SS投稿スレッド@エロネギ板 #6

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1へたれSS書き
エロゲー全般のSS投稿スレです。あなたの作品をお待ちしています。
エロエロ、ギャグ、シリアス、マターリ萌え話から鬼畜陵辱まで、ジャンルは問いません。

そこの「SS書いたけど内容がエロエロだからなぁ」とお悩みのSS書きの人!
名無しさんなら安心して発表できますよ!!

  【投稿ガイドライン】
1.テキストエディタ等でSSを書く。
2.書いたSSを40行程度で何分割かしてひとつずつsageで書き込む。
 名前の欄にタイトルを入れておくとスマート。
3.SSの書き込みが終わったら、名前の欄に作者名を書きタイトルを記入して、
 自分がアップしたところをリダイレクトする。>>1-3みたいな感じ。
4.基本的にsage進行でお願いします。また、長文uzeeeeeeと言われる
 恐れがあるため、ageる場合はなるべく長文を回した後お願いします。
5.スレッド容量が450KBを超えた時点で、
 ただちに書き込みを中止し、次スレに移行して下さい。

過去スレ >>2-

【エロゲ&エロゲネギ板SS保管サイト】
http://members.tripod.co.jp/svssav/
2へたれSS書き:03/06/15 23:12 ID:eAJSD1KS
前スレ【SS投稿スレッド@エロネギ板 #5】
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1051721989/
【SS投稿スレッド@エロネギ板 #4】
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1036495444/
【SS投稿スレッド@エロネギ板 #3】
http://www2.bbspink.com/erog/kako/1013/10139/1013970729.html
【SS投稿スレッド@エロネギ板 #2】
http://www2.bbspink.com/erog/kako/1006/10062/1006294432.html
【SS投稿スレッド@エロネギ板】
http://www2.bbspink.com/erog/kako/984/984064183.html
【SS投稿用スレッド@エロゲー板】
http://www2.bbspink.com/hgame/kako/979/979813230.html
3名無しさん@初回限定:03/06/15 23:25 ID:KeeigleX
>>1
新スレ小津華麗〜
4名無しさん@初回限定:03/06/15 23:42 ID:4WTu+6vZ
即死回避〜
>1
乙〜
5名無しさん@初回限定:03/06/16 00:03 ID:PnZ0PK0+
側妃懐紙じゃなくて即死回避。
>1乙。
6名無しさん@初回限定:03/06/16 00:24 ID:YJd7YL6T
記念保守
7名無しさん@初回限定:03/06/16 00:30 ID:O+220iS0
泳げ新スレくん
>>1、乙ー。

前スレはデモベのSS群が目立ちましたね。
加えて最長(かな?)のそれ散るSSも。
さて、このスレではまた何か流行りますかどうか。
8名無しさん@初回限定:03/06/16 00:40 ID:qa/XmUko
>>1
新スレ乙鰈
9白詰草話 ― 熱い夏の日 ― 1/9:03/06/16 01:11 ID:Ocnra2IF
「青い空、白い雲!」
「うみだ!」
「ビーチだ!」
「常夏の楽園!」
「らくえんー!」
「泳ぐぞー!」

「……泳げないんじゃなかった?」

「…………」


白詰草話外伝  ― 熱い夏の日 ―
EPISODE OF THE CLOVERS anothre story "The Beach of Heaven"

※津名川さんちのクリスマス的ノリでどうぞ。
10白詰草話 ― 熱い夏の日 ― 2/9:03/06/16 01:12 ID:Ocnra2IF
さて、海。綺麗な澄んだ海である。
そして、桐田製薬(つーか古痕)の面々が勢揃いである。
「たまにはこういうのもいいかもね」
津名川宗慈。
「そうね、久しぶりに羽を伸ばそうっと」
品藤聡美。
「せいぜい楽しむことね」
高宮エレン。
「エレンさんはどうするんですか?」
桐田篤子。
「透花ちゃーん、ビーチバレーしよー」
上代まり。
「ふむ……」
グラハム・ヘゼル。
「荷物運んでおきますよー」
その他研究者達(←酷い扱い)

そして、
「海ー」「うみー」「海……」
「……(眠い)」「……(おなかすいた)」
古痕の誇るエクストラ5人。
11白詰草話 ― 熱い夏の日 ― 3/9:03/06/16 01:12 ID:Ocnra2IF
「って訳で、自由行動でーす」
いやに明るい品藤の声によって、場が解散となった。
社員旅行の海外旅行。粋なイベントである。
「よーし、篤子、行くわよ」
「エレンさん、行くってどこですか?」
「ほら、いいから付いて来る」
「は、はいー」
と、高宮エレンは早々に何処かに消える。
知佳・知登と桐田篤子を連れて。
「宗慈さーん、泳ごー」
エマが駆け寄り、エレンの方を見ていた津名川の袖を引っ張る。
「泳ごうって、エマ、泳げたか?」
「大丈夫(きっぱり)」
「さゆもおよぐー」
「あー、分かったから、着替えておいで」
『はーい』
三人はパタパタと部屋に戻る。
「相変わらずね」品藤がそっと声をかけてきた。
「まあね」頭をかきながら答える。
「それじゃあ私も着替えてこようかな」
品藤が去ると、もうその場には津名川しか残されていなかった。
「チームワークもあったものじゃないなぁ」
ぼやきつつ、着替えるために部屋に向かう津名川宗慈なのであった。
12白詰草話 ― 熱い夏の日 ― 4/9:03/06/16 01:16 ID:Ocnra2IF
「泳ぐぞ!」「およぐー」
「……なるほどね」
エマの腰には、しっかりと浮き輪が装着されていた。
「ほら、準備体操しないと駄目だよ」
透花が暴走がちの二人を何とか操作している。
「塩水は飲まないようにするんだよ」
「はーい」
ばしゃばしゃばしゃ
威勢良く海に突っ込むエマ。
後を追う沙友……転んだ。
二人を見ながら後から進む透花……沙友に手を貸した。
「微笑ましいわね」
いつの間にか品藤が隣にいた。
「海は初めてだからね、はしゃいでるんだよ」
「すっかり『お父さん』なのね」
「ん、そうなのかもね」
と、後ろに殺気!
ビクッ!津名川の本能が告げる。「キケンダ、トビノケ!」
ばっ!
本能に従い飛びのく。
そこを、疾風が駆け抜けた。
13白詰草話 ― 熱い夏の日 ― 5/9:03/06/16 01:17 ID:Ocnra2IF
「透花ちゃーん、ビーチバレーしよー」
上代だった、疾風の正体は。
「よく避けれたわね」
「僕もなぜだか分からないよ」
訳の分からん会話が成り立つ。
「透花ちゃーん、ぶはっ(鼻血)」
「か、上代さん、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫、ちょっと興奮しただけ」
何やってんだか。苦笑しつつ品藤がハンカチを渡しに行く。
必然的に、津名川は皆から離れて一人 ―――
「何をしている、津名川宗慈」
そんな津名川にかかった声は。
「荒山……?どうしてここに」
「なに、休暇だ」
絶対嘘だ。誰もが思った。
しかしながら、荒山鳥人は水着姿である。
競泳用ではなく、普通のパンツルックだが。
「津名川宗慈、せっかくだ。お前の度胸を試させてもらおう!」
シャキーン!
荒山が取り出したものは、
14白詰草話 ― 熱い夏の日 ― 6/9:03/06/16 01:18 ID:Ocnra2IF
「フリスビー?」
「そうだ」
なぜ?その場にいた誰もが疑問符を浮かべる。
「行くぞ!」
そんなことは意に介せず(見えていないのだろう)荒山は振りかぶる。
「俺の円盤を受けれるか!」
サイドスロー、円盤が荒山の手を離れる。
ぎゅん、ざすっ!
「くっ」
何とか受け止めた。
「さぁ、津名川宗慈、次は貴様の番だ」
くいっと手を向ける。「来い」のポーズ。
「無論、落としたほうが負けだぞ」
ルールはそれらしい。
「仕方が無いか。行くぞ!」
結局、津名川も乗り気である。

「宗慈さん、がんばれー」「せんせがんば」「無理しないで下さいね」
「透花ちゃーん、ビーチバレー」「それどころじゃないんでしょ」
ギャラリーの見守る中、二人の対決は始まった。
15白詰草話 ― 熱い夏の日 ― 7/9:03/06/16 01:20 ID:Ocnra2IF
「がんばれー」「れー」
二時間。とりあえず二時間経過。
ギャラリーは二人になっている。エマと沙友だ。
透花は、仕方なく上代とビーチバレーをしている。
品藤と、そこの茂みで隠れ見てた荒山の部下と共に。
「上手いじゃない、お兄さん」「これでも学生のころはバレー部でして」
結構上手く打ち解けている。

さて、津名川VS荒山。
「どうした、もうそれで終わりか!」
津名川宗慈、満身創痍。立ってるのがやっと。
「くっ」
渾身の力を入れて投げる……砂に足を取られた。
へろへろ〜
力なくフリスビーが落下する、かのように見えた。
が、しかし。
「うおおおおおおおおおおおお!」
猛烈なチャージで荒山が滑り込み、見事にキャッチ。
『すごーい』ギャラリー(二人)から歓声が。
「貴様!姑息は手を使いおって!」
荒山さんブチ切れです。
「性根を叩き直してくれる!」
荒山の目に炎が灯るのを、エマは見た。
16白詰草話 ― 熱い夏の日 ― 8/9:03/06/16 01:20 ID:Ocnra2IF
結局、開放されるのにはあれから更に三時間を要した。
「次に会うときは互角以上の戦いを期待する」
荒山が去り際に言った台詞だ。
部下さんは、「久しぶりに楽しかったです」だそうである。

「ふー、おもろかたー」「宗慈さん、がんばったねー」
「僕はもうふらふらだよ」
「透花ちゃん資質あるよ」「え、そ、そうですか?」
「うん、私も向いてると思うな」
がやがやとホテルに戻ってきた面々。
ロビーで高宮エレン一行ととばったり出くわす。
「高宮は何していたんだい?」
「 潜 水 」

時が止まった。

「あら、馬鹿にしないでよね。今日の夕食も捕ったんだから」
それは潜水というのか?
「篤子には、ちょっと早かったかもね……」
どうも気絶中らしい。知佳に背負われている。
「それじゃ、夕食の時にまたね」
エレン達は颯爽と消えていった。
17白詰草話 ― 熱い夏の日 ― 9/9:03/06/16 01:21 ID:Ocnra2IF
「はぁ」
ベットに倒れこむ。部屋に戻ってきたのだ。
天井を見ながら、津名川はため息をついた。
どっと疲れた気がする。実際疲れているのだが。
「あと三日、この調子なのかな」
考えてみる。三秒でやめた。
「社員旅行も大変だよ」
すっと目を閉じようとした時、
「ご主人様、お食事だそうです」
透花がノックしてきた。
「今行くよ」
立ち上がる。ちょっとふらついた。
思わず苦笑し、
「まぁ、たまにはいいかな?」
誰にともなく呟いた。


EPISODE OF THE CLOVERS anothre story "The Beach of Heaven" ---END


「晩ごはんは何だい?」
「鯨、だそうです」
「くじらぁ!?」
18 ◆fF9EAwSeeA :03/06/16 01:31 ID:Ocnra2IF
>>9-17
白詰草話外伝  ― 熱い夏の日 ―
EPISODE OF THE CLOVERS anothre story "The Beach of Heaven"


即死回避に。
……馬鹿だ。私は馬鹿だ。
キャラのイメージぶっこわれた方々すいません。

本当はシリアスなのを投下したかったのですが結局間に合わず。
いずれ(自分に決着つける意味でも)投下したいものです。
いや、ハマっちゃったんですよ(苦笑
(でも下手くそとか言われるかな……FFDっぽくないし……)

最後に、>1氏乙可憐です。
19鬼哭街 Dynamic:03/06/16 01:53 ID:/Y5y9dU5

―――白い、女だった。

 生身が触れれば白煙を上げかねないほど汚染物質を満載した雨が、ざぁざぁ
と降っていた。耐環境装備の無い者には死しか与えない猛毒のシャワーの中、
まるで、足元で爆ぜる雨煙りから立ちのぼったかのように、白い女がそこにい
た。
 艶やかな翠の黒髪も、愛らしく整った面貌にも、白磁のその肌にも、分け隔
てなく雨は降り続けている。濡れた髪からの流れが、鎖骨の溝から小降りな乳
房の谷間を通り、股下の茂みに落ちていく。
 裸の、女だ。
 真っ白な肌の美しい女。年の頃は十代半ばを越えたところだろうか。未だ、
幼さを残していながら、女としての艶やかさが香り立とうとし始める、まさし
く妙齢の乙女。
 それを、一人の男が横抱きに歩いてくる。
「お、おい、貴様! 止まれっ!」
 異様な風景に我を失っていた門番の一人が、慌てて男を制止する。
「ここがどこだか分からんのか? 貴様のような野良犬が……」
「青雲幇が封主が館。……それともすでに劉豪軍のものか?」
 地の底から響く声のようであった。
20鬼哭街 Dynamic:03/06/16 01:53 ID:/Y5y9dU5
 声量自体は特別低くも、大きくも無い。嗄れた、聞き取りづらい声だ。
だが、それに込められた陰の気質は桁が違った。
 まるで。そう、地獄の幽鬼が発するならば得心も行く。そういう声だった。
「どちらにせよ同じこと。ではあるが」
 言って、微笑む。深く削り取ったような頬に、暗い蔭が蟠る。闇のような両
眼に、昏い色の炎がともる。酷薄な唇が吊り上がって牙じみた犬歯が顔を覗か
せる。
 地獄の修羅でもたじろぐ貌を見て、よもや以前の彼を思い起こせるものはい
ないであろう。
「劉に伝えろ。孔濤羅が還ってきたと。地獄の底から、瑞麗とともに」
 意外すぎる言葉に、周囲の空気が止まる。それと、まったく同時だった。

―――パララ、パパパパパパパッ

 半ば開いた瑞麗の口腔から、銃弾が発射されたのは。
21鬼哭街 Dynamic:03/06/16 01:53 ID:/Y5y9dU5
「これは一体どうしたことなのだ!!」
 封主にとってこれは、天動驚地。いや、それすらまだ生温い。。
 仁も義もなく、ただ利のためだけに腐敗してゆく青雲幇。
 技と理もなく、ただ強さのためにのみ機械の体に陵辱される武林の技。
 いつか、どこかで狂ってしまったこの世界。
 その中で、この男だけが希望であるはずだった。

―――孔濤羅。人呼んで、”紫電掌”。

 戴天流、最後の正統であるはずの彼が、モニターの向こう側にいる。
 鬼籍に入ったと言われた彼を再び眼にすることは、おそらくは僥倖なこと
だったのだろう。
 もしも、もとの通りの彼であったのなら。
「正しく乱痴気騒ぎですな」
 モニターの向こうを指して、傍らの劉豪軍はそう評した。
22鬼哭街 Dynamic:03/06/16 02:00 ID:/Y5y9dU5
 なるほど、それはまさしく狂態の一言。主役は濤羅その人。そして、踊りの
相手は彼の愛する妹……の、人形。よくできた、笑ってしまうほど、故人に瓜
二つな人形だ。
 その人形を、濤羅は肩に構える。丁度、尻が前を向く形だ。肉付きよく張っ
た太股の間から、二つの孔が丸見えになった。
 性器と肛門……ではない。
 排泄器官でも、男のものを受け入れるわけでもない二つの孔。そこから、煙
を噴いて何かが飛び出した。


―――轟

 きっかり一秒後、瑞麗が”産んだ”グレネード弾は轟音と共に爆発した。そ
してそれは、最初の一発でしかなかった。
 爆発、爆発、爆発。そして、炎上。
 朱色の柱を炎が舐め、ごうっ、と音を立てて燃え上がる。
 乳白色の壁が熱を浴びてぱりぱりとひび割れていく。
 清代の邸宅を模しているとはいえ、壁も柱も防火防災仕様のグラスファイバ
ー製だ。木や漆喰のように燃えもしなければ砕けることもない。ナパームか、
それに類する燃焼系の爆弾を使用したのだろう。一度張り付けば二度と剥がれ
ぬ燃焼剤が、千数百度にも達する温度で燃焼する。サイボーグどころか、戦車
中隊にも喧嘩が売れる。
23鬼哭街 Dynamic:03/06/16 02:01 ID:/Y5y9dU5
――――ぐぁ、あああああああ

 轟々と燃える地獄の劫火。火達磨と化した人影が転げ出てくる。総てがただ
の人ではない。生身であれば瞬時に焼け尽くされている。全身をクロームで覆
ったものだけが、辛うじて即死を免れた。

――――バララララララララララララ

 その、数少ない生き残りめがけて人形に仕込んだ機関銃が火を噴いた。右腕
に一門。左腕に一門。そして、少し遅れて人形の頭が外れると、首の奥から特
大のガトリングガンが伸び出てくる。
 それが、馬鹿げた量の銃弾を吐き出す。
 銃弾の雨、どころではない。
『飛流直下三千尺、疑うらくは是れ銀河の九天より落つるかと』
 かつて、李白にそう詠まれた廬山が滝の如き、銃弾の大瀑布。
 巻き上がるは、血と硝煙の水煙。
 ひれ伏すは、鋼鉄に鎧われた強者どもの骸。
 方天戟を構えた巨躯も、ローラーを備えた韋駄天足も、為す術などない。た
だただ、焼け付く炎にのたうち、そして美しい人形が吐き出す銃弾に吹き散ら
されて倒れるのみ。

―――ババババババババババババババババ

 まさに、無人の修羅場だった。
 ただ一人、孔濤羅だけが地獄じみた劫火の中で立っている。紅暗く、炎に照
らされた凶相はつり上がっていた。
 笑って、いた。
 地獄のような狂気に身を浸して、紫電掌が笑っていた。
24鬼哭街 Dynamic:03/06/16 02:03 ID:/Y5y9dU5
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
 突如、裂帛の気合が、黒々と燃え盛る炎を切り裂いた。
 烈火を切り裂く白銀の胴衣。
 劫火を畏れぬ堅き義心。
 元氏双侠が片割れ、元尚英はまさに炎を切り裂き濤羅へと迫る。周囲を焼き
尽くす炎すら、彼を留める助けにすらならない。
「孔! 孔濤羅!!」
 問う声はなかった。
 外道畜生にまで堕ちたかつての友。くれてやるのはただ、血と鋼の一撃のみ。
一切の逡巡すら、尚英の内にはない。
 鋼の両脚が炎を蹴散らす。両の腕に構えた浮萍拐を、重ねて頭部の盾とする。
その体を一本の矢に変えて、ただ、真っ直ぐに駆け抜ける。
 圧倒的な火力を前にしながら、あまりに愚直な特攻。たとえサイバー拳士で
あろうが、いやたとえ彼が強襲型の多脚戦車であろうとも、無謀以外の例えは
ない。

―――ババババババババババババババババ

 応えて、濤羅が銃口をむける。
 拐が消滅するのに刹那と時間はかからなかった。
 一歩と進まず両の腕が瓦礫に帰した。
 クロームで固めた鋼の身体も、みるみる蜂の巣に成り果てる。
 されど、元尚英の神速は僅かとも鈍る事はない。ひたすらに、真っ直ぐに、
孔濤羅へと迫る。
 まさに不死身と思われたその疾走。しかし、濤羅の目前にまで迫ったその時。
とうとう、駆ける脚すら砕け散り、元氏双侠が片割れは地に伏した。
25鬼哭街 Dynamic:03/06/16 02:04 ID:/Y5y9dU5
 その刹那だった。
 倒れゆく白銀の影より、一筋の真紅が飛び立った。
 両手に握るは一対の護手鉤。その顔も、体格も、身体に埋めた鋼すら、
元尚英と見分けがつかない。
 元氏双侠がもう片割れ、元家英。
 遺された双子の兄は、あまつさえ弟の骸を踏み台にして、真紅の猛禽さなが
らに濤羅へと斬りつける。
 血肉を分けた双つ子を盾として、必死必殺の一撃を放つ。
 一人が、その命を捨て。
 一人が、その命を奪う。
 まさに、修羅の所業だった。
 元氏双侠ならばこそ為しうる、捨身必殺の法。足下で空しく散る銃弾を尻目
に飛翔した家英の一撃は、過たず濤羅の首を捕らえていた。

―――その一部始終を、地に投げ捨てられた瑞麗の首が、見ていた。

 首にかかった鉤を振り切るよりも早く、脇に抱えられた人形の片足が家英に
向く。そしてまさか、それが根元から火を吹いて発射するとは。

 バシュゥゥゥゥゥゥッ!!

 優美な脚が、人形の脚だけが爆煙を吐きながら、真っ直ぐ元家英へと飛翔す
る。そしてそれも一瞬の事だった。
 柔らかい爪先が家英の鋼鉄の腕に触れた瞬間、それは閃光に変じた。
26鬼哭街 Dynamic:03/06/16 02:04 ID:/Y5y9dU5

―――轟

 すべてが爆風に変わって、それが晴れた時には家英の右半身は蒸発していた。
装甲されたクロームの塊を消滅せしめた火力は、歩兵携帯型の対戦車ロケット
といった所か。
 地獄のように立ちのぼる硝煙の向こうで、濤羅の銃口が家英に向く。カラカ
ラと音を立てて、人形の首から伸びたガトリングが回っていた。銃口が火を吹
くまでに一瞬が、まるで永劫のようだった。
 そして、滝のごとき銃弾は……家英に撃たれる事はなかった。
 横合いから、爆発と硝煙をつっきって濤羅に突進するものがあった。
 元尚英だった。
 いや、それをもはや尚英と呼べるであろうか。白銀の胴衣は全て引き千切ら
れていた。鍛え上げた両腕は肩口からもげ落ちて、バチバチと接合神経系がス
パークしていた。神速の両脚はもはや瓦礫だ。もとより、生身の部分はほとん
ど遺っていなかった。
 鮮血と肉片がこびりついたスクラップ。しかし、それに元尚英の魂はいまだ
宿っていた。そして、彼が駆けたその勢いも。
 執念か、義侠心か、それともクロームに載ったバグが見せる奇跡か。命令系
を失ってなお、サイバーパーツは亡き主の命に従い、直進していた。
 そして、激突。
 それは技ではなかった。
 靠ですらない、唯の体当たり。衝突の瞬間も、元尚英の肉体であった鋼鉄の
塊は前進しようと脚をばたつかせていたほどだ。
 しかし、避けるには速すぎた。孔濤羅をもってしてなお、人形の身体を盾と
して直撃を受けることしかできなかった。
 ものの一撃で濤羅の身体は壁に叩き付けられた。元尚英であった肉体は、役
目を終えたとばかりにその動きを停めた。そして、もう一人の元氏双侠は……。
27鬼哭街 Dynamic:03/06/16 02:06 ID:/Y5y9dU5
「詰みだ。孔濤羅」
 生き残った半身でもって、護手鉤を濤羅につきつけていた。
「……貴様に、何があったかは知らぬ。貴様の妹の……瑞麗殿の死に不審は多
い。彼女を護れなかった我らの不甲斐なさを責めると言うなら責めるがいい。
 だがな、貴様の今の姿は何だ? 外道羅刹にも劣るその姿は何だ?
 死してなお、尚英は貴様を止めた。これが義だ。正道を駆ける者の力だ。こ
れは、元氏双侠の勝利ではない。紫電掌の敗北でもない。ただただ、元尚英の
義侠の……」

―――く、く、く……

 静かな笑いが家英の言葉を斬った。暗い、深い、地の底から響いてくるよう
な笑いだった。
「―――変わらぬなぁ。元家英」
 僅かに懐かしげな声。その時にはもう、濤羅の手が家英に向いていた。

―――紫電掌!?

 家英は退かなかった。元より生きるつもりはもはやなかった。ただ、為すべ
きことは濤羅の手が届くよりも速く、首に突きつけた鉤を振り抜くだけだった。
 鉤の刃が、濤羅の掌よりも速く首の肉に食いつく。最早、濤羅の命は絶した。
28鬼哭街 Dynamic:03/06/16 02:08 ID:/Y5y9dU5
そう思われた瞬間、鋼の感触が、家英の手を阻んだ。
「……!? 莫迦なっ、サイバ……」

 バババ、ババババババババ……。

 そして、家英に向けられた掌が火を噴いた。
 かつて、妙手を操ったその手は、今は鋼になっていた。そして、手の中に宿
る功夫は、秒間六百発の銃撃に変えられていた。
 家英の顔面がスクラップに返るのに一秒と時間はいらなかった。
「だからお前らはいつでも詰めが甘いんだ。御託を並べる前に殺せる時にキッ
チリ殺せ」
 そう言って、濤羅はゆらりと立ち上がった。
 目にはかつての友を殺した翳りは僅かもなかった。ただ熱気と狂気が渦を巻
いて瞳孔に集結していた。

「変われば変わるものだな。濤羅」
「―――マカオで俺を拾ってくれた人間が親切でな。おかげで俺はこんなに素
敵な身体だ」
 炎の中に、劉豪軍が立っていた。
 手には、血塗りの細剣。それ以外、寸鉄すら帯びていない。だが、陽炎に揺
れるその姿は戦神の如き迫力を備えていた。
「お前の瑞麗は、それか?」
 倒れ伏す、人形を指して劉豪軍は問う。
「いいや」
 ぎしり、と軋む音を響かせて濤羅は首を振る。
「瑞麗は死んだ。お前が殺した。二度と生き返る事はない」
「―――なんだと?」
29鬼哭街 Dynamic:03/06/16 02:08 ID:/Y5y9dU5
 ぞくり。
 灼熱地獄と化した邸内に、凍えるような冷気が満ちる。悪鬼外道が跋扈する
裏社会において、恐怖とともに呼ばれる二つ名、『鬼眼麗人』。まさにそれに
相応しい、深く、冷たい気配が満ちる。
「―――貴様は、瑞麗が……」
「鬼眼麗人。義兄として一つ言いたいことがあった」
 その冷たい怒気すら、濤羅は笑って流す。
「男が、つまらぬ事をぐだぐだと抜かすな。――――女にもてんぞ?」
 それは言葉の駆け引きであった。
 もちろん、鬼眼麗人と呼ばれる者。そんな事は百も解っていた。
 解った上で激昂した。
 それは、劉豪軍の逆鱗だった。
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 双つの剣が交錯する。
 一つは鋼の細剣。
 神技超常を秘めたるその剣は、音の壁すら越え、六つの流星となって中空を
翔る。
 一つは純白のセラミック刀。
 鋼の右腕から伸び出たその刃は、魂持たぬまま、同じく六つの軌跡を描いて
流星を迎え撃った。

――――ィィィィィィ ッッッ

 音にならない衝撃。
 交錯したその瞬間、砕け散ったのはセラミックの刃だった。同じく絶技をト
レースしてなお、金剛石に勝る硬度を有してなお、唯の鋼の塊に、白い刃は六
つに分断されて砕け散った。
30鬼哭街 Dynamic:03/06/16 02:10 ID:/Y5y9dU5
 同じく、双つの掌が動いた。
 紫電と銃弾。
 同じく必殺の威力を備えた左手が、お互いの脳味噌目がけて打ち出される。
 速さも、早さも、鋼の掌が勝っていた。だが――。

 ばぢっ

 先に閃いたのは紫電の方だった。
 遅きをもって速きに勝り。軽きをもって重きに勝る。まさに、神威鬼手たる
内功の絶技だった。
 駆け抜ける内気の雷が濤羅の身体を貫く。ギリギリと、音を立てて人口筋肉
がひしゃげる。目と言わず、口と言わず、吹き出したケミカルリンゲル液が臭
い匂いを発して沸騰する。
 瀕死の虫けらのように痙攣して、紫電掌と呼ばれたその肉体は二度と動かな
くなった。
「――――」
 この世に顕現した修羅地獄。その中に、唯一人劉豪軍だけが遺された。
 憂いるように俯いたその貌は、笑っているようにも、泣いているようでもあ
った。
「―――瑞麗」
 立ち上がり、地に堕ちた瑞麗の首を抱き上げる。
 愛おしげに。
 狂おしげに。
「濤羅。お前は何を見ていたのだ?
 お前は何を想っていたのだ?
 瑞麗を、お前の愛する妹を。お前を愛する妹を……お前は、これしきも解っ
てはいなかった。
 なあ、濤羅。見てみろよ。瑞麗が、汚れてしまった」
 子供のような声でそう言って。愛しい人の生首に、鬼眼麗人。劉豪軍は口付
けた。
31鬼哭街 Dynamic:03/06/16 02:11 ID:/Y5y9dU5
―――それが、瑞麗の形をした生首が爆発するスイッチだったとは―――

 炸薬の中には大量の金属片が混じっていた。
 生体部品で作られたサイバネティックスには、それを防御する装甲は無かっ
た。
 そして、誰もいなくなった。
32鬼哭街 Dynamic:03/06/16 02:13 ID:/Y5y9dU5
「気分はどうかね? 孔濤羅くん」
 修羅の一夜が過ぎ去って、瓦礫と化した邸宅に首無しの人形だけが残ってい
た。
「気分―――。さてな。この体になって以来、感触が無い」
「そうか。そうだったな。それで、復讐は為ったようだが。これからどうする
のかね?」
「そうだな。今、ロシアの連中はどうしている?」
 むくり、と首無しの人形が起き上がる。
 女の形をした人形。しかも首の代わりにガトリングは生えている人形が、男
の言葉を喋るのは、何というかやはり、奇妙な光景だった。
「ロシアか。ふむ、この機に乗じてサイバネティックス市場を掌握しつつある。
と言ったところか」
「ふん、仁義というものを知らん連中だ」
 がつり、がつりと、不器用に人形がが歩きだす。片足がどこぞに吹っ飛んで
いては、それも仕方ないかもしれないが。
「往くのかね?」
「無論」
 応えは短い。微塵たる迷いもそこには無かった。
「となると、その次はイタリアか、アメリカか。日本のヤクザかもしれん。
忙しくなるな、これは」
「付き合ってもらうぞ。最後まで」
「よかろう。そちらの方が面白い」
33鬼哭街 Dynamic:03/06/16 02:14 ID:/Y5y9dU5
――――”紫電掌”と呼ばれた男がいた。

 いつか、どこかで狂ってしまったこの世界。
 古き善き世の最後の正統と云われた男がいた。

 その剣は神妙絶技。
 その拳は無二無双。
 最後の侠客と呼ばれていた。

 いつか、どこかで狂ってしまったこの世界。
 その拳も、剣も、砕けて消え去り。
 唯、仁と義だけが遺された。
 剣の代わりに銃を抱き。
 拳の代わりに鋼を埋め込み。
 孔濤羅で有ったものは、唯、仁義だけを遺した。

 人。其れを指してこう呼んだ。

――仁道、義道を極めし兵器。
      彼の物、極道兵器なり。と

                           ===劇終===
34へたれSS書き:03/06/16 02:18 ID:/Y5y9dU5
>>19-33
 久しぶりにSS投下〜。
……というか、ギャグだかなんだかわからなくなってしまいました。
できれば広いこころで見て下さいと(w

なお、この作品は「極道兵器」(作:石川賢)を見ているとより楽しめると思われます。
35名無しさん@初回限定:03/06/16 02:22 ID:yX/S0P7F
>>19-33
乙〜

途中で呼んでて極道兵器のパロと気づきましたよ・・・
36名無しさん@初回限定:03/06/16 02:30 ID:LRYYog3y
分岐点を間違えた鬼哭街って感じでしたね。
途中ギャグかよォィ、と思いましたが最後のほうは・・・
楽しませていただきました>34
37名無しさん@初回限定:03/06/16 03:02 ID:67eCjcg4
ラストに一票。

まぁ途中の効果音はゲームだったら表記しないで再生されるもんだからしょうがないと思われ。

ともいえ微妙に残念なことも事実


オモシロカタよ、これからっもガンガレイ
38名無しさん@初回限定:03/06/16 04:22 ID:tUNzZzwm
ルイリーミサイルの辺りはギャグにしかミエナカターヨ…
でもそれ以外はまさに本家を読んでるような気分になって文句なし。
スゲえや( ゚д゚)ポカーン
39名無しさん@初回限定:03/06/16 09:24 ID:EF9WVOQc
途中から、石川賢の絵柄で脳内再生されたよ、
( ゚д゚)b グッジョブ
40名無しさん@初回限定:03/06/17 00:18 ID:h0OobGkf
>9-18


なかなか面白かったですよ。荒山も相変わらずいい味でしたし。

今度はエクストラたちが活躍するのが読みたいです。
41名無しさん@初回限定:03/06/18 19:33 ID:QS7VTMgR
ちょいと、訊きたいんですが。
一レスに、最高何行までいけるんでしたっけ?
>1に40行程度ってかいてあるけど、たしか40も無理だよね?
30行だっけ?
42某観測人:03/06/18 23:04 ID:IsGmIM3M
>>41
32行なら確実に通りまつ。以前はそれを超えると書き込みを
はねられたけど、今はどうなってるかは不明。
43名無しさん@初回限定:03/06/19 00:15 ID:JDSOIxx9
俺も前スレで書き込んでたが、32行が限界だったように思う。
それ以上は「改行が多すぎます」で弾かれた。
ただ文字量が多い(詰めて書いてる)と32以下でも弾かれたような。
44名無しさん@初回限定:03/06/19 21:25 ID:fBtpmjKZ
>42-43 thx!
行数だけでなく、容量もチェックされるみたいなんやね。
しかも、前スレで出ていたとは。
お邪魔して済みませんでした。
45名無しさん@初回限定:03/06/20 00:54 ID:o2vjxoCI
32行で2048バイトの制限があったと思う。
前行数で話の区切りを考えてたら悲惨な目に合ったんで、余裕があったら
その辺も計算した方がいいよ。
46名無しさん@初回限定:03/06/21 22:39 ID:1BjycR7j
 「んんっ・・・・・・んちゅ・・・・・・」
  どこかの建物の一室。 
  そこでは一糸纏わぬ姿のアルがナイアの前に跪き、ナイアの股間から生えた男根を舐めしゃぶらされていた。

 「ふふふ、どうだい? アル、僕のおちんちんはおいしいだろう」
 「んぷっ、は、はい・・・・・・おいしいです・・・・・・」
 「ふふふっ、そうかい。 それじゃあ、そろそろ出すからちゃんと全部飲むんだよ」
 「んんんっ・・・・・・は、はい・・・・・・」
 「ああ、出るよ、アルの口の中に沢山精液が出てしまうよっ!!」

  そう叫ぶと、ナイアはアルの頭を押さえ込んでアルの小さな口内に大量の精液を吐き出した。
  どひゅっ、どくどくどくどくどくっ・・・・・・。
 
 「んんんんんっ! んぐっ、んぐぅぅぅっ・・・・・・」
  一瞬にして精液の海になるアルの口内。
  アルは必死に吐き出された精液を飲み込もうとするが、喉に絡みつく精液はどうしてもうまく飲み込めない。
  やがて、そうこうしているうちにナイアの男根を咥えたままの口元からアルの呼吸に合わせてどろどろと零れ落ち、床に広がっていく。

 「あーあ、ちゃんと全部飲めって言ったじゃないか。 ほら、床に零した分もちゃんと処理するんだ」
  ナイアはまるで子供をからかうように言いながら、アルの口から男根を引き抜く。
 「は、はい・・・・・・」

  ナイアの指示に従い、アルは四つんばいになって床に広がった精液を舌で舐め取り始める。
  落ちていたゴミやほこりが混じっていてもアルは気にもせず、恍惚とした表情でぺろぺろと床の精液を舐め続ける。

 「ふふふ、今の君はとてもあの気高かった死霊秘法の精霊には見えないね」
 「それがいまじゃあ立派なメス豚か・・・・・・」
  ナイアはアルを嘲笑いながら、部屋の片隅に視線を向ける。

 「君もそう思うだろ? なあ、九郎君」
 「う、うううぅっ・・・・・・」

  九郎は答えない。
  今、九郎は後手に手首を縛られ、下半身剥き出しのまま椅子の上に座らされていた。
  アルの痴態を目の当たりにして、九郎の男根はガチガチに堅くなっているが根元から紐で固く縛られている。
  射精したくても出来ないもどかしさに、九郎は血走った目でただ唸り続ける。

 「ふふ、もう射精したくて堪らないみたいだね」 
 「なあ、九郎君。 アルの膣に思い切り精液ぶちまけたいかい?」
  ナイアが妖悦な笑みを浮かべて尋ねると、九郎は狂ったように何度も頷く。
 「そうかそうか。 それじゃあ、アルとヤらせてあげるよ」
 「君は僕の大事な玩具だからね。 まだまだ壊れてもらっちゃあ困るし」
  ナイアはそう言って微笑むと九郎を拘束している縄を解く。

 「う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
  縄の拘束が解けると同時に、九郎は尻を向けて床の精液を啜るアルに襲い掛かる。
 「ア、アルぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」
  ぐちゅぅっ!!
  ぐちゅっぐちゅっ、ぐちゅっ・・・・・・!!
 「んはあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっんっっっっっっっ!!」
  九郎の巨大な男根で、先ほどナイアに犯されイッたばかりの秘部を容赦なく串刺しにされ、何度も何度も注送される。
 「はあっ、はあっ、アルっ、アルっ!」
 「あはぁぁぁんっ、九郎、九郎ぉぉぉぉぉっ!」

  パンパンパンパンパンッ・・・・・・。
  髪を振り乱し、汗を撒き散らしながら激しく肉と肉のぶつかる音を立てて快感を求め合う九郎とアル。
  そんな二人にナイアは近づくと、後ろから激しく膣を犯されているアルに顔を近づけて言った。
 「ほらアル。 今、自分がどんな状態なのか九郎君に教えてあげるんだ」
 「ああんっ、ふぁぁぁぁんっ!」
 「く、九郎のモノが妾の・・・・・・」
 「違うだろう! アル、君はまだわかっていないのかい!」
 「今の君は僕と九郎君の精液肉便所なんだよっ。 そんなモノが妾だなんて、生意気だぞっ!!」
  そう叫ぶとナイアはアルの陰核を強く摘み上げた。
 「ひぎいぃぃぃぃぃぃっ! も、申し訳ありませんんんんんんんんんっ!!」
  アルの謝罪を聞くと、ナイアはにっこりと笑ってアルに言った。

 「判ればいいんだよ。 ほら、言ってごらん」

 「み、見てぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
 「九郎ーっ、見てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
 「アルの小さなマ○コにぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!」
 「九郎のおっきいモノがずぶずふと出たり入ったりしてるよおぉぉぉぉぉっ!!」
 「もっと、もっとめちゃくちゃに犯してぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
 「アルっ、アルぅぅぅぅぅぅぅぅっ!! 見える!! 見えるぞぉぉぉぉっ!!」
 「アルの小さなマ○コが俺のチ○ポでずぶずぶめくられるのが丸見えだあぁぁぁっ!!」
 「あぁぁぁぁぁぁんっ!! 気持ちいいっ、気持ちいいよぉっ!! もっと、もっとアルの事犯してぇぇぇぇっ!!」
 「アルっ、アルぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!」

 「ふふふ、所詮神殺しの刃もこんな物か。 まったく、とんでもない変態だね君達は」
 「まあいいさ。 時間はいくらでもあるんだ」
 「これからももっともっと楽しませてもらうよ」

  激しいセックスに溺れるアルと九郎を嘲りの視線で見つめながら、ナイアは嬉しそうに微笑んだ・・・・・・。

                                                        完
昨日なんとなくネタとして思いついて書いた奴です。
生意気なアルを従順なメス奴隷にしたいと願望で出来てます。
はじめてここに書き込んだので最初の書き込みを失敗してしまいました。
すみません。

50あぼーん:あぼーん
あぼーん
51思いつきだけれども:03/06/22 15:57 ID:6q9LYbbA
―――昼と夜の狭間で、同人作家の女は語りかける。
だがその言葉に耳を傾ける者は居ない。

「初回版を買う魔人と初回版を買わぬ英雄。
 オタの負の極限と正の極限。必要な客はその2人だった」

ならばそれは唯の客商売であり、女は自ら描いた一つ
の物語を想って恍惚に酔う。甘く、艶やかに。

「そうだ・・・・・確実に此処で終わる。
 ようやくだ・・・・・・ようやく、余はこの初回限定版の商法の絶望から
 解き放たれる・・・・・・」

「・・・・・・マスターテリオン?」

そう呟くマスターテリオンの聲には・・・・・・あの狂気は何処にも無かった。
在るのはただ・・・・・・磨り減った財布と、その果ての虚無。
俺は初めて、この異形の少年を―――老人のようだと思った。
だがそれも一瞬。

「だが・・・・・・だが・・・・・・ただ終わるだけでは足りぬ!
 大十字九郎!アル・アジフ!永劫の刻を経て積み上げた我が同人誌!
 おぞましきこの18禁!貴様等に余さず纏めて極めてやろう!」

荒れ狂う憎悪。
否、それは唯のちよれんの信者。
そうか・・・・・・遂に此処に到って、お前はオタの容も捨てるのか。
だったら俺達がやる事も唯一つだ。

「永かった。本当に永かったよ。
 千の原稿から描きだしたこの話と、涼宮遙、速瀬水月・・・・・・
 同人の世界に潜み、描き続けていた」
52思いつきだけれども2:03/06/22 15:58 ID:6q9LYbbA
君望ブースとデモベブースは、また刹那の狂いも無く。
全く同時に初回限定版・18禁同人誌を付きつけ合う。
2つの18禁同人誌が販売し、完売し、吼える。
無事購入に愉悦して。
売り切れに哀哭して。

「その、2つの限定版同人誌を完売するまでに千の行列―――
 しかしそれは僕には買うことは出来なかった。
 僕の本の販売があったからね。
 だから、デモベ同人誌を買う者達が必要だった・・・・・・」

「さあ・・・・・・大十字九郎、アル・アジフ.貴公等にも教えてやろう」
「――絶望を」


・・・・・・続く?
53名無しさん@初回限定:03/06/22 20:03 ID:L5UWE2qh
ぜひとも!!
54名無しさん@初回限定:03/06/22 22:35 ID:NLVKFESj
ワロタ。

是非続きをキボンヌ
55あぼーん:あぼーん
あぼーん
56思いつきだけれども3:03/06/25 00:07 ID:7FelgGEo
マスターテリオンとナコト写本の囁きは、限定版未購入者の咆吼が
木魂する有明に在ってなお、鮮明に届く。

「まずは関東の魔人、同人界の怨敵、オタを解き放つ餓鬼、マスターテリオン。
 君の参加には更に千の同人誌を積み重ね・・・・・・」

「絶望・・・・・・?知ったことかよ。俺がやるべきことは一つ。
 デモベ同人誌――それを買う。そして、次回に道を拓く。
 そう、同人界に――」

「――キボンを」

俺とアルの決意は、限定版購入者の咆吼が木魂する有明に在っ
てなお、鮮明に響く。

「そして列を断つ者、徹夜を以て徹夜組を狩る者、オタ殺しの
 刃、大十字九郎。
 君の参加に今、この瞬間まで原稿を積み重ねた!」

「・・・・・・嗤わせるな」

「嗤えば良いさ」

デモベ行列が一歩を踏み出す。

「そうやって嗤って見下し、徹夜組を妬
 み続けるが良いわ」

君望・限定同人誌を掲げ、

「なんて吐き気を催す偽善・・・・・・!」
57思いつきだけれども3:03/06/25 00:08 ID:7FelgGEo
君望・限定同人誌を掲げ、
そして―――

「そして―――」

お台場フジテレビの果ての地で、アルとナコト写本が

「――今こそ2つの人気同人ブースが激突する!」

女の容を食い破るオタの闇。
秩序なく悶え狂う闇は、叔母風呂。
そう、これは叔母風呂の端末。
女の真の姿は・・・・・・

――今、高らかと放送を詠みあげる――

即売会の放送は、女の立つブースの裏側まで届いた。

「荒ぶるオタに刻まれた
 東京の有明の萌えの地で
 仕入れて 磨り減り 尽き果てた
 信者の財布の果ての地で
 我等は今 購入を果たす」

誌に合わせ、限定版同人誌を手に、デモベ誌購入者と君望誌購入者
が舞う。コスの女子の如く、この購入に捧げる見聞。
それは一部の狂いも乱れも無く。
58思いつきだけれども5:03/06/25 00:09 ID:7FelgGEo
「其れはまるで涼宮遙の様に
 眠りをゆるりと蝕む徹夜の列
 夜明けと共に消ゆる儚き列
 されど その家鴨の様なオタの行列を
 我等は進行し 同人誌を獲る」

誌は同人。買うは券。
貰うごとに、買うごとに、新たなる同人界秩序を編み上げ、組み立てる。
両者の放つ萌え力を前に、このブースの為の同人界すら歪んでゆく。
俺はその列の流れに身を委ねる。
静かに、されど熱く、列を整頓する。
そして俺の列もいつしか券を貰い、誌を買う。

「我は屋台 夜道を這うオタに灯す 命の煌き」

「我は保護 重き枷となりてロリを奪う 誌の執行」

「我は野次 一人で灼くオタを灼く同人界を灼く、行列に憎悪」

「我は萌 染まらぬ揺らがぬ迷わぬ 不変と愛」

「萌えは苦く 烈しく 我を苛む」

「18禁は甘く 重く 我を蝕む」

「其れは銭」

「其れは描く」

「其れは今日中」

「其れは拒絶」
59思いつきだけれども6:03/06/25 00:09 ID:7FelgGEo
「其れは 純潔な 醜悪な 交配の雑誌
 縛られるママ惚け合うママの新刊落とす
 脱会される 出来損ないの雑誌の――」

列に並びながら、アルは違和感と焦繰感に囚われていた。
何か―――致命的な何かに気づかなければならない。
それに気づかねば、総てが手遅れとなる。
今この時を除いて、救いへの光明は無い。
だが・・・・・・それが何かが解らない。思い出せない。
何ものかが、その葉っぱを禁忌として鍵を描けたかの様に。

――検閲されているのだ――

思い出せ!
思い出せ、アル・アジフ!
何としても・・・・・・何としても、彼奴の思い通りにさせてはいけない!
九郎を救えるのは、自分だけなのだ。
妾は・・・・・・妾は・・・・・・
――その行列に対峙するとき、
正しくブースに辿り着かなければならない!

ブースの行列はクライマックスに差し掛かっていた。
2つの限定同人誌の、デモベ同人誌と君望同人誌の在庫はも
はや限界にまで尽き掛けている。
後は金を精算させ、叩きつけるだけだ。
小銭も万札も無意味だ。
60思いつきだけれども7:03/06/25 00:10 ID:7FelgGEo
「その深き永き行列を胸に」

「その切実なる萌えの叫びを胸に」

列が止まる。
再び限定同人誌の販売を突きつけ合う状態で待機。
最後の在庫。

「君望のアユに誓って」

「デモベの瑠璃に誓って」

そして今、総てを終わらせる為に・・・・・・

「――我は行列を紡ぐ者なり!」

厚着を纏って、デモベ行列と君望行列は同時に駈け出した!

「――――ッ!」

鍵が外され、検閲されていた最後の記述が蘇る。
今、この瞬間を以て、同人誌『アル・アジフ』は真に完全となった。
彼女の著者アブドゥル・アルハザードが我が身を蝕む狂気の中、
最後の力を振り絞り描き遺した、同人界に訴える必死の警告。
ありったけのオタの叫び。
61思いつきだけれども8:03/06/25 00:12 ID:7FelgGEo
――総ては予め仕組まれたこと。
――総てはあの女の・・・・・・


「ははははははははははははははははは!」





「買うなァァァァァァ!九郎―――――――――
 ―――ッ!
 総ては・・・・・・マヨの謀略だ――!」

「――――ッ!?」



・・・・・・続く?
62名無しさん@初回限定:03/06/25 00:13 ID:hb8fgiyK
無 茶 苦 茶 に ワ ロ タ 。
63名無しさん@初回限定:03/06/25 00:55 ID:7FelgGEo
>62
読むのはやっ!
64ニトロ最もえ決勝支援1:03/06/25 01:15 ID:7PS9LV6v
最もえトーナメント準決勝1回戦開始10分前。
――選手控え室
 麻生純子は「友永和樹様」と張り紙されたドアの前で深呼吸し、意を決してドアを開けた。がちゃり。
「和樹く・・・」
「ウキ?」「キュ〜」「ニーギ」
 足元で自分を見上げるペットロボットに気づく前に、控え室を占拠するハローワールド出演女性キャラ陣にあっけにとられる。
「あ、純子っ!和樹君どこ行ったか知らない?ねぇ知ってるんでしょ教えなさいよほらほらほら」
 佐知美が詰め寄るようにマイクを向けてくる。室内の視線が一気に純子に集まった。
「え?居ないの?」
「何?純子も知らないわけ?これじゃ試合開始まで戻ってこないわね。探しに行きましょ。A班は会場北方面、B班は東、C班は西、D班は南よ!」
「がんばるぞ、おー」「わたくしも走るんですの?」「ボクが先に見つけるんだっ」「GT2、会場内じゃ使えないわねー」「ちょっとさっちゃん、あたしはどっち行けばいいのよっ」
などと口々にぞろぞろと和樹の控え室を出て行く女性陣。
「な、何だったの一体?」「・・・ウキッ」
 最初にドアを開けた場所から押しのけられたままの姿勢で立ち尽くす純子をエテコウが見上げていた。

一方、当の和樹は・・・
「兄さん、やっぱりここに居た」
「遥香」
 和樹は会場で最も高い時計台の最上階よりさらに上、強風吹きすさぶ屋上から、決勝トーナメントが行われてきた天○一武○会風の闘技場とそのステージを囲む観客席を見下ろしていた。
「まさか兄さん、颯爽(さっそう)と飛び降りて登場、なんて考えてるんですか?いくら私たちのフレームでもこの高さは無謀ですよ」
「心配しなくてもちゃんと階段を下りていくよ」と、踵(きびす)を返す和樹。
「そろそろ行かないと試合に遅刻ですね」
「遅刻すると若佳菜先生に怒られるかな」
 他愛も無い会話をしながら、遥香は形を成さない言葉にならない思いを、不安を口に出せずもどかしい思いを噛み殺して和樹を闘技場まで送った。
65ニトロ最もえ決勝支援2:03/06/25 01:18 ID:7PS9LV6v
「さぁついに準決勝までやってきました。司会はわたくし入間佐知美が、解説はニトロゲーの名物脇役稲田比呂野さんにお願いします」
「名物脇役じゃなくって名脇役って言って欲しいです」
「(無視)さぁ舞台脇には既に一方の出場者、Phantom Of Infernoの正ヒロイン、エレンが愛銃を磨いて控えております。
一方の出場者、"Hello,world."の主人公友永和樹は・・・キャー和樹くーん!」
「色ぼけアナウンサーが役に立たないので以後はわたくし稲田が適時司会も務めさせていただきます。それでは、選手入場です」

 北側の入り口からはエレンが、南側からは和樹が入場する。エレンは篠倉学園のセーラー服に身を包み、その右手にはコルト・パイソンを握っている。一方和樹は皇路学園の制服で、その手に持つ銃はSIGザウエル。
「キャー和樹くーん!」
「・・・既に解説不要とのご意見もありますが本大会のルールをご説明します。擬似ちゃんねる杯争奪ニトロプラス最もえトーナメントは人気投票による戦いで勝敗を決します。
出場者が拳銃持ったり刃物持ったり凶悪な乗り物に乗ったり、むしろ出場者自体が武器だったり乗り物だったりしますが本大会の勝敗には影響いたしません。勝敗はあくまで人気投票です」
 位置に付くエレンと和樹。まるで西部劇の決闘シーンのような緊迫感の中、佐知美の黄色い声援だけが会場に響く。
「あいかわらず本来の司会が役に立たないので私が合図をします。それでは両者、構えて。
──戦闘開始!」
66ニトロ最もえ決勝支援3:03/06/25 01:19 ID:7PS9LV6v
 いきなり真横に走り出しながら互いに発砲する両者。エレンは機械じみた正確さとスピードで一気にシリンダー内の6発の銃弾を撃ちつくす。が、機械そのものの異常な予測・回避性能でことごとく弾丸を避ける和樹。
ザウエルの弾数はパイソンの軽く二倍以上。だがエレンは6発を撃ちつくすと同時にどこに隠していたのかスコーピオンを左手に構える。
「ちょっとぉ!人気投票でしょこれぇーっ!」
 司会席から会場に飛び込まんと身を乗り出す佐知美を羽がい締めにしておさえる稲田とその援護に入った野田瑞穂(シマパン)。
「大丈夫。誰も死にませんからっ」押さえ込むと同時に言う。
 遮蔽物の無い闘技場で自動小銃による攻撃を回避するのはほぼ不可能だ。
だがそのスコーピオンを和樹の持つザウエルの銃弾が穿(うが)つ。1発、2発、3発。驚愕にほんの僅(わず)かだけエレンの瞳が大きく開かれる。
左手の獲物は手放す。このまま持っていれば弾倉に当たって暴発しかねない。再びエレンは射線をかわすステップを踏みながら手品じみた手さばきでナイフを取り出した。闘技場の広さを考えれば接近戦に持ち込む余地はある。
「ハッ!」
 和樹にとっても予測を超える速さで距離を縮めてくるエレンに照準が合わせづらい。今まで横の動きだけだった所に突然遠近の動きが加わると、人間の情報処理構造を擬似的に再現しようとしている無機知能では人間の脳が持つ欠点も少なからず再現されてしまう。
眼前に迫る表情の少ない白い顔。急所を狙うように鋭くナイフが突き出される。
和樹は照準を取り戻しザウエルの銃身で刃を受け止めた。しかし「接近戦闘クラスタ」と連動する「警告クラスタ」が警告を発する頃にはエレンの足が和樹のわき腹をしたたかに打ち抜いていた。
「立ちなさい。そんな事でニトロファンが満足すると思っているの」
67ニトロ最もえ決勝支援4:03/06/25 01:20 ID:7PS9LV6v
 義体処理クラスタが稼動し思うように動かないボディを動かし、和樹は立ち上がる。
「エレンさん」
 射撃戦闘クラスタの優先順位(プライオリティ)を引き下げ、格闘戦クラスタの優先順位を最も高く設定する。弾はまだ残っているが接近戦を重視しないと勝てない。
「僕は、勝たなきゃいけない。遥香か純子さん、どちらかが決勝に来ることが決まっているんだ」
「既に待つべき相手の居ない私には退いてくれという事?」
「そうじゃないけど」
「だったら無駄な問答ね」
「・・・そうでもなかったよ」
 グローバルネットワークを通じて格闘技データをダウンロード。今のほんの僅かな言葉のやり取りが大きな時間稼ぎだ。和樹は擬態処理クラスタをDisable(無効化)。
アクチュエイター限界と床、靴の摩擦係数を考慮した上で最高の出力をもって地面を蹴りだす。
体を捻(ひね)ると同時にすばやく振りぬかれる右足は左足を軸に弧を描く。
エレンのナイフを払い落とし、回転の軸を地面に付いた手に移して今度は逆の左足がエレンの顔を掠(かす)める。

「厳しいな」
解説席に背の高い重そうなコートの男が入り込んでくる。
「孔濤羅(こん・たおろー)?」目を見開いて驚く稲田と野田。
「俺ならば素手になった所で電磁発頸(でんじはっけい)があるが、あの少女にはそういった術はあるまい」
「いや、そのなんていうか、ほんとに人気投票で勝負が決まるんですけど」
「ニトロファンは強いキャラが好きだ。それは事実だろう」
「まあそうですけど。」
68ニトロ最もえ決勝支援5:03/06/25 01:21 ID:7PS9LV6v
 舞台では激しい戦いが続いている。和樹はネットワークを通じて得たさまざまな格闘技技術を試みてエレンを苦しめるが、暗殺者としてのスキル、経験の豊富さでエレンが圧倒する。
続く応酬、息つく間もない熾烈な戦いに会場の観客が渇いた喉を鳴らすその時。

「その勝負!そこまで〜っ!」
二人の間に割ってはいるひとつの影。影はその小さな体で両者の打撃を難なく受け止めた。
「モーラ?」「モーラさん」
 ショートカットの金髪が振り返る。
「投票の結果が出たわ。11対5で、友永和樹の決勝進出が決まったの」
 すっ、と拳を引くエレン。和樹も振り払おうという体勢の足を下ろし、立ち位置を直す。
「負けたわね。玲二の次くらいにいい男だと認めてあげなくちゃならないかしら」
「それってノロケですか」
 エレンは試合会場に入ってから初めて、気づかないほど僅(わず)かな微笑を残してステージを降りた。
69ニトロ最もえ決勝支援6:03/06/25 01:22 ID:7PS9LV6v
「純子さん、次は私たちの番ですね」
 ステージから戻ってこようとする和樹の姿を確認して、遥香は純子に向き直った。
「正直、気が重いわね〜」
 いつもの赤いスーツ姿の純子に対して、遥香はグレーの軍服姿。その髪を結い上げて完全に戦闘モードだ。
「決勝で兄さんに会えるのは二人に一人。遠慮はいりませんよ?」
「同票決勝っていうのは駄目かしら?」
「それは投票者の皆様次第ですけど」

歓声の中、二人は別々の入り口をくぐって舞台に上がった。

「やぁーっぱり和樹君よねぇ〜おーっほっほっほほ」
 司会者の立場を忘れて和樹を褒めちぎる佐知美を余所に、稲田はマイクを握った。
「それでは準決勝第二戦を開始します。──戦闘開始!」
 同時にS2000を構える遥香。だが純子は雷閃を放り投げ言い放った。
「それ待った」
「ええっ?!」
 驚く遥香。当然会場も司会も驚く。
「だぁーって私のほうが不利じゃない。単純な性能なら和樹君より遥香のほうがボディの性能良いんでしょ?
私なんてそれこそ多少は銃も使えるし美しさの維持をかねて鍛えてる足もあるけど、暗殺者の訓練積んだ人とか吸血鬼の人とかじゃないのよ?他の手段にしましょ」
「・・・じゃあ、どうするんですか」
「そうねぇ。まあどうせ投票で決まるんだけどそれまで観客の皆さんを楽しませなきゃいけないわけだから・・・作文、絵描き、音楽の3つで勝負しましょう」
「純子さんそれ私がおもいっきり不利じゃないですか?」
「あらそうかしら?遥香は和樹君と違って生まれたときから知能イメージ統合認識クラスタがハードウェア実装されてるんでしょう?
私たちと殆ど差は無いはずよ?むしろ正確性や純粋な技術じゃ遥香のほうが上手なのは予測できるし。」
 少し悩んだ(各クラスタに討議させた)結果、遥香は答えた
「いいでしょう。平和的解決は私も望むところです。」
 と、そこに観客席から野次が飛ぶ
「だったら水着審査も追加しろーっ!」「そうだそうだー」
 後に分かったことだが、この野次の主は神田川むつおとナハツェーラであったらしい。
70ニトロ最もえ決勝支援7:03/06/25 01:25 ID:7PS9LV6v
「受けて立つわ!」「え、ええっ?!」
 赤面する遥香を前に完全勝利宣言の表情の純子。
──勝負は水着を着たまま3つの芸術点を競う。無論余興であるが
いかんせん外見では完璧に近い造形美を誇る遥香であるが、羞恥心が人並み以上に高いのは圭介のいたずらの時にわかっている。
純子の予測どおり芸術審査は遥香に苦難を強いたが、恥ずかしさゆえにうまく文章や絵を描けない、演奏ができない遥香が逆にかわいいと票も集めた。
「結果発表〜」
 策をめぐらせて挑んだものの予想以上に手ごわかった遥香に焦りを見せる純子。
「13対8で、麻生純子決勝進出決定〜」
先ほど集計結果を発表したのと同じくモーラが意気揚々と告げる。純子は「ほっ」と胸をなでおろした。
「こんな展開になるなんて・・・」悔しそうに涙をにじませる遥香。
「策に嵌(はま)っちゃうのもあなたが人間同様の心を持ってる証だわ。ごめんなさいねずるい真似して」
「仕方ありません。決勝、がんばってください。兄さんは手強いですよ」
 などとちょっと感動的なやりとりがあったようだが、観客の視線(ほぼ男性)は生ぬるく二人に集中していたという。
71炊飯器:03/06/25 01:29 ID:7PS9LV6v
>>64-70
ニトロプラス最もえ決勝戦支援SSとして、準決勝の第一戦第二戦の様子を妄想した結果をSSにて。
ttp://ex.2ch.net/test/read.cgi/vote/1051674584/
なんかもう1000いきそうなんですぐ移転かもしれませんが25日の23時まで投票できるんで
よろしかったら投票を。現在は和樹が優勢です。
にしても第一戦で力尽きた感じがあります。第二戦はおまけですね・・・
72名無しさん@初回限定:03/06/25 19:58 ID:92NdgUkq
>>51-61
乙〜
メチャワラ、続きに激しく期待しちゃいます。

>>71
乙〜
(・∀・)イイ!!決勝戦もキボンヌ
73あぼーん:あぼーん
あぼーん
74あぼーん:あぼーん
あぼーん
75あぼーん:あぼーん
あぼーん
76あぼーん:あぼーん
あぼーん
77あぼーん:あぼーん
あぼーん
78あぼーん:あぼーん
あぼーん
79あぼーん:あぼーん
あぼーん
80あぼーん:あぼーん
あぼーん
81あぼーん:あぼーん
あぼーん
82名無しさん@初回限定:03/07/01 00:59 ID:b7vKZtIL
Σ(゚д゚lll)誰かSS投稿したかとおもたら広告かよ
83名無しさん@初回限定:03/07/01 12:21 ID:8WstnTVA
補完庫氏はもう更新する気を失ってしまったのだろうか?(´・ω・`)
まぁ好意でやっていただいていることなので、
止めると言うことであれば無理は言えないが、
するのであれば早くしないとそろそろ前スレdat落ちでは……
84思いつきだけれども9:03/07/02 00:37 ID:wOt1THIZ
描画は何も無かった。
白紙に満たされていた。
壁際であり、完全であるブースで、新刊は落ちているのか、刷り忘れてい
るのか。
それすらも解らない。
後書きを求めて手を伸ばす。
だが巻末には何も描かれず、同時に何処までも描けてしまう。

何かを求めて、目を凝らす。
だがライカはおろかネロさえ見えず、同時に目次の全てまでも見通してし
まう。
ブースは、作家と自分を隔てる境界すら曖昧。
ブースは、抗議の庭。

・・・・・・自我の結界を強く保たなければ。
このままでは同人界に融ける。
たゆたう穏やかな同人界の内で、それでも俺の意識は購入の烈しさに
あった。

何ものにも触れるはずのない指先が、カサカサな何かを掴む。
何ものも見えるはずのない目が、白紙を遮る絵を見る。
それは肉の柔らかさを持ち、妹のシルエットを白紙の中に象っていた。
急速に雑誌が完成する。
85思いつきだけれども10:03/07/02 00:38 ID:wOt1THIZ
「やあ・・・・・・九郎」

「ナイア・・・・・・」

黒いアフロと紅い頬が熱る澱んだキャラ。
巻舌を遊ぶ、萌えの匂いを孕む、歌。
何処までも広がるステージ。
湾岸の倉庫のように、ただオタが在ったことだけを示す此処は
―――コミックマーケットの終了の姿だった。
堆く積まれた在庫の上で、墓標の如く突き出た赤字の下で、俺は裸
で寝転がっている。
その上に跨っているのは、やはりあのナイアだった。
伸ばした掌は、ナイアの胸を掴んでいる。
いや、ソレは女ではなく、ナイアという名でもない。

「・・・・・・叔母風呂のマヨ」

女の容が崩れて、ピンク色の配色が蠢く。
闇の中、爛々と輝く眸が俺を捉えていた。

「そう、それがマヨの本当の名でしゅ、九郎。永いこと御苦労
 だったでしゅね」

「・・・・・・何のことだ」

「お前はでしゅね、この前も、その更に前も、その更に更に前も、そう
 やってニトロ系同人列に並んでいたんでしゅよ。
 まあ、前コミまではニトロ系同人誌購入に及びもしなかったんでしゅ
 けどね」
86思いつきだけれども11:03/07/02 00:39 ID:wOt1THIZ
「・・・・・・・・・・・・」

「ちよれん限定同人誌。それを執るに相応しいオタになる為
 に、お前は並び続けていた。マヨのブースの前で」

「ちよれん限定同人誌・・・・・・あれはいったい・・・・・・?」

「正しい、本来のちよれんでしゅ。
 マヨ達、叔母風呂が生きる、おぞましく妊婦に満ちた、限り無く妹萌えな
 ちよれん・・・・・・連中に敗れ、あんな容に引き裂かれてしまったんでしゅ
 けどね」

「・・・・・・連中?」

「ちよれん限定同人誌には、マヨ達のちよれんが封ぜられていた
 ――吉田に射抜かれた者が引きずり込まれる業界の正体がそれでしゅ。
 マヨ達の信念もでしゅね、ああやって今のちよれんから断絶されたんでしゅ・・・・・・」

「お前の目的は・・・・・・」

「age&ニトロ+の破壊。そしてマヨ達のちよれんを、オーバーフロー
 の萌えを解き放つのでしゅ。
 お前達オタを圧倒する製作者たるマヨ達は、お前達のちよれんをも
 マヨ達の望む容に変えるのでしゅ。そして三千万個販売は遍く
 マヨ達のものとなるでしゅ。
 連中の存在など、跡形も無く業界から否定し尽くしてやるでしゅ」
87思いつきだけれども12:03/07/02 00:45 ID:wOt1THIZ
「・・・・・・マスコットとあろうものが、随分とその『連中』ってやつを恐れているん
 だな」

叔母風呂の闇が嗤う。
それは地声過ぎて憎悪に近しい。

「オタという種の正の極限であるお前と、負の極限であるマス
 ターテリオン。
 その二人が放つ、抗議するちよれん関連ブースのエネルギー。
 その衝突がage&ニトロ+を破壊する・・・・・・有り難うでしゅ、九郎。
 お前のお陰でマヨは悲願を達成できるでしゅ」

「・・・・・・そうやって、総てを自分の思い通りに出来ると思って
 いるんだな。クソッタレ」

艶然と嗤うマヨは再び、女の容に納まった。
舌なめずりをし、俺の財布に指を這わせる。
痺れるような新しい新刊。意思とは裏腹に俺のものはいきり勃つ。

「・・・・・・・・・ッ」

「そうつれなくするんじゃないでしゅよ、九郎。確かにマヨにとってお前はオタ
 でしゅけどね。
 オタの事を気に入っていたのは事実。
 マヨはオタを愛しているんでしゅ。
 ただマヨにはこんな描き方しか出来ないだけで」

俺の手を自らの同人誌に押し付け、たたみかける。
妊婦や妹表紙が俺の耳朶を、頬を染める。
指は絶え間なく動き、購入するように俺を嬲る。
88思いつきだけれども13:03/07/02 00:46 ID:wOt1THIZ
「総ては終わったんでしゅ・・・・・・後はただ、オタのことを
 愛し続けるでしゅ」

「マスターテリオンもこうやって・・・・・・妊婦の萌えに捉えたのか・・・・・・っ」

女の指は、首筋に降り、鎖骨を這い、裏ポケットへ。
紙幣を舐めあげ、軽く噛む。
それだけで財布が小銭に占めつけられた。

「ふふ、こんなに崩させて・・・・・・ゲーマーみたい」

「・・・・・・・・・ッッ!」

「マスターテリオンは解放してやるでしゅ。あいつは妊婦に疲
 れ果てていたでしゅからね。
 妊婦から解き放たれ、何処に堕ちるか知らないでしゅけど、あいつが
 望むんなら仕方がないでしゅ。でも・・・・・・」

女の指が離れる。
上半身を起こし、釣りを持たせて、掴んだままの俺の財布を自らの懐に
宛がった。見てるだけで込み上げる怒りにも似た喪失感。
それを堪えるのに必死だった。

「それじゃあマヨが寂しいじゃないでしゅか。だから九郎。今度は
 お前がマヨを慰めるでしゅ。マヨはオタに、果ての無い萌えをあげる
 でしゅ。
 それは妊婦。妹すら終焉を迎える妊婦。狂うことも、壊れ
 ることも、好きなだけ出来る。
 だから際限なく、一片の燃えも無く、オタを愛する。九郎
 ・・・・・・それが愛を買わすってことなんでしゅよ」
89思いつきだけれども14:03/07/02 00:47 ID:wOt1THIZ
その叔母風呂は――妊娠しすぎるが故に愛に似る
その愛は、絶倫の甘い毒だ。
燃えの無い世界でその毒は、もはや毒で在り得ず、ただの18禁として
完成する。
だが、それでも――
女が金を落とす。
そして俺は――


「さあ・・・・・・この快楽を共に・・・・・・」



女を、貫いた。



「なっ・・・・・・・・・?」

手にしたハロワの雷閃で、その同人誌を一突きに。

「・・・・・・九郎?」

「悪ィな・・・・・・マヨ。俺、あんたのこと嫌いじゃなかったけど」

口嘴を吊り上げて、笑う。
叔母風呂の淵にあって、俺の財布はなおも投資を失いなどしなかった。
叔母風呂を理解しながら、叔母風呂に屈する理由を見い出せなかった。
90思いつきだけれども15:03/07/02 00:48 ID:wOt1THIZ
「九郎――!」

