【最狂の寝取られとは? 第5夜】

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1名無しさん@初回限定
各々の心に潜む闇、それは今夜、誰を標的にするのだろう…
そして、狂乱は周囲を巻き込んでいく……


前スレ
【最狂の寝取られとは? 第4夜】
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1064439053/

作者別過去ログ
【最狂の寝取られとは?】SS保存サイト
http://www2.be-cat.net/kapapa/opi/index.html

注意事項

☆このスレはsage推奨です 【E-mail(省略可):にsageを入れる】
☆荒らしは徹底的に無視&放置
☆ここは21禁の板です。21歳未満の人はいないので、いたとしてもそれは過去の話だと思われます
☆長文をupする場合は、メモ帳などで全部書いてからコピー&ペーストで投下
☆連載する場合は、固定ハンドル+トリップ(名前欄に#好きな文字列)付きで
2名無しさん@初回限定:04/01/23 23:23 ID:HCNc2He9
過去ログ
>【最凶の寝取られとは?】
http://www2.bbspink.com/erog/kako/1015/10155/1015552737.html
>最狂の寝取られとは?第2夜
http://www2.bbspink.com/erog/kako/1036/10365/1036595603.html
【最狂の寝取られとは? 第3夜】
http://www2.bbspink.com/erog/kako/1053/10537/1053707523.html

寝取られスレ
>彼女または片想いの娘が犯られてしまうゲーム27
http://vip.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1064391745/l50

検索に便利
>寝部屋(寝取られゲーム・漫画などの情報を纏めたサイト)
http://www5e.biglobe.ne.jp/~kten/
3名無しさん@初回限定:04/01/23 23:24 ID:HCNc2He9
関連スレ
>彼女または片思いの娘が犯られてしまう作品5(エロ漫画小説板)
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erocomic/1054355992/l50
>エルフ系ゲーム、エロパロスレッド3(エロパロ板)
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1040654281/l50
>「かまいたちの夜2」のエロ小説(エロパロ板)
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1027522445/l50
>ヒロインが『ついに!』犯られてしまう作品(エロパロ板)
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1006964778/l50
>母親が他人に犯される作品 ♯2.4(エロ漫画板)
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erocomic/1064099013/l50
>彼女または片想いの娘が犯られてしまう同人作品(エロ同人板)
http://www2.bbspink.com/erodoujin/kako/1013/10137/1013783193.html
>うに・彩子・山下……さえた…ゴルァ!2(えっちねたロビー)
http://wow.bbspink.com/hneta/kako/1026/10261/1026135071.html
>自分の好きな女他の男に喰われた奴 2(えっちねたロビー)
http://wow.bbspink.com/hneta/kako/1026/10261/1026131638.html
>友人に彼女を寝取られてしまいました(えっちねたロビー)
http://wow.bbspink.com/hneta/kako/1016/10169/1016991274.html
>妻や彼女を他の男に抱かせてみたい(えっちねたロビー)
http://wow.bbspink.com/hneta/kako/1020/10207/1020793586.html
>主人公がヒロイン以外とくっついた漫画(漫画サロン)
http://comic.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1026878937/l50
>ヒロインが思わぬ伏兵と結ばれる漫画ってある?(少女漫画)
http://comic.2ch.net/gcomic/kako/1029/10290/1029040026.html
>主人公とヒロインが結ばれないゲーム(未HTML化) (家庭用ゲーム)
http://game2.2ch.net/test/read.cgi/famicom/1034435604/
4名無しさん@初回限定:04/01/23 23:27 ID:HCNc2He9
             / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ,__     | 今スレでも魅力的なヒロインが寝取られますように…
    /  ./\    \____________________
  /  ./(寝).\       o〇      ヾ!;;;::iii|//"
/_____/ .(´ー`) ,\   ∧∧        |;;;;::iii|/゙
 ̄|| || || ||. |っ¢..|| ̄  (,,  ) ナモナモ   |;;;;::iii|
  || || || ||./,,, |ゝ iii~   ⊂ ヾwwwjjrjww!;;;;::iii|jwjjrjww〃
  | ̄ ̄ ̄|~~凸( ̄)凸 (  ,,)〜 wjwjjrj从jwwjwjjrj从jr
5名無しさん@初回限定:04/01/23 23:53 ID:Z/imCtc6
寝取られスレ
>彼女または片想いの娘が犯られてしまうゲーム29
http://vip.bbspink.com/test/read.cgi/hgame/1071302410/l50

>彼女または片思いの娘が犯られてしまう作品7(エロ漫画小説板)
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erocomic/1073439180/l50

>>1
乙なんだけど関連スレのリンクは直そうね
とりあえず2つだけおいてく
6第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/01/24 00:11 ID:DHILkg1m
乙に ござります。

ただいま、(ry のエロシーンを 悪戦苦闘しながら描いとります。








内芋終わらない(←まだかよ)のに、30日に笛糸を買いに行こうとする。
603でした。
7 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 01:05 ID:t4sr2RUN
乙 でございます。

もいらも早く、

「ごめんね・・・わたし、
○○君が思ってくれているような娘じゃないんだよ。」とか、

「まいったなあ・・・わたし、勘違いされちゃってたわけか。」とか

ヒロインに吼えさせてみたいです。
8名無しさん@初回限定:04/01/24 01:21 ID:7pwmJ/tS
ヒロインに咥えさせてみたいです。





かと思ったよ(;´Д`) ハァハァ
このままじゃ堕ちるのでage
9名無しさん@初回限定:04/01/24 01:25 ID:IX0KTIjc
スレたてZ!

あんど越智回避。
10 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 01:59 ID:t4sr2RUN
もいらはNTR保守中道左派なんで、
主人公は精神的に追い詰められてボロボロになっても、
最後にはサブヒロインに癒してもらう
(シチュエーションとしては密着対面座位で)
ってENDが好きなんだけど・・・

でもここの住人はNTR原理主義民族派が多そうだから、
徹底的に救いが無いENDが良いんでせうね・・・
11名無しさん@初回限定:04/01/24 03:03 ID:CZne1tJj
おれはNTR国家社会主義労働党右派なんで
主人公とヒロインがズタボロになった挙句の鬱エンドがいい。
ついでに寝取った男や係わった人間も地獄行きなのが最高。
12名無しさん@初回限定:04/01/24 04:10 ID:6dUDuD8r
俺は主人公が幸せになっても
寝取られたヒロインがそれよりもっと幸せになってたらいい派
13名無しさん@初回限定:04/01/24 04:46 ID:nyckLawY
>>10
おれは◆LZ40ROiqVQ 氏に全面同意だよ(NTR保守中道左派って言うのか・・・)。
貴方がそれが好きならそれで行ってくだされ。
14名無しさん@初回限定:04/01/24 06:29 ID:2I63MXCp
>>1
乙、寝取ってやるよ
15 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:00 ID:CufhZmgp
じゃ、新スレ一発めいきまーす。

どのキャラがどう堕ちていくのか、決めて書くとまた日常まったりも
楽しいですねえ。
16 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:00 ID:CufhZmgp
1、

「僕の教科書、貸そうか?」

おずおずと申し出た僕の提案にも、彼女は肩をすくめるだけだった。

「要らない。どうせ授業なんて聞いてなかったし。」

そう言ってから椅子に腰を降ろそうとする彼女を、僕は慌てて止めた。

「どうしたの?」

これは僕の経験からなのだが・・・
机の中の私物にいたずらをしたということは、机や椅子にも手を加える可能性が高いわけで・・・
やっぱりそうだった、水原恭子の椅子の、ちょうどお尻が接する位置には数個の画鋲がアロンアルファで接着されていた。

「僕の椅子を使いなよ。」

画鋲を引き剥がそうとする僕を、水原恭子は立ったまま、黙って見ていた。教室のそこかしこでクスクスと笑い声が上がった。

「もういいよ。」

彼女はそっと言った。

「・・・でも、これじゃ・・・」
「もういいって。ま、見てて。」

彼女は腰に手を当てて立ったまま、自分に浴びせられる悪意に満ちた視線など全く眼中にないかのように、にいっと笑った。
きれいな歯並びだな・・・。
17 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:01 ID:CufhZmgp
2、
 教室に入った石井正人(女子の健康診断時は必ず立ち会うことで有名)が出席を取り始めようとした矢先、
突然水原恭子が声を上げて遮った。

「石井先生、話があります。」

石井は一瞬ハァ?、という表情だったが、
すぐにいつもの職業教師の顔(角刈りに脂ぎった顔、生々しい髭剃り跡、肛門を連想させるタラコ唇)に戻った。

「なんだい?ミナハラさん。」
「今朝私が登校すると、机の中に入れていた教科書とノートが使用不能な状態になっていました。」
「・・・あ、ぃやぁ、それは・・・大変だね。」
「これは意図的に誰かがやったことです。私が言う意味、分かりますか?先生。」
「・・・それは、つまり、ぁあ・・・」
「このような事態が2度と起こらないことを強く要求します。」
「あ、ああ、わかった。」
「それから、監督責任者としてのあなたに謝罪を要求します。」
「そうだね・・・・な・・・なんだってえ?」

石井が目を剥いた。
18 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:03 ID:CufhZmgp
3、
「児童生徒の管理監督はあなたの職務です。この事件は、あなたの職務怠慢に原因があります。
先生さえしっかりしていれば、未然に防止出来たはずです。」

まるであらかじめ用意していた原稿を読み上げるかのように、
水原恭子は淡々と、良く通る低い声で話し続けた。
その表情には怒りも憎しみもなく、どことなく面白がっているような
雰囲気さえあった。
ぴん、と背筋をのばし、真正面から石井正人を見据えた水原恭子は、
正直とてもクールでかっこよくて、
うちの親父や、やたら世話を焼きたがる小うるさい琴ちゃんよりも
よっぽど頼りになりそうだった。アメリカじゃ自分の主張をはっきり
させないと、子供でも相手にされないと聞いたけれど、こんな感じ
なんだろうな。
・・・正直年齢だけじゃなく、性別も疑いたくなったけれど。

石井はかなり取り乱していた。

「なんでオレがお前に謝らなくちゃならないんだ!大体、こういうことになるのは、お前にも原因があるんだぞ!!」

水原恭子は鼻で笑った。なんだかこういうアメリカナイズされた立ち振る舞いのせいで、彼女は実年齢よりもずっと上に見えてしまう。

「・・・犯罪は被害者にも原因がると、そう言いたいわけですね?」
「当たり前だ!ミズハラクンは授業も聞かないし、団体行動でも勝手なことばかりやってるじゃないか!!」

19 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:07 ID:CufhZmgp
4、
石井が言う『勝手なこと』の最たるものは、秋の修学旅行の一件だろう。まず、ホテルで同室になるメンバーをクラス会で決める段になって、
水原恭子は個室か大部屋かは個人で選択できるようにすべきと強く主張し、ついでホテルそのものに、さらに旅行スケジュールにも文句を言った。結局、彼女は一人で別のホテル
(修学旅行は金沢だったが、金沢市内で一番ランクが高いホテルの、しかもデラックスシングルなる一泊2万円の部屋)に泊まることになった。
当然ながらクラスの女子からも男子からも総スカンをくらい、誰も水原恭子と一緒の班になりたがろうとはしなかったが、
3日間の旅行中彼女は僕と一緒に映画を見たり、美術館を回ったり、街頭大道芸を見物したりした。

(そう、水原恭子とべたべたしているという理由で、僕も仲間はずれだったのだ。)
でも彼女はそれなりに楽しそうだった。

「授業を聞くのも聞かないのも私の判断です。価値があると思えば授業に集中します。」

水原恭子は静かに、諭すように、言った。それを聞いた石井はどうやら完全に頭に来たようで、手にした出席簿を教壇に叩きつけて怒鳴った。

「もういい加減にしろ!ミズハラクンがどうしたいかは勝手だが、ここはニッポンなんだからここのやり方に従え!!」
20 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:09 ID:CufhZmgp
5、
水原恭子はかすかに眉を上げただけで、全く笑っちゃうくらいにリラックスした雰囲気だった。

「・・・分かりました。今専門家を呼びますので、彼と交渉してください。」

そういうと、彼女は教室を出て行った。
 それから何が起こったかというと・・・しばらくして、学校の正門に黒塗りの
ベンツが一台止まった。
中からスーツケースを持った男と、えらく体格の良い男、それに妙におどおどした中年女が降りてきて、校長に面会を求めた。
まもなく、校長みずからが授業中の教室にやって来て、石井を呼び出した。
授業は中断されたまま一時間が過ぎ、2時間が過ぎ・・・
その日の午後、図書室で静かに本を読んでいた水原恭子に、石井正人
(女子の健康診断の立会いが終わると、なぜかトイレにしばらくこもっているらしい)
と、校長と、おどおどした中年女(市の教育委員だそうだ)は平身低頭して謝った。
 
 「さっきの人達って、誰だったの?」

読んでいたハリー・ポッターシリーズ(ペーパーバックの英語版だ)をプラダのバッグにしまって、
帰り仕度をしている彼女に、僕は聞いてみた。
21 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:11 ID:CufhZmgp
6、
「ん?気になる?」
「いや別に・・・でも石井、半べそかいてたし。校長もガクガクブルブルだったし・・・」
「あれはウチの顧問弁護士。でかいのは、『なんでも相談屋』だよ。」

『なんでも相談屋』ってなんだよ、そんな職業あるのかよというつっこみを入れる度胸は僕には無かった。
率直なところ、水原恭子がちょっと怖くなった。
彼女がその力を容赦なく振るって自分の要求を通すということは、この先も幾度かあった。
問題を解決、というよりも問題を叩き潰すのが彼女の流儀だった。
自分の意思や好みを通すとなると、水原恭子は他人の都合や周囲の雰囲気など全く考慮しない。
はじめは面食らっていた僕だが、そんなある種の純粋さ、率直さは、当時の僕には魅力的に映った。
・・・世の中には、こんな種類の人もいるんだ・・・。

「早く仕度しなよ?もうすぐタクシー来るよ。」
「あ、でも僕は・・・」
「家まで送ってってあげるよ。ほら早く。」

水原恭子は僕の手首をひっぱって急かした。
彼女の手はすべすべして、ほんのり暖かくて、白くて細い指がきれいだった。
22 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:13 ID:CufhZmgp
7、
「ああいうのって、内田クンも経験あるわけ?」

タクシーの中で、彼女は僕に尋ねた。

「うん。まあ・・・。」
「そういう時は、どうしてたの?」
「別に・・・。まあ我慢するとか・・・。」

本当のところ、何度かは琴ちゃんが相手の家に怒鳴り込みに行ったことも、あった。

「・・・見てて思ったんだけど、内田クンってちょっと卑屈なところがあるよね。」

すいませんね、こっちはアンタみたいに金もなけりゃ、人を黙らせるくらいのルックスってわけでもないんだよ。

「だって・・・我慢するしかないじゃん。そんな・・・力なんかないし。」

もごもご呟く僕を見て、水原恭子は笑った。僕は少々腹が立ったが、彼女の表情に軽蔑の色は浮かんでいなかった。

「ま、仲良くしようよ。いじめられっ子同士、さ。」

何が可笑しいのか、ケタケタと声を上げて水原恭子は笑った。
タクシーの運ちゃんはバックミラーに映る彼女の姿に、気味が悪そうだった。
23 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:15 ID:CufhZmgp
8、
多分この頃、僕は水原恭子が好きになり始めていたと思う。
好き、といってもどうして良いのか分からない。
学校にいても話しかけてくる彼女に間の抜けた返事を返すことぐらいだったし。
大体好き、ってどういう感情なんだろう?
特定の異性を守ってあげたい、そしていつまでも一緒に居たいと思うことなんだろうか?
もう少し成長すれば肉体的な繋がりという項目も付け加わるのだろうが、
当時の僕にはとてもそんな欲望はなかった。
守ってあげたいといっても、あの水原恭子はいかなる助けも必要としないだろうし、
僕に出来ることなんて何もなかった。

他人の助けを必要とする水原恭子なんて、全く想像できない。
でもね・・・、僕は出来る限り、水原恭子と一緒に居たいと思った。
が、それを阻む障壁がひとつ、あった。
彼女の中学受験である。
 というわけで、12月のある土曜日、僕は町の本屋の学習参考書コーナーに居た。
日能研が出版している『全国有名私立中学入試問題・最新版〜傾向と対策』というそれっぽい本を手に取ってみた。
・・・・・・なんだこりゃ?わけわからんぞ。っていうか、ホントにこれ、小学生が受ける入試なのか?

「あ、ユッキーはっけーん!」

固まっている僕の耳に、聞きなれた声が届いた。
琴ちゃんだ。
24 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:17 ID:CufhZmgp
9、
続いて、

「お、コトPの弟クンはっけーん!」弟じゃないって。

「コトPの子分一号はっけーん!」子分って、いくらなんでもさあ・・・

「コトPの彼氏はっけーん!」それはやめてくれ。

「コトPが貢がせているオトコはっけーん!」なんじゃそりゃ・・・

琴ちゃんといつも一緒に居る友達だ。
隣町の中学の女子バスケ部の仲間で、みんな揃いの部活のジャージを着て、大きなスポーツバッグを肩から下げていた。
この寒い中琴ちゃんはジャージの前を開けて『8miles』と描いたTシャツの胸を見せている。
・・・・・なんかウルサイのに見つかっちゃったなあ・・・

「何見てんの?Hな本の売り場は、ここじゃないよ?」

うりゃっ、と言って琴ちゃんは僕を背後から抱き締めると、僕の肩に顎をのせていきなり耳元で囁いた。
他の女友達もクスクス笑いながら近寄ってくる。
みんな部活帰りらしくエイトフォーの香りにまじってちょっと汗臭く、囲まれると正直きつい。
僕だってもう12歳なんだから、抱きついてくるのとか止めて欲しいけど。
25 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:18 ID:CufhZmgp
10、
「・・・Hな本なんかじゃないよ。勉強の本を探してるんだよ。」
「なになに・・・。『全国有名私立中学入試問題・最新版〜傾向と対策』?変わったエロ本のタイトルだねぇ。」
「いやだから違うって!僕は中学受験の傾向ってヤツを知りたいの!!」
「なんだってまた?あ、ひょっとしてあんた、好きな子が中学受験する、とか?」

・・・げ・・・図星だよ・・・。

「ち、違うよ。まあ、僕もほら、そろそろ将来ビッグになることを夢見る12歳とか、
未来への自己投資とか、そういう感じだよ。」
「ま、今からじゃ無理だよ。あきらめな。」

琴ちゃんは僕の頭にポン、と手を載せて言った。

「琴ちゃんだって来年中3だろ?そろそろ入試準備とかしないといけないんじゃないの?」

琴ちゃんは僕の頬をいきなりつまんだ。
26 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:22 ID:be9PkWS5
11、
「あんた、その琴ちゃんて呼び方止めなさいって言ってるでしょ?仮にも年上なんだから、琴姉と呼ばんかい!」
「・・・なんだよぉ・・・2歳しかちがわないだろ・・・従姉なんだしさぁ・・・」
「あーだめだめ。そういう態度だとあんた、中学入ってから苦労するよ?」
「先輩後輩関係とか、そんなに厳しいの?」
「あったり前っしょ!あたしは容赦無くびしびし行くよぉ?鬼軍曹の篠原と呼ばれてるからね。」

琴ちゃん―――篠原琴乃(14歳中2)―――は僕の母方の従姉である。
背は同年齢の女の子にしてはかなり高い、というわけで僕よりずっと背は高い。
昔から運動神経は万能で、中学の当時はバスケ部所属だった。
くっきりした眉に切れ長で細いツリ目、薄い唇がきつい印象を与えるけれど、
まあ僕が見てもそれなりに美形の部類に入る.
・・・が、美形といっても基本的には美少年顔なのだ。
本人もそれは自覚しているらしく、何度か髪を伸ばそうと挑戦したが結局ちょっと長めのスポーツ刈りで妥協した。
一度横浜でタレントスカウトに引っ掛かったことがあったそうだが、話を聞いてみると相手は琴ちゃんを男と思い込んでいたそうだ。
27 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:23 ID:be9PkWS5
12、
「でもなんだかんだ言ってもコトPけっこー面倒見いいよね?もてるし。」
「そうそう!後輩の女の子にモテルよね!!」
「今朝の朝錬だってさ(うふッ)・・・あの子、コトP見る目がうるうるしてたよね☆」

なんだって?

「えッ??琴ちゃん、このまえ私はモテるって自慢してたのは、相手女の子なの?」

琴ちゃんは僕の頬を両手で掴んでぶるぶると揺すった。
もちろんふざけてなんだろうけれど、さすがスポーツ少女なだけあってその力は侮れなくてちょっと痛い。
体型も腹筋が割れるくらいの筋肉質だし。
・・・・・・・・・あ、でも胸は・・・大きい。ほとんど大人並み。

「だーかーらー。琴姉と呼べつってんだろ?あぁん?」
「こ・・・こと・・・ねえ・・・」
「よーし、オーケーそれでいいんだ。その呼び方、忘れんなよ?」
28 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:25 ID:be9PkWS5
13、
気が強くて口は悪いが、典型的な体育会系の姉御肌で、僕の面倒を良く見てくれるし、
友達が少ない僕に付き合って遊んでくれた。
なにより、人手不足の我が『ヘアーサロン・ウチダ』に手伝いに来てくれるのだ。
どうしてそうまでしてくれるのだろう、と思うこともあったが、
どうやら琴ちゃんは、僕の母親に関する一件について彼女なりにある種の後ろめたさを感じているらしい。
別に彼女に何の責任も無いのだけれど、数少ない身内の問題、ということもある。
実際、母の駆け落ち当時、僕は母の縁者が嫌いになって、琴ちゃんを避けていた。
琴ちゃんが良く抱きついてきたり、お風呂に一緒に入ろうとしたりするのは、その反動かも。

「じゃ、帰ろっか?」
「え?だって琴ちゃ・・・琴ねえは今日どうすんの?おばさんち帰らないの?」
「ああ、明日はこっちで試合があるからさ。
おじさんちから行ったほうが早いから、今日は泊めてもらう約束。いいでしょ?」
29 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:26 ID:be9PkWS5
14、
琴ちゃんは僕と手をつないで本屋を出た。
電車で30分程の距離に住むおばさん・・・琴ちゃんの母親、つまり僕の母の姉・・・はシングルマザーだった。
一度おばさんが酔っ払って僕に教えてくれたのだけれど、
一人っ子の琴ちゃんはおばさんが商社に勤めていた頃不倫の末に産んだ子だそうだ。
明るくて表裏の無い性格だけれど、家庭環境上いつも一人だった琴ちゃんは話相手が欲しかった、とおばさんは言う。
同世代の親戚といえば僕しかいないので、半ば押し掛けるように我が家に泊まりに来ていた。
ちょっと口やかましくて、鬱陶しいところもあるけれど僕は琴ちゃんが嫌いではなかった。
こんなふうに手を繋いで歩いていると、本当の姉弟のような、どこか暖かい気分にもなる。
水原恭子への思いとは全く違う次元で、僕は篠原琴乃が好きだった。
30 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/24 16:30 ID:be9PkWS5
ふふふ。マルチヒロインで全滅狙うぜ。破滅の種は仕込んだ。

・・・申し訳ない、今日はここまでです。
31名無しさん@初回限定:04/01/24 16:42 ID:6dUDuD8r
あんた楽しんで書いてるなw
これからも期待。
32 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/25 00:28 ID:ZDo+f3rd
例えば、
ヒロインAがつまんない男と一緒になって、
ぼて腹になって、
こお大きくなったお腹なんかを誇らしげに見せつけながら
主人公の前を通り過ぎたりして、
でもって鬱になった主人公が心の拠り所にしていたヒロインBが
実はとんでもない罠にひっかかっていて、
なすすべも無く主人公の目の前で堕落していくのを見せ付けられたりして、
それを救おうとする主人公は肉体的にもボロボロになって、
アヒャヒャ状態で街をうろついているところを
一時ちょっと好きだったヒロインCに久しぶりに再会したりして、
「どおしたの○○君・・・何があったの?」
みたいに聞かれて、
ヒロインCの部屋に行って、これまでの話をぽつりぽつりと語って
聞かせて、
「そう・・・そんなことが・・・でも、○○君は良くやったと思うよ。」
みたいに慰めてもらって、
実はヒロインCは主人公が好きだったと告白して、流れからラブラブH
になったりして、二人で幸せな朝を向かえて、
「ありがとう。これで僕もまた生きていける。ちょっと待ってて、すぐ
戻るから」
と言い残して主人公が出かけて、戻ってくると野島シンジばりに不意打ち
NTRの餌食となるヒロインCを目にして、そこで唐突にEND

なんていうのが、民族主義者のロマンと思わんたい?
33名無しさん@初回限定:04/01/25 00:43 ID:pKBqqToG
よくわからんがそれ最高
34名無しさん@初回限定:04/01/25 01:46 ID:ZF6sBa7s
おもしろいなぁ
3523 ◆bxyzd8gFCE :04/01/25 02:47 ID:603xMxPI
>>◆LZ40ROiqVQ 氏
美男子がじわじわ孤立していく話はどうでしょう?
周りの取り巻きの女の子がどんどん他人に篭絡されていき、
最後にそれまでつれなくしていたにも関わらずくっついてきていた幼馴染にすら
見捨てられる……とか

>>1
乙です。

3623 ◆bxyzd8gFCE :04/01/25 05:27 ID:603xMxPI
夜明けに更新は何かせつない気分になります。
今頃一勝負終えた連中は寄り添って寝てるんだと思うと……

ともかく更新。今回は(9/9)です。
3723 ◆bxyzd8gFCE :04/01/25 05:28 ID:603xMxPI
(1/9)

「私は、妄想に囚われている」

朝食を終えた優菜の傍らで(と言っても鉄格子越しだが)、健司は静かに語り出した。

「この世界は元々、今とは違う価値観で彩られていた。
 人間は衣服を着て、表向きはそれなりの倫理観を持の元に日々を過ごす。
 その実、裏ではSEX……性行為はある意味で奔放な面を持っていて、
 婚姻をした男女は、当たり前のように子孫を残す……世界はそんなものだと、妄想していた」

優菜は黙って健司の話に耳を傾ける。
その聞けば聞くほど奇異な話を。
服を着て生活するなど、変態以外の何者でもない。
アダルトビデオ、それもかなりマニアックなものにしかそんなシチュエーションはありえない。
考えるだけで卒倒しそうだ。
それに加え夫婦が勝手に子を成すなど正にケモノの理屈だ。
人間は交配の機会を限定させてきたからこそ、今霊長の頂点にいる。

そのはずなのに、そんな常識も彼にとっては逆に奇異なのだという。

(だから、ここは黙って話を聞こう)

優菜は健司が話しを再開するのを待ち続けた。
3823 ◆bxyzd8gFCE :04/01/25 05:29 ID:603xMxPI
(2/9)

「私はある女性を愛していた。
 ささやかながら幸せな家庭を築く。
 そんな当たり前のことを望んで、私達は結婚を約束した。
 だが、結婚式の当日……私の中で、妄想と現実とが完全に剥離した」
 
健司はぐっ、と拳を握り締めた。
思い出したくない、しかし忘れられない記憶が鮮明になっていく。

「彼女は、全裸で式場に現れた。
 他の出席者の同様全裸。
 私は思わず己の目を、程なくして世界を疑った。
 何が正常で、何が異常かがわからなくなった。
 そして式は終わり、新婚初夜……私は、罪を犯した」

そこからの健司の話は、嗚咽まじりで聞き取りにくかったが、
優菜はかろうじて概要は理解することができた。
3923 ◆bxyzd8gFCE :04/01/25 05:32 ID:603xMxPI
(3/9)

つまり、健司はその結婚相手に無理矢理性交を迫ったのだ。
そして当然のように拒まれた。

無理も無い。
その日その時その瞬間にメスの発情期が来るとは限らない。
そんな相手に無理に行為を迫るなど、犯罪以外の何でもない。
しかし彼はそれを理解できず、半ば強引にその女性を貫いたのだという。
その後は、優菜たちと同じ。
どこからか健司達の行為を察知してやってきた武装警官に取り押さえられ、強制連行。
そして二人は死か隷属かを迫られ……

女は死を選び、
男は罪の意識に打ちひしがれながらも、法に隷属を誓った。
そんな昔話。

「私たちとは……逆ですね」
「ああ、逆だ」

静かに、会話も無く。
時間が経過していく。
優菜は健司にかける言葉が見つからず、
健司は優菜にかける言葉を持たない。
それでも、

優菜は健司の手を取った。
健司もその手をぎゅっ、と握り締めた。
4023 ◆bxyzd8gFCE :04/01/25 05:36 ID:603xMxPI
(4/9)

「お互い、つらいな」
「つらいです」

手を絡めたら、やっとそれだけ言葉が生まれた。
やがて……
鉄格子ごしの二人の距離が、しだいに短くなっていく。
何の為に?何故に?
それは当の二人もわかっていない。
傷付いた心を慰めるためなのか、それとも……

「所属ナンバー029945、所属ナンバー029945、
 至急詰所まで出頭せよ。繰り返す……」

二人の空間をうち消す、機械的な音声。
天井に据付けられたスピーカーが、割れた音で健司への命令を反芻していた。

「行って来る」

優菜から身を離し、健司はすっと立ち上がる。
その様は以前の無表情に戻ろうとしているように優菜には見えた。

「あのっ……!」

後ろから声をかけられ、健司は振り返った。
声の主は勿論優菜だ。

「あなたは……まだ人間です!
 言葉を交わし、気持ちを分かち合えるなんて、機械にはできません!」
4123 ◆bxyzd8gFCE :04/01/25 05:38 ID:603xMxPI
(5/9)

素直な心情を優菜は伝えた。
脳洗浄で感情を殺されているとは到底思えない健司の言動、行動。
それでも必死に禁欲し、自らを機械たらしめようとしていた。
そんな葛藤の中でもがく健司が、人間でないわけがない。

「だがそれでも私は鬼畜だ」

振り返らず、健司は優菜の気持ちを跳ね返した。
まだ彼の中でくすぶる罪の意識が、健司を許さないのか。
しかし、

「愛する人を死に追いやったにも関わらず、また誰か想い始めているのだからな」

「えっ……」

捨て台詞のような告白を残し、健司は牢獄を去っていった。
後に残された優菜の中に、暖かい気持ちが溢れて行く。
それは、今はいないあの人に抱いた気持ちと同じもの。
いや、それ以上の……?

「サキくん……私、私は……」
4223 ◆bxyzd8gFCE :04/01/25 05:39 ID:603xMxPI
(6/9)

よろめき、尻餅を付く。
ふらふらと、まるで熱病のように何かが優菜を侵食していく。

体が熱い。
鎮める方法は無いのだろうか。

そう思った瞬間、優菜の指は自然に体の敏感な箇所に伸びていった。

(違う。違うのサキくん。これは違うのっ……)

頭でそう思いつつも、指の動きは止まらない。
右手でその豊満な胸をまさぐり、左手で股間の蜜壷をかき混ぜる。
電撃の如く流れる快感。
慌てて手を離すと弛緩。
自分は一体何をやっているのか。
両の乳首は当の昔に勃起している。
秘所からはとめどなく愛液が滲み出て行く。

それは優菜にとっては初めての自慰行為だった。
4323 ◆bxyzd8gFCE :04/01/25 05:41 ID:603xMxPI
(7/9)

(これサキくんの手、これはサキくんの手、だから気持ちいいの……)

優菜は必死に自らをまさぐる両手を佐紀のものだと思い込もうとする。
しかし脳裏に浮かんでくるの、あの男の顔ばかり。
ぶんぶんと首を振り、浮かぶ絵を掻き消して再び。

(サキくん、サキくん、サキくんサキくんサキくんサキくんサ……)

指の動きが一気に乱暴になっていく。
佐紀の顔が脳裏にあるうちにせめてイキたい。
そう願うも、佐紀の顔を思っている間はそれ以上の高みに昇ることは無く、
逆に、

(いや……違う…… 健、司、さんっ……こないで……)

一瞬。

「うっ……あ、あ、いやぁ、あああ、いやっ、やだぁぁぁぁっ………!」

正に一瞬で優菜は絶頂に達した。
あまつさえ潮すら吹きながら。
4423 ◆bxyzd8gFCE :04/01/25 05:43 ID:603xMxPI
(8/9)

それは、形容するなら絶望的な絶頂。
故に優菜は歓喜の声を上げることはなく、泣きそうな声で呻いた。
びくびくと断続的な快感が優菜を蹂躙していく。
後悔のせいか、涙すら出なかった。

信じない。
こんなの、信じない。

(サキくんっ……)

めくるめく悦楽の海の中で、優菜は必死に佐紀の面影を探し続ける。



しかし、終ぞ優菜は快感が治まるまで佐紀の姿を思い浮かべることが出来なかった。
4523 ◆bxyzd8gFCE :04/01/25 05:49 ID:01PDkKUE
(9/9)

「君には、選択肢がある」

詰め所に戻った健司に開口一番用件を伝える同僚の一人。
無表情で上からの伝言を伝えるだけが任務の、ただの録音再生機だ。
健司にとって彼はその程度の存在でしかない。

「現在、我々のボスを決定する戦いが行われている。
 その参加資格が君にもあるとのことだ。
 参加するか、このまま任務を続けるか、今ここで決めて欲しい」

(ボスとは何だ? 武装警官の元締めか?)

健司は答えに窮した。
深く追求しても、目の前のテープレコーダーからは満足な返答は望めないだろう。
しかし、

(あの少女の罪を、軽くするくらいはできるだろうか)

そう思い健司は、

「わかった。参加する」

武装警官らしく、機械的に返答した。
46名無しさん@初回限定:04/01/25 07:06 ID:ZFCxVGP7
23氏乙です〜、おもしろかったです
凡人の考えですが、

健二とサキが戦う

サキ勝利

優菜の心は健二のものになっていた

健二と一緒に優菜自殺

ってなことにならないように期待
47名無しさん@初回限定:04/01/25 09:34 ID:tlRVDNRE
>>46
あの世で俺に詫び続けろ、オルステッドEDですな
48名無しさん@初回限定:04/01/25 11:54 ID:iTa6LJ7j
そういやオルスもある意味寝取られだな。性交渉があったかは知らんが。
ところで俺はLIVE A LIVEが好きなのだが、
ここのみんなはオルス達についてどう思ってる?
あと、俺はやった事ないけどバハラグのヨヨとかについても。

とりあえず俺は即行で魔王になって世界滅ぼしました。
キャーキャー叫んで石化させる馬鹿女なんぞ香織タンの足元にも及びません。
49 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/25 12:05 ID:0W5tAIaw
>>35
なんだかますますモンティパイソンっぽくなって来ましたね。
エンディングが楽しみです。

>美男子がじわじわ孤立していく話はどうでしょう?
いや、美男子っちゅーのはちょっと。感情移入出来ませんしw
でも、じわじわ寝取られは好きですね。

おいらとしては主人公はコンプレックスがあって積極的にはなれない
けれども基本的にはストイックな努力家で、

ヒロインAは身近にいる子で、主人公のことを少なからず思っている
んだけれども相手にしてくれない&主人公では肉体的に満たされない
ゆえに他の男とくっついてしまう、と。でこいつはそれなりに幸せに
なって。

50 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/25 12:06 ID:0W5tAIaw
でもって
ヒロインBは主人公にとって憧れの対象で、彼女に近づくために主人公
はひたすら努力するんだけれども、実は彼女はとっくの昔に汚れていて
やっと近づけたと思ったら主人公の眼前で散らされていくのをなすすべ
も無く見るしかなく、寝取り男に復讐しようとしたら返り討ちにあって
ボコボコにされて、

ヒロインCはヒロインBと知り合いで、主人公のことが好きなんだけれ
ども立場上ツレナイ態度をとっているメガネキャラで、
ようやく主人公と結ばれたと思ったら・・・
ヒロインBの寝取り男が主人公を人質に取って、主人公の命を助ける
引き換えにヒロインCにセックスを強要。主人公をただ一人心から愛して
いるヒロインCはその求めに応じ、寝取り男にHR。寝取り男は堕胎
できなくなるまでヒロインCを拉致監禁してから主人公の元へ返すが、
ヒロインCは自殺。主人公も自殺しようとするが、最後にその目に映った
のは子供と主人に囲まれて幸せそうに散歩するヒロインAの姿だった・・・

みたいな話なんすよ。
やっべ、今のペースで書いてたら一体いつまでかかることやら。
51名無しさん@初回限定:04/01/25 13:09 ID:1x3tBiMV
す、スゲエ……
52名無しさん@初回限定:04/01/25 13:24 ID:ZFCxVGP7
すげぇ・・・だけど・・・
ネタバレしちゃったら読む気しなくなるよぅ〜;;
53 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/25 13:44 ID:ZDo+f3rd
>>52
にひひ。いやまあ、あくまで「みたいな」話を「予定」してる
だけですしな。
ヒロインABCの役割もチェンジするかも知れませんしな。
まあ出来ればつきおうてくださいな。
54 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/25 13:55 ID:ZDo+f3rd
あ、でもヒロインABCの役割や運命についてこうして欲しい、
みたいな要請があれば対処したいと思います。長期戦になりそうですし。

でもそろそろワンフェスの準備せにゃ>オレ
55名無しさん@初回限定:04/01/25 14:11 ID:UrPmADkR
>LZ40ROiqVQ
お前気持ち悪い。
ネタ帳をさらすようなことは止めろと言ったはずだ。
5652:04/01/25 14:38 ID:ZFCxVGP7
>>55
五月蝿い、だまっとけ
>>LZ40ROiqVQさん気にせずに、これからもがんばってください
57名無しさん@初回限定:04/01/25 15:22 ID:NSoEVBUx
俺は作者さんもこのスレを楽しんでくれてたら嬉しい。
ネタは秘匿してほしいというのも分かるが、ある意味苦行を強いてるわけだから。

マンセーレス以外はするなっていう気はないがね。
ネタ師あってのネタスレ。でもネタ師を育てるのは名無し。
58名無しさん@初回限定:04/01/25 18:47 ID:HqIpd77K
ついでにネタ師を潰すのも名無し。
59名無しさん@初回限定:04/01/25 21:21 ID:pKBqqToG
某さえたスレを見て思うに、
「彼女がこういうシチュエーションで寝取られますた」→詳細
という流れでもハァハァできるわけだから多少のネタバレは構わないけども
いきなりきれいにまとまった全体像見せられるのはちょっとショックがでかいなw
というわけで要望としてはできるだけ早い時期に前述のプロットからの脱却をきぼん。
60名無しさん@初回限定:04/01/26 10:50 ID:yvlh7m52
某とき○モ2で刷りこまれたっけ…
>NTR

初葱板で覗いたスレが何故かここでした。
職人の方々、頑張ってください!
ドアの隙間から応援してます!
61名無しさん@初回限定:04/01/26 14:08 ID:IZPCWP9+
じゃあ漏れはベランダから
62名無しさん@初回限定:04/01/26 17:55 ID:GFPzE0XG
じゃあ漏れは部屋と向かい合わせの窓から
63名無しさん@初回限定:04/01/26 18:17 ID:yvlh7m52
やっぱりビデオテープで
64名無しさん@初回限定:04/01/26 20:51 ID:ih9WGo+Z
603氏マダー
65第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/01/26 22:39 ID:rytpcZcx
すんまそん

もうちょいです。
66名無しさん@初回限定:04/01/26 23:13 ID:xNpoxukR
クローゼットの中から見守ってるよ
6723 ◆bxyzd8gFCE :04/01/26 23:18 ID:VdbSBrGc
>>60-63
>>66
ワロタ
68名無しさん@初回限定:04/01/27 12:45 ID:FBTw2WD5
ドキドキしながらうち妹やってみたけど全然大した事なかった・・・・・・
69名無しさん@初回限定:04/01/27 15:45 ID:/zODt269
NTR確定作品だからな>>宇宙芋
OHPで純愛しか紹介しなきゃダメージでかかったろうに。
70名無しさん@初回限定:04/01/27 21:09 ID:FXTrHq3Q
「不意打ちで寝取られが来る作品の情報が欲しい」という永遠のジレンマだな。
71 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/27 23:05 ID:ErBZRU6+
えー、
>>49
>>50
はお忘れいただきまして、もうちょっとさわやかな寝取られに路線
変更しました。まだまだ坂を上っている段階ですが、よろしければ
お付き合いください。
72 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/27 23:06 ID:ErBZRU6+

 水原恭子は、中学受験のために天下の四谷大塚進学塾に通っていた。
これまで私立中学受験など縁もゆかりもなかった僕でも、
その名前くらいは知っている。
だが、知っているとはいっても、僕にとっては
『グラナダ基地』とか、
『ゼダンの門』みたいなもので、
自分とは遠い世界、アニメに出てくる固有名詞も同然だった。
私立中学受験にかかる各種費用、
それこそニュータイプでもなければ受かりそうに無いその難易度、
どれを取っても僕には近づくことすらかなわぬ世界だった。

大体、僕は彼女がどこの学校を目指しているのかすら知らなかったのだ。

 中学受験の追い込みにさしかかる12月の半ばになると、
水原恭子の一日のスケジュールはこんな感じだった。
 朝登校→僕に軽く挨拶。

→図書室に引っ込んで勉強
(もちろん対私立中学攻略用・四谷大塚製第一種戦闘装備で)
息抜なのか、時々ファッション雑誌や映画雑誌を読んだりもする。

→下校時刻になると即タクシーを召喚。

校長以下の職員は例の事件以降、彼女に恐れをなしていたので
このスケジュールには何も言わなかった。
そんなわけで、僕は水原恭子と疎遠になってしまった。
73 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/27 23:08 ID:ErBZRU6+

久しぶりに僕が水原恭子と話したのは、小学生最後の冬休み、
クリスマスイブのことだった。
僕が住んでいた神奈川県南部のK市は、
少子化が進みじいさんばあさんばかりが増えた昔ながらの観光市で、
クリスマス期間でもそれほど華やかなムードに包まれるわけではない。
不況の影響もあって土産物屋や和食系レストランが多い商店街では、
プラスチック製のもみの木もどきの飾りつけをぽつぽつ見かける程度だった。
 そんなしょぼいクリスマスイブの夕方、
レンタルビデオ店に向かう道中、
僕は水原恭子・・・正確には水原ファミリーと遭遇した。

 僕はTシャツの上にユニクロのフリース一枚、下はジャージという格好で駅前通をとぼとぼ歩いていた。
時々時代劇のロケなんかに使われる神社から、JRのK駅まで伸びるこの駅前通には、
観光雑誌やTVの名所めぐりの番組では必ずと言って良いくらい良く紹介される、『敦賀屋』という和食の名店がある。
完全予約制のこの店を利用するのは、新興成金が多数を占めるガーデンランドの住人か、
あるいは東京からわざわざやってくるグルメさんご一行くらいで、僕ら地元原住民とはほとんど縁が無い。
コース物なら3万円とも噂される難攻不落の最終要塞、
それが総檜作りの『敦賀屋』だった。
74 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/27 23:10 ID:ErBZRU6+

 僕が『敦賀屋』の前を差し掛かると、店内から男女4人が出てきた。
上品なグレーのハーフコートを着た中年の男、
カラシ色のロングコートを着た中年の女、
ダブルのスーツを着た青年、
そして真っ赤なコートにチェックのマフラー姿の水原恭子。
言われるまでも無く、水原家メンバー
・・・水原父、水原母、水原兄、そして水原恭子・・・
だった。
 
「あ。内田クン。」

僕はなんだか決まり悪くてそのまま通り過ぎようとしたが、水原恭子に気付かれてしまった。
でも僕はそのまま歩き続けた。
だって、ねえ?
レンタルビデオ店で『0083』を借りた帰りの、
こんなみすぼらしい男の子がですよ、おたくのお嬢さんに話しかけたら、どうします?
いやっしょ?お父さんお母さん。
お兄さんも思うでしょ?
大事な妹さんには、もっとふさわしい相手がいるって。

「あ、待ってよちょっと、ねえ待ってってば。」

通り過ぎる僕に水原恭子は駆け寄ってきた。
75 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/27 23:11 ID:ErBZRU6+

「なーんで無視するんだよぅ?私が声かけたっていうのに。」

口を尖らせて水原恭子は言った。
・・・正直、僕はあなたが怖いッス。
とても、
『やあ!水原さん!!家族で外食の帰りかい!!ほお、『敦賀屋』とはまた豪勢な、けっこうけっこう!!!』
なんて言えませんて。

「・・・別に、無視したわけじゃないよ・・・。なんか、家族で居るのに、ちょっと悪いかな、と思っちゃって・・・」
「はぁ?なんていうか、内田クンっていっつもくだらない遠慮するよねえ。いいからそこで待ってて。」

水原恭子は様子を見守っていた両親の元へかけよると、何か叫んでいた。両親は笑いながら大きく頷き、
僕とは反対方向へ歩き始めた。
お兄さんらしき青年は振り返ると、僕に小さく手を振った。
76 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/27 23:12 ID:ErBZRU6+

「・・・どしたの?」

「私はあの子とちょっと話すことがあるから、先に帰ってて、ってウチの両親に言ったの。」

話すこと、ッスか。
ストイックな僕もちょっとトキメキますね。
ええ、トキメキますとも、ジオン残党の僕でさえ。

・・・僕の脳内妄想では、
水原恭子:CV榊原良子、
内田祐樹:CV大塚明夫
というキャスティングで次のようなアフレコが実施されていた。

『ウチダ少佐。短刀直入に言おう。デラーズフリートを捨て、アクシズに恋、っていうか来い!』←榊原良子
『み、ミナハラ総帥閣下!わたしわっ、デラーズ閣下を見捨てることができまっせん!』←大塚明夫
『・・・私が、おまえを愛しているといってもかっ!』←榊原良子
『はぁううっ!なんだこのプレッシャーは!!』←大塚明夫
77 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/27 23:13 ID:ErBZRU6+

「・・・最近、しゃべんないよね?」
「・・・うん。」
「まあ、私が教室に顔出さないから仕方ないんだけど・・・。
図書室に来て、話してくれたっていいじゃん?」
「だってさ・・・勉強してるし、邪魔しちゃ悪いな、と思って。」
「まあね。でもやることが無いから塾の課題でもやってよっか、って感じだから、その気遣いは無駄。」
「え?でももうすぐ受験でしょ?」
「うん。でも私、それぐらい余裕だから。」

並んで歩いていた水原恭子が、にやっと笑って僕の顔を覗き込む。

「す、すごいね。」
「内田クン、私のこと金でなんでも思い通りになると思い込んでいるジコチュー女だと思ってたでしょ?」

いいえ違います。僕はあなたが、
“金とルックスで世の中なんてどうでもなると思い込んでいる、
外見は美少女精神年齢は熟女のバイタリティ溢れるクリーチャー”
だと思っていました。
78 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/27 23:15 ID:ErBZRU6+

「私はねえ・・・実は、頭の方もけっこうイケるんだよ?」

水原恭子は僕の顔を覗き込んだまま、こつこつと人差し指で額を叩きながら秘密めかして言った。僕は思わず笑ってしまった。

「ひっどい、別に笑わそうと思って言ったんじゃないよ?
どうも内田祐樹クンはこの水原恭子サンを誤解しているようですねえ。」
「いや、ごめん。ごめんなさい。だったら、水原さんは完璧だね。」
「完璧って、どこが?」
「まず家がお金持ちで・・・」
「・・・別に私の財産じゃないけどね。」
「それから頭が良くて・・・」
「・・・まあ、御三家レベルは余裕かな。」
「・・・それから・・・」
「それから?」

怒るかな・・・。
でも、ホントにそう思うし、誰だってそう思うだろうな・・・。

「・・・かわいいし・・・」

水原恭子の顔からニヤニヤ笑いが消えた。
一瞬、アーモンド形の瞳をびっくりしたように大きく見開いて、僕を見つめる。
そして、微笑んだ。
これまでに(といってもたかだか数ヶ月間だけれど)見たことの無い、
優しそうな笑みだった。
79 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/27 23:16 ID:ErBZRU6+

「・・・かわいい?私が?」
「・・・うん。かわいいっていうか・・・きれい・・・だと思う・・・」

僕はごにょごにょ言うだけだった。

「ん?なに?もう一回。」

・・・追い討ちをかけるなんて、厳しいなアンタ。武士の情けってもんは無いのですか。

「いや、だから・・・」
「ああぁん?良く聞こえないよ?」

俯く僕の顔を、水原恭子は下から覗き込んだ。

「・・・水原さんは、きれいだな、って。」

突然、水原恭子の顔が急上昇する。僕は思わず目をぎゅっと閉じたけれど、
ほっぺたに、濡れた物がかすかに触れる感触がした。
・・・うわッ・・・えッ・・・まさか?
いやまさかまさか。その攻撃は南極条約違反だろ。
80 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/27 23:19 ID:ErBZRU6+
主人公キャラも本人もヘタレパイロットなので、
またもここまでです。
すみません。盛り上げも全然足らなくてごめんなさい。
8123 ◆bxyzd8gFCE :04/01/27 23:55 ID:syGcj1/4
>> ◆LZ40ROiqVQ 氏
乙彼様です〜

何か凄まじい萌えが渦巻いてくるのは何故?
今、水原恭子タソが寝取られて欲しくないとマジで思っている俺がいる……!
82名無しさん@初回限定:04/01/28 02:15 ID:7/0LIBeP
だがしかしマジで寝取られてほしくない恭子タンを、寝取られてほしい俺がいる……!
8323 ◆bxyzd8gFCE :04/01/28 02:47 ID:iMQfoaMp
|∀゚)ノ
84名無しさん@初回限定:04/01/28 09:00 ID:aRUhkCh7
◆LZ40ROiqVQさんおもしろかったですよ〜
でも、少しアニメネタというかガンダムネタ控えたほうがもっといい作品になると思いますよ〜
主人公の子供っぽさを表現してるのかな?
あくまでも俺自身の勝手な感想ですけどw
85名無しさん@初回限定:04/01/28 18:47 ID:9QOEARgi
最近、和姦寝取られ(ヒロインと寝取り男がラブラブ)が多いけど、第1夜の中盤のような
陵辱寝取られ(好きじゃないけど身体が求めちゃう)はこのスレ的にどうでしょう?
後者でもOKならSS書いてみようかと思うんだが・・
86名無しさん@初回限定:04/01/28 19:17 ID:HIjEv+TD
いろいろあっても勿論OKでしょう。
書いていただけるなら、ROMとしては、
これ以上嬉しいことはありません。
ぜひぜひ投下を。
87名無しさん@初回限定:04/01/28 19:57 ID:F7Lax93d
◆LZ40ROiqVQさん、小学生時代から書くというのは後々ダメージが大きそう
でとても楽しみです。あんまり関係ないですが東野圭吾氏の白夜行を思い出
しました。ぜひとも最後まで書いてください。
88 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/28 23:00 ID:Izto1ejx
>>84
お好みに添えなかったようで申し訳ないす。
主人公の成長やヒロインへの心情によって文体が変わるっていう
のをやってみたくて。あえて小学生時代はコミカルに、というつもり
だったのですが・・・

本日分も、ガンダムネタ入ってます。すいません。
89 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/28 23:01 ID:Izto1ejx
1 
おそるおそる目を開くと、僕の視界は水原恭子の顔で埋め尽くされていた。
 思わず手を伸ばしたくなるくらいなめらかで、透き通るように白い肌、
 ちょっとツリ目気味だけれど、きれいな二重のアーモンド形の瞳は蟲惑的という表

現がぴったり(当時は知らなかったけれど。)
 ほっそりと筋の通った鼻のライン、
 小さく尖った顎、
 ちっちゃいけれども優しそうなカーブでまとまった唇、
しかも半開きになったその唇から漏れてくる水原恭子の吐息は僕の顔を直撃して・・

・なにかの果物のような・・・林檎?葡萄?・・・
とてもイイ匂いがする。

僕は今、どんな表情をしているのだろう?
なんだか耳の付け根あたりが妙に熱いけれど。
90 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/28 23:03 ID:Izto1ejx
2
『少佐!大変です、敵モビルアーマーが防衛線を突破しました!
現在急接近中です!!』
『落ち着けウチダユーキ。で、こちらの被害状況は?』
『敵の核攻撃を至近弾で食らいました!
いやひょっとしたら直撃かもしんないです!
機体温度上昇中!
被害は甚大ですっていうかもうダメ・・・』


突然、水原恭子は笑い出した。
突拍子もなく、物凄い勢いでげらげら笑い出した。
何事かと道行く人々が振り返るが、
そんなことはお構いなしに水原恭子は笑い続けた。

「・・・な、なんだよ・・・」
「うっわぁ、内田クン、スゴイ顔色。すんごい真っ赤。」

言われて顔に手を当ててみる。確かに熱い。
91 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/28 23:04 ID:Izto1ejx
3
「ちょっと大丈夫?やばいくらい真っ赤だよ?
いっやあー、私の攻撃がここまで効いちゃうとは。」

水原恭子は、手袋をした手で僕の顎をつまんで持ち上げた。
そして僕の顔を覗きこむと、さらに笑った。

「なんだよ、からかっただけかよ・・・。」
ようやく冷静に戻った僕は言い返した。

「ん?からかっただけじゃない、とでも?」
突然、水原恭子は真っ直ぐに僕を見つめて言った。
その視線に僕は再びたじろいでしまう。

「いや、別にその・・・
からかわれたからどうこうってわけじゃなくって・・・そのぉ・・・」
「さあて、どうでしょうかねえ?
あんまり深い意味を求めないほうがいいかもよ?
傷ついて悲しくなるのは内田クンだからね。」

ほあ〜なんていうか、すごい自信ですな。
流石は最終MA、Iフィールド防御は完璧ですか。
92 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/28 23:06 ID:Izto1ejx
4
「だから、その、僕は別に・・・」
「内田クン、私がいなくなっちゃったら、どうするの?」

はぁ?唐突に何を言い出すのですか?

「私が私立に行って・・・内田クンが公立に行って・・・
そしたらこれっきり、今生の別れって感じかな。」
「そんなの、元の生活に戻るだけだよ・・・
水原さんが転校してくる前の生活にさ・・・」
「話す相手がいなくなっちゃよ?
お弁当一緒に食べる相手もいなくなっちゃうよ?」
「そんなの別に・・・なんでもないよ・・・」
「あーあ、想像できちゃうなあ。
中高6年間、教室の片隅で一人寂しく固まっている内田クンの姿が。
もう登校拒否、引き篭もりまっしぐら、って感じ。」

・・・ひでえ・・・。

僕はあなたと違ってもうちょっと社会性のある児童のつもりなんですがね。

「それでさぁ、マリリン・マンソンなんか聴いちゃったりして、
なんかアブナイ目つきになっちゃって。」

・・・僕はアニソンくらいしか聴きませんて。

「・・・で行き着く先は、ボーリングフォーコロンバイン。
校内でダダダダダーッ。」
93 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/28 23:07 ID:Izto1ejx
5
水原恭子は見えないライフル銃を両手で構えて撃つそぶりをした。
彼女が着ている真っ赤なコートは、
襟が広い上にウェストが細く絞られているので、まるで軍服のようだった。

「・・・日本にゃ銃は売ってませんて。」

なぜかニコニコしながら水原恭子はスキップしながら僕の前を歩く。
そして大通りから路地裏へと続く小道の、人通りの少ない角で立ち止まると、
僕に手招きをした。
いささか常識に欠ける彼女の突拍子も無い行動には慣れていたけれど、
ひょっとしたら『敦賀屋』でワインでも飲んだんじゃないか、と僕は思った。

 僕が近づくと、彼女は急に僕のフリースの両袖を掴んだ。
 ・・・心臓がたっぷり5cmは跳ね上がった。まじで死ぬって。

でも、次に彼女が口にした言葉は、僕の予想を遥かに超えた。
94 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/28 23:08 ID:Izto1ejx
6
「内田クンさぁ・・・私のこと、好きでしょ?」

・・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・・・・?
えーと、自分はどうすれば良いのでしょうか?教えてくださいガトー少佐。

「ん?どうよ?言っちゃえよ言っちゃえ。」


『ガトー少佐。これは一体どういうことでありましょうか?』
『敵のセンサーに動きは?』
『なんだか良く分かんないスけど、こちらの様子をじっと伺っています。』
『・・・うむ・・・おそらくこれは・・・敵の本格攻撃の前兆だな。』
『と、いいますと?』
『・・・次に直撃を食らえば、我々は終わりだろう。』
95 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/28 23:09 ID:Izto1ejx
7
「ぼ、僕は・・・それは・・・で、でも、言ったら・・・
水原さんきっと怒るし・・・怒るとスゴイ恐いし・・・」

僕は本当に恐がっているみたいに、声が震えていた。
でも水原恭子は、石井正人を脅した時と同じように、
落ち着き払ったポーカーフェイスに
かすかな微笑みを浮かべているだけだった。

「そうですねえ、返事によっちゃあ、怒るかも知れませんよねえ?」

僕の腕を掴む力が、ぎゅっと強くなる。
いや実際、水原恭子を怒らせると怖い人が押し掛けてくるんだよね。
しゃれにならないって。

「ぇぅう・・・水原さんは、僕を嫌ってるよね?きっと。
嫌いだから、こういうふうに僕をからかうんだよね?」

「んー?質問してるのは、私だよ?」
96 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/28 23:11 ID:Izto1ejx
8
水原恭子の視線に耐え切れなくなり、僕は目を閉じてそっぽを向いた。

『ガトー少佐!!』
『もはやこれまでか・・・総員に各自撤退命令を出せ。降伏しよう。』


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すすすす、
好きだよ・・・・・・・・・・・・・・・。」

「おんやぁ?ぜんっぜん聞こえませんよ?
すーすーと、なーに言ってるんですかぁ?」

「だからさぁ・・・す、好きだよって・・・」

「ほぉ・・・誰が?」

「・・・僕が。」

「誰を?」

「・・・水原さんを。」

「好きであると、そう主張されるわけですな、内田祐樹クンは?」

「あーそうだよ、だからもうやめてよ・・・
こんなにからかって面白がるのはさぁ・・・」

水原恭子が、僕の頬に手を伸ばす。
ひょっとして・・・殴られる?
実体弾攻撃は、勘弁ね。
97 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/28 23:15 ID:Izto1ejx
9
唐突に、
僕の、
唇に、
寒くて寒くてカラカラに乾いてちょっとひび割れている唇に、
何か、
ぬれたやわらかいものが、
ふにゅっと、
・・・押し付けられました。




ひょっとして・・・んー・・・こりゃあ・・・その・・・あれだ。
もう・・・終わりだな。限界だな。
98 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/28 23:17 ID:Izto1ejx
10
「じゃね。バイバイ。」

気がつくと、水原恭子は手を振りながらスキップで立ち去ってゆくところだった。
僕は半ば意識を失ってボケッと突っ立っているだけだった。
水原恭子の姿が見えなくなったところで、
僕のそのまま前のめりに倒れてしまった。

・・・小学生時代に彼女に会うのは、これが最後だった。



正直、僕は彼女に心底嫌われていると思っていた。
だから、あえて彼女を避けていた、というのもある。
それはある事件・・・僕のトラウマにもなったある事件が原因だった。
99 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/28 23:20 ID:Izto1ejx
本日はここまででございます。脳内妄想ネタ、もうちょっと控えます。

次回は多少、エロいかもしれません。よろしければお付き合い下さい。
100名無しさん@初回限定:04/01/30 10:20 ID:UdQztFXb
乙。
次はいよいよ青雲編かー
事前情報は構えてしまうので少な目がいいな
101名無しさん@初回限定:04/01/30 12:33 ID:s74LRHFu
所々入るガンダムネタ……かどうかは知らないけど、非常に違和感
でも、ストーリー展開としては面白くなりそう
102第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/01/31 00:04 ID:zY07gdy8
今日、秋葉に行ってきました。
エロゲの売り場はどこも大混雑。
めぼしい所の店は、レジに相当の列が出来ていました。

こんなのは、あんまり見たことないんだけれど・・・・・・・・・



と、前置きは このくらいにして、
次のレスから、うpしまする。

今回から ちょと趣向をかえて、暫くは、小出しにうぷしていく予定でおります。
103第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/01/31 00:04 ID:zY07gdy8
1/5
絆、彼女が俺に求めたもの。
だけど、一体どんな絆を彼女との間に築けば良いんだ?
彼女は言った。俺と香織の間よりも太くて強い絆が欲しいと。
でも、どうすればそんなものを作ることができるって言うんだ?
彼女の方を見る。相変わらず俺の体にその身を預け、両の腕を俺の体にまわしてしがみついている。

彼女の望む絆とは一体何なんだろう。
俺だって、彼女との絆が欲しい。でも、それは彼女が望んだものと同じなのか?自分が求めた事が彼女に嫌わ
れる事になりやしないか?
相変わらず進歩がない。同じ処をグルグルと堂堂巡りしているだけだ。

それよりも、今はもっと差し迫った問題がある。
さっきから、自分の心臓は非常サイレンをずっと鳴らしっぱなしだった。
興奮は極限までに達している。
と同時に 俺の一物は大きく 硬く竣立し、ちょいと針でもさせば爆発してしまうのではないかと思うほど 
腫れ上がっていた。
何時まで理性を保っていられるだろうか……時折、臍下の奥の辺りがギュッと熱くなるような感じがした。

本能に負けたのかもしれない。俺の腕は彼女の華奢な肩を掴むと、強引にグイっとかなりの力で自分の方へ引
き寄せた。
自分がこんな事を……相手の気持も考えずに抱きしめる事をするなんて、考えても見なかった。
我ながら呆れてしまう。
なのに 彼女の腕は、俺の腕から逃れようともがくのではなく、逆に『もう逃がさない』とばかりに力を込めて
しがみつき、その後 手を背中に、胸に、肩に 俺の体を優しく弄る様に せわしなく、柔らかく動かしてい
た。

な……何て事をしているんだ、彼女は。
104第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/01/31 00:08 ID:zY07gdy8
2/5
理性が…辛うじて首の皮一枚で繋がっていたものが切れる……駄目だよ。こんな事されたら、俺は君を襲って
しまう。もう限界はとっくに超えてるんだよ!

「と……遠野さん」

返事がない。相変わらず彼女の腕は俺の体に絡みついたままだ。俺の声が聞こえなかったかのように、その手は俺の体を弄り続けている。

「遠野さん」

「嫌!」
また『嫌』だ。しかも、さっきより激しい。一体どうしたんだ?

