【異能】黄昏の学園13【異端】

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15島田 六花 ◆Rikka6HNi6
ttp://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/erochara2/1234829200/202 の続き、です】

はい、もちろん、なのですっ。
(彼に喜んで貰えるなら、来ない訳がない)
(それ以上に、六花自身が彼を祝ってあげたかった)
いーえっ、2倍でも、3倍でも……え、わたし、ですか?
……あゎ、そんな、わ、わたしがお返し、しに来たのに……
(彼の言葉に、ふるふると首を振る)
(けれど、知りたいと言っているのに教えないのも、きっと失礼なことだ)
(それに――六花自身、誕生日というものを祝われたことは、ないのだ)
(初めての誕生日を迎える前に、それを祝ってくれるはずのひとを、六花は失った)
(もし、彼が六花の2回目を祝福してくれるなら)
(それは、とてもとても、しあわせなことだ)

――じゅうがつ、むいか。
…………が、わたしのお誕生日、です。
(口をついた、その日付は)
(六花が土人形以上の意味を持った日)

……う、ぅ。
(綺麗にリボンをかけられた包装紙が、ゆっくりと丁寧に開かれてゆく)
(包装紙が立てる音が、一度は落ち着いた気持ちを一瞬で昂らせて)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ。
(かつてない緊張に、胸がぎゅっとなる)
(このまま、押し潰されてしまいそうなほどに)
(なのに、彼の表情から目が離せない)
(やがて、真っ赤な箱が顔を覗かせた)

…………そ。そう、ですか。
(告げられた感謝の言葉に、どうしてこんな素っ気ない台詞しか返せないのか)
(目の前が白いのか黒いのか、それさえも分からなくなって)
(何もかも初めての感覚で、いっそう戸惑う)
(それでもすべての感情の核は、“嬉しい”だった)

……あ、あっ。えと、お手紙は、恥ずかしいのでっ……
(不意に思い出した、紙袋の底の手紙の存在)
できれば、後で読んでいただけると、うれしいのですっ。
(目の前で読まれたら、確実に頭が沸騰してしまう)
(――それは困る。絶対に)

あ、はいっ。よろしくおねがいしますっ。
(エプロンと聞くとなんだか“本格的”なイメージで胸が高鳴る)
(お菓子作り、なんてほとんど経験がないから)
(不安もあるけれど、それより期待が遥かに上回っていた)