漫画キャラバトルロワイアルPart11

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1Classical名無しさん
このスレは漫画キャラバトルロワイアルのスレです。
SSの投下も、ここで行ってください 、支援はばいばい猿があるので多めに

前スレ
漫画キャラバトルロワイアル Part10
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1199155761/l50
【外部リンク】
漫画キャラバトルロワイアル掲示板(したらば)
http://jbbs.livedoor.jp/otaku/9318/
まとめサイト
http://www32.atwiki.jp/comicroyale
漫画キャラバトルロワイアル毒吐き
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/8882/1183133225/l50

1/4 【アカギ】○赤木しげる/●市川/●平山幸雄/●鷲巣巌
1/2 【覚悟のススメ】○葉隠覚悟/●葉隠散
1/3 【仮面ライダーSPIRITS】 ●本郷猛/●三影英介/○村雨良
2/4 【からくりサーカス】○加藤鳴海/○才賀エレオノール(しろがね)/●才賀勝/●白金(フェイスレス指令)
1/4 【銀魂】 ●坂田銀時/○神楽/●桂小太郎/●志村新八
2/4 【グラップラー刃牙】○愚地独歩/●花山薫/●範馬刃牙/○範馬勇次郎
3/4 【ジョジョの奇妙な冒険 】○吉良吉影/●空条承太郎/○ジョセフ・ジョースター/○DIO
3/4 【スクライド】●カズマ/○シェリス・アジャーニ/○マーティン・ジグマール/○劉鳳
1/4 【ゼロの使い魔】○キュルケ(略)/●タバサ/●平賀才人/●ルイズ(略)
3/4 【ハヤテのごとく】○綾崎ハヤテ/○桂ヒナギク/○三千院ナギ/●マリア
1/3 【HELLSING】○アーカード/●アレクサンド・アンデルセン/●セラス・ヴィクトリア
3/4 【北斗の拳】○アミバ/○ケンシロウ/●ジャギ/○ラオウ
2/4 【武装錬金】●防人衛/○蝶野攻爵/○津村斗貴子/●武藤カズキ
2/4 【漫画版バトルロワイアル】○川田章吾/●桐山和雄/●杉村弘樹/○三村信史
2/4 【名探偵コナン】 ○江戸川コナン/●灰原哀/○服部平次/●毛利小五郎
3/4 【らき☆すた】○泉こなた/●高良みゆき/○柊かがみ/○柊つかさ
計 31人 / 60人
2Classical名無しさん:08/01/17 00:40 ID:y9lzgfss
【NGについて】
・修正(NG)要望は、名前欄か一行目にはっきりとその旨を記述してください。
・協議となった場面は協議が終わるまで凍結とする。凍結中はその場面を進行させることはできない。
・どんなに長引いても48時間以内に結論を出す。
『投稿した話を取り消す場合は、派生する話が発生する前に』

NG協議の対象となる基準
1.ストーリーの体をなしていない文章。(あまりにも酷い駄文等)
2.原作設定からみて明らかに有り得ない展開で、それがストーリーに大きく影響を与えてしまっている場合。
3.前のストーリーとの間で重大な矛盾が生じてしまっている場合(死んだキャラが普通に登場している等)
4.イベントルールに違反してしまっている場合。
5.荒し目的の投稿。
6.時間の進み方が異常。
7.雑談スレで決められた事柄に違反している(凍結中パートを勝手に動かす等)
8.その他、イベントのバランスを崩してしまう可能性のある内容。

上記の基準を満たしていない訴えは門前払いとします。
例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×

例.「このキャラがここで死ぬのは理不尽だ」「この後の展開を俺なりに考えていたのに」など
  ストーリーに関係ない細かい部分の揚げ足取りも×
3Classical名無しさん:08/01/17 00:43 ID:7pScmoNQ
・批判も意見の一つです。臆せずに言いましょう。
 ただし、上記の修正要望要件を満たしていない場合は
 修正してほしいと主張しても、実際に修正される可能性は0だと思って下さい。
・修正要求ではない批判意見などを元にSSを修正するかどうかは書き手の自由です。
・誤字などは本スレで指摘してかまいませんが、内容議論については「問題議論用スレ」で行いましょう。
・「問題議論用スレ」は毒吐きではありません。議論に際しては、冷静に言葉を選んで客観的な意見を述べましょう。
・内容について本スレで議論する人がいたら、「問題議論用スレ」へ誘導しましょう。
・修正議論を見て修正するかどうかは書き手の自由ですが、原則、書き手は本スレで出された修正案以外には対応する必要はありません。

・展開予想、ネガティブな感想、主観的な意見は「毒吐きスレ」でお願いします。毒は溜め込まずに発散しましょう。
・議論スレと正式に分離したことで毒吐きでの感想は過激化している恐れがあります。見る必要性もないので、書き手は見ないことを推奨します。
4Classical名無しさん:08/01/17 00:43 ID:7pScmoNQ
【能力制限】

◆禁止
・アーカードの零号開放
・武藤カズキのヴィクター化
・吉良吉影の“第三の爆弾バイツァ・ダスト”
・ギャランドゥ(ジグマールのアルター)の自立行動(可否は議論中?)

◆威力制限
・ゼロ勢の魔法
・空条承太郎、DIOの時止め
・スクライドキャラのアルター(発動は問題なし、支給品のアルター化はNG)
・アーカードの吸血鬼としての能力
・仮面ライダーの戦闘能力
・シルバースキンの防御力
・北斗神拳の経絡秘孔の効果
・激戦の再生力、再生条件

◆やや制限?
・グラップラー刃牙勢、北斗の拳勢、仮面ライダー勢、覚悟のススメ勢の肉体的戦闘力
・ジョジョのスタンド(攻撃力が減少、一般人でも視認や接触が可能)
・からくりサーカス勢の解体能力

◆恐らく問題なし
・銀魂キャラ、戦闘経験キャラなどの、「一般人よりは強い」レベルのキャラの肉体的戦闘力

【支給品について】
・動物、使い魔、自動人形などの自立行動が可能な支給品は禁止です。(自立行動を行わないならば意思持ちでも可)
・麻薬、惚れ薬、石仮面などの人格を改変するおそれのある支給品や水の精霊の指輪、アヌビス神などの人格乗っ取り支給品は禁止です。
・核金によって発現する武装錬金は、原作の持ち主の武装錬金に固定されています。
5Classical名無しさん:08/01/17 00:44 ID:y9lzgfss
【基本ルール】
 全員で殺し合いをしてもらい、最後まで生き残った一人が勝者となる。
 勝者のみ元の世界に帰ることができる。
 ゲームに参加するプレイヤー間でのやりとりに反則はない。
 プレイヤー全員が死亡した場合、ゲームオーバー(勝者なし)となる。

【スタート時の持ち物】
 プレイヤーがあらかじめ所有していた武器、装備品、所持品は全て没収。
 ただし、義手など体と一体化している武器、装置はその限りではない。
 また、衣服とポケットに入るくらいの雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される。
 ゲーム開始直前にプレイヤーは開催側から以下の物を支給され、「デイパック」にまとめられている。
 「地図」「コンパス」「筆記用具」「水と食料」「名簿」「時計」「ランタン」「ランダムアイテム」
 「デイパック」→他の荷物を運ぶための小さいリュック。詳しくは別項参照。
 「地図」 → MAP-Cのあの図と、禁止エリアを判別するための境界線と座標が記されている。
 「コンパス」 → 安っぽい普通のコンパス。東西南北がわかる。
 「筆記用具」 → 普通の鉛筆と紙。
 「水と食料」 → 通常の成人男性で二日分。
 「名簿」→全ての参加キャラの名前のみが羅列されている。写真はなし。
 「時計」 → 普通の時計。時刻がわかる。開催者側が指定する時刻はこの時計で確認する。
 「ランタン」 → 暗闇を照らすことができる。
 「ランダムアイテム」 → 何かのアイテムが1〜3個入っている。内容はランダム
6Classical名無しさん:08/01/17 00:45 ID:y9lzgfss
書き手の心得その1(心構え)
・この物語はリレー小説です。 みんなでひとつの物語をつくっている、ということを意識しましょう。一人で先走らないように。
・知らないキャラを書くときは、綿密な下調べをしてください。
 二次創作で口調や言動に違和感を感じるのは致命的です。
・みんなの迷惑にならないように、連投規制にひっかかりそうであればしたらばの一時投下スレにうpしてください。
・自信がなかったら先に一時投下スレにうpしてもかまいません。 爆弾でも本スレにうpされた時より楽です。
・本スレにUPされてない一時投下スレや没スレの作品は、続きを書かないようにしてください。
・本スレにUPされた作品は、原則的に修正は禁止です。うpする前に推敲してください。
   ただしちょっとした誤字などはwikiに収録されてからの修正が認められています。
   その際はかならずしたらばの修正報告スレに修正点を書き込みましょう。
・巧い文章はではなく、キャラへの愛情と物語への情熱をもって、自分のもてる力すべてをふり絞って書け!
・叩かれても泣かない。
・来るのが辛いだろうけど、ものいいがついたらできる限り顔を出す事。
 作品を撤回するときは自分でトリップをつけて本スレに書き込み、作品をNGにしましょう。
7Classical名無しさん:08/01/17 00:45 ID:y9lzgfss
書き手の心得その2(実際に書いてみる)
・…を使うのが基本です。・・・や...はお勧めしません。また、リズムを崩すので多用は禁物。
・適切なところに句読点をうちましょう。特に文末は油断しているとつけわすれが多いです。
 ただし、かぎかっこ「 」の文末にはつけなくてよいようです。
・適切なところで改行をしましょう。
 改行のしすぎは文のリズムを崩しますが、ないと読みづらかったり、煩雑な印象を与えます。
・かぎかっこ「 」などの間は、二行目、三行目など、冒頭にスペースをあけてください。
・人物背景はできるだけ把握しておく事。
・過去ログ、マップはできるだけよんでおくこと。
 特に自分の書くキャラの位置、周辺の情報は絶対にチェックしてください。
・一人称と三人称は区別してください。
・ご都合主義にならないよう配慮してください。露骨にやられると萎えます。
・「なぜ、どうしてこうなったのか」をはっきりとさせましょう。
・状況はきちんと描写することが大切です。また、会話の連続は控えたほうが吉。
 ひとつの基準として、内容の多い会話は3つ以上連続させないなど。
・フラグは大事にする事。キャラの持ち味を殺さないように。ベタすぎる展開は避けてください。
・ライトノベルのような萌え要素などは両刃の剣。
・位置は誰にでもわかるよう、明確に書きましょう。
8Classical名無しさん:08/01/17 00:47 ID:y9lzgfss
書き手の心得3(一歩踏み込んでみる)
・経過時間はできるだけ『多め』に見ておきましょう。
 自分では駆け足すれば間に合うと思っても、他の人が納得してくれるとは限りません。
 また、ギリギリ進行が何度も続くと、辻褄合わせが大変になってしまいます。
・キャラクターの回復スピードを早めすぎないようにしましょう。
・戦闘以外で、出番が多いキャラを何度も動かすのは、できるだけ控えましょう。
 あまり同じキャラばかり動き続けていると、読み手もお腹いっぱいな気分になってきます。
 それに出番の少ないキャラ達が、あなたの愛の手を待っています。
・キャラの現在地や時間軸、凍結中のパートなど、スレには色々な情報があります。
・『展開のための展開』はNG
 キャラクターはチェスの駒ではありません、各々の思考や移動経路などをしっかりと考えてあげてください。
・書きあがったら、投下前に一度しっかり見直してみましょう。
 誤字脱字をぐっと減らせるし、話の問題点や矛盾点を見つけることができます。
 一時間以上(理想は半日以上)間を空けてから見返すと一層効果的。
 紙に印刷するなど、媒体を変えるのも有効
 携帯からPCに変えるだけでも違います
9Classical名無しさん:08/01/17 00:47 ID:7pScmoNQ
【読み手の心得】
・好きなキャラがピンチになっても騒がない、愚痴らない。
・好きなキャラが死んでも泣かない、絡まない。
・荒らしは透明あぼーん推奨。
・批判意見に対する過度な擁護は、事態を泥沼化させる元です。
 同じ意見に基づいた擁護レスを見つけたら、書き込むのを止めましょう。
・擁護レスに対する噛み付きは、事態を泥沼化させる元です。
 修正要望を満たしていない場合、自分の意見を押し通そうとするのは止めましょう。
・嫌な気分になったら、ドラえもん(クレヨンしんちゃんも可)を見てマターリしてください。
・「空気嫁」は、言っている本人が一番空気を読めていない諸刃の剣。玄人でもお勧めしません。
・「フラグ潰し」はNGワード。2chのリレー小説に完璧なクオリティなんてものは存在しません。
 やり場のない気持ちや怒りをぶつける前に、TVを付けてラジオ体操でもしてみましょう。
 冷たい牛乳を飲んでカルシウムを摂取したり、一旦眠ったりするのも効果的です。
・感想は書き手の心の糧です。指摘は書き手の腕の研ぎ石です。
 丁寧な感想や鋭い指摘は、書き手のモチベーションを上げ、引いては作品の質の向上に繋がります。
・ロワスレの繁栄や良作を望むなら、書き手のモチベーションを下げるような行動は極力慎みましょう。

【議論の時の心得】
・作品の指摘をする場合は相手を煽らないで冷静に気になったところを述べましょう。
・ただし、キャラが被ったりした場合のフォロー&指摘はしてやって下さい。
・議論が紛糾すると、新作や感想があっても投下しづらくなってしまいます。
 意見が纏まらずに議論が長引くようならば、したらばにスレを立ててそちらで話し合って下さい。
・『問題意識の暴走の先にあるものは、自分と相容れない意見を「悪」と決め付け、
  強制的に排除しようとする「狂気」です。気をつけましょう』
・これはリレー小説です、一人で話を進める事だけは止めましょう。
10Classical名無しさん:08/01/17 00:48 ID:7pScmoNQ
【禁止事項】
・一度死亡が確定したキャラの復活
・大勢の参加者の動きを制限し過ぎる行動を取らせる
 程度によっては雑談スレで審議の対象。
・時間軸を遡った話の投下
 例えば話と話の間にキャラの位置等の状態が突然変わっている。
 この矛盾を解決する為に、他人に辻褄合わせとして空白時間の描写を依頼するのは禁止。
 こうした時間軸等の矛盾が発生しないよう初めから注意する。
・話の丸投げ
 後から修正する事を念頭に置き、はじめから適当な話の骨子だけを投下する事等。
 特別な事情があった場合を除き、悪質な場合は審議の後破棄。

【予約に関してのルール】

・したらばの予約スレにてトリップ付で予約を行います
・初トリップでの予約作品の投下の場合は予約必須(5日)
 ただし、予約せずに投下できなら、別に初トリでもかまわない

・予約時間延長(最大3日)を申請する場合はその旨を雑談スレで報告
・申請する権利を持つのは「過去に3作以上の作品が”採用された”」書き手
・修正期間は審議結果の修正要求から最大三日(ただし、議論による反論も可とする)
・予約時にはトリップ必須です。また、トリップは本人確認の唯一の手段となります。トリップが漏れた場合は本人の責任です。
・予約破棄は、必ず予約スレでも行ってください。

【MAP】
http://www32.atwiki.jp/comicroyale/pages/34.html
http://www32.atwiki.jp/comicroyale/pages/330.html (登場人物の位置あり)
11 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 00:49 ID:y9lzgfss
テンプレ貼りを手伝ってくれたか、ありがとうございます。
つづいて、覚悟、ヒナギク、川田、つかさ、三村を投下します。
夜分ですが、願わくば支援を賜りたく。
12Classical名無しさん:08/01/17 00:50 ID:ytcaBXxs
       
13Classical名無しさん:08/01/17 00:50 ID:cj..Ai..
しえっ
14Classical名無しさん:08/01/17 00:50 ID:Mbh8r3ko
>>1乙! テンプレの人も乙! 支援する俺様乙!
15 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 00:50 ID:y9lzgfss
「へぇ〜、劣化ウランなんだ、すごいねぇ」
 しげしげと覚悟の持つハルコンネンを見ながらつかさが言い、
「うむ。他に爆裂鉄鋼焼夷弾もある」
 謹厳な調子で覚悟が答えた。
 他愛もない、という形容詞がこれほど似合う会話もないであろう。
(本当は、しゃべりながら移動すべきじゃねえんだがな)
 川田は、口の端に苦笑を浮かべた。
 無人の街で、人の声はよく響く。それが女の子の声ならなおさらだ。
 とはいえ――
(気持ちは分かるから、どうにもな)
 喪失の悲しみは、簡単に消えるものではない。
それでも、紛らわすことはできる。
我ながら甘いとは思うが、覚悟の心の痛みを少しでも和らげたいというつかさの心情が分かるだけに、
 止めにくい。
(それにしても役者には絶望的に向いてないな、つかささんは)
 あんなに心配そうに眉を寄せて、何度も表情をうかがっていたりしていては、バレバレ――
「……すまないな、つかささん。どうやら、君にも心配をかけてしまったようだ」

 ――やっぱりな。

 心の中で嘆息をもらす川田の視線の先、
「え!? べ、別に私は……。気をつかったりとかそういうんじゃ……」
 つかさが、焦ったように口の中でもごもご言っている。
「俺はもう大丈夫だ。零式は愛憎怨怒を滅殺する技。
そして、ヒナギクさん、川田、そしてつかささんの後方支援。
十分だ。俺には十分すぎる」
「そ、そんな……」
 つかさは、ほんのりと頬を染めた。
 と、その髪をいじっていた手が止まる。
「あっ……」
 つかさは、顔を上げた。
16 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 00:51 ID:y9lzgfss
「そういえばさっき、覚悟君。『つかささん』って言ったよね?」
「……すまなかった。謹んで訂正をさせてもらう」
 ヒナギクのことを名前で呼ばなければと心がけていたせいで、つかさも名前で呼んでしまった。
 覚悟は、迂闊な己を戒めた。
 ところが、
「ううん!」
 つかさが、ぶんぶんと首をふり、
「『つかささん』でいいよ。そっちの方が『友達』って気がするもん」
 つかさが嬉しそうに頷く。
 ヒナギクの時と同じく、覚悟には、呼び方にどういう違いがあるのか分からない。
 だがそんな疑問など、つかさの笑顔の前では些細なことだと、素直に思う。
(友達、か)
 級友。学友。友。
 当たり前だが、何度も聞いた事がある。覚悟とて使ったことがないわけではない。
 それなのに何故か、初めて聞いた言葉のような気がした。
 
 ――俺の人生に愛はいらない。

 幾千幾万の人を殺めた悪鬼の子孫。
 殺人の技を極め、零式鉄球を埋め込まれたこの身は兵器。
 忌まわしい、恐ろしいと、誰もが思うだろう。
 それでもよかった。かまわなかった。

 ――心を繋いだ鎧があるから。
 
 零さえいれば十分だった――否。十分と思っていた。
 葉隠一族の男として、牙なき人を守るために自分の全てを捧げるのみ。
 そう、思っていた。
 だが今の自分は、自分の胸に宿るこの温もりを、愛おしいと感じている。
 ふと、自分が微笑んでいることに、覚悟は気付く。
 そういえばこの場所に連れてこられてから、自分は何度も笑顔らしきものを浮かべているように思う。
17 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 00:52 ID:y9lzgfss
 多くの人命が失われている中で不謹慎を通り越して軽薄の極みだとは思う。
 だが、新八やルイズといた時、そして今も自分は、心に柔らかなものを感じている。
 気付かれないように注意を払いながら、覚悟は、川田、つかさ、そして最後にヒナギクを
 順繰りに見た。
 心の痛みが、ルイズ達の死を知ったときの張り裂けんばかりのものに比べ、
 弱まっているのは仲間達の、そしてあの時、情けなくも涙を流してしまった自分を包んでくれた、彼女のおかげだ。
 自分の足は、間違いなく彼女達にも支えられている。
(父上、私は果報者です)
 覚悟は心の中でそう呟いた。



(――気付かれてないわよね?)
 目線だけで後ろを振り返りながら、ヒナギクは覚悟の様子をうかがった。

 目が合いそうになった。

 音速で視線を前に戻して、ホッと一息。
(何をやっているんだろう? 私は)
 さっきからずっと心がもやもやしている。
 そのもやもやの理由は分かっている。
 さっき……まあ、その、何だろう。
 彼を、葉隠覚悟を抱き――
 顔が熱くなるのをヒナギクは感じた。
 今が夜であることに感謝しながら、覚悟達に気取られないようにと、少し足を速める。
(なんであんなことをしたのかしら?)
 さっきから何度この問いを繰り返しただろう。
 いい加減、疲れるものを感じて、ヒナギクはそっとため息をついた。
 
 最初に覚悟に出会ったときは、嫉妬のようなものを感じた。
 自分には到底できないことをやってのけることができる彼の力と裏付けのある自信に、嫉妬した。
18Classical名無しさん:08/01/17 00:53 ID:7pScmoNQ
    
19Classical名無しさん:08/01/17 00:53 ID:UFIkL7b6
shien
20 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 00:53 ID:y9lzgfss
 自分がなんだかちっぽけな人間に思えて、悔しかった。
 たまらなくなって、思わずそれを出合ったばかりの彼にぶつけてしまった。
 彼には悪いことをしたと思う。
 それなのに彼は許してくれたどころか、よく言ってくれたと感謝までしてくれた。
 その感謝がただの世辞ではなかったことは、彼が焦燥に駆られた自分を止めてくれた時に分かった。
 
 ――かなわないな。

 不覚にも認めてしまった。今まで、誰かに負けることを許容したことは、ほとんどなかったのに。
 ホームセンターで、色々と力の違いを再確認させられ、その思いはさらに強くなった。
 彼は強くて、道行きが茨の道であろうと闇の中であろうと、確固たる信念の元、
 歩き続けられる人で、与える事はあっても、誰かを、何かを必要とする人間ではないと思っていた。

 ――でも違った。

 彼は超人なんかじゃなかった。
 彼は誰よりも優しい男の子で、マジメだけど、少し、天然っぽいところもあって。
 民家で自分とつかさがやらせてしまった、珍妙極まる格好を大真面目にやる覚悟を思い出し、
 ヒナギクはクスっと笑った。
 そんな彼に自分は惹か――

(違う! 断じて違うわ!)

 ヒナギクは思い切りかぶりを振った。
(だって、まだ会ってそんなに経ってないじゃない!
え? この世には一目惚れというものがある? そんなものは嘘! 
私は信じないわよ。信じないったら信じないんだからっ!!)
 
 でも。
21Classical名無しさん:08/01/17 00:54 ID:Mbh8r3ko
                              
22 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 00:54 ID:y9lzgfss
 でもあの時、涙を流す彼を見て、たまらなくなって抱きしめてしまった。
 彼を支えられると知ったとき、嬉しかった。
 自分にも彼のためにできることがあると分かって、本当に嬉しかったのだ。
 それに――
 さっき、覚悟とつかさが話している時、彼が浮かべた表情を見て気付いてしまった。
 彼の孤独に。そして弱さに。
 覚悟は、心の何処かで自分自身を否定している。自分は人に愛される人間ではない、と心の何処かで思っている。
 ヒナギクにはそれが分かった。
(何で……。分かっちゃったのかな?)
 間違っていないという確信はあった。相通じるものも感じた。
(こういうの、シンパシーっていうのかしら?)
 似たような感覚は、別の少年にも感じたことがある。
(ハヤテ君、どうしてるからしら? ナギも……)
 ヒナギクは一つため息をついた。
 友人達のことを考えると気が重くなる。
 どうやったところで、知りようも無い。どうにもならない。
 ハヤテ達に会ったことがあるという人間に出会えば様子も聞けようが、会場が広いせいか
 そもそもほとんど人と接触しない。
 ヒナギクは、もう一度ため息をついた。
 とりあえず、この問題は棚上げしておくしか他に、どうしようもない。
 できることといえば、せいぜい無事を祈ることだけだ。

 ――で、何の話だったっけ?

 そうそう、思い出した。
 
 ――何故、覚悟にシンパシーを感じるのか?

 そのわけは――想像がつかなくもない。
 こういう時、知識豊富で余計なことにまで頭が回ってしまう自分に、ヒナギクは多少ウンザリする。
23Classical名無しさん:08/01/17 00:55 ID:ytcaBXxs
   
24 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 00:55 ID:y9lzgfss
 何故覚悟にシンパシーを感じるのか? 
 ヒナギクは自嘲の笑みを浮かべた。

 ――答えは簡単だ。

 ヒナギクもまた、心の何処かで自分を否定しているから。
 今の両親や友達のおかげで大分小さくなりはしたが、ヒナギクの心には傷がある。
 本当の両親に捨てられたという、癒えない傷が。
 その傷は、ふとした瞬間にあらわれてヒナギクを苛むのだ。
 毛利や本郷の命によって生き永らえたということに関して、
 ヒナギクが自分を責めたてるのもそのあらわれ。
 自分にそんな価値はないと、人の命をかけて守られるべき存在ではないと、そう思っているから……。

(私が覚悟君のことを支えたいとか思ったのは、私のエゴ……。
単に、私は自分を救済したかったとか、そういう理由なわけ?)

 ――違う。

 アッサリと心が否定を返した。それはもう、これ以上ないほどはっきりと。
 全く無いとは言わない。
 だが、部分的に合ってる可能性はあるが、満点ではないのだ。
 となるとやはり自分は――
(だから何でそこに行き着くのよ!? おかしいのよ、それはっ!!
どうして最後に間違った解答に行き着いちゃうわけ!?)
 両手で髪をかき回したい衝動と、ヒナギクは必死に格闘した。

「――ヒナギクさん」

 虚をつかれ、
「武装錬金!」
 飛びすさると同時にヒナギクは吼えた。ヒナギクの足に、4本のアーム付きの刃が装着される。
25Classical名無しさん:08/01/17 00:56 ID:ytcaBXxs
    
26 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 00:56 ID:y9lzgfss
 振り向きざま構えを取る。
 ヒナギクの目の前には、覚悟の顔。
 
 泥のような沈黙が二人の足をとらえた。

「覚悟君……。急に後ろに立たないでくれる?」
 顔を赤らめながら、ヒナギクは核鉄を元に戻した。
「すまない……。また私は、ヒナギクさんに失礼なことを……」
「え!?」
 後悔の念が多量に含有された覚悟の声に、ヒナギクは顔を上げ、覚悟の顔を直視した。
「別に……。そんなに気にしないでいいわ。ちょっと、その……驚いただけだから」
「……そうか。だが、とにかくすまない」
「だ、だから……。まあ、いいわ。これからは気をつけてよね!」

 ――どうしてこういう風に、可愛げのない言い方しかできないのだろう?

 軽い自己嫌悪の波にさいなまれながら
「何の用? 声をかけてくるからには、何かあるんでしょ?」
「とりわけて用というわけではないが、ヒナギクさんと我々の距離は大分離れてしまっている。
だから危険と判断した。少しここにとどまって、つかささん達を待つべきだ」
「……え?」
 間の抜けた声で、ヒナギクは辺りを見渡した。
 覚悟の言うとおりであった。
 つかさ達と、かなり距離が離れてしまっている。
 考えに没入しているうちに、早足になっていたようだ。
 けっこうはなれた所から、つかさが手を振っている。
「ご、ごめんなさい……」
 返事は返ってこなかった。

 ――ひょっとして怒った?

 焦りを感じて、おそるおそるヒナギクは覚悟の顔をみやった。
27Classical名無しさん:08/01/17 00:57 ID:7pScmoNQ
   
28 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 00:57 ID:y9lzgfss
 ヒナギクの予想に反して、覚悟の顔に怒りは無かった。
 ただ、何か迷っている風ではあった。
(どうしたのかしら?)
 その後少し考え込んだ後、覚悟は意を決したようにヒナギクに向き直った。
「ヒナギクさん。ひとつ、いいだろうか?」
 そう言って、清冽な眼差しでヒナギクの瞳を直視してくる。
「……何かしら?」
 何故か、自分の心臓が跳ね上がるのを、ヒナギクは感じた。
「歩く時もそうだが……。これからはなるべく、私の前には出ないようにして欲しい」
 ヒナギクの眉がその角度を変えた。
 しばしの沈黙があって、
「覚悟君……。まさかとは思うけど、女は三歩下がって男の後をついて来い、
なんて言うつもりじゃないでしょうね?」
「さにあらず」
 覚悟は断固とした調子で否定した。
「防壁は城の前に築くもの。備えは万全を期すべきだと思う」
「つまり、後ろにいた方が守りやすいから自分の後ろにいて欲しい……。そういうこと?」
 覚悟は深く首肯し、口を開いた。
「ヒナギクさん、俺は君を守りたい」

 顔から火が出たかと思った。

(やだ……。どうしよ……)
 今立っている場所には街灯が無いことを、ヒナギクは本気で神に感謝した。
 心の中で、得体の知れない激情の炎が燃え盛っている。
 やたらと頬が熱い。
「さっき俺は、君に支えてもらった」
「そんな……こと……」
「君だけじゃない。つかささんや、川田にも俺は助けられた。
だから俺は――」
 ヒナギクの心の中で燃えていた炎が、急激にその火勢を弱めた。
29 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 00:58 ID:y9lzgfss

 ――何だ、そういうことか。

 失望の気持ちが同時に湧いてくる。そのことがヒナギクを苛立たせた。
 覚悟の言葉は、どう考えても失望すべき内容ではない。
 なのに何故、失望する必要があるのか?
 それに――
(今は、そんなこと考えてる時じゃないのよ!)
 苛立ちと困惑を存分に息に込めて息を吐き出し、ヒナギクは思考を巡らした。
 彼の気持ちは分かる。
 新八やルイズを失ったことを、覚悟は深く後悔しているはずだ。
 だから、今度こそ彼が言う所の、牙無き人を守ろうとしているのだろう。
 その気持ちは、痛いほど分かる。嬉しくも思う。
 
 ――だが、断る。

「嫌よ」
「……何故だろうか?」
 覚悟の瞳を挑むように見返しながら、
「私は、後ろより隣がいいのよ!!」
 本郷が死んだとき、自分はただ、見ていることしかできなかった。
 情けなかった。何もできない自分が許せなかった。

 ――あんな思いは二度と御免だ。

 今の自分には、例え覚悟や本郷には遠く及ばないにしても、力がある。
 その力で彼を守りたい。支えたい。
 覚悟が闘っているのを後ろでみているだけなんて、そんなのは。

 ――絶対に嫌だ。

 突如、覚悟の眼光が鋭さを増した。
30Classical名無しさん:08/01/17 00:58 ID:7pScmoNQ
xxxxxxxxxxxxx
31Classical名無しさん:08/01/17 00:59 ID:ytcaBXxs
              
32Classical名無しさん:08/01/17 00:59 ID:7pScmoNQ
               
33 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 00:59 ID:y9lzgfss
 覚悟の体から発せられる猛烈な気に、ヒナギクは身をこわばらせた。
 
 ――負けるものか。

 鉄の意志を眼光に込め、ヒナギクは覚悟を見据え返す。
 それは時間にすれば数秒だったかもしれない。
 だが、ヒナギクには永遠にも感じられた。
「……分かった」
 覚悟は笑みを浮かべた。
「君を、戦士と認める」
 ヒナギクは、ハッとする。
 覚悟の笑みが、今までとはまったく違っていたから。その笑みはどこか荒々しく、不敵だった。
 眠っていた獅子が身を起したような感覚に戦慄を感じつつも、
「足手まといには、ならないつもりよ!」
ヒナギクもまた不敵に笑う。
「心強い。千の味方を得た気分だ」
 言いながら覚悟は視線を前に戻し、歩を進め始める、
 挑むようにヒナギクもその隣に立って歩き出す。
 
 なんだか、色々と心の中でごちゃごちゃと感情が渦巻いていて、もう分けが分からない。
 けれどとにかく、一つだけ分かる感情があった。
 自分は、彼の、葉隠覚悟の隣にいたいのだ。
 それだけはハッキリと分かる。

 ――今はそれだけでいいはず。多分。



「……大したもんだ」
 覚悟たちの会話は、途中から聞えていた。
(まったく……。とんでもない女の子もいたもんだぜ)
34 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:00 ID:y9lzgfss
 驚きと頼もしさを同時に感じつつ、川田はウージーを肩に担ぎ上げた。
 だが、危ういものも感じる。
 何かに憑かれたように核金の使い方を練習していたヒナギクの姿が、川田の脳裏をかすめた。
「大丈夫かなぁ、ヒナちゃん……」
 ちらっと隣を歩くつかさをうかがうと、案の定というべきか、
つかさも心配そうな表情を浮かべていた。
 昼間にも感じたことだが、柊つかさという少女は、他人の痛みに敏感だ。
 ヒナギクが、毛利という探偵や本郷の命と引き換えに自分の命を繋いだことで自分を責め続けていることに、
 つかさも気付いているのだろう。
 もっとも、覚悟のおかげでそればかりではなくなったように見えるが、戦いの最中に顔を出さないとも限らない。
 そうなれば――
「そんなに心配すんな、つかささん。
ヒナギクさんだって、そうそう命を捨てていいなんて、思ってないさ」
 努めて明るい調子をつくって、川田は言った。
「でも……」
 つかさの瞳の中の暗い光彩は、消えようとしない。
「なぁに、いざとなったら俺と葉隠で止めるさ。
これ以上仲間に死なれるのは――絶対に御免だからな」
 大きさこそ抑えられていたが、その声には明確な意思があった。
 つかさのしかめられていた眉が緩められ、その瞳に明るい色が戻る。
 それを見て川田は心中で安堵のため息をついた。
 無論口に出した言葉は紛れもない本心だ。
 だが同時に、ヒナギクを止めるかどうか分からないとも、頭の冷静な部分は言っている。
 それほどに、ヒナギクの決意は固い。
 だから「止めてみせる」というのはある意味では気休めだ。
「絶対に」と口にしながら一方で成功を疑う。いわゆる『整合性の欠如』。

 ――かまうものか。

 気休めだろうがなんだろうが、かまわない。
35Classical名無しさん:08/01/17 01:01 ID:7pScmoNQ
支援支援支援支援
36Classical名無しさん:08/01/17 01:01 ID:7pScmoNQ
s       
37 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:01 ID:y9lzgfss
 この隣にいる少女が、悲しげな顔をしていることの方が、我慢できない。
(慶子の時はいつも、泣かせたり、怒らせたりしちまってたからな)
 だから、今度こそは守り抜いてみせ――

「聞いてる? 川田君?」

 耳元で響いた声によって、川田の意識は、思考の井戸から浮上させられた。
「聞いてるさ。それで、どうしたって?」
 何食わぬ顔で川田は尋ねた。
「だからね、米酢とバルサミコ酢のどっちを使ったらいいのかなって……」

 ――ば……バルサ見越すって……何だ……!?

 しばしの間、川田の頭の中では疑問符が踊り狂った。
 その踊りは、鼓膜を震わせたクスクスという笑い声で、中断に追い込まれた。
 嘆息しつつ、
「悪い……。聞いてなかった」
 まだ笑っているつかさに向かって肩をすくめつつ、
「で――なんだったんだ?」
「え?」
「だから、さっき、何を俺に言ったんだ?」
「え〜とね……」
 するとつかさは、何故か照れたように俯くと、
「川田君にとって私達は、『仲間』なのかな、って」

 ――その通りだ。

 反射的にそう言おうとして――川田は、言葉を喉の奥に引き摺り戻した。
 なんとなくだが、そう言うとつかさが、悲しそうな顔をしそうだ。
 チラっと視線をつかさの方に送る。つかさの顔はこの上もなく真剣だった。
(『仲間』じゃダメ、ってことだよな。となると……)
38Classical名無しさん:08/01/17 01:02 ID:ytcaBXxs
      
39 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:02 ID:y9lzgfss
 
 ――検討がつかないわけでもない。

 ただ、こういう場面で口にするのは、かなりの精神力を要しそうだった。
(七原ならそれこそアッサリと言っちまうんだろうが、なかなかキツイもんがあるぜ)
 込み上げる羞恥心を殴りつけて黙らせ、
「そう、だな……。仲間であり……まあ、その、何だ……。
ダチってやつでも……ある、んじゃねえか?」
 流石につかさの顔を直視しながらは、無理だった。
 横を向きながらなんとか言い終え、目線だけ動かして、つかさの顔を盗み見る。

 満開の笑顔がそこにあった。

 つかさは本当に嬉しそうに笑っていて。
 何か愛おしいものを噛み締めているようなそんな笑顔をしていて。
 照れくさい気持ちと同時に、胸に苦いものが込み上げてくるのを、川田は感じた。

 ――あいつにも、慶子にも、言ってやればよかった。
 
 もっと素直な気持ちで、今みたいな言葉を伝えておけばよかった。
 気持ちを伝えあって、互いに自分の気持ちを相手がどう思っているか知っていれば……。
 川田はかぶりをふった。
(未練だな)
 後悔しても無駄だ。起こってしまったことは変えられない。
「行こうぜ、つかささん。ちょいと遅れちまったみたいだ」
 足を止めてこちらを見ている覚悟とヒナギクに軽く手を挙げながら、川田はつかさを促した
「うん!」
 大きく頷いてつかさが走り出す。
 その隣を並走しながら、川田は小さくつかさに笑いかけた。
 つかさが微笑みを返してきた。

 ――だが、今を変えていくことはできるはずだ。
40Classical名無しさん:08/01/17 01:03 ID:7pScmoNQ
         
41Classical名無しさん:08/01/17 01:03 ID:7pScmoNQ
                                                           
42 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:03 ID:y9lzgfss


「そろそろ……か」
 視界の中で距離が詰まる。
 三村は唇を噛んだ。
 ハンドルを持つ手が震える。心臓の鼓動がやたらうるさい。
 E−6エリアの境界線が迫る、後、3メートル、2、1……

「――っ!」

 首輪は――作動しない。
 三村の口から、ため息がもれた。

 ――喉がひりつく。

 エンジンを止め、ペットボトルの水を飲む。
 どっと疲れが込み上げてきた。
(こいつは……。きついな)
 エリアからエリアへ移動するたびに、寿命が縮む。
 その度に精神力をゴッソリと、こそぎ取られる思いだ。
「クソっ……。何で誰もいないんだ!?」
 苛立たしげに吐き捨てる。

 答えは、どこからも返ってこない。

 孤独感が三村を打ちのめした。
(やっぱりF−8まで行って、北上するべきだったか?)
 FエリアよりもEエリアの方が繁華街に近く、そして地図上の施設の位置関係からして、
 人と会える可能性が高いと考えての進路変更だったが――結果は、収穫ゼロ。
「畜生っ……」
 腹立ちまぎれに、サドルを蹴る。
43Classical名無しさん:08/01/17 01:04 ID:ytcaBXxs
            
44 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:04 ID:y9lzgfss
 クールとはいえない行動をとっている自分への苛立ちで、余計に苛立ちが募る。
 ジョジョが生きていたら軽口を叩くだろうか? 不満タラタラで愚痴るだろうか?
 埒も無い考えばかりが心に浮かぶ。
「居なくなって初めて気付くとは、よくいったもんだ」
 あの男の陽気さに、何事にも動じない冷静な態度に、どれだけ救われていたか、よく分かる。
 
 ――了解、了解。弱っちいシンジちゃんも俺が守ってやるから大船に乗った気でいろよ

「弱っちぃ、か。その通りだな」
 自嘲気味に吐き捨てる。
 ジョジョと別れて以来、何一つできてない。
 仇は取れない。この腐れゲームを潰すための手がかりすら見つけられない。

 ――ジョジョがいたら。

 女々しいと分かっているのにもかかわらず、どうやってもこの考えを振り払えない。
 その度に、あの女――柊かがみに対する殺意が増す。
 あの女を捜す手がかりが皆無なことへの苛立ちが、さらに増す。

 まさに悪循環。

 焦燥の炎が胸を焼き焦がすのを、三村は感じた。
(クールになれ……クールに、なるんだ……)
 呪文のように繰り返す。
 だが、焦燥の炎は収まるどころかますますその火勢を増していく。
(畜生っ!! 畜生っ!! ジョジョ、教えてくれよ! お前だったらどう――)
 その時、三村の耳の奥に蘇る声があった。

 ――今のお前は、自分が冷静になることに捕らわれ過ぎて冷静さを欠いているんだ。わかるかシンジ?

 自分の体から、スッと力みが抜けるのを三村は感じた。
45Classical名無しさん:08/01/17 01:05 ID:7pScmoNQ
                          
46 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:05 ID:y9lzgfss
「そうだったよな。ジョジョ……。『クールになれ』と心の中で思ったならッ!」
 呟きながら、エンジンキーをひねる。
「俺達は既にその時スデに冷静になっているんだ!」
 原付が走り出す。
(焦っても仕方ない……。一つ、一つ片付けていくしかない。
 まずは誰かと接触することだけを考えるとするか)
『弱っちぃ』自分にはそれが関の山だろう。悔しいがみとめるしかない。
 そう考えるとなんだか、気分が楽になる。
(助けられてばかりだな、お前には)
 だからこそ、ジョジョを殺した奴だけは、許すわけにいかない。

「柊……。てめえはこの三村信史が、じきじきにぶち殺す!!」



「くしゅん!」
 可愛らしい声が響いた。つづいてもう一つ。
「寒いのか? つかささん」
 心配そうに尋ねる覚悟に、
「そんなでもないよ。ちょっとね……。ゾクっとしただけ」
 心配しないで、といようにつかさ手を振ってみせた。
「でも……。つかさの気持ちは分かるわ」
 辺りを見渡しながらヒナギクが呟く。
 人っ子一人いない夜の町は、半端ではなく不気味だった。
 家々に灯りはなく、道路を照らすのは電柱についた蛍光灯のみ。
「確かに、幽霊の一つも出そうな雰囲気だな」
 油断なくあたりを見渡しながら、川田が軽口をたたく。
「……出てきて欲しいな」
「え?」
 言葉の意味をはかりかね、ヒナギクはつかさの顔をマジマジと見た。
 するとつかさは悲しげに笑い
「ゆきちゃん……。幽霊になって、出てきてくれないかなあって、思ったんだ……。
47 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:06 ID:y9lzgfss
ごめんね、変なこと言っちゃって」
「……会えるかもしれないわよ?」
 目を丸くするつかさに、ヒナギクは真剣な調子で続けた。
「私達の推論が正しいと仮定してだけど……。
そのみゆきさんって人の魂も、私達が見たあの鎧の中に閉じ込められてるはずよ。
だから、魂を開放すれば、その時に話をすることだって不可能じゃないわ」
「そだね……。あの鎧を壊したら、会えるかもしれないよね」
「きっと会えるわよ。その時は、紹介してね? 私もつかさの友達に会ってみたいから」

「……ちょっと待ってくれ」

 その声には、ただならぬ響きがあった。
 その場にいた全員が足を止め、川田を注視する。
「聞いてて思ったんだが……。
ヒナギクさん、まさかとは思うんだが、幽霊に会ったことがあるなんてことは――」

「あるけど?」

「ヒ、ヒナちゃんって霊能力者だったの!?」
 つかさは驚愕で仰け反り、
「ヒナギクさんの世界では、霊ってのは、誰にでも見えるものなのか?」
 興味を引かれた川田が問いを発し、覚悟は無言でヒナギクを注視した。
「ちょっと待ってよ! 誤解しないで?
私の世界でも、霊は普通の人には見えないし、もちろん、私にも見えないわ」
「で、でもヒナちゃん、さっき会ったことがあるって――」
 落ち着けというようなジェスチャーをしつつ、
「話すと長くなるから省くけど……。とにかくちょっとした縁があって、
幽霊……あれは悪霊の類かしらね? と、会ったし、話もした、それは本当よ。
だけど、四六時中見えるわけじゃないわ。霊を呼んだりとか祓ったりとかそういうのも無理よ?
私は霊能力者じゃないもの」
「……ヒナギクさんが出合った霊は、どんな風だったんだ?」
48 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:07 ID:y9lzgfss
「多分、生前の格好だと思うんだけど……。神父の格好をしてたわ。
学校にも来てたから、どこにでもいけるんでしょうし、普通に話せたし……。
『見えるのはダンジョンにいた人たちぐらい』って言ってたから、
誰にでもってわけじゃないんだろうけど」
「なるほどな……。とにかく、ヒナギクさんの世界では、そうってことか」

 ――本当に並行世界ってのは、なんでもありだな。

 しばらく考える仕草をした後、川田は周辺を見渡した。
(道端じゃ無用心すぎる。といって家に入って明かりをつけりゃ、
ここにいますと喧伝してるようなもんだ。さて……)
 探すうちに、川田の目が一点に吸い寄せられた。
 おあつらえ向きなことに、地下鉄の入り口――確かS7駅だ――が見える。
(あそこなら明かりもある、か。地下鉄は入ってくれば分かる。後は、入り口に気を配ってりゃいい)
 川田は全員に集まるように促した。
「病院に行く前に、あの駅で時刻表を写し取っておかないか?
地下鉄で移動すればどこへ行くにも時間を短縮できる」
 いいながら、取り出した紙をペンで叩く。
「私はいいと思うけど……。どう思う? 覚悟君、つかさ」
 川田の意図を汲み取ったヒナギクが、しらじらしく質問を発する。
「良き案だと思う」
「うん、いいと思う。後ね……ちょっと休んでいかない?
ちょっと、疲れちゃった」

 ――ナイスアシストだぜ。
 
 つかさに向かって、川田は親指を立ててみせた。
「じゃあ、そうするか。葉隠、ヒナギクさん、それでいいか?」
 川田の提案に当然のごとくヒナギクと覚悟は同意し、4人はS7駅の中へと歩を進めた。
 
 突然覚悟が足を止め、振り返った。
49Classical名無しさん:08/01/17 01:08 ID:ytcaBXxs
              
50Classical名無しさん:08/01/17 01:09 ID:7pScmoNQ
               
51 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:08 ID:y9lzgfss
 つかさと川田に先に入るように促し、覚悟は背後の闇を注視し続ける。
「どうしたの? 覚悟君」
 ヒナギクの問いかけに、覚悟はわずかに首をかしげた。
 しばらく間があって、
「……気のせいだったようだ」
 完全に納得はしていないという表情ながら、覚悟は駅の入り口へと歩を進め、
 ヒナギクもその後に続いたのだった。



 ――あれは!?

 その後ろ姿を見たとき、三村の頭を電流が駆け抜けた。
 反射的にエンジンを止め、三村は建物の影に身を隠す。
 かなり距離が離れている上に、駅の中へと消えていく、まさにその一瞬しか見えなかったが、
(あの髪の色……。体格……。間違いねえ)
 紫色などという奇天烈極まる色の髪の持ち主が、何人もいるはずがない。
 その上体格も似ているとなれば、これはもう確定だ。
 少し小さくなった気もするが、髪の長さで見え方が違っているから小さくなったと錯覚しているだけだろう。
 
(見つけたぜっ!! 柊っ!!)

 憎悪と殺意が込み上げてくる。
 三村はゆっくりと息を吐いた。
 細心の注意を払って、地下鉄への入り口の方に目をやる。
 一瞬だけみて――

 残像が残りかねない速度で顔を引っ込める。

(気付かれたか?)
 駅構内から漏れ出る光に照らし出された男の顔には、見覚えがあった。
52Classical名無しさん:08/01/17 01:09 ID:7pScmoNQ
   
53 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:09 ID:y9lzgfss
 一番初めに集められた場所で、見ず知らずの女の子を助けようとする正義感の強い奴。
 30秒ほど時間をおいて、もう一度駅をうかがう。

 ――いない。

 三村は胸を撫で下ろした。

 ちなみに、覚悟が足を止めたのは、三村の原付の音を聞いたからである。
 では何故、覚悟は正体を確かめようともせず、無視してしまったのか?
 それは、覚悟が乗り物全般に縁がなかったからに他ならない。
 荒廃した世界に住んでいる覚悟は、乗り物の排気音というものに馴染みがなく、
 その正体を推理することができなかったのである。
 
(さて、どうする?)
 心の中に根付いた殺意は速く殺せと喚き散らす。
 飛び出していきたい衝動に駆られるが、三村はその衝動を必死でねじ伏せた。
 会場でみせた動きからして、あの少年はただものではない。
 その少年の隣にいるのは、燃えるような髪をした女。
 さらに、柊かがみの隣に、もう一人。
(川田……か?)
 ほとんど話したこともない奴だが、体格自体はなかなかのものだったと記憶している。
 とにかく、柊かがみのほかに3人もいる。
 ぎりっと三村の奥歯が軋み上げた。
(それがてめぇの手ってわけか、柊っ!!)

 弱者を装って、集団に入り込み、隙を見て皆殺しにする。
 
 女というだけで、大体の参加者はガードが緩くなる。
 自分達がやられたように、仲間思いのフリをして涙の一つも見せれば楽なものだ。
(ジョジョを殺した時のようにやるつもりだろうが、そうはさせねえ!)

 ――だがどうする?
54 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:10 ID:y9lzgfss
(今すぐ中に入っていって、アイツの悪行をバラらすってのは――却下だな)
 ただでさえこの腐れゲームは、互いが互いを疑い合うようになっているのだ。
 どの程度人間関係を構築できているかは分からないが、
 柊かがみの狡猾さと演技力を過小評価するのは、危険だ。
(俺とジョジョが、完全に騙されたくらいだ……。
それにさっき、柊は男と先行して中へ入っていった。
つまり、『誰かと二人きりにしても何もしない』と思われる程度には信頼されてるってことだ)
 それに、仮に、自分の話を柊かがみ以外の人間が信じたとしても、まだ問題はある。
(槍をどっかに隠してるってことは、例の火を吐く鳥の不意打ちで片をつけるつもりだろう。
あれは攻撃範囲も攻撃力も並じゃない。俺は避けられても、誰かが死ぬかもしれない……。
それじゃダメなんだ)
 戦力にならないような女の子を保護するような人間は、貴重といえる。
 あの老人の計画をぶっ潰すためにも、戦力を減らすわけにはいかない。
(隙を見てあの3人に見つからないように柊を殺るのは――キツイな)
 まず、柊かがみ自身の戦力が侮れない。下手をすると返り討ちだ。
 不意打ちをかけようにも向こうは4人。そして自分には、尾行のスキルはない。
 見つかって危険人物だとみなされようものなら、目も当てられない。
 焦燥の炎が、心の中でチロチロと燃え上がり始めるのを、三村は感じた。
(まずい……。地下鉄が来たら、4人はどこかへ行っちまう。その前に、何とかしないと……)
 その地下鉄が来る時間が分からないのが辛い。
 後1分後かもしれないし、30分後かもしれない。
 焦燥の炎が心の壁を這い登るのを、三村は感じた。

 ――さあ、どうする?


  
 入り口と、電車、両方から来る来訪者に対処するために、
 駅の入り口と、地下鉄のプラットフォームの中間あたりの場所に4人は集まっていた
 3人に目線でうながされ、川田が、ペンを動かし始める。
55 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:11 ID:y9lzgfss
『強化外骨格が、この会場の中に存在する可能性がある』

 川田をのぞく全員が息を呑んだ。
 3人の視線が集中する中、川田の手は動き続ける。

『俺達はどうか分からないが、ヒナギクさんのいた世界の霊は「意志」があって「移動」が可能らしい。
となれば、少なくともヒナギクさんと同じ世界の人間の「霊」を、
強化外骨格に引っ張っていくには、何らかの「強制」が必要だってことだ。
そうでなけりゃ、ヒナギクさん達の世界の「霊」は何処かへ行っちまうかもしれないからな』
 その時、覚悟が無言でペンを取り、
『零には怨霊を零の中へ導き、英霊に列する力がある』
 簡潔に書いて、川田の推論が空論でないことを示した。
 川田はニヤリと笑うと、ペンを握りなおした。
『ありがとよ、葉隠』
 と、その時ヒナギクが苛立たしげにペンを取り、
『川田君……あなたの言いいたいことがよく分からないわ。
あの爺さん達の目的は、強化外骨格に「霊」集めることなんだから、
強化外骨格にそういう力があるのは当たり前でしょ?』
『まあ、待ってくれ。
俺も、漠然と強化外骨格にはそういう特質があるんだと思ってたさ。
葉隠の話を聞いた限りじゃ、零に宿る英霊は、あくまで強化外骨格を通して、
しかも葉隠限定で意志を伝えることができるんだと、解釈してたからな』
 覚悟が頷いて、肯定を示す。
『だから、霊には考える力があるんだろうが、それ以上のことはできないと思ってたわけだ。
ところがヒナギクさん達の世界じゃ、霊は自分の意志で動き回ったりできるそうじゃないか。
こりゃあ、大問題だぜ。あの爺さん達にとってはな』
 意地の悪い笑みを浮かべつつ、
『抵抗しないものを移動させるのと、抵抗するものを移動させるのじゃあ、労力が全然違う。
「誘導」じゃなく「強制」しなきゃならないんだからな。
ただでさえこのゲームの会場は広い。
どこで死んでも「強制」的に強化外骨格までひっぱっていく力を及ぼうそうと思ったら、
「強制」する装置を少しでも対象と近づけたいと思うのが、普通だろ?』
56Classical名無しさん:08/01/17 01:11 ID:7pScmoNQ
     
57Classical名無しさん:08/01/17 01:12 ID:7pScmoNQ
       
58 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:12 ID:y9lzgfss
 ところが、そこで川田は一転してきまり悪げな顔になり、
『とはいえ、あの爺さん達が、
会場の外からでも十分な力を及ぼすことができるようにしてる可能性も、あるけどな』
『それはどうかしら?
私は、仮にこの会場全域にその強制力を及ぼせるだけの力が強化外骨格になかったとしても、
この会場の外に置いてある可能性の方が高いと思う。
だって、私達の手の届く所に置いていくのは危険すぎるもの。
私があの爺さんの立場だったら……。
一人分か二人分の魂を取り逃がさないために強化外骨格を破壊されかねないリスクは、犯さないわね」
『……確かにな』
 ヒナギクに指摘され、川田は唸り声を上げた。
(都合がいいように考えすぎまったか?)
 人は、物事を自分の都合のいいように考えてしまうのだ。
 ましてや、五里霧中で希望の光を探してさ迷っているような状況なら、なおさらだ。

「そうとも言い切れない」

 3人の視線が自分に集まるのを待って、覚悟はペンを走らせ始めた。
『俺の世界では、霊とは死すれば昇天し、元の場所へ還るもの。
現世に残る霊はすべからく怨霊。そしてその怨霊が現世に留まり続けるには、宿るモノが必要だ』
例えば、死した者の名を刻んだ「碑」などがそれにあたる』
『何でもいいってわけじゃないってことね?』
 そもそも件の神父の霊と出合ったのは、ダンジョンの中であったことを思い出しながら、
ヒナギクが尋ねる。
『然り。本来、縁もゆかりもなき強化外骨格に自然と霊が宿るはずもない。
先ほど零には、怨霊を強化外骨格に宿る英霊の列に加える力があるといったが、
怨霊が零を求めてやってくるわけでは決してない。それに――』
 覚悟の瞳が悲しみをたたえた鈍い光を帯びた。
『戦士の魂を持っていた新八や、気高い心の持ち主だったルイズさんが、
誰かを恨み「怨霊」になるとは、俺にはどうしても思えない』
 覚悟の言葉にヒナギクとつかさは、思わず頷いてしまう。
59 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:13 ID:y9lzgfss
(確かにそうね……。マリアさんもそうだけど、本郷さん……。
あの人が、自分を殺した相手を恨んで怨霊になるのは、ちょっと想像できないわ)
(ゆきちゃんは、いつも笑ってた。
どれだけ怖い思いをさせられたって、ゆきちゃんが死んだ後まで人を恨むなんて、
思えないよ)
 ヒナギクとつかさが考えに沈む間も、覚悟の手は動き続ける。
『霊の昇天をとどめ、なおかつ強化外骨格まで引き摺っていき、封じ込めてしまう……。
先ほど川田が「強制」と表現したが、俺は「強制」という言葉を超えているように感じる。
幾ら何でも、そこまで人の魂を自由にできるものだろうか?』
『なんとも言えねえな。だが、少なくとも俺や杉村、そして桐山が
死んでからこの世界に連れてこられてるという事実があるからな……』
 感情を排した声で川田は言った。
 人の死が絡むと、人は容易く冷静さをなくす。
 だが、ここは冷静にならなくてはいけない場面だ。
「で、でもね……」
 黙っていたつかさがおずおずと口を開いた。
 川田からペンを借り、
『場所はやっぱり大事なんじゃないかな……。ちょっと違うかもしれないけど、
私のお父さん、神様が住みやすいように、毎日境内を掃除したり、社殿で朝拝とか、
祝詞をあげたりしてるもん』

 ――神様? 朝拝? 祝詞?

 覚悟、川田、ヒナギクの顔にそろって不可解の文字が浮かび、
「あそっか、みんなにはまだ話してなかったね。私の家って、神社なんだ」
 慌ててつかさは補足した。
 なんだかヒナギク達とは長いこと一緒にいるような気がしていたが、
 考えてみれば、会ってそれほど時間がたっているわけはない。
 互いに伝えていないことも、知らないことも、山ほどある。
『ええと……。だからね……。霊とか魂とかに来てもらおうと思ったら、
ちゃんとした場所とか、儀式とかが必要なんじゃないかなぁ』
 ヒナギク、川田、覚悟はそれぞれ、頭の中で地図を広げた。
60Classical名無しさん:08/01/17 01:13 ID:ytcaBXxs
     
61Classical名無しさん:08/01/17 01:14 ID:s689QGSY
  
62 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:14 ID:y9lzgfss
 ここに来るまで何度も地図を広げている。すでに主だった施設は頭に入っていた。

 ――ちゃんとした場所。霊を呼ぶのにふさわしい『場』

 4人が同じ考えに辿り着くのにそう時間はかからなかった。

 ――寺。もしくは神社。

「限られるわね……。すごく」
 ヒナギクがディパックを背負いなおし、
「急ぐとするか。行かなくちゃいけない場所が、増えちまったからな」
 川田がペンをしまいこんで、ウージーを取り上げる。
「あっ……でもどうせなら、時刻表をメモしていこうよ」
 つかさが時刻表の方に歩み寄った、その時。

 ――ずぅん。

 という破壊音が、駅の入り口の方から聞えてきたのだった。



「何で音がしなくなったのかしら……?」
 バルキリースカートを装着したヒナギクが押し殺した声で呻く。
「さあな……。一発でカタがついたのか、何か他に理由があるのか……。
この時間帯まで生き残ってる人間なら、やすやすとはやられない。
だから不自然だといいたい所だが……。そうとも言い切れないのが、辛いところだな」
 仮にラオウと張り合えるくらいの人間と自分が出合った場合、それこそ瞬殺されてしまう。
 川田は顔をしかめた。
 ラオウと同レベルの人間などそうはいないといいたいところだが、
 とりあえず目の前に1人いる。本郷もいれて知っているだけでも2人。
 このゲームの目的が「殺し合い」である以上、ラオウと同レベルの人間が複数いる可能性は、高いといえた。
63 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:15 ID:y9lzgfss
「狙いが私達って、線は?」
「それもありえるな、音に釣られて地上に出てきたところを、狙うつもりかもしれねえ」
 小声でヒナギクと言葉を交えながら、川田は覚悟の方をうかがった。
 覚悟の鋼鉄そのものといった表情からは、その感情はうかがいしれなかった。
 だがしかし――
(そんなに長い付き合いじゃないが、
お前の考えそうなことは分かるつもりだぜ、葉隠)
 川田は、ヒナギクに目配せした。
 どうやら同意見だったらしく、ヒナギクは苦笑じみたものを浮かべて頷き返し、
「覚悟君、行って! 牙無き人を守るための零式防衛術、でしょ?」
 小さく、だがハッキリとした声で告げた。
「しかし……」
 悪鬼に襲われている人間がいるなら助けたい、だが助けに行けば、ヒナギク達を守れない。
 覚悟は葛藤していた。
 今度は川田が口を開いた。
「葉隠。どっちみち、こうやってても埒があかねえ。
音を出した奴の目的が襲撃なら、どっちみち出て行くしかないんだ。
危ない橋を1人で渡ってくれと言ってるようで気が引けるが……。頼めるか?」
「こちらの戦力を分断する戦術の可能性がある」
「地下鉄でそれをやる可能性は低いだろうぜ。
線路を渡ってる最中に電車が来たら、逃げ場がないんだからな。
入り口は実質的に一つだ。それにな――」
 川田は唇を吊り上げた。
「あんまり舐めてくれるなよ。俺達を分断しなきゃならないと考える程度の奴なら、
お前が戻ってくるまでの間、持ちこたえてみせるさ」
 しばしの沈黙の後、
「了解した」
 歩きながら覚悟がいう。その横にヒナギクが並ぶ。
「ヒナギクさん!」
 川田が制止をかける。
「悪いけど、聞けないわ!」
64Classical名無しさん:08/01/17 01:16 ID:7pScmoNQ
               
65Classical名無しさん:08/01/17 01:16 ID:s689QGSY
      
66 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:16 ID:y9lzgfss
 凝縮した決意を込めた、凛とした返答。
 声に込められた決意の量に、川田は沈黙に追い込まれた。

 ――止められん。

 と、その時――
「ヒナちゃん!」
 つかさが走った。
「わっ!」
 つかさに後ろから抱きつかれ、ヒナギクはわずかによろめく。
 口を開こうとするヒナギクに先んじて、つかさは言った。
「止めたりしないよ……。でもね、私待ってるから。
ヒナちゃんが帰ってくるのを、ちゃんと、待ってるから。
川田君も。それにヒナちゃんのお父さんとか、お母さんとか、お姉さんとか、
友達とか、みんなヒナちゃんのこと待ってるよ。
私も、みんなも、ヒナちゃんのこと――大好きだから」
 限りない思いが込められた、友達の言葉。
 
「ありがとう……つかさ」
 
 ――心が、満たされていく。

 なんだか体が軽い。欠けていたものが埋まった気がする。
 今なら――どれだけでも高く飛べる気がする。夕方、イメージしたよりも遥かに高く。
「じゃあ、行ってくるわ!」
 ヒナギクの言葉と同時に覚悟が駆け、ヒナギクはその背を追った。
67Classical名無しさん:08/01/17 01:18 ID:ytcaBXxs
           
68Classical名無しさん:08/01/17 01:18 ID:NJm5OTJ.
 
