラインが分からんから、どうしても腰引けちまう
アセリアのときでは、世界観がしっかり見えてたから、キャラ動かしていくのをメインに据えられたんだけど
長編SS書けない 書いても仕上がらない まず書き出せない ってのはそれが主因じゃないかなぁとおもうわけさ
まぁ俺が今悩みまくってる部分そのままなんだけどね

>452
旅団メンバーだけだからつまらんのじゃなく 本来メインのはずの旅団メンバーですら設定と描写があちこち手薄で説明不足なせいで
ストーリー全体がぼやけて見えちまってる ってことじゃないかなぁ
タリアにしろソルにしろ 旅団に入る前には相応の事件なり葛藤なりがあったはずだし
スバルなんか、ただ成り行きまかせに、特に強い動機もなく、ただついてきてるだけにしか見えん
そのへんが
>「総合的な一個の人物」としてが浮かびにくい割りに「キャラ性のみ」が確立しすぎていて
ってことになる根本原因だと思うのさ
461名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 07:54:09 ID:nq0tRwYZ0
なんつーか素材はいいんだよな、素材は。
SS考えるだけで、アレやコレやと想像できるネタは多いし、ポテンシャルは高いはずなんだよ。
462名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 12:16:40 ID:k6yO39h/0
職員室にはPCもそのままだよな。
それに美里はデジカメデータを写してるのかな。プリンタもあるだろうし。
生徒の成績やら指導履歴も見放題。先生なんか一人だけだし。

隠し撮りとか入ってそうだな……
463名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 12:47:31 ID:itNt+fo4O
SHシナリオモード

五章頭望たちの勝手に愛想尽かした一部の生徒が魔法の世界に残ることに
マナゴーレム侵攻時、敗走後にヘタレたニーヤァら政府高官
周りの分枝世界の為に、全滅しても塔は守らなくてはならない、と兵士らを率いて学生たちが指揮権強奪
旅団保護下のクリストたち(ものべー隊以外)の力を借りて決死の防衛
クーデターだ云々吐かして補給援軍一切無視の政府
崩れかける防衛線、そこに来たのは補給物資を携えた民間人の義勇団
一度、二度と傷付きながらもゴーレムを退ける
三度目のゴーレムたちの攻めはいやにあっさりしたものだった
退いて行くゴーレムたちに安堵した瞬間、クリストたちを貫く光の矢
業をにやした南天神により、要のクリストたちを撃破される
治療に専念すれば復活できる、との言葉に人間だけで時間を稼ぐことに
無数のゴーレムの前に次々と屍が築かれながらも戦えるまでに回復したクリストにより一時持ち直す
しかし披我の戦力で劣り、一度崩れた戦況は立て直せず、敢えなく全滅
防衛隊の全滅の前後、ようやく来たものべー以下旅団
ものべーの姿を見て、毒付きながらもどこか満足気に最後のクリストと共にゴーレムに突っ込んでいく生徒

どうせ厨になるならこんな展開で学生使ってくれれば……
その後に
・連戦になり塔の占拠はできなかった南天神をジルオルパワーであっさり排除
・「こんなモノがあるから」とか言って塔壊すナーヤ
・祝勝パーティする旅団
こんな展開きたらディスク叩き割る
464名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 14:07:21 ID:/qccDH+x0
異世界に飛ばされた生徒たちが達観しすぎてるって愚痴がでてる状態なのに、
何の訓練も受けてない生徒がプロの兵士を率いて拠点防衛ってどんだけーw
465名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 14:09:28 ID:ALhuNnOH0
>>463
そこはニーヤァの汚名返上のチャンスだし頑張ってもらった方が良くない?
ここ奪われたら世界終了という前提があるんだし、政府が悪者になる理由が不自然だと思う。
全員で必死こいてなんとかしようとする方が自然じゃないかなぁ。
で、ものべーでお荷物扱いされるわ振り回されるだけだわと嫌気が差してた生徒達なんだけど、
望たちを行かせた事にちょっと罪悪感感じてたり、かつものべーを離れた後も庇護を受けてる自分に嫌気が差してたりしてる中、
目の前で傷ついていく人達を見て義勇軍に志願!みたいな。

もしくは、神剣は持ってないけど俺にはそれをはるかに上回る破壊神の力が宿っていると妄想し続ける邪気眼ボーイが、
目の前の悲惨な状況を目の当たりにしてく内に、自分にそんな力なんてないと現実を直視するようになり、
負傷者の看護や応急処置など自分に出来る事を精一杯やろうとする、一念発起ストーリーとか。

ただ、こういう状況をジルオルの力で全部解決して祝勝パーティなんて開いた日には、
望の扱いは誠クラスになるだろうなw
466名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 14:14:24 ID:ALhuNnOH0
>>464
その通りなんだけどw、衛生兵とか救助クルーとか(まぁそれでも足引っ張るだろうけど)で活躍するならありじゃねとか思う。
467名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 14:21:52 ID:/qccDH+x0
>>466
ああ、指揮権強奪ってところが引っかかっただけだから気にしないでくれ。
義勇兵とかそういう展開は俺も好きなんで。
468名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 14:29:48 ID:ALhuNnOH0
>>467
了解。
何の力も技能も持たない普通の一般人が必死こいてなんかしようとするというシチュが燃えるんだよな。
469名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 17:43:43 ID:nq0tRwYZ0
水道、ガス、電気、果ては太陽、次元移動できるものベーなら、
生徒が迎撃戦に使えそうな何かを作ったりしてくれないんだろうか、とふと思った
ついでにこれだけ出来て、何故か食料生産能力がないことに気付いた。
470名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 17:58:36 ID:k6yO39h/0
土地はあるから自家栽培は可能でしょう。
各地で種苗を頂いていけば、ソル兄が耕して五期作くらいしてくれるよ。
100人くらい居たと思うからまかなうのは大変だがな。
471名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 18:13:14 ID:VlbkZDcq0
>>456
聖なるかなはご都合主義のストーリーだからいいんだよ
472名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 19:02:59 ID:IvtxFXtM0
>469
水道=下水道・排水・尿その他をものべー内で浄化処理して再排出 減った分は寄った世界で水浴びして補充
電気・ガス=清浄が集めまくってるマナをエーテルに変換してry
太陽・月=単に光球を周期的に回してるだけ 熱とか出してませんからwwwwサーセンwwww

食料というか 各種アミノ酸ビタミンやらなんやら、栄養素の合成くらいはできそうだが
となると食い物は昔の宇宙食みたいなんとか良くてカロリーメイト?
それなら普通のもの食ったほうがマシじゃね 後は>470
473名無しさん@初回限定:2007/09/27(木) 23:43:09 ID:JmHoej8X0
土地はあっても学校の運動場じゃ野菜育てるのは無理だし
園芸部の花壇を徴発して何か作ってもたかが知れてるだろうしなぁ。
剣の世界か精霊の世界に行った時に土を入れ替えて
校庭の半分が農園になってる事にすれば何とかなるかも知れんが。

で、適当に種を蒔いておけば後はものべーが一気に成長させてしまうので
何の苦労もなく新鮮な野菜や果物が取り放題w
474名無しさん@初回限定:2007/09/28(金) 00:19:25 ID:YE0Fy+220
エヴォリアとかタリア辺りがヒロイン追加なexpが冬か来年の夏辺りに発売されるのでしょうかねぇ
475名無しさん@初回限定:2007/09/28(金) 19:16:50 ID:0Ludwesm0
本スレや避難所のほうがよっぽどSSスレ化してる件
476名無しさん@初回限定:2007/09/28(金) 19:22:13 ID:2e8bMHeG0
向こうで書いた方が盛り上がるからな
ネタももう尽きてるようなもんだから、とくにウザがられてもないし
477名無しさん@初回限定:2007/09/28(金) 20:07:51 ID:GbZFII400
避難所はいつもの人保管庫と化してるからな
でも、いつもの人に釣られてる奴がたまにいるな
478名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 00:38:16 ID:D4JwY6aU0
SS書こうにもなるかなだとなんかこう…こないんだよな
イマジネーションというかインスピレーションというか
どいつもこいつもキャラが薄っぺらいから妄想する気が起きない
479名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 05:53:06 ID:Qwi2T8/20
うすっぺらいからこそ自腹で考えるエピソードを盛り込みやすいと思う。
ちょっとしたネトゲ同人みたいなタッチで攻められんものか。
480名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 06:42:24 ID:dIk9BUIb0
いくらでもネタが湧いてくるぜ
ふへへ、み な ぎ っ て き た
481名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 09:46:46 ID:fyhPpdSC0
>478
薄っぺらければ継ぎ足して
分厚ければキャラまわしして
多少の妄想を加えればSSは創れますよ

それを人と共有できうるように表現できるかどうかが力不足で悩む所ですがorz
482名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 12:51:46 ID:d98Kwbgg0
>>475、477
避難所ってどこ?
483名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 13:01:53 ID:jZzvdx6k0
484名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 13:41:03 ID:mPiTZSLy0
思うんだが、なるかなの場合、「俺とレーメ」「俺とタリア」「俺とソル」
こんなのが多いと思うんだ。そんなわけで共有がむずいのでは?
真ん中に据える人物が重きを成してくれてれば悩みも浅くてすむ気がする。
485名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 20:25:02 ID:DHu40y6DO
>>484
頭悪いんでよく解らないが、
どういう意味だ?
486名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 21:35:01 ID:INr0lCqa0
(=゚ω゚)ノぃょぅ

今までずっとクリスト話書いてきたんだけどさ。
元々、本編中で描写のないクリストの視点から、聖なるかなの物語を追っかけてって、彼女たちにもそれなりの結末を用意してあげる、っていう筋書きだったんだ。
一応そこに至るまでの大まかなあらすじもできてたしね。
けど、いろいろと細かいところを考えていくと。
どうしたって、ハッピーエンドにするためには、時間樹の生育と世界の興亡絡みとか、マナの循環法則とかにも言及しないといけない。
折角新世界を見つけたのに、すぐ時間樹ごと滅ぶんじゃね? とか、どうしてクリストは、特殊なマナの中でしか生きてけねーの? てか特殊マナって何? 
みたいな疑問点残したままだと、ちょっとやりきれんからさ。

んで。その辺の設定をつらつら考えてる中、>431とか>433とか、>448とかを見てて思ったわけ。
この際、なるかなシナリオの再構成やっちまうかって。むしろその方がクリストたちの物語も語りやすいか、って。

んだから、ひとつ。今まで書いてきたクリストのアレはいったん忘れて、一から書き直してみようかって思うんだ。
とりあえずプロローグだけ落とす。
けど、wikiの没設定とか、舞台劇パンフとか参考にして、なるかな本編とはあちこち設定変えてるから、ここでやるのはまずいかも知れんかな、って気もする。
俺がいないほうがスレのために良さそうなら、いつでも引くから、言ってくれ。
んじゃ、まずは3レス分。
487序――虚空の庭園 1/3:2007/09/29(土) 21:36:47 ID:INr0lCqa0
 そこは茫漠たる空間だった。
 地平線かなたまで広がる花の園。でありながら、そこには動くものひとつ存在しない。風は吹かず、ゆえに絢爛と咲き誇る花々はぴくりとも動かず。蜜を求めて飛び交う虫の姿もなく。
 延々と続く、延々と同じ、無限に広がる寒々しい光景が、その世界の全てであった。
 空間の中央には、場に似つかわしくない、巨大な天蓋付きのベッドがひとつ。傍らには、己の背丈を超えるほどに長大な斧槍を、肩にかけて背もたれる青年がひとり。
 訪うものとてない静謐たる世界で、ベッドに横たわる小柄な少女は、ただこんこんと眠り続けていた。

「――テムオリンか」
 ふらり、と空間が揺らぎ、青年が小さくつぶやいた。いまや片手の指で数えるほどしかおらぬ、この世界への侵入方法を知るものの1人が、久方ぶりに訪れたのだ。
「ええ。お久しぶりですわねトークォ。ごきげんようミューギィさま」
 不可視の門から現れたのは矮躯の少女。身に纏った法服の裾を、両手でちょいとつまみ上げ、2人に見かけだけは慇懃な一礼を交わす。
「何の用だ。またいつかのように、姉さまの寝込みを襲いにでも来たか」
 しかし青年――トークォは、目すら合わせず剣呑な口調で問い返す。テムオリンは忌々しげな表情を一瞬だけ浮かべるが、それもすぐに消え。
 皮肉気な青年の言葉には返答せず、訪れた用件を言の葉に乗せる。

「ボー・ボーが戻りましたわよ」
 何気ないような一言に、しかしトークォの顔色が僅かに変わる。残り少ない彼の――いや、ミューギィの信奉者のひとり。時空を渡り永遠を生きる者が、戻ったということは、すなわち。
「また、か」
「ええ。またですわ。どうやらまたしても、わたくしたちは失敗するようですわね」
 そうか、と。トークォは静かに、悔しそうに、けれどどこか安堵したように、小さく頷いた。
4882/3:2007/09/29(土) 21:38:28 ID:INr0lCqa0
 輪廻の観測者・ボー・ボーは、現在活動している神剣使いの中で、最も強大な時空操作能力を持っている。
 今まで数度、彼は自らの、不満足な結末へと行き当たり、それを覆さんとして時間を遡上している。その度に、同志にその結末を伝えることで、その未来を回避してきた。
 此度もまた、彼が所属するエターナルの一団――宿命のミューギィを頂点とするロウ・エターナルの敗北を目の当たりにし、その結果を拒絶して過去へと舞い戻ってきたのだ。 
「これで3度目。この短期間に3度もですわ。トークォ。いよいよわたくしたちは、袋小路に閉じ込められつつあると思いません?」

「……今回の顛末はどういう展開になった?」
 テムオリンの問題提起にはあえて言葉を返さず、トークォは瞑目したまま問いかける。問われたほうはまた僅かに苦い顔を浮かべ、答える。
「あの脳無しが、そのような細かいことを覚えているとお思いかしら? 戻ってきたという事実と、僅かに聞き分けられた単語の節々から、また負けたのだと判断しただけですわ。
 ああ、そういえば今回は、むやみに叢雲という単語を繰り返して発音しておりましたわね」
「叢雲?」
「ええ。少し前から活動を開始した神剣の名ですわね。世事に疎いあなたは知らないようですけれど、随分派手に暴れまわってますわ。私の手駒も何人かやられています。
 類推すると、その神剣と所有者が、わたくしたちの敗北に強く関わってくるということでしょうかしらね」
「――新参のエターナルか。所属はやはりあいつのところか」
 敢えてその名を口にせず、しかしトークォの抑えきれぬ怒りが、手に持つ長柄斧――虚空と共鳴し、世界を僅かに揺らがせる。
 最近新たに加わるエターナルの、そのほとんどが参加する一団の、勇猛なるリーダー、運命のローガスに対するトークォの怒りと恨みが、虚空の作り出した空間であるこの庭園に共鳴しているのだ。
 しかしテムオリンは意外にも、いいえ、と首を振った。

「叢雲とその所有者は、どこにも所属していませんわ。いえ、出来ないのです。何せ当の叢雲が、なんとも迷惑甚だしき、かのナル神剣なのですから。
 ええ。いくら1位神剣の威光を振るおうと、誰も付いてくるものですか」
4893/3:2007/09/29(土) 21:40:16 ID:INr0lCqa0
「――驚いたな。まだ残っていたのか、ナル神剣が。それも1位なんて大物が。なるほど、それならば――」
 ほぉうと、納得したように頷いて、トークォが言った。
 生半な神剣でどうにかされるほど、自分の虚空と姉さまの宿命は、無力とは程遠い存在だ。
 しかし、相手がナル神剣、それも1位のものとなればどうか。トークォは考える。彼自身は1度しか目の当たりにしたことのないナル神剣、その対峙の経験から推察すれば――
 苦労するどころではないだろうな。この世界に誘い込んで、姉さまと2人がかりで、なんとか互角の勝負になるかどうか。姉さまが起きてくれれば話は違うのだろうが……

「トークォ。これは由々しき事態と言えると思うのですけれど?」
「そうだな。――それで、俺に何を求める? 俺はここを動かないし、動けもしない。今の姉さまと宿命を1人にはできないからな」
「ええ、分かっています。あなたのような引きこもりに、何を期待するつもりもありませんわ」
 引きこもり呼ばわりすればさすがに怒るかと思われたが、逆にまったくだと苦笑で返され、僅かに拍子抜けする。
「なら、何でも好きにすれば良い。今のロウはお前が動かしているようなものだろうが。お得意の謀略でも策略でも、なんでもやればいいさ。俺は口を挟むつもりはない」
「そうはいきませんわ。トークォ。こればかりはあなたに許可を頂かなければ。そうでなければ、わたくしの言葉ではどうにも動いてくれない人がおりますので」
「――彼女に何をさせる気だ?」

「分かりませんか? 叢雲がわたくしたちの敗北を呼ぶというのであれば、その存在を抹消するだけですわ。
 ボー・ボーの時空遡行で、彼女を過去に送り込み、叢雲の主となる人物――望とかいう人間を、エターナルとなる前に殺させればよいのです。
 これは、彼女以外にはできないことでしょう?」
490名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 22:04:31 ID:RoJHV/XE0
>>489

そしてターミネーターユーフィーktkr。

再構成物、俺は全面的に支持するぜ!
491名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 22:40:08 ID:KnWhoC+50
>>486
俺の好きそうな展開ktkr!
俺も既存シナリオよりもマテ本設定に準拠したような形で再構成した方がいいと思う。

散々言われてるから今更だけど、本編のシナリオってノリでの思いつきを詰め込みすぎたか、締め切り間近に大幅な設定変更したか、とにかくいろんなとこが破綻しすぎちゃってるんだよな。
だったらいっそシナリオはそっちのけで資料の設定優先した方が話作りやすいし共有もしやすいと思うんだ。
ただやるからには慎重にやろう。オリ剣とかオリスキルとかそういうのは極力使わない方向で。
492名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 23:09:06 ID:mPiTZSLy0
>489
ハイレベルなのがキター。
まさに、「俺達の考えていた聖なるかな」だな。
時深さん大活躍の予感。
ただまあエタとして出来ちゃったのを過去で殺そうってのは無理な話だとおもうけれども。

>485
ああ、すまん。
望の魅力が薄いからか、二次の中でもいわゆるドリームものに近い妄想が多くなってないか? 
ということが言いたかった。中心人物がしっかりしてれば最大公約数も求めやすくなるし、幅も取りやすい。

ドリームものってのは、作品内に二次作者自身が入り込んでいく妄想小説を指す。
493名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 23:49:56 ID:RoJHV/XE0
>>492
>二次の中でもいわゆるドリームものに近い妄想が多くなってないか? 

例えばどれ?
少なくともここ以外で、なるかなのSSは見たことないし。
今のところ「俺と○○」的な絡みネタは無いように思えるんだが。
494名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 23:51:53 ID:fyhPpdSC0
期待してたさ、戦闘で関係なさそうな村とか開放したら
次の幕間(?)でクリスト・コマ劇場がみられるかも?ってさ
実際は戦闘パートのみ出演の捨て駒だなんて・・・

ザウスさんよぉ・・・
495名無しさん@初回限定:2007/09/29(土) 23:55:51 ID:SRqRgXcA0
戦闘時のセリフすらなかったからな
アセリアの戦闘セリフは、脱力するようなのも多かったが、キャラつかむには便利だった
496名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 00:00:20 ID:tTy2QWke0
戦闘台詞は増やしつつ、扱いはもっと酷くしてくれると愛着沸いて良かったかなぁなんて思ったり。
主要キャラは戦闘不能までだけど、クリストは死んだらそれっきり、処刑も可能、当然テキストでも触れられない。
ぐらいまでやってくれると本気で守りたくなるじゃん。
497名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 00:03:08 ID:WXiDBrX30
>493
ここの話しではないです。作品別。
あっちに妄想書く人多いし。なるかな以前ならうざがられたのに。

498名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 00:21:39 ID:tTy2QWke0
>>497
向こうは単にレーメたんの人が面白すぎて追従する奴が現れるだけで、
夢小説を本気で描きだす痛い人が集まってるわけではないと思う。
現状でなるかな二次の傾向ってのは全く定まってないんじゃないかな。
ちなみにアセリアはU-1系と同じジャンルにカテゴライズされてるらしい。
499名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 00:27:03 ID:aP6LNxNr0
>>498
U-1って何?
そんな細かいカテゴリーがあるのね。
500名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 00:54:58 ID:tTy2QWke0
>>499
U-1:
普通の一般人である筈の相沢祐一(KANONの主人公)が、修行したとか、実は物凄い潜在能力を秘めていたとか、
○○(堕天使が多い)の生まれ変わりとかそんな設定が付与されて最強の存在となってしまう原作レイパーの総称。
その活躍は多世界に渡り、圧倒的なパワーで敵味方を蹂躙し、その世界のヒロインは全て祐一の物になる。
名前は祐一だがそのキャラクターに一貫性は無く、作者の願望が反映されている事が殆ど。
作者曰く「これはKANONのクロスオーバーです」「○○という作品のヒロインが気に入ったので祐一とカプさせてあげようと思いました」
最近は似たような設定のオリキャラ物(所謂最強オリキャラ)を総称しているとか。
501名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 01:34:30 ID:aP6LNxNr0
>>500
解説ありがとう。
もう笑うしかないレベルだなぁw
澱剣も確かに同じだ。納得。
502名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 02:07:04 ID:SaxmM4gx0
>>500
つかそれ、まんまなるかな…
503名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 02:44:34 ID:nMTDarB10
>>502
『名前は望だがそのキャラクターに一貫性は無く、ライターの腕前が反映されている事が殆ど』
こうですか、わからぎゃらっしゃー!
504名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 10:25:02 ID:cjLHmdKS0
>>500
>>502
これ以上ないくらいのなるかな解説っすね…w
505名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 12:19:49 ID:XYAtuVgV0
(=゚ω゚)ノおはぃょぅ
んじゃ、とりあえずここでやらせていただきまっす。書き込み時には(=゚ω゚)ノ付けるんでよろしくっす。

>491
>オリ剣とかオリスキルとかそういうのは
出さんよw つーか元いるメインキャラを動かすだけでも肩抜けそうなのに なんでわざわざ神剣増やさなならんのよ。
オリキャラは端役で数名予定。
クリストの長 旅団の下っ端 光をryの下っ端 そんなとこ。どうしたって端役つかわなならんとこ以外は、本編とかwikiで名前出てる奴だけで行くよ。
つうかそんなの書いてる余力あるならレチェレやハキュレタやニーヤァ兄さまや、タリア×ソルラスカとか信助×美里とか書くよ。
あとエヴォリアに光を! もっと光を! 彼女救済せんことにはハッピーエンド成り立ちませんから!
まぁこんな感じで進めていきま。

で。俺マテ本手に入れられなかった口なんよ……行ったら無かったんよ。あんま入り浸ってるわけにもいかんかったんよ。
本編やれば設定本なんていらんだろとか思ってたらこの有様なんよ。アセリアのときの反省生かせてなかったんよ。OTLなんよ。
だから参考資料は本編とアセリアとwikと本スレの書き込みなんよ。その中にマテ本設定が入ってるかも知れんけどそれは意図したことじゃないんよ。

>494
お前は俺か。ええ。全く同じこと考えてましたよ? 何も無かったから数日発狂しましたよ。まじで。
まぁ発狂してる間に色々思いついたわけですが

>500
あるある。腐るほどあるな。それ系の。
その轍踏まないように、日々自省しつつ頑張りますよ。

>490
そういやターミネーターと同系の展開だな。言われて気付いた。でも大丈夫。今から書き込むOP4レスで、>492もろともふっ飛ばしてみせる。
んじゃいくよ。4レスだから支援は無くて大丈夫だよ。
506悪夢 目覚めの朝 1/4:2007/09/30(日) 12:21:40 ID:XYAtuVgV0
 俺は追われていた。
 追ってくるのは女だ。時代錯誤にも長槍を持ち、にもかかわらず、宙を飛ぶような勢いで逃げる俺を、それ以上の速さで追いすがってくる。
 追われながらも、俺は奇妙に冷静だった。何をどうしたところで、彼女からは逃げられないことを、知識ではなく本能で知っていたからだ。
 やがて彼女が、俺を長槍の間合いに収めた。顔は見えないがきっと、何も感じていないような、冷徹な無表情だったに違いない。
 それを感じ取った瞬間、振り向き様に双剣の片方を投げつける。無駄な抵抗と知りつつも僅かな希望を込めて。けれど女は顔色ひとつ変えず、首を僅かに振ってかわした。
 次の瞬間には槍が大きく引かれ、電光の速度で突き出され、俺は咄嗟にかわそうとして、そのときには既に手遅れだった。

 場面は移り変わる。

 激しく鍔競り合う双剣と長刀。数合打ち合って飛び離れ、呼吸を整えてまた打ちかかる。
 手数では双剣を持つ俺が、一撃の鋭さとリーチでは長刀を持つ敵手が、それぞれ上だ。ひたすら手数で押す俺の攻勢を、一刀で華麗に打ち払いつつ、一瞬の隙を見誤らずに打ち出される神速の突き。
 閃く剣先に心が躍動する。命を削る快感に震えながら、両足が悲鳴を上げるのもかまわず、無理な機動で強引に、なんとかそれを避ける俺。
 相手の男は良く避けたと賞賛の笑みを浮かべ、俺も応えてしてやったりと笑いを返す。そして再び切り掛かる。刃音。きらめく刃の輝き。荒い息。
 そのとき俺は、命のやり取りをしながらも、無性に楽しかった。多分それは相手も同じであったんだろう。

 そんな光景が不意に掻き消えて、次に写るのは鮮血の草原。
 死体が積もっていた。前後左右どこを見ても死者しかいなかった。その中央で、俺は凄絶な笑みを浮かべていた。
 両手には血に染まった双剣が。死体には全て、その双剣で切られ、突かれ、叩き割られた跡が。
 男も居た。女もいた。子供もおり、老人もあった。ことごとく殺されていた。何人死んだのか数える気もおきないくらいに殺した。その感触が腕に残り、その快感に俺は打ち震えていた。

 俺の見る夢は、そんな光景ばかりだ。
5072/4:2007/09/30(日) 12:25:23 ID:XYAtuVgV0
 夢で見る自分の体は、ある時は白かったり、黒かったりした。毛深かったり、薄かったりした。痩せていることもあれば太っていることもあった。髪の色もほとんどの場合で異なっていた。
 けれど。俺の使う武器は常に双剣で、俺を殺すのはいつも長槍の女で、俺と戦えるのはほんの数名で、俺が殺すのはそいつら以外の全てだった。
 殺し殺され傷つけ傷つけられ、そのたびに俺は歓喜の雄叫びを上げる。もっと殺せと。もっと殺せと。もっともっともっと殺せと。世界の全てを殺しつくしてもまだ足りぬと。
 そして最後に、毎回全く同じように、槍の穂先で体を貫かれて、次こそはやり遂げて見せると無念の叫びを上げながら、死ぬ。
 
 いつから見るようになっていたのか覚えていないほど昔から、物心ついたときから繰り返し、毎晩のように見る、快楽に満ちた至上の悪夢。
 子供の頃は眠るのが怖かった時期もあったが、所詮夢は夢。現実になんら影響を与えるものじゃない。
 ただ夢はそこにあるもの。俺の心の奥底にある破滅願望か、殺人願望か、そんな何かの漏出なのだとしても、現実に俺が、そういうことをしたくなったことは、一度も無い。
 要は恐れないこと。気にしないこと。そうすれば毎夜見るこの夢も、ちょっとした映画のように気楽に見ることができると、気付いたのはいつのころだったか。

 けれど。それは、いつも似たような展開だからこその慣れだったのだ。

 今も、俺は追われていた。いつものように追われていた。しかし、追ってくる相手はいつもの長槍女ではなかった。
 女であることに変わりはなかった。だが持っている武器が違っていた。服装も違っていた。何より、顔つきが違っていた。
 いつもより遥かに素早く、効率よく、俺を追い詰めながら、しかしその顔には感情があった。圧倒的な力の差を見せ付けるように、俺の攻撃を軽く打ち払いながらも、謝罪の心が確かに見えていた。
 そんな彼女は、身近にいる誰かに、とてもよく似ている気がすると、夢の中の俺ではない、夢を見ている今の俺が思った瞬間。
 俺の体に、光を放つ刃の先端が、異様なリアリティと痛みを伴って食い込んで、
5083/4:2007/09/30(日) 12:26:51 ID:XYAtuVgV0
「望さ〜ん! 朝ですよ〜っ!」
 
 そして俺は飛び起きた。ひどく汗をかいている。息も荒い。タオルケットはベッドの下に跳ね飛ばされて、枕も遥か彼方へ飛んで行ってしまっている。
「ゆ、ゆーふぃー、か」
「どうしたんですか望さん? ひどい汗です。風邪ですか? 悪い夢でも見たんですか?」 
 息を整えながら、俺を起こしてくれた女の子の方を向く。俺のほうを心配そうに見つめる瞳を見て、ほっと安堵の息がこぼれた。夢は終わったのだ。
 今まで見たことの無い人物の登場というただそれだけのことだというのに。夢の展開自体はいつもと変わらないのに、何故だかむやみな恐怖を覚えている自分がいる。
「ああ……ひどい夢だったよ。起こしてくれてありがとうな、ユーフィー」
 少し無理して笑みを浮かべてお礼を言うと、ユーフィーもにっこりと笑ってくれた。悪夢の記憶が少しずつ薄れて、朝の心地よさがそれを上書きしていく。よし、大丈夫。大丈夫だ。

