アーカムシティ。
大黄金時代にして大混乱時代にして大暗黒時代を内包する、巨大都市である。
そのような街なのだから、街の地下深くに広大な秘密基地が広がっていたとしても、
何の不思議も無いだろう。
「・・・・・・・・・」
何やら不気味な機械音が鳴り響く中、一人の少女が自分に与えられた部屋で呆けていた。
魔術の儀式に使われるような奇妙なデザインの装束にその身を包んだその少女は、
白痴のように、ボ〜っと部屋の天井を見上げている。
「大十字・・・九朗・・・」
しかし、彼女は人間ではなかった。
擬似の生命を機械の身体に、歯車と螺子に宿した人形。
狂気の天才ドクター・ウェストがこの世に造り出した魔道兵器。
人造人間エルザ。
それが、彼女だった。
「あー、エルザ! 今から我輩、ニグラス亭のジンギスカン定食で、
貧しさとひもじさを感じる心の空洞と胃の空洞をタップリはちきれんばかりに満たしてくるゆえ、
しばしの間、留守番を頼むのである!」
隣の部屋から、大音量の声がエルザの耳を捉えた。
しかし、物思いに耽る彼女は一向に反応しない。
「エルザ・・・? 聞こえているのであるか? マイ・スイート・ハニー、エルザ?」
そんな事を呟きながら、一人の男がエルザの部屋に入ってきた。
男の名はドクター・ウェスト。
アーカムシティに広がる地下の一部を勝手に拝借し、そこを自らの基地と勝手に決め付けた男である。
日々、この基地で破壊ロボを造り上げては倒され、倒されては造り直して・・・
・・・を日常のサイクルのように続けるあたり、意外にまめな性格なのかもしれない。
「エ〜ル〜ザ〜?」
「博士・・・」
ようやく、エルザはウェストが入ってきた扉の方へと視線を向けた―――
「やかましいロボ」
―――途端に、罵詈雑言を吐く。
いくらなんでも、自分の生みの親に対して使うべき言葉ではないだろう。
「エ、エルザ・・・エルザが我輩に対して・・・な、なんと酷い言葉を・・・」
「五月蝿いロボ、静かにするロボ、黙るロボ」
エルザは、機関銃を乱射するような勢いで早口に捲くし立てた。
一句、一句が紡がれるごとに、ウェストの表情がどんどん崩れていき、瞳からは大粒の涙が零れ落ちる。
「出て行くロボ!」
最後には白衣を掴まれ、哀れウェストは基地の外へと放り出されてしまった。
「エルザァァァァ!? わ、我輩に何処か至らぬ点が在りましたのであるか!?」
鋼鉄製の扉を両手で思い切り叩きながら、ウェストは滝のような滂沱の涙を流しつつ、必死に叫び続ける。
が、防音設備完備のため、その声はエルザの耳には聞こえなかった。
まぁ、おそらくは防音設備が無かったとしても、エルザが扉の鍵を開けることは無いだろうが。
「大十字九朗・・・お前に初めて会った時から、エルザの体内温度は上がりっぱなしロボ・・・」
エルザのメモリーの中には、件の男、大十字九朗との出会いがありありと浮かんでいた。
破壊ロボのコクピットにあるモニターに映し出された、二丁の拳銃を構え、颯爽とした大十字九朗の姿。
その光景を見た時から、エルザは言い知れぬ恋の予感を抱き始めたのだ。
以来、彼女はウェストの暴走がある毎に大十字九朗と遭遇し、
戦闘を繰り返しては自分の中で赤熱する何かの存在を感じ取ってきた。
「間違いなく・・・これは恋ロボ。エルザはあの大十字九朗にゾッコンラブ・フォーエバーロボ・・・」
恥ずかしげに両手の人差し指の先端どうしをくっつけたり、離したりしながら、エルザはもじもじと呟く。
「ならば、エルザは愛しいダーリンを手に入れに往くロボ!」
彼女の手には、二つの本が握られていた。一つは住所録。そしてもう一つは―――
「くぅぅぅ・・・この脅威の大・天・才、ドクタァァァァウェェェェスト! が、何故に探偵なぞに頼らなければならないのであるか・・・」
翌日の早朝、ウェストは探偵事務所の扉の前に立ち、独り言を繰り返していた。
昨晩基地を追い出されたので、仕方なくジンギスカン定食を食べ散らかした後、帰ってみればエルザの姿が無かったのだ。
最初は自主休業でもとったのだろうかとも考えたが、家を追い出されたときの尋常ではない雰囲気を考えると、
答えは(ウェストにとっては)唯一つだった。
「ううっ・・・エルザ・・・。我輩の何が気に入らなくて家出なんてしたのであるかっ!?」
家出である。
確かに、ウェストにとって思い当たるふしはいくつかあった。
最近、回路がショートしたように呆けていたり、親同然の自分に向かって暴言を吐いたり、
そろそろ反抗期であったり、etc、etc・・・。
「すいませーんのである。仕事の依頼であーる」
えらく礼儀正しく、ウェストは扉をノックした。
待つこと数秒。
「はい、はい! どのようなご依頼でしょう・・・・・・か・・・・・・」
「・・・・・・・・・だ、大十字九朗!?」
「ドクター・ウェスト!?」
二人の声が重奏する。
今、彼らの瞳にはお互いの姿しか映ってはおらず、二人とも固まったように凝視し続け、
「ななな、なんで貴様がこんな所にいるのであるかっ!?
赤い鎖でお互いの身体をマゾッホの如く縛り愛った我が宿命のライバル、大十字九朗!」
「てめぇ、なんだその台詞は! 近所の奥様方の誤解を招くような言い方は止せ!
そんなに俺の社会的立場を抹消したいか!? つーかボコる」
お互い一方的にそう叫んだ後、九朗はウェストの襟首を掴み、家の中に引きずり込んだ。
「はぁぁっ!? エルザが家出!?」
「うーむ、エルザも最近多感な時期に入ったであるからな」
己の顔面をインスマウスの住人のような顔に整形されながらも、
ウェストはようやく九朗にエルザが居なくなったことを伝えた。
「多感な時期ってなぁ・・・」
「てけり・り」
「あ、これはご親切にどうもなのである」
消毒箱片手に、柔らかでプニプニとした触手を使いウェストの傷の手当てをする
スライム状の生命体―――ダンセイニに対し、ウェストが律儀に礼を言う。
「で、依頼を引き受ける気になったであるか? 大十字九朗?」
「なるかっ!」
九朗はウェストの無知なる厚顔に、鉄拳を見舞った。
勢いよく吹っ飛ぶ前に、ダンセイニの弾力性に富むボディが
ウェストを受け止め、衝撃を緩和する。
「てけり・り」
「な、何をなさるであるか、大十字九朗! 我輩は立派なお客様・・・・・・、
依頼人であるからにして、それなりの礼儀と客人用の茶と和菓子を出し、
必要とあらばマッサージくらいやってもお釣りはあるはずなのである!」
九朗は渾身の力を込めたアイアンクローで、ウェストの頭を掴んだ。
「おい・・・お前はそれ以前に犯罪者だろうが・・・!
このまま頭を90度回転させて窓から突き落としてやってもいいんだぜ!
ここはてめぇの居ていい場所じゃねぇ。とっとと出て行け!」
「ぅおぉぉぉぉぅっ! 痛い、痛いのである!
柘榴柘榴柘榴柘榴の実が裂けて裂けて砕け散るのである!
か、金ならちゃんと払うのである! この依頼は合法的なものであるぞ! 」
「お前が合法言うか!? お前が!?」
そこまで二人が罵り合ったときであった。
突然寝室の扉が開き、九朗の生活面兼仕事面のパートナー、
アル・アジフが寝巻き代わりのワイシャツ姿を二人と一匹の前で披露した。
「あ・・・アル・・・」
「大十字九朗・・・貴様、ロリコンであるな」
「静かにせぬかぁぁぁぁぁ! このうつけ共がぁぁぁぁぁぁぁぁ〜!」
一世一代、渾身の力を込めた、荘厳で、優美で、壮大な大魔術が華開いた。
そりゃもう見事に。
「まったく、せっかく妾がいい気分でもーにんぐ・こーひーを啜っておったというのに。むくー」
「そんなに膨らむな。それよりどーすんだ! この大穴は!?」
「妾は知らぬ。あの小娘に泣きついて、仕事でももらってくるがよい」
二人の会話が、大穴を通じて屋内から外へと漏れる。
「ううっ・・・」
茫然自失といった状態で、九朗はフラフラと幽鬼のように、窓ごと砕け散った壁へと近付いた。
空は雲一つ無い快晴で、都会の空とは思えないほど清く澄み渡っている。
「なんだろうな、この理不尽の具現は・・・」
はらはらと滝のような涙を流しつつ、
九朗はとりあえず床に散らばった破片を拾い集めようとかがみこんだ――――その時、
「ローーーーーーーーーーーボーーーーーーーーーーーー!」
突如として、青空にエルザの叫び声が響き渡った。
「な、なんだなんだ!?」
九朗は慌てて、立ち上がる・・・が、もうすでに遅かった。
上空から飛来した緑色の破壊ロボが、九朗の自宅に開いた大穴に右腕を無理矢理突っ込み、
その掌が九朗をがっしりと握り掴んだのだ。
「く、九朗っ!?」
「あれは只今最終テスト中の我が破壊ロボ、その名も“スーパーウェストロ(略)”ではないか!?」
「汝の仕業かぁぁぁぁぁっ!」
ネクロノミコン奇跡の大魔術パートツー。突如として蘇えったドクター・ウェストは、
再び爆風に飲み込まれた。
しかし、破壊ロボは直撃を免れ上昇する。
九朗をしっかりと握り締めたまま。
「し、しまった! つい、このうつけに気を取られておったわ!」
アルが悔やんだ頃にはもう手遅れだった。
彼女の視界にはすでに、破壊ロボの威容は映っていなかったのだ。
援護
空高く、天高く。破壊ロボはアーカムシティ上空を飛行していた。
「くっそぉっ! なんなんだよ、一体!? おい、エルザ!」
その掌の中で九朗は必死に叫び声を上げる。
「呼んだロボか? マイ・ダーリン?」
えらく能天気なエルザの声とともに、
破壊ロボのハッチが開かれ、中からエルザが姿を現した。
「お前、一体何を考えてやがる! 何・・・を・・・」
そこまで言って、九朗の言葉は途切れた。
彼の視線の先には、エルザが立っていた。
ウエディングドレス姿のエルザが。
「・・・綺麗ロボ?」
いつもの奇妙な儀礼服からは想像もつかない純白の花嫁衣裳。
ドレスと同色の手袋をして、ブーケを両手で大事そうに胸の位置で抱えている。
はにかんだ表情は薄いヴェールによって覆われ、全貌を確認することはできない。
「――――」
思わず、九朗はエルザの姿に魅入っていた。
今の彼の視界には、無骨な破壊ロボの姿は映っていないだろう。
『おいおい・・・君は僕に向かって、
自分は自他共に認めるロリコンだと公言したんだから、
彼女相手に欲情するのはどうかな・・・』
突然、思考の中に忌わしい闇黒が広がった気がし、
九朗は今の思いを掻き消すようにぶんぶんと首を左右に振る。
「・・・しゅん。エルザは綺麗じゃないロボか・・・・・・・・」
九朗の仕草を先ほどの問いかけの意思表示と誤解したのか、
エルザは素肌剥き出しの肩を落とした。
「い、いあ、違う! そうじゃない!」
その光景に、思わず弁解する九朗。
彼の言葉に、しょげていたエルザは顔を輝かせ、
「じゃあ、興奮したロボ?」
「何でそうなるっ!」
「殿方の9割はウエディングドレスで着飾った乙女を見れば欲情すると、
昨日読んだ本に書いてあったロボー」
嬉しそうにそう言い始めた。
「どんな本だ、どんな!」
「そんなのはどうでもいいロボ。早く結婚するロボ」
「は?」
エルザの一言で、ようやく九朗は彼女が
何故花嫁衣裳に身を包んでいるのかという疑問を抱けた。
「結婚?」
「そうロボ、愛とは略奪するものロボ。だからこのままダーリンと結婚するロボー」
「ちょっ、ちょっと待てぇい!」
エルザはそう言い残すと、九朗の言葉を無視して破壊ロボのハッチに戻り、
アーカムシティ上空を移動していた機体を勢いよく下降させていった。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
風圧で九朗の顔が歪む。彼は揺れる視界の隅で、
破壊ロボの足につけられた空き缶の束を見つけた。
「ああ・・・あれはアレだ。結婚式の帰りに乗るクルマの後ろに取り付けられている奴だ・・・」
九朗の呟きも空き缶のぶつかり合う音も、吹き荒れる風に巻き込まれて消えていく。
半ば諦めが瞳に宿り始めた頃、九朗を掴んだ破壊ロボは彼が見慣れた場所に着地した。
「ここは・・・・・・」
孤児院だった。
孤児の子供達に混じって九朗も面倒を見てもらっている孤児院―――だが、
いつもの寂れた雰囲気は無く、純白の花々がそこいら中に飾り付けられている。
破壊ロボの掌が開き、九朗は路上に落とされた。
「な、なんだなんだ!?」
「さぁ、二人の愛の門出ロボ!」
エルザは叫ぶ九朗を引っ掴み、孤児院の扉を勢いよく開ける。
その途端、
『ご結婚、おめでとうございます!』
必死に練習したのか、孤児院に世話になっている三人の子供達がピッタリ息を合わせて
九朗とエルザに祝福の言葉を言い放った。
皆、精一杯のおめかしをし、両手に抱えきれないくらいの白い花束を抱えている。
「ありがとロボ! エルザは幸せになるロボー!」
子供達に手を振るエルザと、場の展開に呆然としている九朗に向かって、
子供達は抱えていた花束を放り上げようとする、が。
「あれー? 九朗じゃん」
「あー、九朗だー」
「(びっくり)」
三人が三人とも、見知った顔の新郎へ驚いた顔を向ける。
が、九朗が何かを言う前に、
エルザは彼を担いで神父の前へと短いヴァージンロードを駆け抜けた。
「えーと、まず、段取りは・・・・・・・・・あらぁ?」
その神父も九朗の見知った顔だった。
金髪の髪の毛と眼鏡。サイズが大きすぎるのか、ずれる帽子を直してばかりいる。
ライカだ。
九朗とライカ、二人の視線は交錯したまま、固まって動かなくなる。そして、
「く・・・・・・・・・九朗ちゃんっ!?」
ライカが驚きの叫び声を上げた。
「ら、ライカさん・・・・・・助けて・・・」
「そそそ・・・そんな! とうとう貧乏九朗ちゃんが女の子を騙くらかして、
資産目当ての結婚詐欺をー!? ああーん、神様―!
九朗ちゃんが犯罪者であることの決定的証拠を目撃してしまった
私はどうすればいいんですかー!?」
九朗の呟きも無視し、ライカは神像の前で泣き崩れ、大声で叫ぶ。
「九朗、詐欺師ー!」
「悪人ー!」
「(おろおろ)」
孤児院三人組もそう言いながら九朗の下へと歩み寄ってきた。
「五月蝿い、ガキんちょども! 誤解を招くような台詞を吐くな!
ライカさんも俺のことをそんな風に見てたんかい!」
「何をいまさら」
突如として真顔に戻り、九朗の詰問に当たり前のように答えるライカ。
「ぐあぁぁぁぁ・・・・・・」
今度は九朗がその場に崩れ落ちる番だった。
「シスター、とりあえず挙式をするロボ」
「ダメよ、エルザちゃん! こんなろくでなしの穀潰しの人でなし、
亭主にしたら大きいお腹抱えて路頭に迷うのが目に見えているわ!」
首根っこを掴んで九朗をライザの前に突き出すエルザに、ライザは説得を始める。
「ちょっと待て! 何か俺の知らないところで進んでいる事態をちょっと止めてくれ!」
「九朗ちゃん、何てこと言うの!? エルザちゃんは昨日遅くここにやって来て、
“どうしても結婚したい人が居るから挙式の準備をしておいて欲しいロボ!”
とか健気に言っちゃってくれたんだから!」
「そこに俺の同意は全く無い!」
「女の子一人に段取り全部任せて・・・・・・・・・九朗ちゃんの甲斐性なしっ!
屑、芋、塵芥! 地べたを這いずり回れ!」
一人エキサイトしてまったく聞く耳持たないライカに、九朗は反論の怒声を上げた。
無論、ちっとも聞き入れてはくれないが。
「あーもう、いい加減にしてくれぇぇぇぇぇっ!」
「ダーリン」
「ん?」
突然のエルザの声に、九朗は振り向く。そこには―――
「ちゅ」
「――――っ!!!!!?????????」
エルザの唇が待ち構えていた。
九朗の視界一杯に、目を閉じたエルザの顔が映し出される。
本人も恥ずかしいのか、頬を真っ赤に染め、
耳からはオーバーヒートでも起こしたかのように蒸気が噴き出している。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
孤児院の聖堂の中に、長い沈黙が居座った。
そして――――
「ほぅ、なかなか絵になっておるではないか」
九朗の耳に、ナイフのような鋭さを持った絶対零度の声が突き刺さった。
援護
「ア・・・ル・・・」
ギギギ・・・と擬音をたてながら、ゆっくりと右京は唇を離して孤児院の入り口を振り仰ぐ。
「妙に楽しそうではないか。妾も混ぜて欲しいものだな、九朗・・・」
そこには、
最凶最悪の外道宝典ネクロノミコンのオリジナル―――アル・アジフの威容が在った。
「いや、あの、アルさん? どうしてここが?」
「表に木偶の坊が鎮座しておったぞ」
蛇に睨まれた蛙のように動けなくなる九朗を一人置いて、
ライカと孤児院のガキんちょども・・・ついでにエルザも、
すごすごと入り口から出てこの場を避難する。
「妾は慈悲深い。懺悔の時間くらいなら、くれてやろう」
あからさまな侮蔑の調子を載せて、アルは告げた。
涙を垂らしつつ、ようやくの思いで九朗は口を開く。
「えーっと・・・・・・」
「そこまでだ! この大うつけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「さ、最後まで――――」
聞いてはくれなかった。
孤児院の中から途方も無い熱量が噴き出し、
飾り付けられていた純白の花びらが吹き荒れる。
その光景を、物陰に隠れながらエルザやライカたちは他人事のように眺めていた。
「今回は失敗だったロボ。でも、次こそはダーリンをエルザの物にするロボー!」
「二度と来るでないわ!」
ウエディングドレスのまま破壊ロボに飛び乗り、
眼下に向かって手を振るエルザに対し、アルは怒鳴り声を上げた。
「あ、アルちゃん。これ、孤児院の修理費代ね。
九朗ちゃんが目を覚ましたら渡しておいて」
「うむ。またあの小娘に泣きつかせようではないか」
そう言って、アルは焦げた九朗の片足首を掴み、
ずるずるとアスファルトの上を引き摺りながら自分達の愛の巣へと帰っていった。
ライカや子供達も、何事も無かったかのように孤児院へ戻る。
今日のアーカムシティも平和だった。
「・・・・・・俺が・・・何をした・・・・・・?」
一人を除いては。
「あ〜、その辺であるな。なかなか上手いのである」
「てけり・り」
ここは九朗の自宅。
そこでドクター・ウェストは来客用の茶菓子を食い尽くし、
茶を飲み干し、ダンセイニにマッサージを施してもらっていた。
ぷにぷにとした感触の軟体触手が、
ウェストの身体を気遣いながらゆっくりと動き、
指圧(指は無いだろうが・・・)する。
「あっ! そこそこ! そこをもっと激しくするのである!
我輩、感極まって大人の階段を登りつめるのである!」
いつの間にか、ヨガリ狂うウェストの背後に二人の人影があった。
気づいたダンセイニが、やれやれ・・・といった感じでその場を離れる。
「じ、焦らすのはやめて欲しいのである! ヤルからには徹底的に――――」
二人の強烈な怒気を含んだ視線に中てられ、
見る見るうちにウェストの顔が蒼くなった。
「徹底的にか。よいぞ、何処まで期待に添えられるが知らんが」
「十三階段を登りつめるのは保障するぜ」
その言葉を最後にウェストの意識は途切れ、彼の身体は頂へと飛んでいった。
アーカムシティ。
その真夜中の路地裏で、ようやくウェストは目を覚ました。
「お、おのれ・・・・・・大十字九朗、そしてアル・アジフ・・・。
我輩の甘くて切なくてちょっぴり苦いこの恨みは、近いうちに倍返しで振り込んでやるのである!」
地べたを這いずり回りながらも、ウェストはようやく路地裏から街道筋へと出ようとした・・・まさにその時、
「ん・・・? な、何であるか?」
彼の行く手を、数人の屈強な男達が遮った。
「オゥ、ネーチャン。金はコイツが払うのかい?」
「そうロボ」
「よしよし。おいニーチャン、ウエディングドレスのレンタル料と
汚れのクリーニング代、耳を揃えて払ってもらおうか」
起き上がれないウェストの身体を、男の一人が持ち上げる。
「エ・・・エルザ?」
「じゃあ博士。エルザは先に基地へ戻ってるロボ〜」
「エルザ! ま、待ってくれなのである!」
ご機嫌な様子で鼻歌を歌いながらこの場を離れるエルザの後姿が、
ウェストは涙で滲んだ視界に入った。
「で、ニーチャン。金は?」
「え・・・? 金はであるな・・・」
九朗の事務所である。
「ちょっと奥まで付き合ってもらおうかい」
「あ〜っ! ちょっ、ちょっと待つのである!
え、エルザ〜! カムバック、マイ・スイート・ハニー!」
情けない悲鳴を残しつつ、ウェストは路地裏へと連れて行かれていく。
今夜のアーカムシティも平和だった。
「わ、我輩が何をしたのであるか〜!?」
馬鹿を除いては。
以上、先人達のデモンベインSSに感化されて書き込んだ次第です。
このような駄文でも、楽しんでいただければこれ幸い。
ドクターウェストの暴走台詞は、本人にしか再現できんと痛感ー。
エルザ欲しいなぁ・・・。一家に一台、人造人間。
> いつもの奇妙な儀礼服からは想像もつかない純白の花嫁衣裳。
> ドレスと同色の手袋をして、ブーケを両手で大事そうに胸の位置で抱えている。
>はにかんだ表情は薄いヴェールによって覆われ、全貌を確認することはできない。
見てぇぇぇぇぇ━━━━━━(゚∀゚*)━━━━━━!!!!
……エルザの花嫁姿……なんか、現物見たら涙と鼻水まきちらす西博士が見えた気がする。
というわけで、グッジョブ。
285 :
279:03/05/14 20:39 ID:JkCduO1E
九郎の文字が間違っている!?
九朗になってる!?
あー、鬱。
辞書登録すれ。
お前ら、何も言わず教えてくれやがれ!
辞書登録ってどうやるんですか。
>>288 まずは、文字を書くときに出るツールバー( あ とか 般 とかなってるやつ)の
本っぽいものをクリック。無いときは右クリックで単語/用例登録を選択。
んで、それで出てきた単語/用例の登録で「辞書ツール」。
それの右上の「ツール」から「テキストファイルからの登録」を選択。
後は
>>287 を展開したテキストファイルを選らベば良い。いじょ。
このスレっていい奴多いな・・・
ちなみに288の言ってる辞書登録って、各単語毎の登録の事じゃなかったりしてな。
287の教えてくれた辞書をまとめて登録する方法を聞きたいのだったり・・・
そうだとしたらまずはFEP(ふぇっぷ。MS-IMEやATOKなどの日本語入力ソフトウェアのこと)
のヘルプを見て調べるのだな。
そーいや最近FEPって言っても通じない人が多い気が・・・
>>290 シングルタスクであったMS-DOSと違って、マルチタスクのOSでは、
日本語入力のプログラムは必ずしもフロントエンドプロセス(プロセッサ)
ではなく、単なる1プロセスでしかないからだと。
西博士といっしょに和む(?)ダンセイニ萌え
確率と確率の狭間。
存在と認識の揺らぎ。
捩れた時空の螺旋で──彼女は泡のように消えようとしていた。
収束しない指先が紐のようにほどけていく。
ほどけて──弾ける。
消えていく。
なくなる。
誰からも忘れられる。
元からなかったことに──なる。
(構いません。あの人にはもう……)
必要とされることはないのだから。
あの人には他に、必要とするヒトがいるのだから。
光が強く、視界は白くぼんやりとしている。自分の身体すら曖昧で、よく見えない。
いまだになくならない意識を持て余し、彼女は考え続ける。
(役目を終えたのだから、消えるのは当り前ですよ──)
嘯くような思考とは裏腹に、まだそこにあるのかさえ不確かな胸を、震えが襲った。
痛み。
痛み。
痛み──
それはどんな感覚だったろうか。
わからない。
だが。
(あの人──)
一つの影を思い浮かべるたびに走る、微弱な刺激が──痛みというものだろうか。
惜別。
愛慕。
愁嘆。
意味を伴わない言葉が通り過ぎ、一瞬だけ膨れ上がって、そして──
「ちょっと待つでちゅの」
不意に声がかかった。
急速に感覚が戻ってくる。
編み直されるように手が、足が、腹が、すべてが元通りになっていく。
なぜ──これはいったい。
「珍しいとこで珍しいものを見まちたでちゅの」
幼い声は、感心したように言った。
背後から聞こえてくる。
振り向くと、そこにはてのひらサイズの少女がいた。
「まあ、いいでちゅの。まずは自己紹介からちまちょう」
くるり、とその場──空中──で一回転してから、少女はにぱっと笑った。
「わたしはモモといいまちゅの。体はスモールでも心はビッグな美しい花の妖精でちゅ」
よく見ると、背中に羽が生えているのがわかった。
「妖精さん、ですか?」
妖精──確かにそういった雰囲気だ。
「でちゅの♪」
嬉しそうに答える。
妖精──そういえば、『ピーターパン』に出てくるあの妖精はなんといったか。
「それで妖精さんが、何か御用なのでしょうか?」
「そう、契約を持ちかけようと思ったんでちゅの」
「契約──?」
「よーく聞くんでちゅのよ、いいでちゅか──」
ダラララララララララララ
鳴り響くドラムロール音。
「………」
「………」
ドラララララララララララ
「………」
「………」
ヅラララララララララララ
──長い。
思った矢先、音が止み──
「あなたの願い事をなんでもひとちゅだけ叶えまちゅの!」
パッパパーン
ファンファーレが鳴った。
「願い事を──?」
「限度はありまちゅが、基本的になんでもOKでちゅの。まずは要相談でちゅの」
「願い──」
「もちろん、『契約』なんでちゅから、お代はただなんて虫の良い話はないでちゅの。
ちゃんと代償があるから、よく考えたうえでしてほしいでちゅの」
願い──そんなのは一つだけに決まっている。
ためらう余地はどこにもなかった。
「雪を──もう一度、あの世界に帰してください」
(あの人が──透矢さんが雪を必要としなくても。
雪は、透矢さんを必要として──)
「了解でちゅの。それでは魔法をかけまちゅの」
モモは両手を掲げ、「えーい!」と叫んだ。
「はあ、はあ──終了でちゅの」
「随分あっさりしていますね。でも、お疲れさまです」
「ねぎらいどうもでちゅの。あ、早速返還が始まりまちたね」
何かが壊れていくような轟音に、思わず少女から視線を外した。
世界が──自分を包むマヨイガが、端から崩れていっている。
ビル爆破工事のように滑らかな崩壊が、高速で進行する。
壊れた場所から、深い闇が覗き込む。
雪は呆然とそれを眺めた。
「雪は、本当に──本当に帰れるのですか」
「イエスでちゅの」
透矢さんのもとに──
夢見ることすら叶わなかった願いが、叶おうとしている。
「では行ってらっちゃいでちゅの!」
トン
少女が背中を押し、雪は前に進み出て──闇の中へと落ちていった。
不思議と温もりに満ちた、その闇の中へ。
チュンチュン、チュンチュン。
雀の声。
カーテンの隙間から漏れるあたたかい陽射し。
掛け布団のかすかな重み──
ゆっくりと、瞼を開けた。
見慣れた天井。
上体を起こす。
視線を巡らせば、そこはやはり見慣れた部屋。
瀬能家の、自分の部屋だ。
うさぎがにこやかに微笑んでいる。
「──帰ってきたのですね」
そっと、両手を胸に当てた。パジャマの生地の向こうから、血の通う温もりが届いてくる。
「雪はもう一度この家に──透矢さんに、お仕えすることができるのですね」
懐かしさと嬉しさが同時に込み上げ、涙ぐみそうになる。
だめだ──
涙を堪え、頭を強く振った。
しっかりと前を向き、自らに言い聞かせた。
「メイドたるもの、常にしゃんとしていなければなりません」
ベッドから抜け出ると、早速着替えて、部屋を出た。
時計を見る──いつもなら、いや、自分がいた頃にはまだ透矢が眠っている時刻だ。
「起こしてさしあげなくては──」
雪は透矢の部屋に急いだ。
ヘッドドレスを付け忘れ、ナイトキャップをしたままだったのを思い出して部屋に戻り、
ついでに朝食の用意をしている間に、透矢は自分で起き出してきてしまった。
「おはよう、雪さん」
いつも通りの、何げない挨拶が、雪にはひどく新鮮で──乱れそうになる心を押さえるのが難しかった。
はい、おはようございます──透矢さん。
「いいえ、おはようございません」
口をついて出た言葉は、まったく正反対のものだった。
「えっ?」
驚いて透矢の動きが止まる。
なんで、あんな言葉が──慌てて雪は訂正しようとした。
違います、『おはようございます』と申そうと──
「違いません、『おはようございません』と申したのです」
「あ、ああ、ごめん──そうだね、いつも雪さんよりずっと遅くに起きてきちゃって。
確かにお早くはないよね」
ぎこちなく笑い、その場を取り繕おうとする透矢。
雪はひどくショックを受けて、言葉を失った。
なんとなく重い沈黙を引きずったまま、雪と透矢は食卓についた。
「雪さんのご飯はいつ食べても美味しいね」
久しぶりに──主観的にはだいぶの間を置いて透矢に食事を振舞った雪はその言葉を
嬉しく思ったが、さっきのことがあって、返事もできなかった。
(雪は、透矢さんに向かってなんという口を利いてしまったのでしょう)
穴があったら、落ちてそのまま埋まりたい気分だった。
「ん? 雪さんは食べないの?」
さっきから朝食に少しも口をつけていない雪に向かって、透矢が尋ねた。
心配そうな響きのこもった声に、何げない雰囲気を装って箸を取り、雪は答えた。
「はい、雪は透矢さんのメイドではありますが、もっと心配してもらいたいです。
と言いますより、普段からもっと労わってもらいたいものですよ」
耳を疑うような、自分の言葉。箸が止まった。
「え──ああ、うん」
戸惑った色を顔に浮かべながら、透矢は素直に頷いた。
違います、雪は透矢さんのメイドなのですから、労わりなんて不要──
「透矢さんは雪を『人間ではない』なんて勘違いしているのではないですか?