69Classical名無しさん:08/01/17 01:18 ID:7pScmoNQ
                 
70Classical名無しさん:08/01/17 01:18 ID:jKvreONY
 
71Classical名無しさん:08/01/17 01:19 ID:s689QGSY
           
72 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:20 ID:y9lzgfss


 ――来た!

 その瞬間、心臓が跳ね上がるのを三村は感じた。
 男が一人飛び出してくる。例の、正義感の強い爺さんに食って掛かった男だ
 油断なく周囲を索敵している。

 ――そろそろ、出て行くか?

 三村は腰を浮かせた。
 その時、男がなにやら合図をした。
 燃えるような髪の女が、駅の入り口から姿を現す。
 二人は合流し、周囲を警戒しながら移動を始める。

 ――賭けに勝った。

 三村は安堵の息を吐いた。
 柊かがみに気付かれずに、柊かがみのもぐりこんでいる集団のメンバーと接触し、
 柊かがみの危険性を伝えるため、三村が考えたのがこの手段。
 あの女は、最後の不意打ちまで無力な女の子を演じ続けるはずだ。
 だから、進んで危険な場所に向かうような真似はしない、というかできない。
 よって柊かがみが出てくるのは、安全確認ができた段階、つまり一番最後だ。
 
 ――そこに賭けた。
73Classical名無しさん:08/01/17 01:20 ID:7pScmoNQ
                    
74Classical名無しさん:08/01/17 01:20 ID:s689QGSY
                
75Classical名無しさん:08/01/17 01:20 ID:NJm5OTJ.
  
76Classical名無しさん:08/01/17 01:21 ID:7pScmoNQ
                       
77Classical名無しさん:08/01/17 01:22 ID:ytcaBXxs
     
78Classical名無しさん:08/01/17 01:22 ID:y9lzgfss
無論、4人で逃亡してしまう可能性も高いとは思ったが、
正義感の強いあの男が、助けを求めているかもしれない人間を助けにいく可能性は、
低くないと見積もった。
 
――喜ぶのはまだ早い。
 
難しいのはこれからだ。これからが本番だ。
正義感の強い男だけではなく、赤髪の女も出てきたが、これは予想の範疇。
さっきの連携をみていれば予測できたこと。

(クールに決めてくるぜ! 見てろよ、ジョジョ)
 
トランプ銃を取り出す。
照準――絶対に当たらないように、男達の足元に向ける。
発砲――男と女の足元にトランプが突き刺さる。

――ひやりとした。

男が女を庇うように前に回りこんでいる。
そのせいで、トランプが突き刺さっているのは、男の足元ぎりぎりだ。
(どんな反射神経してやがんだ?)
 男から殺気が炸裂した。
 猛速でこちらに突進してくる。
(は、速い!?)
 焦る心の手綱をなんとか取り直し、まず、銃を捨てる。
 そして、高々と両手を挙げる。
 男が迫る――
79Classical名無しさん:08/01/17 01:23 ID:s689QGSY
                           
80Classical名無しさん:08/01/17 01:23 ID:ytcaBXxs
        
81Classical名無しさん:08/01/17 01:23 ID:s689QGSY
         
82Classical名無しさん:08/01/17 01:24 ID:y9lzgfss
「――っ!!」
 三村の息が詰まった。

 男が――止まっていた。油断なく構えを取っている。

 ――まったく隙がない。

 女が走り寄ってきて、男の隣に並んだ。
(えらく美人だな)
 真紅の髪に滑らかな白磁の肌。工芸家が腕によりをかけたような顔の輪郭。
 まず、男が口を開いた。
「存命したくば、次の質問に答えよ。
一つ、破壊音を出した理由。一つ、私達を狙った動機。一つ、仲間の有無。
制限時間15秒!」
 低いが威圧感のある声だった。
 体から放出する殺気と相まって、すさまじい迫力だ。
 大きく深呼吸を一つして、
「俺は、三村信史。俺はこの殺し合いに加担するつもりはない。
誰かに襲われれば応戦はするが、それは自営の範疇だと思っている。
あんたの問いに対する答えだが、始めの二つに対する答えは同じだ。
あんた達と話がしたかったから、だ。
そして仲間の有無についてだが、今は、いない」
「今は」という言葉を強調しておく。
 『三村信史』という名前は、男と女に影響を与えたようだった。
 目と目で何やら会話している。

――川田が何かしゃべったか?

 悪評じゃなきゃいいんだが、と思いつつ三村は言葉を紡ぐ。
83Classical名無しさん:08/01/17 01:24 ID:s689QGSY
 
84Classical名無しさん:08/01/17 01:24 ID:DHfIm7TQ
85Classical名無しさん:08/01/17 01:25 ID:y9lzgfss
 悪評じゃなきゃいいんだが、と思いつつ三村は言葉を紡ぐ。
「あんたは、『話がしたいだけならば、何故こんな真似をした?』と言う」
「話がしたいだけならば、何故こんな真似をした?……ハッ!」
 男が目を丸くし、隣の女が少し相好を崩す。
 空気が緩んだことに少し安堵しながら、三村は口を開いた。
「結論からいえば、あんた達の残りの仲間のうち、女の方に、
俺とあんた達が接触したと知れたらマズイから、だ。
あの女に知られると、命にかかわるんでね。俺も、あんた達も」
「命に関わるってどういう意味よ?」
 赤髪の女が、心底不可解だという表情で尋ねてくる。
「文字通りの意味さ。俺とコンビを組んでた男は――」
 口にした瞬間、三村の頭に激情の炎が駆け上がった。
「あの女に殺されたっ!!」
 三村は吐き捨てた。
 女の表情が激変した。
 眉が瞬時につり上がり、鎌が跳ね上がって三村の喉元に突きつけられる。
「一つ、質問していいかしら?」
86Classical名無しさん:08/01/17 01:25 ID:7pScmoNQ
          
87Classical名無しさん:08/01/17 01:25 ID:s689QGSY
  
88Classical名無しさん:08/01/17 01:25 ID:y9lzgfss
 氷のような声だった。
 顔立ちが整っているだけに、怒気を纏うとえもいわれぬ迫力がある。
 男の方も、かなり押し殺しているが、その余波が伝わってくるほどの怒気だ。
 三村はツバを飲み込んだ。
 
 ――こりゃ、ヤバイかもな。

 二人とも完全に、柊かがみに篭絡されている。
 三村は、今更ながらに柊かがみの狡猾さに舌を巻き、同時に憎悪を募らせた。
「何なりと、どうぞ」
 心とは裏腹に、おどけた調子で三村は答えた。
「三村信史、それがあなたの名前で間違いないのね?」
 三村は無言で首肯した。
「それなら、川田章『一』、『三』原秋也、この二つの名前に心あたりがあるはずよ」

 ――引っかけか。

 慎重なことだ、と三村は心の中で苦笑した。
「警戒する気持ちは分かるが、信じて欲し――」
「質問の答え以外の発言は認めないわ」
 ぴしゃりと言われ、三村は心の中で嘆息した。
「その二人には心当たりはない
川田章『吾』、『七』原秋也になら、心あたりはある」
 どこか不満そうにしながら、女が鎌を下ろす。
 男に先をうながされ、三村は表情を引き締めた。
 
 ――ここからが正念場だ。

「名簿に載っている、『ジョセフ・ジョースター』という男を知ってるか?」
 二人が黙って首を振った。
「俺はその男とこの殺し合いが始まってすぐに出会い、共に行動していた。
しばらくして……1回目の放送が終わった頃に、柊と出合ったんだ」
89Classical名無しさん:08/01/17 01:26 ID:7pScmoNQ
                                 
90Classical名無しさん:08/01/17 01:27 ID:s689QGSY
           
91Classical名無しさん:08/01/17 01:27 ID:ytcaBXxs
        
92Classical名無しさん:08/01/17 01:27 ID:y9lzgfss
 『柊』と言った途端、男と女から放たれる殺気の総量が、大幅に増加した。
「放っておくわけにもいかなかったから、彼女を俺達で保護した。
彼女が仲間と合流したいといったので、俺達は民家から拝借した車でボーリング場へと向かった」
三村は話しながら二人の反応をうかがった。
 二人とも無表情で、感情が読み取れない。

 ――ダメか?

 萎えそうになる気力を奮い起こし、三村は続けた。
「――その道中で先程の二回目の放送が始まったら、彼女は豹変した。
急に『スタンド』という支給品を行使し、車を炎上させたんだ……
俺はジョセフ・ジョースターの機転と、アイツの『波紋』とかいう能力で一命を取り留めたが
アイツ自身は……」
 あの忌まわしい光景が蘇ってくる。
 怒りが込み上げ、知らず知らずのうちに口調が荒くなる。
「俺はあの女をゆるさねえ! あの時、俺は逃げるしかなかった。
俺には、あの女を倒せるだけの力がなかったから!
あの女が殺し合いに乗ったと、分かっていながら!
あの女が、またどこかで無力な顔をして誰かに近づいて、その誰かを殺すと分かっていながらっ!!
だから俺は、これ以上の被害者は出したくないんだ! 
アイツみたいな、ジョジョみたいな被害者を出してたまるか!!
いい奴だった。陽気で、落ち着いてて、尊敬に値する奴だった!!
信じられないかもしれないが、これが真実なんだ。あの女の正体なんだっ!!」
 返ってきたのは――

 沈黙だった。
 
 無念の思いが込み上げてくる。三村の奥歯が音を立てた。
「――1つだけ、確認させて」
 女が尋ねてくる。
93Classical名無しさん:08/01/17 01:28 ID:s689QGSY
 
94Classical名無しさん:08/01/17 01:28 ID:y9lzgfss
「何だ?」
「あなたが始めて会ったのは、1回目の放送の後、でいいのね?」

 ――また、引っかけか?

 三村は無言で首肯した。
「そう……」
 女の口から嘆息が漏れた。
「よく分かったわ――」
 氷槍が三村の心臓を刺し貫いた。
 顔を上げた女の瞳には、氷点下の殺意が、その声には、極限まで圧縮された怒気があった。
 三村の全細胞が、本能的に最大警戒警報を叫んだ。

「臓物をぉぉ――っ」
「クレイジーダイヤモンドッ!!」

 咄嗟にスタンドを展開。
 スタンドが、ゆらりと姿を現す。
 驚愕でヒナギクの体が動きを止める。
 その隙を着いて、クレイジーダイヤモンドの掌がヒナギクの胸元に一直線に奔る。
 衝撃――クレイジーダイヤモンドからのフィードバックが三村に伝わってくる。
 次の瞬間、咆哮が三村の鼓膜を打ちぬいた。
 
「その行為――宣戦布告と判断するっ!!」

 文字通り鋼鉄と化した男の体が、クレイジーダイヤモンドの掌を受け止めていた。



 人形出現の驚愕による硬直は、一瞬だった。
 硬直が溶けた瞬間、怒りが吹き上がり、何もかも真っ黒に塗りつぶした。
95Classical名無しさん:08/01/17 01:29 ID:y9lzgfss
――よくも、よくも。

 灼熱の怒りが、ヒナギクの体を突き動かす。
 
 ――この男は、私達につかさを、疑わせようとした!!

 男が飛びすさる。
 怒りの命じるまま、ヒナギクは男に向かって突進した。
 刃が弧を描き、人形を狙う。
 ぎぃん、と鈍い音。
 人形の掌が、鎌を止めている。

 ――私達につかさを殺させようとしたっ!!
 
「重爆っ!!」

 覚悟の左回し蹴りが高速で弧を描き、ガードごと人形を吹き飛ばす。
 三村が同時に吹っ飛んだ。

 ――絶対に、
 
 ヒナギクは足に力を込めた。
 足のバネを最大限に使って跳躍。

 ――許さないっ!!

「ああぁぁっ!!」

 ヒナギクの咆哮と共に鎌が回転をはじめ――

「クレイジーダイヤモンドォォッッ!!」
96Classical名無しさん:08/01/17 01:29 ID:s689QGSY
    
97Classical名無しさん:08/01/17 01:29 ID:y9lzgfss
 三村の絶叫とともに、人形が高速で地面に落ちた瓦礫に向かって拳をぶち込む。
 
――何としたことか!
 
 突如、破壊された瓦礫同士が結合をはじめ、三村の前に高い壁が出現したではないか!
「なっ!?」
 体が止まらない。ヒナギクの体は重力と慣性に従って壁へとつっこんでいく。
 総毛立つ思いで、ヒナギクは両手を交差させた。
(ぶつかるっ!!)
 目を閉じる――何かに抱えられる感触。
 硬質な何かと何かの衝突音――半瞬遅れて軽い衝撃。
 何かに抱かれて落下していく感覚――下方から衝撃があって、体が上下に揺れた。
 
 ――いたく、ない?

 目を開けるとそこには、
「大丈夫か? ヒナギクさん」
「覚悟君!?」
 ヒナギクは状況を悟った。
 壁にぶつかる瞬間、覚悟がその身を呈して守ってくれたのだ。
「か、覚悟君こそ――」
「問題ない。それより、離れていてくれ。
この壁を破壊し、あの男を追うぞ!」
 覚悟が壁を蹴り破ろうとした、まさにその時。

 原付の音が響き渡った。
 またたく間にその音は遠ざかっていく。

「なんてこと……」
 ヒナギクはその場にへたり込んだ。
 ヒナギクの雰囲気から、覚悟は男が逃げ去ったことを知り、拳を下ろした。
 重い沈黙の枷が二人を捕えた。
98Classical名無しさん:08/01/17 01:30 ID:7pScmoNQ
                  
99Classical名無しさん:08/01/17 01:30 ID:y9lzgfss
 ややあって、
「帰ろう、ヒナギクさん。つかささん達が待っている。
「ええ……」
 ヒナギクは足をすすめようとする。
 だが、駅へと引き返すヒナギクの足は、なかなか前に進んでくれなかった。
ついに、ヒナギクの足が止まった。
「ごめんなさい、足手まといにならないなんて言っておいて……」
「意味が理解できない」
 淡々とした答えが返ってきた。
 ヒナギクは唇を噛んだ。
「慰めはやめて! 私を二回もかばわなければ、覚悟君はきっとあいつを倒せてた。
そしたらこれで、何もかも終わったのに……」
 拳を握り締め、ヒナギクは俯いた。
「一度目の時は、俺は二人を俯瞰する立場にあったゆえに、対応できた。
一対一で対峙した場合、初撃を完全にくらっていたかもしれない。防御がせいぜいだろう。
二度目の時もそうだ。あのような面妖な技があると誰が予想できよう?
俺も同じように壁に激突していたに違いない。俺の因果は深く踏み込んで撃つ
ゆえに、俺一人ならば、より重症をおっていた可能性がある」
 覚悟の口調には明快さがあり、事実を述べているという確信があった。
「男を取り逃がしたのは痛恨事だ。
だが、二人とも大事無くてすんだは、二人だったゆえだと思うが……。
ヒナギクさんはそうは思わないのか?」
「でも……」
 俯いたまま拳を握り締めるヒナギクの両肩に、手が置かれた。
「前も言ったが……。できないことがあるからといって自分を追い詰めてはいけない。
人一人の力には限りがある、それを教えてくれたのは、ヒナギクさん、君じゃないか。
君自身がそれを忘れて、どうするんだ」
 顔を上げるとやっぱりまた、覚悟の顔が近くにある。
 でもなぜか――目をそらしたりする気には、なれなかった。
「理不尽に必勝するのが葉隠一族だ。ゆえに、父上にはすくたれ者と叱られよう、
零には腑抜けたかといわれようが……。
あの時、あの言葉と君が、確かに俺を支えてくれた。そして、今も、支えてくれている」
100Classical名無しさん:08/01/17 01:31 ID:y9lzgfss
 無意識にヒナギクは、胸に手を当てていた。
 心がなんだかとても熱い。さっきの殺意に駆られていた時の熱さとは全然違う。
 これは何だろう? これは、これはきっと――
 唐突に覚悟が身を離した。
「す、すまない。また、俺は……」

 ――あっ

 離れてしまった、という気持ちに襲われ、気恥ずかしくなったヒナギクは、顔をあからめた。
 顔を隠すために後ろを向きながら、
「……いいわ、許してあげる」
「む? 今、なんと?」
「……教えてあげない!」
 振り向いてペロっと舌を出し、ヒナギクは悪戯っぽく笑った
 二人の間に暖かな空気が満ちた。
 その空気を壊すのは嫌だったけれど、ヒナギクは苦労して表情を引き締め、
「覚悟君、あの男だけど……」
 覚悟の鉄の如き眉が困惑の形を取った。
「やっていることは悪鬼の所業ではある。
しかし、あの男の話術と演技力は神技の域だと、評せざるを得ない」
 二人は深刻極まる顔で押し黙った。
 あの男の話には、真実があった。
 口調、視線、表情、どれも全てが真実のように見えた。
 特に友への思いを聞いたときは、心を揺さぶられた。

 ――それが全て嘘と演技によるものであるというのに。

 つかさとずっと行動を共にしていた自分たちですら、思わずつかさを疑いそうになった。
 だからこそあれだけ腹が立ったのだ。
 まかり間違えば、あの男の話を信じてしまったかもしれないから。

 ――嘘だ、これは嘘だ。
101Classical名無しさん:08/01/17 01:31 ID:7pScmoNQ
                   
102Classical名無しさん:08/01/17 01:32 ID:s689QGSY
   
103Classical名無しさん:08/01/17 01:32 ID:7pScmoNQ
                                                               
104Classical名無しさん:08/01/17 01:32 ID:ytcaBXxs
         
105Classical名無しさん:08/01/17 01:34 ID:7pScmoNQ
                                                     
106Classical名無しさん:08/01/17 01:34 ID:8OryCmrg
 
107Classical名無しさん:08/01/17 01:34 ID:s689QGSY
     
108Classical名無しさん:08/01/17 01:34 ID:s689QGSY
 
109Classical名無しさん:08/01/17 01:34 ID:s689QGSY
      
110Classical名無しさん:08/01/17 01:34 ID:y9lzgfss
 何度も心に言い聞かせなければ、どちらの話が真実か分からなくなっていた。

 ――恐ろしい。本当に恐ろしい。

 ヒナギクがこれ以上ないというほど眉をひそめつつ、
「何とかしないと、生き残っている人達がみんなでつかさを狙う、
なんてことになりかねないわ」
「そうならぬという保証はないな……。とにかく、川田にも相談してみよう。
川田なら良き案を思いつくかもしれない」
 言いつつ、覚悟は足を速める。
 覚悟に並走しながら、
「覚悟君、だけど私、どうしても分からないことがあるの」
「何だ?」
「どうしてつかさなのかしら? 恨みがあるとは思えないし……」
「俺もそれが気になっていた。何故つかささんを、害しようとする?
しかもあのような方法で」

 考えても考えても答えは出てこない。
 三村信史という怪物に、覚悟ですら、どこか薄ら寒いものを感じたのであった。
 


「くそっ……。柊ぃっっ!!」
 三村は、地面に思い切り拳を叩きつけた。

 ――あの魔女を甘く見ていた。 

 幾らなんでも、殺意満々の刃が飛んでくるとは、予想もしていなかった。
 誠心誠意を持って話せば、言葉は届く。
 彼らのうちの誰かは疑問をもち、かがみからも話を聞こう、
 というような展開になると思っていたのだ。
111Classical名無しさん:08/01/17 01:35 ID:s689QGSY
  
112Classical名無しさん:08/01/17 01:35 ID:s689QGSY
    
113Classical名無しさん:08/01/17 01:35 ID:ytcaBXxs
                    
114Classical名無しさん:08/01/17 01:35 ID:7pScmoNQ
        
115Classical名無しさん:08/01/17 01:35 ID:y9lzgfss
 ――甘っちょろくも。

「どんでもねえ女だ……」
 三村は柊かがみに、ある意味感嘆の念すら抱いていた。
 一体、何をどうやったら、この短期間で同姓、異性の双方の仲間から、
あれほど信頼を勝ち取れるのか?
「見当もつかねえ……」
 演技力と対人の天才、としか言いようが無い。
 実際、女の方は本気で激怒していた。あの刃は受け損ねれば、致命傷だっただろう。
そのせいで、クレイジーダイヤモンドの力加減をミスってしまった。
まだ操作に慣れていないにも関わらず、咄嗟に使ったのだから当然だが……。
これであの男と女は、自分の事を完全に危険人物と認識しただろう。

 ――まあ、あれだけ柊かがみを信じ切っているのだから、今更大差ないが。

「備えあれば憂いなしとはよくいったもんだよな」
 万が一のために考えておいた策だが、まんまと当たった。
 といっても、誰かをおびき出すために壊した塀を復元して追ってこられないようにし、
待機させておいた原付で逃亡、という単純なものだが、シンプルな策ほど強い、ということだ。 
 息を一つ吐き、三村は立ち上がった。
 柊かがみは、正義感の強い男、赤髪の女、おそらくは川田も、完全に篭絡している。
 あの3人は、完全に柊かがみを信じきっている。
それこそ、仲間である柊かがみために、人殺しすら厭わないほどに。
 
 ――誰かに伝えなければならない。
 
 魔女の使い魔に成り下がってしまった奴らと、チームを組んではいけないと。
 三村は、原付をスタートさせた。
 また、禁止エリアかどうか分からない地域を巡ることになるが――

 不思議と恐怖は感じなかった。
116Classical名無しさん:08/01/17 01:36 ID:y9lzgfss
(それぐらいでビビッてて、あの怪物に勝てるわけがないからな)
 三村は、柊かがみの評価を完全に修正していた。
 心の何処かで、柊かがみは、単に理性を失っただけの女かもしれない、と思っていた。
 柊かがみとはそんなに長い時間一緒にいたわけではないが、仲間を思う言動は真実に思えた。
(完全に騙されてたわけだ。俺も、ジョジョも)
 あの女は、どんな人間の心でも手玉にとることができる、化物だ。

 ――ひょっとしたら、優勝に一番近いのはあの女ではないだろうか?

 怖気が背筋を駆け抜け、三村は顔を歪めた。
「だが、そうやすやすと思い通りには、させねえ!」
 あの女は、1つのチームを食いつぶすまでは、次のチームへと手を伸ばすまい。
 その前に自分が他のチームに接触すればいいのだ。

 ――北へ、行ってみるか。

 三村は進路を北へ向けた。
117Classical名無しさん:08/01/17 01:36 ID:ytcaBXxs
   
118Classical名無しさん:08/01/17 01:36 ID:y9lzgfss
【E-3/一日目/夜中】
【三村信史@BATTLE ROYALE】
[状態]:精神疲労(中)、鼻の骨を骨折、顎にダメージ有り(大)、原チャリで移動中
[装備]:トランプ銃@名探偵コナン、クレイジーダイヤモンドのDISC@ジョジョの奇妙な冒険、銀時の原チャリ@銀魂
[道具]:七原秋也のギター@BATTLE ROYALE(紙状態)支給品一式×2
[思考・状況]
基本:老人の野望を打ち砕く。かがみはどんな手段を使ってでも殺す。
1:仲間になってくれそうな参加者に会う。
2:1のために北上する。
3:参加者に出会ったら第三放送の内容を訊く。そして「柊かがみという女は殺し合いに乗っていて、人を一人殺した」と伝える。
4:参加者にあったら柊かがみと一緒にいる、3人(覚悟、ヒナギク、川田)が柊かがみに騙されて、かがみを信じきっていると伝える。
5:再度ハッキングを挑む為、携帯電話を探す。
6:集められた人間の「共通点」を探す。
7:他参加者と接触し、情報を得る。「DIO」は警戒する。
8:『ハッキング』について考える。
9:アーカードは殺す。
[備考]
※つかさをかがみと誤認しています。
※つかさ、覚悟、ヒナギク、川田が柊かがみに、完全に騙されていると思っています(説得不能だと考えています)。
※覚悟、ヒナギクの名前を知りません。
※本編開始前から連れて来られています。
※クレイジーダイヤモンドは物を直す能力のみ使用可能です。
 復元には復元するものの大きさに比例して体力を消費します。
 戦闘する事も可能ですが、大きく体力を消費します。
※ジョセフは死亡したと思っています。
※マップの外に何かがある、と考えています。
※彼が留守番電話にメッセージを残したのは、以下13ヶ所です。なお、メッセージは全て同一です。
 老人ホーム(A−1)、市役所(D−3)、病院(F−4)、消防署(D−4)、学校(C−4)
 総合体育館(D−5)、ホームセンター事務室(H−5)、総合スーパー事務室(D−6)
 変電所(A−8)、汚水処理場(B−8)、ホテル(D−8)、パブ(F−8)、ボーリング場(G−8)
※第三放送を聞き逃しました。
※ジョセフの話(波紋、吸血鬼、柱の男 etc)を信じることにしました。(どの程度まで詳しく話したかは任せます)
119Classical名無しさん:08/01/17 01:37 ID:ytcaBXxs
                
120Classical名無しさん:08/01/17 01:37 ID:y9lzgfss

「……ついたね」
 ようやく見えた病院の正門を見て、つかさがポツリと漏らした。
 目的地に着いたというのに、4人の表情に明るさはなかった。
「葉隠君……」
 ヒナギクがいたわるように覚悟をみやった。
 その視線に覚悟は小さく頷くと、先行して正門をくぐった。
 一瞬の後、

「来るなっ!! つかささん、ヒナギクさん、入ってはいけない!!」

 叫びが聞こえた。
「覚悟君っ!?」
 だが、血相を変えたヒナギクが、真っ先に正門をくぐった。
 一瞬遅れて、川田も、そしてつかさも続く。
 誰もが、覚悟だけを危険に晒すことなどできないと思った。
 危険を潜るのは皆一緒だと強く思った。
 その思いゆえに――見てしまったのだ。

 ――アレはなんだろう?

 ピンク色の、お肉屋さんにならんでいるような形の物は何だろう。
 長い長い白いものが切れ切れに飛び散っている。
 白いものの束が、大きな白い塊からたくさん出ている。
 もしゃもしゃの黒い毛の向こうに黄色いものがみえる。
 赤黒いものがそこらじゅうにぶちまけられていて、
 散らばるもの全てをペイントしている。
 ヒナギクが倒れ掛かって、覚悟に支えられている。
 なんだか物凄くうるさい。耳から酷い振動が伝わってくる。

 ――私の、声?
121Classical名無しさん:08/01/17 01:38 ID:y9lzgfss
 自分が悲鳴を上げていることに、ようやくつかさは気付く。
 顔を歪めた川田に目を覆われる一瞬、下に目をやったら、地面に転がった目玉と目があった。
 つかさの記憶は――そこで途切れた。



「目を閉じるんだ、ヒナギクさん!」
「だ、大丈夫……。私は、大丈夫、だから、つかさ……を」
 言葉とは裏腹に声はひび割れ、大理石を思わせる白い肌は血の気を失って青白い。
 悔恨に顔をしかめつつ、ガタガタ震えているヒナギクを抱え、
覚悟は一気に病院の建物付近まで跳躍した、
川田がつかさを抱えてやってくる。
「とにかく、適当な部屋で寝かせよう」
「異論はない」
 やはり、医者を父親と共に営んでいたという川田は頼もしい。
 覚悟は、川田の背を追い、病院に足を踏み入れた。
「……こりゃあ、一体どういうことだ? 戦争でもしたのか?」
 まさに戦争の惨状であった。
 壁にはいくつも大穴が開き、窓ガラスはことごとく割れ、棚がひっくり返り机が粉砕されている。
 足をすすめるたびに、何かを踏みつぶすハメになり、その度に嫌な音が発生する。
 それでも何とか、つかさとヒナギクを二階の病室へ運びおえ、
 つかさをベッドに横たえ、しぶるヒナギクを半強制的にベッドへ押し込んでドアを閉める。
 期せずして川田と覚悟は、同時に息を吐いた。
「ひでえもんだ……。あの、バラバラになってたのは……」
「新八だ。そしてもう一つの遺体は、坂田さんという人のものに間違いない。
新八から聞いていた外見的特長と合致している」
 川田は腕組みをした。
「パッと見ただけだからなんとも言えねえが、
坂田とかいう人は、どデカイ鈍器で殴られたような外傷だった。
葉隠、俺は……。あの傷には見覚えがある」
 覚悟が目だけで後を促すと、川田は眉間に皺を寄せ、
122Classical名無しさん:08/01/17 01:38 ID:s689QGSY
   
123Classical名無しさん:08/01/17 01:38 ID:y9lzgfss
「ラオウに殺された、本郷猛って人にあった外傷とよく似てやがる」
 握り締められた覚悟の拳が軋みをあげた。
「待て……。俺は、断定はしないぜ?
ラオウと似たような技を使う奴がいないとは、言いきれねえ。
そうなるとラオウと肩を並べるような奴が、後、一人か二人、いるかもしれないってことだ。
それともう一つ――」
 そこで一息入れ、川田は続けた。
「新八って人の外傷だが……。正直、よくわからねえ傷だ」
「どういう意味だ?」
 覚悟が問い返すと、川田は困惑の深い皺を表情に浮かべ、
「まんまの意味だ。爆薬でも使って人間を吹き飛ばせば、ああいうことになる。
ただ、じっくり見たわけじゃないからなんとも言えないんだが、どうも違う気がする。
まあ、俺の気のせいならいいんだがな……」
 最後の方は呟くように言って、
「葉隠、お前は部屋でヒナギクさん達を看ていてくれ。
俺は下へ行って、使えるものがないか探してくる」
 覚悟の表情が、わずかにしかめられた。
「……表の遺体をどうにかしたいって気持ちは分かる。
コナンって子や吉良って人が気になるのも分かる。
だが、この病院はいつ襲われるか分かったものじゃないんだ。
そいつがラオウと同レベルの奴だったら、その時に対抗できるのは、葉隠、お前だけなんだ。
頼む、今は自重してくれ……」
 言い置いて、川田は階下へと降りていく。
 覚悟は瞑目しながら、新八の霊に向かって詫びた。
(許してくれ……。この戦いが全て片付いたならば、必ず!)
 あの賢かった少年、コナンのことも気になるが、どうにもならない。
 ここには、守らなければならない人たちがいるのだから。
 類稀なる自制心を発揮して、覚悟が心の水面の揺れを止め、
直立不動でドアの前に立つこと数分。
 ノックの音がして、
「もしも〜し」
 覚悟は、驚きの光彩を目に浮かび上がらせた。
124Classical名無しさん:08/01/17 01:39 ID:s689QGSY
  
125Classical名無しさん:08/01/17 01:39 ID:y9lzgfss
(逆のような気がするが……。ヒナギクさん達の世界の風習なのだろうか?)
 戸惑いつつも、
「どうぞ」
 覚悟が言うと同時にドアが開き、ヒナギクが顔を出した。
「大事ないか? ヒナギクさん」
「ダメね……私。取り乱しちゃいけないと思ったんだけど……」
 ヒナギクは唇を噛んだ。
 はあっとため息を一つつき、
「川田くんが戻ってきたら、例のこと、教えてあげて。
不幸中の幸いって言ったらつかさに悪いけど……。いい機会だわ」
 ヒナギクは声をひそめて言った。
「そうしよう」
 するとヒナギクは少し意地の悪い表情を浮かべ、
「つかさが起きたらすぐ呼ぶから、別に中の様子をうかがったりしなくて、平気よ」
「そんなことはしない」
「それにしても……。川田君は、中で看てろと言ってたと思うんだけど?」
「聞いていたのか?」
「聞いてたら悪いの?」
「……俺はここで見張りをする」
「中でやればいいじゃない。ベッドも、もう一つあるわよ?」
「それはできない」
「どうして?」
「男子たる者の道に反するからだ」
「道って……。でも、その格好じゃ休めないでしょ?」
「問題ない。俺は疲れてなどいない」
「ここまで歩いてきて、アイツと戦ったのに?」
「仔細なし」
 頭痛をこらえるように、ヒナギクは額を抑えた後、
「ちょっと待ってて」
 言い残してドアの向こうに消えた。
 しばらくして、
「これ、使って」
126Classical名無しさん:08/01/17 01:40 ID:y9lzgfss
 差し出された核鉄を見て、覚悟は首を横に振った。
「それはヒナギクさんが使うべきものだ」
「大分良くなったから、もういいわ。覚悟君の方がはるかに重症よ」
 覚悟が拒もうとすると、ヒナギクはぐいっと顔を近づけ、
「……どうしてもいらないっていうなら、私もそこで見張りをするけど、
それでもいいわけ?」
 そのまま二人はにらみ合った。
「では、使わせてもらう」
 ついに根負けした覚悟が核鉄に手を伸ばすと、
「じゃ、私休むから」
 勝ち誇ったような笑顔を浮かべながら、ヒナギクはドアを閉めようとする。
「ヒナギクさん」
「何?」
 締める動作を中断してヒナギクが尋ねる。
「……安心して休んでくれ」
「うん……。川田くんとの話がまとまったら、教えてね……。
つかさが起きたら、今後のこと考えましょ。どっちへ先に行くか、決めないとね」
「そうだな」
 覚悟が頷くと、ヒナギクは微笑を浮かべ、ドアを閉めた。
 手元の核鉄を見ながら、覚悟はしばし思案した後、核鉄を右腕につけた。
 痛みで拳を撃つ手を緩める覚悟ではないが、流石に、折れた場合は腕が稼動しない。
 
 ――我が身は全て必勝の手段。攻撃手段さえ残されていれば良い。
  
 覚悟は立ったまま目を閉じた。



 その頃、川田は事務室で電話機のネジをドライバーで外していた。
 解体し続けながら、留守電に吹き込まれていた内容をもう一度、頭の中で繰り返す。
(つかささんの話だと、いいお姉さんらしいんだがな……。
いざとなったら自分の命の方が可愛いってのは、まあ、ありえるな。
127Classical名無しさん:08/01/17 01:41 ID:s689QGSY
       
128Classical名無しさん:08/01/17 01:41 ID:y9lzgfss
もしくは、つかささんを生き残らせるために殺して回ってるって線も、一応なくはない、か?
もちろん誤解やら嘘という可能性もある。そうあって欲しいもんだ)
 あれこれと考えを巡らしながら事務室を出て、川田は破壊した電話機を、
 病院内で破壊がもっとも酷い空間に、ばら撒いた。
(つかささんが知ったら、お姉さんを止めにいこうとするに、決まってる。
だがこの空間じゃ、探し人と会えるかどうかは運任せだ。
実際、村雨って人は影も形も見えやしねえ……。それならいっそ、教えない方がいい)
 何より――

 ――つかさに悲しい顔をさせたくない。

 だが、仮につかさの姉、柊かがみが殺し合いに乗っていた場合のことも、考えておく必要がある。
(なんといっても、つかささんの大好きなお姉さんだからな……。
仮に殺し合いに乗っていたとしても、説得に応じるならよし、だ)
 だが、万が一の時は――
(三人に任せられない汚れ仕事をやるのが、俺の役目だ)
 医薬品を手にして階段を上る川田の瞳が、一瞬、漆黒の光を放った。


【F-4/病院 1日目 夜中】
【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に火傷(治療済み) 胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ、
    両腕の骨にひびあり(右腕を核鉄で治療中) 強い決意
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)
[道具]:ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾5発、劣化ウラン弾、残弾6発)@HELLSING 大阪名物ハリセンちょっぷ
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者を必ず倒し、彼らの持つ強化外骨格を破壊する。
1:川田が来たら、あの男(三村信史)のことを相談する。
2:つかさが起きたら、寺へ向かうか神社へ向かうかも含め今後の方針について相談する。
3:生存者(コナン、吉良)の救出
129Classical名無しさん:08/01/17 01:42 ID:y9lzgfss
[備考]原作一巻第一話、逆十時学園入学初日より参戦
※三村信史を、つかさの悪評をばら撒く者と認識し、警戒しています。
※三村信史がどうしてつかさの悪評をばら撒こうとするのか疑問に感じています。

※決意が強まりました、殺し合いに乗った者が戦士であるならば容赦はしません。
※戦士でないと判断した者(一般人の女性や子供など)に対しては決して抵抗せず、 説得を試みます。
130Classical名無しさん:08/01/17 01:42 ID:bT9UbixA
支援
131Classical名無しさん:08/01/17 01:43 ID:y9lzgfss
【川田章吾@BATTLE ROYALE】
[状態] 健康
[装備] マイクロウージー(9ミリパラベラム弾16/32)、予備マガジン5、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
[道具] 支給品一式×2、チョココロネ(残り5つ)@らき☆すた
    文化包丁、救急箱、ZXのメモリーキューブ@仮面ライダーSPIRITS、裁縫道具(針や糸など)
    ツールセット、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、缶詰やレトルトといった食料品。
    薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(四本消費) ツールナイフ
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗っていない参加者を一人でも多く救出し、最後は主催者にカウンターパンチ
1:全員の手当て
2:つかさが起きたら、寺へ向かうか神社へ向かうかも含め今後の方針について相談する
3:仲間と一緒にPCと村雨を探す。PCが見つかったら、ハッキングを試みる
4:生存者(コナン、吉良)の救出
5:ゲームに乗っている参加者と遭遇した場合は容赦なく殺す(柊つかさを含む)
参戦時期:原作で死亡した直後
[備考]
※三村の吹き込んだ留守禄を聞きました。
※三村の留守禄の内容を、覚悟、ヒナギク、つかさに伝えるつもりはありません。
※柊かがみについては、今のところニュートラルな見解です。
 ただし、つかさを殺して優勝しようとしているのであれば、
 3人に秘密裏に説得し、説得不能ならば殺そうと考えています。

※桐山や杉村たちも自分と同じく原作世界死後からの参戦だと思っています
※首輪は川田が以前解除したものとは別のものです
132Classical名無しさん:08/01/17 01:43 ID:ytcaBXxs
     
133Classical名無しさん:08/01/17 01:43 ID:y9lzgfss
【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 両足に痛み(弱)
[装備] ボウガン@北斗の拳
[道具] 支給品一式。ボウガンの矢18@北斗の拳 、核鉄(バルキリースカート)@武装錬金
[思考・状況]
基本:ハヤテ達との合流
1:とりあえず休む。
2:川田と覚悟から、三村信史にどう対応するかを聞く。
3:つかさが起きたら、寺へ向かうか神社へ向かうかも含め今後の方針について相談する
4:生存者(コナン、吉良)の救出
5:やれることを探してやる。だが無理はしない。

[備考]
※三村信史を、つかさの悪評をばら撒く者と認識し、警戒しています。
※三村信史がどうしてつかさの悪評をばら撒こうとするのか疑問に感じています。

※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです
※桂ヒナギクのデイパック(不明支給品1〜3品)は【H-4 林】のどこかに落ちています
※ロードローラー@ジョジョの奇妙な冒険と捕獲網@グラップラー刃牙は【H-4 林】に落ちています
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました
※バルキリースカートが扱えるようになりました。しかし精密かつ高速な動きは出来ません。
 空中から地上に叩きつける戦い方をするつもりですが、足にかなりの負担がかかります。
134Classical名無しさん:08/01/17 01:44 ID:y9lzgfss
【柊つかさ@らき☆すた】
[状態] 健康、(新八のバラバラ死体を見たいことによるショックで気絶中)
[装備] なし
[道具] 支給品一式、ホーリーの制服@スクライド、ターボエンジン付きスケボー @名探偵コナン 、ツールナイフ
[思考・状況]
基本:ゲームには絶対に乗らない
1:生存者(コナン、吉良)の救出
2:仲間と一緒にPCと村雨を探す。
3:お姉ちゃんやこなちゃんたちと合流したい
4:みんなの力になりたい。でも無理はしない
[備考]
※川田、ヒナギク、覚悟、新八を完全に信用しています

【備考】
※4人はつかさが目覚めるのを待って
神社、寺のどちらを捜索するかを話し合う予定です。

※4人の主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。

※4人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首輪には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている

※4人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論。
135 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:45 ID:y9lzgfss


かくして、彼らの頭の中に『怪物』が生まれた。

生まれ出でた『怪物』は二匹。

いや、三………?


136Classical名無しさん:08/01/17 01:45 ID:vwuvOEsA
 
137 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 01:46 ID:y9lzgfss
以上で投下終了です。
深夜にもかかわらず、長い間の支援、ありがとうございました。
138Classical名無しさん:08/01/17 01:48 ID:asN5VRrA

 KOOL蝶頑張れ!
 この疑心暗鬼の連鎖っぷりがまさにバトルロワイアル!
139Classical名無しさん:08/01/17 01:53 ID:bT9UbixA
GJ!
駄目だこのKOOL・・・、早く何とかしないと・・・
あっちもこっちも誤解だらけで対主催も大変だ。某所といいここといいかがみは対主催に爆弾を持ち込む天才だなw
140Classical名無しさん:08/01/17 01:56 ID:vwuvOEsA
投下乙!

>>◆MANGA/k/d.氏
吉良が吉良らしすぎる……生まれついての悪たァオメーのことだよ…
コナンと服部はコンビ組んで本領発揮って感じだけど、アミバのダイイングメッセージをいつ使うかだな…
神楽については聞く耳もたなそうだし、下手に時間かけると吉良に殺られそうだし
我らのスーパーヒーロー劉鳳は暴走せずにいられるのかッ!? 続きが気になるゥ!

>>◆wivGPSoRoE氏
KOOLゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!
ジョセフへの友情は美しいが方向性がァァァァァッ!!
原作でも信用できるやつとできないやつはきっちりしてたがここまでとはッ!
4人の友情が脆かったらアウトだったな……川田は暴走してくれるなよ
141Classical名無しさん:08/01/17 01:56 ID:ytcaBXxs
GJ!
凄い……誤解フラグです……
状況によっては川田がかがみに疑いを持つわけですなw
覚悟とヒナギクの怒りを持つシーンが印象的でした。
果たして三村はどう進むか。
142Classical名無しさん:08/01/17 02:01 ID:4FhNB7sk
乙です!!
誤解が誤解を生む負のスパイラル。
もうちょっと落ち着いてお互いの情報を交換し合えたら・・・。
本当はいい奴ばっかりなのに。
143Classical名無しさん:08/01/17 02:03 ID:Mbh8r3ko
投下乙! KOOLてめぇ俺のオアシスチームによくもやってくれたな! いいぞ、もっとやれ!
でも、ヒナギクと覚悟にフラグ立ってますね。全く……こいつらw
いい感じになってるところに爆弾男乱入&死体発見。
そして川田の不吉な……。
144 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 02:06 ID:y9lzgfss
>>131
修正します。

×5:ゲームに乗っている参加者と遭遇した場合は容赦なく殺す(柊つかさを含む)

○5:ゲームに乗っている参加者と遭遇した場合は容赦なく殺す。
145Classical名無しさん:08/01/17 02:08 ID:UFIkL7b6
GJ!
今後の展開に大きな幅を持たせる良い話でした。
ただキラークイーンによって爆破されたため、新八の死体は一欠けらさえも残ってないので、その部分は修正する必要があります。
あと川田の状態表の思考5はつかさじゃなくてかがみだと思うのですが、どうなんでしょうか。
146Classical名無しさん:08/01/17 02:11 ID:7pScmoNQ
さて、新たなるKOOL伝説の幕開けか……
正直な話、ここがバーロ伝説を越えるかどうかの……ゴメン嘘。

誤解フラグとは、バトロワらしい。
だが、このロワではなぜか珍しい……
今のところ、勝以来じゃないか。


>>144
乙です。
覚悟は坂田銀時に一度だけ会ったことがあります。
ですので、>>121は少々おかしいかと。
147 ◆wivGPSoRoE :08/01/17 02:13 ID:y9lzgfss
>>145-146
一部誤読があったようです。
できるだけ速く修正しますが、ちょっとここ数日予定が……。
少しお待ちくださいませ。
148 ◆O4VWua9pzs :08/01/17 09:40 ID:XtqYH35o
遅れましたが
SSが完成しました
投下します
149I bet my belief:08/01/17 09:42 ID:XtqYH35o
ガタンゴトンと一定の間隔で揺らぐ車内。車窓から見える景色は車内から漏れる明かりに照らされたコンクリートの壁。
壁についた黒く汚れたシミが規則的な間隔で流れていく。眠気を誘うように流れてく。
そんな心地よい揺らぎの中、向き合ったまま座り込んでいたアカギとジグマール。
二人はお互いに知っていることやここに来た経緯など情報を交換した後、黙り込んでいた。
規則的に電車のうなる音、静寂を意味する音が響く。

沈黙が包み込む中、ジグマールは気まずい思いを抱いていた。
目の前でだらんと何もない空間を見つめるアカギをちらっと覗き見る。
一時的に協定関係を組んでいるとはいえ、元々お互いに何も知らない同士だ。
ジグマールはアカギの底知れぬ空気に圧倒させられていた。
この男が放つオーラ。自分の思惑も全て見透かれてしまうではないかと思わせる異様さ。
それに畏怖していた。

ジグマールはそんなことを振り切るかのように別のことを考えることにした。
先ほどS7駅で繰り広げられた戦いを思い出す。あの戦いで幾人のも猛者が乱闘を繰り広げていた。
自分は無駄な体力を消費したくなかったので、前線から一歩引いていたのだが。
そのなかで最も印象深い戦いがあった。ケンシロウとDIOと名乗る化け物との戦いであった。
見所はケンシロウの人間離れした戦闘能力? それとも、劉邦と吉良と同じ自動人形タイプのアルター使いであろう、DIOの人間離れした戦闘能力?
違う。確かに奴らの戦闘能力は目に見張るものがある。
だが、ジグマールが一番興味を抱いたもの。DIOの『人間ワープ』の疑惑だ。
私が見た限り、奴はケンシロウ相手に三度、私と同じ『人間ワープ』を使っていた。

ジグマールは記憶を手繰り寄せる。
最初の疑惑。ケンシロウがDIO目掛け、拳を振り上げた瞬間、DIOはケンシロウの側面にいた。
二つ目の疑惑。ケンシロウがDIOの背後に回った瞬間、DIOはケンシロウの背後にいた。
三つ目の疑惑。DIOが氷上を滑走中、瞬く間にケンシロウの目に指を突き入れたDIOがいた。
この三つは全て瞬きをする一瞬の出来事内で行われていた。明らかに自分の能力である『人間ワープ』と酷似していた。
150I bet my belief:08/01/17 09:45 ID:XtqYH35o
だが、『人間ワープ』では説明の付かない違和感があった。

最初の疑惑時、ケンシロウの側面でDIOは剣を持っていた。
素手立ち向かっていた男が突然剣を持っていたのだ。素手の状態から剣を持った状態に変化する。
これは明らかに可笑しい。
奴はいつ剣を抜き出したのだ? そんな動作は一切見られなかった。
ワープ中に引き出したのか? いや……それは不可能だ。
『人間ワープ』は一瞬で移動する技であり、まさに一瞬である。
もし、私が素手の状態で『人間ワープ』したなら、素手の状態で移動先に着くのだ。
剣を抜き出すタイミングはワープ使用前か使用後しか出来ない。
現に『人間ワープ』の能力を持つ私が思うのだ、DIOの『人間ワープ』は明らかに可笑しい。
更にだ。二つ目の疑惑は可笑しくないのだが、三つ目も色々と変なのだ。
移動した瞬間、ケンシロウの目に指を突き刺した状態であったことだ。
ワープした瞬間、突き刺さっているのだ。
走っている状態から目に突き入れている状態への変化。
ありえない。『人間ワープ』ではありえない。
しかし、瞬間的に移動する点では『人間ワープ』である。
これ以上説明がつかない。

うーんと無意識のうちに頭を捻るジグマール。そんな悩める彼に不適な笑いが耳に付く。
「ククク……何か迷いごとかい? ジグマールさん」
アカギが声をかける。
「いや…少し分からないことがあって、悩んでいただけだ……別に気にすることではない」
ほんの些細な疑問なのでジグマールは言葉を濁す。
「ジグマールさん……分からないことは自分の中で溜めておくべきではありませんよ。
 時には……他人と相談することで…見聞が広がるってもんです」
アカギの尤もらしい意見にジグマールはそれもそうだなと納得し、己が感じた違和感を話す。
151I bet my belief:08/01/17 09:47 ID:XtqYH35o

「―――というわけ何だが、形だけでは『人間ワープ』なんだが、どうも『人間ワープ』では説明できないことが起きているんだ。
 DIOの『人間ワープ』はどうしてもありえないのだ」
ありえない。殺し合いの舞台に来てからそんなことが多すぎる気がする。
自分に課せられた制限にしろ、自分と同等の強者が跋扈するにしろ、多すぎるのだ。
「…へえ……DIOというアルター能力者がねえ…」
アカギは虚空を見つめるように考えている。

ジグマールはケガの治療のスキンシップ時、自分が知る限りの情報をアカギに与えた。
アルター能力のことや自分が出会った人物たちの情報を簡単にだ。
元々殺し合いに参加していることを看破されたのだ。別段隠す必要はなった。
もちろん自分が不利にならないように歪曲した事実で伝えてある。
それと、自分がアルター使いであることも隠している。
下手に自分の能力を晒すわけにいかない。一般人を装うことで最後まで生き残るために。

「なぜ…ジグマールさんはありえないと感じるんですか?
 話しを聞く限りでは……『人間ワープ』でいいと思いますが…」
「そ、それは…」
嫌の事を聞かれる。ここで適当なことを言えば、疑われてしまう。
自分が『人間ワープ』使えるからこそ、ありえないと感じるわけで、一般人が一見するぐらいではDIOの能力は『人間ワープ』と捉えられるのだ。
それは、目の前のアカギにしろ、同じに違いない。
ここは私の口八丁が試される執念場だ。
「わ、私の知り合いに同じ能力のアルター使いがいるのだ。だからこそ、ありえないのだよ……アカギ君」
「……そうですか…それなら納得だ」
咄嗟のデマカセが効いたのかアカギは何の疑問を浮かべず、思案状態に入った。
ジグマールはひやひやしながら胸を撫で下ろした。
ガタンゴトンとまた静寂を意味する音が聞こえる。目の前のアカギは黙ったままだ。

すると突然。
152I bet my belief:08/01/17 09:50 ID:XtqYH35o
「カテイがないのだろ…」
アカギが静かに口開く。
「…かてい……それって、親子とか夫婦を形成する『家庭』」
「フフ…違う違う……『過程』だ。
 物事の進行の途中を意味するプロセスだ」
「プロセス?」
「そうだ……プロセスだ」
「それはどういう……」
突然。車内にアナウンスが鳴り響く。
S8駅に到着を意味するアナウンスがジグマールの言葉を遮る。
電車がS8駅に到着するとアカギは一通り、駅構内を眺めると、突然立ち上がり、ジグマールの手を取る。
「ど、どうしたのだ! アカギ!?」
「ジグマールさん、予定が変わった…ここで降りるぞ」
ジグマールはアカギの突如の変わりように驚きながらも、その気迫さに押し止められ、流されるようにS8駅に引っ張りだされた。
「一体どうしたのだ!? アカギがここに降りても……」
そうだ。本来ならボーリング場に向かうはずだった。
それなら、ボーリング場の最寄駅であるS9駅もしくはS10駅に降りるべきだ。
なのに…。

「くく……あと数分後に……三回目の放送が始まるんだ」
「……!!」
ジグマールはハッとする。失念していたのだ。
もうすぐ、放送が始まるというのに危険に合うことを恐れ、無理矢理アカギを引っ張り出し、南行きの電車に飛び乗ったのである。
そのとき、三回目の放送がそろそろ始まる時間だったのに、焦燥のあまり、時間など毛頭になかったのだ。
普通に考えれば電車内に放送が流れるだろう。
が、もし流れない仕様だったなら、完全聞き逃していたかもしれない。
アカギが時間に気づかなければ、電車に乗ったまま、聞き逃すところだったのだ。
アカギはズボンに手を突っ込みながら、横目でジグマールを覗く。
理解が早くて助かるといった目で見つめている。
ジグマールは何となくその小ばかにしたような目に苛立ちを覚える。
153I bet my belief:08/01/17 09:51 ID:XtqYH35o
「で、どうするんだ。これから? 大幅に予定が狂ってしまったのだが」
「本当なら……もっと早くS10駅に着くと考えていたけどね……。
 ここは臨機応変ってことで行きましょう」
コツコツと駅構内を歩きながら、アカギは改札口に向かった。
「くっ」
ジグマールはなんとも性格を掴め辛いアカギに苛つきながら後を追う。
奴は私の僕ではなかったのか、と自問自答しながらジグマールは付いていった。

そのときである。アカギに対する苛つきを吹き飛ばす声が広がった。
『さて諸君―――』
糞忌々しい光成の声だ。
今の無様の現状に怒りを覚えるジグマール。
ほぼ無制限に使用できた『人間ワープ』がかなり制限によって使用できないこと。
本来の力さえ、解放できれば、恐怖に怯えず戦えるのに。
「畜生っ」
もやもやとした怒りをどう発散していいのかジグマールは言葉を漏らす。
怒りに打ち震えるジグマールを尻目にアカギは淡々と放送内容を聞き入っていた。
相変わらず表情に変化がみられないアカギ。
何を思っているのであろうか? 何を感じとっているのであろうか?
この男は何者だと更にアカギに対する認識が不透明になっていく。

+++
154I bet my belief:08/01/17 09:55 ID:XtqYH35o

散乱したガラスの破片、散らかった書類。乱れたデスクの数々。
アカギとジグマールは壮絶な光景となっている車掌室に探りに入っていた。
争ったらしき形跡が根強く残った車掌室。

本来ならボーリング場に行くため、S10駅の電車に乗るつもりだったのだが。
その方面行きが半時間待ちになっていたのだ。
そこで、アカギの提案で空き時間を利用して、周囲を探索することになったのだ。
その途中、アカギが構内の廊下に途轍もない力で拉げられたデスクが転がっているのを発見したため、今の状態に至ったのだが。
ジグマールにとって、それは気が気になって仕方がなかった。

この惨状を作り出したのは自分のアルターであるギャラン=ドゥであったので、ここを調べても何も情報が得られないからだ。
それに、末恐ろしい観察力を持つアカギにあまり詮索されたくなかったのだ。
ジグマールは次のところに行かないかと、アカギに促していた。
「まあまあ……ジグマールさん……そんなに急ぐことはありませんよ」
アカギは室内に放置されていたバズーカーを手に取りながら、中に弾が込められていないことを確認すると辺りを見渡す。
「ジグマールさん……変だと思いませんか…」
壁を見渡しながらジグマールに尋ねる。
「特におかしい所はないと思うが……」
アカギ弾切れになったバズーカーの引き金をカチカチと鳴らす。
「弾切れになっているのに、この部屋には銃創が一切残っていない……変だと思いません?」
「それも……そうだな」
適当に相槌を入れるジグマール。
155I bet my belief:08/01/17 09:58 ID:XtqYH35o
「……一見…この部屋は争いごとがあったとしか思えない…しかし……それが全く感じられない」
どうしてそんなことが分かるんだ、とジグマールはアカギに疑いのまなざしを向ける。
「簡単なことだ…足元を見れば分かる」
ジグマールは足元を見る。
そこには自分の顔が映るほど綺麗に透き通った白いタイルが規則的に並んでいる。
「ただ白いタイルが敷かれているぐらいじゃないか」
「ククク……床には一切跡が残ってない…。
普通争いがあればなんらかなの形で跡を残す。
 人間である以上……逃げるにしろ…闘うにしろ…自分の脚力を奮い立たせ地を蹴る。
 だが…ここには一切擦り切れた靴の跡がない。つまり……ここで争いなんてなかった」
「争いがなかったことに何の意味がある? それにあれはどう説明する」
ジグマールは指差す。その方向には無残な姿になったワークデスクがあった。
「オレが思うに…あれは怒りのあまり…投げ飛ばしたんだ」
なんとも根拠のない答え。だが、アカギが次に紡ぐ言葉にジグマールの中で戦慄が走る。
「手に取るように分かる……自分が強者であると自覚した奴で…プライドを逆撫でされたんだ。
 気にくわないことがあったのだろう……思い通りにならなかっただろう。
 ……怒りの限りね…」
アカギは目を閉じ、想像しながら語った。
ジグマールに身の毛が弥立つ。
アカギはまるでここでギャラン=ドゥと自分の出来事を見たかのように語るのだ。
「まるで根拠がない。それに、それを知って何の意味がある?」
アカギの馬鹿げた推論に無意識に声を荒げる。
いや、違う。ジグマールは恐れていたのだ。
もしかして、アカギは自分の能力を暴いてしまうではないかと。
アカギの悪魔じみた洞察力に身を凍えさせていた。
「ククク…相手の思考を読み上げることは……駆け引きには重要なことだ」
そう言うと、アカギは興味がなくなったのか車掌室からそそくさと出て行った。
ジグマールも置いていかれないように付いて行く。思考が付いていけない、そう思いながら後を追う。
156I bet my belief:08/01/17 10:01 ID:XtqYH35o
S8駅に出ると、空はもうすっかり夕方の名残を鳴り潜め、外には紺碧の夜空が広がっていた。
そんな夜空の下にアカギとジグマールはマンションに向かっていた。
間隔ごとに並んだ電灯を灯りに二人は目的地に突き進んでいた。
一度マンションに立ち寄ったことがあるジグマール。
アカギに特に何もなかったことを進言するが、アカギはお構い無しに歩き進んでいた。
ジグマールは頑固な奴だと、ため息をつきながら一緒に行動していた。

相変わらず、会話のない二人。
何も会話がないのも難だったので、ジグマールはこの機会に聞き忘れていた疑問を尋ねた。
電車の中でアナウンスに邪魔され、聞きそびれたアカギの回答。DIOの能力の考察を。
「そういえば、アカギ……DIOの能力のことだが…」
いまさら聞くのは何となく負けたようで胸がむかつくがそんなことは言ってられない。
答えがまだ分からないのだ。仕方なしに聞く。
「何を言おうとしていたのだ?」

不適な笑みを浮かべるアカギ。その目は全てを吸い込みそうなぐらい深い。
ジグマールは目を背けたくなる。が、負けじと視線を交差させる。
「……プロセスがないのだろ…DIOの『人間ワープ』は…」
「プロセスだと……『人間ワープ』には元々『過程』などない」
現在地から目的地に一瞬で移動する『人間ワープ』。
空間を支配したこそ可能にしたこの能力。
空間と空間を繋げることで一瞬の内に移動することが可能なのだ。
過程という概念など最初からありはしない。

「フフ…言い方が悪かったな……言い直す。
 DIOの『人間ワープ』は『過程』が省略されている…」
「省略…それはどういう意味だ?」
「そのままの意味さ。『過程』が省略されているのさ」
「だからどういう意味なのだ!?」

ジグマールはアカギのもったいぶった言い回しに苛立つ。
157Classical名無しさん:08/01/17 10:03 ID:cj..Ai..
早朝支援♪
158Classical名無しさん:08/01/17 10:04 ID:GDwfbsEI
支援
159I bet my belief:08/01/17 10:05 ID:XtqYH35o

すると、アカギは足を止め、視線に上に上げる。
「おっと……目的地に着いたようだな…」
目の前には大きく聳え立つマンションがあった。
どの部屋も光が灯らず、暗鬱な空気を漂わせていた。

アカギはそんなマンションに立ち寄ろうと入り口に進む。
しかし、ジグマールはそれを遮る。
「ここには何もない!! その前に先ほどの意味をおしえてもらいたい」
ジグマールにとってケンシロウとキュルケの出会いの場所。
これといって何も変哲もないマンション。
「フフ……そんな焦る必要はありません…」
アカギは掻き割るように突き進むが。
身体を大の字に広げ、反復横跳びの要領でマンションの入り口をとうせんぼするため、中に入れなかった。
「教えるまでここは通さんぞ!! さあ、私に教えるがよい」

「……やれやれ」
アカギは勝てないなと呆れながら、視線をジグマールから逸らす。
その視線の先に興味深いものがあった。崩壊したビルの瓦礫である。
それは約200メートル先に不気味に佇んでいた。
戦闘があったのだろうか、ジグマールの情報に無い光景。
アカギは埒があかないと話をすりかえる。
「分かったよ……ジグマールさん…あそこの瓦礫に着いたら……教えてやりますよ」
「いいだろう。しかし……歩きながら教えろ」
「……やれやれ…分かりました」
160Classical名無しさん:08/01/17 10:05 ID:cj..Ai..
こんな早朝からとは、気にしてたんだな。良く頑張ったよ支援
161Classical名無しさん:08/01/17 10:07 ID:GDwfbsEI
 
162I bet my belief:08/01/17 10:08 ID:XtqYH35o

瓦礫のまでの道中。闇夜が覆い尽くす道路を歩く影。
ランタンの明かりだけが瓦礫へと続かせる道しるべ。
ジグマールは歩きながらアカギの考察の続きを聞き入れていた。

「…ジグマールさんが指す『人間ワープ』は瞬間的に目的の場所に移動するんだろ…。
 つまり……『始動』から『始動』に移動するというわけだ…」
ジグマールは理解できずに言い噤む。
「……例えば何らかの状態で『人間ワープ』を使えば……同じ状態で移動する。
 そこから…攻撃するなり…防御するなり…行動を『始動』させるということだ…
 さっきも言った通り……『始動』から『始動』に移動するわけさ…」

アカギは更に言葉を続ける。
「だが…DIOの『人間ワープ』は『始動』から『結果』に一瞬で移動すると考えられる。
 つまりだ……
・始動→過程→結果
 とする、当たり前の流れが…
・始動→結果
 と、『過程』が省略されていることだ…
 そしてだ。ジグマールさんの三つ目の疑惑に当てはめてみる……
・DIOがケンシロウの元へ向かう→ケンシロウの側に移動→目に指を突き刺す
 という流れになり、そこに『過程』である『ケンシロウの側に移動』を取り除けば…
・DIOがケンシロウの元へ向かう→目に指を突き刺す
 ジグマールさんが知覚した光景に当てはまるわけさ……まさに一瞬の出来事だ…」

ジグマールはアカギの凄まじい考察力に驚愕した。
「つまり…奴の能力は最初から『人間ワープ』ではなく」
「そう……元々別の能力だったわけさ……」
アカギがそう言うといつの間にか目的の瓦礫に到着していた。
163Classical名無しさん:08/01/17 10:10 ID:GDwfbsEI
アカギ支援
164I bet my belief:08/01/17 10:10 ID:XtqYH35o

瓦礫。崩壊したビルの面影は一切無く、ただ不気味であった。
全面に敷き詰まれたガラスの破片。
所々に散漫したコンクリートの塊、突き出た鉄柱のオブジェが飾られ、電灯の明かりと合わさって不気味さを演出させている。
タンクから漏れ出す水滴の音、歩くたびにガチガチとガラスの金切り音がまるで鎮魂歌を思わせるメロディーを奏でる。
そんな情景にジグマールはなんともいえない不気味さを感じた。

「一つ聞いていいですか? DIOが能力を使用した時……周囲の状態は変化していましたか?」
アカギは瓦礫を探索しながら問いかけた。
「いや…別段変化はなかったが?」
「そうか……それなら……DIOの能力が判明した」
またもやジグマールは驚愕する。
「奴の能力は……何秒かその場にいる人間の知覚と動きを止める能力だと考えていた。
 しかし……その能力だと周囲の変化は止められない。
 ジグマールさんの意見を踏まえると…この線は無い…
 そこで……知覚も動きも周囲を止める能力だと判断できる・・・
 つまりDIOの能力は―――」
アカギが言い終える前に、ジグマールは理解した。
ここまで来れば、ほとんどの者は自ら答えを導けるだろう。
奴の不自然なワープ移動の謎が解けていく。
知覚も動きも周囲を止めるだと、だとすれば…

「―――時を止める能力」

ジグマールの膝が瓦礫の上に崩れ落ちる。
ガラスの破片が膝に少し喰い込んだが、痛みは感じなかった。
まさに自分のプライドが崩壊した瞬間であった。
165Classical名無しさん:08/01/17 10:11 ID:cj..Ai..
あ・か・ぎ! 支援
166I bet my belief:08/01/17 10:16 ID:XtqYH35o

空間を支配した『人間ワープ』。世界を制することが出来る最強のアルター能力だ。
だが、しかしDIOはそれを遥かに上回る能力。
時間を支配した『タイムストップ』。まさに神がかりの能力だ。
本当に世界を制することが出来るアルター能力だ。
そして、何の対抗策も無い。

最強のアルター使いDIO。
優れた運動神経を有しており、目からビームを放出し、周囲を凍らし、高い再生能力を持ち、更に時を止める具現体を持つ化け物。
それがDIO。
勝てるはずない。僕の能力でも勝てるはずない。
ギャラン=ドゥですら勝てない。DIOの能力は反則だ。馬鹿げている。
奴は三度も『タイムストップ』の能力を使っている。いや、もっと多く使用していた可能性さえある。
しかも、反則に近い能力なのに体力もそんなに消費してないように見える。

自分は『人間ワープ』を使用するたび、かなり体力が消費されるのに何故……奴は?
何故? 僕の能力だけ、こんなにも制限されるのだ。
何故? 僕が何をしたっていうのだ。
畜生!! 畜生!! 畜生!!