「希美はもう来てる?」
「はい。下で朝ごはんを作ってます。今日は洋食だーって言ってましたよ。望さんがなかなか起きてこないから、私が起こしに来たんです。来て良かったです」
 そっか、と答えて、大きく背伸びをひとつしてふと気付いた。今日は朝の生理現象が起こってない。それだけあの夢に引っ張られてたのか。不幸中の幸いだなと、心の中で苦笑する。
 ユーフィーにはまだ見せられないよな――っつか、誰にも見て欲しくないし、見せたくもないか。
5094/4:2007/09/30(日) 12:27:47 ID:XYAtuVgV0
「時間は――まだ余裕あるな。んじゃ、ちょっとシャワー浴びてから行くから。先に食べててくれって伝えてくれるか?」
「くす、汗だくですからね望さん。そのほうがきっとお互いのためです。そんな姿で希美さんの前に出たら、問答無用で病院に放り込まれちゃうかもです」
 くすくすと笑ってユーフィーがいう。やりかねない、と俺も吹き出した。そんなやり取りだけで、心がどんどんと軽くなっていく。
「でも、希美さんは待ってくれると思いますよ。遅刻ぎりぎりまで待ってくれると思います。だから、なるべく早く着替えてきてくださいね」
 確かにそうかもしれない。希美はそういうやつだ。そしてきっと、その隣にはユーフィーもいて、2人で文句を言いながら、俺を待っててくれるんだろう。

「そうだな。出来るだけ急ぐようにするよ」
「はい。それじゃ、私は下に降りてますね。二度寝しちゃ駄目ですよ?」
「しないよ」
 笑う。ベッド脇から扉へ向かっていくユーフィーの、小柄な後ろ姿を何となしに見守りながら、悪夢の最後の余熱が冷めていくのを待つ。ふと立ち止まって振り向く背中。
 
 何故か――その顔が、太陽のように輝いている笑顔なのにも関わらず、さっきの夢に出てきた、俺を刺し殺した女の顔と、とてもよく似ているような気がした。

「言い忘れてました。
 おはようございます。望さん♪」
510名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 13:46:37 ID:Sf1rU8n00
乙!最初からユーフィーいるのか。これはwktk
511名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 13:55:20 ID:qrKUtl7n0
余計なことかも知れないがちょっと気になるんで言っちゃうけど、
「聖なるかなの再構成」を目指すならエターナル登場から開始するのは止したほうが良かったんじゃないかと思う
今作本編の最終的なシナリオは「神々の転生体が人として創造神に戦いを挑む」で終わってる訳だし
ロウ・カオスのエターナルの視点から物語が始まると、読み手にはクライマックスがロウVSカオスに映ってしまう気が
それだとシナリオの主眼が時間樹エトカリファの分枝世界を守るための戦いからズレちゃうんじゃないか
エターナル同士の抗争を描くならそれは「聖なるかなの再構成」じゃなくなってしまうんじゃ?
512名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 14:09:45 ID:prDiss8X0
まぁまぁ、まだ方向性が完全に出きったわけでもないんだから。
生暖かい目でwktkしてようぜ。
513名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 14:11:47 ID:WXiDBrX30
>505
492だが、え、俺だけそう言う扱いなの(´・ω・`)? 
水を差したならスマン。

>509
乙。
吹っ飛ばされたって言うとなんだけど、上手い文章に期待の持てるダークOPですね。
ユーフィーの目的ってのがいつの間にかすり替わっているのだろうか。
514名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 14:13:43 ID:zBv0+nd30
結局このスレもそういう方向に行くのか。
正直、シナリオ叩きとその発展系は本スレだけに留めて置いて欲しかった。
2ヶ月その話題だしな。
そろそろそういうのにいい加減うんざり、という方が少数派なんだろうか。
515名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 14:23:02 ID:qrKUtl7n0
>>514
SSスレだからこそ、って部分もある気がする
なるかなのシナリオや設定に粗、というか穴があるのは事実だし
その穴を自分にしか通じない俺解釈だけで埋めたSSが面白くなるかは正直微妙なところ
なら書き出す前にその穴について解釈を求めるなり述べるなりしたほうがいいんじゃ
516名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 15:35:21 ID:80CI7Dh50
>>501-504
U-1の痛さってのは原作キャラの世界や魅力を無視しまくって、自分の願望だけを押し付けまくる行為にあるから一次をU-1と呼ぶのは違うと思う。
以下U-1作者との良くある問答。

Q.あの、何故この主人公が祐一なんでしょうか?
A.KANONとのクロスオーバーだからです。

Q.いや、そういう事じゃなくてこの主人公が祐一である必要があるんでしょうか?
A.KANONとのクロスオーバーなんだから必要はあると思います。

Q.というか、これ祐一じゃないですよね?KANONやった事あるんですか?どう考えても別人じゃないですか。
A.捉え方が作家毎によっては違うのは当たり前です。貴方の中では違うかもしれませんが、私や応援してくれるファンの皆様の中ではこれが祐一なんです。

Q.人それぞれ違うかもしれないけど、二次創作なんだから統一しなきゃいけない設定というのはあるんじゃないでしょうか?
 そもそもこれ、登場人物の名前以外何も引き継いでいないじゃないですか
A.だったら貴方がそれを書けばいいじゃないでしょうか?そんなに嫌なら見なければいいと思います。
  あんまり突っかかると嫉妬してるみたいでみっともないですよ。
 
これ以上はスレ違いなのでやめるけど、基本的にU-1ってのは二次創作に限った話という事でお一つ。

>>509
GJ。
一見するとバッドエンド確定な流れですね。wktk感がたまりません。
オリで補完するなら物部学園の生徒なんかもやって欲しいっす。
名前は無くても、反発する生徒、怯えるだけの生徒、協力的な生徒、マイペースな生徒etcみたいな感じで。

>>514
設定についての話になるとどうしても文句が出ちゃうのはしょうがないかなぁとは思う。
まぁでもあんまり原作を叩くだけの方向には持っていきたくはないよね。せめてやるんなら生産的な方向で。
517名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 16:07:15 ID:prDiss8X0
>A.だったら貴方がそれを書けばいいじゃないでしょうか?そんなに嫌なら見なければいいと思います。
> あんまり突っかかると嫉妬してるみたいでみっともないですよ。

どっかで見たような台詞www
最初から開き直って『ほとんどオリジナルです』とでも言ってくれればなぁ……
518名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 19:56:08 ID:nMTDarB10
>>500>>516を見てたら久々にスコッパーの血が騒いできたぜ
519名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 21:23:03 ID:apfvo3Lr0
言っていいかわからんが言わせてもらおうか
どこぞのア○○アの二次創作同人ゲーも似たようなモンだったな
シナリオ3本やって放置してあるよ・・・
520名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 22:41:45 ID:thOo4pYO0
外部の作品に手付けるのはやめておこうぜ。
U-1な作品が大量なのはみんな分かりきってるだろうし、オレらはこうならないように努力しようと自戒するに留めておこうよ。
余計なもめ事持ち込みたくないしな。
521名無しさん@初回限定:2007/09/30(日) 22:54:22 ID:FWEiwl180
よく言った!!出雲に来て綺羅をファアアアック!していいぞ!!

ああ、ごめんなさい!頭に牙を!爪を立てないで!アッー!
522名無しさん@初回限定:2007/10/01(月) 00:12:53 ID:oAYegniW0
かなりのキャラが、自己都合やら拉致やらで一度は戦闘メンバーから外れてしまう旅団であるが、
ソルがもしもタリアを逃がすために理想幹に残存したりしたらタリアはどうなりますかね?
523名無しさん@初回限定:2007/10/01(月) 00:25:04 ID:wKtRk7G10
>>522
「最近のソル、いい気になってたから良い薬じゃない」
524名無しさん@初回限定:2007/10/01(月) 00:26:07 ID:0B/aK5aC0
>>523
吹いたwww
ほぼ確定だろうなw
525名無しさん@初回限定:2007/10/01(月) 00:34:21 ID:Li+cA4sV0
話が面白けりゃ何でもいーんでないかい?
これまでの作品見るに(=゚ω゚)ノぃょぅの人は期待は出来る…とは思う。

まあなんだな。二次創作はSMみたいなもんで。
まず大前提として素材がよくないとおっ勃つものもおっ勃たず。
それをクリアしてもだ、人によっちゃハードでないと感じないという
ヤツもいれば、ソフトでも全然OKという人もいるだろう。
緻密なハードの縛られ方に美しさを感じることはあるかもしれないが、
それだけではないだろうという事でひとつ。
526名無しさん@初回限定:2007/10/01(月) 14:12:48 ID:JxVZX/T30
そろそろSS保管庫みたいなの作らまいか。
俺はスキルが無いので出来んが。
527名無しさん@初回限定:2007/10/01(月) 14:57:42 ID:xP9iW7qo0
まだ1スレ目でここで全部読めるし
あと、100KB以上大丈夫なんだぜ?
早いだろ
528犬猿の仲:2007/10/01(月) 22:07:48 ID:kE6pnbmO0

ログ領域から沙月とサレスを無事救い出し、ゼフェリオン・リファから脱出しようとしていた俺達の前に立ち塞がったのは、
妙な格好をした巨大な「抗体兵器」とかいう奴の大群だった。図体がデカすぎるせいか、動き自体は緩慢なのが唯一の救いか。
しかし『荒神』で引き裂こうとしても、中々息の根を止めるまでには至らない。
そして思い出したように繰り出してくる一発一発がまともに喰らえば洒落にならない破壊力で辺りを焦土に変えていく。
連続で管理神と戦って来た後なので、みんな疲れきっている。
このままずるずると持久戦にでも持ち込まれたら簡単に全滅しちまうだろう。くそ、やべぇ。
「みんな! 全力でものべーに走れ! 突破口は俺が作る!」
「ちょっと! 何馬鹿言ってんのよ!」
「うるせえっ! お前も早く行け、奴らは%攻撃じゃなきゃ倒せねぇ、足手まといだっ!」
「なんですって?!」
ちっ、口が滑った。案の定一人だけ立ち止まり、血相変えて詰め寄ってくる。
全く、こんな時まで面倒くせえ性格してやがんな。とっくに体力の限界で、足元ふらふらと覚束無えくせに。
背後から踏み潰されそうになった小柄な身体に咄嗟に飛びかかり、その場から離れる。途端、物凄い地響きと土砂の嵐が背中を叩く。
「――――痛ぅっ!」
「っっ! アンタ、血っ!」
「へっ……これくらい、なんでもねぇ。それより、早く行け。サレスが……待ってるんだろ?」
「ちょっとこんな時に何言って……待ちなさいよっ! これで……」
急に慌て、懐の中をごそごそと漁り出す。元々赤い瞳の目元がいつの間にか少し腫れていた。
恐らくいつも携帯している絆創膏でも探してるんだろうが……こんな時に何やってんだよ、お前こそ。
ま、そんな所に惚れちまったんだけど、な。鉤爪が当らないように、そっと細い肩に手を当てる。
529犬猿の仲:2007/10/01(月) 22:09:15 ID:kE6pnbmO0

「いいから、行けよ。判るだろ、今奴らを足止め出来るのは、俺だけだ」
「……くっ、そういう問題じゃないでしょ」
「ありがとな」
「ソル?……きゃっ! な、何をっ?!」
「――――サレスッ!」
そのまま思いっきり突き飛ばす。後方で受け止めたサレスが眼鏡を上げながら、小さく頷いていた。
迫る脅威を肌で感じ、振り返る。数体の抗体兵器が今まさに俺に向かい、咆哮しようとしている瞬間だった。へっ、上等じゃねえか。
「……後は頼んだぜ」
呟き、一気に跳躍する。後ろから、馬鹿ぁっ、とか罵声が投げかけられたが、むしろそれで笑いが加速する。力が漲る。
「いくぜっ! 『黒き牙』!」
神獣の力を限界まで解放する。獲物はそれこそ掴み取り状態。身体中の血が沸騰してくるのがわかる。
戦闘に、研ぎ澄まされていく神経。鋭敏になった聴覚が、ものべーに無事乗り込もうとしている仲間達の声まで運んでくる。
『タリア、怪我はないか』
『え、ええ……。その、はい。ありがとうございます』
『後はソルラスカね。大丈夫かしら』
『あ、えっと……そうね。最近のソル、いい気になってたから良い薬じゃない?』
「――――ぐはぁっ!」
その精神的アンチバニッシュ口撃はものの見事にダストトゥダストの効力を発揮し、次の瞬間、
強制的に全ての戦闘マナを0とされてしまった俺は抗体兵器によってあっけなく理想幹のお星様と化していた。まさに命脈の源泡の如く。
530名無しさん@初回限定:2007/10/01(月) 22:10:34 ID:kE6pnbmO0
派生元住人でなるかなはまだ良く判ってないヒヨッ子ですが、
>>522-523の流れにフイてつい書き殴ってしまいました。スレ汚しスマソorz
531名無しさん@初回限定:2007/10/01(月) 23:13:28 ID:gyGJLO4C0
タリアヒドスwww
532名無しさん@初回限定:2007/10/01(月) 23:43:48 ID:wKtRk7G10
>>530
バロスw
そういえば、タリアに隠れて忘れられがちだけど、
ソル苛めならカティマも相当ヒドスだよなぁ
533名無しさん@初回限定:2007/10/02(火) 13:44:29 ID:LMnnhfNd0
(=゚ω゚)ノ月開け初ぃょぅ

>511
確かに言うとおりだと思う。でも俺にとっての聖なるかなは、「永遠神剣シリーズ第2章」というのがまずメインに来てるんだ。
ロウとカオスの抗争劇の中にある、ひとつの大きなエピソードを切り出したのが、アセリアであり、なるかなだと。
それを本編中で象徴してるのが、ユーフィーや時深、イャガの登場とそれぞれの結末だと思うんな。
でも、本編中では彼女たちの存在意義自体が無いようなものになっちゃってる。実際、いなくても物語上ほとんど問題ないし。
だから、なるかなが永遠神剣シリーズに入るの自体がおかしいんじゃないかって意見が出る。
だから、物語の大きな部分に、ロウとカオスのエピソードを挟み込まないといけないと思ったわけさ。

まぁつまるところ、本編でロクな見せ場が無かったユーフィーの補完をしてやりたいんだよ! ってことでw

>516
あ、ごめん、今のうちに謝っとく。
物 部 学 園 は 飛 び ま せ ん ので。
物部学園飛ばして、生徒たちの描写もきっちりして、ってとこまでは、正直手が回らんのです。力量不足で申し訳ない。

>518
スコッパーって何だすか?

>530
盛大にワラタw どんなオチが来るのかと思えばw 
せっかくソルカッコヨスだったのに……

さて、それでは第3回目の投稿を。そろそろあちこちで、キャラクター個々の設定変更色が強くなって参ります。
特に望。思慮深く真面目で、物事を多角的に判断でき云々という、公式HP設定の望に近づけるように書いてみたんだが……雰囲気出てるだろうか。
書いてて別人28号じゃんと思ったりもしたわけで、受け入れてもらえるか不安な俺も小心者。
534平和な1日 1/11:2007/10/02(火) 13:47:37 ID:LMnnhfNd0
 物部学園は古い歴史を持つ私立学園である。幼稚園から大学まで一貫のマンモス校だ。
 広大な敷地面積と充実した施設群を誇り、教師陣の評価も高く、全国でも有数の名門校として名を知られている。
 元々は旧校らしく、それなりに名の通った家やら資産家やらの子女ばかりが通っていたが、少子化に歯止めが効かないここ10数年の流れを受けて経営が悪化。
 現在では全国から、家柄や資産額などに関係なく生徒を募集し、また世界各国からの留学生も積極的に受け入れて、経営再建を図っている真っ最中である。
 世刻家の長男にして、現時点ではただ1人の実子でもある望も、校風が大きく変わりつつある物部学園に籍を置くうちの一人だ。
 高等部からの入学であるが、望と同様に公立中学を経て入学してきた生徒もかなりの人数になっているため、特に戸惑うことなく学園にも慣れて早幾年月。
 幼なじみでお隣同士の永峰希美、世刻家養女のユーフォリアをはじめとした、同級生下級生たちと、平凡で、陽気でのんきな学生生活を送っている。

「はぁーい、来たわよ、望くん」
 右手に小さなバッグを提げて、沙月先輩がやってきた。どこか日本人離れした風貌と、綺麗に伸びた赤い髪が目印の綺麗な人だ。

 俺と希美、それに同級生の信助と阿川が手を振って迎える。学園の、中央広場の木陰にピクニックシートを敷いての昼食タイム。
 だんだんと夏の暑さが翳ってきたここ最近は、だいたいこの場所が集合場所になっている。
「ういっす! 斑鳩先輩、今日も変わらず綺麗っすねっ! ぜひ今度2人きりでお会いしたいのですが!」
「ありがと、森くん。でもそんなこと言っても何も出ないわよ? 出るのは、私手作りの、お弁当くらい〜」
「あ――それはちょっと、勘弁していただきたく」
 信助がいつものように、本気か冗談か分かりかねるような挨拶をして、きっちりカウンターを食って降参する。ていうか先輩……自分の弁当がやばいって自覚あるんですね。
「あら、私を諦められるくらい、私のお弁当ってまずいわけ? それもちょっとへこむなぁー」
 先輩はシートの空いているところに座りながら、信助に追撃をかける。さすがだ。やはり先輩のほうが何枚も上手、どう答えても外れっぽい展開になっている。
5352/12:2007/10/02(火) 13:48:49 ID:LMnnhfNd0
「あーあーあー、いえ、そんな、先輩のためならば! たとえ赤くて硬くて苦くてきのこ風味の唐揚げでも、何個だって食べて見せますっ!」
 やけくそ気味に胸を張って言う信助。額には微妙に脂汗が流れている。しかしなんだよその食べ物は。本当に実在するのか?
「森君、そんなの食べさせられたの?」
 ここで、小さくくすくす笑っていた希美が口を挟んだ。 

 既に俺たちは昼食を広げている。親に作ってもらいました感ありありの信助と阿川。俺のは購買で買ってきたパン2個と、コーヒー牛乳が1本。
 そんな中で希美の弁当は、大きさ的にも見た目的にも、場の支配者のような存在感を放っている。
 色合い、品揃え共に豊富。ご飯の上にはそぼろと卵。豚肉のしょうが焼きをメインに、ひじきやほうれん草のおひたしといった副菜が添えられた、和風テイストが強めに漂う重箱弁当だ。
 もちろん、女の子1人で食べられる量じゃない。弁当非持参の俺やユーフィーの分も考えて作ってくれているのだ。
 毎日朝ごはんを作ってもらっている分も考えると、いったいどれだけ希美に借りがあることやら不安になってしまう。
「いや、それは先輩じゃなくてみ――いたいいたいいたい耳引っ張るなよ美里ぅっ!」
 信助の左隣に座って、愛用のデジカメで希美の弁当を撮影していた阿川が、突然信助の耳を思い切り引っ張っている。それで概ね事情は察せた。いや、色々苦労してるな信助も。

 信助と阿川も、俺と希美とは別に幼なじみの間柄だ。もっとも、2人の場合は幼稚園から小学校低学年までという、男女の別があまり付かない時期に良く遊んでただけだということらしい。
 思春期に入って、中学生になって、お互いにどことなく疎遠になっていたのが、たまたま揃って物部学園に入学してからまた話すようになったとか、そういう経緯なんだそうだ。
 信助いわく、美里はただの古なじみってだけだ! だそうで、
 阿川いわく、信助? なんか気が合うから一緒にいるだけよ。だそうだ。
 まぁ他人同士の関係を、どうこう言う気なんてない。正直俺は俺の人間関係だけでもお腹一杯だ。ほら、こうしている間にも、希美が先輩の弁当に色々何か言い始めてる。
5363/12:2007/10/02(火) 13:53:23 ID:LMnnhfNd0
「ふむ。相変わらず凄い色合いの弁当ですね、斑鳩先輩」
「うわびっくりした! いきなり後ろから覗き込まないでよ暁くん!」
 俺もびっくりした。いつの間にか絶の顔が、先輩の肩越しに覗いている。いや本当に、いつから見てたんだろう。
「絶、おまえいつの間に?」
「森の耳が思い切り引っ張られたあたりからだな。
 しかし先輩、青色をしたおにぎりというのはいくらなんでも無しだと思うのですが」
「あ、やっぱり暁くんもそう思うよね? ほら先輩、やっぱりおかしいですよ、このお弁当」
「り、料理は味よ、味! おいしかったら多少見た目が悪くたって」
「料理は目で味わうものでもありますよ、先輩。そうだな、望はどう思う」
 俺に振るな。そして何か期待してるような目で見るな。そんなに俺が何かやらかすのが楽しみか、絶。
「楽しみだね」
「そうかよ」
 即答された。まったく友達甲斐の無いやつだ。諦めて先輩の小さめなお弁当箱を覗き込む。――おにぎりが何故に総天然色ですか、先輩。

「これは……凄いですね」
 いや、本当に凄いとしか言いようがない。何か致命的に色彩感覚が狂ってるのかとしか思えない毒々しい色のおにぎりが4個、ごろごろと転がっている。
 おかずがまともな――いや、そう見えるだけかもしれない。先輩の料理はどこに地雷が隠れているか分からないのだ――だけに、主食のえぐさが実に良く際立っている。
 おいしいまずいの問題以前に、はたしてこれは食して大丈夫なものなのかどうかが危ぶまれる出来栄え、とは思えどいくらなんでも直には言えない俺小心者。
 まぁ、容姿端麗学業優秀運動抜群、学園内でも評判の人気者な先輩にも、こんな弱点があると知ってるのは、ごく近しい俺たちだけなんだと、
少し優越感を抱かないこともない。自分に災厄が降りかかってこなければだけど。
5374/12:2007/10/02(火) 13:55:04 ID:LMnnhfNd0
「絶句しないでほしいんだけどなー」
 先輩がすねている。黙りこくりすぎたらしい。けれどこれはどう答えたものか。絶、信助、阿川と順繰りに視線を送ってみるが、すすすと視線を外された。お前ら。
「すいませーん! 遅くなりましたー!」
 そのとき天使のような声が聞こえてきた。話を逸らす絶好機、これを逃がすわけにはいかない。声に答えて後ろを向く。ごめん先輩。

「よ、遅かったなユーフィー」
 中等部の制服に身を包んだユーフィーが、とてとて走ってやってくる。手ぶらなのに遅かったのは、前の授業が遅れるか何かしたせいだろう。
 背丈や体格は、同年代のほかの女の子と比べても発達してるとは言えない。けれど身体能力は高いらしく、かなりの勢いで走ってきたのに、ほとんど息も切らせずにいる。
 中等部の校舎から走り詰めだったとしたら、年齢と体格の割には大したものだと思うんだけど、どうなんだろうか。
「はーい、ユーフィーちゃん。今日も元気?」
「はい、元気ですよ。沙月さんも皆さんもお元気そうですねっ」
 挨拶を交わしながら靴を脱いで、俺の右横に座る。これでいつものメンバーが勢ぞろいだ。またしてもいつの間にか、絶もシートに腰を下ろしている。音も無く動くな。心臓に悪い。
「それじゃ、みんな揃ったところで」
 いただきます、と、沙月先輩の音頭にあわせて、小学校の給食開始時のように、7人の声が揃った。 
5385/12:2007/10/02(火) 14:00:12 ID:LMnnhfNd0
「やっぱり希美ちゃんのお弁当はおいしいわ〜。うん。あ、暁くんそれ何?」
「パスタと鶏肉とセロリを刻んで、餃子の皮でまとめて包んだものです。ふと思いつきで作ってみたんですが」
「手作りかよ」
「無論だ。なに、森だって少し練習すれば出来るようになるさ」
「こいつにそんな根性無いって。めんどくさがりだもん」
「えっと、ひとつ貰っていいかな暁くん」
「あ、私も食べてみたいです」
 賑やかに、お互いの弁当をつつきあいながら、会話に花が咲く。

 絶は1人暮らし。親がどうなったのかは聞いていない。家事の一切を全部自分で片付けて、勉強の合間にバイトで生活費も稼ぎ出している苦学生だ。
 その上、毎日の昼食にはかなり手の込んだ弁当をしっかり作ってくる。だが疲れたような顔を見せたことがない。ついでに背も高く顔も良い。学業でも文武両道に好成績を残す。
 かくて付いた裏でのあだ名が完璧超人。ここまで何でも1人で出来てしまうと、羨みやらやっかみやらの対象にもならない。だから、あまり周りに人が集まらない。
 そんな絶と俺が、こうして友人になったきっかけは……正直あまり覚えてない。たまたま隣同士の席になったのが最初だったかな、というくらいだ。
 どちらからともなく良く話すようになり、いつの間にか絶が希美や先輩たちとの輪に加わるようになって、今に至る。人と人との縁なんてそんなものなんだろう。

「ぶはぁっ!? せんぷぁい! このたまごやきなんかへんな硬さと味なんですけどぅ!?」
 信助が悲鳴を上げて口から卵のかけらを吹き出した。愚かなり信助。先輩の料理に安全地帯なんてあるものか。
 まぁ、咄嗟に木のほうを向いているあたり、まだ余裕はあるらしい。そしてその瞬間を写真に撮っている阿川が実に絶妙。さすが写真家志望なだけはある。
「えーと、右から3番目だからー……どうやって作ったんだっけ。あはは」
「ちゃんと味見しないとだめですよ先輩。あとレシピもちゃんと残しておかないと、凄く良いのもあるのに再現できないんじゃ意味ないじゃないですか」
「あっはっは、そこ突かないでのぞみん。結構痛いから」
5396/12:2007/10/02(火) 14:10:29 ID:LMnnhfNd0
 信助と阿川は、最初は希美の友達だったんだっけな。
 阿川と希美がまず知り合って、そこに信助が割って入って、続いて俺が加わった。初対面のときに、阿川が俺の苗字を聞いてひっくり返ったのも良い思い出だ。
 なんだかんだで、今では別クラスなせいで会えない時はとことん会えない絶よりも、信助と一緒にいるほうが多くなっている。
 そこに女性陣が加わればやれ買い物ややれカラオケやと繰り出したり。
 2人のときもそれなりに、ゲームしたり無駄話したりでいつしか時間が大変なことになっている、ってのが良くあるパターンだ。
 なんにしても、俺はいい友人に恵まれたと思う。 

「望ちゃん、パンだけじゃなくてお弁当も食べてね? 栄養バランスも考えないと」
 希美が話しかけてきた。そうだな、と答えて適当に箸を伸ばす。実際、パンだけじゃ少し量が物足りない。それに何より、ちゃんと食べないと夕食がどうなるやら。
「そうよー、菓子パンってカロリーだけしか取れないんだから。というわけではい、沙月さん特製緑黄色おにぎりー。これ一個で必須ビタミンが全部取れちゃう優れものよ」
「……何をどうしたら、おにぎりがそんな色になるんでしょう」
「企業秘密よん」
  
 沙月先輩は――正直今でも良く分からない。俺はクラブや生徒会には入っていないため、先輩とどこで接点があったのか、未だに思い出せていない。
 言ったことは無いけれど。怖いから。
 ただ、何度か廊下ですれ違ったり、図書室で顔をあわせたりしているうちに、何故か知らないけど気に入られて、
気がつけば、この目立つ先輩が、1学年下の教室にまで押しかけてくるようになっていた。
 もちろん、そのことに不満なんて無い。クラスメイトからからかわれたり、邪推されるのにももう慣れているし、そのこと自体が少し誇らしいと思う気持ちもある。
 ちょっとおせっかい過ぎるところはあるけど、その分色々と頼れる、良い先輩だ。
 ただ、最初のきっかけが分からないのが、少し引っかかっているだけで。
5407/12:2007/10/02(火) 14:12:25 ID:LMnnhfNd0
 押し付けられた青緑色のおにぎりを、どうしたものかと悩んでいると、横のユーフィーがごちそうさまでした、と一言言った。
「あれ、もう良いの?」
「はい。もう結構食べましたし。お腹いっぱいです。ありがとうございます沙月さん希美さん暁さん。
 望さん、せっかく作ってもらったんですから、ちゃんと食べないと沙月さんに悪いと思います」
「それじゃユーフィー、これ食うか?」
「私はもう食べられないですから」
 にっこりと笑って遠慮なくどうぞ。と続けられる。沙月先輩は期待に満ちた目だし、絶や信助も興味津々、阿川はカメラを構えるな。頼むから。
希美も心配そうには見てくれているが、助けてはくれないらしい。
 退路なし。もはやこれまで。名無三。
 
 運を天に任せて、毒にしか見えないそのおにぎりにかぶりついた。

 ――希美とは、この中で一番付き合いが長い。
 何せ、生まれた日も病院も一緒。新生児室で隣同士のベッドだったというんだから大笑いだ。そのときに互いの両親同士が知りあって、以来家族ぐるみでの付き合いが始まったらしい。
 おかげで、俺の両親が、子供なんてとても連れて行けないような鉄火場ばかりを巡り歩いていく、ヤクザな生活を送る中で、俺は斑鳩家のごく普通な環境で、育てさせてもらえた。
 子供の頃の写真を見返したりすれば、俺たちは大抵一緒に写っている。並んでにっこり笑っている俺たちは、どこから見ても仲の良い兄妹に見えただろう。
 だけど、やっぱり真の兄妹にはなれなかった。
 いつか、古い思い出のなかにある、皿の上にとても不ぞろいな形の、小さなおにぎりを並べて、俺に出している希美の姿。
 それが希美の気持ちを最初に意識した場面だった。以来もう何年経ったのか。希美は変わらず俺の隣にいて、変わらない笑顔と変わらない気持ちを俺に向けてくれている。
 でも。俺は今の居心地の良さを壊したくなくて、周りとの関係が壊れるかもしれない恐怖に負け続けて、この歳になってもまだ、希美の心に答える勇気を持てていない。
 あのときのおにぎりは、今の希美の料理からは考えられないくらい、とんでもなく妙な味だった――
5418/12:2007/10/02(火) 14:14:34 ID:LMnnhfNd0
 ――結論から言うと。
 先輩のおにぎりの味は、あのときのアレよりも数段すさまじく壮絶に強烈なものだった。 
「……これは。なんと言って良いか」
 と言葉を発したはずだけれど、皆には届いたかどうか。もしかしたらそう思っただけかもしれない。
 口の中に溢れかえる青臭い香りと味。鼻に抜ける強烈な草の匂い。胃が拒絶しているような粘着質ののど越し。逆流したら大惨事と、必死に抑えて飲み込んでいく。
 野球場に行って、人工芝を引っこ抜いて、数束丸めてまとめて食べたらひょっとしたらこんな感じなんじゃないか、と思ったそのとき、ようやくその物体が、胃の中にもぐりこんでくれた。

「望ちゃん、大丈夫!? 顔色真っ青だよ!?」
「いや、しかし良く飲み込んだ。さすが望だ。吐き出した森とは比べ物にならない男っぷりだな」
「はい、お茶です望さん。口の中ゆすいでください」
 ユーフィーの差し出したペットボトルを受け取って、一気にあおる。やばい。本気でやばかった。今のはもう少し多かったらきっと致死量だ。
「えっと……そんなに不味かった? 望くん」
「……不味い、というか。拙いというか、マズいというか。人知を超えた味でした。ぜひご自身で体験するのをお勧めします」
 かぶりついた残りを先輩に差し出した。大分減ったがまだ半分は残っている。体験するには全く問題ない量だ。――先輩、自分で作っておいてたじろぐのはどうかと思います!