雪は『透矢さん専用のメイド』である以前に人間なのですよ。人権だって認められているんです。
透矢さんの所有物とは違うのですから、あまり都合の良いモノとして見ないでくださいな」
「そんな、僕は雪さんをそういう風には思って──」
「思ってはいないなどと、断言できるのですか? 本当に? そういう見方を一度もしたことがないと、
天地神明に誓って言い放つことができるのですか?」
「………」
透矢は黙り込んだ。
雪は死にたくなった。
これほどの暴言は、口にするどころか心に浮かべたことさえない。
なのに、さっきから口をついて出る言葉はいったいなんなのだろう。
「さ、早くお食べくださいませ。つくったものを残されるのは不快ですが、
いつまでもゆっくり食べていたのでは遅刻してしまいますよ。透矢さんが先生方に叱られるのは
一向に構いませんが、そんなことが成績や評価に響いてしまっては瀬能家の恥となりますからね」
「雪さん……今日はまた、なんで」
「透矢さん、今日という今日は言わせてもらいますが」
ピンポーン
チャイムの音が、ふたりの会話を遮った。
ガタッ
雪は立ち上がると、逃げるように玄関に向かった。
なぜ、あんな言葉が止まらないのか──皆目見当がつかない。
ただダムが決壊したように、思ってもいない言葉が口をつく。
玄関には、花梨がいた。
つっ、と雪の胸に疼痛が走る。
花梨は宮代神社の娘で、透矢の幼馴染みでもあり──雪がこの世界を去る前に、
透矢と付き合うことが決まった少女だった。
雪は何を言えばよいのか分からず、一瞬息を詰めたが、意を決して口を開いた。
「花梨さん──今日はまた一段と綺麗ですね」
「はっ!?」
花梨は驚きのあまり目を見開き、絶句した。
絶句したいのはこっちの方だ、と雪は思ったが、口の動きは止まらなかった。
「癖っ毛がキュートで──この跳ね返り具合が、雪のハートを鷲掴みしてしまいますよ」
手が勝手に動き、花梨の髪を──ちょうど犬の耳のようになったところをサラリと撫でた。
花梨は顔を赤くした。
「ゆ、雪みたいな子に言われると嫌味としか思えないわ。というか、これっていやがらせ?」
必死に動揺を隠し、なるべく平静を保ったつもりの花梨に──雪の制御が利かない言動はなおも続いた。
「雪みたいな、とは──どんなことを指しているのですか?」
「ど、どんなって──だから、ほらその」
「ですから、どんな?」
「──ああ、もう、だから美人ってことよ!」
ふわっ
真っ赤になって叫んだ花梨を、雪が柔らかく抱き締めた。
「嬉しい──」
「え──ええっ!?」
「花梨さんは雪をそのように思っていてくれたのですね」
「う、うん、まあそうだけど、でも」
「何も言わないでくださいな」
更に抱き締める強さが増した。
花梨の体温が、ダイレクトに全身へ伝わる。
「でも──それだけなのですか?」
「え?」
「花梨さんは雪を『美人』だと思うだけなのですか?」
瞳が悲しげな色を浮かべる。
無論、雪本人が意識してのことではない。
「え、え?」
雪の動作ひとつひとつに戸惑う一方の花梨。
「そう──花梨さんは、見た目だけで雪に近寄ったのですね」
(近寄ったも何も、雪と花梨さんの接点は透矢さんでは──)
本心の訴えは、表面に出ることがない。
「ゆ、雪、今日はいったいどうしちゃったの?」
「目当てはこの顔ですか? それとも──からだ?」
「なあっ!?」
「そう、からだなんですね。花梨さんは雪のからだが欲しくて欲しくてたまらないのですね」
「いや、まあ、ある意味では欲しいというか何というか、その」
「いやらしい」
「はあ──?」
「そんな目で、雪を見ていたなんて──」
「あのー、雪、さっきから何を勘違いして」
花梨の言葉を無視し、なおも一方的に雪は言い募る。
「花梨さんはそんないやらしい方だったんですね」
「だから雪、あたしの話を──」
「透矢さんが雪を縄で縛って、鞭で叩いて、三角木馬で責めて、外から丸見えの居間で放置プレイを
したまま登校しているだなんて、そんな淫らな妄想に耽って雪を慰み物にしていたのですね」
「いや、さすがにそんな具体的な想像はしてないし、慰み物にもしてないけど。
──ふたりが怪しいな、とは、その」
抱き締められたまま、もごもごと抗弁する。
「よろしいんですよ──すべて事実ですから」
本当のことなど、何ひとつもなかった。
「ええっ!? と、透矢の奴、本気でそんなことを──!」
瀬能家に三角木馬などあるはずがない、という理性的な思考は、
花梨の頭の中において行われることはなかった。
「で──花梨さんもですか?」
「へ?」
「花梨さんも、透矢さんみたいに──雪のからだ、それだけが目的なんですか?」
「いや、そんな──だってあたし、雪と同じ女だし──」
「性別は関係ありません。ただ、雪がどういった人間かも関係なしに外見的な事柄だけで
良し悪しを決めているのかを訊いているのです」
「うん、まあ、雪は性格の方もいいと思うよ──優しいし、こまめだし、控え目なところも
あるし──ちょっと透矢の世話を焼きすぎるとこが、アレだけど」
「では、花梨さんの世話を焼くべきだとでも?」
「そういう意味じゃ──」
「どういう意味です? 世話を焼かれるよりも──可愛がって欲しいと?」
だんだん脈絡がなくなっていく自分の言葉を、雪はぼんやりと聞いていた。
「花梨さんは、尽くされるよりも尽くす方が好きですか?」
「雪、いい加減に──!」
ぎゅっ
言葉を封じるように、強く、更に強く花梨を抱き締める雪。
「痛っ」
「ご無理をなさらないでください──」
じっ
密着した状態で、雪は花梨の目を凝視する。
ぶつかり合う視線と視線──
花梨は雪の瞳に、真剣の色を見て取った。
とくん、とくん。
(あ、れ──?)
知らずのうちに鼓動が早まっていた。
頬が上気し、強く抱き締められた苦しさもあって、たまらず息が漏れる。
「はぁ……」
それは、花梨自身がびっくりするぐらいに、切なげだった。
「やだ──あたし、なんかドキドキして──」
「怯えてなくてもいいのですよ、花梨さん。素直になってください」
「素直に──?」
「そう、素直に──自分に対して」
「自分に対して……」
キュンキュンと胸が高鳴る。
「あたし、あたし──雪!」
がばっ
ただ抱き締められるがままだった花梨が、抱き返しにかかった。
ふたりは一層密着し、ますます息苦しくなる。
けれど──花梨にはその息苦しさが心地良かった。
雪の方はというと、ちょっと辛かった。
花梨は弓道を嗜んでいるせいか、なかなか力が強い。
「雪……!」
「はい、花梨さん」
「ダメ、ダメよ。あたしには透矢がいるのに──」
「怖がらなくても大丈夫です。落ち着いて──時間をかけて、
気持ちを整理していけばいいんです」
「雪……」
「花梨さん……」
見つめ合うふたり。
やがてその唇が近づき──
ガタッ
物音に、思わずふたりの動きが止まった。
抱き締め合う腕を離し、同時に音のした場所へと顔を向ける。
そこには、やや青ざめた表情の透矢が、身体を震わせていた。足元には、鞄が転がっている。
「なんだか、やけに遅いと思ったけど──ふたりに、そんな趣味があったなんて」
「透矢──!」
花梨の叫びは悲鳴に似ていた。
「こ、これは、そのっ──!」
「透矢さん」
雪は花梨を庇うように、前へ出た。
「雪さん──いったい何の冗談なの?」
無理に笑ってみせようとするが、その顔は強張っていた。
「別に、何の冗談でもございません。すべて見ての通りのことです」
とりあえず、花梨の方に関してはそう言えるかもしれなかった。
雪はいい加減、何もかもやめたくなっていた。
「雪、さん」
「透矢さん──花梨さんはあなたには渡しませんよ」
雪の赤い瞳から鋭い光が放たれ、透矢の足を竦ませた。
「そんな──」
「──と。その前に、おふたりはそろそろ登校しなければなりませんね」
ついっ、と時計の方に目をやった雪は、それまでの険しい雰囲気を消して平然と言った。
「へ──」
「は──」
気の抜けた透矢と花梨の声。
雪はにっこり笑った。
「では、いってらっしゃいませ」
ふたりが出て行った瀬能家。ひとりぼっちになった雪は、呆然と立ち尽くしていた。
と──背後に気配が現れた。
気配は雪の頭を飛び越え、目の前で滞空した。
「おめでとうございまちゅ! 契約通り、無事戻れまちたね」
ピンク髪のツインテール。郵便配達夫のようなに鞄の紐を肩に掛けた妖精。
ティンカーベル──いや、違う。
マヨイガで逢った──確か、モモとかいったか。
雪は言葉をなくしたように押し黙っていた。
それを無視するかのように、モモは続けた。
「で、説明し忘れまちたが、願い事を叶える代償についてでちゅの」
「代償──」
聞いたような気もする単語。そして、確かに説明は受けていない。
「なんなんですか?」
不意に、さっきまでの自分の言動が甦る。
本心とはかけ離れた言葉。
まったく意志を伴わない行動。
──もしかして!
「嘘しかつけなくなる、でちゅの」
「そんな──!」
「辛い条件でちゅが、あなたみたいに『存在しないもの』を世界に結び付ける仕事には
そういった制約を課す決まりがあるんでちゅの。モモだって好きでこんなことを強いて
いるわけではありまちぇん」
肩を竦め、パタパタと羽を動かす。
「特例で、モモに対しては嘘をつかなくてもいいんでちゅが」
「嘘しか──いえ、待ってください」
打ちひしがれそうになった雪だったが、一つ疑問に思って尋ねた。
「確かに、思ったこととは逆のことを口にしてしまうことはありましたが──
しかし、意志とは関係なしに身体が動くことまで『嘘』の範疇に入るのですか?」
「ええとでちゅね、あれは……」
不意に妖精は言葉を濁した。
「──ミス、でちゅの」
「ミス?」
「はいでちゅの」
「──どういうことですか?」
黙り込んだモモだったが、いつまでも見つめ続ける雪のプレッシャーに負け、
遂には口を開いた。
「実はでちゅね、あなたの前にひとつ契約を交わした人間がいるんでちゅの。
そっちの方はいろいろと難航したんでちゅが、最終的にはうまくいって──でも、その」
ポリポリ、と小さな手の小さな小さな指で頬を掻く。
「──長いことかかずらってたせいで、ちょっと余韻みたいなものが残っていたんでちゅ。
それが、今回の契約にちょこっ、と混ざってちまいまちて」
「………」
「つまりでちゅね──前の契約が、『女の子にモテモテになりたい!』だったんでちゅ」
「要するに──」
ひとつ深呼吸をした。
気を確かに保つ。
「──雪は、嘘しか言えなくなったうえ、女の子に対してモテモテになってしまった、と?」
「掻い摘むとそうでちゅの。ついでに、うっかりしていると自分から口説きに行っちゃうんでちゅの」
「………」
絶望は、たっぷり六十秒後に襲ってきた。
309 :
空ラ塗布:03/05/16 00:10 ID:PC7uGRnI
>>294-308 『水月』と『うそ×モテ』を混ぜようなどというアホなことを考え、
遂には実行してしまいました。基本的に『水月』の世界が舞台で、
『うそ×モテ』のキャラはモモしか出てきません。
とりあえず前半だけ。後半も明日には仕上がりそうな気配です。
あと、「ゆき×モテ」は仮タイトルなので、変更する可能性があります。
〆 〆
(゚д゚ll) >309 グッジョブデチュノ
ノNヽ
uu
どんなに手を伸ばしても届かない場所がある。どんなに望んでも辿り着けない場所が
ある。
そう。誰もがいつかは自らの限界に気がついて絶望していくのだ。この俺のように……
「ああ……遠い」
数メートル先の扉に手を伸ばしながら、掠れた声で呟く。
死が近づくと、昔のことを思い出すという話はどうやら本当らしい。
脳裏に浮かんだのは故郷の島国と今は亡き両親のこと。
懐かしくなって苦笑する。
「母さん……掃除中に見つけたエロ本を、机の上に積んでいくのはやめて欲しかったぜ……」
「まだまだ大丈夫そうだな、汝」
頭上から呆れかえったと言わんばかり声。確認するまでもなかったが、死ぬ前に彼女の
顔を見ておきたいと思い、死力を尽くして頭をあげる。
滲む視界に映ったのはスラリと伸びた白い足。そして同じく白いショーツ。流れる銀髪
が日の光を反射している。
「アル……」
最愛の少女の名を呼ぶ。
「なんだ九郎?」
アルが俺の名を呼ぶ。
「アル」
もう一度囁く。なんとなく万感の思いを込めて。
「だからなんだ?」
「……死ぬまえにアルの裸エプロンで女体盛りが食べた……ぶべらッ!」
“頭蓋骨よ砕けろ!”とばかりに振り下ろされたアルの踵によって、俺の意識は刈り取ら
れた。
渇かず飢えず無に還る寸前だった俺を救ってくれたのは、やはりこの人だった。
「ぷは〜! 助かったよライカさん。お茶のお代わりもらえる?」
テーブルを挟んで向かいに座っている金髪魔乳の非萌えシスターに湯飲みを突き出しな
がら俺は言った。
「まぁ、九郎ちゃんがうちの前で行き倒れてるのはいつものことだけど……少しは遠慮して」
半眼になりながらも非萌え眼鏡――ライカさんはお茶を注いでくれる。
湯飲みを受け取ってから、俺はどこか遠くを見つめる気持ちで語る。
「ライカさん。知ってるかい? 片栗粉は、お湯で溶かすと食べられるんだぜ☆」
「いや……突然誇らしげな顔でそんなこと言われても」
冷や汗のようなものを流しながら、ライカさんが告げてくる。
――と、それまで隣に座って食事に専念していたアルが口を開いた。
「ふぅ。やれやれ、九郎も愛らしくて、ぷりてぃで、こけてぃっしゅな妾を養ったり貢いだ
り貢いだり出来る程度の甲斐性は持って欲しいものだな」
溜息など吐きながらホザいてくださった。
そんなアルに向かってライカさんは、たしなめるように言う。
「アルちゃん、無理言っちゃ駄目よ。九郎ちゃんはアーカムシティで一番貧乏が似合う男
の子なんだから」
「ふむ、そうであったな。こやつに甲斐性などというものを期待するだけ無駄であったか」
「そうそう。お金持ちな九郎ちゃんなんて九郎ちゃんじゃないわよ。む し ろ キ モ イ」
「キモイとまで!?」
なにやら人の悪口で盛り上がる二人。だが、概ね事実なので反論もできない。
母さん。都会は田舎ものに冷たいです。
とりあえずやり場のない悲しみを噛み締めつつ、神にでも祈ることにした。
「いあ! いあ! か、みさま……っ! かみ……ごん、どら! ごん、どら! ごん、
どら!」
「汝はなにに祈っておるかっ!」
『スパーン!』と小気味よい音をたて、俺の顔面にハリセンが叩き込まれる。
「〜〜〜っ! おまえ、そんなものをどこに隠し持ってた!?」
「乙女のたしなみじゃ」
ジンジンと痛む鼻を押さえつつ、アルのほうを見るが、既にハリセンは影も形もない。…
…そんな馬鹿な。
「まぁいい。ゴンドラが駄目なら、大宇宙超真理曼荼羅に祈ってやる! 邪魔をするなよ!
金、金、金、金、金〜〜!」
「あー、もう九郎ちゃんは〜……大体この間、臨時収入があったって小躍りしてたじゃない」
――俺はピタリと動きを止めた。確かにライカさんの言うとおり、このまえ臨時収入が
あった。姫さん――覇道瑠璃に頼まれて、アーカムシティの夜を騒がす怪盗ウェスパシアヌスと
対決したのだ。途中でドクターウェストとロボ子が率いる小悪党集団『ブラックロッヂ』の
邪魔が入り捕縛には失敗したが、とりあえず撃退した功績に免じて報酬を貰った。
まぁ姫さんは基本的にケチなのでギャラもたかだか知れているのだが――
「……言えないよな、アルに内緒でダブルベット買ったらおけらになったなんて」
「考えが口に出ておるわ汝ぇぇっ!」
「ええっ!?」
自分のミスに気づいたときにはもう手遅れだった。アルの右ストレートが俺の頬に突き
刺さる。体重が見事に乗った文句のつけようもない一撃だった。
続けてチョッピングライトを繰り出そうとするアルに、俺は慌てて言い訳する。
「ま、まてっ! だ、だって必要だろダブルベット!?」
「それで食うに困ってたら世話がないわッ! そ、そもそもショゴスベットで一緒に眠れ
ば問題なかろうに」
アルが赤くなりながら言う。だが俺も引き下がらない。コトは俺の命に関わる風味ロボ。
「俺は、あの物体Xの上で寝るのは嫌なんだよっ!」
「うぬぬ……ダンセイニの何が気に入らないというのだ!」
「全部だ! 全部! 具体的に言うと、ご立派な名前とか、触手とか触手とか蠢く触手ーー!」
一気にまくしたててから気がついた。ライカさんが俺のほうを指差したまま固まってい
ることに。
「ラ、ライカさん……?」
「い、イヤァァァァァァアァァァーーーーーーー!!!」
悲鳴をあげるライカさん。それから何か、俺の理解を超える面妖なことが起こった。
まずライカさんの姿が一瞬で見えなくなった。次いで俺の周りに旋風が巻き起こる。
その暴風のなかで『ガンガン!』『ゴンゴン!』『ギュイイィィィン!』などと、まるで
工事でもしているような音が聞こえた。
「え〜っと、あれ?」
気がつくと、俺の周囲にはバリケードが張り巡らされていた。教会の床にぶっとい杭が
突き刺さり有刺鉄線が張り巡らされている。立て看板には『Keep Out』やら『DANGER』やら
『ロリコン』『ぺどふぃりゃー』などと書き殴られていた。しかも意外と達筆。
「あッ! もしもし警察ですか!? 今、教会に変質者が――!」
「ウホ! 本当に通報してるし!?」
頭の中に、明日の“アーカムタブロイド”の三面記事がよぎる。『ロリコン探偵逮捕
〜被害に遭った少女は12人〜』
くっ! 妙にリアルに想像してしまった。
「汝がロリコンなのは事実だからな」
アルが腕を組みながら、冷めた目で告げてくる。
時空の果て、二人で紡いだ愛はどこに行ったのだろう? つーか助けろ。
「わ、わたしの監督不行き届きのせいで、ア、アルちゃんが傷物に……ああっ! やっぱ
り陵辱悪夢絶望なのね……むしろ永遠留守!」
ビシッ!とこちらを指差す。なんだか死にたくなってきた。
そんな俺を無視してライカさんはますますヒートアップする。
「そ、そんなアルちゃんのお尻まで開発済みだなんて……この変態! 剛棒!」
援護
……俺は陵辱ゲーの主人公かよ。いや、確かにそのうちア○ルも試して
みようと思って――
「な、汝……妾にそんな変態行為までしよーと……む、無理だぞ!? 普通にするのでさ
え大変なのだ。そ、それをお尻なんて!」
しまった……どうやらまた口走ってしまったようだった。アルが自分の尻を隠しながら
後ずさりし、いやいやをしている。
……正直、その仕草はちょっと可愛いと思った。というか嗜虐心を刺激される。アルたんハァハァ。
「ああ〜、神様〜! わたしはどうすればいいんでしょうか〜? ヨヨヨ……こうなった
ら死ぬしかないわ」
瞳に暗い炎を灯しつつ、ライカさんはこれまたどこかから取り出した出刃包丁を自らの
喉元に充てる。
「ちょ、ちょっとまってライカさん! 基督教は自殺禁止だろう!」
俺は有刺鉄線の隙間から手を伸ばして言う。
「関係ないわよ。わたし偽シスターだし」
「開きなおりかよ!?」
ヤケクソ気味に突っ込む俺。しかしライカさんは落ち着いたのか、俺のほうを見て優し
げに微笑む。どうやら正気になってくれたようだ。
「そうよね、自殺は良くないわよね」
そう言って俺の手首を掴む。
「って待てッ! 俺の手首に包丁充てるなーーー!!!」
「大丈夫。わたしもすぐ後を追うから♪」
「全然正気じゃない!?」
「うふふふふ」
ヤバ気な表情で俺の手首を掻っ切ろうとするライカさんの腕を、もう片方の手で押し返す。
だが、どれだけ力を込めようと拮抗こそすれ押し返せない。一体この細腕のどこにこんな力が!?
やはり胸か! 胸なのか!?
「うぉぉぉぉ! て、手が痺れてきた……」
限界ギリギリのバトルを繰り広げる俺たち。
――と、遠くからサイレンの音が近づいてきていることに気がついた。
「警察キターーーーーーー!」
そう叫んだ俺の声に驚いたのか、ライカさんの力が緩む。
俺はその隙を逃さずにライカさんの手を振り解き、逃走を開始する。
周囲に張り巡らされた柵を乗り越え教会の裏口へと駆け出したところで、
俺の耳をなにかが掠めた。
……見ると裏口の扉に包丁が根元まで刺さっていた。おい。
「ら、らいかしゃん?」
「うふふ、駄目よ九郎ちゃん。ちゃ〜んと罪は償わなくっちゃ。 ホラ、お勤め中寂しく
ないように、アリスンちゃんのシャワー姿を激写した写真をあげるから……わたしの宝物
だけど」
駄目だ……目が逝ってる。つーかアンタが変態だ。
俺は助けを求めてアルにアイコンタクトを送る。心を重ねた俺たちにとって互いの意思を伝
えるにはこれで充分なはず。
援護
「だ、駄目だぞ九郎! わ、妾はお尻まで許したつもりはない!」
……全然通じてなかった。うう……。
「変質者がいるのはこの教会であります、ネス警部! 警官隊突撃〜〜!」
掛け声とともに警官隊が突入してきた。
普段のヘタレ振りはどこへやら、迅速な動きで俺を拘束する。両手に手錠が掛けられた。
「よ〜し、逮捕だ変質者! お前には黙秘権も弁護士を呼ぶ権利もないからな!」
「無いのかよ!?」
すかさず突っ込むが黙殺された。そうして俺は護送車に詰め込まれた。
向こうでアルとライカさんが手を振っている。
扉が閉まる前に俺は上空の太陽を見上げた。
――ああ、昼間だけど……今夜はこんなに月がキレイ――だ。
「ネス警部。そういえば例の変質者はどうなりましたか?」
昼食時、ストーンは思い出したかのようにネスに訪ねた。
ネスは伸びてしまったラーメンに舌打ちしつつ答える。
「ああ、アイツか? アイツだったら最近評判のカウンセラー。カリグラータ先生とピン
クの壁紙が張り巡らされたせま〜い地下室で、みっちり一週間のカウンセリング中」
ネスはしれっと言い放つ。
ストーンは渋面になりながら言った。
「カリグラータ先生ですか……」
件の女医の顔を思い浮かべようとしたが、脳がそれを拒絶する。
そんなストーンを横目にネロは得意気に語る。
「凄いんだぞ〜、カリグラータ先生は。彼女のカウンセリングにかかれば、どんな凶悪犯
罪者もすぐに大人しくなる。まぁ、まるで別人のように目は虚ろになって口の端から涎を
垂れ流すようになるのが玉に傷だが……」
「……自分は犯人に同情します」
そう言って犯人に黙祷するストーン。
(ぴぎゃああああーーーー!?)
地下の方から悲痛な叫びが聞こえてきた気がした。
「軽い軽い。まだ3日目だし。辛いのはこれからさ」
そう言ってネスは食後の一服をするため席を立つのだった。
>>313-329 なんかテキト〜に書いてみましたが、今イチですね。スマソ
最期、おまけでカリグラータ嬢に出演してもらいまつた。
>>330 いやいや、面白かったですよ
結構テンポよかったし、ライカさんの壊れっぷりがなかなか・・・
ただ、難を言えば九郎が九郎っぽくないってのと
オチがちょっと弱かったんじゃないかと・・・あれ?終わりなのって思っちゃったので
どうせならオチにカリグラータ嬢を出してみた方がすっきり終わったような気も
>>330 面白かったよ。
しかし、あんなでかいの入れられたらどうなるのか。
白目剥いてるアルを想像してしまった…。
>>330 >――ああ、昼間だけど……今夜はこんなに月がキレイ――だ。
死ぬほど笑ったけど、元ネタ知らない人には微妙かも、とか言ってみる。
>む し ろ キ モ イ
いいなぁ。
>む し ろ キ モ イ
言われてみたいなぁ、とか言ってみる。
>わ、妾はお尻まで許したつもりはない!
