ようこそ10人目!!
_ , ヘ , ヘ _ _ ,ヘ
, ^》ヘ⌒ヘ《ヾ '´ ⌒ヽ '´ ヘ ヘヾ ' ` ^ヽ '´ ⌒ヽ 〃 ' ^^ヾ 〃 ' ヘ ヘヽ '´ ⌒ヽ 〃/::::|ヽ
( リ〈 !ノルリ〉)) ! l」」ルl」」 ノ〈从ハ从〉ノ ル从ルリゝハ」」」l」」〉 i ハ从从リ ノi ミ从l~iルソ ! ソノノ~))) ∠ <====ゝ
ノノ(!リ゚ ヮ゚ノリ(( i !ゝ゚ -゚ノゝ 从ヲ´ヮ`ノヲ从リ゚ ー゚从 ヾゝ゚ ヮ゚ノゝノノゞリ゚ ヮ゚从(((ヾ(i|゚ -゚ノi|く人リ゚ ー゚ノiゝんヘi」゚ -゚ノ」
(( ⊂》|Tリつ ソ ⊂》|Tリつ ノ⊂》|Tリつ ⊂》|Tリつ ⊂》|Tリつ(((⊂》|Tリつ 从i⊂》|Tリつ ⊂》|Tリつ ⊂》|Tリつ
く/|_ノ⊃ ノノく/|_ノ⊃て(く/|_ノ⊃ く/|_ノ⊃ く/|_ノ⊃ く/|_ノ⊃ く/|_ノ⊃ く/|_ノ⊃ く/|_ノ⊃
(フ (フ (フ (フ (フ (フ (フ (フ (フ
____ ________ _______
|書き込む| 名前:| | E-mail(省略可): |sage |
 ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
,ィ
,べV //
ネリーみたいなクールな女には / 〃  ̄ ヾ; / ./
sage進行がぴったりよね〜 ! i ミ(ノハソ / /./
!ik(i|゚ ヮ゚ハ<///
リ⊂}!廿i つベ/
く/Цレ'
し'ノ
ちと早いけどまあ>1乙かの。
で早速さらっとくーるにネリーをもっていきまつ。
" タイムアクセラレイト
´∴ # __ ゜ヾ´ ″´∴
「,'´r==ミ、―≡ ̄`:∵∧_∧´∴∵゛'
__くi イノノハ))≡―=',((( )≡―=‥、 ∵゛、゜¨
, ≡ )| l|| ゚ヮ゚ノl|r⌒) _/ / ̄ =―≡― _
´∴'≡く / ∧ | y'⌒ ⌒ ヽ イノノハ))( ≡―=‥、,、
″″ \/〈(((ノ从| / | | ゚ヮ゚ノ`=―≡―∞
" ||( ゚ヮ゚ー' | |ヾノ //
=―≡ ̄`:, | , | ( ̄=―≒‥,,
" ,゛"=―≡―=',/ ノ )∵`=≡―=
″( ゚ヮ゚∴/´/ / | | , ゚ヮ゚ノ'ゞ ∵゛、 ゜ ¨
ヾ =―≡ ̄`:゛/ / \| |≡―=‥、,、 ヾ
,゛"=―≡―='( | ( |=―≡―∞=@ , 、∴
/ | | |\ \ ´ ∴ ヾ .
・ / / | | | ヽ/⌒〉
.... . ............ . .(_ 「 _) (_〈_/....... . .. . .... . . .
__
「,'´r==ミ、
くi イノノハ)))
| l|| ゚ヮ゚ノl| <タイムシフト
j /ヽ y_7っ=
(7i__ノ卯!
く/_|_リ
今回の点呼ネタ・お題は「二つ名」ですよ〜、
>>4さんw
ではタイトルヒロインに敬意を表して。
「ラキオスの白いナマ足」
あ、そうだったw
んじゃ「ラキオスの覆面の死神」とでも。
誰かは察してw
わ、イキナリ。
>>1さん乙です。
点呼なのにカウントが無いとはこれいかにw
それでは「マロリガンの残念少女」とか。<3>
んと、「永遠の18歳」でw
ある意味、著作権ぎりぎり?
>1さんモツカレ〜
と、言うわけで点呼
「ラキオスの黒いドジっ娘」<4>
>>1さん乙。
「ラキオスの爪牙・緑毛の俊猫」<5>
を衝かれさま〜 > 1
えーと、>9の分を補正して、
「ラキオスののんき者」<7>
でいいのかな?
>>1乙です。
うーむ、じゃ
>>10の分に追加補正で
「ラキオスの疾風(小)」<7>
ってことで。
揺さぶられる度身体を貫かれている痛みよりも。
荒々しい息に心を覆う嫌悪感よりも。
ただ、悲しかった。失われる事が。自分が。記憶が。想いが。
「え〜、私達もお会いしてみたいですよ〜」
無理を言う彼女達にいつも静かに答えてくれた優しい穏やかな笑みが遠く淡く霞んでいく。
「ああ……お前達にもいづれ、な…………」
一番暖かかった思い出が闇の底へと沈んだ時。
涙が一筋、頬を伝った。
もう何も映し出していない、虚ろな瞳が流した最後の涙だった。
―――そう、そのはず、だった…………
16 :
回帰 X−1:05/01/16 02:32:31 ID:PElAYdC3
ガチャリ。硬い鎖の音が響く。冷たい金属の感覚に、ヘリオンは目を覚ました。
「う…………」
「おや、これはお早いお目覚めですね。気分はいかがです?」
「ひっ!」
耳許でいきなり囁かれ、その気持ち悪さに飛び起きようとする。が、しかし身体がそのまま勢いよく後ろに引っ張られた。
ばふっ!
「え?あ、あれ…………」
仰向けのまま倒れこんだヘリオンは、ようやく自分が両手を繋がれたままベッドに拘束されていることに気付いた。
舐めるような声がおかしそうに続ける。覗き込んだその顔は、捕われた自分を見下ろしていたあの男。ソーマ・ル・ソーマだった。
「ふ、逃げようとしても無駄ですよ。もっとも、その格好では起き上がる事も出来ませんがね」
「わ、わたしをどうするつもりですか…………きゃあっ!!」
気丈にソーマを睨みつけようとしたヘリオンは自分の格好に気付き、真っ赤になった。
前開きの戦闘服は大きく胸元が開かれ、ささやかな膨らみが露呈している。
脱がされた黒いストッキングが視界の隅で下着と共に丸く転がっていた。
男の前で、自分が今一体どういう対象なのかを嫌というほど思い知らされる状況だった。
「は、外してくださいっ!やぁっ!!」
じたばたと暴れるヘリオンの悲鳴をうっとりとした表情をして聞いていたソーマが、舌なめずりをしながら近づいていく。
「丁度味見をしようかと思っていましたが、抵抗が無くていささか興醒めだったのですよ。これでいい調味料が出来ました」
「それ以上……近づかないで下さい……やだ…………」
涙声ですっかり怯えたヘリオンを嬉しそうに眺めながらソーマが顔を寄せる。湿った声が嬉しそうに告げた。
「心配しなくても、すぐ天国に送り届けてさしあげますよ……快楽と殺戮のね……」
「い、いやぁ!ユートさまぁ!」
恐怖が限界を超えたヘリオンの叫び声に、ソーマの動きがピタリと止まる。しばしの後、ソーマははじける様に笑い出した。
「はははは、これはいい、勇者殿も私と同じ趣味でしたか…………くくく、傑作です」
「………………?」
「わたしの祖父は勇者殿と同じエトランジェでしてね……なるほどなるほど、血は争えないものです、くっくっ」
不思議そうに見つめるヘリオンの目の前で、ソーマはゆっくりと上着を脱ぎ出した。
17 :
回帰 X−2:05/01/16 02:33:47 ID:PElAYdC3
初めて見る男のそれはただの凶器に思えた。
信じられないくらいに肥大したソーマの欲望を正視出来ずにヘリオンが目を逸らす。
「……………………」
「おや、すっかり大人しくなってしまいましたね…………まあいいでしょう、すぐに嬌声をあげるようになります」
「……………………」
「くくく、なるべくいい悲鳴を聞かせて頂けるようせいぜいわたしも頑張るとしましょうか」
構わず、ソーマがベッドの上に乗りかかった。顔に生臭い吐息をかけられ、顔をしかめる暇も無い。
「…………ひっ!」
熱い何かが茂みに触れた感覚にヘリオンは短く息を飲んだ。それが何かを悟り、本能的に全身が硬直する。
それは、狙いを定めるような動きでゆっくりと下の方に這いずっていく。
透明な粘液が後を引いて震える淡い茂みを濡らした。
やがてソーマがヘリオンの中心に辿り着く。
まだ未成熟な、怯える様に閉じられたヘリオンの秘部に対して、その赤黒い塊は余りにも禍々しい。
「あ…………あ…………」
鳥肌が立つ感触と絶望で目を閉じることも出来ない。
少女の滑らかで白い臀部をゆっくりと擦りながら、ソーマは口許をやや上げた下卑た表情で最後に囁いた。
「さあ光栄に思いなさい、貴女を女にして差し上げますよ………………ぐおおっ!!!」
そしてソーマは妙な悲鳴と共に勢いよくヘリオンに覆いかぶさった。
18 :
回帰 X−3:05/01/16 02:36:28 ID:PElAYdC3
「お、重いっ!!!」
いきなり男に圧し掛かられてヘリオンは息が詰まりそうになった。
両手が塞がっているのでどうしようもない。ソーマの激しすぎるキスを危うく避わすのが精一杯だった。
「全くうるさいわね…………ほらっ!」
声と共にごとっと鈍い音がして、ソーマが床に放り投げられる。どうやら気絶しているらしい。
やっと圧迫から開放されたヘリオンは息を整えつつ声の主を探した。
するとそこに立っていたのは。
「あ、貴女は…………名も無いお姉さんっ!」
「だれが名も無いお姉さんかっ!……まったくやってらんないわよ」
速攻で鋭い突っ込みを入れつつ、お姉さんがヘリオンの鎖を外す。
手首を擦りながら、ヘリオンは不思議そうに訊ねた。
「あ、あの〜……どうしてわたしを助けて…………?」
外した鎖をソーマに付けていたお姉さんが背を向けたまま何故かふっと溜息をついた。
「さあね…………ただアンタを見てると何だか懐かしい頃を思い出すのよ…………」
「…………え?」
「なんでもないっ!ほら、いいから早くその貧弱な裸を隠しなさい」
「えっ?あわわわ!…………って何気に酷い事言ってませんか……?」
ジト目のヘリオンに軽く手を振りながら、既にお姉さんは入り口から外に顔だけ出してきょろきょろしていた。
「ほらいいから早くっ!追っ手が気付く前に逃げるわよっ!!!」
「あ、ま、まだストッキングを穿いて……待ってくださいよ〜」
お姉さんがさっさと部屋を飛び出す。ヘリオンはぴょこぴょこと片足で跳ねながらお姉さんの後を追った。
お姉さんに感謝しつつ支援
20 :
回帰 X−4:05/01/16 02:39:27 ID:PElAYdC3
リレルラエル付近の森の中。ソーマが拠点としている小屋まであと僅かというところでヒミカが立ち止まった。
「どうした、ヒミカ」
足を止めた悠人達が不審を感じてヒミカを見つめる。背中を向けたままヒミカが答えた。
「気配がします……ユートさまは、先へ」
「手前どもが敵を引き付けます……ユート殿、先をお急ぎ下さい」
ウルカも決断を迫る様に『冥加』を構える。悠人は二人の迫力に圧された。
「…………判った、頼む。光陰っ!」
「応っ、とっとと片付けてこようぜ!」
光陰が先に飛び出す。続いて駆け出しかけた悠人は、すれ違いざま泣きそうな顔でヒミカにそっと囁いた。
「ヒミカ、ありがとう……ごめんな」
「あ…………ユートさま…………」
悠人の静かな言葉に込められた悲しそうな感情。それだけで、ヒミカには何がしかが伝わった。
「………………はい」
はい、としか言えなかった。既に悠人は立ち去っているのに。聞こえるはずは無いのに。
立ったまま、瞳から勝手に涙が流れ出す。しかし不思議に哀しみは無かった。
最初から判っていたことなのは前と同じ。でも確かに気持ちは伝わった。答えももらえた。
不器用な自分はこんな形でしか伝えられなかったけど。
それでも、やっと気持ちに形をつけられた。その清々しさはちゃんと残っていてくれる。なのに。
…………どうして涙は止まってくれないのだろう?
ウルカがやってきて静かに肩を叩く。
「ヒミカ殿、妖精部隊は強力です。戦いに集中出来ますか?」
ヒミカは鼻をふんっと鳴らして涙を流し続けたままウルカを睨みつけた。
「今のわたしに勝てるスピリットなんて、大陸中探しても貴女とアセリアそれに……ヘリオンしかいないわよ」
21 :
回帰 X−5:05/01/16 02:41:08 ID:PElAYdC3
「ヘリオン、無事かっ!」
「ヘリオンちゃん、お待たせ!」
「もがもがもが…………」
「………………」
「………………」
悠人達が飛び込んだ小屋の中。
そこには一人ソーマが全裸で猿轡をされた上、手錠をかけられてベッドに転がされていた。他には全く人の気配が無い。
オーラフォトン全開、気合バリバリで飛び込んできた二人のエトランジェにとってそれは色々な意味で困った状況だった。
「もがもがもがもが〜!!!」
「……なんだこりゃ、一人羞恥プレイか、それとも放置か?悠人、コイツがホントにあのソーマなのか?」
溜息交じりに光陰が呟く。疲れた表情を浮かべた悠人が『求め』を所在無さ気に下ろしたところだった。
「あ、ああ……確かに姿形は奴そのものなんだが……すまん、俺にも自信が無くなってきた」
急激に萎む白と黄緑のオーラ。二人は顔を見合わせたまま力無く立ちすくむ。暫く嫌な沈黙が流れた。
「むぐ〜〜、むぐむぐ〜〜〜!!!」
くねくねと貧相な体を捩じらせながら、ソーマがくぐもった唸り声を上げていた。…………全裸で。
「やれやれ……おいおっさん、あんたソーマか?」
心底嫌そうに光陰が猿轡を外す。口だけ開放されたソーマが掠れた悲鳴をあげた。
「ゆ、勇者殿、どうやってここへ!それにマロリガンのエトランジェ、ロリペドのコウイン!な、なぜ貴方がここにいるのですっ!」
「…………そういや前にそんな流言が流れてたな……ラキオスの方から」
22 :
回帰 X−6:05/01/16 02:44:03 ID:PElAYdC3
「待て光陰、そんなことよりこの口調、この態度」
眼光鋭い光陰の眼差しに身の危険を感じた悠人は、まずい流れと判断してあからさまに話題を摺り替える。
幸いにして何の疑問も持たずに光陰の怒りは一瞬でソーマに向いていた。ぼきぼきと指を鳴らして睨みつける。
「ああ……間違いなくコイツがソーマだな……おいおっさん正直に吐け、ヘリオンちゃんはどこだ?」
「ひぃっ!ま、待ちなさいっ!わたしを殺したら、あ、あの小娘の命はありませんよ!」
「くっ……こいつ…………」
咄嗟の嘘だったがそれでも二人の動きを止めるには十分だった。調子に乗ったソーマが更に畳み掛ける。しかしそれが失敗だった。
「さあ、判ったらこの鎖を外しなさい!まったくあの妖精、油断していたとはいえ……………………あ」
慌てて口を噤むがもう遅い。絵に描いたような一人ボケである。
たちまち全ての状況を把握した悠人と光陰が互いに目配せした。次の瞬間には駆け出しながら、悠人が叫んでいた。
「光陰、後を頼むっ!」
「おう、ヘリオンちゃんに宜しくな」
悠人が戸口から飛び出していったのを見届けた後、口笛を吹きながら光陰は振り向いた。
「さ〜、この俺様にこんなつまらない役目を負わさせたんだ、その償いは体でじっくり支払ってもらうぜ」
にやにやしながらの恫喝に、ソーマはみっともないほど狼狽する。腰が抜けたのか、ベッドを這いずったまま壁にぶつかった。
「こここ殺す?わたしを殺すというのですか?このわたしを、ロリペドの貴方が?!……そ、そうだ、ある意味わたし達は同士じゃ」
瞬間、ひゅうっとソーマが息を鳴らした。胸に『因果』が突き立てられている。
胸元と光陰を交互に見つめ、不思議そうな表情をしたままソーマは永遠に喋らなくなった。
「しまった……気持ちの悪いこと言うからつい苦しませるのを忘れちまったじゃねーか」
悔しそうにこぼし、握った『因果』に力を込める。開放された『因果』が青白く光り出した。同時にソーマの死体が一瞬にして消滅する。
「全く反吐が出るけどよ……まあ仏は仏だ、一応唱えといてやるか」
光陰は念仏を唱えだした。今までで、最も心を篭めずに。
23 :
回帰 X−7:05/01/16 02:45:08 ID:PElAYdC3
ヘリオン達は森の中を逃げ回っていた。先ほど小屋を出る時、哨戒していた妖精部隊に見つかってしまったのだ。
「ほら、こっちだよ、早くっ!」
前を行くお姉さんをヘリオンは必死で追いかける。
(速さなら負けないって思っていたのに……!)
森の木々が枝を伸ばしたその隙間をお姉さんは苦も無く潜り抜けている。
いくら地の利があるとはいえ、ヘリオンは速さで「ただの」グリーン・スピリットに遅れを取っていた。
妖精部隊にこれ程のスピードを誇るスピリットがいるなんて聞いたことがない。
ヘリオンはただただその「強さ」に驚き、後姿を見失わないように必死についていった。
一方名も無きお姉さんもこの状況に戸惑っていた。以前戦った時のスピードがヘリオンに見出せない。
(おかしいわね……あの娘あんなに遅かったかしら……?)
自我を僅かとはいえ取り戻した妖精部隊。心の力がその能力を最大以上に引き出している。
しかしその事実にヘリオンはもちろん、当の本人も気付いていなかった。
「ふぅ、ここまでくればもう大丈夫かな……」
やっとお姉さんが立ち止まった。辺りを見回しながら木にもたれる。
少ししてヘリオンが追いつき、ぺたんと地面に腰を下ろした。
「はあはあ、お、お姉さん、速いですね〜」
「だからそれやめなさいって……それより、貴女の方が遅くなったんじゃないの?」
「え〜、そうですか?へんだなぁ……」
頭にはてなマークを浮かべてうんうん唸っているヘリオン。その様子を見ていたお姉さんがくすくすと笑い出した。
「え、え、なんですか?」
「まったくアンタってよくそうくるくると表情を変えれるよね」
「そ、そんなことないですよぅ。それにお姉さんだって今、笑ってるじゃないですか……」
「え……あ、そ、そうね…………不思議……どうしちゃったんだろう、わたし…………」
笑うのを止めてしまったお姉さんがふと哀しそうな表情を見せる。ヘリオンは恐る恐る声を掛けた。
「……お姉さん?」
すると決してこちらを見ようとはせずに、お姉さんは静かに語り出した。
>1乙です。
「北国の雪花」…イマイチかなぁ。
「北国の白百合「の方が判り易いか(w
支援〜
25 :
回帰 X−8:05/01/16 02:47:31 ID:PElAYdC3
「昔ね……といってもホンの少し前のことなんだけど……わたしたちもそんな風に笑いあってたわ……」
木に寄りかかったまま、ぽつぽつとお姉さんは話し出した。
「その頃はとても楽しかった……わたしは弱かったけど、いつも隊長が優しく声を掛けてくれて……」
ヘリオンはじっと話を聞いていた。とても口を挟める雰囲気じゃなかったのだ。
何故今自分にそんな話を聞かせてくれるのだろう。ぼんやりと、そんな事を考えつつ。
「いつからなのか思い出せない……気付いたら神剣に『振らされて』いた……あのソーマ、奴が現れてから…………っ!?」
「…………?」
そこでお姉さんは、ちっと軽く舌打ちして急に言葉を止めた。
歪んだ表情を浮かべた後、ふうっと大きく溜息をつく。
「…………もう行きなさい。わたしはなにくわない顔をして部隊に戻るから」
「え、あの、まだお話の途中じゃ」
「貴女は間違えちゃだめよ。決して心を失くしちゃだめ…………今度会う時は敵だからね」
話は終わり、とばかりに黙ってにっこり微笑んだお姉さんがやっとこちらを向いた。
長い緑のポニーティルが風に揺らめく。笑顔が意外と幼なかった。
きっとこれが本来の笑顔。なんとなく、そう思った。だがヘリオンは、可愛いと思う一方で、その翳に感じる寂しさが少し気になった。
釈然としないまま、それでも真面目な瞳に圧されてしぶしぶ立ち上がる。ちょうど遠くで声が聞こえた。
「お〜い…………」
「え…………あ、この匂い!ユートさまだ!」
「ふふ……貴女、匂いだけで判るの?」
「え、は、はいっ、何故かユートさまの匂いだけは判るんです、わたし」
「そう……それじゃ、なおさら、早く行か、ないと…………さよならね」
「は、はい…………あのぅ、お姉さん…………」
「…………ん?」
「その…………ありがとうございましたっ!!」
ぺこり、と大きくお辞儀をした後、ヘリオンは振り向いて駆け出していった。
「ありが、とう、ね…………そ、んな言葉、聞いたの久し、振り、かな………………」
走り去るヘリオンの後姿を見送った後。少女は呟きながらずるずると木の根元に沈みこんだ。
背中に刺さっていた神剣が貫き通したままの木に引っかかって抜け落ちる。とたん、吹きだした大量の血が背中を濡らした。
ごふっと口から吐いた赤い霧が瞬時に煌き舞い上がる。
少女はマナに還る自分自身に包まれたまま、身体の周囲が金色に輝きだすのをぼんやりと眺めていた。
綺麗だな、何故かそんな的外れの感想がよぎった。
「そう、いえば……名前を聞く、の、忘れてた、な……………………」
空を見上げて、中空に浮かぶ満月にそっと囁いてみた。月も金色だった。
ややあって、がさがさっと周囲の草が揺れる音。妖精部隊の精鋭達が次々と姿を現わす。
「ねえ……わたしがみんなにしてあげ、あげられる事って…………も、もう何も、ないの、かな…………?」
そちらを見もせずに呟く。“かつての仲間達”は、黙って黒く消えた瞳でその言葉を跳ね返していた。
その気配に溜息が漏れる。判ってはいたが、哀しみが無くなる訳でもなかった。
「そう…………恨まない、でね……わた、しも……すぐいく、か、ら………………」
そっと目を閉じる。たどたどしく唱えた高速詠唱が少女の体を緑雷のハイロゥで包み込んだ。
すぐ近くに巨大な雷群が落ちた、と思ったときには一斉に駆け出していた。
そうしてウルカとヒミカが辿り着いたその先……それはまるで地獄のようだった。
ぶすぶすと燻ぶった木々。黒から金に変わって舞っている小さなマナ達。
それらに強烈なデジャビュを感じてヒミカは立ちすくんだ。
一本の大木の下。一人の幼いグリーン・スピリットが血塗れで倒れている。一瞬それがハリオンに見えた。
頭を振って考え直す。そんな筈は無い。落ち着け、落ち着け……ヒミカは自分に言い聞かせていた。
ウルカの様子を窺う。彼女はその朱い双眸を大きく見開いたまま、ふらふらと少女に向かって歩き出していた。
近づいてくる気配を感じる。
もちろん、それが誰かはすぐに判った。
信じられないけど、間違いない。絶対に、間違えない。懐かしい、あの人…………
「ふふ、わたしだって、匂い、だけで……わかるん、だ、から…………」
少女は口許に幸せそうな笑みを浮かべていた。
優しく抱き締められて浮き上がる躯。熱い雫が顔に落ちてくる感覚。
そっと目を開けてみる。ほら、やっぱり。
「たい…………ちょう……………………」
少女は間もなく消える自分の時間全てが大好きだった隊長と共にいられる事を、名も知らない敵の少女に心の中で自慢していた。
28 :
回帰 X−9:05/01/16 02:54:33 ID:PElAYdC3
背中に衝撃と轟音が聞こえたが、悠人を捕捉したヘリオンは振り返りもしなかった。
真っ直ぐに悠人に突っ込んでいく。ほんの少し離れていただけなのに、もう随分会っていないような気がした。
驚いた悠人がこちらに振り返った時、既にヘリオンはその胸に体当たりしようとしていた。
「〜〜〜〜っっっ!!!」
「な、ヘリオン?!ちょっと待…………ぐふっ!」
どささーーー…………
受け止めきれずに悠人が倒れこむ。雪崩式にヘリオンと地面を転がった。
「痛ててて……」
したたかに後頭部を打ち付けた悠人が頭を振りながら上半身を起こす。そこでやっと見慣れた黒髪を確認した。
ヘリオンは鼻を擦り付けたまま悠人の胸で泣きじゃくっている。
ふっと安堵の気持ちがこみ上げて来て、悠人は力強くヘリオンの背中を抱き締めた。
「心配、したんだぞ……?」
同じように顔をヘリオンの髪に押し付け、くぐもった声で悠人が呟く。微かに、森の匂いがした。
それだけで、安心出来る。悠人は湧いてくる安堵感の中に、自分の気持ちを見出した気がした。
その間中、ヘリオンはただこくこく頷くだけで、中々顔を上げなかった。
やがて発見した光陰がさんざんからかったが、ヘリオンは遂に悠人から離れようとはしなかった。
ウルカとヒミカが合流した頃には泣き疲れて眠ってしまったが、
それでも悠人のシャツだけはぎゅっと握ったまま離さなかった。
29 :
支援:05/01/16 02:55:58 ID:BF18L2yE
メインヒロインズもよろしく。「ラキオスの赤い小悪魔」
悠人達はシーオスに帰還した。仮詰め所内は、いきなり行方不明になっていた悠人達に大騒ぎだった。
ずっとヘリオンを背負ったままだった悠人は疲れていたが、ヘリオンをエスペリアに託すとそっと外に出る。
そして空を見上げて溜息をついた。しばらくすると思ったとおり、背後から足音がした。
「ユート、お帰り」
「ああ、ただいま、アセリア」
「………………」
「………………」
しばらく無言の時間が流れた。
悠人はどう答えるべきか、まだ明確には決めていなかった。
それでも素直に答えよう、それだけは守ろうと思っていた。
「ユートは、ヘリオンが好きなのか?」
前にもされた質問、そして今は予想された質問。
問いかけるアセリアはじっと悠人の目を覗き込んでいた。前と同じ、蒼く澄んだ深い瞳で。
悠人は一度深く息を溜め込み、アセリアの目を見たまま一気に伝えた。
「俺は、アセリアが大事だ…………でもいつの間にか、ヘリオンから目が離せない……これはアセリアとは違う『好き』だと思う」
「ん…………わたしもユートが好きだ。それにヘリオンも」
「…………へ?いやだから」
「おやすみ、ユート」
「お、おい」
アセリアはそのまま仮詰め所に入っていった。引きとめようとした悠人の呟きが虚しく夜に飲み込まれていった。
「……ふぅっ」
壁に背を預けてもう一度空を見上げる。風にさざめく木々の間から、ふと忍び笑いが聞こえた。
ぶすっとした表情のまま、悠人はそちらを見つめた。掛ける声の機嫌が悪いのが自分でも判った。
「…………いるんだろ?聞いてたのか」
「すみませんユートさま。難しいものですね」
なにが可笑しいのか口許を押さえながらファーレーンが現れた。悠人は諦めて疲れた声を出す。
「難しいって……なにが?」
「スピリットには必ずしも男女一人ずつという概念はまだありませんから……でもユートさまは、それではいけないのでしょう?」
「今日子からでも聞いたのか……でもそうだな、俺には無理だよ。どちらもなんて支えられない」
「……あら、またユートさまの悪い癖が出ましたね。一体どうしたらいいのかしら…………」
すぐ側にきたファーレーンが屈んで悪戯っぽく上目遣いで悠人を覗き込む。
ロシアンブルーの髪から森の匂いが微かにした。ドキリとした悠人は慌てて目を逸らす。思わず声が拗ねた感じになった。
「どうって……どういうことだよ」
「さぁ…………わたしには沢山質問するんですね、ユートさま」
「え?あ、ああ……う〜ん俺って姉や兄がいなかったからかな……ファーにはなにか安心するというか……」
自分で言ってて照れくさくなり、途中で呟きのようになってしまった。いつの間にかファーレーンのペースになってしまう。
「まぁ、わたし、年上ですか?……でもふふ、ありがとうございます。いい風ですね…………」
「ああ、ファーとこうして話している時はいつもこんな風だな……………………………っ!!」
いきなりファーレーンの言っている意味が判った。悠人は横にいる筈のファーレーンに振り向く。
目に優しい月の光を反射させてファーレーンは静かに頷いた。
「そうか……そうだったな……ごめん、また忘れてたよ」
「はい、また忘れたら、今度こそ覚悟して下さいね」
「ああ、ファーのお仕置きは怖そうだからな、肝に銘じておくよ」
悠人の冗談にふふっと微笑んでファーレーンは去っていった。
後に残った森の残り香が悠人を包み込む。空には満月が浮かんでいた。
32 :
信頼の人:05/01/16 03:00:54 ID:PElAYdC3
X あとがき
まずは支援頂いた方々、有難うございました。
タイトル『回帰』は実は名も無いお姉さんの事を指してつけました。
ああ、名前が無いのがじれったいやら勿体無いやらw
ウルカルート以外での妖精部隊の補完。
このSSのもう一方の軸がこれでやっと終わりました。
色々考えてはみたのですが、こういった形に収まりました。
私の作品中最も悲しい結末になりましたが如何でしたでしょうか。
ちなみにソーマがあっけないのはあんまりこの男に暴れて欲しくなかったからです。
読んで下さった方、有難う御座いました。
誤字脱字今回特にハリオンマジック等ご指摘があれば幸いです。
>32
今回は、ソーマの言動にハラハラし、ヒミカのせつなさに胸打たれ、
ロリペドの光陰に笑い、お姉さんの最後に涙しと、大忙しでした。
つーかファーが妙に色っぽく感じたのは私だけでしょうか…ハァハァ
34 :
憂鬱の人:05/01/16 03:17:36 ID:BF18L2yE
真夜中にも関わらず、巻頭SS乙でした、信頼氏。
ああ、名も無きお姉さんが...(落涙)
それにしてもユート君、相変わらず腹立つやっちゃなあ。
ラキオスには倫理がないのか!?...うーん、「ラキオスの秩序の壁」があの人では無理か。
お仕置きしてやれ、ファーレーン!なにげにおいしいトコ持ってってるけどw
信頼氏、乙ですー。
ユートの「心配、したんだぞ……?」って台詞は、何気にカコイイと
思いました。
しかし「貧弱な裸」って、ホントに何気に酷いよ、お姉さん。
そして、お亡くなりなんてあんまりだよ、お姉さん。(泣
さようなら・・・。(T−T)
って上から読み返してみたら、カウント<7>被ってるッ!?
とりあえず訂正しておきます。<8>
関係者各位に、激しくスマソ。(死
読んで頂いて有難うございます。
>>33さん
今回の話が一番視点の切り替え多いので、駆け足感が無かったかと少し心配だったりします(汗
また、『安息』とのクロスポイントでもあり、ヒミカ嬢に何がしかの感想を持たれたなら嬉しいです。
作風でファーに感情移入してしまうのは……もうどうしようもないかもw
>>34憂鬱さん
ラキオスの倫理教育がどれ程スピリットに浸透しているのかは判りませんが、
どっちにしてもアセリアはあんな感じな様な気がします。そこがまたいいんですが(ぇ
ファーがおいしいのは……ここまで、でしょう(汗) 次回、ヒロイン犬暴れ、もとい大暴れですw
>>35さん
あ、初めてこの作品悠人が褒められたw
ウルカルートで一枚絵まで有るのに名も無く消えていくお姉さん。あのシーン好きなので、余計に悲しい。
という訳で、不憫なので補完してみましたが……不憫のままでした。合掌(汗
まだ常緑の樹の生え方が足りないようです>自分
>>32 お疲れさまです。
お姉さーっん! あんた漢だった!(涙
強く、そして、弱かった…
君の微笑みは記憶の中で生き続けるだろう。
今は、想い抱きしめ静かに眠れ…
想いが支える このスレの中で
探し続けたい 君の未来を…
やっぱ「深緑のエベレスト」だろ。
・・・体の一部が
二つ名と言えばこれは外せないでしょう(w
「ラキオスの魔女」
<14>かな?「ラキオスのく〜るびゅ〜てぃ(自称)」
連レス&長文すみません。
>>32 信頼の人さん
乙でした。
「緑の彼女」が、名も無いお姉さんが……(´Д⊂)
ヘリオンに加えもう一人の補完という事からおそらく、と思いずっと注目して読ませて頂いておりました。
取り戻した自我。その状態で自我の薄い帝国のスピリットたちを率いて、
左遷されたためにかつての仲間から引き離されて。それでも戦い続けていた彼女。
最期には彼女自身が望むように上官の意向に逆らい、心に残る敵のために体を張った。
あぁ、やっぱりウルカの仲間だったのだなぁと、その行動でこちらの胸に刻み込んでくれました。
前スレ分の感想になりますが、こちらに書き込みます。
>「クォーリンの憂鬱」&「続クォーリンの憂鬱」
む、報われない、そして可哀想……だけどクォーリンかわいいよクォーリン。
>それに、ねぇ?恋敵じゃないし。
数ある中でこのツッコミが最大のツボでした、ラキオス勢の行動原理はこれになっちゃってそうで。
何気に打算的じゃないか真のクールビューティw
>「黎明」
連載開始おめでとうございます。
嵐の前の静けさ、と言いたくなるような一見まったりとしたお茶の時間。
その中に潜むのは戦いに向けての儀式。互いに隠そうとした心を、
既に察し合えているのは微笑ましいものです。隠している心の量の差に気がかかり、
そこはかとなく胸騒ぎが起こってしまいます。本編開始を楽しみにしてます。
>「ハイペリア式告白法 前編」
この季節がやってきました、月日が経つのは早いですねぇ。
砂漠の気候を潜り抜けたチョコ数粒に戦慄を覚えます、
ポケットの中は大丈夫なのかとさらにどうでもいい心配をしてしまいましたw
>「作家としての行き方を決めた日」
重い生き方をしてるなぁ……ファーレーン。
その苦難に報われる生き方を見せて生き抜く事が唯一の助けのようです。
月の裏側は誰にも見られることは無く、只在り続けるのみ。
他人の目に触れるものは、他者が放つ光の照り返し。
「月光」に道が照らされるのは、迷い人自身が光を放つ者だから。
月自身も、照らされる光によって己を定めて進むのである。
>「戦うにあたって一番最初に教わった事」
ニム、ファーもの三連打で、雰囲気もそれぞれに個性が光っているため楽しませて頂いてます。
それでいて、ファーレーンの芯というか筋というかはびしっと通っているのです。
点呼ネタ、ギャグ系しか思いつけませんでしたorz
っ[燃えあがるツンツン]
っ[萌えあがるデレデレ]
>>信頼の人
回帰X、乙です。
ああ、名も無きお姉さんが……orz
それでも最後にウルカと再会できたことは、戦争という容赦のない場所ではきっと幸運だったのでしょう。
ロリペドとして帝国に名前が知れ渡ってる光陰も不憫ですが、
それ以上にソーマがあっさり死んじゃったのが哀しいのは自分だけでいい……ソーマ、大好きです。
ファーレーンはやっぱりおいしいところ持っていってますよね。腹黒w
<15>「ちゃっかり漁夫の利っ子」
>>37さん
漢って(汗
雑魚スピの中でもクォーリンに匹敵する位情報の無いあの少女。
自分なりに補完してみましたが、ここまで言って頂けると彼女も本望でしょう。
探してみてください、「あなたなり」の彼女も。ただしくれぐれもポニテ必携でw
>>41道行さん
バレバレでしたか……グラフィックだとそんなに大人びた印象は無いのですけど、
あえてヘリオン視点から「お姉さん」連呼してオリキャラだとミスリーディングしていたのですが(汗
ラスクに或いは助けられた観のあるラキオス隊とは違い、何の助けも得られなかった妖精部隊。
もうちょっとその辺のウルカの心境も出せれば良かったかなと今は考えています。
わ、再読み込みしてから書き込むべきだった(汗
>>44紅蓮さん
幸運、うん、そうですね。指摘されるまで気付きませんでした(汗
戦争が当たり前の世界観で、どうしても忘れがちな事を思い出しました、有難うございます。
ソーマ、本来大暴れだったのですが、段々書いていてムカついてきまして、気付いたらあんな感じに(汗
かっこ悪いのはあくまで作者の好みですので(汗
ちなみにLemma−2の辺り、校正段階で少し紅蓮さんの影響受けてます。まだまだですが。
戦闘シーンの小気味いいテンポと表現、今の自分の課題だったりします。
第二詰め所の最年少大人 <16>
ヘリオンよかったね。だけどその悠人の胸はヘリオンを受け止めることは出来るけど、心まで受け止めるこ
とは出来ないんだ。たぶん、確証は持てないが……ユートだし。
アセリアは一応納得?
お姉さんは……名も無きスピにも生きた証が有る。ヘリオンもウルカもそれを受け取ったのだと思います。ヘリ
オンの脳は再びユートさまで塗りつぶされてるだろうけど。
ファーレーンは……正直悠人がどう解釈したのかわからないですorz ファーねえが良い役なのはわかったw
ソーマ……コーインを同類だなんて失礼な。あっちはそれ専門w
>>48髪結いさん
ファーとの会話は全体を通して「大人のやり取り」みたいな雰囲気醸し出したかったんです。
結果的にただ判り辛いものに(汗 完全に作者の力量不足です、すみませんorz
という訳でカッコ悪いですが少し解説を。
ファーが指摘していたのは何かと言うとすぐ全部自分で背負い込もうとする悠人の性格です。
Vでそれとなく誘導して気付かせてあげたのに、それをもう忘れている。
そこで、珍しく自分にはやや依存しているらしい悠人に何故ヘリオンに対してそれが出来ないのか、
と問いかけてる、そんな感じです。
レスばかりでアレなので、さっき気づいた事でも。
以前ファーのハイソの色についてネタ振りましたが、セリアもイビルだと白、立ち絵青なんですね。
……もしかして気付いていなかったの自分だけですか?
ミス朴念仁<16>
>49
Vを読み返してきた…………ソウイウコトカ ○| ̄|_
これはきっとOBASANの仕業に違いない。
記憶を操作さ j l||(つと)=======∵・(l|li´Д`)・∵=======
……読む側の力量(記憶量)に問題があったようで。
ニーソは、もしかするとメイド服の時は白で統一なのかも。いや、セリア陵辱の時って戦闘服で来たの
だったか。
ウルカのメイド服姿はしゃがんでて、スカートにすっぽり覆われてるから確認できないんですよね。
んじゃ疑問を一つ。
スピの戦闘服の前合わせはファスナー式のようなのですが、悠人を犯した赤スピは、悠人のズボンの
ジッパーに何故手こずったのか。
エスペリアは何故いつも同じ格好なのか……はメイドだから。
>>1 乙。
「だからワッフルじゃないって!!」<<17>>
>51
>ジッパーに何故手こずったのか。
初めてだったから不慣れだったのですよハァハァ
…orzマインド低すぎだってば俺…。
54 :
憂鬱の人:05/01/17 00:17:38 ID:bkwzwemc
それは言わない約束だよ>ジッパーの謎
悠人を襲った赤スピは、スピの中でも比較的身分が高かった、と考えられます。
そのため、彼女は自分で服の着脱をしたことがなかった。
...そう、すべてお付きのスピ達にさせていたのでしょう。
しかしあの時、悠人は自ら動ける状態ではなく、
彼女の「脱いでよ」という命令にも(言葉の壁もあって)従う事が出来なかった。
これこそがその謎の真相です!
決してグラフィックとテキストの担当者同士の間で、意思の疎通が図れていなかった訳ではありません。
えっとまだ眠っていた『求め』が無意識にプロテクトかけてたとか
>>1 乙です。
なんか遅刻気味だけどとりあえず
「黒塗りの腹」<19>
>>32 乙です。
ヘリオン危機一髪!
ソーマ様出てくると毎回ひやひやしますな。よかったよかった。
そして・・・さらばお姉さん・・・
ファーもファーでがんばってるし。
ともかくGJでした。
―――コンコン。
「失礼いたします、ユートさま。」
真夜中に悠人の部屋を訪れる者...思い浮かぶ人物はただ一人しかいない。
「――エスペリア、一体何の用だ?」
悠人は押し殺した声で、ノックの主に問いかける。
「...そのまま、楽になさって下さい、ユートさま。」
静かに入室したエスペリアは、ベッドの横で「準備」を始める。
「...呼んだ覚えはないぞ。」
「いいのです。私はこういう事が好きなのですから...」
苦々しげな口調と、諭すような口調の言葉が交差する。飽きるほど繰り返された、二人の間のやりとりであった。
レスティーナの命を受けて、悠人が神剣に呑み込まれない様に、そしてオルファやアセリアたちを守るために、
「献身」の名の下に度々行われてきた秘め事。―――すでにそれは、半ば公然の秘密と化していた。
「だからと言って、エスペリアだけが犠牲になる事はないんだ。」
繰り返される言葉だけのあらがい。
「私の体はすでに汚れています...今さら何をためらうことがありましょう。」
その言葉とともに、悠人に向けられる慈母のような微笑み。
「―――汚れている、か。」
悠人はふと、その言葉を反芻する。おぼろげに脳裏に浮かぶのは、
かつて少しだけ聞かされた事のある、エスペリアと妖精趣味の男との忌まわしい過去の出来事。
「俺だって、他人の事を偉そうに言えた義理じゃない。」
ふう、と小さな溜息をつきながら言葉が漏れた。
「―――え?」
エスペリアの眉がぴくりと動く。
「...どういう事ですか?」
淫靡な儀式の支度をしていたエスペリアの手が止まる。
「まだ...エスペリアには話していなかったけど...抵抗出来なかったんだ...赤い妖精に...。」
ひょっとしたら、今までの悪い流れを断ち切る事が出来るかもしれない、そう思った悠人は、
迷いながらもぽつりぽつりと話し始めた。
―――そう、異世界に我が身が召喚された、あの日の事を。
「―――そうですか、そんな事が...。」
驚きを隠せぬ口調でエスペリアが言う。
「...そう言えばナナルゥに似てたな、あの娘。」
自分を犯し、そしてアセリアに斬られた少女を思い起こしつつ、悠人は呟くように言った。
「―――では、失礼いたします。」
まるで悠人を無視するかのごとく、エスペリアがそう言うのと同時にジッパーが下ろされた。
「ま、待ってくれ!だから、エスペリアがそんな事しなくても―――!」
「私は、私の使命を果たすだけです。」
見上げたエスペリアのその顔にはいつもの優しげな微笑。
悠人には、しかし、その笑顔の裏に危険なマナが潜んでいる事をうかがい知るだけのゆとりは、なかった。
エスペリアが悠人の股間に顔をうずめた――次の瞬間。
――がぶりっ!
「が...あぐごぉっっ!!」
何とも形容しがたい悲鳴を遺し、悠人は悶絶した。
―――翌日。
「あ、あのう...ユートさま...」
訓練場の脇を、がに股で歩く悠人の傍に、音もなく近付いた炎の妖精が声を掛けてきた。
「あ...、ナナルゥ。珍しいな、自分から話し掛けてくるなんて。何か相談事か?」
「はあ、実は...何だか、今朝からずっとエスペリアに睨まれているような気がするもので...。」
滅多に感情を表すことのない寡黙な少女が、眉間に皺を寄せて悩ましげに言う。
「特に恨みを買った覚えは無いのですが...。ユートさまなら何か心当たりはないかと思いまして...」
「ナナルゥ!何をしているのですか!今は訓練中ですよ!!」
顔を寄せ合う二人の背後から、突き刺すような怒声が飛ぶ。ひっ、と小さな悲鳴を上げてナナルゥが体を硬直させた。
「いいですか、我々はユートさまにお仕えするスピリットなのです!
必要以上に馴れ馴れしく話し掛けるなど、もってのほかですッ!!」
「は、はいっ!」
叱咤された赤い妖精が慌てて訓練場に戻ってゆく。
―――許せ、ナナルゥ。編成の時は、エスペリアとは別部隊にしてやるから。
悠人は駆け戻ってゆく紅い長髪の少女の背中に、心の中で謝るのが精一杯だった。
61 :
憂鬱の人:05/01/17 13:49:09 ID:BPs8FIdA
今まで書いた中で、一番痛い話かも知れません...
((((゚д゚;;))))
コワイコワイエスペリアコワイコワイ
エス、そこは奥歯で甘噛み(違
まぁでも今回は悠人が全面的に悪いでしょう。
冒頭の少女とナナルゥを間違えるなんて。
アポカリプスU喰らって一回休み。
>>63を見て思ったが、スピすごろくとか作ったら面白そうだな・・・
アセリアの料理を食べる。10マス戻る
ニムとコタツで寝る。2回休み
とか
面白そうかも。
ウインドウィスパーで3マス進むとか、
タイムシフトでもう一回サイコロを振れるとか。
えーと悠人君はチャックに挟んじゃったんですか?チガ
流れを掴んだ憂鬱話。ガクブルでした。
エスペリア……汚してるのはわたしでも悠人君でもないのでそこんとこよろしくw ナナルゥはどうせサポート
なんだから後ろから「あ、手が滑りました」とかいって火の玉の一つもエスのあた「返り血で汚れるのもたまに
は良いかも知れませんね……?」チャキ
「自我を失ったスピには、動物の根元的感情である「恐怖」が効く……と。モミモミとの因果関係も臨床に回さ
なきゃな……もっともこんな研究をするのは私くらいのもんだろうがなぁ……」
呟いたボサボサ髪の白衣のヒトは、何処か遠くを見ながら口からぽかりと紫煙を吐くのだった。
>>64 >ニムとコタツで寝る。2回休み。
すいません、ずっと休ませて貰います。
ヘリオンは庭かけまわり、風邪ひき一回休み。
アセリアの料理の腕が上がったっ! それでも3マス戻る。
エスペリアと買い出し中迷子に。女の子とぶつかりヨフアル弁償−10ルシル。
ポニテとツインテールのどっちが良いか光陰と議論に。ダイスを振って1の目が出るまで足止め。
>>61 お疲れさま〜。
「憂鬱の半分はエスペリアでできています」
ということですねw
すごろくかぁ…
ハリオンに捕まって激しく和む。3回休み。
>>64 いいですね、スピすごろく♪
転んだヘリオンに背中を押され、坂道を転げ落ちる。スタートに戻る。
光陰のとばっちりで、今日子にハリセンで吹っ飛ばされる。5マス進む。
ナナルゥとデート。6マス進む。ただし、その後何者かに襲われ10回休み。
↑犯人は
>>57参照(藁 憂鬱氏GJ!
・・・・・・酷いのしかないですね。(−v−;)
三択分岐でネリシアに両側から引っ張られる。
偶数が出たら右、奇数が出たら左、光陰が出たら二人共連れて真ん中。
スピろく…
バニシングハイロゥを喰らって次回サイコロの目−1
黒い三連星を踏み台にして3マス進む
おばs スタートへ戻り、
>>5回休み
レスティーナ様が宣言
「わたし、普通の女の子に戻りたい!!」GameOver
74 :
憂鬱の人:05/01/18 12:02:41 ID:En0XDkls
最近脳内エスペリアタンが暴走気味で困ってます。
原作ではもっとおしとやかで家庭的な娘だったような...(大汗)
>>62 自分では「こういうエスは可愛い!」と思って書いてるんですがねえ...。(←マゾか?)
>>63 冒頭の少女はマナの霧になっちゃったし、ユート君も間違えたワケでは無いんでしょう。
まあ、もし見間違えたとしても無理はないです。立ち絵が一緒ですから(無印では)。
おそらく信頼氏の「ナナルゥ八重歯説」もそこから来ているかと思われますw
>>69 おっしゃる通りです。
残りの半分がお好み焼きで出来てるのは秘密ですが。(←完全にバレてますが何か)
>>66 元はと言えば貴方が>.51で変な事言うからですw
チャックに挟んで一回休み。いてて。
スピろく、
ゆっくり休息…と思ったら何か視線が気になる
1、2、3…扉の隙間からオルファ&ネリシアが、3回休み
4、5…天井の羽目板の隙間からニムが、1回休み
6…次元の隙間からおb(ry、振り出しに戻る
スピろくか…なんで漏れが書けないときに限って面白いネタが出るんだ…
ハリオンとお茶する。その後(ピー)な事態に発展し99回休み。
ヒミカと一戦交える。1回休みだが次のさいころの目に+2。
エスといちゃついてたのがばれて、今日子にハリセンを食らう。
1,2…ライトニングハリセン。5マス戻って5回休み。
3,5,6…普通のハリセン。2マス戻る。
4…光陰が身代わりになってくれた。お礼のため次回さいころの目から−1。
人生ゲームだと、結婚とか子供とかあるよな。
…………重婚罪で処刑されるところを広大無辺な慈悲深き女王様による恩赦で
女王様のSP兼御伽集兼慰み者として取り立てられて上がり。
こんなところにコタツがある。緑スピリットのみ一回休み。
エレメンタルブラストだ! ハリオンだと思ったら一回休み
(ナナルゥ限定)忍者に変身!! サイコロの目 + 1
休み大杉w 散歩進んでニム下がる。
瞬との決戦も無事終了。上がった!…と、思いきやイービルルートだった。
振り出しの神木神社に戻って演劇の練習。
アセリアOVA発売日は5月末ですか
サブスピ出番少なそうだからいいけどねorz
エスペリア御奉仕モード発動。
一回休みだが次の一回サイコロの目+3
運命の分かれ道!マインドが30以下なら左のルート、95以上なら右のルート
それ以外なら真ん中のルートを進む。
とか。ちょっと数値がシビアすぎるか・・・
ところで使用キャラは全員悠人?
>>74 だいぶ遅れましたけど、乙です。
ナナルゥが不憫だ・・・
自分もこういうエスかわいいと思いますよ。
一途で嫉妬深くてもそれも愛ゆえのこと。
かわいいのでもらってっていいですか?(おい)
>>83 なぜかアセリアOVAの情報見てるとナイト○ンダムを思い出します。
・・・板違い申し訳ないorz
なんとなく
エスペリアのエレメンタルブラスト、略してエスブラストとか考えていたら、
こんなの思いついたりして。
ソーマ これがラキオスのスピリット共ですか、使い物になるまで時間がかかりそうですねぇ。
ラスク それでも彼らは非常に意思に燃えています。
ソーマ 意思だけでは戦いは勝てないのですよ。それは知っているでしょう。
それを聞いていたエスペリアが1歩進み出て歌い出す。
あらしも雪も 太陽のほほえみも
灼熱の昼も 凍てつく夜も
顔は砂塵にまみれていても
他のスピリット達も歌に加わり、スピリット達の合唱になる。
ソーマ くっくっくっ、ラスク、あなたも歌いなさい。
ラスク 歌うのですよ、あなたも私も、くくくっ。
そして2人とも歌い出す。
意志のもとで、意志のもとで、それは喜びとなり
われらスピリットは嵐の中を爆進する!
なぜこうなってしまうかは軍事板の中の人にでも聞いて下さい。
いきなり1行抜けているし。思いつきだけで書くもんじゃないね。
>>56さん
読んで頂いて有難うございました。
こうして書いてみるとお姉さん、案外いじり易いキャラだったなぁとか思ってます。
ファーは……頑張ってるのかなぁ。自爆の方に方にとw
>>74 @63として
何か名無しの罠に嵌めた様な気が(汗
説って程大したものじゃないですw 何か似合う気がするだけで。
「見間違えた」ってorz 例える、の間違えでしたね(汗
>>74 憂鬱の人さん
エスペリア……それはラキオスの敵をケムセラウトで討つってものだぞ……
うっかり別の女性との体験談を洩らして酷い目に遭った悠人くんは、
これから先、何人の女性と交わろうが口を滑らせる事は無くなりましたとさ。合掌。
>>スピろく
お風呂場にオルファネリーシアーが乱入!
1、身体を張った洗いっこに理性を流される。マインド−5。
2、3、三人がかりで(ピー)を掴まれ悶絶。一回休み。
4、5、エスペリアが助けに来てくれた。残念な気持ちで次回サイコロの目−1。
6、ゆったりと湯に浸かりながら語り合う。マインド+5。
娘が時深におばさん発言。
怒り狂った時深にタイムアクセラレイトされる。 サイコロの目−5
「ヘリオンー。あんたはいいわよねぇ。皆から可愛がられてるし。甘え上手だしー」
「――や、止め。セリアさん。止めてください」
「いいじゃないのよー」
「良くないです!」
なんでこんな目に? と思いながら、抱きついてくるセリアから逃れようともがく。
アセリアとの見回りを終えて、やっとのことで帰ってきたのだ。
ウイングハイロゥを展開して、ヘリオンのことなど知ったことか、
とばかりに疾走していくアセリアを追いかけて追いかけて。
もうクタクタのぐでぐで。疲れてるんです。寝たいです。
――というか。
「けほ。……セリアさん酒くさいですよ? 酔ってますね?」
「何言ってるのよー。酔ってない、まだ飲めるー」
何で酔っ払いは自分が酔ってることを認めたがらないんだろう、なんて思いながら、
セリアをずるずると引っ張って浴場へ向かっていく。
冷たいシャワー浴びせれば、たぶん正気に戻るに違いない。
「うー。ヘリアンどこ行くのよー」
「はいはい。動かないでくださいね」
お姉さん風を吹かせながらヘリオンが言う。
最年少はニムントールなのに、そう扱われることが多い彼女は、
それが少しコンプレックスで前から妹的存在が欲しいと思っていたのだ。
「あたっ」
「んぐっ」
――まぁ、何も無いところでころべる様なドジっ娘なら、
妹が出来ても逆に世話されそうではあるが。
「いたた。すみませんセリアさん。ころんじゃいました」
あはは、とから笑いしながらヘリオンが立ち上がる。
セリアの方を見ると、うつ伏せに倒れていた。
申し訳なく思いながら、右腕を掴んで無理やり立ち上がらせる。
――その時、セリアと目があった。
潤んでいるように見えるのは、ヘリオンの気のせいか。場違いにも綺麗だな、
と見とれてしまったヘリオンは、次のセリアの行動に対応することが出来なかった。
「――――ユート」
うっとりと目を細めて、セリアが抱きついてくる。
「――――!!」
本能が危険だと激しく警告を鳴らす。第二詰め所に帰ってきた時に襲ってきたセリアと、
今のセリアは違う。それはもう全然。完璧に。
それに、とヘリオンは思った。セリアさんてば、私とユート様を勘違いしてる……?
「ん――」
キスをねだるようにセリアが顔を近づけてくる。
貞操の危機! セリアを振りほどこうと、本気で突き放そうとする。
けれど、それもセリアの前では儚い抵抗でしかなかった。
「むーだ」
くすくす、と少女のように笑いながらセリアが言う。
顔面を蒼白にしたヘリオンは、大声を出そうとして――――唇を塞がれた。
「んー。ん、んんー―――」
ヘリオンが目を見開く。ショックで一瞬放心する。と、
「んんんんん……あ、んっ、ん、うむ」
「ん……んく、はむ……んっ」
口内に何かが入ってくる。
それがセリアの舌だと分かったときには、時すでに遅し。
ヘリオンはもう、なすがままだった。
「ん……んん……!? んうぅぅぅ!」
「はむ………。ん、ん……あ」
妖艶な笑みを浮かべながら、セリアの顔が遠ざかって行く。
惚けた表情で、ヘリオンがだらんと脱力する。
それを、全く苦にせず片手でセリアが支える。
「もう一回……する?」
笑みを全く崩さずに、セリアが言う。コクコクと、ヘリオンは頷いた。
「それじゃあ。舌、出して」
「――え? あ……」
ふるふる、とヘリオンが首を振る。
そんな恥ずかしいことできない、とばかりにヘリオンの顔は真っ赤に染まっている。
それを、全く変わることない笑みで黙殺すると、
「――止めて良いの?」
「ん――――」
止めないで、とばかりにヘリオンは舌を伸ばす。
セリアと唇が再び合わされ――――。
「――クォーリン。一つ聞いても良い?」
「ええ。かまいませんけど」
「なんかさ。ヘリオンの私に対する態度って最近変じゃない?」
「そうですか? ――まぁ、言われてみれば確かに」
「たまに、『お姉さま』ってヘリオンが言ってるのが聞こえてくるのよ」
「――事実じゃないですか。慕われているんでしょう。喜んだらいいじゃないですか」
「私に向ける視線も変なのよ。判りやすくいうと、ニムに対する光陰さまの視線」
「普通じゃないですか」
「ごめん。この質問はあんたには通じないんだった」
「――どうゆうことですか?」
「気にしないで。それでさ、心当たりある?」
「いいえ、全く」
「――そうよね。はぁ、困ったなぁ」
「困るんですか?」
「とっても。はぁ、私にも全然心当たりないし。まぁいいわ。エスペリアにも聞いてみる」
「そうですか。それじゃ」
「うん。ありがと。それじゃ」
前スレ584です。
酔っ払いセリアは、手におえない。そんなSS。
ヘリオンは流されやすいにちがいない。そんなSS。
ああ、ごめんなさい。石投げないでorz
ちなみに、セリアとヘリオンの行為の続きを書いてたら、フランス書院っぽくなったのは秘密。
急に生々しくなったので自粛しました。
オチもセリアが途中で寝て生殺しってのだし、多分こっちの方が良いかと。
>>信頼の人さん
ああ、名も無いお姉さんが!(涙
助けられたヘリオンがこんなことになってしまいスミマセンでした。
>>憂鬱の人さん
痛い、痛いよ!
男ならわかるこの痛み。
でも食いちぎられなくてよかったよかった。
………GJ!(満面の笑みでサムズアップ
もー何と言うかセリアが可愛いったら可愛いったら。
てゆか続き書いてくださいおながいします!orz←土下座
97 :
憂鬱の人:05/01/20 14:02:46 ID:yu21KVui
>>84 どうぞもってって下さい。取り扱い注意。あ、ついでに絆創膏おまけします。
>>87 くっ...罠にはめられるとは...私とした事がw
>>88 そうしてみんな大人になってゆくのですね...せめて私だけでも失わずにいたいものです。
けがれなき少年のような美しい心を...(←最初っからなかったくせに)
>>95 流れよう流されよう、いくらでも。ヘリオンのように。
ああ、21禁の住人で良かったと思う瞬間。
Uとして私の小部屋に持ってっちゃっても良いでしょうか?
>>85 最後は油の入った樽を投げつけられたナナルゥが、火炎魔法に油が引火爆発してぶっ飛ぶのかの?w
そして戦いの果てに、いずれ幸運つきたならば
我らはもはや、故郷に帰ることあたわず・・・
小部屋に連れ込まれるヘリオン…………(゚д゚) タイーホ
花弁が一枚花弁が二枚……散っちゃったよヘリオン。
セリアさんこうして皆を魔の手に掛け競争率ダウンを狙うのですかー?
フランス書院熱烈きぼん。ヒミカさん覆面作家きぼん。
>>95 「普通じゃないですか」……そうなんですか……普通なんだ……orz
「エスペリア、一つ聞いても良い?」
「ええ。かまいませんけど。最近アセリアやヒミカの貴女に対するよそよそしい態度も含めて」
「え?そうなの?」
「……自覚がなかったのですか?」
「うーん……どうだろう。最近よく廊下の角で寂しそうな視線を感じてたりはするんだけど……」
「そこまで判ってれば何も言う事はありません。ただセリア、『お姉さま』は皆に平等なのが鉄則ですよ」
「は、はぁ…………で、ソレなんの話?ちょ、ちょっとエスペリア、待ってよ……しょうがない、ナナルゥにでも聞いてみるか」
つづく
嗚呼セリア、一体貴女は何処へ逝く…………w
>>100「つづく」って、あーた...
「お姉さま...ですか。」
視線を宙に泳がせるナナルゥ。
尋ねる相手を間違えたかも知れない。
早くも後悔し始めるセリアではあったが、話しかけた以上勝手に中断する訳にもいかない。
「あ、あんまり深く考えなくてもいいわよ、ナナルゥ。
エスペリアが『皆に平等なお姉さまであれ』なんて言うもんだから、ね。」
「残念ながら私では適切な返答は不可能です。
代案として最善と考えられる候補者を推薦します。」
「―――誰のこと言ってるの?」
意外とナナルゥに尋ねたのは正解だったかも知れない、などと、そこはかとなく
失礼な事を考えるセリアであった。
ナナルゥは答える代わりに、無言でセリアの後方を指し示す。
「あらあら〜?二人ともそんな所で内緒話なんて、めっ、ですよぉ〜?」
つ、つづく...?
ツンデレ筋の思惑買いと機関投資家による利益確保の売りが錯綜していたセリアですが、
ここにきて、百合タチ筋の買いが入り、高値気配に転じているようです。これについて、
市場アナリストでスピリット評論家の光陰氏にお話を伺いたい思います。
光陰さん、よろしくお願いいたします。
よろしくお願いします。
さて今回の動きについてですが。
もともとセリアには地力があるんで、本来の線に戻りつつあると言えると思いますね。
では今後の展開としてはいかがでしょう?
私は短期的には現在が底値だと見ています。多少投機的動きは有るでしょうが、比較的
高値の線を推移していくんじゃないでしょうか。ネリシアやヘリオンの様な大きな動きは
無さそうですが、職人さんの動き次第ではかなりの上昇も見込まれますね。
ありがとうございました。以上ラキオス市場からでした。
うちのそばにあるw 初めて見た時はいつファンタズマゴリアに召喚されたのかと。
目指せセリア! ラキオス一詰め上場!
そうか、時代は百合なのか……(違
投下する前は大丈夫なのかガクブルものだったんですが、意外に受け入れられて
いるようでホッとしています。
>>96さん
続きですか。
ヘリオンがセリアをストーカー!?
セリアの身に危機が迫る!
>>97憂鬱の人さん
それはヘリオンとセリアのどちらなのか。
どちらにしても(゚д゚) タイーホ らしいですよ?(伝聞調)
>>99さん
>フランス書院熱烈きぼん。ヒミカさん覆面作家きぼん。
ヒミカの作品っていうオチ?
>>100信頼の人さん
セリアの魔の手は、アセリアとヒミカにも……
流石『お姉さま』
>>102さん
ツンデレでニムに負けてるセリアには、百合という要因が必要……!!