「望! 先に俺に寄越せ、俺だって男だ、先輩の作ったものなら今度こそきっちり飲み込んでやる!」
「信助!? いや、よせ、これは命に関わる!」
 と、何を血迷ったのか、信助が俺の手の中にあった毒物をもぎ取ってしまった。横目ににやりと笑う絶の顔が映る。お前ね。
「そこまで言われるとちょっときついなぁ……」
「行くぞ! 先輩、俺の愛を見てください!」
 叫んで、口の中に残り全部を叩き込む。シャッターチャンスを逃がすまいとデジカメを構える阿川。止める気も助ける気も無しか。

 数秒。沈黙。飲み込めないらしく苦悶の表情。吐き出すまいと全身全霊を込めているのが外野からでも覗える。がんばれ、信助。
5429/12:2007/10/02(火) 14:24:46 ID:LMnnhfNd0
 まぁ結局、飲み込みきれずに、水道口まですっ飛んでいくことになったんだが。

「あーーーーーー。まだ口ん中に残ってる気がするぜ」
 夕暮れの帰り道。俺と信助・希美と阿川がそれぞれ並んで歩いている。絶は早々にバイトで退散し、先輩は生徒会の活動で帰れず、ユーフィーは中等部だから先に授業は終わっている。
 俺たちが前。希美たちが後ろ。前後でも充分会話可能な距離だ。
「だから止めとけって言っただろ。ってこの会話もう何度目だ?」
「忘れた。けどホントに、ありゃ効いたぜ。まさかあの唐揚げを超える食い物が世の中にあいて」
 後ろから、信助の後頭部に阿川の手刀が入る。
「いつまで何年も前のこと言ってるのよ。子供の料理なんだからひどい味で仕方ないじゃない、ねぇのぞみん?」
「そうだよね。前のことをいつまでも言うものじゃないと思うよ、森くん」
「おーい、俺だけ袋叩きかよ。何とか言ってくれ望」
 すがりつくな信助。すがりつかれても気色悪いだけで何も出せん。てか歩きにくい。
「なんとも言いようないな。俺も子供の頃の希美料理には色々とやられたけど、それを根に持ったことはないし」
「あ、やっぱり希美も料理下手な時期てあったんだ?」
「そりゃそうだよ、最初からうまい人なんていないもの。いつまで経ってもうまくならない人はいるけど」
 そういうことを本人がいる前で言わないでくれよ。頼むから。

 物部学園から俺の家まで徒歩で20分程度。自転車ならもっと早いんだが、親父に往復40分くらい、毎日歩けとどやされて、自転車通学の許可がもらえなかったのだ。
 阿川と信助は電車通学なので、時間が合うときはこうして、信助たちと駅まで行って、そこから希美とたまにユーフィーも連れて家へ、という経路が帰宅ルートになっている。 
 毎日小1時間の徒歩通学。最初は辛かったが、今ではすっかり足腰もそれに慣れて、心なしか歩く速度も前より早くなったように思う。
 まぁ、親父はその後、希美も一緒に歩いて通っていると知ったとき、足太くしてごめんなー! などとピントが大分ずれたところで平謝りして、赤くなった希美に殴られたらしい。
54310/12:2007/10/02(火) 14:29:34 ID:LMnnhfNd0
「ところで世刻、ご両親って、今どこにいるの?」
 後ろから阿川が話しかけてきた。少し考えて答える。
「知らない。前手紙が来たのが……2月前で、そのときは東南アジアのどっかからだったな。多分ビルマあたりにいるんじゃないか? 今騒ぎになってるし」
「だとしたらやばくないか? 確かフリーで入った人が、何人も死んだり捕まったりしてるんだろ?」
「らしいな。けどあの2人なら大丈夫だろ。何せアフリカの紛争地帯で、子供連れで半年過ごして、揃って無傷で帰ってきたんだぜ?」
「さっすが世界の世刻夫妻よね! ねー、次帰ってきたら絶対に教えてよ? 色々聞いてみたいこと書き溜めてるんだから」
 阿川がまたそのときのことを想像してトリップしている。いや、本当にその気持ちだけは理解できないよ。俺には。

 俺の両親は、フリーのジャーナリストだ。親父が写真。お袋がライター。特に世界の紛争地域や、独立運動とかで騒ぎになってるところばかりを巡っている。 
 良く知らなかったのだが、どうもその業界では随分と名が知れているらしい。親父と同様に、写真メインのジャーナリストを目指している阿川から聞いた話だと、
なにやらえらく有名な賞の候補にも上がったことがあるとかないとかなんだとか。
 俺がその1人息子と知ったときの阿川の驚きぶりは今でも忘れない。ついでに、俺が全然両親の仕事について知らなかったことを知ったときの、あの馬鹿にした目線は心に刻まれている。

「そりゃ、教えるのは良いけどな。会ってがっかりしないでくれよ? 実際会ってみたら変人も変人、息子放りだして世界中ほっつき歩いてて、いきなり別の子供連れて帰ってくるような2人なんだから」
「天才と変人は紙一重って言うじゃない。そういう人じゃないと、あれだけの仕事なんて出来るわけないもの。
 ――後半については、ま、置いとくとして」
544名無しさん@初回限定:2007/10/02(火) 14:30:42 ID:lXZAnFsS0
    | ======,p、 サッ
    |ミ   , ;(,,),)),、
    |    | ! !_ノノ_i|
    | .  | | -_-ノ| <支援幹……なんでもない
    |   | |   i.!|
    |   リリ   ノリ
    |  ((
54511/12:2007/10/02(火) 14:32:21 ID:LMnnhfNd0
 ユーフィー――ユーフォリアは、俺の両親がどこぞの紛争地域だかどこだかで拾ってきた、戦災孤児らしい。
 今年の正月にふらりと帰ってきたとき、開口一番、妹を連れてきたぞ! と来られたときには、正直、ついに気が違ったかと思った。そのくらい、その登場は唐突だった。 
 なんでも、昨年の夏ごろに、行き場無くさまよっていた女の子を助けたは良いが、孤児院もNGOの施設もまともに機能してない地域だったため、
やむなく連れて歩いているうちに、どうにも離れがたくなってしまったらしい。
 それで、まぁどういう手管を使ったものか、気がつけば姓不明の名前ユーフォリアという10数歳の女の子が、2人の養子となる、
つまり俺の義妹とする法的手続きが全部終わっていて、物部学園の中等部に、今年の4月から入学する手はずもきっちり整っていた。
 その段階で初めて俺と引き合わせたのだから、これは俺を忘れていたのではなく、受け入れるしかない状況が出来上がるまで待っていたと見るべきだろう。
 いや本当に、年頃の男子1人暮らしの家に――いくらお隣と家族同様だとはいえ――これまた年頃のしかもえらく可愛い女の子を連れてきて、これから一緒に住むんだぞなんて、
本当に何を考えてるのか俺にはさっぱり分からない。
 しかも連れてきた当の両親は、半月くらいでまたどっかに飛んでいってしまったんだから、なおさらだ。

「今だから言うけどな、最初はやばいんじゃないかって思ったよ。俺は。永峰さんとの関係もそうだけど、望が犯罪行為に走りやしないかと心配で心配で」
「望ちゃんはそんなことしないよ」
 うん、確かに俺にそんな度胸は無いんだけど。それを分かって言ってるのか、それが気になるんだが。
「ま、今は心配して無いけどな。ユーフィーちゃんは良い子だし。永峰さんともうまくやってるみたいだし」
「そうよね。日本語も達者だし、生活になじむのも早かったしね。ドラマとかだと、後から来た子って色々あるから、あんなにすんなりいくなんて思わなかったな」
「その辺は2人にも感謝してる。冬休みとか春休みとか、2日に1回は来てくれて騒いでくれただろ。あれ本当に助かったんだぜ」
「感謝してるなら、ちゃんと形であらわしてよね。ご両親に私を引き合わせる手はず、ちゃんと整えててよ?」
54612/12:2007/10/02(火) 14:35:18 ID:LMnnhfNd0
 そんな話をしているうちに、気がつけばJRの駅はすぐそこに。交差点で手を振り別れて、それぞれの家路につく。
 希美と2人きりになると、微妙に会話が止まってしまう。何か切り出さないとと思うが、良い話題が出てこない。多分希美もそれは一緒で、だから足音だけがこつこつと響いていく。
 でも、それで居心地が悪いわけじゃない。並んで歩くのは子供の頃からずっと続けてきたことだし、会話が無くても互いの存在感だけで、なんとなく落ち着いた気分になれる。
 だから俺は、本来色々話さなければいけないこと、聞いておいたほうが良いことが、脳裏に浮かんでいるのに、それを口に出す勇気が出せないでいる。
 そもそも――自分が本当はどうしたいのか、まだ分かっていないのが最大の問題なんだ。
 希美の気持ちを受け入れるのか、いれないのか、それについての答えすら、俺はまだ出せていない。

「じゃ、望ちゃん、また後でね」
 結局、ほとんど言葉を交わすこともなく帰り着いた。隣同士にならんだ、良くある建て売り一戸建ての家だ。俺たちが産まれる前は、お隣だというのに互いに顔も知らなかったらしい。
「ああ。ユーフィーと一緒に行くよ。何か買っていったほうが良いか?」
「ううん……何かあったらメールするよ。品物だけ言われても分からないでしょ? 望ちゃん」
「否定できないのがつらいな」
 笑いあって、じゃ、と手を振り別れる。また1時間もすれば、向こうの家に夕食をご馳走になりに行く。それまでの少しのお別れだ。
 家の中には、つい半年ほど前までは無かった別の気配がひとつあって、俺の帰りを待っていてくれている。
 
 はっきり思うけれど、俺は世間一般よりは幸せな人生を歩んでいると思う。帰る場所はあるし、待っていてくれる人がいて、友人もいる。生活にも苦労していない。
 でも何故か、心のどこかで、それがいつか壊れるんじゃないかという不安が常にあって、その無根拠な不安を恐れるあまり、積極的な行動に出られない自分が、たまにいやになる。
 そんな自分を変えたいと思いながら、ユーフィーにただいまを言った。
547名無しさん@初回限定:2007/10/03(水) 03:46:17 ID:vcbZoCOw0
くっ…ダメだ…ここでスレを止めちゃダメなんだ……!!

>>532
あはは、そうだよね〜
548名無しさん@初回限定:2007/10/03(水) 07:43:50 ID:dkmmVR9q0
>>533
お〜つ〜か〜れ〜さ〜ま〜
549名無しさん@初回限定:2007/10/03(水) 09:24:20 ID:AOYn2zu+0
>>532
カティマは黒色ユニット最強の座に君臨するソルに嫉妬しているに違いない
「便所掃除係り」だとか「単細胞だから細胞分裂で増殖する」とか
あれで怒り狂わないソルは人間出来すぎ
550名無しさん@初回限定:2007/10/03(水) 17:36:47 ID:dkmmVR9q0
なるほど。剣神とまで言われた神剣使いの転生で、高貴な血筋で、人望もカリスマもあるのに、
下品で野蛮で戦国で野生で爪神剣で獣臭い足臭いソルに遅れをとっているのが我慢ならない、と
納得がいった!
551名無しさん@初回限定:2007/10/03(水) 18:00:36 ID:7iwvzCNI0
>550
何か調教物にありそうですねw
552名無しさん@初回限定:2007/10/03(水) 18:55:56 ID:bU3Fhv7E0
>>550
つまり瞬のソゥユートに対する侮蔑的な感情みたいなもんか
553名無しさん@初回限定:2007/10/03(水) 20:56:38 ID:e5OWSUg00
(=゚ω゚)ノぃょぅ

>550
あんまりなまとめに思わず吹いた。
そしてフォローのしようが無い事実にもまた何か出そうになった。
それにしてもそこまでソルの悪評連ねられるあんたも凄いんだぜw

それはそれとして、続き、というか小さな幕間劇をふたつ。1レスずつ×2話で。
554幕間01 校内は携帯電話禁止です:2007/10/03(水) 20:58:23 ID:e5OWSUg00
 ――うん、うん。分かった。それじゃ、来るのはあさっての夜になるのね?
 まだかしら。
 ――そんな謝らなくても大丈夫よ。今代のジルオルは、私が覚えている中でも群を抜いて安定してるし。
   うん。早々、あなたたちの力を借りるような騒ぎにはならないと思うわ。うん。
   ミゥたちにもそう伝えて。物見遊山くらいの気分で来てくれれば良いからって。
 それにしても、さっきから何の話をしているのか、さっぱり分からない。相手の声も聞こえてこないし。
 ――それじゃ、またね。今度帰るのは冬休みになってからだから、そのときまたお茶でもしましょ。
   うん。ばいばい。
 
 話が終わったらしい。誰と話してたんだろう。私は扉の横に立って、出てくるはずの誰かを見送る位置につく。
 ……出てこないわね。出てこない。1分。90秒。2分。中から声も物音もしない。
 ノックしてみた。
「はーい?」
「柊です。学園祭の提出書類を持ってきました」
「あ、はいはい。入って良いわよ」
 扉を開けた。やはり中には誰もいない。失礼しますと言って中に入り、所定の場所に書類を置いた。
「ありがと。提出状況はどんな感じ?」
「文化部の大半と、3年クラスの2・4・5組がまだです。毎年のことですが、文化系クラブは提出が遅いですね。
 それより会長。先ほどどなたかと話をしておられませんでしたか?」
「あ、聞こえちゃってた?」
「古い建物ですし、会長の声は良く通りますから。……ところでそのお相手はどこに? 部屋からは誰も出てきませんでしたが」
 会長は何を言われてるのか良く分かっていないような顔をする。やっぱりまだ分かってもらえていなかったみたいだ。
「あ? えーと、そう、携帯で話してたんだけど」
「会長! 校内は携帯電話持ち込み禁止って何度言えば分かっていただけるんですか!?」
「そんなー。いまどき携帯持って来てない生徒なんて1人もいないって。たくみん真面目過ぎー」
「たくみん呼ばないで下さい! 会長が甘いこと言ってるから――」 
 結局それから30分、会長とまたしても、携帯の扱いについて散々議論してしまった。暖簾に腕押し。ぬかにくぎ。はぁ。
 それにしても、結局誰と何の話をしていたんだろう?
555幕間02 私は幸せです:2007/10/03(水) 20:59:34 ID:e5OWSUg00
「おかえりなさい、マスター」
 扉を開けると、玄関で少女が待ち構えていた。安アパートの一室に当座の居を置いている絶は、ひとつ頷いて速やかに中へ入り、扉と鍵を閉める。
 少女は見かけは10代前半。銀色の短い髪をターバンのようなものでまとめている。身長は絶より頭2つほど小さい位か。絶の鞄を受け取ろうとして、そのくらい自分でやると返された。
「出ている間、何かあったか?」
「新聞の勧誘員が来ましたが、無視しておきました。後はなべてこともなし、平穏な1日です」
 少女の言葉を聞きながら、床に鞄を置き、ハンガーに上着をかける。炊飯器が、炊けましたよと立て続けに電子音を鳴らす。

「すまないな、。色々と些事を押し付けてしまって」
「気にしないでください。私本来の役割でお役に立てない今、少しでもマスターの力になれればと思ってやっていることですから」
 炊飯器からご飯をよそい、椀に味噌汁を注ぐ。お盆に乗せてちゃぶ台の上へ。絶はその間急須に茶葉を入れて湯を注ぎ、湯飲みを用意して机の上に置いている。
「無理はするなよ。この世界は、お前がその姿を保つには少し辛いだろう」
「大丈夫です。ちゃんと、家事をしているとき以外は、眠るか小さくなるかしていますから」
 フライパンから肉野菜炒めを皿に移す。冷蔵庫の余り物をまとめて炒めて味付けしただけだが、それでも良い匂いが部屋に漂っていく。
「それに、それを言うなら私こそ謝らなければ。ここまで来ておきながら、黎明の気配を追いきれず、マスターに無為な時間を過ごさせてしまっています」
「仕方ないだろう。むしろ、ここまで追ってこられたことを誇りに思うべきだ。あの学園のどこかにジルオルがいると分かっているだけでも僥倖さ」
 絶は静かな口調で答える。焦りも気負いも、少なくとも表面的には見せていないその様子に、少女は力不足に自責の念を抱きながらも、それ以上に強く安堵する。
 
 最近、そんな穏やかな顔をされることが多いですね。以前の、追い詰められて張り詰めていた姿を思うと、少し信じられない気もします。
 願わくば。こんな穏やかな時間がずっと続いてくれたら良いのにと。復讐も、恨みも全て忘れて、穏やかに生きて下さいと、そう願ってしまうのは罪なのでしょうか。
 マスター。ナナシは、今がとても幸せです。
556名無しさん@初回限定:2007/10/03(水) 21:19:57 ID:425xbaeg0
ソ「なんだその、相も変わらず下品で野蛮で獣臭い出で立ちですね、便所掃除係り程度があなたにはお似合いですわよって顔はよぉ!」
望「すごいやソルラスカ!その言いがかりにはお金を払ってもいいくらいだよ!」

>>555
若奥様キター
557名無しさん@初回限定:2007/10/03(水) 22:41:57 ID:RZGzWoWv0
>>556
ソ「ありがとよ」
558名無しさん@初回限定:2007/10/04(木) 18:25:26 ID:ywOa1YdE0
動き始めてるとこに水を差すようで何だけど。

アセリアに続く永遠神剣第二章としてなるかなに組み込まれた
「空飛ぶ学園」や「巻き込まれた一般生徒」って大ネタを切り捨てて
神剣使いに焦点当てた話を書くのは別に良いが
それで原作ネタのSSが載せ難い雰囲気にはならないようにして欲しいな。

嫌いなら見なきゃ良いってだけかも知れないけど
十レス以上もある長編が載ってると見なくてもスレ容量は減るし
空気も自然とそっちに引っ張られるもんだから
意図しなくても、原作改編もの以外はお断り、な感じになると困るんで。
559名無しさん@初回限定:2007/10/04(木) 18:57:49 ID:PPloHAuR0
>>558
>>1を読んでお風呂入って寝ましょう
明日からこのスレの存在を永遠に意識しないでいられるように
生きてくれればそれだけで満足です
560名無しさん@初回限定:2007/10/04(木) 19:34:50 ID:6ieVw6Nh0
>>558
言わんとしている事は分かるが、雰囲気作りが一個人に委ねられるようじゃ話にならんだろ。
与えられるだけじゃなくて、住人全員で作っていくというスタンスをもっと大事にしようぜ。

>>559
言わんとしている事がさっぱり分からんのだが、>>1の制限は無かったことになった筈。
561名無しさん@初回限定:2007/10/04(木) 19:38:47 ID:VHFDURgw0
>>558
この時点では杞憂だし、
寧ろ、その言い方がスレを私物化してるみたいで良くない。
>>1を読んで様子見が吉。
562名無しさん@初回限定:2007/10/04(木) 19:43:28 ID:VHFDURgw0
>>560
前に1と同一人物のレスがあったけど、
スレ住人で相談してテンプレが確定するまでの暫定的なものらしいから
制限はなくとも効力はあると考えた方がいいかと。
563名無しさん@初回限定:2007/10/04(木) 19:59:41 ID:6ieVw6Nh0
>>562
了解。
確かに何かしらのガイドライン無いと動きにくいな。
564名無しさん@初回限定:2007/10/04(木) 21:19:24 ID:jZtgN36D0
(=゚ω゚)ノぃょぅ

スレの方向性云々って話になるとこの辺がそうかな
>410-417 >419 >426 >432
まぁ、次スレ立つまでに決めりゃいいんじゃないのん? 
つうか、そんなに細かく考えることも無いと思うけどね。総合ネタスレで良いじゃん、単純に。

>558
と言われても……要するにどうすりゃいいんじゃろか
俺が張り切ろうと張り切るまいと、他のSSがそれに関わるかってあんま関係ないと思うけどな
つうか、今は良いペースで書けてるけど絶対どっかで調子落とすからw

んでは今日の分。本編7レスと幕間3つ。
565変わり行く夢 1/7:2007/10/04(木) 21:21:26 ID:jZtgN36D0
 そこは、美しい世界だった。
 俺はとても優しい感情を心に満たしながら、広大な草原の一角に立っている。南、遥か遠くには霞む山嶺。北、遥か彼方からかすかに漂う潮の香り。
 傍らには少女が寄り添うように立ち、柔らかい笑顔を俺に向けている。俺も応えて小さく笑い、上空遥か蒼天から降り注ぐ日の光を浴びる。
 夢の中の俺が何を考えているのか、意識が繋がらない。
 けれど、その表情はとても穏やかだった。腰には一対の剣。背は図抜けて高く、肩幅は広く、がっしりとした体つきの偉丈夫だ。
 傍らの少女は――何故だろう。俺に微笑みかけてくれていることだけは理解できるのに、それ以外の何も見えない。分からない。その姿も、その顔も、まるで霧に霞んだようにぼやけている。
 だが、その少女は夢の中の俺にとって、とても大事な存在なのだということだけは伝わって来た。
 広い、ただひたすら広い草原の只中に、2人立ち、何も語ることもなく寄り添っている。
 そこは、とても静かで、とても穏やかで、とても満たされていた。
 そんな光景を、夢に見た。

 窓から注ぐ朝の光を受けながら、俺は目を覚ました。
 夢と現実が混ざりこんでいる感じ。どちらが実でどちらが虚なのか分からない奇妙な感覚に身をゆだねる。このまま、この体ごと夢の世界に落ち込んで行きそうな気がした。
 ぼんやりと数分――もっとかもしれない――まどろんでいるうち、薄ぼけた頭がだんだんと、日の光を浴びて覚醒していく。夢の世界とのつながりが薄れていく。
「!」
 そして、それに気付いて飛び起きた。急に背すじが寒くなる。夢を見ている間の穏やかな気分は吹き飛んで、体にひとつ震えが走った。
「なんだ、今の夢」
 昨日の夢は、まだいつもの延長として理解できた。けれど――
「あんなの、今まで。見たことない」
 その事実に気付いて、俺は何か、得体の知れない不安を覚えたのだった。
5662/7:2007/10/04(木) 21:22:38 ID:jZtgN36D0
「望さん、何だか元気ないですね?」
 朝食のパンにバターを塗りながら、ユーフィーが言った。
 希美は今日はいない。1ヵ月後の学園祭に備えて、クラス内での出し物やなんやの打ち合わせのために、早くから学園へ行ってしまっている。 
 だから今日の朝食は、食パンと目玉焼きと俺がインスタントコーヒー、ユーフィーが牛乳という、俺たちでも作れる手のかからないメニューだ。
「そうかな」
「はい。昨日より、ずっと調子よくないように見えます。またいやな夢でも見たんですか?」
「そういうわけじゃ、無いけどな」
 そう。不思議な光景ではあったけれど、いやな夢というわけじゃなかった。それを言うなら、いつも見ているものの方が、世間一般ではよほど悪夢というにふさわしいだろう。
 むしろ、これは喜ばしい事態なのかもしれない。10何年ずっと同じ夢を見続けてきたということがそもそもおかしいんだ。多彩な夢を見られるようになるというのは、悪いことではないはず。

 不意に、額に柔らかい感触を覚える。
「熱は無いみたいです……やっぱり夢見のほうですか?」
 温かいユーフィーの手が、俺の額に触れていた。何故だか、手の先からぬくもりが移ってくるような感覚。照れるより先にほっとする。
「うん、いや、大丈夫だよ。少し変な夢を見てさ。それに引っ張られてただけだから」
 そうだよ。どうしたって夢は夢。現実に何か影響があるわけじゃない。今までのように、あまり考えずにやり過ごしていれば良いだけのことじゃないか。
「ありがとう、ユーフィー。おかげで気が楽になったよ」
「それなら良かったです。望さん、あんまり考え込むのも良くないですよ?」
5673/7:2007/10/04(木) 21:26:05 ID:jZtgN36D0
「ところで、学園はどうだ? 勉強着いていけてるか?」
 かちゃかちゃと食器が触れ合う音。まだ時間に余裕があるためちょっとした話に花が咲いている。
 考えてみれば、こうしてユーフィーと2人きりな時間は、今まであまり無かったような気がする。いつも他の誰かが側で騒いでいたからな。
「そうですね、漢字はまだ難しいですけど、それ以外は、えっと、一応それなりにっていうところです。あ、でも体育では私凄いんですよ?」
「そうだな。ユーフィーは見かけの割に体力あるし足も速いもんな」
「見かけの割には余計です。そりゃ、同じ学年の人と比べたら色々小さいですけど、でもまだ成長期なんですから」
 だからしっかり食べるんです。と最後のパンのひとかけらを口に放り込んで、牛乳3杯目を飲み干す。また買い足しておかないと、もう無くなりそうだな。
「悪い悪い。パンもう1枚くらい焼くか? まだ時間は大丈夫だし」
「えーと……いえ、とりあえずこのくらいにしておきます。朝から食べ過ぎるのも良くないって言いますし」
 ま、確かに朝からパン5枚目は食べすぎかもしれない。
 それにしても、家に来てからもう結構経つけど、さっぱり成長してるように見えないんだよな……頑張れユーフィー。
 
 と、そうだ。2人きりのうちに話しておかないと。
 立ち上がって、戸棚の小物入れの中から手紙を取り出す。しばらく前に届いた親父からの手紙だ。
「こないだ親父から手紙が来たんだけどさ」
「はい」
 ユーフィーが少し身を硬くするのが分かった。これからする話の内容が予想できたんだろう。
「……やっぱり、名前だけじゃ身元を確認するのは難しいらしい」
「そうですか……あ、良いんですよ、見付かっても、見付からなくても。どちらにしても、私、覚えてないですから」
 少女は静かにそう答えた。答える様子には陰はなく、本心からそう思っていることが、なぜかすぐに理解できた。
5684/7:2007/10/04(木) 21:29:02 ID:jZtgN36D0
 俺の両親が、どういう状況でユーフィーを見つけてきたのか、実のところ詳しく聞かされていない。一度聞こうとしたのだが、はぐらかされてしまったのだ。
 だけど、そのときの2人の顔と、見つかった場所の当時の状況を重ね合わせれば、俺に話せないようなレベルの、ロクでもないことがあったのだろうとは見当がついた。
 それともうひとつ。
 ユーフィーは、保護されたとき、過去の記憶がのきなみ全部消えてしまっていたらしい。
 名前は、僅かな持ち物の中に書いてあったもので、それが本名かどうかさえ、正直分からないそうだ。ただ他にどう呼びようも無いので、そう呼んでいるというだけで。
 両親は、家に連れてくる前に、知り合いの医者のところをあちこち連れて回って、治療できないか調べてもらったらしいが、結局糸口すらつかめなかった。
 その後は、あやふやな名前と写真だけという貧弱な手がかりを頼りに、身元や家族を探し出そうとしていたのだが、手紙の内容を見る限り、やはり無理があったらしい。