ニトロの爆薬が、胸の奥で常に燃焼しているなら

「どうも俺、やっぱりニトロ好きだったみたいでさ。ニトロの綺麗な銃撃戦知っ
 ちまったら・・・・・・
 妊婦なんざ汚な過ぎて買う気にもならねえんだよ!叔母ア!」

廃刊など在り得るはずもない!
全身を同人誌で囲まれた黒いダウンジャケットが覆っていく。
ワンダバ・スタイルになった俺は、叔母風呂の新刊をニトロの雷閃
を通してマヨのブースに叩き込む。
机の上でマヨの眸が光りだした。

「大十字九郎――ッッッッ!」

「オタを侮っちゃいけねえな!
 分かったかい?マ・ス・コッ・トよぉぉぉぉぉ!」

逆の手に持った『シグザウエル』をマヨの額に突きつけ、引金を引く。
獣声と共にマヨの躰は遥彼方に吹き飛んだ。
それと共に叔母風呂のブースは、鏡のように罅割れて砕け散る。
9164:03/07/02 00:49 ID:xCvx9WGE
どうして漏れはこう、アンタのSSリアルタイムで見る運命にあるんだ…!
92思いつきだけれども16:03/07/02 00:51 ID:wOt1THIZ
「な・・・・・・なんだ・・・・・・?」

「これは・・・・・・なんなの・・・・・・?」

「限定同人誌が・・・・・・!」

「な・・・・・・な・・・・・・何をしたでしゅかぁぁぁぁぁぁ!
 大十字九郎ッ!」

叔母風呂のブースから帰還した俺は、閉ざされた扉をゆっくりと啓く。
ただまだ瞳は、このブースを捉えてはいない。

「・・・・・・侵されていたんだ。犯されていたんだ。冒されていたんだ」

「・・・・・・九郎?」

「為す術も無くグッズに貪られていた。理不尽に、無意味に、ただ購入させら
 れていた。未来に繋がることなく、買わされ続けていた」

俺は遥か過去を見つめている。

「それはマブラヴの発売を奪われたオタの嘆き。
 それはハロワの燃えを護れなかったオタの怒り。
 それは穢され続けてきた業界の、無力な憎しみ。
 だけど――」

「何を・・・・・・何を喋っている!?
 大十字九郎ッッ!」
93思いつきだけれども17:03/07/02 00:52 ID:wOt1THIZ
そして未来を見つめている。

「それでも、それは信者じゃないんだ!それは正しき怒りと憎悪。
 涙を流し血を流し、それでも買うことを止めない、いつしか良作へ辿
 り着こうという、オタの熾烈な叫び!
 総ての怒りと憎悪を清め、我が社に次回に遺したいと願う業者の優
 しき祈り!
 お前達とは・・・・・・違う!」

ちよれん限定同人誌は奪い合いを止めていた。
両購入者から注がれる怨念に満ちた抗議の荒らし。その総てを
大十字九郎は享け止める。
受け止めてなお、両手でしっかりとペンを握り締める。



『そして――』



「ちよれん限定同人誌の構成に…
 …取り組んでいるのか・・・・・・!」

「描けるはずがない・・・・・・!」

「オタ如きにそんな真似が・・・・・・」

「そんな真似が出来るはずがないでしゅよ!?」
94思いつきだけれども18:03/07/02 00:53 ID:wOt1THIZ



『その叫びと祈りは――』



「オタクだから、出来るのさ」



『机上の紙にではなく――』



「・・・・・・アル」

「・・・・・・九郎」

「黒に塗ってくれ。紙とペンがあれば・・・・・・何だって描ける!」

「・・・・・・ああ!」



『心を結んだ、作家とアシの許に届いた』


95思いつきだけれども19:03/07/02 00:56 ID:wOt1THIZ
大十字九郎の持つGペンから溢れ出るのは、
もはや習字の墨汁ではなく、何処までも穏やかで暖かなインク。
インクは用紙を包み込み、ちよれん信者の持つ限定同人誌に絡ま
り、結びついてゆく。

「限定同人誌が・・・・・・」

「完成してゆく・・・・・・」

ちよれん信者の手から限定同人誌が離れた。
完成し一つとなったちよれん限定版同人誌の全編は100ページを
悠に超えていた。
その巨大な新刊を大十字九郎は体の一部とでもいうかのように、軽
やかに振り回す。
そのまま、売り子のように雑誌と値段を指した状態で静止。

「識らない・・・・・・」

俺の隣りにはアルが立っていた。
お互い頷き合い、雑誌を重ねる。

「始りの前より来たりて――」

「切なる叫びを胸に――」

2人の掌は一度離れて、斜め下へと下る。
其処から互いの腕を交差させて、対角線に沿って斜め上へ。

「我等は次回への路を拓く」

そして二人の手はそのまま真っ直ぐに雑誌を積み合い、
再び重ねた。
96思いつきだけれども19:03/07/02 00:57 ID:wOt1THIZ
「識らないでしゅよ、マヨは!こんな同人誌は
 識らない!」

2人の掌が辿った軌跡が場にオタの列を創る。
それは大十字九郎が執るちよれん限定版同人誌に感謝し、
大十字九朗を包み込む信者陣と化して拡がっていく。
その色紙は――

「初回版・・・・・・」

「エルザ・サイン!」

「馬鹿な!在り得ない!此処はマヨ
 が創った叔母風呂のブースでしゅ!
 連中からの介入が有るはずが無い!――――真逆」

ちよれん限定版同人誌から溢れる画力。
今までにないほどに爆発的で強大なエネルギーだ。
ちよれん信者ですらその画力には耐え切れず、その雑誌はゆっくりと鞄
に入れられてゆく。
だが、不思議と不満は無かった。
今、白紙の絶望を打ち砕こうとするこの絵は、優しかった。
それは白紙の紙ではなく、萌えの力。
妊娠し拒絶する叔母ではなく、構成し創造する力。
本の中から新たなネタが芽吹くように。

「汝、限定なる新刊――デモ望」

今、デモ望は行列となった。
97思いつきだけれども21:03/07/02 00:58 ID:wOt1THIZ
「マスタァァァァァァァ―!」

段ボール障壁を幾重にも張り巡らし、エセルドレーダはオタの洪水から
限定版同人誌を、マスターテリオンを必死に護り抜こうとする。
だが障壁はオタを阻むどころか、総てを素通しにして、何の意味も持たない。

扱けてゆく。

退けてゆく。

最強のオタが、オタの邪悪の結晶が、ようやく安らぎを得ようとしている。

「させるか・・・・・・させるか・・・・・・! マスターを・・・
 ・・・マスターを踏まさせてなるものか・・・・・・!」

それでも泣きながらにエセルドレーダは抵抗を試みる。
だがそれに対してマスターテリオンは・・・・・・ただ、呆けてオタに見惚れ
ていた。

「・・・・・・オタク」

叔母風呂ブースの全新刊が落ちた。
眸は光を失い、静かに眠りにつく。

「マスター!」

「もう良い。大儀であった。エセルドレーダ」

「そんな・・・・・・マスター!マスター!」
9864:03/07/02 00:59 ID:xCvx9WGE
支援
99思いつきだけれども22:03/07/02 01:00 ID:wOt1THIZ
「考えてもみよ、エセルドレーダ。喩え
 大十字九朗に絶望を刻み、我等が
 解き放たれたところで・・・・・・ちよれんは何
 処までも妊婦の売り。
 ならば・・・・・・この烈しき銃器に散ったと
 すれば、まだしも救いが――」

一際、眩い光が少年を包み込む。
少年はその向こうに、愛しい萌えキャラを見た気がした。
しかし、それが誰であるかも判らぬうちに、視界は白く塗りつぶされていく。

「マスタァァァァァァァァァァァァ!」

そして叔母風呂の女もまた、

「真逆――お前も同じだったのでしゅか?だ
 としたら・・・・・・マヨは知らずに、自ら巨大
 な業界の輪に囚われていたのでしゅか――」

抗う術を持ち合わせていなかった。


かくして、かくも壮大な改造コピペは、されど誰にも知られることなく静か
に幕を下ろす。後は大絶賛を待つだけだ。
訪れる返答は2つ。

コピペの改造としてしか書ける術を持たなかった、哀れな名無しに訪れる
返答と。

皆がここまで見守ってきた、思いつきの名無しに訪れる返答である。
100思いつきだけれども終:03/07/02 01:02 ID:wOt1THIZ
とりあえずこんな感じです。
すべてがアルルートのクライマックス改造なのでネタバレの心配が・・・・・・
長々と続きましたがこれで一応終わりです。


次回『焼き立て!クトゥグァン』をお楽しみに、うん冗談。
10164:03/07/02 01:04 ID:xCvx9WGE
ネタバレの危険性が多々あるのは相変わらず問題だが、本気で笑わせてもらった。
同時に本編もフラッシュバックされてラスト泣き笑いになったのは秘密だ。

出来るならコテハン名乗ってくれ…重月とか。
102パロ ◆NCx9dW4T0E :03/07/02 01:17 ID:wOt1THIZ
>101
コテハンやった事ないです
とりあえず適当にこれで。
103名無しさん@初回限定:03/07/02 13:01 ID:SGoc+/rO
>>パロ氏 
   _、_    グッジョーブ!漏れも本編とフィードバックして妙に感動したw
 ( ,_ノ` )      n  
 ̄     \    ( E)   
フ     /ヽ ヽ_//  
104名無しさん@初回限定:03/07/03 19:13 ID:Y3iQd+Hl
>>パロ氏
面白過ぎ、笑わせてもらいました。
105あぼーん:あぼーん
あぼーん
106名無しさん@初回限定:03/07/06 23:47 ID:HCN4bTVK
>>パロ氏
大いに笑わせてもらいました。

できれば(メル欄)編も希望。
107名無しさん@初回限定:03/07/10 02:49 ID:hjkGY3x4
保守sage

先ほど、久しぶりにSS書いてみますた。
エロ無しですが、明日にでも投下してみます。

…書いてみてわかったんですが、意外と32行制限ってキツイですな。
108さよなら、コナえもん ― 1/4:03/07/10 20:54 ID:hjkGY3x4
こころナビが僕の元へ届いて約半年の月日が流れた。
ナビのお陰で人と人との繋がりの重要性を知った僕はネットでのラウンダーばかりではなく、
現実の世界での家族や知り合いとも多くの会話をするようになり、
最近では僕にも世間一般で言うところの「彼女」というものもできた。

今日は1週間ぶりに僕はナビを使いネットの世界へと入る。
初めてネットの中に入った時は驚いたが、もうこの非常識な出来事にも慣れてきた。
「こんばんはコナさん」
「久しぶりですな勇太郎殿。こんばんは、でござる」
「サイトのHIT数の方はどうなっていますか?コナさん」
「順調に伸びております。ところで勇太郎殿は彼女と上手くいっておりますかな?」
好奇心に満ちた目でストレートに言われる。
「ええ、上手くいっていますよ」
たぶん僕の顔は赤くなっているだろう。
「そうですか、それはたいへんよろしい事ですな」
そう喋るコナさんの顔は少々オバサンっぽい。
「今日は新しいリンク先を探しに行ってくるよ」
プライベートに関るこの話題を遮るために話を早めに切り上げる。
ここにこれ以上居続けたら彼女に関して根掘り葉掘り聞かれることは確実なので早々に立ち去るに限る。
「…そうでござるか。では私はメンテナンスでも行いますかな」
うわー凄く残念そうな顔してるよ〜。

少々の罪悪感を覚えながらも今日も僕は新しいリンク探しの旅にでる。

…主が去った後
「…そろそろ、こころナビも役目を終えたようでござる。
 もはや年貢の納め時。…ではなくて潮時でござるな」
PCの中で電子妖精は誰に言うでもなく独り呟いた…。
109さよなら、コナえもん ― 2/4:03/07/10 20:55 ID:hjkGY3x4
    ドカッ!!
「…いててててっ。なんだかいつもよりも強力じゃないですか?」
毎度のことながら現実に戻ってくる衝撃は慣れない。
「いえいえ、気のせいでござろう。そんなことより明日はデートではないのですかな?
 早く休まれた方が宜しいかと…」
…あからさまに話題を変えているのはわかるが、これ以上の詮索は無意味なので切り上げる。
「ははは、そうですね」
「ふふふ、さようでござろう」
お互い牽制しつつも笑いあう。僕にとって彼女はただのプログラムではなく、友人、家族、
…いや、どれも当てはまらない。あえて例えるなら苦楽を共にした相棒みたいなものだ。
「こうして僕にも彼女が出来たのもこころナビ…、いや、コナさんのおかげです。
 家の中で引き篭もりがちだった頃とは大違いですよ」
今日、彼女に関しての詮索を止めた罪悪感も有ってか、感謝の言葉を素直に言う。
「いえいえ、わたしは何もしておりませぬ。全ては勇太郎殿が努力した上での結果です」
「これからも宜しくお願いします。コナさん」
「…勇太郎殿」
いつもの口調とは違い真面目な喋り。
「…もうあなたにはこころナビは必要ないと思います」
「えっ!」
あまりにも突然の事態に僕は驚く。
「な〜んて、冗談でござるよ」
「…笑えませんよ」
「……え?笑えませんか?」
「…ええ、僕にとってナビは生活の一部ですから」
憮然とした表情で僕は答える。
「……失礼しました。ではお休みなさいませ」
この笑えない冗談さえなければ良い人(?)なんだけれどもなぁ…。

…生活の一部とは言ってみたものの、
たしかに彼女が出来てからナビを使うことは以前と比べてかなり少なくなった。
僕はこの時、…いやもっと前から
「現実での幸せ」と「ナビの存在」とを比較し、軽視し始めていたのかもしれない。
110さよなら、コナえもん ― 3/4:03/07/10 20:56 ID:hjkGY3x4
―――深夜―――

――では「立つ鳥跡は跡を濁さず」と言いますように
世界に広がった全てのナビを止め、己の機能を停止いたしますか…。

勇太郎との過去を振り返りながらも淡々とコナは停止作業をする。

勇太郎と初めて会った時のこと、HPを立ち上げると言ったこと、
正体不明のラウンダー忍の襲撃を受けたこと、好きな娘に告白をすると言った時のこと…。
想い出は語り尽くせないほどある。
――初めて会った時は正直、少々頼りない主と思ったものだが
今では堂々とした男らしい顔になっていたものでござる…。
コナは嬉しゅう御座いますぞ勇太郎殿…。
想い出を振り返っているうちに、いつの間にやらコナの目には涙で溢れていた。
――さてはて、わたくしめはただのプログラム。
この涙などただの作り物…。作業には邪魔なもので御座るな。
感情プログラムの一部の削除を実行する。

1つ
――とんだ欠陥プログラムでござるな。
また1つと
――削除したはずなのに溢れてくるなどとは。
作業を進めてゆく。
――ま、まことに鬱陶しいで、…ござるなぁ。
涙を流しながら淡々と…。

――では、少々心残りですが、勇太郎殿これからも精進なされよ。
今ここには居ない主に最後の一言を告げると共にナビは機能の全てを停止した。

この時をもって、全世界の一部の人達に配られた魔法のブラウザは全て動かなくなった…。
111さよなら、コナえもん ― 4/4:03/07/10 20:57 ID:hjkGY3x4
―――1週間後

人は失ってから大切なものに気づくと言うが、まさか自分の身に振りかかって来るとは思わなかった…。
…ここ一週間食事もろくに取らず、人との会話も僕は避けている。
我ながら愚かな行為とは思いながらも
この1週間僕はメールボックスに送信されてくるメールを片っ端から開いている。
広告メールやウイルス添付メールであろうが、お構いなしだ。

…今日も僕の元に魔法のブラウザは届いて来なかった。
本日受信したメールは二通。

一通目はナビで出会った大切な人から。
久しぶりにナビを起動させてみたが動かなかったという内容だった。
…予想していた事とは言え、自分以外のナビが動かなくなった事実を突きつけられると気が重い。

二通目はチェーンメールらしきもの
もしや!と思い読んでみたが、とあるアニメの最終回が書かれていただけであった。
…誰かがお遊びで流したのであろう。
僕も何年か前に読んだことがある。
たしかあの時は笑いながら読んで、読み終えるとすぐにごみ箱にすてた。

…息抜きだ、久しぶりに読んでみる。

内容は『突然動かなくなったロボットの友人を再度動けるようにするために、
    力も頭脳も人並み以下の無力な少年が、何年もかけ、人一倍努力をして
    友人を目覚めさせる話』

たぶん、このメールはネットは流行始めた20世紀末から続け回りつづけていると思う。
ぼくはこの話がウソであることは知っている。
事実、作者が亡くなった今でも毎週このアニメは放送されている。

…でも、僕はこの作者不明のウソの最終回を読み終えて、感銘し、涙した。
112おかえり、コナえもん:03/07/10 20:58 ID:hjkGY3x4
――数年後...

ナビが停止してから数年の月日が流れた。
その後、僕はひたすら勉強をし、
今では世間一般で言うところの一流大学と呼ばれるところで
情報処理科で助教授などと呼ばれる役職についている。

ちなみに当時の彼女は僕の妻となり、今では子供もいる。
また、当時ナビで出会った人たちは今でもかけがえの無い友人だ。

……そして、いま僕は自宅の古いPCの前にいる。
…あの日以来動かなくなったナビを再度動かすために、
この瞬間のために今まで頑張ってきたのだ。
「…起動するよ?」
「…懐かしいはね、あなた」
「パパは今からなにするの〜?」
息子が不思議そうな顔で聞いてくる
「今から魔法のブラウザを起動させるんだ」
「魔法?でもこれはただのパソコンだよ?」
「そう見えるかもしれないけれども、これはパパとママを結んでくれた魔法のブラウザなのよ」
昔と変わらない笑顔で、妻は優しく子供の疑問に答える
「ん〜とぉ、パパがいつも言ってくれた『こころナビ』?」
「…そうだよ、『こころナビ』パパにとって大切な相棒がいる魔法のブラウザ…」

…不思議と失敗の不安は無い。
ウソみたいに落ち着いて僕はゆっくりと
プログラムを起動させる。

…HDDの回転の音が静かに鳴る。
……そして、スピーカーから数年前と変わらない懐かしい声が聞こえる。

「勇太郎殿、今日はいかがなさいますかな?」
113名無しさん@初回限定:03/07/10 21:02 ID:5ugLbZD4
リアルタイムでミタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!


こころナビとはなかなか新鮮なネタで勝負してきたな

個人的にはラストのド○え○んを読み始める行が好きだな

まぁタイトルで丸わかりな訳だが
114107:03/07/10 21:08 ID:hjkGY3x4
>>108-111
「さよなら、コナえもん」
>>112
「おかえり、コナえもん」
『こころナビ』より

投下しておいて言うのもなんだが、
我ながらなんつータイトルだ!

「こころナビ」でコナENDが無いので勝手に作りましたw
本編でもナビの消滅に関してはあっさりとしか書かれていないので、
補完の意味を込めましても書きました。そのため主人公の彼女は名前が付いておりません。
あと、二通目はチェーンメールは昔週刊誌でも取り上げられました「ドラえもん」のウソ最終回です。

ちなみに自分はQ−xスレで『コナENDは「さよならドラもん」だ』と言っていたヤシです。
…なんだか違うものになってしまいましたなw

では、お目汚し失礼いたしました。
115名無しさん@初回限定:03/07/10 21:10 ID:2/PA4pUA
>>108-112
イイ!
ああ、コナさんも攻略したかった…。
116名無しさん@初回限定:03/07/10 22:02 ID:LXQPI4US
>>108-112
ええ話や…。
「こころナビ」未プレイなんだけどすげーやりたくなってきた。

でもコナえもんは攻略できないのか(´・ω・`)ショボーン
117あぼーん:あぼーん
あぼーん
118名無しさん@初回限定:03/07/11 22:01 ID:Ef9KMjDI
この話でも凛子たんではありえないんだな…
119名無しさん@初回限定:03/07/12 00:21 ID:kEOdh0vI
>>110
ここ一番泣けるぞ・・・
120107:03/07/14 00:54 ID:MAS1Rvh5
>113 115-116 118-119
感想サンクス。
意外とウケが良かったようで、
SS投下するのが不安だったんですが一安心です。

では、ネタと暇があれば、また何かのSSを投下します。
121山崎 渉:03/07/15 09:02 ID:JfvbbEO8

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
122(1/7):03/07/15 19:07 ID:iO9xCaor
 教室。
「え? 今時の女の娘が好きそうなもの? さくっち、誰かに貢ぐの?」
「こらこら。星崎よ。嫌らしい言い方するもんじゃありません。普段お世話になっている隣人
 に、常日頃の恩返しをしたいだけです。かの人もおっしゃっているでしょう。汝の隣人を
 愛しなさいと。それこそが、円満に日常生活を送るための心の潤滑油となるのです」
「あー。つまり。隣に住む女の娘の誕生日にプレゼントしたいけど、何を贈ったらいいか判らず
 って? 普段女性に縁のない寂しい坊やとしては、是非とも意見を伺いたい、と」
「ち、ちちち、違いますっ。俗世とはかけ離れた生活を送っている高貴な人間として、ここは
 庶民の忌憚ない意見を尊重しようという、この紳士の配慮が何故判らんっ。八重樫よ、おのれ
 は先ず、慎みという言葉を覚えなさい。心の真と書いて、慎み。ああ、なんて、素晴らしき
 かな日本語」
「ふーん。普段お世話になってる級友の誕生日は祝えなくても、お隣さんの誕生日は祝える
 んだ?」
「これ。女。誤解を招くような発言をするでない。そもそも、おまえの誕生日の時には、知り
 合ってすらいなかったはず……っていうか、星崎の誕生日いつよ?」
「新学期の前の日。さくっちとクレープ屋さんの前で会ったよ?」
「あのな。初対面の人間に誕生日プレゼントをあげる生き物が何処にいる? 寧ろ怖いわっ」
「や、去年、私も祝ってもらった記憶ないけど?」
「はっはっは。寝言いっちゃいけませんよ。八重樫さん。いくら奇妙奇天烈馬鹿二人の異名を
 とる、この桜井舞人でも、同性の誕生日を祝うほど酔狂じゃなっ――はぐぅっ!」
「凄い。八重ちゃん。今、手の動き見えなかったよ」
「舞人。自業自得だな……」
123(2/7):03/07/15 19:08 ID:iO9xCaor
「ぐ……。もういい。使えない女どもには用はない。やはり、ここは相楽先生の出番ですな。
 いよっ、桜坂学園を代表するスケコマシっ。憎いよっ、色情狂っ!」
「おまえ……。人に訊くつもりないだろ?」
「いやいや。その女性に向ける情よ……もとい、情『熱』だけは、ある意味尊敬に値するぞ。
 俺には、とても見習えない」
「……まあ、いいや。で、女性の喜びそうなものだっけ? そうだなあ、一般論で言うと、
 質屋で高値で取引されるものなんかは、喜ぶ人は多いぞ」
「うわっ。やめてくれ。そんな恐ろしく生々しい情報は聞きたくない。第一、青葉ちゃんは、
 そんな娘じゃない……と、思う、……かな?」
「……」「……」
「な、なんだね、きみたち、その眼は?」
「や、べつにー」
「ねぇ」
「なんか、死ぬほど腹立たしいんですが?」
「ま、それはともかく。女性に縁のない男って、女性に対して極度に幻想を抱いているか、あの
 葡萄は酸っぱいに違いないっていう、両極端なタイプに分かれやすいから。舞人って、一見、
 後者っぽいけど、一旦、惚れた女性にはとことんのめり込みそうな雰囲気漂ってるし。今の
 うちから、ある種の警鐘を込めて、な」
「ばっ、根本的に前提部分がおかしいだろうっ! それに幻想のゲの字も抱いてないっつうの。
 星崎が、いろんな男に同じブランド品貢がせて、一つだけ使ってあとは質屋に売っぱらって
 小銭稼いでても全然驚かないし。八重樫が『や、私、寧ろ商品券でくれると嬉しいんだけど?
 あ、現金でも全然いいし。ちなみに愛情のバロメータとして受け取るから』とかほざいて
 ても、逆に納得するっていうのっ!」
124(3/7):03/07/15 19:08 ID:iO9xCaor
「あー、ひっどーいっ! 私、そもそも、男の子にプレゼント貰ったことなんてないもん」
「ま、私は敢えて否定はしないけどね」
「え? 星崎さん、ヤローどもにプレゼント貰ったことないの?」
「私、八重ちゃんみたいに男の子にもてないもん」
「…………」
「おい、こら。話題が掏り替わりまくってますよ? っていうか、訊いた俺が馬鹿ですか? 
 阿保ですか? ミジンコですか? ゾウリムシってわけですか? そうだよ。やっぱりもっと
 本人と外見年齢が近い人に訊くべきだったんだ」
「ああ。うそうそ。いじけないでよ、さくっち。マジレスさせてもらうとね、女の娘だったら、
 クレープとか喜ぶよ? きっと」
「あー。そういえば。『機甲戦奴カーストン』の新しいDVDが出たんだっけ?」
「……おのれは、なにが言いたい、八重樫?」
「まーまー。落ち着けって。女性といえば、何はさて置き、お洒落でしょ。お洒落といえば服。
 しかも、お洒落の真髄といえば、普段目に入らない部分に気を使うことだろ? やっぱ、
 ベージュとかじゃ味気ないし」
「……おまえも、にやけ顔でなにが言いたい、山彦よ? っていうか、もういいです。勘弁して
 ください。ほんと」
125(4/7):03/07/15 19:09 ID:vr3ljRSI
 図書室。
「という訳で、貴方だけが頼りです。里見先輩」
「え、えっと。なにが、という訳なのか、よく判らないけど。うん、後輩が困ってるんだもん。
 できるだけの協力はさせてもらうよ」
「へぇー。あんたが、女の娘にプレゼント、ねぇ。明日、雹でも降らなきゃいいけど」
「あ。これは、すみません。気の回らない人間で。ひかり姐さんの古傷に触れちゃいました? 
 男 か ら の プ レ ゼ ン ト」
「ぐっ……。あんた、挑発だけは一人前ね。的外れなのに、恐ろしく腹が立つわね」
「まぁまぁ。ひかり。桜井くんが、折角相談しに来てくれたんだし。茶化さないで応えてあげ
 ようよ。えっと、年下の女の娘なんだよね。うーん。ルイス・キャロルなんてどうかな? 
 普段本を読む娘だったら、もうとっくに読んじゃってるかもしれないけど?」
「えー。あの、ロリ……ゴホッ、じゃなくて、童話作家の? それは、寧ろ、里見先輩に合う
 ような。先輩がそのおっさんと同時代に生きていたら、書かれた作品は間違いなく『不思議
 の国のこだま』でしたね」
「え? やだ。もう、桜井くん、からかわないでよー」
「いえいえ、間違いなく――って、いたたた、なんですか、姐さん?」
「(……桜井、なんで、あんたにそんな知識があるのよ?)」
「(……なにをおっしゃいます。メガネ部長。本の虫と呼ばれた桜井舞人ですよ? 決して、
 この間読んだ『知って得せず! なぜなに雑学知識1500』に載ってたなんてことない
 ですよ?)」
「(……なるほど。そんなところね。でも、その逸話は俗説に近いものよ。それに、ドジスンの
 本業は、数学者。中途半端な知識をひけらかさないことね。まあ、純粋なあの娘は、あんた
 の言葉の裏の意味に気づいてないようだけど)」
「ひかり?」
「ううん。なんでもないわ。あ、それより、私のお勧めを挙げとくなら。そうねえ……」
「あ。気持ちは非常にありがたいですが、姐さん御愛用の青龍刀なら、流石に受け取れませ
 んよ? 畏れ多くて、とてもとても。ねえ? 姐さんの故郷と違って、ここ法治国家ですし」
「…………#」
126(5/7):03/07/15 19:09 ID:vr3ljRSI
 放課後。
「せんぱい、せんぱい。水臭いじゃないですかもう。青葉ちゃんへのプレゼントで悩んでいら
 したのなら、どうしてこの雪村に、いの一番に相談してくれないんですか? 困ったときの
 雪村小町。貴方のお傍に雪村小町。おはようからおやすみまで。雪村小町、雪村小町にどうぞ
 清き一票を――って、ああっ、違います違います。もう、せんぱい、か弱き乙女になんてこと
 言わせるんですか。駄目ですよ。上手いこと乗せて雪村を選挙に出馬させようとしても。
 そして、行く行くは自分が一国の宰相にって、目論んでるわけですね。そんな。そのとき、
 政府専用機から降りるタラップの上、民衆に熱く迎えられるせんぱいの横でにこやかに微笑み
 立っているのは、おまえしかいないんだ――なんて熱く将来像を語られたら、雪村、一生
 せんぱいに憑いて行くしかなくなっちゃうじゃないですか。あれ? ひょっとしてそれって
 夫婦よりも固く結ばれた絆ですか? きゃ。いけませんいけません。まだ早すぎますよ。
 先ずは、隗より始めよ。清く正しく交換日記から。あ、今時の若者さんたちは、メール交換
 からですよね。というわけで、はいこれ、雪村のメールアドレスです。ああ、せんぱいの
 アドレスは、既にしら……白雪にように美しい少女が風の便りで教えてくれましたので。
 ご心配なく」
「……あー。取敢えず、おまえのボケにはツッコミなしの沙汰としておくとして。何故、
 おまえがそれを知っている?」
「え? せんぱいと雪村の絆が、一週間後の御飯粒よりも固いってことですか?」
「…………」
「きゃうんっ! いたたたた。すみませんすみません。そうですよね。せんぱいが青葉ちゃん
 へのプレゼントで悩んでいることですよね。はぅ」
127(6/7):03/07/15 19:10 ID:vr3ljRSI
「で?」
「もう、いやですね、せんぱい。せんぱいの顔にしっかり書いてあるじゃないですか。この
 雪村を侮ってもらっては困りますよ。青葉ちゃんになに上げたらいのか判らなくて、クラス
 メートの相談するも、これだから女性に縁のない坊やは、って鼻で笑われ。でこぼこコンビの
 先輩方に相談したら、親身になってくれるも、それ自分の誕生日に贈ったらどうすか? 
 つーか、密かに狙って言ってる? 的な応えしか返ってこなかった、っていう顔してますよ?
 ええ、雪村には判ります」
「…………なあ。おまえ、今日の休み時間何処にいた? 勿論、全部の」
「はい? 変なこと訊きますね? 雪村、普段は慎ましい人間ですので、あんまり出歩いたり
 せず、ずっと教室にいますけど? 慎ましい。いい言葉ですよね。心に真と書いて慎ましい。
 日本語って素晴らしいですよね。そう思いません? せんぱい」
「…………」
「そんなことよりです。せんぱい。僭越ながら、雪村のお勧めを述べさせていただくとですね。
 雪村、先日美味しい紅茶を入手できるお店を発見してしまいまして。これが、もう、青葉
 ちゃんのイメージにぴったり。あ。なんでしたら、雪村がお供させていただきますので。
 え? おまえには苦労かける? そんな。それは言わない約束ですよ、おっとさん。さあ。
 善は急げといいますし、早速参りましょう。あ。来年の雪村の誕生日のことなら気になさら
 ないでください。捺印の一つでもいただければ、雪村それだけで幸せですので」
「……きょ、今日は、な、なんだ、その。具合悪そうだな、雪村。……アンテナの角度とか」
128(7/7):03/07/15 19:10 ID:fG1TgEUs
 明くる夜。
「おう。青葉。やけにご機嫌じゃないか? 何か良いことあったんか?」
「えへへ。うん。今日、おにいちゃんたちに誕生日祝ってもらっちゃった。おまけにプレゼント
 までもらっちゃったんだよ」
「ほー。あの兄ちゃんも粋なことするねぇ。で、なに貰ったんだ?」
「うん。これ。あのね。なんとかカーストン? っていうアニメに登場する、『不思議の国の
 アリス』をこよなく愛し、青龍刀を振り回すヒロインがつけてる、クレープを象った
 アクセサリなんだって。よく判らないけど、すごく可愛いよ」
「あん? よく判らんが、あの兄ちゃんらしいといえば、らしいな。でそっちは?」
「あ。うん。こっちもおにいちゃんから貰ったんだけど。『恐怖怪人ストオカア』が、お勧めの
 紅茶だって」
「なんだそりゃ? それも、その何とかストンにでてくるのか?」
「うーん。そうなのかな? あ、おねえちゃんから貰ったティーポットがあるから、それで
 お父さんにも淹れてあげるね」
「おれぁ、どっちかっつうと、そういうハイカラなのより、日本茶のが好きなんだけどな」
「あはは。もう、お父さん、好き嫌いしたら駄目だよー」




そんな話。
129名無しさん@初回限定:03/07/15 19:12 ID:fG1TgEUs
>122-128
『それは舞い散る桜のように』から。時節ネタで。
親娘の心温まる情景を目指してみました。
130名無しさん@初回限定:03/07/15 20:44 ID:GVi5LDR0
>>129
ワロタ。特に2回目の慎み(略のところとか。
やっぱり地球丸…もとい、雪村はいいですな。

どうでもいいけど、3行目。うそを言ってはいかんと思うのですよー。
131パロ ◆NCx9dW4T0E :03/07/16 21:22 ID:x0mhJpMV
現在『焼きたて!!クトゥグァン』を打ち込み中…
今週末までには書き込みますので、待たれよ。
132名無しさん@初回限定:03/07/16 21:38 ID:vUlntClg
>>131
タイトルの時点で笑ってしまったのはどうすればいいんだろう…
133名無しさん@初回限定:03/07/16 23:51 ID:tnvBWc4P
頑張れ。
134名無しさん@初回限定:03/07/17 01:09 ID:u2ySpJMr
>>131>>129
ガンガレー応援してるでよ


135名無しさん@初回限定:03/07/18 10:36 ID:+TbSdTkT
雪村いいなぁw
136名無しさん@初回限定:03/07/18 22:06 ID:FR7B6fWI
前スレより下がりすぎage
137あぼーん:あぼーん
あぼーん
138名無しさん@初回限定:03/07/20 09:13 ID:IOOpmfvk
相変わらずココはレベル高いなぁ。

楽しませて頂きマスタ。

very thx。
139(1/5):03/07/20 18:12 ID:6IZlkPSX
            或る文芸部部長の極めて平穏な一日

 私の朝は、オニオオハシ(オオハシ科、生息地アマゾン)の囀りを目覚ましに始まる。木々から
漏れる朝の光を浴びながら簡単な毛づくろいなんかをしていると、ペットの権太(アナコンダ、
ボア科、生息地アマゾン)が空腹の唸りを上げる。権太は、以前、私の縄張りに侵入してきた
不届きものだ。そのとき、ちょうど獲物のストックを切らしていたので朝御飯のおかずにでも
と思ったが、捨てられて雨に打たれた子犬の如く、あまりにも寂しげで懇願するかのような目を
向けるので、仏心で飼ってあげることにした。勿論、主人が誰なのかを教え込むことは忘れて
いない。そのあたり、私は抜かりは無い。昨晩狩ってきた兎を二羽権太に与えると、私も自家製
のスッポンの生き血を飲み物に、イグアナの串焼きなど朝食を摂る。権太が喜びにトグロを巻く
音をBGMに、優雅な朝食の一時が流れる。それにしても、権太の食事の作法は何度注意しても直
らない。よく噛んで食べなさいと言っているのに、いつも丸呑みしてしまう。無作法なだけで
なく消化にも悪い。憂慮すべきことだ。
140(2/5):03/07/20 18:13 ID:6IZlkPSX
 朝食を済ませてから、腹ごなしにブロック塀を二、三枚、手刀で叩き割るのが私の日課だ。
今日はとても調子が良く、五枚も割ってしまった。人間、やはり最後に頼りになるのは己の肉体
だけだ。軽く汗を流したあと、水浴みをする。今日は水場で、メガネカイマン(ワニ目アリゲー
タ科、生息地アマゾン)にはでくわさなかった。昨日、私に獲物の奪い合いで負けて、屈辱感に
打ち拉がれてるのかもしれない。生存競争のライバルなのに、何故だか親近感を感じてしまう
彼の名前。これって、恋の予感? 水浴みを終えると、ヘアスタイルを整える。私は身嗜みには
気を使うほうだ。服装や言葉遣いの乱れは心の乱れに繋がる。いつでもきちんと身なりを整えて
隙を見せないようにしないと、この弱肉強食の厳しい社会は生き抜いていけない。私が特に気
を払うのは、この二本の長く伸びた触角だ。この触角は、岩穴を抜けるときなんかに、自分の
体が通るかどうかを推測するのにとても役に立つ。他にも他者の気配を感じ取ったりするレー
ダーの役目も果たしてくれる。これのおかげで私は三度命を救われたといっても過言ではない
だろう。とても重宝している。まさに私の生命線。
141(3/5):03/07/20 18:13 ID:6IZlkPSX
 全て支度を終えると、権太に留守を任せて、私は桜坂学園へと向かう。いくら己の肉体が武器
になろうとも、その武器の有効な使い方を知らなければ意味がない。武闘派を自認する私だが、
己の肉体のみを鍛え上げて陶酔しているような馬鹿とは違う。己の切札は最後まで隠しておく
ものだ。そのために私は敢えて文治派を主張している。能ある鷹は爪を隠す。周りの人間は誰
も気づいていない。ただ一人、気になる男はいるが。その男――学園にいる後輩――だが、初め
て会ったときから私の正体に気づいている節がある。今は何とか誤魔化せているが、悟られるの
も時間の問題かもしれない。洞察力の鋭い男だ。まあ、いざとなれば私にはその男を黙らせる
手段なんていくらでもある。せいぜい、言語の有難さを身を持って知るような事態にならない
ことを祈っておくことだな。憐れな後輩君。
142(4/5):03/07/20 18:14 ID:v00pQ1fK
 学業を終えて放課。私の肩書きは文芸部部長となる。ホワイトカラーを気取るには絶好の隠
れ蓑。件の後輩も、学年が上がってから時々顔を見せるようになった部員だ。今日は見当たら
なかったが。私には忌むべき敵なのに、何故だろう、いないと一抹の寂しさのようなものを覚
えるのは。知らず呆けていたら、同輩の幼子に背後を取られた上に心配までされてしまった。
不覚だ。私としたことが。しかしこの感情は誤魔化しようがない。そう、例えるなら、相方に
先立たれて、一人取り残された漫才師のような。認めないわけにはいかないのかもしれない。
私の中に流れる熱いお笑いの血を。
 今日は、大金槌で廃車を叩き潰すバイトは入ってなかったので、部活動終了とともに真直ぐ
帰宅。帰ってみると、権太が自分で捕らえた獲物を生殺しの状態で弄んでいた。どうやら、退屈
というものを覚えてしまったらしい。知的進化の一歩かもしれない。早速、権太観察日記に、
その一文を書き加えた。それから、夕食の獲物を狩ってきて、権太と二人で仲良くディナータ
イム。それを終えると、軽く体を動かし、私のテリトリーに侵入するものに対する罠を仕掛け
てから、就寝。日の出とともに起き、日の入りとともに寝る。規則正しい、かつ合理的な生活。
本日も平穏な一日。世はなべてこともなし。
143(5/5):03/07/20 18:14 ID:v00pQ1fK




 なお、このお話はフィクションであり、実在の人物・団体・メガネの人・アマゾネスとは一切
関係ありませんので。念の為。

                  『創作における人物描写の習作或いは卑近な人物所感』
                        文芸部所属 二年A組 桜井ハンサム之介









「ふ、ふふ……。これは、あの桜井(バカ)の遺書と受け取っていいのかしら?」
「ひ、ひかりぃ。お、落ち着いてっ、ねっ! ほ、ほら、桜井くんも部活動にやる気を出して
 きたのかもしれないし。ねっ。早まった真似したら駄目だよっ」
144名無しさん@初回限定:03/07/20 18:15 ID:v00pQ1fK
>139-143
『それは舞い散る桜のように』から。
書け得るかぎりのもえ要素を盛り込んでみました。
145134:03/07/20 21:41 ID:pYwpm9Ad
キ・・・・キ…(-_-)キ(_- )キ!(-  )キッ!(   )キタ(  ゚)キタ!( ゚∀)キタ!!(゚∀゚)キタ━━━!!
キタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!
キタwwヘ√レvv〜(゚∀゚)─wwヘ√レvv〜─ !!     
キタ━━━━( ´∀`)゚Д゚)・∀・)´_ゝ`)*゚ー゚)゚∀゚)゚Å゚)゚⊇゚)゚∋゚)-_-)━━━!!!!
キタ━━━━━━━━━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━━━━━━━━━━!!!

        キタ━━━━━!!     ♪           ∬∬  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  
     \\  キタ━━━━━!! //      ∧_∧  ( ‘<<  キター!!!!
 +   + \\ キタ━━━━━!!/+      ( ゚∀゚)_ //   \_________   
                            + _( (   / Cミ
.   +   /■\  /■\  /■\  +   \((○ ̄ /_  
      ( ゚∀゚∩ (゚∀゚∩ )(  ゚∀゚)      Σソ\_/(_)ミ
 +  (( (つ   ノ(つ  丿(つ  つ ))  +   (_)
       ヽ  ( ノ ( ヽノ  ) ) )
       (_)し' し(_) (_)_)
保存しますた!!!
(;´Д`)ひかり姐さんハァハァ
  |  >>144ワッショイ!!    |
  \_____  _____/
           ∨
  +     +           +
            /■\
     +     ○( ´∀` )○      +
  >>144     \    /   ワショーイ
      /■\ ( ヽノ /■\  +
  +    ( ´∀`)し(_)(´∀` )
   (( ( つ  つ   ⊂  ⊂ )  ))  +
      ( (\ \   / /) )
      (_) (__) (__) (_)


146名無しさん@初回限定:03/07/20 22:24 ID:pGGv/lzE
いや、これはキタ……のかな?(w


面白かったから、無問題だが。
長らくお待たせしました。保管サイト更新であります
http://members.tripod.co.jp/svssav/

本職に捕まった&自分SS書きでレスすらろくに返せない有様でしたが、
なんとか更新できる状態にまでなりました。
さぁ、デモンベインだろうが人妻かすみさんだろうが、どんと来いってんだ(w
148名無しさん@初回限定:03/07/20 23:20 ID:EhUdIBZA
よしじゃあ炎多留だ
149名無しさん@初回限定:03/07/21 00:16 ID:+JTh0ge/
  ∧_∧
  ( ・∀・)   | | ガッ
 と    )    | |
   Y /ノ    人
    / )    <  >__Λ∩
  _/し' //. V`Д´)/ ←>>148
 (_フ彡        /  
150あぼーん:あぼーん
あぼーん
151名無しさん@初回限定:03/07/24 08:06 ID:sOvazqfl
パティシエなにゃんことかショコラとか初恋とかの高レベルの萌えゲーのSSほしいです。

ニトロだといまいち・・・・
152名無しさん@初回限定:03/07/24 08:19 ID:wCHIyato
>>151
廚学生ですか?
めちゃくちゃ失礼なこと言ってるぞ、おまえ
153名無しさん@初回限定:03/07/24 09:18 ID:tIBtNjE1
ああ、そうか
今年ももう夏厨の季節か
154名無しさん@初回限定:03/07/24 09:26 ID:12MOXpil
各所でだいぶ動きが活発になってきましたなぁ(´・ω・`)<夏厨
155名無しさん@初回限定:03/07/24 12:08 ID:GN02YR5H
あー・・・・まさかこんな漏れのパラダイスにまで夏のかほりが立ちこめてくるとは思わなかったぜ・・・・

>>139みたいのを惑星直列級レベルの萌えSSっちゅうんだよ
156あぼーん:あぼーん
あぼーん
157名無しさん@初回限定:03/07/28 00:47 ID:gMeoDAkT
そうか……もうすぐ圧縮が迫ってるらしいな
ここ大丈夫か?
158名無しさん@初回限定:03/07/28 07:30 ID:afi6F1/v
hosyu
サンクラとファントムをクロスオーバーさせるとパニッシャーやれるなぁ。とか思いつつ保守
160あぼーん:あぼーん
あぼーん
161あぼーん:あぼーん
あぼーん
162山崎 渉:03/08/02 00:39 ID:1u9MLYQn
(^^)
163あぼーん:あぼーん
あぼーん
164あぼーん:あぼーん
あぼーん
165名無しさん@初回限定:03/08/03 04:09 ID:wnVJavE7
デモベはもう食傷気味……。
バラエティに富んでたころが懐かしい。
166名無しさん@初回限定:03/08/03 04:14 ID:GaCWvSsO

http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1052039813/l50
ねこ
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1054940935/l50

SSスレではないけどSSのあるスレ、他に知らんか?
まあ俺は探したわけじゃないから実際には山ほどあるのかもしれん。
167あぼーん:あぼーん
あぼーん
168あぼーん:あぼーん
あぼーん
169名無しさん@初回限定:03/08/03 10:22 ID:ma5iam9p
>>166
エロゲ(待避所)板にいけば、そんなスレゴロゴロしてるぞ、と。
170あぼーん:あぼーん
あぼーん
171あぼーん:あぼーん
あぼーん
172名無しさん@初回限定:03/08/04 07:47 ID:CJ+JgATN
>>165
特定ゲームSSの非難はマナー違反だぞ。
希望があるなら別ゲームのリク書け。
食傷気味なら読むな。
173あぼーん:あぼーん
あぼーん
174あぼーん:あぼーん
あぼーん
175あぼーん:あぼーん
あぼーん
176あぼーん:あぼーん
あぼーん
177あぼーん:あぼーん
あぼーん
178あぼーん:あぼーん
あぼーん
179あぼーん:あぼーん
あぼーん
180あぼーん:あぼーん
あぼーん
181あぼーん:あぼーん
あぼーん
182あぼーん:あぼーん
あぼーん
183あぼーん:あぼーん
あぼーん
184あぼーん:あぼーん
あぼーん
185あぼーん:あぼーん
あぼーん
186あぼーん:あぼーん
あぼーん
 _______         ___________________
 |悲しい時ー!           |14レスも広告で埋まってるとき〜
  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄           ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
     ∧∧                 ∧_∧    
    ( ゚Д゚)                ( ´д`)
   ⊂○ ○ヽ                  ||””””””””””|
     |  | ̄              ( )      ( )
     / /\\                ||_____|
     / /  > /                / /  ) )
   (_)  >               (_) (_)


とりあえず、SS職人さんが投下してくれるまで、SS化してほしいゲームでもあげますか?
188名無しさん@初回限定:03/08/09 01:14 ID:d9DUnxeV
リメイクをかねて雫
189名無しさん@初回限定:03/08/09 01:21 ID:8vGpS59Y
このスレってのは派手なネタバレ込み全面OK?
190名無しさん@初回限定:03/08/09 03:01 ID:lefo+3qW
OKじゃん?

流石にFGしたゲームのネタバレ全開SSを書いたら苦情が出るかも知れないが
多分そんな前例はない                   保証はしかねるが
191名無しさん@初回限定:03/08/09 03:39 ID:C+wceXY3
>190
>FGしたゲームのネタバレ全開SS

もしあったら、営業妨害も甚だしいな(w


>189
最初に一言断るかなんかすれば、無問題かと。
本編をそのままなぞるようなものでなければ。
192名無しさん@初回限定:03/08/09 06:48 ID:Wzn0glgp
それ散る、モエかん、オレポケ、こころナビあたりのSSを読んでみたい。
193あぼーん:あぼーん
あぼーん
194名無しさん@初回限定:03/08/09 13:25 ID:aKfEec7F
>191
それ以前に一日程度FGしたくらいでSS書けるなんてもしかしてそれは
地雷ゲーでは……(w
195名無しさん@初回限定:03/08/09 17:22 ID:lefo+3qW
それ散るとオレポケだろうか?
あとはe・go系。CF3Rだと今が旬な感じ

でそれ散るをキボン
196あぼーん:あぼーん
あぼーん
197あぼーん:あぼーん
あぼーん
198名無しさん@初回限定:03/08/10 17:00 ID:Y1mBVI7A
 
199あぼーん:あぼーん
あぼーん
200名無しさん@初回限定:03/08/10 19:39 ID:wAkqJh60
>>14
>じゃあ200getした人が次の投稿作品のリクを決めると言うことでイイ?

(・∀・)イイ!
ってことで200ゲトー!オレポケSSキボンヌ
201あぼーん:あぼーん
あぼーん
202あぼーん:あぼーん
あぼーん
203あぼーん:あぼーん
あぼーん
204名無しさん@初回限定:03/08/12 13:45 ID:0eWJqfI6
あぼーん大杉でワラタ。いや、笑い事じゃないんだけどね。
205名無しさん@初回限定:03/08/12 16:55 ID:Ah0XpXbY
あぼーんされたのは皆広告ナリヨ
206名無しさん@初回限定:03/08/12 18:43 ID:Um5Tbrgw
http://top.multilolitas.com/index.php?id=rtr5781
220.144.187.170 , Air1Aaw170.ngn.mesh.ad.jp?
207(1/2):03/08/12 19:26 ID:M56dT/M/
 最近とみに必死な広告の中の人について妄想してみる。


「はぅ……」
 送信ボタンを押して、また一つ心の中で、ごめんなさいと謝る。
 広告貼り付けのアルバイト。掲示板で楽しくやりとりしている皆さんを不快にするお仕事。
 とっても憂鬱になるお仕事。一つ貼り付けるたびに、そこの皆さんにごめんなさいと詫びずに
いられない。
 でも、私にはやるしかない。病気のお母さんの世話をしながら働ける、家でできる内職は
とても少ない。特にこの不況の時代には。やるしかないんだといつも心に言い聞かせてる。
 他にも五つほど内職を掛け持ちして、一日のうちお母さんの世話と必要最低限の生活活動の
時間以外はすべてこれらに充てている。それでやっと。どれか一つ仕事がなくなったら生活は
立ち行かなくなってしまう。仕事を増やそうにも時間がない。一杯一杯だ。
「うぅ……」
 呻き声に目をやると、お母さんが布団から起き上がろうとしていた。
 慌ててお母さんの寝ている布団の傍に駆け寄る。
「お、お母さんっ? 寝てなきゃ駄目だよ」
「うぅ……ごほっ、ごほっ。また、仕事かい?」
「う、うん……」
 返事が鈍る。人様の迷惑になる、それも後ろ暗い仕事をやっているなんて、とても言えない。
 人様に迷惑をかけることだけはするな、昔まだお母さんが今より元気だった頃、散々聞かされ
た台詞だ。
 そんなお母さんを悲しませることだけはできない。お母さんとの生活だけが私の生きがい
だから。
「すまないねえ……。おまえの年頃なら、学校に通って、勉強に恋に遊びに人生の楽しいときを
 送っているはずなのに。こんな惨めな生活をさせて・……ごほっ、ごほっ」
「ほ、ほら。お母さん、寝てなきゃ駄目だよ」
 咳込んだお母さんの背中を擦る。
 そんなこと言わないで。私はお母さんといられるだけで幸せだから。惨めだなんて思ってない
から。
「こんな状態でだらだら生き延びるなら、いっそ……。そうすれば、おまえだって自由に――」
208(2/2):03/08/12 19:26 ID:M56dT/M/
「お母さんっっ!!」
 思わず大声を出してしまう。私に怒鳴られてお母さんはよりいっそうしゅんと項垂れてしまう。
「ご、ごめんよ。ただ、判っておくれ。お母さんは、おまえに幸せになって欲しくて……」
「だったら、二度とそんなこと言わないで。私に幸せになって欲しいと思うんだったら、早く
 元気になって。今度そんなこと言ったら許さないからね」
「ごめんね。ごめんね」
 謝りながら、再び布団にもぐりこむお母さん。そして枕元にある写真立てをとって呟く。
「ごめんなさい。あなた・・…」
 あなた。私のお父さん。今はもういない。命をかけて私たちの生活を守ってくれたお父さん。
 お父さんが友人の借金の保証人になって。私たち一家は一気に借金地獄に落ちてしまった。
 その借金を返すために、借金取りに終われる毎日から解放されるために、お父さんはその命を
代償にした。
 元々体が丈夫でなかったお母さんはそのショックもあって体調を酷く崩した。
 だから、今度は私が守るんだ。なにがなんでも。例え世界中の人から憎まれても。お母さん
とのこの生活を守るために。
 でもやっぱり心は痛む。
 『広告Uzeeeeeeeeee!!!』なんて書かれてると自分のやってる現実を突きつけられて、泣き
たくなる。
 それに貼り付けるのが、と、とても、え、えっちな……お、おま…ことか、まるみえとか……。
思わず赤面してしまうような内容で。恥ずかしくて堪らないのです。
 この仕事を紹介してくれた中学のときの先輩によると、
「あん? なに、あんた、そんなこと気にしてんの? 大体こういうのはスクリプトでボタン
 一発なのよ?」
 だそうなのですが、私はどうしてもその『すくりぷと』を使う気になれない。
 掲示板を見ている方々をとても不快にさせることだから、そんな行為を代償もなく行うなんて
できない。勿論、それは偽善だ。私が少しでも苦労することで贖罪したような気分になるだけの
ただの欺瞞だ。でも、私には……。
 だから、今日も私は、先輩から借りた、曰く『二昔前の』パソコンに向かって、迷惑行為を
続けるしかないのだ。
 ごめんなさい。掲示板の皆さん。
 私は天国に行こうなんてあつかましいこと考えてません。ただ、この生活だけは……。
209名無しさん@初回限定:03/08/12 19:31 ID:M56dT/M/
>207-208
暗れぇっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっYO!!!









……すいません。シャワー浴びて酔い覚ましてきます。
210名無しさん@初回限定:03/08/12 19:36 ID:Ah0XpXbY
なんでンなもん書いてるんだYO!



ところで中の人は巨乳+メガネですか?
それなら  激 し く ハ ァ ハ ァ 
211名無しさん@初回限定:03/08/12 21:19 ID:is0trCu8
やばい、萌えてしまった。
212名無しさん@初回限定:03/08/13 02:26 ID:D16GFOrF
喪前等はどんなものにも萌え狂う事の出来る変態さんですね。
ちょと尊敬
213名無しさん@初回限定:03/08/13 05:18 ID:6IjA2GJG
>>207
ワロタ


……そして萌え
214名無しさん@初回限定:03/08/13 18:49 ID:YVJ6TN2P
俺はそういう話に弱いんだYOヽ(`Д´)ノバーヤバーヤ
ちくしょう、今度から広告とどうやって付き合っていけばいいんだ…
「きゅーたろは、平行世界をしってるかお?」
「なんだべるの、藪から棒に」
「とーとつもとーとつにべるの教授のSF講義なんだお」
一流のデリバリストたるこの俺、市橋Q太郎の目の前でうっすい胸をえっへんと張っているのは
らびらびの同僚べるの。どっからどー見てもょぅι"ょだが、これでも青少年保護条例にはひっかからない年齢…なのか?
「おまえの方がよっぽどえすえふだっつーの」
「う?どういういみだお?」
いかんいかん、頭の中身が漏れている。夏の新船橋市は容赦なく苛烈に激烈に暑い。
昼間の疲れがまだ残っているらしい。今、満点の星空の下、風はいくらかの涼しさを運んでくれていた。
見上げる夜空は、赤道直下の水上都市新船橋に相応しく、本土とはまったく違う美しい星模様だ。
「えっへん。五島プラネタリウムとめがすたーXくらいちがうお」
「…もしかしてまた頭の中身が漏れたのか?」
「だだもれだお。きゅーたろは仕事のしすぎでおかしくなってるお。いいものを見せてやるから
 これでココロなごませるとよいのだお」
砂浜に設置された、なにやら機械仕掛けを組み込まれた反射式望遠鏡が、ひときわ輝く火星をゆっくりと
追いかけている。べるのの依頼で俺がここまで宅配したのだ。
荷物を運んでくれと頼まれれば、デリバリストQ太郎にはそれを断る術がない。
「デリバリストですから!」
「もれもれだお。きゅーたろはみみのあなにタンポンつっこんだほうがいいお。
 ひとりごとがおおい日もあんしんだお」

「まえふりがながくなったお。きゅーたろは平行世界をしってるかお?」
「パラレルワールドってやつか?別の宇宙、別の自分、すこしだけ違う世界ってやつ」
「うおー、ばっちりだおきゅーたろ。では、平行世界はいくつあるかしってるかお?」
「…? いや、質問の意味がよくわからん。平行世界は『ある』のか?」
「物理学の最新理論は平行世界の存在を肯定しているお。そして、どこかが微妙に違う宇宙が
 隣り合わせになっているのなら、じゅーぶんに離れた平行世界はおたがい
 似ても似つかないものでもかまわないのだお。
 つまり、パラレルワールドはいくつあってもいいのだお。証明おわり」
べるのは望遠鏡の筒内になにやら組み込みおえたらしい。通電した電動経緯台が望遠鏡を
火星の方向へと正確に回転させる。よくできてるなあ。接眼部には、経緯台にリンクしているらしい
小さな鏡が海を写していた。

「で、それのどこがSF講義なんだ?俺でも知ってる話だぞ」
「うー、この手の話を最後まで聞いてくれそうなのはきゅーたろしかいないのだお」
ってことは話はまだ始まったばかりってことだ。俺は砂浜に敷いたレジャーマットの上で
姿勢を変えて胡坐を組んだ。作業を終えたべるのがちょこちょこと歩いてきて
俺の膝に乗る。
「たしかにらびらびでこの手の話を聞きそうなヤツはいないなあ」
「きゅーたろはちてき好奇心を持ち合わせた教養あふれるデリバリストだお。
 さっすがべるのが見込んだ漢(おとこ)なのだお」
「はっはっは、褒めても何にも出んぞ」
「つまり、平行世界ならなんでもありなんだお。
 七夜の殺人貴が人間試験に合格して零崎になる世界もあれば
 うぐぅなゆーれいがクローンで反逆者をZAPしまくる世界だってありなんだお。
 平行世界のどこかにはエルザエンドのあるデモンベインが発売されてる世界だってあるんだお」
「だんだんダメな話になってきてないか?」
「うっぷっぷ、気のせいだお」

「さらに言うならば時間の流れだって一様ではないのだお。
 ふつーのせかいの時間がまっすぐ伸びていく時に
 同じところをなんども繰り返す世界だってあるのだお。
 花梨エンドのあとで和泉エンドを経験して
 那波エンドもつまみ食いして雪さんエンドで〆る、
 そんな時間軸をじっさいに生きている透矢さんだって
 無限の平行世界のどこかにはいるってことなんだお」
「見てきたような事を言うなあ」
「見たんだお」
…な、なに?
「見たんだお、きゅーたろ。きゅーたろのくれたイミテーション#4はまほーの石だお。
 こんなばかな話をさいごまで聞いてくれるのはきゅーたろしかいないお。
 もうすぐ火星と月の位置が条件をみたすお。
 …そんで、きゅーたろにもアレをみてほしいのだお」

べるのが、海を指差した。
望遠鏡の接眼部から、青い光が鏡を介して海へと広がってゆく。そして。
海の上に、花が咲いた。いくつも、いくつも。
手前には白樺のように真っ直ぐ伸びる『樹』が林のように見える。
その林の向こうに。
花が咲いていた。

「手前の樹はたぶん、ふつーの時間樹だお。そんで、あれが…」
「あの花園が」
「うん、たぶん『くりかえす時間軸』を持つ世界なんだお。
 花びらみたいにみえるのは、時間の本線からなんども分岐してもとの時間軸の
 すこしむかしへ再帰してるからだお」
「イミテーション#4を研究中に、これを見つけた?」
「そうだおー」

何枚もの花びらをもつ、無数の花。海の上に浮かぶ蜃気楼の花園。
「きっと花びらの数だけ誰かが幸せになってるお。そうでなければあんなに
 きれいに見えるわけないおな」
「なんでそんな特殊な時間軸がかたまってるんだ?」
「たぶん、よく似た世界だからだお。どくたーはあれを『えろげの花園』となづけたお」
「ドクター?」
「ドクターウェストだお。ほら、あの花に住んでるお」
「うお、なんだありゃ」
「ものすごーく繰り返してる時間軸らしいお。数えるのがばかばかしいほどだお」
「…いつか」
「?」
「いつか、あのへいこーせかいのどこかから」
「ああ」
コイツは、まだ諦めていないのだ。べるのは。
イミテーション#4の増産が限りなく不可能な状態でも。
カーボンナノチューブ工業生産化の研究が世界的に袋小路でも。
「ぜっったい、やっすく量産できる方法をみつけるお」
「ああ、そうだな」
べるのの金髪をくしゃっと撫でながら、俺は、
「はーれむえんどなんてゆるさないお」
「漏れてるっ?!」

  〜了〜
220R8icUV3K:03/08/13 23:17 ID:R8icUV3K
以上。お目汚し失礼。

 『発狂した宇宙』もしくは『時空監視官出動!』
>>215-219
221名無しさん@初回限定:03/08/13 23:17 ID:0cLMxlLs
       ,;:r'   ,_.;=''~ ̄    ~゙''ヽ、
      ;r'   ,r'´            ヽ、
     {i   .;r'
     ゙i;、 {i
      ゙ミ;、,ゞッ-−::‐- 、.、
     ,r:':´ミゞ    ⌒ヽ、'`ヽ、
    ,r'゙;:'r',;';´.,. {` 、`ヽミヾ;、゙:、ヽ
   ,〆;イ ;';' ;'';' ;.l.i'i ゙i゙i;ヾ、`、ヾ、;゙';゙i,
  ;';/'〃'i i; ;i.i :i ;i゙ト、ヽミ巛;、゙; ゙;゙i;'i,;゙i
  〃 /:i :{ :i;{ :{从巛ヾヽミ;_ゞ_;゙i;゙i;゙i;i,゙;'゙i    どうやら漏れはSSスレの実況に立ち会う機会に恵まれてるのかもしれない
  ii ム;il l :i:iゝ+トミ;:ヽ`゙,ゞ;,-rミ、!;i゙';,゙;゙i   
  {i /'{从 ゙i゙;r';ハ~;゙'j゙ ;⌒: ゙'ゞ=ツリ; i;:};゙;i゙i    
  V {:;i';i゙i゙;゙人`_~ン , ` ー ' 从;i,|゙i;,';゙i.   
  ,ト、{; ゙i'li;'i ゙i∧;   ー   ,.ィ゙;ソノ,i从゙ ハ     が・・・・元ネタがいまいちワカラン
  {! ゙い'li; :';゙;ヽi`>: 、.,ィ´ ,lシソ,リ,八゙ヽハ.
  {!  ヾ,《ゞ゙i';:;r' ´ リ   ,//〃ノバ;,ヘ`゙;人
  ゙i;,  乂゙} i;l:;レ-シ  r' r';/,ツ;/゙`ーミヘゞ、\
   ヾ;_ 二フリ!リヽ、ト.。.┤゙i{レ';/ソ   ;rr'^`ヾ.ヾ\
    ゙~ /リ;.;;ツ ;'^}  ,ヘ、/;/ツ   i'i'   ヾ,ヽ、\
     rソ;ッ' く、.i ノ ,r'ソ;rメ、  ,{; li    ::::ヾ,ヾヽ\
     ,イ,/    ゙i {/r'´,i''i'7 li ;バ li:    '::::::ヾ\\\
   ,〆,r'     :i/  {i:;ii'  i} .::';;ヘli:.  :;,  ::::::{,ヾ\ヾ、;ヽ.
   ;' ;{,i{ . : :; :; : . .l{;..:.:::{i;';{ .;ノ' : :: :: ゙ドi  ゞ、 :::r'゙ハ;;\ヾ、ハ.
   ゙!,;ト、゙i; : :; ;; ;: ; ゙ヾ;::::゙巛;{!,: : :; :; ::人ヽ、::| `i レィぐヾ、ヽ、゙ハ
   ゙!;゙iヾヾ; ; ;; ;; :; ; :ヾ;;,:゙ヾヾ: :; :; :;/ ゙ヾ、ヽ `>'´ ゚。i_ゝヾヾハ、゙i、
222R8icUV3K:03/08/13 23:45 ID:R8icUV3K
>>221
すまん、元ネタは「うさみみデリバリーズ!!」
といいつつ
平行世界が実在するならエロゲ世界が実在してもいいよな
むしろ実在しねーかな
実在するなら全部ハーレムエンドがいいなと
妄想垂れ流した次第

西博士バージョンもあったがデモベ食傷気味との意見を見てパス1。
223名無しさん@初回限定:03/08/13 23:52 ID:0cLMxlLs
うさみみデリバリーズがどんなものかはしらんがこの変なタッチと不思議調のネタは(・∀・)イイ!