ほんと、言われてみたいなぁ。
あ、暴君(ネロ)が出てる。
暴君ハァハァ
あのシーンはネロもいっしょに居たと妄想
もちろんネス、ストーンの上司で(検閲)のSS風の治安警察の制服(ミニスカ黒パンスト)で
手に"にくきゅう手袋"を装備しているのは言うまでも無い………てか義務
良質だなあ・・・
カリグラータ萌え
ピンポーン
部屋の中にひきこもってうさぎさんと戯れていた雪の耳に、チャイムの音が届いた。
無意識的に立ち上がって玄関へ向かおうとしたが、意志の力で思いとどまる。
(いま雪が出て行っても、嘘しかつけぬ身では仕方ありません)
メイドとしての仕事をこなせないことに歯噛みしつつも、
居留守を決め込み、再びうさぎさんと遊び始めた。
ピンポーン
ピンポーン
ピンポーン
客は、執拗にチャイムを押し続ける。
ピンポーン
ピンポーン
ガラガラガラッ
チャイムの音に混じり、戸の開く音が響いた。
そういえば、戸締りを──
「ああ、もうっ、あいつもう出て行っちゃったの!?」
「おねえちゃん、だからもう少し早くいこうって──」
「うるさいわね、マリア。わかってるわよ、ちょっと寝坊しただけじゃない」
「寝坊って、三十分も──」
「もう、いいから早く忘れ物取って出るわよ。ちゃっちゃっと用事済ませて、
あたしたちもがっこ行かないといけないんだから」
けたたましい声と、無遠慮な足音。気の引けた声と、控え目な足音。
ふたつが、雪の部屋を通り過ぎていった。
今の声は確か、教会の──香坂という、双子の姉妹。
「ん? あれ、あんなとこに部屋あったっけ?」
「さあ──」
足音が引き返してきた。
「おかしいわね──何度もこの家に上がっているけど、この部屋を意識した覚えがないわ」
何度も上がっているとは──透矢はこの双子を何度も家に招いていたのか?
(いったい、何のために──もしかして、透矢さん……!)
雪の思考に「犯罪」「条例違反」の単語を伴った動揺が走り抜けた。
うさぎさんの耳を持つ手が震える。
(う、うさぎさん、雪は──雪はどうすれば)
「物置か何かじゃないかな? 入ってみる?」
「い、いいわ。早く透矢の部屋に──」
「──? なんでそんなに焦ってるの、おねえちゃん」
「え? だ、だって、時間が──」
「──ああ、怖いんだね」
「………!」
「なかったはずの部屋があるなんて──まるでお部屋の幽霊さんみたいだよね」
「う──」
「おねえちゃん、怖いの苦手だったっけ」
「べ、別に苦手なんかじゃないわよ!」
「そうだっけ?」
「そうよ! なに、こんな部屋──気味悪いけど、入ってやろうじゃないの」
ノブが回るのを、雪の目が捉えた。
まずい。
咄嗟に雪は、自分の身体をドアに押し当て、開けようとする力に全体重をかけて立ち向かった。
「──開かないわ、鍵でも掛かってるのかしら」
「やっぱり物置なんじゃない?」
「たかが物置に鍵なんて掛けるかねぇ」
「よっぽど貴重なものを入れてるんじゃないかな。
ほら、透矢さんのお父さんは学者さんらしいし」
「どうだか──ま、いいわ。余計な時間かけちゃったけど、さっさと用事済ませましょう」
「うん」
トントントントントン
二連の足音が階段を上がっていった。
ほっ、とひと息ついて雪はベッドの上に腰かけた。
大して体力も使ってないのに、随分と消耗したような感じがする。
やがて、「忘れ物」とやらを見つけたのだろうか。再び足音が階下に戻ってきた。
そのまま雪の部屋を通り過ぎ、玄関へ──
ガチャ
(え──?)
まったく唐突に、ドアが開いた。
「あれ? 鍵なんてかかってないよ、おねえちゃ──」
ドアの隙間から、ショートカットの少女──妹のマリアが入ってきた。
「あ──」
マリアは息を呑んで、雪を見つめた。
「ちょっと、マリア。あんたどうし──」
続いて、長い髪をツインテールにした少女──姉のアリスが顔を覗かせた。
「──!」
彼女も妹同様、息を呑んだ。
ふたりともお揃いの制服姿。夏服仕様から伸びる健康的な手足の肌は、眩しいほどに輝いていた。
四つの瞳が、雪の赤い瞳の中に映り込む。
魂を吸われたように、ふらふらと、力ない仕草で双子が雪に近づいていく。
(今度は一瞬みたいですね──)
両腕をそれぞれ少女の肩に回し、抱き寄せると、ふたりの耳元に口を近づけて囁いた。
「こう見えても雪──野蛮なのですよ」
ワイルドを強調するように足を組んでみたりした。
双子といろいろ遊んだ後──変な意味ではない、雪は理性を総動員し、辛うじて
暴走を防いだ──、遅刻間違いなしで慌てて出て行ったふたりを見送ると、
今度はしっかりと玄関の戸に施錠し、誰が来ても決して応対に出ないことを誓ったうえで、
雪は再度部屋にひきこもった。
昼が過ぎ、夕が近くなった頃、そろそろ夕食の支度をしなければならないことに
気づいた雪は、キッチンへ向かった。
料理の下ごしらえをしている最中、「ピンポーン」と玄関からチャイム音が鳴り響く。
次いで、戸を開けようとする「ガタガタッ」という音。
それが何度か執拗に繰り返された後、不意に止んで、静かになった。
誰かは知らないが、諦めて返ったのだろう。
包丁でジャガイモの皮を剥いていた雪は、そう思った。
ガラリ
数分後、何の前触れもなく外からキッチンの窓が開けられた瞬間、
雪は強制的に考え直す羽目となった。
思わず滑りそうになった包丁を、なんとか操り続けることができたのは、
偉大なる理性のおかげであろう。
「わはーっ!」
ジャガイモと包丁をまな板の上に置き、悟りを得たような乾いた表情でその客を迎え入れた。
「──鈴蘭さん」
大和鈴蘭──透矢の友人・大和庄一の妹。雪にはよく懐いていた。
明らかに自分の背より高いところにある窓を開けることができたのは、
たぶん、壁を伝うパイプをよじのぼって来たからだろう。
(この子は将来、登攀を生活の糧とした職業に就くのかもしれない)
両手で窓から抱え降ろしてくれた雪に、鈴蘭が陽気な声で叫んだ。
「雪ちゃん、遊ぼっ!」
「──はい」
「わはー♪」
ぽすっ。鈴蘭はすかさず抱きついてきた。雪はそっ、と抱き返す。
この子なら、さすがに邪な思いは湧かないだろう──
青く澄んだ瞳に浮かぶ妖しげに潤んだ輝きと、やけに早くて熱い呼吸を意識しないようにしつつ、
雪は夕食に並べる料理の下ごしらえを続けた。
「──ただいま」
透矢が帰ってきた。
「あのさ、透矢──」
「花梨……」
「あたし、頭の中がごちゃごちゃして、その──まだ整理がつかないんだ」
「………」
「あ、あは、これじゃキミのこと『優柔不断』とか、詰る資格ないよね」
「花梨、僕は──」
「じゃあ……透矢、またね」
「──うん」
微妙な空気を漂わせる花梨との別れの挨拶の後、キッチンに入ってきた。
「ただいま、雪さ──あれ?」
雪の足にまとわりつく存在を見て、透矢の声に戸惑いが混じった。
「鈴蘭ちゃん? いったいどうして──」
「透矢ちゃん──」
ぎゅっ、と雪の腰に抱きついて、透矢に悲しげな表情を向ける鈴蘭。
「──ごめんね☆」
「え?」
トントントン……
また板を包丁が叩くリズミカルな音が途絶えた。
「透矢さん」
雪は振り向き、決然たる意志を瞳に湛え、宣言した。
「鈴蘭さんは渡しません」
「………」
「えへー」
なんだかんだで夕食が終わり、鈴蘭を家まで送った雪は、ひとりとぼとぼと夜の道を歩いていた。
「………」
限界を感じた。
透矢から必要とされなくなったにも関わらず、ただ自分が透矢を必要としているから、
妖精の力を借りてまで帰ってきたというのに、透矢に迷惑をかけてばかりいる。
暴言を吐きかけ──
花梨との仲にひびを入れ──
これでは騒動と災厄をもたらすためだけに帰ってきたようなものだ。
暗澹たる気持ちに、このまま夜の闇の中へ混ざって消えたくなる思いが強くなってくる──。
「──辛いんでちゅか?」
妖精の声。
目を動かして、その姿を捉えた。
「モモさん──」
パタパタ。
モモは雪の服のどこかに隠れていたらしい。
沈んだ様子の雪に励ましの言葉も、慰めの言葉もかけず、事実を確認するように訊く。
「もうやめたい、と──思うんでちゅか?」
「………」
「既にあなたをこの世界に繋いでちまいまちたので、契約を破棄して元に戻すことはできまちぇん」
胸の中の絶望が、更に深さを増した。
「雪は──」
ポツリ、と思いが漏れた。
「この世界で透矢さんの幸福を願うためには、透矢さんの元から立ち去らなければならなかったのですか」
「………」
「帰ってくれば、帰ってきてしまえば、会わずには──いられないというのに、
会いに行かないことが、本当に取るべき選択だったのですか」
今さら、何もかも放り捨て、去ったところで──透矢と花梨の仲は、
傷ついたまま、修復しないのかもしれない。
雪がこの世界を去る要因となったふたりの仲を裂いて、雪をこの世界に留まるというのは──皮肉と
いうものだろうか。
「一つだけ──」
モモが呟いた。
「一つだけ言い忘れたことがありまちた」
パタ……
雪の肩に止まり、雪の頬にもたれるように首を傾げた。
「あなたは、モモ以外の人にモモとの契約のことを話ちてはいけまちぇん。モモ以外の誰かに、
この契約のことをバラちてちまったときは、規則に基づいて、
モモはあなたを処罰ちなければなりまちぇん」
妖精の表情に宿る、物憂げな笑みは、雪には見えなかった。
「この約束は絶対に破ってはいけまちぇん」
パチッ、パチッ
ふたりは街灯に群がる羽虫を見るともなく目にした。
「もし、破ったりちたら──すぺぺー、っとしちゃいまちゅよ」
おどけた響きの裏に、冷たい哀しみを嗅ぎ取った雪は、かすかに笑って訊いた。
「それは──あのマヨイガで消えていくことよりも恐ろしいことでしょうか?」
誰からも忘れ去られ。
自分が自分であることも忘れ。
世界さえも存在を忘れて──「なかったこと」にされてしまう。
それよりも恐ろしいことが、何かあるのだろうか。
「分かりまちぇん。ただ──」
声が詰まった。
「──『すぺぺー』されるときに、後悔しなかった契約主はひとりもいなかったでちゅ。
人間でも、人間以外の何かでも、あなたみたいなヒトでも──みんな、自分の過ちを血を吐くほどに悔み、
涙を流し、大切なヒトやモノの名前を叫びながら──執行されていったんでちゅ。モモ、正直に言えば、
もうあんな真似は二度とないんでちゅの」
きっとそれは、とてもとても恐ろしいことなのだろう──
自分の味わった悲しみとは別種の、苦しみなのだろう──
雪は理解した。
そして、決心した。
「もう、欲しいものは何もありません」
帰宅した雪を、暗い表情で椅子に収まった透矢が迎えた。
その背中は拒絶ではなく、強い意志を漲らせていた。
顔を上げ、入ってきた雪に振り向き、穏やかな──
しかし、退くことを知らないような決然とした言葉を投げ掛けた。
「雪さん。僕は雪さんの気持ちや考えを、責めるつもりはないし、責める資格もない。けれど──」
椅子から立ち上がり、向き合った。
「僕の、花梨を想う気持ちは確かなものだ──それだけは知って欲しい」
ええ。
言われなくても──雪はちゃんと知っておりましたとも。
しっかりと視線を受け止め、頷いた。
だからこそ、言わなければ──告白しなければ。
かすかにわだかまる迷いを置き去りにして、一歩、進み出す。
これでお別れになるのだとしても。
後悔するのだとしても。
前に進まなければ──。
透矢との距離は、触れられるほどに近く、その息遣いさえも感じ取ることができる。
胸の高鳴りを抑えるのは難しかった。
込み上げる愛惜の念。
溢れ出そうとする涙。
全部──全部に堤防を張って、食い止めた。
メイドたるもの、常にしゃんとしていなければなりません。
背筋をピンと伸ばす。
「透矢さん、雪は──
嘘つきではありません」
「は?」
驚いたのは、透矢だけではなかった。
(──なんてこと、でしょう)
雪は頭の中が空白になる思いだった。
失敗した。
忘れていた。
思い出せなかった。
思い至らなかった。
──間の抜けた自分を呪いたくなった。
(嘘しかつけないのでは、真実を伝わることはできません──)
「雪は一度もこの世界から消えていませんし、妖精とも契約していませんし、
透矢さんに迷惑をかけたことを済まなく思ってもいません。透矢さんは何も思い出さなくて構いません」
意志が空回りし、偽りの言葉ばかりがひとり歩きする。
「雪さん、何を言って──」
「雪は透矢さんを恨んでいます。何も気づかなかった、何もしてくれなかった透矢さんを
憎んでさえいます。寂しがる透矢さんを支え、世話を焼き、尽くし、必要となくなるまで
頑張り続けたのは、決して雪が透矢さんを好きだったからではありません。消えるときになって、
雪を追いかけにきてくれなかった透矢さんを、雪は泣きたくなる気持ちを抑えことができなかった、
なんてことはありません」
「──わけがわからない。ちゃんと説明してくれ」
頭を抱え、心底戸惑う透矢に、雪の胸は痛んだ。
どうにかして真実を伝えなければ──でないと。
妖精──ティンカーベル。
ピーターパン。
不意に意識が澄み渡った。
(──これは本当の話です)
「──これはフィクションです」
「は?」
更に戸惑う透矢。
構わず続けた。
「あるところにピーターパンがいました。そのピーターパンは女の子でした。
彼女はネバー・ランドではなく、この世界にいました。彼女がこの世界にいたのは、
ひとりの男の子のためでした」
嘘をつきながら、真実を伝えるには──物語ればいい。
物語で、嘘によって、騙ることで、真実を伝えてきた人々もいるのだから。
「男の子は幼くして母親を失いました。母親を恋しく思う男の子は山に分け入り、
母の思い出を探し、母そのものを捜しました。そして男の子はいつしか、
この世界を超えて──ネバー・ランドに辿り着いたのです」
「………!」
惑乱する一方だった透矢の顔に、驚愕と、かすかな理性が灯った。
「ネバー・ランドには『頭をなでてくれるヒト』がいました。男の子はそのヒトを母親だと思い、
その膝で甘え、幸せな時間を過ごしました。けれど、そのヒトは男の子を元の世界に帰すため、
男の子に別れを告げました。男の子は別れを惜しみ、イヤだと言います。そのヒトは優しく頭をなで、
男の子に言い聞かせました。『いつかあなたにも、頭をなでてくれるヒトが現れますよ』と」
「雪さん……」
「男の子はネバー・ランドから去り、元の世界へと帰りましたが、母への焦がれは消えませんでした。
『頭をなでてくれるヒト』を希って、毎日寂しい夜を過ごしました。だから──女の子のピーターパンが
生まれました。ネバー・ランドにいるはずのピーターパンが、男の子の世界で暮らし始めました」
「雪さん!」
透矢が肩を掴む。
言葉は止めず、紡ぎ続けた。
「ピーターパンは男の子と同じ時を過ごし、ともに成長し、大きくなりました。
男の子はもう『頭をなでてくれるヒト』をあまり必要としなくなっていましたが、
心の片隅に願いは残ったままでした。ピーターパンはその願いをどうにかして叶えようとします。
しかし──ピーターパンはネバー・ランドへ帰らなければなりませんでした。
歳を取るはずのない彼女が、歳を取らなければならない世界で生きていくのは無理があったのです。
ピーターパンは男の子が心配で、ネバー・ランドには帰りたくありませんでした」
「雪さん、もういい、もういいから!」
不思議と、肩を掴む透矢の手の感触が遠い。
身体が熱い──意識が朦朧として、視界がぼやけてきた。
「でも、心配することはありませんでした。ピーターパンの心配は杞憂だったのです。
男の子には、相応しい女の子がいたのです。女の子は男の子の幼馴染みで、やんちゃで、
少し暴力的ではありましたが、その実、傷つきやすく、脆い部分も抱えていました。
男の子も、女の子も、欠けているところは多く、不完全ではありましたが、不完全であるが故に
お互いを補い合い、支え合っていくことができました。完全であるか、まったくの無であるか、
それしか意義のないピーターパンはただ見ているだけしかできません……でし……た」
「雪さん、雪さん!」
声まで遠くなってきた。
自分の言葉さえ、はっきりとは聞こえない。
身体の熱が高まっていく。
「やがて……男の子は、『頭をなでてくれるヒト』を欲さなく……なりました。母を愛する気持ちを抱え、
母の愛を満足に受けられないまま……それでも男の子は……母を卒業したのです。そして、完全であるか
……まったくの無であるか、それしか意義のないピーターパンはただ……ただ……消えるだけしか……」
「……! ……!」
もう透矢の声も聞き取りづらくなってきた。
あと少し。そろそろ物語を終わらせることができる。
「ピーターパンは……必要とされなくなった母の幻は、ネバー・ランドでさえ存在することができなく
なりました。歳を取ることのない世界でも、必要とされない者は……生きていけないのです。
ピーターパンは……『元からなかったモノ』としてネバー・ランドからも消えようと……していました。
そこに妖精が現れたのです。妖精はピーター・パンを助けました。助けて、男の子の世界に帰してくれたのです。
……嘘しかつけなくなる、代償とともに……」
意識がゆっくりと溶けていく。
世界に拒絶されていく。
油が水を弾くように──
「嘘をつくことで……男の子のそばに留まることができるようになったピーター・パンは、
嬉しく思う一方で悲しく……思いました。自分がつく嘘で、男の子がどんどん傷ついてしまうことに
気づいたのです。ピーター・パンは……男の子をそれ以上傷つけたくなくて、決心をしました。
妖精との約束を……破ることにしたのです。『絶対に破ってはいけない』と言われた約束を破ることに
しました……そして……ピーター・パンは、遂に」
この世界からもう一度、消えることができました。
ありがとう、ティンカーベルさん。
──もう何も聞こえない。
──何も見えない。
唇を動かす。
「透矢さん……雪は、あなたをお慕いして……」
いるのか、いないのかは──彼の解釈に任せることにした。
さようなら、透矢さん──
──気を取り戻したとき、雪はモモと向かい合っていた。
スノードロップの咲き乱れる、白い平野──雪のマヨイガ。雪が選んだ──選んばれた世界。
腕組みし、難しい表情をする妖精に向かって、雪は微笑んだ。
「さあ──終わりましたね」
気分は晴れ晴れとして、後悔はなかった。
「──『すぺぺー』でも何でもしてください」
言って、目を閉じる。
一秒、二秒、三秒……
過ぎしていく時間を数える。
その最中に、ひょっこりと今までの思い出が甦ってくる。
(おはようございません)
肝を潰すような、物凄い挨拶。
あまりに珍妙で、思い出すと苦笑してしまう。
(雪は透矢さんのメイドではありますが、もっと心配してもらいたいです。
と言いますより、普段からもっと労わってもらいたいものですよ)
(透矢さんの所有物とは違うのですから、あまり都合の良いモノとして見ないでくださいな)
「メイドの鑑」とは程遠い暴言。
(花梨さん、アリスさんとマリアさん、鈴蘭さん……)
彼女たちとの騒動も、遊戯めいていて、今では微笑ましい。
(雪は透矢さんを恨んでいます。何も気づかなかった、何もしてくれなかった透矢さんを
憎んでさえいます。寂しがる透矢さんを支え、世話を焼き、尽くし、必要となくなるまで頑張り
続けたのは、 決して雪が透矢さんを好きだったからではありません。消えるときになって、
雪を追いかけにきてくれなかった透矢さんを、雪は泣きたくなる気持ちを抑えことができなかった、
なんてことはありません)
思ってさえいなかった言葉……とんでもない嘘。
(いえ──これは)
嘘ですら、ない。
透矢を恨んでいるか/いないか。
透矢を憎んでいるか/いないか。
消えるあのとき、泣きたくなるという気持ちがあったか/なかったか。
そもそも考えたことがなかった。
ただ、すべてが「仕方のないこと」「受け入れなければならないこと」であって、
それに逆らおうとする気持ちなど、自分自身、あったかどうか、はっきりとは分からない。
だから、あの言葉の数々は、嘘じゃない。嘘でさえない。
自分の心の底に沈んでいた、意識すらされなかった気持ちや感情。
噴き出してきたところで、本当か嘘かも区別することができない。
「あの気持ちは結局──嘘だったのでしょうか、本当だったのでしょうか」
「──ようやく、気づいたようでちゅね」
「え──?」
目を開けた。
閉じるときは難しげな顔をしていたモモが、にこにことした笑みを浮かべている。
「はい、契約終了でちゅの! 今回はあなたの深層に吹き溜まっていたモノを掘り起こすことが
終了条件でちたの。ふう、疲れまちた。前回のケースに比べれば短かったでちゅけど、
こっちが消耗する点では負けてまちぇんでちゅね」
「あの……どういうことですか?」
一方的にすっきりしている様子のモモだったが、雪は釈然としない。
モモはくるっ、と縦方向に回転し、ビッと人差し指を突きつけた。
「言ったでちょう、これであなたとモモの契約は終了ちたんでちゅ。もうこれであなたは自由でちゅよ」
「でも──約束を破ったら『すぺぺー』なのでは」
「破ってまちぇんよ?」
「──え?」
「途中で高い熱を出してぶっ倒れちゃって、何やらもごもご言っているみたいでちたけど、
モモには全然聞こえまちぇんでちた。たぶんあっちの男にも聞こえなかったはずでちゅ」
「はあ、では──」
勇気を振り絞った、最後の告白。
解釈を任せた曖昧な心情吐露。
あれも為されなかったということか──
そう思うと、無事だったにも関わらず、がっかりしてしまった。
「さて、これからどうするかはあなたの自由でちゅ。好き勝手にちてくだちゃい。
モモはちゃっちゃっと次の契約を取りに行くでちゅ。ノルマはいつだってキツイでちゅ」
素っ気ない口ぶりで言い放つ。
「それにしても、『存在しないもの』とのなかなかに難しい契約をたった一日で完遂するとはモモちゃん
すごいでちゅね〜、えらいでちゅね〜、かわいいでちゅね〜」
「──確かに、可愛いことは可愛いですが……」
この妖精は、自分が思ったよりも強かなモノかもしれない。
雪は認識を改めた。
可愛いというだけではないティンカーベル──
「ま、とりあえずは掘り起こした気持ちと向かい合ってみるといいでちゅ。それが本当なのか嘘なのか、
たっぷり考えてみるでちゅ。それからどう行動すればいいかを考えたらいいでちょう」
すいすいと空中で泳ぐようなターンを繰り返すモモを見ながら、雪は考えた。
眠ったままだった気持ち。省みられることのなかった感情。
それはまるで──
(生まれることすらできなかった、子供のような──)
それを抱えたまま、自分は消えようとしていた。「なかったこと」になろうとしていた。
とても──早計なことだったかもしれない。
もっと自分と向き合い、「必要とそれなくなった」事実を受け止めながらも、
「消えなければならない」運命と立ち向かうべきだったのかもしれない。
──だいたい、運命なんていうものはあるんだろうか?
「まあ、モモは胡散臭い『自分探し』は奨励ちまちぇんの。ここでは歳を取らないみたいでちゅし、
やりたいことやって過ごすがいいでちゅ。いちいち感知ちまちぇん。ただでちゅね──」
「なんでしょう?」
「──欲ちいものは何もないなんていう、あなたの一番大きな嘘は、ここでさよならしちゃいなちゃい」
じゃあ、でちゅの! と叫び置いて、妖精はマヨイガの遙か彼方に飛び去り……見えなくなった。
身のこなしの軽いティンカーベルへ向かって、軽く手を振る。
「そうですね」
手を下ろすと、雪はひとり頷いた。
「欲しいものは何もない」なんて気持ちがあるわけはない。
欲しているからこそ──本当に欲したものを手に入れられないからこそ、そんな言葉が──。
仰ぎ見た。
雲の流れる青い空。どこからか流れてくる風。
「必要とされなくても、自らが欲せば、なんとかなるものかもしれませんね」
ひとりぼっちの世界。
何ができて、何ができないかは──まだ分からない。
(形のないものには形を、名前のないものには名前を)
全身をほのかな温もりが包む。
このネバー・ランドで──マヨイガで、自分のできることを、したいことを、探して──やってみよう。
ささやかな誓いを胸に、スノードロップの海を歩み出した。
355 :
空ラ塗布:03/05/16 23:56 ID:3CR9ETx0
>>294-308、
>>339-354 題「ゆき×モテ 〜スノーグッドバイ〜」(水月、および、うそ×モテ)
『水月』と『うそ×モテ』のクロス・オーバーSSです。
個人的に『うそ×モテ』の方がメインです。世界は『水月』ですが。
最初は「モテモテになる代わり、主人公が北海道へ!」という
「どさ×モテ〜どさんこモテモテーション〜」を考えましたが、やめました。
そこで代替案として「ゆきんこモテモテーション」に。ゆき→雪。安直の極み。
タイトルは石田衣良の『スローグッドバイ』から。短編集みたいだけど、読んだことはなかったり。
しかし、ネタのつもりが30kオーバー。しかもくだらないギャグでオトすつもりがシリアス紛いのエンド。
「人生って、わからないなぁ」
『うそ×モテ』はちょっとマイナーかもしれませんが、個人的にはかなり面白いゲームです。
並々ならぬ気に入りぶりを発揮しています。こうしてSS書くぐらいですから、言わずもがなだけれども。
それにしても千籐たんの新作はまだか。
ナイス
うそ×モテは知らなかったけど
水月を知っているので
十分楽しめました。
後編投下乙〜。
>「どさ×モテ〜どさんこモテモテーション〜」を考えましたが
一体どんなプロットだったんだと。
>>330 ブラックロッヂ
もの凄いパチもんクササだな(w
水月全然知らないけど(うそモテはプレイ済み)、凄いな…
読みやすいし、結構おもろかった。
>>355 (・∀・)イイ!