 だけど――薄情な話かもしれないが――俺にはそんなことは関係ないことだ。
 過去の記憶が無かろうと、何をして、何をされてきたのか知るまいと、ユーフィーがとても優しい女の子で、最近ようやく、本当の妹のように思えるようになってきた、その事実は変わらない。
 はっきり思う。
 今まで俺の隣に希美がずっといて、その逆側にユーフィーがいるようになって、そんな状態が、これから先もいつまでも続けば良いのに、と。
 もちろん、そんなことは不可能だと分かっている。
 いずれ学園を卒業して、社会に出て行けば、俺たちの関係について、何らかの決断を下さなければならないときはいつかやってくるだろう。 
 だけどそれまでは。出来るだけ長くこのままで。この優しい世界が出来る限り続きますように。
5695/7:2007/10/04(木) 21:31:42 ID:jZtgN36D0
 ユーフィーと2人、のんびり歩いて学園へ向かう途中、偶然絶と出くわした。
「む」
「あ」
「あれ?」
 3人揃って怪訝な顔と声を同時に上げて、思わず同時に吹き出した。笑いながらおはようと挨拶を交わし、3人並んで歩き出す。
「珍しいな、永峰は一緒じゃないのか」
「学園祭の準備だかで先に行ったよ。絶こそなんでこんなところに?」
「バイト先から直接来たのさ。家に戻るより早いんでな」
「朝からバイトだったんですか、凄いですね、暁さん。体は大丈夫なんですか?」
「何、休むときは思い切り休んでいるからな。今まで不調になったことはあまりない」
 へーぇ。思わず感心してしまう。かなり人間離れした活動時間だと思うんだけどな。

「1人暮らしでバイトしながら家事もして、勉強もしっかりやって、ってなあ。凄いよお前は」
「――あ、分かりました。暁さん、実は1人暮らしじゃなくて、誰かと一緒に住んでるとか」
 ユーフィーの冗談に、絶は意外にも、厳粛な面持ちで深く頷いた。
「正解だ。実はユーフィーと同じかちょっと下くらいの女の子と一緒でな、一つ屋根の下愛の巣を作っているところさ」
 笑う。さすがにこれも冗談だろう。ユーフィーも同じくくすくす笑っている。しかし絶は真顔のままだ。
「冗談だと思われたか?」
「え、いや、まさか本当に?」
 じっと俺の目を見る。ここだけの話だぞ、と間をおいた。緊張しごくりとつばを飲む俺。
「もちろん冗談だ」
 あわや転びそうになった。
「ははは。だいたい望、以前に家に来たことがあっただろう。もしそんなのがいるなら、そのときに引き合わせているさ」
「ちぇ、そりゃそうだけどな。そんな顔で言われたら信じそうになるっての」
5706/7:2007/10/04(木) 21:33:37 ID:jZtgN36D0
 学園の門をくぐり、ユーフィーと別れて自分たちの校舎へ向かう。途中で行き違う顔見知りの生徒や教員と挨拶を交し合いながら歩く。いつもと同じ朝の光景だ。
「なぁ望」
「ん?」
 不意に絶が立ち止まった。何かあったかと俺も停止し、奴のむやみに端正な顔を見る。珍しく何かを言いよどむように、口の中で言葉を選んでいた。
「おまえ――変な夢を見ることはないか?」
 ぞく、とした。
 あるかないかと言われれば、見ていると答えるしかない。だがどうしてそんなことを聞く? ただの世間話のネタか、それとも何か意図があるのか。

「……どうしてそんなことを?」
「ん? 何、最近少し夢見が悪くてな。1度2度ならいいが、あまり続くと気にもなる。望は、そういうときはどうしているのか、と思ってな」
 少しほっとする。世間話の範疇にある会話らしいからだ。そういうことなら任せてくれ。俺ほど悪夢を見続けているやつはそうはいまい。
「俺は気にしないようにしてるな」
「……それだけか?」
「それだけだな。いや、俺も結構夢見の悪いほうでさ。やれ殺し合いだのやれ血染めの草原だの、結構物騒な夢を多く見るんだ。
 そんな夢をいちいち気にしてたらきりがないからな。気にしないのが一番さ」
 軽い口調で言う俺。けれど絶は、なぜかむやみに深刻そうな顔をしている。どうしたのか、消えかけていた疑念がまた戻ってくる。
5717/7:2007/10/04(木) 21:35:49 ID:jZtgN36D0
「殺し合い?」
 怪訝な顔で問い返される。いや、そりゃ普通、そんな物騒な夢を見てると言えば、変な顔をされるだろうけど。 
「ああ。まぁ夢のことだからな。双剣を持った俺が、槍や剣を持った相手と派手に切り結ぶとか、そんなのさ。おおかた、漫画か映画の影響でも受けたんじゃないかな。
 まぁどんな夢だって、どうせ夢は夢なんだ。気にしなけりゃそれでいいんじゃないか」
 少しの間をおいて、絶がくすりと小さく笑い出す。
「はは、それは物騒だな。ひとつ、俺もお前に斬り殺されないように気をつけるとするか」
 2人声を揃えて笑い、いつもの空気が戻ってきた。内心ほっと大きく息をつく。特になんてことのない会話じゃないか。気にしすぎだよ。俺。

「ああ気をつけてくれ。ついでに体の使いすぎにもな。大方、日ごろの疲れやストレスが溜まってるせいで、そんな悪い夢を見るんだよ」
「そうかもしれないな。忠告は受け取っておくよ。
 ……そうだ、ついでに伝えておこう。今日の昼はちょっと小用があるから、いつものところには行けそうにない。俺は勝手にするから、そっちも勝手にやっていてくれ」
「小用?」
「ちょっと図書館で調べ物をしたくてな。放課後はバイトで埋まっているから、昼休みじゃないとまとまった時間が取れないんだ。
 森や阿川には済まないと言っておいてくれ。俺の弁当をいつもおいしそうに食べてくれる2人だからな」
 皮肉に苦笑しつつ、分かったと答えた。そんな会話をしているうちに、予鈴が鳴り出すまであと数分。少し急いで、校舎へ向かって歩いていった。

 結局、その後は特になんという出来事も無く。ごく普通の1日は、ごく普通に過ぎていった。
572名無しさん@初回限定:2007/10/04(木) 21:39:56 ID:bYin1Uds0
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573幕間03 喧嘩するほど――:2007/10/04(木) 21:41:59 ID:jZtgN36D0
「あーあ、それにしても、暁のお弁当食べられなかったの残念だなー」
 夕日が差し込む電車の中。帰宅ラッシュよりはまだ少し前なのか、乗客の数はそれほど多くはない。
 耳慣れた駆動音と振動を共にして、信助と美里は揃って帰路についていた。
「もう諦めろって。また明日もあるんだから」
「そりゃそうだけどさ。希美のと暁のと、食べ比べて至福に浸るのが私の日課なのに。はぁっ」
 踏み切りを駆け渡って、車内に甲高い独特の音楽が響く。高く低く。2人の降りる駅はまだ少し遠い。

「決めた。明日、暁には今日の分もまとめて2日分くらい作ってきてもらおう。そんで、そのうち1日分は私が独り占めにするの」
「馬鹿。今からじゃ連絡取れねーだろ、あいつ携帯持ってないんだから。
 それに、あいつの苦労も考えろよな。そんなに作ってこれるわけないじゃないか」
「もう、分かってるわよそれくらい。冗談よ冗談。
 でも、ううんだからこそ、明日のお弁当は絶対に信助には譲らないからね。あんたの分まで私が食べる!」
 手を差し上げて宣言する。本来の作り手兼食べ手のことを忘れているかのような言動だが、最近は絶も、食べられてしまう分も見越して作ってきているわけで、量的にはさほど問題は無い。人道的にはともかく。
「なにをぅ。自分で作れないからって人にたかりやがって。そんなんじゃ嫁の貰い手が無いぞ」
「何よ。私はカメラに一生賭けてるんだから、結婚なんてどーでもいいの。そんなことより良い写真を撮りたいの、私は。
 それより信助こそどうなのよ。最近は家事もできないと、彼女なんて出来やしないんだからね」

 そして後は売り言葉に買い言葉。降車駅に着くまでの10数分、2人は延々口論を続け。
 結果は美里の圧倒的勝利。何か良く分からないうちに言葉の奔流に押し流されて、アイスクリームをおごる羽目になった信助だった。
574幕間04 苦悩。煩悶。決意。:2007/10/04(木) 21:44:13 ID:jZtgN36D0
 決して有意な答えを求めていたわけではなかった。ただの世間話のついで、閉塞気味の状況から生まれた気の迷いのような質問だった。
「ジルオルは望だ。ナナシ」
 それが、予想外の獲物を釣り上げた。いや、予想外という言葉はふさわしくない。単にその可能性を、考えたくなかっただけという側面もあるからだ。
「世刻が、ですか、マスター」
 落ち着いた言動と行動。少し消極的なのが目に付くが、それゆえに、彼が仮にも破壊神と呼ばれるような存在だと思えなかった。もっと破壊的で積極的な人格の者だと勝手に思い込んでいた。
 それに何より、この世界に来て始めて出来た、対等に話せる友である彼を、"そう"だと思いたくなかったのだ。

「そうだ。なんとも皮肉じゃないか。捜し求めていた相手は、実はずっと前からすぐ近くにいたんだからな。
 望と永峰の関係性、考えてみれば伝承にあるジルオルとファイムの関係に合致する。そうとするなら斑鳩先輩がなぜ2人の側にいるのかも理解できる。
 先輩は……いや、彼女は、破壊神たる望を何らかの目的で監視していたわけだ」
「ですが、いえ、確かに斑鳩沙月は神剣使いです。ですが、彼女が側にいるからといって、世刻がそうであるとは限らないのでは。 
 ジルオルとファイムの伝承を言うのなら、森と阿川の関係性もそれに近いものがあります。斑鳩沙月が監視しているのはその2人であるという可能性も」
「無い。森と阿川は、中学の頃に一度関係が途切れている。あの2人がそうであるなら、そんな断絶期間は存在してはならないはずだ。
 ――いずれにしても、まず拠点を移す。お前には悪いが、しばらく暁天は校内に置いておくぞ。俺もあの家から出て、適当に学園の周辺で過ごすことにする。
 証拠を固めて、そうだという確証を得たら――」

 ――得たらどうする。できるのか。俺に出来るのか。望を斬ることができるのか。
 できる。俺には出来る。できるはずだ。あの地獄を抜けてきた俺には、それをする義務と責任がある。
 そうだ。そのために俺はここにやってきたのだ。それをするために遥か彼方までやってきたのだ。今更投げ出すことは出来ない。今更、復讐を忘れることなど、出来ない。

「――殺す」
575幕間05 光をもたらすもの:2007/10/04(木) 21:48:54 ID:jZtgN36D0
 ――そして、またひとつ世界が溶け崩れていった。
 世界のマナが吸い上げられて、何本もの神剣がそれを吸収していく。宙に浮かぶ男女1組。男の手にある巨大な薙刀と、女の手にある腕輪もまた、まばゆい光を放っていた。
 やがて、待つほども無く、光が消え、マナの奔流も途切れる。2人の見つめる先では、先ほどまで青々と茂っていた枝葉のひとつが、急激に枯れはてて消え去っていく。
「これで、ここでの作業もお仕舞いね」
「ああ。――何度見ても、胸が悪くなる光景だ」
 巨躯の男が神剣を回収し、背に負う籠に戻していく。その身を分厚い筋肉と頑丈そうな鎧で覆った、見るからに精悍な武者である。
「そうね――でも、それが運命なのよ。あの世界の」
 女は、男とはあらゆる点で異なる格好であった。娼婦かと見紛うほどに肌を露出させ、豊満な肉体をこれでもかと誇示している。
 場所が場所なら、男に買われた売春婦、あるいは武芸一辺倒の無骨な男を引っ掛けた悪女、そのような取り合わせに見えただろう。

「それにしても、あの『旅団』の男、最後に面白いことを言っていたわね」
「破壊神と相克のことか。確かにもしそのような者が存在するならば、我々の仕事は大いに楽になるだろうな」
「ええ。確か、あいつが言っていた世界のほうにも、もう誰か行っていたわよね。誰だったかしら、ジゥエ?」 
 名前を咄嗟に思い出せず、少し悩む。相方の男がそれで正解だ、と頷き、現状について報告する。
「そうだ。近くの世界でミニオンの生産を開始している。まだ本格稼動はしていないが……10体程度はできている頃合だ」
 女はふふん、と笑う。いかにも面白そうねという様子。男は何を言うこともなく、ただ実直に指示を待っている。
「良いわ。出来上がっているだけの数でその学園とやらを襲わせなさい。それで様子を見ることにしましょう。少なくとも、光輝のお嬢ちゃんがそこにいるのは確かなんだし」
「俺も出るか」
「いえ、あなたは持ち場に戻っていて。あちらのほうも軽視して良い拠点じゃないわ。今一番有望なのはあそこだから」
「分かった。では後のことは任せるぞ、エヴォリア」
「ええ。吉報を期待していてベルバルザード。ことがうまく運べば――色々一気に動き出すかもしれないわね」
576名無しさん@初回限定:2007/10/05(金) 00:04:46 ID:ju0L1RX30
連投支援
577名無しさん@初回限定:2007/10/05(金) 00:42:54 ID:LrPiRsv90
(=゚ω゚)ノぃょぅの人はSS投下完了したら終了宣言してくれないか?
投げっぱなしジャーマンだと終わったのかどうか判らなくて後のレスが付けにくいんだ。
578名無しさん@初回限定:2007/10/05(金) 20:41:16 ID:Cg3NbFh10
時間で判断するのも手だがなるべくなら一言ほしいですな
アクセス制限で引っかかったりしたら目もあてられんがw
579名無しさん@初回限定:2007/10/05(金) 21:26:17 ID:9kL2DE6E0
はじめに何本連投するか宣言してくれてるし問題なくない?
念のためということなのかもしんないけど
580名無しさん@初回限定:2007/10/05(金) 21:36:41 ID:ju0L1RX30
>>67で一度指摘した気がする(人違いだったらごめんなさい)けど、
投下途中に規制に引っかかったのか投下直後に引っかかったか分かりにくいので
投下開始・終了の宣言もこれまで通りよろしく
581名無しさん@初回限定:2007/10/06(土) 11:42:01 ID:dbmX2Kkg0
>>564
乙。
いい感じに日常が進んでますね。
何気に本編でほとんど描写されていないエヴォリアさんとベルバルさんの葛藤が描かれているのも◎。
ここからどう展開させるのか楽しみです。

俺も長めの場合は開始と終了の宣誓はした方がいいと思います。
開始だけだと分かりにくいし。
582名無しさん@初回限定:2007/10/07(日) 17:39:37 ID:F0p6MNcR0
>>532
カティマってソルいじめそんなにやってたっけ?
ほとんどの面子がいじってるから、特にって感じがしない
583名無しさん@初回限定:2007/10/07(日) 19:45:26 ID:t1iMl3Fi0
ここが、とすぐに出てくるわけではないのだが、皆がソルを弄ってる中で一番ひっどい事言ってるのがカティマだった印象ががが。
最初はなんで黒なんだと思ったけど、カティマは間違いなく黒だと確信したよ。
584名無しさん@初回限定:2007/10/07(日) 20:32:41 ID:1SYsk1Fq0
カティマの言葉はタリアより言ってる内容がキツい。
あとは個別ルートのイメージで補強って感じか
あれでも元は相談役のお姉さんなんだぜ
585名無しさん@初回限定:2007/10/07(日) 20:57:48 ID:T+6orplc0
(=゚ω゚)ノぃょぅ

>576-578 >580-581
いや、済まなかった。配慮が足りんかった。
最後に、終わり、だけで1レス使うのも面倒だしなーとかって思ってたんだ。
考えたら、名前欄なりSSの最後に「終」とか書いとけばいいだけだったんだよなw
これからはそうするよ。指摘ありがとう。

エヴォリアとベルバさんはなぁ……明らかに物語中盤までをひっぱるキーパーソンなのに、
何がどこでどうなって出会い、光をryなんて組織を立ち上げるにいたったのか、
そもそも2人がどういう関係なのかすら描写無いからなぁw
その分力入れさせてもらいますよ。濡れ場も多分ありますよ。おっぱい無いもしれないけど。

>582
一言が重い印象は俺も持ってるなぁ。分裂して増えるとか。便所掃除要員呼ばわりとか。
いじってる、ってレベルじゃなくて悪罵ってるって印象が……

まぁそれはそれとして、今日の分10レス分。
早いとこソルやタリアやカティマさまを出したいもんです。
586はじまりと、わかれ。 1/10:2007/10/07(日) 21:00:01 ID:T+6orplc0
 かつて豊饒と清麗を誇った草原は、いまや見る影も無かった。
 激しい血風が吹きすさみ、鉄錆の匂いを四方に届けている。随所に生き物の死体と何かの残骸が転がっていて、その一部は金色の光に姿を変えようとしていた。

 ――ああ、またこんな夢か。

 かつて雄偉と剛強を誇った偉丈夫は、いまや見る影も無かった。
 激しい剣風にさらされ、大小さまざまな傷が四方に走っている。随所に致命傷とさえ見える貫通痕や切断面があり、そこからは金色の光があふれ出していた。

 対する相手は、腰剣すら抜かずに無傷だった。
 その顔にはいかなる思いによるものか、かすかな笑みさえ浮かんでいる。利き腕ではないはずの左手には、剣と呼ぶにもふさわしくない、古色蒼然たる儀礼刀のようなものが握られていた。
 あんなものに、あそこまで切り刻まれたのか、と、今の俺は愕然とする。
 それは、いったいどれほどの力の差あってのことか。相手は、まだ成長期の只中程度の年齢にしか見えない少年だというのに。

 夢の中の俺は、しかし、ぼろぼろになりながらも昂然と胸を張って立ち、後ろに少女を守っていた。
 少女は気絶し、草の上に倒れこんでいる。息はあった。ほどなく目を覚ますだろう。腰の双剣を共に抜き放ち、衰えぬ戦意をむき出しにしている戦士は、それゆえに、眼前の雄敵に対して敗戦は許されないと自戒する。
 ふたこと、みこと、言葉を交わす。少年は変わらず小さく笑い、俺は達観したような表情を浮かべる。いかなる問いかけがあったのかは聞き取れなかった。俺と彼は、遠く離れすぎていた。
 そして男は。最後の力をもって、少年へと突進していく。

 ――それは、輝いていた日々の終わり。
 俺の願っていた小さな夢が、跡形も無く砕かれた、その瞬間の光景だった。
5872/10:2007/10/07(日) 21:01:25 ID:T+6orplc0
 ――今日は、朝からどうも空気がおかしかった。
 
 まず最初に、希美が風邪を引いたとかで学園を休んだ――休みの連絡を学園じゃなくて俺に入れるあたり、やはりおばさんもなかなかのつわものである――
 それを聞いたユーフィーと、帰ってから何か持って見舞いに行こうと約束を交わし、2日続けて2人だけで登校した。2日続けてなんて、一体いつ以来なのか思い出せなかった。
 駅前で信助たちと出会うことも無く、途中で絶と行き会うこともなく、暗い雰囲気のまま学園へ。
 教室で待ち構えていた先輩が、いつものペースで話しかけてきてくれたけれど、そこに絶も休みだと聞かされて、またひとつ、いやな予感を覚えてしまった。

 昼休み。阿川が弁当マスターふたりが揃っていないことに憤懣やるかたないという顔で、それを信助とユーフィーがなだめていた。
 先輩が地雷を運び出し、それを信助が食べ、奇声をあげて玉砕。阿川がまた一枚ベストショットが増えたと少し機嫌を直す。
 そんないつもの光景が展開されていたけれど、俺は心のそこから笑えなかった。

 たまたま、希美と絶が揃って風邪を引いただけ、というただそれだけのことなのに。
 何故か、無性にいやな予感がしてしかたがなかった。根拠の無い悪寒が全身を包んでいた。
 それは、また変わっていた夢の内容に引っ張られたせいなのかもしれないけれど。
 それ以上に、何かが起こる、何かが変わるという、絶望的な確信が俺にはあった。
5883/10:2007/10/07(日) 21:06:03 ID:T+6orplc0
「うーん、お見舞いの手土産ねぇ。望くんが一番のお土産だと思うんだけどな、私は」
 夕日差し込む生徒会室。俺は沙月先輩に会いに来ていた。学園に残る生徒もかなり少なくなっているはずの時間帯、外からは、ときおりどこかの運動部が上げる掛け声が聞こえてくる程度だった。
「そういう冗談は無しでお願いします」
「そんな深刻に考えることないわよ。ただの風邪なんでしょ? 梨とかみかんとか、何か果物でも持って、顔を見せてあげれば充分だと思うけど」
 からからと明るく笑いながら、俺のことを見つめている沙月先輩。それとも風邪じゃないの? と尋ねてくる。目じりは笑っているが、俺を見つめる視線は、全てを見通そうとしているかのように強い。

「いえ……そういうわけじゃないと思うんですが」
「ならいいじゃない。顔見せて、うつされない程度にしゃべって笑って、それでさよならしてまた明日。のぞみんが元気になって出てきて元通り。ね?
 望くん、何かあったのか知らないけど、今日は少し神経質すぎるんじゃないかしら。私でよければ聞いてあげるわよ?」
 ――答えるべきか。悩む。ここ数日、俺の心をさいなんでいる、変わりゆく夢の話。夢は夢と割り捨ててしまえない、心の奥底に溜まっていく不安のこと。
 だが、話してどうにかなることなのだろうか。
 俺自身も理解している。これは、本来なら取るに足らない悩みだと理解している。ならば他人にとってみれば、なおなんということのない話でしかないだろう。
 口ごもり、考える。沙月先輩は俺が悩んでいるのを静かに見守ってくれている。何も言わず、何も促さず。
 ――話そうか。
 先輩を、信頼にたる人だと思うのなら、話してみるべきだ。1人で悩んでいるより、きっとそのほうが良いはず。
 そう決意し、口を開きかける。

 その瞬間。
5894/10:2007/10/07(日) 21:09:40 ID:T+6orplc0
 閃光。炸裂音。校舎が揺れる。身をすくめて重心を低くし、なんとか転倒は免れた。

 突然爆音が響いた。極近くだ。一瞬閃光が室内を満たす。瞬時に椅子から立ち上がる先輩。窓に向かって走り、覗き込む。その顔が、恐ろしく厳しい表情に早代わりしていたのが、僅かに見えた。
「ユーフィーや森くんたちは!?」
「あ、きょ、きょうしつに、俺を待ってくれて」
「急いで教室に戻りなさい! それで皆を連れて中庭に行って! 途中で誰かに会ったら同じことを言う!
 ――った!? 復唱!」
 今まで聞いたことのない、激しい口調で言う。わけの分からない状況にあって、その態度はとんでもなく冷静だった。
 途中でまたひとつ爆発音が重なり、発言が聞こえなかった。沙月先輩が張り付いている窓の向こうから、悲鳴のようなものも聞こえてくる。
「は、はい! すぐに戻ってみんなと一緒に中庭に行きます!」
「よし! 私は校舎を一回りしてくるから。良いわね。また後で、状況が落ち着いたら携帯にメールするから。
 行って!」
 走り出す俺。扉を開けて、廊下へ駆け出す。先輩を心配に思う心は、後で振り返ってみれば、一切存在しなかった。

 望を見送り、ひとつ自らの気を高めるために息をつく。覚悟を決める。平穏にさようなら。騒乱にいらっしゃい。覚悟は決まった? 決まったなら往こう。私の役目を果たすために。
 この場所を、この時間を、狙ったのか偶然かは、今は考えている余裕がない。隠すつもりなど全くない敵の気配は、既に学園内に侵入している。
「ケイロン、数はどの程度?」
 誰もいないはずの室内で、誰かに問いかけた。沙月のスカートのポケットから光がこぼれ落ち、急激に膨らんで、形を作る。
 秒も経たぬうちに現れたのは、かの高名なる幻想生物、ケンタウロスのごとき姿であった。人の上半身と馬の下半身を備え、人身を白銀、馬身を黒耀の鎧で覆った勇壮な騎士の姿である。

「およそ20余。既に全てが敷地内に到達――校外にひとつ、大き目の力を感じます。おそらく指揮官かそれに類するものかと」
 その顔は仮面に覆われて見えない。声は張りのある男性のもの。沙月は僅かに考え、告げる。
5905/10:2007/10/07(日) 21:11:32 ID:T+6orplc0
「よし……聞いてたわねミゥ。私は校内を回って、関係ない人たちを外に誘導する。あなたたちは、ケイロンと一緒に敵を食い止めて」
 いつの間にか沙月と、ケイロンと呼ばれたケンタウロスの周りには、5体5色の球体が浮いていた。
 白。青。黒。緑。赤。それぞれ全高20cm少し。幅15cm弱。材質は、宝石か何かであろうか。外からの光を受けてまぶしく輝いている。
「わかりました、さつき」
 白の球体が声を発する。それを合図にしたかのように、5体の球体それぞれが次々に言葉を放つ。

「まったく、何が物見遊山の気分で――よ。来て早々これじゃ、観光どころじゃないじゃない」
 黒。聞くからに不満そうな、少女の甲高い声。球体もぐるぐると空中を踊っている。
「ゼゥ、文句言ってないで、行くよ」
 青。嗜めるような静かな声。落ち着いた、成年女性のような声である。
「そうです。観光は後からでも出来ます。今は私たちのするべきことをしましょう」
 緑。おそらくは青と同年輩程度か。少しおびえの色が混じっている。
「ごめんね、5人とも。片付いたら、埋め合わせはするから」
「おっけーぃ! さっさと片付けて、みんなで沙月の家を襲撃だー!」
 沙月の謝意に、赤が威勢良く声を上げる。一番幼そうで、一番元気の良い声だ。

「それでは、沙月様。行ってまいります」
 ケイロンが最後を締める。沙月が窓を大きく開けた。強く感じる敵の気配。悲鳴はまだ多くない。血臭もない。けが人が出ていなければいいんだけど。
「ええ。すぐに追いつくから」
 頷き合い、ケイロンが宙に舞う。黒い4つ足が床を蹴り、窓から外に飛び出していく。その右手にはいつしか長大な槍が握られ、兜からは鋭く長い刃が突き出ている。
 それに続く5色の球体たち。不断に位置を変えながら、ケイロンを護衛するように背後に、側面に着く。白はケイロンの直上に。右20度! と叫ぶ声がかすかに聞こえた。
 既に沙月も部屋を飛び出している。ポケットの中から取り出される、手のひらに収まるほどの小さな何か。お守りのようにぎゅっと握りしめながら、走り去っていった。
5916/10:2007/10/07(日) 21:13:55 ID:T+6orplc0
 ジゥエは酔っていた。 
 酒にではない。血に酔っていた。
 元々彼は、崇高な理想も確固たる目的もあるわけではない。ただ、破壊と流血を好み、悲歎と悲劇を目の当たりにする、それを求めて、光をもたらすものに力を貸しているだけである。
 学園から僅かに離れた位置にあるビルの屋上に1人立ち、杖を握りしめながら彼の命令下にあるミニオンの群れに指示を飛ばす。
 命令はただひとつ。
 破壊せよ。目に付くもの全てを破壊せよ。人も物も区別なく破壊せよ。
 その指令どおりに、ミニオンたちは剣を振るい、壁を、門を、木々を打ち倒し、芝生を灰に変えていく。
 唯一不満があるのは人の少なさと敷地の広大さだ。23体程度のミニオンでは把握しきれないほどに面積が広く、それゆえに人となかなか行き会わず、結果まだ人死にを出せていない。赤い血を見られていない。
 それが幸運だった。

 一刀。一閃。無音の刃が走る。気付く暇すらない。そもそも気付かせないのが彼の技量である。
 光をもたらすものの一翼、ジゥエは、己が死んだことを認識することさえないままに、その首を飛ばされていた。
 もしも人死にが出ていれば、実行者は彼をもっと無残に、もっと無慈悲に殺していただろう。
 それが彼にとっての最後の幸運だった。

「小物ですね、マスター」
「ああ」
 斬首刑を執行したのは黒衣の男。右手の刀を鞘に収め、名も知らぬ男の持っていた杖を拾い上げて、空中に放り投げる。
 身の端から光に返っていく死体を無視し、タイミングを計って再び抜刀から神速の斬撃を繰り出す。杖は主人同様一刀の元に断ち割られ、主ともども最後を迎えた。
 それぞれから放出された光の一部は、斬った男の手にある刀に吸収され、残る大半は空中へ散っていく。後には何も残らず、ただ一滴の血が、その存在の最後の証明だった。
 男は全身に漲っていく力を感じつつ、学園の様子を遠く見やる。
「行くぞ」
「はい」
 飛ぶ。ビルの屋上から飛び降りていく。向かうのは敷地の一角、世刻望がいるはずの場所へと向かって。
5927/10:2007/10/07(日) 21:15:18 ID:T+6orplc0
 扉を勢い良く開けて、中に飛び込む。中にいた3人は思い切り体をびくつかせて振り返り、俺の姿を見てほっとしたように息をつき、俺のほうに駆け寄ってくる。
「望! 無事だったか。斑鳩先輩はどうした!?」
「校内を、はぁ、回って、はあ、生徒たちを誘導してくるって。俺も、何人かに、ふぅ、声かけてきた。
 俺たちも外へ! 中庭に行けって言われた!」
 息を整えながら3人――ユーフィー、信助、阿川の3人に先輩の言葉を伝える。同時にまたひとつ校舎が振動する。木造の古い建物が、ぎしぎしといやな音を立てて揺れている。絶対やばい。
「あ、うん、そうね。建物の中だと、崩れてきそうだし」
「ユーフィーちゃん、走れるか? 俺背負っても良いぜ?」
「大丈夫です。私走るの早いですから。信助さんこそ、遅れないで下さいね!」
 いつもの元気そのままに、ユーフィーがひとつ軽口を叩く。張り詰めた空気が少し緩んで、肩も軽くなった気がした。よし、急ごう。