ってわけじゃないですが、『お姉さま』はセリアに良く似合う。
>>105個人的なことですみませんが。
えっと、知らない方もおられるようなので説明させて頂きます。
「〜の憂鬱」と題名に付けると、自動的にSS保管庫の人に
「憂鬱シリーズ」というカテゴリに放り込まれちゃいます。これが「小部屋」ですね。
以前は私一人のさみしい小部屋だったんですが、ここんとこお客さんが来始めています。
で、すでに584氏の「クォーリンの憂鬱」もその小部屋の中に入っていますw
ちなみに「ヘリオンの憂鬱」というのはすでに有りますので、「ヘリオンの憂鬱U」として
90-94を入れちゃってももオーケーかな?という意味だったんです。
わかりにくいレスですみませんでした。
さらに付け加えると
>>99さんは、あろうことかフランス書院風の続編を書いて欲しい、
とリクエストされてるわけでして。ヒミカの名前が出たのは「ア&セリア子供劇場」シリーズとか、
前スレ572に書かれている事の影響ではないかと。
こんな低マインドな人のいう事などほっといて...は、いけませんね。
ちゃんと聞いて上げてくださいw
107 :
信頼の人:05/01/21 06:55:46 ID:Fd2X9b7b
補足。
考えてみればテンプレに貼っておかなきゃいけない事だったのかも。
こちらのスレに書かれたSS(名前欄に題名をつけたもの)は、
特に作者の意向の書き込みが無い場合、
>>1にある「外部板:雑魚スピスレ保管庫
http://etranger.s66.xrea.com/」のSS保管庫という所に、
サイトを開かれている保管庫の中の人の御好意によって回収&保管&公開されています。
それによって過去ログに落ちたSSをいつでも読めるという大変便利&有り難いものです。
もちろんそちらには過去ログも保管されているのですが、
興味のあるSSを纏めて読める様にと作品はカテゴリごとに収録されています。
そんな訳で、あとは
>>106さんの書かれている通りです。
age、失礼しましたorz
ソーマ「ねんがんのエスペリアをてにいれたぞ」
・ふーん かんけいないね
・たのむ、かえしてくれ
→・ころしてでもうばいとる
久々にクリアしてこんなことを考えた・・・・・
「ロリスピ(おとめ)はお姉様(セリア)に恋してる」と浮かんだ
来週発売だからか…
>>105 了解ですー。
どうぞU号さんとして連れ去ってください。
……なんかいやらしいな(ボソ
>>95さん
酔った翌朝は記憶が飛ぶタイプですかセリアさん。
なんか、自室に見覚えの無い置物とかをお持ち帰りしてそうです。
>セリアと唇が再び合わされ――――。
酔った時のお約束、別の形の生々しいオチを想像した私は……∧‖∧
アセリアとセリアは幼馴染です。
二人は物心ついた頃、一緒にエルスサーオに転送されてきました。
以来、遊ぶのもご飯を食べるのも訓練を受けるのも寝るのもいつもいつも一緒。
同じ青スピリットだったこともあり、二人は絵に描いたような仲良しさん……とはいきませんでした。
生まれた時から何を考えているかよく判らないアセリアはともかく、
セリアは何をやっても敵わないアセリアを密かに敵対視していました。いけませんね。
ある日のこと。
二人は詰め所内の掃除を命じられました。
エスペリアお姉ちゃんが用事で出かけている間に終わらせるように、とのお達しです。
…………どうでもいいですが、本当に無事掃除が終わるとでも思っていたのでしょうか。
もしかしたら何か激しい勘違いをしていたのかも知れません。エスペリアだし。
ああ、そんなことよりさっそく箒の奪い合いを始めましたね。応接間の主導権争い真っ最中の様子。
「だからわたしがここを掃除するのっ!」
「セリアは台所を掃除する。だからここはわたしがやる」
「いいのっ!ここはわたしがやるのっ!」
「二人で分担した方が早い。セリアはあっち」
「いいから貸しなさいってばっ!」
…………どうしてそんなに応接間に拘るのでしょう。
命じられた掃除に意欲満々なのは感心しますが、子供の縄張り意識というのはどうも良く理解出来ません。
暫く睨み合っていた二人でしたが、う〜っと低く唸ったセリアがぷいと横を向いた所で決着が付きました。
「アセリアなんて知らないっ!」
そして捨て台詞を吐きながらどすどすと大股で台所の方へ歩いていくセリア。
その後姿ははしたない事この上ありません。女の子としての嗜みがまだまだなお年頃。いけませんね。
アセリアはというと無表情でその様子を見送っていますがどう思っているのでしょう。
「……………………」
どうやら何も考えてないようです。鉄仮面健在。無言で戦利品の箒を何時までもこねくり回しているだけです。
もしかしたら勝利の余韻に浸っているのかも。…………いいからさっさと掃除をしなさいよ。
さて。
しぶしぶ台所に到着したセリアは、そこで真の惨劇というのを見ました。
よく判らない材料をよく判らない調理で台無しにした後暴風が駆け抜けて行ったとか、そんな感じの。
考えます。そういえば、掃除を命じたエスペリアお姉ちゃんの顔が引きつってました。
更に考えます。そういえば、昼前辺りからアセリアの様子が変でした。何か落ち込んでいる様な。
ぴろぴろぴ〜ん。頭で擬音が聞こえた様な気がしました。正解。アセリアにハメられました。
棒立ちになっているセリアのポニテがざわ、と逆立ちます。『熱病』が赤いマナで光り出しました。
おお、あれだけ使いこなす事の出来なかった『熱病』が素直に呼応しています。セリアのレベルが上がりました。
「〜〜〜ふんっ!!!」
鼻息荒く気合を入れたセリアはそのままアセリアを撲…………おや?何か様子が変ですね。
いきなり袖捲くりを始めたと思うと、だぶついた半袖を大きめのロールアップで細い肩に巻き上げていきます。
手甲とブーツも脱ぎ捨てました。関係ありませんが襟元をくつろげると真っ白な鎖骨が目に眩しいですね。
ついでと言わんばかりに青ストをくるくると脱ぎ捨て、上着のスリットも腰の辺りで巻いて短くしてます。
最後に傍らに掛かっていたエスペリアお姉ちゃんの大きすぎるエプロン(フリル付き)を首から掛けました。
どうやらアセリアの後始末を引き受ける決心をしたようです。服が汚れない様に装備したつもりなのでしょう。
どういう心境の変化かは知りませんが、セリアそれではまるで裸エプロンです。大変よく出来ました。
元気の無いアセリアの顔を思い出しながら健気にこしこしと床をふきふきするセリア。
素直になれない優しさが彼女の真の魅力です。エプロンから見え隠れする蒼の水玉パンツなんて目じゃありません。
ふりふりするかわいいお尻や、開かれた襟元でささやかに揺れる未成熟な谷間など及びもつかないものです。
華奢な白い腕や薄っすら浮かんだ幼い鎖骨や意外とボリュームのあるしっとりと汗ばんだ太腿もうたまりません。
…………壊れそうなのでアセリアの方へ視点を向けて見ましょう。
うんうん、真面目に掃除を始めている様子です。ざっざっと箒の擦れる音がリズム良く聞こえてきます。いい感じです。
「…………ん?」
おや、何か見つけた様ですね。棚に飾ってあるティーカップセットに近づいていくようです。
「……………………」
じっと見つめたまま何かを考えています。どうしたのでしょう。あ、ソーサーを手にとってかざしました。
…………あらら、割れてますね。真っ二つ。どうやら誰かが壊したまま隠していた様です。
アセリアは考えます。そういえば、朝からエスペリアお姉ちゃんがしょんぼりしてました。
だから元気を出して貰おうとお姉ちゃんの替わりにお昼ご飯を作ろうとして失敗した訳ですが。
それは置いといて更に考えます。そういえば、昨日の夜からセリアが妙にそわそわと落ち着きがありませんでした。
ぴろぴろぴ〜ん。頭で擬音が聞こえた様な気がしました。正解。セリアが壊して隠していたのです。
アセリアは黙って台所の方へ目を向けました。しゃがみ込んだセリアの脹脛だけが動いています。はぁはぁ。じゃなくて。
何も言わずに自分の後始末をしてくれているセリア。アセリアは決心がつきました。
「………………うん」
ぱっとソーサーを空中に浮かせます。そして持っていた箒を両手で握り直し、脇を締めて…………フルスイング。
がしゃああああああん。
哀れエスペリアお姉ちゃんお気に入りのソーサーはアセリアによってこなごなに砕け散りました。大変よく出来ました。
応接間の方から聞こえてきた破壊音にびくっと跳ね上がったセリアは驚いて台所を飛び出しました。
するとそこにはスイングの余韻に浸っているアセリアと散乱した陶器の破片。
口を半開きにさせたまま事態を把握できないセリアに、気付いて振り向いたアセリアがぼそっと言いました。
「ごめん。壊した」
「アセリア…………これって…………」
足元の破片を手に取りながらセリアが呟きます。
一瞬でアセリアの意図を悟ったセリアは、胸がいっぱいでそれ以上暫く何も言えませんでした。
じ〜んと涙が零れ落ちそうになって慌てて深呼吸。ふうっと息をついて無理矢理苦笑いを浮かべます。
「…………一緒に片付けよ?」
「…………ん」
二人は一緒に応接間を掃除しました。もちろんその後台所も。
帰ってきたエスペリアお姉ちゃんは何も言いませんでした。
ただ黙って二人の頭を撫ぜてくれました。珍しく大人の対応でした。大変よく出来ました。
ところでアセリア、どうして野球を知っているのかな?
エスペリア「あの時は本当に悲しかった……台所は使用不能になるしお気に入りは壊されるし」
セリア「だからりゅうりゅうと『献身』をしごかないでよ……悪かったって思ってるから…………」
ハリオン「あらあら〜、セリアさんって意外とお転婆さんだったんですね〜」
ネリー「セリアお姉ちゃん、ネリーが廊下走ってたら怒った〜!」
シアー「シ、シアーも応接間で騒いでたら怒られたよ…………?」
ナナルゥ「これでは年少組を躾けても説得力ありませんね」
ウルカ「因果応報…………というやつでしょうか」
ニムントール「大人ってずるいよね」
ファーレーン「こらニム、つまらなそうに言いながら炬燵に潜り込まないで」
ヒミカ「う〜んこれはフォローしようがないかな」
セリア「 ア ン タ が 書 い た ん で し ょ う が っ ! 」
アセリア「セリア、なぜ、怒る?これ、セリアとわたしの大切な想い出」
セリア「そうね〜大切な二人だけの想い出よね〜その大事な想い出を他の人にぺらぺら喋るのはこの口かしら〜?」
アセリア「ヒェリアひひゃい、ひっひゃらへるといひゃいぞ」
118 :
信頼の人:05/01/21 23:23:44 ID:BrxAMFEX
あとがき
そろそろ4レスに纏めるのツラくなってきました。って自分で決めてるだけですけど(汗
>>116さん 支援、有難うございました。
119 :
憂鬱の人:05/01/21 23:39:27 ID:qWRwmDen
どういたしまして。
美しい話じゃありませんか。感涙しました。
私の汚れた心が...心が洗われます。ハアハア(←ちっとも洗われてないよ)
>>118 をつかれさま〜
今回はいつにもまして麗しいですね。大変よく出来ました。
しかし…考えてみるとエスペリアは逃げたとも…いけませんね。
いつもながら、ア&セリア分補充乙です。
裸エプがツボですよハァハァ。
たいへんよくできました、花マルをあげませう。
小鳥が囀り、夜の冷たさを含んだ風が肌を撫ぜる。
長かった夜が明け、戦いに傷ついた森にも朝が訪れた。
けれど、戦いだけはまだ続く―――スピリットバトルロワイヤルの二日目が幕を挙げる。
「ああ……太陽が黄色い」
……どこぞの徹夜明けの受験生のように呟いているのは穴掘り真っ盛りのヒミカ嬢である。
ナナルゥのラピュ○級の神剣魔法で抉られた大地、そこに埋まった愛しの神剣『赤光』を探してほとんど寝ずに徹夜中。
最早グロッキー状態のヒミカ嬢、その頑張り様と言えば最初は綺麗な半球形状のクレーターだったにも関わらず、
今は盛り上げられた土やら掘られた穴やらでもう何がなんだか分からない形になっているほどだ。
「ていうか……こんなもんで掘らすなッ!!」
ガギンッ!と鈍い金属音を立てて地面に叩きつけられた―――園芸用スコップ。
さすがに素手では掘れないと、袋の中を漁っていたら食料品に紛れて出てきた園芸用スコップ。
本気になればこんなものでも2m近くの大穴をほれるんだと関心させてくれる園芸用スコップ。
取っ手には小さな文字で「えすぺりあ用」と書かれたプレミア物の園芸用スコップ。
……けれど、こんなもので一晩粘ったヒミカが一番凄いのかもしれない。
「ふー!ふー!…………はぁ」
急に怒り出したかと思えば次は一気に項垂れる、乙女心はフ・ク・ザ・ツ。
「これだけ掘っても『赤光』は見つからないし……代わりに『変なの』が出てくるし」
ぶつくさぶつくさと文句を垂れるヒミカの後ろにその『変なの』があった。
それは、少々崩れた巨大な楕円形のような形をしており―――
それは、茶褐色の表面に幾筋もの脈動する血管が全体に張り巡らされており―――
それは、所々内部で何かが蠢いているかのように表面が波打っており―――
それは……巨○兵と呼ばれうわなにをするやめくぁswでrftgyふじこlp;
まあ、なんていうか一言で言えば非常に『キモい』物体であった。
「気持ち悪いわね……何かしら一体これ……」
気持ち悪いとか言いながら隅々まで嘗め回すように『キモい』物体を視姦するヒミカ嬢。
薄い皮膚膜の表面を通して僅かに中身が見えるが赤い液体でも詰まっているのか赤と言う色彩しか目に入ってこない。
と、僅かに顔のような輪郭が見えた。
自分と同じほどもある巨大な顔、そしてそこにつけられたパーツのようなただ一色の瞳。
その気味の悪い瞳は確かにこちらを捉えて―――
「……笑ってる?」
ぞくりと悪寒が背筋を走り抜ける。
未知のものを目にした時に感じる根源的な恐怖、それに似たようなものであった。
気のせいだ、と頭を振る。徹夜明けで精神が参っているせいだ、と。
そして、次に見た時には顔らしきものは見えずただ赤だけが広がっていた。
「はぁ……」嫌なもの掘り当てちゃったな感を全体的に出しながら小さく溜息をついた。
ふと、もう一度その『キモい』物体を眺めていた時、気づいた。
ちょうどその天辺、まるで墓標のように天へと向かうように突き刺さった一振りの両剣。
僅かに感じる懐かしい神剣の気配、それは捜し求めていた神剣―――
「―――赤光!!!!!!」
先程みた顔のことなどすっかり忘れ、輝かしい顔で『キモい』物体に足掛け手掛け登っていく。
途中で物体の表面の血管を二、三本引きちぎり、辺りが血に染まるが全く気にしない。
彼女の目に入っているのは徹夜で捜し求めた可愛さ余って憎さ百倍の『赤光』。
そして……ようやく頂上まで辿りつき手にした愛しの神剣。
思わずちょっと抱きしめてみたりもする。
「やっと……やっと見つけた」
まるでかのアーサー王のようにゆっくりと力を込め引き抜いていく。
だが、ここでヒミカは大変なことを忘れていたのである。
卵みたいな物体に突き刺さってる→引き抜く→卵割れてなんか生まれる、という黄金方程式を……。
さてはて、ヒミカがよくわからん地形の上で今世紀最大の喜びと恐怖を味わっている中、
初日には名前すら出てこなかったアセリアはと言えば……
「ラナハナ……食え」
「ンギュルルルルルルーーーー!!」
大きなエヒグゥ(?)と戯れていた。
…………以上、出番終わり。
朝焼けの空は紅いような青白いようなそんな不思議な色合いになる。
不思議とそれは人々を懐かしい気持ちにさせてくれる。
「………寒」
―――妖精にはあまり関係ないようだ。
早朝の森というのは総じて気温が下がる。
おまけに霜やら露やらで湿気も高くなり少し歩いただけでもベトベトになるものだ。
そして体が濡れるということは体温も下がるということでうんぬんかんぬん。
そんな森の中を、ぞわりと鳥肌の浮かんだ肌を掌で擦りながらトボトボと歩く一人の妖精……最近百合属性が定着しつつあるセリア嬢である。
「……誰のせいよ、誰の」
私は知りません。(キッパリ)
一見するといつものセリアではあるが、実際のところは結構ボロボロである。
青の戦闘服は所々破れて素肌が露出しているし、肌にも細かく小さいながらも軽度の火傷が無数にある。
美しい青髪も湿気でベタベタ、肌に張り付いて気持ち悪いことこの上なし。
本来ならどこかで休息を取り、万全の体制にするべきなのだがもう『二日目』なのである。
寝込みを襲われてリタイアなんていうのは洒落にならない、というか情けない。
「ふぁぁ〜〜〜……んっ」
というわけで小さな欠伸を噛み殺し、トボトボと森の中を散策するのでありました。
さて、こうなったのには理由がある。
勿論、裏ナナルゥとの戦いのせいではあるのだが……。
実際のところは、あの戦いはたった一回の激突で決着がついた。
同じ速度、同じ角度、上からか下からかの違いはあったが二つの剣戟は寸分違わず交わった。
水蒸気爆発。
絶対零度の氷、超高温の炎。
こんな二つが交わったら何か起こらないほうがおかしい。
ナナルゥの自爆魔法を越える勢いの爆発が二人の中心、二つの神剣の交わった点から起こり何もかもを吹き飛ばした。
咄嗟に腕でガードしたもののその爆発力は凄まじく、腕に感じた衝撃と数百メートル離れた木に叩きつけられた衝撃とをほぼ同時に感じるほどだった。
当然のことながら同時に吹き飛ばされたナナルゥを見失い、リタイアしたのかしていないのかも分からない。
ただ、咄嗟にガードしたこちらと違い、爆発を諸に受けたナナルゥが無事であるかは疑わしいところではあるものの油断はできないのであった。
さてはて、その爆発を諸に受けたナナルゥではあるが実はピンピンしていた。
勿論、爆発のダメージはあったが地面に叩きつけられたとか木に叩きつけられたとかいうダメージは一切ない。
何故なら―――
「あら〜?ナナルゥさんじゃないですか〜?」
「……ふぇ?ふぁりふぉん?」
モゴモゴと喋るナナルゥの顔はハリオンの豊かな胸の谷間に埋まっていたからだ。
ようするにぱふぱふ込みのハリオンクッションだね!と近所のトミー君が言ってました。
ぱふぱふ……それは男の夢であり、希望であり、全てである。
爆風で吹き飛ばされたナナルゥはちょうど木の上で舞っていたハリオンに狙ったかのように直撃。
その豊かな胸に顔を埋めながら、そのまま二人で地面へと恋のアバンチュール。
ナナルゥが受けるはずだったダメージは豊かな胸が吸収し、代わりにハリオンに痛恨の一撃。
通常ならば怒り狂って首をへし折るところだが、そこはハリオンお姉さん、慈母のようにそっとナナルゥの顔を抱きしめる。
ますます、その豊かな胸(しつこい)に顔を埋めることになるナナルゥ。
……というか息が出来ない。
「むぐ!?ふぁ、ふぁりふぉん!ひきふぁ!」
「怖かったんですね……もう大丈夫ですから〜」
さらにギュッと抱きしめる。天然なのか殺意があるのか分からない。
ますます息が出来なくなりじたばたと暴れるナナルゥ、爆発のショックでか正気に戻ったナナルゥの純白のウィングハイロウも死に掛けの鳥のようにばさばさと羽ばたく。
それでもハリオンの拘束は離れない。ここまで来たら完全に殺意があるだろう。
「あら〜?ナナルゥさん」
ようやく何かに気付いたかのように声をあげるハリオン。
胸に埋まって表情は見えないが顔には一縷な希望が浮かんだことだろう。
「いつからウィングハイロゥになさったんですか〜?」
所詮は一瞬の希望である。
案外、人というのは希望を失った瞬間、一気に落ちていくものである。
妖精もそれに違わず―――
(あ、お花畑が見える……)
最早、息が出来ない苦しみが快楽に変わりつつ、ゆっくりと落ちていく意識。
「もう〜、そんなに暴れたらくすぐったいじゃないですか〜」
だって、暴れないと死ぬじゃん!という突っ込みすら出来ないナナルゥ。
完全に落ちる寸前の意識。その中で一瞬ポツリと聞こえたハリオンの呟き。
「これで三人ですね〜」
何が?と聞き返す余裕すらなくナナルゥの意識は闇に捕われた。
「はうあ……しつこすぎます〜」
泣き言とベソをかきながら駆ける、飛ぶ、翔る。
地面から数メートル、木の枝から枝へと舞うようにして飛び移っていく。
三つの麻袋を担いで相当の重量のはずだがまるで羽のように着地した枝はしならず折れず、軽やかに翔けていく。
その遥か後方、圧倒的な威圧感を放ちながら徐々に距離を詰めてくる黒い影。
こちらはもう、なんていうか木の枝とかいうレベルじゃない。
四肢を巧みに操り、まるで木々全てが平らな地面のように駆けてくる。
時に、幹に張り付いたり、小鳥が乗っただけで折れそうな枝を踏み台にしたり、ぶら下がっている蔓を掴み「ア〜アアア〜〜」とか叫んだり……。
そんな激しい運動をしているのに息遣いに全く乱れが感じられない。
……ええい!連○のM○は化け物か!?
と、思いつつ視認できる距離まで近づいてきた黒の影をチラリと振り返る。
―――、一瞬にして眼を逸らした。
「なんていうのでしょう……えーと、野生化?」
現実逃避で思わず独り言を漏らしたくもなったりします。
あの理知的な姿は面影もなく、瞳は爛々と輝き、涎を口から垂らしながら木々を駆けてくる獣。
黒豹と猿と人間を足して三で割ったらあんな感じになるのではないか、と冷静に考えてみる。
「って、そんな場合じゃないですよね!?」
恐怖のあまり、泣きベソが本泣きに変わり、死に物狂いでスピードをあげる。
けれど、黒の影は悠々と距離を詰めてくる。
逃げる、追う、逃げる、追う、逃げる、追う……。
その構図を何時間も繰り返し、さすがに疲労困憊のファーレーン嬢。
が、チラリと確認するかのように振り返った背後には黒の影の姿はなかった。
「あら……?」立ち止まって辺り見渡し首を傾げる。
ついさっきまでは確かに気配があったのに、今はまるで気配がない。
怯えながら再確認、やはりこれっぽっちも姿は見えないし感じられない。
「……逃げ切った?」
言葉にしてどっと疲れが押し寄せてきたのか安堵の溜息をつくファーレーン。
と、ポタリと一滴の雫が肩に滴った。
ビクリ、と身体を硬直させる。
僅かに粘性のあるそれはポタリ、ポタリと断続的に垂れてくる。
ここがこの木の最上段ではない、まだまだ上には無数の木の枝がある。
「((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル」
恐怖による震えが全身を伝わる。
ゆっくりと誘われるように―――上を見た。
そこには――――。
今日一番の断末魔の悲鳴が森中を木霊した。
獣は飢えている。
昨日の夜から何も食べていないのだ。
故に横で地面に横たわり不思議な金色の霧に代わりつつあるものに興味などない。
だが、三つある袋を漁っても出てくるのは食べ方の分からないものや、
三角形の布やら不思議な形をした布やら卍型の刃物やらで食べられそうなものがない。
少し聞いてみようと横を向くが横たわっていたものは最早跡形もなく消えていた。
獣は困った。これでは空腹を満たすことが出来ないと。
が、ここで獣の鋭敏な嗅覚は捕らえた。食べ物の匂いを。
すぐにそれに向かって走り出す、少しでも早く空腹を満たすために。
そこに待ち受ける戦いをも知らずに……。
【残り6人】
さて、ここですっかりほったらかしの医務室に焦点を当ててみよう。
……もしも〜し、現場のクォーリンさん?
「あー!だから違います違います!包帯はそう巻くんじゃなくて!」
……もしもし?
「そこでそう、亀甲縛りに……違います!それは三角木馬―!」
……あの、中継始まってますよー。
「むきー!どうしてわからないんですか!温厚な私も……え?中継始まってる!?」
……ええ、とっくの昔に。
「や、やだ!カット!今の部分、カットしてください!」
……それは、無理です。生ですから。
……というか、随分キャラが違いますね。もっとこう男っぽかったような。
「えっと、それは……あんまり煩く言うと殺すぞ」
……ひぃ、ごめんなさい。
「ご、ごほん!では、気を取り直して中継参りマース。」
……ドンドンドン、パフパフー。ワーワー。
「医務室はどんどん送られてくるリタイア者によって大慌てです」
……医療班も大変ですね。
「あんたのせいだろという文句は置いておいて……では、まず一番最初にリタイアされたユート様にインタビューを……」
「不意打ちは卑怯だ、不意打ちは卑怯だ、ハーレム計画、やりたい放題」
ベッドの上でブツブツと呟く、ちょっと鬱気味の悠人。
「と、思いましたがちょっと壊れちゃってるので次にいきましょー!」
……いいのカナ?いいのカナ?
「いいんです!では、次は……ヘリオンさんですね(棒読み)」
……カンペ見てる。
「お黙り!……はっ!カメラさん!ズームズーム!サービスショット!」
「ふぁ……ん、ん〜……」
悩ましい黒の下着から覗く瑞々しい肌、破れかけの衣服から除くそれに男はもうク・ギ・ヅ・ケ!
キュッと引き締まったお尻にピッタリと張り付きラインを浮かび上がらせる黒パンツに男はもうメ・ロ・メ・ロ!
さらには柔らかくしっとりと汗ばんだ太腿はぴったりと閉じあわされ、それによって構成される禁断のデルタラインに男はもう野・獣!
「……ちょっと脱がしてみたいような、襲ってみたいような感じですね。」
……それよりも先に隣をなんとかした方がいいと思います。
「わっ!ユート様、手をワキワキさせて今にも飛びかかろうとしないでください!」
慌てて医療班の面々に取り押さえられ、ベッドに縛りつけられる悠人。
「離してー!離してくれ!今、やらずして何が漢かー!!」
「今回は、いい具合の壊れっぷりですね」
……出番少ないからねー。
「さて、次はオルファリルちゃんですね」
……火傷、大丈夫かな。
「……火傷よりこっちの心配をしたほうがいいと思います」
指差した先にはアフロヘアー、問答無用のアフロヘアー。
その周りには必死に笑いを堪えて治療をする医療班の面々。
「後で燃やされちゃいますよ?」
……パスポート持ってたカナ。
「国外逃亡は禁止です!……寝てるのでオルファちゃんは飛ばしましょう」
……それがいいです。
「んでは、次はシスコンラブラブ、百合に一番近い妖精のニムントールちゃん!」
……ワー、ドンドンドン、ぱふぱふー。
「なっ!?お姉ちゃんとはそんなんじゃな…くて……そのあの……」
「ちっちっ!頬を赤らめながら言っても説得力ないですよ」
ボッと、真っ赤に染まるニム。
医療班の男性陣、女性陣、両陣営から悩ましい溜息が漏れた。
「しかし、今回はその姉に裏切られたわけですが、その辺はいかがでしょう?」
……でしょう?
「ニムは……お姉ちゃんの役に立てるのならそれでいい。」
「な……なんと健気な!?皆さん聞きました!?」
医療班の(以下略)が全員一斉に頷く。
「次は、お姉ちゃんと幸せになれるといいですね……しろよ」
……考慮します。
「まあ、いいです。では次は、小さな可愛い双子妖精ネリシア姉妹!」
「はーい、ネリーでーす!!」
「えと……あ、あの……シアー……です」
……ヒューヒュー。
「ベッドの上にちょこんと座っている姿なんてベリーキュート!食べちゃいたいくらい!」
「えへへ、ネリーは大歓迎だよ!」
「シアーは……お菓子くれるなら……」
お菓子を持って突撃しようとする悠人を必死で押さえ込む医療班の面々。
医療班の男性陣もなぜか全員お菓子を手に持っているが……。
「さてさて、そんなネリシア姉妹ですが、今回簡単にやられちゃいましたね」
……たねー。
「状況からハリオン姉さまにやられたと推測できるのですがどうでしょう?」
「え?えとね……確かハリオン姉に食事を貰ったところまでは覚えてるんだけど」
「シアーも……そこまでは覚えてるんだけど」
「「ねー」」
「見事なハモり、さすがは姉妹!ということは食事に毒を盛られたかな!?」
……ハリオンマジックかもしれませんね。
「まあまあ脱落してしまったことは残念ですが、これからも頑張ってください!」
「はーい!みんなのアイドル、ネリーは頑張ります!」
「えと……ところでお姉さんは……?」
「はーい、とっとと次に行きましょう!(無視)」
……意外とひどい妖精。
「じゃあ、次は表裏一体、不可能を可能にするスーパー忍者妖精のナナルゥ!」
「ぜーはーぜーはーぜーはー……はぁはぁはぁ」
……いきなり死に掛け。
「あんな嬉しい体験しておいて苦しいだなんて冒涜ですよ!」
医療班の男性陣、一斉に頷く。何人かは鼻血ブー。
女性陣は呆れ顔。何人かは自分の胸を見て溜息。
「それで今回、ウィングハイロゥなんて生やしちゃったわけですが訓練厳しかったですか?」
「ぜーはーぜーはーぜーはー……はぁはぁはぁ」
「えと、表と裏、普段はどっちが出てるんですか?」
「ぜーはーぜーはーぜーはー……はぁはぁはぁ」
「……駄目だこの女、役にたたねえ。次に行きましょう。」
……ちゃんと聞いてあげましょうよ。
「煩い、このスカポンタン!では、次は……え、次でラスト?」
……いまのところは。
「もう出番終わりですか……寂しいですね。」
医療班の面々、首を横に振る。
「さ・び・し・い・で・す・ね!?」
医療班の面々、慌てて首を縦に振る。二、三人失禁。
「よろしい……気を取り直して次は、先程転送されたばかりのファーレーンさんですね。」
……イェーイ。
「これがファー……うわっ、こわ!!」
……この世で最高の恐怖を見てきたって顔ですね。
「眼を見開いたまま気絶してるし、瞳孔拡張しっぱなし……医療班の皆さんお願いします。」
ぶんぶんぶん、もの凄い勢いで首を横に振る医療班の面々。
「確かに、この顔には近づきたくないですね。半分覆面してるんですけど怖いです。」
……です。
「肩の辺りとか粘性の液体でベトベトじゃないですか、こりゃトラウマものですね。」
……日常生活に支障がないか心配です。
「何にせよ、腹黒はいつか滅びる運命にあるということですね……気をつけよう」
……腹黒?
「純白ですよ!さて、これにて中継は終わりですね」
……お疲れ様でした。
「いえいえ、光陰様の看護も飽きてきてましたから……あのセクハラ親父」
……こわっ!
「では、ラキオス隊の戦力を少しでも削ろうと誰かを暗殺しに侵入したら、
いつの間にかレポーターに仕立て上げられたクォーリンがお送りしました!……夜道では後ろに気をつけろ」
……お送りしましたー。
幕間 完
134 :
風変わり:05/01/22 17:28:32 ID:rrbWM3ro
Chapter.6、一ヶ月ぶりの風変わりです。
入院してる間にこんなに月日が流れて私的にはビックリです。
今回で遂に六人、随分と絞られてきました。
大体キャラが壊れ始めてくるのもこの辺りなんですね……。
この先どうなっていくのか私もわかりません。
いい方向に向かえばいいな〜と思いつつア&セ劇場を堪能するのでした。
ハァハァ、セリアたん……小さい時もいいです。
乙&GJでしたー。
何と言うか、各キャラのはっちゃけぶりが最高です。
特にユートくんのマインドの低さが(w
果たして栄光は誰の手に!?
乙でやんす。
いやぁ、かっとんでますなぁ…発掘しちゃうしw
もしや…い、言うのか?あのセリフを…
あー飛んでいきてー受け止められてーはりぉwでrftgyぱふんlp;
幕間…次は幸せにむにむクル━━━(゚∀゚)━━━ !?
>>118 信頼の人さん
口には出さない庇い合いが和みました。掃除場所を取り合う理由が分かってから
もう一回読んだら、二人の必死さがますます伝わってきて笑みがこぼれます。
>>134 風変わりさん
野生化……と言うよりも野獣化ウルカがツボに嵌ってしまいました。
前回からのギャップがたまりません。勝者は更なる狂乱の宴へ突入し、
壊れっぷりを魅せていくことになりそうで楽しみです。
医務室では敗者がモニタで観戦してそうな雰囲気ですねw
>>118信頼の人さん
GJ! です。セリア分補給完了!!
これで、あと十(ry
>>134風変わり
クォーリン分ほきゅ……できませんでした。
GJです。GJなんだけどorz
ああ、クォーリン……(涙)
>>134風変わりさん
最近ア&セリア書いてると不思議に風変わりさんのハァハァが聞こえてきます(ぇ
BR、笑いすぎでお腹痛いんですがw 特に、ばさばさの辺り。
園芸用スコップ、えすぺりあ用があるという事はターザ○もといウルカ用もあるのだろうか?
ファー、で、出番少ない……orz 腹黒なんてとんでもない。よしよし怖かったんだね、お嬢様育ちらしいし。
幕間で暴れまわっている悠人は放っておいて…………ネリシア、知らない人に付いて行ったら駄目ですよ。
>>119憂鬱さん
最近エスペリアが自分の中でどんどん美化されてきて困ってます。どうしたらいいですかw
>>120さん
たまには彼女も一人になりたい時があるのです。決してゲンジツトウヒした訳では(ry
エスペリアの日常、どなたか書いてくれないかなぁ。
>>121さん
花マルもらったw 属性が無いのでよく判らないまま書きましたが、裸エプロンってあんな感じで宜しかったでしょうか?
>>137道行さん
子供にとって大人というものはどこまでも恐怖の対象です。怒られるのが怖いのです。だから隠す。
誰でもそんな経験があるのではないでしょうか?そんな感じの今回でした。
>>138 584さん
十……じゅう……なんだろう? とりあえず584さんの蒼の水玉、大きくなったでしょうかw
140 :
憂鬱の人:05/01/22 21:30:39 ID:R/crbhw/
風変わり改め病み上がり氏GJですた。(←勝手に改めるなよ)
やっぱり掘り当てちまったか、ヒミカ姐w
窒息してる娘もいるようですが、それはともかく。
クォーリン、なんだかやけにカッコいいぞ!ロリ坊主のセクハラで逞しく成長したのか?
ああ、夜道で襲われたい!!襲って襲って〜〜!!(エレメンタルブラスト)...ぐはッ!
どうも前回分でニムのセリフを勘違いしてたらしき憂鬱でした。
この前過去スレ読んでて、ファーには意外と和服とか似合いそう、ってレスに思わずハァハァしますた。
ウルカにも袴とか似合いそうだよなぁ。
ナナルゥにキャリアウーマン風のスーツ&メガネとか。
セリアにフリフリのエプロン着せて新妻羞恥ぷれいとか(違
白いブラウスに茶系のタイトスカート。
夏場は薄っすら浮かぶ清楚なブラのラインと浮き出る鎖骨。
すらっと伸びた白く艶のある手足、首筋。
そんなファーに教壇から教科書片手に
「ここは試験に出ますよ」
なんてにっこり微笑まれたら必死になって勉強するだろう。
そう言えば戦闘チップでのヘリオンが、チャイナドレス姿に見えて仕方ない。
PS2版で最年少決定してしまうニムにはやはり
水色スモックと黄色い帽子か…
いやいや、エプロンドレスと猫耳カチューシャという選択も…
>>134 風変わりさん乙です〜。
いや、それにしてもこんなに漢らしい悠人がかつていただろうか、いやいない。(笑
ってくらいはっちゃけてますね、悠人。
個人的に大変いいと思うので、頑張って欲しい所です。
医務室からだけど。(^^A
そして、ヘリオン!
そりゃ、あんなサービスショット見せりゃ、悠人じゃなくてもハァハァです。
実はヘリオンって、サービスシーンが似合うスピなのだろか・・・。
>>143さんも生足が気になって仕方ないって言ってるし(違
>118
エスペリアは二人を信じてたんですっ。正直に申告してきてその後大統領になることを信じてたんですっ。
アセリアGJ! メジャーの誘いがw えっPS2に移籍?
セリアさんなんだかんだ言って折れる娘だから。私的なことを言えば、うっすらと浮かぶであろう青い静脈にはぁはぁ(ヤバ
エスペリアは、二人のかばい合い? を信じてたんです。信頼しあう大切さを教えるために涙を呑んだんです。
きっと一人で夕日の見える公園でブランコをキィコキィコ揺らしてたんです。ねえ、ちゃんしてるよ。
決して隠れてあいびきなんて。エヒグゥ100%の方が安いし美味いし。
>134
ヒミカさんがんばった。掘った物は埋め戻しましょうね自然破壊はいけません。えすぺりあの園芸スコップでw
リュセリア・トゥエル・ウル・ラp
ハリオンさん、その体が武器ですね。ファーは天網恢々w ニム騙されてるよっ! ナナルゥ鳥屠殺。NO.1とNO.2
の間には谷間に差がある(ナンノ? 野獣はどうしよう(汗) 医務室にもいるし。
147 :
痕 1/5:05/01/23 17:52:58 ID:UF5N+I8y
いつもの朝。
曙光とまではいかないけれどこの世界に来てからというもの、俺は三文の得ってやつを実行
中だ。元の世界との緊張感の差なのか、体が根本から変わってしまったせいなのか。良く分か
らないところだが、三文ずつ増えてれば今頃金持ちだな、などと思いながら(だけど三文って
どんな価値なんだ?)俺は、朝食のために食堂へと降りていった。
食堂には既に先客がいた。
「よっ、アセリア。おはよう」
頬杖を突き、開け放たれた窓からぼーっと、外を眺めているアセリア。レースのカーテンが
初夏の朝風に揺れている。
「ん」
相変わらずの返事。いつものことだが何を考えているのかわからないヤツだ。一応、目線だ
けは俺へとよこした。
ん、なんだ?
アセリアはそのまま俺の顔をじっと見ている。猫のような虹彩のブルーの瞳が上目使いに俺
を見つめる。そして椅子から立ち上がると、俺の前へするりと立った。
無防備に俺の目の前に晒される白いのど筋に、いけないと思いつつも目線が吸い寄せられそ
うになる。
「ア、アセリア? どうかしたのか?」
無理矢理視線を引きはがして尋ねた。ちょっと吃った。
まだ朝食前、いつぞやのようなことはないはずだ。そう思いながらも知らず手が頬をなでた。
そんな処へ厨房の方から、いつもの緑のメイド服でエスペリアが現れた。
「ユートさま、おはようございます。……何をしているのですか?」
丁寧にお辞儀をした後疑問の声を上げ、柔らかな笑顔のままで少しきつい目線をこちらへよ
こす。
こわ……けど当然かもしれない。今の俺とアセリアの体勢は、まるで見つめ合い今にも……。
「ユート、虫に刺されたのか?クビが赤くなっている」
148 :
痕 2/5:05/01/23 17:54:05 ID:UF5N+I8y
えっ、虫?
アセリアは俺の首筋を指さし、ここももう一つ、と呟くと、俺の頬をツンとつついた。
虫に刺されたって、そんなことは…………っっ!! ま、まさかっ!?
ハッとしてエスペリアを見た。エスペリアも同時に俺を見た。
エスペリアの頬がカー、と瞬時に染めあがる。俺もおそらく似たような状況だろう。
「違うのか?虫さされなら良い薬がある。もってくるか?」
アセリアは、何の疑いもなくいつもの調子で聞いてきた。だけど、俺もエスペリアもそれど
ころじゃないっ!。
「あアアあアぁAアセリア、ああの、そ、そう。むし、虫に刺されたの。ユ、ユートさま、そ
うですね」
「あ、あ、ああそうだ。そうだぞ、虫に刺されたんだ。夕べは暑かったからな、窓開けっ放し
だったんだ」
俺もエスペリアも、しどろもどろになりながら弁明する。もう、心臓がバクバクいっている
けれど、アセリアに状況が理解できるはずもなく、
「ん、わかった」
一言のみで、食堂を出て行っってしまった。おそらく薬を取りに行ったのだろうか。
149 :
痕 3/5:05/01/23 17:54:53 ID:UF5N+I8y
はぁ〜〜。あせった。
エスペリアと同時にため息をつく。はっきり言って……目を合わせにくい。
微妙にそっぽを向きながら、赤い顔をしたエスペリアが口を開く。
「あ、あのユートさま。朝食の準備中なので……」
「ああ、そうだな……」
そそくさとエスペリアは厨房へ消えようとする。俺もとりあえずいつもの椅子に落ち着こう
かと思ったのだが、俺達を掻き回す運命の糸は、朝っぱらから全開で絡まっていく。
「あれ〜、パパとエスぺリアお姉ちゃん。テミみたいに真っ赤っかだよ〜?何かあったの?」
一難去ってまた一難。青をやり過ごしたと思ったら赤でストップだ。
小走りに駆け込んできたオルファが、俺達をしげしげと眺め、小首をかしげている。
「い、いやなんでもないぞ。なっ」
わざとらしくも、エスペリアに同意を求めた。二詰めの奴らならいざ知らず、オルファなら
たぶん誤魔化せるはずっ。
「は、はい。何でも無いのよオルファ。ちょっとユートさまが虫に刺されただけで」
「えーパパ、だめだよ〜。また窓あけたまま寝たんでしょ? あの虫はマナが大好きなんだから」
150 :
痕 4/5:05/01/23 17:56:47 ID:UF5N+I8y
ふざけた話だが、オルファの言う虫「マナスー」なるものがこの世界には存在する。やはり
草むらなんかを絶好の生息場所とする、いわゆる「蚊」だ。
この世界の人間が持つ、微量なマナを吸うことで繁殖の糧とするらしいのだが、当然マナそ
のものであるスピリット及びエトランジェは、ご馳走としか云いようがないわけで、行軍中も
かなり悩まされていたりする。
「ああ、わかったよ、オルファ。ほ、ほらエスペリアの手伝いでもしてくれないか腹減ったか
らさ」
なんとか話を打ち切ろうと、オルファの肩をつかんでエスペリアの方へ軽く押しやった。
なんだか不審気ではあったが、オルファはうんと頷くと、はらへった〜と歌いながらエスペ
リアと供に厨房へ向かっていってくれた。
ほ。
助かった。朝から冷や汗かきまくりだ。
151 :
痕 5/5:05/01/23 17:57:48 ID:UF5N+I8y
「ユート」
おわっ!
振り向くと、やはりいつものようにいきなり現れたアセリアが、なにやら茶色い小瓶を手に
して立っていた。
「薬、塗る」
べとっ。
いきなり頬に感じる冷たさ。振り向いた俺に二の句を継げる間も与えず、アセリアは薬瓶に
指を入れると、その軟膏を俺の顔に塗りたくった。さすがラキオスの青い牙、獲物に歯向かう隙
を与えず牙を立て――――。
「ア、アセリア、こら」
俺の声など頓着せず、さらに首筋へとアセリアは指を伸ばす。
「あ〜アセリアお姉ちゃん、お薬塗ってるんだ。オルファもやる〜」
せっかく厨房に入りかけたオルファまで戻ってきてしまった。アセリアのひんやりした細い
指と、オルファの子供々々した指に、顔から首筋は云うに及ばず、胸元まで多少はだけさせて
蹂躙されてしまう羽目になった。ほとんど壁塗りの如く、薬瓶は空っぽだ。
「ん、完璧」
「このお薬効くよ〜でもパパいっぱい食われたね。それになんだか変な痕〜」
何故か誇らしげなアセリアと楽しそうなオルファの声に、今日は一日、庭の草むしりをしよ
う……と思うのだった。
俺、一応隊長なんだけどな……。
ちなみにエスペリアは、一人厨房に逃げ込みこちらを窺うばかりだった。
こりゃ今晩、きついお仕置きが必要かもしれないな――――。
当て字読み禁止w 訓読み推奨。
えと、元々は「鮮やかな命(ひ)」のカウンターとして間をおかず上げるつもりでした。
そのうち、そのうちと思うっているうち、ずるずるここまできたのでした。
ですので、季節感がおかしくなっております。ご了承くだされ。
エスペリアは虫に食われなかったのか。真相は藪の中でw
やっぱりエスが一番。
153 :
憂鬱の人:05/01/23 18:51:24 ID:noi+1dIG
やはり貴方はエス萌えの師匠です、髪結いさん。
もう、何も言う事は有りません。素晴らしきかな我がSS人生。
まだ半年も経ってないけど。
エスペリア万歳。
髪結い氏GJ!
この話が『鮮やかな命』に繋がると思うと切ないですね…。
とか言いながら私こういうの大好きなんですがw。
エスペリアとの懐古ストーリーとしてシリーズ化希望します。
うかつに人目に付くところをむやみと吸うものではありません。
……もちろんマナスーに注意してるんです、ええ。
悠人も吸われたなら吸われたでもう少し堂々としましょう。
緑のマナスー嬢にも宜しく。狙うなら鎖骨の辺りが静脈ですよ(謎
マナスーに刺されると見ている方もむず痒くなるのですね。
よっぽどアツかったんだろうなぁ、窓が全開なのに気付かず吸われるなんて(違
あんまり吸われすぎて干からびないようにご注意を。
GJ!
個人的に悠人君のエスペリアへのきついオシオキの詳細キボンヌ
朝から精が付くお食事だったかもね。
>153
すべてはマナの導きです。さぁ祈るのです。「リレルラエルチツジョノカベケンシンリュウリュウゼンカイデス」
一周期ほど祈り続ければ生身のままファンタズマゴリアにいけるとか。イキロw
>154
繋がるというか、「鮮やかな命」との相殺を狙ったSSなのです。ちょっとやばすぎるかなぁと思ってたので単純に
萌エロネタで場を暖めようかとw こう言うのが大好きならこっちも本望です。
でも、繋がってたらガクブル マジで”♪はーかなくーてー”ですよ。
シリーズ化は、エスネタはもう一本有るけど狙った風に書けなくて。お気楽に単発で書いていって
それが結果的にシリーズみたいに成ってればなぁっと。あ、でも雑魚スピ分少々はネタがあった。
>155
マナスーはやはりメスだけが吸マナ行為をするのだらうか。要研究。ユート君は鈍感だからいくら吸われても
気付かないのでしょうw
私は悠人の静脈には興味有りません! え?緑のマナスー嬢の得意箇所なんですか?!
>156
刺しつ刺されつです(ドカバキ アツいので全裸で。まったく悠人君はだらしないですね。
蚊取り線香はこの世界にはないのでしょうか。
それさえ有れば緑のマナスー嬢も淑婦のようになるでしょうに。昼間は。
>157
主を見捨てて引っ込むなんてなんてことでしょう。えーとあ、明日は早朝訓練か……残念w
悠人と一緒に草むしりでもやらせましょう。
でも三日くらいお預け食らわすと…………腹一杯になるまで離れないでしょう。窓閉めてもね。
エスペリア!エスペリア!エスペ(ボグシャッ!!)
セ……セリア嬢!?ち、違うんだこれは浮気ではなくうわなにをすあqすぇdfrgtyふじこいp;@
危険です、緑色のマナスーに吸われると余計なものまで飛び出ます(何
怯えている緑色マナスーを慰め、キツイお仕置き実行しなければなりません
……マナスーは食べられるのでしょうか
>158
3日お預け食らわした後お腹いっぱいになる過程を見てみとうございます。
お願いエロい人!(w
つーか漏れも含め、エロ分が足りてない人が多いのか?(w
―Attention―
えっと……この板は21歳未満の方は見たらめっ、ですよ?(汗
注:作者は別段某チェーンや某国に特別な感情を持ち合わせてはおりません。
「話は決まったようだな」
「そうね。このままじゃいつまでも埒が明かない事だし」
「ああ、いい加減それとなくってのも俺様の性分に合わなくなってきたしな」
「そうね。アタシもそんなに気が長い方じゃないし」
「大体アイツが全てにおいて悪いんだからな」
「そうね。自分からもうちょっと動いてくれればこんな事しなくても済んだんだけど」
「既成事実をつきつけてしまえばちったぁ素直になるだろうしな」
「そうね。悪く思わないでね、悠。すぐに楽にしてあげるから」
「じゃあ開始だな。misson〜…………」
「そうね、ってちょっと待って、それはエスペリアの十八番よ。口に出すと色々と面倒になるわ」
「おっと迂闊だったぜ。ここは第一詰め所だったな。じゃあ……」
「『そんなに流されたいんなら流してやるぜ作戦』、いくわよ」
「………………しくしくしくしく」
……………………
先制支援、決めます。
かぽーん…………
何故か獅子おどしの音が響く大浴場の中。悠人と光陰がのんびりと湯に浸かっている。
「あ〜今日の訓練もキツかったな〜悠人よ」
「お前はオルファを追い掛け回してただけだろうが。まったく、俺まで電撃に巻き込みやがって」
「しょうがないだろう、オルファちゃんが『パパ〜!』とかって泣きながらお前の方へ走ってくんだから」
わははは〜と光陰が頭に乗せていたタオルを取って顔を拭う。目で追いつつ悠人は溜息をついた。
「全くお前の方がよっぽどオヤジ臭いのにな……それで?なんで今日に限って俺を風呂に誘った?」
「別に〜たまには男同士で背中を流し合うのもいいんじゃないかと思ってな」
「ああ、まあそれはそうだな……お前が居れば誰か襲撃してくることも無いだろうし」
ふぃ〜とあらぬ方を見ながらくつろいでいた光陰が、悠人の何気ない一言に敏感に反応した。
「なにっ!お前そんなうらやましい性活を送っていたのか!俺はマロリガンで散々苦労していたというのに!」
「がぼがぼがぼっ!こら、やめろっ!その意味不明な誤植も含めてっ!」
「しっ………………来たな。静かにしろ、悠人」
「お前なに言って……もがもが」
「うるさい奴だな。いいから黙ってろって」
暴れる悠人の口を必死にタオルで押さえ込む光陰。そうこうしている内に向こうの方でがらっと扉の開く音が聞こえる。
誰かが入ってきたようだった。
「どうやら誰もいないようですねアセリア」
「ん。ナナルゥ、さっさと済まそう」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
「ほほうアセリアとナナルゥか、珍しい組み合わせだな」
入ってきたのがアセリアとナナルゥだと解説されて、何故か真っ赤になって暴れ出す悠人。
光陰は感慨深げに頷きながら、そこでやっと窒息しそうな悠人に気付いたのか、抑えていた手を緩めた。
「〜〜〜〜……ぶはっ!お前これが目的で……………………」
ぜいぜいと抗議の声を上げようとする悠人。しかしやや荒いその声が、少し大きかった。
「ん?何か声がしなかったかナナルゥ」
「……気のせいでしょう。さ、始めましょうか」
不審気な声を出すアセリア。しかしナナルゥが軽く流したお陰なのか、どうやら気付かれなかった。
「あぶないな悠人、そんな大声を出したら変態の烙印を押される事になるぜ」
「くっ……お前というやつは……」
「悔しがるのは後だ悠人、今俺達には大事な役目がある」
ヒソヒソ声で話し合う二人。どうでもいいが別に女湯に侵入した訳でもないのに妙に卑屈である。
「なんだ大事な役目って」
「まだ判らんのか悠人、誰もが一度は経験した事があるだろう?そう、林間学校しかり修学旅行しかり」
「ま、まさかお前…………」
「抜かりは無い。既に昼間絶好の鑑賞ポイントを押さえておいた。お前と楽しみを分かち合おうと思ってな」
「待て、おいちょっと!」
言いながら河童のように音も立てずに泳いでいく光陰を悠人は慌てて追いかけた。
「お、おいまずいって。いいかげんにしろ光陰」
「ここまで付いて来て今更何を言う。だからヘタレなんて噂を撒かれるんだ」
「なんで知ってっ!………………お前か…………………orz」
「ま、あんまり効果なかったけどな……お、ここだここだ」
「おい待てって」
悠人の制止をまったく聞かずに覗き込もうとする光陰。しかしその時女湯から響いた声が二人の動きをピタリと止めた。
「あ、ナナルゥ、そこいい」
「ここですか」
「ん…………ふぁっ」
「ではこちらも気持ちがいいでしょう?」
「あ……あぅ、ナナルゥ、そこはまだ少し痛い」
「そうですか、ではもう少し優しく」
「…………悠人よ」
「…………なんだ光陰」
「お前がしっかりしないからアセリアがレzぐぉっ」
「そんな訳ないだろ変なこと言うな光陰まさかアセリアがナナルゥとそんなはず」
支援
「いてててっ!……まったく、思いっきり動揺してるじゃねーか。どら、俺が確認してやる」
「ままままて光陰、まだ心の準備が」
「何が準備だ…………ってあれ?」
「お、おいどうした」
光陰が覗き穴にへばりついたまま動かなくなる。不安になった悠人が声を掛けようとした時再び女湯から声が響いた。
「これでさっぱりしましたかアセリア」
「ん、ナナルゥいつもサンキュ」
「そちらのお二人もいかがですか?」
いきなりこちらの方を向いて微笑んだナナルゥに、思いっきり動揺した二人は足を滑らせてしまった。
そのまま折り重なるように倒れこんでしまう。
がさがさがさっ!!
「ん?なんだナナルゥ、他に誰かいるのか?」
「いえ、勘違いだったようです。一つ貸しですよ」
「貸し?なんのことだ?」
「それよりも部屋に戻って洗った髪を早く拭きましょう。自然乾燥は髪を傷めますから」
くすくすと聞こえるナナルゥの忍び笑い。新鮮な感じを受けながらも悠人は女湯に向かって必死にぺこぺこ頭を下げていた。
かぽ〜ん…………
「悠人よ、たまには寿司でも食いたいな」
「いきなり何だ。お前は小○寿しでも食ってろ」
「○僧寿しって言えば最近見ないが、か○ぱ寿司の繁盛っぷりとなにか関係でもあるのだろうか?」
「かっ○寿司ってあれか?年中○ぐろ祭りをやってる」
「妙にインパクトあるんだよな、寿司と○っぱに因果関係がある訳じゃないのに」
「小○寿しだってなんかガキの食べるものみたいな感じだぞ」
「どっちもなに考えてんのかよく判らんな」
「意外と思想は同じとこにあるのかも知れないが」
「キム・○ョン・ヒからキム・ジョン・○ルみたいなモンか?」
「なんで反抗期の貧乏国が寿司の例えで出てくるんだ」
「………………」
「………………」
「やめよう、色々とヤバそうなネタだ」
「そうだなこれ以上刺激して世界地図が変わったら大変だ」
「まぁラキオスの風呂場を盗聴しているとも思えないけどな」
「………………」
「………………」
「北○○の人、冗談ですよ?」
「やめろと言うのに!」
がらがらがら
一息ついた二人が懐かしい故郷を思い出して良く判らない時事ネタ雑談を楽しんでいると、
またもや女湯の方へ誰かが入ってくる音がした。
「うわ〜誰もいませんよ〜!」
「ちょっとヘリオン、走ったら危ないわよ」
「大丈夫ですよぅ〜わわっ!」
「よっと、ほらごらんなさい」
「えへへっキョーコさま、ありがとうございます」
かぽーん…………
「………………どうした光陰、いかないのか?」
「それは死刑宣告か悠人。こんなに水気の多いところで俺に雷を喰らえってか?」
「いくら今日子でもそれはないだろ。自分も感電するって判ってて放電するか?」
「お前はまだ今日子の恐ろしさを知らないようだな。アイツは狙った相手だけに的確にダメージを与えられるんだ」
「いやまさかそんな物理法則を捻じ曲げるようなマネ出来る訳」
「あいつは、する。具体的には俺にならする。保障してもいいぜ、なんなら賭けるか?」
「……やめとこう。どちらにしても不毛な結果になるからな」
不毛な会話を繰り広げている二人に女湯から会話が割り込んできた。
「それにしてもヘリオンさぁ〜今日の訓練でもそうだけどもっと悠に話しかけなくっちゃ」
「…………へ?俺?」
またもや動きの止まる二人。悠人が間抜けな声をあげた。
二人は心持耳が大きくしながら黙り込んでしまう。女湯の声がはっきりしてきた。
「そ、そんなわたしなんか恐れ多いですよ〜」
「そんなことないって、悠もあれでヘリオンのこと気にかけてるみたいだからさ」
「え、え、え、そそそそうなんですか……?」
「そんな驚かなくても……そうそう、ヘリオンだってもっと悠と仲良くなりたいんでしょ?」
「…………は、はい〜」
「も〜かわいいんだからヘリオンってば!このこの」
「きゃっキョーコさま、変なところ触らないで下さい」
「う〜んやっぱりまだ発展途上ってとこね」
「わわわ〜っヒドイですよっ!ううう……確かにちっちゃいですけど……」
「ま、悠はどちらかと言えば大きい方が趣味って言われてるけどね」
「はぅっ、そうなんですか?」
「あはは、まあ気にしない気にしない。アイツちっちゃい娘もほっとけない性質だから」
「う〜素直に喜べないですぅ〜」
「うわキタね、悠人、鼻血を湯船に撒き散らすなって!」
抑えた手の隙間からぼたぼたと流血を滴らせている悠人だった。
やがて気が緩んだのか、ヘリオンがぽつぽつと本音を語り出す。
「わからないんです……結局私ってユートさまにとってなんなんだろうとかいつも気になっちゃうというか……」
「ちょっと落ち着いてヘリオン。確かに最近の悠はなんかふらふらしてるけどさ」
「そうなんですよぅ、優しいなって思うとアセリアさんにも同じ顔で笑いかけてそれが寂しいなって……」
「……………………」
「でもたまに話かけてくれてそれで嬉しくて寂しさなんて全部吹っ飛んじゃって……」
「……………………」
「でもおかしいですよね、それって。ユートさまどちらにも優しいのって。そういうのって二まt」
拳を握り締めながら力説するヘリオン。自分にとってタブーな単語が聞こえそうな気がして今日子は慌てた。
「ま、まぁしょうがないんじゃない?自分でも決められないのよそういうのって」
「キョーコさま、さっきと言ってることが違ってますよぅ」
「あ、あはは……」
ヘリオンにしては鋭い指摘に今日子は笑って誤魔化す。一方ヘリオンはそこでふっと寂しそうに顔を半分湯船に埋めた。
「でも、待ってるのってすごく苦しいです……こんなの初めてで……」
「ヘリオン…………ごめんね……」
「へ?なんでキョーコさまが謝れるんですか?」
「あ〜……いやぁほら、悠もいい加減ハッキリすればいいのにね…………ごめんねアセリア、この娘めっちゃ良い娘だわ」
「え?なにか言いましたか、キョーコさま」
「ああ、なんでもないなんでもない…………はぁ」
一方の男湯では、ぶすっとした顔が二つ向かい合っていた。
「おい悠人よ」
「なにもいうな」
「統括するとお前は誰でもいいということにがぼっ!」
「それ以上言うな」
「わひゃった、わひゃったから風呂桶をくちにひっこむはって」
「暴れるなよ。あまり大声を出すと変態の烙印を押される事になるぜ光陰」
「ぶはっ……落ち着けって悠人。大体お前、一体どっちが好きなんだ」
口をかくかくと揺らしながら顎の調子を窺っていた光陰がふと訊ねる。悠人は憮然としたままこう答えるしかなかった。
「どっちって……誰をだよ」
「ちぇ、今度は拗ねやがった。決まってるだろ、アセリアかヘリオンちゃんか。それとも他に誰かいるのか?」
予想通り、といった表情で光陰が呟く。その言葉に悠人は光陰の本気を悟ったが、それでも黙秘し続けた。
「……………………」
「ダンマリか。ま、いいけどな、俺は。お前と戦う理由も無くなっちまう事だし」
「光陰…………」
「じゃ、そういうことで。俺はちょっと行って来るわ」
いきなり会話を断ち切って立ち上がり、女湯へと歩き出す光陰。
一瞬呆然とした悠人だったが、それを見て思わず本音が漏れてしまった。
「ああ、行ってこい…………じゃなくて何処へっ!おいダメだ光陰、ヘリオンだけは許さん…………あ」
読み耽って支援し忘れてた...orz
ニヤニヤしながら振り向いた光陰を見て悠人はようやく嵌められた事に気付いた。
「クックッようやくカミングアウトしたな悠人よ…………お〜い今日子、作戦終了だっ!!」
「あ〜了解了解☆こっちにも途中から丸聞こえだったからね。よかったわね、ヘリオン」
「え、え、あの一体、あのあの……」
「な〜に赤くなっちゃってんのよっ!この幸せ者!」
「お、おい光陰!」
「ふふふ、俺の目は誤魔化せないぜ悠人。お前、アセリアの時は最後まで止めようとはしなかったのになぁ〜」
「なっなっそれは……」
「ホントよね〜アタシも悠がもし覗いてきたらどう力をセーブしようかとハラハラだったわよ〜」
「今日子……お前まで……」
「だからね悠、後は二人の問題っ!しっかりやんなさいよ!」
「あっ、キョーコさま待ってください!」
「ヘリオンはもう少し入ってるの。悠が話があるってさ」
「で、でもでも……」
「そういう訳だ。ちょっともったいないがヘリオンちゃんは任せたぜ」
「お、おい二人とも……」
がらがらがら……ぱたん。男湯と女湯、二つの扉が同時に閉まる。置いていかれた二人に沈黙が走った。
外の通路には、詰め所の面々が集まっていた。服を整えながらナナルゥがアセリアに問いかける。
「アセリア、これでよかったのですか」
「ん、ヘリオンといるときのユート、凄くいい顔をしている。わたしはそれが嬉しい。もっと仲良くなって欲しい」
「アセリア、意味判って言ってんの…………はぁ」
黙って聞いていた今日子が盛大な溜息をついた。暖簾に腕押し、という単語が浮かぶ。アセリアが首を傾げた。
「?どうした、キョーコ」
「なんでもない…………『ヤキモチ大作戦』、失敗…………」
「?」
「天然……いえ、なんでもありません。うかつでした、ここまでとは」
今日子と並んで落ち込んでいる風?なナナルゥの突っ込みに、珍しく静かな口調で光陰が訊ねる。
「ナナルゥこそ、いいのか?それにヒミカも」
「光陰、余計な事言わないの」
嗜める今日子にまぁまぁと半ば呆れ口調のヒミカが頬をぽりぽりと掻いていた。
「……ばれちゃってましたか。まぁしょうがないです、精一杯やった結果だし」
「それに、ユートさまはヘリオンに笑いかけている時が一番幸せそうですから」
「でもさ、あっちで落ち込んでるお姉ちゃんはどうする?」
どうやらファーレーンが落ち込んでいるのが気に入らないらしい。ニムントールがぶすっと口を挟んだ。
向こうの方でどんよりと溜息をついているファーレーン。完全に自爆だろう。
なぜか、クォーリンが慰めている。ネリーとシアーが訳も無く一緒にしゃがんでそれを見物していた。
まったく、ゆっくり落ち込んでる暇もないわね……今日子は少し苦笑しながら言った。
「そうね……みんなで自棄酒でもしましょうか、お祝いも含めて」
「明日エスペリアに怒られそうだけどね」
ヒミカの一言にみんながくすくすと笑い出した。一人、よく判っていないアセリアを除いて。
「まったくアイツら……」
壁一枚ごしにヘリオンの気配を感じながら悠人は呟いていた。
とりあえず、どうしたものか。途方にくれていると女湯から消え入るような声が聞こえた。
「あ、あの……ユートさま……」
「あ、ああ、どしたヘリオン?」
「………………」
「………………」
再び沈黙が走る。バカか俺は。どうしたじゃないだろう、中学生じゃあるまいし。
これじゃまるで新婚初夜……考えがヤバい方向に行きそうになって慌てて修正を試みる。
湯に浸したタオルで顔を拭いた。少しさっぱりする。
そうだよな、みんながここまでしてくれたんだ、俺もハッキリしなきゃな……軽く深呼吸して覚悟を決める。ごくりと喉がなった。
「俺さ、佳織って妹いるだろ?昔からアイツのことは俺が守るってムキになって、それでよく光陰辺りにからかわれたよ」
「ふふ、今もユートさまはそうですよう」
「そうか?両親が早く死んじまっててさ、アイツはいつも泣いていて……だからなおさらだったんだよな」
「………………はい」
「でさ、最初ヘリオンを見たときも……その、正直、妹みたいな感じしかしなかった」
「……は、い」
「でもさ、ヘリオンは俺に追いついてくれようとした。横に並んでくれようと何時も頑張ってくれている」
支援
支援
ヘリオンの返事が無いのを確認して、悠人は続けた。
「最近さ、ヘリオンが側にいてくれないと……その、なんだか凄く落ち着かないんだ、俺」
「ユ、ユートさま…………」
「だからさなんていうか……そんな女の子を……もう、妹としてなんて見れないっていうか……えっと…………」
「も、もう………………」
「つまりその……ええいっ!お、俺はヘリオンが好きだ!だからもっとヘリオンの側にいたい!側にいて欲しいんだっ!!」
言った。言ってしまった。心臓の音が物凄いことになっている。告白するのにこんなにマナを使うとは思わなかった。
「………………」
ヘリオンは黙ったままだ。告白の興奮からふと冷静になる。もしかして俺の早とちりだったんじゃないかと嫌な予感が頭をよぎった。
「………………」
生殺しのような沈黙が続く。悪い方悪い方へと考えが進んだ。ひょっとして嫌われてる?呆れられてるとか?……落ち着け。
「………………」
「……あの〜ヘリオン、さん?」
恐る恐る訊いてみる。へんじがない。しかばねのようだ…………じゃなくて、しかばね?あっ!