「『嫌』って、どうしたの?」

「そんな呼び方しないで」

「呼び方……」

「あの人の事は『香織』って名前で呼んでるじゃない。なのに、私の事は『遠野さん』なの?名前で呼んでく
れないの?」

「名前……」

「私の事も……名前で、…呼んで欲しい」



105第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/01/31 00:13 ID:zY07gdy8
3/5
「名前で?」

「『景子』って呼んで」

今まで、彼女を名前で呼ぶ事を考えていなかったわけじゃなかった。
でも、実際に呼ぼうとして、どうしても言葉がでなかった。
気恥ずかしさがあったし、それに 怖かった。
俺は、女の娘に向かって名前で呼べるほど言えるほどの親しいと、胸を晴れるだけの存在なのか。単なる独り
善がりじゃなかろうか。
もし、名前で呼んで、『狎れ狎れしい』って言われたらどうしよう、そう思っていつもためらっていた。
けれど、今は違う。彼女の方から要求しているんだ。

「景子……ちゃん」
今言われた事がまだ半分信じられなくて、恐る恐る呼んでみる。声は震えていたのは間違いない。
香織以外の女性に、初めて名前で呼んだ。
何だか、くすぐったい。けれど、彼女グッとが近づいた感じがする。
頭では解っていたけど、苗字で呼ぶか名前で呼ぶかでこんなに感じが違事に、少し驚いた。

「博昭……くん」
彼女も名前で呼び返してくれる。やはり、『田川君』と呼ばれるより、数段嬉しさが違う。

「景子ちゃん」
「博昭くん」
「景子ちゃん」
「博昭くん」
「け い こ ち ゃ ん」
「ひ ろ あ き く ん」
何度も呼び合い、強く抱きしめあう。……完全なバカップルだ……
106第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/01/31 00:15 ID:zY07gdy8
4/5
それでもいい。二人でこうしていられるなら、何を言われてもかまわない。
でも……自分の気持は、さらに上に行こうとしている。
ここから先、思いに任せてやってしまうのは、獣のする事だ。そんなことはしたくない。
……でも……したい。
彼女を、自分のものにしたい。メチャメチャになるほど、彼女を愛したい。

もう、本能が理性をはるかに上回っていた。
完全に理性を覆い尽くすまで、もう後幾程の余裕もない。
とにかく、冷静にならなくちゃ。こんな事で嫌われたりするのなんて、ごめんだ。
「景子ちゃん……あのね……落ち着いて訊いて欲しいんだけど…」

「……どうしたの?……」

「あ…あのね、こういうの……本当嬉しいんだ。君の事ギュって抱きしめることができて……いつまでもこうし
ていられたらって思って……」

「……うん。……私も、ずっとこうしていたい。……このまま、時間が止まればいいのに……」
その言葉に、思わず腕に力がこもる……。彼女の手は、変わらず 優しく俺の背中を撫でていた。

「だから……だからね、…………怒らないで、冷静に聞いて欲しいんだけど、……一旦、ちょっと離れて……」

「何故?」
胸元に押し付けられた彼女の額が左右に揺れる。彼女の吐息が水月を暖め、さらに興奮が増してくる。

「わぁっ……たっ……ちょ…ちょっと、……ごめん。もう、限界なんだよ。これ以上こうしてると、君の事 襲
っちまいそうなんだ」

「……え?……」
107第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/01/31 00:17 ID:zY07gdy8
5/5
「僕は、君が……好きだ。君の事、大切にしたい」
「だけど、……情けないけど、こうしていると 君を襲ってしましそうなんだ」

「…………」

「僕はね、古臭い考え方かもしれないけれど、そういうのは二人がお互いの気持を確かめ合って、その上で、
両方が したい と思わなければ、しちゃいけないと思ってる」

「……うん……」

「いくら好きでも、激情にまかせて……ていうのは、ダメだと思う。
「このまま、君の気持ちも解らずに暴走するなんてのは、許されないから……だから……」

「いいよ」

「え……?」

「あなたに……博昭君に傷つけられるのなら、私は構わない。だから、傷をつけて。消える事のないあなたの
爪痕を、私につけて」

「本当に、良いの?」

「……何度も、言わせないで」
頬がうっすらと赤く染まっている。
既に彼女の腕に力はなく、目は伏せられている。
もう、止める事は出来ない。

彼女を力一杯抱きしめた後、俺は 彼女の淡くピンク色をした唇に、自分の唇を重ねた。
108第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/01/31 00:18 ID:zY07gdy8
本日は、此処まで。





P.S
Fate 買いました。
でも・・・・・・
109名無しさん@初回限定:04/01/31 00:33 ID:Iue5fnHJ
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

ヒロクンが、ヒロクンが寝取られるぅぅぅ
110 ◆LZ40ROiqVQ :04/01/31 01:08 ID:zYkT8QXW
>> 603 ◆fzpLpgOYbk さん
ヒロインの書き分けとキャラ立、上手いっすよね〜
もいらも見習わないと。
111名無しさん@初回限定:04/01/31 01:59 ID:l6g0wfSI
>>109
ワラタ。
112名無しさん@初回限定:04/01/31 08:13 ID:SkJEuKBr
「由美ちゃん…」
「太陽くん…」
「由美ちゃん……」
「太陽くん……」

「おいおい、何見つめあってんだよ」
「ちゃんと練習しろよ〜」

を思い出してしまいました。すいません。
113名無しさん@初回限定:04/01/31 09:04 ID:kqXY58MW
>>112
ワラタ…ら年がばれる罠
114名無しさん@初回限定:04/01/31 22:35 ID:byP+qwX0
ちくせう、ちくせう・・・・ヒロクンがぁ・・・・でもなんか嬉しいとか言ってみるテスト
115名無しさん@初回限定:04/02/01 00:51 ID:X5FA1p6v
>「あなたに……博昭君に傷つけられるのなら、私は構わない。
>だから、傷をつけて。消える事のないあなたの爪痕を、
>私につけて」
もう少し盛り上げた所なら良かったんだけど、
チョット浮いてるかも。
116名無しさん@初回限定:04/02/01 09:36 ID:9LzM24Xe
やはりヒロクンが寝取られる話だったか・・・

ところで女性にも寝取られスキーっているのかな?
117名無しさん@初回限定:04/02/01 11:08 ID:dAiYqEQm
ヒロくん寝取られって何視点?
当然香織視点だよね。
俺的には香織はすでにヒロイン脱落だからこれで本筋ルートに入ったように思えるよ。
118 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/01 23:39 ID:WgNX0gnn
お待ちしてくださる方がいらっしゃいましたら今晩は。

本日分の投下でございます。

冒頭、意味不明の三人称視点の描写が入りますが、これは
主人公の現在の姿です。
119 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/01 23:40 ID:WgNX0gnn
1,
暗闇の中で、ぜえぜえという男の荒い息が聞こえる。
やがてその間隔は短くなり、何か魘されているようなつぶやきも混じるようになり・・・

「あっ!」

唐突な叫び声とともに男が跳ね起きた。
青年と言われる年齢だが、汗でびっしょりと濡れたその裸の上半身は痩せ細り、
青年というよりも思春期の少年に近い。
夜毎の悪夢にうなされるその顔は疲労の色も濃く、げっそりとやつれている。
ベッドの上で半身を起こした状態で、青年は頭を抱えた。

・・・まただ。もう幾度、こんなことを繰り返せば、忘れられるのか・・・。

「大丈夫?」

寄り添って寝ていた女が、青年の額に手を当てる。
彼女こそは、ようやく彼が辿り着いた安らぎそのもの。
彼女の助けが無ければ、青年はとうの昔に、自ら命を絶っていたことだろう。
心の底から青年を労わるその声音には、母のような、姉のような無償の慈愛が滲み出ている。
120 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/01 23:41 ID:WgNX0gnn
2,
「ごめん・・・。また、起こしちゃったね・・・。」
「いいのよ・・・。いつものことだし。何か飲む?」

青年が頷くと、彼女はベッドから降り立った。
引き締まっているが、豊かに恵まれたその体躯は、それまでずっと抱き締めていた青年の汗で、
白木に塗ったニスのように濡れていた。
燐光を発するようにほの白く輝くその裸体が、深夜の暗闇の中に消えてゆく。
程なくして戻ってきたとき、彼女の手にはミネラルウォーターが一杯に注がれたグラスが握られていた。

「これを飲んで、落ち着いて。」

青年はゆっくりと飲む。
目の周りに深く刻み込まれた隈や、脂汗で額に張り付いた前髪が痛々しい。
その上半身には、いくつかの大きな傷跡がある。
中でも目を引くのは、刃物によるとおぼしき、一直線に伸びてひきつれた脇腹の傷跡だ。
だが、体に刻まれた傷跡よりも彼を苛むのは、
心に刻まれた・・・おそらく終生消えることの無い、思い出という傷跡。
121 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/01 23:42 ID:WgNX0gnn
3,
「また、怖い夢を見てたの・・・?」
「・・・いや。昔を思い出してた。ずーっと昔のことを・・・。僕がまだ小学生の頃の・・・。」
「・・・あの娘の、こと?」

ややあって、青年はゆっくりと頷いた。それを見て、彼女の美しく整った面立ちに絶望の色が浮かぶ。

・・・どうあがいても、消し去ることは出来ないんだ・・・。

はじめて出会った時から、この人の側に居たいと願い続け・・・
ようやくその願いが叶った時、彼の心は壊れていた。
何よりも憎いのは、心身ともに取り返しがつかぬ程彼を傷つけたあの娘。
しかしその娘も、その共犯者達も、もはやこの世には居ない。
今の自分に出来ることは、夜毎の悪夢に苛まれる彼を、ただひたすらに抱き締めて守るだけ・・・。

「ごめん・・・。ずっと側に居てくれているのに、こんなままで・・・。」
122 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/01 23:44 ID:WgNX0gnn
4,
かつてのような軽口も、はにかむような笑みも、もはや青年の顔に浮かぶことは無い。
変わらないのは、彼女に対する敬意と優しさだけ。
しかしそれも、今では心のどこかで彼女を遠ざけているような、よそよそしさに感じてしまう。

「・・・もう忘れたら、なんて、わたしには言う資格、無いよね・・・。」

何もしてやれないやり切れぬ無力感が、全身を浸してゆく。
それを振り払うように、彼女は、うなだれる青年の頭を、その胸にそっと抱き締めた。

「でもね・・・。これからはわたしがいるから、きっと大丈夫・・・。」

再び二人でベッドに横たわる。
もはや愛を交わす気力すら無いほどに憔悴しきった青年は、抱き締められた姿勢のまま、
幼子のように寝息を立て始めた。

・・・・・・・・・どうして、こんなことになっちゃったんだろう・・・・・。
123 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/01 23:45 ID:WgNX0gnn
5,
「そりゃ諦めた方がいいわね。」

オレンジアイスキャンデーを舐めながら、琴ちゃんはあっさり言った。
中学一年の夏休み、僕たちは駅前の本屋の2階にある塾の夏期講習に通っていた。
琴ちゃんは高校受験、そして僕は授業の補習だった。

「なんでさ?だって、キスしてくれたんだよ?」
「確実にからかってるね、それ。だって、自分からは何も言わなかったんでしょ?」


中学に入学して、僕が新たに学んだこと。

その1、水原恭子の予言どおりには事はすすまなかった。
少子化による学校の統廃合計画のおかげで、僕たちの小学校は、
隣の市の3つの小学校とともにひとつの市立中学に入学した。
一学年400人、12クラスのマンモス中学には、当然僕の家庭環境を知らぬ者たちも多く、
またアニメやマンガが縁で気が合う友人グループもそれなりに出来た。


その2、僕にとって制服の存在は有り難かった。
大体僕は、服装にはあまり気を使う方ではなかったし、毎朝の着替えで悩む必要が無いのは嬉しい。
なにより、他人に比べて惨めな自分の服装であれこれ思い悩まなくて済む。
124 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/01 23:47 ID:WgNX0gnn
6.
その3、部活のシゴキは、琴ちゃんから聞かされていたのとはかなり様子が違っていた。
僕はなんとなく陸上部に入部してみたのだが、
どういうわけかマッチョな3年の先輩(男)や、
3年の女子部の先輩(当然女)に良く目をつけられて、
僕はトレーニングや校庭ランニングを他の一年以上によくやらされた。
それが終わって僕が疲れ切ってよろよろしていると、
彼らはなぜかハァハァ息を弾ませて近寄ってきては妙に親切に僕に接するのだ。どういうことなんだろう?


その4、中学校の教師連中は、小学校の教師に輪をかけてやる気が無かった。
科目ごとに専任の担当教師がおり、算数は数学と名を変え、
理科は物理だの化学だのと名を変えてややこしくなった。
なにより、僕がてこずったのは英語だった。
いちいち単語の発音や綴りをどうやって覚えたら良いのかてんでわからなかったし、
文法だの英作文だのはさっぱりだった。
と、いうわけで、僕の中学最初の中間テストと期末テストは学年平均の半分以下、世に名高い『赤点』だった。
125 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/01 23:49 ID:WgNX0gnn
7.
『授業を聞いているだけじゃ、正直中学のカリキュラムにはついていけない子が大半ですよ。
自助努力が必要ですね。』

1年3組の担任である福島正子(43歳)は夏休みまえの三者面談において極めて事務的にそう述べた。
親父はおろおろしていた。

『でも、自助努力てったって・・・何をすればいいんですか?』
『この年齢のお子さんが自発的に勉強する習慣を身に付ける、というのもなかなかキツイですしねえ。
とりあえず、学習塾に行ってみてはどうですか?』
『・・・学習塾、ですか。』
『・・・・・・今時、みんな通ってますよ。学校なんて当てにならない、ってね。』

というわけで、僕は少なくとも夏の間、琴ちゃんと一緒に
『神奈川プレパレトリースクール』なる中堅どころの塾に通い、
特に惨憺たる結果だった数学と英語の強化を図ることとなった。
親父は、僕の成績なんてかなりどうでも良かったようだが。
126 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/01 23:50 ID:WgNX0gnn
8,
「だけどさ、だけどさ、年賀状とか来たじゃん?」
「ああ、あの自慢たらったらの年賀状?あんなの、特別な意味は無いって。」

水原から来た年賀状は、僕が12年間で初めて(親戚以外の)女の子から貰った年賀状だった。
どこか外国のリゾートで撮ったと思しき写真が裏面にプリントされていた。
真っ白な砂浜をバックに、セパレートタイプの水着の上にパーカーを羽織った水原が、
籐の木で編んだ椅子に座ってカメラに向かってピースサインを突き出していた。
そして小さく、『謹賀新年』と隅に書いていた。
それが無ければ、なにかの観光案内かと思ったろう。

「でもさぁ、その後で春休みに手紙も着たじゃん?」

琴ちゃんはちょっと溜息をついた。

「まあ、あんたがその子を好きだってぇのは判るけどさ・・・
もう忘れたほうがいいって。」
127 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/01 23:51 ID:WgNX0gnn
9.
春休み、水原から短い手紙が届いた。
『内田裕樹君へ』から始まるその文面はたった数行しかなかったが、
転校してなにもわからなかった私に色々教えてくれてありがとうだのといった性も無いことが、
極めて・・・いやかなり・・・っていうかどう読んでも無愛想かつ事務的に綴られていた。

一つの収穫は、水原が激戦の結果松栄学園という有名私立校に合格し、
春から都内にあるというその学校に通うという事実だった。
その松栄なる学園は初等部から高等部まで揃っており、年間授業料は150万、
一学年120人のうち100人はT大に現役合格するという超エリート校だった。

「どうせ、私立のお嬢様学校で、今頃『おねーさま』とかぬかしてるって。
お茶やったり生け花やったりしてさあ。」
128 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/01 23:53 ID:WgNX0gnn
10.
あの水原が、少女小説で良くあるように、先輩と性別を超えて親密になったり、
礼儀正しく学校行事に参加したりという姿は・・・全く想像できない。
『あなた、私のスールにならない?』なんて言われても、鼻であしらいそうだ。
なにより。

「・・・松栄は男女共学だよ。」
「じゃ、ますますだめじゃん?
頭が良くて、かっこ良くて、親が資産家のお坊ちゃんをBFにしてるんじゃない?
あーあ、あんたの恋も終わったね。」

・・・その可能性は・・・残念なことに十分有る。
と、いうかいずれそうなることはほぼ確実だろう。
琴ちゃんも彼女なりに僕を励ましているのだった。
129 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/01 23:53 ID:WgNX0gnn
11.
・・・僕のことなんて、もう忘れているかもな・・・。

卒業式の日に渡そうと、僕は水原の名前(と一緒に小さく僕のイニシャルであるY.U.)
を刺繍した布製の定期入れを、母が残した電動ミシンとキャンパス布地で自作した。
(僕は結構器用なのだ。)
結局水原は卒業式には来なかったので、預かった証書と一緒に彼女の家に郵送した。
どこまでもクールな水原のことだ、ちらっと見ただけですぐに捨てたかもな・・・。

終わった恋をうじうじと思い悩んでも仕方ないのだが、
しかしあのほっぺたと、まあなんというか一瞬ではあったが
唇への・・・の2度のキス・・・はなんだったんだろう?
アメリカンジョーク?

水原にはある種の2面性があったけれど、
クリスマスイブの夕方、何が彼女をあの行動へと走らせたのか、僕はわからなかった。
水原が、自分の身内や近しい者達に対して一種の保護者的な感情を抱いているということ、
そして僕に対してとっていた態度の真の理由を知るのは、まだまだ先のことだった。
そして、その時には全てが手遅れになっていた。
・・・とにかく、僕には単純に好意と思えない理由があった。
それは、クリスマスイブの一月ほど前の、ある日の体育の授業の後で起こった事件が原因だった。
130 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/01 23:57 ID:WgNX0gnn
またもや話の進展がトロくてごめんなさい。
エロまで行かなくてもっとごめんなさい。

冒頭の青年は主人公の行き着いた姿です。
彼に何があったのか、となりに居る女性は果たして誰なのか・・・
これからネチネチ綴る予定です。
131第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/02 00:05 ID:eyNUg8ND
> ◆LZ40ROiqVQ  殿
いよいよ新展開。

結構、面白いな、・・・・・・これ。

私の分は明晩うpしまする。





P.S
どうやら、Fateに寝取られ(らしきText)があるとの事。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも、その対象キャラが偉い評判悪いらしい。(AArya
とりあえず、今晩は Fate の世界へ行ってきまつ。
132名無しさん@初回限定:04/02/02 21:51 ID:JXadzewN
喜べ!!Fateに寝取られハケーン!!・・・なんか悲しくなった
133第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/02 23:24 ID:eyNUg8ND
本日分、うpしまする。

1/6
柔らかい。
生まれて初めて感じる 唇の柔らかな感触は、甘美だった。

最初は、おそるおそる そっと。やがて大胆に。
上唇を、下唇を啄ばみ、吸って、舌で感触を味わう。

「ぁ……」

彼女から漏れる吐息が、より一層性的な興奮を沸き立たせる。
もっと……もっと激しく もっと深く愛し合いたい。





自然と俺の手は、彼女の胸を掴んでいた。
女性の持つ この胸の膨らみというものは、神秘の存在だ。
あそこからは、なにか特別な光線でも出ているのだろうか。
男にとって、あの二つの丘を征服したいという欲望には、とても抗えるものではない。
そっと触れると、彼女の体がキュッと跳ねて硬くなった。
いけない、まだ早かったか?……慌てて手を離そうとした瞬間、誰かに手の上から押さえつけられた。
誰が?……考えるまでもない。今此処には、二人しかいない。彼女の……景子の手だった。
その手は、俺の右手を握って自分の胸に押さえつけて、緩やかに 円を描くように動かした。
布越しに伝わる胸の感触、……なんて柔らかいんだろう。
心臓の拍動はさらに激しさをまし、股間の物は破裂せんばかりに腫れ上がり 一部先端から液が漏れつつあった。
134第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/02 23:26 ID:eyNUg8ND
2/6
直に触れて見たい。もう、布越しじゃ満足できない。

右手を掴んでいた彼女の手を左手で剥ぎ取る。自由になった右手でブラウスのボタンを一つ外し、空いた隙間
から中へ手を滑り込ませた。
又、彼女の体が硬くなる。でも、もう俺は手をどけない。止める事なんて出来ない。
初めて手に触れる彼女の柔肌は、すべすべで、柔らかくて、暖かくて、とても気持がよかった。
このまま、ずっとこうしていたい。いや、もっと……もっと彼女に触れたい。
もっと直に触れて、そして一つになりたい。

唇から頬、下顎、耳たぶ、鼻、瞼と、彼女の顔中に唇を 舌先を這わせていく。
その度ごとに、彼女は体をビクッと震わせ吐息を漏らす。その声が、その時の表情が堪らなく愛おしい。

左手でブラウス越しにブラのホックを外す。
戒めが解かれると同時に手をカップの中にいれ、彼女の胸全体を手のひらで包みこんだ。
柔らかくて、且つ弾力のある感触が手に伝わってくる。その中で一点だけ、丁度掌の真中の辺りにある、ちょっ
と硬い感じ、胸の先端だ。
その先端を親指と人差し指の付け根の辺りではさみ、掌で胸の下を支えるように掴む形にかえると、5本の指
にそっと力を入れ、同時に円を描くように手を動かす。
「ふぅ……ぁ……ぁぁ……あぅっ」
先端は見る見るうちに固くなり、彼女の漏らす声が少し大きくなった。

感じるのか?
感じてくれているのか?

「気持いい?」

答えはない。微かに首が縦に振れる。頬の赤みがちょっと増したような気がした。

135第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/02 23:29 ID:eyNUg8ND
3/6
嬉しかった。
あいつは言った、『女の子だって、一緒に気持良くなりたい』と。
彼女と事に及ぶ前、真っ先に頭に浮かんだのはこの事だった。
彼女と一緒に気持ちよくなれるのだろうか、彼女を気持ちよくさせる事はできるのだろうか。
どうすれば彼女は気持ちよくなるのだろうか。

彼女は感じている。気持ちよくて声を漏らしているんだ。俺の愛撫に気持いいと感じてくれているんだ。
何かもう、例え様もなく嬉しくて、彼女をギュッと抱きしめた。
それに反応して、彼女も抱きしめ返してくる。
俺は、幸せだ。
こんなに幸せを感じた事は、生まれて初めてだ。
もう、彼女さえ側にいてくれたら他には何もいらない。
そう感じた。

手の動きを止め、抱きしめ合ったまま、暫くの間じっとしていた。
布越しに 直に 彼女の肌を感じ、全身で重みを感じ入る。
他の何にも替え難い至福の時。
自分と彼女がいる、この空間だけが、永遠の時を刻んでいるかのように感じていた。

しかし、その状態も長くは続かない。
この沈黙を破ったのは、彼女だった。


「もっと……胸以外も触って」



136第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/02 23:31 ID:eyNUg8ND
4/6
一瞬、耳を疑った。
大人しくて清純そうな彼女から求めてくるなんて……
慌てて心の中で首を振る。彼女を神聖視するな。彼女だって人間の女の娘、性欲だってあるんだ!

彼女の言葉をお墨付きにして、左手を腰から下へゆっくりと這わせていく。
それに合わせるかのように、彼女の下半身が俺の一物にこすりつけるように艶めかしく動いている。
なんと言うか、『私が気持ちよくして欲しいのはここよ』と誘導しているかのようだ。
その誘導に従って、手を太腿へと滑らせていく。

胸とは全く違う感触が、左手に拡がる。
勿論、腿の手触りは、すべすべだし、柔らかい。
けれど、弾力が……触った時に手に跳ね返ってくる力が違っていた。
丁度、胸の感触が、ほんの少し気の抜けたゴム毬だとすると、太腿は、パンパンに空気の入った自転車のタイ
ヤ(勿論表面はあんなにゴツゴツしていないが)のそれだ。
左手で、膝の辺りから付け根の近くまでゆっくりと何回も往復して さする。
最初は外側を、徐々にそれを内側に移動させていく。
やがて左手は、両足の真中にある、もう一つの柔らかい場所、神秘の場所へとたどり着いた。

履いているのは木綿素材のものだろうか、指先に感じる繊維の感触は柔らかく、しっとりと湿り気を帯びていた。
『?!』
この湿り気は、そうなのか?
それとも、普通こんなものなのか?

股間に這わせた指先を、ゆっくりと前後に動かしていく。
「……ぁ……ぅ……ふぅ……ぁぁ……」
その動きに合わせて彼女の吐息が漏れ聞こえてくる。何とも艶めかしい音だ。

137第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/02 23:33 ID:eyNUg8ND
5/6
指を動かしていくうちに 湿り気は染みに、そして少しずつその領域を広げる様相を呈していた。
間違いない。彼女は俺の愛撫に感じてくれている。
そう確信し、最期のヴェールに手をかけた。

スカートをたくし上げ、上のゴムの所から左手を入れる。
手を両足の中間にある、僅かに盛り上がった、低めの丘へと、這わしていと、ちょっとごわごわした感触が指
先に伝わってくる。
それは、彼女の陰毛……目的地がもうすぐそこ、という事だ。
既に、そこは彼女が自分で出す分泌液によって 濡れていた。
これって、彼女の愛液だよな?

『ぬるぬるしてる……』

「いや……恥ずかしい。 そんな事言わないで」

「あ……ご、ごめん」
その言葉と裏腹に、心の奥底では『もっと濡らしてやる。この部屋を彼女の愛液で洪水にしてやる』と、鬼畜
な考えが、頭をもたげていた。
恥らう彼女を愛しく感じ、傷つけたくないと思う心。
彼女の中に、決して消える事のない傷を刻み、壊れるほどに愛したいと思う心。
どちらも、本音だ。

真中にある 窪み、というか裂け目にそってゆっくりと指を動かしていった。
粘り気のある液体に覆われたクレバスを辿る。
小さな突起に指先が触れた瞬間、微かに『ウッ』とも『ハァッ』ともつかない声が漏れてくる。恐らくここが
女の娘の一番敏感な所−クリトリス−なんだろう。
さらに前進していくと、不意に指が何か深みに嵌った様に、ずぶずぶとのめり込んでいった。

138第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/02 23:33 ID:eyNUg8ND
5/6
指を動かしていくうちに 湿り気は染みに、そして少しずつその領域を広げる様相を呈していた。
間違いない。彼女は俺の愛撫に感じてくれている。
そう確信し、最期のヴェールに手をかけた。

スカートをたくし上げ、上のゴムの所から左手を入れる。
手を両足の中間にある、僅かに盛り上がった、低めの丘へと、這わしていと、ちょっとごわごわした感触が指
先に伝わってくる。
それは、彼女の陰毛……目的地がもうすぐそこ、という事だ。
既に、そこは彼女が自分で出す分泌液によって 濡れていた。
これって、彼女の愛液だよな?

『ぬるぬるしてる……』

「いや……恥ずかしい。 そんな事言わないで」

「あ……ご、ごめん」
その言葉と裏腹に、心の奥底では『もっと濡らしてやる。この部屋を彼女の愛液で洪水にしてやる』と、鬼畜
な考えが、頭をもたげていた。
恥らう彼女を愛しく感じ、傷つけたくないと思う心。
彼女の中に、決して消える事のない傷を刻み、壊れるほどに愛したいと思う心。
どちらも、本音だ。

真中にある 窪み、というか裂け目にそってゆっくりと指を動かしていった。
粘り気のある液体に覆われたクレバスを辿る。
小さな突起に指先が触れた瞬間、微かに『ウッ』とも『ハァッ』ともつかない声が漏れてくる。恐らくここが
女の娘の一番敏感な所−クリトリス−なんだろう。
さらに前進していくと、不意に指が何か深みに嵌った様に、ずぶずぶとのめり込んでいった。
139第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/02 23:41 ID:eyNUg8ND
本日は此処まで。

おやすみなさいまし。
140名無しさん@初回限定:04/02/02 23:44 ID:cUdhbyZD
。・゚(´Д`)゚・。
141 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/03 00:03 ID:Ry+XZ/rF
いいなあ。俺もはやくエロいとこまで書きたいなあ。
そして「私汚れてるから・・・」とか
「初めては、あなたに、と思っていたのに・・・」なんてヒロインに
言わせたいねえ。
・・・まだまだ先になりそう。
142名無しさん@初回限定:04/02/03 00:28 ID:rhB4qUgF
ああああああ、失敗したまま行かないでぇぇぇぇぇぇぇ!!!!
143名無しさん@初回限定:04/02/03 00:45 ID:nJF4gbg+
ヒロ君冷静だな。
初めてとは思えないよ。
144名無しさん@初回限定:04/02/03 01:07 ID:itM+lnUL
603氏
乙〜と言いたいんだけど6/6は?
5/6が2つあるよ・・
145第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/03 01:15 ID:SmFqJZW4
>144
and all

失礼。
後の5/6は6/6としてくだせい。
146名無しさん@初回限定:04/02/03 01:21 ID:itM+lnUL
>>145
603氏へ
いや・・あの同じ文章が2つあるという事なんですけど・・

おそらく6/6は違う文章じゃないかと思うのですが?
どうでしょうか?

次回作も期待してます。
147146:04/02/03 02:50 ID:itM+lnUL
訂正
×次回作→○続き 失礼しました。
148名無しさん@初回限定:04/02/03 06:45 ID:HzZLXeAk
ヒロくんの父親の地上最強の生物が乱入してきそうな予感。
149名無しさん@初回限定:04/02/03 17:54 ID:vqIIKoO9
>>148
SAGA篇デスカ。
150第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/03 22:52 ID:SmFqJZW4
>all
すみません!すみません!すみません!すみません!すみません!
なんとも阿呆な事をやらかしてしまいました。そんなに酔ってないと思ってたけれど、やっぱり酔ってたんかな?
本当の6/6は以下の通りです。
6/6
「はぁぁ……」
彼女の切ない声が部屋に拡がる。
痛!……背中に鋭い痛みが走る。彼女が俺の背中に爪を立てたらしい。

「ごめん、痛かった?」

「……違うの…気持ちよくて……つい……ごめんなさい」
聞き取れないくらい小さな声で返事が返って来た。
そんなことを言われると、背中の痛みも快感に変わってくるから不思議だ。

ゆっくりと指を抜き差しするように動かしていく。
指に絡みつく粘液と、それを通して伝わる肉壁にある粒状の感触。さらに奥へ進入した先に、コツンと当たる壁。
その間、指先の動きに合わせて、甘く切ない声が耳を擽る。
ここ……ここに俺のアレが入るのか……。
想像しただけでイキそうになる。
慌てて関係ないこと(たとえばお経を唱える)を考えて、何とか股間を静める。さっきからそんな事の繰り返しだった。

しかし、その周期は段々と短く、感覚は敏感になってきている。
もう、ちょっとした刺激でもイッてしまうだろう。、
これ以上我慢すれば、ズボンの中で発射してしまうに違いない。

「いいかな?」

「……うん……」

短く、一言二言 言葉を交した。これだけで二人の思いは通じている。
151名無しさん@初回限定:04/02/04 00:52 ID:SZuecCtP
ご馳走さま´ー`)
152146:04/02/04 01:26 ID:svn8sapg
603氏
乙〜 6/6 確かに拝見しました。
やっぱり続きが楽しみ!!期待してます。
153名無しさん@初回限定:04/02/04 20:52 ID:uyQfJLCu
603氏
続き期待しております。
ひそかに710氏の続きも期待しているんだが・・・
154名無しさん@初回限定:04/02/04 23:46 ID:YpV/Nh69
切ない寝取られSS希望。

って、リアルでさんざん経験してるんだけどな・・・
155第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/05 00:43 ID:h6/OTbGV
本日の分、うpします。
1/7
もう今すぐにでも大丈夫な状態だろう。とはいえ、ちゃんとベッドがあるのに 硬い床の上でするのは不味い
か……。

彼女を愛撫していた手を抜き、左腕を肩に 右腕を膝の裏にあてがって、一気に引き上げる。

「キャ!」
可愛らしい悲鳴と共に彼女の腕が俺の首に巻きついた。


「……ぁ、これ……」

「……うん……」

「……お姫様だっこ……フフ……」
嬉しそうな恥ずかしそうな顔で彼女が笑い声を漏らす。首に巻きついた彼女の腕がキュッと少しばかりきつく
しまった。

何か彼女に随分受けたような気がする。
女の娘って、こういうのに憧れるんだろうか?

彼女をベッドの上にそっと降ろす。
目を閉じた彼女の唇にそっとキスをした後、ブラウスのボタンを外しにかかった。

「……ハッ……やめ……」
緊張に震えながら一つめのボタンを外そうとした俺の手を、彼女の手が押さえた。


156第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/05 00:45 ID:h6/OTbGV
2/7
「どうしたの?」

「……あの……やっぱ…り……はずかしぃ」

「恥ずかしいって何が恥ずかしいの?」

「私……胸…小さい……」



確かに彼女の胸は決して大きくはない。
だからと言って、まったくのナイ胸でもない。外から見てもちゃんとその存在を主張している。
それに、さっき直に触った時には、充分 確かなふくらみがあった。決して恥じ入るようなものではないはずだ。

「そんなことないよ」
こんなことで萎縮してしまう彼女を見るのが悲しくて、つい語気を強めてしまう。
その言葉に反応して、彼女の身が硬くなる。

「いゃ……ちが…そうじゃな…」
取り乱しているのか、何を言っているのか解らない。ちょっと強く言い過ぎたか……。

「ね…落ち着いて。ちょっと強く言い過ぎた。ごめんね」

「君が何を気にしているのかはわからないけれど、僕は全てを受け入れるつもりだ。例え、君の胸が小さかろ
うと大きかろうと、どんな形になっていも、笑ったり、変な顔したり、嫌いになったりすることなんて、絶対
にないよ。どんな胸をしていたって、大好きな君に変わりはないから」
「だから、心配しないで。自信を持って」

157第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/05 00:46 ID:h6/OTbGV
3/7
「…………」
彼女の表情はまだ硬い。
あたりまえだ。例え恋人同士であっても、たった一言で気持が変わるなんて事があるのは、お芝居か漫画の世
界だけ、そんなことは100も承知だ。

以前の俺だったら、ここで止めていたかもしれない。
でも、今は それはありえない。さっき彼女から『いいよ、して』と言われた時から、本能を押さえ込む掛け金
を外してしまった。もう やめることは出来ない。

「大丈夫だから」そう言って彼女のブラウスのボタンに手をかけ、外していく。
体の硬さは取れていない。けれども、『嫌!』と俺の手を払いのけるようは勿論、身を硬くして脱がされるのを
拒むような事はなかった。
その間に、ボタンを二つ目、三つ目と外していく。依然として、彼女の抵抗はない。
ボタンを全て外し、袖に入った腕を抜いて、ブラウスを剥ぎ取ると、既にホックの外れたブラジャーが彼女の
前にぽとりと落ちた。

「はっ……」
息を呑む音と共に、彼女は慌てふためいて 何かを隠すように胸に手を当てた。
けれど、彼女が手で覆ったのは、女性のシンボル……二つの膨らみではなかった。
目の前に、露になった彼女の乳房。
腕に圧迫されて変形しているから正確な大きさはわからないけれど、B…Cあたりりか…丁度手の中に収まる
くらいの大きさの胸が、目の前に二つ、乳輪は小さく、淡く、乳首はツンと上を向いて立っている。
思わずむしゃぶりつきたくなるような、乳房だ。

……おっぱいじゃない……じゃ、一体彼女は何を見られるのを嫌がったんだ?

彼女が手で隠しているのは、胸の丁度真中、二つの山の中間の谷間だった。
一体、何を隠しているんだ。
158第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/05 00:48 ID:h6/OTbGV
4/7
彼女の腕を掴み、手を剥がそうとした。


「……嫌……」

彼女の手に力が……剥がされまいと、手の内にあるものを見せまいと必死になっている。
一体、何があるんだ。何が彼女を必死にさせているんだ。

「ね、どうしたの?」

「……やっぱり……恥ずかしい……」

「どうして?……こんなに綺麗なのに、こんなに可愛のに」

「違うの…おっぱいじゃ…ないの」
彼女の目が潤んでいる。涙があふれる寸前まで来ているようだった。
ここまでか……


「…ごめん、強引だったね。……今日は此処までにしよう」

「……え?何で……何で止めるの?……どうして……」

「だって、……君が辛そうだから。これ以上したら、君を傷つけそうで……」

「違う!違うの!私は……私は、貴方と……一緒になりたい。貴方と……一つになりたいの」

「それじゃあ、『嫌』って……何が……」
159第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/05 00:50 ID:h6/OTbGV
5/7
「傷跡……胸の傷……」

「……」

「私、心臓が弱くて、小学校の時に手術を受けたんです。その痕がずっと残っていて……その傷痕を見た友達
の目つきが、笑っているような、哀れんでいるような、……何処か一段高い所に立って見下ろしているような気
がして……その視線が……嫌で嫌でたまらなくて……」

完璧な美しさを持っていると思っていた彼女に、こんなコンプレックスがあるなんて思ってもいなかった。
何とかしたい。

何とか?彼女を救いたい?彼女をこの苦しみから解き放ってやりたい?
そんなご立派な事を思っていたわけじゃない。ただ彼女をこんな事で手放したくない、自分勝手なことを思っ
ていただけだ。
けど 一つだけ、例え胸に傷があろうと、それがどんな状態であろうと、彼女が好き という事だけは知って
いて欲しかった。
それだけだった。

「景子ちゃん、綺麗も汚いもないよ。僕が好きになったのは、そういうのを全部ひっくるめた『遠野景子』っ
ていう女の子なんだ。だから心配しないで。君の事、ずっと大好きだから」
「見せて。 君の全部見たい。君の事は……全部知っておきたい。」

彼女を力一杯抱きしめて、キスをした。
彼女の体から、力が抜けていくのを感じた。大丈夫だ。彼女は見せてくれる。



160第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/05 00:51 ID:h6/OTbGV
6/7
彼女の胸に置かれた手をそっと掴んだ。
ビクッ 彼女の手に力が入る。
力ずくで引き剥がすなんて事はしない。その手に自分の温もりが伝わるように、ただじっと掴んでいた。
俺と彼女の手の間に僅かに汗が滲みだをそうとしていた頃、草木から種が落ちるかのように、自然に彼女のて
が胸から離れていった。

彼女の手が除けられた後に、目に入ってきたのは……谷間を縦断する一本の縦線……手術のメス痕だった。

手術した医師の縫合の仕方が上手だったのか、それは乱れることなく、彼女の胸の山の間に、綺麗に、けれど く
っきりと一本の線となって、刻まれていた。

決して消える事のない、傷痕。
これが……女の子の体に、しかも一番目立つ処につけられた傷痕が、彼女にとってどれほどの苦痛なのかは、
想像すらできない。
けれど、これははっきりと言える。この傷痕だって、彼女だ。俺が大好きな遠野景子の一部だって。

傷痕に唇でそっと触れる……柔らかい……歯を当て、強めに吸った。

「…ひゃっ?!……平気……なの?気持悪く……ないの?」

「平気も何も、この傷だって君の一部だろ?何で気持悪いことなんんてあるのさ?」
「それにさ、これは 君が病気と闘って勝った、ていう証じゃないか。言わば、勲章だよ」

「勲……章?」

「そうさ。そりゃ、見せびらかしたり ずっと保存しておくべきものじゃないけれど、でも、恥じることじゃ
あ、絶対にないよ」
「少なくとも、君の事を大切に思っている人なら、これを見ても、笑ったり 哀れんだりは、決してしない筈だよ」
161第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/05 00:52 ID:h6/OTbGV
7/7
「本当に……本当に気にならない?」

「何度も言うよ。僕は、君が その傷も何もかもひっくるめて、好きなんだ」
そう言って右手で彼女の頭を自分の胸に押し当て、残る腕で肩を抱きしめる。
俺の背中に回された彼女の腕に力が入っていくのを感じた。

「高校に入って、この傷の事で何もなかったから 忘れてた。けど、貴方とこういう事になった時、急に小学
校の時の事を思い出して、……そしたら怖くなって……笑われるんじゃないか……嫌われるんじゃないかって」

言葉では、答えない。
その代わりに、もう一度彼女にキスをして、抱きしめた。

「大丈夫、僕を信じて。……続けるよ」

「……うん。……」












という処で、本日の分は此処まで。
皆様、おやすみなさい。
162名無しさん@初回限定:04/02/05 01:40 ID:d/oK53CP
603氏
おお 2日連続で来るとは乙です。

いよいよ次回か・・
163名無しさん@初回限定:04/02/05 10:25 ID:cLtQYOGm
嗚呼、ヒロくんが寝取られちゃう。。。
16423 ◆bxyzd8gFCE :04/02/05 13:03 ID:rTJCS+E+
|Д`川ヒロキュンハァハァ…

乙です。
ついにこの時が来ましたか!
この先どうなるか非常に楽しみ。
つーか読めん。
ので今は括目して次回を待つのみ
165名無しさん@初回限定:04/02/05 18:23 ID:q1XV3SA+
Bバージン…
166名無しさん@初回限定:04/02/06 13:13 ID:9V0QRg2V
そしてオワタ
167第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/06 23:25 ID:BXMR40gK
すみません、今日の分は短いです。ご勘弁の程を
1/
スカートのホックを外し、ジッパーを下げる。
彼女の上体をベッドに横たえさせ、腰を少しばかり持ち上げると、スカートを一気におろした。
目に、最後の一枚の白い色が飛び込んでくる。
改めてよく見てみる。
飾り気のない、シンプルなデザイン。真中にちょこんとリボンがついている。
彼女らしい、清楚ないでたち。けれど、股間の辺りは大きく染みが出来ている。
そのギャップに興奮を覚え、一気に彼女を貫きたい衝動にかられた。

最後の一枚に手をかける。
何も言わないのに彼女は腰を上げ、あっさりとパンツを降ろすことができた。
もう、彼女の体を覆うものは何もない。

彼女の裸は、美しかった。

バランスよく 整った形をした胸、細く引き締まったウエスト、緩やかに広がるヒップ、スラッと細く長い足。
その付け根に生える薄めの陰毛の下でうっすらと見え隠れする縦の裂け目。
眩しいくらいに光っていた。

「そんなに見ないで……恥ずかしい…」

「何で?……こんなに綺麗なのに?」

「……だって、はだか……」

「でも、本当に綺麗なんだから……もっと見ていたい」

「だったら……、あなたも脱いで」

168第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/06 23:28 ID:BXMR40gK
2/4
「え?」

「……だって、私だけ……ずるい」

「あ……」
そういえば、まだ自分は服を着たままだった。
慌てて脱ごうとする俺を彼女が制した。

「待って。今度は私が脱がしてあげる」

服を他人に脱がしてもらうなんて、幼稚園の時に母親にされて以来だ。
胸にこそばゆいものを感じる。

目の前で彼女が俺のシャツのボタンを外していく。
シャツを、下着を脱がされると、次は下だ。

「立って」

その言葉に従って彼女の目の前に立つ。カチャカチャと音を立てて、ベルトが外され、その下にあるボタンが外され、ジッパーが降ろされていく。
ストンとズボンは床の上に落ちた。その場を退くと、彼女は丁寧にズボンを畳んでシャツ(これも彼女が綺麗に畳んで置いてくれた)の上に置いた。
間を置かずに彼女の手が俺のトランクスのゴムに掛かる。
トランクスが下に降ろされると、俺の物が彼女の目の前に勢いよく飛び出した。

「……元気だね」
ちょっと恥ずかしそうに、にっこりと笑う彼女。何だか恥ずかしかった。

169第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/06 23:29 ID:BXMR40gK
3/4
もう、二人の間を隔てているものは、何もない。これからは素肌の触れあいになる。
ベッドに並んで座ると、彼女の体を抱きしめ、キスをした。

手で胸を揉みながら、キスの場所を唇から顎、首、鎖骨、胸、と少しずつ下げていく。
それに従って彼女の吐息は荒く、それに混ざって漏れてくる声が少しずつ大きくなっていく。
乳首を吸うと「ハァッ……」と一段大きな声を漏らし、体を硬くした。

ひとしきり両方の乳首をしゃぶると、さらに下へと移動する。
臍から下腹部へと舌を這わしながら、移動すると、下の毛の生え際まで来た。

黒い繁りの下に見え隠れする、一本の縦筋。この下に俺の目的地がある。
見てみたい。この奥にある、男にはない神秘の場所を生で見てみたい。
膝に手をかけ左右に押し開くと、その間に頭を入れた。

「……え?……」

彼女の声と共に膝が閉じられていく。
丁度太腿の付け根の辺りで顔を挟みこまれる形になった。
頬に伝わる柔らかな内腿の感触。目の前にある一本の縦筋と、その間にチラリと見え隠れする外性器。
これを見て、興奮するなと言う方がどうかしている。
けれど、太腿のきつい締め付けで、これ以上前に進めない。目的地はもうすぐだと言うのに……

「これじゃあ できないよ」

「……うん……」

膝の力が緩まる。その時を逃さず、一気に顔を目的に寄せると、縦筋に指をかけ、そっと左右に開いた。
170第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/06 23:31 ID:BXMR40gK
4/
アンモニア臭がツンと鼻を刺激する。
普段は汚らしいとしか認識しない臭いなのに、今は逆に興奮をそそるのが不思議だ。
目の前では俺が広げた下の唇に沿って一対の花びらが、左右に広がっている。
花びらは上で一つに纏まり、その場所には小さなふくらみがあった。
それはまだ固いつぼみのようで、芽が出きっていない。

視線を下に移していく。
芽の下に、針で突いたような小さな穴。そしてその下に裂け目のように見える比較的大きな穴。
此処が本当の最終目的地。
愛液に濡れ、テラテラと光るその穴を押し開いた。
予想に反して、内壁には細かい襞と、粒上の突起が敷き詰められている。
そして、入り口から少し入ったところ、穴を狭めるように 中心を残して周囲を覆っている粘膜には、2箇所程亀裂が入っていた。
171第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/06 23:55 ID:BXMR40gK
すんまそん 今夜は此処までです。
172名無しさん@初回限定:04/02/07 01:24 ID:ERCYf8Hk
ヒロキュン…
173名無しさん@初回限定:04/02/07 02:46 ID:Go/7YADz
ヒロクンが大人の階段を上っていく・・・

そして再び転げ落ちるのですな?
174名無しさん@初回限定:04/02/07 04:55 ID:gD/eKJQw
転げ落ちないで欲しいなあ…
ヒロクンには不幸になってほしくないよ
175名無しさん@初回限定:04/02/07 08:25 ID:yI3aBB/W
>>174に同意
そしてヒロクンを寝取られた香織視点でのシーンが見たい。
176名無しさん@初回限定:04/02/07 09:23 ID:zv3hofnp
大人の階段のーぼーるー♪
177 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/07 09:26 ID:N2s0rVUZ
君はまだ〜シンデレラっさぁ〜〜

シンデレラボーイか。
178名無しさん@初回限定:04/02/07 10:22 ID:gw1JVUoH
このスレの幸せはヒロクンが運んでくれそうです
17923 ◆bxyzd8gFCE :04/02/07 23:10 ID:hS1/U2vJ
久々に更新です。
あと少し……
18023 ◆bxyzd8gFCE :04/02/07 23:14 ID:NyvYgx5g
(1/11)

白で塗り染められた何も無い部屋。
その中で灰色の異形は佇んでいた。
唯一部屋を彩るのは、粗末なパイプ机の上にばら撒かれた夥しい数の携帯電話達。
それぞれは先程から引っ切り無しに着信を報せる為に唄っている。
その光景は姦しいことこの上ないのだが、

<<<ダ マ レ>>>

異形が紡ぐ、計測不能な言語によってもたらされる静寂。
受話器の向こう、地球各地に散った端末のうち、122体がこの瞬間に消滅していた。

「つまらない」

椅子に深く腰掛け、異形は天蓋を仰ぐ。
この星も既に組織の管理下にあるも同然。
仕事は滞りなく順調だ。
しかし、日々の進捗も生殺与奪も、何らこの異形を振るわせることはない。
それ程までに灰色の異形の心は空虚だった。
18123 ◆bxyzd8gFCE :04/02/07 23:15 ID:NyvYgx5g
(2/11)

そこへ、

「やあ、君か」

ドアを蹴り開けて踊りこんできた影が一つ。
この世の暗黒を全て請け負っているかのような、その気配。
異形は旧知の友を迎えるかのように、両手を広げてその客人を招き入れた。

それは、己が衰退の発露であり、今唯一この心を振るわせる存在。

「久しぶりですね。加藤佐紀」
「気安く名前を呼ぶな、化け物」

そうだ。
そうでなくては楽しくない。
異形……宇宙人・イチローは、その黒く巨大な双眼の奥底で、人知れず愉悦の笑みを浮かべた。
18223 ◆bxyzd8gFCE :04/02/07 23:17 ID:NyvYgx5g
(3/11)

「あと4人だと?」
「ええ、この星に生息するソブネリア達のボス……
 郷に従い、君達風に言うなら「王」ですか。
 365人いた「王」候補者は、確かにあと残り4人です」

結果報告に来た佐紀にイチローからもたらされた事実。
それはこの戦いの終焉を告げる報せだった。

佐紀がこの争奪戦に参加してから既に3週間が経過している。
その間、彼は実に29人の候補者を在るべき敗者の姿に還した。

3人目を還した時には嗚咽と後悔。
6人目にもなると、相手を哀れむ余裕が生まれ、
12人目を倒した後、相手を哀れむ気持ちが失せた。
16人目の相手は天敵並の手強さ。
19人目の男程度なら、最後のカプセルをいつでも飲めるよう構えることも無かったか。
23人目と24人目はほぼ同時に掌握。
そして今、この部屋の前には29人目の敗者が降参の体勢を取っていたりする。

しかし、それら勝利の代償として、

頬はこけ、髪も髭も伸びるがまま。
どうすれば効率よく相手を仕留められるか、どうすれば生き残れるか。
負けてケダモノにはなりたくない。
なりたくないから、先に人とは違うものになってしまえ。
熟考し実践。研鑽と反芻。
感情を殺せば、それ即ち機械の所業。
寸分の設計ミスも無い完全自律戦闘兵器は必ず勝利を収める絶対の方程式を演算する。

佐紀の心は既に磨耗し切っていた。
18323 ◆bxyzd8gFCE :04/02/07 23:19 ID:NyvYgx5g
(4/11)

でも、それでも、

「……ょし、よし、よしっ、よしっ……!」

拳を強く握り締め、佐紀は小躍りする。
永続と思っていた戦い。その底がとうとう目前に現れたのだ。
残るは己を含む4人。
倒すべきは、あとたったの3人。
それで届く。
その果てに届く。
唯一の君、成瀬優菜に。

「君の相手は程なくこの施設に出揃う。
 せっかくの王決定の瞬間だ。
 全世界完全同時生中継と行こうじゃないですか」

何やら良からぬことを企んでる風のイチロー。
好きにすればいい。
どうせ自分には関係無いこと。
佐紀はイチローの提案を軽く聞き流した。
しかし、その後異形から発せられたのは聞き捨てならない一言。

「加藤佐紀。君は絶対に勝ち残りなさい。
 それが唯一君自身を生かす道です」

どうとでも取れる一言は、何故か最悪の想定を佐紀の脳裏に焼き付ける。
無機質な白と灰色と黒の部屋に不穏な空気が漂い始めた。
18423 ◆bxyzd8gFCE :04/02/07 23:20 ID:NyvYgx5g
(5/11)

「一応、聞く。
 ……どういう意味だ」

疑念を持つと手先が鈍るかもしれない。
聞けば疑念が増幅されるかもしれない。

「そのままです。
 古い記録によるとソブネリアのボス選びは殺し合いが基本。
 事実他星の同種は血肉の丘に最後まで立っていたモノが群れの長と認められる」

宇宙人イチローは事実のみを端的に述べた。
ボスは群れの仲間に認められなければならない。
見えない所でそれを決めたとて、それは意味を成さない。
故に全世界完全同時生中継。
この一大事、顛末を確かめたがらぬ輩など皆無。
同星の仲間が見守る中で相手を殲滅せしめ、その威を示せ、と。

「部屋を用意してあります。
 望みとあらば慰安用のメスの用意もしましょう」

背後からは雑音しか聞こえない。聞こえない。
佐紀は無言で白と灰色の部屋を去った。
18523 ◆bxyzd8gFCE :04/02/07 23:22 ID:NyvYgx5g
(6/11)

特殊警察署の地下深くにその場所はある。
広大で堅牢かつ複雑なその設計は、中にいるものを無断で退出させることを許さない。
その気になれば永遠に閉じ込めることが可能だとか。

性犯罪者専用の牢獄。
世にある中で最も豪勢な作りのそれは、同時に完全な密室でもあった。

その場所で、
二人は一枚の壁を隔てて佇む。
壁とは即ち鉄格子。
咎人と断罪者とを別つ絶対の壁だ。
それを挟んで二人は、話しかけることも無く触れ合うこともない。
片方にいるのは女。
壁向こうの相手を時折ちらちらと見やり、落ち着きが無い。
もう片方にいるのは男。
椅子に座したまま、何かに思いを馳せるかのように目を閉じて沈黙する。

「あの……」
「……」

女が話しかける。男は語らない。
二週間ほど前から、この時間帯はずっとこの調子の二人だった。
18623 ◆bxyzd8gFCE :04/02/07 23:23 ID:NyvYgx5g
(7/11)

一体この男は何をしにここへ来るのだろう。
自分に何かを求めここへ来ているのは明確だ。
何故なら、武装警官にはここに来る理由は数える程しかない。

配膳はとうに終わった。
私の処遇はまだ決定されていない。

なのに男は決まった時間には必ずここにやってくる。
そしてしばらく自分がいる牢の前に座り、1時間程で、

「来たか」

と呟き、去って行く。
そんな妙な日課がずっと続いている。
実際今日もそうだった。


男は今日も、やって来た候補者を粉砕した。
女は今日も、男の残り香を聞き集め、慰めとした。
18723 ◆bxyzd8gFCE :04/02/07 23:25 ID:NyvYgx5g
(8/11)

今、俺は確かに夢を見ている。
かなり昔の、曖昧な思い出なのは間違いない。
でも夢はそんな過去でもあっさりと引っ張り出してくるから不思議だ。


幼い頃。かなり幼い頃。

『こ こ へ は い っ ち ゃ い け な い よ ?』

その時、その場所で、そんな声を見えない誰かが言った。
かくれんぼの鬼は遥か後方。まだ100まで数えていないだろう。
どこに隠れようかと散々悩んだあげく、

俺は、その何気ない路地を隠れ場所に選んだ。

路地を進む。声はどんどん大きくなってくる。来るな来るなとさっきの声。
でも、捕まるのは嫌だ。今日は4回も鬼だった。せっかく逃げる側になったのに。
更に奥へ。来るな来るなと声がする場所こそが絶対の隠れ場所だと直感で感じていた。
恐怖はある。凄くある。そこはいけない。行っちゃ駄目だ。心が警告する。
それでも奥へ。ここなら絶対見つからない。だってだって。

――そこは、誰も足を踏み入れたことのない、唯一の場所だから――

『え……』

そこに至った。
そこには、理解の範疇を超えた、何かがあった。
18823 ◆bxyzd8gFCE :04/02/07 23:26 ID:NyvYgx5g
(9/11)

ビルとビルの狭間にある、一坪ほどのその場所。
中途半端な広さで持ち主も不明。
そんな場所だと思っていたが否、そこは正に異界だった。

無味無臭無風無為。
日本人形が並んでいる。そう見えた。
たくさん並んでいる。そう見えた。
左端から新しく、右へ進むほど朽ちていく。
朽ちるからには骨まで。腐り落ちるまで。
現れてから終わるまでの過程を描く人形群はそれでぐるり一列。
その下の段にはうさぎのぬいぐるみ。
そのまた下の段にはフランス人形。
日本人形の上の段には何故か藁人形。
そのまた上に上に上にさらに下に下に下に天地果てしなく。
同じように生まれてから死ぬまでをぐるり一列。
て言うか、
この場所は、夥しい数の人形で覆い尽くされている。そう見えた。

(あ、あ、ああ)

怖い。声が出ない。
そんな俺を人形が一斉に俺を睨む。
何故ここにいるのかと攻める。
いや、攻めてない。
あれらにそんな感情はない。
ただ、一言。

『お前はこの中のどこにいるのか』

とだけを繰り返していた。
18923 ◆bxyzd8gFCE :04/02/07 23:27 ID:NyvYgx5g
(10/12)

やばい。
あの人形の群れを見てはいけない。
明滅する蛍光灯のように心が告げる。
あの人形の中から「探し出しては」いけない。
何故なら、あの人形。億にも兆にもそれ以上にも達するだろう人形の群れの中に、

(きっと俺がいる……!)

確信があった。
あれらは全部だ。
世の中にある全部がここに集合している。
怖くなって目を逸らした。
すると丁度目の前に、

それはいた。
唐突に現れた、自分以外の生あるもの。
でもその姿は人ではなかった。
アニメであるような宇宙服っぽいのを着込んだその変なやつ。
ここに足を踏み入れたのが俺が初めてならば、目の前にいる存在は何なのか。
率直な気持ちが口をついて出た。

『う、うちゅうじん!』

その後は知らない。覚えていない。
ただ、この時からだったと思う。
俺こと加藤佐紀は、全く泳げなくなった。
19023 ◆bxyzd8gFCE :04/02/07 23:30 ID:NyvYgx5g
(11/12)

「うー……」

佐紀は寝苦しさに負け、目を覚ました。
見渡すと、そこは見慣れない部屋。
宇宙人イチローが用意した、特殊警察署内の一室。
簡素なベッドと必要最低限の装飾が施されているその部屋は、客をもてなす為の場所だ。
久々に安心して休める場所だというのに、佐紀は先程見た夢のせいで中途半端な覚醒をした。

「くそ、体を休めなきゃいけないのに……」

明日には3人の敵が揃う。
いや、既にこの場所に到達しているかもしれない。
朝になるまでが、佐紀の休める時間。
それ以降は……考えたくないが殺し合いだ。
故に佐紀は無理矢理にでも寝なければいけない。
いけないのだが……

「あの、起きてますでしょうか」

いかにも申し訳無さそうな声が、ドアの向こうから聞こえた。

「誰だ……!」

警戒心が佐紀を支配する。
既にコートの右袖からは、彼の得物たる金糸が鎌首をもたげていた。
数秒の沈黙の後、ゆっくりとドアは開かれた。
19123 ◆bxyzd8gFCE :04/02/07 23:33 ID:NyvYgx5g
(12/12)

「夜分遅くすいません」

そこには、
佐紀より二つほど年下の少女がいた。
いたのはともかく、その少女は奇異だった。
それとも奇異に感じてしまう佐紀自身が既に奇異なのか。

その理由。
彼女は何故か、薄いピンクのネグリジェを身に纏っている。
それは勿論透けており、苺模様の愛らしい下着が見て取れた。
肩までの赤みがかった髪を所在なさげにいじりながらも、真っ直ぐに佐紀を見つめる少女。
その瞳は……すでにある種の諦めを湛えているかのように見えた。

はっ、となる。
佐紀は得物たる金糸を隠し、
ついでに少女に見とれている股間の逸物も隠した。

「何の用だ」

深呼吸。
努めて平静を装いながら佐紀は少女に詰め寄る。

「あ、あのっ」

少女は少し怯えながらも、

「私、あなたの夜の世話をするように命令されて来ました」

自分の来訪の目的をはっきりと告げた。
192名無しさん@初回限定:04/02/07 23:41 ID:tquMkaCH
23氏乙です。まさかのサキ君寝取られですか!?
続き楽しみにしてます。
193名無しさん@初回限定:04/02/08 02:18 ID:mgjOu/+3
23氏、603氏乙です。
それにしてもココの神は更新早いな。
194名無しさん@初回限定:04/02/08 16:46 ID:vCaodOLP
23氏すごくおもしろかったです
寝取られて欲しい反面、サキには幸せになって欲しいと思う自分がいる・・・
195名無しさん@初回限定:04/02/09 14:07 ID:QHTjkSPB
なんか、23さんの話は無常感があるな。
頑張って風呂敷畳んで下さい。
196名無しさん@初回限定:04/02/09 22:24 ID:oeQwLhub
彼女が寝取られ&中だし&妊娠描写のあるゲームでおすすめは
197第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/10 00:15 ID:spkFS/wW
>196 うち芋 
自分が知っているのはこれくらい。 
次レスから、続きをうpします。

衝撃の展開・・・・・・・・・・・・・となりますやら。


タブン、ナラナイトオモウノデ、キタイシナイデクダチイ。
198第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/10 00:16 ID:spkFS/wW
1/9
「………」息を呑む。ほんの一瞬 全身に緊張が走り、体中が熱くなった。

例え彼女がどんな人間であれ、好きな事に変わりはない。
どんな過去を持っていようと、どんな容姿であろうと、受け入れる気構えは持っている。
俺が愛しているのは、今目の前にある『遠野景子』という女の子だ。
現に彼女の胸の傷痕を見ても、何とも思わなかった。寧ろ愛おしさが増したくらいだ。
なのに……なのに、何でこんな物を見たくらいで、怯むなんて。
情けない。彼女に対する気持を、自分自身で否定してしまったみたいで、悲しかった。



慌てて頭を振る。こんな事を考えている場合じゃない。
一体どれくらい、手が止まっていただろうか?……おそらく時間にして、ほぼ2,3秒というところだろう。
時間的にはたいした間じゃない。けれど、その間は確実に動きが止まっていた。
彼女は何か感じ取っただろうか?
確かに、一瞬怯んだ。それは、君の過去を想像してだ。けど、そうであっても、俺は今の君を愛しているんだ。
解ってくれ。



すぐに、花弁の頂点にある突起に舌を這わした。

「ひっ……」

彼女の体が固く縮み、小さな悲鳴が上がる。
構わずに舌を、顔を動かしていく。

「はぁ……ぁ…くぅ……ぅっ」
199第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/10 00:17 ID:spkFS/wW
2/9
徐々に荒くなっていく彼女の声。
再び俺の頭は彼女の太腿に挟み込まれ、彼女の手で押さえつけられる。
ただ、さっきとは逆だった。
手は 押し戻そうとするのではなく、股間に押し付けるような、足は接近を拒むのではなく、俺の頭が離れないように固定するような、力の入れ方だった。
頭を挟んでいる彼女の足が、俺の舌の動きに合わせて、ゆっくりと動き出し、……少しずつ激しさを加えていった。

指先で花芯を取り巻く薄皮を剥き、中身を露出させると、たっぷりと唾液を絡めた舌でそっとこする。
「……んっ……うっ……あぁ……」
彼女の息が段々荒くなってきた。漏れ出す声も、少しずつ大きくなっている。
大丈夫だ、彼女は感じている。
さらに花芯への愛撫を執拗に繰り返す。
右回り、左回りと円を描くように、はたまた 舌から上へと犬のように舐め上げるように、……。
時には口先で摘み上げ、前歯で軽く甘噛みする。
「……はぁっ……くぅっ……うぅっ……はぁ」
声に合わせて 彼女の足…膝に力が入ったり抜けたりを繰り返すしている。

本当のことを言えば、こちらも もう我慢なんか出来ないところまで来ていた。
一秒でも早く彼女に入れたい。彼女と一つになりたい。
そして、彼女の中で絶頂を迎えたかった。

けれど、彼女の中に入ってしまえば、そう長くは持たないのは目に見えている。
恐らくは1分も持たないだろう。
あいつの『女の子だって一緒に気持ちよくなりたい』が、頭からこびりついて離れなかった。
童貞の俺の技術では、一緒に気持ちよくなるなんて不可能だ。
いや、彼女をイかせることだって出来やしないに決まっている。
だから、せめて他の手段で彼女に絶頂を味わって欲しかった。
200第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/10 00:18 ID:spkFS/wW
3/9
彼女の太腿の締め付けが強くなったり弱くなったり、その周期が短く、振幅が激しくなっている。
喘ぎ声も段々とリズミカルになってきたようだ。
大丈夫だ、絶頂は近い。このまま突き進むんだ。頼む、イってくれ。
祈るように花芯を舐め上げていく。
…と、突然大きく息を吸う音が聞こえたかと思うと、一段強く頭を締め付けられた。
彼女の手が、俺の頭を掴み、荒っぽくクシャクシャと撫でまわしていく。
最後に「ぁ……あぁぁぁぁぁ」とちょっと気の抜けていくような声と共に、彼女の体から力が抜けていった。

彼女の股間から頭を離し、放心したように横たわっている彼女にそっとキスをする。

「気持ちよかった?」

「……う……ん。……目の前が…真っ白に……なっちゃっ……た」

焦点の定まらない視線をこちらに向けて彼女は答えた。

「イっちゃった?」
その問いには答えず、こちらの胸に額を押し付けてくる。
そのしぐさが可愛くて、イってくれたのが嬉しくて、力一杯彼女を抱きしめた。

「今度こそ、行くよ」

「うん、来て」

思いは同じ。一つに溶け合って、果てる事。

足を開かせて、その間に分け入る。
ペニスを掴み、目的地に目処を合わせると、彼女の上に覆い被さり 腰を突き入れた。
201第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/10 00:19 ID:spkFS/wW
4/9
これで、ようやく彼女の中に……入らない。

あれ?
再度筒先をあてがって、腰を突き出す。
ヌルッ……駄目だ。
俺の物は 中に入らず、彼女溝に沿って上へ外れてしまう。
もう一度……やっばり入らない。柔らかな壁に跳ね返される。
指で位置を確認。やっぱり此処でいいはずだ。
再度トライ……でも結果は同じ。一ミリたりとも中へ入って行く事ができない。くそ、どうすりゃいいんだ?!

「もうちょっと……下に…」

見かねたのか、彼女の声がする。そ、そうか。もっと下なのか。

筒先を今の目標から下にずらし、腰を突き出す……でも入らない。
もっと下か?……やっぱり入らない。
なんだよ、もっと下なのか?……考えている以上に下にあるみたいだ。

根元を持ち、筒先を思いっきり下げて彼女の体に押し当てた。

「ヒッ……そこ……違う……」
悲鳴にも似た声があがる。……ここじゃないのかよ?

「そこは……お尻の……穴」

え?…………行き過ぎたって事か?じゃあ、目的の穴は一体何処なんだよ?


頭の中が真っ白になった。

202第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/10 00:20 ID:spkFS/wW
5/9
もう、どうしたらいいか解らない。
やけを起こして、闇雲に腰を突き立ててみたものの、上手く行く筈がない。
涙が出そうになってきた。

今まで、ビンビンに硬くそそり立っていた俺の物が、急速に萎えて、柔らかくなっていくのが解る。
だめだ、これじゃあできない。畜生!何で上手く行かないんだよ?!

香織の顔が頭に浮かぶ……やっぱり、香織相手に練習しておけば……慌てて頭を振る。何て事考えてるんだよ。
いくら焦っているからとはいえ、こんな事を考えた自分が嫌になる。ダメだ!もう、ダメだ……

と その時、俺の物が何かに触れた。
それは、俺のかり首の辺りを優しく撫でまわしている。
途端に、元気を回復していく俺の物。
言うまでもなく、彼女が俺の竿を掴んだのだ。

「焦らないで、此処だから」
彼女は、俺の物を掴んで 自分の入り口にあてがった。

さっきまでとは違う。筒先にぬめぬめした間隔が広がる。

「このまま、真っ直ぐに動かして」

さっきは、腰だけを動かしたために軌道が変わって 上手く入らなかったのだろう。
彼女のアドバイスに従って、軌道が変わらないよう、体全体を真っ直ぐに動かしていく。
ヌチャ……先っぽだけだったぬめった感覚が、亀頭全体に広がる。上手くいきそうだ。
そのまま、慎重に先へと進んでいく。やがて、俺の物は全て彼女の中に飲み込まれていった。
203第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/10 00:21 ID:spkFS/wW
6/9
ようやく、彼女の中に入れた。
竿全体に広がる、彼女の中の感覚。暖かくて、柔らかくて、ヌルッとしていて、とろけそうだった。
俺の物は、彼女の中で溶け出し、その中で俺と彼女は一つに混ざり合っている……そんな感じだった。

「へへ……入った」

「うん……博昭君が入ってる」

彼女にキスをする。
触れ合う肌の感覚が 気持ちよくて、彼女と一つになれたことが嬉しくて、ギュッと抱きしめる。このまま、
ずっとこうしていたいと思った。

けれど、本能はそれを許さない。
更なる高みへと、より一層の快感へと……俺をつき動かしてく。

腰を前後に動かす。ゆっくりと、抜けないよう 慎重に。
擦れあう亀頭から、竿全体……それから全身に快感が伝わる。
何なんだ、これは?これじゃ、あっという間に果てちまうぞ。
だからといって、動かすのを止める事は出来ない。おそらく、一分持てば良い方だろう。

「……はー……ッふー……」
俺の動きに合わせて、彼女の声があがる。気持い良いのか?気持ちよくなってくれているのか?
それが嬉しくて、つい腰の動きを強めた。

「…はっ…あっ…くっ…」
途端に、彼女の声が大きく、リズミカルに上がり、眉間に立て皺が寄る。
その声と表情は効果抜群だった。彼女の表情が変わると同時に竿の根元に熱いものを感じる。やばい、終わっちまう!
204第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/10 00:23 ID:spkFS/wW
7/9
慌てて速度を緩める……事はできなかった。

「……もっと、……もっと突いて。……もっと強く、……」
この声を聞いた瞬間、魔法をかけられたかの様に、俺は腰を激しく突き動かし出した。

「はっ…はっ…はっ…いっ…んっ…うっ…」

リズミカルに彼女の口から漏れる声の感覚が、短く 強くなっていく。
同時に竿の根元に熱い塊のようなものを感じる。
程なくそれは竿全体に広がり、激しい快感と共に 俺は彼女の中に精を放出して果てた。

今まで経験した事のないような 気持ちのよさと、胸をつぶすほどの絶望感が、俺の体を被う。
結局、一分と持たなかった。
………早漏。
彼女はどう感じただろうか? やっぱり、引いたよな?


