たまにはヤムチャが活躍する話を考えようぜPart27

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1Classical名無しさん
〜狼牙風々拳炸裂!! 勝つのはオレだ〜

エーックス・・・
漫画界有数のヒット作品、ドラゴンボール。
その登場人物の内に他の追随を許さぬ最低のヘタレが居た。
そのヘタレに、わずかばかりでも活躍の場を・・・
しかし、そのあまりのヘタレさは人類の想像力の限界を遥かに超えていた。
あまりにもお留守な足元、雑魚キャラの自爆で道連れ、恋人を寝取られる甲斐性の無さ。
2ch中でヘタレの代名詞としてネタにされてゆく日々。
立ちはだかる「戦闘力のインフレ」という難敵。

誰もが「ヤムチャ」の2ch語化を覚悟した。
だが、そんなヤムチャにせめて妄想の中だけでも活躍させてやりたい…
ヤムチャを最もネタに使い、そして愛した彼らがこの困難に、立ちむかったのだ。

これは、少年漫画史上最も困難な創作に立ち上がった男たちの物語である。
※ヤムチャ以外の小説・ネタも大歓迎!おまえらも妄想爆発させようぜ?
【前スレ】
たまにはヤムチャが活躍する話を考えようぜPart26
URL 不明

【小説作品保管庫】
http://yamnov.hp.infoseek.co.jp/index.html
【お勧め作品】
http://yamnov.hp.infoseek.co.jp/recommend.html
【過去ログ倉庫】
http://yamnov.hp.infoseek.co.jp/kako/log.html
2Classical名無しさん:08/10/01 00:33 ID:X2CZOy.2
>>1
そして2get

久々のたまヤムスレでオラわくわくしてきたぞ
3Classical名無しさん:08/10/01 21:53 ID:X2CZOy.2
age
4Classical名無しさん:08/10/05 19:53 ID:sgx8/PU.
Saiyan Killerの続き書いていいですか?
5Classical名無しさん:08/10/13 00:04 ID:fEFbiM5Q
l
6Classical名無しさん:08/10/24 23:59 ID:80Ao8uwI
チェク
7Classical名無しさん:08/10/25 22:44 ID:CHiPoebg
http://www.geocities.jp/aruthimet/

ヤムチャのお話 編集きたねー
8Classical名無しさん:08/10/26 23:46 ID:O2pWojhs
9Classical名無しさん:08/11/01 13:16 ID:5JHuknU2
まとめサイトの作品オモシレーw俺もなんか書こうかな
10Classical名無しさん:08/11/01 14:15 ID:5JHuknU2
―――エイジ789
 孫悟空が『究極のドラゴンボール』によって子供になったのと同時期に神龍を呼び出す者がいた。われらがヒーローヤムチャである。
 白髪まじりの長髪にタレ目の周りには深い皺が刻まれている。が、その瞳からは確固たる強い意思が見受けられた。―――そう、かって砂漠を駆け回り盗賊として名をはせた若かりし頃のような大きな"野望"を胸に秘め
11Classical名無しさん:08/11/01 14:16 ID:5JHuknU2





  時をかけるヤムチャ





12時をかけるヤムチャ:08/11/01 14:35 ID:5JHuknU2
「神龍、叶えて欲しい願いは1つ、オレを若返らせてくれ」
「お安い御用だ」
 神龍が言い終わるや否や、ヤムチャの身体がみずみずしさを取り戻していく。彼はすっかりと昔のような整った顔立ちと潤しい肉体を得たのだ。
13時をかけるヤムチャ:08/11/01 14:47 ID:5JHuknU2
「ハァァァァ!」
 試しに全力で気を解放するヤムチャ。が、駄目。いくら力を捻りだしてもそよ風すら吹かない。
(しまった! 戦闘力も昔に戻ったのか……!?)
 ちなみに現在のヤムチャの戦闘力は100にも満たない。狼牙風風拳を主力技にしていた野盗時代と同程度だ。エネルギー弾など撃とうものなら5〜6発で卒倒してしまうだろう。
「……まぁいいか」
 しかし、意外とヤムチャは大してショックを受けていない
 コツは掴んでいるんだ、すぐに強くなれるさ。いや、むしろこれから始まる『新たな旅立ち』には好都合かもしれない。
14時をかけるヤムチャ:08/11/01 15:12 ID:5JHuknU2
「願いは残り2つだ。早く望むがよい」
 一人笑みを浮かべるヤムチャに痺れを切らした神龍がそう催促した
「ん? ……ああ、もういいよ。願いはこれだけだ」 願いはこれだけで充分、というより余計なことまで願いたくなかったのだ。
「そうだ。オレは、オレ自身の力で全てを手に入れるんだ……!」
15時をかけるヤムチャ:08/11/01 15:31 ID:5JHuknU2
 カプセルコーポレーション

 ブルマは作業着を身に纏い、ベンチを片手にせっせと何かの機械を組み立てていた。それはちょうど悟空がナメック星に行くのに使った宇宙船のような大きさで、側壁がまだ無く未完成であった。
16時をかけるヤムチャ:08/11/01 15:36 ID:5JHuknU2
 1m程のプレートを取り付け、流れるようにボルトをしめるその手捌きからは微塵も老いを感じさせない。
「母さん、少しは休んだら?」
 ブルマの背後からトランクスが言った。
「ん……もうちょい……」 振り返りもせずにそっけない言葉を返し黙々と作業に専念するブルマ。彼女にはもう機械の事以外頭に入っていない。
 母さんの悪い癖だ。トランクスは軽く溜め息をついた。
17時をかけるヤムチャ:08/11/01 15:55 ID:5JHuknU2
「別にさぁ……これが無くても普通の宇宙船があるんでしょ? 僕と悟空さんはそれでも構わないよ」
 その言葉に反応し、ブルマは初めてトランクスの存在に気付いたかのように作業を止めて振り向いた。
「まあそう急かさないでよ。この『タイムマシン2号』も今晩中には完成するわ。そしたら究極のドラゴンボールなんて一瞬で集められるんだから」
18時をかけるヤムチャ:08/11/01 16:21 ID:5JHuknU2
「一瞬て……大袈裟な」
「大袈裟じゃないわ! アンタ、まだこれの凄さが理解できないみたいね……いい! この『タイムマシン2号』は"あらゆる時空"に跳躍できる、……つまりその気になれば"別世界に行くこと"もできる私の英知を全て注ぎこんだ究極のマシンなのよ!」
「もう何回も聞いたよ……」
 興奮してまくしたてる母親と対照的にトランクスはうんざりとした表情を浮かべていた。
(こういうとこだけは科学者なんだからなぁ……)
19時をかけるヤムチャ:08/11/01 16:44 ID:5JHuknU2
「でもさ、それって一回跳んだら充電に50日もかかるんでしょ」
「う……け、けどほら、過去に跳べば実質プラスマイナス0だし……」
「無駄に年をくうし嫌だよ……」
「ああもう! 嫌なら乗らなくてもいいわよ! 孫くんだけでじゅーぶんよ!」
 なかば逆上したブルマは「帰れ帰れ!」とトランクスを強引に工場から追い出した。
20Classical名無しさん:08/11/03 00:24 ID:NmybRBbE
面白いから早くkake
21saiyankiller2:08/11/16 15:01 ID:dOhxEGhY
>>1ですが
http://yamnov.hp.infoseek.co.jp/kako/saiyankillerindex.html
の続き書きますね。

多分、saiyankillerを全て読んだ人じゃないと話が分からないかも
22saiyankiller2:08/11/16 15:05 ID:dOhxEGhY
プロローグ

何年か前、人造人間たちとの戦いに備え、孫悟空をはじめとする戦士たちは個々に修行を重ねていた時期があった。
その修行中に、一人の少女が地球にやってきたことがある。
名をマーリンという。
そして戦士の中の一人ヤムチャと、その異星から来たマーリンに纏わる話を知っているだろうか…。

彼女は元々サイヤ人を滅ぼすために地球に降り立ったのだが、ひょんなところでヤムチャと出会う。
きっかけは最悪だった。
ヤムチャをサイヤ人と勘違いしいきなりヤムチャを襲うが、逆に翻弄され最後は自滅に近い技を放とうとし、寸前でヤムチャに気絶させられる。
意識が回復してからも、今度はサイヤ人である孫悟空にいきなり襲い掛かると、圧倒的な実力差を見せ付けられ、100%及ばない力に思わず発狂。
そして今度は自滅技「ファイナル・グランスピアード」を最後まで放ち、両腕が千切れてしまう。
だがヤムチャの迅速な処置により、仙豆で彼女は腕を再生し、一命を取り留めた。
次に意識を回復してからは、再生した腕に驚きながらも、まだヤムチャたちを警戒するしぐさを見せる彼女。
だが、ヤムチャの怒りの説教と、彼女が勘違いしていることを伝えると、さすがの彼女もヤムチャたちを含め地球に住む者達が悪者ではないと認識をしたのか、次第にヤムチャに心を許し始める。

そして自分を遥かに越える圧倒的な地球人(孫悟空含)の強さに心を打たれた彼女はヤムチャに稽古をつけてほしいと申し出る。
ヤムチャの答えはOK。
そして二人の修行は始まった。
最初はてんで弱かった彼女だったが、ヤムチャと修行を重ねるうちに見る見ると成長する。
成長したのはパワーだけではない。
人間としての心も、ヤムチャとの修行によって育まれていった。
23saiyankiller2:08/11/16 15:07 ID:dOhxEGhY
だが彼女は仲間からの無線により、戦闘のため再び宇宙へ旅立たねばならぬ理由が出来た。
しかも、宇宙船や星と星との距離の関係上、次いつ会えるか分からない、もしかしたらもう会えないかもしれないとのこと。
それは、いつまでも続くと思っていた過酷だったが楽しいヤムチャとの修行も、もうすぐ終わりだということを告げた。
だが彼女は、宇宙に旅立つ前にどうしても孫悟空と戦いたい。
しかし、戦えるまでの戦闘レベルになるにはまだまだ時間が足りない。
だが仲間の元へも向かわなければならないため、ノンビリしている時間もなかった。
そこでヤムチャは考え、精神と時の部屋で修行することにした。

そこへ入り、半日(ヤムチャ達にとっては半年)で部屋を出た。
部屋の中では数々のドラマや事実が明らかになったが…そこは省いておこう。
そしてすぐに彼女はスーパーサイヤ人・孫悟空に再び戦いを挑む。
修行の成果はばっちりといったところで、悟空の前に挑んできたベジータを軽くあしらう彼女。
そしていよいよ悟空との対決。
今までにない死闘を演じ、そして最終的にボロボロになりながら、彼女は意識を失いつつも孫悟空に勝った…。

意識を取り戻した彼女は、勝利の事実を確認すると歓喜の叫びを上げる。
だが、感傷に浸る暇もなく、マーリンは宇宙船へと乗り込んだ。
見送りにくるヤムチャ。
別れを目の前にし、マーリンは涙目ながらヤムチャに宇宙で一緒に自分と戦ってほしいとスカウトした。
それは単純にヤムチャの戦闘力が魅力的なだけではなく、ヤムチャに対しずっと胸に秘めていた想いが別れを前にして抑えきれなくなったからだ。
しかし、ヤムチャの答えはNO。
ヤムチャは言った。
戦いが終わり、再び平和がくるまでは地球に残ると。
そして、ヤムチャは自分も彼女のことが好きだと遠まわしに告白する。
だがマーリンはもっともっと好きだと…。
最後の最後で、重なり合った二人の想い。
ヤムチャと彼女は接吻を交わす。
次いつ会えるという確証もない。
諦めかけていた所だったが、咄嗟に「ドラゴンボール」のことを思い出す二人。
いつか世界が平和になったら、必ず…必ずドラゴンボールを使い連絡するとヤムチャは誓い、彼女は再び宇宙へと消えていった。
いつか再びヤムチャに会えることを信じて…。
24saiyankiller2:08/11/16 15:09 ID:dOhxEGhY
【1話】
――ここは惑星キカリーマ。
いや、正確にはキカリーマという名になった惑星と言うべきか。
元の名は惑星タッバと言う。
役10年ほど前にキカリマ星人による侵略を受け、元々住んでいたタッバ星人は全滅し、星は支配された。
キカリマ星人は戦闘力こそ平均300前後と大したことはないのだが、ものすごい群れをなすため、戦闘系の文明が発達してなかったタッバ星人では太刀打ちのしようがなかった。
だが、そのキカリマ星人の運命も今終わろうとしていた。

「クソ…!クソ!たった一人に…たった一人の女に我々キカリマ星人が――!」

ズドオォォォオオォンッ!!

「ぐわああああ!!」

ここはその都心部。
つい数時間前まで建物が建ち並んでいたとは思えないほどの荒野がそこには広がっていた。
生き残っている最後のキカリマ星人が何者かの巨大エネルギー波によって吹っ飛ばされたのだ。
「ふう…今回の任務は少々手間取ったな。予定より2日も遅れてしまった」
ほぼ無傷の一人の女性が、そこには立っていた。
プラチナブロンドの長い髪に、美しい顔立ち。
戦闘服の上からではっきりとは分からないが、全体的にしなやかな筋肉で、体のラインのバランスも良い。
そして、その美貌からは想像できないほどの強さが彼女にはあった。
「どうなってやがる…戦闘力は1000ほどしかないのになんだあの破壊力は……」
彼は見ていた。
数万人のキカリマ星人相手に、たった一人で立ち向かうこの女性の姿を…。
数十分後、そこに立っているのはこの女性だけだった。
25saiyankiller2:08/11/16 15:11 ID:dOhxEGhY
戦闘力1000前後ならば、差があるとはいえ戦闘力平均300のキカリマ星人いっせいに襲われて生きていけるわけがない。
しかも、あくまで平均が1000なだけであって、優秀な戦士は3000を越える者もいるのだ。
彼自身も戦闘力は2000以上あり、この星ではかなりのエリート戦士だった。
それだけに、にわかに信じられない現実に混乱していた彼だったが、そんな暇さえ彼女は与えなかった。
「スカウターか。それはわたしにとっては余り意味がない…この歴然たる差を見ていただろう?」
女性はそう言うと、額から流れる汗を軽く腕で拭い、自ら吹っ飛ばしたキカリマ星人に歩きながら近づいていった。
「クソ…なめやがって……だりゃあぁあ!」
キカリマ星人は最後の力を振り絞り、彼女の顔面めがけて殴打のラッシュを浴びせるが、軽く片手でガードされてしまう。

バキィ!

何かの衝撃音が聞こえたと思うと、次の瞬間キカリマ星人の視界には地面があった。
「ギャアアアア!足が…足が…!」
そしてコンマ数秒後に、彼の足に激痛が走る。
どうやら彼女に足を蹴られたようだが、動きが早すぎてキカリマ星人は何が起こったか気づいていないようだ。
「すまんな、足元がお留守になっていたものでつい」
かつて、自分の師匠から言われたことのある名台詞を得意気に言い放つ彼女。
キカリマ星人はほとんど感覚すらない足をもう片方の足でかばいながらフラフラと立ち上がる。
26saiyankiller2:08/11/16 15:12 ID:dOhxEGhY
「てめえは…一体何者なんだ…」
キカリマ星人は観念したのか、逃げ出す様子もなく女性に尋ねた。
「…世間では“銀光のマーリン”で通っている。弱者だけを襲い続け、強者との戦いは避けていた貴様らには縁のない名だったか…ふふっ」
彼女の名はマーリン。
女性でスーパーサイヤ人孫悟空に勝ったことのある唯一の戦士だ。
頭が上がらないという意味では孫悟空の妻であるチチも、悟空に負けることはないと思われるが…。
27saiyankiller2:08/11/16 15:13 ID:dOhxEGhY
需要があれば2話からも書いて行こうと思います。
閲覧者がいらっしゃるのなら、何かしらのレスポンスをお願い致します。
28Classical名無しさん:08/11/17 23:28 ID:0.YFVyOo
ヤムチャは女体化すればいいと思います><
そしたら地球人でNo2になるんじゃね?
29Classical名無しさん:08/11/20 22:42 ID:wVblvOWc
サイヤンキラー続編まで来てたのか!
たまヤムスレ復権のためにage
30Classical名無しさん:08/11/21 02:27 ID:777g/8b.
考えない考えない。
頭使わず、体動かせ
31Classical名無しさん:08/11/21 21:10 ID:s9wBpVp.
このスレはマジで期待
関連スレに宣伝したほうがいいんじゃないか?
32Classical名無しさん:08/11/22 00:58 ID:HfVptA/w
33saiyankiller2:08/11/22 02:15 ID:R8HOdc7.

【2話】
それにしても、ニヤリと自慢気に自らの異名を語るところは、宇宙最強クラスの戦士にしては意外とかわいい一面を見せる。
「な…なんだと…!お前が帝王フリーザをも凌ぐ戦闘力をもったと噂される…あのマーリンなのか…!」
一見お花摘みでもしてそうな、気品高そうなこんな女性が全宇宙でもトップクラスの戦闘力を誇る、あのマーリンだとは、姿を見たことのないキカリマ星人が想像できないのも当たり前だった。
適う筈がない。
彼はこの状況をどうにかしたかったが、それを考えることすら無駄なのではないかと思い始めた。
「名前だけは知っていてくれたようだな。嬉しく思うぞ」
そう言い放つマーリンだったが、顔は全く嬉しそうではない。
「さて…おしゃべりが過ぎたな。次の予定がつまっている。悪いが手短に終わらせてもらうぞ」
彼女は悪びれる様子もなく淡々と話すと、再び戦闘態勢の構えをとった。
「ひ…た、助けてくれ…。お願いだ、殺さないでくれ!」
星に残っている最後のキカリマ星人が必死に彼女に命乞いをする。
既に放っておいても治療しなければ死にそうな体力しか残っていなそうなものだったが、それでも最後の力で必死に女性に頼み込んでいた。
「…利己的なことを言うな。元々この星に住んでいたタッバ星人はどうした?お前らが全員殺したのだろう?同じことだと思え」
女性は冷酷な言葉を吐き捨てると、既に死にそうなキカリマ星人にトドメを刺そうと手にエネルギーを溜めていた。
「終わりだ」
そして女性は手からエネルギー波を放つポーズを取った。
「お、おい!待ってくれ!話を聞いてくれ!」
キカリマ星人は後ずさりをしながら両手を上げ、お手上げ状態といった形相で女性に同情をねだる。
「この期に及んで…くどいぞ…」
女性の手のひらはすでにキカリマ星人の目の前にあった。
その手には往生際の悪い宇宙の無法者に対しての怒りなのか、若干最初より膨れ上がったエネルギーが充満しているのがわかる。
「俺には別の惑星に住んでいる家族がいるんだ…腹をすかせたガキが3人に病に侵された女房…それに歩くのもままならない母親が!」
「!!…」
“家族がいる”…その言葉に彼女は一瞬ピクリと反応した。
34saiyankiller2:08/11/22 02:16 ID:R8HOdc7.
「な!わかるだろ…?頼む、見逃してくれ!俺は心を入れ換えてこれからひっそりと暮らす!二度と悪さはしねえ!」
それに気づいたのか、気づかないのかわからないが、キカリマ星人はつけ込むように彼女に話す。
「…それが分かるなら、何故タッバ星人をほろぼした…彼らにも家族はいた」
女性は躊躇ったのか、手に貯めていたエネルギーを少し弱めながら言った。
「仕方ねえんだ…何か特別な技術もない我々は、創造力もなく生まれたときから星を侵略して生きることしか許されなかった…別に好きでやったわけじゃない!」
「…ならば、貴様の存在自体が罪だな」
「そ、そう言うなよ…頼む!この通りだ!」
キカリマ星人は死の恐怖に耐えかねたのか、半ば発狂気味に叫び続けた。
「…ッ…不快だ…黙れ!」

ズドーン!

その女性の叫びと同時に、女性の手からエネルギー波が放たれた。
だが、その矛先はキカリマ星人ではなく、1キロほど離れた直径50メートルほどの岩の固まりだった。
岩は大爆発を起こし、すぐ近くまで岩の破片が飛んできた。
「あ…あああ……」
キカリマ星人は一瞬死を覚悟したのか、放心気味だ。
そして爆発してから数秒後に、ショックのあまりか膝からがっくりと倒れ込み、意識を失った。
「……チッ」
女性は軽く舌打ちして、後ろに振り向きその場を去ろうとする。
「次、わたしの目の前に現れたら確実に殺す…いいな」
そして、ボソリとそう呟くと、宇宙船に戻るためか、武空術で素早く空へと飛んでいった。
35saiyankiller2:08/11/22 02:20 ID:R8HOdc7.
【3話】
既にこの星にはあのキカリマ星人しか残っていない。
この女性一人に全員倒されたのだ。
「まったく…あの男に出会ってからどうも慈悲深くなってしまったようだ…」
女性は軽くそう呟くと、何かを思い返したのか、少し微笑んだ。
「でも…お前ならこうしたはずだ。そうだろう?…ヤムチャ」
“ヤムチャ”…それは彼女から取って切り離せない名前。
一緒に過ごした期間こそ生涯時間から言えば短いものだったが、彼女にとってもっとも濃いと言える時間はこのヤムチャと過ごした数ヶ月なのだ。

しかし、笑顔だった表情にはどことなく悲しさも含んでいるように見えた。

スタッ!

数分もするとマーリンは宇宙船の前へと降り立った。
丸い形をした型で、どうやら一人乗りのようだ。
だが、その狭い宇宙船にはすでに誰か入っていた。
しかしマーリンは驚く様子もなく、宇宙船に乗っていた誰かに近づいていった。

プシュウー…

マーリンが宇宙船の目の前きた時、自転車のタイヤから空気が抜けるような独特の音をたてながら、宇宙船のハッチが開いた。


「遅れてすまんな、シルフ。今戻ったぞ」
「お母さんっっ!おかえり!ねぇ、お母さんが一人でここの奴らみんなやっつけてきたの?」
宇宙船の中には子供がいた。
36saiyankiller2:08/11/22 02:21 ID:R8HOdc7.
マーリンが小さくコクリとうなずくと、“シルフ”と呼ばたマーリンをお母さんと呼ぶ小さな子供は、目をキラキラと輝かせながら、キャッキャッとマーリンに抱きつく。
そんな子供に一切迷惑そうな顔をせず、優しく頭をなでるマーリン。
「ところでシルフ…一応目立たない所に宇宙船をとめてはおいたが…キカマリ星人に襲われたりしなかったか?」
「あ!さっき5人ぐらいでここにやってきたんだよ!でもね、スカウターがあったから、そいつらにばれる前にぼくが隠れて、逆に後ろから“ロウガフウフウケン”をくらわせてやったんだよ!そしたらあの雑魚ども遠くへ逃げていきやがったんだ!」
「ほう…一人で撃退出来たのか」
「そのすぐあとに、そいつらの逃げた方で大爆発が起きてたから、多分全員お母さんにやられたんだよね!」
そういうとシルフは少しマーリンから離れ、“ロウガフウフウケン”の真似をする。
楽しそうに敵をやっつけたことを語る様は、幼いながらにもやはり彼は戦士の血を引いているなとマーリンは思った。
「お母さん、ぼくの“ロウガフウフウケン”どうかな?」
ブンブンブンと手が空を切る。
少年は必死に練習中のロウガフウフウケンをマーリンの前で披露し、評価を請った。
「ふ…そうだな…中々いいのではないか…?もしかしたら、シルフはヤムチャ…父さんよりもう強いかもな…ふふふ…」
ただ単に手を振り回しているだけにしか見えなかったマーリンだが、冗談混じりにシルフに言う。
すると、ヤムチャと言う単語に反応し、少年の目は更に輝いた。
37saiyankiller2:08/11/22 02:26 ID:R8HOdc7.
「お父さんより!?でも父さんのロウガフウフウケンは手が見えないぐらい速かったんでしょ?ねぇねぇ、もっとお父さんの話聞かせてよ!」
「わかったわかった。ふふ…仕方のないヤツだな…。とりあえず宇宙船にのるぞ、シルフ。続きは中でだ。一人乗り用で狭いが、我慢するんだぞ」
「うん、わかった!ぼくサイバイマンの話もう一回聞きたい!」
「サイバイマン?…ああ…確かヤムチャが死にそうな仲間を庇い、自分の命と引き換えに仲間の命を助け、結果的に地球は救われた話だったな。宇宙船を起動したらたっぷりとしてやろう…ふふ」
サイバイマンの話は、実際こんなかっこいいものではなかったが、ヤムチャが誇大表現してマーリンに話したため、彼女はそのままそれをシルフに語り継いでいた。

ピピピ…
「ハッシャジュンビデキマシタ…」

宇宙船のオペレーターが発射の準備ができたことを伝える。
宇宙船のスイッチを操作しながら彼女は続けた。
「わたしは…わたしは…まだ最後の言葉を信じているぞ…ヤムチャ…」
彼女は静かにそう言い放つと、何もない空を見上げた。
まるで、視線の遥か何万光年も先にいる、地球にいるはずのヤムチャに訴えかけるように…。
38SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/11/22 02:30 ID:R8HOdc7.

今日のところはこの辺にしておきます。
トリップはこれで。
急いで作成したものなので、誤字脱字、矛盾点など多々ありそうです。
内容についてですが、最後まではまだ考えていません。
が、大よそのストーリーは考えています。
GTと若干結びつかないかもしれませんが…。
39Classical名無しさん:08/11/22 10:02 ID:G/zZ7R9o
サイヤンキラー2はじまったか!楽しみにしてます
ちなみに作者は別人なんだよね?
あと時をかけるヤムチャも早く書いてくんろ
40SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/11/23 00:23 ID:tjagLBCg
【4話】
一方…ここは地球。
孫悟空による特大元気玉で最強の敵、魔人ブウが消滅してから1年が経っていた。
世間ではミスターサタンが魔人ブウ(正確には魔人ブウの記憶はドラゴンボールで世界から消されたため、人々の記憶には残っていない)を倒したことになっている。
何はともあれ、地球に平和な日々が続いていた。

しかし、そんな平和な日々が続いているのにも関わらず、激しい修行に励む武道家がいた。

「狼牙風風拳…!ハイハイハイハイッ!ハイッ!ハイッ!ハイヤーッ!」
一人の男が、砂漠と岩壁しか見当たらない灼熱の荒野で掛け声と共に勢いよく素振りをしていた。

凛々しい男前の顔立ちに、鍛えぬかれた全身筋肉質な鋼のような肉体。
激しい運動のせいか、その顎や肘からは大量の汗が滴り落ちている。

素振りを行っている彼の手の動きは、恐らく常人の胴体視力では間違いなく捉えることはできない速さだろう。

ビュオーン!

男が素振りを終えると、その素振りによる風の影響で、前方に突風が吹き荒れた。
「今日の調子はまずまずだな……よし!」
男は独り言を呟くと、すーっと一度全身の力を抜き、次の一瞬で全身の気を一気に高めた。
「んぐぐぐぐッ…ががあああああ!」
そして真っ赤な気のオーラのようのものが彼を纏う。
空にかかっていた雲は一気に消え、立っているところはクレーターのようにへこみ、回りの砂や腐って折れた木などは遥か遠くへと飛んでいった。
「んぐぐ…くッ…このままを……あと1分維持しつつ…はあっ!」
掛け声と共に男はそこから消えた。

ビュオーーーン!!

そして何もないはずの空間で再び突風が吹き荒れた。
先ほどとは、比べ物にならないほど大きな突風が…。
41SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/11/23 00:24 ID:tjagLBCg
そして一分後。

スタッ

ボフゥゥウウ!!

そこに、先ほど素振りをしていた男が再び何もないところからパッと激しい砂煙と共に現れた。

しかし、男は消えていたわけでもなく、何もないところでいきなり突風が吹いたわけでもない。
不可解にも思えるこの一連の怪奇現象は、男が超高速で動き回っているため、消えたように見えただけだった。
まるでハリケーンのような突風も、彼の動作によって引き起こされたものである。
「く…は…ああぁああーーーーーーーいてえーー!!」

すると男は動きまくっていた今までとは対照的に、今度は激しく息を切らしながら地面に寝転がった。

「はあはあ…………はあ…なんとか20倍は…はあ…使えるようになったけど…はあはあ…………はあ…さすがに30倍はいてえな…チクショウ!…………いてッ!」
叫べば叫ぶほど男の肉体は悲鳴をあげるが、どうやら叫ばずにはいられない性格のようだ。
男は周りを見渡した。
一昔前まで岩や枯れ木でデコボコだったこの荒野も、男の放った凄まじい気によって全てが吹き飛んだため、今は地平線が広がるのみだった。
42SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/11/23 00:25 ID:tjagLBCg
【5話】
「ロンリーウルフ…砂漠のヤムチャ…か。ははっ…寂しいもんだぜ。こんな修行を都会のど真ん中でやったら、町が吹っ飛んじまうからな…思い切り気を高め

て行う修行には、ここしかないってわけだ」
この男の名はヤムチャ。
幾度も地球の危機に直面し、そのたびにヤムチャは戦ってきた。
役に立ったのか…と聞かれたら、大きく頷くことはできないが、時には勇敢に戦い自らの命を落としたり、セルジュニアから弱った悟空を援護したり、陰なが

ら活躍をしていた。
だが、ヤムチャの表情は煮えきらない様子だ。
ヤムチャが未だに修行を続ける真意はそこにあった。
「こんな俺が…またあの子に会う資格があるってのかよ」
男は寝転がりながら、仰向けになると、自分が気で吹き飛ばした雲一つない青空を見つめた。
「……マーリン…」
男は漏らすように一言だけ、こう呟くと悲しげな表情を浮かべた。
遥か彼方の惑星キカリーマで、空を見上げたとある女性と同じように…。
“マーリン”…それはヤムチャにとって忘れられない名前だ。
最初は、純粋に彼女の飽くなき向上心や強さに強欲な精神に惹かれただけだけだと思っていた。
しかし、精神と時の部屋で死にそうな彼女を目の当たりにし、自分の気持ちに素直になってみると、ヤムチャは彼女を愛していたことに気づいた。
そして別れ際、最後にあの約束を交わしたことだってもちろん忘れてはいない。
「………」
それからはしばらく無言になっていたヤムチャだったが、しばらくすると立ち上がり何かを目指し空高く飛び上がった。
ヤムチャはいよいよ決心がついたようだ。
約束を果たそうという決心が…。
43SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/11/23 00:29 ID:tjagLBCg
>>39さん
はい、別人です。
勝手に書いてますので、元の作者さんの世界観というか、イメージを損ねてしまうのが怖いところです。

時をかけるヤムチャの続きもみたいところです。
わたしと並行して、どなたか新規の小説や、中途半端な小説の続きを書いていただけると
このスレも盛り上がるでしょうね。
44Classical名無しさん:08/11/24 01:58 ID:WjmT3RyA
久々の病むスレに期待wwww
45Classical名無しさん:08/11/24 07:16 ID:1MRxeW.g
ブウ編の後の話か
パワーバランスが難しそうだ
応援してます!
46SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/11/25 00:15 ID:x9C0dROI
【6話】
「ピ…ピッコロさん、ヤムチャさんがこちらに向かってきています」
ここは天界。
世界一高いカリン塔の更に上にある、地球の神の家のようなものだ。
地球の神、デンデはそばにいたピッコロに話しかける。
戦闘タイプではないデンデだったが、ヤムチャのいつもとは異なるただならぬ気配を感じたのか、若干不安そうにしていた。
「そのようだな。まあ大体何しに来るかは予想はつくが…」
ピッコロは宙に浮き、精神統一をはかりながら答えた。

そして数分もしないうちに天界にヤムチャが姿を表した。
「よう、デンデ、神コロ。久しぶり」
いつもと変わらないお調子者といった雰囲気のヤムチャが軽く挨拶を交わす。
「お久しぶりです、ヤムチャさん」
「ピッコロと言え」
表情一つ変えずにボソっと言ったピッコロだったが、その声に不機嫌さがにじみ出ていた。
意外と執念深い性格のようだ。
「あっはっはっ…、すまんすまん…今の神様はデンデだしな」
「そういう問題でもないが。で、ヤムチャ…ここへ何しに来た?」
ピッコロは宙から地面に降り、やっと目を開いてヤムチャに視線を向けた。
「またまた…分かっているくせに一々聞いてくるところは変わってないよなー、本当に!ははっ」
ヤムチャはピッコロの肩をポンポンと叩きながら笑い飛ばした。
だがピッコロは険しい表情をしながらじっとヤムチャを見つめていた。
その表情に気づいたヤムチャだったが、きっと最近悟飯に構ってもらえなくて不機嫌なんだろうなと勝手に解釈し、話を続けた。
「あるんだろ?ドラゴンボール。使いたいんだ」
ヤムチャは天界に来てから初めて真面目な表情になる。
47SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/11/25 00:17 ID:x9C0dROI
数秒ほど沈黙が流れたが、やがてピッコロが口を開いた。
「…たしかに、いざという時の為に集めてはおいたが…ヤムチャ…マーリンとやらに会うつもりなのか?」
「ああ、約束したからな。世界が平和になったらまた会おうと。魔人ブウも消えた今、この世は平和そのものだろ?」
同意を求めるヤムチャだが、ピッコロは何も答えない。
すると今まで黙っていたデンデが重い空気に耐えかねたのか、会話に入ってきた。
「私も悟飯さんからその話を聞いたことがあります。会わせてあげたらどうでしょうか…確かにこの世に平和は戻りましたし、ヤムチャさんは今までずっと地球のために戦ってきた…
特に悪巧みを企んでそうな願いでもありませんし、それぐらいの願いは叶えてあげていいと思います」
なんだか上から目線だな…と一瞬思ったヤムチャだったが、デンデは地球の神だ。
まだ幼さが若干残るデンデだが、神が背中を押してくれてヤムチャはなんとなく心強かった。
「私利私欲のために使うのはあんまり好ましくないのは俺も分かっているさ。でも今回だけは見逃してくれ、頼む!」
ヤムチャは申し訳なさそうにピッコロに頼み込む。
「…嫌な予感がするんだ。かつて孫を殺そうとしたほどの奴だぞ…?そしてその孫にヤツは勝利した。あれから何年か経ったが…ヤツが危険じゃないという保証はあるのか?
考えにくいことだが、万一に俺たちの力を凌ぐ力を持っていて、俺たちに襲いかかってきたら…ヤムチャ、責任は取れるのだろうな」
ピッコロは真顔でヤムチャに確認をとる。
ピッコロがあまりにも真剣な顔で訪ねてきたので、少し返答に困ったヤムチャだったが、すぐに口を開いた。
「初対面の悟空を殺そうとしたという点は、俺も神コ…いやピッコロもベジータも同じだろ。しかもマーリンの場合は悪気があって襲った訳じゃない。
それに、いくらあいつが強くなっていたとしても、俺の言うことを聞かないということはないと思うんだ」
「…」
納得がいかないのか、ピッコロは表情を変えずヤムチャを睨むように見つめ続けているだけだった。
48SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/11/25 00:18 ID:x9C0dROI
納得がいかないのか、ピッコロは表情を変えずヤムチャを睨むように見つめ続けているだけだった。
「そ、それに、悟空は今やスーパーサイヤ人3になれるんだぜ?更に悟飯は悟空より強いわけだし、心配することはないさ」
ヤムチャの執拗な説得に対し、ピッコロは少し眉を潜めるものの、やがて諦めたのか重い足取りでしぶしぶと宮殿の奥にあるドラゴンボールを運んできた。
「願い事は3つまでだ、この神龍は。さっさと始めろ」

「サンキュー、神コロ!よし……いでよ、神龍!」

ヤムチャの掛け声と共に、空が真っ暗となり、ドラゴンボールが激しく光を放ち始めた。
そして、次の瞬間ボールからまるで滝登りをする鯉のように、はるか上空へと向かいボールの中から神龍が現れた。
「うお…!いつ見ても神秘的だよなあ、神龍って!」
幾度となく神龍を見てきたヤムチャだが、何度見てもその姿は神秘的で美しいみたいだ。
「どんな願いでも3つだけ願いを叶えてやろう…さあ願いを言え」
ヤムチャは少し考え込むと、大きな声で叫んだ。
「神龍、今回の願いは2つだけでいい。まず1つ目の願いだ。…7年前、宇宙船で地球にやってきたマーリンという女性がいる。その女性と5分ほど会話をさせてほしい」
「ちょっと待てヤムチャ。ヤツと会うのが目的ではないのか?」
ヤムチャの会話をさせて欲しい、という願いに思わずピッコロが横から口を出した。
「まあ焦るなよピッコロ。もし何か取り込み中だったら急にこの星に移動させるのも悪いだろ。まずは確認をとる」
「フン…好きにしろ」
恋愛経験豊富なヤムチャは意外と女性に対してデリカシーのある男だった。
「いいだろう…願いをかなえてやる。目を閉じて、マーリンとやらに話しかけるがよい。もう会話は出来る」
「ああ…やってみる」
ヤムチャは戸惑いながらも目を閉じて、ゆっくりと口を開いた。
『マーリン…聞こえるか?』
ヤムチャは声が届いているのか不安になりながらもマーリンに向かって話しかけた。
49Classical名無しさん:08/11/27 06:11 ID:0qM240I.
そしてクリリンは大きくいきむと、褐色の赤子を産み落としたのでした
見事な安産だったそうです
                      完
50Classical名無しさん:08/11/27 16:53 ID:IgqJCoD6
支援
51Classical名無しさん:08/11/27 21:23 ID:Op4ApIU.
52Classical名無しさん:08/11/28 22:57 ID:YByTKg.2
ついにコンタクトか
53Classical名無しさん:08/11/29 20:59 ID:fM.ip9nA
普通におもしろい
54Classical名無しさん:08/12/01 23:45 ID:0DqanOXc
続きが早く読みたいです
55SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/02 01:09 ID:BD4UM7Wo
【7話】
すると、どこからともなく返事が帰ってくる。
『ま……ま、まさか!…ありえるわけがない。その声は………ヤムチャ…!』
マーリンは狭い宇宙船で思わず立ち上が…れなかったが、中腰になり、キョロキョロと周りを確認する。
声が聞こえたのは夢かと思ったが、はっきりと意識があるのは自分でも分かる。夢ではない。
とすると、これは現実なのだろうか?
俄かに信じられないことではあるが、確かに自分の耳にはヤムチャの声が聞こえたのだ。
一秒たりとも忘れたことのない、この安心できる声。
聞き間違えるはずがない。
マーリンはヤムチャが一言話しかけただけで、声の主はヤムチャであると確信していた。
『ああ、ヤムチャだ』
ヤムチャは目をつぶりながら、落ち着いてマーリンの問いに答える。
どうやらしっかり声は行き届いているようだ。
『ヤ…ムチャ……どうやら本当にヤムチャのようだな…。今どこにいる!何故わたしの声が聞こえているんだ!そもそも、わたしは宇宙船の中なのだがどうやって話しかけているんだ!答えろ!』
『そう一辺に質問されてもな…何から答えりゃいいのか』
マーリンは惑星キカリーマを後にし、宇宙船内で体を休めじっとしていたところだった。
そんな中、突然のヤムチャからの呼びかけ。
こんな宇宙の果てで、ヤムチャの声がいきなり聞こえるなど…一体何がどうなっているのか、当然ながら理解できるわけがない。
マーリンは急な出来事に焦ったのか、既にもう必要ないはずのスカウターをカチカチと操作し、ヤムチャの位置を探ろうとする。
当然ながらスカウターはシルフの微々たる戦闘力と、気を抑えた状態の自分の戦闘力しか感知せず、マーリンは軽く舌打ちをした。
一方、驚きを隠せない様子のマーリンの声が耳に入り、ヤムチャの顔には自然と笑みがこぼれていた。
『お前が地球にきた時は“ありえるわけがない”事ばかり起こっていただろ。いくら探してもそこには俺はいない、なんせ俺はその地球から話しかけてるからな。
それにしてもマジで久しぶりだなあ、マーリン!約束通り、ドラゴンボールを使って連絡したぞ!もう地球は平和なんだ!』
『……!…そうか、ドラゴンボール…!』
56SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/02 01:12 ID:BD4UM7Wo
マーリンはハッとした。
ドラゴンボールという不思議な球があり、何でも願いをかなえてくれるという話をヤムチャから聞いたことがある。
そして、その球を使って連絡をくれるという約束も忘れたことがなかった。
だが、まさかこんな急に、何の前触れもなく連絡がくるとは思っても見なかったのだ。
『…ドラゴンボールとは、本当になんでも出来るのか…。それにしても…ふふ、ヤムチャ、久しいな…待たせすぎだぞ』
宇宙には不思議な出来事が多々転がっているが、無線機も何も使用していない状態で、ここから遥か彼方にある地球に住んでいる人間と会話できるという現象を中々受け入れられないマーリン。
しかし、どういった原理で会話が出来ているのかは分からないが、ヤムチャから話しかけられている事実は事実だし、マーリンにとっては嬉しい誤算であることは間違いない。
声の謎が解けた上に、ヤムチャから話しかけられているという事実を再確認すると、機嫌が良くなり思わずマーリンから笑みがこぼれた。
しかし、すぐに彼女は暗い表情になる。
『最初に…謝らなければならないことがあるんだ。…すまない、ヤムチャ……。残念なことに前の宇宙船はあれから故障してしまい、今のところこの辺りの宇宙で最先端のこの宇宙船でも、地球に向かうのに281年かかってしまう……。せっかく連絡をくれて嬉しいのだが……』
マーリンは一瞬だけ子供のように喜んでいたが、次第に声のトーンが落ちていった。
マーリンと地球は距離が遠すぎるのだ。
いくら強くなっても、決して手が届かないものだってある。
例えそれが宇宙最強クラスの戦士だったとしても。
マーリンが10年近く地球に出向かなかったわけは、ここにあった。
正解に言うと“出向けなかった”のだ。
57SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/02 01:14 ID:BD4UM7Wo
孫悟空が取得している瞬間移動という技があれば別の話かもしれないが、そんな技術を身につけていないし、どこで身につければいいかも分からないマーリン

はどうしようもなかった。
それでもいつか、何かしらの方法を使って地球に出向こうとは思っていたのは言うまでもないが。
だがそんなことはお構いなしにヤムチャは続ける。
『まあそんなことは気にするな。それよりマーリン…今暇か?暇なのか?』
『?…まあ、船内だし暇と言えば暇だが…一応1週間後に仕事が入っている。わたしがいなくてもどうにかなりそうな星だがな…。しかし先ほども言ったよう

にこの宇宙船では……』
その言葉を聞いた瞬間、ヤムチャの表情が思わずにやける。
『なるほど…なるほど…281年ねえ…はははッ!そいつは好都合だぜっ!じゃあ決まりだな!』
『??…決まり?』
『そう、決まり』
『…ヤムチャ…前から思っていたが、わたしは常人より語学に関する知識は卓越している訳ではないので、分かりやすく言ってくれないと…。お前の言うこと

はたまにほとんど伝わらないときがあるぞ…まあ、その直後にいつもそれを無理矢理に理解させるあっと驚くことが起きるのだがな…ふふ』
昔のヤムチャの思い出を振りかえり、思わず笑いがこぼれるマーリン。
ヤムチャはそれを小バカにしたように軽く笑い飛ばすと、マーリンがムッとなってそれに突っかかる。
自然と“昔と変わらない”やりとりを取っていた二人は同時にそれに気づくと、再び大笑いするのだった。
そして自分はこの人を愛しているんだな、と心の中で静かに思う二人。
結局、マーリンはヤムチャがこれからしようとしていることはわからずじまいだったが、会話が一段落すするとヤムチャは目を見開いて、再び神龍に向き直った。
58SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/02 01:16 ID:BD4UM7Wo
「神龍、2つ目の願いだ!今…今話していたマーリンが乗っている宇宙船を、宇宙船ごと地球に移動させてくれッッ!」
ヤムチャは2つ目の願いを大声で言いはなった。
「いいだろう…それではマーリンが乗っている宇宙船を地球に移動させる。中に乗っている人間も移動させることになる」
「ああ、頼む。間違えて宇宙船だけ移動させてマーリンを宇宙に忘れたりしないでくれよ!」
ヤムチャはよく分からないギャグを言ったが、神龍に無視されていた。
一方…目を開いている間は、ヤムチャの声はマーリンには届かないようで、彼女は宇宙船で突然途切れたヤムチャからの連絡にあたふたしていた。
「ヤムチャ……?どうしたのだ…黙らないでくれ…頼む……うう…」
たった1分ちょっと通信がとれなくなっただけで、マーリンの精神状態はここ数年で一番不安定になった。
泣きそうな小さな声でヤムチャと連絡が取れなくなることを怯え、恐れていた。
そもそもこんな離れた所で会話ができること自体細い細い糸をつかむようなものであって、いつ途切れるかも分からない…いや、もしかしたら今途切れてしま

ったかもしれないその糸を必死に彼女は探し求め、掴もうとしていた。
スヤスヤと眠る我が子の手を強く握りながら、マーリンは強く念じ続ける。

…その時、マーリンの乗っていた宇宙船が何かオーラのようなものに覆われ、ピカピカと光り始めた。
そして視界が次第に薄くなり、見えていた宇宙空間も一瞬で白い靄(モヤ)のようなものしか見えなくなった。
「!?…まずいな…故障か?それとも宇宙嵐にでも巻き込まれたか…どちらにせよさすがにこんな所で宇宙船が壊れたら死んでしまうな…」
マーリンは額に汗を浮かべながら緊急再作動ボタンの操作をし始めたが、ほんの数秒後に白い靄は消え、再び視界が戻った。
何がなんだか分からないマーリンは呆然としていたが、故障ではないのなら幸いだと思い、ほっと胸をなでおろした。
しかし…戻った視界に映し出されたものは、先ほどまで見ていた青く暗い宇宙空間ではなく…緑が生い茂る森の真上だった。

「…ッッ!…墜落する!」

ドゴオォォォォォォオン!!
59SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/02 01:21 ID:BD4UM7Wo
【8話】
そのマーリンの声とほぼ同時か、少し早くか、宇宙船は森の中へと音を立てて墜落し、そこには直径100メートルほどのクレーターができた。
宇宙船が着陸体勢に入っていなかったため、マーリンの宇宙船は無造作に地面に墜落する形となったのだ。
「…いったあ…」
マーリンは無意識に我が子を抱きこむようにして庇ったため、墜落の際に頭を打ってしまった。
そのおかげか、シルフはいまだにスヤスヤと眠っている。
こんな衝撃だったのになんと無神経なんだと思いながらも、その寝起きの悪さは自分に似たことに気付いていなかった。
シルフに怪我もなさそうでほっとするマーリンだったが…異様な事態に気づく。
「ここは…どこだ?わたしが宇宙船で行き先を設定するときに、星を間違えたのか…?」
マーリンが拠点とする星は文明が発達し、自然など無縁の星だったため、こんな森などなかったのだ。
自分が拠点としている星ではないと即座に気づいたマーリンだったが、もう一つの異様な事態に気付く。
そしてそれは目に見える結果として現れた。

ピーッ ピーッ!!

スカウターが危険信号を発している。
ある一定以上の戦闘力を感知すると、自動的に音を立てるようになっているのだ。
マーリンは嫌な予感がしつつも、シルフをそっとシートに寝かせると、宇宙船から降り、スカウターを装着してボタンを操作し始めた。
「な…なんなんだ、この星は……」
戦闘力が10万を越す反応が一つや二つじゃない。
「1…2…3…5………10人以上…だと…!!」
マーリンはスカウターで正確にその数を数え始める。
どう考えてもこの星は異常だ。
「まさかここは地球…?いや、そんなはずはない…」
マーリンは首を振り、一瞬頭を過ぎった考えをすぐに引っ込めた。
60SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/02 01:23 ID:BD4UM7Wo
ここ数年で宇宙で一番強かった敵を思い出しても、精々戦闘力2万前後がやっとだった。
戦闘力10万を越す反応が今ざっと確認しただけで10人はいるこの星が、どれだけ異常な星かは誰が見ても明らかだということになる。
かと言って、10万程度の戦闘力ではマーリンには遠く及ばないのだが、戦闘力10万クラスと言えばあのギニュー隊長レベルの猛者が何人もいるのと同じことだ

と思うと、少しぞっとしたが、すぐにニヤリと表情が変わった。
“こんな奴らと戦ってみたい”…自分では気付かなかったのかもしれないが、彼女の中のサイヤ人の本能はそう叫んでいた。
長く宇宙で戦いを続けてきた彼女だが、10万を越す反応にはほとんど出会ったことがない…ある一つの星を除いては。
そしてマーリンは無意識に気を高めてしまう。
まるでこの星にいる誰かに、自分に襲い掛かってこいと挑発するかのように…。
「はああああああ………!」
マーリンは自らの潜在パワーを体のエネルギーへと変えていく。
見る見るうちに彼女の気が上がっていった。
まだまだ本気じゃないにしろ、戦闘力に直したら100万は軽く超えている。
相手が戦闘力10万程度なら、ここまで力を引き上げる必要はないのだが…マーリンはこの戦闘力10万の集団に不気味さを感じていた。
普通、相手が気を込めれば戦闘力が1000だろうと2000だろうと、離れていてもその力を込めた気の“気迫”が伝わってくる。
だが…こいつらからそれは感じられなかった。
むしろナチュラルな気…まるで、最低限に抑えて行動しているかのような気のように感じたのだ。

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオォォオオオ…

大地が激しく揺れる。
地球全体で地震が起きたかのような揺れだ。
しかし、その揺れは突然収まった。

それは、あまりにも衝撃的であまりにも懐かしく、そして…あまりにも信じられない出来事が彼女の目の前で起こったからだ。
61SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/02 01:24 ID:BD4UM7Wo
スタッ!

彼女の目の前に、突然男が降り立った。

「…よっ!探したぜ。分かりやすく気を上げてくれて助かった」
黒髪に、頬の傷…見覚えのある胴着にこのどこか柔らかく、優しい声…。
もう戦闘力10万前後の集団のことなんてどうでもよくなっていた。
そして…彼女の全身の力が抜けた…。


「ヤ…ヤ…ヤム…チャ…………なのか……?」
マーリンの目には、既にあふれんばかりの涙が浮かんでいた。
男は一歩、また一歩とゆっくりマーリンに近づく。
「ああ…そうだ。顔も忘れちまったか?悲しいもんだな…ははっ…ってうわ!」

ドンッ!

ヤムチャの体にずっしりと重い衝撃が走る。
彼女はヤムチャが全て言い終わる前に、ヤムチャに向かって全力で走り、体にギュッと抱きついたのだ。
さすがにマーリンの全速力を受け止めるのがなかなかの力がいるようで、ヤムチャも足にグッと力を込め、抱きついてきたマーリンをしっかりと受け止めた。
顔を見られないようにか、マーリンはヤムチャの胸に顔を押し付けるようにして決して離さなかった。
「マーリン…久しぶりだな……」
そんなマーリンを強く抱きしめ返し、優しく声をかけるヤムチャ。
いつしか、マーリンの涙は…止まらなくなっていた。
「ヤム…ううう……チャ……わ…わたしが…どれだけ待ったと…うう…思っているのだ…う…ヒック…」
マーリンはバンバンとヤムチャの胸を叩きながら、長年自分を待たせた事に対する不服を訴える。
それに対し、ヤムチャは申し訳なさそうに自分の頭に手をやる。
「いやあ…ははは…これには色々と訳があってだな…」
「??…その訳とやら…あとで詳しく聞かせてもらうぞヤムチャ…」
マーリンにこう言われると、少しギクリとしたヤムチャだったが、マーリンは何かに気付いたように再度口を開いた。
「そういえばヤムチャ…ここはどこなのだ…?地球なのか…?」
62SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/02 01:27 ID:BD4UM7Wo
マーリンのぼけた質問に、ヤムチャは耳を疑った。
「何言ってんだ、ここは地球…俺とお前が数ヶ月過ごした星に決まっているじゃないか。宇宙船が着陸する際に頭でも打ったのか?」
確かに頭を打ったマーリンだが、こればかりは別にマーリンがぼけていた訳ではなく、むしろマーリンの記憶力を褒めるべきところであった。
「いや、そんなはずはない。ヤムチャ…ドラゴンボールとは1つだけ願いを叶えてくれるのだよな?先ほどわたしと会話をしたことによって、願い事を1つ叶

えたのではないのか…?だとしたら、わたしがここに居るのはおかしいという事になる…」
ヤムチャはマーリンの言っていることが最初はよく分からなかったが、ようやく意味を理解した。
「あー、そういうことか…。今神龍で叶えられる願いは1つじゃなくて、3つに増えたんだ。だから最初の願いでお前に話しかけ、次の願いでお前の宇宙船ご

と地球にワープさせた。それだけのことだ」
はぁぁと大きなため息をつくと、深刻そうな顔をしていたマーリンは再び笑顔に戻り、またヤムチャに抱きついた。
「そういうことは…早く言えッ!一度連絡が遮断され…もう話せないかと…思ったんだぞ…」
マーリンがむすっとした顔を見せたが、ヤムチャはそれを笑い飛ばす。
ヤムチャに笑われたマーリンだが、このやり取りに不快感はなかった。
それどころか、マーリンは既に昔ともに洞窟で過ごしたときのような感覚を思い出し、自分の胸が熱くなるのを感じていた。
戦闘力10万前後の反応の謎も、ヤムチャがいるこの星…地球ならそんなに驚くことでもない。
63SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/02 01:29 ID:BD4UM7Wo
【9話】
「それよりマーリン…お前…ずいぶんとまあ……」
ヤムチャはそう言いかけて上から下までマーリンを見直した。
顔からは幼さが消え、体つきもよくなり、出るところは出て、髪の毛もしっかりと手入れが施してある。
最後に見た時より、全然女らしくなっているマーリンにヤムチャは正直驚いていた。
(こんな良い女になっているとは……にしてもなかなかのボディだ…)
ヤムチャの顔は自然とにやけていた。
そのヤムチャの何かやらしそうな顔を、マーリンは大きな目で不思議そうに見つめていた。
「??…なんだ?そんなにじろじろ見て…わたしの体に何かついているか?ふふ…それともわたしにパフパフとやらでもしてほしいのか?ふふふ…」
「ばっ…そんなんじゃねーよ!前より…ちょっと…あれだ。お前、背、伸びたよな?はは…」
マーリンは冗談交じりにヤムチャをからかうと、ヤムチャは顔を真っ赤にした。
その様子がよほどおかしかったのか、マーリンは腹を抱えて笑う。
(本当はちょっとしてほしいけど…)
ヤムチャは心の中でそう思っていたが、さすがに口には出せなかった。
「と、とりあえずどこか移動しないか?こんな森でいつまでも話し込むのもなんだしな」
照れ隠しにヤムチャはマーリンに移動するよう促した。
「そうか。わたしはどこでも構わないのだが、ヤムチャがそうしたいならそうしよう。それで、どこに行くのだ?」
「うーん、そうだな…都の喫茶店なんてどうだ?コーヒーが美味い店を知っているんだ」
得意げに語るヤムチャだったが、マーリンの顔には「?」マークが浮かぶ。
「キッサテン?こーひー?なんなんだ、それは」
マーリンはよく分からないことを言われ、話についていけないようだった。
宇宙ではあの不味いブロック状の食べ物と水しか口にしないマーリンにとって、ヤムチャの言っていることが理解できないのは無理もない話だ。
「ま…まあ、説明はその場でする。とりあえず案内するから俺についてきてくれないか?」
未知の世界への案内に、半分不安で半分楽しみなマーリンだったが、ヤムチャの言うことだしついていく事にした。
64SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/02 01:32 ID:BD4UM7Wo
2人が30キロほど離れた所まで飛んでいくと、やがて街が見えた。
「よし、そろそろ降りるぞ。飛んでいると怪しまれるからな」
そういうとヤムチャは地面へと降り立った。
飛んでいるところを見られるだけで不都合がある事が不思議だったマーリンだが、あえて何も言わずに共に降りていった。
ここは西の都。
建物充実具合や人の量からして、世界一の都会と言っても過言ではないかもしれない。
かの有名な、カプセルコーポレーションがあるのもこの西の都なのだ。
まあ、ヤムチャにとっては余り良い思いがしない場所ではあるだろうが…。
「さて…と、とりあえずマーリン………喫茶店の前に服を何とかしようぜ」
ヤムチャはマーリンの戦闘服を見ながら言った。
「何故服を変える必要がある?この戦闘服は2週間前に変えたばかりで新しいのだが…」
…やっぱり何も分かっちゃいないな…とヤムチャは思った。
「戦闘服が新しいとか、古いとか、そういう問題じゃないんだ。お前の服は地球では余り適していない。周りを見渡してみろ」
マーリンはムッとしたがおとなしく周りの人だかりを見渡してみた。
…たしかに、自分と同じような服を着た人がいない。
しかし、マーリンには地球人の服装が理解できなかった。
ヒラヒラしたスカートを履いたり、生地の薄いノースリーブだったり、と…
自らの体の防御力を多少なりとあげるために服を着ていた彼女にとって、そんな服を着ても意味がないとしか思えなかったのだ。
「…地球人とはずいぶんと情けない服装をしているのだな。いや…もしかしたらあの服装は薄そうに見えて実はかなりの強度を誇っていたりするのか…?」
マーリンは興味ありげにヤムチャに質問する。
「なんつーか…服に対する概念がずれてるのかもな。地球人は基本的に服に強度なんて求めちゃいないよ。
いかにお洒落な服装でいられるかを念頭に置いているんだ。地球はもともと平和な星だしな…」
そのヤムチャの説明に対し、ふーんと軽くうなずくマーリンは、まだまだこの星の環境に慣れるには時間がかかりそうだと思いながらも、
地球の文化に興味を示していた。
65SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/02 01:35 ID:BD4UM7Wo
長らく待たせてすいませんでした。
その代わりに沢山書いてみました。
残業やら休出やらでほとんど文章を書く時間がなかったのですが
待たせすぎては悪いと思い、今日は少し無理をしましたw

また明日も忙しくなりそうなので、今日のところはこれで寝ます。
おやすみなさい。
66Classical名無しさん:08/12/02 22:35 ID:s8WCij9I
乙です
67Classical名無しさん:08/12/03 17:24 ID:L2YB25ZU
オメシロイ
68ダークオ:08/12/03 17:28 ID:L2YB25ZU
最高にはまっダー
69SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/05 01:24 ID:/ieIiF0.
それにしても、地球とは実に不思議な星だ、と彼女は思った。
孫悟空をはじめとする宇宙全体から見てもトップに君臨するであろう強さの人類が存在するのにも関わらず、
他の地球人の戦闘レベルが極端に低過ぎる。
マーリンが仕事を請け負った星に比べても、比べ物にならないほど地球人のパワーは弱い。
これは、マーリンが元々「余所者に侵略された星」を奪い返す依頼しか引き受けていなかったため、
必然的に気性が荒く力の強い民族ばかりが相手だったからとも言える事だが。
しかし、ここまでレベルの低い戦闘力で、よく平和にぬくぬくと暮らせたものだ。
いつどこから突然やってくるかも分からない侵略者に、恐怖心はないのだろうか?
ヤムチャたちがいなかったらとっくに地球人の文明など滅びていただろう。
マーリンはそんなことを考えているうちに、一人で段々と腹が立ってきた。
「ど、どうした…?そんな怖い顔して、具合でも悪いのか?」
ヤムチャはマーリンの顔を覗き込むと、恐る恐る額に自分の手を当てた。
どうやら熱はないようだ、と一人で悟る。
ヤムチャの手が額に触れ、マーリンはハッとわれに返る。
「…ヤムチャ、質問がある!」
「い、いきなりだな…なんだよ」
マーリンは我に返ると、いきなりヤムチャにつかみかかる様に攻寄りながら言った。
70SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/05 01:27 ID:/ieIiF0.
「今こうやって地球人がヌクヌクと暮らせているのは、お前たち…ヤムチャたちの活躍があったからなのだろう?」
「…うーん、俺はあんまり活躍してないけど、まあそうなるな」
「お前は…お前にはプライドはないのか?地球人はもっとヤムチャたちを慕い、尊重すべきだ。それなのに、なんだこの有様は…」
「ありさま…?」
「誰一人として、お前に挨拶しようとしない。それどころかもはや他人同然だ。命をかけ、地球の運命を救ってきたのに…」
「まあ…言いたいことは分かった。とりあえず落ち着けよ。な?」
ヤムチャはマーリンの肩をポンポンと優しく叩く。
だが、彼女の勢いはそれでは治まらなかった。
「いいや、言わせて貰う!では訊こう…何故、感謝もされず、称えられもせず、誰からも知られもせず、それでもなお、お前は命をかけて戦い続けた?この恩

知らずな地球人どものために、お前は…ヤムチャは――」
「もうよせ!分かったから!!」
71SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/05 01:35 ID:/ieIiF0.
【10話】
ヤムチャは辺り全体に響くような大声で怒鳴った。

ピキッ

ヤムチャの気合の影響で、近くにあったビルにちょっとしたヒビが入る。

だが、その怒鳴り声は怒りとは違うものだったのかもしれない。
周りにいた地球人はある者は立ち止まり、ある者は腰を抜かし、いっせいにヤムチャの方を見つめた。
「す…すまない。わたしはお前がこうも評価されていなかったのが悔しくて…つい」
「…分かってる。ありがとな。ささ、それよりとっとと服を買おうぜ」
するとマーリンは微妙な表情を浮かべる。
「別に要らないのだけど…戦闘服のほうが動きやすいし…」
確かに、防御力、耐熱性、柔軟性どれをとっても戦闘服のほうが優れた服と言えるだろう。
だが、その特性のほとんどは、平和な今の地球じゃ意味がないものなのだ。
「ダメ」
ヤムチャはニヤリと歯を見せながら断固否定した。
「…どうしても?」
「うん、どうしても」
「うう…」
「ほらほら、この店なんていいんじゃないか?」
するとヤムチャはある方向を指差してマーリンの背中を押し始めた。
軽く抵抗し、踏ん張ろうとするが、マーリンはずるずると店の前まで運ばれてしまう。
それからもしばらく渋っていたマーリンだが、結局再びヤムチャに引き摺られるように連れられ、服屋に入ることになった。
72SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/05 01:42 ID:/ieIiF0.
【○話】の区切りが適当すぎるので、もう書き込むたびに入れておきますw
73SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/05 01:44 ID:/ieIiF0.
【11話】
「いらっしゃいませ!本日はどういったお洋服をお探しでしょうか?」
店に入ると早速店員の女性が話しかけてきた。
「どんな服がいいのだろうな…わたしにはよく分からない。とりあえず、
お前が適当にわたしに合いそうな服を選んでくれると嬉しいのだが…なにぶん、地球での買い物は初めてなものでな」
地球での買い物が初めてと言われ、どれだけ田舎物なんだろう…とでも思ったのか、店員はしばらくポカーンとしてたがやがてビジネススマイルになった。
「…か、かしこまりました。それでは、中へどうぞ」
マーリンは店の奥へと案内された。
当然試着をするのだろうし、さすがにヤムチャは中まではついていけなかった。

10分後…店からマーリンは出てきた。
膝上20センチぐらいの、足がほとんど見えるデニムのショートパンツに、体のラインが際立つサイズが小さめのTシャツ。
ラフな服装だが、これがマーリンの体の美しさがもっとも強調されるファッションだろう。
予想以上のマーリンのプロポーションに、ヤムチャは思わずあいた口がふさがらなかった。
いや、戦闘服の上からよく見たのだが、やはりそれでは完全に把握できていなかったようで、
マーリンの胸やクビレのラインは一流モデルに引けをとらないほど素晴らしい。
74SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/05 01:51 ID:/ieIiF0.
【12話】
「…やはり、違和感はあるが…意外と動きやすいし特に不快でもないな。どうだ…?ヤムチャ…こんな服装でいいのか…?」
マーリンは恥ずかしそうにヤムチャに尋ねる。
こんな戦士らしくないところを見られるのは、さすがの彼女も恥ずかしいのだろう。
女の子らしい…とは言えたものではないが、ぎこちなくもじもじしていた。
そのぎこちないところがまた、ヤムチャにとってはたまらなくツボなのだが…。
「か、かなりいいんじゃないかな…。よく似合っていると思うぜ」
ヤムチャの顔が再びやらしくニヤニヤするのを感じてか、マーリンは再びクスクスとヤムチャを笑うと同時に、不信そうな目付きになる。
「ところでヤムチャ、わたしの戦闘服はどうすればいい?捨てるわけにはいかないのだが、持ち運ぶのも手間がかかる」
「ああ、そうだろうな。これを使ってみろ」
ヤムチャは懐からカプセルのようなものを取り出し、マーリンに手渡す。
「なんなのだ…これは」
マーリンはそのカプセルをよく見回したが、ヤムチャがなんのためにこれを渡してきたのかが分からなかった。
「その中に戦闘服を入れるんだ」
「……は?」
「一回俺に貸してみろ」
ヤムチャはマーリンから再びカプセルを受け取ると、それのボタン状の部分を押下し、地面へと放り投げた。
するとそこには、砂煙と共に、カプセルではなく、大き目のアタッシュケースが現れたのだ。
75SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/05 01:52 ID:/ieIiF0.
【13話】
「な…」
「これに戦闘服入れておけ。そこのボタンを押すともう一度カプセルに戻るから」
「や、やってみる…」
あんなに小さかったカプセルが、ここまで大きなアタッシュケースに化けるとは物理的に不可解な現象だったが、マーリンは驚くのを堪えて戦闘服をアタッシ

ュケースにつめこみ、再びボタンを押下した。
すると、再びアタッシュケースはカプセルへと戻った。
しかも重量はカプセルの重量のみで、アタッシュケースや戦闘服の重みが全く感じられない物理的にも、重力的にもありえないことが起きている。。
「それで持ち運びも便利だろ。さ、いこうぜ」
「…素晴らしい技術力だな…地球とは」
地球が生んだ、カプセルコーポレーションの奇跡の技術に、ただただ感心するしかないマーリンであった。

支払いを済ませると、ヤムチャたちは喫茶店へと向かう。
これで、とりあえず見た目は地球人と全く変わらなくなったマーリン。
道中を歩いていると、やたらと男からの視線を感じて不快になったマーリンだったが、ヤムチャと二人きりで街中を歩けた喜びのほうが断然に大きく、気にし

ないようにしていた。
当然ヤムチャもその視線に気付いていた。
(やっぱり地球人目線から見ても可愛いのかな…マーリンって)
マーリンの美しさに、段々マーリンと二人で居る自分が気恥ずかしくなってきていたヤムチャであった。
いや、もちろんヤムチャも十分に格好いいと言える容姿なのだが…。
それに、マーリンは容姿以外にも何か惹かれるものがあった。
独特のオーラというか、雰囲気というか、地球人から見れば「宇宙人」であるマーリンは、少し地球人とは違ったものが感じられた。
それがなんなのかはよく分からないが、一言で言うと「不思議な感じ」がするといったところだろうか。
「ヤムチャ、もう少しこっちを見てくれても…いいのではないか」
マーリンはヤムチャが自分の方を余り向いてくれないせいか、不機嫌になりかけてた。
「あ、ああ…すまんな、考え事をしていた。ここが喫茶店だぞ、マーリン」
ヤムチャは喫茶店に着くと立ち止まって、それを指差した。
76SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/05 02:11 ID:/ieIiF0.
【14話】
「なるほど…これがキッサテンとやらか」
人ごみが多いせいか、街に入ってからずっと警戒心を張り巡らせていたマーリンは習慣からなのか、スカウターを操作して中の人間の戦闘力を探った。
「…中の人間の戦闘力は最高で4。きっと気を抑えているのだな」
「それから…スカウなんとかは外したほうがいい。ここでは必要ない」
あえてヤムチャは戦闘力の話に突っ込まずに、マーリンに次なる指摘をした。
するとマーリンは再びキョロキョロと周りを見渡す。
「ふむ…スカウターのような物をつけている地球人もたまに見かけるが…あれは違うのか?」
「あれはサングラスって言って、服と同じさ。自分を着飾るためにつけている人がほとんどで、別に機能とかはついていない」
意味のない事が好きだな…地球人は、と思いつつもヤムチャに言われた通りスカウターを外す。
ここ数年で前より少し素直になったようで、ヤムチャは感心した。
「ほら、それ付けてない方が可愛いぜ」
「カワイイ?わたしが?それはバカにしているのか?」
「……一応、褒めてるつもりなんだけど」
話がかみ合わないまま、二人は喫茶店へと入った。