落ち着いて会話を振り返ってみる。告白に夢中になっていたが、ヘリオンが何か言いかけてたような。
「お、おいっ、ヘリオン、入るぞっ!!!」
言うや否や女湯に飛び込む。案の定ヘリオンは、すっかり茹で上がって湯船に浮いていた。
慌ててとっさに自分の部屋に連れてきてしまったはいいがどうするか。
冷静になった悠人は今の自分の状況をやっと理解し始めていた。「お持ち帰り」という単語が浮かんできて、慌てて頭を振った。
ベッドですうすうと寝息を立てるヘリオンをそっと見る。
ほんのり上気して頬を染めた顔。普段のお下げをすっかり下ろすと意外と長い黒のロングヘア。時折微かに動く口元から目が離せなくなった。
(ちっ、まだ返事も貰ってないっていうのに俺ってやつは……)
無理矢理ヘリオンから目を放し、椅子に腰掛ける。窓の外に映った月を眺めていると少し気持ちが落ち着いた。
とりあえずなにかで仰がなくっちゃなと探していると、後ろから囁くような声が聞こえた。
「………………ユートさま」
振り向くと、じっとこちらを見ているヘリオンの大きな黒い瞳に月が映りこんでいた。
全部を覗き込まれているような気がして悠人はまた少し気持ちが乱れた。
「ユートさま、ここは?」
「ああ、俺の部屋。ヘリオン風呂で倒れたんだよ、憶えてないか?」
悠人は声が上擦っていないかと不安だった。しかし直後、動揺したヘリオンの方がよっぽど上擦った声を上げた。
「ふぇ……ふええええ?ユ、ユートさまのお部屋?わ、わたしその……ってきゃあっ!」
起き上がろうとして初めて自分が裸だということに気付いたらしい。慌ててシーツを肩まで上げてう〜と上目遣いで睨んでいる。
「あ、あのユートさま、つかぬ事をお伺いしますけど……」
「……ああ悪い、緊急事態だったしその……少しだけ……」
「わ〜〜〜〜〜んっ!!!」
つ【支援】
「ああっ、で、出来るだけ見ないようにはしたからっ!大丈夫だって!」
なにが大丈夫なのか言っててよく判らなかったがとりあえず嘘は言っていない。悠人は誘惑に打ち克ってはいたのだ。
半泣きだったヘリオンが急に黙りこんだ。俯きながらちらちらとこちらを窺う。そしてぽつり、と呟いた。
シーツをぎゅっと握り締めた手が震えているのが見えた。
「あの〜わたし、こんなですけど…………本当に、いいんですか……」
「…………へ?」
何が?と訊きそうになって慌てて口をつぐんだ。先ほどの返事だ。最後まで聞いてはいたらしい……ってそんな事より。
「も、もちろん!ヘリオンじゃなきゃ駄目なんだ!そういうちょっとドジなところも含めてっ!」
「わわわっ、そこを強調しないで下さいよぅ〜〜〜〜」
「あ〜いや、そうじゃなくてその」
「…………ぐすっ……ありがとうございますぅ……わたしも、ユートさまのこと、好き、です…………」
「う…………あ、ありがとう…………」
はっきり意思表示してくれたヘリオンに思わず間抜けな応答をしてしまった。
でもまあこの方が俺達らしいのかもしれないとすぐに考え直す。目が離せない女の子。
心が通じた嬉しさで、なんとなく見詰め合ってしまう。
つぶらな黒い瞳がそっと目を閉じた。綺麗な睫毛が少し震えている。
悠人はその瞼に吸い込まれるように顔を近づけ、そして静かに唇を重ねた。
ただ触れただけの軽いキス。それでも離れた時にはこんなにも名残惜しい。
ヘリオンはというとぽーっと夢見心地なのか、目の焦点が全く定まっていなかった。
「…………ヘリオン?」
「ふぇっ?え、あ、あのあのあの……あ……ん…………」
その仕草が可愛くて、もう一度キスをする。今度はもう少し深く。舌で唇を軽く突付くように。
ちょっと驚いた後、素直にヘリオンは唇を開いた。ゆっくりと舌で舌をノックする。怯えて縮こまった舌が徐々に従い始めた。
「あ…………あん…………ふぁ…………」
絡み合う舌。いつの間にか悠人にしがみつく形になったヘリオンの顎を軽く上げさせる。そのまま唾液を送り込むと自然に飲み込んでくれた。
「ん…………ん……ん……こくっ…………ぷはぁっ」
喉元を嚥下したところで息が苦しくなったのだろう、ヘリオンが口を離してしまう。
つぅっと唇同士が細い糸で結ばれる。悠人は力強くヘリオンを抱き締めた。
「ユートさまぁ…………あっ……」
力の抜けたヘリオンが手元のシーツを落としてしまう。眩しいほど白く滑らかな肌が目に飛び込んできた。
生唾を飲み込みつつ、支援
慌てて引き上げようとするヘリオンの手をそっと制する。真っ赤になりながら、それでいて不思議そうにヘリオンが囁いた。
「あ、あの、ユート……さま…………あ……」
「あ…………はは…………」
拍子に見えてしまったのだろう、俯きつつちらちらと盗み見ている。もちろん、先程から自己主張している固くなったモノを。
今更隠す気もなかったがそう見られるとなかなか恥ずかしい。ごまかすようにヘリオンの首筋にキスをすることにした。
「あ、やんっ…………ぅんっ!」
決壊寸前だったがまだ理性は残っていた。下半身にも困ったものだがしょうがない。
それにヘリオンを大事にしたいという気持ちが何より優先しているのは確かだったから。ヘリオンはまだ幼い。よく知らないだろうし。
そんな感じで離れかけた悠人の、それでも決意をぶちこわしたのは囁くようなヘリオンの一言だった。
「あ、あの……ユートさまなら………………いい、です」
「…………へ?」
一瞬何を言われているのか判らなかった。そう言えばと、皆の噂を思い出す。耳年増、そんな単語が頭に浮かんだ。
「ででででもっ!あの、少し怖いですから……もう一度、キス、下さい……」
そう言って、胸に顔を埋めてくるヘリオン。縋るような瞳が潤んでいる。限界だった。軽く髪を撫ぜる。
「ヘリオン……好きだ……」
耳に口付けしながら囁いた悠人はそのまま静かにヘリオンに覆いかぶさっていった。
今度はヘリオンの方が積極的なキスだった。深く舌を絡めつつ唾液を送り込んでくる。甘い、幼いヘリオンの味がした。
甘美な、倒錯的な悦びに脳髄が痺れる。負けまいと(何にかよく判らないが)そっと胸に手を当てた。トクントクンと速い鼓動を感じる。
「ふぅっんっ……やぁ……」
すぐにヘリオンが甘い鼻息を漏らす。声に後押しをされているような気がしてゆっくりと手を動かし始めた。
「あ、あん、あん……」
小振りな、手の中にすっぽりと納まるサイズ。それでもその柔らかさは確かに女の子のものだった。
力を込めるたびにヘリオンの体がくすぐったそうに反応する。悠人は唇をずらし、首筋から鎖骨をなぞった。
「ぅんっ!」
「?」
大きな反応があった。試しに今度は鎖骨を甘噛みしてみる。ヘリオンが耐え切れず嬌声を上げた。
「ひぁっ!…………あぅんっ!…………ふぅっ!」
面白いのでそのまま手をずらし、胸の中心を先から根元に軽く擦ってみた。ヘリオンがぴくんぴくんと体をしならせる。
「あ……や、や……あうっ……」
鎖骨に当てていた口を既に硬くなっている乳首にあてると、今までで一番大きな声を上げてヘリオンの体が硬直した。
「うんっ……はっ……はっ……あ……あ……いゃ……ぁ………………ゃ、あ〜〜〜〜〜〜っ!!!」
「え…………」
「は〜〜は〜〜は〜〜…………」
ぐったりとしたヘリオンは全身に汗を吹きだしていた。
「ヘリオン……?」
息も絶え絶えのヘリオンはうつろな目で呆然と四肢を投げ出している。
経験の少ない悠人にもそれがイったのだということが一目で判った。
それにしても早すぎる。余程感度が良いのかそれとも……
「ユートさまぁ〜…………すきぃ……」
「…………………………」
なんというか。こんなにも好きでいてくれた女の子のこんな姿を見せ付けられて最早我慢できるはずがない。
太腿の辺りをそっと触るとぴくんっと一瞬反応したヘリオンだが嫌がるそぶりは見せない。
そのままするすると、肢の付け根まで手を上げていく。
「あ…………あ…………」
淡い茂みに辿り着いた時、初めてヘリオンが拒絶っぽい囁きを漏らした。
「あ……だ、だめです……ん……」
かまわずキスをしてなだめるように手を進めていく。幼い秘所に手が触れた時、そこはもう十分に潤っていた。
周辺をなぞるようにゆっくりとほぐしていく。
既に受け入れ態勢は十分出来ているようではあったが、今度は悠人がもっとヘリオンを感じさせたがっていた。
実に半端な嗜虐心だった。顔をずらし、まだ華奢な肢を持ち上げて肩に担ぐ。それだけで、ヘリオンの中心が全て晒される。
「やぁぁ……ユートさま、恥ずかしいですぅ……」
あまりの体勢にヘリオンが顔を覆ってイヤイヤをした。しかしその仕草が逆に悠人を興奮させる。
ヒクヒクと蠢いているピンク色に誘われるようにいきなり悠人は口を押し付けた。
「きゃぅっ!ユ、ユートさま、きたない……ひゃぁんっ!」
少女の香を思いっきり味わいながらキスを繰り返す。それだけでも一度絶頂を迎えていたヘリオンはいちいち敏感に反応した。
「あ、あう、あん、あん、あ、あ、…………」
担いだ細く白い肢がその度に跳ね上がる。滑らかな太腿にはしっとりと汗が滲み出て悠人の頬に体温を伝えていた。
喘ぎの周期が段々短くなっていく。
「あ、は、はぅっ、あ、あ、あ、…………あーーーーーっ!!!!」
そして悠人が隠れていたもっとも敏感な肉芽を舌でざらっと撫ぜたとき、ヘリオンは二度目の頂点を迎えていた。
支援
つ[支援]
目の前で激しい収縮を繰り返しているヘリオンを見て悠人は我慢の限界を感じた。急いで服を脱ぎ、再びヘリオンの覆いかぶさる。
肢の間に体を割り込ませ、ぎゅっとヘリオンを一度抱き締めた。夢見心地だったヘリオンがようやく状況に気付く。
「あ……ユート、さま…………」
「ヘリオン、いくよ」
「え…………あ…………はい…………ふ、ふつつかものですが、よろしくおねがいします……」
「…………ぷっ」
「えっ?えっ?わ、わたしまた何か間違えましたか〜?」
「くくく……いや、いいんだ、そんなヘリオンも好きだから」
「もぅ〜なんか誤魔化されてるみたいですぅ〜」
ぷぅっと頬を膨らませてじっと睨んでいたヘリオンはそこでトンでもないことを言い出した。
「……わたしとアセリアさん、どちらが好きですか……教えてくれなかったらもうこれ以上させてあげませんよ……」
このタイミング、この状態。バニッシャーの様に放たれた一言が悠人を見事に凍りつかせる。
しかし言葉のキツさとは裏腹に、ヘリオンは捨てられた仔犬の様な瞳でじっと悠人を見ていた。
きっと不安だったのだろう、ずっと。もちろん悠人は既に心の整理をつけた後であって答えを躊躇する理由は無いのだが……
(このタイミングで言ったらまるでヤリたいが為に答えたみたいになるじゃないかっ!)
いや、ヤリたいのはもちろんなのだが。悠人は激しいジレンマに身悶えした。
至近距離で百面相を繰り広げる悠人をしばらくじっと見ていたヘリオンがいきなりぷっと吹き出す。
「え?あ、あれ?」
「ふふふ…………さっきのお返しですよっ!ユートさまイジワルなんですから」
「お、お前なぁ……むっ!」
抗議の声が唇で塞がれる。そのまま背中に手を回したヘリオンと暫くベッドの上で転がりあった。やがて唇を離したヘリオンが耳元で囁く。
「……冗談です。ユートさまのこと……好きですから……」
「ヘリオン…………」
にっこりと微笑むヘリオン。感動した悠人はそっと両手でその頬を包んで…………思いっきり引っ張った。
「いひゃひゃ〜〜っ!いひゃい、いひゃいです、ユートひゃまぁ〜〜〜!」
「この口かっ、この口が悪いのかっ!」
「ご、ごめんにゃひゃい〜、もうひまへんはら〜」
じたばたと涙目で暴れるヘリオン。悠人はやっと手を放してじっとヘリオンを見つめた。
う〜と頬を擦っていたヘリオンがその視線に気が付く。
「確かにアセリアに惹かれていた時期があることは認める。でも今はヘリオンが一番大事だ。これからもずっとそうしたいと思ってる」
「ユートさま……はい……夢みたい、です…………」
目を閉じたヘリオンの体から力が抜けた。それを確認して、悠人がそっと自分のモノをヘリオンに宛がう。
一瞬ピクリと瞼が動いたが、ヘリオンはそれ以上なんの反応もしなかった。静かに呼吸している胸が軽く揺れている。
「ヘリオン、大事にするから……!」
そう言って悠人は腰を突き出していた。めりっという感触と共に、僅かに頭の部分が潜り込んだ。
「んんっ!あっ!はぅっ!」
狭い膣口は初めて受け入れる異性に驚いて収縮を繰り返し、容易に先へ進めない。
悠人は焦らないよう慎重に少しずつ進めた。一番太い部分が通過した時、ヘリオンが最も苦痛の色を浮かべた。
「あぅっ!はっ!あ、あぅ!」
小刻みに突き入れる度ヘリオンが短い悲鳴を上げる。最初は先しか入らなかった竿が四分の一程埋まった所で強い抵抗があった。
わなわなと硬直しているヘリオンの髪をそっと撫ぜる。気付いたヘリオンが薄っすらと目を開けてそっと微笑んだ。
ヘリオンが少し緊張を解いたのを確認して悠人は残りを一気に突き入れた。
「はっ…………あーーーーーーーっ!!!」
ずぶずぶと埋まった先端がコツリと固いざらざらした処に到達する。
ヘリオンの一番深い処を感じながら悠人は荒い息を繰り返していた。
呼吸に合わせて収縮する膣が痛いほど締め付けてくる。見ると痛々しく開かれた秘裂からは赤いものが滲み出てきていた。
それでも未成熟なヘリオンの身体は健気に悠人を受け入れていた。
「だ、大丈夫か、ヘリオン?」
ぐったりとしたヘリオンに声をかける。
相当痛いのだろう、目尻に涙を浮かべたまま、それでもヘリオンはエヘヘとはにかんでいた。
「ごめんな、痛かったろ……?」
「は、はい少し……でもなんでだろ、嬉しいんです凄く……こうしてユートさまを感じられて…………あっ痛っ!」
「ご、ごめん…………」
「い、いえ、いいんです…………嬉しい…………あぅ……」
あまりにも健気な言葉と仕草にいちいち反応したモノが膨らんでヘリオンを圧迫してしまう。その矛盾に我ながら悠人は困った。
しかし肝心のヘリオンはその反応が嬉しいらしく、むしろ幸せそうな表情を浮かべている。
やがて呼吸が落ち着いてきたヘリオンは窺うように悠人に囁いた。
「あの……もう大丈夫ですから……動いてください……」
「え、でもまだ……」
「まだちょっと痛いんです……だから、早く痛くなくなるように、ユートさまが……して、下さい…………」
「………………」
切れた。頭の中で、何かが。悠人は無言でヘリオンの片足を掲げると、より深く挿入する態勢を取る。
そしてどこで覚えたのか、指を微かに顔を覗かせている赤い小さな舌に触れるか触れない様そえて小刻みに腰を動かし始めた。
こうするとダイレクトに挿入の刺激が敏感な肉芽に伝わる。しばらくそうしていると、ヘリオンが徐々に嬌声を上げ始めた。
「え…………はっ、はぁん!痛っ、な、なに…………きゃぅぅ〜!!」
幼い性が徐々に開かれていく。喘ぎ声に甘いものが混じり始めた時、悠人は攻撃を切り替えた。
「きゃぁぁっ……ひゃぁん、ひゃぁんっ!あっ、あっ、ああ〜〜〜」
予想通り性感帯の鎖骨を舐められたヘリオンの体温が上がった。悠人が強く吸ってももう快感しか感じないらしい。
調子に乗って首筋から乳首までどんどんキスマークをつけていく。つけられるたび締め付けるヘリオンの中がそのつど理性を焼き切った。
「ふぁん、ふぁん、あ、あ、ユートさま、ユート……さまぁ…………」
喘ぎ声がどんどん掠れていく。受け入れる快感に体がついていかないのだ。それでも悠人は攻撃を止めなかった。
脇に両腕を入れて肩を抱きこむ。腰の動きに円運動を加え、最奥まで突き刺したままグリグリと肉芽を擦り上げた。
ひぃっと細い悲鳴を上げたヘリオンが体をぶるぶると震わせる。三回目の絶頂。物凄い締め付けと快感が悠人を襲った。
ぐっと根元に力を込めてそれをやり過ごす。もっともっとこの可愛い女の子の中に入っていたかった。
「あ、あ、あ…………」
軽く開いた口から涎を垂らしているヘリオンに貪るようにキスをする。
半分意識が飛んでいるにもかかわらずヘリオンは懸命に応えてくれた。
「ん…………ん…………ふぅ…………好きぃ…………好きぃ…………」
うわ言のように繰り返すヘリオン。しばらくぺちゃぺちゃという交わる音だけが部屋に響いた。
し、支援っ!
頃合をみて悠人が再び動き出した。
もう十分に練れているヘリオンのそこはそれでも悠人の全部を収めきれない。
限界まで開かれた秘唇からはしかしもう赤いものは流れていなかった。
出し入れするたびにじゅぶじゅぶと音を立てて白い愛液が溢れ出る。
十分に潤った熱いその中で動かすたびに無数の襞があらゆる方向から悠人に刺激を与え続けていた。
「あ…………あ…………あ…………」
押し寄せる快感に敏感に反応する体は限界を超えてヘリオンを突き上げていた。
悠人の動きに合わせて揺さぶられる中、朦朧とした意識でそれでも懸命に悠人を受け止めようとしている。
「んっ……んぅ……あぅ…………きゃっ!あああっ!」
突然悠人がヘリオンを抱いたまま起き上がった。繋がったままのヘリオンはそのまま悠人に跨る格好になる。
小さな尻に手を当て上半身だけ起き上がったまま、悠人はヘリオンを突き上げた。
「あっぁぁぁ……あぅっ、あうっ、はぁっ……」
口をぱくぱくさせ、目を白黒させる。
自らの重みでより深く悠人を飲み込んだまま、ヘリオンは呼吸もままならない快感に翻弄され続けた。
ぐりぐりと子宮に押し付けられる熱いものがたまにごりごりと強く圧迫してくる。内臓を押し上げられるような感覚。
恐怖に近い感情すら悦楽に変換されて頭の中が白くなっていく。
「ユートさま、ユートさま、……ユートさまぁ……ユー…………」
ひゅーひゅーともはや声にならない喘ぎを出したとき、ヘリオンはまたベッドに倒されていた。乳房を胸板で押しつぶされる。
「あうっ!」
「ヘリオン……そろそろ…………」
悠人の言葉を少女の本能で悟ったヘリオンは汗まみれで微笑んだ。
「わたし…………きてっ、…………あっ、あっ、はあっ、あああああ」
ヘリオンの言葉を最後まで聞かず、悠人がラストスパートをかける。
今までで一番激しいその動きに、ヘリオンは今自分がどんな状態なのかまるで判らなくなった。
ただ悠人を感じる一点に思考が集中させられる。自分が悠人をちゃんと受け止めている。その事実が嬉しかった。
「あっ、あっあっあっ…………」
声の周期が短くなると共にヘリオンの中の痙攣が小刻みになっていく。限界の予感に悠人は腰のストロークを最大にした。
ほとんど抜き取るまで引いた後、思い切り突き出す。戻ろうとざわめく膣壁の波を掻き分けるように、ヘリオンの最奥へと突き刺した。
「あ、あ、あ、あ…………ふ、ぅっ……あーーーーーーーーっっ!!!!!」
一瞬息を止めたヘリオンがこれまでにないほど大きな嬌声を上げて頂点に達した。
うねる様にぎゅっと膣全体が痙攣し、竿が熱く柔らかく締め上げられる。
「……くぅっ!」
びゅうっ!
悠人は先端を子宮に押し付けたまま白い飛沫を吐き出していた。
「きゃぁっ!あ、あ、あ……あぅ……うっ、うん……」
物凄い勢いで迸る熱い感覚にヘリオンの中が更にうねる。頭の中が真っ白になる浮遊感にヘリオンは悶えた。
ぎゅっと力を込めて悠人にしがみ付く。背中に爪を立てられて悠人は快感のあまり鳥肌が立った。
びゅっびゅっ……
悠人の放出は中々収まらない。小さい膣はその全てを受け止めきれず、既にこぽこぽとあふれ出してきている。
「あ…………あ…………ユート……さま…………」
悠人はヘリオンの子宮にぐりぐりと先を押し当てて、最後の一滴まで注ぎこんでいた。
そうしてようやくヘリオンを抱く腕の力を緩める。力尽きたヘリオンが、ぐったりと悠人の胸に収まった。
気を失ったのか、静かな鼓動の音しか聞こえない。温もりが、心地よかった。
悠人はしばらく繋がったまま、ヘリオンの体温を感じていた。
朝の光が眩しい。ぼんやりとした頭でそんな事を考える。
目の前でヘリオンがすぅすぅと寝息を立てている。すっかり乱れてしまった髪を撫ぜて整えてやる。
汗で張り付いた前髪に触れた時、うう〜んとヘリオンが目を覚ました。
「あぅ〜〜眩しい…………ユート、さま?……ん…………」
「お、おいおい……」
いきなり抱きついてきたヘリオンを悠人は慌てて受け止める。
確認してすぐに胸に鼻を擦りつけて来るヘリオンの仕草は、正に仔犬そのものだった。
腕の中で小さく収まった女の子の匂いがくすぐったく鼻腔に広がる。
悠人は朝からイケナイ気持ちになりそうなのを必死に堪えて囁いた。
「さ、起きようぜヘリオン。そろそろ行かないと…………」
「…………やだ」
「やだって、そんなこと言ったって」
「ユートさまが起こして下さい」
「……そうやって甘えるのがヘリオンの悪い癖だな」
「そうやって誤魔化すのがユートさまの悪い癖ですよ」
「………………」
「………………」
「……………………ぷっ」
「……………………ふふっ」
額をコツンと当てて笑いあう。ひとしきり笑った後、ヘリオンが不思議そうな顔をした。
「…………あれ?」
「ん?どした、ヘリオン……って、おわっ!」
疑問の声を無視して、ヘリオンは急に悠人に抱きついた。また鼻を擦り付けてくるヘリオンに驚いた悠人は身を捩って抵抗する。
「おいこら、やめろって。くすぐったい」
「う〜〜〜ん………………」
軽い抗議が届いたのか、ぱっと離れると、今度はくんくんと自分の腕の辺りに鼻をひく付かせている。
その行動がよく判らないまま、悠人はとりあえず声を掛けた。
「ヘリオン。どうでもいいけど、とりあえず起きよう」
「あ、は、はい…………あ、あれれ?」
首を傾げながら立ち上がろうとしたヘリオンは、しかしその場にぺたん、と再び座り込んでしまう。
先に立っていた悠人は不思議そうにその様子を覗き込んだ。
「…………なにやってんだ?」
「…………ふぇぇ〜ん、立てませ〜〜〜ん」
ヘリオンが、情けない声を上げた。
「う〜ユートさまが悪いんですよぅ〜…………ケダモノですぅ〜」
「なっ!どこでそんな単語を!大体ヘリオンが可愛すぎるのが悪いんじゃないか…………なんでニヤニヤしてるんだ?」
「えへへ〜気付いてないんですか〜?じゃ、ナイショですよう」
「う、なんとなくキャラ変わってないかお前……まあいいや、立てるか?」
「はいっ!もう大丈夫です!それよりユートさま……」
「え?なに?」
背伸びをして悠人の耳に口を当てたヘリオンが囁く。ぎゅっとシーツの裾を掴んだまま。
――――もうどうやったら独りで起きられるか忘れちゃいました……ユート……さんのせいですよ…………
支援
悠人の匂いが以前とは違う。微かに混じっているのは自分の匂い。
そして、自分の匂いも違う。それはもう、悠人の匂いに包まれている。
新しい匂い。それはそのまま二人の関係が新しくなった証拠でもあった。
ヘリオンは、自分から腕を絡めた。恥ずかしそうにはにかむ恋人の横顔を見上げながら。居場所の匂いを確認するように。
ところで。
「おはよう…………ってうわっなんだこりゃ!」
「うわわ〜みなさんお酒臭いです〜」
食堂にやってきた二人が見たのは死屍累々の山だった。
更にその夜。
「ね〜ヘリオン、その痣みたいなの、一体な〜に〜?」
「う、うん、体中についてるね……いたくない?」
「「「 な ん で す っ て 〜 〜 っ !!! 」」」
浴場でヘリオンが体中のキスマークを皆から追及されたのは言うまでも無かった。
205 :
信頼の人:05/01/24 23:17:29 ID:NBQxb2eb
Y あとがき
とりあえず、書いてる時より投稿している時の方が何倍も恥ずかしいという事が判りましたorz
支援して頂いた方、有難うございました。
誤字脱字、今回特にハリオンマジック等ご指摘があれば幸いです。
>>信頼の人氏
GJ、GJです!存分にハァハァさせていただきました〜。
心がまたヘリオンに傾いてゆく〜。
時に
>>169、「鹿威し」が「獅子おどし」になってます。
>205
お疲れ様でした。
エロ分補充完了つーかエロっ!ハァハァ
信頼氏は鎖骨がお好きデスカ?(w
相変らず周りのキャラも良い味だしてますなぁ。
ナナルゥが特に美味しかったです。
ごちそうさまでしたー。
やってくれたぜ、信頼さんGJ!!!
寿司ネタでお茶を濁すような人ではないと信頼してました!!旨い事言うなあ、我ながら。
鎖骨ってこの事だったのか。ユート君意外とテクニシャン...ボーゼン
ヘリオンの一言くらいではエトランジェのスキルはバニッシュされません。むしろ情熱UPのパッションか?
しかしラキオス軍総力でこの二人を応援するとは。ええいっ、邪魔する香具師はいないのかっ!
ファーレーン、いつもの腹黒はどこへ行った!?キミに賭けていたのに...ッ!
うぐぐ、冷静に支援に回ろうと思ってたのですが、途中から我を忘れてしまいました。
どうしましょう、涎が...涎が止まりません。(←きたないなあ、もう)
・・・・・・性欲を持て余す。
ベッドの上でごろごろと転がりながら俺は元気になった自分のモノを見下ろす。
仰向けになればヘソにつくほど反り上がり、俯せになれば微妙に気持ちいい。
最近は行軍続きで抜く暇もなかったしな…もう一週間近く溜まっている。
『契約者よ、体に悪いぞ』
うっさいバカ剣。お前は次に妖精を襲えと言う。
『妖精を襲えば……ハッ!?』
いいから黙っててくれ。さすがにお前の相手をしているほど余裕がない。
『…寝る』
ふて寝したようだ。まあその方が精神衛生上いいだろう。
そう、俺はこれからオナニーをする。するったらする。
エスペリアにスピリットは道具じゃないと断言した以上、流石に呼び出してイタす
わけにはいかない。だからこその自家発電だ。
俺はズボンを脱ぎ、横になる。そしてベッドの下に隠してあるオカズを……?
あ、あれ?ない……?ラキオス美女・美少女厳選集が!
顔をベッドの下にやり、所在を確かめる…と、そこに一枚の紙切れがあった。
手に取ってみる…
【全て処分いたしました。ご入り用の際はお呼びくださいね byエスペリア】
「ああぁぁぁぁああぁぁ……orz」
お、俺の…俺の聖書が…
こんな衝撃は佳織にアダルトビデオ(SM)で自家発電を見られたとき以来の物だ…
はあ…それじゃ妄想しかないか…だれをオカズにすればいいんだろう…
…スピリット隊しかいないよなぁ…みんな標準を超えた美人、美少女揃いだし。
さて、だれにしようかな…
1.ネリー&シアー
2.セリア
3.ナナルゥ
4.ヒミカ
5.ハリオン
6.ファーレーン&ニムントール
7.ヘリオン
5.ハリオン
「ふふ〜、ユート様ったらおっぱいがそんなに好きなんですか〜?」
ハリオンの胸に手を這わせ、ゆっくりと揉みしだく。
どこまでも埋まっていきそうな柔らかさ、そしてしっかりと指に弾力を返してくる。
「ハリオンの胸…気持ちいいな」
たっぷりとボリュームがあり、吸い付いてくるような肌。
俺は我を忘れてハリオンの胸を味わい続けた。
「あんっ、ユート様ぁ…激しすぎますよ〜」
「ハリオン、ハリオン…んっ」
「あ、ひんっ!か、噛んじゃ駄目ですよ〜」
胸の大きさに比べて小さな乳首を甘噛みした。
こりこりとした感触、僅かに甘い味が口の中に広がる。
「ひゃんっ…ゆ、ユート様赤ちゃんみたいですよ〜」
乳首に舌を這わせ、先を尖らせてぐりぐりと弄ぶ。
そしてちゅう、と吸い上げた。
「あ、きゅぅん!だめです…なにか出ちゃいます〜!」
ハリオンの手が頭を押さえつける。だけどそんなことはお構いなしに吸い上げる。
柔らかくて、固くて、気持ちいいハリオンの胸。すでに俺は夢中になっていた。
「う、あんっ!あぁ…で、出ちゃいます〜…ユートさまぁ〜…!」
「んっ…んんっ?」
ハリオンの胸を吸い上げていた口の中に、甘みが広がった。
おもわず口を乳首から離すと…
「あ、ああ…でちゃい、ました〜…」
その豊満な胸の先端から、白いミルクが勢いよく飛び出していた。
「ハリオン…イヤらしいおっぱいだな」
俺は母乳を出す乳首を二ついっぺんにくわえ、一気に吸った。
ホースから出てくる水のように次々と溢れ出てくるミルク。
「や、やあぁ…ゆーとさま、き、きもひいいれふ〜…ひゃあぁん!」
あとからあとから湧き出てくる母乳、俺はそれを一心不乱に飲み干していく。
「あ、あ、ふあ…!な、なにかきちゃいます〜!あぅ…はぁ!!」
「んはっ…イッていいぞ、ハリオン!」
「きもちよすぎて…あうっ!おっぱいだけで…イッちゃいます〜……ん、ぅあ!!」
ビク、ビクとハリオンは体を突っ張らせ、母乳を噴水のように吐き出して絶頂に至った。
「ふぅ…ハリオン、そんなに良かったか?」
「あ…ぅ〜、ユートさまぁ〜…」
ときおり噴き出す母乳に体を白く染め上げられ、恍惚の表情を浮かべるハリオン。
その姿はまるで大量の精を浴びたかのように見え、俺の頭を痺れさせた。
「こっちは…はは、胸だけでこんなにびしょびしょになってるのか」
無造作にハリオンの秘所に手をやると、そこはすでに濡れきっていた。
「ユート様、とてもお上手ですから〜…いっぱい感じてしまいました〜」
恥じらうことなく甘美な笑みを浮かべて俺の指を受け入れるハリオン。
滑った水音をたてて俺の指はハリオンの膣内に潜り込んだ。
「はあぁぁん〜…あはぁ!」
喚起の声を上げ、ハリオンは軽い絶頂に至ったようだ。
「…これなら前戯は必要ないな、ハリオン?」
秘所から抜き出した指は、ぬめりを漏った液体がまとわりついていた。
俺はハリオンの目の前でそれをいじり回し、意地の悪い笑みを浮かべる。
「あぁん…いじわるなんですから〜…お姉さん怒っちゃいますよ〜」
そう言ってはいるが、ハリオンはとろけるような笑みを浮かべている。
その表情はとても淫靡で、男を誘うものだった。
「ハリオン、いいか?」
すでにはち切れそうになっている逸物をなんとかズボンからとりだし、ハリオンの
膣口にあてがう。
「はい〜…ユート様ならお姉さん、許しちゃいますよ〜」
その言葉を受け、俺はゆっくりと腰を前に突きだした。
亀頭が柔らかい膣内に入り込み、じわじわと押し広げていく。
「あ、はぁんっ…お、っきいで、す〜…」
充分に潤滑液が出ていたためハリオンの声に苦痛の色はない。
むしろ男を迎えることの悦び、そして快楽の声色が先にあった。
「すご…ハリオンの中、うねって…吸い付いてくる」
亀頭が入り込み、一気に腰を進めた悠人は、ハリオンの膣の感触に思わず声を漏らした。
肉棒を隈無く包み、全体で刺激し続けてくるその快楽に思わず腰砕けになる。
「あぁっ!ゆ、ユート様の…素敵すぎます〜!!」
だが、それはハリオンも同じようだった。
俺のモノを受け入れたと同時、軽く達したようだ。ヒクヒクと膣内が痙攣している。
ゆっくりしてたら…先にイッちゃうな。
「あ、はぅっ!そ、んないきなり〜!はげ、し、すぎ、ますぅ〜!!」
ハリオンの嘆願を無視し、一心不乱に腰を降り続ける。そうでもしないと
この気持ちよさにすぐ射精してしまう。
一気に先端まで引き抜き――――
「はぁんっ!ぬ、抜いちゃ――」
子宮口まで叩きつける!
「ひあぁぁぁああ!!い、いぃですぅ〜!!」
「ほらっ!おっぱいが漏れてるぞっ!」
俺は快楽に咽ぶハリオンの胸を掴み、片方をハリオンの口に咥えさせた。
「しっかり飲めよ、ハリオンっ!」
「は、い〜…ん。じゅりゅっ…ん、ぷあっ!お、いし…」
愛おしげに自らの胸を啜りあげ、俺の与える快楽に溺れるハリオンを見るうちに、
急速に射精感が押し寄せてきた。
「くぁっ!で、出るぞハリオン!!」
「は、はい〜…いっぱい、いっぱい射精してください〜!!」
搾り取られるような膣内の動きに合わせ、俺はハリオンの最奥まで突き入れた。
「うぁっ!あ、だ、駄目ですぅ〜…わた、わたしも…イッちゃう――――――!!」
今までにないほど膣内が締め付けあげられ、俺も一気に射精感が頂点に達した。
「あ、ぐ…で、射精る――――!」
爆発する快楽、体中がただ快楽のためにあると錯覚するほどそれを感じながら、
俺はハリオンの膣内に全てを流し込んだ――――
「…はあ」
妄想を終えて残るのは虚しさだけだ。どっかで聞いたことのある格言が頭の中で過ぎった。
シーツの上に吐き出された粘度の高い白濁液を見やり、俺はため息をついた。
この世界では俺達エトランジェはマナで構成されている…つまり、精液も
放っておけばそのままマナに還るわけだ。
「……寝るか」
一発抜いてすっきりした一物を抱え、俺は自己嫌悪と共に布団に潜り込んだ。
前の選択肢に戻りますか? Y/N
適当に三十分で殴り書きしました。
雑魚スピではハリオンが一番好きです…次点でセリア
>>信頼の人氏
ヘリオンいいなぁ…エロいし、自分色に染めたくなりますw
アセリアとの3Pを期待した私は吊ってきた方がいいんでしょうかorz
うおおっ!立て続けにエロ分が二つも!
>>215氏
グッジョブです。
マインドの低い私はきっとエスペリアを呼んでしまいます。
>>205 信頼の人さん
乙&GJです!
あぁ、一体どうなる事かとハラハラしていた二人の関係が
ついに、ついに一つに結ばれた……って言葉を飾ってもショウガナイ……
ひ た す ら 大 興 奮 す る ば か り でした。
他のスピとの関係もしっかり清算出来てるのですよねぇ。
涙を呑んだ彼女たちの祝福もしっかり受け止めような、悠人君よぅ。
>>215さん
やっぱり
ハリオンは
工ろゐ
な
ハァハァ
妄想だけでなく、是非とも実践に到って欲しいものですw
>215
うわーいまたエロ分補充〜乙ですた。
選択肢はYes→2でおながいします(w
30分でコレだけの物書けるんですか…尊敬しますマジ。
名前はエロい人もしくは妄想のひt(パァン
219 :
憂鬱の人:05/01/25 00:46:16 ID:IuxErdcw
皆様、お気を付けくだされ。
今宵のスレは桃色のマナに満ち溢れておりますゆえ...
ともあれ、GJでした、215氏!!
うん、でも、やはり妄想だけでは勿体ない気が。
母乳、もとい母性あふれるハリオン姉、何とかしてあげてw
>信頼の人さん
GJ…GJGJGJGJGJGJGJGJGJ〜〜〜〜〜〜
前半のやりとりを吹き飛ばす様な(個人的にも)理想的な濡れ場!
ヘリオンたん…エ・○・イ・ぞぉぉぉ〜〜〜〜〜〜(某料理漫画の異世界への扉を開く叫び風(ぉ
現状
いろいろと忘れてきたので、アセリア再プレイ中〜
…私生活はそれどころではないんだけどね〜
>>205 信頼の人さん
乙です。アセリア、そして他のスピたちよ強く生きろ・・・
まぁそれはさておき、よかったねヘリオン。おめでとう。
>>215さん
モニターが赤く染まる所でしたよ!GJ。
えー、ぜひとも3番もおねがいしますw
今日のこの桃色のマナは一体なんなのでしょうね?
・・・ふぅ、パソがこのままではシャ○専用になるんで撤退を・・・
>205
アセリア〜〜〜ホントにいいんかいっ?
そこはかとなくではなくユートムカツク。
ってのが正直なところです。胸がもやもやしますw NTR属性はないのだよ〜<NTRとは違うか
ふられる方に感情移入してしまうのでした。
アセリアにまだハッキリ言ってないと思うのですが、ユート君しっかり決めて欲しい。それとも
X−10で言ったことになるのでしょうか。
もう一話有るのでしょうけど、もしかしてやっぱり信頼さんの掌の上?
求めのフラグは正解だったのか。
「安息」との絡みを断って考えられれば良いのだろうけど。パラレルなのだろうけど。
アセリアが積み重ねてきた物を考えると……「回帰」単品でも……ムリカモorz
一人、批判的でほんとにスマソ。イタモノ耐性は有るつもりだったのだけど。
ヘリオンに関してはエロエロでハァハァしますた。ケダモノめっ!
ヘリハリコンビのエロが同時に見れて(つД`)ウレシイ
このままだとア&セリアに対抗してヘリ&ハリオン劇場が・・・
そういえば昔、エロ大王(仮名)で競演して以来、あんま見てないなぁ、ヘリ&ハリ・・・
何も知らないヘリオンにハリオンが優しく、かつエロくいろいろ教える話・・・
(;´Д`)誰か書いて〜ハァハァ
自分では妄想大爆発してもはや言葉にできません_| ̄|○
>>205 うぉーつかれさま
ついに結ばれた二人は次回…
二日酔いで倒れてる他の面々から食堂の片付けを押し付けられる
のだった
なわけないとしてw、ある意味この後が大事なわけで。
がんがれー、とお待ちしております。
>>215 そこまでしといて選ばれないどころか選択肢にも挙がらないエスペリアw
三十分とはパフォーマンス高いですな。
これからもよろしくです〜
225 :
憂鬱の人:05/01/25 09:05:35 ID:IuxErdcw
>>222 そっか、これって「安息」の続きだったんだっけ...
今さら言えない...アセリアの存在自体を忘れてたなんて...
なんて忘れっぽい読者なんだ、自分...orz
ハッ!?こ、これは...雑魚スピ中毒!?
>>215 こんな調子でハリオンがいっしょにE化したら、なんというか、ものすごいことになりそうで。
Eハリオン「ふふ〜よかったー、これからもずっーとおっぱいあげられますね〜」
聖賢者ユウト「…(゚∀゚)!!」
そんなんで永劫の戦いなんてできんのかよって感じw
>>205 信頼の人さん
GJ!おつかれさまです。
本命が決まって落ち込むスピ達の酒盛りは
酷いことになりそうですね…
>>215さん
私は、ぜひとも4を……
今日は桃色のマナの補充ができた
腹ぁいっぱいだ……
228 :
215:05/01/25 20:01:56 ID:fI19W6nK
>216さん
エスペリアを呼んだら噛まれてしまいそうで((((゚д゚;;))))ガクガクブルブル
やめてエスペリアエスペリアやめて
>217さん
妄想だからこそのぼにうなのですw
揉みしだかなきゃたゆんたゆんを!
>218さん
セ・リ・ア!セ・リ・ア!!(AA略
でもツンデレは見るのは好きですが書くのは苦手…でも頑張ってみます
>憂鬱さん
悠人君には妄想でちょうどいいのですw
現実ではハリオンお姉さんに膝枕&耳掻きで勘弁してください_○/|_ヘコー
229 :
215:05/01/25 20:02:48 ID:fI19W6nK
>221さん
一応雑魚スピ別シチュは考えております。
3番だと…悠人を捕まえていろいr(ry
>おにぎりさん
ヘリハリ劇場…書いてみたいですけど自分がやるとマニアックな方向に向かいそうな悪寒orz
その妄想を何とかして具現化して欲しいですw
>224さん
雑魚スピ分補充なのでメインの連中には外れてもらいました。
書いたのは三十分ですが、構想(妄想)は一日かけますた。仕事中に
ハリオンの母乳プレイを考え続けている自分…ダメポorz
>226さん
m9(・∀・)ソレダ!永遠にぼにうプレイ…(*゚∀゚)=3 ハァハァ
>227さん
4番は生真面目で頑固者さん。でも実は誰かに守ってほしいと思っているのかも。
堕ちたときは一番激しいかも知れませんw
「えへ、……ふふふふふふふふ」
この上もなく幸せそうに頬を緩めながら、セリアが悠人に抱きつく。
一瞬、困ったような表情を浮かべた悠人は、けれど、セリアの為すがままにベッドに倒れこむ。
トンッ、という軽やかな音が悠人とセリアを歓迎する。仕方ないな、なんて雰囲気を滲ませながら、
胸に抱きついているセリアの髪を悠人が掻きあげた。
お風呂からあがったばかりだから、少し濡れている。
どんな風に思われているのかセリアは不安だったけれど、顔をあげて確かめる勇気はなかった。
それよりも、悠人に髪を掻きあげられている現実の方が重要だった。
本音を言えば、抱きしめ返して欲しかったけれど。
「――なぁ、セリア」
おずおずと悠人が切り出す。
「…………何?」
「離れられないか?」
「いや」
駄々をこねる子供のようにセリアが答える。
ぎゅ、と強く悠人に抱きつく仕草は、まさに子供そのもの。
これからするであろう行為を考えれば、離れないければいけないのは明白。
身動きできない体勢でセリアが抱きついているのだ。
一回離れて、仕切りなおしをしなければ、次のステップには進めない。
――それは、分かる。分かるんだけれども、もし、離れたら、これが夢で終わってしまいそうで……
「……離れない。ずっとこのまま」
悠人の胸に顔を押し付けてセリアが言う。はぁ、というため息が聞こえた後、
「――分かったよ。セリアの準備が整うまでずっと抱きしめててやるから」
背中に腕が回される感触。心地よい幸福感に包まれながら、セリアは意識が遠くなって行くのを、
まるで他人事のように考えていた。
目が覚める。映るのは天井。それも悠人の方じゃなくて、変わりない自分の方。
寝起きは良い方だ。だから分かった。今のが夢だということに。
「――――ううううう」
涙が流れないように必死に耐えながら、バンバンとベッドに八つ当たりする。
「う、うぇ……」
――だめだ、耐えられない。
夢にリアリティが在り過ぎた。
お風呂の前にキスをしたのも覚えているし、されたのも覚えている。
どう考えても、夢なんかじゃない。
抱きしめられた時の幸せも覚えているし、抱きしめたときの暖かさも覚えている。
――だからこそ、ダメージが大きすぎる。なぜなら悠人は、一昨日からマロリガンに行っているのだ。
どうして、自分と蜜月をすごせよう。
ぼろぼろと涙を流しながら、ベッドから出る。
「……裸?」
おかしい。昨日は――――あれ? 思い出せない。
たしか、クォーリンのやけ酒に付き合ったんだ。二回目の。
て、ことは…………?
「あ、『お姉様』。おはようございます」
顎が外れんばかりに、セリアが驚く。
居たのは、同じく裸のヘリオンだった。
前スレ584です。
さぁ、セリアが見たのは夢なのか現実なのか。
一応、ヘリオンの憂鬱の続きってことになりますね。
どうでもいいことですが、クォーリンの憂鬱から全部繋がってたりします。
――本当、どうでもいいことですね。すみませんorz
>>信頼の人氏
ヘリオンエロイよエロイよヘリオン
けど、アセリアが……(涙)
>>215氏
タイトルで笑った漏れを許して下さいorz
ハリオンは別格だと再認識。
皆さん、読んで頂いて有難うございました。
Hシーンは初挑戦なもので、正直かなり緊張したのですが、沢山の感想を頂けてほっとしてます。
>>206さん
ご指摘有難うございます。ライオンを威してどうする……orz
>>207さん
鎖骨、大好きです。というか、かなり拘る方ですw
>>208憂鬱さん
途中から、支援のセリフに笑いがw お陰様でかなりリラックス出来ました。
>>215さん
三十分で……う〜ん、濃さで負けた……。3Pなんて自分には無理です。あれでいっぱいいっぱいで(汗
>>217道行さん
自分の書くものって何故か雑魚スピ皆出てくるので、色恋絡むと失恋が大量発生するんですよね……何でだろう(ぇ
>>220無名さん
アセリア、やり直してみると意外に忘れてる事多かったりします。日々精進です。
>>221霞さん
時折思い出した様にスレが桃色になるんですよね、最近。っていうか自分もまさかバッティングするとは(汗
>>222髪結いさん
全然批判じゃないですよw むしろこういう御助言は書く時に非常に助かります。
>>223おにぎりの中身の人さん
ヘリオンとハリオン……激しくハリオンマジックが炸裂しそう(汗
>>224さん
いつも応援有難うございます。頑張りますw
>>227さん
酒盛りシーンは以前憂鬱さんが書かれていますのでそちらを参考にして頂ければ(汗
>>232 584さん
ああ、セリアのお姉さま属性が脈々と……これはこれでw
>232
ハァハァハァぐっじょぶっすハァハァ
つーか、何この桃色のマナのフィールドは!
皆さんピンクの属性値上がりまくりじゃないっすか?(w
流れから言って次は赤組の誰かでしょうか、とそこはかとなく煽っt(キシュ
>>231 オチにハゲワロス
まだ続いてたのかw
>>232 乙です
わはー、こ、これは…このまま続くんでしょうかw
ヘリオンが悠人に邪険になったり?
揺れるセリアのアイデンティティ
何気に新境地かも…と期待してみます
238 :
憂鬱の人:05/01/26 09:28:17 ID:7+STqAYX
>>232 セリア...(;´д⊂
いつか...いつかきっと君にも春が来るさ...
裸でコーヒー二つ持って来るヘリオンの姿が目に浮かびますw
>225
エスペリアがフられるのなら、それはアセリア世界におけるデフォルトセッティングですので、
私も空気のようにスルーしますw /\
j ∩ i
| |...| |
j |__| l
ノtEti」ィ^i^!1ー、 カミーウシロウシローー
スレの流れを無視した人生ゲームネタ。
「んっと、……6ね」
「あらあら〜、セリアさん結婚ですね〜。
はい、どうぞ〜」
「……ハリオン、どうしてピンクの方を渡すのかしら?」
「結婚ですから〜」
「だから、結婚なら男と女で!
それじゃ女と女じゃない!」
「…………ご不満ですかぁ?」
「当たり前でしょう!!」
「それじゃあ、姉妹の契りと言う事で〜」
「どおして結婚で姉妹なのよぉ……」
ありがちな小ネタでゴメンなさい……
SLGパートのマップを見てたら桃鉄が出来そうな気がしてきた……
「お見事です、ユートさま。一着でリレルラエルに到着しました!
ユートさまには褒賞として15000マナが贈られます。
リレルラエルから最も遠いトキミさまには……申し訳ありません、
ヨーティアさまが同行し、研究の為にマナを使い込まれる可能性が出てきます。
他の皆さまに押し付、もとい紹介なさると移籍されますのでご自由にどうぞ。
それでは、次の目的地は……デオドガンに決定いたしました。
どうぞ皆さま、マナ長者目指して目的地へお進み下さい!」
ヨフアル屋台 1000 50% ユート
ヨフアル屋台 1000 50% ユート
ヨフアル屋台 1000 50% ユート
ヨフアル屋台 1000 50% ユート
スピリットの館 50000 10% ユート
スピリットの館 50000 10% ユート
ラキオス王城200000 5% ユート
「ユート様、おめでとうございます。
ラキオスを独占しました。エーテル変換効率が倍になります。」
こんな感じ?
大番長みたいだな・・・・
いただきスピリット?
245 :
215:05/01/27 23:49:35 ID:7QUCQCT0
手首に食い込むナニカの痛み。私はその鈍痛に意識を覚醒させられた。
霞がかかる視界を頭を振ってはっきりさせる…
じゃらり、と手首に繋がれたナニカの音が聞こえた。
そうだ、私は…
「目、覚めたか?」
いきなり声をかけられ、私はその方向へと顔を向けた。
「ユート、様…?」
不自由なままの体を無理に曲げたため、少し痛みが走る。
だけどそんな些細なことなんてどうでもいい。なぜ、今、ここに、ユート様がいるんだろう。
「あ、の…ユート様、なんで、あ、わ、私…あぅっ」
慌てて体を起こそうとしたけど、手首と足首に付けられていたナニカのせいで
倒れてしまった。
「ほら、慌てるなよ―――」
私の名前を呼び、体に付けられたナニカを引っ張って私を起こす。
「痛…っ!ゆ、ユート様…なに、を…?」
「ああ、悪いな―――。だけどな…そうじゃないだろう」
ユート様の手が私の顎に添えられ、上げられた。
目の前には見慣れた少年の顔。私たちの隊長であり、欠くことの出来ない仲間。
だけど――そうだ、この時は違う。いま私の前にいるのは、
「あ……ご主人…様…」
246 :
215:05/01/27 23:51:09 ID:7QUCQCT0
私の言葉に、ユート様…いえ、ご主人様は笑みを浮かべる。
「そうだ、ちゃんと言えたな―――。良い子だ」
あぁ…そうだ。私は、ユート様…ご主人様の奴隷。
ご主人様に頭を撫でられ、微笑みを向けられ、言葉をかけてもらう。
それだけで私は、幸せを感じる…奴隷。
「ん…あぁ…」
体をご主人様に預け、その逞しい胸に頬ずりする。
男の人の匂い…でも、私はご主人様以外の匂いは知らない。
この匂いはご主人様だけのもの。だから私はご主人様だけのもの――
「ほら、―――。おあずけだ」
「あ……」
肩を掴まれて体を離された。ご主人様の匂いが離れていくのが寂しい…
「―――は甘えん坊だな、いつもはあんなに凛々しいのに」
ご主人様の指が私の頬から少しずつ下に降りていく。
首筋、鎖骨、そして…私の胸。
「あ、ふぁ…」
ご主人様の手に収まるくらいの私の胸。
微笑みながらご主人様は手のひら全部を使って私の胸を揉んでいく。
「まったく、小振りだけど―――は感度がいいな」
そんなこと言わないでください…私は、ご主人様だから…ご主人様だから
こんなに気持ちよくなるんです。
247 :
215:05/01/27 23:52:14 ID:7QUCQCT0
「んぁ…き、もちいいで、す…!」
理性なんか働かない。体に這わされる両手が私の性を掻き出していく。
暖かい手のひら、全てを任せてもいい…
「そんなに気持ちいいのか?」
くにくにと指を動かして私の乳首を抓り上げる。
痺れるような刺激が私の背骨から沸きあがり、体中の力が抜けた。
「はぁっ…!うあ、ん…」
膝から崩れ落ちるように床に倒れてしまう。
後ろ手に縛られた鎖に手を引っ張られ、肩に激痛が走った。
「お…っと―――、危ないな。体は大切にな…俺のためにも」
「あっ――」
何気なく言い渡されたその言葉。その意味に気付き、私は歓喜に包まれた。
肩の痛みなんてどうでもいい。それに勝る隷属の悦び、そして主人への愛。
私は体を芋虫のように這い、ご主人様の足下に縋り付く。
「あ、ふぅ…んちゅ、じゅっ…ごしゅじんさまぁ…」
足の指を口にくわえ、丹念に爪の間を舌で愛撫する。
指と指の間、足の裏、くるぶし、甲、全てに舌を這わせ、私はこの言葉を口にした。
「ご主人様…私は、ヒミカは…ご主人様に、永久に、仕えます―――」
248 :
215:05/01/27 23:53:15 ID:7QUCQCT0
「――――あぁぁぁぁああ!!!!」
自室でペンを奔らせていたヒミカは、絶叫と共に紙を破いた。
「はぁっ…はぁっ…なん、なんてもの、書いて、るの……私は……」
きっかけは些細なものだった。
最近舞台の台本を書くにあたり、ネタが無くなってきた。
そこでラキオス城下町の古本屋で無造作に小説を買い込み、色々と読み耽った。
その中の一冊、『鎖に繋がれたスピリット』という題名の成年向小説。
成年向けということと、スピリットを蔑視した中身にヒミカは最初は読むのを躊躇っていた。
しかし何事も経験として、と割り切りその本を開いて読む―――と。
「……………」
面白い。一人の男がスピリットに抱く偏愛的な感情、それをわかっていて受け入れる
スピリット。二人はそういった形でしか愛を表すことが出来ない。
やがて男はそのスピリットに殺され、スピリット自身も自分で命を絶つ。
道を間違えた二人は、死んでハイペリアに生まれ変わり再び出会う。
掻い摘んで言えばそういう話し。しかし、ヒミカには心うたれるものがあった。
なんとかこれを舞台に出来ないか、と筆を執ったはいいが…
「なんで……調教シーンばかり書いちゃうのよ……」
それも、自分とユート様に置き換えて……
「あぅ…」
とたんにぼっ、と顔が赤くなってしまった。
鎖でユート様に繋ぎ止められた自分、絶対に離れることなく寄り添い続ける……
「……はっ!!」
再び桃色のマナに囚われそうになったヒミカは、頭を振ってそれを追い出した。
「ね、寝よう!そう、疲れてるからこんなのが浮かんでくるんだ!!」
そう、ユート様の逞しいモノとか、それを愛おしく舐めあげる自分とかうわあああ!!
「……はぅ」
眠れそうにない、そう思いながらヒミカはベッドに倒れ込んだ。
「んっ…だめ、ゆーとさ…ごしゅじん、さ……うんぅ、あぁ…」
頭の中で繰り広げられる自らの痴態どおりに指を動かしながら、ヒミカの夜は更けていった…
249 :
215:05/01/27 23:58:13 ID:7QUCQCT0
スレの流れをぶった斬ってまたエロ妄想でつ…
後日談としてうっかり会議中に悠人に向かってご主人様と言ってしまい
スピ達に小一時間ほど問いつめられる二人を想像してしまいますた
ヒミカの台本ネタはお借りしましたw
>232さん
タイトルは狙いましたええ狙いました
さあみんなでやってみようハリオンの方向に向かって
∩
( ゚∀゚)彡 おっぱい!おっぱい!
⊂彡
…タイトル付け忘れてますたorz
『とある赤い文字列』です
250 :
215:05/01/28 00:15:46 ID:3660IJ2/
おつまみ程度にささっと書いてみました。
「あら〜?ユート様耳掃除してませんね〜」
俺の耳を覗き込んできたハリオンは、開口一番にそう言った。
「いや、最近行軍続きでなぁ…耳掃除している暇無かったんだ」
とりあえず言い訳がましいことを言ってみる。
しかしハリオンにはそれが通じなかったらしい。どこからともなく耳掻きを取りだし
「それじゃあ〜…お姉さんが耳掃除をやっちゃいますよ〜」
…はい?
みどりいろのひざまくら
「痒いところはありませんか〜?」
「いや、それは違うと思うぞ、ハリオン」
かりかりと耳の中を蠢く木の棒。微妙にくすぐったい感触に俺は少し頭を動かした。
「あん、駄目ですよ〜。動いちゃめっ、です〜」
耳掻きを持っていない方の手で頭を押さえられた。
そのせいでより強く、ハリオンの太股に押さえつけられた。
ああ、なんつーか…弾力があって、ムッチリしていて、すごくいい匂いがする…
「んっ、あんっ、ダメですったら〜」
思わずむしゃぶりつきそうになった俺の頭を押さえつけ、ハリオンは俺の耳元に
唇を寄せてこう囁いた。
「耳掃除終わったら〜…いっっぱい、してあげますからね〜……♪」
艶やかな声色に、俺は思わず頷いた……
ハリオン好きなのを改めて実感しますた…
>215氏
うわホントに赤組の攻撃キター!
意外とロマンチストで妄想家なヒミカさんハァハァ。
今後の名前は妄想の人ですか?(w
次は誰がターゲットに!?(ぇ
ガサガサ。
ヒミカの部屋のゴミ箱をあさるナナルゥ。
「発見」
びりびりに破かれてはいるものの、修復は容易だ。
「コレクション、増えました。ヒミカファイルNO.4もそろそろ埋まります」
さっと音もなく天井へ飛び上がり、闇へと消えるのだった。
戦争終結後名声を極めた作家「ヒミカ・ラスフォルト」の未発掘稿が出版されるのは
まだ遠い先の話しw
「光陰、しっかりしろッ!光陰!!」
血溜まりに伏す光陰に、悠人は必死に呼び掛ける。
「…へっ、ちょっと血を流しすぎただけだ……それより悠人、おまえだけでも此処を抜けろ…
俺の二の舞になる前にな」
「…ッ!馬鹿野郎!そんなことできるわけないだろ!」
「ここいら一帯を覆い尽くしているこのマナ障壁は、半端じゃない…わかってるのか?」
「ああ…でも、行くしかないだろ……漢ならさ!!」
その悠人の言葉に応えるように、光陰はふらつきながらも自力で立ち上がる。
「よし!んじゃ、行くとするか!この“桃色のマナ障壁”を越えて!!」
「その前にとりあえず、鼻血を拭けよ…」
漢たちの旅は続く…。
………スミマセンデシタorz
あまりにここの所、GJ!で桃色な空間が形成されているので、ついつい訳の分からないものを
書いてしまいました…。
>>信頼の人さん
ヘリオンが、もー可愛過ぎです!持って帰っちゃ駄目でしょうか?(マテ
幸せなヘリオンは、やっぱりイイ!!
>>232さん
次はセリアとヘリオンともう1人で!な展開を希望します。(笑
>>妄想の人さん(断定
途中まで本気でヘリオンだと信じて疑いませんでした…。
狙ってやったのでしょうか…?
作品別の方で、真キモウトが降臨しました。
168 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:05/01/26 11:04:27 ID:5zOvhCLL
_
/ /゙・ 皿・_ヽ <ワスレナイヨ、オニイチャン
i ((〈゙^〉リ
| |゚ ヮ゚ノi| <あの女の臭いがする
ノ,⊂)介iつ
'´(( く/_|j〉リ
し'ノ
169 名前:名無しさん@ピンキー 投稿日:05/01/26 12:47:24 ID:BS+TZAgX
真キモウト爆誕!
255 :
227:05/01/28 11:33:42 ID:yti4/T1t
>>215さん
いやっふー!!4番キター!!
やっぱり、気が強くて引き締まった身体の娘は
革手錠とか首輪が良く似合(ry
妄想してるヒミカって、可愛いですな…
ともあれ、G.J!!
256 :
憂鬱の人:05/01/28 12:14:04 ID:DARoxo8/
>>253 こういうのを関西では「おいしいトコ取り」と言います。
...ヤルナ!(←何となくライバル視してみる)
>241-242
ラキオス独占状態で、
「コマンド」→「ちいき」→スピリットの館・大浴場のマップチップをくまなく捜索→ウマー
温泉関連を買い捲り、悠人と同地点に存在すれば悠人を温泉に誘えるぞ!
「ざうす」と入力したら湯気が、
「はどそん」と入力したらモザイクが取れます
サレ・スニルもゼィギオスも陥ちた。後はユウソカを抑えれば秩序の壁を攻略出来る。
首領を失った妖精部隊の残党が森のあちこちに出没していたが、統一の無いその動きではラキオス軍に各個撃破されていくだけだった。
悠人は一部の部隊をゼィギオスから南下させ、残りの全部隊でユウソカを攻めるという方法を取った。
帝国攻略は着々と進んでいたのである。
さて、今悠人は最大の問題に直面している。
ヘリオンとの仲を、どうしたらアセリアに理解してもらえるか。
一夫一婦制などという概念すらなく単純に「好き」「嫌い」で考えているアセリアは、
事ここに到っても「三人仲良し」みたいな態度を崩さない。
そもそも、「事」事態を把握しているのかどうかすらも怪しい。
毎晩の様にヘリオンの部屋に泊まる悠人を見て、嫉妬を感じないどころか私も一緒に寝ると言い出す始末。
他のスピリットや光陰達は気を使ってかその話題に触れようともしなかったが、それは悠人にとって、ある意味孤立無援の状態だった。
「だからいいか、男と女っていうのは好き合っていないと一緒に寝たらだめなんだって」
まるで小学生かなんかに対する様なセリフにもアセリアは一向に頓着しない。それどころか無垢な瞳をまじまじとさせながら訊いて来る。
「だからなんでだ?わたしはユートもヘリオンも好きだ。問題ない」
つまりは、元はと言えばずるずると二股紛いの事を続けていた悠人が悪いのだが。
髪をわしゃわしゃと掻き毟って唸る。
「だからな、男と女が一緒に寝るっていうのは…………つまりあれだ………………ごにょごにょ」
肝心なところで詰まってしまう。それはそうだろう。恋愛に関して小学生以下のアセリアに直接的な表現は流石に出来ない。
どうしてもそこで赤面し、黙り込んでしまう。
「……?つまりユートは何が言いたい」
「だーー!!!だ・か・らっ!どう言えば判ってくれるんだーーー!!!」
「ユート、落ち着け」
思わず叫んでしまう悠人と冷静に嗜めるアセリア。
ところで、そんなやり取りに耳をそばだてている者達がいた。というか、全員。
そう、ここは第一詰め所の廊下であった。
ユウソカ攻略前の休息として、部隊は一度ラキオスに戻ってきていた。
もちろん、敵の反撃を見越して城の防御に抜かりは無い。正規軍を配置して、いざという時に備えている。
どうやら敵もユウソカに篭り、出て来る気配がここ数日窺えなかった。
そこでこうして全員で居間に集まり昼下がりの談笑を楽しんでいたのだが、
そうとも知らない悠人が壁一枚向こうの廊下でアセリアを捕まえて痴話喧嘩?を始めたのだ。
そして先ほどのやり取りである。他の仲間にとってこんなに面白い余興は無かった。
最初は全員息を殺して聞き入っていたのだが、途中から悠人の大声が筒抜けである。
さすがにいい気味だとまで言い切る者はいなかったが、それでも悠人にはいい薬、程度には考えている向きもある。
ましてや誰しも(光陰除く)が一度は憧れたり仄かな恋心を抱いた相手がいきなりヘリオンと肉体関係を持ってしまったのだ。
半分自分達で後押ししたのもどこへやら。やっかみも含み、各々の心中は意外と複雑だった。
そんな訳である者は苦笑し、またある者はおろおろと。そしてまたある者はもらい泣きし、そしてその全員が耐え忍んでいた。
「ちょっと光陰、アンタ笑いすぎよ…………くくく…………」
「だ……だって今日子よ…………く、苦しい…………」
「コーインさま、少しはユート様の身にもなって下さいませ」
エスペリアが眉を顰めて嗜める。がしかし目元に浮かんだ笑みは隠せない。横でハンカチを握っていたハリオンが加勢する。
「いけませんよコーインさま〜、あまり大きな声で笑われては気付かれてしまいますぅ〜」
「ってアンタ……泣き笑いだったの……」
微妙にぷるぷる震えているハリオンの肩をヒミカが小突く。そんな彼女も口許が耐え切れずに緩んでいた。
「皆さんそう笑われては……ぷっ」
「そうです、ユート殿はいたって真面目なのですから…………くっ」
珍しくポーカーフェイスを保てないナナルゥが吹きだす。ウルカに至っては小刀のこじりでぐりぐりと太腿を抉って耐えている様子。
「ニ、ニム…………可笑しくなんかないモン………………」
「ニムントール、我慢は体に良くないですよ」
うずくまって真っ赤になったニムントールの背中を優しくさすりながらも、ファーレーンは片手で必死にソファーを握り締めていた。
殆ど全員何とか爆笑をこらえている耳年増組とは対称的に、話についていけない年少組の反応は様々だった。
「え〜、え〜?なんでみんな笑ってるの〜?」
「シ、シアー判んないよ〜」
「え〜、パパがどうしたの?」
理解できずにおろおろするネリー、シアー、オルファ。
「コ、コーインさまが壊れました〜〜」
まだラキオススピリット達のノリに上手く乗り切れていないクォーリン。
そして。
「……………………」
ただ一人、つい先日年少組を「卒業」したヘリオンだけが、不安そうな顔をして入口の方を見つめていた。
「心配ですか、ヘリオン」
隣に座っていたファーレーンがそれに気付き、目尻の涙を拭いながら優しく声をかける。
しかしヘリオンは無言で少し笑いかけた後、ゆっくりと視線を戻した。
ヘリオンのそのちょっとした仕草に、ファーレーンは内心驚いていた。
先日までのヘリオンなら、このような状況でただおろおろと慌てるだけだったはず。
それがどうだろう、この落ち着きようは。いつの間にそんな表情が出来るようになったのだろう。
心が通じ合うというのはこれほどまでに変われるものなのか。
(少し羨ましいですね…………)
ファーレーンは小柄な少女の大人びた雰囲気に、多少の嫉妬を込めてそう思った。
場の抑制された喧騒の中、一人セリアだけが複雑な表情のまま淡々と神剣の手入れをしていた。
やがてそれも済ませると黙って立ち上がり、庭側の窓から外に出て行く。
別に悠人とアセリアに気を使った訳では無い。ただ聞いていられなくなっただけだ。
複雑である。自分はヘリオンを応援しているはずではなかったか。
それなのに、アセリアの動向が気になってしょうがない。
あのリレルラエルの件以来、不思議に悠人への特別な感情は無くなっていた。
もちろん敬意はあるが、最近誰かと一緒にいる悠人を見ても、思いつくのはただアセリアの鈍さだけ。
「はぁ…………もうそろそろね………………」
溜息交じりに呟いた時には、いつの間にか訓練場まで来ていた。
セリアは気晴らしに『熱病』で素振りを始めた。
詰め所の方からここからでも聞こえる位の歓声が起こった。
恐らく悠人とアセリアが皆に気付いたのだろう。セリアはもう一度、深く溜息をついた。
数日後。ラキオススピリット隊は、帝国軍と激しく衝突した。
ユウソカは、それほど大きな城ではない。ただその兵力だけは、並みの城より余程充実していた。
膨大すぎる部隊を収容しきれないのか作戦なのか、殆どが野戦部隊として前衛に布陣している。
地理に乏しいラキオス軍はそれを迂回する事も出来ず、真正面からぶつかっていた。
錐の様に中央を穿つというエスペリアが起草した作戦。その殆どは、戦い当初から頓挫しかけていた。
突破して敵の本営を突くも何も、前衛自体が本営そのものの重厚さなのである。
確かに突破出来れば城などは容易く陥ちるかもしれないが、それは机上の空論というものだ。
ここまで百戦錬磨のエスペリアにしては珍しい作戦ミス。だが、戦力を集中させていたのは不幸中の幸いだった。
じりじりと敵の主力を分断しつつ前進するのは、最も戦い自体の「正面」は少ない。
被害は最小限に。悠人の要望通り部隊にさほどの損害も無く、敵は徐々に勢力を失っていった。
ただ、進攻速度は確実に最初の衝力を失い、徐々に遅くなっていく。悠人は次第に焦り始めた。
支援
消耗戦は出来るだけ避けたい。そんな考えが悠人の思考に余裕を失わせていた。
ここから一番近いサレ・スニルでも、戻っているまでに丸一日は掛かる。その間に敵が補強されるのは間違いない。
「くそっ、あと少しなのに…………」
目の前に、ユウソカの城がある。すぐそこにあるはずのその姿、大きさが、先程からなんの変化も無いように見えてしまう。
気のせいだ、少しずつだけど近づいている、そんな言葉を自分に言い聞かせても、一方では別の考えが浮かぶ。
ここまでぎりぎり抑えてきた『求め』。神剣の力をもっと開放すれば、何とかなるかも知れない。そんな甘く黒い囁きが響く。
「くっ…………佳織…………」
思わず呟いた一言。口に出してみて初めて気付く。そうだ、もう少しじゃないか。ユウソカは、目の前なのだ。
それは考えを迷いから決断へと一気に移行させた。少なくとも、悠人は自分自身で判断したと信じていた。
いつのまにか目的が、無意識に刷りかえられていることにも気付かずに。
このまま押し切るしかない。やっと敵部隊中央を分断した時、悠人は決断してしまっていた。
「左右に分かれてそれぞれを抑えてくれ。俺はユウソカに直接攻め入る!」
「ユートさま、それは危険です!もう少しでここは制圧出来ます、無理はおやめ下さいっ!」
「だめだっ!このままじゃこっちが先に力尽きるかもしれない…………!」
「ユートさま…………っ!?」
駆け出しかけた悠人の『求め』が鈍く光っているのを見てエスペリアは息を飲んだ。
(こんな時に…………)
もう少しで佳織を助けられる。そんな悠人の感情を飲み込んだ、『求め』の干渉が始まっていた。
『もう少しだ契約者よ、汝の大切なものはもうじき取り戻せるぞ…………』
頭の中に鳴り響く警鐘。悠人は痛みよりその甘美な誘いに乗ることを選んだ。
(大丈夫だ、城を陥とせば皆だって危険から早く解放されるんだから)
そんな言い訳じみた考えがふらふらと思いつく。それ自体がより戦場を危険なものにするとは思いもよらずに。
『そうだ、それこそ我と汝が求めていたものだ』
戦場という環境は、どんな人間でも少なからず高揚させる。そして悠人の感情に色々なものが混じりすぎた。
一度ならず干渉を退けてきたという自負。目前に迫ったサーギオス。囚われている佳織。それらが重なり合い、暴走する。
悠人の瞳から徐々に意志の色が削られていく。この機会を狙い続けた『求め』の周到さはこの期に及んで止めを刺した。
『そうすれば守れるだろう、あの黒き妖精も』
同時に頭に投影される幼い顔立ち。皮肉にも、ヘリオンの顔が思い出されたとたん、悠人の瞳は昏く落ちた。
ふらふらと最前線に立った悠人の前に、複数の敵が襲い掛かった。
無防備な悠人を格好の標的とでも勘違いしたのだろうか。
白刃を煌かせて踊りかかった小部隊は、一瞬でその存在を影も残さず吹き飛ばされた。
「…………じゃま、だ」
低くどすの利いた声を呟きながら、ゆらりと再び歩き始める。
悠人はたった一振り、『求め』を薙いだだけ。それでも周囲は、焦げ臭い匂いとぶすぶす焼けた地面に包まれていた。
エスペリアが何か叫んでいるが、ただ煩いだけだった。今は殺意さえ湧いてくる自分を抑えきれない。
支援
『存在』の声に従って、『求め』の発動を察知したアセリアが駆け寄ってくる。
「アセリア危険です!今のユートさまは…………」
「ユート、いけないっ!」
混乱と喧騒のさ中。その中心に飛び込んだアセリアの蒼い瞳に、黒い霧に包まれている悠人の姿が映った。
かつての自分が思い出される。それは、これ程までに禍々しい存在だったのか。
身震いを抑えながら、アセリアは全力でそれを止めなくては、と『存在』にマナを籠めた。
もう良く思い出せないその少女に対して悠人は『求め』を大きく振り切った。驚きながらもアセリアが『存在』でそれを受ける。
がきぃぃぃん…………
甲高い金属音。弾かれたアセリアは逆らわず、そのまま真っ直ぐ後ろに飛ぶ。咄嗟の判断だったが正解だった。
着地して、初めて気付いた。『存在』を持つ手が痺れている。冷たい汗が背中を流れた。
(…………恐怖?わたしが……ユートに…………?)