あまりのショックで茫然自失となっているジグマール。
そんな彼にため息をつきながらアカギは近づく。
「ジグマールさん……ボーとしている暇はありません」
アカギの励ましの言葉。
衝撃は大きかったがジグマールは聞き入れる。

167Classical名無しさん:08/01/17 10:16 ID:GDwfbsEI
考察支援
168Classical名無しさん:08/01/17 10:18 ID:cj..Ai..
スーパー赤木タイム支援
169I bet my belief:08/01/17 10:19 ID:XtqYH35o

「確かにDIOの能力は世界を制することが出来る力。
 俺たち人間では……到底太刀打ち出来ない能力。
 ……まさに不条理な能力」
「だけど…敵いっこないじゃないか……」
「フフフ…今俺たちは殺し合いという名のギャンブルの世界にいる。
 運の無い奴……力が無い奴が……無残にも食い殺される。
 まさに不条理な世界だ…。
 くく…だけど……おもしろいと思いません?」
ジグマールは涙目でアカギを見る。

「な、なにが?」
「不条理こそギャンブルの本質……
 そんな不条理に打ち勝ってこそ高みに登れる……
 そう思うと…おもしろくありませんか?」
ジグマールはアカギに振り向く。
視線を虚空の空に向け、不気味なほど真剣な表情のアカギ。
その瞳は暗黒を思わせるほど黒い。
全てを塗り潰してしまいそうな、全てを吸い込んでしまいそうな黒だった。
邪な目。だが、子どものように無邪気で純粋な目であった。
「でも……でも……時を止められたら…どうしようもないよ」
170Classical名無しさん:08/01/17 10:20 ID:GDwfbsEI
目からビーム支援
171Classical名無しさん:08/01/17 10:21 ID:cj..Ai..
足から冷気支援
172I bet my belief:08/01/17 10:23 ID:XtqYH35o
生き残れない。自信が失っていくのが分かる。
能力であるギャラン=ドゥは制限で半時間ぐらいしか表に出られないし、
頼みの綱である『人間ワープ』もそう何度も行使できない。
無残にも殺されてしまう。

それだけではない。
敵である劉邦やシェリス・アジャーニはまだ生きているし、
先ほどの放送でマリアや銀時、ルイズは死んだようだが、
私の素性を知っている吉良やコナンはまだ生きている。
刻々と自分の悪評が広まりつつあるのだ。
それに、ケンシロウとキュルケを見限った自分には味方すらいないのだ。
自分は生き残れる可能性はかなり低いのだ。
でも、どうして? 目の前の男は…

「DIOだけじゃない。ただでさえ…勇次郎やラオウ、僕たちを圧倒的に凌ぐ強敵までいるのだ。
 どうしようもないじゃないか!!何も出来ないまま、殺されてしまうんだ。
 アカギは恐ろしくないのか……死んでしまうのだぞ……?
 今までの功績も名誉も全て無意味に失ってしまうんだ。
 …お前は恐くないのか?」
夜空を見つめていたアカギは間を切り、不意に顔を向ける。
173Classical名無しさん:08/01/17 10:25 ID:GDwfbsEI
のび太支援
174Classical名無しさん:08/01/17 10:25 ID:cj..Ai..
助けてーアカギえもん支援
175I bet my belief:08/01/17 10:26 ID:XtqYH35o
「確かに真向からDIOや勇次郎とぶつかれば、何も出来ないまま殺される。
 まさに無意味な死。けれど……。
 『無意味な死』ってやつがまさにギャンブルなんじゃないの……
 俺はずいぶん長くそう考えてきたが違うのかな…?」
「あくまで、それはお前の考え方だ。普通の人間は死を恐れる。だが、お前は…」
狂人。死を恐れぬ狂人。
こいつは狂っている。気が触れている。
現実から目を逸らした臆病者だ。
ハッタリに違いない。
自分と同じように臆病なだけだ。

「普通、人なら死を恐れる。お前は本当に人間なのか? …アカギ?
 だったら、死を恐れないお前は何を恐れるのだ?」
ジグマールは自嘲気味に問いかける。
アカギの目は相変わらず虚無の世界に引き込まれそうなぐらい深い。

「くくく…俺は少々捻くれているだけで…普通の人間さ。
 アルターもスタンドも使えやしないただの人間さ…ジグマールさんと同じように。
 …死ぬことは恐くない。俺がただ恐れるのは……」
アカギは少し間を置く。

176Classical名無しさん:08/01/17 10:28 ID:GDwfbsEI
狂人が普通なアカギは狂人 支援
177I bet my belief:08/01/17 10:28 ID:XtqYH35o
「自分が自分でなくなるときだ。
 この俺の 『俺』 だという気持ち意識が吹っ飛ぶ。そこが問題だ。
 俺が恐れるのは…俺が 『俺』 でなくなること…それだけはご免だ
 だから、俺は常に自分の意志を貫いている。
 どんな逆行が降りかかろうとも俺は『俺』でいる。
 ……ただそれだけさ」
圧倒的に力はないのに、何故そこまで自分を信じられる。
アルター能力も無い、ただの人間であるアカギにジグマールは驚いた。

なぜ、そこまで自分の信念を誇れるのか。
私はただただ怯えていただけなのに。
自分の力を信じず、ただ死を恐怖して。
ギャラン=ドゥに頼りっぱなしであった。何一つ己を出さずにいた。
けれど、目の前にいる儚い人間であるアカギは……

―――自分を貫いている。

ジグマールはそんなアカギを羨んだ。
そして、自信を失ったジグマールは尋ねる。
とても殺し合いに乗っているとは思えないアカギ。
そこまで自分の意志を貫こうとするアカギの目的を。
この殺し合いの舞台で何をしたいのか?
至極興味が湧いてきた。
アカギはこの場で何を見据え、行動しているのか?
それを聞けば…自分も…
178Classical名無しさん:08/01/17 10:29 ID:cj..Ai..
ジグマール覚醒フラグ!? 支援
179Classical名無しさん:08/01/17 10:29 ID:GDwfbsEI
アカギ>ジグマール 支援
180I bet my belief:08/01/17 10:33 ID:XtqYH35o

―――アカギのように信念を貫けるような男に

なれるかも知れないという甘い期待を願って。
「アカギ……お前は―――」
「しっ…ジグマールさん。黙ってください…」
突然、アカギは耳に手を当て、音を探るように指を広げる。
「ど、どうしたのだ…アカギ!」
「変な…音が何か聞こえませんか?」
そう言われると、ジグマールは耳を澄まし、周囲に集中させる。

パキパキ
ガラガラ

そんな押しつぶれたようなか細い音が交互に聞こえる。
埋もれた死者が甦るように地面から這い上がってくる。そんな感覚を思わせる音だ。
「何の音だ? アカギ」
「まだ分かりません…でも用心に越したことはありません」
アカギとジグマールに緊張が走る。
この瓦礫の山で、奇怪な音がするのだ。周囲を見渡し、警戒を怠らない。
ランタンの灯りを消し、自分たちの存在を消す。
すでに遅いかもしれないが、場所を特定されないよりましである。
辺りは薄暗い、ここから離れた道路に立っている電灯だけが頼りだ。
181I bet my belief:08/01/17 10:35 ID:XtqYH35o

パキパキ
ガラガラ

音は弱まるどころか、強まるばかりだ。
二人は周囲に警戒を強める。
そんなときである。

ボコ

音が変わった。

すると突然アカギが叫ぶ。いや、叫ぶというよりは語気が強くなったと言うほうが的確である。
冷静なアカギの口調が強くなったことに驚いて、ジグマールは思考が追いつかなかった。
すぐに一瞬の間を置いて下を見る。

「ジグマールさん。下です」
「……何!?」
薄暗い足元を見ると地面に膨らみが現れる。
瓦礫の山を押し切り、そこから現れたのは髑髏だった。
ジグマールはその髑髏と目が合う。
そして、死神を想像させる髑髏が唐突に断末を上げるように絶叫する。

『コッチヲ見ローーーー!!』

その瞬間、髑髏から爆炎が舞い上がる。

182Classical名無しさん:08/01/17 10:35 ID:cj..Ai..
むう、アカギとジグマールにまさかの友情? つかぷろしゅーと&ぺっしフラグ?
183Classical名無しさん:08/01/17 10:36 ID:GDwfbsEI
ノーマル支援
184I bet my belief:08/01/17 10:37 ID:XtqYH35o
ジグマールの視界に炎が映る。炎がスローモーションのようにゆっくりと迫り来る。
徐々に身体を包み込もうとする。
死を覚悟する前にジグマールは咄嗟に動く。身体が死を認識する前に発動させた。
己の武器である『人間ワープ』を。

爆心地から離れること、2メートルの地点にジグマールがいた。
アカギはジグマールのいる方に振り向く。
その表情は落ち着いている。が、爆発に巻き込まれたはずの男がぴんぴんとしているのだ。
さすがに驚いたのであろう、小さな笑みを浮かべる。

身体が咄嗟に『人間ワープ』を使ったために思考が混乱するジグマール。
「ジグマールさん! 安心するのは早いですよ、ここは一度引きましょう……」
思考が自動的に回復するまえに、アカギが喝を入れる。
「!? 分かった」
安心するにはまだ早いかった。
あの髑髏はさっきの爆発に壊れずに、続けてアカギに向かっていたのだ。
『コッチヲ見ロウ』
と、声を上げる。それは先頭に髑髏を施した悪趣味な玩具の戦車であった。
しかし、それは見た目だけであり、動く爆弾であった。
「とりあえず、あそこに逃げましょう」
アカギは住宅街を指差すと、すぐに全力で走り去った。
「く」
遅れてジグマールはアカギを追う。
髑髏の戦車はいつの間にか自分のほうに目標を定め、後ろから追ってきていた。
歩きと走りの中間ぐらいの速さで後を追う爆弾。
ジグマールは全身の痛みを堪えて全力で走った。
185Classical名無しさん:08/01/17 10:38 ID:GDwfbsEI
支援ハートアタック
186Classical名無しさん:08/01/17 10:39 ID:cj..Ai..
支援っ
187I bet my belief:08/01/17 10:40 ID:XtqYH35o
「あの髑髏、どこかで見たときあるぞ…」
走っているとはいえ、ジグマールの思考が澄んでいく。
自信を失っているとはいえ、HOLYの隊長を任されるほどの持ち主だ。思考の回転力は劣ってはいない。
あの悪趣味な髑髏。確か吉良の自動人形タイプのアルターに施されていたアクセサリーにそっくりだ。
一度、戦ったあるから見間違いは無い。明らかに同じ髑髏である。

気配は一切感じられないがこの近くに吉良がいるということか?
まだ、分からん。しかし、一つ言える事は、奴の能力は追尾爆弾を作るの能力だと考えられる。
パワーだけの劣化した劉邦かと侮っていたが、有効範囲もかなり長く、恐ろしい能力だ。
「こんな能力を隠し待っていたとはなア…侮れない男だ。暗殺者としてHOLYに欲しい人材だ」
今更ながら感心した。

ジグマールは疲労困憊ながらも爆弾から目視できないほど距離を離し、
手招きするアカギに誘われ、民家の中へと入った。
真っ暗闇に包まれる部屋の一室。
電灯にスイッチが入れば、もっと明るく出来るが、先ほどの爆弾のこともあり、
敵に居所を悟られるわけもいかないのでランタンの灯りのみが光源であった。
ジグマールは息を切らし、水分を取り、気を落ち着かせる。
188Classical名無しさん:08/01/17 10:41 ID:GDwfbsEI
支援だッ
189Classical名無しさん:08/01/17 10:43 ID:cj..Ai..
支援なりッ
190I bet my belief:08/01/17 10:43 ID:XtqYH35o
会話はすぐに先ほどの出来事に向いた。

「ここまで来れば大丈夫だろう」
ジグマールはフウと息を漏らし安堵する。
「一応警戒はしておいてください。まだ、どんな能力か分かっていませんから…」
アカギが進言すると、ジグマールは鼻息を鳴らす。
「フフ。もう大方予測が付いたよアカギ」
勝ち誇った笑みで語る。爆弾の正体が何であるのか。
考察の全てを誇らしく語った。

「―――だと、するとアレは吉良吉影のアルター能力だと言うんですね」
「ああ、そうだ。私のビューティフルな頭を働かせれば簡単なことだったよ……
 本体である吉良を倒せば、NO問題だ。
 そぉぉして、たぶん奴はどこか近くにいるはずだ」
ポーズを決めながらアカギに笑みを向ける。
「ククク……奴はここにはいないさ」
がくっとポーズが崩れる。

191I bet my belief:08/01/17 10:44 ID:XtqYH35o
「何だと? 何故分かる?」
「簡単なことさ……あの爆弾が現れたときを思い出してほしい」
「確か……地中からだったな」
ジグマールは適当に相槌を打つ。
「そうだ。たぶん、ビルの崩壊もこれが大いに絡んでいるだろうが。
 …あの爆弾は最初から瓦礫に埋もれていたということになる。
 吉良は何らか理由でこの能力を使わざるをえなかった。
 本来なら、回収するところが……瓦礫に埋もれたおかげで回収できなかった。
 ……俺たちはたまたま埋もれた爆弾が飛び出すところに出くわしたってとこだろ」
「だが、そうとも限らない。アルターは使用者の思い通りに形成できるのだ」
「……今更だな……ジグマールさん。ここには未知の能力が蔓延っているんだ。
 今更、『ありえない』は無しだ…」
鼻に付く言われようにジグマールはそっぽ向く。
「それに、ジグマールさん……あなたの能力について伺いたい。あなたの能力は―――」
ついに来たかとジグマールは言われる前に全詳細を語った。
192I bet my belief:08/01/17 10:46 ID:XtqYH35o

「『人間ワープ』だ。アカギ! 有効範囲は半径2メートル。
 持っている物は自分の意志で持ち運び可能で、使用するたびかなり体力を消費する」
屈辱であった。自分の能力を詳細に語るほど、怒りが湧いてくる。
どれだけ現在の『人間ワープ』が劣化しているのかを。
本来の力を全く以って引き出されていないかを。
自分から認めているようで、無性に怒りが溢れ出す。
かなりの制限を施した光成に対して怒りが満ち溢れる
「本当なら、もっと広範囲に移動できるのに、疲れ知らずの技なのに。
 …畜生……光成め」
恨みの篭った口調で言い終える。

アカギはそれを聞き終えるとすぐに問いかける。
「ジグマールさん。一つ聞いてもいいですか」
「構わん。知っていることは全て話そう」
「…本来の『人間ワープ』はどれくらい距離を移動できたのですか?」
「そんなことを聞いて何になる? ……まあ、いい教えてやる。
 本来なら最大200メートルは可能だ。少々疲れるから使いはしないがね。
 短い距離なら疲れることなく、何度も使用可能だ」
「そうですか……ありがとうございます」
一礼すると、アカギは質問を続ける。
「『人間ワープ』以外に他に能力をお持ちですか」
ジグマールは一瞬顔をしかめ、答える。
『人間ワープ』がばれたとはいえ、能力を全て話す気にはなれなかった。
手の内を公開するわけにはいかない。
ギャラン=ドゥにいたっては絶対に話すわけにはいかなかった。
ここは適当に嘘ついておこう。
193Classical名無しさん:08/01/17 10:46 ID:GDwfbsEI
sienn
194655:08/01/17 10:47 ID:i7roa7Ek
>>182
支援すると心の中で思ったならッ!
その時スデに行動は終わっているんだッ!
支援ッ!!!
195Classical名無しさん:08/01/17 10:47 ID:cj..Ai..
やはりスーパーアカギタイムは止まらない支援
196I bet my belief:08/01/17 10:48 ID:XtqYH35o
「残念だが、アカギ。私は『人間ワープ』以外―――」

その瞬間。
ガラスの割れる音と共に。聞き覚えのある声が聞こえる。
『コッチヲ見オウ』
あの吉良の追跡爆弾が窓を突き破って迫ってきたのだ。
更にジグマール目掛け。
「何にィ!!」
タイミングが悪すぎと心の中で雄たけびをあげる。
ジグマールは咄嗟に腕を翳す。
すると、ジグマールの腕から衝撃波が巻きおきる。
その衝撃によって髑髏爆弾はビデオの巻き戻しのように屋外に吹き飛んでいった。
「なるほど……分かりました」
アカギはジグマールのもう一つの能力を見ると笑った。

最悪だと、頭を引きつかせ涙交じりで
「ああ……そうだ。これが私のもう一つの能力だ…」
と、ジグマールは笑みをこぼした。

「……とにかく、ここを出ましょう」
「嗚呼…分かった」
あまりの運の無さに涙が溢れそうだった。
197I bet my belief:08/01/17 10:51 ID:XtqYH35o

外に出ると当ても無く走り出した。あの追尾爆弾がどこまでも追いかけてくるからだ。
後ろの暗闇から髑髏の爆弾が迫ってくる。そして、そのプレッシャーは計り知れない。
ただでさえ全身のケガで体力が消費されやすいのに。
このままでは、爆発に巻き込まれるのは自明であった。
「くっ、どうして奴は私たちの居場所が分かったのだ」
完全に巻いたと思ったのに、完璧に追跡してくるのだ。
何らかの機能が働いているに違いない。
「まだ、分かりませんよ。ジグマールさん。
 言える事は…何らかの方法で俺たちの居場所を把握しているぐらいですよ」
アカギの冷静な態度にちっと舌打つジグマール。
まるで焦っている自分が馬鹿みたいじゃないか。
嫉妬に似た感情を覚える。
「くく…早く対処しないといけませんよ。
 あの爆弾はまるで……蛇のように獰猛で執念深い」
一瞬喜びに満ちた笑みを浮かべるアカギ。
ジグマールは見間違いかなと目をこする。
そこにはいつものように表情の無いアカギであった。
「く、どうにかしないと…」
このまま走り続けても体力がもたない。
ジグマールは必死に考える。あの蛇のように執念深い爆弾から逃げる術を。

(蛇ような能力だ。ん……へび? 蛇だと……分かったぞ)
インスピレーションが舞い降りる。
ピコーンと豆電球が頭上に現れることが分かるほど、天啓のような閃きだ。
198Classical名無しさん:08/01/17 10:51 ID:cj..Ai..
謎衝撃波かっ!?支援
199Classical名無しさん:08/01/17 10:53 ID:GDwfbsEI
半角やっちまったぜ支援
200I bet my belief:08/01/17 10:53 ID:XtqYH35o
「分かったぞ、アカギ。奴は蛇だ。蛇のように私たちの熱を感知して、追跡しているのだ」
どこかで蛇の生態を聞いていたからこそ到達できる考察。
アカギでは到達できない知識の領域。
科学が発展した未来から来たジグマールと昭和の時代からアカギ。
知識では圧倒的にジグマールのほうが上であった。だからこそ、到達できる考察。
しかし、アカギなら本能で嗅ぎ取るかもしれないが。こ
こではいち早くジグマールが嗅ぎ取ったのだ。
「…なるほどね」
アカギはジグマールの考察を聞くと、すぐにパックから斗貴子から奪ったランタンを道路のど真ん中に置いた。
だんだんと離れていくランタン。背中越しに灯りが漏れている。
一分もしないうちに爆発が起きた。二人は後ろを振り向くとランタンの置いた場所が炎に包まれていた。
ランタンの光は無く、新しく火の灯りが生まれていた。
「ビンゴじゃないか、アカギィイ」
ジグマールは誇らしくアカギの肩をオーバーに叩く。
「そうですね…」
アカギは頷く。

ここからが正念場であった。
熱源で探知していることが判明してもまだ根本は解決していない。
ここからはどうにかして、爆弾を追い払う必要があるからだ。
「アカギ、何か策はあるか?」
ジグマールは何気にアカギに相談する。
こいつの考察力ならあっという間に解決策を捻り出すだろう。
そう期待して問いかける。
アカギはそんな問いに間を置いて、答える。
「……ここはリスクを細分化させましょう」
「リスクを細分化させる? どう言う事だ?」
「つまり…」
アカギは突如方向を変え、走る速度を上げる。
201I bet my belief:08/01/17 10:56 ID:XtqYH35o
「二手に別れるってことさ……確立は1/2の博打。
 運のいい奴が生き残り、悪い奴が追われる。
 簡単だろ…」
そう言うとアカギは一目散に闇にまぎれていった。
「ちょ…おま…そんな無責任な」
ジグマールは無責任なアカギの後を追うが、すでにアカギは闇に溶け込んでいった。
アカギを見失ってしまった。
「くっ…仕方がない」
ジグマールは気持ちを改め、全力でアカギとは反対の方向へ走り出す。
アカギの言うとおり、今ここで運が試されているのだ。
いくら力を誇る奴でも、運が悪ければ死に至ることすらあるのだ。
HOLYの隊長に上り詰めた私の運は底無しにある。それは、自負できる。

(アカギの奴め…血迷ったな)

運の良さでは、私の右に出るものはいない。
爆弾に追われるアカギを想像すると笑いが溢れそうだ。

『ハア、ハア……こんなことなら賭けなければ良かった…ジグマールさん!! 助けてくれー!!』

あの冷静沈着なアカギの焦り姿が目に見える。
「ハッハッハ、この勝負。このジグマールが勝利した」

202Classical名無しさん:08/01/17 10:56 ID:GDwfbsEI
閃き支援
203Classical名無しさん:08/01/17 10:56 ID:cj..Ai..
ここで二酸化炭素とかまた言い出すかとオモタ支援w
204I bet my belief:08/01/17 10:57 ID:XtqYH35o

その数分後。

『コッチヲ見ロォォーー!!』

「ひぃいぃいーーー!! 何故この私がぁあぁああああーーー!!?」
シアーハートアタックはアカギではなくジグマールを追っていた。
「ギャラン=ドゥ…アカギ…いや誰でもいい!! 助けてくれー!!」
ジグマールの悲痛な叫び声が木霊する。
彼の受難はまだ続きそうである。
205I bet my belief:08/01/17 10:58 ID:XtqYH35o

【E−4 池の公園前 1日目 夜】

【マーティン・ジグマール@スクライド】
[状態]:全身に負傷中(治療済み) 美形 中程度の疲労 
[装備]:本部の鎖鎌@グラップラー刃牙
アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙(未開封)
法儀礼済みボールベアリングのクレイモア地雷(リモコン付き)@HELLSING(未開封)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:生き延びて全宇宙の支配者になる
1:シアーハートアタックから逃げ延びる
2:アカギの目標が聞きたい
3:ギャラン=ドゥの言うとおりに行動する
4:ギャラン=ドゥが活動できるまで戦闘は避ける
[備考]
※アカギと情報交換しました
※人間ワープにけっこうな制限(半径1〜2mほどしか動けない)が掛かっています
連続ワープは可能ですが、疲労はどんどんと累乗されていきます
(例、二連続ワープをすれば四回分の疲労、参連続は九回分の疲労)
※ルイズと吉良吉影、覚悟、DIO、ラオウ、ケンシロウ、キュルケはアルター使いと認識しました
※吉良吉影の能力は追尾爆弾を作る能力者(他にも能力があると考えています)だと認識しました。
※DIOの能力は時を止める能力者だと認識しました。
※アカギと情報交換しました

206I bet my belief:08/01/17 10:59 ID:XtqYH35o
【ギャラン=ドゥ@スクライド】
[状態]:ジグマールに潜伏状態 全身に負傷小(自己治癒中) 小程度の疲労
[思考・状況]
1:成り行きを観察中
[備考]
※ギャラン=ドゥは制限によりジグマールと命運を共にしています
 そのため、ジグマールを生かしています
※ギャラン=ドゥは制限により、30分前後しか表に出られません(それ以降は体力を大幅に消費してしまいます)
※表に出られる時間はギャラン=ドゥ本人の体力と精神力に依存しています
※一度引っ込んだら2、3時間ほど間を置かないと、表に出られません(無理をすれば出られますが、体力を大幅に消費してしまいます)
※人間ワープにジグマールほどではないが、けっこうな制限(半径3〜4mほどしか動けない)が掛かっています
連続ワープは可能ですが、疲労はどんどんと累乗されていきます
(例、二連続ワープをすれば四回分の疲労、参連続は九回分の疲労)

+++
207Classical名無しさん:08/01/17 11:00 ID:cj..Ai..
乙支援
208Classical名無しさん:08/01/17 11:01 ID:GDwfbsEI
アカギ1シーン支援
209I bet my belief:08/01/17 11:01 ID:XtqYH35o
闇夜の中を歩く一人の男がいた。
シアーハートアタックの死線を超えた赤木しげるであった。
今アカギは目的地である学校へと足を運んでいた。
この半日の間に有力な情報を携え、主催者に対抗できる力を着々と身につけていった。
だが、しかし・・・
「承太郎を失ったのは……痛かった」
あまり会話を交わしていないとはいえ、承太郎の瞳は鳴海と同じように強い意志を持っていた。
どんな逆行に立ち向かえる強い意志。
主催者に立ち向かうにあのような強い意志を持った人間が必要だったのだ。
それに加え、承太郎はスタンドという未知の能力を持っていた。
主催者に立ち向かえる筆頭になるはずだった。
…だが…死んだ。

「とんだ災難だったな…承太郎」
普通なら弱かったから死んだと思うだろう。しかし、アカギは違った。
本来なら対主催に活躍できたであろう武藤カズキ。槍からあれほど強い光の柱を打ち出すのだ。
かなりの強さを持っていたのであろう。だが、二回目の放送で死んだ。
そして、次に承太郎が死んだ。
二人には共通点があった。詳細は分からないが武藤カズキはある人物といて、そのまま亡くなってしまった。
そして、それを引き継ぐように承太郎がその人物といて、亡くなった。
単なる偶然なのだろうか? 違うな。
これは必然だ。
210I bet my belief:08/01/17 11:03 ID:XtqYH35o
三千院ナギ―――この女はこの舞台にとって、曲者だ。

たぶんそこらの一般人と変わりないだろう。
しかし、この女は殺し合いの舞台で最も運に見放されている。
つまり疫病神って奴だ。博徒にとって最も恐ろしい存在。
かかわるもの全てを飲み込む悪魔である。
どんなに強者でも、ツキに見放されればあっさりと死んでしまう。
勝負には流れがある。不利な流れでは、勝負を仕掛けない。
運が自分のところまで向いてくるまで、力を溜め込み。
運が回ってくれば、全力で開放する。当たり前の行動である。

三千院ナギはギャンブルでいう負けの込んだ人間だ。
ツキを失った奴は負けがこむ。そして、悪循環に見舞われる。
負けるたびに、打ち筋が弱くなり、更に落ちていく。
覚悟が足りない、そのために打ち筋が弱くなる。
運と力を自ら手放すのだ。一種の錯乱状態だ。
そして、その運の無さは最終的に周囲を巻き込む。
武藤カズキも承太郎も三千院ナギの運の無さ、実力の無さ、覚悟の無さに翻弄されたにちがいない。
「……三千院ナギ…もし…お前がこの舞台にいることを嘆き、自暴自棄になっているようなら…」
切り捨てる。
逆行に耐えられる者こそ、強い意志を貫くものこそ生き残ることが出来る。
逆行に立ち向かう者こそ高みに登れる。
三千院ナギが現状に怯え、立ち向かわないような人物なら切り捨てる。
211Classical名無しさん:08/01/17 11:04 ID:GDwfbsEI
カズキ・・・支援
212Classical名無しさん:08/01/17 11:04 ID:cj..Ai..
しえっ
213I bet my belief:08/01/17 11:05 ID:XtqYH35o
「ククク…ジグマールさんは…どうなったのかな?」
十数分前の同行者ジグマールのことを思う。
たぶん、爆弾に追われていること間違いないだろう。
あの場面で二手に分かれれば、十中八九爆弾はジグマールを追うだろうとアカギは予想していた。
案の定、予想は的中していたのだが…。

アカギはあのときのことを振り返る
ジグマールには悪いが、あそこは二手に別れる必要があった
本来なら二手に分かれる必要はなかった。しかし、今後の展開のためにもそうする必要があった。
アカギはジグマールの存在は必要不可欠だと認識していた。
214I bet my belief:08/01/17 11:07 ID:XtqYH35o
(マーティン・ジグマール―――奴はこの舞台にとって最も主催者に近い男だ)

奴の能力である『人間ワープ』。
それが、主催者の居場所を突き止める最大の鍵だとアカギは確信した。
そう確信させた要因はジグマールに課された制限である。

奴は言っていた。
本来なら最大200メートルは移動することが可能だと。
しかし、この舞台だとたったの2メートルしか移動できないと言っていた。
どう考えても制限を設けすぎていると考えられる。
他の能力者がどこまで制限をかけられているか分からないが、奴の『人間ワープ』は異常だ。
何故そこまで制限をかける必要がある? 一方的な殺し合いをさせないため?
くくく…ちがうな。
たぶん真相はこうだ。

主催者が奴の能力を恐れている。
そう考えられる。一瞬で長距離を移動できる、そこがポイントだ。
そこで、ある仮説が思い立つ。
主催者がこの舞台からそんなに離れていない距離にいるとする。
そこは幾重にもトラップを重ね、戦陣を固めた要塞だとする。絶対に攻略できない難攻不落の要塞。
しかし、そんな要塞を意図も簡単に落城させることが出来る方法がある。
それが『人間ワープ』。ジグマールのアルター能力だ。

主催者は怯えているのだ。ジグマールの能力に。
だから、命いっぱい『人間ワープ』に制限を施したのだ。
そして、それと同時にあることが分かる。
主催者の居場所が200メートル以内の場所にあるということだ。
この舞台内なのか。舞台外なのかは分からない。
しかし、200メートル以内にあることが予測される。
だからこそ、ジグマールの存在は必要だ。
215Classical名無しさん:08/01/17 11:08 ID:GDwfbsEI
 
216I bet my belief:08/01/17 11:09 ID:XtqYH35o
しかし、時期が早かった。

ジグマールは殺し合いに乗っていた。
現時点で、対主催を吹聴しても、それを利用されるのが目に見えていた。
奴は土壇場で裏切るのは自明であった。
だから、あの場面で一旦別れる必要があった。
奴は自分の力を信用せず、保身に回っていた。
勝とうとする意志が無い、あのままの状態では最後まで生き残れない。
奴に足りないのは逆行に打ち勝とうとする強い意志だ。
本来の力を奪われたおかげでジグマールは無意識に自棄になっていた。

―――理不尽に対抗しようとする意志。

それが備われば奴は大いに化ける。
殺し合いに乗る輩に化けるか、それとも対主催を掲げる輩に化けるかはまだ分からない。
しかし、まだ希望はある。奴は根っからの殺人狂ではない。
殺人狂なら真っ先に俺を殺しにかかっただろう、奴の判断は俺を利用することだった。
ジグマールは仕方なしに殺し合いに乗っていた。
首輪に命を握られている。だから、最後まで生き残る。
ジグマールからそんな意志が感じ取れた。

そんな男を対主催に転向させるには……
首輪を外す方法と主催者の居所を与えれば、俺たちに協力するだろう。
更に運がいいことにジグマールは表の主催者光成に対して、怨恨を抱いている。
それを利用しない術は無い。
217Classical名無しさん:08/01/17 11:09 ID:cj..Ai..
ああ、確かにハヤテも……持ち直したけど
218I bet my belief:08/01/17 11:11 ID:XtqYH35o
「おもしろくなりそうだ……」
主催者がジグマールの行動を把握しているなら、奴は殺し合いに乗っていると判断していることだろう。
だったら、俺はその隙を狙う。
もし、殺し合い乗っている奴が突然対主催に転向し、しかもその能力が最も恐れている能力の持ち主なら……
主催者は何らかの行動を行うだろう。

「ククク……」
待っていろよ。影の主催者。高みから笑っていられるのは今のうちだ。
すぐにでも同じ土俵に引き摺り下ろしてやる。
「そのためにも…ジグマール」

―――生き残れ
―――己の力を存分に引き出せ
―――己の力を信じるんだ

そうすれば、お前はより強くなれる、高みに登れる。
だが、それが出来ないようなら……

「それまでの男だ…」
219Classical名無しさん:08/01/17 11:12 ID:GDwfbsEI
ジグマール昇格
220I bet my belief:08/01/17 11:12 ID:XtqYH35o

アカギは歩みを止めない。
更なる高みを目指すために。
主催者に反旗を覆すために。
意志を貫き通す限り、止まることは無い。

そんなアカギにバッサバッサと鳥のはばたく音が聞こえる。
闇夜の使いである梟が上空を横切る。
その瞬間、銀色の星が流れてくる。
いや、それは星ではなかった。
鋼の信念がアカギの信念に呼応する。

正義の意志を最後まで貫いた男がいた。
遥かなる己の意志を貫いた男がいた。
その男の意志の結晶体がアカギの目の前に転がる。
『シルバースキン』。
核鉄を手に取る。
信念は砕かれぬことなく、アカギに受け継がれた。
221鬼(オーガ)降臨:08/01/17 11:14 ID:XtqYH35o
【E-4 市街南 1日目 夜】

【赤木しげる@アカギ】
[状態]:脇腹に裂傷、全身打撲(両方とも治療済み) 小程度の疲労 眠気
[装備]:核鉄(シルバースキン) 基本支給品、 ヴィルマの投げナイフ@からくりサーカス (残り9本)
[道具]:傷薬、包帯、消毒用アルコール(学校の保健室内で手に入れたもの)
始祖の祈祷書@ゼロの使い魔(水に濡れふやけてます) キック力増強シューズ@名探偵コナン水のルビー@ゼロの使い魔、工具一式、医療具一式 沖田のバズーカ@銀魂(弾切れ)
[思考]
基本:対主催・ゲーム転覆を成功させることを最優先
1:学校に向かって、自分の情報を伝える。
2:脱出のカードを揃えてから、ジグマールを説得する。
3:対主催を全員説得できるような、脱出や主催者、首輪について考察する
4:強敵を打ち破る策を考えておく
5:このバトルロワイアルに関する情報を把握する
(各施設の意味、首輪の機能、支給品の技術 や種類など。)
6:ツンデレの意味を知りたい。
222I bet my belief:08/01/17 11:14 ID:XtqYH35o
[備考]
※ツンデレの意味を色々間違った意味で捉えています。
※マーティン・ジグマールと情報交換しました
※光成を、自分達同様に呼び出されたものであると認識しています。
※参加者をここに集めた方法に、
スタンド・核鉄・人形のいずれかが関係していると思っています。
※参加者の中に、主催者の天敵たる存在がいると思っています(その天敵が死亡している可能性も、考慮しています)
 そして、マーティン・ジグマールの『人間ワープ』は主催者にとって、重要な位置づけにいると認識しました。
※主催者のアジトは200メートル以内にあると考察しています
※ルイズと吉良吉影、覚悟、DIO、ラオウ、ケンシロウ、キュルケ、ジグマールはアルター使いと認識しました
※吉良吉影の能力は追尾爆弾を作る能力者(他にも能力があると考えています)だと認識しました。
※DIOの能力は時を止める能力者だと認識しました。
※ジグマールは『人間ワープ』、衝撃波以外に能力持っていると考えています
※斗貴子は、主催者側の用意したジョーカーであると認識しています
※三千院ナギは疫病神だと考えています
※ゴールド・エクスペリエンスのDISCを持った梟(桐山の首)が会場をさまよっています。


223Classical名無しさん:08/01/17 11:15 ID:cj..Ai..
支援っ
224 ◆O4VWua9pzs :08/01/17 11:17 ID:XtqYH35o
投下完了
矛盾等があれば
ご指摘お願いします
最後にタイトルが間違ったよ……
225Classical名無しさん:08/01/17 11:30 ID:cj..Ai..
アカギのフリーダムさが素敵。実は最も制限が必要な奴だったんじゃねえのこいつwwwwwww
DIOの謎解き、二人のありよう、そして別れ、その後の放送に関する思考、読んでて凄く面白い話になってました
そしてシアーハートアタックの襲撃喰らって涙目な美形が愉快で大変よろしでありんした。GJ!
226Classical名無しさん:08/01/17 11:37 ID:GDwfbsEI
投下乙です。
アカギの「アカギらしさ」や、
ジグマールののび太っぷりがとても良いと思います。GJ!
227Classical名無しさん:08/01/17 15:07 ID:Dqd5kdxc
GJ!
このジグマールはアニメ版のような男を見せてくれるかもしれんな。
一応アルター仙人を一撃で始末してロストグラウンドを作り上げた張本人だからなあ。
実力は無茶苦茶あるんだよね。どこぞのギャングの暗殺チームのコンビみたいに黄金の精神に目覚めるか!?
そしてアカギの考察はおみごと。制限から主催者の拠点が近くにあることを見抜いてしまうとは。
228Classical名無しさん:08/01/17 17:35 ID:bT9UbixA
投下乙です
まさか美形が脱出の鍵候補になりうるかもしれないとは・・・、そして赤木の考察は流石赤木としか言いようがない。

後一つだけ誤字発見しました。劉邦じゃなくて劉鳳ですよ。
229Classical名無しさん:08/01/17 19:31 ID:vwuvOEsA
投下乙!
シアーハートアタックに追いかけられるジグマールアホwwww
そういえば過剰な制限=ヤバイと思われてるって考え方もできるんだよなぁ〜
しかしナギの不幸属性に気付くとは……コナンがようやく役に立つかと思ったらアカギはその2歩先を行ってるな
230Classical名無しさん:08/01/17 19:34 ID:vwuvOEsA
あ、今更誤字っぽいの発見

>>◆wivGPSoRoE
三村の「どんでもねえ女だ……」

ジョセフの祖父の魂が乗り移ったか?
231Classical名無しさん:08/01/17 20:00 ID:gJx930sc
お疲れ様です、赤木の考察はお見事、ですが赤木は敬称略はしないけど完全敬語って
所に違和感を感じました、安田などにもさんづけはしますが解説はぶっきらぼうな所が
赤木しげるの赤木しげるたる所だと個人的には思っています
232Classical名無しさん:08/01/17 20:11 ID:asN5VRrA
 アカギ蝶サイコー!
 シアーの追跡方法を見抜いたときのジグマールの調子に乗りっぷりもイカス。
 アカギは、コナンやパピヨン、川田等とはまた違う視点で、孤高のまま推察しているのが良い。
 多分それは、「自分自身 (や、親しい誰か) を生き残らせること」 に主眼をおいていないから
故なんだろうし、そこが強みであると同時に、危うさでもある感じ。
 
 ただ、全体的に細かい誤字があるのが残念です、ハイ。
> どんな逆行が降りかかろうとも俺は『俺』でいる。
   どんな逆境が…
>生き残れない。自信が失っていくのが分かる。
  自信が失われていく… or 自信を失っていく… 
233 ◆04DcwbhVLk :08/01/17 23:50 ID:Gz.THDNE
前スレ>>662の修正を投下します。
234贈り物 ◆04DcwbhVLk :08/01/17 23:51 ID:Gz.THDNE
 夕日が、あたりを赤く染めている中、一人の男が消防署から出てきた。
 彼が周りを見回すだけで、赤い日光を受けて余計に赤くなったポストは全身が青ざめて恐怖に震える。
 地上3階建ての消防署は、彼が体から抜け出たことにホッとした表情を見せている。
 地上最強の生物、それは建物が相手であったとしても、脅威の対象となりうるものだ。
 けれども、数メートル上から彼を見下ろす街路樹だけは、その表情に僅かな陰りがあることを見逃さなかった。
「……死んだか」
 数分前に流れた放送は、範馬刃牙の死を伝えてきた。それが彼に与える影響は少なくないということなのか。
 地上最強の生物は軽く溜息を漏らすように呟く。すでに薄暗くなった空気が一瞬白く変わる。
「……痴れ者が」
 息子と共に、父として過ごした日々を思い出しているのか。
 息子に外道と言われながらも、やはり勇次郎は人の親だったと言うことか。
 彼の周囲は、そのオーラに包まれ1度だけ温度が上がっている。
 けれど、彼の吐息は悲しみに包まれ、逆に温度を下げているようにも思えた。
「ックックック……」
 彼が嗤った。
「弱いッ、あまりにも脆弱。何たる腑抜けぶりッッ!!」
 彼は決して悲しんでなどいなかった。誰にでもなく、虚空に向かって鬼は叫ぶ。
「俺に挑むと言っておきながら、どこの馬の骨とも知れぬ輩に敗れるなど恥を知れ!!」
 自らに挑むと誓った息子が死んだ。久方ぶりに見た餌に足る人間。それが死んだ。
 範馬勇次郎にとって、息子の死はそれ以上でも以下でもない。だから別に悲しんだりはしないのだ。
 それに今の勇次郎は落胆もしない。勇次郎は知っている。この場には息子以上に強い者がいることを。
 1800年の歴史と共に、磨き上げた奇跡の技術。
 その精度は中国拳法すらも超え、その肉体は近代兵器すらも凌駕する。
 科学では作りえぬ純度。ただひたすらに強くあれと願い続けて作られた存在。
235Classical名無しさん:08/01/17 23:51 ID:IM/lzPH2
なんて化け物だ。
時を止める能力、レロレロの人は死ぬ間際に体感して
やっと見抜いたというのに……話し聞くだけであっさりと
言い当てやがった! アカギは恐ろしい。225の言う通り、
こいつが一番制限必要だったのでは? と思っちまった。
236贈り物 ◆04DcwbhVLk :08/01/17 23:51 ID:Gz.THDNE
 そう、男の名はラオウ。
 この場には、息子を遥かに上回るあの男がいるのだ。だからもう、刃牙の挑戦を待つ必要はない。
 あの男を喰らえば、それで全てが足りる。
「クックックッ……」
 再び、鬼が嗤う。今度は明らかに楽しそうに嗤う。
 そして、デイパックから打ち上げ花火を取り出す。
 辺りは既に薄暗い、太陽の明かりは僅かに地上を赤く染めるだけ。
 今花火を打ち上げれば、周囲に目立つこと間違いなし。きっと、あの男にも見えるだろう。
 そう考え、勇次郎が花火に手をかけた瞬間……周囲に、異質な気配を感じた。

 気配は勇次郎の背後から近づいてくる。
 足音ひとつさせず、だが確かに一歩ずつ勇次郎に近づいてくる。
 そして、その背中まで1メートルという所で止まった。
「親父は生き残ったんだな……」
 勇次郎の背後にいたのは少年。彼の息子、範馬刃牙。刃牙は勇次郎の返事を待たず、言葉を紡ぎ続ける。
「俺はアンタに憧れていた。アンタより少しだけ強くなりたかった」
 幽鬼となり、死しても勇次郎の側に現れた刃牙。
 彼は執念でこの場に現れたのか、それとも、別の者に誘われたのか。はたまた、これは単なる勇次郎の幻影なのか。
 勇次郎は応えない。振り返り、ただ刃牙を見つめるのみ。
「受け取ってほしい親父……いや、父さん。アナタに捧げる俺の拳だ」
 言うが早いか、刃牙は両掌を広げ、両手を天高く掲げる。
 父、範馬勇次郎と同じ構え。対峙する勇次郎はズボンのポケットに手を突っ込んだまま微動だにしない。
 刃牙が動く。
 ノーモーションからの右アッパー。半歩後ろに下がり、かわす勇次郎。
 続けざまに左フック。右へ一歩ずれてかわす勇次郎。
 刃牙が徐々にスピードを上げていく。
 左右の拳を使ったコンビネーション。左ジャブから右ストレートへと繋げる単純な攻撃。
 だがしかし、嵐。
237Classical名無しさん:08/01/17 23:52 ID:1frrzPgU
                        
238贈り物 ◆04DcwbhVLk :08/01/17 23:52 ID:Gz.THDNE
 二人の闘いを見下ろす街灯が、ほんの少し明かりをビクつかせて身震いする。
 地面に縛り付けられたままのガードレールは、ちょっとだけ体を捩じらせて逃げようとする。
 無生物でさえ、恐怖させる二人の闘い。
「……光成のヤロウ……面白ぇものを仕掛けてきやがった……」
 愉悦。明らかな喜びが勇次郎の顔からこぼれ出る。
 苛烈さを増していく刃牙の攻撃は、地上最強の生物から両手を引き出した。
 ついに勇次郎は、刃牙を避けるのではなく、手で防ぐようになってくる。
 ジャブ、フック、アッパー。さらには、回し蹴りや踵落しまで。連撃。
 技という技が、勇次郎に送り込まれる。
 刹那、勇次郎は防御を止め、再びポケットの中へと手を戻す。
「生れ落ちて僅か18年。取るに足らぬ若造の歴史……」
 吹き荒れる拳の暴風。その中で、勇次郎は一人呟く。
「だがしかし、色を知り、欲を知り、果ては死まで知りて辿り着いたその場所は……」
 刃牙の攻撃は止まらない。
 勇次郎は、反撃も防御もせず、ただ独り言を呟くばかり。
「中国拳法すらも凌駕する!!」
 そして、勇次郎はその両腕を天高く掲げた。
「ようやく、本気になってくれたのか……」
 刃牙が止まる。
 勇次郎は、掲げた両掌を、さらにさらに高く上げて刃牙を見下ろす。
 嵐が止んだ。
 刃牙は腰を落とし、両足を肩幅より広げて、右拳を脇に抱える。
 刹那、拍手のような甲高い連続音が、辺りに鳴り響いた。
 音速拳。刃牙が持つ、最速の拳。
 それが、勇次郎に襲い掛かる。だが、勇次郎は掲げた拳を下げない。
239贈り物 ◆04DcwbhVLk :08/01/17 23:52 ID:Gz.THDNE
「だがしかし、中国拳法を越えてなお。貴様の拳は完成を見ない」
「おしゃべりが多いんだよ!!」
 勇次郎に襲い掛かる刃牙の拳は、さらに苛烈さを増し、常人の目にはもはや人の形とさえ、
認識できぬほどの速度にまで達する。
 だが、それでもなお、勇次郎は拳を下げない。
「あるはずだ、見せてみろ。音速拳を超えた貴様のオリジナル!!」
 勇次郎の咆哮を聞き、刃牙が動きを止める。
「気づいてたんだ……流石だね……」
 刃牙は、音速拳の構えを若干前傾させた形で構える。
 勇次郎が笑う。刃牙が嗤う。
 刃牙の拳が、音速拳と同じ形で放たれる。
 先ほどと同質、同速。けれど、二人の表情は違う。愉悦、快楽。それが見て取れる。
 そして、コンマ1秒にも満たない僅かな時間で、刃牙の拳が勇次郎にぶつかった。
 その瞬間、刃牙の体は停止した。
 剛体術。インパクトの瞬間、間接を固定することで得られる最大の破壊力。
 音速を超えるスピードで、70kgの鉄球が勇次郎の体に激突した。
 次の瞬間。
 拳が、刃牙を頭から叩き落とした。
「やれば出来るじゃねぇか……」
 音速拳と剛体術の融合。
 それが、範馬刃牙の切り札。
 そして、その切り札をもって闘いは終結した。
 範馬刃牙の幽霊は、叩き潰されたまま姿を消した。
「っへ。強くなりやがって……」

240Classical名無しさん:08/01/17 23:53 ID:1frrzPgU
しえん
241贈り物 ◆04DcwbhVLk :08/01/17 23:53 ID:Gz.THDNE
 範馬勇次郎は気分屋である。
 先ほど、打ち上げ花火を手にした時、不意に息子に会ってみたくなった。
 その彼がやったことはリアルシャドー。
 自らの知らぬ、死を知った刃牙を、勇次郎なりに再現して闘ってみた。
 その刃牙は、ほんの少しだけ強くなった刃牙。
 それが真実とは限らない。否、死んで強くなる者などいるはずがない。
 だから、これは勇次郎の想像の中の出来事。単なる誤り。
 けれどリアルシャドーの中では真実。
「先に冥土に行ってな。100年経ったら、俺も付き合ってやる」
 勇次郎は取り出した打ち上げ花火を再び仕舞う。
「クックック……それなりに楽しめたな……」
 鬼は嗤う。息子の死でさえも。
 強者との戦い、それこそが、鬼の望み。
「暫く歩くか……」
 満足した勇次郎は、そのままかつての好敵手がいた場所へと歩き始める。

 沈み行く太陽が、彼の背中を見たとき。
 なぜか、少しだけ啼いているように見えたという。
 リアルシャドーは勇次郎なりの刃牙への弔いだったのかも知れない。
242Classical名無しさん:08/01/17 23:53 ID:IM/lzPH2
ゆーじろー……支援
243Classical名無しさん:08/01/17 23:54 ID:1frrzPgU
                             
244贈り物 ◆04DcwbhVLk :08/01/17 23:54 ID:Gz.THDNE
【D-4 消防署前/一日目 夜】
【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】
[状態]闘争に餓えている。左腕切断(アクア・ウィタエの効果により自己治癒中)。息子が死んで少し切ない気分。
[装備]ライター
[道具]支給品一式、打ち上げ花火2発
[思考] 基本:闘争を楽しみつつ優勝し主催者を殺す
1:戦うに値する参加者を捜す
2:首輪を外したい
3:S7駅へ向かいラオウ、DIO、ケンシロウを探す。
4:未だ見ぬ参加者との闘争に、強い欲求
[備考]
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。
※ラオウ・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました。
※生命の水(アクア・ウィタエ)を摂取しました。身体にどれ程の影響を与えるかは後の書き手さんに任せます。
245贈り物 ◆04DcwbhVLk :08/01/17 23:56 ID:Gz.THDNE
投下終了。
246Classical名無しさん:08/01/18 00:00 ID:bkIbXzFI
修正乙。
なるほど、こういう勇次郎もいいっすね。
オーガの意外な一面が垣間見えて良かったです。
個人的には修正前より良くなったと思います。ここは好みの問題ですかね……。
247Classical名無しさん:08/01/18 00:14 ID:kbOpUr1M
赤木がやっぱり格好いいなあ
コナンや服部も洞察力や考察力という意味では多分同じくらいなんだろうけど道徳感っていうリミッターがあるからなあ
赤木の場合そのリミッターが無い分妥協がなくていろんな可能性が感じられるわ
でも、なんか最後まで生き残れなさそうな感じがあるわ。
248Classical名無しさん:08/01/18 00:48 ID:wZhO/iCw
>>235
赤木の場合は、人間ワープという絶好の比較対照がありましたからね。
ただ見ただけだったら、人間ワープと同じ瞬間移動か、ケンシロウ達のように超加速だと考えただろうし。
249Classical名無しさん:08/01/18 00:48 ID:NxiARsnM
確かに容赦は無いけど、なんだかんだで面倒見がいいからな、アカギ。
工場で働いてた時の同僚とか、天のひろゆきとか気に入った奴には。
勇次郎の投下乙です。
参戦時期はバキ以降っぽいし、こっちでもありえそうではありますね。
250死亡者名鑑の守人 ◆vPecc.HKxU :08/01/18 06:22 ID:dGOBBhR6
死亡者名鑑に志村新八・才賀勝・ルイズの三名を記載しようと思いますので、
したらばの名鑑スレに何かおかしい記述があれば指摘お願いします。

あと、各人に「関わりの深い人物」「関わりの深い支給品」を追加しときます。
251Classical名無しさん:08/01/18 07:10 ID:DKmWt8yw
>>250
津村斗貴子の記述が何故か全て津村北貴子になっているのでお知らせします。
252死亡者名鑑の守人 ◆vPecc.HKxU :08/01/18 07:22 ID:dGOBBhR6
なんと……TQNの名前を書くときに北斗・貴族・子でいちいち消して書いてるからこういうことが起きる…
というわけで修正しました。ご協力感謝します。
253250:08/01/18 09:51 ID:DKmWt8yw
口うるさくて申し訳ありませんが、花山の関わりの深い人物の所がまだ北貴子になっていたのでお知らせします。
254Classical名無しさん:08/01/18 12:25 ID:2k7TOUrQ
死亡者名鑑乙!
いつも楽しみにしてるからなー。
それと所々誤字があったので修正しとく。
255死亡者名鑑の守人 ◆vPecc.HKxU :08/01/18 13:14 ID:dGOBBhR6
(´・ω・`)いずれ俺はTQNに後ろからアッーされそうな人物のようです。
報告&修正ありがとうございます
256Classical名無しさん:08/01/18 18:29 ID:9RkgT8zg
死者名鑑更新乙!
ルイズのAAがあいすぎw
257 ◆bnuNxUeVnw :08/01/18 23:10 ID:MhH5vfXw
>>244
投下乙!!
哀愁に浸る勇次郎の背中が物悲しい・・・
彼の人間臭い一面がみれてよかったです。

それでは キュルケ、ケンシロウ投下します。
258Classical名無しさん:08/01/18 23:11 ID:eRyH9en6
259Classical名無しさん:08/01/18 23:12 ID:eRyH9en6
しえん
260Classical名無しさん:08/01/18 23:12 ID:gEa832hM
261 ◆bnuNxUeVnw :08/01/18 23:13 ID:MhH5vfXw
「今から話すことを真面目に、かつ冷静に聞いて欲しい。
俺の名は―――すまない、言うことは出来ない。 だが、信じて欲しい――
言いたくないのではなく、言えないんだ。」
(これはなに……?もしかしたらなにかの機械?私が宝石を触ったから?)
もしかしたら泥棒に間違えられたかもしれないと思い、一人焦るキュルケ。留守電に録音されたものなのだが、あいにくキュルケは魔法の世界出身。
(盗難防止だったのかしら?ケンを…)
だがケンシロウを呼ぼうと開けた口が次の言葉を聞いてぐっと閉じられる。

 「あの女に俺が生きていることを気付かせるには、まだ早すぎるからな。……これがどういう意味かは、今から説明しよう。
 参加者名簿に、『柊かがみ』という名が載っているだろう? 彼女はこのプログラム――いや、この殺し合いに乗って――――」

聞いていくうちに男の声とその内容に真剣に耳を傾けるキュルケ。
マーティン・ジグマール。ひとりの男が彼女にこのゲームでの情報の大切さを経験させてくれたのだ。
そして情報を過信しすぎないことも。
電話のスピーカーから職員室に響く一人の男の声。しかし彼の確固たる決意がこもった情報を遮るものがあった。
「さて諸君、午後18時の定時放送を始める。調子はいかがだろうか?」
――――第四回放送が始まった

262 ◆bnuNxUeVnw :08/01/18 23:14 ID:MhH5vfXw
「マリア
タバサ
防人衛
――――」

え……
今なん…て…?
手足が振るえ、自分の体重を支えきれずその場に座り込む。
嘘よ、嘘よ、嘘よ……

しかし現実は非常である。
彼女に心の整理をさせる暇を与えず、ひとつの名前を読み上げる。

「…村新八
才賀勝
ルイズ
――以上10名じゃ。」

その時切れた。
彼女の中で「なにか」が切れた。決定的な「なにか」が。

一個借り、そう言って酒場を出て行くタバサの小さな背中。
ガリアの屋敷で苦しそうにうなされているのを抱いてあげたときのタバサの顔。
夏でも汗ひとつかかず涼しげに本を読んでいて、キュルケに冷風の魔法を唱えてくれたタバサ。
「あぁ……」

「――――から、十字架型の炎を吐き出していた。それで車を炎上させたんだ。
 信じられないかもしれないが、真実なんだ。信じてくれ、頼む!
 もうアイツのような被害者は出したくないんだ!!」
もうなにも聞こえない。耳には入るが聴こえないのだ

263 ◆bnuNxUeVnw :08/01/18 23:15 ID:MhH5vfXw
貴族の誇りを胸に巨大なゴーレムに立ち向かったルイズ。
才人のことをからかって顔を真っ赤にしながらわめくルイズ。
馬鹿にされながらもいつでも一生懸命だったルイズ。

震えがとまらない。
口から意味のない言葉がつむぎだされていく。
「…うあぁ…………」

どこか自分と世界が違い、それに惹かれた愛しい人 才人

犬猿の仲のはずがいつのまにか仲良くなっていた悪友 ルイズ

妹のようであり、いつも側にいてくれた一番の親友 タバサ


このゲームは彼女から全てを奪った。愛しい人も、悪友も、親友も。なのに自分は生きている。キュルケはもうただ泣くことしか……泣くことさえできずに自分の内側から沸き起こる「なにか」を叫ぶ。
「――――ッッ!! ――――ッッ!! ――――ッッ!!」


「微熱」の名をもつキュルケ。彼女の心の炎は風前の灯だった。


264 ◆bnuNxUeVnw :08/01/18 23:17 ID:MhH5vfXw
暗い夜に月が浮かび、ひとつの建物を照らしている。
本来なら勉強や部活動が終わり、生徒たちが談笑しながら帰宅に向かうであろう学校からふたつの人影が出てくるのが見える。


あの後ケンシロウは職員室で茫然自失となったキュルケを保健室のベッドに寝かせ、落ち着いた後に次の禁止エリアをメモさせ死亡者のチェックも行った。
視力を失ったケンシロウには気配で人や建物などがわかっても紙が地図か名簿かわからないのだ。
「葉隠散 マリア タバサ 防人衛 坂田銀時 空条承太郎 範馬刃牙 志村新八 才賀勝 ルイズ、の10名だ」
(キュルケにとって先程突きつけられたものを再び認識させられるのは、酷な作業だろう。)
そう思い、ケンシロウは極めて淡々と死亡者を読み上げた。
だがキュルケは表情ひとつ変えず、悲しみのそぶりひとつ見せず名簿に線を書き込む。
それはまさに抜け殻。
ケンシロウにとって別れは日常であった。だが目の前の少女にとっては大きすぎる傷だったのだろう。
結果彼女は魂が抜けた状態のようになってしまった。
「この後どうしたい?」
「神楽に…会いたい…………」
ケンシロウは知っていた。
例え世界中で一番の名医を連れてきても、どんなに希少な薬を使っても、一子相伝の北斗神拳で秘孔をついても心の傷は治せないのだ。心の傷はその本人が乗り越えるしかほかない。
はたしてこんな状態のキュルケの言葉をケンシロウが拒否できようか?いや、できない。

神楽が向かったであろう病院に行くため、ケンシロウは後ろにいるキュルケを気遣いながら東へ向かう。
自分の大切な「友」を傷つけたこの腐ったゲームを潰す決意をさらに強固なものにしながら…………。


265Classical名無しさん:08/01/18 23:17 ID:emBr1Qt2
        
266 ◆bnuNxUeVnw :08/01/18 23:18 ID:MhH5vfXw
猛吹雪から小さなロウソクを守っている大きな囲いがある。
ロウソクの火は今にも消えそうでか細い。
仮に…もし仮に囲いがなくなったらロウソクはどうなるだろう?吹雪に負けまいと再び燃えあがるのだろうか?それとも吹雪の前に消えさってしまうのだろうか?

