【異能】黄昏の学園 42【異端】

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438兵部 晶 ◆oWbpNIMs9M
>>435

…おかしい。

(壁に張り付きながら、建物を回り込みつつ入口を探る。
予想に反し、見張りがいない。隠れているのではないだろう)
(こちらの尾行が気付かれた様子はない。そもそも一般人程度なら、
気配を消した所で自分のセンサーには引っかかる)
(元から単独犯の行動だったのか?だがただの人間が、少女を何人もスムーズに誘拐できるのか?)

………。

(元より綿密な計画を建て、それを予定通りに進行する方が得意な晶に
とって、この違和感はなんとも言えない不安を掻き立てていた)
(銃を構えながら、洋館の中へと入る。明かりこそ点いているものの、
やはり人の気配はない。この建物のどこかに、メリルはいるはずなのに)

『ピリリリ』
…!

(隠密行動の最中に、着信音がする。そうなるよう設定してあるのは、
現在はメリルだけだ。犯人のスキをついて電話してきたのであろう)
(片耳にそれを押し当てながら、銃口を向けつつ奥へと入っていく)

………。

(自称人形師、犯人らしき男の声と、メリルの声。そして聞こえてきた言葉に、
思わず唇を噛みしめる。今までに誘拐されてしまった少女達は、無事なのだろうか?)

…よし。後は…っ!

(地下室というキーワードに対し、何ら反応しない男。
だが即座に否定しないという事は、案にそれが正解である事も多い)
(金髪どうこうの意味は分からなかったが。そこに人質としても
使われる可能性のある少女がいるというメッセージだろうか?)


っ?!くそっ…!

(そもそも、そこへの入口はどこだ?もはや存在を秘匿する事は
諦め、一階全てを走り回ったが、それらしき場所は見当たらない)
(荒々しく息を吐きながら、携帯に再び耳を済ませる。何か新しい情報はないかどうか)

(そして聞こえてくる、触らないでという怯えた彼女の声。
焦燥が脳を支配する。思わず、電話機に彼女の名前を叫んでしまう)

メリルっ!

(そうして晶は、サプレッサーを外しながら一つの部屋に向かった。先程一度中を見た書斎だ。
ドアを開けるなり銃口を床に向け、規則正しく銃痕を刻んでいく)
(異能によって貫通力を増した所で、やはり拳銃弾。床を貫くことは
できない。何らかの理由で、薄くなっていない限りは)
(しかし、晶は手応えを感じた。異能を送り込んだ弾丸の内の
一発が、見事に床を貫通したのを。すぐさまそこへ駆け寄り、何度も引き金を引く)
(脆くなった床板は蹴りの一発で砕け、その先の地下室への入り口を現した。
普段はこの腐った世界を疎んでいる少年だが、今回ばかりはその一部に感謝せざるを得なかった)

(先程の乱射には、銃声で男を威嚇する意味もある。魔の手がそれで
こちらを警戒してくれればいい。そうでなくとも、すぐに助け出す)
(弾丸をリロードしながら、階段を降りて行き、地下室へと全力で赴いた)