店内に入ると、早速二人は窓際の席へと座る。
この喫茶店は地上から高いところにあり、窓からは色々な景色が見えた。
スカイカーで走り回っている人や、下の方でワイワイと楽しそうに日常生活を送る人たち。
建物が隙無くびっしりと立ち並び、西の都の都会具合が伺える。
そして、更に遠くの待ちの外れには、空気が美味しそうな森が見えた。
ヤムチャたちがさっきまでいた場所だ。
「いい景色だろ。西の都じゃ、一番この景色を見ると落ち着くんだ」
「どう落ち着くんだ?」
「うまく言えないけど…『ああ、俺って地球で生きてるんだな』って感じる」
「やはり、お前は変わっている。地球上で地球人であるお前が生きていても、別に普通というやつではないのか…?」
「ま、わからないならいいさ。いつか分かる時がくると思うぜ」
「ふぅん…」
ヤムチャは窓の外の景色を見ながら、マーリンに言った。
その目は、どこか寂しそうな目のようにもマーリンは感じた。
77SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/05 02:23 ID:/ieIiF0.
【15話】
ヤムチャは視線を店内に戻す。
全体的に地味で暗いお店だが、落ち着いた雰囲気があり、心を和ませるクラシック音楽が流れている。
育った文化は違えども、そこはマーリンにとっても悪くない空間であった。
「お客様。ご注文はお決まりでしょうか?」
ウェイトレスの若い店員がヤムチャに尋ねる。
「コーヒー2つ。片方はブラックで頼む」
ヤムチャは慣れた口調で頼むと、チラッとマーリンに視線をやる。
それまで店内を興味深そうに見回していたマーリンだったが、ヤムチャの視線に気付くとヤムチャを見つめ返した。
「ここは…いい場所だな。なんだか、心が落ち着く…」
マーリンは感心したように言った。
宇宙で戦いばかりしてきたマーリンにとってこれほどの“癒し”を感じたのは久しぶりなのだろう。
それまで地球人を警戒してきたマーリンだが、いつの間にかその警戒心は消えていた。
「だろー!修行が疲れたらたまにここで心を落ち着かせに着たりするんだ。生きていて楽しいことばかりじゃないからな、少しは精神を休めてあげないと」
「なるほど…」
戦いにおいて、もっとも大事なのは体と心のバランス…かつてヤムチャが言っていた台詞を忠実に守っていたヤムチャ自身に納得したマーリンだった。
78SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/05 02:25 ID:/ieIiF0.
【16話】
「失礼します、お待たせ致しました」
ヤムチャが喋り終わるころにコーヒーが届き、先ほどの店員がテーブルにそれを並べる。
ヤムチャはそれをズズズと一口だけ飲む。
マーリンもそれを見て、対抗心からか、負けじと一気に飲み干そうとする。
「…!!っつぅ…!」
マーリンは絶叫すると、ヒリヒリした舌を出しながら飛び上がりそうになった。
「ははっ、そんな一気に口に入れたら熱いに決まっているだろ。これはこうやって少しずつ飲むんだ」
そう言ってヤムチャは二口目のコーヒーを口にする。
「……!」
マーリンは半分涙目になりながら、無言でヤムチャに目で訴える。
「わ、悪い悪い…怒るなよ」
勝手に飲みだしたくせに…と思いつつもヤムチャはマーリンに謝った。
「熱いのが嫌ならお子様向けのアイスコーヒーもあるんだけど、どうする?」
ヤムチャの馬鹿にしたような態度にマーリンはムッときたのか、首をぶんぶんと横に振り、再びコーヒーにチャレンジする。

ズズズ…

そしてやっと一口飲み干したところで、マーリンは神妙な顔をしながらヤムチャに問いかけた。
「……ヤムチャ、…この液体は口の中に痺れるような味が残るというかなんというか…不思議な味がするぞ…」
マーリンは生まれて初めて飲んだコーヒーの不思議な味に、興味津々のようだ。
「ああ、ブラックだしお前にとっては苦いだろうな。俺はその苦味が好きなんだけど…。とりあえずこいつを入れてみろ」
ヤムチャは二つの不思議な液体を差し出した。
マーリンはそれを受けとると、不器用に蓋を開けてコーヒーに入れる。
飲んでみろと促すように、ヤムチャが手でジェスチャーをする。
マーリンは慎重にそれを一口飲む。
するとマーリンは驚いたように目を見開き、ヤムチャを見つめる。
「どうだ…?結構味が変わるだろ。暖まるし。ガムシロとミルクを足しただけだけどな…」
「……これは中々いいな…」
マーリンは目を瞑り首をコクコクと頷かせると、猫舌ながら一口ず一口ずつつコーヒーを口にする。
そして全て飲み干すと、ふう…と至福の溜め息が漏れた。
79SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/05 02:33 ID:/ieIiF0.
【17話】
「…地球人が温厚なのが、何故なのかわかった気がする…」
マーリンはヤムチャに聞こえないように呟いた。
そのうっとりとしたマーリンの様子に満足そうな表現を浮かべるヤムチャ。
「気に入ったようだな、良かった良かった。まあ俺が作ったコーヒーのほうが数段美味いんだけどな!」
逆にマーリンも、ヤムチャが楽しそうに話す様子を見て嬉しくなる。


それから――
ヤムチャたちはしばらくこの数年間、何があったかお互いの報告をしあった。

とはいっても、マーリンはほとんど星々を行き来して戦ってばかりの毎日だったため、話のネタとしてはやはりヤムチャのほうが豊富だった。
最初は交互に互いの話をしていた二人だが、いつの間にかヤムチャが話し手、マーリンが聞き手という形になっていた。
「…というわけで、ミスターサタンとか言う地球人が今や2度も地球を救った空前絶後の大ヒーローになってるってわけ。笑えるだろ?」
マーリンはヤムチャの話にすっかり聞き入っていた。
まさに驚きの連続。
ヤムチャが言うには、あのフリーザなんて、もはや比較するのが馬鹿らしいレベルの戦闘の連続だったらしい。
次元が高すぎる話に、マーリンは中々現実を飲み込めないでいたが、次から次へと出てくるヤムチャの話にうんうんと聞き入る。
その話の中で、ヤムチャが一度死んだという話を聞いたときはさすがに驚いたが、
笑いながら話すヤムチャに呆れながらも今ヤムチャが生きている現実に安心したというかなんというか、よく分からない気持ちになった。
80SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/05 02:38 ID:/ieIiF0.
【18話】
そして、話は更に遡り、ちょうどセルを倒したあとの話になっていた。
「…で、俺の修行仲間のクリリンがなんとそのおっそろしい人造人間と結婚しちゃうんだぜ!
当時は信じられなかった話だけど、今はあいつも幸せそうで何よりなんだ…って…………そういえば…」
ヤムチャはここまで話すと、マーリンを少し怪しい目で睨み始めた。
「な、なんだ…?」
ヤムチャの声のトーンが急に落ちて、マーリンは何もしてないのに何か悪いことをしてしまったかのような焦りを感じた。
「マーリン…お前この数年の間に…恋人とかは出来たの?…ていうか、結婚とかしてないよな?子供とかいたりしないよな…?」
ヤムチャが疑いの目で問いかけてくる。
最初は中々意味が飲み込めないでいたが、ようやくマーリンがヤムチャの言っている意味を理解する。
そして、元々大きくてキラキラしていた目が更に見開いた。
「……あ」
そして、はっとしたのかマーリンはその場で急に立ち上がった。
「……………忘れていた。ヤムチャ、急いでさっきの宇宙船に戻るぞ!」
「おいおい、ずいぶんと急だな。しかも何焦ってんだ?まさか……」
「いいから来い!」
マーリンはオドオドしているヤムチャの手を引っ張り、店を出ると猛スピードでマーリンは先ほどの宇宙船がある場所へと戻っていった。
かなり飛ばしたため、数分もしないで元の場所についた。
無言でヤムチャを引っ張ってきたマーリンに、ヤムチャはどう反応したらいいか迷っていた。
「なあ…そんな焦ってどうしたんだ。宇宙船に大事な忘れ物でもしたのか?」
「……ヤムチャ、先ほどの話で思い出した。お前に言わなければならないことがある…」
マーリンはヤムチャと顔を合わせないようにして言った。
81SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/05 02:43 ID:/ieIiF0.
今日はこの辺でやめておきます。
SaiyanKiller1から読んでくれている方にとっては、結構気になるところだと思います。

それではおやすみなさい。
ってあれ…この板私しか小説投稿してない…?w
82Classical名無しさん:08/12/05 07:10 ID:.OyAtq7Q
いいと思います。
83Classical名無しさん:08/12/05 07:12 ID:.OyAtq7Q
これ読むのが楽しみです
84 ◆Nt3ni7QiNw :08/12/05 13:27 ID:k2bqoOiM
俺は最強への道を読んだでかなり爆笑した。
でも人造人間編がない、なら俺が書きたいと思いました。
なので書こうと思います。だが最強への道や最強の道Zとは違って
ヤムチャが1000人になったのは人造人間編前でなったということです。

85 ◆Nt3ni7QiNw :08/12/05 14:18 ID:k2bqoOiM

第一話「ヤムチャが1000人!そこにいるのは仙人」

人造人間との戦いまで、あと一年。
Z戦士達は人造人間との戦いに備え日々、修行をしていた。
そんな中、一人の男がドラゴンボールを集めていた。
「へへっ、この願いが叶えば、人造人間が来ようと恐れることはないぜ!」
そうヤムチャである。彼はカプセルコーポレーションからドラゴンレーダーを持ち出し
気を消しながらドラゴンボールを探しているのである。
そして八個のドラゴンボールを集め終えた。
「いでよ、神龍。そして願いをかなえたまえ!」
バリバリバリ!ヤムチャが合言葉を言うと辺りが真っ暗になり
巨大な竜が現れた。この竜が神龍である。
神龍が願いはなんだと聞く。
「俺をあと、999人増やしてくれ!」
「了解した」
そして、ヤムチャが1000人になった。
神龍がいなくなりドラゴンボールが八個それぞれ別の場所に飛んでいった
「はっはっはー!もう誰も俺に敵う者はいない!」
笑うヤムチャ達、しかし、すぐに気を消して隠れ家に戻った
「皆を驚かせるのは一年後だ・・・」





86 ◆Nt3ni7QiNw :08/12/05 14:41 ID:k2bqoOiM

第二話「悟空もビックリ!ヤムチャ達1000人」

ヤムチャが1000人になってから一年後、人造人間襲来の日
悟空、悟飯、ピッコロ、クリリンが島の待ち合わせ場所に向かう
「な、なんだありゃ?」
「や、ヤムチャさんだ!」
ビックリしながら待ち合わせ場所におりる悟空達。ヤムチャは事情を説明した。
ちなみにヤムチャ達は皆に会う時は一人だけ会っていたのである。
なにも言わないピッコロ、頭を拭いている天津飯。ブルマは怒り狂っている。
「ヤムチャさん達を他の場所に誘いださないと島の人達が見たらショック死するかも知れませんよ・・・」
「そうだな・・・」悟飯がこっそりと悟空に言う。
クリリンは話を変えようとブルマが抱いている物体に注目した。
「そ、そんなことより俺はブルマさんが抱いている物体に驚いた・・・」
ヤムチャ達よりも!?悟空達のほとんどがそう思った。
「父ちゃんはベジ―タだよな、トランクス」
「な、なんでそんなこと知ってんのよー?ビックリさせようと思って
誰にも言わないでおいたのに・・・」会話がブルマの赤ちゃんの話題になりはじめ
しだいに無視されはじめたヤムチャ達。仕方ないのでヤムチャ達は「UNO」をやりはじめた。
次話「現れた人造人間。UNOをやり続けるヤムチャ達1000人に続く
87 ◆Nt3ni7QiNw :08/12/05 15:07 ID:k2bqoOiM

第三話「現れた人造人間。UNOをやり続けるヤムチャ達(1000人)」

悟空達の前にスカイカ―に乗ったヤジロベーが現れた。
ヤジロベーは仙豆を渡すとスカイカ―に乗りすぐに帰って行った。
だがヤムチャ達の攻撃によりスカイカ―ごとヤジロベーが打ち落とされた。
「けっ、きたねぇ花火だ」
不快そうな顔をしながらヤムチャが言った。
「なにやってんですか!ヤジロベー、せっかく仙豆届けてくれたのに!」
ヤムチャに向かってクリリンが言う。
「だって人数分ないんだぜ?俺達の分が足りねえぞ」
「そんなに仙豆ありませんって!普通に考えてくださいよ」
ヤムチャがヤジロベーを攻撃したのは仙豆を人数分届けなかったからかと思う悟空。
「全部、俺達の分だとしても全然足りねえし・・・」
「貴様らで全部食べるきか。それよりもヤジロベーを助けに行ってこい」
しぶしぶ、ピッコロの言う通りに助けにいこうとする一人のヤムチャ。
しかしヤムチャが空を飛んだ時、何者かのエネルギー波が向かってきた!
あわてて攻撃するヤムチャ。
「ふう驚かせやがって・・・」
そう言いながらヤムチャは死んでいった。


88Classical名無しさん:08/12/06 03:54 ID:f34AC9Ow
盛り上がってきたねぇ
続き楽しみにしてるよ
89 ◆Nt3ni7QiNw :08/12/06 12:49 ID:Tu9pnu5E
>>85の八個のドラゴンボールというのは入力ミスです。
ドラゴンボール七個の間違いです。
90ヤムチャ最強への道3:08/12/06 13:13 ID:Tu9pnu5E

第四話「恐怖!怯えるヤムチャ達320人+(679人)」

「あっ、ヤムチャが!」
「ついに出やがったな。人造人間!」
急いで島にある町へおりる悟空達。悟飯は打ち落とされたヤジロベーを助けにいった。
ヤムチャ達679人が悟空達についていった。他の320人のヤムチャ達は残った。
ブルマは残っているヤムチャ達を見ながら聞いた。
「あんた達は行かないの?」
その質問にすかさずヤムチャ達は答えた。
「あたり前だ。行かん!」
「い、行かんって、こういうときは一人でも多い方が・・・仲間も地球もピンチよ」
「だろうな・・・」
「だろうなですって!あんた達なんとも思わないの!サイテ―よ!」
「恐いんだよ、俺達は・・・」
「ど、どうも・・・」ブルマが申し訳なさそうに言った。
次話「襲いかかる人造人間。ヤムチャ達679人+(320人)」
91ヤムチャ最強への道3:08/12/06 13:42 ID:Tu9pnu5E

第五話「襲いかかる人造人間。ヤムチャ達679人+(320人)」

町へ降りた悟空達。クリリンは近くにいた男に怪しい奴を見なかったか聞いた。
「おいっ、怪しい奴見なかったか!?」
「み、見た。あそこに・・・」男は指をさしながらいった。
「きゃー、誰か助けてー!」
「へへへ、今からお茶しなーい?」
その方向には3人のヤムチャが女性をナンパしていた。
クリリンは見なかったことにして人造人間の捜索を続けた。
一方、他のヤムチャ達は真剣に人造人間を探していた。
「くそっ、どこだ?」そこにキャーと女性の悲鳴が聞こえる。
ヤムチャ達がそこの場所に向かう。
それに気づいた人造人間達。だがとりみだすことはなかった。
「エネルギー値が異常に高い人間が何百人も近づいてくる。サーチシステムの故障か?」
「故障ではありません。私も同じ反応をとらえました」
ヤムチャ達がそこにかけつけた時には3人の人間が殺されていた。
そこで人造人間達はヤムチャ達に襲いかかった。
次話「かけつける悟空達。余裕のヤムチャ達679人+(320人)」
92ヤムチャ最強への道3:08/12/06 14:09 ID:Tu9pnu5E

第六話「かけつける悟空達。余裕のヤムチャ達679人+(320人)」

人造人間達は二人ヤムチャの首を掴み腹に手をつきさした。
いきなり現れた人造人間達を前にあっけにとられるヤムチャ達。
ここで七人のヤムチャが逃げ出した。老人の姿をしている人造人間は
それを逃すまいとエネルギー波を放った。七人の全てのヤムチャが爆死した。
そこに一人のヤムチャが動いた。「特大繰気弾!とうっ」
巨大な繰気弾を人造人間に向けてなげる。だが片手で跳ね返されてしまった。
跳ね返った繰気弾がヤムチャにせまりくる。
「くっ、こうなったら天津飯!技を借りるぜ!排球拳いくわよー!」
数人のヤムチャが協力し排球拳を使った。
「ワン!」
「ツー!」
「アタ―ック!」
空中に投げられた繰気弾を最後のヤムチャが人造人間に向けて叩き落とす。
だが運悪くそこにかけつけててきた悟空達もまきぞえになってしまった。
「ゆ、許さん・・・絶対に許さんぞ虫けら共!」
怒った天津飯が気功砲を放つ。ここで20名のヤムチャが命を落とした。
次話「悟空対人造人間。ヤムチャ達652人+(320人)」
93 ◆Nt3ni7QiNw :08/12/06 14:12 ID:Tu9pnu5E
今日はここで終わりです。
ちなみに>>87のあわてて攻撃するといのは防御の間違いです。
マジでごめん・・・
94SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/06 23:40 ID:2MGc1fDM
>>80の続き

【19話】
「先ほどの話…?ああ、子供とか結婚とかの話か。……って………え?」
ヤムチャは嫌な予感がした。
これだけは絶対にないと思っていた。
しかし、マーリンの言葉はヤムチャの予感を確信させる。
「あの…その…ヤムチャ…。わたし…さ、実は…子供が、いるんだ」
「………なんだってえええええええええええ?!?!!!!!!」
マーリンは恥ずかしそうに下を向いていた。
森中の野生動物が、ヤムチャの大声に驚いてほとんど逃げ出した。
「そ、そんなに大声をあげなくてもいいじゃないか…」
「………」
さっきまで暖かかった風が少し肌寒く感じられる。
ヤムチャはしばらく硬直し、それに対しマーリンは落ち着かない様子だ。
しかし、ヤムチャはこの言葉の意味を大きく勘違いしていたことにまだ気付いていない。
「……俺はこの数年間、ずっとお前を信じて待っていたんだぜ?女も作らずに、いや、遊んだりぐらいはしたけど…。…それなのにマーリン、お前ってやつは…その辺の男と……」
ヤムチャの気がどんどん上がっている。
どうやらかなり怒っているようだ。
それを見て何に怒っているか分からず、ポカンとしていたマーリンだったが、やっとヤムチャが勘違いしていることに気付いた。
「えっと…ヤムチャ……何か勘違いしていないか?」
「か、勘違い…?勘違いもクソもあるかよ!どう言い訳してくれるか楽しみだぜ、他の男との子供が出来た言い訳をな!」
ヤムチャが大声で怒鳴りつけると、マーリンはやっぱり…と言った表情をし、苦笑いをしながらやれやれと首を横に振る。
「どうやら言い方が悪かったらしい…。ヤムチャ……子供というのは……わたしと、…お前……ヤムチャの子だ」

「…………………………は?」
95SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/06 23:55 ID:2MGc1fDM
【20話】
空気が凍りついた。

ヤムチャは、微動だにせず、目の焦点もどこにあっているか分からないような方向を見つめ、そのまま30秒ほどが過ぎた。
「…ヤムチャ?」
全く動かなくなったヤムチャを心配し、マーリンが肩をちょんちょんと指で触ると、ヤムチャの目の焦点が彼女に戻る。
「あ…マーリンか。悪い悪い、今立ちながら寝ていたみたいで夢を見ていたんだ。なんかその夢の話だと俺とマーリンの間に子供がいるとかいう話でよ…あははっ」
ヤムチャはいつもの陽気なヤムチャに戻ったようだ。
「ふふ、信じられないようだな。それは夢ではないぞ。わたしは出産した……お前との子をな」
なかなか現実を受け入れられないヤムチャに、マーリンは笑いながら言った。
「………マジで?」
ヤムチャは耳を疑う。
自分に子供がいるだなんて、実感がまるで沸かないのだろう。
「だって……だってマーリンと俺は…その……一回しか………ねえ?」
「…と、言われてもな……わたしはどう答えたらいいのか……結果こうなってしまったのだから、そういうことなのだろう」
「…本当に、俺の子なのか?」
「間違いないと言って良い。そもそも、わたしの性格上、他の男に体を許すわけがないのはヤムチャが一番よく分かっていそうなものだが…」
確かにヤムチャとマーリンが交わったのは精神と時の部屋での一回のみだ。
しかし…偶然にもマーリンはその一回でヤムチャとの子を胎内に宿していた。
「なんで…そういう大事な事をもっと早く言わないんだよ!」
ヤムチャは半笑い半怒りのような良く分からない表情でマーリンを問い詰める。
「その点はすまない…ヤムチャが急に現れたせいで、すっかり忘れてしまっていたのだ」
マーリンは指で頭をかきながらヤムチャに謝る。
「……で、まさか、お前が宇宙戦に忘れたものって………」
ヤムチャはそっと宇宙船に目をやる。
「ああ、わたしの子…シルフだ。当然ヤムチャ、お前の子でもある」
ヤムチャは目を白黒させながら、恐る恐る宇宙船の中を覗いてみた。

そこには……スヤスヤと眠るかわいらしい男の子が眠っていた。

その顔はマーリンのような気品ある感じもするが、ヤムチャにあるような野心も纏っているように見える。
96SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/06 23:59 ID:2MGc1fDM
【21話】
ヤムチャはシルフの顔を見た瞬間、これは自分の子だとすぐに分かった。
「これが…俺の…いや、俺とマーリンの……子…」
「そうだ。こう改まってみると、少し照れくさいものだな…ふふふ」
眠る我が子を片目に、宇宙船を覗き込むヤムチャの横にマーリンもやってきた。
すると、タイミングがいい事にシルフは目をパチパチやりながら起き上がった。
「お母さん……?あれ?ここどこ?」
寝ぼけているのか、シルフはフラフラしながら立ち上がり、宇宙船を降りる際に転びそうになる。
「シルフ、ここは地球だ。今日はお前にとって最高の日になるだろう。父さんに会えるぞ」
マーリンははっきりした口調でシルフに言うと、シルフの細かった目が急に見開いた。
「…えっ!地球…?父さんに…会える?」
我が子の質問に対し、マーリンはうんうんと頷くと、シルフはキョロキョロあたりを見渡した。
そして、すぐ近くに立っていた男の姿が目に入る。
その男とシルフはしばらく目が合った。
「……え?」
シルフは、まさか…まさか…と思い、呆然とする。
照れたような顔でその男はしゃべりだした。

「よ、よう…シルフ…大きくなったな…!いや、小さい頃のお前は知らないけどさ…はは」
ヤムチャが子供には通用しなそうなギャグを言っていたが、シルフの耳には入っていなかった。
「――なの?―さん…なの?お父さん…なの?」
少年は既に泣きそうな顔をしている。
ヤムチャはその少年を優しく抱きかかえると、顔を近づけて言った。
「ああ…そうだ、俺がヤムチャだ。…今まで長い間会えなくてすまなかったな、シルフ」
そのガッチリとした腕に抱かれたシルフは、この人がヤムチャであるということを疑うことすらしなかった。
「お父さぁぁああぁぁんッ!!!」
そして、今まで抑えてきた気持ちが全て開放され、それは少年の大量の涙へと形を変えた。
ヤムチャは少し驚いたような顔をしたが、抱き上げているシルフの頭を強く、優しく撫で、長い間抱きしめていた。
その様子を、マーリンはニヤニヤしながら見つめていた。
97SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/07 00:12 ID:oPl7hCEg

【22話】
――数時間後。
辺りは薄暗くなったが、とある荒野の洞窟だけはいまだに明るさに満ちている。
ゴウゴウと焚き火が燃える中、3人の人影がそこにはあった。
狭い場所だったが、その狭さがあえてちょうどよかったのか、そこにいる3人は仲良さそうに鍋を小さく囲むように座っていた。
「どうだ、シルフ。その料理は地球でマーリン…いや、母さんが最初に食べたものと同じものだ」
ヤムチャは喋りながら鍋の中身を皿によそい、それをシルフに手渡す。
「最高だよ!お父さんは料理も上手いんだね!」
「このぐらい普通さ。地球にはまだまだ美味い食い物があるんだぜ」
「本当に!?これより美味しいもの食べたら気絶しちゃいそうだ」
「はは…大袈裟な奴だなー」
シルフはがっつくようにスプーンを口に運び、口の中のものが飲み込み終わるとヤムチャに話しかけていた。
食べては話し、食べては話しを繰り返し、忙しそうにしている。
たまに動作を急ぎすぎたせいか、変なところに詰まらせ、むせかえる姿を見てヤムチャとマーリンは大笑いをする。
お互い違う環境で何年も暮らしていたので、いくらでも会話は弾む。
尽きることのない雑談にすっかり時間を忘れ込んで話し込んでしまい、気付くとシルフは眠り、マーリンも少しウトウトしていた。
「眠いか?マーリン」
「いや……平気だ。地球時間にしてあと二時間は大…丈……」
と言いながらヤムチャにもたれかかり、眠りに落ちてしまう。
ヤムチャはマーリンが眠ったのを確認すると、彼女の肩を優しく抱えながら毛布をかけ、
生まれてから初めて感じるこの温もりと、本当の幸せを噛み締めながら共に眠りに落ちるのだった。
98SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/07 00:35 ID:oPl7hCEg
【23話】

ゴゴゴゴゴゴ…

「…ん…」
マーリンは地響きによって目を覚ます。
いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
マーリンは昨日まで惑星制圧の任務をぶっ続けでやっていた疲れが溜まっていたせいか、二人よりだいぶ遅れての起床となってしまった。
体には暖かい毛布がかかっており、それにはまだわずかだがヤムチャの温もりが残っていたように感じる。
目をゴシゴシやりながら周りを見渡すと、ヤムチャとシルフがいない。

初めてあの洞窟で迎えた朝に似ているこのシチュエーションがとても懐かしく、思わず修行に明け暮れた日々を思い出した。
ふと外で大きな気を感じる。
この気の感じはヤムチャのものだろう。
マーリンはヤムチャが何をしているのか大体想像がついた。

「お父さんすごいや!それはなんて技なの?」
シルフの大声は、洞窟内にいたマーリンの耳にも入る。
マーリンはフラフラとした足取りで洞窟の入り口まで歩いていった。
自分の真上にある太陽がやたら眩しく感じる。
そしてその光が、彼女の目を優しく覚ましてくれた。
少し遠くからヤムチャの声が聞こえる。
「界王拳2倍、って技だ。無理をすれば30倍以上まで上げられるけど、1、2分持つのがやっとってところだな。それに使い終わったら反動でしばらく動けない。使いこなせるのはせいぜい20倍ってところか」
シルフはヤムチャが何を言っているかはよく解らなかったものの、この男はスゴイということは、近くにいるだけで痺れるぐらいその肌で感じていた。
もちろんマーリンも。
その赤いオーラを纏うヤムチャの姿は、マーリンの記憶の中で、初めてヤムチャが自分の前で界王拳を使った時のそれと被った。
そして自然に握りこぶしに力が入り、無性に体がウズウズとしてくる自分にハッと気付く。
起きたばかりで、それに昨日までの戦闘で体の疲れはまだ残っているはずなのに、何故かマーリンは動きたくてしょうがない衝動に駆られる。
まるで何かに操られているかのように、自分の意識が戦闘態勢へと変わっていくのが分かったマーリンだったが、こればかりはサイヤ人の本能的なものであって、中々制御できない。
もちろん、それを促しているのは目の前から感じられるヤムチャの強さ…それだけだった。
99SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/07 00:48 ID:oPl7hCEg
【24話】
界王拳を解いたところで、ヤムチャはマーリンの姿に気付く。
「よう、マーリン。今ので起こしちまったか?」
「お母さん、おはよう!」
ヤムチャは悪い悪いと言わんばかりに手で謝罪のジェスチャーをする。
「気にしなくていい。あんな地響きがしていたら起きない方が不自然だ。それよりヤムチャ、久々にわたしと組み手とやらをしてみないか?宇宙には強い者が

いなくて退屈していたのだよ…ふふ」
マーリンはそう言いながらサッと戦闘の構えを取った。
ヤムチャはマーリンの誘いに乗るか乗るまいか頭をかきながら迷っていたようだが、やがて決心をしたようだ。
「いいのか?…言っておくが、俺は腕をあげたぞ」
ヤムチャはニヤリと表情を変えた。
そして亀仙流の構えにアレンジを加えた独自の構えでマーリンの前に立ちふさがる。
対するマーリンもそれを見て笑い返す。
「ふふ…面白いっ!言っておくが手加減は無用だ、本気で来い!」
そう言いながら指をパキパキと鳴らすと、マーリンは気を解放し始めた。
「はあああああ…ッ!」
「ッ…さすがに凄い気だな…ていうか俺相手になるのか…?」
まるで地下から湧き出る水のようなその底知れない気に、さすがのヤムチャも表情が曇る。
「…シルフ、離れていろ。200…いや、400メートルぐらいな」
ヤムチャは姿勢を低くし、シルフに離れるように促す。
それに対しシルフは素直に頷き、急いで二人の間から離れていった。
マーリンとヤムチャの間に走る緊張感はシルフにもビリビリと伝わっていたようだ。
100SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/07 01:23 ID:oPl7hCEg

【25話】
「いくぜマーリン!対人で使うのは久々だな…狼牙風風拳ッッ!」
「ふふ…その技は見切っている!狼牙風風拳によっていやと言うほど痣(アザ)ができたのでなっ!」
マーリンがそれを言い終わるや否や、ヤムチャは超スピードでマーリンに突っ込んでいった。
シルフの目では、その速さを捉えることが出来なかったが、ヤムチャがマーリンの方へ向かっていってることだけはかろうじて理解できた。
ヤムチャの移動によって、走った道には砂嵐が巻き起こる。
その様子をシルフは息を飲んで見つめていた。

超スピードな上に砂嵐までもが巻き起こり、ほとんど肉眼ではヤムチャの姿を捉えられないはずだがマーリンは焦りもせず、表情一つ変えずに集中していた。
「そりゃああああッ!!」
砂嵐の中から突然ヤムチャの姿が現れ、その直後にヤムチャの拳がマーリンの目の前までそれが迫る。
それと同時に、マーリンの目付きが変わった。
「受けてやろう…お前の狼牙風風拳を!」

ドガガガガガガガッッ!
バキッ!ドガッ!

激しい攻防のように見えるが、ヤムチャの狼牙風風拳を完璧に全てガードするマーリン。
次から次へと拳を繰り出すものの、全て直前でマーリンに防がれてしまい、思うように攻めれないヤムチャ。
「チィッ!!」
一度もクリーンヒットすることなく、ヤムチャは再びマーリンから距離をとった。
「さすがに隙がないな…今みたいな単調な攻めじゃ通用しなそうだ」
ヤムチャは顔に汗を浮かべながら言った。
「つまり、腕を上げたのはヤムチャ、お前だけではないということだ」
マーリンは腕でヤムチャの攻撃を全て受け止めたのにも関わらず、その腕には傷一つない。
それどころか、殴っていたヤムチャの拳の方が逆にヒリヒリと痛んでいた。
「へへ、そうかい。それじゃあこいつはどうだっ!」

すると、ヤムチャは何かを閃いたのか、再びマーリンへと突進していった。
101SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/07 01:33 ID:oPl7hCEg
【26話】
「ハイーーッ!」
マーリンは再びヤムチャの単純な突進に、怪訝そうな表情を見せたが、やがてその表情も不気味な笑みへと変わる。
「…というのは残像で、本物のお前は後ろだろう?…そこッ!」
ヤムチャの残像拳を見切り、マーリンは振り返らずに気を探り、後ろにいたヤムチャに肘打ちをくらわす。
が、ヤムチャはそれを顔面の直前で受け止めると、体勢を低くしてマーリンの足元目掛けて蹴りを入れる。
足元がお留守ではないマーリンは、最低限の跳躍でそれを避けると、クルリと体を回転させ、その遠心力を利用しフック気味のパンチを繰り出した。
「なっ…!!」
これは受け止めたらまずい。
変則的な動きで、こんな攻撃を予想できなかったヤムチャ。
恐らく、普通に受け止めても致命的ダメージを受けることになる。
単純にパワーだけなら確実にマーリンの方が上なのはヤムチャはよくわかっていた。
界王拳を本気の状態まで上げればどうにか受け止められそうだが、とてもそんな時間はない。
「チッ…!」
ヤムチャは脳内でとっさにこれを判断し、舌打ちすると空中へと飛び上がった。
「逃が…っ!」
逃がすか、と言いかけたマーリンの口が思わず止まる。
マーリンは空中にあがったヤムチャを追いかけようと、足にグッと力を込めたが、なんとヤムチャは2メートルほどしか宙に浮かんでなかった。
そう、ヤムチャが空中へ飛び上がったのは攻撃を回避するためもあったが、次なる攻撃に転じるためでもあったのだ。
「狼牙風風“脚”だ!」
「……!」
ズガガガガガガッ!
ヤムチャは武空術で空中に静止した状態で、凄まじい蹴りの連打を仕掛ける。
パワー、スピード共に以前のヤムチャからは想像がつかないほどの攻撃だ。
「ハイハイハイハイハイハイッ!ツリャアアアッッ!」
独特な掛け声と共に次から次へとヤムチャの蹴りがマーリンに向かって繰り出される。
102SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/07 01:47 ID:oPl7hCEg
今日のところはこの辺で寝ます。
戦闘シーンは書くのが難しい…。
頭の中で描いた戦闘を、文章で読者様方にそのまま伝えるのは至難の技ですね。
◆Nt3ni7QiNwさんも、頑張ってください!

それでは。
103Classical名無しさん:08/12/07 18:49 ID:/TOnHu4U
これからどうストーリーが動くか楽しみ
104SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/08 01:06 ID:HmL8Bl5A
【27話】
マーリンはその蹴りを全てガードしているが、攻撃が速すぎて反撃する隙がなかなかなかった。
距離を取って立て直してしまえばよかったのだが、彼女のプライドはそれを許さない。
意地でもこの場に留まろうとするマーリンに、ヤムチャは容赦せず蹴りを打ち込んでいく。
クリーンヒットもしてないし、ガードも全て間に合っているが、防戦一方では気分が悪いのか、段々と彼女の表情に余裕がなくなってくる。
「…っ!こ…の…ぐらいッ!!はぁあああッ!!」
勢いよく動いていたヤムチャの足が止まる…いや、止められたのだ。
もちろんマーリンの手によって。
「な…止めやがった…!」
マーリンはヤムチャの足をしっかりとつかみ、ジャイアントスイングのようにしてヤムチャをグルグルと回す。
遠心力の勢いでヤムチャは身動きができない。
そして数十回転させた後にマーリンは手を離す。
言うまでもなく、ヤムチャは無抵抗に数百メートル先まで吹っ飛んだ。
岩壁を貫通し、地面を数回バウンドしたところでようやく身動きがとれるようになったヤムチャ。
すぐに身構えるが、マーリンの姿が見えない。
「ここだ、ヤムチャ」
ヤムチャの真横からマーリンの声が耳に入った。
「は、速い…な」
吹っ飛ばされた直後に起き上がったつもりなのに、彼女は既に目の前に居た。
ヤムチャの体勢が整わない内にマーリンは攻撃を仕掛ける。
「さっきのお返しだ…今度はわたしの狼牙風風拳をくらうがよい」
マーリンはニヤりと笑い、高速でヤムチャに殴打のラッシュをかける。

ズドドドド…!ガキッ!バゴ!

対するヤムチャも最初は避け切れなかったが、体勢が整うと本場の狼牙風風拳で応戦する。
目では捉えられない超高速な攻防が続く。
そしてお互いに結局1発もクリーンヒットしないまま、両者は再び距離をとった。
105SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/08 02:37 ID:HmL8Bl5A
【28話】
「準備運動はこれぐらいでいいか?ヤムチャ」
マーリンは息一つ切らさずにヤムチャに向かっていった。
「ああ、そうだな」
ヤムチャも負けてはおらず、余裕の表情を浮かべる。
「そろそろ本格的にこいよ。あくびが出ちまうぜ」
ヤムチャは人差し指をマーリンに向けると、クイクイっとやり挑発する。
「……」
その挑発にムキになって突っ込んでくると思ったヤムチャだったが、マーリンはその挑発に乗らずに、ただジッと身構えていた。
この数年で突っ込み癖は直ったか…と少し感心させられたヤムチャ。
しかし…それは…彼女は…マーリンはただ構えていただけではなかった。
「っはぁあ!!!」
唐突だった。
ヤムチャが気づいた頃には目の前に自分に向かって迫ってくるエネルギーの塊があった。
なんの前触れもなくマーリンの手の平からヤムチャに向かってエネルギー波が放たれたのだ。
そこまで威力はなかったが、ヤムチャは驚いていた。
「っ……今の…どうやって…!」
エネルギー波が予想できなかったヤムチャは、咄嗟に上に避けるしかなかった。

ドゴォオーンッッッ!

真下で爆発が起きる。
威力がないとはいえ、直撃したらヤムチャとは言えどただでは済まない体になっていただろう。
空中でうまく避けれたとホッとしたヤムチャだったが、マーリンの狙いはそのエネルギー波の不意打ちではなかった。
遥か下の地面に出来た影に、自分の物と、もう一つ自分のものではない人影が存在するのを確認し、ヤムチャは全てを悟った。
飛び上がった先…ヤムチャの背後はマーリンが待ち構えていたのだ。
106SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/08 02:41 ID:HmL8Bl5A
【29話】
「な…後ろ……!」
ヤムチャがそれに気づいた頃にはマーリンの蹴りがヤムチャの背中を完璧に捉えていた。

メキッ!

「そーりゃああ!!」
鈍い音と共に、マーリンの足はヤムチャの背中にめり込むと、彼女はそのまま掛け声と共に、地面にむかって足を振り抜いた。
何かが壊れるような音が聞こえたのと同時に、背中に激痛が走る。
「グ…ハッ…アア…!」
声にならない声をあげることが今の彼に出来る精一杯だった。
ヤムチャは蹴られた瞬間に意識が遠退き、自分が今下に落ちていると言う状況を理解できずにいた。
上手く呼吸が出来ない。
ヤムチャが時速数百キロはあろうかという勢いで地面へと落ちていく。
「……だあああああ…ッ…まだだ!」
だが、地面寸前でヤムチャの意識と体が一致した。
そして墜落ではなく着陸という形で再び地面に足をつけるヤムチャ。
長年の武術経験からか、ヤムチャはマーリンに蹴られる寸前に無意識のうちに瞬間的に背部の気を高めていたため、致命傷だけは避けていたのだ。
かといってかなりのダメージを受けたことに変わりはないが。
数秒後にマーリンもゆっくりと着地してきた。
「さすがだな…エネルギー波を避けるのはわかっていたが、あの蹴りをくらって持ちこたえるとは…。だがダメージは大きいようだな、ヤムチャ。ふふ…早くも勝負あったか?」
腕を組ながら笑みを浮かべるマーリン。
ヤムチャはそれを見て口から血の混じった唾をペッと吐き出す。
「今のエネルギー波……普通じゃなかったな?」
かなりのダメージを負い、今後の戦闘に支障がないと言えば嘘になるヤムチャだったが、不適にも笑い返した。
107ジュウ:08/12/08 06:40 ID:TSsCU3GI
おもしろ杉〜
108SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/08 23:24 ID:HmL8Bl5A
【30話】
「…さあな」
マーリンはとぼけたように首をかしげる。
だがヤムチャは続けた。
「俺はお前がエネルギー波を打つなら、打つ前に手に宿った気を感じとり、あの程度ならもっと余裕でかわせたはず…というか打つ前に分かったはずだ。
だがお前からはその気の『溜め』を感じられなかった」
余裕を見せていたマーリンだったが、ヤムチャが喋り出すと表情が強張ってきた。
押し黙っているマーリンに、ヤムチャはなおも続ける。
「お前はもしかして、外見の気を変化させずに…内面的な気を高めることができるのか?エネルギー波のあとの蹴りにしてもそうだ。
後ろから気配は感じなかった…。
お前は高速で俺が動く方向を予想し、そこで気を消して俺の背後で待ち構えた。そして体の内側に溜めていた気を一瞬で体に宿らすとし、俺がお前の気を察知する前に俺を蹴った。
つまり、お前が気を入れたのは、蹴りが俺の体に触れる直前ってことだ。察知されたら避けられたりガードされたりしちまうからな。どうだ?違うか?」
単純に、気のコントロールならヤムチャとて達人レベルだ。
だが…ヤムチャとマーリンの違いはそのコントロールの『速度』だった。
普通、エネルギー波を打つにはヤムチャの言うように気の溜めが要る。
その溜めの動作をいくら短くしても、気を探れる能力があるものなら、相手がエネルギー波を打つ前からそれを察知できる。
だが、今のマーリンの攻撃はその次元の域にはいなかった。
体の内側…つまり相手に悟られないように気を体内で上昇、凝縮させ、外見の気を変化させずに、内面的な気を高める。
そして、凝縮されたその気を瞬時に外…つまり、体の一部、あるいは全体の強化や、エネルギー波やらへと変化させ、放出させるという技術だ。
その気のコントロールにより、蟻のようなレベルまで気を消したかと思えば、次の瞬間にはスーパーサイヤ人並のパワーでの攻撃を繰り出す…。
当然のことながら、気を察知しながら戦うヤムチャを初めとする地球人たちでは気を読むことが出来ず、相手の場所も非常に分かりづらい有効な手段だ。
ヤムチャがマーリンの攻撃が読めなかった答えは、この変則的なマーリンの気のコントロールだった。
109SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/08 23:25 ID:HmL8Bl5A
【31話】
「ふっふっふ……あははははっ!」
ヤムチャの説明が終わると、マーリンは甲高い声で笑い出した。
「何がおかしい?俺の考えは間違っていたか?」
「ヤムチャ、お前は本当に凄い男だ…わたしがお前対策に長い時間かかけて編み出したこの技を…たった数秒のこの手合わせで見抜くとはな…」
言葉では自分の技が見抜かれたことを褒めているが、それでもマーリンの表情には再び余裕が戻っていた。
ヤムチャはそのマーリンの表情を見て自分の目を細めると、再び戦闘の構えを取る。
「だがな、ヤムチャ……わたしはお前のことをよく知っている。わたしがこんな小細工をしたところで、一瞬で見抜かれるだろうと思っていた…」
マーリンもヤムチャが構えたのを確認すると、同じく戦闘態勢に入る。
「しかし…この技は“見抜けても避けれない”技なのだよ…ふふ、残念だったな」
「………」
たしかにマーリンが同じような攻撃をしようと、相手を『気』で感じて動いていては、分かっていても今のヤムチャに攻撃をかわすことは難しいだろう。
いわゆる「詰み」の状態にさせたつもりだった…だが。
だが、次に起こった展開は彼女の予想とは違っていた。
ヤムチャの焦ったような表情を見られると思っていたマーリンだったが、ヤムチャはそんな様子もなくただただ自分に向かって真っ直ぐと構えている。
「…もうその攻めは俺には通用しない。やってみれば分かる」
静かにヤムチャが言葉を発する。
今度ははっきりと分かる、余裕の表情を浮かべて。
「…では、そうしてみよう」
予想外の展開にマーリンは面白くなかったが、気を取り直して再びヤムチャに攻撃を繰り出そうとしていた。
ヤムチャに悟られないように、静かに体の奥でエネルギーを溜める。
じわりじわりと体の芯にエネルギーが充満してくるのを感じる。
それと同時にヤムチャを見つめ、彼の気を察知する…全身に気が張り巡らせているようだが、足の方にパワーを集中しているみたいだ。
最初の攻撃をまず避けて、その後自分から一本取ろうというところなのだろうと解釈すると、マーリンは頭の中でどうヤムチャの不意をうとうか作戦を練っていた。
110SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/08 23:31 ID:HmL8Bl5A
【32話】
だが、ヤムチャへの意識が疎かになったほんの一瞬…目を放した隙に、ヤムチャの気配が自分のすぐ近くにいることを感じた。
「油断したなっ!」
「…っ…!」
ガードしようとするが、気のコントロールが間に合わなかった。

ドス…!

気付けば腹に、ヤムチャの拳がヒットしていた。

「………ッッ!」
胃液が口から出そうになるほどの激痛。
毎日鍛えているとはいえ、久しぶりにまとものパンチをくらったマーリンは苦しそうに顔を歪める。
「誰がこっちから攻撃しないって言った?」
先程とはまるで逆の展開。
自分の頭上からヤムチャの声が聞こえる。
「チィイ!」
腹を殴られたマーリンだったが、苦し紛れにヤムチャに向かって手刀を繰り出した。
だが、いとも簡単に受け止められてしまう。
怯まずに逆の手でアッパーを狙うが、これも紙一重で空を切る。
腹へのダメージが大きく、いつものように技に切れが出ない。

だが、マーリンは接近戦となるのを密かに狙っていたのだ。
「…はぁあっ!!」
ヤムチャとマーリンの間は1メートルもない。
その至近距離でマーリンは先ほどと同じ要領で、溜まっていた内面的エネルギーで、エネルギー波を放つ。
ヤムチャは避けれるはずもない。
そのエネルギー派はヤムチャを吹っ飛ばし、はるか遠くへと飛んでいった…かのように見えた。
111SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/08 23:33 ID:HmL8Bl5A
【33話】
だがそれは違う。
当たったにしてはまるで手ごたえがない。
「あいにく心理戦は得意でね。あのタイミングでエネルギー波がくるのは分かっていた」
「!!」
今度は左からヤムチャの声が聞こえた。
声が聞こえた方向を向くと、ヤムチャはすぐ隣に腕を組みながら待ち構えていた。
「それにしても残像拳に引っかかるとは、さすがに焦りすぎじゃないか?」
分が悪いと思ったマーリンは、足で地面を蹴り、大きく後ろへとジャンプするように下がり、ヤムチャとの距離をとった。
「何故避けられたのだ……」
マーリンはヤムチャに聞こえないよう、独り言をつぶやく。
そして、そこで腹を押さえながらがっくりと膝をついた。
マーリンは歯を食い縛りながら悔しそうにヤムチャを睨む。
「結構効いたみたいだな。気を全く変化させずに気を溜めるという発想まではよかった…俺には思いつかなかったぜ。
気を察知して戦う俺たちにとっては、目を瞑って戦うよりやりにくいぐらいだ」
ヤムチャはあえて攻撃の手を止めて続ける。
「だがな…この技の弱点は、内面的な気を溜めている間は、外見の気を自由に変化させれないことだ。
つまり、内面の気を溜めている時にピンチの局面が突然訪れたら…頭では分かっていても対処ができない。
さっきみたいにお前が気を下げた状態で、気を入れた状態の俺に殴られたらどうなるかわかるよな。絶対的なパワーの差があってもこの通りだ」
ヤムチャの指摘に対し、びっくりしたような顔でマーリンがヤムチャを見つめる。
「なん…だと?そんなはずは……」
「じゃあなんで、戦闘力がお前より低いはずの俺の攻撃で、そこまでダメージを受けている?」
「……!」
口では強がってみるものの、冷静になって考えてみると確かにそうだった。
ヤムチャの気配を感じてから、防御に移るまでに時間がかかり、その時受けたダメージも大きい。
マーリンは言いかけた言葉を言うのをやめ、下へと俯く。
112SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/08 23:40 ID:HmL8Bl5A
34話】
「それに意識が内面エネルギーの方へと偏りすぎてしまって、相手の気を完全に把握しようとしても意識がついていかない。
普通にやって相手の気を100%読めるなら、今のお前は40%ぐらいか。残像拳に引っかかったのもそのせいだろう」
ヤムチャはマーリンの方へ近づきながらなおも続ける。
「もっとも…俺が挑発して、お前がその技を確実に使ってくるって分かっていたから、今はたまたま回避できただけで、
戦闘中に上手くコンビネーションとして織り交ぜる分にはカナリありだと思うぜ…」
「……そうか…ふふ、そうか…」
「…俺の言ってることはおかしいか?」
マーリンの不気味な笑いにヤムチャは質問する。
「おかしいのではない…嬉しいのだ。わたしはこの技をよく考えて編み出したつもりだった。だがお前はその技の隙を一瞬で見つけ、実際に破って見せた。
確かに気のコントロールに集中しすぎて、ヤムチャへの意識が薄れたのは事実だ。わたしに隙があったとは言え、それを読むお前のブジュツの腕は凄まじい…
わたしが認めただけの男だ…」
「…おだてても何も出ないぞ」
「やはり、わたしにはこういった小手先の技を使って戦うのは性に合っていないらしいな…っ!できれば…できれば武術の腕だけでお前に勝ちたかった……!」

ボウッッ……!

マーリンの周りに赤いオーラが漂う。
そして、先程とは比べ物にならないぐらいにマーリンの気が膨れ上がり、ヤムチャはその気迫で一歩下がりそうになった。
「…勝たせてもらうぞ、ヤムチャ」
113SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/08 23:42 ID:HmL8Bl5A
【35話】
「あれは界王拳…。なるほど…とことんやりたいってわけか…」
さっきまでのはお遊びだったとでも言わんばかりの凄まじい気に、ヤムチャの足は震えかけていた。
だが、武道家として、戦士として、ここは退くわけには行かない。
仮にも相手は自分の弟子だ。
マーリンは先ほどまでのような小細工は使っておらず、既に身体中の気を解放している。
解放しているはずなのに…なおも彼女の気は変化し続ける。
増えているのか…?はたまた減っているのか…?
激しい気の変化にマーリンの気の状態がよくつかめない。

「今のわたしの攻撃についてこれるかな?ふふ…」

「面白い…こちらも界王拳にかけるしかないようだ…!」
ボウ…と、ヤムチャの方も真っ赤な気のオーラが包む…!
砂嵐が巻き起こり、お互いの視界はほとんど遮られている。

だが、そんなことはお構いなしなのか、既にマーリンはヤムチャの目の前まで迫っていた。

「かああああああっっっっ!」
マーリンの拳が刺さるような勢いで、ヤムチャの顔面目掛けて飛んでくる。
「っく…!」
ヤムチャはそれを辛うじてかわした。
だが次の瞬間にはマーリンの逆の拳が目の前にあった。
それもギリギリでかわすヤムチャだったが、マーリンの手は止まらない。
次から次へと迫る拳に、ヤムチャは必死に避けることしかできなかった。
最初からヤムチャの回避力をマーリンのスピードが上回っている…このままでは時間の問題だった。
114SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/09 00:43 ID:.50R71JU
【36話】
これは避け続けられないと思ったヤムチャは、手のひらに気を集中し、マーリンの拳を受け止める決心をする。

バシイイイ!

受け止めた反動で5メートルぐらい体が後ろに下がったヤムチャ。
「ッ…!受け止めた…だと!?」
マーリンは信じられない表情を見せる。
以前は孫悟空をも捉えた拳を、受け止められるなど考えもしなかった。
マーリンの戦闘力はあの時より格段にパワーもスピードも増しているはず。
ましてや、元からヤムチャの力は超えており、更にこの数年の修行で差をつけたつもりだった。
だが…自分の拳はヤムチャの掌の中にあるという事実。
マーリンは予想外のできごとに、思わず手を止めてしまう。
……この時彼女は、このパンチを自分自身の理性で威力を制御していたことに、まだ気付かなかった。
「……やっぱり、これだけ力の差があるといてえな。あの世に行った時大界王様のもとで修行してなかったら、手首から上がふっとんでいたところだぜ…」
あの世…?ダイカイオウ…?
ヤムチャが何を言っているか分からなかったが、自分の拳が受け止められた事実はなんら変わりない。
マーリンは焦りを感じていた。
…焦りを感じていたのだが、この気持ちはなんなのだろうと自問自答し、意識が葛藤しているのが分かった。
心の中でモヤモヤしたものがあり、それが中々姿を現さない。
「何を言っているんだ…?」
マーリンはヤムチャに自分が動揺していることをばれないよう、冷静に聞き返す。
「前にちょこっと話した界王様っていたろ。それより更に偉い人の元で修行したんだ」
ヤムチャは自慢げな様子もなく、淡々とあの世で修行した時のことを語る。
「おしゃべりタイムはこの辺で良いか?続けるぞ、マーリン!」
「…望むところだ」

ドスンッ!
バゴッ!
ガキィィ!

まるで金属と金属が物凄い勢いでぶつかり合っているような爆音が荒野に響き渡る。
115SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/09 00:44 ID:.50R71JU
【37話】
「そりゃーッ!!ハイハイハイハイーッ!!」
ヤムチャはこれまでにないほどの、怒涛の進撃を見せる。
自らの限界である界王拳を30倍にあげてマーリンに猛打を浴びせていた。
常人なら、手の動きどころかヤムチャとマーリンの体の形すら見えないだろう。
だが、静かに勝負は付きつつあった。
「………」
この時、マーリンは心の中にあったモヤモヤをようやく理解したが、それを口には出せずにいた。
言ってはいけないことだと悟ったからだ。
必死のヤムチャの攻めに対し、マーリンは神妙な面持ちでそれを防御し続ける。
マーリンは防御の合間にコンマ数秒とない隙をヤムチャに見つけると、空かさずジャブ気味のパンチでカウンターをとっていた。
ほんの数十秒の攻防なのだが、手数が一瞬で数百回という次元なので、カウンターを受けた数もそれだけ多い。
ダメージを受けながらも、無理してマーリンを攻め続けるヤムチャ。
界王拳はなんとか維持しているものの、既に体力が限界を迎えつつある。
「はあ…はあ……」
ヤムチャは殴打を止めると、攻め続けては分が悪いと見たのか、“受け”の構えになる。
「ヤムチャがこないのなら、わたしからいかせてもらうぞ!」
それを見たマーリンはすぐにヤムチャの懐へ入り込み、ヤムチャに攻撃のラッシュを浴びせる。

ガガガガッ!ドガガガドガッッ!!!

今度はマーリンが攻め、ヤムチャが守りといった形になった。
マーリンの攻撃に、ヤムチャは何とか付いていき、防御することができていた。
そして、マーリンのときのように攻撃に隙を見つけるとカウンターを返す。
だが…彼の目にはもう燃え滾る闘志のような輝きは感じられなかった。
116SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/09 01:31 ID:.50R71JU
【38話】
互角の攻防をしているように見えるが、ヤムチャの表情には余裕がなく、マーリンは笑いを見せる余裕すらあるように感じられる。
そんな中、攻防戦をしながらヤムチャの表情はどんどんと曇っていった。
すると、何を思ったか、ヤムチャは後ろに大きく跳躍し、攻防に見切りをつけたかのように、フッと界王拳を解いた。
ヤムチャを覆っていた真っ赤なオーラが、徐々に薄くなっていき、普通の状態に戻る。
マーリンはヤムチャのよく分からない行動に呆然とし、何を言って良いのか分からなかった。
体力の限界が近かったとはいえ、スタミナ切れではないはずだ。
あと1分ほどは持ったはず。
ということは…?
ヤムチャも無言でマーリンの方を見つめていた。
言葉を交わさずにただただ目と目を合わせる二人だったが、ようやくヤムチャの口が動く。
「…やめだ。もうこれ以上戦っても意味が無い」
「何!…それはどういう……」
「分かりやすく言ってやろうか?今までの攻防で悟った。これ以上続けても、俺はお前に勝てない。そうだろ?」
突然のヤムチャのギブアップ宣言。
マーリンは驚きを隠せず、すぐにヤムチャに突っかかる。
「何を言っているんだ、ヤムチャ。わたしとお前はほぼ互角の戦いを…………」
そこまで言いかけたマーリンだったが、ただならぬ視線を感じ、口が止まる。
ヤムチャが睨むようにして、マーリンを凝視していたからだ。
「…薄々勘付いてはいたが…お前、途中から俺の気に合わせて自分の気を調整していたな?…わざわざ“互角”になるように…。故意的かはわからねーけど」
「…!それは……」
答えを聞くまでもなく、マーリンの反応が全てを物語っていた。
ヤムチャはそれを確認すると、大きくため息をつき、下を向いて独り言のようなことをはじめた。
117SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/09 01:33 ID:.50R71JU
【39話】
「…はは…あはははは!見ただろ?マーリン!」
「…なにをだ?」
独り言のようにそっぽを向きながら喋っているヤムチャだが、話の矛先はマーリンに向いているようだ
「毎日毎日、人生の大半を修行に注ぎ込んでも、俺はこの程度なんだよ!よーく分かったろ?お前が慕っているこの男は、この程度なんだってな」
「……ヤムチャ…違う…違うぞ、わたしはそんな風にお前を見ていない…」
マーリンも界王拳を解くと、話しながらゆっくりとヤムチャの元まで歩み寄っていった。
「…みんなの前ではヘラヘラしていた俺だけど、毎日のトレーニングを欠かしたことがない。もちろん、地球が平和になってからもな」
マーリンがヤムチャの傍までたどり着くと、ようやくヤムチャの視線がマーリンに戻る。
「…続けろ」
マーリンは何か言いたそうだったが、ヤムチャに話を続けるよう促した。
「お前に再会しても、恥ずかしくないように…堂々と胸を張れるように……必死に修行した。でも、これが結果だ。俺はお前に本気すら出させることが出来なかった…それどころか手加減されちまうとはな…情けない話だぜ」
「ヤムチャ…わたしはそういうつもりでやった訳では……」
「いや、いいんだ。お前がマジになったら、俺が相手にならないのは分かっているからな」
マーリンはヤムチャの開き直りに、励ましの言葉さえ思いつかず、何も言えなかった。
彼女自身、経験したことのあるこの“絶対的力の差”。
絶対に超えられない壁を目の当たりにしたとき、己の強さに一気に自信がなくなり、発狂した経験がある彼女だから、ヤムチャの気持ちはよく分かるのだ。
「マーリン…俺が何故、十年近くもお前に連絡をしなかったか…今教えてやろうか?……もう分かると思うけど…」
「……話してくれ、ヤムチャ」
すると、ヤムチャは大きく息を吸い込み、溜まっていたものを吐き出すかのように喋り始めた。
118SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/09 01:34 ID:.50R71JU
【40話】
「俺は…俺は弱すぎるんだよ!いくら修行しても、悟空たちのように強くはなれなかった…。いや、悟空たちどころじゃない。あいつらがあっさり倒しちまうような敵にさえ、俺は勝つことが出来なかった。
そんな俺が、何事も諦めずに戦い続けるお前と…再び会う資格があるのか?…俺はずっと自問自答を重ねていた。だから連絡がこんなに遅くなったんだ」
「……」
拳を震わせながら喋るヤムチャを、マーリンは黙ってジッと見つめていた。
「…今の俺はそれなりの自信があった。今ならお前に勝てる…とまでは行かなくても、いい勝負が出来る…そんな甘い考えを抱きつつ、お前を地球へと移動させたんだ。…甘かったよ、俺は」
「もういい、ヤムチャ。分かった。それ以上自暴自棄になるな…」
「そりゃそうだよな…すぐにこーやって諦めるような男が、マーリンといい勝負になるわけがないよな…はは…」
ヤムチャはマーリンの足元に倒れるように座り込むと、無念そうな表情を浮かべ、青い空を見つめていた。
マーリンはどう言葉をかけて良いかしばらく考え込んでいたが、やがて口を開く。
「…ヤムチャ、これは励ましとか同情とかそういった類に聞こえてしまうかもしれないが…少し言わせてくれ」
「なんだよ」
「前にも言ったと思うが、お前は宇宙でも指折りの最強クラスの戦士だ。間違いない」
「仮にそうだとしても、仲間内じゃ強いとはお世辞でも言えな――」
「本当にそうか?」
全て言い終わる前にマーリンはヤムチャを制した。
「そりゃ…悟空やベジータには勝てないだろうし、悟飯は今や宇宙最強の戦士だし…ていうかサイヤ人は全部無理だろうな。ピッコロも勝てそうにない。
天津飯も修行しまくってそうだしな…やっぱりチャオズとヤジロベー…それから結婚して修行を怠けてるクリリンぐらいか、俺が勝てそうなのって」
「実際、最近そいつらとは戦ってはいないんだろう?なら分からないのではないか?」
「無理。絶対勝てねーよ、やるまでもない」
ヤムチャの投げやりな態度に、思わずこめかみと拳がピクリと反応したマーリンだったが、気持ちを抑えて話を続けた。
119SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/09 01:35 ID:.50R71JU
【41話】
「ヤムチャ…お前は自分が思っている以上に強い力をもっている。その気になれば孫悟空にも勝てるぐらいのな…わたしはそう思う。本気で、だ」
「ありがとな。でも無理だ…あいつらは次元が違うんだよ、もはや」

パシン!!

ヤムチャはそれまでマーリンの顔を見ていたのだが、何故か視界から突然それが消えた。
マーリンにビンタされたのだ。
「い…いってーな!…なにすんだよ!」
ヤムチャは赤くはれ上がった頬を押さえながらマーリンに向かって叫んだ。
「諦めないって言ったのは嘘だったのか?わたしと同じように、諦めず戦うんじゃなかったのか?」
マーリンの目付きは厳しいものになっていた。
自分が尊敬するヤムチャを…こういう形で説教するとは少し残念なものだが、ここはびしっと言うしかないと判断したのだ。
ヤムチャもようやく目が覚めたのか、先ほどとは打って変わって真面目な顔つきになる。
「…たしかに前のレベルなら追い付こうと言う気になれた。だから俺も修行したさ…死に物狂いでな。けどあいつらも強くなっていく。俺の何倍ものペースで。
気が付いたら、この歴然たる差。お前は見てないから分からないだろうけど、もはや俺なんてお荷物状態だ。
だからもう、あいつらを目指すのはやめた。俺は自分の限界を越えて越えて、越えられなくなる日がくるまで修行を重ねることにしたんだよ…。これが俺なりの結論だ」
ヤムチャは立ち上がると、マーリンの目をしっかりと見ながら喋った。
「その修行の先には何があるというのだ…」
「さあな…たまに考えちまうんだよ。なんで俺修行してるのかなって…こんな頑張ってなんの意味があるんだろうってな。でも、そんな弱音にぶち当たったと

きに、そこで浮かぶのはいつもお前の顔だった…マーリン…」
「……ヤムチャ…」
「まっ、しょせん目標のない修行だ。狼の一人旅で終わっちまうかもな…」
120SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/09 01:36 ID:.50R71JU
【42話】
自らの限界…いや、言い換えるのなら地球人の限界。
地球人の中では抜群の格闘センスを誇るヤムチャ。
そして一般人では想像を絶するような、血の滲むようなと努力と、神様や界王様の元での修行。
ヤムチャはマーリンの言うとおり、既に宇宙から見ても指折りの達人と言われても良いレベルの強さを持っていた。
だがその強さにも限界がある。
元々ぬくぬく平和な星の元産まれた地球人と、常に死と隣り合わせで毎日が戦いの日々…更に死にかけから全快すると強さがいくらでも増す戦闘民族サイヤ人

では、
体質や潜在能力…その他に“スーパーサイヤ人”などという界王拳を遥かに凌ぐパワーアップの技なども考慮すると、はじめから条件が違いすぎた。
だが、ヤムチャはそれでも諦めずに修行を続けていた。
しかし、待っていたのは悲惨な結果。
異常なまでに強くなっていく敵の出現と、それを相手に、手も足も出ないままやられるだけの自分。
そしてその敵を更に凌ぐような力をつけていく悟空をはじめとするサイヤ人たち。
現実の壁はヤムチャにとって、余りにも高すぎた。
ヤムチャは自分が敵に通用しないという現実より、その強い敵より更に強くなっていく仲間たちに対してのショックの方が大きかった。
なぜならそれは間接的に、ヤムチャと悟空たちの圧倒的な力の差をヤムチャに突きつけていたからだ。
恐らく、今悟空とヤムチャが戦ったら小指一本でもやられるだろう。
のし掛かる無言の重圧と、無意識のうちに確立された孤立感。
今じゃ一緒に稽古しようとすら言われなくなった。

そんな嫉妬心や蟠りを、ヤムチャはずっと胸に秘めながらも、一人で修行をしていたのだ。
いつか…いつか、この差が縮まって、悟空を倒せなくとも、せめて一泡吹かせることができるぐらいの強さを求めて。
悟空は全く意識してなかったが、ヤムチャの中の悟空へのライバル心は消えないままだった。
121SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/09 01:44 ID:.50R71JU
【43話】
いつしか、ヤムチャの目には涙すら浮かんでいた。
「誰よりも強くありたい…俺は…俺はそんなことを願うことすら許されないのか……?」
誰かに問いかけたわけでもなく、ヤムチャは空を見ながら自問自答する。
「そんなことは…ない。一人旅では終わらせない」
そのヤムチャの様子を見て、ようやくマーリンはヤムチャに優しい声をかける。
「お前は…ヤムチャは…わたしの師匠だぞ?ソンゴクウを一度とはいえ破ったこのわたしの…な。
だから…それだけの悔しい気持ちがあるなら…諦めないでほしい…その気持ちがあれば、絶対に結果として現れるはずなんだ…」
マーリンはヤムチャに視線を合わせずに言った。
「……」
ヤムチャは何も言わない。
マーリンは続ける。
「そもそも…わたしたちがやろうとしてることは間違いだらけだ。違うか?」
「…!その台詞は…」
心に覚えのある発言にヤムチャは顔を見上げる。
「ああ、お前の言葉だ。地球人が最強のサイヤ人に挑もうとするのはたしかに間違っているかもしれない。でも、それがなんだ?
間違っていようといまいと、そんなことはどうだっていい…しかし、これだけは言える」
マーリンは少し考えてから言った。
「サイヤ人だろうと地球人だろうと、最終的に諦めなかったものが勝つんだ。わたしのように、そしてヤムチャ、お前のようにな…」
「…マーリン………」
その言葉は、体より心が苦しい修行を続けていたヤムチャにとって、物凄い支えとなり、心に響いた。
実際は、悟空に勝つのなんて不可能かもしれない。
しかし、ここにこうやって自分をきっちりと見つめ、真剣に考えてくれる人がいる。
例え勝てなくても、この言葉を励みにいくらでも修行に打ち込める気さえヤムチャは沸いてきた。
こうやって、人に認められたのは久々なのだろう。
ヤムチャの心はいつの間にか満たされていた。
122SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/09 01:48 ID:.50R71JU
今日のところは寝ます。
また今週も忙しく、書くペースが中々上げられそうにありません。
いつもコメントくれる方は同じ人でしょうか?
ご丁寧にありがとうございます。

そろそろマーリン、ヤムチャ、シルフ以外のキャラも出していく予定です。
123ジュン:08/12/09 17:37 ID:iIqAYb6k
楽しみにして待ってます。
124Classical名無しさん:08/12/09 22:44 ID:YXkpOx7Y
たまに感想書くけど同一人物ではありませんよ
125Classical名無しさん:08/12/10 21:43 ID:dv8poS0w
ペース早くなってきていいね
126SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/11 01:04 ID:ty0bixrc
【44話】
ヤムチャは黙ってマーリンをその場で抱き締める。
大きなヤムチャの肩幅が、一回り小さいマーリンの肩をすっぽりと覆う。
突然の抱擁にも、マーリンは抵抗すらしなかった。
そしてヤムチャは彼女の耳元でそっと囁く。
「…愛してる。やっぱり最高だ、マーリンは」
「…わ、わたしも……、その…同じ気持ちだ」
マーリンも恥ずかしそうに、ヤムチャに聞こえないぐらいの声で言葉を返す。
既にヤムチャの目から涙は消えていた。
黙っていても、二人が次にすることは客観的に見て想像が付く。
二人は目を瞑り、顔を近づけ、濃厚なキスを……

「お母さあああああん!お父さあああああああん!!今のどっちが勝ったの!?」

出来なかった。
シルフが大声で叫びながらこちらへ走ってきたのだ。
焦って体を離し、ヤムチャとマーリンはお互いに背を向ける。
「遠くてよく見えなかったけど、二人とも動いてなかったし組み手は終わったんだよね?どっちが勝ったの?」
シルフはそんなことを知るよしもなく、目をキラキラさせながら子供特有の残酷なまでに空気を読めない発言をする。
「え……あ、ああ…?ど…どっちが勝ったっけ、マーリン」
ヤムチャは赤面しているのがばれないように、顔をシルフの後ろに向けて、話をマーリンに振った。
「わ、わたしが答えるのか…?そ、そうだな…うーん…双方痛み分けってところだろうか…」
マーリンの頬も心なしか赤く見える。
「ソウホウイタミワケ?新しい技の名前?強いの?」
ヤムチャとマーリンは顔を見合わせて、やれやれという顔をする。
127SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/11 01:14 ID:ty0bixrc
【45話】
「技の名前じゃない。引き分け、ってことさ…母さん曰く、な」
ヤムチャはシルフの頭を大きな手で撫でながら答えた。
「へへ…やっぱりお父さんもお母さんも、めちゃくちゃ強いんだね!」
「…いや、まだだ。俺はまだまだ強くなるぜ、シルフ」
ヤムチャはガッツポーズを取りながら、我が子に対し強気な発言をする。
絶望の淵から這い上がり、今ではその顔に希望の色が見えていた。
マーリンはそのヤムチャの様子を見て、とりあえず一安心といったところなのか、安堵のため息をつく。
先ほどの落ち込みようが嘘のように、今のヤムチャはやる気に満ち溢れていた。