吹雪はやまない…。

【C-4 学校。一日目 夕方】
【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]:カズマのシェルブリット一発分のダメージ有り(痩せ我慢は必要だが、行動制限は無い)全身各所に打撲傷
    キング・クリムゾンにより肩に裂傷 両目損失。吐き気はほぼ、おさまりました(気合で我慢できる程度)
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1〜3、本人確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない。
1:キュルケを気遣いながら病院に向かって神楽と合流する。
2:アミバを捜索、事と次第によれば殺害。
3:ジャギ・ラオウ・勇次郎他ゲームに乗った参加者を倒す。
4:助けられる人はできるだけ助ける。
5:乗ってない人間に独歩・ジャギ・アミバ・ラオウ・勇次郎の情報を伝える。
[備考]
※参戦時期はラオウとの最終戦後です。
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました 。
※秘孔の制限に気付きました。
※ラオウが無想天性使えないことに気付きました(ラオウの記憶が操作されていると思っています)

267 ◆bnuNxUeVnw :08/01/18 23:18 ID:MhH5vfXw
【キュルケ@ゼロの使い魔】
[状態]後頭部打撲(治療済) 貧血気味 マントが破られている
   魔法に使いすぎによる精神の消耗(回復基調にはある)
強い精神的ショック
[装備]タバサの杖@ゼロの使い魔
[道具]支給品一式
[思考・状況]
基本:???
1:神楽に会いたい
2:タバサ…ルイズ…
[備考]
※軽い頭痛。
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました
※ケンシロウに惹かれています。
※三村の留守電の内容はほとんど聞き逃しました。ケンシロウにも伝えてありません。

<二人の首輪についての考察と知識>
※首輪から出ている力によって秘孔や錬金が制限されていることに気付きました。
ケンシロウは首輪の内部に力を発生させる装置が搭載されていると思っていますが、
キュルケは媒介にすぎない可能性があると思っています。

<二人のDIOの能力について>
※瞬間的に普段の数百倍の速度で動く能力だと思っています(サイボーグ009の加速装置のイメージ)

268Classical名無しさん:08/01/18 23:22 ID:eRyH9en6
  しえん
269 ◆bnuNxUeVnw :08/01/18 23:24 ID:MhH5vfXw
投下完了しました。誤字、脱字、矛盾点などありましたら指摘をお願いします。
題名は「風前の灯火」です。

>>1qmjaShGfE氏
「万事屋銀ちゃんの店仕舞」の神楽の台詞を勝手ながら引用させていただきました。
大切な人の死に立ち向かった神楽と潰れてしまったキュルケを対極的にさせたかったためです。

気に入らなかったり、許可できなかったら修正いたしますので一言宜しくお願いします。
270Classical名無しさん:08/01/18 23:29 ID:eRyH9en6
さて、キュルケよりケンシロウより。
俺には注目したいキャラがいる。そいつが誰なのか言うまでもないだろう……なので省略だ。


>>269
投下乙。キュルケにとっては、二度目の死亡報告になるわけですが、
二度目は正直きついですよね……まぁ、ある程度想定していたことだと思うし、ケンもいるので大丈夫でしょうけど。
どうなるかな。
271Classical名無しさん:08/01/18 23:32 ID:5KT.AbyI
投下乙。
三村のメッセージ届かずw悲惨すぎるw
キュルケがこんな状態だからかな、ケンシロウの頼もしさがいつも以上に伝わってくるSSでした。
マーダーの位置的に考えて、病院への道のりは険しいぞ、ケンシロウ。
272Classical名無しさん:08/01/18 23:38 ID:emBr1Qt2
投下乙!
傷ついた美女にケンシロウの組み合わせは反則過ぎるw
放送後の親しい人を喪った描写が上手かったです。
GJ!
273Classical名無しさん:08/01/18 23:40 ID:rSrTbJHo
投下GJです!
ケンならキュルケを守れる。そう信じたいが……
キュルケが立ち直る日は来るか。ああ、気になるぜ!
改めて、GJ
274Classical名無しさん:08/01/18 23:44 ID:dGOBBhR6
投下乙。
さすがに親友・悪友・惚れた男と立て続けに失えばくるトコくるかぁ…
ケンシロウが下手に気を使いすぎる男じゃなくてよかったなキュルケ
つか、三村の行動今のところすべりまくりだなw
275Classical名無しさん:08/01/18 23:45 ID:dP2zce2E
投下乙です。
キュルケには是非とも立ち直って欲しいが仮に神楽と合流できても今は殺人犯がすぐ近くに。ここも苦難の道だなぁ。
そして三村哀れwww対主催で彼の意見をまともに聞いてくれそうなのってあそこくらいしかなかったんじゃなかろうか
276Classical名無しさん:08/01/19 00:22 ID:bx2S38Fs
投下乙!
キュルケ……流石に二連続は堪えてしまうか。
しかしケンシロウがなんとも頼もしい存在だ!
彼なりに彼女を気遣ってるのが良いですね!
三村……ごめんw
277 ◆1WtHqYWV9M :08/01/19 00:55 ID:bx2S38Fs
連投失礼。
他所で鳥ミスしましたので今日から鳥を変更します。
最後にナギ組を描いた者ですので。
……三回めだよママン。
278Classical名無しさん:08/01/19 03:23 ID:yqx3lEJQ
三村カワイソスww
さて、これから三村の留守録は効果が出てくるのだろうか…
279Classical名無しさん:08/01/19 13:36 ID:nvxvBz.o
かがみの不幸が三村に移行してねえかw
アーカードと遭遇、仲間とはぐれ情緒不安定ってのが
280 ◆1qmjaShGfE :08/01/19 18:04 ID:1QFkgsrM
>>269
お返事送れて申し訳ありません。許可も何も、私の拙い文章を使っていただけたのは、とても嬉しかったです。ありがとうございます
281 ◆bnuNxUeVnw :08/01/19 19:45 ID:l62WrmLc
>>280
ありがとうございます。
次回作もがんばってください!!
282Classical名無しさん:08/01/19 21:26 ID:D4DuqdoM
>◆MANGA/k/d.氏へ。
前スレの「今にも落ちてきそうな星空の下で」に時間が書かれていません。
書いていただけると助かります。お願いします。
283Classical名無しさん:08/01/19 21:40 ID:s7.8b4Tw
>◆wivGPSoRoE氏、wikiに収録したいのでタイトルを教えていただきたいです。

>>282の件はとりあえず、時間は未表記のまま収録しました。
284Classical名無しさん:08/01/19 21:43 ID:D4DuqdoM
>>283
>>147に注目。今は修正中だよん。
285Classical名無しさん:08/01/19 22:15 ID:s7.8b4Tw
>>284
おkです、分かりました。
286 ◆MANGA/k/d. :08/01/19 23:05 ID:FOI5TOX6
>>282
 修正しておきました、押忍…!
287 ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:05 ID:fKelb2Yo
勇次郎、アーカード投下します。
今回はNG覚悟ですが、全力でうちこんだので例えそうなろうとも後悔はありません。
かなり長いので、支援よろしくお願いします。
288『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:07 ID:fKelb2Yo
「さあ……行こうか」

傷は癒えた。
完璧とまではいかずとも、これで再び戦うことは出来る。
アーカードは微笑を浮かべたまま、ゆっくりと起き上がった。
吸血鬼が求めるは、更なる闘争。
心臓をくれてやろうと思えるほどの猛者との死闘。
それこそが望み、それこそが至福。
アーカードは、その足を人が集まるであろう場所―――駅の方面へと向けた。
目標は、最寄のS7駅。
駅ならば、例えそこに人がいなくとも、待っていれば人が来る可能性は高い。
はたして次は、どの様な兵と戦うことになるだろうか。
これまで相対した猛者達との再会か、未知なる強豪との出会いか。
どちらにせよ……期待をせずには、いられなかった。
アーカードが走り始める。
既にその身は少女ではなく、本来の彼―――その姿ですら、本当の姿かどうかは分からないが―――へと戻っていた。
乗り物を失った今、移動をするのには、歩幅が大きい此方の方が便利だからだ。

「……やはり、此方の方が速いな」



「悪かねぇな……」

勇次郎が、左の手で拳を握りながら呟く。
完全とまではいかないが、大分調子は良くなった……これならば戦闘でも十分に用いられるだろう。
果たして、この拳を最初に打ち込める相手は誰か。
ラオウか、ケンシロウか、DIOか。
駅で出会えたあの男達は、いずれもが世界最強の一角に入れるであろう猛者達。
刃牙以上の楽しみを、きっと与えてくれるに違いない。
勇次郎の心は、この上なく高ぶっていた。
289Classical名無しさん:08/01/20 02:08 ID:6HXK5OXQ
きた……! 俺はこのときを待っていた……!
だからっ……寝なかった……! 

支援
290『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:09 ID:fKelb2Yo
吸血鬼と地上最強の生物。
比類無き暴力を武器に、他を食らい続けた鬼二人。
このゲームに集められた者達の中でも、極めて危険といえる両者。
彼等が求めるは唯一、己を満足させられるだけの闘争。
そんな二人が、さながら磁石の様に引かれ合うのは……ある意味、必然ともいえた。

「……ほう」

駅まで後僅かとなった、その時。
勇次郎は、近くから放たれているその異様な気配を察知して、歩みを止める。
これまで勇次郎が感じたことのない、異質極まりないその気。
勇次郎はゆっくりと振り返り……笑みを浮かべて己を見つめる、アーカードの姿を確認した。

「勇次郎……確か、そう呼ばれていたな」
「ああ……貴様は?」
「アーカード、それが私の名だ」

アーカードは、勇次郎と出会えた事が嬉しかった。
ゲーム開始時のあの光景は、彼が強者であるという事を認識させるのには、十分すぎた。
十分すぎる闘争を与えてくれるに違いない相手であると、そう確信できた。
しかし……それと同時に、一つだけ気がかりな事があった。
今の勇次郎は、何かが違うのだ。
あの広場で最初に見た時と、明らかに違う点が一つある……そう。

「……貴様もか、勇次郎」
「あん……?」
「貴様も……人間をやめたのだな?」
291『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:10 ID:fKelb2Yo
広場で目にしたときの彼は、紛れも無い人間であった。
だが……今の勇次郎は、人の身にあらず。
生命の水を摂取した事により、彼はしろがねの力を手にした。
現人鬼の様に、かつては人間だった者になってしまっていたのだ。
アーカードはこの事態に、落胆せずにはいられなかった。
勇次郎は、人間のままでも自分を打ち倒せた可能性がある存在の一人。
もしやすれば、心臓をくれてやれるのではないかと思っていた。
それだけに、期待を裏切られたショックは大きかった。
しかし……勇次郎はそんな彼を、嘲笑う。

「どうだっていいんだよそんなこたァ……」
「何?」
「人間であるか否か、そんな事は闘争には不要だと言ってんだよ。
ただ楽しめりゃ、それで十分じゃねぇか」

人間であるか、人間でないか。
そんな事は、勇次郎にとっては本当にどうでもいいことだった。
彼は闘争を楽しめるのであれば、それだけで十分だった。
その言葉を聞き、アーカードも笑わずにはいられない。
確かに、彼の言うとおり。
闘争を楽しめれば……今はそれでいい。
二人が、揃って大きな笑い声を上げた。

「クククッククククク……HAHAHAHAHAHAHAHA!!」
「エフッエフッ……ハハハハハハハハァッ!!」
「いいだろう……始めるぞ、勇次郎。
闘争の始まりだ!!」
292『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:12 ID:fKelb2Yo
アーカードの宣言と共に、二人は同時に飛び出した。
吸血鬼と地上最強の生物の闘争が、ついに始まったのだ。
二人は大きく前へと踏み込み、そして右の拳を繰り出す。

「ぐっ!!
このパワー……!!」
「こいつは、面白ぇ……!!」

ぶつけ合わせた拳から、全身に強烈な痺れが伝わってくる。
お互い、相手の怪力に驚かされていた。
勇次郎は、一見細身のアーカードに、まさかこれ程の力があるなどと思ってもみなかった。
アーカードは、よもや勇次郎が、吸血鬼である自身の力と互角……いや、それ以上とは思ってもみなかった。
とっさにアーカードは後方へと下がり、間合いを離す。
その右の拳からは、鮮血が流れ落ちていた。
力では、若干ながら勇次郎が上回っていたのだ。

「面白いぞ勇次郎!!
吸血鬼の持つ怪力を、真正面から打ち砕くというのか!!」
「吸血鬼だぁ?
はっ……テメェといいラオウといい、大層な肩書きなこったなぁっ!!」

勇次郎は更に前へと詰め、左の拳を振り上げる。
その強烈な一撃の前には、下手な防御は無意味。
ならば、取るべき道は回避しかない。
しかし、勇次郎の一撃、それもしろがねの力が加わったそのスピードは、半端なレベルではない。
並の格闘家ならば、避けられずに直撃をもらうしかないだろうが……
293『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:13 ID:fKelb2Yo
「RAAAAAAAAAAA!!」

第三の目を持つ吸血鬼の動体視力ならば、回避も可能。
アーカードは素早く身を屈め、勇次郎の一撃を紙一重で避けた。
そしてその体勢を維持したまま、さながら地を這うかのように、勇次郎へと急速接近。
勇次郎はそれを見て、本能的に一歩後ろへと下がる。
その直後、アーカードが右手を手刀の型へと変え……逆袈裟に斬り上げた。

「ぬっ……!!」

勇次郎の腰からわき腹にかけて、真一文字の傷が出来上がり、そこから血が噴出す。
とっさに回避行動を取ったにもかかわらず、この傷。
もしも下がっていなければ、相当のダメージを受けていたに違いない。
面白い。
この男は、大口を叩くだけの実力を秘めている。
勇次郎はアーカードに対して大きな笑みを浮かべ、お返しとばかりに左手の手刀を振り下ろした。
天内悠に致命傷を与えた、鉄で作られた錠前でさえも切り落とす鬼の手刀。
しかしアーカードは、それを前にして引こうとはしない。
その逆、勇次郎へとさらに突っ込んできたのだ。
アーカードは振り上げた右手の指を開き、そのまま勇次郎の顔面へと掴みかかりにいった。
結果、勇次郎の手刀はまともにアーカードの左肩に振り下ろされ、肩の骨がグシャリと音を立てて砕ける。
しかし……アーカードは、若干怯みこそしたものの、行動そのものを止めはしない。

「掴まえた」
294Classical名無しさん:08/01/20 02:15 ID:peZYlEfw
     
295『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:15 ID:fKelb2Yo
アーカードが掴んだのは、顔面ではなく右肩だった。
手刀を受けた所為でバランスが崩れ、狙いが反れてしまった為である。
しかし、それでも十分すぎる。
そのままアーカードは、力任せに勇次郎を押し倒す。
その衝撃を受け、地面は砕け土砂が舞い上がった。
アーカードのパワーがどれだけ強烈なものかを、見事に現している光景であった。
そしてアーカードは、勇次郎の顔面へ目掛けて全力で拳を打ち下ろしにいく……が。

ガシュッ。

「ぐぅっ!?」

勇次郎の取った行動は、アーカードが全く予想だにしていなかった一撃。
彼は、アーカードの拳が自らに叩き込まれる寸前、自分からその拳へと顔を近づけ……その指を、食い千切ったのである。
吸血鬼に対して噛み付きを行うという、まさかの蛮行。
勇次郎は食い千切った指を、アーカードの顔面に吐きつける。
そして、両手でアーカードの右腕を掴み……全力で後方へと投げ飛ばした。

「ガハッ……!!」

強烈な勢いで、アーカードは背中から電柱に叩きつけられる。
そこへと、素早く起き上がった勇次郎が迫った。
驚異的なスピードで、勇次郎はアーカードとの間合いを詰める。
体勢を整える隙を、彼はアーカードに全く与えないようとはしない。
与えるのは唯一、確実な死のみ。

「邪アアアアァッッ!!」
296Classical名無しさん:08/01/20 02:16 ID:5Xyo1bmY
                 
297『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:17 ID:fKelb2Yo
勇次郎が雄叫びを上げ、強烈な一撃を見舞う。
その拳は、アーカードの顔面を完全に粉砕し、電柱すらも圧し折った。
鮮血と脳漿が、勇次郎の拳に降りかかる。
頭部を粉砕され、生きていられる生物などいはしない。
事実、数刻前に勇次郎は勝の頭部を粉砕し、そして絶命させた。
だが……アーカードは、その理が通用しない化物。
その心臓を完全に止めぬ限り、例え頭部を吹き飛ばされようとも死ぬことは無いのだ。
即座に、アーカードの肉体が再生を始める。

「まだだぞ、勇次ろっ!?」

しかし、その次の瞬間だった。
なんと勇次郎は、アーカードの心臓目掛けて強烈な前蹴りを叩き込んでいたのだ。
電柱は完全に粉砕され、アーカードは十数メートル先の家屋まで一気に吹っ飛ばされる。
勇次郎は、アーカードの弱点が心臓である事を知らない。
だが、恐るべき野生の勘でそれを察知し、そして本能的に攻撃を繰り出したのだ。
しかしその一撃も、アーカードの心臓を停止させるにはいたらなかった。
彼はギリギリのところで、右腕で防御していたのである。
御蔭で腕はぶち折れ、ぶらりと垂れ下がってはいるが、心臓に比べればどうということはない。

「力みが……足りねぇか……!!」
「くくっ……クハハハハハハ!!!
素晴らしい、素晴らしいぞ勇次郎!!
我を仕留める唯一の方法を、本能的に察知するとはな!!」
「頭を吹き飛ばされて、それでも死なねぇ。
仕留めるには、心臓に杭をぶち込むしかない……吸血鬼か。
まさか、実在してたなんてな……!!」
298『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:19 ID:fKelb2Yo
アーカードが吸血鬼であるという事実を知り、勇次郎は更に高揚する。
彼はこれまで、人外の存在との闘いも幾度と無くこなしてきた。
北極熊を屠り去った事もある。
軍隊を導入せざるを得ないと判断されたほどの、超規格外のアフリカゾウを屠り去った事だってある。
地上最強の生物の名に相応しく、彼はこれまでに数多くの獰猛な動物達を屠り去ってきたのだ。
だが……そんな彼でも、吸血鬼との遭遇は始めてであった。
人間ならば致命傷である程の傷を受けても平気で闘える、正しく人知を超えた存在。
食らい甲斐がある、未知の餌。
是非とも……全力で、食らい尽くしたい。

「まだまだこの程度で終わってくれるなよ、アーカードォッ!!」
「当然だ、勇次郎!!」

肉体を再生させ、アーカードが家屋から飛び出した。
それに合わせ、勇次郎も地を蹴り間合いを詰める。
北極熊を葬り去った猛獣の連撃が、次々にアーカードの肉体へと叩き込まれる。
吸血鬼の怒涛の猛撃が、勇次郎の肉体へと叩き込まれる。
互いの拳から、脚から、胴体から。
全身の至る所から出血が起こり、血飛沫が舞い散る。
しかし、両者共に全く引こうとはしない。

「HAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!!!!」

アーカードは左手で手刀を作り、大きく腕を引く。
それに合わせるかの如く、勇次郎は大きく上半身を捻る。
先に繰り出したのは、アーカード。
一歩前へと踏み出し、真っ直ぐに貫手を繰り出す。
その貫手は、勇次郎の背へと突き刺さった……しかし。
ここで、アーカードの表情が変わる。
これまで二人は、ずっと正面から相対していた。
それ故に……アーカードは、それをはじめて見る事になったのだ。
勇次郎の背に浮かぶ……鬼の形相を。
299Classical名無しさん:08/01/20 02:20 ID:ZNwaj9d6
 
300Classical名無しさん:08/01/20 02:20 ID:peZYlEfw
     
301『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:20 ID:fKelb2Yo
「鬼の……背中……!!」
「うおおおおおおお!!」

直後、勇次郎が急速な勢いで上半身を捻り返した。
それにより、アーカードの指が背中から強引に引き抜かれる。
そして……強烈な一撃が、その胴体へと見舞われた。
アーカードは猛烈な勢いで吹っ飛び、家屋へと逆戻りする羽目となったのだ。
その一撃は、彼がこれまで受けたどの一撃よりも強かった。
しかし……心臓以外の部位を狙った所で、トドメを刺す事は不可能である。
それは、放った勇次郎にも十分分かっていた。
元々あの一撃は、心臓を狙っての一撃だった。
それなのに胴体へと打ち込んでしまったのは、背に貫手を受けた影響で、狙いを狂わされたからである。
勇次郎は、ゆっくりと家屋へと迫っていく。
そんな彼を見て、アーカードは己の感想を素直に述べた。

「打突の要と言われている背なの筋肉……その筋肉の構成が、明らかに通常とは異なる。
言うなれば生まれながらの……天然戦闘形態と言ったところか……!!」

それは奇しくも、かつて勇次郎と激突した郭海皇と、全く同じ意見であった。
勇次郎の背中に浮かぶ鬼の形相。
それを形成する筋肉の構造は、通常の人間のものとは大幅に異なっている。
そう……勇次郎の肉体は、生まれながらにして闘争用に出来ているといっても、過言ではないのだ。
闘争の為だけの肉体、なんと素晴らしい事だろうか。

「クククッ、面白い、面白いぞ勇次郎!!
いいだろう……貴様には、見せる価値がある!!
この私の、吸血鬼アーカードの全力を!!」

アーカードは両手を前方へと突き出し、親指と人差し指で四角形を作る。
現人鬼葉隠散とキャプテンブラボーを屠り去った、アーカードの最大最強の切り札。
それが今……発動される。
302Classical名無しさん:08/01/20 02:21 ID:ZNwaj9d6
 
 
303『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:22 ID:fKelb2Yo
「拘束制御術式『クロムウェル』――第3号第2号第1号、開放。
目前敵能力及び目前敵の完全沈黙までの間能力使用……限定解除開始……!!」
「っ!!」

勇次郎は足を止め、即座に家屋から離れた。
直後、家屋は音を立てて崩壊。
その内部から、禍々しい気を放つ何かが飛び出してきたのだ。
蝙蝠、百足、黒犬。
それは、勇次郎がよく知っている、しかし何かが違う生物の群れ。
全てが漆黒に包まれ、そして全身に無数の瞳を持っているという、異様な井出達。
何より、その獰猛さと殺気。

「これが貴様の全力か!!
よかろう……さあこい、アーカードォッ!!」

向かい来る漆黒の群れを前に、勇次郎は勇ましく向かっていく。
勇次郎にとって、目の前にいるのは何もかもが未知の存在。
されど彼は恐れず、逆にそれを楽しんでいる。
恐らくは二度とないであろう、吸血鬼との闘争を。

「邪ッ!!」

前方より向かってきた黒犬に、全力で踵を振り下ろし粉砕する。
黒犬は脳天をかち割られ、地に伏せた。
しかし、その死体は一瞬にして分解……無数の百足に姿を変化させる。
その百足は、勇次郎の脚部から齧りつきにかかった。
それとほぼ同時に、真正面からは大量の蝙蝠が牙をむいて襲い掛かる。
一瞬にして勇次郎の全身は、漆黒の魔獣によって覆い隠された……が。
304Classical名無しさん:08/01/20 02:22 ID:peZYlEfw
      
305Classical名無しさん:08/01/20 02:23 ID:ZNwaj9d6
 
306『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:24 ID:fKelb2Yo
「ヌンッ!!」

直後、その全ての生物が吹き飛んだ。
ラオウ戦で見せた様に、全身から闘気を放出したのである。
闘気の扱いに関しては、勇次郎はまだ未熟。
ただこうして、闘気を乱雑に解き放つ事しか出来ないが……それでも勇次郎の闘気は、並の格闘家を遥かに凌駕している。
纏わりつく魔獣達への対処には、十分すぎる威力であった。
その後、すぐさま勇次郎は、アーカードを狙おうと彼を探すが……その直後だった。

「RAAAAAAAAAAAAA!!」
「ぬぅぅっ!?」

アーカードが出現したのは、勇次郎の背後。
家屋が崩壊した時、アーカードはすばやく下半身を黒犬へと変化させて、そして勇次郎にも気付かれぬ程の速度で回り込んでいたのだ。
ここにきて、アーカードのスピードが急激に跳ね上がった事に、勇次郎も驚きを隠せない。
とっさに振り向き、拳を打ち込もうとするが……それは、最悪のタイミングだった。
先程、指を食い千切られた事に対する逆襲とでもいうべきか。
勇次郎の左拳は、丸々黒犬の口の中へと収まった……食われてしまったのだ。

「豚の様な悲鳴を上げろ……!!」

黒犬は、その左拳を食い千切ろうとする。
強烈なパワーで齧り付かれ、勇次郎の怪力を以てしても、引き抜く事は出来ない。
ここで、アーカードの上半身にも変化が現れる。
両肩が隆起し、そこから二本ずつ、合計四本の手が出現したのだ。
その四本の手に、本来の両手を加えた六本の手が、一斉に勇次郎へと襲い掛かる。
拳を食われ身動きを封じられた勇次郎には、どうにかして拳を解放しない限り、これをかわす術はない。
ならば、もはや手段を選んではいられない。
勇次郎はとっさに、左腕へと回転を加え……アーカードを、転倒させた。

「ヂャッ!!」
「何っ!?」
307Classical名無しさん:08/01/20 02:24 ID:peZYlEfw
     
308『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:26 ID:fKelb2Yo
アーカードは、脳天から強く地面に叩きつけられる。
それによって生じた、一瞬の力の緩み。
勇次郎はそのチャンスを見逃さず、黒犬の口から腕を引き抜いた。
その手首にはくっきりと歯型がついており、血が滴り落ちている。

(野郎……ッ!!
俺を、技に追い込みやがった……ッ!!)

勇次郎が放ったのは、合気の一種。
黒犬から逃れる為、とっさに彼はそれを使ってしまったのだ。
これまで、相手の力量を試したり、からかう為に技を使った事は何度もある。
だが……今回は違う。
本能的に、危険を察知して技を使ってしまった。
それだけ、追い込まれてしまっていたのだ。

「成る程成る程、パワーだけではないという訳か。
技術に関しても一級……素晴らしいぞ、勇次郎!!
よくぞ、ここまで練り上げたものだ!!」

アーカードは頭部を再生させながら、更に歓喜する。
勇次郎には、怪力だけではなく技まで備わっていた。
闘士としては、これ以上ないレベル。
闘争の相手として、最高の実力者。
これだ、これこそが望んでいた闘争だ。
309Classical名無しさん:08/01/20 02:26 ID:ZNwaj9d6
 

 
310『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:27 ID:fKelb2Yo
「さあ来るがいい!!
その拳を見事、この心臓に突き立ててみせろ!!」

アーカードの胴体から、更に無数の手が出現。
全ての手が勇次郎に襲い掛かった。
勇次郎はそれを驚異的な反射神経で回避し、一気にアーカードとの間合いを詰める。
だが、その距離が徐々に近づくにつれ、完全な回避は不可能になってきた。
手は勇次郎の肉体に突き刺さり、その肉をえぐり飛ばす。
それでも勇次郎は、ダメージを意に介さずただ前へ前へと進む。
拳を打ち込みながら、蹴りを繰り出しながら、噛み砕きながら。
徐々に徐々に、アーカードとの間合いを詰めてゆく。
そしてついに、勇次郎は己のエリアへとアーカードを捉えた。

「アァァァァカァァァァドォォォォォォッ!!!」

勇次郎は天高く、両腕を真っ直ぐに突き上げた。
背中の鬼が、哭き顔を浮かべる。
これが勇次郎の、最大最強の形態。
かつて独歩の心臓を停止させた、必殺の拳を繰り出す為のフォーム。
アーカードはそれを見て、全身から出現させた手の全てを、大きく後方へと引き絞った。
勇次郎が全身に受けているダメージは、相当なもの。
残されている体力を考えれば、この一撃は彼にとって最後となるに違いない。
ならば、喜んで受けてたとう。
真正面から、己も全てをぶつけるのみだ。

「邪アアアアァァァァァァァァァァァァッ!!!!!」
「RAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!」
311Classical名無しさん:08/01/20 02:28 ID:ZNwaj9d6
    
312Classical名無しさん:08/01/20 02:28 ID:ZNwaj9d6
   
313『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:29 ID:fKelb2Yo
二人が雄叫びを上げ、最後の一撃を繰り出した。
鬼の拳が、アーカードの胸部へと炸裂する。
肉を断ち骨を砕き、心臓へと真っ直ぐに突き出される。
無数の手刀が、一斉に勇次郎へと突き刺さる。
腕、足、胴体……全身の至るところを、刺し貫く。
その体勢のまま、二人は完全に硬直する。
吸血鬼アーカード。
地上最強の生物範馬勇次郎。
悪鬼同士の戦いに打ち勝ったのは……

「見事だ……勇次郎……!!」
「……貴様こそな。
見事だったぜ……アーカード」

アーカードの心臓が爆ぜた。
勇次郎の拳は、アーカードの心臓に取り付けられていた首輪を見事に破壊、起爆させていたのだ。
しかし……その影響により、勇次郎の左の拳も爆ぜてしまっていた。
最後の一撃を繰り出したのが、右の拳だったならばまだ分からなかっただろう。
だが、完全には治癒を仕切っていなかった上に、黒犬に噛みつかれた事で大きなダメージを受けてしまっていた左拳では……
犠牲にせずにアーカードを打ち倒すというのは、不可能な事であったのだ。
それでも、その犠牲に見合うだけの上げた成果はあった。
散もブラボーも、ZXもハヤテも、後一歩という所で叶わなかった、アーカードの撃破。
それを終に、勇次郎は成し遂げたのだ。
勇次郎の肉体に突き刺さっていた無数の手が、塵となり崩れ落ちていく。
そして、同様にその両足も塵と化し……アーカードは、地面へと崩れ落ちた。

「……どうだい、気分は?」
「ああ……悪くない。
……勇次郎よ、一つだけ聞かせろ……」
「何だ?」
「何故、貴様は……人間をやめた……?」
314Classical名無しさん:08/01/20 02:30 ID:6HXK5OXQ
一応外見はロリ旦那なんだよな……
315Classical名無しさん:08/01/20 02:30 ID:ZNwaj9d6
 
316『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:31 ID:fKelb2Yo
薄れ行く意識の中。
アーカードは一つの気がかりを、勇次郎に尋ねた。
それは……彼が何故、人をやめてしまったのか。
何故、彼ほどの者が人の身を捨て去ったかであった。

「ああ……別に、望んでやめたつもりじゃねぇよ」
「何……だと……?」
「いつのまにか、気付かねぇうちになっちまってた。
だが……言った筈だぜ、そんな事はどうでもいいってよ。
人間だ、人間じゃない……別にどっちだっていい。
俺は俺だ……オーガ、範馬勇次郎だ」
「……くく。
ハハハハハ……そうか……そうか……!!」

アーカードは勇次郎の言葉を聞き、笑わずにいられなかった。
そして悟った……勇次郎は、紛れも無く人間であると。
彼はその強靭な自我で、人間でい続けた。
自分の様な、化物にその身を堕とさなかった。
人外の存在となろうとも、それの持つ力に溺れなかった。
ただただ、それまで同様に、己の力を信じ続け、そして拳を振るっていただけだった。
勇次郎の魂は、勇次郎という人間であり続けたのだ。
そう……だからこそ、自分は敗れたのだ。
範馬勇次郎という名の、人間に。

「……先に、地獄で待っていよう。
奴等が……待っているのであらば……退屈は、しないだろう……」
「ああ……俺の息子も、恐らくはそこにいる。
俺が来るまでの間、退屈はさせねぇさ」
「そうか……さらばだ……いや……また会おう……ゆうじ……ろ……う……」
317Classical名無しさん:08/01/20 02:32 ID:ZNwaj9d6
        
318『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:32 ID:fKelb2Yo
アーカードの肉体が、塵となって崩れ落ちていく。
やがて、そこへ一陣の風が吹き……塵を、彼方へと運んでいった。
ただただ闘争を望み、そして己の破滅を望んだ吸血鬼アーカード。
その永きに渡る、永久にも等しいと思われていた生涯に……今、幕が下ろされた。
勇次郎はしばしの間、ただじっと、風の吹く先を眺めていた。

「……アーカード。
最高の餌だったぜ……感謝するぞ、心からな」

満足のいく戦いだった。
これまで感じた事の無い充実感が、勇次郎の中にあった。
やがて、風がやんだ時。
再び、勇次郎は歩き始めようとする。
だが……その瞬間だった。

ズシン

勇次郎は、前のめりに地面へと倒れこんでしまった。
彼が受けたダメージもまた、相当のレベルであった。
アーカードの心臓と引き換えに、右拳を失い。
全身の至るところの肉を抉り取られ、そして内臓器官にもダメージは及んでいる。
しかも今度は、鳴海と闘った時の倍以上の数の臓器を、損傷してしまった。
その全てが相俟って、勇次郎の肉体には相当のダメージが蓄積されてしまっていた。
いかに勇次郎といえど、それに堪え切られなかったのだ。

「ちっ……仕方ねぇな……」

勇次郎はゆっくりと瞳を閉じ、そして意識を失った。
はたして、次に彼が目を覚ます時、その目の前には何があるだろうか。
何も無く、変わらずに彼一人だけなのだろうか。
それとも、更なる闘争の相手との出会いか……
319Classical名無しさん:08/01/20 02:33 ID:5Xyo1bmY
                     
320『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:34 ID:fKelb2Yo
【アーカー[email protected] 死亡確認】



【E-4 駅付近/1日目 夜】
【範馬勇次郎@グラップラー刃牙】
[状態]気絶中。左手消失、全身の至るところの肉を抉られている。
   幾つかの内臓器官にも損傷あり。大量出血中。
[装備]ライター
[道具]支給品一式、打ち上げ花火2発
[思考] 基本:闘争を楽しみつつ優勝し主催者を殺す
1:戦うに値する参加者を捜す
2:首輪を外したい
3:S7駅へ向かいラオウ、DIO、ケンシロウを探す。
4:未だ見ぬ参加者との闘争に、強い欲求
[備考]
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。
※ラオウ・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました。
※生命の水(アクア・ウィタエ)を摂取し、身体能力が向上しています。
※左手はアーカードの首輪の爆発により、完全消滅しました。
321Classical名無しさん:08/01/20 02:34 ID:5Xyo1bmY
                         
322Classical名無しさん:08/01/20 02:37 ID:5Xyo1bmY
                          
323『巨星落つ』  ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:37 ID:fKelb2Yo
以上、投下終了です。
そして同時に、いきなり誤字を発見……orz

誤「アーカードの心臓と引き換えに、右拳を失い」
正「アーカードの心臓と引き換えに、左拳を失い」

です。

勇次郎vsアーカード、決着は勇次郎の勝利という形でつけさせてもらいました。
生命の水飲んだ影響で身体能力が向上しているしと思い、ついつい勇次郎には無茶をやらせてしまいました。
とりあえず、吉良vsTQN以上の流血戦になったという自信だけはあります
324Classical名無しさん:08/01/20 02:41 ID:5Xyo1bmY
投下乙。勇次郎の勝ちならよし! 旦那よりもオーガが自ロワのマーダー代表って感じだし。
残ったマーダーも絶望的に強すぎるやつらだし、いいでしょ。
このバトル見てたら「誰も勇次郎倒せないんじゃね?」って思い始めたw
それくらい両者が恐ろしかったです。
325Classical名無しさん:08/01/20 02:43 ID:5Xyo1bmY
>>323
あ、「死亡確認」の表記の後に残り人数を表記してくださいね。
326Classical名無しさん:08/01/20 02:43 ID:3jJ/f1Ko
投下乙
いいんじゃない、カオスロワでの2人顔負けのバトルでした
そろそろマーダーも減らしてもいい頃ですし、これでいいと思います
旦那も連戦に連戦を重ねたし、結構体力つかってんもんな
327Classical名無しさん:08/01/20 02:45 ID:6HXK5OXQ
左手損傷は痛いが……まぁ、どのみち利き腕残ってるわけだし
片腕ない状態で大乱戦こなしてたし、ハンデ的な意味でちょうどよくなったか?

いや、むしろなくなった左手で殴りそうだな。
328Classical名無しさん:08/01/20 02:45 ID:ZNwaj9d6
投下乙です
自分はたまたまスレ覗いた他ロワ住人だけど、こういう豪華な対戦カードって凄い魅力的ですよね
桁外れに強い怪物同士の戦い、壮絶過ぎるw
これまでの過程を余り知らなくても、心底から楽しめました
329 ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:47 ID:fKelb2Yo
>325
入れ忘れておりました……orz
wiki掲載時、こちらに修正お願いします

【アーカー[email protected] 死亡確認】
【残り30人】
330 ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 02:48 ID:fKelb2Yo
【残り30人】 じゃねぇ、【残り29人】だ……

疲れてるね、俺、うん
331Classical名無しさん:08/01/20 02:55 ID:ck6g0EyQ
話は面白かった!

面白かったんだが、正直やはりこいつらは善玉側に倒されて欲しかったと思う。復讐の対象さえいなくなってしまうのは、残されたものにとってつらいんじゃないか。
あとアーカードの方が好きなんで彼が負けたのも残念。勇次郎の方が憎らしい感じあるから、鳴海たちに倒された時の爽快感が大きくなりそうなので今後のストーリー考えると良いけれど。
332Classical名無しさん:08/01/20 03:20 ID:3/EDIuMU
投下乙です
いや〜化け物同士、二人とも熱かった!!
ピクル戦のセリフ使用などの演出があったりと、自分的には大満足でした!

そして一カ所ミス発見しました
>>301のアーカードのセリフ
「打突の要と言われている 背なの筋肉→背中の筋肉
333 ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 03:29 ID:fKelb2Yo
>>332
そこは絶対指摘されると思ってましたし、俺自身も悩みました。
ただ、そこに関しては敢えてミスではないと言わせていただきます。
勇次郎vs郭海皇戦を見てもらえれば分かりますが、郭海皇が勇次郎の鬼を見て「背なの筋肉」と発言してましたので。
「背中の筋肉」の方が自然なのは確かでしょうが、敢えてこちらでいかせてもらったんです。

まあ……俺も原作見てて「これって正しいのか」とは思いましたが。
これに関しては、変更するか否か、ちと意見よろしくお願いします。
334Classical名無しさん:08/01/20 03:32 ID:Ckz9Vg2Y
投下乙!!
ここまで熱い話が読めるのは恐らく漫画ロワだけだろうなあ
勇次郎だったらまた左手くらいなんとかするだろw
335Classical名無しさん:08/01/20 03:35 ID:g715SuPc
投下乙です
私的マーダー四天王(アーカード、DIO、ラオウ、勇次郎)の一角が崩れ去ってしまいました。
なんにしてもすさまじいガチバトルでした。本当に乙です!!
336Classical名無しさん:08/01/20 09:00 ID:GWRwaWpY
投下乙。
なんて豪華な全力バトルなんだ……! 観客が居ないのが実に勿体無い。
いや、仮にいたとしても手ェ出せないだろうけどね……GJ。
337Classical名無しさん:08/01/20 11:27 ID:9NPabaUs
超絶バトルの興奮を遮って申し訳ないんだが、◆bnuNxUeVnw氏の「風前の灯火」は、時間が夕方になってるけど夜にしていいのかな?
338 ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 14:05 ID:eVes8BUc
申し訳ありませんが、今回の『巨星落つ』は破棄させていただきます。

改めて考えると、色々問題がありすぎました。
ここまでの話の流れをまるで読んでない結果に終わらせてしまったし、それに対し不快感を覚えた人も多いと思います。
……誠に申し訳ありませんでした。
以後完全に自粛して、書くのは当分控えさせていただきます。
迷惑かけて、本当にすみませんでした……
339Classical名無しさん:08/01/20 15:28 ID:hGOJD2K6
 私は 「破棄するほどのことはない」 とは思います。
 というか、破棄というのは、本当に特例でないとあまりよろしくないと思います。
340Classical名無しさん:08/01/20 15:34 ID:CPpFYVtA
いまさらで申し訳ないとは思いますが、自分も破棄するほどのものかと思っています。
第二部後期あたりの、相手に敬意を表す勇次郎の雰囲気が良く現れていていいと思います。

もっと早く言うべきでした、すみません。
341Classical名無しさん:08/01/20 15:40 ID:dUWRb9mg
>>338
キサマ、スーパーライダー月面キックの餌食になりたいようだな……


 絶 対 に N O だ !


本当お願いします。まだ漫画ロワ参加者の意見というには、あまりに時間が経っていなさすぎなんです
推敲もそうですが、一日寝かせるだけで色々とまとまる事、気づく事もあると思うのです
どうか、それまで待ってはもらえないでしょうか
342Classical名無しさん:08/01/20 16:20 ID:MR6hNJhs
>>338
破棄は絶対にもったいないと思います。
強者に敬意を示した上で、
壮絶な死闘を繰り広げた勇次郎とアーカードが良かったです。
戦い敗れた彼の死も納得出来ましたし、考え直して頂きたいです。
343Classical名無しさん:08/01/20 17:56 ID:Kj3hoORE
>>338
破棄するのはちょっと待って欲しいです。
きつい事を言いますが書いたのなら結論がでるまで勝手に破棄したりせずにまつべきだと思います。
344Classical名無しさん:08/01/20 18:10 ID:peZYlEfw
>>338
ええと、まずは投下乙!
支援途中で力尽きて申し訳ない。
いつもの旦那の問いかけに、「いつのまにか、気付かねぇうちになっちまってた」
という答えが皮肉気でお気に入りです。
バトル描写にも力が入っていたと思います。破棄にするには惜しい力作でした。GJ!

出来るなら、破棄宣言は一日くらい待って欲しかったです。
破棄するには惜しい作品だと思いますし、この続きも気になる話でした。
もう少し落ち着くまで結論を待っていただけませんか?
345 ◆bnuNxUeVnw :08/01/20 18:53 ID:dLJZOJD2
>>337
「夜」にしておいてください
今回はミス無いと思ったのに……orz

>>ga/ayzh9y. 氏
投下乙!!
非常に読み応えがある話でした。
アーカード、勇次郎両者全力の戦いで非常に緊張感のある
「アツイ」バトルでしたッ!!

破棄についてはなぜ破棄したいのか、その理由が気になります。
読み手はみな、納得してくれるであろうと思います。

346Classical名無しさん:08/01/20 19:12 ID:EtfHXax.
むしろ破棄する理由がないかと。設定にも問題なさそうですし。

DIOが悔しがってるだろうな。新しい体てにいれ損ねたし。
もっとも腕挿げ替えたときの反応見るにそっちの方が幸せなのかもしれんけど。
347Classical名無しさん:08/01/20 19:26 ID:uPyD6.co
>>338
うーん、難しいな。
ここでもし破棄したとして、アーカードにこれ以上の散り様があるかと言えば
疑問ですらある。

でも個人的に言わせて貰うならば、アーカードがここで死ぬとすると、
ヘルシング勢が全滅と言うのはファンからすると寂しいな。
もう一度ディオと顔合わせしてほしいとも思ったし。
まぁ何にしろ、ここの住人の反応を見てから改めて考えて欲しいと思うよ。
348 ◆1qmjaShGfE :08/01/20 20:28 ID:dUWRb9mg
津村斗貴子、ラオウ投下……したいのですが、実は修正待ちの病院が舞台に出てくる予定になっているのです

>>◆wivGPSoRoE氏
急かすような事を言って大変申し訳ありませんが、修正にはもう少し時間がかかりますでしょうか?
そうであるのなら、その部分を削ってしまいます。
その部分は今回の話のメインでは無いので、それ自体は問題無いのですが、いかがなものでしょうか?
349Classical名無しさん:08/01/20 21:36 ID:m4z8KwDY
本人が自分の意思で破棄すると言っているのだから
外野は黙っていたほうがいいと思うが
350Classical名無しさん:08/01/20 21:40 ID:cWK007Rg
>>348
よし、いいこと思いついた
ここは一時投下スレに……まあ、待つという選択肢もあるですよ
351 ◆1qmjaShGfE :08/01/20 21:44 ID:dUWRb9mg
そうですね、では申し訳ありませんが。待たせていただくとしましょう。
津村斗貴子、ラオウの延長を要請します
352 ◆wivGPSoRoE :08/01/20 22:03 ID:OWvjC5O2
まずは、出てくるのが遅れて申し訳ありませんでした。
謹んで謝罪させていただきます。

実は、風邪と試験で死に掛けてました。
そんなことはまったく言い訳にならないのは存じておりますが、
何とか明日夜11時までお待ちいただけたらと、伏してお願い申し上げます。
353Classical名無しさん:08/01/20 22:25 ID:lQUL6E2w
がんばれー、いや風邪で試験とかそれだけで死ねるから無理スンナww
354 ◆1qmjaShGfE :08/01/20 22:26 ID:dUWRb9mg
いえ、私もさりげなくむちうちで苦しんでますので、気持ちは痛い程……みなさん、ウィンタースポーツを楽しむ際はくれぐれも背後にお気をつけ下さいませ
さておき、本当に申し訳ありません、助かります。更なる都合等発生しましたらご遠慮なくおっしゃってください。無理を言ってるのはこちらの方なのですから
355Classical名無しさん:08/01/20 22:53 ID:VKxQrqdA
しかし、」このロワの毒吐きは勘違いしすぎじゃね、書き手までもが一緒になって
思い通りにならなきゃ、あいつ嫌いだとか、本スレの書き込みにも自分たちがルール
かのごとく振る舞い、自分たちの意見以外は何も解ってないとばかりの態度、
あいつらこそ「上等の料理に蜂蜜をぶちまける」ような底辺の中の底辺の集まりだな
毒吐きへのリンクなんて切ったほうがいいな、本スレの人間を叩くくせに自分達は
非常識せめて糞出しにでも名前を変えるべきだな、毒は薬になるがあのスレは
単なる糞
356 ◆ga/ayzh9y. :08/01/20 22:55 ID:fKelb2Yo
皆様、大変ご迷惑をおかけしまして、真に申し訳ありませんでした。
まずは、今回の件について素直に謝罪させていただきます。

SSの破棄するという結論に至った理由ですが、
アーカードはここまで相当数のフラグを組み立ててきているのに、
それを初見の勇次郎が撃破してしまい、何もかもを台無しにしてしまったことと、
大して数をこなしていない新参者の癖に、四大マーダーの一角を消すなんていう分不相応な真似をしてしまったこと等が、
主な原因です。
自分は空気を全く読めていないという事を認識し、その所為で多くの人に不快感を与える結果となってしまいました。
大変、申し訳ありませんでした。

書くのを自粛するといったのは、上記にある通りの理由で、
このまま書いていても迷惑にしかならないだろうと判断したからです。

それだけに、破棄しなくてもいい、破棄する方がおかしいという意見が出たのは、正直意外でした。
ただ、そう言ってくださった人達には、素直に感謝します。

この『巨星落つ』に関してですが、ここまで言われておいてなおも破棄するというのは、返って失礼になりますね。
とりあえず、明日か明後日辺りに、したらばの方に修正したのを一度上げたいと思います。
なるべく、ここまでのSSを無駄にしない結果にしたいと思います。

最後にもう一度、ここまで大変申し訳ありませんでした。
357Classical名無しさん:08/01/20 23:06 ID:peZYlEfw
>>356
了解です。修正お待ちしています。

>大して数をこなしていない新参者の癖に、四大マーダーの一角を消すなんていう分不相応な真似をしてしまったこと等が、主な原因です

ここに関しては気にする必要はないかと。
あの毒吐きでの話は正直いき過ぎですし。

>>355は華麗にスルーで
358Classical名無しさん:08/01/20 23:12 ID:lQUL6E2w
あ、ありのまま起こったことを話すぜ!
日曜だから夕方まで寝て、起きてスレをチェックしたら(ry

>>356
いまさら毒吐き見るなってのも無理な話ですよね。私も見ていてヒントをもらったりとかありますし。
でも毒吐きってのはCライシス帝国の陰謀だったり、Gルゴムの仕業だったりするレスが混じってると考えて下さい。
実際、その防止のためにしたらばに議論スレが立ったわけですから。
そうすればあまり真に受けることなくフィルターかけて見れますよ。
そこから受け入れるべき意見を取り入れるかどうかは自分の判断ですから。
修正頑張ってください。
359Classical名無しさん:08/01/21 02:09 ID:z5wc6MlQ
>>355
確かに最近毒吐きが感想兼議論スレみたいになっているのは変だよな。しかも書き手がSSの批判ならまだしも作者の人格攻撃までしてるし…
はっきりいって見てて不愉快。まぁそれは毒吐きだからってことになるけど。
360Classical名無しさん:08/01/21 03:47 ID:e/6GkvHg
読み手としては面白いしバトル描写にも文句はないが、これは駄目だな。
色々なフラグが全て飛んでしまったというマイナスの方が大きい。
出したタイミングが悪かったとしか言いようがない。
本人も分かってて、それでも書きたいという熱い魂は好きだけど。
361 ◆ctWQeRff.I :08/01/21 16:01 ID:W/PsS6JM
>>356
修正お待ちしています。内容は良かったと思うので、微修正だけでしょう。
フラグ云々については、色々と思うところがあると思いますが個人的見解として言わせてもらえれば、
そのような理由があったとしても、死亡者の部分は修正すべきではないでしょう。
本ロワには、これまで何人かファンの方々の熱望により復活したキャラがいます。
ですが、ロワとは本来そのような理由でキャラが復活するものではないと思っているのです。
どうしても、復活したいのならSS外の騒動で復活させるのではなく、
矛盾の無いストーリーを組み上げて復活させるべきです。

まぁ、死亡者の部分を修正するとは言ってないので、心配しすぎかもしれませんが、
私としては生存者・死亡者を外野の意見で変えてしまうというのには納得できません。
以上です。
362Classical名無しさん:08/01/21 18:11 ID:i7HHgsY2
フラグ、フラグって鬼の首、取ったみたいに・・・勇次郎の強化なら済んでるじゃないの
リレーな上にこんなロワなんだから敢え無く死ぬ事だってあるだろうに、予定調和が
したいなら、打ち合わせでもしてひいたレールの上を走ればいいのに
363Classical名無しさん:08/01/21 19:00 ID:ZSBsQlV6
愚痴やそれに反応するレスは毒吐きで。
364Classical名無しさん:08/01/21 20:56 ID:OLiORk2E
361>
同意。
生存者・死亡者を意見によってコロコロ変わるのはどうかと思いますね。
ロワなのでフラグを必ずしも成立させる必要はないかと。
とりあえず修正、頑張って下さい。
365 ◆wivGPSoRoE :08/01/21 22:57 ID:2xv0/YlI
すいません、1時間くらい(下手すると2時間?)投下が遅れそうです。
◆1qmjaShGfE氏、すいません、本当にすいません。
とにかく、今夜中には必ず投下しますので……。
366Classical名無しさん:08/01/21 22:57 ID:rm0re5Ag
よし・・・!
今から脱いで待ってるぜ
367Classical名無しさん:08/01/21 22:59 ID:9xUYiNNg
どころでいったい、何を修正するんだろう。
何か致命的な矛盾とか発見されていたっけ?
368Classical名無しさん:08/01/21 23:05 ID:rm0re5Ag
覚悟が銀時に会ってないみたいな記述があったけど、実は会ったことありますよ的な修正だっけか
369 ◆1qmjaShGfE :08/01/21 23:45 ID:.Kpv3uGc
>>365
はいはーい、私は今夜は死ぬほど暇人&明日は昼起きなので、久々ににこにこしてますから、どうぞ焦らずにGOでございます
370 ◆wivGPSoRoE :08/01/22 01:03 ID:/SOBtjwc
原稿が完成しました。
誤字チェックと、状態表作成にかかります。
投下は1:30分になりそうです。

また……ジャンプ……まるで、多重債務者……
シリーズ、人間の……屑……
371Classical名無しさん:08/01/22 01:30 ID:4ebnaBOI
当方に支援の用意あり!
372 ◆wivGPSoRoE :08/01/22 01:31 ID:/SOBtjwc
つかさ、覚悟、川田、ヒナギク、修正部分を投下いたします。
373 ◆wivGPSoRoE :08/01/22 01:32 ID:/SOBtjwc
 暗い事務室で川田は、虚空を睨んでいた。
(ひでぇもんだ。戦争でもあったみたいじゃねえか)
 病院の惨状はまさに、被災地のような状態であった。
 壁にはいくつも大穴が開き、窓ガラスはことごとく割れ、棚がひっくり返り机が粉砕されている。
 足をすすめるたびに、何かを踏みつぶすハメになり、その度に嫌な音が発生する。

 ――逃避するな。

 心の中でそんな声が聞こえた。
 舌打ちを一つ。
(分かってるさ……。病院を荒らした奴を誰か考えるもの大事だが、今はそっちよりも――)
 川田は、視線を下に落とした。

 川田の目の前には、電話機が一つ。

(さて、どうしたもんかな……)
 録音からもたらされた事実を、もう一度頭の中で反芻する。
 川田の眉間に、困惑と苦悩の陰影が浮かびあがった。
(つかささんの話だと、いいお姉さんらしいんだが……。
間違いだったらそれにこしたこたあない。
というか間違いなのがベストなんだがなっ)
 舌打ちを一つ。
 この状況はそれほど甘いものではないことは、
二度もプログラムを経験させられた自分がよく知っている。
 最後の独りにならなければ死ぬという状況は、容易く人を狂わせるものだ。
 ましてや、昨日まで平和な生活をしていた女の子ならなおさらである。
 いまさらながらに、理不尽極まる運命につかさや、つかさの姉を巻き込んだ老人に対する怒りが、
 胸を焼き焦がすのを川田は感じた。
 と、その時。
「――川田、少し、話せるだろうか?」
 ドアが開き、覚悟が戸口から姿を現した。
「もう、別れはすんだのか?」
374Classical名無しさん:08/01/22 01:33 ID:QEC8jaSY
支援
375Classical名無しさん:08/01/22 01:33 ID:/SOBtjwc
 どこか沈痛なものを瞳に浮かべながら、
「せめて、昇華で弔いたかった……」
 覚悟は呟くように言った。
 だから、病院の入り口近くに墓を掘って埋めた。
 本当は、より魂が安らげる場に埋めたかったのだが、いつ襲撃があるか分からない状況では、
 病院を離れるわけにもいかなかった。
「……坂田って人は、『サムライ』だったんだろう?
だったら、墓がどうとか、小せぇことはいわないと思うぜ」
 覚悟はわずかに眉を緩め、頷いた。
 確かに、超然とした雰囲気を漂わせていた、戦士新八があれほど慕っていた、坂田銀時なら、
 墓に文句をつけたりはしないだろう。
「ヒナギクさんと、つかささんは?」
「見かけなかった。が、二階に気配はしたゆえ、そちらだろう」
「そうか」
 つかさがいないことに胸を撫で下ろしつつ、川田は覚悟に先ほど聞いた事実を話すかどうか、逡巡する。
 しばしの間、沈黙の川が二人の間に横たわった。
 ようやく川を渡る決意を川田がつけるのに、半歩ばかり先んじて
「川田……。話しておきたいことがある」
「何だ?」
「川田の知人のことゆえ、言いづらいのだが――」

ざわ……と心の水面に風が吹くのを川田は感じた。
そのましばらくの間、同じ音域の声が部屋の大気を震わせ続けた。

「――以上だ」
 覚悟が口を閉ざすと、再び事務室は沈黙を取り戻した。
 困惑の皺を幾重も額に浮かべて黙り込む川田に向かって、覚悟は続けた。
「何ゆえ、つかささんを狙うのか分からないが、
あの男が何かを企んでいるのは間違いない。
何らかの対策を練る必要があると――」
「いや、葉隠、ちょっとまってくれ」
376Classical名無しさん:08/01/22 01:34 ID:QEC8jaSY
支援っ
377Classical名無しさん:08/01/22 01:35 ID:1AAEoaTM
支援
378Classical名無しさん:08/01/22 01:35 ID:/SOBtjwc
 訝しげに押し黙る覚悟から視線をそらし、川田は天井を仰いだ。

 ――なんてこった。
 
 よもや話がここまでこじれてくるとは思いも寄らなかった。
(黙ってるわけには、いかなくなっちまったか)
 ここで間違えば、取り返しのつかないことになる。
 先ほどの一件にしてもそうだ。
 下手をすれば、3人のうちの誰かが死んでいたところだ。
 それに、三村をこのまま悪役にしておくことは、できない。
(七原に申し訳が立たねえからな……)
 三村のことを嬉しそうに語っていた、七原の顔を思い出しながら、
 川田はため息をついた。
(七原の話の通りならもうちょっと頼りになる奴なんだが……)
 何をやっているのかと、三村に対して軽い苛立ちを感じながら、
「……葉隠、つかささんと、ヒナギクさんを呼んできてくれ」
「つかささんにも話すのか?」
「そうだ。ここで、間違えるとまずいことになる。
状況を、ちゃんと理解しておかねえとな」
「了解した」
 顎をわずかに下に傾け、覚悟は立ち上がると外に出て行く。
 ほどなくして、3人が事務室に揃った。
 ヒナギクは、深刻そうに形の良い眉をしかめ、雰囲気の硬さを感じ取ったつかさも、どこか不安げだ。
 川田は、もう一度つかさの顔に目をやった。

 つかさと目が合った。

 つかさが口元を緩め、口の端に微笑を浮かべた。
 猛烈な勢いで目を逸らしたくなる衝動が込み上げてきた。

 ――言いたくねえ。 
379Classical名無しさん:08/01/22 01:35 ID:9nSkRpvM

380Classical名無しさん:08/01/22 01:35 ID:4ebnaBOI
 
381Classical名無しさん:08/01/22 01:37 ID:/SOBtjwc
 その思いが怒涛のごとくおしよせ、心の堰を今にも打ち破らんとする。
 精神力を総動員してその思いをねじ伏せながら、川田は口を開いた。
「話す前に、まず、前提として思い出してもらいたいことがある――」
 川田はヒナギクと覚悟に目をやった。
「『柊』は、この場に二人いる。それをまず、思い出してくれ」
 つかさが疑問符を浮かべつつ、首をかしげる。
 覚悟はいつものごとく、謹厳な顔をしながら黙考。
 突然――、

「え!? じゃあ……」

 ヒナギクが立ち上がった。
 驚愕と、そして悔恨の光彩が、ありありとその瞳に浮かび上がっている。
(流石だな、ヒナギクさん。理解が早くて助かるぜ)
 少し遅れて覚悟の顔にも、理解の色が浮かぶのをまって、
「……つかささん、つかささんのお姉さんの髪の色は、つかささんと同じ色。
背丈はほぼ同じ、で間違いないんだな?」
 急に姉を持ち出され、混乱と不安に顔を歪めながらつかさが頷く。
 心がしめつけられるのを川田は感じた。