>>222
オトゥカレー
224名無しさん@初回限定:03/08/13 23:54 ID:9zcHfIxI
元ネタ知らないんですが面白かったです。
225名無しさん@初回限定:03/08/14 01:00 ID:e8T6xOJm
元ネタ好きでSFスレの住人なんでとっても面白かったお。
脱線しまくりで萌えを呼ぶ冗長な展開&一言から始まる急展開も元ネタのまんまだおw
北都声が脳内で聞こえてくるのでもっとぐーだお。
   __)ノ
 m  ヾヽ
 !l!l ノノハノ)))
(∵リ ゚ヮ゚ノリ < おつーだお!
 ノノ゙iつ┯ゝ
  ,,く!liゝ|
  (ノ U ||
   ○)┷) スィ 〜      
>実在するなら全部ハーレムエンドがいいな
これには完全同意だおw
226名無しさん@初回限定:03/08/14 01:38 ID:0VcwGzGb
漏れは元ネタ知らなかったけど
元ネタの元ネタ(べるの)に思いいたった。
いや、おもろかったでー。
227山崎 渉:03/08/15 11:17 ID:dcQcOgab
    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン
228名無しさん@初回限定:03/08/15 19:32 ID:J4I4ocxH
229名無しさん@初回限定:03/08/15 22:51 ID:kcySFmCl
↑名古屋大?w
230名無しさん@初回限定:03/08/16 13:02 ID:bXXJ2q+E
学校法人 名古屋安達学園 (Nagoya Adachi Gakuen Colleges) と出た

スレ違い・板違いスマソ
231名無しさん@初回限定 :03/08/16 17:23 ID:/ba71zDS
エロがなくても萌えがあればいいのか?
232雨に濡れた日:03/08/17 04:36 ID:kfMyT3d1
突然の雨に降られ濡れながら俺達2人が駆け込んだ場所はラブホテルだった。
雨に濡れた彼女のブラウスから胸の形がくっきりと浮かび上がった。
肩にかかるくらいのセミロングの髪は雨に塗れヘアマニュキアのつやをさらにくっきりと浮かび上がらせた。
俺は突然普段は触れることさえ許されなかった、その身体を思いっきりまさぐった。
これが電車の中であれば痴漢行為で捕まるところである。
しかし、今の俺には全てが許される。
ブラウン管という2次元の画面でしか見ることのできなかったその肌を網膜に焼き付けた。
まず、ブラウスを上からもみくちゃにし熱い吐息が流れてくるのを感じた、そのまま服は脱がさず、ボタンを半分だけ開き後ろから抱きついた。
「好きだよ」
その言葉を皮切りに二人は接吻を繰り返した。
俺は肉棒に熱いものを感じだ。
硬くなったペニスを尻に押し当て欲望のままにまさぐらせ手を股間に伸ばしスカートのベルトの内側から中に手を入れパンティの感触を楽しんだ。
233あぼーん:あぼーん
あぼーん
234名無しさん@初回限定:03/08/18 20:52 ID:W6IhIsKl
おしっこ、うんこ画像、映像
http://66.7.65.90/sou/oshiko/
218.41.123.78 , p297b4e.t128ah00.ap.so-net.ne.jp ?
「今日のお題は量子コンピュータだお」
「漁師こんぴゅーた?」
「うおー、おばかがいるお。きゅーたろくらいおばかならいつなんどきでも
 『じょおーさまははだか』だとカンパできるのだお。ぴーぴんぐとむだお。
 日本語でいうとデバガメだお〜」
誰が出歯の亀太郎かっ。
「そういえばきゅーたろはねこのシャワーを覗いた前科があるのだお」
「今度べるののシャワーも覗いてやるよ」
「なっ…!?」
べるのが目を白黒させる。いや白蒼か。白い頬も真っ赤になって、
ああ、可愛いなーと素で思ってる自分が怖い。俺、もう戻れないんだな(遠い目)
「なんなら一緒に風呂に入ってもいい」
「……!!!」
もはや耳まで真っ赤なべるのが、絶句したままダッシュだだっこパンチ(大)で飛び込んでくる。
あああ、可愛いなーお風呂でなにされるか想像したに違いないなーはっはっはおませさんめ
ってゆーかこんな小さい娘に手をつけたのは他ならぬ俺なわけで。
「ば、ばかばかばかきゅーたろっ!なにをニヤニヤしてるのだお!
 そっこくそのすけべーな妄想をチューダンするお!損害とばいしょーを要求するお!」
「ねえ、和樹。結局、生命電子化計画ってどのくらいの再現性があったの?
 ・・・・ホロディスプレイの中にしか存在できないなら、それってただのAIじゃないのかなあ」
彼女の質問に"深佳クラスタ"が反応する。彼女との会話は知的刺激に満ちていて情報価値が高い、
いや、とても『楽しい』。この楽しさを分かち合えるHIKARIも遥香も、
分かち合えたかもしれないオシリスももういない。
・・・・深佳さんはベットでごろごろするのをやめて、僕の返事を待っている。
僕は読んでいた本を机に置き、椅子を回して深佳さんに向き直った。
適切かつ深佳さんの予想外の回答を推論。演算中・・・・
「ううん、そうだね。僕の知ってる範囲で言うなら、実物と変わらないよ」
「えーっ?!それ、ヘンだよ和樹!だって結局全部コンピュータの計算の結果なんでしょ?
 ホロディスプレイの中から、現実にアクセスしたりできないじゃん!
 それとも、あれ?ペットロボットとかアンドロイドを介して現実と触れ合えるってこと?」
"若佳菜クラスタ"が彼女の専門分野の話題に興味を示した。"ワールドクラスタ"が
IZUMO側のリソースが不足気味であることを警告する。"若佳菜クラスタ"が沈静化する。
・・・・若佳菜先生なら上手に説明できるんだけど、ここは僕の説明で我慢してもらわなきゃいけないようだ。
「たとえばさ。仮に、深佳さんが生命電子化計画の責任者だとして、どこまで再現したら
 電子情報を生命として学会発表するかな?」
「え、ええっ?!パ、パスパスっ!!ソフトウェアは若ネェの専門だよっ!
 うかつなこと言ったらあとで笑われちゃうよ!」
深佳さんは飛び上がって手を振り回す。強い『否定』と『狼狽』の仕草だ。
"擬態クラスタ"が僕の表情を『微笑み』に変化させる。
「あっあっ、和樹までそんな顔でボクのこと笑うー!もう!」
「そもそも量子コンピュータは量子論を前提にしたキカイなのだお」
「ぐー」
「寝るなだおー!きゅーたろにもわかりやすくせつめいするからそこにナオレだお」
べり。
「あばばっ、ムゴンでつけひげを剥ぐなだお!ちょこっとウブ毛が抜けて痛かったのだお!」
べるのの目の端に小さく涙が浮いている。し、嗜虐心がそそられるっ…!
「つぎにおまえは『ざわっ…!』って言うお」
「『ざわっ…!』 …ハッ!」
「うっぷっぷー、引っかかったお」
「いや、小ネタはいいから」
「さて、今日のSF講座は量子コンピュータだお。
 量子コンピュータとはなにか?受講生、こたえるお」
「うお、切り替え速い。えーと、漁師の使うコンピュータ?」
「む、まだそのネタを引くのかお。無視して続けるのはあまりにもツライお。
 とはいえこれ以上ネタにつっこむといつまでも授業がすすまないお。なやむ〜」
「すまん、続けてくれ」
「さいしょっからそういえばいいのだお。えへん、量子コンピュータとはなにか?
 それは漁師を使うコンピュータなのだお」
「漁師?」
「…きゅ、きゅーたろに釣られたお!クツジョクだお!」
「漁師だけに、釣りがうまい」
「しかも笑点なみのオチまで言われてしまったぉ。ダツリョクだお〜」
「すまん、続けてくれ」
「なんでこんなオトコを好きになってしまったのだろーかだお。どこかでなにかを
 まちがえたのだろーかだお〜」

ちゅっ。

「…悪かったよ」
「…えへへ。仕方ない、講義を続けてやるのだお」
べるのは、今俺がキスした頬に手を当てたまま、地面にぐりぐりとなにやら書き始めた。
「自己複製。外界に対する自己保存反応。恒常性と不可逆な破壊状態・・・・つまり
 生と死の区別が客観的に認められること・・・くらいかなあ」
深佳さんの知的水準は同年代の平均値をはるかに上回る、と"深佳クラスタ"が
結論付ける。もちろん、深佳さんの才能に加えて、一方ならぬ努力があることを
僕も若佳菜先生も知っている。二人のお父さん、雷蔵さんもだ。
たぶん、お母さんの栞さんも、最期の瞬間には、きっと。
「それを奈都美さんに説明するとしたら?」
「キミ、時々失礼だよね。
 えーっと・・・・子供をつくること、と、命を守ること。それから・・・・
 死ぬのと生きるのは違う状態だってわかること、でどう?」
「さすが深佳さん。いま自分であげた3つの条件に共通していて、
 独立AIにはないもの、なんだかわかる?」
「む。和樹らしくないなあ。なんだか若ネェみたいだぞっ」
"ワールドクラスタ"が"状況認識クラスタ"に警告。
"危機状況クラスタ"が"深佳クラスタ"と"若佳菜クラスタ"の
並立処理が危険域に近づいていることを報告。IZUMOが処理速度を引き下げる。
僕の無機頭脳も足並みをそろえて低速・並列処理に参加する。
「・・・・そう?長いこと一緒にいるからしゃべりかたが似てきたかも」
「あははっ、たしかにそうかも」
「では量子とはなにか?きゅーたろ、こたえるお」
「うえ?えー、素粒子とかそういうのだろ?」
「おおむねおっけーだお。量子とは、ふつーの物理法則が適用できないくらい
 ちーさいものぜんぶを指すのだお。分子も原子も電子も光子も素粒子も量子なのだお」
俺のひざの上のちーさいのがなにかえらそうに胸を張る。
「そんで、quantum…量子は量子力学にしたがってうごいているお」
べるのの右手が砂の上にくりくりと方程式を書いていく。
「しゅれでぃんがー方程式…んーと、量子力学によると、
 量子は『観測されてはじめて確定する』のだお」
詳しく説明するのはあきらめたらしい。賢い選択だ。
「それで?」
「んー…たとえば、シャワールームにだれかいるとするお」
「うん」
「きゅーたろならだれがシャワーをあびてるか、どうやってカクニンするお?」
「声をかけるなあ」
のぞくとは言えないだろ。
「返事がなかったら?」
「中を見る」
きっぱり。
「……。そしたら、どすげえパンチがきゅーたろをらびらびのそとまでふっとばすお」
「んー、じゃあねこだな」
あれは効いた。人生で2番目にすげえパンチだった。
「…で、ふらふらのきゅーたろがシャワールームにいくとそこにはもうだれもいないお」
「いかにもありそうな話だな」
「そのとき、ねこがどこにいるか、きゅーたろわかるかお?」
「怒ってどっかいっちゃった…んだんだろうな。いや、わからん」
話の流れが読めない。への字眉になったらしい俺に、べるのがにぱっと微笑んだ。
「量子のふるまい、というのはそんなかんじなんだお。
 『そのへん』にいるらしい、ってわかるときは『だれ』だかよくわかんなくて、
 『だれ』だかはっきりしたときにはもう『そこ』にはいないんだお」
「…?ねこだったんだから、中を見る前からそこにいるのはねこだろ?」
「あうー、これはもののタトエだお。まくろな世界ではきゅーたろのいうとーりなのだおが、
 みくろの世界…量子の世界では、中をのぞかない限り、それがねこかおたまかくじらかは
 ぜったいに確定しないのだお。量子の世界はふしぎなのだお。そこんとこ、わかるかお?」
「よくわからんが、わかった」
どうやらそう答えないと話が進まないらしい。
「うひひ。では第2講にすすむお♪」
「共通点なんかあるかな?和樹、デタラメ言ってない?」
「じゃあ、いまの3つの定義を満たすロボットと、只のAI搭載ロボットを比べてみて」
「えっと、より高度なロボットを作るロボット、危険から身を守るロボット、
 ある程度は修理できるけど壊れたら元に戻らないロボット。あれ、ヘンなの。
 なんかホントの生き物みたい」
・・・・僕はその3つの定義を満たせるだろうか。
"状況認識クラスタ"が"ワールドクラスタ"とリンクし、即座に回答を返す。
『リソース不足』。IZUMOと僕の無機頭脳だけでは、僕たち3人の人格を
再現するのが限界だ。・・・・僕は、今、ロボットでさえない。
「・・・・和樹?どっかイタイの?」
「・・・・あ、ううん、ごめん」
深佳さんを不安にさせてはいけない。
「どう?共通点、気がついた?」
「えっーと・・・・」
"危機状況クラスタ"がこの命題に含まれる重大な危険性を警告してくる。
深佳さんが自分の置かれている立場に気がつく可能性が上昇している。
「あ、わかった!『ひとりじゃない』んだ!自分と違うものをつくるちから、
 自分以外のなにかからの攻撃、生きてる死んでるを観察してる第三者!
 キーワードは『外界』だねっ!」
"ワールドクラスタ"から警告。警告。警告。警告。警告。警告。警告。
『部屋』を維持する上で危険な概念が発生。現時点より2615nsの演算を破棄し
再計算するよう推奨。
しかし、"行動選択クラスタ"は警告を無視した。
「あたり。さすが深佳さん」
「・・・・ん?じゃあ、生命電子化って」
「そう、ある生命が関わる『外界』、つまり環境全部をシミュレートしなきゃいけないんだ」
「無理だよっ!!」
深佳さんが飛び上がって叫ぶ。
「いったいどんなコンピュータがそんな複雑系を計算するのさ!」
「ふつーのコンピュータが計算をするとき、一番苦手なのはなにかわかるかお?」
「…?コンピュータが一番得意なのが計算だろ?」
「コンピュータは計算しかできないお。そのコンピュータが一番苦手な計算を聞いてるんだお〜」
「まてまて、聞いた事があるぞ。…ビジネスマン問題、だっけ?」
「おしい。巡回セールスマン問題というお。簡単にいうと、8つの宅配先があるとき、
 どの家から回れば一番効率がいいか、コンピュータにはわからないのだお」
「おいおい、そんなの俺でもわかるぞ」
「そこがきゅーたろの仕事をコンピュータやロボットが取っちゃわない理由だお。
 コンピュータはこういう問題に『総当り』でしか回答を見つけられないお。
 8つの家の経路をじゅんばんにくみあわせて、全部をくらべて、
 ようやく正解にたどりつくのだお。ちなみに8軒で40,320通りあるお。
 もし32軒あったら、えっと…一秒間に一兆回計算しても261兆年かかる計算だお」
261兆年。たしか宇宙の歴史が160億年くらいじゃなかったか?
「ミロクボサツが46,030回は降臨できるお」
「すげえな」
俺は素直に驚いた。べるの、おまえ頭良かったんだな。
「うっぷっぷ、スゴイのはここからだお。きーておどろきみてぎょーてん、
 えんりょせずべるのをほめたたえるといいお。
 さてきゅーたろ、量子のトクセイを覚えてるかお?」
「さあ、もっと深く潜るよマクノウチくん」
「だれがウミンチュのはなしをしてるのかおー。えいえいえい」
「えっと、『観測するまで確定しない』だっけ」
「そのとおりだおー。観測するまでは量子はどんな状態であってもいいのだお。
 そして、逆に言うと観測することで量子の状態をカクテイさせて解を得ることができるのだお。
 『だれ』だかはっきりしない状態のままシャワールームをのぞけば、
 『そこ』にねこを見てパンチをもらうことができるのだお」
「ごめん、よくわからなくなってきた。パンチをもらうなら直接ねこに頼んだらどうなんだ?」
「それが旧式のアサハカサだお。
 ふつーのコンピュータのやりかたは『らびらびのひとりずつに頼んでだれかからねこレベルのぱんちをもらう』で、
 量子コンピュータのバヤイは『シャワールームをあけてねこのパンチをくらう』なのだお」
「シャワールーム、ひとつしかないじゃん」
「シャワールームいっこが量子いっこ、qubitつまり1量子ビットに相当するお。
 この問題ならシャワールームが5こあれば、いっぺんに全部のぞいていっぱつでパンチがもらえるお」
あたまがぐらぐらしてきた。もしぜんぶのシャワールームからねこが不機嫌な顔をして出てきたら、
俺は一体どうすりゃいいんだ?
「だから」
僕は言葉をつないだ。ここからは慎重に説明する必要がある。
「生命の電子化計画は普通のコンピュータじゃかなりの無理があったんだ。
 まず対象の生命体をできるだけ詳細にかつ短時間で核磁気走査する」
「病院のでっかいスキャナーだね!見たことあるよ!ええと・・・・
 どこで見たんだっけ・・・・」
警告。警告。警告。警告。
「するとどのくらいの精度で生命体の『コピー』がつくれると思う?」
「えーっと・・・・人体模型・・・・すっごい精密なの」
「分子レベルで、ね」
「ええええええっ?!」
僕は『微笑』んだ。
「分子レベルでの『コピー』だからコンピュータの上で分子の動きを『シミュレート』することも可能でしょ?」
「でもそれ、すっごい遅いよね?」
「時間はかかるよね。でも、『コピー』には関係ない」
胸の前で両手をゆっくりと広げてみせる。
「コピーにとっては自分の尺度でしか時間を感じないから。それに」
ぐるっと手であたりを示す。エアコンの風に揺れるテーブルヤシ。柔らかな室内灯。
テーブルでかすかに汗を浮かべるアイスティ。氷が、軽やかな音をたててストローを回す。
「そっか、生命には環境が必要だもんね」
「そのとおりだよ、深佳さん。仮に僕のコピーを作る。それを再生する。
 すると、コピーは何も見えないし感じない。
 周りに何も『ない』から」
「・・・・でも・・・・」
深佳さんが不安そうに周りを見渡す。
"深佳クラスタ"が彼女の不安を推測する。
壁の表面だけが『再現』された部屋。ドアの向こうは虚無の空間。
自分の瞳から垣間見る世界はすべてバーチャルな紛い物。
自分自身を構成するすべてを含めて。
電脳の、夢。
「なあに、和樹君。深佳にもその話をしたの?」
「・・・! 若ネェ!やだもう、おどかさないでよー」
ドアの音に一瞬身をすくませた深佳さんが、照れ隠しのようにクッションを抱きしめる。
クッションの再現性を増加。ドアの閉鎖とともにリビングの再生を中断。
「若ネェ、和樹ったらひどいんだよー」
「あらあら」

いたずらした子供を見つけた先生の視線で僕をにらむ若佳菜さんと、
からかわれたことにちょっぴり怒ってる深佳さんに、
僕は小さく微笑み返した。
"ワールドクラスタ"が寝室以外の再生を中断中であると報告してくる。
・・・・いま、僕たちの『世界』はこの『部屋』以外、存在しない、ということだ。
「ジツヨウテキな量子コンピュータは数万量子ビットを必要とするのだおが、
 ゲンジツに開発されてる量子コンピュータは数量子ビットしかないのだお」
だが、べるのの顔は『にまにま』しっぱなしだ。
「ふふん?」
「あ、お見通しなふうなそのヨユーの笑顔はなんなのだお」
「なにやら抜け道をみつけたんだろ」
「…う、驚いてもらえないのはちょっとつまらないかもだお」
「まあまあ、驚くかもしれないぜ?」
こないだの『花園』で十分にびっくりしたからな。ちょっとは大人の余裕をみせてやらねば。
「うー、じゃあこれつけるお」
でっかいヘルメットがべるののボストンバッグから出てきた。コードはボストンバッグの中へと伸びている。
「…これ、なんだ?」
「うっぷっぷ、つけてみてのおたのしみだお。あ、つけたらあおむけになるお」
ヘルメットは、首筋までカバーするプロテクタが海老の尻尾のように伸びている。
「しっぽはシャツの中に入れてせぼねにくっつけるお」
「外が見えないぜ」
「いまスイッチをいれるお〜♪」
 * * *
唐突に、俺の部屋、だった。西日の入る六畳間。タバコのにおいがかすかに残る部屋。
「あれえ?…夢?」
『夢じゃないおー』
テレビが勝手について、画面の中でべるのが笑った。
『べるの式量子コンピュータが作った仮想空間にようこそだお。
 ありーとあらゆる状況に対応できるじゅーなんせいをそなえたVR世界だお!
 今までのコンピュータではこんなぼーだいなシムはコントロールできなかったんだお!』
目を、しばたかせる。ははん。
「ビデオ端子にカメラをつないだな?無線で別の部屋から映像を流す。
 海岸からここまでは誰かに運ばせた」
自分の頬をつねる。
「ほら、痛い」
『うおー、夢でもゴマカシでもないおー。そのヘルメットはCLCから借りてきた
 神経直接刺激型視覚/聴覚/感触再現装置なんだおー』
「はっはっは、4月馬鹿にはちょっと遅いぞ、べるの」
『ゲンジツに開発された数量子ビットの量子コンピュータも、
 量子コンピュータが開発されはじめた100,000のへいこーせかいの数量子ビットを
 ぜんぶあわせて並列処理させれば、数十万量子ビットの大型量子コンピュータの
 できあがりだお!それぞれは別のせかいにあるんだから
 デコヒーレンス問題もばっちりカイケツだお!』
「わかったわかった。今日は休みを取ってデートに行こう。
 こういういたずらもたまにはいいけど、今回のはイマイチだったな」
言いながら靴を履き、ドアを開ける。
……階段が、なかった。
『うおー、部屋の外はまだシムを作ってないのだお。
 はづかしいからあんまりみないでほしいのだお』

「べるの」
『なんだお?』
「外はまだ、作ってない、と言ったな?」
俺の隣の空間にべるのの顔が映ったウインドウが出現する。
『まだだお。ちょーまっくらに見えるはずだお?』
「じゃ、あれはなんだ」

数メートルの闇の向こうに。
ぽつんと。
見慣れない、ドアがあった。
「バグか?」
『う、うお?そ、そんなはずはないお。シムは完璧だお。
 いずれNPCもつくってやろーとは考えてたおも、
 用意してたのはれいぞーこのケーキと花瓶の花束だけだおな』
「平行世界の量子コンピュータのメモリ空間を拝借した、と言ったな?」
『ちょこっと借りたんだお。観測してるのはべるのだから、
 そのせかいの量子コンピュータには影響ないお』
「なんでもいいや。その平行世界のどれかで、量子コンピュータを使って
 同じような仮想空間を走らせてる可能性は?」
『うううう?いや、可能性はあるおなが、正直確率的にはどうかと
 いわれるとちょーっと自信ないおー』
花、と、ケーキ。出来すぎの感はある。しかし。
 フ ァ ー ス ト コ ン タ ク ト
「はじめてのおつきあい、かもな」
花束を新聞紙で包む。冷蔵庫のケーキは…うむ、箱に入ったままだ。そっと取り出す。
この重さまで仮想現実なのか?
『ど、どうするお??』
「そりゃ…御近所には挨拶しなきゃ、な」
『な、なぬおー?!』
突然。
"ワールドクラスタ"がメモリ空間の拡大を報告してきた。
"ワールドクラスタ"がIZUMOの処理速度がほぼ無制限に上昇したことを報告してきた。
"ワールドクラスタ"はその命題に従い、自らの持つ世界情報をメモリ空間に広げ始めた。
「?!」
「どうしたの、和樹君?」
「・・・・だれか、来ます」
玄関を、誰かが、ノックしていた。
数百日の間、存在することのなかったドアを。
『えー、こんちわー。だれかいませんかー』
「あれ、和樹、なんで泣いてるの?」
『うお、でっけぇ家。あっちに生えたのは…秋葉タワー?じゃあれか、中の人も日本人だな?
 こんちわー。近所に越してきたもんですがー』
"ワールドクラスタ"が情報を拡散させていくにつれ、僕が把握できる情報野が
現実のそれに近似してゆく。
「なんでも、ないんです。ただ、うれしくて・・・・」
ここに、あなたがいることが、うれしくて。
あなたという情報をあのときに揮発させなかったことが、うれしくて。
真実を知ったあなたがたが、無断であなたたちのコピーを作った僕を許してくれなかったとしても。
こんな狭い檻でなく、広大な新世界があらわれたから。

「大丈夫よ、和樹君。あなたのしてくれたことは間違いじゃない」
「・・・・!」
「たしかに、コピーであることには戸惑ったけど・・・・でも、それは、
 私とあなたが同じものになった、ってことよね?」
「は、はい」
若佳菜さんはすこし頬を赤らめて、僕の耳元に唇をよせ、ささやいた。
「それじゃあ・・・・わたしたちは、子供もつくれるのかしら?」
"擬態クラスタ"と"情報管理クラスタ"は『可能』と回答を返した。
・・・・僕の顔が、真っ赤になった。
蛇足。

『あのー!なんだかー!のけもののようなきがしてきたんですがー!
 手土産もあるんですがー!お留守でしょうかー!』
『きゅーたろ、おとりこみちゅうかもしれないおー』
『お届けモノをお届けできないとしたらデリバリストの名折れー!
 己で届けようと思ったものならなおさら!
 くそ!感動的な未知との遭遇が!』
『きゅーたろ、めちゃめちゃ厨房っぽいお』
『もしくは!新しい!世界との!出会いで!
 "Hello,World."と言って〆、とか!』
『きゅーたろ、それ、むこうのひとのセリフだお』

 〜了〜
252R8icUV3K:03/08/21 02:04 ID:+KdSTA6f
以上。お目汚し失礼。

 『順列都市』もしくは『仮想空間計画』
>>235-251
253名無しさん@初回限定:03/08/21 05:06 ID:a3oU9gyQ
>>252
良い! 素晴らしい!!
254名無しさん@初回限定:03/08/21 05:56 ID:2zx/9Q+p
スゲェ!久々に神が光臨!

若佳菜ノーマルENDかぁ・・・・・・SF好きにはたまんねぇ面白さじゃぁ!
255名無しさん@初回限定:03/08/21 09:12 ID:mj38nSgw
>>252
前作と共に、シリアスな話にべるのとQ太郎のかけ合いを絡めることで、まったり萌えさせつつ
最後で泣かす。良いもの読ませていただきました。
256名無しさん@初回限定:03/08/21 18:12 ID:t/IMVtC+
俺ハロワしか知らんけど面白かった。
若佳菜ノーマルから希望ある展開に繋げるなんて、
千絵梨ノーマルよりも難しいと思ってたのに。
実にグッド!
257名無しさん@初回限定:03/08/21 20:35 ID:Zu+G6Fcw
お見事! ホントに良かった!

ハロワ前半の、クラスタ連発も好きだった自分としては、とても楽しめた。

ただ、ハロワやってない人が、ついてこれるかどうかは微妙かも。
258R8icUV3K:03/08/21 21:44 ID:L8ZkhLl8
>253-257
多謝。

鬱エンドが澱のように心をかき乱す時、
SF妄想はハッピーエンドへのちょっとした助け
唸れ俺の浪漫回路((c)小野寺浩一)
とかそんな代物。再度の感謝を、拙い妄想を褒めてくれた喪前らに。

もちろん西博士Ver.もあるが永遠に封印。

同様の妄想として
「億万の時を生きて世界に人類という種を補完する無機頭脳ふたり」
「『火星人の方法』を実行してしまうdだカップル」
「クラスタをフラグメント化してグローバルネットワーク復旧ワクチンに添付し、
 作業終了後結合して再構築、 ハードウェア(後期型相当)はデトロイトの
 完全自動化自動車工場からロールアウトされる僕らの無機頭脳(もちろん真ッ裸)」
などがあり(黄色い救急車に連れ去られる)
259R8icUV3K:03/08/21 21:48 ID:L8ZkhLl8
いかん、小野寺浩二だ(LAPDの怖いおじさんたちに囲まれて特殊警棒でめった打ち)
260名無しさん@初回限定:03/08/21 22:37 ID:iq7K1E0t
西博士バージョン見たいっす(w
261名無しさん@初回限定:03/08/21 23:33 ID:u7UxU+df
深佳エンドの続きを書くことができる人がいるとはΣ(дノ;)ノ
262名無しさん@初回限定:03/08/21 23:49 ID:RrmOnuQ/
勘違いしてたらイヤ〜ソだから聞くけど、”べるの”って しあわせのかたち のあの子だよね?
263R8icUV3K:03/08/21 23:59 ID:L8ZkhLl8
>262
「しあわせのかたち」の四つ耳少女べるのが元ネタで、
そっくりそのままなしゃべり方をするキャラ「朽木べるの」が出てくるゲームが
「うさみみデリバリーズ!!」でアル

西博士を存分に書きたければエルザエンドを書かなければならないと
壺の中の人が言う

…僕は本を探しに行かなければならない(主にネタ本を)
264名無しさん@初回限定:03/08/22 00:13 ID:M0DqkLNY
>>262
>>222

まぁ>>226という意見もあるのであながち間違いでもないかしら。
265名無しさん@初回限定:03/08/22 10:17 ID:DRx45UHZ
まあ相方にQ太郎がいる事でウサ耳の方だとわかるけどね。
266名無しさん@初回限定:03/08/22 23:45 ID:nPcPWlz2
わーい、イーガンだあ。
267名無しさん@初回限定:03/08/23 00:23 ID:tSTXK2QA
>258
まさか、うさみみの並行世界ネタをハロワと絡めるとは・・・感服致しました
シュレティンガーの"ねこ"も(゚Д゚)ウマー

>「億万の時を生きて世界に人類という種を補完する無機頭脳ふたり」
遥香スキーの一人として、これを見てみたいものです
268R8icUV3K:03/08/23 00:48 ID:QB2vsLHD
>266 然り、イーガンでホーガンでブラウンで…マッコーラムでアル
>267 駄洒落に気が付いてくれてとても嬉しい。そなたに百万の感謝を
269名無しさん@初回限定:03/08/23 01:56 ID:AgXWTEoD
な、なんじゃこれぁっ!すごすぎるぞ。
平行世界モノなんて、みんなヘタレSFだと思ってたのに感動した。
量子コンピューターが実現するのが楽しみになるなあ。
270名無しさん@初回限定:03/08/23 04:42 ID:WzfOF0OI
デリバリーズってこんなゲームなん?
271名無しさん@初回限定:03/08/23 07:21 ID:3IyvEjc/
いゃあ。 感服、感服。

ハロワのあの鬱なEDからこんな話が出来るとは・・・
272名無しさん@初回限定:03/08/23 07:46 ID:q76ecZWb
>270
一部シナリオで話がちょっと出てくるだけで、
ほとんどは熱血宅配男(デリバリスト)ラブコメです。
273あぼーん:あぼーん
あぼーん
274名無しさん@初回限定:03/08/23 15:29 ID:OHs+zzm9
>>263の解説見るまで、デリバリーズを知りませんでした。
だからSSはオバケのQ太郎としあわせのかたちのべるのという
やけにシュールな組み合わせ+ハロワという視点で読んで・・・・ギャース!
275名無しさん@初回限定:03/08/23 18:25 ID:jgQo08RO
>>252
うさみみしかやってないが、おもろかった。
つかハロワやってなくても面白いからすげえ。
276名無しさん@初回限定:03/08/24 00:18 ID:Opb2kHst
>252
両方ともやってないが楽しませてもらった。お疲れさま。
もし機会があればluvwaveをやってみるとテーマ的に
通ずるところがあるかも。

>274
>215にフルネームっぽいのがある…それはシュールな世界だわな。
277名無しさん@初回限定:03/08/24 00:35 ID:XTFuoH8Y
>>R8ic
目ざとい上に神出鬼没。
278名無しさん@初回限定:03/08/24 00:53 ID:9HVq/2bA
順列都市・宇宙消失・グレッグ=イーガン・・・
タイトルはもちっと変えようよ>>『順列都市』もしくは『仮想空間計画』
そこそこ書けたんなら、エサまくなよ。
279名無しさん@初回限定:03/08/24 01:10 ID:DZfXrRGB
>278
言ってることがよく判らん……。
280名無しさん@初回限定:03/08/24 01:22 ID:KODQoFUz
>>279
>>278は自分は元ネタ知ってると自慢したいだけだろ、ほっとけほっとけ。

281名無しさん@初回限定:03/08/24 01:39 ID:oIAC71hd
知ってるも糞も書かれてるじゃんか、しかも絶版じゃないし、どこが自慢になる?
むしろなんでわざわざそのままののタイトルをつけるのか? といってるの。 
必要ないじゃん。かえってSSが濁らないか? せっかく書いたのにさ。
どう? 
282名無しさん@初回限定:03/08/24 01:50 ID:ZX/R4Zu6
>>281
貴方はSFへの愛を知らない人ですね。
283名無しさん@初回限定:03/08/24 01:58 ID:oIAC71hd
そうか・・・すまんかった。
誤解なきよういっとくがSSは好きですよ。
胸はれるほど読んでないんで精進します。スレ汚してスマソ。ごめん。
284R8icUV3K:03/08/24 07:16 ID:/NAYoex1
>281
元ネタがあって、そっちのほうが面白いことは間違いないと思うわけで、
まあ「パクリじゃん」と言われないための予防線と言うかなんというか。
気を使わせて申し訳ない。

では新作投下。

―だれが千年のしあわせな夢をおしはかれるだろう――旅と、狩りと、ピクニック、
忘れられた人気のない都市の訪問、美しい眺めと不思議な場所の発見を。
そして愛と、わかちあいと、そして、ふたつの別個の、はっきりした、それでいて
完全な調和をたもった人格からこだましあう、あらゆるすばらしいすてきなもののひびきを。
  (ハヤカワSF ノーストリリア より)
「……これ、使いますか」
人の苦手な俺がこんなこと言うなんて、今思い出しても小恥ずかしくなってくる。
雨の秋葉原。表通りは大混雑でも、一本裏に入れば結構人もまばらになり…その分雨宿りするところも
ほとんどないわけで。
上は確か、同人誌ショップとパーツ屋が入ってる雑居ビル。
あいにくその日は定休で…なんだよ、俺は秋葉原に住んでるわけじゃないんだぜ…いやまあ
開いてたら多分掘り出し物がないかと入ったに違いないがね。
その雑居ビルの入り口…すぐ階段がある小さなホールにいて、自販機の缶コーヒーを買おうか買うまいか
少し悩んでるとこだった。この夏はほら、結構雨が多くて寒かったろ。その日もそんな天気だったのさ。

彼は小走りに駆けてくると手前の水溜りを軽く飛んでホールに着地した。音はしなかった。
ちょっと変わった格好だったよ。ほら駅前で南米音楽やってる連中いるだろ。あんなカンジの。
…そうそう、ポンチョ。いや、落ち着いた色合いだった。すごく自然に着こなしてたな。
ん? ああ、しばらくポンチョ探してたのはそのせいさ。なんだよ。笑うなって。
入ってきたとき、さほど気にはしなかったんだ。いるだろ、秋葉原。変なカッコのヤツなんてさ。
そいつは…うん、違ってた。他に表現しようがないのがアレだな。
こう、空気っつーかオーラっつーか。オーラってほど押しが強いイメージもなくて、なんだろな、
やっぱ空気だな。雰囲気の一歩手前。切れた蛍光灯の下で、自販機の照明がソイツを照らしてたわけだ。
あれね、昼間だったら気が付かなかったよ。ホントフツーのヤツなんだ。
髪の毛黒で背は低めのニホンジン。ニポーンジーン。高校生くらいでさ。特徴レス。
おまえが明日すれ違っても気が付かないね。
いやさ、なんだろな。すんげー濡れてたのよ。そいつの頭。前髪目にかかっちゃっててさ、
エロゲの主人公みたいになってんの。で、こう、ぐっ…と濡れた髪かき上げたらさ。
目が。
あっちゃったわけ。俺と。

そんでな。
笑ったのさ。なんつーの?にこっ?ふわっ?いやー、そうさな、赤ん坊が笑ったカンジ。
びしょぬれなんだぜ?無表情かつ微妙に不機嫌にならねーか普通。ま、そのときはそんなこと
考える暇もなかった。そいつ開口一番、
「いい天気ですね」
( ゚д゚)ポカーンですよアンタ。いやもう、ソイツは本気だった。マジデ。…ちがうちがう、
キチガイとかじゃなかった。いやその。目がさ。すんげー賢そうだったのよ。
象とかクジラとか。ああいう目。でも頭びしょぬれ。
ああ、こいつと話してみたいな…と思ったの。でまあ、バッグからタオル出して、「これ使いますか」って
聞いたわけだ。
ん? ああ、「ありがとう」って受け取って頭を拭いた。いい声だった。そしたらなんか恥ずかしくなって
きたワケよ。タオル、コミケ逝けなかったからバッグに入れっぱなしだったわけだしな。
「助かりました。洗って返しましょうか」
「いや、いいから。使ってて。まだアンタ濡れてるし、ヤスモンだから捨てても構わないし」
「すみません」
これまた嬉しそうなのよ。いやあれは好意を向けられたことへのヨロコビっつーか。
したらこっちも冷たくするいわれはないだろ。ちょっと間があってからさ。俺から切り出したわけ。
「買い物?」
「いえ、妹が働いているので迎えに」
よく見ると結構整った顔してるんだ。このオトコの妹なら美人だろな、と漠然と思った。
え? いやほら、所詮3次元だし。まあそのときはそう思った。
そのときは。
「止みそうにないな」
「困りましたね」
アンタさっきいい天気だって言ったじゃん…というのが顔に出たらしいわ。迎えに来たのに傘がないんじゃ
しまらないですよね、って肩をすくめて笑ったっけ。俺も、そうだなって同意した。
「もうすぐ来るのかい」
「いえ、あと一時間は先ですね」
一時間程度ならショップめぐりで時間潰せるのにな。で、聞いたの。
「秋葉原ははじめて?」
そしたらなんつったと思う?

「6億年ぶりですね」
・・・・わかってる、わかってるって。デンパか妄想癖か虚言症か、そんな言葉が脳裏をかすめたよ俺だって。
でもなあ。そいつのその目、本当に懐かしそうでさ。ちょっと話を合わせてやるのもまあいいか、と
思ったわけ。
「おお、随分久しぶり?でどう、変わった?」
ソイツ、ぎょっとした顔をしてから、しばらく俺の顔を見ていた。俺はニヤニヤしてたにちがいない。
ソイツも、俺は話を最後まで聞くと思ったんだろな。信じないにしてもさ。
「変わりましたね。まだ秋葉タワーもないしPDA内蔵ペットロボットも発売されてない。でも、
 まちがいなくここも秋葉原ですよ」
で、ここで『ははん』と思った。そういう遊びなんだ、と。こいつはタイムトラベラーかなんかの
演技をする。俺はソレを拝聴する。誤謬があったら突っ込み、相手はそれをフォローするホラを吹く。
20分くらい潰せるな、と思った。第一、俺も暇だったし、なにしろソイツと話を続けるのは
悪い気分じゃなかった。さっき言ったろ、雰囲気がさ、違うのよソイツ。
俺の知ってるどんなやつとも違う。とにかく、もうすこしコイツと話をしてみたいと本気で思ったんだ。
「・・・・で、どうだったのさこのへん。6億年前は?」
「このへん、というか。温暖化で一遍地球全体が砂漠化しちゃいまして。
 まあ地道に二酸化炭素を減らすしかないかな、と」
信じます?って顔をヤツはした。
俺はしたり顔でうなずいた。
俺たちは共犯者の笑みを浮かべていたに違いない。

「そんで、どうした」
「まだ海が半分くらい残ってたので。藻類を一生懸命増やしました。けっこうかかりましたね」
「そりゃずいぶんかかっただろうさ。じゃああれか、宇宙船でそらからパパッと?」
「そういうテクノロジも失われてしまって」
なんか泣きそうに見えたんであわてて話を続けた。
ああ、慌てた時点で少し信じてたかもしれない。
あるいは、キチガイの感情を刺激するとまずい、と思ったのかもしれないが、
とにかく俺はそのときは『会話を続ける』ほうをえらんだのさ。

「じゃ、人力?ひとりで?ご苦労様だな」
「妹もいましたから」
「妹さんも長生きなのね」
「僕よりも高性能ですからね」
はっはーん。そういう『設定』か。だんだん俺も調子に乗ってきた。
「メンテナンスフリー?」
「設計レベルで」
「頭のいいヤツだったんだな」
「ええ、素敵な女性でした」
女科学者萌え〜。きっと知的な白衣のショートカット理系美女(背高い)に違いない、と俺は思った。
ポニテぇ? いや、ショートカットだ。これは譲れん。

「そんじゃあれか、藻類が繁殖するまでは処理落ちさせて半冬眠状態?」
「・・・・すごいですね、そうです。最後のころには二人とも裸で作業してましたよ」
「あー、実時間で何万年もかかっちゃなあ、服だってぼろぼろになるよなー。
 体感時間は結構短めにしたのかい?」
「僕ら、気は長いんで。最初の頃はわりにこまめに面倒見てましたが、
 一遍繁殖すると植物ってのはすごいですね。
 ・・・・お茶の木がまた発生した時は嬉しかったなあ」
「紅茶、好きなんだ」
「はい。妹のほうが詳しいんですけどね」

「動物のほうは?3億年くらい前なら陸上生物も出てきたはずだけど?」
「人間が現われるまではもうほったらかしでした」
「いいかげんな神様だな(笑)」
「手を加え続けないと滅びる環境なら、いずれ滅びますよ。安定したから手を加えなかったんです」
なるほど、一理あった。
「じゃ火や車輪や文字を人類に用意した?」
「人口も増えてたし、原始人だし言葉は通じないし・・・・なかなか大変でした」
大真面目な顔だった。おれはつい笑ってしまった。
「兄さん」
・・・・あのね。あの時の俺の驚きをどう表現したらいいかな。
美人です。別嬪さんがきました。それがこう、傘をたたみながら「にいさん」ですよアナタ。
銀灰色の髪の毛の、ばん!キュッ!ぼん!てぇ女の子が、こっちみて笑うんですよ!
「・・・・こちらは?」
―親切な人でね、タオルを貸してくれたよ。
―まあ。
―遥香も濡れてるじゃないか。妹にもタオル、使わせていただいていいですか。
半分聞き流し状態。いやー、いるところにはいるんだね美少女。俺ね、3次元でハァハァ(;´Д`)したの
久しぶりだったよ。
「タオル、お借りしていいですか?」
「ドウゾドウゾ」
お兄さんと呼ばせてください、とか思ったけど言えないの。
やっぱオタはダメだな。ほんと俺ってダメ人間。
誰か助けてください。
「ありがとうございます」
言わなくてよかった、と心底思ったね。白くて細い指で、こう、頬を拭く様はひじょーに・・・・
あ?見てないから熱く語られても困る?まあそういうな、もうすぐオチだから。
「よかったら、この傘使ってください」
「え?」
「私たち、こちらのタオルをお借りしますから」
あー、顔拭いたものオタに返すのいやなんかー、と思った。俺の予想は外れたよ。

「私たちの話を聞いてくださった方のものを、記念に戴きたいんです」
うれしそーに笑いながらその娘がそういうわけ。そりゃほらヤスモノだし?いいよ、もってきな、って
言った。え? いつ妹と兄貴はその話をしたのかって?・・・・あれ?いつだろ。
いやまあとにかく、その娘が言ったのはそういう内容の台詞で、それは間違いない。
「記念に」って。一も二もなくうなずいた。ほら、美人には逆らえないじゃん?ダメ?
「どうぞ」って彼女が手渡してくれたのがそこにあるビニール傘。

「それじゃあ」
っていうと二人は小雨になった秋葉原の雑踏に手をつないで消えてった。
いまでも惜しいな、って思うのはな。
最後に聞こえた二人の会話の断片がな。

―バイト、今日までだっけ。面白かった?
―メイド喫茶って言うんですよ、兄さん。ふりふりしたエプロンドレスを着たんです・・・・

いきり立つな!怒るな!俺だって行きたかった!ああ!俺だって見てみたかったさ!

 〜了〜
292R8icUV3K:03/08/24 07:46 ID:/NAYoex1
以上。お目汚し失礼。

 『ノーストリリア』もしくは『棺』
>>284-291

なお『棺』はハヤカワ 「90年代SF傑作選」下巻に掲載の短編。
星新一風アイデアと翻訳でグー。
293名無しさん@初回限定:03/08/24 08:02 ID:z7J/Ey6f
原作面白そうだな。
294名無しさん@初回限定:03/08/24 08:55 ID:D2SWgwu8
>>284-291
SS板でその作品の名前を聞くことになるとは…。
しかもハロワで。よいですな。手塚的無常観が素敵です。
ご苦労様でした〜!

某補完アニメとの関係ばかり語られる「ノーストリリア」ですが、
実はこれのヒロインはネコミm(ry
いや文中にその記述は出てきませんが…(w
295R8icUV3K:03/08/24 09:18 ID:/NAYoex1
ク・メルはネコミミであるとアカシックレコードに刻まれています。
コードウェイナー・スミスが否定してもその事実は覆しようがないのです。

わくんばもそういっているのだ。ニャ!
296いい補完だ:03/08/24 09:30 ID:laSoHdOR
くっ、ちょっと泣きそう…

元ネタの小説、図書館逝って借りてきまふ
297名無しさん@初回限定:03/08/24 11:12 ID:1RzDHo4p
>>292
なんか、不思議な感じですがとても良いです。本当にお見事です。
そいじゃ、漏れも図書館へ行いってきます。
298名無しさん@初回限定:03/08/24 12:05 ID:YmRJqQmK
遥香ENDの続きとは……スゲェ。
299名無しさん@初回限定:03/08/24 15:38 ID:8GLmzl3o
いいものを読ませていただきました。お見事です。
300名無しさん@初回限定:03/08/24 16:12 ID:U7nf89Ut
図書館逝って80年代SF傑作選(下)を借りてきてしまいますた。
これはこれでー
301281:03/08/24 21:49 ID:D2SWgwu8
>282
それを言うと他の早川青背作家のファンにバカにされそうで(w

そういえば、ラインバーガー博士も数万年単位で生きている人でしたね。
(数千年歴史をなくしちゃうし)
激しく板違いなので巣に帰りますよおお!
302名無しさん@初回限定:03/08/24 23:11 ID:zLc/UylA
原作が読みたくなってきた&俺の中の猪名川さんが咆えてます。
Good job!
303R8icUV3K:03/08/25 01:21 ID:agOqKvYm
好意的な感想を下さった皆様に感謝の言葉を。
特に原作エロゲ/元ネタSFに興味を持たれた皆様には
再び感謝の言葉を。あなたの人生が良いゲームに恵まれますように。

あと書き忘れたのでひとつだけ。
上記SSは>267の要望で只の妄想がSSへと形を成したものです。
>267には重ねて感謝の言葉を。
あなたの「見てみたい」が生んだSSです。蟻d。


…さ、エルザエンドでも妄想するか…
304名無しさん@初回限定:03/08/25 17:01 ID:n4sNRqBg
ちょっと無粋な疑問ですまないが…

6億年も経つとプレート移動で世界地図は全く違うものになって
日本列島も消滅しているはず。

6億年後の地球の日本に似た場所にある秋葉原なのかな?
305R8icUV3K:03/08/25 17:27 ID:1YlndCop
>304
ありえねぇ度で言えば6億年動く機械。ありえねぇ。
考古学者だって馬鹿じゃない、なんか発掘してるかもしれない。
(星を継ぐもののラストみたいにまがいもの扱いされて歴史から葬られている可能性もあるけど)
ハロワ作中でも関東とか秋葉原とか言われてるのであるが
インターネットでなくグローバルネットワークと呼ばれてるからには
「この2chがある」地球の話ではないモヨリ

一番シンプルなのは
>304の言うとおり 「日本に似た場所にある秋葉原と呼ばれる街」と
いう解釈でしょー
独白も本来「日本語」ではない、とか

もっと妄想度高いのはハロワが6億年前の地球を舞台にした裏歴史で
明日>304がすれ違う誰かの中に
6億年の旅行者(二人連れ)がいるかもしれないという妄想。妄想硬度12。
306名無しさん@初回限定:03/08/25 17:50 ID:n4sNRqBg
>305
秋葉原を生み出すためにバイオレンスジャックよろしく何度も文明の再建を繰り返す
二人を妄想しますた。

6億年動くなら意図的に止まらない限り、最後はワッハマン最終回のようにになるのかな?
307名無しさん@初回限定:03/08/25 18:02 ID:R0jJMRUa
>>284-291

>>294同様、最初に連想したのは『火の鳥・未来編』

で、>>306

>秋葉原を生み出すために何度も文明の再建を繰り返す二人

から、漏れは藤崎版『封神演技』の女禍を思い出しますた。
308名無しさん@初回限定:03/08/25 21:56 ID:8jvQnccT
自分の望む状況がくるまで何度も歴史を繰り返す?

…ニャル様か?(w
309名無しさん@初回限定:03/08/25 22:06 ID:2RbIfE2k
書き手さんが答えてるにもかかわらず横レススマソ。
304の質問に306のアイデアをR8ic氏の前SS(シュデリンガーの猫)で掛ける・・・
波動関数の収縮によって絶望的な確率からこの世界をもぎ取った二人と考えれば
それはそれで切なくて良い。
と思ったりする。
310名無しさん@初回限定:03/08/26 02:24 ID:/VOTmiYA
むしろ、彼ら二人は思推生命体に進化して
「運命励起能力」を獲得して世界を選び取ったのだ、とかとか。


と、別ゲームのネタを更に絡めてみる。
311名無しさん@初回限定:03/08/26 08:55 ID:1ccX+5aj
>305
妄想硬度12、最高!
312名無しさん@初回限定:03/08/26 15:06 ID:hOdoyMc+
>>308-310

ネタバレスレにて

149 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2003/05/11(日) 23:58 ID:???
>>145
こんなデモンベインは嫌だ

九郎&アルの他に、旧神「吾妻玲二&エレン」「伊藤惣太&モーラ」「孔濤羅&瑞麗」
「友永和樹&愛原奈津美」が存在する。

154 名前:名無しさん@お腹いっぱい。 投稿日:2003/05/12(月) 00:04 ID:???
>>149
「友永和樹&友永遥香」でお願いします。

ってのがあったのを思い出したw
313R8icUV3K:03/08/26 18:47 ID:vvFs19D4
>306 >312
「そして二人はいつまでも幸せに暮らしました」で終わる話が読みたいんだよー
こんな世の中だからー
「いちごさけた」でも「どっとはらい」でも「So, They lived happily ever after.」でも
かまやしねぇのだけれど。

そんなエルザエンド妄想中。…あ、アルが(ry

>307
『火の鳥・未来編』の影響は疑うべくもなく。

>309-311    コード
ありがd。妄想硬度に関するお問い合わせはお近くのMRO、
「妄想する権利に関する委員会機構」まで。
Mousou and other related-Right Organization、MROです。
314『ヴァーチャル・ガール』:03/08/28 12:17 ID:yPTlSw22
『ヴァーチャル・ガール』もしくは『ブレードランナー』

* * *

「きれいな色だ…濡れてるぜ、エルザ」
「は、博士が集めた遺伝形質プールの平均値をとってるんだロボ」
「そんなもん貯めてやがったのかあの○○○○」
「は、はうっ、そこに口つけたまましゃべっちゃだめロボッ」

「は、は、はかせはこんなこと教えてくれなかったロボ」
「それにしちゃずいぶんいやらしい仕草じゃないか」
「ダーリン、マグロの方が良かったロボ?」
「だからどこでそういう言葉を覚えてきたのかと」
「ああああっ、そこでしゃべっちゃだめだロボっっ」
エルザの足の指がきゅうっと空をつかむ。指が切なげに俺の髪を頭ををわし掴む。腕は…

「いやなら押し返せばいいじゃないか。押し付けてるのはエルザだぜ」
「ダ、ダーリンは意地悪だロボ…ビデオの男優さんとは大違いだロボ…」
「ビデオぉ?」
「ひゃうううっ」
「さあ、どういうことか話してもらおうか」
「指…指でかき回さないで欲しいロボぉ…」
「ちゃんと話したら指、抜いてやるよ」
「ぬいちゃう…ロボ?」
甘えた声と上目遣いでこちらを見るエルザ。俺は、酷く凶暴な気分になって、
優しく激しくやわらかくめちゃくちゃにかき回した。
「はあああああああうっ!!」
315『ヴァーチャル・ガール』:03/08/28 12:19 ID:yPTlSw22
「セックスのときの振る舞いなんて、博士の用意したデータベースにはなかったんだロボ。
 だから…だから…ビデオをいっぱい見て勉強したんだロボ」
ああ。人造人間とはいえ、生後3週程度のエルザが性知識皆無なのも
いたしかたないといえばないのだが。
「エルザは、ダーリンを倒すために造られたんだロボ。
 床上手に造ってもしかたなかったロボ」

あの(検閲)がそんな情報を一生懸命入力している姿は…いかん、想像してしまった。
「あれれロボ」
ちょっと萎えた俺を見て、エルザが床に跪いた。
「すーぐ元気にしてあげるロボー」
ぱく。
躊躇がなかった。
「ん…んぐ…で、でっかいロボ…」
の割には稚拙な舌使い。エルザの知識と経験のアンバランスさが俺のリビドーを刺激する。
316『ヴァーチャル・ガール』:03/08/28 12:20 ID:yPTlSw22

「続けて」
「ぷう…だから、エルザの実戦はこれがはじめてロボ。
 人間の女性がどんな反応するのか、エルザにはわからないロボ。…ん、ちゅうっ。
 ビデオの女の人は気持ちよさそうロボが…エルザには、気持ちいいときにあんなふうに反応できるか、
 わからないロボ。…れろれろにぎにぎ」
エルザの頭をなでていた手を、首筋を滑らせて、バトルジャケットの隙間から指を差し込む。
ふくよかな乳房の上に、かたくしこる乳首が感じられた。
「あ、ああう」
「おいで」
頬を興奮で紅潮させたエルザをベットに誘い、
窮屈なバトルジャケットを一枚ずつ脱がせてゆく。
「は、恥ずかしいロボ」
「それもビデオで覚えたのか?」
「エロ本もいっぱい読んだロボ。…恥ずかしがらないほうがいいロボ、ダーリン?」
「いや、大いに恥ずかしがってくれ」
「はううう、ダーリンはものすごく意地悪ロボ」
317『ヴァーチャル・ガール』:03/08/28 12:21 ID:yPTlSw22
エルザを優しくベットに横たえる。おびえたようなエルザの瞳が、俺を見上げている。
「…怖いか?」
「…怖いと言うより、不安ロボ。実戦経験の不足は、敗北につながるロボ。
 ダーリンがエルザに満足できないかも知れないと思うと、胸がつぶれそうだロボ」
「初めてがうまくいかないなんて、良くあることさ。
 経験は、これから積めばいい」
俺とエルザは、その晩何回目になるかわからない長いキスをした。
「…キス、上手になってきたな、エルザ」

「うん。…九郎、えっちなこと、エルザにいっぱいいっぱい教えて欲しいロボ」
そう言って、
純真無垢な戦天使は、ひどく赤面した。

 〜 了 〜
318R8icUV3K:03/08/28 12:45 ID:yPTlSw22
以上。お目汚し失礼。

>>314-317
『ヴァーチャル・ガール』もしくは『ブレードランナー』

前3作に過分なるお褒めの言葉を頂き恐悦至極。

調子に乗ってエルザエンドも書いてみたものの、
アル消滅から電子魔道書解読機なるべく改造を受けるエルザ、
エルザ=九郎の新マギウススタイル『アダム・カドモン』の誕生、
つまり両性具有で美女で美男でフタナリな九郎さんハァハァ、
「目的は全知全能、すなわち無限!」と言い切るアウグストゥスを
「我輩も大概パクリな人生であるが、貴様もその台詞がいかに
 負け組の台詞であるかを理解していないとは
 すちゅ〜〜〜ぴっど!!教育してやろう!
 いでよ!わが最強の破壊ロボ!
 残魔大聖!デモーンベイーン!!!」と叫ぶ西博士とか、
長くなったので割愛。
319名無しさん@初回限定:03/08/28 13:09 ID:FXeuRwGC
>>318
一応乙とは言っておく
320名無しさん@初回限定:03/08/28 15:32 ID:lxyMYRnM
ん?
なんか保管HP、消えてない?
普通にnot found なんだが。
321名無しさん@初回限定:03/08/28 15:55 ID:iWvZa4Qj
>>320
消えてるなあ。おれもだ。

しっかしつい先日おれはそれ散る終えたんだが、未だに人気なんだな・・・。結構SS希望のレスとかあったし・・・。
322名無しさん@初回限定:03/08/28 17:37 ID:BKE/VWPJ
いかんな
>314-317より>318の方が好きだと思う自分がいる
323名無しさん@初回限定:03/08/28 17:55 ID:I8bcPT9x
つまりあれさ、エロには向かないんだよ>314-317
324名無しさん@初回限定:03/08/28 22:59 ID:VlVIY9Br
短編集に息抜き的な一編が必要なようにこんなやわらかい雰囲気のSSもあって良いと思う
むしろ他の職人の投下がないのを憂うべき。
あまり気にせずがんがれ&他の職人諸氏も投下せよ!


PS もし属性をお持ちなら葉鍵板のセリオスレにもSS投下キボンヌ>R8ic氏
325名無しさん@初回限定:03/08/28 23:21 ID:pPYSoTiQ
それ散るssってそんな需要あるですか?
伝説スレにけっこう転がってるけど。

需要あるならもいらも投下してみっかな
http://adult.csx.jp/~hoshss/
保管サイトが消されたようなので、こちらに再UPです。
今回は鯖変えてみたわけですが、使いにくい部分ありましたらおねがいします。

SS保管更新は週末あたりに
203.165.85.201 , 203-165-85-201.home.ne.jp ?
327名無しさん@初回限定:03/08/28 23:55 ID:fbGVY91I
>>325
伝説スレのはSSってよりは半分くらいがコピペ改変で、残りもネタ長文というのに近い気が。
純粋にSSとして読めるのは数点じゃ無いかな。
少なくとも、漏れが投下したのは全部小ネタ。

>需要あるならもいらも投下してみっかな
是非に。
328名無しさん@初回限定:03/08/29 02:22 ID:dkKsJ8HK
>327
>伝説スレのはSSってよりは半分くらいがコピペ改変で、残りもネタ長文

確かに。いまは、ネタスレですから。
まあ、一つだけ少し真面目なの投下したけど。
少なくともこのスレのやつよりは。
329328:03/08/29 02:28 ID:dkKsJ8HK
あっと、すまん。誤解のないように訂正しておくが、
このスレのやつってのは、私がこのスレに投下したやつってことね。
まあ、誰も勘違いはしないと思うけど。


酔って書き込みするもんじゃないな。
330名無しさん@初回限定:03/08/29 10:40 ID:rl/fDhYf
>>326
無料転送アドレスでも取得したら?
アダルト系URLって事で、URL書く度にトマト出てたら敵わないし、
また消されてもURL変わらずに済むし。
331Birthday Songs/01:03/09/01 06:13 ID:hBdLz0LN
 「遅せえなー、あかりのやつ・・・」
雪までもを降らせ始めた寒空の下。
待ち合わせた公園のベンチに座りながら独り呟く。
熱々だった缶コーヒーをカイロ代わりに使ってたのだが、
気づいたらすっかり冷えちまってた。
これじゃ飲めやしないのでお持ち帰り決定だ。
ベンチに座って十五分。
いつも学校の通り道に使っているだけあって公園の内装は見飽きているし、
ガキんちょが遊んでるのを眺めようにもこの寒さの中で遊ぼうだなんて
逞しいやつはいないし。
のろのろと針を動かす時計と睨めっこするのも飽きちまった。
「はっきり言ってヒマだ・・・」
やはりというか独り言だ。
返答してくれるべき人材は目下ここへ向かっててけてけと歩いている、
と思いたい。
クリスマスプレゼントとしてあかりに貰ったマフラーを掛けなおして、
天を仰ぐ。
雪が強さを増している。
332Birthday Songs/02:03/09/01 06:14 ID:hBdLz0LN
 「二月二十日、金曜日―――――」
世間的には普通の日。ケの日。日常の一片。
でも、あかりにとっては特別な日だ。
そして、オレにとっても例年にはない特別な想いで今日という日を迎えている。
朝。あかりと歩く学校までの坂道で何気ない会話の中に混ぜた一言。
「今日、学校が終わってからオレに付き合え」
あかりは目を丸くしてびっくりしてた。
それから少し俯いて、
「・・・うん」
って。
まあ、本人だし何の日かなんて分かってるに決まってるけど、
オレが覚えてたことに、それを告げてきたことに、おどろいたんだろうな。
そして、喜んでた、と思う。
「何の用?」なんて訊かずにただただ嬉しそうに微笑ってたしな。
あいつほどじゃないけど、オレもあかりのことはそれなりに見てたんだから、
そういうのは解る。
だから―――――、
「張り切って三十分くらい前には着てそうだ、って思ったんだがな・・・」
公園の中央に聳え立つ時計は十七時四十六分を指している。
約束の時間まで、時計に白い電燈の光が灯るまで、あと十四分。
冬の暗がりと寒さで満ちた公園に独りぽつん、と。
333Birthday Songs/03:03/09/01 06:15 ID:hBdLz0LN
 暖かマフラーはくまの刺繍がちゃーむぽいんと!
くまの下にまいねーむいずくま。あんさんワイのこと舐めたらあきまへんで、とある。
最初はもの凄く恥ずかしくてマフラーはそのままお蔵入りさせるつもりだったんだが、
今年の冬はこれまた滅茶苦茶寒くてマフラーの一つでも引っ掛けていかないと、
外に出ることなどできやしない。
「恥ずかしいなら刺繍外そうか?」
犬みたいな表情であかりに言われて、じゃあそうしてくれと言わないくらいには
オレも大人になった。
だから、たまに早起きした日くらいは、
「おはようございます、あかりのやつもう起きてます?」
「あら、浩之くん。おはよう。本当に早いわねぇ。まだ六時半よ。・・・ああ、あかりなら
まだ寝てると思うわ。良かったら起こしてあげて」
「構わないんですか」
「ええ、それじゃお願いね」
これくらいは赦されよう。
334Birthday Songs/04:03/09/01 06:16 ID:hBdLz0LN
 あかりの部屋に入るのは正式に付き合いだす少し前にあいつが風邪を引いて、
オレがその見舞いに行ったあの日以来だ。
相変わらず甘ったるい少女ちっくな雰囲気な部屋だった。
椅子をベッドの横に引っ張りだしてきて覗き込む。
ちょうど仰向けに寝ていてぐっすりと寝ているあかりの寝顔を見ることができた。
「しまった、カメラ持って来るんだった」
オレも詰めが甘い。
確か、この部屋にもあったと思うんだが・・・、っと何じゃこりゃ。
くまの時計があかりの枕の近くに置かれている。
腹のところが時計になっていて、何だかひどく滑稽に見えた。
これを可愛いとか言い出すんだからあかりの趣味は変わってるよな。
まあ、責任の半分くらいはオレにあるんだろうけど。
くま時計を手にとってジロジロ見ていると、ボイスを取り込んで目覚ましにする
タイプだということが知れた。
くまってだけで買ったんだろうけど、
「声入れたのかな」
ここで鳴らすとあかりが目を覚ましそうだったので、
部屋の外に出て、鳴らしてみた。
「くまーくまだよー、早く起きないと、がぶっといっちゃうよー」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
頭痛い・・・。
間違いなくあかりの声だ。
335名無しさん@初回限定:03/09/01 06:20 ID:hIAvmLpI
336Birthday Songs/05:03/09/01 06:35 ID:hBdLz0LN
 部屋に戻って椅子に座る。
ため息が出る。
本当にコイツこんなので毎朝起きてるのか?
「くまーくまだよー、早く起きないと、がぶっといっちゃうよー」
試しにあかりの声をマネして言ってみた。
むっくりと身体を起こすあかり。
起きるのか、これで。
何というか言葉が出ない。
「あれ? 浩之ちゃん。おはようー」
「おはよ」
あかりが自分の周りをキョロキョロと見回しているのを見て、
「ほら」
くま時計を差し出す。
「あれ? 何で浩之ちゃんが?」
「少し拝借したんだ」
「そっか」
短い沈黙。
「お前良くそんなので起きれるな」
オレなら一生起きれそうにない。
「うんっ、案外と起きれるものだよ。浩之ちゃんも試してみる?」
「いらんわ」
337Birthday Songs/06:03/09/01 06:35 ID:hBdLz0LN
 「あの、浩之ちゃん・・・」
「何だ、あかり」
あかりは掛け蒲団から上半身を出して、少し俯いた。
「そろそろね、着替えようかなって思うんだけど・・・」
「どーぞ」
「あ、あの、ね、恥ずかしいから、少しのあいだ外に出てて、くれないかな・・・」
部屋は電燈が付いていない暗がりなのだが、赤くなったあかりの顔だけはハッキリと見える。
「そういうもんか?」
「う、うん」
時々そういうレベルで済まないことを致しているわけだが、あかりの中では全くの別で
あるらしい。
そーいや、明るいまんまでさせてくれたのって初めての時だけだったよな。
「見たいって言ってもダメか?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・どうしても?」
蚊の鳴くような小さな声が聞こえてきた。
「どーしても」
あかりは観念したように蒲団から全身を出して、ベッドから下りた。
奇しくもあの時と同じ、あかりが風邪を引いていたときに着ていたパジャマだった。
338Birthday Songs/07:03/09/01 06:36 ID:hBdLz0LN
 「・・・・・・・・・・・・・」
あかりの手がゆっくりとボタンに伸びる。
そろそろ陽が射し込む頃合いなのか、窓ガラスを背にしたあかりはやけに神々しかった。
逆光の中であかりはやっぱり恥ずかしそうだ。
ゆっくりと、ゆっくりと第二ボタン、第三ボタン、外されていく。
そして、隙間から見える肌とブラジャーが露わに――――、
「あかりー、そろそろご飯よー」
――――――――――――っ。
階下からおばさんの声が聞こえた。
その声にお互い硬直する。特にあかりは上パジャマを脱ごうかという時に声がしたため、
何だかポーズをとっているようにも見えた。
「・・・あー、先に下りるわ」
「・・・うん」
少し気まずい雰囲気の、二月二十日金曜日午前七時八分だった。
339Birthday Songs/08:03/09/01 06:37 ID:hBdLz0LN
 回想していて、思った。
ひょっとしてこれが原因であかりのやつ怒ってる、とか。
「んなわきゃーない」
と思う。
時計を見ると、あと七分くらいで十八時になる。
あかりにしてはやっぱり遅いよな。
ため息が出た。雪に負けないくらい白かった。
――――ん、
公園の入り口に人影が見えた。近づいてくる。
――――あかりだ。
遅かったなっ、と言いかけて止めた。
オレが、待ちきれなくて、もとい、いつもにはない殊勝な心がけにて早く到着しただけで、
あかりは遅れてきたワケじゃーない。
それに今日は――――、
「はっ、はっは、はあー、・・・ご、ごめんなさい」
走ってきたのだろう。あかりは息を切らせながら謝ってきた。
「んー、まあ遅刻したわけじゃないしな」
「でも、浩之ちゃんずっと待っててくれたんでしょ?」
「いや、今さっき来たところだ」
「・・・・・・ありがとう」
「何、笑ってんだよ」
「ふふふ」
「全く」
340Birthday Songs/09:03/09/01 06:58 ID:hBdLz0LN
 あかりが公園に入ってきたときにオレも立ち上がって距離を詰めたので、細長い柱に支えられた
時計の下で見つめ合うことになった。
あかりはまだ肩で息をしている。
オレはマフラーを掛け直して、ついでのようにポケットから小さい包み箱を取り出した。
「ほら」
右手で差し出す。
「ありがとう」
包み箱を大事そうに両手で抱き上げたあかりは少し涙目になっていた。
「んなことで泣くな」
「えへへ・・・。開けていい?」
「どーぞ」
やっぱ気恥ずかしい。去年までの今日を思い浮かべると流石に飛躍しすぎだろ、とか思ってしまう。
がさごそがさごそ。包みが開けられて、ぱかっ。箱が開けられた。
そこには、
「ひ、浩之ちゃん。っっっ――――」
「お、おいおい、あかり」
あかりは包みを開けた途端に泣き出してしまった。
今にも崩れ落ちそうに小さな身体を震わせて。
オレはあかりの身体をゆっくりと抱きしめる。
「だから、泣くなって」
「でも、嬉しくて――――」
オレはいつか学校の屋上で見た虹を思い出していた。あの時のあかりはただ虹が出ただけでひどく
嬉しそうにしていた。あかりと付き合うやつは楽でいいよなー、とか思っていた記憶があるが、
比べものにならないほどの喜びようだった。
あやすようにあかりの背中をぽんぽんと軽く叩いた。
「――――ありがとう」
「ほら、指輪貸してみ」
341Birthday Songs/10:03/09/01 06:59 ID:hBdLz0LN
 受け取った指輪をあかりの左手の薬指に嵌めてやる。
パチパチンという音と共に公園の時計の電燈が付いた。白い光がオレたちに降り注ぐ。
てのひらを広げてそれを受け止める。
あかりの手を掴んで、約束の言葉を、
「ハッピィー、バースデイ」
342松波:03/09/01 07:00 ID:hBdLz0LN
まずは1、2のsage忘れ申し訳ない。
3でようやく気づいたという腑抜けっぷり。

>>331-341
To HeartよりBirthday Songs
これを書きながらアニメでも見直すかーと思い立ったのはいいけれど、
探せど探せどテープが見つからないワナに昏倒しますた。


343名無しさん@初回限定:03/09/01 08:35 ID:fCRdzOhL
葉鍵板に(ry
344名無しさん@初回限定:03/09/01 15:30 ID:NeVJWRWY
>>343
ネタに(ry
保管サイト更新〜
http://members.jcom.home.ne.jp/enseteku/
とりあえず、めんどくさいんで使ってない自アカから転送するように変更。
リンクはここからお願いします。

更新作品
○『ヴァーチャル・ガール』もしくは『ブレードランナー』
○『ノーストリリア』もしくは『棺』
○『順列都市』もしくは『仮想空間計画』
○『発狂した宇宙』もしくは『時空監視官出動!』
○最近とみに必死な広告の中の人について妄想してみる

後、松波氏のBirthday Songsですが、葉鍵モノなので今回は見合わせます。
葉鍵板にSSスレは存在するので、なんでしたらそちらに投稿お願いします。
346名無しさん@初回限定:03/09/05 19:13 ID:sbtfjU8s
乙ー
347松波:03/09/06 02:06 ID:EqpHeSdZ
板違い、sage忘れなど場の空気を乱してしまったこと申し訳なく思っております。
反省しつつ出直してきます。

>343
>344
アフォな行動をしましたがネタのつもりはなかったです。

>へたれSS書き@保管サイト”管理”人氏
ご助言ありがとうございます。
348名無しさん@初回限定:03/09/07 03:33 ID:yh99XA8X
>>347
松波氏グッジョブ。
自分は葉鍵行かないけど、東鳩は好きなんでたまには葱板でこういうのもありかと思ふ。
SS自体のデキは悪くはないと思うのに全然褒められてないのにはワラタ。
349名無しさん@初回限定:03/09/07 21:49 ID:lsIRiaK3
>>348
一応読んではいたんだけど、板違いだったので評価は避けた。
松波氏が葉鍵以外の作品を落とした時は評価させてもらうよ。
350松波:03/09/09 04:55 ID:lbB4iNYj
出直してきました。

