アーチャーではバーサーカーは倒せない、しかし聖杯戦争において、
サーヴァントを倒す必要などない。
マスターさえ倒してしまえば、サーヴァントは存在できないのだから。
バーサーカーには遠距離攻撃はない。
バーサーカー自身はアーチャーの攻撃をかわせても、マスターはかわせない。
バーサーカーにできるのは、マスターのそばで飛んでくる矢を叩き落すか、
マスターと敵の間を一直線に進んで矢を落とす。
あるいはアーチャーに攻撃させる暇を与えず間合いを詰める。
この3つだけであり、他はない。
カラドボルグなど、周囲を巻き込む攻撃を行える宝具が使えるから、1番目の方法をとるなら、
相手のマスターを簡単に殺せる。
この身は弓兵になれる英霊、まっすぐではなく曲線を描く撃ち方くらいいくらでもできる。
だから、直線に進んでもこちらの攻撃が先に出せれば相手のマスターは避けられない。
つまり、バーサーカーにとってアーチャーに弓を使った攻撃を出させたら負けなのである。
だから、それがわかっているからこそバーサーカーは最短最速で突っ込んできた。
そして―――最短最速は隙だった。
どんなにヘラクレスがすごかろうと、無謀な突進には隙ができ、攻撃は雑だった。
おおよそ剣の扱い方とは違う、剣の強度を考えずに双剣を叩きつけて、そのまま捨てる。
頭の中には既に次に投影する剣があり―――いつか、遠い日に英雄王が使っていた魔剣、
グラムで最大限の力と魔力を用いて、バーサーカーの心臓を貫いた。
次の瞬間、バーサーカーの斧剣が振りぬかれる、一瞬前に自分のいた場所に。
心臓を貫かれては、いくらバーサーカーとはいえ、速度が落ちるのは必然。
ならば、いくら捨て身で飛び込んだとしても、交わすことは可能。
飛びのいた一瞬、間合いが離れる―――絶対の勝機がそこにはあった。
飛びのきながら投影したのはカラドボルグ。
バーサーカーを一度殺したことにか?それとも、殺したはずのバーサーカーが仕掛けた
攻撃をまるで知っていたかのごとくかわしたことにか?とにかくイリヤスフィール・
フォン・アインツベルンは驚きの表情を浮かべている。
今彼女に向かって矢を放てば、それで終わる。
そして―――
自分がマスターであることを認めさせようとして、令呪を使ってしまうようなマスターがいた。
理想に裏切られ磨耗した自分が失った、まっすぐな瞳をもった少女がいた。
巻き込まれて命を落とした他人を、自らの切り札を使って助けた魔術師がいた。
何も知らない他のマスターに聖杯戦争のルールを教えるお人よしがいた。
確固たる自分の世界をもち、何にも負けない自分の信念を貫く一人の人間がいた。
―――ええ、遠慮はいらないわ。がつんと「痛い目」にあわせてやって、アーチャー
マスターを殺す、という聖杯戦争において全く当たり前の方法で勝ち残ったら、生き延びたら―――
なぜか遠坂凛に顔向けできなくなるような気がした―――
そして、カラドボルグが放たれる、マスターにではなく、サーヴァントに。
直撃を受けてなお、バーサーカーは間合いを詰めた。
バーサーカーは理解している、おそらくもう殺したとしても間合いを取れることはなく、
故にもう矢は放てない、マスターを倒すという唯一無二の勝機が消え去った。
セイバーではない自分は、バーサーカーと打ち合えず、交わすしかない。
アサシンでもランサーでもライダーでもない自分は、交わしきることができずに削れていく。
掠める度に身にまとう外套が裂け、鎧が砕けていく。
力で負け、速度で負け、耐久性で負け、その状況でなお接近戦をする。
つまりはただ、勝利は絶望的というだけの話。
――――――ああ、なんだ、それだけのことか。
勝てそうにないだけで絶望的?