うそ×モテはやってなかったけど買ってみようかな…
事の始まりは小さないさかい。
激昂したアルに吹き飛ばされる俺。
此処まではいつも通りだった。問題はここから先だ。
どうやら半端にかわしたのが災いしたか、アルの放った衝撃波はそのままバスルームまで吹き飛ばした。
ボイラーから水道管まで完膚無きまでに崩壊させてしまい、完全に使い物にならなくなってしまったのだ。
部屋は水浸しだわ、大家さんにはこっぴどく怒られるわ修理費も結構な額になるわ。
はっきりいってかなり鬱。
がっくりとうなだれる俺に向かって、ウチの女帝陛下は毛ほども悪びれず言いやがりました。
「ところで、妾は湯浴みをしたいのだが」
…いっぺんシメてやる。
そんなこんなで今はふたり並んで銭湯へ向かっている。
アーカムシティに銭湯なんてあるのかという疑問は一切受け付けない。却下。あるといったらある。
アルは銭湯に行くのが楽しみなようで、鼻歌まじりだ。
まったく…我が家の財政事情も知らずにいい気なモノだ。
「…ところでアル。俺はさっきからスゴイ気になることがあるんだが」
「ん? なんだ主」
「お前のその格好は一体なんだ」
アルはなぜかジャージを着ていた。髪の毛はお下げにし、首からは手拭いを下げている。
それだけならいざ知らず、さらにその上からドテラを羽織り、
シャンプーなどの入った木桶を抱え、あまつさえ下駄なんぞ履いている。
いったいどこから入手したのか知らないが、相も変わらずの知識の偏りっぷりだった。
「うゆ? 銭湯に行く際の標準装備だと思うが、何か変か?」
「きっぱりと変だ」
「汝こそ、そんな普段着で行って番頭に追い出されても妾は知らぬぞ」
どんな銭湯だそこは。
一度コイツには世間の常識というものをしっかり叩き込まねばならないようだ。
……などというやり取りをしている内に銭湯に到着。
昔ながらの和風建築が慕情を誘う。入り口には『ティベリ湯』というのれんが掛かっている。
なんだか嘗めてるとしか思えない激しくイヤな予感がする名前だが…。
「じゃ、また後でな。お前はそっち」
言いながらアルに小銭を渡す。
「うむ。ところで、風呂あがりのフルーツ牛乳代が足りないのだが」
……ホントにいらん事ばかり憶えおってからに、この古本娘が。
俺はアルの手に叩き付けるようにして小銭を追加した。
からからから。
「いらっしゃ〜い♪」
ゴン!
思わず番台に頭を叩き付けてしまった。まったく悪い予感ほど良く当たる物だ。
なんだかけったいな緑の仮面を被ったステテコ姿の番頭がそこにいた。見覚えあり過ぎだ。
確かに邪悪な運命の連鎖が解き放たれ歴史は大幅に変わった。それにしてもだ
……変わりすぎだろうソレは!!
「……」
額を押さえツッコミそうになるのをぐっと耐える。
「あらーん、無愛想ねえ。あーら、こっちのお嬢ちゃんもか〜わい〜」
「ぬ? 汝、何処かで…」
もう何も言うまいよ。さっさと金を払って脱衣場へ。拘ったら負けだ。
手早く服を脱いで裸一貫、浴場へ。前を隠したりはしないのが漢。銭湯の暗黙のルールだ、覚えておけ。
しかし、なんだか廻りの人が妙に驚愕と畏怖の入り交じった目で俺を見るのだが。
かぽ〜ん。
どこかで見覚えのある奇妙な番頭の、妙にハアハアな視線を背中に感じつつアルは浴場に入った。
心地よい湯煙が体をしっとりと包み込む。
湯気に曇る見慣れない光景にしばし惚けた後、いそいそとカランの前に座る。
「なるほど、これが銭湯か。赤い方がお湯で…ぬ? シャワーの温度はドコで…?」
アレコレいじり倒しながら初めての銭湯に対する緊張をほぐしてゆく。
シャンプーを手に取り、まずはその長い銀色の髪を丁寧に洗う。
さらさらとした、まるでそれ自体が水のような髪の上を白い泡が滑り落ちていった。
「ふぅ」
シャンプーとリンスを済ませたところで一息。もう一度周囲に目を向ける。
数人の人影があり、皆が皆妙齢の女性であるようだ。豊かな体を惜しげもなく晒している。
「……」
視線を自分の体に向ける。……溜息。
何となく泣きそうになるのを堪える。
落ち込んでいても仕方がない、気を取り直して体を洗うことにする。タオルにボディソープをたっぷりつけて泡立てる。
「〜♪」
鼻歌まじりに首筋から肩、腕、胸と順に洗っていく。
何はともあれ一日の汚れを落とす作業というのはやはり気持ちのいいものだった。
爪先までしっかり洗って満足し、もはや泡人間状態になった時それは起こった。
からからとアルの足下に何かが転がってきた。見ればそれはシャンプーのボトルのようだ。
どうやら隣の女性が落としたらしい。拾って手渡す。
「あ。どうもありがとうロボ」
「いや、礼には及ばん……って、ロボ?」
「ロボ?…あ」
「きっ機械人形〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!?????」
「アル・アジフ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!?????」
かくしてティベリ湯は戦場と化す。
かぽ〜ん
あ、いけね。どうやらシャンプーを忘れてきてしまったようだ。
しかし今更番台に行って買ってくるのも手間だ。あの腐臭のする番頭とは顔合わせたくないし。
しばし思案。仕方がないのでアルに借りることにする。壁の向こうに向かって声をかける。
「お〜いアル〜! シャンプー貸して…」
「きっ機械人形〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!?????」
「アル・アジフ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!?????」
え? 何だ今の? 確かにアルの声だったが。
「あ、アル!? どうした!!?」
壁の向こうに声を張り上げる。すぐに返答がある。しかもふたつ。
「気をつけろ、九郎! 敵がおるぞ!」
「えっ♪ ダーリンもいるロボか!?」
緊迫した声と浮かれた声。
今の………エルザか!? ということはだ、当然の如く…。
首を捻ってあたりを見渡す。
……いたよ。まず見つけたのは湯船に浸かっている三つの顔。
赤、青、黄の覆面が信号機よろしく並んでいた。っていうか風呂でもかぶってんのかソレ。
ある意味敬意に値する。帽子の上に手拭いを乗せる事にどんな意味があるのか意味不明だが。
「だ、だだだ大十字九郎!」
「何でこんな所に!」
「ボス! ボーーース!」
向こうも俺に気付いたらしい。それぞれが湯船から上がって俺を遠巻きに囲む。はい、腰あたりにモザイクON。
だがおかしい。親玉の、奴の姿が見えない。一体どこに…
「だぁぁぁぁぁぁぁいじゅうじくろほぉぉぉぉぉう!」
ザッバァァァァァ! 叫び声と共に湯船の底から浮上してくる変態が一人。
「貴様とはつくづく腐れ縁であるな! よもやこんな所で会おっ、っくふ!げふ、げふ!げふっ!」
「むせるくらいなら潜ってんなよ! いい歳して!
しかしまったく腐れ縁だな、ドクターウェスト!! 今日も痛い目に会いに来たか!?」
立ち上がってタオルを突きつける。
「!!」
たじろいで一歩下がるウェストの部下達。
何か視線が一部に集中しているようだが。
「いや待つのである。今日は一戦やらかす気はないのである」
「は?」
「手元にギターがないとテンションがイマイチ上がらんのであるからにして、
とりあえず銭湯内では休戦を望むが如何であるかボーイ、ah ha?」
「……そうだな。素っ裸で殴り合うのも間抜けだしな」
「そういうことなのである」
奴にしては非常にまっとうな感じだ。ギターが無いだけでこうも変わるとは、
正直驚きを禁じえない。というか貴様もうギター持つな。
「しかし…である」
ドクターウェストの視線が上から下へと移行し、やがて苦虫を噛み潰したような顔になる。
「ソレくらいの! ソレくらいのことで勝ったと思わないことであるぞ!
力より技が優るということをいつか思い知らせてやるのである!! この串刺し公!!」
何故に涙目? っていうか何だ、串刺し公って。
「だ、大丈夫ですボス! ボスのは十分に人並み以上です!」
「そうです! ただ、ただあいつが変なんです!!」
「あんな突然変異系奇形種に負けないでください!」
「うわ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!」
「ああっ! ボスがまたお湯の底にっ!」
何が言いたいのだコイツ等は。
かぽ〜ん
「ダーリン、ダーリン! 今そっちに行くロボ! エルザの三助ぶりにあわあわのメロメロになるロボ!」
「な、な、な、なぁ〜〜〜〜! なにを破廉恥な事を考えておるか汝は!!」
本気で壁を乗り越えようとしているエルザを見て、アルは慌ててその脚を掴んで引きずり倒す。
激しくもつれあいながらタイルの上に転がるふたり。
「痛ぇロボ! 何をするロボ、この資源ゴミ!」
「黙れポンコツ! 汝のような重油臭い体で九郎に近寄るでないわ!」
「カビくさい貴様に言われたくないロボ!!」
「にゃぁん! コラ! おかしな所を、あっ、触るなこの! ぅんっ!」
「ふやぁぁ! そっちこそ! あ、泡まみれで絡むなロボ! ぬるぬるするロボ! ぁう!」
「ああっ」
「ひやぁん!」
かぽ〜ん
並んで湯船に浸かる俺とドクターウェスト。
コイツと一緒なのはともかく良い湯だ。たまにはでかい風呂も良い物だなぁ。
女湯からは悲鳴というか嬌声というか、とにかくそういった声が響いてくる。
「……」「……」
「…おい」「……何であるか」
「何か凄いことになってるが、止めなくていいのか?」
「うむ。確かに凄いことになっているのであるが……あれだな」
湯船から出した顔を見合わせてお互い頷きあい、視線を女湯に向ける。
「「止める気になれんな」」
何故か赤くなってハモる俺とウェスト。
ちょっと通じあえた気がする。
「あああああああ。イイ! イイわあ、ピッチピチの肢体が組んずほぐれつっ!!」
番台では番頭の緑仮面が妙にエキサイトしていた。
渇かず飢えず無ニ還レ。まじで。
かぽ〜ん
「はー、はー、はー」
「ふー、ふー、ふー」
満身創痍で睨み合う魔導書と人造人間。人知を越えた戦いは決着を見せぬまま、色んな意味で限界を迎えていた。
「な、なかなかやりおるではないか、機械人形ぅ」
「そういうっ、貴様もっ、しぶといロボね」
肩で息をしながら座り込むふたり。
「い、いつまでも風呂場にいるわけにもいかん…ひとまずは休戦といこうではないか」
「うぅぅ、仕方ないロボ。ダ〜リぃ〜ン、後でそっち行くから待ってるロボ〜♪」
「行くな! 寄るな!」
甘ったるい声で男湯に声をかけるエルザに反射的に突っ込む。
それに対し酷く不機嫌な顔でエルザが返す。
「いちいち五月蠅いロボ〜、人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死ねロボ、つるぺた。」
「つ、つるぺ…」
コンプレックスをストレートに抉られ、絶句するアル。ふるふる震えながら拳を握る。
「だ、黙っておれば調子に乗りおってぇ…ええい! 人の恋路に干渉しているのは汝の方ではないか!
良いか! 九郎はっ! 九郎はすでに妾とっ…わらわと…ワラ、藁…」
そこまで言って後が続かなくなる。耳まで紅潮し口をもごもごさせている。
「と、とにかく! 汝が九郎に言い寄っても無駄! 無駄なのだ! なぜなら彼奴は、彼奴はな…!」
「ダーリンが何だってんロボ」
「彼奴は…彼奴はそう! 真性の、正真正銘の、他の追随を許さぬ程の、完膚無きまでに宇宙規模のロリコンぞ!
ああ、そうだ!ロリコンだ。 ロリコンなのだ! 妾のように平べったくて、幼くて、愛くるしい、
ヘタするとランドセル背負ってるくらいの女で無ければ欲情などできん男なのだ!
しっかり『出るトコ出てる』汝など見向きもされぬわ!!」
かぽ〜ん
「公衆の面前でトンでもないこと口走ってんじゃねえ!!!!!」
ざわ……ざわ……。
なんだかウェストを含めみんな一斉に引いている。違う! 誤解だ! 半分くらい。
「貴様……どことなくヤバイ匂いがすると思ったら…
そうか、性犯罪者の変態さんであったか、変態さんいらっしゃぁ↑い♪であったか!!」
「お前だけには変態とか言われたくなかった…」
恐ろしくヘコんだ。なんだか凄い泣けそう。
壁の向こうから声がした。
「大丈夫ロボ! エルザが愛の力でダーリンを正気にするロボ」
「いや、正気だってば!」
「そして部分的に元気にするロボ、ぽ」
「いや、それは…」
「諦めろ機械人形! 九郎は妾の穢れ無い肉体にベロンベロンに溺れておるわ!」
「お前も何錯乱してやがる! 廻りの皆さんの視線が突き刺さるように痛いからやめれ!!!」
ドクターウェストが隣に立った。意味ありげに俺の肩を叩く。
その目にはそこはかとない憐憫の情が浮かんでいる。
「貴様の幼少時にどんなことがあったかは吾輩の知ったことではないのであるが、性犯罪はいかんと思うのであるぞ、人として」
「だから!」
「まして! 貴様のぶらさげている戦艦ヤマトなど使おう日には、
波動砲一発、殺人罪まで付加されることは間違いないのであ〜る!
キャー猟奇的! え?キラー? あなたキラーですか!? い〜〜〜〜やぁ〜〜〜!!」
や、ヤマト!?
「いや! むしろ早いところ自首してマッシヴに精神鑑定を受けた挙げ句、
隔離病棟にでもさっさと入ってしまうが吉!ラッキーカラーは紫! ほれチャキっとつつがなく自首するのである、大十字九郎!」
もうワケわかんねえ。つーか、お前がまず自首して精神鑑定受けろ○○○○。
「だから誤解だ! 俺だって出るトコ出てる女の子は好きだ!! 決して変態でも性犯罪者でもないッ!」
……多分。
「待つのよ! 好き嫌いは良くないわ!! あたしはロリでもペドでもオスでもメスでもイケルわよ!!」
大威張りで浴場に乱入、もとい闖入してくる番頭。
コイツはコイツで今一度宇宙の彼方に送ってやりたい。
かぽ〜ん
そして事態は加速する。止めどなく。
「ほら、ダーリンはああ言ってるロボ!」
「く、九郎、こんな輩に塩を送るようなことを言いおって! 汝は妾の敵か! 敵なのだな!!」
「お前さっきから何言ってんだ!? OK、魔導書! 時に落ち着け!」
「やーい、へんたーい、へんたーい! がはははは、ががっ!!
い、痛いのである! 何をするか! 今日は休戦ではなかったであるか!?げふう!!」
「ダーリン、エルザのすぺしゃるばでぃで今すぐご奉仕するロボ」
「ええい! やめろと云うておる!! 九郎! 汝、妾と此奴のどちらを取る!!!??」
「だから、何言ってやがんだお前は!」
「や、やっぱりつるぺたは嫌なのだな! 此奴のほうを取るのだな!!!??」
「お前取ってやるから、とりあえずシャンプー貸せ、シャンプー!!」
「取ってやるとは何だ!妾よりシャンプーの方が大事か汝は!! 妾は!妾はぁ、ふ、ふぇ」
「ああっ! 泣くなっ悪かった!」
「ダーリン今のはちょっと酷いロボ」
「だから、どっちもイケルって言ってるじゃな〜い。いらっしゃい子猫ちゃん達♪ れっつ暴食!」
「お前は引っ込んでろ!」
「泣ーかした、泣〜かした〜っげぶぉ!!」
「ああ! ボス! ボス! しっかり!!」
「やばい! 首が変な方向に!」
「おのれ、第三の脚!」
「だから何なんだソレは!」
「九郎の…」
「はっ!」
殺気!
「大うつけぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!」
そして激震。
…ああ…………結局爆破オチなんですね。(俺が。
薄れゆく意識の中でそう思った。
…………こうして俺はまた風呂を失い、不本意なことに例の番頭にはこっぴどく叱られ、
更に多額の修理費を抱え込むことになった。激しく鬱。
ウェストの奴も明日からは違う銭湯に出没するのだろう。
…………アーカムから銭湯が姿を消す日は近いかもしれない。
ぐっじょぶ
題「それは或いは神田川」(斬魔大聖デモンベイン)より
深夜にこっそり投下。
懲りもせずに書いてしまいました。しかもオチてません。
すいません。昨夜銭湯行ってその場の思いつきで一気に書いたので。
377 :
名無しさん@初回限定:03/05/18 02:08 ID:LEWGEjSv
>犬江しんすけさん
素晴らしいです。
それにしてもヤマト… 確かにCGで見てると手が生えてるようにしか見えませんよねあのでかさは
378 :
377:03/05/18 02:08 ID:LEWGEjSv
すいません、下げ忘れました
職人さん達の作品への愛に触れて、デモンベインの購入を決意しますた。
レス番書き忘れますた。
>>362-374 題「それは或いは神田川」(斬魔大聖デモンベイン)より
です
あぼーん
382 :
名無しさん@初回限定:03/05/18 03:33 ID:yXm/+bVr
あんたすげぇよ。「れっつ暴食!」大爆笑。
まさかティベリウスで笑える話が読めるとは思わなかった・・・・・・
本編じゃ嫌悪感しか感じなかったし。
ドクターウエストおいし過ぎ。激しくワラタ。
385 :
名無しさん@初回限定:03/05/18 10:15 ID:2siPACis
お互いを慰めあうテリオンとナコト写本(ウェストと慰め合うのはイヤ)とか。
どーせなら人間ティベリウスのデスラービームと一騎打ちを所望。
自前のは貧相とか言うオチかも?
このスレ見るたびにデモベやっててよかったと思うわ。
神々に感謝(笑)
あぼーん
あぼーん
>>380 でかける準備を始める前にちょっとチェック、のつもりが
大いに読み嵌ってしまったよ・・・あんたは罪深い人だ(笑)
デモベSS(・∀・)イイ!
激しく笑わせてもらいました。
今日は人と会う用事があったのに…
ニヤニヤが止まりませんでした。
おれも書こう。
ここのSS読んだらデモベ欲しくなって買いにいったけどプレミア付いてた……
|
| ('A`)
/ ̄ノ( ヘヘ
仕方無い、再販されるのをSS読みかえしつつ待ちますか。
30日にセカンドバージョンが出荷されるのでのんびり待つよろし。>デモベ
…だがここのSSはネタバレ全開なのだが大丈夫か。
>>394 情報サンクスコヽ(´ー`)ノ
アルに萌えたいだけなんでネタバレは気にしないっす。
>>395 他の娘のルートのアルも、萌えられるので、完全攻略するがよい。
>犬江しんすけさん
おつかれです。このスレの保管サイトを管理させてもらっているものです。
HPを立ち上げられたとのことですが、これまで投稿されたSSはどうしましょうかね?
特に問題が無いなら、保管サイトにも置きますけれど、保管はやめてほしい。もしくは
HPの方にリンクを張るようにしてほしい、など。要望がありましたらおねがいします。
>>398 保管サイト管理人さま
いえ、もう全然置いて下すって結構です。
むしろ感謝です。
もうどうにでもしてやってください。
400 :
394:03/05/19 05:50 ID:NLYu1dVV
>397犬江氏
いや、別にここでネタバレ不可!とか言いたいわけではないですので。
犬江氏、絵も描けるのか……才能豊かな人って羨ましか〜
403 :
名無しさん@初回限定:03/05/20 14:36 ID:uA05VH5+
>>397 TOP絵のエルザ。グッドです。
ギャラリーのチャイナさんを見て、「九郎×アル、チャイナ服プレイ」
が脳裏に閃きました。
あぼーん
あぼーん
>ここに書いときゃ伝わると思うんで、犬江氏へ
秋刀魚の野郎は、鋼屋氏の掲示板で「 高 校 生 」だと書いて氏に叱られた、
というのにまた恥も外聞もなく電波長文書き込んでいやがる空気の読めない阿呆です。
漏れ的には第二のK様候補。スルー推奨。
ていうか>お早めに入手を! とか書いちゃだめぽー
>>406 はっきり言おう。君の方が余程空気を読めていない。
場の雰囲気を崩すような書き込みは控えてもらいたい。
うえ…この件に関しては間違いなく自分も同罪です。
申し訳ございません>みなさん
>>406 メールした方が良かったと思われ。削除希望出して来なよ。
SS職人も影でなにをしとるかわからんな。サイテー。
なんだかなあ。>409 メールは賛成だけどこのていどのレスは削除されない。
>410 (´Д`)?
↓終了すべ。以後は通常進行でよろ。
>>410 待った待った。
件の秋刀魚氏は犬江氏のサイトでは自身が高校生だと明かしていないので
知らずにレスしてしまった可能性もあるかと。
それに秋刀魚氏自身も、鋼屋氏の掲示板で注意された後は、電波な長文はともかく
デモベ入手に関しては触れていない……と思ったら結局犬江氏のとこでなんか言ってるな……
す く え ね ぇ な
ヽ( ・∀・)ノ
( ´,_ゝ`)
(゚∀゚)ノcome on!
>>413 すまんかった。
おとなしく新たなる神の降臨を待ちまつ(´・ω・`)
エロゲ板のふたなりスレからきまつた。
というわけでふたなりネタ。嫌いな人は飛ばしてください。
「由女よぉ、俺の嫁さんになってくれねーか?」
「へ?」
いきなりの悪司の発言に、由女の目が点になった。
ミドリガオカ悪司組事務所、悪司の寝室。
いつものように?由女は呼び出されて連れ込まれていた。最初は二言三
言、言葉を交わしていたのだが……
「な、なななな、な、なに言ってるんですか、わわわわ、私、私ですよ!?」
いきなり求婚の言葉を告げられて、由女は背後の壁まで後ずさりした。
「おう。ってーか、俺は女に別の女へのプロポーズをするような趣味はな
いぞ」
由女のダイナミックな反応に、悪司の方も少し唖然としながら言い返す。
「え、えーと……」
悪司に真剣な表情を向けられているが、由女はそれを直視できず、俯い
てしまう。
「いや……嫌なら無理にとは言わねーけど」
「そっ!」
悪司は平然とした表情のままでそう言ったが、由女は過敏に反応して声
を上げてしまう。
自分の声に慌てたようにして、声のトーンを落とす。
「そう言うわけじゃ、ありません……けど……」
「じゃあ、OKってことだな?」
由女の言葉に、悪司が彼らしく、短絡的に聞き返す。
由女は俯きがちなままで、一番の懸念事を口にしようとする。
「で、でも私、こんな躰、なのに……」
やはり最初に口をついて出たのはこのことだった。
「それも判っててプロポーズしてるわけなんだけどよ」
悪司はそう言ってから、彼にしては珍しく、微かにだが恥ずかしそうな
表情になった。
「そもそも、俺がお前に惚れたのもそれ絡みだしよ」
「え?」
由女は少し驚いたように、顔を見上げる。
「つってもたった今の話だけどな……お前が、自分を女として抱いてくれ
るのが嬉しいとか言ってるのが、あんまりに可愛かったからよ」
「え……そ、それで……いいんですか?」
「おう」
悪司の言う理由に唖然としてしまう由女だったが、同時に心のどこかで
喜んでいる自分が存在していることには気付いていた。
那古教時代、由女の躰に対する苦悩を理解していた人間はほとんどいな
かった。人々が自分をどんな存在かも知らずに崇められるのは、由女にと
って苦痛でもあった。
聖女の陽子や遥はそのことも知って好意的に接してくれた。しかし、同
時に那古教の教祖、那古神としての自分を強く要求したのもこの2人だっ
た。悪司組との抗争でこの2人を失ったと知った時、深い悲しみに嘖まれ
ながらも、一方でやっと重圧から解放されたという気持ちがあったのも事
実だった。
今も共に生活している元聖女、寧々にはそう言う意味ではむしろ、先の
2人より気を許していた。しかし、現在彼女は悪司組の頭脳、島本純と交
際中。性的交渉も持った間柄としては、少し裏切られたような気持ちもあ
ったが、同じ女性としては歓迎できた。
だからこそ……自分を“女性”として求めてくれる悪司は、酷い人だと
思いながら、憎み切れずにいた。そして躰を重ねる度に、その感情は徐々
に好意へと変わっていってしまった。
「もっとも別に、お前のことよく知らないで一目惚れしたのとは違うぞ。
ここ数カ月、お前のことはそれなりにわかった言ってるつもりだ」
悪司が言う。その言葉に、由女はごくっ、と喉を鳴らしてから、神妙な
面持ちになる。
「わかりました……それなら……」
「OKしてくれるのか?」
聞き返して来る悪司に、由女は自分でも驚いてしまいそうな程、自然に
笑顔になっていた。
「はい」
その優しげな微笑みを上げながら答えた。
「よーし、じゃあ早速市議会に行って婚姻届だ」
気の早い男は、そういって行動に出た。確かに、まだ日は高いが……
「えっ、ちょっちょっ、悪司さん……っ」
由女は手を引っ張られて、共に部屋を出ていく。
2人がそこに戻ってきた時は、すでに日はとっくに暮れて、外は夜の闇
に包まれている。
「まいったな……まさか由女の戸籍がねぇとは」
忌々しそうに、悪司が呟く。由女も意気消沈したようにベッドに腰を下
ろしていた。
正確にはないと言うより、どこの誰だかわからないと言った方が合って
いる。由女には戦時中以前の記憶がないのだ。
とりあえず、市長になった夕子と市議会の鴉葉に頼んで、由女の戸籍を
でっち上げることにしたが、さすがにそれだけの工作となると、一朝一夕
にはできない。
「でも……今日は、嬉しかったですよ」
にへ、と由女が顔を上げて、笑みを浮かべた。彼女は今、那古教時代の
和服ではなく、柄物のブラウスとフレアのスカートを着ていた。市議会か
らの帰りに、商店街で悪司が買ったものだった。
「いや……その程度までそんなに喜ばれてもな」
むずがゆそうに、悪司は言う。
由女にしてみれば、性交渉の上だけではなく、私生活でも1人の少女に
戻れた、そう思えたことが嬉しかった。
「じゃあ、とりあえず今日はもうやることもねぇしよ」
ニヤっと笑いながら、悪司は由女の隣に腰を下ろした。
「はい……」
対照的に、初々しく頬を染めながら、少し恥ずかしそうに微笑みながら
答えた。
悪司が由女の肩を抱き寄せる。由女はそっと目を閉じて顎を上げた。2
人の唇が重なる。
一度離れ、お互い裸になる。悪司は脱ぎ散らかした服をざっとまとめた
だけだったが、由女は丁寧にたたんで部屋の壁際にそっとおいた。
「しかし、ちみっちゃくて可愛いなー、お前は」
「え、そ、そうですか?」
悪司の言葉に由女は顔を真っ赤にする。
「よっと」
「きゃっ……」
由女の小さい躰が、ベッドに仰向けに倒される。
「んっ……」
そのまま上体を抱き締められ、唇を重ねられる。
「ふぁ……」
そのまま、背中を優しく撫で回された。
「なんだよ、もう興奮してるのか?」
少し意地悪そうに笑いながら、悪司が言う。やんわりとベッドの上に由
女の躰を寝かせると、その股間で、彼女のペニスがすでに身を起こしてい
た。
「そ、それは、そのっ……」
「あー、いいっていいって。悪いっつってるわけじゃねーんだからよ」
困惑したように言う由女に、悪司はそう言い返すと、由女のペニスを優
しく掴んで扱きあげる。
「ふぁぁっ……ひぁっ……」
びくびく……と躰をゆすってしまい、ベッドのシーツを掴む。
――野郎のより敏感だよな、やっぱりクリトリスの役目もしてるわけか。
悪司は由女の反応に喜びを覚えつつ、ひとしきり由女のペニスを扱き上
げた。
ペニスから手を離して、両手でその下の割れ目に触れる。
「んっ……はぁ……はぁ……」
少し刺激が減った為か、由女は息をついた。
くに……悪司の指が、軽く由女の割れ目を開く。とろっ……と愛液が中
から溢れ出してきた。
「ひぁ……ぁっ……!」
「もう、きっちり濡れてるな」
言いつつ、指を軽く押し込んで優しくかき回す。
「はぁ……ぁ……ぁっ……」
由女の息がどんどん昂っていく。
「入れても大丈夫だよな?」
前戯もそこそこに、悪司は自分の逸物を由女の女性にあてがおうとする。
それに、由女の方が吃驚したように反応した。
「え……あ、悪司さん、前から、じゃっ……」
今まで何度も悪司と躰を重ねたことは合ったが、常に由女の背後からだ
った。前からの体位だと由女が絶頂した時に、彼女の放ったものが相手に
かかってしまう。それを由女は理解していた。
だが、悪司はにやっ、と笑って、
「バーカ、前から抱けねぇ相手を嫁さんにしたりしねーよ」
そういって、左手で由女の頭を少し乱暴に撫でた。
「悪司さん……」
「行くぜ」
ず、ずずっ……
由女の中に、悪司のペニスが埋まっていく。
「ふぁぁぁっ、は、ぁぁっ……っ!」
「く、きつっ……」
由女はまるで処女のように涙を滲ませながら哭き声を上げ、悪司は締め
付けに顔を歪ませる。ただでさえ常人より大きな悪司のモノを、常人より
小柄な由女の中に押し込んでいるのだから、当然とも言える。
ゆっくりとした挿入だったが、由女は激しく背を仰け反らせて哭き声を
上げる。由女のペニスが断続的にびくついた。
それでも、奥まで挿入を終えると、悪司は由女の上体を抱き締めて、三
度キスをする。
「んっ、んぅ…………ぷは、はぁ……はぁっ……」
喘ぎながらキスを交わし、唇が離れると、由女は熱く荒い息をした。
「くっ……」
ずずっ……
悪司がストロークを始める。
「ふぁぁっ……はぁっ……」
由女は悩ましげな表情で声を上げる。その声に悪司はより興奮を覚えて、
ストロークを少しずつ速くしていく。
「由女、お前……可愛い、ぞっ」
いいながら手を伸ばし、由女の慎ましやかな乳房を手で被って、こねく
り回すように揉みしだく。
「ひゃぁぁぁっ、ひぁぁっ……っ!」
由女は強過ぎる快感を与えられて、涙を零しながら良がる。
ストロークする悪司のペニスを、ぎちゅっ、ぎちゅっと由女の膣が締め
付けた。
「くぅぅっ、お、お前……あ、あんまり可愛いから、もう、出ちまう……
っ」
普段のこましぶりはどこかへ飛んでしまい、顔を歪ませながらストロー
クを激しくしていく。
「はぁぁぁっ、も、はぁっ、わ、たしっ、壊れ、あ、はぁぁっ……」
悲鳴に近い声を上げる由女。その膣内で、悪司のぺニスが射精感に膨張
する。
「くぅっ、で、出るっ」
どくっ、どくどくっ!
