アク禁でかきこめません。 解除まで待ちます。
>>721 何げにsageがまた全角になっている訳だが...
かきこむ前に直されるが吉
失礼、携帯からだったので自爆しました。
重ね重ねのご指摘ありがとうございます。
メリークリスマス、でございます。
年越し投入の可能性大なのですが、キリが良いところまで。
補足説明させていただくと、章立てにして、
場面切り替えの時に※※※の印を入れました。
読みにくいようでしたらまた考えます。ご意見ください。
藤原忍
序章・弥生の雲
恋人の南良明は研修を兼ねた東欧旅行に旅立ったのは2月末のことである。
当初の予定より出発が遅れたので帰国は3月20日の予定だった。
涼子は新宿のバスターミナルで彼の乗ったオレンジ色のバスを見送り、
2月から始まった簿記学校の春季特訓講座に向かった。6月の試験に向けて
講座が続くのである。
その講座の合間に、三日間の休みがあった。
たまたま、その休みの間に故郷の小学校の同窓会が行われると言う知らせが
届いたのは1月末のことで、涼子は楽しみにしていた。
その年の成人式の日、小学校の同窓生が卒業以来の顔合わせで盛り上がった
のだが、大学や短大の進級試験と重なって出席しなかった同窓生も多く、
その話の流れで春休み、3月20日に小学校の同窓会を開こうと言う話になった。
それが幼馴染の和美から聞いた報告だった。
和美は涼子の家から3件先の中華料理店の娘で、
今は東京の4年制大学に通っている。生まれてからずっと一緒に
育ったようなもので、涼子のよき理解者でもあった。
南の帰国と同窓会が重なったので和美のほうが残念がっていた。
南も涼子も和美の心配を笑い飛ばして同窓会出席を選択した。
帰国は夜遅くになるから、という南の心遣いもあったのだ。
涼子は東京から夜行バスでターミナル駅に降り立つと電車に乗り換え、
海辺の地方都市である実家に向かった。
涼子は東京に出て初めて瀬戸内の素晴らしさを知った。
実家に一番近い駅は海に近い場所にある。
駅に降り立つと東京とはまた違う、静かな落ち着きのある町並みの中に、
確かに人が生活しているという活気。100メートル先にある海からは
潮風がゆっくりと流れてくる。
風向きに関係なく香るこの潮の匂いは東京にはない。生まれてから
それが当たり前だとは思っていたが、東京に出てみて初めてこの匂いに
自分が郷愁を感じることに気がついたのは大きな収穫だった。
それ故、今回の同窓会出席は楽しみにしていた。
※ ※ ※ ※ ※
山本和美の自宅は中華料理店兼自宅の割合大きなビルになっている。
1階は普通の店構えで2階も椅子席なのだが、3階は座敷にして
100人程度は充分入れる宴会場を作ってある。もちろん、
パーテーションして小部屋にすることもできる。
自宅玄関もあるが、店の中からも内階段で自宅に入れるので
涼子は和美の家に行くときは店の厨房入り口から出入りしていた。
誰もいない自宅に戻って荷物を置くなり、涼子はその和美の家に行った。
「おはようございます」
「お、涼子ちゃん、お帰りなさい」
和美の家で働く厨房のスタッフが頭を下げた。この街では割合大きな
中華料理店なので修行目的の若者もやってくる。住み込みでとことん面倒を
見るのは山本夫妻の人柄の良さを示していた。
和美の母親はもう忙しく立ち働いていた。お互いに忙しさは知っているので
和美は朝食を食べていると教えてくれただけで自分の仕事に戻っていった。
店では従業員が交代で朝食を食べていた。和美も毎朝、従業員と一緒に
朝食を取るのは生まれたときからの習慣だった。
「お、おはよう」
涼子に気がつくと和美は口をもごもごさせながらそう言った。和美は
1週間ほど前から帰省していたはずだった。
「おはよう…ん?」
朝からテーブルの一角で将棋をさしているのは和美の父と涼子の父だった。
「あれ?父さん?」
「およ?涼子か。早かったな」
「ただいま。でも何で?」
「早朝ゴルフに誘われてな、今帰ったばかりだ」
「あ、そ」
「ね、涼子、南さんは戻ってきたの?」
車のことを聞こうとした涼子は不意打ちを食らった。家に車がなかったので
てっきり仕事の母親を送っていったのだと思っていた。
「え?あ、ちょっと、和美」
涼子は口ごもった。動揺したといってよい。
交際中の男性がいると名前まで口にしてはいるが、その後の話は
余りしていない。特に父親とは話していないのだ。
「ねぇねぇ、指輪は?いつあいさつにくるの?」
その一言に父親が振り向いた。
「あら、何の話?」
和美の母親がコーヒーを持ってやってきた。
「和美、だからね、まだ話していないんだってば、そのことは」
「うそ」
和美が驚いていた。
南良明がプロポーズしたことは和美には話してある。母親にも
話してあるのだが、それ以上の話は父にはしていないはずだった。
一方の和美は今はそれ以上は動かないと言う二人の結論に不満を持っていた。
「どっかーん」
和美がおどけた。が、涼子の父はまた将棋の駒に目を落とした。
「話せないことか」
涼子の父は不満そうにそう言った。口には出さないが、
怒っているような口調だった。
「そういうことじゃないんだけど…」
和美がどうフォローしようかとおたおたしていた。
「南さんにプロポーズされたの。去年のクリスマスに」
涼子はあっさり認めた。
「涼子ちゃん?」
和美の母親は驚いていた。
「ただ、南さんも私も学生の身だし、今のところ具体的に話を進める
段階でもない、で、…今はね、お互いに真剣に付き合っている人がいるという
ことだけは両親に話しておこうとしう段階。だから母さんには一応話した」
「でも南さんの卒業式の時にご両親と会うんでしょ?」
「どうして和美がそれを知っているのよ」
「晴香さんがそう言っていたもん」
「誰だ?そのハルカさんというのは?」
「南さんのお姉さん。素敵な人よ」
和美は自分の父親にそう答えた。
「お前、南さんとはそういうふうに考えているのか」
「ずっと先の話だけどね。ただ真剣に交際していますという段階。
お互いに社会人になって、その時が来たらそうなることを
考えていると言う話で、今の段階では結婚しますと口に出せないでしょ?
お互いに学生だし」
「そうか」
「そうかって・・・おじさん…」
「分をわきまえているのならそれで良い。ただ、お前がそういう風に
南さんのことを見ているのなら、相手のことも大切にしてやれよ」
「はい」
それでその話は終わった。
「で、どうなったの?そろそろ帰って来るんでしょ?」
「明日の夜の飛行機で戻ってくるわよ」
「モスクワからだっけ?」
「そ。モスクワって美術館がごろごろしているんだって。
よくわからないけど。楽しそうよ」
「ごちそうさま」
和美はそう言った。
「あ、こんな時間に来たってことは…」
「もちろん、手伝いに来たのよ、幹事さん」
涼子は即答した。
※ ※ ※ ※ ※
翌日の同窓会は日曜日ということもあって、かなり集まっていた。
最終的に1クラス40人のうち30人近くの人間が集まり、
当時の担任だった堺先生と音楽の先生だった田中先生が出席してくれた。
全員、20歳を迎えたとはいえ、それでも相変わらずのやんちゃぶりで
堺先生の一喝も食らったのだが、久しぶりに会った幼馴染や学友たちと
楽しい酒を飲んでいた。
一番のお笑いねたは原島圭介とのことだった。
原島家は涼子の家から6軒先なのだが、中学に入ってから
同窓会があるまで今の今までずっと会わないままでいた。
そのことがクラスメートの笑いを誘った。
幼稚園から小学校卒業までずっと一緒だった原島圭介と山本和美は
同級生の間でも有名で、クラスは違ったが、やはり幼馴染の工藤守とも
そろって4人組とも呼ばれていたのだ。
その4人の話をしながら場は盛り上がっていて、そろそろ場所を移動
しようかといい始めたのは5時くらいだった。
誰かがカラオケセットの片づけをしていて、テレビのスイッチに触れ、
たまたまニュース番組になった。
ニュースではシベリア上空を飛行中のソビエト航空が墜落したという
速報ニュースを流していた。
シベリア上空を飛行中のソビエト航空421便が墜落、機体は炎上し、
乗員乗客の安否は絶望、とソビエト側は発表していた。同時に外務省によると
乗客名簿に日本人らしき男性4人の名前があり、現在確認を急いでいる
というコメントもあった。
それが、恋人・南良明の訃報だった。
和美が涼子の様子からことの次第を理解し、その和美の説明で級友たちが
確認のために動き始めた。
そんな彼らを目の端で追いながら涼子は呆然と座っていた。
自分のはいているスカートがたまらなく、心細かった。
そして、涼子はスカートをはかなくなった。
(序章・完)
今日はここまでです。
時間作ってまた投入します。
年末ですので事故にはくれぐれも…。
リアルでも自爆したアフォより。
>藤原忍さま
ああああーーーーー。。。。。
という感じですね。
クリスマスプレゼントありがとうございます。
ゴールデンレター
このスレを見た人はコピペでもいいので
30分以内に7つのスレへ貼り付けてください。
そうすれば14日後好きな人から告白され、17日後に
あなたに幸せが訪れるでしょう
クリスマスもすぎ、そろそろ模様替えかな。
どんな色がよいでしょう?
やっぱり年末・お正月モードでしょうか?
保管サイトのリンク集に
「母親が他人に犯される作品」スレのまとめサイトを追加。
(ひそかに存在していたらしい。ショック!!!
でも、全部は保管されてないからこぼれを狙う。)
容量1メガをこえる「堕された母」は秀逸。
藤原さんのは、まだ保管してません。ごめんなさい。
おそいので(いや、むしろ早いか)起きたら保管します。
お休みなさい。
保管サイトはこちら。
http://novels2ch.s6.x-beat.com/
>>保管サイト担当様
いつもありがとうございます。
お暇なときで充分でございますです。
御身御大切に。(睡眠不足は大敵です)
>>733からの続きです。新章突入です。
春の章
それから2年の月日が流れ、涼子は地元ではかなり大きな家具会社に
就職した。今はホームセンター事業に力を入れており、涼子は店舗勤務を
希望した。将来、店舗開発部を希望しているのでそれを踏まえての選択だった。
人事も本部配属でずっと店舗開発に携わるより、現場で経験を積んだ後
店舗開発に関わる方が涼子の性に合っていると判断したのか、配属先は
店舗だった。ただし、大卒女子が店舗勤務と言うのは前例がないという理由で
半年か一年か、現場の流れを掴んだ後店舗開発に入って欲しいと言うのが
条件だった。
店舗担当と言っても実際はレジ打ちから掃除から品出しから、
やることは雑用のようなことばかりだった。
どこまでが店舗開発につながるのか、暗中模索の状態だったが、
ほぼ毎日の肉体労働は涼子の、南良明への時間をどんどん奪い、
かえって涼子には楽だった。
しかも、担当は全く知識のない工具関係、いわゆるDIY担当に
なったので勉強することは山ほどあった。それぞれの名称、使い方。
釘一つとっても種類は山ほどあった。
「すいません」
「はい」
売場で顧客の注文を取りまとめての発注業務中の涼子は顔をあげた。
「あれ?来生?」
「原島…?」
去年の夏以来の再会だった。
南を失ってから、涼子は東京に戻り、少しずつだが普通の生活に
戻っていった。しかし、南という男の存在は涼子の心に深い喪失感を生み、
それに気付いた原島はその年のゴールデンウィークや夏休みや、
事あるごとに理由をつけては東京に出てきた。
原島圭介は福岡にある大学を出て、建築関係の会社に就職したと
聞いている。もともと、建築士希望でその手の大学に進学したのだから
当たり前と言えば当たり前なのだが。
「戻っていたんだ」
「そ、ここで働いているの」
「パート?」
「正社員」
その言葉に、原島が驚いていた。大学卒業の女子は本部採用が
原則の会社であることは周知の事実である。その本人が店舗にいるのは
驚きだった。
「で?探し物なの?」
「あ、ああ」
原島は会社で使うのだといって研磨剤と画鋲を買い求めた。
「会社はこの近くなの?」
「研修兼ねてこの先の事務所に配属されたんだけど、もう、大変で」
「仕事が??」
「通勤だよ。研修期間中、3ヶ月は車通勤やバイクは禁止なんだ。
だから電車とバスで」
ホームセンターは住宅地に近い幹線道路沿いに店舗を構えるため、
駅からは離れてしまうので交通の便は不便だった。自宅から車通勤でも
1時間はかかる。電車でとなると最寄り駅からバスでここまで20分、
電車で30分、その後自転車で20分、といったところか。
「帰りは何時なの?」
「仕事が終わるのは6時。でも時間になんか帰れないから7時ごろかな」
「じゃぁ終わったらここにおいでよ。乗せて帰ってあげる」
「は?」
「アタシ、車通勤。兄貴の軽四貰ったんだ」
「ラッキー。7時に外の苗売り場にいる」
「OK」
二人はそこで別れ、仕事に戻った。
※ ※ ※ ※ ※
涼子は勤務を終え、タイムカードを押すとロッカールームで
制服から私服に着替えた。
ジーンズにポロシャツ姿でショルダーバックを下げると外の駐車場に行く。表の駐車場に車を回せば、原島を拾えるはずだった。
が、予想に反して原島が、車の側でタバコを片手に待っていた。
タバコを箱から出そうか、どうしようかと迷っている姿はちょっと滑稽だった。
「スーツ姿もサマになっているわね」
「馬子にも衣装ってか?」
「そうそう」
「俺、はらぺこ」
「はいはい、夕飯一緒に食べよう」
「賛成」
「割り勘ね」
「ガク」
涼子は就職祝いに、兄から譲られた白の軽自動車のロックをあけた。
中古だが、綺麗に使ったので汚れはあまりないし、傷もない。
クリーム色のシートカバーがちょっと女の子らしいと言って原島は助手席に
腰掛けた。
「禁煙ね」
「その方が助かる」
「何で?」
「今の職場、完全禁煙で…タバコ、やめようかなと思っているんだ」
「えらい」
タバコの煙は、南を思い出した。
最後に南の墓参りをしたとき、昇って行く紫煙をいつまでも
眺めていたっけ、とふと思う。
「おーい」
「ごめん」
涼子は原島に作り笑顔を向けた。
「で、どうなの?」
「何が?希望通りの会社に入って、希望通りの仕事をしているわよ」
「それは和美から聞いた。そうじゃなくて、南さん以後、男の話」
「ストレートね。何で?」
「フリーなら付き合って欲しいかなと」
「ジョークでしょ?」
「本気だよ。あれから2年経って、少しは楽になれたかなとも思ったり…。
心配していたんだぞ、これでも。で、今日会ったのがチャンス、
と思ったわけ。俺は」
「チャンス、かぁ・・・」
「で、男の話は?」
「2、3人いたわよ」
涼子はあっさり教えた。
「でも続かなかった。以上、昔の話」
「どうして?変な男だったのか?」
「どうして私はスカートをはかないのか、それで喧嘩になったのよ」
「スカート?」
原島圭介が考え込んだ。記憶にある限り、最後にスカートをはいた姿を
確認したのは、あの同窓会の日だけだった。
「レストランで食事しようって言われてね、お互いの内定祝いに。
それでパンツスーツで行ったの。それが気に入らなかったみたい。
良い雰囲気になったってキスもしなかったし」
「拒否したのか?」
「びんた一発」
「マジ?」
原島が笑った。
「だって夜の公園でいきなり押し倒してキスしようとするんだもの。
こっちが慌てるわよ」
「同感、そりゃ、驚きだ。じゃぁ俺が同じことしたら?」
「状況によるわよ。いきなり両手封じてキスしてきたら間違いなく
抵抗するわよ」
「その状況で…そうか、じゃぁ今度からその手で迫ろう」
「研究しないの」
市街地の渋滞を抜け、市街地から外れた、通りに面したファミレスに入った。
そこから二人の家まで、峠の山道を使えば一本道で帰れるからだった。
原島との食事は、楽しかったの一言に尽きた。
お互いに他愛ない話をし、最後のコーヒーが運ばれてきた。
「砂糖は?ミルクは?」
原島は自分のカップに砂糖を一つ落とすと、そう尋ねた。
「いらないよ」
「ブラック?」
「甘いと眠くなるから」
嘘だった。南との情事の後、ベッドの中で飲むコーヒーは
甘いコーヒーだった。それを、思い出したくはなかった。
ごめんなさい、訂正します。
>>744の5行目
「びんた一発」→「ケリ入れてビンタ一発」
題名を入れずに素直に名前を入れてみました。
読者殿はこちらの方が読みやすいですか?