絶望とはそんなものではない。
味方に裏切られ、仲間に裏切られ、助けた者達に裏切られ、最後には
理想にさえ裏切られた自分を、それでも英霊になっても戦い続けた自分を
磨耗させたものを絶望と呼ぶならば、勝てないだけの何が絶望的なのか。
勝てないだけの戦いなど、たった一つの魔術すら満足に使えなかった人間
であった頃からいくらでも経験している。
切り札の固有結界「無限の剣製」は使えない。
バーサーカーを倒すためにあれを使うならば、凛から魔力を供給してもらわなければならない。
それはいけない。
この後、凛とイリヤが遭遇することを考えれば、凛から魔力の供給を受けるわけにはいかない。
ただそれだけのこと。
もとより自分のやってきたことの中に勝ち目などあったためしがない。
だからこそ失望し、磨耗した果てに衛宮士郎という名の過去を後悔し、呪ったのだから。
勝ち目などありえない、0に等しい可能性に賭けたのだから。
それでも―――あの宝石の持ち主が彼女だった以上、借りは返さなければならない。
生きている間、見つけられず最期の時まで身に着けていた宝石の持ち主。
彼女がまっすぐであることを望んだ以上、マスターに顔向けできなくなるようなことは
できない―――それが、計算高く猫かぶりでここ一番でどじを踏む、まっすぐな瞳を
もった遠坂凛から磨耗しきったはずの自分が少しだけ受け取ったもの。
だから、マスターが殺せと言わなかった以上、自分の力だけでバーサーカーを倒さなければならない。
その果てに何があるかわかっていても、それでも戦い続けるわけか?
知らずに苦笑していた。
何のことはない、理想に裏切られ、誓いが磨耗しきって、過去を呪い奇跡に等しい
矛盾に賭けて自分を消そうとしても―――結局理想と信念を裏切ることはできなかったわけだ。
切って切断し、突いて貫き、溶かして溶解させた。
まともな手段では傷ひとつつかないであろうヘラクレスを殺すために、一回一回
最大限に魔力を込めて技と成した。
切るたび突く度溶かす度に、狂戦士の斧剣は自分から何かを削り取っていった。
時間にすれば半刻もたっていないはずだが、もはや魔力はかけらしか残っていない。
体はまともに機能するところを見つけるほうが難しい。
その代償として5度殺した。
バーサーカーも今はまともに動ける状態ではない。
両足が溶解しかけ、首の切断は治っておらず、腕もかろうじて着いている。
内臓も見えるし、肩から股下には槍が突き抜けている。
それでも、バーサーカーは間合いを取らせないよう、イリヤを守るために接近戦を続けていた。
先制攻撃を受け、時間を置かねば動きも鈍ることは避けられないにもかかわらず、
バーサーカーは一度たりとも引かなかった。
それだけの絆がバーサーカーとマスターの間にはあった。
最後に残ったかけらほどの魔力を使って、最後の投影をする。
デュランダル
グラムと同じように、いつか遠い日に英雄王が投擲に使っていた武器であり、
所有者が魔力切れをおこしても、変わらぬ切れ味を維持する剣。
バーサーカーが斧剣を振るう。
その腕はまともにくっついてなく、引きちぎれそうになりながら振るわれる。
本来のバーサーカーの筋力と速度からすれば、おふざけにしか見えない剣速。
それでも、バーサーカーを5度殺すことと引き換えに徹底的にぼろぼろ
になりもはやまともに動かない体では交わすことはできない。
だから、最後の力を振り絞って飛び込み、デュランダルを突き出した―――
そうして両者の戦いは赤い騎士の消滅をもって戦いは幕を閉じた。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは呆然としていた。
目の前で起きた出来事は理解できなかった。
何の英霊かもわからないサーヴァントに自分のヘラクレスが6度も殺された。
そして、イリヤは気づいていた。
あの一瞬、アーチャーが自分を狙えたのに狙わなかったことを。
侮辱された、馬鹿にされた。
それは屈辱だった。
勝利するのは自分たちでなければならない。
自分とバーサーカーが最強でなければならない。
相手に追い詰められたなど、少女の自尊心が許さない。
「……許さない。許さないだから。よくもここまで私を侮辱してくれたわね……!」
少女の自尊心を回復するための、そしてアインツベルンの裏切者の養子を殺すための狩が始まる。
interlude out
以上
>>803-812 笛よりinterlude 11-0でした。
戦闘シーンかけるほどうまくないので、そこは省略。
そこ抜くならこのSS書く意味あんのか?って気もしますが。
聖杯戦争における常道であるにもかかわらず、なぜアーチャーはイリヤを狙わなかったのか?