その時!
大きな気を近くに感じ、マーリンの目付きが鋭くなる。
「この気…!」
そして、大きな気の主は、マーリンの真後ろに立っていた。
即座にマーリンは後ろを振り向く。
ヤムチャもほぼ同時に同じ方向を振り向いた。
そこには…ヤムチャにとってもマーリンにとっても、見覚えのある男が立っていた。
「オッス!久しぶりだなあ、ヤムチャ」
背後からのほほんとした声が聞こえた。
どこか気が抜けているが暖かい声が。
「ヤムチャの気がずっと乱れてたから瞬間移動で見に来たけど…やっぱりただの修行じゃなかったみてぇだな」
「ご、悟空…!はは…やっぱりこれだけ激しく戦ったらばれちまうか」
ヤムチャは恥ずかしそうに笑い飛ばした。
「お前は…ソンゴクウ…!」
マーリンは睨むようにして悟空を見ながら言った。
悟空がヤムチャと全く同じ胴着を着ていることが気に食わないようだ。
「あれ…おめぇオラのこと知ってんのか?そういや…どっかで見たことあるような顔だな…」
悟空はあごに手をあてながら考え込む。
「んー……あ!…あーーー!!おめぇは…あの時の…!?」
悟空はびっくりした様にマーリンを指差した。
128SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/11 01:17 ID:ty0bixrc
【46話】
その声に一番びっくりしたのは何故かヤムチャだったわけだが。
ずっと記憶の片隅にあった、かつての敗戦の様子が悟空の脳裏に再現される。
悟空の中でちょっとしたトラウマでもあるこの女を目の前にし、思わず声を荒げてしまった。
マーリンは悟空のあまりの驚きようにも動じず、冷静な口調で言葉を返す。
「…。久しぶりだな、ソンゴクウ。気のせいかもしれないが、余り見た目が変わってないな…」
「ああ、オラは純粋なサイヤ人だから、わけぇ時間が長いんだ。…ってベジータが前に言ってたっけな…確か」
悟空はどうでもよさそうに笑いながら答えると、空かさず続ける。
「いやー、にしてもすんげぇ懐かしいな!そういえばオラまだおめぇの名前しらねぇや!なんつーんだ?」
「…マーリンだ」
「へぇ…マーリン、か」
悟空が自分から名前を聞くとは珍しい…と、ヤムチャは思った。
かつて勝負に負けたこともあり、マーリンにはただならぬ思い入れがあるのだろう。
それにしても、マーリンの悟空に対する接し方はずいぶんと冷たいように見える。
「で、なんでおめぇがここにいるんだ?ずいぶんめぇ(前)に宇宙に帰ったって聞いたけど」
悟空は不思議そうにマーリンに尋ねる。
「そこは俺から説明しよう、悟空」
マーリンと悟空の間にヤムチャが待ってましたとばかりに割ってはいった。
10年ほど前、悟空との勝負のあと、別れ際にヤムチャとマーリンは再び会おうという約束をしていたということ。
そして昨日、ドラゴンボールを使い、宇宙から地球に呼び寄せたということ。
事実をありのまま悟空に伝えるヤムチャ。
「なるほどなー…ドラゴンボールかぁ。それなら納得だ。ま、オラもおめぇに会いたかったしちょうどいいや」
悟空は本当に嬉しそうにしていた。
かつて自分を破ったほどの強敵と、再び会えたという事実が彼をワクワクさせているのだろう。
それはマーリンも同じで、あのギリギリの勝負を、もう一度味わいたいと思っていた。
だが、それよりマーリンは悟空に聞きたいことがあった。
「ところで、ソンゴクウ。…お前はヤムチャを、どう思っている?」
129ジュン:08/12/11 17:18 ID:YSHnUj2A
おもしろい。早く続きが読みたいっす!
130SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/12 02:50 ID:rLw6IaXg
【47話】
マーリンは唐突に悟空に訪ねた。
予想だにしなかったマーリンの発言に、思わずヤムチャがまた首を突っ込む。
「お、おい。マーリン何言ってるんだ…そんなこと聞いてどうするんだよ」
質問を投げかけるヤムチャをほんの一瞬横目で見ると、再びマーリンは悟空へと視線を戻した。
「ヤ、ヤムチャをどう思っているか…って?言ってる意味がよくわかんねぇよ。…まあ、普通にイイ奴じゃねぇかな」
悟空はマーリンの突拍子もない質問に、たじたじと答える。
言ってる意味がわからないってことはないだろう…と、心なしか悲しい発言にヤムチャは苦笑いする。
「そうじゃない。わたしが聞いているのは、戦士としてのヤムチャだ」
「戦士と…しての?」
「そう。お前たちと共に戦ってきたヤムチャを、お前はどう思っているのかと聞いている」
マーリンは悟空を見つめる。
その目に迷いはない。
マーリンの目をしばらく見つめたあと、悟空は真剣に考えはじめた。
「改まって言われんとうまく言葉が出てこねぇけど…おめぇが聞きたいのは、オラがヤムチャを強いと思ってんのか、それとも弱いと思ってんのかってことか?」
「まあ、簡単に言うとそうだな。もう少し、捻った回答が欲しいものだが」
「そうか。じゃあ正直に話すぞ、普通にヤムチャはめちゃくちゃつえぇと思う。ただ、オラの仲間たちが強すぎてあまり目立てねぇけどな…」
悟空は自分なりの素直な答えを出した。
ヤムチャは弱いと言われなくてよかったとホッとするが、マーリンは納得していない。
数秒黙っていたが、再びマーリンの口が動く。
「最後の一言は余計だな。その言い方だと、ヤムチャがお前を含めお前の仲間たちと比べたら、弱い方に入ると言う風に聞こえるが、ソンゴクウはそう思っているのか?」
マーリンは少しだけ、声を震わせながら言った。
ヤムチャが弱いという扱いを間接的に下した悟空に対して、自分では気付かないほど自然に怒りがこみ上げてきている。
131SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/12 02:53 ID:rLw6IaXg
今日は2時くらいに家に戻れました。
ちょっと体力的にきついので、1話だけで勘弁してください。
132ジュン:08/12/12 06:40 ID:f6EMH402
無理しないで頑張って下さい。お疲れ様でした。m(__)m
133ヤムチャ最強への道3 ◆Nt3ni7QiNw :08/12/12 15:14 ID:U01cwzu2
書き込めるかテストです。
134ヤムチャ最強への道3 ◆Nt3ni7QiNw :08/12/12 15:39 ID:U01cwzu2

第七話「悟空対人造人間。ヤムチャ達652人+(320人)」

色々あったが人造人間の所に一斉に着いた悟空達。
天津飯はヤムチャ達に近づき頭を拭かせ始めた。

ピッコロは腹を貫かれた2人のヤムチャに近づいた。
「ヤムチャ・・・」「ぐっ・・・助けてくれ・・・ハゲ・・・」「ずあっ!」
ピッコロにより放たれた大量の気により
瀕死だった2人のヤムチャは死亡した。細胞一つ残さずに・・・・

悟空は人造人間に場所を変えるから付いて来いと言う。
だが人造人間達は場所を変える必要はないと言い目から出した光線で
辺りをメチャクチャにしだした。
ドババババババ。破壊されていく町。人々もたくさん殺された。

ちなみにこの攻撃によりナンパしていた3人のヤムチャのうち2人が死亡した。
「おい!汚いから片付けておけよそのボロクズを!」
ナンパされていた女性は生き残ったヤムチャに吐いた。
次話「ヤムチャという名のヤムチャ!648人+(320人)」に続く
135ヤムチャ最強への道3 ◆Nt3ni7QiNw :08/12/12 16:06 ID:U01cwzu2

第八話「ヤムチャという名のヤムチャ648人+(320人)」

「やめろー!」
バキッ、町を破壊していた人造人間に悟空の一撃があたる。
「ついてこい!2人ともぶっ壊してやる!」
「誰もいない場所を作ってやろうと思ったのだが、仕方ない」
悟空は町から別の場所に行こうとする。
その隙にヤムチャ達は逃げ出そうとしたが悟空は見逃さなかった。
「ヤムチャ達。おめえ達もついてこい!」
それに1人のヤムチャが答えた。
「悟空君。僕達見たいテレビがあるから帰るよ」
「ぶつぞ」
「行きます」
悟空は飛んでいき町から離れた。
それに人造人間、ピッコロと天津飯、嫌々ながらヤムチャ達がついていく。
一方ここはブルマ、悟飯、ヤジロベー、残りのヤムチャ達のいる所。
クリリンも仙豆を取りにここに戻っている。
破壊された町を見た悟飯達は悟空達のいる所に行こうとしている。
だがヤムチャ達は行こうとしない。それに悟飯は強い口調で言った。
「ヤムチャさん達も行きますよ!お父さんの所にいるヤムチャさん達もピンチですよ!」
それにヤムチャ達はフッと微笑しながら言い返す。
「ヤムチャは役立たずじゃない。多分、作戦があるんだよ」
「ねえよ、んなもん!」悟飯が怒鳴った。
次話「役立たずのヤムチャ達648人+(320人)」に続く
136 ◆Nt3ni7QiNw :08/12/12 16:10 ID:U01cwzu2
少なくてすみません。
>>102
ありがとうございます。あなたの話はかなり面白いです。君も頑張れよ!
137Classical名無しさん:08/12/13 21:03 ID:KO9FDwR6
こいつwwwwwww
138Classical名無しさん:08/12/13 21:32 ID:jtJ3Aki6
ここのSSはみんなレベルが高いので楽しみだ。
139Classical名無しさん:08/12/14 20:47 ID:f2VdT3p2
「ぶつぞ」「行きます」が秀逸w
140Classical名無しさん:08/12/15 21:13 ID:Al01H4Q.
◆Nt3ni7QiNwという人間が面白い
141ジュン:08/12/19 06:34 ID:cfWzoCPU
早く続きが読みたいです。
142Classical名無しさん:08/12/19 20:14 ID:pfx.pz0A
保守
143SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/20 18:23 ID:qM74Xf0A

【48話】
「いや…まあ、順序付けしちまえばそうなるかもしんねぇけど…どうでもいいじゃねぇか、そんなこと」
「順序付けをすればそうなるだと…?」
マーリンはそれまで少し距離を置いていた悟空にジリジリと詰め寄る。
今にも悟空と一戦おっぱじめようかという空気になりかけたところを、ヤムチャがマーリンの肩をグイとつかんで止めた。
「…そろそろやめとけよ、マーリン。はは…悪いな悟空…こいつは結構無駄に熱くなるところがあって……。…な?マーリン」
言われてみれば、確かに地球にきてからというもの、ちょっとしたことですぐ怒りの感情が滲み出ていた自分に気付く。
ヤムチャのこととなると、いてもたってもいられない自分が少し大人気ないように思えてきて、ちょっと恥ずかしくなるマーリン。
ヤムチャは笑いながらいつもの明るさを纏い、マーリンの背中をぽんぽんと叩いて、怒りを宥めた。
だが、マーリンは知っていた。
このヤムチャの笑いが作り笑いであり、実際は先ほど打ち明けたような悔しい気持ちで胸がいっぱいなんだと。
その事実を再度確認すると、いくら悟空が強いからと言えど、悟空のさきほどの発言が余計頭にくる。
もちろんながら悟空には悪気など全くなく、ヤムチャを見下していたりはしていないわけだが。

「っっりゃああああ!ロウガフウフウケンッッ!」

その突然の掛け声と同時に、悟空は背後に殺気染みた気配を感じとる。
何かが後ろにいて、自分に向かって攻撃しようとしているという状況を振り向かずに理解すると、その気を瞬時に探り、相手の位置を正確に把握した。
そしてヒョイと数十センチ横に体を避けると、後ろから突っ込んできた犯人が前のめりにバタンと倒れこむ。
見たところ、まだ小さな子供みたいだ。
トランクスや悟天と同じぐらいだろう。
なんでこんなところに子供が…?
そう思った悟空だったが、その子供の顔を確認すると、誰かに似ている。
だが中々誰だか思い出せない。
うーん、と悟空は長考をはじめた。
144SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/20 18:32 ID:qM74Xf0A
【49話】
「今の攻撃をかわすとは…運だけは強いようだな!オマエは!」
その子供は攻撃を避けられると予想すらしてなかったのか、驚いた様子で呆気に取られていたが、やがて起き上がり再び自分に向かって構えを取っていた。
「中々の不意打ちと言いてぇところだけど、その程度の攻撃じゃオラのかすりもしないと思うぞ」
「さ…さっきから聞いていれば偉そうな事を言いやがって…オマエ何も知らないみたいだな!ここにいるぼくのお父さんとお母さんは宇宙最強の戦士なんだぞ?」
子供は宇宙だとか最強だとかスケールの大きいことを自慢気に語るが、悟空の耳にはある一言しか耳に入らなかった。
「お父さんとお母さん……?おめぇ…何言ってんだ?ここにはオラとヤムチャとそこにいるマーリンって娘しか………って……えええ?まさか、ヤムチャ……?」
悟空は苦笑いしながらも、現実を必死に確認しようとする。
「いやあ…ははは……ばれちゃ仕方ないか。そいつは俺の子だ。母親はそこにいるマ――」
「ぎょえええええええええええええええええ!!ほんとかぁぁあ!?」
ヤムチャの言葉を全て聞き終わる前に、悟空は後ろにすっころんでいた。
まるで、未来から来たトランクスがベジータとブルマの子ですと告白した時に近い驚きようだ。
「お、おめぇら…結婚してたのかぁ…ヤムチャ全然教えてくれねぇんだもんなぁ…」
悟空は倒れながらヤムチャとマーリンの顔を見渡す。
そうとう驚いたのだろう。
悟空は腰を抜かしたかのように身動きをとれずにいた。
「結婚と言うか…子供はいた…みたいだ。まあこれには色々とあってだな……って悟空、大丈夫か?…立てる?」
「あ、ああ…よっこらせ…っと」
悟空は転んだことによって服についてしまった砂をパンパンと払い落とすと、ヤムチャの後ろに隠れているいまだに警戒心を解かない子供が視界に入った。
「そう力むなって、オラは別に喧嘩しにきたわけじゃねぇんだ」
「フン…じゃあお父さんやお母さんより弱いのに偉そうな態度を取るのはやめてもらおうか!」
「はは、わかったわかった」
悟空は参ったような顔をすると、らちが明かないと思ったのか、ヤムチャの方を再び見直す。
そして何かを思い出したかのように話を始めた。
「あ、ところでヤムチャ、マーリン。おめぇら天下一武道会に出てみねぇか?」
145SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/20 18:34 ID:qM74Xf0A
【50話】
「テンカイチブドウカイ?」
黙っていたマーリンが理解できない単語に反応する。
「ああ、2週間後に地球の武道会があるんだ。組み手形式で相手を倒していって、最後まで勝ち進んだヤツが優勝する大会だ」
悟空は人差し指を立てながらマーリンに説明を始める。
「…ほう。それは面白そうだな」
マーリンは興味の沸いた大会にニヤリと笑うと、ヤムチャの様子を伺う。
すると、ヤムチャは何故か険しい表情になっていた。
「…誰が出るんだ?」
ヤムチャは恐る恐る悟空にたずねる。
「んーと…多分、オラ、悟飯、ベジータ、トランクス、悟天、ピッコロ…はわかんねぇな。あとクリリンも出るって言ってたと思う。18号とかも出そうだな…」
ずらずらと仲間の名前をあげていく悟空に対し、ヤムチャは名前を一人挙げられるたびに表情が暗くなる。
「ほ、ほとんど出るわけか、俺らの仲間は…」
マーリンは悟空の仲間の名前を挙げられても、ほとんど分からなかったが、ヤムチャの反応からして今挙げられた者たちの方がヤムチャより強いのだろうと把握する。
…今のところは。
「ああ、みんなで久しぶりに出ようぜって事になったんだ。ヤムチャも出ようぜ」
「悟空…それって俺が出ても……」
「ヤムチャ」
弱音が出そうになったヤムチャを、マーリンが制する。
そしてマーリンは悟空に歩み寄り、顔を悟空に近づけると、不適な笑いを見せながら言った。
「ソンゴクウ、わたしとヤムチャはその大会に出る。そして、お前たちを倒す」
「ちょ…お前何勝手なことを…」
ヤムチャはマーリンの勝手な発言に肝を抜かす。
それもそのはず、ヤムチャはあの大会では全くいい思いをしたことがない。
初参戦はジャッキー・チュンとかいう老人にさわやかな風をプレゼントされ、場外負け。
2回目は天津飯と激しい攻防をするものの、最後は失神し、足を折られてKO負け。
3回目は神様が相手で、繰気弾をヒットさせるも直後に手刀をもろにくらい場外負け。
いわばヤムチャのトラウマだ。
だが、そんなヤムチャも関係なしに、悟空とマーリンの間にピーンとした空気が張りつめる。
146SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/20 18:38 ID:qM74Xf0A
【51話】
マーリンの透き通った目は、はったりではないと悟空は悟っていた。
本気でこいつは勝つ気でいる…。
だが――、そうでなければ面白くない。
その闘争心をかきたてられるような目に、悟空はここに来て初めて“温厚な地球人”ではなく“戦闘民族サイヤ人”の顔つきになった。
「ああ、楽しみにしてっぞ。…それから、大会の時の参考までに、今のオラの強さを少しだけおめぇに見せてやる。何も知らないままだと少しかわいそうだからな」
その挑発的な態度に、再び突っかかりそうになったマーリンだが、悟空はそれを無視するかのように気を高め始めた。
「っっはぁぁああぁああ…っ!!!」
高鳴る声と共に、悟空の髪が一瞬で金色に輝く。
その豹変振りに、思わず声が出ない。
地球がどうにかなってしまいそうなこの凄まじいパワー。
さすがのマーリンも、余りにも強大な悟空の力を目の前に、冷や汗がたれる。
宇宙最強の戦士、スーパーサイヤ人へと変身したのだ。
いや…ただのスーパーサイヤ人ではない。
凄まじい気のせいか、火の粉が舞っているかのようにバチバチと音を立てながら、金色のオーラの周りに電流のようなものが発生している。
「スーパーサイヤ人…2、か…」
ヤムチャはぼそりとつぶやく。
こんな凄まじい気なのに、大して驚いていない様子だ。
見慣れているのだろうか?
この強大な気を目の前にし、大して驚かないところからして、ヤムチャたちが地球でいかにハイレベルな戦いを続けてきたのかが見て取れる。
「うわ…あ…」
その気迫と、神々しいまでの輝きに、シルフは石になったかのようにピクリとも動けなくなり、やがて意識が途切れる。
咄嗟にヤムチャがその体を支えた。
「…ソンゴクウ…それが今のお前の強さか…」
マーリンは以前、スーパーサイヤ人である悟空と戦ったことがある。
その時は自分と実力も近く、良い勝負になった。
しかし、今の悟空と自分では、戦うまでもない。
到底埋まりそうにもない差があることがはっきりと分かる。
だが、これだけではなかった。
次の悟空の言葉はマーリンを更に絶望の淵へ叩き落すことになる。
147SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/20 18:40 ID:qM74Xf0A
遅れてすみませんでした。
今日はもう少し書けそうなので、深夜にでも時間をとって、
またちょろちょろと書いていこうと思います。
148Classical名無しさん:08/12/21 05:53 ID:ojtDbS0Q
楽しみにしてます 頑張って下さい(・ω・`)
149SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/21 15:40 ID:lcU.ccGE
【52話】
「はっきり言っておくぞ。今のオレはもう一段階上のスーパーサイヤ人になれる」
「なん…だと……」
スーパーサイヤ人2が本気の状態だと思っていたマーリンは、その言葉が信じられなかった。
「ソンゴクウ、お前は、い…今の状態より気を上げられるのか…?」
「そういうことだ。その変身をすれば、今より数段階強さが増す」
悟空はスーパーサイヤ人の状態ながらも、ニヤリと笑いながらマーリンに話す。
さすがのマーリンも、笑い返す余裕がなかった。
「わたしはお前が今以上に気を上げることが出来るなど信じられない。見せてくれ!……お前の本気の変身というのを…!」
マーリンは鬼気迫るかのように悟空に頼み込んだ。
少し悩んだ悟空だったが、やがて決心がつく。
「…ああ、分かった。少しだけだぞ、大会前にあんまり手の内を見せるわけにはいかねぇからな…一応」
そう言うと、悟空はスーパーサイヤ人2の状態から、更に気を練り始めた。
「はぁぁあ……っっ!」
地球がどうにかなってしまうのではないかとすら思えるほど、凄まじく地面が揺れる。
マーリンは立っていられなくなり、思わず武空術で空中へ飛び上がった。
ヤムチャも気絶したシルフを抱きかかえ、マーリンより先に既に空中へ避難していた。
「…っかぁぁっ!!!!!」
その悟空の掛け声とともに、悟空の気がもう一段階膨れ上がる!
揺れがおさまったのを確認すると、マーリンは悟空の姿をまじまじと確認する。
…顔付きもまるで変わり、髪の毛は何倍かに伸びており、気質も先ほどとはまるで違う。
悟空の戦闘力の大幅な上昇と、見た目の変化にただただ足を震わせ、呆然とするしかないマーリン。
ふとヤムチャを横目で見るが、やはり特に驚いた様子もなく、普通にしていた。
「…なんという戦闘力だ…。一体どういった修行をしたらこんなに……」
悟空の気がもう一段階膨れ上がったのにも驚いたマーリンだが、見た目の変化にも驚いていた。
あれではまるで別人と言っても過言ではない。
150SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/21 15:42 ID:lcU.ccGE
【53話】
(いつも思っていたけど、どうしてスーパーサイヤ人3って眉毛がなくなるんだろう…)
この変身を見慣れているヤムチャは、悟空のは気の変化云々より、そんな些細なことに突っ込みを入れていた。
「…これが今のオレに出来る最高の変身だ。…この変身でも、ゴテンクスや悟飯を吸収した魔人ブゥには到底敵わなかったけどな」
「何…?今のお前でも、敵わない敵がいたというのか?」
「ああ、敵わないな。まぁそいつはもう元気玉で消滅しちまったが…」
その悟空の話を聞いて、ヤムチャが絶望し、悟空たちに追いつこうという闘志を失ったのも頷けるとマーリンは思った。
普通のスーパーサイヤ人の状態ですら、反則に近い強さであるのに、そこから更に二段階も変身できる悟空。
それに対し、界王拳で強さを倍化させることの出来るヤムチャだが、素の状態での戦闘力が違う上に、強さが何百倍にも膨れ上がる変身が可能な悟空には、到底及ぶはず

がない。

フッ、と悟空の変身が解け、元の黒髪の状態に戻る。
顔付きも前の穏やかなものになり、緊張感が一気に緩んだ。
「…とまあ、今のオラはこんなもんだ。どうだ?少しはやる気出たか?」
さすがに戦意喪失するだろうと思っていたヤムチャは、マーリンを横目でちらりと見た。
だが、そのマーリンの目は諦めた目でもなく、以前自分や悟空に見せた時の、燃えるような闘志が宿った目だった。
「……ああ、俄然やる気が出た。わたしの目標はやはり…ソンゴクウ、お前を倒すことにあるみたいだ」
マーリンの予想外の反応に、ヤムチャは驚く。
実力の差が分からないはずもない。
今から2週間では、どう修行しても追いつけるはずもない。
なのに…彼女のあの何かを信じて揺るがない、断固たる意志が感じられる目つきはなんなのだろう?
先ほどまでマーリンは震えて動くことすら出来なかったように見えたが、その震えは武者震いだったのだろうか?
今のヤムチャには到底理解できなかった。
「ははっ、そうかぁ!やっぱりおめぇはなかなか骨があるなぁ!オラ、期待してっぞ!あ、ヤムチャにもな」
「あ、ああ…って俺にも?」
ノリで受け答えするヤムチャだが、すぐさま悟空に突っ込む。
151SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/21 15:43 ID:lcU.ccGE
【54話】
悟空の眼中にないと思われていたヤムチャだったが、悟空はしっかりとヤムチャを見ていた。
「ヤムチャ、オラは知ってるからな。ヤムチャが隠れて長年ずっと修行してんのは」
「…!…そ、そうか…」
悟空は気づいていた。
自分が修行していたことを。
だが、それは同時にヤムチャにとってに恥ずかしいことでもあった。
ずっと修行をしつつも、全く縮まることなく離れ続けていく実力差。
努力を認められ、評価されても、結果として現れなければ意味がない。
“ヤムチャはがんばった”
“ヤムチャはやるだけやった”
言葉では何とでも言える。
だが、今のヤムチャにはそんな評価なんて必要ない。
欲しいのは――――皆をあっと言わせるだけの実力…ただそれだけだった。
ヤムチャは悟空を厳しい目で睨み返す。
「悟空…俺もお前を倒すつもりで今から修行に励むことにした。お前を倒さずして、優勝はないだろうからな」
「…ああ。けどヤムチャ、オラだって負けねぇからな」
「お前と戦えるのを楽しみにしているぞ、悟空」
「良い試合になるといいな…ヤムチャ」
二人はかつてのライバルだった時のように、腕と腕を合わせる。
悟空はこの時、内心本気でヤムチャに期待をしていた。
同じ時期に武術をはじめたもので、今も毎日修行に励んでいるのはヤムチャと悟空ぐらいなものだった。
この男は絶対に何か仕掛けてくる…自分の想像できない何かを…。
そんな胸に秘めた思いを募らせながら、悟空はヤムチャと距離をとった。
「…んじゃ、オラはそろそろ戻るとすっかなぁ…腹も減ったことだし。そのちっこいおめぇらの子供にもよろしくな」
ヤムチャはこくりと頷く。
マーリンも無言のまま悟空を見つめている。
そして、右手の人差し指と中指で額に手をあてながら、左手で自分たちに2、3回手を振ると、瞬間移動で跡形もなく消えてしまった。
152SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/21 15:45 ID:lcU.ccGE
【55話】
…悟空が消えただけで、やたら空気が静かになったように感じる二人。
「…まあ、座ろうぜ…マーリン」
ヤムチャはそばにあったちょうど良い高さの石に腰をかける。
その隣にマーリンも腰掛ける。
「……さて、俺たちはどうしようか」
悟空が去ってからしばらくの沈黙の後、ヤムチャはそっとシルフを地面に寝かせると、マーリンに向かって話し掛ける。
「……ヤムチャ、ソンゴクウの戦闘力は…今数値で言うとどれくらいなのだ?」
マーリンはヤムチャに訊ねる。
「わ、分かるわけねーだろ…そんなの。お前の持ってる機械でさっき測ればよかったじゃないか」
「…あれは、わたしとヤムチャが組み手をする前に既にバッテリーを抜いてある。500万までしか計測できないのでな」
「それを超えるとどうなるんだ?」
「おそらく、電子回路がショートしてチップが故障し、二度と機能しなくなると思う…」
「へー…」
(測定不可能な値になった程度で故障するなんて、なんてデリケートな機械なんだ…)
ヤムチャはスピードガンで野球の球の速さを測るような感覚で物を考えていた。
気を察知して数値化する際に、大量に電力消費でもするのだろうか。
「前のように想像で構わない。ヤムチャ、わたしと最後に地球で戦った時のソンゴクウが500万だとすれば…今はどのくらいだ?」
「うーん…そうだな……うーん……どんなもんだろう…あれから結構経つからな」
ヤムチャは長考を始める。
「多分だけど…スーパーサイヤ人3の状態で、1億5000万以上はあるんじゃないかな…悟空は」
「…いちお…く…ごせんまん…?」
ある程度の数値は覚悟はしていたが、想像した単位と桁すら違っていたことにポカンとするマーリン。
153SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/21 17:16 ID:lcU.ccGE
【56話】
1億5000万…前のソンゴクウが500万だとしたら、その30倍強くなっているということになる。
「ああ、本当に想像でしかないけど…。お前と戦った時と比べたら、遥かに強くなっているのは分かったろ?」
マーリンもヤムチャの言葉を聞き、マーリンは唸りながら下を向いた。
「……ヤムチャの言っていることが正しければ、普通に修行しては、孫悟空には到底追いつけないことは分かった…」
「はは…さすがのお前もお手上げか」
ヤムチャが笑いながら言うと、マーリンはキッとヤムチャを睨む。
「そうじゃない!ソンゴクウに勝つためには、“普通ではないこと”をする必要があるということだ」
「……例えば…?」
「……。……それは、今考えている」
はぁ、とため息が出る二人。
やる気はあるのだが、どうしていいかが分からない。

しかし、ふとヤムチャが何かに気づいたかのように立ち上がる。
「そういえば…マーリン、お前スーパーサイヤ人になれるのか?」
マーリンは立ち上がったヤムチャの顔を見上げると、やれやれといった表情で答える。
「いや…。誰でも簡単になれるものでもないだろう」
伝説の戦士と言われているスーパーサイヤ人。
彼女は、孫悟空が特別な存在であり、そう易々スーパーサイヤ人になれるものではないと思っていた。
自分がサイヤ人の血を引いているのにも関わらず、スーパーサイヤ人になろうという発想すらなかった。
だが、ヤムチャは意外そうな表情を浮かべる。
「いや…地球のサイヤ人たちは今や全員スーパーサイヤ人になれるぞ…」
ヤムチャのこの言葉に、マーリンも思わず立ち上がった。
154SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/21 17:20 ID:lcU.ccGE
【57話】
「な…なんだと!?ヤムチャ、それは本当か…?」
「ああ、シルフと同じぐらいの小さなサイヤ人と地球人の混血の子ですら、スーパーサイヤ人になれてるからな」
信じられない表情を浮かべるマーリンだったが、やがて落ち込んだように再び地面に座り込んだ。
「くっ…では、わたしは何故なれないのだ……」
俯いて悔しがるマーリン。
「スーパーサイヤ人は強さ云々じゃなくて、怒りをきっかけに変身できるようになるって聞いた。だからいくら強くても、きっかけがなければずっとなれないんだ…タブン」
ヤムチャは得意げに語るが、どこか信憑性に欠ける感じだ。
「怒り?」
「…悟空の例で話すと、悟空はフリーザに親友を目の前で殺された怒りがきっかけで、スーパーサイヤ人に目覚めたんだ」
「……そうなのか」
「だからマーリンもとりあえず……怒れ!そうすればお前も絶対なれる、スーパーサイヤ人に!」
ヤムチャにそう叫ばれるマーリンだが、困ったような顔をする。
「だが、怒れと言われても…己の感情を自由自在に操るのは難しいぞ…」
「じゃあ、目を瞑って、俺やシルフが誰かに殺されたことを想像してみろ」
「……やってみる…」
マーリンは言われたとおりに目を瞑り、想像を始める。
が、当然ながらなかなか本気で怒ることができない。


「…っ……!」
「…だめか?」
うーんうーん…と唸りながら、1時間ほど目を瞑り続けたマーリンだったが、やがて心が限界にきた。
「…すまない、少し休みたい」
ヤムチャはマーリンの顔色を見る。
少し青白くなっており、あまりいいとは言えない。
体を酷使するより、心を酷使する方が疲れるのだろうか。
155SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/21 17:22 ID:lcU.ccGE
【58話】
「分かった。こればかりはあんまり無理しても無意味だろうし、少し休むか…」
マーリンがそれに頷くと、ゴロンと二人は横になる。
目の前には、青い空が広がるのみだった。
「ヤムチャ…」
寝転がった状態でマーリンが不安げな声でヤムチャに話し掛ける。
「ん」
ヤムチャは再会してから初めて漏らす、彼女の震えた声に耳を傾けた。
「わたしは…いや、わたしたちはソンゴクウに本当に勝てると思う…か?」
常に強気な彼女にしては意外な質問だったが、ヤムチャは答える。
「勝つか、負けるか…選択肢があると思うか?もう勝つしかないんだよ、俺たちは。少なくとも俺は勝つことしか考えてないぜ。お前もそうだろ?」
「………うん」
ヤムチャが笑顔で答えてくれたおかげで、マーリンも少し安心した。
この男についていけば、間違いなく勝てるはず。
前回もそうだった。
自分に出来るのは、ヤムチャを信じることと、自分の力を信じることだけだ。
二人は再び空を見つめなおす。
「…マーリンは、今までずーっとこの空の先にいたんだよな」
「……?ああ、そうだが…」
「そんなお前が、この宇宙から見たらホコリみたいなちっぽけな星に偶然降り立って、偶然俺と会って、戦って…そんな二人がこうやって隣で寝そべってるんだなーって

考えるとなんか凄いよな。宇宙は広いのにさ」
「…?えっと、何が言いたいんだ」
何が言いたいのか分からないヤムチャに、マーリンは首をかしげながらヤムチャを見つめる。
「……。…とにかく、会えてよかったよなってことだ!」
「そうだな…。自分の運命を憎み続けていたわたしだが、ヤムチャと出会えたことだけは運命に感謝しなければならない…」
マーリンは空を見つめながら素直な気持ちを語る。
156SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/21 17:29 ID:lcU.ccGE

【59話】
戦うことしか出来なかった自分に、ヤムチャは戦いを通じて様々なことを教えてくれた。
そのおかげで、今の自分がある。
ヤムチャが思っている以上に、マーリンはヤムチャに心から感謝していた。
「マーリン」
ボーっとしていたマーリンだったが、ヤムチャの声に気がつくと、自分の顔のすぐ前にヤムチャがいることを確認する。
そして、いつの間にか口と口が静かに重なり合っていた。
「…ん」
二人は、ようやく久しぶりのキスを交わす。
思わず他の事に手が出そうだったヤムチャだが、シルフもそばで寝ていることだし、さすがに自重した。
っていうか、こいつマーリンに似て寝すぎだろ…とキスの最中に心の中でヤムチャはそっと思う。
対照的にマーリンはなんとも言えないこの胸に高鳴りに、自分がどうにかなってしまいそうな気さえしていた。
ほんの10秒ぐらいの時間だったが、マーリンにとってはもの凄く長く感じた。
「…さて、マーリン、気を取り直して特訓だ!スーパーサイヤ人への道はまだ遠いぜ」
「…そ、そ…そうだな。はじめるか」
キスで調子を狂わされたと思っていたマーリンだったが、先ほどよりずっと心が楽になっていることに気づいた。
ヤムチャが自分を安心させてくれたおかげなのだろう。
もしかしたら、それも計算してヤムチャは自分にキスをしたのだろうか?
そうだとしたら、実に凄い男だ…と彼女は再び思った。
「…ありがとう、ヤムチャ」
「何がだよ」
「…ふふ、いろいろとな」
「ふうん…」
マーリンはニヤリと笑う。
ヤムチャも釣られて笑う。
そして二人はマーリンをスーパーサイヤ人にするため、再び特訓に励むのだった。
特訓と言っても、ヤムチャは隣でアドバイスを送るだけだが…。
157Classical名無しさん:08/12/23 07:15 ID:O04vnwwk
更新乙です。やっぱりおもしろいな
158Classical名無しさん:08/12/25 10:31 ID:ShTPL/Z2
Meri-kurisumasu
159Classical名無しさん:08/12/25 21:22 ID:gPU1qno.
サイヤンキラー無印の頃から悟空が悪役に見える
160SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/25 23:44 ID:eRGZjAqU
メリークリスマス!
たくさんのコメントや支援書き込み、ありがとうございます。
皆さんからの応援があるから頑張って書いていけます><

>>159さん
それは私も思いましたw
あくまでSaiyanKillerはヤムチャとマーリンが主役なので、
悟空やベジータなどにはそっち路線に行ってもらったほうがストーリーが展開しやすい気がします
161SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/25 23:46 ID:eRGZjAqU

【60話】
一方、ピッコロは占いババの元を訪れていた。
神と融合したあとのピッコロには、ちょっとした未来予知能力のようなものが備わっている。
その能力により、ピッコロは具体的に何が起きるかは分からないが、近い将来“悪い何か”が起きると予知をしていた。
そう、セルの出現を地球で一番早く予知していた神のように…。
つまり、ピッコロはその“悪い何か”を占いではっきりさせるために、占いババの元へと単独で乗り込んだのだ。

「ここか…。出て来い、占いババとやら!」
ピッコロが建物の外から叫ぶ。
すると、薄黒い建物の中から、水晶球に乗り、フワフワと宙に浮かびながら占いババが姿を現した。
「なんとまあ…これはこれは、珍しい客がおいでなすった…」
占いババは驚いたようにピッコロに向かって言った。
「…貴様、占いが出来るんじゃないのか?俺が来ることぐらい占いで分かっているものだと思っていたが」
ピッコロはそう言うと、腕を組みながら占いババに向かって近づいていった。
「ふぉふぉ…ここに誰が来るかなどを頻繁に占ったりはせんのでね」
「そうか」
ピッコロはつまらなそうに言葉を返す。
「それにしても、まさかおぬしが単独でたずねてくるとはのう…」
占いババはピッコロが怖いのか、少し距離を置きながら喋っている。
「俺もまさかこんな胡散臭い所に、一人で来るとは思わなかった。…ダラダラ喋るためにここにきたわけではない。手短に言う、地球の近い未来を占え」
ピッコロは真剣な面構えで、淡々と占いババに向かって喋る。
「地球の…未来?お主ともあろうものが、地球の未来が心配なのかね?」
「……つべこべ言ってると後悔することになるぞ。もう一度言うが、俺はダラダラ喋るためにここにきたわけではない」
「わ…分かった!占えばええのじゃろ、占えば!」
ピッコロの威圧感により、占いババはびびってすぐさま占いを開始する。
162SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/25 23:46 ID:eRGZjAqU
【61話】
占いババは水晶球から地面に降りると、それに向かって手の平で何かを念じ始めた。
それを黙って見つめるピッコロ。
「ほほほーいほほーいほいホーイ…」
占いババが奇妙な呪文のようなものを唱えると、水晶球に変化が現れる。
透き通っていた水晶球が、白く濁り、何も見えなくなったのだ。
「これ…は………」
占いババは小さく声をあげる。
その頬に、わずかな冷や汗を浮かべて。
やがて、水晶球の濁りは消え、元の透き通ったただの球に戻った。
その水晶球をしばらく見つめていた占いババだが、元からシワだらけだった顔が更に歪む。
「終わったみたいだな。…どうなんだ?」
その表情を見て、ピッコロはただごとではないと思い、占いババに結果を問う。
「……こりゃ…とんでもない事が起きるかもしれん」
「かもしれん、では困る。具体的に何が起きるのか話せ」
ピッコロが強い口調で占いババに結果を話すよう催促すると、占いババの顔は深刻そうなものになり、しばらく間を置いて口を開く。
「…“具体的”には分からん。何も映らんのじゃ」
その呆気に取られるような結論に、ピッコロは占いババに突っかかる。
「なんだと…?ふざけているのか?」
だが、占いババは微動だにもしない。
ピッコロも気付いていた。
こいつはただ単に、ふざけているわけではないということを。
「…ピッコロとやら、よく聞け。今わしは地球の未来をこの水晶球を使って占った。…じゃが、この水晶球に、地球の未来が映らんかった。…この意味が分かるかね?」
「分からん。どういう意味だ」
占いババは青ざめながら、ゆっくりと言った。
「どういう経緯かは分からんが、このままいけば………地球がなくなる…ということじゃ」
163SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/25 23:48 ID:eRGZjAqU
【62話】
しばらくの沈黙が流れる。
ピッコロは目を大きくさせながら、占いババを見つめていた。
占いババはそれ以上何も言わずに黙り込んでいる。
「貴様、何を言っている……?」
重い空気の中、ピッコロが沈黙を破る。
「……こんな事が本当に起きるだなんて、わしじゃって信じたくないわい」
この様子だと、占いババが嘘を言っているとは思えない。
そして、ピッコロの中の予想は、確信へと変わって言った。
「…やはり、あの娘……マーリンとやらは、何かしでかしやがるのか……」
占いババに聞こえないように呟くと、ピッコロは続ける。
「おい、貴様。貴様の占いと言うものは確実に当たるんだろうな?これは今から何日後の話だ?」
「今から3週間後ぐらいじゃと思う…。未来予知に関しては、“一番確率の高い未来”を映し出すようになっておる。じゃから、100%とは言いきれないが…地球がやばいことに変わりはないじゃろうな」
「…そうか、分かった。助かったぞ、占いババとやら。悟空たちには俺から伝えておく」
「ああ…そうしてくれ。わしは近いうちに、地球以外の場所に避難するとするかのう…」
「…好きにしろ」
ピッコロはそう言うと、宙に飛び上がり、高速で悟空たちの家へと向かっていった。。
「…チッ。だがどうすればいい……悟空に言ったところで、何が起きるか具体的には分からんのでは、手の打ちようが…」
ピッコロは高速で移動しながら、独り言を呟く。
その目には、明らかな焦りの色が浮かんでいた。
164SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/25 23:49 ID:eRGZjAqU
【63話】
そして、ここはパオズ山。
孫家は天下一武道会に備え、ちょうど今日から本格的に修行を始めようとしているところだった。
「今日は日曜日だから、一日中修行が出来ますね。父さん」
悟飯が家の中で私服から胴着に着替えながら、悟空に話しかける。
「そうだな、悟飯。とりあえず、着替え終わったら準備運動すっか。にしても…昨日悟飯がデートなんてしなけりゃ昨日から修行できたのによー」
悟空は屈伸しながらニヤニヤして悟飯に言う。
「す、すみません…ビーデルさんが忙しくて昨日ぐらいしか時間とれなかったもので…」
その率直過ぎる言葉に、顔を赤らめる悟飯。
「ぼくも一緒に修行するー!少年の部はなくなったから、一般の方で出るんだ!」
悟天は腕立て伏せをしながら、気合十分といった感じだ。

スタッ!

そこへ静かにピッコロが降り立つ。
「え?ピ…ピッコロさん!?どうしてここに?」
降り立ったピッコロの元に、悟飯が一番に駆けつける。
「オッス、ピッコロじゃねぇか。天下一武道会に備えて、オラたちと修行する気になったのか?」
悟空も遅れてのそのそと歩み寄る。
「…武道会なんぞに興味はないが、話があってここまで来た」
「なんだ?改まって」
「実はだな……―――」
ピッコロは占いババから仕入れた情報を、全て悟空、悟飯に話す。
165SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/25 23:53 ID:eRGZjAqU
【64話】
「――という訳だ。マーリンという娘が鍵を握っているだろう。俺の嫌な予感が始まったのが、ヤツが地球に来ると知った辺りからだからな」
「地球が…なくなるって…本当なんですか?ピッコロさん…」
悟飯はいきなり突きつけられた最悪な未来にうろたえる。
悟空はそれを聞いてもあまり驚いた表情は見せず、ただ下を向いて何かを考え出した。
「占いババとやらがそう言っているんだ。ただ、もっとも確率の高い未来というだけであって、100%地球がなくなるというわけでもないらしいが…」
「なくなるにしろ、なくならないにしろ、ばっちゃんがそう言ってんならどっちにしろ地球がやべぇことに変わりはねぇ。けどよ、それだと抽象的過ぎて解決法がねぇんじゃねーか?」
「その通りだ。俺が今のところ思いつくのは、非道かもしれないが…取り返しがつかなくなる前に、マーリンとかいう小娘を始末するという方法ぐらいだな…」
ピッコロは提案を出すが、その提案に、悟空や悟飯が賛成するはずもなかった。
尤も、ピッコロも本気でそんなことをするつまりなんて更々ない訳だが。
「ピ、ピッコロ…さすがにそりゃねぇよ…。第一、今は別にワリィことしてねぇのに手ぇ出すってのはオラにはできねぇ…」
「そうですよ!それはあんまり過ぎます。ぼくたちと一緒にもっと他の方法を考えましょう、ピッコロさん!」
「…チッ…相変わらず甘いな、貴様ら親子は」
ピッコロは一回舌打ちし、続ける。
「それでは孫、お前はどうすればいいと考える」
ピッコロは意見を悟空に求めた。
166SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/25 23:54 ID:eRGZjAqU
【65話】
「難しいことはよくわかんねぇけどよ…もしマーリンが原因なら、マーリン以上にオラたちが強けりゃ問題ねぇんじゃねぇか?」
ピッコロの問いに悟空はすぐさま答えた。
「ぼくもそう思います…。それに、果たして本当にマーリンさんに原因があるのでしょうか?」
悟飯も悟空の意見を肯定する。
そして、その言葉にピッコロはハッとした。
「…確かに、俺の勘違いだということもあり得るな。だが…もし原因がヤツではないとしたら一体他に何が……」
「さっきチラッとあいつを見てきたけど、オラや悟飯の方が、だいぶパワーは上だったぞ。あいつが元凶とは思えねぇな」
「…忘れたわけじゃあるまい。10年ほど前、ヤツが1ヶ月という短期間で前のお前並みの強さに伸し上ったことを。今の強さは参考にならん」
「……まあな」
悟空、悟飯、ピッコロの3人は同時に深く考え込む。
悟天も最初は耳を澄ませて聞いていたが、会話についていけず、暇そうに腕立て伏せを再開していた。

「で…ピッコロ、地球がなくなる時期ってのは今からどんぐれぇ先の話なんだ?」
悟空がピッコロに質問する。
「役3週間後…だと聞いた。そう遠い話ではないぞ」
「そうか、じゃあ天下一武道会の後ってことだな…」
悟空はそう答えると、再び屈伸を始めだした。
「おい、孫…」
能天気にも見受けられる悟空の行動に、ピッコロは何かを言いかける。
だが、悟空はピッコロの言葉を気にせず準備運動を続けていた。
167SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/25 23:55 ID:eRGZjAqU
【66話】
「考えたってはじまらねぇさ。オラはとりあえず、うんと修行する。そして誰にも負けねぇぐれぇの強さになる!それじゃだめか?」
悪く言えば楽観的過ぎ、良く言えばとてもポジティブな悟空ならではの結論に、ピッコロの口元が緩む。
「……ケッ、貴様らしい結論だな。やはり、そうするしか手はないか」
「ピッコロさんも一緒に修行しましょうよ、せっかくですし!」
悟飯は一大事だと言うのに、ワクワクしているように見える。
やはり、このへんは悟空の血を引いているのだなとピッコロは思った。
「…フン、いいだろう。だが勘違いするな、俺は別にお前らと修行がしたいわけでは―」
「ピッコロー、そうツンツンすんなってー!それよりとっとと始めようぜ!」
こうして、孫家とピッコロの修行が始まった。
ピッコロが感じ取った“悪い予感”とは一体何なのか?
地球危機の原因は本当にマーリンなのか?
元凶は分からないまま、彼らはひたすら修行に打ち込みはじめた。
168SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/25 23:57 ID:eRGZjAqU
【67話】
「くっ……ぎっ…」
それから更に1時間経っていた。
動いてもいないのに、マラソンをした後のようにマーリンの体から大量に水滴が滴り落ちてゆく。
「だめだだめだ!ただ単に気を上げてどうする!それじゃあ疲れるだけだぞ」
ヤムチャの厳しい指摘が入る。
「いいか?気を上げることはさほど重要じゃない。それより何かにブチ切れるんだ。その怒りがお前をスーパーサイヤ人にする」
ヤムチャはさっきから何度も同じことを言っていた。
スーパーサイヤ人に関する知識が、それくらいしかないからだ。
だが、大よそ間違っているわけでもない。
「分かっている…!分かっているのだが……っ…」
マーリンは全神経を集中して怒ろうとしているが、特に憎く思っている相手もいないため、非常に難しいものだった。
「………よし!とりあえず休憩だ。髪の毛がゾワって一瞬逆立つときがあったから、多分もうちょいだな」
ヤムチャから休憩の合図が出ると、マーリンはバタリと倒れた。
「お、おい…大丈夫か?」
「…問題ない。それより一秒でも早くスーパーサイヤ人になれなければ…まだ続けるぞ、ヤムチャ!」
「無茶だ。とりあえず今は休め、体の傷は治るが、心が壊れちまったら取り返しつかないぞ」
ヤムチャはそう言いながらマーリンの背中をぽんぽんと叩いた。
169SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/25 23:59 ID:eRGZjAqU
【68話】
さっきまで寝ていたシルフは既に起きていて、両親が行っている不可解な修行をジッと見つめていた。
ただ目をつぶりながら何かを考えている母と、その隣で腕を組みながらそれを見守っている父。
余りにも不可解なため、何をしているか質問したのだが、『ソンゴクウを倒すための修行』としか教えてくれなかった。
悟空よりマーリンやヤムチャの方が絶対に強いと信じてやまないシルフにとっては、当然納得のいくものではない。
「ねー、お父さん。修行しなくてもあいつに勝てるのになんでこんなことしてるの?」
シルフが健気にヤムチャに質問する。
「…そ、それはなあ…」
父としては、子にここまで信じられたら、自分は悟空より弱いだなんて中々言い出しづらい。
それを聞いたマーリンは、乱れていた髪をかきあげるとシルフに近づいていった。
「シルフ、ソンゴクウはお前の想像している以上に強い男だ。今のままでは、わたしもヤムチャも勝てない。だからこうしている」
「え……お母さんたちが…あの男に勝てない?…どうして?」
「……ソンゴクウは、お前が生まれる前に、わたしが辛うじて倒したという話をしただろう?」
マーリンはシルフの前にしゃがみこみ、目線を合わせて言った。
「うん、でもお母さんはその時よりぜんぜん強くなったって…」
「確かに、わたしはその時より遥かに強くなったが、ソンゴクウはそれ以上だった。ヤツは前あった時より30倍ほど強さが増している…この意味が分かるな?」
シルフはそれを聞くと、驚いた顔になる。
「だって…だって…いろんな星を回ったけど、お母さんより強いヤツなんて一人も今まで……」
「シルフ…宇宙は広い。今までわたしが倒してきた者など、ただの雑魚に過ぎなかったということだ。少なくとも、この星の視点からだとな…」
残念にするシルフを見て、心が締め付けられるような思いがしたヤムチャ。
「そっか……でも、最後の勝つのはきっとお母さんかお父さんだよね?」
「それは、約束しよう。そのためにも、わたしたちは一秒たりとも無駄に出来ないんだ…」
170SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 00:04 ID:Vq.Wea2g
【69話】
マーリンはそう約束をすると、拳を強く握り締め、打倒ソンゴクウを誓うように空を見上げた。
「…うん!がんばってね…お母さんも、お父さんも!応援するから!」
やはり、シルフは自分たちを信じきっている。
この純粋な期待を裏切るわけにはいかない…絶対に。
黙って会話を聞いていたヤムチャだったが、そう心の誓った。

それに…ヤムチャを心から応援してくれる者は、シルフだけではない。

「――様ー!ヤムチャ様ぁー!」
少し遠くから声が聞こえる。
3人はまっすぐと飛んでこちらに向かってくる者に一斉に視線を向けた。
当然ながら、ヤムチャはすぐにその声の主の正体に気付く。
「プーアル…!」
ヤムチャは思わずその正体の名を叫んだ
「プーアル……?知り合いか?ヤムチャ」
マーリンがヤムチャの言葉に反応し、ヤムチャに尋ねた。
「知り合いも何も、俺と長年ずっと一緒に過ごしてきたパートナーだ、あいつは」
自慢げにプーアルのことを語るヤムチャだったが、マーリンの表情はあまり穏やかではなかった。
「パートナー…恋人?」
マーリンは少し声のトーンを落としながらヤムチャに言った。
「ば、ばか!どう見たって恋人じゃないだろ…そもそも地球人じゃなくて猫だし」
「そういう意味だと、わたしも地球人ではないが…」
マーリンは不信そうな表情を浮かべ、ヤムチャを睨むようにして立っていた。
171SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 00:05 ID:Vq.Wea2g
【70話】
「……あのなあ」
「ヤムチャ様ぁーー!今戻りました!」
プーアルは飛んできた勢いで、小さな体ながらそのままヤムチャの顔面にに抱きつく。
「ご、ご苦労だった、プーアル…」
抱きついてきたプーアルの頭をよしよしと撫でるヤムチャ。
しばらくしてからプーアルがヤムチャの顔から離れる。
「あれ…ヤムチャ様、そちらの女性とお子さんは…一体?」
プーアルは今気付いたのか、ようやくその話題に触れた。
「ああ…紹介しようプーアル。こっちは俺の嫁さんでマーリン。で、これが俺たちの子供、シルフだ」
「……!?……え…?ヤムチャ様、結婚されてたんですか!?」
ヤムチャの言葉を聞いて、思わず目が点になるプーアル。
それもそのはず、長い間ヤムチャと共に過ごしてきたのに、ヤムチャに奥さんがいることに全く気付かなかったからだ。
だが、プーアルが気付かなかったのも無理はない。
「ほら、前に話したろ、人造人間との戦いに備えて俺が一人身で修行していた時に出会った女の子の事。それがこのマーリンってわけだ。で、昨日ドラゴンボールを使っ

て地球まで呼び寄せた」
「あ…!そんな話ありましたね。ボクはその場にいなかったからいまいち記憶が曖昧で…でもお子さんは…いつ…?」
「んーと…なかなかプライベートな質問だな。まあ、その時に精神と時の部屋で…ちょっとな」
自分が知らなかったヤムチャを取り巻く事実を告げられ、プーアルは素直に驚くしかなかった。
だが、その驚きの表情もやがて喜びに変わる。
なんせ、結婚とは長年主人であるヤムチャが追い求めていた夢だったのだから。
172SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 00:09 ID:Vq.Wea2g
【71話】
「そうなんですかぁ……。ヤムチャ様、おめでとうございます!やっと結婚できましたね!」
「あ、ああ…はは、ありがとな。式は挙げてねーけど…」
「さっそく結婚式あげましょうよー!ボクが手続きとかは全部やりますから!」
プーアルはまるで自分のことのように張り切っていた。
「そうだな…天下一武道会が終わったら式でも挙げてみるか」
ヤムチャは呟くように言った。
「え、ヤムチャ様…天下一武道会に出られるんですか?」
「ああ、今回は出るつもりだ」
「それじゃあ、いっそう修行に身を入れるしかないですね!」
マーリンとシルフは、ヤムチャとプーアルの話の内容自体はあまり気にしていなかったが、いきなり現れたこの青い猫がヤムチャとやたら親しげで、なんともいえない複雑な心境だった。
あの猫はどう見ても戦士ではないが、一体ヤムチャのなんなのだろう?
そんな疑問がマーリンには募る。

「で、プーアル。カプセルコーポレーションに修理を頼んだアレはどうだ?直ったのか?」
「あ…!そうでした、今日はこれを届けに来たんですよ」
そう言いながらプーアルはカプセルを取り出すと、ボタンを押下して地面に放り投げた。
すると、砂煙が舞い、何もなかった荒野に、カプセルの何千倍はあろうかというかなり大きな宇宙船のようなものが姿を現す。
「……す、すごい…!」
昨日ヤムチャからカプセルを見せてもらったマーリンはさほど驚かなかったが、シルフは口をあけながらその宇宙船を見つめていた。
「随分と綺麗になったな。大きさも前より大きくなって中も広そうだ。最大重力は何倍って聞いている?」
「えっと、重力はヤムチャ様の希望で一応1000Gまで設定できるみたいですが…とても心配していましたよ、ブリーフ博士」
「お、ようやく1000Gか。確かに今の俺では立って居られるかすら微妙なところだけどな…」
ヤムチャは顔を顰めるが、どこか嬉しそうにも見える。
173SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 00:10 ID:Vq.Wea2g
【72話】
二人の会話を黙って聞いていたマーリンだが、ヤムチャのそばまで歩み寄ってきた。
「ヤムチャ、これはなんだ?一見宇宙船のように見えるが…」
マーリンは宇宙船を手で軽くコンコンと叩きながらヤムチャに尋ねる。
「これは重力発生装置だ。まあ、元々宇宙船だったんだけど、今は宇宙船としての機能はついていない。純粋に重力を発生させるだけだ…最大1000倍のな」
「なるほど。…1000倍……ヤムチャとわたしが修行したあの不思議な部屋で、確か10倍だったような…」
「でも、あの時はそれとは別に錘(おもり)もつけていたし、体感重力は100倍ぐらいだろうな」
昔、ヤムチャとマーリンは精神と時の部屋で修行をしたことがある。
その時は、10倍だけの負荷じゃ足りないと思い、手足に錘もつけて修行を行っていたのだ。
「それでは、ボクはこれで……」
プーアルは用が済んだからか、その場を去ろうとした。
「ちょっと待て。どこに行くんだ?」
逃げるようにこの場から離れていこうとするプーアルを、ヤムチャが引き止める。
「…西の都にでも、戻ろうかなーって…思いまして……」
「どうしてだよ、プーアル。ここにいろよ」
「そうしたいのは山々なのですが、なんというかその……いいんですか?」
申し訳なさそうな表情を浮かべるプーアルに、ヤムチャは笑いながら言った。
「はは、いいんですかって…何言ってるんだお前。まさか俺がマーリンたちと一緒にいるからって、気を遣っているのか?」
「……ええ、その方がいいのかなと思いまして…」
「水臭いぞ、プーアル。むしろ俺はマーリンたちにお前のことを知ってもらいたいし、お前にもマーリンたちのことを知ってもらいたい。ちょうどいい機会だし、お互い自己紹介しようか、ほら」
ヤムチャはプーアルを捕まえると、マーリンたちの前に座らせた。
174SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 00:16 ID:Vq.Wea2g
【73話】
「…えっと、初めまして、マーリンさん、シルフさん。ボクはプーアルと言います。特技は変身です」
「ぼくはシルフって言うんだ。よろしく、ぷーあるさん」
「…マーリンだ。ヤムチャが世話になっている」
さっそくシルフはプーアルの頭を撫でたりしてかわいがっていた。
マーリンは腕を組みながらプーアルを見つめる。
その様子を見て、うんうんと一人で頷くヤムチャ。
「ちなみに、プーアルは俺の古くからの親友だ。悟空たちと会う前から一緒に居たからな」
「あはは!シルフさんくすぐったいですよー!」
プーアルはシルフに擽られて笑い転げていた。
その様子を見てヤムチャは腹を抱えて笑っている。
息子はすっかりプーアルとなじんだみたいだが、マーリンは、未だに複雑な気分だった…。

シュビッ!

「……!」
ヤムチャたちは、再び後ろに大きな気を感じた。
だが、この気は悟空とは違う。
振り向くと、そこには明らかに異世界の人間と思われる人物が立っていて、こちらを見ていた。
悪い気ではないので、悪人ではないと思うが…一応警戒を始める二人。
はしゃいでいたプーアルとシルフも途端に静かになる。
変わった服装のその男は、二人に向かってしゃべり始めた。
175SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 00:51 ID:Vq.Wea2g
ふう…。
誤字脱字が確認しただけで2箇所ありました。
疲れているのかもしれません。

続きはまた明日にでも!
176Classical名無しさん:08/12/26 01:40 ID:e3VqxY06
初めて書き込ませていただきます。SaiyanKillerを以前読ませていただいて、続編があればいいのにと
思っておりました。書いている方が違うということですが、SaiyanKiller2もとても
おもしろいです!楽しみにしてますので、がんばってください!!
177Classical名無しさん:08/12/26 19:12 ID:sFDI0N2k
>>176
ageてるのは故意なのか?それともsage方が分からないんですか?今度から気をつけてください。

それとマーリンがスーパーサイや人3の悟空を超えるのも無理ではないか?
老界王神に潜在能力を開放してもらって悟空を超えるのなら分かるが
悟空は何年もかかってスーパーサイヤ人3になれたのに
マーリンはそれを短期間で超えるってのはおかしいよ。
悟空を超えるのはかまわんけど悟飯やゴテンクスは越えないでくれよ。
悟天とトランクスは元々すごくてフュージョンしてさらにとびっきりの戦士になった。
だから短期間でスーパーサイヤ人3になれたのは分かるけどマーリンはフュージョンもしないで悟空を超えられるか?
悟飯は潜在能力がたくさんあってそれを限界以上に老界王神に引き出してもらってゴテンクス以上になったんだし・・・
だから普通の修行では悟飯とかを超えないでくれよ。潜在能力を開放してもらうってのは分かるけど。

なんか悪く聞こえたらすみません。これだけは言いたかったので
悪く聞こえたら無視していいので頑張って下さい。
178SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 20:59 ID:Vq.Wea2g
【74話】
「…そんなに驚かないでください。怪しい者ではないですから。はじめまして、ヤムチャさん、マーリンさん。あなたたちの今日の行動、ずっと見させてもらいましたよ」
「やれやれ、今日はやたら背後に人が現れる日だな」
ヤムチャはそう声を漏らすと、やけに丁寧に話す男に、半信半疑ながら近寄っていく。
「俺たちの名前を知っていてくれて光栄だ。だが、まずあんたは誰だ?俺の知り合いには見覚えないぜ」
「…今の技は瞬間移動か…?いきなり背後に気配を感じたが…只者ではなさそうだな」
ヤムチャとマーリンは同時に質問すると、男は申し訳なさそうに答える。
「申し遅れました。わたしは東の界王神です。そしてマーリンさん、あなたの言うとおり今の技は瞬間移動ですよ。悟空さんのものとは少し違いますがね」
男が全て言い終わる前に、ヤムチャは腰を抜かしてそっくり返った。
そう、ヤムチャと界王神は面識がなかったのだ。
「あ…あ、あ、あなたが、か…界王神…様!!??」
「ヤムチャ…なんなのだ、カイオウシンとは…。ソンゴクウの知り合いのようだが」
「…今使ってる界王拳を教えてくれたのが、界王様。その上にもっと偉い人がいて、それが大界王様だ。で…更にその上に界王神様という宇宙で一番偉い人がいるんだ。それがこ

の人ってわけ」
「なるほど…よく分からないが宇宙の偉人なのだな」
マーリンは界王神を見ながら答えた。
ヤムチャは起き上がると、マーリンより前に出て界王神の耳元で囁く。
「か、界王神様…今日の行動を全部見てたって…もしかしてキスシーンも…?」
「え、あ…すみません、そんなことをするとは思わなくて、つい見ちゃいました……」
それを聞いて顔を真っ赤にするヤムチャだが、マーリンからはただコソコソと内緒話をしているようにしか見えなかった。
179SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 21:00 ID:Vq.Wea2g
【75話】
「それで…界王神様。一体俺たちになんの用が…?」
ヤムチャはようやく真剣な顔付きになり、話を始める。
界王神も真面目な顔付きになった。
「はい、実は…界王神界におられる、大界王神様がお二人を見ていて『ここにつれてこい』と言っておりまして…早い話なのですが、わたしについて来ていただけませんか?悪い

ようにはしませんよ」
ヤムチャとマーリンは顔を見合わせる。
「大界王神様…悟空から聞いたことがある…。なんとかソードに封印されていたっていう例の…?」
「はい、そうです。直接話したほうが早いと思うので、とりあえず私の肩へ手を…」
「は、はい!」
ヤムチャは界王神の肩に手をあてたが、マーリンはそうしなかった。
「マーリン…?」
「マーリンさん、どうしました?」
「あいにくだが、わたしはソンゴクウを倒すための修行がある。私用ならソンゴクウとの戦いが終わったあとにしてもらいたい」
マーリンはきっぱりと答えた。
「マーリン…!界王神様に向かってなんてこというんだ…あはははっ…あーもうすいません界王神様、こいつちょっと寝ぼけているみたいで…」
ヤムチャは慌ててマーリンの口を押さえるが、タイミングが遅すぎる。
そんな二人のやり取りを見ていて、界王神はニヤリと笑った。
「マーリンさん、大丈夫です。今あなたたちが何をしようとしているか、全て知っていますから。それを知った上で、ついてきて欲しいと言っているのです」
妙に自信ありげな界王神の回答に、最初はついていく気はなかったのだが、マーリンは少し迷いはじめた。
「え…そうなんですか?じゃあ、俺たちが悟空を倒そうとしていると言うことも…」
「もちろん知っていますよ。今日の行動を見ていたと言ったじゃないですか。それより…今は一刻一秒も惜しいのではないですか?強くなるためにも…」
“強くなるため…”この一言が、マーリンにとって決定打だった。
180SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 21:04 ID:Vq.Wea2g
【76話】
「…ヤムチャ、気が変わった。この人についていこう。きっと、何か考えがあってのことなのだろう」
「あ、ああ…」
二人は界王神の肩にしっかりとつかまった。
それを見て、プーアルは慌てて重力発生装置を元のカプセルに戻す。
そしてヤムチャの肩にプーアル、マーリンの腰にシルフもしっかりと捕まった。
界王神は再び軽く微笑む。
「それではいきますよ………カイカイ!」
界王神が奇妙な呪文を言い放ったと思うと、4人と1匹は地球上から姿を消した。

―ここは界王神界。
「さ、つきました」
さっきまで見ていた辺り一面の荒野が嘘のように、緑の草原が広がる。
その景色はとても自然が美しく、まさに界王神界という名に相応しい世界だった。
「ここが聖地・界王神界か…」
ヤムチャは声を漏らす。
「ヤムチャ、あそこに人がいるぞ」
隣にいたマーリンが数十メートル先を見ながらヤムチャに話しかける。
ヤムチャはその視線の方向に首を向けた。
すると、そこには一人の老人が立っていた。
その老人は界王神と同じような服装をしている。
ということは、この人が…?
「あなたが…大界王神様ですか?」
ヤムチャは老人に恐る恐る質問する。
「うむ、いかにも。こやつの15代前の界王神じゃ。よくきたのう、ヤムチャとやら…と、そこのギャルよ」
大界王神はほんの数秒だけヤムチャを見ていたが、その視線はすぐにマーリンだけに集中していた。
(この人…武天老子様と同じタイプだ…)
その様子を見て、ヤムチャは一瞬で悟った。
181SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 21:05 ID:Vq.Wea2g
【77話】
軽い足取りで大界王神はヤムチャたちのほうへ近づいてくる。
「…ぎゃる?それは、わたしのことを言っているのか?」
目の前までやってきた大界王神にマーリンが質問する。
「お前以外にギャルはおらんじゃろう…ぬふふ」
そう言ってやらしい目つきになる大界王神。
マーリンはそれを無視するかのように、キリッとした目で大界王神を見つめる。
その鋭い視線に大界王神もすぐに気付いた。
「マーリンとやら…実に良い目をしておる。その何かを信じて疑わない目…目標のためには妥協を許さない目…そして、絶対に諦めない目じゃ」
目を見ただけで、大界王神はマーリンの性格を全て当てて見せる。
さすがに大界王神だけあって、ただのエロ爺ではないな、とヤムチャは思った。
「…大界王神様、さっそく彼らにご説明を…。地球の大会まで、残り2週間しかないみたいなので、あまり時間がありません」
ヤムチャたちを地球からここまで連れてきた方の界王神が割って入る。
「まあまあ、そう急かすでない…。とりあえず、お主はお茶でも入れて来るんじゃ」
「は、はあ…かしこまりました」
大界王神に命令され、界王神はお茶を入れに行った。
界王神ともあろうものが、地味にお茶入れをしているという光景にヤムチャは笑いそうになったが、どうにか堪える。
「さて…お茶はまだじゃが本題に入ろうかの」
大界王神は二人の前に立つと、背を向けて話始めた。
「…わしが今日、偶然地球を見ておったら、平和なのにも関わらず、大きな力と力が衝突しておった」
「俺たちのことですか?」
ヤムチャが間髪いれずに聞き返す。
182SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 21:06 ID:Vq.Wea2g
【78話】
「うむ。何でお主らを呼び出したかと言うと、お主らが戦っている様子が目に入ったからなんじゃ」
「この星から…わたしたちを見たのか?」
マーリンが質問する。
この世界がどこだかは知らないが、地球とは明らかに別世界なのは確かだ。
とすると、ずっとここにいては自分たちが戦っていた様子も見れるわけないはず。
ならば、当然どうやって戦っている様子を見たのだろうかという話になる。
「わしの目は神眼で、全宇宙どこでも見渡せる。それに、この水晶球で見ることも可能じゃ」
大界王神は地面に転がっていた水晶球を指差した。
「例えば……ほれ、悟空たちじゃ。今は必死に修行しておる」
マーリンとヤムチャ、それにシルフとプーアルは小走りでその水晶球に駆け寄り、それを見つめた。
そこには確かに悟空や悟飯がパオズ山で修行している姿が映し出されていた。
「へー…テレビみたいだな、これ。ていうかピッコロも一緒なのか」
ヤムチャは感心したように言う。
その水晶球を見て、何故このような映像が映し出されるのか原理は分からないが、一応マーリンも納得する。
「なるほど…不思議な現象だが、世界中どこでも見渡せると言うのは事実のようだな」
「でも、大界王神様…偶然目に入ったってだけで、俺たちをここに?」
ヤムチャは続けて質問を重ねる。
「……もちろん、最初はその気はなかったんじゃが……悟空とのやり取りを見て、賭けてみとうなったのじゃよ、お主らに」
大界王神は神妙な顔付きになる。
「俺たちに…賭けてみたくなった?」
「あれだけの差を前にも、飽くなき向上心を持ち、何より“強さ”に欲があるお主らに、賭けてみとうなったんじゃ。時代が変わる瞬間を見たいと思わんかね?」
大界王神はヤムチャたちに何かを期待しているのか、気持ちを昂揚とさせながら喋る。
183SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 21:08 ID:Vq.Wea2g
【79話】
「…話が見えません。どういうことでしょう?」
ヤムチャは焦っているかのように、核心に迫ろうとする。
大界王神は一息おき、ヤムチャたちに言った。
「…オホン。では、まずお主達に聞こう…今より強くなりたいかね?」
「はい、もちろんです」
「ああ、聞くまでもない」
ヤムチャとマーリンは大界王神の問いに即答する。
「……悟空たちを、倒したいかね?」
さっきより重い口調で大界王神は言う。
「……はい」
「…そのつもりでわたしは修行している」
二人はそれに対してかみ締めるように答えた。
大界王神はヤムチャとマーリンの顔を交互に数回見ると、ニコッと笑い再び口を開く。
「よろしい。お主たちを強くしてやろう」
「「…!?」」
ヤムチャとマーリンは顔を見合わせた。
強くしてやろうと言われても、痩せ細ったこの老人が、自分たちに一体何が出来るのだろう?
二人とも大体こんなことを考えていた。
「つ…つまり、大界王神様が直々に稽古をつけてくださるんですか…?」
ヤムチャは不安そうに大界王神に聞いた。
「稽古?そんなもんこの老体には無理に決まっておろう。それに、時間も足りない」
大界王神は首をゆっくりと振りながら断言した。
「じゃ、じゃあ一体……?」
「潜在パワーを引き出すのじゃよ。それで、お主達は今の何倍も強くなる」
大界王神は微笑みながらヤムチャとマーリンに向かって話す。
「潜在…パワー……?」
184SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 21:09 ID:Vq.Wea2g
【80話】
「そうじゃ。要するに、眠っている力というやつじゃな。わしはそれを引き出すことが出来る」
ヤムチャはてっきり稽古をつけてくれるとばかり思い込んでいたので、予想外の大界王神の言葉に驚いていた。
それに、果たして自分には潜在能力…つまり、使わずに眠った力なんてあるのだろうかと疑問も抱く。
今備わっている顕在能力でさえ、限界を超えるぐらいの強さを身に付けたつもりなのに、今の何倍も強くなると豪語されては信じるほうが難しい。
仮に潜在能力があったとして、それを引き出したところでも、悟空たちと対等以上の実力になれるとも考えにくいのではないだろうか。
「…そんなことが可能なのか?」
マーリンも信じられない様子で界王神様に言った。
「ほっほ、わしにかかれば余裕じゃよ。見たところ、お主ら二人ともかなりの潜在能力が眠っておるのう…実にもったいないわい」
大界王神は笑いながら答える。
「大界王神様、お茶が入りました。ヤムチャさんたちもどうぞ」
「ああ、ご苦労じゃった」
大界王神は例を言うと、湯飲みを受け取りお茶を啜り出す。
どうやらプーアルとシルフは界王神の手伝いをしていたみたいで、プーアルからヤムチャ、シルフからマーリンに同じようにお茶が渡された。
しばらくお茶を飲んでいた大界王神だったが、半分ぐらい飲み干すと再びヤムチャたちに向き直る。
「で、どっちからやるんじゃ?わしはいつでもいいぞい」
大界王神は飲みかけのお茶を地面に置きながら、ヤムチャたちに質す。
「…どうする?マーリン」
ヤムチャは小声でマーリンに言った。
「そのパワーアップはどれぐらい時間がかかるのだ?」
その質問に大界王神が答える。
「うーむ、そうじゃな…個々の潜在能力の度合いにもよるが、儀式に5時間、パワーアップに20時間ってところじゃ。その間パワーアップを受けている者には、わしの目の前で座

ってもらうことになる」
「な…ながっ!」
ヤムチャは思わずいつものノリで突っ込んでしまった。
185SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 21:11 ID:Vq.Wea2g
【81話】
「思った以上に長いのだな。そういうことなら、ヤムチャが先に受けてくれるか?わたしはその間一人で修行している。スーパーサイヤ人にもならなければいけないしな…」
マーリンは、ヤムチャに先に受けるように促す。
「ああ、分かった。マーリン、修行頑張れよ…期待しているからな」
「ふふ…こちらもパワーアップした後のヤムチャがどれほど強くなるかが楽しみなものだ」
言葉を交えた後、二人は小さく拳と拳を合わせると、お互い背を向け違う方向に歩み出した。
ヤムチャは大界王神の方向へ、マーリンは界王神の方向へとそれぞれ向かう。
「…それじゃ、大界王神様。…俺からお願いします」
ヤムチャは深く一礼をする。
「ふむ。ヤムチャからか、よかろう。じゃ、そこに座れ」
ヤムチャは言われたままに、その場に座り込む。
「よし、始めるぞい!…フンフンフーン♪フフーンフーン♪フフーンフフフンフン♪ヘイヘイ!」
何を思ったのか、大界王神は唸りながらその場で踊るような動きでヤムチャの周りをクルクルと回り始めた。
「…大界王様……パワーアップの方は一体……?」
「静かにしとれ!もう始まっておるぞ!フフーンフン!」
「あ…は、はい…」
大界王神の不可解な行動に、この人酒でも入ってるんじゃないかとヤムチャは疑ったが、大人しくしていることにした。
いよいよ、大界王神によるヤムチャの修行(?)が始まった。
186SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 21:16 ID:Vq.Wea2g
>>176さん
ありがとうございます。
前の作者さんのように、絶妙な臨場感溢れる描写は
中々出せませんが、出来る範囲で頑張ります。
完結まではまだまだかかりそうですし、
更新ペースも速いとは言えませんが、
どうか、まったりと見守っていてください。

>>177さん
長々とありがとうございます。
この話を書くにあたって、一番難しそうだなと思ったのがパワーバランスなんですよね。
で、本題ですが、悟空や悟飯、ゴテンクスをマーリンが超えるのは無理なのではないか?とのことですが、
小説の中でマーリンが「普通にやっていては到底無理」とこっそり複線を出しています。
それが、結果的にこういう方向になったのですけれどね。
ちなみに、老界王神による潜在能力の開放については、書き始めの段階から
パワーバランスを調整する要因としてずっと考えていました。
それを、ちょうど界王神登場シーンを書く前のこのタイミングで言われてしまったので、
あまり言うことがないのですが…。
分かっていただきたいのは、>>177さんの助言によって、
「界王神の登場」という描写を追加し、今作品を矯正したわけではありませんので、
ご理解いただけたら何よりです。
187SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :08/12/26 21:18 ID:Vq.Wea2g
それでは仕事に戻りますので、
また深夜か後日にでも書いていこうと思います。
では。
188177:08/12/27 14:47 ID:cki.ZM.6
>>177のことを書いた後にちょうど界王神が出てきたからビックリしたぜ。
うん、老界王神に潜在能力を開放して悟空達レベルになるのなら問題ないな。
俺も失礼なこと言ってすみません。この調子で書いていって下さい。
続きを楽しみにしてますよ。
189Classical名無しさん:08/12/27 23:00 ID:QECt5ra.
たしかに失礼だな

俺としてはマーリンが最初から3以上の能力があっても面白いと思ってる
しかし珍しくまともな界王神だwこの話では本領発揮しないのかな
190Classical名無しさん:08/12/29 14:46 ID:88V4xqNk
>>189
最初からマーリンが3以上ってのはおかしいだろ。
マーリンは昔、頑張って修行してスーパーサイヤ人の悟空を超えたのに
いきなりスーパーサイヤ人3以上の力だったら
あの時、頑張って修行をしたのはなんだったんだってことになるだろ。
前作を読めよ、厨房が。
191Classical名無しさん:08/12/29 15:12 ID:EGZ9jxGQ
熱い雰囲気だ。それだけヤムチャが好きなんだな
192Classical名無しさん:08/12/29 22:34 ID:j52b0wgQ
>>190
何様?端から見てて気分悪い
小学生みたいな文章だし荒らしにしか見えないぞ
193Classical名無しさん:08/12/29 23:29 ID:SxlqqIqI
1000人ヤムチャも期待
194Classical名無しさん:08/12/30 09:56 ID:XI/ODq9k
>>189-190>>192がこのスレの空気を読まないせいで
作者さんや無関係の人々も迷惑しています。
ケンカはどっちも悪いですから謝るか他スレに行くかして下さい。
だいたい>>188がちゃんと謝っていたのに>>189が余計なこと言うから
こんなことになったんですよ。てゆうか、本当にやめて下さい。
195Classical名無しさん:08/12/30 10:34 ID:S7M5HVB6
189は特に喧嘩売ったようにも見えないが…
自分の設定押しつけてそれに沿わない意見には即感情的な暴言吐いて口論を起こす輩が一番厄介。
書き手の人達のやる気も失せる

↓いつものたまヤムスレ再開
196Classical名無しさん:08/12/30 11:37 ID:XI/ODq9k
>>177>>188>>190>>194は俺です。
他スレで色々あったから、このスレの事でも少しのことで
ちょっとカッとなってしまって・・・

>>189>>192に謝る。暴言言ってゴメン。本当にすみませんでした。
197189:08/12/30 13:02 ID:/IhL9Mj.
>>196
後腐れ無く鎮めてくれてありがとう。
一応言っとくけど俺は初代もリアルタイムで見てたよ。
例えで言った最初から3以上ってのは
初代の後の空白の期間中に宇宙で超体験しててもいいし
面白くなるなら作者の裁量でどうとでも補整できるってフォローのつもりだった
198196:08/12/30 19:28 ID:smLedMgk
>>197
そのつもりだったんですか。これからは考えて書き込もうと思います。
あなたにも作者さんにも謝ります。本当にすみませんでした。
199ジュン:09/01/01 00:34 ID:PNL/YvkQ
謹賀新年あけましておめでとうございます。
200Classical名無しさん:09/01/02 23:47 ID:gMLrBu0Y
強さ最上主義のDB世界でヤムチャを活躍させるためには・・・

神龍にお願い「強さの基準を野球にしろー!!」
で、ベジータ&ナッパ+サイバイマンvsZ戦士連合軍で野球対決
操気弾の使えるヤムチャは変化球マスターとなり大活躍
201Classical名無しさん:09/01/05 00:28 ID:bDhsJWIs
つづきは?
202Classical名無しさん:09/01/08 02:05 ID:L/X0lwIQ
保守
203Classical名無しさん:09/01/08 08:31 ID:kwejSYmM
saiyan2の作者さん、ありがとう!
前作を読んだときこの二人がちゃんと出会えるのか不安だったから、
アフターストーリーを読めて、ホッとしています。
これからも楽しみに待っています!
204SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/09 01:19 ID:RtIHakkU
あけまして、おめでとうございます。
今年もなにとぞよろしくお願いします。
かなり久々の書き込みとなってしまいましたが、その間にたくさんの書き込みが…。

争いに関してですが…揉め事にならないように、私が想定している、個々の戦闘力のまとめ表みたいなのを
作ろうかと思ったのですが、それこそ批判をモロにくらいそうなので結構迷っています。
うーん、どうしよう。
皆さんどう思いますか?