 ――こいつは、キツイな。

 だが、ここで言わなければ、取り返しのつかないことになる。
 川田は口を開いた。


 
「――とにかく、断言は危険だ。
この状況じゃ、ちょっと対応を間違えただけで殺し合いになりかねない」
「その通りね……」
 苦味を存分にブレンドさせ、ヒナギクが嘆息する。
382Classical名無しさん:08/01/22 01:37 ID:QEC8jaSY
なんてーかこう川田が可愛い件
383Classical名無しさん:08/01/22 01:38 ID:4ebnaBOI
前回と展開が違うがまあよし!
384Classical名無しさん:08/01/22 01:38 ID:/SOBtjwc
「確実なのは、つかささんと三村、そしてジョゼフという3人の間で、
何かトラブルが起きたということ。
その結果、ジョゼフという男が、何らかの形で生死不明になるような状況に陥った。
それだけだ。だから――」
 つかさの方に向き直りながら、
「こうだろう、って決め付けるのはやめた方がいい。
この腐れゲームの場じゃあ、人間が接触すれば、何らかのトラブルが起きる可能性の方が高い。
いや、起きない方がおかしいんだ、本来は。男と女ならなおさらな……。
そして、トラブルが起きれば必要以上に相手を悪く思っちまう。
そういう状況なんだ、今は。だから――」
 初対面の人間同士が友好関係を結べるほうが、本来はおかしい。
 人間の精神が、こんな異常な状況でおかしくならないはずはないからだ。
 ここにつれてこられた人間達は、色々な意味で規格外の人間が多いが、
 つかさの姉が会った人間がどういう人間だったのかは分からない。

 ――もっとも、三村という男は女をいきなり襲ったり、嘘をついて誰かを陥れたりという類の人間ではないはずだが。

 その考えはとりあえず頭の中の棚にしまいこみつつ、
「誤解しあってるだけの可能性は十分にある」
 その時、川田は気付いてしまう。

 ――聞いちゃいねえ。

 暗い光で覆いつくされたつかさの瞳は何も見ていなかった。

 ――とどかない

 今のつかさに、言葉は無力だ。
川田は心の中で歯噛みした。

 つかさの姉が殺し合いに乗る決断をしたということは、自分の妹も殺そうと決断したということ。
385Classical名無しさん:08/01/22 01:39 ID:/SOBtjwc
 大好きな肉親に裏切られる心の痛みは、いかほどか。
 それを考えると、川田は何もいえなくなる。
 覚悟も、ヒナギクも同じだった。
 否。ヒナギクと覚悟の場合は、その思いは川田以上であったろう。
 二人とも知っている。肉親の裏切りによってできた傷が、心に深く刻み付けられている。
 だからこそ分かるのだ。言葉が届く場面なのかどうか、ということが。
 分かるから、覚悟も、ヒナギクも、沈黙しか選ぶ選択肢がない。
「ヒナちゃん――」
 暗い声だった。
「三村、って男の子は、どんな風だったの? 嘘、ついてるように見えた?」
 一瞬の沈黙があって、
「どうった、かしらね……」
 言いにくそうに目を逸らしながら、
「よく、覚えてないのよ、私。つかさを悪く言われて、頭に血が上っちゃって……。
ごめんね、つかさ」
 それだけを言ってヒナギクは黙り込む。
 しかし、ヒナギクの歯切れの悪い言葉と態度は、雄弁に真実を物語っていた。
「そう、何だ……」 
 俯いたままつかさが立ち上がる。
「どこへ行くんだ? つかささん」
 いたわるように覚悟が尋ねる。
「……ごめんね、覚悟君。ちょっと、独りにさせて……」
 肩を落として出て行くつかさに、何か言おうとしてヒナギクが唇を噛む。
 覚悟が鉄の眉ねを寄せる。
 川田は、無言で拳を握り締めた。



 暗い部屋の中で手を動かし続けるつかさの胸に去来する思いは一つだった。

 ――おねえちゃんに会いたい。
386Classical名無しさん:08/01/22 01:39 ID:/SOBtjwc
 会って確かめたい。
「そんなわけないでしょ」って笑う声が聞きたい。
「私が人殺しをするなんて、思ったの!?」って怒られたい。
 信じてる。

――お姉ちゃんが、人殺しをするはずがない。

そう、信じてる。
でも。でも仮に、殺し合いに乗ってしまっているのなら。

――止めなきゃ。

かがみが、川田達と殺しあう所なんて見たくない。
でも。それでも。
姉が、殺し合いをやめてくれなかったら、せめて。

――謝りたい

 姉が、自分のことを殺そうとしたとしても、恨むつもりはない。
 怖いけど。すごく、すごく嫌だけど、かがみのことを恨むなんて、できない。
 きっと自分のせいだから。
 いつもいつも守ってもらって。迷惑ばかりかけて。よりかかるだけで。
(お姉ちゃんに嫌われちゃっても、仕方ないよね)
 だから言ってあげたい。

 ――お姉ちゃんは悪くないよ。
 
 自分の気持ちを伝えて、少しでも楽にしてあげたい。
 姉はダメな妹を突き放せないほど優しかった。だからきっと、苦しんでいる。
 お礼も言いたい。
387Classical名無しさん:08/01/22 01:40 ID:4ebnaBOI
 
388Classical名無しさん:08/01/22 01:40 ID:QEC8jaSY
支援
389Classical名無しさん:08/01/22 01:41 ID:/SOBtjwc
 ――ずっと一緒にいてくれてありがとう。

 それだけは伝えたい。
 一緒に生まれて、一緒に育って。ずっと側にいて、守ってくれた。
 そのことを心から感謝しているということだけは、どうしても伝えたい。
 つかさは、ディパックを背負いあげた。

 ――行かなきゃ。

 そっとドアを閉め、足音を忍ばせながらつかさは廊下を歩き出した。
(ごめんね、ヒナちゃん。覚悟君)
 つかさは心の中で頭を下げた。
 勝手なことをしようとしているのは、分かっている。
 自分がいなくなったら、きっと二人とも心配するだろう。とってもいい人達だから。
 二人の顔を思い浮かべると、心に痛みが走る。
 だけど――

 ――私は、いない方がいい。

 いても迷惑をかけるだけだから。
 覚悟にもヒナギクにも、やらなければならないことがある。
 彼らを巻き込みたくない。巻き込めない。
 ただでさえ、覚悟にもヒナギクにも、負担をかけているのだ。
 闘えない。特殊な技術もない。頭も良くない――何の役にも立たない、柊つかさ。
 だからいつか。いつかきっと――
(覚悟君も、ヒナちゃんも、私のこと、嫌いになるよね)
 姉に愛想を着かされたように、二人にも愛想をつかされるに決まっている。
 だから、これ以上二人と一緒にいない方がいい。いたくない。

 ――もう、大好きな人達に嫌われたくない。
 
 その時、つかさの脳裏に一人の人間の顔が浮かんだ。
390Classical名無しさん:08/01/22 01:42 ID:/SOBtjwc
 意識して考えないようにしていたのに、考えてしまった。

 ――川田君。

 マンションの一室で、何がなんだか分からず、怖くて怖くて震えていた自分を助けてくれた人。
 優しく包んでくれた人――
(ごめんね、川田君……)
 彼とも別れなくてはならない。

 ――嫌。

 いきなり心が叫んだ。
 自分でも驚いてしまうほど、強い声だった。

 ――別れるなんて嫌。一緒にいたい。

 つかさの視界が滲んだ。 
 目元をぬぐってもぬぐっても、すぐに視界はぼやけてしまう。

――ダメ。こんなこと考えちゃいけない。

 今はかがみのことだけを考える時のはずだ。
 つかさは大きく鼻をすすり、乱暴に目元をぬぐった。
(ごめんね、お姉ちゃん……。今、行くから)
 姉の姿を思い浮かべると、少しだけ心が前を向く。
(お姉ちゃん、お姉ちゃん……)
 呪文のように心の中で何度も繰り返す。
 姉の姿を思い浮かべている時は、彼の顔を忘れられた。
 玄関へは向かわず、壁の大穴から外へ出る。
 待っていたのは――

 闇と静寂、
391Classical名無しさん:08/01/22 01:43 ID:4ebnaBOI
あれ? なんでロワなのにこんなピュアな話に・・
392Classical名無しさん:08/01/22 01:43 ID:1AAEoaTM
それが漫画ロワというものだ
393Classical名無しさん:08/01/22 01:43 ID:/SOBtjwc
 悪寒に襲われ、思わずつかさは立ちすくむ。
 夜の闇が、永遠に続く深淵に感じられた。
 つかさは今更ながらに痛感する。
 いかに自分が守られていたか、仲間に救われていたか。
 ゴクリ、とつかさは喉をならした。
 出て行けばもう、誰も助けてくれない。守ってくれない。

 ――だけど、だからこそ。

「行かなきゃ……」
 夜の闇を睨み、つかさは歩き出した。
 一歩、二歩、三、四五六――歩数だけを数えて夢中でつかさは歩く。
 足を止め、振り返ってみる。
 病院はもう闇の中に隠れて、ほとんど見えなかった。
(覚悟君、ヒナちゃん。川田君……さよな――)

「で、どっちに行くんだ?」
 
 弾かれるように、つかさは顔をねじり、声のした方を見た。
 
 闇の中に、彼がいた。

 塀によしかかってタバコをくわえている。
「三村とつかささんのお姉さんが別れたのは、ボーリング場の周辺らしいから、
俺としては南の方がいいと思うんだがな」
 さっきまでと変わらない、川田のいつも通りの声。
「どう、して……?」
 口から飛び出した声は、みっともなく掠れていた。
 また、視界が滲み始める。
(会いたくなかった、会いたくなかったよ……。川田君)
 きっと迷ってしまうから。
394Classical名無しさん:08/01/22 01:44 ID:/SOBtjwc
 辛くなるから。
 もう、こんなに心が痛いのに、これ以上痛くなったら、心が壊れてしまかもしれないから……。
「どうして、と聞くかねえ」
 呆れたような口調で彼が言う。
「これは、私と、お姉ちゃんの……問題だから……」
「そうかもな……。けど、割り込ませてもらうぜ」
「そんな……勝手すぎるよ」
「悪いとは思うが、今回ばかりは無理を通させてもらうぜ」
 彼が近づいてくる、つかさは後ずさった。
「来ないで……来ないでよ……」
 彼の足が止まった。
 つかさの心に痛みが走った。
「川田君たちは……。やらなきゃいけないことが、あるもん。
ダメだよ、私なんかと一緒に来たら……」
「つかささんと一緒にいること以上にやらなきゃいけないことってのが、
俺には思いつかねえんだが、つかささんには思いつくのか?」
 つかさの瞳孔が拡大した。
 沈黙の川が二人の間に横たわった。
「何で……。どうしてそんなに、してくれるの?」

 ――そんな価値は、私にはないのに。

 嘆息が聞えた。
「つかささん……」
 優しい声だった。
 大好きな、聞いていると安心できる、川田の声。
「君は、俺のことを君の希望だと言ったな……」
 コクリ、とつかさは頷いた。
 川田が表情を引き締めた。はっとさせられるほど真剣な表情だ。

「俺にとって、つかささんは、命だ。俺の命、そのものだ」
395Classical名無しさん:08/01/22 01:45 ID:9nSkRpvM

396Classical名無しさん:08/01/22 01:45 ID:4ebnaBOI
スーパー川田タイム
397Classical名無しさん:08/01/22 01:46 ID:1AAEoaTM
川田はいいね、支援
398Classical名無しさん:08/01/22 01:46 ID:/SOBtjwc
 息が止まるかと思った。いや、実際に息ができない。
 頭が真っ白だ。その真っ白な空間に声が響く、彼の声が、響く。
「前にも言ったが、俺はもう死んでる人間だ。
だから、こっちの世界につれてこられたときは、いつ死んでもいいと思ってた。
この腐れゲームを潰すために命を使えりゃ、それでいいと思ってた……」
 そこで川田は言葉を切り、ふっと笑った。
「君と会って、命が惜しくなっちまった。もうちょっと生きてみたいと思っちまった。
俺がこうやってまだ生きてるのは、つかささん、君がいるからだ。
君がいなけりゃ、俺の生きてる意味もなくなっちまう」
 川田が歩を進め始める。
 逃げなければ、と心の中でか細い声が呟くが、まったく体が反応しない。
 川田の体が視界の中でどんどん大きくなって――

 抱きしめられた。

「俺の命は君と共にある。つかさんが行きたい場所が俺の行きたい場所だ。
つかささんのやりたいことが俺のやりたいことだ。だから――」
 つかさの背中に回された川田の腕が一瞬、力を増した。

「側に、いさせてくれ」

 つかさの目から涙が溢れた。
 心の堰が壊れて、感情が迸る。
「わた、し……おねえちゃん、に嫌われ、っちゃったのかなぁ?」
「そんなこと、あるわけねえ!」
「でも、でも……。私、おねえちゃんに、いっぱい、迷惑かけて、たから……」
 背中に回された川田の手が、さらに力を増す。痛いくらいだ。
 でも、全然痛くない。
「そんなことは絶対にねえ……。
君のお姉さんが、君のことを迷惑だとかどうとか思ったはず、あるもんか。
それでも万が一……億が一、そうだったとしても……」
399Classical名無しさん:08/01/22 01:47 ID:/SOBtjwc
 一瞬、川田の声が途切れ、つかさは泣き濡れた瞳で、川田の顔を見上げた。
 目の前に彼の顔がある。瞳に慈しみの優しい光と情熱の炎が燃えていた。

「俺がつかさの側にいる。だから――泣くな」

 言葉が見つからなかった。何も言えなかった。
 つかさは黙って頷き、川田の背に手を回した。
 彼の心が感じられるように強く、手に力を込めた――



 
 嵐のような激情が過ぎ去り、つかさは川田から体を離した。
「……川田君、病院に戻ろう」
 つかさは川田に言った。
 無言で先を促され、
「私、お姉ちゃんのこと、止めたい。
ううん、絶対に止めてみせる。
お姉ちゃんと川田君たちが殺しあうのなんて、絶対に、絶対に許せない。
だけど、私と川田君だけじゃ――」
「俺じゃ力不足だってか?」
「そんなことないよ!」
 あまりの声の大きさに川田が耳を押さえた。
「ご、ごめん。でも、私、川田君にもお姉ちゃんにも怪我、してほしくないよ。
お姉ちゃん……。よく分からないけど、何か、変な力を使ったんでしょ?
だから……」
 つかさは決然と顔を上げた。
「私、ヒナちゃんと覚悟君にお願いしてみる。
私の言ってること、すごく勝手なことだから、断られるかもしれないけど……」
「じゃ、行くか」
 言い置いて、川田が歩き出す。
 続いて歩き出そうとして――
400Classical名無しさん:08/01/22 01:48 ID:/SOBtjwc
「川田君、そっち逆方向だよ」
「ヒナギクさんと葉隠に頼むんならこっちだ」

 ――え?

 きょとん、とするつかさを置いて、川田がさっさと歩き出す。
「ま、待ってよ……。どういうこと?」
 歩きながら、つかさは川田に尋ねた。
 川田は答えない。だまって歩き続ける
 混乱しつつも、つかさはそのまま歩き続けた。
 だが、さすがに我慢できなくなり、
「川田君、一体どういうことなの?」
 足を止めてつかさは尋ねた。
 すると、
「どういうことも何も……」
 くっと笑い声を漏らしながら、
「みんな、つかささんのことが好きってことさ。
君のお姉さんを止めに行くのを、当然だと思うくらいにはな……。
まあ、俺には負けるだろうけどよ」
 川田が前方を指差した。
 つかさの視線が其方の方に向けられた。
 一度つかさの瞳孔が細められ、一気に拡大した。

 ――いた。

 覚悟とヒナギクがいた。蛍光灯の下に立っている。
 暖かいものが込み上げてきて、胸を満たしていく。
 すぐにつかさの心は一杯になった。


 目を潤ませるつかさを見ながら、川田はホッと息をついた。
 拒絶されたり、逃げられなくて良かったと思う。
401Classical名無しさん:08/01/22 01:49 ID:ybaf0kz6
              
402Classical名無しさん:08/01/22 01:49 ID:4ebnaBOI
なんだかんだでキスにも至らないコイツらが大好きダッ
403Classical名無しさん:08/01/22 01:49 ID:ybaf0kz6
  
404Classical名無しさん:08/01/22 01:50 ID:1AAEoaTM
ときめも漫画ロワ そして病院の下で 支援
405Classical名無しさん:08/01/22 01:50 ID:/SOBtjwc
 無論、逃げられても追いかけるつもりではあったが――
(熱血はともかく、ストーカーはさすがになあ)
 まあ、先ほど自分が口走ったことは、多少、熱血の範疇を超えていると思うが、本音だから仕方ない。
 決めたのだ、今度は心のままに生きると。
 大事な人にはちゃんと思いを伝えると。
「行こうぜ!」
 ポンっと川田は、つかさの肩を叩いて歩き始める。
「川田君……」
 呼び止められた。
「どうし――」
「ありがと!」

 鈴のような声と共に、川田の唇を何かがかすめた。
 それはこの上もなく柔らかな感触だった。
 体を襲う痺れるような感覚に、川田は体を硬直させる。

「急ごう!」
 つかさが、ヒナギク達のところへと走っていく。
 その首筋のあたりが真っ赤に染まっているように見えたのは、見間違いであったかどうか。
 川田は黙って空を見つめていた。

 何はともあれ、速く、この顔を普通の状態に戻さなくては――

 闇夜に輝く北斗七星を見ながら、川田はそんなことを思ったのであった。
406Classical名無しさん:08/01/22 01:51 ID:4ebnaBOI
>>404
病院の下に埋めるなwww
407Classical名無しさん:08/01/22 01:51 ID:/SOBtjwc
【F-4/南部 1日目 夜中】
【葉隠覚悟@覚悟のススメ】
[状態]:全身に火傷(治療済み) 胴体部分に銃撃によるダメージ(治療済み) 頭部にダメージ、
    両腕の骨にひびあり(右腕を核鉄で治療中) 強い決意
[装備]:滝のライダースーツ@仮面ライダーSPIRITS(ヘルメットは破壊、背中部分に亀裂あり)
[道具]:ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾、残弾5発、劣化ウラン弾、残弾6発)@HELLSING 大阪名物ハリセンちょっぷ
[思考]
基本:牙無き人の剣となる。この戦いの首謀者を必ず倒し、彼らの持つ強化外骨格を破壊する。
1:ボーリング場周辺、および病院南部を探し、つかさの姉を捜索する
2:寺へ向かうか神社へ向かうか決めておく
3:生存者(コナン、吉良)の救出

【川田章吾@BATTLE ROYALE】
[状態] 健康
[装備] マイクロウージー(9ミリパラベラム弾16/32)、予備マガジン5、ジッポーライター、バードコール@BATTLE ROYALE
[道具] 支給品一式×2、チョココロネ(残り5つ)@らき☆すた
    文化包丁、救急箱、ZXのメモリーキューブ@仮面ライダーSPIRITS、裁縫道具(針や糸など)
    ツールセット、ステンレス製の鍋、ガスコンロ、缶詰やレトルトといった食料品。
    薬局で手に入れた薬(救急箱に入っていない物を補充&予備)
    マイルドセブン(四本消費) ツールナイフ
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗っていない参加者を一人でも多く救出し、最後は主催者にカウンターパンチ
1:ボーリング場周辺、および病院南部を探し、つかさの姉を捜索する
2:寺へ向かうか神社へ向かうか決めておく
3:仲間と一緒にPCと村雨を探す。PCが見つかったら、ハッキングを試みる
4:生存者(コナン、吉良)の救出
5:ゲームに乗っている参加者と遭遇した場合は容赦なく殺す。
参戦時期:原作で死亡した直後
[備考]
※桐山や杉村たちも自分と同じく原作世界死後からの参戦だと思っています
※首輪は川田が以前解除したものとは別のものです
408Classical名無しさん:08/01/22 01:52 ID:/SOBtjwc
【桂ヒナギク@ハヤテのごとく!】
[状態] 両足に痛み(弱)
[装備] ボウガン@北斗の拳
[道具] 支給品一式。ボウガンの矢18@北斗の拳 、核鉄(バルキリースカート)@武装錬金
[思考・状況]
基本:ハヤテ達との合流
1:ボーリング場周辺、および病院南部を探し、つかさの姉を捜索する
2:寺へ向かうか神社へ向かうか決めておくる
4:生存者(コナン、吉良)の救出
5:やれることを探してやる。だが無理はしない。

[備考]
※三村信史を、つかさの悪評をばら撒く者と認識し、警戒しています。
※三村信史がどうしてつかさの悪評をばら撒こうとするのか疑問に感じています。

※参戦時期はサンデーコミックス9巻の最終話からです
※桂ヒナギクのデイパック(不明支給品1〜3品)は【H-4 林】のどこかに落ちています
※ロードローラー@ジョジョの奇妙な冒険と捕獲網@グラップラー刃牙は【H-4 林】に落ちています
※核鉄に治癒効果があることは覚悟から聞きました
※バルキリースカートが扱えるようになりました。しかし精密かつ高速な動きは出来ません。
 空中から地上に叩きつける戦い方をするつもりですが、足にかなりの負担がかかります。


【柊つかさ@らき☆すた】
[状態] 健康、(新八のバラバラ死体を見たいことによるショックで気絶中)
[装備] なし
[道具] 支給品一式、ホーリーの制服@スクライド、ターボエンジン付きスケボー @名探偵コナン 、ツールナイフ
[思考・状況]
基本:ゲームには絶対に乗らない
1:ボーリング場周辺、および病院南部を探し、かがみを捜す
2:姉が殺し合いに乗っていたら、絶対に止める。
409Classical名無しさん:08/01/22 01:53 ID:/SOBtjwc
[備考]
※川田、ヒナギク、覚悟、新八を完全に信用しています

【備考】

神社、寺のどちらを捜索するかを話し合う予定です。

※4人の主催者の目的に関する考察
主催者の目的は、
@殺し合いで何らかの「経験」をした魂の収集、
A最強の人間の選発、
の両方が目的。
強化外骨格は魂を一時的に保管しておくために用意された。
強化外骨格が零や霞と同じ作りならば、魂を込めても機能しない。

※4人の首輪に関する考察及び知識
首輪には発信機と盗聴器が取り付けられている。
首輪には、魔法などでも解除できないように仕掛けがなされている

※4人の強化外骨格に関する考察。
霊を呼ぶには『場』が必要。
よって神社か寺に強化外骨格が隠されているのではないかと推論

※三村とかがみについて
三村の吹き込んだ留守禄の内容を共有しています。
かがみと三村に対してはニュートラルなら姿勢です。
とにかくトラブルがあって、三村がかがみを恨んでいると事実がある、
とだけ認識しています。
410Classical名無しさん:08/01/22 01:53 ID:1AAEoaTM
>>406
「中で」の方が正しかったかもねw
そして川田うらまやしいぞ支援
411 ◆wivGPSoRoE :08/01/22 01:55 ID:/SOBtjwc
投下、完了いたしました。

題は、「誰がために」です

どうも上手く行かなくて、投下の感覚が空いてすいませんでした。
支援に心から感謝を。
待ってくださった、 ◆1qmjaShGfE 氏に心から感謝を。
そして今一度、遅れたことを謝罪申し上げます。
412Classical名無しさん:08/01/22 01:57 ID:4ebnaBOI
キ、キスだとォ〜〜〜〜!?
う、うろたえない! ドイツ軍人はうろたえない!
村雨と散のときとは違ったヤバさがあるぜ―ッ
そして空気読みすぎのヒナギクと覚悟にワロタ
三村は七原と川田に救われたなぁ……運がいいよお前

そして定例の誤字報告タイム

>>「俺の命は君と共にある。つかさんが行きたい場所が俺の行きたい場所だ。
塚さんって誰w

あと、ジョゼフってよく書いてあるんだけどジョセフの間違いでは?
413Classical名無しさん:08/01/22 01:59 ID:1AAEoaTM
投下乙
なんだ、これはwパロロワらしからぬ恋愛モノが平然と行われているではないか!
特に川田お前はなんて羨ましい…いやけしからんことを!
だが、それがいい!
だがこれでフラグがビンビンにたったというものだ
414Classical名無しさん:08/01/22 02:05 ID:sya2Ou8g
これはニヤニヤせざるを得ないw
なんという清涼剤チームだ
415Classical名無しさん:08/01/22 02:07 ID:Zlj0VcK.
つかさの状態が修正前のままになってるね。
カッコ部分は削除し忘れだろうから、まとめにて修正よろ
416Classical名無しさん:08/01/22 02:07 ID:6/QO/wtw
投下乙
川田さん、あまぁ〜い! この異空間最高だぜえええええ!!!
三村もひとまず信じてもらえてやっと窮地脱出か?
川田が穴の中に先回りしてるところで痺れました。カッコよすぎだろw

状態表で、つかさがまだ気絶していることになってますよ。
あと、これは修正前のどの部分に繋げれば良いでしょうか?
417Classical名無しさん:08/01/22 02:11 ID:ybaf0kz6
投下乙!
ニヤニヤが止まらないw
ラブ度がいきなりアップ。
もう川田が可愛い。そう思わせたあなたが憎いw
GJ!
418 ◆wivGPSoRoE :08/01/22 02:14 ID:/SOBtjwc
>>408
×健康、(新八のバラバラ死体を見たいことによるショックで気絶中)

○健康

>>416
wikiへの収録ですが、以下の通りでお願いしたいと思っております。

前編>>15->>62の↓まで
>という破壊音が、駅の入り口の方から聞えてきたのだった。

中篇>>62の↑から>>118まで

後編>>373->>409

>>118以降を>>373以降と差し替えという感じです。
419 ◆ga/ayzh9y. :08/01/22 02:25 ID:WDaAhHOk
乙です。
ついに川田とつかさ、恋愛成就……やっぱりこのチームは、ロワの清涼剤だなぁ。
見てて癒されました、GJです。

さて。
巨星落つの修正版ですが、したらばの方に投下できました。
話の流れそのものは変わってはいません。
その為、修正は最後の一撃からになります。
問題の有無に関して、チェックお願いします。
420Classical名無しさん:08/01/22 02:34 ID:safp08x2
>>419
修正乙。
なるほど、正義の魂が受け継がれていくなら、悪の業も受け継がれていくわけですか。
旦那が劉鳳たちを「素晴らしきものたち」って言ったのが印象的ですね。
問題はないとは思いますよー。
421Classical名無しさん:08/01/22 02:44 ID:4ebnaBOI
>>419
乙ー
内容的には問題ないかなと
フラグはある程度守られ…ってロクでもねぇ置き土産をw
422 ◆1qmjaShGfE :08/01/22 02:54 ID:QEC8jaSY
では、こんな時間ですがラオウ、津村斗貴子、投下します
423Classical名無しさん:08/01/22 02:55 ID:JHRw2aZE
sien
424Classical名無しさん:08/01/22 02:55 ID:4ebnaBOI
よし、全裸支援
425Classical名無しさん:08/01/22 02:56 ID:JHRw2aZE
まだ半裸のはずだが、つまり全裸
426 ◆wivGPSoRoE :08/01/22 02:56 ID:/SOBtjwc
支援させていただく
津村斗貴子は声をかけてしまった事を後悔していた。
そのあんまりな姿についツッコんだというのがより正確な形なのだが、この大男は特異すぎた。
強い。それは間違いない。
だが、それ以上に頭がおかしい。
ここは殺し合いをする場で、僅かな隙も許されない非情のフィールド。
現に斗貴子も何人かを仕留めてきている。
確かに相応の実力を備えた者ならば、多少目立つ事をしていても、いや目立つ事で人を集めて一網打尽にするという行為も可能かもしれない。
しかし、それにしたってやり方というものがあろう。
そういえば、相応の実力と知性を持ち合わせていながら脳に菌糸類を繁殖させているような頭のおかしいパピヨンという奴も居た。
(……パオーンというのはどうだろう?)
怪我と疲労のせいか、油断すると斗貴子の思考能力は著しく低下してしまう。
カズキ、ああカズキ。私が君に似てくるのはとても嬉しい。だが、君のこういうセンスは私には理解出来ない。
だからお願いだ、こんな時だけ私に乗り移ってくるのは控えて欲しい。
しれっとカズキのせいにしつつ大男の動向に注視する。
声をかけてしまった以上、何も無かった事にする訳にもいくまい。
正直に言わせてもらうと、対応に困る。
こんな所を見られたのだ。色々と反応があってしかるべきだろう。
恥ずかしがるなり、怒るなり、逃げ出すなり、襲い掛かってくるなり……いや、一番最後のは勘弁して欲しい。
強いとか弱いとか恐いとか死ぬかもとかそういった次元とは別の話で、頼むから止めてくれ。
しかし、せっかく声をかけたのに返事すら無いとは一体どういう了見だ。
出来れば現状での戦闘は避けたいのだが、休息を妨げられて気が立っているのだ。あまり焦らさないで欲しい。
ああ、段々腹が立ってきた。この男はいつまで無言で居るのだ。
場所が場所で無ければとうに見なかった事にして立ち去っている所だ。

斗貴子の苛立ちが頂点に達しようかという時、大男は口を開く。
「……何か用か?」
頭に来ていた事も手伝って即座に怒鳴り返す斗貴子。
428Classical名無しさん:08/01/22 02:57 ID:/SOBtjwc
               
「質問したのはこちらだ! 何をしているのかと聞いている!」
斗貴子の発言をガン無視して、大男は降ろしていたズボンを上げると、斗貴子が出てきた建物とは別の建物に入って行く。
それは小奇麗なヘアーサロン、ガラス張りの壁から大男が中に入っていく様子が見える。
大男はその中の、WCと書かれた小部屋へと入っていった。

斗貴子は、自分の脳内で血管が弾け飛ぶ音が聞こえた気がした。

「バカにしてるのか貴様あああああああっ!!」

斗貴子の怒りに応じてサンライトハートが顕現する。
ヘアーサロンのガラス壁をサンライトハートでぶち破り、トイレの前で槍を構える。
「そのままクソをブチ撒けて死ね!」
サンライトハートの穂先が大きく伸び、トイレの扉をぶち破る。
中に居る大男ごと貫くはずだったその穂先は、斗貴子が予想していたより早く伸びるのを止める。
サンライトハートが貫いた扉が、遅ればせながら崩れ落ちる。
その奥にはトイレの個室に狭そうに身をかがめている大男がおり、彼は二本の指のみでその穂先を捉えていた。
有利とか不利とかそういうのをさておき、彼がズボンを降ろす前だった事に安堵したのは、彼女だけの秘密である。


   〜〜〜 ラオウ体内主要器官会議 〜〜〜

脳からの命令が下ると、真っ先に反対を表明したのが大腸である。
「これから戦闘開始だと!? バカを言うな! 後三分だって保ちはせん!」
しかし、脳は前言を翻さない。
「外の状況をお前等は理解出来んだろう。いいからしばらく保たせろ。大、小、十二指、盲、直まで揃えているのは伊達ではあるまい」
「それが出来ないからこうしてわざわざ文句を言いに来たのだ! これ以上は無理だと何度言わせる気だ! 心臓も何か言ってやってくれ!」
これまで沈黙を守っていた心臓は、常に無い程疲労した顔で腸に言った。
430Classical名無しさん:08/01/22 02:58 ID:/SOBtjwc
     

「……戦闘に反対なのは私も一緒だ。ただでさえこちらも機関目一杯で回しているんだ。これ以上損傷を増やされては手に負えなくなる。だが、脳がそう判断したのならば是非も無い」
心臓は先ほど完全停止の危機を乗り切った後である、全身が疲労に満ちていても無理はあるまい。
これでは、ここ一番での全腸周辺筋肉フル稼働を頼むのも無理だろう。
「心臓までこのザマでは、最終防衛ライン括約筋が動けるわけないだろう! 脳よ、どうか考え直してくれ!」
初めて、脳は苦悩の顔を見せる。
「……何処もギリギリなのだ、理解しろ」
大腸もこれ以上の問答は無理と悟り、苦渋に満ちた顔で会議室を後にした。

腸会議室に大腸が戻ると、気色ばんで小腸が詰め寄る。
「どうだった!? 脳は考え直してくれたか!?」
静かに首を横に振る大腸。
それを見た小腸はこの世の終わりとばかりに喚きだす。
「は、ははははは……どうしろってんだ! こんな、こんなのってあるかよ!? そもそもあんな刺激物胃に流し込んだ脳のミスじゃねえか! なんだって俺達がこんな目に!?」
胃は真っ青な顔で俯いている。
「ボクが胃液の分泌量を誤ったせいで……こんな大変な事に……」
すぐに胃を正す大腸。
「バカを言うな! あの液体は全員にとって未知の液体だったのだ、お前に咎は無いし、データも取れた。それよりもこれからの事を考えるんだ」
半泣きになりながら更に喚き散らす小腸。
「これから!? そんなもんあるか! 終わりだよ! 俺達みんな……」
大腸は小腸の言葉を遮って怒鳴る。
「ふざけるな! 俺達が諦めたら誰がコイツを止めるってんだ! 俺はやるぞ! 一人でもコイツを止めてみせる!」
胃は相変わらず青い顔のまま大腸に同意する。
「やらせてください。ボクだって、このままじゃ終われません!」
鼻を鳴らす十二指腸。
「当たり前だ。周辺筋肉達の了解は取り付けてある。連中、体組織が消滅するまで踏ん張ると言ってくれてるぜ」
頭を猛烈な勢いで掻き毟る小腸。
「あーもう! わかったよ! やりゃいいんだろやりゃ! クソッ! 上等だよ! コレラでも赤痢でもノロでもかかってきやがれってんだ!」
盲腸が直腸に問いかける。
「ねえ直腸……本当に私達勝てるの?」
内心の不安を押し隠し、優しげに微笑む直腸。
「もちろん大丈夫よ。さあそんな情けない顔をするのはおよしなさい、私達は誇り高き消化器系なのだから」

体内に大腸の叫び声が轟く。
「胃酸の量が多すぎる! 直接行って弁を閉めて来い! 小腸! お前の所で三分の一は止めるんだよ!」
括約筋からの悲鳴が聞こえる。
「ダメだ畜生! 心臓からのエネルギー供給が少なすぎる! 後一分と支えられねえ!」
大腸が再度怒鳴る。
「小腸! 括約筋が限界だ! 一度そっちに少し戻すぞ!」
小腸からも泣き言が漏れ出す。
「収縮止めるので手一杯だってーの! そんな量戻されたら次にそっち行った時、勢い付きすぎてお前の所で押さえられなくなるぞ!」
そんな言葉を大腸は歯牙にもかけない。
「いいからさっさとやれ! その時は俺が何としてでも抑えてみせる! 胃の方から最後の大玉ぶち込まれた時に量で止めるんだ!」
盲腸は直腸の様子を見て苦しげな顔を見せる。
「無理しないで直腸! もう貴女は限界よ!」
「フフフ、心配無用よ盲腸。ここからずっと私のターン、何処まででも駆け抜けてみせるわ」
人事のように十二指腸は呟く。
「……臀部から通達だ大腸。排出作業時の安全性は確保されているのか? だそうだが」
「知るか!『クソ喰らえ』つっとけ!」


ヘアーサロンから出た所で斗貴子はラオウと相対していた。
戦場が変わっているのは、斗貴子がラオウの間合いから逃げ回っているせいだ。
斗貴子はこの大男を見くびっていた事を素直に認める。
変態だのなんだの、そちらの方がどうでも良い事だった。
433Classical名無しさん:08/01/22 02:59 ID:/SOBtjwc
     
そもそも迂闊に近づけない。
槍でぎりぎりの間合いを保ち、伸縮自在の特性を活かしての中距離での戦闘のみが、辛うじてこの大男との戦闘を成立させるが、それすら数秒も維持出来ないだろう。
幸い大男はこちらに積極的に攻めこんでくる気配が薄いため、距離さえ取れば一息入れられるが、こちらから踏み込むのはただの自殺行為にしかならない。
そして悪い事は重なる。
ボロボロに消耗している状態のまま体と神経を酷使したせいで、一瞬、ほんの一瞬だが斗貴子は戦闘中にも関わらず意識を失ってしまったのだ。
大男は、それを見逃してくれた。
背筋が凍るなんてものではない。確実に今斗貴子は死んでいたのだ。
そして確信する、今斗貴子は自身が戦闘を行える状態では無い事を。
(……出来るか?)
サンライトハートの先端を地面に斜めに突き刺し、準備は万端。
ラオウは最初に斗貴子を迎え撃った時のように、構えもせずつまらなそうにこちらを見ている。
斗貴子の祈りに応えるかのように、力強い輝きと共に伸びるサンライトハート。
その勢いと、自らが大地を蹴る勢いで一瞬で大きくラオウとの距離を取り、そのまま逃げ去る斗貴子。
ラオウの追撃は無かった。

殺すのが一番早い。
だが、この女妙にすばしっこく捉えるには少し少々手間取りそうだと思ってた矢先、女はラオウの前から逃げ出した。
意味がわからない。満身創痍の状態で挑んで来たかと思えば今度は逃げ出す。
(実力差も理解しえぬ愚者か? ……どうでもいい事だがな)
おくびにも出さなかったが、ラオウの腹痛は既に常人に耐えうるそれを遙かに凌駕していたのだ。
ヘアーサロンに再度入ると、槍で斬り裂かれた扉の代わりに壁をひっぺがしてドアとする。
何にしても、ようやく落ち着けそうだった。


   〜〜〜 ラオウ体内下腹部内臓器官 〜〜〜

大腸がその膝を折り、苦しそうにその場に蹲る。
慌てて胃が駆け寄るが、それを手で制する大腸。
「持ち場を離れるな!」
「でも! 大腸さんもう……」
「俺は倒れん! 何度でも立ち上がってみせる! だからお前達は自らの役目を果たせ!」
最も負担の大きい役割を進んで引き受け続けた大腸。
小腸が最後の収縮を全身で止めながら叫ぶ。
「ふざけんな大腸! 俺は……俺は絶対に負けねーぞ! だからお前も立つんだよ! 頼むよ大腸! ここまで来て終わりなんてそんなん絶対認めねーぞ!」
直腸は随分前から正気を保てていない。限界などとうに超えているのだ。
「ああん……盲腸……これ、いいわぁ……」
「しっかりして直腸! お願い十二指腸! 直腸を助けてあげて!」
十二指腸は、最早指揮能力を失った大腸に代わって現場の指揮を行うが、状況は芳しくない。
そんな絶望感満ちる空間に、脳から朗報が舞い降りる。

『待たせたな大腸。戦闘は終了した。全ての器官は消化器系達の援護に回れ』

自らを囲む筋肉達が息を吹き返す。
ひたすらに自分達を支え続けてくれた彼等さえ居れば百人力だ。
足元から力が湧き上がってくる。これなら、後僅かだが耐えられる。
大腸が残る全ての力を振り絞って立ち上がった。
十二指腸は臀部との直接通信を開く。
「こちら消化器系、コンマ一秒でも時間が惜しい。外部とのコネクトと進路確認の報告は脳ではなくそちらから寄越せ」
『わかった! 後ほんの少しなんだ持ちこたえてくれよ!』
「任せろ。俺達を誰だと思っている」
通常なら問題にもならない振動が、ここまでの激闘を耐え抜いた彼等には天地を引っくり返す程の衝撃に思える。
誰一人余裕のある者など居はしない。しかし誰一人諦めようという者も居なかった。
全ての隔壁は限界まで膨張し、溜まりに溜まった胃液はそれだけで胃壁を溶かしつくしてしまうかと思う程だ。
既に声を出す者は居ない。励ます声すら惜しむ、そんな段階に来てしまっているのだ。

『外部接続来ました! 進路オールクリア!』

大腸の目が大きく見開かれ、全ての内臓達に届けとばかりに大声で吼える。

「全器官同時開放! ぶちかませえええええええええええええ!!」


  Now Unting........

(そのままお花畑でお待ち下さい)

ハーレルヤ♪ ハーレルヤ♪ ハレルヤ♪ ハレルヤ♪ ハレールヤー♪


ラオウは道路を歩きながら封を開けてあるコーラの瓶を口にする。
表情一つ変えないが、これはやはり彼のお気に入りなのであろう。
すぐに全て飲み終わり、そこらに空き瓶を放り捨てる。
「ふん、この拳王に同じ技は通じん」
放送を聞き、彼が目を付けている人間が一人も死んでいない事に満足したラオウは、歩を進める。
ラオウは気付いていなかったが、彼が持つ赤木より受け取った核金は、確実にラオウの体の治癒を進めていた。
直接肌に貼り付けような真似はせず、懐に収めているだけなのだが、その力はラオウの体に及んでいたのだ。


必死に逃げ続ける斗貴子。
失敗だった、ついさっき戦力低下を自覚したというのに、激昂したせいでこのザマだ。
今度こそ本当に休息を取らなければ目的達成どころか、この夜を越える事すら危うい。
437Classical名無しさん:08/01/22 03:02 ID:JHRw2aZE
  
あの大男は追撃する素振りを見せなかったが、油断は出来ない。
足の動く限り走り続けなければ。
行く先は……
そこまで考えて向かう方角を変える斗貴子。
病院に行けば薬が手に入る。休む為のベッドや身を隠す場所にも事欠かないであろう。
西に向けていた足を南へと、距離は大して無い。
そこで放送が聞こえてきた。
といっても、気になるのは禁止エリアぐらいだ、走りながらそれを記憶する斗貴子。
死者名は適当に聞き流し、人数だけ把握していたのだが、聞き覚えのある名前がそこにあった気がした。
その時斗貴子が考えたのは彼の死を悼む事ではなく、彼のような強者と争わずに済んだ幸運だけであった。

病院に辿り着くと、その随所に見られる破壊の跡に驚くも、それで倒壊するという程でもないと考え、中へと入っていく。
途中簡単な外傷治療に使える道具を幾つか拝借し、最上階の病室に侵入する。
消毒や包帯などを用いて治療を行おうと思っていたのだが、ベッドの上に座ると抗いがたい睡魔が彼女を襲う。
最上階、奥まった場所にある病室、その更に一番奥のベッドで周りをカーテンで覆ってある。
ここは戦場であり、緊張した状態の自分なら物音があればすぐに目覚めるだろう。
そんな言い訳を自分にしながら睡魔に身をゆだねる。


斗貴子は何処か遠くから人の話し声が聞こえた気がして、ベッドから跳ね起きる。
完全に寝入ってしまった。時計を確認すると、数時間まるで無防備な状態であったと思われる。
消耗が激しすぎた事が原因だろうが、それにしても不注意すぎる。
自分の馬鹿さ加減に嫌気がさすが、それより先にするべき事がある。
声は外から聞こえてきた。なにやら会話をしているようだ。
窓に寄れば何とか聞こえそうな声量。
斗貴子は注意深くその声に耳を傾け、内容を把握する。
男と女の二人組み、女はともかく男の方はそれなりに鍛えてあるように見える。
439Classical名無しさん:08/01/22 03:02 ID:/SOBtjwc
             
(少し後を着けて機を伺うか?)
ゆっくり休んで思考も落ち着いてきた斗貴子は、慎重な行動を取るようになった。
先ほどの大男相手の時のような真似は二度とすまいと。

気付かれぬように病院を出て、二人の後を追う斗貴子。
そこで予期せぬ出来事に遭遇する。
何と二人は更にもう二人と合流するつもりだったのだ。
あまりの間の悪さに斗貴子は渋い顔になるが、その後の二人組の行動を見ると、そんな意識も吹っ飛んでしまった。
最初に話をしていた女が、恥ずかしそうに男に口付けをし、仲間達の所へと駆けて行く。
これを見て、斗貴子は平静を保っていられなくなる。
胸の奥を締め付けられるような感覚。切なく、苦しいこの感じは、一体何であったのか。
理解出来ない自分の心の動きに困惑する斗貴子であったが、一つだけはっきりしている事がある。

(羨ましい、あの女が羨ましくて羨ましくて仕方が無い……)



【F-3 東中央市街北 1日目 夕方】
【ラオウ@北斗の拳】
[状態]内臓に小ダメージ 、鼻の骨を骨折、 胴体に刀傷 限界に近い程の全身フルボッコ(強がって気にしないフリをしている)
[装備]無し 核鉄(モーターギア)@武装錬金
[道具]支給品一式
[思考・状況]
1:ケンシロウを追う。
2:強敵を倒しながら優勝を目指す。
3:覚悟の迷いがなくなればまた戦いたい。
4:本郷、銀時の死に様に思う所あり。
5:赤木が気に入った。
[備考]
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。又、秘孔を破られやすくなっている事にも
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました
※無意識にですが、その戦闘技術如何によらず、自らが認めた相手に敬意を払いその生き方をも認める事をしました
※コーラに対する耐性がつきました
※ラオウがどちらに向かっているかは、次の書き手さんにお任せします


【F-4 病院内部3F病室 1日目 夜中】
【津村斗貴子@武装錬金】
[状態]:しろがね化、心臓代わりに核鉄、精神崩壊、判断力低下(若干回復)
    右手消失、全身大火傷、頭部に刺し傷 (核鉄としろがねの力で回復中)。衝撃により、骨にヒビ。簡単な治療済み。
[装備]:サンライトハート@武装錬金
[道具]:支給品一式×2
[思考・状況]
基本:最後の一人になり、優勝者の褒美としてカズキを蘇らせ、二人きりで暮らす『夢』を叶える。
1:可能ならば、なんらかの手段で戦力の増強を図る。
2:強者との戦闘は極力避け、弱者、自動人形を積極的に殺す。
3:アカギ、吉良、勇次郎、軍服の男(暗闇大使)は最終的に必ず殺す。アカギは特に自分の手で必ず殺す。
4:つかさが羨ましくてしょうがない
※数時間の休息をとりました。しろがねの血、核金の効果による回復が見込めます
 それがどの程度のものなのかは、次の書き手さんに一任いたします
442 ◆1qmjaShGfE :08/01/22 03:06 ID:QEC8jaSY
以上です。問題点等ありましたら、ご指摘の方よろしくお願いいたします
また私の都合で ◆wivGPSoRoE氏を急かすような結果になってしまった事、お詫びいたします
快く対応してくださり、本当にありがとうございました
443Classical名無しさん:08/01/22 03:10 ID:JHRw2aZE
やっべーーー、あれをリレーしやがったwwww
体内会議が激バロスってか、キスシーンまでキッチリリレーしてるし。

444Classical名無しさん:08/01/22 03:10 ID:/SOBtjwc
>>442
投下乙であります!!
リアルでコーヒーを吹きそうになったぜw
体内での「たたかい」の描写、お見事、お見事であります。
445Classical名無しさん:08/01/22 03:23 ID:TLO/x5G2
投下乙!!
俺の腹筋がぶっ壊れたんだがどうしてくれるwwwwwwww
446Classical名無しさん:08/01/22 03:36 ID:hvY/inXE
お二方とも乙です!!では感想を・・・・・
川田あああああああああああああああああああああああああああああああ
貴様慶子さんと言うれっきとした彼女がいたにも関わらずううううううううううううううう
おのれええええええええええええええええええええええええ
・・・・すみません、取り乱しすぎました。ごめんなさい。
〜〜〜 ラオウ体内主要器官会議 〜〜〜
この一文で吹いてしまいました。
メンツのわりにやけにコミカルだったので味噌汁をPCの前に思いっきり吹いてしまいました。
とにかくお二方ともGJでした!!
447Classical名無しさん:08/01/22 03:39 ID:eToj01E6
3者とも乙です!!
ああ、なんて熱くて甘酸っぱい。
いいですなぁ、若いということは。
これが少年漫画だったらこの4人は無事生還できるんだろうけど、ロワではどうなることやら………。

しかしフラグがややこしくなってきたなぁ。
ヒナギクがブチ切れる前に、さっきの放送でジョセフなんて名前呼ばれなかったわよ?って言ってたらどうなってたんだろう。

そしてラオウ。
なんですかその体内会議はwww
今回の話で斗貴子さんが精神崩壊してるのが如実に現れていたような気がする。

最後にアーカード。
なんという置き土産を。
正直、話の腰もフラグも折らないその展開に感動しました。
オーガがマホメドアライや郭海皇に感じていたような想いを、アーカードに対しても感じているようで良かったです。

一気に良作が投下されるからこのロワは止められない。
448Classical名無しさん:08/01/22 11:19 ID:8HzVCtuk
いやいやいや、最高の流れでしょ。

もうほとんど主人公チームになってる川田たち、
更なる闘争……というより獲物を求め続けるオーガ、
ラオウ……尊厳もなにもねぇ……

わらって、ないて、ゾッとして、この三作の流れだけで
ロワの本懐を全部見た気がする。
449Classical名無しさん:08/01/22 20:37 ID:6izHqYKQ
◆hqLsjDR84w氏の投下は今日か?
450Classical名無しさん:08/01/22 20:48 ID:6izHqYKQ
すまん、あげてしまったorz
451 ◆hqLsjDR84w :08/01/22 22:07 ID:.A1aql.I
すいません、日にちの計算を間違えてました……
延長させてください。申し訳ありません。
452Classical名無しさん:08/01/22 23:15 ID:hvY/inXE
>>451
ドンマイです。投下楽しみにしてます。
しかしwikiが結構編集されてるな、KOOLが暴走した話まで。
しかし、しかしだ。俺らの清涼剤に疑心暗鬼をぶちまけたKOOL、
少し嫌な印象を覚えるのは解る、解るんだが、何故登場人物の欄でKOOLがスルーされてるんだ。
しかも投下順、時系列順共に・・・
453 ◆L9juq0uMuo :08/01/23 22:17 ID:QoisqM/s
すいません、執筆が予想以上に難航してしまいまして、期限一杯まで延長してもよろしいでしょうか?
延長期限って+三日であってましたっけ?
454Classical名無しさん:08/01/24 00:11 ID:aL8yUvbQ
>>453
L9氏はかなり多くの作品を投下しているので大丈夫でしょう
執筆頑張ってください
455 ◆hqLsjDR84w :08/01/24 01:50 ID:YwoYwhi6
コナン、神楽、吉良、服部、劉鳳のパートを予約しているのですが……

書いては消し、書いては消しで、延長期限が迫っているのにかかわらず、未だに六割程度しか書けておりません。
間に合わなそうなので、すいませんが予約の方を破棄させてください。
申し訳ありません。


>>453
予約を見たときから、楽しみにしています。
頑張ってください。
456Classical名無しさん:08/01/24 17:09 ID:bL6N4J5o
>>455
そういう事もあります。あまり気を落とさず
457 ◆bnuNxUeVnw :08/01/24 20:57 ID:Peld9Rmo
>>453
登場人物も多く大変でしょうが楽しみに待ってます。
頑張ってください!!

それでは ラオウ、投下します。
458 ◆bnuNxUeVnw :08/01/24 21:01 ID:Peld9Rmo
ラオウは駅に向かっていた。彼は先ほどの体内での戦いを終え、スッキリしていた。
このスッキリを誰かに伝えたい…わけではなく、今度は「闘い」を求めていたのだ。
自らの拳で、血肉沸き踊る「闘い」を。
そのために人が多く集まり、そして中心に近いS3の駅に向かっていたのだ。


静かな町に一人の男の歩く音が響く。月が綺麗で星も良く見える良い夜だ。
ふとなにか気配を感じた。
「逝ったか…」
夜空にひとつ流れる大きな流れ星を見ながら拳王はこの闘いの舞台から一人強敵が去ったのを感じる。
そのものは彼が一度拳を交わしたものなのか、それともまだ見ぬ強者だったのか。
ラオウにはわからなかったが心のなかで敬意をはらった。
そして敬意をはらった自分に驚く。
「この拳王も甘くなったものだな…」
今までの自分だったら他人に敬意をはらうなど考えられなかった。
否、他人などに興味をもったことさえなかった。
ただひたすら目の前のものは闘いに値するか、しないかにしか興味をもたなかった。
たがこの舞台で闘った相手は違った。
459 ◆bnuNxUeVnw :08/01/24 21:05 ID:Peld9Rmo
葉隠覚悟
本郷猛
坂田銀時
いずれも本来なら闘うはずがないものだろう。
それどころか自分がいた世界だったら弱者をかばって野垂死んでいただろう。
だが奴らには鋭く光る魂があった。
けっして曲げることの無い強い光を発する、刀のように鋭い魂が。

はたして自分の魂は真っ直ぐになっているのだろうか。
ふと、そんなことを思った。
自分は彼らに何か教えてもらった気がした。
この闘いで自分は変わったのだろうか。

が、次に浮かんできたのは駅での大乱戦。
この拳王も認める猛者たち。

DIO
範馬勇次郎
ケンシロウ

460 ◆bnuNxUeVnw :08/01/24 21:08 ID:Peld9Rmo
「フン…」
先程までの自分の考えを鼻で笑う。
いや、自分は何も変わってない。
ただ目の前のものを倒すのみ。
この闘いで生き残り、全ての強さを手に入れる。
「このラオウに敗北の文字はないわ!!」
そしてラオウは思う。

頂点に立つ、世紀末覇者拳王として世界に君臨する。
これが自分の魂ではないか?
自らが貫き通すべきものではないか?

夜空に光る北斗七星を見上げ呟く。
「決してセンチになったからではない…
俺にとって強い戦士こそ真理……勇者こそ友であり尊敬するもの
この拳王はうぬらのことを永遠に記憶のかたすみにとどめておくであろう」

神をも恐れぬラオウは歩みを止めない。



461 ◆bnuNxUeVnw :08/01/24 21:10 ID:Peld9Rmo
【F-3 東中央市街北 1日目 夜】
【ラオウ@北斗の拳】
[状態]内臓に小ダメージ 、鼻の骨を骨折、 胴体に刀傷 限界に近い程の全身フルボッコ(強がって気にしないフリをしている)
[装備]無し 核鉄(モーターギア)@武装錬金
[道具]支給品一式
[思考・状況]
1:ケンシロウを追うためにS3の駅へ向かう。
2:強敵を倒しながら優勝を目指す。
3:覚悟の迷いがなくなればまた戦いたい。
4:赤木が気に入った。
[備考]
※自分の体力とスピードに若干の制限が加えられたことを感じ取りました。又、秘孔を破られやすくなっている事にも
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました
※自らが認めた相手に敬意を払いその生き方をも認める事をしました
※コーラに対する耐性がつきました
※誰か猛者が逝ったのを感じました。
462 ◆bnuNxUeVnw :08/01/24 21:14 ID:Peld9Rmo


月が鳥の影を映し出す。一羽の梟がラオウを追うように滑空していく。
一人の猛者が逝ったのを感じたラオウ。
その逝った猛者、アーカードによってできた梟。
これは果たして運命なのだろうか?
梟は飛ぶ。どこまでも……。
463 ◆bnuNxUeVnw :08/01/24 21:18 ID:Peld9Rmo
投下完了しました。
題名は「夜空ノムコウ」です。

「繋ぎ」として書いたのですがすこし短過ぎるかなぁ…
464Classical名無しさん:08/01/24 21:29 ID:aL8yUvbQ
さりげない投下乙!
一瞬戦士に肩入れしたかとおもったらやっぱりラオウは闘志でした!
そしてラオウも激戦地か…
465Classical名無しさん:08/01/24 22:23 ID:Nt.reVNU
GJ!
これぞ拳王様!
突き進め、覇道を! 天を目指せ!
拳王様の魅力を充分出しています。短くても気にすることないかと!
466 ◆d4asqdtPw2 :08/01/24 23:13 ID:W9kJicM.
投下乙。
ラオウ復活してきましたね。
ただ、状態表見る限りだと、まだ万全の状態ってわけじゃあないみたいですね……。
最後のフクロウのシーンが面白いですね。
あったことないはずの2人が最後の最後で少しだけ交錯して、少し嬉しかったです。

あと、今日が期限のはずでしたが、なかなか上手いこと書けないんで延長させてください。
467Classical名無しさん:08/01/24 23:15 ID:W9kJicM.
延長させてもらうのに謝罪し忘れた……すいません。
468 ◆bnuNxUeVnw :08/01/25 19:13 ID:r8f2hGPs
昨日投下した「夜空ノムコウ」ですが、
やはり短すぎる、話が薄すぎると思い修正版をしたらばの
一時投下スレにageておきました。

誤字脱字、矛盾点があれば指摘おねがいします。
また自分が気に入らなかったというワガママで修正を勝手に行ったことをお詫びします。
469Classical名無しさん:08/01/25 21:05 ID:2Uta2yaw
>>468
投下乙。トキが出てきて、勇次郎まで出てくるとはちょっと意外でした。
470 ◆wivGPSoRoE :08/01/25 21:10 ID:Ob1/dlIs
村雨、ハヤテ、ジョジョ、かがみを予約します。
471Classical名無しさん:08/01/25 21:10 ID:G.x0sdPY
予約?
472 ◆wivGPSoRoE :08/01/25 21:11 ID:Ob1/dlIs
……大変失礼しました。

村雨、ハヤテ、ジョジョ、かがみを「投下」します。
473 ◆wivGPSoRoE :08/01/25 21:11 ID:Ob1/dlIs
「――ここで待っていろ」
「え? 僕も行きますよ。一人より二人の方が速いじゃないですか」
「お前は休んでいろ。またさっきのように、戦闘中に動けなくなられたら、たまらない」
 言い捨てて、村雨が足早に、汚水処理場の中に消えていく。
 
 確かに疲れてはいた。
 
 ため息をついてハヤテは、クルーザーによしかかる。
(村雨さん、辛そうだな……)
 先ほどの村雨の横顔からは、必死さが痛いほど伝わってきた。
 零の探知能力は制限されているため、有効距離範囲でも建物の深部になると、一部乱れがあるらしい。
 とはいっても、死体があるかどうかを間違えることなど、ほぼ、ありえないらしいのだが、
 それでも村雨は、外からの調査だけでは納得できないらしく、ああやって中に入っていく。
 そんな村雨の気持ちが、ハヤテには分かる気がした。
 だって。 

 ――似たもの同士だから。
 
 あの時――千切れとんだマリアの体を見つけたとき、絶望した。
 三千院ナギやマリアと始めてあった雪のクリスマスの日に、戻ってしまった気がした。
 この世にはもう、自分の居場所はなくなったように感じて、圧倒的な孤独に打ちのめされた。
 否。今も――そう、今も同じ感覚を感じている。
 たとえ拒絶されたとしても、ナギのために、ヒナギクのために、
 自分と同じく理不尽な運命に巻き込まれた人たちのために、BADANの奴らを何とかしたいとは思う。
 奴らからみなを、心底守りたいと思う
 でも、それでも。
(参ったなぁ……。やっぱり……。辛いや)
 ハヤテは再確認する。
 三千院家の日々が、どれほど自分の心に安らぎを与えてくれていたか、
 どれほどあの日々を、それを取り巻く人々を愛していたか……
474Classical名無しさん:08/01/25 21:13 ID:Ob1/dlIs
 それを、自分は自らの手で捨ててしまったのだ。
 どれほど悔やんでも、自分が激情に駆られ、あの男を殴り殺してしまったという事実は消えない。

 独りぼっち。孤独。

 人間とは、どうやらそれらの冷たさに、耐えられないようにできているらしい。
 それなのに村雨は、過去にすら、温もりを求めることができないのだ。
(あの人は、ずっと雪の中にいたんだろうな)
 だからこそ、初めて、真の意味で仲間になってくれた散が、大切なのだろう。
 自分にとって三千院ナギが、この上もなく大事な人であるように……。
 それでも村雨は、ズタボロで、あのまま放置されていれば死んでいはずの自分を助けてくれた。
 村雨とは、命を預けあってあの吸血鬼と戦った。
 孤独で、必死で無くしたものを探し続けているあの人に、伝えたいと思う。
 記憶だけだが全てじゃなくて、出会いでも、今は変わる。
 変わった今を大事にしていれば、今いる場所をそれほど悪くないものに変えることはできるってことを。
 このゲームを潰して、三千院ナギやヒナギクを守り、他の参加者もできるだけ助け、
 その上で村雨も――と考えるのは、少し欲張りすぎかもしれないが――

『どうした? ハヤテよ』

 ハヤテの顔に憂いを見て取り、零が尋ねてくる。
「いえ……その……。ちょっと、分不相応な考えを……」
 するとヴヴヴという振動と共に零は笑い、
『何を言うか! 分不相応な望みを持ってこそ男子! お前はまだ、分別を知るには若すぎる!』
「は、はぁ……」
 当惑したようにハヤテは銀髪を撫でた。
(当たり前だけど……。零さんって少し、時代がかってるなぁ。ガンコ親父系っていうか……)
そんなハヤテの思いに気付いているのかどうか、
『話してみよ! 何か助言できるやもしれぬ』
475Classical名無しさん:08/01/25 21:13 ID:pVeQgth2
476Classical名無しさん:08/01/25 21:14 ID:Ob1/dlIs
 ハヤテは困ったように笑い、
「……なんていうか、僕ごときが考えるのはおこがましいかもしれないんですけど……。
村雨さんの今を、ピカピカにすることはできないにしても、
何とか、くすんだ輝きぐらいにはしてあげられないかなぁって、思いまして……」
 口に出すと、猛烈に恥ずかしさが込み上げてきて、ハヤテは顔を赤らめた。

 零は沈黙している。

 ハヤテの頬の朱の面積が大きさを増した。
「や、やっぱり……。おこがましいでしょうか……」
『そんなことはない』
 零の声は穏やかだった。
『ハヤテ……。お前は優しい男よな。
この修羅の庭においても失われることの無きその優しさは、時に超鋼よりも強きものとなろう』
 零の声には喜びがあった。
 ハヤテは知らぬことだが、村雨に「未来」を与えたいと思っている零は、
 ハヤテの中に、自分と相通じるものを感じたのである。
(ハヤテとならば、良を正しき道に導くことができるやもしれん)
零は期待を込めてハヤテを見つめた。
だが、零の予想に反し、ハヤテの顔は暗い。
「僕は、優しい人間なんかじゃありません。僕は……。怒りに任せて、人を……」
 口に出した瞬間、抑えていた激情が、言葉となって溢れ出た。
 勝手に言葉が、ハヤテの口から飛び出していく。
「……許せなかったんです。アイツは、笑っていました」

 ――そういえばピンク色の髪の毛をしてたなぁ! もしかしてお前達の知り合いか?