 廊下に出て走り出す。俺が先頭。信助は阿川の手を引きながら着いてくる。ユーフィーは――本気で早い。下手したら追い抜かれそうな勢いだ。
 階段を2段飛ばしで駆け降り、踊り場で急旋回してまた駆け下る。他の生徒とは全く出会わないし見かけもしない。
 幸運なのか、なんなのか。本当に今日は、ほとんど生徒が残っていなかったみたいだ。
 1階にたどり着く。ユーフィーもすぐ後ろについている。阿川と信助は段の途中。少し息を整えて待つ。
 突然、踊り場の窓が砕け散ってガラスの破片が舞う。同時に校舎中に、今までになく強い振動が走る。
「うわ、っと!」
 耐え切れず転んだ。階段の阿川と信助は手すりにしがみついてやりすごしている。ユーフィーも転びかけているが立ち直り、階段上の2人を手助けに行く。
 俺も立ち上がって階段を上がり――俺は一体何を思ったのか――3人を追い越して踊り場まで上がり、壊れた窓枠から顔を覗かせて、外の情景を見た。
5938/10:2007/10/07(日) 21:16:50 ID:T+6orplc0
 まるで夢の中のようだった。
 広い校庭を、縦横に走る色とりどりの少女が何人もいる。長剣を振るう者。立ち止まり魔法陣を展開している者。空中から地上へ、機銃掃射のように火の雨を降らせている者。
 それに対抗しているのは、それ以上に幻想的な姿。
 空中では何個かの球体が、相互に支援し合いながら踊るように戦っている。光壁を展開して攻撃を弾き返し、回復のマナを仲間に与え、空間を渡る闇の刃を解き放つ。
 地上にはケンタウロスがいた。降り注ぐ炎の雨をものともせずに力強く地面を蹴り、駆け行く先には緑の髪の少女。槍の穂先は正確にその顔面へ。突進を察知した少女は手にある槍をかざし、防御の姿勢に入る。

 接触。 
 騎士の槍は虚空で防ぎとめられた。少女の展開した防御壁と噛みあって、マナが火花のように散る。突進の勢いはそがれて消え、壁を抜けないと判断した騎士は、やむなく大きく跳んで少女を飛び越え後ろへと回る。
 体勢を立て直そうとしているその頭上を狙い、刀を持った黒い少女が飛び掛り、同時に横合いから切りかかる、長剣を振りかざした青い髪の少女。騎士はしかし落ち着いた様相で、槍を地面に突き立てて、防御陣を展開する。
 二者同時の攻撃を受け、それを見事に受け止めて見せた。
 騎士の力は彼女たちを上回っている。しかし反撃に出られるほどではない力量差。少女たちには退くという選択肢はないらしく、刀を剣を再び振りかざして、新たに一撃を繰り出そうとして、
 空中の黒は、突如その身の回りに湧き出した氷の刃に全身を貫かれ、地上の青は、全身を炎に包まれて崩れ落ちる。

「ルゥ殿! ワゥ殿! 感謝いたす!」
 朗々たる声がここまで響いてきた。青と赤の球体が、騎士の両横に付き、彼を援護する態勢を取る。
 何本もの炎の矢が赤い球体の回りに現れ、前方90度を掃射する。効果範囲には3人。1人は弾き、1人は空中へ飛んで避け、残る1人は不意を撃たれて直撃を受ける。
 弾いた1人の背後に、突然黒い球体が現れる。空間を飛んだのだと何故か分かった。対応の暇も与えず、黒い刃が少女の頭を断ち割った。
 空中に飛んだほうも同時に討ち取られている。白い球体が放った光り輝く球が、その胸を直撃、同時に炸裂し、身体の真中に風穴を開けていた。
5949/10:2007/10/07(日) 21:19:37 ID:T+6orplc0
「――何、これ」
「俺が、知るか」
 いつの間にか俺の隣には信助と阿川がいた。写真をとるのも忘れて呆然と見守っている。ユーフィーは俺の後ろについたまま、ぎゅっと俺の服の裾を握っていた。
 2人は、この情景を理解できていない。だが、俺は理解できていた。この光景は、似たような光景は、何度も何度も夢で見ていたからだ。
 少女たちはミニオン。俺を殺しに来て殺し返されるもの。
 ケンタウロスは神獣。俺を殺しに来る者の忠実な臣下にして相棒たるもの。
 球体は、分からない。あの物体は俺の記憶にはなかった。けれどその動きは、明らかにケンタウロスを支援するものだ。
 ――どれも、俺に脅威を与えるほどの存在ではない。
 戦況は明らかにミニオンが劣勢だった。数では勝るが連携が悪く、一体ずつ確実に葬られていく。倒れた身体はマナへと還り、虚空へ散っていく。消え行く光のかけらが妙に美しい。
 ――それを吸い力を増せ。手に入れろ。奴らのマナを手に入れろ。  
 それでも、数はまだミニオンが上。ざっと数えて残り14人。対する側はケンタウロス1と球体5。ミニオンは拙いながらも分断を図り、球体は素早く機動して相互支援の位置を保ち続ける。
 ――奴らを殺せ。全て殺せ。あれならば当座の補給程度にはなる。
 さっきから誰かが煩わしい。殺せと吸えと誰が言う。俺にはそんな力はないし、俺にはそんなつもりはない。
 ――ではなぜ俺は、階段を登りなおしたのだ。登りなおしてまでこの光景を見たいと思ったのだ。

「望さん! 皆さん! 早くここから離れましょう。巻き込まれたら危ないです!」
 ユーフィーが言う。そうだな、と2人が同意して、階段を降り始める。
「望さんも、さぁ」
 だが俺は動かない。
 また1人ミニオンが空中で吹き飛ばされて消えた。ケンタウロスの槍が光を放ち、緑髪が展開しようとしていた魔法陣をかき消す。
 だが俺は動けない。
 空気中の水蒸気が液化して青球体を取り囲み、飛来した白球を受け止めてともに霧散する。しかし次弾が即座に飛び来て、それは白球体が割って入って防御した。
59510/10 今日の分終わり:2007/10/07(日) 21:21:48 ID:T+6orplc0
 望さん! 
 甲高い音が廊下に響いた。頬が熱を持つ。いつの間にか俺の前に回っていたユーフィーが、手を一杯に伸ばして俺の頬を張り飛ばしてくれたのだ。
「あ――」
 それで、俺は我に返ることができた。今一体、何を思ってあの光景を見つめていたのか。記憶が混錯している。
 とにかく、ここから離れよう。そうしなければまずいことになる確信だけは頭に残っていた。

「望さん、しっかりしてください! 早く逃げないと本当に危ないですよ!」
「あ、ああ、ごめん、ユーフィー」 
 先に行った2人が、何事かとこちらを見ている。大丈夫だ、と声をかけて階段を駆け下りる。
「早く行こう、みんな。とにかく、安全なところまで」
「おう」
 1階の廊下を駆け抜けて、中庭を目指す。戦闘が続いているのは表側。その裏ならばとりあえず表よりは安全なはずだ。 
 またしても、遠く爆発音とともに廊下が揺れる。だがその衝撃は、先ほどよりは明らかに弱くなっていた。
 緩むことなく最後の10mを走り抜けて中庭へ飛び出す。

 ――そこには
 幻視する過去の記憶。 
 ――何人もの生徒たちが
 血染めの草原。山と積もった死体。
 ――死んだように倒れていた
 その中央で哄笑する俺の姿。

「来たか。望。待っていたぞ」
 倒れている生徒たちを見下ろすように、1人、中庭の芝生の上に、奇妙な装飾の黒衣を着てたたずむ影がひとつ。
「ぜ、つ――か」
 その顔はとてもみなれた顔で、けれどそこには何の感情もなく。そんな顔は今まで見たことがなかった。
 剥き身の刀を右手に下げ、腰にはその鞘を付け、肩の上に小さな女の子を乗せた、暁絶の姿がそこにあった。
596名無しさん@初回限定:2007/10/07(日) 21:41:07 ID:/gYafGOh0
>>595
GJ&乙
そーいやものべー学園動かないんだっけ?
597名無しさん@初回限定:2007/10/08(月) 01:02:57 ID:yad06qRP0
>>595
おーGJ。
ところで余計なお世話かもしれないですが、
毎回タイトルが違うのでシリーズ名を入れた方が
まとめサイトができたときにいいのでは。
598名無しさん@初回限定:2007/10/09(火) 17:51:35 ID:m+ysOgY50
乙です
本編より俺の好みだから困る
599名無しさん@初回限定:2007/10/09(火) 20:46:08 ID:jeHuzHoQ0
(=゚ω゚)ノぃょぅ

>596
うい。動きません。ってか動かせません。あらゆる意味で。
余りにも大ネタ過ぎて、生徒たちと日常生活その他に描写に要する文章量考えただけでめまいがしますた。いや、ほんとに。書いても書いても終わらんよまともにやったら。
それなら一般人代表として信助美里にハキュレタレチェレフィロメーラその他男勢の描写に費やすほうが良いと判断した結果っす。
あれをまじめにやろうとした(少なくとも当初はそうだろう)ザウススタッフは絶対どっかネジ飛んでると思いますサー。

>597
いあ。むにゃむにゃ。
入れたほうが良いなと思いつつ。
ロクな総合タイトル思いつかんというジレンマが。
今日までに考えとくつもりだったし実際考えてたんだけど良いのが浮かばんかったオチ。
はぁ。

というわけで今日の分9レス……10かも。
ようやくはじまり。長い旅は始まったばかりだ。
600そして、はじまり。 1/10:2007/10/09(火) 20:47:30 ID:jeHuzHoQ0
「安心しろ。殺しちゃいない。少し眠ってもらっただけだ」
 刀を振り、鞘に戻す。確かにその刀身には、血の曇りは一切なかった。
 その後ろに倒れているのは俺たちと同じ制服を着た同級生や後輩や先輩たち。ことごとく気を失ってぴくりとも動かない。――沙月先輩の姿まである。先輩は意識を保っているらしく、腕を地面について立ち上がろうとしている。
 俺と目が合い、指を口元に当てた。黙ってて、というジェスチャー。絶は先輩の動きに気付いていない。頭から僅かに流れる血と、金色の粒子。推測するに、中庭に生徒を誘導していた最中、絶に奇襲を受けて倒れたというところだろうか。
 遠目で見ても、先輩の服装は奇妙だった。左肩に金属の肩当て。両腕の肩口から伸びる、やたらに長いひらひらした布。スカート周りを覆う鎧のようなもの。
 全体に、ファンタジー世界の女騎士か神様か、といった服装の中で、何より一番不思議なのは、頭の両側についている大きな羽根飾りだ。真白い羽が、支えもなく両側にぴんと張っている。今、僅かに羽ばたいたようにすら見えた。

「阿川、森、ユーフィー。少し下がっていたほうが良いぞ。お前たちまで殺したくはない」
 絶が1歩、前へと歩み出す。俺はそれに応じて1歩下がる。先輩が何かをしようとしているなら、俺は時間を稼ぐべきだ。
 森と阿川も、絶の態度が冗談ではないと感じ取っているらしい。俺と同様に1歩を下がる。
「絶、お前、何をするつもりだ」
 答えた俺の声は、明らかに震えていた。本当に、絶が何をしたいのか理解できなかった。何故そんなに、俺に対して殺気を漲らせているのか。
「お前を殺す」
 そして。ためらいも、よどみもなく、絶はそれを言い切った。
「理由は――今のお前には言っても無駄だろう。理解できはしまい。言うことがあるなら、それは」
 済まない、だ。
6012/10:2007/10/09(火) 20:48:42 ID:jeHuzHoQ0
 そう小さく言った途端、絶が大きく足を踏み出して、駆け出す。狙いは一心に俺のみと、視線とと歩幅がそれを示している。
 時間を稼ぐどころじゃない。わずかに10歩。あの歩幅ならば、俺の元にたどり着くまで10歩。その位置が奴の暁天にとって、最も適した攻撃範囲。
 防げ。防げ。防げ。避けろ。避けろ。避けろ。危険信号が脳を駆け巡る。しかし身体は動かない。動けない。動いても無駄。既に俺は奴の間合いに取り込まれた。今からどう動いたところでその刃からは逃れられない。
 1歩
 ならば防ぐか。防ぐ? 不可能だ。俺にはその手段がない。武器がない。防具がない。得物がなければ、それも業物でなければあの白刃を止めることはできない。
 2歩
 武器がない? ない? ないなんてことはない。思い出せ。思い出せ。それは常に俺とともにある。ただその名を呼べば良い。それだけでそれは俺の呼びかけに応えてくれる。
 3歩
 思い出せ。力を取り戻せ。そして奴に反撃しろ。防ぐのではなく斬り返せ。その手に現れる双剣を振るえ。奴の刃を弾き返してその首を落とせ。そうすれば俺は本来の俺へと返る事が―― 
 4歩

「れ、レ、黎――」
「駄目です望さん!」
「ケイローーン!!」
 ユーフィーが叫び、俺を横殴りに突き倒す。同時に、後ろから沙月先輩が絶に飛びかかり、さらに校舎を飛び越えてきたのだろう、上から先ほどのケンタウロスが俺たちの前に飛び降りてくる。地響き――はさすがに感じない。
 地面に叩きつけられ、砂が目に入った。上に覆いかぶさってくる柔らかい感触。
「ッ」
 絶の足音が止まる。剣戟の音が激しく響く。俺の上にユーフィーが被さって、俺をその身でかばっている。
「駄目です。望さん。諦めちゃ駄目なんです」
 俺の耳元で小さくささやく声。諦めた――わけじゃ、ない。いや、それとも諦めていたのだろうか。良く分からない。さっき不意に浮かんだ名前は、倒された拍子にまたどこかへ消えてしまっている。
 いや。それで良い。自分を守るためだけの力なんて必要ない。思い出してはいけない。
6023/10:2007/10/09(火) 20:51:17 ID:jeHuzHoQ0
「マスター! 私を中に!」
 絶の肩の上にいた少女が言い、主は無言のままにそれを実行する。黒服の女の子が剣に吸収されるように姿を消した。
 その間も絶は、前後から同時に襲い掛かってきている、先輩とケンタウロスの攻撃を、苛烈に、的確に防ぎ続けている。
 騎士は槍をどこかへ仕舞い、今は剣を取っている。先輩の武器は閃白の刃。実体があるのは柄の部分のみ。両手でしっかりと握り、絶に対して立て続けに切り掛かる。
 だが。2人に挟まれて窮地にあるはずの絶は、しかしまだ余裕があるとばかりに、右手一本のみで持った暁天を縦横に振るい、左右両側からの連撃を跳ね除けている。
 下からの袈裟上げ。合わせて止めるのではなく刃をかすめて流すように防ぐ。光輝の刃から光が散る。騎士の虞風のごとき剛剣を、その流れのままに上から抑えて下へと弾き、そのまま体全体の重心を下げて先輩へ横突きに刺突を繰り出す。
 防御が間に合わず慌てて後ろに飛び下がる先輩。騎士はその隙を好機と、我が身を武器にし踊りかかるが、刀の柄で鎧の胴を強く打ち付けられて、それだけで突進を押しとめられる。
「ぐっ!」
「出力が上がらないようですね先輩!」
 叫ぶ。勢いを止められた騎士に対し、今度は絶が肩からの体当たりを見舞う。体重差はいかなる視点でも騎士のほうが絶対的に上、にもかかわらず、押し合いに競り負けて騎士はたたらを踏んで後ろへと。

 この間数秒。俺は身を起こすのも忘れて、攻防に目を奪われていた。
「この世界は、あまりマナが濃くない。ゆえに俺たちの戦いは、個々の技量により大きく左右される――先輩、失礼ながら、剣技では俺のほうがずっと上のようだ。
 先ほどの打撃からすぐに持ち直してきた打たれ強さには感服しますが。ですが、あなたでは俺には勝てない」
 絶は強かった。2対1でも平然と打ち勝っていた。ミニオンたちを圧倒していたあの騎士でさえ、遠く及ばないようだった。
 ――いや、厳密に言えば2対1ではないのだが。
6034/10:2007/10/09(火) 20:52:41 ID:jeHuzHoQ0
「はぁっ。はぁ。確かに、あなたと私は相性が悪すぎるみたいね……でも、だからといって退くわけにはいかないのよ!」
 先輩が気を吐き、輝く刃がその光を増す。騎士も体勢を立て直して、剣を構えなおす。
 先輩の――セフィリカの光輝は、自らのマナを糧に刃を成す神剣だ。使い手が、神剣に注ぎ込むマナの量を増やせば増やすほど、その威力は増大する。
 ――だが、刃を生み出すことで失われたマナは、周囲の空間にある浮遊マナを取り込んで補充するしかない。ゆえに、世界のマナ濃度に、出しうる出力は大幅に左右される。
 ――出力を上げれば上げるほど、それだけ自身から多くのマナが持ち出される。補充が効かないほどに持ち出しが多くなれば、最悪自らの存在自体が危うくなる可能性を孕むからだ。
 ――なるほど、確かにこの世界では、暁天との相性は最悪に近いか。彼女の光輝が、剣技において大幅に勝る相手と打ち合えるほどの出力を得るには、この世界はマナが薄すぎるか。

 待て。俺は今、この知識をどこから引き出した?

「……危険域に達していますよ先輩。早くマナの使用量を抑えなければあなたの存在が危うくなるかもしれない」
 絶の顔が疑念を含む。ようやく俺は立ち上がった。ユーフィーは俺の手を引き、ここを離れようとアピールしている。
「何故、そこまでして望を守ろうと?」
「暁くんこそ、どうして望くんを殺そうとするわけ?」
 だが、俺にそれはできない。この場を収められるのはきっと俺だけだ。俺を巡って殺しあう2人を放置などしていけない。
 ああ、だが。この状況をどうすれば収められるのだろう?

「別に、あなたに言っても仕方のないことや」
「なら、私も言ってもしょうがないわよね」
 絶が小さく苦笑する。いつもと同じ雰囲気で。けどそれもすぐに消えて、再び冷酷な目へと変わる。
「退いてくれないと言うのなら……あなたも殺すしかない」
「やれるものならやってみなさい!」
6045/10:2007/10/09(火) 20:53:52 ID:jeHuzHoQ0
 ユーフィーが望の手を引いている後ろで、信助と美里は完全に茫然自失の有様であった。
 目に映るものが現実と認識できない。
 聞こえてくる気迫の声が脳に届かない。
 今、自分たちはどういう状況に置かれているのか把握できない。
 自分たちは巻き込まれたのか。それともただの傍観者なのか。あるいは当事者なのか。その区別もつかず、ただ、少し離れたところで繰り広げられる剣舞を唖然と見つめていた。

 沙月と絶には、致命的な力の差がついてしまっていた。
 まだ他の世界なら。マナ濃度がより高い世界ならば、光輝は、技巧を凝らした暁天の一撃を、出力の差でねじふせるだけの輝きを得ることが出来ただろう。
 あるいはもっとマナ濃度が低い世界ならば、2人はそもそも戦いにならず、自身の生存維持で手一杯になっていたはずだ。
 その意味では、この世界のマナ量は、絶にとっては好適であり、沙月にとっては最悪と言える。
 マナの放出量を少なく取り、神剣そのものの切れ味と自身の戦技のみで戦える絶と、刃を生み出し、打ち合いに耐える強度を維持し続けるだけで消耗していく沙月では、相性が余りにも悪すぎた。
 前後、あるいは左右を常に挟むようにして戦い続ける、ケイロンとの連携の良さが無ければ、戦いは速やかに決着していただろう。
 また、戦いを長引かせれば、やがてこの周辺のマナもろとも使い尽くし、戦闘不能に陥る。そういう判断が絶の心のどこかにあり、その刃に微妙な手心を加えさせてもいた。
 それらの要素が2人の戦いを長引かせ――誰も予想し得なかった闖入者がやってくるまでの時間を稼ぎ出す結果となった。

「あ、あれ? のぞみん?」
 不意に、後ろに何物かの気配を感じ、慄いて振り向いた美里の目に写ったのは、見慣れた同級生の姿。
 だが、その瞳には光は無く、ゆえに美里は、見知らぬ何者かが現れたより以上に戦慄した。
「――」
 希美の姿をした、希美でないものは、誰にも言葉をかけることなく、無音の疾走で2人が戦う舞台へ乱入していく。
6056/10:2007/10/09(火) 20:56:12 ID:jeHuzHoQ0
「あ、あれ? のぞみん?」
 阿川が何か言ったのがふと耳に入って、2人の争いにただ魅入られていた俺は、気配に気付いて振り返り、その姿を見た。
 ――危険
 中庭への入り口に1人、異様なほどに落ち着いた様子で立つ少女は、確かに、希美の姿をしていた。
 ――危険
 だが、それは明らかに希美ではなかった。その顔には表情が無く、その瞳には何者も写していなかった。あんな冷たい目の希美を、俺は知らない。
 ――逃げろ
 着ているのは緑色を基調にした、ゆったりとしたドレスのような衣服。右手には身の丈ほどもある長槍。本来の槍の穂先以外に、一側面には鎌のような刃が付いている。
 ――でなければ
 つい、と、長槍の少女は情景を見渡す。ひたり、と、一瞬だけ俺と視線が合った。

 ――ころされる

 だが、希美は俺に何も言うことなく。風邪を引いて休んでいるはずなのに、どうしてここにいるのかという問いをかける時間もなく。
 先輩と、絶が戦い続けている光景を視線の上に置いた瞬間、飛ぶように走り出す。
「希美っ!?」
 意図が分からず叫ぶ声も届かず。希美は槍を両手に持ち直し、音も無く走って2人の元へと。気配に気付いた絶が目を見張る。先輩の攻勢も期せずして止まる。一瞬誰もが動きを止める。その中で希美は、走り、槍を引き、突進の勢いに乗せて、繰り出す。
 絶へと。

 学校中に響き渡るかのような、激越な金属音が響いた。
 絶の暁天が、力任せに突き出された希美の清浄を――ああ、何故俺はその名を知っている? ――こちらも力任せに打ち払ったのだ。 
「――ッ!? 何故俺に向かってくる! 永峰っ!」
 絶は明らかに混乱していた。渾身の一撃を跳ね除けられ、だが全く表情を変えることなく、槍を振るい続ける希美は、どう見てもこの場にいるほかの誰でもなく、暁絶ただ1人を狙っているからだ。
 ――本来狙われるべきただ1人は、俺であるはずなのに。
6067/10:2007/10/09(火) 20:57:58 ID:jeHuzHoQ0
 希美の動きには迷いもためらいも無かった。清浄が突き出され、薙ぎ払われ、打ち下ろされる。どれも必殺の一撃。だがその軌道はひたすら直線的で一辺倒、絶は容易にそれをかわし、受け流し、弾き返す。
 清浄と暁天が打ち合わされる度、周囲に壮麗な花が咲く。激突に損傷した神剣が、直ちに内部にあるマナで己を修復、その過程で燃え尽きたマナが、次々と放出されているがゆえの火花である。
先ほどまでは先輩の光輝のみから発せられていたそれは、2つの神剣が猛烈な勢いでマナを燃焼させているという証明であった。
「グ――っ!」
 絶は歯を食いしばり、急激な消耗に耐えている。対して希美はまだまだ余裕といった風情。――当然だ。清浄とマナのぶつけ合いをして勝利できる神剣などそうありはしない。どれほどのマナがあの槍に蓄えられていると思うのだ。
 だが――理解できない。おそらくこの場の誰も理解していない。何故希美は。清浄のファイムは。相克は。俺ではなく、絶を狙っているのだ――?

 絶が大きく飛び退き、間合いを開けた。その顔には疲労の色が浮かぶ。一瞬たりとも気を抜けない、清浄との剣戟は、ほんの数合のうちに、先輩との数十合を遥かに超える精神的肉体的消耗を絶に与えていた。
 誰も言葉一つ発せない、身動きすら取れない緊迫した空気。絶を取り押さえる絶対的好機であるはずなのに、先輩でさえ呆然と立ち尽くしている。
 そんな中、希美はひたすら冷淡に、冷静に、冷酷に、槍の穂先を絶に向ける。己が仕留めるべき相手以外は目に入らぬと、その行動が告げている。

 その構えを俺は知っている。穂先にマナが収束していく。打ち放たれるのは光一条。清浄が一度に出力可能な全てのマナを投入し、敵を貫く光の奔流。
「駄目だ、避けろ絶ッ!」
 叫んでいた。俺を殺そうとしている相手を救おうと俺は叫んだ。けれどその声が合図になったかのように、清浄は形を僅かに変形させて、
「とどめ」
 ここに来てから始めて開かれた希美の口。その合図とともに、それが打ち出された。
6078/10:2007/10/09(火) 20:59:24 ID:jeHuzHoQ0
 一瞬か、数秒か。光の束は狙い過たず絶を直撃し――本来ならば光は目標を貫通し、その先にあるもの全てに穴を穿つ――しかし、絶はそれに耐え切っていた。
 荒い吐息。片膝をついた姿。暁天を杖と支えてふらつく足を持ちこたえさせる。僅かに、その刃に刃こぼれが見えた。それはすなわち、彼らが保有していたマナが底を着いたことのこれ以上無い証明。
 それほどの打撃を、一撃のもとに下して、なお希美は、清浄は余力を存分に残していた。再び先端に集まっていくマナの輝き。
 今の絶が、さらなる一撃に、耐えられるはずがない。

 止めろ。

 強く思う。

 とめろと。やめろと。とまれと。頼むから止めてくれ。希美、それはお前の意志じゃない。お前は、自分の手で絶をころし、それに耐えられるのか。 

 強く強く願う。ユーフィーが何かを言っているがもう聞こえない。先輩が俺の様子に気付いたらしいがもう止まらない。
 俺はもう誰の死も見たくない。あの夢の続きなんてもうごめんだ。殺し合い憎しみ合うのはもう嫌だ!
 どうか、この運命を変えうる力を。どうかこの先に待つ死を回避させられる力を。どうかこの輪廻を断ち切る力を俺に――!

「来い、黎明――――!」

 俺は、その名を、思い出した。 

 ――力がわきあがってくる。破壊の衝動が心を覆っていく。だめだ。それに呑まれてはいけない。
 それに呑まれては、また同じことの繰り返しだ。分かっているだろう世刻望。それを今まで何度繰り返してきた!
 耐えろ。耐えろ。心を押さえつけろ。俺の望みは皆の笑った顔なんだ。
 皆が傷つく姿じゃない。俺はもう誰も殺したくない。俺に関わる人を、俺を友と呼んでくれた人を、俺を愛してくれる人を、殺したり傷つけたり殺されたりしたくない!

 視界は白く染まっている。マナの輝きが俺の体を覆っている。気付けば服装も変わっていた。制服は消し飛んで、戦闘服がそれに変わっていた。
 全てが遅延して見える。清浄に収束していくマナの輝きが穢れて見える。あれを食い止めなければならない。
 俺の手にはいつしか双剣が握られている。初めて持つはずなのに手になじんだ。当たり前だ。これは常に俺と共にあったものなのから。
6089/9 あ、10レス行かないで終わったわ:2007/10/09(火) 21:00:38 ID:jeHuzHoQ0
 先輩が何かを叫んだ。阿川が上を向いて悲鳴を上げていた。屋上から飛び降りてくる1体の青ミニオン。ごめん、1匹逃がした! と聞き覚えの無い絶叫が耳に届く。
 ――あれも食い止めなければならない。放置すれば阿川か信助がその刃にかかる。前後同時、双方が致命、時間は秒も無く、俺の腕は届かない。
 ならば。

 黎明に力を送る。神剣を触媒として世界に干渉を開始する。俺の身から吸い出されるマナの輝き。良いとも、好きなだけ持って行け。
 願いを告げる。俺の力を解放する。ジルオルの力の封を解く。止まれ。全て止まれ。俺の意に沿わぬもの全て止まれ。俺の意に沿わぬもの全て滅びてしまえ――!
 ――違う、最後のは違う。止まるだけで良いんだ。壊すな。壊れるな。滅ぼしては駄目だ!!