「ふぁぁぁっ、はぁぁっ、はぁ、ぁ、ぁぁっ……!!」
びゅくっ、びゅくっ、びゅるるっ……
由女もまた、激しく背を仰け反らせて絶頂しながら、互いの腹部に自ら
の精をまき散らしてしまう。
「くぅっ……」
ずるり、と由女の中から悪司のぺニスが引き抜かれる。
「ふぁぁっ……ぁぁ……っ」
由女は余韻にとろん……としながら、荒い息をしている。
悪司はタオルでまず自分の腹部から由女の精液を拭い、力なく横たわっ
ている由女の腹部も拭き取る。
「あ……悪司さん……」
はぁはぁ……と息を整えながら、由女は悪事を見上げる。
すると悪司はぎゅっと由女を抱き締めた。キスを交わしてから、囁くよ
うに言う。
「これからは、ずっと一緒にいろよ」
「はい……」
由女は肯定の返事をして、ぎゅっと抱きつきかえした。
いいよいいよー
グッジョブ!!
フタナーリ(;´Д`)ハァハァハァ
フタナリは苦手なのに萌えますた(;´Д`)
PS2ファントムはやめて大悪司買ってきまつ。
由女ぇ…何故本編では攻略できんのじゃぁ…
ガリガリ(畳を引っ掻く音)
悪司はそういうの多いよな。殺っちんとか。
おお…大悪司で由女を嫁に出来なくてむせび泣いた俺にとっては
まさに神からの贈り物じゃあ……
そして調子に乗って遥もキボンヌとか言ってみる
那古教関連のキャラは良いのぉ(;´Д`)ハァハァ
>>432 スマン漏れちょっとアンチ遥入ってるから無理でつ……
申し訳ありません。
どなたか他に遥たん愛でられる神いたら応えてやってください。
∧||∧
( ⌒ ヽ よけいな一言ですっかり葉鍵板名物の漏れ
∪ ノ
∪∪
>>432氏スマヌ。
次からは何事もなかったかのようにお願いします。
喪前ら!
犬江氏のTOP絵が更新されてるぞ!!
437 :
436:03/05/24 22:55 ID:IAzgcj5+
ごめん誤爆した
夜食作ってきます
∧||∧
( ⌒ ヽ
∪ ノ
∪∪
吊るんじゃねーのかよ!w
ワロタ
コレを御覧になる神様へ
この後に続く駄文はネタバレ検閲プログラムにより安心して御覧いただけるものではありますが
検閲箇所、および検閲行為そのものが、ネタバレに繋がる場合がございますのでご注意ください。
それではどうぞ……
──私は本を捜していた
食卓についた。
「ライカ姉ちゃん、おはよう」
「ライカ姉ちゃん、おはよう」
「・・・・」(しゅたっ!)
みんな揃っていた。
「九郎ちゃんは」
「そこに」
空腹で気絶していた。今月に入って4度目だ。
ぐるるるると、空っぽのお腹が鳴っている。ぴくぴく、九郎ちゃんが震えている。
私は九郎ちゃんを椅子に座らせから、皆で朝食を摂った──いつも通りの味がした。
──私は本を捜しに行かなければならない。
「いってきます」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃい」
「・・・・」
子供達に挨拶を返して、私は教会を出た。
──私は本を捜しに行かなければならない。
って、別に私は悪夢に縋って生きているわけではありませんよ、念の為。
ただ、日頃から、全力で遊ぶ子供達の相手をしたり、
社会不適合者の生活を面倒みたり、アーカムシティの■■の■ー■ーとして、
既知外の相手をさせられたりで、ストレスが溜まっているんです。
欲求不満なんです。女だって、男の人で言うところの
「ヌキたい」っていう衝動があるんです。
でも、わたしは教会のシスター。神に仕える身。
別に、基督教的倫理観なんて露程もないけど、
仕事柄、龍を背負った取引相手との秘密の逢瀬なんてものがあった事は無いし。
だから──私は本を捜さなければならないのです。
もしくはAVだったかも知れないし、ドラッグだったかも知れないし、
大人のおもちゃだったかもしれないのだけど、そうじゃなくて、
私が捜しているのは、あくまで「オカズ」なんです。
それも、普通の「オカズ」ではなくて。とても特殊な趣味じゃないと、ダメ。
私は所謂、■■■■。「肉体が精神を凌駕する」って状態。
私の妄想で、肉体的快感を得る事は、困難を極める。個人の限界だ。
もっと、新鮮なシチュエーションで。
もっと、斬新なプレイを。
もっと、過激な快楽を。
新しい世界に出会うことを願いながら……
──私は本を捜している。
フラフラと夢遊病者のように……
ニヤニヤと精神病者のように……
──私は本を捜さなければならない。
やってきたのは、アーカムシティ一の電気街。
大黄金時代にして大混乱時代にして大暗黒時代のアーカムシティの中でも
特に混迷極めし欲望の坩堝。
「ぴょん派」だの「てへ派」だのといった仮想者達の論争が、
乱闘に発展するのは、何処の国でも同じ。
そんな喧騒を十■■罪で切り分けながら街を歩くうち、
ふと、目の前に古書店があるのに気付いた。小さいけど、何か妖しい雰囲気を感じる。
ちょっと、覗いてみようかしら……
「これは、まぁ……」
中に入って、本棚に並ぶ本の数と、店内に充満する瘴気に声を失くす。
品揃えも凄いが、このヤバイ気配。
お嬢様がクラシックCDの後ろにヘビメタを隠すように、
聖書を並べた棚の後ろ、秘密のドアの向こうの部屋にある私のコレクション。
妖気はともかく、部屋に漂う瘴気ならば、噂に聞くミスカトニック大学の
秘密図書館に勝らずとも劣らないだろうと思っていたのに……
ココは、その私の誰にも言えない自慢を打ち砕くのに充分な空気を持っていた。
私は敗北を感じながらも、期待を抱く──ここなら見つかるかも知れない。
「何かお探しものでも?」
「えっ?え、ええ。そうな──」
突然、背中から声を掛けられて、振り向いた私は、
しかし、そこで一点、いや、正確には二点に目を奪われ、続く言葉を失う。
「魔」>「爆」
本日、二度目の敗北。
「それで、どういった本をお探しかな?」
「ええ……ああ、私の捜しているのはちょっと特殊な代物で……」
「ふむ。たとえば……変態趣味のオカズ本、とかかな?」
「なっ……!?」
「ああ……いや、そんな顔しないでよ。別に大したことじゃあない。
なんて言うかね、長いことレンタルビデオ──もとい、
本屋をやっているとね。分かるのさ。求めるものが普通と違う客のことがね。
特にね……今夜のオカズを求めている人間ってのは、これは特別だ。
見ただけで分かってしまう。」
店長は近くの棚から1つの箱を引き抜いた。ソレには『はじるす』と書かれている。
「──特殊なシチュエーション。人々に刺激を与える本。
人々はそれを行使し、『奇蹟』を起こす。
『S&M5906に処女をささげる少女』
『エターナル・ヴァージン』
『暴走ロボと後輩に襲われる女性教師』
……この『はじるす』もそうさ。そんなとんでもない力を秘めている本なんだ。」
「そこまで分かるんなら話が早いわ。店長さん、私にソレを売ってくださらない?」
私が頼むと、店長は申し訳なさそうに顔を顰めた。
「ごめんね、それは無理だ」
援護
援護
彼女は続ける。
「この店には、あなたが必要とするような嗜好の本を置いていないんだよ」
「置いてないって……あなた、その手に持っているのは何ですか?
自分でそれは特殊な本だって説明してたじゃないですか」
「それはそうなんだけど、この本は他のお客さんの予約取置き分──じゃ無くて、
あなたには合わないのさ。
あなたは近い将来、必要とするはずだ!最高の力を持った本を……
そう、『神』をも招喚できるような窮極の本を!」
「え……あ……えーと……」
いけない……なんか盛り上がっています、この人。
こっちの話はまったく聞かずに、どんどん進めてしまってます。どうしましょう?
いつもは私の役なのに……
「あるんだよ。
最高位の本の中に『神』をSSスレに招喚できるヤツがね。
まあ、正しくは、神掛かった職人なんだけど。
とにかくあなたが必要とするのは、きっとそういう本なんだと思うよ」
もう何が何だかさっぱりだ判りません。
私は完全に店長のペースに飲み込まれてしまい、言葉も出さない。
「嗚呼、楽しみだ。楽しみだね。
あなたが手に入れる魔導書はどんなのだろう?
『アイ2』かな?『Theガッツ』かな?
もしかしたら、それは、かの『永留守』だったりするかも知れないね──」
結局、あのまま店長の勢いに流されてしまい、気付いたら店の外に出てしまっていた。
なんか、今日は負けっぱなし。
入れ替わりに店内に入っていくメイド姿の女性をぼんやりと眺めた後、私は教会に帰った。
だけどその日の夜──
──私は遂に本を見付けた
──私はたぶん本を見付けた。
深遠。
深遠。
果て無い、限りない『電子』の海の中、
総ての情報が渦巻くその場所で。
総ての情報を積み重ねて無数の虚構を構築し、
無数の虚構から無限の真実を紡ぎ出すその場所で。
弱者の屍が風に揺れ、
強者の驕りが時に遷ろうその場所で。
私はたぶん本を見付けた。
※注意。
突然ですが、このあと、ヨグ=ソトースの門が開きます。
平行世界ではネタバレ検閲プログラムは作動しません。
ネタバレ回避の方、およびSANチェックに失敗した方はココで終了してください。
──九郎!大十字九郎だ!
>>238でもなければ、正義のヒーローでもないぞ!
生も死も、聖なる
>>238の思うがままに……
>>238を騙るつもりはないそうか。
ならば
>>238。妾は
>>238と契約する
さあ、踊ろうではないか。あの忌まわしき
>>238が奏でる、狂った輪舞曲の調べに乗って
我輩の
>>238最強伝説をしかと胸に刻み込み、冥土の土産とするが良いのである!
さあ……付き合ってもらうぞ、
>>238 ならばこそ、
>>238を信じて下さい
>>238は着実に、邪悪な位置に納まろうとしている
──そう。貴方にこそ相応しい
>>238です。大十字九郎さん
>>238は動き出している。もう止められない。
きみは走り続けるしかない。いつか
>>238の中心に立つ、その時まで
怖いよだけど、何もしなかったら
>>238って分かっていて、
それでも何もしないで……やっぱり
>>238になってしまう方が怖い!
危険なのである!!
>>238に触れると怪我するぜ!!我輩が。
私はたぶん
>>238を背負った……
そこに■が居るのを見て、私は泣いた。
>>440-448 タイトル「私はたぶん本を捜した」(斬魔大聖デモンベイン)
──えーと、まず土下座。
>>238を書かれた空ラ塗布サン、ごめんなさい。
SAN値を下げる、魔導書そのものだと思ったものですから。
次にこのスレの住人の方々、ごめんなさい。
自分は文章作成能力がまったく無いので、
SSではない、こんな引用ばかりのネタ話になってしまいました。
ネタスレに投下するには、少々長いと思ってコッチにしたのですが。
援護、感謝。
以上、「私はたぶんスレを汚した」でした。
いい感じにSAN値下がってますな。
残念なのは下げるだけ下げて、オチがちょっと弱い感じが。
451 :
名無しさん@初回限定:03/05/25 21:25 ID:tV6E9F0v
とりあえずおつ。
イントロはそれこそ神そのものだと思うのですが(BADの引用が)
やはりラストが…
>>238を引っぱってくるのはまだしも、あっちのSSじゃライカさんは
カニバる嗜好はないと宣言してるからまずそこから矛盾してるし。
叶うならばオチだけリライト希望。
…そもそもライカさんの嗜好って何だろ?…掲示板じゃロリって事になってるがw
保守
>>451 やはりあの流れなら落ちは801に逝くべきだろ
「だぁぁぁぁぁぁぁいじゅうじくろほぉぉぉぉぉう!」
あぼーん
>>451 ショタ、しかもマゾ希望
だから子供に手を出すと怒られるねん
ライカさんはオフィシャルで同人女じゃないのか?
このスレ的には エ ロ を 期 待 し て る ん で つ よ ね ?
ほのぼの非エロはお呼びでないですよね?
>>458 そんな事は無いと思うよ、少なくともオレは。
エロ抜きほのぼのあまあまSSも読んでみたいぜ〜
ならば素直にエロを欲すると言ってみる。
そう、エロを!一心不乱の大エロを!
エロ━(´゚◇゚`)゚◇゚`)゚◇゚`)゚◇゚`)゚◇゚`)゚◇゚`)゚◇゚`)━━!!
エロ━━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━━!!!!
エロ━━(゚∀゚)━( ゚∀)━( ゚)━( )━( )━(゚ )━(∀゚ )━(゚∀゚)━━!!!!!
エロ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
エロ━━━( ´∀`)・ω・)・Ω・)( `・ω・) ゚Д゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)=゚ω゚)*゚ー゚)-_-)━━━!!!!
よかろう、ならばエロエロだ
面白ければエロでも解体でもなんでもいいよ。
いや……ラブラブぬるぬるしか思い付かない。。
スレのルールは
>>1に書いてる通りだしょ。
改めて聞くような事でもない。
466 :
山崎 渉:03/05/28 13:19 ID:ylMFNEMA
∧_∧
ピュ.ー ( ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
=〔~∪ ̄ ̄〕
= ◎――◎ 山崎渉
と言うわけで今回はエロなし。
しかもネタありがち。
スンマソ。
「ん?」
夕食時の悪司組。
「さっちゃん、なんか今日の味付け変じゃねぇか?」
悪司がそう言った次の瞬間。
ガタッ
一緒に食卓を囲んでいた由女が、吃驚したように身を跳ねさせた。
「?」
悪司がそれを怪訝そうに見る、すると、
「不味いか?」
殺が、いつものように睨むような視線を悪司に向けて、素っ気無い口調
で聞き返した。
「うーん、不味いっちゅうか……なんかなじみのねぇ味だと……味噌汁の
具もなんかいびつだし……」
「ままま、不味いなら無理して食べない方がいいですよ、悪司さん」
悪司の応えに、横から由女が慌てたような口調で割って入ってきた。
「あ、いや、無理するってほど不味いわけじゃねーけどよ」
由女の言動に少し焦りながら、悪司が言い返す。
「なら、余計な事を言わずに黙って食わんか」
殺はわずかに声を低くして、愛想のない表情を多少、険しくして言う。
「? なんだよさっちゃん、そんなに気に触ったか? それとも、どこか
体調でも悪いとか?」
悪司は殺を気づかうように言った。
にもかかわらず、殺は間髪入れず、突然憤りを露にしてガンっ、とちゃ
ぶ台を両手で叩いた。
「ええいっ! この愚か者が! 無駄口を叩く暇があったらさっさと飯を食
ってしまわんか!!」
「??」
殺の突然の怒鳴り声に、悪司も、その隣にいた島本も目を円くする。
「あ、あの、殺さん、そこまで言わなくても……」
恐る恐る、と言った感じで、申し訳なさそうに由女が殺に向かって言う。
しかし殺は、不快感を露にしたまま、
「このようなうつけを庇う必要はない…………あ、いや、スマン。言葉が
過ぎた」
いつものように自分の甥を怒鳴り付けている気で強気に言いかけ、ハッ
としたように、慌てて自分の発言をただした。
「どう言う事だよ……」
と、聞き返そうとする悪司を、殺がキッ、と鋭く睨み返す。
「……わかったわかった、黙って食えばいいんだろ、食えば……」
殺に睨まれ、毒気を抜かれたように、半ばヤケ気味に言い放って悪司は
食をすすめる。
その隣で、島本がふぅ、とため息をついた。
「お茶が入りましたわよ」
寧々の手から、ことん、とテーブル、ではなく、事務机の上に湯呑みが
置かれる。
組事務所の事務室。悪司はパイプ椅子に大股開き、手ブラ状態でだらし
なく腰掛けている。
「おう、さんきゅ」
悪司は寧々にそう言ってから、けだるそうにぐちぐちと言いはじめる。
「しかしさっちゃん、なんだってのかな〜、急に絡んできて」
「若、思ったんですが……今日の夕食、殺様がおつくりになったのではな
いのではないでしょうか?」
事務椅子に腰掛けた島本が、眼鏡の下で仏頂面のままそう言った。
「んー、しかし夕子さんは市議会にいずっぱりだし、他に誰がつくるんだ
よ?」
やる気なさそうに悪司は聞き返す。
「奥様ではないかと」
「あー」
あっさりと、しかしはっきりと言った島本の言葉に、悪司は最初、適当
な相づちをうったが、
「…………」
きっかり5秒後。
「な、なにーっ!?」
と、素頓狂な声を出して、驚愕の表情で島本の方を向く。
「ちょ、ちょっと待って。あの子、包丁なんてろくに持った事ないわよ?」
寧々も慌てたような口調でそう言った。
「むしろそうだとしたら、あの具材のいびつな形も理解できます」
「そ、そりゃまぁ……」
気まずそうな表情で、悪司はぽりぽりと頬をかいた。
「けど、それならそうと言ってくれればよ……」
「あの子思い込んだら一途ですものね」
言い訳しようとする悪司に、すかさず寧々が追撃をかけた。
「きっと悪司さんを喜ばせようと思って、必死に……」
「う……」
よよよ、と言った感じで俯きがちに言う寧々に、悪司は言葉に詰まる。
「ええい、くそっ」
不機嫌そうに言いながら、悪司は焦ったように奥に入っていった。
「流石だね、とっさのところで」
「伊達に場数は踏んでないわよ。それに、半分くらいは本気だったしね」
寧々の応えに、島本は愉快そうに苦笑した。
「しかしまぁ、お互い手のかかる人を上に持ってしまいましたね」
「しかし我が甥とは言えあそこまでうつけだとは思わなかったな」
呆れたような笑みを浮かべながら、パジャマ姿の殺が勉強机に頬杖を突
いた。
殺の自室。由女は床に直接、正座している。
「親父殿の孫とは思えん……いや、むしろらしいと言うべきか」
「もうちょっと上手に作れるようになってから出せばよかったですね……」
由女はしょげ返るように俯いている。
「そんな事はあるまい」
殺は即座に否定した。
「見てくれはともかく、味の方は充分合格だ。私が保証する」
「そうでしょうか……?」
困ったように、俯いたまま上目遣いで殺を見上げる由女。
「おう、だからあまり気にするな」
そう言って殺はため息をついた。
「はい……」
しかし由女は、落ち込んだ様子のまま小さく返事をした。
「今日はもう遅い、そろそろ休んだ方がいいな」
「はい、そうします」
殺が言うと、由女は力なく言って立ち上がり、
「失礼します」
と言って、部屋を出ていった。
「あの馬鹿もんが、あとで直接的に制裁してやらんといかんな」
恐ろしげな言葉を発しながら殺は困ったような表情で、頬杖を突いたま
ま、由女の出ていったドアを見ていた。
バタン。
照明が突いておらず、暗い廊下に出て、由女は後ろ手に殺の部屋の扉を
閉める。
そして、寝室へ向かおうとした時。
「あ……」
「よ、よう……」
正面に、気まずそうに苦笑した悪司がいた。
「あー……なんつーか……今日の晩飯、お前がつくったんだって?」
由女の顔を直視できず、上向きの視線のまま切り出す悪司。
「……っ! す、すいません、あんな変なもの食べさせてしまって……!」
「あ、いや、そんな事なかったぞ」
慌てたように悪司は由女を見て、その言葉を否定する。
「いや、なんだ……さっちゃんの味付けとは違うからあんな事言っちまっ
たわけで……別に、フツーに旨かったからな」
「そ、そうですか?」
まだ不安そうな表情を上げて、由女は悪司を見る。
「お、おう……け、けどよ。何だって急に飯なんかつくったりしてたんだ
?」
真剣な表情になって、悪司は由女に尋ねる。
すると、由女は困ったような表情で、また、俯いてしまった。
「え……だって、情けないじゃないですか、せっかく、こんな私と結婚…
…していただいたのに、私、お嫁さんらしいこと1つもできなくて」
由女の言葉に、悪司はわずかの間惚けたようにじっと視線を送ってから、
おもむろに手をあげると、わしゃわしゃと乱暴に由女の頭を撫でた。
「はぅ!?」
突然の悪司の行動に、由女は目を円くして顔を上げる。
「わりぃ、まさかそんな事で思いつめてるとは思ってなかったわ」
申し訳なさそうに言ってから、悪司は由女の小さい身体を“お姫さまだ
っこ”する。
「ひゃう!」
「けどよ、そう言う事だったら、俺にも相談してくれよな」
「え、で、でも……」
由女は顔を真っ赤にして、困ったような表情をする。
「夫婦なんだろ、俺達……」
「あ、悪司さん……」
すっと、由女は悪司を見上げる。
「ありがとうございます、それと……ごめんなさい」
「俺の方こそ……すまなかったな」
そうお互いに謝りあって、そして悪司が顔を近付けていくのを由女が受
け入れるように軽く目を閉じる。
ちゅっ
唇が触れあった、次の瞬間。
バンッ!
「ええいっ、夜遅くに人の部屋の前で! いい加減にしろ!」
唐突にドアが開き、中から怒りの形相の殺が現れた。
「うわ、さ、さっちゃん……」
「さ、殺さん……」
“お姫さまだっこ”の姿勢のまま、慌てた表情になる悪司と由女。
「いちゃつくなら自分達の部屋でやらんか!」
「へ、へいへいっ」
殺の余りの勢いに、言い返す言葉もなく、悪司は由女を抱えたまま自室
へ走り去っていった。
「まったく……」
呆れたように腕を組む殺。
「雨降って地固まりよるか、あの2人は。バカップルは処置なしだな」
(*´Д`)
(*´ー`*)
グジョーヴッ ⊂⌒〜⊃。Д。)⊃
っつーか自分でも書いてて思ったんだが、
このSSで由女よりもさっちゃんや寧々に萌えた人、
正直に手ぇ上げて……(汗)
479 :
名無しさん@通常版中古落ち:03/05/30 01:24 ID:06/UJHJ6
さっちん萌へ。でも由女も良いのでぐじょぶッ!
ああ・・・俺もこの萌へをエンネアに捧げたひ。
こんな事言うから友人から「渇かず飢えず無に帰れ」って言われるんだろな。
あぼーん
>>479 さっちん違う。さっちゃんだ。
どこぞのできたて吸血鬼と混同しないでいただきたい。
漏れはしばらく殺(や)っちんと読んでたがな。
485 :
空ラ塗布:03/05/31 23:31 ID:kpJm+8Eb
デモンベインの不条理バカSSを投下します。
ボカしていますが、ややネタバレなので未プレーの方はご注意を。
>>484 そんな、オヤジメガネを額にかけて「メガネメガネ」と探すような子は
わたしの叔母さんじゃありません。
「ふふふ、わたし、エセルえもーん」
空白。
視界が白く染まっていき、脳内の時間が停止した。
カチリ、コチリ。秒針が時を刻む音がやけに大きく響く。
……新しい酸素が巡ってくるにつれ、視界は色を取り戻した。
「ナ、ナコト写本!? お主、何を言っておるのじゃ!?」
「えーと、どう反応していいんだか分からないんだけど」
うららかな午後の事務所。エセルドレーダはノックもせずに扉を開け室内に入って
くるや、開口一番に意味不明なセリフを吐いた。
すわマスターテリオンの謀略か、と意気込んで立ち上がった俺とアルの腰が砕け、
思い切り脱力感を味わう羽目となった。
へなへなと腰を下ろしつつ、俺はエセルドレーダに尋ねた。
「……で、何の用なんだ」
「わたしは真実に気づいてしまったのよ」
なあ、これって会話になってないよな?