「人の死を、あんな風に嘲笑って……」

 ――ソイツは残念だったなァ……ハハハハハハハハハ!!

 あの、悪魔のような笑みと狂声が今にも聞えてきそうだった。
477Classical名無しさん:08/01/25 21:14 ID:pVeQgth2
478Classical名無しさん:08/01/25 21:15 ID:pVeQgth2
479Classical名無しさん:08/01/25 21:15 ID:Ob1/dlIs
「それだけじゃないんです! アイツは、お嬢様を、僕のこの世で一番大事な人を殴った!
傷つけたっ!! それだけでも許せないのに、アイツは、ジョジョさんをっ!
ジョジョさんは、厳しくて、ぶっきらぼうな人だったけど、本当は情に厚くて、
それなのに情を殺して正しい判断ができる、すごい人でした。それなのに……。
アイツは、そんなジョジョさんを……殺したんだっ!!」
 ハヤテは絶叫した。
 胸に大穴を開けられて倒れ伏す承太郎の姿、涙を流すナギの顔、
 封じ込めていた光景が蘇ってきて、目の前でチカチカと瞬く。
「だから、だから僕は……。アイツを、殺したんですっ!!」

 ――殺した。

 何度も何度も何度も殴りつけて殺した。
 心臓の鼓動が早鐘のように打っている。
 胸を抑えながら、
「でも……でも……。アイツは……」
 あんなにボロボロになって、頭から血を流していて、それでも必死で生きようとしていた。
「……生きようと、してたんです。それなのに、僕は……」

『よくやった!』

 零の大喝が響いた。
 思いがけない賞賛の言葉に呆気に取られるハヤテに向かって、零はさらに言葉を叩きつける。
『ハヤテよ! お前の行動は一切、間違っておらん!!』
 ハヤテの目の中から疑念が消えないのを見て取り、
『では、問う! お前がとどめをささずば、一体誰ができた? 
その悪鬼が立ち上がり再び牙を向いた場合、誰がそれに対処できた?』
「そ、それは……」
 あの場で動けたのは、ナギと自分。
 総毛立つ思いがハヤテを襲った。
480Classical名無しさん:08/01/25 21:15 ID:G.x0sdPY
 
481Classical名無しさん:08/01/25 21:16 ID:Ob1/dlIs
(冗談じゃない! お嬢さんにそんなことをさせるくらいなら……)
『その通りだ! お前の愛しき者かお前、どちらかが手を下すしか道は無かった。
さもなくばお前達は、その場で悪鬼に殺されていただろうからなっ!!』
 畳み掛けるように零は続けた。
『人を喰らって生きる悪鬼に対してまでも、情けをかけるその慈悲の心、見事なり!!
だがな……。己を! そして、愛しきものを守りたいのならば、慈悲を心に沈め、
敵を撃たねばならぬ時もあるっ!!」
「分かってますよ! そんな理屈は分かってるんです!! でも、僕は……」
『ハヤテよ……』
 それまでとは打って変わった暖かな声だった。
『お前は悪くない! 間違ってなどいない!』
「だから、そういう問題、じゃ……」
 ハヤテの視界が急にぼやけた。
 自分が泣いていることにハヤテは気付く。
『お前は悪くない!! 間違ってなどいない!!』
 零の声が繰り返し鼓膜を震わせる。

 ――許して欲しかった。

 浅ましい考えだとは知っている。自覚もしている。
 それでも誰かに――許して欲しかったのだ。
 ハヤテは、溢れてくる感情に一時、身を任せた。
482Classical名無しさん:08/01/25 21:17 ID:pVeQgth2
483Classical名無しさん:08/01/25 21:17 ID:Ob1/dlIs


「す、すいません……。えらそうなことを言ったのに、子供みたいに……」
 恥じ入ったように、ハヤテが俯く。
『何を言う。男子たるもの、みだりに涙を見せてはいかんが、たまにはよい!』
「はあ……。たまには、ですか」
『うむ。あくまで、たまには、だがな』
おどけたような零の調子に、ハヤテが笑みのようなものを浮かべた。
 ハヤテが落ち着いたのを見て取った零は、
『――さて、ハヤテよ』
 改まった声で告げた。
 零の声にハヤテの背がピンと伸びる。
(まったく……。良に、ハヤテの万分の一の素直さがあれば、苦労は少なくてすむというに!)
 ハヤテの態度に目を細めつつ、この場にはいない村雨に向かって、零は軽く毒づいた。
 気持ちを改め、
『お前に伝えておかなくてはならんことがある、この地を跋扈する悪鬼達のことだ』
「アーカードのような奴のことですね?」
『奴もその一人だ。あの鬼の怪力、再生の力、脅威という言葉すら生ぬるい……。
だがな、ハヤテ。あるいは、奴よりも恐ろしいかもしれぬ、敵がいるのだ』
 ハヤテがゴクリと喉を鳴らした。
『その名はDIOという』
「DIO、ですか!?」
 ハヤテが激しくその名前に反応すると、
『む? 知っているのか、ハヤテ?』
「はい! 僕を襲ってきた赤毛の男がDIO様のためにどうとかこうとか……」

――やっぱりDIO様を知ってるのか! ならなおさらだッッッ!!

 赤毛の少年の言葉を思い出しながら、勢い込んでハヤテが言う。
 零は――沈黙した。
484Classical名無しさん:08/01/25 21:17 ID:G.x0sdPY
 
485Classical名無しさん:08/01/25 21:17 ID:Ob1/dlIs
 黙りこみつつ、零は思考を展開する
(赤毛の男……。刃牙に相違ない! 我々と分かれた後、刃牙はハヤテ達を襲っていたというわけか。
何たる奇縁よ!)
 自分をこの世界で始めて手にした少年が、目の前の心優しい少年に殺されていたという事実に、
 流石の零も動揺する。
(ぬぅ……。若輩者の範たるべき我々が、心を乱されて何とするか!)
 類稀なる自制心を発揮して、零は何とか動揺を封じ込めた。
 そしらぬ風を装い、
『ふぅむ……。この殺し合いの場ですら、他人を心服せしめるとは恐ろしい奴!』
「ええ……。本当にそう思います」
『悪鬼の中には稀に出現するのだ。他の悪鬼を取りまとめる強大な悪鬼がな。
だが、善の心を持つ我々には、関係のなきことよ!』
 零は心の中の刃牙に向かって深々と頭を下げた。
 敵を殺したと認識していてさえあれほど苦しんだハヤテが、実は殺した相手が、
DIOに洗脳されていたとだけと知ったならば……。
(刃牙よ、すまぬ! 死したお前の尊厳を踏みにじる我々を、許してくれ!!)
 ハヤテに教えるわけにはいかない、知らせるわけにはいかない。
 ここでハヤテに崩れてもらっては困るのだ。
 村雨良を正しい道に導くためにも、この会場に存在する牙なき者達を守るためにも!

 ――大目標のために情を殺せずして、何が軍人!
 
 血涙を流しつつ、零はハヤテに真実を教えたい誘惑断ち切り、話題を転換する。
『そちらの方も恐ろしいが……。DIOの恐ろしさは、やはり、あの得体の知れぬ能力にあろう!
よいか、ハヤテ……。面妖に思うであろうが、しかと聞け!
我らを始めて手にした者が、DIOと闘ったときのことだ――』
 ハヤテが一言も聞き伸ばすまいと集中しているのを見て取り、零は言葉を発した。
『その者の拳がDIOに叩きこまれたと我々が思った時、突如DIOの体は消え、
気がついた時にはDIOの腕に嵌った時計から発射されたとおぼしき針が、
我々を手にしていた者の首筋に刺さっていた』
 ハヤテの瞳に疑問の光彩が浮かび上がった。
486Classical名無しさん:08/01/25 21:19 ID:Ob1/dlIs
『何を言っているか理解できぬかもしれぬが、事実だ。
我々が確認した時、確かにDIOの体は我々を手にしていた者の拳を受けていた。
だが次に確認できたのは、DIOの体がそれより遠間に現れてから。
しかもその時には、DIOは針を発射し終えていた。
超速の力のみではありえぬこと。あれはもっと何か別の――』

「時間を操作したとか、そんな感じでしょうかね?」

 アッサリと帰ってきた驚天動地の答えに、零は二の句を発することができない。
「空間移動と超スピードを組み合わせても、最後の針だけは説明できません。
針をDIOが自分で刺したのならともかく、道具で発射された針が飛んでいく過程を
零さんがまったく感知できないってことは……」
『ま、待て! ハヤテよ。確かにお前の言うとおり、それならば辻褄はあう。
しかし、時をどうこうするなど……』
「僕だって、普通だったらこんなこと絶対に言いません!」
 ハヤテが、肩をすくめた。
「でも、状況がこれだけ現実離れしてるんです。何が起こったって、おかしくないと思いませんか?
もっとも、その針の速度がとんでもなく速い可能性も考えられますけど、
そうだとしたら、DIOが超スピードで動ける能力を持ち合わせていることになるでしょうね。
零さんに見えない速さで、移動して、照準して、針を発射し終えてるんですから」
 零は瞠目する。
(やる! こやつは思った以上にやる!)
 全てをなぎ倒す村雨良を『剛』とすれば、彩崎ハヤテには『柔』の資質がある。
(良とハヤテ、この二人の力を合わせることができれば――)
 零は期待の眼差しでハヤテを見つめた。
 と、その時。

「あ、お帰りなさい」
487Classical名無しさん:08/01/25 21:20 ID:pVeQgth2
488Classical名無しさん:08/01/25 21:20 ID:Ob1/dlIs
 村雨良が、入り口から姿を現した。
 そのどことなく不機嫌そうな様子から、散を見つけられなかったことが見て取れた。
『だから、言ったであろうが』
 当然といえば当然の結果に、零は叱責交じりに言う。
 零の方を見ようともせず、村雨は立ち上がるハヤテを一瞥し、
「次は、変電所の周辺だ」
 ボソっと言葉を吐き出すと、さっさとクルーザーにまたがった。
(とりつく島もない、か)
 先ほど感じた歓喜が失望に変わっていくのを感じつつも、零はその感情を抑え込んだ。
(まあ、良い……。時間はある。きっと良にも分かる時が来よう) 
 苦々しい思いと共に、零は探査のために意識を集中させた。




「村雨さん……」
「良……」
 零とハヤテの声が、どこか遠くに聞こえた。
 二人――零を一人と換算すればだが――が見つめる先、村雨良は立ち尽くしていた。
 この先に散がいる。

 ――この先にいるというのに。

(俺には、何もできないのかっ!!)
 握り締められた拳が、みしみしと軋みをあげる

 ――私は常に美しくなければならない。なぜなら、王であるからだ。

 美しさと気高さの化身だった散。
 少しでも、元の姿のようにしてから、葬りたかった。
 名も無き戦闘員のように、遺体を野ざらしにしておきたくなど、なかった。
489Classical名無しさん:08/01/25 21:21 ID:Ob1/dlIs
 だが、無情にも零が見つけ出した散の遺体のありかは、禁止エリアの中。
 禁止エリアの中に入っていけば、いくらZXだろうと爆死は必定。
 
 ――必ず記憶を取り戻させる。私に二言は無い!!

 自信と覇気に満ちていた散の言葉が、村雨の耳の奥で鼓膜を震わせ、
 美しさと凛々しさに満ちていた横顔が瞼の裏に浮かぶ。
(あの時、別れたりしなければ……)
 散は死んでいなかっただろう。そして自分は、記憶を取り戻していたかもしれない。
 散なら、不可能という文字の存在を知らぬ、知っていても抹殺してしまったであろうあの男なら、
 自分の記憶を取り戻してくれたはずだ。
 だが、いないのだ。

 ――散は、失われた。

 体の中の何かが、刺すように痛んだ。
(なるほど……。痛みには、こういう痛みもあるのか)
 心を締め上げる「痛み」。
 痛みを感じながら村雨は、自分の心に湧きあがる、もう一つのモノを感じていた。
 そう、これは。
 
 ――真の怒り。

 アーカードに対して感じた怒りが、再び村雨の胸の壁を焼き焦がしていた。
 そして、真の怒りの矛先が、アーカードだけではなく、自分自身へも向けられていることに、
 村雨は気付く。

 その怒りの名は、「無力感」

 何故か、心に馴染むその怒りは、村雨の心の中で膨張していく。
490Classical名無しさん:08/01/25 21:23 ID:G.x0sdPY
 
491Classical名無しさん:08/01/25 21:22 ID:Ob1/dlIs
(俺はまだ、散のために何もしていない!! 散が生きていた時も、死んでからも!!)
  
――何故あの時、仇を取ることができなかった!?

 決まっている。
 
 ――力が、足りなかったから。
 
 アーカードを完殺するだけの力がさえあれば、仇を討つことができたのに。
 あの時逃亡したのは、ハヤテを助けるためという理由も、勿論ある。
 だが、アーカードを倒せるどうか、疑問に感じたからというのも理由の一つ。

 ――ヤツにはまだ、先がある。

 でなければ、散がまけるはずがない。
(足りない! 俺には、力が足りない)
 自分にたりない力とは何か? 村雨は思考する。

 ――己のルーツを知らないとすれば、お前に私は討てない。

 アーカードの嗤い声が聞こえた。
(記憶が欠けたままでは……。不完全なままでは、奴を完全に殺せない)
 怒りを押し殺しながら、村雨は思考する。

 ――まだ、ないか?

 この世界に来てから闘った強者達の記憶を、村雨は、何度も頭の中で再生する。
 一際大きく、頭の中に映し出される記憶があった。
 それは――敗北の記憶。
 
 ――お前、戦闘した事あるのか?
492Classical名無しさん:08/01/25 21:23 ID:Ehtta6qY
493Classical名無しさん:08/01/25 21:23 ID:mAOWPm5s
 
494Classical名無しさん:08/01/25 21:23 ID:Ob1/dlIs
 蝶の仮面の男が発した蔑みの言葉を思い出した瞬間、胸を焼き焦がす怒りの炎が吹き上がった。
(俺はあの男に、スペックでは勝っていた)
 スピードとパワーなら、自分は勝っていた。
 それなのに負けた。

 ――大技は、きっちり相手を崩してからだろう。

 呆れるような声

 ――二手、三手先ぐらい読め、間抜けが。

 嘲るような声。
 声、声、声――
「くそっ!!」
 村雨は、地に拳を叩きつけた。
 ずどぉぉんと凄まじい音と共に、地面が陥没した。
 もう一発、続けてもう一発。
 荒い息を吐きながら、
(俺に足りないもの……。記憶。そして闘いのの記憶)
 アーカードと戦った時、元の世界で戦った「仮面ライダー」とかいう、
 偽善者――仲間である三影の言葉を借りて表現すれば――の技、
 あれを使った時、新たな可能性が見えた気がした。
 弱い奴を何人殺しても意味がない。
 強者との闘いの先にこそ、求めるものはある。

 散と闘うことで、「痛み」を取り戻せた。
 アーカードと闘うことで「真の怒り」を取り戻せた。
 闘いは自分に記憶を与えてくれる、力を与えてくれる。
 闘いこそが――

「村雨さんっ!!」
495Classical名無しさん:08/01/25 21:24 ID:Ob1/dlIs
 耳を打った真っ直ぐな声に、村雨は思考の深海から引き上げられた。
 無造作にハヤテを一瞥し、
「……何だ?」
「何だ? はないでしょう!」
 ハヤテが、怒ったようにその端整な顔をしかめた。
「そんな……自分の体を痛めつけるような真似をして、誰が喜ぶんですか!?
散さんという人だって、きっと悲しみますよ! そうですよね!? 零さん」
『……その通りだ、ハヤテよ』
 零の言葉に複雑なものが含有されていることに気付きつつも、
ハヤテは、とりあえずその疑問は心の井戸中に沈め、
「村雨さんが拳を叩きこまなくちゃならないのは、アーカード、DIO……
それに、村雨さんの記憶を奪って利用しようとしてる、BADANの奴らですよ!!」 

 ――何故だ?

 村雨の心に沸き起こるのは疑問だった。
 先ほども感じた強烈な疑問が、再び心を満たしていく。

 ――何故、こいつも零も、他人のために怒る?

 ハヤテの声に込められた怒りは、自分の心を焼き焦がしている「怒り」とは違う気がする。
 自分の心を焼く黒炎とは違い、目の前の少年の怒りには輝きがある。眩いばかりの純白の輝きが。

 ――理解したい。
 
 自然とそう思えてくる。
496Classical名無しさん:08/01/25 21:24 ID:pVeQgth2
497Classical名無しさん:08/01/25 21:25 ID:G.x0sdPY
 
498Classical名無しさん:08/01/25 21:26 ID:mAOWPm5s

499Classical名無しさん:08/01/25 21:26 ID:pVeQgth2
500Classical名無しさん:08/01/25 21:26 ID:Ob1/dlIs
 理解すれば、あの幻影の女は、笑ってくれる気がするのだ。
 そんなことは、どうでもいいはずなのに。
 記憶を取り戻すことに比べれば、どうでもいいことのはずなのに。
 何故か。何故かそれが大切なことのように思えて、心が乱れる。
(どうすれば理解できる?)
 チラっと村雨は、零に視線を走らせた。
 零も、ハヤテと同じ精神の持ち主だ。
 しかし、それなりの時間共に行動しているのに、まったく理解できない。
(共に行動しているだけでは、駄目だということか)

 ――ではどうすれば?

 スッと村雨の手が伸び、ハヤテの頬に触れた。
 怪訝な顔をするハヤテに、村雨顔を近づけ――

「な、何をするだァ――――っ!?」

 瞬間移動並の速度で後ろにカッ飛びながら、ハヤテが絶叫する。
「りょ、良ぉぉっ!? 血迷ってはいかんぞっ!! 相手の合意も得ぬうちにっ!
ましてや年端もゆかぬ、こ、子供に、そのような……。恥を知れぃっ!! 恥をぉっ!!」

 ――何なんだ?

 疑問の風が村雨の心の水面を揺らした。
 ただ単に、散が自分にしてくれたことをしてみようと思っただけなのに。
 散のアレは、未知の感覚だった。
 ハヤテとしてみれば、また違ったかもしれないと思ったのだが。
(……この反応では、やらない方が無難か)
 
 ――そうすべきだ。
 
 心の何処かでそんな声がした。
501Classical名無しさん:08/01/25 21:26 ID:Ob1/dlIs
 そういえば、先ほど顔を近づけたときに、脳がすさまじい不快信号を発した気もする。
 歯軋りを一つ。
(結局、何も手に入らない。記憶も、力も、理解も……)
 不可解なことが増えたようで苛立ちが込み上げ、焦燥感が募る。
 嘆息しつつ、村雨はクルーザーにまたがった。
 エンジンをかける。

「……どうした?」

 ややあって、焦れたように村雨は首をひねった。
(何をモタモタしている?)
 するとハヤテが、見たこともないような微妙な表情をしながら、
「……あの、ですね……。お気持ちはこう、なんというか……その……。
村雨さんは、命の恩人ですし、それにはすごく感謝してます……。でも僕には、そういう趣味は……」

「お前は、何を言ってるんだ?」

「それは僕の台詞です!!」

 鼓膜をぶち割らんばかりの大声に、村雨は顔をしかめた。

「……俺と来ないというなら、それもいい。好きにしろ」
「ま、待ってくださいよ……」
 おっかなビックリという感じで、ハヤテがクルーザーに乗り込む。
「聞けぇぇぃ!! 良よっ!!」
 零が待っていたように怒鳴り始める。

「後にしろ」

 吐き捨てて、村雨はクルーザーを発進させた。
502Classical名無しさん:08/01/25 21:27 ID:Ob1/dlIs


「誰もいねーなぁ……」
「そうね……」
 かがみとジョセフは同時にため息をついた。
 徒労感が二人を襲っていた。
 S10駅、 S9駅の周辺をかなり捜索したが、収穫はゼロ。
 人っ子一人見当たらない。
「音すら聞こえてこないってことは、そうなんじゃないの」
「ったくよぉ〜」
「……アンタはこれから、『俺の嫌いな言葉は1に努力、2に頑張るなのによォォ』と言う」
「俺の好きな言葉は、1に努力、2に頑張るなのによォォ」
 かがみは眉をしかめ、ジョセフはフフンと鼻をうごめかせた。
「いい線言ってたぜぇ〜? けど、まだまだ、だな。
相手の裏をかく時は、『裏をかいてやる』って顔を出しちゃいけねーのよん。
顔に出す時は、さらに裏の手を持ってるときだけだぜ、か・がーみん」
「その呼び方、やめてってば!」
 顔をしかめるかがみに向かって、
「おいおい……。そうやって、顔しかめてっとカワEー顔が台無しだぜー? か・が・み〜ん」
「呼び方くらい統一しないさよ!」
「お? お? か・がーみんとか・が・み〜ん、のどっちが好みぃ?」
「知るか!!」
 おお怖〜と、大げさに身をひねりながらジョセフは、かがみの顔を盗み見た。
 ぶつくさ言ってはいるが、その瞳には力が戻っている。
 少し前の、空ろで、生を放棄した表情は見つけられない。
 ジョジョは心の中で、安堵の息を吐いた。
 ずっと注意して見てきたが、かがみは今のところ、順調に立ち直りつつあるように見える。
503Classical名無しさん:08/01/25 21:27 ID:G.x0sdPY
 
504Classical名無しさん:08/01/25 21:28 ID:mAOWPm5s
  
505Classical名無しさん:08/01/25 21:28 ID:pVeQgth2
506Classical名無しさん:08/01/25 21:28 ID:Ob1/dlIs
 だが、油断は禁物だ。
(ンな簡単に気持ちの切り替えができりゃ、苦労しねーからなぁ)
 戦闘経験においても、人生経験においても百戦錬磨のリサリサですら、
 シーザーを失った時、感情の手綱を手放したのだ。
 喪失の悲しみは、それほど甘いものではない。
 いつまたなんどき、自己嫌悪と喪失の悲しみが、彼女を襲うかもしれない。
(まあそんときゃ、支えてやるのがオトコの役目ってやつだよなァ? シーザーよォォ?
にゃにぃ? 俺に男を語るのは100年はぇぇ!? へへ〜ん、俺はもう妻子持ちだもんネー。
参ったかコラ)
 女ったらしだった友の面影を思い浮かべながら、ジョセフは友に語りかけた。
「……何、変な顔してんのよ?」
「Oh My God!! なんつーヒデーこと言うんだ、か・がーみん。
俺のピュアなハートに傷がついちまったらどうすんだ!?」
「心配しなくても、アンタの鋼鉄の心臓には、傷一つ付かないわよ」
 鼻で笑いつつ、かがみが足を速める。
 既にかなり速い速度で歩いているという自覚が、あるのかどうか。
(かがみんたらもぅ、頑張っちゃてまぁ〜)
 微笑ましさと痛ましさを同時に感じて、ジョセフはわずかに苦笑する。
 この捜索を行っている間、彼女がどれほど目を皿のようにして辺りを見ていたか、
 歩幅の違うジョセフに負けまいと、どれほど必死で歩いていたかを、彼は知っていた。
(な〜んて、女の子観察して、余裕ぶっこいてる場合でもねーんだろうけどなァ……。
どうやって首輪をはずしゃいいのかぜんぜんわかんねーし、
あの爺さん達が、何で俺達をここに呼んだのかもわかんねーしィィ……。
けどなぁ〜。くよくよ考えても仕方ないってのが、俺の生き方の原点だしなァ〜。
シンジの野郎は、ど〜してんのかねェ。ハッキングとやらは、進んでっかなァ?)

 他力本願は本意ではないが、何でもかんでも自分でやれると考えるほど、
 ジョセフ・ジョースターという男は傲慢ではない。
 任せるところは任せるしかない、そう割り切っているのである。

(肩の力ぬきゃいいのによォ〜。かがみとかシーザーとか、責任感のつぇぇのは、
その辺ノーブレーキだから、厄介なんだよなぁ……)
507Classical名無しさん:08/01/25 21:29 ID:Ob1/dlIs
 などと考えながら歩くうちに、S9駅が、再びジョセフの視界に飛び込んできた
(またアレに乗るのかよ……。
けっこう面倒くせぇなぁ〜、来るのを待ったり、乗ったり降りたりよォ)
 ゲンナリしつつ、ジョセフがため息をつきかけたその時。

 ドドドドド……。

 遠雷のような音が、ジョセフの鼓膜を揺るがした。
 この音には、聞き覚えがある。
 氷塊がジョセフの背を滑り落ちた。
(ま、マジィ――――ッ!?)
 冷や汗をかきつつ、
「かがみ!」
 ただならぬジョジョの叫び声に、かがみの眉が上がる。

 ドドドドドドドドドドドド……

「ど、どうしたの?」
「説明してる暇はねェ――ッ! とにかく――」
「とにかく!?」
「逃げるんだよォォォ――――ッ!!」
 スプリンター並のフォームで走りながら、ジョジョは叫んだ。
「わ、分かったわ」
 すぐさま、かがみも走り始める。
 だが、しかし――

 ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド……………

 黒い旋風が二人の前に回りこみ、一人の男が地面に降り立った。
「待たせたか?」
「……こりゃまた、お早いお着きですこと」
 冷や汗が頬をつたうのを感じつつ、ジョセフは何とかそれだけを搾り出した。
508Classical名無しさん:08/01/25 21:30 ID:Ob1/dlIs


(来ているとはな!)
 村雨の口元に獣の笑みが浮かんだ。
 再戦を約束した男と、再戦の場所は決めていなかった。
 決める必要が無いということは、同じ場所ということ。
 男が既にこの周辺にいる可能性があると思って、来てみれば……。
 胸が高鳴る。熱いものが体の中で駆け巡る。

 ――そう、こなくては。

 闘志と歓喜が胸に満ちていく。さっきまでの苛立ちが嘘のようだ。
 村雨の思いに反応し、村雨の体が変容を始める。
 血のごとく赤い装甲が体と顔面を覆い、碧色の目が光る。
「さあ、見せてみろっ! そして――」
 
 感情でもいい。技でもいい。何でもいい。

「俺に記憶を、よこせっ!!」

 咆哮が轟き――

「ちょ〜っとタンマっ! 速すぎる男は嫌われるゼェ!!」
「何やってるんですか! 村雨さん!!」
「やめんか、良!!」
「待ってよ! あなたは、さっき私を助けてくれてじゃない! それなのに、どうして!」

 複数の声が絡み合った。

「……引っ込んでいろ。これはこの男と俺の問題だ。誰にも邪魔はさせない!」
 村雨は零とハヤテをねめつけた。
509Classical名無しさん:08/01/25 21:30 ID:pVeQgth2
510Classical名無しさん:08/01/25 21:31 ID:G.x0sdPY
 
511Classical名無しさん:08/01/25 21:31 ID:mAOWPm5s
支援
512Classical名無しさん:08/01/25 21:31 ID:Ob1/dlIs
「この男は、そこの女を止めるために協力すれば、俺と戦うと言った……。そうだな?」
 男がウっとのけぞる仕草をした。
「た、確かにそう言ったけどよォ〜。その後に、俺がなんつったか、もう忘れたのか?」
「12時を回れば強くなる、か?」
「そうそう、その通りヨ〜ン。寝かせたワインほど味はイイの、知ってるだろ?
だから、もう少しの辛抱――」
「断る!」
「て、てめぇ……」
 男が唸り声を上げる。
 村雨は淡々と続けた。
「お前が、そこにいる女との戦いでみせた闘い方……。どこか、あの仮面の男と似ている。
正面から闘わず、力を逸らし、横から奇襲し、好機には一気に畳み掛ける……。
俺は、あの闘い方が知りたい。
俺のスペックがお前のそれを上回っている今でなくては、見られなくなるかもしれないからな」
 村雨――否。BADANの尖兵、ZXは、両腕を跳ね上げた。
「さあ、約束を果たせ! 俺と、闘え!!」
戦鬼の咆哮が、再び無人の街に響き渡る
「て、てめぇよォ、無理矢理ヤっちまう男は、サイテーだって知ってんの――」
「おしゃべりは……。終わりだっ!」
 体気が裂ける、一陣の風となった村雨の体が前方へと突撃。

「やめてっ!!」

 走りこむ影。
 宙を舞った淡い紫の髪が、村雨の視界に飛び込む

 ――あの女!?

 瞼の裏を髪の長い女の幻影が過ぎる。
(チィ……)
 繰り出そうとした拳を強制中断。
513Classical名無しさん:08/01/25 21:32 ID:pVeQgth2
514Classical名無しさん:08/01/25 21:32 ID:Ob1/dlIs
 ――止められんっ!

 集聴力の高まりと共にスローになる世界の中で、女が両手を広げる。
 巌――と金属音が響いた。
 村雨の拳は、女の額の手前で、村雨の左手によって制止させられていた。

「邪魔だ、どけ!」
 圧縮した怒気を込めて、ZXは言った。
「嫌よ!」
「ば、馬鹿野郎ォっ!! いくらソレがあるからって、無茶すんじゃ、ねえ!!」
 男が女の肩を引っつかんで、後ろに引き摺り戻そうとする。
「無茶するわよっ! するに決まってるじゃない!」
 男の手を振り払いながら、女がひっくり返った声で叫ぶ。
 あまりの悲痛な声に、その場にいた者達は息を呑む。
「また……。私の、せいで……。私なんか、助けなかったら……」
 俯いて大粒の涙を流しながら、女が肩を震わせる。

 ――ズキン。

 心が万力のように締め上げられるのをZXは感じた。
(何だ、この『痛み』は……。何故だ、何故こんなにも……)
 戸惑うZXに向かって、女が目元を拭い、顔を上げた。
 わずかにZXはたじろぐ。
 女の目は、さっきとは別人のような眼光を放っていた。
「あんた……。さっき、約束って言ったわね?」
「それが、どうした?」
「おい、かがみ――」
「ジョジョ!! あんたは、黙ってなさいっ!」
 一言の元に男の発言を封殺し、女が視線を向けてくる。
 再び、女の引き絞られた視線がZXを射抜いた。
「約束なら、私の方が先よ」
515Classical名無しさん:08/01/25 21:32 ID:Ob1/dlIs
 ――何?

 ZXの心に疑問の風が吹いた
「あいつ、ジョセフ・ジョースターと私は、例の『事故』が起きる前に約束した。
一緒に、S10駅から順に駅を巡って私の仲間を探すっていう約束をね。
まだここはS9駅で、約束の駅は、S1駅……。まだ全然、終わってないわ」
「嘘をつけ!」
「嘘なんかついてないわよ!」
 女が即答。
「本当だって言ってるでしょ!
あなたがこれ以上、悪魔の証明をお望みでも、悪いけどもう、どうしようもないわ」
 ZXの殺意の視線と女の射抜くような視線が真っ向から激突。
 女の目に揺らぎは――無い。
「……ジョジョが12時って言ったのは、私との約束のことも考えたからよ。
12時までに全ての駅を回るのは、無理じゃないでしょ?」
 ZXの拳が音を立てた。体内で、殺意と狂気が、行き場をなくして暴れ狂っている。
「……俺には関係のないことだ」
「あっそう!」
 女の唇が耳元までつりあがった。
「それなら、私もあなたの約束なんか『カンケーない』わ。
アンタ達の戦い、邪魔して、邪魔して、邪魔しまくってやるんだからっ!!」
 狂気にも似た光が女の瞳で弾けた。
 女が十字槍を喉元に突きつけてくる。
 それを無造作に払いのけ、
「お前の力で、できると思っているのか?」
「できないと思ってんの?」
 再び両者は睨み合った。
 先に目を逸らしたのは――ZX。
 
 ――どうしても、引かない気か。

 表情のない仮面の向こうで、ZXは焦燥を募らせる。
516Classical名無しさん:08/01/25 21:33 ID:Ob1/dlIs
どういうわけか、自分はこの女を攻撃できない。
 無理を通せばできるのかもしれないが、その度に精神に多大なノイズが走る。

 ――それはマズイ。

 この女に紛れ込まれては、男と闘っても、十分な闘いの記憶を得ることができない。
「かがみよぉ……。もう、いいぜ」
「だからっ!! 引っ込んでなさいって言ってる――」

「できねえぜっ!! ンなこたぁなァっ!」

 男が吼えた。
 いつの間にか男の瞳には、溢れ出さんばかりの怒りが宿っていた。
「おい、赤ムシ野郎。てめーはやっちゃならねーことをした……」
 低い、押し殺した声。それが逆に、男の怒りの深さを感じさせた。
「確かに俺はてめーと約束した。それは事実だ。
だがそれを、かがみの前でいきなり言いやがったのは、許せねえ!
せっかくよぉ、イイ笑顔を見せてくれるようになったのによォォ〜。
ま〜た、泣き顔になっちまったじゃねーか、このバカタレがっ!!」

 ――こいつもだ。

 この男もまた、他者のために怒っている。
 男と闘いたいという欲求が、さらに高まるのをZXは感じた。
 どうやれば記憶を取り戻せるのか、そのためにどうすればいいのか。

 ――闘うしかない。

 それしか、そのやり方しか、知らない
 だが――
「村雨さん、やめてください!
この男の人、全然闘いたがってなんかないじゃないですか!
517Classical名無しさん:08/01/25 21:33 ID:pVeQgth2
518Classical名無しさん:08/01/25 21:34 ID:Ob1/dlIs
 そんな人と無理矢理戦ってどうするんですか!?」
「良っ!! まだ分からんのかっ!? 婦女子を泣かせ、望まぬ者に闘いを強いるっ!!
そこに正義はあるのかっ!?」
「その通りですよ!」
 ハヤテが近寄ってくる。
 その手に核鉄があるのを目にとめ、
「ハヤテ……」
「止めますよ? 僕は。村雨さんの仲間ですから」
「その体でか?」
「はい!」
 天使のように清らかな笑みを少年は浮かべた。
「仲間が間違っていることをしようとしていたら、全力で止めます。
それと――さっきも言いましたけど、『それならもう仲間じゃない』っていうのは認めませんから!
僕と零さんの仲間になったからには、簡単に足抜きができるなんて、思わないでくださいね。
それに――」
 ハヤテは、かがみを見やった。
「こなたさんの友人を、悲しませるわけにはいきません」
 かがみの瞳孔が拡大した。
「こ、こなたを知ってるの!?」
「はい! ご心配なく! こなたさんは、元気ですよ。頼りになる人が側にいるハズですから」

 ――実力はともかく、性格はあんまり保証できませんけど。

 という付け足しは、心の中だけにしておき、ハヤテはいつものように微笑んだ。
「そのへんのことについては、後でゆっくりお話ししますね」
 ハヤテとかがみのやり取りを聞き流し、無言でZXは思考を組み立てる。
(ハヤテの目、重心の置き方……。本気のようだな)
 本気で自分と闘うつもりらしい。

 ――好都合だ。

 アーカードとの戦いでみせたハヤテの動きは、それなりのものだった。
519Classical名無しさん:08/01/25 21:34 ID:G.x0sdPY
 
520Classical名無しさん:08/01/25 21:35 ID:Ob1/dlIs
 行使する『スタンド』と『核鉄』も、油断のならない武器だ。
 殺すつもりは無い。
 だが、自分の新しい面を教えてくれたハヤテとの戦いは、未知の記憶を取り戻させてくれるかもしれない。
 今のハヤテのコンディションなら、殺すか殺さないかの調整は可能だ。
 闘わないテは、ない。

 ――だというのに。
 
 目の前の女がいる限り、ハヤテとも、ジョセフという男とも、全力で闘えない。
 ZXは歯噛みする。
 とにかく、女を殺さずにここから排除することだ。
 それでいて、目の前の二人が全力で向かってくるように仕向ける。

 ――どうすればそれができる?

 ZXは考え続ける。
 考え続けるうちに、ある顔が、ZXの記憶の中に浮かんでくる。
(……やってみるか)
 ZXの複眼が漆黒の光を放った。

 ――まずは、確認。

「……おい」
「あン? 何だってんだ、赤ムシ野郎!」
「お前は、その女との『約束』を果した後なら、俺と闘えるんだな?」
「聞いてろよなァ、人の話をよォォ……。
今すぐでもいいつったろーが、このどサンピンがっ!!」
「駄目だって言ったでしょ!? 何で、挑発すんのよ!!」
 血相を変え、かがみがジョセフにしがみつく
「お〜い、かがみぃ、俺の力を疑ってんのォ? 安心しろ、心配することなんか何もねーぜ。
さっき言ったとおり、悪党はこのカッチョいいジョセフ・ジョースターがぶちのめしてやるからよ!」
521Classical名無しさん:08/01/25 21:35 ID:pVeQgth2
522Classical名無しさん:08/01/25 21:35 ID:Ob1/dlIs
「……やめなさいよ……。お願い、だから……」
 張り詰めていたかがみの顔が、崩れた。
「私のことなんか、どうでも、いいわよ……。あんたにまで、何かあったら……私……」
 身を震わせながら、かがみがジョセフにしがみつく。
 ZXはそれを冷酷な目で見つめていた。
「かがみ……」
 ジョセフが顔をゆがめ、ハヤテが痛ましげな表情をかがみに――向けた。

 ――今だ。

「オオッ!!」

 拳を叩きつけ、地面を踏みぬく。
 衝撃波と土煙が同時発生。
「うぉ!?」
「きゃっ?」
「っわ」
 三者三様の悲鳴が響く中、土煙と同時に煙が噴出。
 視界が遮られる中――

 複数のZXが駆けた。

 二人がジョセフへ。一人がハヤテへと殺到していく。
「放れてろっ!!」
 ジョセフがかがみを突き飛ばし、
「――武装錬金ッ!!」
 ハヤテが苦渋の表情を浮かべつつ、ピーキーガリバーを発動させる。
 一瞬遅れて、ジョジョの背後に炎の鳥が出現。
「喰らいやがれっ!! 灼熱のォォ――」
 向かい来る二人のZXを見据え、ジョセフが咆哮をあげる。
523Classical名無しさん:08/01/25 21:35 ID:pVeQgth2
524Classical名無しさん:08/01/25 21:36 ID:Ob1/dlIs
『惑わされるなっ!!』

 クルーザーの上から零の絶叫が響いた。

 ――もう、遅い。

 ZXは心の中で宣告した。  
 クルーザーにまたがり、エンジンをかける。
 爆音。
「マイクロチェーンっ!!」
 いつ間にか、かがみを取り巻いていた鎖か、がみの体に絡みつく。 
 牽引。
「きゃぁぁっ!?」
 かがみの体が宙を舞う。
その体をZXは受けとめ、片手で拘束する。
 万力という表現すら生易しい力で体を締め上げられ、かがみの体が苦痛で歪む。
『やめよ、良っ!! 外道に落ちるなっ!!』
 零の悲鳴じみた絶叫。
 驚愕に凍りついたジョジョとハヤテから、怒りの爆炎が吹き上がった。
「てめぇぇぇ――――っ!!」
「はやての――」
 ジョジョの怒りを顕現するかのように鳥の口内に灼熱がともり、ハヤテの体がたわむ。

「この女との約束を果たした後――神社へ来い。お前が来るなら、女は無事だ」

 一方的に宣言し、ZXはクルーザーをスタートさせた。
「ジョジョ……来ない、で……」
 苦しげな息の下から、かがみがか細い声を絞り出す。
 その声を掻き消すように、猛速でクルーザーが発進。超加速で一気に車体が最高速度へと到達。
 
 クルーザーは、走り去った――
525Classical名無しさん:08/01/25 21:37 ID:G.x0sdPY
 
526Classical名無しさん:08/01/25 21:37 ID:Ob1/dlIs


「かがみぃぃぃぃィィ――ッ!!」

 血を吐くような絶叫が、ジョジョの喉から迸った。
 答えは返ってこない。
 怒りと悔恨でジョセフは身を震わせる。
 噛み破られたジョセフの唇から、一筋の血がつたった。
 血は顎へとつたい、ポタポタと地面に落ちて紅い花を咲かせる。
(なんて……こった……)
 
 ――完全に、やられた。

 負け惜しみに過ぎないが、大した作戦ではなかった。
 かがみが標的だと分かっていれば、見破れていただろう。

 ――かがみがターゲットになっていると気付いてれば。 

 完全に間違えていた。
 あの戦闘狂のターゲットは自分だと思い込んでいた。
 そして、ワムウと同じく、人質を取るようなタイプではないと、
 戦いの場では筋を通すタイプだと思い込んでいた。
 目がくらむような怒りに囚われ、ジョセフはきつく目を閉じた。

 ジョセフの思い込みも、無理の無からぬことであった。
 ZXは、その気になれば何度もかがみを殺せていたのに、そうしなかった。
 寸前で拳を止めたりもそうだが、妙にかがみには遠慮していた。
 そしてあの男が求めたのは、一貫してジョセフとの闘争であり、かがみはアウトオブ眼中という様子だった。
 ジョセフの高い洞察力をもってしても、そう見えたのだ。
 実際にそうであったのだし、今もZXの頭にあるのはそれだけなのだから、当然なのだが。
527Classical名無しさん:08/01/25 21:38 ID:pVeQgth2
528Classical名無しさん:08/01/25 21:38 ID:Ob1/dlIs
 だが、真実を知りようも無いジョセフは苦悩する。後悔する。
 そして怒る。
 どれほどのピンチであろうが、逆境であろうが、冷静に起死回生の策を巡らす。
 それが、ジョセフ・ジョースターの真骨頂であったが――

「ダボがァッ!! この状況で怒らなきゃ、人間じゃあねーぜっ!!」

 あっさりと彼は、怒りを静めることを放棄する。

「行ってやるぜ。赤ムシ野郎っ!! このっ!! ジョセフ・ジョースターがっ!!」
 
 憤怒を足先に漲らせ、駅へと歩を進め始める。その前方に、少年が回りこんだ。
 深々と頭を下げ、
「同行させてください……。
何をトチ狂ったんだか、チンピラまがいに嫌がってる人間にケンカをふっかけて、
挙句に女の子を誘拐するなんて、一体どこの三流悪役だっていう、頭のネジが外れたか、
AIにバグが出たとしか思えないような、馬鹿なことをやらかす人でも……。
村雨さんは僕の仲間です。僕はあの人を、止めなきゃならないんです!
零さんも、連れて行かれちゃいましたし……」
 無言でジョセフは、ハヤテの胸倉を掴みあげた。
「いぃー度胸してんじゃネーの。今の俺の前でそれを言うってのがどういうことか、
分かってんだよなァァ?」
「わかっては、いるつもりです」
「そーかい。じゃあ、テメーはここで俺にブチのめされても、文句は言えねーってことだぜ!」
 半ば以上本気で、ジョセフは目の前の少年を見据えた。
 さっきこの少年が赤ムシ野郎を止めようとしていたのは分かっているが、
『仲間』などと言われると流石に、感情が制御できなくなりそうだった。
「それは困ります」
「あァん!?」
529Classical名無しさん:08/01/25 21:39 ID:pVeQgth2
530Classical名無しさん:08/01/25 21:39 ID:mAOWPm5s
 
531Classical名無しさん:08/01/25 21:39 ID:Ob1/dlIs
「柊かがみさんを助けてからなら、ボコボコにされてもかまいませんけど。
今ボコボコにされちゃうと、できなくなっちゃうんで……」
 苦笑染みたものを浮かべる少年に、ジョセフは一瞬呆気にとられ、少年の顔を凝視した。
(こいつ、こいつは……)
 細い手足に、ナヨっとした体つき。男らしさとは程遠い、女のような顔。
 だが、こいつには――
(決めたことは何が何でも、命に代えてもやりぬくっつースゴ味があるっ!)
 ジョセフは直感的に悟った。

 ――こいつと組んで損は無い。

 胸に淀む怒気を、ジョセフは吐息と共に吐き出した。
 手放した冷静さが呼吸と共に、少しだけ戻ってくる。
「……オーケー、オーケーだ。とりあえず、一時休戦ってことにしといてやる」
 少年の胸倉を掴む手を放し、地下への階段を駆け下りながら、
「俺は、ジョセフ・ジョースター。ジョジョ、でかまわねーぜ」
 
 返事が無い。

 自己紹介に応じない相手に多少ムカつきを感じ、
「オイ、名乗られたら名乗り返すのが礼儀だって、ママに教わらなかったのかァん?」
 首だけをひねって後ろを見ると、少年は階段の途中で足を止め、考えるような仕草をしていた。
「……どうした?」
「え? ああ、すいません……」
 慌てて少年が階段を駆け下りてくる。
「僕はハヤテ、彩崎ハヤテといいます。ええと……ジョジョ、さん」
 そこで一度言葉を切り、ハヤテはジョセフの顔を直視した。
「空条承太郎、という名前に心当たりはありませんか?」
「知ってるのか!? 空条承太郎を!?」
 ジョセフは思わず、頓狂な声を上げたのであった。
532Classical名無しさん:08/01/25 21:39 ID:G.x0sdPY
 
533Classical名無しさん:08/01/25 21:40 ID:pVeQgth2
534Classical名無しさん:08/01/25 21:40 ID:Ob1/dlIs


 時計に目をやって、まだ地下鉄がこないことを確認しつつ、
「なるほど……。時間、ですか。異世界に、時間移動。
本当にファンタジーやメルヘンの世界ですね、ここは」
 ハヤテはため息をついた。
 幸か不幸か、電車が来るまでにそれなりあったため、かなり話ができた。
(承太郎さんの言ってた、「ジョセフ・ジョースター」と今ここにいる「ジョセフ・ジョースター」は、
同一人物だけど別人ってことなのか……。ややこしいなぁ)

 ――道理で老けてないわけだ。

『ジョジョ』や『ジョセフ・ジョースター』という名前を聞いたときは、耳を疑った。

 ――偽名か?
 
 とすら、思ったほどだ。
 空条承太郎の話では、ジョセフは初老のはず。孫までいれば当然のことだ。
 にもかかわらず、目の前のジョセフは、どうみても今が盛りの20代。
 しかし、その謎はジョセフの話をきいて氷解した。
 同時に小さな失望も感じる。
承太郎の言っていた、『ハーミッド・パープル』の能力を、目の前にいるジョセフはもっていない。
 したがって、首輪の内部構造を解き明かすことも――期待できない。
 湧き上がってくる失望の念を、ハヤテは懸命に抑え込んだ。
「おめーの話から推測すると、
DIOってのはどうやら俺の爺さんが倒したっつー『DIO』に、間違いねーな。
偶然と考えるにゃ出来すぎだ。俺の未来の『孫』まで参加してたらしいからな……。
実感なんか、欠片ほどもありゃしねーけどよ!」
 欠片ほどもないといいつつ、ジョセフの顔には複雑なものが浮かんでいた。
 ハヤテには、かける言葉が見つからない。
535Classical名無しさん:08/01/25 21:40 ID:Ob1/dlIs
「まあ、そういう因縁とかを抜きにしても、DIOの『仲間』がいたっつーことから考えても、
間違いなく吸血鬼・DIO・ブランドーだ」
 暗い顔でハヤテは頷いた。
 いくらDIOにカリスマがあるとはいえ、一人しか生き残りが許されないこの場において、
 その仲間になるほど奇特な人間がいるだろうか? その疑問はずっとひかっかっていた。
 
 だが、DIOが吸血鬼なら、話は別。

 DIOに血を吸われた者は吸血鬼となり、DIOに服従するようになる。
「それにしても、パワーアップしてるってのがたまんね〜よなぁ……。
他にも、その場にいる全員に幻覚をみせる能力とかも考えられるけどよォ〜。
どっちにしろ――」
 ジョセフの言葉は、ハヤテの耳を素通りしていく。
(僕が殺した人も、きっと……。犠牲者の一人だったんだ……)
 罪悪感の重い枷が、再びハヤテを捕えていた。
 零に心情を吐露した時ほどではないが、はやり重い。
(零さんは、知ってて黙っててくれたのかな? 本当に知らなかったのかな?
どっちなんだろ……)
 陰鬱な思考の海底に沈むハヤテの肩を、ジョセフが叩いた。
「どうしました?」
 呼びかけると、ジョジョは黙って首を横に振った。
 ピンと来たハヤテは紙とペンを取り出す。
 先ほど、話がBADANにおよんだ時、ジョセフに筆談を提案されて、正直、背筋が凍った。
 おそらく、元からBADANのことを知っている村雨との会話であったから、
 今まで見逃されていたのだろうが……。
(殺されるかもしれないな。僕が、他の人たちにBADANの情報を伝えていることを知られたら)

 あの老人はただの駒で、このゲームの計画したのがBADANという組織であること。
『暗闇大使』という男がBADANの一員であり、その男参加者の殺し合いを促進させている可能性があること。
 敵の本拠地と思われる場所。
536Classical名無しさん:08/01/25 21:41 ID:Ob1/dlIs
 幾らなんでも、これらのことが他の参加者に知れ渡るのを、BADANは好まないだろう。
 特にあの、『暗闇大使』という男が本当にBADANの一員だった場合は、なおさらだ。
(……かまうもんか)
 それでナギやヒナギク、そして他の参加者達が脱出できる可能性が少しでも高くなるなら。

 ――どうなってもいい。
 
 半ば自棄交じりの決意を固めるハヤテの視線の先で、ジョジョが肩をすくめるような仕草をした。
 その後、急激にその表情を真剣なものに変化させ、手を一度叩く。

(ジェスチャーで会話しようってことかな?)

 ジョセフがVサインをつくる。
 さらに、親指と人差し指で円を作り――最後に、何かを見渡すようなポーズをする。
 一連の動作をやり終えるまで、ジョセフの表情は微塵たりとも動かなかった。

 ハヤテの心の水面に、混乱という名の波紋が発生した。
(手を叩く、拍手、本を閉じる? 拝むポーズ……神社?
Vサイン、数字の2、2は英語でTWO、二人? マル、円、サークル、それともお金?
最後の動作は……。覗く、見える、見渡す……かな?)

 ――さっぱり分からない。

 だが、あのジョジョの顔からして、何か深遠な意味があるのだろう。
 ハヤテは頭をフル回転させた。
(本を閉じる、拍手をする……音が出る、ポンか、パン、あの指は2で間違いない、
2人、ジョジョさんと僕、もしくは柊さんと村雨さん? 円は……マル? お金が
マル、またはお金が見える……って、あれ? パン、T……) 

 ハヤテの体から怒気が炸裂した。

「ジョジョさん……。マジメにやってくださいよ……」
537Classical名無しさん:08/01/25 21:42 ID:G.x0sdPY
 
538Classical名無しさん:08/01/25 21:42 ID:Ob1/dlIs
 くろぐろとしたハヤテの声音に動じた風も無く、
「ワリィーワリィー。けどよォ、マジメっつーのは……」
 そこでまたジョセフは、今度は掛け値なしに、真剣な表情を浮かべ、
「そうやって、『アタシの両肩に世界の運命がかかってるのよン』とでもいいたげな、
くっれー顔をすることなのか?」
「それは……」
「あのよぉ〜。さっきも言ったが、綺麗事でもなんでもなく、おめーはそいつを救ったんだ。
吸血鬼を元に戻す方法は、ねえっ!」
「それは……。分かってますけど……」
「ぜ〜ぜん、分かってるように見えねーのは、俺の気のせいですかねえ? ハヤテくん。
じゃあ、何だァ? 仮に吸血鬼にされた奴が殺し合いをしたくなかったとして、だ。
お前はそいつがDIOに操られて、人を殺しまくった方が良かったとでもいうつもりか?」
 ハヤテは黙って首を振った。
 するとジョセフは苛立たしげに髪をかき回し、
「かがみと今のおめーは、何か、かぶるぜ!!
別に背負い込む必要のねー重いもんを背負い込んで、クヨクヨしてよォ……。
そのくせ、人のことばっか考えてやがる。
そりゃぁよ、『人のために』ってのは『仁』ってやつだ。貴いぜェ?
けど、お前とかかがみの場合はもちっとこう、自分本位に、つーのか、
自分のためってのかしらねーけど、そっちの方が大事なんじゃねーの?」
ハヤテは目をしばたたかせた。
(ジョジョさんって、いい人だな)
 よっぽど、かがみが心配なのだろう。
 さっき、『来るな』と言っていた、かがみを思い出し、ハヤテは軽く眉根をよせた。
 柊かがみは、友人達が死んだことに責任を感じているそうだ。
 おそらく今、ジョジョは、かがみにそう言ってやりたくて仕方がないのだろう。
(それにしても、村雨さんの仲間だと言った、僕のことまで……)
 いくら、ハヤテが村雨を止めようとしているのをみていると入っても、
 そうそう感情的には納得できないはずなのに。
(クヨクヨか……。そりゃしてるけど……)
539Classical名無しさん:08/01/25 21:42 ID:Ob1/dlIs
 例え吸血鬼であったとしても、人一人の命を奪ってしまったことは、
 簡単に忘れてしまってはいけないはずだ。
 だが、その罪悪感が少し軽くなっているのに気付き、ハヤテは苦笑する。
(つくづく現金だなぁ……。僕は)
 短時間に二回も同じような言葉を聞いて、立ち直ることになろうとは。
 心に少し余裕が戻ると同時に、湧きあがってくる思いがあった
(お嬢様、どうしてるかな……)
 今でも、あのナギの怯えた目を思い出すと、心に鉛のようなものが発生する。
 心が軋みを上げ、鋭い針が心を滅多刺しにする。
 だけど――
(このまま別れちゃって、いいののかな?)