強さの概念には、個人個人のイメージがありますからね…。
それこそセオリー通り悟飯が最強だと思っている人もいれば、超3悟空の方が強いと思っている人もいそうですし、
はたまた王子信者…?いや、我らがヤムチャ様が最強?
思いは様々です。
イメージが全て、と言ったらそれまでなのですが。

>>203さん
こちらこそ、読んでいただいてありがとうございます。
私自身、ヤムチャとマーリンをもう一度会わせたいという気持ちがあり、続きを書こうという決断に至りました。
所々既に矛盾が出てしまっているのですが…目を瞑って頂けると幸いですw
205SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/09 01:23 ID:RtIHakkU
【82話】
その様子を、遠くでマーリンは界王神たちと見つめていた。
「ヤムチャ様…かわいそう」
「本当にあんなことして強くなるのかな…」
プーアルとシルフから見ても、あの動きは普通ではないらしい。
界王神も恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
「……カイオウシンとやら。わたしも、あれと同じのを受けるのか…?」
「…ええ、多分……」
マーリンの問いに界王神が答えると、はぁ、と二人同時にため息が出る。

「それより、わたしから頼みがあるのだが…聞いてくれるだろうか?」
マーリンは界王神の方を見つめ、ヤムチャに聞こえないように静かに話しかける。
「なんでしょう?マーリンさん」
「瞬間移動で、ヤムチャの修行が終わるまでわたしを違う星に移動させて欲しい」
マーリンの突然の頼みに、界王神は少し戸惑う。
「構いませんが…どうしてですか?」
「わたしは今から修行をする予定なのだが、この場でやってはヤムチャの邪魔になってしまうかもしれない。それに、わたし自身も誰も居ない場所で一人で修行した方が集中できる…」
界王神からしたらサバサバした性格のように見えたマーリンだったが、ヤムチャを気遣う意外と優しい一面もあるギャップに驚いていた。
「なるほど…分かりました。移動しましょうか」
笑顔で界王神は答える。
206SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/09 01:24 ID:RtIHakkU
【83話】
「すまない、感謝する…」
マーリンは界王神に礼を言うと、プーアルに近づいていった。
「プーアルとやら。先ほどの重力発生装置を借りてもいいか?」
「あ、はい!どうぞ!マーリンさんも修行の方、頑張ってくださいね!」
マーリンはプーアルからカプセルを受け取ると、コクリと頷いた。
「シルフ。お前はプーアルとここに残っているんだ。くれぐれも、ヤムチャの邪魔をしないようにな…」
「分かってるよ、お母さん。だけど、あんまり無理しないでね?」
シルフは先ほどから苦しそうに修行しているマーリンを心配していた。
「ああ、気をつける」
マーリンは優しく微笑むと、シルフの頭を撫でたあと、再び界王神のもとへと歩み寄っていった。
「準備はできましたか?この辺りで地球に近い環境の星と言えば、惑星クリケットですが……」
「そこでお願いしてもいいだろうか」
「分かりました。それでは行きますよ…!カイカイ!」
二人の体が白く光ったと思うと、次の瞬間にはマーリンと界王神の姿は消えていた。
207SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/09 01:26 ID:RtIHakkU
【84話】
――所変わって、別の星に突然二人の人影…つまり、マーリンと界王神が現れる。
それと同時に、マーリンの体にズンと今まで感じていたものより強い重力が圧し掛かった。
もちろん界王神にも同じように重力が圧し掛かる。
周りを見渡すと、一面の砂漠の地平線が広がり、近くには大きなオアシスがあった。
どことなく、地球でヤムチャと共に修行した場所に環境が似ている。
意識を集中し気を探ると、かなり弱い気ではあるが、この星を支配する民族らしき者たちの気も遠くで感じられた。
この近辺には何も居ないようだ。
「惑星クリケット…と言ったか。なかなか良い星だな。地球より少し重力が高いみたいだが…」
「ええ。ここは地球の5倍ぐらいの重力ですからね。ですが、気中の窒素と酸素の濃度の割合、それから気温は地球とほぼ同じです」
マーリンはこの星の重力を確認するかのように、一歩一歩慎重に歩き始めた。
そしてシュシュシュ、と数十発パンチや蹴りの素振りをして見せる。
「なるほど…修行の環境には問題なさそうだ。ありがとう、カイオウシン」
「いえ、私に出来る手伝いはこのくらいですからね。礼には及びませんよ」
界王神は控えめな態度でマーリンに言った。
「…では、ヤムチャさんのパワーアップが完了したら、またここに迎えに来ます」
「分かった。わたしも、早速スーパーサイヤ人になるための修行に取り掛かる」
マーリンはその場で目を閉じると、静かに意識を集中し始めた。
「はい、素晴らしい戦士の誕生を期待していますよ。それでは……カイカイ!」
界王神はその場から消え去った。
わざわざ『カイカイ』と言わなければ、瞬間移動出来ないものなのだろうか…とマーリンは素朴な疑問を抱いていた。
208SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/09 01:30 ID:RtIHakkU
【85話】

ゴゴゴゴ…

気を集中しているため、体の周囲100メートルほどの範囲で、重力を無視しているかのように、小さな岩の破片などが宙に浮く。
数十秒ほど経つとその岩の破片は、上から吊るされていた糸が切れたかのように無造作に地面へと落ちる…この現象が既に100回近く繰り返されていた。
これは、マーリンが精神を集中していることによって、そのとてつもない気が発生し、大気が不安定になり近くの空間が歪んでいるため起こっている。
マーリンはかつてないほど修行に集中していた。
ヤムチャと地球で買った服は既に脱いであり、自分の戦闘服に着替えている。
やはり、長年着ていた服の方が気持ちの面で落ち着くのだろう。
「……わたしは…勝たなければ……っ…」
苦しそうな声で独り言を漏らすと、彼女の長い髪の毛がゾワッと逆立つ。
「あと少し…!あと少しで……なれるっ…!」
そして、逆立った髪はわずかに金色の光を帯びたかと思えば、元の髪の色に戻ったりと点滅を繰り返していた。
「おそらく、この感じだ……このままの状態を維持をしなければ…!」
しかし、それも意識を長く集中することが出来ず、数十秒ほどでとまってしまう。
「はあ…はあ……あと後一歩が厳しいが、ここまでくれば時間の問題だろうな………」
疲労のせいで立っているのも辛いのだろう。
マーリンは地面に手をつき、四つんばいになると、肌が触れている部分の地面が流れる汗で段々と湿っていく。
そのままの体勢で少し休憩すると、マーリンは地面に置いていたスカウターを手に取る。
そして抜いていたバッテリーをセットし、電源を入れた。
どうやら内蔵されている時計が見たかったらしい。
「あれから…約9時間ほどか。ヤムチャは順調なのだろうか…」
209SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/09 01:32 ID:RtIHakkU
【86話】
「………あの」
「………」
「……あのー」
「………」
「あの、大界王神様!!」
「…は、な、なんじゃ?そんな大声出して…」
ヤムチャの大声が界王神界に木霊する。
「今…寝てましたよね?」
「ば、バカモン!界王神ともあろうものが居眠りなんぞするわけないじゃろ!」
大界王神は胡坐を組みながら、片方の手の平を開き、その手を真っ直ぐとヤムチャに向けていた。
そしてもう片方の手は、ページをめくるためだろうか、雑誌のような物の上に置いてある。
首は斜めになり、口からは涎が垂れかけていた。
「………………」
疑いの眼差しでヤムチャは大界王神に視線を送る。
「…フン。それよりお主は余計な事を考えず精神を集中せい!その方がパワーアップの効果も高い」
「……わ、分かりました…」
疑いの気持ちは持ちつつも、ヤムチャは静かに目を閉じる。
…数分後、チラッと片目を開けて、大界王神の方を見ると…やはり眠っていた。
「…もういいや」
こんないい加減なことで果たしてパワーアップするのだろうか…ヤムチャの脳裏にそんなことがよぎる。
半ば諦めかけていたヤムチャであったが、大界王神の言葉を信じ精神を集中し続ける。
精神を集中している間に、ヤムチャは色々なことを思い返していた。
210SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/09 01:37 ID:RtIHakkU
【87話】
初めて悟空たちと会った時、盗賊でワルだったヤムチャは、カプセルを奪うために悟空たちと対峙していた。
一度は狼牙風風拳で悟空をぶっ飛ばしたものの、結局とどめはさせずに退却。
今思えば、これ以来悟空とは一度も戦っていない。
ありそうで意外となかった対決と言えるだろう。
そもそも、唯一まともに戦える場である天下一武道会において、初戦敗退しか経験したことがない。
悟空は常に決勝まで残っていた為、もし自分が勝ち進んでいれば、いくらでも戦える機会はあったはず。
その頃はまた次回倒せばいい…また次回頑張ればいい…そんな風に思っていたヤムチャだったが、それ以来悟空を初めとする戦士たちは、天下一武道会に参加しなくなった。
魔人ブゥが現れる直前に、再び天下一武道会が開かれたが、その頃の悟空たちとヤムチャでは、圧倒的過ぎると言っていいぐらいの差が付いてしまっていた。
その為、ヤムチャは参加を断念するしかなかった。
悟空たちと勝負したい気持ちはあった…しかし、実力の差が開きすぎ、これでは勝負にすらなりえないと踏んだのだ。
自分の仲間が参加している中、自分だけ不参加というのは武道家として苦渋の選択ではあったが、あれはあれで正解だったのかもしれない、とヤムチャは思っていた。
無謀な挑戦と、僅かな可能性に賭ける勇気は違う。
どうせやっても今の自分では敵わない…ならやらなければいい…だけどいつかは必ず…。
ヤムチャはそうやって自分の行動を正当化し続けていた。
しかし、ヤムチャは分かっていた。
そんな気持ちのままでは、その“いつか”は永遠にやってこないということに。
そして、マーリンと約束した諦めずに戦うということを守れていなかったことに…。
211SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/09 01:39 ID:RtIHakkU
【88話】
ヤムチャはたまにあることを考える。
悟空はサイヤ人だからずば抜けて強いと言うのもあるが、仮に悟空が地球人だったとしたら…自分は悟空に勝てるだろうか?
おそらく、勝てない。
というか、悟空が純粋な地球人だろうと、ベジータやピッコロはもちろん、現れる強敵全てに負けないのではないだろうかとすら思う。
つまり…自分は全て先入観で『サイヤ人だからあいつは強い』『地球人だから自分は勝てない』という風に決め付けているだけなのかもしれない。
もし悟空が地球人であっても、自分なりに修行や戦闘スタイルを工夫して、今と同じように、常に頂点を目指し続けるはず。
そして、今と同じように、実際頂点に立っているはず。
あくまで仮定の話でしかないが、ヤムチャが導き出した結論として言えることは、“地球人だから勝てない”というのは言い訳にならないということ。
確かにサイヤ人は強い。
体質的にも、地球人より有利であることは変わりない。
だが、自分はそういった問題以前に、気持ちの面で悟空に負けていたのではないか?
それが結果的に、実力の伸び具合の差…そして、今の実力差にそのまま反映しているのではないか?
そう思うと、今の自分と悟空との差の全てが納得行く。
そして、自分の中の自信は確信へと変わる。
今の気持ちは、悟空に負けないだけのものはあるということ。
それはつまり、悟空に勝てる要素は0ではないということに繋がる。
少なくとも…今の自分には、間違いなくそれが言える!
212SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/09 01:43 ID:RtIHakkU
【89話】
仲間たちの中で、ヤムチャは武道家として最も惨めな人生を歩んでいた。
ご存知の通り、天下一武道会では全て初戦敗退。
サイヤ人の来襲に備えて修行したのに、その手下であるサイバイマンに自爆で殺される。
ドラゴンボールで生き返って、3年後に現れる人造人間に備えて必死に修行するも…20号に胸を貫かれ、瀕死の状態となる。
セルジュニアには腕を折られてなすすべすらなかった。
その後はほとんど戦っていない。
ヤムチャは思う。
自分ってなんなんだろう、と。
本来の自分なら、馬鹿馬鹿しくてとっくに修行なんて辞めてしまって、遊び呆けているだろう。
しかし、自分はまだ修行を続けている。
そう、マーリンと出会った事によって、自分の人生は大きく変わったのだ。
一度は悟空たちに追いつくことを諦めかけたが、それでも修行は続けていた。
それが最低限、自分に出来る全てだから。
女を愛しいと思ったことなんて殆どない。
自分にはプーアルがいるし、寂しさもさほどない。
長年付き合っていたブルマは、どういう風の吹き回しか、地球に住むようになったベジータと2年ほどでくっつき、子供まで作る。
普通はショックを受けて良いはずなのに、どういう訳か、不思議と不服はなかった。
むしろ清清しい気分である、といっても過言ではない。
その時はっきりとヤムチャは思った。
自分の中で、マーリンに対する想いはブルマを遥かに越えているということに。
そして再度自分の気持ちに気付く。
自分はマーリンのことを、本当に愛しいと思っているんだということに。
213SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/09 01:46 ID:RtIHakkU

【90話】
――。
「フム…これは中々……」
大界王神が独り言を呟く。
そんなような事を思い返しているうちに、ヤムチャの潜在能力はどんどん解放されていった。
その声が聞こえ、ヤムチャの目がぱっと開く。
「…あ、今何かおっしゃいました?」
「いや、なんでもない」
ヤムチャは眠っていたわけではないのだが、意識が現実に戻ると、かなりの時間が経っていることに気付いた。
「それよりヤムチャよ、あと3時間ほどでパワーアップが完了する。もう少し辛抱せい」
「分かりました」
大界王神の隣には、山積みにされた大人向けの雑誌が何冊も無造作に置いてあったが、ヤムチャは突っ込むことすらしなかった。
(ヤムチャの奴…地球でそうとう修行を積んだのじゃな。修行の際解放されずに体に蓄積されたパワーが、見る見るうちに解放されていくわい…)
大界王神が想定していた以上に、ヤムチャのパワーアップに時間がかかっていた。
本来なら終わって良いはずなのに、ヤムチャからは力が湧き出るように解放され続ける。
「凄いですよ…ヤムチャさんは」
遠くでヤムチャの様子を見守っていた界王神は声を漏らす。
「そりゃそうだよっ!なんたってぼくのお父さんだからね!」
シルフは自慢げに話す。
「潜在能力、って隠されていた力って事ですよね?」
プーアルが界王神に尋ねた。
「ええ…そうです。凄いですよ本当に。あれだけ力を隠していたとは…さすがにご先祖様は見る目が違う…」
界王神は感心の余り、薄っすらと冷や汗すらかいていた。
「ヤムチャ様に、そんな力が…」
皆が見守る中、なおもヤムチャは隠された力を解放し続ける。
214SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/09 01:48 ID:RtIHakkU
それでは、寝ます。
東京の方では明日みぞれが降るとかいう噂が…。

おやすみなさい!
215Classical名無しさん:09/01/15 02:04 ID:RMz2yFrk
更新乙です。戦闘力に関しては公開してくれた方が個人的にはよいです
216Classical名無しさん:09/01/19 20:12 ID:CfCS2fuI
保守
217SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:27 ID:qGq8L4NM
>>215さん
ありがとうございます。
では、近いうちに戦闘力表を作っておきますね。

参考までに言わせて頂くと、フリーザを倒し、地球に帰ってきてから
少し修行をした悟空で、戦闘力500万弱という設定です。
これはSaiyanKiller作者さんが設定されたもので、それを基準に一覧表を作りたいと思います。
一部(公式?)ではフリーザ戦での悟空の戦闘力が1億を超えているという話もありますが、
SaiyanKiller作者さんと同じく、私はその数値に反対です。
これは個人のイメージもあると思うのですが、皆さんが思い通りの戦闘力数じゃなくとも、
どうにか納得して作品を読んで頂けると嬉しいです。
218SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:28 ID:qGq8L4NM
【91話】
一方、マーリンも、空白の時間に修行をしなかったわけではない。
むしろ、かなり過酷なトレーニングをこなしていた。
それにも関わらず、現実は甘くなかった。
当時は悟空互角…いや、むしろ自分は勝負に勝つだけの実力があったはず。
それでも気を抜かず、地球から去った後の空白の時間にマーリンは常に悟空より多く辛い修行をしたつもりだ。
だが、久しぶりに会った悟空に圧倒的な差をつけられていて、自分の考えが浅はかであったことを知る。
何故、あれほどまでに差が開いてしまったのか。
やはり、スーパーサイヤ人に変身できないという事実が大きな要因だろう。
“海皇拳”を使えば、スーパーサイヤ人に匹敵する強さになるが、あれは体への負担も大きすぎるし、長時間持たないという欠点がある。
それに、スーパーサイヤ人は第2形態と第3形態があるらしい。
“海皇拳”はノーマルのスーパーサイヤ人と同等クラスになる変身ではあるが、スーパーサイヤ人2、スーパーサイヤ人3には到底及ばない。
一瞬で決着が付くとは思えないし、長時間持たない“海皇拳”では勝負になりえないだろうとマーリンは睨んでいた。
そう考えると、悟空に勝つにはまず、自分がスーパーサイヤ人になるというのが最低条件になる。
219SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:29 ID:qGq8L4NM
【92話】
「クソッ…時間がないというのに……ッ!!」

ゴゴゴ…

大地が震える。
ヤムチャの話だと、今では子供でもサイヤ人の血さえ引いていれば、スーパーサイヤ人になれるらしい。
しかし、マーリンはなかなかスーパーサイヤ人になれずにいた。
そんな自分に、正直焦りを感じずにはいられない。
いや、“最初”は…焦りだった、といったほうが正しいだろう。
今となってはその焦りはやがて苛立ちに変わりつつあった。
いつまで経っても変身できない、自分に対しての苛立ちに。
時間が経てば経つほど、スーパーサイヤ人になれない苛立ち…即ち、怒りがマーリンに昂じる。
そして、その怒りは今、ピークを迎えた。
「わたしは…ならなければ…っはぁあぁ…!!」

ボワッ!!

マーリンが気合を込めた次の瞬間、自分自身が何かに変化したような感覚が起きた。
長い髪の毛が、重力を無視したかのように逆立ち、興奮状態のような落ち着かない気分になる。
マーリンはそのままの状態を維持すると、手の平を開いたり閉じたりし、それをジッと見つめていた。
220SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:31 ID:qGq8L4NM
【93話】
そして、腕に軽く力を込めると、手の平の上にエネルギーを集中し始める。
「繰気弾…」
小さくそう言うと、マーリンの直径1センチ…ほんのビー球サイズほどの小さな気弾が現れた。
「この近くには、誰もいないはずだな…」
念のため、辺りの気を探るが人が居る気配はない。
戦闘力を0にまでコントロールしている者がいる可能性も0ではないが、幸い辺りは地平線のため、目で見ただけでも人がいないのは一目瞭然であった。
マーリンは確認を終えると、その気弾を思い切り前方に投げつける。

ギュゥゥウン!!

風を切るような音と共に、気弾はグングンと前に進んでいく。
予想以上にスピードが速かったのか、マーリンは慌てて気弾を止めた。
既に1キロほど先に気弾は進んでいた。
マーリンは目が良いため、気弾がフワフワと空中で静止しているのが見える。
「この星の形を変えることになるかもしれないが、お試しに威力を見せてもらうぞ…それ!」
その気弾をマーリンが手で操作すると、真下に向かって急降下を始めた。
そして、気弾が地面に当たった刹那…

ドゴォォォーンン!!!!!!

白い光が一瞬だけ見えたと思うと、凄まじい爆発が起こり、鳴り響いた爆音が聞こえ、数秒遅れて突風が吹いた。
爆発の半径500メートルほどが蒸発する。
「……ふふふ…あはははは!!これだ…!」
思わず笑いがこぼれるマーリン。
そうでもないのかもしれないが、笑ったのはとても久々な気がする。
221SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:33 ID:qGq8L4NM
【94話】
今の繰気弾は、まるで本気ではなかった。
それでいて、あの破壊力、あのスピード…全てが想像以上だ。
「1割の力でこれか…。素晴らしい…素晴らしすぎるぞ、スーパーサイヤ人の力…!」
マーリンはスーパーサイヤ人にになれたことに、歓喜していた。
そして、安心したせいか、急に体にどっと疲れが出る。
マーリンは修行を始めてから、今に至るまで、何も口にせず、ひたすら神経を集中し続けていたのだ。
とりあえず、喉が渇いたので、近くのオアシスで水を飲むことにした。
スーパーサイヤ人の状態を維持したまま、マーリンはオアシスへと向かう。
毒物の匂いがしないことを確認すると、ゴクゴクと勢いよく水を飲むマーリン。
鉄分が多いのか地球の水より若干苦いが、乾いた喉をオアシスの水が潤してくれた。
ふと自分の容姿が、水に映っていることに気が付く。
髪の色は完全に金色に変わって逆立ち、目はサファイアのような輝きを帯びていて、自分で言うのもなんだが神秘的だと感じた。
だが、顔付き…というより、目付きが若干悪者っぽい顔になっている。
「少し髪が長すぎるな…戦闘に影響が出るかもしれない。あとで切っておくか…」
長い髪の毛に人差し指をクルクルと絡ませながらマーリンは独り言を呟くと、スーパーサイヤ人を解いた。
それから10分ほど休憩すると、マーリンは先ほどプーアルから渡されたカプセルを取り出す。
疲れはほとんど取れていないが、勝つためには休むわけにいかない。
「スーパーサイヤ人になれてからが、本当の修行だ…」
ボタンを押下し、カプセルを放り投げると、重力発生装置が姿を現す。
ハッチを開け、装置の中に入ると、中心部にある重力メーターは5Gを指していた。
それは、この星の重力をそのまま指していた。
「なるほど…とりあえず、300倍の重力程度から徐々に慣れていくか…」
マーリンがボタンを操作すると、メーターは300Gを指す。
そして、腕立て伏せや腹筋などの基礎トレーニングを始めた。
今は徹底的に体そのものを鍛えて、実戦練習はヤムチャと組み手で鍛えれば良い。
体にかなり無理がきていたが、マーリンは苦痛で唸りながらも決して修行の手は休めなかった…。
222SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:35 ID:qGq8L4NM
【95話】
「…パワーアップは終わりじゃ、ヤムチャ」
その大界王神の呼びかけで、ヤムチャは静かに目を開ける。
目を開けると、目の前にマーリンを除いた全員揃っていた。
シルフとプーアルが心配そうにこちらを見つめている。
「大丈夫…?お父さん…」
こくりと一度頷くと、ヤムチャはゆっくりと立ち上がった。
「これが…今の俺なのか……?」
ヤムチャは自分の体をすみからすみまで見ながら言った。
少し動かしただけでも分かる、今までとは明らかに違う体全身の感覚。
「どうじゃ?気分は」
大界王神はニヤニヤしながらヤムチャに話しかけた。
「…不思議な感じです。まるで俺が俺じゃないかのような…よく分からない気分だ…」
ヤムチャは真剣な表情で大界王神に言葉を返す。
「じゃろうな。今のお主は以前のお主とははっきり言って別人じゃ。もしかしたら、あのベジータぐらいならなんとかなるかもしれん」
「…え?ベジ……!?」
ベジータならなんとかなるかもしれない…その言葉に思わずヤムチャは声が詰まってしまう。
そして、ヤムチャは言い直すように改めて口を開いた。
「ベジータなら…なんとなかるかもしれない?…この俺が、ですか?」
「そうじゃ。しかし、何をそんなに驚いておるんじゃ?」
大界王神は不思議そうにヤムチャを見つめていた。
「そりゃ驚きますよ…自分がベジータに勝てるかもしれないだなんていきなり言われたら…」
「おかしいのう…お主たちは悟空を倒すつもりじゃなかったのかね?ベジータを倒せずに悟空が倒せるのか?」
「……!」
ヤムチャはハッとした。
223SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:36 ID:qGq8L4NM
【96話】
大界王神は続ける。
「それに…かもしれない、というだけじゃぞ。ベジータは天才じゃ、そう簡単に勝たせてはくれまい」
確かに、大界王神の言うとおりだ。
自分たちはあくまで悟空を倒すつもりだったはずである。
ならば、悟空より弱いベジータを倒せる程度の実力は、最低限なければならない。
そのベジータも、悟空には敵わないが、かなりの実力者であることはヤムチャもよく知っている。
「…まあええわい。とりあえず、ヤムチャ、気を入れてみろ」
大界王神は少しヤムチャから離れると、ヤムチャに向かって言った。
「…はい!」
ヤムチャは厳しい目付きになると、全身の筋肉に力を入れ、気を練り始めた。
「んぐぐ……ッ!」
界王拳は使わずに、自分の発揮できる最大限の気を解放する。
「はッッ……!」

ボンッッ!!

爆発音のような凄まじい音をたてて、ヤムチャの周りに衝撃波のようなものが巻き起こる。
平らだった地面はへこみ、所々ヒビが入って歪な地形に変わっていく。
大界王神たちは吹っ飛びそうになるが、界王神が気のバリアのようなものを作り、どうにか踏ん張った。
224SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:38 ID:qGq8L4NM

【97話】
「スゴイ…!元から凄かったお父さんの力が、更に上がっている……」
気を完全に読めないシルフでさえ、ヤムチャの飛躍的なパワーアップは感じ取ることが出来た。
「……な、なんなんだ…この、溢れんばかりの力は…」
ヤムチャは予想以上に膨れ上がっている自分の力を疑った。
大界王神は巻き上がった砂埃でゴホゴホと咳き込んでいたが、どこか満足げな表情を浮かべながら言う。
「そんなもんじゃないぞい。その状態で、界王から習った体の力を倍化させる技を併用してみるんじゃ」
「界王拳のことですね?…いきなり30倍試してみるか」
ボウッ、とヤムチャの体を赤いオーラが包む。
しかし、ここでヤムチャにとって予想外のことが起きた。
「…ん……あれ?これ、30倍だよな…?」
いつもなら苦労するはずの30倍界王拳なのだが、体の負担が予想以上に軽い。
「これなら40倍はいける……いや、50倍…!」
そう独り言を呟いて、ヤムチャは未体験ゾーンの50倍まで界王拳を引き上げる。
以前の自分だったら体全身の筋肉繊維がボロボロになるぐらいの負担があるはずだが、今のヤムチャには大した負担にならなかった。
50倍まで界王拳を上げても、まだちょっときつい程度だ。
「本当にかなり力があがっている…。いいのか、こんなことがあって…」
極端なまでにパワーアップした現実を、ヤムチャは受け入れるのを躊躇っていた。
225SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:39 ID:qGq8L4NM
【98話】
「ヤムチャよ…一つ言っておくぞ。お主の仲間たちの潜在能力を、同じように引き出しても、ここまでパワーアップはせん」
大界王神が改まったようにヤムチャに向かって言った。
「それは一体…?」
「ずっと修行を続けておったろ、お主。その時に力は解放されず、体内に潜在パワーとして蓄積されていたんじゃ。それを今わしが引き出したんじゃよ」
「…そ、そうなんですか」
「つまりじゃな…それだけのパワーアップを果たしたのは、お主の努力の賜物であって、それ以外の何ものでもないんじゃ。分かるか?わしはキッカケを与えたに過ぎん」
「俺の…努力…」
いくら修行しても、悟空たちのようにヤムチャの力は伸びなかった。
修行すること自体、無駄なんじゃないかと何度も思ったことがある。
しかし、それでもヤムチャは修行をずっと続けていた。
その努力が今…長い月日を経て、ようやく今報われたのだ。
もちろん、ヤムチャの努力があったからこその話なのだが。
「はは…ははははっ!!こりゃいいぜ!!」
ヤムチャは50倍界王拳の状態で地面を蹴って高く跳躍すると、高速でビュンビュンと空を飛び始めた。
「軽いッ!今までの何倍も何十倍も体が軽い!しかもまだ余裕があるッ!」
ヤムチャはそう言って、力を持て余すかのようにはしゃぎ出した。
そんなヤムチャを見て、半ば呆れながらも笑みを浮かべる大界王神。
どうやら想像以上に力が伸びたようだ。
226SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:41 ID:qGq8L4NM
【99話】
ヤムチャのパワーアップが完了して一段落すると、界王神は何かを思い出したかのように口を開く。
「あ、それでは…私はマーリンさんを迎えに行ってきます。カイカイ!」
その場から界王神が消えたが、1分もしないうちに戻ってきた。
その肩にマーリンを連れて。
「お母さん、おかえりー!ねぇねぇ、お父さんがスゴイパワーアップしたんだよ!」
シルフは駆けつけるようにマーリンに近づいていった。
そのシルフの言葉を聞き、マーリンの視線はヤムチャをとらえる。
「よう、マーリン。久しぶりだな…いや、そうでもないか」
ヤムチャは修行が長く感じたのか、マーリンと会うのが久々なような気がしてならない。
そんなヤムチャをジッと見つめていたマーリンだが、その口元が緩む。
「…ふふ、どうやら成功したようだな。気質自体が前とは違うものになっている」
「ああ。やっぱり、分かるか?まだまだこんな程度じゃないけどな」
ヤムチャはニヤリと笑う。
マーリンもそれを見て不敵にも笑い返す。
「わたしもお前にいいものを見せてやれそうなのだよ……ハッ!」
高い掛け声と共に、マーリンの髪の毛が逆立ち、長いプラチナブロンドの髪が一瞬で金髪へと変わる。
金色に輝くマーリンからは、傍に立っているだけで尻餅をつきそうな気迫さえ感じられた。
一同はその変貌に驚く。
「これ…さっきの男と同じ変身だ……!」
シルフは超化したマーリンを見て、悟空の変身と同じものだと瞬時に悟った。
「…!……こいつは驚いた。こんな短期間でスーパーサイヤ人になれるなんて…。しかも、お前それ――」
ヤムチャの次の一言で、更に驚くべきことが発覚した。
227SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:46 ID:qGq8L4NM
【100話】
「…スーパーサイヤ人2じゃないか!?」
マーリンの体の周りにはビリビリと電流のようなものが流れている。
これは、スーパーサイヤ人2以上になると起こる特有の現象だというのを、ヤムチャは知っていた。
「なるほど…これがスーパーサイヤ人2、か。1と2の違いすらわたしにはよく分からないが…特に問題はないだろう」
マーリンは自分自身の体を見つめながら言った。
スーパーサイヤ人になったばかりの頃は、かなりの興奮状態で理性がほとんどぶっ飛ぶという話を1年前に行われたバーベキューの時に悟空から聞いたことがあった。
しかし、驚いたことに、マーリンはスーパーサイヤ人になった状態でかなり冷静に意識を保っている。
悟空たちのように、長い間スーパーサイヤ人を経験しているのならそれも頷けるのだが、たった数時間前にスーパーサイヤ人…しかも1を飛ばして2になった者が、そこまで自身をコントロールすることが可能なのだろうか。
サイヤ人ではないヤムチャには未知の領域で分からないことだったが、目の前に居る愛しき女性…マーリンは只者ではないという現実を再確認した。
(ていうか、一応“穏やかな心”の持ち主なんだな、マーリンって…)
マーリンには失礼だったが、心の中でヤムチャはそっとそう思う。
「さ、さすがは俺の弟子、ってところかな…」
強がっているヤムチャだったが、若干顔が引きつっているようにも見える。
「ふふ、よく言う…」
マーリンは軽くそれを受け流すと、超化を解いて普通の状態に戻る。
「さて…次はわたしの番か」
大界王神の元へとゆっくり歩みだすマーリン。
しかし、大界王神はマーリンの接近に気付いているのにも関わらず、何故かそっぽを向いていた。
228SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:47 ID:qGq8L4NM

【101話】
「あの…気付いているだろう?」
明らかに自分を無視している大界王神を相手に、横から声をかけるマーリン。
「お主…そんな服を着たままわしの術を受けようというのか?」
大界王神は深刻な顔付きになっていた。
「服…?ああ、確かに惑星クリケットで修行している途中で戦闘服に着替えたが…それに何か問題があったのだろうか…」
「大有りじゃい!そんな服を着ていたら、胸やクビレのラインがよく見えんではないか…オマケに露出も少ないとあってはモチベーションも下がるわい…」
「…………そう」
マーリンは大界王神が何を意図して言っているのかよく分からなかったが、物凄く下らないこじ付けをしているのだけは、なんとなく想像が付いた。
冷たい視線で大界王神を見つめるマーリン。
同じように界王神、シルフ、プーアルも冷たい視線を大界王神に送る。
ヤムチャだけは彼の言っていることにちょっと納得していた。
「あ、そうかい。そういうことなら別にいいんじゃよー?わしはこのまま昼寝でもしようかなー?」
大界王神はその場で寝転がると、肘を地面につきながら昼寝の体勢に入ろうとした。
「…着替えればいいのか」
マーリンは折れたのか、ため息をつきながら大界王神に言った。
「そーいうことじゃ」
「分かった…」
マーリンは力なく頷くと、少し離れた木陰まで武空術で飛んでいく。
時間の無駄だと思ったのだろう。
229SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:48 ID:qGq8L4NM
【102話】
ヤムチャから偉い人と聞いていたので、まさかこんな不意打ちがくるとは思いもしなかった。
ぶっ飛ばしてやろうかと思ったぐらいであったが、そんな事をする時間すら惜しいとマーリンは感じていた。
マーリンは木陰に入ると静かに服を脱ぎ始める。
遠くでその方向を凝視する大界王神だったが、木が邪魔で着替えを見ることが出来ない。
「わし…神眼で覗いちゃおうかな」
「ダメです」
「相変わらずかたいのう…面白くない奴じゃ」
「かたいとか面白くないとか、そういう話じゃありませんよ…これ」
「フン。ギャグの通じん奴め」
「…どう見ても本気だったじゃないですか」
「いいや、ギャグじゃ」
いつの間にか界王神同士で言い争いが起きていた。
それを聞いていたとシルフは、これが宇宙で一番偉い人たちの言い争いとはとても思えなかった。
マーリンが着替え終わった頃に、ヤムチャはプーアルを肩に抱きながら、さりげなくその木陰へと移動していた。
230SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:49 ID:qGq8L4NM

【103話】
「とんだ災難だったな」
苦笑いしながら言うヤムチャ。
「全くだ。もしあれがカイオウシンという偉人でなければ普通にぶっ飛ばしていた」
アタッシュケースに戦闘服を詰め、カプセルのボタンを押しながらマーリンが言った。
「はは、おっかねーな。それよりマーリン…髪、切ってやろうか?」
「…え?」
「いや…ほら、長いじゃん、髪。見る分には綺麗でいいんだけど、戦闘だと結構邪魔にならないか?」
予想外だったのか、ヤムチャの突然の提案に悩むマーリンだったが、ちょうどさっき、自分でも髪を切りたいと思っていたところだったのを思い出した。
「…分かった。ヤムチャ…上手く切れる…?」
「ははん、実は俺…若い頃は美容師を目指してたんだぜ?4日で挫折したけど」
「それは、大丈夫と言うのだろうか…ふざけて変な髪形にしたらお前の顔の原型が変わるかもしれないからな…」
マーリンは拳をボキボキならしながら脅しをかけるが、ヤムチャは既にプーアルが化けたハサミを持っていて、やる気満々だった。
渋々ヤムチャの散発提案を承認するマーリン。
「セミロングでいいか?」
「セミ…なに…?」
「んと、肩に届くぐらいの長さって意味だ」
「結構短くなるな…もう少し残したいのだが…」
「じゃあ、胸辺りまででいいかな」
「うん」
大雑把そうに見えたヤムチャだったが、意外と慎重な手付き且つ、素早くマーリンの長い髪の毛を捌いていく。
231SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:51 ID:qGq8L4NM
【104話】
「出来た!短くするだけだったし、俺でも結構スムーズに出来たな」
「ほーう…楽しみだ」
切り始めてから2分ほど経つと、ヤムチャが嬉しそうに叫ぶ。
ヤムチャはかなりゆっくり切ったつもりだったが、常人視点だとありえない速さだ。
超人故に出来る早業である。
「プーアル、鏡に化けてやれ」
「はい!変化!」
プーアルは手鏡に変身すると、フワフワとマーリンの目の前まで飛んでいった。
「…どうですか?マーリンさん」
恐る恐るプーアルがたずねる。
「上出来、だな…意外と」
どうやらマーリンは自分の髪に満足したようだ。
前が長すぎたため、結構ばっさりと切っているが、見た目的には特に違和感もない。
今は初めてヤムチャに会った時と同じぐらいの髪の長さになっている。
もしかしたら、ヤムチャはそれを意識してこの長さにしたのかもしれない。
毛先もしっかりと見栄え良く揃えてあり、なかなか様になっているように見えた。
「んじゃ…修行頑張れよ。ただ座っているだけだけどな」
「ああ、上手くいくといいんだが…」
先ほどのエロジジイの顔が頭に浮かんで、何か変なことをされるんじゃないかと少し不安そうな表情を浮かべるマーリン。
「心配か?大丈夫大丈夫。お前は潜在能力の塊だからな、きっと凄い戦士になるぞ」
そっちの心配じゃないんだけど…と思ったマーリンだったが、口には出さずに再び大界王神の元へと向かう。
232SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:53 ID:qGq8L4NM
【105話】
「待たせてすまない。はじめてくれるか」
マーリンは先ほどの気持ちを心の奥にしまい込み、再び大界王神の前に立つ。
大界王神はそれを見て、大きく頷くと、ジロジロと体をなめ回すように見つめはじめた。
「…うーむ。やはり、お主はいい体格をしとるの。顔立ちもわしの好みじゃ。まあ、そこに座れ」
「……」
マーリンは言われた通り、大人しくその場に座り込む。
しまい込んだはずの気持ちが、再び頭に浮んできた。
果たして、自分はこのきついきつい修行(?)に耐えられるのだろうか。
ある意味今までで一番辛そうな修行に、不安が頭によぎるマーリンだったが、既に大界王神の修行は始まっていた。
「ほれ、集中せい!余計な雑念が混じるとパワーアップ効果も減るぞ」
自分は雑念の塊の癖によく言うヤツだ…マーリンは静かにそう思った。
ヤムチャは腕を組みながら先ほどの木陰に寄りかかり、その様子を見つめていた。
いつの間にか隣に界王神も立っている。
「そういえば、俺の時は儀式に5時間かけていたけど…今回はやらないみたいですね」
ヤムチャは界王神に話しかける。
「ああ…あれは気分の問題だと思いますよ、多分」
「ていうことは……別にやってもやらなくても良いってこと…ですか?」
「おそらく…」
思わず、界王拳を10倍ぐらいまで上げて、ドスーンとずっこけるヤムチャであった。
233SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:55 ID:qGq8L4NM
【106話】
それから3時間ほどが経った。
「88……んくっ…89…!」
ヤムチャは重力発生装置に入り、500倍の重力で基礎トレーニングを始めていた。
既に腕立て伏せと腹筋100回を終え、現在は背筋100回に取り組んでいた。
出来るだけ気は使わず、生身に近い状態で体を徹底的に虐めている。
以前なら、500倍の重力なんて気を入れた状態でも厳しかったのに、今はギリギリトレーニングが出来るレベルにまで力が上がっていた。
一方、マーリンと大界王神は無言で座っていた。
ヤムチャの時は雑誌を見ながら手を翳(かざ)しているだけだったが、今回はそんなものは見ずに、じっとマーリンを見つめ続けていた。
「お主……辛い過去を経験したんじゃな」
「…!?」
何を思ったのか、唐突に大界王神が口を開く。
「故郷をサイヤ人に奪われ、両親も幼いうちに亡くし、皮肉にも父親はその故郷を奪ったサイヤ人だった…。それ故に以前はサイヤ人に尋常じゃない恨みを持っておった。…今は違うみたいじゃが」
「どうして…それを知っている…?ヤムチャから聞いたのか?」
マーリンは少し動揺した。
「いや、聞いとらんよ。人の心の中がなんとなく分かるんじゃ、これだけ長く生きとるとな…」
大界王神はニコニコしながら言う。
その笑顔が以前なら気味が悪かったが、今では何故か優しく感じられた。
何も聞かずして心を読めるだなんて、超能力の類以外では聞いたことがない。
マーリンは初めて、この目の前にいる老人…大界王神が凄い人だと思い始めた。
「確かに…わたしの過去を遡ると、余り良い道を歩んできたとは言えないな…」
どこか暗く、自嘲気味にマーリンは言った。
234SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:57 ID:qGq8L4NM
【107話】
物心ついた頃から、彼女は戦場に居た。
それが当たり前となり、永遠とも思えるような戦いの日々が繰り返されていた。
今ではすっかりなくなったが、戦いにおいて生きるためとは言え、無差別に命を奪っていた時期もある。
そして、宇宙に散らばっていたはぐれサイヤ人を根こそぎ排除してきたという事実も。
昔のマーリンの心は冷徹で、その手は血塗れていた。
地球にやってきてヤムチャと出会ってから、心身ともに全てが変わるわけだが。
忘れかけていた昔の記憶が、少しずつ頭に蘇る。
いや、罪の意識があったため、忘れようとしていた、といった方が正しいかもしれない。
その罪滅ぼしのためか、地球を去ってからは“侵略された星を取り戻す仕事”をこなす様にしていた。
これなら悪者は完全に相手であるため、心置きなく戦える。
かつてサイヤ人に侵略され、破滅の運命を歩んだ自分の星とその星を重ねて、それを守るかのように。
「わ…わたしは……」
上手く言葉に出来ず、出掛かった言葉が詰まる。
「大丈夫じゃよ。もう以前のお主ではない。本当に運が良かったのう、偶然とはいえ地球に降り立ったのは」
「…地球は…ヤムチャは、本当にわたしの運命を大きく変えてくれた」
「そう思っているなら、なおさら自分の運命を恨んじゃいかん。お主が重ねてきた行動や出来事の一つ一つが、結果的にお主をここに導いたのじゃから。言わば必然的じゃったの

かもな…お主が地球に行くというのは」
どこか深い話をされて、感傷に浸るマーリン。
「話し込んでしまったな。さて、再開じゃ」
「ああ、頼む…」
次第に、マーリンは大界王神を信じ始めた。
235SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:58 ID:qGq8L4NM
【108話】
「98…99…100ッ!……ふう、早くも全身が筋肉痛だぜ」
背筋100回が終わり一息つくと、ヤムチャは地べたに寝転がった状態で床を蹴り、クルクルと体を回転させながら派手に立ち上がった。
トレーニングは既に3週目を迎えていて、汗で全身がびしょ濡れになっている。
こんな部屋に居ては、何もしていなくても体に負荷がかかるのに、その状態でトレーニングをすることは過酷を極めた。
500倍の重力といったら、常人なら何も出来ずペチャンコに押しつぶされてしまうレベルの高重力である。
体重60キロの人間だったら、その500倍…3万キロ、つまり30トンになるということだ。
体が強くなったとは言え、さすがに飛ばしすぎたか…とヤムチャは思った。
「少し休もう…」
部屋の重力を元に戻すと、体がフッと軽くなったように感じた。
手を羽ばたけば武空術なしでも空を飛べそうな勢いだ。
マーリンの様子も気になった頃なので、ヤムチャは数時間ぶりに重力発生装置から出た。
「ヤムチャ様、お疲れ様ですー!」
プーアルがタオルを差し出しながらヤムチャに近づいていった。
「ああ、すまん」
ヤムチャは礼を言うと、タオルを受け取り体中の汗を拭う。
と、マーリンの方を黙って見つめているシルフに気付き、ヤムチャは汗を拭きながら声をかける。
「シルフ、どうだ?母さんの様子は」
「なんか、凄い集中しているみたいだよ。さっきから微動だにしない…」
そう言われてマーリンを見てみると、確かに完全に精神を統一している。
動いているのは風によって僅かに棚引く髪の毛ぐらいだった。
それを見てヤムチャは意外そうな顔を浮かべる。
「なんだよ、マーリンのヤツ。さっきまであれだけ胡散臭そうにしていたのに」
チェッと舌打ちするヤムチャだったが、言葉とは裏腹に、トラブルもなく修行が進んでいるようでほっと胸を撫で下ろす。
236SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 00:59 ID:qGq8L4NM
【109話】
「そういえばシルフ、お前もマーリンみたいに強いの?」
何気なく、ヤムチャがシルフにたずねた。
「ぜんぜん…。お母さんは、『お前はわたしよりもヤムチャよりも強くなるはず』って言ってるんだけどね…とてもそこまで強くなれる気がしないよ」
ヤムチャの言葉でシルフは暗い表情になってしまい、何か悪いことを聞いてしまったかのような気がした。
「で、でも…お前はまだ小さいし、多分近いうちにグーンと力が伸びると思うぜ?マーリンの言うように、俺たちを超えるぐらいのな。サイヤ人の血も引いてるしさ」
「そうかなあ…」
「そうさ。まあ、5歳6歳でもスーパーサイヤ人になれる化け物もいるわけだが…そういうのは例外で…」
すると、シルフは何かを考え始めたが、すぐに答えが出たみたいだ。
「お父さん…大会が終わったら、ぼくに稽古つけてよ!」
一瞬驚くヤムチャだが、すぐに笑いながら答える。
「はは、そういう所はマーリンそっくりだな、お前。俺の稽古は厳しいぜ?」
「うん…大丈夫だから!見てよ、ぼくだってロウガフウフウケンできるんだから!」
ヤムチャから少し距離をとると、自慢げにブンブンと拳を振り回すシルフ。
確かにスピードはまずまずといったところだが、実戦で使えるレベルには到底なかった。
「仕方ねえなあ…まずは狼牙風風拳より、基礎トレーニングで肉体の鍛錬をする。それから精神統一と、俺の肩揉み。どう?やれそう?」
「うんっ!約束だからね!」
目を輝かせてシルフはヤムチャに抱きつく。
やれやれと呟くヤムチャだったが、内心は自分自身もシルフの成長を楽しみにしていた。
237SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:03 ID:qGq8L4NM
【110話】
それから…時間は流れ、マーリンが座りだしてから丸一日が経とうとしていた。
やりすぎて何セット目かすら分からなくなったトレーニングを終えると、ヤムチャが重力発生装置から出てくる。
重力は500倍では物足りないらしく、650倍まで上げていた。
「そろそろ…あいつも終わる頃かな」
ヤムチャはマーリンの方に視線を向ける。
相変わらず、目を瞑ったまま岩のように全く動かないマーリン。
よほど集中しているのだろう。
ヤムチャとマーリンは不眠で修行に打ち込んでいたが、プーアルとシルフは疲れたのか眠っている。
「そろそろええぞ…マーリン」
とうとう大界王神が口を開いた。
マーリンのパワーアップが終わったのだ。
その言葉を聞き、ゆっくりと目を開けるマーリン。
長い間目を瞑っていたため、眠っていたわけではないのだが数秒間景色が霞んで見える。
ぼんやりと見える大界王神の顔。
マーリンは完全に視力が回復すると、黙ってその場に立ち上がった。
そして自分の手先から足先まで、ゆっくりと見渡す。
「違う。手、足、いや、体全体の感覚そのものが違う」
「そりゃあ、わしがパワーアップさせてやったんじゃから当たり前だ。ほれ、早速スーパーなんちゃらの要領で気を入れてみい」
「む…普通にスーパーサイヤ人に変身すればいいのだろうか?」
238SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:04 ID:qGq8L4NM
【111話】
「安心しろ、スーパーサイヤ人にはならん。そもそも、スーパーサイヤ人なんて邪道じゃわい!1000年に一度の戦士だかなんだか知らんが、元々邪悪な心が基に生成された変身に

過ぎん」
やたらとスーパーサイヤ人を批判する大界王神。
過去に何かあったのだろうか。
「とりあえず…やってみるぞ」
マーリンが大きく息を吸い込んだ。
その息遣いが聞こえそうなぐらい場に静寂が走る。
そして、一気に気を高めだすマーリン。
地面が僅かに揺れたと思うと、その揺れは徐々に激しさを増し、最終的には立っているのすら厳しいほどの揺れに変わる。
「はあああああ…ッ!!!」

ボフゥゥゥウゥゥンンッッッ!!!

ヤムチャの時と同様に爆音が轟き、かなり離れていたヤムチャまで足に力を入れて踏ん張らなければ吹っ飛ばされそうになるぐらいの突風が吹く。
一瞬でマーリンの範囲数十メートルにクレーターができ、凄まじい地面の揺れにプーアルとシルフも慌てて目を覚ました。
「あれが…お母さん…!?」
「す、凄いな…!見た目はほとんど変化ないのに…桁違いの強さになってやがる」
ヤムチャが小さく独り言を漏らす。
かなりのパワーアップを果たしたヤムチャだが、マーリンのパワーアップはそれ以上だった。
元の戦闘力が高い分、パワーアップの割合もその分大きいのだろうか。
スーパーサイヤ人の状態でもないのに、マーリンの体に途轍もない力が駆け巡る。
「信じがたいことだ…。スーパーサイヤ人の状態より、遥かに力が漲っている。わたしにここまで力があったのか…」
ヤムチャの体から冷汗が流れる。
いつの間にか、少しだけ身体も震えていた。
239SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:07 ID:qGq8L4NM
【112話】
「……手の爪の先端まで力が漲ってくるようだ」
マーリンは大喜びしていいはずなのだが、余りに凄まじいパワーアップに、つい喜ぶことすら忘れてしまっていた。
「それにしても、このマーリンの気…どこかで感じたことがあるようなないような…」
遠くから見つめているヤムチャはふとその事で考え込むが、答えは出てこない。
すると、大界王神が呼ぶ声がする。
ヤムチャはすぐに駆け寄った。
「オホン。これにてわしらの役目は終わりじゃ。後は下界で大会まで修行を重ねることじゃな」
「はい!」
「無論、そのつもりだ」
ヤムチャもマーリンも大満足といった様子で、勢いよく答える。
大界王神は続けた。
「それからヤムチャよ。お主は以前、地球人は不利、サイヤ人は有利…そんな風に考えておったな?」
「え、ええ…まあ…そうだったかな…」
ヤムチャは不意を撃たれたのか、あやふやに答える。
大界王神の読心術によって、ヤムチャの頭の中は全て見透かされていたのだ。
「確かにサイヤ人のような圧倒的な力強さはないが、地球人は決して弱くはない。それに、サイヤ人にも負けん武器もある」
「と言いますと…?」
「まあ、それはいずれ分かるじゃろ…近いうちにな」
大界王神はホッホッホと意味深に笑う。
サイヤ人にも負けない武器…一体なんのことを言っているのだろう?
「地球まではわたしが送ります。地球の大会、是非見物させてもらいますよ」
ヤムチャ、マーリン、シルフ、プーアルの4人とも界王神の肩につかまる。
240SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:09 ID:qGq8L4NM
【113話】
「本当に…本当に、お世話になりました!」
ヤムチャは一度肩から手を離し、最後に深く一礼する。
マーリンもそれを見て、口を開いた。
「わたしからも礼を言う。大会が終わったら、何らかの形であなたたちに礼をさせてくれ…」
マーリンの発言に対し、一瞬やらしいことを閃いた大界王神だが、最後は界王神らしく決めようと思い格好をつける。
「礼は地球の大会を見れるだけで十分じゃ。見せてくれよ…お主たちの暴れっぷりをな」
にこやかな表情でヤムチャたちに手を振る大界王神。
「それでは、地球へ移動しますよ!準備はいいですね?…カイカイ!」
4人と1匹がその場から消える。
つい数秒まで賑わっていた界王神界に、かつての静寂が戻った。
「頑張るんじゃぞ、ヤムチャ、マーリン…」
大界王神は届かない心の声をそっと口に出す。
「しかし、ヤムチャもマーリンも想像以上に力が上がったのう…。特に、あのマーリンというムスメ…以前ここにきた孫悟飯の息子のようなパワーじゃ。悟空たちが驚く顔が目に浮か

ぶわい」
そう言いながら、既に入れてあるお茶を寂しそうに飲み干した。
241SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:15 ID:qGq8L4NM
【114話】
同時に、地球に4人と1匹の影が現れる。
「さ、地球に着きましたよ」
ヤムチャたちが辺りを見渡すと、そこは界王神界に行く前までいた荒野だった。
実質二日ぶりぐらいなのだろうけど、やけに懐かしい気分になる。
「わざわざ送っていただいてすみません、界王神様」
「いえいえ。情けない話ですが、この星々間の移動ぐらいしか私に手伝えることはありませんので…」
恥ずかしそうに笑いながらそう言うと、界王神は続ける。
「また、機会があれば会いましょう、皆さん!それでは……カイカイ!」
界王神はそう言うと、跡形もなく姿を消した。
しばらく間を置いてから、マーリンが口を開く。
「実に不思議な連中だった。瞬間移動は出来るし、パワーアップまでしてくれるとは…全く、ヤムチャに会うと相変わらず驚くことばかり起こる」
すると、ヤムチャは困ったような顔で答えた。
「でも、さすがに今回の事は俺にも予想外だった。まさか界王神様が直々にコンタクトをとってくれるなんてな…。モチロン、嬉しい誤算ではあるけどさ」
途轍もないパワーアップを果たした二人だったが、まだ戦いでその力を試していないため、いまいち実感が沸かないというのが正直なところである。
出来れば今すぐにでも己の力を戦闘で試したい。
しかし、二人とも彼是50時間以上睡眠をとっていないことに気付いた。
不思議なもので、今まで平気だったのに、そう考えた途端、極度の睡魔が二人を襲う。
話し合いの末、ヤムチャの提案により、二人は一旦修行は休憩して睡眠をとることにした。
ヤムチャの住処である洞窟に入り横になると、2人は1分もしないうちに深い深い昏睡へと堕ちていった…。
242SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:17 ID:qGq8L4NM
【115話】
――
「ケッ…抵抗しても無駄なのは分かっている。早く殺せよ。それでお前の気が済むならな」
闇の中に男と女が立っている。
男は傷だらけだったが、女はほとんど無傷だった。
どうやらこの女がとことん痛めつけたらしい。

ズァッ!!

そして、止めを刺すためか女性の手からエネルギー波が放たれた。
言うまでもなく、男の体は粉微塵にバラバラになる。
唯一…体の一部である尻尾だけが、原形をとどめて無残にも地面に転がっていた。
「勘違いしているようだな。お前の死を持っても、わたしの怒りは消えないのだよ」
女性は捨て台詞でそう言い放つと、砂煙の中一歩、また一歩とその残骸に向かって近づいていった。
エネルギー波によって、地面のあちらこちらに火の粉が飛び散ったため、夜なのに昼間のような明るさになる。
その炎の明るさが、女性の顔がはっきりと照らし、映し出す。
それは…紛れもない若き頃の自分の顔だった。

ビュンッ!