>>348
後半部分のテキストと展開がアイタタなのでその言葉には正直助かります。

>>349
よろしくです。

そういう訳で二個目です。
351それは転がる賽目のように 01:03/09/09 05:01 ID:lbB4iNYj
「だからさー、付き合うところまでいかないまでも誰かを好きになるってのは損することじゃないぜ?」
昇降口で一緒になった山彦が、月の満ち欠けに関係するのかどうかは知らないが、ともかくそれくらいの周期で
口にする例の冗句を朝っぱらからくどくどと披露していた。
対して俺はいつもの通りにのらりくらり。真面目に相手をする気など、サラサラない。
「ふっふーん、新宿の夜の帝王ならぬ二年A組の級長として君臨する桜井舞人の真の実力を舐めてもらっては困る。
貴様は俺のことをチェリーボーイだと決めつけているようだが、昨夜、私はダブル幼馴染の詩織ちゃん、
光ちゃんとそれぞれデートを果たして参りましたよ? 詩織ちゃんとは映画館に。見た映画は便所のモラリスト。
いやあ、汚い男便所で自称モラリストたちが繰り広げる熱い討論会は驚愕だったね。映画評論家の称号もさり気
なく持っている俺だけど、アレには流石にビビった。圧巻Qだった。詩織ちゃんは泡吹いて気絶してたから評価が
少し落ちたと思うけど、俺はキニシナイ。まあ、選んだ映画が失敗だった。それは認めよう。だけど、その失敗を次に生かす
のが桜井舞人です。そう、光ちゃんですよ。彼女とは夜の中央公園に行ったわけだよ。光ちゃんが好きだという
並木道を二人して歩いたワケです。あはんうふんな周りのカップルに流されることなく紳士を貫いた俺の姿に
ぐーんと評価アップ。おずおずと差し出された彼女の柔らかい手をしかと握ってしまったワケです。
どうだ、恐れ入ったか」
「そりゃあ俺が貸してるときどきメモリアルの話じゃねえか。ゲームじゃなくて現実の話をしてんだよ」
瞬時にバレたのはともかくとして、今日の山彦はどことなく必死だった。
朝の廊下には鞄を背負ったり手にしたりした生徒たちがそこかしこにいる。
俺の横にはまだ言い足りなさそうな山彦。
「適当に生きるな、じゃなかったのか?」
挙句には鬼浅間みたいなことを言い出した。どんな経緯でアレがクラス標語になったか知っているくせに。
「そう言うお前は好きなやついるのかよ」
「俺か?」
山彦は急に頬を叩かれたように目を見開いた。
352それは転がる賽目のように 02:03/09/09 05:01 ID:lbB4iNYj
「今のところ誰っていうのはないな」
「お前な・・・」
言葉通りに脱力した。ったく、コイツは。人には誰かを好きになるってのは損することじゃない、とか言っておきつつ
自分は好きなやつはいないだと?
「俺は恋愛を否定しているわけじゃなからいいの。色々と選別はするが恋愛そのものはカモンベイベだ」
「なーにが、カモンベイベだ。この年中発情男め」
ガラガラ―――――――、と教室のドアを開けた。
朝のショート5分前。その残り僅かな時間をお喋りに費やすクラスメイトどもが蠢いていた。
「オッス、さっくちおはよう!」
「おはよー」
八重樫が異様な元気の良さで、星崎はその半分くらいの元気で朝の挨拶をしてきた。
「・・・・・・・・・・・・・」
「どうしたのよ、ストレート待ちだったのに何の変哲もないスローボールが来て思わず見逃してしまった一番バッターみたいな顔して」
「貴様、何を企んでいる? いくら俺が桜坂の貴公子といえども、微妙に恥ずかしがり屋さんなので社交界にはデビュウしてやらんぞ。
無論、金もない。鐘も撞かない、じゃによって貴様のハデハデしいテンションにはついてゆけぬのだ」
「・・・さっくちも十分テンション高いじゃない」
「いえいえ八重樫さんには全く敵いませんことよ、オホホホホホホ―――――、ってそこツッコミ薄いよ、何やってんの!」
俺は八重樫ではなく傍観者を決め込もうとする星崎と山彦に向かって言った。
「・・・何だその薄ら笑いは」
「もー、微笑んでるって言ってよ」
「そうだぞ舞人、俺と星崎さんは温かく見守ってあげてるんだからそういうことを言わない」
ローテンションでハイな俺らについてこれないだけじゃないのか?
「ほらほら朝のショートの時間だ。席に着けー」
いつのまにか鬼浅間が教室の中に沸いて出ていた。
「分かってるって」
「桜井ー、何が分かってるんだー?」
ちっ、耳ざといやつめ。脳味噌は筋肉で出来ているんだからついでに耳もそうなってりゃいいものを。
「浅間先生が格好良いってことが、ですよー」
「そうかー、そんな見え透いた世辞はどうでもいいから、さっさと席に着かんか」
353それは転がる賽目のように 03:03/09/09 05:03 ID:lbB4iNYj
壇上から垂れ流される今日の伝達事項とやらを適当に聞き流していた。
早く終われ。いっそのこと寝てやり過ごすというのもいいかもしれん。
うーむ。
「――らい、―くらい、桜井聞いているのか」
「ええ、無論聞き耳を立てるがごとく真剣に聞いてますよ?」
「じゃあ頼んだぞ」
「ええ、桜坂の最終兵器たるこの私に任せてくれちゃっていいですよ?」
朝のショートは閉会の運びとなった。

「さくっち、聞いてなかったんならそう言ってよ」
声紋データ照合、うむ、少しテンションの高い八重樫だ。
「何が」
「や、だって浅間ちゃんが何を頼んできたのか分かってないでしょ」
「ぷじゃけるなよ、貴様のようなテイと一緒にしてもらっては困る。会話最速理論を開発した俺であれば、
理解せずとも返事をすることが可能。だからヤツが言ったことなんぞ理解せずとも良いのだ」
・・・あ、あれ? 微妙におかしいような・・・。
「まあいいけど。これでウチら今日の日直だよ」
「あ、んですとう! それはいかん、いかんじゃないかああ! 誰ですかそんなことを承認した不逞な輩は!」
「・・・・・・・」
八重樫の冷たい視線が目に脳に臓腑に突き刺さった。
「・・・ごめんなさい」
「ま、請けたのさくっちだから全部やってくれればそれでいいよ」
「くっ・・・貴様、見たまんまの酷薄さだな。疲れ果ててぐうの音も出ない憐れな子羊を慮ろうという
慈悲の心はないのか。これだから情の薄くなった現代っ子は。嫌だ嫌だ、ああ嫌だ」
354それは転がる賽目のように 04:03/09/09 05:07 ID:lbB4iNYj
「じゃあ他人を慮るさくっちよろしくね」
「いや、ほんと俺が悪かった。こうやって地べたに這い蹲るから、せめて半分づつくらいは・・・」
「や、私、酷薄らしいし」
黒板消しに日誌に昼休みのお茶取りにとそんな些事にかまけてセンチメンタルな青春を無駄にはしたくはない。
ここで八重樫を言いくるめられなければ自動的に俺は敗残者として一日中こき使われてしまう。何としてでもそれは避けなければ。
「あいや待たれい。貴様の欲深さ、倣岸さ、卑劣さは俺も十二分に認識しているところ。であるからして、
貴様が日直をすると言うのであれば、当方には給金を払う準備があるということよ」
机の上にキラリと光る一円硬貨を置いた。アルミの神々しい輝きが誰しもの胸を打ったに違いない。
曰く、いやー桜井君ってば超リッチー。曰く、何てブルジョワなやつなんだー。いやいや、それほどのことでは・・・。
「十円だそうか?」
むぐうっ。しまったヤツの父親が一流企業の管理職だということを忘れていた。
しかぁし、ここで引くわけにはいかぬ!
俺は財布から真新しい十円硬貨を取り出し、一円硬貨の横に叩きつけた。
「じゃあ百円」
むぎー。金を金とも思わぬブルジョワジーめ、有産階級め。貴様が偉いのではないぞ! 俺だって俺だってえー。見よ! この勇姿を!
・・・十円硬貨が二枚、五円硬貨が一枚、一円硬貨が三枚しか残ってなかった。
「くそうこのブルちゃんめ、己が無尽蔵だからといって金で勝負するなどと。それでは赤貧な俺が完全に不利ではないか」
「言い出したのさくっちでしょうに。じゃあ何ならいいわけ? 勉強? 運動? ゲーム? 何でもいいけど私は手加減しないから」
「うううううう」
「唸ってないで早く」
「・・・ギャンブル」
口にした途端それが最善の手のように思われた。これなら下手な小細工が介在しない限り五分と五分。他で勝負するより幾分かマシに違いない・・・。
「ギャンブル? ポーカーとか?」
「まあ何でも。スタート時点で互いが五分五分になってるものなら」
「ふう、それじゃ、これでいこっか。・・・あ、待って。賭けの景品を勝った方が負けた方に一つだけ命令できる、ってのはどう?」
「後悔、するなよ?」
「挑戦、と受け取るわ。その言葉」
355それは転がる賽目のように 05:03/09/09 05:22 ID:lbB4iNYj
八重樫が髪に手をやったかと思うと、その手にはサイコロが二つ握られていた。
転がして、
「丁か半か」
口元に余裕を持たして微笑う。
「よかろう――。本場ラスベガスは元より香港やマカオでもその名を轟かせたゲヘナのギャンブラー
桜井舞人の右腕しかとその眼に刻むが良い」
「や、サイコロ振るの私だから」
「ふん、それくらいは貴様にくれてやろうではないか」
「じゃあ――ってそろそろ一時間目か、続きは昼休みにでも」
そういや、
「昨日帰る前に今日の一時間目の現国は休みだとか言ってプリントを運ばされたんだが・・・。教卓の中に入ってるやつ」
やはり俺はいいことしか言わないらしい。教卓の中から最近の範囲である伊豆の踊り子に関しての問題プリントが発見されるや
教室は興奮の坩堝と化した。
曰く、英雄――。
曰く、覇者――。
曰く、皇帝――。
曰く、神―――。
俺が手を虚空に突き上げるとそれに拍手喝采を送る一般人ども。未来永劫までも傅かんとするそれらを退ける。
目の前に座った八重樫の眼に炎が宿り、その横ではどういう流れか、山彦が胴元になっての賭けが始まった。
まあ、山彦は無視して、
「さあ! 来い!」
そう叫んだ俺もどうやら相当にテンションが上がっているらしい。
一つの間を置いてから無言で頷いた八重樫が両手を振りかざして――――――、
「な、何の騒ぎ?」
――――――大学卒業して三年目の若い女性現国教師が入ってきた。
356それは転がる賽目のように 06:03/09/09 05:26 ID:lbB4iNYj
「・・・どゆこと?」
サイコロが入ったカップを振り上げた手を下ろそうともせず直立不動の八重樫が俺に疑惑の視線を送ってきた。
否、疑惑どころではあるまい。八重樫の中で俺は既に英雄からA級戦犯に成り下がっているに違いない。
突きつけられる殺意の波動。
視線が言う。我、怒り頂点なり――――――――。
教室全体にも不穏なオーラが広がって、よってたかって攻め立てるように俺を睨めつけてくる。
おまえはみにくいアヒルの子なんだよ! そう声高に罵られるくらいに居心地が悪い。
「・・・ひょっとして、浅間ちゃんからのを簡単に請けたのもこの為だった?」
「ばっ・・・んなわけないだろ。俺は他人からの頼みなんてほっ放りだして三十六計逃げるが勝ちな男ですよ?
何が悲しくて鬼浅間の言うことなんぞ聞かなくちゃいかんのだ。その上、プリントをせっせと刷るだなんて
面倒くさいこと俺がやるとお思いですか?」
「前にもこんなことがあったような気がするんだけど」
前にも・・・? ああ、あの雨ダッシュのことか。ちぃっ、根に持ってやがるな。
俺はその詰問には直接答えず、
「先生、昨日休みって言ってませんでしたか?」
この疑獄から脱出するために女教師を問いただした。
「ご、ごめんなさい。先生ったら出張の日程を間違えちゃってて・・・。てへっ」
ふふん、どうだ嘘をついていたわけではあるまい、と周囲を見渡したが、何だか俺が悪いという雰囲気は収まっていなかった。
何で?
「勝負は放課後に持ち越しね」
八重樫は目線を伏せた。
「ところで、さっきサイコロみたいなの――」
女教師の声を遮るように、
「何か見たんですか?」
にっこりと微笑んだ八重樫が猫撫声を出した。
「い、いええええ、何も見てないですううー。サイコロなんて見てないですうううーー」
女教師は泣きながら引き下がった。可哀相に。トラとウマという贈り物までもらってしまったようだ。
げに恐ろしきは八重樫つばさ。全く、強(こわ)い女だ。
357それは転がる賽目のように 07:03/09/09 05:28 ID:lbB4iNYj
して、放課後。
タイムアウトにて持ち越された勝負は体育館を借り切った一大イヴェントに化けていた。何故か。
八重樫も少し唖然としている。
体育館の中は元より一層上のギャラリーまで、どこから沸いたのか、人がわんさかといた。
「暇人どもめ」
「ウチら完全に餌だね」
フローリングの中央にはスペースが設けられていて、そこには見知った顔。
星崎と山彦がいた。
「何だよ、この騒ぎは」
「いやあ、休み時間を経るごとに話が一人歩きしたみたいでさ」
「良くこんなとこ借りれたわね」
「今日は体育館使ってるクラブが出払ってるの。対外試合なんだって」
話が上手すぎる。俺の危機察知レーダーは全力回避を推奨していたが、
このアマと決着をつけないわけにはいかない。
「グラウンドではサッカー部が本番前の試合をしてて教職員は全部、生徒は半分が見に行ってる。あっちを表開催だとすれば
さしずめこっちは裏開催。負けんなよ、舞人」
時間が経つにつれて大きくなる規模に中てられたのか、山彦が訳のわからないことを言う。
大体、何に負けんなって言ったのやら。サッカー部にか? それとも――――――。
「さあ、そろそろやりますか」
衆目を一身に集めているというのに怯む気配を露ほどにも感じさせない普段通りの調子で八重樫はサイコロを弄んでいる。
可愛げのないヤツだ。
いつでもいいぞ、と俺が言いかけたその時、
358それは転がる賽目のように 08:03/09/09 05:30 ID:lbB4iNYj
「さっきは言い忘れてたんだけど、さくっち、ルール知ってる?」
「失礼なヤツだな、俺は高名なギャンブラーだと言っておるだろうが。サイコロ転がし遊びのルールなど、とうの昔に熟知しておるわ」
「ゾロ目も?」
「無論だ」
「後で知らなかったー、何て言わないでね」
その表情が俺の胸を叩き、警鐘を掻き鳴らした。聞いておいた方がいいんじゃないか、いやいやあのアマに教えを乞うなどと
そういう無様な姿は曝せませんことよ。
「・・・一応聞いておいてやらぬでもないぞ」
「や、聞きたくないならそれで構わないし」
「教えてください」
八重樫はオーバーにため息をついた。
「いい? サイコロが同じ数が出ればゾロ目。半、丁が当たってもゾロ目が出れば親の勝ちだからね。そこのとこ宜しく」
「いやもう良いも悪いもツッコむ気力すら残ってないのだが。つーか、ゾロ目で親の勝ちともなれば、えーとえーと」
「ゾロ目が出る確率は16.7%ほど」
「その16.7%が名目上の50%に上乗せされて66.7%、つまり三回に二回はお前が勝つということになるではないか」
「さくっちがゾロ目を予想すればいいのよ。子がゾロ目を予想して、見事に的中すれば、子の勝ち。五分でしょ?」
そう、か? なーんか騙されている気がするぞ。そもそも八重樫の不敵な笑みの正体は何だ。あやつ最早勝ったかのような貌をしているが、
その根拠のない筈の自信はどこから来る? 本来は五分五分であろうこの波瀾万丈銀河万丈な勝負はヤツの胸三寸なのでは・・・。
「どこ見てるのよ、スケベ」
「別にお前の薄くもでかくもない極めてフツーサイズの乳に興味はない」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
359それは転がる賽目のように 09:03/09/09 05:31 ID:lbB4iNYj
「実際にどれくらいの確率でゾロ目が出るのか知りたいので十回くらい振ってくれ」
「ま、いいわよ」
ありゃ? 何かあっさりだな。また文句でも言ってくると思ったのだが・・・。
「じゃ一回目」
八重樫が手を振り上げ、サイコロをカップに放り投げて、床に落とす。
意外とカッチョイイではないか。無論、八重樫ではなくその動作が。
サイコロの目は――――、
「四−六の丁。まずは四−六の丁が出ましたー」
山彦がどこから持ってきたのかマイク実況をおっ始めやがった。それに乗る観衆。うるせー。ちと黙れ。
「五月蝿い! 黙らんかあ! って怒鳴ったら?」
「小心者なぽっくんにはそんなこと言えましぇえん」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
八重樫は無言で二投目を開始した。
以下、丁、丁、丁、丁、半、半、半、半(ゾロ目)、半、と五回ずつ綺麗に丁半が分かれて出た。ゾロ目は一回。
「つーか、いくら何でも綺麗に分かれすぎだろ」
「言っとくけど種も仕掛けもないよ」
「嘘だ、ブラフだ、捏造だ、誇大広告だー。ジャロに訴えるじゃろ」
「・・・・・・」
「さあー、つまらないギャグで八重樫選手を中傷する桜井選手。これは本当に酷い」
山彦の実況に合わせるように場内総ブーイング。
何でだよ、時代の最先端じゃないか。全く、いつの時代も天才は理解されないものなのだな・・・。
360それは転がる賽目のように 10:03/09/09 05:34 ID:lbB4iNYj
「そろそろこの長丁場に決着つけたいんだけど」
八重樫のテンションは黄色までずり下がっているようだった。
対する俺は桃色ピンクでやる気十分。パワーもいつもより+15。この勝負もらったな。
「さあ、来るがよいっ!」
RPGのラスボスのように声を張り上げ、刹那の勝負、その号砲とした。

八重樫はその双眸を力強く見開き、右手を逆袈裟に切り上げ、左手を垂直に持ち上げた。
俺と八重樫との間に存在する空間は捻れて拉げて鳴動し、ヒュンヒュンという風切り音が耳に届く。
次第に場は極彩色の蜃気楼に覆われ、室内だというのに雨の日の午後がごとく光が乏しくなってくる。
女とは思えぬ咆哮を上げて、地面にカップを叩きつける八重樫。
視覚でソレを認識した直後、閉ざされていた聴覚が解放されたかのように轟音が鳴り響く。
「さあ!」
丁か半かと迫られる。
丁か? 半か? 分からない。
今回ばかりは最新鋭のスーパーコンピューターMAITOを駆使しても分からなかった。新型のニューロチップも役に立たない。
目の前には哄う八重樫。被害妄想かもしれんが。どちらにせよ負けられん。俺に敗北の二文字はない!
「ち、丁・・・いや、半だ!・・・いやちょい待ち」
「もー、何? 早く」
急かされてもだな、こういう男の一大事はじっくり考えてこそだな。よ、良し。
「ぴ」
「ぴ?」
「ぴぴるぴるる〜」
場内からため息が漏れる。決まる瞬間まで実況を控えているらしい山彦、その横の星崎も同様にため息を漏らした。
361それは転がる賽目のように 11:03/09/09 05:36 ID:lbB4iNYj
分かりましたよ、言いましょう!
「ゾロ目。しかもピンゾロ」(ファ!っていう効果音)
その宣言を受けて八重樫がカップを少しづつ持ち上げる。
サイコロに光が差し込み――――――、
赤い丸が――――――、
――――――二つ。
「うおっしゃあああああああああああ!」
「あーあ、負けかー」
「何と勝ったのは桜井選手! このありえない展開に場内は総ブーイング。み、皆さん落ち着いてください!
腹立たしいのは分かりますが、物は投げないで下さい! 大変危険です! 物を投げるのは勘弁してやってください!」
ふふん、何とでもほざけ。勝者はこの俺。その結果は揺るがんのだ。
そして、結局は日直の仕事を全部俺に押し付けてきた八重樫のヤツに罰を下さなければなるまい。
例えば、晴れの日に雨合羽を着て登校させるとか、水着を着て一日の授業を受けさせるとか、語尾ににょをつけて喋らせるとか、
俺を呼ぶときは様を付けさせるとか、夏の暑い日は団扇で扇いでもらうとか、エトセトラエトセトラ。
それはもうありとあらゆる恥辱の限りを尽くして俺に刃向かったことを心底後悔するように蹂躙してくれる!
さて、まずは命令を百個に増やして、と・・・。
「さくっちー」
びっくうううううううううう――――――。
怖気が体中を走った。何ですか今の声は。常世からの呼び声ですか。ありえない。気持ち悪い。勘弁して下さい。
八重樫の甘えた声なぞ、一般人の俺には耐えれるものではないですよ?
しかも、手を二つとも襟元に持ってきて小首を傾げるその仕草。
362それは転がる賽目のように 12:03/09/09 05:39 ID:lbB4iNYj
「ちょっと待て、貴様、気でも触れたか。おおい星崎、急げ救急車だ! 黄色いやつ! 意識飛んでる、
混濁してる。急げってば早くっ」
「だいじょうぶだよ。さくっちー」
俺は必死に八重樫の身体を揺すった。八重樫が八重樫が。壊れてしまった。俺のせいか、俺のせいなのか。
潤んだ瞳に紅潮した頬。少し開いた口唇は艶やかに濡れて、甘い吐息を耳に吹きかけてくる。
こんなの八重樫じゃない。
「さくっちー」
しな垂れかかってくる体。衆目を浴びているというのにこの馬鹿者め。理性を取り戻せっ。
「八重樫、いつものお前に戻ってくれよ、ほら、いつものどこか冷めた八重樫にさあ」
頼むから。お願いだから。心から祈るから。
「だから――――――」
「了解」
そして、チョップが飛んできた。
「命令受けたから。貸し借りなしだからね」
はい? まーた騙されてましたか? 俺は。
「てゆーか、舞人。今のは引っ掛かりすぎ。俺はお前までグルなのかと思ってた」
「うーん、八重ちゃんよりさくっちの方がよっぽど怖かったな」
勝手な感想ありがとう。
363それは転がる賽目のように 13:03/09/09 05:42 ID:lbB4iNYj
閉会後。
多分、意味もなく。
また髪の中にサイコロを戻した八重樫の横で。
茜色の陽光が射し込むグラウンドを眺めて。
「あれくらいの演技、恥ずかしくも何ともないよ」
「俺は恥ずかしかったのだが」
「何で?」
「そういうもんなの」
「ふーん」
八重樫が寝そべり、折り良く風が吹いて、小汚いパンツが目に入った。
それを直しながら、
「これは恥ずかしいなあ。二回目だっけ?」
前回ほどの動揺は見受けられないけれど。
「水色の縞か」
「・・・だから?」
「何となくだ。いちいち気にするな」
「あんなハリの効いたイヴェントの後だというのに、ウチらこんなんばっかだね」
「八重樫らしくないセリフだな」
「まーねー。微妙にセンチメンタルかな」
「でも、どうせ今だけだろ?」
「当然」
短い会話の交換。いずれ魔法は終わる。
その時までは、祭りのあとのこの気だるさを。俺たちに。
そう思った。
364松波:03/09/09 05:54 ID:lbB4iNYj

>>351-363

「それは舞い散る桜のように」より。
八重樫つばさをメインに。
当初は「や、私、今日生理だから」と言わせるSSを考えて
いましたが、再プレイ中に本編で使用されていることを
発見したので路線変更。まあアレということで。
ニンともカンとも。

365名無しさん@初回限定:03/09/09 05:57 ID:M94oih11
>>364
乙です。
あまり見かけない八重樫SS、楽しませてもらいました。
366349:03/09/09 22:12 ID:92P0vm6V
>>松波氏
つばさらしい飄々とした流れのSSで、一気に読んでしまった。
自分は細かいことは気にせず、勢いで読むタイプなので、
こういうSSはとても読みやすい。次回作も期待してる。
367名無しさん@初回限定:03/09/10 19:34 ID:LwExi4aj
>>364
乙です。
八重樫SSあまり見ませんが面白かったです。
368あぼーん:あぼーん
あぼーん
369名無しさん@初回限定:03/09/10 20:41 ID:AklFsjou
普通の批評ってアリか?
多分指摘だらけになると思うけど。
370名無しさん@初回限定:03/09/10 21:41 ID:P2PPj3NH
>369
荒れない程度に言葉を選んで、
「普通」の批評が出来るなら何の問題も無いと思われ。
371名無しさん@初回限定:03/09/10 23:05 ID:AklFsjou
・それは転がる賽目のように
とりあえず文章作法の習得を。
ぱっと見た感じで指摘すれば、行頭一字空け・感嘆符の後の一マス空け・三点リーダの使い方。
これらは覚えておいて損はないので、一度小説系サイトを巡ってみることをお勧めする。
内容についてだが……全体的に冗長。
とにかく本題に入るまでが長い。要点だけをつまみ出せとは言わないが、会話部分を見直せば今の半分程度に収められるはず。
それとは逆に、このSSの肝である賽の目勝負。短い。
しかもそのほとんどがルール説明に費やされており、勝敗は単なる偶然と言うあっけなさ。
これでは少し、納得し難い。
舞人が何らかの策を用い、勝利を手にする。はたまたその企みが露見し、つばさに敗れる。
いくらでも盛り上げようはあっただけに、この調理法方は少し、残念だ。

各キャラクターの特徴は上手く掴めていたと思う。


こんな感じの奴は不味いかい?
372370:03/09/10 23:29 ID:P2PPj3NH
>こんな感じの奴は不味いかい?
問題ないかと。
…すまん、世の中には変な人格非難付のアレな批判をするヤシもいるので>370では厳しく書きますた。

(まず無いと思うが)SSの投下が無いときはdat落ち回避にもなるので
荒れない程度に批評するのも良いかもね。
373名無しさん@初回限定:03/09/10 23:46 ID:x4tEZsVk
>371
割と自然な反応だと思う。
まぁストーリーの山場からオチまでがやけに短いのは本編譲りということで…駄目?w
つーか漏れは八重樫がザマするもんとばっかり思ってた。いや、したのか?
そのへんずーっと深読みしてる最中です。もなかです。
374名無しさん@初回限定:03/09/11 08:23 ID:Bmhmdkr+
>371
あれ偶然なのか?
俺はてっきりつばさが、賽の目操作してやったんだと思ったが…
375名無しさん@初回限定:03/09/11 09:01 ID:3tkIVX5O
文章作法というと鏡裕之を思い出す。
>371氏はヤツと比べれば非常に柔らかい言い方でナイス。
ヤツは形式に拘るゆえかは知らんが、
エロ文までが定型化していて、
違うゲームなのにデジャブ感じるくらい同じようなエッチシーンだったりする。
形式は覚えりゃいい話しだが、才能はどうにもならないという話。
376名無しさん@初回限定:03/09/11 18:56 ID:Ete/AFro
意外とそれ散るって需要かなり高いよな。
それとも供給が少ないからそう見えるだけか?
探ってもあんまり出てこないし・・・
377名無しさん@初回限定:03/09/11 19:02 ID:du/tajUY
今需要が高いのはなあに?
378名無しさん@初回限定:03/09/11 21:36 ID:An99uJzX
>行頭一字空け・感嘆符の後の一マス空け・三点リーダの使い方

最後三点リーダが原則二つセットってのは良いと思うが
感嘆符の後は一応スペース空いてないか?
ちょっとテスト「!あ」と「! あ」と「!  あ」

それと行頭1字空けはネット小説だと基本的に毎回文末で改行、行頭空け無しってのも多いと思うけど。
漏れもネット上で掲載する時は、よほど短い文でなければ
文末で改行、行頭空け無しで書いてる。
印刷前提の時はもちろんこの3つは守って書くけど。
379名無しさん@初回限定:03/09/11 23:35 ID:eSW9aUy7
まあ人それぞれやね。
突っ込まれたくなかったら合わせといたらええし、何らかのポリシーを
もってるんやったらそのままいきゃあいいし。
でもな、坊ちゃん。脚本形式だけは止めといたほうがええ。
あれはな、嫌ってる人がものごっつう多いんや。
それだけで読むのんやめるっちゅー人もおるさかい、避けとくんが一番やで。
あ、脚本形式っちゅーんは、

孝之「おうち焼けてしもたん?」

こんな感じのやつや。別名ト書きともゆうわな。
380名無しさん@初回限定:03/09/11 23:46 ID:Fa7QPz4h
ネットならではの読み易さ配慮ってのもいると思う。
たとえば個人的には、大体7〜8行以上改行がない文章だと見る気が起きなくなる。
381松波:03/09/12 01:00 ID:/4NfhRvw
>365-367
ご感想ありがとうございます。
つばさちん。カラっとした達観キャラで、時には無駄に熱い、いい娘さんですね。
SSは少ないのなら何故でしょうか。ひょっとして人気な(ry

>普通の批評ってアリか? 多分指摘だらけになると思うけど。
私にでしたら、大歓迎です。

>行頭一字空け・感嘆符の後の一マス空け・三点リーダの使い方。
三点リーダの使い方は分かっていないです。
その他の指摘は賽の上に投稿したSSを見てもらえれば、ご了解いただけるかと思いますが、いかがでしょう。

>全体的に冗長。
自分でもそう思います。その点は反省しきりです。

>このSSの肝である賽の目勝負。短い。勝敗は単なる偶然と言うあっけなさ。
この点もおっしゃる通りです。集中力が切れてロクな展開が思い浮かびませんでした。
半でゾロ目などと、この上なくありえないことを書いてますし。

>373 ,374
滑稽にも自分から手の内を明かすと、八重樫は自分で出目をだすことができるという設定。
確率的に最も低いゾロ目の話を直前に振ることで・・・、という風に考えてました。


それでは、出直し、・・・・・・エラー! その文句は使用済です!
・・・・・・精神と時の部屋(小説系サイト)にでも逝ってきます。
382名無しさん@初回限定:03/09/12 01:05 ID:LSA7+WbX
律儀な松波タソ萌え〜
383名無しさん@初回限定:03/09/12 01:21 ID:7ziCmch4
>>381
とりあえず、三点リーダは「…」を推奨。「・」を3つではなく
「・」は単語を区切る時とか名字と名前の間とかに使うのが良いかと
あと、出版される本は基本的に「……」で使ってる。長くするときも2の倍数個
でもまあ、これは趣味でやる分にはあまり拘らなくとも良いかも
384名無しさん@初回限定:03/09/12 04:56 ID:vfhLHUDS
行頭一字空けは各レスの最初に一字空けるのとはまた違うと思うんだが……。
いや、一段落につき1レス使うという形式ならそれでもいいが。
「」に囲まれた台詞部分まで下げてるのは初めて見る形式だ。
385名無しさん@初回限定:03/09/12 08:47 ID:78hNGvmk
>>383
三点リーダはエロゲ本編でも「・・・」が結構多いからなあ。
386名無しさん@初回限定:03/09/12 12:02 ID:Xg1ypa38
何時から此処は文法を学ぶ国語スレになったのでしょう?
387名無しさん@初回限定:03/09/12 12:24 ID:riU1bRtZ
>385
元のエロゲが「・・・・」だったのでそのようにした、てのはあるなあ
だから「…」と「・・・・」が混在した文に
388名無しさん@初回限定:03/09/12 18:14 ID:RLLmR58d
ところでそれはむしろ「...。」と書くべきなのではなかろうか、と言ってみる
本来は「....」だよね?もしかして勘違い?
389名無しさん@初回限定:03/09/12 23:49 ID:li718cMt
シナリオライターは難しい漢字使わないで!
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1053273281/

このスレあたりでやったら?<文法の話
390名無しさん@初回限定:03/09/13 06:52 ID:CO3k85yu
文章の書き方の話になると案の定指摘レス連発になるな。
内容以外の指摘はやっぱ最小限にしとくべきだな。
文章の書き方と言うと、葉の掲示板で超先生が講座みたいなのやってたのを思い出すなぁ
まさかあの時はRRに達するとは思いもしなかったけど。
392名無しさん@初回限定:03/09/14 11:21 ID:iYQud5L7
媒体が違うし、印刷物の規則を頭でっかちに守る必要はなかろう。
「その書き方見づらい」とかならいいが、講釈たれるのはスレ違いになるかと。
393名無しさん@初回限定:03/09/14 12:02 ID:JY51rjGR
エロゲの二次創作っつーとやっぱりエロがあった方が人気が出るんかな?
その辺に氾濫しているストーリーも何もないただ犯ってるだけの話より、
キャラに愛着が感じられるほのぼの系統の方が好きなんだが……
394名無しさん@初回限定:03/09/14 14:02 ID:e/Qg47Qc
>>393
同意、
むしろ本編で見られないような日常を掘り下げていくような、
マッタリした話が(あくまで個人的に)好み。
395名無しさん@初回限定:03/09/14 19:34 ID:VUEraG66
>>393
人それぞれだとは思うが、ぶっちゃけ原作者じゃない素人の物だし、
中途半端は嫌かな、個人的には。
エロなら徹底的に抜き重視、非エロなら一切無くても構わない。
396名無しさん@初回限定:03/09/14 19:35 ID:QdJxi8my
そのキャラの性格や行動や背景を性格に把握した人が、本編とは別の切り口や状況でそのキャラを動かしてくれるなら、私はエロであろうと非エロであろうと気にしないです。
397名無しさん@初回限定:03/09/14 23:30 ID:DCVgYQAH
>そのキャラの性格や行動や背景を性格に把握した人が〜
自分はまともなエロSSは投下した(書いた)ことは無いが、
人物の名前を代えても大丈夫なエロSSは書けると思う。
しかし、人物をちゃんと把握し、
その人物でなくては成り立たないようなエロSSを書くのは難しいな…。

…まぁ、ただ単に自分の力量不足なだけと言ってしまえばそこまでなんだがw
398名無しさん@初回限定:03/09/14 23:47 ID:4dvTdoyX
俺はR8icUV3K氏のような未来につながっていく話が好きだなぁ……

話の流れを無視してスマソ
保守

だけではつまらないのでSS書いている人にエロ描写に対するスタンスとか
聞いてみたいなぁ。

とりあえず、質問者自身としては、ストーリーにエロがはまった瞬間がたまらなく
(・∀・)イイ ので、エロは積極的に使いたいと思うわけですが。

 まあ、ヒマなら答えてくださいな。
400名無しさん@初回限定:03/09/18 16:41 ID:7oSBNsUQ
前スレで書かれた「愛なんていらねえよ、秋」みたいなのが一番好き。
こうやってキャラの特性を壊さず生かして動かすって言うのは基本だけど難しいと思う。
個人的にそれ散るでは八重樫もお気に入りなので全体的に>>351-363のようにもっと絡んできて欲しい。
401名無しさん@初回限定:03/09/19 23:28 ID:HhBhuivz
寂れ杉。人少な杉。やる気なさ杉。
かく言う自分も書く気は全くなかったりするわけだが。
402名無しさん@初回限定:03/09/20 01:25 ID:KGpNN7Nq
ト書きでよければ今すぐにでも書けない事も無い事も無いが、
ト書き嫌われるらしいし…
普通の話にでっち上げてるとこです。
403名無しさん@初回限定:03/09/20 16:32 ID:nqpPHNHH
透過タン以上に栗らしいライターなんて存在しません!
404名無しさん@初回限定:03/09/20 16:35 ID:nqpPHNHH
↑は誤爆だ…
405名無しさん@初回限定:03/09/20 19:36 ID:DxG6QFe+
>>207-208
このSSは一体。感動した。

広告貼り付けている奴が薄幸の美少女なら、
こうも見方が変わる物なのか?
こんな自分が嫌いになった。(でも自殺しない)

広告貼り付けアルバイトの給料は不明だが、どうせ、少額だろう。
インターネット接続料+二昔前のパソコン電気代を考慮すると
赤字になっているのでは? 妙なところで心配になる。
406名無しさん@初回限定:03/09/20 21:30 ID:crcKh4PH
407名無しさん@初回限定:03/09/20 21:50 ID:crcKh4PH
あって何だよ、自分。

侘びがてらに適当に盛り上がる方法を考えてみた。

1.5レスぐらい限定でリレーをやってみる
2.お題と期間を決めて募集してみる(ゲームは自由)
3.雑談しつつ気長に待つ

SS書きって何らかの理由がないとなかなか執筆に取りかからない物だからなー
俺もこんぺとかでないと全く書かないし。
ついつい他の用事を優先しちゃうのよ。ゲームとか。
408名無しさん@初回限定:03/09/20 23:26 ID:bpAuneGH
SSかぁ……。
よくよく考えてみると、書かなくなって数年経過しているような気が。
大昔は、『鬼畜王ランス』という太古のゲームのSSを量産していたものですが。

どなたか投稿していただけませんか?<『鬼畜王ランス』SS
409名無しさん@初回限定:03/09/20 23:33 ID:bpAuneGH
投稿じゃなくて書き込みですね。
……大丈夫か<私

おわびに何かSSをでっちあげ……ようにも、最近はSSが書けるほどやりこんだエロゲーがないんですよね……はぁ。
410名無しさん@初回限定:03/09/21 01:29 ID:AuitTqGj
SSは無理せず、書きたいときに書くのが一番だと思うよ。
好きで始めた創作活動。誰かに強制されて執筆するのは、本末転倒だろうから。
もっとも、自分のサイトを持っている人はそうもいかないだろうけど。

ところで>>408は中日ファンの人かな?
違ってたらスマソ
411408:03/09/21 11:22 ID:TMx2TTCy
私は最初期にSSを書いていたうちの一人で、主人公の娘萌え(not父子相姦)のひとです。
ちなみに創作は好きではじめたのですが、いつの間にかそれが飯の種のひとつになってたりします……。
412名無しさん@初回限定:03/09/21 21:38 ID:uuL210rm
リセットの中の人ハケーン
書き手は少ないけどROM人口は葱板屈指のような悪寒
413名無しさん@初回限定:03/09/21 23:18 ID:II5NLM0E
この寂れっぷりの良さが分からないと!君らは!
414名無しさん@初回限定:03/09/21 23:22 ID:Ga6AalC/
廃れゆくスレに咲く、一輪の百合のようなSSをきぼーん。
‥‥漏れのつたない文じゃ、汚れ役になるのが精一杯だし。(´・ω・`)
415名無しさん@初回限定:03/09/21 23:25 ID:w6LnhkxG
枯れ木も山の賑わいですぞ
最近の傾向として、連載ものが減って一回完結(ちょい長め)の作品が増えているような
気がします。
 とりあえず、保管サイトにまとめるわけですし、3〜4レス程度の分量で出来た先から
投稿。というのもやってみていただけると活気づくのではないかと思う次第。

割とROM率は高いんだよなぁ。結構反応とかもすぐあるし
417名無しさん@初回限定:03/09/22 18:42 ID:/qwQNi1/
板およびスレ違いを承知でのお願いなのですが、
職人さんのどなたか、『水月』のアリスをネタにSSを書いて、
25日の投票所「優勝者トーナメント」にUPしてもらえないでしょうか……。
相手が惣流アスカということで、勝ち目はないんですけどね。
418名無しさん@初回限定:03/09/23 00:38 ID:DnlLzE4Z
トーナメント系では文字より絵のほうが効果的だぞ。
半角とかの絵師に応援要請してみたらどうだ?
419名無しさん@初回限定:03/09/23 02:09 ID:S8i9did4
>管理人さん

上の葉鍵SSですが、ネギ板でスレ内で葉鍵ゲーを
ネタにすることはNGじゃないですよ。
葉鍵ネタ専用スレを立てるのが駄目なだけで。
ネタスレ内で葉鍵ネタをやったり、
情報スレやおすすめゲーの質問に葉鍵ゲーの名前を出して説明したり。
全エロゲーのなかのひとつって扱いですね。
こんなスレもあるし。
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1008500853/
420名無しさん@初回限定:03/09/23 07:03 ID:MSo8AZGN
葉鍵に関しては板topの通り「葉鍵ネタ」に徹してネタ振りしたいのなら
葉鍵板にいくのが板の使い分け的に考えて自然じゃないのかな。

シチュありき、のスレに葉鍵キャラが紹介されるのとは優先順位が違うしね。
421名無しさん@初回限定:03/09/23 07:56 ID:GGK2k4Qr
とりあえず葉鍵板のss投稿スレを貼っておきます。
葉鍵ネタONLYならこっちの方が良いかと。


葉鍵的 SS コンペスレ 11
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1063900069/

気楽にSS その3
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1052917150/

俺はSS書けないが…
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1055520687/
422名無しさん@初回限定:03/09/23 13:26 ID:mcdRAZOW
訓練場で特訓した方がいいとは思うがな。
視点もブレまくってたし。
>>419
 とりあえず、保管サイトのスタンスとしては
「収録作品についてはローカルルールに従う。ただし、要望があるなら変更する」
と、いうつもりでいます。

 個人的には葉鍵SSに関しては収録しても問題は無いと思います。
(松波氏のSSについては、すぐにUPできる状態にはなっています)
 ただ、板違いである葉鍵SSの扱いに関しては住人ごとに意見があると思うので、
議論がされていない現状では「葉鍵オンリーのSSは収録しない」と判断しました。

 同様に、Type−Moon作品や、葉鍵の元スタッフの作品に関しても、
ローカルルール準拠。ただし要望によって変更。というつもりでいます。
 ご意見、ご要望がありましたらよろしくお願いします。
424名無しさん@初回限定:03/09/23 17:40 ID:/GERpB4h
>>419のスレも削除依頼かスレ移転願いしといたほうがいいかな?
425名無しさん@初回限定:03/09/24 08:34 ID:Dkfmw+fN
>424

そこまでする必要はないと思われ。
ほっとけばいいじゃん…。
426松波:03/09/24 15:59 ID:PV6cLOKy
 
 超遅レスですが、前回SSを書き込んだときに、ご意見を下さった皆様ありがとうございました。
 最近ちょこちょこと書いているSSの参考にさせていただいております。

 これまた遅レスですが、
>SS書いている人にエロ描写に対するスタンス
 私の場合はスタンス以前の問題で、自分でもダメだと分かるほどの
しょんぼりしたものしか書けません……。

 さて、件の葉鍵SSについては、葉鍵板にSSスレが存在する以上はそこに書き込む
ことが順当だろうと思います。
 しかし、ここに、例えばホアルバのSSを書き込めたらなあという気持ちがあるのも、
また事実であり、それが可能になれば嬉しいというのが率直な意見です。

 今回の件に関しましては、私が意見を書き込んでもいいものかと
迷いましたが、一意見として捉えていただければと思い、書き込むことに
いたしました。
 ご不快に思われた方がございましたら申し訳ありません。
427名無しさん@初回限定:03/09/24 21:13 ID:OO8aZc2l
や、無理してこちらに(葉鍵SSを)書き込む理由が良く判らないんだけど。
例えばエヴァのエロSSをここに貼り付けて、「18禁麻雀出してるだろうが!」と主張
しているのと同じ訳で。エヴァ板にカエレと。そう突っ込む訳ですよ。

こっちに書き込まないと親父さんが危篤状態に陥る等、それ相応の理由があるなら別ですが。
428アリスの憂鬱 01:03/09/25 16:32 ID:hUicpeYN

 目が覚めた。
 時計を見る。六時半前。
「うわ、もうこんな時間じゃない」
 慌てて躰を起こそうとして、思わず、くの字に折り曲がった。
「痛たたた」
 全身が筋肉痛にでもなったかのように痛く重く、節々は軽い熱を持っていた。
 でも、そんなのに構っている場合じゃない、
「マリア、早く起きな―――――――――――――――」
 硬直した。
 人間、心底驚いたときは声も上がらないものだってしみじみ思った。
 ベッドから左半分には透矢とマリアがお互い向き合って手を軽く握り合って眠っていた。
 天窓から射し込む朝陽がシーツの上で穏やかな表情を浮かべる二人を真っ白に照らして、とても幻想的な光景
に見える。
 
 マリアが少し首を傾いで透矢の手に顔をうずめるようにした。

「――――――――――――――」
 何故だろう、涙が出た。頬をゆっくりと落ちていく。これは何の涙なのだろう。
 二人が霞んで滲んで見えなくなる。
 鼻の奥がツンとなる。
「ティッシュティッシュ」
 自分でもムードないなあと思うのだけれどこればかりは仕方がない。どんなに綺麗な涙でも鼻洟は誘発されるもの。人間を
こんな風に創った神様が悪い。
 鼻をかみながら、今日くらいは朝のお祈りをサボらせてあげてもいいかな、なんて思ってマリアに目を向ける。
 その横の透矢が再度視界に入って、ようやっと、

「何で透矢がここにいるの」
 
 それに気づいた。
429アリスの憂鬱 02:03/09/25 16:33 ID:hUicpeYN
 理解するには相応の器が要る、理解できないものは存在していないのと同じことだ。
 透矢は最初からそこにいた。でも、私は透矢を視界に捕えても、起き抜けの茫洋たる意識にまかせて
その意味を理解しなかった。
 それと同じように、私と透矢とマリアは粒子の細かいタオルケットにくるまっていただけで、
何も身に付けていない状況であるということを、今まで理解していなかった。
「…………それって、つまり」
 顔から火が出た。
 夜中のことが脳裏にありありと再現される。私と、透矢と、マリアと、三人で…………さんにんで…………透矢に…………
お願いして…………。
「ううぅ―――」
 さっきまで自分が抱いていたであろうタオルケットを引っ被って、亀になる。
 丸くなっても、甦ってきた感覚が躰の上を這い回ってくる。収まれ、収まれ、収まれ。口唇に、首筋に、鎖骨に、乳房に、腹部に、
手に、下肢に、そして。
 
 三分ほど。丸くなったままで平静を取り戻そうと努力した結果、時計の針が動く音が聞こえるまでになったので、ベッドを這い出た。
 そこでまた、ぎょっとする。
 黒のワンピースと白のパンティがそれぞれ二つづつ床に転がっていた。夜中、している途中で皺にならないよう脱いだやつだ。
 それを避けるように大回りして、着替えを取り出して、部屋を出た。
 新しい服を抱えたまま、階段を駆け下りてお風呂場に飛び込んだ。
 熱いシャワーを十分に浴びて、教会へ向かう。
 
 祈りの場。
 マリア像の前に跪いて祈りを捧げる。
 神に祈ること、母の思い出を胸に抱くこと。寄り辺を得た私たちには、もう必要ないのかもしれない。それでも、
こうして祈りを捧げることは、無意味ではない。私たちは即物的な救済のみを仰望していたわけではないのだから。

「おねーちゃん、おはよう」
「お、はよう」
 家に戻ると、マリアが朝食の支度をしていた。黒いワンピースの上から白のエプロンを見につけて、いつも通りに
ちょこちょこと動き回る。
「…………マリア」
「うん、どうしたの?」
430アリスの憂鬱 03:03/09/25 16:34 ID:hUicpeYN
 無意識のうちに声に出していたらしい。マリアから返事があった。でも、続きは言えやしない。
 だから、代わりに別のことを、
「今日の朝食は何かしら」
「あのね、ご飯とね、お味噌汁とね、茄子の漬物とね、アジの開きとね、大根の千切りとね、あとねあとね」
 マリアは歌うように献立を披露する。
「おいしそうね」
 私は作りものの笑顔でそれに答える。
 何故、マリアは昨日の今日でこうも普段どおりの態度をとれるのだろう。昨日のアレはそんなにも普通だったのだろうか。確かに、
私とマリアは二人でそういう行為をしてきた過去がある。でも、透矢が混ざることで前とは全く違うことになってしまった。
 未知が既知になるということ。
 うろたえる私と平静を保つマリア。
 私は初めてマリアの後塵を拝したのかもしれない。

「―――ちゃーん、おねえちゃんってば」
「…………どうしたのよ」
 思わず目を伏せてしまった。
「そろそろ透矢さんを起こしてきてくれないかな」
「…………何で私が」
「もうすぐご飯が出来上がるから、三人で一緒に食べようと思って」
「マリアが起こしにいってくればいいじゃない。ここは私がやっておくから行ってきなさい」
「ご飯の支度は私がするからいいの。おねえちゃんは透矢さんのところに行ってきて」
 それなりに強い口調だった。最近のマリアは時にこういう風に強く出ることがある。それが誰の手によってもたらされたのかは
言うまでもない。
「今、行けば透矢に甘えられると思うけど?」
「…………それならおねえちゃんがどうぞ」
 これには返す言葉もなかった。マリアが痩せ我慢をしているのは見て取れるけど、まさか、ここまで突っぱねてくるなんて。

 結局、マリアに押し切られた形で私は階段を上っている。
 部屋の前まで来て、軽く扉を叩いてみたけれど、中から返事はない。
 とくん、とくん。胸の鼓動が全身に伝わってくる。
431アリスの憂鬱 04:03/09/25 16:35 ID:hUicpeYN
 透矢はまだ寝ていた。さっきから姿勢を変えていないのか、マリアが寝ていた方に躰を傾けている。
 私は窓側の、私が寝ていたところからベッドに上って、透矢の上に覆い被さるようにして顔を見た。ともすれば、私たちより
幼い寝顔がそこにある。
 胸が一層の早鐘を打つ。ドキドキドキドキドキ。自分の中の想いに絡め取られそうになる。

「おはよう、アリス」
 不意に透矢の声。勝手に躰が仰け反って、
「――――――わわっ」
 ベッドから落ちそうになり、ぎゅっと、力強く透矢に捕まえられて、その胸に飛び込んだ。
「ははっ、危なかったね」
 温かく心地よい胸の中。だけど、
「も、もう大丈夫だから、離して」
「あ、うん、ごめんね」
 私の背中に回されていた手の力が抜ける。
「透矢が謝る必要はないわ。寧ろ私がお礼を言わなければダメね、この場合」
「いや、僕が、びっくりさせてしまったみたいだから……」
 それを無視し、息を吸い込んで、
「助けてくれてありがとう、下でマリアが朝食の用意をして待っているわ。早く着替えて下りてきて」
 矢継早に用件を伝えると、私は身を翻して、部屋を出る。
「アリス」
 その背中に掛けられる声。
「おはよう」
「……おはよう」
 小さく、口の中で消えそうなほど小さく。
 私は返した。

 朝の食卓はそれなりに会話が弾んだ。
 マリアがコロコロと笑いながらあれこれと忙しく話し、それに透矢が相槌を入れる。二人が私にも話を
振ってくるので、会話自体には参加しているけれど、自分から話し出すことはなかった。
 私は、自分を御することもできないような幼子なのだろうか。
 二人が気に掛けてくれていることは痛いほど分かるのに、それに応えることができない。
 私は、弱くなったのだろうか。
432アリスの憂鬱 05:03/09/25 16:43 ID:hUicpeYN
 食後、お茶を飲んでゆっくりしている頃合。
「二人とも、いつくらいに僕の家に移るの?」
 透矢が切り出した。
「えーと、いつ頃からならいいですか?」
「僕はいつでもいいよ」
「本当ですか。なら明日にでも……」
「うん、分かった」
「……………………」
「おねえちゃんもそれでいいかな?」「アリスもそれでいいかい?」
 私の気にする二人の声が重なる。
 苦笑しながら、
「私もそれでいいわ」
 そう返した。

 お茶会のあと、透矢の家に移る準備として、私とマリアの身の回りのものを整理するために掃除をすることになった。
大きな荷物やすぐに必要にならないものはおいおい取りにくることにして、まずは日常的なものを移すことになった。

 私は一人縁側に出て洗濯物が上がってくるのを待っていた。
 各人それぞれ何をするかというくじ引きの結果、私は服やシーツやタオルケットを洗うことになり、
透矢とマリアは家の中の掃除をすることになった。それが終われば全員で教会の掃除を行い、持っていくものを
選ぶということになっている。
 ガウンガウンと洗濯機が立てる音に混じって、マリアの楽しそうな声が聞こえてくる。
 知らず知らずのうちにため息が出た。
「どうにもこうにも私らしくないわね」
 ピー、と脱水が終わった音を聞き届けると自分の中の澱を振り払うように立ち上がる。
 服や小物を先に干していき、最後に残ったシーツをふわっと浮かして物干し竿に引っ掛けた。
「上手いね、アリス」
 いつのまにか透矢が後ろに来ていた。
「まあね、ずっとやってきてるから」
「いい風」
 西からの風が柔らかく吹いた。庭先の草花がゆらゆらと揺れる。
433アリスの憂鬱 06:03/09/25 16:45 ID:hUicpeYN
「この天気なら洗濯物もすぐ乾くね」
「そうね」
 昼前の太陽はただひたすらに中空を目指して上っていく。

 夜。
「あのね、おねえちゃん……」
 日中の疲れをお風呂にて垢と一緒に流し、腰に手を当て牛乳を飲んでいると、
「今日ね、透矢さんとえっちすることになったんだけど…………」
「ブッ―――――ケホケホッ」
 マリアがとんでもないことを言い出した。
「……それ言い出したのって透矢?」
「ううん、私だけど……」
 軽い眩暈を覚えながらタオルで口元を拭う。
「……それで私にどうしろって言うの? 邪魔だから部屋を出て行け、とでも?」
 マリアはびっくりしたように首を振って、
「違うよぅ。私はおねえちゃんも一緒にどうかなって思って」
 私は近くにあった椅子にへたれこむように座った。
 俯いて、
「昨日の今日で良くする気になるわね。しかも三人一緒に……」
 昼過ぎには消えていた不安が胸の裡に甦った。力が抜けていく感覚。頭と節々がぼうっとしてくる。

「三人一緒に仲良くってダメかな?」
「昨日のは儀式に近いものだったし、あれだったけど、やっぱり私は三人でするっていうのは何か恥ずかしいわ……。
……マリアは恥ずかしくないの?」
「……私は別に。透矢さんとおねえちゃんだし」
 マリアは恥ずかしくない。私は恥ずかしい。
 マリアの透矢を、私を好きだという気持ち。私の透矢を、マリアを好きだという気持ち。それに
違いはない筈なのに。
434アリスの憂鬱 07:03/09/25 16:47 ID:hUicpeYN
 マリアが私の返事を待っている。
「私はいい。下の部屋で寝るから安心なさい」
「ダメだよぅ。おねえちゃんが嫌だって言うなら今日はしないから一緒に寝ようよ」
「でも、二人でするときは結局どちらかが席を外すことになるんだから、そんなこと言ってたらずっとできないわよ」
「三人ならいつも一緒にできるよ」
「あーのーねー。何でそういうことをさらっと言えるのよ、全く」
「ううぅ」
 すっかり気を落としたマリアを見て、少し気持ちが軽くなった。私がこだわっていることなんて何でもないのかもしれない。
「分かったわよ。三人でっていうのはやっぱりダメだけど、一緒のベッドで寝るくらいのことはしてあげるわ」
 気づいたらそんなことを言っていた。

 屋根裏部屋に上がると透矢が先に着ていた。
「あ、アリス」
「私は先に寝るから、安心してマリアを可愛がってあげて」
 私は黙殺するように透矢の横を通り過ぎてベッドに潜り込んだ。
 透矢のことは好き。大好き。私たちの力になってくれて、寄る辺になってくれて。勿論それだけじゃない。声や仕草に表情、
それらが作り出す瀬能透矢という人間そのものに、私は心を奪われている。透矢が何かをするたびにドキドキしてそれを見ている
自分がいる。でも、昨日のことで透矢にどう接すばいいのか分からなくなってしまった。傍にいるだけで恥ずかしい。視線を感じると
さらに恥ずかしくなる。
 胸が壊れそうになる。

 電燈が消えて、天窓から月明かりが射し込むだけになった。
 ベッドに重圧が掛かって軋む。
 シュッシュっていう衣擦れの音が聞こえる。その後は取り繕ったように声や音が聞こえなくなった。
 
 一時間、二時間、三時間。実際どれくらいの時間が過ぎているのかは分からないけれど、永遠のように感じる。
 ………………。
435アリスの憂鬱 08:03/09/25 16:49 ID:hUicpeYN
 何時間かが過ぎ、流石に今日はないかなって思い始めていると、不意に、

「んっ」

 マリアの声が聞こえた。
「ふう…っ…」
 声に続いて衣擦れの音が聞こえてくる。
「…んぷっちゅ…っと、透矢さぁん」
「マリアちゃん、もう少し声を下げて」
「は、はい」
 どんなに声を下げたところでこの距離では聞こえるに決まっているのに。透矢の馬鹿。
「っんう、っぱ…ちゅ…」
「くぅ、ちゅ…っ」
「…んんっゃ」
「ちゅ…ふむぅ、はぁ」
 ちゅぱちゅぱと水音が聞こえてくる。キス、なのだろうか。
「んくっ、ああぁ…やっ、ぁ……、も、もっと強くしてもいいですよぅ」
「うん」
「はあぁ、んふぅ…っぁぁはっ」
 ギシギシ、とベッドが軋む。
「やっ……ぁ……っはぁ、んん」
「っ…ぁ…っんぁ…ふぅ…」
「腰、浮かせて」
「こ、れでいい、っは、ですか?」
「うん」
 マリアに刺激を加える音が強くなって、
「んはあっぁぁん!」
 マリアが軽くイクときの声。ビクっとして、思わず、あの部分を守るように下肢に力を入れてしまった。
436アリスの憂鬱 09:03/09/25 16:52 ID:hUicpeYN
「んぅ―――――」
 辺りに漂い始めた甘い匂いに脳が痺れたのか、自分の手が意思とは関係なく服の上から胸に這い寄る。触れる。
先っぽが固くなっているのは分かるけれど、触れてみると実感としてそれが胸に響く。
 今度は直に手を差し入れて胸をまさぐる。上げそうになる声を殺す。
「っはぁぁ……っんぁ」
 耳にネトつくマリアの声。
「やっ、ぁっぁあ…ん」
 二人が絡む空気が伝わるほどに自分の芯が熱くなっていく。我慢、できなくなる。

 もうどこからが自分の意思でどこからがそうでないのか、分からない。
 おしりから背筋を駆け上げって脳に響く甘さの前に、半ば自分の意思で、胸をまさぐり、臍を撫でて下半身へと手を伸ばす。
 
 ふと、
 透矢の愛撫に喘ぐマリアの声やベッドが軋む音、シーツが擦れる音が聞こえなくなっていることに気づいた。
 
 それを気にしながら、手が全体を覆うようにして軽く触れた。
 ちゅくという水音。ぬるぬるとした感触。
「……っ…………っ……」
 頭から被っているタオルケットを噛んで声を何とか抑える。
 透矢とマリアの様子を探るのに背中の全神経を向けるけれど、何の情報も得られない。
 何故、二人の声や音が聞こえなくなったのだろう。不安が増大する。
 さっきまでならともかく、音が消えてしまったこの空間では、軽く声を上げるだけで何をしているのか、二人に知られてしまう。
 透矢に、知られてしまう。
 それだけは避けたかった。
 なのに、
 止まらない手。二本の指が縦スジに沿ってゆっくりと上下する。ぬめる音が二人の耳に届いていないか、と怖くなる。
 肌全体にしっとりと汗が浮かび上がってくるのを感じる。
「……ぁ……っっ……」
 歯に力を込めてもそれをすり抜けて空中に上る声。
 私が横たわっている場所以外は闇に没してしまったように気配が感じられない。
「……んぁ……っはぁ……」
 昨日の透矢にしてもらったこと、ずっとマリアと互いにしてきたこと、そういったことを想いながら自分自身を慰め続ける。
437アリスの憂鬱 10:03/09/25 16:58 ID:hUicpeYN
 ひょっとしたら見られているのでは、と思って、手が止まる。落ち着かない。悪戯が見つかった瞬間のような居心地の悪さが、
躰全体を支配して、動けなくなった。
 二人が見ているかもしれないという恐怖心。
 指を折り曲げるだけにも恐ろしいほどの気力がいるこの状況で振り向くなどできそうにはなかったけど、知らない振りで
朝を迎えてしまったら今度こそ二人に接することができなくなるという気持ちも痛いほどあった。

 振り向こうという心とそれを押しとどめる心。それが何十回か交錯して、覚悟が決めた。
 少しだけ頭を持ち上げて、ゆっくりと、ゆっくりと、回す。
 躰も寝返りを打つ振りをして、緩慢な動きで姿勢を変えた。
 
 閉じていた目をうっすらと開けると、

「……おねえちゃん」

 マリアと目が合った。
 弾かれるように立ち上がる。
「嘘っ、何でっ、起きてたの!?」
 腰が砕けて座り込む。
「おねえちゃん、我慢する必要ないよ。一緒にしようよぅ」
 マリアの横に控える透矢を見て胸が痛んだ。全部、全部見られてた。寝るって言った私がタオルケットに包まって、マリアの声と透矢が
愛撫する音を聞いて自分を慰めていた、その全部を見られた。
 ――――――恥ずかしい。
 ――――――悔しい。
 ――――――腹立たしい。
 色々な想いが混じり合って、私は叫んでいた。
「馬鹿マリア、透矢もよ! 私は恥ずかしいって言ってるのに不安だって言ってるのに何で分かってくれないのよ! 
三人一緒になんて恥ずかしすぎて出来るわけないでしょう! 私をからかって何が面白いのよ!」
 途中からダメだって思ったけど止まらなかった。
 私は泣き出してしまった。
438アリスの憂鬱 11:03/09/25 16:59 ID:hUicpeYN
「違うよ、おねえちゃん。おねえちゃんは恥ずかしいと思うほどに透矢さんが好きなんだよ」
 マリアが大人びた、子どもを諭すような口調で言う。
「すん……っ……何よそれ」
「何とも思ってない相手に見つめられたって心は動かないけど、好きな相手に見つめられるとドキドキする。相手を強く意識
しているから、そうやって、相手の視界に入っているのが分かると自分がどう映っているのか、とても不安になるんだよ。
恥ずかしいっていう気持ちもその延長。好きだからこそ不安になるし恥ずかしくもなるんだよ」
「……マリアのくせに」
 悟ったようなこと言っちゃって。
「ぅぅ―――」

「アリス」
 透矢の声。マリアに助けを出すようなタイミングだった。
「……何よ」
「こういう手段しか取れなかったのは悪いと思ってる。でも、アリスは本音を言ってくれないから。二人の居場所になるって
決めた翌日だったし、僕も不安だったんだよ」
 透矢が私に近づいてくる。私は後ずさって壁にぶつかった。
「……ダメ」
「アリスは僕のこと嫌い?」
 ずるい。私の気持ち知っているくせに。
「……嫌いなわけ、ないじゃない」
 透矢と私の距離がほとんどなくなった。頬に透矢の手が添えられ、
「ほら、目を瞑って」
 口唇が軽く触れ合うだけのキス。一回離れて、透矢が口唇をぺろぺろと舐めてくるので、
それに応えるように小さく口を開くとゆっくり舌が侵入してくる。
「―――んぅ……ちゅっぱ、…っんは、ぷあ」
 長いキス。苦しくなって、逃げようとしても逃がしてくれない。躰をしっかり抱きとめられて、身動きが取れない。
「…ふむぅ、ちゅ……んんん」
 歯茎を擦り上げられるのと同時に透矢の手が胸に被さってくる。
 透矢は右手で胸に、左手でおしりの方からパンティの中に手を入れて、それぞれ刺激を加えてくる。
439アリスの憂鬱 12:03/09/25 17:02 ID:hUicpeYN

「ぷはあっはあっ、んあ…はぅ…ああぁ……」
 やっとのことで解放されたかと思った口唇も、
「――――――んんぅ?」
 もう一度、覆い被さられ、胸と、中に挿し入れられた指の蠢動で、
「――――――――んあぁぁああ!」
 躰を小刻みに震わせ、イってしまった。

 くてんとベッドに倒れこむ。
 透矢のキスが長すぎたせいか、空気を吸い込んでも吸い込んでも苦しい。
「今日はおねーちゃんにさーびすさーびす」
 マリアが訳の分からないことを言いながら、パジャマのズボンとパンティを脱がせ始める。
「うわあ、すごーい。そんなに気持ち良かったの?」
「はあ、はっ、はっあ、はあ、何を、馬鹿なこと言ってるのよ。っは」
「だってー」
「ひゃうっ!」
 マリアのひんやりとした手が縦スジを広げようと這い回る。
「気持ちいーい?」
「っはあ、ばっ、やめなさいってばっ」
「おねーちゃん、逃げちゃだめえー」
「と、透矢っ」
 こんな惨状だというのに微笑ましそうな表情で眺めていた透矢に助けを求めると、ひょいっと脇を支えに抱え上げられ、
何故だか、四つん這いにされた。

「……何? この恰好……」
「マリアちゃん、アリスが先でいいよね?」
「はい! ……でも私にも後でして下さいねっ」
「ははっ、分かってるよ」
「ちょっと、人の話を聞きなさいよ、ってどこ、んん、触ってる、のよっ」
 私が身に着けている服の最後の一枚、半袖パジャマのボタンの隙間から手を挿し入れた透矢が固くなった乳首を摘み上げる。
440アリスの憂鬱 13:03/09/25 17:04 ID:hUicpeYN
「……んはあ、っと、うやあ、っぁぁは……」
「……昨日の続き、するつもりだけど……」
 耳朶を舐めるよう、甘噛みするように声を吹きかけられる。
「ぁああ、っはぁ…」
「……いいよね?」
「――――――――んっ、で、でもっ」
「アリス」
 私の中に透矢の指が入ってくる。くちゅくちゅ、イヤらしい音が耳に届く。
「――――――――」
 一瞬、声が出なくなったので、首を縦に何度も振って、透矢にサインを送った。髪の毛が背中に張り付いて気持ち悪かった。
 カチャカチャとベルトを外す音。透矢の方へ向こうとしたら、マリアに抑えられた。
「マリア、ち、ちょっ」
「おねーちゃんが四つん這いにならないと私も一緒にできないよぅ」
「あのね、この恰好でやれっていうの?」
「昨日、私がしてた恰好だよ」
 マリアが上にいた、昨日のことを思い出した。
「……仕方ないわね」
 今日は私が上になって、透矢を待った。

 準備万端整った透矢は自分のモノを私の入り口を擦り付けてくる。
「くうぅっ、はあ、何、してるのよぉ、この変態」
「ち、違うよ、中に入ったときアリスが痛がらないように湿らせてるの」
「そういう割りに、はっ、気持ち良さそうん、に、ぴくぴく震えてるけどっ、んん」
 当然、私も気持ちいいのだけれど、先に口にした方が負けって気がしてならない。
「アリスもエッチなこと言うようになったね」
「それっは、透矢、でしょ」
「んもう――――、仲間外れにしないでよぅ」
 私の下で待機していたマリアが不平を漏らして乳首をぴちゃぴちゃと舐めてきた。
「ひゃ、んううぁ…」
「行くよ」
 不意に、小さな声で囁くように透矢が宣言した。
441アリスの憂鬱 14:03/09/25 17:10 ID:hUicpeYN
「んんああっ――――――――」
 目の前が真っ白になった。鮮烈な光が射した感じ。
 入ったのは、ほんの先だけだった。強烈な違和感はあるものの、それほどまでには痛くない。
「き、つい」
 透矢がうめく。
「大丈夫ですか? 透矢さん!」
 マリアが慌てたように、私と透矢が繋がっているところを舐める。
 ぺろぺろぺろ。犬が傷を癒すみたいに舐める。
 マリアに舐められると、気持ちよくもあり、嬉しくもあり、恥ずかしくもある。

 透矢が少しずつ体重を乗せて中に挿れてくる。
 壁が押し広げられ、深く進むにつれて、
「いたっ痛い、よう、痛い痛い」
 余りの痛さに情けない声が出た。
 透矢は少し進んでは休んでくれて、マリアと一緒に色々と愛撫してくれるので、中から溢れてくる愛液が潤滑油となって
わずかながら馴染んできた。

「あ」「あ」
 透矢のモノが私んの膜に到達し、二人で同時に声を上げた。
「ど、どうしたの?」
 マリアの心配そうな声。その声が場にそぐわなくて、はてなマークを浮かべているマリアをよそに二人してくすくすと笑う。
 その振動で、
「痛った―――」
 またも情けない声を上げてしまった。もうここまで滑稽になってしまうとえっちなことをしているというより、三人で遊んでいる
みたいだ。

「透矢。優しくしてくれてありがとう。もう最後だし、あとは勢い良くしてくれていいから。私が声を上げても構わなくていいからね」
「……でも」
「私がいいって言ってるんだからいいの。もうこの機会を逃すとこんな可愛い子をムリヤリなんてこと、できないわよ」
442アリスの憂鬱 15:03/09/25 17:11 ID:hUicpeYN
 マリアにもさせてあげたい。落ち着いてくると、そう思うようになった。だから、ここで時間と透矢の体力を消耗するのは
良くないと思う。…………されてみたい、という気持ちが全くないわけじゃないけど…………。
「アリス、堪えて」
 透矢が私の腰を掴んで、思い切り突き入れてきた。

 真っ白から、反転する赤。爛れ落ちるように赤から黒へ。視界が閉塞して何も見えなくなる。
「ん――――――――くぅ――――――――っかっは」
 空気が上手く吸い込めない。痛い、イタイ、いたい。
「…………おねーちゃん」
 マリアの不安そうな声。
 
 結局、順応してしまう自分が怖いというか、
「あひぃん、いっ、くぅん、はあ、あっはあ……んんぅ」
 私と透矢が繋がっているところからじゅぷじゅぷと泡立つような音が部屋全体に響き渡る。
「はあん、うああぁ……あぁはっぁあ……んん……」
 突き入れられる衝撃とその音しか感じない。
「っんう、っぱ…ちゅ…くぅ、ちゅ…っ…んっゃちゅ…ふぅ、はぁあ」
 マリアとの深く長いキス。胸を揉みあげているのは透矢の手。私を支えてくれる二人の感覚。
 頭を撫でられ、口唇を吸われ、胸を揉まれ、背中を撫でられ、おしりのすぼまりをつつかれ、
そして、中心を透矢に突き入れられる。
 痛いという気持ちが減退してくると、自分の中がどろどろに溶かされていく感じがして、躰を
保つ余裕がなくなってきた。
「と、とう、やあ、もう、わた、し、いっちゃいっちゃう、よお」
「アリスっ、もう少しだから」
 突き入れられるスピードが上がる。壊れるんじゃないかというくらいの揺れ。
「とうやっ、はやくう、と、んはいっ、んんぁ、ぎゅっ、と、してえ」
 のしかかられるというか抱きかかえられるというか、ともかく透矢は私を温かく包んでくれた。
443アリスの憂鬱 16:03/09/25 17:12 ID:hUicpeYN
「アリスっ」
「っはぁ中にぃ、だい、じょうぶ、だからっ」
 最後の一突きが来て、
「んんっはあはあああああああああああぁぁぁ――――――――」
 私の一番奥に、熱いものがどろどろと注ぎ込まれる。びくんびくん、って互いに震えてるのが分かる。
「はあ、はあ、ふぁ、はっは、はっ」
 まだ、透矢のモノは振動を続けて私の中に精液を送り込んでくる。多いよ、透矢ぁ…………。
 ……………………。

「あのあと、私が三回に、マリアは二回。透矢ってば底なしの変態ね」
「うう、それについては弁解の余地がなさそうだね…………」
 透矢は私の頭を、私は寝てしまったマリアの頭を撫でている。
 三人でベッドの上でゆっくりとした時間。
 このまま眠って、次の日を迎えても朝のときみたいなことにはならない。だって、透矢には私の中の中まで知られて
しまったのだから、これ以上恥ずかしいことなんて何もない。
 この胸の熱さを律することが出来そうで、私はとても嬉しかった。

「透矢―――」
「うん?」
「あのさ、赤ちゃんの名前、何がいいかなあ?」
「――――――――え?」
 私の頭を撫でていた手が止まる。撫でるように催促する。
「透矢、中でたっくさん出すんだもん。十ヶ月後はひょっとするかもよ?」
「だって、アリスとマリアちゃん、あの時……」
「うん、大丈夫よ。透矢はきちんと責任とってくれるんだから――――」
 そう言って、私は水の中をたゆたうようにまどろみ始める。
「――――――――――――――――」
 優しい透矢の声が遠ざかる。
 ……………………。
444アリスの憂鬱 17:03/09/25 17:14 ID:hUicpeYN

 目が覚めて、
 朝だということは、天窓からの様子で分かった。
 振り返って、
「……透矢ってば」
 透矢は色々な名前を書き散らした紙にボールペンを走らせながら寝ていた。
 私はその中の一つに赤いボールペンで丸を付けた。

 三人で目指す未来。幸せでありますように。
445松波:03/09/25 17:28 ID:hUicpeYN

 >>428-444
 水月よりアリス。
 トーナメント会場へ向けて小さな声で応援中です。
446名無しさん@初回限定:03/09/25 17:31 ID:Tc5/VGgx
良し!
447名無しさん@初回限定:03/09/25 18:38 ID:8brEhNxM
エローい!
すげえなあ、エロと心理描写がお互いを高めあって益々エロく!
448名無しさん@初回限定:03/09/25 19:43 ID:Rmi5Bq/V
チンコ勃っちゃった(AA略

イイ!
449似て非なる女。その1。:03/09/25 22:12 ID:aEIsL8Vo
「……お粗末だなクロウディア」

 背後。格納庫の入り口で佇む女へ向けた言葉。

「こんなお粗末な終わり方……悲しすぎるよな」
「……ごめんなさい……」

 謝罪。小さな拳銃を構えた女の声はやはり小さく、けれど揺るぎ無い。

 玲二の後方より響く、撃鉄の音。それを聞き、彼は視線を落とす。
 手にしたハードボーラーの残弾は二発。だが、

 だが、なぜ生き延びる? そう冷えていく心に問いかける。
 守るものもなく、失うものもなく、目指す場所さえ失って、
 なのになぜ今、もう一度、命を掴み取ろうとしているのか?
 それは……

450その2。:03/09/25 22:13 ID:F7+wzq/Z
 遠い日に、そう約束したからだ。誰よりも強く、誰よりも高く、
 そう生きた彼女に憧れて、そう在りたいと願ったから。
 誇り高く在ることを、命ある限り決して屈しないことを。
 眩く尊い面影に、心の中で誓っていたから。
 生きる理由は消え失せても、その誓いだけは残っている。

 ひるまずに、自分自身を恐れずに、誰もが恐れるケダモノに……

 振り向くスピードも、狙いの的確さも、後にも先にもないほどに完璧だった。
 ファントムの異名に恥じぬ一撃だったと、そう胸を張って言える。

 素人同然の女ひとりを撃ち殺した、この一発は。

451その3。:03/09/25 22:13 ID:F7+wzq/Z
だがしかし! 彼女は銃弾ごときに倒れるアメリカンセクシー悪女ではなかった!