「……ごめん。早過ぎるよね」
いくら初めてとはいえ、この早さは言い訳が出来ない。……あまりにも惨めだ。

「ううん、そんなことないよ」
彼女の言葉が聞こえる。優しいよな。こんな下手糞な相手でも、ちゃんと思い遣って暖かい言葉をかけてくれる。
ちょっと鼻の奥がツンとなった。彼女に聞こえないように、そっと 鼻をすすり上げる。

「ありがとう。そう言ってくれると嬉しいよ」


205第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/10 00:25 ID:spkFS/wW
8/9
「そうじゃない、そうじゃないの。本当に嬉しかったの。本当に……気持ちよかったの」

「だって、一分……

「自分をそんなに卑下しないで。私、本当にうれしかったんだから。本当に、博昭君とこういう風に……一つ
に…なれたのが嬉しかったんだから。……それに……さっき……舐めて…くれたでしょ?……あれ、本当に気
持ちよくて………目の前が真っ白になっちゃった……」
彼女の額が俺の額と合わさる。コツッという感覚。彼女の吐息は暖かく しっとりとしていた。

お義理でもいい。彼女を満足させた事にほっとすると、改めて彼女と一線を越えることができた事に喜びが爆
発的に俺の中に広がっていくのを感じた。

「……それより、貴方はがっかりしなかった?」
急な展開に、彼女が何を言ったのか解らなかった。天にも上るような、雲の上を飛んでいるような感覚から、
一気に現実に引き戻される。

「がっかりって、何が?」

「私が、初めてじゃないこと。…………幻滅しなかったの?」

「気にならない て言えば、嘘になるよ。でも、さっきも言ったけど、僕は 今の君が好きなんだ」
「僕と知り合う前、誰か好きな人がいたって、不思議じゃないよ。でも、今は……僕の事、好き?」

「……うん……」

「じゃ、大丈夫。今の君が僕の事、『好き』って言ってくれるなら、何もいらない。何も怖くないよ。

206第二夜スレ603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/10 00:27 ID:spkFS/wW
9/9
「本当?」

「本当だよ。僕は今、君とこういう事が出来て、物凄く嬉しいんだ。過去なんて関係ない」
俺の腕をつかんでいる彼女の手に力が入り、……数秒後、力一杯つかんだ処を柔らかく撫でまわしていた。

「でも…………ちょっとね。君が初めて身も心も投げ出すほど好きになった人って、どんな人なんだろう……
って、考えると、妬けるな」
今の彼女が好き。それは、胸をはって言える。けれど、かつて彼女が愛した人がいることが気になり、その相
手に嫉妬している……情けないけれど、否定する事は出来ない。恋すると、自分の持っていたポリシーなんて、簡単に崩れるものなんだ。

そんな俺の言葉に反応したか、しないのか……彼女が ポツリ…と語りだした。
「………その人の事、好きだった」










本日は、此処まで。
お休み あそばせ。
207名無しさん@初回限定:04/02/10 00:39 ID:g5whXWqD
うう、ヒロ君寝取られオメ(涙)
なんだ、この娘が結婚したような気持ちは……(W
208名無しさん@初回限定:04/02/10 00:48 ID:F/XRpIQ7
いつか張った伏線の出番ですな
209名無しさん@初回限定:04/02/10 01:24 ID:zfjLMrE0
603氏
乙です。来るべきところが来てしまったなという感じ。
さあ、これをどうヒロクンが乗り切るか?
おそらく次でその相手が語られるだろう。(もう、わかっている様な気もするけど)

さあ、ヒロクンがヘタレで終わるか?それとも男を見せるか?
次回を楽しみに待とう!!

210名無しさん@初回限定:04/02/10 02:09 ID:j0cZ/zOv
ヒロクンの脱童貞を祝って赤飯炊きます
ヒロクン…たとえ君が非童貞だろうとヘタレだろうと
このスレの住人はみんなヒロクンを愛しているよ…
だから…

思う存分寝取られてきてねっ!
211名無しさん@初回限定:04/02/10 06:09 ID:Qy1KDc74
  .ト│|、                                |
. {、l 、ト! \            /     ,ヘ                 |
  i. ゙、 iヽ          /  /  / ヽ            │
.  lヽミ ゝ`‐、_   __,. ‐´  /  ,.イ   \ ヽ            |
  `‐、ヽ.ゝ、_    _,,.. ‐'´  //l , ‐'´, ‐'`‐、\        |
  ヽ、.三 ミニ、_ ___ _,. ‐'´//-─=====-、ヾ       /ヽ
        ,.‐'´ `''‐- 、._ヽ   /.i ∠,. -─;==:- 、ゝ‐;----// ヾ.、
       [ |、!  /' ̄r'bゝ}二. {`´ '´__ (_Y_),. |.r-'‐┬‐l l⌒ | }
        ゙l |`} ..:ヽ--゙‐´リ ̄ヽd、 ''''   ̄ ̄  |l   !ニ! !⌒ //
.         i.! l .:::::     ソ;;:..  ヽ、._     _,ノ'     ゞ)ノ./
         ` ー==--‐'´(__,.   ..、  ̄ ̄ ̄      i/‐'/
          i       .:::ト、  ̄ ´            l、_/::|
          !                           |:    |
             ヽ     ー‐==:ニニニ⊃          !::   ト、
            ヽ     、__,,..             /:;;:   .!; \
             ヽ      :::::::::::           /:::;;::  /  
みんな聞いてくれ。

描かれる日常が長く萌えるほど、寝取られ時の鬱勃起角度が高くなることはこのスレ住人には周知の事実だ。

これは今現在、景子でも香織でもなくヒロクンハァハァ人口が最大勢力であることからもわかる。

すなわちこれは、ヒロクンがヒロインであることを表している。

ここから導き出される物語の結末は一つ、先輩両手に花ENDでもなくヒロクン香織元鞘ENDでもない、

他でもない俺たちが、ヒロクンを、先輩に寝取られて初めて完成する、

つまりこの物語は、603氏が我々に仕掛けた新たなる不意打ち寝取られの形なんだよ!!
212名無しさん@初回限定:04/02/10 10:16 ID:zaGVKJ8r
ΩΩΩ<ナ、ナンダッテー!!??
213名無しさん@初回限定:04/02/10 12:17 ID:4jP2jY4d
ヒロキュンとサキたんを乗せたジェットコースターは今、頂点へ…

あとは、堕ちるだけ(゚∀゚)アヒャ
214名無しさん@初回限定:04/02/10 13:18 ID:6BeilvXS
悔しいが反論できない>211
お ま え の か ち だ

ヒロくんにハァハァ
215名無しさん@初回限定:04/02/10 21:39 ID:7zlZcUo+
景子の奴・・・おれのヒロクンから童貞奪いやがって!!
畜生・・・・童貞のヒロクンに俺の処女を捧げる予定だったのに・・・ヽ(`Д´)ノ
ヒロクンの童貞奪った景子なんて先輩にめちゃくちゃにされて捨てられてしまえ!!
216名無しさん@初回限定:04/02/10 22:55 ID:C3exECOV
ヒロくん
赤飯おにぎり買ってきたよー
217名無しさん@初回限定:04/02/10 22:59 ID:xD6G0yBk
良いな、ヒロくん。
処女に拘らずに相手を、気持ちを大事に出来る奴こそ漢。
どっかの厨どもとは大違い。
218名無しさん@初回限定:04/02/11 01:35 ID:xiCikm3i
相手の初めてを聞いてしまうのってありがちな罠だわな。
賢い大人の女は適当にはぐらかすのだが…。
21923 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 02:37 ID:Dca0ML9D
>>203
>>「へへ……入った」


ここ、凄く萌えるんですけど。
やばい。キュンスレ住人でも無いのに。


こちらも更新です。
ちと長いですけど、お付き合いヨロ。
220名無しさん@初回限定:04/02/11 02:37 ID:jwBp/560
でも、もう語りだしてますよ
まぁ 喋っても、はぐらかしても不信の芽を植え付ける事は出来そうですが
ヒロくんと景子には それを乗り越えて幸せになってもらいたいものです
SEXのLVは常に現状に満足しなければ そのうち上手くなるし(やけに冷静だし)
ヒロくん頑張れ!(スレの趣旨とは違う気も…)
22123 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 02:39 ID:Dca0ML9D
(1/22)

「は……?」

間抜けな声が漏れた。
見慣れぬ部屋の見慣れぬドアの前。
そこに佇む、扇情的な衣装に身を包んだ、見慣れぬ少女。
縮こまり、恥ずかしそうにしながらも、真っ直ぐに佐紀を見抜く瞳。
その手には、ペットボトルやタオルなどが入った籠を手にしている。

「あの……聞こえてます?
 私、あなたを満足させるように命令されて……」

何だ。何なんだコイツは。
この世界は宇宙人に改造されてしまったんじゃなかったのか。

人類皆全裸。
表の世界には「服」という概念が無く、
女は男が望むままにその柔らかな肢体を差し出し、
男はその申し出に当たり前のように飛び込んでいく。
人間の興味は性に関することに終始している。
それでい直接的な性行為はご法度。
もし事に至れば、どこからか監視している怖い連中がなだれ込んでくる。

それが常識。大多数が認めるから常識。

ならば、何故、
何故にこの少女は、

「どうしてそんなに怯えているんだ」
「……えっ」
22223 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 02:41 ID:Dca0ML9D
(2/22)

自然に言葉が出た。
考えてみれば、ありえるパターンだ。
この世界には、確かに宇宙人に洗脳されにくい者、されない者がいる。
それは勿論、「男女問わず」にだ。
ならばこの少女は。

「君は……「この世界」の住人か?」
「一体……何のことでしょうか?」
「だから……!」

年齢も問わず。相手も問わず。
女は男の性欲を静めようとする。
何故か。
答えはおのずと導き出される。

種が増えすぎないようにするためだ。

これまでこの世界の異分子として生きてきた佐紀の至った答えがそれだ。
もし、オスが性欲のままにメスと契れば、彼らはあまりにも増えすぎてしまう。
まず初めに、メスの発情周期が不定期になった。
しかし、オスのそれは今だに欲するままに引っ切り無し。
故にメスは、オスの交尾の欲求を目先の行為に置き換えることにした。
すなわち、直接的行為に至らぬ性交渉。
ぶっちゃけた話、本番無し。
それで世界は円滑に回るようになった。

いきなり土足で乗り込んできた宇宙人が描いた、正しい人間のあり方。
あいつ風に言うなら、ソブネリアという種のあるべき姿……とでもいいやがるのだろうか。
22323 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 02:42 ID:Dca0ML9D
(3/22)

「……何だかよく分かりませんが、私」

ずい、と。
少女が近づいてきた。
見慣れたと思っていた女の肌なのに、何故か佐紀は目の前の少女を直視出来ずにいる。

「私」
「よせ」

少女が近づく。佐紀は後ずさる。
幾多の敵に勝利してきた男とは思えない狼狽。

「私、あなたを」
「やめろ」

駄目だ。
この女、追い出さないと駄目だ。
直感がそう告げる。
そうしないと、張り詰めていた何かが砕け散る。

なのに、この少女ときたら……!
22423 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 02:45 ID:Dca0ML9D
(4/22)

「私、あな痛っ」

噛んだ。

「し、射精さささ、させないとっ」

ドもった。

「射精、させないと」

させないと、何だ。

それは恐らく予想通りの答え。
今、この世界にいていい異分子はたった一種類。
すなわち、

「射精させないと、殺されてしまいます……」

異分子な二人は、法の奴隷だった。
22523 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 02:47 ID:Dca0ML9D
(5/22)

シャワーのついでに髭を剃り、伸びすぎた髪を後ろでに括る。
多少見た目は変われど、昔の佐紀に戻ったような錯覚。
しばらく、じっと鏡を見る。

「くそっ! 何やってんだ俺は……!」

洗面台の縁を強く握り締め、佐紀は一人ごちた。


「へぇ、髭剃ったら結構カッコいいんですね」

浴室を出た佐紀を見た少女の第一声がそれだった。
果たして心からの言葉なのか否か。
そう言ってる最中も、少女は着々と準備を進める。
彼女が携えてきた籠には、小さな洗面器とタオルとローションの入ったペットボトル。
少し熱めの湯にローションを溶き、わしゃわしゃとかき混ぜる。
それは、少女が佐紀と対峙するための準備だった。

「ベッドに横になって楽にしていてください。すぐに、始めますから」

言われた通りに横になる。
一応、股間のタオルは外さないまま。

「……?」

その様を、何とも不思議そうな顔で見つめる少女。
その顔を正視できず、佐紀は思わず目を逸らした。


しばらくの後、行為は始まった。
22623 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 02:48 ID:Dca0ML9D
(6/22)

色々よく見えるように。そんな配慮。
佐紀の上に中腰でまたがり、少女は一枚ずつ服を脱いでいく。
先ほどの狼狽ぶりはどこへ行ったのか。
その姿は堂々たる娼婦のそれだった。

「君は……何か捕まるようなことをしたのか?」

そんな少女を仰向けに見上げながら、佐紀はそんな質問を少女にぶつけた。

「ヘンなことに興味を持つんですね」

苺模様のブラが外される。
戒めから開放された彼女の胸は、年相応に小さかった。
そして少女は、

「……好きな人がいたんです。
 馬鹿な奴だったけど、ホントに好きだったんです」

消え入るような声で告げた。
そしてそれ以上は無為とばかりに、少女は激しく佐紀の唇を吸い始めた。
22723 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 02:49 ID:Dca0ML9D
(7/22)

「どうですかっ、き、気持ち、いいですかっ」

佐紀の傍らに寄り添い、少女は佐紀の逸物をローションに塗れた右手でこね回す。
自分の足と佐紀の足とを絡め、その密着度合いをアップさせる。

「あの、む、胸も吸って下さい。その方が、その方が私もっ……」

絡みつく軟体が佐紀を絡めとっていく。
じわじわと高ぶっていく中で、佐紀は少女の顔を見やった。

「?」

目が合った。
汗に塗れ、息を荒げる目の前の少女。その瞳。
それは今までの「メス」に見てきた、あの菩薩のような無我の色を湛えている。
しかしそれは、

(こんな、こんな風に)

確かに、そう見えた。

(人は笑顔で泣けるものなのか……)

この少女は自らを「この世界の一部」たろうとしているのだ。
異端な自分を、無理矢理世界の枠組みに組み込もうとしている。
しかし、真っ当な席は、彼女の為に用意された椅子は、この世界のどこにもない。
だから彼女は、地べたに座り込むしかなかった。

恐らくは、恐らく彼女が犯した罪は、きっと。
22823 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 02:52 ID:Dca0ML9D
(8/22)

「君は、俺と同じなんだな」
「……え」

少女の手淫が止まった。
瞳に色が戻り、まじまじと佐紀を見つめる。

「俺さ、好きなコに、1年半も告白できずにいた」

少女が身を離した。
佐紀は背を少し起こし、少女を見つめながら話を続ける。

「いきなりだったよな。宇宙人?ふざけんなってんだ。
 寝て起きたら全員裸でさ。母親なんて裸エプロンだぜ?
 思わず目を疑ったよ」

話したところで何になるのか。
それでも口が言葉を紡ぐのをやめない。
今までこの鬱屈を共有していたのは敵ばかりだったから。
笑い話にして慰めあうことなど叶わぬ関係だったから。
だから話し合いも無く、悉く倒した。還した。
でも、目の前の少女は……

「それでも告白できたんだ。両思いなれてスゲー嬉しかった。
 そりゃちょっとはエッチに溺れたりもしたけど、それでも……それでも」

佐紀の声に嗚咽が混じり出す。
少女は佐紀を見据えたまま微動だにしない。

「それでも……普通に、みんながするように、俺は彼女と結ばれたかったんだ……」
22923 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 02:53 ID:Dca0ML9D
(9/22)

涙が溢れた。
この瞬間に敵が押しかけてきたりしたら佐紀は終わりだろう。
しかし、そんな輩は来ることはなく、代わりに、

「そうか……お兄さんって、私と同じなんだ」

暖かい体温が、泣き崩れる佐紀を包み込んだ。
見上げた先にあった少女の顔は、照れたような、困ったような、
それでも、今日一番の笑顔で涙ぐんでいた。






それでも少女が佐紀を射精させないと済まないことに変わりはないらしい。
だから佐紀は少女の奉仕を受けることにした。
しかし……

「な、何か普通の人が相手だと照れちゃいますね……」

このことだった。
今や佐紀も少女もお互い恥部を隠している。
少女もこれまでは割り切っていたのだろうが、いざ話が通じる相手だと思うと、
どうしても羞恥心が先に立ってしまうらしい。
23023 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 02:55 ID:Dca0ML9D
(10/22)

「や、やっぱり俺、自分の手でやるよ。
 だから君はそこで見てれば……」
「…………」

佐紀は言ってから激しく後悔した。
今の要求は「オナニーを鑑賞してくれ」と言っているようなものだ。
とゆうかそのまんまだ。

「あ、いや、だからその」

改めて少女を見る。
その裸身を覆っているのは、今は床にあるブラとお揃いの苺のスキャンティだけ。
控えめな胸元をシーツで隠しながら、恥ずかしそうにちらちらと佐紀を見やっている。
そんな少女が、

「お、お兄さんは、それで満足なんですか?」

などとのたまった日には、

「あ、いや、よくないっ!
 けど違う、よくないっていうのは、別に何かしてくれとかそんなんじゃなくてっ」

脳処理速度を激しく上回るアプリケーションの起動はマシンの性能を著しく損な(略。


「私に、任せてください」

しばらくの沈黙の後、そう言って彼女は微笑んだ。
瞬間、佐紀の体から強張りが抜けた。
23123 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 02:58 ID:Dca0ML9D
(11/22)

少女が促すまま、ベッドに体を横たえる。
弛緩し切った身体にのしかかってくる、少女の柔らかな重みが心地良い。

「ん……」

喉元を軽く吸われる。
ドラキュラに血を吸われる美女が感じる快楽とはこのようなものなのか。
鼻にかぶさった少女の髪の匂いに酔う。
まさぐる指先に体中が過敏になる。
次は何をされるのか。そんな期待だけで股間が疼いていく。

「お兄さん……どう……されたいですか?」
「えっ?」
「どこで、気持ちよくして欲しいですか?」

耳元で少女が囁く。
顔を見なくても分かる。
きっと少女は、身をよじる佐紀を見て悪戯っ子のような瞳をしているに違いない。
今している行為自体は、きっと唾棄すべきものなのだろう。
でも、お互いの同意の下にする行為ならば、それはきっと悪ではないはず。
だから佐紀は、

「俺、後ろからの素股ってしたこと無いんだよね」

臆面もなく要求した。
その後、少女がひとしきり笑い転げたのは言うまでも無い。
23223 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 03:00 ID:Dca0ML9D
(12/22)

「準備いい?」
「いいですよ」

自らの太ももにローションをたっぷりと塗り、少女は四つんばいになった。
これで佐紀を素股で受け入れる準備は完了。
後は、

「じゃあ、お兄さんのを入れてください……」

後ろ向きに首を向け、少女は佐紀の昂ぶりを要求した。
思わず違う所に入れたくなる衝動を抑え、佐紀は逸物を少女の秘所と足との隙間に刺し入れた。

「ん、やん」

異物感に少女が身をよじる。
挿入されていないとはいえ、敏感な部分が硬質で擦られるのだから仕方ないだろう。
しかしそれは佐紀にとっては初めての感覚だった。

今までの優菜との行為に思いを馳せる。
口でされても、手でされても、秘所以外のあらゆる部分でされても、
気持ちいいのは佐紀だけ。
優菜は佐紀が射精することのみに喜びを感じる。

ソレは変だ。
逸物を刺激しているのは君の肉体じゃないのか。
逸物で刺激されてるのは君の肉体じゃないのか。
嫌悪感でも何でもいい。
何かを感じて欲しかったのに。
23323 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 03:03 ID:Dca0ML9D
(13/22)

「ん、あっ、これっ、擦れ……」

今、目の前で佐紀の攻めを受け止める少女。
切なげに、息を荒げ、快感に震えている。
求めと応え。
これこそが、この行為のあるべき姿じゃないのか?

「凄……ホントにやってるみたいだ……」

「ホントの、ん、SEXって、こんなに、気持ち、んあ! いいのか、なっ?」

アホな会話だ。
でも気持ちいい。

「宇宙人、く、いつかどっか、行くだろか」

「さ、さぁ? 待つしか、や、そこばっか駄目ェ!」

建設的じゃない。
でも気持ちいい。

「……俺、あの宇宙人殺そうかな」

「ん、ん、あ、ん、……え?」

言ってて実現できるかどうか。
期待させるのも可哀想だ。
そう思い、佐紀はその言葉をかき消すため、一気に注挿を加速させた。
23423 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 03:05 ID:Dca0ML9D
(14/22)

「え、んあ!ちょ、ちょっとタンマ、やだ、駄目駄目!!」

「く、くっ、くぐっ!」

乾いてきたローションを補うかのように溢れてくる少女の愛液。
援軍の助けを受け、佐紀は必死に少女の秘所を擦り上げる。

「う、うああ、ああ……」

シーツを握り締め、少女がびくびくと震えだした。
どうやら先に達したらしい。
だが佐紀はまだ止まらない。
達した後の、全身が過敏になった少女の柔肌を容赦無く蹂躙する。

「や、やめ、今されたら、激しすぎっ、うあん、いやっ!」

まだ足りない、とばかりに打ち付ける。
体を入れ替え、少女の足を抱えてつ体勢習性。
正常位の素股だ。
この体制なら、少女の小ぶりな胸が弾む様をまじまじと拝むことが出来る。
23523 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 03:07 ID:Dca0ML9D
(15/22)

「い、あっ、うっ、おにーさん、お兄さっ、んっ」

空を掻き毟る少女。
その手を取る。
肌を滑る玉のような汗。
その汗を少女の胸に塗りこむ。
全てが収束していく。
異なる性の持つ全てを貪るような感覚。
やがてそれは佐紀の下半身に灼熱となって結実していく。
佐紀は少女に折れんばかりに覆いかぶさって、その柔らかいと思われる箇所全てをこね回す。

「か……は、くふ……」

少女はあまりの刺激に声すら出ない。

「く、お、っく……イく、マジイくって!!」

気の効いた言葉など出るべくも無い。
アダルトビデオなんか嘘っぱちだ。
人間、本当に気持ちいい時は何言ってるかわかったもんじゃない。

「あ、射精、射精っ!!」

そんな情けない台詞を吐きながら、佐紀は少女の胸に精液を迸らせた。
23623 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 03:13 ID:Dca0ML9D
(16/22)

事が済んだ後、今更ながらに先程の行為に赤面する二人。

「あの……私、何か変なこと言ってませんでしたっけ?」
「えーと、俺、何か変なこと言ってなかったっけ?」

ほぼ同時。
笑うしかない。だから笑った。

「どうぞ、先にシャワー浴びて来てください」

照れくさかったのか、少女はそう言った。



熱いシャワーを浴びながら佐紀は思う。
たった一人の意志の通う人と出会った。それだけでそう思うのは早計なんだろうが、
もし、自分が地球の「王」になったのなら、

「あの娘の罪を無くせるかも知れない」

この星全ての人類を束ねて宇宙人イチローに反旗を翻したら、あるいは。
戦争、とまでいかずとも、地球の総意として話し合いの上、イチローを出て行かせる。
あと、洗脳は勿論解除させよう。
どう考えても、こんな世の中間違ってる。
それを強いるイチローは間違ってる。
だからまず、奴と対等に話せる立場に立たなくては。

性(行為)の開放。
如何ともし難い立志だったが、
今のこの星においては、それでも尊い志だった。
23723 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 03:14 ID:Dca0ML9D
(17/22)

「おまたせー。次シャワー使っていいよー」

体を拭きながら、少女に声をかける。

(そういえば名前聞いてなかったな)

今更だったが、気付いたからには聞かないと気分が悪い。
彼女が体を洗い終わったら聞こう、と佐紀は思った。

「おーい、タオル出しとくよー」

寝室からは返事はない。
疲れて寝てしまったのだろうか。
汗をかいたままでは風邪をひいてしまうかもしれない。
それでなくとも、少女にはこれから先も過酷な懲役が待っているのだ。
せめて、今宵だけは安らかに休んで欲しい。
そんな事を思いながら、佐紀は寝室のドアを開いた。
その瞬間、


「え――――――――」


一切の思考が停止した。
23823 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 03:19 ID:Dca0ML9D
(18/22)

窓が僅かに開けられていた。
恐らく、夜伽の残り香を逃がすために少女があけたのだろう。
それは分かる。よく分かるからこそ。
「それら」が、その隙間から入り込んできたことが分かった。

長さ60cm、幅40cm、厚さ3mmの奇妙な金属板。
それが数えて6枚。

ベッドの上で頭を抱えうずくまる少女をぐるりと囲み、何かレーザーのようなモノを浴びせ続けている。
あの板一体何なのか。
分からない訳がない。
それはいつか出会った何か。
それはいつか倒した何か。

『……対ベクター耐性が基準値を大きく上回っている』
『……イ型を注入してみなさい』
『……イ型は効果なし。エ型、オ型も同様の結果』

そんないつか聞いた台詞を思い出した。
そうだ。アレは洗脳信号・ベクターを照射する装置だ。
理解したからには更に気付いてしまう。
今照射されているアレは何なのか。
いつもアレを使って敵を倒していたから理解してしまう。
アレは。
最大濃度のベクター。
佐紀達「王」候補者が持たされる、必殺にして必生の共通武装。
ベクター透過体ですらもこれの干渉を防げない。
一度干渉をうければ、思い出も心残りも未来も自我も記憶も全てがその全てが、

「あああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーっ!!」
23923 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 03:24 ID:Dca0ML9D
(19/22)

壁に掛けてあるコートを引ったくり纏う。
板がこちらに気付いた。構うか。
瞬時にコートの右袖からベクターを孕む金糸を展開させる。
板達から放たれる金色のレーザーの束。
いや、そう見えるソレは佐紀の金糸と同じモノだ。
物理的な要素を持たない糸のような何かとしか形容できないモノ。
レーザー群が弛む。佐紀を取り囲もうとするその動きは緩慢極まりなかった。
金糸を大きく振るい、全て弾き飛ばす。
同じモノ同士なら接触できる。
それは今までの戦いで実証済み。
仕組みや原理までは知らない。
ただあるがままを受け入れ、それを上手く使ってきた。
ただそれだけ。
だから今自分はまだ人間のままでいられている。
板が少し後退する。そして窓の方に方向転換。
逃げる気だろうか。でも逃がさない。
辺りを見やる。
何か、何か先端が尖っているものは無いか。
あの板の弱点たる「起点」を穿ち抜ける何かは無いのか!
板が開かれた窓に集まっていく。
早く、早くしないと!


――そうだ。自分には、あの日には無いモノを持っている。
て言うか、俺にはこれしか無いんだったっけ――

「あの板っ切れ、全部ブチ抜け」

そう命令するだけで、金色の糸は標的に向かって疾走ってくれた。
24023 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 03:28 ID:Dca0ML9D
(20/22)

紙切れに穴を穿つように一気にその位置を駆け抜けさせる。
正確無比。
金糸に「起点」を打ち抜かれた板は、霧散消滅していった。

「お、おいっ!大丈夫かっ!!」

慌てて少女に駆け寄る。
うずくまったままの少女の姿。
果たして間に合ったのだろうか。
それとも、もう……

「う、うん。平気……」

かなり疲労している様子だったが少女は正気を保っていた。
佐紀はほっと胸を撫で下ろした。

「そ、そっか。良かった……
 俺、まだ君の名前を聞いてなかったからな」

そう言って佐紀は少女を起こそうと手を伸ばした。
しかし少女は、

「お兄さんも、アイツと同じ事してるんだね」
「え……」

佐紀の手が硬直する。
少女は一体何を言っているのだろうか。

「アイツもお兄さんと同じような黒い服着て戦いに行っちゃった。
 潰しあって、人類の支配者を決めるんでしょ?」
24123 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 03:31 ID:Dca0ML9D
(21/22)

その男が漏らしたのだろうか。
知ってる。この少女は自分がしている事を知っている。
この時、佐紀は何故か自分に対する少女の幻滅を恐れた。
しかし、

「アイツはこの世の女を全部食うって言って出て行ったよ。
 そのついでに私も助けてやるってさ」

少女はさも可笑しげに笑う。
まるで、そんな男を好きになった自分を嘲笑するかのように。
その姿が、佐紀にはとても儚そうに見えた。

「お兄さん、もしアイツにあったらきっついお仕置きしてやってくださいね。
 アイツ、みんなにチヤホヤされて結構調子に乗ってるみたいだし」

少女が微笑む。

「富岡裕次郎。
 それがアイツの名前。長い上ダサいからってみんなユージって呼んでる」

その名前。
いつか この手で還した誰かが そんな名前 だったのでは 無かったか。
聞きたかったのは そんな ヤロウの 名前 じゃ ない。

「それとね、実を言うとね」

少女が微笑む。

「お兄さんとエッチしてなかったら、もうちょっと頑張れたかも。
 でも気持ちよかったから、別にいいy」
24223 ◆bxyzd8gFCE :04/02/11 03:35 ID:Dca0ML9D
(22/22)






それから先、少女はヒトの言葉を発さなくなった。
佐紀は力なく少女に近づき、その頬を撫でる。

「?」

きょとん、と。
少女が首をかしげる。
それは、見つめるその瞳は、まるで子犬のように無垢で……

窓を、きちんと閉める。
乱れたシーツを正し、佐紀はベッドに体を預けた。

「おいで」

少女に手招き。
とてとてと近づいてくる少女。

「今日は、もう休もうな」

そう言って佐紀は灯りを消した。
少女は佐紀の傍らで丸くなってごろごろ。

「明日は殺し合いになるだろうから」

少女にその呟きが理解されないのが、せめてもの救いだった。
243名無しさん@初回限定:04/02/11 04:32 ID:KK5rInR+
サキくんがいい男に見えてきた俺はおかしいか…?
全然ヘタレっぽくない…
寝取られるにしてもパーにはなってほしくないっていうか破滅してほしくない…
244名無しさん@初回限定:04/02/11 07:10 ID:oC/8dJTh
>>220
>>218は、景子タンは賢い女の子かもしれないが、
まだ大人の女のズルさを持っていない。て意味で褒め言葉です。


漏れは過去寝取られ派なので、現在おあずけ状態です(;´Д`) ハァハァ

23氏も乙です!
245名無しさん@初回限定:04/02/11 08:59 ID:2DvHFTIi
23氏の単純にお話しとして面白いんですが。
寝取られ抜きで物語として続きが楽しみです。
つーか、寝取られなくてもいいからサキくんには幸せになったもらいたい。

寝取られ目当てでこのスレ居るのに、もはや本末転倒な漏れ。
246名無しさん@初回限定:04/02/11 12:20 ID:eOOCFcFU
23氏の作品にはエロがあってもなくても引き込まれていく自分がいる・・・
読み始めると止められない〜
最高です。ラストに向けて突き進んでください
247名無しさん@初回限定 :04/02/11 16:41 ID:8Bka5nju
23シ603シ、オツカレーオモシロイヨーツヅキガタノシミダ
ンデ、マエスレニハサクシャソノ1サン!!!ガコーリンサレテマスナ
248名無しさん@初回限定:04/02/11 18:47 ID:bGZFu44j
どちらの作品にしても、寝取られ云々というより、
主人公=ヒロインハァハァ状態になってしまってどうしよう。
何故かくも主人公が萌えるのだ!!
249名無しさん@初回限定:04/02/11 21:14 ID:ApyzQe2g
そう!サキかっこいい!!
250 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/12 22:32 ID:IMim7T2M
悶々としてのたうちまわる主人公がくぁわいい>603氏
ヒロくんの漏れの脳内CVは保志総一朗、
景子タンは田中理恵

なぜか岡本喜八の「ブルー・クリスマス」を思い出してしまうですよ>23氏
サキたんの脳内CVは白鳥哲
251名無しさん@初回限定:04/02/14 03:36 ID:Guxq6fhP
はやくつづきをよませれ
252 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 00:54 ID:QQnr9wC7
603氏、23氏の小休止期間のようなので、ちょいと更新させて頂きます。
253 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 00:56 ID:QQnr9wC7
1
前任のK市市長は、バブルの頃に自治体に無駄にばら撒かれた『ふるさと創生資金』の使い道に
悩んだ挙句、僕達が通っていた小学校に全天候式の室内温水プールを増設した。
何の意味も無い投資だったが、せっかく作ったものは使わなくてはならない。
と、いうわけで僕達の小学校では10月下旬から11月にかけて水泳の授業を行っていた。
そして僕は水原恭子の水着姿を初冬に拝謁するという栄誉にあずかったのだ。
 明日は水泳の授業がある、と僕から聞いた水原は、
「気分転換に運動でもしよっか。」
と言い放った。
石井との一件以来授業には全く参加しなかった彼女だが、
どういうわけか温水プールでの水泳には興味を示した。
そうして翌日、ほとんどの女子がスクール水着を着ている中、
水原は12歳の小学生にしてはかなり大胆なカットのセパレートタイプの水着に着替えて授業に現
れた。
254 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 00:59 ID:5tRfFJXo
2
石井正人を含めた男子の目線は彼女に釘付けになっていたが、
水原はいつものように堂々と自信に満ちた態度で
(食生活の豊かさを暗示するかのような)起伏に富んだボディラインを晒していた。

深い群青色の水着に覆われた水原の肢体は物凄く魅力的で、
きれいなフォームですいすい泳ぐ彼女の姿から目をそらすのは至難の業だった。
ほっそりと伸びた肉付きの薄い手足はさすがに年相応だけれど、
微妙な丸みを帯びた胸や腰まわりには、どういうわけか週刊コミック誌で見るグラビアアイドル
でもかなわないような、異様な色香が漂っていた。

すぐに僕は気付いたが、石井は海パンの前をパンパンに膨らませて、食い入るように水原を凝視
していた。
クラスの他の男子も同様だった。

無様なフォームで必死にクロールの練習をしている僕と目が合うと、水原はプールサイドで濡れ
た髪を撫で付けながら微笑んだ。
255 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 01:00 ID:5tRfFJXo
3
「内田クン、泳ぎ下手だねぇ?」

授業が終わると、水原が近づいてきて僕に言った。

「・・・そりゃもう、ご覧の通りでございますよ。」
「クロールも背泳ぎも、もちろんバタフライも出来ないでしょ?」
「・・・ああ、そうですよ、僕は平泳ぎしかできませんよ。」

琴ちゃんとプールや海に行くと、最初のうちこそ泳ぎを教えようとしてくれるのだけれど、
結局いつもビーチバレーやらただプールサイドでふざけるだけになってしまう。

「ひょっとしてさ、平泳ぎでも25m泳げないんじゃない?息継ぎ全然出来てないもん。」
「・・・・・はいはい、どうせ僕はなんにも出来ませんよ。」
256 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 01:01 ID:5tRfFJXo
4
その時、ふと、僕は思った。
水原がこうして何かとかまけてくるのは、結局僕しか手近に話相手が居ないからではないだろう
か?
つまり、ひとりぼっちの女の子がぬいぐるみに向かって話しかけたり、一人でままごとをして遊
ぶようなもので、そこには何の感情も・・・僕に対する異性としての、感情ということだ・・・
も介在していないんじゃないか、ということだ。

しかも、僕を話相手として選んだのだって、特に深い訳があるわけでもなく、
たまたま転校前にその顔を見たことがある、という些細な理由に過ぎない。
この時点で、僕は水原をはっきり好きであると自覚していた。
だが、それはこっちの一方的な、それこそ親父が良く言う『分不相応な』思い込みだろうし、今
のままじゃ彼女に近づくことも出来ない、ということも判っていた。

「じゃさ、今度私が教えてあげるよ、泳ぎ。」
「どこで?」
「ウチのプールで。」

あっさりと言い放つと、水原は女子更衣室へと消えていった。
・・・ウチのプールって、水原の家には25mプールがあるってのか?あんたはハリウッドセレ
ブか。
257 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 01:03 ID:5tRfFJXo
5
「水原のケツはたまんねえよな!」

僕が男子更衣室でシャワーを浴びていると、不愉快などら声が聞こえた。
後藤博次の声だった。
彼は小6にして身長は165cmという少年で、地元のサッカーチームのジュニアメンバーでは
ちょっと名の知れた存在だった。
高校生の兄から仕入れたその方面の知識は豊富で、休み時間には良く『フェラチオ』だの『アナ
ルセックス』だのというキーワードを連発した会話を取り巻き連中と繰り広げていた。
彼の両親はちょっとした建設会社を経営しているので、水原が転校してくるまではクラスで最も
裕福な家庭の子だった。

「ああ、性格は最悪だけどな。」

後藤の取り巻きの一人、福田武が相槌を打った。彼はいつも後藤の脇に控えていた。
258 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 01:03 ID:5tRfFJXo
6
「性格はメタクソだけど、あのおっぱいとケツはたまんねえよ!」

これまた後藤の取り巻きの一人である、小牧治が言った。
彼の一家は室内装飾業を営んでいて、主な客層はガーデンランドの住人達だった。
そのせいだろうが、彼自身は、
ガーデンランドの住人達のような富裕層にある種のコンプレックスを抱いていた。

「いやぁ、水原の体で一番そそるのはあのケツだぜ。」

後藤は女子更衣室まで聞こえるような大声で言った。
彼は着替えもせず、全裸のまま更衣室をうろうろししていた。
股間ではいまだに半勃起状態の、
12歳にしては発達しすぎている・・・完全に皮もむけている、ということだ・・・ペニスがぶら
ぶらと揺れていた。
そんな姿を見られても、彼はなんら物怖じしなかった。
というのは彼には何も恐れるものが無かったからだ。
腕力で彼に適う者は居なかったし、横浜の高校に通う彼の兄はストリートギャングのメンバーだ
という噂だった。
今のところ水原が見せしめに血祭にあげたのは教師である石井だけだったし、後藤にとって水原
は『ちょっとムカつくけど、たまんねえ体をした女の子』だった。
259 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 01:06 ID:5tRfFJXo
7
「内田はどう思ってんだよ?」

突然後藤がでかいペニスをぶらぶらさせながら、僕に近寄って問い掛けた。

「・・・どうって・・・別に・・・」
「何が別にだよ!テメエだって、あの体見りゃチンコ立てるだろうによォ!!」

まあ、当然だが、僕は後藤や彼らの取り巻き連中が大嫌いだった。
彼らは絵に描いたようないじめっ子だったし、『お前の父ちゃん、母ちゃんを寝取られたんだっ
てな!』と言って母の一件をよく持ち出しては僕を笑いものにしていた。

「・・・案外、内田も家帰ったら速攻で水原でシコシコやってんじゃねえの?」
福田が調子を合わせて言った。

「ばーか、むっつりスケベのコイツなら休み時間にトイレでシコシコやってるよ。」
後藤が言うと、その場に居た十数人の男子がゲラゲラ笑った。
僕は黙って背を向けると、さっさと着替え始めた。

「もうこうなったら、オレが水原の性格をたたき直してやるしかねえよ。」

僕の背後で、後藤が言った。

「どうやって?」
「・・・水原にぶち込むんだよ。」
260 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 01:13 ID:5tRfFJXo
えー、すいません、これで終わりです。そろそろいろんな趣向で
盛り上げていこうとプロット練り直してますので、できればお付き合い
くださいませ。
261名無しさん@初回限定:04/02/15 01:29 ID:nGnYqk/M
うはwwww超期待wwww

つーかよさげなキャラ出してきましたな。
このままさわやかな青春の味を出しつつ、ガツンとくるのを希望。
262 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 19:54 ID:GMqwafJg
続き、アップします。
本来このエピソードは時系列から言ってクリスマスイブのエピソードの
前に入れるべきだったのですが、書き忘れていました。判り辛くなって
すみません。
263 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 19:55 ID:GMqwafJg
1
「ぶち込むって、袋叩きにでもすんの?」
「ばーか、コイツをぶち込むに決まってんだろ。」

着替え終わって振り返ると、首にタオルを巻いただけの後藤が、
下腹部にへばりつく股間の一物を指して得意げに説明していた。

「うちの兄貴が言ってたけどな、生意気な女は一回ブチ込むとすっげえおとなしくなるんだって。」
「・・・チンチンをどうすんの?」

この辺の知識に関しては少々理解不足の男子が後藤に尋ねた。

「だから!この前写真も見せたじゃんか!
女の股には穴が開いていて、そこにチンチン突っ込むと子供が出来るんだよ!」

後藤の説明は単純明快、見事な性教育だった。
保健の授業も、結局ここまで簡略化できるというわけだ。
264 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 19:56 ID:GMqwafJg
2
「ああ、あの変な穴かぁ。なんかびらびらしててキモかったなあ・・・」
福田がぼそっと呟いた。
僕が見たところ、彼には多少ホモの気があった。やたらと後藤の体に触れたがるのだ。
だが悲しいかな、後藤は偏った男女間の生殖行動について熱弁を振るうのに夢中だった。

「うちの兄貴が言ってたけど、すっげぇ気持ちいいらしいぜ!
腹を殴って動けないようにした女の子の股開いて、でっかくしたチンチン突っ込むと、
初めのうちは嫌がるけれど、そのうち変な声出すようになるんだって!!」
「・・・で、どうなるわけ?」
「しばらくすると赤ちゃんが出来て、女の腹がでかくなるんだよ!」
「・・・後藤が、水原に、赤ちゃん産ませるの?僕らの年じゃ無理なんじゃない?」

・・・なんだって・・・?

「出来んだろ?あの水原のエロい体つきじゃ、ひょっとしたらもうヤッてるかも知れねえよ?」
265 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 19:57 ID:GMqwafJg
3
その日の帰り、僕は図書室に駆け込んだ。
いつも水原は一番奥の壁際の丸テーブルに一人で座っている。
彼女はイヤホンで音楽を聞きながら、塾のテキストを斜め読みしていた。
いつになく緊張した僕の表情を見て、水原は訝しげに眉を顰めて、イヤホンをはずした。

「なんかあった?どうしたの?」
「いいかい、水原さん。もう学校には来ないほうがいいって。」
「・・・はぁ?」
「少なくとも、水泳の授業には出ちゃだめだ。絶対に。」
「どうして?このくそいけすかない学校で、あのプールだけはちょっと気に入ったんだけど。」

水原は隣の椅子を引いて、僕に座るように促した。

「・・・クラスの男でさ、後藤ってヤツ、知ってる?」
266 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 19:59 ID:GMqwafJg
4
水原は苦笑した。
「ごめん。私さ、実を言うと全っ然名前覚えていないんだ。そいつがどうかした?」

僕は、更衣室で聞いた内容を、多少薄めて水原に話した。
水原はボールペンを指先でくるくる回しながら、黙って聞いていた。
ちょっとどぎつい内容だったけれど、彼女は無表情だった。

「・・・わかった。つまり、内田クンが心配してるのは、そいつが私をレイプするんじゃないか、ってことね?」

女の子がそんな言葉をあっさり口にするのを聞いて、僕は息が止まりそうになった。
もちろん、僕は『レイプ』がどういうことかも知っていた。

「そ、そうだよ。」

水原は腕組みをして、軽く頷いた。
「そいつはどんなヤツなの?」
267 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 20:56 ID:V1VFRBkj
5
僕は彼の家庭や、悪行を・・・コンビニでの集団万引きや、
兄貴が横浜駅西口にたむろするストリートギャングのメンバーで、
ナンパした女の子をレイプしているらしいという噂をかいつまんで説明した。

「・・・だからさ、ホント絶対危ないって。」
「口だけね。」
水原はあっさり断定した。

「つまんない男の子の、くだらない口先だけの与太話よ、そんなの。」
「でもさ!」
「・・・別にそいつが銃を突き付けて、私に『脱げ!』って言うわけじゃないんでしょ?」
「いや、でもあいつはこの辺じゃ有名なワルなんだよ。」
「・・・ま、日本の小学生にそんな度胸があるとは思えないわね。」
水原はイヤホンやテキストをショルダーバッグにしまって帰り支度を始めた。

「私は、自分が出たい授業は絶対に出たいの、わかる?
この季節にプールってのはちょっといいな、と思ったし、
それに私は水泳得意だから、そんなわけわかんない心配で授業に出るのをやめるなんて絶対にイヤなの。」

水原には頑固なところがあった。
彼女は、他人に自分の行動が邪魔されるのが我慢ならないのだ。
まあ、言葉遣いはともかく、水原も典型的なお嬢様タイプだったというわけだ。

268 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 21:00 ID:V1VFRBkj
6
「・・・でもさ・・・あいつらとか、石井が水原さんを見る目つきが・・・おかしいんだよ。」

水原は面白がるような表情で、
「じゃさ、内田クンは私のことを、どういう目つきで見てるわけ?」

僕は唖然として何も言い返せなかった。そんな僕を見て、水原は微笑んだ。

「気にしてくれてありがと、坊や。でも、もうこの話はこれでおしまい。わかった?」

ぼ、坊やって・・・まあ、確かに僕は、水原に比べれば年下に見えるかもしれないけれど。

彼女はいつも自信満々だった。
世の何人たりといえども自分の体を(もちろん心も、)傷つけられるはずはない、
と当然のように信じていた。
269 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 21:01 ID:V1VFRBkj
7
とはいえ、次の水泳の授業では、彼女の様子には少々変化があった。
水着が、小学生には刺激的すぎるセパレートタイプから、ややおとなしめの競泳用ウェアに変わったのだ。
多分彼女なりに考えて、男子の目を刺激しないようにと精一杯配慮したのだろう。

だが、それは全くの逆効果もいいところで、『PASTA’S ESTAB』というロゴが入ったその濃紺の水着は、ワンピースタ

イプでこそあるものの、股間の切れ込みは少々急角度に過ぎた。

なによりも、水原の一挙一動が、その何気ない仕草も含めて、異様なオーラのような色香を放っているのだ。
妻帯者で子供もいる30男の石井ですら眼を離せないのだ、一度でも彼女の姿を見たら、意識せずには居られなかった。

完璧なフォームで飛び込み、優雅にクロールで水面を切ってゆく
・・・それはもう、何かの海生哺乳類のように見事に・・・。
そしてプールサイドに上がると、水中眼鏡とスイミングキャップを外して、
濡れた髪の毛を勢い良く振って水滴を飛ばす。
濡れてぴったりと肌に張り付いた競泳用ウェアは、水原のしなやかな肢体の、
微妙な曲面を余すところ無く反映している。
引き締まって、無駄な脂肪が無い平らなお腹、その中央のおへその窪みに至るまで・・・。
室内プールの照明で、そこかしこのカーブや曲面がキラキラと輝き、殊更にその肢体の豊かさを強調するのだ。

誰も彼女に話しかけなかったが、クラスのほぼ男子全員が水原を食い入るような眼差しで見ていた。
後藤は瞬きもせず、福田が何か話しかけても邪険にあしらって、水原の体に見とれていた。
小牧は指の爪を噛みながら、睨み付けるような視線を水原に向けていた。
僕はどうしようも無く不安になった。
・・・水原さん、自分が挑発してるってこと、わかってんのかなあ・・・。

この日、体育の授業は最後の5時間目で、僕は急いで着替え終わると、真っ直ぐ図書室へと向かった。
・・・水原恭子の姿は、どこにも無かった。
270 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/15 21:05 ID:V1VFRBkj
えー、またしてもここまでです。
プロット立て直しているんですが、長い話になりそうだなあ・・・
271名無しさん@初回限定:04/02/16 00:47 ID:dwRxDEpe
不敵な寝取られヒロインってここじゃあまり(まったく?)見ないから、新鮮でいい感じ。
272名無しさん@初回限定:04/02/17 16:50 ID:SehLzzN+
リンカーンフラグが勃ってるぽいが、まだ二転三転しそうやね
273名無しさん@初回限定:04/02/17 23:12 ID:4+kKkrmO
自分、こういう不安感が好きで寝取られ物読んでるようなもんだなあ……
続きが楽しみ。
274名無しさん@初回限定:04/02/19 16:16 ID:w+CXYzzB
オタワ
275名無しさん@初回限定:04/02/19 21:02 ID:rwXGxWhT
え・・・?オタワ?(w
276 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/19 23:41 ID:bjaNxTdS
かなり先(主人公高校生)まで書いたけど・・・
いま一つ、ショックが少ないです。
もっとこぉ、がっつんがっつん来るような話にせぬと。
今フィッツジェラルド読んで勉強してます。
277 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/19 23:47 ID:bjaNxTdS
今後の展開をより一層お楽しみ頂くために、過去アップした
分を一部リライトして再アップしてもヨロシイでしょうか?

ここでアップしちゃうと、他の職人さんに迷惑かかるので、
SS保存スレのBBSで、ということで。
278名無しさん@初回限定:04/02/20 01:55 ID:9bO/i8XF
どうぞ
279名無しさん@初回限定:04/02/20 22:58 ID:M4MY4jgV
あんまりそこらへんこだわりすぎないほうがいいんじゃないかと思うけどね。
どうしようもないミスってのならともかく……
28023 ◆bxyzd8gFCE :04/02/20 23:05 ID:q/QBk01w
>>◆LZ40ROiqVQ 氏
自分はうpした時点で手を離れた、と思っています。
…そして後で読み返して…ぐね…ぐね…することしばし。

こちらは明日の夜には何とかうpれそう。
皆様よろしくお願いします〜
281 ◆LZ40ROiqVQ :04/02/21 00:01 ID:RLU8Z9HD
了解です。改修せずこのまま突っ走ります。
282名無しさん@初回限定:04/02/21 06:46 ID:owS6v4KA
こだわりたいならこだわるべきだと思うけどね。
603氏だって一回書き直したし。

やりたいようにやってくれればいいと思うよ。
283名無しさん@初回限定:04/02/21 12:47 ID:gAuc3bVf
ま、人それぞれってことでいいんでね? あと23氏うP待ってまっせ!
284名無しさん@初回限定:04/02/22 02:41 ID:tU2xFWqd
今日はもうあかん、眠い…。
23氏、できれば早めによろ〜。
期待して待ってまっす。
28523 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:06 ID:6PYeShnd
こんなアタシでごめんなさい……

自分を鼓舞させる為に締め切りを切ったのがいけなかった……
呼んでくださる皆様、他の職人の皆様にはご迷惑をおかけしてしまい、
まことに申し訳ありませんでした。

なお、今回は閑話休題ということで宜しくお願いします。
28623 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:11 ID:6PYeShnd
(1/26)

{ちょっと構わないか?}

衛星通信での定期連絡を宙央政府に送信するいつもの作業。
その途中である人物から通信が入ってきた。

「あ、これは副統括。ご無沙汰しております」

相手は宙域希少生物保護団体副統括のヤマダだった。
地球支部代表のイチローの、遥か彼方の上層に位置する男である。
ヤマダはその龍のような勇壮な容姿をイチローに見せ付けるかのようにカメラ前に立っている。
彼の種族「ドレイク」は、宇宙でも屈指の文明と知能を持つ支配階級の組織だ。
その彼からみたら、イチローのような下等種族は侮蔑の対象でしかなかった。
しかし、

{ふふ、君は「灰鱈(ハイダラ)」のくせに礼儀正しく頭もいい。
 地球支部代表に抜擢した私の目に狂いはなかったようだね}
「ありがとうございます」

慇懃に頭を下げるイチロー。
その下で硬く握り締められた拳はカメラには入れないようにしていた。

{よろしい。ところで、そろそろ事は大詰めではないのかね?}
「はい。間も無くこの星のソブネリアの代表が選別されます。
 ベクター透過体はこの時点で一人にまで減らされます」
{随分回りくどいやり方だったね。殺せれば楽なのにねぇ}
「そこはそれ、相手は天然記念物ですから」
{そんなのどうだっていいのにねぇ。ヒャヒャヒャヒャヒャ!}
28723 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:12 ID:6PYeShnd
(2/26)

下品にケラケラと笑うヤマダ。
果たして、

{ま、失敗しないように頼むよ。宙央政府からの目もあることだし}
「はい」

果たしてこいつはこんな男だっただろうか。

「あの、よろしいでしょうか」

通信が途切れる間際、イチローはヤマダに声をかけた。
灰鱈がドレイクに話しかけるなど、本来恐れ多すぎることなのだが、

「奥様はご壮健でしょうか?」

このヤマダという男は妻を溺愛している。
その為、その話題になると途端に機嫌が良くなるのだった。

{ミリアムのことかい?
 アレも甘えん坊でね。たまの出張から帰ると、いきなり抱きついてきたりしてかなわんよ}
「へへ、それでそのまま寝所へと?」
{君もはっきり言うね〜♪ま、その通りなんだけどねエヒャヒャヒャヒャ!}
「副総括もお好きですね〜」
28823 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:14 ID:6PYeShnd
(3/26)

高等生物ドレイクにあるまじき見るに耐えない姿。
それでも彼に合わせる為、イチローもわざと好色な笑みを浮かべる。
ヤマダはエロ話も大好きだった。

{おっと、そろそろ宙央政府のお偉い方との会食の時間だ。
 そろそろ失礼するよ}
「はい」
{くれぐれも私の足を引っ張らないようにね}
「はい。心得ております」

勝手な言い草を残し、ヤマダは一方的に通信を切った。
無音に戻った特殊警察署の一室で、イチローは深く溜息をついた。

果たして、
かつて部下だった男は、
こんな愚か者だっただろうか?
それもどうでもいい。
何故なら、

「ミリアム……
 君は今が幸せなのですね……」

かつて自分を愛してくれた人。
そして今はかつて最も信頼していた男の腕の中にいる人。
いつからこうなってしまったのだろうか?
それは、今自分がここにいる理由そのものだった。
28923 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:17 ID:6PYeShnd
(4/26)

――――それは、十年前の出来事。

『そろそろ最後の空間跳躍が途切れる。
 あと五分で通信できなくなりますよ』

跳躍空間の距離破綻を利用した最新式の携帯電話は良好に相手の声を伝えてくれる。
高かったが、無理して買っただけの価値はある。
なぜなら、

{今度話せるのはいつ?}
『任務自体はすぐ終わりますよ。
 ベクターの異常を修正してお終いだから1日くらいでしょうか』
{ホントに?}
『ええ、そしたらすぐに帰りの跳躍空間にを入りますから』
{えへへ、またお話できるね。楽しみ……}

ほら、こんなにも愛する人の声が綺麗に聞こえるじゃないですか。
29023 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:18 ID:6PYeShnd
(5/26)

『もっとも帰るまではあと数ヶ月かかりますがね』
{……むぅー。そんなに待ーてーなーいー}
『はは。ミリアムは寂しがりですね』

そう。ミリアムは寂しがりだ。
近場の出張ですらいつも不機嫌になる。
その代わりと言っては何だが、

『帰ったら、たっぷりと可愛がってあげますから』
{な……!そ、そんなつもりで待てないんじゃないよっ!
 もう、イチローのスケベッ!}
『はは……』

照れまくる、それでいてまんざらでもない様子が見えなくとも浮かんでくる。
くそ、可愛いやつめ。

『ゴメンゴメン。あ、そうそうミリアム。
 ヤマダ君はいますか?』
{ヤマダさん?い、いるけど、……何で知ってるの?}
『たしか今日物置の整理を手伝ってくれる約束をしてましたから』
{そ、そうなんだ}

はて。
何でミリアムは焦っているのでしょうか。
29123 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:21 ID:6PYeShnd
(6/26)

『まぁいい。で、いますか?』
{あ、ちょっとまってね}

しばらくして、ヤマダ君の声が聞こえてきた。

{あ、イチロー副統括。ご無沙汰です}
『休みなのに悪いですね。そちらは変わりありませんか?』
{はい大丈夫です。あと残務もばっちり片付いていますから}
『ありがとう。今度焼肉でもおごりますよ』
{わっ!是非!}
『はは、それじゃよろしく頼みますね』
{はい。イチロー副総括もお気をつけて}

通信は跳躍空間を抜ける寸前で終わった。
ふぅ、と大きく息をする。
大きく首をふり、翼をバタバタはためかせる。

『さてと、それじゃ支度を始めますか』

いつの間にか宇宙船のモニターに映し出された蒼い惑星。
今回の任務先。
私は借張り切ってそこに向かって調査用の端末を放った。
29223 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:23 ID:6PYeShnd
(7/26)

そもそも何で私がこんな辺鄙なところまで仕事に来ているのかというと。
それは全てベクター異常の為だった。



ベクター。
暗黒物質とも呼ばれる不可視の存在。
その正体は、この宇宙に存在する全ての生物に
「自分とは何か」を認識させる為の情報群だ。

宇宙開闢と同時に、それは宇宙のあらゆる場所に発散していったという。
このベクターのおかげで、生物は行き過ぎた進化や行き詰まる進化を遂げる事無く、
定められた終わりの時まで正常な営みを続けていけるのだ。


だがここ最近になって、
ベクター濃度の薄い宙域が次々と確認され始めた。
29323 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:26 ID:6PYeShnd
(8/26)

代表的なベクター異常は以下のものが挙げられる。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
<ケース:0038892>
ベクター内の「パンドゥラ菌」に関する情報が逸脱していた(A?)=E55星系では、
上位種を食い尽くす「パンドゥラ菌」が大量発生し、星系全域が多い尽くされた。

(処置:宙域細菌管理組合)
「パンドゥラ菌」以外の全生物消滅を確認後、圧縮弾頭で星域封鎖。
200年周期での再封鎖が彼らの定期任務となった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
<ケース:0106027>
ベクター内の「ドレイク」に関する情報が逸脱していた(∀ヾ)=D34星系では、
惑星一個を多い尽くすほどの巨大な「ドレイク」が出現し、全宇宙に宣戦布告をした。

(処置:宙央政府)
誇張ではなく宇宙大戦争。607,914,333,654人の
同胞の犠牲の果て、辛うじてその「ドレイク」を絶命せしめた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
<ケース:0456789>
ベクター内の「灰鱈」に関する情報が逸脱していた(∋υ)=M78星系では、
正義の心と変身巨大化能力などを持った「灰鱈」が多数出現した。

(処置:宇宙防衛団体)
彼ら(あえてこう言う)は当団体に極めて協力的だった為、
厳密な偽証検査の後、特別派遣部隊として採用。今日もどこかの星域で頑張ってくれている。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

などなど、数えれば切りが無い。
そして今回のケース。
<ケース:0144763>は、私達「宙域希少生物保護団体」の管轄となった。
29423 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:29 ID:6PYeShnd
(9/26)

太陽系第三惑星。
エコノミー空間跳躍すること数十回。
かかった時間は数ヶ月。
旅費は組織予算の2パーセントにものぼった。

『……ぐああっ』

悶絶したくなる気持ちを無理矢理落ち着かせる。
すみませんミリアム。私達はこんなにも離れてしまいました。
遂に到着した(_ ̄)=F91星系。
はっきりいってクソ田舎です。
最近までメップルにさえ載っていなかった宇宙の最の最果て。
宙央政府にあまり発言力を持たない我々ならではの派遣先。
しかも人員の都合で副総括自らの出向とは……
母星に帰るころには私も遂に200歳の大台に乗ってしまうでしょう。

『……ぐおお……っ』

酩酊したくなる気持ちを無理矢理落ち着かせる。
すみませんミリアム。結婚はもう少し待ってください。
はぁ……
溜息を付き、モニターを見つめる。

『こんな時はコレですね』

先程放った第一次調査隊はあと2〜3時間はかかるだろう。
なもので私は食事を摂る事にした。
往年の友の如く食べ飽きた固形食。
でも今日は違う味かもしれない。
と言っても味は2種類しかないのですが。
29523 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:30 ID:6PYeShnd
(10/26)

食料庫から目をつぶって一つを取り出し、ぺりりとラベルを剥がす。
さてさて今日のメニューは、

『またですか!』

無造作に取った袋には不人気のタロウスチーズ味が収まっていた。
今日で8連続。1/2を8連続。
……今までで新記録です。
全く、何故私はこればかりを引くのでしょう。
思わず己の運命を呪いたくなるが……

『一度手にしたものは残さずに平らげるのが我が組織の美徳。
 それに私の犠牲で部下の誰かがタロウスカリー味を楽しめるのだと思えば……』

それでも不味いものは不味い。
口に広がる如何ともし難い妙味は全く消えてはくれなかった。
29623 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:33 ID:6PYeShnd
(11/26)

戻ってきた第一次調査隊の端末からデータを吸い出して見る。

・生物生存惑星レベル……特盛(化学雪、呼吸毒などの超自然災害は確認できず)
・出入りしている異星人1……「灰鱈(ハイダラ)」
・出入りしている異星人2……「雲藻(ウンモ)」
・支配種……「ソブネリア」
・支配種分布数……61億匹(端数省略)
・支配種文明レベル……並盛(核融合+1、遺伝子操作−1)

『成る程。これはベクター密集の典型的状況ですね』

データを見て納得する。
特盛レベルの自然環境で知的生物は「ソブネリア」のみとは。
「蜜柑ネコ」や「平面ガマ」位はいてもおかしくないのに、だ。
そして、その「ソブネリア」の文明レベル……

『こんな短期間で核やDNAを実用化させるなんて。
 放っておくと危険ですね』

2千年程度の文明にしては異常なまでの発達。
恐らく安全性の確立を成さないでの技術使用か。
ともかくこれではっきりした。
ベクター密集。
星系全域にくまなく分布しているはずのベクターが、「どこかに偏っている」現象。
それ故、正規の能力異常の種が実現してしまう現象。
恐らく、ベクター密集の特移点はこの惑星のどこかだろう。

おおよその位置を特定した後、私は惑星地表に降下を開始した。
29723 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:36 ID:6PYeShnd
(12/26)

降下先は高層建築が無造作に密集している人口3万人ほどの都市。
この辺りにベクター密集の特異点があるはずだ。
私はソブネリアの姿の義体を着込んで捜査を開始した。
私の真の姿はソブネリア程度の理解力では知覚できない。
もし運悪く知覚したならば、一瞬で灰と化してしまうでしょう。
故のこの義体。
暑苦しいが我慢せねば。
この任務さえ終われば愛しいミリアムの元に帰れるのだから。

……
…………

『ははぁ。どうやら……これのようですね』

ビルとビルの隙間にぽっかりと開いた一坪ほどの空き地。
草木の類も全く無く、およそ生物が立ち入った形跡も無い。
きっと野生の本能でこの場所への進入を回避しているのだろう。
ここは存在するのに、存在しないと認識する場所。
それは、この星が始まってから今までずっと。

この場所に存在する高密度の「何か」が発する無言の圧力の成せる技である。
その正体は、言うまでもない。
29823 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:39 ID:6PYeShnd
(13/26)

『始める前にまずはこれを設置せねば』

ここに至る道……ビルの隙間の路地に侵入者用のバリアを仕掛ける。
なるべく違和感の無い自然なものを。
選んだのは選択型バリアだ。
1/2で相手に強烈に引き返したい気持ちを抱かせるものだ。
それを30cmの間隔ごとに一つ仕掛ける。
その数、13個。
突破される確率にして0.0001%だ。
これならごく自然に侵入者を追い返すことができる。
原住民への干渉は極力避けないと。

『準備完了……と。
 さて、ぼちぼち開始しますかね』

義体を脱ぎ捨て、生まれたままの姿に戻る。
種族「ドレイク」
巨大な翼と硬質の表皮、そして強力な精神感応力を持つ高等知的生物。
この手のベクター事故にはうってつけと言われている。
何故なら、

『スキャン開始』

精神感応力を開放し、不可視のベクターに色と形を与える。
色々といじくり易いように。
瞬間、私の肉体は逆に色と形を失っていった。
29923 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:42 ID:6PYeShnd
(14/26)

『続いて半同化開始』

ベクターとほぼ完全にシンクロした。
空き地の空間が歪みつつも安定していく。
この処置のおかげで今この場所にあるベクターの状況が手に取るように知覚できる。

『分散して然るべきベクターの密集。
 それが圧縮に耐え切れず、ベクターの一部に書き換えが生じている』

まるで炭素が圧力で金剛石に変化したかのように。
そしてその異常部分は……

『やはり、ソブネリアに関するデータですね……』

トレースの結果、思いの他、その異常は広範囲なことがわかった。

・ソブネリアの知能限界突破
・ソブネリアの習性の欠落
・ソブネリアの発情周期異常

うーむ、あるまじきですね。
解ったからには、速やかに処置を施さねば。
時間にして、約521分ってところでしょうか。
ではさっそく……
30023 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:45 ID:6PYeShnd
(15/26)

きぃん、と。

突如鋭い警告音が響き渡った。
何者かがこの場所へと至る路地に侵入しようとしている。
この密集したベクターが持つ威圧感を超えてなお、ここへと歩を進めるつもりらしい。
……まぁいい。
直線距離でおよそ40m。
その道なりに仕掛けたバリアは13個。
どうせどれかのバリアに引っかかって帰ってしまうだろう。
私は気にせず作業を進めることにした。

『正規情報を宙央政府書庫よりダウンロード』

ぴしり。バリアが一つ突破された。1/2。

『圧縮データを解凍開始』

ぱしり。2つ目も突破された。これで1/4。

『必要箇所を選択してコピー』

ぴしぱし。一気に突破された。おいおい1/16?

『…………』

ばしばしばし。何者かはわからないが、レーダーでも持ってるのか?
……これで1/128。
30123 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:48 ID:6PYeShnd
(16/26)

変な汗が出る。
これで都合7つのバリアが突破された。
1/2の確率を7連続で引き当てることがどれ位の偶然か、
わかる人にはわかるのではなかろうか。
そんなことを考えてるうちに、

ぴしぴしぴしぴしぴし!

残るバリアはあと1枚になってしまった。


まずい。
侵入者の目には、恐らまだ奥へと続く道が見えているだろう。
だが、もしあと一歩踏み出せば、1/2の確率でこの場所へと至ってしまう。
私は針の穴を通すような作業中にも関わらず、携帯してきたバッグを漁り始めた。

『て、手持ちで一番強力なバリアは……!』

なりふり構っていられない。
不特定多数に見られても仕方ない。
減棒降格言ってられない。
くそ、どこです、どこにあるんですか!!

『あっ……』
30223 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:52 ID:6PYeShnd
(17/26)

あぁ……
ビルとビルの隙間からソブネリアの子供が現れた……
この子が、この子が確率1/2の13乗を引き当てたのか……
子供は呆然としてる。
そりゃそうでしょう。
あの子の目に映っているのは、恐らく形容し難い異常な光景だ。
よくて発狂。悪くて肉体ごと消滅。
可哀想だが、仕方無い。

と思った矢先だった。

『う、うちゅうじん!!』

その子は何故か、空間に融けている私を発見した。


『え?』

思わず素っ頓狂な声をもりしてしまう。
ベクターと同化した私は姿形は拡散していて勿論不可視だ。
なのに、この子は私を1個の存在として裸眼で認識している。
信じがたい。が、それよりも。
それよりもこんな不安定な状況の中で、

『うちゅうじんだ、うちゅうじんがいる!!』

あ、駄目です。そんなことを強く思われたりしたら……
30323 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:55 ID:6PYeShnd
(18/26)

『い、いけないっ!これはいけないですよ!』

嫌な予感が的中した。
空間に密集したベクターが「うちゅうじん」に関するデータを選別し始めた。
いかんいかんですいかん。
このままだと、
「うちゅうじん」に、
書き換えが発生してしまう。
この子と、
この私の存在が、書き換えられてしまう。
この場を支配するイメージ、
侵入者の子供の想像する「うちゅうじん」の姿に!