アセリアは知らず、後ずさっていた。
悠人はアセリアが離れた事に何の関心も示さず、我慢できないという感じで天に向かって大きく吼えた。
「おおおおおおおおっっ!!!」
叫びと同時に起こった黒い巨大なオーラフォトンの竜巻が敵味方全ての動きを一時硬直させた。
びりびりと、震える大気。周囲のマナが中央に居る悠人ただ一点に集中していく。
アセリアは、一歩も動けなかった。足が、動かなかった。
『因果』が共鳴を起こした。と同時に光陰は状況を理解していた。横にいる今日子と一瞬目が合う。
二人は頷き、そして一斉に駆け出した。目の前で嵐の様に巻き起こる砂塵の中心。そこに向かって飛び込む。
「悠人っ!!」
光陰は叫びながら加護のオーラを全開にして、悠人を後ろから羽交い絞めにしていた。
抑えつけた光陰は異常に膨れ上がった悠人の筋肉に驚愕していた。
(コイツ、身体まで真剣に喰われてやがる…………っっ!!)
予想外の状態に歯噛みする。膨れ上がったマナが加護のオーラを“喰って”いた。このままでは自分も危険だと判断した光陰が叫ぶ。
「今日子、『求め』だ、『求め』を叩き落せっ!!」
「…………っ!!了解っ!!」
悠人の様子に呆然としていた今日子が我に返って弾かれたように飛び出す。『空虚』でピンポイントに『求め』を狙うつもりだった。
「っ!…………『因果』……この時を待ちわびたぞ」
「…………何?」
「ぐ、がぁぁぁぁっ!!」
「ぐぉっ!」
光陰がいぶかしんだのもつかの間、力任せに光陰の拘束を振りほどいた悠人がその勢いのままオーラフォトンを開放する。
辺りを闇と轟音が包んだ。無数に飛んでくる破片。とても目を開けてはいられない。
間に合わなかった今日子が必死で両腕で体を庇う。肉が焦げる匂いが充満した。
音が静まって恐る恐る目を開いた今日子が見たものは、消滅した敵右翼と焼け野原、大きく抉れた地面。
倒れているエスペリアとアセリア、…………そして、左手足を吹っ飛ばされて転がっている光陰だった。
「光陰っっ!!!」
左翼の敵が動揺してさざめく中、今日子の悲鳴が響き渡った。
やや離れた位置に居た他の仲間達は悠人の異常に気が付かなかった。
側にいたエスペリアやアセリア、高位神剣の持ち主である光陰や今日子とは違い、
彼女達は単純にオーラフォトンの威力が敵勢力を削いだ、と解釈した。
その技がオーラフォトンビームだった事も、それ自体が悠人の変調を示すという事も知らない。
ただ、目の前の敵が浮き足立っているのだけは明らかだった。
「みんな、今よっ!」
常に先陣に立っていたヒミカが駆け出す。それに習って全員がハイロゥを全力展開した。勝利は目前だった。
くんっ、と『失望』が反応した気がした。
なんだろう、と手元を確認しようとした時、微かに何かが匂った。
急に立ち止まったヘリオンに気付き、側にいたウルカが不思議そうに訊ねる。
「…………どうなされた、ヘリオン殿」
「…………ユートさん」
「は?」
ウルカが訊ね返した時、ヘリオンは既に消えていた。否、ウルカの目でも捉え切れなかった。
後には白い羽根が数枚舞っていただけだった。
「…………?!ヘリオン殿っ!」
驚いたウルカが直ぐに後を追いかける。予感に従い、『冥加』の力を最大にして。
「……ふぅ」
敵側面を突いて部隊を潰乱させたファーレーンは、『月光』を静かに鞘に収めた。
後方に控えているニムントールに振り返り、にっこりと笑って合図を送る。
この方面の戦いは終わったと、無言で伝えた時だった。
ひゅんっ。何かが視界の隅を横切った。黒、そして白。ファーレーンは咄嗟に身構えた。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
駆け寄ってきたニムントールが不思議そうに尋ねる。しかしファーレーンはその体勢のまま、数瞬動かなかった。
「………………」
「お姉ちゃん?」
不審に思ったニムントールが肩を叩こうとした時、ざっ、とファーレーンは駆け出していた。
何時の間にか構えた『月光』が灰色の輝きを放っている。あっという間にその姿が小さくなり、見えなくなった。
ニムントールは、なにかがあったと悟りはしたが、しかし本気になった姉を追いかける手段など持ってはいなかった。
文字通り飛んできたヘリオンが見たものは、まず左手足の無い光陰を抱き締めている今日子だった。
右手に辛うじて掴んでいる『因果』に力が感じられない。
側でクォーリンが泣きじゃくりながら治癒魔法を掛けている。
向こうの方、ようやくよろよろと起き上がってきたアセリアとエスペリアも視界の隅に見えた。
そして今日子達がいるすぐ側でゆらりと立っていた悠人がこちらを見たとき、ヘリオンはその場で速度を下げた。
『失望』から激しく伝わる警告の気配。瞳に光を失っている悠人。周囲の惨状。
それらがヘリオンの中で一つになる。
しかし理解した彼女を支配したのは、恐れではなく懼れ、そしてただ純粋な怒りだけだった。
ぎりっと歯軋りする。足を止め、ヘリオンはゆっくりと低い声で叫んでいた。
「…………『求め』、ユートさんを離しなさい!」
今まで誰も聞いたことのないヘリオンの命令口調に、アセリアもエスペリアも今日子も驚いた。
しかし一番驚いたのは悠人、いや『求め』だった。下位神剣の使い手に命令される。これほどの侮辱はかつて無かった。
「……妖精。そのような口を叩いて無事で済むと思わないことだ」
悠人の口を伝って『求め』の冷たい呪詛が紡がれる。あれほどの技を使った直後にもかかわらず、悠人の周囲に黒い光が集中した。
だがヘリオンにとっては、『求め』が悠人の口を使って喋った事自体が許せなかった。握った『失望』に自身の力を注ぎ込む。
「…………『失望』、行こう!!」
呼応した『失望』がたちまち黒く輝きだす。対称的に、純白のハイロゥは眩しく煌く。
急激すぎるマナの放出に吹き荒れる風が髪留めを吹き飛ばし、自由になった黒髪が各々のウェーキを引く。
「…………小賢しい」
呟いた『求め』へ収束したマナがオーラフォトンへと変化したその瞬間。死角から、別の影が飛び込んでいた。
「はぁっ!」
低く屈んだ姿勢のまま気配を消して、ウルカは悠人の左後方へ廻り込んだ。
悠人は右手に『求め』を握っている。この位置なら悠人自身が盾になり、『求め』に捕捉される事も無い。
踏み込んだ左足を軸に、身体全体を後ろに捻ると同時に一旦『冥加』を鞘に収める。
収まりきったかどうかの刹那、反動を利用して向き直った時にはすでに間合いの中だった。
「雲散霧消の太刀!」
移動した体重を乗せ、『冥加』を鞘から滑らせる。加速した剣が鞘と空気の摩擦からか、細かい粒子を巻き起こす。
抜き放たれた『冥加』が唸りを上げて、『求め』を狙った。
「…………しっ!」
同時にファーレーンは間合いの遥か外、空中から悠人に踊りかかっていた。
畳んだ膝をそのままに、空気抵抗を最小にしたまま『月光』を突きに構えて滑空する。
悠人の正面に、ヘリオンが見えた。悠人はそちらを見据えて立っている。こちらに注意を促す必要があった。
「……ユートさま!」
叫びながら、ファーレーンは展開していたウイングハイロゥを内に収めた。
同時に斬りかかってくる二つの影。後方と、上方と。
しかしその状況下、『求め』に半ば支配された悠人は落ち着き払っていた。
遅い。妖精にしては腕が立つのかも知れないが、「今の自分」なら対応できる。
二人の意図は理解できたが、それは奇襲と呼べる様なものではなかった。
後方から来た黒い妖精に、同じスピードでバックステップし、間合いを狂わせる。
「なっ!」
それだけで動揺した妖精の剣先が鈍った。最早スローモーションにしか見えないその鍔元を難なく抑える。
そのまま剣ごと妖精を放り投げ、もう一方の妖精が頭上から迫るのに合わせて首を僅かに捻った。
突いてきたその剣を皮一枚で避わし、着地した背中に『求め』の狙いを定める。
そこまでは、計算どおりだった。
投げ出されて辛うじて体勢を保ったウルカの目の前に、ロシアンブルーの髪がふわりと降り立った。
「…………!」
「…………!」
一瞬視線が交差する。お互いの意志を確認し、二人は全力で擦れ違った。四枚の白い翼を全開にして。
それは先程とは明らかに違う、「人の動体視力を遥かに越えた」、本来の動きだった。
悠人の視覚を介して外界を知覚している『求め』は咄嗟に何が起きたのか判らなかった。
予想外の方向に逃げ出した二人の動きは、再び加速はしたものの、まだ気配で追える。
そのまま追撃することもまた、今の契約者の肉体でも可能だった。
しかし、確かに今の今まで正面に立っていたはずの小柄な妖精の姿が見えない。
『求め』は理解出来なかった。それが、暗黙の了承により行われた意図的な錯覚なのだと。
本来黒スピリットというものは、スピードを身上にする。それをわざと殺した攻撃の後の速さの緩急。
その異常な横の加速度に気を取られていた悠人の目では、
別の移動体――例えば、一直線に突っ込んでくるヘリオンの姿を視認出来ない、という事が。
『求め』は一度左右に逸らした意識を、もう一度ヘリオンを追う為に前方に集中させた。
だがスピリットを相手にしてのそのタイムラグは、明らかに大きすぎた。
「…………ぬっ?」
瞬く間に懐に入られた『求め』は今度こそ動揺した。その焦りを、ヘリオンは見逃さなかった。
まさか悠人を斬り付ける訳にはいかないので、くるっと反転しつつスピードの乗った足払いをかける。
「悠人」はそれを避けつつ後ろに一回転しながら横殴りに『求め』を振り切った。
だが元よりフェイントだった足払いを放った直後、ヘリオンは既にその間合いから紙一重外に屈んでいた。
振り切り、動きの止まった『求め』の横を、滑る様に悠人の手元に飛び込む。
『求め』を叩き落そうとするその動きは、しかし完全に読まれていた。
「愚かなっ!」
『求め』の咆哮と共に弾かれる、悠人「本体」からのオーラフォトンビーム。
至近距離であえて集中させた闇の槍。その獰猛な一閃が的確にヘリオンの心臓を狙って放たれる。
爆音がヘリオンを消滅させた――――そう思った時、『求め』は悠人の手から“手刀”で叩き落されていた。
悠人の手元を離れる瞬間、『求め』は「見た」。
軌道を逸らしたオーラフォトンが離れた地面を深く削りつつ爆発するのを。
確かに、オーラフォトンビームはヘリオンを狙っていた。
しかし、またもや『求め』は目の前に気を取られすぎて、察知できなかった。
その隙を突いたウルカとファーレーンが左右に廻りこんでいた事も、
『冥加』と『月光』が気配を殺す為にマナすら纏わずにいた事も、
そしてその二人がただ単純に、「悠人」に体当たりをしたのだという事も。
計算外は、三つもあった。
覚醒した第五位に立ち向かう妖精が居た。
ファンタズマゴリアでも瞬速では屈指のブラックスピリット三人を、同時に相手にしていた。
そして、「自らの意志を保つどころか」、こんなにも神剣の力を引き出している、目の前の少女がいた。
地面に転がった『求め』は最後までその敗因が掴めずにいた。
がしゃっと乱暴に踏みつけられる。
『…………ぐおっ!』
ウルカが『求め』を踏んづけたまま、たった今自分を超えたかも知れない少女を眺めていた。
『な、なにを貴様…………『冥加』かっ!…………』
「少しは大人しくしなされ。馬に蹴られますぞ」
『ぐ、ぐぬぬぬぬ…………がっ!』
動けもしないのに抵抗の意志を見せる『求め』。その刀身を、もう一つの影がこちらは「少々」乱暴に踏みつけた。
「さっきの動き、わたし達にも捉え切れませんでしたね」
『ぐっ!がっ!……おのれ、六位の分際で…………はぅっ!』
ファーレーンが同じ方を優しく見つめたままウルカに話しかける。『求め』は完全にスルーだった。
ただし、爪先に入れた力はぐいぐいと籠めたままで。
立て続けに大技を連発して力尽きたのかそれともウルカとファーレーンの足責めが効いたのか、『求め』の輝きが失われていく。
それに伴い「干渉」から開放された悠人の目に、少しづつ光が戻っていった。
そうして悠人が最初に見たもの。それは涙を湛えてしがみ付く、最愛の少女の姿だった。
「ユートさんっ!」
暫く呆然と抱きつかれたままだった悠人が、やがてゆっくりと下を向く。
舞う白羽の中、束縛を解かれて舞い踊る長い黒髪が見えた。そっと頭に顔を寄せ、静かに息を吸い込む。
まだ霧がかかった頭の中が、風に吹き払われてクリアになっていく。優しい風は、心を次第に温めてくれた。
悠人はまだ上手く動かせない手を、ぎこちなくヘリオンの背中に回していた。
支援
こん、こん。
ユウソカが陥ちたその夜。
あてがわれた一室で、セリアはノックの音に目が覚めた。
「はぁ〜〜〜、まさかこんなに早いとはね…………」
溜息混じりに呟きながら、静かに扉を開く。やはりというか、アセリアが立っていた。
両手で『存在』を握り締め、瞳をうるうるさせながらセリアを黙って見上げている。
「……ま、入りなよ」
そう言って背中を向けたセリアに、アセリアはただこくっと頷いた。
「はい、お茶…………で?」
「……………………」
椅子に座ったまま何も言わないアセリアにお茶を出しながら聞いてみる。予想通り答えは返ってこなかった。
「私、眠いんだけどな」
もちろん、嘘だ。ただ、こうでも言わないとアセリアは絶対に口を開かない。
長年の付き合いである。用件も、とっくに判っていた。
しかし、今回のアセリアはしぶとかった。下を向いたまま、一向に動く気配が無い。
問題が問題なだけにしょうが無い気もするが、セリアはうじうじしているアセリアに、だんだん腹が立ってきた。
元より気が長い方ではない。カップを口にしたまま、思わず少しきつい口調になってしまった。
「しょうがないでしょ、アンタがバカだったんだから」
切り出してからしまった、と思った。
既にアセリアの肩がぷるぷると震え出している。今にも泣き出しそうだった。
昔から、こうだった。怒られた、とでも思っているのだろう。そんな事は、全然無いのに。
何時からだったのだろう。こんなにも、この少女の考えている事が理解出来るようになったのは。
いつも純粋だったアセリア。それは今も変わらない。その無言の優しさは、誰にでも平等に、いつも注がれている。
幼い頃、困らせていたのはどちらかというと、自分の方が多かったように思える。
それでも常に、アセリアは自分の味方だった。守られているのは自分だったのだ。それが逆転したのは何時からだったのだろう…………
半ば俯瞰していたセリアの意識は、アセリアの呟きに引き戻された。
「…………怖かった」
搾り出すようにぼそっと口を突いた一言が切欠だったのだろう、普段無口なアセリアからは考え付かないほどの大量の言葉が飛び出す。
「分かってた。ユートが苦しんでると分かってた。それなのに、何も出来なかった」
「怖かった。今までユートをそんな風に見た事なんてないのに…………怖い、と思った自分がどうしても許せない」
セリアは黙って聞いていた。
「ヘリオンは凄い。とっても強い。でもセリア、なんでだ?なんでそれがこんなに悔しいんだ?」
声は途中で涙声に変わっていた。大粒の涙をぽろぽろと零しながら縋りついてくる。
寝巻きの裾を強く掴まれながら、セリアはただじっとアセリアの蒼い髪を眺め続けた。
そう、純粋だから。だから、アセリアはただ「守ろう」としてきた。
自分の大切な、存在の為に。居場所の為に。悠人の笑顔を、仲間の笑顔を。そして……ヘリオンの、笑顔までも。
自分の戦う意味。自分の生きる意味。サモドアで教わり、ハイペリアで望んだ。
その大切さを、ただ忠実に実践してきたアセリアは、しかし自分の笑顔だけは守れなかったのだ。
そして、初めてアセリアは気付いたのだろう。少し前に自分が初めて理解した感情――思慕というものに。
アセリアを優しく抱き締めて、セリアは落ち着かせる様に静かに伝えた。
「誰だって怖いよ……わたしだってあんたが神剣に『飲まれ』てた時、正直怖かった……」
「セリア…………?」
アセリアを抱く手に力がこもる。不思議そうに見上げたアセリアを、セリアの強い口調が抑え込んだ。
「いいから聞きなさい。……でもね……本当に大切なら、その人が辛い時には必ず側に居なきゃいけないんだ。
私は悔しかったよ、ユートさまがアセリアの側に居てくれた時。自分が何も出来なかった時。後悔だって凄くした。
ずっと友達だったのにって。いざという時、何も出来ないって…………でも…………
でもね、アンタが戻ってきた時には、悔しいけど…………凄く嬉しかった。ユートさまに感謝した」
アセリアの頭をぎゅっと抱き締めたまま、セリアの声にも嗚咽が混じる。
「だからね……判るんだ…………誰でも側にはいられる。だけど、“ずっと”側に居られるのは一人だけなんだ。
皆が苦しい時、皆が笑っている時には、“一番”居たい人の側に居る事を選ばなくちゃいけないんだ」
「…………っ!」
「それが“好き”ってことよ、アセリア……もう寝なさい、そうすれば分かるから」
まだぐずぐずと泣いているアセリアを諭しながら、セリアは天井を見て必死に涙を堪えていた。
今アセリアが感じている悔しさ。それは悠人がアセリアを戻してくれた時、セリア自身が感じたものと同じだったから。
嫉妬という、喪失感……それは、時間だけが癒せるものだと知っていたから。
どんな城にも一番高い所というものはある。そしてそこに、やはりファーレーンはいた。
「よっ」
「あら、ユートさま。ヘリオンは宜しいのですか?」
「うん、今は疲れて眠ってるから…………」
「ああ…………」
合点がいったという表情のファーレーンに悠人は苦笑いを返した。
「そういう訳だから…………隣、いいか?」
「ええ、どうぞ」
了解を得て腰を下ろす。見上げると月の影が丸く夜空に溶けている。月の満ち欠けがあるのだと、悠人は今更ながらに気付いた。
「コーインさまのご容態はいかがですか?」
「え?あ、ああ、アレはご容態なんて大層なもんじゃないよ、もうピンピンしてる。さっき殴られたばっかりだ」
考え事をしてたのに気付かれたのだろうか、と思いながらなんとか冗談を返す。しかしファーレーンは予想に反して真剣な瞳をしていた。
「…………ファー?」
「ユートさま、アセリアは大丈夫です。ちゃんと“戦う以外の意味”を考えられる娘なのですから」
「………………」
「だから、そんなに辛そうな顔をしないで下さい」
「…………あ、あれ………………?」
ファーレーンがそっと悠人の頬に手を当てる。知らない間に悠人は涙を流していた。自覚したとたん、抑えていた気持ちが溢れ出す。
「俺、最低だ…………アセリアの気持ちを裏切っただけじゃなく、剣まで向けた…………」
「………………アセリアは良い娘です、きっともう、分かっています…………」
嗚咽を流し続ける悠人の背中をファーレーンは優しくさすっていた。
「なんかさ、あの時ヘリオンにしがみ付かれて…………なんていうか、包まれてる気がしたんだ……うん、今のファーみたいに」
落ち着いた悠人が目を真っ赤にしたまま恥ずかしげに告白する。
「あら…………ふふっ、じゃああの娘はきっと美人になりますね」
悪戯っぽく目を細めるファーレーン。いつもとは違う幼い表情に悠人は吹きだした。
「な、なんですか?」
ぷぅっと膨れるファーレーンを可笑しそうに見つめる。
「いや、今度はファーが前のヘリオンみたいだなって」
「え……まぁ…………」
「ははっ…………」
月の光が見守る中。二人はしばらく笑い合っていた。
――――――――
次の日。悠人はアセリアに呼び出されていた。
「………………」
「………………」
既に悠人が来ている事に、気付いているのだろう。
背中を向けたまま、微妙に揺れている肩や落ち着かなく爪先をとんとん地面に当てている事からでもそれが判る。
それでも悠人は自分から話しかけたりはしなかった。
「…………ユートは」
暫しの沈黙の後、ようやくアセリアが口を開いた。悠人は黙って頷く。見えないが、伝わると思った、アセリアになら。
「ユートは幸せ、か?」
「…………ああ」
短い質問。答えもまた一言だった。風が静かに流れる。
アセリアの髪が軽くなびくのを悠人は黙って眺めていた。その蒼が少しぼやけてくる。
「…………そうか」
アセリアが振り向いた。笑顔だった。目は赤く腫れ、少し引きつってはいたが、それでも笑顔だった。
だから。悠人も微笑みで応えた。零れそうな涙を必死になって我慢して。
―――――ごめん、な。
決して口にしてはいけない一言を飲み込んで。
戦いのつかの間。ある日ヘリオンはウルカに声をかけられていた。
「ヘリオン殿、帝国を無事倒したら手前に少し付き合っては貰えませぬか」
「ふぇ、ウルカさんが、わたしをですか?」
「はい、手前の部下が眠っている場所へ…………そこでお渡ししたいものが…………」
―――――それが何であるかをヘリオンが知るのはもう少し先の話である―――――
狭い階段を駆け上がる。緊張は無く、心臓の動悸はむしろ体を前へ前へと。
やがて視界に飛び込んでくる満天の星空。一際明るい満月が世界を照らす。
煌く槍。ひゅっと軽い空気を切り裂く音。襲い掛かる音速の殺意。
気にせず詠唱を続ける。魔力を帯びた死の予兆は目の前で止まる。
力と輝きを失った神剣が地面にからん、と不自然に転がった。
『求め』を中心に湧き上がる嵐。静寂を破って余りある風の響き。
力の全てを敵に向かって解放する。
再び訪れた闇は金色に照らされていた。月の光を受けて舞い昇っていくマナ達。
背後を振り返る。黒くたなびいた長髪を軽く抑えながら、彼女は軽く微笑んだ。
闇に潜めていたその姿を今は仄かに浮かび上がらせて。
「こうして見るとファーに似てきたな、ヘリオン」
「ファーレーン姉様に?ふふっ、なんだか嬉しいですね」
古い緑の髪留めにそっと触れながらはにかむヘリオン。
お下げもそれはそれで良かったけど。そんな言葉を飲み込む。
二人で月を見上げる。朧に温められた光が、穏かに世界を照らす。
そっと手を握る。握り返してくるヘリオンから、優しい森の匂いがした。
―――― Fin ――――
286 :
信頼の人:05/01/28 21:36:59 ID:ONcIgsV7
あとがき
まず、支援頂いた方、有難うございました。
黒☆魂の信頼です。今回、ヘリオン&妖精部隊のお姉さん?モノを書いてみました。
ある小説に、こんな一説があります。
「気持ちは伝わらない。伝わるのは、伝えた言葉だけだ。黙って気持ちだけを判ってもらおうという他人への依存、それが『甘え』だ。」と。
(本当はもう少し長いので、少し割愛させて頂きました)
勿論受け手の観察能力や状況にも左右されるのでしょうが、こと恋愛事に関しては、この傾向がより強いようです。
受け手としてどう考えてもアンテナの感度が鈍そうな悠人に、気持ちを伝える為に無条件の努力をするとしたら誰だろう?
そんな流れで頭に浮かんだのが時深とネリー、そしてヘリオンでした。その中から今回は、ヘリオンの努力モノを書いてみたいと思いました。
ヘリオンものというとこのスレでは最早伝説となったあの方の作品がある訳ですが、自分なりのヘリオンも求めてみたいな、と。
前スレの304さんに、Vの感想レスで、「想うだけでは何事かを成すには足りない。」という一文を頂きました。
内心どきりとしたのですが、自分の中で、恋愛事に関しての、これがアセリアとヘリオンの違いだと思っています。
判らないままで、それでも体一杯にそれを表現し、伝えられそうなヘリオン。
極端に感情表現に不器用で、相手によっては伝わりにくい、アセリア。
どちらもとても優しい良い娘なのですが、アセリアにはどうしても自分の気持ちに気付く「切欠」が必要なのではないかと思いました。
287 :
信頼の人:05/01/28 21:37:50 ID:ONcIgsV7
一時期、アセリアについてかなり深く考え込んでしまった時期がありました。
ゲーム本編ではその性質上、アセリアルートでは無事悠人と結ばれますが、その感情が芽生えた時期はいつだったのだろうか。
戦いにひたすら純粋で、その意味合いすら持たなかった彼女。何の為に、とようやく自分に問いかけ始めたばかりの彼女。
どうしても、アセリアがハイペリアに居た段階で、悠人に対して持っていた感情の正体に気付いていたとは思えない。
ではその変化はどこで発生したのか。そこで感情移入しつつ何度かプレイし直し、自分なりに出した結論が、
「リーソカ」以降ではないだろうかというものでした。つまり、「態度」が悠人に「伝わった」、それ以降ではないか、と。
また、ルートに入ってからは、ライバルらしいライバルが現れません。
良い意味で透明なアセリアの感情に、ライバルの存在はどう影響するのだろう。もしあそこで、Hまで至らなかったら?
もし先に、ライバルが肉体関係を持ってしまったら?そんな妄想も、このSSの切欠になりました。
妖精部隊の補完、特にウルカイベントの一枚絵に登場するお姉さん?の補完は、結構前から考えてはいたものでした。
スレにそこそこクォーリンの話題は登るのに、公式に絵まであるお姉さん?の話題は今まで無かった様に思えます。
「補完スレッド」である以上、彼女にも何がしかの補完があってもいいのではないだろうかと。
そこで思いついたのが、ラキオススピリット隊との対比でした。自分にはどうしてもあの絵に結びつくラストしか思い浮かびませんでしたが(汗
正直、自分でも伝えたい事が上手く表現出来ていない所が多々あって今読み直すと中々に赤面モノなのですが、
それでも暖かく見守って下さったスレの皆様に感謝致します。
そして読んで下さった方、本当に有難う御座いました。誤字脱字今回特にハリオンマジック等ご指摘があれば幸いです。
長文、駄文、失礼しました。
信頼さんGJ!
友人達とカラオケ中ですが、友人ほったらかして読みふけってしまいましたよ。
創作意欲が湧いてきたので、帰宅次第書こうと思ってます。
お疲れ様であります。
まずは一言、見事でした。
『永遠のアセリア』は、各ルートに入ると恋敵が存在しないゲームなので、今回のようにそれぞれの心情を描ききった様子は、
アセリアやヘリオンたちもやはり女の子なんだな、と再確認した次第です。
そして名も無きお姉さんの補完も見事でした。結末は……話の展開としては、あれで良かったと思います。
個人的には残念でありますが(苦笑
ともあれ、お疲れ様です。
……ちっくしょう負けてらんねぇw
お疲れ様です。
『求め』を踏みつける黒い人たちハァハァ・・・
俺も踏まれ・・・・はっ!!!感想になってない!!
アセリア側に肩入れして読んでいたので終盤(特に今回)は泣けました。
アセリアも女の子なんだよなー、と感じさせてくれる作品でした。
いや、きっといい女になるよアセリア。がんばれ。
おつかれさまでした。
・・・ちっくしょう俺も負けてらんねぇw
291 :
憂鬱の人:05/01/29 01:31:52 ID:VT1XBARa
完結乙でした。恋敵の分岐もともかく、まさかユウソカでイービル分岐があるなんて!
このへんがSSの妙ですな。「if」の補完。久しぶりに見たなあ、オーラフォトンビームを使う悠人。
ん?前は不発だったかなあ。どうかなあ。
アセリアとヘリオンについては、私的には最初っから勝負がついてますのでこの結末は
全く問題ないですw 恋に勝ち負けや心変わりは付きもの。 男のヘタレで傷が余計深まる
事だってあるさ。アセリアにはそれすらも良い経験でしょう。皮肉ではなく。
>287 信頼氏
連載お疲れ様でした。
もう終わっちゃったのかぁ、と少し寂しくなりました。
アセリアとセリアのやりとりが切なくて切なくて・・・。
子供劇場が思い起こされて更に切なくなりました。
信頼氏の作品は、いくつもの長編短編がキャラを生かしているからこそ味があるんだなぁと。
良い物読ませていただきました、ありがとうございます。
…ちっくしょう、俺も頑張ろう(w
>>信頼の人さん
連載完結、お疲れ様でした。
「回帰」全話を通すと、改めて悠人の鈍さがはっきりとする書かれ方だと感じました。
しかし、ゲーム本編を思い返すと悠人の気持ちってルート分岐後も少し曖昧で、
最後の一押しがこの辺りに来ているんですよね。ちょうどその煮え切らなさを持ってきたことで
悠人のヘタレ度が上昇したのかもしれません。
そんな所に、最後の一押し役が急遽交代。
個人的には、ヘリオンは健気で可愛らしくてちっちゃくて……というだけじゃないんだぞ、
ということを最後の戦闘に至るまでじっくりと楽しませていただきました。
皆さん、読んで頂き有難うございました。
>>288さん
自分の作品が創作意欲の刺激になったとしたら、幸いです。
288さんの書く物語、楽しみにしてます。
>>289紅蓮さん
自分で書いててももう少しお姉さん、幸せにしてあげたかったのですが……(汗
ウルカに手渡した緑の髪留め、それがヘリオンを導いてくれますように。
>>290霞さん
彼女達に踏まれては、生身ではとてもハァハァ所ではないかもw
霞さんもイオ嬢補完、頑張って下さい。楽しみに待ってます。
>>291憂鬱さん
オーラフォトンビームの描写、こんな感じだったかなぁと頭を捻りつつ書いてみましたが、
変じゃなかったでしょうか?あの技使う悠人、暫く見ていないので正直イマイチ自信が(汗
>>292さん
黎明さん……でいいのかな?子供劇場を連想されたのが嬉しいです。
アセリアとセリアが幼馴染というのは公式かどうか微妙な所なので……(汗
『黎明』、お待ちしてます。ファーレーン好きなので、わたしも負けてらんないですねw
>>293道行さん
周りの状況に流されて、自分はどっちつかずにふらふら。実は自分の経験だったりします(汗
こうして読み直してみると、自分がいかにヘタレで残酷だったか思い返しても冷や汗モノです。
さんざんいじり倒してしまった(道行さんのw)ヘリオン、楽しんで頂けた様で、ほっとしました。
>>215さん
>とある赤い文字列
前半どきどきして読んでたら……見事なオチですw
それにしても自分で書いた小説に悶々とするヒミカ嬢って一体w
>みどりいろのひざまくら
個人的に「膝枕耳掻き」は男が永遠に憧れるシチュエーションだと思っています。
ハリオンの包容力なら、正に理想的。ほんわかとさせられました。
>>253さん
桃色のマナ障壁の向こうは桃源郷だった。
漢なら、逝かなくては。でも鼻血はかっこ悪いのでなんとかしましょうw
電撃PSにてネリシアのCG公開。
構図は、悠人が両手に花、という感じで。
途中まで書いていたニム物消滅…orz
>>251さん
堕ちたときに激しいヒミカさんは素敵ですw
次のターゲットはニムだったのですが書きかけの消失してしまいましたorzバカバカオレノバカ
>>252さん
回収されますた?
ヒミカファイル全何巻になるんでしょうかw
>>253さん
妄想といえばヘリオンですが(何 彼女はもっと正統派のえちシーンをさせてあげたいので
ヒミカみたいに生真面目なほど鎖がよく似合いますよね、ね?
>>255さん
(・∀・)人(・∀・)ナカーマ
貴方は私ですかw
>>信頼の人さん
雑魚スピスレにおいて避けては通れぬヘリオン長編…お疲れ様でした&GJ!
アセリアの決意、そして感情の発露…好きなんですよええメインスピの中では一番。
だからこそぐっと来る物がありました。ヘリオン、悠人を幸せにしてやれよー!
私もいつか長編物を書いてみたいですね…ハリオンでw
最終話、お疲れ様でした。
うーん、悩ましい。キャラの捉え方というか、許容範囲の差というか。
月光は私の上に差し込まなかった様です orz
「安息」とは繋がってないということでOK?
ハリーオン LV 16 属性 緑
対HP効果 20% 最2/行1
種別 スタートサポート ターゲット 全体【味方】
ターゲットスキルLV 16 マインドバランス 80〜100
ハリオンオリジナルの神剣魔法。ウインドウィスパーを使えないハリオンだが、その風の精霊の力を
防御ではなく加速のためにアタッカー及びディフェンダーの体にまとわせ、行動回数を増やすことが
可能となった。
実はハリオンはこのスキルを普段から常用してるとかなんとか。三倍ハリーオンっ!!
アタッカー・サポーター/ 行+1
味方全体/ 緑属性UP
エターナル縮小版?
エスペリアが夕菜(銀色)みたいに年少組にまくしたててるの想像してしまった
「うふふふふっ、そうね、そういうことなのよねっ!
この裏切り者っ!」
ねーちんキターッ!
無粋で悪いが、夕奈ですよ
あ、間違い。
アタッカー・サポーター/ 行+1 ×
アタッカー・ディフェンダー/ 行+1 ○
Hurry on
ラキオススピリット劇団 冬の新作「牡丹と薔薇」(ハイペリア文学)
ヒミカ=ラスフォルト脚本
ボタン役:未定
カヨ役:エスペリア
( ´∀`)誰がいいかなぁ、ボタン役
コミトレ5にて、「サブスピ萌。」なる実に直球かつ漢な題の本を入手。
概ね○な内容。ハリオンかわいいよハリオン。
ぐぐると見つかった。手に入れようがないけど。
いいなこの絵(´∀`) ネリーとシアーの絵がもえ〜
>304
あまり詳しく知らないけど、立場逆転でレムリア。
「マヨ、あなた何も知らないのね。この山出しの小娘がちょっと悠様に声を掛けられたくらいで舞い
上がるんじゃないわ」
「そ、そんな私はそんなつもりは…………」
実感のこもったエスのセリフに観客達は次第に舞台に引き込まれ(逆もありw)ていくのだった。
って実際のドラマのやり取り知らんので、てけとーヽ(´∀`)ノ
マヨ?
於是洗左御目時
所成~名天照大御~
次洗右御目時
所成~名月讀命
(古事記)
―――(伊耶那岐(イザナキ)の命が黄泉を見た穢れを祓い清める禊にて)
左の目を御洗いになった時に御誕生になられたのが日神天照(アマテラス)大神、
右の目を御洗いになった時に御誕生になられたのが月神月読(ツクヨミ)の命です。
ラキオス王が死んだ日の、もうひとつの物語。
その日、ニムントールは王宮で警護任務に就いていた。
その日、ファーレーンは訓練所で修練をしていた。
夕暮れのラキオス城下に、突如敵の襲来を知らせる鐘が鳴り響く。
ファーレーンが、急ぎ神剣反応を確認する。
反応に何か妨害の力がかかっているが、感覚を研ぎ澄ませたファーレーンにとって強すぎる障壁にはなり得ない。
未知の神剣反応が複数。霞がかったかの様な障害があるとはいえ、つい先程まで全く反応を感じとれなかった。かなりの手練と認識する。
反射的にニムントールの神剣『曙光』の反応を探す。
ラキオス城内。近くに敵の反応3。味方の反応0。
舌打ちする間もあらばこそ、白い翼が瞬いた。
高速に流れる茜色の景色の中で、味方の神剣反応を調べる。
『求め』、『存在』はエーテル変換施設近辺。
『献身』、『理念』は城内。謁見の間付近。『曙光』の場所とは距離があり、既に交戦中。
ニムントール以外の第二詰め所のメンバーは、詰め所付近で敵に足止めをくっている。
目標は最早一点のみ。
『曙光』の反応が弱まる。だが、消えてはいない。気を失ったらしい。
黒い疾風は速度を微塵も緩めず、窓をプロテクターの額部分で打ち砕き、城の一室に飛び込む。
そのまま神剣を振り上げていた帝国の青スピリットに突進。三連突きは寸分違わず両肺、喉を貫いた。
血は殆ど出ない。悲鳴も出ない。声すら出ない。息すら出来無い。
電光石火の暗殺術。
ファーレーンの二面性。
限り無く優しい姉の顔と、冷酷無比な暗殺者の顔。
ファーレーンの暗殺者の姿、その片鱗を、ニムントールはたった一度だけかいま見た事がある。
昔、ニムントールが今より幼い頃、ファーレーンが狩りをした時の姿。
眠っていたニムントールが目を覚ました時、木々の間にファーレーンが見えた。
ファーレーンがふぅっと軽く息を吐いた瞬間、気配が消えた。目が離せなかった。目立っていたからでは無い。その逆。
網膜にその姿は映っている。しかし、その背後の景色との境目が無い。
注視してすらそうである。一度でも目を離せば、視線を戻したところで姿を捉えるのは至難だろう。
たとえ目の前にいても、景色と姿の区別がつくまい、存在に気付くまい。
それが証拠にファーレーンが近づいても、狙われたエヒグゥは何の警戒も示さず、そのまま首を刈られた。
存在を全く感じさせない。野生の獣にすら。
そこに至っては、鋭い剣技も強靭な肉体も必要無い。
相手の胸に刀を軽く突き刺せば、それだけでいい。相手の首に当てた刀を軽く引けば、それだけでいい。
そんなファーレーンの姿を、ニムントールもその日を最後に見ていない。
そして今回も、見る事は無かった。
空気の漏れ出る首を掴み、急速に死に向かう体を投げつける。
その陰になり、ファーレーンの姿が視界から消えたのはほんの一瞬。
先程まで仲間であったモノを跳ね除けた帝国の緑スピリットは、暗殺者の存在を二度と感じる事が無かった。
あったのはただ不可解のみ。戦場に立つ張り詰めた集中力をもってなお、目の前にいた相手を完全に見失うという信じがたい事実のみ。
ファーレーンは、天井に跳び、天井を蹴り、目標の視界の外である真上から、一直線に『月光』を突き立てた。
脳天を真っ直ぐ刺し貫かれた帝国のスピリットは、自分でも気付かぬままに思考が閉ざされ、そのまま何を考える事も感じる事も出来無くなった。
残るは恐れに震える灰色のスフィアを持った帝国の赤スピリット。
幼さを残した顔は、まだ神剣に飲み込まれてきっていない理性は、心の半分を飲み込んだ神剣の本能は、今や恐怖一色に彩られていた。
見えているのに見えない相手に。はっきり見えてしまっている己の死に。
幼い赤スピリットの不運は二つ。
ラキオススピリット隊のカード13枚。
悠人、アセリア、エスペリア、オルファリル、セリア、ヒミカ、ハリオン、ファーレーン、ナナルゥ、ネリー、シアー、ニムントール、ヘリオン。
このカードの中からジョーカーを引いてしまった事。
ジョーカーを抑えるカードを既に伏せてしまっていた事。
殺気も無く、剣気も無く、逡巡も無く、躊躇も無く。
ファーレーンは若き赤スピリットの命の灯を吹き消した。
からん、と乾いた音を立てて、持ち主を喪った神剣が転がった。
「は……ははははは!! 脅かしよって、帝国のスピリット風情が!!」
静寂を濁した声は、ラキオスの大臣と呼ばれる人物のもの。
帝国のスピリットは、部屋の隅で震えていたこの男を殺そうとしていたのだろうか。
「全く、この役立たずの緑のやつがやられた時には、どうなるかと思ったぞ」
燕雀安んぞの喩えが適切かどうか。
いずれにせよ、本能すら麻痺するぬるま湯に浸かり続けたこの男は、今のファーレーンを目の前にしてなお、これからどのような結果が導かれるか理解出来てはいなかった。
「この緑の奴には、何か罰を与えねばならんな。おい、黒いの。お前ももっと早く来い!! 大臣であるワシが殺されるところだったんだぞ!! おい!! 聞いてるのか!!」
マナに返ろうとする赤スピリットの神剣をファーレーンは拾い上げ、振り向きもせず背後に投げた。
神剣を眉間に生やし、大臣の声が永遠に止む。
やがて大臣の頭を壁に縫い付けていた神剣も霧と消え、魂の抜け殻が血を流しながら崩れ落ち、部屋に静寂が戻る。
ジョーカーは、場を終わらせた。
ニムントールの目の前には矩形の鏡。
「これは夢だ」と、ニムントールは思う。
特有の不自由さ、目の前の鏡以外を認識出来無い中で、鏡に映る自分の姿に引っかかりを覚える。
何が違う、とはっきりしたものは判らないが、あえて言うなら纏った雰囲気が違う。
老成した、落ち着いた雰囲気を纏った姿が、語りだした。
自分の声で紡がれる、自分のもので無い言葉に、言霊と呼ばれる様に言葉は魂を持つのだと、ニムントールははっきり気付かされた。
鏡の声に込められた魂は自分のものとは異質と解る。
その一方で、不思議にもどこかに魂の共通項を感じる。
同じで違う。違うけど同じ。不思議な声がゆったりと鼓膜を震わす。
―――神剣の位は本来圧倒的な実力差を意味します。
ですが、下位神剣を所有する者が、より上位の神剣を所有する者の実力を時に凌駕する場合があります。
神剣の能力を引き出すには神剣と心を交わらせねばならない。
上位の神剣ほど強き自我を持ちますから、心を交わらす際に心を飲まれる危険は格段に増してゆきます。
事、高位になればなる程その傾向は顕著になります。
下位の神剣ならば剣を支配し全の力を引き出す事も比較的容易ではありましょうが、上位神剣に至ってはそれもままならぬ事でありましょう。
仮に神剣に心を飲ませたところで、発揮出来るは能力のほんの一部に過ぎません。
元有る本能の赴くまま戦うは、赤子の駄々も同じ。己を知り、能力を尽くすとは異なります。
ヒミカ殿やハリオン殿は良き力の持ち主。神剣の力を適度に引き出しながら、それを効率的に用いる術を心得ておられます。
アセリア殿やナナルゥ殿、オルファリル殿も、神剣に飲まれる前に己を確立されました。喜ばしい事です。
ですが、汝の尊敬するファーレーン殿は、ラキオスにあって異質なる存在です。
神剣には全く飲まれてはおりません。そうであるにも関わらず、ファーレーン殿の行動は神剣の本能と大きく重なります。
アセリア殿やウルカ殿の様に好敵手との力比べを好むのでも無く。
エスペリア殿やセリア殿の様に戦いを好まざるのでも無く。
オルファリル殿やネリー殿の様に戦いの意味を理解しきれていないのでも無く。
ただ、殺す。
ファーレーン殿は殺す者。命をぶつけ合うのでは無く、刈り取る者。その道は血塗られた修羅の道と言うも生温い、虚無の道。
そこには寂寥も悲哀も無い、歪んだ愉悦も自己嫌悪すらも無い。淡々と命の灯を刈り取るのみ。ただただ空虚。
殺すは目的で無く、手段で無く。生きる事それ即ち他を殺す事。
それでもなお、汝はファーレーン殿に心寄せるのですか?
穏やかながら真剣な問いに、ニムントールは迷い無く踏み出し、笑った。
「お姉ちゃんが生きる事が他を殺す事? 馬鹿みたい。じゃあ、私は何なのさ。お姉ちゃんの生きる事が、私の生きる事なのに。それっておかしくない?」
鏡の中の姿が目を見開く。それが驚きの表情だと気付くのにニムントールはしばしかかった。
何よりも、この相手が驚くなどと想像もつかなかった。
驚きはやがて穏やかな笑いに変わる。
―――なるほど然り。
ファーレーン殿には今や神に捧げる命も、悪魔に売り渡す魂もありはしません。
全ては、汝の為にこそ、あります。
なれば汝がそれに応えるは、信頼されし汝自身を貫く事。それ即ち汝が生きる事に他なりません。
ほうっと感心したかのような微笑交じりの優しい息を吐き、老成した幼い笑顔を上げてニムントールを見据えた。
途端、姿見が光を発しだす。力強く包み込むような光に世界が白む。
眩い光の洪水の中、最後に分け身の発した言葉が、幽かに耳に届いた。
―――ぬばたまの闇夜を照らす月光の輝き。
暗く長い夜を導くファーレーン殿に、朝の訪れ、暁を伝えるは汝の役目です。
汝と共に歩む、吾が名は……
目を覚ます。
暖かな姉の背におわれている。
「……お姉ちゃん?」
「あ、ニム。起きた?」
「ん」
「助けに行くの、遅くなっちゃって、ごめんね」
「ううん。ありがと、お姉ちゃん」
すりすりと姉の背中に頬を擦り付ける。
戦いを終えてなお、一滴の返り血も浴びていない姉の匂いは、柔らかな花の香り。
触れるほど接近しなければ気付かないこの香りは、ニムントールを安心させてくれる。
「ありがとう、ね。お姉、ちゃん……」
再び寝息を立て始めたニムントールを優しく背負い直し、ファーレーンは歩いていく。
姉妹の影が黄昏に長く伸びていた。
>>310−317さん
なんだか幻想的な感じがします。
『月光』と『曙光』が惹かれ合う理由。
日本神話に絡ませて現れたファーとニムの心情と結びつき。
しん、と張り詰めた戦いの中に、綺麗な温かさを感じました。G.J.です!
>>298髪結いさん
設定を所々使っているのは冒頭の通りですが、続編とは認識していません。
意識した訳ではないのですが、紛らわしい書き方になってすみませんorz
319 :
憂鬱の人:05/01/31 08:48:34 ID:ETjN0VFT
>>317 朝早くから乙でした。
まるで貴方に研ぎ澄まされた「月光」を喉元に突き付けられた気分です。
ラキオスの「光と影」姉妹。私はかつてこれほど「神剣」を真摯に描き出したSSを知りません。
その上で真面目にレスします。ニムがエレメンタルブラストを放つ時のセリフは
「ニムは死にたくない。...だからっ!」
確かこうだったと思います。私は彼女が恐れる「死」が「金色のマナの霧」すなわち「曙光」ではないだろうか、と
考えていました。我ながらネガティブな考え方ですね。
「生きる事」を愛し、闇の中を歩く孤独な暗殺者をも照らす女神。それがニムの本質なのかも知れません。
うわぁ。ミスりました。古い方のデータをアップしちゃいました。
白状します。私、5スレ226です。
「あなたを見つめる私」からもってきて、そのまま修正入ってない部分があります。
さてそれはどこでしょう。
……気付かれない方は、どうか探さないで下さい。
古事記関連はそれっぽい部分のみを抜き出させていただきました。本当はもっとずっと複雑です。
私自身、まだ読みきっていないです。それなのに引用してしまいました。スイマセン。
>>318 幻想的、ですか。正直意外な感想です。
分不相応な感想を頂いて、嬉しいよりも戸惑いが先に来てしまいました。ありがとうございます。
>>319 真摯、ですか。
そんな言葉を頂くと、読みきってもいない本から引用をしたり、古いデータをアップしたりしてる自分に泣きたくなります。それこそ分不相応というか何というか。
ありがとうございますというか、だらしない私でスイマセン。
ところでみんな、画像板行ってみた?
GJ!>226氏
アサシンファーレーンカコイイ
>>317 自分は戦闘(暗殺?)シーンに魅力を感じました。
終始冷静な語り口で描写される「殺し方」が、その冷徹さそのもののようで、冷たくも心地良く感じました。
それ以外でも全体を通して落ち着いた文章であり、すらすらと読めました。
ともあれGJ、であります。
>>310-317 5スレ226さん
鏡に向かうニムが受け取った問いは、
幼い日の光景を心のどこかに気付かないまま残した自分の恐れか、
それとも、「神剣」自身が感じた上位者に対する畏怖か。
とちょっと暗い方向を想像してしまいましたが、
あっさりとそんなものを吹き飛ばすニムの強さに心を打たれます。
ファーが照り返す光は、そうかニムから出ているのかと清々しい美しさを感じました。
スピりットって化粧とかするのかな。
> 310-317
いやぁ、いいねぇ、ニム、躊躇なし。芯はつおいこだよね、うん。
そのつおさはまばゆくて。
だからこそ守りたくなる…
>320
最初どこの誤爆かと思ったw スサノオは悠人(求め)?
ファーレーンとニム。二人の絆は神々といえど切ることあたわず。
曙光の女神エオスなんてのもいますね。こいつに惚れられた人間の男はまさにエターナルにw
>325
おそらく禁止されてるでしょう。
もし仮にOKだったら、毎朝悠人に顔合わせる彼女たちは常在戦場になるw
薄いピンクのルージュ、それでもファーはマスク。
スピは一般人より美人にできてるからスッピンが一番綺麗。化粧などいらないに一票。
>>325 恋する心こそが彼女達の最高の化粧です。
エスは淫らさも含む。
流石に汗は気になるだろうから、香料位はつけてるかな、と。
何となくスピリットの汗は無臭っぽい。
それこそマナの霧に帰るのでは?
「私って、特徴らしい特徴がないんじゃないかしら…?」
「…人の部屋に押しかけて、開口一番何ですかソレは」
ここはラキオススピリット部隊第2詰め所。その1室、ナナルゥの部屋である。
簡素ながらも鏡台、クローゼット、テーブル等、一通りのものは揃っている。
ちなみにテーブルはちょうど部屋の真ん中に置かれていて、そこで向かい合ってセリアとナナルゥが今現在、会話の真っ最中である。
「だから、ネリーの3連へヴンズスォード、ヘリオンのダメージ付きアイアンメイデン、ヒミカの赤属性攻撃とか、皆これぞ!って技を持ってるのに比べて、私ってただバランスがいいだけって気がするのよ」
「必殺技が欲しいんですか?それなら特訓して、飛天御○流でも第7センスでも勝手に開眼してください」
「…もしかして馬鹿にしてる?」
「してます」
にべもない台詞に、セリアは思わず絶句してしまった。
言葉が出てこないので、とりあえず溢れんばかりの怒気を目の前の人物にぶつけてみる。しかし、ナナルゥはそんな事は意にも介さず言葉を続ける。
「まあ、あなたの言いたいことは大体察しが着きます。つまり、皆には突出した個性があるのに自分にはない、とそう言いたいのでしょう?」
「…そうよ」
「確かに、戦闘データだけ見ればそうかもしれません。ですが性格としての個性なら、十分他の人に負けないものを持ってると思いますが。何も問題はないでしょう」
「負けないだけじゃ駄目なのよ、何か差をつけるものがないと…」
「何で駄目なんですか?」
「うっ、そ、それは…」
言葉に詰まるセリア。沈黙。
そして、会話としてはかなり不自然な間を置いてからようやく、
「…別に。ただちょっとこのままだと皆の中に埋もれちゃうな〜とか、地味だな〜とか思っただけよ」
歯切れ悪くそれだけ言うと、プイとそっぽを向いてしまった。何故か、顔を赤くしながら。
「……ユートさまですか」
「!!そ、そんな事一言も言ってないでしょ!?最近へリオンが妙にユートさまと仲良さそうにしてるとか、エスペリアやファーレーンのユートさまを見る目つきが怪しいとか、私は全然気にしてな…」
そこまで言って、セリアは猛烈に自爆したことに気が付いた。が、全ては後の祭りだった。
思ってたことを、こうはっきり口に出しては弁解の仕様がない。
こんな時間に支援!
「全く、あなたは分かり易いですね」
「うぅ…わ、悪かったわね、分かり易くて…」
セリアは、真っ赤になって俯いてしまう。
(こーゆー所、本当に魅力的な性格だと思いますけど…ま、言わないでおきましょう。
言ったところでどうせ怒るだけでしょうし)
そんな事を考えて、思わず苦笑してしまうナナルゥだった。
「まあ、いいです。それじゃ、始めましょう。」
「え…?」
「剣技も性格も一朝一夕では変えられないけれど、外見だけなら比較的簡単に変えられる。
それで私の所に来た。違いますか、セリア?」
「あ…」
常に前線で戦うスピリットたちにとって、化粧をするといった事や、綺麗な服で着飾るといった事は、ほぼ無縁である。
しかし、そこは変わり者(?)のナナルゥ、化粧やら服やら何故かたくさん持っているのだった。
で、セリアがナナルゥの部屋を訪れたのも、確かにその事に起因している。
とゆーか、ナナルゥの言うことは、そのまんま図星であったわけだが…
「それはそーなんだけど…。何か癪だなぁ…」
どうにも初めから全て見透かされていたようで、納得できないセリアであった。
「ハイハイ。分かりましたから、とっととクローゼットから好きな服を選んで、鏡台の前に座ってください」
ナナルゥに促され、渋々といった感じでセリアは席を立つ。
「そう言えばリクエストはありますか?どう変わりたいとか、何かあるでしょう」
「え、えーと、その…」
一瞬躊躇するセリアだったが、続けて蚊の鳴くような声で答えた。
「…か、可愛く見えるように、して欲しい…」
間。
「成る程。初対面で『あなたは指揮官として信用できません、逝ね』とか言ったものだから、それ以降何か冷たく見られてるっぽいな〜とか思ってたわけですか、ずっと」
「ひ、人の心を読むな〜!!って言うか、そこまで非道くは言ってない!!」
語気を荒くするセリア。しかし、それを向けられているはずのナナルゥは、やはり何ら意に介した様子も見せずに飄々としている。
「……全く、あなただって最初は全然喋らなかったくせに…。どこでどう間違ってこうなったんだか」
「…ユートさまのせいでしょう」
「え?それって…」
もう1度後ろを振り向こうとしたセリアだったが、ナナルゥに制される。
「冗談です。皆があまりに騒がしいから、毒されただけですよ」
いまいち釈然としないセリアだったが、
「それより動かないで下さい。始めますから」
というナナルゥの言葉にしたがって、じっとしている事にした。
―2時間後―
メイクアップが終わったセリアは、何とゆーか既に一目ではセリアとわからない容姿になっていた。
「なかなかイイ感じに仕上がりましたね」
「そ、そうかしら…?私には、ひたすら似合わなく見えるんだけど…」
「そんな事ないですよ。もう少し、自分に自信を持って下さい」
髪−ポニーテールを下ろして、ストレートに。
大きなリボン、所々に小さなリボンもついている。
顔−アイライン等メイクの効果か、柔らかく少し幼くなった印象を受ける。
服−フリルがたくさんついたワンピース。白を基調として、水色も入っている。
セリアから見て、一番可愛い服らしい。
胸−据え置き(笑
「う〜ん…自分から言い出してなんだけど、やっぱ柄じゃないわ…」
立ち上がりながら、伸びをするセリア。
2時間座りっぱなしでじっとしていたので、さすがに疲れた様だった。
「私は良いと思うんですけどね」
ナナルゥは少々残念そうな表情を見せながら、化粧道具を片付け始めている。
コンコン
ちょうどその時、部屋のドアをノックする音がした。
「…今日は千客万来ですね。すみませんがセリア、出てもらえますか?」
「うぇ〜…この格好で、あんまり人に会いたくないなぁ…」
渋るセリアだったが、頼み事をした手前こんな些細な要求を断るわけにもいかない。
しかし、セリアがドアの前に立つよりも早く、外にいた人物はドアを開けて中に入ってきた。
「入るぞ、ナナルゥ。セリアがここにいるって、ヒミカから聞いてきたんだ…けど…」
「ユ、ユートさま!?」
部屋の外にいた人物が悠人だったとは微塵も予想せず、セリアは思わず声を上げたまま硬直してしまう。一方、驚いたという点では悠人も全く同じだった様だが、セリアよりは冷静なのか、すぐに言葉を紡いだ。
「…………その声、セリア…なのか?」
(しまった!黙ったまま、ナナルゥに知り合いの青スピリットだとか何とかフォローしてもらえば良かった…)
かなり無理がある。大体悠人は、セリアがここにいると聞いて来たのだから、ごまかし様もない。が、今現在のパニック寸前のセリアに冷静な思考を求める方が酷という物である。
「ち、違うんです!こ、これは、その魔が刺したとゆーか…いえ!そーじゃなくて、あの、その……」
最早、自分でも何を言ってるのかよくわからないセリア。半分涙目で、まるでいたずらがばれて親に叱られる子供のようだった。
けれど、そんなセリアの心境を知ってか知らずか、悠人は笑顔でこう言った。
「驚いたな…。普段の凛々しい姿もいいけど、その格好もすごく似合ってる」
「……えっ!?」
セリアは耳を疑った。聞き間違い、もしくは幻聴じゃないだろうか…ついつい、そんなことを考えてしまう。そっちの方が、よほど納得がいくからである。
「ユートさま、今何て…?」
「ん?いや、似合ってるって。すごく可愛いよ」
……どうやら聞き間違いではないらしい。とすると、これは夢か妄想…?
とりあえず、頬をつねってみる。痛い。=夢じゃない。
「ユ、ユートさま、嘘ついてませんか!?」
「ついてないって」
苦笑する悠人の言葉を聞いて、ようやくセリアはこれが現実だと認識する。そして、喜びが胸の内に湧き上がってくると同時に、気恥ずかしさを憶えて、耳の先まで真っ赤になってしまう。顔から火が出そうというのは、こういう状態を言うのであろうか。
そんなセリアを見て悠人も少し照れている様だったが、ここに来た用事を思い出し口を開いた。
「あー、あのさ。そう言えば部隊編成の事で話したいことがあったんだ。後で、部屋に来てくれないか?できれば、その格好の方が嬉しいな」
「は、はい!い、今すぐで大丈夫です!」
悠人は頷くと、ナナルゥと二言三言簡単に言葉を交わして部屋を出て行く。
セリアも慌ててその後に続こうとして、思い出したように立ち止まり振り返る。
「ありがとう、ナナルゥ!私も…もう少しだけ自信持ってみるね!」
それだけ言うと、セリアは足早に去っていった。
それから―
その後、悠人と妙な格好をしながらも幸せそうなセリアが、2人でいるところが度々目撃されたと言う。
「色恋沙汰は当人同士の問題。手前どもがとやかく言う筋合いはないでしょう」
「ん」
「全く、今は大切な時期なのに…恋愛なんてもっての他です!」
「エ、エスペリアお姉ちゃん、なんか怖いよ〜?」
「ネリーも、あーゆー可愛い服着たいなー♪」
「…シ、シアーも〜」
「ユートが誰と一緒に居ようが、二ムは別に構わないけど、お姉ちゃんが部屋に篭っちゃうのが困る…」
「あらあら〜、そ〜言えばヒミカさんも部屋から出て来ませんね〜」
「ハァ、羨ましいなぁ…私も、もっと背が高くて魅力があればなぁ…」
「ヘリオンちゃん、君の魅力は俺が知っている!俺に任せろ!!さあ、この胸に飛び込んで来るんだ!!」
「で、その後はどーするわけ?」
「そりゃもちろん、熱い抱擁、熱いヴェーゼ、そのままベッドへGO!って、ハッ!?」
「とりあえず、死んどけぇぇッ!!!」
「ぶげらッ!?」
「ああっ、コーイン様〜!!」
落ち込む者、羨む者、興味のない者、2人に関して皆の意見は様々だったが、概ね問題はなかった。(約1名、星になりかけたが、自業自得なので割愛)
「まあ、一応ハッピーエンド、なんですかね…?」
並んで歩く悠人とセリアの二人を遠くから眺めながら、ナナルゥはそっと微笑む。
その微笑みはとても優しく、けれど同時にどこか寂しげにも見えるのだった。
342 :
253:05/02/01 03:21:26 ID:y4c7q6T9
後書き
まずは、支援どうもありがとうございます。
2話くらいでまとめようと思っていたのに、何だか(異様に)長くなりました。
ちょうど、化粧の話が出てるときなので、タイムリーです。
一昨日中に完成予定だったのにここまで延びたのも、上記のように考えれば良かったなあ、と思えてきます。
…すいません、嘘です。書くのノロ過ぎ…。(死
しかも当初はヘリオンで何か書こう!とか思っていたのに、完成してみたら中々報われないセリアさんとナナルゥの話になっていました。
何故こうなったのか、私にもわかりません…(ぉ
セリアが子供っぽい、ナナルゥが饒舌過ぎる等の苦情は、これを読んで下さった皆さんの心の中にしまっておいて下さい。(泣
誤字脱字、ハリオンマジック等ありましたら、ご指摘下さると幸いです。
お目汚し、失礼しました。
>>信頼の人さん
回帰、堂々の完結御疲れ様です。
黒い3連星、じゃなくて黒スピ3人の攻撃が凄く燃えました。
ちっちゃくて、速さでは負けなくて、可愛くて、強くて…完璧過ぎです☆
まあ、こんなヘリオンと共に歩んでいけるなら、今は多少へたれな悠人君も強くなれるでしょう。
ヘリオンにはお姉さんの分まで、しっかり幸せに生きて欲しいと切に願います。
ところで、作中Z−15、第五位って所、第四位だと思うんですけど…。
間違ってたら申し訳ありません。
あと、「逝こう」、確かにこの方がとてもしっくり来ますね。全然思いつきませんでした。
勉強になります。(笑
343 :
253:05/02/01 03:23:00 ID:y4c7q6T9
>>憂鬱の人さん
おいしいトコをもらいました♪
どーも自分の中では漢らしい悠人=エロ、となってるらしくかなり駄目駄目です。
ライバル視などとは、恐れ多いにも程があります。(笑
>>妄想の人さん
ヘリオン−正統派、生真面目−鎖…激しく同意!