「帰り、運転してやるから。コーヒー飲んだら寝られないのが普通だけど」
「誰かの話に戻るからだよ」
涼子はぽつりとそう言った。
「そうか。今度の休みは?」
「来週の火曜日」
「今度休みを合わせてどこか行く?」
「誘っているの?」
「通勤用に車を買ったんだが、出番なしで可愛そうなんだ。紺の軽四だけど」
「助手席に彼女を乗せなさい」
「だから俺の彼女になって欲しいと言っている」
「だから、本気なの?アタシはつまらない女だよ」
「つまらなくないよ」
原島の真面目な答えだった。
「確か、彼女がいたんじゃない?」
「彼女とは終わっちまった。大学3年の冬。浮気された」
「原島のよさをわかっていないのよ、その子は。あーあ、勿体無い」
「そう思う?」
「もしかして、その優しさが優柔不断だと誤解されているんじゃない?」
「図星。どうしてお前ってズバズバ言うの?」
「合計9年間一緒だったのよ。アンタの本質、そんなに変わっていないと
思うから。アタシだって原島だから話せることもあるし、和美だから
話せると言うこともあるし」
「なぁ、これ、好奇心。だから無理に答えなくて良いけど、
どうしてスカートのことで別れたんだ?」
「男とする話じゃないような気がする」
「和美は信じられない理由だって言っていたけど…。
理由がスカートだったとか?」
「そうね、和美はそう言っていたけど」
苦い沈殿物が、また体の中に沈んでゆく。
「大学に入ってすぐ、電車の中で痴漢にあったのよ。
その時スカートをはいていて、結局、
それからスカートはけなくなったのよ」
「トラウマか」
「それから南さんと知り合って、私がスカートをはかない理由を知ったとき、
南さんは珍しく怒ったのよ。穏やかだった人が。痴漢行為は卑劣だといってね。
それでこの人は信用できると思ってまたスカートをはける様になったんだけど、
またはけなくなっちゃった」
「南さんが死んだから?」
「みたいね。毎年スカートは買うんだけど、結局はかないまま終わっちゃう」
「それより、お前スカートはく気があるの?」
「鋭いなぁ」
続けて、指輪を指さした。仕事中のアクセサリーは禁じられているので
指輪はネックレスに通して制服の下に隠してある。今はポロシャツの
胸元からのぞいていた。
「どっぷり漬かってない?ツケモノみたいに」
「前の男にも同じことを言われた。でもね、何か違うと思うのよ、私」
「スカートはいても、指輪を外しても外見が変わっただけで
お前自身が変わった訳じゃないもんナ。それは、わかる。だけど、
そういうことをひっくるめて前を見ないと、お前、駄目になるぞ」
「自覚はしているわよ。そこから脱却しなきゃいけないことも。
ツケモノのままでよいとは思っていないから」
「でももう2年だ。過去はもう変えられないんだし、
忘れることも出来ないんだし、それはそれでお前の歴史に
すれば良いことで…」
涼子の目から涙が、落ちた。
「来生?おい?俺変なことを言ったか?」
「どうしてなんだろう…」
「え?」
「前の男は忘れろの一点張りで。原島は歴史にしろって言うし。
同じ男なのにね」
「…公園で押し倒したって男か?」
「そう」
原島が小さなため息をついた。
「最低の野郎だな」
「ご免」
涙が、止まらなかった。
何度かデートした男はごく普通の男だったが、涼子の昔の男のことを
知りたがった。
だから素直に全部話した。
結婚を考えていたこと、飛行機事故で死んでしまったこと。
しかし、その男は一言しか言わなかった。
忘れろ。
それしか言わなかった。それが、辛かった。
忘れろ、でも良いのだがどうして自分の痛みに共感してくれないのだろうか。
ほかの事はともかく、人一人の命がこの世から消えたというのに。
そのことで打ちひしがれている自分に、忘れられなくて苦しんでいる自分に
忘れろというのは苦行にも等しい。それを笑いながら平気で口にして、
手の一つも握らない、慰めの言葉一つかけない思いやりのない男に
どれだけの優しさを見出せというのか。
一時でも好きだったそんな男の側面を思い出し、
涼子はまた自分が情けなくなってきた。
同じ男なのに、目の前の原島は少なくとも自分で消化して吸収して
「歴史」にしろと言った。少なくとも全部捨てて「忘れ」られないのなら
そうするしかないと言った。
だったら、南だったらどう言うのか。
そう思ったとき、自分のあさましさに情けなくなって涼子はまた泣いた。
一体自分はどこにいるのだろうか。どこにゆこうとしているのだろうか。
「御免、出よう。原島が変に思われちゃう」
「馬鹿か、お前は」
周囲の視線のことを考えて涼子はそう言ったのだが、
そこまで気を使う涼子に原島はばかばかしさすら感じていた。
とりあえず会計を済ませると外に出た。
湿った生暖かい風が流れる。
涼子は涙をこらえていたが、店を出たらまた涙が溢れた。
原島は黙って腕を取り、車のキーを取り上げると
そのまま助手席まで誘導した。
どこかで稲妻が光っていた。
「お前、ひょっとしてずっと我慢していたのか?」
原島は運転席に座るとエンジンをかけた。
「何を?」
「泣かなかったのかって事。和美の話だと、和美の前で泣いたのは
四十九日の時だけで…」
「無理だよ。両親やお姉さんの方が一緒にいた時間が長いのに、
アタシが泣いたら余計辛いでしょうに」
「そう言う変な気遣いするから…ばかだなぁ、お前は」
「だって…親だって心配するし、うかつに泣けないもん」
「じゃぁ今ここで泣いて少しはすっきりしろ、誰にも言わないから」
「原島に泣き顔見られたくないよ」
「へいへい。全く、わがまま」
原島はそう言って自分のスーツの上着を涼子の頭からかぶせた。
それが、涼子にはありがたかった。
原島はちょっと乱暴に車を発進させた。
(春の章・完)が抜けた…。
今日はここまでです。
また時間作ります。
本当はもっとまとめて投下したいんですが、事情があってそうもいかないです。
とはいえあんまり投稿しないと今度いつになるのかわからないので、短くてすいませんが
続きを書き込みます。
「むりです。学校の先生の精液を注いでもらうなんて!」
「いい方法があるの」
白衣のポケットから布着れを出す保健室の先生だ。
それを見てユカは声を上げた。
「こ、これは……!」
美雪先生がとりだしたのはパンティ。
しかしただのパンティではない。
魔女ッ子アニメのキャラが、前後にプリントされている幼児向けパンティだ。
「こ、こ、これをはけと……」
「そう。尾崎先生はね、実はああ見えて真性のロリコンなの。だからユカちゃんがこのパンティを見せて御覧なさい。
とってもムラムラくるわよ。それにこれ……」
これも幼児向けのキャミソールを美晴先生は取り出した。
ご丁寧にこれも魔女ッ子キャラがプリントされた、パンティとお揃いの下着だ。
(この人いつも白衣にこんなもの入れてるの……?)
ちょっとあきれるユカだ。
「こんなので本当に尾崎先生を誘惑できるんですか?」
「それはあなたのテクニック次第よ。がんばって」
言われて仕方なく更衣室で下着を着替え、その上から体操着をつける。
(やだあ……完璧にハミパンしてるよお……)
幼児向けパンティは布の面積が大きい。
しかも足を通す部分の構造も独特の布地が厚くなっているものだ。
しっかりとパンティがはみだすばかりか、幼児向けのものをはいていると判ってしまうだろう。
(う、う……恥ずかしい)
しかし、催淫剤の影響だろうか。
これから誘惑する尾崎の巨根を想像して、新品の魔女っ子パンティをさっそく愛液で濡らしてしまう。
(よーし)
そうとなれば覚悟が決まった。
ブラジャーも脱いでしまう。
薄い幼児用のキャミを素肌の上から着けるが、若々しい張りのある乳房の形が、体操服の上から丸わかりになる。
(ん……ち、乳首が固くなってる……)
バストの輪郭どころか、乳頭の形状までこれでは尾崎にしっかりと見られてしまう。
(ええい! 女は度胸だ!)
決意を秘め、ユカは体育準備室をノックした。
入れと声をかけた尾崎はユカの姿を見て絶句した。
目がブルマーと勃起した乳首のあたりを往復している。
(う……う……み、見られてるうッ)
じゅん、と視線に感じてしまうユカだ。
「に、西野……」
気を取り直すように咳き払いをして、喋り始める尾崎。
「今日の授業中の態度は何だ? 罰として補習をする」
「は、はい」
「そこのマットに座れ」
準備室はかなり広い。
尾崎の授業準備用のデスクの他に小さなマットがわきにひいてあるのだ。
尾崎によると簡単な運動のアイディアをここで実験するのだという。
「よし、じゃあ、まずは倒立だ」
いわれてユカは逆立ちをした。
尾崎に足を支えてもらう。
勢い良く倒立をすると、ブルマーの中に入れていなかったので上着がめくれて、キャミソールが露出してしまう。
(やあん……恥ずかしい……。子供用の下着が見られてるう)
ごくり、と尾崎が唾を飲み込みのがわかった。
倒立しながら、尾崎の股間に目をやると……
(す、すっごい! おっきくなってるう!)
そうでなくても柔らかい素材のジャージを突き破らんばかりに尾崎の巨根のシルエットがありありとわかる。
「よ、よし、次は足を広げて前屈だ」
ユカは尾崎に向かって股を開いた。
「うんしょ、うんしょ」
わざとらしく言いながら前屈をする。
勿論、ブルマーからパンティがうんとはみ出すように動く。
「ん……」
ハミパンを直すふりをして、ブルマーの裾をひっぱる。
だがもちろん、さらにパンティをはみださせるのだ。
幼児用のコットンパンティが外に見える面積がますます増えた。
「に、西野お前……」
尾崎の声がかすれていた。
勃起したペニスが天に向かう高度をさらに急角度にしている。
「だ、だってユカちゃん、可愛い下着が好きなんだもん……」
ここぞとばかりに幼児口調で甘えた言葉を言ってみるユカだ。
(ち、ちょっとわざとらしいかなあ……)
しかしユカの心配とはよそに尾崎の逸物はいよいよ猛り狂ってきていた。
「そ、そうか。ユカちゃんはまだ子供なんだね」
あっさり乗ってきた。
「そうだよ。だからパンティもこーんな可愛いのはいてるんだよ」
言って、ブルマーを一瞬ずらす。
西野の鼻息が荒くなった。
コットンパンティの魔女ッ子キャラが目に焼きついたに違いない。
ここまで。また忘れられないうちに続き書き込みたいと思います(苦笑)
保守
保守
760 :
名無しさん@ピンキー:04/01/01 19:27
あけおめ
作家陣の方々、補完さん本年もよろしゅうおねげーします
新年投稿がない……(´・ω・`)ショボーン
ほしゅ
保管サイトのカウンタが鯖死でリセットされちった(泣
補完サイトの各作品のヒットが多い順にランキングされると面白いかも
>765
それは書く側にしたら創作意欲にプラスに働く人とマイナスに働く人が激しく分かれそうな気がする。
読み専としては便利だし面白そうだと思うけど。
>>765 どのくらいの期間で更新するかも問題ですね。
トータルをだすと古い作品が上位にきますから。
入れ替わりが激しいほうがよいとすれば一日集計でしょうけれど、
一日集計では作品の質が反映されませんしね。
ティッシュにはじけた白濁とともに捨て去るべき妄想を書き連ねただけ
読者がいようがいまいが……と達観しましょう。
>>767 短期-1週間 中期-1ケ月 長期-1年
の三本立てでは?
一つなら1ヶ月
作家自身としたら1日にどれだけカウント数が上がったかは逆算で分かるだろうから
トータルで良いんじゃないの?1月当たりとか、週当たりでカウントが分かると
逆に気になって書けなくなっちゃったりしそうだし。
あんまり競わせるような感じが良いのかどうか・・・。
見てるこっちとしては面白いけどねw
漏れ的には藤原さんちの涼子ちゃんが
幸せになってくれればそれでいいっす。
ガンガレ!