この子がデフォルトで想像する宇宙人とは何なんだろうか?
「灰鱈」?
「雲藻」?
と言うかその二つだけは絶対嫌です。

それ以前に、原住民をベクター事故に巻き込んだりしたら私は良くてクビ、悪くて犯罪者だ!
30423 ◆bxyzd8gFCE :04/02/22 23:58 ID:6PYeShnd
(19/26)

『そこの君!!』

既に書き換えが発生している状態にも関わらず、私は無理矢理シンクロを解除し受肉した。
眼に飛び込んでくる己の姿は、あぁ……この姿はやっぱりぃ……
それでも、

『とっとと逃げなさいっっ!!』

渾身の力で、その子を投げ飛ばした。
多少書き換えの影響を受けているかもしれないが、これ以上は無理。
だって、
もう、

『ミリアム……!』

意識が 途切れ  た。
30523 ◆bxyzd8gFCE :04/02/23 00:00 ID:uT+yrYHz
(20/26)

気が付いた時には、
何とかベクターは沈静化していた。
まだ異常は修正されていないだろう。
はぁ、もう一度、やり直しか……

むくりと身を起こす。
はて、目線が低い。
色々見回す。
おや、手が妙に白い。
て言うか、鱗は?翼は??
恐る恐るバックから手鏡を取り出し、ちらと見る。

『――う――あ――――――ああ、ああぁぁぁ――――』

信じたくないが、事実らしい。
書き換えはしっかり完了していた。
勇壮だった我が身はいずこへ。
ミリアムが愛した我が身はいずこへ。

我が姿は、
あの、体液採取、内臓摘出しか能の無い下等生命体、

「灰鱈」の姿になっていた……
30623 ◆bxyzd8gFCE :04/02/23 00:04 ID:uT+yrYHz
(21/26)

それから先はバタバタしすぎて、もう……
ほうほうの体で帰還した後は、宇宙警察からの執拗な尋問。恫喝。

副統括のイチロー氏はどこへ行ったのか。
お前は何でここにいるのか。
カツ丼食うか?衣しか無いけどナー

酷い扱われようだった。
ミリアムやヤマダ君、果ては組織の威信をも考えて、
私は苦渋の選択をした。

『イチロー氏は調査中に不慮の事故で死亡。
 その間際、たまたま現地でアルバイトに雇われた自分が生前の記憶データを受け取りました』

苦しい言い訳だったが、本人が言っているのだからまぁ疑われないだろう。
精神分析にかけられても、この体にいる魂はイチロー本人のものなのだから問題無い。
事実あらゆる分析は見事にクリア。
私は「灰鱈」の身ながら、宙域希少生物保護団体副統括イチロー本人だと認められた。
30723 ◆bxyzd8gFCE :04/02/23 00:21 ID:uT+yrYHz
(22/26)

『で、問題はどう話せばいいのかなのですが』

数ヶ月ぶりの自宅の前で、私はうろうろしていた。
身の証は立てられたものの、私はそれをまだ公にはしていない。
何故なら、ミリアムのこと。

ドレイクの勇壮な姿は今は無く、私の見てくれはみすぼらしい「灰鱈」だ。
こんな姿で彼女に会ってしまっていいものやら。

数時間悩んだ末、私は意を決して玄関のチャイムを鳴らした。
しばらくして、

『誰〜?』

出てきたのは、

『え』

寝巻き姿のヤマダ君だった。
あまつさえ、

『あなた……何……お客様〜?』

遠くから、聞きなれた声が、聞こえてきた。
30823 ◆bxyzd8gFCE :04/02/23 00:21 ID:uT+yrYHz
(23/26)

『新聞なら間に合ってるから』

ボリボリと頭を掻きながら、ヤマダ君はめんどくさそうに応対する。
が、私は混乱の極みだ。

何故、彼が未だここに?
それに、あなたって何?

『あ、えと、その、旦那様はいつからここに?』
『何でそんなこと聞くの?』
『いえ、宙央政府の下請けで世帯調査を』

無論出まかせだ。
しかし、



『あんた、「元」副総括でしょう?』

ヤマダはにやり、と笑った。
30923 ◆bxyzd8gFCE :04/02/23 00:25 ID:uT+yrYHz
(24/26)

その後、私はイチローとしての生前の記憶データを破棄した。
したと公式には発表した。
ヤマダや世間の目を欺くためである。
勿論記憶を破棄してなんかはいない。
そして自分の代わりに副総括になったヤマダに取り入り、そこそこの地位を得た。
ヤマダは元上司だった私ががヘコヘコするのが気持ちいいらしく、
面白いように私の思惑通りに動いてくれている。

全ては、ミリアムの前に立つため。
君が捨てた男がどんな人物だったのかを、知らしめるために。

だが、それは恐らくは叶わないだろう。

肉体の完全再生。
自分が生きているうちに技術が実現されるかどうか……





その事に関しては、すでに脳の中の隅の隅。
十年間泣いて悩んで、やっと最近心の中から失せてくれた。
31023 ◆bxyzd8gFCE :04/02/23 00:30 ID:uT+yrYHz
(25/26)

そして今、イチローはやり残した仕事を済ませる為、十年前と同じ惑星にいる。

ベクター密集はすでに処置を済ませた。
後は、既に違う存在へと昇華してしまったこの惑星のソブネリアを修正するのみ。
いわば、事後処理だ。

そこでかつて自分の運命の軌道を大きく変えた者とイチローは再開した。
加藤佐紀。
生まれながらのベクター透過体質に加え、恐ろしいまでの運の持ち主。
その彼も、今やイチローの手の中だ。

イチローが彼に課した選択肢。
対峙する相手は、全て佐紀を基準に装備品で能力修正を施し、
お互い全くの互角に設定してある。

佐紀が勝つか、負けるか。
それはすべからく1/2。
これは、いわばあの選択型バリアの続きだ。
イチローが仕掛けた1/2の連続に、佐紀がどこまで食らいついていくのか。
色んなことを諦めたイチローの、それは唯一の興味だった。
31123 ◆bxyzd8gFCE :04/02/23 00:33 ID:uT+yrYHz
(26/26)

「さて、そろそろ時間ですね」

最後の勝負が間も無く始まる。
イチローは座り慣れた椅子から腰を上げた。
ソブネリアのボス選びなんて正直どうでもいい。
己が勝つか。
佐紀が勝つか。
結果はすぐに出るだろう。

だがイチローは気付いていない。
いや、あえて考えないようにしているのか。
自らが既にその確率を修正してしまっていることに。

佐紀に与えた3錠のカプセルがそれだ。

何故、そんな酔狂をしたのか。
それは、イチローの心の奥底に微かに燻る灼熱だけが知っているのかもしれない。
312名無しさん@初回限定:04/02/23 09:52 ID:3wn/P8/f
23氏乙。 エイリアンもNTRかよw トンデモ科学に関してはツッコミ不可でいいですか?
313名無しさん@初回限定:04/02/24 08:54 ID:pE6RV3hx
灰鱈ってグレイのこと?
314名無しさん@初回限定:04/02/24 23:25 ID:n4aLseae
おお、二眠りほどしてる間に新作が…。

って、そこでサイドストーリーですくゎ…。
続きはよ見たい…。
315Fateに寝取られchuな603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/24 23:32 ID:0vGdAlJ5
他の方の作品がうpされるまでの間に、お目汚しさせていただきます。一応、前回の続きです。
さてさて、皆様方のご期待に沿えるかどうか。
(1/10)
「その人に出会ったのは、小学校3年の2学期だった。ちょうど登校班が一緒だったの」
「その人は私より2年年上の人だった」

何故彼女はこんな事を話すのだろう。正直言って、昔の男の話など聞きたくない。
だけど、耳を塞ぐことはできなかった。
彼女が何を意図したのか、本当のところは、解らない。けれども、俺には それが何かの儀式のように感じら
れた。そう、過去に決別し、目の前にいる俺との愛を育むために、自分にたまった過去の残滓を全て吐き出す
儀式だ。
彼女の過去の経験は、今の彼女を形作る礎になっている。
俺は、今現在の彼女を愛すと決心し、宣言したんだ。たとえ彼女の過去がどんなものであれ、それを受け入れ
なければ、真に彼女を愛する資格など無い!どんなに苦くても、しっかり受けて咀嚼し、自分のものにしなけ
ればだめなんだ!

「私、それまでずっと海外で暮らしてたから、日本の生活習慣なんか解らなくて 不安で、でも友達いないか
らどうしたら良いか解らなくて、一人ぼっちで集合場所に立っていたときに、その人が声を掛けてくれた」
彼女の話は続く。心臓の拍動の度に鋭い痛みが胸に突き刺さっていった。

「『君が、遠野景子ちゃん?よろしくね』って、にっこり笑って手を取ってくれて……すごく嬉しかった」
「その人、優しくて、いつも私に声を掛けてくれて、登校するときはいつも一緒で、帰りも時間が合えば一緒
に帰ってた。他の男の友達も一緒だったのに、冷やかされても嫌な顔一つしないで一緒に帰ってくれた」
「学校の行き帰りだけじゃない。時々は休みの日に一緒に遊んでくれたりした。好みの合わない映画に付き合
せても、文句一ついわなかった。ショッピングに付き合わせても、私が納得するまでじっと付き合ってくれた」
「こんなに優しかったから、その人の事、すぐに好きになった」
「まあ、『好き』っていっても、その時は小学生中学年だから、男女のそれ より、憧れ……優しいお兄さん、
って感じだったけれど……でも、その時から、『この人のお嫁さんになりたい』て思ってた」
316Fateに寝取られchuな603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/24 23:33 ID:0vGdAlJ5
(2/10)
「小学校6年の時くらいからかな? その人のことを『お兄さん』じゃなくて、一人の男性として好きになっ
ていったのは」

「でも 彼、私だけじゃなくて 他の人にも優しかったし、運動神経抜群でスポーツ万能な上に頭も良かった
から、凄くもてた。中学の頃なんか、いつも4、5人の女の子がその人の廻りを囲んでたもの」
「不安だった。私の事は、単に近所の好で優しくしてくれるんで、そうじゃなかったら見向きもされないんじ
ゃないかって」
「中学に入って すぐに『好き』って告白した。 彼、困ったような顔をしたけど、『好きだ』って言ってくれたわ」
「それで安心したけれど、でも その人が卒業して高校に進学すると、すれ違いが多くなって、一緒にいられ
る時間が少なくなった」
「その人は相変わらずもてるから、他の女の人と一緒の処を見たり、噂を聞いたり……で、堪らなくなって、
その人に『私の事、どう思ってるの?『好き』って言ってくれたのは変わらないの?』って訊いたの」
「そしたら 彼、私の事『好きだけど、それは妹のように思ってる』だって……もう、悔しくて悲しくて、そ
の時は目茶目茶に泣いたわ。手当たり次第に物を彼に向かって投げつけて……彼、ギュッ抱きしめてくれた。そ
れが嬉しくて、その後、余計に悲しくて、悔しくて……彼が帰った後もずっと泣いてた」

「それでも諦めきれなくてね、どうしても彼を自分に向けさせたくて、彼を自分の部屋に呼び込んで、『抱いて』
ってお願いした……服を全部脱いで」

「彼、抱いてくれた。……嬉しかった。これでこの人の恋人になれたんだって思った」

驚いた。おとなしそうな彼女に、こんな激しい一面があるなんて……いや、そうじゃない。今日の事を考えれ
ば、これも彼女の真実なんだ。
愛しい人に振り向いてもらえるのなら、どんな事でも厭わない、そんな一途さと激しさを 彼女は持ち合わせているんだ。


317Fateに寝取られchuな603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/24 23:36 ID:0vGdAlJ5
(3/10)
そんな彼女から抱きつかれてこうなったのだから……今の彼女は俺のことを愛してくれている……間違いない。

「それからは、こうすればこの人の側にいられると思って、何度も彼に抱かれた。……でも、1年も持たなか
った。彼のベッドの隙間に女物の下着が挟んであったの」
「問い詰めたら、彼、認めたわ。他の何人かの女の人とそういう事したって……最初のうちははぐらかされていたんだけれど、しつこく何度も訊いていたら、そのうち逆切れして」
「彼、怒って『お前だって他の女共と一緒だ。抱いてもらったくらいで彼女面すんな。嫌なら別れる』って言ったの」
「悔しかった。あんなにいっぱい抱いてくれたのに、でも彼の恋人になれなくて……結局、ワンオブゼム
でしかなくて……それでも、諦め切れなくて、彼の求めるまま抱かれたけれど、その度に空しくて……でも諦める事、できなくて……」
「ともかく、彼と一緒にいる時間少しでも長くなれば、もしかしたら……と思って、そのために彼と一緒の高校に入らなきゃって思って、死に物狂いで勉強したの」
「その甲斐あって 合格したけど、……けど、何も変わらなかった。それどころか、彼に呼び出されて、『うざ
い、お前とは付き合えない』だって……涙もでなかった」

胸が苦しい、彼女から『抱かれた』という言葉を聞かされる度に、彼女が彼氏から冷たく扱われるのを聞く度
に、息が詰まり心臓が止まりそうなくらいキリキリとした痛みが胸に広がる。
彼女の不幸な話に心を痛め、でありながら 彼女が他の男と繋がった話にどうしようもない焦燥感を感じてい
る……自分勝手なのは言われなくても解っている……でもどうしようもない。俺は、彼女が欲しい。他の誰にも、その一部すら渡すのは我慢できない。



「気が狂いそうで、死んでしまいたかった。……可笑しいよね。こんなに酷い事言われたのに、それでも好き
だなんて……唯、彼に言われた時、死ぬほど辛かったのは事実なの」
「その時は、冗談とか言葉のあやとかじゃなくて、真剣に死に場所を探してた。そんな時だった……貴方に会えたのは」
318Fateに寝取られchuな603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/24 23:42 ID:0vGdAlJ5
(4/10)
「あの時もそうだった。学校に行くのも クラスメイトと顔を会わせるのも 何もかもが嫌で、憂鬱で……それ
なのに 聞こえてきたピアノの音色が気になって、行ってみたら 貴方が『あの曲』を弾いていた。……変だ
よね、何をするのも嫌だって言う人間が、ピアノの音に引かれて 来てしまうなんて、出来すぎだよね。……
でも、本当」
「自分でも信じられなかった。あの曲が終わった時、『なんでこんな所にいるんだろう』ってびっくりしたもの。
だけど、すぐに解った。貴方のピアノ、すごく暖かくて、優しいの。それに惹かれて来たんだって」

「特に、あの曲は、そうだった。何だか誰かに優しく抱きしめられている気がして、子供に戻ってお母さんに
甘えているような感じで、その時だけは彼に振られたことを忘れて ゆったりした気分になることが出来た」
「だから、なの。貴方にあの曲ばかりリクエストしてたのは……ごめんなさい。自分勝手なお願いばかりして」

その時の彼女の顔を思い出してみる。
確かに、表情は暗かった。
そう、あの曲をよくリクエストしていたのは、そんな事があったからなんだ。

「貴方には、感謝している。貴方に会わなかったら、こんな風に立ち直る事なんて出来なかったから」

「ちょっと待って」
彼女の独白にはじめて口を挟んだ。
感謝される事に、悪い気はしない。けど…………俺が彼女を救ったわけではない。

「待って……感謝してるって……嬉しいけれど、あの時僕は君のリクエストに答えて、ただ弾いただけだよ。そんな、君の事を癒してあげたいなんて、ご大層なことを考えていたわけじゃあ……」

「わかってる。解ってるわ。でも、貴方の演奏は、貴方自身……そのものじゃないの?私は、『貴方』が弾いて
くれた曲に、、慰めらて、癒されて、元気になったの」
「曲が良かったから、て言うのなら、他の人の演奏でもいいはず……でもそうじゃなかった。この曲のCDを何
枚か買ったけれど、ダメだった」
319Fateに寝取られchuな603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/24 23:44 ID:0vGdAlJ5
(5/10)
「貴方の音色でなきゃ、気持が落ち着かなかった。優しい、穏やかな気分になれなかった」
「解ってもらえたかしら。あの時、私を支えてくれたのは、貴方の曲じゃない。貴方自身だったのよ」

「……だから、貴方から『振られた』って事を聞かされた時は、本当に辛かった」
「何か、まるで 自分が振られたみたいで、心臓に太い針が刺さったような痛さを感じた事、覚えてる」
「何とか心の傷を埋めてあげたかった。貴方が私をピアノで癒してくれた様に、貴方を癒してあげたい。でも、
私にはあんな事できない。それだから、貴方がその前に『そっと胸に抱き寄せて欲しい』って言うのをしたの」

あの時の事は、はっきりと覚えている。
香織と先輩との情事を見せられ、心の隅に僅かに残った希望を粉砕されて絶望の淵にあった俺に気付いて、優し
くその胸に抱きしめてくれた事を。そして『泣きたい時は泣いたほうがいい』と囁いた優しい声に後押しされ
て、彼女の胸で泣いた事を。
その優しさに惹かれ、彼女を好きになった。こんなにも美しく、こんなにも優しい彼女が自分だけを見ていて
くれたら、といつも思っていた。
それは、今でも変わらない。いや、今は余計に、その好きだった彼が、今彼女の中でどうなっているのか、知りたい。
彼女にとって大切な人が俺以外にいるのなら、悲しいけれども、それでもかまわない。俺が彼女のオンリーワ
ンでなくてもいい。せめて、今の彼女のナンバーワンでありたい。

それは、自分にとっては、一つの賭けだった。
知らなければ、幸せな時を過ごせるはずだ。勿論、期待した通りの答えなら、より幸福の度合いは増えるの
は間違いない。でも、でももし意図したのとは違う答えだったら……考えれば考えるほど、訊くべきでないと
解ってくる……けれども、訊かずに終わらせる事ができなかった。

「君は、今でもその人の事……すき…なんだ」
彼女から答えは返ってこない。替わりなのか、背中に回った彼女の腕に力が入ったのを感じた。

320Fateに寝取られchuな603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/24 23:44 ID:0vGdAlJ5
(6/10)
訊いてから、2分…いや、3分くらいたった頃だろうか。彼女からの答えが帰ってきた。

「今は……今好きなのは、貴方だけ。だから……何処にも行かないで」

頭に、体に精気が送られていくのが解る。体中に元気の元がみなぎっていく。
嬉しい。素直に嬉しい。

「あたりまえだ。何処にも行くもんか。僕が好きなのは、君だけなんだから」

「本当に?……信じていいの?

「ああ、信じてくれ。証明する事はできないけれど、この言葉に嘘偽りはないよ」

信じる……信じる。だから、貴方も信じて」

「信じるとも……」

抱き合ったお互いの腕に力が入る。彼女の鼓動が、息遣いが、温もりが、素肌を通して伝わってくる。
この温もりが、お互いの信頼の証。言われなくとも、離すものか。苦しんで、やっと見つけた 大切な人だ。
321Fateに寝取られchuな603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/24 23:45 ID:0vGdAlJ5
(7/10)
シュルシュルと衣擦れの音が背後で聞こえる。
今、背中合わせで共に自分の服を着ている。
時刻は7時15分過ぎ、もう帰らないとお袋から爆弾が落ちる危険性が高い時刻だ。
何故背中向きに?……彼女曰く、『恥ずかしい』のだそうだ。
さっき、頭のてっぺんから足の先までお互いに見せ合ったというのに、下着姿を見せるのが恥ずかしいってい
うのは、どういう事なのか……こんな風に感じる俺には、女の子の感情は一生掛かっても理解できないだろう
………は…ふぁ…ハックション!!。

ちょっと裸でいる時間が長かったか、くしゃみと共に大量の鼻水が出てきた。流石にこれでは着替えができない。

「悪い。ちょっと鼻水が出ちゃったから、ティッシュもらえないかな?」

「あ、今取るから ちょっと待ってて」

「あぁ いいよ、自分で取るから。何処にあるか教えてくれる?」

「えぇと、私の机の二番目の引出し……」
言われて、彼女の机の引出しを開けた。ティッシュボックスが収納され、その上に写真立てが伏せて置かれている。
これ……勝手に触っちゃまずいよな……でも、退かさないとティッシュ取れないし、それに……。

自分の胸の奥深くに向かって、何かが囁かれた感じがした。
この写真立ての中に収まっているものは何なんだろう……。
心臓の鼓動が1ノッチ速まる。


322Fateに寝取られchuな603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/24 23:46 ID:0vGdAlJ5
(8/10)

普通、写真立ては 机の上 とか 割と目立つ処に置かれる。それが、引出しの中、しかも伏せて置かれてい
る、という事は……見たくないもの、見ると辛くなるもの、だろう。
なのに、捨てていない、という事は……捨てたくないもの、には間違いない。

見たくない、けれども捨てられない写真……それが何なのかは、想像するに難くない。
見てはいけない。見たら、彼女を信頼する心が揺らいでしまう。

「あ……ち、ちょ、ちょっとまって! やっぱり私が……
彼女の声が聞こえる。
ほら、彼女もそう言っている。この写真は見てはいけないものなんだ。
彼女を愛しているのなら、彼女を放したくないのなら、見てはいけないんだ。

頭の中で必死に叫んで、手を止めようとした。
なのに、手は自分の脳の命令を無視して、写真立てを取り……、表に……返した。

「あ……」
彼女の声がすぐ後ろで聞こえる。
振り向いて何もなかった様に彼女に写真立てを渡して、ティッシュを2枚取ると、鼻水をかんで 拭き取り、
丸めてズボンのポケットにしまった。

別に大したものが写っていたわけじゃない。まあ、普通にある写真だ。

「あ……あの、…………みちゃっ……た?」
彼女の様子がおかしい、何だか酷く慌てているようだ。


323Fateに寝取られchuな603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/24 23:47 ID:0vGdAlJ5
(9/10)
「あのね……落ち着いて聞いてね。これ、ここにあるの、ずっと忘れてたの。もう捨てなきゃ、って思ってた
んだけど、何処にあるかわからなくなっちゃって……だから……ね?気にしないで。ね?お願い。もう、何で
もないんだから」

「どうしたの?何か、おかしい事でもあったの?……とにかく、落ち着いて話して」

「ね?もう、捨てようと思ってたものなんだから。ね?」

「落ち着いてってば」

「解って……解ってよ、ねえ。本当、本当に今は貴方だけなんだから」

「落 ち 着 い て ! ! !」
彼女の両肩を強く掴んで、揺らしながら、叫んだ。かなりの大声だ、近所に聞こえたかも知れない。『落ち着け』
って言いながら、こんな大声で怒鳴るなんて、自分の方がもっと落ち着かなきゃいけないようだ。我ながら
みっともない。
とはいえ、その言葉に我に帰ったのか、彼女もひとまず静かになった。

「大丈夫、さっき言ったよ、『信じる』って。安心して。こんな写真より、僕は君の言葉を……今目の前にいる、
君の生の声の方を信じらてるから」
そう言って、彼女をギュッと抱きしめた。

「……うん……ごめんなさい。ちょっと取り乱しちゃった」

「ごめんね。僕も、無神経だった。君が『取ってくれる』って言ったのを無視して、自分で取るからこんな事に
なるんだよね」
324Fateに寝取られchuな603 ◆fzpLpgOYbk :04/02/24 23:51 ID:0vGdAlJ5
(10/10)
それからは、お互い黙ったまま服を着、見送りもそこそこに彼女の家を後にした。


胸の中は、激しい後悔で一杯だった。
見ればこうなるのは解っていたのに、なぜ、見てしまったんだろう。
あれほど、自分でも見るなって言っていたのに。

さっき、彼女に『信じる』って言った。それは嘘じゃない。いや、嘘でも信じなきゃいけないんだ。自分の言葉
を忠実に守らないと。
じゃないと……俺は、自分の猜疑心に押し潰されてしまう。
見てしまった写真に、自分の気持を全て破壊されてしまう。

彼女の机の引出しに伏せられていた写真は……彼女と中川先輩が仲良く笑って肩を抱き合っている写真だった。

こんなのには負けられない。写真一枚に自分の気持が負ける訳にはいかない。先輩、あんたは昔の人なんだよ。
あんただけには、渡さない。お前には絶対に負けない!!!







という処で、本日はおしまい。
次回、二人は急展開に・・・・・・なるのか?
果たして、香織の出番は?
などと煽ってみたりするテスト(懐



・・・・・・さ、次の人、クスクスと笑ってGoGo!
325名無しさん@初回限定:04/02/24 23:57 ID:c52pziX9
予想していた展開だけど・・・イタイな。
ヒロクンに幸せになって欲しいなぁ・・・シミジミ。
326名無しさん@初回限定:04/02/25 01:23 ID:wA80Sdit
ティッシュの上って事は今だけ隠してるって事だよなあ…。
327名無しさん@初回限定:04/02/25 03:35 ID:Cb4O7g50
ああ・・・寝取られスレなのに・・・
ヒロクンだけは寝取られないで欲しいと思ってしまう自分が居る・・・
328名無しさん@初回限定:04/02/25 05:28 ID:AbRL3Qzw
先輩悪確定か…
329名無しさん@初回限定:04/02/26 00:00 ID:6Wd/NJEC
この展開を踏まえると、
ヒロくんがめちゃめちゃ痛々しいんだが。
一方で香織のピエロっぷりがずばぬけて際立つ気がするのは何故だろうW
330名無しさん@初回限定:04/02/26 01:07 ID:WsrJvyaM
景子、未練たらたらだな。
33123 ◆bxyzd8gFCE :04/02/26 01:52 ID:Op9lUDH/
先輩が悪人とは正統なれど予想外。
これでもしヒロくんより強かったりしたらもぉ最悪_ト ̄|○
332名無しさん@初回限定:04/02/26 02:04 ID:JEsPv2mY
そりゃもちろん腕っぷし強いしスポーツ万能だしイケメンだし巨根だしあっちのテクも(ry
333名無しさん@初回限定:04/02/26 09:47 ID:BXTJqQB9
それよか兵隊が沢山いてヒロキュン個人の強さではどうにもならない方が萌え
334名無しさん@初回限定 :04/02/26 14:06 ID:tdc185Ga
個人的にはヒロキュンに
「君はさっき”人の気持なんてそう簡単に割り切れるものじゃない”って言ってたじゃないか」
みたいな事を言ってほしかった。
335名無しさん@初回限定:04/02/27 01:48 ID:94GKFJEI
ワンオブゼム って何ですか。。。?? 誰か教えて....
336名無しさん@初回限定:04/02/27 02:49 ID:fbpF0Wci
ONE OF THEM
337名無しさん@初回限定:04/02/27 15:55 ID:bKCljoLq
オンドゥルオワタンディスカー!!
338名無しさん@初回限定:04/02/27 17:13 ID:voUw+OJt
きっと次回の内容は特殊部隊よろしく景子の家からぶら下がって
一部始終を目撃したストーカー香織タンの殺してやる日記
339名無しさん@初回限定:04/02/27 18:38 ID:Qaqim38l
俺は普通に景子寝取られに期待してます。
ある日、ヒロ君の家に届けられる
先輩と景子のラブラブ和姦ビデオ(;´Д`)ハァハァ
340名無しさん@初回限定:04/02/27 18:48 ID:ClgVvALN
>>339
王道だな。
漏れも期待するとしようか(;´Д`)ハァハァ
341名無しさん@初回限定:04/02/27 23:31 ID:5QOq0XEV
俺的にはヤッて一皮剥けて性長したヒロ君の変化に一早く気付いた
香織の焦燥感、ヒロ君の心から自分が本当に消えつつある事への
絶望感等、かおりんの心の叫びと逆切れを是非とも見たい。
342名無しさん@初回限定:04/02/28 15:14 ID:nhyHq6T+
待て待て。あまり予想しすぎるはあまりイクナイ
343名無しさん@初回限定:04/02/28 15:29 ID:J5+wkzTi
ヒロ君編と香織日記が終わったら景子日記が始まってほしい
344名無しさん@初回限定:04/02/28 22:43 ID:vdjaO68x
エンドまで行った後に先輩日記もあったらもう至高神ケテーイだが、

……すんまそん、好き勝手言ってますね。
345名無しさん@初回限定:04/02/29 13:37 ID:lcXz9w3s
香織が捨てられて、ヒロの所に行くと景子と音楽室でヤってる。
なんてシーンをキボンヌ。

346名無しさん@初回限定:04/02/29 13:57 ID:aU3UXprF
そしてヒロクンも景子に捨てられて二人とも(´・ω・`)
347名無しさん@初回限定:04/02/29 19:38 ID:a1+/C9Qj
>346
ヽ(#゚Д゚)ノ┌┛Σ(ノ´Д`)ノ
ふざけんな!
俺のヒロ君が捨てられてたまるかYO!
348名無しさん@初回限定:04/02/29 20:35 ID:lcXz9w3s
>347
同意
349名無しさん@初回限定:04/02/29 22:33 ID:kj97Yu4s
いや、普通に考えて捨てられてほしいですよ?
そのために今までの積み重ねがあったんじゃないかー。
350名無しさん@初回限定:04/03/01 03:15 ID:mp4Tf2p0
603さんのを何度も読み返して、自分も書きたくなっちゃいました。
うーん、寝取られは初挑戦だったり。
それで、シチュとか、ヒロインとの関係とか、寝取り男はどんな奴とか、プロットとかの要望、希望などを
お願いします。好き勝手に書いて下さって結構です。
反響がなかったら、……その時考えます。
やっぱり、幼馴染かなぁ。

351リク1号:04/03/01 03:38 ID:8VT1OjvW
>>350
新たなる神候補キターーー。

さっそく好き勝手なレスを。

ファンタジーぽい世界(魔法なし)でお姫様が出てくるようなのが読みたい。


お姫様(寝取られる人、ハイティーン)
燻し銀の騎士(たたき上げの軍人、姫によって騎士に叙勲、30代)
大臣の息子(寝取る人、でも姫は権力を得るための手段、20代)

若く美しい姫と中年騎士のほのかな関係が引き裂かれるって感じで。

他の人と嗜好が違いすぎるかも。

以上勝手なリクエストでした。
352名無しさん@初回限定:04/03/01 05:13 ID:1zpLi1Cz
>>350
おお、キター。603氏効果で物凄い活性化してるな、ここ。いいよー、いいよー。

自分の要望としたら、他の職人さんと違った構成にしてほしいので、

ヒロインとの関係:幼馴染、妹以外
年齢:学生以外

かな、ちょっと適当過ぎ?
シチュエーションは350氏にお任せしまつ。

あと寝取られの描写の時に視点移したりする必要があると思うので、
できたら23氏のように3人称で描いてほしいかも。

寝取られ現場を主人公が目撃ってのは、毎回は無理があるので、
603氏のように日記形式にするってのも一つの手だよなぁ。
353zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 05:41 ID:mp4Tf2p0
>>350です。
トリップってこれでいいんですかね? 使ったの初めてなんで、不安だったりします。

>>351
どうもです。
けど、騎士とお姫様だと身分差がありますし、大臣の息子だと騎士も
納得しちゃうような気が…
他のも参考にしたいので、期待せずにお待ち下さい。

>>352
年齢:学生以外ってことは社会人ですか?


シチュはプラシーボ効果とかを考えてます。(ただの
水を媚薬だと偽ったりする奴です)
基本的に遅筆なんで、忘れかけた時にうpされると思います。





354名無しさん@初回限定:04/03/01 07:27 ID:/v45ugwD
>zyunn氏
まだ受け付けてますか?

@「姉寝取られ」をきぼん(現代なら)

姉(義姉でも可):社会人きぼん
主人公(弟):学生でも可
敵役:お任せ(姉の同僚、上司など姉の知人//主人公の友人、家族など)


A妻・婚約者寝取られきぼん(現代以外なら)

近世以前の中国、日本の支配階級など夫以外との接触が禁じられてた時代
権力、財力絡みだと尚よし
355zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 13:06 ID:mp4Tf2p0
>>354
全然OKです。
まだまだ受け付けますので、どんどん好き勝手に要望、希望を
リクしてって下さい。

うーん、社会人が人気?
OLとかかなぁ。職業とかも指定してくれれば嬉しいです。


35623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/01 13:31 ID:3ptPoLEJ
新妻キボン
357zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 17:23 ID:mp4Tf2p0
学生がでないので、学生で作って見ました。

プロットも何もなく、気の向くままに。
構想時間0分。
執筆時間二十分。

変なとこが多々あると思いますが仕様ということで一つ。
あまり叩かないでくださいね? 期待外れだーとか、小学校行って国語やり直して
来いとか。自覚してますから。
もっと努力します。ええ。(あやまっておく)


それでは次から行きますよ。
358zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 17:24 ID:mp4Tf2p0
(1/2)

「先輩。おはようございます」
「おはよう、今日も良い天気だね」

 いつもの登校風景。隣には昨日と同じように、葵が並んで歩いている。
 ああ、そういえばいつの頃からなんだろう。葵と一緒に登校するようになったのは。
 出会いは運命的なわけでもなく、何処にでもあるような、ありふれたものだったはずだ。
 けれど、それがなんとなく嬉しくて空を見上げる。いつもより深い蒼。青ではなく、蒼。それこそが、今の自分を表しているのではないのだろうか。
 隣にある確かな存在感。それが、例えようもなく尊いものであると実感する。

「ええ、良い天気ですね。って先輩、何ぼけーっとしてるんです。
 シャキッとして下さい。学校着きますよ?」
「あっと、……すまない。ちょっと、考えごとしてた」

 葵の叱咤で現実に戻る。
 葵の言う通り、学校まではあと少し。数分で着く、というか校門が見え始めた。
 葵の顔を眺める。いつものように………あれ? なんか不機嫌みたいなんですけど?

「葵?」
「お、……遅れますよ。先輩も速く………して下さい」
359zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 17:25 ID:mp4Tf2p0
(2/2)
 俺が名前を呼んだことさえ気づかないのか、葵は顔を真っ赤にしながら手を差し伸べてきた。
 葵に誘発されて、こっちの顔も赤くなるのがわかる。
 ――こうゆうのは、酷く苦手だ。葵もそこらへんを分かっているはずなのに、たまにこうゆう行動を取ったりする。だって、予鈴にはまだ時間があって、急ぐ必要は全くないのだから。
 けど、女の子にここまでされて何もしないのは流儀に反する。どんな流儀か知らないけど。
 それに、確信犯でも葵になら騙されても良い、と思っている自分がいるのも事実だし。

「あ……あ、それ…じゃあ、行こうか」

 少しどもってしまう。情けない。ついでに言えば、した行動も情けなかった。
 やっぱり、こうゆうときはかっこ良く手を握るのが主流であるはずなのに、俺のした行動といえば、手を差し伸べた葵に手を差し伸べ返したのだから。
 そんな俺に、葵は、

「ええ、先輩。速く行きましょう!」

 微笑みながら、俺の手を取り、走り出していく。
 それで、少し救われた気がした。
 今度は俺から手を握ることを誓いたいと思う。もちろんそんなことは言わない。行動で示してこそ、価値があるモノ。これはそうゆうモノだから。

「先輩! 今日のお弁当はですねぇ――」

 だからさ、葵さん。今日は我慢したいと思うよ。
 疎らとは言え、決して少なくはない生徒の中、手を握られ、更には昼ごはんの内容を大声で言われる集団羞恥を。
 けれど、明日は勘弁して欲しいなぁ。聞いていますか? 葵さーん。

「先輩! 今日も良い一日になりますよ!」

 ああ、聞いてない。
 まぁいいか。無粋なことをいうよりも、葵の笑顔を見ているほうがよっぽど建設的だ。
 幸せがいつまでも続きますように。
 それが、俺。式条 鷹斗の願い――。
360zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 17:30 ID:mp4Tf2p0
ちなみに希望、要望はまだまだ受け付けております。

いないとは思いますが、↑の続きなんてのも希望があったら書きたいと思います。
いや、実際続きは書いてるんですがねぇ。読みたい人なんているんでしょうか?

社会人とかのを書いたほうが良いのかなぁ。
361名無しさん@初回限定:04/03/01 17:45 ID:y1GGDtTX
>>360
やりたいようにすればいいんじゃない?
読者に媚びて書いてもおもしろくないと思うしここでは職人は神だし

でもプロットを募集して進めるというのはエロゲ雑誌巻末の読者参加企画ぽくて
おもしろいかも
362zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 17:58 ID:mp4Tf2p0
>>361
サンクス。
363名無しさん@初回限定:04/03/01 18:15 ID:BbV+WIsf
>学生がでないので、学生で作って見ました。

ワラタ
364zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 19:59 ID:mp4Tf2p0
>>361
言う通りだと思ったので、学生のやつをまずはがんばってみたい。
あ、けど希望、要望はまだまだ受け付けます。

学生のやつの続きをうpします。いちよう、ここまで完成したので、
信じられないほどハイペースだなぁ。お目汚しですがどうぞ。
365zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 20:00 ID:mp4Tf2p0
>>361
言う通りだと思ったので、学生のやつをまずはがんばってみたい。
あ、けど希望、要望はまだまだ受け付けます。

学生のやつの続きをうpします。いちよう、ここまで完成したので、
信じられないほどハイペースだなぁ。お目汚しですがどうぞ。
366zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 20:08 ID:mp4Tf2p0
1
「タカト。ラブラブじゃない、この幸せものー」

 教室に入るなり待っていたのは、女の姿を借りた悪魔。
 ポニーテールを靡かせながら、幼馴染である立花 皐月がみごとな正拳づきをぶちかましてくれた。

「くっあ、いってぇ。お前、不意打ちだなんて、なにしやがる!」
「えーと、他人の不幸は蜜の味?」
「違うだろうが!」

 教室を震わす怒声。こんな声が出るなんて自分でも驚きだが、それだけ怒っているのだろう。うん。
 クラスメイトたちは「いつものことだ」とでも言うように静観している。
 お願いだから、そんな態度は取らないで欲しい。
 なんか、孤立無援になった気分。

「もー。じゃあ、どうしろっていうのー。タカトの我がままー」
「コイツゥ………」

 今なら、口から水蒸気が吐ける。それぐらいまで、体温が上昇していく。
 コイツはぁ。
 せっかく、葵と良い雰囲気で登校できたんだ。その余韻に浸らせてくれ。お願いだから。
 あれ? なんか下手に出てない?
 いかん、いかん。今日こそは、今日こそは、この天然あーぱーポニーテール女に教えなくてはいけない。

「なによー。もう知らないー」
「あ、待ってって。おい、皐月! 待てよ、ってああ、行っちゃた」

 一方的に傷つけられ、一方的に罵倒され、あげく逃げられた。
 溜息をつく。よくもまぁ、あんな女と幼馴染できてるよなぁ。
367zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 20:11 ID:mp4Tf2p0
2
「タカト、追わなくていいのか?」
「大丈夫、大丈夫。てーか、俺悪くないし」

 話し掛けてきたクラスメイトを適当にあしらう。
 心配してくれているのだろうが、毎日のように起きているので、真剣に言う奴は誰もいない。せいぜい、行って見たら? 程度だ。

「ふう、なんか、疲れた」

 鞄を机に置き、教科書を机に入れる。
 椅子に座り、あとは予鈴がなるまで――。

「タカトー。なんで追いかけてこないのよー」

 ちなみに俺は、教科書はきちんと持ち帰る派だ。関係ないけど。

「シカトするなー」

 皐月が目の前に来て、机を揺らし始める。
 ちっ、せっかく人が現実逃避してやったというのに。
368zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 20:12 ID:mp4Tf2p0
3「シカトじゃない、村八分」
「それ、同じ意味ー」
「よく知ってるな」
「何度も使ってるでしょ、それ。てゆうより、なんで追いかけてこないのよー」

 ガタガタと机が揺れ続ける。
 もちろん、「なんで追いかけてこないのよー」という、台詞の所で揺らしているのは言うまでも無い。

「必要性。零」
「うわっ、言い切りやがったよ。この人」

 机から怪奇音が鳴らなくなる。いいことだ。

「うー。何よー。彼女が出来たからって偉そうにー」
「いや、関係ないし」
「そうゆうのはねー。私に彼氏が出来た時とかに本当の気持ちに気づいて後悔するものなのよー、その時になって後悔しても遅いんだからねー。
 私が彼氏と一緒に買い物しているのを見て嫉妬しないでよー、男の嫉妬は見苦しいんだからー。
 分かった? わかったら、返事ー」

 机から怪奇音が、再び鳴り始める。すまない、呪いはまだ解けていなったんだ! 待ってろ、今、解呪してやる!

「本当の気持ちって?」
「う」
「本当の気持ちってなんですか? 皐月さん」

 おお、なんか優勢。このままなら、呪いが解ける――!?
369zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 20:13 ID:mp4Tf2p0
4
「そんなのはどうでもいいのー。返事をしなさい、返事をー。はぐらかすなんて見っとも無い、誇りを持て誇りをー。それじゃあ、返事ー」

 ガタガタがバッタンバッタンに変化する。くそ、解呪どころかよけい酷くなった。
 
「無理」
「よろしい! ってなによー。そんな返事あるかー。期待してたのにー」

 何を期待してたんだあんたは。迂闊に返事しなくてよかった。

「この甲斐性無しー。玉無しー。あんたなんか、女を満足させることなんて、できないんだからねー」

 いままで息継ぎもせず、マシンガンのように喋ってたくせに、句読点をいれて男の尊厳を潰しにきやがった。
 あと、微妙に会話がズレ始めたような。

「この早漏ー。EDー。うぐごぁぁ、何するのよ! 乙女の唇に触れて!」
「違うって、何を学校で叫んでるんだよ! 羞恥心がないのか」
「うん、全く」
「マジで!」
「嘘」
「どっちだよ!」

 なんなんだこの会話は。疲れる。
 会話はキャッチボールで、成り立っていると聞いたことがある。相手に分かりやすく、丁寧に投げるのが、円滑なコニュミケーションができるとかなんとか。
 俺たちの会話って暴投だらけなんじゃないのか? ああ、葵が恋しい。まだ別れてから三十分も経っていないのに。
370zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 20:14 ID:mp4Tf2p0
5
「そんなことはどうでもいいのー」

 それ、二回目の使用。

「つまり、タカトは私に絶対服従せよ! 具体的に言えば、今日の昼飯を奢れー。弁当を家に置いて来ちゃたサツキに愛の手をプリーズ」
「利子は十一ですが?」
「うわ、見奈見の帝王だ。横暴横暴ー」

 聞く耳持ちませんな。回収率100%の鷹斗金融、じゃなくて!

「それで、何円必要?」
「えーと、600円ほど」

 制服の胸ポケットから財布を出す。
 五百円玉を一枚、百円玉一枚を取り出し皐月の手に乗せる。

「ありがとー。明日財布持ってくるから心配しないでねー」

 机から離れ、自分の席に戻っていく皐月。600円を俺から借りる為に、かなり回り道したような気がするんだよなぁ。
 それと、確か皐月に言わなくちゃいけないことがあったような?
 忘れてるんなら、そんなに重要でもないか。
 解呪出来ただけでもよしとしよう。

 きーん、こーん、かーん、こーん。

 予鈴が鳴る。それじゃあ、今日も一日気合を入れて頑張りましょうか!
371名無しさん@初回限定:04/03/01 22:20 ID:Jp0JbE/f
なんかここの住民の気配を馴染スレとかで感じる…ひしひしと
372zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 23:08 ID:mp4Tf2p0
おお! すごい、筆が進む進む。
お目汚しですがどうぞー。


1
 屋上への階段を上っていく。自分で言いだしたことながら、なぜ屋上で昼ごはんを食べたいといったのか不思議でしかたない。
 本当は分かってるんですけどね。こんな天気の良い日に屋上で食べる弁当は、とてつもなく美味い。美味いから屋上、と葵を説得したのだ。
 屋上へのドアを開け、何もない、ただ平坦なコンクリートの上に葵がちょっこん、と座っていた。

 ――果てしなく、ごめんなさい。

373zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 23:09 ID:mp4Tf2p0
2
 ゆとり教育が適用された公立高。土曜日に学校がなくなり、みんな幸せか? ゆとりが
有るか?
 そんな訳がない。授業が間に合わないという名目で、進研模試が土曜、日曜に回ってくるし、夏休みと冬休みには特別授業という名目で学校がある。
 特に駄目なのが、文部科学省の連中だ。ほとんどの文部科学省の役人は、文系出身で数学が、嫌いなのが多い。
 つまり、自分たちは数学が嫌いだから、子供たちに教える数学の時間を減らそうなんて政策を取っている。(子供の為になんて言う自己満足に浸りながら)
 アメリカ、イギリスの欧米は日本に追いつけ追い越せとばかりに、数学の授業を増やしているというのに。
 それでも日本は世界で四番目に数学が良い。(韓国より下)
 そう、まだ間に合う。間に合うというのに、文部科学省の連中は何をやっているのか。
 
 この学校も例外ではない。45分授業だった去年から、50分授業に増えた。
 これは大きな変化だった。
 12時45分で昼休みに入っていたのに、今年からは1時からになったのだ。

 ――空腹で死ぬ。

 そう。単純であるが故に発生したミス。
 一年はパンを持ってきて途中休憩に食べるというが、こちとら一年45分授業だったのだ。
 たまに忘れるんです。50分授業だということを。
374zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 23:10 ID:mp4Tf2p0
3
「あ、先輩。どうしたんです? なんか怪しい人みたいですよ?」
「気にしないでくれ。――全てを恨んでいただけだから」

 俺の言葉に、はぁ、なんて気の抜けた返事をした葵は、俺が待ち望んでいたブツを取り出してきた。

「なんか、ピクニックをしてるみたいで楽しいです」
「そうだな。けど、出来たら早く準備してくれるとかなり嬉しい」
「そんなにおなかが減ったんですか?」

 尋ねながら、弁当を開いたり、水筒からお茶を取り出したりする葵。
 ありがとう。最高の幸せモノだよ、俺。

「ああ、減りすぎて死にそうになった」

 それはタイヘン。ではどうぞー、なんて言いながら箸を手渡してくれる。

「いただきます」
「いただきます」

 まずはから揚げ。弁当用なのか、しっとりした衣がおにぎりに良くあっている。
 卵焼き。ウインナ―。ときて、またから揚げ。
 んで、お茶。

「生き返るー」
「どうぞ、どうぞ。先輩用に作ったんですから残さないで下さいね」
「俺が残したことなんてないだろ?」
「ええ、だからこそ作りがいがあります。残したりしたら、メッですよ?」

375zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 23:11 ID:mp4Tf2p0
4



 なぜなら。             それは。
 もし、今が人生の最高潮とするなら。     ジェットコースターように。
 もう、「落ち続ける」人生しか待っていないじゃないか!



 ありえない。そう、それはありえない。かぶりを振る。こんなのは妄想。
 だって。

「先輩? 顔色が悪いですよ?」

 彼女は、俺の「恋人」である彼女は、俺の些細な機微に気づいてくれたじゃないか――!

「いや、気にしないで。ちょっと太陽に当たりすぎたのかな? 眩暈がして」
「そうですか? 体調に気をつけて下さいよ?」

 もちろんだよ、と答えつつも頭を巡るのは一つの事柄。
 けど、それは忘れなくてはいけない。そう、こんなことで彼女を疑ってどうするというのだろう。アレは妄想。ただ、式条 鷹斗が作り上げた妄想なのだから。
376zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 23:12 ID:mp4Tf2p0
5
「ごちそうさま」
「お粗末さまでした」

 葵が弁当箱と水筒を仕舞う。俺がやろうとしたら、
「仕事を奪わないで下さい」
 と面と向かって言われた。デートでも自分の意見を言わない葵が、自分の意見を言ってくれたことが嬉しくて、嬉々として引き下がった。(変な表現)


「先輩」

 不意に、葵に抱きしめられる。後ろから、首に腕を回すようにして。

「私は何処にも行きませんよ。心配しないでください」
「気づいて……た?」
「当たり前じゃないですか。好きな人のことくらいわかります。全てをわかる事は出来ませんが」

 切なさで胸が押しつぶされるような。
 結局、俺は葵に――。
377zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 23:13 ID:mp4Tf2p0
6
「自分を卑下するのか簡単ですけど、それからは何も生まれませんよ」
「すまない」

 ぎゅ、っとキツク抱きしめられる。

「すまない!」

 一体自分は何に謝っているのか。そんなことさえわからなく。

「すまない!!」

 ただ、涙を流しながら葵の優しさに浸っているだけで。

「すまない!!!」

 謝らずにはいられなかった。
378zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 23:15 ID:mp4Tf2p0
 いったい、どのくらいの時間が経ったのか、チャイムが鳴らなかった所を考えると、20分も経っていないと思うけれど。

「落ち着きましたか?」
「ああ、えーっと。恥ずかしいな、こんなこと見せちゃって」

 髪を掻きながら見た葵は満面の笑顔で

「先輩が私を頼ってくれて嬉しかったです。ええとですね、は、恥ずかしいですけど、先輩なら何度でもしてあげますので、もっと、た、頼ってくれたほうがうれしいなぁ、なんて。
いやすみません、差し出がましいこと言って、忘れてくれてもいいですよ? いえ、どうぞ、忘れてください!」
「忘れないよ。ありがとう」

 ぼっ、と一気に赤面する葵。
 それを見て普通に愛しいと思えるのは、まったく、自分自身が葵に夢中になっているからだろう。

379現在Fate3週目の603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/01 23:17 ID:OJfyVna+
そいじゃあ、私もリクエスト良いですかな?

婚約者寝取られ

結婚を間近に控えた主人公に突然の海外転勤命令が下る。
結婚は帰国後に先延ばし(断れば昇進に響く and 婚約者の「私、ずっと待ってる」の一言があると
なおよろし)

2年間の海外赴任を終えて帰国する主人公。
涙で迎えるヒロイン・・・・・・ところがその後の行動が、何処となくおかしい。
気になった主人公は、ふとした事でヒロインのことがどうしても信じられなくなってしまい、婚約者の事を信じられない自分に嫌悪する。
もう一度、ヒロインを信じられるように、彼女の潔白を確信するために主人公は彼女の部屋に盗聴器を仕掛ける。

ところが、聞こえてきた音声には・・・・・・・・・とか、言う感じ。

この後、・・・それでも、彼女に未練を残し彼女のとの関係が壊れる事を怖れる主人公は、知ってしまった事実に苦悩する。

とか、

不倫がバレた事を知らない婚約者は、浮気相手の子供を主人公の子供(あくまで法律上)に仕立て上げようと画策する。
主人公は如何にして、その陰謀を逆手にとって 裏切り者たちに、鉄槌を下すのか?

とかあると面白いかと・・・・・

っつーか、これ、今のssの後書こうかと思ってたやつのプロットの一部なんだけど、流石に自分に文才ないので
どなたか、寝取って下せえまし。

P.S
ss・・・・・・・・・・は、暫くお待ちください。
380zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 23:24 ID:mp4Tf2p0
8
「ほら、葵!」

 手を差し伸べる。今まで気恥ずかしくて出来るようになったのは、誇ってもいいことなのか。

「え、先輩からなんて。初めて手繋いで……」
「ああ、もう、行くぞ!」

 奇しくもそれは今朝の焼き直し。違うことといえば、手を差し伸ばした俺の心境だろう。
 だって、そうだろう?
 これは今朝に誓ったモノでもなんでもなく、ただ、愛し、愛されていることを確認する為の儀式。
 そんな神聖な儀式には誰彼も立ち入ることはできないのだから。




なんか、娘が寝取られたような気分です。
いちよう伏線は張ってみたりしましたが、よく考えると、伏線でもなんでもない気が。
まぁ、こんな感じで進んでいきます。


381名無しさん@初回限定:04/03/01 23:30 ID:4LUtpSvU
遠くに行った主人公が帰ってきたら寝取られていたって感じか。
なんかシュトルムの「みずうみ」っぽくてイイ!!

是非次にお願いしまつ
382zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 23:33 ID:mp4Tf2p0
603氏に触発されて書いたのでリクされてもらえてかなりうれしかったり。
Mだな。うんMだ。

学園ものはプロットをほとんど考えましたので、死なないかぎり最後までいきます。
その後にリクに答える、と。
選択肢は入れようと考えてますが、どうですかね?
そこらへんも踏まえてリクしてもらえるとたすかったり。
もちろん、好き勝手に書いてもらって結構です。
383名無しさん@初回限定:04/03/01 23:39 ID:Jp0JbE/f
寝取り男はキムタクか・・・
384zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 23:43 ID:mp4Tf2p0
今気づいた間違い。

>>375
の前にこれが入ります。嗚呼、間違えるなんて(涙)一番大切なところじゃん!

 箸を持ちながら、可愛らしく注意をしてくる。
 いい天気の下で、美味しいお弁当に、可愛らしい恋人。
 これ以上の何を求めるというのだろう。
 まるで、人生の最高潮にいるような気持ち。今が、幸せ――な。し、あ、わ、せ?
 そう考えて、全身に悪寒が走ったような違和感。これは、間違い――だ。ま、ち、が、い?

385zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/01 23:47 ID:mp4Tf2p0
つまりはこうなります。ほんとすみません。ここ大事なんで。

>>375
 箸を持ちながら、可愛らしく注意をしてくる。
 いい天気の下で、美味しいお弁当に、可愛らしい恋人。
 これ以上の何を求めるというのだろう。
 まるで、人生の最高潮にいるような気持ち。今が、幸せ――な。し、あ、わ、せ?
 そう考えて、全身に悪寒が走ったような違和感。これは、間違い――だ。ま、ち、が、い?


 なぜなら。             それは。
 もし、今が人生の最高潮とするなら。     ジェットコースターように。
 もう、「落ち続ける」人生しか待っていないじゃないか!

>>383




38623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/02 01:20 ID:IiM9jfYO
大学時代のリアル知り合いでイケメン君がいたのだが、
そいつは何事にも凄い真っ直ぐ立ち向かう男だった。
もちろん恋にも真剣。
彼女に振られた夜はヤケ酒に付き合ったのだが、さんざん泣いていてこっちが引いた位。
んで、そいつがこの間ゴールインしたのだが、その相手の女は

・イケメン君がその女に惚れた時、すでに女には婚約者がいた。
・相手の男と婚約破棄していないその女にイケメン君は猛アプローチ。
・その後婚約者の男にそれがバレた。
・しかし、イケメン君はいかにその女を愛してるかを、その男と女の前でひたすら語り合い、
 ついにその女を、男の目の前で奪い取ることに成功した。

嘘のようなマジ話。
婚約者の男はイケメン君の猛攻に対抗できず、涙ぐんでさえいたそうだ。
今でもたまにイケメン夫妻と話したりするが、奥さんは未だに元婚約者に申し訳なく思っているそうです。
(でもヨリを戻すつもりは全くないモヨリ)



いいなーその婚約者(違

そんな訳でこちらもうp。
今回は(11/11)でちょっと短めです。
38723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/02 01:22 ID:IiM9jfYO
(1/11)

頼りたくなかったが、他に方法が見つからない。
そんな思いで佐紀はこの場所を訪れていた。
そこは宇宙人イチローのいる特殊警察署の一室。
いつもとは違い、佐紀はノックをしてから扉を開いた。

「おや、おはよう加藤佐紀。今日は決戦の日だというのに此処に何か用でも?」
「…………」

佐紀は黙って傍らの少女に目線を移した。
己の腕にしがみつく少女……昨日何者かの襲撃に遭い、ヒトから野生のソブネリアに還された少女だ。

「この子を助けたい。何か方法は無いか」
「……?」

椅子から降り、無造作に近寄ってくるイチロー。
その瞬間少女はびくっと体を震わせ、さらに強く佐紀にしがみついた。

「にゃっ、にゃ、にゃぁっ……!」

どうやら怯えているらしい。
その様子を見たイチローは少し離れた位置で止まり、まじまじと少女を観察した。

「これは……ベクターで還されていますね。君がやったのですか?」
「夕べ誰かが攻撃を仕掛けてきた。恐らく俺とこの子を間違えたんだろう。
 これってあんたからすればフライング行為になるんじゃないのか」
「……ふむ」
38823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/02 01:24 ID:IiM9jfYO
(2/11)

イチローはこの最後の戦いを大々的に中継するつもりだと言っていた。
もし夕べの時点で佐紀が攻撃を受けていたら、それも台無しになってしまっていただろう。
佐紀はそれを笠に、この名も知らぬ少女を救おうと考えているのだ。
しかし、

「残念ながら我々はこのメスを救う術を持ち合わせていません」
「……」
「それよりも
「え?」
「この子は「動物園」に入ってもらわないと」

動物園。聞き慣れた言葉。
野生動物を檻に閉じ込め、見世物にする場所。
そこに、この少女を、入れるというのか……?

「な……そんな、人間を動物園に入れるだなんて!!」

憤慨する佐紀。しかしイチローは平然と事情だけを述べた。

「このメスは「ヲ型ベクター」であるべき姿に還されています。
 「ヲ型ベクター」は此度のベクター透過体の数減らし……
 すなわち「王」選別の戦いでしか宙央政府に使用を認められていません。
 故にこの子も戦いの敗者と同じ扱いにしないと、こちらとしても上に説明ができない」
38923 ◆bxyzd8gFCE :04/03/02 01:25 ID:IiM9jfYO
(3/11)

イチローの言うことはわかる。
この宇宙人も組織の一員としてこの星に来ているからには、
色々とややこしいしがらみもあるのだろう。
使用制限以外でのテクノロジーの使用はできないこと。その逆説。
もし使われるからには、その用途は適切であらねばならない。
でも、それでも。
この少女を好奇の対象として見世物にするなんて、到底承服できない。

「最後の戦いまで幾らか時間がある。見に行きますか?」
「……何をだ」
「敗残者が入れられる動物園を、ですよ」

イチローの意外な提案。
佐紀はしばらく考えた後、首を縦に振った。
39023 ◆bxyzd8gFCE :04/03/02 01:27 ID:IiM9jfYO
(4/11)

用意された乗り物は、まさにUFOそのものだった。
高さ、直径ともに4メートルほどの円盤型のそれは金色に鈍く輝き、
周囲の輪郭はぶれているかのようにぼやけている。
しかし各部に触れると、それには確かな金属の質感があった。

「これは1050年式のET型で、マニアの間では垂涎の一品なんですよ」

本当にどうでもよかったので佐紀は黙殺した。
少女は佐紀の膝の上でぐっすりと眠っている。

「ま、10分ほどで到着します。適当にくつろいでいてくださいな」

二人のつれない態度に肩をすくめつつ、イチローは操作盤を操り始めた。

程なく、かすかな浮遊感。
どうやら動き出したらしい。
佐紀は初めてUFOに乗った感慨に思いを馳せることも無く、少女の頭を撫でながら瞳を閉じた。
39123 ◆bxyzd8gFCE :04/03/02 01:29 ID:IiM9jfYO
(5/11)

時間にして10分程度。
どの位の速度で飛行したのだろうか。
揺れも騒音も微塵にも生じさせずに移動した機体は、停止の際にも全く静を保っていた。

「御覧なさい」

イチローが示した先、円形の機内の床がガラスのように透過されていく。
例えるならサンルーフの逆バージョンと言うべきだろうか、程無く床全体が透明に変化した。

「これは……」

覗き込んだ佐紀の眼下に広がる風景は、まさに何の変哲も無い、
どこにでもある郊外の動物園のそれだった。
ただ一点、

「ほら、あそこの山ですよ。見えますか?」

動物園の中央付近、見た感じサル山のようなその区域に、彼らはいた。

ある者はうずくまって眠り、
あるも者は何かの野菜屑にしゃぶりついている。
ある者は奇声を発しながら駆けずり回り、
ある者は、あろうことか檻の隅で自慰にいそしんでいる。

そしてその面々の中には、
見紛うはずも無い、佐紀が今まで還してきた「王」候補者たち、
その姿が見て取れた。
39223 ◆bxyzd8gFCE :04/03/02 01:32 ID:IiM9jfYO
(6/11)

「……これは……」
「とりあえずここには50匹の「下等ソブネリア」が収容されています。
 勿論君が打ち負かした29匹も含まれていまよ」

こんな。
いくらなんでも非道すぎる。
殺さなければいいなんて、そんなのは詭弁だ。
それを言えば人間が運営する動物園も同じことになるのだろうが、
佐紀にしてみれば、それでも許しがたい光景だった。

「あ、言っておきますが、この趣向はは我々が企画したわけではありませんよ?」

佐紀の憤慨を感じ取ったのか、すかさずイチローが付け加えた。

「言ったでしょう?ソブネリアにとって負けた「王」候補者は下の下の存在。
 この動物園は、この星のソブネリア達が敗残者を晒し者にする為に作った施設なのです」

あまりの事実に佐紀は言葉が紡げない。
つまり人類は、その意識の大元にこんな残虐な嗜好を持っているということ。
それはどんな生物にもある要素なのかも知れないが、これはあまりにも悪趣味すぎる。
しかも見るとサル山にいるのは男ばかり。
もし。
もし、野生の本能剥き出しのこいつらの中に、この少女を投げ込んだりしたら……
39323 ◆bxyzd8gFCE :04/03/02 01:35 ID:IiM9jfYO
(7/11)

「このメスの動物園入りは避けられません。
 しかし、君の戦いが終わるまで。それまでは私がこのメスの安全を保証しましょう」
「え……?」
「君には余計な心配はかけたくない。万全の状態で戦いに臨んでもらわないことには、
 私にとって意味が無いのでね」

そう言って、イチローは背広の内ポケットから携帯電話を取り出し、
それを少女に向けた後、幾つかのキーを叩いた。
その瞬間……

「に、にゃぁぁあっ!」

少女を取り囲むかのように、それらは現れた。
それは、昨日見た、この少女の心を陵辱した、あの金色の板だった。

「な、何をするっ!」

思わず佐紀はイチローに食ってかかる。
昨日の出来事を思い出してか、恐怖で泣きじゃくる少女の姿を見たら、それは当然の行動だった。

「これはベクターを射出する為の端末です。本来は歪に進化した生物の矯正に使用するのですが、
 調整しだいでは外敵を退る結界にも成り得る」
「……で、でもだなぁっ!」

それでも少女は泣きじゃくる。
見た目は昨日少女を襲ったモノと同じ。
戦いが終わるまで、この子はこの板がもたらす恐怖にさらされるのだろうか。
39423 ◆bxyzd8gFCE :04/03/02 01:39 ID:IiM9jfYO
(8/11)

「本当に」

唇を噛み、言葉を搾り出す。

「本当に、信用していいんだな」

そう呟き、佐紀はおもむろにコートの袖の金糸を展開させた。
そして少女の元に跪き、正面からその瞳を見据えた。

「いいかい?こいつらは、君に酷いことはしないんだ」
「に!にぇぃ、にぃっ……」

佐紀が傍に来たことで幾らか安心したのか、少女の嗚咽は少し穏やかになっていく。

「よーし、見てろよ」

優しくそう言い、佐紀は金糸に命令を送った。
緩やかな軌跡で閃く糸。そしてそれは……

くるくると少女の周りを回る金の板。都合3枚。
その一つ一つに、




そう刻まれていた。

「あーあ、傷をつけるなんて酷いじゃないですか」

本当にどうでもよかったので佐紀は聞き流した。
39523 ◆bxyzd8gFCE :04/03/02 01:40 ID:IiM9jfYO
(9/11)

「サ・キ」

佐紀はその文字を声に出して読み、続いて自分自身を指差す。
少女はきょとんとしている。が、構わず佐紀はその行為を繰り返す。
そのうち、

「サ・キ……?」

今度は少女が声を出して、佐紀の方を指差した。

「そう、佐紀。俺の名前」

優しく微笑む。
少女はしばらく呆けた後、

「サキ! サキ!!」

がばっ、と佐紀にしがみついてきた。

「サキ、サキ、にゃああっ♪」
「この板たちには俺が言い聞かせてある。だから信じて待っていてくれ」
「に、にぃっ!」

果たして全てが通じているかどうか。
しかし、佐紀には確信があった。
言葉が通じなくても、伝わる思いがあるのならば。

それ以降、少女は佐紀が身を放しても泣くことは無かった。
39623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/02 01:41 ID:IiM9jfYO
(10/11)

「じゃあ、やってくれ」
「わかりました」

イチローの操作で、今度は本当に床に穴が開かれた。
そこから少女は金の板に囲まれた状態でゆっくり、ゆっくりと降下していく。

「にー……」

少し寂しそうな様子の少女。

「絶対に、勝つから」

佐紀は力強く呟いた。
少女はそれを見て、少しだけ笑った。


程無く地上……サル山の頂に少女は着陸した。
瞬間、山にいたオス共が凄まじい勢いで駆け上り、少女をもみくちゃにしていく。
あっという間に人だかりにもまれて見えなくなった少女の姿を、佐紀は拳を握り締めて見つめていた。

「大丈夫ですって。あのオス達は指一本触れることはできませんよ」

今の佐紀には、イチローのこの言葉を信じるしかなかった。
39723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/02 01:43 ID:IiM9jfYO
(11/11)

「それよりも、そろそろ時間です。
 戻るとしましょうか」

そう言って、再びイチローはUFOの操作盤をいじり始めた。
佐紀はその傍らで座り込み、顔を伏せた。

「なあ」
「何ですか」
「あの板……操れる候補者がいるのか」

佐紀の目下の標的。ベクター射出の端末たるあの金の板を操り、少女を陵辱した相手。
それは特殊警察署の特設会場で行われる最終対決の3人の相手、そのうちの誰かに相違無いはず。

「ええ。一人います。彼は精神面での弱さが著しいため、君や他の候補者よりは
 多少使いやすい武装が支給されています」
「そうか」

しばらく考えた後、

「まずは、そいつとやらせてくれ」

佐紀ははっきりとそう告げた。
が、イチローから帰ってきた答えは、

「構いませんよ。その彼も、君との戦いを一番に望んでいますから」

全くもって、以外なものだった。
398名無しさん@初回限定:04/03/02 03:58 ID:/UZaVItq
23氏おもしろかったです〜
やっぱ何か23氏の作品は引き込まれる何かがある・・・
次も楽しみにしてます〜
399名無しさん@初回限定:04/03/02 09:19 ID:YMH/DTcz
名無し少女に萌えてしまう罠かよ!……ダマサレナイゾ
400名無しさん@初回限定:04/03/02 11:49 ID:wjlvGnB5
>>371
( ゚д゚)ハッ!
まさか俺の目にもインターセプターが!?

だってあっちはあっちで安心して萌えられるんだもん……
401名無しさん@初回限定:04/03/02 17:05 ID:UNSZY7OY
23氏乙!zyunn(じゅん?…家計?)氏も乙!