 ――いいわけがない。

 アッサリと心がそう答えた。
(別れるにしたってあれはないか……。ちゃんと、お礼もお別れも言ってないし。
お嬢様に顔も見たくないって顔されたら、まあ、死ぬほど、キツそうだけど……。
それはそれで仕方ない、か)

 ――何のことはない、自分が可愛かっただけだ。

 ハヤテは苦笑する。
 ナギに、自分に居場所を与えてくれた人に、怯えた目で見られたくなかっただけの話だ。
 彼女のことを考えたのではなく、自分の事を考えていただけ。
 そもそも彼女のことを考えるなら、あそこで離れてはいけなかった。
 せめて、赤木達が戻ってくるのを確認してから、離れるべきだった。
(僕は、執事失格だな……)
 それでも。

 ――とにかく一度、お嬢様に会いに行こう。
540Classical名無しさん:08/01/25 21:44 ID:pVeQgth2
541Classical名無しさん:08/01/25 21:44 ID:Ob1/dlIs
 次に闘う予定の相手は、超絶の力を持つ村雨良。
 説得できなくもないとは思うが――
 礼も、謝罪も、ナギに伝えられないまま、死んでしまうのだけは、嫌だ。
「……もしも〜し、ハヤテちゃ〜ん、ちゃんと俺の目の前にいらっしゃいますかァ?」
 ジョセフの言葉に、噴出しそうになりながら、
「すいません……。ジョジョさん、どうもありがとうございます。おかげで少し、考えがまとまりました」
「そーなのォ? それならいいけどよォー」
「あっ! でも一つだけいいですか?」
 ジョセフが軽く首を傾けた。
「さっき、もっと自分勝手に生きればいいとおっしゃいましたけど、
お嬢様やヒナギクさん、村雨さんにもですけど……。僕がその人たちに、
何かしたいと思うのは、ほっとけないというか、喜んでくれると嬉しいというかでして……。
僕にとっては、すごく意味があることなんです。だからまぁ……したいからやってるというか、
結局は回り回って自分のためというか」
「……そのお嬢様ってのは、おめーが借金を肩代わりしてもらったっつー子だっけか?
Oh、NO! 俺には、理解できねー感覚だぜ! 
40年も人に奉仕し続ける人生なんて、耐えられそうにねェッ!!」
「アハハ……。まぁ、人それぞれですから」
 承太郎にも同じことを聞かれたことを思い出し、ハヤテは可笑しそうに笑った。
 やっぱり血筋なのか? と思う。
(でも……。承太郎さんは、僕やお嬢様のために闘ってくれた。この人も、きっと……)
 照れ屋の多い家系なんだろう、そんな風にハヤテが考えた、その時。

 電車の音がホームに響き渡り、二人の顔が引き締められた。



「じゃあな、次でお別れだ……」
「どうしても、村雨さんを『倒す』んですか?」
 かたい表情でハヤテが尋ねてくる。
「悪ぃーが、俺はお前ほど、あの赤ムシ野郎を信用できねぇ。
あの野郎は、かがみの腕を斬りやがったからな……」
542Classical名無しさん:08/01/25 21:45 ID:Ob1/dlIs
 ジョセフは、自分の顔が歪むのを感じた。
 さっき対峙した時、こちらの事実を重視しておくべきだった。
「お前の目的は奴を『止める』だ。
戦いのゴールをどこにおくか、それが食い違ってんのは、よくねーことだ。
共闘すれば、きっと齟齬が生じる……。
赤ムシ野郎は、そういう隙をつくって戦える相手じゃあねえ。大体――」
 指先をハヤテの鼻先に突きつけ、
「お前は、『倒す』より、『制する』方がはるかに難しいって、わかってんだろーなァ?
しかも、取り押さえる奴は、押し倒して嬉しいハイスクールの女学生なんかじゃあねえ!
あの赤ムシ野郎なんだ。そこんとこ、ちゃ〜んと分かってんのかっ?」
「……僕は、止めてもらいましたから。
その上、本当は誘拐しようとしてたんだって分かっても、マリアさんは、許してくれました。
なんていうか……。かがみさんに何もしていないのなら……多分、していないと思いますけど、
それなら僕も、あの人を許したいんです。
許してくれる人間がいないと、人間ってどこまでも行っちゃいますから」
「だからよォォッ!!
 頭をガシガシとかき混ぜながら、
「何で、おめーがンなことを赤ムシ野郎にしてやる必要があんのか、俺にはわかんネー」
「何でと言われても困りますけど、僕はそうしたいんです」
 ニッコリと笑う少年をみて、ジョジョは絶句する。
(クレイジーな野郎だ……。さっきも思ったが、こいつは普通の奴とは一味違う)
 額に手を当てつつ、
「オーケー、そこまで言うなら、譲歩案を提示するぜっ!
11時30分にS1駅に集合だ。あの野郎は俺のハッタリを真に受けてやがった。
それくらいの時間になりゃ、日付が変わると同時に攻撃をしかけて来ると考えて、
集中が途切れてるはずだ。一回切れた集中力は簡単に回復しねェ。そこを突く! 
まず、お前にやらせてやる……。当然、お前が殺されそうになったら俺は止めに入るがなっ!
そしてあの野郎を、俺と俺の連れて行く予定の仲間がぶっ倒す……。文句はねーだろうな?」
「……分かりました」

 ――本当に分かってんのかァ?
543Classical名無しさん:08/01/25 21:45 ID:Ob1/dlIs
「いいな? 先走って、俺より先に突っ込むんじゃねーぜ?
俺が行くまで、待ってろ! お前に協力してくれる仲間が現れても、だからな?」
「分かってますよ。ジョジョさんも仲間集め、頑張ってくださいね」
「まかせときな! お前のおかげで、信用できそうなメンツってのも大体わかった。
こいつらをどーやって見つけて、どーやって説得するかっつーのが、問題だがな」
 悩むジョジョを見て、ハヤテがクスっと笑う。
「どしたの? 何かおもしれーギャグでも思いついたァ?」
「いいえ……。でも、ジョジョさんだって、何だかんだいって、
かがみさんに何もしないって思う程度には、村雨さんを信用してるんじゃないですか」
 すると、ジョジョはとおどけた態度を消し、
「ああいう、ワムゥみたいなタイプは律儀だからな……。お前も聞いたろ? 
『女との約束が終わったら』って台詞をよ。
アイツにとって、約束とかそういうモンは絶対に守るべきもんなんだろう。
そういう筋は通す奴だ……。だが、だからと言って、奴が危険じゃねーかと言ったら、そりゃ違うぜ」
 ジョジョの眼光が鋭さを増した。
「奴は強い奴と戦いたがってる、戦闘狂だ。
仮に俺が負けたら、奴がかがみに闘いを強いる可能性は、ゼロじゃあない。
さっきはまったくその気はなさそうだったが、いつ気が変わるか、分かりゃしねえ
負けられない闘いをやる時は、準備が必要だ。
孫子曰く、『勝利の確信があるとき以外は闘うな』だぜ――」
 ハヤテが無言で頷く。
 ややあって、突然、ジョジョの顔に不安の色が浮かび上がった。
「おい、ハヤテ……。あいつ、女に対してはどんな態度だった?」
 あまりにも唐突な質問に、ハヤテが目を白黒させる。
「色情狂ってこたーねーと思うだけどよォ〜。
かがみはあれでけっこうカワイイから、やっぱ、ちょいと気になるぜ」
 するとハヤテは何故か明後日の方向を向き、
「心配ないと思いますよ……。それは」
 ジョセフの心の水面が大きく揺れた。
「おいコラ!! ちゃんと俺の目を見て――」
「あの人、どっちかというと……。女性じゃない方の性別に興味があるというか……」
544Classical名無しさん:08/01/25 21:46 ID:G.x0sdPY
 
545Classical名無しさん:08/01/25 21:47 ID:Ob1/dlIs
 
――時は止まった。

「でよぉ〜。DIOの能力のことだけどよォ――」
 ジョセフはとりあえず、今の話は聞かなかったことにした。
 じきに電車が減速を始め、ジョジョは戸口の方へと歩いていく。
「……じゃあ、ばったりシンジの奴に会うことがあったら、
俺とかがみがこうなってるってことを、伝えてくれ。
それと、DIOの野郎と会ったら逃げろ! 特に、タイマンは絶対に避けろ!
吸血鬼の生命力に、時を止めてんだかなんだかわかんねー力、俺の爺さんを殺した空裂眼刺驚、
オマケにここには、核鉄やらスタンドDISCが溢れかえってやがる、まともに相手をすべきじゃあねえ。
複数でタコろうが、罠をしかけようが、卑怯も何もありゃしねえ、勝てばよかろうの精神だぜ、
ハヤテっ!!」
 ジョジョの言葉に、いちいちハヤテは頷いていたが、
「あ〜と、それからそれから……。他にもな〜んかあった気がすんだが……」
 流石にジョセフがこう言い始めるのにおよんで、笑いを噛み殺して立ち上がった。
「じゃあ、後で」
「おう、後でな!」

 ドアが開いた。

 ジョジョはホームに降り立つと、ハヤテに向かって親指を掲げた。
「GOOD LUCK!! 首尾よく、お前のお嬢様に会えることを、祈ってるぜっ!」
 閉まるドアの向こうで、ハヤテが笑顔で親指を立てる。

 電車が走り去った。

 それを見送ったジョセフは、地上へと続く階段を登り始める。
546Classical名無しさん:08/01/25 21:48 ID:Ob1/dlIs
(しっかし、北の方じゃ色々あったみてぇだなァ〜。
そういう意味じゃ、俺とシンジはツイてたのかもな……。
かがみとちょっとしたトラブルを起こしただけだったわけだしよォー。
はぐれちまったのは余計だったが……。
シンジの野郎、面倒なトラブルに巻き込まれてねーだろうな? なんだか心配になってきたぜ)
 などと考えているうちに、ジョジョの爪先が階段の一番上を捉えた。
 外に出て辺りを見渡す。
 当然のことながら、周囲は漠々たる闇であった。
(ハヤテが信用できそうだっつってたのは……。
アカギってやつ、ナルミってやつ、パピヨンってやつ、は、性格に難アリ……。
後は、ハヤテも又聞きだが、カクゴとかいうあの爺さんに宣戦布告かました奴か。
んでやべーのが、パワーアップしてるDIOとアーカードって野郎。
夜ってのが厳しいが……。まぁ、何とかなんだろう。つーか、何とかしなきゃ、ならねえぜ!)
 泣いていたかがみの顔が、ジョジョの脳裏に浮かぶ。
(ま〜た、『自分のせい』病が再発してやがったからなァ……。
どう考えても、かがみが責任感じる必要なんかねーってのによォ〜)
 怒ってツッコミを入れてくる顔。ヨーヨーで遊んでいる時の無邪気な笑顔、
 かがみの顔が、次々と浮かんでくる。
 どう考えても、泣き顔だけが似合っていない。それはもう、圧倒的に。
(負けて死ぬのは当然として、今回は、相打ちでも許されねーなァ)
 自分が負けて死にでもしたら、かがみはさらに自分を責めるだろう。
 下手をすると一生、泣いたままだ。

「柊かがみは、このジョセフ・ジョースターが笑顔込みで取り戻すっ!!」
 
 闇の中へ、ジョセフは駆け出した。
547Classical名無しさん:08/01/25 21:48 ID:pVeQgth2
548Classical名無しさん:08/01/25 21:49 ID:G.x0sdPY
 
549Classical名無しさん:08/01/25 21:49 ID:Ob1/dlIs
【F-5/(地下鉄内)1日目 夜中】
【綾崎ハヤテ@ハヤテのごとく!】
[状態]下腹部、左肩、右頬に中程度のダメージ、核鉄とスタンドの同時使用により疲労(大)
核鉄により自己治癒中
    人を殺した事実を何とか乗り越えつつあります。
[装備]核鉄(ピーキーガリバー)@武装錬金 454カスール カスタムオート(6/7)@HELLSING オー・ロンサム・ミーのDISC
[道具]支給品一式-水少量 13mm爆裂鉄鋼弾(35発)、ニードルナイフ(15本)@北斗の拳 女装服
音響手榴弾・催涙手榴弾・黄燐手榴弾、ベレッタM92(弾丸数8/15)
[思考・状況]
基本:マリアの死を無駄にしないためにも、力の無い人を助ける。命を捨てる事も辞さない。
1:喫茶店に戻ってナギを探す
2:ジョジョと共にかがみを助ける。
3:BADANは許せない。
4:ナギにあわせる顔が無い。
[備考]
※総合体育館の一部に、半径2mの穴が空いてます。
※ガモンを主催者の一味でないか?と考えています。
※柊かがみ、三村信史の情報をジョセフから得ました。
550Classical名無しさん:08/01/25 21:50 ID:Ob1/dlIs
【F-5/S8駅 1日目 夜中】
【ジョセフ・ジョースター@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:健康、顔面にマジシャンズ・レッドの拳によるダメージ、精神疲労(微小)
[装備]:ハイパーヨーヨー×2(ハイパーミレニアム、ファイヤーボール)、
     マジシャンズレッド(魔術師の赤)のDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:支給品一式(食料を2食分消費)、食用油1L(現地調達)
[思考・状況]
基本:まず、かがみを助ける。その後、BADANとかいうボケ共を一発ぶん殴る。
1:S8駅、S7駅、S3駅、S1駅周辺を探し、かがみ救出のための仲間を探す
2:かがみを助け、村雨は殺す。
3:三村とそのうち合流。
4:マップの端を見に行く。
5:一応赤石も探しとくか……無いと思うけど。

[備考]
※ハヤテ+零が出合った人間のうち、生き残っている人物及び知り合いの情報を得ました(こなた、パピヨン、ナギ、鳴海、エレオノール、ヒナギク、覚悟)
※二部終了から連れてこられていますが、義手ではありません。
※吉良の名前に何か引っかかっているようです。
※水を使うことで、波紋探知が可能です。
※三村の留守電を聞き逃しました。
※主催者は目的は強者を決めることであり、その中にはイレギュラーもいると考えています。
※少なくともかがみとは別の時代の人間であるということを認識しました。
※波紋の力を使うことで対象のディスクを頭部を傷つけることなく強制排出することができます。
 ただし、かなりの集中力を要求します。
※マジシャンズレッドの火力は使用者の集中力によって比例します。
 鉄を溶かすほどの高温の炎の使用は強い集中力を要します。
 火力センサーは使用可能ですが精神力を大きく消耗します
 また、ジョセフのマジシャンズ・レッドは通常の炎の威力の調節が極端に難しい状態です。
 ただし、対象に直接マジシャンズ・レッドの手を当てて炎を出した場合に限り調節が可能です。
 修練をすれば通常の炎の精度が上がる可能性があります
551Classical名無しさん:08/01/25 21:50 ID:pVeQgth2
552Classical名無しさん:08/01/25 21:51 ID:Ob1/dlIs
※ジョセフとハヤテの約束。
ハヤテはナギと会った後、ジョセフは仲間を募った後、必ず11時30分にS1駅に集合。
その後、かがみ救出のために神社へ攻め込む。

※DIOの能力についての知識と考察
・目から弾丸を発射する能力(空裂眼刺驚)を持っている。
・血を吸って仲間を増やすことができる(肉の芽については知りません。
一度DIOの仲間にされてしまった者は、救えないと考えています)
・@時を操作する A超スピードで動く+超高速の麻酔針発射装置、Bその場にいる全員に集団幻覚を見せる。
DIOの力は、@~Bのどれか、特に@が有力だと考えています。

【ジョジョとハヤテのBADANに関する考察及び知識】
・このゲームの主催者はBADANである。
・BADANが『暗闇大使』という男を使って、参加者を積極的に殺し合わせるべく動いている可能性が高い。
・BADANの科学は並行世界一ィィィ(失われた右手の復活。時間操作。改造人間。etc)
・主催者は脅威の技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
・だが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
・ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外にある。放電している。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
553Classical名無しさん:08/01/25 21:51 ID:G.x0sdPY
 
554Classical名無しさん:08/01/25 21:52 ID:pVeQgth2
555Classical名無しさん:08/01/25 21:51 ID:Ob1/dlIs


飛ぶように、としか表現しようがない。
あまりの速さに目をつぶり、しばらく耳元で風が唸っていたかと思うと、
急に音がやんだ。

――嘘?

かがみの目の前には、神社の鳥居がそびえていた。
頭の中で地図を広げる。
この一瞬で、ほとんど会場の端から端へと移動したことになる。

――なんという速さ。

「わっ!?」
 いきなり、体が担ぎ上げられた。
 暴れたくても、チェーンでぐるぐる巻きにされているため、どうにもならない。
 この不自然な体勢で、激戦の核鉄を落さなかっただけでも、僥倖といえるだろう。
「……不満そうだな」
 男がカバンに向かって酷薄な声を発する。
『もはやお前にかける言葉は無い』
 カバンが氷点下の声音で応答。
 カバンがしゃべったことに驚いて、目を見開くかがみの視線の先、
「約束は守ってやる。
強くなった俺が、DIOもアーカードも殺す。それで問題はないだろう」
 淡々と言って、境内へと続く階段の途中で、カバンを横に放り投げた。
 鈍い音と共に、カバンが転がった。
『最後に言っておく……』
「かける言葉はないんじゃなかったのか?」
『覚えておけっ!! 正義なき拳に宿る力など、しれているのだということをっ!!』
 男の双眸に紅蓮が宿った。
556Classical名無しさん:08/01/25 21:52 ID:Ob1/dlIs
「ならば……。なぜ、散はアーカードに敗れたっ!?
アーカードに、正義とやらがあったとでも言うのかっ!!?」
『葉隠散に正義はなかったっ!! 正義なき者の間でも序列はある。だが――』
「お前の役に立たない話は、もう沢山だっ!!」
 吐き捨てると同時に男が大跳躍。
「――つ!!」
 かがみは息を呑んだ。
 ふわっと男が、階段の果てにある鳥居の上に降り立った。
 男がさらに跳躍。
 目をつぶっていないと、気が遠くなりそうだ。
 浮遊感と自由落下の感覚に、気分が悪くなる。
 地面に降り立つ気配がした。

 ――やっとか。

 ホッとする暇も無い。
 男は、本殿の中へずかずかと足を踏みいれ、
「きゃぁっ!!」
 畳の上に投げ出され、かがみは悲鳴を上げた。
 男が自分を見下ろしている。
 本能的に危険を感じ、かがみは身を縮こまらせる。
 と、その時。

 ――そういやアイツ、かがみの裸をマジマジ見てたぜ。

 耳の奥でジョセフの声が聞こえた瞬間、氷槍がかがみの心臓を貫いた。
(い、嫌……)
 かがみの目に、涙が滲んだ。
557Classical名無しさん:08/01/25 21:53 ID:Ob1/dlIs
 こんな奴に体を自由にされるのかと思うと、たまらない。
 男が手を伸ばしてくる。
 両足で畳を蹴り、かがみは身を捩った。
 髪を縛る紐が解け、バラりと散った髪が、かがみの視界を覆った。
 自由にならない体が、もどかしくて悔しい。
「触るなっ! それ以上近寄ったら、舌噛んで死んでやるからっ!!」
 鬼気迫る声で叫び、かがみは男を睨み付けた。
 男が手を止めた。

「……危害を加えるつもりはない」
「ふざけんなっ!!」
  
 男が顔をしかめた。
「だが――それは、自分で外せないだろう?」
 かがみは、コートのボタンに目を落とした。

 ――この野郎。

 噛み締めた唇から血が流れた。

 ――泣くもんか。泣くもんか。

 必死に言い聞かせるのに、涙がこぼれてしまう。
「言ったでしょ……。アンタなんかに、アンタなんか、に……」
 舌打ちが聞えた。
 怒りがかがみの頭を貫いた。
 全てが真っ白に見える。

 ――ごめん、みんな。
558Classical名無しさん:08/01/25 21:54 ID:pVeQgth2
559Classical名無しさん:08/01/25 21:54 ID:G.x0sdPY
 
560Classical名無しさん:08/01/25 21:55 ID:pVeQgth2
561Classical名無しさん:08/01/25 21:55 ID:Ob1/dlIs
「武装錬金!!」
 手の中の核鉄が十字槍に変化。
 男の顔色が変わる。
 その槍の穂先に向かって、かがみは喉から身を投げ――

 まさに超速。

 踊りこんだ男が槍を払い飛ばす。
 間一髪でかがみの顔が床に落下。
「何をやっている!?」
 男の手に押さえつけられる感触が背中から伝わってくる。
 怖気がかがみの全身を駆け抜けた。

「いやあァァ――――ッ!!」

 絹を裂くような悲鳴が、本殿のガラス窓をビリビリと震わせた。
 男の手が体から離れた。
「えっ……うっ……」
 嗚咽がかがみの口から漏れ出た。
 ため息が聞えた。

「……俺にはどう見ても、その格好は不自由に見える。
だが、お前がその格好の方がいいというなら、止めはしない」
 
 ――え?
 
 かがみは泣き濡れた顔を、わずかに上げた。
「何の……は、なし、よ?」
 しゃくりあげながらかがみが尋ねると、
「俺のマイクロチェーンが絡みついたままでは、自由に動けないだろうと言っているんだが?
お前は鎖が好きなんだろう? それなら好きなだけ絡まっていればいい」
 その声音に疲れのようなものが混じっていると感じたのは、かがみの錯覚であったかどうか、議論の分かれるところであろう。
562Classical名無しさん:08/01/25 21:55 ID:mAOWPm5s
支援ッッッ!
563Classical名無しさん:08/01/25 21:56 ID:Ob1/dlIs


 冷たい水が心地いい。
「っとに……。人騒がせな」
 洗面所に備え付けてあったタオルで顔を拭きながら、かがみは吐き捨てた。
 鏡で顔を確認すると、案の定、目が真っ赤になっている。
 あれから男はうんざりしたように、危害は加えないと何度も繰り返し、
 マイクロチェーンを回収すると、

 ――男が来るまでは好きにしてかまわない。ただし、逃げるな。

 そういい残して、どこかへ消えてしまった。
 チェーンを外す時も、顔を盗み見たところ、男の欲望っぽいモノは微塵も感じられなかった。
 手つきも、なんというか、椅子に絡まった服の裾を外すが如きであった。
 つまりは、まあ、その、何だ。

 ――全部、自分の独り相撲だったわけで。

「誤解される言い方すんなってのよ!!」
 罪も無いタオル思い切り叩きつけ、かがみは憤激の声を上げた。

 ――怖かった。

 本当に怖かったのだ。
 さっきの恐怖を思い出すと、誤解だと分かった今でも、震えが来る。
(つかさ……こなたも……。怖い目にあってないといいけど……)
 考えてみれば、この無法の場では、女に無体を働く人間がいても、おかしくない。
 憂鬱な気分で、かがみは社務所を闊歩する。
 幸いなことにというべきか、この神社の構造は、実家の神社とそっくりだったため、内部構造はすぐに把握できた。
(ええと……家の場合は、確かこの辺に……)

 目的のものは、すぐに見つかった。
564Classical名無しさん:08/01/25 21:56 ID:G.x0sdPY
 
565Classical名無しさん:08/01/25 21:57 ID:Ob1/dlIs
 かがみは、目を輝かせる。
 まっとうとは言いがたいが、これでも、今の服とは雲泥の差だ。
 かがみは、いそいそと着替え始める。
 衣擦れの音と、赤紐がシュルシュルと音を立てる音が、静まり返った室内に響く。
 他の人間ならいざしらず、素人ではないかがみにとって、これを着るのはお手の物である。
 最後に真正面で紐をきゅっと結んで、出来上がり
 純白の白衣。朱袴。

 どこからどう見ても、立派な巫女さんであった。

(やれやれ……。こなたが見たら、「かがみも時代のニーズを読んだんだねえ」とか言いそうね)
 ふぅっと一息。

 ――なんか、落ち着いた。

 ストン、と心が落ち着くのをかがみは感じた。
 服装にはマインドセットの効果があるが、こういう服は、そのわけその効果が強い。
 やはりこういう格好をすると、気持ちが改まる。
 廊下を歩きながら、かがみは、袂から核鉄を取り出した。
(完っ全に舐められてるな……)
 核鉄を1つもたせたからといって何の脅威にもならない、と思われているわけだ。

 ――残念ながらその通りだ。

 どう足掻いても、あの男に太刀打ちできない。
 傷の一つもつけられるか、怪しいものだ。
(ジョジョ……来るかな?)
 ジョジョの陽気な笑顔を思い出すと、胸に痛みが走った。

 ――また、巻き込んでしまった。
566Classical名無しさん:08/01/25 21:58 ID:2Uta2yaw
567Classical名無しさん:08/01/25 21:58 ID:Ob1/dlIs
 封じ込めておいた暗い気持ちが湧きあがり、心を覆っていく。
(何で……。私のせいで、みんな……)
 自分が不幸を呼んでいるのかもしれないと思うと、たまらない。
 かがみは、激戦の刃を見つめた。

 ――駄目だ。

 かがみは大きく首を振った。
 自分が死んだとジョセフに伝える手段がなければ、同じだ。
 あの男の目的は、ジョセフと闘うことであって、
 ジョセフがここに来れば、目的は達成されたも同然なのだから。
 それに。

 ――どんなにカッチョ悪くてもいい……とにかく生きて寿命を全うしろ!

(ジョジョは私に、生きろって言ってくれた……)
 彼のために死を選んだと知ったら、彼はきっと怒るだろう。
 だから――死ねない。
 さっきは衝動的に死を選ぼうとしてしまったけど、あんなことでもない限り、
 死を選んではいけないはずだ。
 
 ――みゆきのためにも、灰原のためにも、桂のためにも。
 
 かがみは両手でパチンと頬を叩いた。

 ――何か、何かやれることはないだろうか?

 かがみは、窓の外を見た。
 闇が広がっている。

 ――どうせ無理だろうけど。
568Classical名無しさん:08/01/25 21:58 ID:pVeQgth2
569Classical名無しさん:08/01/25 21:59 ID:G.x0sdPY
 
570Classical名無しさん:08/01/25 21:59 ID:Ob1/dlIs
 意を決して窓を開け、見つけておいた草履を履き、窓から飛び降りる。
 辺りを覗うが、気配は無い。
 キョロキョロと辺りを見渡しながら、かがみは歩き出す。
 歩くうちに自然と足は速まっていく。

  ――ひょっとして、行ける?

 と思った瞬間に、目の前に何かが落下。

「ひっ!」
 短く悲鳴を上げるかがみの視線の先、体を変化させた男が立っていた。
「逃げるなと言ったはずだが?」
 苛立ちと呆れが入り混じった声。
 せりあがってくる失望を飲み下し、
「散歩してただけよ!」
 かがみは踵を返した。
 
 ――ん?

 かがみの目が一点に吸い寄せられた。
(何で、あんな所に?)
 本殿からかなり外れた所に、もう一つ社殿が見えた
 どうにも、位置的に不自然のような気がする。
 かがみはもう一度、その社殿に目をやった。

 ――ぞくり

 何かが背筋をかけぬけ、かがみは首をすくめた。
571Classical名無しさん:08/01/25 22:00 ID:pVeQgth2
572Classical名無しさん:08/01/25 22:00 ID:Ob1/dlIs
「早くしろ!」
「うっさいわね!」
 怒鳴り返して、かがみは社務所の入り口へと取って返した。
 我ながら物怖じしないにもほどがあるとは思うが、どうも目の前の男は、
 自分に危害を加える気はないらしい。
 否――できない、というべきか。
 今までのあれやこれやで、男のそういうところは、なんとなく分かる。
 とはいえ、拘束してどこかに放り込むくらいのことはやりかねないので、そこは駆け引きだ。
 正直、さっきの恐怖を思い出すとまだ身がすくむ。体が震える。
 だからって――

 ――負けてたまるか。

 社務所に戻る途中、手水を見つけ、かがみは柄杓を手に取る。
 右手で柄杓を持って水を汲み、左手にかけて左手を清める。
 次に左手に持ち替えて、同じように右手を清める。
 再び柄杓を右手に持ち――
(何で作法どおりやってんのよ、私は!)
 この格好になったせいか、長年培った経験が、勝手に体を動かしてしまう。
「おい――」
 度重なる催促に、かがみの眉間に青筋が発生した。
「しつこいのよ!」
 怒鳴りざま、右手にもった柄杓で水をぶちまけ――
「わきゃっ!?」
 怒りに任せて変な風に体をひねったせいで、かがみの体勢は大きく崩れた。
573Classical名無しさん:08/01/25 22:00 ID:Ob1/dlIs
 予想軌道を大ハズレした水は、見事に男に直撃。
 男の顔から水がしたたった。
(ざまぁみなさい!)
 勝ち誇るかがみの視線の先、男が無造作に顔にかかった水を払った。
 
 ――ん!?

 かがみは、男の首輪を凝視した。
(今、色が変わらなかった?)
 なんというか、普通っぽい色が現れたような気がしたのだ。
 目をこすってもう一度見てみる。

 ――何も変わっていない。

(目の錯覚だったのかしら?)
 かがみは首をひねる。
「……もういい、好きにしろ。どの道、逃げられはしない」
 
 肩をすくめて遠ざかっていく男を見ようともせず、かがみは首をかしげ続けたのだった。
574Classical名無しさん:08/01/25 22:01 ID:2Uta2yaw
      
575Classical名無しさん:08/01/25 22:01 ID:Ob1/dlIs


(何なんだ、あの女は?)
 とんでもなく不可解で、厄介極まる生き物だ。
 こちらは、何もしていないのに喚きちらし、怒鳴り散らす。
 女の甲高い声を思い出して頭痛を感じ、ZXは本殿の屋根に飛び上がった。
 改造人間ZXの視力は、人間のそれとは比較にならない。
 ここならば、周囲が一望でき、女が逃げないように見張ることもできる。

 ――男が近づいてきたら、女はチェーンか何かで縛って、建物の中に入れておく

 女の居場所が分からない男は、ZXを倒して聞き出すしか手段がない。
 ゆえに、全力で向かってくるだろうし、途中で逃亡もしない。

 ――何より、女に闘いの邪魔される心配が無い。

 計画に穴が無いことを確認し、ZXは小さく頷いた。
(三影に教わったことが、役に立つとはな……。
やはり記憶というものは、どんなものであれ、役に立つ)
 記憶の無い自分にあれこれと教えてくれた同士を思い出し、ZXは胸中で感謝の言葉を発した。
 三影の言っていた、「偽善者達の習性」を利用するのだから上手くいくはずだ。
「偽善者」は、弱者、特に女・子供を見捨てないそうだ。
 ジョセフという男の言動は、三影の言っていた「偽善者」どもの習性に当てはまる。
「偽善者」に類される人間は、絶対に女を見捨てたりはしないと三影は言っていた。

 ――準備は整った。

 だが、男が全ての駅を回ってくるのに時間はかかるだろう。
(速く来い……。速く……)
 分かっていても、体内の衝動が収まらない。
 荒ぶる衝動を押さえつけようと、ZXは胸あたりを押さえつけた。
576Classical名無しさん:08/01/25 22:02 ID:Ob1/dlIs
――何かをくびり殺すかのように。
 
 その時、ふと気付いたというように、ZXは手を見つめた。
 さっき一瞬だけ――本当に一瞬だが――体が軽くなった気がしいのだ。
 いや、軽くなったというよりは、機構の全てが正常に戻った気がした、と表現すべきか。
 手を握り、開く。
(気のせい、か)
 どうやら昂ぶりすぎているらしい。
 ZXは月を見上げた。
 何故か、さっき零やハヤテといた時よりも――くすんで見えた。


『おのれ、おのれぇぇ……』
 怨嗟の声が階段に響いていた。
 存在しない奥歯が軋り声を上げる。
『あの悪鬼を導けると思うた我々が、間違っていた。
所詮はBADANのしもべ! 悪鬼の手先めがっ!!』
 繰り返す猛省につぐ猛省。湧き上がる後悔に告つぐ後悔。
 零の悔恨と苦渋の声は、絶えることなく陰々と鳴り響き続けていた。
 さきほど響いた、女の身を切られるような悲痛な叫び。
 あれは、さきほどの可憐な女子に相違ない。
 愕然としつつも、生命反応を探せば、確かに生命反応は存在する。
 だが、生きていれば良いというものではないのだ!

 ――あの女子の身の上に起きたは、死よりも辛い責め苦に間違いなし!

『年端もゆかぬ女子を毒牙にかけようとは……。鬼め! 悪魔めっ!
村雨良――否。BADANの尖兵、ZX!! 最早貴様を希望とは思わぬ!
貴様を、打ち倒されるべき悪鬼の一人と認識したぞっ!』

 ――貴様のような莫迦はいらぬなり!!
577Classical名無しさん:08/01/25 22:03 ID:G.x0sdPY
 
578Classical名無しさん:08/01/25 22:03 ID:hpHuwuyQ
579Classical名無しさん:08/01/25 22:03 ID:hpHuwuyQ
580Classical名無しさん:08/01/25 22:03 ID:2Uta2yaw
                                
581Classical名無しさん:08/01/25 22:04 ID:Ob1/dlIs
『覚悟よ、ハヤテよ……。まだ見ぬ、正義の心を持つ戦士よ……
速く来てくれ……。そして、あの悪鬼を打ち倒し、あの娘を救い出してくれ……』
 
 血涙を流しながら零は慟哭したのであった。
 



【D-1/(神社)1日目 夜中】
【村雨良@仮面ライダーSPIRITS】
[状態]:全身に無数の打撲。疲労(中)
[装備]:クルーザー(全体に焦げ有り)、十字手裏剣(0/2)、衝撃集中爆弾 (0/2) 、マイクロチェーン(2/2)
[道具]:地図、時計、コンパス 、強化外骨格「零」(カバン状態)@覚悟のススメ
[思考]
基本:殺し合いに乗って最後の独りになるかどうかは保留。だが、強い奴との戦いはやめない。
1:力を得るために、ジョセフと闘う。(ハヤテでも可/ハヤテは殺さない)
2:アーカードを倒し散の仇を討つ。
3:アーカードを倒した後、零との約束(DIOを倒す)を果たす。
3:劉鳳と次に会ったら決着を着ける。
4:散の愚弟覚悟、波紋に興味あり。
5:パピヨンに恨み?
[備考]
※傷は全て現在進行形で再生中です
※参戦時期は原作4巻からです。
※村雨静(幽体)はいません。
※連続でシンクロができない状態です。
※再生時間はいつも(原作4巻)の倍程度時間がかかります。
※D-1、D-2の境界付近に列車が地上と地下に出入りするトンネルがあるのを確認しました。
※また、零の探知範囲は制限により数百メートルです。
※零はパピヨンを危険人物と認識しました。
582Classical名無しさん:08/01/25 22:05 ID:Ob1/dlIs
【零の考察】

ホログラムでカモフラージュされた雷雲をエリア外に発見。放電しているのを目撃。
 1.以上のことから、零は雷雲の向こうにバダンの本拠地があると考えています。
 2.雷雲から放たれている稲妻は迎撃装置の一種だと判断。くぐり抜けるにはかなりのスピードを要すると判断しています。
※雷雲については、仮面ライダーSPIRITS10巻参照。
583Classical名無しさん:08/01/25 22:06 ID:43Y.Oh9I
仮面ライダーVS加賀美支援
584Classical名無しさん:08/01/25 22:06 ID:hpHuwuyQ
 
585Classical名無しさん:08/01/25 22:06 ID:Ob1/dlIs
【柊かがみ@らき☆すた】
[状態]:左肩、左脇腹に打撲、精神消耗(中)
[装備]:核鉄「激戦」@武装錬金、
    巫女服
[道具]:
[思考・状況]
基本:生きる
1:男(村雨)の隙を突いて脱出してジョセフと合流。
2:さっき見た首輪の異変について、考えてみる。
3:神社の中にある、もう一つの社殿が気になる。
4:ジョセフが心配。
5:こなた、つかさと合流する
6:三村に謝りたい
[備考]
※ZXが、自分に危害を加えられないことに感づいています。

※アーカードを不死身の化け物と思っています。
※「激戦」は槍を手から離した状態で死んだ場合は修復せずに死にます。
 持っている状態では粉々に吹き飛んでも死にませんが体の修復に体力を激しく消耗します。
 常人では短時間で三回以上連続で致命傷を回復すると意識が飛ぶ危険があります。
 負傷して五分以上経過した患部、及び再生途中で激戦を奪われ五分以上経過した場合の該当患部は修復出来ません。
 全身を再生した場合首輪も再生されます。
 自己修復を利用しての首輪解除は出来ません
 禁止エリア等に接触し首輪が爆破した場合自動修復は発動しません。
※精神消耗のためしばらくスタンドは出せません
※三村の留守電を聞き逃しました。
※ボウリング場にかがみのメモを張っています。
※主催者は目的は強者を決めることであり、その中にはイレギュラーもいると考えています。
※波紋、ジョセフが知る吸血鬼の能力について知りました
586Classical名無しさん:08/01/25 22:06 ID:Ob1/dlIs
※かがみの主催者に対する見解。
@主催者は腕を完璧に再生する程度の医療技術を持っている
A主催者は時を越える”何か”を持っている
B主催者は@・Aの技術を用いてある人物にとって”都合がイイ”状態に仕立てあげている可能性がある
Cだが、人物によっては”どーでもイイ”状態で参戦させられている可能性がある。
587 ◆wivGPSoRoE :08/01/25 22:07 ID:Ob1/dlIs
投下完了いたしました。
いつもながら、長い投下にお付き合いいただき、ありがとうございました。
心より感謝申し上げます。
588Classical名無しさん:08/01/25 22:13 ID:mAOWPm5s
投下乙
かがみんってどこでもさらわれのお姫様だなぁw
そしてまともな服が着れて何ともむね……いや、よかったと言ったところか

そしてジョセフもかがみやシンジを気にかけていいやつだ。
当の本人はそれと正反対のことをやっているがな
589Classical名無しさん:08/01/25 22:18 ID:f0KeglQE
投下乙!
なんという……なんというロワとは思えぬほどのベタベタな展開……
だが そ れ が い い (ニヤリ)
590Classical名無しさん:08/01/25 22:20 ID:BNdpANw2
投下乙。
村雨の迷走っぷりがグッド。
そのせいでハヤテ村雨チームが早くもここで分裂ですかw村雨この野郎w
かがみんが何気に鍵を握っているんですねー。かがみ村雨はいいコンビかもw

ところで最後の部分、首輪は水をかけると機能が停止するってことですか?
答えるのが野暮なら答えないで大丈夫です。
あと、タイトルはどうしましょう?
591Classical名無しさん:08/01/25 22:23 ID:yx8ElucE
 GJ!!
 力持ってない分、らきすた陣が一番気になる。このままベタを突き進んで、かがみに村雨を変えて欲しい。
592Classical名無しさん:08/01/25 22:37 ID:.j5LNzys
投下乙です。
村雨ったら、もーw
ハヤテに誤解され、かがみに誤解され、零に誤解され……流れ流れてどこへ行く。

それとどうでもいいが、久しぶりに三影さんの名前を見た気がする。
593Classical名無しさん:08/01/25 22:38 ID:pVeQgth2
GJ!
カズキに続いて村雨にホモ疑惑ww
ああ、迷走しているなw これからの行動が期待できるぜ、村雨。
ジョセフはどうなるか……ハヤテはお嬢様と再会できるか……
色々気になる話でした。
594Classical名無しさん:08/01/25 22:42 ID:iefZcwc6
ロワでさらわれの女子高生とか、なんからきすた勢は縁でもあるのかw
ハヤテはハヤテでまた村雨にホモヤローフラグ立てちゃうし零はプッツンだし、
村雨は誤解の生産工場w
刃牙の死の真相を隠しても違う時代のジョセフによって知らされるとかクロスオーバーの引き立てかたが上手すぎ…
投下乙でした!
595Classical名無しさん:08/01/25 23:28 ID:PNngA8ns
GJ! GJ! GJ!
いやなんかもうすごい! 
世界の能力をあっさり見破っちゃったけど、
ハヤテならおかしくねぇと感じてしまう自分の頭はおかしいかな?
んでもって村雨のかがみ誘拐、燃えるジョセフ。
どこの少年漫画だよwさすが漫画ロワだな。

最後にもう一回、GJ!

596 ◆wivGPSoRoE :08/01/25 23:32 ID:Ob1/dlIs
遅くなりましたが、題名は、『――の記憶』です

wikiは、↓でお願いします
>>473->>507までが(前編)
>>508->>552が(中編)
>>555->>586を(後編)

>>590
「水をかけても首輪の機能は停止しません」とだけ
597Classical名無しさん:08/01/25 23:45 ID:mzl6wKxA
くそ村雨があああああああああ俺の嫁に何してくれてんだああああああああ!!
その女はくれてやるから二度とハヤテキュンに手出すんじゃねえぞぼけがああああああ!!

さておき、村雨の迷走やらハヤテの動向、零大活躍、かがみさん拉致られるなど見所いっぱいでした
そしてかっこいいぜジョセフ、そうだよ俺もこういうかっこいいジョセフが見たかったんだ
組み合わせの妙というものを堪能させていただきました。GJ!
598Classical名無しさん:08/01/25 23:50 ID:d9QLiM3g
それではそろそろ定例のスーパー誤字報告タイムをば

>>『人を喰らって生きる悪鬼に対してまでも、情けをかけるその慈悲の心、見事なり!!
だがな……。己を! そして、愛しきものを守りたいのならば、慈悲を心に沈め、
敵を撃たねばならぬ時もあるっ!!」

閉じが』ではなく」になっています

>>(まあそんときゃ、支えてやるのがオトコの役目ってやつだよなァ? シーザーよォォ?
にゃにぃ? 俺に男を語るのは100年はぇぇ!? へへ〜ん、俺はもう妻子持ちだもんネー。
参ったかコラ)

まだジョセフに子供はいないはず…なので妻子は間違い。所帯持ちが正解かな?
599Classical名無しさん:08/01/25 23:57 ID:2Uta2yaw
遅ればせながら読んで来た。
やはり、グルグルパンチは笑えるな。
来週は永周の実力が発揮されるだろうが、美味しく食されるシーンしか想像できないぞ。
今回は嘘バレの出来に期待できそうだ。
600Classical名無しさん:08/01/26 00:26 ID:OTG3Gudw
OK厳密に誤爆と言い切れないが、まあ誤爆なんだろ。堕ちたツンデレに用は無い、消え失せいっ
601Classical名無しさん:08/01/26 04:27 ID:UW4/uuH2
細かく誤字報告
全てをなぎ倒す村雨良を『剛』とすれば、彩崎ハヤテには『柔』の資質がある。
全てをなぎ倒す村雨良を『剛』とすれば、綾崎ハヤテには『柔』の資質がある。
あとこれはどっちでもいいのですが
間違いなく吸血鬼・DIO・ブランドーだは
2部以前の表記はディオだしブランドーがある時は必ずディオになっているのでここだけは
間違いなく吸血鬼・ディオ・ブランドーだ
にした方が良いんじゃないかと。
まあスルーしてくださって結構ですが。
602Classical名無しさん:08/01/26 10:26 ID:1FafmqFw
 GJ!!
 村雨は自業自得なんだが不遇だな。ホモ疑惑とか特に。ハヤテは立ち直ってよかったが。ジョセフは相変わらずカッコいいからいいとして、かがみが心配。拉致されて目立った活躍ができるだろうか? お姉ちゃんキャラとして、弟キャラの村雨とはいいコンビになれそうだが。
603Classical名無しさん:08/01/26 19:04 ID:ATja7WJ6
3661 :やってられない名無しさん:2008/01/26(土) 19:03:11 ID:???0
見てるか。
ならはっきり言おう。

二度と書くな、お前は。
てか、パロロワ企画そのものにもう関わるな
604Classical名無しさん:08/01/26 19:06 ID:1qNRmBhw
>>603
毒吐きの誤爆ですか……?
605Classical名無しさん:08/01/27 00:08 ID:glhO1DQc
>>603
わざわざご苦労なこったなタコ
606 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 07:53 ID:JWcJ2/yc
おはようございます。ケンシロウ、キュルケ、エレオノール投下です。
607人形の名を名乗った娘 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 07:54 ID:JWcJ2/yc
【キュルケ編】

 赤い物体─それが何なのか分からないが─の中から人が出てきた。
 朦朧とするキュルケの頭では、その人物が自分より背の高い女性であることぐらいしか分からなかった。
 ケンシロウが一歩自分より前に出る。盲目なのに頼りになる男だ。

「何の用だ?」

 目の前の女性を、ケンシロウは若干警戒している。
 スタイルのいい女性だ。
 体は痩せているが、ダイエットに憧れる小娘の体と違って全身に薄い筋肉を感じさせる。
 光沢を持った銀髪は弱い星明りさえも反射させ、上品な宝石のように輝いている。
 美しさにはそれなりの自信を持っているキュルケでさえ、一瞬見とれてしまうほどの女性。
 同じ女ながら、将来はこんな人間になりたいと思ってしまうほどだ。

「こんなところで男女2人腕を組んでいたら、気にもなるだろう」

 腕を組んで歩いているのは、単にケンシロウの気遣いなのだが、妙な勘違いをされてしまったらしい。
 致死と言うほどでないにしろ頭部に傷を負って、フライの魔法で低空高速移動を行った後だ。
 殺し合い開始から、ほとんど眠っていたとは言えキュルケはいつも以上に疲弊している。
 だから、ケンシロウに支えられつつ歩いているだけ。それだけの事だ。
 微熱のキュルケとしては不本意かもしれないが……

「用がないのなら、俺たちは先に行く」
「いや、用ならある。先ほどの放送で、私は同行者を失ってしまってね……
誰か一緒に行動できる人を探していたのだ」

608 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 07:55 ID:JWcJ2/yc
 放送で失った。つまり、同行したい人間の死を放送で知ったと言うことか。
 キュルケにとっては自分と同じ境遇にあるはずの女性なのだな。
 しかし、それにしては妙に落ち着いている。
 ケンシロウのように鋼の精神を持った人間だと言うのだろうか。
 仲間が死んだのなら、少しぐらい落ち込んでもいいだろうに。
 伸びた背筋や、雪のように輝く瞳からは意志の強さのみが感じられる。

「すまないが、今は先を急いでいる。仲間探しなら他を当たってくれ」
「そうか……」
「いや待て、もし良かったら、お前の車に俺たちを乗せてくれないか?」

 クルマ? キュルケには初めて聴く言葉だが、恐らくあの赤い物体の事を指すのだろう。
 それにしても、この会場には大きな乗り物が多い。
 いや、それよりも驚くべきは音だけであれが乗り物だと当てたケンシロウか。

「……あぁ、構わない。助手席に2人座ってもらうがな」

 仲間が欲しい、か。
 ある意味、この場ではまっとうな行動目的を持っているわけだ。
 だけど、ジョシュセキとはキュルケにとって初めて聴く言葉。
 セキという語感と前後の文脈から、乗り場所らしい事は分かるのだが、セキに2人で座ると言うのはどういうことだ。
 それはつまり、教室の椅子のような物にケンシロウと2人で座ると言うことか。

(まぁ……その……ケンは悪い男じゃないし、ってか、いい男なんだけど……)

 妙な想像をして、キュルケは柄も無く赤くなってしまう。

609 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 07:55 ID:JWcJ2/yc
(でもま、そうと決まったわけじゃないし……)

 ケンシロウの膝の上は並みの木材より硬そうだ。
 でも、硬いけど弾力もありそうだ。何となく矛盾しているが、きっとそうに違いない。
 キュルケはほんの少し、ほほに微熱を感じた。

「まずは、貴方から乗ってもらおう」

 長身の女性が、ケンシロウの手をとってクルマの中へとケンシロウを誘導する。
 後部座席には、大きな人形が乗っており人が乗れる場所は、どう見ても2箇所だけ。

(……え? ケン……その……)

 急いでいるのは分かるが、もう少し広い乗り物でもいいんじゃないか。
 と言うか、外見はでかいのに、乗り場所はあれだけしかないのか。
 さっき乗った奴のほうがよっぽどマシではないか。

(っていうか……私はケンの上に座るわけ??)

 微妙に混乱してきた。疲れた頭でも、友の死を知った直後でも、やはりこういったことには反応してしまうと言うことか。
 いや、しかし情けない。初心な子供じゃあるまいに。
 これがヴァリエールなら顔面をマグマみたいに真っ赤にさせて発狂してもおかしくないが。
 自分は恋の微熱、ツェルプストーのキュルケではないか。

610 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 07:56 ID:JWcJ2/yc
「次は貴女だ」

 銀髪の女性が、自分に向かって手を差し出す。
 こうしてみると、この女性も格好いい。いや、女性に対し格好いいと言うのは失礼なのだが。
 それでも、やはり格好いい。

(……久しぶりね。同性を見て嫉妬するなんてさ……)

 キュルケにとって、ここは初めて尽くしの場所だ。
 普段と違う嫉妬や恥ずかしさを感じても、不思議はあるまい。
 それに今は、あり得ないほど疲れている。
 いつものキュルケでなくて当然。むしろ、いつも通りの方がおかしい。
 キュルケは、銀髪女性に手を取られながら赤いクルマの入り口へと足を進める。
 そして、段の高いドアを開けてケンシロウが手を差し伸べる。
 その手をとり、キュルケが足を高く上げた瞬間、ほんの少し頭が揺れる。
 ただ、それだけの事で周囲が暗転した。

(!……)

 突然のブラックアウト。
 意識が遠くなる。文字通り、頭から血の気が引くことを感じ取りキュルケは誰かの腕に抱きとめられた。

611 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 07:57 ID:JWcJ2/yc


 枯れた草のにおいがする。
 木目模様の薄汚れた天井が見える。
 自分の体に毛布が掛かっている。
 キュルケは、自分が突然倒れてしまったことを悟った。
 朦朧とする意識の中、ケンシロウと女の声が聞こえてくる。

「そ…………受…………拳……つ……」
「…………し……か…………」

 ぼやけた頭では、2人の会話が掴めない。
 ゆっくりと、キュルケは頭を持ち上げて何とか、疲れ果てた脳を活性化させようとする。
 思えば、ここに来て無理をしすぎた。出来ればケンシロウや神楽と共に、まとまった休憩を取りたいのだが、現状ではそれもままならない。
 やはり、今なすべきことは神楽に直ぐにでも会うことか。

(そんなこと、私のわがままなんだけどね……)

 ちょうどそんな時、ハッキリとしてきた意識に女性の声が飛び込んでくる。

「目を覚ましたのか、ちょうど良かった。晩御飯が出来たところだ」

 そんな声と共に、暖かそうなご飯が運ばれてくる。
 毛布の中で周囲を見回し、キュルケは自分のいる場所が平民の家であることを悟る。
 温かいご飯の、ほんの少し塩辛い匂いが届く。
 そう言えば、香りにする食事なんて、もう随分と食べてないような気がした。
 銀髪の女性がご飯を運びながら、自分の名前を名乗る。
 そして、これまでの事情をケンシロウと共に説明してくれた。

612 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:01 ID:JWcJ2/yc
「……つまり、ケンとエレオノールが貧血で倒れた私をここまで運んでくれたのね……」

 急いで神楽の下に行きたい、そう思っていたのに。
 自分が原因で遅れてしまった。またも、ケンに迷惑をかけてしまった。
 それどころか今度は名前も知らなかったエレオノールにまで……

「ありがとう…………」

 こんな殺し合いの中にも、いや、だからこそと言うべきか、情は存在するのだ。
 何一つ美徳の見つからない世界でも、こうして温もりのあるご飯を食べることが出来る。
 彼らには何と言っていいか分からない。

「本当に、ありがとう……」
「礼には及ばない、当然のことをしたまでだ」


 こういう成り行きで、キュルケとケンシロウはエレオノールが作った食事をとる事となった。
 話によれば、彼女はサーカス団─それが何なのかキュルケには分からないが─の一員として世界中を巡っていたらしい。
 そのときに、一通りの料理は覚えてしまったそうだ。

 晩御飯を食べる前、エレオノールだけは1人でほんの1分ほど、どこかに移動していた。
 そして、戻ってくると円状の背の低い机の前に座り、3人で食事を開始した。
 晩御飯中に3人がする雑談は、首輪制限について。
 どうやらキュルケが眠っている間、ケンシロウとエレオノールで、その事を話していたらしい。

613 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:02 ID:JWcJ2/yc
「でだ、先ほどのケンの話では秘孔の効きが弱くなったこと、身体能力が低下したこと、キュルケの魔法が弱くなったこと等から、
制限の存在が明らかになり、秘孔を自分の体に突くことで制限が首輪によるものだと分かったわけだな?」
「あぁ、そうだ。加えて言えば、キュルケの魔法にも制限の強弱があり、それも決め手となった」
「錬金よ、ある物体を別の物体に変化させることが出来るわ。魔法としては初歩の部類なんだけどね」
「なるほど……だとすると不自然だな」

 エレオノールは2人の考察に若干の違和感を持ったらしい。
 特に問題のない話だと思ったが……

「2人とも覚えているか、私たちが最初に集められた場所で赤毛の男が暴れだした時のことだ。
あの時、光成と呼ばれた老人は確かに言った、『首じゃ、首を見ろ』とな」
「それこそ、首輪が制限の根源だと言う動かぬ証拠だろう」
「いや、私はあれを罠だと思っている。そもそも、制限と言うものは我々を押さえつけるために必要不可欠なもののはずだ。
この事は、あの場で赤毛の男、確か勇次郎だったか、彼が暴れたことを思い出してみても分かるだろう。
そこで考えてもらいたい。あの老人にとって、保身の要とも言うべき制限の内容を、そう簡単に明かすだろうか?」

 言われてみると、確かに不自然だ。
 制限が無ければケンシロウもユージローもDIOやラオウだって、誰だってあの老人を殺そうとするだろう。
 彼は制限という檻の中に、参加者を閉じ込めておかないと安心して殺し合いを鑑賞することさえ許されないのだ。
 だが、この不自然さはあくまで、ケンシロウの秘孔による考察を無視した場合の話だ。

「そりゃ、確かに不自然だとは思うけど、でもケンが秘孔でちゃんと確かめたんだから、間違いないわよ」
「いや、実は私にとってはその話こそ、これが罠だと断定した根拠なんだよ」
「どういうことだ?」

 エレオノールは、どうもキュルケとケンシロウの2人が考察したことに否定的らしい。
 確かに何の証拠も無く出した結論だから、その正しさに保障があるわけじゃない。
 しかし、だからと言って大きな穴は無かったはずだ。

614 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:03 ID:JWcJ2/yc
「いいか、ケンの秘孔は『何か』によって制限されている。そして、ケンは秘孔によってその『何か』を分析した。
この話はおかしいだろう、仮に私があの老人の立場で制限をかけたのなら、秘孔では分からないように制限をかけると思うがな」
「言われてみれば……」
「そんなはず無いわ。そうだとしたら錬金はなぜ制限されてるの。これも罠なのかしら」
「いや、違う。貴女の錬金は物質変換の魔法だと言ったな。つまり、首輪に限らず、どんなものに対しても錬金は脅威となりうるわけだ。
戦闘時には相手の武器を無力化させることが出来るし、そんなことをしなくても、脳みそをかぼちゃにでも変えてしまえば、必殺の魔法になる」

 そう言いながら、エレオノールはオレンジ色の野菜を口にする。
 それがかぼちゃと言う野菜であることをキュルケが知らなかったことは幸運だろう。

「人体に錬金は効かない」
「だが機械になら効くのだろう? つまり、首輪以外のものが制限をかけている場合も、やはり貴方たちの考察と同じことが言えるわけだ」
「……そ、それは……」

 キュルケはエレオノールの言葉に何の返しも出来なくなってしまった。
 言われてみれば、確かにその通りなのだ。
 首輪が能力制限の根幹と判断したのは、早計だったという事なのか。
 これでは、バトルロワイアルの謎解決に全く近づけていないではないか。

「あれだけ、あれだけ考えたのに……」
「まだ、俺たちの考察が間違ったと決まったわけじゃない」

 ケンシロウがキュルケの肩に手を置きながら、声をかける。
 その姿を、エレオノールが見つめている。鋭い眼光のせいもあってか、若干睨んでいるように見える。
 ほんの少し、嫉妬していると言うのだろうか。
 そう言えばエレオノールもいい女だが、キュルケだって負けてない。
 成長期のせいもあってキュルケとエレオノールは大きく年が離れているように見えるが、実際は2,3歳だろうし……
 ケンシロウの目から見れば、キュルケの方がいい女に映っているかもしれない。

615 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:04 ID:JWcJ2/yc
「フフッ……、そんな顔をするな。貴方たちの考察は素晴らしいものだと思うぞ。
そこまで考えてくれたからこそ、私も刺激されて意見が出てきたわけだしな」
「……そうね……」
「それに頭を使ったら、意識もしっかりしてきただろう?」

 ほんの少し、エレオノールが笑った。
 どこと無く冷たい印象を受ける笑顔ではあったが、それでもキュルケは救われた気分になれる。

(初めて会った私のために、やってくれたことかしら……)

 本当に、人のいい女である。
 もちろん、首輪の考察に対する彼女の厳しい突っ込みは、本音であろう。
 最後の一言も、フォローにしては強引過ぎる。
 けれど、それは彼女が自分を傷つけまいとして言った言葉だ。
 キュルケは、エレオノールという女性の温もりに触れた気がした。

 食事を進めながら、エレオノールの方を見やる。
 まるで仮面のような表情は、先ほど一回笑顔を見せたきり、全く表情を変えていない。
 そんな所は親友のタバサにそっくりだ。
 身長も、年齢も、似ても似つかない2人だけれど、一個だけ共通点がある。そのことでキュルケは安心できる気がした。

「ねぇ、話は変わるけど、私の親友にさ……」

 キュルケは思い切って、懐かしいタバサの話をすることにした。

616 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:05 ID:JWcJ2/yc


「では、神楽の下へ行くとするか……」

 夕飯が終わった頃、周囲は完全に闇で支配されていた。
 窓から空を見て、星があまり見えないことから、キュルケは雨が降りそうだと感じる。

「そうね急ぎましょう。あの子も心配だし……」

 神楽が再会を求めていた2人は既に亡くなっている。
 これは病院が危険地帯であると言う証明であり、同時に病院にいる必要の無くなった神楽がそれ以外の場所に移動した可能性を示唆するものでもある。
 つまり、今神楽はどこにいるのか分からない状態なのだ。安全な場所で、仲間と一緒にいてくれると言いのだが……

「少し待って欲しい」

 出発を急ごうとするケンシロウとキュルケの2人を、エレオノールは止めた。

「休憩してもキュルケの顔色は優れないだろ? 神楽も心配するぞ」
「……そりゃ、そうだけど」
「幸い私はメイク道具を持っている、と言っても道化師用の特殊メイクだがな」

 なるほど、それは面白い。神楽を心配させずにすむし、ケンシロウの気も惹けるかもしれない。
 道化師用というのが、若干気にはなるが、普通のメイク用品とさして変わらないだろう。
 エレオノールの意思を汲み取ったキュルケがその方を見ると、彼女はまた微笑んだ。

 キュルケはエレオノールと共に、洗面所へと移動する。
 この民家の鏡が洗面所にしかないための移動だ。ちなみに、エレオノールは、

617 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:07 ID:JWcJ2/yc
「これはサーカスで使う特殊メイクだから。普段女性が見るものとは使い勝手がだいぶ違うのだ」

 などと言って一緒に入ってきた。ケンシロウは男だからと言う理由で外だ。
 狭い脱衣所に、女が2人で並んでいる。
 脱衣所には、入り口から見て左手に大きな鏡が一枚。鏡の向かい側に、タオルなどを入れておく引き出しが一つ。
 キュルケは鏡の方を向いて立ち、エレオノールは鏡とキュルケの間に立って、少しだけ膝を曲げてかがみ加減になる。
 エレオノールの肩越しに、鏡が見える。
 なるほど、自分の顔は確かに血色が悪い。キュルケはそれを再認識する。これでは、神楽も心配するだろうな……
 そんなことを思った時、エレオノールの両手が引き出しから、何かを取り出したように見えた。
 自分の背中に隠れて、はっきりとは見えないが確かに何かを……

「さっ、メイクするぞ……人にしてもらわないと行けないのが、特殊メイクの困ったところだな……」

 エレオノールはぼやきつつも、クスりと笑っている。
 よく見ると、タバサよりは表情が豊かかもしれない。
 突然。
 エレオノールが左手に持っている、メイク道具が落下する。

618 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:10 ID:JWcJ2/yc
「すまない、拾ってくれ」

 落下したメイク道具を拾い出そうと、キュルケは身をかがめる。

「もう、しょうがない…………  ヒュゥ………」

 刹那。キュルケは首に熱いものを感じた。

(一体、一体何が起こったの?)

 自分の身に何が起こったのか、さっぱり分からない。
 熱さに続いて、痛みが襲い掛かってくる。
 首に感じた熱いものは、気管を通って肺まで流れ込んでくる。
 これは一体、何だ。理解できない。
 声を出そうとしても、潰れた気管からは、ヒュウ、ヒュウという風音だけが流れるだけだ。
 まさか……
 キュルケの脳が一つの結論を出そうとしたとき、エレオノールは脱衣所の奥にある風呂の窓を蹴破って、外へと脱走していた。
 それを見送った後、首から痺れるように全身に広がった痛みは、キュルケの体を完全に停止させた。
 彼女は停止するその瞬間まで、自分の身に何が起こったのか理解できなかった。


619 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:12 ID:JWcJ2/yc
【エレオノール編】

 消防車を運転しながらエレオノールは、自分の頭が澄み渡っていくのを感じた。
 古井戸での記憶が、今まで以上にエレオノールの人形認識を加速させている。

「先生、あなたのおかげで私は本当に目指すものを見つけることが出来ました」

 この街に来てから、まだ一日も経っていないが、エレオノールは既に数回目的を変更している。
 今にして思えば、目的が何度も変わってしまったのはギイの言う自分の役割を見つけていなかったからだ。
 だが、もう違う。
 暗いイドの底から、エレオノールの意識にははっきりとした目的が浮かんできている。
 ふと、消防車から外を見る。
 平均的な日本の家々が並ぶ。
 地上8階程のビルや、ごく普通のビデオショップ。
 日本での生活が長いエレオノールにとってはありふれた風景。
 そんな風景の真上、既に青白い点群だけが支配する黒幕となった空。
 そこを見て、エレオノールは思う。

「雨が降りそうだな……」

 はっきりと見えないのだが、何となしにそう思った。
 そして、エレオノールは思考を続ける。

「先生、私はこれから加藤鳴海に会いに行こうと思います。けれど……」

 目的とは違って、エレオノールには全く変わらないものがある。
 この会場に放り込まれてから、終始一貫しているものが二つある。
 それは、ここで勝ち残らなければならないという事と、勝ち残る戦力が不足しているという事だ。

620 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:13 ID:JWcJ2/yc
「今の私が向かっても鳴海を取り巻く者たちに勝てるとは思えません」

 エレオノールは最初、しろがねである自分は圧倒的強者だろうと思っていた。
 身体能力の高さ。とりわけ、回復力やタフさにおいて、しろがねの右に出るものなどいない。
 そう思っていた。
 だから、この場で自分が負けることなど想像もしていなかった。
 特に、才賀勝からオリンピアを手に入れたときはそうだ。
 誰かを守るには不十分だったかもしれない。
 けれど、自分が生き残るには十分すぎる戦力だろう。
 それが、当時のエレオノールが感じた素直な感想だ。
 だが、実態は違った。
 人形を持っても、オリンピアを持っても、しろがねの身体能力があっても。
 未だ殺害数ゼロ。
 隻眼の老人にまで遅れを取ってしまう有様。
 あの頃のエレオノールが想像もしていなかった醜態。
 そう。
 この数時間で、現実はエレオノールにまざまざと見せ付けていたのだ。
 彼女自身の戦力の無さを。
 このまま、同じ事を続けていたら、いずれ殺されることは明白。
 思えば、今までのエレオノールはほとんど工夫も無く、馬鹿正直に攻撃するだけだった。
 不意打ちに近いことなら、初老の男に対して行った。
 だが、拙速すぎた。
 一瞬、背後を取れただけなのに、すぐに攻撃してしまった。
 あのまま無害を装っていれば男も油断していたかもしれないのに。
 拙速すぎる攻撃が、殺害の機会を逸しさせた。

621 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:15 ID:JWcJ2/yc
「私は思うのです。今のままでは、鳴海を笑わせることが出来ないと……」

 やはり、武器。戦力。何よりもそれが欲しい。
 けれどだ。
 既に死合開始から半分の人間が消えている。
 この状況だと、生き残っている人間のほとんどが強者であろう。
 そして、強者でない人間には、それなりの護衛者がついていると考えるべきだ。
 つまり、武器を誰かから奪う場合は、命がけの行為になることを覚悟すべきなのだ。
 別の手段として、武器をそこらの民家から徴収するという手もある。
 だが、正直な話、どう見ても一般的な日本のこの街に、まともな武器があるとは思えない。
 包丁の一本もあればいいところだろう。そんな物、あった所で人形より劣る。
 つまり、このままでは戦力不足によりエレオノールは目的を叶えられない訳だ。

「攻め手を変えなければ……私は鳴海を笑わせられません」

 だが、だからと言って名案が浮かぶ由もない。
 エレオノールは自然とハンドルを北から逃げるようにきって行った。
 暗くなった空が微妙な湿気を帯びている。
 殺し合いで勝ち抜く手段も分からないまま、エレオノールには何故かそんなことだけが分かった。

622 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:16 ID:JWcJ2/yc


 消防車を南に向けて走らせていると、一組の男女が目に入る。
 仲間同士か。どう見ても、殺し合いには乗っていないだろう。
 エレオノールは一瞬のうちにそう判断する。そして決意する、殺さねばならないと。
 今、エレオノールが持つ武器は強いて言えば消防車一台。
 相手は歩行者である。このまま、ひき殺してもいい。
 そう思い、エレオノールが相手を見た瞬間。
 目のつぶれた男から、妙な威圧感を感じた。

(警戒しているのか……)

 まさか車越しに殺意が感づかれたとでも言うのだろうか。
 いや、幾らなんでも、そこまで鋭い相手ではあるまい。
 しかし、よく見るとあの体格。潰れた目とは裏腹に鍛え上げられた四肢。
 消防車を跳ね返せるほどの身体能力を持っているとは考えにくいが、前例がある。
 ここは拙速よりも巧遅を選ぶべきだ。
 エレオノールは、様々な可能性と過去の事例を考慮に入れた上で結論を出す。
 ゆっくりと消防車を停止させ、彼らの近くで止める。
 そして、消防車からおりる。
 肩から先の露出した服装で、両の手を相手から見えるように若干体の前へと持っていく。
 武器はない。攻撃の意思もない。
 それを表現するための行動だ。
 盲目の男は、それを感じ取ったらしく一瞬警戒心を薄めた。
 しかし……この男。目が潰れていると言うのに、気配ひとつで色々な事を察知するらしい。
 まともに闘っては危険だな。

623 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:17 ID:JWcJ2/yc
「何の用だ?」
「こんなところで男女2人腕を組んでいたら、気にもなるだろう」

 本音を言えば、別に男女が何していようと興味を持つエレオノールではない。
 素直に殺しに来ましたとは言えないので、お茶を濁したまでだ。

「用がないのなら、俺たちは先に行く」

 いや、用ならある。言えないだけだ。
 とりあえず、無難に仲間探しをしているとでも言っておくか。

「用ならある。先ほどの放送で、私は同行者を失ってしまってね……
誰か一緒に行動できる人を探していたのだ」
「すまないが、今は先を急いでいる。仲間探しなら他を当たってくれ」
「そうか……」

 同行していれば、隙を見せるかもしれないと期待したが甘かったようだな。
 武器を手に入れてから、正攻法で殺すとするか……

「いや待て、もし良かったら、お前の車に俺たちを乗せてくれないか?」

 車に? これはチャンスかもな。

「……あぁ、構わない。助手席に2人座ってもらうがな」

 今現在、助手席にはオリンピアが座っている。これを後部座席に移動させて、2人を助手席に移せば問題ないだろう。
 まぁ、日の落ちた時間帯に腕を組んで歩いている2人だ。助手席に相乗りさせても、文句は言うまい。
 近くにおいておけば、殺す隙も窺えるし、助手席は戦闘開始にうってつけの場所のようにも思える。
 最悪のケースでも、自分ごとビルにでも突撃すれば、耐久力差でしろがねが勝つ。

624 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:19 ID:JWcJ2/yc
「まずは、貴方から乗ってもらおう」

 エレオノールは盲目の男の手をとって、助手席へと誘導する。
 半ば予想していたことだが、男は掌まで筋肉に覆われている。
 肉厚な節々に加え、ゆっくりと脈動する血液。
 体温は人のそれでありながら、マグマのごとき力強さを持つ。
 これを相手にまともに闘ってはいけない。それでは同じ愚を繰り返すことになる。

「次は貴女だ」

 今度は、頭部に怪我を負った少女の手をとる。
 こちらは、何とでも殺しようがありそうだが、殺した後が厄介だ。
 どう見ても男とそれなりの関係にある。
 ここは素直に車に乗せてやろう。チャンスはまだあるはずだ。
 掴んだ手を、恋人の方へ渡す。
 男が掴んだ手をゆっくり持ち上げる……そのときだ。
 少女の瞳が光を失い、その体が力なく男の手にぶら下がる。

(何があった?)