今更ながら…あけおめでございますです。
作家陣の方々、保管さま、読者の皆様、
今年もよろしくお願いします。
カウントの件ですが、読者サイドとしては面白いと思いますが、
書き手としては好き嫌いあると思います。
私的には3ヶ月くらい(カウントの意味なしって声もありそうですが)
サイト自体に各種ジャンルの小説があって、その中で「競う」ための
スタンスは避けたほうが無難かもという理由で。
例えば、どれを読もうか迷っている読者さんにランキングは
「保管サイトの案内の一種」として扱うのなら作家・読者双方に
軋轢は少ないと思いますが。
>>読者の皆様
今年は自爆しないように、涼子、がんばります。
春の章が終わったので次は夏の章です。
夏の章
結局、ドライブの約束を果たせたのは7月に入ってからだった。
あの日以来、休みが一緒になるということはなく、また一緒の休みを取れる
と言う忙しさではなかったので仕方なかったのだが。
原島は6月中旬に会社近くのアパートを借り、そこから会社に通っていた。
駐車場の都合がつかなくて、車の引越しは7月からだと笑っていたのだが、
その車の引越しの為に夕方、会社帰りに原島を乗せて実家に戻り、翌日は
二人でドライブに出かけるという約束だった。
梅雨の合間のちょっと心もとない晴れの天気ではあったが、二人は海にいた。
毎日海なんて見慣れているはずなのに、ドライブコースは海のコースを選んでいた。
「うまい」
原島圭介はホットドックをかじった。
さっき昼食を食べたばかりだというのに、展望台のホットドッグ屋に
足を踏み入れてしまった。
「昔さ、プールの帰りに良く食べたよね」
「そ、カレー味の炒めキャベツが最高だった」
「あれは贅沢だったよね、子供ながらに」
「そうそう」
市民プールの入場料を払うと親から貰ったお金はいくらかしか残らない。
何回かプールに行って、残りのお金を貯めておいてやっと買えた
ホットドックは至福の味がした。
涼子はそう言って同じようにホットドックをかじった。
海からの風が気持ち良い。夏を予感させる。
「なぁ、やっぱりまだスカートははけないのか?」
「今度ははこうか?今日はいてこようかと思ったんだけど、
海だって言うからやめた」
「何で?」
「風にあおられたらイヤだもん。まだ、お礼言ってなかったね。
あの時はありがとう」
代わりに圭介が耳まで真っ赤になってホットドッグをかじった。
どっちの言葉に反応してのことだか…と涼子が苦笑する。
「なぁ、俺達、ちゃんとつきあわないか?」
「ご近所だと駄目になったとき、辛いよ」
「駄目にならない。俺本気だもん」
「私本気じゃないもん」
本音とも建前ともいえる今の心境だった。
「お前、俺のこと嫌いなのか?」
「そうじゃないよ。ただ、何かあったときに辛くない?
恋人が死んだことはご近所知っているわけだし、
何かあったら全部それをつなげちゃうよ。ご近所さんの底力。
何だかんだ言われるのは私はもう平気になった。ただ、
貴方はそういうこととは違う立場でいて欲しい」
「…………」
「怒った?」
「情けないだけ。俺じゃ力になれないのかな?」
「違うって。わざわざ火の中のクリを素手で拾うことはないと思うってこと。
頭冷やしなさいって」
「お前冷静だな」
「冷静だよ」
「じゃぁ今俺がこのままホテルに行こうって言っても冷静でいられるか?」
「冷静じゃなくても、冷静を装うだろうね。貴方がそこまで考える
と言うことは余程のことだと思うから。逆に一緒になって騒いで良いけど、
そうしたら貴方は余計に自己嫌悪に陥るでしょ?それよりびんた一発で
冗談だったと言う方が貴方楽だもん」
「な、何で俺中心に物事考えるんだ?自分の気持ちに向き合えよ」
「貴方が大切だから、そういう考えになるわよ」
「俺のこと、好きという事か?」
「友だち以上恋人未満の方が楽だよ、きっと」
「根拠は?」
真面目な、圭介の顔だった。
「一緒にいても何をやっても貴方を見ながら…貴方を通して南さんを
探しているのよ。それに気が付いて、アタシは何て嫌な女なんだろうって。
そんな気持ちで貴方と向き合えるわけないじゃない」
圭介は突然、怒ったように涼子を助手席に押し込んだ。涼子のホットドックが
落ちそうになるが、かろうじてそれをこらえた。そしてそのまま、自分も
運転席に乗り込むと車を発進させた。
「ちょっと、落ち着いてよ」
食べかけのホットドックをほおばりながら圭介は片手運転で車を走らせる。
「落ち着いているけど怒っている。黙って付いて来い」
そう言うと圭介は車を走らせ…一番近いラブホテルに車を入れた。
「ちょっと・・・」
「降りろ」
それだけ言うと、圭介は車を降り、助手席のドアを開けた。
涼子は降りなかった。
圭介は手首を引っつかんで乱暴に車の中から引きずり出し、目の前の
ホテルのドアを開け、涼子を玄関に突き飛ばした。
「やめてよ、こういう真似は」
圭介の背後でがちゃりと金属音が起きてドアがロック状態になった。
「脱げよ。裸になれ」
圭介は涼子の靴を脱がせながらそう言った。
「だから、やめてよ」
体を起こそうとする涼子だったが、圭介は靴を脱がせると容赦しなかった。
そのまま倒れている涼子にのしかかり、抵抗する涼子の首筋にキスをした。
「あっ」
声が上がると同時に、何年かぶりの刺激と、圭介と体を繋ぎたいという
涼子の欲望が入り混じる。
「やめてよ」
涼子は抵抗したが、圭介は着実に涼子を攻めてゆく。
最初は首筋から耳に。それから執拗に耳を攻める。
涼子は抵抗したが、圭介が自分にのしかかっていて動きが取れない。
両手すら、床に押し付けられて動かない。
圭介のキスは薄皮をはぐように涼子の理性をはがして行く。
「俺の昔の女はここが一番弱かったんだ」
そう言ってもう一度いとおしそうに耳にキスした。それから口に含み、
やわやわと耳のラインに添って舐める。
全身、総毛立つ快感に涼子は身体を硬くして耐えるしかなかった。
その反応を見て取ると、圭介は耳朶に歯を立てた。
「!!」
涼子の身体が一瞬、びくりと動いた。それを確認してから、また耳を舐める。
涼子は抵抗の声を出そうとしたが、その感覚をやり過ごすことに必死だった。
南のときと同じように、圭介が愛情を込めたキスを首に落としていた。
それだけで身体が震えるほど嬉しい。
この男がいとおしい。
「ここも」
少し位置を下にずらして今度は首筋に。
「ここもだ」
ポロシャツの襟元から見える肌のぎりぎりのライン。
もうそれだけで体が熱くなる。
圭介ことは好きだが、それ以上は…と封印してきた涼子の気持ちがはじけそうだった。
「ここも」
「!!」
耳の穴をざらりと舐められて声にならない声があがる。
どこかでぷつんと糸が切れた。
「俺だってそうだよ。涼子を通して昔の女と比べている」
圭介はそう言って離れ、隣に大の字に転がった。
「誰だって完璧にはなれない。心の奥底で思うことを止められはしないさ」
だけど、と思う涼子。南の思い出は月日と共にゆっくりと色あせていると
思いたい。しかし、反対に南に対する思いは月日と共に鮮明になっているのも
確かだった。
届かぬ思いに何度頭を抱えただろう。
いっそ泣ければ、辛くはなかったのに。
圭介の存在は南の存在と共存している。
だからこそ、涼子は圭介への気持ちを封印してきた。しかし、
これ以上は理性も身体も保てない。何かが悲鳴をあげていた。
「いちいち突き詰めると神経持たないぞ」
「本当、神経疲れるわ」
涼子は深呼吸した。しかし、まだ胸の動悸はおさまらない。
「悪い、やりすぎた」
「自己嫌悪にならないでよ」
「もうなっている。思いっきり後悔している」
圭介はため息と共にそう言った。罪悪感が、涼子に広がる。
追い詰めたのは私だ、と涼子は思う。
「本当。酷い口説き方よね」
涼子はのろのろと体を起こした。圭介に与えられた刺激で頭がぼうっと
していた。
しかし、心の中では圭介の気持ちは痛いほどわかる。
あの時、靴を脱がせたのは涼子にとって抵抗するチャンスを作る為で、
それは涼子にもわかっていた。
突っ走るつもりなら、わざわざそんなことはしない。
その気持ちがわかるからこそ、涼子の身体が余計に反応していた。
ある種の安心感か。
「…俺じゃぁ駄目なのか?」
「本当に嫌だったらけり倒しているわよ」
確かに、そうだ。反撃のチャンスはあった。圭介はそう思いたかった。
「涼子?」
「今度は色気のある誘い方をしてよね」
涼子は深呼吸して、圭介の方に振り返った。それから寝転がっている
圭介の頬にキスして、耳元でささやく。
「先にシャワー使うからね。後でちゃんと入ってよ」
「涼子?」
かまわず、涼子は耳たぶにかじりつき、首筋に舌を這わせた。
「お前、それは・・・」
圭介が体を硬直させ、声にならない声を我慢していた。それを無視して、
指を圭介の胸板に這わせる。目的のものはポロシャツの上からでも
はっきりと突起を作っている。
「やめろって」
「やめないわよ。人を押し倒しておいてそれはないんじゃない?」
即座にその答えを返す。涼子の舌がもう一度圭介の首筋を這った。
圭介が涼子を押しのけたいのか、両腕が宙をさまようのを見届けると
涼子は立ち上がった。
「ここに連れ込んだのは貴方、誘ったのはアタシ。以上、共犯成立」
「涼子?」
「あんまり悩むと頭はげちゃうよ」
圭介は何ともいえない苦笑いを返してきた。
涼子は立ち上がるとお風呂場に向かった。
※ ※ ※ ※ ※
バスルームから出てきた涼子はその動きが不自然だった。
備え付けのバスローブは情けないほど薄っぺらで下着まで透けそうだった。
膝下まである丈が唯一の救いだったが、涼子の心もとない気持ちを隠せるほどではなかった。
部屋の明かりは薄暗く落とされていた。が、逆にバスルームが明るくなって、
マジックミラーから見える浴室は丸見えだった。
「あ、発見しちゃった」
スイッチ類を触っていた圭介の意外にも明るい声だった。
「明るくしたらわからないんじゃない?」
「それもそうだ」
そう言って明るくしたが、圭介は無言のまま、また暗くした。
「どうかした?」
「そこに立つなよ。後ろからライトが当たって…」
振り向くと、ライトが幾つも並んでいた。後ろからライトが当たると、
シルエットは丸見え状態になる。
「わ、ご免」
涼子は慌ててその場所を動き、洋服をバッグの脇に置いた。
さっきは突き飛ばされたのでバッグが部屋のどこかに行ってしまったのだが、
今度はちゃんとテーブルの上にあった。圭介の、こういうところが好きだと
涼子は思う。
「後悔しないのか?」
背中に投げかけられた言葉。
「私のセリフ」
「そうやって強がりばかり言って、周りを安心させて、自分を隠す」
「そうやって分析がちゃんと出来る貴方に今更隠し立てしたって
何も得はないでしょう?それとももっと直接的に言った方が良い?
別の方法が良い?」
「口説く俺の楽しみ取るなよ」
圭介はそう言ってバスルームに向かった。
涼子は結局目のやり場がなくて、テレビを見ながらベッドの中で待った。
圭介はシャワーから出ると、ベッドに入ってきた。
「おーい」
「はいはい?」
テレビに熱中していた涼子は、体を起こし、ベッドの上に座った。
「本当に良いんだな?」
「私はね」
「涼子?」
「自分が傷つくのは良いけど、誰かが傷つくと言うのは、私は辛いよ。
信頼した人なら尚更」
「守ってやりたいと思うのは俺のエゴか?」
「人間皆エゴよ。エゴの塊。ただどこでどうそのエゴと付き合ってゆくか、
どこまでそれを認められるか」
圭介は、涼子の右手を握った。左手がちょっと汗ばんでいたのは
シャワーのせいなのか。それとも…。涼子は全然関係のないことを
思っていた。
「南さん、だっけ?そういう関係、あった…んだろうな?」
「南さんだけにはね」
「ほ?」
「南さんがいなくなってから何人かの人とデートはしたけど、
特に付き合っているといったふうにもならなくてみんな消滅したの。
誤解のないように言っておくけど」
「意外と真面目だもんナ」
「誰とでも寝られるくらいさばけてしまえば良かったとも思うけど」
「そういう痛みや悲しみをいつも側にいて分け合えたらと思うのは
俺のエゴかな?」
「友だちとして?」
「人生のパートナーとして」
「今は…」
「答えられなくて良いよ。ただ、今日のことを踏み台にして欲しい」
圭介はそう言うと、涼子の唇をふさいだ。
涼子はためらって逃げたが、圭介はつないだ手をゆっくり絡ませて
もう一度キスした。
二人の間に、ためらいがなくなっていた。
「南さん、どういうふうに涼子を愛したんだ?」
「いつも本気だったわよ」
「そうじゃないよ。最初はキスした?それとも押し倒した?」
「…南さんに嫉妬しているの?」
「多分な」
「最初は私が押し倒してキスしたのよ」
「ウソだろう?」
「ウソに決まっているわよ。…教えるわけないじゃない。
そんなのテクニックで、気持ちとは別物じゃない?」
「だから、いつも本気だったと答えたのか」
「そ」
「俺、本気でそうなったら…止められないような気がする」
「大丈夫、びんた一発でジョークですませてあげるから」
「子供が出来たらどうする?」
「避妊してよ。少なくとも今は」
「お前冷静すぎ。さっきは声が出ていたくせに」
「どっちが冷静なのよ」
「あんな声で鳴かれたら男は理性失うって」
そう耳元で囁くと、首筋にキスした。涼子はじっと動かないで耐えたが、
代わりに圭介の左手をしっかり握ってしまった。
圭介はその手を振りほどくと、代わりにしっかり抱きしめた。
「真面目に、イヤだったらストップかけろよ。
俺、お前のこと待つ覚悟はあるんだから」
圭介は耳元でそう囁くと、額にキスし、それから少しだけ、唇を重ねた。
涼子はそっと圭介の背中に両手を回した。それに気がついた圭介が
もう一度、本気のキスを涼子の唇に落とした。
2年ぶりの本気のキスは、涼子には刺激が強すぎた。圭介の指は
涼子の背中を往復し、その刺激であっけなく涼子はベッドに倒れこんだ。
涼子は息を整えようとしたが、圭介はそれを許さなかった。
マジックテープで止められているバスローブの前をはだけると白い下着が
圭介の目を奪った。涼子の薄肌色と白のコントラストが欲望を掻き立て、
首筋から胸へと舌を這わせた。
「うっ…あっ…ぁぁぁぁ」
さっと舐めただけで涼子の体は物凄い勢いで反応してゆく。びくびくと
体が跳ねるように反応し、恥ずかしさに逃げようとするが、圭介の両足は
涼子の腰をしっかり挟んで動けなかった。
圭介は露わになった胸だけに刺激を与えていた。
「やめてよ。そんなに…」
圭介に唇をふさがれ、その状態で下着をくぐった指先が涼子の胸の頂点に触れた。
「あぁっ」
「そんなに、何だよ」
指先が、また頂点を刺激すると体が跳ねた。目を閉じ、少しだけ眉間に
皺を寄せて涼子は悶えていた。圭介が考えていたより胸は薄かったが、
それ以上に涼子は滑らかで敏感な肌の持ち主だった。
「そんなに責めないでよ。恥ずかしいから」
「何とでも言え。俺、嬉しい」
圭介はそう言って涼子の胸に耳をあて、目を閉じ、しっかりと抱きしめた。
涼子の息遣いが圭介の耳に届く。圭介が胸に指先を置くとその指先の動きに
あわせ、息も乱れ、鼓動も激しくなる。
「はぁん」
「他の男でなくて良かった」
「え?」
「こんな声、他の男に聞かせたくない」
「誰にも聞かせたくないわよ」
喘ぐように答える涼子。
「俺にも?」
「こんなぐちゃぐちゃな状態で…」
「それでも俺はお前のことが好きだよ」
心臓をえぐられるような苦痛。
圭介を傷つけていることに変わりない自分。
「・・・・・」
「だから安心して良いよ」
圭介は下着の隙間から胸にキスをし…そのキスだけで涼子は声を
あげてしまった。
「敏感?」
「貴方だからね」
「お、殺し文句」
「もう、これでも男を選ぶ余裕はあったんですけど」
「ひどいなぁ、その言い方。…涼子」
「何?」
「昔みたいに圭介とは呼んでくれないのか?」
「どういう意味?」
「俺の初恋、涼子だったから」
「ウソだよ。3年の時の新田先生でしょ」
図星だった。
「そういうこと言うか?お仕置き」
そう言って舌を胸に這わせ、その後お腹から下腹に這わせた。
圭介の舌が散歩するたびに下にいる涼子はコースを変えさせようともがく。
「やめてって」
生暖かい刺激とざらついたような舌の刺激は一気に快感を呼び起こす。
「それ以上は、やめてよ。びんたでジョークの範ちゅうを超えるから」
圭介は下着の場所をパスすると内股に本気のキスを贈ってきた。
「わ……」
涼子の体が仰け反った。甘い快感が走る。