これを書きたかった。
ついでに、イリヤが戦闘後にアーチャーが何の英霊なのかわからなかったことから、
明らかに「無限の剣製」は使ってない、だから使わないこともSSで明記したかった。
巷のSSでは皆バーサーカー相手に固有結界使ってるんで、それは違うだろ、と。
まぁ、埋め埋めSSですね。
埋め立てって禁止されてる気もしますが、SSなら大丈夫ですよね。
こう前向きというか、ポジティブっぽいアチャが微妙に新鮮だったw
GJでつ
>813
ステキだ。大変ステキです。
埋め立てに使うにはもったいない作品。堪能しました。
>マスターを狙わなかった理由
言われて気づいた。
やろうとおもえばギル亀戦法も出来るんだもんな。
良い感じの理由付けだと思うん、うん。
「無限の剣製」は、仮に使ってもイリヤにはわかんないんじゃないかな?
未来の、つまりはまったく未知の存在なわけだし。
今回より更に過去で召喚されたことが在れば、その記録はあるかも知れぬが……はて?
>>816 イリヤはアーチャーが何の英霊かも、なぜ6種類もヘラクレスを殺す武器を用意できたのかも
わからなかったんです。
士郎じゃあるまいし、いくら聖杯用にチューンナップされた魔術師とはいえ、知識0でないなら
固有結界なんぞつかったら、アーチャーが魔術師で固有結界で武器を用意しているのは
ばればれでしょう。
実際、アーチャーの正体を知った桜ルートでは、イリヤはものを用意して強化する形では
士郎は宝石剣を投影できないということが理解できていましたし。
その辺の事情が一切謎だ、と言い切っている以上、バーサーカー戦では固有結界は
使われなかった、つまりアーチャーは投影のみで戦った、と考えました。
魔力供給を受けすぎると、凛が疲れて逃げれなくなる、とかも考えましたが、
個人的に今ひとつだったのでカット。
そのネタってやっぱり多いのかなあ。
_| ̄|○ カブッタヨ。
>818
かるくリンクのタイトルと説明だけ見てきたけどアーチャーネタ多かったよ。
あとセイバーのグッドエンドネタがかなり目についた。
やっぱりルートヒロインが残らないってのに納得できない人が多いって事なのかね。
>>803よ………
崩す覚悟が出来た。
ありがとう
残りわずかなので少し質問いいですか?
webでSSを公開されてる方、それを読んでる方たくさんいると思うんですが
気に入った作品があった時どのように保存、整理されてますか?
自分は「文章コピー→エディタに貼り付け→保存」としてるんですが
もっと楽で便利な保存、整理の方法ありませんかね?
よろしければ皆さんの技を伝授して下さい。
メニュー画面でタイトルにアイコンあわせて対象をファイルに保存、
ファイル名を作品タイトルに変更で十分。
短編なら上の人と同じで、長編はIrvineで。自分は基本的に落としてから窓の中の物語で読んでるから。
掲示板の投稿SSは、選択範囲の文章をドラッグ&ドロップで保存できるフリーソフト使用。
何故か唐突に「人形の館」のSSが書きたくなってきた……。
紫苑エンディング後で、むっちゃラブラブめいたやつ。
汝の為したいように為すがよい。
俺ッチ原作知らないけどそんなカンジ。
ラが入ると別物になるアレか。
あれって戒律守るのも自由なんかな?
>>827 それって、「私は嘘つきですよー」って言う人は嘘つきか否か?