>>400
時々考える・・・バラモソがここの住人だったらイヤだな・・・と
402zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/02 22:10 ID:f3TyXlaG
ひそかに更新>コソコソ。これは「幼馴染寝取られ小説」です。
どう考えるかは個人の自由。
では、うpします。

1
 ドアを開け、部屋に入る。息を切らすほど走ってきたせいか、時刻はまだ四時前。
 机に向かって鞄を投げるのは、多分八つ当たりなのだろう。
 ベッドに飛び込む。制服を脱ぐことさせしたくなかった。

「なんでよぉ」

 出た声は涙声。
 この問いかけに答える人は居なく、静寂が返答。
 我慢してきたせいなのか、溢れる涙を抑えることは不可能で。
 流れ出す涙は頬を伝い、消えるのみ。
 ――それはまるで、私の様。
 消え去るものが、儚きモノを彩るなら一層。

「嫌、嫌。なんで鷹斗の隣にアイツがいるのよ。本当なら私が居るはずなのにぃ」

 涙を流しながらの訴えにも、答える人は居なく。
 何も聞こえない。何も感じない。何も存在しない。
 夢のような悪夢。
 それが、遠くに行ってしまったことを実感して。
 
403zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/02 22:11 ID:f3TyXlaG
2
 昼休みに屋上に行こうとしたのは、ただの気まぐれだった。
 ――そういえば、鷹斗。屋上、好きなのよね。
 そう、ふと思いついて。
 それは、とても魅了的な提案に思われた。
 離れてしまった鷹斗を感じさせてくれる場所として、これ以上の場所を思いつくことは不可能だったし、鷹斗が連れて行ってくれた屋上は、たぶん、私にとって聖域みたいなものだったはずだから。
 スキップをしてしまいそうなるほど上機嫌で、屋上へと向かう階段を上って行く。
 この学校では屋上を開放している。というのも、何代か前の生徒会長が校長と掛け合い、フェンスを作ることを条件に開放し出したらしい。
 教師の中には、フェンスを登り怪我をする生徒が現れるはずだ。その責任はどうするんです! と、生徒を心配してるんだか、してないんだか分からない主張をするのも数名いて、大論争になったらしい。
 実際のところ、フェンスを登るようなサルは現れず、有効活用された屋上は一部の生徒に人気がある。
 鷹斗はその一部の生徒に属していて、放課後にそこで黄昏ていることが多い。
 本人曰く「落ち着く」とのこと。
 ちゃっかり私も屋上にお世話になっているあたり、一部の生徒に含まれているのかもしれない。
 階段を上りきる。屋上へは、この鉄のドアを開けるだけで――。
404zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/02 22:12 ID:f3TyXlaG
3
「すまない!」

 その、聖域で。
 一番聞きたく、聞きたくない人の声が聞こえた。

「あれ? なんで?」

 鷹斗は昼ごはんを食べに学食に行ったのでは?
 そこで葵の弁当を食べているはず。
 おかしい、こんなのは、おかしい。
 音が鳴らないよう、ゆっくりと開ける。覗きではない。そう、言い聞かせて。あくまで確認。
 心臓が飛び出しそうなほどの緊張感の中、視界には、鷹斗を背後から抱きしめている葵。

「―――――!!!」

 衝撃。ハンマーで頭を殴られたような。
 ガンガン、と脳が警報を鳴らしている。
 このまま見ては駄目だと。覗きとか、二人の邪魔になるだとか、そうゆう類のものではなく。
 ――後悔するぞ、と。過去には戻れないのだと、理性が告げている。
 それでも、ここで逃げてなんになるのだろう。
 なら、ここで二人を見たほうが――。

405名無しさん@初回限定:04/03/02 22:12 ID:vc63qivu
406zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/02 22:12 ID:f3TyXlaG
4
「落ち着きましたか?」
「ああ、えーっと。恥ずかしいな、こんなこと見せちゃって」

 答える鷹斗の姿を見れない。いや、見たくない。
 だって、あんな嬉しそうに照れている鷹斗は、幼馴染である私でさえ見たことがなく。
 二人が紛れもなく「付き合って」いることを証明していて。
 そんなこと、知っていた。知っていたはずなのに――。
 なんでこんなにも、切なく、胸が痛いの――?

「先輩が私を頼ってくれて嬉しかったです。ええとですね、は、恥ずかしいですけど、先輩なら何度でもしてあげますので、もっと、た、頼ってくれたほうがうれしいなぁ、なんて。
 いや、すみません、差し出がましいこと言って、忘れてくれてもいいですよ? いえ、どうぞ、忘れてください!」
「忘れないよ。ありがとう」
407zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/02 22:13 ID:f3TyXlaG
5
 見たくない。こんな鷹斗、見たくない。
 私以外に優しくするところを見たくない。
 私以外に親切にしているところを見たくない。
 私以外に微笑んでいるところを見たくない。
 私以外と話しているところを見たくない。
 
 葵と付き合っている鷹斗を見たくない――!

「嫌だよ。あんな女になんか微笑まないでよ。話さないでよ。聞かないでよ。見ないでよ。
 なんで、私のこと好きって言ってくれたくせに」

 口から出た言葉に感情は篭っていなく。淡々とした口調はしかし、嫉妬で彩られた怨嗟の呪い。
 ドアから手を離し、階段を下りていく。
 まるで、幽霊。
 視界には何も映らず。センサーとしても無能で、滑稽にもほどがある。
 向かう先は保健室。
 おそらくは蒼白であろう私が隠れるには、ここ以上に最高な場所なんてないはずだから。

408zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/02 22:14 ID:f3TyXlaG
6
 いつの間にか寝ていたのか、時刻は7時を回っていた。
 見た夢は過去のあらすじ。
 ダイジェストのようにコロコロ変わる場面には、後悔で色塗られた周りの風景。
 
「好きって言ってくれたのに、か………」

 鷹斗に告白されたのは中学三年の時。
 高校受験のために、休みの日を利用した面接練習の帰り道だった。
 なんてことないように「付き合わないか?」と言われた。
 鷹斗の表情は真剣そのもので、本気なのだと一目でわかった。けど、それ以上にこんなところで告白する鷹斗に腹が立った。
 今まで兄妹(私が妹だ、小さいときはお兄ちゃんと呼んでいた時期がある)のように過ごして来た二人が結びつくは、一生の思い出となるような場面でして欲しかった。
 それに、告白されるより、したかったということもある。
 鷹斗に浮いた話が無かったこともあり、その場で笑い話に仕立て上げた。
 次の日も鷹斗とは一緒に登校し、下校し、たまに夕食を食べたりした。
 鷹斗に変わったことは見られず、安心したことを覚えている。
 そんな中で私は、鷹斗に告白するのに良い場所はないかと必死になって探した。
 合格発表と同時にデートに誘い、そこで告白する。
 とてもすてきな思い出になると思った。
 そのころ私は、天然アーパー少女と言われていたこともあり、二人が高校を合格し、付き合うのは確定された未来だと信じて疑わなかった。
 けれど実際は違ったのだ。鷹斗にとって一生懸命頑張った告白を笑い話にした時点で、私にはチャンスは無く、合格発表の次の日使うはずだった遊園地のチケットは、いまだに机の中。
409zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/02 22:15 ID:f3TyXlaG
7
「どうしたら、良いのかなぁ……」

 ――そんな、時に悪魔はやって来るもので。

 奪え、と。ドロボウ猫から奪い返せ、と。本当なら、鷹斗の隣にはお前が居るべきなのだ、と。
 いや、悪魔ではなく、コレは自分の思考。誤魔化したところで、どうしようというのだろう。

「そんなこと、できるわけないのに………」

 自嘲を含んだ言葉は、全てが本心というわけではなく――。



410名無しさん@初回限定:04/03/02 23:29 ID:YMH/DTcz
>>zyunn氏
広告やレス割り込みを避ける為、sage進行、話数/全話数表記が吉ですよん
411zyunn ◆5MTxGX2n1c :04/03/03 00:11 ID:+wCvNL28
>>410
了解
412名無しさん@初回限定:04/03/03 17:10 ID:RQIK2+RZ
ユウナタンハァハァ
 (゚∀゚)
/= ■■ =
 ■□■
■┃∪┃■
かとうさき
413名無しさん@初回限定:04/03/04 07:47 ID:e7Aa39cw
一昨日あたりの新聞に

「NASAが明日、重大発表」

とあったので、明後日からは全裸世界だ!
…と期待してたんだけどな〜。
414名無しさん@初回限定:04/03/04 11:40 ID:FT9rYImD
>>412
色々歪んj
が、これは揺れるサキたんの心情を表してるのだと善意に解釈。
415名無しさん@初回限定:04/03/05 11:01 ID:d1hMnz9N
フォォォオワタァァッ!(゙゚Д゚)≡○)Д`)
416吐露リスト ◆VFEd3BgWxI :04/03/06 03:46 ID:7RCCVPyY

今このスレの初代スレとか読んでいるものだけど

(エンジェルスブルーを数回クリアして、うちの妹のばあい途中、フロムMは体験版だけやった。)

この現行のスレはほとんど読まずに書き込みさせてもらうね。

同人ゲームとして「ラブひな」の寝取られゲームとか作られたら萌えそうじゃない?
417名無しさん@初回限定:04/03/06 08:55 ID:YuqHlC/D
作ってくれ。
SSだけでもいいから。
41823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 00:45 ID:XawEY9zj
こまごまとうpです。
ラストも近いので、これからは足早に。
41923 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 00:48 ID:XawEY9zj
(1/15)

特殊警察の地下深くに作られた広大な敷地は、ゆうに15,000坪は超えるだろう。
そこは、この最後の決戦を彩るための場所だ。
すなわち闘技場(コロッセウム)。
真ん中に据えられたリングは小さな丘や森、湖などを模したジオラマ作り。
これによって候補者達は地形を利用した戦法を取ることが出来るという仕組みだ。
そしてその周りにはリングを取り囲むかのように観客席が敷き詰められている。
数にして約50,000席。
決戦の閲覧者は、元各国VIP以外は抽選で選ばれている。
ここにいるのは、その途方も無い確率を引き当てた、世界中から押し寄せた幸運な者達。
彼らは自分達のボスが決まる瞬間を、固唾を飲んで今か今かと待ちわびていた。
42023 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 00:49 ID:XawEY9zj
(2/15)

……が、固唾を飲んでいる者ばかりというわけでもなく、

「えー、フェラチオいかがですかー、1発2500円ですよー」
「膝枕いりませんかー、柔らかくていい匂いの膝枕ですよー。
 今なら耳掻きもサービスでついてきまーす」

イベントには付き物の、市場価格よりちょっと高めの売り子が会場狭しと動き回っていた。

「おーい、こっち1曲吹いてもらえるかー」
「はいはーい、ただいまー」

観客席の中年オヤジによばれ、フェラチオ売りの女の子が元気よく返事をした。
そして小脇に抱えたバックからウエットティッシュを取り出し、オヤジの股間を丁寧に拭き始める。
その刺激だけで、オヤジの浅黒い逸物はぴくぴくと戦慄いた。
42123 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 00:52 ID:XawEY9zj
(3/15)

「ところで姉ちゃん。69は出来んのかよ」
「えー、この狭さじゃ難しいなー」
「いんや、こうすれば……よっと」

そう言って、観客のオヤジは売り子の女の子をぐるりとマン繰り返しの体勢に持ち上げた。
そしてそのまま自分の席に座る。女の子の顔は、逆さまにオヤジの股間の位置に据えられる形だ。

「わわっ、お客さん無茶しすぎですよっ」
「ほれ、こうすれば……じゅるるっ……できんだろが」
「うぐぐ、この体勢は……ちょっと血がのぼるかも……」

そう愚痴りつつも、

「ちゅう……れろろ……あぷぅ……」

至近距離の怒張を前に、売り子さんは速やかに『状態』へと突入していった。

見渡せば、そこかしこで行われている淫らな行為。
ある者はキス屋とのねっとりとしたディープキスを繰り返し、
ある者はおっぱい屋自慢のDカップに顔を埋めてその肌を舐め回してた。

汗を啜り、肉を食み、精液を注ぎ込む。
混沌とした空気が充満していく会場内。
血と性が交じり合う饗宴が、間も無く始まろうとしていた。
42223 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 00:59 ID:XawEY9zj
(4/15)

沸き立つ会場の遥か上方……それでいてなお地下にある場所。
犯罪者を閉じ込める地下牢。
その一角で、今日もまた段健司は椅子に座り込み瞑想している。
いつもの特殊警官の重装備は身に着けておらず、その姿は全裸だった。
胸の前で腕を組み、物思いにふける。
鍛え抜かれたその体は、ギリシャの彫刻のように端正極まりない。
鉄格子を隔てた向こうで健司を見つめる成瀬優菜には、少なくともそう見えた。

「……」

もう何度この状況があっただろうか。
あの男はしばらくの瞑想の後、いずこかに去っていく。
何日かに一回行われる奇妙な日課。
その間は、お互いに全くの無言で終わる。
が、今日は少し違っていた。

「今日で、最後だ」
「えっ」

不意に立ち上がり、健司は優菜に声をかけた。
優菜にとって、それは予想しないことだった。

「君は、恐らく今日でここから出られる。
 今のうちに持ち帰りたい手荷物をまとめておくがいい」
「今日で……最後?」
42323 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 01:02 ID:XawEY9zj
(5/15)

優菜にはこの男の言葉が理解できなかった。
今日で釈放。どうしてなのだろう。
性犯罪者には極刑。
それを懲役に換算したら如何ほどの年月になるだろうか。
自分はそれに代替し得る償いを何かしたのだろうか。
どう考えても、今日この日に釈放になるはずがない。
となれば、優菜に考え至ることは一つだった。

「それは……サキくんが身を投げ出してくれたからですか?」

健司は答えない。

「その分、私の刑が軽くなったのですか?」

それでも健司は答えなかった。
そしてそのまま、

「時間だ。行って来る」

地下牢を出て行った。
42423 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 01:05 ID:XawEY9zj
(6/15)

ここ最近あの男はずっとこんな調子だった。
以前のように言葉を交わすことも軽く触れ合うことも最近は無くなっている。
それが、その行為が、獄中にある優菜の心の支えであったこと。
佐紀がいなくなってすぐにこんな事を感じてしまうのはあまりにも薄情かとも思うが、
それでも、佐紀が死んだと思い込んでいる優菜の中で、健司の存在は少しずつ大きくなっていた。

「これって、もしかして……」

この、もやもやした感情の意味するもの。
優菜がその答えを見出そうとそした時、それは起こった。


心臓が跳ね上がったかのような音を、聞いた。

今まで感じたことのないような、それは衝動。

血液が、ある一点に向かって集中していくかのような感覚。

まさか。
まさかこれは。

保健体育の授業で、いつか習ったような、気がする。
とすれば、これは初期微動。
次にこの感覚が押し寄せたならば、それは。

「ど、どうしよう……」

優菜は、己の股間を押さえたまま途方に暮れていた。
42523 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 01:07 ID:XawEY9zj
(7/15)

照明が不意に落ち、会場が一瞬で闇に包まれる。
そして享楽を甘受していた観客達も一気に静まった。
そして、

{お待たせしました。
 これより、我々の「王」を選出する聖戦。
 その最終対決を行いたいと思います!!}

響き渡る場内アナウンス。
そして一気に光を取り戻す会場内。
色取り取りの火薬が炸裂し、派手なBGMが大音響で流れ始めた。
後ろの観客のための巨大なモニターが何枚も天井から降りてくる。
50,000人の観客が、声にならない歓声、轟音を張り上げた。

「おおおおおおお!!」

中年のオヤジが、フェラチオ屋の女の子の膣内を力任せに吸い上げる。

「ふむううううう!!」

その瞬間に発射されたオヤジの精液を、フェラチオ屋は一気に嚥下した。
42623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 01:13 ID:XawEY9zj
(8/15)

「何て、馬鹿騒ぎだ……」

やがてあのリングに降り立つであろうゴンドラの上で、加藤佐紀は眼下の騒ぎを見おろしていた。

「お前等、今から始まるのが何なのかわかってんのかよ!」

勿論、今からとり行われるのは格闘技の試合でも列島縦断ツアーでもない。
「王」たる為に、最後の一人が敗残者の骸の上に立つこと。
そうして初めて勝者は「王」としての絶対的カリスマを得る。
今宵の出し物とは、つまりは殺し合いによる戴冠式なのだ。

「成る程。ソブネリアが知能を持ったら「王」の存在を形骸化する傾向になるようですね。
 これはまた興味深いことだ」

佐紀の横に佇む、初老の紳士が抑揚も無く呟いた。

「何だよそれ」
「他星にいるソブネリアは100匹くらいの単位で群れを成します。
 そしてその100匹の中から群れのボスを選ぶ。
 対して君達は60億人。そりゃボスの影響力も薄れるってもんでしょうに」

そう言って初老の紳士は懐から取り出した煙草に火を点けた。
42723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 01:14 ID:XawEY9zj
(9/15)

「その格好で吸うのか」
「大丈夫です。この義体の口には吸引排気口が伸びていますから」

紫煙が宙を揺らめき、散り散りになっていく。

「ま、そんなことはどうでもいい。それよりそろそろ降ろしますよ」

初老の紳士……義体を纏った宇宙人イチローは、そう言って手元の携帯電話のスイッチを押した。
瞬間、音を立てて動き出す佐紀を乗せたゴンドラ。

「おい」

下がり行くゴンドラから、階上のイチローに佐紀は言葉を投げつけた。

「見てろよ。お前の思い通りにはさせないからな」
「そうですか。……別に私に思惑などはありませんけどね。
 私はただ、任務を遂行するのみ」

イチローは義体の顎鬚を撫でながらさらりとそれを受け流した。

「じゃあ訂正する。
 『お前等』の思惑通りにはならないッ!」

そんな佐紀の心からの叫びは、
果たして怒号木魂する会場の熱気にかき消されること無く、
この飄々とした宇宙人に届いたのだろうか……
42823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 01:16 ID:XawEY9zj
(10/15)

山、谷、川、池、森林、泥地、湿地、雪地、砂漠、氷河、小型のビル群。
あらゆる環境が凝縮再現された広大なリング上。
その4方4隅に、最後の候補者達を乗せたゴンドラがそれぞれ降り立った。
その瞬間沸き起こる、怒号に次ぐ怒号。歓声に次ぐ歓声。
ちなみに佐紀はリングの西側、海岸沿いの丘が再現された場所に降り立っていた。

{えー、各候補者には、互いの位置を大まかに示す腕時計型レーダーが渡されています。
 これを頼りに彼らは戦う相手を探すことになります。
 なお、戦闘中の実況は行われません。
 観客席の皆様、ひいてはこの試合を見ている全国の同胞の方々には、リング内に設置された
 数千個のカメラでの映像、音声のみで試合の行方を知ってもらうことになります}

実況……いや、前説担当の男が放送で試合の大まかな流れを説明する。
その声は、かつてプロレスや異種格闘技での名物司会だった男のものだった。
42923 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 01:18 ID:XawEY9zj
(11/15)

{候補者が二人になった時点で、リングを小型リングへと切り替えます。
 そのリングは30m×30mの平地。皆様の肉眼でも確認しやすい仕様のものです。
 売り子さんの数も10倍に増やしますので、皆さん大いに盛り上げてくださいっ!!}


ぅううううううおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーっ!!!


会場全体が吼えた。
そしてそれが合図となり、

「!?」

レーダーが明滅を始めた。
4方の隅に赤い光点が4つ。
一つは佐紀の位置を、残る3つは他の候補者の位置を示している。

「くそっ、いきなりかよ!」

佐紀は舌打ちした。
しかし、その目は既に各候補者の動きを図りだしていた。
あらかじめ聞いておいたイチローの話によると、少女をケモノに還した相手は、

「……南か!」

佐紀は一直線にその方向へと駆け出した。
43023 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 01:20 ID:XawEY9zj
(12/15)

小高い丘を抜け、谷を回避し、レーダーが示す場所へと。
リング南端の光点は一歩も動いていない様子だった。
他の2人はというと、佐紀の動きを見たのだろうか、お互いを目指して動いている。
戦うなら1対1で。協力して1人を狙うという考えは無いらしい。
それとも、今まで勝ち残ってきた己の力を信じているからなのだろうか。
どちらにしても、佐紀にとってそのことは僥倖だった。

「ハァ……!ハァ……!」

相手が佐紀との戦いを望んでいるなら、向こうから来るのを待ってもいいのだろうが、

何の関係もないあの少女を陵辱した相手。
それが今、すぐ近くにいる。

「絶対に、許さないっ……!」

その思いが、相手を少しでも早く倒したいという衝動が、佐紀を突き動かしていた。
43123 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 01:24 ID:XawEY9zj
(13/15)

駆ける、駆ける、駆け抜ける。
恐らく最後の遮蔽物たる森に入った。相手はすぐそこだ。
いきなりの奇襲に備え、金糸は既にコートの右袖から伸ばしている。
小枝が行く手を邪魔してくるが、構わずに突き進む。
もうすぐ、もうすぐ少女の仇が討てる。
遂に森の出口が見えた。レーダーを見ると、相手とはまだ少し距離がある模様。
ということは、ある程度開けた場所に出るだろうということ。
そこが相手との戦場となるということ。

「構うもんか。どこだって」

森の終点を走り抜けて急停止。
瞬間、天井からのライトが日差しのように照りつけた。
目を焼く光にも構わず、佐紀は身構えた。



20メートル四方のその場所は、辺り一面の沼地。
沼のあちこちに点在する岩場がとりあえずの足場と見ていいだろう。
その中央の一際大きな岩の上に、その相手はいた。
43223 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 01:26 ID:XawEY9zj
(14/15)

両腕を腰に置き、佐紀を見下ろすかのような姿勢の痩身の男。
全身が黒ずくめ……見た感じは黒い全身タイツといった感じか。
それに覆われた顔は見て取れない。
そしてその周囲には、

長さ60cm、幅40cm、厚さ3mmの奇妙な金属板。
それが数えて6枚。

昨日と同じモノたちが、男の周囲を、死に体の者の上空を舞うハゲタカのように旋回していた。

「キミかい?僕の武器を半分壊した人は」

くぐもった、甲高い声が響く。

「貴様か、貴様があの子を……!!」

怒りの形相に染まる佐紀。
しかし男は微動だにしない。
それどころか、

「ん〜〜〜?」

空気の抜けたような間抜けな声で。

 「あれ〜〜〜?」

沼地ぎりぎりまでにじりよった佐紀を、訝しげに凝視していた。
43323 ◆bxyzd8gFCE :04/03/07 01:29 ID:XawEY9zj
(15/15)

そしてしばらくの後、

「あはははははははははははははははははは!!」

堰が外れたかのように、甲高く笑い始めた。
佐紀はその様を呆然と見つめている。
男は、ひとしきりその溜まった笑気を吐き出した後、
かろうじてその部分だけ開かれた全身タイツの隙間から目を細め、

「よく見ると、君、佐紀じゃないか。
 こんな所で何をしているんだい?」

そう言えば見知った声色で、言った。
その声。佐紀には聞き覚えがある声。
でも、いや。そんなはずは無い。
目の前の、この「痩身」の男が、その者であるはずが無い。
でも、

――仕組みや原理までは知らない。ただあるがままを受け入れ、それを上手く使う――

この戦いとは、つまりはそんな類のものなのだ。
何でもあり。そのことに気づけと今までの実践が告げる。
それが真理ならば、
目の前のこの「痩身」の男は、

「輝……先輩?」

全身タイツの男、伊集院輝が、にやり、と微笑んだ。
ように見えた。
434名無しさん@初回限定:04/03/07 01:58 ID:2KfqVToO
乙です。
なんか少年マンガっぽいですね。
サキ君には勝って欲しいなあ。
435名無しさん@初回限定:04/03/08 08:17 ID:Ez1VLA7Z
サキたんをカッコいいと言ってる方々
ちんこ丸出しなことを忘れてないか?w
436名無しさん@初回限定:04/03/09 11:20 ID:glsDZ9S2
だがそれがいい
437 ◆LZ40ROiqVQ :04/03/09 22:24 ID:fiymSpsJ
>>354

姉寝取られって、「麿の茶室」にあるSSみたいな感じで?

それとも、和姦系?姉さんの恋人は、
かつて主人公を苛め抜いて退学に追い込んだ
憎い仇敵だった・・・みたいな。
438名無しさん@初回限定:04/03/09 22:42 ID:jN2X9ujK
>>437
調教イラネって感じでお願いしたいのです。
主人公がヘタレで姉が酷い目にあってるのを分かりながら手も足も出ないのはイマイチ。
あ、でも後で気付いてしまうのはいいかも。

和姦系がいいのかな…
仇敵でなくても主人公が嫌ってる相手、どうしても好きになれない相手。
エロ描写よりも「なんであんな男に…」という葛藤の面を深く…かな?
あと姉と主人公の繋がりの深さをしっかりと描いておいてほしい。


いや実際に書いてくれる神がいれば全てお任せしますが。
439名無しさん@初回限定:04/03/09 23:02 ID:Z0YCXaPO
別に仇敵とか嫌な奴でなくとも、

姉−弟 であるがために結ばれえない関係 に疲れた姉が
年上の包容力ある男に癒され惹かれていってしまうという話 でもいいな。




「学校で孝ちゃんが女の子と話してるのを見るたびに嫉妬する・・・そんな生活はもう嫌なの・・・」


440名無しさん@初回限定:04/03/10 23:46 ID:acL0T6Zg
>>439

それはまさに「ホテルニューハンプシャー」なりよ。

ここの住人的には、陵辱寝取られの煩悶よりも、
古典的な三角関係の切なさやるせなさの方が受けるのね。
441名無しさん@初回限定:04/03/11 01:00 ID:2wrWvxL3
>>440
組み合わせてほしい。
>>439みたいな状況に弱っている彼女が心の隙につけこまれたり
442名無しさん@初回限定:04/03/12 17:15 ID:QME1vVJ7
オワタ……カ
443名無しさん@初回限定:04/03/12 22:38 ID:Ail6Vy8E
オワタ
444名無しさん@初回限定:04/03/13 01:28 ID:2T56Uxed
寝取られ=大切な人が酷い目に会うのを手をこまねいて見ている

ではないってことか。

603氏や23氏のSSみたいに、大切な人の心が、
自分以外の男に向いていくのを止めることが出来なくて悶々とする
主人公に萌えるってことなのかな。このスレ的には。
そう考えると、寝取られも純愛モノの一ジャンルって気もする。

漏れが考えたのは、弟と一緒になるために戸籍の偽造を闇業者に依頼した
姉が、代償に体を要求されてしまう・・・ってありきたりな展開なんだけど・・・
このスレの寝取られとしては甘いかな。心が寝取られないとダメだな。
445名無しさん@初回限定:04/03/13 01:38 ID:qUqXua7u
>>444
いやカラダの寝取られ大好きよ
ただカラダの寝取られは最初の一回が一番キテ、それ以降は逓減する

そのたった一回のためにキャラ萌えさせてくれたらオレ的には神だが不満のある人も多そうだ。
446名無しさん@初回限定:04/03/14 01:41 ID:qBeET+yt
マジオワタ
447名無しさん@初回限定:04/03/14 01:51 ID:W6/NjFiW
オ・・・・ワタ
448名無しさん@初回限定:04/03/14 10:34 ID:MY0ktQ5r
オワタ = 保守
449名無しさん@初回限定:04/03/14 17:39 ID:1JUQ5+5N
                _∧_∧_∧_∧_∧_∧_∧_∧_∧
               |                           ̄|
      オワタ      <         え・・・?オワタ?(w         >
   ☆           |_ _  _ _ _ _ _ _ _ _   |
     ヽ   ☆        ∨  ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨  ∨ ̄
 (;゚д゚)エ? =≡= ∧_∧          ☆。:.+:  ∧_∧     オワタ
        / 〃 (・∀・ #)  シャンシャン        ( ・∀・)  ♪.:。゚*
      〆  ┌\と\と.ヾ∈≡∋ゞ      / ̄ヽ/,― 、\ o。。。    ( ゚д゚)ポカーン
       ||  γ ⌒ヽヽコ ノ ||           | ||三∪●)三mΕ∃.
   ドコドコ || ΣΣ  .|:::|∪〓 ||           \_.へ--イ\  ゚ ゚ ゚
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                          ( ・∀・ )っτ        。::.☆ο
 ( ゚д゚)ポカーン            ♪〜 ( つ‡ /  |   オワタ
                         |  (⌒). |  ☆1          (;゚д゚)エ?
                 オワタ 彡  し'⌒^ミ A 〃
                        / ̄ ̄     ̄ ./|   え・・・?オワタ?(w
    オワタ              | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| .|
.                       |     オワタ    .| .|
.                       |          .|/
.                      ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
450名無しさん@初回限定:04/03/14 22:22 ID:MY0ktQ5r
オワタ = ツヅキマダー?
45123 ◆bxyzd8gFCE :04/03/15 00:13 ID:3Dbp6EA8
アク規制でうPれません(ノд`)
携帯じゅしんどいでつ…
452名無しさん@初回限定:04/03/15 00:22 ID:lqNeNA1l
乙です。
とりあえず保存サイトの掲示板にうpしてみるというのは?
453名無しさん@初回限定:04/03/15 13:10 ID:SjbXCOh0
マア オワタナ
45423 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:23 ID:LPfj2X8s
エロが書きたい……
今宵は(13/13)でつ。
45523 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:24 ID:LPfj2X8s
(1/13)

にやにやと、
全身タイツに身を包んだ男が嫌らしく微笑む。
男の名は伊集院輝。
頭脳明晰にして運動神経抜群。
天は彼に二物を与えたが、
その容姿は……大腸小腸が作動していないかのような超肥満体。
だが今佐紀の目の前にいる輝は、モデルもかくやとばかりの痩身だった。

「色々聞きたいことがあるけど……先輩、何でここにいるんですか」

誠実で、明朗で、ちょっとしたスキンシップも内心色々葛藤していた
伊集院輝の過去の姿が佐紀の脳裏に浮かぶ。
それは優菜にアプローチしていた時も傍目に見て取れた。
その彼が、今この血生臭い場所にいる。
つまり、
それは。

「君と同じコトをした」

そう言うことだった。
45623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:26 ID:LPfj2X8s
(2/13)

宇宙人の侵攻をどうにかしたがっていたはず。
変貌してしまった世界を憂い、闇雲ながら奔走していたはず。
そんな男が、アレをしたという。

「こんな僕でも、僕のでもね、舐めたいって女性がいたんだよ。
 ……知らない女性だったけど。
 それで……ついつい調子に乗ってしまったんだ」

照れくさそうに頭を掻く伊集院輝。
世界を救おうとする遠大ながら尊い志も、一瞬の色香で瓦解したという。
ここにイチローが言っていた伊集院輝の精神的弱さがあるのかも知れない。

「佐紀。この世界はいいよ。実にいい。
 見た目での差別がまるで無いんだ。
 男だったら無条件だからね」

そう言って、輝はおもむろに両手を掲げた。
天を仰ぎ、願い奉る。
そんな体勢。
瞬間、滞空していた板達が、一斉に佐紀の方に向き直った。
見た目で表裏など分からないが、今向いている面が恐らくは表の面。
つまり、輝の得物はそこから射出されると言うことに――
45723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:29 ID:LPfj2X8s
(3/13)

一気に臓腑の底から駆け上がってきた悪寒に身を委ね、佐紀は真横に跳んだ。
着地点に磁力があるかの如きその反射的な跳躍のおかげで、
佐紀はかろうじて直撃を避けることができた。

見た目は正にレーザー光線。6発同時発射。
その実は佐紀の得物と同じ、ベクターを孕んだ何か。
音も無くそれらは板の中心から発射され、
今しがたまで佐紀がいた場所に吸い込まれていった。

「って、いきなり何をするんです!」

恫喝し、見据える。
輝の下僕たる板達は、3枚1組に分かれて伊集院輝の両肩の上あたりで旋回していた。

「いきなり?そうさ、不意打ちしたんだからね」
「あんた……っ!」

ぎりり、と歯噛みして睨み付ける佐紀。
それを軽く受け流す伊集院輝は殺る気まんまんの様子だった。

「君が壊した僕の武器、補充しないといけない。
 君のと、あっちでやり合ってる2人のと。
 それでも3枚にしかならない」
「え……?」
45823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:34 ID:LPfj2X8s
(4/13)

伊集院輝が突如言い出した奇妙なこと。
が、佐紀はその言葉で彼の武装を看破した。

「……奪えるのか、あんたは」
「そうだよ。今まで僕がやっつけた相手が12人。
 この板はそいつらに取り憑いていたモノさ」

そう言って板を得意げに回転させる伊集院輝。

宇宙人から全ての地球人に向かって放たれた、夥しい数の金色の板。
その数は約60億。丁度全人類の数だけ。
それらは1人の人間に1枚がへばり付き、
段階的に濃いベクターを照射して少しずつ記憶を改ざんしていった。

道行く裸人たち、その背中に、肩に、顔に、局部に。
よくよく見れば、張り憑いていた。
ベクターを透過する候補者の眼には、何故かそれが映ってしまう。
板が、ベクターと同じ構造物で編まれているからだろうか。
それは当の佐紀達にも分からないことだった。

で、今や殆どの人類の洗脳は完了済み。
板も殆どが任務を終えて母船に帰還した模様。
残るのは、

「もう補充は候補者達からしかできない。
 ――君のを、僕にくれないか?」
45923 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:36 ID:LPfj2X8s
(5/13)

金の板が再び佐紀のいる方向に直った。
今度は佐紀もちゃんと回避するつもりで駆け出す。
そして板も同時に疾走を開始、
そのスピードは人がマラソンする位程度だ。
決して速い、と言う訳でもないのだが、
それでも数で勝る板達は、佐紀の体力をじりじりと削っていく。

「くっ…ハッ、ハァッ……!」

逃げる佐紀。追随する金色の板の群れ。

「足元に気をつけないといけないよ。
 ここは足場が悪いからね」

煽り立てる伊集院輝は足場から一歩も動いていない。
対する佐紀は途中幾度も足を泥濘に取られ、その度大幅に体力を消費していた。

(くそっ、近づくことすら……できない!)
46023 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:39 ID:LPfj2X8s
(6/13)

逃げおおせている間に見出さなくてはいけない活路。
しかし今回ばかりは何も浮かばない。
何しろ今までとは違い、相手の能力は破格だ。
遠隔操作。恐らくは際限無しであろうその有効射程。
昨日の緩慢な動きは視界に目標が入ってなかったからだろうか。

と、

「う、あっ……」

その一際深い箇所に、脚を取られた。
一気に深みに沈み込んでいく佐紀。
底を蹴り、ジャンプしてやっと呼吸ができる深さだ。
勿論のこと浮いたりなんかはしない。
何故なら佐紀の比重は下級生物「灰鱈」並みの正確に1.21。
幼きあの日、イチロー諸共身体構造の一部を書き換えてしまったあの日から、
佐紀は水に浮かない体のままなのだから。

「が、ぼ、っ!」

佐紀は輝に誘い込まれたのだ。
この予定調和の配置に陥るように。
沈みかけの佐紀の頭上ぐるりと囲み込み、
金板の群れは必勝の陣地を確保した。
46123 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:41 ID:LPfj2X8s
(7/13)

「僕はこんな場面で遊びを取り入れる程自信家じゃない。
 好機においては速やかに勝ちを拾うよ」

何とか呼吸しようと飛び跳ねる佐紀の眼に、

映った。

板の中心、「起点」と同じ位置が、より煌く黄金に染まる瞬間が。

「……!!」

思わずその身を沼に沈みこませる。

「そう来るのかい。では下手な鉄砲を撃つとしよう」

伊集院輝が板に指令を送る。
瞬間、6枚の板からの一斉射が始まった。
次々と泥水を切り裂いて迫るレーザー群に対して、
佐紀はただ水中で頭だけをぐるぐると動かし続けるだけだった。
腕を、脚を、胸を、
ベクターが抉る、感覚の無い悪寒。
それでも、脳のあの場所以外なら当たっても阿呆にならない。
だが、それもいつかは……
46223 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:45 ID:LPfj2X8s
(8/13)

汚濁の中、まさぐる手の先には確かな感触。
それは、コートのポケットに忍ばせてある最後のカプセルだった。

(使うしか、ないのか)

もはや一瞬の逡巡も許されない。
泥水ごと佐紀はそれを嚥下した。

―― 脳髄を侵す、軟体異物が佐紀の全細胞を「臆病者」に改造していく――

そして始まった無敵時間。
某ゲームでスターを取った時のBGMが聞こえる錯覚。錯覚だが事実。

(いや、それはともかく)

まずはこの泥濘を脱出しなくてはいけない。
が、それも杞憂に終わる。
佐紀は何故か沼から「弾き出されて」いた。

そう。
このカプセルの効果は、佐紀自身を脅かそうとするものならば、
それが敵だろうと天災だろうとただの泥水だろうと関係なかった。

それだけに、まだ敵が残っているこの局面で切り札を使ってしまったのことが悔やまれた。

気を取り直して周りを見やる。
己の頭上にいた。板が数えて6枚。
伊集院輝の、あれが全武装。
僅か10秒で、全て破壊しなければいけなかった。
46323 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:48 ID:LPfj2X8s
(9/13)

本日初めての佐紀の攻撃ターン。
出ろ、と念じるだけでコートの袖から金糸が出現した。

「行け!!」

イメージ通りに疾走させて、粉々に打ち砕く。
1枚、2枚と続けて。
その足で、ようやっと逃げ腰になってきた板を追いかける。

(逃げるな。こっちの時間は限られているんだ!)

3枚。4枚を破壊。
残り2枚の板が伊集院輝の方へと逃げ帰っていく。
口をあける幾つもの泥濘にも構わず佐紀はそれらを真っ直ぐに追跡する。
落ちるはずの、脚を救われるはずの泥濘を、まるでアスファルトを駆けるかのような速度で。

泳げない佐紀にとって、足元のそれは致命的な空間。
だからカプセルはそれらをも「回避」しなければいけないのだった。

「な、何ぃ!?」

忍者の如く、佐紀は水面の上を疾走していく。
少年漫画の雑魚キャラのように驚愕する伊集院輝に向かって。

46423 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:50 ID:LPfj2X8s
(10/13)

全力で駆ける。残り2枚の板にはもうすぐ並ぶ。
瞬間、一気にこちらに向かってレーザーを放ってくる金板。

(あと5秒)

特濃のベクターを乗せた2本のレーザーが、佐紀の細胞群に弾かれてあさっての方向に散った。
それを確かめるまでもなく、使い慣れた金糸の一薙で破壊完了。
これで、ゼロ。

「あ、あ」

最早狼狽するだけの伊集院輝。
勝てる。佐紀は確信した。
顔見知りだからって遠慮はしない。
頼むからこの手よ鈍るなと、自身に言い聞かせる。
目の前にいるのは、仇だ。
あの無垢な少女を、更に、取り返しがつかない位に無垢に変えた張本人ならば、然るべき報いを――

「終わり、だ!」
「終わり、だね」

正に佐紀が右手を振り上げようとした瞬間、いきなり出現した。

13枚目。

佐紀の顔面とほぼゼロ距離の位置に、何故かそれは。

「僕に取り付いていた分さ。簡単だろ?」
46523 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:52 ID:LPfj2X8s
(11/13)

3・2・1・ゼロ。

無敵の10秒間が、終わった。
佐紀がしまった、と思った今はもう取り返しがつかない状況。

「残念だったね。さようなら佐紀」

本来なら自分が告げるべき最期の台詞は相手の物。
止めとばかりに、黄金の板が眩き光を放った。





いきなりもたれかかってきた。
佐紀は思わずソレを受け止めてしまう。
瞬間、佐紀を真っ赤に染め上げていく、何か。

「あ、れ……」

鼻をつんざくのは何ともいえない臭い。
が、嗅いだ事の無い臭いではない。
いつだったか、擦りむいた手の甲を舐めたとき。
鉄の味と一緒に、
そんな臭いがしたような。
46623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:55 ID:LPfj2X8s
(12/13)

ソレからは、とめどなく吹き上げていた。
跳ね飛ばされたパーツは首。
元あった場所から、飽きもせず、噴水のように。
瞬間全身タイツが弾け、
戒めを解かれた伊集院輝の胴体は、元の肥満体に戻った。

「う、うわあああああっ!!」

佐紀は思わずソレを蹴り飛ばした。
血の放物線が、舞って、泥濘に落ちる。
水とは違い、沈まずに汚濁を極めさせる赤と黒の群れ。
その上で伊集院輝の胴体がじたばたと首を求めてのたうつ、醜悪な絵図が完成した。

「ご、おぇ
         ぇええええええぇええぇぇぇ……!」

たまらず佐紀は胃の中を空にし出した。
それで何がどうなる訳でもないのだが……
46723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 01:59 ID:LPfj2X8s
(13/13)

「あとは、君と俺だけだ」

思うがままの吐捨を終えて、見上げた先。
そこには、

佐紀と同じく全身を血に染めた大男が佇んでいた。
全身を筋肉の鎧に包んだその大男は、
全裸でありながらまるでギリシャの彫刻のように美しく、
伊集院輝の醜態を見た後でその勇壮はなおさら際立って見えた。

「何故……助け…………た」

投げかける佐紀の疑問に、男はさも当然そうに、

「背を取った相手がたまたまその男だっただけの話。
 他意は無い」

それだけを言い残し、大男は去っていった。
腕のレーダーを見ると、残る光点は2つのみ。
もう一人の候補者を、あの男は還した……いや、殺したのだ。
今しがた伊集院輝を殺した時のように。
そう言えば、佐紀は見ていた。
その瞬間を。
何の感慨も無く、機械のように、あの男の拳が――

耳を澄ませなくとも聞こえてくるのは、湧き上がる50,000人の歓声。
場内アナウンスが告げる、舞台変更の知らせ。

佐紀の最後の相手が、今決定した。
46823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/16 02:13 ID:LPfj2X8s
エロくなくてすみません。
ところで佐紀は勝った方がいいのでしょうか?
未だ決めあぐねて結末を2つ用意していたりしまつ……
469名無しさん@初回限定:04/03/16 02:25 ID:/mtZxh4k
>>468
23氏、お疲れ様です。今回もおもしろかったです。
個人的には佐紀キュンに勝って欲しいなぁ。
470名無しさん@初回限定:04/03/16 02:28 ID:ryQOc456
>>468
個人的には、佐紀が勝って、その挙句に寝取られたほうが……救いがなくて(・∀・)イイ!

でも結局、両方見たいと思ったりしてるですよ、はい。
471名無しさん@初回限定:04/03/16 04:36 ID:A11W7mBb
サキクンに勝って欲しい。
寝取られてもなんかサキクンは前を見て生きてくれそうな気がするし。
個人的な希望だけども。
イチローみたいな例もあるしなあ。
472名無しさん@初回限定:04/03/16 07:37 ID:8x4+LJP0
サキたんが幸せになる方でおながいします・・・
473名無しさん@初回限定:04/03/16 13:22 ID:DjGjCxh0
負けたらそこで物語終わりでしょ?
やっぱ寝取られるとこまでみたいなぁ
474名無しさん@初回限定:04/03/16 23:17 ID:7KS38+lw
>>473
寝取られを見せ付けられるためだけに
生かされるサキたん、という線もあるのでは?
475名無しさん@初回限定:04/03/17 01:02 ID:aI0HdCaE
なんかサキたんも、ヒロくんも、
やばいくらいに主人公が萌える。
お二方の筆力もあるのだろうが、
最近ここを「寝取られ」スレでなく、
「萌えSS」スレだと認識してしまっている自分がいる。

やべえ。これで寝取られきたら、
あまりのショックにどうにかなりそうだ。
47623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/17 02:41 ID:aSEFdmIy
連投スマソ
筆が進むがままに続きをば
今回は(12/12)です
47723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/17 02:45 ID:aSEFdmIy
(1/12)

それは決勝戦までの僅かな時間での出来事。
段健司は「王」候補者ではあるものの、兵役に服する身ゆえに、
獄中にいる者への配膳および監視の任務は解かれてはいなかった。
今日も今日とて彼は配膳トレイを持って牢獄内を徘徊する。
そして本日最後の配膳は、性犯罪者・成瀬優菜の所へと。
その際に彼は、

「これを渡しておく」

10インチの小型テレビを、優菜がいる牢内に運び込んできた。

「これは……?」

夕食のシチューを頬張りながら、優菜は健司に質問した。
最低限の設備がある牢内とはいえ、テレビや本などの娯楽に関するものは当然無い。
これは退屈な獄中生活に潤いを与えようという健司の心遣いなのだろうか。
47823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/17 02:48 ID:aSEFdmIy
(2/12)

「君は知らないだろうが、今地球人類の「王」を決める戦いが行われている。
 前の支配者が現役を退いた「らしい」からな」

「王」候補者を選ぶ戦い。
古来よりそれは行われており、今もそれは変わらない人類の営み。
優菜の脳裏にいつか公民の授業で、習った「ような」記憶が蘇ってくる。

「で、このテレビはそれと何か関係があるのですか?」
「ふむ」

テレビの配置を終えた健司は、腕を組みしばし考えた後、

「決勝で、私が戦う。見守っていて欲しい」

はっきりと告げた。
優菜は危うくシチューを噴出しかけた。

「え、えええええええっ!?
 け、健司さん、候補者だったんですか?」
「そうだ。何の因果だか」
47923 ◆bxyzd8gFCE :04/03/17 02:50 ID:aSEFdmIy
(3/13)

健司の言葉に呆気に取られる優菜。
それもそのはず。
今まで「王」候補者に選ばれた人物は、いずれも卑しからぬ出身の者ばかり。

(だったように習った、気がする)

健司には失礼だが、刑に服する者が選ばれるなんて聞いたことが無い。

「あー……、今回は何か基準無しで選別されたらしい」

真相を健司は、優菜を混乱させないよう、適当な理由を述べた。

「最初は断ろうかとも思ったが、これは好機だと思ってな。
 で、戦い続けたら運良く勝ち残ってしまったという訳だ」

何が好機かは不明だったが、優菜は納得してしまった。
あの時、自害しようとした優菜を救った健司の動き。
およそ常人のそれではなく、例えるなら格闘技の達人のような。
恐らく健司はその類の何かを会得しているのだろう。
その強さを以ってしたらあるいは。
48023 ◆bxyzd8gFCE :04/03/17 02:52 ID:aSEFdmIy
(4/12)

「あっ……」

そこで優菜は悟ってしまった。
好機。
その意味を。
そして、健司の昨日の言葉の意味を。


『君は、恐らく今日でここから出られる。
 今のうちに持ち帰りたい手荷物をまとめておくがいい』


これは自惚れなのだろうか。
自惚れてもいいのだろうか。
まさか。
自分を助けるために、この男は勝ち残ってきたのだろうか。

「もうすぐ、君を助けることができる」

気が付くと、健司は優菜のすぐ前にいた。
目が合って、その言葉は反則だ。
顔が上気し、心臓は早鐘のように高鳴る。

「で、でも、本当に私、なん、か、を……?」

恐る恐る尋ねる優菜に、健司はしっかりと頷いた。
48123 ◆bxyzd8gFCE :04/03/17 02:57 ID:HWRgy9GD
(5/12)

「もう一度言う。
 もうすぐ、君を助けることができる」

「は、はぃ……」

呂律が回らない優菜。
彼女は舞い上がっていたのかも知れない。

「だからその時は……」

「その、時は……?」

健司の次の言葉を優菜は待つ。
薄暗い牢獄の中、相応しい静寂。
そんな中でも満ち溢れる光を優菜は感じた。
恐らく。
恐らく彼はきっと、


「……俺の子を、産んでくれないか」


健司らしい、ぶっきらぼうな告白だった。
だがそれは、彼の嘘偽り無い望み。
優菜の体内に一瞬で何か暖かいものが染み渡っていく。
そして優菜の心のドアを、その水圧はそっと押し開いた。

頬を伝う涙。
理屈では無く、感情が流す涙。
優菜は健司の告白に対し、はっきりと、声に出して返事を返した。
48223 ◆bxyzd8gFCE :04/03/17 03:00 ID:HWRgy9GD
(6/12)

「ここに……優菜がいるのか?」

照明もまばらな階段を、佐紀はイチローから手渡された地図をもとに「昇って」いく。
佐紀が戦っていたコロッセウムからは昇ること約100メートル、
地上から数えて地下6階の位置にそれはあるらしい。

性犯罪者を閉じ込めておく牢獄。
つまりは成瀬優菜が捕らえられている場所だ。

決勝までの僅かな時間だけ許された優菜との邂逅。
初め牢獄に優菜が閉じ込められていることをイチローから聞いた佐紀は
それはもう怒り心頭だったのだが、

『少しだけなら、会ってきてもいいですよ』

その言葉を聞いてあっさりとクールダウンしてしまった。
我ながら現金だとは思う佐紀だったが、
それでも、

(優菜の顔を見れれば、きっと俺はまだ戦える)

そう思えた。
最後の相手のあの力。
恐らくは何かの拳法を嗜んでいるはず。
そんなのと一戦交えると考えると、体がすくんで然るべきなのだが、
今や優菜と会えるという希望が、その恐怖を薄めていた。
48323 ◆bxyzd8gFCE :04/03/17 03:05 ID:HWRgy9GD
(7/12)

薄暗い地下牢は、いつか優菜と行った室内プールくらいの広さがあった。
牢獄は数えて10室。中々に広くて設備も牢獄にしては悪くない。
階段近くのものから順番に見渡すしていくと、
中には牢の隅でぶつぶつと独り言を言っている老人が一人、
そして……

(ゆ、優菜!!)

最奥の牢獄で、小型テレビを眺めている全裸の成瀬優菜だけがいた。
久しぶりに見る優菜の姿。
思ったよりも血色も良く、元気そうに見えた。

(寂しそうに見えないのが、ちょっとあれだけど)

でもそれも些事。
少し上向きの乳房もはちょっと大きくなったような気がするが昔のまま。
水泳同好会で鍛えられたその美しい肢体は、やさぐれかけた佐紀の心を躍らせた。

「このカッコ、変じゃ、ないよな」

佐紀は物陰で軽く髪型を整え、丁度優菜の死角になる位置からそっと忍びよった。
48423 ◆bxyzd8gFCE :04/03/17 03:07 ID:HWRgy9GD
(8/12)

「思ったより元気そうじゃないか」

背後からいきなり声をかけた。
瞬間、

「きゃああっ!」

小動物のように優菜は飛び跳ねた。

「だ、だだだだだ誰っ!?」
「おいおい、もう彼氏の顔を忘れちまったのかよ」
「え……」

振向いた鉄格子の向こうに立つ、漆黒のコートを纏った長髪の男。
まじまじと、見やる。

「あ……」

そして優菜はそれが誰であるのかを、やっと認識した。

「………………………………サ、キ、くん……?」
「よ、久しぶり」

まるで幽霊を見たかのような態度の優菜に、佐紀は思わず肩をすくめた。
48523 ◆bxyzd8gFCE :04/03/17 03:09 ID:HWRgy9GD
(9/12)

「ゴメンな。俺のせいでこんな目に合わせちまって」
「う、ううん……」

鉄格子越しに背を合わせ、佐紀と優菜は語り合う。
佐紀は優菜に対する罪の意識。
優菜は整理の付かない感情。
お互いの顔を見れないが故の妥協点だったのかも知れない。

「……」

それでも優菜だけはちらちらと佐紀を見やっていた。
眼に飛び込んでくるのは、今は懐かしい顔。
少しやつれてるような、そんな気はしたが、
少なくとも幽霊では無さそうだと、優菜は思った。

「で,さ」

唐突に佐紀は振り向いた。
色々話したい事もあった佐紀だが、時間も限られている。

「もうすぐ、優菜を助けることができそうなんだ」

ここは事実と用件だけを、告げることにした。
48623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/17 03:11 ID:HWRgy9GD
(10/12)

「そ、そうなんだ」
「ああ」

沈黙。
何故か優菜はぎこちない。
こんな話、信じられないのだろうか。
性犯罪者がこんな短期間で釈放されるなんて普通はありえない。
ならば、安心させてやらなくては、と佐紀は考え、

「優菜はずっとここにいたから知らないと思うけど、
 今、人類の「王」を決める戦いが行われているんだ」
「……!!」

まずは事実を告げた。

「俺さ、その決勝まで勝ち残った。
 ……あと一人。あと一人倒せば、君に届く。君を自由にしてあげられる」
48723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/17 03:18 ID:HWRgy9GD
(11/12)

次はいよいよ用件。
でも、
言おうか言うまいか。

「で、でさ」

「う、うん」

「でさ、その時は……」

逡巡。
度胸が。
うまい台詞は何処にある。

(いや、そんな体裁、どうだっていいんだ)

そう、必要なのはただ一つ。
こんな世界だからこそ。
こんな世界に生きる異端者な自分だからこそ。


「……俺と、結婚してくれないか?」


(君との、確かな絆が欲しいんだ―――――)
48823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/17 03:20 ID:HWRgy9GD
(12/12)

薄暗い牢獄の中、相応しい静寂が支配する。
そんな中でも満ち溢れる光を佐紀は感じた。
恐らく。
恐らく優菜はきっと、

「あ、あの、私……
 いきなり、あれ?
 ちょっとびっくりした……」

「ははっ、だ、だよな」

優菜からは佐紀の予想通りの言葉が返ってきた。
思えば確かに彼女の言う通りだと思い、
佐紀は照れた笑顔で優菜の言葉を受け止めた。

「へ、返事はすぐじゃなくてもいいんだ。
 この戦いが、終わったら……聞かせてくれよな!」

顔を真っ赤にしながら、そそくさと地下牢から去っていく佐紀。
その背中に、優菜は全く言葉をかけることができなかった……
489名無しさん@初回限定:04/03/17 05:37 ID:42rfdIro
キタ━━(゚∀゚)━━!!!
優菜タンどーする!?
指先が震えるくらいドキドキしてきた…。
490名無しさん@初回限定:04/03/17 17:15 ID:3gK3VFqr
昨日の今日でそんなに書けないとはわかっているけど…。

それでも23氏早めに続き頼みます!
491名無しさん@初回限定:04/03/17 18:48 ID:YZKg661B
うぉおおおおおおおおおおお
めっちゃ面白い展開!!!

どうなるんだ!?
23氏大好きです
492名無しさん@初回限定:04/03/17 20:03 ID:69j+yMQW
>23氏大好きです

ウホッ(ry
493名無しさん@初回限定:04/03/18 23:29 ID:h20G19GB
この空き具合からして次の603氏のページ数は30以上。
間違い無い。
494名無しさん@初回限定:04/03/19 19:11 ID:V8Zsvc8L
優菜タソより名無しタソに幸せになって( ゚ー゚)ホスィ…
495名無しさん@初回限定:04/03/21 05:11 ID:yqA5uCjJ
保守するニダ
49623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 19:53 ID:CtkuK4dX
あと数回で完結です。
今回は(22/22)でちょっと長め……
49723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 19:55 ID:CtkuK4dX
(1/22)

一時の想い人との邂逅を経て、

今、二人の戦士が立った。
この最後の戦いの舞台に。

ウオオオオオオオオオーーーーーーッ!!

50,000人の観衆が上げる咆哮が、大気を雷の様に振るわせる。
それは、静かに向かい合う二人の心境を代弁しているかのようだった。

先程までの様々な地形を模した凝った舞台装置とは違い、
1m×1mのタイルが敷き詰められたそれは、マットもロープも審判も無いリング。
そこで行われる戦いのルールは、

如何なる手段を用いてでも、相手を行動不能に陥れる。

実に単純かつ明瞭なものだった。
勿論、ベクターで先祖還りさせてもそれは戦闘不能に違いないのだが、
聞き分けの無い相手には、その前に「肉体的」に戦闘不能になってもらうしかない。

王たる者が立つのは、血肉の丘の上のみ。

それが古来よりのルール(のはず)。
観客の誰もが、そういう戦いを望んでいた。
49823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 19:57 ID:CtkuK4dX
(2/22)

リング東側に立つのは、「王」候補者・段健司。
撫で付けるようなオールバックの髪は、対面に立つ男との対比のように。
長年の拳法の研鑽がもたらした鋼の肉体は、今はまだ静かに時を待っている。
他の候補者達とは違い、彼が纏う物は何も無い。
地下を照らし出す幾千個もの照明の下、その裸体を晒すがままにしている。
いや、よく見れば違っていた。
唯一彼が弛緩させていない両の拳、その薬指に、

漆塗りの、指輪のようなモノが。

それが健司の武装だった。
果たして、如何なる力を持つのだろうか、語るものは誰もいない。
何故なら、今まで彼と対峙してきた相手は、既にこの世にはいないのだから。
49923 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 19:59 ID:CtkuK4dX
(3/22)

健司と向かい合うように西側で佇むのは、「王」候補者・加藤佐紀。
どこからか入り込む微風に、この1ヶ月近く伸ばすがままにしてきた髪が揺れていた。
対岸の相手を睨み付けるその瞳は、炎のように激しい色を湛え今すぐにでも爆発しそうな程に。
着慣れた漆黒のコートに一本だけ織り込まれた佐紀の武器たる黄金のベクター糸も、
その殺気を受けてか、まるで針のような張力を以って戦いの始まりを待っていた。

あと一人を倒せば。

その思いだけで、佐紀は今この場にいる。
例えそれがどんな相手だろうと、怯む訳にはいかない。
感じる糸との同調も申し分無し。
戦闘開始の合図が上がれば、後はこれを相手の眉間に叩き込むだけ。
その構えで佐紀は佇んでいる。
今まで還した相手、これから倒す相手への同情は、既に無かった。
50023 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:01 ID:CtkuK4dX
(4/22)

そんな喧騒とは遠く離れた地下牢で、成瀬優菜はテレビに食い入っていた。
僅か10インチの画面とは言え、観戦するには十分の大きさ。
映し出される両候補者。
名前も勿論表示されている。
その両名は、どちらも優菜の顔見知りであり、それ以上の人。

「私……」

最早優菜は独り言すら言葉が選べない。
今からこの二人が、
史実に基づくなら、
文字通り、殺しあう。

(そう言えば、前の王様を決めた時って、どんなだっけ)

逃避の思考。
だが現実はすぐ目の前に。
この時既に優菜の答えは決まっていた。
だが、選ばなかったもう一人の気持ちも痛いほど伝わっている。
そんな彼に、自分はどう答えればいいのか。
それよりも、骸になったのが自分の想い人だったとしたら。
優菜の心が今までに無い困惑と恐怖で揺れ動く。

だが、事態は刻々と進行し続ける。
それは死合開始の刻限であったり、
優菜の体の変調の期限であったり、だった。
50123 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:05 ID:CtkuK4dX
(5/22)

予告などあるはずも無く、

高らかに響き渡る、場違いなゴングの陳腐な音色。
それはアンプで増幅されていた為、余計に間抜けな響きだった。

「う、ああああーーーーーーっ!!」

合図と同時に佐紀が仕掛けた。
といっても別に策がある訳でもない。
突進の後は、金糸の機動力に任せて一撃を見舞う。
一応左手は顔面を守る位置に構えてはいるものの、
彼我の能力差を考えると長期戦は不利だと悟った為、

(相手が構えないうちに、倒す)

それだけを佐紀は考えていた。
50223 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:07 ID:CtkuK4dX
(6/22)

1メートルまでと近づき、急停止。
そこからは人外の速度の領域。
つまり、金糸が猛威を振るう間合いだ。
佐紀が素早く糸に命令を送る。

(……貫け!)

無形の言霊を、同じく無形のベクターへ。
それを媒介する金糸が電気を流されたように跳ね上がった。
最大加速時には400km/時。
これが果たして人の目に映るかどうか、甚だ疑問である。

佐紀の金糸が、渓流を滑るが如き滑らかさで目的地へと疾走していく……
50323 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:10 ID:CtkuK4dX
(7/22)

闘技場内は、その攻防に見入っているかのように静かだった。




佐紀が糸を繰り出してから経過した時間は、およそ2分程だろうか。
佐紀の目の前には、未だ構えすら取っていない健司の姿があり、
何故か、依然健司はヒトのままでいた。

「な、何故、何故当たらないんだよ!?」

驚愕する佐紀。
それも無理は無かった。
健司は、この2分間の間に繰り出された佐紀の攻撃を、全て「素手」で弾き返しているのだ。
いや、正確には、
両の薬指にはめられた黒い指輪。
そこから生えている、僅か5cmの金糸で、
1メートル以上の長さにも及ぶ佐紀のそれを圧倒していた。
得物が長いに越したことは無い。
それが得物自体に威力があるなら尚更なはずなのに。
50423 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:12 ID:CtkuK4dX
(8/22)

にも関わらず、

「く、そっ!」

再び佐紀の金糸が、極細の大蛇となって健司の眉間を狙った。
その一撃を、

「……覇ッ!」

十手で刀をいなすが如く、健司が弾き返す。
健司の糸には、長さからしておよそ機動力があるようには見えない。
即ち、健司は殆ど自分の動体視力のみで、この脅威の速度を見切っているのだ。
ありえない。
ありえないが、事実。
健司が少しずつ佐紀に近づいていく。
その間も勿論佐紀は攻撃し続ける。
が、それも全て届かず。
何度も何度も何度も佐紀は糸を繰り出す。
そうこうしている間に、二人の距離が半分に縮まり、

今は、健司の刃圏となった。
50523 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:13 ID:CtkuK4dX
(9/22)

唐突に、挙動無しで撃ち出された、加速を孕んだ健司の左拳。
それは狙い通り、一瞬で佐紀の左肩を打ち抜いた。

「う、ぎぇ……!」

めしり、と声とは別の悲鳴が佐紀の脳髄に響き渡る。
それは皮一枚の向こうで弾け飛ぶ肩の筋肉繊維があげる悲鳴。
余りの激痛に佐紀はよろめいた。
その隙を健司は見逃す訳は無く、

「疾ッ!」

辛うじて顔面を死守する佐紀に、容赦無く撃ち降された。
その身を袈裟に断絶せしめんと繰り出される健司の左脚は、例えるなら弧月の軌跡を描く閃光の剣。
まずは岩戸の如く硬く閉じられた佐紀の両腕を裂き切るが如き一撃を。
受け止めた佐紀の左腕が、その衝撃に耐え切れず、緩む。
そして、

「疾ィイッ!!」

慣性に反する一挙動で、寸分違わない位置に叩き込む二撃目の烈蹴。
その絶技に内包する武器は何時の間にか、

――ほぼ無防備となった佐紀の顔面を直接粉砕する為の――

超重量・破壊槌と化していた。
50623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:15 ID:CtkuK4dX
(10/22)

「……っがぁあ!」

二撃目の健司の踵落としは寸前の間合いで掠るに留まった。
佐紀が無理矢理に後方へと飛び退き、その直撃を凌いだのだ。
それでも佐紀の両腕には一文字の裂傷が刻まれている。
もし直撃していたら、佐紀は身体全体を両断されていたかもしれない。

「ふうぅ……」

一足跳びで距離を開け、健司は再度構え直す。
深呼吸を一回した後は、完全に平静を取り戻していた。
対する佐紀は大きく息を荒げ、その身のあちこちを朱に染めながら跪いている。
今まで部活で人並み以上に鍛えてきたはずの己の肉体。
ではあるものの、この全身凶器の前でそれは何と脆い壁であることか。

「どうした少年。もう終わりか?」
「く……っ!」

とんとんとその場でステップを踏む健司。
佐紀は返す言葉が無い程に、この一瞬で追い詰められていた。
50723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:17 ID:CtkuK4dX
(11/22)

「実力を出したまえよ。
 君が先程の肥満体と戦っていた時の動きは、
 私の速さを軽く凌駕していたぞ?」

どうやら健司は佐紀がカプセルを使っていた時、既にあの場に居合わせていたらしい。
あの時の戦いの展開から、見た目に弱そうだった伊集院輝を選んで倒したのだとすれば、
健司はとんだ見込み違いをしていることになる。

(くそ、あんな回避、生身で出来るか!!)

ドーピングの為のカプセルは既に品切れ。
もはや佐紀に打つ手は無かった。

「ふむ。思ったより早く、彼女をここから助けることができそうだ」
「……彼女?」

進退窮まった佐紀の耳に、健司の独り言が飛び込んできた。
どうやら、相手も女絡みで戦っているらしい。
50823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:19 ID:CtkuK4dX
(12/22)

「ここの地下牢に、俺の子を産んでくれそうな人が捕らえられている。
 君に勝てば、「王」の権限とやらで釈放することができるだろう」

健司が話す内容は、ますます佐紀と同じ境遇だった。
だからと言って同情できるわけがない。
最も、今の佐紀にそんな資格は全く無いのだが……

「……俺も、彼女がここに捕まっているから。
 あんたに勝たないと、殺されるか、奉仕活動で慰みものだから……」

話したからといってどうにもなる訳ではない。
それでも佐紀は健司に己の境遇を話していた。
果たしてそれは弱音か、はたまた己を鼓舞する為の言葉か。
どちらにしてもこの戦いの場に置いては無意味な話だ。
しかし健司には、

「…………成る程、そういう事か」

佐紀の言葉に何か腑に落ちるものがあったらしく、

「予定変更だ。
 君は野生に還すに留めるつもりだったが……」
50923 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:21 ID:CtkuK4dX
(13/22)

やおら健司が全身を捻り、続いて両脚を一気に沈み込ませた。
その衝撃で発生した大地の反作用を巻き上げ、
己の拳の燃焼物たる気流の螺旋へと昇華させていく。
両脚を透過した螺旋は筋肉の捻れを上乗せしながら上半身へ。
それは例えるなら引き切られた弓を更に引き込む行為。
健司の構えも射手の如くで、臨界へ達した螺旋を射の構えの右腕へと落とし込む。
螺旋を受けた金糸がぎりぎりと絞り込まれ、約1cmの長さまで縮んだ。

弓手には見えざる強弓。
馬手には恐るべき魔弾。

「―――――今この場で、君を完全に殺す―――――」

どうやら、佐紀は余計なことを言ったらしい。
51023 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:26 ID:CtkuK4dX
(12/22)

佐紀の全身が、一瞬で悪寒で満たされた。
目の前の、恐るべき相手が本気になったことに。
このままでは、
完膚無きまでに叩きのめる最中、あの楊枝のような短い糸で一突き。
そしたら無様なケダモノの一丁上がり、と相成る。

(……嫌だ!
 阿呆になんか、ケダモノなんかになりたくない!
 勿論それは今まで俺が戦ってきた相手にしてきたことだけど……
 それが罪だと言われたら恐らく罪だけど……
 でも、それでも、後悔なんかしていない。したところで何になる。
 俺がが勝ち残らないと、優菜にもあの少女も未来は無いのだから。
 ……相手はまだ動かない。
 が、恐らく間違いなく間も無く来る。奴はすぐにも来る。
 真っ向から躊躇なく殺しに来る……!
 だから俺が勝つには今すぐ奴以上の力が必要。
 でもそんなモノはどこにあるんだ?
 探せ。探せ探せ!
 この舞台。施設内。目が届くところ全てを探せ!!
 何か、無いのか?
 俺に力を与えてくれる何かを、誰か持っていないのか!?