頭痛に悩まされながら、辛抱強く重ねて尋ねる。
「で、何の用なんだ」
「すべては邪神の企てたことだったのよ」
えーと、それは知ってるけど……
輝くトラ(中略)したことにより、俺たちはアーカム・シティでの平穏な
日々を取り戻した……はずだったんだが。
「あのことならもう終わったろうが」
アルが素っ気なく言い返す。
「違うわ。あれは終わりじゃなくてむしろ始まりだったのよ」
自信たっぷりにエセルドレーダは断言した。
「何が言いたいのじゃ、ナコト写本。はっきり言うがよい」
「つまりね、わたしは知ってしまったの。……わたしが魔導書ではないことを」
「へっ?」
「はぁ?」
意味の取れない言葉。
栓を開けっ放しにしたコーラのごとく、気の抜けた返事をするアルと俺。
「今さら何をぬかすか。お主はバリバリの魔導書であろうが」
「それが邪神の謀略だったってわけよ」
「わけよ、って……」
「幾度もの永劫をマスターとともに生き抜いたわたしでさえ、今の今まで気づけなかった。
実に巧妙に仕組まれた罠。あなたたちが知らなくてもおかしくはないわ」
なんだか俺たちを置き去りにして、エセルドレーダの話は前へ前へ進んでいく。
「で、お前が魔導書じゃないってんなら、いったい何だって言うんだ? 実は人間だったとか?」
「真逆! どこの世に五千年も生きる人間がいるというのだ!」
「ええ、そう。わたしは人間ではないわ」
勢い込んで反論したアルの言葉に、あっさりと同調するエセルドレーダ。
毒気を抜かれたのか、アルは黙って腰を下ろした。
「ふん、じゃあなんだと申すのだ、ナコト写本。阿呆の戯れ言はあまり聞きたくないが、
聞いてやろうではないか。さっさと申せ」
「ヒトを阿呆とは酷いことを言うわね。それにその尊大な態度。ここまで育ちが悪かったなんて」
「ほっとけ! それにお主はヒトじゃなかろうが!」
「そうね」
さっくり頷く。
「ふう、なんだか疲れてきよったわ……」
心なしか、アルの身体がぐったりとしているように見える。
それを横目に、俺は訊いた。
「で、もう一度聞くけど、魔導書じゃないってんなら、いったい何なんだよ」
「ロボット」
即答。
ふたたび視界が白く染まっ
「阿呆かお主は!」
ていくのをアルの叫びが遮った。
「ロ、ロボットだぁ?」
唐突すぎてわけが分からない。
「ええい、紙魚でも湧いたのか!」
どんっ
テーブルに踵落としを食らわせながら、アルが吐き棄てる。
「どうでもいいけどアル、足を乗せないでくれ」
「はん!」
魔導書が黙殺。
「いいえ、わたしはまったくもって正気よ。正気でもって気づいたの。
自分が、人よりつくられし存在……ロボットであることに」
言って、笑みを浮かべる。
柔らかく、温かみのある笑顔で、とても今までのエセルドレーダと同一のモノとは思えない。
さながら悪夢を見るような面持ちで、「へええ」と気の抜けた返事をしてしまった。
アルの方はというと、返事もしたくないのか紅茶を啜っている。
視線もエセルドレーダから外し、遠くを見ていた。足は依然テーブルに乗せたままだ。
「実はね、一冊の書物を読んだの」
「書物?」
本が本を読むというのもおかしな話だな。
「書物とな? いったい何を読んでそのような妄念に駆られたのやら」
視線をエセルドレーダに戻しつつ、アルが尋ねた。
「これ」
即座にエセルドレーダが本を差し出した。
それは。
青。
蒼。
藍。
アオく、ずんぐりと丸みを帯びたマヌケ面のキャラクターが、白い球体状の手をアッパーカットの
ように突き上げ、怪異なる微笑みを浮かべてカバーの大部分を飾っている。傍らでは眼鏡をかけた
情けない雰囲気の少年が吸盤のついた小さなプロペラを頭に乗せてふらりと飛んでいる。
上部には「てんと○虫コミッ○ス」とあり、その下にデカデカと本のタイトルが記されていた。
これって……
「『ドラ○もん』じゃねぇか!」
日本では国民的なマンガとして有名な一作。知名度が高いおかげでパクリネタをかましても
大抵通用するので、汎用性の高い作品ではあるが、版権の問題からいささか扱いが難しいこと
でもよく知られている。
「これを読んで、自分がロボットだと?」
「イエス。わたしは22世紀からやってきたゴス型美少女ロボット・エセルえもんだったの」
ゴス型って。しかも自分で美少女とか言ってるし。
「遂に紙が腐り始めたか……」
同類ゆえか、アルの言葉には非常に強い憐憫が篭っていた。
それにしてもテーブルに乗せた足はいつどかすのか。
「わたしがなんでも出来たのは魔術ではなくて秘密道具のおかげだったの。考えてみれば魔術は
いろいろと制約が多いし、ああまでうまくやれるのは不自然だったのよ」
物凄い牽強付会だなオイ。不自然なことをこなすからこそド凄い魔導書なんだろうが。
「しかし、『ドラ○もん』ってんなら四次元ポケットはどうなるんだ?」
「………」
気のせいか、エセルドレーダは見下すような(実際には身長の関係で見上げているのだが)目で
俺を見ていた。周りの空気までも、軽蔑を孕んだように冷ややかなものとなっていた。
「……卑猥」
ぽつっ、と呟いた。
「え?」
聞き返すや否や、ぷいっ、と横を向く。
卑猥って……。
「……だああああ、そういうことか、そういうことかよ!」
納得した。納得したが、それは違うだろうが!
「マスターのあれだけの大きさのモノを易々と飲み込めるのは前々から妙とは思っていた。
でも、わたしに四次元ポケットが付いていたのだと考えれば、説明はつくわ」
「あんまりついている気がしません、はい」
「こ、こらー! お、お主はなんてことを言うのじゃ!」
遅れてエセルドレーダの言ってる意味が分かったアルは真っ赤になって怒鳴った。
ようやく足をテーブルから下し、憤然と立ち上がる。
「慎みがないにもほどがあろうぞ!」
アルは片頬を歪めて腕を組むや、のんびりと紅茶を啜るエセルドレーダを糾弾する。
いや、っていうかいつの間に茶が? 用意した覚えはねぇぞ。
「じゃあ、聞くけどアル・アジフ。あなたは少しも疑問に思わなかったの?」
ことり、とティーカップを置いた。
「はぁ!?」
赤くなりながらも、はっきりと疑問の声をあげるアル。
「あなたも大十字九郎を易々と受け入れることができたのでしょう?」
「………!」
もはや言葉を失ったのか、頬を紅潮させたままアルはぱくぱくと口を開けたり閉じたりした。
いや、あれはどう考えたって「易々と」と形容できるようなもんじゃなかったぞ。
というツッコミを入れるのも気恥ずかしくて黙っていたら調子付いたのか、エセルドレーダは
席を立って歩み寄り、ぐぐっ、とアルに顔を近づけた。
「ふの!?」
思わずのけぞってしまうアルに向かってなおも言葉を重ねる。
「おかしいでしょう? わたしとあなたみたいに小柄な体躯の者が、マスターや大十字九郎のように
ひと回りやふた回りは大きい人のモノを、余すところなく、悠々と、咥え込めるだなんて」
「はいはい、そこ、いい加減に猥談はやめような」
それに、「余すところなく」って、無茶苦茶余っていた気が……。
「……確かに」
ああ、そうだよな、アル。って。
え?
「確かに、変だ」
「だあああああああ!? あっさり詭弁じみた口車に乗せられてる!?」
そんなバカな!
お前は仮にも外道の叡智をてんこ盛りした魔導書だろうが、訪問販売員や
実演販売員以下の安っちいコトバ・マジックに引っ掛かんなよ!
「おいアル! なに巫山戯た話をまともに聞いてんだ! 気を確かに持て!
このままだとおまけでもう一本付いてくる高枝切りバサミを売りつけられるぞ!」
「アル・アジフ。確かに真実を知ることには様々な痛みやショックを伴うわ。
高枝切りバサミや布団圧縮パックや怪しい牛皮七点セットをついうっかり買って
しまうどころの話ではないわね、クーリング・オフも利かないし。
でもね、あなたは仮にも『最強』を謳っているのでしょう? それを反故するの?
ダンボール箱に詰められた仔猫みたいに怯えていてはダメ。ダメダメよ。
あなたはアブドゥル・アルハザードの意志を継ぎ、正しく真実に気づかねばならない」
エセルドレーダの笑みは懐柔するように甘かった。
反対に俺の気持ちは苦かった。
「耳を傾けるな。どうせマスターテリオンが仕掛けたくだらん悪戯だっての」
「九郎……」
アルの弱々しい瞳がこちらを向く。
燃えるように赤かった顔は、もはや蒼白に変わっていた。
「大十字九郎の言葉を信じてばかりでいいのかしら? 何もかもについておんぶにだっこなんて、
そんな姿勢で『最強』を謳えるの? 主に拠りかかる生き方が、あなたにとっての幸せなの?」
「アル!」
「妾は……」
「両の目をしっかり開けなさい。見ていたい夢は閉ざしなさい。あなたが見るのは真実だけでいい」
「妾は、妾は、妾は……」
「しっかりするんだアル!」
強く肩を揺さぶるが、俺の声は届いていない様子だった。
アル? どうしちまったんだよ、おい! こんなバカバカしい冗談を真に受けているのか?
「アル、アル!」
「あなたは魔を断つことができても、真実まではどうすることもできない」
勝ち誇るような笑みがエセルドレーダを飾った。
アルがゆっくりと口を開く。
「妾は……ロボット?」
「そうよ」
「妾は、ロボット……」
「ええ」
「妾はロボット」
「イエス」
「妾はロボット!」
らわろぼっと、ろぼっと、ぼっと……
叫んだ。
響いた。
谺した。
俯けていた顔を上げる。ぶわっ、と髪が跳ねる。
まるですべての迷いを吹っ切ったかのような晴れ晴れしさが、そこにあった。
「はっ!」
跳躍んだ。
ズパッ
風切り音を立ててトンボ返り。難なく着地してポーズを取り、朗々とした声で見栄を切る。
「妾こそは未来の天才科学者、アブドゥル・アルハザードがつくりしヒトガタ!
千年の永きに耐え、遂には最強の領域にまで達した美少女ロボット!
どんな夢でも叶えてみせる無敵で素敵で知的に外道なマシーネン!
デウス・マキナと同じ刃金の身体と鋼鉄の精神を持つモノなり!」
「ようこそ、すばらしき新世界へ、アルえもん。でも最後の『ナリ』は余計よ、コ○助とかぶるから」
「ああ、清々しい気分じゃ。これが、これこそが『すべてを知る』ということか」
「イエス、同志。あなたは今こそ真実に辿り着いたのです。コングラッチュレーション」
へー、そう、ふーん。
なんだか、ひどく無関心な自分がいた。
「わたしがゴス型ならば、あなたは白ゴス型」
「ナコト写本……」
アルの唇をエセルドレーダの指がそっ、と押さえて、言葉を遮った。
「水臭い呼び方をしないで。わたしの名前はナコトえもん」
「ナコトえもん……」
ああん? さっきまでエセルえもんとか言ってなかったか?
「わたしとあなたは科学の子、人類の叡智の結晶。十万馬力や百万馬力は当り前、蒸気機関が湯気を噴き、
灼熱の動力炉が轟々と猛るように唸りを上げる。混沌の代わりにナノ・マシーンが這い回り、
ほとんど生物の領域に達し、やがては超える。向かうところ敵なし、正に天下無敵の金属体よ」
「ナ、ナコトえもん、ひょっとして『カタカタ、ピー。計算結果ガ出マシタ』とか言って細い穴開きの紙を
出したりすることもできるのか? 妾はあれがいっぺんやってみたくて」
「簡単よ、そういうステロ・タイプでロースペックげなマシーンの真似ならすぐにでもできるわ。
コツはカタカナで喋ること。でもあまり長いと読みにくいから短めに、漢字も交えて。
それと、今まで魔導書のページを出すのと同じ要領でパンチを入れた紙も出せば、ホラ、コノ通リ」
言いつつ、エセルドレーダの指先から「細い穴開きの紙」とやらが出てきた。
カタカタカタ、ピー。
御丁寧に効果音付きだ。
「おっ、おおっ、おー!」
子供のように浮かれ、はしゃぐアル。
よかったな、アル。
投げ遣りに思いやってみる。
「家事手伝いにはいささか不安が残るところだけど、夜伽をさせたら適うものなどないわ。
生命の限界もなんのその、エレクトリカルな刺激で何度でも萎えた穂軸を甦らせて
夜の二十四時間耐久マラソンを走り続けるのよ。ゴールなんてないわ」
うわあい、それはたのしみだなあ(棒読み)。
もういい、お前らは好きに戯れていろ、俺はダンセイニと遊んでいるから。
「なあ?」
「てけり・り」
うねうねと黄土色のゼリー塊が震える。これはきっと肯定の証だろう。
さて、どんな遊びをしようか……。
「ちょぉぉぉぉっと待つのであーる!」
ギャイーン
開け放したドアからギターの音が響いてきた。
あーあ、よりにもよってイヤな奴が混ざりにきやがった。
「この、超、大、天、才! ドクタァァァァァァァァァウェェェェスト!
を差し置いてロボ談義とは実に寂しいではないか。お邪魔しにきたのである」
入口のドアをトントンと叩き、叫ぶ。
「九ー郎ちゃんっ、あーそーぼっ!」
「でえええい! 普通に喋ってても聞こえるから大声出すな!
つーかお邪魔すな! 本当に邪魔だ! 帰れ、顔面崩壊サイエンティスト!」
「おおう、なんだか誉めてるんだか貶してるんだかな言葉で歓迎ありがとうHAHAHA!」
「貶してしかいねぇ。当方に■■■■をもてなす用意なし! いいから、渇かず飢えず
さっさと警官どものとこ行ってエルロイも真っ青な手厚い歓迎を受けてきやがれ」
「残念ながらこのドクター・ウェスト、マゾの気はないのである。ポリースに手錠と警棒で
責められて『畜生、いつか必ずロック・ユー!』と悦に入る趣味はナッスィング。
ただ単にアイダホの大地で鍛えられたこの身体が打たれ強いだけである」
知るか。
「五月蝿い■■■■じゃな、ナコトえもん」
「まったくとんだ■■■■だわ、アルえもん」
なんだか息が合ってるな、お前ら。
「ふん、この世界でロボットを語るからには欠かしてはいけないものがあるのであーる!
それこそ、この大天才たる我輩の血と汗と涙と尿の結晶、全知全能を傾けた集大成!
愛しき強き荒々しき戦いの女神、闘神の娘、その名も高き……エルザァァァァァァ!」
ギャリギャリギャリギャイーン
■■■■がギターを掻き鳴らす。
そして。
「博士うるさいロボ」
げし
入口に留まっていたドクター・ウェストを、一本の足が蹴り倒した。
「おぅち!」
びたん、と地面に這いつくばったドクター・ウェストを踏みつけ、一つの影がズカズカと室内に侵入してきた。
ドクター・ウェストが生み出した奇蹟、「ロボット三原則」のアシモフも草葉の陰で泣くアンドロイド。
エルザ。
いつも通り、トンファーを手にしていた。くるくる回して弄んでいる。
「ダーリンどこロボ?」
きょろきょろ。右手で庇をつくって部屋中を見回した。
「ぬぁぁぁぁぁぁ!? 踏んでる、エルザが踏んでる! この、生みの親である我輩を!
反抗期か!? いかん、いかんぞエルザ、孝行心の大切さについては昔、孔子という奴が……」
「博士だまってるロボ」
ドヅッ
バカデカい棺桶が五月蝿い■■■■を沈黙させた。
「さてロボ」
なんにでもロボをつけんと気がすまんのか。
「ダーリン、久しぶりロボ。元気してたロボ?」
「ダーリンはよせ、それに久しぶりって三日前に会っただろうが」
路上でドクター・ウェストと鉢合わせになって、ボコボコにした際に。
「言葉の綾ロボ。細かいこといちいち気にしてたら大きくなれないロボ」
「俺はもう充分に成長してるっつーの」
天国の父さん、母さん、丈夫に生んでくれてありがとう。
と、今は亡き両親に感謝を捧げることで現実逃避を図ったが、果たせなかった。
「ところで博士はああいったけど、さすがにエルザは尿が結晶化してなんてないロボ」
「え? ああ、すまん、あいつのセリフはデフォで聞き流す仕様になってるんだ」
「万が一、ダーリンにスカトロ趣味があったらどうしようかと思ったロボ」
「ねぇ、そんな趣味はねぇ!」
嘘っぽく聞こえるかもしれないが、一応強く主張しておいた。
「これ、そこのクズ人形、何しに来よったのじゃ」
険を込めた声色で尋ねるアル。自分がロボットだと思い込んでるせいか、エルザに変な
敵愾心を抱いているようだった。
「ふぅぅ〜ロボ」
溜め息にも語尾がいるのか、お前は。
「クズはどっちロボ。『秘密道具』とか『四次元ポケット』だなんてありもしないものを
信じるなんて度し難いロボ。よっぽど頭の中身がスクラップになってるロボ」
「な、に……!」
「………!」
部屋の隅から隅までに闘気が張り詰めた。じりじりと焦げるような緊張感が漂う。
えーと、俺、そろそろ逃げた方がいいかな?
迷っている隙にエルザが言葉を続けた。
「『ドラ○もん』なんて所詮は弱者の思想に過ぎないロボ。科学の道を舐めてるロボ。
科学はもっと地道でもっと延々としてもっと厭々としたもんロボ。何十年もの研究が一瞬にして
白紙になりかねない、そんな殺伐としたムードがいいんロボ。
『ドラ○もん』如きに目を輝かせる女子供はすっこんでるロボ」
「言わせておけば……!」
「秘密道具の制裁を受けるがいいわ、エルザえもん」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
書き文字じみたプレッシャーが部屋を包んだ。
「変な名前で呼ぶなロボ。お前たちにはしっかりロボットのなんたるかを叩き込んでやるロボ。
授業料はダーリンに支払ってもらうロボ」
「お、俺が!?」
「主に身体で払ってもらうロボ。ぽっ」
「『ぽっ』じゃねぇ! つか、『主に』ってことは他にも何か払わせる気かよ!」
「そのへんについては契約書の隅にちっこく書いとくロボ」
うわあ、詐欺臭ぇ。
「さておきそっちのバカどもは覚悟するがいいロボ。……『我、埋葬にあたわず』」
いきなりぶっ放した。
緑のレーザー光線がアルとエセルドレーダのふたりに襲い掛かる!
「はん!」
「ふふ」
キィィィン
ふたりはそれぞれ片手を掲げ、余裕で魔術障壁を張った。
「秘密道具が一、」
「ひらりマ○ト」
なぜか交互に喋る。
レーザーは障壁に沿って逸れ、窓ガラスを突き破ってお外へ抜けた。
砕け散るガラス。光り輝くレーザー。広々とした青い大空。
「わああ、キレイ……虹みたい、って、んなわけあるかぁぁぁ! お前ら、俺の
事務所を破壊するんじゃねぇぇぇ!」
「今度はこっちの番よ」
「来るロボ!?」
連中は悲しくなるくらいこっちの話を聞いてなかった。
「秘密道具が二、」
「空○砲」
アルとエセルドレーダが手と手を重ねる。
「「どかん」」
斉唱するや、ふたりの手に圧縮された空気が集結し──
ばぼうッ
砲弾と化した大気がエルザに襲い掛かった!
「ちぇすとーロボ!」
咄嗟にエルザは近くのものを盾にした。転がっていたドクター・ウェストだった。
着弾。
「けばぶっ!」
奇怪な悲鳴を挙げて吹っ飛ぶドクター・ウェストの下を匍匐するような低い姿勢で
潜り抜け、エルザはアルとエセルドレーダのふたりに肉迫した。
ひゅんひゅん
両手のトンファーが唸る。曲線的な軌道を描き、宙に読めない文字を刻む。
「ほらほらほらほらほらほらほらほらほらほらーロボ!」
「くっ!」
「たぁぁ!」
げいんげいんげいんげいんげいんっ
エルザの猛攻にシールドを展開して凌ぐふたりだが、徐々に押されて後退する。
「ここは……」
「二手に分かれるぞ!」
叫んで、ふたりは左右別々の方向に散った。
どっちを追うべきか、エルザは一瞬迷ったようだが、跳躍が控え目だったアルの
方に迫った。トンファーを振り下ろす。
「めぇぇぇんロボ!」
「けやぁ!」
キシィン
両手にシールドを張りつつ、アルは真剣白羽取りの要領でトンファーを挟んで掴んだ。
「甘いロボ」
カチッ
トリガーを引いた。途端にバチバチッ、と白光が生じる。
確か電気ショックだったか、あれ?
「くああ!」
シールドで防ぎきれなかったのか、両手をトンファーから放し、よろめいて尻餅をつくアル。
「もらったロボ」
すっ
トンファーを頭上の高くにピンと掲げ、
「ふしゅっ、ロボ!」
一気に振り下ろすエルザ。
スイカ割りでもするように、一切の容赦なくアルの脳天目掛け……ってさすがにこれはやばくねぇ?
「アル!」
叫んで止めに入ろうとした俺を、横にいた影が静止した。
「手出しは無用よ、大十字九郎。それにあの娘はもうアル・アジフではなく、アルえもん」
「え? は? お、お前、いつの間に!?」
俺の質問を無視してエセルドレーダは魔術を唱え、見えない衝撃をエルザに叩きつけた。
「かふっ!」
アルの脳天に一撃を加えようとしていたエルザが吹っ飛び、壁に向かって行く。
叩き付けられる直前にくるっ、と膝を抱え込むように丸まった。
とんっ
壁を蹴り、エセルドレーダの方へ、つまり──俺の方へ宙を疾走してくる。
「いつの間に背後を取ってたロボ? 視界には入らなかったロボ」
俺と同じような質問。今度はエセルドレーダもちゃんと返答した。
「秘密道具が三、」
「と、通りぬけフー○」
よろよろと覚束ない足取りで立ち上がりながら後を継ぐアル。
「……って、単に床ぶち抜いて階下を移動してこっち来ただけじゃねぇか!」
床に空いた大穴を見つけて頭を抱えた俺は、思わず説明的な口調で叫んでしまうのだった。
「とにかく喰らえロボ」
エセルドレーダの首筋にトンファーの先端を送り込む。
慌てず騒がず、エセルドレーダは俺の襟をむんずと掴み、
え?
ぶんっ
全身を覆う浮遊感。
重力の支配を強制的に外された俺は、元気良く空中を飛んでいた。
まっすぐ、エルザに向かって。
「ダーリン、何するロボ!?」
いや俺の意志じゃねぇって。
「秘技、人間ロケット」
ポツリ
エセルドレーダが呟いた……ってもう全然秘密道具関係ねぇだろこれ!
『あぶないぞ! 飛行物体、急には止まれない』
なんだか変な標語がふっと浮かんでは消えた。
俺とエルザはお互い、どうすることもできず、そのまま──ぶつかるしかなかった。
ブチュウウウ
怪異なる衝突音、というかこれは……。
唇を覆う柔らかい感触、触れるのは鋼の冷たさではなく、意外にも肉の温かさであった。
唇と唇が、重なり合っていた。
無論、俺とエルザの。
エルザの目が見開かれ、その瞳にぎょっとした表情の俺が映り込む。
時間の流れがとてもゆったりと引き伸ばされて行った。
ぶつかっただけでは飽き足らず、更に余ったエネルギーがぐいぐいと俺とエルザの頭を
押し込み、えぐるようなキスを強要する。その一瞬一瞬が、確かに知覚される。
やがて唇との接触が痛いくらいになったころ、身体の他の部位も衝突を開始した。
肩と肩、胸と胸、腰と腰、脚と脚……二枚の紙をぴったり重ね合わせるようにぶつかり、
それでもなお余ったエネルギーがモーメントを生んで……俺たちはもつれ合うように
絡まって落下した。
ドンッ
衝撃で息が詰まり、目の前に星が回った。
「う〜、ててて」
ゆっくりと戻っていく視界に、エルザの姿が映った。
俺を組み敷くように馬乗りしていた。
「………」
呆然と、唇を指で撫でている。目は見開いたままだ。
「………」
つられて俺も黙り込む。静寂が耳に痛かった。
「……た、ロボ」
「え?」
「ダーリンにキスされたロボ」
「え? は? いや、待て待て待て」
今のはどう考えたって純然たる事故だろーが。俺の作為なんて一片だに介在する余地は
ありませんでしたよ? そりゃあ、まあ確かに、
「柔らかかったな……」
とは思ったが。
あれ?
今、俺、言葉に出して……?
「ダーリン……」
「いや、待て! 熱い吐息を出すな! 握り拳を口元に寄せてふるふるさせるな!
涙目になって俺を見るなぁぁぁぁ!」
言われてそっ、と視線を外すエルザ。
いや、なんとか冷静になってくれたのか。
と楽観的な見方をして胸を撫で下ろすのも束の間。
すっ……
滑るように飛来したエルザの手が、俺の手を握った。
「もう、離さないロボ……」
ぎゅっ
「いでででででで! ち、力込めまくってんじゃねぇよ!」
「このままお持ち帰りさせてもらうロボ」
ぐいっ、と引っ張られて股の間から抜け出した俺は、そのまま脇に抱えられた。
抵抗の余地は一切なし。流れるような一連の動作であった。
すっくと立ち上がり、立ち竦むアルとエセルドレーダを無視してエルザは部屋の
戸口へすたすたと歩いて行く。
「おいおい、俺は弁当じゃねぇっての! テイク・アウトするなって!」
じたばた暴れるが、エルザの膂力は並大抵ではなく、ちっとも逃れることができない。
「はあ……アル、なんとかし」
人間は、あまりにも巨大な恐怖と直面したとき、言葉を失う以外に手立てがない。
噴火寸前の活火山の如く、怒りのマグマを今にも爆裂させようとしているアルの姿を
前にして、俺は言語を始めとする一切の意志表現行為が不可能になった。
ただひたすらに、恐怖のままに、身体をうち震わすのみ。
「汝等、そんなに世界の終末を目撃したいのか、そうかそうか」
ゆらりゆらり、自らの怒りを持て余したように身体を左右に揺らし、アルは
ぶつぶつと呟いた。
「まさか九郎がそんなクズ人形に惹かれるとは思わなんだな、なに、千年生きた妾にも
世界はまだまだ不思議をいっぱい隠し込んでるということか。なるほど、痛感されられたわ」
言葉とともに、膨大な量の魔力がアルへ一点集中していく様がよぉぉぉぉぉっく見えた。
嫌になるくらいはっきりと、まざまざと、勘違いの余地をまったく抜きにして。
「然るべき滅びを与えよう、今日、この時点、この場所でもって世界を一つばかり
終わらせてやろうかのぅ」
ギラッ
視線が鋭い刃となって俺の心臓をぐりぐりいじり回した。
「ひぃぃ」
情けない悲鳴が口の端から勝手に漏れる。片手で押さえるが、空気の漏れるような
ひゅーひゅーした音は喉の奥から奥から次々に漏れ出てくる。
「嫉妬は醜いロボ」
ボソッ
エルザの無造作な一言。
なあ、「火に油を注ぐ」ってよく言うよな? あれを更に強調したいときは「火に
ガソリンを注ぐ」とか言ったりするわけだが、そんな表現すら生温いときはどうすれば
いいんだろう?
教えてアル先生!
「クズ人形、多量のニトログリセリンをどうもな。ここまで来ると怒りも心地良いものよ」
やっぱり教えてくれなくても良かった。
後悔する俺をよそに、いよいよアルに集う魔力は尋常の域を外れていく。
あたりが暗く淀み、窓の景色が異様にねじ曲がったうえ、なんかバチバチ放電現象まで
発生し始めた。ここはもう異界ですか。春も山も愛も日常もすべて死にましたか。
「秘密道具が終、地球○壊爆弾」
一人で全部言った。いつの間にかエセルドレーダの姿はなくなっている。
逃げた?