 心が悲鳴を上げる。双反する2つの願いが力の集中を削ぐ。制御が外れて暴走を開始する。捻じ曲がった力が世界に広がる。
 先輩がそれは駄目だと叫ぶ。希美は咄嗟に防御に切り替える。絶は残った力で何かをしようとしている。飛び込んできた球体5体は何事か知らずも慌てて守りの陣を張る。ミニオンは俺の意図に気付かない。そんな思考力を与えられていない。
 身を守る術の無い阿川と信助は――ユーフィーがかばっている。何故かその手には見覚えの無い神剣が一振り。展開された頑強なバリアが、3人を俺の放つ力から完璧に守っている。
 そして俺は。
 俺の放った力が世界に広がっていくのを知覚しながら、世界が停止していくのを自覚しながら、力を使い果たし、その場へと倒れ伏した。


 聖なるかな外典 序章
 元々の世界――浄戒の目覚め――
 終
609名無しさん@初回限定:2007/10/09(火) 21:13:34 ID:g6a8KBW90
GJ
いい感じで暴走したなぁ
これはどういう分布になるんだろ
旅団
光をもたらすもの
理想幹神(希美)

望(ユーフィ、阿川、信助)
かなぁ

あと誰が誰と何処にとぶのかも気になるwww
610名無しさん@初回限定:2007/10/11(木) 20:33:32 ID:t+Pj0UCw0
GJです
そういえば、原作でユーフィーがゆーくんに乗ってGソードダイバー(もしくはリフボード)で攻撃してますよね
ユーフィーにつかまって飛行する望…そんな妄想が(ぇ

あー…でも何か、望飛んでたような気も…
611名無しさん@初回限定:2007/10/11(木) 20:56:03 ID:JQ7PzuJG0
(=゚ω゚)ノぃょぅ

>609
ん、え、あーーーー
いや。ほらあれだ。
物部学園は飛ばないけど、
ものべーが飛ばないなんて言ってないっすよ(´・ω・`)
ごめん期待裏切って(´・ω・`)

>610
望は多分ありゃ自力で飛んでるw
でもその発想はなかったわ。うん。

さて、では今日の分15レス……こんだけ書いて中庭から移動できてないってどういうことか(´・ω・`)

ところで、これ落とし終わったら容量やばくなると思うんだけど
次スレのテンプレどうするのとか考えといたほうがよくね?
6121/15:2007/10/11(木) 21:01:16 ID:JQ7PzuJG0
 記憶があちこち寸断されている。
 
「油断したな――ルツルジ!」
 双剣の片方が男の背を貫いていた。狙いは違わず心臓を一撃。さしもの名の知れた剣神といえど、これならば致命傷だろう。
 顔を後ろの俺に向け、何かを言おうとする銀髪長身の闘神。だが、口から溢れ出る血の泡に溺れ、言葉を発することができない。
「さらばだ」
 末期の言葉などに興味は無い。黎明を通じて奴の体内に力を送り込み、同時に左手に持つ双剣の片割れで、その首を跳ね飛ばす。
 それで最期だった。
 絶命したルツルジの肉体がマナに返り、世界に溶けていくその一部を黎明が吸収していく。よし。

 空へと舞い上がる。薄暗い曇天、まもなく雨が降り出しそうな気配が漂う――その機会はもう二度と訪れないが。
「――はっ」
 集中。数多くの命を吸い、黎明に充填されていた大量のマナが一時に放出されて行く。
 先ほど散ったルツルジの残滓たるマナは、まだ周囲に色濃く残り、ここら一帯のマナ濃度を上昇させている。
 そこに黎明から大量のマナを放出することで、さらに濃度を増す。増し続ける。10の空間に20のマナを。20の空間に60のマナを。俺の周囲が金色に帯電していく。過密状態に置かれたマナ同士が激しくぶつかり合い、反応を開始する。
 充分だ。
 飛翔し、その場から離れる。金色の光はますます強さを増していく。後は起爆するのみ。
 充分な距離を置き――最後の一押しを放つ。光白の球体が金色の空間へ向かい飛ぶ。それを見届けて、俺は全力でその世界を離脱した。

 着弾。起爆。誘爆。連鎖。過剰濃度となり臨界点を超えたマナが一斉に爆裂する。
 周りのマナを巻き込み続けて、光は際限なく広がっていく。世界にあるマナが次々と炸裂していく。世界を光が満たしていく。
 時間樹の枝が一瞬だけ光り、散る。ひとつの世界を構築していた膨大なマナが時間樹に戻っていく。その一部を俺と黎明は受け止め、手に入れた。俺はさらに力を増した。

 またひとつ世界を滅ぼし、俺は爽快だった。ひたすらに爽快だった。強烈な快感が体と心を満たしていた。
 だが、と、夢を見ている俺は思う。
 ――そもそもどうして、俺は世界を破壊するようになったのか。そのきっかけが、どうしたって思い出せないのだ――
6132/15:2007/10/11(木) 21:02:32 ID:JQ7PzuJG0
 目が覚めた。
 自分が何をしたのか思い出す――皆は無事か。どれだけの間意識を飛ばしていた? あれから何があっただろうか?
 妙に硬く、ちくちくと痛む芝生の上から上半身を跳ね起こす。荒く息をつきながら、周りの情景を確認する。
 見慣れた、学園の中庭だった。木の位置も、芝生の感触も、校舎の配置も何一つ変わっていない。
 だが、奇妙に薄暗い。全てのものから色がなくなっているモノトーンの世界。風を感じず音も聞こえない。太陽の日差しも遥かに遠い。動くものの気配は――
 右横に、濃いマナの存在を感じた。
「……望くん、よね?」
 ――殺せ。
「せんぱい、ですか?」
 頭に浮かんだ衝動を理性で抑え、声のしたほうを向く。

 警戒と、苦衷と、少しの希望とが混ざり合った表情で、俺に光輝の刃を向けている先輩の姿が、そこにあった。

「望くん、で良いのよね?」
 先輩が2度目の問いかけを発した。奇妙に薄暗い世界で、唯一鮮やかな色を保っている。
 俺も自分に問いかける。そうで良いんだな? 自分は自分を保っているか? 記憶ははっきりしているか? 
 俺は、俺のフリをしているだけのジルオルではないのだな?
「……はい。どうやら、まだ俺は世刻望でいられているみたいです。沙月先輩」
 数秒考えた後、確信を持ってそう答えることができた。――今はまだ。

 良かったぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜、と、思いっきり息を吐き、肩の力が一気に抜けたのか、先輩はその場にへたりこんだ。光輝の輝きは消え、先輩の戦闘服も羽根飾りも全部消失していつもの制服姿に戻る。
「よかった。ほんとによかった。もし望くんが望くんじゃなくなってたら、私」
「言わなくて良いですよ、先輩。後は分かりますから」
 そうだ。もし俺が完全に覚醒していたら……先輩は俺を殺そうとしたに違いない。
 そのために、彼女はここにいたのだろうから。
6143/15:2007/10/11(木) 21:03:41 ID:JQ7PzuJG0
 泣きそうになっている先輩をなだめながら、自分の体調を確認する。
 頭ははっきりしている。特に痛いところも無い。服装は異国風の戦闘服に変わっている。制服が吹き飛んでしまっていたから……これを解除するわけにはいかないな。
 腰には双剣を収めるための大きな鞘。それで思い出して手で地面をまさぐると、あった。
 俺の神剣、黎明は、地面に転がったまま、静かにたたずんでいた。
 両方を両手で拾い上げ、鞘に戻す。初めて行う動作のはずなのに、全く自然に、意識せずに行うことができた。何百、何千、何万回と繰り返し、魂にまで刻み込まれている動作だからだ。

「ところで、他の皆は?」
 先輩が少し落ち着いたところで問いかける。希美は、ユーフィーは。絶は。それに阿川や信助も。周りをぐるりと見渡すが、他に誰の姿も無い。
「暁くんは――望くんが何かする直前に消えちゃったわ。残りの力でこの世界から脱出したんじゃないかと思う。 
 希美ちゃんは暁くんがいなくなったのを確認して、倒れちゃった。ユーフィーちゃんと阿川さんが、とりあえず保健室に寝かせに行ってるところ。ちょっと熱っぽかったから、風邪で意識が朦朧としてて、それで相克を抑えられなかった、っていうことじゃないかと思うわ」
 なるほど。てことは、俺が気を失っていたのは正味数分程度だったみたいだな。みんな大丈夫だと良いんだが。

 おーい、と声がした。2人してそのほうを向く。左側にある校舎の開いた窓から、信助が顔を出していた。その姿も、周囲から鮮やかに浮き上がっている。
「おーいせんぱーい! やっぱり何もかんも止まっちゃってますねぇー!
 お、よーぅ望、起きたかー! どうだ、先輩独り占めできて気分良かったろー!」
 思わず吹き出しそうになった。いつもの陽気な声色が健在だったからだ。手を振って答えると、向こうも笑って手を振り返し、今から降りるからなー! と声を上げた。
「ところで――他の生徒たちはどうしたんです。それに、周りの風景が何か色あせてるのはどういうことですか?」
「それを聞きたいのはこっちよ望くん。あなたいったい何をしたの?
 少なくともこの学園周辺――ひょっとしたらもっとかも。とにかく、世界に存在する全てのものが、完全に停止しちゃってるのよ」
6154/15:2007/10/11(木) 21:05:24 ID:JQ7PzuJG0
「あー。んー。えー、っと。
 おはよ、世刻」
 阿川の挨拶がぎこちない。まぁそりゃそうだろう。逆の立場なら俺だってそうなるはず。いくら友人とはいえ、そいつが何か得体の知れない格好をして、得体の知れない何かをやらかして、腰に剣を提げていたりしたら、俺も10歩くらい退く。きっと。
「それじゃあ、本当に何もかもが停止してるのね?」
 戻ってきた阿川が気まずく沈黙している横で、信助と先輩が情報を整理している。ユーフィーはまだ戻ってきていない。校内を見て回っているそうだ。
「ういっす。木の葉が空中で停止してるのを見たときは、さすがに肝冷えましたよ。
 止まってるのを動かすことはできるみたいですが。扉を開けたり窓を閉めたり。ただ、機械系は一切アウトでした。電源点きませんね。コンロとかも同じくです。
 後、人間含めて生きてる奴も動かせません。いや、こっそり女の子の胸触ってみた――ジョーク! いっつじょーく! ――とにかくですね、みんなかちんこちんに固まりきってました。
 美里はどうだったよ? 永峰さん寝かせてきた帰りに何か気付いたこととかあるか?」
「あ、え、私?
 あうん。えーと、私のカメラは普通に動いてます。撮ったり見たり。それ以外は、信助と言うことあんまり変わらないですよ」
 ひとつふたつと先輩が頷きながら、僅かに俺のほうに視線を送る。何やらかしたの? とその目が言っているが、俺も分からず首を振る。

「まー先輩、望、とりあえず聞きたいことが山ッほどあるんですけどね、聞いても良いですかね」
「やっぱり?」
「笑わないでください先輩! こっちは真面目に聞いてるんですからっ!」
 参っちゃったなー、と笑っている先輩の態度に阿川が怒り出した。まぁまぁ抑えろよ、と信助がなだめる。
「あんた、なんでそんなに落ちついてんのよ!? この状況分かってんの!? 私は全く分からないわよパニックよ! えーもう、納得いく説明出るまで一歩も引きませんからね先輩っ!」
「まーだから落ち着けって。俺も何もわかってないけどな、だからこそ落ちつかねーと。そうしなきゃ何聞いても嘘に聞こえるぜ?
 まさか先輩、知られたからには生かしておけぬ、なんてこと言い出したりしませんよね?」
「言わないわよ。ただ、二度手間は嫌だからね。あとユーフィーちゃんが戻ってきてからゆっくりと――あ」
6165/15:2007/10/11(木) 21:06:43 ID:JQ7PzuJG0
 ぱかぽこ、と馬のひずめが鳴る音がする。4人揃って音のほうを向くと、ケイロンが背中にユーフィーを乗せて戻ってきていた。何があったものか、あの白い球体を腕の中に抱えている。
「お帰り、ケイロン。あたりの様子はどうだった?」
「は、学園周辺を一回りしてきましたが、やはりあらゆるものが停止していました。永峰殿は、ルゥ殿が見ておられます。残りの3方はもう少し足を伸ばしてみると言って、飛んで行かれました」
 ケイロンが足を折り曲げて身を沈め、清浄を静かに地面に置く――妥当な判断だ。希美と清浄を引き離しておけば、意識を取り戻してもさしたることは出来まい。
 かがんだケイロンの背から、ユーフィーもひょいと飛び降りて、ありがとうと一言。戻りましたと俺たちに一礼。それに俺も手を振って答えた。

「――で、何なんですかその槍とか、その白いのとか、世刻の剣とかは。なんか武器は本物みたいですけど」
 阿川が言う。声には不信感と、僅かな恐怖の影が。
「白いのとはわたしのことですか?」
 ユーフィーが抱えていた白い球体がふわりと浮き上がり、言う。
「「「は?」」」
 俺と信助阿川の3人が揃って間抜けな声を上げた。いや、まさかしゃべるなんて思ってなかった。しかも何か随分かわいらしい女の子の声だし。普通は驚くだろう。
「あ、やっぱりびっくりしますよね? よかった、私も始めて声聞いたときほんとに驚いちゃって、思わず投げちゃったんです」
「投げたって、ミゥを? そりゃ災難だったわね」
「投げられたのにはわたしも驚きましたけど。まぁ、初対面の人は大抵そんな反応ですし、今更ってことで」
「だから内輪で話まとめてないで私たちにも事情説明してくださいってば!」
 ふかー! と阿川が牙を剥く。はいはいどうどうと信助がなだめる。俺は先輩のほうをちらり。どう説明して良いか、色々言葉が浮かんで消えてまとまらない。
「はいはい、ちゃんと順序だてて説明していくから慌てないで。ミゥ、他の子たちは良いのかしら」
「ええ、ここでの会話はわたしが中継していますから、話を始めても問題ないですよ、さつき」
「そ。じゃ、長い話になるから少し覚悟してね」
6176/15:2007/10/11(木) 21:08:05 ID:JQ7PzuJG0
 俺、信助、阿川、先輩、ユーフィー、の順で円になり座る。ユーフィーの隣には俺。中心にはミゥと呼ばれた白い球体。ケイロンは神剣に戻っている。
「さ、て。まず抑えておいてもらわないといけないのは、私やミゥたちは別の世界から来た存在だ、ってことね。おそらく暁くんもそうだと思うんだけど、これは確実じゃないわね」
「別の世界――って、宇宙人ってことですか?」
「んー、少し違うわね。美里ちゃんも、平行世界とかって聞いたことあるでしょ? この星がある、この宇宙のほかにも、別の宇宙がたくさーーーん存在してる、そのうちのひとつからやってきたの」
 みるみる阿川の顔が、胡散臭そうに疑いまくっているものへと変わる。まぁ、確かにすぐには信じられないだろう。実際目で見りゃ早いんだけどな。

「……なんか、話がいきなり嘘臭くなったんですけど」
「んー、まぁでも、先輩が宇宙人だろうと平行世界人だろうと、胡散臭さには変わりないぜ? それに少なくとも、このミゥって丸いのが、この星のものじゃないってのは間違いないわけだし」
「そうですね。わたしはいかなる意味においても、この星とは関わりがありませんから」
 芝生の上に横倒しになっているミゥが言う。白く輝く球体の中で、ときどき何か動いているように見えるんだけど……うーん、光の加減でいまいち良く見えないな。

「一応納得してくれた? とりあえず、私たちがこの星の生まれじゃないってことだけは抑えておいてね。
 で、次。私たちがこの世界のこの学園にやってきた理由なんだけど」
「あ、当ててみましょうか。望が何かとんでもなく凄い力の持ち主で、それを狙う何者かがいて、そいつらから望を守るために先輩が来た、ってところでどうです?」
 凄い。かなりのところまで当たっている。
「良いところついてるわよ。加点20ね。森くん」
「え、マジですか?」
「そこで驚くなよ信助……当てずっぽうだったのか」
「いや、漫画とかの設定で良くあるじゃん。それを適当に混ぜ捻ってみただけだったから。そりゃ驚くさ」
6187/15:2007/10/11(木) 21:08:53 ID:JQ7PzuJG0
「まず、望くんが何か凄い力の持ち主、っていうのは大当たりよ」
「それは一番自信あった。今のこの状況、お前が何かしたからだろ?」
「え、これって世刻がやらかしやがったことなの!?」
 気付いてなかったのか。てかどういう言葉遣いですか阿川さん。
「いや、お前も見てただろ? 永峰さんが暁に襲い掛かってて、屋上から剣持った女の子が降ってきて、望がこうぶあーーって光って、それでこうなったんだから」
「私途中から目つぶってうずくまってたし」
「役たたねー! お前それでもカメラマン志望か!? ベストショットの1枚くらい撮っとけよいつもみたいに!」
 阿川絶句。この場は信助完全勝利。話進めて良いかな? おっと、すみません。
「望くんがどう凄いのかは、とりあえず更に胡散臭くなるから置いといて……望くん自身は理解できてるのよね? 自分のこととか私のこととか」
「はい。概ねは。分からないところがあったら言いますから、進めてください」

「それじゃ。次、望くんの力を狙う何者かが――ってのも多分当たりよ。暁くんが、なぜ望くんを殺そうとしたのかは分からないけど……校庭で、ケイロンとミゥたちが戦っていたのは見た?」
「えっと、ケイロンってのはあのケンタウロスのことですよね? 5色の女の子たちとの戦いなら見ましたよ」
「そうそう。森くんって結構色々見てるのね。プラス10点あげましょう。
 あの女の子たち――ミニオンって呼ばれてるんだけど、あれも私と同じ、別世界から来たものよ。もっともあれは人形みたいなもので、自意識はほとんど無いんだけど……まぁそれはいいか。
 あれは望くんの存在を知ったある集団が、ここに送り込んできたんだと思うの。望くんを力に覚醒させ、暴走させるために」
「覚醒……はしたわけですよね? じゃ、暴走の結果がこれだということですか?」
「違うよ信助。俺は暴走はしてない。寸前で踏みとどまれたんだ。もし暴走してたら――今頃は、俺だけ残してこの世界は滅んでるよ」
 阿川に続いて信助も絶句する。先輩も同意と頷き、言葉を続ける。
「最後、私が来た理由ね。それは半分正解。私は望くんを守りに来たというより、監視しにきたと言うべきかな。
 望くんが力に覚醒するのを阻止すること。もし覚醒し、暴走するようなら、手遅れになる前に抹殺すること――それが私の役目だったの」
6198/15:2007/10/11(木) 21:10:22 ID:JQ7PzuJG0
「はいストップ。2人の聞きたいことは分かってるわ。ではいったい、望くんとは何モノなのか、ってことよね」
 うんうんと、手を上げた直後に機先を制され、揃って頷く阿川と信助。それにしてもユーフィーが静かだ。話理解できてるよな? と一応聞いてみる。
「ちゃんと分かってますよ。分かってるから黙ってるんです。分からなかったらちゃんと聞きますから、大丈夫ですよ」
「そっか、なら良いけど」
 それにしても妙に落ち着いてるよな。あのとき2人を守ってくれたのもユーフィーだったみたいだし……どこまで事情を知っていてここにいるのか、後で聞いてみないとな。
 などと思っている間に、先輩が爆弾を投下していた。
「つまりね、望くんは神様なの」
「……はぁ」 
 明らかに納得いかないという顔の2人。半信半疑よりもっと比率は悪いか。だが事実なんだから仕方ない。これからのために、事情を一応飲み込んでもらわないと。

「もちろん冗談じゃないからね。望くんだけじゃなくて、私も希美ちゃんもそうなんだけど……私たちはそれぞれ神の転生した存在、生まれ変わりに当たるの。その証が、これ」
 先輩が光輝の柄を取り出し、その刃を発生させる。同時に、制服の右二の腕を覆っていた部分を消去して――って先輩、あなたそれ自作だったんですか。
 話の腰を折りたくないので突っ込まないですが。正直どうかと思います……楽なのは楽なんでしょうけど。
「これは私の神剣、光輝。腕が光っているのが見えるかしら。これが私の神たる証、神名。全ての神とその転生体は、神剣を持ち、神名をその身に刻まれている――望くん」
「はい」
 俺も先輩と同じように、服の右腕部分だけを消去する。何せ自分のマナでできている服だから簡単なものだ。要はイメージの問題……よし。
 先輩のはだけられた腕に光る、意味不明な象形文字群。それより4言ほど多い、俺の右腕にある神名の光。続いて黎明を引き抜いて、2人に見せる。
「もちろんこれは刺青でも化粧でもない。こっちの剣も本物だ。名は黎明――2本1組の、俺の神剣だよ」
 2人が真顔になる。ついさっきまで見ていた剣戟と戦いが頭によみがえっているのかもしれない。僅かに阿川が、体をぞくりと震わせた。
6209/15:2007/10/11(木) 21:11:42 ID:JQ7PzuJG0
「まぁ、逆にそのくらい突拍子も無いほうが、信じやすいかな。俺は」
「うん、まぁ、さっきのあれ見せられてるし……ね。納得はできないけど、一応信じてあげる」
 まだ完全に信じたわけじゃないぞ、という様子ながら、1度2度と首肯し、俺たちに続きを促す。
「私の神としての名は、セフィリカ。神名とはまた別よ。神名は、その神に与えられている役割を示しているものなの。
 ちなみに、私の神名は、命を運ぶ太陽神とか、そんな感じみたい。ちょっと凄いでしょ? 最高神クラスの転生体なのよ」
 あがめなさい、と少しふんぞり返り、これにはさすがにみんな揃って笑う。さて、俺だ。
「で、俺なんだけどな。これでさっきまでの色んな疑問、何故俺が狙われたのか、俺が暴走したらどうなるのか、沙月先輩が見張っていた理由は何か、ってそういうのは全部分かると思う。
 俺の名はジルオル。災厄と破滅を呼ぶ破壊神だ」
 笑いながら2人の顔が凍りついた。

「……破壊神、様?」
「様つけるな信助……そうだよ、俺は破壊神と呼ばれる神の転生体なんだ。この現象も、俺の力が巻き起こしたもの――だと思う。
 もし完全に、神として覚醒していれば、俺はこの世界をぶち壊して、他の世界も破壊して、全てを消滅させるまで暴れ続けるだろう。そういう存在なんだ、俺は。
 こうしている間にも、俺はずっと、先輩やみなを殺せと、全て壊してしまえって衝動に駆られてる。それをずっと理性で抑えてる。今は理性が勝っているけど、何かの弾みで衝動が強くなれば、どうなるか分からない」
「ちょっと待ってよ、世界を壊すって、この宇宙ごと全部壊すってことでしょ? 
 確か――直径3万光年くらいある、星も数えていくつあるかわかんない、そんなでっかいものを簡単に壊せるわけ!?」
「それを可能にするのが神剣なんだ。正しく――いや、間違ってって言った方が良いか。使えば、宇宙、世界のひとつやふたつは簡単に吹き飛ばせる。
 実際、俺は何度も何度もそれをやってきた。俺が今の俺になる前――前の俺、前の前の俺、もっとずっと前から俺は、世界を壊し続けてきたんだ。最大、確か24の世界を同時に消したこともあったような記憶がある」
 自分の記憶を手繰りながら答える。そう、確かそんなこともあった。今はできないけれど、もっと力を溜めた後ならきっと出来る。この俺でも。
62110/15:2007/10/11(木) 21:14:13 ID:JQ7PzuJG0
「質問っす」
「はい森君」
「もし世界が滅んだら、そこに生きてる連中はどうなるんです?」
「もちろん全滅するわよ。跡形も無く」
「んじゃなんで望の力を覚醒させようなんて考える奴がいるんですか? 誰も得しないじゃないですか、そんなことしたって!」
 ひた、と先輩が人差し指を立てる。良い質問ね、と言い、きょときょと辺りを見回し、立ち上がる。
 少し離れたところにある立ち木の前まで行きながら、はいみんな着いて来てねー、と呼びかけた。

「さて! それじゃこの世界と、平行世界の関係についての説明よ。まずはそこを理解してもらわないといけないから」
 一同頷く。まぁ俺は知ってるんだけどな。
「つまり、この木が世界――大局的に見た場合の世界なわけ。ここはそのうちのひとつの分枝。この木の枝の1本が、私たちが今いる世界なの。ここは結構幹に近くて大きい世界だから……このあたりかしら」
 言いながら、光輝を指示棒状に伸ばして、枝の一本を指す。長く伸びた枝の付け根に近い部分だ。

「私たちは、この木を時間樹って呼んでいるわ。世界樹って言い方でも良いかもしれない。文字通り、樹木のように伸びていく、ひとつひとつの枝が、ひとつひとつの世界を形作っている。
 で、この枝をずーっと辿っていくと、この通りどんどん分かれていくわけだけど、この分かれた枝のひとつひとつも、それぞれ1個ずつの世界なわけね。ただ、幹から離れれば離れるほど、世界のサイズは小さくなる。
 ミゥのところってどのくらいだったっけ?」
 ずーっと、と言いつつ光輝の指示棒を枝の先へと進めていく。しかし、神剣をあんな使い方して良いんだろうか?
「この世界は3万光年と言いましたか? ここの単位での1光年で換算すると……えーっと、ですから、うん。
 ざっと500光年くらいだったと思います。煌玉の世界は特に狭かったようですけど」
「せまッ!」
 思わず阿川が叫んでいた。狭くても立派にひとつの世界だったんですよ、とミゥの声に怒気混じり、あ、ごめん、と即座に謝った。
62211/15:2007/10/11(木) 21:15:50 ID:JQ7PzuJG0
「ちなみに私がやってきた世界は2万光年くらいの大きさね。あ、まぁそれは良いとして……
 さて森くん、美里ちゃん、良好な環境におかれれば、木はどんどん大きくなっていく。大きくなって枝もどんどん増える。あのCM見たことあるでしょ? このー木何の木気になる木、って。ああいう感じになっていくのね」
 ああ、はいはい、と頷く2人。なるほどイメージ的にはちょうどぴったりかもしれない。あれよりさらに規模は大きいけれど。

「でも、永遠の成長はありえない。どこかで養分が尽きて成長は止まる。さて、根から吸い上げる養分が足りなくなったら、木はどうなる?」
「そりゃ、枯れますよね」
「そう、枯れるの。そして枯れるとなれば、先端部分から枯れていく。先のほうにある小さな弱い枝から、枯れて落ちてしまう。
 だけど、そうやって枯れて落ちた枝を再び栄養分として、時間樹は生き続けることが出来るの。だから、本来ならある程度大きくなったところで、枯れるのと、成長を続けるのとの釣り合いが取れて、木全体が安定する。
 でも、時間樹の枝が枯れるということは」
「あ――ひとつ世界が滅ぶってことでもある」
 信助が言う。早くも事情が飲み込めてきたのか。
「そう。そしてもちろん、そこにも生物は住んでいる。人々が日々を営んでいる。さて。そのもうすぐ枯れてしまう世界に住む人たちが、そのことに気付いたとしたら――」
「あ! そうか。他の世界を滅ぼして、自分たちの世界に栄養が行き届くようにしようとするわけですね!?」
 今度は阿川が手を打って言う。正解だ。凄いな2人とも、ちゃんと説明を飲み込んでくれている。
「ビンゴ。美里ちゃんその通りよ。そこで登場するのが我らが破壊神様。彼を覚醒させれば、放っておいても世界を片端からぶち壊してくれる。自分たちの世界に近寄らせ無いように注意しておけば、これ以上無い樹木剪定業者になってくれるわけね」
「そういう言い方は少し腑に落ちないんですが」
「言葉のあやよ。
 さて、質問は?」
623名無しさん@初回限定:2007/10/11(木) 21:17:33 ID:BlgN4yqp0
支援支援
62412/15:2007/10/11(木) 21:18:19 ID:JQ7PzuJG0
 はい、と信助が手を上げる。はい信助くん。
「えーと、この世界は幹に近いところにある、先に多くの枝を持っている、って言いましたよね? 
 なら、もしこの世界が滅んだらどうなるんです?」
「もちろん、先にある枝もまとめて一切合財全滅よ。
 ただ、当然大きくて幹に近い世界ほどたくさんの栄養分を抱えているから、そう簡単には滅んだりしない。それを可能にするのが、神剣であり、望くんの力なわけ」
「はぁー。おい、よかったな望、この世界滅ぼさなくて。大惨事になるとこだったんだぜ?」
「知ってるよ。てか、そうなってたら今頃俺は、もうとっくに俺じゃなくなってるさ」

「あー、んー。えーっと、何か腑に落ちないところがあるんだけど……何が引っかかってるのかな」
 今度は阿川が、手を上げたり下げたりしながらむにゃむにゃ言っている。何でも良いから言ってみてよ、と先輩が促した。
「えー……とですね。ということは、ミニオン――でしたっけ? この学園を襲った女の子たち」
「そうよ」
「それを送り込んできたのは、滅びそうな世界に住む人たち、ってことですよね」
「確証は無いけど――おそらくはそうよ。私たちは光をもたらすもの、と呼んでいる。神剣を持ち、神名を持ちながら、自分たちの生まれた世界を救うためだけに、よその世界を滅ぼして回っている人たちがいるの。
 私やミゥたちは、彼らと敵対している集団の一員。望くんを覚醒させないように見張りにきたのもそのためよ」
「そうだ、それが気になってたんですよ。先輩。
 そもそも、どうして神なんて存在がいるんですか? さっきの説明だと、時間樹自体は枯れたり伸びたりしながらも一応安定してるんでしょう。それをどうして破壊神なんて存在がかき回す必要が」

──wwヘ√レvv〜─w──wヘ√レvv〜─wwヘ──────────
62513/15 支援感謝:2007/10/11(木) 21:20:47 ID:JQ7PzuJG0

──────────



「――くんを覚醒させないように見張りにきたのもそのためよ」
「あるのかわからなって――え?」
 阿川が言葉を途中で切り、先輩の顔を凝視している。信助も妙な顔をして、次々に俺たちの顔を見回している。なんだろう、何かあったか?
「え、何美里ちゃん、私の顔に何か付いてる?」
 その場にいる全員が揃って状況把握できず困惑と混乱の表情。全員の頭の上にはてなマークが散る。阿川が再び口を開き、
「――いや、ですから、どうして神なんて存在が時間樹に必要な」



wwヘ√レvv〜──wwヘ√レvv〜─wwヘ──────────
62614/15:2007/10/11(木) 21:23:16 ID:JQ7PzuJG0
─────────