 ……在るはず無い。そんな都合のいいモノ、「他の誰か」が……)
51123 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:32 ID:CtkuK4dX
(15/25)

今にも爆ぜそうな健司の圧力を前にして、佐紀はじっと自分の右手を見ていた。
羽織った漆黒のコートから伸びる金色の糸。唯一の武器。
それは特殊な調整を施されたベクターを孕んだ物質。
『王』候補者が持たされる共通武装。

これに脳を穿たれた相手は、すべからく太古の記憶を呼び覚まされてケダモノと化する。

だが、これだけは。
この「自分の」袖から伸びている糸だけは。
佐紀の意識と繋がっているモノ。
佐紀の意のままに動くモノ。
佐紀以外の誰かを害する為だけのモノ。

ならば、
この糸だけは、
自分を害することが出来ないのではないだろうか。
51223 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:33 ID:CtkuK4dX
(16/25)

そしてさらに、

かつて微生物から始まって、進化変異の果てに今ヒトの身の佐紀がいる。
生存競争を勝ち抜いて現在。ここに至るまでの道程。
その途方も無き時間の中で、かつてあったのではないだろうか。
猫を噛む窮鼠程度の獣(ケダモノ)では無く、それは獣(ケモノ)。

手負いにて最も狂うことが出来る、獰猛なケモノ。

それは、天敵だらけの過酷な時代を生き抜く知恵と力と勇気を持ちたる存在。
自分に連なる以前の存在が、そんなケモノだった時代が、かつてあったのではないだろうか。
そしてその記憶は、
平和ボケに弛み切った現代人たる自分の脳の奥底、最奥に、
ほんの一欠片でも残っているのではないだろうか。

じっと佐紀は自分の得物たる金糸を見る。
この糸が内包するベクターが、太古の記憶を呼び覚ます為のスイッチであるのならば――――
51323 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:35 ID:CtkuK4dX
(17/25)

佐紀がそう思い至った瞬間、
健司は大気を切り裂く一陣の流星と化した。
可能性を計る時間は最早刹那。

「頼むぞ、相棒……っ!!」

意を決し、佐紀は自分の眉間に己が得物たる黄金糸を突き刺した。


「―――む―――?」

佐紀の奇行を前にしても健司の突進は止まらなかった。
己が放った必殺の一撃を制する術を持ち合わせていないのか、
はたまた敗者が自滅じているとでも、思ったのか、
その手をを緩めることは、遂に無かった。

その間にも、佐紀は脳の奥の、記憶の海に沈み続けていた……
51423 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:37 ID:CtkuK4dX
(18/25)

感覚の無いおぞましい感触が、佐紀の脳をかき回していく。
至るべき場所に至ろうと、金糸の中の「ヲ型ベクター」は必死に抵抗する。
が、手綱を握る佐紀も必死だった。
糸を通して視る自分の脳。
そこに眠る記憶。
見たことの無い記憶。
でも、恐らく過去、何代、何十代、何百代前の先祖が見たであろう記憶。
それを掻き分け、探す。
まるで内視鏡が患部を探すが如く、
記憶の切開、抽出を繰り返す。

(江戸時代の先祖は百姓だったのか。弱そうなので却下)

(お、鎌倉時代の先祖は公家っぽい。でも権力あっても腕力は無さそうな感じ。却下)

(……石器時代……か?
 うわ、マンモス……追っかけてる……でも、これじゃぁ……駄目……却下)

時代を遡るごとに強くなるベクターの干渉。
人間がソブネリアとしての進化の道と袂を分かった位置が近いからか。
でも、佐紀が目指す記憶は、そこにはない。
51523 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:39 ID:CtkuK4dX
(19/25)

(あれ、今何か一瞬……手術室に……貼り付けにされているような、映像が……?)

不意にベクターの干渉が正反対の向きになった。
恐らく本来目指す場所、このベクターが還す時代の記憶を超えたのだろう。
佐紀は慌てて手綱を持ち直すした。
まだまだ記憶を遡る。脳を掻き分ける。

(……こいつ弱そう……こいつも弱そう……ああもぉどいつもこいつも……)

そんな刹那の瞬間での数限りない取捨選択の果て、

(あ…………っ!!)

見るからに強そうな、
鱗の肌と巨大な体躯を持つ、己の先祖の姿を発見した。

(アンタの記憶……借りた……!)

それが眠る場所、小脳の奥底の極僅かな一点。
今はもう薄れ切って存在しないが如き一点。
文字通り針をも通す程しかないその位置を、佐紀は正確に穿ち抜いた。
51623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:42 ID:CtkuK4dX
(20/24)

おおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーっ!!

沸き立つ会場内。
大画面モニターには、今まさに殺されようとしている候補者の姿が。
誰もが数秒後には、新王が誕生すると確信していた。

「むお、むおおおお!!」
「あ、いやっ!そ、そんなに強く吸わないでぇ……!!」

おっぱい屋の売り子さんが両の乳首をそれぞれ違う男に吸われている。
そう訴えつつも、彼女は男達をみていない。
新王が誕生する瞬間。それだけが彼女の今の関心事だった。


フェラ屋の売り子さんが一列に並んだ男達の勃起を次々に静めていく。

「ね、ねぇ、ちゅっ、せ、せんぷぅぁい、もぉ交代して、くださ……ぺろっ」

フェラ屋の期待の新人・奈津美さん(15)が後ろで休んでいる先輩に声をかけた。
が、当の先輩も既に30人近いお客を果てさせて息も絶え絶えだった。

「そ、そんな! 僕、君にしてもらいたいんだけど!」

咥えられてる客が残念そうに呟くその台詞にグッと来たのか奈津美さん(15)は、

「ま、まはせへくらさい! わら、私がきちんと、射精むぐぅぅぅぅっ!!」

いきなりの射精され、むせ込んだ。
新人・奈津美さん(15)は精進が足りなかった。
51723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:44 ID:CtkuK4dX
(21/25)

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオーーーーッ!!!」

突然巻き起こったその咆哮に、一気に静まり返る会場内。
それはアンプで増幅されていた為、会場狭しと響き渡った。



健司が放った一連の技は、全て我流の物である。
彼は今まで様々な拳法の門下をくぐり、そして各流派の技と精神を吸収してきた。
それは紙が水を吸うが如くで、恐らく天憮の才といっていいだろう。
そんな彼が行き着いた先が、我流だった。
まだまだ開発途上ではあるものの、編み出した技の幾つかには、
無双の威力を秘めたものも確かに存在している。

その中の一つが、今放っている、この『貫破(つらぬき、はぜる)』だ。
文字通りの威力を持つ技がもたらす、確約された勝利。
健司はそれに向かっているはずと信じていた。
51823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:45 ID:CtkuK4dX
(22/25)

はずなのに、

目の前の満身創痍が、
あり得ない反応速度で、消えた。

満身創痍の脚の筋肉がぶちぶちと爆ぜる音を、健司は確かに聞いた。
恐らくは脳が下す指令に体が耐え切れなかったのか。
勢いで健司は満身創痍の横を通り過ぎてしまった。
慌てて身構え、
振り返るも、
そこには、

ソレが、顎を大きく開き、

ぞ ぶ り

と、

首の肉を、食んだ。
51923 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:47 ID:CtkuK4dX
(23/24)

「あ――――ア」

これは、恐怖。
久しく感じていなかった恐怖。
あと数ミリ、相手が歯を立てれば、自分は死ぬ。
頚動脈が破られて、血が、止まらなくなる。
相手と目が会った。

「ヒッ  ……   !」

違う。アレは人なんかじゃない。
自分を目で射殺すなんて、恐らく人には出来ない。
誰にも負けない自身があった。
そんな自分を。ここまでも。
ならばアレは恐らくは人じゃない。

ナラバ、アレハ、キット、タブン――――――――――――――




「降参すれば、殺さない」

健司の耳に、人の言葉が木霊した。
佐紀は既に己の頭蓋から金糸を引き抜いていた。
52023 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:50 ID:CtkuK4dX
(24/25)

「あっ……」

液晶テレビの安物スピーカーから流れてくる歓声。
勝負が、着いたのだ。
健司の首を掌握したのは、あの加藤佐紀。
新しい人類の王は、加藤佐紀に決定した。
その瞬間が、優菜の瞳に映る。

「そっか。
 サキくんが、王様になったんだね」

優菜が安堵したかのように微笑む。
思えば佐紀に勝ち目があるとは思えなかった。
でも、どんな方法を使ったのか、佐紀は健司の能力に追いつき、そして凌駕した。
再び見た画面には、未だ健在な健司の姿がある。
どうやら佐紀は健司を殺さなかったらしい。

「サキくんは、やっぱり優しいな……」

そう思った瞬間、

「あ」

突然起こった主要動に、堪らず優菜は床にへたり込んだ。
その内股からは、とめどもなくそれは湧き出ていた。
52123 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:53 ID:CtkuK4dX
(25/25)

「おーい、娘ッ子ぉ、どうしたぁー?」

遠目に映る、も囚人の少女の異変に気付いたのか、
その男は少女に大声で呼びかけた。
その声はしわがれ、人生の終わりが近いような色を湛えている。

彼は優菜と同時期にこの地下牢に連れて来られた囚人で、
名を宇佐美権造という。ちなみに82歳である。

彼は勃たない己の息子を勃たすべく、妻(77)とのオーラル行為に望んだが、
終ぞその逸物は勃つことはなかった。
だが彼は諦めず、幾度も幾度も妻に事を強要した。
それがあまりにしつこかった為、しゃぶり疲れた妻が特殊警察に通報したのだという。
それはともかく、

「はっ、はぁっ、はぁんっ……!」

少女は苦しそうに息を切らしている。

「こ、こりゃ、まさか……」

漂ってきた淫臭で、権造は少女の異変が何なのか察知した。

「わ、わしじゃ、駄目だぁ……
 ど、どぉすりゃいいんじゃぁあーーーーーっ!!」

権造は、枯れた声で叫び続けた。
522名無しさん@初回限定:04/03/21 20:54 ID:1JUf0BwI
乙です!ほんとーに乙です!
新人・奈津美さん(15)に笑わせてもらいました。
しかし鎌倉時代には公家さんだったのに、江戸時代には百姓っていったいナニが…。
ともかく続きがすんごい気になりますです。
ムリしない程度に頑張って下され、期待してまっす!
523名無しさん@初回限定:04/03/21 20:57 ID:xKPuKvk5
23氏、乙でつ。
寝取られと燃えですげえドキドキした、相変わらずおもしろかったです。
52423 ◆bxyzd8gFCE :04/03/21 20:57 ID:CtkuK4dX
ごめんなさい。
番号ふり間違えてました・゚・(´Д⊂ヽ・゚・
次はいよいよ佐紀の選択の時です。

名無しの少女ENDか、成瀬優菜ENDか。

どうしよう……決めてない……
525名無しさん@初回限定:04/03/21 21:06 ID:1JUf0BwI
え、そーなの?
個人的には優菜タンがズプズプに寝取られエンドキボンだけど、
無論作者にお任せです。
あー、続きが気になる…。
526名無しさん@初回限定:04/03/21 21:13 ID:xKPuKvk5
あえてスレの趣旨と反するとしても優菜たんが寝取られないEDキボン。
寝取りになるけどそっちの方が興奮する…。
527名無しさん@初回限定:04/03/21 22:00 ID:9Sk1L0Gh
宇佐美権造(82)に期待しておこう
528名無しさん@初回限定:04/03/22 11:46 ID:rwKTcQ5F
ここまで来て決められないという時点でもう
寝取られないENDでもいいんじゃないかという気もする。
俺はガッツンガッツンに寝取られてほしかった派だけど……
529名無しさん@初回限定:04/03/22 11:53 ID:RVQ/p1I5
寝取られが無いのなら他でやれ
530名無しさん@初回限定:04/03/22 13:19 ID:EYL1zVd1
寝取られ:3票
寝取られない:2票

俺は寝取られにイピョーウ
531名無しさん@初回限定:04/03/22 19:01 ID:I9DfgshQ
23さんの労力が増えるのでなんですが、寝取られ有/無
両ルート書いてもらえたら双方納得で無問題かも。マルチ
エンドな感じで。ちなみに流れとしては寝取られ無END⇒
ガッツンガッツン寝取られEND希望ですがいかがでしょうか?
532名無しさん@初回限定:04/03/23 03:24 ID:rQ6O7psM
>>529にハゲドウなんだが…
533名無しさん@初回限定:04/03/23 04:18 ID:5TseRvYP
ここは寝取られスレだ!!!
でも、幸せになって欲しい自分がいる俺は寝取らリスト失格ですか(´;ω;`)?
534名無しさん@初回限定:04/03/23 12:18 ID:qietPIk8
何を言う。
その気持ちがあるから寝取られて興奮するんじゃないか。
535名無しさん@初回限定:04/03/23 12:31 ID:GcnNWD/G
23氏の思惑は…

1・優菜(寝取られ)END
2・名無し(寝取られ)END
3・ハーレム(両方寝取られ)END

と見た
536名無しさん@初回限定:04/03/23 15:48 ID:SJd9f48i
>>534
Σ(゚Д゚ ソウダッタノカ…
537名無しさん@初回限定:04/03/24 00:11 ID:4q1236Qp
>>534
それはつまり>>533はサキクン萌えだということから
サキクンを寝取られてこそ興奮するという意味でつか?
538名無しさん@初回限定:04/03/24 16:00 ID:WCQ5pSXn
第二夜スレ603タン続きマダー?
603タンのが俺的一番なんだが。
539名無しさん@初回限定:04/03/24 19:42 ID:S+fOhit1
>>538
オワタんだよ・・・
540Fateに寝取られてた603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/24 23:09 ID:K6sO1Pzd
すいません。今までFateやってました。

SSの続きは、あんまし進んでません。(現在執筆中)
取りあえず、Fateはコンプした(温泉まで行った)ので、今後はSSに力入れられそうです。

多分・・・・・・・・大丈夫・・・・・・・な筈・・・・・・・・・です。
541名無しさん@初回限定:04/03/25 01:37 ID:T4Yhv3EX
>>540
気長に待ってますよ
542名無しさん@初回限定:04/03/25 04:55 ID:JQGFp1S9
603氏復活。

そして
先輩がサッカー部をやめて突然弓道部へ。
という衝撃の展開が。

んなわけねぇ。

543538:04/03/25 05:33 ID:nW+ZsrVE
よかった。もうオワタのかと
期待して待っときます。がんがれ!
544名無しさん@初回限定:04/03/25 08:16 ID:QuvHohYP
>>542
先輩がU-19に選出。
カレンロバートを押しのけて、平山と夢のツートップ。
545Fateは終了した第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/25 23:33 ID:gF+HJ7hY
ちょいと思った。


23氏の描くの佐紀タンと健司クンんが、Fateの士郎とアーチャーとにダブっているな、と。

どっちがどっち?と言われると、
佐紀=士郎
健司=アーチャー
てな感じ。









いや、だって・・・・・・『ぞ ぶ り と』 なんて書かれると、ね・・・・・・。





他意はございません。お気を悪くされましたら、お詫び申し上げます。
嗚呼、重度の月厨になっとるわ、俺。
546誘導:04/03/25 23:44 ID:ozjVCjyy
547名無しさん@初回限定:04/03/26 12:31 ID:1OMWM5rf
23氏はライノベ風寝取られを狙ってるんだろうな。
とりあえず優菜には健司を選んでホシイ
54823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/27 00:11 ID:5u6oTBb8
皆様、貴重なご意見どうもありがとうございました。
明日仕事がはけたら、本能が赴くままに書きます。
549名無しさん@初回限定:04/03/27 10:54 ID:zp8cOxOI
非常に楽しみにしてるワケで。
550名無しさん@初回限定:04/03/27 14:57 ID:LAXAvwxF
本能(・∀・)イイ!!
551名無しさん@初回限定:04/03/28 00:15 ID:Hg2BRE0d
603氏に期待.........
55223 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:04 ID:zeV+IJtD
長くなりそうなので、分割してうp。
今は(14/14)です。
55323 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:06 ID:zeV+IJtD
(1)

「何だ。何があった」
「何だ。何があった」

権造の叫びを聞きつけた武装警官二人が地下牢に下りてきた。

「あ、あの娘ッ子、あ、あ、アレじゃアレ!
 は、早くせんと!」

警官二人は向かい合い、しばらく話し合った後、権造の方に向き直った。
が、権造はすぐに、

(ふるふるふる)

力無く首を横に振った。
自分では駄目なのだ、と。

「よし、わかった」
「よし、わかった」

納得したのか、武装警官二人はへたり込む優菜の肩を取り、地下牢を去っていった。
55423 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:07 ID:zeV+IJtD
(2/14)

闘技場内は、先程までの歓声などは見る影も無く、
ただひたすらに、
荘厳。
静謐。
そこには凛としたモノが敷き詰められていた。
50,000人の観衆が皆一様に頭を垂れ、跪き、自分達の新しい王の誕生に感じ入っている絵。
まるでそれは、夥しい数の彫像の群れの様だった。

「く……これが、「王」のカリスマ性ってやつか」

本来ならソブネリアとしての枷から外れている存在、
ベクター透過体である段健司も、

「何だか……私まで、圧倒される……っ?」

数々の宝石が散りばめられた台座に立つ、加藤佐紀の姿に魅入っていた。
55523 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:09 ID:zeV+IJtD
(3/14)

「おお新王・加藤佐紀様。
 この度は幾たのご苦難を乗り越えてのご戴冠、まことに……」

跪いては、祝辞。
元白い家のボスだった男は、専属の通訳が編んだ台詞を述べて去って行った。

「えー……次は、石油保有世界第一位地区元代表……」

いいかげん佐紀は我慢の限界に達していた。
元々なりたくてなった王じゃない。
ただ、優菜を助けるために。
それだけのために、自分は戦ったのだ。
性(行為)の開放。
志は無いこともない。
でも、今は。

(一刻も早く、優菜に会いたい!)



「サキ・カトー。コヨイハマイドアリガトゴザマース!!」

両手で、握りこむような握手された。
口髭の男はガハガハと笑っている。
祝辞はあと30人分残っていた。
55623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:12 ID:zeV+IJtD
(4/14)

その頃、武装警官二人は迷っていた。
両側から抱えている、息も絶え絶えなこの少女の処遇をどうすればいいのかを。
自分達が命じられているのは、性犯罪者の捕縛と監視、実刑。
だが、既にこの少女は犯罪者では無かった。

新王が命じた、受刑者への恩赦。

先程まで牢獄にいた老人・宇佐美権造(82)はうきうきと娑婆に帰って行った。
勿論この少女にもその権利が今はある。
しかし、

「ううっ……あはぁ……きゅ……んんぁあんっ!」

内股を擦り合わせ、襲い来る感覚に必死に抵抗する少女。
恐らくは、普通の人間なら、こんな時どうすればいいかわかっているのだろう。
でも、

「……」
「……」

目を下に向けると、股間には何故か肉製の棒が。
何の為に付いているのかは甚だ疑問だが、それは硬くいきり立っていた。
はっきり言って、動くのにとてつもなく邪魔。

(今度、切り落としてもらうか)
(今度、切り落としてもらうか)

それで任務がスムーズになるのならばと。
武装警官二人はそんな親不孝な事を考えていた。
55723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:14 ID:zeV+IJtD
(5/14)

「あーれーぇ、もっしもしお巡りさん、どうしたんですか〜?」

地下牢を抜け、西棟と東棟を繋ぐ渡り廊下に差し掛かった時、
武装警官二人は一人の男と出会った。

それは見事なスキンヘッドの中年男性。
背は175cmと平均位。その見てくれには年相応の貫禄と贅肉がある。
かなりの酒気を帯びてはいるものの、見たところ怪しい所は無い。
恐らくは、この戦いの観客の一人だろう。
ならばお互い多くを語る必要も無いし、また語る内容も無く、

「医務室へ向かっている」
「医務室へ向かっている」
「あ、そうなんですかー。ん〜〜っ!ご苦労様っ、ディース!」

そんな内容皆無の会話を交わし、武装警官と中年男はすれ違った。
が、すぐに振り返り、

「すまないが、医務室はどこにあるのか」
「すまないが、医務室はどこにあるのか」

大真面目な顔でそんな台詞を放った警官達に対し、

「ヘコーーーーーーーーーー!!」

中年男は漫画の如く派手にずっこけてそれに応えた。
55823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:16 ID:zeV+IJtD
(6/14)

実に3時間にも及ぶ戴冠式を終え、疲弊し切った佐紀は
逃げるようにイチローの部屋へと移動していた。

「や、お疲れ様でした。加藤佐紀。
 ……いや、『黒獣王』と呼ぶべきですか?」

黒獣王。

決勝戦におけるその苛烈な戦いぶりから、圧倒的得票数で選ばれた佐紀の二つ名である。
これから佐紀は、本名よりその名で呼ばれることが多くなるのであろうが……

「そんな事はどうでもいいっ!」

佐紀は頭に乗せられた銀色の王冠を床に叩き付けた。

「おいっ!約束通り勝ったぞ!
 優菜を、優菜を開放しろっ!!」
「そうですね。
 戴冠式の場で、君は真っ先に犯罪者への恩赦を命じましたからね」

そう言ってイチローは懐から携帯電話を取り出し、いじり出した。
55923 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:17 ID:zeV+IJtD
(7/14)

「あーどれどれ、えーっと。ほほぅ……」

しばし液晶画面に見入るイチロー。
地下牢に設置されたサーモセンサーに熱源反応は無かった。

「ご安心ください。
 地下牢には既に誰も残っていません」
「じゃ、じゃあ」
「もうみんな家に帰ってるんじゃないですかね?」
「…………っ!」

……遂に。
遂に佐紀は念願を叶えた。
優菜を助ける為に加わったこの戦い。
幾多の死線を超え、生きた屍を積み上げ、ようやく事ここに至ったのだ。
思えばそれは、あまりにも……

「ふむ、そうなのか。
 ならさっそく会いに行くとしよう」

佐紀に感慨に耽る暇を与えず、
傍らの段健司がそう呟いた。
56023 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:19 ID:zeV+IJtD
(8/14)

「……何あんた」
「む、そう仰られても」

そう言えばさも当然のようにこの場にいる段健司に、佐紀はあからさまに不審そうな視線を向けた。

何故か健司は敬語丁寧語混じりな口調になっている。
恐らくは、佐紀が纏わされた「王」としての威厳に引きずられているのか、
ベクター透過体の身であるとはいえ、遺伝子に刻まれた本能には抗え切れない様子だった。

「何故ここにいる?」
「いや、成瀬優菜の状況を知りたかっただけのこと。
 知ったから、会いに行こうかと思いまして」

それでも、臆することなく健司はしれっと答えを返す。

「なっ……何で、何であんたが優菜に会いたがるんだっ!」

当然狼狽する佐紀に、健司はさも不思議そうな顔をして、

「言ったはず。
 『ここの地下牢に、俺の子を産んでくれそうな人が捕らえられている』――――と」

絶望的な、事実を告げた。
56123 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:21 ID:zeV+IJtD
(9/14)

「貴様ァッ!」

だん! と。

「何を寝言ほざいてやがんだ!!」

佐紀は健司を思い切り壁に叩き付け、首根を掴み詰め寄った。
健司はその暴行に別段抵抗反撃もせず、

「彼女を責めないでやって欲しい。
 私も彼女も、君が既に死んだものと思い込んでいたのだから」

激昂する佐紀に対して、健司は冷静そのものだった。
口元には自信から来るのか、薄く笑みすら浮かべている。

「彼女は実にいい。
 肌が合う、とでも言うのか。
 正にそんな感じの女ですな」

言葉が穿つ、その意味。
まさか、
まさかこの男は。
目の前のこの男は……!
56223 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:25 ID:zeV+IJtD
(10/14)

「ヤったのか?」

ストレートに訊く。

「……」

涼やかに健司は受け流す。

「ヤったのかよ!?ヤッたのかっつってんだろうが!?」
「あまり熱くなりなさるな黒獣王。
 人類の頂点に立つ者がそんな言葉遣いでどうする」

健司に冷静に諌められ、佐紀はぎりりと歯噛みをした。
何で。
何で、こんな、いきなりの介入者に。
今まで自分達に何の関わりも無かった男が。

(俺は一年半も、優菜を想い続けてきたんだぞ!?)

そのこと。片思いを重ねてきた年輪。
それが何の価値も意味もも持たないことは、佐紀も心の奥底ではわかっていたはず。
しかし、だがしかし。

「納得できる訳がないだろうがッ!!」

だから、叫ぶ。
毒を吐いて、現実が変わることも無いのだろうけども。
それでも、佐紀は不恰好に叫び続けた。
56323 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:27 ID:zeV+IJtD
(11/14)

「ハァ……
 残念ながら、まだ事には至っていない。
 だから少し落ち着きなさいな」

叫び疲れてうな垂れる佐紀に、健司はぼそり、とその事を告げた。
黙っていれば佐紀を出し抜けたのかも知れないが、
公明正大を良しとする健司の性格がそれを許さなかった。
それに、


あの時、最後の戦いに赴く前に、健司が優菜から貰ったプロポーズの返答。


      ――――きっと、勝ってください――――


その言外の意味。
溢れる絶対の自信。
だから、

「では直接会って確かめようではないですか。
 あなたと、私。
 優菜がどちらを選ぶのかを」

王たる佐紀は跪きながら健司を睨み仰ぎ、
下僕たるべき健司は今や佐紀を涼やかに見下ろしている。

そんな構図だった。
56423 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:31 ID:zeV+IJtD
(12/14)

「お取り込み中、水を差すようですが」

火花を散らし合う男二人に突如割って入る異形が一人。
当然ながらそれは、この部屋の主たる異星人・イチローだ。
彼は既に老紳士の義体を脱ぎ捨て、『灰鱈』の姿に戻っていた。

「何だ!邪魔するな!!」
「ほう、TVで見たのと同じだな。木曜のUFO特集も眉唾では無かったということか」

男二人の反応はバラバラだった。
それはともかく、

「優菜さんのこともいいですが、黒獣王。そろそろ電池が限界に達しますよ?」
「……え?」

言われてしばし思考を巡らせる佐紀。
その結果はすぐに、

「ま、まさか」

思い当たることが、間違いなくあった。

「そうです。
 あの少女を鎧っているベクタープレートはそろそろ動かなくなる。
 急いで助けに行ったほうがいいのではないですか?」
56523 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:34 ID:zeV+IJtD
(13/14)

ベクターに侵され、人間の尊厳を失ってしまった少女がいる。
それは、一時ながら佐紀と心を通わせた存在。


使用が限定しれている「ヲ型ベクター」に侵されたモノは、すべからく畜生でなくてはならない。


そんな大宇宙のルールに則り、名も知らぬ少女は畜生が住まう「動物園」に放り込まれた。
そこに蠢くのは理性も知性も失ったオスの群れ。
その数は50匹。
イチローとの約束で今はあの金の板……ベクタープレートとやらに守られてはいるが、
少女は押し寄せるオスどもの姿に怯えて続けているはず。
例えるなら、篭城する小屋に殺到するゾンビの群れを窓越しに見る心境か。

「そ、それは……」

いきなり投げつけられた選択。
佐紀はちらりと健司の方を見やった。
しかし、

「私は今から真っ直ぐに優菜の所に赴き、
 そしてその場で契りを交わそうかと考えておりますが、何か?」
56623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:37 ID:zeV+IJtD
(14/14)

健司には、佐紀を待つ気は全く無かった。
事情を知らない彼からすれば、
佐紀は二股がけをしているようにしか見えていない。
そんな相手に、そこまで容赦する義理は皆無。
冷たく佐紀を見返す瞳がそう語っていた。

「今から優菜さんの家に向かうか、
 ベクタープレートが停止する前にあの少女を「動物園」から救い出すか、
 この状況から考えると……」

イチローの、耳障りな声が、すごく遠くに。

「――――う、あ――――」

「……2分の1です。
 あなたも王なら、選びなさい」
56723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 01:38 ID:zeV+IJtD
続きは明日にうpいたします。
もう少しお付き合いくださるよう、宜しく威お願いします。
568名無しさん@初回限定:04/03/28 01:51 ID:Lf8ERB+7
キタ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━(  ゚)━(   )━(゚  )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━!!!
乙です、いよいよ決断の時ですな〜。
明日というか今夜楽しみにしてます。
どっちを選ぶのか〜。
569名無しさん@初回限定:04/03/28 01:54 ID:gJymtiWZ
23氏乙です。
二者択一か…
個人的には名無しの少女を助けて欲しいなあ。
寝取られ云々の前にサキクンには真人間な判断をしてほしいし。
寝取られてもそれならヘタレじゃないよ。
570名無しさん@初回限定:04/03/28 03:03 ID:Jngo4v/R
569に激しく同感なのだが、
なんか健司突然ヤな奴になりましたな。
サキが二股かけしてると思ってるのは別にしても、
女には優しく、男は自分が優位に立ったときはやさしくする
タイプだったんじゃなかろか。
571名無しさん@初回限定:04/03/28 03:44 ID:vlhtb/IL
名無し少女助けて、事に及んでいる最中の優菜&健司を虐殺してほしい・・・
572名無しさん@初回限定:04/03/28 08:03 ID:dQTx+iTw
健司は戦闘中、頭を打ってしまったのだろうか?(ワラ
とりあえず、氏ね。
573名無しさん@初回限定:04/03/28 12:09 ID:69MZYGmz
健司って思い返してみると
ただでさえインフレ気味に強いくせに
選考レース中も穴倉から戦闘の時だけ出張で戦闘に行くような
優遇された環境だったんだよなぁ
574名無しさん@初回限定:04/03/28 12:39 ID:S0KVkSCl
とりあえず今晩は寝取られ映画のパールハーバー見ながら
続きをよませてもらうでつ。
57523 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 23:27 ID:aSTLPC0q
次回でラストです。
今宵は(20/20)
長々とスマソ……
57623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 23:30 ID:aSTLPC0q
(1/20)

『管轄外だから、君には協力を依頼する』

と、武装警官二人から少女を託されたスキンヘッドの中年男は、
迷った末に、警察署内の医務室にたどり着いた。
医務室に人の気配は無い。
どうやら皆戴冠式に出張っているようだった。

「はー……
 全く、何で俺がこんなことせにゃならんのよ」

ぶつくさ言いつつも、男……名を富岡という、は戸棚からタオルを取り出し、
備え付けの水道できつく絞った。

「ハッ、ハッ、ハッ……!」

額に濡れタオルを当てても、少女は苦しげだった。
だが富岡も目的は戴冠式の観覧でこの場に来ている以上、
あまりここで時間を潰したくはなかった。

早く王の威を受け、静謐な気分に浸りたい。
王のカリスマ性を感じて震えたい。
なのにこの面倒事。

「ったく。すっかり酔いが覚めちまったよ」
57723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 23:37 ID:aSTLPC0q
(2/20)

だから、

「取りあえず、これで看病したってことにすっか」

と、己に言い聞かせてさっさと退散しようと試みるも、

「う……あ、れ……ここは……」

ドアを開けようとした丁度その時、少女が意識を取り戻してしまった。

(あっちゃー……
 ……でも、ここで放っとくのも後味悪いよなァ……)

観念して富岡は少女の方に向き直る。

(もう少し付き合ってやるか)

そう思い、富岡は少女に笑顔を向け、声をかけてみた。

「お嬢ちゃん大丈夫かい?」

「あ、あれ? ほ、保健室……?」

「違う違う、警察署内の医務室だ。
 何か具合悪そうだったけど、気分どうよ?」
57823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 23:41 ID:aSTLPC0q
(3)

きょろきょろと見渡す。
白い部屋に消毒液の臭い。

(……やっぱり保健室?)

少女はまだ状況が掴めていなかった。
が、目の前の見知らぬ男に話しかけられて、見つめられて、

「――――ア!!」

再び、苦しみ始めた。

「お、おいおい!か、勘弁してくれ……」

少女のいきなりの変化に驚いた富岡が慌てて枕元に駆け寄る。
そこでようやく彼はそのことに気が付いた。

「お嬢ちゃん……あんた」

酒が抜けた富岡の鼻腔を突き抜ける、雌の淫臭。

「発情期が、来てるのか」

富岡の唾を飲み込む音が、しんと静まり返った医務室に響き渡った。
57923 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 23:43 ID:aSTLPC0q
(4/20)

皆TVに見入っているのか、人気のまばらな街を、

「ハァッ……ハァッ……!」
「ほっ、ほっ、ほっ」

二人の男が疾走していた。

一人は元・王候補者の段健司。
彼は戦いには負けたものの、ベクターで還されていないため未だ正気を保ったままだった。
その横に並ぶのは、今や人類のボスたる黒獣王・加藤佐紀。
武器たる漆黒のコートを脱ぎもせず、ただ無心に駆け続けている。
たまに道行く人が佐紀の姿を見てすぐさまひれ伏すも、

(無視!)

本当にどうでもいい事だったので、佐紀は彼らに会釈もせず通り過ぎ続けた。
競い合うように走る二人が目指すのは、お互いに最愛の人が帰っているであろう場所。
すなわち、成瀬優菜の自宅だった。

「いいのか?
 動物園の少女とやらを後回しにして」

今まで蓄積してきた運動量が違うのか、全力疾走でも息を切らしていない健司に対して、

「……うる……さいっ! ゴチャゴチャと、話しかけるな……!」

息も絶え絶えに佐紀は罵声を浴びせた。
58023 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 23:46 ID:aSTLPC0q
(5/20)

悩んだ末、佐紀は「まず」優菜の自宅に向かうことを選んだ。
全力疾走で優菜の元に赴き、その後でとんぼ帰りに警察署内へ。
その後イチローの宇宙船で「動物園」に向かい、少女を救い出す。

虫のいい話だったが、

『全速力でギリギリの時間ですね。
 面白い。やってみなさいな』

何故かイチローはその条件を飲んでくれたのだった。

「私は彼女が自分を選ぶと確信している」
「お、俺なんか……結婚を申し込んだんだぞ……!」
「ほぅ。で、返事は?」
「そ、それは……時間をくれ、と……」
「そうかそうか。それはそれは」
「くっ……言いたいことがあるなら……はっきりと、言えよ!」
「いやいや、あの時はあなたの存命を知らなかったとはいえ」
「……ぉい!!」
「あまりがなると帰りがつらくなるぞ」
「……コノヤロウ……」
「それにしても、二人ともよろしくしようとお考えになるとは。
 英雄、色を好むと言う所か」
「あ、あの……ハッ……子とは、そんな、関係……じゃ……ハッ……」
「言葉に詰まった」
「う、うるさい……い、息が切れてる、らけら……!」

そうこうしている内に、いつしか見慣れた景色が。
佐紀の眼に、優菜の自宅が飛び込んできた。
58123 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 23:49 ID:aSTLPC0q
(6/20)

滑り込むように玄関になだれ込み、チャイムを鳴らす。
やがて、ドアの向こうから足音が聞こえてきた。

「は〜い、どなたですか?」

出てきたのは一度会ったっきりの、優菜の母親だった。
優菜の母は年の割りには以上に若作りだ。
崩れを見せない裸体に巻きつけたエプロンが妙に扇情的だった。

「あらあら加藤くん。……じゃなくて黒獣王さまね。
 この度はお見事な戦いぶりで、私も主人も当てられちゃって、ついさっきまで……」
「おばさん、そんなことより!優……成瀬さんはいますか?」
「優菜?」

娘の名を聞き、優菜の母はしばし考え、

「あんな子、もう家の娘ではありません。
 何をしでかしたのか、警察のごやっかいになるなんて。
 ホント、黒獣王様の友達になんて勿体無さすぎて……」
「か、帰ってないんですか?」
「さっき電話があって 具合が悪くなったので警察署の医務室で治療中だって」

それを聞くや否や、先程とは比較にならない速度で走り出す健司。

「あ、くそ! 
 お、おばさん、これで失礼します!」

慌てて佐紀も、後を追った。
58223 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 23:53 ID:aSTLPC0q
(7/20)

シーツを剥ぎ取り、汗のしたたる少女の肌を見やる。

「むぉ……」

熱にほだされ、赤みをさした柔肌に二つの硬くなった乳首がアクセントを添える。
匂い立つ少女の性の芳香が、富岡の思考を麻痺させていく。

「な、なあお嬢ちゃん。苦しいだろう?」
「は……は、い……」
「あんたは今、発情している。発情期が来ているんだ。
 何、心配いらない。女の子なら一度は通る道なんだよ。わかるね?」
「は、はい……知ってますぅ……が、学校で……」
「そうか、習ったか。もうそんな年齢なんだねぇ」

うわ言ように自分の問いかけに素直に答える少女。
富岡の愚息が、むくむくと鎌首をもたげ始めた。

「ね、だから、ね……」

ハァハァと息を切らせながら、富岡は優菜の肌に指を這わせ始めた。

「あ、ぃ、いやっ……」
「だ、駄目だよお嬢ちゃん。逃げちゃ駄目」

当然身をよじって体をかわす少女を、富岡は軽く諭した。

「今しとかないと、次のがいつ来るかわからないんだよ?」
58323 ◆bxyzd8gFCE :04/03/28 23:57 ID:aSTLPC0q
(8/20)

「だ、だってだって……私、そんな、おじさんの事、知らないのに……
 それ、に……っ、好きな人とじゃなきゃ……そんなコト……!」
「若いうちはそうだよね。好きな人としたいよね。
 でも、発情期のこと、学校でならったよね?」

ねっとりと畳みかける富岡の稚拙な誘惑。
鼻先にある中年の脂ぎった肌からのむせ返るような過齢臭。
それらに呼応するかのように、少女の体はいよいよもって激しく変調し始める。
限界だった。

「あうッ!!ああああ!!ふぐぅん!!」
「ねぇ、苦しいでしょ?どうにかしたいでしょ?切ないでしょ?」

富岡は素早くベッドにまたがり、丁度少女の鼻先にソレが来る位置に据えた。

「だから、さ」
「ぅぁあ……ぃ嫌ァ……」

少女の目の前には、磯の岩肌のようにゴツゴツとした男性器が、
まるで得物を狙うかのように揺れていた。
鼻を刺す性臭が、少女の雌の本能を隆起させていく。

「入れとこっか、コレ」

ぱくぱくと、金魚のように口をしばたかせる少女。
上唇と下唇とを、淡い唾液の線が繋げていた。
58423 ◆bxyzd8gFCE :04/03/29 00:01 ID:sTspeTTy
(9/20)

「くそ、何だって……こんな……!」

悪態をつきながら、佐紀は今来た道を逆走していた。
電車もバスも、今日に限っては走っていない。
王誕生を祝って、皆が飲み、食い、歌って騒いでいるのだ。
ある意味、自身のせいでもあった。

「……ほっ……ほっ……!」

はるか先を行く健司は、もはや無駄口を叩いたりはして来ない。
ただ一心に警察署を目指して全力疾走している。

「お……」

追いかける佐紀の眼に、違法駐車の自転車が止まった。
鍵は勿論かかっているが、

「だあっ!」

一瞬、罪悪感がよぎりはしたが、
一蹴りで佐紀はそれを粉砕した。
全力で漕ぎ、これでやっと健司と同等の速度。
競うように並走しながら、二人は警察署に辿りついた。
58523 ◆bxyzd8gFCE :04/03/29 00:03 ID:sTspeTTy
(10/20)

警察署前に盗んだ自転車を乗り捨て、佐紀は急ぎロビーの案内図を見やった。

「医務室……医務室……畜生、どこだよ!」

焦燥が佐紀を包む。
そこへ、

「西棟の3階だ」

捨て台詞のように残し、健司が脇を駆け抜けて行った。


既に笑ってしまっている両脚に鞭を打ち、階段を駆け上がる。
半分昇るごとにぐるりと向きを変える階段の構造が恨めしい。
やっとのことで2階。
昔、昼休みに購買へダッシュする時はこんなことなかったのに。
今日は限界以上の運動をし過ぎたからか、そのせいなのか。
ふくらはぎの筋肉が、裏返る機会を虎視眈々と狙っている。
もう少し。
もう少しだから。
なだめすかして駆け上がり、

「あgいnhうえidfoごkjif!」

丁度3階についた時点で、脚が吊った。
58623 ◆bxyzd8gFCE :04/03/29 00:06 ID:sTspeTTy
(11/20)

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

足の指をつかみ、無理矢理に引っ張る。
ふくらはぎを叩き、元の位置に収めようと足掻く。
永遠に続くかのような地獄の時間。
それでも床を転げながら、佐紀はその場所を目指した。

「くそ、くそクソくそ、あぎがぁぁああ!」

無茶苦茶に足を殴り倒し、ようやくソレが元の鞘に納まった。
よろめきながら、身を起こす。

「ア、アイツは……?」

きょろきょろと見回す。
いた。
ある一室の前で、健司はいた。
おそらくあそこが医務室だろう。
健司はドアを開けもせず立ち止まっていた。
照れているのだろうか。
それとも敗者だからと言い寄る順番を佐紀に譲るというのだろうか。
足を庇いながら近づき、佐紀は医務室のドアを掴んだ。

「何してるんだ。早く開けろって……!」

健司を押しのけ、佐紀は勢いよくドアを開けた。
58723 ◆bxyzd8gFCE :04/03/29 00:07 ID:sTspeTTy
(12/20)


「あれ?」

その先で、


「ふああぁぁぁあぁあああぁああん!」
「お嬢ちゃん、良かったね良かったね。これで、お、女になれた、ねっ!」


どこかの誰かのソレが、

「え  何  」

優菜の鞘に、


「  これ …… ?  」


深々と納まっていた。
58823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/29 00:11 ID:sTspeTTy
(13/20)

果たして、一体ここは何処なのだろうか。
佐紀達は部屋を間違えたのだろうか。


「っく、アっ、く――――あっ!」

見知らぬ誰かの逸物に、深々と背面座位で優菜は貫かれている。

「ああ、お嬢ちゃんの中は、ぐにょぐにょしてて、どんなオナホールよりいいねぇ……」

背中から優菜の両の乳房をもみしだきながら、中年男は優菜の髪に顔を埋めていた。
でっぷりと贅肉にまみれた肉体から、およそ似つかわしくない鋭い突き込みが繰り出される。
そこの筋肉のみ特化しているのか、中年男は容赦なく破瓜したての優菜の性器を擦り上げ続けていた。

「いぎっ、そ、そこ、痛っ……!」
「ご、ごめん。
 女の子とするの、初めてだから、よくわからなくて……………………あ、もう一回出すからね」

びくんびくん、と。
中年男の腰が小刻みに揺れる。
優菜の了解も取らぬ間に、中年男は本日2回目(であろう)吐精を完了した。
58923 ◆bxyzd8gFCE :04/03/29 00:15 ID:sTspeTTy
(14/20)

「――やれやれ」

その光景を目にし、

「間に合わなかったか――」

健司は力無くその場に崩れ落ちた。

「間、に、合わなかった、って、ナニ」

カクカクとした動きで質問してくる佐紀に対し、

「この世界で一月近くもシラフで過ごしてきた割には不勉強だな。
 優菜の発情期に、あなたと私が間に合わなかったと言っている」

健司の話す内容はこうだった。
雄雌の発情期がずれているソブネリアという種。
雄の発情期は引っ切り無しに。
対する雌のそれは不定期で、一生に1〜2回程度だという。
その為雌は発情期の間に子を成さないと、下手すれば二度と受精できないかもしれない。

故にソブネリアは群れ単位で生活をする。

――群れならば、夫が留守の際に妻が発情しても、
   誰か他の雄が受精させてくれるだろうから――

「愛する人と子を成せる夫婦は、かなり稀だそうだ。この何かといそがしいご時世ではな」
「そ……そん、な……」
59023 ◆bxyzd8gFCE :04/03/29 00:18 ID:sTspeTTy
(15/20)

再び佐紀は眼前の光景を見やる。
何時の間にか、優菜は後背位で中年男に貫かれていた。
シーツをぎゅっと掴み、枕に顔を埋め、最早声にならない悲鳴で優菜は喘いでいる。

「ウほッ、う、ウ、ウほッ、う、ウ」

先程から中年男は妙なリズムで腰を振っている。
その声は何故かゴリラを連想させた。

「ひん、ひぎん、ヒィんっ…………!」

優菜が両足をぴんと張り、その所為で中年男の腰が持ち上がった。

「あ、ちょ、お嬢ちゃ、そんなことしたら……!」
「ぅうあああん……んぁああ……アア……ぁア…ああぅ……」

足を吊らせそうな位張ったまま、優菜の腰がびくびくとのたうつ。
恐らく達してしまったのだろう。

「駄目駄目、ラメェ〜〜〜〜!」

中年男は女のような甲高い声を上げながら、本日4回目の精を、優菜の膣内に放った。
59123 ◆bxyzd8gFCE :04/03/29 00:22 ID:sTspeTTy
(16/20)

「で、あなたは受け入れることができるのか?」
「え……」

呆然とする佐紀に、健司が唐突に質問してきた。

「この事実、この現実。それでも彼女を……優菜を受け入れることができるのか?」

そのことは。
すなわち、
優菜とともに、
目の前のこの中年男がたった今孕ませた子供を、
育てていくということ。

果たして自分に出来るのだろうか。
そこまで割り切ることが出来るのだろうか。
連れ子とかだったら別に問題無いことなのかも知れない。
だが、しかし。
今まさに、作られようとしている命、
目の前の中年男にとっては小便程度の重みしかない射精によってつくられる命、
それを慈しみ、愛し、育てていくということ。
それを、
自分は、
自信を持って、
言葉にして、覚悟とともに……
59223 ◆bxyzd8gFCE :04/03/29 00:24 ID:sTspeTTy
(17/20)

「出来、る」

捻れ弾け飛ぼうとする心を押さえつけ、無理を通し、我を押さえつけ、佐紀は首を縦に振った。
それでも、
優菜が、自分を愛してくれているなら。
この、目を背けたくなるような光景が、種の当たり前の姿だというのなら。
愛と性は別、想いと行為は別、
佐紀を愛しているという事実と、他の誰かとセックスすることが別だというのなら……!

「そうか……」

ぼそり、と健司は呟き、

「流石は王だ。あなたは、強い心をお持ちだ」

自らの拳を……
正確には、はめられた指輪から伸びる金の糸を、

「私は愛する人が生む、自分の血を継ぐ子供が欲しかった。
 その稀な判例に、なりたかったんだ」

眉間のその位置に叩き込み、

「私には、到底、認められそうにn」

健司は、自ら還っていった。
59323 ◆bxyzd8gFCE :04/03/29 00:29 ID:sTspeTTy
(18/20)

のそのそと、四つんばいで毛繕いをする健司。

「このヘタレ野郎……がっ!」

その尻を蹴り飛ばしたら健司は医務室から出て行った。
佐紀の恋敵は、去ったのだ。

「……優菜」

振り返り見れば、まだ二人は行為を続けていた。
唾棄したくなるような光景。
本来は自分があの位置にいるはずの光景。
恋人同士ならば、自然に至るはずの光景……

今はそれが何と遠いことか。
それこそ呼吸するようにセックスの話題が氾濫していたのが凄く昔のように思える。
今、世界はオーラル行為が日常茶飯事ではあるものの、
その実、直接のセックスに対するモラルは恐ろしく厳しくて。
ある意味、秩序に満ち溢れているのかもしれない。
と、

「あ……あぁっ……ああ……ごめんなさい……ごめんなさぁい……」
「ほ、うほっ……だ、誰に、謝っているのかな?」
「あなたと……出来なくて……ごめんな……ア!」

優菜が嬌声の最中、懺悔していた。
それはすなわち、愛する人がいるそばで発情期に入れなかったことに対して。
その所為で他の誰かに抱かれていることに対して。
59423 ◆bxyzd8gFCE :04/03/29 00:31 ID:sTspeTTy
(19/20)

それでも、佐紀は沸きあがる嫌な感情の全てをねじ伏せた。
悪いのは彼女じゃない。悪いのは彼女じゃない。
イチロー達が悪いのか?恨む気持ちは確かにある。
でも、一番悪いのは、歪んで進化してしまった地球の人類なのかも知れない。
もしくは、全てが偶然の重なり合いで、悪などいないのかも知れない。
だから、この黒い、鬱屈した感情も、全て偶然の産物だから。
だから、ねじ伏せる。

「ほ、だったら俺も同罪だねっ!だったら一緒にあや、おひぃ!……謝ろうか」
「は、はいっ」
「じゃ……お嬢ちゃんから、どうぞ。
 ……あ、――――――――ア、あーあ、また、出たぁー」
「くっ……やぁ……」

もう何回目か分からない中年男の射精をその身に受けながら、

「……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいっ……あなたと、あなたと出来なくて、
 してあげられなくて、あなたとの子供じゃない子を作っていてごめんなさいっっ!!」

優菜はぽろぽろと涙を流しながら懺悔する。






「―――――――――健司さん―――――――――」

その愛する人の名を呼びながら。
59523 ◆bxyzd8gFCE :04/03/29 00:46 ID:sTspeTTy
(20/20)

医務室は強盗に荒らされたかのように滅茶苦茶になっていた。
窓ガラスは割れ、花瓶やタンスの中身は殆どが粉々になり、
照明も半ば落ちかけて明滅している。
ベッドの上には既に優菜と中年男の姿は無く、

代わりに部屋の隅で、全裸の雄と雌が、ソレを見上げ、抱き合って震えていた。


ソレの怒髪天をも貫くが如き形相は、正に黒き獣。
纏った漆黒のコートのあちこちからは、夥しい数の金の糸が生えている。
特殊繊維の中に編み込まれた、ベクターを孕んだ金色の無形ワイヤー。
人間の精神力では操れて1〜2本のそれが、今や全て起動していた。
その能力は様々で、物理的な破壊力を持つ糸もあれば、他人を操ることが出来る糸もある。
今やソレは、その二つ名に相応しい能力をその手にしていた。

「あの子を、助けなきゃ」

震える二匹には理解できない高度な言語で何かを呟き、ソレは去っていった。

それからしばらくして、
怖いモノが去ったことに安心したのか、
ポニーテールの雌と、中年の雄は、再び交尾を始めた。
596名無しさん@初回限定:04/03/29 00:47 ID:K67nc2Iy
23氏、お疲れ様でした...ってはぅぁぁ!?
うわ、健司すらなくどこぞの中年男に...スレ的にはまさに正道ですが
優菜より佐紀クンが可愛そうなこの気持ち...恋?
何はともあれGJ!ごちそうさまでした。次回最終回心待ちにしております。
597名無しさん@初回限定:04/03/29 00:49 ID:qZuf9a5g
ガツンとキタ。
さすが23氏。
心が痛いぜ。
やっぱり、そこで健司の名前を呼んでくれた…。




…でも正直ポカーン。そーキましたか。
598名無しさん@初回限定:04/03/29 00:53 ID:bYDfwnWX
(19/20) のラストの健二さん・・・ってセリフ鳥肌が立った・・・
これはすごい寝とられだ・・・
23氏GJ!!!
599名無しさん@初回限定:04/03/29 00:59 ID:LaYi4TaW
…週初めになんてモノ読ませるですか…

仕事中に反芻して鬱になりそうだ。

そんな内容でもハァハァした自分に更に _| ̄|○

(さすがにチンコたたなかったのは褒めてやりたい…)

600名無しさん@初回限定:04/03/29 01:01 ID:d6+4xWdY
す、すげえ。最狂級の寝取られだ……。
健二、結局なんだったんだろうな。
601名無しさん@初回限定:04/03/29 01:03 ID:LyCrLWkE
_| ̄|○
602名無しさん@初回限定:04/03/29 01:18 ID:TxARuUz1
健司も先輩もかませ犬だったとは…
しかし健司がただのヘタレになっちゃったせいか
サキクンがいい男に見えるなあ
603名無しさん@初回限定:04/03/29 05:32 ID:qZuf9a5g
最後に優菜の言い訳が聞きたかったカモ。
604第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/29 22:23 ID:5cjjJXBt
とうとう、23氏もラス前か。
また、後から来て追い越されちまったなぁ。
しかし、何であんなに沢山、短期間で書けるんだよ。しかも、読み物としてちゃんと面白いし。
ちくせう。ちくせう。どうしたら良いっていうんだよぅ。(´Д⊂)




という訳でもないんですが、23氏のオーラス前の膜間にゲリラupは次のスレから。
605第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/29 22:24 ID:5cjjJXBt
(1/10)
あの日から、俺たちは変わった。

休み時間、昼休み、放課後、時間さえあればいつも一緒、手を繋いだり、肩を抱き寄せたり、一緒にいるとき
はいつもどこかしら肌に触れ合っていた。

傍からみれば、いや 傍からでなくてもものすごいバカップルだ。
クラスの連中からは好奇心半分、やっかみ半分の それは手荒い祝福を受けた。
……まあ、仕方ないだろう。学年どころか、我が校どころか、この地区で1、2を争うほどの美少女とラブラ
ブ、いちゃいちゃの関係になったのだから。

幸せ?満足?
この光景をみて不幸せだと感じ取る人間いるのなら、その人の方がどうかしている。勿論、幸せだとも!
大好きな人と、人目も憚らず触れ合い、いちゃいちゃし合い、この幸せを満喫する。自分自身、こうなるなん
て考えてもいなかった。まったく信じられないほどの変わり様だ。

実は、これで終わりではない。
他人の目の無い所では、俺達はより一層深い愛を求め合った。
それは所を選ばない。ある時は彼女の家、ある時は自分の家、又ある時は……音楽教室の中で。

606第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/29 22:25 ID:5cjjJXBt
(2/10)
ピチャッ……ピチャ……クチュ
足元の辺りで水の滴るような音が聞こえる。
しかも、それは何処となく粘性を…熱を帯びているようで、聞こえてくるだけで男の股間をカチンカチンに固
くさせる効果がある。
事実、俺の物はさっきからずっと大きく、硬く、固まったままだ。
その大きくなった俺の物を何かが包み込み、なお且つ前後に行ったり来たりしている。その物が1往復する毎
に股間に激しい快感が沸き起こり、蓄積されていく。

暖かいような、熱いような、柔らかいような硬いような、ざらざらした、つるっとした 何かが俺の物に纏わ
りつき、敏感な個所を優しく刺激して行く。その度に背骨に電流が走り、股間の付け根に熱い衝動が走っていく。
後何回、この衝撃を味わえばよいのか……
もう、いい加減一気に終わりにして欲しい。……いや、だめだ。ずっとこの状況が続いて欲しい……。

爆発しそうになる感覚を無理矢理押さえる事数度、……その間に俺の股間を包むそれは、動く速度をどんどん
と速めていた。
と同時に 何かが根元を強く締め付け、前後に動き出す。さながらチューブの中身を扱き出すかの様な動きだ。
それが最後の一押しになったのか、股間のさらに奥から何か熱いものが湧き出す感覚が拡がっていく。

「…くっ……はぁっ……いく……よ……」
その言葉に反応したのだろう、今まで前後に激しく動いていたものはゆっくりと動きを止め 同じくして俺の
物に絡み付いていたものは解かれ、俺の物の先端に柔らかくてザラっとしたものがあてがわれ、そっと俺の先
端……放出口の辺り……をなぞっていく。
もう、全ての準備は整った。
付け根の感覚は、竿全体に広がり……俺は熱い感情が具現したものを、思いっきり放出した。


彼女の……遠野景子の口の中に。
607第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/29 22:26 ID:5cjjJXBt
(3/10)
「ん……はぁ………博昭君の……おいしい…」
彼女は恍惚の表情を浮かべ、俺が放出した精液を飲み干していった。
舌と上顎で俺の物を強く挟み込み、まるで搾乳機のように舌を動かして俺のものに残っている精液を搾り出し
ていく……根元に当たった歯がちょっと痛かった。
最後の一滴まで絞り尽くして、彼女は咥えた物を離す。
唇の内側と俺の物の先端の間に一本の糸が引かれ、伸びてゆき、消えていった。
何時からだろうか、彼女に自分の性器を咥えさせ、精液を飲ませるようになったのは。
覚えていない。遠い昔のことだったのだろうか、つい最近の事だっただろうか、俺が要求したのか、彼女から
自発的にしてくれたのか。

「はい、交代。今度は僕の番」
社会の窓から飛び出した一物を仕舞って、軽くキスを交わす。
してもらったら、してあげるのが道理。これも、必ずやるのが定番にになっている。彼女も拒む事は無い。

彼女を教室の角に背中をもたれかからせるように立たせ、スカートを捲り上げる。
白い、眩しく白い布切れが目に飛び込んでくる。見た途端、さっき精を吸われて萎えた筈の俺の物は大きく硬
く腫れ上がった。
捲り上げたスカートに頭を入れ、彼女の両腰を掴んで、彼女の足の付け根を被う白い布に顔を埋めた。
「…ぁ」
彼女の漏らす小さな吐息が俺の理性を削り取る。
鼻先を撫でる柔らかな感触と微かな刺激臭、又一つ理性が剥ぎ取られていく。
鼻先を布の中心にグリグリと押し付け、彼女の柔らかさと、臭いを堪能する。少し、湿り気が増してきた気がした。
608第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/29 22:27 ID:5cjjJXBt
(4/10 )
彼女の臭いと布越しの感覚を堪能した後、その布に手を掛け、下に降ろした。
薄めの黒い繁りと、その奥の縦筋が顔を出す。

なおも下に降ろしていく。
膝の辺りで降ろすのをやめ、彼女の左足を持ち上げて、下着から片足だけ引き抜いた。
剥き出しとなった彼女の股間。右膝に引っ掛かっている彼女の白い布切れ。
この時点で理性は殆ど失われている。本能の趣くままに彼女の股間に顔を埋め、一番敏感な所を舐めあげていく。
そこは既に愛液で溢れ、指でクレバスを左右に開いた途端、ツーっと内腿に流れていった。
内腿の柔らかな感触とすべすべの肌が頬をくすぐり、その感覚が、より一層 俺の物を奮い立たせる。

花芯の辺りを舌で精力的に刺激していく。時には唇でつまんで引っ張り、時には歯で甘噛みしたり……その度
に彼女の膝がガクンと崩れる。かなり感じている様だ。
さっきから、彼女は両手を俺の両耳の後ろにあてがい、がっちりと俺の顔を自分の股間に押し付けている。

「ハァ……アッ……ウッ……クゥ……ンッ」
教室だからと出さないようにしていた筈の声が彼女の口から漏れて来た。
その淫靡な響きに興奮し、より一層花芯を刺激していく。

「アァ……ァ……ハァァァ……」
程なく、大きく息を吐きだすと同時に、両腿で俺の頭を挟み込み、より一層強く俺の顔を股間にこすりつけ、
彼女は 高みに達した。

609第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/29 22:28 ID:5cjjJXBt
(5/10)
力が抜けたのか その場にペタンと座り込んだ彼女、その顔は魂を引き抜かれたような呆けた表情だ。
こちらもしゃがんで、彼女にもう一度キス。その後ギュッと力一杯抱きしめた。
彼女の腕にも力が入っていく。おそらく表情も元に戻っているだろう。
柔らかな彼女の体の感触が俺の腕に、胸に、伝わってくる。
背中では、彼女の手が優しく撫でまわしている。
彼女の性器を目の当たりにし、それを愛撫するのも幸せだが、こう、お互いの体の肉感を感じあえるこの瞬間
と言うのも幸せだ。この感触は俺に安らぎを与えてくれる。
しかし、この安らぎもほんの一瞬。それ以上の幸福を覚えた者にとっては、さらなる幸せを甘受するための一
呼吸にしか過ぎない。
それは彼女も同じだ。一時の抱擁は、彼女の言葉で終わりを告げる。
「ね……して。」
既に俺の股間は痛いほどギンギンに腫れ上がっている。断るなんて考えてもいない。
黙って頷くと、ジッパーを降ろした。
彼女の膝を内側から捲り上げるように抱えると 自分の一物を反対の手で掴み、彼女に秘所にあてがい、一気
に突き上げた。



「んんっ」
ちょっと苦しそうに眉間にたて皺を寄せて 彼女が呻き声を揚げる。
でも、これは苦痛の表情ではない。(最近になって解ったんだが、最初に入り口を通過する瞬間は結構感じるら
しい。)
ゆっくりと、腰を前後に突き動き出す。
「ハァ、ハァ、ハァァ……ン」
彼女は眉間の縦皺はそのまま、目を閉じて 艶めかしい吐息を漏らしている。
耳元で囁かれる吐息は、どんな媚薬も敵わない。
俺の物に伝わる彼女の中の感覚は 快感として蓄積し、彼女の吐息は、それを何倍にも膨れ上がらせていく。
正直、彼女の中で10回も往復すると いつももう限界ギリギリだった。
610第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/29 22:30 ID:5cjjJXBt
(6/10)
それから後は、我慢較べ。
爆発しないよう、処々で休息を入れながら、時に強く 激しく、時に優しく 弱く、出来る限り彼女が気持よく
なるよう、彼女と一緒に絶頂を迎えるよう、彼女の息遣い、表情から彼女の絶頂度合いを探り、それに応じて
腰を調整して動かしていく。職人芸が必要だ。
「ハッ…ハッ…ハッ…アァ……イ……クゥ……」
彼女の息遣いが荒い。漏れる声も艶めかしく変わってきている。そろそろ終わりの時が近い。
それに合わせてこちらも一気呵成に腰を突いていく。景子、イクなら一緒にいこう。
「ハァーーーーーー」
溜息のような喘ぎ声と同時に、俺の物が強く締め付けられた。今まで感じていた快感は一桁上のものに増加し、
竿全体を被う。
と同時に、俺も高みに上り詰め、彼女の中に放出した。


ビュク、ビュク、ビュク……何度かの痙攣の後、自分の物を彼女の中から引き抜く。
彼女の股間からは、白く濁った粘液が泡を立て、床に流れ出た。
ポケットからティッシュを取り出し、彼女の股間を、床に流れ落ち白濁液を拭き取っていく。彼女は恍惚の表
情、、俺のなすがままに受け入れている。

一通り、処置を終えると彼女の肩を抱き寄せてキス。
お互いに舌を絡めあい、吸い合う。あの日までの俺達では考えられなかった、貪りあう激しいディープキスが、
続けられていく。……飽きるまでずっと。








611第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/29 22:31 ID:5cjjJXBt
(7/10)
夕日が落ち掛かる中、乱れた服を調え、そそくさと下校の支度をしていく。お互いに一言も喋らず、目線も合
わす事さえない。
恥ずかしくて、と言うわけではない。
それは、強いて言えば後悔の念だ。

――結局、又彼女と最後までしてしまった。――

こんな筈ではなかった。
勿論、男子たるもの 好きな女の子とエッチをしたいと願う事は何らおかしいことではない。
けれども、それだけではない筈だ。
もっと、お互いに高め合い、支えあい、一緒に(セックス以外の)楽しい思い出を作っていく、それが付き合う
ということだと、精神的な充足感が二人の愛にとって最も重要な事だと思っていた。
いや、今もそう思っている。
なのに 実態は、精神的な満足などあさっての方へ投げ飛ばし、ただひたすら肌が触れ合うことを、交じり合
う事を求め、実行した。
いつも彼女と交わった後、『又 体の繋がりを求めてしまった』事に落ちむ。
いつも、今日こそは最後までいくのはやめようと心に誓った。今日こそは普通に顔を合わせ、普通に話し、お
互いの気持を確認して、普通に帰ろうと思ったのに……。

何故?さっきまであれほど幸せぶりを宣伝していたのに、自身も『幸せだ』と宣言した筈なのに……。
幸せだと言った言葉には嘘は無い。確かに俺は幸せだと感じている……彼女に触れている間だけは。

正直に言おう。幸せを感じる異常に苦しいんだ。
彼女の姿が自分の視界に無い時、彼女の素肌が自分に触れていない時、例え様も無い苦しさに発狂してしまい
そうだった。

612第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/29 22:32 ID:5cjjJXBt
(8/10)
唯一、彼女と肌を合わせている時だけが、この苦しみから開放される時だった。そして、その余韻に浸れる間
は、この苦しみを味わわずに過ごす事ができた。
だから、会うとどうしても求め……人目が無ければ最後まで行ってしまう。

しかし、余韻が消えれば、苦しみは又押し寄せてくる。
繰り返される苦痛……違う。それは時を追うごとに、彼女との逢瀬を繰り返すごとに、酷さを増していた。
それは、酷い怪我に苦しむ患者に打たれた麻薬と同じだ。
苦しみから逃れるために貪り、一時の安寧に身を委ねる。けれども、得られた安寧の代償として、より一層の
苦渋が課せられ、それから逃れるため、より一層求める……酷い悪循環。

何故、それほどまで傷つきながら強く求める?
何故、肌を触れ合えない事にこれほどまで苦痛を感じるのか?
苦痛……?、苦痛ではない。

それは……恐怖。
俺は、怖れていた。

大切な人が自分の目の前からいなくなる恐怖。一度味わった身としては、もう二度と味わいたくない。
彼女がいなくなる事に恐怖し、その恐怖から逃れるため、彼女の温もりを求めた。その温もりだけが自分達を
繋いでおく絆だと感じ、温もりが消えないように求めつづけたんだ。

彼女がいなくなってしまう?……彼女を誰かに奪われるというのか?
一体誰が?……何にそんなに怯えている?