背中が浮いたところで、圭介はブラのホックを外し、内股を指で
なぞりながら自己主張した胸の頂点を口に含んだ。それだけで、体が反り返る。
「ぁぁぁぁぁぁん」
甘い吐息が混じった。
「良い声だ」
圭介の声が聞こえてきて、それから涼子は圭介から与えられる刺激に
訳がわからなくなっていた。毛穴の一つ一つが甘い快感に呼吸し、息づいてゆく。
圭介がキスをすればキスされた部分の細胞がふわりと新しく呼吸を始める。
圭介が指を這わせればその部分の肌がみずみずしく満ち足りてゆく。
圭介の体温を感じるたび、圭介の息を感じるたび…。
涼子の中で「圭介」というキーワードで身体のすみずみまでその感覚は
インプットされ、同時にそれは直接快感として涼子の頭の中に入ってくる。
「もうストップきかないからな、覚悟しろ」
圭介はそう言うと涼子の胸に唇を這わせ、その掌で小さなふくらみを
愛撫する。
息が出来ないほどその刺激に溺れ、下半身がそれに答えて蜜を出す。
もう自分でもわかるほどに涼子は濡れてしまっていた。
自分の体の暴走が信じられないほどなのだが、その一方で圭介に
触れてもらうこと、愛されることで心が満たされ、体が満たされてゆくのが
わかる。嬉しくて嬉しくてたまらない自分に涼子は気がついていた。
2年ぶり、というだけのことではない。自分の奥底にしまいこみ、
封印していた何かがあふれてくるのがわかっていた。
「俺も嬉しい。お前の体が喜んでいる」
背中にまわった圭介の胸板を感じながら後ろから両方の胸を塞がれた。
同時に両方の指がくるりと動いて涼子の敏感な場所を刺激する。
「あ…ああん」
背中が反りあがって圭介の腕から逃げようとするが、圭介はぴったり
身体をつけたまま、それを許さない。腰に熱い圭介を感じながら、
涼子の蜜は胸と腰の愛撫に同調する。
「ここは?」
圭介の手が下に下がった。
「やめて、お願い。今は…」
涼子の言葉より、すっと圭介の指が下着の上からスリットを撫でた。
瞬間、体が大きく仰け反り、電流が走った。それだけで、軽い絶頂を迎える。
うつぶせのまま、ベッドに倒れこみ、涼子は体を丸めようとした。
「ああ・・・」
圭介のそんな呟きが聞こえた。圭介の指には涼子の身体の反応を示す蜜が
絡んで残っていたからだ。それはまた、圭介自身の喜びでもあった。
一方の涼子は呼吸を整え、体を丸めて、まず続いて来る絶頂の波を押さえようとする。
しかし圭介は荒々しく涼子に体の向きを変えさせると下着を取り去り、
足の間に入ってきて、その先端を、涼子の下半身の中心に当てた。
「駄目だよ、そんなことをしたらすぐに終わっちゃう」
「いいよ。どんどん感じて」
圭介はもう一人の自分をスリットにこすりつける。お互いの体温を感じて、
また一段と嬉しくなるのを抑えられなかった。涼子は自分の下で
抵抗することなく、裸身を晒していた。それどころか、
ちょっと触れただけで喜びの声をあげ、体は正直に反応している。
今までのこともあって充分登っていて、あと一息の刺激で達してしまうのは
明白だった。
「良くないって」
「良いの」
圭介はそう言って体重をかけ、涼子は久しぶりに男性を迎え入れる
激痛と快感と嬉しさに・・・頭の中が真っ白になった。
「涼子?痛いの?少ししか入っていないのに」
圭介の声が、もう一人の圭介を通して涼子の中に直接話し掛ける。
快感の波がすぐそこまで迫っていた。シーツをしっかり握って
顔を背けている涼子を見ていると、それがわかる。少し体が震えているのが
いじらしい。涼子の中心がまた一段と暖かくなる。
「俺の背中に手を回して。爪、立てて良いから」
圭介の手が涼子の手を背中へと導き、また少し圭介が体重をかけてきた。
「だめ・・・いっちゃう・・・」
涼子の小さいか細い声が部屋中に満ちたように思えた。告白したとおり、
涼子は快感が津波になってやってきて、一人で登りつめてしまった。
が、圭介の背中に爪は立てられず、涼子は握りこぶしのまま、
圭介の背中を抱きしめていた。
圭介は涼子の中で動かなかった。自分の下にいる涼子の体がしっかり
反応し、喜んでいることは自分が一番良く感じていた。それだけで
最初よりもずっといとおしさが増す。こういう行為でしか、
しかも半ば捨て鉢な状況でしか自分の気持ちを伝えられないもどかしさが、
いっそう自分自身を妙に駆り立てていた。できれば二人を隔てている
この薄い人工物すら取り払って、自分の気持ちを涼子の体の中に
思い知らせてやりたいとすら思った。
涼子は肩で荒い息をしたまま、トロンと目の焦点があわせられないでいた。
さっきから、涙が溢れて止まらない。
「ごめん・・・。本当にごめん・・・」
自分ひとりだけ登りつめたことを謝った。
「気にするな」
圭介はそう言って涼子の余韻の波に合わせて腰を振り、奥まで入れてきた。
「あ・・・ぁぁぁぁんんん」
涼子に再び波が襲ってくる。
圭介自身を受け入れた涼子の体に圭介は満足はしていた。
しかし、涼子は圭介を愛したから受け入れたわけではない。
それがわかっているからこそ圭介は自分の欲望をもてあましてしまう。
「素敵だよ、涼子」
圭介は自分の心の中を隠そうとするように涼子の波とシンクロを始めた。
余韻の波とシンクロすることは、圭介には心地よい刺激だったのかも
しれない。しかし、圭介自身は果てることなくひとしきり涼子の中を
かき回すと、波が収まるのを待って外に出た。
「少し落ち着いた?」
「こういうことをやっている限り、落ち着きませんって」
「当然だ。完全にクールダウンしたら俺が面白くない。
涼子にはもっと可愛い声で鳴いて欲しいから」
「変なビデオの見すぎ」
「そうじゃない」
そう言って圭介は涼子を抱きしめると横になり、その体に指を這わせた。
「他の男に絶対渡したくない。…これは俺のわがままだな。
お前、本心から抱かれたわけじゃないだろう?
だから、今度はちゃんと俺のほうを見て…」
涼子の目から涙が溢れた。嬉しい涙ではなかった。それが、よくわかる。
罪悪と、情けなさと、ずるがしこさと。
自分のために圭介とこうなってしまった罪の涙だった。
「それが俺の気持ち。…お前、こんなに自分を痛めつけないと
前に進めないほど、南さんへの思いを溜め込んでいたのか?」
図星だった。
「パンパンに南さんの思いを溜め込んでいるお前を見ていると痛々しかった」
「ごめん、私・・・」
「整理がつかないくらい訳わからない状態になっているんだよ」
「でも、でもね、圭介、私は…」
返事の代わりに、圭介は涼子の胸に指を当てた。
「!!」
指先は確実に涼子を捕らえていた。涼子はその先の言葉を紡ぎ出せなくて
ただ喘ぐしかなかった。
そんな様子を見てから、圭介はその指を涼子のスリットに落とした。
少しの抵抗はあったが、涼子は圭介の指を受け入れた。
「私、圭介のこと・・・」
「ああ、わかっているよ。でなきゃ、ちょっと触っただけで
体がこんなに喜ぶわけないだろう?」
圭介はそう言いながら、涼子の体の反応を見ていた。
「心も体も限界だった、そういうことだ。だから今はそれで良い」
「でも・・・圭介・・・」
「俺は涼子の事が好きだ。何も心配することはない」
「あっ」
圭介の指の動きに、涼子は身をよじった。涼子の中心の一番敏感な部分は、
圭介の指を喜んで受け入れていた。
涼子の体は圭介の動きに素直だった。そっと指を動かすたびに蜜が染み出してくる。
「涼子、キスして良い?抱いて良いか?」
「圭介…」
「本格的に口説いてから抱きたいとも思うんだが、俺にも限界があってな」
涼子の体が小さく震えていた。圭介はスリットから手を離すと、
濡れた指先を涼子の胸の先にあてがう。
「ひっ」
涼子がその濡れた感触に声をあげた。が、指先は確実に涼子を責めていた。
「今度はちゃんと俺を感じて欲しいんだが。涼子」
「ん…」
「俺は、誰かの代わりじゃなくお前を愛したいし、受け止めたい」
「ありがとう」
涼子はそう言うと本気のキスを、圭介の唇に重ねた。
「んんんん…」
圭介は涼子に本気のキスを返す。
涼子の「受容」が圭介の欲望のタガを取り払った。
そのまま、涼子の首筋にキスを落とし、静かに下にずらしてゆく。
涼子の細い首筋も、鎖骨も、薄い胸も、圭介には愛しい存在だった。
その一つ一つにキスすると、涼子は悩ましい声をあげた。特に胸は。
すっぽりと手に収まる胸の厚みは男の圭介にとって不満とも言える
大きさだったかもしれない。しかし、その感覚の鋭さに圭介は満足していた。
涼子が圭介の動きに息を乱れさせ、時に声をあげる姿は圭介を胴震いさせる。
「あぁぁぁぁっ」
何度目なのか、圭介が涼子の胸を責めると涼子はそう声をあげて軽く達してしまった。
「涼子?」
圭介は呆然とした涼子に一度声をかける。
「ごめん…」
「どんどん感じれば良いと言っただろう?」
「でも…」
「大丈夫だから」
圭介はそういうとスリットに指を落とした。先ほどからの愛撫で
もう充分に潤っていた。
圭介は涼子の胸に顔をうずめ、その突起を口に含むとゆっくりと舐めた。
「あ…」
一度達してしまえば女性の体は余計に敏感になるときがある。
涼子の口から甘い声を引き出すと、胸の刺激はそのままに、
スリットの間の突起を指でそっと撫でた。
「ああっ」
体をビクリと震わせて涼子はその刺激に耐えていた。
つるんと指が往復するだけでまた新たな刺激に体は喜んでいて反応を示す。
敏感になっているだけあって、涼子の息の乱れはもう終わりが近いことを示していた。
「あっ、だめ」
指の動きを変えると涼子の息がひときわ乱れた。
圭介は愛撫をそこだけに集中させる。
「あっ…あっ…」
圭介の耳を刺激する良い声だった。だんだん小さくなるその声は、
最後は息と一緒になって圭介の背中に、しっかり握りこぶしの感触を植えつけた。
何故、爪を立てないのか。
そのことは圭介の気持ちをいっそう駆り立てた。
まだ南良明という男の呪縛から逃れられないのか。
しかし体のほうは着実に圭介の刺激に喜びの反応を示していた。
「もうやめて…」
涼子がそういっても、圭介は涼子を責め続けた。
圭介の腕の中で先ほどから何度も波を迎えている。その波に合わせて圭介は涼子を責めていた。
お互いの気持ちはわかっていても、もしかしてこれは一時の気の迷いで
後になってみるともう抱けないかもしれないという危機感が圭介を駆り立てていた。
ひときわ強い波を迎えた涼子を見届けると、圭介は涼子の体を割って中に入った。
たちまち、涼子の波が圭介を襲う。
その波に呑まれないように圭介は奥へ奥へと登って行く。
圭介の体を受け入れた涼子の体は喜びに満ちていた。
「あ…ああ…」
自分の身体の中心が妙に暖かくなる感覚が涼子にはある。
それが体中に広がればとめどない至福の世界があるということは
もう体が覚えてしまっていた。身体の中心がその感覚を思い出してきた。
圭介をその中心にといざない、包み、放さない。
「気持ち良いの?」
圭介はわざとそう聞いた。
「わかっているくせに」
圭介がいたずらっぽく腰を振って少し奥に進めた。それだけで
涼子の腰に温かみが広がる。
さっきとは違って、お互いに精神的に落ち着きがあるのか感じ方も違った。
「あ…だめ…」
「まだ奥まで入れていないよ」
「でも…」
圭介の腰の動きは涼子を追い立てる。圭介はそれを満足そうに
下に見ながら、腰を振った。
「涼子の体は正直だよ。凄い…俺のほうが危ない」
「あ…」
突き上げられた涼子に波が来た。
「俺も限界」
圭介の動きが変わった。涼子の波に合わせていたのだが、
今度はその波に合わせて自分でリズムを刻んで新しい波を起こし始めた。
涼子が波に呑まれて行くと同時に、圭介も同じように波に呑まれてゆく。
「あ、あぁぁぁぁっ」
涼子がか細い小さな声をあげて終わりを告げた。
ほぼ同時に、圭介も果てた。
しかし、圭介の心の中に何か苦いものが残ったのは確かだった。
あの瞬間、背中に回された涼子の手は、開かれていなかったからだった。
今日はここまでです。
また次回に。
夏の章があと少し続きます。
(2回投稿分かな?シーンが変わります)
by藤原忍
>>793の続き
※ ※ ※ ※ ※
夜、涼子は一人の部屋で今日の出来事を思い返してみる。
二人で交わした会話は、あのホテルの後から意味が通じないほど怪しくなっていた。
半分自暴自棄に抱かれてしまった自分と、圭介に抱かれたことを喜ぶ自分。
あんなシチュエーションで圭介を追い詰めて、しかもあんな行為を
させてしまった自分。
後悔の涙。
マイナスの要因しか頭にはない。
二人で交わした会話さえ、支離滅裂の会話だと思う。
ただ一つ、涼子にとって贅沢なのはそんな自分でも圭介は受け入れると
言ってくれたことだった。
なにより、圭介は涼子が立ち直るまで待つ覚悟があると言うことだけは
はっきりと言った。あのベッドの中でも、別れ際の言葉でも。
圭介自身にその覚悟があるからこそ、今日のことは「安心して」良いとも
言われた。
圭介は今日のことを転機として捉えようとしているという表れだった。
深呼吸すると窓を開けた。先ほどからの雨で、気温が下がっていた。
7月にしては寒い空気が部屋に流れ込んだが、雨の匂いは心を落ち着けされてくれる。
「涼子、入るぞ」
「はい?」
涼子の返事を待ってから兄の純一が部屋に入ってきた。
今日は飲み会だとかで帰ってきたのは遅く、さっきまでお風呂で
鼻歌を歌っていたのだ。
「借りていたCD」
「お、ありがとう」
3枚のCDと一緒に純一の手から缶ビールが手渡された。
純一自身、風呂上りなのでもう一方の手には自分のための缶ビールが
握られていた。一瞬、純一が何か言いたそうに立ち止まり、
涼子と目が合った。
「?」
「涼子、キスマークついているぞ」
兄の不用意な一言に、涼子はリアクションを忘れた。
「え?」
「ま、前に進んだと言うのは良いということかな?で、相手は誰だ?」
「飲みすぎじゃない?」
涼子はそうとぼけた。今日は圭介とデートだったことは
家族の誰もが知っている。
「そうだな、他の男に走るほどお前器用じゃないから…」
「どういうことよ?」
「ケースケは本気だってことだよ」
「だから悩んでいる、ということよ」
「相談に乗ろうか?」
「兄貴も和美にも圭介に筒抜けになるからだめ。意味なし」
純一がにやりと笑った。つい今朝までは「原島」と
呼んでいた筈だったのに、今は圭介と呼んでいる事に気付いたからだった。
「へいへい、おやすみ」
純一は頷くように部屋を出て行った。
純一が出て行った後、鏡で確認すると涼子の肌には情事の後が残っていた。
そのアザミ色の痕跡がいっそう涼子の混乱に拍車をかけた。
混乱の原因は、涼子が確かに圭介を愛し始めていることにあった。
(夏の章・完)
どうにかこうにか、日付が変わる前に夏の章・終わりです。
秋の章はただ今執筆進行中です。
ではおやすみなさい。
乙です、若さ故の切なさですな…
読み返したらタイプミス発見。
失礼しました、訂正します。
>>796の2行目
雨の匂いは心を落ち着けされてくれる。
→雨の匂いは心を落ち着けさせてくれる。
>>797の12行目
「兄貴も和美にも圭介に筒抜けになるからだめ。意味なし」
→「兄貴は和美にも圭介にも筒抜けになるからだめ。意味なし」
あとはないと思うんですけど…
日本語としては「落ち着かせてくれる」が正しいと思うのだが…
>>801さま
ご指摘の通りです、ありがとうございます。
訂正の訂正なんてみっともないですが、
「落ち着かせてくれる」と訂正させてください。
(゚д゚)ウマ-
ここまで保管しました。
他スレの過去ログ保管依頼があったので検討中。
>>藤原忍さま
どんな執筆者だって誤字脱字をします。
出版物の場合、先に校正が入るから目立たないだけです。
気にせずにどんどん訂正を入れてしまってください。
保管サイトはこちら。
http://novels2ch.s6.x-beat.com/
SOTさんまだかな……右手が疲れた(*´Д`*)ハァハァ
>>保管サイト担当さま・読者さま
いつもありがとうございます。
誤字脱字・日本語がおかしい、などなど指摘してください。
(と皆様に頼ってしまって良いのかしら、と思うときもありますが)
一つ一つが勉強だと思っていますので、どんどん鍛えてやってください。
自分としては誤字脱字などは読み手さんにとって読み辛いだろうな、
と思っておりますので、見つけてしまうとやはり恐縮してしまいます。
推敲しよう
捕手
作家の皆さん、待ってますよー
推薦する作家さんとか言ったら少しは書いてもらえるようになるのかね?