その時、自分の顔の僅か数十センチ隣を弱弱しいエネルギー波が通過した。
当たってはいないのだが、エネルギー波が通過した際、一瞬真空状態になったためか、彼女の頬に軽い切り傷が出来た。
「お前は…サイヤ人を見くびりすぎだ」
と、バラバラになったはずの男の声が聞こえる。
辺りを見渡すと、エネルギー波を受ける際にわずかに体をずらしたのか、その体は上半身だけだった。
「…ククク…サイヤ人を倒しまくっているらしいが、お前自身がサイヤ人にやられる日もそう遠くは」
「死ね」
全て言い終わる前に、先ほどの倍はあろうかという威力のエネルギー波を男に向かって放つ。
再び爆発が起きると辺りは業火に包まれ、今度こそ男の体は跡形もなくバラバラになった。
その死に様を見て、女性は狂気に満ちたように、どこか不気味な薄ら笑いを浮かべている…。
そして、その世界は闇へと戻っていった。
243SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:19 ID:qGq8L4NM
【116話】
誰かが呼ぶ声がする。
僅かに暖かい感触を首筋に感じる。
どうやら体を揺すられているようだ。
「おい、大丈夫か…?」
目の前に男がいる。
いや…自分はこの男の名前を知っている。
「……ヤムチャ?」
「お前…だいぶ魘(うな)されていたぞ。心配していくら呼んでも起きないしな…ったく、相変わらず寝起きの悪さは天下一品かよ!」
笑い飛ばすようにヤムチャは言うと、小さい皿を差し出す。
上には何かの肉が乗っていて、食欲をそそる甘辛い匂いがする。
「食え。朝飯だ。俺たち丸一日ぐらい眠っていたらしいぜ」
「…ここは…」
キョロキョロと辺りを見渡すと、美味しそうに鍋を食べるシルフとプーアルがいた。
ようやくマーリンの記憶が現実と一致する。
「そうか…わたしはカイオウシンという者に会って、修行して…疲労で寝てしまったのだったな」
「はは、いつまで寝ぼけてんだよ」
ヤムチャは何が面白いのか、爆笑しながら言った。
「すまない…数年前の出来事がそのまま夢に出てきて…」
そこで、一旦マーリンの口がとまる。
「ん…?出てきて、なんだ?」
「いや…なんでもない。もういいんだ…もう、終わったはずなんだ」
ヤムチャが突っ込むが、マーリンはそれ以上語ろうとしなかった。
ヤムチャもあえて、それ以上追求することをしなかった。
「さて…飯が食い終わったら修行を始めるか。ていっても、この短期間で何が出来るのやら…」
ヤムチャはスプーンを口にくわえながら、あと10日で何が出来るか考え込む。
かなりのパワーアップを果たしたとは言え、ヤムチャは自惚れることなく、まだ自分は悟空に勝てるレベルでないと踏んでいたのだ。
244SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:21 ID:qGq8L4NM
【117話】
スプーンを口から出し、それを空っぽの皿に投げるようにおくと、ヤムチャはマーリンに言った。
「マーリン。今から新技の開発をするにも、大会までに間に合うかどうか微妙なところだ。だから、俺は基礎トレーニング以外はお前と組み手して、実戦での感覚を鋭くした方がいい

と思うんだが、お前はどう思う?」
それを聞いて、むむ…っと腕を組みながら考え込んだマーリンだったが、やがてヤムチャと同じ結論に至る。
「そうするしかないか。やれやれ…果たしてヤムチャに今のわたしの相手が務まるかな?」
マーリンは冗談っぽく笑いながらヤムチャに言う。
もちろん、これはマーリンに自信があるからこそ言えることでもあるが。
「へっ…!そんな事言いながら、俺の強さにビビって小便漏らすなよ」
「ふふ…わたしが漏らすのは、ため息の方じゃないかな?」
一方、強がりを言うヤムチャだったが、確かに今のヤムチャより、マーリンの方が力は上だった。
しかし…これはヤムチャにとって、これ以上にない恵まれた修行になる。
自分より弱い者、もしくは同等レベルの者との組み手と、自分より格上相手との組み手では訳が違う。
当然、それに気付いていないヤムチャではなかったからこそ、力の差が分かりつつも組み手をしようと結論になったのだ。
一方、口ではこんなことを言っているマーリンだが、内心は自分も早く力を試したくて、うずうずしていた。
食事を済ませると、後片付けはシルフとプーアルに任せ、ヤムチャたちはさっそく修行に取り込むことにした。
「んじゃ、基礎トレーニングから始めるぞ」
ヤムチャとマーリンは重力発生装置に二人で入る。
「とりあえず、重力500倍ぐらいから慣れていこうか。気はある程度使っていいが、体に負荷が掛かる程度にな。使いすぎたら楽過ぎてトレーニングにならないし」
「分かった。しかし、500倍程度では物足りないだろうな」
「当然、日に日に重力は上げていく。一日100G上げていくつもりだ。つまり、明日は600倍、明後日は700倍…大会5日前には1000倍の重力にするつもりだ」
マーリンはふーん、となんとなしに相槌を打つ。
245SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:23 ID:qGq8L4NM
【118話】
「じゃ、腕立て、腹筋、背筋をそれぞれ100回ずつで午前は3セットな。休憩は1セット終わってから5分間だけ取ること。で、3セット終わったら昼飯食って、午後からはひたすら組み手だ。
で、日が沈む頃に組み手は中断して、さっきの基礎トレーニングをもう3セットやる。どうだ?」
ざっくりと聞いた感じ、かなりきつそうなスケジュールだ。
トレーニングをこなしている自分を頭の中で想像すると、マーリンは昔ヤムチャにこっ酷く扱(しご)かれた修行の日々を思い出した。
かつての苦い思い出により、一瞬顔が引きつったマーリンだったが、ブンブンと首を振って、それを無理矢理振り払う。
少なくとも、今の自分はあの頃の自分とは比較にならないほど強くなっている…はず。
そう自分に言い聞かせるが、何故か嫌な予感が消えない。
「ヤムチャも同じことをやるなら、わたしだって出来るはず…」
「甘いな、マーリン。その思い上がりが今に痛い目を見るんだぜ」
その言葉で、マーリンのこめかみがピクリと動く。
「…言ってくれるな、ヤムチャ。こうなったら意地でもやってやる…!」
ヤムチャの一言で、マーリンの闘争心に火がついた。
腕を数回グルグルと回すと、いつでもやれるぞと言わんばかりにマーリンは腕立て伏せの構えを取る。
「ヤムチャ、早く重力を上げろ!」
先ほどまでの不安はどこにいったのか、マーリンは重力を上げるように急かす。
「やれやれ…まあ、その方がお前らしいっちゃらしいけどな」
ヤムチャはそう言うと、中心部の機械で重力を500倍に設定すると、自らもマーリンの隣で腕立て伏せの構えを取る。
二人はその構えを取ったまま、数秒目があったが、やがて地面を見つめだす。
ジワジワと重力が上がっていく…100倍…150倍…300倍……500倍!
ずっしりとした重みが二人にのしかかった。
246SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:25 ID:qGq8L4NM
【119話】
二人は勢い良く腕立て伏せを開始した。
気はある程度の負荷が体に掛かるくらいまで引き上げるだけで、それ以上は気を高めずに行うトレーニング。
マーリンとヤムチャは平等になるように、気を同じくらいの大きさに合わせた。
最初は同じくらいのスピードで進めていた二人だが、徐々にマーリンがペースを上げる。
「ふふふ…早くも…42…ペースが…43…遅くなってきたな…44、45…ヤムチャ」
すると、ヤムチャは気にしていないかのように、マイペースに動作しながら答える。
「32…動作が速けりゃ…33…いいってもんじゃないんだぜ?…34…遅い方が体に負荷がかかって修行になるんだ…35…お前は腕立て伏せの世界チャンピオンになりたいのか?
……それとも、己の体を強くしたいのか、どっちなんだ?…36…37…」
「〜〜!!」
ヤムチャに一本取られて悔しかったのか、マーリンは腕立て伏せを体地面スレスレの一番きつい所で十数秒止めて見せる。
そして、その状態から体をゆっくりと数センチずつ上げていった。
「………ッ53!!ふふっ…どうだ、ヤムチャにはここまでする根性は…54…」
無理をしたことによって息が上がってきたマーリン。
あごから汗が滴り落ちる。
ヤムチャはその様子を見て、面白そうに笑った。
「はは…どうでもいいけど…38…最初からカッコつけてバテるなよ?100回だからな、100回!…39」
「………」
自分を褒めてくれなかったヤムチャに、少しだけ冷たさを感じたマーリン。
しかし、言われてみれば、無理をしたせいで腕に負担がかかったのか、最初より体が重く感じられる。
気を入れれば、楽に体が持ち上がるのだろうけれど、それは自分のプライドが許さない。
ヤムチャも自分と大体同じ大きさの気でトレーニングをしているため、苦しさは同じはずなのだ。
それなら、なおさら負けるわけにはいかない!
「まだまだっ…!」
マーリンとヤムチャは張り合うように、500倍の重力の中基礎トレーニングに励んでいった。
247SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:27 ID:qGq8L4NM
【120話】
太陽が一番高い位置に上がる頃、ようやくヤムチャたちが重力発生装置から出てくる。
「ふーう…体中いてえな…。でも、重力が1Gになった時に感じるこの体の軽さは最高だぜ!」
ヤムチャは汗をダラダラ流しながらも、気持ち良さそうに外の空気を吸う。
一方、マーリンには結構ギリギリだったようで、手はぶらんと垂れ下がり立っているのも辛そうだった。
それもそのはず、気の強さが同じなら後は筋肉の強さと持久力で疲労度が変わる。
当然、男で筋肉の量が多いヤムチャの方がマーリンより楽は楽なのだ。
もっとも、マーリンはこのことには気付いていないが。
「さて、だいぶ参っちまってるみたいだけど、午後からは組み手だからな。まあ飯でも食ってゆっくり休んどくことだ」
「…ああ、分かっている」
力なく言葉を返すマーリン。
どうやら疲弊しきっているみたいだ。
そこへプーアルがフワフワと飛びながら近づいてきた。
「ヤムチャ様、マーリンさん、お疲れ様です!シルフさんと一緒にカレーを作りましたので、どうぞ温かい内に召し上がってください!」
それを聞いて、マーリンの目の色が変わる。
「おう、ご苦労だった、プーアル。さっそく飯にしようぜマーリ……ってあれ?」
ヤムチャが名前を呼びかけた時には、さっきまで隣に居たマーリンがいつの間にか消えていた。
と思いきや、彼女は50メートルほど離れた場所にある鍋の前に既に座り込み、皿に溢れんばかりのカレーを盛りつけている。
あまりの速さにあっけに取られながらマーリンを見つめるヤムチャ。
その視線にマーリンも気付き、キョトンとした顔をする。
「…?どうした?早く食べないと冷めてしまうぞ」
「…そんなすぐには冷めねーよ、っていうか移動するのはえーよ!」
突っ込みをいれるヤムチャだったが、お構いなしにマーリンはカレーを口にする。
言うまでもなく、その日カレーを一番食べたのはマーリンであった。
248SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:30 ID:qGq8L4NM
【121話】
「…お前さ、……何杯食った?」
腹も膨れたのか、満足そうにに壁に寄りかかってリラックスしているマーリンを見て、ヤムチャは言う。
「いちいち数えていないが…5杯ぐらいかな?」
「…その2倍だよ。その細い体の何処にこれだけの食いもんが入るんだか…」
鍋いっぱに入っていたカレーはすっからかんとなり、マーリン以外は一杯しか食べていない。
ヤムチャはまじまじとマーリンの腹を見つめる。
食べ終わってからさほど時間は経っていないのだが、既に消化が進んでいるようで、マーリンの腹はほとんど出っ張ってなかった。
胃腸の機能がよほど優れているのだろう。
「力も蓄えたことだし、フルパワーでヤムチャの相手が出来るな。ふふ…死ぬなよ、ヤムチャ」
「はは…大会の前に死んだとあっちゃ、今までの初戦敗退より惨めだな…」
ニヤニヤとしながらヤムチャを見つめるマーリン。
対するヤムチャは苦笑いをしていた。
二人とも冗談っぽく笑っているが、この後ヤムチャは本当に死にそうになるくらいマーリンに甚振られることになる。

―――。
ドドド…ガガガガッッ!
空中に、二つの影が見える。
その影は高速で移動し、ぶつかっては離れ、離れてはぶつかってを繰り返していた。
肉と肉、骨と骨が激しく衝突する音と、風を切る音が、轟音となり静かな荒野に響き渡る。
「ハイハイハイーやッッ!!」
一瞬で数十発と繰り出したヤムチャの拳が、全てマーリンの顔面スレスレで空を切る。
「遅いッ!…はっ!」
何十発目かのヤムチャの手刀を手の甲でガードすると、一瞬ヤムチャの動きが止まる。
マーリンはそこで無造作に体から気を放ち、ヤムチャはその風圧で後方に吹っ飛んだ。
どうにか倒れず踏ん張るが、ヤムチャの表情は強張っていた。
「ち…っ!!」
かなり力を上げたヤムチャなのだが、やはりマーリンにはまだ及ばない。
249SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:35 ID:qGq8L4NM
【122話】
「…はぁ…はぁ……、さすがに…強いな。肉弾戦で正面からまともにぶつかりあってちゃ何をしても歯がたたねえ……!」
「そんなことはないぞ、以前よりかなり技のキレが上がっている。パワーアップ受ける前のわたしではおそらく敵わなかった…」
両者は距離を取り、一時休戦なのか、気を練ることをやめた。
「俺のどこが悪い?マーリンから見た感じだと」
ヤムチャはプライドを捨てたのか、弟子であるはずのマーリンにアドバイスを求める。
しかし、自分の動きとは意外と分からないもので、客観的に見てもらった方が良くない点は分かりやすいのだ。
「うー…ん…そうだな…例えば……」
マーリンは首を傾げながら考え始める。
「わたしが思うに、ヤムチャはこれといった決定打がないのが惜しい。ある程度は追い込んでくるのだが、そこからのパンチ力がヤムチャには足りないのではないかな…?」
「決定打……ねえ。確かに言えてるかもしれない。よく見てるな、お前」
ヤムチャは感心したように言う。
「それから、状況に関係なく肉弾戦に拘り過ぎではないか?力で劣る相手には、わたしが以前ソンゴクウにとった作戦のように、業で翻弄して相手に隙を作り、そこをピンポイントで攻める方がヤムチャもやりやすいはず…」
「なるほど…。トリッキーになれってことね」
ヤムチャはマーリンの説明に首肯する。
これはまさにマーリンの言うとおりだった。
ヤムチャの戦闘スタイルといえば、牽制の狼牙風風拳で相手の体勢を崩し、隙ができたところに単発で強めのパンチや蹴りを入れるというスタイルが多かった。
しかし、これでは狼牙風風拳が相手に通用しなければ、相手の体勢も崩れないし、隙もできない。
つまり、ヤムチャにはそれ以上攻めようがないというわけだ。
結果的に、ヤムチャは雑で無謀な攻めを繰り返すことになり、それが自分の隙となってしまう。
そして、気づいたら防戦一方になってしまい、何もできずに負ける。
大げさに言うならば、ヤムチャは猪突猛進で隙だらけだった。
「俺は攻めパターンが限られていたのか…だから格上には善戦すら出来なかったわけだな…」
250SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:37 ID:qGq8L4NM
【123話】
力のない子供が、力のある大人に単純に真っ直ぐ突っ込んでいっても、結果は目に見えている。
そんな当たり前のことすら気づけなかった自分が、少し情けない気すらした。
以前、マーリンに『お前の攻撃は分かりやすい』などと偉そうなことを言っていた自分がなんだか恥ずかしくなってきた。
「……このやり方じゃ、俺は悟空や悟飯どころか、ベジータやピッコロにすら勝てない…か」
言葉こそ自嘲的なものだったが、ヤムチャは落胆とも絶望ともつかない表情で、むしろ何かを見据えているような顔つきだった。
「でも…今、自分の悪い点に気づけたわけだからな。まだ改善のしようがあるってわけだ…この残り10日の間に!」
ヤムチャはマーリンには気づかれない程度に僅かにはにかんだ。
それに気づいたのか気づかないのか、マーリンも僅かに笑う。
「ふふ、そうだな。そこを少し自分で考えながら、戦術を練ってみるといいかもしれない、ヤムチャは…」
マーリンはヤムチャにそう告げると、再び構えを取る。
「組み手の続きをやるぞ!次はわたしが言ったことを踏まえて、かかってくるんだ!」
ヤムチャは数秒だけマーリンを見つめて黙考するが、すぐに吹っ切れたのか、やがて自らも構えを取る。
「ああ…!バリバリやらせてもらうぜ、マーリン!……っうらぁぁあ!!!」
掛け声とともに、界王拳を使わずして戦闘力100万近くはあろうかという、ヤムチャの体がマーリンに向かい、躍進する。
まるで、獲物を追う狼のようなその目つきは、若き頃…自信に満ち溢れていた頃の輝きを取り戻していた。
「こい、ヤムチャ!」
再び二人の肉体と肉体は激しくぶつかり合い、お互いの体を傷つけあう。
だが、それとは対照的に、二人の気持ちは傷付くことなく、むしろ修行を重ねることによってより一層強くなっていった。
251SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:40 ID:qGq8L4NM
【124話】
―――そして、時日は流れ、大会前日の夜…。
辺り一面に湯気が立ち込め、ボンヤリとだがくっきり人の形が見える。
ヤムチャたちは前に訪れたことのあるオアシスにいた。
前と同じように気のエネルギーで水を加熱して、人口の温泉を作って温まっている。
「ふー…実に心地よい…。それにしても、わたしの湯加減は最高ではないか?ふふ…褒めてくれていいのだよ、ヤムチャ」
気持ちよさそうに大きなため息をつくと、マーリンは歌うようにヤムチャに話しかけた。
マーリンは大胆にもオアシスの端っこに寄りかかりながら、両手のひじを地面に掛けている。
誰も見ていないが、当然上半身の大事なところも丸出しとなっていた。
「あ、あ、ああ…最高、最高だよ。だからずっとそこにいろよ?こっちにくるんじゃないぞ?」
ヤムチャは何度も念を押すように言った。
マーリンの目の前には、肩まで潜って自分に背を向けてるヤムチャがいた。
ほとんど肌なんて見えないが、少し耳たぶが赤くなっているのは、お湯で熱いせいなのか、それとも……?
そんなヤムチャを、なんとなくかわいく思えてきたマーリンだった。
「いよいよ…明日だな」
ヤムチャは背中を向けながらマーリンに喋りかける。
「ああ…。わたしたちは、やれるだけのことはやった。あとは明日、後悔しないように精一杯戦うだけだ」
「うんうん、俺は俺で色々戦法を考えたしな…って…うわ……!」
いつの間にかマーリンがヤムチャの真後ろまできていて、その手がヤムチャの肩にそっと乗せる。
冷たいわけではないのに、ヤムチャはヒヤッとした感覚だった。
そして横目でチラッとその手を見ただけなのだが、白くて実に綺麗な肌をしていた。
「お、おい、急になんだよ!裸なんだぜ?俺たち!」
ヤムチャは動揺しながらも、ちょっと嬉しそうに叫ぶ。
252SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:43 ID:qGq8L4NM
【125話】
「ふっふっふ…そいつはすまなかったな?」
その慌てようが実に面白くて、マーリンはそう言いつつ更にべったりとヤムチャにくっついた。
マーリンの上半身がヤムチャの背中に覆いかぶさるように触れる。
「ぎゃああああ!!!!」
叫ばずには言われなかったのか、先ほどより更に大きい声でヤムチャは喚き散らす。
それを見て、あっはっはっは!と大声で笑うマーリン。
しばらくしてからようやくヤムチャは落ち着き、話を元に戻した。
「今日は一切修行はせずに休んだから、体のコンディションはバッチリのはずだ。天界の塗薬も塗ってあるから、体のアザもほとんど治ったしな」
自分の体の状態を確認しながらヤムチャは言う。
マーリンもそう言われて、自分の体を見渡してみた。
確かに今まであった修行で出来た青いアザは消えていて、白い肌だけが見える。
「なあ、ヤムチャ…」
マーリンはヤムチャのすぐ後ろで囁く。
「うん?」
いつもより近くで聞こえるマーリンの声に、ヤムチャは少しだけドキドキしてきた。
「負けるなよ…お前の仲間たちに…もちろん、ソンゴクウにもな!」
「…ああ。負けない。お前も負けるんじゃないぜ」
いつもと変わらない声だったが、はっきりと分かる力強い声。
「ふふ、誰に言っているのだ?当たり前だろう」
マーリンはその声を聞いて安心した。
「見ろ、マーリン。星が綺麗だぞ!」
ヤムチャは空を指差す。
マーリンが空を見上げてみると、そこには無数の星が光輝を放っていた。
「…美しい夜空だ。わたしの星の光も見えるかな…」
「ああ…。目を凝らせば、きっと見えるはずさ」
二人はくっ付きながら、しばらくその夜空を見つめていた。
いつの間にか、お互いの手を強く握りながら…。
253SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:45 ID:qGq8L4NM
【126話】
――。
まだ午前8時だというのに、既に会場には数万人の人だかりが出来ている。
そのほとんどは、先着100名限定と言われているミスターサタンの直筆サイン入りTシャツが目的のようだ。
同時刻、会場の外れに一台の車が止まる。
「…久しぶりだな、選手としてこの大会に足を運ぶのは」
そう言いながら、運転席から姿を現したのは、全身スーツでびしっと決めているヤムチャだった。
「何度も言うが…ずいぶんと肩が凝りそうな服装だな、ヤムチャ…」
助手席からマーリンがそっと降り立つ。
マーリンはヤムチャにこの前買ってもらった服を着ていた。
なんだかんだで気に入ってるらしい。
後部座席からは、シルフとプーアルが飛び出すように出てきた。
「い、いいんだよ!あとでどうせ着替えるし…」
ヤムチャは若干不満そうに言うと、車をカプセルの状態に戻した。
「それから…この遅い乗り物に乗った意味も教えてもらいたい。途中まで普通に飛んできたのに…わざわざ会場の少し手前でこれに乗り換えたのは何故だ?」
「だってさあ…車に乗って来た方が、傍から見てかっこよくないか?」
「………」
そんな他愛もない話をしながら歩いているうちに、ヤムチャはふと視線の先に、人ごみの中歩く悟空たちの姿をとらえた。
「お、あれは悟空たち!おい、マーリン、シルフ、プーアル。悟空たちに合流するぞ」
ヤムチャはそう言って、若干小走りで悟空たちのもとへと駆け寄っていった。
他の者もそれについていく。
254SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/20 01:47 ID:qGq8L4NM
更新遅れてすみませんでした。
本日は少し多めに更新ということで勘弁してください。
仕事の都合上、1月はあまり時間がとれないもので…。

それでは、おやすみなさい。
255Classical名無しさん:09/01/20 22:02 ID:FsDadAPM
いきなり更新が進んでてびっくりした。乙です
256Classical名無しさん:09/01/25 09:16 ID:fe0/JHYc
日曜で時間が取れる!
一気に読ませて頂きます。連貼り乙です
257Classical名無しさん:09/01/25 19:38 ID:im3n8bGs
マジでいつも楽しみにしてます。
次の更新期待してます!
258SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/29 00:55 ID:qm/c.RRk
【127話】
「やあ、みんな!悟空とピッコロ以外は久しぶりだな!」
見渡せば見渡すほど、懐かしい顔ぶれが並んでいる。
悟空、悟飯、悟天、チチ、牛魔王、ビーデル、クリリン、18号、亀仙人、ウーロン、海がめ、ベジータ、ブルマ、トランクス、ピッコロ。
ヤムチャはいつものお調子者キャラで仲間たちに挨拶を交わす。
「オッス、ヤムチャ!」
悟空は一番に挨拶を返すが、ベジータとピッコロと18号はいつも通りヤムチャを無視していた。
悟空は続ける。
「今は気を抑えてるみてえだけど、オラには分かる。この短期間で相当鍛えてきたな…おめえら」
「はは…まあな」
本当は修行だけじゃなくて潜在パワーを引き出してもらったおかげの方が大きいんだけど…とヤムチャは心の中でつぶやく。
他の者もヤムチャの声に反応し、その方を向いたが、やがてその視線はすぐヤムチャの背後に居る見覚えのない者…マーリンに移っていた。
「ピッコロさん……あの、ヤムチャさんの後ろにいる人…」
「ああ、間違いない。以前孫に勝利した女だ」
ピッコロと悟飯は周りに聞こえないように静かに言葉を交わす。
そして、その集団の中からひょっこりと背の小さい男が前に出てくる。
もう昔とは似ても似つかないフサフサヘアーで、腕には泣き喚く子供を抱えていた。
「お。クリリンじゃないか、懐かしいな」
「お久しぶりです、ヤムチャさん。…ところで、なにげにカワイイ女の子連れてますね!新しい彼女ですか?」
クリリンは肘でヤムチャをツンツンとやりながらやらしい顔つきで言う。
「あ、ああ…彼女というか奥さんというか…こいつは…その、あれだ、うん」
ヤムチャは喋りながら頬を赤らめると、語尾にいくにつれて段々と声が小さくなっていった。
「え?何て言いました?声が小さくてよく……」
「あーーーーーーーーーーーーーーっっ!!その子はあの時の……!?!?」
そのとき、突如ベジータの隣にいた女性が大声を出しながらマーリンを指差した。
259SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/29 01:00 ID:qm/c.RRk
【128話】
「…ブルマ、か」
ヤムチャはどこか寂しげな顔でその名を呟く。
マーリンは自分のことを指差しているブルマに気づき、その顔をしばらく見つめていたが、ようやく以前彼女と会った時の事を思い出した。
「どこかで見たことあると思ったら…あの女…。そうか、ソンゴクウと戦う前に少し出てきたあいつだな。あの様子だと、やはり、ベジータというサイヤ人の王子と…」
女の勘は案外当たるもので、マーリンは以前初めてベジータとブルマを見た時から、あの二人はくっつくのではないかと踏んでいたのだ。
どこか勝ち誇ったような顔をし、ブルマを見ながらマーリンは微笑する。
「な…何よ!今笑ったわね!何がおかしいのよ!」
ブルマはツカツカとハイヒールの音をたてながらマーリンに歩み寄っていった。
「地球の女…ブルマ、と言ったかな?お前がそこのサイヤ人と仲良しになってくれたおかげで、わたしとしては非常に好都合だった。礼を言わせてもらうよ…ふふ」
マーリンはベジータを横目で見ながらブルマに向かって言った。
「な…好都合ですって?どういうことよ、それ…!」
おそらく、分かってないフリをしているだけで、マーリンの言う好都合という意味がブルマだけには分かっているのだろう。
ブルマはマーリンの顔を物凄い形相歯軋りしながら睨むが、マーリンは一歩も退こうとしない。
騒がしくなってきた所でようやくベジータがマーリンの存在に気づいたのか、組んでいた腕を下ろしてマーリンに歩み寄り、ザッとブルマの前に出る。
「おい、貴様…!…以前、そこの地球人と一緒に居た、サイヤ人殺し…“サイヤンキラー”のマーリンだな…?」
ベジータにしては珍しく声を荒げて、マーリンに食いつく。
言うまでもなく、そこの地球人とはヤムチャのことだ。
数年ぶりとはいえ、さすがにマーリンはベジータの顔と声を覚えていた。
「ふふ…ずいぶんと懐かしい話をしてくれるな、ベジータ。その件に関しては、とうの昔に手を洗ったのだが?」
興奮気味のベジータに対し、マーリンはそれほど熱くならずに答える。
260SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/29 01:02 ID:qm/c.RRk
【129話】
「おいおい、サイヤ人ゴロシ…って?悟空、ベジータのやつは何言ってんだ?それにあの女の子…なんかブルマさんやお前とも面識あるみたいだし…どういうことだよ?」
クリリンはこの流れについていけず、悟空に訊ねる。
あとで説明する、とだけ悟空はクリリンに言うと、何が楽しいのか口元を緩めながらベジータとマーリンの会話に再び聞き入ってしまった。
他の者もクリリンと同じようなことを胸に思っていたが、話しかけにくいムードで聞き出せない。いきなり現れた女性と、それを連れてきたヤムチャ、初対面と思いきや以前から因縁がありそうな悟空やベジータ…それにピッコロと悟飯もこそこそ話しているし、何か知ってそうだ。
クリリンたちの頭は益々混乱する。
そんな中、ベジータの気がわずかに膨らみ、周囲数メートルの空間が歪みはじめていた。
だが、当然そんな程度で怖気づくマーリンではない。
「フン…まあいい。それよりどうして貴様がここにいる。そして、ここにいる目的はなんだ。答えてもらおうか」
「いちいち説明するのも面倒だ。自分で勝手に想像しろ」
マーリンは言葉少なくベジータに返す。
偶然にも、いつだか自分が言った事のある台詞をそのまま言われてカチンとくるベジータ。
一方マーリンの方もしつこくベジータに絡まれて頭にきてそうな感じだった。
今にも喧嘩が起こりそうなところに、ヤムチャが仲裁に入る。
「はいはいはいはい、そこまでー!ベジータもマーリンも昔のことは水に流そうぜ、せっかく久しぶりにこうやって顔を合わせるんだからさ。あんまり良い思い出とは言えないかもしれないけど…」
「どいてろ、貴様には関係のないことだ。サイヤ人の王子として、この俺がこいつを――」
と、そこで全て言い終わる前に悟空がベジータの肩にポンと手を置く。
261SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/29 01:05 ID:qm/c.RRk
【130話】
「まあいいじゃねーかベジータ。もう手ぇ洗ったって言ってんだしさ。どうしてもってんなら、試合でケリをつけようぜ。戦士らしくよ?」
悟空が宥めると、ベジータは舌打ちし、再びマーリンを数秒睨み、一人控え室のある方向へと向かっていった。
「チッ…!覚えておけ、試合で必ず貴様を叩き潰す。たっぷりと前の礼をしてやるぜ…クソッタレ」
と、捨て台詞を吐きながら。
「やれやれ…恨まれたものだ」
マーリンはその後ろ姿を見ながら、呆れたように言う。
その様子を見てヤムチャもマーリンに声をかけた。
「ははは…あいつ、プライドめちゃくちゃ高いからな。前にお前に負けたこと、そうとうショックだったんだろ。大目に見てやってくれ」
たしかに、ベジータにとっては余りにも屈辱的だった敗戦だった。
悟空とマーリンの決闘に勝手に割り込み、そして数分としないうちにマーリンに捻じ伏せられた。
そして、地球もろとも吹っ飛ばす決死の覚悟でギャリック砲を放つが、マーリンに跳ね返される。
結局は死にそうになったところを、悟空の瞬間移動によって助けられるという、誰がどう見ても恥ずかしいかませ犬でしかなかった。
そのベジータも、あの時点とは比べ物にならないほど心身ともに強くなっているのだが。
だが、ベジータを構うヤムチャにマーリンは納得がいかなかった。
「ベジータはわたしと共にこの星を消そうとしたんだぞ…?わたし自身、もうサイヤ人に対する恨みの念はさほどないのだが…あいつには微塵も好意を寄せれそうにもないな…」
そう言ってマーリンは控え室に向かい歩いているベジータの背中を睨む。
「そう言うなって。あいつ自身、お前がいない間に結構成長したんだよ。家族のために、命と引き換えに魔人ブウを倒そうとしたりな…」
「……。わたしには、関係のないことだ」
マーリンは一瞬何か口ごもったが、そう言って、ベジータを認めようとはしなかった。
262SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/29 01:07 ID:qm/c.RRk
【131話】
「ちょっとちょっとちょっと、あたしを無視しないでよ?!大体アンタとヤムチャはどういう関係なのよ?っていうかアンタ宇宙に帰ったんじゃないワケ?あ…、別に、ぜーんぜん興味なんてないんだけどね、ヤムチャとかアンタなんかに!」
ブルマはしつこくマーリンの耳元でガミガミと喚く。
こんなうるさい女のどこにヤムチャは惚れたんだろうか…と、マーリンは迷惑そうな顔を浮かべながら思った。
と、そこに、ヤムチャがやたらマーリンの近くに立つ。
「それはな…こういうことだよ、ブルマ」
ヤムチャはブルマにそう言うと、その太い右腕でマーリンの体をギュッと数秒抱きしめる。
「…ヤ、ヤムチャ…?何を…」
突然のことにマーリンは戸惑いの声をあげるが、ブルマたちはそれ以上に驚いた顔をしていた。
さすがのマーリンも、人前で抱かれることは恥ずかしいのだろう、普段はクールな表情が少し崩れていた。
そして、ヤムチャはそばに居たシルフを手で招くと、シルフを肩車し始める。
「よっと…俺たち、家族なんだ。こいつは妻でマーリン、こいつは息子でシルフ。これからたまに世話になると思うけど、よろしくな、みんな!」
「え……ええええええええええええええーーーーーーーー!??!?」
ブルマ以外の者たちも、このヤムチャの爆弾発言には驚いていた。
「ヤ、ヤムチャさん…結婚していただか?全然知らなかっただ…。悟空さは知ってたか?」
「あー、オラもついこの前知ったんだ」
「と、父さん…!あの人が地球に来ていることは聞いてましたが、ヤムチャさんの奥さんになっていたなんて聞いてませんよ…」
「わりいわりい、言わねえ方が驚くかなって…。でも、それって悟飯がそんな気にするようなことか?」
「あ、いや…そういうわけじゃないんですけど…」
どことなく顔が赤くなっている悟飯と、それを冷ややかな目で見つめるビーデル。
「悟飯くん、年上が好みなのねえ…」
「いや、ほんとにそういうあれじゃ……ねえ、ビーデルさん!違いますよ!?」
すぐにそれを誤解だ誤解だと言う悟飯だが、ビーデルはそっぽを向いてしまった。
そんなビーデルと悟飯を見て、なかなか絵になるカップルだな…とヤムチャは思う。
263SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/29 01:15 ID:qm/c.RRk
【132話】
「恋愛というやつか…分からない」
ピッコロは一人そう呟くが、誰も聞いていない。
「ヤ、ヤムチャさん!どうして結婚していたことを教えてくれなかったんですか!子供がそれだけ大きいってことは…オレの子供より前ですよね…?」
クリリンがあたふたしながらヤムチャに質問する。
「いやー、はは…。そろそろ話してもいいかな。実はさ…これはもう何年も前の話になるんだけど…――――」
ヤムチャはそこで、初めて仲間たちにマーリンとのことを説明した。
マーリンがサイヤ人に恨みを持っていて、地球にいると言われていたスーパーサイヤ人を倒しにここへやってきたということ。
そして、元はといえば勘違いから始まったヤムチャとの戦い、そしてヤムチャとの修行の日々。
大激戦とも言える、ベジータ、悟空との戦い…その結果と、その後地球を去ったという話。
最後に、ヤムチャが約2週間ほど前に、ドラゴンボールを使って地球へ呼び寄せたということを話す。
大雑把に説明したため、説明自体は5分ほどの軽いもので終わったが、関わった人物以外は全く知らなかった裏のストーリーを知り、一同は信じられない表情を浮かべ、唖然としている。
「ヤムチャ…やーっぱりアンタ、その子とあの時点で“出来てた”んじゃない!!!!!この変態!ロリコン!!」
ブルマは大の大人だというのに、ヤムチャの悪口をバンバンと言う。
ロリコンという単語の意味は分からなかったが、それを気分悪そうに聞くマーリン。
力もなさそうなこの女が何故あんなに威張っていて、そして何故誰もあの女に言い返さないのか不思議でしょうがなかった。
「お…おいおい、何を言ってるんだブルマ。先に気持ちが俺よりベジータに傾き始めたのはお前の方だろ?気付かないと思ってたのかよ…。だから俺はカプセルコーポから荒野に移って一人修行を始めたっていうのに…とんだご都合主義だな…。そして、俺はロリコンじゃないっ!」
ヤムチャはすかさず反論する。
ロリコンじゃないというところを若干強調して。
264SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/29 01:21 ID:qm/c.RRk
【133話】
「そうですよー、ブルマさん。せっかくヤムチャさんに奥さんと子供が出来たって言うのに、その言い方は…」
「なによなによ!私が悪いって言うの!?大体クリリン…アンタもアンタよ!それになんなのよ、その髪型は!」
「えええ?そこでオレにきますか?しかも…髪型は関係ないじゃないですか…これ結構イケてると思ってるんですけど…」
クリリンが仲裁に入るが、ブルマのとばっちりを受けて落ち込んでしまった。
ヤムチャとブルマの間に嫌な空気が立ち込める。
睨み合う二人だが、周りの者は、やれやれまた始まったよ…と言わんばかりの呆れ顔だった。
「大根だかラジコンだかしらねえけど、人が集まらねえ内にとっとと受付しちまおうぜ。そのために早くきたんだしよー」
悟空が受付をするために並んでいる人だかりの最後尾に立ちながら、こちらに向かって言葉を投げかける。
「フン…。大体ヤムチャやアンタが出たって孫くんやベジータに勝てるわけないんだからね!」
ブルマは毒づくが、ヤムチャは全く気にも留めずに言い返す。
「確かにそうかもなあ。でも、出場しなければいつまでたっても勝てる可能性はゼロだ。けど、出場すれば…勝てる可能性は、少しはある…だろ?それが例え万一の可能性にしても、な。違うか?ブルマ」
ヤムチャがそういうと、ブルマは悔しそうに黙り込んでしまう。
「ふふ…大人になったな、ヤムチャ」
マーリンがその隣で声をかける。
「あ、ああ。……って、お、お前がそれを言うか!?」
そのヤムチャの突っ込みで、マーリンとヤムチャは大笑いをする。
ブルマはその様子を複雑な表情で見つめていた。
「もう、勝手にすればいいじゃなーい!精々恥じかかな………あれ?トランクスは?」
265SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/29 01:23 ID:qm/c.RRk
【134話】
一方、ここは会場の裏…いわば普段は誰もいない場所だ。
こちらでも小さな小競り合いが起きていた。
「…で、何?いきなりこんなトコに呼び出してさ」
「なんでもねーよ。ただ、オマエに一つ、いい事を教えてやろうと思ってさ」
黒髪の少年と薄い紫の髪の少年が対峙していた。
どうやら薄い紫の髪の少年が黒髪の少年を呼び出したようだ。
黒髪の少年の方が少し上背があるように見える。
薄い紫の髪の少年は続けた。
「オマエのママ、オレのパパに喧嘩売ってるのか知らないけど、ああいうのマジでやめたほうがいいぜ?殺されるから」
「…お母さんが?っていうか、キミのパパ…お父さんって誰だよ」
「鈍感だなあ。ベジータって呼ばれていた人に決まってんじゃん」
「…ベジ…?ああ、あの変わった髪型の人か…」
「…!あ、あれはなあ…生まれつきあーいう髪型なんだよ!」
「ふうん…で、何が言いたいの?」
黒髪の少年はだるそうに受け答えする。
「いやだからさ…」
その淡々とした態度に半ば諦め気味の薄い紫の髪の少年は、ため息をついて続ける。
「…はー、もういいや!おい、オマエ名前なんていうんだ?俺はトランクスだ」
薄い紫の髪をした少年、トランクスが言う。
「さっきお父さんが言っただろ?…シルフ。宇宙最強のお母さんがつけてくれた名前だ」
黒髪の少年、シルフは目を輝かせながら誇らしく自分の名前をトランクスに告げる。
どうやらこの小競り合い(?)は、マーリンのベジータへの接し方が酷かったため、トランクスがシルフを経由してマーリンに警告をしていたようだ。
「宇宙最強?オマエのママが…?…おいおい、とんだ勘違いだぞ、それ」
「な…なんだと!」
今まで冷静だったシルフの態度が変わり、気迫のこもった声を上げる。
266SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/29 01:31 ID:qm/c.RRk
【135話】
トランクスは一瞬びっくりしたが、すぐに話を続けた。
「オマエがどこの星からきたか知らないけどさ、地球にはまず悟飯さんがいるし、悟空さんもいる。そしてパパやピッコロさん…それに俺や、悟飯さんの弟の悟天っていうのも居るんだけど、そいつも普通の人間よりカナリ強いんだぜ?」
「…へー、ズラズラ名前あげられてもよく分からないけど、ゴクウっていう人はお母さんが前に倒したって言ってたよ」
「…え?マジで?」
トランクスの頬を一筋の汗が伝った。
超3化した悟空の強さは父、ベジータを遥かに凌ぐことは知っているし、その悟空をあのどこにでもいそうな女性が倒せただなんて信じられなかった。
それはつまり、マーリンはベジータ以上に強いということを意味する。
「へへ。ほんとだよ?」
だが、このシルフという少年の言葉も嘘だとは思えないし、トランクスの頭が混乱してきた。
「そんな馬鹿な…。お、おい、それっていつごろの話だ?最近?」
トランクスがうろたえながらシルフに尋ねる。
するとシルフは少し考えこみながら答えた。
「んー、ぼくが生まれる前だから、けっこー前だね。この星で言うと10年ぐらい前かな、多分」
それを聞くと、トランクスはホッとため息をつき、汗を拭った。
「なんだよ、そんな前の話か。そんなこといったら、クリリンさんの奥さんだってお父さんたちより強かった時期もあったし、全然参考にならないな」
「確かに前の話だけど、今もお母さんやお父さんが一番強いよ!すごい修行してたし!」
「お父さん…?ヤムチャさんのこと、か…まあ、何言っても無駄そうだしそう思っておけばいいじゃん。じゃ、俺も受付してくるから。またな」
トランクスはそう言いながらシルフに背を向ける。
「…すぐに分かるさ」
シルフはボソッとつぶやく。
当然トランクスにもそれは聞こえていたが、聞こえていない振りをして小走りで去っていった
「ちぇ…なんだよ、あの自信。ヤムチャさんやあの女の人がパパや悟空さんより強いわけないじゃん…。気もてんで大したことないし…」
トランクスはそう小声でつぶやきながら、受付場へと向かうのであった。
267SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/29 01:40 ID:qm/c.RRk

【136話】
そして、戦士たち全員が受付を済ませ、予選のトーナメント表が貼り出された。
今回の予選は前回のような“パンチ測定式”ではなく、“組み手式”での予選だ。
理由はいたってシンプルで、前大会のような得体の知れない連中にパンチ測定器を壊されてしまっては、予選に時間がかかりすぎてしまうからである。
つまり、言ってしまえばベジータのせいだ。
人ごみの中、そのトーナメント表を眺めるヤムチャたち。
今大会はAからHまでの8ブロックで予選トーナメントを開き、各ブロックで最後まで勝ち残った者が本戦トーナメントへ進める。
当然ながら、一般人なんて目もくれない悟空たちだが、身内と予選の段階であたってるのではないかとヒヤヒヤしながらそのトーナメント表を見つめていた。
「悟空やベジータと当たってませんように……!」
クリリンが祈るように声を漏らしながら総勢128名の名前の中から自分の名前を探す。
その隣でヤムチャもドキドキしながら自らの名前を探していた。
「…んー…なかなか見つか…ら…あ、いた!76番だ。Eブロックだな!」
ヤムチャが自分の名前を見つけ、子供のように大きい声をあげる。」
そして、すぐさま同ブロックに身内がいるかどうかだけ確認する。
「む…当たっちまったか」
どうやら2戦目で今必死に名前を探しているクリリンとあたるようだ。
昔なら手ごわいと思った相手だったが、不思議とヤムチャに恐怖心はなかった。
「わたしは122番だ。予選でわたしとヤムチャは当たらないようだな」
マーリンが髪の毛をかきあげながらヤムチャに言った。
しかし、ヤムチャがマーリンのブロック…Hブロックを見てみると、そこには恐るべき名前があった…。
「115番…じゅ……18号!?マーリン、お前18号と決勝で当たるぞ!」
「………あの…すまない、誰?」
マーリンが人差し指で頭をかきながらボケると、ヤムチャは思わずその場でずっこけた。
268SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/29 01:42 ID:qm/c.RRk
【137話】
「喫茶店で話したじゃねーか!ほら、俺がお前と初めて会った時に修行していたのは、18号とかを倒すためだったって」
「そんなこと言われても…わたしは顔や声もイメージできなかったし…その場で名前を全部覚えるというのは難しい…」
ヤムチャは仕方なさそうにふう、とため息をつくと、再び説明を始める。
「…18号はドクターゲロが作った人造人間で、だいぶ昔だけど、超サイヤ人になって悟空と互角以上の強さだったベジータが敵わなかったぐらいの相手だ。そして今はクリリンの奥さんでもある」
ヤムチャが指を立てながら説明すると、マーリンはふむふむと頷いた。
「なるほど…つまり、あの時点で戦闘力約500万だったソンゴクウより、遥かに強い人物…という認識でいいのだな?」
そう言ってマーリンは指の骨をバキバキと鳴らし、激しい戦闘を待望してなのか、口元が緩む。
「ああ、そうだな。“あの時点”の悟空よりは、ね…」
見慣れているヤムチャでさえそんなマーリンが怖く感じるぐらいで、思わず苦笑いをしながら答える。
さすがにマーリンはサイヤ人の血を引いているだけのことはあるなと感じざるを得ないヤムチャであった。
「で、そのジュウハチゴウは今どこにいる?」
顔と名前が一致しないので分かるはずがないのだが、マーリンはキョロキョロと辺り見渡す。
「んーと…あ、あそこだ」
ヤムチャは20メートルほど先で、一人人ごみから外れ壁に寄りかかっている、如何にも冷徹そうな目をした一人の女性を指差す。
「あいつ、か。不思議だな…何も力を感じない」
「そりゃそうだ、あいつは人造人間だから俺たちの言う“気”はないんだ。でも、エネルギー波とかは撃てるみたいだけどな…俺も詳しいことは良く分からん」
「気を持たないだと…?どういうことだ、それは生物学的におかしいのではないか?」
「だから、俺に言われてもわかんねえよ。あいつを作ったヤツは殺されちゃったし、今となっては謎のままだ」
マーリンは再び18号を凝視する。
誰に対しても冷たそうなその青い瞳は、どことなく自分と似ている感じがした。
269SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/01/29 01:46 ID:qm/c.RRk
>>255-257さん
励ましの書き込み、ありがとうございます。
時間があればもっとペースを上げられるのですが…なかなか難しいところでして…。

それでは、おやすみなさい。
270Classical名無しさん:09/01/29 19:49 ID:PCJdX7B.
ペースは遅くても良いから最後まで書き上げてください
好きな作品は結末まで読みたいので
ぜひお願いします
271Classical名無しさん:09/02/01 14:31 ID:EEJQtV8A
ヤムチャwwww
272Classical名無しさん:09/02/03 02:41 ID:7oeHVI86
おおぉ遂に武道会にまできましたね!1ヶ月くらい前から
読みすすめてたから感慨無量だw最後まで応援しています!
お仕事頑張ってね!


それにしてもヤムチャがヤムチャらしくていいねえ。
273Classical名無しさん:09/02/05 16:55 ID:0MMhCp/2
クロフネ
274SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/06 01:33 ID:cWK007Rg
【138話】
そこへ、漫画のようにどたばたと足音を立てながらヤムチャのそばへクリリンがが駆け寄ってきた。
おそらく自分の名前を見つけたのだろう。
「ヤムチャさん!俺とヤムチャさん予選で当たっちゃうみたいですよ…最悪ですよねー、本戦前に身内と当たるのって…」
どこか面白おかしそうにヤムチャに話しかけるクリリンに対し、ヤムチャも笑い返す。
「ははは、そうみたいだな…。まあ仕方ないだろ、こればかりは」
「ですよね…ったく、チャオズとか居れば超能力でなんとかなったかもしれないのに…」
ヤムチャと共に苦笑いをするクリリン。
ふと、マーリンからの視線に気付き、会釈をしながらクリリンは続ける。
「あ、マーリンさん、でしたっけ?初めまして、俺はクリリンって言います」
「…クリリン、か。覚えておこう。ヤムチャがいつも世話になっている」
そう言うマーリンに対し、クリリンはそんなことないとでも言わんばかりに顔の前で手を横に振る。
「いやー、それにしても、ヤムチャさんはこんなカワイイ子を放っておいて、この数年間何してたんですかねえ。もっと早くドラゴンボールで呼び寄せてあげればよかったのに」
何を想像しているのか分からないが、クリリンはやらしい目付きでヤムチャを見る。
お前と違ってひたすら修行してたっつーの、とヤムチャは心の中で幸せボケしてるクリリンに向かって突っ込みを入れておいた。
その時、何者かがいきなりクリリンの耳を掴むと、グイグイと引っ張っていく。
クリリンの耳を無造作に引っ張れる人物といったら一人しか居ない…先ほどまで壁に寄りかかってた女性、18号だった。
「てててててっ!!な、なんだよ〜、18号!」
「いつまでも油売ってんじゃないよ、クリリンのくせに」
マーリンは初めてこの女性の声を聞いた。
地球にずっといるヤムチャでさえ久しぶりに聞いた気がする。
「何の用だよ、18号」
「勘違いするな。別にお前に用なんてない」
「じゃあなんで…ってててて…!」
そのまま18号は表情を変えずに無言でクリリンの耳を引っ張っていき、見えないところへと消えていった。
275SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/06 01:39 ID:cWK007Rg
【139話】
マーリンは18号の行動に不思議そうに見入っていた。
「…オホン、よく聞けよマーリン。あれはな、“ツンデレ”と呼ばれるものだ」
すかさずヤムチャの余計な解説が入る。
「ツンデレ……?聞いたことがない」
「そりゃ、最近出来た言葉だからな。ちなみにマーリン、お前もツンデレっぽいところあるぜ。いや、むしろツンツンデレツンかな?」
ヤムチャは笑いを堪えながらマーリンに言う。
バカにされているような気がして、なんとなくヤムチャが腹立たしいマーリン。
「訳の分からんことを…そういうヤムチャは、よく分からないがロリコンというやつではないのか?」
ヤムチャは今日二度目のずっこけを見せた。
マーリンはそんなヤムチャが面白くて、つい笑ってしまう。
そして、これからはヤムチャと何かあるたびロリコンと言ってやろうと密かに決心していた。
自分ではそんなつもりないヤムチャであったが、確かにマーリンとはかなり年齢差がある。
いや、実際はそんなことはなく、マーリンの方が年上なのだが…。
実年齢だけ言ってしまえば、ヤムチャは42歳、マーリンは約48歳。
つまり、マーリンの方がヤムチャより年上なのだが、彼女は若い頃、星と星を行き来している間に長期的なコールドスリープ…いわゆる“冬眠”状態が頻繁にあったため、身体的な年齢はヤムチャよりずっと若く、26歳前後の年齢だということになるのだ。
ヤムチャも40歳を過ぎたとはいえ、見た目的には20代半ばから30代前半にも見えるぐらいの若さなので、そういった意味では外見的に中々釣り合っているカップルではあると言っていいだろう。
もちろん、ヤムチャにとっては肌が弛んでる40過ぎたオバサンよりは、ピチピチの若いお姉さんの方が嬉しいわけで、マーリンの冬眠状態が長かったのが好都合だったのは言うまでもない。
276SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/06 01:42 ID:cWK007Rg
【140話】
(見た目はあれだけど、実際はマーリンの方が年上なんだぞ…気にするな気にするな!俺は断じてロリコンじゃない…!それにマーリンは初めて会った時みたいにもう見た目も別に幼くないし、
…いや、俺は何を言っているんだ?そしたら当時はロリコンだったって認めることになっちまうじゃないか!ええい、実際はあいつの方が年上だから、見た目とかは関係なくて……って、
あー!もう訳が分からなくなってきた!!)
ヤムチャは心の中で必死に自分に言い訳をしながら、支離滅裂な自分の考えに収拾がつかなくなってきた。
目の前でいきなり唸りだしたヤムチャをマーリンは不気味そうに見つめる。
その冷ややかな視線に気付き、ヤムチャは我に返った。
「……あ、あのさマーリン!実はな、お前用の胴着を用意してあるんだ」
ヤムチャは場の空気を変えるために咄嗟に話題を変える。
「何…?いつの間に…わたしが地球にきてから、ずっと一緒にいたのに…」
ヤムチャの言葉により、マーリンの目の色が変わった。
「お前が寝てる間に、何度か街の服屋にいって新調してもらったんだ。もちろん、デザインは全て俺が考えたものだけどな。ほら、このカプセルの中に入ってる」
そう言ってヤムチャはマーリンにカプセルを放り投げる。
それをパシっと素早くキャッチするマーリン。
「もうあけて見てもいい…?」
マーリンは早く中の服を見たいようで、うずうずしながらヤムチャに問いかける。
「待った待った。どうせ今カプセルをあけてもここじゃ着替えられないし、女用の控え室であけることだな」
ヤムチャはそう言って女性の控え室がある方向を指差す。
するとマーリンは不服そうな顔をしながら言った。
「女用ということはヤムチャとは別の場所なのか?面倒だな、同じ場所でいい」
「バ、バカか!俺以外にもたくさん男がいるんだぜ?そいつらに着替えてるところを見られることになるぞ」
「別にわた――」
「俺がイヤだっつーの!お前の裸が他のやつらに見られるってのは!」
ヤムチャは顔を赤くして断固拒否した。
むすっとしたマーリンだったが、仕方なさそうに女性用の控え室に向かう。
「ったく、あいつはもうちょっと恥ずかしがるべきだろ…」
ヤムチャは胸を撫で下ろし、ぶつぶつと呟きながら反対側の男性用控え室の方へと向かっていった。
277SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/06 01:47 ID:cWK007Rg
【141話】
ヤムチャが控え室に入る頃には、既に選手の大半がそこに集まっていた。
あらかじめ胴着や戦闘服でここへやってきた悟空たちはいなかったが、大体80人ぐらいの選手が着替えたり準備運動したりして、予選に備えていた。
「さて、この胴着を着るのも久々だな…」
そう言ってヤムチャは自分が用意してきた着替えをカプセルから取り出す。
その胴着は、いつものように橙色の【亀】という文字が刺繍されている胴着でなかった。
その代わりに、腹部辺りに、大きくはっきりと【樂】の文字が刺繍されていた。
胴着の上は緑色、下は橙色、そして、同じ橙色のスカーフのようなものと、青いリストバンドに白い帯。
そう、これは悟空と武天老子に弟子入りする前までヤムチャが着ていた胴着である。
ヤムチャはパッパとそれに着替え、ギュッと帯を締めると、その胴着を着た自分の姿を鏡で確認した。
「うんうん、なかなかイケてるじゃないか」
一人で納得すると、ヤムチャは先ほどの会場に戻る。
そろそろ自分の試合が始まる時間だ。
参加者が多いだけに、午後からの本戦に間に合わせるため、トーナメント表を貼り出した10分後には試合をするとの事。
ヤムチャが予選会場に戻った頃には、既に戦いを始めているブロックもあるようで、激しい戦闘の音や掛け声が聞こえた。
『Eブロックのヤムチャ選手!そろそろ試合が始まります、おりましたら舞台へお上がりください』
ヤムチャの耳にアナウンサーの声が入る。
辺りを見渡してみるが、マーリンの姿は見当たらない。
おそらくまだ着替えているのだろう。
「まあいいや…マーリンが来る前に終わらせちまうかな…っと!」
ヤムチャはグッと足に力をこめ、軽く跳躍すると、クルクルと体を回転させながら舞台へ着地する。
278SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/06 01:49 ID:cWK007Rg
【142話】
「オォーー!」
「なんかスゲーぞ、あいつ!」
「頑張ってー!マムチャ選手ー!」
ヤムチャのパフォーマンスを見て、周りの選手や観客から歓声があがる。
「おとうさーーーーん!頑張ってーー!」
シルフも舞台のすぐ近くでヤムチャを応援していた。
「今のはファンサービスだ。あと、俺の名前はヤムチャね…。マムチャって誰だよ…」
果たしてヤムチャにファンがいるのかどうか疑問だが、そんなおちゃらけてるヤムチャの前に、対戦相手が現れた。
ヤムチャより、一回りも二回りも体が大きく、全身白い衣装に覆われている…ように見える。
が…衣装に見えたそれは衣装ではなかった。
「ヤムチャ…前に聞いたことがあると思ったら、お前だったか。また俺と戦う羽目になっちまうなんて、運のない野郎だぜ」
「………へ?」
「どうやって甚振ってほしい?腕の骨を折って欲しいか?それとも足の骨か?殺さなければ勝ちらしいからな」
「……えっと、ところでお前怪我してないか?全身包帯巻いちゃって…」
「…これは俺の正装だ。まさかお前と対戦する機会がまたこうやって訪れるとは思っても見なかったぜ。それにしても久しぶりだな」
大男はいかにも自信ありげに仁王立ちしている。
どうやら、ヤムチャと以前戦ったことがあるらしい。
だが、ヤムチャのほうは覚えていないようで、ポカーンとしていた。
「あ…ああ。久しぶり……なんだよな…?お、お前は………えーと……あれだ、あの…なんだっけ………ゾンビ男…いや、違うな…ゾンビマン!キャプテン・ゾンビ!!」
ヤムチャは名前を思い出せなくて、この場で適当に命名した。
「デタラメ言ってんじゃねえ!ミイラくんだっ!」
…センスのかけらもねえな、とヤムチャは思う。
ヤムチャの命名を見る限り、人のことを言えないのはもちろんのことだが…。
279SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/06 01:51 ID:cWK007Rg
【143話】
「お前…俺に負けたの覚えてないのか?占いババ様のところで戦ったじゃねーか」
「占いババ…?あ…、あー、いたいた。確かそんなのいた」
ヤムチャはようやく思い出したのか、手をポンと叩く。
「…まあいい…。すぐに黙ることになるからな」
「ほう、お前がくたばるからか?」
ヤムチャがミイラくんを挑発すると、今まで薄ら笑いをしていたミイラくんの表情が曇る。
「俺を怒らせてそんなに痛い目にあいてえか?」
「どうでもいいけど、ゴチャゴチャ言ってないで、試合でお前さんの実力を示せよ。それともお前は口喧嘩の試合でもしにきたのか?」
「…っ」
ミイラくんは歯を食いしばりながら拳を強く握っていた。
ヤムチャは相手をなめきっているのか、無防備に棒立ちしている。
『それでは、ヤムチャ選手、ゾンビ男選手!試合を始めてください!』
会場にアナウンスが響く。
その瞬間、ミイラくんは猛烈な勢いでヤムチャに突進していった。
「俺は…ゾンビ男じゃねえっ!ミイラくんだっ!!」
体重300キロ近くあろうかという巨体が、一歩進むたびにドスンドスンとどでかい足音をたて、その大きな拳がヤムチャの顔面に迫る。
このままでは間違いなくヤムチャの顔面にその拳が直撃し、顔は文字通りぺちゃんこになるだろう…もし、ヤムチャが普通の人間ならば。
だが…ヤムチャは笑っていた。

ドスンッッ!!

物凄い衝撃音が聞こえ、会場の者は思わず目をそむける。
280SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/06 01:52 ID:cWK007Rg
【144話】
そして、数秒後に恐る恐る舞台上に目を向けると、そこにあった光景は…まるっきり想像と逆のものであった。
ヒットするかに思われたミイラくんの拳は空を切っており、逆にヤムチャの拳がミイラくんの腹部に深くめり込んでいた。
「あげ…はが……っ…!!?」
ミイラくんは声にならない声をあげて悶絶し、そのまま白目をむいてしまう。
「…大丈夫か?一応、おもいっきり手加減しておいたんだが…どうやらそれでも効きすぎちまったみたいだな」
ヤムチャはそう言いながら、ミイラくんの腹部からゆっくりと拳を離す。
「審判、どうなんだ」
ヤムチャは気絶しているミイラくんの体を支えながら審判に言った。
「あ……失礼致しました!息はあるようですので…ヤ、ヤムチャ選手の勝利ィィ!!」
観客や選手から歓声が上がる。
ヤムチャはその歓声にこたえるかのように、わずかに手を上げると舞台から降りていった。
「まあ、勝って当たり前なんだけどね…」
自嘲気味にそう呟くが、どうやらこの歓声にはまんざらでもなさそうだ。
「ヤムチャ」
後ろから自分を呼ぶ声が聞こえる。
ヤムチャが振り向くと、そこにはさきほど渡した胴着に着替えたマーリンの姿があった。
腹部には【樂】の文字が印字されている、ヤムチャとほとんど同じデザインだ。
違う点といえば、ヤムチャの胴着より露出度が高いところぐらいだろう。
「体ばかりでかくて、まるで大したことない相手だったな…。生意気な口を叩くからそこそこ腕が立つと思ったのだが」
マーリンは担架で運ばれてるミイラくんを見ながらため息をつく。
「ま…普通の地球人はこんなもんさ。で、マーリン…俺があげた胴着はどうよ?」
「ふふ…サイズもぴったりだし、このデザインも気に入っている。ありがとう…ヤムチャ」
マーリンは目線を少し逸らしながら、恥ずかしそうにヤムチャに礼を言った。
「はは、そいつはよかった!深夜お前が寝てる間にこっそりスリーサイズ測っておいて正解だったな…」
「何か、言った?」
「あ、いや、なんでもない…です」
ヤムチャは誤魔化すように自分のリストバンドを直すフリをしていた。
マーリンは機嫌がいいのか、ふうん、と大して気にも留めず他の舞台上の地球人が行っている試合を見つめている。
281SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/06 02:04 ID:cWK007Rg
>>270さん
いつも応援ありがとうございます。
かなり描写を細かく書いているので、300話以上になりそうな感じですが…最後まで頑張ろうと思います

>>272さん
天下一武道会に来るまでに、かなりの話数になってしまいました…申し訳ない。
これから、ヤムチャやマーリン以外の人もバンバン登場するようになります。
仕事も頑張ります…適度に。
ヤムチャがヤムチャらしいと言っていただけて光栄です!
私のストーリーの中のヤムチャは、実は怠けていたわけじゃなくて、
セル戦から魔人ブウ戦の間まで、ずっと修行に励んでいた…という設定にしています。
なので、原作のヤムチャよりちょっと真面目で強めなイメージかもしれません。
というか、私はヤムチャを活躍させたいので、勝手にちょっと強めにさせていただきます(笑)

ところで、いつだか言っていた戦闘力表が完成しました。
が、どこにアップすればいいのか迷い中。
画像アップできる環境があればいいのですがね…。
どこかいい所ありますか?
282Classical名無しさん:09/02/06 02:49 ID:aZYSAK7g
連貼りお疲れ様です。時間があるときじっくり読ませていただきます。

ttp://www.age2.tv/
ここの1M二次元ローダーとかどうでしょうか?
結構長生きで7ヶ月ぐらい保持されます
283Classical名無しさん:09/02/07 22:43 ID:EwZfv87M
乙です。クリリン戦期待してます。
284 ◆Nt3ni7QiNw :09/02/09 12:42 ID:Cy99rhsU
テスト
285 ◆Nt3ni7QiNw :09/02/09 12:47 ID:Cy99rhsU
第九話「役立たずのヤムチャ達648人+(320人)」

「いいかげんしろ孫悟空。どこまで行く気だ」
町から遠く離れたところで戦うとして飛んでいる悟空達に年寄りの人造人間が言う。
「ここがいい。この場所にしろきさまらには選ぶ権利などないのだぞ」
俺達に選ぶ権利がないだと?人は誰でも平等だろーがとヤムチャ達は思った。
だが声出したら殺されそうなので黙っておくことにした。
スタタッ、Z戦士達と人造人間が地面につく。
(ちい・・・高原ではあるがまわりは岩山に囲まれている・・・
いざという時は岩にかくれて闘うという計算か・・・こいつに考えてやがめる・・・)
ピッコロが周りの状況を見て冷静に思った。
(周りに人々はいない。なんだあいつらけっこういい奴らじゃん)
ヤムチャ達はおもっいきり勘違いしていた。
次話「とびあがる天津飯!セリフがあまりないヤムチャ達648人+(320人)」に続く
286 ◆Nt3ni7QiNw :09/02/09 12:48 ID:Cy99rhsU
第十話「とびあがる天津飯!セリフがあまりないヤムチャ達648人+(320人)」
「さあ、闘う前に教えろ・・・なぜオラたちのことを知ってるんだ・・・」
悟空がいう。だが天津飯は悟空がただ飛んできただけなのに
息をきらしていることに疑問を思った。頭に育毛剤をすりこみながら。
年寄りの人造人間が話した。悟空の事をずっと偵察していたこと、ピッコロやベジータとの
闘いま時も偵察していたということ、
悟空がレッドリボン軍を滅ぼしてからずっと研究をしていたということを。
それって、プライバシーの侵害じゃ・・・ヤムチャ達は思った。
そして年寄りの姿の人造人間は20号、太った人造人間は19号らしいということが分かった。
人造人間達はナメック星での闘いはスパイしてなかったらしい。
それを聞いて悟空はおめえらの負けだといって
ニヤリと笑い超サイヤ人に変身した。
「なるほど・・・たしかにかなりのパワーアップを果たしたようだな」
20号が言う。しかし人造人間達は悟空を余裕で倒せると言った。
「あ そう。じゃあ、さっそくその強さを見せてもらおうかな。そりゃっ!」
悟空が19号という人造人間に飛びかかった。
「うわっ!育毛剤が目に!」
ちなみに育毛剤が目が入った天津飯はあまりの痛さに飛びあがった。
次話「どうした孫悟空 ついでにヤムチャもどうした648人+(320人)」に続く
287Classical名無しさん:09/02/09 20:31 ID:DKjI19Ls
ヤムチャ1000人も再開してる。乙です7
288SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 01:50 ID:6T/uSG6w
【145話】
「お父さん、あんな大きいやつを軽々気絶させちゃうなんて…やっぱり凄いや!」
シルフがヤムチャの足元にしがみつきながら言った。
「はは…ありゃ見かけ倒しだからな。シルフでも勝てるぞ、タブン…」
「え、ほんとに?」
「ああ、おそらくな。いいか、ああいうデカイのってのは大体大振りで攻撃を仕掛けてくるんだ。だから基本的にはカウンターを返すイメージで――」
ヤムチャがシルフに熱弁している間に、マーリンは静かに屈伸運動などの柔軟体操をしていた。
『Hブロック122番、マーリン選手、予選第一試合がまもなく始まります。おりましたら舞台の方までお上がりください。繰り返します―』
アナウンスが入ると、マーリンはヤムチャに背中を向けた。
「いよいよわたしの番か。瞬きする間もなく終わらせてやろう…」
マーリンはそう言って、いつもとは違う戦闘体勢の厳しい顔付きになる。
そのただならぬ表情が目に入り、思わずヤムチャがシルフへの熱弁を中断した。
「お、おいおい…思いっきり手加減しろよ?死んじまうからな…」
「分かっている」
心配するヤムチャだったが、マーリンもそれぐらいのことは心得ていた。
どうやって相手を倒そうか考えながら、マーリンは舞台への階段を上っていく。
舞台に上がってからも、マーリンは顎に手を当てながら、考え込んでいた。
対戦相手は既に目の前にいるが、それには目もくれていない。
『それでは、マーリン選手、イズール選手!試合を始めてください!』
「へっ、初戦の相手は女かよ!けっけっけ、しかもびびって戦おうとすらしてねえ。調子狂っちまうな」
見るからに脇役っぽい男が品のない声をあげると、ようやく対戦相手…イズールがマーリンの視界に入る。
そして、無言でイズールを睨み始める。
「イズーーールーー!手加減してやれよーー!」
「イズールの奴、美味しい相手もっていきやがって…羨ましいぜ」
「なあ、この試合お前はどうなると思う?」
「何いってんだ、言うまでもねえだろ。20秒…いや、10秒でイズールがあの女をノックアウトしちまうさ」
Hブロックの周りには他のブロックより人だかりが出来ていた。
このイズールというのは、どうやら一般人の間ではちょっとした有名人らしい。
289SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 01:52 ID:6T/uSG6w
【146話】
その観客の声に応えるかのように、得意げにステップを踏みながらパンチの素振りを繰り出すイズール。
「ああ?何黙ってんだよ?…しらねーなら教えてやろうか?俺はこの若さで獅子牙流空手25段、次世代の格闘王と言われているイズールってもんだ。今日はミスターサタンを倒して文字通り世代交代してやろうかってところで…」
自慢げに話すイズールだったが、マーリンは全く話を聞いておらず、黙ってスッと人差し指をイズールに向ける。
「お、なんだ?俺に指なんて指しやがって…やっと戦う気になったか?っつーかお前結構イイ女じゃねえか…へへ、この際わざと負けてやるから試合のあと会場の裏でイッパツ――」
「不快だ、冗談は顔だけにしろ」

ッベチンッッッ!

弾けるような音が聞こえたと思うと、その瞬間突風が吹き、イズールが後方20メートルほど吹っ飛び、場外に落ちた。
前歯は2本とも折れていて、既に意識はない。
会場は何が起こったかわからず、静まり返る。
『な、なんと…本大会優勝候補と言われたイズール選手…ですが、勝手に後ろに吹っ飛び、場外に落ちたため、この試合はマーリン選手の勝利となります…』
「何が起こったんだ…まさかあの女が…?」
「いや、そんなはずはねえ!あの女は一歩も動いてないぞ!」
一時静まり返っていた会場だったが、暫くするとざわつき始め、やがてイズールの登場時以上に騒がしくなる。
「手加減しろって言ったのに…。まあ、死んでないみたいだしいいか…」
人ごみから少し離れたところで、ヤムチャがぼそりと呟いた。
「お父さん、今何が起こったの?全然分からなかった」
シルフが興味深そうにヤムチャにたずねる。
「…今のはな、デコピンだ」
「デコピン…あの、指でやるやつ?」
シルフは指でデコピンのモーションをしながらヤムチャに再度確認する。
「ああ、まさにそれ」
「でも、お母さん相手に触れたようにはみえなかったけど…」
「そりゃ当然触れてないんだから、見えるわけがない」
そのヤムチャの言葉で、シルフの頭に“?”マークが浮かぶ。
290SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 01:53 ID:6T/uSG6w
【147話】
相手に触れず、デコピンをするという意味がイマイチ掴めなかった。
「うーーん…」
「シルフ、一ついいことを教えてやる。空気だって歴とした物質なんだぞ。当然、触れることも出来る」
頭を悩ませているシルフに、ヤムチャはヒントを出す。
「空気…物質……あ、わかった!高速でデコピンをすることによって、空気を前に飛ばして相手にぶつけたんだ!」
「その通り。いわゆる、軽い衝撃波みたいなもんだな」
そう言って、ヤムチャは誰かが飲んでポイ捨てしてあった空き缶を見つけると、十数メートル離れた所からマーリンと同じようにデコピンでパンパンとそれを打ち抜いて見せた。
「ま、こんな技もあるってわけ」
シルフは感動的な目でその様子に見入っていた。
「全く…あと何回あんなようなのと戦えばいいんだ……」
マーリンが不満を漏らしながらヤムチャとシルフのほうに歩み寄ってきた。
「あと3回勝てば予選通過だ。まあ、お前んとこは18号以外問題ないだろうな…」
ヤムチャがトーナメント表を見ながら答える。
「ヤムチャは、ジュウハチゴウと戦ったことはあるのか?」
先ほどからやたらと18号を恐れるヤムチャに、マーリンは疑問を問いかけた。
「いんや。ただ、18号より弱い20号とは戦ったこと…っていうか、殺されかけたことはある。あれはマジで危なかったな…」
「……。どんな風に…?」
「手で胸を貫かれた。心臓を貫通していたから、本当に死ぬかと思ったぜ」
「……」
「まあ、これは俺が油断してたっていうのもあるけど、あの時の俺じゃ20号とガチで戦っても勝てなかったろうな、絶対…。ピッコロも油断して殺されかけたって聞いたし」
マーリンは黙ってヤムチャの話を聞いていた。
「で、その20号をあっさりとやっつけちまったのが、20号が作り上げた自分より強力な人造人間…17号、18号なんだ」
「ということは…生みの親を…殺したのか」
マーリンは震えるような声で言う。
怒りなのか、悲しみなのか、はたまた別の感情なのか、その表情からは読み取れなかった。
291SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 01:56 ID:6T/uSG6w
【148話】
「いや、それはちょっと違うな。あいつらは元々人間ベースの人造人間だから、普通に地球人として家庭はあったはず。
それを、20号、つまりドクターゲロに奪われて、本人の意思と関係なく改造されたから、人造人間化しても20号を恨んでいたんだと思う」
ヤムチャは詳しい話を知っているわけではなかったが、自分なりの推測でマーリンに人造人間たちの成り行きを説明する。
「人造人間は冷徹な殺人鬼だとヤムチャから聞いていたのだが、どうやらワケありのようだ…な」
マーリンは意外そうな顔を浮かべながら答えた。
「ああ…。……で、話を戻すけどさ!」
同情するかのように、顔を曇らせているマーリンを見て、ヤムチャは気を遣うように明るく話を戻す。
「さっきも言ったが、18号ってのは超化したベジータがスタミナ切れでコテンパンにやられたってぐらいだ。前に戦った悟空の倍…以上…強いと思っていい」
人造人間は気を持たないため、戦闘力のように数値化するのは難しい話だが、超化した昔のベジータの戦闘力を仮に900万以上だとすると、それより僅かに上…おおよそ1000万以上はあると言っていいだろう。
時代が時代なら、全宇宙最強を名乗ってもいいレベルの強さだ。
「まあ、大丈夫だとは思うけどな…。一応、注意しとけ」
それに対し、マーリンは小さく頷くだけだった。
会場は予選だというのに、既にお祭り騒ぎのように盛り上がっていた。
中でも、各ブロックに一人、あるいは数人いる鬼のように強い謎の戦士たちの試合の行方に観客や選手は注目を集めている。
もちろん、悟空たちのことだ。
『それでは、Eブロック2回戦を始めたいと思います!ヤムチャ選手、クリリン選手!おりましたら舞台にお上がりください!』
Eブロック審判からアナウンスがコールされた。
ヤムチャの目付きが少しきついものになる。
「クリリン…さっきの地球人だな」
「ああ…俺にとっては最初の壁みたいなもんだな、この試合は」
そう言いながら、ヤムチャは今まで一度もしなかった本格的な準備運動をこなし始める。
292SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 01:59 ID:6T/uSG6w
【149話】
「じゃ…行ってくる」
ヤムチャはマーリンとシルフに背を向けて、舞台の方へと歩いていった。
「お父さん…頑張って!」
シルフは親指を立ててヤムチャに声援を送る。
ヤムチャはチラッと振り返ると、シルフに親指を立て返した。
既に相手のクリリンは舞台の上に立っている。
ヤムチャはその姿を確認すると、一度の跳躍で15メートルほど先の舞台の上へと飛び乗った。
「待たせたか?クリリン」
「いえ、俺も今上がったばっかりですから」
クリリンはいつものように明るい表情だったが、戦いを前に緊張しているのか、目付きだけは笑っていなかった。
『予選の2回戦ながら、これは良い試合が見られそうです!両者ともに、初戦の相手を圧倒的な強さで捻じ伏せた者同士の対決です!おそらく、Eブロック一の好カードでしょう!』
アナウンサーの声にも力が入っていた。
その説明を聞いてか、野次馬たちが続々とEブロックの舞台に近づいてきた。
「お、クリリンとヤムチャか。楽しみな試合だ」
いつの間にか、マーリンの隣に悟空がいた。
「…クリリン…と言ったか、あの背が低い男」
マーリンは悟空に話しかけているのか、独り言なのかどうかわからないような言い方で言った。
「…ああ、オラの親友だ。結構つえーぞ、あいつは。前まではヤムチャよりクリリンの方が強かったけど、ヤムチャは腕を上げたみたいだし、いい勝負かもな、この試合」
その悟空の予想を聞いて、マーリンは思わず表情がにやける。
「いい勝負かも…?ふふ…まあ見ていろ、ソンゴクウ。すぐに分かる」
そのマーリンの自信ありげな言葉を聞き、疑いとも期待とも取れない微妙な表情を浮かべながら悟空は舞台上の二人の姿に注目した。
『えー、調べたところによりますと、お二人とも過去に天下一武道会出場経験者のようです!そして驚くことに、両者とも武術の神様と言われたあの武天老師のお弟子さんだそうです!
これは白熱したバトルが予想できます!』
アナウンサーの解説が入ると、一段と場が騒がしくなる。
武天老師と言えば、格闘家を名乗る者で知らない者はいないと言われるほどの達人だ。
その達人の弟子同士が、予選の段階で戦うことになるなんて、その場に居るものとしては見ないわけには行かないというのが素直な心境だろう。
293SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 02:00 ID:6T/uSG6w
【150話】
だが、そんなザワメキなど、耳に入っていないかのようにヤムチャとクリリンは集中していた。
「お前と本気で戦ったことって、何気に一度もないんだよな、クリリン」
ヤムチャが手首と足首をグリグリと回しながらクリリンに話しかける。
「そうですね。同門生なのにまともに戦うのが初めてなんて、なんか変な感じがしますよ」
クリリンも柔軟体操をしながらヤムチャに言った。
しばらくの沈黙が二人に流れる。
言葉こそないが、二人は目で会話するかのように、見詰め合う…というよりは、睨みあっていた。
「……最初から、飛ばしてくるつもりだよな?」
ヤムチャがニヤリと笑いながら言う。
「…そのつもりですよ、ヤムチャさん」
クリリンもニヤリと笑いながら答える。
それは、決していつものヘラヘラした笑いではなかった。
二人ともサッと構えを取る。
『それではァ!!ヤムチャ選手!クリリン選手!試合を始めてくださいッッ!――』
アナウンサーが全てを言い終わる頃には、既にクリリンの姿は肉眼では見えない速度で動いていた。
「っつああああッッ!!」
と、ヤムチャの右斜め後ろにパッとクリリンの姿が現れる。
蹴りのモーションに入っていて、腹部に強烈な蹴りを叩き込もうとしていた。
振り向いて肉眼で確認してからガードしていては、ほとんど間に合わない速さだ。
だが、ヤムチャは完全にそのクリリンの気を読んでいた。
「甘いッ!」
クリリンの蹴りのリーチが最大になる前に、ヤムチャはその蹴りを振り向かずして右手で受け止めた。
こんな簡単に受け止められるのが予想外だったのか、クリリンの顔に焦りの色が浮かぶ。
ヤムチャは蹴りを受け止めた際に、一瞬…ほんのコンマ数秒クリリンの体が硬直した所で胸ぐらをがっしりと掴んだ。
そして、その体を力任せに場外に向かってぶん投げる。
294SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 02:03 ID:6T/uSG6w
【151話】
時速数百キロで宙に放り出されたクリリンの体が、室内会場の壁にぶち当たりそうになった…が、直前で武空術で留まりなんとかその場をしのぐ。
それを見てヤムチャはチッと舌打ちをした。
だが、クリリンはそれでも怯まずそのまま武空術を使い、高速でヤムチャに向かって頭から突進していく。
「っと!危ない!」
口ではこう言ったものの、ヤムチャは危なげなくそれをかわす。
そして、クリリンは再び舞台に着地すると、腰にぐっと力を込め、そのバネを利用してヤムチャに向かって突っ込み、無数のパンチを繰り出した。
ヤムチャはそれを数発受け止めると、隙が出来たところでクリリンの顔面にジャブ気味の素早いパンチをシュっと2発打ち込み、クリリンは顔を押さえながら後方に数歩後退する。
「どうした、クリリン。まだ俺は一発もダメージを受けてないぞ」
「…く、…くそッ!くらえっ…はっ!」
ヤムチャの挑発にクリリンはその場でエネルギー弾を打つ。
「いまさらこんなものが通用するかっ!」
ヤムチャはそう言うと、クリリンのエネルギー波をグローブでボールをキャッチするかのように手の平で包み込むと、それを思い切り握りつぶし、エネルギー弾はパンと音をたてて弾けた。
「な…なんだってえ!」
エネルギー弾を無効化されたことに、思わずたまげるクリリン。
ブランクがあるとはいえ、ヤムチャ相手にここまで自分の力が通用しないなんて、予想だにしていなかった。
少なくとも、昔はヤムチャより絶対に強かったのだ。
クリリンにだってプライドはある、この試合は同門生として、地球人としてヤムチャには負けられない。
「…まだまだァ!」

ドガガガガガ………ガギッ!!!ガガッ!