けど、自分じゃ力量が足りなさ過ぎて桃色は無理なので、お願いします。(ぉ
いつか、書けるようになればいいんですが…。
>>226さん
ファーレーン、か、カッコいいーッ!!
大臣をぶち殺すトコが、痺れました。
ニムの想い、ファーの想い、2人の絆がとても上手く描かれていると思います。
そして、自分の書いたのを読み返して、激しく鬱…。
ごめん、ファー。台詞すらなかったよ……。
何かいつも遅レスになってる気が…orz
>341 253氏
化粧話にばっちりタイムリーだったので、この短時間でこれだけ書いたの?と変な汗かいてました(w
完成が延びたのはマナのお導きでしょう。
しかしセリア可愛いよセリアハァハァ
気を許した相手には子供っぽくなるのでしょう。
例えばベッドのなk(キシュキシュ
セリア分補充完了、GJでした!
「お〜し、いっくぞ〜!!」
盛大な掛け声と共に、ネリーがぽーんと戦闘服を脱ぎ捨てる。
部屋の中を落ち着き無くあちこち動きながら着替えを始める姉の後を、
シアーは必死になって追走&服の捕獲に勤しんでいた。
「ネ、ネリーちゃん、もうちょっと落ち着いて…………ああ、もう」
拾った服を丁寧に畳みつつ脇に揃えて抱える。籠手は机の上に並べる。
下を向いたまま歩いてると、ぽんと頭の上に蒼い塊が落ちてきた。
「………………#」
いくらなんでもはしゃぎ過ぎだろう。
御揃いの青ストがくるくると玉になったまま転がされてるのを、
拾って伸ばさなきゃならない妹の苦労も少しは理解して欲しい。
電線しない様気を付けて解きながら、シアーは諦め半分の溜息をついた。
「なにいってるんだよ〜、今日はお出かけなんだからね〜♪」
理由になってない。部屋を散らかす理由には、絶対なってない。
シアーは心の中で反論していた。『孤独』が少し光を帯びる程度に。
ふふふ〜ん、とリボンをこれだけは丁寧に解いているネリーを横目に、
黙々と服を片付けるシアー。自分も戦闘服を脱ぎ脱ぎしていて、ふと気付いた。
さっきのネリーの服のサイズが局地的に自分のよりも小さくなっていると。
「〜〜〜〜〜♪」
「おっ、ようやくシアーちゃんもノッてきたみたいだね〜」
能天気にショウブ下着に履き替えている姉に、シアーは曖昧に微笑んで見せた。
こうして今日も平穏な姉妹の睦まじさが保たれているのだった。
そんな水面下での激しいイイオンナ争いをシアーが勝手に制圧していると、
急に振り向いたネリーが両手にリボンを持ったまま、訊いてきた。
「ねね、どっちが可愛いかな?」
「え?う〜ん、どうだろう…………」
考えるふりをしながら、シアーは別のものを観察していた。
そう、パンツ一丁の姉のスタイルを。上から下まで隅々まで。
細身のネリーは脱ぐと実は凄いんです、なんてことは全然無いが、
それでも全体のバランスは悪くない。顔立ちの可愛さと非常にマッチしている。
小悪魔的(コケティッシュ)、とでも言うのだろうか。
ささやかな膨らみがつん、と上を向いていたり、引き締まった腹筋に
きゅっとすぼんだお臍、綺麗に浮き上がった鎖骨、小さなお尻。
それらが元気一杯に輝いていて、妹の目からしても「イイオンナ」の素質十分だった。
普段から見慣れている筈だが、こうして改めて見直すと、つい自分と比較してしまう。
肌の色はシアーの方がやや白い。肌理細やかさでは勝っているだろう。
鎖骨やお臍の形はそっくりだし、色々な大きさは圧勝。あとは背だけ、と思っている。
「う〜ん、やっぱり、こっちっ!」
「え……?」
考えに耽っていると、ネリーは勝手に自分でリボンを決めてしまっていた。
網目がチェック状になっている、やや緑がかった淡い蒼。
それをん〜と後ろ手に持ち上げた髪に纏め上げようと背伸びをしている。
シアーはそれを見て、ぷっと少し吹きだしてしまった。背伸びはしても意味が無いのに。
そんなことより、とシアーはこっそり隠しておいた、自分のリボンを取り出す。
短い髪はシアーみたいに後ろで纏める、という訳にはいかない。
やや太めの黄色いリボンは、頭の両サイドを飾る為のものだ。めったにつけないが、今日くらい。
首を少し傾げて片方ずつ蝶結びで丁寧に着けていく。
一方ネリーはエスペリアお姉ちゃんから貰った普段着を取り出していた。
肩口と胸前、それに大きめに膨らんだスカートの裾に御揃いのフリルがついて可愛い。
背中にある大きいリボンだけはセリアお姉ちゃんに作って貰った二人一緒の藍色。
白を基調に薄い緑の染めがややきつめだが、それは髪の色でフォローできる。
「あ、ネリーちゃん、ストッキングの方が先だよ」
「え?あ、うん。ありがとう、シアーちゃん」
「青はだめだよ、白のがいいと思う」
「りょ〜か〜いっ」
そうして再び二人はもぞもぞと御揃いの衣装を頭から被り始めた。
「シアーちゃん、ちょっとお願い〜〜〜」
「こ、ここ引っ張って、ネリーちゃ〜ん……」
お互いに助け合い、何とか着終わる。最後に靴を履き直して出来上がり。
苦心賛嘆、ようやく着替えを完了した二人は向き合ってお互いをチェック。
暫くふんふんと頷き合い、仕上げにお互いの顔を見つめ合う。
「…………へへ〜」
「…………あはっ」
にぱっと元気良く笑うネリーとほんわり微笑むシアー。ようやく準備が整った。
いつもとは違い、ゆっくり廊下を歩く。しずしずと、あくまで『れでぃー』として。
もっともシアーは何時もの事で、普段は駆けていくネリーを懸命に追走していただけなのだが。
「あら、珍しいわね、お出かけ?」
「おっ、可愛くなったじゃない」
「孫にも衣装、ですか」
「いいですね〜、お姫様みたいですよ〜」
一部問題発言の様なものもあるが、皆が褒めてくれる。
二人は軽く微笑みを返すだけ。でも内心大得意。よかったね、と小声で囁きあう。
それはそうとして、何故全員付いて来るのだろう。見送りが必要な程、子ども扱いなのだろうか。
そんなことを考えながら、ネリーとシアーはおすまし顔で歩いていった。
やがて約束の、玄関先に辿り着く。そう、今日はユートさまと『でぇと』なのだ。
「よっ、遅かったな…………ってぇ?!」
悠人の反応にネリーは満足した。時間をかけておめかしした甲斐があったというものだ。
ふふん、と胸をそらして次の言葉を期待している姉を横目に、しかしシアーだけは冷静だった。
悠人の視線が微妙に自分達とはずれた方向……後方へと向けられているのだ。
時を待たずして、後ろから物凄い殺気が大量発生していた。
「「「「「 # ユ ー ト さ ま 〜 ! ! 」」」」
シアーは少ししょんぼりした。どうやらお出かけは、もう少し後になりそうだったから。
349 :
信頼の人:05/02/01 07:09:46 ID:Fc+KzVBQ
女の子のおしゃれに賭ける心情というものは、男にとって永遠の謎です。
その隠された努力というものは、きっと幼い頃から培われた努力の結晶なのでしょう。
>>342 253さん
>最近へリオンが妙にユートさまと仲良さそうにしてるとか
_| ̄|○
戦闘面で言われたい放題のセリア、合掌。ナナルゥにお礼を言う所、妙に可愛いですねw
後、感想&ご指摘有難うございました。
で、ファーですけど、
薄蒼紫のシャドウもロシアンブルーの瞳に合いそう。でも兜w
351 :
憂鬱の人:05/02/01 10:43:22 ID:90e3rSgh
>>253氏
いいえ〜、私には可愛いセリアは書けませんし、そもそも既にネタが枯渇してますから〜>ライバル
ナナルゥは饒舌と言うより毒舌ですな。「逝ね」って、セリア...w ホントは言っただろ!?
私も「漢=エロ」だと思ってましたけど...違うの...?
>>350信頼氏
お洒落シリーズ第二弾!
...どうやら信頼氏のマインドは、まだ回復していないようです。いけませんね。
ストは「伝線」です。ニーソ好きの某氏に怒られますよ。
ネリーが孫ならニムはひ孫。ナナルゥ、毒舌にもほどがあるぞ!w
352 :
名無しさん@初回限定:05/02/01 14:46:35 ID:1F5aENdi
>350
×孫
○馬子
だよね?
と、誤字だけ指摘しておく
>>343 253さん、乙でした。
部屋から出てこない年長組の二人がかわいい……
第二詰め所の中では、一番恋愛ごとに疎かったりして(w
>>350 信頼の人さん、乙です。
おめかししたネリシアは光陰には見せれませんね。
きっと今日子の雷が落ちるでしょう。
おしゃれとかで考えてみると、ラキオスでスピの扱いが
良くなったのは悠人達がきてからのように思えるので
おしゃれ、恋愛関係は年長組のほうが下手そうではありますね。
>>351さん、
>>352さん
なんかもう最近書く度誤字脱字がorz……前から?
馬子ですね……孫ってナナルゥ、言い過ぎ。
伝線は素で知りませんでした(汗
どっちみち電線じゃおかしいんですが。某氏に怒られてきます。
>>353さん
年長組のほうが下手→おしゃまな年少組→何故かとんがり帽子のメ○ルを連想してしまいましたorz
……知ってる人いるでしょうか(汗
>349 信頼氏
その後、ユート様は五体満足ででぇとに行けたのでしょうか。
健気な二人の為にもせめて歩ける程度で済んでいて欲しいです(w
伝線と言う言葉に対してそこから透ける素肌にエロティシズムを感じこそすれ
怒ることなどありえない私は、きっと某氏とやらではないのでしょう(w
光陰が神剣の能力を全開にして第2詰め所に侵入して
ストッキングをピリピリ破りながらハァハァ(´Д`*)してる所に
同じように神剣の能力を全開にして鬼夜叉のような形相のエトランジェが(ry
「人間は、神剣なんかに負けはせんy」
―――第一詰所。
それはある朝、唐突に幕を開けた。先に食卓に座っていた蒼いストレートヘアの少女が、
寝ぼけ眼の悠人を衝撃的な言葉とともに出迎える。
「......ん、おんじい。」
―――何だ?何が起こったんだ?
口をぱくぱくさせて、現実が受け入れられずにいる悠人に、次々と追い打ちがかかった。
「あ、これは祖父殿。」
―――ウルカ、お前まで、どうしたってんだ!?
「ご朝食の準備が出来ております、おじいさま。」
―――エスペリアまで!?
「エトランジェ・グランパ、このたびの任務遂行、大儀でありました。
昨夜は良く眠れましたか?」
―――朝っぱらから、何故ここに居る?
頭の中が真っ白になった悠人は、居合わせた少女たちの顔をせわしなく見比べながら、
この事態の説明を一体誰に頼むべきか迷った。
そう言えば、悠人が妹タイプ好みというデマ(?)が広がった時に、
詰所中のスピリット達が一斉に悠人を兄呼ばわりした事があったが、今回のは違う気がする。
いくら何でも孫フェチなんて聞いた事が無いし、思い当たるような言動をとった覚えも皆無であった。
――ん?そういや一人足りない?
悠人が気付いたまさにその時、いつもは活発な赤い少女が、しょんぼりとした足取りで食堂に入ってきた。
「あ―――、パパ。」
茫然と立ちすくむ悠人に気付き、うつむいていたその顔を上げて声を発したその少女だけは、
いつもの呼びかけ方を変えていない。
口調こそ沈んではいるが、どうやらこの異常事態には巻き込まれていないようだ。
ほんの少しだけ冷静さを取り戻した悠人は、今自分が見舞われている事態の真相よりむしろ、
オルファの様子のほうが気になり始めた。
「どうしたんだ、ずいぶん顔色が悪いぞ、オルファ。どっか具合でも悪いのか?」
幼い妖精が力なく首を振る。部屋中に気まずい沈黙が流れた。
まさかとってもイケナイ事を訊いてしまったのだろうか?確かにオルファが人間ならば、
そろそろ始まってもおかしくない年頃である。
しかしスピリットには確か生殖能力が無く、したがってそういう事も有り得ない筈であった。
ややあって、赤い妖精がゆっくりと口を開いた。寂しげな、笑みを浮かべながら。
「オルファね...気が付いちゃったんだ。」
「き、気が付いたって...何を?」
思わず固唾を飲んで、悠人は続く言葉を待った。
「笑っちゃうよね、パパ...。オルファ、みんなのママだったんだよ...。」
「なるほど!それでつまり、俺はみんなのおじいちゃんってわけか!...それもやだなあ。」
すべての事に得心が行き、膝を打った後、オルファ同様に肩を落とした悠人はポツリとつぶやいた。
「―――それにレスティーナは関係ないだろ、レスティーナは。」
360 :
憂鬱の人:05/02/01 23:31:01 ID:EoE84Y5T
我ながら相変わらずの関西&低マインドっぷりでした... orz
レスティーナは実はおじいちゃん子。
やさしい家族のぬくもりを与えてくれたのは、まだ小さな頃薨去した祖父だけだった。しんみり。
>342
セリアさんこれだけ皆にイジラ……いや、かわいがられてるのに特徴がないとはっ!
ところでナナルゥの服。胸が余ったりしま(逝ね!ヘヴンズスォード[物理])
>349
シアーその密かな優越感。心に秘めて狙うは……いくつものロックオン警報が悠人の耳に!
何気ない所作の中に「女」をみたw
>短い髪はシアーみたいに後ろで纏める、という訳にはいかない
ネリー?
>318
あくまで、私個人がその辺気にしてるだけですので〜お気になさらないで下さいませ。
規制解除…こういうときはやたらレスしたくなるもの…
>>342=253さん
ラブラブセリアのマインドが130くらいあるように見える…
恋する女は無敵。彼女の地位を得ればもはや敵なし。そして年長組は気づいた時にはもう遅い。あーあ。
で、乙といいつつヒミカ萌者として紅蓮氏の作品を待ってみるテスト。
>>360=憂鬱の人さん
いつものノリ。いつもの安心。乙ですた。w
>>361 セリアは優しいの?(ヘブンズ【赤】もあるのに【物理】ということは手加減したということであり以下略)
>>355黎明さん
ニーソ好きな方はどうやら沢山潜伏されているようなので、油断は出来ませんw
悠人はどうやら気の済むまでぼこぼこにされた後、でぇとの約束と引き換えにアースプライヤーを(ry
>>356さん
鬼夜叉のようにって……
今日子さん、思いっきり空虚に飲まれているじゃないですかw
>>360憂鬱さん
妹→馬子(違 →次は何が来るのか。
アセリアの「おんじい」、渋過ぎなのに似合っていそうで爆笑しましたw
しかし祖父の言い回し、13個もあるのでしょうか?第二詰め所が心配です。
>>361髪結いさん
みんな美形だし、イイオンナになるんでしょうけど、ネリシアが大人になったら、
ネリー=向日葵
シアー=蒲公英
みたいな女性になるイメージがあります、個人的には。
しかし短編1本で3つ目のエラー……orz これで打ち止めだといいなぁ……だめかなぁ(汗
364 :
253:05/02/02 07:34:16 ID:XNnAY6sC
読んで下さった方々、誠にありがとうございます。
>>344さん
短時間で…そんな神々のようなことは、自分には無理ぽ((((゚д゚;;))))
セリアが可愛いと思って頂けて、嬉しいです。
ベッドの方はご想像にお任せします(笑
てか、部屋に誘った時点で悠人がフリル服プレイを考えていた、に一票w
>>345 信頼の人さん
ネリシアおめかし編、見てビックリ。
なにせ、次作品の構想『ネリシア、悠人とでーと』…まんまだああッ!orz
うーん、内容は違うとはいえ、どーしたものか…。
苦労しつつも、現金でちゃっかり者のシアーが良いです。
>>351>>357 憂鬱の人さん
…ホントは言いました。ただ乙女モードセリアは、過去の記憶を改竄出来るのです。
だから腹黒な訳ではありません。…え、余計悪い?…そうかも。w
漢=エロだと、紅蓮の人さんの悠人に漢らしいと使えなくなってしまう罠。
その場に合わせて使えば良いですけど。
ところで、悠人=祖父だとすると、義理とは言え彼は孫に手を出す変たi(ry
>>353さん
確かに、年長組は総じて恋愛事弱そう…。
ヒミカやファーも書きたいものですが、どうなることやら…。
>>361 髪結いの人さん
胸が余る…やば。ナナルゥに的確な回答を要請。
「大丈夫です。あの服、昔のですから」…解決!(・∀・)…でも、非道いorz
>>362さん
ヒミカの扱いが酷くて、申し訳ございません…。
まあ、自分も紅蓮の人さんがラブラブを書いてくれるのに期待してみたり。
365 :
憂鬱の人:05/02/02 16:41:52 ID:w/b7whfg
>>361 こんな低マインド話も貴方にかかると美談に!?い、いつから高マインド派に宗旨替えを!?(←なにげに失礼だよ)
>>362 って言うか、私にはこれしかありませんから〜w 安心して頂ければ何よりでした。
>>363 意味がわかんねーよ!と言う方は短編SS保管庫雑魚スピ総合カテゴリへGO!
高マインドだった頃の信頼氏の短編が読めます。(←ホントに失礼だってば)
>>364 まあ、紅蓮さんもニーソの好きな漢ですから気にしませんよ、きっと。(←職人全員敵に回してどうする)
お日様の匂い。私はそれが好き。
その匂いをたくさん吸い込んだ布団はもっと好き。
ぽかぽかに暖まった布団に丸まって寝るのも好き。
ふわふわの布団。私はそこに寝転んだ。
ん〜……♪
あったかい腕、あったかい胸、お日様の匂い。
ユートの身体は好き。すごくあったかくて気持ちいい。
「ははっ、ニムは甘えん坊だな」
ニムって言うな〜…んん〜
ほっぺたをユートの胸にすりつける。意外とゴツゴツ。
すんすん鼻を動かせばちょっと汗の匂い。ユートの匂い。
それをもっと感じたくて、私はぺろっとユートの身体を舐めた。
「うわっ!く、くすぐったいって」
知らない。ニムがしたくなったんだから。
ユートの味が口の中に広がっていく。
ちょっとしょっぱくて、汗の匂いがすこしして、お日様の匂いがする。
すごく気持ちいい。ユートを感じるのが気持ちいい。
「ん、そうか…じゃあ、ちょっとこっち向いて」
あぅ…ユートが離れた。ユートの匂いが離れた。
寂しい…ん、あ?
あ、う…ちゅ、ん…うむ…はぅ。
あ…ユートに、キス、されちゃった…
「…ニム」
ユートの目が私を見つめている。
すごく真剣で、まっすぐで、私のことだけを見てる。
私はその目にひかれて…もう一度、ユートにキスをした。
「んっ…ちゅ、んむぅ…」
ユートの口の中に舌を入れる。ぬめぬめした柔らかいものがすぐに絡みついてきた。
あ、これ…好き、かも。ニムの中にユートが入ってくる…
「っあ…ふぅ。ニム、気持ちよかったか?」
あぅ…そ、そんなことない!き、気持ちよくなんてないもん…
……ううん、嘘。ユートの唇、気持ちよかった。
キスしてるときはユートのことしか考えられなかった。ユートしかいなかった。
ずっと、ずぅっと、このままでいてほしかった。
でも言えない…だって、いままでユートに酷いことしか言わなかったから。
「ニム……好きだよ」
あ…
ユートの手が私を抱き寄せた。
…ぎゅって、ニムを抱きしめてくれた。
すこしの隙間もない。ユートとニムがいっしょになる。
どくどくってユートの胸がなっている。たぶんニムもそう。
「ん…」
またキス。今度は唇が触れるだけのキス。
ちゅ、ちゅっ、って何回もキス。そして抱きしめてくれる。
「ニム…好きだ、大好きだ」
もう…何回も言わない。わかってる。
私も…ニムも、ユートのこと、大好きだよ。
そして、キス。
ユートが私を、ニムがユートを抱きしめて、唇を合わせた…
「ん〜〜……むにゃ…?」
…あれ?ここは……ん〜…ゆー、と?
もやもやしてる目を擦って回りを見る。でもユートはいない。
…ん、うぅん?
「……ゆめ?」
ユートの匂いがない…あれ…やっぱり、ゆめ…?
「むぅ…」
なんか、すっごくイライラしてきた。
ユート、あんなにキスしてきたのに、夢…!?
そんなの許さない。あんなに気持ちよかったのに、夢なんて…
「ぜったい、ほんとにしてやるんだから……!!」
続く?
369 :
妄想の人:05/02/02 23:19:05 ID://NrM5hp
というわけでニム物です。実は消してしまった物の方が桃色マナが濃かったです。
>>309-317さん
ニムがファーを、ファーがニムを必要とする理由。
互いに欠損した部分、そして補完できる部分を抱えているから二人は惹かれ合うのでしょうか。
ともあれ、GJでした!私もシリアス物書いてみたくなりました。
>>253さん
セリア可愛いよ(;´∀`)ハァハァ
でも個人的にはナナルゥの毒舌っぷりに惚れますたw
>>信頼の人さん
好きな人に綺麗な自分を見てもらいたい、というのは古今東西共通しているもの。
可愛い女の子が自分のためにおしゃれをしてくれる。それだけで男心に来ますねw
>>憂鬱の人さん
アセリアの「おんじい」に萌えますたw
でも爺とは…意表を突かれたというか、なんというかw
>>362 スイマセンスイマセンもうちょっと待ってくださいごめんなさいスイマセン。
期待に沿えるだけのものをお送りできるように頑張りますからスイマセン(ヘコヘコ
>>364>>365 ニーソ好きだから気にしませんよw
しかしウチの悠人は漢らしいのか、どうなのか。
>>369 かわいいよニムかわいいよ(;´Д`)ハァハァ
消してしまったほうも是非見たいですな。
>>368を続けてみる。
絶対にしてやるんだから。
勢いこんで部屋を飛び出したものの、肝心の悠人が中々見つからない。
廊下を一周した所で、生来の面倒臭がりが徐々に頭をもたげてくる。
夢見の時の昂ぶりも気合も、最早どこかへ行ってしまった。
「……めんどくさい」
既にどうでもよくなりかけていたわたしがお約束のセリフで諦めかけた時だった。
「あっ」
ちらっと見えた廊下の角に消えた影。間違いない。ロックオン。
気合を篭めて出したハイロゥは、思いもかけない翼形。自分で驚いた。
でも今はそれどころではない。
背中に生えたハイロゥを無理矢理使い、全力を挙げてコーナーを駆け抜ける。
まだ、すぐそこに居た。驚いて振り向いた顔を目がけて飛び込む。しかし。
「ってぇ?!」
「うわっ、ニムントール!」
フルネームで呼ばれる違和感を感じるまでも無い。そこに立っていたのはコーインだった。
このままではコーインとしてしまう。急制動をかけたが間に合わない。冗談じゃ、ないよ。
「どいてどいてどいて〜〜〜!!!」
「おわわわわ〜〜〜〜〜」
おわわわわ〜〜とか言いながら、両手を広げて待ち受けるコーインは何故だか満面笑顔。
その目尻の垂れ下がりっぷりに悪寒を覚えたわたしは必死になって『曙光』にマナを送った。
「……やられる前に、先に潰すっ!!!」
かつて無い程必死だった一撃は、唸りを上げてコーインの眉間を的確に捉えた。
「ぐぉぉっ!!!」
手ごたえの良さが、心地いい。神剣に飲まれるのとは、また別の恍惚感。
吹っ飛ばされるコーインを見送りながら、何時の間にかわたしのイライラは消えていた。
――後でお姉ちゃんにこってり絞られたのは言うまでも無い。
ソニックストライクッ! いやインパルスブロウ? ハゲワラ
その後コーインは、いつでもニムントールを受け止められるようにふんわりソフトで柔軟仕上げな
マナ障壁を練り上げる訓練を積み、ニムの姿を探して同じ廊下をうろうろしたという。まちぼうけ〜〜
374 :
妄想の人:05/02/03 23:10:40 ID:hDpEnjhT
>>370さん、
>>371さん
消してしまった方はデータ残ってませんので再うぷ不可です_○/|_ゴメンナツァイ
内容としては猫が甘えてくるような、そんな感じの甘々えちになる予定でした
ニム猫、一匹欲しい…w
>>372さん
や ら れ たw
光陰が幸せそうな顔をして両手を広げているのが目に浮かびます
そこからスローモーションで曜光がめり込んでいくカットも目に浮かびましたw
第二詰め所にてユートとファーに問いつめられるニムの図
「―で、ニムはなんでこんなことしたんだ?」
「…ニムって言うな。ユートのせいなんだから」
「は?」
「ユートがニムに…ゴニョゴニョ…」
「どうしたんだニム?はっきり言わないとわからないぞ」
「そうよ、もう怒らないからちゃんと言いなさい」
「―――キス、してきたから」
「……え?」
「――は?」
がたっ、がたたたっ!!
ドアが開き、天井の板が外れ、窓に激突する影たち。
「な、ど、どうしたんだみんな?」
第二詰め所の面々がユートをもの凄く剣呑な目で見据える。
「「「どういうことですかっ!ユート様!!」」」
そして繰り広げられるいつもの風景。
多数から問いつめられるユートを見て、ニムははあ、とため息をつき
「……ほんと、めんどくさい」
すこし笑いながらそう言った。
375 :
憂鬱の人:05/02/04 08:59:21 ID:U8lyMfJ5
>>371紅氏
やっぱり一番上の微妙に食い込んじゃったりしてる部分とかが
そこはかとなく...ハッ!?俺は一体何を!?
>>372頼氏
いや、ニム、それって完全に呑まれてるし。
>>374妄氏
これであとは1,2,3...そして7。3にはげしく期待。
唐突にネタ振り。「こんなSSはいやだ!」シリーズ!
1.ソーマ様一人称のSS (←自分の道を塞いでどうする)
最近思いついたSSネタ
アセリア初登場シーンで出てくるのが、アセリアじゃなくてセリア
赤スピ:「ラキオスの青いツンデレ!」
セリア:「(ブチッ)誰が…誰かツンデレですってぇ〜」(悠人も斬られる)
以後、ラキオス王の過剰評価により大敗BAD END。
…一部変えたら使えそうだな。誰か書いて〜(私用によりしばらく書く暇がない)
>376
それなら俺は、ハリオンかナナルゥに助けに来て欲しいな〜
他力本願!誰かマナの恵を!
>375
を見て頭に浮かんだ「こんなソーマ様は嫌だ!」
1、責めるより責められる方が好き。
2、剣技はエクスプロードのみ。ダメージしょぼくて相手攻撃力+100%
3、腹筋が六つに割れている。
>375
1.全登場キャラの性別反転
2.光陰アフターストーリー「スピリット後宮作り」
3.レスティーナED後、子供が作れるようになったスピリットに生理用品を販売して食いつなぐ悠人
4.実はMだったラキオス王
描きたいネタなら
1.『聖緑』の木の実をエスペリアと食べて三日三晩しっぽり
2.時深ED後、休みを得るため時深、悠人とストライキ
とか。
>>375 エターナルにならなかった悠人が
若いままのスピリット達に見守られながら老衰
実はエターナルの素質があったのはキモウトだった
電撃PS立ち読みしてきたけど、佳織と瞬の馴れ初めあるみたいだね。
>375
*再生崩壊後、生殖能力を得たスピ達……。
だがそれはある欠陥を包含していた…………年二回の発情期。
>>375 バルバロイファンタズマゴリア編
悠人がイービルルートで並み居るスピリット達を調教していく物語
からん、と二つのグラスの中でアカスクが揺れた。
並々と注がれたそれは、この前悠人と飲んだ時の飲み残しだ。新しいものは手元にないので仕方がない。
まぁ実際に飲むのは自分だけなのだから構いやしない──ヨーティアは思った。
口に煙草を咥え、火をつける。
「アンタにも吸わせてやりたいとこだけど、無理か。もういないもんな」
テーブルにはグラスが二つと椅子が二つ。片方はヨーティアが座り、もう片方には〈禍根〉が立てかけられている。
研究資料の名目で、エーテル変換施設から回収されたものを譲り受けてきたのだ。
そしてこの剣は、クェドギンが最期に握った剣でもある。
くつくつと、意志のない神剣を眺めながらヨーティアは笑う。
「結局アンタは凡才のまま逝っちまったんだねぇ。
自分の限界知ってたアンタが、唯一見出した術がアレじゃあ、どうしたって救われないな」
煙を吐いてアカスクをあおった。一気に飲み干し、なぁ、と〈禍根〉へ声をかけた。
「なぁ知ってるかい。知らんだろうなぁ。私はさ、この大天才ヨーティア様はさ。
この世でただの一人っきり──アンタだけは、怖かったんだ」
自分の限界を知っているということは、自分にできることとできないことが分かっているということだ。
できる範囲で、最大限のできることを知り、更に上の階梯へと行くことができるということだ。
だからヨーティアは怖かった。己の分を知る者は、どんどん高みに昇っていく。
最初から高い位置に定められた天才と違って、自ら望む高みへと、常に。
──そしてその先で、クェドギンは絶望したのだろう。
この世界の真実を知り、それに自分では抗えぬことを知って。
彼が世界に抗うためにやった最大限のことも、結局は止められた。
ただ一人で世界に立ち向かおうとして、そして負けた。最期に、自らを破った者にその先を託して。
だが、とヨーティアは、その時の悠人と同じことを思った。
「それならもっと他にやりようもあったろうに。……それとも、それもできないくらい、アンタは孤独だったのか」
帝国を離れた後、自分にはイオがいた。けれどクェドギンは一人だった。
たった一人で、帝国から流れてきた彼が一国の大統領にまで登り詰めるまでに、如何ほどの孤独と苦労があったのか。
そんなもの、ヨーティアには想像すること以外できはしない。
「本当に……あのボンクラとそっくりだな。愚直で、一途で、意地っ張りで……」
くつくつと笑いながら、ヨーティアは泣き笑いの顔で瞼を閉じた。
イオがその部屋を訪れた時、主人はテーブルに突っ伏して眠っていた。
主人をベッドまで運び、毛布を被せ部屋に戻ると、椅子の上の切っ先のない神剣が目に入った。
それをイオは手にしたことなどなかったけれど──何故か、少し懐かしい感じがした。
エーテル変換施設の暴走を食い止めた後、マロリガンは和議を申し入れてきた。
とはいえ事実上の降伏である。議会の老人達も、レスティーナの意向に従うつもりのようだ。
とりあえずレスティーナは暴走寸前だったエーテル変換施設の解体を命じ、新たに建設。
次いで旧マロリガン領にも、ラキオスと同等の生活水準が保てる程度のエーテル供給を命じた。
混乱状態にあった旧首都の復興には技術者を幾人か回し、警備には稲妻部隊を初めとする、以前からマロ
リガンに属していたスピリット達を起用した。
政治自体は、クェドギンがそれまで行ってきた政策などを引き続き行うことになった。
その最期こそああであれ、彼の為政者としての手腕は優れていたということだ。
実際に旧マロリガン領の市民を治めていくのは議会だ。名目上、和解であるので、ラキオスが領内の政治
に過度に口出しをしないほうが良いという判断である。
また、クェドギンのあの暴挙にも関わらず、市民の中にはまだクェドギンを支持するものも多い。
変換施設の暴走は彼なりの考えがあってのことだと、好意的に受け止められてさえいる人間もいる。
逆に彼と反目していた議員達が非難されることもあるようだ。それらは今、信頼回復に躍起になっている。
ともあれ戦後の混乱もさほどなく──マロリガンの国政諸々の引き継ぎは、速やかに行われていった。
これで残る敵は帝国のみである。
ラキオスは正式に帝国に宣戦布告、最後の戦いの火蓋が、切って落とされた。
>>383 それはむしろ見たい。
>>375 求めに魅入られたのが佳織でスピが全員美少年な逆アセリア。
〈因果〉の光陰、〈空虚〉の今日子を戦列に加えたことでラキオス軍は戦力を増し、帝国との戦いへの意気を高めた。
旧マロリガンに属していた二人のエトランジェを警戒する声もあったが、今や勇者と持て囃される悠人の
旧友という立場と、レスティーナの進言、そして依然厳しいラキオスの台所事情がそれを抑える形となった。
マロリガン首都の復興の目処が立ってからは、稲妻部隊率いる旧マロリガン領スピリット部隊も参戦。
彼女らは主に都市の防衛と後方支援に当たることになった。
元よりマロリガンの保有するスピリットは多く、悠人達が領内を中央突破し短期決戦に持ち込んだことで、
戦争の規模の割に死者の数は極めて少なかった。
ラキオスは国境付近の守りを固めた後、旧ダーツィ領ケムセラウトより、法皇の壁に向けて進軍を開始した。
ケムセラウトから法皇の壁までは、それほど距離はない。
しかし、法皇の壁の門は帝国とダーツィを結ぶ唯一の道であったため、当然、守りも尋常ではなかった。
「法皇の壁っつーのは、要するに万里の長城みたいなもんか」
全道程の三分の二ほどで夜営することになった中、焚き火を囲んでいた光陰がぽつりと漏らした。
「光陰殿、バンリノチョウジョウとは何でありましょうか」
ウルカが問う。光陰は答えた。
「俺達の世界にあった、大昔に建てられた、外敵の侵入を防ぐための物凄く長い砦のことさ。
規模的には、法皇の壁と同じか、それ以上だな」
5/59
「ハイペリアにも、戦争はあるのか?」
ふとアセリアが首を傾げた。そうね、と今日子が頷く。
「アタシ達がいた国はそれなりに平和だったけど、別の国じゃまだ戦争してるよ。理由は色々だけどね。
ま、昔に比べりゃマシと思うけど。アタシらが生まれる前には、世界中巻き込んだ大きな戦争があったりしたから」
それらを実際に今日子達は経験したわけではないが、その悲惨さは語り継がれている。
「それでも、コウイン様達の国は平和になったのですね」
膝の上で眠るオルファの髪を優しく撫でながら、エスペリアが言う。
「争いのない状態を平和と言うのなら──だな。色んな場所でやっぱり紛争があってるし、恒久平和には程遠い。
そうさな。こんな戦争になる前のこの世界と同じようなもんだった。揺らせば倒れる砂上の楼閣、さ」
絶妙なバランスで成り立っている国々の状態。小国の紛争と、大国の牽制が繰り返される関係。
この世界では、楼閣を揺らしたのは前ラキオス王である。……いや、本当の意味で原因となったのは、
──俺達がこの世界に落ちてきたからだな。
遠巻きに彼らを眺めていた悠人はそう思い、そして考えた。何故、自分達がこの世界に呼び込まれたのか。
『この世界は神剣に支配されている』。クェドギンの言葉が蘇る。自分達がこの世界に来たのも、神剣の意志なのか?
無論、考えたところで分かるものではない。確かなのは今ここで戦争が起こり、自分達が戦場にいるという事実。
「──ならば、造り直さなければなりますまい。
今のこの世界が壊れた楼閣であるというのなら、今一度、もう倒れぬものを」
静かに呟かれたウルカの言葉に、皆は深く頷いた。
翌日、悠人達は一気に法皇の壁へと侵攻した。
道中待ち伏せしていたスピリットの悉くを殲滅し、日が沈む前には法皇の壁目前まで到達した。
「で、これからどうする? 光陰」
敵の哨戒部隊をやり過ごし、木々の間に法皇の壁の門を望みながら、悠人は訊いた。
守りは堅い。ただ攻め込んでも落とせないと判断した悠人は、光陰の知恵を拝借することにした。
「ふむ。まぁ一筋縄じゃ行かんだろうな。敵も本気だ。
さっきちょっと〈因果〉使って偵察に行ってきたんだが、あそこにゃ人間は全くいねぇよ。全部スピリットだ。
……しかも意志を失した、な。機械的な、そして堅固な警備システムだよ、あそこは」
顎に伸びた無精髭を撫でながら、光陰は言う。
「左右に伸びる壁にも相当いる。強引に門を突破しようもんなら、戦ってる間に集結しちまうな」
「じゃあどうすんのよ」
問う今日子に、光陰は肩を竦めて答えた。
「焦るなよ今日子。確かに相手はでけぇ壁だ。俺達の流れを阻む堤だ。
だがな今日子、昔から言うだろう。堤ってのは、蟻の穴から崩れていくもんだってな」
にやり、と光陰は笑った。
「それにだ、俺の剣の力を忘れちゃいねぇだろうな」
それを聞いて、ああ、と悠人達は納得した。
「そういうこった。……じゃ、今から具体的な作戦案を話すぞ。駄目出しよろしくな」
法皇の壁──
帝国とその他の国々とを分かつ、巨大な石造りの城壁である。
城壁、と言ってもただの壁ではなく、中には居住スペースすらあり、一種の拠点と言っていい。
中は空洞であり、壁内部での人員と物資の行き来を容易にしている。
壁は高く、乗り越えることでの進入は不可能だ。スピリットなら可能かもしれないが、人間による制圧は出来ない。
帝国領内に侵攻するのであれば、当然門を押さえる必要がある。
故に、ここの守りはどこよりも堅牢だった。
門の内側と、壁の上の物見、門の外を哨戒する者。ここを守るスピリットの総数は百を下らない。
そしてその全員が、神剣の意志と同化した戦闘機械であり、敵を殺すことにも己が死すことにも躊躇はない。
日が落ち、周囲が闇に包まれた今も、光のない瞳がケムセラウトの方角を見つめている。
──と、壁の上の物見にいたスピリットが、夜闇の奥にぽつんと小さな赤を見つけた。
近くの猟師か、とそのスピリットは推測する。
スピリットにしては神剣の気配を感じないし、そうでなくとも敵前で居場所を知らせるような真似はすまい。
だが──それは誤りだった。気付けば、その赤が僅かだが大きさを増している。
近づいている、と気付き、逃げようとした時にはもう遅い。
音速を超えて飛来する赤い飛礫は、城壁に開いた窓にすぽっと入り、
────────爆発した。
「……命中確認。移動後、作戦行動を再開します」
ぼそりと呟くような声が樹上から聞こえた。
遠くでは、法皇の壁の向かって左の一部が崩落し燃え上がっている。半鐘の音が夜に響く。
ザッ、と赤い影が枝葉の間から飛び出し、枝葉をしならせながら、次々と木々を跳梁していく。
赤い影はナナルゥだ。月光を浴びながら、さっきまでいた木から遠く離れていく。
適当に背の高い木を見つけると、そこで足を止め、太い枝をしっかりと踏み締めた。
「ナナルゥ、次は二分後よ」
下から聞こえる声はセリアのものだ。了解、とナナルゥが頷く。
ナナルゥの役目は、狙撃だ。敵の神剣の知覚範囲外からの、神剣魔法による遠距離攻撃。
セリアはそのサポートである。手には懐中時計。秒針が、小さく音を奏でながら時を刻んでいく。
最初の爆発で、第一陣が突入している。次の爆発を合図にして、残りも襲撃に向かうはずだ。
今回の作戦ではそれぞれに決まった役割がある。いつものように戦陣に突っ込んでいく単純な戦いではない。
皆も、それに従い行動しているのだ。ならば、とナナルゥは思う。己は己の為すべきを為す。
剣先にマナを集めていく。手の届く範囲全てを引き寄せていく。
際限なく絶え間なく隙間なく、爆炎の意を与えられたマナを圧縮していく。
剣先に炎が灯る。子供の頭ほどしかないそれは、しかし唸りながら渦巻く灼熱の業火だ。
もう無理だと叫ぶ空間を捻じ伏せて、それでも尚炎をつぎ込んだ。
張り詰めた炎をつがえ、ナナルゥは静かにその時を待った。
そして、
「──撃て!」
セリアの声が響いた。
ばん、と超々高密度の火炎弾が撃ち出された。反動でナナルゥの身体が大きく仰け反る。
風を切り裂きながら突き進む赤。それは狙いを違えず壁に開いた窓に入り──そして爆発。
轟々と、門の両翼から炎が上がる。
「作戦第一段階、完了。……皆様、幸運を」
後半は口の中で転がすように呟いて、ナナルゥは木から飛び降りた。敵がこっちの位置に気付いた。
周囲を警戒していたセリアと頷き合い、自分達も門へ向けて駆け出した。
壁の中では、スピリット達が迅速に行動を開始していた。
感情を喪った彼女達に、混乱という余計なものはない。それぞれが的確に己の持ち場へと駆けていく。
そして今、ナナルゥの砲撃により破壊された砦の左翼には、多くのスピリットが集結していた。
仲間を助ける、などという意識はないが、しかし火災を放置しておくわけにはいかない。
石造りの壁とは言え、内部には木造の部分もある。放っておけば延焼する可能性もあった。
鎮火作業を行うため、約二十名ほどのスピリットが壁の上に集結していた。
──と、そのうち一人が、ふと違和感を感じ取った。ごくごく弱いが、壁の下に神剣の反応を感じたのだ。
仲間がまだ生き残っているのかもしれない──
まだ情緒というものがほんの僅か残っていたそのスピリットは、誰かいるのか確認しようと壁から身を乗り出した。
394 :
387:05/02/04 23:59:40 ID:L3JDbVhK
ぶったぎってすみませんでした。
謝罪代わりに支援しときますね。
だが感情があるが故のその不用意さが、彼女の命運を分けた。
弱かった神剣反応が急激に膨張し、そしてそれが壁を駆け上がって──彼女の首を刎ねた。
最早隠していない神剣の反応に、その場にいた全員がその方向を振り返った。
首を喪った身体が噴水のように血を噴出しながら、よろよろと二、三歩後退し、そして倒れた。
壁を駆け上がって姿を現したのは、燃え盛る火より尚赤い炎の妖精──
即座に、帝国兵の一人がその妖精に肉薄する。妖精も石を蹴り、三度剣を交わして斬り捨てた。
その右から更にブルースピリットが飛び込んでくる。だがその切っ先は届かず、片刃の剣に阻まれる。
銀の髪を持つブラックスピリット。『漆黒の翼』と謳われる剣士がそこにいた。
ブルースピリットの剣を弾き、返す刃でその身を斬り伏せる。血が飛沫となって銀の髪を汚した。
その隣からグリーンスピリットが姿を現し、迫りつつあった敵二体を槍の一閃で薙ぎ払った。
どけっ、と後方のレッドスピリットが叫んだ。素早く呪文を唱え、神剣魔法を完成させようとする。
だが、それを、
「──サイレントフィールドッ!」
全てを凍結させる声が、荒ぶるマナの動きを止めた。
ばさりとウイングハイロウを羽ばたかせ、ブルースピリットが舞い降りる。
ヒミカ、ウルカ、クォーリン、そしてアセリア。
かつては敵対し、今はラキオスの誇る屈指の剣士達が、ここに集っていた。
「一人当たり五人、ってとこですね」
警戒すべき敵を前にして動きを止めた帝国のスピリット達を一瞥して、クォーリンが呟いた。
そこに、神剣の気配を感じてだろう、壁の内部に通じる階段から、また数名のスピリットが姿を現した。
「……追加注文、でしょうか」
珍しく、ウルカが軽口を叩いた。そうね、とヒミカも口元に笑みを浮かべて応じる。
二十人以上の敵に対し、こちらは四人。だが、これっぽっちも負ける気はしなかった。
一度敵として剣を交えたからこそ、その強さは分かっている。そしてだからこそ、その力を信じられる。
ヒミカは一呼吸置いて、そして告げる。
「さて……私達の仕事は門左翼の制圧と掃討。少しでも悠人様達の仕事を減らすこと。全員──」
ぼぅ、とその双剣が紅の光を宿す。炎のマナを込められた剣が、灼けた銅のように赤熱する。
「────突撃!」
四色の影が弾けるように飛び出した。
先頭に立つのはウルカだ。膝より低く駆け抜ける影は疾風の如く。
炎に照らされた影を取り残し、それより尚疾い剣閃が幾十と乱れ飛んだ。
黒い風の通り抜けた後で、スピリット達が脚から、腕から、そして首から血飛沫を吹き上げる。
手足を斬られ体制を崩したスピリット達を、遅れてやってきた青い旋風が一薙ぎで両断した。
剣を振り切り足の止まったアセリアに、左右二方向から剣がブラックスピリットの剣が落ちてくる。
その剣がアセリアに届く前に、ヒミカがその背を掴んで引っ張った。
身体が後ろに引かれ、目の前を二本の断頭の剣が落ちて石畳に火花を散らす。
慣性に従い入れ替わってヒミカが前に出る。踊るように円を描いて動きながらヒミカは剣を振るった。
一人の首を飛ばし、一人の頭蓋を貫いた。
一回転したヒミカの影から、腰だめに槍を構え弾丸と化したクォーリンが飛び出す。
正面にいた一人が反応できず心臓を貫かれる。勢いは衰えず、その後ろにいたもう一人をも串刺しにする。
背後に気配。マナに還りつつある二体から槍を引き抜き、石突をかち上げて顎の下を突き破った。
のみならず石突は上顎を突き破り脳髄を磨り潰した。びくんびくんと痙攣しながら緩やかに死に向かうスピ
リットを左の一団に放り投げ、柄を片手で長く持ち遠心力で右に振り抜いた。
刃が、迫りつつあったスピリットの頭部に、ごすん、と横からめり込んだ。
顔の中心辺りまで分割した穂先を引き抜き、クォーリンは一度後退する。
「ウルカさん」
呼びかける。同じく後退し、背中を合わせたウルカが気配だけで応じた。
「私は右。あなたは左」
「承知」
言葉は短く。それだけで事足りる。
跳び、ウルカが抜刀する。神速の閃光はしかし敵の剣に弾かれた。だがその程度ではウルカの隙にはならない。
弾力を力で抑え込み、斬るのではなく刺突。剣の間を潜り抜け、横に寝かせた刃が左眼を突き刺した。
後頭部まで貫通した刃は鮮やかにこめかみを切り裂いて空気に触れ、赤い血がマナへと還っていく。
横に流れる切っ先を、くん、と斜めに落とした。
背後に迫っていたスピリットの脾腹を切り裂き、返す刀で胸に深く十字を刻む。
倒れ行く身体に目もくれず跳躍。周囲のスピリットを飛び越え、うち一人の背後に降り立ち脊髄ごと心臓を貫く。
剣を引き抜いて後退。とん、と背中が良く知っている気配に触れた。
ヒミカ達四人が、それぞれ背中を合わせて集った。周囲には帝国のスピリットがまだ十数人。
四人ともそれぞれ六人以上斃したはずだが、また増援が来ていたらしい。
火は鎮火しつつある。闇を取り戻しつつある空間の中で、クォーリンが不思議なものですねと呟いた。
「私達は、ついこの間まで互いに剣を向け合っていたはずなのに、今はこうして背中を預け合っているなんて」
「それも縁というものでありましょう、クォーリン殿」
チキ、と〈冥加〉の鍔を鳴らし、ウルカが答えた。アセリアが、ん、と頷き、そうね、とヒミカも答え、
「けど、悪くないでしょう?」
「──ええ、それはもう」
クォーリンが愉しげに答えた。
やや出来すぎている感はある。昨日の敵は今日の友とは言うが、都合が良すぎる気がする。
だがそれでも、とヒミカは思う。今ここに、心強い仲間と共に在れることは嬉しいことだと。
四人は再び地を蹴った。
支援だっ!
同時刻、門の右翼側。こちらは更に損壊が酷かった。
ナナルゥの炎弾は倉庫に仕舞われていた可燃性の物資に引火し、更に燃え広がった。
爆発自体の衝撃も酷く、門からこちらは殆ど完全に崩壊している。中にいたスピリットも助からないだろう。
門から離れた位置にいたため生き残った十数名は、事態を把握するため壁を降り、門へと向かっていた。
だがその途中、固まった複数の神剣の気配を感じ、足を止めた。
視線の先には五つの影が。やや背の高い一人と、低いのが四人。
「ここから先は、通さないよ!」
一番手前の影が威勢良く言い放つ。熱で脆くなった壁がまたどこかで崩れ、更に高く炎が上がる。
その炎が、彼女達の横顔を照らした。
先頭に立つのは、剣を構えたオルファ。その後ろには、ネリー、シアー、ニムントールが控え、
「そういうわけなので、ごめんなさいね〜」
やはりいつもの間延びした声で言うハリオンがいた。
傍から見れば、それは小学生と引率の先生のようにも見えただろう。
だが彼女達は、幼いながらも皆それぞれが戦士なのだ。瞳に宿る意志は強く、しっかりと敵を見据えている。
両者はしばし無言で対峙し、──また壁が崩れた。
「──ふぁいあぼるとっ!」
それが戦端となる。燃え盛る炎に負けじと、強く色を宿した火群が、帝国のスピリット達を襲う。
帝国兵は散開、それに応じ、オルファ達も個別にそれらを迎え撃った。
また同時刻。
左翼側の内部、丁度ヒミカ達がいる場所の階下では、崩落に巻き込まれるのを免れたスピリット達が走っていた。
事態が把握できない。だが真上に強い神剣反応があるのは分かる。
とりあえずはそれの掃討に向かわねばなるまい。そう判断した。
法皇の壁内部は三つの階層に分かれている。今彼女達がいるのは一番下の階層だった。
二階への階段を駆け上るため、先頭を走っていた三人がまず曲がり角を曲がり、
──直後、その気配がふっつりと消えた。
後続の三人が急停止する。曲がり角の向こう、仲間の気配は消えたが──そこに、別の何かがいる。
剣を構え警戒を強めた。気配はあるがそれは押し殺されていて──そして冷たい。
かつん、と音がして、一歩、影がゆらりと足を踏み出す。
闇に溶ける気配、その頭部と思しき部分に小さく光る、猫のような眼光が、三人を射抜いた。
「──三人。少々、面倒ですね」
片刃の神剣を逆手に握る影が、その零下の気配に似合わぬたおやかな声で喋った。
「六人同時に駆け込んで来てくれれば良かったのに。そうすれば──楽に殺してあげられたのに」
心底哀れむような声。細まる眼は猫から猛禽へ変わる。隠者から狩人へ。
「上には誰もいませんよ。三階は逃がしてしまいましたけど、そっちももうあの四人が片してるはずですね。
──ええ、だから、後は、あなた達だけ」
かちりと神剣の鍔を鳴らし、ファーレーンは立ち竦む三人へと跳んだ。
そしてまた同時刻──門の内側。
法皇の壁はその巨大さと厚さ故、門は二枚ある。ダーツィ側のものと帝国側のものだ。
その二つの門扉の内側を、帝国のスピリット達は駆け回っていた。
門の左翼に敵兵が侵入し多くはそれの迎撃に向かった。
右翼の壁は先の砲撃で殆ど崩壊。しかもそこにも敵スピリットが目撃され、そこにも人員が回された。
よって通常最も硬い守りである門そのものは、常よりやや人員の少ない状態となっていた。
問題はない、と帝国兵達は判断していた。門の外に気配は感じない。敵は両翼の二つの軍だけだ。
もう少し左翼側に回すべきか、とリーダー格のレッドスピリットは思考した。
左翼に侵入した敵は四人。しかし、既に斃された兵は三十を数えた。
これ以上減らされる前に畳み掛けるべきか──撤退という概念はそもそも存在しない。
己の死に頓着せず、そも死というものを理解しない。あるのは冷徹な思考と戦闘回路のみである。
その冷たい計算によって、レッドスピリットは左翼側に人員を回すことに決めた。
いくら強くとも所詮はスピリット。過程で何人死のうと、数で押せば殺し切れるだろう。
そう結論を出し、部下に指示を飛ばそうとしたところで──
──門が吹っ飛んだ。
ズゥゥゥン……と重い音と砂埃を上げて、巨大な門が内側に倒れた。
「おうおう、こりゃまた盛大な出迎えが期待できそうだな」
光陰が門の内側を見て気楽に言う。
倒れる門扉に巻き込まれた者はいなかったようで、皆健在に──敵意を剥き出しにしている。
門の内側の空間はあまり広くない。交通の便が悪そうに見えるが、防衛上それは当然だ。
そこにスピリット達が約三十。出てきていない者も含めればまだいるだろう。
「ヒミカやハリオン達が折角敵をひきつけてくれてるんだ。頑張らないとな」
今しがた光陰の〈因果〉と共に門を叩き壊した〈求め〉を握り直し、悠人は呟いた。
──光陰の立てた作戦は、このようなものだった。
まずナナルゥが神剣の知覚範囲外から砲撃し、壁の左右を断絶させ敵をそちらに集める。
光陰の言う『蟻の穴』とは、つまり壁に開いた窓のことだ。
外から衝撃を受けるのと、内側から破裂するのでは無論後者のほうが威力は大きい。
ナナルゥの能力なら外からでも充分な効果は得られるだろうが、より効果的な手段を取ったのだ。
砲撃後はヒミカ達とハリオン達がその方向へ向かい、更に敵を分散させる。
ヒミカ達とハリオン達では戦力に差があり過ぎるが、その割り振りにも勿論理由はある。
二つの集団が平均的な能力を持っていた場合、相手は両方に均等な兵力を送るだろう。
だが平均的には同じでも、個々の能力は違う。そして戦闘の中では仲間を護り切れる保証はない。
つまりそれは、敵と戦う中で、力の弱い年少のスピリット達が命を落とす可能性があるということだ。
全力で支援
だが逆に二つの集団に差があれば、より強いほうに兵が送られる。
そして強いほうは、スピリットの中でも最高峰の実力を持つ者ばかり。おいそれと死ぬはずがない。
また弱いほうには兵が追加されず、相対している分だけを斃せばそれで済む。
ハリオンがそちらに回されたのも、オルファ達が傷ついた時の加護と治癒を任せるためだ。
ナナルゥ、セリアの二人にも、自分の仕事が終わった後はハリオン達の加勢に向かうように言ってある。
そして最後に──悠人、光陰、今日子のエトランジェ三人の出番である。
ぎりぎりまで〈因果〉の能力で気配を隠し、敵の数が適度に減ったところで門に突貫する。
通常なら三人だけでは流石に辛い兵力も、今はやや少なくなっていた。それでもやはり多いが。
念の為、門の外にはヘリオンとエスペリアがいる。背後からの奇襲を避けるためだ。
……全員一丸となって門に突撃するだけでは、力の弱い者から死んでいく。
今回の作戦と人員の割り振りは、誰一人として死なせないためのものだった。
「──さて、と。それじゃ、そろそろ行きましょーか!」
今日子が〈空虚〉に稲妻を宿らせる。おうよ、と悠人と光陰が剣を構えた。
三人の戦意に答え、向けられる敵意が殺意へと変わる。
悠人は、目を閉じた。対峙する敵は、けれどヒミカ達と同じスピリットだ。
罪悪感は常に胸に。だが戦いをやめることは出来ない。より多くを護るのならば。
目を開く。ただそれだけの迷いを切り捨てる儀式を経て、剣を握り締め、そして吼えた。
ぎゅん、と景色が後ろに置いて行かれる。獣の様に低く跳躍し、敵陣の真っ只中に突っ込んだ。
面を上げる。周りは何処を見ても敵。沈んだ身体を捻りながら、旋風のように剣を振るった。
薙ぎ払われる風が一瞬でスピリット達をマナへと変えていく。
その霧を突っ切ってまた別のスピリットが殺到する。正面の一人を蹴り飛ばし、右に剣を振るった。
受け止めた神剣ごと吹き飛んでいく身体。そのまま振り抜き背後へと一回転。少女の身体を上下に分割する。
回転の勢いを殺さぬまま剣を下げ、そしてすぐに斬り上げを放つ。弦月を描く一閃を、線上にいたブルー
スピリットが受け止める。しかし剣が跳ね上げられ、そのまま両目から頭蓋骨を斜めにカットした。
脳を破壊され、残った本能が弦を引き千切るような絶叫を上げさせる。
左に敵。慣性を駆逐し刃を返すことさえせず、〈求め〉の峰で少女の頭を粉砕した。
パン、と呆気なく脳漿が飛散し、赤から金へとその色を変えていく。
肉を裂く音。骨を砕く音。断末魔の音。──命の散る音。
意識の中で耳を塞いで止まることなく剣を振るう。その度に視界一杯に血の華が咲く。命の華が散る。
歯を食い縛った表情のまま、容赦なく剣を振るって妖精を屠殺する。
鬼神。
その戦う様を見るものは彼をそう呼ぶだろう。
躊躇のない動きはいっそ美しくすらある。殲滅の風となって舞う大剣が、尾のように金色のマナを引く。
罪悪感は常に胸に。だがより多くを護るのならば、泣き言など言ってられない。
例えどんなに、この心が軋みを上げても。
「おい悠人、でしゃばりすぎだ。俺らの分も残しとけ」
周囲の敵をあらかた片付けたところで、光陰がそう声をかけてきた。
冗談めかして言っているが、それが自分の戦いぶりを見ての言葉だということは分かっていた。
三歩離れたところで、どこか所在無げに立っている今日子を見ればそれは明らかだった。
「ああ、すまん」
素っ気無く放たれたその謝罪は、何に向けられたものだったのだろう。
光陰達の分を奪ったことにか、余りにも別人過ぎる戦い方にか。そのどちらであっても、悠人は無表情だった。
まぁいいさ、と光陰が肩を竦めた。
「無理はするなよ。今俺達は三人で戦ってるんだからな。無謀をされて、一人欠けても困る」
「……そうだったな。すまん」
少し間を置いて、同じ謝罪を悠人は繰り返した。今度は、微笑を浮かべて。
そうだな。そうだった。今は三人で戦っているのだから。悠人は剣を握り直した。
「じゃあ行くぞ、仕切り直しだ!」
三人が同時に、敵の群れへと突っ込んでいった。
先端に立つのは悠人。その後ろを、光陰と今日子が追従する。
敵に肉薄する悠人の肩を、とん、と軽く今日子が踏み、跳躍する。
高く飛翔した今日子の〈空虚〉には蛇のように巻きつく稲妻。それが今日子の意志に答え、
「いっけぇぇぇっ!」
──地表を蹂躙する龍となる。
のたうつ紫電がスピリットを次々と吹き飛ばしていく。体勢を崩した群れに、悠人と光陰が突っ込んだ。
光陰が巨大な〈因果〉を振り回すと、それだけで二体のスピリットが霧となる。
だが新たに三体が光陰に迫った。斃した数に勝るスピリットが次々と押し寄せる。
それらを吹き飛ばしていく光陰の背後から迫るスピリットを──悠人の剣が斬断する。
背中合わせに光陰と悠人は立ち、その間に今日子が入る。
「まず蹴散らす。そしたら門ぶっ壊すぞ」
「おう」「オーケイッ」
声だけで頷き合って三人はまた駆け出す。
今日子が疾る。正面にはブラックスピリット。縦横無尽に迫り来る居合の太刀を潜り抜け一閃。
ごめんね、という今日子の呟きの向こうで、ブラックスピリットの喉が貫かれていた。
身を翻し、背中を貫こうとしていた槍を避ける。獲物を見失った穂先はブラックスピリットの腹に突き立つ。
引き抜く動作より今日子のほうが早かった。脇から心臓を斜めに貫き、速やかに命を奪った。
左足を軸に舞うようにターン、背後から斬りつけてきたブルーの剣を左腕の楯で受け止め、剣で顎の下を貫く。
びくん、と一震えしてマナへと還る身体。一瞬だけ瞑目し、また新たな敵に向かう。
だがその今日子に、燃え盛る火炎が殺到した。仲間諸共に焼き払うその炎に、思わず脚を止めてしまう。
まずい、と思う暇もあればこそ。それらは今日子を消し炭にせんと襲い掛かり──その直前で弾けて消えた。
「光陰っ」
その名を呼ぶ。グリーンスピリットのそれより強固な加護を展開した光陰が、片目を閉じて答えた。
尚も殺到する炎は、しかしその加護の前には無力。勢いが収まったところに、光陰が身を躍らせた。
一気に敵の群れの奥まで突っ込み、密集していたレッドスピリット達を次々薙ぎ払っていく。
「──怯むな! 行け!」
その後ろから声が飛んできた。姿は見えないが、恐らくは彼女達のリーダーなのだろう。だが、
「不用意だな!」
それが彼女の明暗を分ける。
光陰は剣の一振りで纏わりつくスピリットを振り払い、勢いそのままに〈因果〉を投擲した。声の方向へと。
がっ、という呻きが遠くから聞こえた。迷わずその方向に向かって、光陰は駆ける。
指令系統を喪い、一瞬スピリット達の動きが止まる。その隙に光陰は〈因果〉へと駆け寄った。
胴体に深く〈因果〉を突き刺し、マナへと還りつつあるスピリットからそれを引き抜く。
そして周囲に眼を走らせ、光陰は決断を下す。
レッドスピリットはあらかた潰した。邪魔はされない。やるなら、指令系統の復帰していない今のうちだ。
410 :
支援:05/02/05 00:11:47 ID:0r7hXBQ7
頑張れ。
「やれッ、今日子!」
オーライ、と威勢のいい声が返ってきて、その方向へと周囲のマナが掻き集められていく。
悠人と光陰は今日子の邪魔をされないよう、周りの敵を打ち払っていった。
そしてやがて、雷撃の法が完成する。今日子が剣を掲げ、腹の底から声を発した。
「ラァイットニングッ! ブラストォ──────────ッ!!」
光条。
風を切り迸る太い雷の帯が、真っ直ぐに帝国への門へと突っ込み──その中心をブチ抜いた。
門を閉じていた太い留め木を焼き尽くし、雷霆の鎚は南の空を明るく照らしながら、消えた。
留めるものを喪った門が、雷の巻き起こした風に煽られ開いていく。
よっしゃあ、と思わず今日子がガッツポーズを決めた。
「ユート様!」
丁度そこに、敵を全て斃したのだろう、ヒミカ達四人が左手の階段を降りてきた。悠人はヒミカ達に頷く。
オルファ達の気配も近づいてきている。後は、と、悠人は敵に向かって声を張り上げる。
「門は開いた! 法皇の壁はもう落ちる。これ以上は無意味だ!