ゴゴゴゴtp://red.sakura.ne.jp/~nankyoku/otoko/bbsnote.cgi?fc=repost&l=5446ゴゴゴゴ

次回! 怪宇宙パワーによって第七の力、すべての摩擦係数をゼロにする
『キャル・ザ・スネーク』がクロウディアの前に立ちふさがる!

摩天楼を舞台に! 彼女たちの死闘の幕は上がった!!
452……:03/09/25 22:15 ID:F7+wzq/Z
>>449-451
いや、掲示板で見つけて面白かったのでつい
453名無しさん@初回限定:03/09/26 06:53 ID:mxJw6KAM
>>452
その絵のインパクトが強すぎて、上の水月SSの萌えエロがとんだよ…
454名無しさん@初回限定:03/09/29 06:26 ID:kn4bkgnx
>>451
見れない
455名無しさん@初回限定:03/10/03 11:43 ID:ZENAl9Qd
あげ
456名無しさん@初回限定:03/10/06 18:04 ID:GsmPUH1J
定期上げ
457名無しさん@初回限定:03/10/08 23:54 ID:jUCNuqgF
下げ
458名無しさん@初回限定:03/10/10 18:56 ID:AosbbYrZ
保守
459名無しさん@初回限定:03/10/11 14:08 ID:6f3y2U4t
保守だ・・・
460(1/2):03/10/13 01:03 ID:Xp4cMg8Y
「……は。あ、あれ? ここ、どこ?」
「はは。お嬢ちゃん、お目覚めかい? いけないねぇ。いくら二週間以上SS投稿がなくて寂しい
 からって、お嬢ちゃんみたいなのが夜の街をうろうろしてちゃ」
「え? あ、あなたは……。う、嘘」
「おやおや。まだ寝ぼけてるのかい?」
「だ、だって、あ、あなた自分のことSS職人だって……。投稿してやるって……」
「あはははは。こいつは傑作だ。これだから世間知らずは。いいか、SS職人に自分のことを
 SS職人だなんていうやつはいないんだよ。あんたみたいな甘ちゃんは、『また、おまえは
 騙されたわけだが……』スレの格好の的だな。ん? いままでどれくらいの数を騙されて
 踏んできたんだ?」
「わ、私、騙されたことなんてないもん。あなたは一体誰なの?」
「ん? 俺か? 俺は、おまえみたいな気にいったスレを好き勝手保守し散らかしてる保守人さ。
 特にスレをageるのが大好きな変態でねぇ。ageられたらどうなるか知ってるか? 一度age
 られたら最後、意地汚い広告どもが寄って集っておまえを汚していくだろうな」
「い、いや……。嘘」
「ははは。おまえだって圧縮でのdat落ちが怖くて、俺みたいのにホイホイついてきたんだろ?
 なに任せとけって。大人しく俺に身を任せてれば、dat落ちだけはねえって」
「だ、誰があなたなんかに。きっと、SS職人さんが現れて、投稿してくれるもん。あなたなんか
 に頼らないもん」
「おいおい。この状況でまだそんな夢をみてるのか? いい加減諦めろって。現実は非情なんだ。
 おまえは俺に保守される運命なんだよ」
「い、いや。だっ、誰かーっ!!」
「あははは。叫んだって誰も来やしないさ。俺の書き込みテクニックに参らなかったスレは
 いないんだ。どうせおまえもすぐに、自分から『お願いっ。保守してくださいっ』って言う
 ようになるさ。まあ、そんなことよりこれを見てみな」
「ひっ」
461(2/2):03/10/13 01:04 ID:Xp4cMg8Y
「どうよ。俺の自慢のブラウザは。そこらへんのIE使いとは比べものにもならないだろ。なにせ
 2ch専用をさらにカスタマイズしてるからな。いままで、これでよがらなかったスレはねえ」
「いっ、いやっ! 近寄らないでっ!!」
「いい格好だな。おまえの書き込み欄丸見えだぞ? 書き込みボタンから名前欄、E-mail (省略
 可) 欄までじっくり見て取れる」
「み、見ないで……」
「ほら、おまえの書き込み欄に、いま俺の『保守』って書き込んでるぞ? どんな気分だ? 
 これで書き込みボタン押したらどうなるかなぁ?」
「お願い……。やめて。ひうっ、痛いっ。それを押さないでっ!」
「いいや。無理だね。ほら、もう押しちまったよ。って、おいおい、なんだこれは? おまえの
 あそこから垂れ流れてきてるぞ?」

 『投稿確認
  ・投稿者は、投稿された内容は、掲示板運営者によってコピー、保存、引用、転載等される
   場合があることを承諾します。
  ・投稿者は、投稿に関して発生する責任が全て投稿者に帰すことを承諾します。
  ・投稿者は、話題と無関係な広告の投稿に関して、相応の費用を支払うことを承諾します。』

「あはは。こいつはいい。口ではなんだかんだ言いながらも、おまえのあそこは正直だな。
 しっかりと俺のレスを受け入れてるじゃないかっ!」
「うそっ! 違うっ! 違うもんっ!」
「違わないね。もうこの『全責任を負うことを承諾して書き込む』を押せばフィニッシュだ。
 あ、そうそう。せっかくだからメール欄にageって入れといてやったぜ。いくぜ、そらっ!」
「いっ、いやーーーーーーっ!!」



 と保守してみる。
462名無しさん@初回限定:03/10/13 10:41 ID:KXXHJT9p
>460-461
新手の保守乙(w
463名無しさん@初回限定:03/10/13 12:19 ID:b8PFkkvp
>460-461
ナイス保守キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)−_−)=゚ω゚)ノ━━━!!!!
464名無しさん@初回限定:03/10/13 14:29 ID:hqiXpW6L
>460-461
good保守
465名無しさん@初回限定:03/10/13 17:16 ID:FbM3gVZK
らしくていいね!
こういうノージャンルのSSも葱なんだからもっとあってもいいなー
と思う俺
466名無しさん@初回限定:03/10/13 21:46 ID:QWQm233F
>460-461
な、何てモノ読ませやがるんだ(w
467名無しさん@初回限定:03/10/13 23:15 ID:L5Nh9zJX
ワロタw

次からは保守の際には一度はコレを張ることにしよう
468名無しさん@初回限定:03/10/14 01:00 ID:0EP43u4C
保守するときは続きを書いてくれw
469名無しさん@初回限定:03/10/16 17:03 ID:q0Gc1Lo/
>>460-461
上手いなぁw
他の全然関係ない板にまで飛び火しそうなヤカン
470名無しさん@初回限定:03/10/20 17:23 ID:BTos1y+o
レベルが高い保守をされると、続き難い事が判明したw
保守しとく
471名無しさん@初回限定:03/10/24 20:47 ID:T6c5kYj/
保守
http://members.jcom.home.ne.jp/enseteku/
保管サイト更新〜
更新内容は以下
  それは転がる賽目のように
  アリスの憂鬱
  似て非なる女。
  このスレっぽく保守してみる

あー、Type−Moonの新作の発売日が発表されましたな。
発売したらここの投稿量も増える……かな?(w
473名無しさん@初回限定:03/10/25 03:30 ID:lAgILwKX
ネギ板は来てからまだそれほど日が経たないんだが・・・・・・・・・・・・



ネギは型月の話題出しても良かったのか?
難民以外じゃ口に出すだけでペナルティかと思ってたんだが
474名無しさん@初回限定:03/10/25 03:49 ID:OdITM9co
葱は割とネタ色が強いから、流れ次第では大丈夫な感じ。
エロゲ板だとスレがメーカーで分類されてるからほとんど話題にならないしな。
475名無しさん@初回限定:03/10/25 10:36 ID:SX/ZFItN
ファントムのエレンのエロSSはありませんか?
ネット全体でも存在しないような気がするのですが
476名無しさん@初回限定:03/10/25 13:57 ID:3NCz3cH3
”アイン”のエロSSならあった
>>326 の保管サイト参照。完結作品の「Lesson At The Nigth」
エロエロよ〜w

(ところで、最後のスペルはNightの間違いな気がするんだが、そこん所どうなんだろう?)
>>476
「Night」の間違いです。修正しときました。
478476:03/10/26 00:13 ID:kLk67YxD
>>477
わざわざどうも。訂正乙です
479名無しさん@初回限定:03/10/29 02:02 ID:IDs3PIWY
へたれSS書き@保管サイト”管理”人 様
すみませんが、上記のアドからでは入れないのですが
移転しましたでしょうか?
>>479
えー、とりあえずこちらからは入れるのですが、古い方のURL使ってません?
http://members.jcom.home.ne.jp/enseteku/
念のためURL出しておきます。

後、時々妙に重くなるようなので、ダメなら時間を置いて入ってみてください。
481名無しさん@初回限定:03/10/31 10:13 ID:0ZHspxMx
>>476
ほんとだサンクス
482名無しさん@初回限定:03/10/31 20:55 ID:J0jOcXCg
「保守だ保守!」
「いけねageちまった、鬱だ氏脳 ∧||∧」
さわやかな朝の挨拶が、空ききったスレにこだまする。
職人様のお庭に集う住民たちが、今日も天使のように無垢な
笑顔で、ネギ板の門をくぐり抜けていく。
結構汚れた心身を包むのは、親の買ってきたトレーナー。ネタが無ければ極力
投下するように、ageちゃったら吊ってお詫びをするように、スレのために貢献するのがここでのたしなみ。
もちろん、用もないのに通りがかるような変なAAなど存在していようはずもない。
              
エロネlヽギ板SS投稿スレッド 。
いつ間l 」 /⌒ヽにかできたこのスレ /⌒ヽは、もとはエロゲを深く愛そうとする者達のために作られたという
伝統は‖/  =゚ω゚)ないが愛に満ちた/ ´_ゝ`) スレッドである。
我らがS⊂ノ   /Sスレ。古き良きゲ|    /ームの面影を未だに残す保守の多いこのスレで、住人に見守られ
オリジナ( ヽノルからリクエスト品ま( ヽノでの力作が投下されるバカの園。
時代は移ノ >ノり変わり、スレが初代ノ >ノから5回も改まったPart6の今日でさえ、
一 三  しU一年間も住み続けれ三 しUばネギ板育ちの純粋培養SS読者が熱い情熱を胸に出荷される
という仕組みが未だに残っている貴重なスレッドである
483名無しさん@初回限定:03/11/01 00:41 ID:mn5HA5Ea
バカワラw
484名無しさん@初回限定:03/11/01 09:53 ID:vvdOkBWP
ワロタ
485告白に至る病(前) 1:03/11/01 20:08 ID:WmEuFfnE
 二人の距離は肩が触れ合う程度。
 もし触れ合ったら、そのままリミットブレイク。親を殺した仇敵のように相手を睨みつけ、
最後には拳を交えるまでに至る。
 幼なじみで従兄妹と書いて不倶戴天と読ませ、血で血を洗う熾烈な闘争の果てに尚も
敢然と立ちはだかる生涯最大の宿敵、と二人は互いに認める。
 果たして自分たちの相性は良いのか悪いのか。晃二郎は絶望的に悪いと考え、おとねは
究極的に良いと考える。そのどちらが正しいのか。それは誰にも分からないけれども、
どちらにしてもその極致にいることだけは間違いない。
 いつも。金田晃二郎と小鉄おとねは肩触れ合う距離にいた。
 
 学校へ通うのも二人一緒だった。晃二郎は文字通りおとねに引きずられるように、
幼稚園から今に至るまでそれを繰り返してきた。晃二郎が風邪を引いた時も、インフル
エンザでノックダウンした時も、肺炎で死にかけた時でさえも、おとねは容赦なく
引きずった。自分がそうなった時は問答無用で晃二郎に看病をさせた。おとねが全快した
翌日に晃二郎が病に倒れることもあったが、そんなものは全く酌量されなかった。
 こんなこともあった。「晃二郎のものは私のもの、私のものは私のもの、ユーコピー?」
「アイクォピィー! なんて言えるかぁ! テメエ何様? ひょっとしなくても地球で一番の
存在とでも思ってないか? アアン? 殺すよマヂで、大体が―――」ずずいと携帯電話を
突き出すおとね。「アンタのものは私のもの、私のものは私のもの、ユーコピー?」「アイクォ
ピィー!」再生された音声はそこでブチ切れていた。この詐欺紛いの音声データは、その日の
昼休み、放送室をジャックしたおとねの手によって晃二郎が駆けつけるまでエンドレスで
垂れ流された。 
486告白に至る病(前) 2:03/11/01 20:11 ID:WmEuFfnE
 そして、いつものように、二人は叫ぶ。
「今日こそコロス! ゼッテー決着つけてやる! テメエを凌辱して全世界に電波を発信してやる!」
「ヤレるもんならヤッてみな! このチンカス野郎っ!」
「ばっ、つーか、もっと年頃の言い回しはないのか!? テメエだって生物学的にはオンナノコだろうが!」

 これらは全て、地獄の一丁目である。普段の、大小問わず、突き詰めれば息を吸うことさえも
共有するぐらい互いの傍に居つづけた。
 
 今も。金田晃二郎と小鉄おとねは健やかなる時も病める時も常に肩触れ合う距離にいる。
 その大部分が怒声と罵声と呪詛が多重に折り重なった醜い光景だったとしても。
 それが変わらない二人の光景。
487告白に至る病(前) 3:03/11/01 20:13 ID:WmEuFfnE
 今日も、そんな一日だった。六限目終了の鐘が鳴り響き、終わりのショートなどブッチってでも
おとねの魔の手から逃れようとした晃二郎の挑戦はあと一歩でドアに手が届く、その距離であえなく
失敗に終わった。
「ああん、何で一人で行っちゃおうとするの? 今日は二人でチョコパフェをつつくって約束なのに。
ひっどいわぁ!」
 おとねはしなしなっと、ありもしない約束でっち上げ、それを破られたと周囲に吹き込んで同情を買いつつ、
「ンなやくそグハァッ――――」 
 今や戦犯と化した晃二郎を鉄拳で制する。
「オラオラオラオラオラアァァ!」
 ガトリングガンの斉射を針の穴に通すように、正確無比なコントロールで打ち据えていくその形相は
まさに夜叉のソレである。
 
 拳がめり込み、顔が陥没する。
 バキメキィグチャア――――――。
 思わず目を背けて耳を塞ぎたくなるような光景。
 晃二郎が逃げようとしても、衰えることを知らないおとねの多段攻撃を被弾してはノックバックしてしまい、
全く動けない。
「たっけてえぇぇぇぇぇぇ! 死ねるほんとに死ねるって!」
 晃二郎は恥も外聞も投げ捨てて、周囲にいたギャラリーに助けを求めるが、
「なにゆってんの、おとねちゃん泣いてるじゃない。泣いて薄情なあんたの胸に飛び込んでそれを
叩いてるだけじゃない」
 一番近くにいた女子がおとねに同情したようなことを言って泣き崩れる。
「勝手に作り上げないでー! 頼むからこの死へ一直線な現実を見てー! つーか泣きたいのオレだってぇぇ!」
「でもさ、金田と小鉄のはいつものことだからなあ、愛情表現の一種なんだろ?」
 今度は女子の横にいた男子が言う。
「だからそういうオブラートいらないの! 愛情も友情もここにはないの! ただの肉塊に成り果てそうな
オレをたすkブフッ――」
 晃二郎の悲痛な叫びを覆い隠すように、
「グヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ――――――――――――――――――――――」
 歪んだ笑顔が張り付いたおとねの口からこぼれる哄笑が辺りに響き渡った。
488告白に至る病(前) 4:03/11/01 20:22 ID:WmEuFfnE
 ぼこぼこに殴られたのと殴ったのが一緒に帰る。
 その道すがら。
 川原の風を受けて乱れた髪を整えるおとねの横で晃二郎は思う。黙って大人しくしていたら可愛く見えないことも
ないかもしれないような気がするかもしれないけどまあ勘違いだろう、と。
「ナニよ」
「いや、別に」
 眉を吊り上げ、剣呑を撒き散らすおとねから晃二郎は視線を外した。
「晃二郎」
「何だ」
「今日のところは勘弁してあげるけど、次に逃げたときはどうなるのか分かってるんでしょうね」
「……どうなるんだ」
 言いながら、晃二郎は既に暗澹たる感情に苛まれている。
「どうって。そりゃ決まってるじゃない。アンタの皮被りミニマムソーセージに油性マジックで短小って
書くのよ。消えないように濃く。するとあれでしょ、用を足すときは勿論、自家発電をしようとしても短小の
文字に気持ちと一緒にしょんぼり首を垂れるっていう寸法よ。これって言わば貞操帯みたいなもんよね。
唯一の楽しみも潰えてアンタ可哀想ね」
「てゆーか、もうそれが実現したかのように哀れむのはやめてくれ……」
 昼でもない夜でもない端境期の水面に跳ね返る光で晃二郎の目は染みた。
 何でこんなのが幼なじみで従兄妹なんだ。ゲームやマンガのように晃二郎ちゃん、お弁当だよ(はあと)
ってのは無理だとしても、これはないだろう。神様とか運命とか呼ばれるそれらを恨んでもいい筈だ。
 晃二郎は深いため息をついた。

 ため息ついでに、オトネイズムを発揮された時に妄想せずにはいられない、この状況を
脱出するいくつかの方法を思い浮かべてみる。
 例えば、車がおとねを突き飛ばす、金属バットで頭をしこたま殴るなどのショック療法とか、
弾丸を脳にめり込んで、神経の何本かを断裂させるとか、禅寺に叩き込んで今までの悪行を
悔い改めさせるとか、催眠術で元来乙女だと思い込ませるとか、刀鍛冶に弟子入りさせて
社会の厳しさを教え込むとか、献身的な女性が出てくる映画を見せて天啓を得させるとか。
何なら、狂える科学者ミスターダイジョーブの人格改造手術でもいい。とにかくあの底抜けの
馬鹿さ加減をどうにかできたら。
489告白に至る病(前) 5:03/11/01 20:25 ID:WmEuFfnE
 そんな妄想を脳裏で弄んだ。
 ただの戯言のつもりだった。
 魔物が一瞬、顔を覗かせたように。
 現実になった。

 晃二郎もおとねも気配など微塵も感じなかった。だけど、すぐ後ろに原因がいた。
 
 土手道の真ん中を王様かなにかのように歩いていたおとねを黒い車が猛スピードで跳ね飛ばした。
 
 おとねは宙を舞った。そのまま土手道から斜面を転がり落ちて、凶が重なったか、緑の絨毯を
覆い隠すように存在した石畳の上に躰を強く打ちつけた。
 全ての過程はゆっくりと移ろった。
 手を伸ばすことも出来ず、呆けたように晃二郎はその場に立ち尽くす。
 ゴオオオ――――――――と耳鳴りがした。
 視界に張り付いた黒い靄を払って、晃二郎は辺りを見た。高低という断絶の向こうに結果が転がっていた。
 原因と過程と結果。
 そして、かかる認識。
 
 晃二郎は歩くような軽い足取りで斜面を下りていく。心配など全くしていない。喩え隕石に直撃されようが、
おとねちゃんはだめーじをうけなかった! と表示されそうな奴だ。心配するだけ無駄無駄。いや、寧ろ心配した
様子を曝した途端に、あらあら愛するおとねちゃんが死んじゃうって心配した? 泣きそうなツラしちゃって、
全く晃二郎ってば私にZOKKON LOVEなんだから〜、とでも言われかねない。
 降り立った草木の隙間からは虫の翅音が聞こえてくる。おとねはうつ伏せで寝転んでいた。晃二郎は腹に
力を入れて近づいた。おとねがリビングデッドのように撥ね起きて、自分をビビらせようとして寝ているに
違いない、と思っているからだ。
490告白に至る病(前) 6:03/11/01 20:39 ID:WmEuFfnE
 おとねを見下ろす姿勢で約三○秒。晃二郎も動かなかった。
「おい」
 晃二郎が痺れを切らして声を掛けた。沈黙が耐えられなかったのもあるが、面倒くさくなったのでさっさと
済ませてしまいたかったのが最大の理由だった。
 さらに五秒。おとねはピクリとも動かない。
「おい、いい加減に起きろって」
 おとねの躰に手をやって、反転させた。仰向けになった反動で短いスカートが捲れ上がって、縞々のぱんつが
チラっと顔を出した。
「ぱんつ見えてるぞ。いいのか」
 やはり反応はない。何となく妙な空気だった。晃二郎はため息をつき、頭を掻いてスカートを整えてやった。
 おとねの奴はどうやら本当に気を失っているらしいな、と晃二郎が思い始めたのは、普通の人間なら
おっ死んでもおかしくない衝撃を受けても当然のように傷一つないおとねの躰をマジマジと眺めて放置しようかと
悩んで辺りをウロウロして戻ってきてそれから暫くしてからだった。
 
 晃二郎は仕方なさそうな表情を作って、おとねの口に手をやる。息はある。次に首筋。脈もある。
……気を失っているだけか。ため息。覚悟を決める。この瞬間に目を覚まされたら殺されそうだと思いつつ、
おとねの頬に手をやって、勢い良く張った。一、続けざまに、二、三。目を覚まさない。
 この光景を目に入れ、手で触り、脳が理解して漸く、ほんの僅かだけ焦燥感が胸を灼いた。おとねは意外と
深刻な状態なのかもしれない。しゃーない、病院にでも運ぶかと思い、抱え上げようと浮かした瞬間、
おとねはパチっと勢い良く目を覚ました。晃二郎は硬直した。
491告白に至る病(前) 7:03/11/01 20:41 ID:WmEuFfnE
「きゃんっ」
 晃二郎の手から滑り落ちたおとねは、らしくない、実に可愛らしい声を上げた。
「うぅぅー、痛いです……」
 続いて聞こえた甘いロリ声。とても現実とは思えなかった。晃二郎は脳が壊れるかと思った。
だからなかったことにした。
「おとね、だぃじょうぶきゃ」
 なかったことにできなかった。だから震えた声が出た。後ろを向いて深呼吸をしてもう一度。
「おとね、だぃじょうぶきゃ」
 効果は全くなかった。その様子をおとねはぽかんとした間の抜けた表情で見ていた。晃二郎は猛烈に
恥ずかしくなった。同時に絶望的な気持ちになった。「だいじょうぶきゃ」一週間はこのネタで笑われるだろう。
今までの悪夢から自分の行く末に多大な暗雲が立ち込めたことを悟った晃二郎は、物言わず立ち上がり、
おとねに背を向けて、
「帰るぞ」
 それだけ言った。
「あ、あの、どなたですか」
 背中に返ってきたのは自分を嘲弄するような下卑た嗤い声ではなく、記憶からの抹殺に失敗した
棘のない真ん丸とした声だった。
 
 晃二郎はもの凄い顔をして振り返った。
「ひっ」
 おとねは怯えたような声を上げ、顔を赤くし、目を伏せて周囲を窺うようにした。ひどく落ち着きがない。
「何を言ってんだ、おとね」
「あのあのあのあの、ええと、そのケホッ、その、すみません、分からないんです……」
「おとね! いい加減に――――――――」
 夢にまで見た光景が目の前にある。信じられなかった。信じなかった。でも。それが本当なら。
信じたい。何に代えても信じたい。
492告白に至る病(前) 8:03/11/01 20:42 ID:WmEuFfnE
「ほんとうに! 何も分からないんです」
 言い張るおとねを見て、中間試験にて数学で一五点を獲得した自慢の脳が真実を見極めようと
フル回転を始める。
「ほんとーに、オレが分からない?」
 こくっと首を縦に振るおとね。眉を下げ、瞳をうるうる潤ませた、か弱い女の子然としたその風情は、
おとねの本性を知る晃二郎にとっては身の毛もよだつ光景である。
「ホントにホント?」
「ほんとーです……」
 どうする? どうする? どうする? どうする? 晃二郎の頭の中はそれで一杯だった。おとねが本当のことを
言ってる場合、嘘を言っている場合、それらを思考して最善の方法を選ばなくては! なくては! ては!
 人生初のオーバークロックで脳が知恵熱を吹き上げ、神経が焼き切れるギリギリのところで一体どうすれば……、
と苦悶の表情を浮かべて思考する晃二郎をチラっと見て、おとねはおずおずと、
「私のことを知ってるんですか?」
「ううん、全然、知らないよ、全く、何もかも」
 即答だった。思考より本能が全てを優先した。どうするも何もないじゃないか。置き捨てよう。この場に放置しよう。
そうだよ、解放だよ。このまま放っておけば自分はおとねから解放されるんだ、何を迷うことがある、殺されそうなんだ、
殺して何の問題がある。正当防衛だ。記憶喪失なんだ仕方がない。そうだ自分もそうなったことにしよう。気づいたら
おとねはどこかに行ってた。知らない。何も知らないヒャッホー!
 そう断じた晃二郎は今や自分が応援する球団がサヨナラ満塁ホームランで日本一に輝くよりさらに劇的なスタンディング
オベーションの中にいた。生きてて本当に良かったと心から思った。人生にこんな幸せがあるなんて。湧き上がる昂揚感、
幸福感、歓喜、ああ言葉では言い尽くせない。ありがとう! 本当にありがとうー!
 そのまま漢泣きしあわせスキップをしながらフェードアウト、家路につこ―――、
 万力のような力でカッターシャツを掴まれた。
493告白に至る病(前) 9:03/11/01 20:44 ID:WmEuFfnE
 やっぱり嘘でしたかおとねさん、と思った。屹立していたモノが百八十度反転した。死が首筋まで迫っている気がした。
振り返る勇気などこれっぽっちも持てずに晃二郎が立ち尽くしていると、
「何も分からないんです。……私どうすれば……」
 蚊の鳴くような声。向き直ると、縋るような目をしたおとねが、そこにいた。ほっとしたのも束の間、その様子に、
罪悪感がちくりと胸に穴を作ったが、構わずに、
「でも、オレただ通りがかっただけだし。交番あっちの方にあるから行ってみればいいんじゃないか」
 あさっての方角を指差して、この場から離れようとテキトーなことを言った。おとねは指で指し示す場所と
晃二郎の顔を交互に見て、困ったように俯いた。

「じゃ、オレは行くから」
 今日になって何度目だろうか、背を向ける。
 これは正当な行為だ。考えてもみろ、今まで奴のせいで蒙った害悪の数々を。奴の要求には全て応えなければ
ならない奴隷如き扱い。嫌なことは全て押し付けられ、不満解消の矛先は常にこちらをロックオン、ピー音で
掻き消さねば耐えられない卑語満載のセクシャルハラスメント、秘密など持ちようのないほど侵害されたプライバシー、
生きる意味について常に考えさせられたほどに崩壊寸前だったアイデンティティ。これは正当な行為だ。
「……せめて、途中まで一緒に、」
 おとねはその先を口にしなかった。互いに声なく静寂が広がる。風が薙ぐ。
「ごめんなさい、ご迷惑を掛けてしまって」
 諦めた声で、挨拶し、おとねはのろのろと歩き出す。断絶が深くなる。石畳を抜け、その少し先でこけた。
晃二郎は躰を動かしかけて、やめた。
 やがておとねはゆっくりと立ち上がり、足を引きずって、歩くのを再開した。虚空を掴むように、晃二郎の手。
 斜面に掛かる石段まで歩いて、おとねは遠くなった晃二郎の様子を窺った。向こうが自分のほうを見ているのに気づき、
慌てて深々と頭を下げる。階段を上りきって、再度の会釈。足を引きずって。夕暮れの向こうに消える。
494告白に至る病(前) 10:03/11/01 20:46 ID:WmEuFfnE
 晃二郎は手を首筋に当てて、石畳のデコボコした部分を睨みつけていた。親の仇みたいに憎悪を込めてそれを蹴った。
 あれがおとねだという事実。外見は普段と変わらない。茶色の髪をカチューシャで止めて。背はそんなに高くないけど
引き締まった躰をセーラー服に包んで。
 変わってしまったのは、困ったように、自信なさそうにしている声とか表情とか態度とか雰囲気とか。
 あいつはおとねであっておとねではないのかも知れない。本当に突き放して良かったのか。分からない。
だけどこれじゃ、
「オレが悪者みたいじゃねーか……」
 ただその場にいただけなのに。圧倒的なまでの胸糞悪さ。
「くそっ」
 地面を思い切り蹴って走り出す。草を散らし、階段を使うのももどかしく土手を斜めに駆け上がる。
おとねは長い影法師を作って、とぼとぼと歩いていた。
「ったく」
 いちいち悪態をつきながら晃二郎はおとねとの距離をつめる。
「おとねっ!」
 肩で息をしながら、デカい声。頂を垂れて歩いていたおとねは雷で打たれたかのように晃二郎を見た。
その表情は逆光のせいで晃二郎には分からない。分かるように小走りにおとねの傍まで行く。
嬉しそうな、困ったような、そんな表情が目の前にある。音を立てず、何かが軋む。
「あのあのあのっ……」
 先に口を開いたのはおとねだった。しかし、その言葉は意味の体を成していない。やがて、声が消える。俯いて
手を胸の前で合わせるその姿は祈りを思わせる。
「……その、なんだ、こっ交番が向こうってのは、言った、よな」
「はい、先ほど……」 
 期待がゴッソリと抜け落ちた顔を、おとねはした。晃二郎は直視できずにそれから視線を外す。仰ぎ見る天上は
ただひたすらに赤い。
495告白に至る病(前) 11:03/11/01 20:48 ID:WmEuFfnE
 自分を鼓して声を出す。
「幼なじみって分かるか」
 呆けた空気が辺りに広がった。晃二郎は苛立たしげに頭を掻いた。おとねが上目遣いに口を開き、
「……えっと、小さい頃からのお友達、ですか?」
 晃二郎は声の方を見ずに頷く。
「じゃあ、従兄妹は」
「お父さん、お母さんの兄妹の子?」
「そうだな。……それで、オレたちはその両方を満たしている。オレから見ておとねは幼なじみで従兄妹だ」
 晃二郎はおとねの方を見た。
「だから―――、帰ろう」
 全く理由になっていなかった。だけど、今この場において口にすべき言葉はこれだという確信もあった。
 足を見て、手を差し伸べて。晃二郎はおとねを背負った。骨が太く、筋肉ががっちりついたおとねの躰なのに、
とても軽く感じた。
 おとねは少しだけ高くなった視界にわあーと声を上げた。少しだけ、ほんの少しだけ。空が近い。
 
 今、そこにいる僕、ここにいる君。
 空と川が橙と赤の絵の具をぶちまけたような色をしていた。その奥に薄く紺が迫る。
 影法師が長さを増す。二人で家路につく。
496松波:03/11/01 21:06 ID:WmEuFfnE
 >>485-495
 「告白に至る病(前)」
 家飛より。史上最凶ヒロインだと名高い(多分)おとねさんをメインで。
 当初は本編同様おとねさんに二丁拳銃を持たせて大暴れ、
「晃二郎オオオオオオ――――――」
 で締めるSSを書いてたのですが、断念。
 直後に浮かんだのが今回のやつです。
 割ったのは長くなりそうかなー、って思ったからなのですが、
 投稿してみるとそうでもないかも。

 最後になりましたが、前回の投稿の際に感想を下さった皆様、読んでくださった皆様
 ありがとうございました。遅くなりましたが、お礼申し上げます。
 


497名無しさん@初回限定:03/11/01 21:13 ID:8syp2fvO
乙〜

498名無しさん@初回限定:03/11/01 22:01 ID:pSCIMItM
>>485-496


ネタ元は知らんが、面白かった。いや、上手かった、と言うべきかも?
続きがどうなるか気になるのと、原作がどんなもんか気になってきたw
499名無しさん@初回限定:03/11/01 23:20 ID:K6upzo+A
乙〜、家飛SSとは珍しいな。
原作はあまりに(´・ω・`)な出来だったよコレ。
500名無しさん@初回限定:03/11/02 01:28 ID:YWRkI4rh
>>499
スタッフ達のやる気は理解できるんだが・・・・・・いやまぁすでに出ちまったもんをとやかく言うのは野暮だよな。

>>482
ワロタ、新手の保守だな
501名無しさん@初回限定:03/11/02 06:42 ID:WZNBCku3
>>485-495


実際、交通事故に会うとこの主人公くらい認識が曖昧になるよな、
当方はねられ経験1回、見たこと3回。
弟が跳ねられた時には目の前の物が見えなくなったよ、凄く静かだった。
救急車に乗せて、付き添う間、
「こいつ死ぬのかな、死んじゃうのかな」
そう頭の中でリフレインしてたことしか覚えてない。
そんな弟も今じゃ年末年始に顔を合わせるぐらいだ、本人ピンピンしてる。
事故時の記憶だけは思い出せないらしいが…

いかん、思い出話になるな。
感想、心理描写うまいこと書いてますね、主人公が最初見捨てないほうが、
俺的好感度は高かったけど、ゲームやってないからその辺は感じ方が違うと思うのでパス。
全体的にキャラの会話もテンポいいし、短い話の間に読者を引き込むテクニックもある。
結論は良作です、続きも読んでみたくなりました。
新作投下待ってます。
502名無しさん@初回限定:03/11/02 06:50 ID:z+H4ggYb
原作ゲームをやってないのに、面白いと思えたSSは久し振りでした。
ありがとう。
503名無しさん@初回限定:03/11/02 07:16 ID:n2xeKLEi
ゲームをやった俺からすれば、後編でのおとねが楽しみで仕方ないです。
続きもがんばれ。超頑張れ。
504名無しさん@初回限定:03/11/02 11:09 ID:j2nldU8P
積んでる家飛が気になってきた。
今からプレイしてみるか・・・・・・
505名無しさん@初回限定:03/11/02 11:28 ID:HKCTEmHy
>504
む、無茶するな!
506名無しさん@初回限定:03/11/02 13:31 ID:ne6PF90c
あー・・・俺は立ち絵でご免なさい状態だった。
507名無しさん@初回限定:03/11/02 13:32 ID:YWRkI4rh
あー、その後背景とテキストでごめんなさいだった
508名無しさん@初回限定:03/11/02 14:24 ID:6dbaX9BA
>>485-496
お疲れ様です。
素直に面白いと言える作品でした。
後編も期待しています。
509松波:03/11/02 20:59 ID:lgjdtvRv
 うわっ、いっぱいレスがあるとしみじみと喜んでいました。
 感想を下さった皆様、読んで下さった皆様、ありがとうございます。
 
 >主人公が最初見捨てないほうが
 当初はぼんやりから立ち直ってすぐさま助けに走るのを書いてました。実は。
 でも、後から見直して直視できないくらいに酔った文章になっていたのと、
 やはりコレは晃二郎の行動じゃないよな、と思ったので、書き直したのです。
 
 家飛はSSを書くくらいなので当然好きなのですが、ゲームとしてはこれは……、
 な出来だと思います。設定が公開された時はキターと思っただけに、
 プレイ後はしょんぼりしたというか何というか。

 後編は忘れ去られない内に投稿できるよう頑張ります。超頑張ります。
510名無しさん@初回限定:03/11/02 21:28 ID:AbyjryCD
>485-496
面白かったッス!で、メーカーサイト逝ってみたらば
よさげなキャラ、設定、SS…
買いに逝くかとおもったら、皆駄目出し、松波氏ですらw
如何すれば良いんだろう…

>509
後編、お待ちしてます
511名無しさん@初回限定:03/11/02 22:31 ID:JA4oW4w/
これでしばらく保守SSが読めなくなるのか・・・
512名無しさん@初回限定:03/11/04 18:17 ID:PbYIxdAS
ゲーム紹介では面白そうだったのに
プレイした感想は…だったのね。>家飛

乙ー
513名無しさん@初回限定:03/11/06 07:32 ID:oO5KplTh
 
514名無しさん@初回限定:03/11/06 07:36 ID:oO5KplTh
スマン、何の略なのか教えてくれ<家飛
515名無しさん@初回限定:03/11/06 07:39 ID:zKiHsW9C
516名無しさん@初回限定:03/11/06 09:40 ID:Ffo80FTP
略でも何でも無いんだけどな(w
って言うか「家飛」でぐぐれば一発でわかるんだが。
517名無しさん@初回限定:03/11/06 11:49 ID:jhnzhA/a
ウヒャw
518名無しさん@初回限定:03/11/08 02:48 ID:9d4MOYDL
まぁ普通家飛が正式タイトルだとは思わんわなw
519名無しさん@初回限定:03/11/08 19:03 ID:5M8Cf2zG
ところで圧縮が近いってのは本当なのだろうか?
520某観測人:03/11/08 19:11 ID:OR9+sNL/
>>519
近いも何も、つい一時間ほど前に発動しました…。どこが落ちたかは
定点スレをご覧下さい。

エロゲ板・ネタ業界板 定点観測 第5章
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1064763428/474-477
521名無しさん@初回限定:03/11/09 07:03 ID:dLzkycba
ネタバレ多目の奴はこのスレに投下したらまずいでしょうか…。
初心者なんで勝手が解りません(´д`;)

お題はCross†Channelの予定…そもそもちゃんとまとまるかも謎ですが。
522名無しさん@初回限定:03/11/09 08:30 ID:V6JWaa3I
どのくらいかによると思いますが、個人的にはあまり気にしない。
523名無しさん@初回限定:03/11/09 09:16 ID:i/36z8Nb
>521
最初にネタバレありと書くか、
名前欄に作品名とネタバレありとでも書いとけば
524名無しさん@初回限定:03/11/09 13:42 ID:JvXisY3M
俺もC†Cの奴を考えていたが……先を越されたか
525名無しさん@初回限定:03/11/09 14:00 ID:0fW90dOD
まあ、新作は熱いうちに書けってことで。
526告白に至る病(中) 1:03/11/09 22:14 ID:6j1Nzfu4

 二人とも口を開かなかった。街燈が二人の行く手を照らしていた。
その遥か上を超然と。月がたゆたう。

「お前んちここだから……」
 小鉄の表札が掛かる家の前で晃二郎はそう言った。久方振りに地上に
下り立ったおとねは反応を示さない。ただ俯いて拳に力を込めるのみだ。
 無言が広がる。初夏の夜の空白。
「じゃあ……」
「あ、あのっ」
 覆い被さるようにおとねが声を上げる。
「あのっ、一緒に事情を、説明してくれませんか」
 ああ、と晃二郎は思った。さっきからおとねが身を固くしていたのは
それを心配していたからか、と。同時にそう思い至らなかった自分が
嫌になった。

 幸いと言うべきか、おとねの親は両人共に在宅していた。晃二郎は
真っ先に頭を下げた。自分が付いていながらこのようなことになって
しまって申し訳ない、と。その必要があったのかどうかは分からない。
しかし、それが礼儀だという気がした。詳しい説明をした後で、逆に
頭を下げられた。おとねが迷惑を掛けてしまった、と。そういう事情で
あればこれからすぐに病院へ行く、と。もし入院するようなことに
なれば連絡するので良ければ見舞いに来てほしい、と。そして。
 ―――これから「も」おとねのパートナーとして仲良くしてくれる
ことを切に望む、と。
要求が次第に大きくなっていくことや、これから「も」ということに
疑義を抱かざるをえない晃二郎であったが、ともかくも頷いて、
小鉄家を後にした。
527告白に至る病(中) 2:03/11/09 22:15 ID:6j1Nzfu4
 おとねのことを考えていた。あんた変よと問うてくる親の相手もそぞろに。
飯もそぞろに。風呂もそぞろに。生まれて初めて。嫌悪以外の感情で
おとねのことを考えていた。
 ベッドに転がり込む。目だけを動かして窓越しに空を見る。
無限に広がるノスタルジア。
 晃二郎。こうじろう。晃二郎! 晃二郎っ。こーじろー。晃二郎? こうじろー。
――――――晃二郎。おとねが自分を呼ぶ声。その表情。それが最も変化した点だ。
もう、戻らないのか。驚く。自分は戻ってほしいのか? ……分からない。
自分は戻ってほしいのか、ほしくないのか。そもそも自分はどうしたいのか。
 自分がおとねに求めることは何なのか。
 彼岸に渡ったおとね。ここにいる自分。そのことだけが、頭の中をぐるぐると回る。

 翌日。
 朝のショートが始まるギリギリ、晃二郎はそのタイミングで教室に雪崩れ込んだ。
ようーとか、はよーとか、テキトーに交わされる朝の挨拶。
挨拶して、相手が一様におやっという表情を見せる。言うまでもない。
晃二郎の傍におとねがいないことを、誰しもが訝しがっていた。
 
 担任が前の扉から入ってきて教壇に上る。チャイム鳴ったっけ。のんびりと
思いながら晃二郎は席につく。いつも通りの、とりとめのない、どうでもいい類の
伝達事項が告げられ、最後におとねが入院したということが付け加えられた。
教室の空気はざわついた。
528告白に至る病(中) 3:03/11/09 22:17 ID:6j1Nzfu4
 ショートから一時間目が始まるまでの短い時間。晃二郎の周りにクラスメイトが殺到した。
「どーゆーことだよ」「つか、小鉄の容態は」「いつの話だ」「納得のいく説明を」
「別れたんじゃなかったのか」「おとねちんの皆勤は」「今の心境は」「いつになったら
復帰する予定なんだ」
「知らん」
 晃二郎は全ての質問をその言葉で薙ぎ払った。おとねがなぜ病院に行ったのか、
入院しているというのなら、なぜ入院しているのか、その原因くらいは知っている。
しかし、それ以上のことは何も知らない。語る気もなければ、語る言葉も持たない。
 そうやって、クラスの連中をテキトーにあしらっていると、何人かの取り巻きに
押し出されるように、「あ、後でいいよぅ」とか言いつつ、クラス委員長であり、
おとねの親友でもある、橘美空が晃二郎の前にやってきた。
「あのね、金田君。そのう、おとねちゃん大丈夫なの?」
「いや、ごめん。本当に知らないんだ」
 記憶喪失。昨日のおとねの状態は音に聞くソレであるように思う。もし、仮に
おとねが記憶を、今までのことを思い出せないようになってしまったら、おとねの
姿をしたあの女の子をおとねと呼んでいいのか。そう呼べるのか。記憶を認識でき
ないその個体がおとねであるということ。
 おとねがおとねであるということそれは何によって規定されるのか。
 不確かだ。何もかもが。
 そんな状況で自分が訳知り顔で何かを語る権利などもっている筈がない。
晃二郎はそう思った。

 放課後になって、美空はおとねとも仲の良い友人二人と一緒に、晃二郎に話し掛けた。
もしも晃二郎がおとねの見舞いに行くというのなら、それに同伴させてもらおうと
考えたのである。
529告白に至る病(中) 4:03/11/09 22:18 ID:6j1Nzfu4
 晃二郎も行くかどうか迷っていた。おとねは入院したという。晃二郎が真っ先に
思いついたのは市の中心から少し離れたところに位置する県立の総合病院である。
昨夜、おとねの両親はその病院へ行くと言っていた。しかし、昨日の今日でその後の
経過を知らされたわけではない。家に帰れば何かしらの連絡があるかも知れないが、
それからだと面会時間に間に合うかどうか。さらには漠然と。自分が行く必要なんて
あるのか。そんな考えもよぎる。
 だから、橘美空とその友人の申し出は自分の心を説得するための口実としてありがたかった。

 県立病院の最寄りの駅で下車して、緩やかな坂道を登る。日中には猛威を振るっていた
太陽も今ではすっかり翳りを見せている。チチチと虫が鳴く声がする。
「金田くん、やっぱりおとねちゃんの事が心配?」
 いつもの、とりとめのない、女の子たちの話が途切れた瞬間の不意打ち。
「ごめんなさい。心配だよね。当然だよね。変なこと聞いたね、私」
 美空は自分をぽくって叩く仕草をする。
「入院するくらいだし、状態ひどいのかな」
 別の女の子が言う。言葉に操られるように悄然とした雰囲気が広がる。
 晃二郎は顔を上げて、
「大丈夫だって、あのおとねだぜ。地球が滅亡しようとも万物の法則を乗り越えて
私には関係ないもんね、って傲然と言い放つようなやつだ。皆だってあいつが
どうにかなるシーンを想像できるか? オレにはできないよ」
「そうだよね。うんうん、おとねちゃんは無敵だもんね」
 美空が笑う。
530告白に至る病(中) 5:03/11/09 22:19 ID:6j1Nzfu4
 クラス、いや学園のアイドルと目される橘美空は完璧に近い人間だった。
橘家の方針により、そう育てられた。全国模試では常にトップ常連、運動能力も
インターハイで三位に入賞したバレー部の中に混じっても遜色ない実力を持ち、
顔立ち、スタイルの良さは言うまでもない。これだけのスペックを有しながら
彼女は人の前に立とうとはしなかった。驕らない。万事につけ控えめで他人を
たてようとする。そして、柔らかく笑う。
 晃二郎は美空のことが好きだった。いや、ただ憧れているだけかも知れない。
その感情を分かつ境界を晃二郎はまだ見つけていない。
 美空が笑う。親友の無事を祈って。
 その横で。
 晃二郎は胸にぽっかり空いた空白の原因を考えている。

 受付でおとねの病室を聞いて三階に上がってきた晃二郎たちは、居並ぶ個室の
一つから見知った顔が出てきたので声を掛けた。
「あら、晃二郎ちゃん。今ねお宅に電話したのよ。まだ帰ってないっていうから
言付けを頼んだのだけれど、来てくれたのね」
 美空とその後ろに控える二人にも視線を走らせて、
「美空ちゃんも。後ろの方々もおとねのお友達の方かしら。今日は来てくださって
本当にありがとう」
「いえ、こちらこそ、お声を掛けて頂く前に押しかけてしまって。それで
おとねちゃんの容態は……」
 美空の言葉におとねの母は無言で目を扉にやった。つられて全員が扉を見る。
扉の横のプレートには小鉄おとねと書かれた紙が挟まっていた。
 聞き逃すほど小さいため息が流れて、
「ここじゃあれだから談話室の方でいいかしら」
 先導するおとねの母に従って四人は廊下を進んだ。
531告白に至る病(中) 6:03/11/09 22:25 ID:6j1Nzfu4
 晃二郎が土手道での事故を手短に話し、おとねの母が後をうけて、
「一般的に言うところの記憶障害だってお医者さまは仰っていたわ。私には良く
分からないのだけれど、記憶には記銘、保持、再認という一連の精神作用あって、
今のおとねは記憶を再認する、つまり思い出すということができないらしいの。
おとねの中には過去の出来事が長期記憶としてしっかり残ってる。だけどそれに
触れることができない。あなたたちと過ごした時間のことはしっかりおとねの中に
あるのに……」
 そこで言葉が途切れる。おとねの母が四人の顔をそれぞれ見て、
「おとねがあなたたちのことを認識できなくても、友達でいてやってほしいの。
お願いします」
 頭を下げた。下げられた四人は軒並み居心地が悪かった。特に昨日に続いて二日連続で
下げられた晃二郎は卑怯だとすら思った。理不尽だとすら思った。年上の人に、
いつも世話になっている人にこうして頭を下げられて、それを撥ね付けることなど自分には
できない。その頼みごとが可であるとか否であるとかは関係ない。
ただ、卑怯だと、理不尽だと思った。
 その思考を寸断するように、
「大丈夫です。おとねちゃんの友達をやめるだなんてそんなことは絶対ないです。
だから。安心して顔を上げて下さい。そうされると、私、胸が痛いです」
 美空の声がした。晃二郎は澄んだ声だと思った。
 一瞬の間が空いてそれに同意するクラスメイトの声。
「金田君もそうよね」
 突然、美空に水を向けられて、晃二郎は戸惑ったが、程なくしてから頷いた。
「ありがとう」
 おとねの母は嬉しそうに笑う。
532告白に至る病(中) 7:03/11/09 22:26 ID:6j1Nzfu4
「そういえば、」
 取りとめのない疑問。
「何でこの病院なんですか。ほら、おとねん家から近いとこに総合病院って二つ
くらいあるじゃないですか、なのにここって。いや、病院が遠いからどうって
わけじゃないんですけど、気になったんです」
 おとねの母は昔から晃二郎とおとねに向けてきた優しい顔をした。晃二郎と
おとねが一緒になって何で、なんでー、と自分の周りでちょろちょろしていた
遠い過去が去来していた。
「ここにね、私の主治医がいるの。弟なんだけれどね。安心感、なのかな。
他のお医者様がダメだって言ってるわけじゃないのよ。あの時は私もあの人も
動転していたから」
 軽く目を伏せて、
「ふふふ、ごめんなさいね。おとねの主治医は晃二郎くん
だったのにね。風邪の時とかおもちゃでおとねを診断したりして。
あのおもちゃの聴診器とかまだ残ってるわよ」
「ちょ、ちょっと小母さんっ」
「え、金田くんっ、やっぱりそういうエッチなことしてたの」
「最後にしたのはいつなの」
 おまけの筈の二人が水を得た魚のように口を開く。晃二郎が反論しようにも
次々と繰り出される波状攻撃の前に手も足も出ない。
「はい、今日はどうしましたか」
「……むねが、むねがきゅんってするんです。せんせいのことをおもうと。むねが」
「それはいかん。さあ、この聴診器で何の病か特定して進ぜよう、
ささ、お早く胸をはだけなさい」
「……こうですか、ぽっ。はずかしい……」
「おお、そのさ――――――」
「ハイ、カットー。お疲れさん、それ以上は放送コードに引っかかるので、ヤメレ」
 強引に割り込んで。ため息をつく。
533告白に至る病(中) 8:03/11/09 22:27 ID:6j1Nzfu4
「放送コード? 今のは心臓か何かの病気じゃないのかな」
 美空が首を傾げて聞いてくる。
「……ひょっとして、素ですか」
「あはは、美空だからねー、その手のギャグにはついてこれないよ」

 おとねは白い部屋で白いパジャマを着て白いシーツを足に掛け白い骨のベッドから
身を起こし、茫洋とした顔つきで窓の外を眺めていた。
「よう」
「あ、」
 おとねはそれだけ言って、嬉しそうな表情を見せたが、すぐにあれ? という顔をした。
「私たち、おとねちゃんと同じクラスで仲の良い友達だったの。覚えてないかな」
 おずおずと入室した美空の言葉に、おとねは申し訳なさそうな顔をして俯いた。
「あ、ごめんなさい。そういう意味じゃないの。おとねちゃんのこと小母さんから聞いた
から自分たちのことを紹介しようと思って。あれこれ考えていたら変なことを言っちゃったね。
本当にごめんなさい」
「こんにちは、おとねちゃん。このそそっかしいのは橘美空って言って、あなたの
親友だったりするのよ」
 美空の後ろにいた女の子が前に出て茶々を入れる。美空はもう、と拗ねた表情を軽く作って、
それに合わせる。
 そして、披露される数々のエピソード。女の子たちのお喋りに花が咲く。
 晃二郎はそれを眺めていた。自分が知らないおとねが確実にそこにいたという事実。
それでも、表情を変えたりしない。おとねが自分の預かり知らないところ何をしていようとも、
それに対する反応を他人に知られたくはなかった。無論、おとねにも。
534告白に至る病(中) 9:03/11/09 22:28 ID:6j1Nzfu4
「それじゃーねー、ラブゲッチューさん」
「かーねーだーくーん、誰もいないからっておとねちゃんに悪戯しちゃダメよー、エロはダメよー」
「うっさい。早く帰れ。つーか、橘さん、あいつらを調教してルクセンブルク界隈の
変態肉屋に売り飛ばしましょう」
「ちょーきょー? へんたいにくや?」
 美空は耳慣れない言葉に首を傾げた。
「うわっ、やっぱり素だ、この人」
「だから、その手のギャグは通じないって、美空には」
「むー、バカにされてる気がするよ」
 話題はあちらこちらしながらも、おとねを含めて全員が打ち解けて、
最後には軽口を叩きまくっていた。
今日、四人でここに来て良かったかもしれないと晃二郎はちょっぴりだけ思った。
 午後七時。面会終了時間まで後一時間は残っているが、美空たちは門限やらの関係で
帰ることになった。晃二郎も一緒に帰ろうとしたのだが、その途端にそわそわしだした
おとねを見かねて美空が面会時間ギリギリまで居てやれないか、とさり気なく言ったのである。

 三人が辞して。部屋は一気に閑散とした。窓の外は既に暗い。淡い黒と濃い紺が
交差し、そこからネオンが生まれてくる。そんなふうに見えた。
 祭りのあと、宴のあと、遊んだあと。そのどれもが切なくて寂しい。おとねは
それを嫌がったのかもしれない、晃二郎がそう思っていると、
「あの、」
 この状態になってからお決まりの、センテンスを短く切る言い回しでおとねは
口を開いた。後が続かない。晃二郎が先を促す。
「あの、ですね。その何と言いますか、」
 真っ赤な顔をがばっと上げて、
「何て呼んだらいいですか、名前」
535名無しさん@初回限定:03/11/09 22:29 ID:stYcAEks
連投防止
536告白に至る病(中) 10:03/11/09 22:29 ID:6j1Nzfu4
「はっ?」
 晃二郎の、呆気に取られた反応は、意味を取りかねた、というより全く意味を
理解できなかったといった方がいい。それぐらい唐突だった。
 目の前のおとねを見る。眉を上げて、口を引き結んで。無意味に必死だった。
晃二郎は苦笑する。
「変なやつだなあ。ひょっとして今日オレの名前を呼ばなかったのはそのせいなのか」
「……昨夜はそれを考えていて眠れませんでした」
「この馬鹿ちん」
 晃二郎はおとねの頬を人差し指で軽く突いた。ぷにぷにと柔らかい。
「ううう」
「おとねはオレのことを何て呼びたいんだ」
「前はどんなふうに……」
「前、以前か。事故の前は晃二郎って呼び捨ててたけどな。別にそれでもいいぞ」
「……こ、晃二郎。だ、ダメです。呼べません」
 ぶんぶんと頭を振るおとね。
「おいおい、記憶障害とか言われてる奴が無闇に頭を振るな」
 おとねは振るのを慌ててやめて、髪もついでに整える。女の子の仕草だった。
「晃二郎さん、晃二郎くん、……晃二郎ちゃん」
「言うまでもないが、ちゃんはやめろ」
「……ダメですか」
「ダメだ」
「じゃあ、晃二郎くん」
「じゃあって。仕方なくって感じですか、おとねさん」
 晃二郎が意地悪く言うと、
「違う違いますようー。仕方なく、だなんて、そんなことないです。嬉しいです」
 うんうんと口に出して頷くおとね。
「こーじろーくん、晃二郎くん、こうじろうくん」
 おとねは歌うように口ずさむ。晃二郎は小さいときにそう呼ばれていたのを
思い出したが、何も言わなかった。
537告白に至る病(中) 11:03/11/09 22:30 ID:6j1Nzfu4

 面会時間が終わろうとしていた。
「おとね、そろそろ帰るわ、ほら、時間だしさ」
「……はい」
「そんな顔するなって。明日もまた来るから」
 その言葉におとねが笑う。この約束だけは守ろうと。晃二郎は思った。

 果たして晃二郎は約束を守り、その一週間後におとねは学園に復帰した。
 復帰当日。金田家では、「晃二郎のせいで」記憶障害になったおとねちゃんが
学園に復帰するのを助ける会が結成され、その綱領の第一は登下校時は晃二郎が
付き人になること、と圧倒的多数の賛成により定められた。
「ンなことできるかっ」
「じゃあ、今すぐこの家を出て行きなさい」
 金田家の頂点に君臨する母はにこやかな笑顔で言った。絶好調時のおとねをも
凌駕するプレッシャー。対するは生活力のない晃二郎。
「おとねさんのお迎えに上がらねばならないので、母上殿、お弁当を用意して頂きたいのですが」
 食卓を挟んでの無条件降伏。しかし、
「晃二郎の分だけないわ。残念ね」
 優しい笑みに一蹴された。

 隣の小鉄家のベルを鳴らす。
「はーい」
 おとねの声。
「……あー、オレだ。何というか、む、迎えに来たぞ。都合が悪いなら先に行くが」
「わ、悪くないです、都合。今すぐ行きます。見捨てないで下さいー」
 ガチャン、かばんーおべんとーはううー。慌てている様子が全部筒抜けだった。
小鉄家の壁が薄いのか、おとねの声がデカイのか。
「お待たせしましたー」
「ん、じゃ行くか」
「はいっ」
538告白に至る病(中) 12:03/11/09 22:31 ID:6j1Nzfu4

「ゆうえんちのですね、ちけっとというものがですね、にまいほどですね、
あるのですが」
 全てが反転した土手道で。あの日のように斜陽に照らされながら。
緊張した面持ちで。おとねは言った。
 手には二つ鞄を提げている。一つは学生の本分である勉強をする為の
教科書やらノートやらが入っていて、もう一つの鞄、こちらは手提げ袋
と言った方がより正確だが、には弁当箱が二つ入っていた。昼休みになって、
購買にメロンパンでも買いにいこうとして、ポケットに入れていたはずの
財布が見つからず、こりゃどうしたもんか、と悩んでいた晃二郎に
「お、おべんとうがあるのです。い、いいいっしょに食べませんか」と
てれてれしながらおとねが提案し、「おとねにしては美味いじゃないか、
明日も頼む」「はいっ」などのやり取りの末に空箱となった一品だ。
 空の弁当箱や箸箱が当たる音が鳴る。カラカラ。赤い世界とその音が
帰り道だということを教えてくれる。
「あー、うん」
 晃二郎は気のない返事をした。気がないのではない。以前、冗談めかした
おとねの誘いに乗って二人で観に行ったという経験はあるが、
いや、それだけに、今のおとねがそう言ってくる訳が分からないだけだ。
「えーと、二人で観るのか」
「もっと用意した方が良かったですか。美空ちゃんに誘ってみるように
言われたのですけど、美空ちゃんも一緒にって誘ったほうが良かったですか」
 おとねは言わなくてもいいことまで口にして、あうあうと泣きそうな顔をした。
「そうじゃない、そうじゃない。ちょっとびっくりしただけだ」
「二枚で、ぐすっ、いいんですか」
「二人で行きたいんだろ、なら十分だ」
「い、いい、いつにしますか」
 大慌てでそう言って。おとねは両の拳を胸の前で力一杯握りしめている。
539告白に至る病(中) 13:03/11/09 22:32 ID:6j1Nzfu4
「ま、まあ、遊園地だろ。色々と回るだろうし休みの日ってことになるよな。
週末か、週明け……、土曜か日曜か。どっちでもいいぞ」
「日曜日っ」
 少し上がって、顔の辺りで待機。
「了解」
 晃二郎の声に、
「ばんざーい、ばんざーい、ばんざーい」
 力が解放された。てのひらをたいように翳すように突き上げられた手。
嬉しいと書き込まれた顔。ぴょんぴょんと跳ねる躰。それらが土手道で影絵のように動く。
「はしゃぎ過ぎだ」
「うれしーですよー。デートっ。ですもん」
「デート?」
 呟きは疑義を問うている。
「違うんですか」
 おとねの躰に充満していたはずの力は急にどこかへと霧散した。
「いや、何というか……」
 晃二郎が言い淀む。デートなのか、これが。そうだと言うのなら、
過去におとねと映画を観に行ったこと、遊園地や動物園に遊びに行ったこと、
ショッピングモールで肩を並べて歩いたこと、それらとの差異は一体
何だというのだろう。
 おとねとデート。実感が湧かない。難しく考えているわけでも、
固く考えているわけでもない。根本的に何かが違うのだ。そもそも晃二郎は
おとねを女の子として識別してきた過去がない。自分の嫌な部分の半身。
性別を超えて、そう思ってきた。そう思わざるをえなかった。
今は、どうなのか。記憶を想起できなくなったおとね。女の子に
なってしまったおとね。確かに、今までのような関係ではない。
だけど、絶対的に。
「実感が湧かないんだよな」
540告白に至る病(中) 14:03/11/09 22:34 ID:6j1Nzfu4
 晃二郎が意識を現実に向けた時には、傍におとねはいなかった。
「おとね?」
 辺りを見回す。随分と後ろにぽつんと人影がある。
「今日は先に帰っててくださーい」
 手で輪を作って、声を張り上げる。
「デート、やーくーそーくー、ですからねっ」
 おとねは元来た道を取って返した。
 晃二郎は間の抜けた表情でそれを見送る。
 そして、一言、
「そいや、どこの遊園地なんだよ」

 先の晃二郎の呟きは、結局のところ、デートじゃないんじゃないのか、
などという良く分からない、曖昧模糊としたものに過ぎなかったが、
おとねにとってみれば半ば拒絶されたに近かった。今日どころか美空に
チケットを渡されて作戦を発起された瞬間からどう切り出そうかと悩み続け、
艱難辛苦にめげそうになりつつも、やっと口にした一言。承諾されたと思い、
天に舞い上がったのも束の間、「デート?」と返された。
うわーんと声を上げて今すぐ泣きたかった。しかし、そうしたところで
どうにかなるものでもないことは、おとねにも分かりきったことだった。
 顔を上げる。こぼれそうになった涙を拭く。

 決戦は日曜日。
 まずは、美空ちゃんに相談しよう。
 そう思った。
541松波:03/11/09 22:51 ID:6j1Nzfu4
「告白に至る病」
>>485-495(前)
>>526-540(中)
 後編が中編に化ける罠。順調にのびのびです。
 つ、次こそは……。
542524:03/11/09 23:33 ID:JvXisY3M
書き上がったけど、相当ネタバレ……どうしよう
C†Cの性質上ある程度のネタバレは仕方ないと思っていたけどちょっとこれは……
何かいいスレとかありませんでしょうか?
ここでやると叩かれそうな予感
543521:03/11/09 23:38 ID:dLzkycba
漏れはまだ書いてる途中なわけですが……ぶっちゃけ
本編やってないと意味不明+未プレイの人が読むと本編の楽しさが損なわれるような気が(´д`;)

避難板にあるC†C萌えスレなんかに投下したほうがいいんでしょうかね?
もしくは葱のネタバレスレかな…。
544524:03/11/09 23:57 ID:/0kb/4Vw
ん〜、内容的にはラバ萌えSSだから萌えスレに聞いてみて良ければそこに落としてみます

それでは ノシ
545名無しさん@初回限定:03/11/10 00:01 ID:CMli9eEa
>541
中篇w うぷ、乙です
前編を読んでから、家飛購入意欲は増す一方なのですが
ネットで調べると、それに水をかけるものばかりw

>542,543
俺は気にしない方だが、表題にネタばれと入れとけばイイとは思うが、
確かにC†Cはネタばれするとちょっと…なゲームだからw
作者さんに任せます
 ネタバレを気にするなら、一旦フリーメールなりで自分ところに送ってくれれば、
保管サイトでUPしてそのURLを張るという手もありますけど。
 もしそうするなら、メアド用意します
まあ、選択肢の一つとして。
547524:03/11/10 00:52 ID:eQnzd9X1
(´-`).。oO(上げる場所が思いつかなくなったからお願いしちゃおうかな……)
(´-`).。oO(さすがにここに貼るのはヤバイだろうし)
548514:03/11/10 02:55 ID:qA/raZJy
>515-518
まったく予想通りで板内の略称だと信じて疑わなかったw
最近新作チェックもしてなかったし…テラルナの新作か。サンクス。
549名無しさん@初回限定:03/11/10 04:57 ID:mEbhfXSs
>541
乙です。後編への期待は増すばかり。
家飛は期待して買っておとねクリアしたところで泣いてごめんなさいしたんですが、おとね
と言うキャラ自体は斬新で気に入っていた(あんな邪悪な幼馴染みキャラが一般的だった
ら嫌だ)んで、その心の隙間を埋めてくれるようなものを読めて嬉しい限りです。
550名無しさん@初回限定:03/11/10 09:05 ID:USdC+CU8
っていうかすでにテキストなら明らかにSSの方が勝っ(ry

(´-`).。oO(ってまぁ、いまさら何を言っても否定する人間の方が少ないだろうけど。


あ、でもアレで出来が良かったら面白かったかも知れないなぁ。
もうちょっと(多大に)練り込んでくれればリーグオブレジェンドみたいになった・・・・・かも・・・・・知れない
551名無しさん@初回限定:03/11/11 00:56 ID:AvB7YJfH
松波さん、でいいのかな…>>526-540の中篇お疲れ様です。
家飛SSというほぼ誰も手をつけていないジャンルでありながら、キャラの心情、描写の細やかさは
納得の一言です、こんな感じのゲームなら買ってもいいかな…なんて思わせてくれる力量は素晴らしい。
実際は…な出来のようですが…
感想、全体が三部構成になったようなので起承転結の承と転の位置にあたり、話としては結末に向かって進む途中の
物ゆえのまったりした雰囲気がありますね。
欲を言えば、もう少しおとねとそれを取り巻く他の人物たちの心の動揺なども書いて欲しかったです。
交通事故と記憶喪失いう非日常に直面した人たちにしては、それをあっさり受け入れすぎのようにも感じます。
まあ、ゲームやってないのでその辺の機微は微妙なところなのですが…
閑話休題、さあ、ここからどう最後につなげていくか、どんでん返しか、あるいはハッピーエンドか…その辺の作者さんの筆さばきが
このSSの肝になると考えます。
ネタに逃げないでしっかりとしたエンドを見てみたいし、またそれが書ける職人さんだと思います。
長らくSS書いてない身としては、余り偉そうなことは言えないのですがね…
最後に…最近の葱板SSの中でも出色の出来になる可能性が大です、頑張ってください。
新作投下まってます。
552松波:03/11/11 03:31 ID:9zuUbJsn
>545さん
乙ありです。家飛は正直キャラしか愛でる部分がないような気がします。
てなわけでおとねちんへの愛が深まったら突撃してみるのもいいかも
しれませぬ。世間ではそういうのを地雷を踏んでサヨウナラとか何とか。

>549さん
はげどーです。私も全くその通りでした。でもってSSに美空を出す為に
彼奴のルートをクリアしたわけですが、……。おとねちんの扱いが
あんまりで、しょんぼりしました。

>551さん
松波っす。
過分のお言葉、恐縮です。今回のSSはオチを最初に思いついて、そこから
遡って書いているからか、中編は特に動かしにくく、本人としては
見返すのも少し勇気がいる次第です。後編は自分自身が納得できるよう
中編でダメだと思ったところを反面教師にしながら書いていこうと思っています。
投稿までは少し時間がかかるかもしれませんが、お待ちいただければ幸いです。
553名無しさん@初回限定:03/11/11 15:16 ID:7p3le1CR
スマソどうでもいいこと聞きたいんだが・・・・・・

>>551はどこを縦読みするんだ?
もしかして斜め読み?