怯えている?……俺が?…………確かに俺は怯えている。たった一枚の写真に怯えている。
かつて彼女が付き合っていた、彼女のはじめての相手、中川淳という男の写真に。

613第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/29 22:33 ID:5cjjJXBt
(9/10)
あの時、彼女は、今は俺だけが好きといってくれた。
俺もそれを信じている……なのに、その後に見た写真に写った元彼に怯え、言葉の証を求めている。信じると
言いながら信じられずに証を求めている。そんな自分が嫌で、自分への嫌悪が自分の苦しみをますます倍加させる。
彼女は?彼女はこんな俺の行動をどう思っているんだろう。
彼女は、これほど自分勝手に愛を求める男にどうして付き合っていられるのだろう?
彼女はこんな俺を優しく包み、求める程に応じて愛を与えてくれているのか?そんな女神様のような人なのか?
違う。
俺だけが求め、彼女だけが与えてきたんじゃない。
お互いに求め合い、与え合ってきたんだ。
彼女だって求めてきたんだ。
彼女だって激しく求め、貪るように愛を奪い取っていったんだ。

彼女にも余裕は見られなかった。
俺と一つになってから、彼女の顔から 落ち着いた 母親のような慈愛にみちた笑顔 といったものが消えた。
どことなく焦っているような表情に変わっていた。
多分、彼女も俺と同じ。俺の後ろに居る(ように見える)誰かの影に怯えているのだろう。

あるはずのない、『伊藤香織』という影に。

馬鹿な話だ。お互いが過去愛したものに決別し、今ある愛に全力を捧げると誓い合ったはずなのに、……それ
なのに、互いの過去の相手の影に心を脅かされ、その苦しさに胸を掻き毟っている。
その苦しみから逃れるために求め合い、肌を寄せ合う……それなのに、近くに寄り添えば寄り添う程、お互い
に傷つけ合ってしまう。まるで互いに鋭いトゲが体中に生えているかのように。


614第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/29 22:34 ID:5cjjJXBt
(10/10)
願っていたのは、こんな事じゃなかった。
何で、こんなになっちまうんだ。
俺は、俺には、この人を愛する能力も、資格も無いっていうのかよ?!!

とにかく、今のままじゃダメだ。このまま行けば、二人ともボロボロになって、最後は別れるしかなくなる。
お互い、相手のことを大切に思うのなら、離れたくないのなら、こんな関係じゃいけないんだ。

動き出した歯車は、当事者の思いとは裏腹に、軋みをたて、あらぬ方へと向かっていた。




615第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/03/29 22:36 ID:5cjjJXBt
本日は此処まで。
次回は・・・・・・・・・・いつになるのか。






なるべく早くうpします。
616名無しさん@初回限定:04/03/29 23:05 ID:ncv0YBQA
今回いいよ
かなりいいよ
617名無しさん@初回限定:04/03/29 23:56 ID:qaiRNyTd
がんばれヒロくん。
ああ、それにしても切ねえ。
景子がもうちょっと包容力のある癒し系だと思っていただけに。
ああ、切ねえ。
61823 ◆bxyzd8gFCE :04/03/30 01:15 ID:RTZsOHTh
奇しくもヒロくんが覗き見た佳織と先輩の情事をなぞってる……
どうなるのか、ワクワク。
619名無しさん@初回限定:04/03/30 01:27 ID:mYGiIgcp
過去の幻影にまで寝取られている二人にハァハァ
620名無しさん@初回限定:04/03/30 15:33 ID:jWjjn8rK
景子の偶像性が無くなってきていい感じだ
やはり生々しい方が萌える
621名無しさん@初回限定:04/03/30 18:15 ID:c9wvQI/E
でもヒロくん生なんだね
622名無しさん@初回限定:04/03/30 20:57 ID:35jeM2xn
景子よりもヒロくん後ろ向き。
シャッキリせえや。
623名無しさん@初回限定:04/03/30 21:21 ID:My7V7TDA
>621
先輩も生。香織タソも拒否らず
624名無しさん@初回限定:04/03/31 02:13 ID:+umy5W5Y
低容量ピルだかミニピルだかを飲んでるのかもしれないし
あるいは意識の底の方で子供が出来るのを望んでるのかもしれないと
妄想を逞しくしちゃってます
625名無しさん@初回限定:04/03/31 03:14 ID:mkmbtfjQ
高校のとき、友達がHの時に、
ほとんどゴムつけてないやつでやってて、
「お前、いつか妊娠するよ」とか、言ってたら
案の定できちゃって、みんなで「パパ」とか
からかってたらマジでへこみ始めたんで、
中絶費カンパしたの思い出した。

高校生で生はイクない!
626名無しさん@初回限定:04/03/31 03:49 ID:l5nr4LAv
うむ。
だが、イクないからするのだ。
627名無しさん@初回限定:04/03/31 06:23 ID:8VrGz8CY
>>625
妄想の上なんだからかたいこと言うなってば
628名無しさん@初回限定:04/04/02 10:24 ID:dyCaJ8hI
オワタ
62923 ◆bxyzd8gFCE :04/04/03 17:06 ID:eQI/bYlR
今晩にでも脱稿できそう。
ラストもお付き合いヨロです。
630名無しさん@初回限定:04/04/03 17:47 ID:7Z0Qivdh
乙カレー。
期待して待って升。
631名無しさん@初回限定:04/04/04 09:42 ID:8XueFC5K
>>603
>しかし、何であんなに沢山、短期間で書けるんだよ。
まー、個人の差だし、マイペースでつよ。
強いて言うなら、単に情景描写だとか行動描写、表現に脂肪的部分が
少なくてすごく直線的な書き方だからからもしれない。

でもスンバラシイものなのでマターリと待っております。
632名無しさん@初回限定:04/04/04 23:20 ID:WVe0GAfA
あれ?
63323 ◆bxyzd8gFCE :04/04/04 23:51 ID:lUCfEWG3
(1/27)

ヒト気の無くなってしまった医務室を後にし、
左右対称造りの警察署内のどこをどう歩いたのだろうか……

「30分の遅刻ですよ」

佐紀はイチローの待つ駐輪場へと辿り着いていた。

「話は付きましたか?」
「……ああ。付いた」

必要も無いのか、イチローは多くを尋ねない。
が、宇宙船はちゃんと用意してくれていた。

「もう、遅いとは思いますが、それでも君は行くのですか?」
「……」

動物園で佐紀の救いを待つ名も無き少女。
少女を守る6枚のベクタープレートの電池は間も無く切れる。
その後は、少女は50人もの飢えたオス共と対峙しなくてはならない。
助ける者は無く、たった1人。
今から駆けつけても、遅れた時間だけ、彼女は……

「出して、くれ」

それでも、佐紀は行くことを選んだ。
もしかしたら、いやせめて、叶わずともせめて、
その前に、その寸前にでも、間に合ってくれれば。
63423 ◆bxyzd8gFCE :04/04/04 23:54 ID:lUCfEWG3
(2/27)

大地を蹴ることも無く、上空から引っ張られるような動きでイチローの船は浮き上がっていく。
その中で佐紀は朝と同じ格好でうずくまっていた。

(優菜。
 俺にはもうかける言葉も見当たらない。言葉も届かない。
 何故なら俺が君を畜生に還してしまったから。
 何故なら俺が耐えられなかったから。
 俺とは違う誰かに抱かれたことは、いい。
 だけれど俺はそんなに時を空けてしまったのだろうか。
 君が、俺の事をを忘れ、他の誰かに走るくらいに。
 それ程君と重ねてきた時間は希薄なものだったのだろうか。
 それとも時間なんて何の意味も持たないのだろうか。
 そして今あの少女を救おうとしている俺は、君と同じ……薄情者なのだろうか)

「ギリギリまでスピードを上げていますが、すみません。これが精一杯です」

頭を上げると、船を運転するイチローの背中が。
そこで佐紀は、かねてよりの疑問を背中越しに投げかけてみた。

「あんたは、何故俺によくしてくれるんだ」
「え?」
63523 ◆bxyzd8gFCE :04/04/04 23:55 ID:lUCfEWG3
(3/27)

それは佐紀の中で燻り続けてきた問いであった。
突如降りかかった理不尽も、時を重ねればある程度は客観視できる。
そうして見れば、イチローが自分に何かしらの肩入れをしていることはよくわかる。

ベクターによる還しが通用しない者どうしの潰し合い。
その中で、イチローは自分にだけ特別すぎる装備を与えた。

各候補者で装備品の違いはあったものの、あのカプセルだけは別格だ。
それに今も、彼は佐紀の為に船を駆ってくれている。
それは少なくともイチローの業務には含まれていない内容だろう。

「君に幾らか賭けていた……というのではいけませんか?」
「あんたが金に興味があるとは思えない」

それはイチローの、あの簡素極まりない部屋が物語っている。
調度品もそれこそ椅子と机のみ。
あとは仕事に使うのであろう、携帯電話があるだけだった。
63623 ◆bxyzd8gFCE :04/04/04 23:56 ID:lUCfEWG3
(4/27)

「……」
「……」

二人は黙り込む。
佐紀はイチローの答えを待っていた。
イチローは己の心中を彷徨っていた。
やがて……

「ホントに、賭けていたんですよ」

ぼそりと、呟くような声で。

「君が、君みたいな境遇の誰かが……」

一瞬の間。
しかし、

「……宇宙ギネスブックに載るかどうかを」
「何だよ、そりゃ……」

どうせ言っても仕方の無いことになるだろうからと。
イチローは言葉を飲み込んだ。
63723 ◆bxyzd8gFCE :04/04/04 23:58 ID:lUCfEWG3
(5/27)

時間にして10分程度。
一定の速度で飛行し、揺れも騒音も微塵にも生じさせずに移動した機体は、
不意に、床だけではなく全体が透過し始めた。

「そろそろですよ」

佐紀が身を起こし、進行方向に広がる景色を見やると、
そこには今朝見たあの動物園が、今は小さな点となって広がっていた。

「あ、あの子は?」
「今、望遠してみます」

そういってイチローは操作盤を操作する。
眼前の景色が少しずつ拡大され、
そこには……

「いな、い?」

少女を降ろした位置に、その姿は見受けられなかった。
63823 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:00 ID:9a6Zftrs
(6/27)

少女がいたはずのサル山の山頂に、その姿は無かった。

「どこだ……?」

少し下にカメラを移動させても、
何匹かのオスが辺りの雑草を食んでいる姿だけしか無い。

ぐるりとカメラを回してもらうも、
何匹かのオスが自身の股間をしごいている姿だけしか無い。

カメラに少し縮小をかけて全体を俯瞰して見るも、
終ぞ少女の姿は見受けられなかった。
63923 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:01 ID:9a6Zftrs
(7/27)

「変ですね。移動することはあっても、いないなどとは」

首を捻るイチロー。
佐紀はまだ少女の姿を追っていた。
そうこうしている間に、船は動物園上空に辿り着き、

「ともかく、降りてみましょう」

程無く地上……サル山の頂に着陸した。



「うおっ! うおっ! うおっ!」
「ひぎ! ひぎ! ひぎぃい!」

突然降って来た巨大物に、何匹かのオスが失禁しながら逃げていく。
船から降りるや否や佐紀は弾けるように飛び出し、少女を探し始めた。

「おーい! おぉーーーーーーい!」

大声で叫ぶ。
園内の何匹かがその声に驚き、ギャーギャーと騒ぎながら逃げていった。
64023 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:03 ID:9a6Zftrs
(8/27)

「……っ……ど、どこにいるんだ!ぉーーーーーーい!!」

時々言葉に詰まりながら、佐紀は叫び続ける。
何故なら彼は知らないから。
呼ぶべき、その名を。
探す少女の名を。

「佐紀だ! 佐紀が来た! 佐紀だよ佐紀!
 覚えてるだろう? 佐紀、佐紀、佐紀サキ佐紀佐紀サキ佐紀だァーーーーーーッ!!」

走り続けながら叫び続ける。
その最中、ふと見上げると、

その先には、サル山を見下ろす全裸の来園者達が。
彼らはまずはサル山頂上に降り立ったイチローのUFOに驚き、
次に我らが王の姿に気付いて、割れんばかりの声援を送ってきた。

「黒獣王さまーーー!」
「そんな所で何をされているのですかーーー!」
「そんな屑共の住処にいると、御身が穢れますよーーー!」

果たして彼らはどう思うだろうか。
自分達の王が、その穢れた存在を探していると知ったら。
64123 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:04 ID:9a6Zftrs
(9/27)

「くそ……ぃない……いない……ょ……」

佐紀の瞳に涙が溢れていく。
もう、彼に残された何かは、たった一つしかないのに。
これまでの道程。
犯してしまった過ち。
その果てが、地球の支配者の地位と最愛の人との別離。
こんなものが欲しかった訳ではないのに。
思っても、もう後の祭り。

「……どうして……どうして……」

それでも後悔は止まらない。
この世界に順応して、馴染めればよかった。
そうすれば、例え契れなくとも、優菜は自分を見てくれていたのに。
思っても、もう後の祭り。

ならば世界よ。
せめて、最後の拠り所だけは、どうか奪わないで。
そんな思いが、今にも挫けそうな佐紀を動かす。

と、その耳に……

「ぃぎ……に……ゃあ……」

一番聞きたかった声が、どこからか、飛び込んできた。
64223 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:06 ID:9a6Zftrs
(10/27)

はっ、となり、辺りを凝視する。
微かに聞こえる、その声。
探し続けていた存在の、それは……泣き声。

「どこだーーーーーーーーー!!!
 どこだぁーーーーーーーーー!!!」

大気をも振るわせる勢いで、叫ぶ。
必ず少女に届けと。
もう泣かなくてもいいのだと。

「……キ……?
 サ………………?
 ……………………キ!…………………サキ……!」

呼んだ。
今、確かに、自分の名を。

「そうだ!佐紀だ!佐紀だよ!!
 どこだ、どこだ!
 もっと、もっと呼んでくれ!佐紀が来たぞ!!」
「にぁ……!!……キ……!!サ……キ……!」

遠い。
少女の声はどこか遠くに。
その声の方へ、走る。
まだ佐紀の足は地についていた。
64323 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:08 ID:9a6Zftrs
(11/27)

近くなっていく、その声。
佐紀を呼ぶ、遠き呼び声。
走り回り、その果てに辿り着けば、そこには、

「ドア……?
 こんな……所に……?」

サル山の一番下に取り付けられた、小さな鉄の扉。
そこは夜、サル共が収容される宿舎だった。

「おーーーーい!!」

佐紀は扉を蹴り開け、中に踊りこんだ。
中には長い廊下が続いている。
時折瞬く蛍光灯が、視界を断続的に遮るも、道は確かに伸びていた。

「おーーーーーーーーーーーーーーーい!!」

力の限りに叫ぶも、今度は何故か声は返ってこない。
焦りと不安が佐紀を蝕んでいく。
それでも佐紀は走る。
まだ佐紀の足は地についていた。
64423 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:09 ID:9a6Zftrs
(12/27)

「うっ!?」

丁度曲がり角に差し掛かった時だった。
鼻をつんざくのは何ともいえない臭い。
が、嗅いだ事の無い臭いではない。
いつだったか、伊集院輝の返り血を浴びた時。
いつだったか、段健司の喉笛に歯を立てた時。
鉄の味と一緒に、
そんな臭いがしたような。



見ると、曲がった先の奥には先程蹴り開けたのと同じ造りの扉が一つ。
それに至る道程に、

ありえない方向に捻れた首。
硬い何かで殴打され続けたかのような、えぐれた傷跡。
方々には、千切れ飛んだ、身体のどこかの部品。

そこには何人もの元・人間の死体が、幾重にも重なっていた。
64523 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:11 ID:9a6Zftrs
(13/27)

吐き気を催す、その凄惨な光景。

その向こうに、きっといるはず。
あの少女が、佐紀を待っているはず。
眼下の惨状を見やる。
物言わぬ肉片となったソレの中には、いつかこの手で還した奴もいる。
でも、それでも。

「……踏み越えて行けってんだろ?」

誰に言ったのか、佐紀はぼそりと呟き、
躊躇無くソレらを踏みしだいて進み始めた。
足元から伝わる感覚を遮断する。

(大丈夫。
 俺の足はまだ地についている。
 挫けていない。
 だから、だからこの手で)

辿り着いたその場所で、佐紀は扉に手を掛けた。
64623 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:16 ID:9a6Zftrs
(14/27)

その部屋は、40畳くらいの広さを持つ大部屋だった。
それでも50匹が寝起きするにはやや手狭だろうか。
一応寝具と思しき毛布はあるものの、それは色んなモノで汚れきっていた。
見渡せば、ここにも死骸が幾つかある。

先程の、何故か返って来なかった少女の声。
ぞわりと、悪寒が走る。
も、

「……ン……」

今、確かに聞こえた。
先程と同じ位の遠い呼び声。
その方向を見れば、何故か死体達は全てその方向に伸びている。

それは、部屋の対角線に向かって。
それは、最も入り口から遠い位置。
時折瞬く数える程しかない蛍光灯が、
視界を断続的に遮るも、
道は確かに伸びていた。
駆け出し、赴く。
その先に。
その暗がりの向こうに。


少女は、いた。
64723 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:20 ID:9a6Zftrs
(15/27)

目に飛び込んできた少女の、その懐かしい姿。

「あ……」

は、見る影も無く、

「ァ……も……キ……」

口に毛布をねじ込まれたその顔には幾つかの殴打の後。
そして幾重もの、白濁の線。

見れば体中にもそれらはあり、まるで画用紙を汚れた絵の具で塗りたくったかのようだった。
それよりも、少女が両手で庇うその先に、

「ハッ、へッ、ハッヘッ、ホ、……おホ!?」


『富岡裕次郎。
 それがアイツの名前。長い上ダサいからってみんなユージって呼んでる』


割り入った少女の足の間で、一匹の下賤が一生懸命に腰を振っていた。


少女を、見やる。
彼女は、佐紀の方だけを見つめていた。
64823 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:22 ID:9a6Zftrs
(16/27)

宿舎へと続く廊下を、異星人・イチローは歩いていた。
彼は何の躊躇も無く、足元の肉塊を踏みしだいて進み行く。

「全く、置いてけぼりなんて酷いですね。
 せっかくここまで送ってあげたというのに」

ぶつくさ言いながらも歩みは止まらず、やがて果てへと辿り着いた。
そこには……


纏った漆黒のコートのあちこちからは、夥しい数の金の糸が生えている。
特殊繊維の中に編み込まれた、ベクターを孕んだ金色の無形ワイヤー。
人間の精神力では操れて1〜2本のそれが、今や全て起動していた。
その中の一つ、鈍い金色で光る、物理的な破壊力を持つ都合21本の糸で佐紀は、

5本は右足元から太ももに。
5本は左足元から太ももに。
5本を右手首から肩に。
5本を左手首から肩に。

そのまま貼り付けにしているかの格好で、一匹のオスを持ち上げていた。

「ぎゃっfsゴお!! ぎいいえeええsfdg!」

首だけをじたばたとのたうたせ、そのオスは暴れ狂う。
その手足は貫いた糸に固定され、微動たりともしなかった。
64923 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:25 ID:9a6Zftrs
(17/27)

それは、王が下す粛清だった。
王のモノに手を触れ、あまつさえ汚した。
その暴挙は、
その罪は、

残る一本の糸が空気を裂いた。

「sdhethiprtjhopryp@nlt@l;@f[lg@[pl[@〜〜〜〜〜〜〜!?!?!?!」

ぼとり、と。
勃起したままの不浄が床に落ち、
血を撒き散らしながらながら縮こまっていった。
そして、

「死ね」

返す刀で佐紀はかつてそのオスを還したその位置に、万死を叩き込んだ。
物理的な破壊力を持つ糸に貫かれたオスは、ただ単純に絶命した。




「ありゃま……
 これは、果たして私の手に負えるかどうか」

イチローはその光景を見やりながら、一人呟いた。
65023 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:27 ID:9a6Zftrs
(18/27)

帰りの船内。
その備え付けの簡易浴槽で。
佐紀は救出した少女の体をスポンジで擦っていた。
少女は寒さからか恐怖からか、がたがたと震え続けている。
その瞳には精気は無く、
佐紀の瞳にも精気は無かった。

「……」
「……」

言葉も無く、佐紀は少女を洗浄する。
こびり付いたオスの性臭は既にもう消え去っている。
それでも佐紀は少女をスポンジで擦り続けていた。

「……サキ」

震えが治まり、余裕が出てきたのだろうか。
少女が口を開いた。
しかし、

「……」

佐紀は色を失った空虚な瞳で、少女を擦り続けるばかりだった。
65123 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:28 ID:9a6Zftrs
(19/27)

「サキ」
「……」

呼べども呼べども佐紀は反応しない。
少女を守れなかった後悔。絶望。懺悔。
佐紀は、既に抜け殻だった。

「サキ」
「……」

少女が佐紀の空いている方の手を取る。
その手には、力が全く入っていなかった。

「サキ」
「……」

試しにぶんぶんと振ってみる。
それでも、佐紀の手は少女のされるがままだった。
65223 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:29 ID:9a6Zftrs
(20/27)

覗き込む。
それでも、佐紀は何の反応も示さない。
示さないので少女は、

「にゃっ!」

手にした佐紀の掌を、己の股間に持っていった。
こうすれば、きっと喜んでくれるはずだと。

「……」

ぐりぐり、と押し付ける。
が、佐紀は何の反応も示さない。

「むー……」

少女に残されたのは、最早奥の手しかない。
が、別に出し惜しみする必要も無いので、

「……ん」

少女は、佐紀の指を、その場所に沈み込ませた。
65323 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:31 ID:9a6Zftrs
(21/27)

「あ」

そこでようやっと佐紀は言葉を発した。
見れば目の前には名も知らぬ少女の姿が。
所々にアザはあるものの、その幼さを残す肢体は美しかった。
空ろに見とれる最中に、
ふと、

「暖かい……?」

何やら左手が熱かった。
何か、ぬめりとしたものが指に絡み付いている。
例しに指を動かしてみた。

「にゃ……ぁん……!」

見れば目の前には体をくねらせる少女の姿が。
わけがわからない。
半ば呆けた脳のまま、佐紀は更に指を動かし続ける。
と、そこには。
65423 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:36 ID:9a6Zftrs
(22/27)

「んみぃぃ!!」

突如、少女が苦悶の表情を浮かべる。
触れる指の先には、何か柔らかい壁があった。

「え」

覚醒が加速する。
今、自分の置かれている状況を確かめてみる。
肩から伸び、少女の細い腕に包まれたその腕の先には、
少女の蜜壷に半分収まった、己の指が。
そして伝わる感触は、
その正体は―――――――

(平気、平気なの)

少女がにこり、と微笑んだ。

佐紀は、
その瞳を唖然と見つめ、
次の瞬間、

「あ……ぁ……ぁぁぁ……あああ…ぅあああああ……ああああーーーーーー……っ」

少女のその慎ましやかな胸の中で、声を張り上げ、佐紀は泣いた。

(そう言えば、この子の胸で泣くのは二度目だったっけ)

優しい掌に頭を撫でられながら、佐紀はふとそんな事を思い出していた。
65523 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:38 ID:9a6Zftrs
(23/27)

使用制限以外でのテクノロジーの使用はできないこと。その逆説。
もし使われるからには、その用途は適切であらねばならない。




「いいのですか?
 今の君なら私と互角以上に戦えますが」

その事を告げたイチローは、佐紀が返した答えにさも意外そうな顔をした。

「構わない。好きにしてくれ」
「ま、そう言うのなら私としては楽でいいのですが」

そう言って、イチローはそれを羽織った。

「ただし!」
「はい?」

傍らには名も知らぬ少女が、不安そうにぎゅっと佐紀にしがみついている。
佐紀はその頭を優しく撫でながら、

「俺達は動物園には入らないからな」

力強く、そう告げた。
65623 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:39 ID:9a6Zftrs
(24/27)

「それは私には関係の無いこと。
 言ったでしょう?
 動物園は、この星のソブネリア達が敗残者を晒し者にする為に作った施設なのですと」

「分かってる。でも、一応誰かに言っておきたかったんだ」

そう言って佐紀は少女を抱きしめ、そっと瞳を閉じた。

「きっと追っ手が来ますよ。
 捕まれば、恐らく……」

「いいんだ。だって」

「え?」

「野良って、そういうモンだろ?」

「あ……」
65723 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:41 ID:9a6Zftrs
(25/27)

そう言って佐紀は胸の中で見上げる名も知らぬ少女に、

「これでやっと、名前が聞けるな」

最上の笑顔で微笑みかけ、








イチローが放った黄金の糸を、その額に受け入れた。
65823 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:42 ID:9a6Zftrs
(26/27)

「彼は負けたのでしょうか」

人気の無い、警察署内の一室。
そこにはもう、佐紀と少女の姿は無かった。

「私は勝ったのでしょうか」

ギシ、と椅子を揺らしてみる。
最早佐紀がどれくらいの確率を突破したのかも分からない。
と言うか、途中からそれはどうでもよくなっている。
そもそもこれは勝負だったのだろうか。
イチローにはそれすらも今は曖昧だった。

「でも」

船から降りていく佐紀のことを思い出す。
一瞬だけ、自分のほうを一瞥し、彼は去っていった。
その姿は、孤高の獣を思わせる威厳が漂っていた。
65923 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 00:44 ID:9a6Zftrs
(27/27)

「……いいなぁ……」

言葉に出してみる。
その時の素直な感情を。
自分は本当はどうしたかったのか。
全てを失う原因となった佐紀を潰したかったのではないのか。
彼が自分の仕掛けた策略にどこまで耐えられるか確かめたかったのではないのか。
それなのに、最後に口をついた感想がそれだった。

「いいなぁ、ああいうの」

下賤に堕ちた我が身を振り返ってみる。
してきたこと。出来ること。
宙央銀行の最果ての支店には、架空名義でかなりの蓄えがある。
そしてこれまた最果てにある手持ちの小惑星には、
あの副統括のヤマダに一矢以上の打撃を与えられる位のスキャンダルが眠っている。

「ああ、うらやましいなぁ」

イチローは、今まで勇気がなかった自分を悔いた。
そして、

「私も、無頼になりますか」

懐から自分で買った携帯を取り出し、
各所に向かって段取りを開始した。
660名無しさん@初回限定:04/04/05 00:54 ID:Za6dSi2G
せ、切なあ。
しかし余韻の残る、深いラストでした。
ぐいぐい引き込まれた名作、乙です。
ありがとうございました。
66123 ◆bxyzd8gFCE :04/04/05 01:00 ID:9a6Zftrs
長々とした話にお付き合いくださった皆様。
本当に、ありがとうございました。


>>603
>>しかし、何であんなに沢山、短期間で書けるんだよ。
自分は勢いで各タイプなので、そう見えるのかもしれませんね。
それ故の話の穴はツッこまない方向でおながいしまする。

>>631
>>強いて言うなら、単に情景描写だとか行動描写、表現に脂肪的部分が
少なくてすごく直線的な書き方だからからもしれない。
アイタタタタタ……カエスコトバモゴザイマセン。



あと最後に、

_ト ̄|○鬼になり切れなかった、俺の意気地無し……!
662名無しさん@初回限定:04/04/05 01:02 ID:G95GvVPC
23氏お疲れ様でしたぁ〜
ひさびさに次の話が待ち遠しい寝取られ小説でした
新作も期待してます♪
663名無しさん@初回限定:04/04/05 01:20 ID:EM1JlnXt
23氏 お疲れ様でした
664名無しさん@初回限定:04/04/05 02:19 ID:Uuwojalg
23氏、とても引き込まれる物語をありがとうございました。
>>_ト ̄|○鬼になり切れなかった、俺の意気地無し……!
私個人としては物語の主人公はある程度魅力があってほしいと思っているので
ただ堕とされるだけの主人公よりサキ君の物語はとてもめりはりが感じられました。
寝取られ作品で心地よい読後感だったものはとても稀有だと思います。
長い間、お疲れ様でした。
665名無しさん@初回限定:04/04/05 05:39 ID:SfsQ+6VU
23氏乙でした。
あ〜。
いいですね、朝の空気をいっぱいに吸い込んだような爽やかなラスト。
最初SF風の寝取られSSと聞いてどんなもんかと思ったけど、
えーもん読ませてもらいました。
666名無しさん@初回限定 :04/04/05 11:25 ID:tFRDfLxV
23氏オモシロカターヨアリガトウ
667名無しさん@初回限定:04/04/05 18:07 ID:gxUFvVvh
オワタ
668第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/04/06 19:38 ID:Cjr7K6U6
マザボを交換したら、OSが あぼーん。  


結局OSをインストールし直したのだけど、デスクトップに置いておいたSSのログや、お気に入りのurl や、mydocに入れていた画像ファイルなんかがすべてパー。


復旧ソフトをつかっても、サルベージできんかった。_| ̄|○

ので、続きはしばらくかかりそうでつ。
669名無しさん@初回限定:04/04/06 20:15 ID:uHRslmGU
そ、それはまたご愁傷様な……。
まあ、古いマザボにデータをねとられたと思って、
頑張ってくだされ。
670名無しさん@初回限定:04/04/06 21:24 ID:MLOcA4+3
>>669
うまいこと言うなぁ・・・
山田君座布団一枚
671名無しさん@初回限定:04/04/06 21:34 ID:+BRek/CZ
お気の毒です・・・

教訓:バックアップは万全に
672名無しさん@初回限定:04/04/07 06:11 ID:jf0OLNi1
23タンの小説一気に読ませてもらいました。
面白かったッす。
またよろしく

603タンPC直ったら次回作UPよろしく。
ガンガってクレ。

ここのSSは途中で書き逃げする人がいなくて
ほんとにイイすれだな・・・
673名無しさん@初回限定:04/04/07 07:57 ID:AURGKenG
お姉ちゃんがチンピラにレイプされてからの続きはマダー?
674名無しさん@初回限定:04/04/07 09:51 ID:CgtczrY6
>>672
書き逃げ以外にいるよ。

603氏と23氏のツートップが現れてから
何人かでてきたけど
始めのいくつかで終わってしまってる。
675名無しさん@初回限定:04/04/07 09:51 ID:d//zKXpK
シティヘブンとお嬢様特急マダー?
676名無しさん@初回限定:04/04/07 12:17 ID:CopO+Z8a
>668
OSがアボンしたらknoppix等のCDブート出来るOSで大事なデータを退避させるといいですよ
HDDが物理的に故障とかでなければ復旧できるかもしれないです
677名無しさん@初回限定:04/04/08 21:58 ID:7oNTMoQi
>>675

お嬢様特急とは?なぜにSS末期のギャルげータイトルがここに?
678名無しさん@初回限定:04/04/10 01:33 ID:ZiPvWWSV
675じゃないけど
PSでも出てるゾ……っと言うより
こんなマイナーゲー知ってるヤシが居た事に驚いた

そういえば、間違った選択肢を選ぶと
町のナンパ男に着いて行ってゲームからリタイヤする女がいたなぁ
679名無しさん@初回限定:04/04/12 02:56 ID:c0AvklVy
オワタ
680名無しさん@初回限定:04/04/12 10:53 ID:TFBBL9gM
>>23
寝取られた主人公(佐紀)より寝取った奴(健司)の方が
へたれてる作品というのもなかなか珍しかった。
そういう意味では読者として優菜に対するこだわりも
薄れたので寝取られ要素はいくぶん後退した感じだった。
それでもそれを補って余りある面白さは持続したし、
最後は佐紀にとって前向きなエンドで素晴らしかった。
次回作は今回とは正反対のへたれ主人公でのSSなんかでも面白そう。
681名無しさん@初回限定:04/04/12 19:33 ID:3FnnGkB2
保守あげ
682名無しさん@初回限定:04/04/12 22:53 ID:3JA99rwn
オワレ
683名無しさん@初回限定:04/04/13 10:54 ID:gxiBU9Zj
オワタァ?
684名無しさん@初回限定:04/04/13 13:18 ID:MojC77Ob
オワタヨ
685名無しさん@初回限定:04/04/13 20:25 ID:HqIYu2Rs
何か書いてみたいんだけど、エロシーンの描写ができない。
他の職人さんはどうやってそれを勉強したんですか?
686名無しさん@初回限定:04/04/13 20:35 ID:kl3ChJe1
エロゲじゃなかろか
687名無しさん@初回限定:04/04/14 09:44 ID:uoqhCuO+
今進行中なのは603氏だけか。
ちょこちょこ保守せんといかんね
688名無しさん@初回限定:04/04/14 11:39 ID:Ur9U2JW9
そだね
603氏が戻ってこれる状況にはしときたい
689名無しさん@初回限定:04/04/14 20:57 ID:/+uTVWUd
>>686
なるほど。それはその都度、練習しながらやってみます。
かなり短いタームのものを書こうと思ってるので、
あんまり抑揚のない内容になってしまうかもしれないです。

早速、書き始めてみようっと。
690名無しさん@初回限定:04/04/14 22:46 ID:7LLRVcSk
オワタ
691名無しさん@初回限定:04/04/15 05:11 ID:ViT+2Nt7
(1/5)

朝から曇っていて、青ひとつ見せなかった空は、午後になってやがて本格的に雨が降り始めた。
雨粒はとても大きく、地面に落ちるとにぶい音を立て、向きだした肌にあたると痛いほどだった。

平井孝太はTシャツの上に、防水用の分厚いコートをまとって、畑の作物の上にビニールを被せていた。
春先に小さな苗を植えたばかりだったので、少しばかりでも雨に打たれた葉は弱弱しくしなってしまっている。

「はやくしろー」

孝太の父親である洋平が遠くで叫ぶ。父は手際のよい手つきで雨よけをつくっている。
孝太はテキパキと仕事こなしていくその父の姿に少しの間、見入っていた。
ぼろく汚れた作業服は雨に濡れて体に余計に、その汚らしさを増したようだったが
それは孝太の小さいころからの憧れであり、目標でもあった。
夕飯時になると、その服を畳の上に投げ捨て、ビールをコップに注いでいる父が
目の奥で鮮明に思い浮かんできた。幼少のころから、毎日のようにその姿を見てきた孝太は
いつしか自分もそうなりたいと思うようになっていた。
ふと気づくと、父が少し睨んだ表情でこちらに向けたので、孝太は慌てて作業を再開した。
692名無しさん@初回限定:04/04/15 05:13 ID:ViT+2Nt7
(2/5)

20分もすると、全ての作業が片付いた。それ程、大きな土地でもなかったし、それも当然だった。
収穫した作物の2割程を自分の家の賄いにし、残りは市場で売ったり、贔屓の卸業者に直接、渡す、
あとは余剰が出るような年は近所の人間にあたえることが多かった。

小さな木造小屋で、タオルで濡れた頭をごしごしと拭いていた孝太は、
トタン屋根に響く雨音が妙に心地よいものに思えた。
体にへばりついたTシャツの気持ち悪さはあったが、
トン、トンと、リズミカルに刻まれ、金属が打たれる音は、躍動的な音楽のように聞こえた。

「今年は、雨が多すぎて駄目だ。みんな下手になっちまう。それに極端に冷えてる。」

父が呟いた。孝太はそれを黙って聞いている。あまり怒らない父が見せる愚痴であったと知っていたからだ。

野菜が積んであるプラスチックのケースをいくつかを引っ張ってきて
泥落としや皮むきをしていてると、孝太の同級生である五十嵐拓が、小屋の中に動揺した様子で入ってきた。
どうしたんだよ?と孝太が尋ねると、五十嵐は大きく深呼吸をしたあと、父に軽く頭を下げて、
もう一度、孝太に顔を向け、目を丸く開きながら言った。

「お前の家の前にへんな奴が立ってるぞ。たぶんあれは女だ。こんなどしゃぶりのなかかさも持たずに立ってやがる。
髪も体もずぶ濡れで、両手に大きなバッグ二つ抱えてさ、俺、気味が悪くてすぐにそいつからはなれてきたよ。
たぶんここらへんのやつじゃあないと思う。遠巻きからでわかりづらかったけどさ、見たことねーもん、あんなやつ。」
693名無しさん@初回限定:04/04/15 05:14 ID:ViT+2Nt7
(3/5)

女、と孝太は心のなかでつぶやいた。誰だろう。どうせろくでもないやつに決まってる。
宗教の勧誘か何かかもしれない。そんなやつは軽くあしらってやればいいんだ。

「誰かな?」

孝太は父と五十嵐の両方に向けて言った。五十嵐は、あきれたように、俺が知る分けない、と言ったが、
父は何か考え込んだように口をつむんでいた。小屋の扉から隙間から入り込んできた空気は
ストーブをいれてある、この中を冷たく冷やした。

「ひとまず行ってみろよ。知り合いかもしれないしさ。俺この後、練習があるから、ここらで悪いな。」

五十嵐が言った。五十嵐は、バイオリンを習っている。
かなりの腕でたびたびコンクールなどに出場して、何かの賞をもらうほどだった。
繊細で糸のように細く、柔らかく動く指を眺めるのは、孝太は好きだった。
指だけ別の生き物であるようにさえ思えた。

行こう、と孝太は言ってイスの上から立ち上がった。父も頷いて、ゆっくりと腰をあげた。
小屋を出ると、父の少し前を、孝太が歩きながら、青いビニールのかさをさした。
外を歩いているものはあまりいなかった。すこし高くに目線を上げると、
灰色の空が透明な青にフィルターをされて、妙な色になっているのに気づく。
694名無しさん@初回限定:04/04/15 05:17 ID:ViT+2Nt7
(4/5)

家まではそれほど距離はなかった。歩いて5分もすればついた。
確かに自宅の玄関の前に誰かが立っている。五十嵐の言ったとおり、女らしい。
じっと体を動かさずに、2階の屋根あたりを見つめながら、立ち尽くしている。
かなり近づくと、彼らの足音に気がついたのか、女は顔をこちらに向けた。
それが誰であるのかというのがすぐにわかった。だが、どうして良いかわからずに、その場で足を止めた。
父はそのまま歩き続け、孝太を追い越した。そして、手の届きそうなところまで来ると、小さく低い声で言った。

「おかえり。」

女はフラっと倒れるように、父に抱きかかかった。濡れた黒い髪が重たく光っていた。孝太の姉であった。

「風呂がわかしてあるから、入りなさい。そんなかっこじゃあ、風邪を引いてしまうよ。」

家の中に入るなり、父は言った。姉は無言で頷いて、床に水滴をしたたらせながら、風呂場へ向かった。

その夜の夕食はテーブルの間だけ固まったような時間が流れていた。
誰もなにも話さずにモクモクと口に食べ物を運んでいた。
テレビから写される動画は何をして、また何を言ってるのかさえ、わからない。
耳の裏側から蝿のにぶい羽音が聞こえた。蝿は上の方へ上っていき、蛍光灯にぶつかった。
695名無しさん@初回限定:04/04/15 05:50 ID:ViT+2Nt7
(5/5)

孝太は一番、先に食べ終わり、自分の部屋へと戻り、買ったばかりのCDを聴きながらベッドの上に横になった。
ふっと頭の中から何かが抜けていくような気がした。そのまま、しばらくの間、眠りについた。

バイオリンの音が聞こえた。それは体を優しく包み込むように鳴っていた。
五十嵐がステージに立って、まわりの観客から大きな拍手を受けているようだった。
一曲、演奏が終わるごとに大きな歓声が響いた。
それを眺めながら、自分はどこに立っているんだろうと足元に目を落とす。
枯れた葉のつもった腐葉土の上だった。そして孝太のまわりにはだれもいない。
五十嵐がどんどんと自分から離れていくのわかった。
いつしか五十嵐は消えて、先ほどの蝿が靴の上にとまった。

そこで目が覚めた。時計の針は深夜の2時をさしている。孝太はため息をつくと、寝ぼけた意識のなかでトイレへと向かった。
トイレと風呂の近くまで来ると、明かりがついている。ガサゴソと音がすると誰かが出てくる。
姉であった。初めてそこで自分の中にある現実と実際の現実が重なっていく感じがした。
暗い廊下の上であったが、今日、目を合わせたのはこれで2回目だ。そしてどちらとも悲しい目をしていた。
姉は何か言いたそうに、孝太を見つめ、口を開こうとした。だが孝太は逃げるようにして、キッチンへ向かった。

俺が、と思った。なんでこんな真似をしなきゃいけないんだ?それよりあいつはなんで今ごろ帰ってきたんだ?
俺はあんなやつとなんて住みたくないんだよ。どのつら下げて俺たちの前に現れやがった。

孝太は冷蔵庫から缶ビールを出して一気に飲み干して、勝手口を開けて、外へ出た。
雨はほとんどやんでいるようだった。とても静かだった。
空き缶をゴミ箱に放り投げると、屋根の先から、ポツリと水が垂れた。
696名無しさん@初回限定:04/04/15 05:54 ID:ViT+2Nt7
少し前に姉NTRの要望みたいのがあったので、書いてみました。

初めてこーゆーの書いてみたので、
結構、しょっぱいことになってます(´・ω・`)

改善した方が良いところとかあったらおながいします。


603氏のつなぎになれればの思い。
697名無しさん@初回限定:04/04/15 09:03 ID:jFK0/tLg
>>689
新しい職人さん大歓迎です
次回からはトリップ装備ヨロシコ(#の後に好きな半角英数6〜10文字)
698名無しさん@初回限定:04/04/15 11:48 ID:L/tP/nl8
>>689
乙。
がんがれ。
699名無しさん@初回限定:04/04/15 21:18 ID:8Xe6g5X5
>少し前に姉NTRの要望みたいのがあったので、書いてみました。

それたぶんオレ(w
ありがとうございます。
姉妹母娘など肉親寝取られ物が好きなので
以前、見たいと口を滑らせました。
期待してます。
700689 ◆A53DhR4yz. :04/04/15 22:47 ID:m9BAlh/A
>>697
あ、忘れてますた。スマソ。

>>698,699
うぃー。出来る限り頑張ってみまつ。
701名無しさん@初回限定:04/04/19 11:49 ID:SXnZruTg
オワタの
702名無しさん@初回限定:04/04/20 14:27 ID:c3LxTDlK
オワタヨ
703名無しさん@初回限定:04/04/20 17:12 ID:o9bzD37y
オタワ…
704名無しさん@初回限定:04/04/20 20:53 ID:7hBQEQ7e
オワタン
705名無しさん@初回限定:04/04/20 21:37 ID:Cg2g0T/P
マダダ!オワランヨ!!!
706名無しさん@初回限定:04/04/21 11:36 ID:a/PLK7tT
主人公が現場に踏み込まない話などはいりませんか?
707名無しさん@初回限定:04/04/21 11:53 ID:95yW9ASQ
いります。いりますとも。
708名無しさん@初回限定:04/04/21 14:04 ID:jhsJbos6
踏み込んだら台無しじゃないですか?
709名無しさん@初回限定:04/04/21 18:18 ID:U1snuAD2
それは覗くけど手をだせないってこと?
それとも知らないうちにってこと?
どっちにしろエロ部分を描写してくれれば無問題、大歓迎です。
710名無しさん@初回限定:04/04/21 21:14 ID:iJWZCsBE
踏み込めない¥況や立場なら良いけど、
踏み込まない%zは俺にとっては寝取らせた、
としか思えないんだよね
711名無しさん@初回限定:04/04/23 15:31 ID:UF70FtvD
それも寝取られのひとつの形かと
むしろそっちの方がより主人公のダメっぷり出てて個人的には好きかも
712706 ◆qVkH7XR8gk :04/04/23 19:33 ID:HBq3mS7K
明日くらいからお付き合いヨロです
713名無しさん@初回限定:04/04/24 00:00 ID:6gGK/JcA
お待ちしてます〜
714706 ◆qVkH7XR8gk :04/04/25 18:26 ID:0heIlOzx
(1/5)

もし、この世に神様なんてのがいるとしたら、
きっとそいつは俺のことが大嫌いなんだろう。


2年間前のとある放課後、俺は部活の後輩の伊藤五月に告白した。
最近彼氏と別れたとの噂を聞きつけ、チャンスだと思ったからだ。
人気が失せた部室でのいきなりの告白に、伊藤五月は戸惑っていた。

『返事はさ、急がないから』

その様子を見て、俺は用意していた言葉をすかさず紡ごうとした。
が、

『ごめん。俺が悪かったよ』

突如現れたそいつにあっさり巻き返されてしまった。
同級生で、4番エース、しかも親友のそいつに。
ていうか元彼ってお前だったのかよ。

『ったく。世話やかせやがって』

咄嗟に芝居をした。
俺が二人のヨリを戻したかのような。
以来、親友は何かと俺を助けてくれる。
715706 ◆qVkH7XR8gk :04/04/25 18:27 ID:0heIlOzx
(2/5)

もし、この世に神様なんてのがいるとしたら、
きっとそいつは俺のことが大嫌いなんだろう。

昨日の帰り道、
同級生の帆坂奈央が知らない男と歩いているのを見た。

腕を組み、お互いに見つめ合って微笑むその光景。
どこからどうみても相思相愛。
つけいる隙など皆無だとばかりのラブとラブが織り成すオーラ。

ああ、またいつものことか。

と思い、何故か物陰に隠れる始末。

声をかけたのは数えるほどしかないが、
俺は穂先奈央に少なからず好意を寄せていた。
716706 ◆qVkH7XR8gk :04/04/25 18:28 ID:0heIlOzx
(3/5)

もし、この世に神様なんてのがいるとしたら、
きっとそいつは俺のことが大嫌いなんだろう。

気が付けば「いい人」。
ちょっといいな、と思った子にはすでに彼氏がいたり、
何とか仲良くなった子には、何故か俺が損な役回りを引き受けて
他の誰かとの仲を取り持つ結果となってしまう。
まるで小説やドラマでの、脇で主人公をサポートする親友のようだ。
彼らは決して自分の人生を顧みることはなく、
常に影に徹し、主人公とヒロインを結末へと導く手助けをする。

俺は人生の主役になることはないのだろうか。
ここまでそんな現実が続くと、そんな被害妄想まで浮かんでくる。



が、それも今日で終わりだ。
717706 ◆qVkH7XR8gk :04/04/25 18:29 ID:0heIlOzx
(4/5)

思い出すこともまばらな、しかしそれは紛れも無い実際の出来事。


7年間前のあの夏の日、隣の幼馴染が親の仕事の都合で引っ越していった。
俺もあいつも、別れが辛くて散々泣いたっけ。
行き先は北の方だったから、俺はあいつにピンクのマフラーを送った。
お返しにあいつは、お気に入りだった藍色のリボンをくれた。

『こんなんもらっても付けれないじゃん』

ぶちぶち文句を言いつつも、俺は嬉しかった。
あいつが半身を残してくれたような気がしたからだ。
しばらくは手紙のやり取りが続いたが、
ここ最近は日常の忙しさにかまけてそれも滞りがちだったりする。
718706 ◆qVkH7XR8gk :04/04/25 18:32 ID:0heIlOzx
(5/5)

もし、この世に神様なんてのがいるとしたら、
きっとそいつはようやく俺の味方をするつもりになったのだろう。

母親から聞かされた、その事実。
明日。
再び空き家となった隣に、あいつが戻ってくるのだという。
そんな、非現実的な現実。
そんな、物語の主人公しか体験できないような現実。

机の引き出しを開け、その奥を覗き見る。
長い事顧みなかった木箱には、それでも大切に仕舞われたソレが、眠っていた。

「マジ……なんだな」

そう、それはきっと。
物語の主役たる者の身の証だ。
藍色のリボンを握り締め、俺は独りそう呟いた。
719名無しさん@初回限定:04/04/25 19:56 ID:xr5kKlGB
イイヨイイヨー
720名無しさん@初回限定:04/04/25 21:59 ID:TgPNTxDZ
いきなり始まったからよくわからないんだけど、
後輩も同級生も幼なじみも全員離れていっちゃったってこと?
かなり最高な寝取られ君ですなw
721名無しさん@初回限定:04/04/26 00:12 ID:8ZiMGvdF
おもしろい!
引き込まれました。
続き楽しみにしてますね
722名無しさん@初回限定:04/04/26 03:35 ID:v9YDdK3/
何かWINDを想像した
723689 ◆A53DhR4yz. :04/04/26 21:02 ID:CHDUOPfn
(1/8)

ここ3年間、朝、おきて真っ先にやることと言えば母の仏壇に線香をやることであった。
普段は、孝太が起きる前に父の線香が1本だけ立っていることが多いのだが、
今日は二つに増えている。少し長めのものがあり、もう片方はほとんど燃え尽きてしまっている。
細い棒から流れるように立ち上っていく白い煙は、まだはっきりとしない意識とあいまってひどく幻想的なものに見えた。

3年とはとても短い時間であったが、まったくと言って良い程、周りの状況や人間関係は変わっていた。
久しく会っていなかった人間を時間の経過によってずれた自分の価値観で眺めると、ほとんど別人の気さえする。
海の浅瀬で遊んでいて、気づいたら沖合いの方に流されてしまったという感じだろうか。
自分の気がつかない間に、意志とは無関係に物凄くゆっくりとだが確実に体を運んでいくのだ。
1人だけ取り残されたという感覚は焦燥よりもどちらかと言えば虚無的ものに近い。
いつまでも10代前半の気持ちが心の中でくすぶっているんだ、と思った。

「おはよう」

テーブルの前で新聞を読んでいた父に向かって挨拶をする。父も同じように返して、また新聞に目を戻す。
その時ふと、台所で音がするのに気がつく。何かが焼けるような音である。
ゆっくりと近づいていくと、姉が、エプロンを肩にかけて、フライパンを持ちながら料理をしているのが見えた。
慣れたように、キャベツと玉葱をニンジンを炒め、こしょうと塩を振りかける。
それから最後に小さく切ったハムを入れて火を弱めにして、仕上げ、
フライパンを持ちながら流し台の横に置いてあった皿にできあがったものをかき入れる。
顔をあげると、孝太の姿に気がついたようだった。
724689 ◆A53DhR4yz. :04/04/26 21:04 ID:CHDUOPfn
(2/8)

「あ、孝太、おはよう。もうちょっとできるからね。少し待っててね」

姉は言った。懐かしい耳障りだった。生まれてからずっと聞いていた声。
そしていつのまにかまったく聞かなくなってしまった声。頭の中で幼少期の自分の姿が蘇ってくる。
姉と手をつないで夕闇の山の中をあるいたことや、小川にヤマメを釣りにいったこと、
都心部に出かけて迷ってしまった孝太を一番初めに探し出してくれたこと、
反対に犬を怖がってかまれそうになってしまった姉を助けてあげたこと。
いくつもの映像が脳裏を高速で走っていく。真っ白な光沢に包まれて。

だがそれ以上に怒りが込み上げてきた。腹の奥に得体の知れない生き物がいると思った。
押さえつけられなかった。何かを壊したいと思った。永遠にもとに戻れないものを。
そこにある包丁で姉を刺してやりたかった。
俺の今の気持ちを沈めるのは赤い血をみることだ、
柔らかい肉の感触だ、と思った。

「できたよ。孝太にもお父さんのところまで運ぶの、手伝ってほしいな」

姉の言葉で我にかえる。狂気的な目をした孝太の顔を見て、姉は一瞬、ビクッとしたが
すぐにお盆に塩ジャケと野菜炒め、それから大根の味噌汁を載せた。
しかし孝太は手伝わなかった。このままここにいると本当に人を殺してしまうかもしれないと思った。
だから姉の作ったメシに対して一口も手をつけずに、急いで制服に着替えて学校まで向かった。
725689 ◆A53DhR4yz. :04/04/26 21:05 ID:CHDUOPfn
(3/8)

オレンジ色の空に黒い鳥の大群が現れて、教室の外にいた孝太のすぐ目の前を超低空で迂回した。
学校の壁に当たりそうな程であった。また離れていく。それを2、3度繰り返した。
そして視界から群れが消えると同時に、チャイムが誰もいない廊下に響き渡る。
担任が孝太の名前を呼んだ。教室のドアの前にたつと、ちょうどひとつ前の個別面談をしていた生徒が出てくる。
小さな女子である。髪はセミロングで前髪をピンク色のヘアピンで止めてあった。
170の中ほどある孝太をまるでビルでも見あげるようにして目が合うとすぐにそらした。
高校3年とは思えない程、小柄であり、どこかおびえた子犬のようである。
そしてそのままそこで立ち塞がって動かないでいた。

「あの、俺、中に入りたいんだけど」

孝太が言った。彼女は体をビクっとさせた。中にいる担任が大きな声で呼ぶ。

「おーい、綿野!早く帰れ。もうお前は終わりだぞ。もうこんな時間になっちまったんだから、気をつけろよ。
次の沖島孝太で最後なんだからな」

綿野は恥ずかしそうに頬を赤らめながら、

「あ、ご、ごめんなさい」

小さな声で言って、孝太の脇の方へするりと抜ける。
726689 ◆A53DhR4yz. :04/04/26 21:06 ID:CHDUOPfn
(4/8)

「えーと、あのー」

まだ、彼女は何か言いたそうにして口篭もっている。

「あのー・・・。そうだ。沖島君、頑張ってね!」

それだけ言うとぎこちない笑い顔を作って、廊下を駆けていった。
彼女とは初めて話した。同じクラスなのに名前すら知らなかった。
だがそんなことはどうでも良かった。孝太にしても担任と同様に早く面談を終わりにしたかった。

机を4つほどつけて並べてある所に担任が座っている。孝太は、お願いします、と言ってその向かい側腰を下ろす。
担任は大きな茶封筒から、進路調査書という紙を取り出して、孝太の前に差し出した。
それから大きなため息を一つついた。

「綿野ってのも、少し変わったやつでな。あんまりクラスの人間と喋らないだろ?
だから何を考えているか、よくわからないんだ。自分のこともあまり口にしたがらないタイプだしな。」

担任は言った。孝太はすこし不平をもったような顔した。
727689 ◆A53DhR4yz. :04/04/26 21:11 ID:22Ho9yvp
(5/8)

「まぁ、そんな邪険にするなよ。俺の話も少し聞いてくれ。教師やってるといろんな人間に会うんだ。
俺も20年近くやってるしな。あくの強い奴もいっぱいる。それをどうにかしてやるのが俺達、教師の仕事でもある。
素直に、勉強をして大学に進んでってしてくればもちろんそれが一番楽だ。
例え塾があるから授業を聞かなかったり、行事になると休んだりってことしてもだ。
最終的な結果が勝負なんだよ。つまり進路だな。ここの高校は99%の生徒が進学だ。
毎年、東大、京大も何人もでてる。だから、こっちもそれに躍起になっている感があるだろう。
もちろん進学を選ばないやつもいる。俺の教えていたやつにバイクのロードレーサーになりたいってのがいてな。
高校卒業してから、かなり努力して良いところまで昇ったよ。8耐にも出られそうになっていたんだ。
それがな、小さな大会でミスをしてな、タイヤ滑らせてしまって、バランス崩したままコースの壁に衝突だ。
意識不明の重体になってしまった。そいつは三日三晩、眠りつづけた。
家族の方も、不安で眠れないし、ひどくカリカリしてた。
だが、なんとか一命は取りとめた。俺も、含めてみんな喜んだよ。だがそれで下半身不随になってしまった。
もうバイクは2度と乗れない体になってしまった。でもそいつは悔しいけど、幸せだったっていうんだ。
何が本人とって良いかなんて、一概に判断できない。
本人が決めて、自分が本当にやりたい道があるのなら、大学なんて行かなくたっていい。
そしたら、俺も全力でバックアップするつもりだ。じゃあ、お前に聞く。
お前はこの道を選んだのか?この道を本当にやりたいと思っているのか?」

担任は沖島孝太と書かれた紙の上を指差した。希望進路の欄に「自営業後継ぎ」と記してある。
しばらく沈黙が続いた。孝太は口を閉ざしている。何も答えられなかった。担任は見かねたように続けた。
728689 ◆A53DhR4yz. :04/04/26 21:13 ID:22Ho9yvp
(6/8)

「お前は入学当時、3年前は進路に経済系の学部で国立大学を希望だったらしいな。
だけど今はお前は就職を選んだ。この間で何が変わった?お金が足りないのか?今なら、奨学金も充実しているんだ。」

そい言って、カラフルな広告をいくつか取り出した。公共の奨学機構、あとは私企業のものであり、
利息の少なさや、月額の貸し金の多さをうたっているものだった。

「そうじゃないんです。これでいいんです。俺、きめましたから」

孝太は出されたものに目を向けずに投げるように言った。担任は孝太の目をじっとみつめてまた深いため息をついた。

「何か抱えているんじゃないのか?お前は何をそんなに怖がっているんだ?
綿野しても、そうだ。お前らは全て自分のうちに閉じ込めようとする。」

担任がいうと、また孝太は押し黙った。息を静かにしながら、机の錆びた金属部分を見つめる。

「強要はしない。だけど、なにか話したくなったら俺の所へこい。」
729689 ◆A53DhR4yz. :04/04/26 21:17 ID:22Ho9yvp
(7/8)

家にはあまり帰りたくなかったが、外で知り合いに会うのいやなのでそそくさと帰宅した。
姉がスリッパの音をたてながら、孝太を出迎える。

「おかえり、お父さん、今日、少し遅くなるんだって。だから、先に食べちゃえって。ね、孝太。そうしよ?」

この女は、と思った。なんでこんなに馴れ馴れしく出来るんだろう。ずっとここにいたように。

無視して部屋に向かおうとした。しかし、その瞬間に腹がつぶれそうなほど大きく鳴った。
姉はそれを聞いて笑う。それから、孝太の引っ張るように手をつかんだ。
久しぶりに姉に触れたような気がした。冷たい手だった。それでも姉の体温が伝わってきた。
血管が血を流しているのがわかった。心臓の音が早まっていく。自分の体の中に姉の血が入り込んできたようだった。
自分の鼓動と姉のそれが、まるで和音を奏でるように脈をうつ。

「ほら、早くいこ?もうできてるよ」

じっと押し殺したように黙っていた孝太に姉は言った。食卓まで連れられて、テーブルの前に腰を下ろす。
箸を手にとって、そのまま少し焦げついたコロッケを口に運んだ。
730689 ◆A53DhR4yz. :04/04/26 21:18 ID:22Ho9yvp
(8/8)

「どう?おいしい?それ、手作りなんだよ」

はっとした。それはまさに母の味そのものだった。それには説明の仕様がない繋がりを感じえた。
3年前に家族4人で一緒になって食べていたそのままであった。
それからすぐに母は他界し、姉がいなくなり、孝太と父の2人になった。
そして、昨日またこの家には3人の人間が住まうようになった。

そうだ、俺は、こいつと血が繋がっているんだ。
どこにいたって離れたくたって、結局は、つながりは断てないんだ。
どちらかが、死なないかぎり、と思った。

姉は相向かいにすわって、身を乗り出すようにして、答えを催促した。
孝太は、視線を自分の茶碗へ落としたまま、おいしいよ、とつぶやいた。

「そっか、よかったぁ。孝太の口に合うかなって、心配だったの」

胸を撫で下ろすように、姉はいった。孝太はもう一度、同じようにコロッケをつまむ。
焦げたような匂いとしょっぱいソースの口ざわりが喉の奥にじっとりと広がっていくのがわかった。
731689 ◆A53DhR4yz. :04/04/26 21:20 ID:22Ho9yvp
やっとplalaの規制が解けますた。マジ、あらしウザー
732名無しさん@初回限定:04/04/26 23:12 ID:Jt/3oj4W
うお、なんかのっけからハードな……。
読んでいて情景に「色」を感じさせるような描写で引き込まれます。
続きもヨロ
733名無しさん@初回限定:04/04/28 13:52 ID:C9fdWmkB
オワタ
734名無しさん@初回限定:04/04/28 20:47 ID:6fSE6+OO
オワタネ
735名無しさん@初回限定:04/04/28 22:59 ID:juBgp1KP
オワタンカオワタンカトコイチジカントイツメタイ
736名無しさん@初回限定:04/04/28 23:12 ID:EhhwPmV/
で、だ。603氏マーダー
737名無しさん@初回限定:04/04/29 22:06 ID:JjpiY/H7
オンドゥルオワタンディスカー
738おぴ ◆NTR/tuhS7g :04/05/01 08:34 ID:FdbIZIql
603氏アク禁中らしいですね
739名無しさん@初回限定:04/05/01 14:04 ID:YEwl5JIR
ш(´[]`)шオーш(´[]`)шマイш(`[]´)шガー
740名無しさん@初回限定:04/05/02 10:49 ID:+FeQpVLb
プゲラ
741名無しさん@初回限定:04/05/02 21:26 ID:Xc3/LfTB
オワタ
742706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/02 23:23 ID:Pqeu7n61
何かキタので明日にはageます。
743第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/02 23:58 ID:fq0cvg5Y
やっぱり、だめ?
744第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/03 00:05 ID:7L0yCRLc
アク禁解除されたようなので、早いとこうpします。れいによって、何日かに分けて小出しにうpします。
(1/5)
「ひろクン、ちょっと話があるんだけど、来てくれない?」
久しぶりに香織から声をかけられた。
あの日以来、香織とはまともに話していない。
勿論、こちらが避けていたということもある。
やはり、その後の景子との事、その時の景子から言われた言葉が、どうしても香織を避けるような行動を
とらせていたのは、間違いない。
あいつ自身もそれを察したのだろうか、俺の教室まで来るような事は勿論、電話やメールさえよこすよう
なこともなかった。
唯、時折目が合うと、こいつから悲しそうな視線な視線が送られてくる。その視線を感じる度に、胸を抉
られるような強い痛みを感じていた。
その痛みは、誰に対するものなんだろう。
その視線に答えてやれない、香織へ向けてなのか。
その視線に心を痛めている自分の、景子への贖罪なのか。

「何だよ」
こちらの胸の内を見抜かれない様、努めて無愛想に振り返った俺の目に飛び込んできたのは、いつに無く
悲壮感の漂った香織の目だった。
他愛の無い、下らない用事ならスルーしようと思っていたのだが、断れば自殺でもし兼ねないその目に
気押されていた。きっと、俺の家に押しかけてきた時、こいつの目はこんな感じだったのだろう。
「ちょっと、ここじゃ話せないから、来てくれる?」
既に、俺に選択権はなくなっていた。
745第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/03 00:05 ID:7L0yCRLc
(2/5)
3月とはいえ 曇り空に北風の吹く花冷えの中、吹きさらしの屋上には、俺と香織以外には誰もいなかった。
正直、寒い。できるだけ早く終わりにして欲しい。
なのに、こいつは何も話し出さない。悲壮感バリバリの顔でこっちを睨んだままだ。
いくら、これから話す事が大事な話だと分かっていても、こう寒くてはいつまでも待てるわけじゃない。

「で……話って何だよ?」
屋上に上がってから、かれこれ10分はたつ。寒さに我慢するのもそろそろ限界だ。
けれども、香織から返事は返事は無い。

「話が無いのなら、行くぜ」
そう言って帰ろうとした時だった。『フッ』ひとつ深呼吸した音が聞こえた後に、香織が話し出した。

「ねえ、……知ってる?あんたと遠野さんがね、音楽室で……エッチ……してるって、噂が立ってるの」

『エッチ』の言葉に息を呑む。……バレてるのか?彼女とあそこでやった時の事を思い浮かべる。
彼女とした時は、全部しっかり鍵をかけたはず。あそこは防音処理されているから、音は漏れていない
……おそらく、確証はつかまれていない筈。

「ねぇ、どうなの?本当にそんなことは、して……いないよ……ね?」
今度は逆に、自分の質問に答えない俺に不安になったのか、香織が急かしてくる。
……というか、噂の真偽を知りたいというより、むしろ否定して欲しい様に見えるのは、俺の自惚れだろ
うか?
でも、嘘をついて取り繕う理由は何も無い。それに 誰かに本当のことを話して、景子との今の関係に歯
止めをかけたい気持ちが、どこかにあったのだろう。
746第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/03 00:06 ID:7L0yCRLc
(3/5)
「いや、……やってるよ」

香織の顔色が見る間に蒼くなっていく。
何で?お前にとって、そんなにショックなことなのかよ?

「そう……なんだ」
声が震えていた。何だか、息も絶え絶えな表情に見ていられなくなる。
そして、またもや沈黙が二人の間に流れる。
3/4
「ひろクン、変わったよね」

「そうか?」

「……うん、前のひろクンだったら、こんな事してなかったと思う」

「そりゃ、買いかぶりだ。俺だってエッチな事はしたいよ」

「だけど、そんな……教室でやるなんて……絶対にしなかったはずだよ……ね、やめて。……別に、ひろ
クンと遠野さんがエッチする事に何もいう事はない。何も言う資格ないもの。……でも、学校では……学
校の中でだけは、……しないで、お願い。……じゃないと、私……」

「何、深刻な顔して言ってるんだよ。俺と景子がエッチしていようといまいと、お前には関係ないだろ?」

「そんなこと無いよ!!!」
唐突に香織の声が大きくなる。
747第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/03 00:09 ID:7L0yCRLc
(4/5)
「そんなこと、ないもん。……わかってる?学校の中でそんな事したのバレたら、退学だよ?」
「そんなの嫌なんだから。あんたと……ひろクンと一緒の学校に行きたくて、一所懸命に頑張ったのに、
そんなことになるなんて、絶対に許さないんだから……だから、そういうのは、やめて……ね?お願いだ
から」

あの日、景子が言ったことを思い出す。
『伊藤さん、あなたの事、まだ諦めていない』

香織が、俺に対して未だにこんな真剣な気持ちでいてくれていた事に、嬉しさと、同時に胸に痛みを感じた。
香織、どんなにお前が俺に真剣な気持ちを向けててくれても、俺それに答えてやることはできない。今、
俺の心の中にいるのは、景子だ。お前じゃない。
とはいえ、こいつの忠告は至極まっとうなものだ。彼女との事を考えても、学校内での性行為は控えたほ
うが良いのは、間違いない

「解った。彼女と話してみる」

「ちゃんと遠野さんと話し合ってよ。絶対だからね」
言うだけ言うと、香織は こちらに目を合わせようともせず、自分の教室へと戻っていった。

そう、噂になっているのなら、抑えなくちゃな。
でも 丁度良い口実ができたと思う。
彼女も この話をすれば納得してくれるだろう。

自分たちの意志で抑えることができなかった事が悔しいけれど、これで元々思っていた ゆったりした
ほのぼのした関係に戻れるきっかけができたような気がする。
香織には感謝しないといけないな。
748第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/03 00:10 ID:7L0yCRLc
(5/5)
その後、暫くはお互いの都合がすれ違う日が続いたこともあり、会うとすぐエッチ という展開になる事
は無かった。
抱きしめあってキスをして お互いの気持ちを確かめ合ってそれぞれの家路へと別れる日々、より深い肌
の触れ合いの無い、セックス抜きの日々は、苦痛の日々だった。
けれども、理由は何であれ、我慢することができたのは、大きな自信に繋がったように思う。
やればできる。今は苦しくても 努力していけば、証を求めなくともお互いの愛を確認することができよ
うになる。
セックスだって、互いに相手の愛の証拠を求めるためだけのものではなく、互いの相手に対する愛を確認
するためのセックスに変わっていくはずだ。
そうさ、そんな日は 実はすぐ近くに来ているのかもしれない。
ゴールは近い。その時は、二人手を繋いで笑ってゴールのテープを切ってやるさ。





この時の俺は、知らなかった。
数日後、そのゴールがはるか彼方に蹴飛ばされるのを見せられることになるとは。
749第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/03 00:13 ID:7L0yCRLc
長らくお待たせしました。
とりあえず、最終章の再開です。
さて、どんな結果になるのか・・・・・・。








しょぼい結果になっても、いじめないで下さいね。


P.S
結局、前に書いたやつは、サルベージでけんかった。
750名無しさん@初回限定:04/05/03 00:40 ID:6qr/6A8p
乙でーす

ハァハァの準備して次を待ちます
751689 ◆A53DhR4yz. :04/05/03 01:29 ID:Wh1ZqQq1
キタキタキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!!!