「愛とは打ち倒して蹴散らして勝ち取るもんロボ。こっちも容赦なんてしないロボ?」
ぎゅぃぃぃぃぃん
俺を降ろしたエルザが『我、埋葬にあたわず』を操作し、光を集約させる。
部屋が一層暗くなった気がした。
注意がこちらから外れた機を逃さず、俺は脱兎の勢いで逃げ出した。恥も外聞もなく、必死だった。
「死ぬがよい」
「それはこっちの台詞ロボ」
言い合う声を背にして、破壊された窓に向かって身を投げた。ぐんぐんと近づく地面に受身を
取る準備をする。
彼方で、閃光と爆音が炸裂した……。
504 :
後日談:03/05/31 23:59 ID:kpJm+8Eb
「九郎、ドラ焼きはどこじゃ?」
「あー、はいはい」
うららかな午後の事務所。俺はアルとエセルドレーダ(本人にはアルえもん、
エセルえもんと呼ばないと怒られる)と一緒に茶を飲んでいた。
机の引き出しからドラ焼きを掴み出し、ふたりの前に置く。
「ふう、これがあってこそ茶を飲んだ気にもなるというもの」
「ええ、そうね」
不思議とババ臭く見えるふたりを眺めつつ、ぼんやりと手元のドラ焼きを弄んだ。
あの日。事務所の中をグチャグチャにしながらも戦いに決着はつかず、エルザは退いた。
「ダーリン、また来るロボ!」
「二度と来んな!」
そして、エセルドレーダはいつの間にか馴染んだように復旧した事務所へ来るようになっていた。
今日はマスターがどうしたのと、アルを相手に茶飲み話に耽る。
不気味なくらいにふたりが打ち解けたのは嬉しいが、なんともいえない気分である。
エセルドレーダが帰ると、アルは押入れの中に引っ込む。
復旧の際にわざわざ自作した押入れであり、一日をそこに収まって過ごすのだ。
なんだかなぁ。
「って、思わないかダンセイニ?」
「てけり・り」
ベッドのお役御免となったゼリー塊生物がふるふると蠢いた。
そこに──
「大十字九郎、勝負するのであーる!」
ギャイーン
「ダーリン、また来たロボ!」
表通りから伝わる近所迷惑な騒ぎ声。
俺はため息をつき、振り向き、一瞬迷った後、押入れに声をかけた。
「アルえも〜ん」
505 :
空ラ塗布:03/06/01 00:03 ID:Tq9WRRZ8
>>487-504 題「嗤う導魔衛門」(斬魔大聖デモンベイン)
えー、最初の一言と最後の一言にすべてが集約されてます、ええ。
タイトルは京極夏彦の「嗤う伊右衛門」から。
warata
爆笑
SANが〜
>>505 タイトル殆ど(2分5厘ほど)関係ねぇーーっ!!
蚊帳の話を延々としたり、妹を犯したりすると思ったのに(思うな)。
あ、いや爆笑したっすよ、ええ。
次回作は「魔道書の夏」で是非。
「牽強付会」なんて単語をさらりと使えるあたりが、凡百のSS書きとは一線を画してるな。スゲエ。
…それはそうとエルロイまで読んでるのかよw
>508さんはああ言ってるが、俺としては「アーカムコンフィデンシャル」を希望。
ごっどじょぶ。
オチが巧いなぁー(笑
SAN値が−50ぐらいまで下がった気がする
「魔導書が黙殺」の部分で『家政婦が黙殺』を思い出した。
>505
乙です。
すこぶる楽しませていただきますた。
んでちょっと気になったのでつが、確かアルは「〜じゃ」って喋り方はしなかったよーな。
漏れの記憶違い?
516 :
名無しさん@初回限定:03/06/01 03:54 ID:2mRfWSCH
・・・アルえもんのまま放置かよっ!
…仕事に疲れて帰ってきて、眠い目こすってチェックをすれば。
神よ、吹き飛んでしまった眠気はいかにすれば取り戻せますか!?w
てか一行目で爆笑し、きっちり目が覚めちまったんですが……。
次はひとつ怪物君なウェスパシアヌスでw
四次元ポケット…萌え。
>517
「哭け、ガルバ!オト―!ウティリウス!」
「フンガ―」
「ざます」
「でがんす」
520 :
名無しさん@初回限定:03/06/01 13:38 ID:2mRfWSCH
えーっと、今更ですが>408での書き込みに関して何か勘違いをされている向きが
いらっしゃるみたいですのでその辺の説明を…。
あそこで同罪と発言したのは「場の空気を乱した」ことに関するもので
年齢制限には一切無関係です。その辺のクリアランスは
H9年の時点で満たしております。念のため。
>522
…んなことは心の底からどうでもいいんだが。いちいち書くなや。
僕らの愛しいマスターてけり・りオンさんは何時出てくるのでしょうか。
ピンク色で。
525 :
アーヴ:03/06/02 02:45 ID:AHFsRhPZ
前に一回投稿したことがるんですが
たぶん誰も覚えてないだろうなぁ
今回はヴェドゴニアからです
形式は前回と同じようにエンディングをいじってみました
自らの欲望の赴くままに
と、言うか俺が書くのってこんなのばっかりなのですが
まあ、暇つぶし程度にでも楽しんでいただけたら幸いです
ではどうぞ
526 :
アーヴ:03/06/02 02:45 ID:AHFsRhPZ
ギーラッハの繰り出す絶え間ない攻撃に俺は劣勢を強いられていた。
やつの攻撃は素早く、それでいて全てが必殺の威力を秘めている。
一撃でも食らえば、負ける。
「ぬうんっ!」
強烈な殺気の渦を乗せて、ギーラッハの剣が袈裟懸けに振り下ろされる。
身を捩ることでかろうじてそれを避ける。しかし、
「でえいっ!」
やつは圧倒的な膂力に物を言わせて、剣の軌道を途中で変えてきた。
飛びすさった俺を追撃するかのように、やつの剣が追いかけてくる。
避けたのでは間に合わない。
俺はやつの剣に意識を集中する。
ほんの少し、軌道を変えるだけでいい。
周りの景色がコマ送りになる。
やつの剣が何かに叩かれたようにして跳ね上がる。
身をかがめた俺の頭の上をかすめるようにしてやつの剣が通り過ぎる。
「そんな、馬鹿な。」
今だ。
やつが狼狽えている一瞬の隙に、懐に飛び込む。
「己は認めんぞ、貴様ごとき下賤の民に…」
俺の全体重を乗せたナイフが、やつの胸に深々と突き刺さる。
「リァ・・ノーン・・様。」
目には見えない炎に、体の内から焼かれてやつの体が灰になる。
「…惣太。」
不意に呼ばれて振り向くと、ドアのところにモーラが立っていた。
「モーラ。その怪我は?」
腹部を押さえた手の下から血があふれている。
「大丈夫。それより、リァノーンは?」
「この先の部屋にいる。それより、本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないなんて言ってられないわよ。急がないと、あなたは…」
そこまで言って俺の顔を見たモーラの目が驚愕に見開かれる。
「そんな、間に、合わなかった?」
モーラの言葉に促されるように、口元に手をやる。
先程までよりも、明らかに長くなっている犬歯。
磨き上げられた床に映った俺の顔は、明らかに白く、目は赤く光っていた。
そして、もう既に痕も残っていない首筋の噛み傷。
「嘘よ。まだ、まだ間に合うはず。」
そう言うと、俺の腕を振り払うようにしてモーラは駆けだしていた。
「モーラっ!」
俺が部屋に入ったときには、もう既にモーラはリァノーンの胸に杭を突き立てようとしていた。
「モーラっ!」
「止めないでっ!」
モーラの目からは、涙があふれていた。
「こいつを殺せば、あなたは人間に戻れる。まだ、間に合うのよっ!」
そんなことはない。
俺の体がもう既に完全な吸血鬼になってしまったことは。
俺以上にモーラがよく分かっている。
「もういい、もういいんだよ。」
モーラの手から、杭を取り上げる。
「もういいんだ。」
ゆっくりと、モーラの体を抱きしめる。
「ごめんなさい。私のせいで。」
俺の腕の中で、モーラが体を震わせている。
モーラが何を言いたいのかは分かっていた。
確かにモーラ達と会っていなければ、俺の吸血鬼かがこれほど早く進むことはなかっただろう。
しかし逆に、モーラ達と会っていなければ俺は殺されていただろう。
俺の中にいた、もう1人の俺に。
伝えたかった。
君が気に病む必要なんか無いのだと。
しかし、どう言えばいい。
今俺の腕の中で泣くモーラは、まるで見た目通りの幼い女の子のようで。
俺には、かける言葉を見つけることは出来なかった。
「モーラ。」
そんなモーラに俺が出来たのは、ただ抱きしめることだけだった。
どれくらいの時間、そうしていたのだろう。
不意に、何かが空気を切り裂く音が聞こえ。
次の瞬間、リァノーンの体が目には見えない炎に焼かれていた。
「そいつから離れろ!モーラっ。」
振り向くと、ドアのところにボウガンを構えたフリッツが立っていた。
「フリッツ。無事だったのか。」
「ああ、なんとかな。でも、テメエはそうはいかなかったみたいだな。」
フリッツの手に握られたボウガンの狙いは、俺の心臓に定められている。
「フリッツ、話を聞いて。彼は…」
「吸血鬼だ!」
モーラの言葉を遮って、フリッツが叫ぶ。
「お前をそんな体にした、吸血鬼の仲間なんだ。」
「でも…。」
「目を覚ませモーラ。そいつはもう、化け物になっちまったんだよ。」
ボウガンの引き金に駆けられたフリッツの指に、力が込められる。
「なら、私も殺しなさい。」
モーラがいきなり、フリッツの構えるボウガンの射線上に割り込んだ。
「な。」
「化け物なのは、私も同じよ。」
「モーラ…。」
部屋に重い沈黙が流れた。
3人とも微動だにしなかった。
いや、出来なかった。
いつまでも続くと思えた沈黙を破ったのは、一発の銃声だった。
それと同時に、フリッツの体が崩れ落ちる。
「フリッツ!」
あわてて駆け寄ろうとしたモーラの足下に、続けざまに銃弾が撃ち込まれる。
「動かないで、お嬢ちゃん。」
床に倒れたフリッツの後ろから1人の女性が現れる。
「よくもリァノーンを殺してくれたわね。おかげで、私のこれまでの研究が台無しだわ。」
白衣を着た女性は、忌々しげに足下に転がるフリッツを睨み付けた。
「でも、まあいいわ。リァノーンの研究対象としての価値は、もう既にほとんど無くなっていたから。」
そう言うと、まるで値踏みするようにおれとモーラの方を見る。
「ロードヴァンパイアの資質を受け継いだヴァンパイアに、半人半妖のダンピィル。実に興味深いわ。研究対象としても、申し分ない。」
「悪いが、そいつはあの世でやってくれや。」
女の胸に、銀の矢が突き刺さる。
いつの間にか起きあがっていたフリッツの放った矢は、確実女の息の根を止めていた。
「お兄ちゃん。」
倒れそうになるフリッツを、モーラが抱きかかえる。
「すまないな、モーラ。どうやら、約束は果たせそうにない。」
消え入りそうな声で、フリッツがモーラに言う。
「おにぃ・・ちゃん。」
モーラの目から、涙が流れ落ちた。
「いっつも、泣かせてばっかりだな。俺は、だめな兄貴だったな。」
まるで、眠るようにして、フリッツの目が閉じられる。
それきり、二度と開くことはなかった。
「お兄ちゃん、お兄ちゃん。」
徐々に体温を失っていくフリッツの胸に顔を埋めて、モーラは泣き続けた。
俺は、どうすればいいのだろう。
炎に包まれていく燦月製薬の本社を見ながら俺は考えていた。
もし俺が完全に吸血鬼になったら、俺を殺してくれ。
かつて、俺はモーラにそう言った。
そのときは、本気でそう思っていた。
でも今は。
背中に負ったモーラの重さを感じながら考える。
「惣太。」
モーラが目を覚ました。
「もう、大丈夫だから。下ろして。」
背中から降りたモーラが、改めて俺の顔を見る。
色素の失せた肌と目、長くのびた犬歯。
今の俺は、間違いなく吸血鬼の顔をしている。
「やっぱり君は、俺のことも恨むのかい。」
「…」
「フリッツの言ったとおり今の俺は、吸血鬼だ。君の人生を滅茶苦茶にした、あいつらと同じだ。」
「…」
「前に言ったよな。俺が吸血鬼になったら、君の手で滅ぼしてくれって。」
「…」
「今は、まだこうしていられるけど。いつあいつ等のようになるかは分からない。」
「…」
「だから、そうなる前に君の手で・・」
「あなた、言ってくれたわよね。人を愛せるのは人だけだって。だから、自分は今も人でいるつもりだって。」
それまで、ずっと黙ったままだったモーラが、俺の言葉を遮って突然話し始めた。
「あなたの言葉は嘘だったの。それとも、もう既に心まで吸血鬼になってしまったの?」
「俺が、憎くないのか?」
「だって、あなたは人間なんでしょう。」
モーラが、優しく俺を抱きしめる。
「私が、そして、あなたの愛した。人間。」
涙が、あふれてきた。
それは、俺が人間でいることの証明。
俺と彼女が、化け物でないことの証のようだった。
一ヶ月後
「本当に、これでよかったの?」
日本を発つ飛行機の中で、モーラが何度目かになるかも分からない問いを繰り返してきた。
「確かに、元の生活には戻れなかったかもしれないけど。あなたには、ほかの選択肢だってあったのよ。」
「確かに、馬鹿な選択に見えるかもしれない。でも、俺にとってはこれがベストな選択なんだ。」
強がりなのは、分かっていた。
俺がなくした物の大きさは、俺自身が誰より分かっていたから。
「それに、君1人じゃあハンターを続けるにも限度があるだろう。」
そう言った瞬間、モーラの顔に影が落ちる。
「ごめん。」
「いいの、あなたが謝る必要はないわ。」
モーラの手の上に、自分の手を重ねる。
「今は、あなたがいてくれるから。」
それは、俺も同じだ。
失った物の重さに潰されないでいられるのは、モーラがいてくれるからだ。
君がいてくれる限り、俺は人間でいられる。
心まで、化け物にならずにいられる。
「いつか、さ。いつか、俺たちの倒す相手がいなくなったら。そのときは、どこかの山でも買って、二人で暮らそう。」
モーラの手を、きつく握りしめる。
「二人だけで、静かに。俺は狩りをして、モーラは革細工か何かをしてさ。それで、たまに町に卸しに行って、必要な物を買って。ひっそりと、二人だけで暮らそう。」
モーラが、手を握り返してくる。
「悪く、無いだろう。」
「ええ、素敵ね。とても。」
そう答えた後で、少し小さな声で続ける。
「まるで、人間のよう。」
「そうじゃないだろう。僕らは、人間なんだから。」
「そう。そうだったわね。」
触れてしまえば、消えてしまうような。
はかない笑みではあったが、それでもモーラは笑ってくれた。
いつか、モーラのことを心から笑わせてあげれるように。
そのために、俺は生きていこう。
時間なら、いくらでもあるのだから。
533 :
アーヴ:03/06/02 03:01 ID:AHFsRhPZ
>>526-532 リァノーンエンドを見て
やっぱり惣太にはモーラと同じ時間の中を生きてほしいと思って書きました
いろいろと賛否はあると思いますが
いつか惣太が死んでしまったときのモーラのことを考えると
なんかやりきれなくなってしまったので
>>533 個人的には凄く悪くなかったです。
自分モーラ萌えなんですが、どうもこうエンディングがシックリこなかったんで。
パイルバンカーが無いのは激しく納得がいかない。
>>536 Y
∧,,,∧ │
ミ;゚Д゚彡 ▽
''''''''''''`````''''''''''''''''''
, ──'^ー─────
| 見せもんちゃうぞゴルァ
`ー────────
。」
↑はなるべく避けて欲しいな、とか。
以下の文章は、デモンベインのナイアさんグッドエンドを見ていないと殆ど意味不明です。
見ていても意味不明かもしれません。
ここまで歪めてしまえばネタバレも何もあったもんじゃない気もしますが、一応は注意してください。
嗤い声が聴こえる、
くすくす、くすくす、と。
俺は、
俺は、
俺は、
俺は――
――俺は本を捜していた。
@ 絶望すらも朽ち果てた
A 俺はこの悪夢にすがって生きる
B 俺はナイアさん(魔乳・えっち。しかも妹)と幸せになる
C 俺はシスターでプリンセスな生活を送る。イエー。
……さ、三番かな?
いや、しかし四番ならそれに加えて『ごしっく』で『ろりー』な少女も楽しめるしな……。
よし決めた。四番だ。
そして毎朝「お兄ちゃんのえっちぃ☆」だの「おにいちゃん、お・は・よ・う(はぁと)」だのと言って貰う。
そうさ、お兄ちゃんはエッチなのさーとかいいながらルパンダイブ。ナイアさんとあのロリ少女で遅刻しちゃうのさ。
OK。この路線で行こう。
本なんて捜さなくてもいいや。
よっしゃ、そうと決まれば早寝早起き。明日のためにもう寝ちまおうっ!
ああ、早く起こしにきてくれないかなマイシスターっ!
「起きるのだ、お兄ちゃん。朝であるぞ」
妹が身体を揺さぶる。
もう朝だった。
原色で塗り潰された朝陽が、カーテンの隙間から射し込んでいた。
棺桶のような目覚まし時計を確かめる。
四つの針が完全無秩序に時を刻んでいた。
ザクザクザクザク。
でも、そんなことは気にしない。気にならない。
俺を起こしにきた『妹』に比べれば。
「早くしないと、遅刻しちゃうのである。ま、それもまた運命かといえば否定するエレメントもナッシング?
イッツ・ア・デスティニィィィィ!!」
ギターの音が響き渡る。
やかましくて、無視もできやしない。
「……なんで、よりにもよってオマエなんだよ、コンチクショーッッッ!!」
飛び起きた。跳ね起きた。その勢いを殺さず、右足を軸にして廻し蹴リ。
ほぼ奴の右耳の横からスタートした俺の左足は、抜群の遠心力を得て一回転。
裂帛の気合を纏った渾身の一撃は、しかし風と服を斬るだけで、本来の破壊力を発揮することはなかった。
――チィッ! スウェーで避けたのか。
意外とやるじゃないか。
しかし、奴――ドクター・ウェスト――も完璧には躱しきれなかったようで、上着が少し破れている。
「お、お兄ちゃん……どうしたのであるか? はっ! ま、まさかお兄ちゃん、この我輩に欲情して……」
「してないっ! つうか、なんでお前がこんな所に出てくるんだこの(放送禁止用語)がッ!」
「あ、ああ……た、大変である。我輩、貞操クライシス!? ああ、でもこの貞操はお兄ちゃんに奉げる為なのであるし……ノゥプロブレム?」
「問題ありまくりだド変態」
「ああ、甘く愛しく時にすっぱく、ハートを抉る熱い一言。それだけで、ああそれだけで、我輩の心はこんなにもジューシィ……」
「いや、意味がわからん」
とりあえず、パジャマが血まみれになるまで殴っておいた。
「いやぁん……お兄ちゃんったら、激しすぎるのである……」
とどめに、首を人間の限界に挑戦するまで曲げた。
カーテンを勢いよく開ければ、心地よい春の匂い。
今日もいい天気だ。
とりあえず、部屋に落ちている赤い何かはほっとこう。
食卓についた。
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
「お兄ちゃん、おはよう」
みんな揃っていた。
頭が痛くなりそうなメンツが、みんな揃っていた。
ちなみに、最初から順に。
マスターテリオン、アウグストゥス、カリグラ、クラウディウス、ウェスパシアヌス、
ティトゥス、ティベリウス、リューガ、ウィンフィールドさん、治安警察の二人、
そして、いつのまに復活したのか、ドクター・ウェスト本人である。
いくらなんでも、本当に十二人用意するとは思わなかった。
しかも、ずらずら並べられても誰が誰がだかよくわからない。
こんなことになるんだったら、最初の選択肢で謙虚にBを選ぶべきだった。
て、選択肢に戻るって手段があったか。ほぼ確実に反則技だが。
まあ、あの世界だってさんざんやり直したらしいし、これくらい許されるよな?
「どうしたのであるか、マイブラザー?」
「なんでもないさ」
CTRL+B 選択肢に戻る 使用!
ふっ、と意識が消え、最初の選択肢に――
@ 絶望すらも朽ち果てた。兄貴たちの餌食になり、快楽を享受する。
A 俺はこの悪夢にすがって生きる。兄貴たちの餌食になり、終わらない夜を過ごす。
B 俺はタカさん(筋肉)と幸せになる。
C 俺はマッシヴでイイオトコな生活を送る。ウホッ。
――戻れなかった。
選択肢が変わっていた。
「なぜだぁぁぁぁ!!」
――それを見て、悦に入っている女性がひとり。
こーいうイタズラにおいては、ナイアルラトホテプ、本領発揮。
546 :
踊る阿呆:03/06/04 01:30 ID:1UpDfxxJ
>>540-545 はて、最初はナイアさんとの素敵な蜜月を書いていたはずなのに、何故このようなものができてしまったのだろう。
しかも中途半端&理不尽。クトゥルフに呼ばれて正気じゃなくなってしまったからでしょうか。
とりあえずスイマセンでした。
>546
さっ、SAN値低!!!
(コロコロコロ)
SANチェック失敗。
俺は病院に(ry
SAN値が低下しています!ワーニン!ワーニン!
ちっとオチが弱い気がするぜ。
もう少し引っ張った方が良い味が出る・・・・っていうかうむ、中途半端なので続きを書くこと希望
>546
ハゲシクワラタ。
惜しむらくは「お兄ちゃん、おはよう」 を
各キャラで特徴をつけて欲しかったかな。
暑苦しい朝の食卓。(笑)
笑い苦しむほどに正気度が低っ!
えー選択肢4でいいじゃーん。サイコーじゃーん。
SAN値が・・・グフゥ
どれがどういう姿だったか忘れていたので、
カラーの神話辞典を引っ張り出してきますた。
蓮コラなんかでは相手にならん凄まじさ。
寝られん・・・
ある意味、絶技開眼しそうなシュチュエーションだw
てか、こんな朝の食卓なら大人しく首をくくるのは漏れだけですか?
朝っぱらから激しくSAN値が危ういので、本を探しに…いやだやめろこんなかみさまたすけt
大家族スペシャルとかの構成見ても男女それぞれ4〜7ぐらいでしょ
男ばっかなんて想像の範疇に無かったぞ(((;´Д`)))
妹を探しに…
558 :
名無しさん@初回限定:03/06/05 23:45 ID:iL2vFMTB
マスターテリオン or ナイア
どちらかは 兄くん の呼び方をすると思うのだが。
・・・おにいちゃまは てぃべりうすあたりか?(平仮名で書くとなんか可愛い)
559 :
名無しさん@初回限定:03/06/06 00:18 ID:+FJZnX2u
俺だけが自爆するの嫌なので書く。
「河原崎家の一族2」の犯人は執事の稲垣。
最後焼け死ぬ。
>559
突然何を言うか
ドクターウェストで一本書いて欲しいなぁ…
笑い死にする人が出そうだ。
ナイアさんとの素敵な蜜月でございます。(誇張表現アリ)
SUN値は高いのか低いのか低すぎて逆にアレなのか不明ですが。
ナイアさんグッドエンドの後の戯れな世界を夢想。短いのはご愛嬌。
僕は、九郎君が好き。誰にも渡さない。
君は、ずっとずっと、未来永劫、僕のものだ。
「おーい、九郎君ー、ちょっと待ってくれないかいー」
公園を歩いていたら、後ろから知っている声が聴こえた。
振り返ってみると、なにやら大きな紙袋を抱えた女性。
「ナイアさん? どうしたんですか、その荷物は」
俺の方に近寄ってくるも、その歩みは少し危ない。
仕方なく、自分から彼女の方へ歩み寄った。
向かいあう。なぜか少し不機嫌のようだ。
むくー、って感じだ。
「酷いなぁ、酷いなぁ、九郎君は。まだ僕のことをさん付けにするなんて。
いつもいつも言ってるじゃないか、ナイアって呼び捨てるようにって」
そんな理由だったのか。
大人びた、というかまさに大人の女性な外見からはちょっと考えられない、子供っぽさ。
「すいません、でも」
「だめだよ、だめだよ、敬語もだめだよ、九郎君。仮にも愛しのダーリンに向かって使う言葉じゃあない」
俺の言葉を遮り、どことなく唄うような、特徴的な喋り方をする。
「だ、ダーリンって……」
「おや、九郎君は僕を愛してくれているんじゃなかったのかい?
酷いなぁ、悲しいなぁ、僕の乙女心を玩ぶなんて……僕は九郎君が居なければもう生きていけないというのに」
「こ、公衆の面前で何言ってんですかっ!」
「まだ敬語をやめてくれないんだね、九郎くんは。仕方ないな、これは君に罰を与える必要があるみたいだね」
「罰って……」
いかん、なんか押されっぱなしだぞ、俺。
なんつーか、キャリアが違う。
「と、いうわけで。この荷物、持つのを手伝ってくれないかい?」
「……もしかして、それが目的ですか?」
「やだなぁ、僕はそんなちっぽけな理由で人を呼び止めたりしないさ」
言いつつも、荷物を俺に手渡す。
かなりの重量のそれは、新旧の差はあれどすべて本だった。
「君と会話がしたかったから呼び止めたんだよ」
「はあ、それは光栄なことで」
生返事を返す。
「む、なんだいその返事は。つれないな冷たいな、もっと喜んでくれても罰は当たらないと思うんだけどな」
片腕を取られる。
「なんですか」
「恋人なら腕くらい、組んでもいいだろう?」
うあ、そんな満面の笑みを浮かべられたら、拒否できるはずがないじゃないか。
まあ、拒否する理由もないけど。
なんかあったかくてやーらかい感触が、腕に。
「な、ナイアさん……その、あまり押し付けないでください……」
「九郎君はこういうの嫌いだったかな?」
大好きです。
いや、そーではなく。
「流石にちょっと、恥ずかしいですよ」
「ふぅん、僕はそういうの気にならないけどな。野外プレイだって大好きだし」
「野外って……もうちょっと羞恥心とかを持ってくださいよ」
「あ、よさそうな茂みがあるよ、九郎君。えっちには最適だ」
本当だ……って、そうじゃなく!
「したいなあ、九郎君とえっちとか、セックスとか。本屋の奥で独り身体を慰めるのには飽きちゃったよ」
「だから、公の場でなんてこと言うんですか貴女はっ!?」
「僕の身体、貪りたいと思わない?」
う、いや、そりゃあ思うけど……
「折角の僕の名器も、指とか道具とかが相手だと寂しいなー」
指…… 道具……
ナイアさんの身体……
「ふふ、九郎君、硬くなってきちゃった?」
う、実は少し。
いやしかし、ここは心頭滅却だ、大十字九郎!
ていうかナイアさん。組んでいる腕を股間に持っていかないでください。
「だ、駄目ですってナイアさん」
「あーあー、僕のあそこはもうびしょびしょなのになー、九郎君はちっとも欲情してくれないんだー」
「だーかーらー、人前でそういうこと言わないでくださいってホントに!」
彼女は、にやりと嗤った。
あまりにも妖艶で、
あまりにも淫猥で、
あまりにも壮絶に。
「――何を言ってるんだい? この世界には、僕と君しかいないじゃないか」
持っていた本が消える。
着ていた服が消える。
公園の風景が闇に沈む。
抱き付いてくる、闇黒。
俺を見下ろす、黒い闇。
絶望という、永遠の生。
ああ、そうか。
俺は――
「……大丈夫かい?」
気が付くと、ベンチに横たわっていた。
というか、ナイアさんに膝枕をされていた。
「突然倒れるなんて、九郎君、疲れているんじゃないかい?」
疲れている……そうかもしれない。最近忙しかったから。
何で忙しかったのかは、不思議と思い出せないが。
介抱してくれたナイアさんの優しさが心地好い。
「……ありがとう、ナイアさん」
「ふふ、礼はいいよ。僕も君の寝顔を堪能できたしね」
最後の記憶は確かに青空だったのに、今はもう夕暮れ時だ。
ずっと見ていてくれたんだろう。
すこし名残惜しいが、膝枕状態を解除し、立ち上がる。
彼女も一緒に立ち上がった。
「そうそう、九郎君。礼はいいといったけど、やっぱり一つだけお願いしてもいいかな?」
断るなんてできない。
「はい、ナイアさんの願いなら、どんな事でも叶えますよ!」
彼女は――彼女にしてはとても珍しいことに――少しためらってから。
「じゃあ……愛してるって言ってくれるかな?」
俺は彼女を抱きしめてから、言った。
「愛してますよ。ナイアさん」
君と僕とは倫理観、価値観が根本から違うから、理解してはもらえないかもしれない。
それでも、僕は君を愛しているんだよ、九郎君。
569 :
踊る阿呆:03/06/06 03:14 ID:Q8GVuxbo
うわあ、本当にナイアで甘々だ。ナイアっぽさが出ていてうまいなぁ。
微妙に玩具扱いな九朗に萌え。
てか、本気でナイアが怖いんですが……。
>>563-568 狂気の世界で戯れに作った夢という感じが出てて、すごくいいです。
それにしても、ナイアグッドエンドか…
アルバッドより、はまっている呼び方だな(w
グッジョブ。
うむ、そこはかとなく良い感じですだ
(*´д`*)勃っちゃったよ。
何かスゲェ怖えぇ・・・
這い寄る混沌の…乱心…?ガタガタガタガタガタガタガタ
ラブラブなのになんでこんなに怖いのか。KOEEEEEEEEE!