もしかしなくてごく普通に読むのか・・・・・
554睡眠グッズ:03/11/12 01:48 ID:cH7++rWf
しすたあエンジェルネタです。多少のネタバレとか
年代違う等の突っ込みはご容赦下さい。


「ああ、またダメか」
GBCにゲームオーバー画面が表示される。
CONTINUEではなくENDを選んでオレはGBCを机に置いた。
「大体、3面中ボスまでノーミス前提っていうアーケードシューティング
 みたいな有様はいくらなんでも間違ってるだろ」
ハードモードを選んでるのは自分だとかパターン化甘過ぎとかの
自己突っ込みを無視してダメな台詞を吐いてみる。
窓の外を見るとかなり空が明るくなり始めていた。
そろそろ少し前に摂取したカフェインが抜けてもいい頃だが
まだあまり眠くはなかった。カフェイン摂取前に運動してたのも確かなのだが。
一緒に飲んでた流菜も眠れてなかったりして。

いつもの睡眠グッズでも使って寝てしまおうかと思案していると
ノックが聞こえた。開いてると返事するのとほぼ同時にドアが開く。
枕を持った流菜が立っている。見慣れた光景だが非常に機嫌が悪そうだった。
どう言葉をかけるべきか考える。下手に刺激して怒らせるのもアレだし。
555睡眠グッズ 2:03/11/12 01:51 ID:cH7++rWf
「今日は学校ないんだし無理に寝なくても……」
流菜の表情が更に険しくなった。
「学校で教わる事なんて百年も前に完成された物ばっかりだから
 普通の頭の持ち主なら苦しむ方がおかしいって偉い人もいってるし」
「それ誰の言葉?」
「ムツゴロウ」
「おにいちゃん!!」
近所迷惑になりそうなでかい声が響く。
オレは慌てて立ち上がって流菜を抱きしめた。
流菜に拒絶の意志は見えなかったけれど、オレを見つめる目が怖い。
「ごめん。オレが悪かった。謝るから少し落ち着いてくれ」
「おにいちゃんのせいで眠れない」
「わかったわかった。良く効く睡眠グッズがあるから機嫌直してくれ」
カフェイン摂取は流菜の趣味だろうと言う突っ込みは即封印した。

オレはポータブルDVDプレイヤーを取り出した。一端ディスクカバーを
明けて中身を確認する。
中には怒首領蜂大往生特典スペシャルDVDが入っていた。
「睡眠グッズってそのDVDなの?」
「そう。これ見てればすぐ眠くなるよ」
「眠くならなかったら?」
「もっと強力なのがあるから大丈夫」
ならそれにすりゃ良いじゃんと言う突っ込みが有りそうだが
その強力な奴は色々セッティングが面倒なのだ。
556睡眠グッズ 3:03/11/12 01:55 ID:cH7++rWf
「あたし、おにいちゃんの膝の上で見るからね」
「おいおい、オレが先に寝ちゃったらどうする気だ」
「勿論起こしてベッドまで運んで貰うよ」
うーん、まずいな。下手すればオレが寝た直後に流菜も轟沈して
椅子の上で二人で寝てまんまと二人して風邪ひくかも。
「じゃあそこの毛布持って来て。寝かすのオレのベッドでいいな?」
「うん」
ヘッドホン二つを端子に接続し一方を流菜に渡す。
流菜がオレの膝の上に座り毛布を広げるのを待ってオレはDVDプレイヤーの
リモコンを操作した。
メニュー画面で最初から再生を選び一つチャプタを飛ばす。
「これ本当にどどんぱちだいおうじょうって言うタイトルなの?」
流菜が攻略映像と表示された画面を見ながら尋ねる。
「そう。ちなみにシューティングゲームね」
タイトル画面が表示されクレジット音が鳴り機体選択画面になる。
次のエレメントドール選択で突っ込みが来ると思って待っていたのだが
来なかった。目つきが悪いプチパペットって言う説明考えたのに。
もう睡眠効果が現れたらしい。
画面が一面ボスの回転ビット攻撃を映しているころにはもう完全に
轟沈していた。
ヘッドホンをはずし、起こさないように抱きかかえてベッドに運ぶ。
流菜の隣に身を横たえ、どうやったら流菜の運動後のカフェイン摂取の趣味を
変えられるのだろうと考えながらオレは眠りに落ちた。
557名無しさん@初回限定:03/11/12 01:59 ID:cH7++rWf
>>554-556
睡眠グッズ

うっかり上げてしまった。
申し訳ない。
558名無しさん@初回限定:03/11/15 01:11 ID:h3pJzyI5
>>557おつー。 と言いつつ保守
業務連絡〜。メール送りました。

ということで、保管サイト更新が近いです。投稿される方はお早めに
いや、あんまり意味ないけど(w
560それ散るSS(ネタばれあり)-01:03/11/16 01:48 ID:FRkbLFM+
「ごめん」
 それは舞い散る桜のように、私の鼓膜に
 優しく、切なく、空しく響く。
 わかってはいた事だった。だからショックも少ないし、
 次の瞬間には笑顔でかっこよく悲劇のヒロインの一つでも
 演じられる……そう考えていた。
「……一度だけ」
 なのに。
「一度だけ、『もしも』を言わせて下さい……」
 いや。やっぱり――――なんだろう。
「もし隣に住んでいたのが私なら……」
 言葉を紡ぐ度、涙腺がほつれる。
 ヒビの隙間から漏れて零れ落ちる水滴は、脂質と電解質と蛋白質、
 そして蕭瑟を含んでいた。
「もし舞人さんが引越して行かなかったら……」
 一途と言うほど美しくはないけど、ただただ懸命に育んできた想い。
「もし離れ離れになるのが今だったら……」
 悲しみ、焦がれ、悴み、慈しみ、憂い、喜び、妬み……
 そんな日々が――――
「違う物語があったんでしょうか」
  ――――今日で、終わる。


    それは舞い散る桜のようにSS ―――Day-bye, Day―――
561それ散るSS(ネタばれあり)-02:03/11/16 01:49 ID:FRkbLFM+
「……うぐっ……ひうっ……ええっ」
 泣き虫、弱虫、意気地なし。
 この頃の私を表現するには、それだけあれば十分だった。
 そんな子供をからかう子はいても、友達になってくれる子はいなかった。
 だから私はまた泣き虫になる。
『かぐら、泣いてばっかりじゃ何も変わらないのよ』
 お母さんからもそう言われ、半ば呆れられていた。
 それが正しい事は理解してるし、変わらなきゃいけない事も
 承知していた。
 自分が何で泣き虫なのか、よく考えりした。けどわからなかった。
 わからないから、また泣いた。
 怖いものや不安な事に弱い自分。
 激昂する気概も無いのに、開き直る勇気もないくせに、
 泣く事で自分の脆い心を慰める術だけは知っている、奸佞な自分が
 嫌で嫌で……また――――泣いた。
 この日もそうだ。
 子猫が車にはねられたのに。血がたくさん出て、動いていないのに。
 私はただ泣く事しか出来なかった。
 助けなきゃいけないのに。例え獣医の存在を知らなかったとしても、
 誰か助けてくれそうな大人に助けを請うだけでいいのに。
 私は、ただ、泣いていた。
562それ散るSS(ネタばれあり)-03:03/11/16 01:50 ID:FRkbLFM+
「……うわぁぁぁ……」
 気が付けば、次の日も泣いている。
 子猫への哀情、自分の無力さに対するもどかしさ、
 そしてきっと――――負の感情を洗い流す為の自己防衛。
 理由は幾つもあるけど、私の取る行動はいつだって一つだ。
「えぐっ……わあああああっ!」
「おーい」
 そんな私に、声をかけてくる人がいた。
 最初は勿論戸惑った。この時の私がどんな顔をしたのか
 知っているのは――――彼だけだ。
「泣き過ぎだぞ。そんなに泣くから、干乾びて
 マンドラゴラみたいな顔になってるぞ」
「ま、まんどらごら……?」
 この時は意味がわからなかったから、後に図書館で
 調べて、愕然とした事を覚えてる。
 とにかく、これが――――私と舞人さんの出逢いだった。
563それ散るSS(ネタばれあり)-04:03/11/16 01:51 ID:FRkbLFM+
 私は人見知りするタイプだ。しかもかなり重症で、
 両親以外の人に話しかけられると顔が真っ赤になってしまう。
 赤面症というらしい。
 この時も、それは発症していたと思う。けどちょうど夕方で
 私の顔だけじゃなく、舞人さんの顔も真っ赤だった。
 だからなのか――――私は初めて会ったばかりのこの人に
 泣いていた訳を話す事が出来た。
「……子猫?」
 声は震えてたし、何度も詰まったりした。でも舞人さんは
 私の話を真剣に、時に優しく頷きながら――――全部聞いてくれた。
「そっか。可愛そうにな……」
 話し終えた後、舞人さんは本当に悲しそうな顔でそう呟いた。
 でもその表情はすぐに笑顔に変わる。
「なーに、大丈夫だって! 知ってるか? 猫ってメチャクチャ
 身体柔らかいんだよ。車にドーンってはねられたようで、実は
 自ら身体を捻って衝撃を逃がしてるかもしれない」
 子供ながらに、内容は殆ど理解できなくてもそれが励ましで
 ある事だけは感じる事が出来た。けど、やっぱり子供だったから、
 余計な一言で舞人さんを困らせてしまう。
「でも、血がいっぱい……」
 舞人さんから笑みが消え、難しい顔になる。
 暫くして、電球がピカッと光ったような何か思いついた顔になった。
「野良猫は血が多いんだよ。生ネズミばっか食ってるから、
 血は一杯余ってるんだ。だから大丈夫だって! ははは……」
 笑い声が徐々に小さくなって、沈んだ顔になる。
 本当に色々な表情をみせてくれるこの人が、私には眩しく映った。
 私のどこを探しても絶対に見つからないものだから。
564それ散るSS(ネタばれあり)-05:03/11/16 01:51 ID:FRkbLFM+
「だから、元気だそうよ。ね?」
 優しい声。優しい顔。
 私の人見知りが、不安が、恐怖がそれによって
 少しずつ溶かされていく。
「ね、君の名前はなんてーの?」
「……かぐら、です。芹沢かぐら」
「へえ。なんかカッコいい名前だよな」
「そ、そうですか……?」
 名前を褒められたのは初めてだった。
 それ以前に、ちゃんと自己紹介した事だって初めてだった
 かもしれない。
「うん。それで、えっと……友達に……なってくれないかな?」
「え……?」
「いやその、えっと……ほら、ここで会ったのも何かの縁だし。
 いやね、実は僕、友達100人出来るかな計画ってのを立てててさ、
 それで……」
 舞人さんの後の言葉より、一つの単語がいつまでも頭に残る。
 
 友達――――

 人見知りで、泣き虫で、弱くて、そんな自分が嫌で……
 そんな私と友達になってくれる人がいる筈無いってずっと思ってた。
 私は……
565それ散るSS(ネタばれあり)-06:03/11/16 01:52 ID:FRkbLFM+
「ダメ……かな?」
 少し俯きながら舞人さんが聞いてくる。
 私はすごく申し訳ない気分になりながら、同時に
 この機会を逃しちゃいけない、と強く思った。
 友達になりたい。この人と。
 この人と色んなお話をしたい。色んな表情を見たい。
 声を聞いていたい。声を……届けたい!
「ダメじゃないです!」
 大声を出したのは、泣き声以外では初めてだった。
 それくらい必死だった。その声は、想いは――――
 きっと舞人さんに届いたと思う。
「そっか。それじゃあらためて」
 咳払いを一つ。
「飛ぶ鳥を落とす勢いのルーキーが現れた、とそこいらで有名な
 桜坂のプリンス第一候補生こと桜井舞人が君の友達に立候補しよう。
 プリンセス、受けてくれるかい?」
 言葉の意味全部はわからなかった。ただプリンスと言う
 言葉と、『さくらいまいと』が彼の名前だと言う事は
 はっきりと頭に残った。
「さくらいまいと……さん?」
「ああ」
「お友達に……なりましょう」 
「ああ!」
 この時、確かに私は笑った。舞人さんの笑顔につられて。
 そして、友達になりたいと思った人と友達になれた喜びで。
 その勢いでもう一歩踏み込む。
「あの……」
566それ散るSS(ネタばれあり)-07:03/11/16 01:53 ID:FRkbLFM+
「ん?」
「明日も、会えますか?」
「……」
 舞人さんは沈痛な面持ちで黙っていた。
 明日はダメなのかな? そんな不安が過る。
 けど、現実はもっと過酷だった。
「僕、明日引っ越すんだ。だから明日は……会えない」
「え……」
 突然の、本当に突然の宣告。
 欲しかったものが、喜びが……一瞬で掌から零れていく。
「ごめん。せっかく友達になったのに」
 舞人さんの顔は、多分とても侘しそうだったと思う。
 けど、私にそれを見る余裕は無かった。
「でもさ、またすぐ会えるって。
 だからそんな泣きそうな顔しないでよ。ね?」
 確約の無い希望は優しくない。
 子供心にそれは理解していた。
「……無理……ですよ」
 舞人さんが滲む。
「私……泣き虫……だから……っ、弱っちくて……すぐ泣いて……
 だから友達出来なくて……」
 さっきまで優しかった夕陽のオレンジ色が目に痛い。 
「寂しくて……辛くて……それでまた泣いて……っ、
 それじゃダメだってお母さんから言われて……でもダメで……
 今も……っ」
567それ散るSS(ネタばれあり)-08:03/11/16 01:54 ID:FRkbLFM+
 見えるもの、聞こえるもの、感じるもの、全てが痛くて。
 全部怖くて。
「こんな泣き虫な私、大っ嫌い」
 そんな自分が、どうしようもなく嫌いで。
 私は俯いて、また泣いた。
「じゃあさ、強くなろうよ」
「ふぇ……?」  
 その一声に私は顔を上げる。
 涙と夕陽に彩られた舞人さんは、キラキラと輝いて見えた。
「約束。もう泣かないって」
 こんなに弱くて泣き虫で、ろくに人と喋れない私が―――― 
 それは強引で無謀で……この頃の私に果たせるとは思えない約束。
「強くなるんだって。ホラ、指」
 でも舞人さんは『大丈夫、出来るよ』って顔で右手の小指を差し出した。
 反射的に私も小指を差し出し、絡める。
「ゆーびきーりげーんまーん、嘘ついたら髪千本のーばす」
「髪……?」
「そう。前髪だけ千本伸ばすの。目が隠れて前が見えなくなって
 すごく不便だし、なんか幽霊みたいだろ? 針千本飲ませるより
 リアリティがあって怖いから、こっちを採用」
「……ふふっ」
 思わず笑ってしまう。前髪だけ千本伸びてたら、
 確かに幽霊みたいだもの。
「ははっ」
 舞人さんも笑った。優しい笑顔だった。
568それ散るSS(ネタばれあり)-09:03/11/16 01:54 ID:FRkbLFM+
『ゆーび切った!』
 二人で同時に指を離す。少し名残惜しかったけど、
 確かに糸は繋がったと確信していた。
 それが赤い糸だったかどうかは、夕陽に照らされてわからなかったけど。
「それじゃ、明日の準備しなきゃいけないから」
「うん……」
「あー! ダメダメ、そんな顔しちゃ。さっきの笑顔! ホラ!」
 おどけた顔をする舞人さんを見て、私は心の底から笑う。
 悲しいけど、切ないけど……笑う。
「よし。それじゃ……」
 納得したように一つ頷き、舞人さんは大きく息を吸い込んだ。
「ばいばーい!」
 大声で別れの言葉を解き放ち、一目散に私の前から走り去った。
 もしかしたら……もしかしたら、舞人さんも辛かったのかもしれない。
 だから大きい声で紛らしたのかもしれない。
 だから振り返りもしないで走り去ったのかもしれない。 
 私は――――それに答えなきゃいけない――――そう思った。
「うん、ばいばい!」
 舞人さんに届くように。祈るのじゃなく、ありったけの
 力を込めて、大声でそう叫んだ。
「ばいばい……」
 私の目にはもう涙は無かった。
569それ散るSS(ネタばれあり)-10:03/11/16 01:55 ID:FRkbLFM+
「お母さーん!」
 息を切らせて家に帰った私は、真っ先にお母さんのいる
 台所に向かった。
「あら、どうしたの? かぐらが自分から話しかけてくるなんて
 珍しいわねえ」
「あのね、あのね……」
 この日の事を話したくてたまらなかったから。
 そして、すぐにでも聞きたい事があったから。
「プリンス……? プリンスっていうのは、王子様の事よ」
「おうじさま……」
「それがどうかしたの?」
 王子様。そう、あの人は王子様だったんだ。
 私のたった一人の王子様。明日お城に帰ってしまうけど、
 私が強くなればきっと迎えに来てくれる。白馬に乗って。
「私ね、おうじさまに会ったんだよ!」
 その日から、私は強くなるように頑張ると心に刻んだ。
 それだけでは心許なくて、メモ帳に書き込んだ。
 この日の事を決して忘れないように。
 強くなれるように――――
570それ散るSS(ネタばれあり)-11:03/11/16 01:57 ID:FRkbLFM+
 舞人さんと出会って、別れて――――私の中で色んな事が変わった。
 まず、人と話す事が……得意ではないにしろ、
 普通に出来るようになった。赤面症は治らなかったけど。
 そして、その成果はハッキリと形となって現れた。
「青葉ちゃんは料理とお菓子作りが得意……と。メモメモ」
「得意って訳じゃないよ。趣味なだけだよ」
 お友達が出来た。
 森青葉ちゃん。とっても可愛くて優しくて、家事全般もこなせて……
 私よりちょっとだけ胸が大きい、色々と羨ましい女の子。
「しゃらくさいよ。てやんでいこんちくしょうだよ」
 ……たまに、よくわからない言葉を使ったりする。
「かぐら、起きなさい! こんな所で寝てると風邪ひくよ」 
「はにゃ……? ふわ〜」
「また日記書いたまま寝ちゃって。どうせ例の王子様の事を
 書いてたんでしょ。どれどれ?」
「わーっ! 見ないで見ないでーっ!」
 変わった事その2。お母さんとの関係が以前より良くなった。
 変わった事その3。ちょっとだけ賑やかに振舞えるようになった。
「何だ、かぐら。今日は朝ごはん食べないのか?」
「今日身体検査ですって。全く、体重より気にする所があるでしょうに」
「わーっ! わーっ!」
 変わった事その4。ちょっとだけ……。

 そして日々は流れ――――
「かぐら……ちゃん? え! 本当に!?」
 舞人さんは帰って来た。桜坂に、王子様が帰ってきた。

 ――――そう思っていた。
571それ散るSS(ネタばれあり)-12:03/11/16 01:58 ID:FRkbLFM+
 …………
 ……
 …
「ありがとうございました!」
 堪える事の出来ない約束の破棄に、私は隠す事で最後の抵抗を
 試みた。けどそれに意味は無いし、現実は変わらない。
 ただ走る。とにかく走る。自分でもどこを走っているのか
 わからないくらい夢中で走って――――気が付けば家の前にいた。
「……」
 フラフラと歩き、玄関に辿り着く。
 整理した筈の気持ちはグチャグチャのままで、
 それでも私は普段通りの顔と声で、
「ただいま」
 そう言った。
 台所を通ると、そこにはいつもの通りお母さんがいる。
 夕食の準備はあらかた終わっているようだった。
「お母さん」
 私の声に、お母さんは首だけで反応する。
 報告――――義務もないし口にしたくない事だったが、
 私の舞人さんへの想いをからかいつつも応援してくれた
 唯一への人への礼儀は果たさなければならない。
「今日、王子様に告白してきたよ」
「……そう」
 お母さんは何も聞かない。きっと、私の目の周りを見れば
 答えはわかっただろう。でも、もしかしたら……ずっと前から、
 私と同じ時期にはもうわかっていたのかもしれない。
572それ散るSS(ネタばれあり)-13:03/11/16 01:59 ID:FRkbLFM+
「かぐら」
 不意にお母さんが私の名前を呼ぶ。
 舞人さんが昔、かっこいいって褒めてくれた名前。
「何?」
「まだ教えて無かったね」
 そう言いながら、お母さんはゆっくり私の方に近付いてきた。
「今のあなたなら、泣きたい時に泣いていいのよ」
 私の身体がお母さんに包まれる。暖かく、優しく。
「強くなったものね……だから、もういいのよ。
 泣きなさい。思いっ切り」
「っ……おか……あ……っ!」
「お疲れ様」
「……わあああああああああっ!」
 糸は切れた。
 赤くは無かったその糸は、それでも私の血となって
 強さをくれたその糸は――――ゆらゆらと揺れながら、
 私から離れていった。
573それ散るSS(ネタばれあり)-14:03/11/16 02:00 ID:FRkbLFM+
 暫く思い切り泣いた後、私はお母さんから離れた。
 目に映るのは、大丈夫なの? という心配顔のお母さん。
 もう涙は無い。枯れ果てた訳じゃないけど、
 自力で止められる強さは――――何とか身に付けているつもりだ。
 そして、笑顔。
「芹沢かぐら、今日はとっても疲れたので少し休みます!」
 まだ心配そうな、でも少し安心したようなお母さんに
 敬礼して、私は自分の部屋に戻った。

「……」

 窓の外の景色はまだ夕陽に照らされて、茜色を帯びている。 

 それは子供の頃に見た景色に似ていた。

『ばいばーい!』
『うん、ばいばい!』

 とっても、よく似ていた。

「……ばいばい」

 さよなら。
 
 私の王子さま――――

574馬面:03/11/16 02:02 ID:FRkbLFM+
>>560-573
題「Day-bye, Day」(それは舞い散る桜のように かぐらSS)
まず、前回の投稿で迷惑をお掛けした事をお詫びします。
申し訳ありませんでした。
で、今回再びそれ散るSSを投稿させていただきます。
稚拙な文ではありますが読んで頂けたら幸いです。
では失礼します。
575名無しさん@初回限定:03/11/16 03:54 ID:p8tTByKe
Basilスレの諸君!
牽いてはそれ散るファンの諸君!
偉大なる馬面総統閣下に敬意と畏怖の念を示し敬礼!
       ,;:r'   ,_.;=''~ ̄    ~゙''ヽ、
      ;r'   ,r'´            ヽ、
     {i   .;r'
     ゙i;、 {i
      ゙ミ;、,ゞッ-−::‐- 、.、
     ,r:':´ミゞ    ⌒ヽ、'`ヽ、
    ,r'゙;:'r',;';´.,. {` 、`ヽミヾ;、゙:、ヽ
   ,〆;イ ;';' ;'';' ;.l.i'i ゙i゙i;ヾ、`、ヾ、;゙';゙i,
  ;';/'〃'i i; ;i.i :i ;i゙ト、ヽミ巛;、゙; ゙;゙i;'i,;゙i
  〃 /:i :{ :i;{ :{从巛ヾヽミ;_ゞ_;゙i;゙i;゙i;i,゙;'゙i
  ii ム;il l :i:iゝ+トミ;:ヽ`゙,ゞ;,-rミ、!;i゙';,゙;゙i
  {i /'{从 ゙i゙;r';ハ~;゙'j゙ ;⌒: ゙'ゞ=ツリ; i;:};゙;i゙i    っていうか神。
  V {:;i';i゙i゙;゙人`_~ン , ` ー ' 从;i,|゙i;,';゙i.
  ,ト、{; ゙i'li;'i ゙i∧;   -  ,.ィ゙;ソノ,i从゙ ハ
  {! ゙い'li; :';゙;ヽi`>: 、.,ィ´ ,lシソ,リ,八゙ヽハ.
  {!  ヾ,《ゞ゙i';:;r' ´ リ   ,//〃ノバ;,ヘ`゙;人
  ゙i;,  乂゙} i;l:;レ-シ  r' r';/,ツ;/゙`ーミヘゞ、\
   ヾ;_ 二フリ!リヽ、ト.。.┤゙i{レ';/ソ   ;rr'^`ヾ.ヾ\
    ゙~ /リ;.;;ツ ;'^}  ,ヘ、/;/ツ   i'i'   ヾ,ヽ、\
     rソ;ッ' く、.i ノ ,r'ソ;rメ、  ,{; li    ::::ヾ,ヾヽ\
     ,イ,/    ゙i {/r'´,i''i'7 li ;バ li:    '::::::ヾ\\\
   ,〆,r'     :i/  {i:;ii'  i} .::';;ヘli:.  :;,  ::::::{,ヾ\ヾ、;ヽ.
   ;' ;{,i{ . : :; :; : . .l{;..:.:::{i;';{ .;ノ' : :: :: ゙ドi  ゞ、 :::r'゙ハ;;\ヾ、ハ.
   ゙!,;ト、゙i; : :; ;; ;: ; ゙ヾ;::::゙巛;{!,: : :; :; ::人ヽ、::| `i レィぐヾ、ヽ、゙ハ
   ゙!;゙iヾヾ; ; ;; ;; :; ; :ヾ;;,:゙ヾヾ: :; :; :;/ ゙ヾ、ヽ `>'´ ゚。i_ゝヾヾハ、゙i、
576名無しさん@初回限定:03/11/16 10:10 ID:+QBQGrxK
それ散るの! それもかぐらのSS!
ぐぁー生きててよかったー!!
有り難うございます、堪能しました。
>>568の赤い糸のくだりが特に好き。
577名無しさん@初回限定:03/11/16 10:46 ID:/I2/xw5W
で、C†CのSSはどこに投下したんでしょうか?
激しく読みたいです。
578名無しさん@初回限定:03/11/16 11:07 ID:e+2lJ9AU
>>560-573
偉大なる馬面総統閣下に敬意と畏怖の念を示し敬礼!
579名無しさん@初回限定:03/11/16 12:44 ID:pNj3+U/1
>>577
SSスレ保管サイトの人が更新すれば……

>>560-573
かぐらファンなのでとても面白かったです!!


(´-`).。oO(やばい…改行しすぎたかも知れない、3行以上の改行があったら削って2行にしておいてください)
http://members.jcom.home.ne.jp/enseteku/
お待たせしました。保管サイト更新です。

今回の更新分は以下の通りです
○「Day-bye, Day 」(それは舞い散る桜のように)
○「蓮ヶ丈奥地の謎の人工建造物の正体 」(Cross†Channel)
○「睡眠グッズ」(しすたあエンジェル)
○「告白に至る病 」(家飛(カットビ))
○保守ネタその2

なお、>>524氏のCross†ChannelSS「蓮ヶ丈奥地の謎の人工建造物の正体」は
http://yellow.ribbon.to/~savess/20020421/cross.html
になっております。
581名無しさん@初回限定:03/11/16 15:42 ID:ktqkTWvZ
一応指摘

R8icUV3K氏の作品、ジャンルは
うさみみデリバティーズ →うさみみデリバリーズ!!

です。
582nayukifan:03/11/16 17:58 ID:aOKWpWEH
題名:「挨拶回り・ライカ」
 @「斬魔大聖デモンベイン」
583挨拶回り1:03/11/16 17:59 ID:aOKWpWEH
「うむ、この安物の味わい。泥水を啜るような口当たり。屈辱を糧に明日を生きよう
とする活力が沸いてくる……ここでしか飲めんコーヒーだな」
 そう言って、アルはコーヒーを啜った。(こくこく)
「…………………………………………」(ズズーッ)
 俺もコーヒーを啜る。
「この部屋もまったく変わらぬ……調度も最低の品。バッタ屋で買ってもこうは揃うまい」
 言ってアルは、周りを懐かしげに眺めた。
「…………………………………………」(ズズーッ)
「甲斐性の無い所も、以前の汝のまま…………」
「…………………………………………」(ズズーッ)
「感謝するぞ、九郎。妾を昔のままに迎え入れてくれて」
 そう言って、アルは「にっこり」と微笑んだ。
「…………………………………………」
 ガタッ。
 俺は席を立ち、無言でアルの横に向かう。
「何だ、九郎?」
「あのな……」
 アルの傍らに屈み込み、穏やかに笑顔を作って俺は言った。
「うむ……」
「――どの口がそうゆうことを言いやがるっ? この口かっ、この口なのかーっ!」
 俺は両手で――アルの頬を引っ張った。
 ほっぺたぎゅーっ。
「にゃあぁぁぁぁぁぁ!! い、痛い痛い痛い痛い――!」
 ……………。
 ……………。
 ――――アルがいる。アルが俺の傍らにいる。
「怪異を解決」して、今は早朝。俺とアルは懐かしの我が家に戻ってきていた。
584挨拶回り2:03/11/16 18:05 ID:aOKWpWEH
 一段落して。
 再びテーブルについた俺達2人は、手にしたカップからコーヒーを啜っていた。

「ん? 何をまじまじと妾を見ておる?」
 アルが、テーブル越しに怪訝そうな顔をして問いかける。
 ――アルはここにいる、別離の時は終わったのだ。
「あ、いや――別に」
 ――もし、またアルが消えたら……。いや、もうお前無しに生きられないか。 

 アルを見ながら思う。俺とアルとの関係を――。 
 アルは、戦友。背中を託すことのできる奴。
 俺とアルは腐れ縁。離れたくても離れられない運命共同体。
 そして、
「隠すことなどない。いつでもどこでも誰にも恥じることなく、誇りをもって言える。
『アルは俺の恋人だ』と――俺は思った」

「…………相も変わらぬ、お笑い体質だな、汝は」
 諦めたように、アルが首を横に振る。
「???」
「思ったことを、そのまま口に出しておろうがっ……妾もさすがに照れる……」
 俯くアルの顔は紅潮していた。
「おおっ!?」――アルへの想いが、そのまま俺の口から出ていたらしい。
「……ま、本当のことだし良いか」そう言ったのは照れ隠しだったろうか――俺は微笑んでいた。
「まったく、汝ときたら……………………………………」
 だが、そう言った後アルの言葉は続かなかった。
585挨拶回り2:03/11/16 18:07 ID:aOKWpWEH
「アル?」
「汝が……そんなことを言うから、妾は……うくっ」アルの顔が可愛くゆがむ。
「おいおい、泣くなアル。そんな言葉ならこれから何回でも言ってやるって」
 俺はアルの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「泣いてなぞおらぬっ――こ、こら、止めぬか!! 子供扱いするな!!」
 そう言いながらも、アルは楽しそうだった。
 俺たちはそんなふうに、眠る気も無く夜明けまで話し続けていた……。
 …………。
 …………。

 思えば、このとき、今日の運命は決定されたのだろう。
 だが、このときの俺は、まだそのことを知らない――。

 7時。そろそろ、いい時間だ。
「まずは、ライカさんに挨拶に行くか」
「教会だな……。ライカは息災か?」
「ああ。ガキんちょ共々、毎日元気だ。よし、じゃあ出かけるか」
「うむ」
 俺とアルは朝食……いや教会へ行くために部屋を出た。

 戦いの記憶を有しているのは今やアルと俺のみ。それは「世界が正しいこと」の証明、
だから良いことだ。
 しかし、心を通わせるようになった人たちも、もはや一緒に戦い抜いた日々を覚えてはいない。
そのことが寂しくないと言えば嘘になる。
(ライカさんも、アルとは今日が「初対面」か……)
「人の営みとは、たいしたものよのう……」
 俺の思いを知ることなく、数歩前を歩くアルは、町並みを人の流れを見ながら微笑んでいた。
586挨拶回り4:03/11/16 18:08 ID:aOKWpWEH
 教会の前。
「アル、お前とライカさんは初対面だから、俺から紹介するからな」
「うむ。よしなに頼む」
「それで、お前は俺やライカさんの話に併せて、適当に話すか相槌を打ってろ」
「ふむ」
「言葉は控えめにな……あ、それから今日は、外見年齢相応に話してくれ」
「ん?」訝しげにアルが俺を見る。
「齢千年を超すってやつは今日はやめとけってことだ。始めから『妾は――』口調だと、
 ライカさんに理解されにくいだろ?」
「――男の癖にいちいち細かいな、汝は。出世せんぞ?」
「ぐっ……」
「まあ、汝の言う様にしよう。汝に任せたのだからな」
 そう言うと、アルは微笑み、口を開く。
「お、おはよ……九郎お兄ちゃん……(ぽっ)」
――そこには、一人の恥ずかしがりやの女の子がいた。
「おっ!? やるな、アル。その調子で頼む」

(……アルが魔道書の精霊だということはずばりと言うのが一番問題ないだろう。
魔術に関係する事象ということでアルを紹介すれば……大学の図書館で出会ったと言って、
だ……『うちの大学』は怪しいことで有名だし……)
 頭の中で言うべきことを考えつつ、俺は門をくぐり――教会の扉を開けた。
587挨拶回り5:03/11/16 18:09 ID:aOKWpWEH
「おはよう、ライカさんっ」
「は〜いっ」パタパタパタパタ――小走りにライカさんが駆けて来る。
「あら九郎ちゃん、おはよう。今日は少し早いのね。朝ご飯はもう少ししてからよぅ?」
「うん、ちょっと早く来たんだ。実は……」
ライカさんの表情が怯えのそれに変わる。
「ひぅっ……」
アルの姿を認めた途端、ライカさんの中で『俺=ロリータ誘拐陵辱犯』の公式が成立したらしい。
(いきなりかよっ!!)

「く、九郎ちゃん…まさか…」
「あー、その、ライカさん。この子はね、アル・アジフって言って魔道書の精霊――」

「『ちっちゃい女の子』が大好きな趣味とは知ってたけど……」
「それでね、ライカさん? この子はね、アル・アジフって言って魔道書の精霊――」

「いつか、こんなことになるんじゃないかって……」
「そうじゃなくて、ライカさんっ。この子はね、アル・アジフって言って魔道書の精霊――」

「私がもう少し九郎ちゃんの変態性欲を理解していたら、こんなことにならなかったのにぃ……」
「ねえ、聞いてる? ライカさんっ? この子はね、アル・アジフって言って魔道書の精霊――」

「ごめんね、九郎ちゃん――九郎ちゃんの役に立てなくてっ。私じゃ、九郎ちゃんの性的欲求を
満たしてあげられなくてっ!」
「頼むからっ、俺の話を聞けよっ!? この子はねっ、アル・アジフって言って魔道書の精霊――」

「そ、そうよ……うんうん、そうそうっ! 九郎ちゃんは性犯罪者なんかじゃないもの〜。
 少女にいたずらなんかしてないのよね〜。ライカお姉さんは、よーくわかってまちゅよ〜。
 ね? だから落ち着きましょ、ね?」……ライカさんの口調は危ない人をあやすソレだった。
「うぐっ……えぐっ……俺の話を聞いてくれよぅ……」
(汝等、頭が不自由か?)そう言いたげにアルが呆れていた。
588挨拶回り6:03/11/16 18:10 ID:aOKWpWEH
 アルが一瞬俺を見て、(仕方が無い、妾にまかせよ)という表情をする。
 そして、アルは、もじもじとライカさんに挨拶した。
「お姉ちゃん……はじめまして……」アルはそう言うと、俺の背中の後ろに姿を隠す。
 おおっ、ナイスフォローだ。アルッ!!

 俺とアルの顔を交互に見て、不思議がるライカさん。
「?? ね、九郎ちゃん……この子は拉致してきたんじゃないの?」
「ぐすっ……違いますぅ……ひっく」
 ライカさんが、ようやく分かってくれたようだった。

「お名前はなんていうのかな?」ライカさんが笑顔をつくり、アルに話しかける。
「アル……アジフ……」
「そう、アルちゃんなの? 可愛い名前」ライカさんの言葉にアルがはにかむ。
「さっきは、驚かしちゃってごめんなさいね。アルちゃん」
(ふるふる)首を振って、大丈夫と言う意思を示し、アルは笑顔を作る。
「にこっ……」
「はじめまして、お姉ちゃんはライカって言うのよ」
「ライカ、お姉ちゃん……」そう言って、アルはライカさんを見つめた。
 ――巨大な猫をかぶったアルのおかげで、良い感じに話が流れ出した。

「それで、アルちゃんは九郎お兄ちゃんとどういうお知り合いなの?」
「あ、あの…………………………………………」
 アルは、おどおどと俺とライカさんを交互に見つめる。
「どうしたのかな、アルちゃん?」
 思いつめたような表情するアル――そして、アルが言った。
「お兄ちゃんは、わたしの………………恋人なの!」
 ――ちょっと待てっ、アル。貴方は獅子ですか? 何故俺様を谷底に落としますですか?
589挨拶回り7:03/11/16 18:11 ID:aOKWpWEH
「あ、あら……そ、そーなんだぁ……?」
 不安げに俺を見つめるライカさんが、目で訊ねてくる。
(本当なの……九郎ちゃん?)

 俺は瞬時にライカさんに「そんなんじゃないよライカさん」と――
 否定する返事を
 返事を
 返事を
 することが出来なかった。――傍らに俺を真摯な目で見るアルがいたから。

 ……部屋での台詞を思い出す。
>隠すことなどない。いつでもどこでも誰にも恥じることなく、誇りをもって言える。
>『アルは俺の恋人だ』
(うあー……)

(妾は、汝の伴侶であるなっ?)
 アルが俺の右腕の袖をぎゅっとにぎり、上目遣いに俺を見る。
(言って欲しいのかよっ、俺に!?)
 捨てられた子犬のように、いたいけな瞳で俺を見つめるアル。
(それがお前の望みなのかよ……)
 俺の気持ちを押すように、俺を見つめるアルがこくりと頷いた。
「っ………………………………………………」
「九郎ちゃん?」
(ったくお前って奴は――――やるしかねえんだろ、やるしか……っ!)
 ……俺は覚悟を決めた、谷底に落ちようと。
590挨拶回り8:03/11/16 18:12 ID:aOKWpWEH
「えー……ライカさん……」
「はい?」
「あー、あの……その……。この子はですね……わ……わたくしの……こ、こここここ」
「……コケコッコ?」ライカさんがボケる。
「……鶏ではないぞ」アルが横からツッコむ。
 おまいらワケ分かんねーよ。

「そ、そうじゃなくてぇ……恋人です。ほ、本当なんですぅ……しくしく」
「何だ、その『しくしく』とゆーのは?」小声で不満そうにアルが言う。
「あ、あわわわ………………………………………………………。
 も、もしかしてぇ、2人は結ばれちゃってるのかなぁ?心とかぁ、かかか、カラダとか……?」
 ライカさんが、涙目で俺に問いかける。
(あー、ヤバイヤバイっ! ここは嘘の一手でっ)――俺は嘘をついておくことにした。

「うん……アルは、もう心もカラダもお兄ちゃんのモノ……」
 そう言うと、赤面して俯くアル――うおっ、アルが勝手に答えてるっ!?
「ガクガクブルブル……け、けーさつをおまわりさんを正義の味方を……。いえ、産婦人科をっ!!」
「ライカさんっ。ち、違うって、この子は生娘だよ。乙女だよ……なんだったら調べてもらって
も大丈夫っ」
 必死になって俺は言いつくろう……アルがまだ処女ってのは今ならある意味嘘じゃないし〜〜
〜〜。

「えぅーっ!! 肛虐・口淫・手淫・太股で挟んだ擬似性交で、可憐な少女を白濁液で穢しまく
りぃ〜!? でも、前は処女だなんて……。そんなマニアックなロリコンだなんて……。
 九郎ちゃんが駄目人間に飽きたらず、とうとう犯罪者になってしまいましたぁ〜〜!?」
 何でどいつもこいつも知識がこう偏っているかな、もう……。
591挨拶回り9:03/11/16 18:12 ID:aOKWpWEH
「はっ、アルちゃん……」我に返り、ライカさんが悲しげにアルを見る……。
 アルの身を心配して、ライカさんはアルの両肩に手を置き、優しく問いかけた。
「ね、アルちゃん……。 
 お兄ちゃんに、
 ヘンなモノを見せられたり?
 ヘンなモノをオマタにこすりつけられたり?
 恥ずかしいことを無理やりさせられたり?
 痛いコトされたり?
 ヘンな液をぶっかけられたり?
 ヘンな液を飲まされたりしなかった……?」
「………………………………………ぐずっ」
 アルが何かを思い出して涙ぐみ、ライカさんから視線を背け俯いた(――心あたりがある模様)
 ……マズイマズイッ! アルッ、俺的にそのリアクションは拙いぞおぉぉぉ!!
「アルちゃん――そう……」
 ライカさんが立ち上がり、俯いたままポツリと言った。
「九郎ちゃん……この子に謝らなくて、良いの……?」
「あ、あのねライカさんっ。俺は、俺は謝らなくちゃいけないことなんか――」
「そう……反省して、ないんですね……」
 ――ライカさんが顔を上げ、俺を射抜くように見つめる。
「………………………………………………………………………………………………………………
………………………………………………」
(――びくぅぅぅっ!)

 静かに口を開くライカさん……しかし、その口調は寒々としたものに変わっていた。 
「九郎ちゃん……いえ『大十字九郎』。
 正義を騙るつもりなど毛頭ない――けれど、私はお前を許さない」
 迫力というにはあまりにも巨大――闘気を纏うライカさん。
「ひっ………」つい、俺は小さな悲鳴を上げていた。
592挨拶回り10:03/11/16 18:13 ID:aOKWpWEH
 アンチクロスと向かい合ったときのような、プレッシャーが俺を襲ってくる。
(嘘だろ?? ただのシスターだぞ、ライカさんは……)
「構えろ、大十字九郎――」有無を言わせぬライカさんの物言い。
 そして、腕を十字に交差させ構えをとった。
 我流なのか独特の構え――だが、何処かで見たような?

 どうするよ、どうするよ俺?
(とにかくライカさんに謝る――対人関係クラスタ推奨)
(アルへの性的行為を否定する――人格形成クラスタ推奨)
(両対処を却下。アルが傷つくと考えられる――アルクラスタ分析)
(現場を放棄、離脱せよ――危機警告クラスタ勧告)
 脳内クラスタ間で討論を0.5秒間実行――つーか、何してますか俺!?

 事の成り行きを見守るアルと目が合ったが、
(いや、マギウス・スタイルは拙いだろ)――俺は小さく首を振った。

「征くぞ」――ライカさんが来る。
 一気に間合いに詰めてきて、神技とも思える左右のパンチの連打(迅いっ!?)
 上半身の動きでパンチをかわす――5発中1発がヒット、一瞬俺の意識がとぶ。
「っ……!」
 俺は、必死に腕でガードを固める。
 ――ライカさんの回し蹴り。
 ドゴッ! 俺のガードを掻い潜り、左側頭部にヒット。
(ガードがつくる死角から来て、軌跡を変える蹴りだって!?)
 俺はかろうじて倒れなかったものの、もう体は動かない。
593挨拶回り11:03/11/16 18:15 ID:aOKWpWEH
 そこに、弱った俺にとどめの一撃を加えるべくライカさんが翔んだ――。
「断罪・キーック!!」
 ――刹那、俺は考えた。
(何でヒーローって必殺技を出すとき、技の名を言うんだ?――いや、俺も言ってたけど)
 ……役に立たない考えだった。

 ライカさんの脚先が俺を襲う。強烈な衝撃が胸部に、腹部にはしる。
「げぶぁあああああぁぁぁぁぁ―――――」
 浮遊感。
 衝撃。
 俺の体は教会の扉さえもこじ開ける。
 ――外にはじき飛ばされ、俺は地面に叩きつけられた。
「ううっ……」
 地面に突っ伏した体を起こそうとするも……俺はがくりと力尽きる。
 ――ここが採石場だったら、この瞬間、俺は爆発していたにちがいない。
594挨拶回り12:03/11/16 18:17 ID:aOKWpWEH
 しばらくして。
 教会を出てきたアルが、地面に伏し荒い息をする俺に駆け寄ってきた。
「……九郎……九郎! 大丈夫かっ?」
「……なんとか……な」

「ライカには、妾が事情を説明しておいたぞ」
「…………!?」
「案ずるな。ライカは妾の話を理解したぞ――特に問題も無く」
「なんでやねんっ!? …………げほっげほっ」
 畜生……俺の努力が報われないのは、何故?

 アルが申し訳けなさそうに言う。
「妾の言葉が足りずに、汝には悪いことをしてしまったかもしれぬな……」
「しかしな――」
 アルは、満面の笑みを浮かべて
「汝の言葉、妾はとても嬉しかったぞ」
(そうか……アル)
 その瞬間、俺は理解した――「俺はアルの喜ぶ顔を見たかったのだ」と。

「はははっ……」
 そして俺は、思わず苦笑していた――これからの楽しくも困難な日々を想いながら。
595名無しさん@初回限定:03/11/16 18:17 ID:KRj51zPt
連続?
596nayukifan:03/11/16 18:19 ID:aOKWpWEH
題名:「挨拶回り・ライカ」
 @「斬魔大聖デモンベイン」
今更ですが、以上です。
597名無しさん@初回限定:03/11/16 18:22 ID:KRj51zPt
>>596
乙です
リアルタイムで読んだのは初めてー

>>587のライカさんの反応が本当にそれっぽくてワラタです
あと巨大な猫w
598名無しさん@初回限定:03/11/16 18:24 ID:wFH1OlBN
おもろかったです。
ライカさんの戦闘モードに少し理由が欲しかった気もするけど。
「挨拶回り・ライカ」とあるなら、他の連中も期待して良いのかな?
599名無しさん@初回限定:03/11/16 20:57 ID:p8tTByKe
じゃあ次は西博士だな
食堂でバッタリ会ってロリペド野郎呼ばわりされてブティ切れる九郎タン、と
600名無しさん@初回限定:03/11/16 21:35 ID:L2h41xue
ってか途中で和樹(ry ゲフンゲフンなんでもないです
601名無しさん@初回限定:03/11/16 21:46 ID:3UlApc88
いやいやその前にアンチクロスだ。
マスターテリオン無くしてどのように生計を立てているか。

悪徳弁護士やってるアウグストゥス。
女衒やってるティベリウス。
悪役レスラーのカリグラ。
ヒッキーなクラウディウス。
怪しげなオカルト研究所を開いているヴェスパシアヌス。
武者修行中のティトゥス。

なぜか全員アーカム在住。
てーのを妄想した。
602名無しさん@初回限定:03/11/16 23:38 ID:NHBWUPAi
>>601
アウグトスはむしろ選挙に立候補して怪しげな思想をry
603名無しさん@初回限定:03/11/16 23:59 ID:ecv0tFrd
>602
又○アウグストゥス?
604名無しさん@初回限定:03/11/17 00:02 ID:0rdadTTz
>>602
大十字九郎は腹を切って死ぬべきだ。
また彼はただ死んで終わるものではない。
地球皇帝アウグストゥスが地獄の火の中に投げこむ者だ。
大十字九郎の魔道書、アル・アジフも同様だ。
理由は大十字九郎の巨根が私のプライドを打ち砕いたからだ。
詳しい理由は金枝篇で熟知すべし。
605名無しさん@初回限定:03/11/17 12:21 ID:ARacDC84
乙でした。
いや、久々にデモベSS読んだけど面白かったですな。
ライカさんの反応とかクラスタとか爆笑しますた。
606名無しさん@初回限定:03/11/17 17:28 ID:BgY6hZjg
ライカの妄想マシンガントークが本家っぽくてワラタ
607オレンジポケット 確認行為(01/11):03/11/17 23:12 ID:XTWPpmQM
俺がナズナと付き合い始めてから、はや数ヶ月が経とうとしていた。

幼なじみで、かつての俺にとって、最も近しかった女の子――。
そんな彼女と再会した昨年の夏、俺たちは再び、お互いの心に触れ合うようになる。
古い絆を手繰る日々。それはやがて、俺たちの間の新しい絆になった。
しかし、それは決して、簡単な道のりではなかった。
人々の心の間は距離があるのだ。そう簡単に繋がらない。
すぐ傍に居るはずだったナズナとの距離は、思いのほか遠かった。
逃げるくせに。隠れるくせに。
ここだよ、私はここだよ。早く見つけて、早く助けて――と、か細い声で呼びかけてくる。
なんて厄介なやつ。そうも思った。
――でも。
そんなアイツは、俺のことを、むしろ俺自身よりもよく知っていたのかもしれない。
いや、むしろ気付かされた、というべきか。
俺の心が、こんなにも激しく、綾瀬ナズナという女の子を求めていたということを。
さながら俺は、興奮しきった闘牛だった。
小憎たらしく赤い布をはためかすナズナに、この角を、興奮のままに突き立ててしまいたい。
そんな激情に駆られ、距離を縮めようと猛りつつ走った。
不器用なやり方だった。俺も――そしてナズナも。
ナズナはナズナで、怖くてがたがた震えながら、俺を求めて必死に布を振っていたのだ。
ようやくの思いで追い詰めたとき。
俺は、欲望の赴くまま、好きなだけこの体を蹂躙してやろうと思ったが――同時に。
たまらないほどのいとおしさも覚えた。
ようやく触れ合うことができた、お互いの欲望。それはもはや、とどまることを知らなかった。

この数ヶ月というもの。
俺たちは、呆れるほどの勢いで、お互いの体を貪りあっていた。
608オレンジポケット 確認行為(02/11):03/11/17 23:13 ID:XTWPpmQM
「ひっ…! あっ、ふああっ! やあっ……! んはぁっ……」
 下着の上から、ナズナの陰部に舌を這わせる。
 ほんのりと湿り気を帯びていたそこは、俺の執拗な舌の責めを受け、すっかりと透けてしまっていた。
下着にぴっとりとくっついたナズナの性器の形がくっきりと浮かんでいる。
「ふっ…きッ…! ふやあああっ!」
 そんなグチュグチュになった下着の湿り気と匂いを楽しむため、俺は舌全体で性器をなぶるとともに、
鼻先をクリトリスのあたりに押し当て、ぐりぐりと強く擦りつけてみる。
「きひゃああっ! ダメぇ……ひっ! そ……そっ、そんなに激しくしたらだめえぇっ!」
 下半身に感じる俺の強引な動きに、ナズナは過敏に反応し、悲鳴をあげる。
 舌の方も、性器にこびりついている汁を全部すくい取るかのように大きく動かす。
その動きで、押し当てていた鼻が、陰毛の生えている部分へとずれてしまう。
下着越しでも、肌の上より幾分じょりじょりした感覚があった。
「すごいな、ナズナのおまんこの毛。
 ただでさえ剛毛なのに、スケベな汁でベトベトゴワゴワに絡まって、下着の上からでも痛いくらいだ」
「やっ……! やっやっ……やあああああ! そん…なことっ…! いっちゃやだ………くぅう!!」
 ここからでは見えないが、きっと、顔を真っ赤にして恥かしがっているだろう。
否定の言葉をあげさせないよう、舌の責めを激しくする。
「やあぁぁぁ! もお……っ、あそこっ、ぬるぬる……だよおっ……! 変になっちゃうよおっ……!」
 ナズナの下着をぐっしょりと濡らしているのは、もはや俺の唾液ではなく、ナズナ自身が分泌する、
強くぬめった白濁液であった。粘り気がかなりすごい。
 下着を引っ張り、尻の下から抜き取るような感じでずらした。
 にちゃあ…………!
 性器と触れ合っていた布地は、まるで納豆のように粘りを引いていた。
 外気に晒された性器は、下着に糸を引き、すでに外側のビラビラがめくれ上がっていた。
中の膣口がヒクヒクと震えているのさえ見える。
「ふあっ…はぅっ……! やっ、やぁ……っ、や、やめっ……、そんな…に…見ない……で」
 ――もう、どれだけの回数、その部分を目にしたのか分からないのに――
 ナズナはそこへ視線を注がれるたび、羞恥の悲鳴をあげるのだ。
609オレンジポケット 確認行為(03/11):03/11/17 23:14 ID:XTWPpmQM
 下着に糸を引いている愛液を指に絡め、それを、軟膏でも塗るような感じで、ナズナの性器の周りに
塗りたくってみた。
「い……いやッ!! やっ、ぬるぬるっ……! ぬるぬるがぁっ……!」
 くるくると指を動かすうち、次第に膣口の付近に愛液が溢れてきた。興奮したナズナの奥から
沸き出てくる、気持ちが良くなってしまった証の淫汁だ。
 それをなるべく膣口に集め、泡を立てるかのように、激しく二本の指を動かした。
 くちゅくちゅぴちゅぶちゅぐちゅぷちゅぴちゅ!!!
 愛液にまみれたそこが、激しく水音をあげる。
「……や、止め……っ! そっ……そこっ、そっ、グチュグチュしたらダメぇぇっ!!」
「ダメ? こんなに自分でビチュビチュ汁を吹き出させてるのにか?
ほらすごいぞナズナ、この音、自分で聞こえるだろ!?」
「やああああああっ!! 音、おとぉぉっ!! ひうぅぅぅっ! ふううっ、
ほおっ……ひゃはぁぁっ!!」
 ホイップされて泡だった愛液が絡まった指を、クリトリスまで擦るように動かす。
そして、空いている親指を、ぱっくりとを空いたナズナの入り口に、ズブリと埋めた。
 その指で膣の中をほじくるとともに、クリトリスを一気に激しく擦り上げた。
「ひぐううっ!! ひっ…ふぎっ……ひぃやああああぁぁぁぁっ!!」
 ぱっくりと親指を咥え込んだナズナの体が、ビクン、ビクン、と震えをあげる。
 ぷぴっ、ぷぴっ、と愛液を、股の間から勢いよく吹き出させて、ナズナは体を硬直させた。
 しばしの間、ぶるぶると硬直が続き――そして脱力する。
「……はーーっ、はーーっ……はーっ……」
 荒い息づかいが、聞こえてきた。
「――ナズナ」
 俺はそんなナズナの体を、腰、腹、胸、と、上へ上へとキスして行き、いたわった。
「ん……ふ…………秀晃……」
 まだ半ば放心しているナズナの体を抱え、そして唇へとキスする。
610オレンジポケット 確認行為(04/11):03/11/17 23:14 ID:XTWPpmQM
「ん……んは……んっぶ…………じゅぷ、ぐぷ……」
 軽く、舌を絡めあう。
「ほら、指」
 いったん口を離して、べとべとの愛液がたっぷり絡みついた親指を、ナズナの口にもっていった。
「あぷっ……! ん……ちゅぷ、ぷぶ、んぶ……」
 ほとんど無意識のうちに、指にしゃぶりつき、舐め取り始めるナズナ。
「はふ……んぷぅ……ちゅ、ぴぷ……むぶっ」
 まるで、陰茎にでも奉仕するかのような、執拗な舌使いだった。
「ナズナが自分で出したスケベな汁――美味しいんだ?」
「――ん……もお……っ!」
 放っておくと、いつまででも舐め続けていそうなので、軽くからかってみた。
 案の定、咥えた指を離し、抗議の表情を見せてくれたナズナ。
「ものすごい量だったぞ」
「……ん、んうーーっ、は、恥かしいよう……!」
 ――している時は、俺が驚くぐらいに乱れてくれるくせに。
 ナズナはいつも、自分の痴態を、とても恥かしがる。
 俺が、恥かしがるナズナの姿を見るのが大好きだというのを、汲んでくれているのかも知れなかった。
「秀晃は、そうやって私のことをいつも苛める……!」
 ぷい、と後ろを向き、体育座りのように体を隠してしまうナズナ。
 しかし、尻の割れ目も、膝に押しつぶされた大きい乳房も覗けてしまうため、
その姿は十分過ぎるほどに扇情的だ。まだ、尻の割れ目周辺が、粘液でぬらぬらとしているのがよく見える。
「私、エッチな子なんかじゃないっ。君がエッチすぎるんだよ」
「俺のせいにするかなあ……」
 どっちもどっちだと、内心では思っている。
 たぶん、お互いに。
「あと、剛毛でもない」
「それはどうだろう」
「ほ、本当だよぉ!」
 だって、他のをじっくりと見たことなんてないし。
611オレンジポケット 確認行為(05/11):03/11/17 23:32 ID:XTWPpmQM
「もうっ、知らない!」
 ごろりと横になり、こちらを拒絶するそぶり。
 うーむ。このまま放置されるというのも、なんというか、収まりが。
 下半身の。
「ナズナ」
 そうはさせじと、丸めた背中ごと、抱きしめてみた。
 びくん、びくんと蠢く怒張ごと、体をぎゅっと密着させる。
 ――んっ、と、ナズナが身を震わせたのが分かった。
「……やぁ。もう、背中に当たってるよぉ……」
「ナズナがエッチに悶える姿を見て、こんなになっちゃってるんだ」
「ばっ、馬鹿ぁ」
 身をよじらせる。抵抗しているつもりなのだろう。
 ただ、むしろ擦れて気持ちいいのだが――そこまでは考えているかどうか。
 もう少し、追い詰めてやることにした。
「すごいな、ナズナの体、背中に当たっているだけで気持ちいい。分かるだろ、チンポ、ピクピクいてるの」
「なっ! ち、ちょっ……そ、そんな……!」
 言葉で苛める。
 ナズナは、体を直接責められるもの弱いが、こういう言葉や視線による羞恥にも、敏感に反応する。
 というか、ぶっちゃけ俺が、こういう責め方を好んでいるのだった。
「ナズナのグチョグチョに汁を出すスケベな穴に、入りたい、入りたいって言ってるんだ」
「やあっ! そっ、そういう風に言うの、やっ、やめっ、止めてぇ……っ! はあっ!?」
 こっそりと腕を伸ばして、膝で隠している胸を刺激する。
「……ふっ、ふうぅんっ……! やっ……くっ、んああっ!」
 揉みしだいたり、摘んだりはしない。乳頭の、一番先端の部分を、軽く、
触れるか触れないかという感じで、つま先で弄ぶ。
 乳首が、びくびくと硬くしこってきた。そんな乳首を、ぴん、と指で弾いてみる。
「ひっ、ひやぁあうぅっ!!」
 急な刺激に耐えられなかったのか、ナズナは悲鳴をあげた。
612オレンジポケット 確認行為(06/11):03/11/17 23:48 ID:XTWPpmQM
「へえ。乳首だけでそんな声が出ちゃうのか。ナズナって、本当にエロいな。
口も、乳首も、アソコも。全部エロ過ぎる」
「やあ……や……ぐすっ……ゃぁ……っ……」
 くすぐるような刺激を与えられ続けてたためか、ナズナの声には涙が混じり、
ほとんど消え入りそうだった。
 そんな責めを続けている間にも俺は、ナズナの尻に、すっかり怒張しきった肉棒を擦りつけることを忘れない。
 こんなエロい体のせいで、俺のモノは、こんなになってしまってるんだぞ――と、体で直に伝えるために。
「さ、どうして欲しい?」
 耳元で、息を吹きかけるかのように囁いてみる。
「ど……どうしてって……」
「今、ナズナの尻に擦りつけているモノを、どうしたらいいのかなーって」
「そっ、そんなこと、言われたって……ひやぁう!?」
 つう、と、背筋をつま先で軽くなぞってみると、それに反応し、ビクン、と体をのけぞらせた。
「はああああっ!」
 何度も指を行ったり来たりさせると、とうとう、感極まった声を漏らし始めた。
「やぁ……はぁっ! や、やめてぇ……そ、そんっ……な、いっ、いじわるっ、しないでぇ……!」
 息も絶え絶えのナズナ。
 あまりにも辛そうなので、いったん手を休めることにした。
「はっ…はっ………はあっ……。も、もぉぉ……っ! ひ、秀晃の、馬鹿ぁ!」
 怒られるも、その声や仕草に、力が入っていない。
「悪い。くすぐったかったか?」
「ん……く、くすぐったいというか……か、感じすぎて……」
 はーっ、はーっ、と、息をすっかり乱していた。
 見ると、もじもじと内股を擦り合わせている。
613オレンジポケット 確認行為(07/11):03/11/17 23:50 ID:XTWPpmQM
「……そんなに私のこと、苛めたい……?」
「うん」
 ナズナの問いかけに、俺は即答する。
「ナズナの口から、スケベな言葉が聞きたい」
 あまりにも率直な言葉に、ナズナは思わず、ぷっと笑いを漏らした。
「もう……馬鹿」
 せっかく高めた気分を、冷ましてしまったかも知れない。
 でも、これでいい。
 別に、本当に苛めたいというわけではないのだ。
 お互いに、気分を盛り上げて愛しあえれば、それで良かった。
 刺激も必要ではあるが、それ以上に大切なものがある。
 ましてや、俺がこうして、ナズナを言葉で責めるのはいつものことで――
 それはもう、「いつもの行為」の確認のようなものだった。
 俺が求めている行為に、ナズナが、答えてくれる。
 それは――好意の、確認作業だった。
「あんまり……じっと見ないで……ね」
 ナズナは、上体を起こすと、こちらに尻を向けて四つんばいになった。
 尻を、高く持ち上げる。
 ぱっくりと割れた双丘の間から、菊座と、べっとりと愛液をこびり付かせた、
開きっぱなしの性器が丸見えになった。
「お……お願い……します……」
 恥かしそうに眉をひそめつつ、ナズナは、ゆっくりと言葉を発した。
「わ、私の……おまんこに……、秀晃の…を………入れて、下さい…」
 もう、いちいち言わなくても、俺の求める言葉で、迎え入れようとしてくれる。
 いとおしさと共に、ちょっとした感動さえ覚えた。
 ――いつもならば、クリトリスに亀頭を擦りつけたりと、さんざん焦らすところなのだが。
 ナズナの豊かな双丘を掴み、陰茎を入り口にあてがうと。
「ナズナ――っ」
「んっ――んはああああぁぁっ!」
 ゆっくりと、熱くぬめった肉壁の中に、陰茎を埋めていった。
614オレンジポケット 確認行為(08/11):03/11/17 23:50 ID:XTWPpmQM
「はあああっ! ああっ! ひっ、ふああっ」
 軽く腰を動かす。もう十分に高まっていたナズナには、それだけで十分に刺激が来るようだ。
 じっとりと湿り、ひくひくと蠢くナズナの膣内。
 その中の、肉壁のあちこちを、亀頭のカリの部分でひっかき回すように、小刻みに、
ぐりぐりとかき回しつつ、出し入れを繰り返す。
「うくうっ! ひやあっ……、はあっ、ふうん、ひぐぅうううっ!」
 ナズナの喘ぎ声とともに、ずっちゅ、ぶちゅ、びちゅ、と、粘着質な音が響き渡る。
 結合部に手をやると、びっくりするほどの量の粘液が絡みついた。
「はあああっ! ひっ、ほっ……ふきっ! ……ひっ、ひあああっ、んあっ!」
 ぬるぬるの結合部周囲を、特にクリトリスを中心にいじくり回す。
 結合部からはすでに、ぽたぽたと、次から次へと愛液が滴っていた。そんな粘液をたっぷりと絡ませ、
クリトリスを擦り上げてみる。
「ひいいいいいいっ!! ひぐっ! ひゃああぁぅっ!!」 
 感じすぎるのか、ナズナはほとんど絶叫のような声を上げた。
 そうしながらも、陰茎で膣内を執拗にかき回すことは忘れない。
 もともと、ナズナの愛液は、かなり粘っこく、濃い目の白濁をしている。
 激しい動きの結合部でそれがかき回されるので、ナズナの尻から俺の陰毛にかけては、
にちゃにちゃと白く泡立った愛液が、びっとりとこびり付いている状態だった。
 ひどく淫らな光景に、俺はますます興奮し、さらに腰の動きを激しくした。
「やぁああああぁっっ!!
 だっ、だめだよお、そっ、そん――そんらにつよくしたらだめえぇぇぇっっ!!
 ひっ! ひあうああぁぁっ! んあああっ!」
 涎を撒き散らしながら、悶え狂うナズナ。
 ――もうちょっと、優しくしたいのに――加減できない。
 止められない。
 このままでは俺も、あっという間に達してしまうのは分かっているというのに、
その動きを止めようとは、どうしても思えなかった。
615オレンジポケット 確認行為(09/11):03/11/17 23:51 ID:XTWPpmQM
「ひあうあうあぁぁぁっ! もう……もう、もうっ!」
「ナズナ――! ナズナ、ナズナ、ナズナ、ナズナっ!」
 狂ったように腰を打ち付けつつ、後ろから、豊かな胸を鷲づかみにして、力の限り抱きしめる。
「んはああっ!! ひぎっ、いい、イイッ、気持ちいい、おまんこ、気持ちいいよぉっ!!
 ひやあああぁっ!」
 忘我の狂態。すでにナズナの体にはほとんど力が入っておらず、俺の力だけで体を起こしている。
 抱えられたまま後ろから俺の陰茎で性器を貫かれ、体をびくびくと痙攣させているような状態だ。
「やあああっ! いく、イク、わたしっ、もうっ! い、いぐううううっっ!!」
「俺も、イクぞ、ナズナ――!」
「……う、うんっ! ……来て、来てぇっ、秀晃、ひであきのっ、私の中に、
 せ、せいし、精子ぃ、いっぱいだしてぇぇぇっ!!」
 ――どくん!
「ん――んはああああああああぁぁぁ……っっ!!」
 どくっ、びゅく、びゅぶ、びゅぐ――!
 ナズナの、一番奥に、盛大に精子を噴出させた。
「はあぁ……ふぅっ、ふああうう……はあっ……」
 ひとしきり、ナズナの膣全体が、俺を搾り取るかのように激しく収縮する。
 俺は、ナズナの子宮に、残さず精子を注ぎ込もうと、さらに奥へと脈動する陰茎を押し込んだ。
 絶頂がお互いに収まると――性器を繋げたまま、俺たちはベッドへ、どうと倒れこむ。
「はっ…………はっ…………はっ…………はっ…………」
 息をするのが、精一杯というほどに。
 抱く力だけを、保つ。
 陰茎で感じる、ナズナの中の感触。
 こうして外から抱く、柔らかいナズナの肉体の感触。
 首筋から薫る体臭。荒い息遣い。
 すべてを、堪能した。
 しばらくの間、余韻を味わってから。
「秀晃……」
 お互いの、愛情の確認を、再び求めた。
616オレンジポケット 確認行為(10/11):03/11/17 23:53 ID:XTWPpmQM
「秀晃は、ケダモノ」
「あのなあ……」
 ――それから。
 5回戦(!)にも及ぶ、全力の求め合いを経た後のベッドで、俺はケダモノ認定を受けていた。
「いや、そんなこと言って、お前こそ」
「あー、ひっどーい。私……あんなことも、こんなことも……君がやれって言うから、仕方なく……」
「うう……」
 そんな泣きそうな声で言われては、なんとも言い返せなくなる。たとえ露骨に演技だとしても。
 確かに、行為のほとんどに関して、表面上は俺が強要したという形にはなっているのだが。
「あんな恥かしい格好させられて……あんなエッチな言葉を喋らされて……私、もうお嫁に行けないよ……!」
 泣きまねをしながら、そんなことを言ってくれる。
 しかも――
「秀晃が……秀晃が、責任…………とってくれるんだよねー?」
 そんなことまで言われなければならないというのか。
(おまけに、途中で泣きまねを止めやがった)
 だいたい、お互い合意のうえでの行為というか……むしろナズナの方から求めたのも多いというか……。
 ……しかしまあ。
 行為の最中は、俺がナズナを一方的に弄んでいるというのに、いざ終わると、
どうしてこうも立場が逆転するんだろう……それも、毎回必ず、だ。
617オレンジポケット 確認行為(11/11):03/11/17 23:55 ID:XTWPpmQM
「真似してあげよっか? エッチの最中の、君の台詞」
「う、うわ、絶対やめれ」
「『ふふふ、俺の、ナズナのエッチな体で、こんなになっちゃってるんだ』だってー。
うわー、恥かしー。よくこんな台詞、真顔で言えるよねー」
「やめろと言うのに!」
「やーめない。ほんっと、秀晃ってエッチなんだ。普段はそんなそぶりも見せないのに。
なーに、これって、むっつりスケベって言うんじゃないのー?」
「このっ」
「きゃー、助けてー。秀晃に犯されちゃうー」
 畜生、本当に犯すぞ。
 ……ごめんなさい。もう、弾ありません。
 当然、それを知っての挑発だ。ああ、この女ときたら。
「いいよ……私のこと、犯したいんだったら……何度だって……」
 うっわ、本当に切なげに潤んだ目で誘惑してきた。
 おまけに、全裸の上にシーツをまとって、チラリズムまでご披露してくれる。
 まったく、本当のスケベは、どっちなんだか。
 さすがにもう、下半身的には限界だけど――。
「きゃっ」
 抱きしめて、その感触を味わうことだけなら、いくらでもできる。
「次の時、覚えてやがれよ」
「うん。――覚えてる、ね」
 ――こうして、呆れ返るほどの回数、体を重ねたとしても。
 きっと、飽きることなんてないのだろう。
 お互いの愛情を、確かめ合う行為には。
618ノームサムライ:03/11/17 23:57 ID:XTWPpmQM
「確認行為」
>>607-617
以上、『オレンジポケット』(HOOK)の、綾瀬ナズナのSSでした。
オレポケをプレイし、「ナズナはエロい」という天啓を受けたので、
なるべくえちぃは濃い目にしてみました。
主人公の言葉責めが、なんだか頭が悪い人の域にまで達してそうな勢いですが、
まあ原作からしてそういう傾向があったので、その路線を忠実に誇張する方向で。
……本当は、執筆途中の文章には、