抵抗すれば容赦しない。だが投降するなら身の安全は保障する!」
僅かな望みを持って、悠人は言う。スピリット達はそれに、剣を構える動きで答えた。──否、と。
仕方ないか、と悠人は気持ちを切り替える。予想できていたことだ。
「──皆、もう少しだ! 法皇の壁を完全に落とす!」
それからものの半刻としない内に、法皇の壁は制圧された。
悠人達の中にも負傷者は出たものの、死者はいない。光陰の策が功を奏した結果だった。
帝国のスピリットはその殆どが命を落としたが、最後の悠人の言葉のせいか、投降してきた者も少しいた。
それを見て、悠人は僅かに安堵する。犠牲は少ないほうがいい。
捕虜となったスピリット達は神剣と引き離された上でラキオスまで送還された。帝国の内情を探るためである。
とはいえ拷問にも口を割らぬような頑なな者ばかりのようで、実質上はそのまま牢に収監しておくだけに近い。
だがそれも戦争が終わるまでだ。それまで辛抱していてもらうことになるが、仕方がない。
悠人達は翌日にはリレルラエルへと進軍した。
ケムセラウトからの兵士を待っていては、その間に帝国が軍を送ってくると判断したのだ。
半日でリレルラエルに到達し、既に守りを固めていた帝国軍と交戦。
だが、巨大なだけ時間はかかるが、法皇の壁に比べればその守りは貧弱だった。
悠人達は日が暮れる頃にはリレルラエルのスピリットを掃討し、遅れてやってきた兵士達が改めて制圧した。
レスティーナの思想は、ラキオス以上にマナに頼って生きてきた帝国の民には受け入れ難いもののようで、
強く反発の声が響いた。だがそれを治めるのはレスティーナの仕事である。悠人達に出来るのは戦うことだけだ。
悠人達は帝国が利用していた砦を拠点とし、これからの方針を練った。
丁度そこに、ヨーティアから連絡が入った。
ヨーティアによれば、首都サーギオスを守る秩序の壁には、エーテルジャンプを利用した罠があるという。
今のままでは突破できないということだ。
秩序の壁の罠を維持しているのは、帝国の都市、ゼィギオス、サレ・スニル、ユウソカの三つ。
当面の悠人達の目的は、その三都市から秩序の壁へのエーテル供給を止めることになる。
結局、帝国全土を制圧するまで戦いは終わらないということだ。悠人はこれからを思って溜息をついた。
兎も角悠人達は部隊を二つに分け、ゼィギオス、サレ・スニル制圧後、ユウソカの手前で合流することにした。
ゼィギオス側は、異常なマナ濃度の暖気の大平原、トーン・ジレタの森を横切るため、大きな被害が予想された。
またユウソカまでの道程も、サレ・スニル側に比べて長い。
そのことを鑑みて、ゼィギオス方面には悠人、光陰を中心とした長期戦闘に向いた部隊を編成。
サレ・スニル側には、今日子、アセリアを中心とした短期決戦を旨とする部隊を編成した。
リレルラエルの混乱が収まり、人間の兵士達も準備を整えたところで、悠人達はそれぞれ出発した。
ヒミカはサレ・スニル方面の攻略に参加していた。
今はハリオン、ナナルゥと共に、先行部隊としてシーオスに続く森の中を駆けていた。
悠人達はつい三時間ほど前に、セレスセリスを落としたとの連絡が入った。
こちらももうすぐシーオスだ。森の中に隠れた敵のせいで少し難航してしまったが、順調と言える。
イオから神剣を通して声を伝えてきたのは、そんな折だった。
『──聞こえますか。聞こえますかハリオンさん。イオです』
「はいはい。聞こえますよ〜」
一度足を止め、三人はその声に耳を傾けた。定期連絡の時間だ。
各隊の状況や、後方支援の様子、制圧区域などが報告されていく。聞く限りどこも順調なようだった。
報告を聞き流しながら、ヒミカは思いを馳せる。ユート様はどうしているだろう。
怪我の心配をしているのではない。傷を負うようなことはないという確信はあった。
心配なのは心の在り様だ。マロリガン戦では友を殺すようなことはしなかったし、投降を呼びかけたり無益
な殺生はしていないが、それでも敵と認めた者に対しては容赦がなかった。
殺す度に心に降り積もる澱を、彼はどう受け止めているのだろう。
そこまで考えて、やめやめ、と頭を振る。彼のことを案ずるのはいいが、今は任務の途中だ。
四六時中一人のことしか頭にないなど、恋する乙女と何が違おう。
まずは目の前の仕事をきっちりとこなす。そうすることのできる、いつもの冷静な自分に戻──
『それとつい先刻、セレスセリス近くの森でユート様が負傷。治療のためラキオスに戻りました」
──れるはずがない。
「なんですって?」
喰らいつくような勢いで、ヒミカはハリオンの〈大樹〉に詰め寄った。
「イオ、詳しく説明して。いつ、どこで、何があったか」
努めて冷静を装うが、言葉からは焦燥と不安が滲み出ている。
それをイオも感じたのだろう、落ち着いてくださいヒミカ様、と〈大樹〉の向こうから静かに言われた。
『ユート様はセレスセリス制圧後休息していたのですが、丁度その頃森から巨大な神剣反応が感知されました。
コウイン様、ファーレーン様が様子を見に行ったのですが、その途中でもう一つの神剣反応を感知。
恐らくそれがユート様です。二つの反応は俄かに増大し、しかしやがて片方が弱まり、残りも消えました。
二人がその場所に駆けつけると、ユート様が重傷を負って倒れていたそうです。
始めの神剣反応は、コウイン様によれば〈誓い〉のものだということです。
帝国のエトランジェが急襲してきたということでしょう』
そんなことはどうでもいい。それよりも、
「ユート様の容態は?」
『一時期危険でしたが、エスペリア様が神剣魔法による回復を行い、今は安定しています。
しかし相当の深手で、現在はラキオスまで戻って療養しています。しばらく戦線復帰は無理かと』
ほっとヒミカは胸を撫で下ろした。生きてるならそれでいい。
だがひどく胸がざわざわする。本当に大丈夫だろうか。どんな酷い怪我だったのだろうか。
それだけが気にかかる。つい先程まで考えていたことを忘れるくらい、ヒミカは冷静さを欠いていた。
もどかしい。落ち着かない。心配でたまらない。──今すぐにでも戻りたい。
耐え難い焦燥で溢れかえるヒミカの思考に──突然、異質な感触が割り込んできた。
神剣反応。敵が近くに来ている。ハリオンとナナルゥも即座に構えを取る。
ザッ、と左右の茂みから四つの影が飛び出す。色は黒黒緑青。ナナルゥが口を開き、
「──接」ザズン
接敵、と言い終わる前に、影が千々に千切れて散乱した。
ぼとぼとと細切れの身体が地面に落ちる。肉片の雨の向こうに、ヒミカが立っていた。
ナナルゥもハリオンも──その二人でさえ、ぽかんとしてその背中を見た。
ヒミカが振り返る。顔からは感情というものが全て抜け落ちて、しかし瞳だけは紅く爛と輝いていた。
「──何してるの二人とも。行くわよ」
言うが早いか、ヒミカは一人で駆け出した。慌てて追いかける。
『ハリオン様? 何かあったのですか』
当然、こちらが見えていないイオに事態を把握できるはずもない。状況を質す声が聞こえた。
「いえいえ、なんでもないですよ〜。ただ──」
ちら、と振り替えず走り抜けるヒミカの背中を見て、
「後方の皆に、兵士さん達も含めて大急ぎでこっちに来るよう言ってください〜。
多分、二時間もしないうちに、シーオス落ちちゃうと思いますから〜……」
……一時間半後。シーオス、陥落。
傷を負って、丸二日が経過しても、悠人は自室から動けないでいた。
傷の治りが遅い。グリーンが出払っているせいもあるが、それ以上に〈求め〉の干渉が強かった。
〈誓い〉と接触して興奮状態にあるのか、〈求め〉は執拗に干渉を繰り返し、悠人に強制的に力を流し込んでくる。
恐らくは次に〈誓い〉と戦う時負けぬようにしているのだろうが、それに悠人自身の強度が追いつかない。
内側から破裂しそうな痛みに耐えながら、悠人は〈求め〉の干渉を押さえつける。
やってきた時と同じように、速やかに痛みが引いていく。この遣り取りももう何度目になるだろう。
ふぅ、と精神的な疲労から悠人が溜息をつく。と、丁度その時ドアがノックされた。
「ユート様。よろしいでしょうか」
「ヒミカか? いいぞ」
タオルで額の汗を拭いて、ヒミカを迎え入れた。失礼します、と一礼してヒミカは部屋に入ってくる。
「お加減はいかがですか?」
椅子に座り、眉尻を下げそう訊いてくる。心配させてしまったようだ。
「まだちょっと辛いかな。……っと」
横になっていた身体を、どうにか起き上がらせようとする。ヒミカが自然とそれを支えてくれた。
「さんきゅ、ヒミカ」
いいえ、とヒミカは答え、ベッドの縁に腰を下ろす。手を伸ばせば届く距離。
ただそれだけのことがこの上ない安らぎを与えてくれた。
一度手を伸ばしかけて──降ろす。一瞬自分の手が、紅く濡れているのを幻視した。
「どうかしましたか?」
自分の挙動を見てヒミカが問う。悠人は自分の手を見ながら、休んでいる間に思っていたことを言った。
「何だか、違和感を感じるんだ」
ヒミカが首を傾げる。主語を欠いた言葉の意味を量りかねているのだろう。
「色々なことにさ。瞬はいけすかない奴だったし小競り合いもしてきたけど、あそこまでじゃなかった」
少なくとも、自分の愛する人間を争いに利用するほど外道ではなかったはずだ。
「それに俺も──あいつを殺したいと思うのが、いつの間にか当然になってた」
ある一人を求める二人の、ただの喧嘩だったはずだ。殺してでも奪い取る、なんて考えはなかったはずだ。
原因は、自分達の持つこの剣にもあるのだろう。〈求め〉と〈誓い〉、激しく憎みあう剣。
それに引っ張られて、自分達の意識が殺すことを安易に考えるようになってしまったのかもしれない。
だが、それに引っ張られるかどうかは、結局は心の持ち方次第だ。
そうならば、自分は結局その程度の人間だということだが──違和感を感じるのはもっと根本的な部分だ。
「何もかも『出来すぎている』気がする」
自分と瞬にあてがわれた、憎みあう〈求め〉と〈誓い〉。攫われた佳織。巻き込まれた今日子と光陰。
そして、クェドギンの残した言葉。『この世界は神剣に支配されている』──あれはどういう意味だ?
「嫌な感じがするんだ。何か、全部を舞台袖から見られているような……」
読み耽りながら支援
「ユート様……」
ヒミカが不安そうな顔をする。はっとして、自分の顔が険しくなっているのに気づいた。
「すまん。全部俺の気のせいかもしれないから。忘れてくれ」
無理矢理笑顔を作って言う。そうですか、とヒミカはとりあえず頷いたようだった。
「まずは目の前のことを考えないとな。戦争が終わらないことには、どうにもならない」
だがそれで終わるのか、という不安はあった。佳織を助けるだけで全て終わるのか?
それは舞台袖にいる脚本家を喜ばせるだけではないのかと──そんな予感がした。
だがそれでも迷う暇はないのだ。自分にできることはそれだけなのだから。
「──帝国を、斃す」
ユート様、とヒミカが悠人の袖を掴んだ。その動きは弱々しく、彼女らしくない。
ふと、気付く。いつの間にか自分は、『らしくない』と思えるくらい、いつもこの少女を見てきたのだと。
「……少し、お休みになってもよろしいのですよ?」
その言葉は、心から悠人のことを気遣ってのものだ。だがそれが分かっているからこそ悠人は頷けない。
「それはできない。皆戦ってるんだろう? なら、隊長の俺が休んでるわけにもいかない」
くしゃりと、ヒミカの髪を撫でた。硬く癖のある髪質は自分のものと良く似ている。
その温かさに触れながら、ヒミカは訊いた。
「──悠人様は、お辛くないのですか」
彼の眼を見ることができないまま、そう訊いた。
421 :
支援:05/02/05 00:21:12 ID:0r7hXBQ7
支援忘れて、ついつい読んじゃうんだなあ、これが。
辛いよ──そう答える声がした。そしてけれど、と続ける声も。
「それでもやらなきゃいけないんだ。そうしないと、皆も、ヒミカも護れないから」
「けど、それではユート様が」
救われないじゃないですか、と。ヒミカは静かに叫んだ。
「そうでもないよ。俺が戦った後に皆が生きていて、笑っていられるなら、俺も嬉しいから。
それにほら、こうしてヒミカが心配して、ここに来てくれてる。今は、それで充分だよ」
本心から、悠人はそう言った。自分のために時間を割いてここに来てくれていることが嬉しかった。
確かな親愛の情から、悠人はもう一度優しくヒミカの髪を撫でた。そして手を放し、ベッドに寝転がる。
「すまん、少し寝る。早く治して、前線に戻らないといけないからな」
「……はい、おやすみなさい、ユート様」
三十秒と経たずして寝息が聞こえてきた。意外と幼く見える少年の寝顔を眺めながら、ヒミカは拳を握り締めた。
(それだけでは、足りないんです)
そう思った。悠人は自分に、いてくれるだけで嬉しい、と言った。
でもヒミカはそれだけでは足りない。それだけで、彼の心が癒されるとは思えない。
あなたは私達のために戦ってくれている。なら、私達はあなたのために在れていますか?
私達は、あなたのお役に立てていますか? 本当にあなたを救えていますか?
「私は──」
あなたのために、なにができますか?
しばらくして悠人は戦線に復帰した悠人を、光陰が出迎えた。
「よう遅かったな悠人。お前が休んでる間にここも制圧しちまったぜ」
今皆がいるのはユウソカだ。悠人が負傷した後は光陰が臨時に指揮を執り、ゼィギオスを制圧。
サレ・スニル方面の部隊とも合流し、ユウソカまで制圧を終えていた。
これにより秩序の壁は解除され、首都サーギオスへの侵攻が可能となったわけである。
「すまん。苦労かけた。サボってた分、これから働かないとな」
「ああそうしてくれ。だが傷に響かない程度にしてくれよ? 無茶されて倒れられたらかなわんからな」
努力する、と悠人は苦笑する。こつん、と握った拳をぶつけて笑いあった。
「さて、あと帝国領内の拠点といえばリーソカだけなんだが、こっちはすぐにカタがつきそうだな。
ちっさい町だし、兵力もない。斥候からの話じゃ、他を落とされてもう抵抗する気力もなさそうだ」
侵攻は順調にいっている。ほとんどすぐにでも首都に攻め入れる状況だった。
「で、だ。そこでちょっとやらなきゃならんことがあるんだが──」
光陰は話し始めた。
帝国首都へは、秩序の壁の南北両方の門から攻め入る手はずになっている。
勢いに任せて門を突破し、首都を取り囲んで制圧するのだ。
「でだな。それはいいんだが、北門側にはまだ少しスピリットが攻めてきてるらしくてな。
数は少ないんだが相当の手練だ。元マロリガンのスピリットも何人かやられちまった」
俺の部下だった奴もな──そう光陰は、遠い眼をして言った。
「……分かった。そいつらを掃討してくればいいんだな?」
「そういうことだ。頼めるか?」
「任せとけ。休んでた分、きっちり取り戻してくる」
頼んだぜ、と光陰が笑う。
「ゼィギオス側のエーテルジャンプ受け入れの準備はできてる。いつでもいいぞ。
お前が露払いしてる間に俺達でリーソカは落としとく。──その後は、いよいよ瞬だな」
ああ、と頷く。首都では瞬と、佳織が待っている。待ってろよ、と心中で呟き、悠人は〈求め〉を握り締めた。
ゼィギオスに向かったのは、悠人、ヒミカ、アセリア、ウルカの四人だ。機動力に富んだメンバーである。
四人は今、ゼィギオスから秩序の壁への道を駆けていた。空は曇天。今にも泣き出しそうな黒い雲が一面に広がっている。
濃い森だった。道は狭く、大軍が進めるようには出来ていない。そして濃密なマナが神剣の気配を阻害する。
ここにいると分かっていても、掃討できずにいた理由はそれだろう。下手に手を出せば逆にやられる。
だが今ここにいる四人は、不意を打たれた程度でやられるような者達ではない。
そして──森に潜む気配を見逃すこともない。
ざっ、と四人が足を止める。右手の森の中、押し殺した、しかし強い神剣の気配。
(……どうする? 行くか?)
場所は分かっている。向こうも気付いているだろう。森に飛び込むべきか、悠人は逡巡した。
しかし──悠人の決定を待たずして、ウルカが森の中に飛び込んでいた。
「ウルカッ!?」
疾風のように茂みに突っ込んでいくウルカ。悠人の声すら間に合わず、その気配は遠ざかっていく。
彼女らしくない突発的な行動に半ば呆然としながらも、悠人達もウルカを追って森に入った。
ウルカはすぐに止まった。先の神剣の気配の目の前で。
「ウルカ!」
茂みを抜け、ウルカの背中を見つける。だがウルカは振り返ろうともしない。
ただ前に立つ光無い瞳のスピリットを見つめたまま。悠人は歩み寄り、肩を掴んで言う。
「ウルカ、一体どうしたんだ。いきなり走り出すなんて──」
ウルカは呆然とした瞳で、てまえの、と呟いた。
「え?」
「────手前の、部下達です────」
目の前に立ち並ぶスピリット達を見て、ウルカは言った。
……部下がいる、という話は悠人もヒミカも聞いたことがあった。帝国に置いてきたことを悔やんでいるとも。
自分にとっては家族のような存在だと、嬉しそうな──そして哀しそうな顔で言っていた。
自分が見聞したことを、愉しげに聞いてくれる者達。安らかな場所がそこにあったと。
それが、今。
温かさも笑顔もどこかに置き去りにして、彼女達が立っていた。
呆然とする悠人達に、立ち並ぶ妖精達の後ろから声が聞こえてきた。
「──かつての家族と再会できて嬉しいでしょう?」
木陰から一人の男が姿を現す。眼鏡をかけ、その奥で蛇のような瞳を光らせるその男は。
「ソーマ・ル・ソーマ……!」
「私如きの名を覚えて頂けたようで。光栄ですな、勇者殿」
慇懃に腰を折って礼をする。その姿が、たまらなく不快に見えた。
「ソーマ! これはお前がやったのか!」
未だ呆然とするウルカの横で、代わりのように悠人が激昂した。その怒りを、ソーマは嘲笑で受け流す。
「そうですとも。元々そこのウルカ以上に使い物にならないモノばかりでしてね。少しばかり調整を。
今では立派な戦士ですよ。そこらのスピリットなぞには負けません。
戦い、勝つ。それがスピリットです。そしてこの娘達は強くなり、勝てるようになった。
──良かったですね? ウルカ。あなたの家族達は、皆見事にスピリットとして戦っていますよ?」
一言一言が、凍りついたウルカの心臓を揺さぶる。ふざけるな、と悠人が叫んだ。
「スピリットはモノなんかじゃない! 皆生きて、ちゃんと自分を持ってる。人間と変わらない。
なんでそれを、お前は──お前達は道具みたいに扱おうとするんだ!」
悠人の激しい言葉に、しかしソーマは浮かべていた嘲笑を引っ込めた。
「……大層、崇高な精神をお持ちですな、勇者殿」
鼻で嗤うでもなく、眉根に皺を寄せ、不快そのものの表情でソーマは言う。
「あなたも、あの女王も、全く素晴らしい人格者だ。全てを平等に扱おうとする。
その意味も知りもしないで。ええ、全く素晴らしい──夢想家ですよ」
ぞくりと、悠人の背筋に怖気が走る。悠人からしてみれば、弱い人間のはずのソーマが、何故か『怖い』。
その理由を理解しないまま、悠人は言葉を重ねた。
「夢想家でも何でも構わない。俺はただ、皆に、戦うだけじゃないってことを教えてあげたいだけだ。
スピリットが道具なんかじゃなく、ちゃんと生きて、色んなことができるってことを」
「……拍手」
ソーマが言う。すると、彼の前に控えていたスピリット達が一斉に拍手を始めた。
ぱちぱちと、からっぽの拍手が、夜の森に響いた。
ぱちぱち、ぱちぱち、ぱちぱち。その人形の無機質さが、悪趣味さが、拒んでも悠人達の耳に残る。
どん、と悠人が手近な木を拳で叩いた。木の幹が大きくへこむ。
「──やめさせろ」
今にも弾けそうな怒りを押し殺した声。ソーマが指揮者のように手を一振りすると、拍手がやんだ。
「お気に召されませんでしたか。残念ですな。折角褒めて差し上げたのに」
「ふざけろ……てめぇなんかに、一生俺や皆や、お前が壊したそいつらのことなんて理解できないだろうな!」
悠人が剣を抜いた。眦が裂けそうなほど眼を吊り上げ、射殺す視線でソーマを睨めつけた。
対するソーマは、ふん、と鼻を鳴らし、答えた。──憎悪を込めて。
「ええ解りませんとも。たかが人間に、スピリットのことも、エトランジェのことも解るはずがない。
生まれながらにして神剣を持ち、強大な力を手に入れていたモノ達のことなんて、解るはずがない。
ですが──逆に問いますがね、勇者殿。あなたに、我々人間の何が解るというのですか」
顔を俯かせ、眼鏡を押し上げ、額とレンズの隙間からソーマの眼光が悠人を射抜く。
一瞬、それに気圧されそうになる。激戦を潜り抜けた悠人でさえたじろぐ得体の知れない何かが、そこに在った。
だが悠人はそれを押し返した。そんな怖気よりも、こいつへの怒りがただ強かった。
「──解りたくもねぇよ」
「そうですか」
短く答え、ソーマが一歩後ろへと引いた。応じるように、スピリット達が剣を構え前に出る。
「では死になさい。この子達の手にかかって。──殺せますか? あなたに」
びくっとウルカが震えた。そして首を巡らせ、悠人へと向ける。行くべき道を喪った迷子の顔で。
ウルカの家族。ウルカの大切な家族。血は繋がっていなくてもかけがえのないもの。──佳織。
殺せるか。殺せるか。殺せるか。殺せるか。殺せるか。自分が詰問してくる。
──立ち塞がる影は十人。いずれも瞳に光はなく、殺す意志のみを伝えてくる。
殺さなければ生き残れない。だが殺せるのか。自分の仲間の、大切な家族を。
──まず三人が跳ぶ。手に手に神剣を携え、動かぬ悠人達の命を奪わんと疾駆する。
だが。だがだがだがだが。自分は何を、決めたのだったか。
──先頭に立つのは悠人とウルカ。スピリット達は呆然と立ったままのウルカを狙う。
仲間を誰一人として死なせず、また自分も死なぬと誓ったのではないのか。罪を背負うと。
──ウルカは動かない。動けない。己の家族が自分を殺そうとしているのに。
ならば。仲間を護るために誰かを殺す罪を背負うと誓ったのなら、するべきことはたった一つ。
──切っ先がウルカを狙う。ウルカを殺す。距離は短い。最早一歩にも満たぬその距離で、
悠人は剣を振り上げ、そして、
──刃金が、視界を叩き割った。
一刀のもとに向かってきた三人のうち、真ん中にいたスピリットが両断された。
頭頂から股間までを両断した剣を、刹那慣性に任せ手を放し、悠人は柄を逆手に握り直す。
それと同時、悠人は左手でウルカの髪を掴んで後ろに引っ張った。
振り下ろされた剣を一度引き、ウルカの体重移動に合わせて、フックの要領で左のスピリットへと振るう。
〈求め〉がスピリットの左腕を切り飛ばし、ウルカを後ろに放り投げて横に回転。
遠心力に乗せて叩き込まれた一撃が、右のスピリットを神剣ごと吹き飛ばす。
一連の動きは全て一瞬。鮮やかな躊躇無い剣閃が、一人を殺し、一人を傷つけ、一人を退けた。
「……ユート、どの」
静まり返る空間。その中で、ウルカがたどたどしく、泣きそうな声を上げた。
その声に、ウルカを見ることもなく、悠人は言葉を紡いだ。
>>380 老人悠人 「わしは神剣の力で
多くのスピリット達に
救いの手を差し伸べてきた」
「だが、わしは永く生き過ぎた。
最強のスピリットとともに戦い
雄々しく息を引き取るのが
わしの望みであった。
今、その望みがかなう‥‥
スピリット達 「悠人様‥・」
老人悠人 「まるで 孫達に
囲まれておる様だ‥‥
わしが 死んだら
もう手助けすることは出来無い!
心して進め!
・‥さらばだ‥・
この元ネタは名場面と思う。
だからこそ思いついたともいえるが・・・
「──すまない。けど、殺さないとウルカが死んだ」
視線を立ったままの七人から逸らさず悠人は言う。無表情な声で。けど、とウルカは叫ぶ。
「それでも、彼女達は──!」
手前の家族なのです、と言おうとしたウルカを、悠人は遮る。
「俺だって殺したくなんかない。でも、ウルカ達に死なれるのはもっと嫌だ。
……俺は正義の味方なんかじゃないからさ。全員救うことなんて出来ないんだ」
ただ救えなかった命は背負うと、悠人の背中がウルカに告げる。
それを見て、最早ウルカは何も言えない。
ウルカがかつての家族を殺したくないように、悠人もウルカを死なせたくないと分かったから。
唇を噛み、〈冥加〉の柄を握り締め、己に言い聞かせるように言う。
「……許せよ。神剣に飲まれたお前達を救う術を、手前は知らぬ」
そうして腰を落とした。敵を殺す彼女の構え。
その二人の背中を見るヒミカは、ひどく胸が締め付けられるような感じがした。
──それで、良いのですか。
恐らく悠人は、ウルカに恨まれることも承知で戦うことを決めた。己が苦しむことを覚悟の上で。
辛くないはずがない。今だってきっと心が軋みを上げているはずなのに──彼はそれをおくびにも出さない。
何も自分にはできることはないのだろうか。彼の心を癒せないのだろうか。
できないと誰かが告げた。戦うばかりだった自分は、誰かを癒すことなどできはしない。
だから今できるのも、剣を構えることだけだ。
ちきりという音。緩く握っていた双剣の柄を強く握り直す音だ。
アセリアもまたヒミカの隣で剣を握る。相手もまた剣を構え直した。
互いの間にあるのは殲滅の意志。静かな殺気が、夜の大気を駆逐する。
ソーマが後方に下がり、夜闇に紛れて見えなくなる。
そして、風が、
──吹いた。
七人が一斉に跳んだ。先行するのは槍を突き出したグリーンの二人。
悠人が剣を振り上げる。切っ先が跳ね上がり、しかし脇から差し込まれた長剣が悠人に二撃を放たせない。
ウルカはただ剣を払い、頭上を薙いだ剣を受け止めるでもなくただ避けた。
やはり、斬りたくなかった。それを甘えと笑わば笑え。例え如何に戦場であろうとも、己が家族を殺せるものか。
故にこそ、悠人の躊躇のない動きが不安になる。彼は殺す。間違いなく殺す。
ヒミカも、アセリアも、殺すだろう。
(しかし、手前は──!)
剣に迷いが出た。不可視であるべき高速の斬閃は、しかし揺らぎ、受け止められ──頭上に、剣が。
「何やってるの!」
ぐい、とウルカの腕をヒミカが引っ張り、頭上の剣を打ち払った。
「ッ、すまぬ、ヒミカ殿」
一歩下がり剣を握り直す。だがヒミカはウルカの様子を一瞥し、敵に向き直って、言った。
「……殺せないなら、殺さなくていいわ。あなたが、罪を背負うことはない」
ヒミカの脳裏にナナルゥとハリオンの姿が浮かぶ。彼女達が敵に回ったとして、自分は彼女達を殺せるか?
きっと殺せないだろう。殺せたとしても、その先ずっとその罪が自分を苛むだろう。
それが分かるから、ヒミカはウルカに彼女達を殺させようとは思わない。
「あなたが苦しむことなんてないんだから」
だが、ウルカは逆にその言葉で眼が覚めた。
「……いや、これは手前の役目です。袂を分かった部下に引導を渡すのも、また上官の役目なれば」
再度、剣を握り直す。今度は強く、手放さぬように。
これまで面倒を見てきた家族だからこそ──最期まで、面倒を見切らなければならない。
「──そう、ならもう何も言わない」
ヒミカが敵に斬りかかる。その背を追うように、またウルカも地を蹴った。
その一部始終を視界の端に捉えつつ、悠人は敵の剣を薙ぎ払う。
強いと感じる。目の前の敵は、ただ本能のままに戦うだけの獣ではない。
先の三人も、殺すつもりで剣を振るったのだ。だが実際に殺せたのは一人だけ。残りは手負いと無傷である。
ちらとアセリアを見ると、アセリアもまた苦戦している様子だった。
さっき一人斃すのを見たが、今はブラックスピリットの猛攻に防戦一方だ。
獣でも戦闘機械でもなく、彼女達は、確かに戦士の動きをしていた。
退くべき時に退き、隙は逃さない。だが確実に相手を殺せる時は、己の身を省みない。
自己保存本能の無い戦士。それをソーマが作り上げたというのなら、訓練士としての彼の腕は確かだということだ。
だが、それを認める訳にはいかない。
ソーマへの怒りが募る。あの男にとって、スピリットは戦争の道具でしかない。
自分がドス黒い感情を腹の裡に抱えているのを自覚しつつ、悠人はまた一人スピリットを殺した。
──心が軋む。自分が今斬った少女は、ウルカにとってどんな家族だったのだろう。
妹分か、親友か、少し幼かったから娘みたいなものだったのかもしれない。
考えるな、と悠人は思考を押し殺そうとする。敵は殺す、仲間は護る。そう決めたのは誰だ。
罪悪感は常に胸に。殺した命を背負い、心が軋みを上げても剣を止めないと誓ったはずだ。
だが──それでも悠人の心は尚も軋み続ける。今にも弾けて壊れそうな、罅割れのゼンマイ仕掛けのように。
剣を振るう度、剣を向ける度──目の前の少女達に、佳織が重なる。
悠人にとって最後に残った唯一の肉親。とてもとても大切な少女。
自分は今、ウルカの『佳織』を殺しているのだ。そんな感傷を、悠人は下らないと切り捨てられない。
ふと脳裏に浮かぶ。今まで斬ってきた者達にも、それぞれ大切な仲間が、家族がいたかもしれない──
やめろやめろやめろ。今それを思い出すな。この場で迷いは死となる。死を呼ぶ。
意識を閉ざせ。後悔も懺悔も後にしろ。今は、この場を切り抜けろ。
支援するぜ、後は適当にやれ
そこまで面倒見きれないぜ
「おおおおおおおっ!!」
迷いも記憶も振り払うが如く、悠人は〈求め〉を振るう。
〈求め〉から引きずり出した力が風となり、スピリットをまとめて二人両断した。
『…………』
そんな戦いの中で、〈求め〉は何も言ってこない。いつものように殺せ斃せと叫ばない。
けれど悠人は、そんなことにも気付かない。それくらい余裕がなかった。
その沈黙は何ゆえに。声を聞ける契約者が気付かず、真意を問い質さぬ以上、誰も知ることはない。
──あいつは。
剣を振るいながら、悠人はただ一人を探していた。
──あいつはどこだ。
ソーマ。先程から姿を見せないあの男は何処に隠れている。
俺達を見て嗤っているのか。蔑んでいるのか。それとも、顔に不快を浮かべて見ているのか。──どれでもいい。
ただあいつは許せない。絶対許さない。気配を探した。神剣を持たない人間は辿りにくいが、それでも探した。
あいつだけは絶対に殺す、と。
戦争の大義も関係なく、神剣の意志に引きずられたのでもなく、悠人は心からソーマを憎悪した。
──そして、見つける。前方三十メートル先の木の裏。そこにいると直感した。
「前に飛び込めウルカァッ!!」
叫んだ。前方で戦っていた黒い妖精が剣を投げ捨て、戦っていた敵を抱き締めるように飛びつき──
──ソーマ・ル・ソーマは剣士だった。
彼の剣の腕前は常人離れしており、かつてそれが評価されてスピリット隊隊長となった。
そして優れた剣士であったからこそ──スピリットと人間の差を理解できていた。
スピリットでは人間に勝てない、と。
なまじ腕が優れていただけに、彼はそれを知ってしまった。
ソーマは絶望した。どんなに努力し、どんなに鍛錬を重ねても、マナを操る妖精に人間は勝てない。
彼ほどの腕であったなら、一対一ならまだ望みもあろう。
だがスピリットは人間には在り得ぬ再生速度で傷を癒し、戦いを続行できる。
そしてまた、スピリットには知能がある。単一能として力を振るうのではなく、技能としてそれを修得しているのだ。
それを脅威と呼ばずに何と呼ぶ。絶望の後に、ソーマは怖れた。
そして彼は、この世界の仕組みを理解した。何故、人より優れたスピリットを人が支配するのか、その理由を。
人間はスピリットを怖れているのだ。一番初めにスピリットに出会った人間は、まずそう感じたに違いない。
だから支配した。手元に置き、歯向かわぬよう育て上げた。それが当然とスピリットに教え込んだ。
でなければ彼女達が敵となった時、それに勝てないと理解していたからだ。
個体数は少なく、生殖能力もなく、しかし一騎当千の力を誇る存在。
ヒトはそれを恐れ、それを封じ、それを利用しようとした。
彼女達を奴隷の身分に置き、幼少からそれを当然と教え込んでいく。
それが人間という『種』を守るための手段だと、ソーマは理解した。
立場を対等に扱えば、自然、ヒトを超えた力を持つスピリットがより上に立っていくだろう。
その気になればヒトなど簡単に殺せる彼女達が、もしヒトを支配する立場になったら?
支配者として、彼女達が間違わなければそれは理想的だ。
力ある治世者が、常に悪を断罪し、常に善良な民を護るのであれば、それは正しく理想的な社会の在り方だ。
だが人間と対等に育てたスピリットは、人間と同じように欲を持つだろう。
人間と同じ欲を持つスピリットが、人間と同じ過ちを犯さないとどうして言い切れる?
もしスピリット達が過ちを犯しても、妖精より弱い人間にはそれを是正できない。
『革命』という手段によって、悪辣な治世者を是正することができないのだ。
それは社会性を持つ生物にとって致命的である。腐敗の泥は、徐々にヒトをも侵していくだろう。
そうなってしまえば後には混乱しか残らない。ヒトもスピリットも多くが死に絶えるだろう。
そのような事態を避けるため、そして先に大地を支配してきた者として、ヒトはスピリットを認めない。
スピリットに権能を与えてはならない。地位を与えてはならない。欲を与えてはならない。
ヒトはスピリットを支配し、スピリットを運用し、スピリットを畏れながら蔑み続ける。
それこそが、ヒトとスピリット双方にとって、最もバランスの取れた在り方だったのだ。
そう理解したから、ソーマはスピリットを道具として扱った。
そこには怖れも、能力に対する劣等感も多少なりともあっただろう。
だがソーマにとってスピリットを道具として扱うことは、この世界にとって正しいことだった。
意志無き兵器として育て上げ、運用することが、互いにとって最も良いと信じていた。
そして事実、そのやり方でこの世界はバランスを保っていたのだ。
──だというのに、あの愚鈍な女王とエトランジェはそれを崩す。
それがソーマには我慢ならない。
何も分かっていないのだ。力の絶対量が違う者同士が、手を取り合って仲良く歩む。
そんなものありえないのだということを、彼らは分かっていない。
戦争をしている今はいいだろう。ヒトを護り戦う彼女達は英雄だ。だが終わった後はどうなる。
レスティーナが勝てば、人間とスピリットの平等を宣言し、人々は沸き立つだろう。
だがそれも一時的なものだ。やがてヒトは、強すぎる隣人を改めて怖れていくだろう。
その末路を、彼らは考えていない。或いは自分達ならどうにかできると思っているのか。
それは凄まじい傲慢だ。如何に聡明な女王とて、誰も彼もを惹き付けられるわけではないのに。
愚かなり。ソーマは悠人を、レスティーナをそう断じ──
──そして今、その剣に斃れようとしていた。
支援、行きます
鶏を縊り殺したような悲鳴が、夜の森に響いた。
それに驚いた鳥がばさばさと飛び立っていく。戦っていたスピリット達が動きを止めた。
「ヒミカ、殺すな!」
悠人が叫ぶ。その意を正確に汲み取り、ヒミカは交戦していた一人に延髄蹴りを見舞って失神させた。
ウルカとアセリアも剣の峰で打ち、殺さず気を喪わせる。
どさりと倒れた身体は三つ。結局、十人のうち最後まで残っていたのは三人だった。後は殺した。
悠人はそれを確認し、森の中へと足を進め、そしてすぐに、半ばから断たれた木を見つけた。
そのすぐ下から、ひゅうひゅうという隙間風のような音が聞こえていた。
悠人は木の裏側に回る。──そこには、背中に斜めに〈求め〉の刀身を埋めたソーマの姿があった。
──悠人が全力で投擲した〈求め〉は鉈のように木を切断し、その後ろにいたソーマに突き立ったのだ。
うつ伏せに倒れたソーマは、掠れるような呼吸を繰り返しながら、背中に刺さった〈求め〉を引き抜くこと
もせず土を掻き毟り前に進もうとしている。
悠人はその姿を哀れにさえ思った。表情を殺し、進もうとする彼の目の前に立った。
それに気付いて、ソーマが顔を上げる。あれほどふてぶてしかった顔には、死相が張り付いていた。
頬は青ざめ、瞳孔は焦点を喪い、脂汗が滲み、唇は震えている。だがソーマはその顔で──嗤った。
「ククッ──」
苦痛に歪んだ嘲笑の表情を浮かべ、ソーマは悠人の脚を掴んだ。
「くっ、くくっ、くふふふふふ……ッ!」
ソーマは嗤っていた。嗤いながらユートの身体を這い上がってきた。
悠人は、鬼気すら放つソーマのその異様さに、振り払うことすらできない。
そしてソーマは言った。
「──勇者、殿。あなたは、御伽噺の勇者の末路を、知って、いますか──?」
途切れ途切れの声で、ソーマは狂笑を貼り付けたまま問う。
ソーマの言う御伽噺は、悠人も知っている。姉を王宮に住まわせるため、王子と共に戦った勇者の話。
物語の最後で、勇者は歓待する人々を離れ、何処かへ旅立っていくという──
「あれはですね、真実なのですよ。かつて、この世界で、あったことなのです。
──ただ本当は、勇者は、王子に殺されてしまうのですよ! 力を怖れた王子に!」
血の泡を撒き散らしながらソーマは叫ぶ。ソーマは既に悠人の胸まで這い上がってきていた。
「面白い話だと思いませんか?! えぇ!? 勇者はね、自分が助けた者に殺されるんですよ!
同じ勇者として、どんな気持ちですか勇者殿! 自分もそうなると考えたことはないですか?!
戦の無い世界で力は不要なのですよ! あなたやスピリットといった力はね!
人間と平等になったスピリットを蔑むことは許されない。今までは畏れると同時に蔑んでいたのに!
そうすることで人間とスピリットはバランスを取っていたのに!
いいですか勇者殿、あなたはね、この世界を壊しているですよ。この世界のバランスを!
あなたが来たから、あの愚鈍な王は、こんな下らない戦争を始めた!
あなたさえ──あなた達さえいなければ、この世界はあのまま在れたものを!」
何処にそんな力があるのか。ソーマは悠人に喰らいつくように叫び続ける。嗤いながら。
その度に血飛沫が悠人の顔に飛び散っていく。
「呪いを残してあげますよ血塗れの勇者殿! この戦争の後は、人間とスピリットが戦うことになると!
人間は妖精を怖れ、やがてそれは殺意に変わる! 次は自分が支配されるのではないかと怖れる!
そしてやがて、力を持たぬ人間と、力を持つ妖精が争うことになる!
他ならぬその原因は、勇者殿、あなた達な」
トスッ、と。声が断ち切られた。
眼を見開き、嗤ったまま絶命したソーマが、ずるずると悠人の身体を滑り落ちていく。
「ヒミカ──」
ソーマの背後には、ヒミカが立っていた。握る〈赤光〉の切っ先は、マナに還らぬ血で濡れていた。
ヒミカは何も言わなかったし、悠人も何も言わない。ただソーマの屍体を、悠人は見ていた。
ぽつりと、悠人の鼻先に冷たい感触が落ちてきた。見上げれば次は頬に、天の雫が落ちてきた。
ぽつぽつと、雨足は段々強くなっていく。曇天の下で、マナに還らぬ屍体が、冷たくなっていく。
「ユート殿──」
自分を呼ぶ声に顔を向けると、そこには、脇に気絶したスピリットを抱えたウルカとアセリアがいた。
「帰還しましょう。進軍を阻んでいた敵は──消えました」
その顔は暗い。彼女の手には、家族を斬った感触がまだ残っているだろう。
「……いや、皆は先に帰っててくれ。俺は──」
そう言って、悠人は足元の屍体を見下ろした。
「……承知」
ウルカが頷き、アセリアと共にウイングハイロウを広げた。
「ウルカ」
飛び立とうとしていた背中を呼び止める。ウルカが顔だけで振り向いた。
「──ごめんな」
「……いいえ。ユート殿は、指揮官として正しい判断をされたのですから」
言い残して二人は飛び立つ。悠人はソーマの身体から〈求め〉を引き抜く。
そして刀身を横に寝かせ、スコップ代わりにするように、地面を掘り始めた。
『我は剣なのだが』
「今回だけだ。我慢しろ」
抗議じみた声を黙殺。ユートは地面を掘る作業を続けた。雨が降り始め、地面が柔らかくなっているのはありがたい。
「ヒミカも帰っていいんだぞ」
そう言うが、ヒミカはいいえ、と言って動かなかった。悠人も、そうか、とだけ言った。
やがて人が入れるだけの穴を掘り終わる頃には、二人はすっかり雨に濡れていた。
悠人はソーマの身体をその穴の中に横たえ、土を被せた。人一人分だけ盛り上がった土を見ながら、悠人は瞑目した。
「こんな奴でも、野晒しにして獣に食われるのは忍びないからな」
それに──少なくとも彼は、歪ではあったけれど、必ずしも戦争を望んでいたわけではないと思うから。
悠人は天を仰いだ。空は曇天。雨が収まる気配は無い。
ソーマの叫びが、耳に張り付いて離れてくれなかった。
スピリット達に、戦うことだけが全てじゃないことを教えたい。その想いは変わらない。
けど理解してしまったのだ。ソーマの言葉の意味を。自分達が今やっていることの、その先を。
いつもの悠人だったら、それでもどうにかすると断言するだろう。根拠がなくても。
けれど今の悠人はそうは言えなかった。どうにかできる自分を信じるには、今この心は重すぎる。
『血塗れの勇者』と。ソーマはそう呼んだ。
……ああそうだろう。自分はこれまで数え切れないくらいスピリットを殺してきた。
それを誤魔化すつもりはない。殺した命を背負って、それでも皆を護ると決めた。
「……それでも、他人に言われると結構こたえるもんだなぁ」
ぼそりと空を仰いで呟いた。結局、その程度で揺らぐ覚悟だったのだろうか。
ウルカの家族を殺したのも、ひどく辛かった。佳織が殺されていく姿を幻視し、心臓が痛みを訴えた。
そんな風に冷静に自己分析している自分がやけにおかしかった。
そんな悠人の背中は、ヒミカには今にも壊れてしまいそうなほど脆く見えた。
だから、問うた。
「悠人様は、──お辛く、ないのですか」
そんな、分かりきった問いを。
446 :
支援:05/02/05 00:41:03 ID:0r7hXBQ7
いきます
「──────つらいよ」
長く間を空けて、悠人は答えた。
「……ヒミカ、俺は間違ってたかな。あいつの言う通り、俺はこの世界には要らなかったか?」
ヒミカは静かに答えた。
「間違っているとか、いないとか。そんなこと、私には分かりません。
正否の判断など出来ないことです。実際に未来が訪れるまで、分からないことです」
けれど、とヒミカは続ける。
「ユート様が、私達をただ戦うだけの存在ではないと──そう言ってくれたことは素直に嬉しかった。
だから私には、ユート様は確かに必要で、信じられる存在です」
「俺は自分が信じられなくなりそうだよ」
はは、と自嘲気味に悠人は笑った。雨に濡れ、垂れた髪の下の顔は、ひどく苦しげで。
悠人が自分の手を見る。
「俺は、ウルカの家族を殺しちまったんだな」
ヒミカは何も言わなかった。否定も肯定も、今の彼には何の意味もない。
彼を癒す言葉も見つからない。やはり自分は、誰かを癒すことなどできない。
(けれど。けれど──)
悠人は尚も続ける。
「俺が今まで殺してきた奴らにも大切な誰かはいたんだろうな。それを俺は──奪ってきた。
覚悟したつもりだった。割り切っていたつもりだった。なのに──凄く痛いんだ」
くつくつと壊れた人形みたいに悠人が笑う。
「……泣いて、いるのですか」
ヒミカは問う。泣いてなんかない、と悠人は答えた。
「俺にはそんなの許されないよ」
殺した者のために、殺してきた自分が涙を流す権利などないと。
ああ──ヒミカは思う。結局、この少年は今も変わらず、出会った頃のままなのだ。
人が良く、直情的で、自分のせいで誰かが死ぬことを一番怖れる少年のまま。
何も変わらないのだ。幾ら戦場を潜り抜け、幾らスピリットを殺しても。
ならばこそその心は磨耗していく。殺す罪を背負い続け、押し潰されていく。
仲間を護るという理由で彼は自分を張ってきた。
だが張り詰めた弓の弦はいつか切れてしまう。それが分かっていても、彼は戦いをやめることはできない。
為すべきことがあるのなら。護りたい何かがあるのなら。
どんなに辛くても、どんなに痛くても、その道を外れることなどできない。
──それが、彼の決めた道だから。
それは茨の道に他ならない。その在り方はいつか彼を殺すだろう。身体ではなく、心を。
戦争自体はもうすぐ終わる。だが、それは必ずしも彼の心を癒さない。
佳織を助けても、元の世界に戻っても、命を奪ったという現実は彼を苦しめ続ける。
けれど幾ら望んでも、ヒミカには彼の苦しみを癒せない。
ヒミカは聖人ではない。彼と同じ、たくさん命を奪い続けてきた殺人者だ。
その心を理解することはできるだろう。でも同じだから、彼を救えない。
(けれど)
それでも。
(それでも、私は──)
「──ヒミカ?」
悠人を正面からヒミカが抱き締めた。彼の胸に顔を埋めるようにして、ヒミカは強く彼を抱いた。
「……私には、」
胸に埋めた顔を上げぬまま、ヒミカが声を発した。
「ユート様の傷を癒してあげることなどできません」
ヒミカは告げる。
「私は戦うことしかできない。これまでずっとそう在り、これからもずっとそう在るから。でも──」
ヒミカは顔を上げ、背伸びをし、悠人の肩に顎を乗せるようにして、もう一度悠人を抱き締めた。
鳥肌立てつつ支援
「あなたの側にいて、あなたと一緒に罪を背負うことくらいは、できるつもりです」
耳元で、確かな決意を秘めて、そう告げた。
「私はあなたの側に立ちましょう。そしてあなたの重荷を、半分私に背負わせてください。
私にも、あなたを護らせてください。あなたの心を、護らせてください」
同じだから彼を救えない。
けど同じだから──理解できるから、支えることはできる。
「私はあなたと同じになります。あなたと同じ道を歩み、あなたと同じ数の血に手を穢し、あなたと同じ数の
戦場を渡り、あなたと同じ数の敵を殺し、あなたと同じ数の罪を背負います。
辛かったり、苦しかったりしたら、私に言ってください。
癒すことも慰めることも、私にはできません。けど、心が崩れそうでも、支え合うことはできます。
だから──だから、もう──」
強く、強く、抱き締めた。
「──もう、泣かないでください──」
そうヒミカに言われて初めて、悠人は、自分が泣いていることに気付いた。
悠人を抱き締めるヒミカの首に、冷たい雨と違う温度の雫が、ぽたりぽたりと落ちていた。
ヒミカは、自分の胸に去来する切なさと愛しさを自覚している。
これを愛と呼ぶのかは分からない。
けれど、気付いた。自分にとって、この少年はとてもとても大切な人だと。
自分の命よりも喪いたくない、世界で一番護りたいもの。
かつての自分のように、友を喪った罪悪によって己の価値を下位に貶めるのではない。
自分の命も、仲間の命も、この世界も全てひっくるめて──
それでも、この少年の、かけがえのないキレイなココロを何よりも護りたいと思った。
ごめんなさい、とヒミカは心の中で、ナナルゥとハリオンに謝った。
もし、彼女達と悠人、どちらか一方しか助けられないことになったら、自分は迷わず悠人を選ぶ。
他の皆にも、一人ひとりごめんなさいと謝った。
──私は皆の剣でもなく、国を護るための剣でもなく、ただ一人ユート様を護る剣になる。
それも、この人が元の世界に帰る以上、叶わない誓いかもしれないけれど──それでも。
例えこの先何があっても、元の世界に戻っても、私の想いがあなたを死なせないと誓いたい。
あなたのココロを護ると誓いたい。
その誓約を口にする。違わぬ約束、決して潰えぬ想いを、この胸に刻もう。
「ユート様──私を、放さないでください」
──私はあなたを護ると誓う。あなたのために生きると誓う。
──だからあなたが私を厭わぬ限り、私を側に置き、私にあなたを護らせてください。
胸の内の想いを全て、その短い言葉に込めて。
返事はしばらくなかった。ただ二人の上に注ぐ雨が、涙のように頬を伝っていく。
そしてやがて、トスッ、と地面に何かが落ちる音がした。
悠人の手から零れ落ちた〈求め〉が、地面に突き刺さっていた。
「──────────────ああ」
悠人の太い腕が、ヒミカの身体を緩く抱き締めた。
目の奥が熱い。それは哀しいのではなく──悠人は嬉しかった。
自分の行く道は血塗られた道だ。誰かを護るために誰かを殺す、そんな道だ。
それなのに、この少女は共にいようと言ってくれた。それが、何よりも、嬉しかった。
この少女を愛しているかと問われれば、悠人は今すぐに答えを出すことはできない。
だがヒミカがそうであるように、悠人もまた、何よりもヒミカが大切だった。なくしたくないと思った。
何よりも護りたいと、そう思った。
──この想いを胸に抱いたのはいつからだろう。
そんなこと問うだけ無粋だし、問われても分からない。
ただ思うのは、自分とヒミカが似ているのではないかということだ。
二人して自分の命より他人の命を救いたがっていた。
そんなのだったから、きっとお互い相手のことが心配でならなかった。
自分が助けようとしている相手が助けさせてくれないから、気が気じゃなかった。
不意に、悠人は笑いたくなる。そんな簡単なことにも気付かなかった。
だから自分は重荷に押し潰されそうになった。
仲間の命と、自分の命と、殺した命。全部、自分一人で背負おうとしていた。
──でも、気付いた。
もう、一人じゃない。この少女が一緒にいると言ってくれた。
「……そうだな」
抱き締める腕に力を込めた。雨に濡れたはずの身体が、何故か温かい。
張り詰めた弦を解こう。それはほんの少しの間だけだけれど、次に弦を張る時は、隣に大切な人がいる。
戦いはまだ続く。戦争の後も、己との戦いがあるだろう。その時、罪の重さを分かち合おう。
倒れそうなら支え合えばいい。
届かないなら手を重ねればいい。
一人では無理でも、二人なら共に行けるから。
「──ありがとう、ヒミカ」
はい、と小さく、震える声で、ヒミカが頷いた。
二人はずっとそうして抱き合っていた。
風が吹く。森の枝葉が揺れ、ざぁざぁと波打つ音を奏でた。
遠い海の、潮騒にも似た。
最早本編すら否定する勢いで文章を書いております。第五章をお送りしました。支援の方ありがとうございます。
今回も駆け足だった……制圧戦は流石に何回も書くと作者も読者も食傷気味なので、法皇の壁だけ。
法皇の壁制圧戦は同時多発侵攻を書いてみました。あまり書いたことがないので自分自身新鮮だったり。
暗殺者ファーレーン、お借りしました。クォーリンも活躍。年少組ほとんど出番なくてごめんなさい。
冒頭はクェドギンとヨーティア及び戦後処理。やっぱりクェドギンは贔屓してしまいます。
あとはソーマを。ソーマが剣士、というのは設定資料集かノベルズのほうにあったかと……
それで自分なりに彼の歪んだ原因や、彼なりの考えを補完してみましたが……成功した、んでしょうか。
ソーマの考えたことや叫びは、殆ど作者自身の代弁でもあります。
人間とスピリットは結局、力の差を身分の差で埋めてた関係だったと思うんですね。
主導権が人間だったから人間のほうが強く見えるだけで、その実ひっくり返そうと思えば簡単にできる、と。
ただ長年人間が上にいたから、力の差による怖れより、地位的優越感が勝ってしまっていたんだと思います。
実際、悠人達がいなくなった後は大変だと思います。あの世界。
ただまぁ、本編では最後スピリットとの間に子供が作れる世界になってますから、ソーマが危険視するほどに
はならないでしょうけれど。
生殖の可不可というのは、イキモノとして大きな違いだと思います。逆も然り。
……と、持論を展開したところで詮無きことではあるのですが。
『紅蓮の剣』の中での悠人はヘタレない代わりに、必要以上に頑なで、殺すことに思い悩んでいました。
本編での悠人は、結局ある程度殺すことに慣れてしまっているんだと思います。
最初はあれだけガチガチになっていたのに終盤じゃあっさり殺してますし。アセリアルートでは人間も。
この話の中での悠人は、ヒミカの言葉を受け、頑なになり、罪悪感を忘れぬまま戦っていました。
ヒミカをガラスのナイフと例えたことがありましたが、それなら悠人は張り詰めた弓です。
その辺りも本編との差別化を図った部分です。ヘタレてないのはある程度仕様、ということで。
まぁそれにしてもヘタレなさすぎかとも思いますが……w 前回あとがきのぼやきもそこから。
反省点は、前回から抱え込み今回解消された悠人の中の危ういものを描写しきれなかったこと。
悠人からヒミカへの想いの変遷が不十分だったこと。
そして終盤の、ヒミカと悠人が想いを交わす部分が、上手く書けなかったこと。いやはや、未熟です。
……後書きを長々と書くことも未熟の証明なのですがorz それは本編で描ききれなかった、ということだし。
そんな未熟な自分ではありますが、どうかもうしばらくお付き合いくださいませ。
まだまだ長くなりそうです。(爆 短く纏めきれないのも駄目ですよね……
誤字脱字ハリオンマジック等ありましたら、ご指摘お願いします。
早速幾つかやらかしちゃってますが……orz
一時間余りの投稿、お疲れ様でした。
感想は後ほど書き込みたいと思います。もう一度拝読し直したいので。
>>紅蓮の人さん
GJです。あいかわらず気合の入った戦闘描写に燃え。
苦悩しつつのウルカの元部下との戦いにホロリ。
そしてラスト悠人を支えるヒミカさんに萌え。
・・・明日朝早いのに読んでしまった・・・でも後悔はしてませんよ?
お疲れ様でした。続きも期待しております。
いやあ、お疲れ様でした、紅蓮氏!
ソーマ補完も見事です。悠人がヘタレてるかどうかなんて
些細な事ですって。作者がヘタレてないのだけは確か。
見据えてますな、未来のファンタズマゴリアまでも。
...で、437の4行目は逆かな?
もう、GJ! 以外何を言えばいいのか。
クォーリン分補給完了+ファーレーンカッコイイ―!!
続きも楽しみに待ちたいと思いますので、無理せず頑張って下さい
461 :
紅蓮の人:05/02/05 01:41:08 ID:GbBYkp8F
>>458 お疲れ様です。明日頑張ってください。
>>459 やっべぇ逆ですorz もう誤字脱字のレベルじゃねぇよ自分。ちゃんと確認しないから……
>>紅蓮氏
毎度の事ながら超GJ!
拍手のシーンむちゃくちゃ怖かったです。
なんか本編よりも世界観が分かりやすいですね。
ホント勉強になります。
毎回思うのですが、紅蓮氏の文章読んでると映像が目の前で動いてるかのような錯覚すら覚えます。
支援を忘れて読み耽ってしまう感覚はその辺りから来ているのかもしれません。
戦闘シーンが濃い熱いのは言うまでもなく、今回は雨の中の二人のシーンが印象的でした。
いよいよ終盤? 今後の展開が楽しみでなりません。
GJでした!
464 :
253:05/02/05 05:21:41 ID:DS+YBmrR
紅蓮の人さん、乙でした〜!
実は今回読んでて、一番感情移入してしまったのはソーマ、だったりします。
賛同できるってわけじゃないですけども。
彼が剣士とゆーのは知ってましたが、まさかこんな事考えてたとは……。
補完は、かなり成功だと思います。
今回のNo.1名シーンは、是非とも444、ソーマの埋葬で!
ここの悠人の台詞、想いは、ホント良いです!まさに漢!!(・∀・)
これからも、漢街道を突っ走って欲しい所存です。
あと超個人的に、今回へリオンの台詞がなくてすごい悲しかったですが、
セリアとナナルゥがコンビを組んでて嬉しかったです。
いえ、セリナナ、最近のお気に入りなもので。
で、えーと間違いは423の1行目「悠人は」が重複してていらない、
ってことと444の2行目「ハイロウ」じゃなくて「ハイロゥ」ですね。
まあ、後者なんてちょっと細か過ぎですが。
これからも、応援しております。ファイト!!
>>前スレ699さん
静謐な闇の中、ひっそり佇む時深の、
強く、それでいて寂しそうな背中が見えてきそうです。
留まるか、歩き出すか。時深の決めた自分の未来。そして今なのですね。
>>紅蓮さん
お疲れ様でした。リアルタイムで拝読させて頂いたのですが、
どうしても感想が纏まらず、読み返しているうちにこんな時間になってしまい、すみません。
>人間とスピリットは結局、力の差を身分の差で埋めてた関係
驚きました。戦争というものに紅蓮さんがよりシビアな考えをお持ちなのは
作品からもレスからも伝わっていたのですが、
今自分が考えているテーマに対して、また新しい刺激を頂いた気分です。
>戦闘シーン
法皇の壁でのラキオスの戦術に、日露戦争奉天会戦で日本軍の採ったそれを連想しました。
確固たる防衛の意志を持つレッドスピリットとクロパトキンの対比などを何故か楽しんだり。
悠人の謝罪は、私には今日子に告げたものに聞こえました。
戦いを望まず、それでも戦わなくては前に進めない今日子の心情、
それが「所在無げ」や「ごめんね」に表れているように思えて、印象に残りました。
妖精部隊。読み進めていた時、もし自分が書いていたら、単純に最初からヒミカが
ウルカの、そして悠人の代わりに飛び出してその罪を被る、
そんなシーンにしかならなかったかも知れない、と思いました。
でも、それだけではヒミカの在り方に対する補完にしかならないんですね。
紅蓮さんの、三人に対する幅の広いスタンスに、感服しながら一人で唸ってましたw
そしてソーマ。彼も、スピリットを恐れ、封じ込めようとした「人間」としての
種の防衛反応の一つだったのでしょう。ただ、そこまで理解していたのなら、
何故もっとスピリットの可能性を信じ切れなかったのか。
本質を捉えていたレスティーナとの違いがそこに現れている気がしてなりません。
或いはソーマの描いていた未来というものの方が正しい人の「在り方」だったのかも知れない、
そんな風に考えさせられました。
悠人とヒミカ、二人の物語はその可能性を全否定するのか、それとも矛盾すら包括するのか。
続きが増々楽しみになりました。
>紅蓮さん
お疲れ様でした。戦闘シーンなどはほんとに
ファンタジーのSSだったはずなのに近代戦のような緊迫感で
セリアが「撃て」なんてもし「上に「ファイアー」なんてルビがついてたら・・。
砲兵士官してるセリア萌えですよ。
(紅蓮氏は意識して書いてるのかな、分単位の正確な火砲の支援
はかなり近代になってからのもの)
読んでいてドキドキしました。
無論それはそれは最後のロマンスの為の
導火線であったわけで。
ヒミカと悠人が一応結ばれた訳ですが、
二人に幸が多いことを・・・。(決してストーリーは強制しませんが)
>セリアが「撃て」なんてもし「上に「ファイアー」なんてルビがついてたら・・。
砲兵士官してるセリア萌えですよ。
何故だろう、ベルバラの最終回を連想してしまった。
468 :
紅蓮の人:05/02/05 23:36:08 ID:GbBYkp8F
皆様レスありがとうございます。
>>462 拍手のところはそう感じられるように書きました。
これに限らず、感情の発露であるはずの動作が機械的に行われるというのは怖いものです。
>>463 支援を忘れてしまうほど読み耽っていただけたなら本望ですw
すいません実はまだ終わりそうにありませんorz
>>464 ヘリオンはごめんなさい。というかどのスピリットも割食ってるんですけどね……
メイン以外上手く動かせていないのは反省モノです……
>>465 シビア、というか現実はこうはならないだろ、という考えが結構あったりします。まぁこれはゲームなのでどうとでもなるのですが……
自分が求めるリアルさと、フィクション特有のご都合主義のすり合わせは結構考えます。
>何故もっとスピリットの可能性を信じ切れなかったのか。
理解していたからこそ、信じ切れなかったと自分は考えました。
レスティーナが本質を捉えていたように、(この作品の中での)ソーマも本質を捉えた人間だったと思います。
本編でのスピリットは純粋かつ忠実であり、傍目に見ればとても「良い」存在に見えます。
でもそれは、人間に飼いならされた結果なんですよね。
人間と同じに育てられた場合、彼女達の「可能性」が必ずしも「良い」方向に向くとは分からないわけで。
レスティーナが、「飼いならされたスピリット」に対し可能性を見出したのか、ヒトと同じく育てられたスピリットを仮定し、
その上で彼女らの良心を信じたのか。それは分かりませんが、ここでのソーマはスピリットの(ひいてはヒトの)良心を
信じられなかった、と考えました。
そういった意味で、正しくレスティーナとソーマは反対だったわけで。
それでは、続きをお待ちください……
>>456 >>紅蓮の人さん
G.J!!おつかれさまでした。
ソーマ、かっこいい……
ここまでくると、本当に裏レスティーナなキャラですね。
クェドギンもソーマも、人の心を信じることができなかったのが
ああなった要因かも、と思います。
>実はまだ終わりそうにありません
ヒミカファンにとっては、うれしい限りです(笑
―――ラキオススピリット訓練場内
「……遅いな」
俺は、人を待っていた。もちろん訓練場で待っているのだから、訓練をするためだ。
一つ説明しておくと、ここ最近の訓練は一日ごとに相手を変えての模擬戦、という形をとっている。
今日の俺の相手は、ただ今遅刻真っ最中のハリオンだ。
ローテーションを組んだのも、それを紙に書いて第一、第二詰所に貼ったのも、自分自身である。
ハリオンが相手という点に、間違いはない。今朝もしっかり確認した。
しかし、来ない。待てど暮らせど、一向にハリオンが姿を現す様子がない。
既に、他の皆は訓練を始めており、相手の居ないのは自分のみ、そんな状況だった。
激しく金属同士をぶつける音が、そこかしこから聞こえてくる。
……まいったな。まさかとは思うけど体調を崩して寝こんでるとか?
いや、それならそれで、誰かが気付いて俺に報告して来ないのはおかしいし……。
仕方ないので、休憩中のセリアとナナルゥに聞いてみることにした。
「なあ、二人とも。ハリオンがどうしてるか知らないか?」
「え、ハリオンですか?一緒に朝食は摂りましたけど。…もしかして、二度寝してるとか」
んな馬鹿な。いや、でも相手はあのハリオンだ。
二度寝していても、何ら不思議はない。(失礼)
とりあえず、セリアの相方にも「知ってるか?」と、視線で問うてみる。
どうやら伝わったらしく、ナナルゥは首を振りながら答えを返す。
「部屋に戻るのは見たのですが。…でも、今日のセリアの下着の色なら知ってます。
水色のストライプです。」
「な、ななななな……!!」
何でもない事の様に、しれっと言うナナルゥ。
それに対して、セリアは言葉も出ないようで、口をパクパクさせている。
で、何か知らないがまだ続きがあるらしい。
「しかも、昨日の夜などはベッドで…」
ブチッ、何かが切れる音がした。
「…殺す。あんたは、ぜ〜〜ったい殺す!!そこ、動くなぁッ!!!」
言葉と共に、『熱病』に手を掛けるセリア。
が、その時点で既に、ナナルゥは30m程離れた位置に移動していた。
……むう、いつの間に。
「では、ユートさま。アディオス」
シュタッと手を挙げ、それだけ言ったナナルゥは、赤スピリットとは思えない尋常ならざるスピードで駆けて行く。
それを、ウイングハイロゥ全開で追撃するセリア。
顔が真っ赤に染まっているのは、羞恥のためか、怒りのせいか。
……いや、ま、どっちもだろう。
あ、ちょっと泣いてる。
2人の姿は、あっという間に見えなくなった。
何か、2人ともキャラ違ってきているような気もするが、この際気にしない事にする。
それよりも、今気にすべき事は………そう、水色のストライプだ。
妄想中―――NOW LOADING―――
うーむ、あとベッドで……何だろ?実に気になる。
こーゆー大切な事は、キチンと言ってくれなきゃ困るじゃないかね、チミ。
全く………。
「…って違〜〜う!!そうじゃなくて、ハリオン!」
「はい〜、遅れて申し訳ございませんでしたぁ」
………………。
「ッうおおぉ!?」
思わず、その場を飛び退く。そこには、当然の様にハリオンが居た。
全然気付かなかったのだが、どうやら妄想してる間に隣までやってきたらしい。
……心臓に悪いから止めてくれ。
※妄想してる方が、悪いと思います。
まあ、いい。とりあえず遅れた理由を聞いて……あれ?
何か、普段と違うよーな……??
「ハリオン…一つ質問してもいいか?」
「はい?何でしょう〜」
「………何故、ニーソックスを履いてないんだ?」
そう。
何でか知らないが、今日のハリオンはニーソックス(以下ニーソ)ではなく、生足だった。
通常、スピリットは自分の属性と同じ色のニーソを着用している。
もちろん、例外もあるのだが。(アセリア、エスペリア、オルファ等)
「あ、実はですねぇ、今日履こうと思ってたのも予備の分も、どこかになくしてしまった様でして〜。
一応探してみたんですけど、見つかりませんでしたぁ」
…成る程。それで遅れたワケか。しかし、これは…………
エロい。とてもエロい。
アセリアで生足なんて見慣れたぜ!なんて思っていたのだが、どうやらそれは、大いなる勘違いだったらしい。
何せ、ハリオンは部隊一のないすばでぃ(推定)。
重層というか荘厳というか、まあ、アセリアには出せない未知の力を、あの太ももは発していると言える。
誤解されないよう言っておくが、俺は決してニーソは嫌いじゃない。
むしろ、好きだ。大好きだ。
ぶっちゃけ、Hシーンでニーソを脱がすなんて言語道断、神々への冒涜だ、コンチクショウ、とか思っている。
だが、相手がハリオンだからか。それとも、やはりこれもニーソの魔力なのか。
ああ、素晴らしき太もも。
何だか、血液が一ヶ所に集まって行く気さえする。
………って、そりゃさすがにヤバイだろ!皆、いるってのに。
とりあえず落ちつけ、俺!こんな時こそクールに。
クールになるんだ、高嶺悠人!!
「BE COOL」
「…はぁ、私は落ちついてますけどぉ」
………………。
口に出しとるッ!?
「い、いや、これは……そう!
訓練中も、戦場と同じ様に常に冷静でいなければならない、そー言いたかったんだ。うん!