今から、全裸で待ってます
752名無しさん@初回限定:04/05/03 01:54 ID:o2bg8Aut
相変わらず香織はDQNだな。
自分こそサッカー部室でフェラ・セクースとそれぞれ一発ずつヤッたってのに
753名無しさん@初回限定:04/05/03 12:26 ID:Dxm7sqeA
俺は香織好きなんでつが?
むしろ香織とくっついてほしーよ・・・。
なんかいじらしいんだよ。
754名無しさん@初回限定:04/05/03 13:38 ID:tN6PPwqF
ハッピーエンドで終わってほしいなぁ・・・
755名無しさん@初回限定:04/05/03 14:56 ID:5km93/99
俺も香織派
景子は小悪党(表現不適切だな…)にしかなれなさそう
香織はいい仕事しそう
756名無しさん@初回限定:04/05/03 15:26 ID:4DSd+Vei
香織はいじらしいが、それは
結局先輩もヒロくんも両方キープで、
って前提の上だからなあ……。
景子とハッピーエンドを望むのは、
寝取られ読者としてはヘタレだろうか。
757名無しさん@初回限定:04/05/03 22:33 ID:4pmvkI4I
>数日後、そのゴールがはるか彼方に蹴飛ばされるのを見せられることになるとは

イイネイイネー
誰が蹴飛ばしてくれるのかな?いや、わかってはいるつもりなんだけど。
やっぱり603氏のはおもしろいナー
758706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/04 12:56 ID:CJxsMhxm
少しずつうpです。
759706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/04 13:03 ID:CJxsMhxm
(1/6)

朝陽がちりちりと肌を焼く不快感。
それでも、予め網戸にしておいた窓からは時折微かな風が。
それが心地よく緩やかに、俺を眠りの底から引っ張り上げ……

「ん……」

意識が覚醒した瞬間、押し寄せてくる妙な高揚感。
祭りや遠足の当日のような、むずむずとした感覚。
その勢いに任せて、

「よっし!」

俺は布団から跳ね起きた。

「……いよいよだな」

そう。
今日が俺のドラマが始まる日だ。
幼馴染の少女が帰ってくる。言ってみればただそれだけ。
それでもそれは俺にとっては特別な女の子の帰還に他ならない。
彼女との楽しかった思い出もある。
彼女が残した品もある。
だから……
760706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/04 13:04 ID:CJxsMhxm
(2/6)

いつも悲しいことがあった時にはあの高台に上ったっけ。
確信があった。
彼女は、きっとそこに。


朝焼け中、風に揺れる桜も今は季節相応の青葉を湛えている。
それでも空の色と陽光に融けて、点描派の絵画のような美しさを醸し出す。
そんな中、
彼女の髪も夏の大気に融けて藍くきらきらと光っていた。

その場所。
思い出の高台に。

『祐樹くん……会いたかったよ』

記憶のままの長い髪をかき上げる、幼馴染の少女の姿があった。

『よっ……久しぶりだな』

そう言って俺はポケットから藍色のリボンを取り出した。
そして、ゆっくりと彼女の髪を結うと……

『これで、元通りだね』
『ああ』

しばらく見詰め合った後、俺達は笑った。
761706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/04 13:05 ID:CJxsMhxm
(3/6)

「なんてこと、あるかもな」

思わず頬が弛んでしまう。
それを押さえつけて無理矢理ポーカーフェイスを作り、

「飯、作るか」

ササッと着替え、俺は階下へと向かった。



「兄貴ーおはよー」

もう起きて蕎麦の仕込みにかかっているであろう兄に挨拶をする。
兄のいる厨房になら階段からでも声は届く。

「おーう、祐樹。起きたか」

はて。
いつになく声が冴えてるな。
いつもなら半寝ぼけで仕込みしているのに。
762706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/04 13:07 ID:CJxsMhxm
(4/6)

俺の兄は蕎麦打ちの職人だ。
母さんが亡くなり、先代の父さんも続けざまに逝ってしまった今、
我が家……『春日庵』は兄が切り盛りしている。
そんな訳だから、朝食を作るのは俺の仕事で、
ていうか家事全般は俺が全て請け負っている。
それは勿論、養ってもらっている身としては当然のこと。
高校だけは出とけ、と言ってくれる兄への、これはせめてもの恩返しなのだ。

「すぐに朝食作るよ」

そう言って俺は台所へ向かおうとした。
そこへ……

「あ、もしかして、今のって祐樹くん?」

場違いな女の子の声が聞こえてきた。
763706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/04 13:08 ID:CJxsMhxm
(5/6)

慌てて方向転換し、厨房を覗いてみると、

「あーっ、やっぱり祐樹くんだ!
 わぁー、懐かしいなぁ!」

厨房で兄と談笑していた少女が、僕の方を振り返った。
長かった髪は肩までに切り揃えられ、
見事なまでにサラサラに手入れされている。
だけど、その振り返る仕草は、確かに昔のままの……

「な、奈緒か?」
「うん。これからよろしくね!」
「あ、あぁ」

拍子抜けした。
え?
これが感動の再開?

いきなりの展開に、俺が返した返事もかなり拍子抜けしたものとなった。
764706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/04 13:09 ID:CJxsMhxm
(6/6)

「おいおい祐樹。そこはもっと再開の感動を大にしないと」

見ると兄貴は苦笑いしながら生地をこね回している。
その傍で、

「お兄ちゃんは大げさだよ!
 挨拶に来たらいきなり泣きながら抱きついてくるんだもの」

彼女はぷんぷんと頬を膨らましていた。
最も、本気で怒っている風には見えないのだが。

「あー……つい、懐かしさに後押しされてな」
「おかげで制服粉まみれ……ホント、酷い目にあっちゃった」
「悪かったって。お詫びに一枚奢るからよ」
「ホントに? わーっ!お兄ちゃんのお蕎麦、久しぶりだなー!」
「そっかそっか。
 あ、祐樹も食えよ。朝飯、蕎麦でいいだろ?」

何かあれよあれよと事は進み、
期待していた再開シーンは、中途半端なまま終わってしまった。

御子柴奈緒。
再開した幼馴染。
彼女に返すためにしまっておいたリボンは、まだ机の中で眠っている。
765名無しさん@初回限定:04/05/05 02:48 ID:GoQIycKh
兄に全部持ってかれる?
嫌すぎんな…
766名無しさん@初回限定:04/05/05 13:52 ID:TgeiBR12
むしろこのまま進むなら、この兄なら仕方ないかなと思った
767名無しさん@初回限定:04/05/05 21:59 ID:6ioTwOTQ
(*´Д`)ヒロクン・・・・
768名無しさん@初回限定:04/05/06 15:22 ID:Wvy/lGV4
オワタノ?
769第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/06 18:44 ID:YHyZYVCn
家のプロバイダのアク禁解除されない。やけくそだ 会社からうpしてやる。

1/6
一日の授業が全て終了し、教室の掃除を終えると、いつもの様に音楽室へと足を向ける。
音楽室の鍵は、どちらか早くフリーになった方が職員室に取りに行くことになっていた。
今日は少しばかり掃除に時間を喰われたので、鍵は景子が空けていてくれるだろう。そう思って職員室に
は寄らず、直に音楽室へ向かった。
階段を上がり、2年生の教室が並ぶフロアの廊下を進む。突き当たりが音楽室だ。
付いて、ドアを開ける……あれ?鍵がかかってる。景子、まだ来てなかったのか。
鍵を取りに職員室へ行こうとした時、ドアの向こうから声が聞こえた。

「ふざけないでよ!!」

え?……中に誰かいる。……あの声は紛れも無く遠野景子の声だ。……なのになんで鍵が?

コンコン……ドアを叩いてみる。……返事はない。
もう一度。…………同じだ。

さっきの声は、別の所からのものか?
そう思って、確認のため、ドアへ耳を押し付ける。
けれども、耳を押し付けた程度で 防音処理されているこの教室で何が起きているかを聞くことなんてで
きるはずも無い。
わかるのは、誰かが中にいるのだろう という事。しゃべっていれば、声がするのはわかるけれど、とて
も何を言っているのかまでわかるものではない。
とにかく、いるかいないのかが判らなければ何も始まらないと、ドアに耳を強く密着させて中の様子を窺った。

耳の中に響く、ガヤガヤした雑音の中で、微かに人の声らしきものが聞こえる。やっぱり、中にいる。で
も何故鍵を掛けているんだ?

770第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/06 18:50 ID:YHyZYVCn
2/6
教壇の真中から少し右にずれて置かれているセミコンサートタイプのグランドピアノ、そのピアノの演奏
者の横顔を真正面に見据える一番前の席が遠野景子の指定席。
その指定席に座り、景子は 演奏者が来るのを待っていた。

本を読みながら、或いは演奏者の持ってきた楽譜を目で追いながら、その演奏者の奏でる音色に身を委ね
る……それは、景子にとって最も心安らいだ時間だった。
今は、それに 愛しい人と肌を触れ合い、お互いの愛を確かめ合う事が加わっていた。
けれども、肌の触れ合いが追加された事で、それは決して心安らぐだけのものではなくなっていた。
いや、むしろ辛さの方が大きかった。こんな事を学校でやっていれば、その内噂は広まり 二人の間は
否応無しに裂かれることになるのは、目に見えている。
なのに、会って愛しい人に愛撫された途端、その身に力が入らなくなってしまう。いや、積極的に愛を求
めようとしていた。
そうして、愛し合えば愛し合う程、背徳の行いに胸を痛め、心が押しつぶされそうになる。
愛しているからこそ、冷静に向き合わなければいけない、にもかかわらず、それができない自分に苛立ち
を感じていた。

今日は違う。

今日は、大切な話がある。肌に触れ、交じり合う余裕は無い。彼は、セックス無しに我慢できるだろうか?
けれどちゃんと、真面目に、伝えなければいけない、愛しているからこそ。

『―――何で、今日に限って遅いの?お願い、早く来て―――』
771第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/06 18:52 ID:YHyZYVCn
3/6
ここ何日か、景子とその愛しい人とは、すれ違いの日が続いていた。
景子がOKの時は、彼に予定が入り、彼が大丈夫なときに限って、景子に用事ができていた。
会えない日、会っても触れることのできない日、触れることができても愛し合えない日、そんな日が続い
て、もう狂い死にしてしまいそうな程だった。
結局、言い出す機会はいくらでもあったのに、何もいえなかった。
けれど、もう限界。期日は目の前に迫っている。おそらく、この日を逃せば、ちゃんと面と向って話す機
会はなくなってしまう。
景子の心臓は極限まで絞り上げられ、外に聞こえんばかりに激しく脈動している。
彼は、景子の話を聞いてくれるのだろうか。
『――大丈夫。彼なら、きっと解ってくれる。……私たちの愛は、こんなことじゃ絶対に崩れない。もう
少し、あと少しで彼は来る。―――』

コツコツという床を踏み鳴らす音、その音がだんだんとこちらへ近づいてくる。やがて、その音はすぐ近
くで止まり、ガラガラと扉を開ける音が聞こえてきた。

「もう、遅かったじゃない……
ちょっと拗ねたような、甘えた景子の言葉は、その半分も口から出ないうちに出口前でUターンして胸の
奥に戻っていった。

来たのは彼ではなく、かつて彼氏だった人だった。

772第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/06 18:53 ID:YHyZYVCn
4/6
「淳……ちゃん……」

「よぉ、久しぶり」

「何で、こんな処……来たの?」

「いや、1学期の頃から、お前が音楽室に入り浸っているって話を聞いてたから、卒業する前に一度見て
みようかと思ってね……」

到底景子に信じられる話ではない。
『――見え透いた事を……、私が此処に来るようになってから何ヶ月経っていると思うの?――』

「そんな話、信じると思う?」
せっかくの彼との逢瀬の時を邪魔しようとしている男に強い敵意の目を向けた。
けれど、男は景子の視線など何も感じないかのように無視して、部屋の中をうろうろと歩き回っている。
『―――こんな時に、彼が来たら―――』
景子の心に不安が過ぎる。捨てようとしていたのに、そのままになっていたもの……この男とのツーショット
の写真それを彼に見られてしまった時の事を。

その日を境にして、彼は咎めるように景子に愛を求めるようになった。
彼は景子を信じようとして、信じられなくて、その証を求め、景子はその求めに答た。
そうしなければ、彼は景子の前からいなくなってしまう。
彼には行く先がある。かつて彼が恋焦がれた、伊藤香織という行く先が。
景子には、行く先はない。あっても行く気はない。今の景子には、田川博之という人しか、心を寄せる人
間はいないのだから。
『―――彼はきっと誤解する―――』
景子の頭から、血の気が引き、頭が、目のあたりが、鼻の奥が、口の中が冷たく乾いたようになっていく。
773第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/06 18:55 ID:YHyZYVCn
5/6
『――とにかく今はだめ――』
急いでドアを閉め、鍵を掛けて目の前の人物に向き合った。

「ね、今日来たのはそんなどうでも良い事で着たんじゃないでしょう? もうすぐ、彼がくるの。話した
い事があるなら、さっさと話して出てってくれない?」
以前の景子だったら、信じられないような刺々しい口調だった。

「おーおー、怖いね。俺の知ってる景子はこんなきつくなかったんだけれど。もっと可憐で、儚くて、
こう触った途端に折れちまいそうな感じだったのに……女は恋をすると変わるって言うけど、それかな?」

冗談とも挑発とも付かない男の言葉には答えず、景子はその大きな瞳でじっと睨みつける。

「話は無いの?なら……」
鍵を開けるために扉に進もうとした景子の行く先を、男がさえぎった。

「話は、ある。けど、いくら防音になってても、此処じゃ他人に聞かれる。もっと奥へ行こう」
男に促され、奥に行く二人。確かにそこなら、よほど大声を出さない限り、外に聞こえることも無い。
けれど、それ程までして聞かれてはいけない話とは一体何?景子の両手足に力が入り、全身が硬くなって
いく。何かいけない事でも起こりそうな、嫌な感じがした。

「で、話って何?」
景子は、できる限り 冷静に、冷たく言い放つような口調で訊いた。もう、男の軽口など聞きたくない、
そんな気分を漂わせて言う。

男の答えも、まじめそのものだった。
「最近、噂に登ってる。 お前と、彼氏が此処でセックスし放題だって」
774第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/06 18:58 ID:YHyZYVCn
6/6
予想はしていた。彼氏と此処での逢瀬を繰り返していれば、証拠は無くとも簡単に噂くらいは立つ。
もう、此処は使えない、彼との間に残された時間をすごす場所所が一つ消えたのは残念だけれども。

「そう、ご忠告ありがとう。これからは気をつけるわ」
そう言ってドアの方へ以降とした景子の腕を、男が掴んだ。

「?!」

声を上げる間も無く、その体は男の方へと引き寄せられ、その唇に男の唇が重ねられていく。
必死で抵抗するものの、景子と目の前の男の力には天と地ほどの差がある。抵抗は空しく、なす術無く男
に唇を奪われるままにされるだけだった。
いいかげん呼吸が苦しくなった頃、男の唇が景子の口を離れ、ほんの一瞬景子を拘束する腕が緩んだ。
その時を逃さず、すかさず腕に力をこめ、拘束する相手の腕を懸命に押しのける。その甲斐あったのか景
子は男の拘束を解き、2、3歩離れて男に正対した。

「何をするの?!」

「やっぱり、……だめか?」

「だめか……って何?」

「いや、昔の頃に戻れないか……な、と思って」





ちょっと中途半端ですけど、今日は此処まで。
775名無しさん@初回限定:04/05/06 19:10 ID:N0R5/jcx
オワテナカター!! (゚∀゚)イイヨイイヨー
ついに景子タン寝取られがスタートでつか?
776名無しさん@初回限定:04/05/06 20:39 ID:AI1aPlCI
 ∧||∧
(  ⌒ ヽ  ヒロクンノ カワリニ クビツリ
 ∪  ノ  ウツダ シノウ
  ∪∪
777706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/06 23:21 ID:OuwIxdfb
∧||∧
(  ⌒ ヽ  
 ∪  ノ  
  ∪∪
778名無しさん@初回限定:04/05/07 01:22 ID:wyqiT1PP
ところでヒロくんの空手は何時披露されるの?
779y ◆Bq/xc5dbQQ :04/05/07 12:54 ID:SWk+8Wpg
_ト ̄|○
780第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/07 19:51 ID:ZjuyQcQ8
本日も会社からうp。尚、土日はアクセス規制によりうpできないとおもわれます事を、予めお詫び申し上げます。

1/5
「ふざけないでよ!!」

その声は、おそらく景子が生まれてこの方一番大きな声だった。
その声に、目の前に立つ男は勿論、自分自身もビックリしてその場に凍り付いて身動きできない程だった

二、三十秒程だろうか、二人の間に微妙な沈黙が流れた後、ようやく景子の方から話を切り出した。
「ふざけないで。私を捨てたのはあなたでしょう?よくもそんなことが……」

「ごめん。その時のことは謝る。でも、ああでもしなけりゃ、お前 諦めてくれないと思ったから」

「それ、……どういう……事?」

「いや、……お前はやっぱり妹だった。大切だけど、汚したくなかったんだ」

「そんな……じゃあ、何で私を抱いたの?」

「本当はね、お前を抱く気は無かった。けれど、あの時断ればお前、自殺でもし兼ねない雰囲気だったか
ら……だから、しかたなく……」

「『仕方なく』って……私の事、嫌だけど無理やり抱いたの?」
「淳ちゃんから誘ってきた事もあるよね? それもやっぱり『仕方なく』なの?」

「い……いや、俺も男だし……さ、性欲はやっぱりあるから……」
「何よそれ……それじゃ私が馬鹿みたいじゃない。勝手に好きになって、舞い上がって、無理やり関係結
んで、結局あなたの性欲処理の道具にされただけ。挙句の果てにあんな終わり方で捨てられるなんて」

781第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/07 19:59 ID:ZjuyQcQ8
2/5
「捨てたつもりは……無い。性欲処理の道具にしたつもりもない。あの時は、お前とセックスするのを
止めたくて、でも、すんなりとは行かないと思っていたから、ああいうやり方しか考えられなかった。
結局お前を傷つけて無理やり終わらせただけになっちまった。自分でも最悪だと思っている。すまない、
許してくれ」

「……ね、教えて。あの時在った女物の下着は何だったの? あれは、私を諦めさせるための細工だったの?」

「いや、あれは……誘われれば、悪い気はしないし」

ふっと 景子の口から深い溜息が漏れる。

「何だかんだ言っても、私にとって最悪の形で振られた事には変わりないんだよね」

「ごめん。ちゃんと気持ちを伝えれば、こんな事にならなかったんだよな。あの時のことは、本当にすま
ないと思ってる。解ってくれ、大切だから、大事にしたいから抱きたくないっていうのもあるんだよ」

「そんなの解んないよ。……それに、私たちもう、終わったんだよ、今更 なんで私の処に来るの?」

「だめなのか?……何とかならないのかよ?……頼む、元に戻ってくれよ」

「もう、遅いよ、とっくの昔に終わったのに。こんな未練たらしい科白、淳ちゃんの口から聞きたくなか
った。昔の淳ちゃんは、やさしくて 周りにちゃんと気配りができる人で、少なくとも こんな事を言い
に来る人じゃなかったのに。何が……あったの?」

「ん……いや さ、俺 ちょっと余裕無くしちまって」

782第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/07 20:00 ID:ZjuyQcQ8
3/5
「どういう……事?」

「俺、プロのサッカー選手目指してたのは、知ってるだろ?」

「うん。淳ちゃんからさんざん聴かされたもの」

「それでさ、スカウトが来たんだけれど、それがJ2の下の方のしか来なくてさ、しかもサテライトから
だって言うんだよ」

「……」

「自惚れなのは解っているけど、ショックだった。自分はもっと上手いって、もっと高く評価されてるっ
て思ってた」
「でも、そこで頑張って活躍すれば もしかしたらJ1から声がかかるかもしれないし、自分の力でチー
ムをJ2からJ1に引き上げるのも悪くないって思った。それで そのチームの合宿に参加したんだ」
「そしたら、J2の、しかも、去年JFLからやっと上がったばっかりの、それも サテライトなのに、
俺なんて全然かなわないんだよ。俺より上手いやつがゴロゴロしてるんだ。もう ショックでさ、ムキに
なってやってたら、膝 やられちまって、おかげで選手権は予選で負けちまうし……解るだろ?こう言う
時、誰かにいて欲しくて、だからお前に戻ってきてほしいんだよ」

男の訴えかけるような眼差しに景子の心がグラグラと揺れだす。
――駄目。こんなと事で気持ちが揺らいじゃ――
男に動揺を悟られない様、努めて平静な表情を作り上げる。

「それ、妹に言う言葉じゃないよ。淳ちゃん、彼女いるじゃない。そういうのは、彼女に言わなきゃ」

「言えるんなら、とっくにそうしてるよ。言えないから、お前に言ってるんじゃないか」
783第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/07 20:02 ID:ZjuyQcQ8
4/5
男が語気を強めて叫ぶ。男にも余裕は無く、それ故真剣であることが、景子にも感じられた。

――彼女に言えないって、一体何が……――
「彼女と……伊藤さんと、何かあったの?」

「あいつ……香織のやつ、浮気してる」

「嘘!」

「嘘なもんか。ちゃんと証拠だってあるんだ」

「どんな……証拠?」

「あいつさ、こともあろうに、俺とやってる最中に他の男の名前、呼びやがった」

「!!……」

意外な事に、伊藤香織が複数の男と関係しているという噂話は無かった。
勿論、二股の話は当然校内に飛び交っている。景子だって、その話は何度も耳にしていた。けれども、
その話だって景子が彼と付き合いだした頃から、とんと聞かれなくなっていた。
それどころか、二股解消の頃、落ち込んでいた香織にアタックを掛けてあえなく撃墜された男子が何人も
居る、という噂さえ流れていた。

という事は、香織の浮気相手というのは景子が知る限り一人しかいない。
景子の顔色が変わる。それを見て取ったかのようなタイミングで 男が言葉を投げつける。

「そうだよ、その間男はお前のよく知ってるやつだよ」
784第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/07 20:04 ID:ZjuyQcQ8
5/5

「やめて」

「そいつは、俺と香織が付き合っているのを知っていて、手を出したんだ」

「やめて!」

「そいつの名前はな」

「やめてってば!聞きたくない!!」

「田川博之。お前が今付き合っているやつだよ」













本日は此処まで。

次回は、アク禁解除されたら 明日にでも、されなかったら、月曜日となります。
それでは皆さん、ごきげんよう。
785名無しさん@初回限定:04/05/07 20:25 ID:6KR8ALED
>>780-784
603氏、乙
さあ、ヒロくんが男になるか、ヘタレで終わるか?
両手に花を目論む先輩の作戦か?または、なにか裏があるのか?
香織が水面下で動いているのか?・・妄想がふくらむね。

個人的にはヒロくんに男になってもらいたいな、と思う今日このごろ。
じゃないと、ヒロ君はこのまま最初から最後までヘタレっぱなしで終わるような気がして・・・

続きはなるべく早く見たいけど・・・期待してますよ。

786名無しさん@初回限定:04/05/07 22:52 ID:QwttYMYf
いや、ここで試されてるのは景子だろ。
先輩の口車に乗せられるか、ヒロくんを信じるか。
もちろんこのスレ的には前者でのヒロくんの反応に
期待してしまうわけだが。
個人的には自殺の可能性を含めたきついのを期待
787名無しさん@初回限定:04/05/07 23:18 ID:FTmSa9KW
俺としては景子が口車に乗せられても
ヒロクンにはヒロクンで信念を貫いて欲しいね。
というか今のところヒロクンには落ち度がまったくないし
そのへんヒロクンの価値を下げないで欲しい。
それでヒロクンが耐えられるかはわからないけど。
って、これ寝取られスレ向きの考え方じゃないな…
788名無しさん@初回限定:04/05/07 23:24 ID:tZJbw/up
603氏の話は香織・景子の寝取られ萌えと、
ヒロ君に対する純愛燃えという、相反する要素を持ってしまったような気がする。
っていうかヒロイン達にとって、読者の萌えは、ヒロ君に寝取られている(w
789名無しさん@初回限定:04/05/08 01:43 ID:9W3zUHrY
オレ達の合言葉は『ヒロ君萌え』だ!
790名無しさん@初回限定:04/05/08 01:47 ID:6PHvJBV/
俺はたとえどんなに主人公が魅力的でも
心理的なスパイス以外の意味では
「寝取られないで欲しい」
と思ったりしない自信があるw
791名無しさん@初回限定:04/05/08 02:01 ID:A1Sa6BhH
この話においてのヘタレはヒロクンではなく香織。
でも先輩が言っていることがブラフではなく香織の策略の内だったら
ヘタレから寝取り女にクラスチェンジ。
792790:04/05/08 02:12 ID:6PHvJBV/
あ、でも女の側にあまり寝取られるイメージが湧かない、ってのはいるかな。
あんましそそらない、っつうか。
まあ、そういう意味では景子たんはがっつり寝取られて欲しいっす。
香織はヒロ君的にこれ以上どうなることもないのかな?
793名無しさん@初回限定:04/05/08 07:57 ID:MFVSuSaa
ああ、でもこれ先輩の言ってる事が本当だとすると先輩も寝取られ君なんだな。
でそれを前提に考えてくと・・・


  香 織 が 全 て の 元 凶 じ ゃ ん


ナチュラルボーンの爆弾女かよ
794名無しさん@初回限定:04/05/08 12:41 ID:4xMiOYkY
実は先輩はヒロ君狙いだったんだよ!
795名無しさん@初回限定:04/05/08 13:13 ID:wGTkOSLI
男らしく先輩のカマ掘って完
796名無しさん@初回限定:04/05/08 15:51 ID:5zNzLojk
>>785
ヒロインを常に撃墜するエロゲ主人公を見慣れてるとへたれに見えるが、
普通に考えるとヒロ君は良くやってる方だと思うぞ。

しかし景子までヨヨ化しちまいそうだ…
今後の展開がどうなろうとヒロ君の女運のなさは確定だな(w
797第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/08 23:25 ID:CjjB/mdO
どうやら、アク禁は解除された模様。やったぜ!

1/7
景子の脳裏に、あの日の事が浮かぶ。
彼から聞かされた、その前日の彼と香織とのやり取り。彼を諦めていない香織と、香織の言動に心を揺ら
す彼。そんな彼を失う事に恐怖し、それがきっかけで結ばれた事。
しかもその直後、自分の失態が原因で彼に拭えない不信感を与えてしまった事。

此処のところ、彼とのすれ違いの日々、その間に関係があったという事は考えられなくもない。
というか、疑えば 怪しいところは沢山ある。……けれど、証拠はない。あるのは、目の前の男が言った
言葉だけ。

なのに、彼の言った言葉を心から信じることができず、男の言葉に心を揺れ動かされる。
何故、最愛の人を信じることができないのか、自分が嫌になる。
心の中でギリギリの抵抗を試み、疑念を無理やりにねじ伏せて、景子は言葉を搾り出した。

「彼女には……訊いたの?」

「ああ、訊いたさ」

「何て言ったの?」

「勿論、『やってない』て言った。……その後、ずっと謝ってばっかりだった。『ごめんなさい、信じて欲
しい』て」

「淳ちゃん……彼女のこと、信じてあげられない?」

「信じられるんだったら、こんな所にいるわけ無いだろ。……そりゃ、信じたい。信じたいけど、駄目な
んだよ。信じようと思えば思うほど、香織とあの一年坊主が仲良く抱き合っているところが目に浮かんじ
まうんだよ!!!」
798第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/08 23:26 ID:CjjB/mdO
2/7
景子の目に、男が小さく見えた。……かつて憧れ、愛した存在。その時は大きく、強く、厚く、やさしか
った。包まれ、守ってくれている感じがして、安心感があった。
その同じ人物が目の前で肩をまるめ、苦悩し、声を震わせて助けを請うている。そのあまりの違いに、思
わずその肩を抱き寄せたくなる感情が沸き立つのを、景子は慌てて封じ込める。
――私がこの胸に抱きしめる相手は、この人じゃない!――

「でも、……私は淳ちゃんの妹でしょ?妹にこういう事吐き出しても、聴いてあげる事くらいしかできないよ」
「やっぱり、こういうのは恋人じゃないと」
景子の心は崩壊寸前だった。これ以上話を続ければ、目の前の男への気持ちと彼への気持ち、どちらが本
当なのか解らなくなる。

けれど、男にはそんな都合は通用しない。

「いや、だから妹じゃなくて……恋人同士に戻れないかって言ってるんだよ」
景子の心臓が『ドキン!』と一拍強く鳴り響く。と同時に切ない気持ちと激しい怒りが一緒くたになって激
しく彼女の頭の中で渦を巻いた。

「……馬鹿にしないで。あの時私を捨てたのは、妹にしか見えないからだったんでしょう?そう言ってお
いて、今更恋人同士ですって?いい加減にしてよ!」

「な……何だよ?!」

「貴方は、淳ちゃんじゃない!! 貴方は……あなたは、私の知っている淳ちゃんじゃない!!」
「私の知っている淳ちゃんだったら、たった一言の失言で恋人を信じなくなって、昔捨てた女と、それも
妹同然の女と寄りを戻して、しかも恋人同士になろうだなんて、そんな浅ましい心はもってないもの。
……こんなのは、私の淳ちゃんじゃない!!」
799第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/08 23:27 ID:CjjB/mdO
3/7
男は、景子の剣幕に気押されていた。
人生で初めて経験する挫折がきっかけとはいえ、脆くも折れた自分の心の奥を見透かされ、何の反論も出
来ない事に、苛々を募らせるばかりだった。
せめてもの反撃なのか、景子へ言葉を向ける。

「お前はどうなんだよ。お前は、あの一年坊主を信じられるのかよ?」

急に自分に質問を振られたことに、景子はハッとなった。……そう、自分は彼を信じられるのか?この男
のことを、憐れと同情するほどの余裕があるのか?
……考えた。
今の関係を壊したくないのなら、答えは一つしか無い筈なのに。なのに、すぐに答えを出すことはできず、
堂堂巡りを繰り返している。

出した答えに、景子は苦渋の表情を浮かべた。

「私は……信じる。 証拠が無さ過ぎるもの、信じるしかない」
声は震えていた。涙腺は崩壊寸前で、ちょっとつつけば、涙が溢れ出しそうだった。

「そうか……景子は、彼氏を信じるんだ……強いんだな」
観念したのだろうか、今までとは打って変わって、男の表情は優しく、少し悲しげなものになっていた。

「馬鹿な事を言い出してごめん。もう行くわ」
そう言ってドアへ向けて歩き出す男の足取りに、景子は今更ながらに気付いた。足を少し…いや大分引き
摺っている。表情もひどく辛そうだった。

「淳ちゃん……その足……」

800第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/08 23:28 ID:CjjB/mdO
4/7
「だから言っただろ?怪我したって。靭帯伸ばしちまったんだよ」

「……ひどいの?」

「医者が言うには、全治3ヶ月だってよ。最近リハビリが始まったんだけど、これが痛いのなんのって……」
おどけた口調で話す男の顔に余裕は見られなかった。

「淳ちゃん……」
景子が、男の肩に優しく指先を這わせる。

「景子……」
男の手が景子の頬に触れると、景子の両手がその手を掴み、自分の頬に押し当てる。まるで愛しいものを
扱うかのように。

景子が何故そんな事をしたのか、おそらく本人にすら説明のできることではないだろう。
昔愛した男にまだ愛情が残っていたのだろうか?もう、博昭の事は 良くなってしまったのか?
言えるのは、そういう事をした という事実だけ。

けれど、さらに一つだけ言える事は、その行為は男の平常心を失わせるには十分過ぎるもの という事だ
った。

その瞬間、男の理性が弾け飛んだ。

「景子。景子!」
男の腕が荒々しく景子の細い体に巻き、自分の体に引き寄せ、密着させる。

801第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/08 23:29 ID:CjjB/mdO
5/7
「……淳ちゃん何するの?!、嫌……やめ……て」

景子は必死で抵抗した。必死で暴れ、ちょっとでも隙があればその腕をかいくぐって、今度こそ鍵を開け
て外へ出るつもりだった。
けれども、その身は未だに男に絡め取られたまま、ただ力なくその腕を押しつづけていた。

力が、入らない。
嫌なのに、彼に見られたら困るのに、思い切り力を入れることができない。

「景子……駄目なのか?何で?……たのむ。今は、お前しかいないんだ。……お前もいなくなったら、俺
は……」
男の声が頭の後ろで囁かれる。初めて聞く、元彼の泣きそうな声。その声が耳に入る度に、景子の腕から、
全身から力が抜けていく。
付き合っている人がいるのに、かつて愛した人に迫られ、それを許そうとしている自分に景子は吐き気が
を催した。
けれど、どんなに嫌でも、どんなに自分を責めても、体はいう事を聴かず、ただ男のされるがままになっ
ていた。

「景子、景子、けいこ、け い こ………愛してる」
男は、景子の名前を連呼し、その両手で、景子の体中を弄っている。右の手は、胸を揉みしだき、左の手
は膝から内腿へと、擦る部位を徐々に上にあげながら目的地を目指していた。

いつのまにか、景子の体は反応し、ショーツに大きな染みを作っていた。

――何で?……何でなの?……何で彼の手じゃないのに、体は反応するの?――
せめてできる事は、この行為に、悲しみの表情と、涙を男に見せる事だけ。
男にこの涙の意味は伝わったのだろうか。
零れる涙を、男の指が拭い……囁く。
「彼氏のことは、忘れろ。 昔の二人に戻ろう」
802第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/08 23:30 ID:CjjB/mdO
6/7
耳をどんなに強く扉に押し当て、神経を集中させても、中の様子は聞こえなかった。
ただ、中に人がいるだろうという事と、中の人が話をしているだろう という事がわかるだけ。
もっと良く中の様子がわかる方法は無いだろうか?
どこか隙間らしきものはないかと、扉を隅々まで舐めまわすように探っていると、後ろでクスクスと笑い
声が聞こえた。
後ろを振り向くと、女子生徒が二人、俺の姿を見て なにやら笑いながら話をしている。

いかん、これじゃ単なる変質者だ。もっと他の方法を考えないと。
そう思って音楽室を後にしようとした時、ゴツゴツと誰かが歩く音が微かに聞こえた。
慌てて耳をドアへ押し付け直す。人が見てようと構うもんか。恥も外聞も言ってられない。

聞こえてくるのは、相変わらず耳の穴の中で反射するノイズが殆ど。その中で、かろうじて誰かの話し声
が聞こえた。

『景子、景子、けいこ……』

その男の声は、誰かはわからない。……いや、中川先輩で間違いないだろう。

さっき聴こえたのは、景子の筈……。

ドキン!と心臓が高鳴る。胸が痛い。嫌な予感が頭に、胸に、そして全身に急速に広がっていく。心臓は
急速に動悸を速め、全身の血管は拡張し、体全体が熱くなる。一体中で何が起こっているんだ?

全神経を耳に集め、中の様子に耳をすませる。けれど、何も聞こえない。
いっそのこと、ドアを蹴破って中に入れたら、と思う。けれど、厚く重い防音扉は、普通の人間が蹴って
簡単に破れるほどやわな存在ではない。
どうすればいいんだ?
803第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/08 23:33 ID:CjjB/mdO
7/7
中では、何か良からぬことが起こっている気がしてならない。とにかく、今止めないと取り返しのつかないことなる。

根拠は無い。けれど、それは間違いないと本能が叫ぶ。
けれど、この鍵が開かない限り、どうにもならない。一体、どうしろって言うんだよ!!

は、鍵。……そうだ、スペアがあるはずだ。そのある場所が考えられるのは……
俺は、この扉に背を向け、一目散に走り出した。












今宵は此処まで。
果たして、ヒロは間に合うのか?!
Good night.
804名無しさん@初回限定:04/05/08 23:39 ID:APETCSQe
スペアキー捜すより正拳突きで扉破れと。
なんのための空手なのかと小一時間問い(ry
805名無しさん@初回限定:04/05/08 23:45 ID:CdSk6bQk
間に合ってくれ〜!!
いや、マジで。
806名無しさん@初回限定:04/05/08 23:49 ID:0J4at5xw
ケガもカオリンの一言も先輩の壮大な「釣り」ではなかったのか。
ちと残念。

とかいいつつ、実は先輩のケガも含めて全て元凶は香織だった!
とかいうオチだったら603氏を神とあがめるな。
807名無しさん@初回限定:04/05/08 23:52 ID:5gUFcKyz
仮に間に合ったとして、空手使って先輩殴ってケガさせたら
景子がひどい!脚を怪我してるのに!とか言って先輩側に
つきそう・・・。
頼むぞ景子〜、、、「信じる心」(ドラクエ4アイテム)を使ってくれー
808名無しさん@初回限定:04/05/09 00:03 ID:o2vjH9dw
まあ、ここでは間に合ってもいいかな……ここでは。
でもやっぱドキドキ期待
809名無しさん@初回限定:04/05/09 00:59 ID:2FNfinpN
ここでまた香織がヒロ君の邪魔をしに入るわけですよ
810名無しさん@初回限定:04/05/09 01:38 ID:r0Uzx3Z9
先輩は何を考えているんだ?
ヒロクンに個人的な恨みがあるのか?
それとも昔の女に手を出されたのがむかついたのか?
まさか景子にマジになったわけじゃないよな?
まあ香織とのことやケガの真偽もわからないし
全ての真実は香織日記第二章待ちかな?
811名無しさん@初回限定:04/05/09 01:48 ID:jMl3jJck
とりあえずノックする事から始めよう。
812名無しさん@初回限定:04/05/09 02:16 ID:pxgZbTrn
ここは間に合わないで、ヒロ君が壊れるのを期待。
そしていよいよ香織の本領発揮ですよ!
813y ◆Bq/xc5dbQQ :04/05/09 10:18 ID:dFd0Zqho
ヾ(;゚;Д;゚;)ノ゙
814名無しさん@初回限定 :04/05/09 12:11 ID:k5b0D5/o
単純に寝取られってことだけ考えれば、間に合わずに先輩→景子の和姦シーンに遭遇しちゃうのが王道
でも、ことヒロ君に限ってだけは幸せになってほしいと思うスレ住人も大半を占めてるわけで
この二律背反する気持ちをどう収めるかが見物ですねー
ちなみに自分は前者に1票
たまには王道もいいじゃない
815名無しさん@初回限定:04/05/09 13:21 ID:btpkWfZW
ヒロ君に幸せになって欲しいとこのスレの住人に思わせてる時点で、
最高の寝取られ劇になることは保証されているようなものだな。
そんな俺もヒロ君には幸せになって欲しい。ここで寝取られる
その衝撃はかなりきそう。まさに最狂。
816名無しさん@初回限定:04/05/09 18:25 ID:/q9peYBM
1票ってなんだ。
得票数が多いストーリーに進むわけじゃあるまいし
817名無しさん@初回限定:04/05/09 22:52 ID:bV93/ueF
昔の名残だな
818第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/09 23:32 ID:iYC/KmZw
今夜も引き続きうpしまする。さて、驚愕の結果となるかどうか・・・・・・
1/5
男の指が、景子の股間に喰いこみ、クチュクチュと音を立てている。
反対の手は、カップの中に潜り込み、優しく乳首を愛撫していた。

「ぁ……ぁあ、……ぃ……ゃ……」
口からは、断続的に喘ぎ声が漏れ、下の口からは大量の愛液が漏れ出し、彼女の履いた下着は既にびしょ
濡れになっていた。

壊れたような、うつろな彼女の視線の先には、何も写っていない。ただ、目の前の風景が拡がっているだ
け。目尻には涙の流れた痕が何本か頬から顎 首のあたりまで続いていた。

「フッ」
シニカルな笑い声が、景子の口から漏れる。

『そう、私はこんな女。好きな人がいるのに、とても大切な人なのに、他の男に股を開き 股間を濡らす、
いやらしいメス豚』

『ねえ、田川君、あなたは私がこんな事をしていると知ったら、きっと嫌いになるでしょうね?』
『私は、貴方を裏切って取り返しのつかない事をした』
『貴方には、もっと良い、人がいるはず。私なんかは、貴方には相応しくない』
『私はもう、貴方に顔を会わせることなんて 出来ない』



『……さようなら……』
819第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/09 23:32 ID:iYC/KmZw
2/5
職員室の手前で急ブレーキをかけて足取りを緩め、乱れた呼吸を無理やり整え、努めて冷静な表情で中に
入る。

「失礼します。音楽室の鍵を借りにきました」

けれども、返事は聞こえない。席には音楽の教師はいなかった。
くっ!こんな時に。
愚痴を言っても始まらない。やむを得ず、引出しの中を探る。荒らしと間違われない様、慎重な手捌きで。
周りの教師たちは、俺の表情に異常なものでも感じたのか、遠巻きにしてジロジロ眺めているだけだった。

鍵は見つからなかった。
あそこの鍵は、スペアが無いのか?もう、手は無いのか?
諦めようとした時、思い出した。
かつて、遅くなって職員室にまで鍵がかかってしまった時、事務員室に鍵を持っていったことを。
そうだ、もしかしたらあそこに有るかもしれない。

事務室へと足を向ける。廊下には何人か教師がいるため、走れない。歩く歩調を速め、できる限り早く着
くように急ぐ。なれない歩き方に焦りばかりが募る。この廊下はいつの間にこんなに長くなったんだ?

ようやくたどり着いた。
ドアを開け、勢いをつけて叫ぶ様に声をだす。

「すみませ―ん。音楽室の鍵を貸して下さい」

事務員の人がいぶかしそうな目つきでこちらに向かってくる。

「音楽室の鍵なら、音楽の桐山先生がもってるでしょ。そっちから借りて」
820第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/09 23:35 ID:iYC/KmZw
3/5
「それが、先生の机には鍵が無くて……先生、いらっしゃらないから どうすることもできなくて……
お願いします!!!」
頭を膝に擦り付けんばかりに拝み倒す。とにかく鍵が無ければ、どうしようもない。

「お願いします!!!」

「先生から借りて」

そんな押し問答が暫く続いた後、根負けしたのか 事務員の人は 鍵を貸してくれた。
ブスッと不満げな表情なのは、相変わらずだったが。

『ありがとうございます!!!』
ちょっと大袈裟に最敬礼して感謝の意を表すと、音楽室へ向けてダッシュした。
頼む、間に合ってくれ。
821第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/09 23:36 ID:iYC/KmZw
4/5
扉は、開いていた。
中に人は無く、窓から指す西日に赤く染まる教室が 寂しく拡がっていた。
まるで 最初から扉に鍵など掛かっていなかったかのように、
まるで 最初から中に人などいなかったかのように。
扉は間口を大きく開け、これから待ち人が来るのを待っているかのような佇まいだった。

さっき聴こえていたのは気のせいだったんだろうか?
そもそも、俺はさっき此処に来ていたんだろうか?
今日は、今 はじめて此処に来たんじゃないか?
それなら、彼女も直に此処にくるに違いない。それまではピアノでも弾いて待っていよう。

いつもの様にピアノに向かって歩を進める。目の前には、いつも景子が座っている席。
ふと床に目が行った。

タイルの床にこぼれた、水滴のようなもの。近寄ってよく見てみると、それは水ではなく、
半透明に濁り粘り気を帯びていた。

辺りに 微かに生臭いような、汗臭いような、女の子から出る独特の甘いような 匂いが漂っている。

胸が痛い。心臓が破裂しそうなほど、鳴っている。
頭が痛い。体中の血液が みな頭へ集中し、破裂しそうだ。

気のせいなんかじゃない。さっき、此処には人がいた。
俺は、確かに此処に来ていた。
そして、中にいる人の声を聞いていた。

そこにいたのは、俺の彼女と、彼女の元彼……中川先輩・・・・・・だと思う。
822第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/09 23:37 ID:iYC/KmZw
5/5
そして、そこで………そういう事があったんだ。

どうして?どうして?どうして?
俺が悪いのか? 俺は何をしたんだ? 景子に振られるような何を、俺はしたんだ?
やり場のない怒りが湧き起こり、手当たり次第に拳をぶつけたくなる衝動に駆られる。そしてその直ぐ後、
絶望感が全身を覆っていった。
全身の力が抜け、視界が歪む。

家に着いた時、俺の顔は涙と鼻水でグシャグシャになっていた。



部屋のベッドに横たわり、手に持った携帯のダイヤルを機械的に押す。
スピーカーから流れる『圏外』のアナウンス。
いったん切って再度ダイヤル。
変わらず、流れるのは同じ言葉の繰り返し。もう、何十回、いや何百回同じ事を繰り返しているだろう。



その日、景子からの連絡はなく、次の日から景子は学校に来なかった。
823名無しさん@初回限定:04/05/09 23:44 ID:btpkWfZW
オワタ
824名無しさん@初回限定:04/05/09 23:50 ID:o2vjH9dw
マニアッテネ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
いやっほう、期待以上。

でもゴメンだけど603タン、「フッ」はどうかと思ったw
どうしても笑いのツボを刺激されてしまうよ……
825名無しさん@初回限定:04/05/09 23:52 ID:42siFJ3k
「フッ」 にワラタ
826名無しさん@初回限定:04/05/09 23:54 ID:ksqEaQur
もう終わったあとでつか・・・・・_| ̄|○

鍵探して戻ってくるまでに終わってるって先輩早漏?

なんにせよ鬱。
827名無しさん@初回限定:04/05/09 23:58 ID:pxgZbTrn
予想の斜め上を行く展開だ。先が見えない
個人的には香織がどうなってるのか気になるとこだが
828名無しさん@初回限定:04/05/10 00:26 ID:63tUhBZ+
俺はメス豚にワラタ
829名無しさん@初回限定:04/05/10 00:43 ID:5wuOYs4/
しかし香織の心情と比べてみると、
エラク違ってて笑える。
香織の場合、両方とも「アタシのもの」と決めてかかってるふしあるし。
830名無しさん@初回限定:04/05/10 00:51 ID:M6eMpSff
景子の自己陶酔?にワロタ
831名無しさん@初回限定:04/05/10 01:17 ID:FmfyPRI4
自虐と偽悪だな。
まー、そーゆーのってたいていは自己陶酔に裏打ちされてるわけだが
832名無しさん@初回限定:04/05/10 01:36 ID:x/9xBW0S
今までの景子とは遥かに離反したキャラクターにちょっとがっかり…。
「メス豚」という単語が出るような子だった…??

なんだか、外野(読み手)の言葉に惑わされて、
作者の中でのキャラクター造形があやふやになってしまっているような気がする…。

でも期待してるので読み続ける心積もりなわけですが…(._.;)ゞ
833名無しさん@初回限定:04/05/10 09:34 ID:geic4zJ7
寝取られ好きって凄いな。
834YUKI ◆Bq/xc5dbQQ :04/05/10 11:08 ID:lqD93TyZ
・゚・(ノД`)・゚・ヒロクン......
835名無しさん@初回限定:04/05/10 11:50 ID:HdfclMnB
香織は処女膜にケアルガかけて出直してこい!
836名無しさん@初回限定:04/05/10 14:24 ID:J5iFhzip
>835

ケアルガかけても甦らないぞ・・・。
837名無しさん@初回限定:04/05/10 17:33 ID:DOQ3Bsky
香織はバニッシュデスでよいよ
838名無しさん@初回限定:04/05/10 17:54 ID:gMNfWhSw
メガフレアで完全焼却
839名無しさん@初回限定:04/05/10 22:20 ID:zu9VFaZH
やはり斬鉄剣だろ
840名無しさん@初回限定:04/05/10 22:40 ID:Y5msReui
みんなのうらみ
841名無しさん@初回限定:04/05/11 00:44 ID:zgZ5GZGO
プチメテオ
842名無しさん@初回限定:04/05/11 00:54 ID:OwNXjWyt
アルテマ
843名無しさん@初回限定:04/05/11 00:56 ID:QHw8aiy2
香織に自白剤うって、
思うさまをぶちまけてもらっても面白かろうな。

先輩、ヒロくん、ともに立ち直れないほどのショックうけそう。
844名無しさん@初回限定:04/05/11 11:43 ID:Qea4dgKK
>>840
ワロタ
845名無しさん@初回限定:04/05/12 01:31 ID:mL0nr5JZ
初めてこのスレを見た人がいきなり>>835-843を見たら
香織がどんな存在なのか本気で悩みそうだ
846名無しさん@初回限定:04/05/12 01:46 ID:5euKCHha
やっぱり香織は人気ないなw
847名無しさん@初回限定:04/05/12 01:56 ID:B+KEB2ES
そんな事は無い
848名無しさん@初回限定:04/05/12 07:25 ID:BHt8b4j5
香織タソはDQNなほど輝く女だよ
849名無しさん@初回限定:04/05/12 12:11 ID:9YQUUVqc
つまりオワタってことだろ?
850名無しさん@初回限定:04/05/13 20:52 ID:FCoQaHOS
アク禁ディスカ?
851名無しさん@初回限定:04/05/14 06:42 ID:BGeurUif
_ト ̄|○  オワタンディスカー!!
852第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/14 12:40 ID:rhwBH3U3
>849,850,851

単に続きができていないだけです。
853名無しさん@初回限定:04/05/14 13:06 ID:hlujXqix
ヤッパリ オワテター!!
854名無しさん@初回限定:04/05/14 17:19 ID:KDH079m5
>次の日から景子は学校に来なかった。

景子たん、学校辞めちゃったのかね?
855名無しさん@初回限定:04/05/14 17:58 ID:mkIeAdVJ
>852
「オワタ」ってのは保守の代わりみたいな慣用句だと思って良いかと
856名無しさん@初回限定:04/05/14 18:28 ID:4cIbrQn1
次に景子タソとはドコで会えるのかが勝利の鍵だな
857名無しさん@初回限定:04/05/14 21:58 ID:14OuPksP
紙面で会うと見た。
遠野景子さん(17)が・・・
858名無しさん@初回限定:04/05/14 22:54 ID:tkmfx2VB
景子の家の前で先輩と景子がキスしてるところに出くわすに決まってるじゃないですか。
859名無しさん@初回限定:04/05/15 12:57 ID:vQbrlASw
一日一オワタ
860名無しさん@初回限定:04/05/15 14:57 ID:tqpQYLd3
ストーリー展開を予想してる香具師は何をしたいんだ?
861名無しさん@初回限定:04/05/15 15:12 ID:AfUhnn5v
>860
性欲をもてあましているだけです
862名無しさん@初回限定:04/05/16 16:19 ID:j2XXbprp
>814>860
空気嫁
妄想が妄想を呼びつつも、その後の流れに思いを馳せるのがこのスレの流れ
863名無しさん@初回限定:04/05/16 16:20 ID:j2XXbprp
スマソ
違)>814 → 正)>815
864名無しさん@初回限定:04/05/16 16:24 ID:j2XXbprp
違)>815 → 正)>816
連投スマソ…
スレ汚しまくり…マジで申し訳ない
俺のほうがよっぽど空気読めてないわ(;´Д`)
865名無しさん@初回限定:04/05/16 19:00 ID:3OP6Vzp7
>>862-864
ワロタ
866名無しさん@初回限定:04/05/16 19:56 ID:OSJsQ8cp
>>864
どんまい
867名無しさん@初回限定:04/05/17 15:43 ID:0nMYFPKr
どんとまいんど えんじょいねとられ
868名無しさん@初回限定:04/05/19 00:21 ID:zexrKBym
ボッシュ
869名無しさん@初回限定:04/05/19 01:20 ID:N7lFRlZS
オォーワチャー
870名無しさん@初回限定:04/05/19 13:03 ID:VUvz/WXT
オワタ
871名無しさん@初回限定:04/05/19 16:57 ID:KusUGG1C
普通に保守ってかけば良いじゃん
872名無しさん@初回限定:04/05/20 01:00 ID:k952Sxq+
今やここの保守はオワタで行うのが正しいように思えてきたよ
873名無しさん@初回限定:04/05/20 01:43 ID:blwcXOaL
オワレ
874名無しさん@初回限定:04/05/20 14:10 ID:ppWhEmR1
>>871は空気が読めずに彼女を寝取られる香具師
875名無しさん@初回限定:04/05/20 16:29 ID:CW/PeLdG
寝取られ初体験はみかん絵日記ですたオワタ
876名無しさん@初回限定:04/05/20 23:40 ID:9rwd9AIb
激しくオワタ
877第二夜603 ◆fzpLpgOYbk :04/05/20 23:57 ID:fP0ykTD4
すんません。
ここ数日、身内にトラブルがあったため、作業を進められませんでした。
とりあえず、その件は本日で終了。
執筆を再開しています。(リリピュー見ながらだけれど)
878名無しさん@初回限定:04/05/21 10:16 ID:7Af6WGri
奥さんをPTA会長に寝取られたに100オワタ
879名無しさん@初回限定:04/05/21 12:35 ID:K0nEpWVn
もう遠い昔の話になるけれど、◆LZ40ROiqVQ氏はどこへ行かれたのですか?
どこかのスレに寝取られたのですか?
880名無しさん@初回限定:04/05/21 13:44 ID:BAGp3Nbz
>>878
イキロオワタ
881名無しさん@初回限定:04/05/21 18:25 ID:JlHK30u3
>>879
私も◆LZ40ROiqVQ氏召喚したいな〜。
882名無しさん@初回限定:04/05/21 20:52 ID:fUgfV+EJ
ヒロクンの可哀想さにリアルで涙した俺は一体なんですか?
可哀想過ぎるよなヒロクン・・・・。あぁ・・・涙が・・・。
883名無しさん@初回限定:04/05/22 00:06 ID:z9P0J/IT
だが主人公が惨めになればなるほど
寝取られ度は高くなり読者は興奮するという罠
884名無しさん@初回限定:04/05/22 14:13 ID:Hf442jTW
うむ。
885名無しさん@初回限定:04/05/22 16:07 ID:mGPlrOpg
主人公=自分なら寝取られ感も増すんだが
ヒロクンは例えるなら無二の親友?ってところ。
俺はどうなってもいいからヒロクンは幸せになってくれ!
886名無しさん@初回限定:04/05/23 12:40 ID:RVoQTLYW
確かに、長い付き合いのせいか他人とは思えん。
アレ?
887名無しさん@初回限定:04/05/23 13:35 ID:Nir8f+21
みんな、もっと短く表現できるだろ
「ヒロくん萌え」
888名無しさん@初回限定:04/05/23 16:56 ID:m+K4uwC5
ヒロくんage
889706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/25 00:24 ID:DCoQL6wY
ご無沙汰です。
バッくれてませんよ?
ぼちぼちとうpです。
890706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/25 00:25 ID:DCoQL6wY
(1)

昔から歩きなれた通学路でもある海沿いの県道。
行き交う車は疎らで、いやでも今がシーズンオフだということを実感してしまう。
登校途中の生徒等が現れ始めるにはもう10分程歩かなくてはならないだろう。
その風景の中を歩く、学生服の俺と私服の少女。
見る人によっては寂しげな絵図。
それでも俺の心は躍っていた。

「わ〜! この辺ちっとも変わってないね〜!」

俺の少し先を行く奈緒は、俺にとっては見慣れすぎて飽き飽きしている景色を
物珍しそうに、それでいて時折懐かしむかのように、五感全てを使って味わっている。
891706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/25 00:27 ID:DCoQL6wY
(2/11)

「私も、明日から県翔に通うんだよ」

くるりと翻り、奈緒が俺に向かって微笑む。
何というか……くすぐったい感じだ。
目の前にいるのは間違いなく幼馴染の御子柴奈緒。
短くはなったものの、日の光の中で少し緑がかる髪は昔のままで、
今着ている白いワンピースも、昔の彼女が着ていたものとよく似ていて、
まるで思い出の中の姿のまま大きくなったかのようだった。

「奈緒は……変わってないなぁ」
「そう?」

俺の率直な感想に、奈緒は不思議そうな顔をする。
7年も隔てた割りには、戸惑いというか、ぎこちなさはあまり感じないその仕草。
漂う雰囲気はどう考えても昔のままのように感じるが……
892706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/25 00:28 ID:DCoQL6wY
(3/11)

「私は……変わったよ?」
「そうか〜? 俺にはあんま成長してないように見えるけどな〜」

わざとねっとりと値踏みするかのように、奈緒を下から上にと見やる。
胸がつつましやかなのが、昔から奈緒の弱点だ。
今は……ゴホン、まぁ、その、中々人並みになっているのはワンピース越しに
勿論見てとれるのだが。

「へっへーん」

俺のエロ視線の意図を解したのか、奈緒が得意げに微笑む。
くっ、既に弱点は克服しているのを分かっているのか……!

「お生憎様。娘は立派に成長いたしましてございます」

スカートの両端をしず、とつまみ、舞踏会に来た姫君のように優雅に頭を垂れる奈緒。
しかし台詞は、

「お前、昨日『おばさん刑事美穂・隣町公園連続盗難事件』見たろ」
「ばれたか」

昨日のサスペンスドラマの真犯人・後藤由紀子(5才)そのままだった。
見る番組の傾向も、うん、昔とちっとも変わってないな。
893706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/25 00:29 ID:DCoQL6wY
(4/11)

「あーあ、祐樹君が相手だと、やっぱり昔に戻っちゃうな〜」
「そりゃそうだろ。いくら離れてたからって、人生の半分以上もいっしょにいたんだし」
「物心つく前からだもんね」

俺と奈緒は親同士が学生時代からの知り合いだったこともあって、
本当に小さい頃……生まれてすぐから一緒に遊んでいたらしい。
記憶にあるのは幼稚園に入る位からだが、俺達は殆ど兄妹同然に育った。

(それでも……
 離れてから奈緒のことを思い出さなくなったのは、やはり他人だからなのかな)

考えてみれば薄情な話だと思う。
でも、それだからこそ、

「どうしたの、祐樹くん?
 ぼーっ、としちゃって」

気が付けば心配そうに俺を覗き込む奈緒の顔が。
その仕草の一つ一つに心が揺れる。
7年ぶりに見る幼馴染の少女の姿は、それ故に眩しかった。
894706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/25 00:30 ID:DCoQL6wY
(5/11)

「ね」
「んあ?」
「まだ学校までは時間あるよね?」

唐突な奈緒の言葉。
どこかに、行きたがっているのだろうか。

「え、ああー、まぁ、少しくらいならいいぜ」

そう悟った俺は、奈緒の言葉が続く前に承諾した。

(ま、あそこなら今からなら時間も十分か)

その行き先も、勝手知ったる何とやら、すぐに理解してしまった。
895706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/25 00:31 ID:DCoQL6wY
(6/11)

県道から少し脇道に入り、歩くこと5分。
地元でも穴場なそこは、少し岩が多いのだが
泳いだり水遊びをしたりするにはもってこいの場所。
大げさに言えばシークレットビーチ。
俺と奈緒の、昔からの遊び場だった場所だ。

「ここも、あの時のまんまかー」

小さい頃は相当の難所だった岩場に器用に足を伸ばし、
奈緒は水際ぎりぎりの岩の一つに腰掛けた。

「ま、あまり地元の連中もここは知らないしな」

そう言って俺は奈緒の隣の岩に陣取る。
足元近くまでよせる波が、僅かに俺達の靴を濡らした。

「……」
「……」

しばらく二人並んで穏やかに揺れる水面を眺めてみる。
昔では考えられないような、二人の雰囲気。
奈緒は今、何を思っているのだろうか。
久しぶりに会う俺を、どう思っているのだろうか。
俺は、しばらくかける言葉を見出せなかった。
896706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/25 00:34 ID:DCoQL6wY
(7/11)

「そういえばさ、奈緒は向こうではどうしてた?」

とりあえずネタを思いついたので早速話をふってみた。
奈緒が東北近くに引っ越してから今までの空白の時間。
俺と過ごさなかった7年間の出来事。
その話が、聞きたかった。

「別に。普通に学校行って……うん、ごく普通だったよ?」
「部活とかは?」
「帰宅部だったからね」

返ってくるのは、どれも内容の無い言葉だった。
ここでない場所での時間は、それほどに無意味だったのだろうか。
俺がいなかった時間がそれほどに無意味だったのか……てのは自惚れすぎか。

「でも、結構楽しかったんだよ?」
「そっか」
「じゃあ、今度は祐樹くんの番ね」
「お、俺?」

今度はこっちにふられた。
うーん、どう答えればいいものやら。
奈緒がいなくなって、寂しかったとでも言えばいいのだろうか。
897706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/25 00:36 ID:DCoQL6wY
(8/11)

(いや、それは……しばらくの間は本当に寂しかった。
 でも、それも2年位までで、以降は奈緒のことを思い出さなくなっていたのだから)

だから俺は、

「俺は相変わらず野球三昧だよ」

違う事実を、述べた。

「そっか。まだ頑張ってるんだね」
「ああ、リトルリーグの頃とは一味違うぜ」

2年生ながら既にレギュラーの座についていることは、俺の一つの自慢だ。
3年生のなかにはあまりいい顔をしない奴もいるが、そこは実力本位の世界。
上級生をも圧倒する技術を見せつければ、彼らも認めざるは得なかったようだ。

「一つのことに打ち込めるのって凄いことだよ。私には、ちょっと無理だなぁ」
「んなコト無いって。奈緒だってこれから好きなことやればいいだろ?」
「うん……そうなんだけどね……」

再び場が静かになってしまった。
これは一体何なんだ。
俺達は、そんなに気を使って会話しなければならない関係だったのだろうか。
違うだろう? もっとこう、俺達はあけすけで遠慮何かせずに、笑えただろう?
これが時を隔てる代償なのか。
空白の時間に、お互い何か得体の知れない何かを感じているのか。
898706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/25 00:37 ID:DCoQL6wY
(9)

「……っ」

ふと、奈緒の声に気付き、振り向いて、驚いた。

「奈緒……」

彼女は、何故か静かに涙を零していた。

「ご、ごめん」

ごしごしと袖で涙を拭い、無理矢理笑顔を作る。
俺には、その涙の訳が、理解できなかった。

「あはっ」

今にも崩れそうな微笑みだった。
聞いても、いいのだろうか。
その、涙の訳を。

「何かさ、向こうを思い出しちゃって。
 ゴメンね、ホント。大丈夫だから」

何も言えなかった。
奈緒のその、取り繕うとする仕草があまりにも儚げで……
だから俺はそのことには触れずに、

「そろそろ行くか」

この空間に終止符を打った。
899706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/25 00:38 ID:DCoQL6wY
(10/11)

「じゃ、明日からだな」
「うん」
「学校まで案内してやるよ」
「え〜いいよぉ。一応地元だし」

それ以降の道中は元の二人に戻っていた。
奈緒も努めて普通を装い、
俺もあの場所でのことを忘れたかのように振舞った。

「それじゃあね、祐樹くん。
 部活、頑張ってね」
「ああ」

県道に復帰した所で、俺と奈緒は別れた。
奈緒は何度も振り返り、手を振ってくれた。
やがてその姿が見えなくなってから……
900706 ◆qVkH7XR8gk :04/05/25 00:39 ID:DCoQL6wY
(11/11)

「向こうで……何かあったのかな」

俺は一人呟いた。
考えても詮無き事だ。
奈緒の口からその理由を聞かない限り。
いつか、話してくれるだろうか。
そんな事を考えながら、

「やべ、そういえば朝錬行ってない」

極めて重大な事実を思い出してた。
ああ、とりあえず放課後は腹を括らねばな。
奈緒と過ごした時間の代償は、事の他大きかった。
901名無しさん@初回限定:04/05/26 02:04 ID:wxT7yROh
ボシュ
902名無しさん@初回限定:04/05/26 07:44 ID:8tHA2mcf
706氏乙
903名無しさん@初回限定:04/05/26 08:37 ID:BY8MhAKq
秘密のある女はいいねえ
904名無しさん@初回限定:04/05/26 18:05 ID:O6HT9PFe
空白の時間…
彼氏とやりまくりだったでつか?
905名無しさん@初回限定:04/05/26 19:32 ID:X7dGJXXX
当然
906名無しさん@初回限定:04/05/26 21:58 ID:uscJuDKi
↑X多すぎ
907名無しさん@初回限定:04/05/26 22:48 ID:8tHA2mcf
スゲエ・・・・
908名無しさん@初回限定:04/05/27 01:05 ID:3cBXybD0
オワタ?
909名無しさん@初回限定:04/05/27 17:00 ID:HfZC7k4u
>>905
GJ
910名無しさん@初回限定:04/05/28 07:19 ID:yrsikbtB
706氏乙
奈緒は単純に引っ越し先の彼氏と遠恋してるとか?
主人公そっちのけで電話メでラブトークしてるのを聞いてしまったり…
とかだったらリアルに欝だ…
911 ◆awHmMXFYIY :04/05/29 00:01 ID:f1QdkX+e
ヴァー
912名無しさん@初回限定:04/05/29 00:37 ID:7Bn+De4M
     (・A・)っ
     (っ ,r 
.      i_ノ┘

       ∧_∧
    ⊂( ・ A ・ )
.     ヽ ⊂ )
     (⌒) | 
        三 `J

     /ヽ     /ヽ
   /  ヽ___/  ヽ
  /           \
  |  ● ヽー/ ●  | オワタ
  \     ∨    /
913名無しさん@初回限定:04/05/30 12:35 ID:QVdRhW3y
オワタ
914名無しさん@初回限定:04/05/30 16:38 ID:QVdRhW3y
オワタ
915名無しさん@初回限定:04/05/30 16:54 ID:TcToUNcG
ヤバイヨヤバイヨ矢部っちヤバイヨ
916 ◆tsGpSwX8mo :04/05/30 21:14 ID:aXo0ntKp
ヒロくんキボンヌ
917名無しさん@初回限定:04/05/31 11:47 ID:j0Rpt4/Z
コリャ オワタナ
918名無しさん@初回限定:04/05/31 12:53 ID:DRNCKIuO
ワタシハ マオウ マオトコ
コンゴトモ ヨロシク
919名無しさん@初回限定:04/05/31 19:45 ID:hf194Sw8
そういえば「馬男」と書いてまおとこって読む小説出てたな。
読んでないが。
920名無しさん@初回限定:04/05/31 20:20 ID:J4ZuE+6C
オワタ
921名無しさん@初回限定