それとも逆効果?
推薦された人はやる気でるけど、されない人がいじけたりしない?
いろいろなご意見があるようで…。
他の方のご意見も伺いたいですね。
書き手の方の腹を割ったご意見とか。
読者さんがいる、待っているというのが私としては幸せなので…
誤字脱字や推敲しろというご意見も読まなくては
出てこないっていうのがありますから。
ちなみにこれでも推敲しています
…だからミスを発見すると恐縮しちゃうんです。
ひたすら長い秋の章に戸惑っている藤原です。
完成分だけですが…。
秋の章
あの海の日以来、二人の時間は電話だけに限られた。
圭介は仕事が忙しくなり、色々な仕事を任せられるようになったのか、
休みの日もあってないようなものだった。それは涼子も同じで、
店舗開発部へ提出する定期レポートのために時間を費やすことが多くなり、
8月はレポートと仕事の両方に忙殺された。
ホームセンター事業は夏のシーズン時は忙しいの一言に尽きる。
6月から9月初旬にかけての売り出しキャンペーンは枚挙にいとまがなく、
加えて夏休みと言うことでアルバイトやパートが休みを取るので
社員はそのカバーに入らなければならない。社員は文字通り目の回る
忙しさなのだ。
しかし、9月のシフトは8月の休めなかった分も含め、少し余裕がある。
会社では夏季休業を6月から10月に分割することを推奨している為、
涼子は家族旅行の予定を組んで連休を取得した。
毎年、夏に家族旅行するのは来生家の恒例行事だった。
共働きだった来生家には毎年の約束がいくつかある。
その一つが夏の家族旅行なのだが、今年は涼子のスケジュールの関係で9月になった。
一泊二日の旅行は、近場でのんびりと過ごすのが通例で、
今年は父の会社の親睦会でリゾートホテルの招待券が当たったので
車で2時間ほどのその海辺のリゾートホテルに決定した。
仕事の関係があるので両親は先に電車で向かい、兄の車を借りた涼子は
本部にレポートを提出し、本部での仕事をしてから同じく出張帰りの兄を
駅で拾ってそのホテルに向かった。
「お、白亜の地中海、のイメージなのかなぁ…」
日中は夏の日差しのような陽が当たるが、朝夕はやはり秋の気配がする
日差し。その日差しに照らされたホテルはなかなかコンセプト通りの建築に
仕上がっていた。
「夏のエメラルドの海だったらもっと良かった?
でも夕陽に照らされている海も素敵よ」
そう言って車のロックをかけた。
「来生なのか?」
不意に声をかけられた。声をかけてきたのは長身の男だった。
涼子にはこの男に見覚えがある。背格好は違うが、兄の中学・高校時代の
友人で森崎という男だ。
「おう、森崎」
「あ、悪かったかな?彼女とデート?」
純一と涼子が同時に噴出した。
「お前、覚えてない?」
「え?」
「妹の涼子だよ。ホテルの宿泊券が当たったから家族で来たんだ。お前は?」
「涼子ちゃん?」
「お久しぶりです」
涼子は頭を下げた。
「見間違えた。…おれは仕事。これからここでパーティがあるんだ」
「お疲れさん」
「後でラウンジで一杯どうだ?今日は俺もここに泊まるんだ」
「いいなぁ。じゃぁフロントに声をかけてくれ。話を通して置くから。
まだ部屋がわからないんだ」
「おう、後でな」
森崎はそういうと足早にフロントに走っていった。
※ ※ ※ ※
ホテルの部屋は家族で泊まれるようにとベッドルームが二つ、
リビングが一つという豪華な部屋だった。バスルームも二つ付いていて、
なかなかのものだった。
が、部屋全体を見渡す間もなくシャワーを浴びてから
純一も涼子も盛装した。涼子は相変わらずスカートがはけないので
スーツ姿にネクタイまで締めてボーイッシュな盛装である。
ポケットに飾られた花のプリントのハンカチが女性らしさを漂わせていた。
「時間、早すぎるって」
「兄さんは満腹じゃないの?」
「あとラーメン一杯くらいかな」
その言葉に涼子は笑う。食事を終えて部屋に戻る途中のことだった。
「だって6時半じゃないとレストランの予約が一杯なんだっていうし」
「前もって予約しないからだよ」
前日、7時からの予約を頼んだが、6時半しかあいていないというので
一家はそれを受け入れた。
「はいはい、言わないの」
涼子が間に入る。家族で盛装してレストランというのは
久しぶりのことだった。時間は早かったが、料理も満足行くものだったし、
何より家族全員が楽しい時間を過ごせたことは良かった。
「あら、素敵なお嬢様」
母がおどけて涼子を褒める。
「ネクタイ曲がっているけどな」
父が笑いながらそう言った。
「やぁねぇ、早く言ってよ」
廊下を歩きながら急いで直す。パーティ会場と同じフロアなので
先ほどから華やかに着飾ったドレス姿の女性や、スーツ姿の男性が
行き交っていた。もうお開きになったのか、それともまだ続いているのか。
7時半を過ぎているのでまだ半ばかもしれない。
「じゃぁ私たちは売店に寄るから」
「おう」
父と兄は部屋に戻り、涼子と母はロビーで開催されていた
小さな花の個展にため息をつき、ロビーで買い物をした後部屋に戻ってきた。
「あらま」
父はまだリビングで起きていたが、兄はベッドの中で高いびきだった。
「もう、そろそろ8時半なのに」
森崎との約束は8時半である。母と涼子が純一に声をかけたが、
もう夢の中だった。
涼子が仕方なく、約束のラウンジに行った。
「あれ、涼子ちゃん?」
「兄貴は寝ちゃって。ごめんなさい」
「出張だったから、疲れちゃったんじゃないのかな?」
「みたいです。本当にごめんなさい」
「いえいえ。何か飲む?」
瀬戸内の多島美が望める階上のラウンジは客も少なく、落ち着いた雰囲気だった。
森崎はカウンターに座っていた。
「じゃぁ、ジンフィズを」
家族との食事ではワインを飲んだので、口当たりが良いものを
飲みたくてそれを頼んだ。
森崎がバーテンダーに注文すると席を立とうとして、思いとどまった。
「高所恐怖症だったっけ?」
涼子がためらいながら微笑んだ。
「そんなことまで話したんですか?」
「高所恐怖症を治すためにジェットコースターに乗せたら
これがフリークになったって言う話は聞いているよ」
「もう」
「最近は、乗った?」
そういわれて首を振った。遊園地に行っても、
コースターに乗ることはない。森崎は隣の席を勧めると
椅子に座りなおした。
「仕事、忙しいですから全然」
「今何しているの?」
「ホームセンター・ピースの南野店勤務です。DIY担当です」
「?あそこは大卒女子は社員採用で本部勤務だと思ったけど」
「店舗開発を希望しているんです。それで現場の仕事を覚えたほうが
良いという助言もあって。うまくすれば4月から本部勤務ですけど」
「そうかぁ。ピースの仕事は厳しいからなぁ。…ウチでも仕事が
ほしいんだが、プレゼンで撥ねられるんだ」
森崎は森崎工業グループの御曹司である。地元では造成から
建築・解体まで請け負うのでなかなか大きな会社だった。
「勉強しているんだよね、あれこれと」
「社内競争も凄いんですけどね」
「でも…思い切ったことしたなぁ、大卒女子で現場に出るなんて」
「父は本部だと思っていたからカンカンでした。
でもアタシの希望を聞いたら納得してくれて。現場を知らない人間に
店を建てられるかって言われたら、二の句が告げないですもん」
「立派だなぁ…。俺はすぐデスクワークだったから…見習わなきゃ」
「何をおっしゃいますか。私だってレポートやら課題やら、
それをパスしないと本部は遠い道になるんですよ。
毎年開発に入れるのは二人、とか。入っても残るのは難しいし」
「凄いなぁ」
「ちょっとグチになっちゃいましたけど。
森崎さんは今何をしているんですか?」
「親父の下で見習い中だよ。まだまだ、だけどね。
今日は取引先のパーティで親父の代理なんだ。
知り合いばっかりのパーティだから俺でも代役が務まるわけ」
「ご謙遜」
「涼子ちゃんは建築に興味があるから店舗開発希望なの?」
「うーん、ちょっと違うかな。私は家族で笑顔になれる店にしたいだけ。
ホームセンターというと実用品ばっかりじゃない?