………ホントですよ?」
「ああ、そ〜だったんですかぁ。判りました〜」
フゥ、なんとか誤魔化せたか……。
だが、一難去ってまた一難。
「でも、どうしてそんなに前屈みで、剣を構えられてるんですか〜?」
「え、えーと……あ、ほら、新しい型を考えたからちょっと試してみようかなーって。
まあ、気にしないで下さい。」
語尾が何故か丁寧語になってるあたりが、そこはかとなく余裕の無さを醸し出しているような気がしないでもない。
けれど、ハリオンは納得したのか、槍型永遠神剣『大樹』を構えた。
「それでは〜、行きますよ〜!」
「お、応ッ!!」
こうしてようやく始まった訓練だったが……結果、ハリオンの10戦10勝。
当然と言えば当然だった。
何せ、ハリオンが『大樹』を振り回す度、たわわに実った双丘がたゆんたゆん揺れるわ、太ももはちらつくわ。
その度に、こっちはほとんど動けなくなってしまう。
勝負になるわけなかった……。
「ユートさま、ひょっとしてお身体の調子が悪いのですか〜?」
「……ああ、うん、ちょっとな」
実際は、ちょっとどころか、身体の一部が大変な事になっているのだが。
しかし、まさかそんな事言うわけにもいかず、ただ曖昧に頷いておく事にする。
「そ〜だったんですかぁ。じゃあ、今日はこれで終わりにしましょう〜」
「それがいい。そうしよう…」
ほぼ拷問と言える訓練なので、終わってくれると非常に嬉しい。
少々、残念な気もするが。
で、そのまま部屋に帰るのかと思われたハリオンだったが、どーゆー訳かこっちへ近付いて来た。
そして、耳元で何か囁きかける。
「……今日はいろいろと御迷惑をお掛けしましたぁ。
お詫びと言っては何ですけど〜、お部屋でお待ちしておりますぅ」
………………。
もしかしなくても、全部バレてましたか?
視線で問う。
ニコニコと笑うハリオン。
……どうやら、疑う余地はないらしい。
何とゆーか、喜ぶべきなのか、落ち込むべきなのか。
…いや、嬉しいけども。
そんな俺に、『求め』から、ありがた過ぎる思念が伝わってくる。
『―――この駄目人間が』
「………………駄目人間ゆーな、この野郎(泣)」
475 :
御洒落の人:05/02/06 02:28:06 ID:gdawhqZt
後書き
や、やっちまったああぁッ!!orz
低マインドなのはともかく、全世界のニーソ好きの方々に喧嘩吹っ掛けるようなSSです。
いえ、作中でも悠人が言ってますけど、ニーソ大好きです。
ええ、嘘じゃないです。信じてください。
(なら、こんなもん書くな)ごもっとも。
まあ、そんな事は水に流して、誤字脱字ハリオンマジック等、ご指摘下されば幸いです。(ぉ
あ、あとこのお洒落シリーズ、他のスピでも書けそうです。
(今回のお洒落か?とつっこまれるとキツイのですが。まあ、題名にも?がついてますし、無問題ってことで。)
なので、今回から名前を「御洒落の人」として、SSを書いていきたいと思います。
よろしくお願い致します。
>>憂鬱の人さん>>紅蓮の人さん
((((゚д゚;;))))ガクガクブルブル
御怒りになられないことを、心の底から祈るばかりです…(陳謝)
>>妄想の人さん
ニムのラブラブ物は、自分的にはかなり書くの難しいなーと思ってます。
なので、何かアッサリ書かれているようで感心してしまいました。
いや、実際は凄い苦労されたのかもしれませんが。
てか、今回悠人、完全にとばっちり。(笑
毒舌ナナルゥが気に入って頂けて、何よりです。
でもスタンスが固まり過ぎて、最もラブラブと縁遠いスピになりつつあります。(苦笑
>>374さん
間違いないって、思いっきり光陰だし。
どこで判別したんでしょう…。
毎度の事ながら、凄まじい遅レス、申し訳ございませんorz
炬燵で寝こけてファーとセリアに問い詰められる夢を見ました。
良く判りませんがとりあえずニムに怒られてきます。
>>御洒落の人さん
ネリシアがユートとでぇとしてない……(涙
じゃなくて、悠人の壊れっぷりがむしろ清々しいです。
完全にノリ突っ込みを体得した悠人、でも口に出すのはやめましょう。
なんだかんだ遅れた理由をうやむやにしてしまうハリオン、恐るべし。
個人的にはちょっと泣いてるセリアを追いかけてみたいと思いますw
>475 御洒落の人
>ぶっちゃけ、Hシーンでニーソを脱がすなんて言語道断、神々への冒涜だ
自分の存在の全てを掛けて同意します(w
セリアさんはなにしてたのー?
せんせー教えて〜。
「はっ!」
一呼吸の間に二度の斬撃を放ち、金色のマナが散っていくのを背中越しに感じる。
それがミネア−ダラム間の街道警備隊の最後だった。
ふぅ、と一息ついてから後を振り返る。
「さて、ここからが正念場よ。気をつけてね」
「…ん」
それだけ言うと私達はダラムに向かって駆け出す。
冬を終え、草木の芽がようやく目覚め始めた季節。
湖からは心地よい冷たさを含むそよ風が頬を撫でてゆく。
このあたりは湖が点在し、水のマナが豊富に満ちた風光明媚な地域だ。
街道の脇には清流が流れ、その水辺では草花が空を仰いでいる。
今でこそ新緑の鮮やかな光景だが、いずれはこの小さな草木が青々と茂ることだろう。
そんな様子を想像して、思わず私も笑みがこぼれる。
(…いつか、こんな所で――)
「こんな所で、ピクニックでも出来たら良いよね」
思わずニムを振り返ってしまう。
「エスペリアとハリオンにお弁当作ってもらってさー」
「ふふっ、良いわね…。でもセリアがなんていうかしら」
「野外訓練って言っておけば良いよ」
もう…、と苦笑いを浮かべながら軽く嗜める。
これから戦場に向かう会話にしては相応しくないが、私は嬉しくなった。
同じ物を見て、同じ事を考えた事に。
そして、戦場の私を見ても態度が変わらない事に。
(今度の戦争が一段落したら、本当に提案してみようかしら)
覆面の内側で口元を緩ませた時、ダラムの門が遠く目に入った。
――綺麗…。
それが、私の感想だった。
戦場に立つお姉ちゃんは、しなやかに優雅に、受け流し切り返す。
金色に散るマナの霧の中で、まるでダンスを踊っているかのように敵の中を駆け抜けていく。
『ランサ方面から進攻する本隊を援護するために、側面からダラムを突き撹乱せよ』
これが私達に与えられた任務らしい。
ダーツィ戦の時も参加していない私達は伏兵としてはもってこいだ。
ダラムに駐留していた敵部隊は、突如側面から襲い掛かった私達に混乱している。
あっという間に数人をマナに返され、動揺はさらに伝播するだろう。
「ニムはサポートをお願い!」
「うん。全力で、行く」
お姉ちゃんが走っていく。その先に緑、赤、青。右から黒がこっちに向かってくる。
「邪魔させない!」間に割り込み『曙光』を振るう、が受け流される。
返す刃で矢継ぎ早に切りかかられる。お姉ちゃんより遅い。2撃目までは裁けた。
ただ最後の突きを避けきれず、左腕を僅かに切られる。何度も教えられた事なのに。
「…っ、…ムカつく…!」
戦闘訓練を受けるようになって、私はずっとお姉ちゃん教えられてきた。
神剣での戦い方、ハイロゥの使い方、魔法を唱えるタイミング。
敵の特徴に合わせた戦い方や、戦いながら状況を見る事、仲間を支援する事。
1対1での戦い方はもちろん、ヘリオンやオルファと組んでの訓練もした。
相手もお姉ちゃんだったり、セリアだったり、ハリオンだったり。
…そう言えば訓練中のお姉ちゃんは怖かった。
「これができなかったら素振り100回ね?」
…なんて事をいつもの笑顔で言って来るのだ。
何度脱走しようとしたか覚えてない。
でも、その度にお姉ちゃんは私を連れ戻して、何度も何度も同じ事を丁寧に教えてくれた。
私が、ちゃんと出来るようになるまで。
そんなお姉ちゃんに鍛えられたんだから――。
目前の敵を片付てからニムの方を窺うと、丁度壁に叩きつけられた黒スピリットがマナに還る所だった。
戦場で自分の身が守れる程度の技術を教えられたことに私は少し安堵する。
私だって所詮はスピリットである以上、いつ斃れるか分からない。
そう簡単にマナに還る気もないが、万が一そうなった時にニムには一人でも生きていける強さを持っていて欲しい。
戦場で生き残るための術は、その第一歩とも言え――「っ!!」
突然『月光』の発した警告に反応して石畳を蹴りつけた。一瞬前まで立っていた場所で爆炎が立ち上る。
視線を上げると、魔法を撃った姿勢のままの赤スピリットが街道の向こうに立っている。
(アレが指揮官ね!)
纏っている雰囲気が違う、本能的にそう感じた。
「お姉ちゃん!」
「ニムは引いて!」
駆け寄ってくるニムに厳しく叫び返すと私はそのまま敵に向かって走りこむ。
こちらに向けて片手を上げるのが目に入る。
(――高速詠唱!?)
咄嗟に全力で横に跳ぶ。肌に感じる爆風。壁を足場にして更に飛び込み切りつける。
首筋と左腕を狙った斬撃を裁かれ、思わず私の口元が歪んだ。
(この人、強い!)
腹に向かって振るわれた神剣を跳び退って避けると、相手も飛び退いていた。
間合いを詰めながら私も詠唱を開始する。
「『神剣よ、我が求めに応じよ…』」
敵の放ったファイアボルトを地面を這うようにして避けながら、神剣魔法を開放。
「アイアンメイデン!」
地面から黒色の槍が赤い妖精を貫かんと襲い掛かり、「っ――!」たまらず空中へ跳び上がる。
(チェックメイト!)
空中戦において赤スピリットと黒スピリットでは機動力が違いすぎる。
再び詠唱を開始してはいるが、勝負は決したと言えるだろう。
止めを刺すために構え直し――(……射線が私に向いてない!)
「いけない! ニム!!」「ライトニングボルト!」
私の悲痛な叫びと、赤スピリットの声が重なった――。
――何というか、それはあっという間だった。
私は妙に冷静で、でも身体は動いてくれなくて。
そこへ突然何か大きいものが割り込んできて。
魔法があんまり得意じゃない私にも分かるくらい、大量のマナが集まってきて。
地面に見慣れない、複雑な魔方陣が浮かび上がってるのが見えて。
すぐにまた跳んでいって、お姉ちゃんを狙っていた敵を神剣ごと真っ二つにして。
私は、ぺたんと尻餅をついたまま、ぼんやりと眺めていた――。
「ニム!」
がば、とお姉ちゃんに抱きつかれてようやく我に返った。
「ニム、…大丈夫…?」
「…うん、大丈夫」
少し震える背中に手を回してぽんぽんと叩いてあげと、ぎゅっとされる。
誰かが近寄ってくる気配に、私はのろのろと視線を上げた。
「大丈夫か?」
そこに、見慣れない格好をした、妙に無骨な剣を持った人が手を差し伸べている。
優しい表情を浮かべた、針金みたいな髪の男の人。
咄嗟に言葉が出てこない私は、とりあえず無言で、こくんと頷いてみる。
――その人からは、なんとなく、優しい匂いがした。
指揮官を失った防衛隊は撤退を始め、ダラムはラキオス軍の手に落ちた。
私とニムは側面から敵軍を撹乱した功労者として、臨時の隊長室に呼び出された。
功労者と言っても命令に従ったまでだし、実際危ない所だったから素直に喜べない部分もある。
そう、もし彼が来てくれなかったら今ごろ私もニムもマナの霧に返っていた所だろう。
その彼は今――。
「隊長自らが単独行動なさるとはどう言うおつもりですか?」
「救援に向かわれるのでしたら、我々にお申し付けくださいと…」
「そのような事では隊の指揮系統が…」
「ユート様はご自分の身が…」
エスペリアとセリアに問い詰められている。
誰にでも優しく厳しいエスペリアはともかく、あのセリアまでが感情を露にしている事に少し驚く。
それにしても…。
(妙に息が合っていると感じるのは気のせいかしらね…)
絶妙のコンビネーションで言葉を紡ぐ彼女らを見やり、ふぅとこっそり息を吐く。
私達を救ってくれた彼が責められるのを見ているのは、少し居たたまれない。
「失礼いたします、エトランジェ様」
気炎を上げる彼女らから逃れる切欠と見たのか、少し露骨に助かった、と言う表情を浮かべて彼がこちらに振り返る。
「先程は危ない所を助けて頂きまして有難うございました。この子の分もお礼申し上げます」
「いや、怪我とかしてない様で良かったよ…えっと…」
「あ、申し訳ございません。私、『月光』のファーレーンと申します。こちらが…」
「…ニム。『曙光』のニムントール」
「俺は悠人。一応隊長って事にはなってるけど、新米だからそんなに畏まらなくて良いから。二人とも、これからよろしくな」
頭を下げる彼に、ユート様、と後ろの二人が声を揃える。
少し驚いた。スピリットに頭を下げる人間は初めてだ。
今の行動と彼女らの態度で、なんとなく彼の人柄が分かった気がする。
「はい、こちらこそよろしくお願い致します」
「二人とも、今日は疲れただろ。見張りとかは良いから休んでてくれ」
「はい、ではお言葉に甘えて失礼いたします」
セリアに目線で、程々にね、と伝えると少しむくれて、分かってるわよと返された。
それを確認してから私はその場を離れ――ようとした。
特に何を考えてたワケでも無かった。
ユート…様?の手に小さなキズを見つけた。
単に、私が初めに気が付いた。ただそれだけの話だと思う。
「…ん? ニムントール、だっけ。何かあったの……か…」
特に何を考えてたワケでも無かった。
私は回復魔法があんまり得意じゃないし。面倒くさいし。
小さなケガでも、一応消毒しておかなきゃと思っただけだ。
…昔、お姉ちゃんがしてくれたやり方で。
れろ、ぺろっ…ちゅっ、ちゅぴ。
「…ん…ん、ふ…」
ちゅ、ちゅっ……ちゅぷ。
「…んふ……ん…」
「………………………」
なんとなく視線を感じて、傷口に唇をつけたまま横目で見てみる。
エスペリアとセリアが、( ゚д゚)ポカーンな顔で固まっていた。
反対側ではお姉ちゃんが呆けていた。顔見えないけど。
最後に、目線を上に上げてみる。
「…あ………あ……」
何故か顔が赤くなってる。ちょっと面白い…れろ。
「……うっ…」
お姉ちゃん達が同時に吼えて、そこでようやく私は自分のしでかした事に気が付いた。
「ここ、こ、これは、お礼…そう! 助けてもらったお礼だからね! 別にヘンな意味とかないんだから!!」
「…ヘンな意味…」
セリアの小さな呟きは、顔を真っ赤にしてまくし立てるニムの耳には入らなかったらしい。
「あ、ああ…。気持t…いや気を使ってくれたんだよな、ウレーシュ、ニム」
「ニムって呼ぶな!」
うがーっ、と叫ぶとそのまま走り去る。
ニムの背中を見送り、私は一つため息をついてから隊長に向き直る。
「…ニムの所に行きます。いくら占領したと言ってもまだ危ないですし」
「…あ、あぁ…そうだな。頼む」
「では、失礼致します」
一礼した後、エスペリアとセリアを一瞥する。…二人とも眼の奥に青い炎が見えた。
背を向けた私を、妙に底冷えのする声が追いかけてくる。
「…さて、ユート様?」
「お覚悟は、よ ろ し い で す か ?」
外に出ると、既に日が傾き薄闇が辺りを覆っていた。
アセリアやヒミカが未だ警戒を続けてるとはいえ、襲撃が無いとも限らない。
(うちのお姫様はどこに行ったのかしらね…)
辺りを見回しながら見当をつけて歩き出す。
ダラムの町は比較的大きい方で、設備もそれなりに整備されている。
にもかかわらず家々にエーテル灯の明かりがあまり見えないのは、さすがに占領区だからだろうか。
少し物寂しい路地を進むと、町の中を通っている小川に掛かる橋に座っている影を見つけた。
二つに縛った頭が下がり、上がり、ぶるぶる振られ、また下がる。
少しだけ苦笑いしながら、私はその背中に近づいていった。
「……はぁ…」
深いため息がせせらぎに流れていく。
勢いに任せて飛び出して来たは良いが、このままではみんなに合わせる顔が無い。
さらさらと音を立てる水面に自分の顔がぼんやりと映っている。
冷たい空気が頭を冷ましてくれた今となっては、自分でも何故あんなに頭に血が上ったのか分からない。
(…失礼なコトしちゃったし…怒ってないかな…)
相手は人間、しかも隊長に対してあの態度はいくらなんでも酷すぎる。
私だけ叱られるならまだ良いけど、お姉ちゃんに迷惑を掛けるのは嫌だ。
(でも、優しそうだったし、ありがとうって言ってくれたし…)
少し元気が出てきた。
(…手暖かかったし、大きかったし…)
一度あんな手で髪を撫でられながらお昼寝してみたい。
お姉ちゃんの細くて優しい手も捨てがたいけど…ってそうじゃなくて!
「……はぁ…」
今度は少し自己嫌悪交じりのため息を河に流す。
「どうしたの?」
「おっ、お姉ちゃん…」
突然声がして、少しお尻を浮かせる程びっくりした。
私の隣に座ると、兜と面を脱ぎ、涼しげに目を細める。少し目元が赤い。
お姉ちゃんは何も言わない。少し迷ったけど、聞いてみる。
「……怒ってた?」
「ん? ううん、怒ってはいらっしゃらなかったわよ。逆にニムを心配していたわ」
「…そう…」
それを聞いて、またため息を一つ。何故だか浮かんでくる笑みを噛み殺しながら。
――思った通り、優しい人だ。
「良かったわね、優しそうな人で」
安心したのか、ため息をついたニムに声を掛ける。
「……まだ、わかんないよ」
「そう? …そうね、そうかもしれない…」
――敵指揮官との戦いの中で、私はニムの存在を完全に忘れていた。
あの時の口元の歪みは、一撃で仕留められなかった悔しさか、強敵との戦いに寄る歓喜か。
ニムに抱きついた時、仮面の奥で私は安堵と、そして懺悔の涙を流した。
私が太陽の下で生きていけるのはニムのお陰なのに――。
すっかり夜の帳が下りた空を見上げる。
ネセスン座が高く見える。
帰らぬ夫を待ち続けた娘が、星となって未だ待ち続けていると言う。
悲恋と取られがちだが、私はそうは思わない。
信じるものを守り続けた彼女は、きっと幸せだったのだろう。
「明日、ちゃんと謝る」
「えぇ、それが良いわね」
上目遣いのニムに微笑み返す。
そうして私達は立上がり、歩き始めた。
足元を照らすのは、人工の灯りではなく夜空に浮かぶ星々と下弦の月。
そんな光すら眩しく感じる私と、こんな光では全然足りないニム。
私達二人には、これくらいが丁度良いのかもしれない――そんな事を思った。
「…ニムントール、寝るならベッドへ行くべきです」
ナナルゥの声で、はっと目が覚める。
目の前にはナナルゥとヒミカ。見慣れない部屋に一瞬ここが何所だか分からなかった。
「疲れてるでしょ? 明日も早いからもう寝たら?」
「…あ、うん。そーする…」
ここはダラム駐留軍の兵舎で、規模も設備もラキオスの物とほぼ同じだったから臨時の詰所として借りている。
お腹が一杯になったせいか、食後のお茶を飲みながら居眠りしていたらしい。
私はふらふらと椅子から立ち上がる。半分夢の中だ。
「…おやすみー…」
みんなが口々におやすみー、と返してくれるのを背中で聞きながら寝室へ向かう。
「ネリーももう寝よっかな〜…ってシアーもう寝てる!」
「…くー…」
「こらシアー起きろー…!」
一番初めに目に付いたベッドにもぞもぞと潜り込む。
(さっきまではそんなに眠くなかったのにな…)
布団の中でごそごそと丸まりながら、今日一日で有った事を思い出す。
初めての戦場、お姉ちゃんの勇姿、向かってくる閃光。
そして――大きな背中と、手と、優しい匂い。
…余計なことまで思い出して頬が熱くなった。
緩んだ口元を押しつぶして目を閉じる。
あっという間に襲ってくる睡魔に無条件降伏。
――今夜は、なんとなく、幸せな夢が見られそうな気がした。
四苦八苦の末よーやくキリの良い所まで上がりました黎明、如何でしょうか?
視点がコロコロ変わるのですが、ちょうど1レスごとに変わっているのでそれを目安にして頂ければ…。
読み難くないか否か、が一番の心配事です。
誤字脱字ご感想等ございましたらご指摘くださいませ。
>448黎明氏
なんとういうか…GJ!!
なんだか妙にニムが素直な気が…、あれ?
流して読んじまったから
もっかいじっくり読ませてもらいます。
>>488 黎明さん
ニム、潜り込んだのが誰のベッドなのかとか、
ファー、兜と覆面じゃ隠しすぎですもったいないとか、
エスペリアとセリアって意外といいコンビだなぁとか、
そんなことはどうでもいいのですが。
レスごとの主観切り替えもさることながら、背景描写が綺麗ですね。
星座の下りも影響しているのでしょうが、
なんとなく北欧の石造りの街並みや、新緑樹の緑が映える高山を思い浮かべました。
前後しますが、視点の変化に未だ時間軸が被っていない所に個人的には注目してます。
↑「新」って(汗 おのれIME……(違
針緑樹の間違いです、すみません。こんなとこでまで間違えてどうするorz
やっと追いついた……。
>488 黎明の人さん
懐く相手にはとことん懐く、そんなニムのスイッチがぽちっと押されてしまったようです。
いきなりの舐め攻撃はざらりとしたものではなく、気持ちよさそうでした。
その後の悠人がエス&セリアにどうされたのかはもう考えるまでも無さそうで手を合わせておきます。
>475 御洒落の人さん
ひらひらドレスで訓練所に姿を現すのかなぁなどと思っていたら……
ニーソ絶対宣言してる悠人なら、例え履いていようと
絶対領域から覗く太ももが気になって全戦全敗しそうです。
>455-456 紅蓮の人さん
雨の中で立ち尽くす悠人の姿に震えが走りました。じわじわと心を蝕んできた
痛みが悠人を覆ってしまったように虚ろさを感じさせる言葉を吐くところで、
これまでかろうじて持ちこたえていた様に思えていた重みが読む側にものしかかって
来たようです。ソーマに説得力があるからこその無力感。悠人とヒミカがそれを
跳ね除けるよりも、受け入れた上で潰されないよう支えあうことを選んだことで、
さらに新しい絆が生まれたことにほっとしております。
まだまだ二転も三転もしそうな雰囲気に期待が押さえられません。
土日分だけになってしまい、作者さま方すみません。
493 :
憂鬱の人:05/02/06 13:09:27 ID:NDWZwlwS
あ、追い越されたw
>御洒落氏(でいいのかな?)
お、快調にとばしてますな。今回のナナルゥは毒舌というよりも、サービス精神に満ち満ちている、
そんな印象ですた。ちなみに私はニーソ好きの変態などではありません。
ニーソの中身が問題なのです!(←力説すんな)
>黎明氏
へー、ダラムってこんな街だったんだ...とか思いながら読んでて、
途中でこれがSSだった事に気付きましたw
ニムはやはりグリーンスピリット。回復魔法の出し惜しみはお約束です。
それにしてもセリアとエスペリア。この二人にコンビネーション決められたら、
大抵の漢は女嫌いになる事でしょうw
>信頼氏
......針葉樹だってば。
>493
いや、常緑樹のタイプミスかも試練
と、さらなる追い打ちをしてみるw
誤字・脱字した人をいびるスレはここですか?
いえ、ここは新語を創作した人をねちねちと嬲るスレです。
トゥルルル……トゥルルル……ガチャ
「はい、こちら『ナナルゥ子供相談室』です」
「あ、あの、実は最近誤字脱字が激しくて…………」
「ちなみに神剣によるマナ通信を利用しています」
「は?いえ、あの一体誰に説明してるんですか?」
「気にしないで下さい。お大事に」
「まだ何も答えてくれてないし!」
「マインドの低下が原因です。お大事に」
「え?あ、ちょ、ちょっと、それだけですか?」
「それだけです。お大事に」
「待って下さい、せめて、対応策とかなんとかは……」
「マインドの低下は、休息をとる事が大切です。何も考えずに寝ることです。お大事に」
「でも最近、歳のせいかなとか考え始めてるんですけど」
「気のせいです。お大事に」
「よく人の名前とか忘れるし。このままではヘリオンマジックとか書きそうで」
「書いて下さい。お大事に」
「その内ナナルウとかZルゥとか…………」
ガチャ。
「あ」
ツーツーツー…………
トゥルルル……トゥルルル……ガチャ
「はい、こちら『エスペリア子供相談室』です」
「あ、あの、実は最近誤字脱字が激しくて…………」
ガチャ。ツーツーツー…………
_| ̄|○ せっかくだからネタにしてみました。
スネーク○ンショーなんて知ってる人いるのかなぁ……
>紅蓮の剣 X
ソーマさま、見直しました。彼には彼なりの哲学があった。
スピリットの可能性。そこに明を見るか暗を見るか。結果だけを見ればソーマは間違っていたのかな。
神ならぬ身に未来は見通せないけど。
スピリットが出現して間もない頃はどんな扱いだったのでしょう。
拍手 ゾゾッ (( ;゚Д゚))
ヒミカはその手に掴む物を選んだ。いや、選んだのかそれ以外見えなかったのか。
悠人がぶら下げているだけの手を、強く握りしめて。強く握れば暖めあえると。
「国のため、仲間のため、…………」
しかしファー鬼神ですな。
>お洒落?ハリオン
うお〜だめだってハリオンさんっ! そ、そのスピリットのふか〜いスリット入り戦闘服でおみ足を狼の目線に
晒すなんてっ! この狼は大きな樹も食べちゃう雑食性かもしれないんだから。
エ「……わたくしも思い切ってニーソックスを脱ぎ捨てます。ユートさまに見られるなんて恥ずかしいですけど、
これでユートさまの薄れた関心も……いえ喜んでくださるなら」
スカート長杉
>黎明 序章
日が昇ったと思ったら……ニムゥ! まぁネコさんが馴れるとぺろぺろなめてくるし。ファーはどう対抗するのか(マテ
エ「その傷はわたくしがねらって……あ、いえ、あのようなまだ未熟なニムの動きに反応できないなんてユートさま弛んでいますっ」
セ「さぁユートさま、私が消毒して差し上げます。すごく効く傷薬がありますから。凄く染みますが」
なんつーか悠人。その二人の組み合わせは危険だと思う。
私が組むならねぇ…………エスとセリア(ぉ 嬲るというより嫐られついでに>484 ウレーシェ
>498
( ´∀`)っ〔*〕 マナ結晶ドゾー
ナナルゥ「こちらナナルゥ。敵発見!4時方向!エターナルミニオンです!!距離300!」
セリア「こちらセリア!敵視認!各隊散開、射撃控え。」
ナナルゥ「了解、距離200…150…100!まだですか!?」
セリア「引きつけて…皆殺しにしてやるんだ!!距離80!ファー、ウルカ、ヘリオン、ファイア!!」
ウルカ「ロジャー!(了解)……Blue is History! Red is Hisotry! Blue is History!(青2、赤1死亡!)」
セリア「ナナルゥ、ヒミカ、オルファ!待たせたわね、情け無用!ファイア!!」
ナナルゥ「とっておきのプレゼントをお届けします!アポカリプス!!」
ヒミカ「目標4撃破!!敵、なおも接近してくる」
セリア「全員抜刀!突撃を行う!我に続け!!」
一同『おおおおおおおお!!!』
ハリオン「あうぅ…ネリーさんがやられちゃいましたぁ〜。後送しますぅ〜」
セリア「!! なんてことなの!ファーレーン、護衛して!」
ファーレーン「了解しました。指一本触れさせませ…!!セリアさん!!?しっかりして!!!」
セリア「はっ…く……心配………いら…ない……わ。お守りが身代わりになってくれたわ。待っていてアナタ…すぐに…仇を!!」
ゲソブソファソハケーンと言っておくべきか。
最近、部隊の皆が化粧をするようになった。
アクセサリーも、身につけたりしている。
私も、その一人。
柘榴石を真ん中に、菱形の銀を組み合わせて炎を象ったイヤリングが、お気に入りだったりする。
もちろん、訓練や戦闘の無い時に限られるわけだけど。
意固地なセリアや、ほぼ仮面を外すことのないファーレーンには、不思議な顔をされる。
「どうして、そんな事してるの?あなたらしくないわよ」
直接尋ねられたことも、何度かある。
実際の所、私だって思う。柄じゃないって。
でも。
「よ、ヒミカ。口紅変えたのか?
うん。それもイヤリングが映えて、似合ってるよ」
愛しい人が、私を誉めてくれる。
それが、何より嬉しいから。
503 :
御洒落の人:05/02/07 04:38:56 ID:ob2NTn2H
後書き
ようやく、短くまとめることが出来ました。
前の二作品は小ネタのくせに不要に長く、どーにかならんかと思ってたわけで。
でも、次回からはやっぱり無駄に長いと思います。(←反省の色全くナシ)
あ、柘榴石ってのはガーネットの事です。
ファンタズマゴリアでの、宝石の呼び名はちょっとわからないので、その辺はご容赦を。
いや、まあぶっちゃけた話、こっちとは違う宝石だらけなんでしょうけども。
>>信頼氏
ネ、ネリシア…待っていらしたんですか?…やばっ…!
序盤で詰まって、書きやすいものから先にやるべきだよね☆ってことで放置プレイとは、口が裂けても言えねぇ…。
あ、もちろん、今の嘘ですから!鋭意製作中ですから!
まあ、ともかく個人的に、私もセリアを追いかけたいです。最近、気になって気になって仕方ないんで。
自分のSS(これからも含めて)、登場回数最多のスピになりそうですよ…。
うーん、すみません。スネーク○ンショーはちょっとわからないです……。
>>黎明氏
自分の存在の全てを掛けて…って、このスレには、ニーソ好きの人しかおらんのですか。(笑
セリアさんは、別に大した事はしてませんよー。
ただちょっと、自分を慰meうわなにするやめgha(ry
黎明 序章、乙です。
風景も戦闘も、魅せてくれますね〜。
ニム舐め→セリエス詰問プレイ!?そりゃ、ちょっとマニアック過ぎますよ!!
ううっ、駄目だファーが見てるッ…!……駄目なのは、自分の思考回路……orz
504 :
御洒落の人:05/02/07 04:40:07 ID:ob2NTn2H
>>道行氏
ひらひらドレスかぁ……それもありですね。ハリオンですし。w
ニーソ絶対領域理論によると、悠人の訓練相手はエスペリアかオルファのみ。(アセリアには敵わないので)
名実共に、へたれ隊長確定ですね♪
>>憂鬱氏
でいいです。自分でつけといてなんですが、御洒落さんって恥ずかしいと思ったり。(笑
ナナルゥは、セリアをからかうためなら、何でもする。
とりあえず、うちではそーゆーキャラです。
中身が問題…激しく同意!!力説されずとも、その心意気は十二分に伝わってきます!!
>>髪結い氏
へたれ狼なので、大きな樹に取り込まれてTHE ENDな気がします。
だから、全然安心です♪
エスペリア…薄れた関心って…(涙
あ、そう言えば、自分のSS構想にもエスペリア大活躍!ってのないや……。
うむむ、なんとか考えないと。
>>500さん
セリアさん、大変格好いいです。
でも…アナタって誰デスカー……orz
>>503 お洒落の人さん
そんな歯の浮くようなセリフを……
悠人、ハリオンの時とえらく対応が違うなぁ。
あ、気にせずゆっくり大きく育てて下さい、蒼の水玉w
スネーク○ンショーについてはメル欄参照で。
そこは名前欄だ……orz
>御の字
「ユートさま♪」
「お、どうした、エスペリア。なんだかご機嫌だな」
「ふ・ふ・ふ。今日の私、どこか違って見えませんか?」
「どこか、って...髪型は同じだし...服も変わってないし...」
「……♯」
「ま、待て!何かヒントを!」
「……ニーソの色、変えてみたんですけど!」
「―――だからスカート長杉だって。」
すぅっと息を吸い込んで。
「第三回セリアの恥ずかしい秘密クイズ!――溶けた氷の中に―― はじまりはじまり〜〜」
「わーぱちぱち」
ハリオンの合いの手に両手を上げて応えるヒミカ。
「俺、飯食ってんだけど……」
額に手を当て歎息するのは我らがエトランジェ・ユート。
「ん、負けない」
その隣で口元を引き締めるアセリア。ハクゥテが一本口からはみ出てます。
「それでは第一問」
「いきなりかっ!? 大体三回ってなんだよっ?」
悠人の皿にはまだハクゥテが結構残ってたりするが、流れはそのまま完全無視。
「えーとまずは小手調べ。セリアとアセリアは二人一緒に転送されてきたわけです
が、さてどの都市に転送されてきたのでしょうか?」
「え、ちょっと待てって。さすがに俺がそんなのわかるわけないだろう」
「あらあら〜ユートさまいけませんよ〜、それくらい名簿を読んでれば書いてあるんですから〜」
「そうです。まぁユートさまのセリアへの関心がそんな程度と言うことを物語ってるのかも知
れませんが」
なんだか含むところのある口調のヒミカ。悠人の後方へ目線を走らせたりするけど。
アセリアはと言うと。
「ユート、知らないのか。私とセリアは抱きしめあった状態でエルスサーオの変換施設に生ま
れたんだ」
結構ヤバゲな発言がアセリアの口からするっと飛び出してきた。ハクゥテは逆にするっと口
に入っていく。
さらに言葉を続けて、最初にアセリアの目に映ったのはセリアの閉じられたまぶただとか、
小さく空いた唇だとか、細い鎖骨だとか、聞きもしないのに饒舌に語るのだった。一応、粗末
な貫頭衣を身につけていたそうな。チッ
「一問目はアセリアが取りました。ユートさまがんばってくださいね」
「ナデナデしてあげますよぅ」
「いやいいから」
「第二問。仲がイマイチ良くない二人を心配したエスペリアは、二人をお使いに出して、手を
携え困難を克服することを教えようとするわけですが、さてこのときのお使いとは如何なるも
のだったのでしょうか」
「……あーあのナナルゥが笑った時のか。パンでも買いに行ったのか」
「ん、初めての私とセリアの共同作業。大切な想い出」
「いやだから、目的を…………って分かんないのねこれ」
出題者も答えがわからないので次ぎ。
「三問目は〜エスペリアさんが関与してますねぇ。え〜とぉエスペリアさんはアセリアにセリ
アに関するある役目を与えていまして、それが今も有効らしいのですが〜一体それは何でしょ
う〜」
今度はハリオンが代わって問題を読み上げた。問題の書かれた紙は何処かに挟んであった模様。
「えっ? なによそれは。そんな問題聞いてないわよ」
ヒミカにも秘密の問題らしい。流石はハリオンだが……どうして知ってる?
「あーなんか聞き覚えあるな。野外訓練の時だっけ」
「ん、その役目は」
ガンッ。
突然悠人の後方のテーブルで物音がした。振り返っても……誰もいない。
「なんだ一体?」
悠人は立ち上がろうとするのだが、ヒミカ達はなだめ付け、
「何でもないでしょう。だれもいませんよ」
「そうですよ〜お座りくださいな〜。あっお茶煎れてきますね〜」
悠人とアセリアの空になった皿を下げながら、悠人の背中方向――厨房――へハリオンは歩
いていった。途中空きテーブルに顔を向けてニッコリ笑ってるけどなんなのだろうか?
「その役目は口止めされてる。セリアと私の大切な想い出。だから言えない」
間がずれたものの、アセリアが答えた。
「そーなのか? なんか漏れるとか何とか言ってたよな」
「漏れる? 何のこと? アセリアお願いだから教えてっ」
ヒミカの嘆願もすげなく、アセリアは無言で首を振る。こうなってはてこでも動かないのは
皆の周知のこと。
「まぁしょうがないか。要調査っと」
常に携帯の閻魔帳に書き記してから、第四問。
「セリアは、またエスペリアに用事を言いつけられ、街へ出て行くこととなったのですが、街
の不逞の輩と悶着を起こしてしまいます。今のセリアなら鼻で笑って伸してしまうでしょうけ
ど、このときばかりは幼いセリアには荷が重かったようです。ですがこれだけではなくて、他
にも原因があったようなのです。さてそれは何でしょう? あ、最近もちょうどユートさまの
目の前で近いことが起こりましたね」
ってこんなの分かるんかい?
「ん、セリアかわいかった」
「最近も……? なんかあったっけ」
「ですから、あの、ナナルゥの部屋であったでしょう」
じれったい。
何でこうこの男は巡りが悪いのか、などと隊長を貶めるようなことを思ったりするけど、そ
れはラキオススピリットとしての分を越える考え。だからセリア、所詮縁がないのよ。
「あ、もしかしてあれか。化粧か?」
おしい。
「えーとそれもあります、もう一声。アセリア?」
「私とセリア、おそろいの服。一緒に歩くと嬉しかった。今はネリーとシアーが着てる」
心底から嬉しいのが分かる笑顔でアセリアは言った。
「服か……へー、アセリアとおそろいで。一度拝んでみたいもんだな」
「充分セリアに見とれてたと思いますが。それでは五問目」
まだつづくの? 読んでる人も同じ思いでは。
「まだあるのか。小鳥の胡散臭い診断テストを思い出すぞ」
話しの中の人も同じ思い。
「ハイペリア語を言われても理解不能です。えーと悠人様? アセリアを見て何か私達と違う
ところに気付きませんか」
「違うところ?」
隣のアセリアを見る。顔、胸、お腹、真っ白な二本の脚。
やっぱり、溜息の出る美人だよな、などと改めて思う悠人だが。
「ユート、脚ばっかり見てる」
「お、おいアセリアっ!、ち、ちがうってそのなんだつい目が引きよ……いやあの」
ヒミカの背中に炎立つ。
様に見えた。
「こほん。いいですかユートさま。今のでまぁ間違いではありません。アセリアの脚です」
声は落ち着いているものの、鼻から小さな火の玉が飛び出そうな核熱プレッシャーに悠人は
気圧されてしまう。刺激しない方がいいだろう。
「あ、脚って?」
「はい、アセリアだけ素足でしょう? これにも実は、アセリアとセリアの幼少時代が関わっ
ているのです。セリアからの願いでアセリアはニーソックスを履くのをやめてしまいました。
これが五問目の問題です。どうしてだか分かりますか」
「そりゃニーソで興奮するからだろ、セリアが」
即答。
「ユート、なんでしってる」
驚きアセリア。
「え? まさか当たってんのか」
単なる自分の性癖をぶっちゃけただけ、なのかも知れない悠人は驚きの顔を浮かべる。
でも、アセリアは素足の方が良いとも思うのだった。セリアと同じ感性なのか。
「はいどうぞ〜お茶ですよ〜」
厨房から戻ってきたハリオンが、人数分のお茶をお盆に載せてきた。
お茶をすべて置くとヒミカに何事か耳打ちした。
「え、もう?」
「はい〜限界まで後一分でしょうか〜」
「ちっ。それではユートさま最後の問題です。セリアは実は今気になる人がいます。それは一
体だ…………」
がたん。
「ヒ〜ミ〜カ〜ハ〜リ〜オ〜ン〜」
後ろから聞こえる地獄の呼び声に思わず振り返る悠人。
「……いきなりやってくれたわね。エレブラ食らわしてこんなとこに転がして」
どうやら並べた椅子二つに寝かされていたらしい。テーブルクロスに隠れてしまうため、悠
人の視界に入らなかった様だ。
「で、ユートさまとアセリア相手にこんなことして、何がしたかったのかしら?」
ゆらりと立つセリアが手近な椅子の背もたれを掴むと、空気中の水分が凍り付き氷の膜が作
られていく。
「ハリオンッ、駄目じゃないのっ!」
「あらあらまぁ〜さすがセリアですね〜」
「あっ待ちなさいっ!」
戦略的撤退を図る二人を追いかけようとするも、ハリオンのエレメンタルブラストの余韻が
まだ残っているのかふらついてしまう。それを悠人が抱き留めてくれた。
「セリア。き、気になる人がいるって…………ホントか?」
「え、ユートさま?」
思いがけない近い距離にあるユートの顔。
気になる人。その本人。目の前。
顔が熱い。これこそ熱病か。怒りが別の物に変換されていく。
これは、千載一遇のチャンスなのかもしれない。きっとそう。だってこれから先このヘタレが
能動的に動いてくれるなんて想像も付かない。こんな状況もう無いかもしれないし。必要なのは
先制攻撃。
すぅっと息を吸い込んで。
「います。気になる人は……目の前にいます」
告白。
言ってしまった。
ユートさま。
「…………そうか、セリア。俺もみんなに理解してもらえるよう努力するよ」
ええっ!! こんな、上手くいって良いの?
「大丈夫だ。俺の世界でも認められ始めてたことだから」
え?
「でも、さ。ヘリオンとの中精算しておけよ。あ、ヒミカとも噂無かったか? アセリアがか
わいそうだからな」
少し寂しげな顔で悠人は言った。
なんのことだろう。セリアの頭は理解力スト中。
「それじゃな、きっとヒミカとハリオンも心配してくれてたんだと思うぞ。良い奴らを友達に
もったな。俺のと交換して欲しいくらいだよ」
はは、と笑うと、アセリアの肩を一度たたいて悠人は食堂を出て行った。
「…………アセリア」
「ん」
「なんでこうなるの?」
「ん、わからない。…………ハクゥテまだ残ってる食うかセリア?」
「……いただくわ」
ユート謹製ハクゥテは塩がちょっと効きすぎだった。
でもアセリアはちょっと嬉しげ。
516 :
髪結い:05/02/07 23:04:40 ID:XqBHZVN/
えーとえーと、快く引用を許された信頼氏、黎明氏の両氏に深い御礼を……
ちょマ 物を投げないで下さ〜い。
いえあの魔が差したというかですね、全話から引用するのがめんど……あわわ。
ちょっと都合良く改変したところもあるかと思います。その辺は樹にしない方が……え、だめ?
マインド出力低下中
面白かった、けど。
頻繁にここに足を運ばんと理解出来ないようなネタはSSとしてどうかと思うのです。
もうしわけありません orz やりすぎでしたか。
一期一会の精神で書いていきます。
まあクイズなんだしいいじゃん。
保管庫の子供劇場見れば分かるんだし。
とかフォローにもなってないフォローをしてみる。
いや、やっぱ不特定多数が見る物として書かれるのが基本なんじゃないかと思われ
板やらスレやらのフォーマットで書かれると一見さんはついていけないんじゃないかと思うわけですよ。
やはりSSやらネタやらを投稿するスレである以上、ある程度は開けたコミュニティである必要が云々。
と偉そうなことをヌカしてみる。
521 :
御洒落の人:05/02/08 15:07:14 ID:02BrnuHy
>>信頼氏
悠人はですね、攻略するキャラによってその性能、性格を変化させているわけですよ!
…まあ、それは冗談ですが、ネタとシリアスでは、別物と捉えて頂けると助かります。
ネタだと、際限なく馬鹿になっていきますから、悠人は。
ネリシア物では、比較的まともなハズ。快調製作中!(しつこい)
スネーク○ンショーはわかったのですが、信頼氏が心に傷を負ってないか心配です。(笑
>>憂鬱氏
「…わからないのなら、スカートを捲って確かめてくださって結構ですよ、ユートさま」
………………………。
「長杉スカート(・∀・)イイ!!」
エスペリア、ハッピーエンド♪
…………ゴメンナサイorz
>>516 髪結い氏
ア&セリアヒストリーって感じで楽しめました。
セリアかわいいよセリア(;´Д`)ハァハァ
…自分も、初めてこのスレに来たときには、各キャラの設定がよく分からなかったけど、
いつの間にか慣れた…てかSS書いてるし、あんまり気にしないでもいいと思うのですよ。
まあ、難しい問題ではある、とも思いますけど。
「永遠のアセリア 『求め』の声」
2005年6月24日(金)に発売が決定いたしました。
5月発売を目指して制作を進めておりましたが、
よりクオリティを上げるため、6月発売に延期になりました。
5月でも期待できないのに延期かよ orz 駄作の予感
>>522 正直漏れは延期っていうか中止して欲しいんだがな。
ザ、ザザー……ピッ
「こちらユート。イオ、いるか?」
『はい、こちらイオです』
「さっきキャプチャーしたスピリットなんだが…」
『ヘリオンをキャプチャーしたのですね』
『ヘリオンはラキオス領内に存在しているブラックスピリットです。
低レベル時の性能は低いですが、レベルが高くなるにしたがって
ブラックスピリット内でも屈指の実力を誇るようになります。
今は低レベルなのでそれほど驚異に感じなくてもいいです。
姿形はまったく違うのですが、ハリオンというグリーンスピリットと
間違いやすいので気を付けてください』
「なるほど…で、食えるのか?」
『……はい?』
「食えるのかと聞いている」
『まあ、その…一応、食べられないこともないです』
「味は?」
『…わかりません』
「そうか。わかった。またなにかキャプチャーしたら連絡する」
『…ロリコン(ぼそっ)』
「なにか言ったか?」
『いいえ、それでは』
仕事中に何考えてるんだろう漏れは…orz
しかし性欲をもてあます
>498
あぁ、そんなじっくり見ないでぇ…粗が目立つから(w
ニムの本領はここからですヨ! 多分…
>490 信頼氏
背景描写は課題として設定した一つなので、嬉しいっすヽ(´ー`)ノ
誤字なんてキニシナイ!
>492 道行氏
スイッチONでも素直になれない、それがニムクォリティー(違
えぇ、私はニーソツンデレスキーなのです…汚れt(ry
>493 憂鬱氏
ありがとうございますーヽ(´ー`)ノ
小一時間の問い詰めくらいユートくんには良い薬です(w
>499&>516 髪結い氏
ファー、どーやって対抗しましょうか…神とスレの流れのみぞ知るって感じでしょうか(ぉ
あ、そーでしたっけ、ありがとうございます<ウレーシェ
賛否両論あるようですが、個人的には引用されて嬉しかったです(w
>503 御洒落氏
これぞアメとムチ(違
ファーレーンさまがみt(パァン
>524 妄想氏
どんな味がするんだろう…。
やっぱり海老の味? とかボケる前に食べてみたいと思った低マインドな私(w
「ん……。朝か。」
ベッドから体を起こす。
いつもと同じ朝。何もない部屋。外から聞こえてくる鳥の鳴き声。
だけど、昨日と何かが違う気がする。
そう、何か大切なものをなくしたような、喪失感。
なぜこんな気持ちになったのだろう。なくしたものなど何一つないのに。
コンコン
聞き慣れたノックの音。
「入ってくれ。」
「失礼いたします。」
そう言って入ってきたのは、俺がこの世界に来てから、ずっとそばで支えてきてくれたグリーンスピリット。
「早朝から申し訳ございません。レスティーナ様が、至急謁見の間まで来るように、と。」
「わかった。すぐに行く。」
ということは、突然現れたエターナルの眷属への対応が決まったのだろう。
「防衛戦!?正気か、レスティーナ?」
只でさえ戦力は無効の方が上なんだ。こっちの不利は目に見えてる。
「もちろん、ずっとではありません。トキミ殿のお仲間2人が助けに来て下さるそうですので、
それまでの間は消耗を押さえ、こちらの戦力が整ってから、一気に反撃に転じます。」
「なるほど。時深さん、援軍が来るまでにはどのくらいかかるんだ?」
「それは私にもわかりません。しかし彼らなら、2週間以内には来るでしょう。」
「どうですか?我が国のスピリット隊の隊長としての判断を聞かせて下さい。」
俺は少しだけ間を置き、答えた。
「まぁ、俺達が勝つためにはそれしかなさそうだしな。やってみるさ。」
2週間。はっきり言って、これだけの期間をスピリット隊で持ちこたえるのは無茶だ。
レスティーナも、時深さんもそれは解って言っているのだろう。
それでも、俺は不思議と絶望していなかった。
俺はレスティーナや時深さんを信頼している。この二人が立てた作戦なら、一番勝つ可能性は高いのだろう。
傍らには永遠神剣もある。俺がこの世界で生きて来れたのも、この剣のおかげだ。
そして――――
俺は左をちらりと見る。
俺をずっと支えてくれた少女。俺がもっとも信頼し、―――あるいは、もっと別の感情を抱いているかもしれない少女。
クォーリン。彼女が、俺の側にいてくれるなら。
……この作戦も、不可能ではない気がしてくるのだ。
「では、改めて命じます。
ラキオス軍スピリット隊隊長 「因果」のコウイン。援軍が到着するまでの間、我が国を守り抜きなさい。」
「おう。任せておけ!」
やっちまった…酔った勢いでついに書いてしまった。
今日子が悠人を追ってエターナルになった後の光陰シナリオです。
反響があれば続きを書くかも……書かないかも…。
しまった……
>>528の名前欄が……。
まぁ、前後から察して下さい。
ミスその2。
無効→向こう
やっぱり酔っぱらってるとダメだね…
でも酔っぱらってないと書けないし…あぁ…
>>529 酔って書いた後に保存しておいて後で見直すとイイと思うよ、といってみるテスツ。
それはそうと乙。すっかり騙されまつた。悠人じゃなくて光陰だとは。
533 :
憂鬱の人:05/02/09 12:43:34 ID:FY9V8dkA
>>529 これって、EXPベースってことですよね。
この後の展開って、一体どうなるんだ〜!?
とにかく乙でした。
光陰がどのように描かれてゆくのか楽しみにしてます。
酒を飲むと筆が進む...あなたはひょっとしてジャッキー・チェン?
534 :
御洒落の人:05/02/09 18:15:43 ID:veECbiBC
>>524 妄想氏
イオは、ツッコミ役として適任ですね♪
それはともかく、ヘリオンの味は、牛丼味だと思います。
何故って……答えは、次回SSにて。(´∀`)
>>526 黎明氏
悠人は駄目人間なので、どっちもアメです。(ぉ
>>529さん
私もクォーリン話、すごく大まかに考えたんですが……如何せんEXPやってないんで、
今日子ルートがわからん…orz
是非とも、続き書いてください。クォーリンに、春来て欲しいし。
…酒飲んでシューティングはやりましたが、SSは書いたことないですねぇ、さすがに。
>516 髪結いの人さん
よくわかる「ア&セリア」総集編、という感じで楽しませていただきました。
すっかりヒミカの描く女性同士の友情物語に感化された悠人が出来上がってしまって……
セリアが不憫でなりません。
>524 妄想の人さん
初感想になってしまいます。悠人だけがするわけでは無かった妄想の数々に、
「ラキオススピリット隊は今日も妄想しています!」なんていうキャッチフレーズまで
浮かんでしまう始末で……大変喜んでいます。
ヘリオン味。……『求め』がマナを吸収した時にはスピリットごとに
異なる味が感じられたりするんだろうか。あぁ、ますます低マインドクラスに堕ちていく。
>529さん
クォーリンが光陰のお世話を……改変された過去の話も色々想像してしまいますね。
EXPを深読みしていると、ちょっと怖い事態になりそうな予感がしつつも、
先が読みたいと思う気持ちは抑えられません。
判ってはいたけど、数日見ないだけで遅レスになってしまうんですね……
嬉しいやらびっくりやら。
>>499髪結いさん、507憂鬱さん
うっ、うっ、骨身に沁みます……(涙
>>516髪結いさん
拘束されてもその場で聞かされてるセリアに合掌。……放置プレイ?w
所々咄嗟に思い出せず、思わず読み返した私は悠人と同レベルらしいです(汗
>>524妄想さん
姿形はまったく違うのですが〜の下りに噴き出しました。
>>529さん
まずい、今日子ルートすっかり忘れている自分がいる……
今のうちにプレイし直してきます。クォーリンがメインになるのかなぁ。
アセリアとセリアは幼馴染です。
二人は物心ついた頃、一緒にエルスサーオに転送されてきました。
以来、遊ぶのもご飯を食べるのも訓練を受けるのも寝るのもいつもいつも一緒。
同じ青スピリットだったこともあり、二人は絵に描いたような仲良しさん……とはいきませんでした。
生まれた時から何を考えているかよく判らないアセリアはともかく、
セリアは何をやっても敵わないアセリアを密かに敵対視していました。いけませんね。
明日はいよいよ初任務。とはいってもまだまだ経験の乏しい二人はただの後方待機さんなのですが。
それでも高ぶる心は抑えても抑えきれない揺れるこの想い。セリアは熱心に神剣の手入れをしています。
そこへ不思議そうな顔をして覗き込んでくるのは『蒼い牙』候補生アセリア。まあ同じ部屋なので当たり前ですが。
「……セリア、何してる?」
「うひゃうっ!…………アセリア、驚かさないでよ」
どうでもいいですが、気配を殺して近づくのはやめましょう。セリアはまだまだそんなモノを察知出来ません。
うかつに手を滑らせてあやうく『熱病』で自決しそうになったセリアは、やはりというかツンツン不機嫌モードです。
「も〜。見て判らない?手入れだよ、て・い・れ」
「……何故、そんな事をする?」
「決まってるよ、明日はお仕事なんだから…………はぁ〜〜っ」
「そうなのか?仕事だと手入れをするのか」
軽く息をかけては布できゅっきゅっと小気味よく『熱病』を磨いているセリア。『熱病』も心なしか、なんだか嬉しそうです。
その様子をじっと見ていたアセリアでしたが、やがて退屈になったのか、離れて布団に潜り込みました。
「なにアセリア、寝るの?」
「…………ん」
一段落終えたセリアが振り向いて、声をかけた時にはもう生返事しか返って来ませんでした。呆れた様に肩を竦めます。
「知らないからね、ちゃんとお仕事出来なくても」
「…………ん、大丈夫…………」
アセリアの寝ぼけ声にやれやれと思いながら、セリアは部屋の灯りをふっと吹き消しました。
「敵襲だーーー!!!」
兵士Aが叫んでいます。呼応してばたばたと駆け出す正規軍の面々。そして必死の形相で襲い掛かってくる敵スピリット。
既に指揮系統が混乱を極めているそんな中で、おろおろと辺りを見回したまま立ち竦んでいるのは我らが青の少女二人組。
セリアが『熱病』を胸元近くでぎゅっと握り直し、必死に不安と戦っています。
隣ではアセリアが『存在』を……握り締めもせずぼーっとしてますが、状況を理解していないのでしょうか?
というかエスペリアがどうしてこの地点を「後方」と認識したのか後でじっくり話し合いたいものです。
それくらい、ここは「戦場」でした。燃え上がる街並みや逃げ惑う人々や、時折起こる地響きや悲鳴や煙の臭いや。
二人は初めてそれらを肌で直接感じていました。という訳で、嫌でも高まるのは緊張感。
「ア、アセリア…………」
怯えきった表情を隠しもせず、セリアはきゅっとアセリアの服の裾を掴みます。その手が微かに震えています。
今からは考えられませんが、セリアもちゃんと「幼い多感な女の娘」だったのです。驚きです。心外です。いけませんね。
さて、実はただ惚けていたアセリアでしたが、その様子を見て決心しました。きゅっと小さな手を握り返してこう言います。
「…………ん。セリアは、わたしが守る」
なんだか後に出現する某エトランジェが好んで主張していた様なセリフですが、無垢で多感なセリアにはじーんときました。
もう少し性長もとい成長していたら「お姉さま!」とか叫びそうです。それはそれで嬉しいやら悲しいやら迷惑やらまぁ色々。
二人の背後に薔薇の花が咲き乱れそうになったその時でした。がさっと背後の草叢が揺れたのは。
「死ねぇぇぇーーー!!!」
血相を変えて飛び出してきたのは、追い詰められていた敵のスピリット。槍状の神剣が血に濡れています。リアルです。
驚いたアセリアは咄嗟にセリアを庇い、前に出ました。やっと『存在』に手をかけ、小さなハイロゥを展開します。
あとは訓練どおり、のはずでした。避わしざま、身体を捻ります。反動を活かし、抜き打ちに開いた脇に狙いを絞りました。
そして『存在』を抜き放ち……抜き放ち……………………抜けませんね。
なんという事でしょう。普段から手入れを怠っていた『存在』が錆び付いていて、どうやっても鞘から抜けません。
一体どこまで放って置いたらここまで錆び付くのでしょうか。ズボラさにも程があります。管理不行き届きです。もっと努力が必要です。
それはそうと、緊急事態です。焦って動きが止まったアセリアは、格好の標的。既に詰め寄った敵の矛先が迫ってます。
それでも鞘と格闘しているアセリアは、全く気が付きません。はっと振り返った時にはもう避わせない距離でした。
…………一瞬でした。目前に迫った敵の殺意に怯えたアセリアの目の前に、ふわっと青い髪の影が飛び出したのは。
ざしゅっ!服を切り裂く生々しい音。空中に飛び散る鮮血。目の前のポニーテールが仰け反ってその顔が見えたとき。
初めてアセリアは理解しました。セリアが庇ってくれた事に。代わりに斬られてしまった事に。
スローモーションで倒れていくセリア。その肩から噴き出している赤いものを見た時、アセリアの中で何かが弾けました。
「うぁぁぁぁぁぁっ!!!」
ぐったりしているセリアの『熱病』を取ったかと思うと、しゃがんだ体勢から跳ね上がり、一気に敵の片腕を切り落とします。
「きゃぁぁぁぁっ!!!」
転がり回って苦しむ、神剣ごと腕を失った敵。しかし今のアセリアは容赦が有りません。いえ、正直敵に回す気が全くしません。
ざりざりっと『存在』を引っこ抜きます。光沢を失った出土品の様な『存在』がどこか哀れですが、そんな事は知りません。
「あぁっ!ああっ!!」
叫びながら無理矢理マナを送り込み、『熱病』と両手持ちで仁王立ち。見下ろした敵にそのまま止めを刺してしまいました。
ぴぴっと頬に当たる血がマナに還っていきます。白に赤のその構図はまるで本編の一枚絵…………いえ。なんでもありません。
「い、痛い、よぅ…………」
「っ!セリア、セリアっ!!」
ぜいぜいと息を荒げていたアセリアは、後ろから聞こえてきた弱々しい声に、我に返って駆け寄りました。
苦しげに呼吸をしているセリアの顔中からどっと汗が噴き出しています。破られた戦闘服から白い肌に刻まれた傷口が見えました。
「セリア、セリア」
動揺してがくがくとセリアを揺さぶり続けるアセリア。しかしどうやら気絶したらしいセリアは反応を返してはくれません。
ぐったりしているセリアの首が、壊れた人形の様にかくかく揺れています。…………そんなに揺さぶるとかえって危険です。
ああ、不安になってきたのでしょう、アセリアは周囲に助けを求めようとしました。
「……誰か!セリアが……セリアがっ!」
しかし混乱して走り回っている大人達は、そんな悲痛な叫び声に目もくれてはくれません。
たまにちらっとこちらを見ても、「なんだスピリットか」と一瞥して駆け去るだけ。人情紙風船。全く、いけませんね。
当時は、スピリットはその程度にしか思われていなかったのですが…………なんだか書いていてだんだん腹が立ってきました。
「…………ん」
暫く悲しそうにきょろきょろしていたアセリアでしたが、やがて決心したのか独り頷くとセリアを担ぎ出しました。
「セリア、待ってろ」
アセリアはそう言って、セリアをおぶると一生懸命歩き始めました。きっとエスペリアお姉ちゃんが助けてくれる。そう信じて。
ところでアセリア、神剣を返しておかないと回復が遅れますよ…………すみません、なんでもないですごめんなさい睨まないで。
ようやく合流したエスペリアお姉ちゃんの必死の看護で、セリアはなんとか回復しました。
ずっとその手を握っていたアセリアは、目を開いたセリアの横で、わんわん泣きはらしました。
「よかった……アセリア、無事だったんだ…………」
そう言って弱々しく微笑む、セリアの横顔を見つめながら。
その後アセリアは、戦いがあってもなくても絶対に『存在』の手入れを怠りません。
セリアと離れ離れになった今では第一詰め所のベッドの上で、常に『存在』を抱き抱えています。
「あれ、ヒミカ、居ない」
「なんか書いててアンタが怖くなってきたそうよ」
「なんでだ?良くわからない」
「いいんじゃない?それよりあの『存在』を抱えた一枚絵、そんな意味があったんだ」
「…………ちょっと恥ずかしいぞ、セリア」
「いつもはわたしが恥ずかしいの。……でも、ふふっ」
「何故笑う、セリア」
「だって、ねぇ……一応、反省してたんだ」
「…………変か?」
「ううん、どっちかっていうと……嬉しい、かな?」
542 :
信頼の人:05/02/09 23:49:28 ID:UiLx7ByY
あとがき
ちょっといつもと違う、シリアスなア&セリアです。
改めてファンタズマゴリアは戦場なのだと思い出させてくれた紅蓮さんに感謝致します。
543 :
憂鬱の人:05/02/10 12:20:31 ID:E1j2PUKV
>信頼氏
復活してくれると信じてました!(←自分で突き落としたくせに)
シリアスなア&セリア...何故でしょうか、笑いが止まりません...
ひょっとして、私の感性は取り返しのつかない所まで歪んでしまったのでしょうか?(←気付くの遅杉)
544 :
御洒落の人:05/02/10 15:00:26 ID:uVLX/YJP
>>542 信頼氏
エスペリアお姉ちゃん、うっかりさん杉!
セリア、受けですか!?
オチにセリアが、使われてない!?!?
………と、まあ読みながら、思わずツッコミ入れてしまいました(笑
シリアスでいい話なのに、笑いも忘れないとは流石です。
是非とも、見習わせて頂きたいと思います。
「お、おはよぉございますっ!遅れちゃって、すみませんっ!!」
「遅いぞ、ヘリオン。これで一体、何回目だと……」
今日も今日とて、訓練に遅刻したヘリオンに、俺は少々きつめに叱るつもりだった。
隊長としての使命感や、時には厳しさも必要だという思いがあったからだ。
が、そんなものは遅刻者の姿を確認した時点で、全て吹っ飛んで星の彼方に消えた。
てか、思わず俺は固まってしまった。
何故なら、俺の目の前に現れたのは見たこともない美少女。
この状況で、心を平静に保っていられる男がいるだろうか。否!
そんなやつは、いる訳がない。いたとしたら、そいつはホモか何かだ。(断定)
いや、先の台詞と流れるような黒髪、目の前の美少女が、ヘリオンである事はわかってはいたのだが。
「ど、どうしたんだ、ヘリオン。それ……」
「あ、はい。実はすぐ其処で、私転んじゃって。
そしたら、右の髪留めが壊れちゃったんです。」
髪留めが壊れる転び方ってどんなだ、オイ。
俺の心の中のツッコミは、ヘリオンには当然の事ながら届かず、続く台詞が紡がれる。
「そのままだとすごく変な髪型になっちゃうんで、髪留めを結局外したんですけど。
……いけなかったでしょうか……?」
恐々と言った感じで、上目遣いで俺を見つめるヘリオン。
………うおお、これはかなりグッと来ますよ!?
とりあえず、俺の部屋に連れ帰って○○○で××××××したいくらい。
そのまま、△△△、あまつさえ□□□にも及びたい。
…よーし、パパ今日はヘリオン祭り頑張っちゃうぞ〜。
こ・い・ぬ!こ・い・ぬ!!こ・い・ぬ!!!
鎖で縛られ、お預けくらって切なそうに喘ぐヘリオン、もう見てらんない。
ヘリオン正統派H、これ最強。
汁だくは古いけど、「しるだく」って読むとすごいエロいと思………………………ハッ!?
俺の目の前には、不思議そうな顔をしたヘリオン。
フッ、どうやら一瞬、違う世界に意識が飛んでいたようだ。
いかんいかん。俺、こんなキャラじゃないし。
「いや、全然いけないって事はないぞ。なんだか大和撫子って感じで、イイと思う。」
「ヤマトナデシコ?」
ヘリオンが、左手の人差し指を顎に当てて、小首をかしげる。
どうやら、意味が分からないらしい。当然といえば当然か。
あれ?そう言えば、俺もそんなに詳しい意味は知らないような……。
うーん、まあ端的に言えば、
「可愛いって事さ」
別に、間違ってはいないだろう。
それに、自分自身の正直な感想としては、これ以上的確な物もない。
「え?え?あ、ありがとうございます……」
うろたえながら、頬を紅潮させるヘリオン。思わず、俺も笑みをこぼしてしまう。
あんまり可愛いので、ヘリオンの頭に手を乗せ、撫でてみる。
おお、顔全体が紅潮した。
何てゆーか、これは………ほのぼの空間?
遅刻とか、ホントもうどーでもいいや。
とりあえず……今は全力で、目の前の仔犬を愛でます!!
…だが、この時点で、俺は気が付くべきだったのだ。
ここは訓練場。
そして、周りにはサボりのオルファと、レスティーナに呼び出されたエスペリア以外、皆揃っていた事を。
さらに、その大部分が怪しく目を光らせていた事を。
―――翌日
「おはようございます、ユートさま。」
「ああ、セリア。おはよ、ぉおッ!?」
俺は、固まった。そりゃ、もう昨日の焼き直しの様に。
「どうかなさいましたか?」
「いや、どうも何も……」
何で、髪型がストレートに?そりゃ、新鮮でイイけど。
てか、よく見るとセリアだけじゃない。
その後ろに控えるネリー、シアー、ハリオン、ニムにナナルゥまで!