「――きたのもそのためよ」
「のかって――先輩、ふざけてます?」
「え、ふざけてなんかないわよ? どうしたの美里ちゃん?」
 阿川の発言が変なところで止まる。何か引っかかっていたんじゃなかったっけ。自己解決したんだろうか。
 信助が阿川の耳元に口を寄せて、数言ささやいて、それに応じて激しく頷く。なんだろう。
「何の話だ2人とも?」
「いや、こっちの話。まぁ気にすんな。
 え――っと、世界と時間樹に関する説明は、これで終わりですか?」
「質問が無ければ、とりあえず基礎知識編はお終いよ?」
「それじゃ、っと、話変えて。もっと肝心なことを聞きたいんですが」
「あ、予想できた」
「予想通りだと思いますが言います。で、この世界はこれからどうなるんです? 滅んで落ちるのかずっとこのままなのか元に戻せるのか。望、どうなるんだ?」
 答えにくいことを聞かれた。けれど先送りにするわけにもいかない。先輩に頷き、自分で言うと意志を示した。

「言いにくいんだけどな」
「何でも言え。これ以上まずいことには早々ならねぇだろ」
「俺自身、どうしてこんなことになったか理解できないんだ。あのとき、俺は絶を救い、2人を襲おうとしていたミニオンを排除したいと願った。

それが、俺の心に巣食う破壊の衝動と重なって、力が変な風に働いた。その結果がこれだ。
 はっきり言うと、この先どうなるかも分からないし、解除する方法も分からない。解除できるかすら分からないんだ」
 うわぁ、と2人が頭を抱えた。そう来たかこのやろう、と言ったのがはっきり聞こえた。謝罪の言葉も無い。
62715/16 入りきらなかったOTL:2007/10/11(木) 21:26:36 ID:JQ7PzuJG0
「そこで、皆に提案したいことがあるの。ユーフィーも含めてね。この世界にこのままいるわけにはいかない――もし滅ぶ直前の状態なのだとしたら危険だし、ここで生活することもできそうにないわよね。
 もし凍結しているのがこのあたりだけだったとしても、2人にはあまり良い未来は待っていないと思うし」
「あー、マスコミやらなんやから質問攻め食らうのが目に見えました」
 信助がその光景を想像してげんなりしている。マスコミ迷惑がるなと阿川に突っ込まれ、じゃお前矢面に立てるのかと突っ込み返され沈黙。
「俺は、こんな風になった原因を知りたい。この状態を元に戻すために、先輩やミゥたちを率いるリーダーに会いに行くつもりでいる。その旅に、みんなにも一緒に来て欲しいんだ。
 こんなことになって、本当に悪いと思ってる。勝手なこと言ってるとも思う。でも、そうする他に、俺には道が思い浮かばないんだ」

 信助が大きくため息をついた。阿川も口元に手を当てて悩んでいる。少し待って、まず信助が口を開いた。
「絶対許さないからな」
「うん」
 弾劾は覚悟している。でも、それでもせめて、お前たちだけでも安全なところに移動していて欲しいんだ。俺のエゴだと分かってはいるけれど。

「俺は、おまえを絶対許さない。こんなことしてくれやがって、俺の生活むちゃくちゃにして、それで旅に着いて来い、ってか? いや笑わせるね。てめーの都合で俺の生活引っ掻き回しやがって。
 だからな。絶対この状況元に戻せ。絶対これなんとかしてみせろ。それまで俺はお前の側から離れないからな。どこまででも着いてってやる。お前がこの光景から逃げたり忘れたりしないように、絶対着いてくからな。
 良いか! 森信助はここに宣言するぞ! 俺たちが元の生活取り戻すまで、世刻望、お前をどこまでも追いかけてやるからそう思え! 
 もちろん元の生活にはお前も含まれてんだ、下らない衝動なんかに負けてんじゃねーぞ! 
 分かったな!」
 思わず、言葉を失った。いや、ほんとうに、俺は良い友達を持ったと思う――
62816/16 今日の分終わり。:2007/10/11(木) 21:27:58 ID:JQ7PzuJG0
「なんて、少しカッコよかったか、美里?」
「似合わないことするから馬鹿っぽかった。5点。実際、ここにいるわけにもいかないし、着いてくしかないでしょ。
 世刻、正直あんたのこと、いま結構怖いって思ってる。でも、私を助けようとしてくれたのも分かる。だから、えーとね、ご両親に免じて、今回だけは許してあげる。
 もし次やったら、世刻が神だろうが何だろうが関係ないんだから。この手で絞め殺しちゃうんだから。覚悟しときなさい」
「うん。うん。ありがとう、ふたりとも」
 気付いたら涙がこぼれていた。うん。ほんと、ありがとう。

「ユーフィーは、聞くまでもないかしら?」
「はい。私は他に行くところ無いですから。置いていかれたら困っちゃいます」
「そうね。私もあなたには色々と聞きたいことがあるから――絶対逃がさないわよ」
 あはは、と少し怯み気味に笑うユーフィー。いや、そうだ忘れてた。本当に、この子にも色々と聞かなきゃならない――何者なのかと。
「ところで、先輩? 移動するって、どうやって移動するんですか?」
「んー、とりあえず希美ちゃんの様子を見に行きましょう。のぞみんが復活してくれてないと話にならないから。あ、清浄は私が持つわよ望くん。

 何かあったらまずいでしょ」
「あ、はいそうですね。すみません」
「それじゃ移動するわよみんなー。そんな変な顔しないの。ちゃんと説明してあげるからさ」
629名無しさん@初回限定:2007/10/11(木) 21:50:26 ID:AQIdqLKr0
乙です.
先輩と望はロールバックがかかったのでしょうか.
楽しみですがどうかご無理はなさらず.
630名無しさん@初回限定:2007/10/12(金) 12:08:53 ID:s3CEPFOX0
乙彼。

ネタ投下する人、というかレス自体少なくなったなぁ。
631名無しさん@初回限定:2007/10/12(金) 18:28:36 ID:R7FE6XQ30
さて@50kになったわけだが・・・
次スレのテンプレって>>1以外になにかあったっけ?
632名無しさん@初回限定:2007/10/12(金) 19:12:20 ID:9JiJPvbW0
>>1のままでいいのか?、っていう話だと思う
あと保管先か
633名無しさん@初回限定:2007/10/12(金) 19:31:47 ID:LHuHg3VY0
>>1から、3と5は削除しても問題ないと思うがどうだろう
634テンプレ案:2007/10/13(土) 00:20:39 ID:qQRLk4pq0
このスレは聖なるかな中心の永遠神剣ネタ総合スレです。
☆1.雑魚スピ関連・スピたんネタと、アセリア単独の場合は雑魚スピスレ推奨です。
アセリア等とのクロスオーバーは注書きを入れてこちらへどうぞ。
2.次スレは950レスまたは480kbを基本に、臨機応変に立ててください。
重複防止のため、宣言と無理だった場合の報告を徹底するようお願いします。
3.職人が投下途中の際などの割込み防止の為、
書き込み前などにはリロードするなど、予防を心がけてください。
※職人・SS等を投稿される方へ
・投下前に注意事項、NGワード指定等を添える
・名前欄・メル欄等に投下レス数の目安、NGワード等を添える
・投下終了後に終了の旨を添える等、
割り込み等トラブルの対策の徹底にご協力ください。
※2次制作に関係ない事柄については各種専門の板へどうぞ。
また、その他ルールやマナーはネタ業界板及びエロパロ板のルールに準じます。

※関係スレ
メーカースレ:Xuse(ザウス)総合48
http://qiufen.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1190044687/l50
作品別:永遠のアセリア/スピたん/聖なるかな 第81章
http://qiufen.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1191837335/l50
派生元:永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 27
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1185277607/
635名無しさん@初回限定:2007/10/13(土) 00:30:54 ID:7RYfSESN0
>>1の時点では本スレ54章だったのに・・・ずいぶん伸びたもんだ
636名無しさん@初回限定:2007/10/13(土) 01:03:50 ID:6CbHPNPL0
ちゅーかスレタイはこのままでいいの?
637名無しさん@初回限定:2007/10/13(土) 02:04:01 ID:iNIz8eyU0
総合ネタスレでいいんじゃね?
そういう案出てたじゃない。
638名無しさん@初回限定:2007/10/13(土) 02:37:43 ID:qQRLk4pq0
>>637
こっちでもOKだけど向こう推奨…の方が良いかなと思ったんだ、スマソ
639名無しさん@初回限定:2007/10/13(土) 02:38:45 ID:qQRLk4pq0
スレタイのことかorz
sage忘れてたからついでに。
640名無しさん@初回限定:2007/10/14(日) 05:40:50 ID:F5cYYTy30
スレタイについては、
例えば聖なるかな(永遠神剣総合)ネタスレその2…という感じでどうだろう?
641名無しさん@初回限定:2007/10/14(日) 13:06:22 ID:QWqwz2V30
それだとSSで検索しても引っかからないよ
642名無しさん@初回限定:2007/10/14(日) 13:22:52 ID:quCLDGYJ0
聖なるかなSS&ネタスレその2、とか
アセリア単独がNGなら、(永遠神剣総合)というのは不適切だし
643634の1番部分修正案:2007/10/14(日) 16:09:33 ID:F5cYYTy30
634は>>1です。NGと誤解される可能性がある…ということらしいので修正。
ここから↓
☆1.このスレは聖なるかな中心のSS・永遠神剣ネタ総合スレです。
聖なるかなネタ以外については以下の通りです。
・雑魚スピ関連単独、スピたんネタ単独の場合は雑魚スピスレへどうぞ。
・アセリアネタ(雑魚スピネタ除く)単独の場合もこちらでもOKです。(※雑魚スピスレ推奨)
・アセリア等とのクロスオーバーは注書きを入れてこちらへどうぞ。
―ここまで↑―
>>641
それについてはちょっとうっかりしてた
>>642
NGというわけではなく、現状では派生元スレが
アセリアネタもカバーしていることを考慮したうえでの改良案なんだけどなあ…orz
644名無しさん@初回限定:2007/10/14(日) 16:13:10 ID:9XbBX1SO0
雑魚スピスレに習って聖なるかな&クリスト分補充スレとか。
まぁクリストは向こうの雑魚スピほど優遇されてない訳だが。
645名無しさん@初回限定:2007/10/15(月) 12:26:07 ID:wi3DTinE0
いっそ聖なるかな妄想スレで。
646名無しさん@初回限定:2007/10/15(月) 18:38:12 ID:l5Amk5Yn0
聖なるかなSS&ネタスレその2、に一票。
聖なるかな&クリスト分補充スレの方が語呂はいいけど、前者の方が現状に適してる気がするので。
647名無しさん@初回限定:2007/10/15(月) 20:53:20 ID:mSU5nugg0
>>646
シンプルイズベスト
648名無しさん@初回限定:2007/10/16(火) 06:37:30 ID:msZkbGCJ0
聖なるかな&クリストネタSSその2はどうよ?
649名無しさん@初回限定:2007/10/16(火) 10:32:35 ID:20/xwdPB0
クリスト入れると限定される感じが
あとクリトリスと見間違える

聖なるかなSS&ネタスレその2、に一票。
650名無しさん@初回限定:2007/10/16(火) 13:28:51 ID:Voc46lXn0
なんで&ネタスレをわざわざスレタイにいれなきゃいけないのかわからん
651名無しさん@初回限定:2007/10/16(火) 16:37:52 ID:Ad3D9LaE0
>>650
SSスレにするとSSオンリーで敷居が上がるという教訓を生かすためだろ。
652名無しさん@初回限定:2007/10/16(火) 20:03:35 ID:td3mJvWuO
雑魚スピスレでは、
ネタ振り

ネタ

SS
の流れも多かったからな
653名無しさん@初回限定:2007/10/17(水) 02:36:39 ID:FzKSAlRg0
長文作品が連立すると途中から入りにくいし、ネタ振りオンリーに納得行かない人は
自前の良質な長文で席巻すればいいわけだし。
ネタを振り合い楽しみ合い、互助の精神で行った方がいいんじゃないかと。
敷居の高いファンスレッドはたいてい滅びの神名が織り込まれちゃうしね。
654名無しさん@初回限定:2007/10/17(水) 23:09:18 ID:XVJO3Kyb0
エロイのはおk?
絶×ナナシきぼんぬ
655名無しさん@初回限定:2007/10/17(水) 23:21:38 ID:egueThpU0
>>敷居の高いファンスレッドはたいてい滅びの神名が織り込まれちゃうしね
お前上手いこというな。よし、うちに来て、KIAIにネームブレイカーしていいぞ
656名無しさん@初回限定:2007/10/19(金) 11:57:02 ID:G1JlhbWq0
なんだか2スレ目くらいで消えてしまいそうだな。
なるかなキャラは、定番の展開に弱いからイマイチなんではとか思ってしまう。

とりあえず虐めておけばいい二枚目脇役光陰とか、
スネを蹴らせておけばいいニムとか、
ん、って言わせておけばいいアセリアとか、
滑って転んでえすぺらんかとか、
ドジッ娘ヘリオンとか、
くーるとかお菓子とか。

紋切り型と言えるかも知れんが、キャラを掴む上では大事よね。
657名無しさん@初回限定:2007/10/19(金) 12:24:23 ID:gcMokg720
わかりやすい説明だな。

なるかなのキャラは多くがDQNか空気だしなぁ。
まともなのもいなくは無いんだが・・・
658名無しさん@初回限定:2007/10/19(金) 17:11:30 ID:i0uIJ6FK0
>>656
そういや無いなそういうの。
コキトナも尊敬厨もイマイチ定着しなかったし。
ネコ耳大統領は性格が最悪だし。
サレスが裏切ったり、のぞみんとかヤンデレだったりそういうのが欲しかった。
659名無しさん@初回限定:2007/10/19(金) 17:48:56 ID:5Ois34VH0
敵キャラも、ネタにするにはイマイチ弱いよな
その意味では、流転とか炎帝は優秀でした
660名無しさん@初回限定:2007/10/19(金) 18:25:33 ID:9GjuECSB0
予想を覆していい奴っぽかったのにそれが却って好ましくない未来の世界のオールバックのアイツとか、
ナナメにおいしいキャラは盛りだくさんなんだがなぁ。
発売前後で設定が大きくずれ込んでる上に発売前のが分かりやすいゆえの魅力があるので、
SS書きの方々にはつらいところですかね。絵ーばっかり描いてる自分には分かりにくい苦労…

というわけで絵ですよ。
ttp://deaikei.biz/up/up/7463.jpg.html
インストまじめに読んでないからたぶん外見と性格が違う。
細かい所わかんないと描く気が萎えるのでクリスターズはこれでおしまいっぽい。
661名無しさん@初回限定:2007/10/19(金) 19:26:06 ID:G1JlhbWq0
>660
gj
だがPASでちょっと迷った。
662名無しさん@初回限定:2007/10/19(金) 20:11:01 ID:ix2iCC8P0
>>660
passわかんね

>661
そういうおまいさんが例の場所に入れといてくれたら最高だったのになぁ
663名無しさん@初回限定:2007/10/19(金) 21:45:23 ID:oX4ryNiD0
>>660
ヒントくれ
664名無しさん@初回限定:2007/10/19(金) 22:21:45 ID:G1JlhbWq0
すまん。

「 crist 」

最初はclystかと思ったんだが。
そーいや>656にヨフアル入れてやらなかったよヨフアル。
665名無しさん@初回限定:2007/10/19(金) 22:36:44 ID:oX4ryNiD0
>>664
トンクス。
俺はnarukanaぐらいしかわからなかったわw

てかこれ>>379のタリア描いた人か。
666名無しさん@初回限定:2007/10/19(金) 22:55:11 ID:ix2iCC8P0
>>664
   ∩
   ( ⌒)       ∩ グッジョブ 
   /,. ノ      ( E) 
  / /      / /" 
  / / _、_   / ノ 
 / / ,_ノ` )/ /  
(        /
 ヽ      | 

これであと1年は闘えそうです
667名無しさん@初回限定:2007/10/19(金) 23:10:11 ID:G1JlhbWq0
まてまて俺にGJいってどーするw
ちなみに俺的にはミゥさんが好きなんだが。
668名無しさん@初回限定:2007/10/21(日) 23:09:15 ID:Gw82NiBs0
のぞみんEND終わりました


――久しぶりに帰った故郷には
       あの時のおもかげはありませんでした

聖賢者「というか、変わりすぎだ! いったい何があった!」

こういう電波を受信しました
669名無しさん@初回限定:2007/10/22(月) 00:40:20 ID:57+bONfH0
まぁ、雑魚スピは、一応人間型で等身大だからよかったけどさ、
ナルカナのクリストって、小型妖精タイプだからねぇ。

スピたんみたいに、スピンオフして独立作品作られるかというと、その、なんだ……
主人公(人間型男子)と絡ませられないという欠点がw

アセリアと比べると微妙なのは、その辺のせいか?
雑魚スピはいくらでも妄想できたしなぁ……
670名無しさん@初回限定:2007/10/22(月) 00:57:44 ID:Uw7xpmIT0
あと主人公のキャラがあまりたってない事も原因かと
671名無しさん@初回限定:2007/10/22(月) 02:03:02 ID:pAv4MEKz0
>>669
そこは向こうをでかくするか、こっちが小さくなるかすれば解決するので無問題。
ほとんど一発ネタになるけどw

だから学園生徒に名前+キャラ付けをしろとあれほど(ry

>>670
あとは主人公に共感できない点が多すぎて、感情移入出来ないのも大きいな。
672名無しさん@初回限定:2007/10/22(月) 15:30:23 ID:VmYDu99d0
雑魚スピスレでもたまーに出てくる「エロはいいのかいかんのか」という疑問に実践で答えるべく
ちょっと投下してみますね。

ttp://www.imgup.org/iup487969.jpg.html
(たいしたものではないですが普通に18禁なので注意してください パスはルプトナのあだ名)

文章のエロと絵の即物的なエロでは微妙に重さも違ってくるとは思いますが、
これに総体的にどれだけ引くか食いつくかで決めてみては如何でしょう。
引いた意見の方が多かったらダッシュで削除してきます(苦笑)

クリストは、やられる時しかしゃべらないのがまずいんだと思います。
主人公に個性がないとかその辺は妄想力で飛び越えられるけど
軸にすべき彼女たちのキャラを垣間見れるのがインフォのあの量だけではキツい。
673名無しさん@初回限定:2007/10/22(月) 16:30:30 ID:PgZffXoE0
>>658
カティマがデレヤンだったのは意外だった。
674名無しさん@初回限定:2007/10/22(月) 18:12:38 ID:sB0LH1pj0
>>672
おkおkむしろ神
675名無しさん@初回限定:2007/10/22(月) 19:13:51 ID:Uw7xpmIT0
元がエロゲなんだからエロ成分否定するやつはいないと思う
まぁNTRとか陵辱系とか属性につっぱしったのは賛否両論あるからな
だからこそのSS投下前の宣言&NGワードなのだが・・・
まぁこれも賛否両論・・・と
676名無しさん@初回限定:2007/10/23(火) 20:11:56 ID:37SBB9aW0
10日振りに(=゚ω゚)ノぃょぅ

先週日曜に風邪引いてそのままぶっ倒れてたぜw おかげでえらく間開いちまったぜw
みなも季節の変わり目には体調管理気をつけるんだぜ

>660
落ちてなくてよかた。見た瞬間躍り上がった。もっとくれ。無理か。
あの服とか何やついてる器具装置類についての設定資料が是非ともほしいところ。ほんとに。

>672
  _  ∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
 ⊂彡
  _
( ゚∀゚)  でも俺おっぱい星人じゃないから食いつかないんだぜ
し  J  ちなみにエロ禁止だったら俺もうとっくに排除されてるはずなんだぜ

雑魚スピのときは、ある程度住人の間で統一見解が持ててたからなぁ。性格付けや口調、その他の特徴について。
あとはそこに肉付けして行くだけで良かったのが
クリストの場合は一から作っていかなきゃならんから、各自の脳内に出来上がるキャラクター像も当然ばらばらになっちまう。
当然、ネタ組み上げてみても、スレ住人に共感してもらえるか分からんから二の足を踏みがちになりやすいと。そんな感じじゃないかなぁと思うのさ。

でも、だからこそ俺はひたすら独自路線を走り続けるのさ。後に続く誰かが出てくることを願いながら。
つうわけで久々に今日の分、10レス分。やっとこものべー発進だ。
677ものべー発進! 1/10:2007/10/23(火) 20:16:15 ID:37SBB9aW0
 あまり会話もなく、保健室の前に着いた。俺と先輩が前に立ち、ユーフィーと白いのがそれぞれの後ろに続き、少し離れて信助と阿川が、深刻な顔で話し合いながら付いてきていた。
「それじゃ、希美ちゃんの様子を見てくるわ。清浄はこっちに置いておくから、ミゥ、何かあったらお願いね」
「分かってます。すぐにさつきを呼びますから」
 清浄を廊下の壁に立てかけ、先輩が保健室に入っていく。中からは物音ひとつしない。仕切りのカーテンに隠れて僅かに、青く輝く球体が浮いているのが見えた。
 白いほうが清浄の刃と柄の境目あたりに、よっこいともたれかかるように自重をかける。あれで押さえられているのだろうか。少し不安だが、俺が持つわけにもいかないので口を挟めない。

「あの、ミゥさん? 私が持っておきましょうか?」
 ユーフィーが近寄って声をかけた。けれど、白は即座に拒絶の言葉を発する。
「結構です。ユーフィー、でしたか。これはわたしが預かっているもの。勝手に渡すわけにはいきません」
「でも、大変そうですし……」
「大丈夫です。それに――ん。さつきが、わたしに預けていったことの真意を察することはできませんか?」
 ……その言葉の意味が良く分からない。ユーフィーも、え、というような顔をしている。いつしか信助たちも、2人の会話を注視しているようだった。
 少し間をおいて、白が続ける。
「……見ての通り、わたしにはこれはオーバーサイズです。ジルオルの転生や一般人に預けるわけにいかず、中に持って行くのも論外である以上、この場ではあなたに預けるのが最善のはず。
 けれど、さつきはその選択肢を選ばなかった。眼中にも無いようにわたしに任せていった――つまり、さつきはあなたを不審に思っている、ということです。神剣という危険物を預けていくのが不安な程度に」
 は、っとした。何かあったら、って、もしかしてそういうことか先輩――っと、っと、いけない、感情を高ぶらせるな。冷静に。黒い感情は色々危うい。
6782/10:2007/10/23(火) 20:18:04 ID:37SBB9aW0
 ……確かに、先輩の不安も分からないではない。俺自身、ユーフィーまでが神剣使いであったという事実に、驚いてないわけじゃない。
 でも、あのときユーフィーは信助たちを守っていた。その前も、俺をかばってくれていた。それは、ユーフィーが俺たちに何か邪なものを持って近づいてきたわけじゃない証拠じゃないのかな、先輩。
 ユーフィーが少し肩を落として清浄から離れていく。俺は少女の柔らかな頭に手をやって、ぽんぽん、と何度か撫でてやった。

 なんとなく気まずい沈黙。これだけ静かなら、車の音や風で木々が騒ぐ音、遠い喧騒とかの生活音の、3つや4つは聞こえてきても良さそうなものなのに、それもない。そのことが、世界全てが停止しているのだということを否応無く知らしめていた。
 寄る辺なさげに壁に寄りかっているユーフィーのほうを向く。何か声をかけるべきだろうか、と思いはするのだが言葉が浮かばない。
 と。
「そういやユーフィーちゃん、まだお礼言って無かったよな。望の馬鹿から守ってくれた礼、いまのうちにしておくよ。ありがと、おかげでこうして動いてられる」
 不意に信助が歩み寄って、しょぼくれ気味のユーフィーに明るく声をかけた。誰が馬鹿だと突っ込みを入れそうになり、思い直す。
「まーそんなしょんぼりしてることないって! 俺たちは君のこと疑ったり怖がったりなんて思ってないし、望だってそうだろ?」
 もちろんだ、と即答する。サンキュー信助、おかげで空気が軽くなった。俺も続いて声をかける。
「そうそう。先輩だって、好き好んでユーフィーのこと疑ってるわけじゃないはずだ。今までずっと仲良くやれてたんだ、この騒ぎが落ち着けば、すぐにまた元通りになるさ」
「あら世刻ー? あんたがこの状況作り出した張本人っての忘れてなぁい? 人のこと心配するより先に自分のやらかしたことの始末をつけること考えてよね」 
 全くだ、と信助が合いの手をいれてひと笑い。俺は返す言葉も無く謝るのみ。触発されたかくすくすと、口元に手を当ててユーフィーも小さく笑いだす。
「びっくりです。信助さんも、美里さんも、どうしてそんなにいつもと変わらないんですか?」
6793/10:2007/10/23(火) 20:20:36 ID:37SBB9aW0
「あー……いや、俺たちだって、不安が無いわけじゃないぜ? こういうわけのわからん状態になってさ、この先どうなるのかって思いはそりゃあるよ。
 でも、だからって意味なく周りに当たり散らしたり、塞ぎ込んだりするのは性に合わないんでね。校庭で固まってるやつらには悪いけど、この変な出来事をなるったけ楽しんでやろうと思ってるだけ」
「このアホほどじゃないけど、私も似たようなものかな。せっかく動き回れるんだしね。
 動けるだけ動き回って、最後もしどうにもならなくなったときに後悔しないように、できるだけ色んなことを見たりしたりしておきたいの。
 この先どうなるか、完全に人任せなのが気に食わないけど、だから余計に、やり残しが無いようにしておきたいかな。って。そんな感じ」
 阿川の言葉が色々と耳に痛い。どうにもならなくなんてさせるもんか。絶対この世界を元に戻して、元の暮らしに戻るんだ。と。俺の思いもまた強くなり、ぐ、っと奥底に濁ったモノを抑え付ける力も増す。
 まだいける。こいつらと一緒なら、俺はまだまだ大丈夫だ。

「でさー、神剣持ってるんだから、ユーフィーちゃんも神さまなのよね? 何の神様なの? 世刻みたいな物騒なのじゃないよね?」
 ……やりやがった阿川のやつ。あっかるい口調で一気に空気を変えるど真ん中ストレート、あぅ、と小さく何かつぶやいてユーフィーの顔が下がる。
「今聞くかそれを……」
「何よ、気になるんだから仕方ないじゃない。宙ぶらりんって嫌いなの、私。それに、聞いて何か問題でもあるわけ?」
 最後の一言はユーフィーに。あうあうと言葉を濁しまくりながら答えに窮している。これはマズったかな、と当の阿川の顔までだんだん曇っていく中、不意にぽつりとつぶやいた。
「覚えてないんです」
 へ? と俺も含めて3人が問い返す。問い返した瞬間、揃ってそのことを思い起こしてやっちまったという表情。日ごろそんな風を見せないからつい忘れがちになるけど、ユーフィーは。
6804/10:2007/10/23(火) 20:22:09 ID:37SBB9aW0
「私、昔のこと何も覚えてないって、皆さん知ってますよね。自分の名前も分からない、生まれたところも何も、昔のことはほとんど何も覚えてないんです。
 だから、私が何なのかとか、どうして神剣を持っているのかなんて聞かれても、答えられないんです。ごめんなさい」
 言いながら、制服の右ポケットに手をいれ、小さなキーホルダーのようなものを取り出し――それが巨大化して、あのとき持っていた、槍とも杖ともつかない奇妙な形状の神剣の姿となる。
 ――大きさ可変の神剣とは、また、随分珍しい。
「この子の――悠久の使い方を思い出したのも、ついさっきなんです。望さんがその剣を取り出して、何かをしようとしているのを見て。そのとき、この子が話しかけてきてくれました。自分を使って皆を守れって」
 私が言えるのはそれだけです、と締めくくった。おのおの顔を見合わせて、どうしたものかと思案顔。
 突然からりと小さな音を立てて、保健室の扉が開いた。
「話は聞かせてもらったわよ」
 沙月先輩が、仁王立ちに立ちはだかっていた。

「先輩」
「たまたま偶然記憶を失っていた女の子が神剣使いで、たまたま偶然ジルオルの転生である望くんの両親と出会って、たまたま偶然同じ家に住むようになって、たまたま偶然覚醒の現場に居合わせて使い方を思い出した?
 いくらなんでも出来すぎじゃないかしら。そんな説明じゃ私は納得できないわよ。望くん、今の話をどこまで信じる?」
 強い口調で問いかけられる。表情は厳しくユーフィーの挙動を見据え、右手にはまだ刃こそ出していないものの、光輝の柄がしっかりと握られている。
 一歩前に出る。ユーフィーをかばうように。