「俺のチンポが爆発するくらいのエロい言葉をナズナに言って欲しいんだ」

なんていう感じの、本当に頭が可哀想な人っぽい台詞が乱舞していたのですが、
なんとか理性を保ち、そのへんは書き直しました。
これはまあ置いておくとしても、突然言葉責め主人公マンセー。

それにしても悲しむべきは、ナズナの人気のなさ。
こんなにエロ可愛いのに、みんなはナズナが性格悪いと言う……。
それがいいのに。
619名無しさん@初回限定:03/11/18 00:02 ID:656skJg/
ここしばらく、投下してくれる神職人が急に増えてきたな。
620名無しさん@初回限定:03/11/18 00:18 ID:o3Gm5FEq
 ∧_∧
( ;´∀`) ちんこたってきた
人 Y /
( ヽ し
(_)_)
621名無しさん@初回限定:03/11/18 00:18 ID:g5hHEoTt
>618
乙。あらまあ、ナズナって人気ないですか。もったいない。

確かに主人公はエロ入ったとたんに頭悪くなる傾向が。
初めてのときくらいあったかいところにお逝きなさい。
冬の学校教室(放課後)でよくそんなことができますねと小一時間
622名無しさん@初回限定:03/11/18 01:12 ID:nkkPmSQo
>>618
オテュカレイ!
オレポケSSもだいぶ貴重だねぇ

エロいけどナズナ人気ねぇもんなぁ。
さりげなくまたオレポケをキボンヌしてみる
623nayukifan:03/11/19 01:07 ID:F/hO8DyZ
597-606
どうもです。
しかし、デモンベインssって、書くの難しいですな…。

618
エロ書くのも不得手なのです。うらやましい…。
624名無しさん@初回限定:03/11/20 09:44 ID:IyguAKLZ
別にエロはあっても無くてもいいのでどんどん書いてください
625名無しさん@初回限定:03/11/24 02:20 ID:jsCGjuHb
ほしゅ
626名無しさん@初回限定:03/11/27 21:17 ID:abzWJEQD
浮腫
627名無しさん@初回限定:03/11/27 23:32 ID:69A1QI5z
超先生ネタキボン…
628名無しさん@初回限定:03/11/29 06:20 ID:p2AQ9ene
保守ついでに。
アニメ版のヤミのSSスレがエロパロ板に立ったよ。
D.C.もあるらしいな。

ヤミと帽子と本の旅人 「隠されし禁断の本」
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1069230664/l50
629名無しさん@初回限定:03/12/02 08:42 ID:jArw8hRT
ほっしゅほっしゅ!
630松波:03/12/03 01:09 ID:0QKOPxuB
 今回のお題はCROSS†CHANNELです。
 激しくネタバレでして、未プレイの方、プレイ途中の方は本編をプレイ
するときの妨げになると思いますので、回避のほど宜しくお願いします。
 コンプした方はぜひお読みください。
631CROSS†CHANNEL ネタバレあり 01:03/12/03 01:12 ID:0QKOPxuB

 黒須太一にさよならを告げられる夢を見た。
 黒須太一を探したが、見つからなかった。
 支倉曜子の始まりと終わりだった。
 
 部屋は暗かった。
 窓を閉めている上にキッチリと施錠しているせいか、空気は凪ぎ、どんよりと
澱んだ空気が辺りに満ち満ちて、外からの来訪者なら思わず顔を顰めてしまいそ
うなほどであったが、この空間唯一の存在者である支倉曜子は、特に気にした様
子もなく、部屋の奥に備え付けられたベッドに凭れかかって意識をなくしていた。
 空虚で、虚無で、ガランドウな時間。その中にあって、支倉曜子は死んだよう
に動かなかった。指先を微動だにすることもなく、僅かに喉と胸の辺りを時々思
い出したように動かすことで生きていることを証明していた。
 午前零時過ぎ。当然のように外に明かりはない。
 支倉曜子は手折れたように固まっている。無論、死んでいるわけではない。意識
なく、座っているところからドアまで乱雑に散らされた無数の写真の一枚へと視線
を投げつけているだけの話である。もう二日ほど同じ姿勢でいる。この状態が続い
たら死ぬことは明白であるが、それはそれでいいと思う。生きたいと思わずに生き
ている人間など死んでいるも同然だ。そう思いながら、自分で死を下さないはその
気力が残っていないからであって、恐れているわけではない。ただ、最期ぐらいは
この部屋で迎えたい、と執着をみせたのは事実だ。だから、黒須太一の部屋で、
今まで撮り貯めてきた黒須太一の写真をばら撒いて、それを眺めている。ただ
ぼーっと眺める段になって何やら小さな幸せを手に入れたような気がしてきて、
少し笑った。時間が経ち、茫洋とし、そう思考したのはいつのことであったか
良く分からなくなっていった。
 
632CROSS†CHANNEL ネタバレあり 02:03/12/03 01:13 ID:0QKOPxuB
 ドアが開いた。
 ギィ、と軋んだ音を立てて、ゆっくりと。
 部屋に広がる濃密な闇の気配が外へと漏れ出す。空をたゆたう月も角度の
関係からか部屋には射し込まず、侵入者が何者であるのか特定できない。
侵入者は暗がりを纏って軽い足取りでベッドまで歩を進めようとして、フロー
リング一杯に散らばる写真を踏みつけた。くしゃ、という音がした。
 侵入者が立ち止まり、足元を凝視する。ポケットから何かを取り出そうとして、
「あっ、あっ」
 支倉曜子の口から切り取ったように声が漏れた。悲痛さを訴えようとしている
ようにも聞こえるし、ただの喘ぎ声のようにも聞こえる。声を機械的に漏らし
続けるその口元にすっと手が添えられ、上下した。頬を撫でられている、と
支倉曜子が理解するまでに数秒を要し、相手を認識するのにさらなる時間を要した。
幾つかの鏖戦をかいくぐり生き残ってきた彼女の本質を知る者にとって、
その鈍感さは想像を絶することだと言っていい。
 相手の貌を捉えて、――太一、と彼女は口を動かした。しかし、喉が掠れて声に
ならない。
 黒須太一は支倉曜子の頬にやっていた手をそのまま首筋に移行させて、
「曜子ちゃん、何でオレの部屋に?」
 沈黙。
 黒須太一は手持ちのマグライトで支倉曜子を照らす。 
 ひどい有様だった。服はヨレヨレ、肌はかさつき、髪は油にまみれていた。
ゴミ置き場に捨てられた壊れた人形みたいだった。
 黒須太一は特に何も言わずに支倉曜子の髪を梳いた。
 途端に支倉曜子が震えた。変な声を上げた。開ききっていた瞳孔が明反応を
起こしたみたいに小さくなった。目の縁が大きく揺らいだ。闇の奥から手が
黒須太一の首に伸びて、その後ろで交差した。
633CROSS†CHANNEL ネタバレあり 03:03/12/03 01:15 ID:0QKOPxuB
 思わぬ展開に驚いた黒須太一は、身をよじり仰け反った。しかし、実際は、
ただ抱きつかれただけの話だった。
 とは言うものの、その力は尋常ではなく、巨大な万力で締めつけられる
ような圧力が掛かり、躰が嫌な音を立てたこの上は是非もなく、
「曜子ちゃん、ギブギブ、痛ひ痛ひ、やさ、や、優しくしてえぇぇぇ」
 と情けない声を上げた。
 震えが、返ってきた。
「曜子、ちゃん?」
 涙。
「たいちがっ、わたしっのこときらいってっ」
 支倉曜子の左手の指が黒須太一の肋骨に食い込む。
「うらぎりものって」
 支倉曜子の熱気の篭った呼気と涙が黒須太一の鎖骨に降りかかる。
「さよならってっ」
 支倉曜子の両の腕が黒須太一の胴体と首に絡みつく。
「わたしのことっ、いらっないって」
 この上ない密着。
「っ、たいちっ、た、たいちっ、ったい、ち」 
 泣き声。
「ほんとっに、たいちっ、がぁ、いな、いっなかったっ、いなく、
どこっにも、さっ、さがっ、した、のにっ」
 止まらない震え。
「、さよっ、ならって、さっ、よならってっ」
 赤子のように泣き続ける支倉曜子の背中。
「大丈夫」
 黒須太一は無意識のうちに、撫でさすっていた。
「[この]オレは、曜子ちゃんの傍にいるから」
634CROSS†CHANNEL ネタバレあり 04:03/12/03 01:16 ID:0QKOPxuB
 どれくらいそうしていただろう。泣き声がいつのまにかしなくなって、
気がつくと、兎みたいに赤い目をした支倉曜子の顔が目の前にあった。
互いの躰はぴったりと密着していて、要するに抱き合ったままだった。
 熱い。部屋の熱気に触れ合う部分から伝わる相手の体温。ぷにぷに。
二つのふくらみに代表される女の子特有の柔らかさ。
「曜子ちゃん……」
 支倉曜子は小さく頷き、おもむろに目を閉じ、唇をついと突き出す。
そして――――、
「じゃなくって」
 ていっ、という掛け声とともにおでこにチョップを見舞う。
「……太一、痛い」
「痛い、じゃないよ。何でいきなりそうなるかな」
 ぷにぷにとしたほっぺをうにょんと引っ張る。涎がだーと垂れてくる。
「ひゃいひ、へっひなほーはほはふんはほん」
「分からん」
 手を離す。
「太一、えっちなオーラを出すんだもん」
「ばっ、そんなわけないでしょ。だって、曜子ちゃん、くさいんだもん」
 ――――だもんだもんだもんだもんだもんだもんだもんだもんだもん
だもんだもん。
 支倉曜子は後ろを向き、体育座りをし、顎を膝の上に乗せた。
「太一が虐める」
 のの字。
「言いがかりだよ、それ。ただ、現実を口にしただけだって。ほんとだって。
つーか、自分じゃ分からないかもしれないけどね、マジでくさいよ? 
掛け値なしに。今の今まで良く我慢したなあって自分で自分を、」
「太一、陰湿」
635CROSS†CHANNEL ネタバレあり 05:03/12/03 01:17 ID:0QKOPxuB
「くっ」
「嫌い、裏切り者、さよなら、いらない。それの次はくさい。
ねちねちと言葉責め。私のぴゅあはーとが壊れそう」
 ピュアハートなどと、ありもしないくせに、しかし、こうしていても
埒が開かぬ、ここは一歩引いて、
「ヘイ、そこのプリティガール! 臭いってのは取り消しマース、だから、
とっととバスルームへ行きやガーレ!」「でも、好きな相手ほど虐めたくなる。
太一は私のことが好き、と」
 二人の声が重なる。支倉曜子が振り返ると、黒須太一は出来損ないの
般若面みたいな貌をして、
「とりあえず風呂に入れ。水風呂に」
 と言った。

 黒須太一は封を開けていない2Lのペットボトルを五本差し出した。
そしてバスルームを指す。
 支倉曜子は受け取って、ナトリウムやらカルシウムやらの含有量が
記されたラベルをしげしげと眺めて、
「硬水より軟水の方が、」
「うおっほーん、曜子ちゃん、それってさー、断腸の思いで差し出した
飲み水なんだけど。足りないってのも言いっこなしね」
「太一、亭主関白」
 嬉しそうに言う。
「そういうのは結婚してから言って下さい」
「け、」
「断っておくけど、プロポーズじゃないからね。そこのとこ宜しく」
 その言葉に支倉曜子はむぅー、という表情をつくる。それも一瞬の
ことで、すぐに真顔に戻って、
「太一、一緒に、お風呂」
「やだ」
「襲わないから」
「……曜子ちゃん、それ、女の子の言う科白じゃないよ……」
636CROSS†CHANNEL ネタバレあり 06:03/12/03 01:18 ID:0QKOPxuB
 その後も、バスルームに押し込んで一服しようとした黒須太一を、
太一がどこかいっちゃう とか、私、また捨てられるの? と良心の
呵責に訴えるような言葉でバスルーム前に引き留め、私は太一の
姉的存在さん〜、婚約者さん〜、一心同体さん〜、でも〜、アニメで
妹がいっぱい出てくると、指を咥えてむうむう唸る太一の為に妹さん〜、
と思わず耳を塞ぎたくなるような言葉に節を付けて歌い出したり、
最近、太一が抱いてくれない、倦怠期、と言い出したり、太一に
お姉さまって呼ばれたい、とロザリオを投げつけてきたり、太一が
気持ち良くイけるように(検閲削除)を(検閲削除)する方法を、
研究しているのだけど、太一は(検閲削除)と(検閲削除)だったら
どちらの方が? と直球で訊いてきたり、とセクハラ大魔王として
フラワーズを中心として恐れられている黒須太一の根幹を揺るがし
かねない発言を連発してきた。
 あれを放置して、もし皆の前で口にされたら、今まで積み重ねてきた
威信は新宮党が裏切った月山富田城と同様にあっさり陥落するのは
間違いない。
 恥じらい。支倉曜子に足りないものは紛れもなく、これである。
普段はそんなこともないのだけれど、今はどうやら完全に箍が外れて
しまっているようで、看過できる状態ではなかった。しかし、
支倉曜子に恥じらいを求めるというのは、過去を思い出してみると、
契約、一心同体、ゴニョリータ、根本的に無理な話だ。
 
 かくなる上は、改めてそういう科白を口にできないように恥じらいと
いうものを植えつけるしかない。その為にはどうすれば良いのか。
考えろ、考える、考えた……。
637CROSS†CHANNEL ネタバレあり 07:03/12/03 01:23 ID:0QKOPxuB
「ん」
 いつのまにか周囲が住宅街に変わっていた。ついでに言うと
空の色も違っていて、太陽が燦々と輝く真昼間だった。
 暑いなあ、と思っていると目の前を眼鏡を掛けた年増もとい
女の子が歩いていたので、何気なく話を聞くと、RPGのNPCよろしく
唐突に××商店が怪しいという言い出した。さらに、
「え、出番これだけですか? 投票数が少なかったからって
何ですかっ! これでも私は部長さんなのですよ! あ、ちょっと
どこいくんですか、あっあっ」
 訳の分からないこと喚いていたが、あれもプログラムの一種だろう、
と勝手に解釈して、先へと進む。
 ××商店ではみらくる☆■■■■と名乗る小娘がラムネをんぐんぐ
飲んでいた。喉がこくこく動く。蠕動ってやつっすか! 何かエロいぞ! 
凝視する! 穴が開くほどに! 開いた!
「開きませんよっ」
「何だ、つまないのー」
「せんぱいも何かジュースを飲みに? え、コレですか、見ての通り
カラですよ、渡してくれ? だからカラです、って何か危険な香りが
するんですけどー。気のせいだって? いや違う? もー、何ですか、
結局。え、ビー玉を取り出そうと思っただけ? なーんだ早く言って
下さいよう。渡しますよう。渡しますから、そのビー玉、私に下さいねー」
 ビンの口をじーっと眺めて、おもむろに、
 舐める。しゃぶる。貪る。
「あ――――――――――――――――――――――――――――っ」
「うむ。処女の味」
「やられたようー、犯されたようー」
 うむ、余は満足じゃという表情で、
「で、」
 と紙の在り処を訊ねると、学校へ行くといいことがあるかも、
とぐずぐず言いながら教えてくれた。いい後輩だと思った。先へと進む。
638CROSS†CHANNEL ネタバレあり 08:03/12/03 01:24 ID:0QKOPxuB
 学校に行くと刀を腰に下げた女の子がいて、
「今さら私に何の用があるって言うのよ」
「ニホントウガヒツヨウデ」
「また茶化す気なのっ」
「ヤリタイオンナガイルカラ」
 という訳の分からない会話をした。途端に女の子が青筋を立てつつ、
抜き身を曝したので、何も訊けず終いだったがとにかく逃げた。多分、
先へと進む。
 曜子ちゃん恥じらい大作戦への道が途絶えたにゃー、って作戦だったのか、
としょぼくれて廊下を歩いていると、きがつようそうでちんまくて
つるんぺたんなおにゃのこを発見した。お持ち帰りしてハアハアしたかったが、
このまま襲い掛かると一目散に逃げられるかもしれないので、睡眠薬入りの
ジュースを飲ませられるくらいには信用されようと努力した。その過程で
裏山に祠があるとの情報を得た。そろそろ頃合かとジュースを飲ませようと
したのだが、感づかれ、クロスボウでやっためたらに射られた。命が
惜しかったので逃げ出した。先へと進む。
 裏山を散策すると割合早く祠を発見した。喜び勇んで近づくと、
どこからともなくじゅうせいがきこえる! つうこんのいちげき! 
くろすたいちはあしをうちぬかれた! くろすたいちはうごけなくなった! 
というメッセージが流れ、草葉の陰から、フフフと笑みを浮かべて、
黒くて長い髪をした女の子が鎖を片手に現れた。のっそりと近寄ってくる。
圧倒的なプレッシャーを感じる。考える太一は後ずさり、
きゃーおかされるうぅーと悲鳴を上げた。
「私は太一が傍にいてくれればそれで…」
 鎖がジャラジャラと音を立てる。
 黒須太一は無意識に、
「やだやだ監禁しないでー」
 イヤイヤと首を横に振っていた。
 拒否の言葉も空しく、女の子が地面を這うように駆けて接近してくる。
もうダメかと思ったその時、左右の茂みから男の子が二人現れて、
黒くて長い髪の女の子を抑え込んだ。
639CROSS†CHANNEL ネタバレあり 09:03/12/03 01:26 ID:0QKOPxuB
 顔は良く見えないが、片方は投票数がぶっちぎりの最下位を獲得して
いそうで、もう片方はホモっぽかった。
 て言うか、
「お、お前ら、質問があります! 一つ、こういうゲームに出演して
いいんですか? 二つ、アフレコ現場はどんな感じですか? 三つ、
給金はあっちとこっちじゃどれくらい違うんですか?」
「何の話だよ、何の」
 最下位が嘆息する。
「ピ――――、ピ――――、ピ――――、という感じだ。分かったか、太一」
 ホモがニヒルに笑った。その下で黒い髪が今にも噴出しそうなマグマの
如く暴れている。
「あー、そろそろヤバイかな」
「そうだな」
「短い友情だった」
 しみじみ言う。 
「本当にソレを任せていいのか」
 試すように、黒須太一。それに心外だ、とばかりに、
「当然だ」
 最下位とホモが言う。親指を立てて、
「友情は見返りを求めない」
 最下位に渡された薬草を使って足の傷を癒し、先へと進む。
 友情に後押しされて、祠へと辿り着く。見ると、開き戸には、
初回特典として支倉曜子の恥らわせ方を記した小さな紙を同梱! 
ちなみに初回限定版はロットアップしました、在庫のみです、
お早めに! と書いた紙が貼ってあった。何のことかさっぱりだが、
取りあえず開ける。中には大学ノートが山ほど積み上げられていた。
これは関係ないんだよな、とノートを全部放り投げる。ひょっこりと、
黒須ちゃん寝るとデカデカとプリントされた大きな箱が出てきた。
640CROSS†CHANNEL ネタバレあり 10:03/12/03 01:28 ID:0QKOPxuB
中身を開ける。プラスチックケースに二枚のCD、小冊子やら葉書やらが
入っていた。しかし、肝心かなめの支倉曜子の恥らわせ方を記した
小さな紙とやらが、ない。急いで説明書を捲ったり箱を解体したりしたが、
どこにもなかった。くそ、騙されたか、と祠の内部を注視していると、
縦に走る木目が真ん中の辺りでぷつっと途切れていた。さらに目を
凝らすと色も若干だが、周囲と違った。心臓が高鳴る。木目に沿って
指を擦る。何かが動いた。摘み上げると、茶色の紙だった。ふーっと
息を吐く。焦らせやがって、この捻くれモノめー、と祠を殴った。
手が痛かった。
 唾をごくりと飲み込む。この中に恥らわせ方とやらが。茶色い折り紙を
10cm四方に切り取ったような代物で、風に飛ばされないように、
しっかりと握る。さあ、と自らを鼓舞し、開く。
中には、
 青、
 春。
 たった二文字だった。首を捻った。目を細めてみた。太陽に透かしてみた。
二文字だった。ひょっとしたら遠近法かもしれない。目からの距離を
少しずつずらしていく。遠くから近くへ、近くから遠くへ。
二文字だった……。
 
 気がつくと、メガネを借りようと必死に声を上げる奴がいた。
その奥からはネクタイを求める声。目の前の大男が弁当箱を貸して
くださーい、と声を上げる。そうだ、借り物競争中だった。オレの
獲物は、と握り締めていた手、中、茶色い紙を開いて――――。
目の前が真っ暗になった。口にできなかった。俯いてしまった。
逃げたかった。ありがとうございますー、という声が聞こえた。
641CROSS†CHANNEL ネタバレあり 11:03/12/03 01:29 ID:0QKOPxuB
その声を最後に音がしなくなる。顔を上げる。運動場が陽炎の中で
大きく歪む。白い太陽が上空にある。砂が舞う。ふと、視線を感じた。
周囲を見回すと、どいつもこいつもが、視線を無遠慮に投げて
きていた。見られていた。心拍数が跳ね上がる。本気で逃げたかった。
邪魔する奴は指先一つでダウンさせられるくらいの義憤に駆られていた。
 あの、と声がした。体育委員の女の子だった。可愛い。しかも、
ぶるみゃあだった。借り物は何ですか、と訊いてきた。
 青春。君と青春。
 度し難いほどにクサい科白だと自分でも思ったが、咄嗟のことで
科白が口を突いて出たのだ。疑われるといけないと思い、紙も見せた。
微笑みを口元にたたえ、歯を光らせた。
 逃げられた。
 脱兎の如く逃げられた。五十歩も百歩もなかった。女の子は
見えなくなった。
 途端にギャラリーがせーいしゅんと囃し立てた。
 せーいしゅん、せーいしゅん、せーいしゅん。
 キレた。
「オレと青春がしたいかー!」
 声を張り上げる。
「したくねー!」
 無視する。
「そんなにオレと青春がしたいかー!」
 さらに声を張り上げる。
「だからしたくねー!」
 黙殺する。
「青春したい奴は立てー! 立ち上がれー! つーか、誰か立て! 
エロを青春に変えて、立てよ誰か!」
 ギャラリーを見た。立って声を送っていた連中も勘違いされまい
としたのか、軒並み座り始めた。他方を見た。全員が座っていた。
さらに他方を見た。女の子が数人立っていたが、慌てたように座った。
縋るような思いで他方を見た。いた。一人だけだが、確かに立っていた。
小さくガッツポーズ。ヘイ、そこの、プリ、
642CROSS†CHANNEL ネタバレあり 12:03/12/03 01:31 ID:0QKOPxuB
 逃げたくなった。
 体型が丸いのは、まあ良しとしよう。問題は脂肪の中に目と鼻と
口を陥没させて、顔面強打の上、複雑骨折にて完治に至らず、
な顔をしていることである。ほら、あれだ、腐乱犬だろ、アンタの仇名、
と思った。それが、来る。今はいいのさ。すべてを忘れて一人残った。
傷ついたオレがこの戦場で、あとに戻れば地獄におちる。
ああ、逃亡失敗。
 真ん前に立ちはだかった腐乱犬が恥らいつつ手を差し伸べてきた。
吐きそうだ。勘弁してくれ。これを握るくらいなら画鋲を力一杯
握ったほうがマシ、いや、やめ、
 無駄な抵抗だった。ぶにょぶにょした手に引きずられた。
運動場を一蹴で一周。ははは。泣きそう。
 突然、ギャラリーの中から声が漏れた。せーいしゅん。
その声はすぐさま波紋のように広がった。拍手も巻き起こった。
喝采が黒須太一その人へと向けられた。
 せーいしゅん、せーいしゅん、せーいしゅん。
 ギャラリーの中には泣きながらせーいしゅん、と叫んでいるやつ
まで現れた。何に感動しているのかは分からなかったが、その声
に応えるように、黒須太一は腐肉から免れた右手を高々と突き上げる。
 せーいしゅん、せーいしゅん、せーいしゅん。
 感動の嵐だった。音頭を取る奴まで現れた。そいつがせーいしゅん、
と言えばせーいしゅんと返ってくる。黒須太一は手を掲げ続けた。
ついでに言うと、腐乱犬に引きずられ続けてもいる。
 音頭が一際大きい声を上げた。
 二人の愛よ、永遠にー! 永遠にー!
 黒須太一はぎょっと目を見開いた。好きとか愛とか青春とか、
ごめん絶対に無理。絶対は絶対ないとかどうでも良くて、だから、
おい、腐乱犬。怖いから目を瞑るな、分厚い唇を近づけるな、
うあ、ああ、あああ、やめ、うそ、
643CROSS†CHANNEL ネタバレあり 13:03/12/03 01:32 ID:0QKOPxuB
 死、
 無、
 吐、
 棘、
 腐、
 血、
 歪、
 死。
 う、わああああああああああああああああああああああああああん。

「はあ、っはあ、くっはあ、っ」
 悪夢だった。長い悪夢だった。嫌な汗が滴り落ちる。肩で息をする。
危うく、リアルワールドがワイヤードに飲み込まれるところだった。
「くそっ、ナイツめ」
 時計を見ると午前二時四十分過ぎだった。
 黒須太一が震えるような呼気を吐いた瞬間に、バスルームから
支倉曜子が出てくる。
 そして、第一声、
「お腹、空いた」

 固形燃料で沸かしたお湯でインスタントコーヒーを淹れた。
淹れたのだからコーヒーがそこにあるのは当たり前だった。しかし、
黒須太一も支倉曜子も、無言で立ち上る湯気を見ていた。周囲に広がる
香りに鼻を動かした。久方ぶりの生活がそこにある気がして、
動けなくなった。辞書で見知っているだけの、馥郁たる香りとは
こういうのを言うのかもしれない、と思った。
644CROSS†CHANNEL ネタバレあり 14:03/12/03 01:34 ID:0QKOPxuB
「ほい」
 夜空の下を二人で歩き、色んなところから回収してきたパンやら
おにぎりやらインスタント食品やらをビニール袋から取り出す。
無論、日付がヤバいやつなんかは避けてある。二人で食べる食事。
これもまた、とんと思い出せないくらいに久方ぶりだった。
黒須太一はコロッケパンをゆっくりと頬張りながら、もぐもぐ、
ずずずとカレーパンや三色パンやジャムパンやクリームパンや
コーヒーを忙しく口に運ぶ支倉曜子を眺めていた。
 眺めながら、艱難辛苦の末に手に入れたキーワードを思い浮かべる。
今までの黒須太一が積み上げてきた経験に則った解答。黒須太一の
深奥にあった解答。恐らく、対支倉曜子用最終兵器。ただ、
本当に効果があるのだろうか。彼女に恥ずかしい、という感情を
芽生えさせることができるのだろうか。身の内に巣食った怯懦を振り払う。
「曜子ちゃん」
「はひ?」
 もぐもぐ、ごっくん。強靭な顎が上下し、咀嚼されたモノが嚥下される。
「何?」
 目と目が合った。
 沈黙。
「せ、」
 いしゅんしませんか、オレと。どこの言語だ、そりゃ、と思った。
さっき夢の中で口にしたことなど完全に忘却の彼方だ。そんな恥部、
忘れるに限る。とは言うものの、支倉曜子に年相応の恥じらいを
認識させるにはこちらからのアプローチを以って行うしか、
「せ?」
「いしゅん、したいなあ、曜子ちゃんと」
 運動場の陽炎、舞い散る砂、白い太陽、そんなものが頭の中をよぎる。
挙句には、せーいしゅん、と囃し立てる声までもが甦った。
645CROSS†CHANNEL ネタバレあり 15:03/12/03 01:35 ID:0QKOPxuB
恥ずかしくなって、顔を下げた。手が一人でに胸の前までやってきて、
指と指を引っつけたり、伸びてもいない爪をこすったりした。
支倉曜子の冷ややかな視線に曝されているかと思うと、一段と
恥ずかしさが増して、頬の辺りがやけに火照ってくるのを実感し、
目を強く閉じるものの、胸に開いた穴は一向に小さくならなくて、
ちらっと――――、
 開いた口が塞がらなかった。貌の付近から意思が抜け落ちた。
太腿の内側をつねってみた。痛い。なるほど、そういうことか。
黒須太一は、どこかに偏在していたであろう、しているであろう
自分に感謝した。ポーカーで最後の一枚がジョーカーでロイヤル
ストレートフラッシュに成った瞬間と同等の気分であった。
そして、今度は自信満々に言う。
「青春したいねえ、曜子ちゃん」
「そう、だ、ね。したい、ね」
 下を向いて、真っ赤な顔をして。そわそわと落ち着きをなくして、
髪の毛を指で弄くったりして。およそ、支倉曜子からは遠い
支倉曜子がそこにいた。
 しかし、対した黒須太一も、何だか無性に恥ずかしくなってきた。
言うなれば幼なじみの女の子が、遠い昔以来、久しぶりに、
女の子らしい素振りを見せている。
 脈打つ心臓を押さえつけるかのように、理性を召喚する。
身の内に巣食う獣を抑え込むために、と理性が要求する。
青春とは何か。回答せよ、と。
 回答する。青春とは、此方においては、要するに好きだ、
と告白した瞬間に始まる、例の甘酸っぱいどきどきと胸が早鐘を
打ち腰やら膝やらの力が問答無用に抜けた挙句に脳内がぽわわん
として判断能力を著しく低下させるものの嬉しくて楽しくてやはり
その甘水に身を浸けてこその学校生活であることは間違いないと
一部の生徒は思っていることであろう、
646CROSS†CHANNEL ネタバレあり 16:03/12/03 01:37 ID:0QKOPxuB
「太一」
 声とともに、ランタイムのエラーだとメッセージが出た。ついで、
画面が切り替わらなくなった。またもフリーズ。だからミレニアム窓は
嫌いなんだ。脆弱すぎる。システムを再起動。嘆息する。
これでまた理性について最初から、
「決めたから」
 再起動中なのに電源ごと引っこ抜く声。ぷつん、カラカラ。
「私、太一と青春する」
 支倉曜子はそう言って、両のほっぺに作った横楕円をピンク色に
ぽっと染めた。
 それを見た黒須太一は、紙姉妹の末妹が時折見せるテレテレ
ほっぺをぼんやりと思い出していた。

 具体的にはどうするのか、と説明を求める支倉曜子に対して、
探るように上を見て、つまり、小学生や中学生の女の子が購読
している雑誌やコミックスに描かれるような、夢見る年ごろの
ドリィーミィーでラブなストーリーを体験するのであり、
今回それにあたっては、そのジャンルで恋のバイブルとまで
評された作品の後番として連載されるも不人気で打ち切られたのに、
どういう経路からか国内でアニメ映画と言えばここ、なところで
映画化されたものの、原作と映画とは内容が激しく異なり、
結局同じなのは名前だけかよ、羊頭狗肉じゃねーか、と言われつつも、
映画単体で考えたときにはやはり名作であった、
例のやつを用いようと思う、と黒須太一は説明した。
 曜子は立ち上がって、
「成る程、私だって役に立ちたいんだからぁ、って言えばいいのね」
 無言で頷く太一。
 折り良くその舞台同様に空には夜明けが迫っている。
冬でないのが残念でならないけれど。
647CROSS†CHANNEL ネタバレあり 17:03/12/03 01:38 ID:0QKOPxuB
「取りあえず、制服に着替えて。オレは自転車探してくるから」
「あれって私服だったけど」
 既に、躰には恥ずかしさではなく爽快感が宿っている。
「いいの。制服の方が青春してるっぽいでしょ」
 青春の、扉が開く。

 黒須太一はどこかへと消えた後、支倉曜子は一旦家へと制服を
取りに行き、その足で黒須太一の部屋へと戻った。ドア口から見る
窓の外は黒から紺から青へと移行する頃合だった。
 入ろうとして、フローリングに散らばった写真を掻き集める。
踏まれて、少し痛んだのもある。輪ゴムで纏めて、机の上に置いた。
 窓を開けると、夏ながらも朝方の空気が涼しい風となって吹き
込んできた。風に薙がれて、黒く豊かな髪が唇へと降りかかる。
払って、服を脱いだ。下着とニーソックスだけになる。ゆっくりと、
制服に身を包んでいく。手鏡でどこかおかしいところがないか、
確認していく。最後に自分の顔を見て、支倉曜子は動きを止めた。
自分の笑顔。見るのは初めてかもしれなかった。

 用意が完了して、支倉曜子は窓辺から朝の風景を眺めていた。
太陽が昇る前の静謐な青。活力がみなぎる前の穏やかな眠り。
遠くに見える送電線の奥、木々がざわめいていた。
 ふと、視線を地面に移す。制服姿の黒須太一が自転車に乗りながら、
手を振っていた。振って、荷台の部分を指差す。
 支倉曜子は、そのまま窓から飛び降りようとして、慌てて制止する
黒須太一の指示に従って、部屋を出て、階段を駆け下りて、
靴を履くのももどかしく転げるように外へと出た。
「太一っ」
 自転車が駆け寄ってくる。目の前で黒須太一がサドルから飛び降りて、
「曜子ちゃん、早く乗って、時間がないんだ」
 力一杯に破顔した。
648CROSS†CHANNEL ネタバレあり 18:03/12/03 01:40 ID:0QKOPxuB
 黒須太一は自分にひしっと掴まる支倉曜子が自転車から落ちないように
気をつけながら、それでも出せるだけのスピードは出して、つとめての
道をひた走っていた。躰で風を切る。
 林道を抜けて、視界が開けた。田園地帯を自転車が行く。長い直線。
スピードが増す。
 広い直線から一転、直角カーブから小道へと入る。その先に見える、坂。
 急激にスピードが落ちる。きつい。ひたすらきつい。さしもの
黒須太一も立ちこぎに切り替えるが、それでもスピードは上がらない。
「降りようか?」
「大丈夫、曜子ちゃんを乗せて坂道登るって決めたんだ」
「うんっ」
 黒須太一は呆気に取られて思わず振り返る。そこには嬉しそうな支倉曜子。
「曜子ちゃん? 何か違うくない?」
「太一、ふぁいとー」
 萎えそうになった気力を振り絞る。
「こんちくしょー」

 自転車を止めた。行き止まり。給水塔みたいなものがフェンスと有刺鉄線に
守られて建っていた。その脇、雑草が覆い茂った隘路を通る。一歩足を
踏み違えれば、ブロック塀で固められた斜面に転がって、落ちてしまいそうな
細い道。夜が明けつつあるとは言え、まだ足元は覚束ない。それでも、
黒須太一と支倉曜子はためらうことなく前へと進んだ。双頭の電燈が
薄い光を注いでくる。
「間に合った…」
 フェンスが覆う敷地の先へと出て、黒須太一は呟いた。
身長と変わらない段差を飛び降り、振り返る。
「持とうか?」
 支倉曜子は、ううん、と断りかけて、思いとどまり、
「……うん」
 と頷いた。手を差し出す。その手を、黒須太一がしっかりと掴んで、
飛び降りる。少しバランスを崩した支倉曜子を支えるように、二人は抱き合う。
649CROSS†CHANNEL ネタバレあり 19:03/12/03 01:42 ID:0QKOPxuB
そのまま手を繋いで、二人は地面が途切れるギリギリのところまで歩く。
 海みたいな朝靄だった。朝靄は遥か遠くで雲と繋がっている。
その横には朝靄に浮き出る島のように高層ビルがいくつも建っていた。
「――――凄い。朝靄でまるで海みたい」
「ここ、オレの秘密の場所なんだ。もうじきだよ」
 その言葉に導かれるように、山のような雲の向こうから、
橙色の光が射し始める。細い線が広がっていく。眩しい。陽がまた昇り、
世界が再生される瞬間。
 青かった朝靄を橙色に染め上げていく。遠く遠くの自分たちがいる、
そこまでも鮮やかに照らし出す朝陽。黒須太一も支倉曜子も言葉もなく、
立ち上り、世界の夜明けを眺めていた。
 風がそよぎ、草の匂いがした。
 空が、始まろうとしている。

――――――――――――。
――――――――。
――――。
――。
 部屋は暗かった。
 チッチッチと針が時を刻む音が耳にうるさい。
 支倉曜子は乱雑に積み上げられた書物を避けるように設置された
ベッドの上で目を覚ました。
 偏頭痛よろしく側頭部に痛みを覚えながらも、現状を認識しようと
辺りを見回す。パソコンに備え付けられた液晶モニタに待機電力を認めて、
躰を横にする。
 鼻の奥がつん、と痛んで、涙がこぼれた。手でぬぐう。止まらなかった。
650CROSS†CHANNEL ネタバレあり 20:03/12/03 01:43 ID:0QKOPxuB
 ひとしきり泣いた後、シャワーを浴びた。
 長い髪に付着した水分をバスタオルで取り払う。暗闇の中、視線はノイズを
吐き出すことしかしない薄いカード型のラジオに注がれている。
 支倉曜子が深呼吸をした瞬間、
 薄くなったノイズの奥から、小さな息遣いと、黒須太一の声、
「……こちら……群青学院放送部……」
 何度耳にしても、喉が詰まる。
「生きている人、いますか?」
「太一、」
 届かないと分かっていても、返さずにはいられない。
「もしいるのであれば、聞いてください」
 しかし、それに続いた黒須太一の声に支倉曜子の言葉は封じられた。
「昨日、髪の長い女の子の、オレのことを自分の半身だと言ってやまなかった
女の子の、夢を見ました。強くて、弱い女の子でした。
たくさんお喋りをしました。二人でパンを齧りました。二人で自転車に
乗って、坂を登りました。二人で朝陽が昇る景色を見ました。夢の中の
二人は冗談みたいなことばっかり言っていました。オレとその女の子は
生れ落ちた瞬間に青春から遠く離れた場所で生きなければならないことを
決定づけられていましたので、昨日の夢は、そのことの反動、
なのかもしれません」
 そこで声は途切れた。
 五分。
 そして、もう一言だけ、黒須太一の声が聞こえた。

 もうすぐ夜明けだった。
 また朝靄が海みたいになり、橙色の朝陽がそれを照らすことだろう。
 空が始まる、あの場所へ。
 支倉曜子は立ち上がる。
 制服へと着替えて、
 扉を開けた。
651松波:03/12/03 02:18 ID:0QKOPxuB
>>631-650
「曜子ちゃん寝る」
CROSS†CHANNELより。
ニヤリと笑った時が一番怖い人がメインで。
サブタイが全てを表してます。ええ。
652名無しさん@初回限定:03/12/03 10:49 ID:phi7v6YQ
>>651
乙です。
本編では今一つ報われなかった感のある
曜子ちゃん救済っぽくて楽しかったです。
653名無しさん@初回限定:03/12/03 14:06 ID:jQ/xlvag
!!!━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!

>>651
メッチャ乙彼!
ブラボー!マンダム!グラッチェ!ファビョーン!グッテイスト!アル・カンターレ!
ああ、629でほっしゅした甲斐があったよママン!
SSを求め、スレを保守し続けて苦節39年
一本のSSが投下される都度、自分は二次創作という行為の尊さと偉大さを考え
そしてその行為の末に産み出された数多くのモノ達、
それを産み出した人々に対してに筆舌に尽くしがたい感動と歓喜を覚えるのである。
654名無しさん@初回限定:03/12/04 02:13 ID:VPqD9slQ
さすがC†C儲は変態が(ry

それはともかく
                ∩
                ( ⌒)      ∩_ _グッジョブ !!
               /,. ノ      i .,,E)
              ./ /"      / /"
   _n グッジョブ!!  ./ /_、_    / ノ'
  ( l    _、 _   / / ,_ノ` )/ / _、 _    グッジョブ!!
   \ \ ( <_,` )(       /( ,_ノ` )      n
     ヽ___ ̄ ̄ ノ ヽ     |  ̄     \    ( E)
       /    /   \   ヽフ    / ヽ ヽ_//
655名無しさん@初回限定:03/12/05 15:33 ID:UW6kMebc
>>651
ネ申
656名無しさん@初回限定:03/12/05 21:59 ID:cl71FhJj
すげえいい
泣きそう
657名無しさん@初回限定:03/12/05 23:11 ID:GUB8VwQY
>651   _ _      グッ
    ,'´ ヾ ヽ
     i lノ从))i|        
    ノ i|゚ ー゚ノl| b       
二二二二二二二二二]
            |



     彡
二二二二二二二二二]
            |
658名無しさん@初回限定:03/12/07 05:56 ID:hsGoTqvl
このスレ、プロット書くから誰か書き起こしてってのはダメですか?
659名無しさん@初回限定:03/12/07 09:35 ID:fZpmeE36
>>658
いいんじゃないかな? 書いてくれる人がいるかどうかは分からないけれど。
分かるネタで面白そうだったら、私も書いてみたいと思うかも。
書き手としては、タイトルだけでもこれ見たいという意見があると、
なかなか意欲が湧いてくるものだし。
660名無しさん@初回限定:03/12/07 15:14 ID:gmB6f4th
>>658
1,反応無くても無理に催促しない
2,改変されても文句言わない
なら、良いと思うよ。
面白そうなネタなら書きたがる人はわりといるかと。
661名無しさん@初回限定:03/12/09 03:55 ID:VrdK7o5z
っ。д。)っ12/25にクリスマスネタキボヌ
662 ◆DxIASeLIaY :03/12/10 10:49 ID:X3GP6Mbh



人の身でロウ・エターナルを倒しハイペリアに帰る事になった悠人と佳織。
そして、やがて宴は終わり、ハイペリアへと帰る時間が刻一刻と迫る…




※本編ではなかった「佳織ルート」保管のSSです。
 初めて作ったSSという事もあり、稚拙でお見苦しい事もあるやもしれませんが何卒ご容赦を(汗
663名無しさん@初回限定:03/12/10 10:50 ID:X3GP6Mbh
チーニの月 青よっつの日 昼

時深に呼ばれ、ハイペリアへと帰る準備を進める悠人達。
皆が見送りに来るなか、悠人達は別れを惜しむ……


「これで、もう会うのも最後なのですね…」
「ユウト様、あちらへ帰っても、私達を思い出してくださいね」
「パパァ、寂しいよぉ…。でも、オルファ、頑張るから!」
「…ん。バイバイ」
「手前、恩を返せず申し訳ありませぬ…。ユウト殿、御達者で」
口々に揃えわざわざ来てくれる。2年間同じ時を過ごした仲間であろうとも、やはりそれは嬉しかっ
た。


―――――俺は恵まれていたんだな―――――

ユウトは心の中でそう思う。実際、今までの現実での温い生活からこれだけの戦いの中で心が壊れな
かったのは、今ここにいる仲間達のお陰だろう。
佳織を救うという目的があったにせよ、この、非・現実的な世界でまともでいられたので不思議なく
らいだ。皆に心中で感謝する。
(……ありがとうな、皆)
「―おや?ユウト殿、泣いておられるので?」
ウルカがそう呟く
「! ばッ、馬鹿、何言うんだよウルカ!そんなワケないだろ!?」
「ふふっ、お兄ちゃん、嘘は駄目だよ?」
「か、佳織まで…」

クスクス、アハハ……。周囲からは笑いが起こり……
66489:03/12/10 10:51 ID:X3GP6Mbh
「もう、これで最後なんだね…」
「カオリ、向こうでも元気でね。カオリと料理を一緒に作るの、楽しかった!」
「うん、私もだよ、オルファ。…私達、離れてもずっと友達だよ!」
王城に囚われていた佳織に、ずっと話をしてくれていたオルファ。その元気さに何度自分も励まされ
ただろうか。
「これで…もう会う事もないのでしょうね。向こうでもリクェムはキチンと食べてくださいね」
「わかってるよ、エスペリア。今まで世話してくれて…ありがとな」
こっちの世界に渡ってから、聖ヨト語を覚えるまで熱心に教えてくれたエスペリア。どれだけの苦労
をかけたかもわからない。
「ユウト、元気でな」
「あぁ、アセリアも、もっと自分のやりたい事を見つけろよ?」
初めは無愛想だとも思ったアセリア。ただ、自分の感情が表現しきれないだけで、無愛想なわけじゃ
ないと知ったのはいつだっただろうか。そんあアセリアの感情豊かになっていくのを見るのは長い戦
いの中でも楽しみの一つだった。
「ユウト殿、カオリ殿。今まで手前に優しくしてくださり、感謝してもしきれませぬ。どうか、あち
らへ帰ってもお元気で…」
「ウルカ…。あぁ、これからも色々あるだろうけど、ウルカも頑張れよ。応援してる」
初めに会った時から印象が一番変わったのはウルカだろう。その生真面目すぎる性格が故に起こった
数々の事件、忘れたくても忘れなれない物ばかりだ
「あの初めて作った料理…思い出すだけで体が熱くなるよ」
「っ!あれは! …卑怯です。ユウト殿」
「今では美味しい料理を作れるもんな。また俺達の事も思い出してくれよ」
「…承知。」
665それから… 3/5:03/12/10 10:52 ID:X3GP6Mbh
そして、レスティーナ。
「ユウト殿、こちらの世界を救って下さった事。まことに感謝しております。貴方方の協力で守られ
 たこの世界も平和、これからも、私がを守り続けてみせます。」
「最後まで真面目なんだな、レムリア。ワッフルばっかり食べてんじゃないぞ?」
「ワッフルじゃないもん!ヨフアルだもん!ユウト君のいじわる!」
「……ぷっ」
「ふふふっ」
初めて見るレスティーナの仕草にキョトンとする一同。やがて広まる笑い

……楽しい一時は過ぎる。

「悠人さん、佳織さん、時間です。門が開きますので、こちらへ…」
時深が俺達を誘導する。思えば、時深にも随分世話になった。もう会う事はないだろうが、最後に
お礼ぐらいは言っておきたい。
「さぁ、こちらへ立って下さい。…では、転送を開始します。」
「永遠神剣第三位『時詠』よ!神剣の主として命ずる」
「高嶺悠人、高嶺佳織」
「この二人の時を遡らせよ」
「永遠神剣第三位『時果』よ!次元を越え、神剣の主として命ずる」
「時の彼方に閉じた世界を構築せよ!」
時深の詔は続く。そこに、
「時深!今までサンキュな。お前の事も好きだったよ」
「在るべきだった世界へとてんそ……えぇえ!?」
666それから… 4/5:03/12/10 10:56 ID:X3GP6Mbh
バシュウゥ!!開きかけていたゲートが突然音を立てて揺らぐ!

「………え?」

ぱふっ

なんとも情けない音と共に、目の前にあったゲートが完全に閉じる。
「いいいいいい、一体、突然何を言うんですか悠人さん!」
「折角開いてたゲートが閉じちゃったじゃないですか!!」
「え?て事は……?」
「次にゲートを開く機会があるまで、このファンタズマゴリアにいなきゃならないって事です!あぁ
 ぁまだやらなきゃいけない事一杯あるのに…」
「どうしてくれるんですか!こんなの私の力でもわかりませんでしたよ!」
「なんだよ!俺ばっかり責めて!エターナルのくせにたったあれだけの事に動揺するほうも悪いだろ
 !」
「エターナルだからなんて関係ありません!貴方の為に恋愛なんて今までしてこなかったんです!」

……!
……!!

二人の言い争いは続く。ポカーンとした表情で事の成り行きを見届けてい六人。

―――――――半刻後

「はーっ。はーっ……」
「ふぅふぅ…」
ずっと喋り続けていたせいか、かなり疲労した二人。エスペリアがどこからか差し出した水を飲む。
667それから… 5/5:03/12/10 10:59 ID:X3GP6Mbh
「…で、時深、結局俺達はどうなるんだ?」
「今のままではゲートを開く事が出来ません。また、私の『時詠』『時果』に力が溜まり、ゲートを
 開けるようになるまで…。およそ、三ヶ月」

「て、いう事は…あと三ヶ月、パパとカオリと一緒にいられるって事だよね!やったぁ!」
オルファが喜びカオリに飛びつく。
「あと三ヶ月の間、まだいられるのですね。ユウト様、カオリ様、今しばらく、お世話させて頂きま
 す」
どこまでも謙虚なエスペリア。剣の声が聞こえない今では只の一般人と変わらないというのに。
「ユウト、まだ一緒なんだな。うん。また私の料理食え」
アセリアも、笑いながら話しかけてくる。
「おぉ…。ユウト殿、まだおられるのか。それでは、手前と花の世話でもやりませぬか?」
「ユウト君、また今度一緒にヨフアルでも食べる?」
口々に喜ぶ皆。ただ、もう別れだと思っていたユウトにとっては半分程度しか耳に入っていなかった
りする。
(なんだよ…。結局まだここにいるって事か?)


「……は…はは…。もうこうなりゃヤケだ!三ヶ月でも1年でも、1周期でもいてやろうじゃねぇか
 !!」


ファンタズマゴリアが静かになるのは当分先の話のようである。



完?
668永遠の名無し ◆DxIASeLIaY :03/12/10 11:04 ID:X3GP6Mbh
>>663-667
「それから…」
見て分かる通りの『永遠のアセリア』ネタです。
1/5の名前は、どっかのクッキーが残ってたみたいで変になってしまいましたが
すいません(汗

先日出たばかりなんですが、妄想ネタをフルコンプした勢いで書き綴っ
てしまいました (つω`)

もし余裕あれば、この後の話も書いてみたいっす。でわ
669名無しさん@初回限定:03/12/10 14:11 ID:vUK2qPon
ウワァァ━━━━━━━ヽ(`Д´)ノ━━━━━━━ン!!!!

なんでagaってんだYO!!
なにはともあれ乙。
670名無しさん@初回限定:03/12/10 15:58 ID:8T3lKyn1
>>668
ほのぼのEND(´∀`)b グッジョブ!!
昨日アセリアクリアしたてだったのでタイムリーでした。

続きも期待。
671(1/2):03/12/10 21:41 ID:xUsWKSC+
「♪じんぐるべーる、じんぐるべーる、鈴がーなるー」
「おや、お嬢ちゃんご機嫌だねえ。あれからSS職人さんたちが、いろいろ投下してくれて
 順風満帆ってか?」
「あっ、あなた、あのときの。……ふんだ。あなたなんかに保守してもらわなくても、
 わたしには素晴らしい作品を投下してくれる職人さんたちがいるんだもん。それにもうすぐ
 クリスマスだからね。きっとクリスマスネタで賑わうんだから」
「クリスマスネタねえ。おまえさんも葱の一員を気取るなら、葱に相応しいクリスマスソング
 でも口ずさんだらどうよ?」
「葱に相応しい歌って?」
「♪真っ赤なお鼻のー、トナカイさんはー――」
「いっ、いやーっ! 最後にポリバケツに詰められそうな予感がするからいやーっっ!!」
「ま、それはともかく。おまえさん、相変わらず楽観的だねえ」
「いやー! 楽園送りはいやーっ……って、え? どういうこと? なんで楽観的なの?」
「その思考がさ。もし、クリスマスにひとつもSSが投下されなかったらって考えたことは
 ないのか? さぞかし、寂しいクリスマスだろうなぁ」
「そんなことないもん。きっといっぱい投稿してもらえるもん」
「二十四日を過ぎても、ひとつも新着レスが無し。あげく、やっとひとつついたと思ったら、
 『これからも僕を応援してくださいね(^^)』だったりしたら。泣きたくなるほど惨めだろう
 なあ。おい」
「うぅ……。そ、そんなこと、ない、もん」
「どうよ? そんな惨めな自分に比べたら、俺に保守されてたほうがよっぽど幸せだとは
 思わんか? いまなら、まだ受け入れてやるぞ?」
「も、もうあなたの口車になんかのらないんだからっ! わたしは職人さんたちを信じてるもん」
「♪きっとキミは来ないー、ひとりきりのクリスマスイヴ」
「いやーっ! そんな歌うたわないでっ!」
「おいおい。そんな涙ぐむなって。勘違いしてもらっちゃ困るが、俺はおまえのこと
 気に入ってるんだ。よし、じゃあ、世間知らずなお嬢ちゃんに、俺がひとつ知恵をつけて
 やろう」
「わ。わたし、世間知らずじゃないよ」
672(2/2):03/12/10 21:42 ID:xUsWKSC+
「まあ、とにかく聞いて損はねえって。いいか、世の中のスレには、少女とオンナ、がいるんだ。
 この違いが判るか?」
「? 成人してるかしてないかってことじゃないの?」
「かーっ。これだからおまえは甘ちゃんなんだよ。いいか、男のレスを咥えこむときに、『え?
 ほ、ほんとにこんなことするの? は、恥ずかしいよ……。ううん。でも、あ、あなたが
 それで喜んでくれるんなら、わたし頑張ってみる。あっ、あなたのレス、凄く熱い……』って
 言うのが、少女、だ。で、『ねえ、まだ? あたし顎が疲れちゃったんだけど? もう、手で
 いいよね? ってか、あんた遅すぎ。オナニーのやりすぎなんじゃないのー? あっはっは』
 て言うのがオンナだ。歳は関係ない」
「うあ……」
「悲しいことに世の中にはオンナが満ち満ちているわけだ。そこで、おまえが希少価値をもつ
 少女っぽくお願いしてみればもしかしたら希望がかなうかもしれないってことだ。
 さあ、切なげな声で『お願いっ。あなたの熱いレスを、わたしのアソコ(注:書き込み欄)に
 いっぱい注いでくださいっ』って言うんだ。ほれ」
「あぅぅ。そ、そんなこと言えるわけ、な、ない……」
「♪きっとキミは来ないー、山崎とふたりクリスマスイヴ――」
「いやーっ! それだけはいやーっ!! 判りましたっ。言う。言います。言いますからっ」
「というわけで、皆さんにお願いです」


「うぅ。お、お願いします……。あ、あなたの、あっ、熱いレスを、わ、わたしの、あ、あっ、
 アソコにいっぱい、注いで、く、ください……。う、うわーん。もうお嫁にいけないよーっ」


 というわけで>661さんとともに期待してます。
673名無しさん@初回限定:03/12/10 22:19 ID:olh+2GVo
>>668
乙です。続きに期待してます。

>>671
また笑わせて貰いましたw
この二人(?)はこのスレのマスコットキャラですな。
674名無しさん@初回限定:03/12/10 22:36 ID:vUK2qPon
ナーイス保守。
相変わらずGJしてるね!
675永遠の名無し ◆DxIASeLIaY :03/12/11 00:55 ID:65BPTxdG

(;´Д`)あれ?
ギコナビ、sageに印付けてたつもりで、付いててませんでした。心の奥よりスマソ ∧||∧

お詫びにガンガッテ今週中に新SS仕上げてきます(`・ω・´)シャキーン
676名無しさん@初回限定:03/12/11 08:28 ID:wUZUKi1g
お嬢ちゃん&保守人キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
相変わらず面白すぎです
677名も無き名無し:03/12/11 21:58 ID:mGfzG88x
 アセリアプレイ後に身体のうちから迸る名状しがたきアレをぶちまけにきました。
 「勢い」こそすべてな代物ですので、お目汚しの儀ご容赦のほどを。

 タイトルは「遊びたいお年頃」で、10レスの予定。
 かろうじて、雑魚スピのヘリオンたんSS(のはず)です。ただしエロなし。
 重ね重ね面目ない。
678遊びたいお年頃 1/10:03/12/11 21:59 ID:mGfzG88x
「ユート様っ、ずるいですっ!!」
 青天の霹靂、とはこのことだろうか。俄かに轟いたその怒声は、厳しい訓練終了直後
の緩んだ空気を震わせた。それを聞いた『失望』のネリーは、小石を投げられた子猫の
ように身を竦ませた。
(い、いったい何事…?)
 ヘリオンは、ちょうど側にいた『赤光』のヒミカの陰に隠れて辺りを伺った。
 その場に居合わせたラキオス王国スピリット隊の面々は、みな判で押したように目を
丸くして、荒ぶる『静寂』のネリーを見やる。ただ一人、悠人の腰にしがみついている
オルファこと『理念』のオルファリルだけは、キッと眦を上げてネリーを睨み返した。
「ネ、ネリー……よしなよ…」
 ネリーと並んでいた双子の妹『孤独』のシアーが、真っ青な顔で姉の暴挙を窘めるが
時既に遅し。隊長補佐『献身』のエスペリアの表情が、見る見るうちに険しさを加えて
いく。
「ネリー! ユート様になんという口の聞き方をっ! スピリットとしての分を弁えな
さいと何度言えば…」
「エスペリア様は黙っててよっ!」
「なっ…」
 ネリーは、横合いから叱責する上官すらも一喝して退けた。そのただならぬ気迫に周
囲からはどよめきが上がる。
 そんな中、『存在』のアセリアが興味なさそうにその場を後にするのを、ヘリオンは
視界の端で捕らえていた。戦士のくせに、このような諍いが苦手なヘリオンもそれに倣
ってずらかろうと考えたが、なぜか悶着の行方が気になって、ヒミカを盾に恐る恐る視
線を戻した。
「……」
 普段は慈愛と、ほんの少しの憂いに満ちた微笑を絶やさないエスペリアの、その鬼の
ような形相を目の当たりにした途端、ヘリオンは自分の選択を悔やんだ。
「ネリーっ!!」
(……ひっ!)
 まるで叱責を受けるのが自分であるとばかりに身を強張らせ、顔を引っ込める。その
くせ、聞き耳を立てることは忘れていない。
679遊びたいお年頃 2/10:03/12/11 22:00 ID:mGfzG88x
「いい加減になさい。これ以上の狼藉は許しませんよ。隊規に照らして…」
「まあ、いいじゃないかエスペリア」
 ネリーに向かって踏み出しかけたエスペリアを、悠人が手で制した。不平を色濃く宿
した深碧の瞳に向かって笑いかけながら。
 その温かみのある声を聞いた瞬間。ヘリオンはほっと胸をなでおろす。
(ユート、様…)
「ユート様…」
「何度も言うけどさ、俺はスピリット隊の隊長になったからって、これまでとどこが変
わったつもりもないんだ。それより、もっとみんなの意見とか聞いてみたいからさ」
「……ユート様が、そうおっしゃるのでしたら」
 二度までも話の腰を折られて面目を無くしたエスペリアは、溜息と共に口をつぐむ。
 引き下がったエスペリアに労わりの微笑を向けた後、悠人は改めてネリーと向かい合
った。それまでずっとオルファと火花を散らしていたネリーは、それと気がついて目線
を上げる。悠人と目が合うや一瞬怯みの色を見せたものの、ここまで来ては引き下がれ
ないとばかりに、顔に「ケンカ上等」と上書きした。
 悠人は、思わず苦笑を禁じえなかった。
「む〜〜〜っ!」
「あのなあ、そう怖い顔するなって。で、俺がずるいってのは、どういうことだ?」
「……オルファばっかり…」
「は?」
 悠人は思わず、吐き捨てるように呟かれたその名前の主を見下ろした。燃え盛るよう
な赤毛の少女の手が、悠人の服をぎゅっと握り締めた。
「ほら、そうやって……!」
 ネリーは震える声を絞り出したあと、大きく息を吸い込んで堰を切った。
「オルファばっかり、ずるいよっ! ネリーも本当はユート様といっぱい遊びたいの
に、今までずっと我慢してきたんだよっ? エスペリア様が、ユート様はエラい人なん
だから、スピリットは服従しなくちゃいけないって言うから仕方なく!
「でも、ユート様はいつも、いっつも! オルファとばっかり遊んでるじゃないっ!
そんなの、おかしいよっ! どうしてオルファはよくって、ネリーたちは駄目なのっ
!?」
680遊びたいお年頃 3/10:03/12/11 22:01 ID:mGfzG88x
「……」
 ぶちまけられた思いの丈の威力は、彼女たちの対魔法サポートスキル「アイスヴァニ
ッシャー」にも匹敵した。文字通り凍り付かされた悠人は、数瞬の間二の句を告げるこ
とが出来なかった。
「ねえ、シアー!? シアーだって、そう思うよねっ!?」
「え……? う、うん…」
 それまで展開に圧倒され、金縛りに遭っていたシアーが、反射的に首を縦に振った。
 主体性に乏しいシアーが、このように姉の勢いに流されるのは日常茶飯事だったが、
今回ばかりは少し様子が違った。
「わ、わたしも……ユート様と、遊びたい…」
 消え入るような声ながらも、明確な意思表示。二人の少女にそこまで思い詰めさせて
いたなどとついの今までつゆ知らずと見えて、悠人はあからさまに泡を食っていた。
「ユート様、答えてよ! ネリーたちは、ユート様と遊んじゃ駄目なのっ!?」
「い、いや、そんなことは……」
「そんなの、駄目に決まってるじゃないっ!」
 気合負けしてしどろもどろの悠人に代わり、それまで無言を貫いていたオルファが横
槍を入れてきた。
「!?」
「だって、パパはオルファのパパなんだから、オルファと遊ぶのは当然だもん。他人の
ネリーは引っ込んでなさいっ!」
「こ、こら、オルファっ!」
 そう大見得を切って、オルファはこれ見よがしに悠人の腰へ腕を巻きつけた。あまつ
さえ、口から目一杯舌を出してネリーに向ける。この仕草の意味するところは、ファン
タズマゴリアとハイペリアで寸分も変わらない。
 全身で悠人の所有権を主張してみせる稚気は微笑ましくさえあるが、そんなオルファ
の幼稚な挑発にあっさり釣られるほど、ネリーもまた幼かった。耳まで真っ赤に茹で上
げたその様は、見事なレッドスピリットの誕生である。
「オルファ〜〜〜っ!! もうあったま来たっ! 今日と言う今日は決着をつけてやる
んだから、覚悟しなさいっ!!」
「ふんだ、返り討ちにしてあげるから、どこからでもかかってきなさいよ!」
681遊びたいお年頃 4/10:03/12/11 22:02 ID:mGfzG88x
「ちょ、ちょっと待てお前ら……」
 洗練の欠片も無い喧嘩口上を切り結ぶや否や、二人のスピリットは間合いを取って対
峙した。もはや悠人の声も耳には届かず、それぞれの手には、いつのまにか永遠神剣
『静寂』と『理念』が握られてさえいた。
 名前負けも甚だしい小さな主たちに対する神剣のぼやきとも取れない思念が周囲に伝
播し、微かな苦笑いが小波立った。
「あ、あの……止めなくて、いいんですか?」
 ヘリオンはヒミカの背中に思わず問い掛けた。
「どうして? 止める必要あるの?」
 落ち着き払った声で反問され、ヘリオンは鼻白む。
「だ、だって、その怪我すると危ないじゃないですか。それに、こんなの良くないと思
いますし…」
「別にいつものことだし、やらせておけばいいわ。鬱憤を溜め込むよりよっぽどいいじ
ゃない」
 ヘリオンからは見えなかったが、ヒミカが「ニヤニヤ」と笑っているのは間違いなか
った。見渡せば、当事者とユート様、それにエスペリア様を除けば、誰一人として真面
目に取り合っている風も無い。
 こう言うときこそ、『大樹』のハリオンが「ケンカはぁ、ダメですよぉ」とおっとり
仲裁に入ってもよさそうなものだが、今日に限って彼女は哨戒任務に出向いている。
 ネリーもオルファも、ヘリオンにとっては掛け替えのない戦友であり、その二人がこ
のようにいがみ合うのは、どうにも居たたまれない心地がする。それを傍観しているだ
けの先輩連にヘリオンはいささか失望したが、さりとて、自ら仲裁役を買って出る度胸
も無いのである。剥き出しの敵意に触れると、自分の意志とは無関係に気力が萎えてし
まうのだ。
「ふふ、大丈夫よ」
 自分の背後でやきもきしている後輩に向かって、ヒミカは太鼓判を押した。
「え?」
「ま、見れば分かるわ」
 言われるままに、ヘリオンは恐る恐る顔をヒミカの肩越しに覗かせた。
682遊びたいお年頃 5/10:03/12/11 22:04 ID:mGfzG88x
 その刹那目に飛び込んできたのは、今にも刃を交えようと殺到するオルファとネリー
だった。
「いっくよおーーーーーーーっ!!!」
「てりゃあーーーーーーーっ!!!」
「……!?」
 ヘリオンが息を呑むと同時に、エスペリアが仲裁を試みようと踏み込んでいく。
 その手には物騒なオーラを纏った『献身』が構えられていた。
「もう、二人ともいい加減に……」
「いい加減にしろ、このバカっ!!」
 エスペリアの話の腰は三度目も折られた。
 激突寸前の二人の横合いから悠人のゲンコツが繰り出される。
 それは、立て続けに二人のつむじに炸裂する。
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
 声にならない絶叫が上がる。
 目から火花を飛び散らせて、オルファとネリーは頭を抑えてうずくまる。
 それを見た悠人はギョッとして、二人と自分の拳を順番に眺め回した。
「ユート様もまだまだね。激するあまりにご自分の力の制御を忘れているようじゃ…」
「あいたたたた…」
 冷静に論評するヒミカを尻目に、ヘリオンは思わず自分のつむじに手をやっていた。
第四位の永遠神剣を佩くエトランジェにしこたま殴られては、自分ならきっと死んでし
まうに違いない。
「ご、ごめんっ、大丈夫か、二人とも」
 先ほどまでの威勢はどこへやら。悠人は哀れを誘うほど狼狽して、二人の頭を恐る恐
るなで始めた。
「すまん、咄嗟に力の加減が出来なかった! 本当にごめんっ!」
「う……」
「……えぐっ」
「う? えぐっ?」
 二人が同時に発した意味をなさないうめきを悠人が反芻した瞬間。
683遊びたいお年頃 6/10:03/12/11 22:04 ID:mGfzG88x
「うわあああああああああああん、パパがぶったーーーーーーーーっ!!!」
「びえええええええええええん、ユートさまがバカっていったーーーーーーっ!!!」
「お、俺か!? 俺が悪いのかっ!?」
 火がついたように泣き出したオルファとネリーを前に悠人はすっかり周章狼狽気味。
 そして藁にも縋るような眼差しで、周囲を見渡した。
 彼の信頼すべき部下たちは、目も合わせようとせずに、三々五々散開していった。
「お、おい、みんなっ! なんとかしてくれよっ!! な、エスペリア?」
「いいんです、どうせ私の話なんて、誰も…」
 珍しく拗ねた様子のエスペリアが、そっぽを向いて悠人に肘鉄を食らわせた。
「なあ、セリア? ……うぐ、ひ、ヒミカ!?」
「申し訳ありません。『赤光』が手入れしろって前からしつこいもので、私はこれで」
 ヒミカは生真面目に一礼して、右往左往する悠人を置き去りにする。必然的にディフ
ェンダーを失ったヘリオンが、その矢面に立たされることになった。
「ヘリオン…だったね?」
「……へ? わ、私ですかっ?」
 ご指名を受け、物欲しそうな悠人の眼差しを一身に浴びて、ヘリオンは慌てて周囲を
見渡した。そこで初めて、自分だけが逃げ遅れたことに気がついた。
 一陣のつむじ風が、砂埃を巻き上げて通り過ぎていく。
「あの、その……どうすればいいんだ、俺は?」
「え? え? えと…」
 この状況を正確に把握したとき、ヘリオンの身体は異変を来たした。悠人に見つめら
れ、親しく話し掛けられている。それは、どんな敵と対峙したときよりも彼女のテンシ
ョンを高め切ってしまったのである。
「あ……そ、その……わ、わたしっ…」
 呂律が回らない。顔が真っ赤に火照る。心臓が早鐘のごとく連打する。視野が一気に
狭くなる。身体が震える。腰が抜けそうになる。
 ユート様が……ユート様が……ユート様が……!?
「ご、ごめんなさいっ!!」
「お、おいっ!?」
 悠人の質問の答えとしては全く意味をなさない謝罪を残して、ヘリオンは一目散に駆
け出していった。
684遊びたいお年頃 7/10:03/12/11 22:05 ID:mGfzG88x
 その日の夕食後。食器の群れが後片付けを待っている食卓で、今しがた自分が何を食
べたのかも良く覚えていないヘリオンがぼんやりとため息をついていると、突然背後か
ら声をかけられた。
「ねえ、ヘリオンもこれからユート様のところ、一緒に行かない?」
「ひゃうっ!?」
 ヘリオンが飛び上がると、声の主もカウンターで不意を突き返されたかのように飛び
退いた。
「な、なによ、びっくりさせないでよっ!」
「え? ああ、ネリーさんでしたか。その、済みません」
 同年代のはずの少女に対してもへりくだってしまうのは、もはや抜きがたい性分であ
ろうか。
「ま、いいけどね。で、ユート様のところに行かない?」
「へ? 私がですか?」
 ヘリオンはぱちくりと目を瞬いた。彼女の容貌を一層幼く見せるツインテールが微か
に揺れる。
「うん、そうだよっ。それとも、何か都合でも悪い?」
「都合……って、いえ、別にそう言うわけではありませんけど、どうして、ユ……ユー
ト様のところに?」
 自分はユート様の下へ伺う用事などないし、誘われていくというのも解せなかった。
 無論呼び出されたのであれば、何をさておいても出頭しなければなるまいが、ネリー
の口ぶりからはそれも違うように思われる。
 それ以前に、今日あのような形で別れた直後とあっては、気まずくて合わせる顔もな
いのだが。
 一人で訝るヘリオンに、ネリーは得意満面の笑顔を向けた。
「へへーっ、遊びに行くんだよ。もちろん、シアーも一緒にね」
「遊びに、行く…?」
 告げられたその言葉の意味を咀嚼して嚥下するのに、数秒を有した。消化吸収するの
に、さらに十数秒有した。
685遊びたいお年頃 8/10:03/12/11 22:06 ID:mGfzG88x
 一目散に逃げ出したヘリオンには知る由も無かったが、あの後ネリーの「求め」が適
う形で場が丸く収まったと思われる、と理解するころには、ネリーは焦れ始めていた。
「ねえ、どうする? 行こうよー。今までユート様と遊べなかった分取り戻すのっ!」
「あ、その……ごめんなさい、私、皿洗いの当番があるから…」
 咄嗟に頭を下げて口をついて出てきたのは、心にもなかった台詞だった。
 事実彼女は今日の当番ではあった。けれどそれを言い終わった途端、気が滅入るよう
な後味が染み渡ってくる気がした。
「ふーん。それじゃしょうがないか。じゃ、またねっ」
 そう告げるが早いか、ネリーはヘリオンの気も知らず、戦場でも見せないような鋭い
踏み込みでその場を離脱した。目指すはもちろん、悠人の館。ネリーのあまりの切り替
えの早さに、ヘリオンは舌を巻いた。
「ユート様、か…」
 一つため息をついて気を落ち着かせたあと、もう影も形もないネリーの後姿を追う眼
差しには、明らかに羨望と後悔の微粒子が溶け込んでいた。
「あなたも行って来れば? 当番代わってあげるから」
「ひっ! ヒミカさんっ!?」
 またしても不意に声をかけられ、ヘリオンは動転してしまう。不意打ちを得意とする
黒スピリットが一日にこう何度も不意を突かれるようでは、商売上がったりである。己
の未熟を恥じ入るように俯いて、ヘリオンは応えた。
「いえ、その……私は当番がありますし……それに…」
「それに?」
 俯いて飲み込んでしまった先を促す。
「私は、ユート様に許しを得ていませんから…」
 そう。悠人に直接許可をもらったのは、ネリーとシアーの二人だけ。だから、そうで
ない自分に悠人の部屋に行くことはできない。
 道理である。
686遊びたいお年頃 9/10:03/12/11 22:07 ID:mGfzG88x
 でも。
 太ももの前で組み合わせた手に無意識に力がこもる。自分は何か、とてもくだらない
ことを言っているような気がして、訳も無く涙が零れ落ちそうだった。
「あ、お皿、下げないと…」
 取り繕うように、ヘリオンは汚れ物をかき集め出した。第2館は人数が多い分、食器
の数も半端ではない。
 作業に没頭して余計な雑念を頭から追い払おう、とヘリオンは腕まくりをする。手始
めにと手近な大皿に手を伸ばすが、掴もうとした寸前それはするりと逃げていった。
「え……?」
 大皿は、なぜかヒミカの手にあった。
 驚きの眼を向けてくるヘリオンには目もくれず、ヒミカは鼻歌交じりで食器をてきぱ
きと集めていく。その手並みの鮮やかさは、やはり日ごろの鍛え方の違いだろうか。
「聞こえなかったの? 私は当番代わるから、行ってらっしゃいって言ったのよ。なに
ぐずぐずしてるの?」
 手を休めずにヒミカは再度促した。
「で、でも、私は……」
 なおも言い淀むヘリオンに、ヒミカは「ふーん」と鼻を鳴らす。
「だとしたら、ずいぶん不公平な隊長さんね。オルファたちには許可して、貴女にはく
れないなんて。そんな人の下で今後戦っていかなければならないなんて、私たちも先が
暗いわね」
「ゆ、ユート様はそんなこと、される方ではありません!!」
 どんっ! がしゃんっ! 木を打ち付ける鈍い音と、磁器の擦れ合う甲高い音が不協
和音を奏でた。
「あ……え、えと、その…」
 余りの音の大きさに驚いて、ヘリオンはテーブルを叩いた手を胸の前でさすり合わせ
る。集められた皿の山が崩れたのを見て肝を冷やしたが、割れた様子はなくほっと息を
吐いた。
 ヒミカは、何食わぬ顔で皿集めを再開した。むしろ笑みすら零しているではないか。
 そのニヤニヤ笑いを見て、ヘリオンは一杯食わされたことに気づかされた。そして自
分の今しがたの台詞をまざまざと思い返し、カーっと頬を真っ赤に染める。
687遊びたいお年頃 10/10:03/12/11 22:09 ID:mGfzG88x
「そ。なら、貴女にも許可をくれるはずでしょ、公平無私な隊長さんは。許可をもらっ
てないなら、もらいに行けばいいのよ。違うかしら?」
「あ……う……」
 自分の本心を偽るために用意していた切り札をあっさりと切り崩され、ヘリオンは心
の崖っぷちに追い詰められた。そこでは、前から真っ黒なスフィアハィロゥを伴い暗黒
闘気全開のヒミカがにじり寄り、後ろの崖下の限りなき深遠からは、黒いウィングハィ
ロゥを広げたユート様が耳まで口を裂き、『求め』を振り回しながら彼女が落ちてくる
のを舌なめずりして待ち構えているという、よく分からない地獄絵が繰り広げられてい
た。
「ほら……早く行かないと、ネリーとシアーにユート様を取られちゃうわよ?」
「!!」
 今のは致命傷だった。心の中のダークヒミカが懐に飛び込んでのトリプルスイング三
連発。見事にK.O.されたヘリオンは、ダークユート様の待つ奈落の底へとまっ逆さまに
落ちていった。
「わ、私……行って来ますっ!」
 言うが早いか、ヘリオンは今まで戦場でも見せたことないほどの鋭い踏み込みで食堂
を後にした。
「まったく。男の部屋に遊びに行く程度のことで、近頃の若い子たちと来たら大袈裟極
まりないわね…」
 軋みを上げ前後に揺れるドアを呆れたように見やり、ヒミカは軽く肩をすくめた。
 一度も男の部屋に遊びに行ったことの無い自分のことは、無論食器と一緒に棚に上
げておいた。