クリリンは諦めずにヤムチャに猛攻を叩き込むが、ヤムチャの体をその拳でとらえることはできないでいた。
上下左右、あらゆる方向から攻め込んでいて、決して単調な攻めではない。
だが…ここ最近ひたすらマーリンと組み手をしていたヤムチャにとって、クリリンの動きなどまるでスローモーションを見せられているかのように遅く感じていたのだ。
295SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 02:05 ID:6T/uSG6w
【152話】
どんなに変則的な攻めでも、動きが遅ければ、単純にそれを避けるのはなんら難しいことではない。
もはや、クリリンが何をしても通用しないレベルにまでヤムチャは達していた。
「はいッッ!」
ひたすら攻撃を繰り出すクリリンだが、逆にヤムチャのストレートを頬にもろに食らってしまい、再び後方にぶっ飛ばされてしまう。

ズザザザザザァァァ……

体が地面に擦れながら、クリリンの体はギリギリ場外に落ちないところくらいまで慣性で移動した。
その摩擦で、【亀】の文字が刺繍されている胴着が数箇所破れ、穴があく。
「はぁ…はぁ…」
クリリンは息を切らしながらヤムチャを睨みつける。
ヤムチャも試合開始から相も変わらず、同じく真剣な目つきでクリリンを睨む。
「悔しいけど…勝てない…!このままじゃヤムチャさんに負けちまう…。こうなったら…………」
クリリンはヤムチャに聞こえないように、ブツブツと自分に何かを言い聞かせながらゆっくりと起き上がった。
「ん…なんだ…?何かする気だな、あいつ」
ヤムチャはただならぬクリリンの様子に、体全身に気を込めて警戒心を強めた。
「ヤムチャさん…悪いけど、この試合…最後には俺が勝たせてもらいますよ!」
クリリンは不敵にも、ヤムチャに向かって勝利宣言をかます。
「…何かしてくるんだろ?こいよ、クリリン」
ヤムチャは構えを取りながらクリリンを誘導する。
クリリンはゆっくりと歩きながら、ヤムチャに近づいていく。
そんなクリリンをじっと見ながら、ヤムチャはなおも警戒を緩めない。

ゴゴゴ…

強い気のせいで、空間が歪み地面がわずかに揺れる。
次の瞬間、クリリンがニヤっと笑ったと思うと、クリリンの気が今までで最大の大きさに膨れ上がった!
次の攻防で勝負をかける気だ。
そして、クリリンはバッと両手の手の平を広げ、自分の額にかざす。
296SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 02:10 ID:6T/uSG6w
【153話】
「…太陽拳っ!」

カッッ!

クリリンがそう叫ぶと、辺りは一面白銀の世界に包まれる。
この状況では、ヤムチャにクリリンの姿は全くと言っていいほど見えない。
クリリンはまさに、この瞬間のために気を全開まで上げたのだ。
「もらったァッッッ!!!」
クリリンの強烈な蹴りが、目を瞑っているヤムチャの顔面を目掛けて放たれる。
一撃KOとはいかないだろうけれど、完全に不意をついたので、ヒットすればヤムチャといえ場外まで吹っ飛ぶはずだ。
クリリンは勝利を確信していた。
が…勝利を確信していたのは、クリリンだけではなかった。
クリリンの視界に、目を瞑りながら口元が緩んでいるヤムチャの顔が映る。

ブンッッッ!!

蹴りは、むなしく空を切った。
「…そう、お前には太陽拳しかないはずだ。あの状況ではな…」
「な……にぃ…っ!?」
クリリンが渾身の力で放った蹴りを、ヤムチャは立ったままその場でブリッジをするかのように、体を反り返らせて華麗に避けてみせたのだ。
ブリッジをした状態のヤムチャに、その真上に浮かんだ状態にあるクリリン。
そして、空中に残されたクリリンを、そのままサッカーのオーバーヘッドを決めるかのような体勢で、ヤムチャが蹴りをクリリンの背中に叩き込む。
「げぶ…し……ッ!」
無防備だったクリリンの体は、それこそサッカーボールのように無抵抗にぶっ飛び、場外の壁を貫通して、その外で更に50メートルほど進んだ辺りでようやく止まった。
失神しているのか、それ以降ぴくりともクリリンの体は動かなかった。
気を探ると、とくに死に掛けているような弱弱しい状態でもなかったため、命に別状はないだろう。
「肉弾戦でもダメ、気功波の類も効かないとあっちゃ、お前は太陽拳に頼るしかないよな…。全部読めていた」
ヤムチャの声はクリリンに聞こえていないが、なおもヤムチャは続ける。
297SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 02:15 ID:6T/uSG6w
【154話】
「太陽拳は目くらまし…つまり、相手が目を開けていないと通用しない。だったら、最初から目を瞑ってしまえばいい。そうすれば、目がくらんでパニックになることもないからな。
太陽拳を回避したあと、落ち着いて気を探れば、ただの無防備に飛び上がっているお前の姿が俺にはくっきりと見えていたったわけさ。心の目で、な」
そう言うと、ヤムチャは舞台からゆっくりコツコツと降りていった。
「もっとも……あの蹴りが俺にヒットしたとして、それで俺を倒せたとは思えないが…」
ヤムチャは舞台の階段をちょうど降り終わるぐらいに、付け足すようにそう呟く。
「おい」
審判とすれ違い際にヤムチャは声を掛ける。
「あ…は、は、はい…!」
びびりながらヤムチャの声に審判、兼ねアナウンサーが反応する。
余りにも凄すぎる戦いに、場内は既に静まり返っていた。
アナウンサーも、実況なんて当然できたものではない。
「結果」
ヤムチャはそれだけ言うと、マーリンたちの方へ小さくガッツポーズをしながら歩み寄っていった。
「ヤ………………ヤムチャ選手の、勝利ィィィ!!!」
そのアナウンサーの声を合図に、ドッと歓声があがった。
「とりあえず、一安心といったところなのかな?ヤムチャ」
マーリンがそんなヤムチャを、軽いハイタッチで迎え入れる。
「ああ。どうにか、勝てたみたいだ」
ヤムチャが勝利をかみ締めるかのように答える。
どうやら結構嬉しいらしい。
「…あのクリリンという者も、地球人にしてはかなりの達人なのだな…見た目以上に機敏な動きだった。まあ、ヤムチャが相手では仕方ないだろう」
「お父さんかっこいい!もう最高!」
シルフは父の戦いっぷりを見て、興奮気味に叫ぶ。
悟空はというと、マーリンの隣で半ば唖然としながら突っ立っていた。
その様子にマーリンが気づく。
「ソンゴクウ。何か、言うことはないのか?」
「…へへ……さすがに、オラもちょっと言葉に詰まっちまったな…」
以前なら、少なくともクリリンとヤムチャはあそこまで差はなかったはずだ。
だが、今日見た光景は悟空の予想を遥かに超えた次元だった。
自分より強いか弱いかではなく、悟空は前と比べて格段にレベルアップしていたヤムチャの強さに驚いていた。
298SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 02:22 ID:6T/uSG6w
【155話】
驚いている悟空に、マーリンは追い討ちを掛ける。
「言ったはずだ。わたし“たち”は、ソンゴクウ…お前を倒す、とな…この意味が分かるか?」
そのマーリンの言葉は、はったりや強がりではなく、確かな自信とそれを裏付けるだけの実力があるからこそ言えるものだった。
それに勘付いているのか、はたまたまだ余裕だと思っているのか、悟空はそれ以上何も言わずにただ少し笑うと、ヤムチャの前を通り、自分のブロックの舞台の方へと戻っていく。
ヤムチャと悟空は言葉を交わさないまま、すれ違うように通り過ぎた。
「…さてと、あと予選の見ものはお前と18号の対決ぐらいか。他のはどうでもいいや…どうせ悟空やベジータたちが進んでくるだろうし」
ヤムチャはそう言って、近くにあった椅子に腰をかけた。
「地球の大会なのに、勝ち残ってくるのがほとんど異星人とは皮肉なものだな…」
「はは…それを言うなよ。でも確かに俺ぐらいか、予選を勝ち残れそうな地球人って」
ヤムチャの目に遠くで自分が吹っ飛ばしたクリリンが、担架で運ばれているのが目に入る。
悪い気はしながらも、ヤムチャはクリリンのプライドを考え、敢えて謝ろうという気はなかった。
倒された相手に謝られるというのは、ヤムチャの中ではトップ3に入るぐらいの屈辱だったからだ。
「そういえば…俺対クリリン、お前対18号……これって夫婦対決じゃん!マーリン、お前気付いてた?」
「いや…」
ヤムチャは今更そんなどうでもいいことに気付いて、何故か嬉しそうにする。
「で、何度も言うけど、18号からは気を読み取れない。つまり、肉眼で追ったり、空気の流れを感じ取ったりして動きを読まなきゃいけないわけ。そこが勝負のポイントになるだろうな」
「気を捉えることができないというのは、確かに厄介だな…」
マーリンはその場で少し不安そうな表情を見せながら、考え込む。
「ポイントは3つ。周りの空気の変化を感じ取ること…これは今言ったな。相手の動きをなるべく止めること…相手に自由に動かれると、試合が長引いて不利だ。
最後に、油断しないこと…見た目はか弱い女だが、パワーはフリーザ以上だからな。強敵だと思って挑め!このくらいか…」
ヤムチャは自分なりに18号対策を練り、マーリンにアドバイスを与えた。
299SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 02:24 ID:6T/uSG6w
【156話】
マーリンは目を瞑り、相槌を打ちながらそれを聞き、頭の中でイメージを浮かべる。
「ヤムチャが対戦したら、3つめのポイントである“油断”をして負けそうだな…ふふ」
「……ほっとけ!」
ヤムチャは以前、自分が最後に出場した天下一武道会で、試合の詰めで油断して神様に敗れたのを思い出した。
「俺だってなあ…あの時、繰気弾がヒットした後になあ…追い討ちをかけていればなあ……勝てたんだぞ!」
「…一体、なんの話をしているんだ…?」
…虚しい無言の間が二人の時間を奪う。
それから、第二試合、準決勝、決勝へと試合は進んでいった。
当然ながら、大きな波乱もなく、ヤムチャとマーリンは順調に決勝まで勝ち進んでいく。
『…場外…ッ!ヤムチャ選手、Eブロック優勝です!』
一般人ではさすがに相手にならないのか、ヤムチャはクリリン戦以外は問題なく勝ち、本戦への切符を手にした。
当たり前と言えば当たり前なのだが、とりあえず無事予選を通ったことに胸を撫で下ろすヤムチャ。
「さて…そろそろマーリンの決勝だな」
ヤムチャはHブロックの舞台上に目をやると、既に18号とマーリンは舞台の上に上がっていた。
「…」
「…」
両者とも口を開かず、腕を組みながら睨みあっている。
「うほ、女同士の決勝だってよ!どうなってんだあのブロックは」
「お前どっちがいい?あの濃い金髪の女と、白に近い金髪の女」
「俺はどっちかっていうと左のねーちゃんがいいな!」
「そうか?変わった胴着着ているプラチナブロンドの方が美人じゃね?気は強そうだけど」
「胸は胴着着ている女の方がデカイから俺はあっちだな」
「優勝候補のイズールは勝手に転落して負けちまったし…どうなってるんだ!?」
明らかに不純な目付きで舞台の周りには男たちが集まっていた。
言うまでもなく、マーリンと18号はそんなものは目にも耳にも入っていない。
(この女…一体なんなんだ。データにはないが、以前孫悟空に勝ったというだけのことはあって、動きを見る限り普通じゃなかった…油断できないね)
(もっとも注意すべき点は、気を感じ取れないこと…ヤムチャに言われたことだけ注意すれば大丈夫のはずだ)
お互いに警戒し、何かを探り合っているかのように目と目を合わせるマーリンと18号。
300SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 02:26 ID:6T/uSG6w
【157話】
『本大会、予選の決勝まで残った女性選手はこの二人のみとなります!それでは、決勝戦!!18号選手、マーリン選手!試合を始めてくださいっ!』
アナウンスがコールされる。
「…いくよ」
18号はそう言って構えを取ると、マーリンも無言で構える。
構えはゆっくりだったが、攻めは突然だった。
「そーらッ!」
18号が掛け声と同時に、猛スピードでマーリンの胸部に右手で殴りかかる。
それをマーリンは5メートルほど大きく跳躍して避けると、18号はすぐさま上方にいるマーリンに向かって連続で無数のエネルギー波を放った。
マーリンがその無数のエネルギー波を、超高速移動でわずかに体を30センチから1メートルほどだけ動かし無駄なくかわすと、18号の放ったエネルギー波は室内闘技場の天井を貫通し、建物がその衝撃で揺れる。
マーリンはすぐさま下を見るが、既に18号の姿はそこにはない。
ヤムチャに言われたとおり、冷静に自分の周りの空気に神経を張り巡らせる。
と、自分の左方の空気がほんの僅かに乱れていたのを感じた。
「そこだッ!!」
武空術で宙に浮いたまま、自分の左側…何もない空間にマーリンがパンチを放つと、ドスッと鈍い音をたてながら、何もない空間に攻撃を仕掛けようとしていた18号の姿が現れた。
「…………ッ!」
18号は攻撃を出しかけていたため、半ばカウンターのような形になったマーリンのパンチがもろに腹部にヒットし、苦痛で表情が歪んだ。
破れかぶれに18号はマーリンにハイキックを繰り出すが、いとも簡単にマーリンに受け止められてしまう。
すぐに次の攻撃を繰り出そうとする18号だったが、それが…この試合の全てだった。
マーリンは一度受け止めた18号の足を、がっちりと強く掴んで離さない。
「…これでもう、身動きは取れない」
「…!な、なんだって!」
マーリンは冷たく小声で囁くと、足を押さえつけた状態で、再び18号の腹部目掛けて拳を下ろした。

ドス…!ゴッ…バキッッ!ドスッ!

「ぐっ……か…はッ……」
身動きが取れない18号はその拳をくらうしか術はなく、マーリンは何度も執拗に18号の体を殴打する。
301SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 02:29 ID:6T/uSG6w
【158話】
必死に暴れて足をマーリンの手から外そうとするが、パワーはマーリンの方が遥かに上のため、どうやっても外れなかった。
胸部、背部、腹部、顔面、人造人間とは言え、ベースは人間なので18号に徐々にダメージが蓄積していく。
体力が減らないとは言え、痛みの感覚はあるのだろう、時折胃液を吐きながら苦しそうに18号は遠ざかっていきそうな意識を保とうとしていた。
やがて18号の動きが鈍くなってきたところで、ようやくマーリンは18号の足を離し、更にフラフラの18号に躊躇なく狼牙風風拳のラッシュをかける。
一度崩れた体勢を立て直すのは難しい。

ズガガガガガガッガガッ!

18号は防御する術もなく、空中でサンドバッグのようにマーリンに打ちのめされた。
もうほとんど18号が動けなくなったのを確認すると、マーリンは狼牙風風拳をやめ、高速で18号の後ろに回りこみ、背後から首に手刀を一撃くらわせると、18号の意識は完全に途切れてしまう。
意識がくなったことで武空術が解け、重力で落下しそうになる18号の服をマーリンは片手で掴むと、そのままゆっくりと地面に降りていった。
そして、丁寧に18号を床に寝かせると、黙っている審判に目で訴える。
『……し、失礼しました。18号選手…戦闘不能!マーリン選手の勝利となります……!』
今度ばかりは、観客や選手から歓声は起こらなかった。
余りにも凄すぎる戦闘と、マーリンの冷徹非情な戦いっぷりにに、黙って息を呑むしかなかったのだ。
第一、速過ぎて何が起こっているかよく分からないというのが一般人の本音だろう。
表情を変えずに、無言のまま舞台の階段から降りるマーリン。
その周りには、目には見えないが触れることを許さないような近寄りがたいオーラが出ていた。
302SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 02:32 ID:6T/uSG6w
【159話】
「……マーリン」
ヤムチャはマーリンの肩を掴むと、何も言わずに目で語りかける。
「やっぱり…やりすぎたか?」
「普通の人間なら、ありゃ死んでるぞ…」
ヤムチャは大きくため息をつきながら言った。
「お前の仲間は、全員普通の人間ではない」
「いや……まあ、そう言われたら否定はできねーけどさ」
「それに…これはヤムチャから言われた3つのポイントとやらを、全て忠実に守った結果だぞ?」
「俺が言ったポイント…?俺なんて言ったっけ?」
ヤムチャは首を傾げる。
今度は逆にマーリンがはぁ、とため息をついた。
「空気の変化を感じ取れ、相手の動きを止めろ、油断せずにボコボコにぶちのめせ…そうだろう?」
言われてみれば、マーリンの動作は全てヤムチャの言葉に忠実に従ったものであった。
姿を捉えられなくなったら、空気の変化を感じ取って動きを見切り、高速で動かれると厄介なため足を掴んで動きを止め、女だからと言って最後まで油断せずに攻撃をし続けた。
「…まあ、そうかな……うん」
「で、わたしのとった行動は、問題あったの?ないの?」
「……ないです」
「ふふ。分かればいいのだよ、ヤムチャ」
勝ち誇ったかのようにマーリンはかわいく笑う。
先ほどまで非情に徹し、無表情で相手を甚振り続けたのが嘘のような笑顔だ。
だが、ヤムチャはどこか腑に落ちない様子だった。
「っていうかさ…。…ボコボコにぶちのめせ、なんて言ったっけ、俺…」
それは、言ってなかった。
「にしても、余計なアドバイスだったな…全然余裕じゃないか。案外18号も大したことないのか…?」
針小棒大にアドバイスをしたつもりではないし、少なくとも一昔前、悟空たちより強かったのは事実だ。
しかし、先ほどの戦いを見る限り、今のヤムチャには18号が前ほど大した相手ではないように思えてきた。
303SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 02:50 ID:6T/uSG6w
>>282さん
ありがとうございます、これを借りてやってみます!

>>283さん
クリリン戦はもうちょっと描写を増やしたかったのですが、
今のヤムチャとクリリンではかなり差があるため一方的になってしまいました。
304SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 02:58 ID:6T/uSG6w
・SaiyanKiller2の戦闘力一覧表
ttp://age2.tv/up1/img/up4595.jpg

問題点が…
画質を上げるためにビットマップで保存したら容量オーバーになったためJPGに…。
そして、URLをクリックしただけでは縮小されていて見れないです。
カーソルを画像に合わせると、右下に拡大アイコンが出ますのでそれを押して頂ければご覧頂けます。

異論がある方もいるかもしれませんが、私はこの設定でストーリーを書いていくつもりです。
ちなみに、作品が進むことによって戦闘力が上昇(あるいは下降)したりするかもしれないので
まあ、参考程度にでも見ていただければ…m(_ _)m
305SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/10 03:00 ID:6T/uSG6w
1000人のヤムチャたちに期待しつつも、体力の限界なのでお布団入ってきます。

おやすみなさい!
306Classical名無しさん:09/02/10 03:18 ID:QDUCXbis
怒涛の更新だー。乙です
戦闘力表の ヤムチャの戦闘力=アクセスカウンターというネタが面白いw
307Classical名無しさん:09/02/12 03:29 ID:ciIhpI7w
ヤムチャと言えば本戦の一回戦で予想外の強さのキャラと戦う宿命だから
一回戦の対戦相手が楽しみだ
308Classical名無しさん:09/02/14 23:43 ID:7S2KR/nA
携帯から戦闘力表はみれますか?
309SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 00:24 ID:Akahxuyc
>>306さん
ありがとうございます。
たまヤムのサイトのアクセス数が、ただいまのヤムチャの戦闘力となっているのを見て以来、
ずっとこのネタを何らかの形で使いたくてしかたありませんでした(笑)

>>307さん
分かっていますね!

>>308さん
今言われてみてテストしましたが、画像は表示できます。
機種によっては見れないかもしれませんが…。
でも、表示できたとしても、文字が小さすぎて読めないかも…。

さて…明日もお仕事ですが、今からまったりと書いていきますね。
310SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 00:26 ID:Akahxuyc
トーナメント表も作って、アップしようかな。
311Classical名無しさん:09/02/15 00:41 ID:7ca.uprE
文字が小さくてわかりませんでした。
312SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 01:00 ID:Akahxuyc
>>311さん
ですよね、申し訳ないです…。
PCで閲覧する方のことしか考慮できていませんでした…。
313SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 01:14 ID:Akahxuyc
【160話】
「ひゃー…あいつほんとにつええな。見てる限りだと、あれでもてんで本気なんて出しちゃいなそうだし…」
マーリンと18号の戦いを遠くで見ていた悟空が感心したように言った。
「何を言っている、カカロット。あれは相手が弱すぎるだけだ」
ベジータはその発言が気に食わなかったかのように、悟空に反論する。
「そんなことねーよ、ベジータ。18号だって一時期オラたちより強かったじゃねぇか」
「そんな何年も昔のことはどうでもいい。どちらにしろ、あの女を倒すのはお前じゃない。この俺だ」
ベジータは己のプライドの高さのせいか、マーリンを倒すことにかなり固執していた。
1年前…界王神界で魔人ブウと戦っているのさなか、ようやく悟空を越えられないことは認めたベジータだったが、そのプライドの高さは変わっていなかった。
いくらマーリンと戦った当時、ベジータがスーパーサイヤ人になれなかったとはいえ、それは相手も同じこと。
一度負けたとは言え、いつまでもあんな小娘になめられたままでは流石にたまったものではない。
いつの間にか、殺気染みた気を放っているベジータ。
初めて地球に来た時よりは、かなり性格が落ち着いてきたベジータだったが、カッとなると何をしでかすか分かったもんじゃない。
悟空はそんなベジータを宥めるように口を開く。
「まあまあ…ベジータ…熱くなるのはいいけど、勢い余って殺したりすんなよ?別に今はワリィ奴じゃねえんだしさ」
「……ふん、俺の知ったことか。なんせ、こっちは下らん予選会なんてやらされてイライラしているんだ」
それはただの八つ当たりじゃん…と、悟空はベジータに突っ込もうとしたが、これ以上機嫌が悪くなったら面倒なのでやめておいた。
こうして、全ての予選が終了し、本戦に進める8人が決定した。
それから10分後、クジによる抽選で決定された本戦のトーナメント表が大きく貼り出される。

第一試合 ヤムチャ VS 孫悟飯
第二試合 孫悟空 VS マジュニア
第三試合 ベジータ VS マーリン
第四試合 Mrサタン VS Mrブウ


「…何………………これ………?」
そう声を漏らしたのは、もちろん…ヤムチャだった。
314SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 01:24 ID:Akahxuyc
第26回 天下一武道会 トーナメント表
ttp://age2.tv/up1/img/up4623.jpg
315SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 01:27 ID:Akahxuyc
【161話】
永遠の一回戦ボーイの異名は伊達じゃない。
過去に3回出場した天下一武道会のトラウマが、少しずつヤムチャの頭に蘇る。
いつもそうだった。
この大会に出るたびに、当時の地球最強クラスの相手が常に初戦の相手となる。
そして、今大会…第26回天下一武道会もその歴史は繰り返された。
「やれやれ…初戦で全宇宙最強の男が相手とは俺もとことんついてないな。今回も一回戦負けか?」
言葉こそ自虐的なものだった……が、その顔は明らかに今までのヤムチャの顔ではなかった。
最強の男である悟飯が相手だというのに、何故かその表情は不安や絶望と取れるものではなく、むしろ自信があるように見える。
「ヤムチャ、気になったのだが…ソンゴクウの息子…ソンゴハンというのはそこまで強いのか?」
マーリンはずっと疑問に思っていたことを口に出す。
「ああ、強いな。はっきり言っちまうと、悟空以上だと思う」
「…なんだと?スーパーサイヤ人3であるソンゴクウを更に上回る戦闘力だというのか!?」
「んーとさ…戦闘力、って要するに気の大きさだよな?それなら、間違いなく悟空以上あると言えるな」
ヤムチャの話によれば、推定戦闘力1億5000万以上のスーパーサイヤ人3・ソンゴクウ……それより更に次元の高いところにその男…ソンゴハンは立っているという。
もはや、それがどの程度のレベルなのか、実際本気で悟空や悟飯が戦っているところを見たことがないマーリンにとっては、見当もつかなかった。
「しかし…どうやってソンゴハンはそこまで強大な戦闘力を手に入れた?ソンゴクウと同じように、スーパーサイヤ人3にでもなれるのだろうか…」
「いや、そうじゃない。あいつのスーパーサイヤ人は2までが限界だった」
「…?なのに、ソンゴクウ以上の強さ…?」
スーパーサイヤ人2と3では、まるで強さの次元が違うのは、2週間前の悟空の変身を見れば明らかだ。
普通に考えれば、変身が一段階多い悟空の方が、悟飯より強い、と考えるだろう。
だが、ヤムチャは孫悟飯の方が間違いなく強いと断言していた。
不思議そうな顔をしながら質問するマーリンに、ヤムチャが答える。
「確かに、悟飯はスーパーサイヤ人3にはなれない…。けど、あいつにはとっておきの変身がある」
316SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 01:33 ID:Akahxuyc
【162話】
「とっておきの?……変身……サイヤ人……まさか…大猿か!?」
かつて幾多の戦場を駆け回っていたマーリンは、月が新円を描く時に限り、サイヤ人が巨大化した猿に変身するのを極稀に何度か目撃したことがある。
たまに見かけるといっても、既に民族としてのサイヤ人は滅びた後の話なので、その姿はほとんど単体だった。
大猿といえども、パワーや破壊力は物凄いが、群れ対群れで争う戦場においては単体だとそこまで脅威ではなかった。
が、もしあの大猿が何百何千の群れで蹂躙していたら…と思うと未だにぞっとする。
マーリン自身は幼い段階で尻尾を切ってしまい、それ以来生えてこなくなったので一度も変身したことはないが、大猿がどういうものかというイメージはしっかりと頭に入っていた。
「はは、バカ言え。大体あいつには尻尾がないだろ。ちなみに、悟飯がその変身を使っても、外見はほとんど変化がない」
結構まじめに考えたのに、ヤムチャはあっさりとそれを否定する。
外見はほとんど変化せずに、力はスーパーサイヤ人3以上…考えても答えが出ないマーリンに、苛立ちが募ってきた。
「…いったい、何だと言うのだ!もったいぶらずに早く教えろっ!」
「やれやれ…まだ分からないか?悟飯はな……俺たちと同じように、潜在能力を開放されているんだ。あの年寄りの方の界王神様によって」
「………!」
外見はほとんど変化がなく、スーパーサイヤ人3を超える変身…ようやく謎が解ける。
「なるほど…そういうこと…」
「そう。だから、あいつは途轍もなく強い」
ヤムチャは続ける。
「スーパーサイヤ人を“超化”と称するのなら…そうだな、この変身は仮に“究極化”とでも名付けておこうか」
ヤムチャが何故か得意げに、勝手に命名した。
「究極化…か。確かに悪くない響きだが…」
マーリンは難しそうな顔をして頷く。
「だろー!とすると…俺は、アルティメット地球人になるわけね…ハハハ…。ここの【樂】の字、【究】にした方がカッコよかったかな…?」
そんなくだらないことで半分真剣に悩んでそうなヤムチャに、マーリンは呆れたように首を振り、下を向いて右手で顔を覆うのであった。
「ヤムチャさん」
呼びかけと同時に、ヤムチャは後ろから不意に肩を叩かれる。
その振り向くと、ついさっきまで話題にしていた悟飯がいた。
317SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 01:35 ID:Akahxuyc
【163話】
橙色の胴着を着ていて、首から下だけ見れば、悟空と見分けがつかないような体格をしている。
「お、悟飯か」
「初戦の相手、よろしくお願いします」
そう言って悟飯はヤムチャに握手を求めてきた。
ヤムチャも数秒だけ間を空けて、手を差し出す。
「…ああ、よろしく。あと悟飯、その髪型なかなかイカしてるぜ」
「え…?は、はい…どうも」
ヤムチャは何を思ってか悟飯に向かって軽くウインクすると、悟飯は引きつった作り笑顔を見せて、その場を後にした。
「…今のが、ソンゴハン?」
悟飯が去ってからしばらくすると、マーリンが小声でヤムチャに言った。
「うん。っていうか、お前、前に会ってるぞ」
「そう…なの?」
「悟空と戦う時に、緑色の肌で白いターバン着た奴と、ちっこい子供が遠くで見てたろ。そのちっこい子供が悟飯だ」
思い出すように上を向きながら、マーリンは悟空との戦いの記憶を遡る。
「うーむむ…あまり記憶にない。あの時、わたしはソンゴクウばかりに意識が偏っていたから…」
ふーん、と相槌を打つと、ヤムチャは結んでいた帯を一度ほどき、更に強く結びなおした。
そしてグルグルと肩を回したり、大きく深呼吸をしたりして、落ち着かない様子だ。
「ふふ…ヤムチャ、緊張しているのだな?」
「そりゃ、しない方がおかしいだろ。でもまあ…慣れたかな、どうせいつも初戦はこういう相手だからさ」
ヤムチャは愚痴をボヤくような言い回しでマーリンに言う。
「まあ…よいではないか。遅かれ早かれ、いずれは倒さなければいけない相手なのだし…」
「まあな…」
「それに…いつも修行で、お前の稽古相手を務めている者を、誰だと思っている?」
「………へ、よく言うぜ、こいつ」
ヤムチャはそれを聞いてニヤリと笑う。
マーリンもヤムチャに釣られて笑う。
「さ…そろそろ本戦が始まるぜ。外に出るぞ」
「うん、分かった!」
こうして二人は本会場である外の武舞台に向かって、そして、優勝に向かってゆっくりと歩きだした。
318Classical名無しさん:09/02/15 01:35 ID:AvrGKdIs
このトーナメント表見るとヤムチャよかサタンを応援したくなってしまった。
サタン!サタン!
319SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 01:50 ID:Akahxuyc
【164話】
パンパン!…パン!

午後1時過ぎ、雲一つない青空に、3発の花火が上がった。
天下一武道会、本戦開始の合図だ。
『実にぃぃぃぃ…!!約、一年ぶりッ……!皆さま、長らくお待たせいたしました!
これより、世界最強を目指し、ここに終結した者たちの熱い…実に熱い戦い!第回26回、天下一武道会を開催いたしまーーーすッッ!!』
審判、兼ね実況、兼ね解説を全てこなす、黒いスーツにサングラスをしたお馴染のアナウンサーが開会の言葉を述べると、冒頭から会場に異常とも言えるほど大きな歓声が上がる。
世界で一番盛り上がる大会だけあって、観客席はギュウギュウ詰めで明らかに過密化していた。
リングは一昔前と比べるとだいぶ広くなっており、そう簡単に場外負けというのは起こらないだろう。
観客席は武舞台と同じ高さで、前よりかなり低くなっている。
これならエネルギー波などをまっすぐ放っても、高さ的に観客に当たることはない。
1年前、ベジータが観客を数百人殺すという事件が起こったせいで、観客席にも安全が配慮されたようだ。
その事件の記憶は、魔人ブウの記憶を地球人の頭から消す時に、同時に消しているが、“何者かによって観客を大量に殺された”という曖昧な記憶だけは残っていたようだ。
『午後1時を回りましたので、予定通り、早速第一回戦……始めたいと思います!!』
観客席からは先ほどより更に大きな歓声が上がり、アナウンサーの声すらかき消されそうになる。
『えー、…第一試合!!…“蘇る狼”…ヤムチャ選手ー!“戦う学生”…孫悟飯選手!!入場ですッ!』
ざわめきが収まらない中、ヤムチャと悟飯がゆっくり歩きながら武舞台の中央に向かう。
ちなみに、この“蘇る狼”や“戦う学生”というフレーズは、アナウンサーが勝手に定めたものではなく、予選を勝ち抜いた選手たちと直接話して個別に決めさせたものである。
『過去に3度も予選を勝ち抜き、本戦に出場したことがあるベテランヤムチャ選手!
対するは、天下一武道会で優勝したことがある、孫悟空さんの息子、孫悟飯さん!前大会はハプニングがあり、残念ながら試合を見ることはできませんでしたが…その実力は未知数です!!』
両者、開始位置につく。
320SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 01:52 ID:Akahxuyc
【165話】
「ヤムチャさまーーーーーーーー!!!頑張ってくださーーーい!!」
「おとうさーーーん!頑張れーっっ!!!」
観客席から、一際目立つ、プーアルとシルフの大きな声援がヤムチャの耳に入る。
「はは…ありがとな…プーアル、シルフ…!」
ヤムチャはそう小さな声で呟くと、目の前にいる敵…悟飯の目を睨む。
「よう、悟飯。まともに戦うのは初めてだな」
ヤムチャは緊張をほぐすように、親しげに悟飯に話しかける。
「そうですね、ヤムチャさん…。かつてお父さんのライバルだったそうですから、油断はしませんよ!」
悟飯はそう言うと笑いながらヤムチャに向かって戦闘の構えをとった。
「ははは…過去形かよ、切ないぜ…。ところで、俺考えたんだけどさ、悟飯」
対するヤムチャはまだ構えずに、腰に手を当てながら悟飯に笑い返した。
「…?」
悟飯は神妙な顔つきになる。
ヤムチャは笑いながらも、どこか真剣に悟飯に語りかけた。
「俺とお前がセルや魔人ブウのような闘い…いわゆる、なんでもありの殺し合いをしたら、まず俺はお前に勝てないだろう。やらなくても分かる」
「な…何が言いたいんです?」
じれったく話すヤムチャに、温厚な悟飯の表情も曇ってきた。
「まあ聞けよ。かと言って、武道会のルールに則ってお前に“参った”なんて言わせるのはもっと無理だ。じゃあ10秒ダウンさせる…?そんなことはもっともっと無理だ。俺の攻撃だけでお前がダウンするはずもないだろうしな」
「……」
悟飯は困ったような顔をするが、さすがに少し苛立っているようで、わずかに気が膨らみ始めていた。
321SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 01:55 ID:Akahxuyc
【166話】
武舞台の外側には、テントで日陰になっている場所があり、そこに出場する選手たちは溜まっていた。
マーリンは嫌がっていたのだが、ヤムチャにここにいるようきつく言われたので仕方なく悟空やベジータたちと一緒に並んで試合を見る羽目になった。
「ヤムチャのやつ…何を考えているんだ。ベラベラと喋りやがって」
悟空の隣で白いマントをたなびかせているピッコロが、武舞台を見ながら言う。
「くだらん。あの地球人と悟飯の試合なんて、やらなくても結果が分かりきっている」
ベジータが馬鹿にしたように言うと、壁に寄りかかっているマーリンが無言でベジータをキッと睨む。
「…なんだ、何か言いたそうだな」
「………」
マーリンはヤムチャに、絶対に喧嘩はするなとも言われていたので、ベジータのことがムカつきながらも無視をする。
「孫、どうした?さっきから黙りやがって」
ピッコロが先ほどから何も喋らない悟空に、不思議そうに問いかけた。
「…いや、なんでもねえんだけど…ヤムチャがちょっと、気になってな」
チラッと一瞬ピッコロの方を向く悟空だったが、再びその視線は武舞台に戻った。
「ヤムチャ?ああ、予選でクリリンに勝ったようだな。だが、実力が上がっていたとして…さすがに悟飯相手では次元が違いすぎる。あいつのパワーはお前以上だ」
ピッコロは切り捨てるように悟空に言った。
だが、悟空は相変わらず難しい顔をしている。
何故そこまで難しく考える必要があるのかとピッコロは悟空を納得しない表情で見ていたが、ピッコロのその心境を察するように悟空が答えた。
「いやさ、ピッコロ。オラも最初はそう思ってたんだ。けど…」
「けど…?」
「オラの勘が正しければ……――」
「なんだ…?なんだと言うんだ」
悟空はそのあとに何かを言い掛けたが、その後の言葉に確信が持てないのか、はっきりとは喋らず口篭らせている。
もしかしたら、言いかけたのではなく何か言ったのかもしれないが、歓声が騒々しくてピッコロに悟空の声は聞き取れない。
322SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 01:58 ID:Akahxuyc
【167話】
『それではァァアァァ!!第一回戦……ヤムチャ選手対、孫悟飯選手!!!試合…開始ぃっ!!!!!!』
アナウンサーの試合開始の声と共に、お坊さんのような格好をした天下一武道会の役員が、大きな鉦を鳴らした。
舞台上の二人に緊張が走る。
だが、まだヤムチャと悟飯は動かない。
いや、あるいは警戒をして動けないのかもしれない。
普通に考えれば、悟飯が一発でもヤムチャに攻撃を与えれば、一撃KO…いや、下手したら死に至るぐらいのダメージは与えられるだろう。
だが、悟飯の中の野生の勘というか、戦いを続けてきた者の独特の直感というか、とりあえずこのヤムチャはいつものヤムチャとは明らかに違うということだけは頭で分かっていた。
それが、“何”を意味しているかまでは分かっていなかったが。
「…悟飯、戦いにおいて、一番怖いものってなんだ?」
ヤムチャは試合が始まっているというのに未だに悟飯に語りかける。
「……なんでしょうね。“怖いもの知らず”という状態が、戦いにおいて一番怖いとぼくは思います」
悟飯はここにきて初めて笑いながら、ヤムチャの問いに答える。
この状況を楽しんでいるのか、もしくはヤムチャを揶揄して笑ったのかは定かではない。
「へえ、なるほど。まさに今のお前ってわけか」
「…ぼくだって怖いものぐらいありますよ」
それを聞いて、ヤムチャもようやく笑う。
しかし、悟飯の笑いとは少し違うものだった。
まるで何か企んでいそうな…どこか不気味な笑みだ。

「…ヤムチャじゃねぇ」
そのヤムチャの笑みを見てやっと確信が持てたのか、悟空はそっと独り言を呟く。
その声にピッコロがすぐさま反応した。
「ヤムチャじゃない、だと?ヤムチャじゃないとしたらあれは誰なんだ」
「いや…ちげぇんだ、ピッコロ。あれはヤムチャだけど…ヤムチャじゃねぇ。オラには分かる…」
323SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 02:05 ID:Akahxuyc
【168話】
ここで、ようやくヤムチャが構えを取る。
そして、若干早口になりながら続けた。
「悟飯…お前は確かに強い。気だけを比べたら、俺なんか比較にならないし、悟空以上のパワーをお前は持っている。だが……かと言って、お前は俺に絶対勝てると言えるか?」
その言葉を聞き、悟飯は数秒ポカンとしたような顔をしたが、やがてすぐに先ほどの表情が戻る。
「面白いことを言いますね。…ぼくが、ヤムチャさんに絶対勝てると言えるか、って?……」
悟飯はそう言ってジワジワと体の力を解放していく。
「…やっと、気を解放し始めたな」
かつて、少なくとも魔人ブウをも余裕で倒せるだけはあった、あの途轍もないパワーが悟飯の体にグングンと宿っていった。
魔人ブウを悟空が倒してから修行はしていない悟飯だったが、1年経った今でもそのパワーは未だに圧倒的だ。
「はぁぁぁ………」
悟飯の気はどんどん大きくなっていく。
気を溜め始めてから間もないとは言え、既に戦闘力に換算して、3000万以上のパワーが悟飯の体に溢れていた。
しかし、ヤムチャはこの瞬間…気を溜めるときに、体が無防備になるのを狙っていたのだ。
「…今だ!お前の力を見せてやれ、ヤムチャ!」
寄りかかっていた壁から離れ、拳を強く握りながらマーリンがそう叫ぶのとほぼ同時に、ヤムチャの口も動く。
「んじゃ、ボチボチこっちから仕掛けていくかなッ!」

ボフゥゥゥゥンンンンンッッッ!!!!!

ヤムチャがそう言って、一瞬だけ歯を食いしばると、ヤムチャの周囲50メートルほどの範囲に突風が吹く。
悟飯とは、比べ物にならない速度でヤムチャの気は一瞬にして膨れ上がる…!
「な……?!」
悟飯や悟空たちには今まで感じたことがないほど、爆発的なまでにヤムチャの気が上昇した。
少なくとも、このヤムチャの気は、まだ完全に気が入っていない悟飯を明らかに超えている。
そして、どことなく悟飯と似ている気だった。
324SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 02:09 ID:Akahxuyc
【169話】
「ば…バカな……!!?」
ピッコロは信じられない光景を目の前にし、思わず声が裏返る。
ベジータもヤムチャの変化を感じてか、見向きもしなかった武舞台をやっと見始めた。
そして、これを既に予知していたのか、大して驚かなかった悟空だったが、その表情は強張り、冷や汗が垂れる。
「気ぃつけろ悟飯!!そいつはいつものヤムチャじゃねぇ!絶対油断すんなっ!!」
「え…!?あ、は、はい」
焦りながら受け答えする悟飯だったが、悟飯はそのヤムチャの変化に驚き、一時的に気を練るのをやめてしまっていた。
だが、そんな悟空の忠告は逆に裏目に出る。
悟空の声に一瞬でも気を取られてしまった悟飯を、ヤムチャの中の狼は見逃さなかった。

――ドンッッッ!

大きな打撃音の直後、悟飯の体が奇妙な体勢で数十センチ上に浮いたのが見えたコンマ数秒後に、赤いオーラを纏ったヤムチャの姿が悟飯の前に現れた。
その衝撃で、地面が揺れる。
「…気を溜めるときに体が隙だらけになるのは悪い癖だ、直したほうがいい」
「――あ…ぐ……いッッ…!!?」
悟飯は気を完全に込めていなかったのに加え、油断もしていたので意識が飛びそうになるぐらいの激痛が腹部に走った。
ヤムチャは一瞬で悟飯との距離を詰め、悟飯のみぞおちに強烈なアッパーパンチをお見舞いしていたのだ。
宇宙一の戦闘力を誇る悟飯とはいえ、完全に気を込めていない状態で今のヤムチャのパンチをみぞおちにくらったとあれば、さすがにノーダメージとはいかない。
「気のコントロールが遅いな、お前は。マックスパワーを溜めるのにどれだけ時間がかかるんだ?」
ヤムチャは厳しい目付きでそう言うと、腹部にめり込んだ拳を離し、今度は逆の拳で悟飯の顔面を強打を繰り出す。
悟飯はそれを咄嗟に見切って腕でガードし、直撃は免れるが、勢いを殺しきれなかったのか、グラグラと後ずさりをするような形になった。
ヤムチャの攻撃を防ぐために、受け止めた腕がズキズキと痛む。
ガードの上からでも、決して小さくはないダメージが悟飯の体に蓄積していた。
このままではまずい。
そう思って慌てて本気で気を高めようとする悟飯だったが、初っ端のみぞおちへのダメージが大きく、体に上手く力を入れられないでいた。
325SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 02:11 ID:Akahxuyc
【170話】
悟飯は決して油断したつもりはなく、最低でもヤムチャに“負けは絶対にない”だけの気はあの時点で溜めてあったはず。
あれだけの気を溜めれば、ヤムチャを圧倒できる…どこかそんな先入観があった。
もちろん、つい最近までのヤムチャから現在を推測すれば、悟飯の読みは間違っていない。
むしろ、戦闘力3000万なら以前のヤムチャを葬り去るぐらいなんともないほどの気だ。
だが、そんな勝手な決め付けこそが、悟飯の油断そのものだった。
体勢が立て直せない悟飯に、ヤムチャは追い討ちをかける。
「…狼牙…風風拳ーーーッ!」
「くっ…!!」
「ハイハイハイハイハイーーっ!」
既に、悟飯とヤムチャの姿は肉眼では見ることができずに、会場には衝撃音と、ヤムチャの掛け声だけが聞こえる。
何十何百発とヤムチャの拳が繰り出され、時折その拳は悟飯の頬や体をかすめた。
「……いつまでも…調子に乗らせないぞ!…っらぁあ!」
悟飯がガードの最中にほんの僅かなヤムチャの隙をつき、鋭いパンチを放った。

ズンッッ!

ヤムチャの胸部に悟飯のパンチが突き刺さる!
その攻撃をくらったせいか、ヤムチャの攻撃がようやくとまった。
「手ごたえ…あったぞ……!」
そう言って、悟飯はにやけながらヤムチャの顔を見る。
だが、そこに映ったのは悟飯以上ににやけたヤムチャの顔だった。
「…これは、パンチのつもりか?悟飯」
「……!?」
ヤムチャはガードもせず、その胸で悟飯のパンチを受け止め、悟飯の放った拳を指差しながら言った。
「今はお前より俺の気の方が高い状態だ。なのに、そんな腰も気持ちも入っていない当てるだけのパンチで、俺を倒せる気でいたのか?」
驚いたことに、ヤムチャはほとんどダメージをくらっていない。
326SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 02:15 ID:Akahxuyc
【171話】
いくら自分が全力の気ではないとは言え、このヤムチャの強さは明らかにおかしい。
悟飯はその不気味さに思わずまた体が硬直してしまった。
「……どうなっているんだ…一体…」
「悟飯ーーーー!!何やってる、早くヤムチャから距離を取れ!!そして気を溜めろっ!!!このままだと負けっぞ!!」
悟空が再び悟飯に向かって叫ぶ。
だが、ヤムチャはその悟空の言葉を聞いても全く動揺しておらず、むしろ悟飯が距離を取るのを待っているかのように何も手を出さなかった。
「は……はい!」
悟飯は後ろに大きくバックステップし、ヤムチャから十二分に距離を取る。
ヤムチャとしては、離脱した悟飯に本来追い討ちをかけたいところだったが、何故かそうしない。
意図があってのことなのか、それとも悟飯をなめているのか…少なくとも、この試合を見ている者には誰も真意は分からなかった。
少なくとも、マーリン以外の者には。
「はぁ………はぁ………」
悟飯は腹部を押さえながら大きく呼吸を繰り返すと、ようやくヤムチャに先制攻撃された腹痛が多少治まってきた。
多少治まったとは言っても、完全にダメージが消えるのには今しばらく時間がかかるだろう。
早くても、この試合中…ヤムチャと戦っている間は消えそうにない。
「フルパワーまで気を高められれば…絶対に負けないっ!」
悟飯は腹を押さえながら悔しそうにそう声を出し、万全ではない状態ながらも、再び気を溜め始めた。
先ほどと同じことにならないよう、ヤムチャへの警戒は当然忘れずに。
「ちっ…やっぱり狼牙風風拳は、格上に通用しないかよ」
ヤムチャはこの技に拘りがあるのか、試合の流れとしてはヤムチャが押しているというのに、どこか悔しそうな表情を見せていた。
「だが、先制攻撃が思った以上に効いたようだな…」
そして、ヤムチャはバッと手の平を顔の前に上げる。
「悟飯、お前が気を溜めている間に、こっちも存分にこの時間を使わせてもらうぜ!」
そう言ってヤムチャは手の平に気を集中し始める。
327SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 02:22 ID:Akahxuyc
【172話】
悟飯は、覚えていた。
父とマーリンが戦っている最中、ピッコロとその戦いを観戦していた自分に、マーリンが使っているフワフワした気弾を自在に操るの技について、ヤムチャが目の前で解説をしてくれたことを。
その情景が、ふと悟飯の遠い記憶から蘇ってきた。
「…あのモーション……そ、繰気弾かっ!」
悟飯が気を溜めながら叫ぶ。
「へえ…覚えていてくれたんだな。一回しか見せてねえのに、さすが優等生」
そう言って、より一層手に気を集中するヤムチャ。
数秒後、ヤムチャの手の平の上にボッと音をたてながら、白い気弾が現れた。
「さて…こっからが勝負だぜ、悟飯」
試しに、その気弾をビュンビュンと自分の体の近くで操作するヤムチャ。
「完璧に思い通りに動く。なかなか調子がいいみたいだ」
ヤムチャはそう言いながら、勢いよくテスト操作していた気弾を、自分の手の平のすぐ上に戻し、状態を落ち着かせる。
だが、そんな様子を見ても悟飯は一切動揺しなかった。
「…へへ、ヤムチャさん…繰気弾で時間をかけたのは失敗でしたね。ぼくに気を溜めさせるチャンスを与えてしまったんですから」
「……かもな…。だが、この繰気弾はちょっと特別でね。だから、まだ作るのにちょっと時間がかかるんだよな」
「…。そんなハッタリ染みた事が、この試合で通用すると思いました?」
「…そうかい。なんとでも言うがいいさ」
両者の距離は30メートルといったところ。
悟飯の気は、既にヤムチャの気を大きく上回っており、例え繰気弾が悟飯にまともにヒットしたとして、大きなダメージを与えることは難しいだろう。
悟飯の気がヤムチャより小さい状態の時に、そのまま試合を続けていればまだ勝敗は分からなかったかもしれないが、既にヤムチャの気は悟飯に劣ってしまっている。
まともに打ち合っては、ヤムチャに勝ち目はなかった。
328SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 02:27 ID:Akahxuyc
【173話】
「あの地球人の馬鹿、不意打ちでいい気になりやがって…あの勢いで攻め続ければ結果は分からなかったが、どうやら勝負あったようだな」
ベジータが馬鹿馬鹿しそうにそう言うと、ベジータを無視していたマーリンがようやくその言葉に反応する。
「さっきから鬱陶しい。黙って見ていられないのか?気が散るのだよ、お前のような奴がそばにいると」
マーリンはうざそうにベジータをあしらう。
「ほう、俺の言っていることが何か間違っていたか?」
そのマーリンの煽りに対して、嫌味とも取れるような言葉を薄ら笑いを浮かべながら返すベジータ。
だが、マーリンは逆にベジータを笑った。
「ふ…一つだけ言わせてもらうとすれば、馬鹿なのはヤムチャではなくベジータ、お前だったようだな」
「な…なんだと!」
「騒ぐな。試合を見ていろ、そのうち分かる」
マーリンとベジータがそんなやり取りをしているうちに、悟飯の気は最大近くまで溜まっていた。

「はぁぁぁあぁぁあっぁあぁぁぁぁあぁぁ!!」
見た目に変化はないが、悟飯の気の上昇は止まらない。
既に悟飯の戦闘力は2億近くまで上がっていた。
星のひとつやふたつ程度なら、簡単に破壊できてしまえるレベルの気が悟飯の体に充満している。
「悟飯の奴…ムキになっちまってんな…」
悟空が険しい表情をして言う。
「ソンゴハン…本当に凄い男だ。ヤムチャが言ってた通り、ソンゴクウ…お前のスーパーサイヤ人3以上のパワーを感じる」
そばにいたマーリンも悟空の言葉を聞いて口を出した。
「ああ…気はオラより悟飯の方がつえぇ。それだけに、この試合が心配だ…悟飯の攻撃をくらって、ヤムチャが無事ならいいんだけどよ…」
悟空はヤムチャの身を心配していた。
だが、マーリンはそれを聞いて笑いながら言い返す。
「ふふ…一つ訊くが、何故ヤムチャは先ほど追撃出来る場面で敢えてそれをしなかったのか、説明が出来るか?」
「……繰気弾を作るためじゃねぇのか?」
「…ふふふ」
マーリンはただ笑うだけで、悟空にその答えは話さなかった。
329SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 02:31 ID:Akahxuyc
【174話】
一方、ヤムチャは悟飯から離れているというのに、ビリビリと肌がしびれる様な感覚に陥る。
「凄い気だな…マジで。こんな奴の攻撃一発でもくらっちまったら、体がただじゃ済みそうにないぜ…」
ようやくヤムチャの顔に焦りの色が見え始めた。
ツー…と、頬にある十字の傷に沿うように、一筋の冷や汗が伝う。
「今更後悔しても、もうぼくは手加減するつもりはありませんからね…ヤムチャさん」
「そうやって油断しちまっていいのかな?俺には繰気弾があるんだぜ」
そう言いながら、ヤムチャはわざとらしくそれを見せ付けるように、再び身の回りで気弾を高速操作する。
「…その技で、ぼくを倒せるとでも……?」
悟飯は念のため、ヤムチャが操作している気弾の気を探る。
気弾からは、それほど大きな気を感じられない。
直撃しても、精々かすり傷が残る程度だろう。
悟飯は状況考察を終えると、ヤムチャに対して久しぶりに余裕の表情を見せる。
「一時は、どうなることかと思いましたが…ヤムチャさん、油断したのはあなたの方でしたね」
「……」
押し黙るヤムチャに、悟飯は続けた。
「あなたの攻撃では、もうぼくを気絶させることなんて出来っこない。そして、ぼくが降参なんてするはずもない。つまり、何をしてもあなたはぼくには勝てない…違いますか?」
「……大した自信だな、悟飯」
ヤムチャはなおも繰気弾を自在にビュンビュンと自在に飛ばしながら言う。
悟飯はそれを警戒するように、宙に舞う気弾とそれを操作している地上のヤムチャをチラチラと交互に見る。
そして、何かを閃いたように悟飯の表情が変わる。
「あんな弾に気を取られずに、ヤムチャさん本人にダメージを与えればいい…簡単なことじゃないか」
悟飯はヤムチャに聞こえないぐらい小さな声で言うと、そっと足に力を込めた。
しかし、ヤムチャはすかさずそれに気付く。
330SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 02:39 ID:Akahxuyc
【175話】
そして、気弾をさりげなく今まで操作していた場所より上空へと動かし、そこに停止させる。
「…今、足に気を集中したな?隙を突いて一瞬で突っ込んでくる気か?そうだろうな…お前はそうするしかない」
分かりきっているかのように言うヤムチャに、悟飯は数秒驚いたような表情を見せるが、それは“驚異”であって、”脅威”ではなかった。
「さすがに長年武術をやりこんでいるだけあって、気を読む能力は素晴らしいですね。でもさ、ヤムチャさん。頭では分かっていても、体の動きがその判断に追いつかなければ何の意味もないんですよ」
嫌味っぽくそう言うと、悟飯の気の上昇がようやく止まる。
推定戦闘力2億以上…まさに最強の肉体を誇る悟飯の筋肉が、気の上昇が止まった数秒後に一瞬…ピクリと動いた。
それと同時にヤムチャは神経を悟飯の気に集中させる。

そして……会場から悟飯の姿が消えた。
「―――だッッ!」
高速、いや、光速とも言えるほど素早い動きで、悟飯の右の肘がヤムチャの顔面に迫る―!
当然、肉眼では見える速さではない。
だが、その宇宙一のスピードに、ヤムチャの集中力は勝っていた。
「…!………っぶねぇ!」
そう言いながら、ヤムチャは足を動かさずに体の腰から上を数十センチ左にずらすと、紙一重でその肘打ちを回避する。
悟飯の肘打ちは空を切り、それによって生じた突風により、肘打ちの先にあった武舞台のレンガが粉々になり、激しくその破片がぶっ飛ぶ。
避けられたのが計算外だったのか、悟飯は歯を食いしばるが、すぐに次の攻撃に転じようと、体を捻ってグググと右手に力を溜めた。
「…らぁぁッ!!」
悟飯は突進した勢いを武空術で停止させると、その場にまだ突っ立っているヤムチャにそのままの体勢で力を込めた裏拳を放つ。
「……っ!」
再び、拳は空を切った。
ギリギリとは言え、それすらも見せ付けるようにバック転をしながら華麗に避けるヤムチャに、悟飯はイライラし、攻め方が雑になる。
331SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 02:54 ID:Akahxuyc
【176話】
「…ダッ!ダッ!ダッ!だらァッ!うるァァッ!!おるァアァァッッ!ダァァァァッ!!」
その後も悟飯はパンチや蹴りの強打を数発放つものの、やはりヤムチャに攻撃は当たらない。
ヤムチャも避けるのにいっぱいいっぱいで、余裕がない表情をしている。
悟飯の攻撃は余裕で避けられているわけではなく、紙一重のギリギリの差で避けられているため、惜しい事は惜しいのだが、そもそもそんなこと自体がおかしい。
ヤムチャの気の大きさでは、あんな攻撃避けることも、受け止めることも無理なはず。
理解できない現実に、悟飯はこれが悪い夢じゃないかとすら思い始めていた。
「ばかな……あ、当たらないはずがない……!!」
「…どうした悟飯!攻撃が止まったあとの足元がお留守になっているぜ!!」
そう言いながら、ヤムチャは悟飯に向かって足払いをかける。
「…っ小癪な!」
悟飯は慌てたようにそれをジャンプして避けると、ヤムチャはその隙に武舞台のコーナーまで逃げるように高速で移動し、悟飯との距離を取った。
「っふう……!危ない危ない!あんなの一発でも当たってたら体が弾け飛ぶだろうな…」
ヤムチャはそう言って額の汗を拭う。
「クソ…ありえない…!……ぼくの攻撃が…当たらない…なんて…!」
悟空やベジータと違い、修行を続けていなかったため、当て勘が鈍っているのもあるかもしれないが、それだけでは説明がつかないあのヤムチャの避けっぷりに悟飯はワナワナと震えていた。
「…あいにく、ここ最近は“お前と同じような奴”とこっちは毎日修行してたんだ。おかげで体の感覚というか反応が、かなり鋭くなっているから、避けるだけならギリギリなんとかなるんだな、これが」
そう言ってヤムチャは笑いながら、試合を見ているマーリンに向かって目線を送った。
マーリンはそれを見て微かに笑い返す。
そう、ヤムチャは界王神界から地球に戻ったあと、毎日マーリンと組み手を行っていた。
圧倒的に自分より気が大きいマーリン…当然、スピードもパワーもヤムチャよりは上をゆく。
そのおかげか、ヤムチャの体の反応は以前より遥かに研ぎ澄まされ、どうにか自分より数段階強い相手の攻撃を避けれるレベルにまで達していたのだ。
332SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 03:04 ID:Akahxuyc
【177話】
それにしても、まさか悟飯の攻撃を避けれるレベルにまで達していたとは、ヤムチャ自身が想像していた以上の上達っぷりだった。
ということは、それだけマーリンの実力も凄まじかった…ということになる。
だが、ヤムチャにとってこれは綱渡りのようなものであって、命懸けとも言える行為だ。
はっきり言ってしまえば互角に戦えている“ように見える”だけに過ぎない。
気の大きさは当然何倍も悟飯の方が大きい為、一撃でもクリーンヒットを許してしまったら…それこそ、ヤムチャは致命的なダメージを受ける。
骨が折れる、などといったレベルではない。
以前、サイヤ人が地球に攻めてきた時、ナッパの攻撃を受け止めた天津飯の腕が簡単に?げてしまったのを、ヤムチャはあの世で見ていた。
もし、悟飯が少しでも加減を誤れば、下手したら死に至るレベルの大ダメージを受けることになるだろう。
少なくとも、気が全開の状態である今の悟飯の攻撃を、一発でも食らってしまったら…それはヤムチャの負けを意味する。
「ま……これ以上速くなるってんなら、さすがに無理かもしれないけどな」
ヤムチャはリストバンドで額の汗を拭いながら言った。
しかし、そのヤムチャの言葉を聞いて悟飯の口元が緩む。
「……これ以上、速く動けないとでも思っているんですか?」
悟飯は精神的に追い込まれているのか、顔は笑っているが、その声は笑っていなかった。
「…なんだと…!?あれで全力じゃないのか?」
「意識すれば、まだスピードは上がりますよ。言うまでもなく…それに比例して、当然…攻撃が当たった時のダメージも大きくなりますがね」
「……マジかよ」
ヤムチャはようやくここにきて初めて本気で焦ったような半笑いの表情を見せる。
「ヤムチャさん、次の攻防で勝負は終わる…意味が分かりますか?」
「…あいにく、物分りが悪くてね」
「じゃ、丁寧に教えてあげますよ…その体、直々にね!!」
「……いいだろう。来い、悟飯!」
333SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 03:13 ID:Akahxuyc
ふー、かなり書いた気がします!
とりあえず、今夜はここまでとしたいと思います。

>>318さん
そういえば、まだサタンは名前だけチラホラ出ているだけで、話には登場をさせていませんでした(笑)
サタンの扱い、どうしようかな…と、ちょっと悩み中です。

それでは、おやすみなさい。
334SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/15 03:20 ID:Akahxuyc
見落としていた…>>332の訂正です。

>>天津飯の腕が簡単に?げてしまったのを

>>天津飯の腕が簡単に捥(も)げてしまったのを

天津飯さん、すいませんでした。
ランチさんと末永くお幸せに。
ちなみに私は金髪のほうが好きです。

では、今度こそおやすみなさい。
335Classical名無しさん:09/02/15 16:07 ID:R1hWrvkw
1000人ヤムチャ、サイヤンキラー作者UP乙かれさまです
続き楽しみにしてます
336Classical名無しさん:09/02/16 08:19 ID:VF2XN0Z.
サイヤンキラー2作者さんアップお疲れさまです。
ヤムチャどうなるんだ!ハラハラしながら読んでいます。
今回のヤムチャは足元がお留守じゃないから大丈夫だとは
思うけどそれでもちょっとドキドキします。
337Classical名無しさん:09/02/17 19:37 ID:1WsCb.tk
復讐の狼の続き誰か書いてくれませんか?
338Classical名無しさん:09/02/19 08:50 ID:VAFZDI.6
保守
339Classical名無しさん:09/02/22 00:09 ID:es8c7IAQ
ヤムチャガンバレ!
340Classical名無しさん:09/02/23 20:33 ID:1A3v19LM
保管庫が更新停止しているとはいえ、あそこに載らないのも寂しいな・・
341Classical名無しさん:09/02/23 20:54 ID:APY2D0cI
クラウンだからスレがdat落ちしたら倉庫にいかずにそのまま消滅だしなぁ
342SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/02/23 23:18 ID:QZWJ.TaQ
>>335さん
ありがとうございます!

>>336
気の強さでいったら圧倒的に悟飯が強いので、ヤムチャは常にKO負けと隣り合わせ…
そんな緊迫した感じが伝わって頂ければ嬉しいです

>>340さん、>>341さん
すみません。
続きをじゃんじゃん書きたいのですが、
月に休みが一日あるかないかという状態で、
なかなか時間が取れないものでして…!

かといって、雑には仕上げたくはないので、
なかなか思うように進みません。

私以外にも、定期的に小説を投稿してくださる方がいればよいのですが…。
343Classical名無しさん:09/02/24 16:55 ID:fiGY/nDg
テイルズ・オブ・ヤムチャ 君とヘタレあう小説
テイルズ・オブ・オルス 僕の足元がお留守な小説

勢いでタイトルを書いた。反省はしていない。
344Classical名無しさん:09/02/25 17:39 ID:uU0lFJo6
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345Classical名無しさん:09/02/25 23:21 ID:CGhRxBTw
ウルフハリケーン!
346Classical名無しさん:09/02/27 12:34 ID:VTII8H6k
どこかに保管出来ないかな?dat落ちしたらそのまま消滅なんてもったいない
347Classical名無しさん:09/02/28 22:36 ID:h5Qs1sss
                 __,,,,、 .,、
            /'゙´,_/'″  . `\
          : ./   i./ ,,..、    ヽ
         . /    /. l, ,!     `,
           .|  .,..‐.、│          .|    ビクビクッ
           (´゛ ,/ llヽ            |
            ヽ -./ ., lliヽ       .|
             /'",i" ゙;、 l'ii,''く     .ヽ
         / ...│  ゙l,  l゙゙t, ''ii_    :.!
 ビクビクッ   : /.._ /    ヽ \\.`゙~''''''"./
        .|-゙ノ/   : ゝ .、 ` .`''←┬゛
          l゙ /.r   ゛ .゙ヒ, .ヽ,   ゙̄|
       . | ./ l      ”'、 .゙ゝ........ん
       l  /     ヽ .`' `、、  .,i゛
       .l|  !    ''''v,    ゙''ー .l、
       |l゙ .il、  .l  .ヽ  .¬---イ
      .ll゙, ./    !            ,!        
      .!!...!!   ,,゙''''ー       .|
      l.",!    .リ         |
      l":|    .〜'''      ,. │
      l; :!    .|'"    ...ノ,゙./ │
      l: l「    !    . ゙゙̄ /  !
      .| .|    !     ,i│  |
      :! .l.    }    ,i'./    |
      :! .|    :|    . /     .|
      :! |    ;!   "      .|
      :! !    │        │
      :!:|               ,! i ,!
348Classical名無しさん:09/03/01 19:18 ID:HYbnW6as
復讐の狼は名作
349Classical名無しさん:09/03/03 00:54 ID:BuO7q556
>>1
part26はクラウンに建っていたスレッドだからログが残っていない
つまりURLがわかっていても閲覧できない

だから、もしもpart28が建つことになっても前スレを入れる必要は無い

つまり>>1のテンプレは前スレのURLが掛けている欠損テンプレに見えるが
実は不備無しの完成されたテンプレなのだ!
350Classical名無しさん:09/03/05 16:51 ID:fSuhZcww
保守
351Classical名無しさん:09/03/07 00:00 ID:jWjc7jU6
352Classical名無しさん:09/03/07 02:58 ID:S6bMRUEY
自分でよければ新しいまとめサイト作りますよ。
ダット落ちしたら消えるなんて勿体ないし
これからもいろんな人に小説書いて頂きたいし…


新しいサイト作ったらオッケー!て問題じゃなかったらごめん
353Classical名無しさん:09/03/07 07:25 ID:PLwk/O6w
>>352
お願いします
354Classical名無しさん:09/03/07 17:34 ID:jWjc7jU6
>>352
お願いします
355Classical名無しさん:09/03/07 21:02 ID:SnO/cWdg
お願いします。できれば携帯でみれるように。
356Classical名無しさん:09/03/08 21:07 ID:pOaT/QWE
ヤムチャ28万ヒットおめ
357Classical名無しさん:09/03/09 09:57 ID:F7i/dmrE
>>352
もしできるのなら非常に嬉しいです
358Classical名無しさん:09/03/09 14:34 ID:UZjGMeKk

第十一話「どうした孫悟空 ついでにヤムチャもどうした648人+(320人)」

悟空と人造人間19号の凄まじい戦いを見てヤムチャ達はあせった。
「お、俺が1000人になった意味は…?」
唖然としているヤムチャ達。そこに悟飯とクリリン、そして他のヤムチャ達がおりたった。
だがピッコロがある事に気づく。「数が減ってないか?」それに悟飯が答える。
「あぁ、ここに来る途中ヤムチャさんは6人ほど戦闘力5のおばさんに射殺されましたよ」
なんで戦闘力5のおばさんに射殺されるんだよとヤムチャは言ったが
悟飯は足元を撃たれて多量出血で死んだんですと答えた。
「あぁ、それなら納得だ」とヤムチャ達。
「納得すんなよ」天津飯が言った。
ピッコロはその事を無視し悟飯に語りかけた。
「お前も気づいたか悟飯?」
「え?あ…はい」
「なにがだ?ピッコロちゃんよ」
それにヤムチャ達も何故かピッコロを挑発しながら反応した。
「貴様は黙ってろ!!」ピッコロはキレた。
次話「繰気弾と気功砲。ヤムチャ達962人」に続く
359 ◆sQwulvD0ZI :09/03/09 14:34 ID:UZjGMeKk

第十二話「繰気弾と気功砲ヤムチャ達962人」」

「孫悟空はなぜか勝負をあせっている…すでに全力に近いとばしかただ…
それなのにあのザマはなんだ……」
「あ…あのザマ?あのザマだと…!?なにをいってるんだ。圧倒的に悟空がおしてるんだぞ…!」
ピッコロの発言に驚きながら天津飯はこの前買ったカツラをかぶった。
「あんなもんじゃない。超サイヤ人になった悟空の力は
もっととてつもないはずだ。そりより天津飯、カツラはもう1着あるか?あったらよこせ」
「すまん。これ1着しかないんだ」
「そうか」
そこに一人のヤムチャが口を開いた。
「もしかして、あいつら気を吸収するんじゃ…」
Z戦士達の空気が重くなる。
その時!悟空がかめはめ波をうつ。だが19号はそれを吸収した。
「やっぱりそうだ!俺って天才?はははは!」
ヤムチャはうかれて天津飯のカツラを繰気弾で燃やした。
「気功砲!」天津飯の攻撃でヤムチャ達15人が死亡した。
次話「ウザいヤムチャ達947人」に続く
360 ◆Nt3ni7QiNw :09/03/09 14:47 ID:UZjGMeKk

第十三話「ウザいヤムチャ達947人」

「気を吸い取る…?じょ…じょうだんじゃねえぜ…」
悟空は絶望した。そして、段々とやられはじめた。
「ちっ…ちくしょう…!!ハアッハアッ…ハアッハアッ」
「お、おい。あいつかなりつらそうだ…そ…そんなに気を吸い取られちまったのか?」
「てゆうか悟空!ハアッハアッじゃなくてハァハァハァハァハァハァハァハァ(*´Д`)だろーが!」と変体のヤムチャ。
もちろんこのヤムチャも悟飯の手によってすぐにお亡くなりになりました。
「お父さんは病気なんだよ…心臓病の!!」
悟飯の発言にみんなが驚いた。
「あのとき未来から来たヤツのいっていたウイルス性の心臓病か!?」
「バ、バカいえよ!そいつは特効薬もらってとっくになおしたんだろ!?」
(く、苦しい…どうなっちまったんだ。オレの体…)
「悟空、仙豆だ。食え―!!」
クリリンは袋から仙豆を取りだし悟空に向かって投げた。
仙豆は悟空の前を通りがかった1人のヤムチャの体を貫き悟空の元についた。
体を貫かれたヤムチャは泣きながら死んでいった。
「サ、サンキュー…た、助かったぜ…」
悟空は仙豆になんか血がついていたけど我慢して食べた。
次話「悟空やられる!ヤムチャはやられてる946人」に続く
361 ◆Nt3ni7QiNw :09/03/09 14:47 ID:UZjGMeKk
第十四話「悟空やられる!ヤムチャはやられてる946人」

「せ、仙豆が効いてない…?」
仙豆を食べたにも関わらず悟空は19号にやられまくっている。
「そうか!ヤムチャさんの血がついてるから仙豆の力が無効に!」
そう言う悟飯。だがピッコロは心臓病だろとツッコんだ。
クリリンがどういう事か悟飯に聞くと悟空は心臓病にかかってなかったらしい。
なので今、心臓病が出始めたのだろう。
そして、とうとう悟空は超サイヤ人じゃなくなり普通の状態に戻ってしまった。
19号は悟空の首を掴みエネルギーを吸い取りはじめた。
その状況をみて3人のヤムチャが「あれって、気持ちいいのかな?」と思った。
ここに3人の血迷ったヤムチャが現れたのである。
悟飯はとりあえずそのヤムチャ3人を跡形ねなく粉々にした。
次話「悟飯の恐怖!脅えるヤムチャ943人」に続く
362Classical名無しさん:09/03/09 14:48 ID:uCJUQyDE
363Classical名無しさん:09/03/09 14:49 ID:UZjGMeKk
第十五話「悟飯の恐怖!脅えるヤムチャ943人」
ピッコロはヤムチャ達の事をさすがにウザくなってきたようである。
「まずいぞ。エネルギーを吸い取られる!助けに行け、ヤムチャ!」
ヤムチャ達に向かってピッコロが言った…というより命令だある。
だがヤムチャ達は切れた。「いや、今それどころじゃねーんだよ!」
「こ、こいつらまたDSをやりはじめてる…」クリリンが呆然としながら言う。
それを見て悟飯はヤムチャ達に近づいた。
「ヤムチャさん。にぎり潰されたいですか?」
なにを!?そこにいた全員が思った。
いや実は分かっているのだがあまりにも恐ろしい事なので思いたくないだけなのだ。
ヤムチャ達もどういう事か分かりとりあえず土下座をして悟空を助けに向かった。
次話「ば、馬鹿な!残像拳じゃない!全員本物のヤムチャだ!」に続く
364 ◆Nt3ni7QiNw :09/03/09 14:52 ID:UZjGMeKk
あー、間違えてばっかだ。馬鹿だ、俺はorz…
>>258-261>>263は俺です。あと、>>259のカツラ1着ってのは1個の間違いです。

>>252
よろしくお願いします。
365Classical名無しさん:09/03/09 15:04 ID:IwZXROwc
レス番号100ずれているよw
乙、これから読ませてもらいます
366 ◆Nt3ni7QiNw :09/03/09 15:25 ID:UZjGMeKk
あ〜、またかよ。
>>365
ご指摘ありがとうございます。

訂正

>>358-361>>363は俺です。そして、>>359のカツラ1着ってのは1個の間違い。

>>352
頼みます。

ふう。てかっ、間違いばっかで嫌になるよ…
367Classical名無しさん:09/03/09 19:54 ID:uCJUQyDE
368Classical名無しさん:09/03/09 23:00 ID:LdiIGfm6
まだ900人以上いるのかw
369Classical名無しさん:09/03/11 23:41 ID:6o0LldA6
370Classical名無しさん:09/03/14 06:18 ID:Hxptf.B2
サイヤンキラーは?
371Classical名無しさん:09/03/14 11:47 ID:Kaq61wBc
レス遅くなってすみません。>>352です。
了解ありがとうございました。では新まとめサイト管理させて頂きます。
このサーバーはダメとか要望とかここに書き込んでもらう形でいいかな?