「俺は、疑いたくないです。確かに出来すぎてるかもしれないですが、でもそんな偶然があったって良いと思います」
「そう。うん、望くんはそれで良いのかも。疑心や疑念、黒い感情はあなたにはよくないからね。
 美里ちゃん、森くん、あなたたちはどう?」
 2人はすぐに頷きあう。言葉も無く以心伝心、信助が代表して口を開く。
「俺たちはユーフィーちゃんのおかげでこうしていられるわけですからね。疑ったりしたくないです」
「ミゥはどう思う? 第三者の視点としては」
 こんどは白球に。清浄によりかかったままの姿で少女の声が答える。
6815/10:2007/10/23(火) 20:25:50 ID:37SBB9aW0
「さつきに全面的に賛成するしかないですね。いくら記憶障害と主張しても、あくまでもそれは自己申告に過ぎないわけですから。――ええ。何かを思い出せないフリなんて、ありふれた嘘じゃないですか。誰でもやれるしやることです」
 何故か発言の途中から、苦いものが混ざったような口ぶりになった。少しの間。先輩が何か言おうとしたのをさえぎって続ける。
「ですから、まずはその子が本当に記憶障害なのかを確認するのが先決でしょう。もし本当なら治療してあげれば良いし、虚偽であれば改めて真実を聞き出せばいい。
 この世界の医療技術では治療できない症状でも、ザルツヴァイなら何か打つ手もあるでしょう、さつき?」
「あー……確かにあっても不思議じゃないか」
 先輩が言葉を濁す。私の記憶、戻るんでしょうか、と小さくつぶやく声が耳に届いた。
「ていうか、沙月先輩。ユーフィーちゃんを信用できないって言っても、でもこの世界に1人で放っておくわけにもいかないんじゃないですか?」
 ――思わず怖気が走った。

「あ、のぞみん、寝てなくて大丈夫なの?」
「永峰さん、風邪は大丈夫なのか?」
 いつの間にやら先輩のすぐ後ろに希美が歩いてきていた。服装はやはり先ほどのまま、緑基調のドレスっぽいもの。大方あれも、俺のこれと同じく自家製戦闘衣なのだろう。
 ぴり、とした緊張が俺の全身に走っている。不意に逃げ出したくなる衝動を抑えて、よ、っと希美に小さく手を振った。大丈夫だって。見た感じ、いつもと変わらないんだし。
「うん、もう体は大丈夫。これでも神さまだからね、ちょっとした風邪くらいどうってことないよ。
 先輩、あんまり意地悪してると望ちゃんに怒られちゃいますよ?」
6826/10:2007/10/23(火) 20:27:07 ID:37SBB9aW0
 いつもと変わらないその様子にほっとした。ぽえー、ぽえー、と何か気が抜ける鳴き声だかなんだか奇妙な音が、希美の声に唱和する。あん? と先輩以外の全員がその声の元を探す。と。いた。
「ぽえー」
 希美の肩の上に、何やら白くて丸くて目口のついた物体が乗っかっている。大きさはバスケットボールくらいか。両横には小さな羽根が少し離れて浮いている。ぽえぽえと、どこか嬉しそうな鳴き声をあげていることから、生き物だと分かった。
 ――記憶の底を浚う。あれには見覚えがあった。あまり深入りすれば呑み込まれるかもしれない、果てない記憶の海。探すほども無くその正体を思い出す。
「意地悪してるわけじゃないんだけどね……ま、ほっておくわけにもいかないし……」
 そうしているうちに、先輩は仕方ないわね、と頭を小さく掻き、光輝の柄をポケットにしまいこんでいた。
「良い? ユーフィー。さっきの話聞いてたと思うけれど、私たちがやってきた世界でなら、あなたの記憶をよみがえらせることができるかもしれない。もし本当に失っているのならの話だけど。
 もし嘘をついているなら、ばれるまえに言ったほうが良いわよ。絶対に」
「先輩、そんなきつい言い方しなくても」
「良いんです、望さん。私だって出来過ぎた話だと思ってますから。沙月さんが、悪意で言ってるわけじゃないのは分かってますから、平気です」
 ならいいんだけど。2人の様子を交互に見守りながら、またしても訪れた沈黙を我慢する。待つほども無く先輩が、はぁとためいきついて言った。

「さて! ユーフィーの発言も無いみたいだし、この話はこれでおしまいね。希美ちゃん、体調のほうは本当に大丈夫なのよね?」
「はい。それに、私が少しくらい疲れてても、ものべーは平気ですから」
 ものべー?
「あ、そうだ紹介しなくちゃね。この子の名前はものべー。私の神剣、清浄の神獣だよ」
 挨拶して、と促され、ものべーなる名の神獣が、ぷわりぷわりと浮き上がり、ぽえぽえ鳴きながら俺や信助たちの前をぐるりと一巡り。途中で可愛さに目が眩んだか、阿川が両手でがしと抱きかかえてしまった。
 けれど、ものべー? 前はそんな名前だっただろうか。
6837/10:2007/10/23(火) 20:28:58 ID:37SBB9aW0
「うわ、何これぷわぷわしてる変な感触ー! ねー、ものべーってこの学園から取ったのよね?」
「うん。私とこの子が初めて会ったところだしね。なんとなく語呂も良いでしょ?」
 ぎゅーと抱かれたものべーが、ぽえぽえぽえと苦しげな鳴き声を発している。じたばた動くも体型が悪すぎてどうにもならないらしい。
「しつもーん。神獣って何すか先輩?」
「あ、まだ説明してなかった? えーとね、神剣の意志そのもの……って解釈で良いのかな。
 神剣は、それぞれに固有の意志を持っているの。つまり心を持っているわけね。それが形を成したものが神獣。剣より出でて主の助けになるもの。神剣は、己の心の具現である神獣を、外界に顕現させる力を備えているの。
 私の光輝ならケイロンがそうよ。今は剣の中で休んでるけれど。で、清浄の――あの大槍の神獣が、その子ってことね」

「へー。剣の意志、ね。ますますファンタジーだな。おい望、そんじゃお前のその剣にも神獣がいるんだろ? 見せてくれよ」
「あ。そうか。黎明にも神獣がいるんだった……な。忘れてた」
 そうだ。今の今まで忘れていた。どんな奴だったか。思い出せない。いや、一緒にいたという記憶自体が存在しない。
 腰にある黎明に問いかける。神獣――名前もでてこない。どうやって呼び出すんだったか、黎明と意識を重ねてみる。途端、大きな錠前のイメージが心に流れてきた。
 そうだ。思い出した。ジルオルにとってあいつは必要の無い存在だった。だからこうして、表に出てこられないように閉じ込めたんだ。ずっとずっと昔、初代のジルオルの手で。
 謝りながら開錠する。鍵を錠前に差し込んで、ぐいとひねるイメージ。神代以来、久方ぶりに黎明の意志が解放される。爽快感が同調している俺の心にまで流れてくる。

「ぷあーっ!」
 ぼてん、と何かが頭の上に落ちてきた。
「あん?」「あら」「ほぉ」「わ」
 周囲4人それぞれの反応を受けつつ、頭の上に手をやる。もぞもぞと何かが動いている。重くはない。手に当たる感触は布地のもの。
6848/11 ごめん、増えた:2007/10/23(火) 20:30:35 ID:37SBB9aW0
「うわ、っとと、ちょっとまて、触るな、触るなっ! ひ、久しぶりすぎて、動き方が思い出せんっ」
 随分とかわいらしい声だと思った。触るなと言われて手を離す。もぞもぞごそごそじたばた、しばらく待って、不意に感触が無くなる。
「お。っとっとと。よし、コツを思い出してきたぞ」
 もう良いかな、と顔を上に向ける。
 目があった。
「おお、済まぬなノゾム、久しぶりに出てきたせいで変なところに落ちてしまった。吾を解放してくれたこと、心から感謝しているぞ!」
 頭の上には青く大きな帽子。零れ落ちかけて慌てて両手で食い止めている。その手にはやけに大きな鈴がひとつずつ、腕輪に通して付いていた。
 髪は綺麗な金色。後ろで三つ編みにくくっている。白い上着に、腰周りにはでっかいリボンがついて、まるで花びらのように広がったスカートと合わさって、むやみに可愛らしさを際立たせている。
 まぁ、つまりあれだ。
「かわいいーーっ!」 
 阿川の叫び声が全てを物語っている。体長は多分20cm無い程度。そんな小型サイズの、妖精みたいな女の子が、俺の黎明の神獣のようだった。

「えーと、この子がその剣の。随分イメージと違うというか……いや、それをいうならものべーのほうが……?」
 だんだんと飛び方を思い出してきたらしく、すいーと飛んで俺たちの目線の高さに降りてくる。そこで空中停止、ぐるりと周りを見回して、ふんふんと頷きながら指差し確認1人ずつ。
「ふむ、こいつがシンスケとか言う男だな? そっちがアガワか。それでユーフォリア、サツキ、ノゾミか。ふむ。そっちの白いのは何じゃ?」
「おいちょっと待て、なんでおまえ名前と顔が一致してるんだ」
「神剣と使い手は一心同体だぞ? お主の記憶を少しばかり手繰り見ておるだけだ。いちいち一から説明するより楽であろ?」
 悪びれもせずに言われた。いや、それはそうかもしれないけれど。
「ふーん、黎明の神獣ってそういえば初めて見るわね」
「ずっと剣の中に封じ込められておったからな。しかし吾は初めてではないぞ? その剣、光輝には見覚えがある。お主セフィリカに縁の者だな? 気配がそっくりだ」
6859/11:2007/10/23(火) 20:31:17 ID:37SBB9aW0
「ん、ええ。私はセフィリカの転生よ。今は、って自己紹介はいらないか」
「うむ。ノゾムの知識との同調が今済んだところだ。ずいぶんとややこしいことになっておるようだな?」
「待て。同調したってどういう意味だ、俺の記憶全部覗き見たってことじゃ」
「そんな面倒なことするわけがなかろう。今の状態と、おぬしの周りの人間、神剣たち、その他一般常識や世界の有様などを確認しただけだ。
 なにぶん、お主の前世のせいで、ずーーーーーーーーーっと眠らされておったのだ。知識が足りなくて仕方が無い。そのくらいは許してもらわねば割に合わんではないか」
 それを言われると……って、俺のせいじゃな――になるのか。なるよな。くそ。

「ねーねー、あなた名前は? あと写真撮っていい?」
「おお、それがカメラというものか。うむ、どんな風に写るのかぜひ見てみたいな。名前は――」
 じと、と俺のほうを向く。なんだよ。
「ジルオルは情の薄い男でな。吾は名前をつけてもらえなかったのだ。ゆえに、吾はいまだに名無しの神獣なのだ」
「世刻ひどい」
「望ちゃん薄情」
「俺のせいなのかっ!? いや、俺のせいなのか……か?」
 何か釈然としない。しないけれど、ん、でも俺のせいなんだよな。同じ魂を受け継いでるわけだから。
「ふむ、まぁノゾムは、ジルオルとは随分と性質が違うようだからな。きっと良い名前を付けてくれると信じているぞ?」
「いきなりそんなプレッシャーかけないでくれよ」
 なんとなく、ジルオルがこいつを封じた理由が分かった気がした。この性格では彼とはどうやっても合わないだろう。そして、この騒がしさを心地よく思える今の自分に少しほっとする。
 うん、ここはひとつ何か良い名前を――
「黎明の神獣だから、レーメってどうだ」
「安直」「単純」「捻り無さ過ぎ」
 3人がかりで一刀両断にされた。黙っていたのはユーフィーだけ。でも、ちらりと見てみれば、それはどうかととでも言いたげな顔。へこみかけたそのとき、救いの声がした。
「うむ、吾はそれでかまわないぞ? むしろ気に入った。良い響きではないか。レーメ。レーメか。うむ、吾の名前はレーメだ! 皆よろしく頼むぞ!」
68610/11:2007/10/23(火) 20:32:28 ID:37SBB9aW0
「まぁ、本人が気に入ってるなら良いのかな?」
 シャッターを切る音がひとつ。レーメが空中で軽やかに決めポーズをとっている。おかげで脱出できたものべーが、息も絶え絶えに希美の腕の中に。ぽえ。
「うむ、吾は気に入ったぞ? ミサト、ミサト、どんな感じか見せてくれ」
 阿川のデジカメの後ろに回り、ほー、と声を上げるレーメ。屈託のない笑顔が少しまぶしい。
「先輩? 神獣って、持ち主の趣味が反映されるなんてことは」
「無いって!」
「無いわよ。残念だけど」
 残念ってどういう意味ですか。ついでになんですかそのいやらしげな笑いは。あと信助、その問いの真意を後で問い詰めるから覚悟しとけ。

「ところで皆さん? 歓談も良いですけど、出発しなくていいんですか?」
 不意に、普段より声量2倍のミゥの声が廊下に響いた。鼓膜がきぃん、と鳴って少し痛いほど。ぽえっ、とものべーがびくりと身を振るわせる。清浄から振動が伝わりでもしたのか。
「あ――そう、そうね。おしゃべりは移動しながらでもできるもんね」
 先輩が取り繕ったように言う。そうですね、と希美、阿川と続いて、ユーフィーも小さく頷いてみせる。
「えーっと、それじゃ希美ちゃん、ものべー、お願い」
 お願い、って何をさせる気なんだろう。はいと答えた希美が、窓のほうに移動して、ものべーを外に出す。
 と。

「ぽ〜〜〜え〜〜〜〜っ」
 ものべーが鳴いた。柔らかい中に力強い鳴き声、甲高く、少しずつ低く、同時に窓の外で、ものべーがどんどんサイズを増していく。
「おうぁ」
 信助が変な声を上げた。気持ちは分かる。分かるとも。まさか俺がこれに乗る日がやってこようとはな。え?
「ぼえーーーーーーーーっ」
 準備完了、とばかりに最後に、コントラバスのような低い音程で大きく鳴いた。最大化完了。サイズは概ね3階建ての家くらい。大口をぱっくりとあけて、窓に張り付くように浮いている。
「……この口の意味は?」
「えっとね、森くん。ものべーは、体の中に人や物を入れて、いろんな世界を自由に移動できるって特性を持ってるの。だから」
「喰われろってこと、ね。つまり」
「大丈夫だよ、中は快適だから」
68711/11 終わり:2007/10/23(火) 20:35:05 ID:37SBB9aW0
 率先してまず希美が、窓を乗り越えてひょいと飛び込む。
「消化されたりしないよね……?」
「しないって。さ、2人とも入って。ミゥ、他の子達は?」
「もう2分ほどで。大分遠くまで見て回ったそうですが、特に発見は無かったらしいです」
 ミゥの隣にはいつの間にか青いのが浮いていた。先輩が清浄を持ち上げて、2人に入ってと促す。
 2人はしばらく躊躇していたが、まず信助が、畜生毒食らわば皿までだ、と叫んで頭から突入。阿川もそれに続いていき、さらに続くは5色の球体。なんのためらいもなく中へと入る。

「ユーフィーは、背届かないか?」
「大丈夫です、っと」
 窓枠に手をかけて、ぐっと体を持ち上げて、窓の外へ全身で飛び出すように口の中へ。巧いものである。
「むぅ、吾とノゾムならば、誰かの助けを借りずとも自力で世界を飛びまわれるであろうに」
「ま、そうだけどな。でもこっちのほうが絶対早いし楽だよ。散々追い掛け回されてきたんだ」
 思い起こす過去の一幕。世界を壊す暇も無く、ひたすら逃げ続ける俺を、どこまでも追いかけてきたのと同じ存在が、今目の前にいて、それに乗り込もうとしているなんて。
「望くん、どうしたの?」
「いえ。前の記憶を思い出したんです。こいつに追い掛け回された思い出がね、ふと浮かんで、不思議だなと。
 俺たちはいつも殺しあっているのに、今回逆に協調して事に当たれている。今回の転生は、いつもと何か違う、そう思いませんか?」
「そうね。神名に覚醒しているのに、己を保てているジルオルなんて私もはじめて。でも気を抜かないでよ。さっき保健室の中で話したけれど、希美ちゃんも確かに、相克の意志を感じている。
 今は抑えこめているけれど、この先はどうなるかって、自分でそう言っていたから」
「……大丈夫ですよ。きっと。俺が暴走しなければ。さ、行きましょう先輩。俺は俺の目的を果たすまで、絶対に負けたりしませんから」

 2人が立て続けに飛び乗り、それを確認してものべーの口が閉じられる。校庭の中庭に茫洋と浮かんだ巨大な次元くじらが、ぐい、と高度を上げていく。
 やがて消え行くその巨体を、見送るものは誰もいない。凍りついた世界を眼下に見ながら、ものべーは世界の壁をすり抜け、虚空に消えた。
688名無しさん@初回限定:2007/10/23(火) 21:58:17 ID:0RAdJLPr0
投下ご苦労様です。 文章投下は楽しみにしてますが、体調には気をつけないと余計な合併症とか発病したりしますから気をつけてくださいね。
689名無しさん@初回限定:2007/10/23(火) 22:47:15 ID:22UulMBqO
GJ
てっきり容量が少なくなっているから次スレが立つまで待っていたのかと思ってたw
ありきたりですが、健康には気をつけて下さいね。
690名無しさん@初回限定:2007/10/24(水) 21:31:59 ID:HOFrhx2u0
(=゚ω゚)ノぃょぅ
昨日寝てる間にレーメたんが夢に出た(=゚ω゚)ノょぅ
ミゥねえさまに早く続き書けと迫られた(゚ω゚)ノょぅ
もうだめだとおもった(゚ω゚)ょぅ
合併症がどうこう言うならこれが一番やばい合併症だ(-ω-)ょぅ

>689
寝込んでる間に次スレ行ってるかなと思ってたんだけどねw
結局
スレタイ
聖なるかなSS&ネタスレその2
テンプレ>643
でいいんじゃろか?

今日の分5レス分 落としたらいよいよ残り危なくなるから
決まりなら決まりで次スレ準備したほうが良いとおもー

じゃ、投下開始
691幕間11 交信記録 1/3:2007/10/24(水) 21:33:41 ID:HOFrhx2u0
"ミゥねぇー、ミゥねぇー、感度どうですかーどうぞー"
"はい、ワゥ、感度良好です。わたしたちの装具はこの現象の影響を受けなかったみたいですね"
"ん……受けてたら身動き取れないと思うよ、ミゥ"

"えっと、神剣の反応の残滓を辿ってみましたが、指示者らしき誰かの姿は見当たらないです。もう逃げ出したんじゃないかと思います"
"でもさポゥねぇ、あのミニオンたちの動き、最初から統制取れてなかったと思うんだけど。指揮官がいればもう少し良い動きできるはずだし、

誰かが早いうちに片付けちゃったとかじゃない?"
"でも誰が? てーかゼゥ、その統制取れてないミニオンの最後1匹、逃がしたの誰の責任だと"
"うるっさい! ワゥこそ土壇場でゼゥの援護しくじったクセに人のこと言えるの!?"
"2人とも喧嘩しない! みんな、わたしはさつきたちの会話中継に入ります。ルゥ、その間は任せますよ"
"ん。私は……えっと……名前……ファイムの転生を見てるからね"

"この世界技術レベル低いなぁ。何この入力装置、原始的ー"
"でも、それゆえの雑然とした美しさはありますよね。こういう街も良いかもです"
"ポゥねぇはこーいう、なんだっけ、のすたるじっく? なの好きだねほんと。ゼゥには良くわかんないけど"
"あ、本屋さん……かしら。ちょっと覗いていっても良いかしら"
"ポゥ、出てこられなくなる。駄目"
"わた、びっくりした。角曲がったら何か生き物が目の前に"
"動いてる?"
"止まってる"
"止まってるのにびっくりするなんてワゥ臆病ー"
"な"
"先に釘刺すよ、ワゥ。言い争い禁止"
6922/3:2007/10/24(水) 21:35:12 ID:HOFrhx2u0
"んー?? 何かへんなのがある"
"変なの?"
"んー、と、なんだこれ。子供――これって男の子で良いのかな? が、全裸でおしっこしてる像。
 股間の雄生殖器から水が出かかった状態で固まってる。ボクより体大きいや"
"何それ、変なの"
"一応、映像記憶で保存しておいたから、興味あったら後で言ってよ。送るから"

"へぇ、この世界ってそんなに広いんだね"
"でも広い分マナ薄いじゃない。いまいち飛びにくいし、出力上がらなかったし――即答でせまッ、て、しつれーな奴"
"世界の広い狭いとマナ濃度の濃い薄いはほとんど関係ないって話聞いてないの? 広くても濃い世界はいくつもあったし、その逆も"
"あれ、そうでしたかワゥちゃん?"
"うんポゥねぇ。こないだ発表論文出てたよ。狭くかつ希薄な世界もいくつもあって、そこが特にあいつらに狙われやすいって"
"狭くて薄い分、やっぱり壊しやすいのかな"

"結局見張ってた意味無かったけどねー"
"でも、見張ってないわけにもいかないし。仕方ないですよ"
"それはそうだけ"

────────────────────

"ゼーゥ、やっぱりあのミニオン逃がしたのが引き金になってるじゃないか。責任取れー"
"共同責任っ! あのときちゃんとゼゥの援護できてたらちゃんと始末できてたっ"
"過ぎたこと言っても仕方ない。次ちゃんとやれば良い"
"うう、おねえちゃんは火力不足でごめんなさいです"
6933/3:2007/10/24(水) 21:36:30 ID:HOFrhx2u0
"あ、沙月が来た"
"わたしもその部屋の前に着きました。ルゥ、のぞみの状態はどんな風ですか?"
"ん、落ち着いてるよ。今沙月と話してる。自分のやったこと、良く覚えてないみたい――そう、のぞみだよのぞみ"
"むっせきにーん! これだから神とかって信用できなーい。あのサレスってやつも気に食わないしー!"
"あの人がいなければ、今頃私たちはのたれ死んでるかもしれないんですよゼゥちゃん。あまりそういうこと言うのは"
"でもポゥねぇ、結局ゼゥたちってあいつらにうまく使われてない? なんか使いつぶされそうで、ゼゥは好きじゃない"
"その気持ちも分かるけど……ん、でも仕方ない。他にいくところないし。ん。沙月が出て行こうとしてるよ、ミゥ"

"おねぇちゃんかっこいいもっと言っちゃえー! 記憶喪失なんてきっとまた嘘っぱちだー"
"ゼゥちゃん、あんまり人を疑うのはいけないことだと思いますよ"
"でも前は"
"それを確かめるのが先決、って話だよ。――さっきから静かだけど、ワゥ? 何か?"
"んーん、何かへんないきものがいたの。面白かったからつい眺めちゃってた。ごめん"
"へんないきものといえば。こっちの、清浄の神獣も結構変だよ。ん。みんなの感想が楽しみ"

"ポゥ、ゼゥ、ワゥ、もうかなり離れてませんか? 何も無いようなら、そろそろ戻ってきてください"
"――あ、本当ですね。えーと……現象の効果範囲限界は確認できず、と"
"こっちも。全部固まっちゃったまま"
"この光景、彫刻家の人とか見たら仕事投げちゃうかもしれないね。どれだけリアルに作ってもこの躍動感には勝てないよ。多分。――よし、今から戻るから"

――記録終了。
混信無し。修正部分無し。記録異常等の不具合無し。母船へ帰還次第、記録を保管庫に格納するものとす。
第7調査団長 ミゥ 神獣ものべー内にて記す。
694幕間12 同志たちよ、集合せよ 1/2:2007/10/24(水) 21:40:56 ID:HOFrhx2u0
「聞こえる、ベルバルザード? ええ。破壊神の名は伊達じゃないみたいね。こんな現象は始めて見るわ」
 光をもたらすものたちの長、エヴォリアは、時間樹の枝と枝の隙間、次元間空間に浮かんでいた。
 巨大な木の幹が、相互に複雑に絡み合った枝々の隙間から、屹立する壁のような威容を見せている。それぞれの表面を伝う金色の輝きは、時間樹を循環しているマナのそれだ。
「そうよ。世界ひとつが丸々凍結してしまっている。そのまま壊れるのでもなく、解除されるでもなく、凍結よ。ええ。どうしたらこんなことができるのか、まるで分からないわ」
 エヴォリアの周囲には、数名の同胞たちが指示を待つように佇んでいた。それぞれの手に握られ、あるいは体のどこかに装飾してある神剣が、彼らも神の一柱であることを示していた。
 その中に混じって、暁天の絶が、意識を失って浮遊していた。身に纏った黒衣はずたずたに裂け、体にも傷が縦横に走っている。
 右手に握り締められた神剣には随所にヒビが走り、刃こぼれも多く、もう僅かに衝撃を与えれば、今にもへし折れそうな状態だ。
 先の戦闘で清浄によって与えられた連続した打撃と、世界から無理に離脱した際の消耗で、彼らは、蓄積してあったマナを完全に損耗。
 このまま放置すれば死を待つのみであろう、無残な姿を晒していた。

「ええ。私は彼らを追っていくわ。そっちは作業を続けて。応援にサリツァを送るから。それじゃ」
 互いに見知り、かつ相性のよい神剣同士のみが成し得る、長距離意識接続を行っての会話を終了する。くるりと身を翻し、彼女を見つめる配下たちを睥睨して、言う。
「聞いていた通りよ。彼らの追跡は私1人で行うわ。あなたたちは各世界に散っている皆を呼び集めてきて」
 一旦言葉を切り、自信と確信に満ち溢れた、凄みのある笑顔を浮かべる。腰に手を当て、豊かな双丘を惜しげもなく張り、受ける視線を物ともせずに続ける。
「旅団の本拠が割れたそうよ」
 歓声が上がった。彼らの宿敵ともいえる集団、滅ぼうとしている故郷を救いたいという彼らの願いを、阻み妨害する怨敵たち。その本拠地に攻め入るときがついにやってきたのだ。
6952/2 今日の分終わり:2007/10/24(水) 21:42:55 ID:HOFrhx2u0
「ありったけのミニオンを動員して攻め込むわよ。準備期間は――やっぱり、共通の時間単位を作っておくべきだったわね」
 一様に苦笑する。
 ここに集うもので、互いに同じ世界を故郷にもつ者は1人もいない。彼らが生まれた世界、惑星には、それぞれ固有の時間単位が存在していた。ゆえに、単に1日、1週間などと言っても、個々の認識している期間にはずれがある。
「仕方ないわね。以前に見つけた、あの無人世界を集合場所にする。全員揃い次第、始めるわよ」
 応、という唱和が虚空に響く。それぞれにどの世界を回るかと相談を始める中、1人の少女がエヴォリアに言った。

「この男はどうするのですか、エヴォリア姉さま。このまま放っておいてもいずれ消滅するでしょうが、ならばこの場で」
「いえ、その男は殺さないわ。サリツァ、さっきの話を聞いていたわね? ベルバルザードが作業を続けている世界に、その男を連れて向かいなさい。あの世界はマナが濃い。療養にはちょうど良いわ。
 その神剣使い、なぜかは知らないけれど、破壊神を殺そうとし、旅団の――光輝のお嬢ちゃんと切り結んでいた。きっと私たちが知らない情報を知っているはずよ。殺すのは惜しいわ」
 しかし、と男の声がした。そやつは同胞、ジゥエを手にかけたもの。回復させれば我らに敵対する可能性も。
「そうなれば、完治する前に始末するだけ。ベルバルザードなら簡単なことよ」
 納得して引き下がる。分かったわね、とエヴォリアが言う。少女は頷き、手の小刀を絶に向け、周囲のマナをより集め、傷ついた男の全身に浴びせた。
 たちまち傷口がふさがっていく。神剣の傷も修復され、元々の鋭い輝きを取り戻していく。回復度合いを見極め、終了する。今意識を取り戻してもらっては困るのだ。
「さぁ、いきなさい皆! 次集まるときを楽しみにしているわよ!」
 号令は下された。神の名を継ぐ者たちは一斉に散り、枝を伝うように飛翔していく。それを見届けて、エヴォリアも移動を開始した。

 行くわよ、雷火。
696名無しさん@初回限定:2007/10/24(水) 22:34:01 ID:moO5Z5pU0
投下ご苦労様です。
本編では少なかった相手側の描写がナイスです。

次スレのことですが、基本的には>>643の案でいいんじゃないかと思います。
スレタイは 聖なるかなSS&ネタスレその2 とするのが妥当なところかと。
具体的に表してみると以下のような感じで

1.このスレは聖なるかな中心のSS・永遠神剣ネタ総合スレです。
聖なるかなネタ以外については以下の通りです。
・雑魚スピ関連単独、スピたんネタ単独の場合は雑魚スピスレへどうぞ。
・アセリアネタ(雑魚スピネタ除く)単独の場合もこちらでもOKです。(※雑魚スピスレ推奨)
・アセリア等とのクロスオーバーは注書きを入れてこちらへどうぞ。
2.次スレは950レスまたは480kbを基本に、臨機応変に立ててください。
重複防止のため、宣言と無理だった場合の報告を徹底するようお願いします。
3.職人が投下途中の際などの割込み防止の為、
書き込み前などにはリロードするなど、予防を心がけてください。
※職人・SS等を投稿される方へ
・投下前に注意事項、NGワード指定等を添える
・名前欄・メル欄等に投下レス数の目安、NGワード等を添える
・投下終了後に終了の旨を添える等、
割り込み等トラブルの対策の徹底にご協力ください。
※2次制作に関係ない事柄については各種専門の板へどうぞ。
また、その他ルールやマナーはネタ業界板及びエロパロ板のルールに準じます。

※関係スレ
メーカースレ:Xuse(ザウス)総合48
http://qiufen.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1190044687/l50
作品別:永遠のアセリア/スピたん/聖なるかな 第83章
http://qiufen.bbspink.com/test/read.cgi/hgame2/1192850231/
派生元:永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッド 27
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1185277607/
697名無しさん@初回限定
立てたよ。

聖なるかなSS&ネタスレ第2世界
http://pie.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1193308532/