実用品を買う店だから、毎日来ても楽しくなるような店にしたい、
そういう店を作りたい…と言うのは贅沢なんだけど」
「へぇ。で、具体的には?」
「企業秘密です」
涼子が笑った。森崎がくすくす笑う。
「なかなか口が堅い。じゃぁプライベートは?」
カクテルが運ばれてくる。
「純一は涼子ちゃんのことは絶対紹介しないって言っていたから
今日がチャンス、と思うんだけど」
「森崎さん、相変わらずストレートね」
「カルーく流してくれたね」
「何も話していないんですか?」
カクテルを一口飲んだだけで涼子はそう言った。
「涼子ちゃんが東京の大学に行った、戻ってくるという話は聞いたけど、
それ以上は聞いていないよ。あ、半年ほど前に会ったときは
紹介しないって拒否されたし。彼氏がいるのかって聞いたら
今はいないとは聞いたけど」
「飛行機事故であっけなく。2年前の春です」
「悪いこと聞いたかな」
「いいえ。立ち止まることが嫌いで、少しでも良いから前に進め
と言う人だから、少しづつでも過去にしていっているんですけどね」
「辛いね」
「でももう落ち着いてきたんで」
「全然そういう話しなかったな、純一は」
「私がいなかったからでしょうね、きっと。殆ど東京にいたし、
こっちに帰ってくると事情を知っている同級生が毎日のように電話くれたり。
家族が話をするよりも友だちが支えてくれたんで」
「今はプライベートは充実しているの?」
「返事に困りますね。会社の課題のレポートに追われて
ヒーヒーしていますよ。その準備と仕上げで殆ど休みが潰れています」
また森崎は笑いながらカクテルを口にした。涼子もジンフィズを口にする。
もっと辛いほうが涼子の好みなのだが。
「森崎さんはどうなんです?学生時代はプレーボーイだったと
聞いてますけど」
「え?」
「女子の人気が高いって」
森崎がくすくす笑う。
「高校までは真面目一辺倒だったけどね。大学に入って
2,3人と付き合ったけど、どうもしっくりこなかったから自然消滅したよ。
純一、他に何か言ってなかった?変なこと言ってないだろうな」
「そうやって私をダブルスパイに仕立て上げるんですか?」
これには森崎が笑った。
「うまい言い回しだな。参った参った」
森崎との会話は、半分が冗談のようなやり取りで笑わせてくれる。
「ね、涼子ちゃん、今はフリーなの?」
「一応、フリー…かな」
「一応、ってどういうこと?」
「う…ん、気になる人に凄く酷い仕打ちをしたのね。
それでその人から連絡がない、連絡できないというのは…やっぱり脈なし、
なんだろうなと」
「酷いことしたって…?」
そこまで聞いて言葉をとめ、改めて良かったら、と言いなおした。
いつもは口にしないが、酒の勢いがあったのか、涼子はぽつりと話し始めた。
「南さん、というのが死んだ恋人で…もう辛くて辛くて
どうしようもない気持ちをその気になる人にぶつけてしまったのね。
凄く傷つけたと思う。南さんへの気持ちを、その人にぶつけちゃったから。
…で、とどめに3年経つまでは自分の中でけじめが付かないから
無理だって言ったのよね。酷い女」
「3年?」
「古いって言われても仕方ないんだけど、南さんが死んでから3年は
あの人と一緒に生きようと。…実はね、南さんが死んだとき、
死のうと思ったことがあるの」
「えっ?」
「でも色々考えていたら迷いに迷って。優柔不断な性格みたいで。
だから3年という区切りをつけたの。3年経って、まだ南さんのことが
好きでどうしようもなくて、死んでも良いと思うのなら
その時に自殺しようって。今は落ち着いたからそんなことは
考えないんだけど、でもやっぱり自分の中で3年は喪中っていう
考えがあるの」
「彼、そのことは?」
「知っていますよ。ずっと待っているから、立ち直るまで待っているから、
といわれたんだけど彼も自分の気持ちを殺しているみたいで。
結局、7月にそんなことがあって、電話が月に一度か二度くらい」
「会ってないの?」
「全然。謝ろうと思って連絡を取ったことがあったんだけど、
留守になっていて。こんな重たい女は多分…。向こうも迷惑だろうし」
「じゃぁ恋人候補に名乗りを挙げてよい?」
「普通はその彼とのことをアドバイスしない?」
森崎が笑った。
「君を口説くほうが面白い」
「簡単に口説かれる女じゃないぞ」
兄・純一がそこにいた。
「あ、起きた」
「お前が一人で行ったと言ってお袋がカンカンになって俺を起こしたんだ」
「男の話がご無沙汰だから森崎さんにふらふら〜と?」
「ならないっていっておいたんだがな」
「お前までそう言うか?涼子ちゃんに失礼だぞ」
「家族で来ているのに部屋にまで連れ込むほど節操のない男じゃない
といったら…親父に殴られた。『森崎さんに失礼だ』ってさ。
それ以前に約束すっぽかした俺を怒っているの」
「ご両親は涼子ちゃんのことを信じているのか…」
「慎重だからね。考えなし・覚悟なしに行動するわけじゃないから。
ある意味、無鉄砲な俺より信頼が厚い」
「よく言うわよ」
「それで?お前は手帳に森崎の名前を入れるのか?」
「…なんでこんな良い男が兄貴の友達なの?」
純一が迷わずデコピンを涼子に突っ込んだ。
森崎が二人を見ながら苦笑する。二人のやり取りはまるで漫才だ。
「でもま、男の話がないと言う意味では心配しているのは確かだな。
森崎は良い男だぞ。俺が保障する」
「次から次へ男を取り替えるほど器用な女なら家族も苦労しないのにね」
「確かにな」
「兄貴がけしかけてどうするんだ、おい」
「こいつは特殊なの」
「やぁねぇ、そういう言い方」
そう言いながら残りのジンフィズを口にした。
「バトンタッチ」
「おう」
涼子と席を替わる純一。
「送っていかなくて大丈夫か?」
「え?」
「涼子ちゃん、酔っているみたいだけど」
「お前そんなに飲んだ?」
「フィズ一杯。それからさっきのワイン」
「じゃぁ大丈夫だ。一晩でボトル半分空けても平気な奴だから」
「ワインボトル?」
「ウィスキーボトル」
森崎の言葉を涼子が訂正する。
「わが家の異端児。酒に強い」
「ねぇ、その言い方、あたしがとてつもなく強い女に聞こえない?
男の話と良い、酒の話と良い…」
「節操を知らない尻軽女とどっちが良い?」
「わが家の異端児の称号のほうがまだましか」
涼子が納得する。
「ん、酔ってないから大丈夫。頭のほうも大丈夫」
「じゃぁお先に。おやすみなさい」
涼子は先に帰っていった。
「真面目に口説きたいな」
森崎はふとそう言った。
「そうしたら…来生が『お兄様』か?」
「あほ」
純一が笑った。
次回は手直しがはいってからまた近日中に。
なかなか進まない涼子ちゃんストーリーに
作者の精神状態は鬼畜と化しています。
(単に自分が思うように表現できないだけのことなんですけどね)
乙っす。
風邪っぴきで死亡してました。
死んでた分仕事まきかえすのに必死でまだ書けそうにありませんが
また挑戦したいと思います。推薦されなくてもw
保管サイトに、他スレの作品+新規投稿になる続編を保管しました。
以前に「糸」を書かれた水戸っちさんの作品で、
保管はご本人の依頼によるものです。
よろしければご一読ください。
>>藤原忍様
ゆったり、ゆったりいきましょう。
他スレの保管などせず、さっさと保管しろとお怒りかもしれませんが、
今宵はご勘弁を。
>>マルチネス様
お久しぶりです。
無理せずに時間があるときに書き進めてください。
続編をお待ちしております。
保管サイトはこちら
http://novels2ch.s6.x-beat.com/
>>保管サイト担当さま
ゆったり、ゆっくりですね…
愚痴になって失礼しました。ありがとうございます。
保管作業は大変かと思いますのでどうぞご自分のペースで。
>>マルチネスさま
今シーズンの風邪はぶりかえします。長いです。
だからくれぐれもお体には気をつけて。
続編をお待ちしております。
舞ちゃん…大丈夫ですよね?
>>828 どうも。作品しっかり読んでますよー。イラつくの分かります。
大量投下するのってエネルギーいりますよね。
自分はいつも途中でどうでもよくなってきちゃうんで・・・。
>>保管サイト担当様
他スレで書いた作品も依頼すれば保管してくれるですか?
>>830 ご依頼がありましたら保管いたします。
直接の新規投稿も歓迎です。
保管サイトの下のほうにメールアドレスがありますので、
直接の新規投稿の場合はそちらからどうぞ。
>>all
サイト下部のカウンタがもうじき20000突破。
>>藤原忍氏
16日投下分はエロなかったけど
なんだかすごくドキドキときめいたよ!続き読みてぇぇ
>>保管係り氏
いつもお疲れ様でやんす
>>832様
ありがとうございます。
日々鋭意がんばりますです。
>>824の続きです。
※ ※ ※ ※ ※
休暇から少したった頃から、朝晩は急に冷え込み始めた。
同じように涼子の精神状態も穏やかではないが、
冷静に振り返る余裕も出てきていた。
先日、森崎と話したことは漠然と涼子の心の中に波を起こしていた。
圭介も森崎もいつも自分の身近な存在だった。
森崎は兄の友人で、涼子の記憶にある森崎はざっくばらんで屈託がない。
先日の印象も同じようなものだが、涼子が酒に任せて話してしまったことに
相槌を打ったものの、それ以上は深入りしなかったことである。
その距離のとり方は安心感すら与えてくれる。
兄が珍しくけしかけるようなことを口にしたのは驚きだったが、
夏以来、進展もしない、むしろ疎遠になったような圭介との関係は
兄にしてみればもう終わったことかもしれないという判断なのか。
しかし、判断するのは自分である。
森崎の距離のとり方は涼子にとって心地よいものであり、
兄によるとそれとなく今度二人で会えないかという話が出てきている
というのだから悪い話ではない。ただ、残業で直接先日の詫びが
できなかったのは気がかりだが。
どちらにしろ、はっきりしない圭介との関係は涼子の迷いを
増やしているだけだった。
※ ※ ※ ※ ※
圭介は仕事を終え、一人のアパートに戻ってきた。
ここ数日、仕事が忙しいので夕食は外食弁当の世話になっている。
あの夏の日以来、涼子のことを思い出せないくらい忙しい日々が続いていた。
ボーナス前後は住宅を買おうという動きが活発になる。
圭介の会社では夏のボーナス時、冬のボーナス時、そして1月、2月、3月に
物件が動くという法則がある。新入社員といえども、その法則を無視する
わけにはいかないので俄然、忙しくなる。涼子との関係を
何とかしようとは思うが、夜10時近くに帰宅するようでは、
自宅にいる涼子には電話しづらい。以前は会社の備品の買出しに
かこつけて勤務中の涼子に会うことは出来たが、最近は事務のアルバイトが
入ったので彼女の仕事になってしまってそうはいかない。
結局、思うように連絡できないまま、秋を迎えてしまった。
しかし、今日は本当に久しぶりに仕事が早く終わった。
終わったといっても7時近いので定時には程遠いが、アパートに戻って
一人で電気を点ける寂しさに言いようのない不安を覚えた。
家に帰って会話のない生活。
一人で明かりを灯す寂しさ。
留守番電話のランプさえ、最後に作動したのはいつか覚えていない。
少なくともここ2週間、涼子からの連絡はない。
圭介はもう一度時計を見た。午後6時58分。
今からなら、涼子が遅番シフトだったら会えるかもしれない。
圭介は衝動的に車のキーを握ってアパートを後にしていた。
車で5分ともかからない場所に涼子が勤務する南野店があり、
夜間の駐車場の出入りも自由だった。隣には24時間営業の
レンタルビデオ店がつい先日オープンし、元々あるパチンコ店と
3店舗で駐車場の境を取り払い、共有しているのでそこで待つつもりだった。
※ ※ ※ ※ ※
涼子は従業員駐車場を見渡し、自分の車があることを確認した。
朝停めた街灯の真下の駐車スペースに車はあった。
しかも、そこに森崎がいた。
「森崎さん?」
「仕事で近くを通ったものだから。電話だと時間を気にするし。
君がすぐ出てきてくれて助かった」
「今日は残業はないですから。あの、先日は失礼しました」
「何のこと?」
森崎はとぼけた。
「酔った勢いで口が滑って。私一人がしゃべっていたから」
「女の子はおしゃべりだと思うんだが」
森崎が苦笑した。
涼子は車の側にいる森崎に近寄った。
「まだ乗っていたんだ、911に」
森崎はそう言った。純一が大学時代中古で買ったこの車は
たまたまナンバーが911だったこともあって純一のポルシェとか
911と仲間内で呼ばれていた。
「まだまだ現役ですよ、あっ」
涼子は何かにつまづいた。
「おっと」
森崎はバランスを崩した涼子を受け止める。
涼子は森崎の胸に飛び込む形になってしまった。
「ごめんなさい」
「いや、大丈夫?」
森崎のタバコの匂いが涼子の記憶を呼び起こし、
バリトンが直接耳に入ってきて眩暈すら覚えてしまう。
森崎は思ったより小さな涼子の身体を受け止めながら片手で
背中に手を回し、片手で腕を支えた。
「ごめんなさい…」
涼子の声が掠れていた。森崎は涼子が体勢を整えるまで
手を添えていてくれた。
「今度連絡して良い?一緒に食事でも。ありきたりだけど」
森崎が鍵を渡しながらそう言った。鍵は涼子の手から落ちて
森崎の足元に落ちたからだった。が、涼子の手は震えていて
渡されたその鍵を落としてしまった。
「涼子ちゃん?」
「ごめんなさい、大丈夫ですから。気にしないで下さい」
「どうかした?」
鍵を拾い上げる涼子。
「仕事のことで頭が一杯で。ごめんなさい。…あ、森崎さん、帰りは?」
「向こうで車が待っているんだ。今日は仕事が残っているし」
「おかまいなく。大丈夫ですから」
「本当に?」
「ええ」
「じゃぁまた連絡するよ、それで良い?」
「え?はい…」
涼子はあいまいに返事して、森崎を見送った。
少し離れたところに、運転手が運転するセダンがあった。
森崎の姿を認めると、彼は車を降りて森崎のためにドアをあけ、
それから運転席に戻って車を走らせた。
去り際、森崎は涼子に手を挙げたような気がするが、
涼子はあいまいな笑みを残してのろのろと運転席のドアをあけた。
運転席に座ると、深いため息をついた。
一瞬だったが、森崎の体臭は南を思い出させた。
森崎のあのバリトンの声も。いや、正確には同じバリトンでも
森崎のバリトンはテノールに近い。南のバリトンを中間のバリトンとすると
森崎の声はそれより高く、圭介のバリトンは少し低い。
圭介…。
自分でストップがかかっていた。
森崎に抱かれたとき、自分の動揺を悟られたくはなかった。
何故動揺したのか。
涼子はもう一度深呼吸するとエンジンをかけ、それからいつものように
車を発進させた。低速ではもたつく感じがする「911」ではあるが、
それは自分の運転の癖かもしれない、と涼子は思いつつ駐車場を出た。
その涼子が店を出てきてから駐車場を出るまでの
一部始終を見ていた男がいた。圭介である。特に森崎とのやり取りは
軽いショックを覚えていた。
涼子と一緒にいた男に記憶はない。少なくとも涼子に話を聞く限り、
そんな話は出てない。というとここ2週間の話だろうか。
それとも涼子がずっと隠していた話なのだろうか。
何かにつまずいてあの男に抱かれる形になったのはわかった。
しかし、それがかえって自分の嫉妬の炎を燃やし続けている。
たったそれだけのことに腹を立て、嫉妬しているのは夕飯を食べていない、
空腹のせいだろうか。そう思い返して圭介は首を振った。
一番は声をかけられなかった自分の情けなさだ。
圭介は長い長いため息をついて、目を閉じた。
落ち着かないことには、この動揺した状態で運転は出来ない。
長い時間が必要だったかもしれない。しかし圭介に時間の感覚はない。
やっと自分の気持ちを押さえつけるとエンジンをかけ、アパートに帰った。
支援
今日はここまでです。
また来れるようだったら投下します。
(手持ちのストックを使ったのでちょっと苦しいです。
給料日前のお財布のようです)
>>839様
ありがとうございます。
リアルタイムで読んでいただけるとは、
うれしい限りです。
捕手
ほす
やっぱ個人のカウンタも付けた方が良いんじゃ?