汝の正気を取り戻せ!汝の正気を取り戻せ!
とか脳裏でアルたんが応援してくれましたがだめぽ
無問題。
自分、ロリっすから。
ガタガタブルブル…
SANが…SANが…
いやいや、これはこれでいいですな。
゛ある意味″、男冥利に尽きるね。>九朗
ナイアさんに正面から萌えれたのははじめてです。ゴチ。
どっちの股間に持っていったんだろう?
ネタが出ない……
そろそろ新作キボンヌしたいところ。
SS作家さまガンガレ。
デモベ以外もキボンヌ。
無論デモベが悪いと言っているわけではありませぬ。
投下しまーす。
ふたなり物、エロシーンありです。
嫌いな方は御注意を。
「よいしょ……っと」
ベッドのシーツを剥がし、新しいシーツをかけていく。
大きなダブルベッド相手に、由女の小さな身体では、ちょっとした重労
働になってしまう。何度も左右に往復しながら、ぴん、とはっていく。
「はぁ……はぁ……ふぅ……」
ようやく白いシーツの張ったベッドを見下ろしつつ、息を整える。袖で
汗を拭った。
「…………」
ベッドと、床に丸めてある外したシーツとを交互に見る。少しして、胸
に手を当て、ふぅ、とため息をついた。
「…………はぁ……」
「何ため息ついてんだ」
突然、後ろからかけられた声に、由女はびくっ、と身体を硬直させた。
慌てて後ろを振り返ると、部屋の入り口のところに、悪司が立っている。
「あ、ああ、悪司さん、いつからそこに……っ!?」
動揺して手足をバタバタとさせながら聞く。
「ついさっきだが……由女こそなんでこんな事やってるんだ?」
言いながら、悪司は腕組みしたままで2、3歩歩み出る。
「いえ……」
由女は多少、落ち着きを取り戻しながら、苦笑しつつ説明する。
「他の方もお忙しいでしょうから……これぐらいのことは私が……と思っ
て」
「まぁいいけどな、それよりさっきのため息のほうが気になるぞ」
「えっ……」
悪司の指摘に、由女はドキッとしたように目を円くする。
「なんか……すげー思いつめた感じだったぞ」
「い、いえ、これは……いえ、このシーツの上で、悪司さんが他の女性を
抱いているのかな、と思うと、少し切なくなってしまって……」
由女は多少俯きながらも、苦笑している感じで言ったのだが……
がばっ
「きゃっ!?」
不意にぎゅっ、と抱き締められたかと思うと、そのまま背後のベッドに
押し倒された。
「あ、悪司さん?」
由女は目を白黒させてしまう。
「躰のことなら……わかってて嫁にした、つってるだろ?」
目前に迫った悪司の顔が、不敵ににやりと笑って、そう言った。
「い、いえ」
由女は困惑して焦ったように言う。
「頭ではわかってるんですが……その……アノ事を除いても、ここには魅
力的な方が多いじゃないですか」
すると、言い終えたとたん、その口をキスで塞がれた。
「ん……んむ……っ」
悪司の舌が由女の口腔に割り込んでくる。
「んぅ……」
たっぷりと由女の口腔を愉しんだ後、ちゅぷ……と水音を立てながら唇
が離れていった。
「ただ胸だの尻だのデカきゃ魅力的ってワケじゃねぇぞ。お前だっていろ
いろこう、かわいらしいとこがいっぱいあるんだからよ」
どこかとろん……としてしまっている由女の顔を、悪司がジッと見据え
ている。
「ふぁ……」
「それと……勘違いすんな。他の女とヤってんのは、必要があってのこっ
た。まぁ、嫌いじゃねぇのは認めるけどよ……本気でセックスしてんのは、
お前だけからよ」
言葉だけでは苦しい言い訳にも聞こえるが、じっと鋭く、しかし敵意を
感じさせない視線を向けられ、由女はどこか安堵感を感じていた。
「はい」
由女は、ほんのりと赤くなった顔で微笑んで、静かにそう応えた。
「おし……じゃ、すっか」
なんてことない感じで悪司は言うが、それの意味するところは……
「え、ええ? 今からですか?」
由女は半身を起こして、驚いたような声を上げる。
「おう。嫌か?」
「いえ……」
由女は立ち上がり、自ら着衣をはだけた。
「お願い……します」
真っ赤な顔になってしまいながらも、笑みを悪司に向けた。
「うし……じゃあ、こうすっか」
自分も全裸になった悪司は、由女をくるっと後ろを向かせて、背中から
抱き上げた。
「あ……」
そのまま、悪司の躰の上に由女を乗せるようにして、ベッドに横たわる。
「この姿勢は、嫌か?」
「いいえ……」
悪司の問いに、由女は少し戸惑いの顔を見せながらも、そう応えた。
ふにふに……っ
悪司の手のひらが由女の慎ましやかな乳房を覆う。
「んっ……」
「じゅーぶんやわらけーじゃん、由女のおっぱいだってよ」
悪司は少しからかい気味に、にやっと笑いながら言う。
「そっ……はぁう、はぁ……っ」
一瞬、何か言い返そうとした夢だったが、巧みな胸への刺激に、腰をく
ねらせるようにして良がり声を上げてしまう。
「こっちは……硬くなるみてーだけどな」
きゅ……悪司は、あくまで優しく、由女のペニスを握り、扱きはじめる。
「ふぁ……ぁ……ぁ……ぁっ……!」
ぴくん、ぴくんと反応しながら、悩ましげな表情になってしまう。
だんだん、悪司の手の動きが速くなってくる。
「やっ、あ……そ、そんなにしたらっ、私……っ!!」
「このまま……イってみせてくれよ……」
悲鳴に近い声を上げる由女に、悪司が耳元で優しく囁く。
「っ、そんな、あぁっ、ぁ、ぁぁっ……」
どこか脱力したような声を上げつつ、由女はびくびくっと絶頂に身体を
跳ねさせながら、ペニスから精を放ってしまう。
「ふぁ……ぁ……はぁ……はぁ……」
――ちんまい女が出すってのも、見なれてくっと結構エロいよなぁ。
悪司はそう思ったが、言うと由女を傷つけそうなので口にはしなかった。
「はぁ……はぁ……悪司、さん?」
息を荒げながら、由女は悪司を振り返る。
「!?」
「んちゅ……っ」
そのとたん、唇を奪われた。
「ふぁ……」
重ねるだけのキスが離れていくと、由女は若干首を戻しただけで、悪司
の胸にしなだれかかる。
くちゅ……っ
「んっ……!」
びく……っと由女の身体が反応する。悪司の指が割れ目の方を開くと、
十二分に潤ったソコが水音が発された。
「そのまま、よっかかってな」
「ふぁ…はい……」
由女が返事をするが速いか、悪司は由女の腰を軽く持ち上げた。
自分のいきりたったペニスをあてがい、おろしながら由女のヴァギナの
中へ埋めていく。
「はぁ……ぁ……ぁぁ……っ!!」
ぐぐっ……っと押し込まれていく過程の中で、萎えていた由女のペニス
がびくんっ、と跳ねるように立ち上がってしまう。
「やっ、こ、これ……っ……て!」
由女が困惑した表情になって、上体を起こしかける。
「ああ……前立腺だな」
「前立腺?」
悪司が言うと、由女は思わず反芻する。
「男のコレの根元に、気持ちいいモトがあるんだよ。由女はそのうらっか
たがソコだからよ、入れっと反応しちまうんだろうな」
悪司は比較的真面目な表情のまま、おおざっぱな説明をした。
「……っ、そんな、それじゃ私……っ」
「露骨に嫌がんなくてもいーじゃねーか。俺は由女が気持ちいいのがわか
って嬉しいぞ」
泣きそうな表情になってしまう由女に対し、悪司は耳元で囁くようにそ
う言って、そのまま耳たぶをかぷっ、と甘噛みした。
「ひゃんっ!」
「じゃあ……突き上げるからな……」
顔を戻しつつ、悪司は由女のそれごと上体を軽く起こし、由女の腰を抱
えるようにして腰をぐっ、と突き出した。
「あ、はっ……」
由女は首の下で手を組むようにして、良がり顔になってしまう。
ずっ、ずずっ、ずっ、ずん……っ……
ストロークは浅いが、強めの突き上げが由女の奥にまで伝わる。
「は……ぁ……はぁ……はぁぁ……はぁ……っ」
その度に、由女の狭いヴァギナはぐっ……と悪司のペニスに絡み付いて
くる。
「くっ……これじゃ俺も……っ」
ずんっ、ずんっ、ずっ、ずず……っ……
「ふぁぁ……はぁぁ……はぁ……はぁぁ……っ」
由女の声は昂っていき、甘い悲鳴のようになっていく。
「も、もう、ぁ、わ、私い、……あ、ぁぁっ……!」
「俺も……だ……っ」
びゅっ、びゅびゅっ、びゅくっ……
由女のペニスから、虚空へと精液が放たれる。その脈動の度にきゅっ、
きゅきゅっ、とヴァギナが締まる。
「くぁぁっ……」
どくっ、どくっ、どくっ、どくぅっ……!!
悪司が呻き、大量の精液が由女の体内に送り込まれた。
「…………っ、はぁ……はぁ……はぁ……っ」
「ふぅ……はぁ……はぁ……」
2人は躰を重ねたまま、ぐったりとベッドに寝そべる。
「なぁ……由女、よぉ……」
息を整えながら、悪司は由女に声をかけた。
「はぁっ……はぁ……な、……なん、でしょう?」
返事をする由女の息はまだ荒い。
「俺だってな……人並みに恋っつーもんをした事もあらぁ……ま、縁がな
くって別れたわけだけどよ」
「……………」
ようやく息を静めた由女は、どこか神妙な面持ちで悪司の話を聞いてい
る。
「けどよ、今はもう、お前だけでいっぱいだわ……相性ってのとはちょっ
と違うけど、本命ってヤツ、今はお前以外考えられねー」
「悪司さん……」
「よっ、と……」
悪司はやはり由女ごと起き上がると、自分の逸物を引き抜きながら由女
をベッドに座らせる。
「んぅっ……!」
由女は引き抜かれた瞬間に声を上げたが、ベッドに直接腰がつくと、す
ぐに後ろを振り返った。
その肩を、悪司が抱き寄せ、唇を重ねる。そして、今度はお互い向き合
うようにして抱き締めながら、再び寝そべっていく。
やがて唇が離れる。
「結局、シーツまた汚しちまったな……」
悪司が呟くように言いながら、由女の背中を優しく撫でる。
「そうですね……」
由女も苦笑した。
そして、由女は悪司の胸に頬を寄せる。そうして2人は、そのまままど
ろんでいった……
>>595 スマヌー。こちらのSS投稿板は実はよくまだわからなかったりするのだ。
ヘタレで申し訳ない。
>>588-594 ←これを入れろってことかな?<リンク
違ったらスマソ。
とりあえずけじめ
∧||∧
・゚・( ⌒ -=y ターン
∪ ノ ̄
∪∪
>>596 ルールというかお約束は
>>1に書いてある通りだよ。要するに「ここで
終わりor一区切りです」というのをはっきりさせるために、書き終わった
後に>>***-***とアンカーでくくることになってるわけで。
>>595,597 &All
申し訳ありません、大変失礼いたしました。
らぶらぶセクースいいですなぁ(*´ー`*)
やはり愛がなくてはな。
ひかり姐さーん!
600getだぜー!
保守さげ
あっという間に400K超えましたな。
そろそろスレ移転の時期なんだけど、どーします? 特に要望が無いなら
自分が
>>1テンプレでたてるけど追加事項とかってあります?
意見が無いようなら今夜くらいに立てます。
保管サイトの方はちょっと待ってくだせえ(w
何気に前スレまだ生きてるんだな・・・
特に意見も無いようなので次スレ建てます〜
ってーか
>>600と同じレスやたら多いな
馬汁で新しい宗教でも設立したのかyo
ふぅ。
前スレの水月といい、当スレのデモペといい、集中しすぎ…。
他のネタが書きにくいよぅ。
悪いとはいわないが、少ーし、分散してくれんかのぉ。
>607
スレにも流れというか、勢いみたいなものがあるからね。
とりあえずそのネタをあげてくださいな。
少しは分散すると思うよ?
それ散るのSSを激しく希望・・・・・・っていうかひかり姐さんの・・・・・・
っていうか登場するだけでもいいから!
ひかり姐さんの登場するそれ散るSSを!(´Д⊂)
あぼーん
あぼーん
あぼーん
613 :
立て、ロボ美春!:03/07/06 19:36 ID:FMxb7Le2
―美春シナリオの数ヶ月前―
初音島にある某研究所にある一室。
そこでは天枷美春が生まれたままの姿で、鈍く銀色に輝く台の上に寝かされていた。
美春の両足は左右に割り広げられ、幼い秘部が外気に晒されている。
だが、陰毛は産毛程度の物しか生えていないばかりか両足を大股開きにされているにも関らず、膣口も尿道も縦筋に包まれたままだった。
「あうぅぅ…恥ずかしいですよぉ…」
大事な所を晒したまま、美春は目に大粒の涙を湛えながら泣きそうな声で呟く。
「悪いな、天枷。 これも科学の発展のためだ」
美春の股間を覗き込んでいる白川暦はそう言うと、美春の幼い秘部を指でめくり開いた。
ぬちゃあ…。
わずかな陰音を立て、ヴァギナがぱっくりと左右に広げられると、まだ男根を咥えこんだ事のない処女の膣口と包皮をかぶった陰核が露になる。
「ひぃぃっ、そんなとこ広げないでくださいぃぃっ」
「…おや、天枷、ちゃんとここは洗っているのか?」
「…えっ?」
「ほら、恥垢が少し溜まっているぞ」
そう言って、暦は美春の性器に付着していた白い塊を指でこすり取ると美春の目の前に持ってくる。
「あうぅぅっ…」
つーんとする臭いが美春の鼻に届く。
自分でもいじるのが怖くてろくに触った事もない秘部を学園の講師に無造作に弄くられ、あまつさえ恥ずかしい垢を取られた羞恥に美春の目から涙が零れ落ちる。
「うぁぁぁっ、ぐすっ、ひっく…」
614 :
立て、ロボ美春!:03/07/06 19:38 ID:FMxb7Le2
「ああ、天枷なにもいぢわるでこんな事している訳じゃないんだ。 頼むから泣かないでくれ」
とうとう泣き出した美春を暦は慌てて慰める。
「うぅぅっ、ぐすっ、ひっく…なんで、美春そっくりのロボットを作るのにこんな事までされなきゃいけないんですかぁ…」
「すまない、天枷教授の指示なんだ」
「うぅぅっ、お父さんの?」
「そうだ。 今回のコンセプトは限りなく人間に近いロボットを作ることなんだ」
「だから、どうしてもこの行為は必要なんだよ」
「ううぅ…」
「あとで好きなだけチョコバナナを食わせてやるから、あと少しだけ我慢してくれ」
暦は秘部を見られる羞恥に泣きじゃくる美春にそう告げると、開かれたままのヴァギナをデジカメに撮り、続けて膣口をやさしく指で広げ処女膜をデジカメに写した。
「これで良し。 あとはCTで天枷の膣の長さを調べるだけだ」
「ぐすぐす…これでもう終わりなんですか?」
「ああ、そうだよ」
そう言って美春の頭を撫でてやる。
「うっうっ、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁんっ!!」
性器を奥まで観察される呪縛から開放されると、美春は幼い子供のように大声で泣いた…。
615 :
立て、ロボ美春!:03/07/06 19:40 ID:FMxb7Le2
―その日の夜。
「天枷教授、サンプルが取れたのでお届けに参りました」
暦が美春の父親にデジカメとCTのデータを持っていくと、天枷教授はロボ美春の設計をしていた。
天枷は作業を中断すると「うむ」と偉そうにひとつ頷き、暦からデータを受け取る。
そしてデータをコンピューターに取り込みロボ美春の設計を再開する。
「…天枷教授、ひとつだけ聞いていいですか?」
「…なんだね」
「いくら人に近い物にするためとはいえ、どうしてここまで本物そっくりにする必要があるのですか?」
「そんな事は決まっている!!」
「ロボっ娘とはそういう風に出来ていなければならんのだよ!!」
「ドジでちょっとお間抜けなかわいい女の子型ロボットが『はわわー、ご、ご主人様ーなんだかわたし、体の調子が変なんですー。 あそこから冷却水が漏れているみたいですー』という風にだなっ…」
天枷は一気にまくし立てるようにロボ娘の魅力について熱弁を振るう。
「は、はあ…」
暦は目の前の熱弁を振るう変態科学者をあきれた目で見ながら美春に心の底から同情した…。
―そして、ダ・カーポ美春シナリオ本編において―
変態親父の科学の粋を集めて作られたロボ美春が誕生したのであった。
完
616 :
名無しさん@初回限定:03/07/06 19:41 ID:FMxb7Le2
少し修正を施したバージョンです。
ロボ美春誕生にまつわるエピソードににります。
あぼーん
あぼーん
>ID:FMxb7Le2
>1 を5千回読んでから出直して来い。 この広告誘蛾灯め
あぼーん
あぼーん
書き込みます〜
紫が目を覚ました場所は、植物と肉の中間のような物で出来た部屋だった。
蒸し暑く、すえた匂いが充満する気味の悪い部屋。
「・・・あれ・・・?・・・ここ・・・は・・・?」
それが、ゆらぎの体内であると、紫に想像出来る筈も無い。
状況すら把握できず、必死に首を巡らす。
四肢は拘束され、部屋の真ん中の地面に大の字で寝ている格好だ。
衣服も着ておらず、整った身体を露にしている。
意識がはっきりし始め、自身の置かれている状況が脳に伝わる。
「何!?なんで!?どうして!?」
やや素っ頓狂な、それ故に彼女らしい声が上がる。
手足に力を入れてみてもびくともしない。
そして、今の紫の叫びに反応したのか、肉質の壁が蠢き出す。
壁だと認識していた物は、全て親指程の太さの触手だった。外見はミミズのそれだ。透明な粘液を分泌し、ネチャネチャと不快な音を立てている。
壁の形が崩れ、触手が紫の身体を絡めとっていく。
「っひ!!!」
羞恥にも、嫌悪にも勝る恐怖。本能が「捕食される」と警鐘を鳴らす。
だが、拘束された四肢は相変わらずだ。
紫は腹のそこから渾身の悲鳴を上げる。
「いやああああああ!!!」
その悲鳴と同時に、触手の先端から白濁した液体が紫の身体にぶちまけられる。
「あっ!?いやぁっ!!」
無駄の無い腹に、扇情的な太ももに、かすかに自己主張する乳房に、桃色の性器に。
触手達は場所を選ばず、紫の全身をコーティングするかのように粘液を擦り付けていった。
ソレは何分続いただろうか。
触手の群れが噴射を終えたときには既に紫の身体はベトベトであった。
「うう・・・こんなの・・・やだよ・・・岡ちん・・・助けてよ・・・!」
気色悪さと、恐怖が、紫の精神を蝕んでいく。
涙声で吐き出した救いを求める声。それがどれだけむなしいか、紫自身がよく知っているのではないだろうか。
現状はそのまま、救いの手は現れず、捕食されようとしているのだから。
捕食とは言っても、紫の想像の埒外の形だが。
噴射を終えると、触手たちは別の動きを見せた。
「え?・・・ふやぁ!!」
先程浴びせた白濁を塗りこむように紫の身体を這いずり回っている触手達。
腹、背中、乳房、首筋、肩、太もも、くるぶし、臍穴、膝の裏、性器、挙句の果てにはセピア色の菊門までも。
「いやっ!!いやぁああああ!!」
嫌悪に声を張り上げても、触手の動きは止まらない。
グチュグチュと粘着質な音を立てながら、紫の体をもてあそんでいく。
ある者は自身の腹を使い粘液を引き伸ばし、またある者は先端で押し込むように突きまわし、またある者は勢いよく先端で舐めるように蠢いていく。
「・・・!!!」
想像を絶する不快感に、紫は声すら出ない。眉根を寄せ、目を閉じ、唇を噛み締め、拳を握り、嫌悪に耐えようとする。
しかしソレを嘲笑うかのように触手の動きは激しくなっていく。
数を増す触手、それに比例して粘着音も大きくなっていく。
あまりの嫌悪感に紫は暴れだそうとした。
つと、その時、一本の触手が乳房の頂をかすめた。
「っんん・・・!」
紫の口から、紫自身が聞いたことも無いような甘い声が漏れる。
「なに・・・今の・・・?」
その答えは、触手達がしてくれた。
「アァ!?・・・んひいいい!!」
今まで嫌悪と感じていた感覚が、快楽となって紫に襲い掛かる。粘液を塗りこまれた部分、つまり全身が敏感になっているのである。
触手が這い回っている全身から、痛みと間違えるほどの快楽が流れ込んでくる。
「んやあ!!止め・・・ってええええ!!」
腹部をビクビクと痙攣させながら、懇願する。その懇願は嫌悪のためではないだろう。声音が快楽に濡れていたのだから。
触手達も気を良くしたのか、先程に倍する動きで紫の肢体を舐め尽くす。
「ああああぁ!!何・・・!?なんか・・・来る・・・くるううううう!!!あああああああ!!!」
初めて味わう性の頂。腰を突き上げ、全身を痙攣させる。
「あ・・・・はぁぁぁぁ・・・」
頭の中が白く塗り込められ、意識が飛びかける。浮遊しているような錯覚。そのまま意識がホワイトアウトしていく。
だが
「んぅ!?あ、ひゃぁあああああ!!」
快楽によって意識を覚醒させられる。快楽によって意識を飛ばされかけるが、襲い来る快楽が意識を飛ばすことを許さない。
暴力的な肉悦の連鎖に巻き込まれ、紫はただただ甘い声を上げるのみだ。
「っひいいい!!?またぁ!?またああああああああ!!」
絶頂を幾度重ねても、すぐに次の頂が襲い来る。
「やぁああああ!・・・もう・・・狂っちゃうううう!壊れぇええ!!」
紫が幾度達しても、触手達は休む気配を見せない。それどころか新しい動きを見せ始めた。
ジュルゥッ
触手たちの先端が割れ、中からさらに細い触手が出てきたのだ。大きさ、形、共にミミズのそれに酷似している。だが連想されるのはミミズというよりイソギンチャクであろう。よく見るとその一本一本に口のようなものまで付いている。
「もうぅ・・・やぁ・・・狂っちゃうよぅ・・・これ以上されたら・・・狂っちゃう・・・」
それが与える快楽の強さを想像し、弱々しく呻く。
果たして、その願いは聞き入れられなかった。
「・・・ッ・・・!!!!」
ソレが、一斉に紫の身体に取り付いた。
「ダメぇ!そんな!先っぽぉ!!」
乳首に巻きつき
「吸わ、ないでぇ、アヒィ、お願い、だか、ああああああ!
臍の垢をこそげ落とすように舐めしゃぶり
「そん、なとこ、もなぁ、のぉ!?んきゃああああ!」
耳朶に入り込み、
「やぁぁ、そんなのぉ、優し、過ぎぃ!!」
手足の指をしゃぶり抜き
「は、恥ずかし、ヒィイイイ!」
肛門のしわをなぞり上げ、
「あ、あ、そこぉ!!!」
淫核の皮を剥き、
「!!・・・きゃはああああああ!!!」
扱き上げる。
それぞれが別々に動くが、紫の身体を襲った快楽は一塊だった。
「イ、ヒイイイイイイイ!!らめ、らめえええええええ!!」
先程の責めよりも繊細で、だがしかし先程の責めに倍する暴力的な、快楽。
ろれつも回らず、舌足らずな言葉で叫び立てる紫。身体に流れ込んでくる快楽が、逃げ道を口に見つけたかのようだ。
涙を流し、涎を垂らし、愛液を漏らし、よがり狂っている。
そして、止めは唐突に訪れた。
キュプウウウウウウッ!!
「グッ!?ひゃあああああああああああああ!!!!」
触手達が一斉に吸引を始めたのだ。
面ではなく、点の責め。しかも全身が性感帯のような状態で、隅々まで、である。
「凄っぉおおぉおおおぃいいいいヒィイイイイイ!!!」
首をガクガクと打ち震わせ、涎と涙を撒き散らし、股間からブシャブシャと愛液を迸らせる。
そして、脳がハレーションを起こし、紫の意識が飛んだ。
触手達は、意識が無くなった紫の身体をしばらく嬲りまわしていたが、反応が無いのが面白くないのかすぐに責めの手を止めた。
だが、これで快楽漬けの拷問が終わったわけではない。
トプットプッ
触手の一本が、紫の口に何かを注いでいた。紫は無意識ながら、その液体を嚥下していく。
その液体が、何をもたらすかも知らずに・・・
以下次回
え〜魔法少女アイ2の紫をいぢめてみましたがいかがでしたでしょうか?
ヘタレな文だ、などの叱責などございましたらどうぞ遠慮なく、自覚しておりますのでw
ふたなりにするか、搾乳奴隷にするか・・・それが問題だ・・・
(あと題名ミスりましたが御気になさらぬようお願いいたします)
あ、ここにカキコするの初めてでちょとミスってしまいました。
>>622-626 ご迷惑おかけしました。
629 :
名無しさん@初回限定:03/07/18 16:30 ID:pO7mbvNL
白河さやか嬢のSSでいいの無い?
抜ける奴。
保守
広告多杉w
632 :
名無しさん@初回限定:03/08/13 06:01 ID:1MdWvnQK
テステス
633 :
名無しさん@初回限定:03/08/13 17:04 ID:/P+yjHCC
広告ばっかじゃん。
感想書いてやれよ、カスども。
あぼーん
保守
636 :
山崎 渉:03/08/15 11:09 ID:nL1dDwuZ
(⌒V⌒)
│ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
⊂| |つ
(_)(_) 山崎パン
638 :
名無しさん@初回限定:03/08/15 18:44 ID:J4I4ocxH
639 :
62718:03/08/15 18:49 ID:5Cqq+WTm
あぼーん
641 :
名無しさん@初回限定:03/08/18 22:21 ID:W6IhIsKl
642 :
名無しさん@初回限定:03/08/28 10:14 ID:6J09Nv5X
馬面氏の次回作に期待
やっぱそれ散る面白い
ちなみに保存サイト削除されてるっぽ
643 :
名無しさん@初回限定:03/08/28 12:40 ID:RIDoKQB+