とりあえず携帯でも閲覧可能なサイト了解しました。
372Classical名無しさん:09/03/14 12:22 ID:Hxptf.B2
ありがとうございます。
373Classical名無しさん:09/03/14 13:44 ID:Sjw5v7fI
374Classical名無しさん:09/03/16 07:08 ID:pcWY5XzI
保守
375Classical名無しさん:09/03/19 06:21 ID:m.3DZBzs
サイヤンキラーの続きはどうしたのかな?
376Classical名無しさん:09/03/23 04:05 ID:yWTWuPik
忙しくて執筆の時間取れないって作者さん言っていたね
続きはのんびり愉しみながらまとうw
377Classical名無しさん:09/03/27 03:29 ID:FcUP8yag
あまりにもサイヤンキラーが面白くて一気に読んでしまった
保守
378Classical名無しさん:09/03/27 18:10 ID:CuaZAno2
今日変な夢を見たんだ。
大筋だけ書くと
ヤムチャ、ドラゴンボールで願いをかなえてもらう(戦闘力5億にしやがれ、若返らせろ、ここじゃない別の世界に飛ばせ)
しかし気を全力開放すると自身が死んでしまうという制約がつく。

続きの話は自分で考えてみたけどさすがに需要ないよなw
379Classical名無しさん:09/03/29 00:06 ID:0T2uTCgg
>>378

> 今日変な夢を見たんだ。
> 大筋だけ書くと
> ヤムチャ、ドラゴンボールで願いをかなえてもらう(戦闘力5億にしやがれ、若返らせろ、ここじゃない別の世界に飛ばせ)
> しかし気を全力開放すると自身が死んでしまうという制約がつく。

> 続きの話は自分で考えてみたけどさすがに需要ないよなw

それよみたい
380Classical名無しさん:09/03/29 05:06 ID:OCMEZ3tk
>>379
まさか需要があるとは思わなかったぜw
381戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/03/29 05:33 ID:OCMEZ3tk
1話 ヤムチャの思いつき

 その男は洞穴の中で寝そべっていた。
死んでいない、生きている。たまに寝返りをうつだけで、それがなかったら死んでると間違えられてもおかしくない。
男の頭上には青い猫がフワフワと飛んでいる。
みなさんお気づきだと思うがこの男が戦闘力のインフレに飲みこまれてお荷物になった男、ヤムチャである。
 ヤムチャはいきなり体を持ち上げた。
「ま、またこの夢かよ…」
彼の額には汗が浮かんでいる。
そこで青い猫…プーアルが声をかけ質問をする。
「一応聞いておきますけど…どんな夢だったんですか?」
ヤムチャは物凄い早口で答えた。
「足元がお留守、金的ぶつける、サイバイマンに自爆される、が重なったんだ!」
プーアルはまたか、と思ったが口には出さない。
いやな思い出の夢だというのに、いきいきとして(そう見えた)話す彼を見て、実はこいつMなんじゃないのか、さらにそう思った。
「それで…一つ思いついたんだ!」
ああ、いきいきと話してたのはこの『思いつき』があったからなんだな…プーアルは思った。
「なんでしょう?」
ヤムチャの目はキラキラと輝いている。たとえるなら一昔前の少女マンガのように。
「ドラゴンボールだ!そうすればこんな夢に悩むことはなくなる!」
プーアルは愕然とした。この人はこんなことに願いを使うつもりなのか。
「いいか、俺を強くしてもらって、俺を若返らせてもらって、ここじゃない過去へ飛ばしてもらうんだ!」
プーアルはもうヤムチャの話を聞いていなかった。
382戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/03/29 05:34 ID:OCMEZ3tk
うわ…最終修正してねえ…
変な文がありますがご容赦を
383戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/03/29 15:09 ID:OCMEZ3tk
2話 善は急げ
「プーアル?おい、聞いているのか?」
ヤムチャの言葉を右から左に受け流していたプーアルは我にかえった。
「あ…ヤムチャ様、どんな話でしたっけ?」
やれやれ、という風にヤムチャは首を振った。
それから話し始めた。
「いいか、俺を強くしてもらって、俺を若返らせてもらって、ここじゃない過去へ飛ばしてもらうんだ!」
さっきにもまったく同じ台詞を言っていたのだが、聞いてなかったプーアルは驚愕した。
若返らせる?なにを言っているんだ?ヤムチャは若返っても弱い。
強くしてもらう?できるはずがない。神龍だってお手上げだ、
ここじゃない世界に飛ばしてもらう?なにを言っているんだ?
ここに人がいたら間違いなくこう考えるだろう。?と、なにを考えているんだが浮かんでは消える。
もちろんプーアルとて例外ではなかった。ポカンと口をあけてボーっとしていた。
「というわけでドラゴンボールを集めようと思う、善は急げだ!じゃあな!」
理由もなにも言わずないヤムチャ。もちろんプーアルが問わないせいもある。
言い忘れていたがヤムチャは下着姿だった。着替えていないので当然といえば当然である。
パジャマ?なにそれ、おいしいの?byヤムチャ
ヤムチャは下着姿で飛んでいった。
プーアルは二重に驚くことが重なり呆然としていた。
ちなみに善と言うほどいいことでもない。
プーアルはしばらくしてようやく我にかえって呟いた。
「ヤムチャ様…寒いところもあるんですから…ドラゴンレーダー…どうするつもりなんだろ…まさかブルマさんのところにあの格好で…」
数時間後ベジータにボロボロにされたヤムチャが戻ってきたのは言うまでもない。
しかし、その手にはしっかりとドラゴンレーダーが握られていた。
プーアルはヤムチャの根性に思わず涙した。
しばらくプーアルはヤムチャが起きるのを待っていた。
「ハァハァ、プーアル…よう…」
荒い息遣いでヤムチャが目を覚ました。
もうなにも言うまい…プーアルは密かにそう思っていた。
「ヤムチャ様、今日は眠ってください」
プーアルが懇願したがヤムチャは傷だらけ、痣だらけで飛び出していった。しかも下着姿。
プーアルは改めて嘆いた。
384Classical名無しさん:09/03/30 06:31 ID:CbQVOoec
おもしろいよ。
385戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/03/31 18:24 ID:69IvfQ5o
3話 前置きはいい加減にしろってことを見せてやるぜ!
「よし、ドラゴンボールを7個集めたぜ!」
洞穴に帰ってきたヤムチャの第一声はそれだった。
そんなにあっさり見つかるものではないのでは?プーアルは思った。
「さあ、神龍を呼び出すぜ!」
なぜ別の過去に飛ばせ、とヤムチャが言うのかはいまだわからずじまいである。
洞穴から出るヤムチャとプーアル。
そしてヤムチャはゴクリ、と生唾を飲み込んだ。
生唾を飲み込んだかと思うとヤムチャはいきなり咽(むせ)び泣いた。
ギョッとしてプーアルはヤムチャのほうを見た。
するとこんなことを言っていた。
「うっうっうっ…俺みたいな脇役キャラが神龍を呼び出せるなんて…オーイオイオイ」
ヤムチャはさらに大きな声で泣き出した。
さすがにこのままでは時間を食いすぎる。プーアルはヤムチャをこういって急がせた。
「ヤムチャ様、早く願いを言わないとドラゴンボール、盗られてしまいますよ」
ヤムチャはハッとして泣くのをやめた。
「ああ、そうだな、じゃあ…イでヨシェンろん!」
ところどころ声が裏返っている。だから脇役なんだよ。まったく関連性がないのにプーアルはそう思った。
「どんな脇役の願いでも、3つかなえてやろう」
「俺を強くしてくれ!」
引っかかることを言っているのにヤムチャ様は気にならないんだろうか…密かにそう思うプーアル。
「具体的な数字を言え…」
低い、神龍の声が響く。
「戦闘力…5億ぐらいでいいや」
ずいぶん適当に答えるヤムチャ。神龍がこう返した
「お前の肉体はヘタレすぎる。全力に近い力を出すと生命が削れるが…いいか?」
ポカンとしたプーアルをよそに、ヤムチャはいいぜ、と相槌を打った。
「それで…何%の力までならOKなんだ?」
「80%までだ…それ以降の力を出すと体が悲鳴を上げる…もって10分だろうか…」
満足げにヤムチャは頷いた。なにが満足なのかは彼にしかわからない。
「よっしゃ、交渉成立!で、つぎの願いだけど…」
交渉ではない。しかもすぐに次の願いを切り出すヤムチャをプーアルはあっけにとられて見ていた。
386戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/03/31 18:25 ID:69IvfQ5o
4話 ムチャクチャヤムチャ

「次の願いは、俺を若返らせてくれ!」
その願いに神龍は茶々を入れず、願いをかなえてくれた。
若返ったヤムチャを見たプーアルは懐かしい気持ちでいっぱいに・・・ならなかった。
第一に短髪である。第二に下着姿である。第三に傷がある。
長い間ヤムチャと居ただけにその3点は懐かしさを失わせるには十分だった。
「三番目の願いはな…」
とうとうあの願いを言うのか…プーアルは静かにヤムチャの口から言葉が出るのを待った。
「俺を…ここじゃない別の過去に飛ばしてくれ!」
「了解した!」
神龍の低い声が響いた…眩い光に包まれたヤムチャ。プーアルは固く目を閉じていた。
プーアルが再び目を開けたとき、ヤムチャは『そこ』にはいなかった。
「願いは叶えてやった…ではさらばだ!」
神龍の声が響く。そして神龍が飛び去り、ドラゴンボールが飛び散った。
そこにはプーアルだけが残された。
「…さようなら、ヤムチャ様、どうかお元気で」
しばらくはそこの周りを飛んで、ヤムチャが帰ってこないか見ていた。
しかし、当然ながら一向にかえってくる気配はない。
プーアルは涙ぐみながらヤムチャがよく歌っていた歌を口ずさんだ。
「クールなまなざしホットなハート
俺が噂のナイスガイ…ヤムチャさ
めっぽう強いが女にゃウブい 花も恥らう夢を見る
愛のブーケに酔いしれて いつも君だけじっと見つめていたのさ
振り向かないでいてくれよ 君の瞳に弱いから
ロンリーウルフ砂漠のヤムチャ
星の痛みが胸を打つとき
ロンリーウルフ風が泣いても俺の足跡残るのさ…
ヤムチャ様!!返って来てくださいー!!
プーアルは地平線に向かって叫んだ。
ヤムチャが歌っていた、ウルフハリケーンが聞こえたような気がした。
387戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/03/31 18:29 ID:69IvfQ5o
これで夢で見た分は全部です。――――しっかり覚えてなくてあやふやな部分もあります。
続きの展開は考えているんですが文章にしていません

Q.あれ?プーアル最後のほうキャラ変わってね?
A.ツンデレです。そういうことにしてくださいorz

Q.結局ヤムチャがここじゃない過去に行く理由ってなによ
A.自分の力を試したいから。作者が言うのもなんですがこれしか思いつきません。

Q.面白くねーよクズ氏ね
A.努力してみますorz
388Classical名無しさん:09/03/31 20:10 ID:BWqCOSmo
ワロタ

最後にヤムチャのテーマソング歌うのかよ
389戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/01 19:29 ID:OC98iIdc
5話 変態ヤムチャ
さて、プーアルが号泣しているとき、ヤムチャは『ここではない過去』の西の都にそっくりな場所にいた。
「ひゃー…懐かしいな〜俺の知ってる中ではサイヤ人が来たときの西の都に一番似てるかな〜」
ヤムチャはしばらく思い出に浸っていたが、栽培マンが出てくるあたりで我に返った。
「そうだ、悟空の気を探って悟空たちに合流するかな」
『ここではない過去』というのをヤムチャはすっかり忘れていた。
気を探り出すヤムチャ。
気を探っている途中で自分の気の調整は0(気を消す)か1(一般人に手加減)か100(全力)しかできないという事を気づいて苦笑した。
「うーん…気が向いたら練習しとくか」
いつ気が向くのだろう。そう突っ込むプーアルはここにはいない。
そんな事も忘れヤムチャは気を探り出した。
「おお、神様の神殿のほうに中くらいの気2つと小さい気たくさんあるぞ!やっぱし神殿か…よーし、悟空と三つ目ハゲと面食いハゲ、待ってやがれ!」
大声で叫んだヤムチャ。彼の周りにいつ出来たのか人だかりが。
「あ…うるさかったですか?すいませ…
「変態だぁー!!!」
人々は大声で叫んだ。警察がやってくる。
な、何故だ!?叫んだだけで変態だと!?ああ、そうか、そんな法律なんだな、間違いない。
いやまてよ?でもこいつらも叫んでただろ?いや、独り言がアウトなのか?
ヤムチャは必死で思いを巡らせていた。…自分の格好に気づかずに。
そう、彼は神龍に願いをかなえてもらう前から、下着姿なのだ。
寒くないか、という突っ込みはこの際なしにしよう。
「しかし、このままお縄につくほどこのヤムチャ様はバカじゃないぜ!
ヤムチャは騒ぎを起こさずに捕まらない方法を考え付いたのだ!
「母が危篤なんです!急がないと死んでしまうかもしれないんです!」
ヤムチャはいろいろなアルバイトをしていた経験を活かし、演技をした。
周りの人からは気の毒な目(ああ、こいつ病んでしまったのかの意)を見せ、去っていった。
「やったぜ!俺の演技大成功!ふはははははははは」
白き虚空にヤムチャの高笑いが響いていた。
――――警察の事も忘れて
390戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/01 19:31 ID:OC98iIdc
6話 あれ?5話過ぎたけど戦闘力5億出してないんじゃね?
「さあて、神殿に向かうとするか!」
ヤムチャは舞空術で飛んだ。シャツがひらひらと風になびく。まるでスーパーマンのようだ。…下着姿だが。ヤムチャの黒い短い髪が風になびく。
「♪ロンリーウールフー砂漠のヤームチャー」
ウルフハリケーンを口ずさみながら神殿に向かって飛んでいるヤムチャ。
しかし、ヤムチャよ。まずは服を着たほうがいいと思うんだ。
「いだっ…舌噛んだ…」
いっそ噛み切ればよかったのに、と風が言っているようで無性に腹がたつヤムチャ。
そして風を殴る、殴る、殴る!
見えない敵とヤムチャが戦っているうちに神殿についていた。
「よーし、着いたな。戦闘力5億の俺の力を見せてやるぜ!」
意気揚々と乗り込むヤムチャ。
一方神殿のみなさん。
「何者かが神殿に向かってやがる…」
そういう三つ目ハゲ。
「たいしたことない気だな。おれでも勝てそうだ」
大口をたたくそばにいたもう一人のハゲ。
「久しぶりの戦けぇでオラワクワクしてきたぞ!」
「お父さん…」
そう言っているのは道着を着ている青年。青年の子供だと思われる少年は何かを言おうとしていた。
「油断はするな、カカロット、フリーザの手の内のものかもしれん」
「お、親父、俺隠れてていいかな?」
スカウターと戦闘服を着けた男が長髪の弱気な発言をした男をにらんだ。
長髪の男は下をうつむいて小さくなっていた。
「まーあ油断しなきゃやられることはねえだろ…バーダック」
そう言った男はバーダックと呼ばれていた男に酷似していた。
――――戦闘服のタイプが違うことと色黒なこと以外は。
そこへ何も知らない、ヤムチャが現れる。
「おっ、いるいる。おーいみんなー」
ここではない世界だというのも忘れてヤムチャは叫んだ。
そして、バーダックと言われていた男が指示を出した
「いくぜ!攻撃開始だ!」
391戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/01 19:32 ID:OC98iIdc
7話 服ぐらいは着ようぜ

一気にいろいろなものが飛んできてなにが起こったのかわからずじまいでヤムチャは落ちていった。そして地面に叩きつけられた。
かめはめ波、どどん波、天さん、僕の超能力が効かない!などが聞こえた。
服を着ていない上、気を開放していないヤムチャはボロボロになった。
「許さん…許さんぞ貴様ら!じわじわとなぶり殺しにしてくれる!」
その時ブワッと一瞬ヤムチャは気を全力開放してしまった。
「っと…いけね、寿命が縮んじまう」
すると神殿にいたバーダックと長髪の男、色黒の男のスカウターがパリンと割れた。
「スカウターが割れちまったな…」
「じょ、冗談じゃねえ!」
「このスカウターは戦闘力100万まで計れる…それ以上ってことか」
なにが起こったのか飲み込めてない、カカロット…孫悟空は手始めにバーダックに話しかけた。
「どーした?とーちゃん、なんかわりぃもんでも食ったんか?」
バーダックは汗をぬぐっていた。
「いいか、カカロット。このスカウターはどういうものかっつーのは話したな?」
キョトンとした顔で悟空は考え出した。
そして思い出したのか手を、パン、と叩いた。
「ああ、戦闘力っちゅうのが計れんだろ?」
そうだ、とバーダックは相槌を打った。
「3人のスカウターが一度に割れるなんて考えられねえ。計れる数値以上の敵が出てきたってこった」
「そんなつぇえんか?オラワクワクしてきたぞ!」
やれやれ、という風に首を振るバーダック。
「カカロット、お前の戦闘力はラディッツより少し上程度だターレスや俺よりも低い」
そのとおり、と言ったのはターレス。
「バーダックは18000ある。お前はその10分の1程度だ」
ターレスが話すと悟空は身構える。
「おいおい、地球に神精樹の木は植えねえよ。いくらなんでもそこまでバカじゃねえ」
おどけた調子が混ざっているが、それは本当のようだ。
「グチグチ話してる暇はねえ…来るぞ!」
バーダックの声で一同は身構えた。
392戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/01 19:33 ID:OC98iIdc
7-2話 ヤムチャの世界の相違点
プーアルは占いババの館に来ていた。
「占いババさま」
占いババはこちらを向く。
「おお、客かい。100万ゼニー」
素っ気なく占いババは言った。
「は、はい」
おもむろにプーアルは100万ゼニーを渡した。
ヤムチャはゼニーを置いて行った。その額110万ゼニー。
「なにを占ってほしいんじゃ?」
そう言われ、キュッと結んでいた口を開くプーアル。
「あの、ヤムチャ様の行った世界のことを教えてください!」
「お安い御用じゃ」
水晶球を覗き込む占いババ。

そして文字が浮かんできた。
仲間→ベジータ、ピッコロいない=神様はナメック星人ではない
事件→ピッコロ大魔王、サイヤ人襲撃なし=ピッコロ大魔王がいない=ピッコロいない(悟空あんまり強くない)
神様→カリン様
サイヤ人たちについて→バーダック、ラディッツ、ターレスがフリーザを裏切り、逃げてくる。
悟空、尻尾切れてない。
ターレス性格変わってます、あしからず。
バーダックの口調おかしいです、あしからず。
ラディッツへタレです、あしからず。
フリーザについて→地球に襲来してくることをサイヤ人たちから伝えられる。

「ということじゃ」
プーアルは言われた意味がわからなかった。しかし、お礼を言って占いババの館を後にした。
「ヤムチャ様…どうか死なないで…」
プーアルはそう切に願っていた。
393戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/01 19:35 ID:OC98iIdc
登場人物カオスに。あーあ、もうなんでもいいやみたいな感じになっています

夢の話だけでよかったんや!続きなんか最初っからいらんかったんや!

もう書いてて反省しっぱなしでした。もはや打ち切ったほうが自分のためにも皆様のためにも(ry
394Classical名無しさん:09/04/02 08:54 ID:w2zdHDMA
>>393
そんなことないですよ。
楽しく読ませていただいています。
自分のペースで頑張って!
395戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/02 19:01 ID:MG7CyrN2
8話 最初の生贄三つ目ハゲ

スタッ、と神殿に降り立つ一人の男。
「スカウターをつけてねえな、フリーザ軍の奴じゃねえのか?」
ぼそり、と呟くバーダック。
バーダックが言葉を発してから喋る者はいない。
そしてヤムチャの様子を伺いながら身構える戦士たち。
張り詰めた空気が神殿を覆う。
「俺が貴様の相手をしてやろう」
そう真っ先に名乗り出たのは三つ目ハゲこと天津飯だった。
「おっ、三つ目ハゲからか…もとの世界の復讐をさせてもらうぜ…」
ヤムチャは密かにほくそ笑んだ。
大体ブウ戦ではヤムチャは登場機会すらないに等しかったのにこいつはあった。差別だ!
そしてその差別された鬱憤をこの世界の天津版で晴らそうというわけだ。まったく外道な男である。
 最初に攻撃を仕掛けたのは天津版だった。胴体、頭に1発ずつ、足に2発の4連撃を放った。しかしヤムチャはすべてをかわしてみせた。
「フハハハハハハ!トロ過ぎてくしゃみが出るぜ!」
思いっきり悪役笑いをして、あくびをくしゃみと間違える間抜けさを披露。
しかし、Z戦士たちにはかなりの衝撃が走った。
戦闘力たった700程度の天津飯だがその攻撃をたやすく避けてしまったのだ。ましてやクリリンや餃子はそれ以下の戦闘力である。無理もない。
「それではお返しといこうか。50万分の1の力で戦ってやる、安心しな」
ヤムチャはかめはめ波の構えをとろうとした。しかしここで自分が亀仙流だとばれてしまうとまずい。自分のとりあえずの目標は仲間と認めてもらうことだ。
はっきりいってここで亀仙流だと言ったほうが溶け込みやすいのだが、天津飯に仕返しをしたい気持ちもあり、狼牙風風拳の構えをとった。
「あの構えは!?」
天津飯は『なにかやってくる』と思い身構えた。しかし…もう遅かった。
天津飯の顔に次々と拳が入っていく。
「ぐは…ぁっ」
天津版の呻き声が漏れた。
そしてバタリ、と倒れる。
「さぁて…と、次は誰がやられたいんだ?」
ヤムチャは感動が入り混じった声で言った。
一方Z戦士たちはヤムチャの強さに戦慄していた。
396戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/02 19:03 ID:MG7CyrN2
9話 パワー全開!ヤムチャの力

「それなら…おれが行かせてもらおうか」
みんなの衝撃が冷めないうちに名乗り出たのはターレスだった。
どこから取り出したのか神精樹の実をかじっている。
そうだ、こいつにも借りがあったな。ヤムチャは思い出した。
〜回想〜
ターレス軍団が地表に穴を開ける為に爆発させる→15年ローンの飛行機が破壊→ターレス軍団のカカオと闘う。負ける。
〜終了〜
「うおおおおおおおおお!!!俺の15年ローン返せええええええ!!!!!!」
いきなりターレスに殴りかかるヤムチャ。しかし軽々とかわされる。
天津飯との戦いのときの気のままのせいである。ちなみにターレスの戦闘力は平常時28000。神精樹の実をかじることで50万に跳ね上がる。
「うおおおおおおお!!15年、15年!!!!!!!!!!!!!!」
ヤムチャはそんなことを考えもせず、ただ15年と連呼して殴りかかっている。
いきなり猛攻を仕掛けてきたのに驚いて受けに徹していたターレスだったが、やがて落ち着きを取り戻し、カウンターを仕掛ける。それは足払いである。
「おいおい…足元がお留守だぜ…」
ターレスはあきれた口調で言った。
その言葉にヤムチャはとうとうキレた。
「チリも残さず消してやらぁ…持つのは10分だったな…上等だ…」
妖しさをおびるヤムチャの声。ターレスは思わず身を固くした。
ヤムチャはどんどん気を開放していく。なかなか全部出ない。全開放までの間しばらくターレスに殴られ続けていたが、1分で殴られても痛みを感じなくなった。
そして…ヤムチャの気が全開になったのである。そこにいた一同は恐怖を感じていた。
そう、ヤムチャでさえも。
「すげぇ…自分でも怖くなるくらい…すげぇ…」
押しつぶされんばかりの気にその場にいた一同はたじろいだ。
「さらに…界王拳…20倍だ!!」
急速にヤムチャの体は悲鳴を上げる。そして戦闘力は100億と跳ね上がった!
Z戦士たちは意識を保つことができなかった。
そう、まるで鬼神のようなヤムチャの気に押しつぶされ。
「はあはあ…ゆっくりと…気を放出するぜ…」
ヤムチャ自身も自分の気に押しつぶされそうになっていた。
397戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/02 19:03 ID:MG7CyrN2
10話 人質or弟子?

ヤムチャはゆっくりと気を放出していった。
「な、なるほどな…10分しかもたないって理由が分かったぜ…」
気を放出してヤムチャは汗を拭った。
そしてキョロキョロとあたりを見回すヤムチャ。
「後継者とか育てとけば老後も安心だな…誰にするか」
どうやらヤムチャは死ぬまでここで暮らすつもりらしい。彼のことだからすぐ気は変わるだろうが。
「悟飯、君に決めた!」
どこかのテレビアニメの受け売りの恥ずかしい言葉を言ってみる。突っ込んでくれる奴がいないから余計に恥ずかしいヤムチャであった。
なぜ悟飯なのか。一つ目に若い。二つ目にピッコロがいない世界のようだから師匠になれる。三つ目に悟飯は宇宙最強の戦士になる!
三つ目、と言ったときに天津飯を思い浮かべて少し鬱になるヤムチャであった。
 さてこうしてヤムチャは人質(本人曰く弟子)を手に入れたのである。
「…ううっ」
最初に目を覚ましたのは悟空だった。
倒れている仲間を見るとさっきのことを思い出していた。
 人は倒れ、建物は瓦礫となったさっきのことを。
そこで悟空は気がついた。
――――悟飯がいない。
急ぎ悟空は神殿から飛ぼうとした。
「待てよ、悟空!」
そこに立っていたのは意外な人物…そう、クリリンであった。
このメンツの中では餃子に次いで弱い。彼が他のみんなより早く起きるのは奇跡としか言いようがないというほどに意外だった。
「みんなが起きるまで待てよ、悟空」
クリリンのほうを振り向いて悟空が険しい表情で睨む。
「悟飯はあいつにつれてかれちまったんだぞ!」
だからこそ、と言おうと思うクリリンだったが険しい表情で口を開けなかった。こいつを止められるのはこいつの親父だけだ、そう思った。
398戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/02 19:09 ID:MG7CyrN2
うっわ、急にシリアスになってるよ、意味わかんねー
…たぶんそうでしょうね、自分でもそうです。
勝手にヤムチャが動き回って自分に指図するんですよ、夢の中にまで出てきて(w
ヤムチャ「おい、見せてやるからこう書けよ、なるべくかっこよくな」
実際にヤムチャが夢の中でやってくれたおかげでスラスラかけたわけですがなんか納得いかない仕上がりに。

>>394
ありがとうございます。…尻叩く人がいてくれてよかった…
399Classical名無しさん:09/04/03 09:26 ID:OHsYxzaU
>>398
どういたしまして。
更新が早くて、毎日楽しみにしています。
400Classical名無しさん:09/04/04 20:49 ID:rpXaXdyY
面白いです・
401戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/05 08:16 ID:PnjJosqM
11話 天秤
悟空が神殿を飛び立とうとしたとき悟飯は意識を取り戻したところだった。
「…ん」
もぞり、と体が動くのを見逃さなかったヤムチャ。
「よう悟飯!目が覚めたか?」
自分が気絶させておいてどの面さげてこの男はこんなことが言えるのだろう。
「…え、あ、あの…」
そこに立っていたのは間違いなく自分と仲間たちを気絶させた人物、ヤムチャであった。
バッ、と体を起こして二、三歩飛び退き、身構えた。
「おいおい…俺はなにもしてねえだろうが…」
ヤムチャは傷ついたようで地面を指でいじっていた。
悟飯は自分のいる場所を確認した。
広大な砂漠、しかし、自分たちのいる場所だけ、草木が茂っている。
―――ああ、ここはオアシスなのか、そう思いホッとする悟飯。
しかし…さっきこの男が言っていた言葉を思い出した。
――――よう、悟飯!目が覚めたか?
間違いない。この男は自分の名前を知っている。
しかし…悟飯はこの男の名前を知らない。一体何者なのか。
気を開放し、カイオウケンという技を使って仲間全員を気絶させるほどの気なのだ。
「ところで悟飯よぅ」
ヤムチャに声をかけられ、悟飯の思考は急停止した。
しかし、ヤムチャが言ったのは意外なことだった。
「お前、強くなりたいか?」
ヤムチャは悟飯の本心に聞いていた。
 確かに僕は学者になりたい、それははっきりと思っている。
――しかし、地球と天秤にかけると地球のほうに傾いた。
その瞬間、悟飯の気持ちは決まっていたのだ。
「強く…なりたい…です」
その言葉を聞いたヤムチャは安心した。
いくら信じやすい子供とはいえ、気だけでみんなを気絶させてしまったのだ。
言い訳は印象を悪くしそうなので質問に変えた。そして効果があったことにヤムチャはほくそ笑んだ。
 一方悟空は猛スピードで悟飯たちのところに迫っていった。
402戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/05 08:16 ID:PnjJosqM
12話 狼牙風風拳

「ちーと時間ねぇからな、一番簡単なのいくか」
ヤムチャはそういってサッと構えた。
狼牙風風拳の構えである。
天津飯を倒した技である。悟飯の体は固くなった。
「よし、この構えとってみろ」
悟飯はしぶしぶ構えをとった。とらないとなにをされるか分からない。
「そして、アチョーハイハイ、うぉりゃあブルァだ」
身振り手振りで教えようとしていたがまったく伝わっていない。説明が下手なせいだ。
実は天津飯を倒したときの狼牙風風拳を見ていた(見えていた)ので真似はできたのだがあえてそれは言わない悟飯。
そして技を見せればいいのに気づかずに口で懸命に伝えようとするヤムチャ。
悟飯はそんなヤムチャが悪い奴ではないのでは、と思い始めていた。
「よっしゃ、分かったな!さあ、打ち込んで来い!」
ヤムチャは自分の説明が下手なことを知ってか知らずか攻撃してくるように指示した。
悟飯は構えをとった。ゆっくりと。
「おっ、なかなか様になってるじゃねえか!さあ、打ち込んでこい!」
構えをとったときから、悟飯の闘争心はメラメラと燃えていた。
―――そう、狼のように。
ヤムチャは痛いほど研ぎ澄まされた闘志に、少なからず焦っていた。
「お、おいおい…れ、練習だぜ?そんなに闘志を研ぎ澄まさなくて――
言いかけでやめた。風の向きが変わった…悟飯が動いたのだ。
「うっ!?は、はぇえ!!」
ヤムチャは急いで一歩飛び退いた。
―――しかし、悟飯の手はナメック星人であるかのように伸びてきた!もちろん、ヤムチャの目の錯覚であったのだが。
ヤムチャは冷静さを欠いていた。自分の技であるというのに。
そうか、足だ!足払いを…
ヤムチャがそのことを思い出してももう遅かった。
「狼牙風風拳!」
後ろから悟飯の声が聞こえ、後頭部の辺りに痛みが走った。
お前は油断する悪い癖がある。ああ、誰かにそう言われたっけ。
そのことを思い出しながら、ヤムチャの意識は闇に落ちていった。
403戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/05 08:18 ID:PnjJosqM
13話 悟空到着!あれ?ヤムチャは?

「オラの子供をけぇせ!」
悟空の第一声がそれだった。
しかし…ヤムチャはボクシングで1R.K.Oされたように伸びていた。
「ご・・悟飯、おめぇがやったんか?」
悟飯は頷きもしない。ただただ悟空のほうに向かってくるだけである。
・・殺気を漲(みなぎ)らせながら。
「い!?ご、悟飯!?どうしちまったんだ!?」
悟飯はゆっくりとこちらに向かってくる。こう言ってはなんだが悟飯より悟空のほうが弱いのだ。
しかも悟飯は獣のようになってしまっている。
「ど、どうすりゃいいんだ…」
悟空はかなり焦っていた。
一方ヤムチャに気絶させられた面々たちは―――
「おい、クソソソ!どういうこった!カカロット一人で行かせただと!?」
バーダックがクソソソ、否、クリリンに掴みかかる。
この親父に凄まれたらどんな奴だって逃げ出しそうだな―――フリーザ以外。
クリリンはそんなことを考えていた。
「そ、そそそそそそりゃ、りゃ、りゃりゃ、と、止められる雰囲気じゃなかったんですよ!」
噛みすぎだろう、後ろで隠れて見ていたラディッツはそう思った。
「カカロットはどこに向かった!」
気が探れないのは不便なものだな、とクリリンは思っていた。…口に出したらどうなるかは大体分かっていたので言わなかったが。
「えーと、南に…」
そう聞くや否やバーダックは仲間を連れて飛び立とうとした。
どの仲間を連れて行くか、バーダックは瞬時に頭の中で考えた。
一番あの男に近い場所にいたターレスは約1日、目が覚めないだろう。そしてカカロットはいない。
バーダックの出した答えは当然だったが、意外でもあった。
「おい、ラディッツ!行くぞ!」
404戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/05 08:19 ID:PnjJosqM
14話 主役はオレ、ヤムチャ

「いやだ」
即座にラディッツは拒否した。
「ぶん殴「行きます」
途中までしか言っていない。しかし、ラディッツは行く、とは答えた。
「おい、クソソソ!ターレスと三つ目ハゲと白いハゲを見とけよ!」
いつになったら名前を覚えてもらえるのだろう…クソソソ、否、クリリンは肩を落とした。
さて、バーダックたちが仲間割れ(?)を起こしている間に、悟空は危機に陥っていた。
「や、やべぇ…無駄な動きがあっけど、悟飯凄げぇ速えぇ…」
すさまじい悟飯のスピードに心底驚いている悟空。顔や体には傷がある。
悟空はちらり、とヤムチャのほうを見やった。
「危険な賭けになっけど、これしかねぇ!」
悟空はヤムチャに向かってエネルギー弾を放った。
 ヤムチャに着弾するまでの間、コマ送りの映画みたいに見えたことを悟空は後に話していた。
「俺は宇宙最強だあ…あ、そんな…体が砂に…ゲッ!?」
ヤムチャに悟空の放ったエネルギー弾が着弾。
ヤムチャはそれに反応して体を起こして叫んだ。
「誰だ、俺の悪夢を邪魔した奴は!」
どうやら悪夢でも邪魔はされたくないらしい。困った奴だ。
「…?悟飯?そうか、お前が…許さん…許さなぁーい!!」
寝ぼけ眼で気を全力開放しようとするヤムチャ。
しかし、腰が抜けたようだ。
「い、痛い…ぎっくりしちゃった、ぎっくり」
なんとも情けない主役である。
「あいつ、オラより若く見えっけど、なんか年寄りくせえ」
悟空はそんなことを誰に喋るでもなく言っていた。
「お、お前なんてかめはめ波で、…あっ!踏ん張れねえ!」
ヤムチャが一人で漫才を繰り広げている間に、着々と悟飯は気を溜めていた。
さすがにヤムチャはまずい、と思い出した。このままではただのヘタレである。
「そ、そうだ!踏ん張らずに出せる技があった!」
ヤムチャはようやく自分の持っている技を思い出したようであった。
405戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/05 08:22 ID:PnjJosqM
就職活動やらなんやらがあってあちこちを飛び回っていたとは口が裂けても(ry
>>399-400
感想ありがとうございます。
えー…なんつーか、ヤムチャが悟空たちの立場に立って恐怖して情けなくなるのが伝わればな、と思ってたりしています。
406Classical名無しさん:09/04/08 22:14 ID:d9dE4KOM
407Classical名無しさん:09/04/10 06:10 ID:k37UharU
新しいサイトは?教え下さい
408Classical名無しさん:09/04/12 19:54 ID:gzLIB9.w
すっごく面白いです、続き楽しみにしてます。
409戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/13 04:57 ID:02D.auo.
15話 決めろ!繰気弾!

「繰気弾があった!」
ヤムチャは繰気弾のことを思い出したようであった。
もう少し早く思い出せなかったものか。
「ヘッヘッヘ、悟飯、お前はもう終わりだ!」
勝機が見えるととたんに強気になるのがヤムチャクォリティ。
「くらえ!特大の繰気弾だ!」
特大、といっても赤ん坊の握りこぶし程度。看板に偽りアリ。
そして悟飯はきれいに繰気弾を回避する。
しかし、操作できるのが繰気弾の特徴。ヤムチャは指を使い繰気弾を操作し始めた。
寝っ転がって操作するのは結構しんどいので、体を起こして操作することにした。
しかし、指を動かすたび、なぜか腰に激痛が走る。そしてギエェ!と叫ぶヤムチャ。
こんな情けない奴が強いのか、と悟空は死ぬ気で繰気弾を操作しているヤムチャの顔をしげしげと見た。
バキッ、と繰気弾が悟飯にマグレ当たりした。悟飯が吹っ飛び、気絶する。それを見るとヤムチャは得意げに言った。
「ハッハッハ!戦闘力10億の俺に勝とうなんて無駄なんだ!」
サバをよむヤムチャ。まあここまでインフレしてしまえば5億くらいサバをよんだってどうってことないのかもしれない。
しかし、一語一語口から言葉を紡ぎだす度に腰に激痛が走る。かなり重症のようだ。
「おめぇ強えぇなー」
そう言って目の前にヌッ、と出てきたのは悟空だった。ヤムチャは動けない。(腰が痛くて)
「おめぇはそんなにわりぃ奴には見えねえ。どうだ?オラたちの仲間に入いんねえか?」
この男はなにを言っているのだろう。自分たちを気絶させて、悟飯をさらったのは紛れもなく、このヤムチャ様だ。
なにか裏があるのではないか?とヤムチャは目を数回瞬(しばた)かせた。
ただ、自分はこの状態だ。気を開放することもできない。
ああ、こりゃやばいな、ヤムチャは本能的に感じていた。
拒否→動けない戦士など必要ない!→ヤムチャ終了のお知らせ
了承→バーダック&ターレス&天津飯にボコボコ→ヤムチャ終了のお知らせ
「ああ、なるなる、仲間になる」
とりあえず深くは考えないことにした。下着姿でうろついたら、また捕まりかねない。
それに腰も痛い。ヤムチャは何も変わらずに、ヘタレの道を歩んでいた。
410戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/13 05:15 ID:02D.auo.
16話 ラディッツ無残

ヤムチャは悟空の仲間に入った。いや、改めて入ったと言った方が適切だろうか。なにせ前の、ヤムチャがいた世界では悟空たちの仲間だったのだから。
…ブウ戦で空気にされたのはともかくとして。
しかし、そんなヤムチャが仲間として悟空に認定されたのだ!感激もひとしおであろう。
さあ、視点は神殿へと向かうヤムチャ(悟空に担がれている)からバーダックへと変わる。
「この辺りか…?」
スカウターがないバーダックは手探り状態でヤムチャを探していた。なによりヒントが少なすぎる。南だけで分かれというのが無茶である。
同時についてきたはずのラディッツは迷子になっていた。助けるのもめんどくさかったバーダックは先へと急いだのだ。
「…クソソソの野郎!あいつ、気を探れるじゃねえか!」
そう、クリリンには正確なヤムチャのいる場所が分かっていた。気を探れないバーダックに普段の仕返しをしてやろうと黙っていたのだ。
「上等じゃあねえか、クソソソ…さてと…」
バーダックはボキボキと骨を鳴らしていた。
ちなみに、バーダックはサイヤ人の中では仲間思いであるが、それはあくまでサイヤ人の中では、である。悟空もサイヤ人だがそこは置いておこう。
「あれは…戦闘の跡!?」
バーダックは焼け焦げたオアシスだったと思われるものを見つけ、それに歩み寄った。
「間違いねぇ…戦いがあったみたいだな…」
 そこにはヤムチャが繰気弾をうまく操れずに倒した木があった。
「カカロット…あいつを倒したのか…?」
語尾に疑問符がついた。まあ無理もない。気だけで気絶させられるような輩を自分よりも弱い悟空が倒せるはずがないからだ。
「おーい、親父ぃ…」
情けない声でラディッツが飛んでくる。バーダックはラディッツの声で思考がプッツンと切れ、クリリンのせいでパンパンになっていた堪忍袋、それの緒が切れた!
「うぉらぁ!」
バーダックのフルパワーのエネルギー弾にラディッツは反応できず、クリティカルヒット、そしてラディッツはバタリと倒れた。
「まあいい、神殿に帰るか」
ラディッツを放置してバーダックは飛び立った。
411戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/13 05:17 ID:02D.auo.
見直しをしていませんので誤字脱字、そのほかあったら指摘お願いします。
412戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/15 19:39 ID:miKoACXI
17話 老婆痛風拳

ヤムチャは悟空に担がれて神殿へと向かっていた。
しかし…ヤムチャは担がれている最中で仙豆という便利なものがあることをしっかりと思い出していた。
「あ、そうだ、悟空」
舞空術で飛んでいながらヤムチャを担いでる悟空は不思議そうな顔でこちらを見た。
「あり?おめえに名前教えたっけな?」
そう言って悟空は頭を掻いた。もちろん、頭を掻くには手が必要である。
担ぐときには(必ずしもそうでないが)両手を後ろに回して支えなければならない。
――――そう、支えがなくなったヤムチャは落ちる!
「ぎゃあああああ!!」
この男、ヘタレにつき。ヤムチャまっさかさま。
「お、そういやぁ、悟飯が老婆痛風拳っちゅう技を使ってたぞ?お前がやったんか?」
ヤムチャが落ちたことも分からず後ろに喋り続ける悟空。重さがなくなったんだから気づくだろ普通…しかも狼牙風風拳が老婆痛風拳になってやがる…
ヤムチャの心の叫び(&突っ込み)も空しく、悟空は落下していくヤムチャに気づくことはなかった。
ぐんぐんと地面が近づいてくる。300.250.200.150.100…もうだめか…あ!
「体を気で支えれば腰は痛くなくなるぜ!」
ヤムチャは叫んだ。今更気づいたところでどうということはない。あ、悟空に声が届いた。ああ、もう遅いよ、悟空…。
次の瞬間…ヤムチャは腰を地面に激しく打ち付けて、あまりの痛みに気絶していた。
「お〜い、大丈夫か?」
悟空はヤムチャに向かって叫ぶ。ヤムチャ、気絶して動かない。
「あり?うごかねえぞ?」
ヤムチャは下着姿、薄いシャツではとてもではないが衝撃を緩和できない。しかも指を動かしたり喋ったりするだけで激痛が走るのだ。
式にして説明すると
X(腰の痛み)+Y(落下した距離)×Z(落下速度)×1.5(腰直撃)
こういう式が出来上がる。腰直撃の痛みはどれほどか不明だが1.5にしておく。
簡単に説明するとヤムチャはとても痛かったというわけだ。
悟空は地面に降り、頭を掻いている。
「めぇったな…まあいいか」
楽観的にそう言うと、悟空はヤムチャを担ぎ神殿に向かって飛び立った。ヤムチャの口からは泡が出ていた。
413戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/15 19:40 ID:miKoACXI
18話 そろそろ服着ようぜ

悟空は神殿に降り立った。風が吹き、雲が流れ、悟空の黒髪が風になびく。。
―――しかし、いつものことなので別段なんとも思わない悟空。
そしてヤムチャを地面に下ろし、建物に入っていく。
「お〜い!神様〜!」
建物に響く声で叫ぶ悟空。そしてさっさと建物に入る。えらく無遠慮で、およそこの清潔な建物には似つかわしくない。
悟空は廊下を曲がり、一つの部屋に入った。
「仙豆ねえか?」
開口一番がそれだった。神様(ネコ)はいつものことなのか慣れてしまったのか、小さく笑い声をあげながら仙豆を渡した。
「じゃが…誰に使うつもりじゃ?」
さっきとは声色が変わっている。しかし悟空はその言葉を軽くスルーした。
「そういえばクリリンたちみあたんねえな」
話を特にあわてる様子もなく、話を摩り替える。
「バーダックとラディッツはまだ帰って来ておらんよ。ターレスと天津版は客室で治療をしておる。クリリンと餃子は二人の手当てじゃ」
つらつらと文章を読み上げるように話す神様。ニコニコしている表情からは感情が読み取れない。
「おお、そうだったんか!」
ちなみに治療を受ける原因を作ったのはヤムチャだと悟空はすっかり忘れていた。
「ああ、それと、カリン様」
いきなり名前で呼ぶ悟空。カリン様は別段驚く様子もなかった。
悟空はいつもこうだった。まるで猫の目を見ているようだ。
「なんじゃ?」
カリン様がゆっくりと聞き返す。
「道着、一着あっか?」
悟空はいつもタメ口である。いや、訛りのせいでタメ口に聞こえるだけかもしれない。
第一道着は亀仙人に頼んだほうがいい。悟空はニートだから分からないとかそういうのではない。
カリン様は道着を取り出した。それを受け取り、部屋から出て行く悟空。
道着をくれというのはさすがに下着姿じゃまずいだろ、という悟空なりの計らいであった。
「さあて!仙豆ももらったし届けっか!」
悟空の元気な声が神殿じゅうに響いた。
414戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/15 19:41 ID:miKoACXI
19話 ヤムチャ・始動!

タッタッタ、と男がヤムチャのほうへ向かって駆けてくる。悟空だ。もっともヤムチャは気絶して見えないが。
駆ける悟空に向かって子供が飛び出した。その子供は砂漠で気絶していたはずの悟飯だった。
「い?ご、悟飯…お前、一人で戻ってこれたんか?」
「これでもお父さんの子供ですから…」
悟飯は自分よりヤムチャを優先したことを怒っているのか、口を尖らせて返事をした。…もっとも悟空は悟飯がいたことをヤムチャに目がいっていて忘れていただけだった。
「わ、わりぃわりぃ…今度から気をつけっからよ」
悟空はひたすら謝っている。話を聞いているとどっちが親かはまるで分からない。
第一その『今度から』というのはどういう意味だろう。悟空の心は海のように透き通っているので常人には分からない。…最近は海洋汚染が進んでいるが。
「ほら、お父さん。早く仙豆を…」
悟飯もボロボロであるが、顔でヤムチャに仙豆をやれ、と合図した。こんないい子はいないだろう。なぜ大人になって「勝てんぜお前は」になったのかはストレスが原因であろう。
「ほれ、仙豆だ!」
ヤムチャの口に仙豆を押し込む悟空。よもや腰の痛みで仙豆を使っているとはカリン様は思いもしていないだろう。
仙豆をヤムチャの口に押し込んでから数秒、ヤムチャは目を開け、飛び上がった。
「うおわっ!あれ?腰、痛くない…」
「ほれ、道着!」
間髪入れずにヤムチャに亀仙流の道着を渡す。カリン様がなぜ持っていたのかは不明である。
そのときのヤムチャの目は虚ろだった。しかし、しっかりとした意思を持っているように悟飯は見えた。
「あ、ありがとう」
さっきまでの自分の無礼が恥ずかしくなるほど親切な二人。なにやら裏があるのでは?ヤムチャは怪訝そうな顔をしようとしたが目の前に恩人がいるのにそれはまずい。
この場はどんな言葉を言えばいいのか、ヤムチャさんが見せてくれるようです。
「………」
何も思いついていなかった。
415戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/15 19:43 ID:miKoACXI
さあ、保守係が現れましたよ
原文より地の分を減らしております。
2つに分けるのが面倒とかそういう理由じゃありません、決して。
416Classical名無しさん:09/04/15 23:11 ID:Epld6Lmg
いつの間にかスレが復活してるとは。
とりあえず5億の人応援してる。
417Classical名無しさん:09/04/16 01:39 ID:pj5UarUs
5億ヤムチャはめちゃくちゃで面白い
418 ◆TANPanX3xc :09/04/16 02:24 ID:Bjma6ZJk
舐めてもらっても困るのだが・・・

がろう、ふぅふぅ拳!!!!><
しかも、真!!!!


繰気弾だ!!!!
ゴクウ。。。。
419 ◆TANPanX3xc :09/04/16 02:30 ID:Bjma6ZJk
魔「ちょw待てよwww」
痰「はい?w」
魔「大体だ。」
痰「えぇ。」
魔「ヤムチャが、繰気弾作れた時点でなんか・・」
痰「無粋だぜ。」
魔「そうだと思ったが、一応な♪」
420 ◆TANPanX3xc :09/04/16 02:35 ID:Bjma6ZJk
普通ー
ヒトは空とか飛べないし、
サイヤ人3とか、無理なのでw


アホかと、馬鹿かと・・・・・・・
421戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/16 18:42 ID:scKR4xnw
20話 ヤムチャ+悟空+悟飯=稽古

ヤムチャは改めて自分の置かれている状況、そしてなにをしたのかを整理していた。
天津飯ボコる→気でみんな気絶させる→悟飯さらう→悟飯に繰気弾ぶつける
ああ、俺は悪役だなあ、ヤムチャはやったことを思い出していた。
あ、悟飯を強くなりたいか聞いて無理に修行させたっけ。それもプラスだな。
しかし、悟空の言葉は意外なものだった。
「悟飯に稽古つけてやってくれねえか?」
しばしの静寂。悟飯もポカンとしている。
耳が痛いほどの沈黙を破ったのはヤムチャだった。
「いいぜ」
ヤケクソとはこのことを言う。ヤムチャはそう思いながら了承した。
そりゃあ自分の子供をさらった誘拐犯に自分の子供を預けると一緒のことだから当然といえば当然、おかしいと思う。悟空は海のように透き通った心を持っているので気にしないんだろう、たぶん。
悟飯に構えを教えたのはこのヤムチャだった。基礎の能力は悟飯のほうが悟空より高かったため、修行をせずとも大丈夫だった(もっともチチに勉強しろ!と押し切られたのが原因でもあるが)。
いくら構えを教えてくれたといってもそれだけで稽古をつけてほしいとはまず思わない。普通の人間なら。
ただ、この親にしてこの子供あり、悟飯はそれをあっさりと受け入れる言葉を言った。
「わかりました」
その言葉に驚いたのはヤムチャだ。ヤケクソで同意はしたが、悟飯が拒否すれば万事OK、そう思っていた。師匠になる大変さは悟飯の狼牙風風拳をくらって大体わかった。
殴られるのか、いや、殴るのか。やばいって、ヤバイッテ…ヤムチャは頭の中で同じような言葉を繰り返していた。
だが、悟空が次に言う言葉はヤムチャに更なる衝撃を与えた。
「じゃあ今から稽古つけてやってくれ」
工エエェェ(´д`)ェェエエ工
ヤムチャは口にこそ出さなかったがそう心の中で叫んでいた。
「あ、オラにも稽古つけてくれ」
工工エエエエェェェェ(´д`)ェェェェエエエエ工
だめだ、この親子…早く何とかしないと…
ヤムチャはそう思うしかなかった。
422戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/16 18:43 ID:scKR4xnw
21話 ラディッツ覚醒?

どのくらい時間がたったのだろう。その人は目を覚まさずにずっと、砂の上で横たわっていた。
父親の一撃受けてから、依然として起き上がらない。
彼の周りにカラスが不適に鳴いている。命の炎が消えるのを待っているのだ。
ピクリ、とも動かない。うっとおしそうなほど長い黒髪。それを体に絡めながら横たわってる。
「う…あ…お、親父…殺さないで…」
死ぬ前のうわごとだろう。なにやら呟いて…
「うわあっ!」
一つ訂正があった。彼はピンピンしている。ガバッ、と体を起こした。
その彼とは、そう、第二のヘタレ、ラディッツである。
「し、死ぬかと思った」
もう一つ訂正があった。彼はピンピンしていない。ボロボロである。
しかし、ラディッツは死の淵から生き返ることによりパワーアップを遂げた。死の淵といえるほど大袈裟ではないが。
戦闘力1500から5500に。このぐらいパワーアップしても戦闘力のインフレに飲み込まれれば役立たずになるのだろうが。
戦闘力が増えたよ!やったね、ラディちゃん!ラディッツが自分の戦闘力に気づいていたらこう脳内でやり取りしていただろう。後日、自分の戦闘力に気づき、ビビって腰を抜かしたのはまた別の話。
ともかく、悟空より強くなってしまったラディッツ(もっともこの世界の悟空は悟飯より弱い)。
ラディッツ先生の次の戦闘にご期待ください。
「えーと、どこだったっけ、神殿のある場所は」
駄目だこれは。帰るのに何日かかるやら。
「まずは北に行ってみるか」
ビンゴ、ピッタリ。16方位の中でよくぞそれを引き当てました!褒美としてドラゴンボール エボリューションを購入する権利をやろう。なに、1800本の売り上げを伸ばすためだ、怖がることはない。
ラディッツは立ち上がり、北へ向かって飛び立った。同時に今まで見ていたカラスたちも慌てて飛び立った。
砂の上にはラディッツの形が残っていた。
423戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/16 18:44 ID:scKR4xnw
22話 怯えるヤムチャ

はあ…受けるんじゃなかった。そもそもこの世界に来るんじゃなかった。ヤムチャは悟空と悟飯に稽古をつけているという普通ではありえない状況である。ありえない状況の相乗効果か倦怠感が増してくる。めんどくさいので悟空たちには修行を指示しておいた。
時間的には夕方か。腹減った。いや腹減ってない。ここから抜け出す口実を考えるヤムチャ。
大体、悟飯だけならともかく何で悟空まで…ヤムチャはそう思い、心底うんざりした。
そこへ、この状況を変える(未来を変える?)救世主、バーダックが現れる。
神殿に降り立ったバーダック。ヤムチャは慌てて後ろを向く。
「おい、カカロット、それに…悟飯」
悟空と悟飯に話しかけるバーダック。
ちらり、と亀仙流の道着を着た男(ヤムチャ)に目をやったが、悟空に視線を戻した。
悟飯は狼牙風風拳の練習をし、悟空は基礎の稽古をやっている。ヤムチャの指示。ちなみに悟空たちにまだ名前を教えていない。というより聞かれてすらいない。師匠の名前を聞くのは礼儀だと思うんですが。
「お前らはなにをやっている…」
呆然として自分の息子と孫の行動を見ているバーダック。
悟飯の練習している技の欠点をとりあえず指摘する。
「おい悟飯…足元ガラ空き…」
「おじいちゃん、僕にはまだ無理だけど…速く動けば足元の欠点もカバーできるって…」
しばらくバーダックは悟飯の構えを見ていた…そして思い出した。
「おい!その技…あの三つ目ハゲがやられた技じゃねえか!」
ヤムチャの背中がビクンとかすかに動く。
まずい、気づかれた…おじいちゃんってことは悟空の父ちゃんか、ヤバイって…。
バーダックの威圧感のある声だけでビクビクするヤムチャ。ヤムチャのほうが強いのに…。
「誰にその技を?」
「そこのお兄さんです」
ああ、よかったあ。お兄さんだ…この体はまだ十代だからな。いや違う違う、悟飯口軽っ!
つかつかとバーダックが歩み寄ってくる。
そして、ヤムチャの顔が見える正面に来る。顔を見られる前に後ろに向く。それを十回ほど繰り返す。しかしこのままではバーダックがキレかねない。ヤムチャは恐る恐るチラリ、とバーダックのほうを見た。
ああ、怒ってる。そう見えた。ヤムチャはあまりにも怖くて動けなかった。
424戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/16 18:46 ID:scKR4xnw
23話 演技力劣化

「お前、気を探れるか?」
あれ?聞くところそこじゃなくね?こいつらの家族全員ズレてね?ヤムチャ、ホッとする。それと同時に当然の疑問が湧き上がる。突っ込んだら負けだと思っているので突っ込みはしないが。
「はい」
ヤムチャ>バーダックのはずなのに敬語。地震雷火事親父、ヤムチャはそれら全部大嫌いだった。だって怖いし。
「よし、探り方を教えろ」
ヤムチャは固まった。この親父とマンツーマンなんて命がいくつあっても足りない。いや、ヤムチャはバーダックの27777.7777777777777777777777777(以下略)倍強いのだが。
さあ、ヤムチャはバーダックの頼みを断れるのか。ピコーン、とヤムチャの中で豆電球が光る。(古い)バーダックの頼みを断る方法が思いついたようだ。
「うおー、おれはわるものだぞー、わるいおれさまがおしえるわけないだろうがっはっはっは(棒読み」
ひどい棒読みである。警官にしょっ引かれそうになったときの演技力は何処へやら。
バーダックは棒演技をしているヤムチャの首筋を叩いた。ヤムチャ、あっさり気絶。
「俺はこいつに気の探り方を教えてもらう」
勝手に話が進んでいる。ヤムチャに一切の拒否権はない。
所詮ヤムチャはヤムチャ、つまり力は成長しても精神面は…
まるで成長していない…(by地球の前の神様&亀仙人)ということだ。
「カカロット。水汲んでこい」
「うっひゃ〜人使い荒れぇな」
そんなことを言っているが悟空は苦笑ではない、笑顔だ。慣れたんだろう。ヤムチャも慣れればどうにかなるのかもしれない。
そういえば天界に水道なんてあるのか。いや川から汲んでくるから大丈夫か。
悟空が飛び立った。
そしてすぐに悟空がフラフラとした舞空術で飛んできた。疲れが出ているのだろう。しかし、さすが悟空。水を汲んでくるのが早い…
「父ちゃん、バケツねぇか?」
汲んでこれなかったようだ。
425戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/16 18:48 ID:scKR4xnw
24話 悪夢

「ならいいぜ、こいつをそのまま水につける」
さらりと怖いことを言ってくれる。ヤムチャは意識を失っているはずなのに時折体がピクピク動く。しかもバーダックの脅しにあわせて。
ヤムチャはしばらく夢の世界にいた。赤い髪…ポニーテール…4本の剣…ヤムチャはうわごとでそう呟いていた。どうせ前の恋人の夢でも見ているのだろう。帯刀した恋人はいないと思うが。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
いきなりヤムチャが叫んだ。悪夢だったんだろう。
ヤムチャさんはいやな予感がしてたんだ…そんな栽培マン戦のときのようなことは避けたい。
「く、くそ…戦闘力2兆なんて反則だろ!」
ヤムチャは夢の中の出来事を口に出す。2兆?ありえねーよ、と笑うバーダック。それもそのはず、この世界の人間は最強の合体戦士でも9000億。そんな人間はありえない。
…この世界なら、の話かもしれない。別の次元の戦士はもっと強いかもしれないのだ。嫌な汗がヤムチャの体を流れる。ヤムチャの話では一般人が3万もの戦闘力があるとのこと。まあ夢なので何でもいいんだが。
「さあ、気の探り方を教えろ」
一難去ってまた一難。バーダックに凄まれるヤムチャ。神龍の力なしのリクームクラスの力のヤムチャに戻ってしまったように見えた。
「イ…Yes, it is」
かなり英語が変である。この場合はitではない。
ただ悟飯以外は気づいていない。ヤムチャ、幸運である。
「じゃああっちへ行くか」
バーダックがそう言った。ここで指導すればいいと思っていたヤムチャは驚いた。
「え?」
呆けるヤムチャを無理に引っ張っていくバーダック。
「おい!行くぞ!」
「た〜す〜け〜て〜」
ズルズルと引っ張られていくヤムチャ。救いの手を差し伸べる者はいない。
そういえば敵のはずが一転して味方になっているので混乱しないんだろうか。いや、孫一家だからか。
ヤムチャはあっさり自己完結した。
426戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/16 18:50 ID:scKR4xnw
いや、次回作への伏線を引くとかそんな真似はしてませんよ、ええ。
この話ですら書けるかどうか怪しいですから。
さあ、そろそろフリーザたちが襲来してきます。そのつもりです。
427戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/17 18:47 ID:jf2N9Xpk
25話 ヤムチャの発見

ヤムチャが戻ったとき、辺りはすっかり夜であった。
ヤムチャは天界に戻って、神殿に入ろうとした。バーダックはスジがよく、2時間ほどで覚えられた。ただ、ヤムチャはボロ雑巾、いやボロクズのようになってしまったが…。
汚いから片付けておけよ、そのボロクズをと言われなかっただけマシか。
ただ、彼は孫一家以外の人と話してはいない。ヤムチャはいまだ恐怖の対象なのだ。
「おい、ヤムチャ」
訓練のときに名前を教えておいた。ついでにバーダックの名前も教えてもらった。
呼び止めたということは用があるのだろう。ヤムチャはバーダックのほうへ体を向けた。
「明日、組み手頼む」
ガシャーン!!ヤムチャの中で何かが崩れた。ああ、俺はここで死ぬのか。わが人生に、100ほどの悔いあり…そう思うヤムチャ。しかし大袈裟すぎるリアクションだ。
「ああ、ついでに俺が状況を説明して誤解を解いてやる」
その言葉で再び自分がなにをしたのか思い出したヤムチャ。
物凄い形相になるヤムチャ般若がおびえたような顔だと言えばわかりやすいだろう。
しかし、意外にもバーダックは仲間思いなのか。
「あ、ありがとう、ございます」
また敬語。もう敬語はデフォかもしれない。
「よせ、堅苦しい。普通に喋れ、普通に」
ああ、いい人だ…ヤムチャは殺されるだとか俺は死んだぁーーーだとか心の底で叫んでいたのが恥ずかしくなった。
「フリーザとの戦いでは戦力がいる…その為だ。お前の為じゃねぇ」
冷たくあしわれた…ようにはヤムチャは聞こえなかった。
温かみのあるような声。ああ、父親ってこんななんだな、ヤムチャは思った。
「さて、おとなしく待ってろ。カカロットと悟飯に稽古つけとけよ」
付け加えられた一言をヤムチャは聞こえないフリもできずしぶしぶと悟空と悟飯のところへ向かっていった。
するといきなり背後から風切る音と声が聞こえた。
「狼牙風風拳!」
間一髪、ヤムチャはそれをかわした。後ろを振り向くと悟飯がいた。悟飯は気まずそうに頭を掻いていた。
428戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/17 18:48 ID:jf2N9Xpk
26話 説得完了?

「あのなあ…悟飯」
悟飯に呆れた口調でヤムチャは言う。
「なんでしょう?」
ヤムチャは一つ咳払いをして、闇が染み渡っている夜空を見上げてから口を開いた。
「いきなり殴りかかってくるんじゃない!」
ピッコロが師匠だったらこんなことはなかったのだろうか。ヤムチャは深いため息をもらした。
建物から何か聞こえる。バーダックが説得してくれているのだ。
「というわけであいつはそんなに悪い奴じゃねぇ」
そこだけがはっきり聞こえた。
「いいいいいや、ででででででも、ああああああぶないですよ!」
それに答えるクリリンの声は震えている。これ以上自分を脅す奴が増えてはかなわないからであろう。
バーダックはそんなクリリンを睨みつける。睨みつけただけで野良犬ぐらい焼き殺してしまいそうなほど…怖い。
「はい、わかりました」
ニヤリ。と笑みを浮かべるバーダック。そして餃子に視線を移す。
「おい、白いハゲ、クソソソは許可したからお前が許可すりゃあ終わりだ」
かなりドスのきいた声。もはや脅迫である。聞こえてくるだけなのに体をガタガタと震わせるヤムチャ。
「う、うん」
あっさりと折れる餃子。ヤムチャはもう聞くも恐怖、語るも恐怖。
そして、次に今まで聞こえなかった声が聞こえる。
「おい、バーダック」
ターレスが目覚めたようである。悟空のifの存在。って百科事典に書いてあったことをヤムチャは思い出した。
あれ?そういえば約一日目が覚めないって悟空の親父は言ってなかったか?半日ほどで目が覚めたじゃないか。むしろ天津版のほうが長い間ダウンしてる。クリリンはそんなことを思っていた。
429戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/17 18:49 ID:jf2N9Xpk
27話 フリーザ軍襲来!

クリリンはヤムチャを仲間に入れなくてもいい可能性を見出したようでターレスのほうに熱い視線を送る。ターレスはそれに気づかない。
そう、クリリンはターレスが拒否すればヤムチャを仲間に入れなくていいと思ったのだ。拒否できるのはターレスだけだろう。ラディッツや天津飯など一睨みで了承してしまう。
しかし、そんなクリリンの目論見は脆くも崩れ去った。
「あいつを仲間に引き入れるのか?いいぜ…」
あっさりと了承するターレスをまじまじと見るバーダック。失神してしまったクリリン。
「なんだ?そんなじろじろ見て…今はフリーザを倒すのが先だ。もっともその後はどうするかわからないがな」
外で話を聞いていたヤムチャはすくみあがっていた。
「お兄さん?どうしたの?」
ああ、悟飯はまだ俺の名前を知らないんだったな。
「俺の名前はヤムチャ、ロンリーウルフ・砂漠のヤムチャだ」
相変わらず歯の浮くような台詞をほざくヤムチャ。そのヤムチャの言葉に不思議そうな顔をして悟飯は聞いた。
「ヤムチャさん、なんで裁くじゃないのに砂漠のヤムチャなんですか?」
そう聞かれてヤムチャは間抜け面をした。
まさか盗賊時代のことを明かすわけにもいかない。
「それはな…」
ヤムチャが口を開いたそのときだった。悟空が叫んだ。
「お〜っなんだありゃあ!流れ星…にしちゃあでっけえし…」
悟空のほうへ駆け寄るヤムチャと悟飯。そこで見えた光景に驚き、絶叫するヤムチャ。
「あ、ありゃあ宇宙船じゃねえか!」
神殿の中から一同が出てくる。天津版も目が覚めている。
「とうとう来やがったか…」
「ああ、そうみてぇだ…」
納得した様子のバーダックとターレスに一同は困惑する。
「な、なにが…なにが来たんだ!」
ヤムチャはビビリながら語調を強める。
「フリーザだ」
バーダックの重い一言。
ヤムチャ は めのまえが まっくらに なった。
おこづかい 1ゼニーを かっぱら われた。
430戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/17 18:50 ID:jf2N9Xpk
28話 ラディッツ覚醒!