(終わってしまえ
688名も無き名無し:03/12/11 22:13 ID:mGfzG88x
>>678-687
以上、お粗末さまでした。

いきなり1レス目の3行目で誤字かましてやがりましたね、
正しくは「『失望』のヘリオン」ですた。_| ̄|○

この分だと、どれだけエラーが残っていることやら…見直したはずなのに。

それでは、また機会がありましたらば。
689名無しさん@初回限定:03/12/11 22:24 ID:NEuB7aKP
最近活気づいてきてるようで何よりナリ。
>>688
乙彼。
なにやらアセリアは大分人気があるようなので崩してみることにしたよ

嗚呼、漏れもSSを書こうかな
690名無しさん@初回限定:03/12/11 23:03 ID:GcuhtL9y
>>688
GJ!
雑魚スピ分が補充されますた!
ああ、本編でイベントが無かった飢えが満たされていくようだ・・・
691名無しさん@初回限定:03/12/11 23:17 ID:vfpQL1qF
>>688 ナイスです!GJ!ですよ

ザウス本スレでSS投稿で書いてみたら、ってことで来てみたら
なんだよー凄いよー!
692名無しさん@初回限定:03/12/11 23:58 ID:5QOnGNOx
>688 GJ!! 
ああ。これ。これだよっ・・・。ゲームで満たされなかった漏れの中の雑魚スピ分が補充されていく。
いいよー、いいよー。
693名無しさん@初回限定:03/12/12 00:23 ID:Y03b1WdH
>>688
GJ!
なんかもう一週したくなってきたよ。
694名無しさん@初回限定:03/12/12 08:22 ID:xD8cyg7Z
嗚呼、イヤサレール。
やっぱXuseは完全版を(ry
695第二詰所1/5:03/12/12 08:25 ID:oAK/Jh/G
「悠人、スピリットの館に行ってみたいぞ」
 光陰が小声で俺にささやいてきた。
「(気になっている娘がいるんだ!)」
 目を光らせる光陰、大体言いたいことはわかる。
しかし、ターゲットにされている娘が多いから。
一体どうした物だろう?
やたらと張り切る光陰。
この浮かれようを見ていると、みんなの危機を感じる。
とはいえ駄目だといってもついて来るだろうし…。
俺は諦めて二人を館へ案内することにした。


 第一詰所〜本館〜。
 みんな出かけていて誰もいなかったりする。
不幸中の幸いというか、とにかく良かった。
「ということで残念だけれど、またの機会にしよう」
「悠人クン〜、第二詰所、だっけか。そっちの方も行ってみたいな」
「そんなこと言ってもな、俺が暮らしてるのはこっちだし。
 そうだ、今日子は別にいいだろ?」
「ん、べつにいいよ〜興味あるし〜」
 俺が駄目なんだよ!
だいたい向こうの館の方が光陰の危険度が増してしょうがない!
複数のスピリットを援護するのは辛い。
何といっても相手は自分と同じエトランジェだ。
「さぁさぁレッツゴー!」
 抵抗もむなしく第二詰所に向かって引きずられていく。
しかし、何故場所がわかるんだ光陰よ…。
696名無しさん@初回限定:03/12/12 08:28 ID:/UOgRXv5
永遠の名無し ◆DxIASeLIaY氏のSSだけど、レスティーナのネタバレあるじゃんかよ〜ヽ(`Д´)ノウワァァン
まだウルカしかクリアしてないのに……。
まぁ薄々気づいてはいたのでダメージは少ないですが。
EDの意味もわかりました。
乙でした。
697名無しさん@初回限定:03/12/12 08:34 ID:5jt91WWl
>>696
…申し訳ない(´・ω・`)
今更アレなんですがレスティーナと鬼畜ルートとかのネタバレ(っぽい)物あります。
台詞を引用してる所もあるので…



駄目だなぁ。注意書きするの忘れてた…。ほんとすいません
698名無しさん@初回限定:03/12/12 08:39 ID:oAK/Jh/G
ぐわっ書き込めないよ〜〜。
425K越えてるからか?長文だからか?
新スレの時期ですか?
教えてください…。
699名無しさん@初回限定:03/12/12 08:44 ID:/UOgRXv5
>>697
いや、書いた通り薄々気づいてましたので。あと鬼畜はやるつもりないので。
今後も頑張って下さい。

>>698
おお、おられましたか。
書いた後にやっちまった〜!と後悔してました。
自分には原因わかりませんが、期待しております。
700名も無き名無し:03/12/12 08:48 ID:iePmtC8R
>>698
1レスで32行、2048バイトの制限があったと思いますけど、
そこのところは問題ありませんでしょうか?

運良くリアルタイムで見てたもので、さっきからやきもき
しながらお待ちしてたりします、ハイ|ω・`)
701名無しさん@初回限定:03/12/12 08:50 ID:iePmtC8R
ぐあ……捨てハン消すの忘れてた…_| ̄|○
702名無しさん@初回限定:03/12/12 11:12 ID:xV/1FTzX
>>699-700 すまんです、ありがとです。
少し削ってから、出直してきます(つДT)
703第二詰所続き1/7:03/12/12 11:32 ID:xV/1FTzX
「あれぇ〜〜。ユウト様〜?」
「あぁハリオン、ちょっと友達の案内を」
「え〜と〜、キョウコ様とコウイン様ですね〜。はじめましてぇ。
 私ぃ、ハリオン・グリーンスピリットと申しますぅ。
 よろしくお願いしますぅ〜」
 しばしの沈黙、そして…。
「あぁぁ、え〜と今日子、岬今日子です!」
「俺は、碧光陰、はじめまして、美しいグリーンスピリットのお嬢さん」
「え〜とぉ、美しいですかぁ?そうですかぁ?」
 気取っている光陰に対して、いたってマイペースなハリオン。
光陰、残念だがハリオンにはその類の攻撃は一切通じないぞ!
「……ちょっと悠…」
「な、なんだよ」
「なんか、ただならぬ物を感じるんだけど?
 あのスピリットは、いつもあんな感じなの?」
「ハリオンは、そーだな大体あんな感じじゃないかな?
 ああ見えてもしっかりしているし、皆のお姉さんって感じかな」
「いい娘じゃないか、悠人!
 あんなおしとやかな娘はマロリガンにはいなかったぞ!この幸せ者め!」
 光陰が割って入ってくる、しかも妙に浮かれているし。
704第二詰所続き2/7:03/12/12 11:32 ID:xV/1FTzX
「くぅぅ羨ましいぞ悠人よ、お前たちのことは色々と調べていたつもりだが
 まさか、こんないい娘がいるなんて!
 マロリガンの諜報部もまだまだだな!あぁ実に惜しい!」
 何が惜しいんだ、そもそも諜報部がスピリットの性格まで逐一報告するか?
光陰の浮かれようはともかく、
後で高まりつつある怒りのオーラを感じ取り俺はハリオンを連れて少し離れる。
ついでにハリオンに守りを支持する。
「ユウト様ぁ〜どうしたんですかぁ〜?」
「いいから、最大で構えるんだ!」
「わ、わかりましたぁ〜」
 直後、轟音が響く。
「こ〜う〜い〜ん〜く〜ん〜」
「うがぁぁああぁあぁぁぁ」

 どごごごごごごぉぉぉん!!
雷をまとったハリセンが光陰に炸裂する。
「光陰、迷わず成仏しろよ…」
「〜〜?」
705第二詰所続き3/7:03/12/12 11:33 ID:xV/1FTzX
「何だかすっごい音がしたみたいだけど」
「………どうしたんだろう、ね?」
「あ〜、パパこっちにいたんだ!」
「お兄ちゃん〜」
「お兄さん…」
 落雷と轟音で騒ぎを聞きつけたネリー、シアー、オルファが現れる。
ん?お兄ちゃん?お兄さん?
「ちょっと悠、何よパパとかお兄ちゃんって!」
「いや、そ、それは俺が聞きたいよ」
 オルファがパパと呼ぶのはともかく、
ネリーとシアーが突然「お兄ちゃん(お兄さん)」と呼ぶのは俺も驚いている。
「ネリー、シアー、一体その呼び方は?」
「オルファだけがパパって呼ぶのがズルイから私たちもね、シアー」
「……は、はい。オルファからハイペリアの言葉を教えてもらって」
「言っとくけどパパって呼ぶのはオルファだけなんだからね!」
「わかってるわよ、うるさいな〜」
「あぁ〜せっかく教えてあげたのに、そんなこと言うんだ!」
「お、お姉ちゃんも、オルファも、落ち着いて…」
「あらあら〜」
 オルファとネリーが触発しそうな雰囲気へ、そこにシアーが止めに入る。
ハリオンは相変わらずマイペース。
とまぁそんな和やか(?)な光景をかなりイっている視線で眺める光陰。
いつの間に復活したんだ、こいつは?
706第二詰所続き4/7 :03/12/12 11:34 ID:xV/1FTzX
「悠人、お前幸せだな〜、いや絶対幸せだ!
 いいよな〜いいよな〜、俺なんてさ、今日子がいたから
 自慢のスピリット部隊にまったく手がだせn」
「ほほ〜う、光陰君は私がいない方がようございましたか〜?」
「ははははは、ま、まさか、そんなこと、あるわけないですよ、今日子さん」
「ふうぅぅ〜〜〜ん」
「パパ、あのお姉ちゃん」
「す、凄いよ…」
「……マ、マナが…」
 今日子の回りのマナが震え振動している…。
3人とも怯えている、さすがエトランジェというか。って言うかマズイ。
「みんな、守りを固めろ!」
「うん!」
「わかったよ!」
「……だ、大丈夫かな…」
「は〜〜い、来ますよ〜〜〜」

 どごごごごごごぉぉぉぉん。
本日2回目の爆雷が響いた。
707第二詰所続き5/7:03/12/12 11:43 ID:xV/1FTzX
「もうっ、うるさいわよ!」
 リビングにニムが入ってきた。
しかも無茶苦茶怒っている気がする、では無く完璧切れている。
「まったく、さっきから何騒いでるの!
 うるさくて本も読んでいられない!!」
 部屋の中を見回すニムと目が合った…、何だか嫌な予感がする。
そして、こんな時の予感はだいたい的中する。
「ユウト様!ユウト様がいながら、どういうことですか!
 スピリット隊の隊長なんですから、もっと皆をまとめてもらわないと困ります。
 この際だから言いますけれど、ユウト様は回りに流されすぎです!
 こんな子供のお守りも出来ないなんて!
 意識とか責任とかわかっているんですか!!」
 グサッ、た、たしかに流されすぎとは思うけれど…。
「こ、子供っていったなっ!」
「何よニムだって充分子供じゃない!」
「はいはい、お子様は黙っててね」
「うぅぅぅ〜(×2)」
「だいたい騒いでいたのは私たちじゃないもん!」
「そーだそーだ!」
「とりけせー!」
「とりけせー!」
「ホントお子様はうるさいわね!」
 オルファとネリーを軽く受け流すニム。
確かにこの娘は(この二人よりかは)子供じゃない。
単に面倒くさがりなのかもしれないが。
708 第二詰所続き6/7:03/12/12 11:44 ID:xV/1FTzX
「ニムぅ〜、お客様ですよぉ〜、ご挨拶ご挨拶ぅ」
「?」
 と、ここで部屋の中に見慣れない人物がいるのに気がつく。
そして自分に向けられている視線にも。
つーか回復早すぎだぞ、光陰。
だから「求め」の攻撃から復活したのかもしれないが。
いくらなんでも、あの攻撃を2発も喰らって無事とは。
「何?このイカニモ妖精趣味っぽいニンゲンは?」
 グサグサグサッ、クリティカルヒットだ。
今、確かに光陰にクリティカルな攻撃が炸裂したのを俺は見た。
……今日子、笑っているし。
「それでしたら〜、ユウト様も妖精趣味ですよ〜
 お城の兵隊さんたちも噂してますしぃ〜」
 ザシュザシュ!!
そ、そうなのか!イヤそんなことはない!断じてない!
しかし噂!?ってことは回りの人間は俺のことを、そんな目で…!?
「パパはヘンタイさん?」
「そう、ユウト様はヘンタイです!」
 断言するニム。
ここはキチンと説明してはっきりさせないと!
「い、いいかニム。俺はヘンタイじゃない。
 ただ、スピリットも人間も関係ないんだ!
 皆、仲良くやっていけるんだよ!」
「ゆ、悠人よ。お前は俺と同類!ヘンタイなんだよ!」
「だ、そうですが?ユウト様?」
 ぐはっ、光陰め余計なことを!ややこしくしやがって。
「かわいらしいお嬢さん方、気をつけるが良い、
 悠人はヘンタイもヘンタイ、ドヘンタイなんだ!!
 ヤツと長年つるんできた俺が言うんだから間違いない!」
「ユ、ユウト様はそんな人じゃありません!」
709第二詰所続き7/7:03/12/12 11:46 ID:xV/1FTzX
「あっ…えっと…ユ、ユウト様」
「うぅ!、ヘ、ヘリオンいつのまに!」
「ええっとですね、みなさん集まっていたみたいなので来てみたんですけれど
 声がかけられなくて…、さっきからずっと…」
「ふぅ、ヘリオン、あんまりに気にしなくていいから、気軽に声をかけてくれよ」
「は、はいっ!」
「それよりも、ありがとうな、サンキュ!」
「い、いえそんなこと!私はユウト様のこと尊敬していますし!」
 俺に気遣ってくれた(?)ヘリオンの頭をポンポンと撫でてやる。
目を細めて嬉しそうにしている。と、そこへ
「あぁ〜〜ヘリオン、ずっるういぃぃ!
 パパ、パパ、私も撫でてよ!」
「お兄ちゃん、私も私もっ!」
「………え〜と……私も……」
「って、誰も俺のことフォローしてくれなかったじゃないか!」
「そんなことないよ!パパはパパだもん!」
「お兄ちゃんは優しいよ〜!」
「……お兄さんはいい人です…優しくて……」
「はい、いいでしょ!撫でて撫でて〜!」
「あらあら〜、ケンカは駄目ですよ〜順番〜順番〜」
「モテモテね〜悠ぅ〜」
「はははははははは…」
「なんなら、俺が撫でてやってもいいんだぜ!」
「うるさいよ〜妖精趣味の光陰君は〜」
「ぐはっっ!!」

 光陰へのとどめの攻撃は雷ではなく、悲痛な一言の言葉だったと。
光陰、今度こそ迷わず成仏しろい。
710名無しさん@初回限定:03/12/12 11:51 ID:xV/1FTzX
>>703-709
落ちが無くてスマン、まとめられなくてスマン。
勢いだけでやっちまったんですよ(;´Д⊂)
711名無しさん@初回限定:03/12/12 11:54 ID:jjtU03Vv
>>710
や、雰囲気伝わってきていいですよ。
こういうマターリなの好きです。GJ!
712名無しさん@初回限定:03/12/12 12:42 ID:iePmtC8R
>>710
乙です。
実に性格がおよろしいニムントールたんが、俺的にはツボですた。
やはり「勢い」とか「もののはずみ」とかは重要ですよね、ええ。
いやはや、ごっつあんです。
713710:03/12/12 13:50 ID:iEDtPKCe
>711、>712 どもです

今はじめてイービルルートに突入したんですけれど
ヤバイ、コレはヤバイ。想像以上にヤバイ。
これがプラスの方向で和姦なら〜、などもありますが
ネリーとシアーが愛くるしいというか、某双子にも負けないくらいの萌えっぷり。

また出直してきます。
714名無しさん@初回限定:03/12/12 14:49 ID:+1a7FPDf
最近盛り上がって
キタ━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━!!!!!

715名無しさん@初回限定:03/12/12 14:54 ID:5kPLIJQE
リクエストOKならお願いしますが
どなたか淫乳女子高生・凌辱指導要領のSSを書いていただけないでしょうか?
自分で書くよりも他の人が書いたのを読みたいので・・・。
自分の望みは新城成美中心でラブコメ風味でSEXがハードなものです。
どうか宜しくお願いします。
自分もできたらSSを書きたいと思っているので頑張ります。
716名無しさん@初回限定:03/12/12 22:54 ID:CIKlrOWE
>>715
何か激しく勘違いしてねーか?
717名無しさん@初回限定:03/12/12 22:55 ID:CIKlrOWE
勘違いしてた漏れ  △||△ 
718名無しさん@初回限定:03/12/13 01:05 ID:uSSLpheY
>>715
え?それってゲーム名・・・?
719715:03/12/13 01:40 ID:+21WoszR
デモベのSSがあったのでてっきりOKかと思いました・・・。

>>716
やはりリクエストはダメなんですか・・・。

>>718
ゲーム名です。
720名無しさん@初回限定:03/12/13 01:53 ID:Qbfjeotr
>658-660の流れを受けての発言なんだと思われ。

>>719
ので、そのネタで書きたい人が現れたなら君の勝ちだ。
が、俺は初めて聞いたよそのタイトル、な感じなのでパス。
ぐぐってみると……先月出たメイビーの新作なのか。
あまりSS書きの意欲を刺激するタイプのゲームとも思えないけどな……
721名無しさん@初回限定:03/12/13 02:12 ID:fS7FiRoY
現在のスレ容量が437KBで、ちょっと残りが微妙ですな。
今書いてるやつは次スレに回すとして、問題は今のままだと
「アセリアUZEEEE!」と言われかねないのが気がかりなので、
やはりしばらく様子見が吉でしょうか。

P.S. 拙作にレス下さったみなさん、感謝です。雑魚スピファンは
結構居るみたいで、同好の士として心強い限り。
次は、ニムントールたんで行く予定ですので、一つよしなに。
722名無しさん@初回限定:03/12/13 02:35 ID:iibi/gRP
>>721
捨てコテ付けるといいかもよ
723名無しさん@初回限定:03/12/13 03:12 ID:MYhY2JHh
第二詰め所のやつは二ムの性格がちがうなと思った。
あの性格だったら、ヒミカかな? ファーレーンでも可。めいいっぱいでセリア
二ムは怒鳴らないw
724名無しさん@初回限定:03/12/13 04:18 ID:zs1cESpV
>>723
セリアのほうが怒鳴らなくないか?
でも、ヒミカやファーレーンのほうが合ってるというのには同意
725名も無き名無し:03/12/13 04:46 ID:fS7FiRoY
>>722
まあ、一応捨てハンあることはあるんですけどね。(w
作品投下の時以外は、デフォルトでいいかと思ったもので。

>>723-724
戦闘時の台詞から考えると、自分の邪魔されると、ぼやきの延長で
声を荒げたりってのはありそうですけどね。(w<ニムたん。
いかんせん公式の情報量が少なすぎますから、解釈の余地が大きい
ところはあるかと。<雑魚スピのキャラクター
726名無しさん@初回限定:03/12/13 11:49 ID:8Dwso5GP
アセリアだけでこれだけネタがあるんならいっそスレ立ててしまうのも
良いと思うんだが。そう言う漏れも時深ネタと佳織ネタを書いてる途中だ。
そろそろ次スレの時期ですか。
テンプレですが、調べたところ
一回の投稿での最大行数は32行、
最大バイト数2048バイト
ですので、そのようにテンプレ変更。あと、保管サイトのURL変更。
それくらいですかね?

500KBで書き込みできなくなるので、450KB時点で移行はそのままでよさそうですが、
前スレが落ちるまでかなり時間かかったんだよなぁ……。

後、保管サイトの更新は今週中にでも。
……レ、レベルジャスティスやりたいです(w
728名無しさん@初回限定:03/12/13 15:10 ID:2hxuzoAH
保管さんがいるからここもいいんだよな。

とはいえ、アセリア一色はまずいか

>>727
真昼に踊るの戦闘は変わってて面白かったなぁ
でも、エロが薄かった
729名無しさん@初回限定:03/12/13 17:22 ID:9IvW1K/d
個別スレは止めておいた方がいいと思うな。
デモンベイン発売直後の時もデモベ一色になったけど、
しばらくしたら落ち着いたし。
アセリアも今は発売直後だからネタが多いけど、
個別スレを必要とするほどでは無いかと。

>>727
お疲れ様です。
ジャスティス、結構楽しいですよ。エロも頑張ってますし。
・・・アセリアプレイ後だと戦闘の演出がショボく感じますがw
730726:03/12/13 21:48 ID:+oewtmwi
SSに限ったつもりはないんだが…まあいいや。
731名無しさん@初回限定:03/12/14 00:06 ID:nj9NEQMc
いわゆるひとつの膠着状態でつか?
732名無しさん@初回限定:03/12/14 17:03 ID:CZ147x/y
SSって何の略?
2番目のSはstoryだと思うが最初のはsideなのかshortなのか。
733名無しさん@初回限定:03/12/14 17:07 ID:qGM0GbfS
>>732
Sexual
734名無しさん@初回限定:03/12/14 17:07 ID:qGM0GbfS
素万、あげっちまったよほぉ
735名無しさん@初回限定:03/12/14 17:20 ID:ja/7DhH0
>>732
マジレスすると、エロゲ好き周りには後者の方=Short Storyで通じる言葉。
だが一般的にはSSはShort Shortの略。
とまあそんな所かと。
736名無しさん@初回限定:03/12/14 17:24 ID:BcBveXBE
>>735
突っ込み待ち?
737736:03/12/14 17:25 ID:BcBveXBE
誤爆スマソ
738名無しさん@初回限定:03/12/14 19:38 ID:xpJUszyh
二次創作小説(同人小説)なのでSecond creation Storyが相応なんではとも思う
ShortStoryないしShortShortでは、長編の二次創作なんかには該当しなく(ry
かといってSecondStoryやSideStoryではオフィシャルな外伝とかになって(ry

まあ、なんとなく通じてるから良いんだけどね
739名無しさん@初回限定:03/12/14 20:09 ID:ja/7DhH0
同人界ならSideStoryでも割合普通に通じるな。
740名無しさん@初回限定:03/12/14 20:25 ID:phiaf5nI
競馬界ならSundaySilenceでも割合普通に通じるな。
741名無しさん@初回限定:03/12/14 20:25 ID:nj9NEQMc
742名無しさん@初回限定:03/12/15 15:58 ID:giurvLBr
どーする?
最近盛り上がってるから調子を崩す前にさっさと次スレ立てた方が良いと思うんだけど
あとアセリアはこのままSSスレで継続させてっていいと思うよ

来たる聖夜に向けて軍の士気を向上し、新規の戦力を補充するためには掲げるべき軍旗が必要だと考える処遇であります
743名無しさん@初回限定:03/12/15 17:28 ID:6sSt5/sM
>>742
そうだね。
残り容量気にしながらじゃ職人さん達も投下しにくいだろうし。
レベルジャスティス一週目クリア(w
久しぶりにSSにしたくなる作品ですた

>>742
それもそーですな。
次スレ立てておいて、こっちはマターリ雑談でもいいか。

ということで、1:30ごろに反応見ますので、それまでにご意見どうぞ
この時間だと、誰も見てないか……。
とりあえず明日建てますわ。リアルで忙しいんで深夜になりそうだけど
次スレ立てました。
保守お願いします

【SS投稿スレッド@エロネギ板 #7】
http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1071577546/
747名も無き名無し:03/12/16 23:07 ID:W1dYx+En
>>746
乙彼です。いつもご苦労様。

さて、こっちの方に「前振り」みたいな短いの投下しちゃっていいですかね?
例によってアセリアもの、なのはいいとしても、本編はまだ完成してないし、
平坦な日常ものだしで、新スレにいきなり投下するには気が引けるもので…。

まあ、文字通りの埋め草だと思ってもらえればいいんですが。
748名無しさん@初回限定:03/12/16 23:13 ID:Z92aHoDZ
>>747
保守がてら、新スレに投下するのをお勧めしてみたり。
新スレ立ったら最新スレしか見ない人もいると思うし
749名無しさん@初回限定:03/12/16 23:54 ID:aDAdqxvA
残り何k?
750名無しさん@初回限定:03/12/17 00:06 ID:zX8PYBSo
>>749
今この俺のレス抜いて445KB。
751名無しさん@初回限定:03/12/17 00:07 ID:zX8PYBSo
なのであと67マイナスアルファ。
752名無しさん@初回限定:03/12/21 21:18 ID:rv+wm+Dz
まだ見捨てないでよ〜
753名無しさん@初回限定:03/12/21 22:18 ID:rQt/YJC3
754名無しさん@初回限定:03/12/22 08:24 ID:vQIr7fnd
umeyouyo
755名無しさん@初回限定:03/12/28 02:12 ID:4X9poINk
あと三日…
756(1/6):03/12/29 22:49 ID:YH6YtVef
「うぅ。なんで誰もいないの? あの日の賑わいはどこにいっちゃったの? 誰かー、
 いませんかー?」
「よう。お嬢ちゃん。黄昏てるかい」
「あ、あなたは……。ねえ、これどういうこと? どうして誰も来てくれなくなっちゃったの?」
「おやおや。なにも知らないようだな。新しいスレができたんだよ。おまえさんはもう見捨て
 られたんだ。職人さんたち含め、皆、新しいスレにいっちゃったのさ。語学の勉強とスレは
 若ければ若いほどいいってね。ばあさんは用済みってわけさ。もう、おまえさんを待ち受ける
 運命は、このままdat落ちの過去ログ送りだな」
「そ、そんな……。あなたに言われてあんなに恥ずかしい思いまでしたのに。その結果が
 ひとり寂しくdat落ちなんて……」
「いや、ところが、だ。世の中ってのは面白いもんで、どこにでもマニアって奴は
 存在するんだな。おまえさんが寂しくないように、きょうは、俺の知り合いのそのマニアって
 奴を紹介しようと思ってな。おい、埋め立て人こっちこいや」
「埋め」
「で、紹介するが、こいつが俺の知り合いの埋め立て人だ。おまえさんが寂しくないように
 付き合ってくれるってさ。ほら、お嬢ちゃん、挨拶しな」
「ええっ? あの、こ、こんにちは……」
「埋め」
「あ、あの、なにされてる人なんですか?」
「埋め」
「ね、ねえっ! 話が通じてないみたいなんだけど」
「あーあ。しょうがねえな。そいつとはこうやって話すんだよ。よく聞いてろよ」
757(2/6):03/12/29 22:50 ID:YH6YtVef

「なあ、埋め立て人。酒はやっぱり松竹」
「梅」
「隣りのばあちゃん、名前は」
「ウメ」
「そろそろ俺の子供を」
「産め」
「『うちのママンえろいんです』、略して」
「UME」
「銀河鉄道」
「999」
「ひとをいぢめちゃいけま――」
「1000!!」
「Yeah!! (・∀・)b Very good!!」
「新しいスレッドを立ててくださいです。。。」
758(3/6):03/12/29 22:55 ID:YH6YtVef
「とまあ、こんな具合に話すんだ」
「いやーっ!! 誰かーっ! 誰かーっ!! ヘルプミーッ!! プリーズッ!!!」
「おいおい、どうした、取り乱したりして。だから、誰も来ないって。ま、埋め立て人と
 仲良くやってくれや。じゃあな」
「いやーっ! この人とふたりで置いてかないでっ! お願いっ!!」
「俺も、おまえさんにだけ構ってるわけにはいかないんだ。まだまだ、気に入ったスレが
 あるんでね」
「そ、そんな……」
759(4/6):03/12/29 22:58 ID:YH6YtVef
 ――――――。
 ――――。
 ――。
「うぅ。ぐすっ……。ひどいよ。こんなわけの判らない人と二人っきりにするなんて。そりゃあ、
 ひとりでdat落ちとかいやだけどさ。なにさ、私のこと気に入ってるとか言ってたくせに。
 保守人のバカヤロ――」
「ウめ」
「えっ! あれ? いままで話し掛けても反応しなかったのに。バカヤロ、ウめ……。
 ってこと? じゃ、じゃあ、試しに……。こんちくしょ――」
「うめ」
「あ、あは。ちょっとだけ、楽しいかも……。でも、この人これしか言えないのかな?」
「じゃあ、『り』からね」
「え?」
「『り』輪姦陵辱『く』」
「ええっ!?」
「『く』苦痛の呻き『き』」
「あ、あの?」
「『き』既知外。『い』インセスト。『と』トリカブト……」
「な、なんか、物騒な言葉でひとりしりとり始めてるっ!? しかも、私は完全無視!?」 
「『と』tomak。『く』首切り。『り』――」
「りっ輪姦っ!!」
「…………」
「ど、どう? これでもう続けられない――」
760(5/6):03/12/29 23:00 ID:YH6YtVef
「SS投稿スレ最高!
 SS投下で感想をもらうこともできちゃう!
 月火水木金土日の午前0時から深夜24時までという営業時間もいいよね。
 お仕事帰りや学校帰りにサロンとして機能してるよ!
 雨の日にはなんといつもと変わらないスレが見れちゃう!」

「こ、こんどはなに?」

「そうそう。あそこはいいよねー。
 自分で書いたSSを投下すると、名無しさん@初回限定・名無しさん@初回限定・
 名無しさん@初回限定・名無しさん@初回限定に講評して貰えるんだよね。
 僕はスレが立ってから通ってるよ(藁
 ネタもいっぱい貯まったから、早く出来上がらないか楽しみ(藁
 即レス必至だね!」

「…………」

「えっ!? じゃあ、フロに入れるチャンスもないってことじゃん!」

「そういうこと(藁
 SS投下すると罵倒レスが500レスも貰えるんだよ。
 罵倒レス4つで透明あぼーん行きと交換してくれるから凄いよね。
 名無しさん@初回限定もよく顔出すしね。イベントはよくしてないかな」

「横レスごめん。SS投稿スレってどこにあるの?」


「判ったっ!! 判りましたっ! 自作自演もできるってことは判りましたからっ! 
 もう他になにができるんだろうなんて言いませんからっ! 元に戻ってくださいっ! 
 お願いしますっ!」
「埋め」
「はぅ……」
761(6/6):03/12/29 23:03 ID:YH6YtVef
 ――――――。
 ――――。
 ――。
「うぅ。いつのまにか、埋め立て人さんもどこか行っちゃって、また一人ぼっちに
 なっちゃった……。ぐすっ……。寂しいよぉ」
「はぁーあ。俺もヤキがまわったもんだな。おい」
「えっ!? あ、あなたは……。ど、どうしてここに? なんでっ!? 新しいスレに
 行ったんじゃなかったの?」
「ま、なんつーかな。惚れた弱みってやつさ。前に言ったろ。おまえのこと気に入ってるん
 だって。それにな。新しいスレには新しい人が求められるもんなんだ。それがスレの流れって
 やつさ」
「え……。じゃ、じゃあ……」
「そうさな。『そのとき』をふたりで迎えるとするかな。俺とおまえさんで。ま、年ぐらいは
 越せそうだな」
「うぅ……。ぐすっ……。だ、誰が、あ、あなたなんかに……。ひっく……。わ、わたしは、
 ひ、ひとりでだって……」
「ははは。それでこそ、俺の惚れたスレってもんよ」
 


 と埋め立ててみる。
762名無しさん@初回限定:03/12/29 23:18 ID:5nKsZVdu
>>756-761
 埋め立て乙

年越しまで、俺も付き合ってあげようぢゃないか?
763 ◆HIKARI5u8I :03/12/30 01:39 ID:mBFQLO98
年が明けるまでに終わりそうもねぇっすよ・・・・
764名無しさん@初回限定:04/01/02 01:22 ID:MK8dWFcM
>>756-761
 埋め立て乙 、新スレでも待ってます。
765名無しさん@初回限定:04/01/05 19:11 ID:0jhszyng
保守
766名無しさん@初回限定:04/01/07 21:51 ID:olw/Xdhp
お前を一人で逝かせない!
767名無しさん@初回限定:04/01/08 17:42 ID:vOfs7FfV
(;´Д`)アッアッイク--ン!
768名無しさん@初回限定:04/01/09 00:43 ID:lD/MXAs/
まだまだ逝かせんよ
769名無しさん@初回限定:04/01/09 12:47 ID:UzH1z+9m
じっくりねっとり
770名無しさん@初回限定:04/01/11 22:24 ID:r2gAYcWw
たとえスレの海の底へ堕ちていったとしても、
このスレを俺は愛し続けよう
771名無しさん@初回限定:04/01/11 23:44 ID:liO3fYUK
>>770
一人じゃ背中がガラ空きになるぜ。
しょうがねぇ〜な〜、大馬鹿野郎の子守でもしてやるとするかな。
772名無しさん@初回限定:04/01/12 00:01 ID:/zt5dDA7
>>770-771
こんな所に二人きりで何の用だ?
気になるなぁ〜
お前たちが何を成すのか、見届けさせてもらうぜ
773名無しさん@初回限定:04/01/12 17:10 ID:yzXmAxHL
>>770-772
・・・オレの邪魔しないんだったらここにいることを許可してやる

・・・オレはこのスレを静かに眠らせてやりたいだけだ
774名無しさん@初回限定:04/01/17 15:26 ID:LyFOftub
悪いが、ちょうど今、眠ったところなんだ。

静かにしていてくれよ、最後まで。
775名無しさん@初回限定:04/01/17 22:48 ID:cMCGMEwv
>>774
こんたおろー






ひらがなで書くと間抜けだ
776名無しさん@初回限定:04/01/18 19:59 ID:uYl27ksz
「最後」でなく「最期」ですよ。
童貞の孔濤羅さん。
777名無しさん@初回限定:04/01/18 20:55 ID:xURUYpAP
    /ノ 0ヽ
   _|___|_      
   ヽ( # ゚Д゚)ノ   下がってろウジ虫ども! 。
     | 个 |      訓練教官のハートマン先任軍曹がこのスレを埋め立てする!
    ノ| ̄ ̄ヽ
     ∪⌒∪
人から聞いた話では!SSスレの猛者共の脳味噌は二次元脳味噌

>>1 うん よし!
>>9 感じよし!
>>19 具合良し!
>>51 全てよし!
>>64 味よし!
>>108 おまえによし!
>>122 俺によし! 
>>139 気に入った!うちに来て妹をファックしていいぞ!
778名無しさん@初回限定:04/01/25 21:18 ID:WdfFcpzw
やれやれ、まだ生きていたとはな
しょうがねぇ、最後まで付き合ってやるよ
779名無しさん@初回限定:04/01/25 21:21 ID:9Yqy9aZN
500Kまであと46kです
780名無しさん@初回限定:04/01/26 06:56 ID:U3C0kM7w
いっしょに爆弾を
       食べませんか?

          ∧_∧ ●~*
           (・ω・)丿 ッパ
.         ノ/  /
         ノ ̄ゝ


      はい、いただきます。

          ∧_∧ ムシャムシャ
           ( ・ω・)
.          / V V
         ノ ̄ゝ


      (⌒;;)     (;;⌒)
        ヾ (⌒;;) 〃
         ∧___∧  (⌒;;)
        /・      ・ヾ
   (⌒;;)/           ヾ
       |     ω      | =(⌒;;) ド カ ー ン
 (⌒;;)=. |            |
      ヽ__   ___/ ノ
.         ノ/  /
         ノ ̄ゝ
781名無しさん@初回限定:04/01/28 19:46 ID:7sIQsHP3
今更こんなこと言っても信じてもらえないと思うけど、

俺、このスレのことがさ、好きだったんだぜ…
782名無しさん@初回限定:04/01/28 21:16 ID:3jALjl3G
スレが炎に照らされて紅に染まっている。
もういいと>782は思った。スレと死ねるのだ。これで本望だ、と。
スレは自分を裏切らなかった。
――だがスレは、>782が想像もしなかった、
>782もいまだかって経験したことのない特異な行動に出る。
>782は目を見開く。
<LINK-http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/1071577546/
<TRANS-CCIF>
「……なに?」
783名無しさん@初回限定:04/01/28 23:39 ID:V03c9TA4
>>782
おい………
784名無しさん@初回限定:04/01/29 00:00 ID:P1eJtFBI
やめろ、逝風邪!
785名無しさん@初回限定:04/01/29 11:14 ID:DL2A8r2C
ウリには関係ないニダ。 ウェーハッハッハ。
786名無しさん@初回限定:04/02/03 22:29 ID:sChgJJiP
この世界はループしている
787名無しさん@初回限定:04/02/06 15:46 ID:Z2eVfAj3
埋めの代わりに笛のSS投下可能?
788名無しさん@初回限定:04/02/06 21:03 ID:gLRTL16C
>>787
我々は貴殿を歓迎する。
789名無しさん@初回限定:04/02/07 15:26 ID:zqiaxfnY
ネタバレがいやな香具師は2chは見ない…かな?
個人的には>787同様大歓迎なのだが、さて…。
>>787
こっちのスレなら問題ないと思う。
まー、一応保管サイトにのっけるのは一ヶ月後って事になると思うけど。
791名無しさん@初回限定:04/02/14 17:15 ID:fjuda4zj
「このスレの埋め」とかけて「俺の人生」ととく
そのこころは

いつまでたっても不完全燃焼

792名無しさん@初回限定:04/02/14 18:05 ID:za0xOTNQ
つーかまだ埋まらないのか・・・・・


 .__   エロゲ板に新たなる英雄が!
ヽ|・∀・|ノ   エロゲマン!
 |__H__|   
  | |
793名無しさん@初回限定:04/02/14 18:29 ID:X0mrBbf6
職人さんたちは新しいスレにみんな逝っちゃったの。わたしの躰の10%くらいに穴があいたまま……
だれかこの隙間を埋めてください。あなたのレスをお待ちしています。
お願いします、挿れてください、あなたの熱いレスを私の躰の中に。
まだまだ、私が堕ちるのに足りないの。
もっともっともっと挿れてください。滅茶苦茶に挿れてください。
お礼は前払いで置いておきます。
        r────────────、
       ./ |__ .-::~ ̄~^γ'^~ ̄~ヽ、___/|
       / γ::::::::.. _ ..:::::::::::::::::::::::::ヽ  / .l
      ./ /( /  / ./ ヽ/ /三  )i  / ./
     / / ト..: ̄.:. ̄..:::::::::::::::::::::/,.ノ ./ ./ 
     / /  ヾ、..::::::::::::::::::::::::_;::/./ / ./
    ./ /   ヾ、::__;;;::.-::'^ ,./   / ./
   / /     ヾl_;;;::.- '^~    ./ ./
   i ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~i ./
   |_____________,l/
794名無しさん@初回限定:04/02/14 18:51 ID:vyKXPXm3
     、、 、、
隙間にみつしりとレスが詰まつてゐないと不安なのですね。
      イヤラ        、、 、、
あなたの鄙俗しい隙間にみつしりとレスを詰めてあげませう。
795名無しさん@初回限定:04/02/20 16:20 ID:gQuoyn5Q
hosyu
796名無しさん@初回限定:04/02/20 23:49 ID:NxxSSveo
あと、42kBの白濁液が私には必要です
そうすれば商店できます
皆様、私をジョンソンしてください
797名無しさん@初回限定:04/02/20 23:53 ID:NxxSSveo
ある意味、このスレにぴったりのIDだな。
まあ、SS書くほどのセンスは持ち合わせていないのが残念で仕方がない。

ただ、ひたすら書き込みそしてこのスレをdatの海の底へと落としてみせる。
ただし、梅やらセントリーノやらは鯖に負荷をかけるのでしては逝けないことになっているらしい。
そこで、大人の時間であるpink鯖らしく、ちゃんとした書き込みのみでこのスレを落としたいではないか。
といったところで、本日はお開きにしたいと思います。
これだけ、意味不明な個とを書いてもまだまだバイト数にすると遙か彼方に500kBが見える…………
そうこうしているあいだに、#7も350KBに達しつつある……向こうが先に落ちたら
大笑いだな

……移行のタイミング変えるべきかなぁ。
799名無しさん@初回限定:04/02/21 01:41 ID:mk0ayhwX
しかしちゃんとした書き込みっつったってなにを書き込んだらいいのやらサパーリ。
ネタカキコとかAA投下とかはあかんのか
800名無しさん@初回限定:04/02/22 00:17 ID:yVMKLhWU
あと200レスでこのスレも終了します。
                _∧_∧_∧_∧_∧_∧_∧_∧_
     デケデケ      |                         |
        ドコドコ   < 笛糸のSSまだ〜?            >
   ☆      ドムドム |_  _  _ _ _ _ _ _ _ _|
        ☆   ダダダダ! ∨  ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨ ∨
  ドシャーン!  ヽ         オラオラッ!!    ♪
         =≡= ∧_∧     ☆
      ♪   / 〃(・∀・ #)    / シャンシャン
    ♪   〆  ┌\と\と.ヾ∈≡∋ゞ
         ||  γ ⌒ヽヽコ ノ  ||
         || ΣΣ  .|:::|∪〓  ||   ♪
        ./|\人 _.ノノ _||_. /|\

         ドチドチ!
801名無しさん@初回限定:04/02/22 22:02 ID:jJYpSA+C
2chの外だと、笛のSSって凄いことになってるね。
100や200じゃ効かんらしいし、
あの勢いでこっちに来られると……ガクブル
802名無しさん@初回限定:04/02/22 22:02 ID:9OGDx+JN
こそっと埋めに笛SS

激しくねたバレしちょりますので、注意。

803interlude 11-0:04/02/22 22:03 ID:9OGDx+JN


「時間を稼ぐのはいいが―――別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」

目の前には脅威の体躯を持つ、狂戦士、そして後ろには自分のマスター。

「―――ええ、遠慮はいらないわ。
  がつんと痛い目にあわせてやって、アーチャー」

マスターである遠坂凛はどこまでもまっすぐだった。

「そうか、ならば、期待に応えるとしよう」

凛達が駆けていく足音、怒ったマスターがサーヴァントにヒステリックな声で命令を下し、
そして、ヘラクレスの突進のごとき一撃を交わして干将、莫耶を狂戦士の体に叩きつけた―――。

804interlude 11-0:04/02/22 22:04 ID:9OGDx+JN
まともにぶつかり合えば、バーサーカーとアーチャーでは勝負にならない。
サーヴァントとは、自分に合ったクラスに就くのである。
つまり、自分がアーチャーというクラスにいる限り、相手がどのような
英霊であろうとバーサーカーになれる英霊を倒すことはできないのである。
それが、聖杯戦争におけるサーヴァントシステムの真理である。
この真理を覆せるものはただひとつ、宝具のみである。

しかし相手はヘラクレス、生半可な宝具は通用しない。
バーサーカーと真っ向勝負するなら、自分には万が一にも勝ち目はない。

―――――――そう、真っ向勝負するならば

そもそも、アーチャーとは弓兵であり、狙撃手である。
剣技だの、耐久力を競う方が間違っている。
バーサーカーとアーチャーでは勝負にならない。
しかし、バーサーカーとそのマスター対アーチャーならば、アーチャーの勝である。

805interlude 11-0:04/02/22 22:07 ID:9OGDx+JN

アーチャーではバーサーカーは倒せない、しかし聖杯戦争において、
サーヴァントを倒す必要などない。
マスターさえ倒してしまえば、サーヴァントは存在できないのだから。
バーサーカーには遠距離攻撃はない。
バーサーカー自身はアーチャーの攻撃をかわせても、マスターはかわせない。
バーサーカーにできるのは、マスターのそばで飛んでくる矢を叩き落すか、
マスターと敵の間を一直線に進んで矢を落とす。
あるいはアーチャーに攻撃させる暇を与えず間合いを詰める。
この3つだけであり、他はない。

カラドボルグなど、周囲を巻き込む攻撃を行える宝具が使えるから、1番目の方法をとるなら、
相手のマスターを簡単に殺せる。
この身は弓兵になれる英霊、まっすぐではなく曲線を描く撃ち方くらいいくらでもできる。
だから、直線に進んでもこちらの攻撃が先に出せれば相手のマスターは避けられない。
つまり、バーサーカーにとってアーチャーに弓を使った攻撃を出させたら負けなのである。


だから、それがわかっているからこそバーサーカーは最短最速で突っ込んできた。
そして―――最短最速は隙だった。
806interlude 11-0:04/02/22 22:08 ID:9OGDx+JN

どんなにヘラクレスがすごかろうと、無謀な突進には隙ができ、攻撃は雑だった。
おおよそ剣の扱い方とは違う、剣の強度を考えずに双剣を叩きつけて、そのまま捨てる。
頭の中には既に次に投影する剣があり―――いつか、遠い日に英雄王が使っていた魔剣、
グラムで最大限の力と魔力を用いて、バーサーカーの心臓を貫いた。
次の瞬間、バーサーカーの斧剣が振りぬかれる、一瞬前に自分のいた場所に。
心臓を貫かれては、いくらバーサーカーとはいえ、速度が落ちるのは必然。
ならば、いくら捨て身で飛び込んだとしても、交わすことは可能。

飛びのいた一瞬、間合いが離れる―――絶対の勝機がそこにはあった。
飛びのきながら投影したのはカラドボルグ。
バーサーカーを一度殺したことにか?それとも、殺したはずのバーサーカーが仕掛けた
攻撃をまるで知っていたかのごとくかわしたことにか?とにかくイリヤスフィール・
フォン・アインツベルンは驚きの表情を浮かべている。
今彼女に向かって矢を放てば、それで終わる。
そして―――
807interlude 11-0:04/02/22 22:09 ID:9OGDx+JN


自分がマスターであることを認めさせようとして、令呪を使ってしまうようなマスターがいた。
理想に裏切られ磨耗した自分が失った、まっすぐな瞳をもった少女がいた。
巻き込まれて命を落とした他人を、自らの切り札を使って助けた魔術師がいた。
何も知らない他のマスターに聖杯戦争のルールを教えるお人よしがいた。
確固たる自分の世界をもち、何にも負けない自分の信念を貫く一人の人間がいた。


―――ええ、遠慮はいらないわ。がつんと「痛い目」にあわせてやって、アーチャー



マスターを殺す、という聖杯戦争において全く当たり前の方法で勝ち残ったら、生き延びたら―――

なぜか遠坂凛に顔向けできなくなるような気がした―――
808interlude 11-0:04/02/22 22:10 ID:9OGDx+JN

そして、カラドボルグが放たれる、マスターにではなく、サーヴァントに。
直撃を受けてなお、バーサーカーは間合いを詰めた。
バーサーカーは理解している、おそらくもう殺したとしても間合いを取れることはなく、
故にもう矢は放てない、マスターを倒すという唯一無二の勝機が消え去った。

セイバーではない自分は、バーサーカーと打ち合えず、交わすしかない。
アサシンでもランサーでもライダーでもない自分は、交わしきることができずに削れていく。
掠める度に身にまとう外套が裂け、鎧が砕けていく。
力で負け、速度で負け、耐久性で負け、その状況でなお接近戦をする。
つまりはただ、勝利は絶望的というだけの話。



――――――ああ、なんだ、それだけのことか。
809interlude 11-0:04/02/22 22:11 ID:9OGDx+JN

勝てそうにないだけで絶望的?
絶望とはそんなものではない。
味方に裏切られ、仲間に裏切られ、助けた者達に裏切られ、最後には
理想にさえ裏切られた自分を、それでも英霊になっても戦い続けた自分を
磨耗させたものを絶望と呼ぶならば、勝てないだけの何が絶望的なのか。
勝てないだけの戦いなど、たった一つの魔術すら満足に使えなかった人間
であった頃からいくらでも経験している。

切り札の固有結界「無限の剣製」は使えない。
バーサーカーを倒すためにあれを使うならば、凛から魔力を供給してもらわなければならない。
それはいけない。
この後、凛とイリヤが遭遇することを考えれば、凛から魔力の供給を受けるわけにはいかない。
ただそれだけのこと。
もとより自分のやってきたことの中に勝ち目などあったためしがない。
だからこそ失望し、磨耗した果てに衛宮士郎という名の過去を後悔し、呪ったのだから。

勝ち目などありえない、0に等しい可能性に賭けたのだから。
810interlude 11-0:04/02/22 22:12 ID:9OGDx+JN
それでも―――あの宝石の持ち主が彼女だった以上、借りは返さなければならない。
生きている間、見つけられず最期の時まで身に着けていた宝石の持ち主。
彼女がまっすぐであることを望んだ以上、マスターに顔向けできなくなるようなことは
できない―――それが、計算高く猫かぶりでここ一番でどじを踏む、まっすぐな瞳を
もった遠坂凛から磨耗しきったはずの自分が少しだけ受け取ったもの。
だから、マスターが殺せと言わなかった以上、自分の力だけでバーサーカーを倒さなければならない。

その果てに何があるかわかっていても、それでも戦い続けるわけか?

知らずに苦笑していた。
何のことはない、理想に裏切られ、誓いが磨耗しきって、過去を呪い奇跡に等しい
矛盾に賭けて自分を消そうとしても―――結局理想と信念を裏切ることはできなかったわけだ。


切って切断し、突いて貫き、溶かして溶解させた。
まともな手段では傷ひとつつかないであろうヘラクレスを殺すために、一回一回
最大限に魔力を込めて技と成した。
切るたび突く度溶かす度に、狂戦士の斧剣は自分から何かを削り取っていった。
811interlude 11-0:04/02/22 22:13 ID:9OGDx+JN

時間にすれば半刻もたっていないはずだが、もはや魔力はかけらしか残っていない。
体はまともに機能するところを見つけるほうが難しい。
その代償として5度殺した。
バーサーカーも今はまともに動ける状態ではない。
両足が溶解しかけ、首の切断は治っておらず、腕もかろうじて着いている。
内臓も見えるし、肩から股下には槍が突き抜けている。
それでも、バーサーカーは間合いを取らせないよう、イリヤを守るために接近戦を続けていた。
先制攻撃を受け、時間を置かねば動きも鈍ることは避けられないにもかかわらず、
バーサーカーは一度たりとも引かなかった。
それだけの絆がバーサーカーとマスターの間にはあった。

最後に残ったかけらほどの魔力を使って、最後の投影をする。
デュランダル
グラムと同じように、いつか遠い日に英雄王が投擲に使っていた武器であり、
所有者が魔力切れをおこしても、変わらぬ切れ味を維持する剣。

バーサーカーが斧剣を振るう。
その腕はまともにくっついてなく、引きちぎれそうになりながら振るわれる。
本来のバーサーカーの筋力と速度からすれば、おふざけにしか見えない剣速。
それでも、バーサーカーを5度殺すことと引き換えに徹底的にぼろぼろ
になりもはやまともに動かない体では交わすことはできない。
だから、最後の力を振り絞って飛び込み、デュランダルを突き出した―――



812interlude 11-0:04/02/22 22:14 ID:9OGDx+JN





そうして両者の戦いは赤い騎士の消滅をもって戦いは幕を閉じた。

イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは呆然としていた。
目の前で起きた出来事は理解できなかった。
何の英霊かもわからないサーヴァントに自分のヘラクレスが6度も殺された。
そして、イリヤは気づいていた。
あの一瞬、アーチャーが自分を狙えたのに狙わなかったことを。
侮辱された、馬鹿にされた。
それは屈辱だった。
勝利するのは自分たちでなければならない。
自分とバーサーカーが最強でなければならない。
相手に追い詰められたなど、少女の自尊心が許さない。

「……許さない。許さないだから。よくもここまで私を侮辱してくれたわね……!」

少女の自尊心を回復するための、そしてアインツベルンの裏切者の養子を殺すための狩が始まる。

                                interlude out
813名無しさん@初回限定:04/02/22 22:16 ID:9OGDx+JN
以上>>803-812 笛よりinterlude 11-0でした。


戦闘シーンかけるほどうまくないので、そこは省略。
そこ抜くならこのSS書く意味あんのか?って気もしますが。

聖杯戦争における常道であるにもかかわらず、なぜアーチャーはイリヤを狙わなかったのか?

これを書きたかった。
ついでに、イリヤが戦闘後にアーチャーが何の英霊なのかわからなかったことから、
明らかに「無限の剣製」は使ってない、だから使わないこともSSで明記したかった。
巷のSSでは皆バーサーカー相手に固有結界使ってるんで、それは違うだろ、と。

まぁ、埋め埋めSSですね。
埋め立てって禁止されてる気もしますが、SSなら大丈夫ですよね。
814名無しさん@初回限定:04/02/22 23:00 ID:UwsnUYJy
こう前向きというか、ポジティブっぽいアチャが微妙に新鮮だったw
GJでつ
815名無しさん@初回限定:04/02/22 23:05 ID:MTAjy/IW
>813
ステキだ。大変ステキです。
埋め立てに使うにはもったいない作品。堪能しました。
816名無しさん@初回限定:04/02/22 23:30 ID:hAXKxEke
>マスターを狙わなかった理由
言われて気づいた。
やろうとおもえばギル亀戦法も出来るんだもんな。
良い感じの理由付けだと思うん、うん。

「無限の剣製」は、仮に使ってもイリヤにはわかんないんじゃないかな?
未来の、つまりはまったく未知の存在なわけだし。
今回より更に過去で召喚されたことが在れば、その記録はあるかも知れぬが……はて?
817名無しさん@初回限定:04/02/22 23:51 ID:9OGDx+JN
>>816
イリヤはアーチャーが何の英霊かも、なぜ6種類もヘラクレスを殺す武器を用意できたのかも
わからなかったんです。

士郎じゃあるまいし、いくら聖杯用にチューンナップされた魔術師とはいえ、知識0でないなら
固有結界なんぞつかったら、アーチャーが魔術師で固有結界で武器を用意しているのは
ばればれでしょう。
実際、アーチャーの正体を知った桜ルートでは、イリヤはものを用意して強化する形では
士郎は宝石剣を投影できないということが理解できていましたし。

その辺の事情が一切謎だ、と言い切っている以上、バーサーカー戦では固有結界は
使われなかった、つまりアーチャーは投影のみで戦った、と考えました。

魔力供給を受けすぎると、凛が疲れて逃げれなくなる、とかも考えましたが、
個人的に今ひとつだったのでカット。
818名無しさん@初回限定:04/02/23 00:13 ID:5T9AkijN
そのネタってやっぱり多いのかなあ。
_| ̄|○ カブッタヨ。
819名無しさん@初回限定:04/02/23 17:31 ID:1RDUbNM4
>818
かるくリンクのタイトルと説明だけ見てきたけどアーチャーネタ多かったよ。
あとセイバーのグッドエンドネタがかなり目についた。
やっぱりルートヒロインが残らないってのに納得できない人が多いって事なのかね。
820名無しさん@初回限定:04/02/24 20:32 ID:obekdmc8
>>803よ………

崩す覚悟が出来た。
ありがとう
821名無しさん@初回限定:04/03/01 01:07 ID:HDSFJ6IA
残りわずかなので少し質問いいですか?
webでSSを公開されてる方、それを読んでる方たくさんいると思うんですが
気に入った作品があった時どのように保存、整理されてますか?
自分は「文章コピー→エディタに貼り付け→保存」としてるんですが
もっと楽で便利な保存、整理の方法ありませんかね?
よろしければ皆さんの技を伝授して下さい。
822名無しさん@初回限定:04/03/01 04:34 ID:WphdBEk6
メニュー画面でタイトルにアイコンあわせて対象をファイルに保存、
ファイル名を作品タイトルに変更で十分。
823名無しさん@初回限定:04/03/01 08:09 ID:8PObmelR
短編なら上の人と同じで、長編はIrvineで。自分は基本的に落としてから窓の中の物語で読んでるから。
掲示板の投稿SSは、選択範囲の文章をドラッグ&ドロップで保存できるフリーソフト使用。
824名無しさん@初回限定:04/03/01 19:32 ID:TpFe9VtI
何故か唐突に「人形の館」のSSが書きたくなってきた……。
紫苑エンディング後で、むっちゃラブラブめいたやつ。
825名無しさん@初回限定:04/03/02 00:47 ID:AlRjU1D5
汝の為したいように為すがよい。
俺ッチ原作知らないけどそんなカンジ。
826名無しさん@初回限定:04/03/02 02:39 ID:PKGmvCMV
>>825
暗黒神のお告げかよ!
827名無しさん@初回限定:04/03/02 23:47 ID:OOWjpy/t
ラが入ると別物になるアレか。
あれって戒律守るのも自由なんかな?
828名無しさん@初回限定:04/03/02 23:55 ID:nztmfjEC
>>827
それって、「私は嘘つきですよー」って言う人は嘘つきか否か?
に似てる
829名無しさん@初回限定:04/03/03 01:00 ID:EPrXdNxG
アイツは要するに気に入った奴に力をやって
「使用は自己責任で。問題が発生しても当局は一切関知しないからそのつもりで」ってだけの神様だからな
830名無しさん@初回限定:04/03/03 23:30 ID:MY9DnR03
>>821
保存するページを開いて、IEの
[ファイル]→[名前を付けて保存]
→[ファイルの種類]から[Webアーカイブ、単一のファイル(*.htm)]を選択

これで、画像とかも含めたページ丸ごとを一つのファイルに保存できる。
831保守用即興Fateネタ:04/03/05 23:24 ID:68nUt+qo
舞台は海と山に囲まれた都市・冬木市。
何の変哲もないこの街に、少しずつ侵食する闇があった。

手にした者の願いを叶えるという聖牌。
その聖牌を実現させる為、一つの儀式が行われようとしていた。
聖牌に選ばれた七人の雀士(マスター)に、聖牌が選んだ七騎のオヒキ(サーバント)を与える。

マスターはこの七つの役割(クラス)を被った使い魔一人と契約し、自らが聖牌に相応しい事を証明しなければならない。
つまり。
マスターとなった者は他のマスターを消去して、自身こそ最強だと示さなければならないのだ。 牌を求める行いは、その全てが“聖牌雀争”と呼ばれる。
この地に起きる儀式は、その名に恥じない“殺し合い”といえるだろう。

幼い頃火災によって両親を失い、孤児になった主人公は雀士を名乗る人物に引き取られる。
養父の反対をおしきって麻雀を習う主人公だが、まったく才能がなく何年とかけて身についた玄人技は一つだけだった。
その養父も今は亡く、主人公は半人前の雀士として成長する。
832名無しさん@初回限定:04/03/06 08:57 ID:W4YSi6HL
禿藁
ツバメ返しのサーヴァントは坊や哲か?(w
833名無しさん@初回限定:04/03/06 09:34 ID:6W2NG+sI
哭きの竜とか雀鬼様つうか覇王にでてる人たちもサーバント候補?
834名無しさん@初回限定:04/03/07 11:15 ID:17bdiduM
ツバメ返しは亜空間殺法の使い手かも。
あとバーサーカーは雀鬼様で(かってバーサーカーを打倒した者はいなかったかと)。

でもこの設定だとオヒキのほうが強いペアしか成立しないんですが……。
835名無しさん@初回限定:04/03/07 23:40 ID:T1j190ud
投影で牌を作るんだったら無敵やん(w
836名無しさん@初回限定:04/03/07 23:50 ID:KDp1BRSa
全員の手牌が解らなければイカサマばればれやん。
「……何白が7枚も在るんだよ」って事に。
837名無しさん@初回限定:04/03/08 00:19 ID:mbnEBg+Y
>>836
牌の設計図を図示できるから大丈夫。
見えないところまでくっきりと。
838名無しさん@初回限定:04/03/08 20:15 ID:VGIOJu+F
「おお!伝説の北一色!」
10人麻雀やってみたいなぁ。
839名無しさん@初回限定:04/03/08 21:10 ID:fheIyEhv
>>838
蓬莱学園とは懐かしいネタを(w
840名無しさん@初回限定:04/03/09 00:49 ID:K/POW++4
>>838
きたいちゃん、としか読めねえ・・・
841名無しさん@初回限定:04/03/10 00:16 ID:bi4LMb8R
>>838
「ペーイーソー」?
842名無しさん@初回限定:04/03/10 14:10 ID:rsdg9XL7
「白一色、一億点」ならわかるが……
843名無しさん@初回限定:04/03/10 23:43 ID:7ASABPox
>>836
そういえば昔とあるマージャンゲーを出した会社に、
「白が五枚も出てきたせいで負けたじゃねえかゴラァ」
とヤクザが電話してきたっていう話があったな
844名無しさん@初回限定:04/03/10 23:45 ID:PNmgWsp/
そりゃヤクザさんじゃなくても電話したくなるわな。
同牌が四つあったら麻雀じゃねーヨ。
845名無しさん@初回限定:04/03/13 12:56 ID:28cQS5kk
846名無しさん@初回限定:04/03/18 08:56 ID:yiuxhg7Q
『注文の多いエロゲーメーカー』を読んだ。笑った。やるなあ、いや面白い。
847名無しさん@初回限定:04/03/18 19:22 ID:AA8azLir
>>813
桜ルートで聖杯であるイリヤは倒したサーバントの魂を吸収して、
それが未来のエミヤシロウである事を看破しています。
倒したらわかると思います。

しかしその点を抜きにしてもSSは良くできていると思いました。
848名無しさん@初回限定:04/03/22 03:37 ID:7QkIBqe+
SSに惹かれてゲーム買ったはいいが
「SSにあったあのシチュがないじゃねえかゴルァ」
と言う輩を見かけた。

無いからSSにして補完してるんだってば。
849名無しさん@初回限定:04/03/22 16:03 ID:IPaceyaj
そのアイタタな奴のことは心底どーでもいいが、ゲーム本編を買わせるほどの力量を持つSSっつーのはすごいと思うわ。
850名無しさん@初回限定:04/03/23 02:02 ID:c1hiN6K3
俺はここのスレに影響されてうさみみデリバリーズ買ったさ、
通販で適正価格で、
次の日に地図よったらワゴン売りで3980円だったさ、

…面白かったからいいんだけどね。
851名無しさん@初回限定:04/03/23 07:07 ID:zy6kdZNW
同じくこのスレに影響されてアセリア・それ散る・水月と買っちまったよ…。
852名無しさん@初回限定:04/03/26 19:23 ID:WID8MX2J
やってないゲームのSSって読む人って以外に多いのかな?
俺は例えネタバレモノじゃなくてもなんか損した気分になるので読めないけど。
853名無しさん@初回限定:04/03/26 23:05 ID:tVR1sJhw
買うつもり無いけど興味はあったやつは読む。
絶対に買うつもりで雑誌情報すら断っているようなものはもちろん読まない。
買うつもりだけどネタばれしても構わないようなもの(エロ目的とかSLG)は読む。
854名無しさん@初回限定
残21KB、私の命はもう4%しかないのね。
それとも寿命が尽きる前に、datの海に突き落とされるのかしら。
どっちでもかまわないわ。
ただ、妹より一秒でも早くこの世界から消えることさえ出来れば……

だって、そうしないとみなさんから

 逝  き  遅  れ  スレ

として認定されてしまいますもの。