に似てる
アイツは要するに気に入った奴に力をやって
「使用は自己責任で。問題が発生しても当局は一切関知しないからそのつもりで」ってだけの神様だからな
>>821 保存するページを開いて、IEの
[ファイル]→[名前を付けて保存]
→[ファイルの種類]から[Webアーカイブ、単一のファイル(*.htm)]を選択
これで、画像とかも含めたページ丸ごとを一つのファイルに保存できる。
舞台は海と山に囲まれた都市・冬木市。
何の変哲もないこの街に、少しずつ侵食する闇があった。
手にした者の願いを叶えるという聖牌。
その聖牌を実現させる為、一つの儀式が行われようとしていた。
聖牌に選ばれた七人の雀士(マスター)に、聖牌が選んだ七騎のオヒキ(サーバント)を与える。
マスターはこの七つの役割(クラス)を被った使い魔一人と契約し、自らが聖牌に相応しい事を証明しなければならない。
つまり。
マスターとなった者は他のマスターを消去して、自身こそ最強だと示さなければならないのだ。 牌を求める行いは、その全てが“聖牌雀争”と呼ばれる。
この地に起きる儀式は、その名に恥じない“殺し合い”といえるだろう。
幼い頃火災によって両親を失い、孤児になった主人公は雀士を名乗る人物に引き取られる。
養父の反対をおしきって麻雀を習う主人公だが、まったく才能がなく何年とかけて身についた玄人技は一つだけだった。
その養父も今は亡く、主人公は半人前の雀士として成長する。
禿藁
ツバメ返しのサーヴァントは坊や哲か?(w
哭きの竜とか雀鬼様つうか覇王にでてる人たちもサーバント候補?
ツバメ返しは亜空間殺法の使い手かも。
あとバーサーカーは雀鬼様で(かってバーサーカーを打倒した者はいなかったかと)。
でもこの設定だとオヒキのほうが強いペアしか成立しないんですが……。
投影で牌を作るんだったら無敵やん(w
全員の手牌が解らなければイカサマばればれやん。
「……何白が7枚も在るんだよ」って事に。
>>836 牌の設計図を図示できるから大丈夫。
見えないところまでくっきりと。
「おお!伝説の北一色!」
10人麻雀やってみたいなぁ。
「白一色、一億点」ならわかるが……
>>836 そういえば昔とあるマージャンゲーを出した会社に、
「白が五枚も出てきたせいで負けたじゃねえかゴラァ」
とヤクザが電話してきたっていう話があったな
そりゃヤクザさんじゃなくても電話したくなるわな。
同牌が四つあったら麻雀じゃねーヨ。
845 :
名無しさん@初回限定:04/03/13 12:56 ID:28cQS5kk
★
『注文の多いエロゲーメーカー』を読んだ。笑った。やるなあ、いや面白い。
847 :
名無しさん@初回限定:04/03/18 19:22 ID:AA8azLir
>>813 桜ルートで聖杯であるイリヤは倒したサーバントの魂を吸収して、
それが未来のエミヤシロウである事を看破しています。
倒したらわかると思います。
しかしその点を抜きにしてもSSは良くできていると思いました。
SSに惹かれてゲーム買ったはいいが
「SSにあったあのシチュがないじゃねえかゴルァ」
と言う輩を見かけた。
無いからSSにして補完してるんだってば。
そのアイタタな奴のことは心底どーでもいいが、ゲーム本編を買わせるほどの力量を持つSSっつーのはすごいと思うわ。
俺はここのスレに影響されてうさみみデリバリーズ買ったさ、
通販で適正価格で、
次の日に地図よったらワゴン売りで3980円だったさ、
…面白かったからいいんだけどね。
同じくこのスレに影響されてアセリア・それ散る・水月と買っちまったよ…。
やってないゲームのSSって読む人って以外に多いのかな?
俺は例えネタバレモノじゃなくてもなんか損した気分になるので読めないけど。
買うつもり無いけど興味はあったやつは読む。
絶対に買うつもりで雑誌情報すら断っているようなものはもちろん読まない。
買うつもりだけどネタばれしても構わないようなもの(エロ目的とかSLG)は読む。
残21KB、私の命はもう4%しかないのね。
それとも寿命が尽きる前に、datの海に突き落とされるのかしら。
どっちでもかまわないわ。
ただ、妹より一秒でも早くこの世界から消えることさえ出来れば……
だって、そうしないとみなさんから
逝 き 遅 れ スレ
として認定されてしまいますもの。