ラディッツはいまだに神殿についていない。なぜなら…北へ行く、と言ったが南に飛んでいったのだ。相当な方向音痴である。
「ここ何処だよお……」
ラディッツは涙目である。地球を一周すればいいんだがそんなことを思いつかないラディッツ。
そこへフリーザ軍の宇宙船が!
「ゲッ!」
サッと飛び退くラディッツ。危うく潰されかけていた。
着陸し、そして宇宙船からワラワラと出てくるフリーザ軍の兵士たち。
「うわああああああ!!」
叫ぶラディッツ。1対25ぐらい。勝てるわけがない。
そして地球に降り立つフリーザ軍兵士。そしてラディッツの姿を確認する。
「おい、こいつ弱虫ラディッツだぜ」
「よっしゃあ!かわいがってやるか」
こんなやり取りをするフリーザ軍兵士たち。
フリーザ軍兵士の戦闘力は約3000。ラディッツは1500(本当は5500)。勝てるわけがない。
「おい、お慰みにスカウターで戦闘力計ってやろうぜ」
カチカチ、とスカウターを操作するフリーザ軍の兵士。
次の瞬間フリーザ軍の兵士は驚愕する。
「バ、バカな!?弱虫ラディッツが5500だと!?」
白々しい嘘つきやがってこの野郎。もうヤケクソでぶちかましてやる、ラディッツはそう心に決めた。
「俺の最後の一撃をプレゼントしてやる!」
そう叫び、ラディッツは巨大なエネルギー弾を放った。フリーザ軍の兵士たちは一瞬にして壊滅した。
「え?あ…まさか5500ってマジ?」
自分の戦闘力が5500まで上がったことを本当だと感じるとラディッツは腰を抜かしてしまった。
「あり?兵士たちの気が消えたぞ?」
悟空は不思議そうな顔をした。
「事故ったか…」
バーダックはラディッツが兵士たちを全滅させたとは夢にも思っていなかった。
というか存在を忘れていた。
431戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/17 18:51 ID:jf2N9Xpk
また変な夢を見た、ピッコロが多くのナメック星人と同化し、ヤムチャと戦う夢。
あ、作中ではやりません。ありえないシチュエーションを楽しんでいただければと思っていますがさすがにそれはちょっと
432Classical名無しさん:09/04/17 19:40 ID:NvDN4WAo
いったいどこからストーリーをもってくるんだw 才能が羨ましい。
頑張ってください
433Classical名無しさん:09/04/18 01:57 ID:TchR.NZw
いくら強くなろうとヤムチャはヤムチャなんだなって感じがしていいな
434戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/18 07:02 ID:fJzLZRxs
>>429
×裁くじゃないのに
○砂漠じゃないのに

うわあ・・致命的ですね、まいったな
435戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/18 07:09 ID:fJzLZRxs
>>429
×天津版
○天津飯
確認しとけばよかったorz

>>432
主に夢から。私の書く小説の題材は大抵夢からです。

>>433
そのつもりで書きました。ただどんどん成長していくので最終的にヤムチャらしくなくなるかも…
436戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/20 18:33 ID:hrauPXzE
29話 作戦会議

「安心するな…」
次に口を開いたのはターレスであった。
重苦しい口調である。
「くたばりぞこないは放っておいても大丈夫だろう。だが…」
バーダックは次の言葉を察知した。
「ドドリアとザーボンか…」
ドドリアとザーボン――地球へ逃亡するときに戦ったのだ。バーダックは瀕死の重傷を負い、ラディッツはクソの役にも立たなかった(バーダック談)。
どうにかこうにかターレスはドドリアとザーボンを倒し、3人は脱出した。
ターレスがいなかったらくたばっていた、バーダックは後にそう語っていた。
ラディッツの話題が出たのに誰一人気づかないZ戦士たち。
「ふっ、なら…俺がそいつらと戦わせてもらおうか!」
ヤムチャが髪をかき上げながら言った。
しかし、一同はスルーして作戦を練っていた。
「ザーボンの戦闘力は21000、ドドリアの戦闘力は22000…」
一同にスルーされ悲しいヤムチャ。かまってほしいので石を投げてみる。一同、きれいにスルー。
「とりあえず悟飯とカカロットと三つ目ハゲとクソソソと白いハゲが雑魚を片付け…」
悟飯はゴクリ、と唾を飲み込んだ。悟飯戦闘力2000。雑魚にも負けそうである。
ただ、そのほかのメンツはもっと悲惨な有様であった。
悟空戦闘力1700、クリリン600、天津飯750、餃子500。
これはひどい。フリーザ軍の兵士の戦闘力は約3000。普通ならまず勝てない。
ただ、悟空と悟飯は主要キャラ補正がかかるので大丈夫であろう。
問題は足手まとい、もといお荷物三人組。どう考えても主要キャラ補正を受けられなさそうなメンツ。
「ラディッツは…ラディッツ…ラディッツがいねえ、逃げたか?まあいい。いなくても支障はねえ」
今更ラディッツがいないことに気づくバーダック。しかしそれを軽くスルー、作戦を練り直している。
「ヤムチャは補佐を頼む」
よかった…忘れられてなかった…ヤムチャは心の中で狂喜していた。
437戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/20 18:35 ID:hrauPXzE
30話 休息

「休息をとってとけ、2隊目が来るのには時間がかかるはずだからな」
ターレスの言葉でZ戦士たちはチリヂリに散っていった。
ヤムチャはしばらくの間空を見上げていた。
無防備なヤムチャにターレスが駆け寄る。
「よう…」
その声に驚くヤムチャ。バーダックや悟空と同じ声、だが冷たい声…
自分に仕返しに来たのか?ヤムチャは身構え、こわばった声で言った。
「なんの用だ…」
やれやれ、とターレスはおどけた様子である。
「なんもしやしねえよ…」
神経を逆なでするような声色。ヤムチャはイラッとした。
「で?なんか用があって俺に話しかけてきたんだろ?」
―――そうでないと俺に話しかけるはずがない…その言葉を飲み込んだ。
しばらく沈黙が流れる。
「…驚いたな。お見通し、ってわけか」
なめるなよ、お前より長く生きているんだぜ?ヤムチャはそう口に出しそうになった。
「気の探り方からカイオウケンから…聞きたいことはかなりある」
ヤムチャは顔を強張らせた。それらを聞かないなら一体なにが目的なんだ…?
ターレスは不敵に笑い、こういった。
「お前…今度の戦いに勝てると思うか?」
なんだ?なにを言っているんだ?こいつは…ヤムチャはそう思っていた。
無理もない。『宇宙の壊し屋』ターレスがヤムチャに向かって、こんな不思議なことを言っているのだ。
ターレスの問いに対するヤムチャの答えは決まっていた。
「勝てる、いや…勝たなきゃいけない」
無理に虚勢を張ってみせた。
――もっともターレスには見透かされていたようで、声を上げて笑いながら神殿に入っていったが…
「なんだよ…あいつは…」
ヤムチャは15年ローンのことを思い出し、さらに不快になった。
438戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/20 18:36 ID:hrauPXzE
31話 ヤムチャ出陣

「ギャー!!画鋲踏んだ!」
深夜のシリアスキャラから一転、ヤムチャはギャグキャラに戻ってしまった。
悟空がヤムチャに向かって駆けてくる。
「大丈夫か?」
心配そうな顔をしている。本心かは不明。
「あ、ああ…All rightだ」
なにやら英語交じりで話している。カッコつけているつもりなのだろうか。
さて、視点はヤムチャからラディッツへと変わる。
「どこだ…ここ」
幾許か余裕もできて、腰も治ったのでラディッツは飛び回っていた。
しかし…雲行きが怪しい。ラディッツは雨男なのだろうか。おまけにここは砂漠である。滅多に雨は降らない。
しばらく神殿を探し、飛び回るラディッツ。しかし…
「?なんだあれは?ちょ、落ちてくる!」
神回避でギリギリ避けるラディッツ。
さあ、その落ちてきたものの正体とは…フリーザ軍の宇宙船であった。
「よ…よし…雑魚ぐらいなら俺でも…」
ヴィーン、機械音が響く。その宇宙船から出てきたものは…そう、ドドリアとザーボンであった。
どうやらターレスの見立ては正しかったようだ。
さて、困るのがこのラディッツである。意気込んで敵が出てくるのを今か今かと待っていたらこのような結果である。ラディッツは顔と体勢をそのままに凍り付いていた。
――さて、視点は戻ってヤムチャサイド。
なにやらでかい物が落ちてきた。宇宙船だ。
ハッハッハ!俺の本領を発揮するときとうとうがきたか!…いや、というより…この世界に来てから一度もいい目にあったことがないな…
おっ、バーダックが出撃の合図を出したな。
おい!クリリン!天津飯!餃子!俺より先に行っているんじゃねえ!
アッー!また画鋲踏んだ!靴履いてこればよかった!
まあいい、主役は遅れて登場してそれまで死者が出ないと決まっている!
のんびり行こうか…
ドドリアだろうがザーボンだろうがこのヤムチャ様がたちまち消滅させてくれるわ!
あ、バーダックが呼んでる…ハイハイ、行きますよっと。
439戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/20 18:36 ID:hrauPXzE
32話 ヘタレたち涙目

さて、視点は再びラディッツに移る。

―――とりあえず俺はドドリアさんとザーボンさんにボコボコにされている。あ、さんは要らないか。まあ、遊んでいるかのように弱い力で殴ってくるので致命傷にはなっていない。
「む?でかい力の奴が来るぜ?」
スカウターを遊ぶように操作しているドドリアさ…ドドリアが呟いた。
「ならば、そちらを始末してくるか、ドドリア」
そのザーボンさ…ザーボンの問いに対し、ドドリアさ…ドドリアはヘッ、と言うだけで何も言わなかった。
ただ、ドドリアさ…ドドリアははその『力のあるほう』へ飛んでいったので、ドドリアさ…ドドリアがなにを言おうとしたのかは大体分かる。
「さあ、続きとしようか」
ザーボン(ようやく慣れた)は逃げようとしている俺をあっさりと捕まえた。
ああ、SUPER ITABURARE TIMEが再スタートするのか…俺は憂鬱になった。一部英語ではないが気にしないでほしい。俺の勉強不足だ。
さて、視点を戻しヤムチャサイド。

無言で進む俺たち。無駄話をすると体力が減るからだそうだ。なにもそこまで…
そう俺はぶつくさ言いながら宇宙船のほうへ飛んでいっていた。
「………ドドリア!」
しばらく無言だった俺たちに衝撃が走った。紛れもない、バーダックの叫びのせいだった。
「よう、久しぶりだな…バーダック」
よし!ここは俺の活躍のチャンス!そう察知し、繰気弾を作り出す。
「フリーザ様に楯突くサルどもが!」
さあ、ドドリアが無駄話をしている間に繰気弾を作ったぜ!
俺、一世一代の見せ場、いや、魅せ場到来!
「くらえ!繰気弾!」
虚をつかれたドドリアは俺の繰気弾に直撃する!
「ぐあああああ…」
ハッハッハ!戦闘力5億の俺に勝てるはずなかろう!今の一撃は5000分の1の力だったがな!
「よし、先に進むぜ」
え?スルー?みんな、ちょ、待て、待てって!何で軽くスルーしちゃうんだよ、なあ!
440戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/20 18:37 ID:hrauPXzE
33話 ヤムチャ再び気絶

さて、視点を元に戻そう。
ヤムチャは自分の活躍をスルーされ、不満のようだった。
しかし…悟飯がいろいろな感情が混ざった視線でヤムチャを見ていたことを彼は知らない。
「…ラディッツの気か!?」
一応は親、バーダックはしっかりラディッツの心配をしているのではないか、一同はそう思った。
しかし…そういうわけではないようだ。
「チッ、時間稼ぎにもなりやしねえ、遊んでやがるな、ザーボンの奴…」
酷い言いようであった。時間稼ぎにもならない。まあ実際はそうである。
ただ…実に幸いなことにフリーザ軍の雑兵は今回送り込まれてなかったのだ。だからどうしたってわけでもあるが。
「急いだほうがいいな…」
ターレスの言葉で一同は加速した。・・・・お荷物三人組を残して。
さて、ラディッツはどうなっているか、というと…
「ひいいいいい!!」
「くそっ!ゴキブリ並みの生命力め!」
どうにかこうにか生きていた。
ザーボンは徐々に力を出し始めていたが、まだラディッツは無事であった。あくまでも『まだ』。
そこへ主人公、ヤムチャが現れる。ようやく主人公らしくなったなあ、と咽び泣いていたところ、悟空に悪いものでも食ったか、と言われたのはまた別の話。
「さあ!俺の仲間を放すんだ!」
正義の味方のお決まり的な台詞を吐くヤムチャ。
「おめぇは黙ってろ!」
ターレスのエルボーがヤムチャのみぞおちにきれいにヒット!ヤムチャはまた気絶かよ、と薄れゆく意識の中で思っていた。
「ほう…その男、君たちの中では実力者のようだが…眠らせてよかったのかい?」
えらく上から目線なザーボン。ヤムチャの意識があったら一瞬でチリになっていただろう。
「うるせぇな…すぐに黙らしてやる」
バーダックは戦闘体勢をとった。
「な、なにが起きているんだ…」
ラディッツは状況を把握できていなかった。
441戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/20 18:38 ID:hrauPXzE
34話 ザーボンVS.バーダック
「お前らはそこで見ていやがれ」
バーダックの「黙らせてやる」というのはそういう意味が込められていた。
その意味を感じ取ったのかその場にいる悟空、悟飯、ターレスは見守っているだけだった。
「じゃあ始めるとするか…」
その言葉を発した途端、ザーボンに殴りかかるバーダック。
「おっと…顔を狙うとは下賎な奴だ…」
ザーボンは顔を狙ったパンチを受け止める、そしてバーダックの腹めがけエネルギー弾を放った!
「ちっ…」
バーダックは舌打ちをし、回避運動に移る。左に高速で移動する。
「甘い!数歩先まで読めている!」
ザーボンのエネルギー弾がバーダックに着弾する!
「ぐっ」
苦痛に呻くバーダック。隙ができているバーダックにザーボンが殴りかかる!
しかし、バーダックはすんでのところでその攻撃をかわした。
2人のどちらが有利かは誰の目にも明らかだった。ザーボンは息も切れていない…対してバーダックは酸素不足に喘いでいる…
「もらった!」
巨大なエネルギーを手に収束させ、撃ち出すザーボン、掌から一筋の光が迸る!
「この言葉を知っているか…危機は最大の機会だ!」
サッ、とその攻撃を避け、ガラ空きのザーボンの体にラッシュを叩き込むバーダック。
「クソッ、下衆が!」
手を振り回し、反撃を試みるザーボン。しかし、大振りになったその攻撃はいともたやすくバーダックにかわされ、更なる反撃を生む!
「悟飯…見えっか?」
悟空が悟飯に聞く。
「す、少ししか…」
バーダックは10発近い攻撃をザーボンに浴びせる。
しかし…ザーボンはボロボロになってはいたが、余裕を見せていた。
「フ…私の勝ちだな…お前の攻撃には決定力がない」
いくらラッシュを放っても、地力ではザーボンのほうが勝る。このままでは…
そのとき、バーダックの頭にあることが閃いた!
「!!そうか!カカロットォ!!技を借りるぜ!!」
バーダックが閃いたこととは…?
442戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/20 18:39 ID:hrauPXzE
35話 バーダックの執念

バーダックは掌と掌を合わせ、その合わせた掌に空間を作り、手を後ろに引いた。
「かめはめ波ぁー!!!」
そう叫び、手を前に出し、手を開いた。手から閃光がザーボンに向かって伸びてゆく!
「くっ…」
ザーボンは完全に虚をつかれた。回避をしようにも行動に入るのが遅かった。
「うおおおおお!!」
ザーボンはエネルギー波で応戦した。気弾と気弾のぶつかり合い。しかし…バーダックはいかんせんかめはめ波を使いこなせてなかった。ジリジリと、しかし確実に…バーダックのほうへと気弾は向かっていった。
その時、バーダックの脳内に、ある会話が再生された。
「バーダック…惑星ベジータの…サイヤ人の仇をとってくれ…フリーザを…」
それは…同僚たちの声だった。
「バーダック…」「バーダック…」「バーダック…」「バーダック…」
その瞬間、バーダックの中でなにかが弾けた。
「俺はこんなところで…くたばるわけにはいかねーんだよ!!」
かめはめ波に送り込む気を一段と強める。
「バ、バカな…押されている!?」
サーボンは自分が押されていること、急に強くなった力…すべてに驚いていた。
「とどめだぁーー!!」
バーダックは力を振り絞り、気を送り込んだ!
ザーボンの顔には恐怖の表情が映っている。
そして…二つのエネルギーはザーボンに着弾した。
「やりました!おじいちゃんやりましたよ!」
その様子に嬉々として喜ぶ悟飯。
「おお、やったな!」
元気よく返事をする悟空。
「お、親父…すげぇ」
ラディッツは呆然としている。ちなみにここは砂漠…被害はほとんどない。
「残念だったな…」
嬉々としている一同の前に、ザーボンが現れた。さっきの美男子とは想像がつかないほどの…化け物の姿となって。
「この姿を見たものは死、あるのみだ」
ザーボンの言葉に殺気がこもっていることを一同は感じ取った。
443戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/20 18:39 ID:hrauPXzE
36話 空気が読めないヤムチャ

「おーおー、随分と男前になって」
バーダックは茶化すように言った。だが、彼に余裕がないことは誰の目にも明らかであろう。
ジャリ、と砂漠の砂を踏みしめるバーダック。
「2倍にして返してやるぞ!」
ザーボンのその言葉に身構えるバーダック。
しかし…次の瞬間バーダックは血を流し、虫の息で倒れていた。
「俺は…まだ…くたばる…わ…け…に…」
「悟飯!仙豆持って来い!」
悟空が間髪入れずに悟飯に指示をする。悟飯はあたふたしていてとても判断が出来るような状況ではない。
「さて、次は誰が餌食になるのかな?グフフフフ」
さっきの美形だった面影はまったく残っていない。
笑い方までが不潔だ。
「なら俺が相手「繰気弾!」
ターレスの声に重ねるように誰かの声が響く。ヤムチャだ。繰気弾を使えるのはヤムチャしかいない。
それにしてもこの男、空気が読めない。
「な、なんだ?」
ザーボンが突如出てきたエネルギー弾に戸惑いを示している。そのエネルギー弾を普通にヒラリ、とかわすザーボン。しかしヤムチャの操作によりザーボンの体に繰気弾が直撃、ザーボンはあっさり逝ってしまう。
「ふははははははは」
いいとこどりである。
それにしても、ヤムチャはいまだまともな戦闘をしていない。
「悟飯!仙豆だ!」
悟空の怒鳴り声。早くしろと要求しているのだ。
「仙豆、仙豆…」
おろおろとしている悟飯。無理もない、子供だ。
「あ?仙豆?」
ヤムチャは口を開いた。
「俺の食いかけあるけど…どう?」
やはりこの男、空気が読めない。
444戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/20 18:48 ID:hrauPXzE
えーとQ&Aっぽいものを。
Q.バーダックが悟空からかめはめ波を借りるって言ってるけど亀仙人の技じゃね?
A.バーダックは悟空の技だと思ってたんです、たぶん、きっと。

Q.かめはめ波撃つときの描写分かりにくいんだけど…
A.自分の文章力ではこれが限界です。第一構えが複雑すぎます。

Q.バーダックがザーボンに打ち合いで勝ったけどこれってお約束じゃね?
A.お約束をやってみたかったんです、スイマセン。

Q.ヤムチャてめえしゃべんな、むしろシリアスシーンに出てくんな
A.一応「たまにはヤムチャが活躍する話を考えようぜ」スレなので了承ください。
445Classical名無しさん:09/04/20 22:05 ID:1YgZ3RCk
446Classical名無しさん:09/04/20 22:31 ID:eYayeLRM
強いのに雑魚みたいな扱いのヤムチャにワロタ
447Classical名無しさん:09/04/20 23:29 ID:dUqZnavQ
劇場版ドラゴンボールに、無理やりヤムチャをねじ込んだような不条理な展開がなんとも言えずつぼw
続き楽しみにしてます。

サイヤンキラー2作者さんと1000人ヤムチャ作者さん、そして保管サイト作るって言っていた人はどうしたんだろう
現在スレッド容量458kb、あと40kbで容量オーバーになっちゃうし見ていてくれたらいいんだけど……
448Classical名無しさん:09/04/22 21:57 ID:TDfBWEJg
5億という大雑把すぎる数字が面白い
449戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/04/24 18:53 ID:4A5FFYCA
うわあ…風邪をひいてだいぶ間が空いてしまった…スレ容量的に投下は自重しておきます。
朦朧とする意識の中で書いた37-42、3話はかなりひどい出来になっているので要添削です。
450Classical名無しさん:09/04/25 10:57 ID:50TwT4Ak
続き読めるのは嬉しいけど、無理して書くこと無いよw お大事に
451Classical名無しさん:09/04/29 10:16 ID:Tql3fyZ6
狼牙保守保守拳!
452戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/05/01 19:19 ID:olTU5Tuc
あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
『俺は戦闘力5億のヤムチャを書こうとしていたらウルフボールGT(ごめんなさい 鳥山先生)
という作品の第一話とプロローグが出来上がっていた』
な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
おれも何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
催眠術だとかヤムチャ乙だとか
そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ

すいません、マジ話です。しばし本当にもう少しお待ちください…
453戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/05/01 19:22 ID:olTU5Tuc
うわあ、>>452の後半部の日本語がおかしいですね…まいったな
454Classical名無しさん:09/05/02 01:59 ID:XUwhJ9JA
毎度ながら、どこからそんなストーリーを持ってくるんだ?w
455テスト:09/05/02 10:38 ID:gulCdMgs
456戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/05/02 19:00 ID:YM8VYGF6
ウルフボールGT(ごめんなさい 鳥山先生)
プロローグ

俺を…ここから出せ…俺を…ここから…!
俺は必死で体を動かす。何百年、何千年もの間こうやってきた。しかし、ここから出られる気配はない。
コツコツコツコツ…足音が聞こえる。外側から俺の姿は見えないが内側から外の光景は見える。
…人間が来た…頬に傷のある男だ…
この俺を…出せ!
再び宇宙を壊すのだ!
457戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/05/02 19:02 ID:YM8VYGF6
うわあ…こっちじゃありませんね…たまげたな
もう勢いでウルフボールも書きあがっている一話まで出しますね…
458戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/05/02 19:03 ID:YM8VYGF6
1話 きっかけは些細なり
神殿の個室に一人の男が入ってくる。
頬に傷があり、黒く短い髪、多少老けたが整った顔立ち。
―――そう、この人は間違いなくヤムチャであった。
彼はキョロキョロと辺りを見回している。
「神殿で迷うなんて夢にも思わなかったぜ…」
その言葉通り、彼は見事に道に迷っていた。
デンデ…いや、神様が必要以上の部屋を教えなかった、というのもあるのだが。
「…ん?なんだこりゃ」
ヤムチャはその『個室』にある二つのボールを見つける。
そのボールには狼の体と胴体が描かれていた。
「ドラゴンボール?いや…なんか違うんだよなあ…」
ヤムチャはその二つのボールを手にした。
459戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/05/02 19:05 ID:YM8VYGF6
紫がかった色…不思議とヤムチャはそのボールに釘付けになっていた。
もし、これがドラゴンボールなら…ヤムチャは息を呑んだ。
「って、そんなわけないよな、なにを考えてるんだ俺は…『強くなりたい』って…自分がなってこそ初めて…ん?」
ヤムチャは言葉を止めた。その手に取った2つのボールが急に光りだしたのだ!
そしてそのボールの1つから狼が飛び出す!
「フハハハハ!!その願い、かなえてやろう!」
呆然とするヤムチャをよそに、個室にその叫びが反響する。
そして眩いばかりの閃光がヤムチャを包む。
ヤムチャはその光を受け、体が溶けてしまいそうだった。体に急激な負担がかかり、体が悲鳴を上げる。
「ぐああああ!!なんなんだ、これは!!」
ヤムチャは手にしたボールを落とした。しかし、地面に着く前にもう片方のボールから人間が飛び出した。
460戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/05/02 19:06 ID:YM8VYGF6
「礼を言うぞ、優男!」
その言葉を残し、天井を突き破り、空へと飛び立った。
ヤムチャは外から与えられた『力』と戦っていた。
「ぐっ…うおおおおぉぉお!」
ヤムチャの叫び声が部屋に反響する。眩い光が去ったとき、ヤムチャは光に包まれていた場所に立っていた。


分割しなければ入らないというシリアス小説を書いたときのジレンマ。
ひょっとして文字数制限厳しくなりました?
461戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/05/02 19:08 ID:YM8VYGF6
37話 戦力

ヤムチャが悟空に手渡した仙豆はまさに『食いかけ』といった感じである。
仙豆の4分の3は齧られており、本当に『欠片』である。
「背に腹はかえらんねぇ…父ちゃん!食え!」
悟空がバーダックの口に仙豆を入れる。いや、ねじ込む。
バーダックの口に入り、仙豆を飲み込んだ瞬間みるみる傷は治って…いや、中途半端に治った。
そして…バーダックの意識が戻る。
「カ、カカロット…」
バーダックは意識が戻るなり起き上がろうとした。しかし…かなりキツそうである。
「父ちゃん、無理すんな。しばらく寝ててくれ」
悟空は優しくそう言った。悟空だからこその思いやりである。
462Classical名無しさん:09/05/07 01:02 ID:jEHPDUfA
ウルフボールは面白くなりそう。今後の展開に期待してます。

戦闘力5億のヤムチャはフリーザを瞬殺できる強さのはずなのにヘタレなところが面白い
463戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/05/10 19:43 ID:sRAbSQZM
「い、今起こったことをありのまま話すぜ!『カカロットよりも強くなっているのに空気にされた』
な、なにを言っているのかわからねえと思うが俺もなにをされたのか分からなかった…あ、頭がどうにかなりそうだった…
愛情度だとか、主人公補正だとか、そんなチャチなもんじゃ断じでねぇ!」
ラディッツはこんなことを口走っていたがバーダックは軽くスルー、辺りを見回し、ザーボンの死体に気づく。
「ザーボン…誰が倒した?」
ヤムチャはずい、と体を前に出し、胸に手を当てながら…自慢げに言った。
「そりゃあモチのロンでこのヤムチャ様ですよ!」
えらく古臭い言葉を言っているような気がする。まあヤムチャだしいいか。
悟空に睨まれて口を噤むヤムチャ。さすがは親子、怖い。
「なあ、父ちゃん。しばらく寝ててくれ」
464戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/05/10 19:45 ID:sRAbSQZM
悟空が心配そうな表情でその言葉を囁く。
しかし、バーダックはその言葉を無視し、話し始めた。
話の内容は、ギニュー特戦隊、というドドリア、ザーボンより数段強い連中が待ち受けている、というものだった。
言葉を発するバーダックの叫びが砂漠に響いた。
間髪いれずにバーダックはさらに続ける。
「これ以上戦力の差が開いていたらとてもじゃないが戦えねぇ!自分の技を磨く努力をしろ!」
バーダックの言葉はそこで終わった。それと同時に意識を失った。
―――一方お荷物三人組はとっくに神殿に戻っていた。
465戦闘力5億のヤムチャ ◆VFBLT7jV.s :09/05/10 20:02 ID:sRAbSQZM
見事に連投規制に引っかかってしまったので遅れての続きです。
文字数がかなり厳しいな…と思ってたらいつの間にか自分のホームページが出来ていた。なにをされたのか(ry
…自分の小説で大分スレの容量喰ってるんでちょっと自サイトにて出していきます。面白くもない自分の小説で容量喰うのはあまり喜ばしいとは言えないので…
音沙汰がないのでまとめサイトも作ってみようかな…とかは思ってませんよ、断じで。
http://www37.atwiki.jp/yamucha/
466Classical名無しさん:09/05/12 01:38 ID:98yhzJsk
面白く読ませてもらってます。サイト開設乙!
467Classical名無しさん:09/05/15 23:23 ID:Jk17kgN6
サイト開設乙です
468Classical名無しさん:09/05/16 06:52 ID:viQMXYuY
みんなどうしたのかな?
469Classical名無しさん:09/05/21 19:35 ID:5usshPD2
保守&支援
470Classical名無しさん:09/05/26 06:41 ID:H/6Da4dU
サイヤンキラー復活祭!!
471Classical名無しさん:09/06/01 03:31 ID:qVA3wrHg
保守
472SaiyanKiller2 ◆EqApAczzj2 :09/06/01 04:23 ID:pFFccgBg
いや〜皆さんお久しぶりですw
急な海外出張でインターネットが出来ない環境でしたw

また頑張って書いてみようかなと思っている所ですが、久々すぎて雑になりそうですw
まあ…まだ忙しさは変わらないので、時間があるときにでもゆっくり書いていきますねー。
473Classical名無しさん:09/06/01 06:06 ID:qVA3wrHg
無事でよかった、お帰りなさい
楽しみに待っています
474ダークオ:09/06/01 08:39 ID:j9CnuCPI
楽しみに待ってます
475Classical名無しさん:09/06/06 18:12 ID:3kvxJmqs
プーアル「保守」
476Classical名無しさん:09/06/10 08:50 ID:/WlK5llo
ヤムチャ「ふっ、住人がお留守だぜ!!」
477Classical名無しさん:09/06/11 14:32 ID:TkGzaLi6
「ドラゴンクエスト5改 天空のプーアル」を書いてたんだがあまりの文章力のなさにビックリしちまったぜ
478Classical名無しさん:09/06/15 21:23 ID:n1.t2ovw
サイヤンキラー2を一気に読んでしまった。返す刀で保管庫の1を最初から読んでしまった。
1はリアルタイムで見ていたが、まとめて読むと、つくづく良く出来た話だと感じた。
そして、そのまた返す刀で、このスレの2を最初から読み直すという、まるでサイヤン蟻地獄w

1も2も、マーリンというキャラがよく出来ている。よく描けているのが最大のポイントなんだろうなと思う。
いわゆるツンデレに属するタイプというか、ドラゴンボールの世界観にふさわしくない「萌えキャラ」で
ありながら、なぜかそれほど違和感がない。

こういうSSにはあまりお目にかかった事が無い。オリキャラといえば「俺の考えたキャラ最高! 最強!」
的な描き方か、あるいは逆に空気の両極端なのが多いなか、マーリンはDBの世界観にしっかりと
溶け込めていながら、なおかつ異質感をも漂わせている。だから存在感や印象が強く感じられるんだろう。
479Classical名無しさん:09/06/15 21:33 ID:n1.t2ovw
また、DBのテーマや根底にあるものとして、「ひたむきさ」というのがある。DBのキャラは悟空を
はじめとして、表面や善悪はどうあれ、みんな真っ直ぐでひたむきだ。そしてそれはマーリンも同じだ。
だからマーリンはオリキャラでありながら、DB世界の住人として受け入れられた、溶け込めた。

マーリンはある意味で、誰よりもDBらしいキャラなのだと思う。そしてその性格を2の作者さんも
しっかりと受け継いで描いている。別人とはにわかには信じられないほど、特徴を掴んで描写している。
本当は1の作者さんなのではと今も少し疑ってるぐらいだw 文体も良く似てるし。って、これは
誰も触れてないが、もしかしたらタブーなのかな……?

……ともかく、一気読みでテンションが上がってしまい、ムダに長文を書いてしまった。スマソ。
願わくば2の作者さんにも、いつになっても構わないので、最後まで書き切ってもらいたい。
そして俺をまたサイヤン蟻地獄に落としてもらいたい。お願いします。
480Classical名無しさん:09/06/18 15:39 ID:FYNymHmA
悟空「三沢のことかーー」
481Classical名無しさん:09/06/19 02:35 ID:imxzc6qg
ヤムチャ「くらえっ!エメラルド・フロージョン!!」
482Classical名無しさん:09/06/20 13:01 ID:EGEFUFDY
>>479
>本当は1の作者さんなのではと今も少し疑ってるぐらいだw 文体も良く似てるし。
どちらかと言うと急襲のヤムチャの人と書き方が似てる気がする。
483Classical名無しさん:09/06/21 03:19 ID:bmWfb12Q
なるほど
484Classical名無しさん:09/06/26 17:13 ID:ym/CmPxM
やっとこさ追いついたーと思ったらサイヤンキラー2は休止中か。
でも作者さん帰国したみたいなんで期待保守。
485鬼ヤムチャ:09/06/26 22:54 ID:qFWSOaKQ
プロローグ

一人の長髪の男が空を突き抜けるほどにそびえ立つ塔を登っている。
蒼く澄み渡る空に朱色の胴着が映える。男の表情は希望と緊張がないまぜになった、
進学や就職を控えた青年のようだ。
荷物は小さな袋を背中に携えているだけ。
男は汗を流し息切らせながらひたすら塔の頂上を目指す。

しかし、男の真の目的は塔の頂点ではなく漢の頂点。
そう、天下一武道会優勝。悲願達成へ――――。

486鬼ヤムチャ:09/06/26 22:55 ID:qFWSOaKQ
其の一

(俺はとうとう野球選手になってしまった――――)
球場のロッカールームでユニフォームに着替える男は心の中で呟いた。
男が着替え終わるとチームメイトが近づき、笑顔で握手をした。
「お前がテスト入団で入ってきたヤムチャか。何でも化け物並みのフィジカルを
持ってるらしいじゃねぇか」
「なぁに・・・俺なんかあいつらと比べればプリント用紙さ」
「んん?お前以外にもっと凄いやつがいるっていうのかよ」
その時、他のチームメイトが会話に加わり、
「こいつはこの前の天下一武道会でベスト8だったらしいぜ」
「えっ!?あのピッコロ大魔王が参加して街もろともぶっ壊したっていう、あの?」
「・・・よしてくれよ。過去の話さ」
ヤムチャは照れを隠すように右手をさっと上げ、ロッカールームを後にした。
「って言ってもよ・・・あれって一年前だよな?」
チームメイトのひとりがぼそっと呟いた。
487鬼ヤムチャ:09/06/26 22:57 ID:qFWSOaKQ
其の二

ヤムチャのプロデビュー戦は8回裏に代走で出場したが、足元がお留守であることが
災いして牽制球でアウト。ほろ苦いデビューであった。
チームメイトたちは「ヤムチャの能力を生かすにはスタメンで4番ファーストしかない」
と監督へ申し出たが、実績のない者をいきなり4番にするわけにはいかないとして却下。
ヤムチャもアルバイト感覚で入団したのでそんな責任の重いポジションはゴメンだと
思った。
ヤムチャは同僚の食事の誘いを断り、帰路に着くべく車に乗り込もうとしたとき、
「ヤムチャさん!」
背の低い坊主頭の男が声をかけてきた。
「おお!クリリンじゃないか!試合見に来てくれたんだな」
「ええ。ヤムチャさんの勇姿、しっかり目に焼き付けましたよ」
「そうか。それはうれしいな。・・・どうだ、これからメシでも食いにいくか?奢るぜ!」
「本当ですか!?ヤムチャさん、ゴチです!」
クリリンは嬉々として車のドアを開け助手席のシートに潜り込んだ。

488鬼ヤムチャ:09/06/26 23:01 ID:qFWSOaKQ
其の三

ヤムチャが選んだのはカウンター10席ほどの小さなすし屋。しかし、その店は知る人ぞ
知る隠れた名店なのだそうだ。隠れ家へ招待され狂喜するクリリン。
一通り食事を終え、雑談を繰り返す内に話は盟友である孫悟空の話題になった。
「なぁ、クリリン。悟空に子どもができたそうだな」
「ええ」
「時が経つのは早いよなぁ・・・つい最近までガキだった悟空がな」
「そうですね。美人の奥さんゲットして、しかも世界の救世主ですよ」
「あいつはいつも俺たちの一歩先を行ってるよな。スタートラインは一緒だった
はずなのに」
ヤムチャはそう言うとグラスに残っていたビールを一気にあおった。

489鬼ヤムチャ:09/06/26 23:04 ID:qFWSOaKQ
其の四
「持ってるモノが違うんでしょう。悟空、しっぽ生えてますし」
 おどけた調子で応えるクリリン。
「だよなぁ・・・あいつが大猿に化けた時は殺される!と思ったもんだよ。けれどなぁ・・・」
ヤムチャは空いたグラスを見つめ、当時の情景を思い出している。
「・・・ひょっとしてヤムチャさん。差が開いたのは天界の修行があったからだと・・・?」
「・・・いや、悟空は人一倍努力しているとは思うが・・・しかし、仮に俺たちも悟空に
同行して天界で修行していたらと思うと・・・」
「そうですねぇ・・・いや、止めましょう。現にピッコロを倒せたのは悟空だけでしたし、世界を平和にした。あいつがナンバーワンですよ」
クリリンのその言葉を最後に店を出た二人。クリリンはお礼を言い、二人は店先で別れた
ヤムチャの後ろ姿を見送るクリリンの目にはその背中がいつもより大きく感じた。
ヤムチャはひょっとして天界へ行くつもりなのか―――しかしクリリンは瞬時にその
着想を振り払った。背中が大きく見えたのはヤムチャの決意の為ではない。俺にご馳走
してくれたからだ、と。

490ダークオ:09/06/27 07:09 ID:zogZznGg
おもしろくなりそうな・・・。期待します!
491鬼ヤムチャ:09/06/27 19:45 ID:JATZ/vos
其の五

かつて武術の神と謳われた亀仙人の家(通称:カメハウス)にクリリンは居た。
世界は平和になり、特に武術の修行をするモチベーションもなかったが、
他に行く当てもなかったので居候をしている。
ヤムチャがプロ野球選手として活動すると聞いて以来、クリリンはテレビで試合を
必ずチェックしている。
しかし、デビュー戦の日に食事をしてから一ヶ月、試合でヤムチャを見ることはなかった。
まだレギュラーで活躍するのは難しいのだろう、と思っていた矢先、ヤムチャの恋人
ブルマがカメハウスを訪れた。
「ブルマさん、お久しぶりです。あれ?今日はお一人ですか?」
クリリンの挨拶を聞くと、ブルマは曇った表情になり
「ここじゃないのね」
「えっ?どういうことですか?」
「・・・実は一ヶ月前にヤムチャったらこんな手紙を残して姿を消したのよ!」
ブルマはバッグから茶封筒を取り出しクリリンに渡した。

492鬼ヤムチャ:09/06/27 19:46 ID:JATZ/vos
其の六

ブルマへ

オレはしばらく留守にする。
このままではオレはきっとダメになる。
いつかお前を失う予感がしてならないんだ。
お前にふさわしい漢になって絶対に戻ってくる。
再びナンバーワンになる為に―――

ヤムチャ

「これって・・・」
言葉を失うクリリン。
「・・・ヤムチャさん、ナンバーワンになったことないような・・・」
クリリンは亀仙人のペットの海ガメと目を見合わせ軽くため息をついた。

493鬼ヤムチャ:09/06/27 19:47 ID:JATZ/vos
其の七

「これはヤムチャの矜持の問題じゃな」
それまでリビング奥のロッキンチェアーでくつろいでいた亀仙人は、おもむろに
立ち上がり二人と一匹に近づいた。
「そう言われてみれば・・・ヤムチャの奴・・・」
ブルマが何かを思い出して言葉をつなぐ。
「オレはサッカーで例えれば日本代表だ。アジアでは強豪でも欧州南米の強豪には
 まるで歯が立たない。せめて世界に通用するフィジカルと技術があればオレも
天下一武道会でベスト4になれる!って言ってたわ」
「そうだ!この前一緒に食事した時も、悟空が強いのはひとりだけ天界で修行したからだ、
 というようなことを言っていたような・・・(それ言ったの俺だったか?)」
ブルマの発言に呼応して、クリリンは一ヶ月前のすし屋での一部始終を語った。
「まぁ、あれじゃな。ヤムチャは修行に出たんじゃな。平和な世の中なのにご苦労な
 こったのぅ」
亀仙人は手を自身の肩にやり、コリをほぐしながら再びロッキンチェアーに座った。

494鬼ヤムチャ:09/06/27 19:49 ID:JATZ/vos
其の八
「ということですから、ブルマさんも心配なさらずに・・・」
クリリンはヤムチャの失踪が修行目的であることを確信し、ブルマを慰めた。
「心配なんかしてないけど、野球チームからの電話がしつこいのよ。期待のホープ
 だから早く復帰して欲しいって・・・まったく、やっと世間で居場所が見つかったと
 思ったらこれだもの。呆れちゃうわね!」
ブルマは一気にまくし立てると、出されたアイスコーヒーを口にした。

その頃、友人や恋人の心配(?)をよそに、ヤムチャは仙人が住むと言われるカリン塔の
頂上にいた。
カリン塔の主である仙人カリンはヤムチャの天界行きの要請を拒み続けていた。
「しつこい奴じゃのぅ、おぬしも。世界の危機でもないのにむやみに人間を上へ
 やってはいかんのじゃよ」
「・・・カリン様。確かに今は平和な世の中かもしれません。しかし、いつピッコロを
超える悪が世界を蹂躙するとも限らない。準備は怠らない方が良い。俺は超神水も
飲んだ。きっと神様との修行にも耐えられる!」
495鬼ヤムチャ:09/06/27 19:51 ID:JATZ/vos
其の九

「おみゃーさん、あの水飲んだ後すぐに気持ち悪ぃ、気持ち悪ぃ言うて吐き出した
 でしょうが。あれは飲んだ内に入らんでしょう」
ヤムチャがカリン塔に来てからというもの、毎日このやりとりを見せられている
ヤジロベーという名のカリン塔に住み着いている青年は呆れつつも毎度のつっ込みを
ヤムチャに入れた。
「わかってないぜヤジロベー。肝心なのはあの味を知っているのは俺と悟空だけだと
 いうことさ」
「・・・味見した程度で強くなれるなら神様に修行してもらわんでも充分でしょうに」
ヤジロベーは一歩も引かないヤムチャへ哀れみと諦めを込めた目を向けた後、
「いい加減こいつを天界に上げさせてやったらええでしょう?」
カリンの下あごを撫でながらヤジロベーも天界行き許可を懇願した。
「んん、まぁ、なんじゃな。あまりにもしつこいし、一度神様に掛け合ってやらん
こともないかな」
喉をごろごろと鳴らしながらカリンは観念したように目を瞑った。
496Classical名無しさん:09/06/27 21:06 ID:1DWNKUK2
ブルマに宛てた手紙が格好良かったです。
497鬼ヤムチャ:09/06/28 19:23 ID:GDMxv4uE
其の十

ヤムチャが天界の神殿にある「精神と時の部屋」と呼ばれる一室に入り早3日が経った。
筋力トレーニングや座禅といった基礎的なメニューをこなすが、なにより食料庫、ベッド、
バストイレ以外何もなく、空気が薄く寒暖差の激しいだだっ広い白い風景が精神を圧迫する。
神様が「孫悟空でさえ一ヶ月しかもたなかった」と言っていたのを身でもって理解した。

―――お主とは以前下界で手合わせして以来、気にはなっていた。
―――では神様、改めて稽古をつけていただけるのですね!?
―――そうしてやりたいのはやまやまなのだが、神というのはこれでも中々多忙なのだよ。
   現に、孫悟空の修行はミスター・ポポにまかせっきりだった。
―――そうだったのですか・・・
―――ミスター・ポポは今病気療養中で相手は無理・・・ヤムチャよ。お主、
   「精神と時の部屋」に入ってみてはどうだ?

ヤムチャはふと天界に初登頂したときのことを思い出し、再び瞑想にふけるのであった。

498鬼ヤムチャ:09/06/28 19:25 ID:GDMxv4uE
其の十一

「精神と時の部屋」の話を神様から聞いた時、不安よりも先に部屋の中での環境に耐え
られる、という確信がヤムチャの心の中で湧いた。
豪華な食事も綺麗な女もいらない。俺は砂漠の狼なんだ、と。
天下一武道会で優勝し、絶対にナンバーワンになる。この一心のみがヤムチャを
過酷な修行へと駆り立てるのであった。

――ヤムチャが天界へ修行に行ってから4年が経過した――

実際にはヤムチャが天界で修行した期間は「精神と時の部屋」で過ごした2日だけで、
その後の消息は不明。
ブルマの元へも戻らず、カメハウスに立ち寄った形跡もない。
クリリンはじめ友人たちは「きっと居心地が良くて天界に住み着いているのだろう」と
思っていた。

そんなある日、一人の長髪の男がカメハウスを訪れた。

しかし、それはヤムチャではなかった。
499鬼ヤムチャ:09/06/28 19:26 ID:GDMxv4uE
其の十二

鎧を身に着けた黒ビキニ姿の長髪男はラディッツと名乗り、孫悟空の息子である孫悟飯を
人質にとり姿を消した。
圧倒的な気(戦闘力)を持つラディッツ。悟空より先にラディッツと対面していた
ピッコロ大魔王(以下ピッコロ)は悟空と手を組めばラディッツを倒せると主張し、
それに同意した悟空と共にラディッツの元へと向かった。

その頃ラディッツは―――

悟飯を宇宙船の中に閉じ込め、食料を確保しようと出発するところであった。
自身の持つスカウターが悟飯の戦闘力を700近く計上するというアクシデントに
見舞われたが、何のことはない、スカウターの故障だろうと気持ちを落ち着かせた。

その時であった。

一人の男がラディッツの前に立ちはだかった。

500鬼ヤムチャ:09/06/28 19:29 ID:GDMxv4uE
其の十三

「地球人にしてはありえない気を察知したから見に来てやったぜ」
亀仙流の胴着を身に包んだ男は自信に満ちた表情でラディッツを一瞥した。
「その服装、カカロットと同じだな。大方奴に援軍を頼まれたのだろう」
ラディッツは不適な笑みを浮かべてスカウターのスイッチを押した。
「戦闘力・・・177。この星の者にしては高い方だな。ハハハッ」
「カカロットだ戦闘力だワケのわからんことを言っているが、悪さをする奴は
 月に代わってお仕置きだぜ!」
「フン!こんな辺鄙な星、元から興味なぞない。カカロットさえ連れて帰れば
 それで良いのだ」
「そうかそうか。その願い叶うといいな。しかし、貴様が悪さをしないという
保障はどこにもない。念には念を入れてこの俺の力を少しだけ見せてやろう」
亀仙流の男は気を開放した。
501鬼ヤムチャ:09/06/28 19:33 ID:GDMxv4uE
其の十四

「なっ・・・何だと!戦闘力がどんどん上がっていく。1000・・・2000・・・」
驚愕の表情で男を見つめるラディッツ。受け入れ難い現実を目の当たりにし、
ラディッツは怒りと焦りを抑え切れなかった。
「はっはっはっ!真の漢(おとこ)の力をしっかり見ておくがいい!」
亀仙流の男はさらに力を入れた。
「戦闘力・・・4649!・・・嘘だ。スカウターの故障に決まっている!」
「ヨロシクか・・・洒落てるな、オレ」
「うおおおおっ!」
ラディッツは雄たけびをあげると、電光石火のスピードで男の懐に近づき右の拳を
男の左頬に撃ちつけた。
微動だにしない男。
「それは君の故郷の挨拶かな?では私も」
男はラディッツの右腕を己の右手で掴むと、勢いよく2〜3回上下に振った。
「うわぁっ!腕がもげるぅ!」
「そいつは失礼」
男は笑顔で手を離した。
502じゅん:09/06/28 19:55 ID:zgq/dRQU
いいねっ!
503鬼ヤムチャ:09/06/28 22:01 ID:GDMxv4uE
其の十五

「はぁはぁ・・・貴様は一体?・・・」
息切らせ腕に手を遣るラディッツ。
「オレか?・・・俺が誰であるかすでにお前も知っているだろう。武術の王にして
漢(おとこ)の中の漢、ヤムチャとは俺のことだ。気の狂うような修行を経てオレの
存在は神をも超えた。想像を絶する力を手にしてしまったので隠遁生活をしていたが
骨のありそうな奴の存在を察知したので来てやったまでさ」
ヤムチャは得意満面の笑みで語ると、腕を組み空を見上げて遠くを見つめている。
(馬鹿な!地球にこんな実力を持つ者がいるとは!・・・誤算だ。しかし待てよ・・・)
恐怖と後悔が交錯する心の中でラディッツは一計を思いついた
504鬼ヤムチャ:09/06/28 22:03 ID:GDMxv4uE
其の十六
「いやぁ、もちろん知っていますとも。ヤムチャさんを訪ねる為にはるばる宇宙から
 やって来たんですから」
ラディッツは精一杯作り笑いをし、揉み手をしながら言葉を続ける。
「我々は宇宙各地から選りすぐりの戦士を募集しています。色々と手広くやっていますが
 ヤムチャさんなら即戦力でご活躍いただけるかと・・・」
「おだてはいい。俺は地球から出る気はないからな。とっととカカ何とかを連れて
くに(故郷)に帰るんだな」
ヤムチャは対峙したラディッツの実力が予想の域を出なかったので、もうここにいる
必要もないと言わんばかりに足早に去っていった。
505鬼ヤムチャ:09/06/28 22:04 ID:GDMxv4uE
其の十七

(た・・・助かった)
ラディッツは安堵の表情で近くの岩に腰を下ろした。
するとまもなく悟空とピッコロがやってきた。

―――死闘の末―――

ラディッツ退治に成功はしたが、孫悟空というかけがえのないヒーローを喪った。
ピッコロは悟飯を預かり、来るべき一年後に備えることにした。
しかし、ピッコロにはひとつ気になることがあった。
ラディッツの元へ向かう途中、ラディッツの他にもうひとつ、短い時間ではあったが
巨大な気があったことを。
悟空も同様に察知したが、気のせいだろうと言ってその場は治まった。
が、やはり気になる。
探し出して協力を仰ぐべきか―――
ピッコロ大魔王ともあろうものが得体の知れないもに近づき頼み事をしようなど
堕ちたものだ、とピッコロは苦笑し、その存在を忘れることにした。
506鬼ヤムチャ:09/06/28 22:05 ID:GDMxv4uE
其の十八

天界には悟空の盟友たちが集っていたがヤムチャの姿はなかった。
神様から以前ヤムチャが修行に来たことを告げられたが、全員そのことはヤジロベーから
聞かされていたので驚かなかった。
ヤムチャは相変わらず誰の前にも姿を見せない。
ラディッツの遺したスカウターで捜索してみるものの、ヤムチャは完全に気を消している。
しかし、神様だけは知っていた。ヤムチャのその真意を。
「精神と時の部屋」に耐え切った漢が得た力。
全てを凌駕するその力を悪用することされることを畏れ隠遁する決意をしたその心意気。
ヤムチャこそがナンバーワンである。
あの世で修行し帰還する予定の悟空との対戦を天下一武道会で見てみたいものだ。
神様はそのことを想像するだけで少年のように心が躍るのであった。

507鬼ヤムチャ:09/06/28 22:07 ID:GDMxv4uE
其の十九
そして、神様は一行を「精神と時の部屋」へ案内した。

しかし、全員一ヶ月もたなかった。

神様は諦めて直々に稽古をつけることにした。
仲間たちはヤムチャが「精神と時の部屋」に入ったことにより一気に老け込んでしまった
ので姿を消したのだろうと噂した。

一年後

ついに二人のサイヤ人が地球に降り立った。
髪を逆立てた小男とスキンヘッドの大男。
大男は挨拶代わりに街をひとつ消し去った。
二人は悟空を待ち受けるべく戦闘に適した場所へと移って行った。

508鬼ヤムチャ:09/06/28 22:08 ID:GDMxv4uE
其の二十

サイヤ人の元へ次々と到着するZ戦士達。しかし、ヤムチャは来ない。
大きい方のサイヤ人は一行を見渡すとピッコロを指差し、
「おい、ベジータ。あいつナメック星人だぜ」
相方へ言葉を投げかけた。
「なるほど。ということは貴様がヤムチャだな」
ベジータは一年前にスカウターで傍受していた内容を思い出しピッコロを睨んだ。
「何のことを言っているのかさっぱりわからんな」
ナメック星人であるという指摘よりもヤムチャに間違われたことに怒りを隠せないピッコロ。
ナメック星人の説明をベジータから受けても、Z戦士達はそのことより何故ベジータと
いう男はヤムチャのことを知っているのか?その方に驚きを隠せなかった。
Z戦士達のどよめきをよそに大男のサイヤ人は小瓶を取り出すと中身の種を地面に埋めた。
509Classical名無しさん:09/06/29 02:34 ID:Ivdz8eH.
鬼ヤムチャさん面白いです
510鬼ヤムチャ:09/06/29 21:01 ID:KRuE7u0c
其の二十一

「この星の土は良質だから強えーサイバイマンができるぜ」
大男は種を6粒埋め終えるとビンの液体を土に撒いた。
すると、6体の生物が次々と土からかえった。
大男曰く、パワーだけならラディッツに匹敵する能力だとか。
最初に天津飯がサイバイマンと対決し、実力者の名にたがわぬ圧倒的な差で
サイバイマンを1体撃破した。

その時であった。

ひとすじの光が遠方よりこちらへ向かってきた。
「ヤムチャさん!」
クリリンは思わず裏返った声を発した。
511鬼ヤムチャ:09/06/29 21:02 ID:KRuE7u0c
其の二十二

「みんなお揃いで何をやっているんだ?」
ヤムチャは現場へ着陸するとさわやかな笑顔をZ戦士達に振りまいた。
「何をって・・・今までどこにいたんですか!みんな心配してたんですよ!」
クリリンは久しぶりの再開を喜びヤムチャに抱擁した。
「すまなかったなクリリン。邪悪な気を感じたんで来てみたんだが、どうやら
 非常事態のようだな」
「貴様がヤムチャか。へへへ、ちょうどいいや。俺が相手してやるぜ」
大男は自分の顔を両手でパンパンと叩き気合を入れるとヤムチャに向かって歩き始めた。
「待てナッパ!そいつを侮るな。まずはサイバイマンに戦わせろ!」
ベジータは大男を制止した。
「けどベジータよぅ・・・たしかあいつの戦闘力は5000近かったじゃねぇか。
 サイバイマンじゃ勝てねぇだろ」
ナッパは歩みを止めてベジータに振り返った。
512鬼ヤムチャ:09/06/29 21:03 ID:KRuE7u0c
其の二十三

「地球人は戦闘力を自在に変化させることができる。あの時の数値が奴の
 限界かどうかもまだわからん。まずは様子見だ」
「・・・ちぇっ」
ナッパは軽く舌打ちをすると、あごでしゃくってサイバイマンに指示を出した。

「何が何だかわからんが、奴らは相当貴様を警戒しているようだな」
ベジータとナッパのやり取りを見たピッコロはヤムチャを得体の知れないもののように感じた。
「何でだろうな・・・ああ!あの鎧・・・あの時の奴と同じ・・・」
ヤムチャは全てを悟るとサイバイマンの方へ歩き出した。
と同時にヤムチャの独り言を聞いたピッコロも全てを理解した。
「あの人・・・前にどこかで見かけたような・・・」
悟飯は記憶の糸をたどり寄せている。しかし思い出すことはできなかった。
513鬼ヤムチャ:09/06/29 21:05 ID:KRuE7u0c
「懲りずにまた来たようだな。いいだろう、少しだけ稽古をつけて差し上げよう」
ヤムチャは気を開放し亀仙流の構えをとった。
周辺で野草をつまんでいた小鳥たちはヤムチャの気に気圧されるように
一斉にその場を飛び立った。
それを合図にサイバイマンの一体が猛然とヤムチャに襲いかかる。
ヤムチャは涼しい顔でサイバイマンの攻撃をかわすと、溜めの少ないかめはめ波を
放ち一蹴した。
かめはめ波をまともに喰らったサイバイマンは、勢いよく吹き飛ばされると仰向けに
倒れ込んだ。
「ヤムチャさん凄い!」
勝利を我が事のように喜ぶ餃子。クリリンとハイタッチをした。
「さぁ、次にお仕置きして欲しいのは誰かな?」
ヤムチャは残りのサイバイマン4体に向かってにじりよる。

すると―――

倒されたはずのサイバイマンが急に起き上がり猛スピードでヤムチャの背後に抱きついた。

514鬼ヤムチャ:09/06/29 21:06 ID:KRuE7u0c
其の二十四

「なんだとっ!」
不意を喰らったヤムチャであったが、すぐに冷静を取り戻し
「おイタがすぎるぜ」
サイバイマンを振りほどこうとした時であった。
「何をボケっとしてんだ!お前たちもやれ!」
ナッパは大声を張り上げて4体のサイバイマンに指図した。
すると、残りのサイバイマンたちは一瞬躊躇したものの一斉にヤムチャに飛びついた。
「まずい!」
ピッコロが叫ぶと同時に5体のサイバイマンは大爆発をした。

大量の砂埃が宙を舞う。

Z戦士達は唇を噛みしめながら砂埃の舞う一点を凝視していた。

515鬼ヤムチャ:09/06/29 21:10 ID:KRuE7u0c
其の二十五

爽やかな春風が砂埃を彼方へ運ぶと、そこにはくの字になって倒れているヤムチャの
姿があった。
「くそっ!」
悔しさのあまり血が出るほど拳を握り締める天津飯。
「自爆に巻き込まれる奴は・・・“不運”(ハードラック)と“踊”(ダンス)っちまったのさ」
ベジータは起き上がる気配のないヤムチャを不遜な笑みを浮かべて見ている。
「これでカカロットが来るまで存分に遊べるってもんだ」
舌なめずりをするナッパ。
「ヤムチャさん!」
クリリンは一心不乱にヤムチャの元に駆け寄り、心音と脈を確認した。
「・・・・・・生きてる」
「何だとっ!」
クリリンの一言に唖然とする一同。
「気絶しているだけみたいだ」
「野郎・・・俺がとどめを刺してやる!」
いきり立ったナッパはヤムチャに飛びかかろうとした。
516Classical名無しさん:09/06/29 22:28 ID:0VWPX5Hg
ヤムチャのことだからどうせ……
そんな風に思いつつもおもしろいと思っちまう。
517鬼ヤムチャ:09/06/29 23:06 ID:KRuE7u0c
其の二十六

「そいつはほっておけナッパ!」
気の短い相方に若干苛立ちを覚えながらベジータは叫んだ。
「何故だベジータ!」
「奴が目覚めた時に死んでも消えることのない恐怖を見せてやるのさ」
「・・・へへっ、アンタも相当ワルだぜ」
「そういうことだ」
ベジータとナッパは顔を見合わせると下衆な笑い声を発した。

ヤムチャが気絶している間に餃子と天津飯が絶命した。
結果としてヤムチャは己の力を過信し油断したことによって救えたはずの命を救うことが
できなかった。

518鬼ヤムチャ:09/06/29 23:11 ID:KRuE7u0c
其の二十七

ヤムチャは正気を取り戻すとひとつのことに気がついた。
―――あれ?そういえば悟空がいないぞ
今まさにナッパとの戦闘を開始しようとしていたピッコロ、クリリン、悟飯の
三人に恐る恐る近づくヤムチャ。
「オホン!・・・さっきはすまなかったな、みんな。でも、もうあんなヘマは
 しないぞ!」
ヤムチャは咳払いをし、照れを隠しながら威勢よく復活宣言をした。
「フン!貴様がしっかりしていれば餃子と天津飯だけでなく孫悟空も無駄死にせずに済んだものを」
ピッコロは軽蔑の目を遠慮なしにヤムチャへ向けた。
その発言を不得要領に聞き入るクリリンと悟飯。
「意外に早いお目覚めのようだな」
4人のやり取りを確認するとベジータは、
「ヤムチャ!貴様にも真の恐怖を味わせてやろう!」
ベジータはナッパとピッコロ達より少し離れた場所へヤムチャを誘導した。

519鬼ヤムチャ:09/06/29 23:14 ID:KRuE7u0c
其の二十八

「お前にヤムチャ呼ばわりされる筋合いはないぜ」
これから踏み入れる未知の領域を前に興奮を極めたのだろう、ヤムチャは見当違いの
発言を対峙するベジータに放った。
それをさらりと無視してベジータは
「カカロットが来るまでだ。たっぷりかわいがってやるぞ」
「おい!そのカカ何とかって奴は何者なんだ?」
「ん?・・・貴様、仲間から何も聞いていないな?まぁ、何者か知る前に貴様は
息絶えるわけだがな」
「どちらが息絶えるかはやってみなければわからんさ」
ヤムチャはぼろぼろになっている胴着を引きちぎると、持てる力を全て開放した。
520鬼ヤムチャ:09/06/29 23:15 ID:KRuE7u0c
其の二十九

これが神をも超越した漢の力か―――大地は震えおののき空間は熱気のあまり歪んでいる
ようにみえる。その圧倒的な威圧感は少し離れたピッコロ達にもひしひしと伝わった。
「戦闘力14800か。少しは楽しめそうだな」
ヤムチャの戦闘力を測り終えると、ベジータは乱暴にスカウターを投げ捨てた。

―――そして戦いが始まった。―――

この戦いが一人の女性をめぐる恋の戦いの幕開けでもあったことなど当時のふたりには
知る由もなかった。
521鬼ヤムチャ:09/06/29 23:16 ID:KRuE7u0c
其の三十

両者の攻防が文字通り火花を散らす。しかし、戦闘力において上回るベジータが次第に
リードを広げていった。
「はぁはぁ・・・何ということだ・・・「精神と時の部屋」で俺は遥かにウデを上げたというのに」
ヤムチャは息を切らせ己を凌ぐ実力者を前に悔しさをあらわにした。
「さて、そろそろお仕舞いにするか」
疲労を一切見せていないベジータは右手に力を込めてエネルギー波を打つ構えをとった。
「・・・しかたがない。とっておきの“アレ”を使うか」
ヤムチャも右手に気を集中させ繰気弾を作った。

「死ね!」
「繰気弾!」

青春の血潮とでも呼ぶべきふたつのエネルギーの塊が激しい勢いで衝突した。

522鬼ヤムチャ:09/06/29 23:20 ID:KRuE7u0c
其の三十一

ふたつのエネルギーは相撲のように力比べをしたが、やがてヤムチャはベジータのエネルギー波に
力負けしてしまうことを悟ると、繰気弾を素早く上空へ操りエネルギー波を避けようとした。
しかし、エネルギー波のスピードはヤムチャに近づくにつれて加速し、まもなく
ヤムチャを直撃。ピッコロ達のいる方へ弾き飛ばされた。

「ヤムチャさん!」
ヤムチャの体はちょうどクリリンの前で横たわった。その姿を見て今度こそヤムチャは
終わった、とクリリンは直感した。
「向こうは終わったようだぜ」
厄介者が片付いたことに嬉しい様子のナッパは一気呵成に出た。
523鬼ヤムチャ:09/06/30 00:25 ID:nbeJ6dAk
其の三十二

その後―――

ピッコロが命を落とし、絶体絶命かと思われたZ戦士達であったが悟空が到着。
紆余曲折あったものの悟空はナッパとベジータを撃退した。

ピッコロが死亡したことにより、神様とドラゴンボールも失ってしまったZ戦士達。
しかし、ナメック星のことを思い出した一同はミスター・ポポとブリーフ博士の尽力で
ナメック星へ行くという一縷の望みを手にした。

まず、クリリン、悟飯、ブルマの三人が旅立った。
ベジータとの戦いで重症を負った悟空は全快した後に追うこととなった。
524鬼ヤムチャ:09/06/30 00:26 ID:nbeJ6dAk
其の三十三

一方、我らがニューヒーローヤムチャは―――

ベジータとの死闘で一命は取り留めたものの、恐怖によるものなのだろうか、
記憶喪失にかかっていた。
しかし、全てを忘れたわけではなく、修行を決意したこと、「精神と時の部屋」でのこと、
サイヤ人達との決戦という一番重要な出来事が頭の中からすっぽりと抜け落ちていた。
ヤムチャの強大な力はナメック星へ行くには絶対に必要だ、とクリリンと悟飯は
必死に説得したが、ヤムチャはそれを単なるおだてであり、自分が同行しても
足を引っ張るだけだ、留守を預かる方が適任だとして固辞した。
そう、ヤムチャは己の実力が前の天下一武道会の時のままであると思い込んでいるのだ。
ヤムチャは時折この4年の月日を細部にいたるまで思い出そうと記憶の底をまさぐってみる。
が、そうすると決まってベジータの影がヤムチャに襲い掛かり脱力する。
その度にヤムチャは言い知れぬ不安と隠遁していた期間を埋めるかの如くピンク街へと
出向き女体をむさぼるのであった。

525鬼ヤムチャ:09/06/30 00:26 ID:nbeJ6dAk
其の三十四

悟空がナメック星へ旅立った翌日、ヤムチャは行きつけの風俗店でお気に入りの嬢から
ある話を耳にした。
「それでね、廃墟になったその街にはまん丸の乗り物があって・・・」
「ふ〜ん、そんなのがあるんだ」
行為を終え、服に着替えているヤムチャは気のない返事をしている。
「そうだ!その写真が載ってる雑誌があったっけ」
嬢はスキャンティ姿で立ち上がると奥の棚から一冊の雑誌を持ってきた。
「ね?消えた街に不思議な乗り物!これは宇宙人が地球を・・・」
ページを開き記事に見入るふたり。
呆然とその写真を見つめていたヤムチャだったが、ふと脳髄の奥から電撃が一閃
ほとばしる感覚が走った。
「・・・俺も行かなきゃな」
「え?イク?もう一回やるの?」
「また会えるといいな」
ヤムチャは嬢を軽く抱擁すると足早に店を出て行った。

「鬼ヤムチャ」サイヤ人編完
526Classical名無しさん:09/06/30 02:12 ID:kqU4WmN2
スキャンティってwww
あんた歳いくつだよw
527ダークオ:09/06/30 06:34 ID:eBPql3io
期待どおりおもろい!展開も速いしいいできでした。次回作も期待します!
528Classical名無しさん:09/06/30 11:06 ID:6x9z6pxQ
ラストのヤムチャかっこよかった
乙です!
529Classical名無しさん:09/06/30 20:10 ID:nbeJ6dAk
全国のヤムチャファンの皆様こんばんは。
「鬼ヤムチャ」を投稿させていただいた者です。
何の気なしに始めたのですが、やりだしたら止まらなくなりました。
続きを書いたのでお付き合いよろしく。
530ノー・エクスペクテーション:09/06/30 20:12 ID:nbeJ6dAk
其の一

ナッパの乗ってきた宇宙船を利用しナメック星へ向かうヤムチャ。
長い時間座り続けていたのでエコノミー症候群になってしまった。
カリンから貰った仙豆は2粒あったが治療の為に1つ消費した。

―――ようやくたどり着いた―――

宇宙船を降りるとそこは雪国であった。昼の空が黒くなった。
気を探るが全く気配がないので、場所を間違えたのか?とあせり始めたその時だった。

「今さらここへ来てなんのつもりじゃ」
仁王立ちする一人の初老の男がヤムチャを睨みつけていた。

531ノー・エクスペクテーション:09/06/30 20:12 ID:nbeJ6dAk
其の二

「すみません。俺はヤムチャと言います。ここはナメック星ですか?」
「ん?違うが・・・君はフリーザ一味ではないのか?」
「フリーザ?いいえ違います」
「そうか・・・あの宇宙船を見て、てっきり奴らかと・・・」
ヤムチャは老人から、この星がフリーザという悪者に狙われていたこと、
フリーザ軍との激しい戦争の末に文明も環境も滅んでしまったが、一人生き残り
たまに迷ってやってくる旅人相手に商売していることを語った。

「というわけで・・・ここはよろず屋じゃ。何の用かの?」

→買いにきた
 売りにきた
 やめる
532ノー・エクスペクテーション:09/06/30 20:14 ID:nbeJ6dAk
其の三
ヤムチャはせっかくなので並べられた商品を見定め、

→やくそう 8G(ゼニー)
 ひのきのぼう 5G(ゼニー)
 はんにゃのめん 3G(ゼニー)
 さとりのしょ 100000G(ゼニー)

「さとりのしょ」を手に持ったが、
「残念じゃがお金が足りないようじゃの。他に用はあるかね?」
しかたがないので、ひのきのぼうとはんにゃのめんを購入した。

533ノー・エクスペクテーション
其の四

よろず屋に宇宙船の知識が多少あったので(どのようにして覚えたのかは不明)、
行き先を登録しヤムチャは一路ナメック星へ向かった。

―――今度こそたどり着いた―――

邪悪で強大な気を感じる。ベジータか?いや、それはベジータを遥かに上回る。
嫌な予感を感じながらも気を消してそれを避けるようにドラゴンレーダーが反応する方へ向かった。

そこには大きな宇宙船が留まっていた。外に二人の人間がたむろしている。
一人は見覚えがないが、もう一人はヤムチャが最もよく知る人物だった。
「待たせたな、悟空!」
ヤムチャは悟空の元へ歩み寄ると再開を喜び、握手を求めようとすっと右手を差し出した。
すると、悟空は握手をかわしヤムチャの頬を思い切りひっぱたいた。