皆、昨日までの髪型とは、一変している。
ネリー、ハリオン、ニムはセリアと同じくストレート。…むう、皆新鮮だ。
最も、ニムなんかはストレートと言うには、ちょっと語弊があるか。
セミロング姿は、確かに恐ろしく可愛いんだけど。
一方、シアーは短い髪ながら、小さな三つ編みおさげをいくつも揺らしている。
……中々良いな、こういうのも。
また、普段からストレートなナナルゥは、髪を上げてポニーテールだ。
綺麗だが……あの微笑みは、ナナルゥが何か企んでる時、特有の物。
嫌な予感、しまくりだ。
…はて?それにしても、何か人数足りないような……?
この髪型騒動に、何の興味も無いかのようなアセリア、ウルカは別にいい。
今日もサボりのオルファも、置いておこう。
……やっぱり、足りない。一体何処に……?
首を巡らすと、訓練場の隅にしゃがみ込んで、何かブツブツ言っている三人組を発見。
エスペリア、ヒミカ、ファーレーンだ。
何だか、『どよ〜ん』という擬音がピッタリくる、そんな雰囲気だ。
一体、どーしたのやら……。
―――訓練場の隅
話に加われなかった、髪短過ぎ、仮面を外さないポリシー、それぞれの理由で落ち込んでいる三人がいる。
「エスペリア、ヒミカ。私達の存在意義って何なんでしょう……?」
「馬鹿ね。戦う事に決まってるじゃない…」
「そうです。スピリットは、戦うためにあるんです……」
三人の友情度が5上がった!
三人の攻撃力が3上がった!
三人のマインドが50下がった!………orz
………………………。
「コホン」
セリアの咳払いで、我に返る。
何か三人の会話ばかりか、チャラララチャッチャッチャー♪ってな感じの曲まで聞こえてたような……。
…ま、気のせいと言う事にしておこう。それよりも…。
「で、セリア。何なんだ、これは?皆揃って……」
「…私のは、ただの気分転換ですが。でも、皆揃っているのは丁度いい機会です。
ユートさま、誰の髪型が一番良いのか、決めて頂けませんか?」
……ハイ?何ですか、ソレは。
俺は、笑おうとして……止めた。一つの恐ろしい事実に、気が付いたからだ。
セリアの瞳。うっすらとだが、冷たく蒼い光を発している。
その瞳、正に鷹の如し。
………………………。
し、しまったぁぁッ!!
最近、すっかりデレデレに染まりきってたから忘れ果ててたが、セリアは元々生粋のツンツンソルジャー。
下手な事言って、怒らせたら……命は無い。
クッ、何とかこの状況を打破する方法は……!
周りに目を走らせる。
ネリーにシアー。
普段は、無邪気な二人だが…今、目の前にいる二人の瞳はセリアそのもの。
洗脳済みですか、そうですか。
ニム。
常日頃から不機嫌そうだが、今日の視線の痛さは普段の2.5倍(当社比)。……駄目だ、無理ぽ。
ナナルゥ。
端から楽しんどる。却下。
ハリオン
いつも通りの笑顔。良しッ!!
俺は、其処に天使を見た気がした。彼女なら、この窮地を救ってくれると確信した。
でも……あれれ?
目が笑ってないんですけど。
超、怖いんですけど!!((((゚д゚;;))))ガクブル
このままでは、袋叩きにされた上、城の中庭に吊るされるという運命を辿ること必至。
ど、ど、どどどうすればいいんだ………。
「お、おはよぉございますっ!また遅れちゃって、すみませんっ!」
丁度その時、ヘリオンがやっぱり今日も一番遅れて、訓練場に駆け込んで来た。
元はと言えば、髪形の変わったヘリオンを、軽軽しく誉めたのが事の発端。
俺は、恨めしげに彼女の方を向き、そして硬直した。
いや、俺だけじゃない。一同、ヘリオンを見て目を丸くする。
其処にいたのは、黒髪を頭の両端で纏めたツインテール、そんな全く普段通りの髪型のヘリオンだった。
「ヘリオン、その髪……」
「え、あ、これですか?
えっと、本当は昨日ユートさまに誉めて頂けてすごく嬉しかったんで、そのままにしとこうとは思ったんです。
…けど、やっぱりこの方が私らしいかな、って」
そう言って、屈託無く笑うヘリオン。
思わず、俺はヘリオンの元に駆け寄り、その双肩を両手でグッと掴んだ。
そして、涙を流して力説した。
「……その通りだ、ヘリオン。人間、自分らしいのが一番!!
人の真似(・A・)イクナイ!!!」
――その翌日、皆の髪型は元通りになっていた。
いやぁ、良かった、良かった。
めでたし、めでたし。
………………でも、何で俺の『袋叩きにされて中庭吊し上げ』って運命は、変わってないんですか?
白紙の状態に、戻して欲しいんですけど。
身体中、とっても痛いデスヨ……。
「……可哀想なユートさま……」
ヘリオンが、木の陰から半身だけ姿を見せつつ、涙を流している。
……つーか、助けれ。
551 :
御洒落の人:05/02/10 15:13:45 ID:uVLX/YJP
後書き
クラスが上がりました。 ヘタレ→HENTAI
………上がってどーする……orz
ええ、もうホント今回は、突き抜けてやがります、奴は。
最も、一番暴走したのはセリア嬢な気も。ヘリオンの名を借りた、セリアSSじゃないか?コレ。
ラブラブになってないしなぁ、ヘリオン。
…お洒落シリーズのテーマは「LOVE」ですよ?(嘘吐くな)
あ、あと作中ラストの方で、悠人が人とか人間とか言ってる所、本当はスピリットとするべき場所です。
でも、語感が悪い上に、意味が通じにくいんで止めました。ご了承下さい。
552 :
憂鬱の人:05/02/10 16:56:05 ID:E1j2PUKV
文字通り吊るし上げを食らうユート君、微笑ましい限りです。(←やっぱり感性が...)
読んだだけで髪型変えたスピ達の姿が思い浮かぶ私は
幸せな奴なのか、どうなのか。シアーは...レゲエ?
ぼちぼち次スレのテンプレ案急募の時期ですね。早いなあ...
>542 信頼の人さん
「ア&セリア」で殺生沙汰を見ることになるとは、
とこちらもファンタズマゴリアの実情に触れなおした気分です。
苦い過去の経験が現在のかけがえの無い思いに繋がって、良かったです。
>550 御洒落の人さん
隠しクラスは魂の代弁者。ええ、思いっきりシンクロしてしまいました。
愛でるという字にはしっかりと「LOVE」が入っております。
仔犬のうちから愛情をもって接すれば自然と向こうからもLOVEを返してくれるでしょう。
>542
手入れはだいじだよ〜 エスはうっかりだよ〜
血しぶき舞う戦場……安全安心な後方待機はいったいどこw エスペリアお姉ちゃんまさかハイペリアの某国殊勝
さんとリンクしてるのですかぁーっ?
このときからアセリアは二刀流を経験していたのか。というと……
「ふえ〜ん、、私の『失望』アセリアさんが持ってってしまいましたよぅ〜〜(泣」
「ん、『理念』使いにくい。軽い方が良い……九位だし」
「ああっ言っては逝けないことを〜〜ヨ、ヨ、ヨ」
二刀流にハマッタアセリアの猛威。うかつに手を離すとアセリアの得物と化すので皆ますます神剣を大事にw
>551
ツンツンソルジャーモエ 迷彩ペイントセリア。ヘンタイって光陰の方がクラス上か。納得。
髪型が変わると言えばあの御仁をお忘れかっ。髪型一つで町娘。だからヘリオンも一つお団子髪になってみて、見知らぬ少女
として一夏の恋を。夏が過ぎれば消えゆく少女。悠人は今日もあの高台で名なしの少女の姿を……って木陰から半身だけ見え
てるよw
ということで生きてます。
>>543憂鬱さん
いやコレ、ねりしあより前に書いたやつなんですorz
>>553道行さん
ライトなア&セは髪結いさんにお任せということでw
>>554髪結いさん
「大事」の方向性が、手入れから防衛へ……w
神剣コレクターアセリア。
「タキオス、わたくしの『秩序』、見かけませんでしたか?」
「いえ。どうかされたのですか?」
「先程確かめたら一本足りないのですけど…………」
――――――
「アセリアどうしたんだ、その神剣」
「ん、たくさんあったから貰ってきた。ちょっと重たい」
>>551御洒落さん
多少ウェーヴ気味のセリアさん、下ろすと纏まりが大変ですよ。
サラサラストレートのネリーみたいには上手く行きません。
一歩間違えると「今日は時間が無かったのか」と勘ぐられる恐れもあります。
ナナルゥにヘアーコンディショナーでも調合してもらいましょう。
脱ぐと本当は凄いファーは今時珍しいシャギーカット。
貞淑な彼女は、めったなことでは男に髪なんか見せません、きっと。
なんといっても髪は女の命ですから。
それにしてもシアー…………ドレッド?
お題
コアラ様が偵察にラキオスに来たが、神剣を置いて来てしまった
慌てて戻ろうと思ったが光陰の「ヨウジョレーダーに探知されてしまい」城に拉致される
果たしてコアラ様は無事に外に出られるか?
misson 〜神剣を奪取して、ラキオス城を脱出せよ〜
「さて、こんな所を抜け出すのは簡単なのですけど、『秩序』の位置が問題ですわね……」
目を瞑り、神経を集中させる。同調する波動の中から、よく知った気配をすぐ発見した。
「……なっ!なんであんな所に…………誤算ですわ…………」
珍しく、くわっと目を見開いて驚く。こんなに驚いたのは、二周期ぶり位だろう。
急いで検索して確かめる。人間界の風習。『秩序』が置かれている場所と一致する項目。それは……
『men's only』
男子トイレの入り口に、黒々と書かれているその文字がビジョンとして飛び込んできた時、
テムオリンはぽっと頬を染めて、いやいやと身体をくねらせていた。牢屋の中で、年甲斐もなく。
コアラ様は無事男の聖域に侵入出来るのか?そこである事に使われていた『秩序』の運命とは?
次回、『ローガスがいなくても、運命は巡る』。ヨウジョレーダーが妖しく光る…………
戦闘シーンで、敵です!とか遅いぞっ!とか負けないぞ〜〜!!とか叫んでいる少女達。
でも、それだけ。あくまで慎ましい彼女達は、めったな事では決してその姿を見せてくれません。
そんな、自分だけの彼女を見つけてみませんか?彼女の世界に逝ってみたくはないですか?
また、シナリオパートでハァハァしてしまい、思わず誘導されてきた、貴方。
無言症や過去のトラウマや全ての産みの親や武家訛りや多少歪な頭蓋骨や、
変装趣味の二重人格やうっかり二股状態な幼馴染や永遠のストーカーに会いたくはありませんか?
さあ、今すぐ異界の門をくぐって下さい。そこに見える筈です。妖精と龍と、正直変態の世界が。
ここは第二ファンタズマゴリア。辿り着いた貴方だけに贈る、愛と妄想の世界です。
そんな訳で、共に切り開いていく永遠のアセリア&雑魚スピ分補充スレッドも、もう11になりました。
ちょっと長い……_| ̄|○
探し物は(ry
見つけにくい(ry
夢の中(ry
>>556,557
一人で身悶えを続けるコアラ様の元に近づく人影。それは何故か包帯ぐるぐる巻きに
なっている坊主と、ライバルストーカー女のストーキング対象の坊やだった。
「光陰、なんか震えてるぞこの子。やっぱりお前がいきなり追い掛け回すからじゃないのか」
「何を言う、ちょいと見知らぬ可愛い娘に声を掛けただけじゃないか。
どれ、どうしたんだお嬢ちゃん、何をそんなに震えてるのかな?」
不意に掛けられた声に赤らめていた顔を隠すことも出来ずに
くねくねぷるぷると震えるまま坊主と向き合うコアラ様。しかしその頭の中では非常に冷静な思考が渦を巻いていた。
(どうにか、ここから脱出して剣のあるアノ場所へ行きませんと……。
くふふ、ちょうど良いですわ。この油断しきった間抜けな坊やたちを篭絡するなど造作もないこと。
目の前の坊主の思考様式などお見通し、存分に利用させて頂きますわ……)
坊主を見ていた目を逸らし、潤ませつつちらちらと上目遣いに覗き込み、内心を悟られぬように小声を届かせる。
「み、見ていて分かりませんの……? この牢には……お、お手洗いが有りませんでしょう……」
弾かれたように顔を見合わせる坊やと坊主。慌てて顔を逸らす坊やは今はどうでもいい。
より重要なのは目の前で巻かれていた包帯を弾き飛ばさんばかりのオーラを展開させた坊主の方だ。
「……連れて行ってくださいませんこと……?」
かかった。全ての包帯をずたずたに引き裂いた内側から現れた、コアラ様たちにとって心地よい黒きオーラの奔流。
あっという間に牢から抱えだされて、向かうべき場所へと運ばれている。
顔にかかる鼻息に、心の中で坊主を三周期は串刺しにし続けながら、コアラ様の反撃がいま、始まる……
恐るべき戦略により某所へのルートを確保したコアラ様。果たして『秩序』は無事に取り戻せるのか。
次回、『崩れ去ってしまいそうな秩序』。ヨウジョレーダーは止まらない……
三連休なんて関係ないぜっ! なオレは仕事中に点呼ネタを考える。
「ラキオス・ガロ・リキュアの祝日を作ってみよう」
例
エ「リクェムってうまいなっとユートさまが言ったからシーレの月黒ひとつの日はピーマン記念日」
ゴロ悪 orz
別に日付を入れる必要はありません。発想は御自由に。
そういやこの世界。日曜日に当たる日なんてないのだろうなぁ。
>554
ツンツンゼブラとかツンツンマリポーサとかいたりするんですか?
で、ユート様の隣争奪戦をする
ヨウジョレーダー……左目付近に付ける耳当てと偏光グラスが一緒になったような物
ピピピピピ
「ヨウジョ力500000だと?! 近いぞっ!? どこだ? 」
”ヨーティア様。国費をあまりそのような物で浪費するのは感心致しません”
「ヨウジョ力5か……フン、ゴミめ」
「……・・・・・・・・ど の へ ん が ご み な の か し ら 〜?」
ズガピシャドガゴロゴロゴローーーンンンンッッッ!!!
”まあそういうな。どうせすぐに壊されるだろうしさ”
まあまあ、「掃き溜めに鶴」って言葉もあるし、今日子さん
565 :
天麩羅ネタ:05/02/12 03:10:58 ID:VXWRQdsZ
二人も三人も萌えキャラを持つ必要は無い!
ただ一人を萌え上げてこそ必殺となる!(意味不明)
・・・ごめんなさい、無理です。ネリーもシアーもセリアもハリオンもニムントールも
ヒミカもナナルゥもヘリオンもファーレーンもアセリアもエスペリアもオルファリルも
ウルカもレスティーナも今日子もオバサンも佳織も小鳥もイオもクォーリンも・・・
いやいや光陰やメダリオやソーマにだって萌えちゃうぜ?
そんなあなたに送る妄想のマナ結晶!
ここは第二ファンタズマゴリア。そんなこんなで11スレ。
・・・ごめん。クドイわ、これ。
あ、そういえば書き忘れた。SSかいたのですが・・・
今から投下するとスレを瀕死にしそうです。
次スレテンプレ案とか点呼案とか決まってから投下するべきですかね。
もしくは次スレか・・・。
ちなみに以前のヴァレンタインネタの続きなので近日中が寿命かと。
容量にもよりますが、
トリガまで28k程ですから25k前後なら問題無いと思います。
30k越えるようでしたら、微妙ですね。近日中にも建つとは思いますが<次スレ
テンプレネタ。
| ̄ ヽ
|」」 L.!
|゚ -゚ノ| ・・・
|とl)
,べV
/ 〃  ̄ ヾ;
! i ミ(ノハソ
!ik(i|゚ ヮ゚ハ 。・゚・⌒) 11度目の正直!! チャーハン作るよ!!
リ⊂! |T|!つ━ヽニニフ))
く/|_|〉
(フフ
うわ、過去スレに失礼&縁起悪っ!!
ごめん、忘れて。
>>566 投下しちゃえ!!
>>568 40キロバイトありましたから・・・残念!
次スレ待ちますかー・・・
そういや点呼ネタは好きなキャラでいいと思うんですがね。
一番書きやすいネタだし・・・
マンネリではなく新スレのお約束と思えばいいのですよ。
というか561だともう6周やり直しですがな…
(そんな日付まで覚えてないしorz)
好きなキャラを2人絡めて2行程度のプチネタにするとか。>点呼用
SSなんて大層なものではなし。
…素でかなり難易度高そうだw
点呼ネタ
バレンタインだからチョコもらいたいコでいいんじゃね。
キャラ名と何か一言長くない程度に
貰うチョコとかシーンとか想定して・・。
この中から新たなネタが出ることもあるだろ。
572 :
御洒落の人:05/02/12 15:09:49 ID:XjazyX+Q
>>憂鬱氏
とても、幸せだと思います(笑
皆がその境地に達すれば、世界中で雑魚スピに萌えることが可能ですし。
洗脳されたシアーは、曲に合わせて踊り、舞います。機敏に。
………既に、シアーでも何でもないなぁ……。
>>道行氏
仔犬を愛する心に、国境はありませんヽ(´ー`)ノ
いつか、ヘリオンのシリアスラブ物も書いてみたい所です。
>>髪結い氏
木陰から半身だけ見えてても、そのシチュだとすごく良い場面に見えます(苦笑
ヘリオンとセリアは、自分の中での二大萌えキャラ。
セリアは意図しなくても勝手に出るので、ヘリオンをもう少し出したい、今日この頃。
>>信頼氏
多少ウェーヴ気味……それはそれで!!(;´Д`)ハァハァ
ファー物、一本考えてるので、そちらでは彼女も仮面を取ってくれそうです。
まあ、その前にネリシアがありますが……いつできるんだろ……orz
>>556>>557>>560さん
ヨウジョレーダー…妖しく光るは、止まらないは、面白杉(笑
光陰の方がHENTAI度が上っぽくて、ちょっと一安心(ぉ
>>571さん
(・∀・)ソレダ!!良い案だと思います。
時事ネタってってことでそれでいきませう。
前スレ落ちたのね。
「へっ、待ってろよ、お嬢ちゃん。今、連れてってやるからな。」
コアラ様をお姫様抱っこしながら、額に汗を滲ませ、ひた走る破戒坊主。
だが、その行く手を阻むかの如き人影があった。
「ふふふ...手加減しちゃったあたしがバカだったわ。光陰っ!そこになおんなさいっ!!」
雷鳴のオーラが立ち昇り始めた。
「悪いな、今日子。だが、俺もどうしても引けない訳があるんだ。力ずくでも通らせて貰うぜ!」
「だーっ!!ついに開き直ったわね!これでも食らいなさいっ!!」
ビシビシビシ!ズダダダダダ――ン!!
地も裂けよと襲い掛かる紫電の雷撃が打ち砕いたものは、
しかし、鮮やかなバックステップでそれをかわしたロリ坊主の残像だけであった。
「なっ!?はっ、早い!!」
驚愕する今日の字を尻目に悠々と逃げ去る光陰。すでに黒きオーラを完璧に使いこなしているようだ。
「これは...思わぬ拾いものですわ...。まさかこれ程の歪みを抱えているとは...!」
次第に熱を帯びる鼻息に閉口しながらも、ひょっとしたら今日の自分はツイているかも知れない、などと
安易な思いにとらわれるコアラ様であった。
次回、『タキオスの憂鬱』。君は、歴史の証人になる...。
余りにも
>>556からの流れが面白かったもので、つい...
ちょっと乗り遅れた気がしつつも、スレ促進をかねて。
点呼ネタ、私も
>>571さんに賛成です。
>>575 確かに歪んでるだろう。
それも(コアラ様にとって)ヤヴァイ方向にw
コアラ様の貞操やいかに!?
好淫触手マダー
拙いな…光陰に凄まじいほどの調教を受けて
クォーリンのライバルになるという妄想が浮かんできてしまいますたorz
嗚呼、光陰の明日はどっちだ…
前スレ落ちたか。
長らくご苦労様。
>>575から
「むぅ…………この辺りで、確かに気配が…………」
背中の『無我』に神経を集中させる。
目の前の、小屋のようなもの。やはりそこから『秩序』の波動は流れていた。
「しかし、なんだココは。いかなる機能を備えているというのか」
一見平凡な、ただの平屋造り。罠があるとも思えない、開放的な入り口。
下賎の風習などに興味が無いタキオスは、そこが何であるかを、知らない。
ただ、眺めていると、何故か落ち着かなかった。こう、下半身がむずむずするというか。
「む…………」
急に急かされるような、焦りに見舞われる。入らなくてはいけない。そんな誘惑。
自分自身に起こったこの衝動が、理解出来なかった。
「まぁ、いずれ入らなければならぬからな…………」
扉をくぐりながら、誰に言い訳をしているのかと、首を傾げていた。
「あ…………」
「ぬぅ…………」
目が、合う。そこでは、若きエターナルが、いかにも無防備な体勢で突っ立っていた。
じょろろろろろ〜〜〜……
じょろろろろろ〜〜〜…………
妖しげな音が、二つ並んで響き渡る。黒き剣士は、初めて戦い以外に開放感を味わっていた。
和やかに連れションなどして、当初の目的をすっかり忘れてしまっているタキオス。
一方、レディスに高速運搬されつつあるコアラ様は、無事『秩序』まで辿り着けるのか。
次回、『忘れ去られた誓い』ヨウジョレーダーが示す明日はどっちだ…………
同じく、スレ促進を兼ねつつ。
点呼ネタは、
>>571さんに一票で。
「ふゥ...。」
ぶるっ、と一つ身震いをしたタキオスは小さな吐息を漏らした。
「それにしても...あの方は神剣も持たずに一体どこへ行かれたというのか...。」
横で並んでいる若きエターナルも気になるが、今は偵察に行くと言い残して飛び出した
直属上司が最優先の問題である。
―――と、その時。はるか彼方に上がる土煙がタキオスの視界に入って来た。
「この気配は...間違いない。しかし、これはまた、ずいぶんと高速で
移動されておられるようだが...って、あっ、あれはっ!?(д)゜゜」
タキオスは我が目を疑った。彼の敬愛して止まぬ法皇が、まるでヨウジョのように
抱きかかえられて向かってくるではないか。
黒き剣士を震撼せしめたその男...「淫牙のコウイン」は、まったくこちらには目もくれず、
小屋の反対側の入り口に飛び込んでいった。
「ハァハァ...やっと着いたぜ、お嬢ちゃん。」
達成感とともにこれ以上ないくらい爽やかな笑みを浮かべるコウイン。息が荒いのは走り続けたせいだろうか。
しかし、ようやく地上に降ろされたコアラ様はなかなか小屋に入ろうとしない。
「どうしたんだ?」不審に思ったコウインの問いかけに。
「ひ...ひ、一人では...できませんわ...。」本当に、自分は何のために戦って来たのだろう、
そんなアセリアじみた疑問を胸に、法皇テムオリンは捨て身の演技に打って出る。
しかし、我が愛しの神剣『秩序』は小屋の反対側で主を待ち焦がれているのだ。
ここはあらゆる恥を忍ばねばならない。コアラ様の目にうっすら浮かぶは実に十周期ぶりの涙。
「うおぉぉぉ―――っっ!!」
我が人生に一片の悔いなし、そんな咆哮とともに真っ黒オーラを全開させるコウイン。
その力はすでに一介のエトランジェのものではない。
次回、『悟りのコウイン』。ヨウジョレーダーも臨界突破。
...いいのかなあ、ここまでやっちゃって。誰か10KBくらいのネタありませんか?
チツからジョ〜っとほとばしる黄金の……
訂 正
『秩序』からほとばしり出でるは黄金のマナ。
とあるうららかな午後。今の所大きな戦いの気配も無く、
ラキオス、サーギオス各々が戦力を蓄えるために日々を費やすその合間。
日課の訓練やら何やらを終えた悠人を初めとする面々は思い思いに時を過ごす。
アセリアのアクセサリ作りのような、大がかりな趣味を持たない
スピリット隊隊長高嶺悠人は、特にやるべきことも無く城下町をぶらついていた。
いや、一応の目的はある。話に聞いた記憶を頼りにすっかり見慣れた町並みを通り抜けて行き、
ちょっとした広場の近くの通りにある、一軒の菓子屋に辿り着いた。
時間もそろそろ、ハイペリア風にいえばおやつ時。その菓子屋の買い食い用の窓の前には、
今まで広場で遊んでいたと思われる男の子数人が塊となって並んでいる。
そこに悠人が近づきかけたところ、目端の利いた一人が悠人の姿を目に入れて
周りにごそごそと何かを伝える仕草をする。途端にそのごそごそが伝染するように広がり、
悠人がふと気付いたとき、つまり菓子屋の列に並ぼうとしたときだったのだが、
子どもたちの目は圧倒的な好奇心を伴って、悠人自身へと突き刺さっていた。
最近はちょっと出かけるだけでこの調子だった。警邏中でも、
買い物の途中でもお構いなしに子どもの注目を集めているような気がする。
まぁ悠人だって悪い気はしない。その視線に込められるのものは純粋な憧れとかそういうものだからだ。
「あ、あの、勇者さまこんにちはっ」
中の一人が小さな拳を握り締めながら一歩を踏み出す。
そうすると、残りの全員がわっと悠人の周りに集まった。
今何してるの僕も勇者さまみたいに俺のこと覚えてる今日は剣を持ってないの。
口々に言いたいだけ放たれる声に、最初の一人の声も紛れて一緒くたになってしまった。
警邏中に話しかけられることもあるにはあるが、ここまで遠慮が無いのは初めてだ。
きっと休憩中の無防備な顔を晒していたためなのだろう、体当たりまでするような勢いで囲まれて、
ややうろたえ気味の悠人は、何とか聞こえた声の一つに応えた。
「あー、俺もここにヨフアルを買いに来たんだ。それに……」
勇者さまもヨフアル好きなのお店のお姉ちゃんもここのヨフアルおいしいよ。
続けようとした言葉を遮られ目を白黒させたところに、
「あらあら〜。そんなにみんなでお話しちゃ、勇者さまもビックリしちゃいますよ〜。
さぁ、焼きたてのが出来上がりましたから、もう一回並んでくださ〜い」
ちょうど良く救いの声がかけられた。一旦子どもたちも引き下がり、
買い物窓のところに半円を作るように集まりなおす。
店の窓から顔を出して笑顔を振りまくのはハリオンだ。悠人がちょっと覗くとその奥には、
せっせと焼きあがったヨフアルを運んでいるヒミカの姿もある。ふと目があったと思ったら、
軽く目を見開いた後、慌てて一礼するとさっさと奥に引っ込んでしまった。
なかなか楽しんでいるみたいだと心の中でそっと笑い、悠人も子どもが作る輪の傍に立つ。
「それにしても、ハリオンまで勇者だなんて言うとはなぁ」
「いいじゃないですかぁ、子どもたちにも大人気ですよ〜」
ハリオンが周りを見渡すと、子どもたち数人の視線は、
悠人本人よりも二人の間を交互に行き来していた。
その目が含む意味をつかみあぐねた悠人が口を開く前に、
子どもたちの中でも飛び切り活発そうな一人が裾を引いた。
「なぁ、勇者さま。ヨフアル屋のお姉ちゃんたちって、勇者さまの家来なんだろ。
だったらなんで今みたいなおしゃべりしていいんだ?」
子どもの顔が急に強張る。無意識での自分の表情の変化に気付き、悠人は一つ深く息を吸って、
視線を合わせるためにそっと屈みこむ。声は別のところから上がった。
「違うよ。だってこの前勇者さまに聞いたもん。ヨフアル屋のお姉ちゃんも、他のみんなも
家来じゃなくって仲間だって。だから、仲良くおしゃべり出来るんだってさ」
そう言うのは、最初に声をかけてきた子だ。言われてみれば確かに覚えのある顔だった。
眉間のしわを取り、悠人はその子に向かい直して笑顔を向けた。
「よく覚えててくれたな。うん、その通りだ」
再び、目の前の子に視線を戻して言葉を続ける。
「仲間って言い方が難しかったら友達、でもいい。
だから、今日はこうやって友達が頑張ってる店に買い物に来たんだ」
話している間中じっと目を見続け、また見続けられる。
ぽんと肩をたたくと、裾を引いた子も周りで見ていた子も大きく頷いた。
それじゃあさ、と目の前から声が続く。どうした、と視線を返すと相手は期待に満ちた目を光らせている。
「俺、勇者さまの家来になりたいって思ってたけど、友達でも、いいのか?」
いつの間にか、悠人に向けられている視線が含むものは一つに染まっていた。
くすぐったいような気持ちに苦笑を浮かべて、悠人は頷く。
「ああ、いいよ。友達になりたいって奴がいたらそいつらもみんな友達だ」
立ち上がって、興奮気味の子どもたちを見渡す。
「なら、ヨフアル屋のお姉ちゃんたちもお友達?」
「友達の友達なら、友達だろ?」
「えーっと、まぁ相手が友達になりたいって言ってからにしろよ」
「あ、おう!」
そこに、店の窓から顔と袋を出したハリオンの声がかかった。
「まぁ、みんなよかったですねぇ〜。それじゃあ、このみんなの分のヨフアルは、
お友達になった記念に、勇者さまがプレゼントしてくださるそうですよ〜」
「え?」
その袋の中には、どう考えても男の子たちの人数分以上のヨフアルが詰まっている。
「勇者さま、ホント!?」
きらきらとした目に見つめられてたじろぎながらも、悠人はそっとハリオンに目をやった。
もちろん、にこにことした目で見つめ返されるだけで事態が変わるわけでもない。
引きつりかけた顔を気合で押さえ込み、馬鹿みたいなノリでやけくそ気味に叫ぶ。
「ああ、本当だっ。きちんと、渡してくれたハリオンお姉さんと、
作ってくれたヒミカお姉さんにお礼を言うことっ。わかったな!」
ヨフアルをハリオンから受け取った子が、彼女の笑顔に向かって笑みを返し、
他の子たちも、窓に身を乗り出すようにして店の奥に声を張り上げる。
そのまま悠人にも大きな声で礼を言うと、子どもたちは袋を抱えたまま
広場を通り過ぎて路地の向こうに消えていく。
入れ替わるように、店員用の勝手口らしき扉からヒミカが飛び出してきて、子どもたちの後姿を見送った。
「ありがとうございましたー!」
声が届くようにか口元に添えられた両手にはめられた物は、篭手ではなくキッチンミトン。
調理場の忙しさを物語るように、衣服の上に着けたエプロンや頭の三角巾に粉が散っていた。
その勢いに目を丸くする悠人を視界に収めたとたん、
エヒグゥ柄の可愛らしいミトンを後ろ手に隠して体を向ける。
「ゆ、ユート様。すみません、お見苦しい格好で」
「いいや、頑張ってるんだからそうなるのは当然だって。それよりさ」
ため息を吐きつつ、今なお窓口でにこにことしているハリオンに近づく。
「……いくらになるんだ?」
ハリオンが提示した額は、だいたい男の子たちの人数の二倍近くの個数の値段だ。
まあ、みんなにお土産を買うことを考えればまだ少ない方だ、と思いながら悠人は財布を引っ張り出す。
慌ててヒミカが悠人の手の中にある財布を押さえた。
「お待ちくださいユート様。中で聞いていましたが、ハリオンが勝手に言ったんでしょう。
彼女の給金から出しておきますから、ユート様にお支払いさせるわけにはいきません」
「いいってこれ位。納得して言ったんだから売り上げに貢献させてくれよ」
静かにヒミカの手を外して悠人自身の分の金額も上乗せしてハリオンに手渡す。
半ばどころか、殆どハリオンの笑顔に押し切られた形だがたまにはいいだろう。
受け取った袋からほかほかのヨフアルを取り出しすと、
まだ少しばかりハリオンを呆れて見ていたヒミカの動きが止まってしまった。
そんなヒミカを横目に、悠人は焼きたての匂いを吸い込みながら一口齧り付く。
サクッとした表面と、もちっとしつつも重くない中身の食感。ほのかに広がる果実の香りと
生地の柔らかな甘み。その完璧なハーモニーに思わず悠人の頬も緩む。
言葉にしなくてもそれでヒミカには伝わったようで、食い入るように悠人の手元を見ていた
彼女からほっと息がもれて、緊張気味の体からも力が抜けた。
ぱくぱくと気持ちの良い勢いで平らげた後、指を舐めるのを二人に見咎められた
悠人がばつの悪そうな顔つきで目をそらしながら子どもたちの様子を思い出す。
「ところでさ、あいつらの分より多目なのは何でだったんだ? それに、てっきり広場で食べ出すもんだと思ったんだけど」
ヒミカとハリオンは顔を見合わせて、隣に立つヒミカが言いにくそうに応じる。
「勇者様ごっこの一つ、だそうです」
なんだそりゃ、と更なる説明をハリオンに促す悠人。
ハリオンがさらに笑みを深くしてヨフアルを差し出し、続けた。
「女の子に言われて、ヨフアルを買いに行く勇者さまがモチーフなんですよ〜。
ですから、あの子たちが向かった先には、残りのお友達がお待ちです〜」
全く、子どもというのはどこで見ているのか分からない。よりによってそんな場面か。
その言葉に肩を落とした悠人にヒミカはくすりと笑みを浮かべかけたが、
店内から彼女を呼ぶ声が響いてきて、ハッとしたように顔を上げた。
「それでは、窯を店長に見てもらっていますのでそろそろ戻ります。宜しければまたお越しください」
「小遣いが無くならない程度には寄らせてもらうよ。毎回これじゃあ困るけど」
二人して、窓越しにハリオンを見つめてため息と苦笑を重ねる。
そのままヒミカはミトンのはまった手を上げて頭を下げ、勝手口に戻っていった。
悠人も、窓のところから数歩離れながら、ハリオンに手を振る。
「それじゃ、二人とも頑張ってな。どうやら、一気に忙しくなりそうだから」
店先で立ち話をしてる間に、ヨフアルの匂いに誘われた客がいつの間にか集まりだしていた。
いつものことですから〜。と答えかけたハリオンに、早速一人目の注文が来る。
あっという間に出来上がった長蛇の列を見ながら、悠人は詰所へと帰っていった。
「友達の友達は友達」あの子どもたちの言葉を胸に留めて、
たった今出来た「友達」と自分が良く知る小さな「友達」が共にある姿を浮かべながら。
589 :
道行書き:05/02/13 16:49:49 ID:pE33sY0F
流れをぶった切ってしまって促進……スミマセンorz
ヨフアル屋から始まる縁が次代に続きますよう。
590 :
憂鬱の人:05/02/13 17:32:54 ID:D5HmVZmY
>>589 あ〜かいヒミカと緑のハリオン♪お菓子屋さんシリーズキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!
この物語のメインヒロインは...ん?オルファ?
「いくらになるんだ」...って、ハリオン姉さんの奢りじゃないんですか〜?
何はともあれ、心が洗われました。道行さんGJ!
しかもIDまでヨフアルっぽいし。GJ!
ヨフアルが繋ぐ、友達の輪っ(古
悠人の、子供と視線を同じくした教育に、感心してしまいました。
決して姿を現せず、漢は黙って後ろ姿、の店長が、
何故かとても存在感溢れるのは……w
こうして戦いの後、スピリット達もそれぞれの道を歩くんだなぁ。
黄昏時の、心地いい穏かさ。なんだかまったりしました。
誰かエスペリアの保母さん、書いてくれないかなぁ、だめかなぁ。
自分で書いてみたいけど、いかんせん今は「常緑の樹」が育たない……(謎
>>581 再びコアラ様を抱え上げ、今いる方とは反対側の扉への突入を目指すロリ坊主。
しかしながら、喜ぶべき方向転換にも関わらずコアラ様の心中は穏やかではなかった。
「お、お待ちなさいっ、抱え方が先ほどとは違うではありませんかっ」
「ハァハァ……大丈夫だぜお嬢ちゃん。これなら着いてすぐに致せるからなっ」
後ろから脚を抱えて大きく広げる。後はスカートを捲って下着を下ろせば準備完了である。
『秩序』さえ取り戻せば。そう自らに言い聞かせて辱めに耐えるコアラ様であったが、
黒きオーラの塊が『秩序』の元へと続く扉をぶち破った瞬間、
それを取り戻した後の考えなど全て吹き飛んでしまった。
「……タキ、オス……?」
「テムオリン、様……そのお姿……まさか私以外の者にその役目を……」
見つめ合う一対の瞳。この忠に厚き大男が驚愕に目を見開くなど幾周期ぶりのことか。
その大きく開かれたままの瞳から零れ落ちた一筋の血涙がコアラ様の胸に突き刺さる。
「タキオス!? 違いますわタキオスっ!
これは、『秩序』を取り戻すための策。この坊主とは何もございません!」
『秩序』を求めて首ごと視線をさまよわせるコアラ様に、ふらふらと忠臣が跪いた。
「『秩序』ならばここに。一足先に取り戻しておきました……私の役目は、此処までのようです……」
虚ろな瞳のままで立ち上がり扉に向かって背を見せるタキオスに、先端に亀の子タワシを突き刺さした
『秩序』を握り締めたコアラ様は、坊主を振りほどこうとしながら悲痛な叫び声を上げる。
「お待ちなさい、タキオスっ! ……くぅっ、放しなさい、放してぇっ」
神剣の力を発動させることも忘れて、ただがむしゃらに抜け出そうと暴れ続ける。
その弾みで、浮かべてはいても、決して流れることは無かった涙がはらりと落ちる。
自らを捕らえていた黒きオーラへとふりかかったその刹那。眩いばかりの光が小屋の中に満ち満ちていく。
「な、何ですの!?」
思わず閉じていた目を再び開きなおしたコアラ様の視線が、徐々に高度を下げていった。
抱え上げられていた高さから、普段の自分の身長どおりの視点に切り替えられて、
ようやく自分が坊主から解放されたことを理解する。
「……行きな、お嬢ちゃん」
どうして、と疑問を含んだ目線をうしろにやると、そこには既に黒ではなく淡く黄緑に輝くオーラを纏った坊主の姿。
「ただ単に愛でるだけなら良かったさ。だけどな、泣かせたとあっちゃあ『悟り』失格なんだ……さぁ」
坊主が纏うオーラはもはや不快なものでしかなく、今潰しておく事が得策だと理性は叫ぶ。
だけれども。背を向けた大きな背中は放たれた光を気にも留めないように扉をくぐり抜けて行く。
「……くっ、覚えておくことですわっ」
戸口から姿を消したタキオスを追い、コアラ様もまた扉を抜ける。
一度姿を消したところで『秩序』を握った右腕だけを見せ、
「今日のところは、これで勘弁して差し上げますっ!」
『秩序』を振り下ろして坊主の顔面に亀の子タワシをクリーンヒットさせ、本当に気配を消した。
大男と連れションをしたと思ったら、訳の分からぬうちに全てが終わって呆然とする友をよそに、
コアラ様を抱きかかえた感触を反芻しつつ、亀の子タワシを思い出の品として懐にしまう坊主であった。
追いついた。大きな背中に体当たりをするように跳びつく。
「タキオスっ、私から離れるなど許しませんっ! 決して、許しませんわっ!」
「……テムオリン様……宜しいのですか……」
振り返って目を合わせる忠臣に、慌てすぎた自身を恥じるように息を整えて言う。
「当然です。『秩序』も戻って来ましたし、一応の偵察も終わりましたわ。
……城の牢とお手洗いの場所に関しては。ですから、貴方がお役御免になる事など有りえませんわ」
「それでは……」
「ええ、帰りますわよタキオス。……遺跡の物陰は暗すぎますわ、帰ってから最初の勤めを果たしなさい」
身を引き締め、ハッっと短く応えた後に二人の姿が掻き消える。
――ソーン・リーム台地は雪に負けずに熱くなりそうだ。
−完−
595 :
道行書き:05/02/13 22:12:59 ID:pE33sY0F
繋いでおきます。
>>556-557 >>560 >>575 >>580-581 >>593-594 「後世の予兆」への感想ありがとうございました。
>>憂鬱の人さん
ハリオン姉さんに奢ってもらったら、お返しが大変だと思うのは気のせいでしょうかw
>>591さん
IDを言われると……最初が「Pee」っぽいので何の因果かと思います。
>>信頼の人さん
個人的にEXP最大の謎ですから、お菓子屋のご主人。あくまでも謎のままで。
>>595 お見事です!!
この話が、まさかこんなにも爽やか&微エロで〆られるとは、
途中に紛れ込んでいた私もびっくりですた。(コラ
最大の悲劇のヒロインは...ちょっとにおいそうな『秩序』?
道行さん、締めお疲れ様でした。
正直ここまで感動的な話に化けようとは(汗
去るタキオスの背中がむさくる……ごほん、漢を感じさせます。
しかし『秩序』……掃除に使われてたんですね……
大悟致した。
| ̄ ヽ
|」」 L.!
|゚ -゚ノ| ・・・
|とl)
,べV
/ 〃  ̄ ヾ;
! i ミ(ノハソ
!ik(i|゚ ヮ゚ハ 。・゚・⌒) 11杯目のチャーハン作るよ!!
リ⊂! |T|!つ━ヽニニフ))
く/|_|〉
(フフ
>>598 「柏の木の上」と「逆さ便所」と「三本の麻」と「棒」
どれがいいすか?
602 :
3案:05/02/13 23:01:56 ID:aBFr3hMN
____ ________ _______
|書き込む| 名前:| | E-mail(省略可): |sage |
 ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
,ィ
,べV //
ネリーみたいなクールな女には / 〃  ̄ ヾ; / ./
sage進行がぴったりよね〜 ! i ミ(ノハソ / /./
!ik(i|゚ ヮ゚ハ<///
リ⊂}!廿i つベ/
く/Цレ'
し'ノ
603 :
602:05/02/13 23:04:19 ID:aBFr3hMN
とりあえず建ててきまつ。
激しくかぶった・・リロード忘れてた orz
>>606さん乙です。
さて、定番ですが、順次次スレへ移動願います。
また、暫くの間、こちらへの書き込みは控えるよう、お願い致します。>皆様方
>601
話し的には便所になるのか。永遠のヨウジョも出てくるしねw
このスレには雲がいっぱいね。
611 :
憂鬱の人:05/02/13 23:44:10 ID:aBFr3hMN
「はぁ……はぁ…………」
弾む息を抑え、高台へと続く坂を駆け上る。
神剣の力を借りれば問題無いけど、今日だけは自力で。
ちょっと遅れるかも知れないけど、きっとあの人は待っていてくれるから。
「頑張ってねっ!」
もう、憶えてくれてはいないけど、背中を押してくれたわたしの姉。
勇気を貰おうと、一日だけ『静寂』を借りた。
代わりに自分の『孤独』と交換して。満面の笑顔で了解してくれた。
「きっと似合いますよ」
もう、憶えてくれてはいないけど、背中を押してくれたわたしのお姉さん。
思い切って打ち明けて、素敵なドレスを貰った。
すこし古い、きっと思い出の詰まったドレス。包み込む優しさは服越しにでも伝わってくる。
色々な人の、色々な想い。
自分にとって、とてもとても大事なもの。
今だってそれは、褪せることのない、大切なもの。
そんな何もかもを捨ててまで、欲しかった、たった一つ。
そんな「女の子」を見て欲しいから、今日だけは自力で走るんだ。あの人の所へ。
「ご、ごめんなさ〜い……はぁはぁ…………待った、よね……」
やっと着いて、肩で息をしているわたし。そんなわたしに、ちょっと困った顔をしながら。
きっと、あの人はこう言うんだ。慌てなくてもいいよ、って。
――――――…………
緊張で震えながら、指に嵌められる、新しい、誓いを籠めた指輪を見つめる少女。
目尻に浮かぶ一粒の涙をそっと拭いながら、はにかむ彼女の、蒼い髪が、風に揺れる。
――幸せを約束された、“Something Four”を携えて。
613 :
信頼の人:05/02/23 07:23:28 ID:hsGZEwXS
タイトル「Something Four」、メイン:シアー。
1レス色分け個別補完&埋め、今回は「青」で、見つけた方から宜しければご参加下さい。
信頼さんGJです。
非常に綺麗な作品だと思いました。
あれ、気がつくとスレの残り容量が・・・。
次のスレ考えなきゃいかんのかオイ。
←乙といいつつ次は何色にするか考えてるヤシ
色分けということは最終的には白も含むわけか…
で、
>>614 >>607参照。
で、風邪でどうやら寝込んでいるらしいユートを見舞いに来てみた。
「ううう…………ごほっごほっ」
「…………?」
なんだかうなされている。イヤな事でもあったのだろうか。
それに凄く息苦しそうだ。それならそれで鼻栓だけでも抜けばいいのに。
変なユート。あ、でも時々ぴくぴく動く瞼、可愛い。
「……よしよし」
何となく、撫ぜてみた。普段は硬い髪が、少し柔らかい。
「……あ、よだれ」
半開きの口からこぼれている。……ユート、だらしない。
でも、見つけたものは仕方が無い。何とかしてあげよう。
「……………………ん」
ぺろっと嘗めた。ん、ちょっとしょっぱい。
「う〜ん…………んぅ?]
あ、ユート、起きた。ちょっと待って。もうちょっとで取れる。
「ん、ん…………ちゅ」
「…………っ!!!!」
ユート、そんなに暴れると、よだれが取れない。じっとしてる。
「む〜む〜…………」
…………『存在』、力を。
しゅごっ。ぴきぴき。うん、固まった。あれ、よだれ、凍ってて取れない……
617 :
信頼の人:05/02/27 12:17:06 ID:x+c4tU+c
企画倒れの予感を孕みつつ埋め促進。メイン:アセリア。
スレを跨いで同時投稿してみました。
>>614さん
サイレンスな感じを出してみようと書いた物でしたので、綺麗と言われてほっとしました。
>>615さん
白だと人数が厳しいかも……(汗
順番に青→赤→緑→黒とか考えてましたが、色によっては難しいかもですね>単品
【残りあと2人】
>>617 信頼の人さん
スレを開いたら増えているのに気付きました、同時投稿乙です。
鼻栓……続いているとしたら、いつの間に抜け出して行ったのでしょうかお姉さん。
まさかベッドに下に隠れているとか。全裸で。
619 :
朝餉:05/02/27 15:09:21 ID:aGTBgdwx
彼は朝起きるのが苦手だ。その証拠に、今もまだ現れようとはしない。
オルファリルにはエスペリアの、ニムントールにはファーレーンの、
そしてネリーにはシアーと私自らの躾でもって、彼女たちの寝坊癖なんかとうの昔に直してるというのに。
テーブルの上には九人分の空になった食器と、一人分の食事。
最後にお皿を空にしたのはシアーと私。付き合うようにゆっくりと食べたあと、
彼が広めた『ごちそうさま』を言ったシアーを送り出しても、まだ彼は現れない。
仕方なく、空の食器を重ねて厨房へと運ぶ。
残った一人分の皿の上にはやや硬さが増したパン。隣にはまだ汚れていないスープ皿。
今ならまだ許してあげると胸のうちで呟いて、普段の人数分の洗い物との格闘を始めた。
そして、自分の決めたタイムリミットはやってきた。水に濡れた手を拭いながらもう一度食堂へ顔を出す。
やはり彼は起きてこない。実に久しぶりに使うことになった『躾』に
懐かしさを感じると同時に、躾ける対象の年齢について頭痛を覚える。
厨房の鍋の中に残ったスープに一工夫を加えて、さらに硬くなったパンをスライスして炙り直す。
全ての調理が終わったところで、予想通りにのそのそと寝ぼけ眼のまま彼は姿を現した。
「お早う、セリア……あれ、俺の分の朝飯は?」
既に何も乗っていないテーブルの上を見てそう尋ねる。
「お早うございます、と言えるとお思いですかユート様。すっかり冷めてしまいましたので作り直した所です」
顔に浮かんだ反省を見て取って、少しだけ悪いことをしたのかも、という考えが頭の隅をよぎったけれど、
先に寝坊したのは彼の方なので気にしないことにする。
「さ、どうぞ。今朝の献立は、ラナハナとリクェムのホットサンドと、卵とリクェムのスープです」
「アノ……作り直す前は……?」
バターつきパンと卵スープ。自分で作ったスープなのだから、工夫しても味は壊れない。
でもそれは言わずに、ただにこりと彼を見つめる。硬直から脱してちまちまと食を進め始める。
自分でも分かってる。食卓を一緒に囲めなかった腹いせもちょっとだけ混じっていることに。
だから、ゆっくりと食べることになる献立で、しばらくの間彼が朝食を摂るのを眺め続けていた。
……次からは、早く起きてください。
620 :
道行書き:05/02/27 15:11:25 ID:aGTBgdwx
メイン:セリア
決して無視していたわけでは無いのです、
今回、思いつくのも書き終わるのも難しいものでした……(汗
【残りあと1人】
>>道行さん
>618
ハリオンも凍ってます、ベッドの中で、全裸でw
>620
題名見て永○園思い出してしまいましたw
自分で企画しておいて、難しいと思ってはいたのですが、
参加して下さって有難うございました。
料理に込めた、素直じゃない愛情。苦手も克服出来るし、
寝坊も改善、二人っきりの時間までとれて……セリア、頭いいなぁw
頬杖付きながらじっと悠人を眺めるセリアの幸せそうな顔が目に浮かぶようです。
ツンツンセリア、堪能させて頂きましたw
>616
アセリア、、、何を…………あ、温寒を交互にって療法ですね? このあと緑の人ばりに人間懐炉となって……?
ギィ、バタン。
あの、出てってしまいましたよ?(汗)
ム〜フム〜
あら、鼻栓も凍って完全に塞がってるような気が。
ポンッ
あ、抜けた。
「ユートさまのご病状は思ったよりも深刻です。いいですかみんな、ここは皆の力を合わせてユートさまの
分まで頑張って耐え抜くのですっ!」
「「「「「おおっっっ!!!」」」」」
「…………ん」
>620
セリアさん……マスオさんいびりですか。
婿って誰のだw
「お風邪を召した後の病み上がりとはいえ、このような事では困ります。リクェムはビタミン豊富で風邪にも
良いのですから四の五の言わずにお食べください」
「ビタミンってあくまでピーマンの話しで」
「……後でネリーにリクェムヨフアルを買ってきて貰います」
「なぜっ」
【残りあと1人】 変わらず(汗)
「うう、げほげほっ...ガハッ!」
……何故だろう、誰かが見舞いに来るたびに病状が悪化している気がする。
おお、あれは死んだ父さん母さん。何だ?俺に向かって手を振ってるぞ。
…夢だ、これは悪い夢に違いない...。
「やっほー、ユートさま!お見舞いだよ〜、生きてる〜?」
ああ、天使の様な無邪気な声が聞こえる...。
「生きてるとも」と自信を持って答えてあげられなくてゴメンな、ネリー。
「死にそうな顔しちゃって。大げさなんだから〜、もぅ。」
「ホントに死にそうなんだよっ!」
最後の気力を振り絞って体を起こす。
「まあまあ、病人がそんなに興奮しちゃダメだよ。あ、そうだ。これ買ってきたんだけど、食べる?」
ガサガサと紙袋を開くネリー。そのちっちゃな手には湯気の立つヨフアル。
「お、悪いな。本当に見舞いに来てくれたんだな。」
「だから最初からそう言ってるのにー!」
ぷうっとふくれる少女の顔。なんだかんだ言いながらも、ネリーのくるくる変わる表情は
見てるだけで気が安らぐから不思議なものだ。
「あはは、ごめんごめん。どうもここんとこ人間不信って言うか、スピリット不信になっちゃっててさ。」
謝りながら見舞いの品を受け取った。ほかほかのヨフアルを一口頬張ってみる。
ん?中に何か...弾力のある歯ごたえが...
味は悪くない気がするけど、何だかソースが欲しくなるな、これ。
「どお?新発売のテミ入りヨフアルだよー!」
……あ、父さん、母さん、もうすぐそっちに行けそうだよ、俺...
624 :
憂鬱の人:05/02/28 13:24:03 ID:P0sTKeB+
例によって関西です。
私も気付いてはいたんですが、青が苦手で(汗
道行さんのセリアってあんまり見た記憶がないなあ。
とりあえず信頼さん、二人分乙でしたw
ラースが襲われた。
ラキオスに所属するスピリットの数は多くなく、スピリット隊の殆どの者は前線に出払っていた。
その隙を突いての奇襲だった。
ラキオスで休息を取っていたネリーとシアーに出撃命令が出た。
是非も無かった。
いかに敵との数の差があろうと、いかに二人が幼かろうと、ネリーとシアーはスピリットだから。
…………。
敵は何とか撃退した。
だが、戦いの中でシアーは重傷を負った。
左の肩口から胸にかけて大きく切り裂かれ、どくり、どくりと、心臓の鼓動に合わせて血が溢れ出ていた。
まだ生きているのが不思議な程の大怪我だった。
「痛いよぅ……ネリー……痛いよぅ……」
「誰かっ!! シアーを助けてっ!! 助けてよぉっ!!」
ネリーが半狂乱になって叫ぶ。
必死の形相で叫ぶネリーに、しかしそれを見るラースの人間の視線は冷めたものだった。
「来るのが遅いんだよ……ったく」
「死んじまえ。役立たずのスピリットが。うちの庭が荒れたじゃねぇか」
「使えねぇ奴」
罵声に、やがて石つぶてが交じる。
この世界での正常な対応。
スピリットは戦いの道具であり、役に立たない道具に価値は無い。
ネリーは、投げつけられる石から瀕死のシアーを庇って覆いかぶさる。
背中に、頭に、石がぶつけられる。
額から血を流しながら、それでもネリーはシアーを庇う。
「ネリー……どこ……見えなぃ……どこ……ぉ……」
シアーの声が小さくなっていく。
やがて声は、しなくなった。
思わずネリーが体を上げたところに、ちょうど飛んできた石がシアーの頭にぶつかった。
力無く、かくんとシアーの首が傾く。
シアーの体が、マナの霧に変わっていく。
―――何の為に、シアーは戦ったのよ。
私は、何の為に戦ってるのよ。
半ば金色の霧と化していたシアーの亡骸に、ネリーは静寂を突き立てた。
孤独が砕け、シアーの形が無くなり、マナの霧は静寂に飲み込まれた。
ネリーは人間達の方に向き直った。
形の良い唇が、呪いを紡ぐ。
―――いらない。こんな世界いらない。
消えて。全部無くなって。
…………。
数十分後、セリアが息を切らせてラースに到着した時、朱色の静寂がラースを支配していた。
「何……これ……」
思わず口を押さえ、息を止める。
スピリットは死ぬとマナの霧と化し、死体を残さない。
それは残酷な事なのか、慈悲深い事なのか。
いずれにせよセリアは、多くのスピリットの死に触れてきてはいても、死体には慣れていない。
粘性の朱い水溜りの臭いと、あちこちに転がる断末魔の表情に、胃の中のものを戻しそうになる。
突如、ばたん! と民家の戸が開いて、右腕の肘から先を失った男の子が飛び出してくる。
男の子はセリアを見、目を大きく見開くと「ひっ」と小さく息を呑んだ。
立ち竦んだ男の子の胸から刃が生えた。
小さく呻き、崩れ落ちる男の子の後ろに立っていたのがネリーだと、セリアにはすぐには判らなかった。
ネリーは全身を朱く染め、瞳に固い意志を漲らせていた。
翼だけが、一滴の染みも無い純白の光を返していた。
セリアはその穢れの無い純白の翼を見て理解した。
ネリーは白過ぎたから、世界の灰色に耐え切れなかったのだと。
…………。
流す雫が、抱いたネリーの顔に零れ落ちる。
まるで、ネリーも泣いているかの様に、雫がネリーの頬を伝って、落ちた。
ネリーの首が金色に霞み、形を失っていく。
マナの霧が熱病に飲み込まれる。
残ったのは、静寂を濁す静かな泣き声だけだった。
向こうにはとても書けないので、こちらにこっそり投下。
パラレルワールドという事でどうか御勘弁下さい。
自分、処刑コマンドすら選択した事無いのに。
朱色に煙る街を見下ろしながら 幾許かの雨雫に誓う
コガネ
黄金に染まる頬をやさしくなでて 繋いだ剣は離さないで
怖かったねシアー 痛かったよねネリー
マナの光がふたりを導いてくれるから いつかきっと笑えるから
朱に染まった少女と真っ白な翼の鮮やかな対比が印象的です。
でも、これもきっと、この世界でのスピリットの姿。
最後までネリーの翼が濁らなかった事に一片の救いを見ました。
その純粋さゆえに傷ついた幼い双子よ、今は安らかに眠れ―――
『再生』の剣に還った二人が、新しい世界でも再び共に生れ落ちますように。
悲しいけどありえたかもしれない一つの可能性でしょうね。
そういえば私じつはダーク路線のファンタジーを期待して買ったんですよね。
ヒロイン攻略ルートはともかくイービルルートがあるみたいだったので。
時に敵に時に守っていた人間に、そして信じていたユートに傷つけられ散っていく
儚くも美しいスピ達・・・みたいな。
実際のイービルは通常ルートに無理やり陵辱突っ込んだだけの物でしたが。
このスレであまり言うことじゃないかもしれないけど救われないルートを
しっかり作って欲しかった気がする。ユートのロウ化とか。
いや、勿論表ルートやEXの雑魚スピの幸せそうな姿も好きですが。
むしろこの悲しみを耐え切った後にネリールートの可能性が…
…妄想はほどほどにせねば。寝よう。
わ、私ちっちゃいですけど……、けど……
だからってこんなところに埋めないでください〜
……orz
スマソ
首だけ外に出して埋めてみよう。……女神?
ちがいますよ〜
……orz
スマソ
おいおい……
いくら俺でもこんな所に埋められたらシャレになんないぜ…………ハァハァ
……orz
スマソ
なんだか知らないけど、キモウト埋めておきますね
r‐-- -┐
/ /゙・ 皿・_ヽ
レ'´从リ从!〉
l从◎_◎从
(リ(つと)
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
なんだかしらないけど、発掘しておきますね。
r‐-- -┐
/ /゙・ 皿・_ヽ
レ'i イノノハ)))
| l|| ゚ヮ゚ノl|
j /ヽ y_7っ
(7i__ノ卯!
く/_|_リ
うほ、若返ったっっ!!
え、えっと……
うめなおしちゃ…ダメ?
r‐-- -┐
/ /゙・ 皿・_ヽ
レ'i イノノハ)))
| l|| ゚ヮ゚ノl|
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
一応、掘り返しておきますね。
へ*__*へ
/ ヽ|・∀・|ノ. \
|__|
| |
あれ?
>>642、
>>644 " タイムアクセラレイト
´∴ # __ ゜ヾ´ ″´∴
「,'´r==ミ、―≡ ̄`:∵∧_∧´∴∵゛'
__くi イノノハ))≡―=',((( )≡―=‥、 ∵゛、゜¨
, ≡ )| l|| ゚ヮ゚ノl|r⌒) _/ / ̄ =―≡― _
´∴'≡く / ∧ | y'⌒ ⌒ ヽ イノノハ))( ≡―=‥、,、
″″ \/〈(((ノ从| / | | ゚ヮ゚ノ`=―≡―∞
" ||( ゚ヮ゚ー' | |ヾノ //
=―≡ ̄`:, | , | ( ̄=―≒‥,,
" ,゛"=―≡―=',/ ノ )∵`=≡―=
″( ゚ヮ゚∴/´/ / | | , ゚ヮ゚ノ'ゞ ∵゛、 ゜ ¨
ヾ =―≡ ̄`:゛/ / \| |≡―=‥、,、 ヾ
,゛"=―≡―='( | ( |=―≡―∞=@ , 、∴
/ | | |\ \ ´ ∴ ヾ .
・ / / | | | ヽ/⌒〉
.... . ............ . .(_ 「 _) (_〈_/....... . .. . .... . . .
__
「,'´r==ミ、
くi イノノハ)))
| l|| ゚ヮ゚ノl| <タイムシフト
j /ヽ y_7っ=
(7i__ノ卯!
く/_|_リ
646 :
642:05/03/15 01:29:11 ID:P0+s86NU
ええ〜〜若返ったって言ったじゃんーーーw
そんなことすると、悠人を神社で介抱した時「同じくらいの歳」とかぬかしたの、ばらしますよ?
>>642 " タイムアクセラレイト
´∴ # __ ゜ヾ´ ″´∴
「,'´r==ミ、―≡ ̄`:∵∧_∧´∴∵゛'
__くi イノノハ))≡―=',((( )≡―=‥、 ∵゛、゜¨
, ≡ )| l|| ゚ヮ゚ノl|r⌒) _/ / ̄ =―≡― _
´∴'≡く / ∧ | y'⌒ ⌒ ヽ イノノハ))( ≡―=‥、,、
″″ \/〈(((ノ从| / | | ゚ヮ゚ノ`=―≡―∞
" ||( ゚ヮ゚ー' | |ヾノ //
=―≡ ̄`:, | , | ( ̄=―≒‥,,
" ,゛"=―≡―=',/ ノ )∵`=≡―=
″( ゚ヮ゚∴/´/ / | | , ゚ヮ゚ノ'ゞ ∵゛、 ゜ ¨
ヾ =―≡ ̄`:゛/ / \| |≡―=‥、,、 ヾ
,゛"=―≡―='( | ( |=―≡―∞=@ , 、∴
/ | | |\ \ ´ ∴ ヾ .
・ / / | | | ヽ/⌒〉
.... . ............ . .(_ 「 _) (_〈_/....... . .. . .... . . .
__
「,'´r==ミ、
くi イノノハ)))
| l|| ゚ヮ゚ノl| <タイムシフト
j /ヽ y_7っ=
(7i__ノ卯!
く/_|_リ
あと4kちょっと……
4k弱だった…… orz
びっくりするほど悠人ピア!
びっくりするほど悠人ピア!
>>650 悠人ピア・・・・・・。
ピア・ホワイトスピリット。
永遠神剣“楽園”の使い手にして、エトランジェ・ユートの対になる存在。
何でこんなどうでもいい妄想がorz
遠い未来、どこかの世界。
「ほらほら〜♪そんな事じゃ、『かおすさいど』は倒せないんだよ〜♪」
「くっ……なかなかやりますね……楽しいですよ…………」
「はははは…………ぞくぞく、するねぇ…………」
「ン……ンギュ?」
「情けないぞお前達っ!いつまでそんな所で寝ているつもりだっ!」
法皇テムオリン率いるロウ陣営は、謎の少女の急襲を受けていた。
「そんな事いってもですね、タキオス……」
「ははは〜!あたしゃもうダメだね、腰が立たなくてさ〜」
「ン……ンギュ?」
「ぬ、ぬう…………」
既に主力である『水月の双剣メダリオ』、『不浄の森のミトセマール』、
『業火のントゥシトラ』は倒され、主不在の今、残るは『黒き刃のタキオス』のみ。
不甲斐なくもあっさりと倒されてしまった部下達を見下ろしながら、
タキオスはその容貌にふさわしい、重く苦々しい唸りをあげた。
「あとはおじさんだけなの?」
「くっ…………俺はまだそんな歳ではないっ!」
「そうなの〜?ん〜でもそんな事、どうでもいいよね♪」
本当はどうでも良くはない事をあけすけな笑顔で言い放ちながら、くるくると表情を変える少女。
一瞬トキめいたが、それどころではない。外見に騙されてはいけない。この少女の力は計り知れない。
衰えたとはいえ、ロウでも屈指の三人を一度に相手にして退けたのだ。
「くくく…………面白い、この『無我』の力、見せてやる」
タキオスは久々に訪れた真の戦いに、背中の無骨な剣を掴みながら内なる昏き悦びを感じていた。
「いいけど……おじさん、その剣重そうだね〜?」
「ふっ……貴様に我が剣を受ける事が出来るか…………ぬっ?」
何故だ。何故、背中の剣を振り下ろせない?こんなに重かったか?
額から、何周期ぶりか、つーと冷たい汗が流れる。そういえば、最後に握ったのはいつだったか……
「じゃあ…………いくよ、ゆーくん!」
「ちょ、ちょっと待て…………ぐふっ#%9@*$!!」
数秒後。タキオスはメダリオ達の横に、一緒になって転がっていた。
「な、なぜだ……貴様、一体何をした…………」
力なく呟く。最早タキオスは先程の不可解を、この少女に求めるしか無かった。
「だめだよ〜、もっと自分に合った神剣を使わなきゃ…………ね☆」
しゃがみこみ、全く悪意のない無邪気な顔でうんうんと頷いている少女。
「…………俺の負けだ、若きエターナルよ」
その姿に、タキオスはあっけなく自らの敗北を認め、どこかで聞いたようなセリフを呟いていた。
見えてしまっているしましまパンツを、緩みきった目元で見つめながら。
(゚д゚)ウマー
−終了−
〜再開〜
は無理だな。
, ´^⌒ヽ
!ツノノ~)))
く从l`ヮ´ノリゝ<ちょっとちょっと悠人先輩、再会ですよ再会っ! 運命に引き裂かれ
と)iÅi7っ 離ればなれのふたり。苦難の時茨の道、ふたりはいつか再び相まみえることを
く_ゝ 信じて運命に抗うんですよ。ああ〜ロマンチックですよねぇ〜。やっぱり運命ですよ運命。
し'ノ 引き裂かれてもまた引き合うなんて。あ、でも棚ぼたを否定するわけではないんですよ?
それはそれでもうけっていうか手っ取り早いですし。それじゃ悠人先輩、駅前で待ち合わ
せですよ? 一度ここで別れてまた逢うんです。ああもうラブストーリーは突然やって来る
んですから。いつでも準備オッケーですよ悠人先輩。