カウンタ上がるとやる気でるだろうし。
もっと作家さんに書いてほすぃ。
時間の都合で秋の章の全部が投入できなかったらごめんなさい。
(問題の鬼畜になってしまった場面です)
>>838からの続き
シーンが変わります。
※ ※ ※ ※ ※
翌月、涼子の休みに合わせて圭介は休みを取った。
その日、朝一番で自分の車を整備工場に預けなければならなかったが、
それさえ済めば後はフリーになった。
涼子には10時半にアパートで待ち合わせをした。
あの日、圭介は自分の気持ちを落ち着かせてからアパートに戻った。
もう取り返しが付かないかもしれない、という思いは自分を激しく
動揺させていて、時計を見ると30分以上も涼子のいなくなった駐車場にいた計算になる。
自分への情けなさで落胆してアパートに戻ると、廊下の電球が切れていた。
不動産屋に連絡しないとな、と思って自分の部屋のドアの異変に気が付いた。
紙が挟んであった。
自分が出かけるときにこんなものはなかったので、駐車場に行ってから、
ということになる。部屋に入って折りたたまれた紙を広げたとき、
圭介はガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた。
システム手帳のメモ帳に書かれたのは簡潔な内容だった。
話がしたいので時間を取って欲しいこと、10月の休みがいつなのか、
4日ほどの日にちが書かれてあり、今日の日付と時間と涼子のサインがあった。
お帰りなさい、という文字で始まる涼子の文章は、
圭介に暖かなぬくもりを与えてくれた。
圭介が急いで涼子と連絡を取ったのは言うまでもない。
その約束の日が今日だった。
圭介は一駅先の整備工場に車を入れると、電車で戻るつもりだった。
しかし、所用があるからといって整備工場のスタッフが近くまで送ってくれた。
予定外に早かったが、涼子の車は指示したとおり、アパートの駐車場に止まっていた。
圭介は予め郵便ポストの中に鍵を置いて来ていたのでスペアキーでドアをあけた。
「ごめん、先に入っちゃった」
涼子はそう言いながらダイニングテーブルの資料に目を通していた。
「おう」
電話では、レポートの提出の為に設計図を読めるだけの
建築関係の知識が欲しいとも言っていた。
そのコーチを引き受ける、という口実でアパートに呼び出したのである。
本当は根掘り葉掘り二人のことを話していたいという思いもある。
「何をしているんだ?」
「資料整理よ。夕方からリサーチに行きたいから」
そう言われて、圭介の動きが止まった。
涼子は資料を仕分けしているようだったが、その足元の布が
ひらひらと揺れていた。
間違いなく、スカート姿の涼子だった。
「涼子…」
圭介はそのまま涼子を抱きしめた。嬉しい、の一言に尽きた。
しかし、と思う。
「圭介、御免、離れて」
圭介に抱きつかれて身動きの出来なくなった涼子はそう言った。
はっと気が付いて圭介が離れる。
「お前スカート…」
「いきなりそんなに、苦しいじゃない?」
二人の言葉がぶつかった。
「真面目に…」
「他の男に一番最初に見せたいとは思わなかったんだもの」
圭介の喉がからからに渇いていた。
「その…涼子…」
「それとも他の女を口説いた?」
「お前以外に口説くか?」
「だって…」
「あの時は流れで口説いたと思ったのか?」
「それが自然でしょう?」
「俺、暴れるぞ。そんなに根性なしに思えたか?」
「貴方の負担になりたくないだけよ」
「負担とは思っていない。何度も言っているが、俺は本気なんだ。
お前は本気じゃなかったのか?」
「そんな余裕ないもん」
「お前正直だなぁ」
圭介が笑った。
「ちゃんと付き合ってくれないか?それとも…口説いた男がいるとか?」
頭の隅に、あの街灯の下の男がいた。
「別の男に口説かれそうになったから、このまま口説かれても良いのか
圭介の真意を聞きに来たの」
涼子はそう言った。
「選択権はお前にあるだろうが」
「夏のこと、ちゃんと謝っていないし、この先の事もあるし」
「俺、お前を抱いて後悔していないし、幸せだったんだぞ」
不意に涼子の耳元で圭介はそう言った。圭介にしてみれば
ふざけただけのことだったが、涼子にはものすごい刺激だった。
圭介の吐息がかかるだけで全身に快感が走っていた。
「それに、何でスカートはいたんだよ?」
「ばか」
「涼子?」
「ごめん」
「耳まで真っ赤だぞ」
圭介はそう言って耳朶を口に含む。
「あっ」
涼子の口から小さな声を引き出した。
「嬉しい」
圭介は後ろから涼子に抱きついた。そのまま、耳から首筋にキスを落とす。
涼子の身体がふるふると震えて資料がテーブルの上に落ちた。
圭介はゆっくり涼子を味わう。
あの街灯の下の男のことなどどうでも良くなっていた。
服の上からでも伝わる涼子の体温がこの上もなく暖かく感じられるのは
自分の感傷のせいなのか。
そう思いながら涼子の耳から首筋を往復しながらブラウスに手をかけた。
涼子はそれをさせまいと圭介の手を押さえようとしたが、
圭介の腕を胸に押し付ける格好になって、それは余計に圭介を興奮させた。
「やめて…」
その言葉と共に涼子の身体から力が抜ける。
崩れ落ちかけた涼子を支えて圭介は涼子と向かい合った。
「ねぇ、返事は?」
圭介のバリトンが耳に響く。
「真面目に俺と付き合う?」
「せめて一緒に食事、くらいの関係に修復したいんだけど」
「でも今こんなことをしてるのに?」
そう言いながら圭介の唇が首筋を往復する。
「あれから、落ち着いたからこういうことをしているんじゃないのか?
スカートはいて」
そう言った後で、変化に気が付いた。
指輪が、なかった。
いつも涼子の胸元を飾っていたネックレスがない。南の指輪がない。
涼子の決意が見て取れた。
「少し、話してよい?」
「指輪も外したのに?」
圭介が指摘した。
「まだ怖いの」
「何が?」
圭介は涼子の手を取って奥の和室に導いた。
奥の8畳の和室にはコタツとベッドとキャビネットつきのテレビ、
それに整理ダンスしか置いていない。作り付けの本棚に仕事で使うらしい本が
並べてあり、製図用の机はLDKのほうに置いてあるのでそこはがらんとした
空間だった。
涼子をベッドに座らせると、ブラウスのボタンの続きに取り掛かる。
キスを落としながらの作業は、圭介を再び興奮させた。
「何の話?」
圭介はブラウスのボタンを全部外すと、涼子の足の間に跪き、
涼子と視線を合わせた。
「圭介と向き合うことにちょっと混乱しているの。それは…
やっぱりちょっと怖い」
「混乱ってどういうこと?話せよ」
圭介はそう言った。
いつもと同じ圭介に、涼子は安心していた。
あの夏の日、独りよがりになって、自分を見失い、それに巻き込んだ
圭介のことが心配だったからだ。しかし、今はその片鱗はない。
それだけは安心材料だった。
この状態の説明には困るのだが。
圭介は涼子がためらっているのを見て取ると、涼子にキスした。
それだけで圭介のスイッチは入ってしまったことがよくわかる。
涼子の唇に、喉に、首に、そしてキャミソールに隠されていない胸元に
キスを落としてゆく。
「ぁぁぁぁぁん」
「ここは?」
圭介がそおっとキャミソールの上から胸を撫でた。
「あ…」
その力加減に、涼子の下半身の蜜が溢れた。
そして改めて感じる。
この男がいとおしい。
一度っきり、そう思って圭介と関係を持ったが、今、冷静に思い返せば
圭介との関係を望んだ自分がいて、そしてその気持ちが今も続いている。
精神的にも肉体的にも、圭介のことをもう愛していた。
幼い頃から人に対してまっすぐに見つめる圭介を、涼子は愛していた。
圭介は再び首筋に唇に落とし、涼子はその優しさに身体が震える。
だからこそ、スカートをはいてネックレスを外したのではなかったか。
瞬間、南に気持ちが向く。
しかし、南のことをまだ愛しているというのに。
その事実に涼子はまた自責の念に駆られた。
そしてその事実は同時に涼子を混乱させていることも。
「涼子、お前今も南さんのことが忘れられないんだろう?」
圭介は耳元でそう囁いた。
「ん、そう」
涼子はそう言った。
「でも、誤解しないでね。私、圭介のこと…」
圭介は頷いて涼子の隣に座った。
「話してくれないか?」
涼子は小さく頷き、その混乱の原因を話し始めた。
南は大学4年に進級すると月に一度のペースで涼子の両親に宛てて手紙を
書いていたこと、その手紙の存在は涼子は全く知らなかったこと、
そして今年3月、会社の研修の前に父親からその手紙を見せられたこと。
一気に熱が冷めたが、圭介は涼子の話をじっと聞いていた。
南が両親に手紙を書いていたということは涼子は全く知らなかったから、
その衝撃は普通ではなかった。
その夜のうちに全部に目を通し、結局色々なことが頭を駆け巡って
苦しい夜明けを迎えることになったのは記憶に新しい。
泣けるほど消化していれば苦しくはなかったはずである。しかし、
泣くという感情を表に出せないほど涼子は苦しんだ一夜だったのだ。
その苦い想いが蘇る。
「南さんの本当の気持ちが書いてあった。いい加減な気持ちで付き合って
いないから、就職して一人前になったら結婚したい、いつかは両親に
挨拶したいって。だからアタシは、南さんにきちんと答えて
あげなきゃいけない、ちゃんと仕事して、毎日を精一杯生きなきゃ、
と思ったの。いつか南さんを越えて幸せになりなさいって父さんは
言ったんだけどね」
「…………」
「圭介の気持ちは嬉しい。素直に、喜んでいる自分がいるのはわかる。
でも、貴方が愛してくれて、その気持ちが真剣だからこそ、
南さんのことは余計に忘れちゃいけないと思うの。
私が幸せになると言うことが、南さんの望むことで、南さんの幸せなら…。
でも、貴方は南さんに会ったこともなくて、ぜんぜん関係ないでしょ?
貴方にまで南さんのことを背負わせてしまうのは…」
圭介はそこまで聞くと、涼子に強引にキスした。
「前に、言った筈だ。忘れなくてよいから。3人で一緒に幸せになれば
それで良い。思い出が生々しいのなら、そうするしかないだろう?」
圭介の優しさに、どっと涙が溢れた。南とのことは過去であると
もうわかっている。しかし、未だに南のことを「愛していた」という
心の傷が残っているのも事実で、同等に圭介をも愛しているという事実は
涼子の心の中で同じ比率を占めている。
順番などつけられないのだ。
「それが、混乱の原因か?」
涼子は静かに首を振った。原因はそれだけではない。
たまたま見てた
支援
「御免、それだけじゃないの。話してよいものか迷っているの。貴方には」
「それは俺が判断するよ。聞いてまずい話なら、俺は忘れるから」
「ありがとう…」
やっとそれだけいえた。
「御免ね」
「気にするな。俺とのことを何度も何度も確認するのは慎重と言う範囲を
越えていると思っているんだ。実は。だからお前には引っかかる何かが
あるんじゃないかってずっと思っていた」
「圭介のこと、大切にしたいから。…夏にはひどいことをしちゃったし」
「共犯、なんだろう?」
圭介はそう言ってウィンクし、涼子の肩を抱いた。
「…南さんと貴方に、似ている部分が多いのよ。それが混乱の原因だと思う」
「似ているって、どこが?」
圭介は疑問に思った。和美が見せてくれた写真では、
南良明は自分と似ているとは思えなかった。少なくとも容姿は。
「本質的な部分、かな。だから、同じようなタイプの人間に惹かれるのは
仕方ないとしても、妙なところで似ている、と言うのかな…」
涼子は言い澱んだ。
「そういう部分、俺に直して欲しいと思っている?」
「どうして?」
涼子は即座に答えた。
「私そんなこと一度も…」
それで涼子は次の言葉を飲み込んだ。
「だったら、良い。そこまで目が曇っていたら重症だと思っただけだ」
「そこまで重症だったら後追い自殺でもしていると思うけど」
涼子は深呼吸した。
「全部、吐き出してみろよ」
「ほら、それよ」
「え?」
「全部受け止めようとするっていうのかな、大丈夫だよって。
俺はそれくらいで倒れる器じゃないよって言うようなこと、口にするところ」
「ふぅん、それから?」
>>853 ヘア解禁様、助かります。
「…………」
「それだけか?」
「違うけど」
「じゃぁ言えよ。全部白状して楽になれ」
「きっと怒る」
「怒らないから」
涼子は黙った。
「夏、貴方に抱かれたときね…ゾクゾクしちゃったのよ。
たった一回だけだったんだけど、今でもゾクゾクしちゃっているもの」
「は?」
「私のあの時の声を聞きたがるのも、人が感じているのを喜ぶのも、
…独りよがりのセックスをしないっていうの、そういうところ」
「ばか」
圭介は真っ赤になってそう言った。
「口にする言葉も似ているの」
「男は殆どそういうことで喜んでいるんじゃないのか?
それに…他にどう表現するんだ?」
「だって…どういうのが標準、ってほど経験がないもの。
南さんと貴方しか知らないんだし、共通点が多いとちょっと戸惑っちゃう」
「それが原因?」
「似ているから…混乱するのかな?」
「考えすぎるから混乱するんだろう?」
「圭介?」
「お前を見ていると、一人で苦しんで感情を表に出さないようにって
やっているだろう?それ、必要ないと思う」
圭介はそう言って涼子の耳朶を指で愛撫する。涼子は堪らなくなって、
少し身体を捩った。
「もっと感情を外に出してもおかしくないと思うが。泣いたり笑ったり、
南さんのことを話したり。お前の中で実際に南さんがいて、同時に俺がいて、
っていうことを客観的に理解できていると言うのは少し前進したんだと
思うんだけど。俺が不思議なのは、どうしてお前の中に俺と南さんの
二人いるってことがだめなわけ?」
不意を突かれて涼子は黙った。
「涼子はさ、南さんのことが好きで、その事実を過去のことにしようと
努力して苦しんでいるんだろう?この2年、ずっと頑張ってきて、
少しづつ過去になってきているんだろう?」
「ん、それはそう」
「俺の存在は?」
「……好き」
「俺はそれで充分だと思う。南さんのことが過去になってきているから
俺のことを考える余地ができてきたんだろう?だから俺と南さんが
似ていると言って混乱する」
「ん、そう」
「南さんのことは自分の中で一区切りついている以上、あとは時間しか
頼るものはないと思う。少しづつで良いから。それが一つ」
「ん」
「それから…、俺と南さんが似ているっていうの、あれな・・・」
「ん?」
耳朶への愛撫が、指から唇に替わる。指が真っ直ぐ下に下りて、
涼子の胸元で止まった。
それだけで、涼子の息が乱れた。
「ノーマルに女が好きな男の中で、女の喘ぎ声が嫌いっていうのは…
少数派だと思うぞ。それに…相手に気持ちよくなってもらいたいと思うのは
…普通だと思うんだが」
耳元でそう囁くと、涼子にキスをした。
「あのね…」
涼子の声が切れ切れになる。圭介は喉に唇を落とし、涼子の言葉を封じる。
「ありがとう」
震える声で涼子はそう言った。本心だった。
「他の男に口説かれるなよ」
圭介はそう言って涼子を押し倒した。
圭介の手が、涼子のキャミソールの上で遊んでいた。
その手は涼子を悩ませていることは確かだった。
圭介の指には、下着を通しても触れる涼子の胸の突起が捉えられていた。
そこを指が往復すると涼子は目を閉じたまま、眉間に皺を寄せ、
ふるふると息を乱す。
圭介の自制心は限界だった。
喉元にキスをしながらキャミソールの前をはだけると、
容赦なく露になった胸にもキスを落とした。
途端に涼子の身体が跳ねる。
「まだ大事なところにキスしていないのに?」
「やん」
涼子は真っ赤になるが、背中に差し込まれた圭介の手は下着のホックを
あっけなく外してしまい、圭介は涼子の身体を押さえるように、露になった、
そのツンとたった乳首を口に含んだ。
「はぁぁぁ・・・」
涼子が吐息を漏らした。
もう一方の乳首は掌でもてあそぶ。
涼子の両手が圭介の頭に伸びるが、圭介が舌で味わうたびに
涼子の指が震えて力が抜けてゆくのがわかる。
「あっ」
圭介に少し強く刺激されて涼子の身体が跳ねた。
圭介の温まった掌が涼子を身悶えさせる。
圭介のキスがあちこちに落ち、耐えられなくなって身を捩ったときには
涼子の背中にキスが落ちた。
「はぁぁぁん」
ぴくりと身体が震える。
圭介はその一瞬を見逃さないように、スカートを脱がせながら
背中にキスの雨を降らせた。
涼子は背中に弱い。身体を丸めて快感をやり過ごそうとしたが、
圭介に阻まれ、ベッドの上に寝かされてしまった。涼子の身体を
隠しているのは自分の両手でしかない。
「お前…」
涼子が圭介と目を合わせたのは一瞬で、その後は恥ずかしいのか、
真っ赤になって視線を外した。
涼子の腕の下でははっきりと頭を起こした胸の突起が色づいていた。
圭介の腕に、力が入った。涼子に本気のキスをすると、片手を胸に
落とそうとしたがそれはかなわなかった。
涼子は自分から本気のキスを、圭介に贈った。
圭介の脳髄をかき回すような情熱的なキスだった。
「んぁ」
圭介の喉から、小さな吐息が漏れた。涼子はそのまま、圭介の首筋や喉に
唇を這わせた。同時に、はだけられた胸に時々キスをして。
脱ぎかけの圭介の姿は妙に色っぽい。
「誘うなよ」
「さっきのいたずらのお返し」
「ここは喜んでいたぞ」
そう言って涼子の乳首を口に含んだ。
途端に、涼子の体が仰け反った。圭介の目が優しく笑って、
反応を楽しみながら自分も服を脱ぎ始め、涼子を悩ませた。
圭介は順番に涼子を責めた。首、胸、あの夏の時と同じように、
しかしそれ以上にゆっくりと。
圭介はぷっくりと立った涼子の乳首を口に含む。それだけで涼子の身体が
震える。手のひらにあるふくらみは暖かく、その弾力と肌触りは
圭介の指を喜ばせる。
鎖骨から首のラインにかけては圭介が執着する女性の肉体的条件の
ひとつだった。
男のラインはどうしても骨ばっていて首が太くなってしまう印象を
与えるが、女性のそれは男性より骨が細いせいか華奢に見えるし、
ライン自体が滑らかだった。そのラインが女性を最も
女たらしめているのではないか、と思うときがある。
そのラインにキスして、体勢を変えようと体をずらしたときだった。
涼子がやんわりと圭介を拒否して体をずらし、はっきりと男の体を
示しているもう一人の圭介を、口に含んだ。
「おお…」
圭介は小さな声をあげた。圭介は体をずらして横向きになって涼子から逃げる。
しかし涼子はやめない。口に含んだまま、舌の愛撫は圭介を悩ませる。
「やめろ…」
「イヤなの?」
涼子はそうきいただけでもう一度口に含んで続けた。
返事に困った。
女性経験は豊富とはいえないが皆無ともいえない。何度か相手に
願ったこともあったが、相手が拒否したこともあって
それ以上は強いたことはない。
付きあいでそういう場所に行ったこともあるが、商業的な
流れ作業の処理に、性欲はわいても愛情は湧かなかった。
そういう意味では、自分から口に含んだ涼子に軽いショックと、
同時に愛おしさを抱かないわけがない。それ故に圭介の快感を倍増させる。
涼子の暖かい刺激は耐えられないほどの苦痛とも言える快感を強いる。
圭介はたまらなくなって身体を横たえ、今までにないほどの強い刺激に
理性を奪われてゆく。
「涼子やめろ」
辛うじて、そう言った。それ以上は理性が耐えられない。
このまま快楽をむさぼりたくなる。そうなることは簡単だったが、
そこまでする涼子の精神状態が不安だった。
涼子は、顔をあげた。
「お前の方が嫌なんじゃないのか?」
「貴方にも気持ちよくなって欲しいの。駄目?」
「いや、そうじゃなく…」
圭介の言葉には明らかにためらいがあった。
「こんなこと…昔の彼女にさせたことはなかった」
圭介の正直な一言だった。
「でもして欲しかったんでしょう?」
「本音はね。でも…言えなかったし、彼女は嫌っていたから」
「嫌々やってるわけじゃないよ。圭介にも気持ちよくなって欲しいだけ。
貴方が嫌ならやめるけど…。圭介は女の子に触ってもらったことないの?」
「えっ?」
涼子はもう一人の圭介をそっと撫でた。いとおしむように、
ゆっくり撫でて、それから両手でそっと包む。
圭介はその行為に震えていた。体の感覚だけではない。
そこまで愛しんでくれる涼子の気持ちに震えていた。
「経験、ないわけじゃないでしょう?女性を喜ばせる方法は知っているんだから」
確かに、圭介はテクニシャンだった。少なくとも、独りよがりのセックスはしない。
「あるが…ほどほどってところだ」
圭介はそう言った。隠すつもりはさらさらない。
一方の涼子の両手はゆっくりと圭介を捕らえ、撫でていた。
「自分が嫌だったから?それとも正直に言わなかったから?
変なところで意地を張るからよ」
涼子はそう言った。圭介は昔ながらの男性気質、というのだろうか、
自分の気持ちを押し殺すときがある。それが時に誤解を生み、
亀裂を生むこともある。
援護
涼子の言葉は図星だな、とちらっと思ったが、その先を考えている余裕はなかった。
快楽をむさぼりたい。涼子と愛を交わしたいという欲望が身体を震わせている。
涼子の指はもう一人の圭介の反応を見ながら確実にマッサージしていた。
「私には正直に教えてくれないの?」
「涼子…」
「私が欲しいのは貴方の身体じゃないわ。貴方の心が欲しい」
圭介はその言葉をかみ締めていた。
「そうやって触ってくれるのも気持ち良いし、口に入れてくれるのも気持ち良い」
「じゃぁどうするのが一番気持ち良いの?ちゃんと教えてね」
涼子はそう言って、圭介を口の中に招き入れた。
「ぁぁぁぁ」
圭介はゆっくりため息をつくと、涼子の髪の中に指を入れた。
圭介の反応は正直だった。気持ち良いときは涼子の髪をぐしゃぐしゃに
撫で回し、ポイントに当たると両手が止まって指先に力が入った。
同時に圭介自身のそれが、ドクドクと鼓動を始める。一層硬さを増し、圭介は腰を震わせる。
涼子は敏感なその部分にキスを落とし、舌を這わせ、圭介から理性を
奪うと口の中でゆっくりとその欲望を味わう。
舌を絡ませるごとに熱くなる圭介の欲望は、そのまま圭介の気持ちだと
思いたい。今にもはちきれそうなその欲望は、自分に向けられた愛情だと
信じたい涼子がそこにいた。
だからこそ、余計に味わいたくなる。圭介が奥底で育んだ愛情と形として。
圭介は一番敏感な部分を舐められて腰が震えた。このまま、果てたいとも
思うがまだこの快楽を手放したくはなかった。涼子が自分の気持ちを
こういう形で示してくれたことは予想外だったこともあって、
自分の気持ちを掻き立たせていた。こんなにまで自分を求める女に、
愛おしさを超えて一つになりたいという欲望が走る。
その想いが、圭介をますます掻き立たせている。肉体の限度はあるが、
精神の限度はない。もう既に肉体は終わりを告げようとしていたが、
心の中の自分の気持ちは終わりがない。
「あう…もう…」
圭介の身体が震えた。圭介は、登りつめてきていた。感覚がそこだけに
集中してくる。
「涼子、やめろ・・・」
しかし涼子はやめなかった。圭介は涼子の頭を何とかしようとしたが、
逆に圭介の両手首を掴むと、涼子は抵抗を封じた。涼子の意思がわかると
圭介は観念してそれ以上は抵抗しなくなり、涼子は手を放した。
涼子は圭介の足の間で頭を動かしていた。
「出ちゃうよ」
「ん?」
聞こえなかったのか、涼子が顔を上げた。その姿にどきりとして
圭介は身体を起こし、涼子の身体を押し倒した。
「嫌だった?痛かった?」
「いや・・・」
どうして自分が涼子を押し倒してしまったのか、わからなくなってしまっていた。
涼子は戸惑う圭介を知ってか知らずか、再び圭介を押し倒す格好になると
圭介の乳首を逆に舐めた。手はそのままゆっくりともう一人の圭介と
遊んでいる。途端に、圭介の身体がビクリと動いて涼子を抱いている腕に力が入った。
「考えられないようなことをするなよ」
圭介が顔を歪めた。もう苦痛に近い快感が襲っている。
「こういうことの最中に複雑なことを聞くからでしょう?圭介の心と身体が
欲しいからこういうことをしているのに邪魔しないの。…私のことが
嫌いなら話は別だけど」
「だから、そういうことじゃなくて・・・」
涼子は身体をずらして固く大きくなった圭介を口に含んだ。
「ああ・・・」
舌で刺激をしながら喉の奥まで入れると、ゆっくり手と口で圭介と戯れる。
圭介の身体が震え、腕に力が入る。もう終わりが近いことを示していた。
やがて涼子の口の中で圭介は熱を帯び、高みに到達した。
「ぁぁぁぁぁ」
圭介は甘い吐息とともに果てた。
「あ、出せ」
圭介が慌てて枕もとのティッシュを差し出すが、涼子はもうそれを
飲み干していた。
「飲んだの?ごめん。でもありがとう」
圭介は本当に嬉しそうに涼子を抱き寄せた。
「今まで何人も付き合っていた人がいたけど、こんなことをしたのは涼子だけ」
「またウソを言う」
「本当だよ。俺、女の子の喘ぎ声の方が好きだから
いつもさせなかっただけなのかな?う…ん、思い出せない。
誰かさんに頭ボケボケにされたからかな」
「誰かさんが意地悪するからよ」
「俺が?いつ?」
「夏。結局貴方は1回いっただけなのに、私だけ何度もいかされて。
で、貴方私のこと見て楽しんでいたでしょ?」
「あの時、もうこんなチャンスはないと思って…今考えたら酷く責め立てたなと。
だからお前から連絡来ないのかと思って…」
「自覚しているのなら良いわよ。…少しは私にも楽しみと言うものが
あるんだからね」
「俺、下手くそ?」
「バカ。…圭介の声、好きだから」
「俺も涼子の声が好き」
そう言っていきなりスリットの中にある花芯に指を添わせ、乳首を口に含む。
突然のことで涼子は声も開けられず口をパクパクさせたが、
花芽はもう頭を起こしており、指には女の潤いが絡んでくる。
時折圭介の耳に聞こえる鼓動は早く、舌の上にある突起ははっきりと
自己主張していた。
「あ…いきなり…」
圭介が嬉しそうに舌の上にある突起をついばむ。指に絡む愛液は
もう充分すぎるほどで、もう指に絡むという範囲を越えている。
指を落とす前からもう涼子の体は蜜を溢れさせてる。
その事実に圭介の心臓が高鳴る。
「ぴちゃぴちゃになっているよ。自分でもわかる?」
「そんなにしないでよ・・・」
体を動かして逃げようとするが、圭介はそれを許さない。
涼子の気持ちが嬉しくて嬉しくて仕方ない。蜜をたたえた体がいとおしい。
自分には望めない女の体の柔らかさや華奢なラインはいっそう欲望を
駆り立てる。気持ちが通じた今は余計にあの声を聞きたいとも思う。
初めて自分の腕の中で果てた声を聞いたとき、言いようのない
暖かな感情を感じたのだが、逆に不安が残ったのは確かだった。
「少し休ませて…恥ずかしいから…」
「こんなに喜んでいるのに?」
「ああっ、もっと、って言ったほうが良いの?」
涼子が気をそらそうとそう言ったが、圭介の指の動きに身体を封じられ、
唇を噛んだ。
「やめて…早すぎる…」
涼子の言葉は耳に入らなかった。嬉しくて嬉しくて仕方のない気持ちに
歯止めはかからない。今はあの時とは違って、涼子の身体も、
心も圭介の腕の中にあった。そのまま指で涼子を責めあげる。
圭介自身を待ち焦がれる熱を帯びた蜜壷も自分の手の中にある。
圭介の愛撫に頭を起こした花芽はぷっくりと起き上がっている。
この幸せを手放したくはなかった。
「これは俺の楽しみなの」
「あ…あっあっ…はぁぁぁぁぁん」
圭介の指攻撃に耐えられず、涼子は声をあげてしまった。
そのはしたなさに、恥ずかしいとは思うが、それよりも今はその刺激に
耐えるほうが先だった。
後方支援
>>861様 支援感謝します。
途中なんですが、今日はここまでに…。
夜また来られたら来ます。
マルチネス様、ごめんなさい。感謝します。
投下したいんですけど、タイムリミットなんです。
規制も厳しいので(このレスも規制されてしまった…)
20レス近くも使えば当たり前か。
そろそろ次スレたてねば・・・
重複したらイヤンなので、
>870さん立ててくださいね。
まだチト早杉な気が、いつも早めに次スレたてんの?
>>870 だいたい1000到達前に容量で限界が来るので早めですね。
よろしくお願いします。
872 :
名無しさん@ピンキー:04/01/23 17:05
1000レスではなくこの手のスレは容量オーバーが深刻な問題・・・
いちおー責任とってたててみますた。
後おながいしまつ。
用事を済ませて戻ってきたら…、次スレが立っていて…
>>870さんありがとうございます。
このまま秋の章続行して次スレで冬の章、行きたいと思います。
即落ち防止にどれくらい書けば良いのです?
素朴な疑問。