 事態が掴めぬまま、エレオノールは一瞬何も出来ずに硬直してしまった。
 そして、気が付けば助手席から飛び降りた男が、少女を抱きかかえていた。
 その一瞬の動きに、エレオノールは驚きながらも気を落ち着かせて、男に問いかける。

625 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:21 ID:JWcJ2/yc
「一体、何だ?」
「ただの貧血だろう」

 男は特にエレオノールを疑っていないようだ。
 実際何もしていないのだから疑われても困るが、ここは心底ほっとする。

「今すぐ彼女を連れて病院にいきたい、すまないがすぐに車を出してくれ」
「いや、病院に行ったところで治療道具があるかどうかは怪しい。それに同じ理由で良からぬ輩が集まっているかも知れんしな」
「病院には、俺たちの仲間がいる」
「確実にいると言えるのか?」
「それは言えん。だが、神楽はハッキリ病院へ向かうと告げたのだ」
「その神楽という人物は、何の目的で病院に向かった。今もその目的は生きているのか」
「それは……」
「目的がなくなっている可能性があるのなら、神楽が病院にいる可能性は低かろう。
それに、少女や我々のためにも、とりあえず暖かい食事を取りたい。そこらの民家にでも入ろうじゃないか」

 エレオノールは自分でも強引な理由だと思いながら、病院行きを否定してみる。
 単純な話、病院に鳴海や赤木がいないとも限らないからだ。
 彼らに会うのは、鳴海を笑わせる計画が立ってから、すなわち戦力が増強できてからだ。
 今すぐ行くのは非常に不味い。

「単なる貧血なんだろう? 見たところ頭部の出血は既に治療済みだし、出来ることと言えば滋養を取るぐらいだろう。
その娘のことを思うのなら、今は食事と睡眠が第一だ」
「……そのようだな、スマン恩に着る」
「気にしなくても構わない。私は同行者が欲しかったのだから」

626 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:22 ID:JWcJ2/yc


 妙な成り行きで、エレオノールは盲目の男と恋人の少女を連れて小さな平屋作りの民家に入った。
 サーカス暮らしの長かったエレオノールにとっては、金持ちの家より三流階級の家の方が居心地がいい。
 そんな理由があってこの家を選んだ。
 民家の入り口には鍵が掛かっており、入る際には道路から見えない裏手の窓から侵入した。
 先にエレオノールが入り、入り口のドアを開けて2人を迎え入れる。
 そして、その後は赤い髪をした少女を布団の上に寝かしつけた。
 ありがとう、と男が呟いた。気にすることはない、とエレオノールは答えた。

 民家は小さな台所と、六畳間、そしてこれまた小さな脱衣所が付いた風呂、最後にトイレという非常に簡素な構成で出来ていた。
 トイレと脱衣所が繋がっているあたり、衛生面でかなりの問題を感じさせる民家だ。
 これが日本のホテルなら納得がいくのだが、民家だからよほどの貧乏屋敷らしいことが伺える。

「冷蔵庫にかぼちゃとほうれん草、そして卵があった。これで十分食べられるものが作れるな」

 本来なら、毒物の一つでもあると嬉しいのだが、生憎とそんな気の利いたものはない。
 素直に料理しよう。しかし……

(全く、私は何をやっているのだ……)

 自分に力が無いことは既に自覚した。
 このまま、あの男に攻め入っても、勝ち目はないだろう。
 それは分かる。
 だから、こうして素直に料理をしている。
 それに、下手な嘘をついて共に周囲の人間を殺しに掛かることも出来ない。
 嘘がばれた時の信頼低下が、どれほど厳しいものかは才賀勝に教えられた。
 だから、込み入った策略を組んで、共闘することも難しい。
 数時間一緒にいて、殺す機会が無ければ適当なことを言って離れるべきか。
627 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:24 ID:JWcJ2/yc
 それとも、共にいて守ってもらうべきか。正直悩ましい。
 本当に、何をやったらいいのか分からない。
 殺しあうことが、こんなにも難しい事だったなんて、エレオノールは今まで90年間全く知らなかった。

(それでも、チャンスはあるはずなんだ……)

 じっと機会をうかがいながら、エレオノールは素直に料理を開始した。

「そう言えばまだ、名前を聞いてなかったな。私の名はエレオノール、貴方たちの名は?」
「俺の名はケンシロウ、ケンと呼んでくれ。そしてこの娘の名はキュルケ」

 エレオノールはほうれん草をそのまま鍋に入れて、水に浸す。そして、火にかける。

「ケンシロウ、ケンか……察するに日本人かな?」
「そうなるだろう……だが、俺の生まれたところに国はない」
「国はないだと、どういうことだ?」

 会話をしながら、かぼちゃを一口大に切る。
 この時、包丁を見つけたが、とても武器には使えない。
 刃渡りが日本刀などの武器に比べ圧倒的に短い日用品。
 殺すべき相手は、筋肉の権化とも言うべきケンシロウ。
 無茶はやめておこう。と、冷静にエレオノールは料理を続ける。

「1990年代に起こった核戦争で、文明が滅んだからだ。俺たちの住んでいた場所は、
かつて関東平野と呼ばれていたのだが、今はもうただの荒地だ」

 一口大にきったかぼちゃを、みりん醤油に頭が出るぐらい浸す。
 味付けに、軽く砂糖をまぶして、これも火にかける。

628 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:25 ID:JWcJ2/yc
「1990年代に核戦争……聞いたことが無いな。1940年代の広島、長崎なら知っているがな。
私の知る限り核が戦争に使われたのは、あの時だけのはずだ」
「そんなはずはない。あの時代、日本を含めた多くの国が核の被害にあったはずだ。
事実、俺の義兄も一人放射能が原因で病に敗れている」

(まともな男かと思えば、おかしな事を……)

 普段のエレオノールなら、そう思って相手にもしなかっただろう。
 だが、彼女は数時間前才賀勝より聞かされていたことがある。

───この殺し合いの参加者はそれぞれ時間軸上の違う点か、もしくは並行世界間を移動して……

 あの時は、馬鹿な子供の戯言ぐらいにしか思っていなかったが……
 今は同じように、狂ったことを言う大人がいる。
 実年齢で言えば、エレオノールに比べ子供のようなケンシロウだが、それでも立派な成人だ。
 己の空想を口に出して言うなどと、馬鹿げた真似はしないだろう。
 とすると、あの時の勝の言葉は真実だったと言うわけか。

「なるほど、そう言えば私の仲間で……もう殺されてしまったが、面白いことを言っていた少年がいる」
「何だ?」
「この場にいる人間たちは違う時代から、あるいは違う世界から集められてきたのだと」
「何だと……」

629 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:27 ID:JWcJ2/yc
 そう考えると、確かに辻褄が合う。
 そもそも、自分たちしろがねより強い人間がゴロゴロ転がっているあたりからして、この街はおかしかった。
 エレオノールは、支給品の缶飯とツナ缶を開けながら考えを続ける。
 それに、才賀勝がオリンピアを操れた理由。
 あれは単に、彼が人形繰りを覚えてから、ここに連れて来られただけの話ではないのか。
 恐らく、人形繰りを教えたのは自分か、勝の言うとおりギイ先生なのだろう、そう考えると筋が通る。
 あの少年が、最初馴れ馴れしく抱きつこうとしたことも、それで説明が付く。
 彼のいた時代の自分は、本当に彼を守っていたわけだ。
 なるほど。確かに、これで納得が出来るな。

「俺の方にも心当たりがある」

 缶飯に卵を割りいれ、ときながらケンシロウの言葉に耳を傾ける。

「俺の一番上の義兄、ラオウが使えたはずの技を忘れていたのだ。
だが、それも違う時代から連れて来られたと考えれば説明が付く」

 フライパンに油をひき、強火で熱する。

「なるほど……どうやら、この仮説は間違いなさそうだな」
「そのようだな」
「しかし、出来れば、別の方法で集めて欲しかったものだ……違う時代、違う世界。まるで全能の神ではないか」
「だが、別の方法だと説明が付かん。少し前に、キュルケと共に首輪制限の考察をしていたのだが……
それも、違うだろうしな」
「首輪制限、何だそれは?」

630 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:34 ID:JWcJ2/yc
 十分熱したフライパンの上に、先ほど作った卵ご飯を入れる。
 強い火力で、一気にご飯をいためる。

「この会場では、俺たちの力が何ものかによって制限されている。そして、その制限の源が首輪と言うわけだ」
「制限だと?」
「あぁ、簡単に言えば普段通りの力が出せないと言うことだな。
恐らく、殺し合いにおける力量差を埋めるためのハンデだと、俺たちは推測している」

 そんな事があったのか、とエレオノールは初めて気づく。
 もしかしたら、自分の回復力も制限されているかもしれないな。
 だとしたら、これからの闘いは一層気をつけなければならない。

「しかし、その根源が首輪だと言うのはなぜだ」

 卵ご飯を米一粒一粒がバラけるまで、強火で十分にいためる。
 おおよそ、大丈夫だと思った時点で醤油を軽くたらして味を調える。
 最後に、ツナ缶の中身を焼き飯に追加する。

631 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:37 ID:JWcJ2/yc
「それはな……」

 ケンシロウの言葉を聴きながら、茹で上がったほうれん草を水でさっと洗う。
 ほうれん草の根元を切り捨て、残った部分を食べやすいサイズに切り分けていく。

「俺が受け継いだ一子相伝の拳、北斗神拳を使って調べたのだが……」

 耳を傾けながら、エレオノールはケンシロウの話に不可解な点があることに気づく。
 どうやら、ケンシロウは秘孔を突いて、制限の謎を解いたらしい。
 北斗神拳とは、人体について、それなりのことを調べるのも可能なのだろう。
 それはいい。そして、それがこの場において制限されていると言うこともいい。
 しかし、そうだとすると納得できないことがある。
 彼の話を聞き終えて、エレオノールは思った疑問を、率直にぶつける。

「しかし……北斗神拳で調べたと言うのなら、かえって不自然ではないか?」
「それはどういうことだ?」
「いや、些細な事なのだが……」

 晩御飯を皿に盛り付け、エレオノールはケンシロウの方を振り返る。
 ちょうど時を同じくして、布団で眠っていたキュルケが目を覚ました。
 彼女は目が覚め、状況を確認してすぐ涙を流しながらエレオノールに礼を述べた。
 エレオノールは、どうでもいいと言わんばかりの態度で「当然のことをしたまでだ」と答えた。

632 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:39 ID:JWcJ2/yc


(全く、私は何をやっているのだ……)

 確かに、敵を殺すことが出来ない。
 それは自覚している。だからと言って流されるままに夕飯まで作ってしまうとは本当に情けない。
 しかし……
 料理をしているときは気づかなかったが、ケンシロウという男。本当に隙がない。
 盲目のはずなのに、彼はエレオノールの方を注視している。目が無いのに、見ているとは妙な話だが、確かに感じるのだ。
 彼の意識が油断無くこちらに向けられていることを。

(無理に殺しにいかなかったのは、正解なのだが……だからと言って何もしないのもストレスが溜まるな)

 一体どうしたらいいのか。エレオノールには、その答えが全く出てこない。
 三人分の食事をちゃぶ台に乗せる。そして、食事前に行儀が悪いと思ったが移動する。
 ケンシロウの隙の無さと若干の焦りから、エレオノールはトイレに入った。

(さてと、どうする……)

633 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:40 ID:JWcJ2/yc
 これ以上、彼らと行動を共にしていても得るものは何も無い。
 殺す機会を窺って、一緒にいるわけだが隙の一つも無い男が一緒では、女の方を殺すことも出来やしない。
 実力から言って、男は無理でも女は何とかしたいのだが……
 たとえ殺せたとしても、下手にやれば男の怒りを買ってアウトだ。

(本当に難しいな……自動人形を相手にしていた方がまだマシだ……)

 だが、難しいからこそ達成感がある。
 才賀勝を守るよりも、人間になれるという確かな実感がわいてくる。
 もちろん、この達成感と人間化には何の関連も無い。
 そんな事は百も承知なのだが、機械仕掛けの神もきっと、難しい試練を子供たちに与えるのだろう。
 そう思えば、やはり、これこそが人間への道なのだろう。
 しかし、それはそうと……

(ここの家は不衛生だな)

 トイレと脱衣所が一緒になっているホテルのような形式。
 脱衣所の先には、お風呂があるわけだが、このような形式では入る気が起きない。

(大体……いや、待てよ。これって……)

 何かが閃いた気がする。エレオノールは周囲を探して、あるアイテムを探す。
 ここが脱衣所ならあるはずだ。アレがある可能性は極めて高い。

634 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:43 ID:JWcJ2/yc


 脱衣所から出たエレオノールは、ちゃぶ台の前に座り2人と共に晩御飯をとることにした。
 殺す目処がついたことで、少しほっとする。
 だが、今はまだ油断できない。
 全身全霊をかけて、2人の隙を突く必要がある。そのことは何も変わらないのだ。

「でだ、先ほどのケンの話では秘孔の効きが弱くなったこと、身体能力が低下したこと、キュルケの魔法が弱くなったこと等から、
制限の存在が明らかになり、秘孔を自分の体に突くことで制限が首輪によるものだと分かったわけだな?」

 ごく自然に、先ほどの話の続きを振る。
 首輪の話など、至極どうでもいいことなのだが、真剣に考えている振りをすれば、彼らも気を許すだろう。
 そう考えて、どうでもいい首輪の話にも真剣になってみる。

「あぁ、そうだ。加えて言えば、キュルケの魔法にも制限の強弱があり、それも決め手となった」
「錬金よ、ある物体を別の物体に変化させることが出来るわ。魔法としては初歩の部類なんだけどね」
「なるほど……だとすると不自然だな」

 本音を言えば、少ない証拠から出した2人の結論に不自然なところは無い。
 というより、この時点では中々良く考えられた考察と言えるだろう。
 しかし安直に、貴方たちは良く考えてますね、というよりはこちらも真剣さをアピールした方が得という物だ。

「2人とも覚えているか、私たちが最初に集められた場所で赤毛の男が暴れだした時のことだ。
あの時、光成と呼ばれた老人は確かに言った、『首じゃ、首を見ろ』とな」
「それこそ、首輪が制限の根源だと言う動かぬ証拠だろう」
「いや、私はあれを罠だと思っている。そもそも、制限と言うものは我々を押さえつけるために必要不可欠なもののはずだ。
この事は、あの場で赤毛の男、確か勇次郎だったか、彼が暴れたことを思い出してみても分かるだろう。
そこで考えてもらいたい。あの老人にとって、保身の要とも言うべき制限の内容を、そう簡単に明かすだろうか?」

635 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:45 ID:JWcJ2/yc
 こじつけもいい所だな。自分ではそう思う。
 なら逆に、首輪以外の何が制限を行っているのだと聞き返したい。

「そりゃ、確かに不自然だとは思うけど、でもケンが秘孔でちゃんと確かめたんだから、間違いないわよ」
「いや、実は私にとってはその話こそ、これが罠だと断定した根拠なんだよ」

 言葉を返しながら、食事を取りながら、エレオノールはケンシロウを見やる。
 厚い胸板は、女性のそれよりもはるかに大きい。
 太い腕は、女の足ほどもありそうだ。
 潰れた瞳からは、見えないがオーラのようなものがありありと感じられ、近くにいるとほんのわずかな動きも気取られかねない。
 しかし、隙は生じる。必ず、生じる。信じろ、チャンスは来るはずなんだ。

「どういうことだ?」
「いいか、ケンの秘孔は『何か』によって制限されている。そして、ケンは秘孔によってその『何か』を分析した。
この話はおかしいだろう、仮に私があの老人の立場で制限をかけたのなら、秘孔では分からないように制限をかけると思うがな」

 もちろん、これは単にあの老人が無用心だったとか、制限はそんなに都合よくかけられないからで説明がつく。
 まぁ、証拠が少ない現状なら、通ると思われる反論なのだが。

「言われてみれば……」

 ケンシロウが渋々頷く。無難な反応だろうな。
 証拠の無い状況では、どちらが正しいかなど、水掛け論でしかない。
 エレオノールが言った言葉も、あくまで一つの可能性を提示しているだけに過ぎないのだから、彼は頷いて話を先に進めようと思うだろう。
 どちらが正しいかは、実際に首輪を解析するなり、あの老人を脅迫するなりすればいい。
 もっとも、そんなことは無意味なのだけれど。

636 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:46 ID:JWcJ2/yc
「そんなはず無いわ。そうだとしたら錬金はなぜ制限されてるの。これも罠なのかしら」
「いや、違う。貴女の錬金は物質変換の魔法だと言ったな。つまり、首輪に限らずどんなものに対しても脅威となりうるわけだ。
戦闘時には相手の武器を無力化させることが出来るし、そんなことをしなくても、脳みそをかぼちゃにでも変えてしまえば、必殺の魔法になる」

 偶然、目の前にあったかぼちゃを例にとって、少女に反論する。
 少女が魔法世界からの住人でなければ、ここで悲鳴でも上げていたところか。
 ちなみに、この反論だけはエレオノールも本気でやっている。
 大体、物質変換の魔法など都合よく使われてたまるか。何でもありの世界ではないか。

「人体に錬金は効かないわ」
「だが機械になら効くのだろう? つまり、首輪以外のものが制限をかけている場合も、やはり貴方たちの考察と同じことが言えるわけだ」
「……そ、それは……」

 言葉に詰まるキュルケを見て、エレオノールはやりすぎたか、と感じる。
 目的は、首輪の考察ではなくケンシロウの隙を窺うこと。いや、信頼させて隙を作ること。
 反論をやりすぎて、逆に不快感を与えては元も子もない。

「あれだけ、あれだけ考えたのに……」
「まだ、俺たちの考察が間違ったと決まったわけじゃない」

637 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:47 ID:JWcJ2/yc
 自分たちの考察が間違っていると勘違いしたのか、キュルケは明らかな落胆を見せる。
 ケンシロウはそんなキュルケを察してか、彼女の肩に手をやり慰めの言葉をかける。

「フフッ……、そんな顔をするな。貴方たちの考察は素晴らしいものだと思うぞ。
そこまで考えてくれたからこそ、私も刺激されて考えが出てきたわけだしな」
「……そうね……」
「それに頭を使ったら、意識もしっかりしてきただろう?」

 せっかく、料理までして、ほんの少し築き上げた信頼をここで壊すわけにはいかない。
 エレオノールは、サーカスで身に着けた作り物の笑顔をほんの少しだけ浮かべて、優しいお姉さんを演出する。
 シルカシェン(サーカスの人)として身に着けた技能さえも殺しに利用する。
 もう何だってやる。人間になるためだ。

 先ほど、脱衣所で考えた作戦を思い出す。キュルケを殺すために立案した強引な策だ。
 失敗したときのリスクを考えれば、やらない方がマシかもしれない。だが……

(いい加減、ストレスも限界だな)

 殺せない相手だからと言って、何もしないままハイさよなら、では情けなさ過ぎる。
 自動人形破壊者として、エレオノールは通常の人間を上回る身体能力を持っているのだ。
 殺す。一度のチャンスを積極的に生かし、殺す。
 彼女は、そんなことを考えつつ食事を進める。
 これを食べ終わったら、キュルケを誘い込む。今の彼女は、自分に少しとは言え恩を感じているはずだ。
 この状態を生かさない手は無いのだ。今なら、彼女は強引なお願いでも聞いてくれるはずだ。

638 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:48 ID:JWcJ2/yc


 食事が終わり、3人で病院の方へ移動を開始する。
 今ここが最後のチャンスだ。キュルケとケンシロウを離して、確実に殺しきる。
 ケンシロウの前では、隙も多く出そうにない。

「では、神楽の下へ行くとするか……」
「そうね急ぎましょう。あの子も心配だし……」

 ケンシロウとキュルケが、そんな事を言うが、ここで素直に行かせることは出来ない。
 エレオノールは、自分に支給された道具を思い出す。この場で、キュルケだけを連れ出すのには、あの支給品を使うしかない。

「少し待って欲しい。休憩してもキュルケの顔色は優れないだろ? 神楽も心配するぞ」
「……そりゃ、そうだけど」
「幸い私はメイク道具を持っている、と言っても道化師用の特殊メイクだがな」

 武器に使えないと思っていたサーカス用のメイク道具。
 これを使って、キュルケを脱衣所へと連れ込む。
 キュルケも、こちらの意図を理解したらしく、共に洗面所へと移動を開始する。
 ちなみに、ここで若干苦しい言い訳になるが、

「これはサーカスで使う特殊メイクだから。普段女性が見るものとは使い勝手がだいぶ違うのだ」

639 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:49 ID:JWcJ2/yc
 などと言っておいた。ただメイクするだけなら、一人でも出来ると言い出しかねないからな。
 もちろん、サーカス用の道具は映画の特殊メイクとは違うのだから、一人で使用することも可能だ。
 脱衣所に入ると、先ほど武器をしまいこんだ引き出しの位置を確認する。
 キュルケを鏡の前に立たせ、自分は「特殊メイクは人にしてもらわないと無理」と言い訳をして、鏡と彼女の前に立つ。
 ここでも、一つ笑顔を見せておく。本当に、サーカス暮らしは役に立つ。
 一瞬の隙を突いて、キュルケの背中側にある引き出しから、剃刀を取り出す。
 それを右手に持ち、鏡を見つめる彼女の視界に入らないよう、腰の辺りに隠しておく。
 そして、左手でメイク道具を持ち上げる。

(ここだ注意深く行け)

 左手に持っているメイク道具を、ポロリと落とす。
 キュルケの目が、それを追いかける。

「すまない、拾ってくれ」

 追い討ちをかけるように、彼女の意識をメイク道具へと集中させる。
 そして、キュルケが身をかがめたその瞬間。
 エレオノールは、剃刀を彼女の頚静脈に向けて振り下ろした。
 剃刀が、キュルケの首を引き裂いたことを確認する。
 頚静脈から流れ出た血の幾分かは、彼女の気管を通り、肺まで流れ込む。
 呼吸も、発声も出来ないまま、彼女は死ぬだけだ。
 だが、悠長に確認することも出来ない。外にはケンシロウが控えている。

 エレオノールはケンシロウと戦うことなど出来ないと判断して、そのまま風呂場の窓を破壊して逃げ出した。

640 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:51 ID:JWcJ2/yc


 神楽の下に行く前に、女性2人でメイクをするという。
 荒廃した世を当たり前に思っていたケンシロウにとって、メイクとは珍しい発想であった。
 メイクにどのぐらいの時間がかかるのか、一体どんな風に変わるのか。
 戦争前ならともかく、今の彼にそんな知識はない。

(懐かしいな……)

 女性が女性らしくあった時代を思い出す。
 エレオノールと出会って、少しだけキュルケが元気になったように思える。
 そう考えると、彼女と出会ったのは運が良かった。元気なキュルケを見ると神楽も安心するだろうし……

 そう言えば、神楽は元気にしているだろうか。
 あの娘がそう簡単に死ぬとも思えないが、ジャギさえ死んだ空間である。油断できない。
 いくら神楽が強いと言ってもラオウやDIOに襲われれば、それまでだ。
 出来る限り早く合流しなければならない……キュルケのために、神楽のために。

 そんな事を思っていると、脱衣所のほうからガラスの割れる音が聞こえてくる。

「何があった!!」

 女性2人でいる脱衣所。だがしかし、破裂音を聞いてはじっとしていられない。
 部屋の中に、強引に割ってはいるケンシロウ。
 そこには、首から血を流し続けるキュルケの姿があった。

「ま、まさか……」

641 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:52 ID:JWcJ2/yc
 エレオノールの姿はない。
 一瞬、困惑するが、直ぐに結論を出す。
 間違いなく、エレオノールが手を下したのだ。
 破られた窓から、彼女を追いかけようとケンシロウは動く。
 だが、それをキュルケが遮った。
 弱々しい力で。それでも確実に、ケンシロウの足を掴むキュルケ。
 振りほどこうと思えば、一瞬で振りほどける赤ん坊のごとき力。
 だが、ケンシロウにとっては何よりも強い。

「………フゥ…………ハッハ……」

 キュルケの口から、と言うより切り裂かれた首から風音が聞こえる。
 もはや彼女は、声を出すこともままならぬらしい。
 だが、それでもケンシロウはキュルケの意思を感じることが出来た。

「キュルケ………すまない………」

 優しく肩を抱き寄せる。

「ハァ……ヒュッ………」

 声にならないキュルケの意思。だが、ケンシロウには伝わる。
 そばにいて欲しい。キュルケは確かにそういっているのだ。
 抱きしめた腕に力を込める。
 キュルケは、そんなケンシロウに一瞬だけ腕を回して抱き返した。
 その体は、ほんのりと微熱を帯びていた。
642 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:54 ID:JWcJ2/yc
【キュルケ@ゼロの使い魔 死亡確認】
【残り28人】

【D-4 北東の民家。一日目 夜中】
【ケンシロウ@北斗の拳】
[状態]:カズマのシェルブリット一発分のダメージ有り(痩せ我慢は必要だが、行動制限は無い)全身各所に打撲傷
    キング・クリムゾンにより肩に裂傷 両目損失。吐き気はほぼ、おさまりました(気合で我慢できる程度)
[装備]:
[道具]:支給品一式、ランダムアイテム(1〜3、本人確認済み)
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない。
1:キュルケを埋葬する。
2:エレオノールを捜索、事と次第によれば殺害。(ただし、女なので手加減の可能性アリ)
3:アミバを捜索、事と次第によれば殺害。
4:ラオウ・勇次郎他殺し合いに乗った参加者を倒す。
5:助けられる人はできるだけ助ける。
6:乗ってない人間に独歩・アミバ・ラオウ・勇次郎・エレオノールの情報を伝える。
[備考]
※参戦時期はラオウとの最終戦後です。
※ラオウ・勇次郎・DIO・ケンシロウの全開バトルをその目で見ました 。
※秘孔の制限に気付きました。
※ラオウが無想転生を使えないことに気付きました。(ラオウは自分より過去の時代から連れて来られたと思っています)
※民家の前に消防車が止まっています。
※オリンピアが懸糸の切れた状態で消防車の助手席の後ろに座っています。
643 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:56 ID:JWcJ2/yc

<首輪についての考察と知識>
※首輪から出ている力によって秘孔や錬金が制限されていることに気付きました。
首輪の内部に力を発生させる装置が搭載されていると思っています。

<DIOの能力について>
※瞬間的に普段の数百倍の速度で動く能力だと思っています(サイボーグ009の加速装置のイメージ)



 エレオノールはあらん限りの力を尽くして、民家から逃走する。
 風呂の窓から抜け出した後は、まっすぐ。隣家の屋根に蹴上がり、屋根伝いに道路まで駆け出す。
 道路に出た後も、油断せずに走り、出来るだけケンシロウのいる民家から遠ざかろうとする。
 ケンシロウに追いつかれたらアウト。
 今の彼女には、そのことがはっきりと分かっている。だからこその逃走だ。

 数分、走りきり。安全だと判断したところで止まる。
 後ろを振り返るが、誰も来ていない。

(やったな……)

 まだ、たったの一人であるが、確かに殺した。
 その事に生まれて初めての達成感を覚える。
 そして、ケンシロウが追ってこないことに大きな安堵も。

(自動人形より、やはり疲れる)

644 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 08:57 ID:JWcJ2/yc
 こんな戦闘をしたことなど、今までに一度も無い。
 自分より圧倒的な強者が監視する中での戦闘。
 90年目にして初めて経験する、いけない出来事。
 この出来事により、消防車という足を失ったが、仕方ない。
 人間になるために、必要な行動だったと思えば諦めがつく。

 夜空の下。街灯の明かりだけが照らすその中を、エレオノールは歩く。
 不意に、初めて殺した少女、キュルケの言葉が思い出された。

〜・〜・〜

「ねぇ、話は変わるけど、私の親友にさ。タバサって娘がいてね。ちょっとエレオノールに似てるのよ」
「ほう……」
「あまり、笑わない子でね。エレオノール………みたいに……無表情でさ……」

 キュルケは、言葉を詰まらせながら話す。
 そう言えば、先ほどの放送でタバサという名前が流れたような気がする。
 どうでもいい名前なので、はっきりとは覚えていないが、それでもキュルケの態度からしてそうなのだろう。

「私に似ている、その娘も人形なのか?」

 エレオノールはほんの少し興味を持った。
 同じ人間で、自分と似たような境遇の者がいるというのなら、そこにも人間になるヒントがあるかもしれないからだ。

「ううん、あの娘は人形とは言われていなかった。でもね……無表情なままで喋る所なんて本当にそっくり。
……………………駄目ね、こんな事、思い出しちゃ」

645 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 09:02 ID:JWcJ2/yc
 言葉が詰まることはなくなったが、キュルケは代わりに涙を流している。
 よほど大切な友人だったのだろう。

「そうそう、人形って言えばね。あの娘の名前『タバサ』ってのは、本当は、彼女が幼い頃に買ってもらった人形の名前らしいのよ。
色々事情があって、自分の名前を名乗れなくなって………それで、幼いのに人形って……」
「キュルケ……」

 ケンシロウが、キュルケの手を掴み語りかける。
 優しい表情で、キュルケのほうを向く。ただそれだけで、キュルケは大きく泣き崩れてしまった。

「大切な友人だったのだな……」

 エレオノールはたった一言だけ、そう呟いた。

〜・〜・〜

「ふん、人形の名を名乗る娘か……」

646 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 09:03 ID:JWcJ2/yc
 そう言えば、自分はエレオノールと名乗っている。
 この名は、素晴らしい名だ。正二おじい様に頂いた無二の名前。
 だが。これは……

「エレオノールとは、人間に渡した名だったな……」

 下らない事かもしれない。
 だが、今の自分は人間ではなく人形。
 この事は紛れも無い事実なのである。とすれば、その自分がエレオノールを名乗って良いのだろうか……

「正二おじい様……あなたの下さった名前は素晴らしい名前です。
エレオノールとは、私にとって宝物です」

 だが、だからこそ。

647 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 09:03 ID:JWcJ2/yc
「ですが、人形である今の私に、この名は重過ぎます。
いつか人間になるその日まで、どうかこの名を捨てることをお許しください」

 そうなのだ。
 繰り返すが、今の自分は人間ではなく人形。
 とすれば、タバサとか言う娘のように自分に相応しい名を考えるべきだ。
 機械仕掛けの神に支配される現状に相応しい名。
 それを名乗り、その神の支配を逃れた後に、再びエレオノールを名乗る。
 分相応と言うものをエレオノールは知ったのだ。
 そして、新しい名前は既に考えている。

「機械仕掛けの神よ、貴方が作りたもうた生命は私を除き唯一つ。自動人形のみ。
であれば、私の名乗る名は決まっている……」

 そう、あれしかない。

「私の名は、フランシーヌだ」


 こうして彼女は、新しい名前を夜空に向かい呟いた。
 空からは、雨粒がほんの少しだけ、落ちてきた。
648 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 09:04 ID:JWcJ2/yc
【D-4 南部(路上)/1日目 夜中】
【才賀エレオノール@からくりサーカス】
[状態]:精神不安定
[装備]:なし
[道具]:青汁DX@武装錬金、ピエロの衣装@からくりサーカス、支給品一式
[思考・状況]
基本:加藤鳴海以外を皆殺し
1:人形以上に強力な武器が欲しい。
2:殺戮を繰り返せば、ナルミは笑ってくれるはずだ……。
3:強い者とは無理に戦わない。
[備考]
※参戦時期は1巻。才賀勝と出会う前です。
※夢の内容はハッキリと覚えていますが、あまり意識していません。
※エレオノールが着ている服は原作42巻の表紙のものと同じです
※ギイと鳴海の関係に疑問を感じています。
※メイクは落としました
※フランシーヌの記憶を断片的に取得しています。
※「願いを叶える権利」は嘘だと思っています。
※制限についての知識を得ましたが、細かいことはどうでもいいと思っています。
※ケンシロウとキュルケを恋人同士だと思っています。
649 ◆9igSMi5T1Q :08/01/27 09:05 ID:JWcJ2/yc
投下終了
650Classical名無しさん:08/01/27 09:30 ID:.7F0yNAI
投下乙!
支援間に合わなくて申し訳ない!
なんでエレがケンとキュルケとチーム組んだのかなと思ったら……こ!こういう事かぁー!
緊張感漂う会話シーンハラハラしながら読ませてもらいました。
キュルケ……お前は頑張ったよ、あっちでタバサ達と仲良くやるんだぞ。
エレとケンの今後が気になる展開ですね、GJ!
651Classical名無しさん:08/01/27 09:47 ID:YQ5kWrDM
投下乙ー
ケンはエレの殺気とか分からなかったのか・・・
652Classical名無しさん:08/01/27 12:28 ID:hrO1Dw2E
投下乙
キュルケも逝ったか…ゼロ魔勢はみんな壮絶な逝き方をしたがこれもまた運命とやらか
タバサの名前の由来とかフランシーヌと名乗るとか、見事なクロスオーバーでした
653Classical名無しさん:08/01/27 15:34 ID:IbLtZWw6
投下乙
キュルケ…あまりにあっけなさすぎる…
だがそれがバトロワらしい
ケンシロウがこの後どう動くか、エレオノールは逃げ切れるか
とてもいい作品でした
GJ!!
654Classical名無しさん:08/01/27 17:27 ID:ECbJT1Xg
投下乙!
エレオールてめえ、貴重なおっぱいをw
騙しあい、化かしあい。
これぞロワといわれる事を実感させる良作でした。
GJ!
655Classical名無しさん:08/01/27 17:33 ID:ZWduLGJA
投下乙! ケンしっかりしろ!w
この2者の視点から見ていくってのは素晴らしい。
キュルケ側の視点では見えてこなかったものも、エレ視点で見るとはっきりします。
殺す側と殺される側両者の思惑が見えてGJ!
656 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:03 ID:509yC7.o
大変お待たせしました。今から投下します
657Classical名無しさん:08/01/27 19:04 ID:ECbJT1Xg
   
658Classical名無しさん:08/01/27 19:04 ID:ECbJT1Xg
     
659Classical名無しさん:08/01/27 19:04 ID:l3S3mblA
 
660月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:05 ID:509yC7.o
――Scene1:いかがわしい本屋内――

こなたは悩んでいた。既にシェリスは本屋を通り過ぎ本屋は静寂と闇が支配している。
出て行こうと思えば出て行けた、シェリスにも声をかけられただろう。
しかし、それを躊躇わせたのはシェリスの格好である。
短い付き合いではあるが、シェリスが好んであのような扇情的な服装で平然と街中を歩くような人間ではないことぐらいはわかったつもりだ。
何より、その服に着替える理由がないのだ。風呂に入る前、シェリスが転んでゴミ箱に突っ込んだ時ならばわかる。
だが何故今この時に着替える必要があるのだろうか。
また転んだという可能性もあるがそれにしては小奇麗過ぎたのでこの可能性はあまり考えられないだろう。

「まさか、ね」

こなたの脳裏に『シェリスがDIOの仲間になったのでは?』という考えが浮かんだ。
しかし、こなたはその考えを否定する。否定したかった。
風呂場での一時や、昆虫怪人との逃走劇。繁華街での食べ歩き。
確かにシェリスは裏で何かを考えていた節はあった。それでも、こなたはシェリスの事も仲間だと考えていた。だから、裏切らないと信じていたかった。
そして、こなたの脳裏にもう一人の仲間の姿が浮かぶ。

「パピヨン……」

こなたの顔が曇る。
この殺し合いの場で一番長く一緒にいたであろうパピヨン。
変わり者同士、色々と話の合ったパピヨン。
自分を彼なりに励ましてくれたパピヨン。
――みゆきを殺した男と同じ、『人食いの怪物』のパピヨン。

(違う、パピヨンは違う)
661月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:06 ID:509yC7.o
パピヨンはあんな奴とは違う。
大きく頭を振って、こなたは最後に浮かんだ考えを否定する。
パピヨンの反応からして『人食いの怪物』というのは本当なのかもしれない。
だが、パピヨンはみゆきを殺したあいつとは違う。そう、こなたは思う。
第一に、そうであったとしてもパピヨンは自分達を食べずに、あまつさえ量こそは多かった物の普通の食事を摂っていたのだ。
それはつまり、自分達を食べる意思が無いと言う事。ならば何を怖がる必要があるのだろうか。
そう、自分に言い聞かせても、こなたは動く事はできなかった。
初めてこの殺し合いの場で感じた圧倒的な『恐怖』。
未だこの近くにいるであろう、みゆきを殺したDIOに対する恐怖が彼女をこの場に縫い付ける。
今、彼女は一人。戦闘に使える支給品はあれど非力な少女である。
もし、DIOに見つかってしまったら……、こなたの背筋に寒気が走る。

(でも、なんとかして喫茶店に着かないと……)

喫茶店、パピヨン達と一旦戻ろうと決めたあの場所にパピヨンや他の人も来ているかもしれない。
恐怖に震える体に喝を入れる。ここにいた所で事態は好転しない、そう怯える自分に言い聞かせ、デイパックから核鉄を取り出し、小声で告げる。

「武装、錬金」

核鉄が展開し、エンゼル御前が姿を現す。

「俺、再び参上!」
「しーっ!」

ポージングをしながら大声を出す御前の口をこなたは慌てて塞ぐ。

「むぐぐ……、ぷはぁ。いきなり何するんだよこなたん〜」

非難の目でこなたを見る御前だが、ふと、自分とこなた以外にこの場に誰もいない事に気づく。
662月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:07 ID:509yC7.o

「あれ? ぱっぴー達は?」
「話すと長くなるからかいつまんで言うとだね、私たちは今それぞれバラバラにはぐれちゃったの。だから、一旦集まるって約束した喫茶店に向かおうと思うんだ。ここまでいい?」

こなたの問いに御前は首を縦に振る。

「それで喫茶店に着くまで御前様には私の目が届かない所をカバーして欲しいんだけど、頼めるかな?」
「おう! そんな事でいいのか? 大丈夫大丈夫、俺に任せておきなって」

こなたの頼みに御前が胸を張って答える。
その姿にこなたは自然と頼もしさを覚える。不思議と先程までの恐怖は少し薄らいだ。

「それじゃ行こうか」
「おう! しゅっぱーつ!」

こうして一人と一体は夜の闇の中喫茶店へと足を進めた。

――Scene2:喫茶店内

喫茶店に到着し待つこと数十分。一向に誰かが来る気配の無いこの状況に一行は不安を覚えていた。
喫茶店で待ち合わせを約束したパピヨン達は一向に姿を見せる機会が無いのだ。不安になるのもいたしかたない。
自分達の様に何かあったのではないか? そんな思いに駆られる。
時間は7時に指しかかろうとしている、このままでは赤木との合流には間に合いそうにない、それでもせめて一人だけでもここに来てくれる事を祈って、彼らは待ち続けている。
663月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:08 ID:509yC7.o

「やっぱり、探しに行った方がいいんじゃねぇか?」
「だとしてもそれですれ違いになるのはなぁ、どこに行ったのか見当もつかねえし」

そう、探しに行きたくても彼らの所在がわからないのだ、最悪すれ違いにでもなればたまったものではない。

「なら、俺だけでも……!」
「よかった〜、電気がついてたからもしやと思ったけど。知ってる人がいてよかったよ」
「おっ! 俺の元持ち主もいるじゃねーか!」

そう言って鳴海が一人出かけようとした時、泉こなたとエンゼル御前が喫茶店の裏口から入ってきた

――Scene3:喫茶店内

こなたの口から独歩達と分かれた後に起こった事が伝えられた。
赤昆虫人間、ストリップ劇場にいるDIO、動転し、パピヨンを置いて逃げて来てしまった事、そして様子のおかしかったシェリス。

「……DIOって野郎はストリップ劇場にいるんだな?」

こなたがうなずいたのを確認すると、鳴海は「そうか」とだけ呟き、こなたを力強く抱きしめた。

「よくここまで来てくれたな、怖かっただろうによ」

突然の抱擁に呆気に取られるこなたの頭を撫でながら鳴海は微笑む。

「安心しな後は俺が……」
「鳴海よぉ、まさか、一人で行くっていうんじゃねえだろうな」

独歩が鳴海を牽制するように尋ねる。
664月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:09 ID:509yC7.o

「……駄目かい?」

鳴海の口調から感じられる隠し切れない怒気。
刃牙という少年を狂わせ、承太郎を殺したばかりか、虫けらのようにこなたの友人である少女も殺した吸血鬼。
そのような男を野放しにはできない、かと言って全員で行けば彼女達に危険が及ぶ。
だからこそ鳴海は一人でDIOを倒そうと決意していた。

「生憎と、俺も野郎には借りがあるからな。こればっかりは譲れねぇよ」

独歩の目に一瞬だけ映った殺気。
刃牙がおかしくなった元凶であるその男。
勇次郎、いや、戦う気の無い無抵抗な人間すら殺す勇次郎以上の外道であるその男を生かしてはおけないと考えるのは独歩も同じであった。

「それに、シェリスの嬢ちゃんの事も気になる」

こなたから聞いたシェリスの様子がおかしい事はこの殺し合いが始まってからほとんどの時間を一緒にいた独歩がよくわかっていた。
シェリスも、刃牙と同じように、DIOと会ってから様子がおかしくなったと聞く。
嫌な予感が頭から離れなかった。
もしも、彼女もDIOの魔の手にかかっていたとしたら……。
繁華街に向かう途中、楽しそうに想い人である劉鳳の事を話していたシェリスの事を思い出す。
665Classical名無しさん:08/01/27 19:09 ID:l3S3mblA
 
666月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:10 ID:509yC7.o

「もしも野郎が嬢ちゃんに何かしたとあっちゃあ、尚更俺が野郎をぶちのめさなくちゃならねぇ。それに、俺の方がお前よりも体力は消耗しちゃいねぇし傷らしい傷もねぇ。だから……」
「独歩さんの言う事もわかる、それでも駄目だ。独歩さんはここに残って二人を守ってくれ。パピヨンって奴もここに来るかもしれないんだ。だからここで皆で待ってて欲しい。
俺の怪我だって生命の水の効果で殆ど治ってるし……」

どちらも思う事は一緒、そして揺らぐことのない決意。だからこそ互いに引くことはできない。


「ええい! 大の大人が二人してごちゃごちゃと。こんなところで言い合いしている暇があるなら皆で行けばいいじゃないか」

遅々として進まない状況に苛立ちを覚えたナギの一喝。
場の全員の顔がナギへと向く。

「どっちが倒すかなんてどうでもいいだろ! そんな奴に遠慮はいらん、二人でボコボコにしてやればいいではないか!」
「何言ってるんだ!? それじゃあお前等が……」
「ん〜、私もナギの意見に賛成かな。」

ナギの意見にこなたが賛同する。
667Classical名無しさん:08/01/27 19:10 ID:ECbJT1Xg
     
668Classical名無しさん:08/01/27 19:12 ID:ECbJT1Xg
    
669月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:13 ID:509yC7.o

「こんなに時間が経ってもパピヨンが来ないって事はきっと私たちを探しているかまだ戦っている筈だと思うんだよね。だったら私も早く合流したいし、もしかしたらDIOの情報を何か握ってるかもしんない」
「それに私にはスパイスガール、こなたにはエンゼル御前がある。こなたのエンゼル御前は後方支援が主だし、スパイスガールは機転が利く。危ない真似も極力しない、だから――」
「駄目なもんは駄目だ!」

ナギの頼みも鳴海は拒絶する。独歩も賛同する気はないようだ。

「力があってもお前達は子供なんだぞ! そんな危ない真似させる訳にいくか!」
「私だって鳴海一人に危ない真似をさせる訳にはいかない!」

鳴海に負けじとナギが言い返す。

「私はお前の仲間だ! 三千院家の頭首たる者が仲間を見捨てる訳にいくか!」

鳴海に言い返す暇も与えずにナギが続ける。

「私たちは仲間じゃないか、鳴海が私達の力になってくれるなら、私達も鳴海の力になる」

喫茶店は静まり返り、BGMだけが流れている。

「……仕方ねぇな」

独歩が沈黙を破った。

「おい、独歩さん!!」

何か言おうとした鳴海を独歩が手で制した。
670月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:14 ID:509yC7.o

「ただし、俺達が危ないと思ったらすぐにお前等の事を逃がすぜ、いいな?」

その問いに、ナギとこなたは首を縦に振った。
それを確認すると、独歩は鳴海と向き直る。

「こんなところで言い合いしてる暇はねぇ、ナギの言う通りだ。ここは大人の俺らが譲歩するしかねぇよ。な? そうだろ鳴海よぉ」

それでも不満そうな顔していた鳴海だが、ナギ達の真剣な視線に、ついには観念した。

「……わかった。でも危なくなったらすぐ逃げるんだぞ? いいな」

それを聞いて、ナギとこなたは表情を明るくした。

「まったく、これだから子供はよ」

鳴海が苦笑交じりに呟く。
それを聞き逃さなかったナギが不満げに頬を膨らました。

「こら、子供扱いするんじゃない!」
「そうだよー私だってこれでも17歳なんだから」

こなたの発言に場の空気は凍りついた。
こなた以外の三人+一体の表情が驚愕に染まる

「じゅ、17歳だとぉ? お前、俺のたった二つ下だったのか!?」

今度はそれを聞いた鳴海以外の三人+一体が信じられないといった表情を浮かべる。
鳴海の発言に場は更に凍りついた。
加藤鳴海19歳。
泉こなた17歳。
外見だけ見れば相当離れて見えてもおかしくないこの二人、その年の差僅か二年である。
671Classical名無しさん:08/01/27 19:14 ID:ZWduLGJA
                     
672月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:15 ID:509yC7.o

――Scene4:繁華街裏通り・ストリップ劇場前――

「……ここか」

こなたの案内により辿り着いたストリップ劇場。
ストリップ劇場の中から確かに感じられる圧倒的な威圧感。
それはつまり、ここには誰か、それも一筋縄ではいかないような力を持つ何者かがいるという事を意味している。
一刻も早く着きたかったが、四人も乗る事はできなかったので黒王号は喫茶店に待たせてある。

(帰ってきたんだ)

一番後ろにいるこなたは自分の体が恐怖に震えているのを感じた。
自分が改めてこの場が殺し合いであるという事を思い知らされた場所。
今にも恐怖に押しつぶされそうになる。それでもパピヨン達が心配なのだ。その一心でここまで来たのだから。
こなたが意を決するのと同時に、彼女の首に何者かの腕がかかった

「こなたーん!!」

御前が叫び、全員が振り向く。しかし遅かった。

「動かないで」
673Classical名無しさん:08/01/27 19:15 ID:ZWduLGJA
                       
674Classical名無しさん:08/01/27 19:16 ID:l3S3mblA
 
675Classical名無しさん:08/01/27 19:16 ID:ECbJT1Xg
     
676月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:16 ID:509yC7.o
振り向いた三人の目に映った物、それは、喉元にナイフを突きつけられたこなたと、そのこなたを抱きかかえるようにしてナイフを喉元に突きつけているシェリスの姿だった
鳴海と独歩は心の中で舌打ちをしていた。ストリップ劇場から感じられた気配にばかり集中し、周りの気配を探るのを怠っていた。

「また会えたねおじさん、それと、知らない人達がこなたちゃんの言っていた仲間かな」

まるで、朝に偶々居合わせた知り合いでも話すかのような調子でシェリスは話しかける。
こなたを人質に取られ、鳴海達は動こうにも動けない。

「……あんた、DIOって野郎に何かされたんだな?」
「……そっか、やっぱりDIO様の事、こなたちゃんから聞いたんだ」

強烈な敵意にあてられても尚、シェリスは笑顔を崩さずにそう答えた。
DIO『様』。その言葉だけで充分だった。

「嬢ちゃん、何でだ」

独歩が悲痛に満ちた顔で尋ねる。

「DIO様はね、約束してくれたの。劉鳳と一緒にしてくれる。一緒に脱出させてくれるって、永遠の命を授けてくれるって」

シェリスは子供の様に目を輝かせて答える。
鳴海はその表情を少し前に見ていた。
DIOの事を話す刃牙と同じ表情、DIOという人間に心底心酔してしまった者の表情だ。

「お前、本当にそんな事信じているのか!? DIOという奴が約束を守ると思っているのか?」
「ええ、もちろん」
677Classical名無しさん:08/01/27 19:16 ID:ZWduLGJA
                                  
678月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:17 ID:509yC7.o
ナギの問いにシェリスは即答した。

「DIO様の言う事は絶対だもの」

肉の芽により忠実な下僕となったシェリスは怖気がするほどに曇り一点のない笑顔でそう言ってのけた。

「で、あんたは俺達を倒しに来たって事か」
「勘違いしないで、ただ私はDIO様に案内しろって頼まれただけよ」

鳴海の鋭い視線をシェリスは気にも留めずに続ける。

「実はね、私、DIO様への生贄を探している時、偶然に貴方達を見つけたの。本当にびっくりしたんだから。
おじさんとこなたちゃん、それに知らない二人がDIO様のいるここに向かってくるから、私も慌ててDIO様の元に戻ってその事を伝えたわ。そしたらね」

シェリスが鳴海を見る。

「DIO様があなたとお話がしたいんですって」
「なんだと?」

何故自分を呼ぶのであろうか、鳴海の頭に疑問が浮かぶがそれはシェリスの言葉により中断される。

「だから私のすることは人払いって事」

そう言うとシェリスはこなたを連れ、後ろへと下がる。

「私は逃げる。おじさんとそっちの女の子が私を追う。もしも二人が来なければ……わかるわよね?」
「皆、私の事は……」
「駄目だよこなたちゃん。皆、そんな薄情な人じゃないんだから。それと、エンゼル御前、だっけ?それは戻してくれないかな」

この状況では言いなりになるしかできず、こなたは仕方なく武装解除し御前は核鉄に戻った。
変わらずに笑顔を浮かべ、シェリスは徐々に距離を離していく。
679Classical名無しさん:08/01/27 19:18 ID:ZWduLGJA
                           
680Classical名無しさん:08/01/27 19:18 ID:l3S3mblA
  
681月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:18 ID:509yC7.o

「鳴海よぉ、俺ぁこれ程自分が無力だと思った事はねぇよ」

独歩が苦虫を噛み潰したような顔を浮かべる

「だが指名されたんならしょうがねえ、嬢ちゃん達は俺にまかせな。その代わり……」
「ああ」

ただならぬ気配に独歩が鳴海の表情を見る。

「野郎は必ず」

加藤鳴海は怒っていた。女子供であろうと平気で狙い、人の想いを利用し凶行をさせるDIOという男に。

「俺が叩きのめす」

そこには一人の悪魔がいた。

「だから、行ってくれ」
「おうよ、だがな、死ぬんじゃねえぞ」
「ああ、まだやらなくちゃいけない事があるしな」

そう行って二人はかすかに笑った。

「ナギ、無理はするんじゃねえぞ」
「それはこっちの台詞だ馬鹿者! お前は私の仲間なんだからな、こんなところでやられたら許さんからな!」
「へっ、そんな怖い激励をされちゃあ、尚更負けられねえな」

そう言っておどけると、鳴海はストリップ劇場へと足を進める。
682Classical名無しさん:08/01/27 19:19 ID:ZWduLGJA
                         
683月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:19 ID:509yC7.o

「さてこっちも追いかけっこを始めるかい。ナギよ、ちょいと荒っぽいが勘弁してくれよ」
「うわわ! いきなり何をする」

そう言うと独歩はナギを無造作に抱え上げ、ナギが不満を言う。

「あはは、それじゃあこっちよ。ついてきてね!」

そう言うとシェリスは駆け出した。

(鳴海、絶対に死ぬんじゃねえぞ!)

シェリスの後を追い、独歩は駆け出した。

「首を洗って待ってやがれDIO」

そして鳴海は、DIOの待つストリップ劇場の中へと足を踏み入れる。
ギイ、とステージへと続くドアが開かれた。
静まりかえった舞台の上、四色のスポットライトの上に置かれたソファの上で、こなた達が遭遇した時とまったく変わらず、DIOは腕を組み、笑みを浮かべ鎮座していた。

「ようこそ、加藤鳴海君」
「テメェがDIOか」

人間という種を超越しているからこそできる、絶対的強者が浮かべる全ての者を見下した笑みを浮かべるDIO。
そしてそのDIOを憤怒の表情で睨みつける鳴海
684月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:20 ID:509yC7.o

「ほう、名前を知っていても動揺しないという事は、こなたから聞いたか。私の所持していたプロフィールの事を」
「ああ、他にも色々と我慢できねぇ話も聞いた」

鳴海が腰を落とし半身を前に出す、三式立ちの構えを取る。
対するDIOは舞台から降りたものの依然として腕を組んだまま

「何で、俺を呼んだ」
「何、単にしろがねとやらの血が気になっただけだ。他意は無いよ」
「そうか」

周囲の空気が張り詰める。

「なら遠慮なくテメェをぶちのめすことができるぜ!!」

鳴海が踏み込む。

「ふん、確か形意拳だったか。人間がちょいとばかし鍛えただけでこの『ザ・ワールド』の拳に勝てる訳がないだろう」

突っ込んで来る鳴海対してDIOの体から金色の人形『ザ・ワールド』が現れ、ボディーブローが放たれる。
『ザ・ワールド』の拳が鳴海に直撃することは必至、このまま行けば、何かがめり込む鈍い音とともに鳴海が吹き飛ぶ事になるだろう。しかし。
685月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:21 ID:509yC7.o

パン!

小気味のいい音と共に『ザ・ワールド』の拳が横に逸れた。
そしてその事にDIOが驚愕する暇も無く、勁を込めた拳が『ザ・ワールド』の頭部を捉えた。
自分の放った攻撃を受け流し、こちらへと攻撃を放つ相手、それは今までDIOが戦ったことの無いタイプの人間であった。
追撃を避けるためにDIOは跳躍し舞台の上に降り立つ。

「生命エネルギー、確か『気』とか言ったか、波紋には及ばないが少々堪えるな」
「さっきの人形がテメェの力か?」
「いかにも。これが我がスタンド『ザ・ワールド』、名の通り世界を制する力だ。まあ他にも色々と力はあるがね。例えば、『自らの下僕を作る能力』とか」

その言葉に鳴海が反応した事にDIOは内心ほくそ笑んだ。
実力で勝つのが困難なようであれば策を弄する。
それがDIOという男の戦い方だ。

「それでテメェは乗る気も無かった刃牙もシェリスも下僕にしやがったってのか!?」

怒りに任せて鳴海が吼えた。
その内容に一つだけ間違いがある事を知り、DIOは笑顔を浮かべた。

「……一つだけ、貴様は勘違いをしている。刃牙は彼の意思に関係なく我が配下にした、それは認めよう。しかし、シェリス・アジャーニは違う。彼女は自らこのDIOに仕える事を望んだのだ」
「何……だと……!?」
686Classical名無しさん:08/01/27 19:21 ID:ECbJT1Xg
              
687Classical名無しさん:08/01/27 19:21 ID:HzEyNzBI
 
688Classical名無しさん:08/01/27 19:21 ID:l3S3mblA
   
689Classical名無しさん:08/01/27 19:21 ID:ZWduLGJA
                          
690Classical名無しさん:08/01/27 19:21 ID:CtekSvJk
 
691Classical名無しさん:08/01/27 19:22 ID:l3S3mblA
 
692月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:22 ID:509yC7.o
我が耳を疑った。信じられなかった。シェリスと独歩が言っていた少女が、自分からこの男に、平気で人を殺したこの男に協力した。その事が信じられなかった。
一瞬の動揺、そしてそれを見逃すDIOではない。
跳躍、距離を詰める。

「どうした? ガードがお留守だぞ?」

『ザ・ワールド』の拳が鳴海の腹にめり込む。

「無駄無駄……」

息つく暇も与えずに『ザ・ワールド』は無数の拳打を放つ

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄
無ゥ駄ァッッッ!!!」

『ザ・ワールド』のラッシュを諸に受け鳴海が吹き飛び、観客席へと突っ込む

「ぐ、う……」
「ほほう、あれで尚生きているとはしろがねとやらも大した生命力だな」

無数の拳を受け、血まみれとなって尚、動こうとする鳴海。
しろがねの耐久力にDIOが感心する。

「しかし、刃牙もシェリスも傑作だったよ」

DIOが嘲笑混じりに喋りだす。
693Classical名無しさん:08/01/27 19:22 ID:ZWduLGJA
しえん
694月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:23 ID:509yC7.o

ピク

その言葉に鳴海が反応したのを確認し、DIOは続ける。

「刃牙は父親、勇次郎だったかな? 彼を超えると言っていた。みゆき達の吸殻を見たときは怒り狂ってね、流石の私も危なかったよ。
だが『ザ・ワールド』の前には彼も勝てず、私に敗北し、忠実な下僕になった。さっきまで殺人者に怒りを覚えていた少年が殺人者に手を貸す。よくできた悲劇じゃないか」

さも楽しそうに、DIOは語り続ける

「シェリスという女は、私を利用する気だったようだ。何よりも劉鳳に会いたいんだそうだ。だが、劉鳳という男は私の軍門には降らないであろうな。
だからシェリスは使い潰すだけ潰す。全てはこのDIOの勝利の為にな」

ストリップ劇場にDIOの高笑いが木霊する。

「うるせえよ」

静かな、底冷えのする声が響く。
鳴海が立ち上がる。
全身には痛々しい打撲跡といたるところからの出血。
そして地獄の鬼であれ、泣いて許しを請うであろうその表情。
怒れる悪魔がそこにいた。

「ふむ、怒ったか? そして今からその体でこのDIOを倒そうと言う訳だ」

口元に嘲笑を張り付かせたまま、DIOが挑発をする。

「テメェはもう喋るんじゃねえ。そのふざけた笑顔ごと俺がブチ壊してやる」
「ほう、ならば試してみろ! このDIOに対してなぁ!!」
695Classical名無しさん:08/01/27 19:23 ID:l3S3mblA
    
696Classical名無しさん:08/01/27 19:23 ID:CtekSvJk
俺よか、支援できる!
697Classical名無しさん:08/01/27 19:24 ID:ZWduLGJA
               
698月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:24 ID:509yC7.o
獣の如き雄たけびと共に鳴海が踏み込む。
勝った。DIOはそう確信する。
怒りは精神を滞らせ、視界を狭くし、いずれは負ける。DIOはそう信じているし、実際はそうだ。
だがそれは悪手。
DIOは知らない、鳴海と戦った刃牙が同じ考えを持った事を。
DIOは知らない、加藤鳴海という人間は、どんなに怒ろうとも身についた戦いの体裁き、そして心の置き所は見失わない事を。
鳴海の突きを軽々と避け、お返しとばかりに『ザ・ワールド』の右ストレートが鳴海へと迫る。
だが、それを鳴海は躱す、拳が何も無いところを打つ。そして

ドン

「ごふぁぁっ!?」

形意拳五行拳の一つ、崩拳。
相手の攻撃に合わせ中段突きを放つカウンター技。
気を練りこんだその一撃にDIOは大きくよろめく。

「オオオオオオオオオオオッッッッッ!!!」

休ませる暇無く鳴海が駆ける。
699月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:25 ID:509yC7.o

「いい気になるなよ糞がッ!」

飛び込む鳴海の頭部を西瓜割りの西瓜の如くかち割らんと、『ザ・ワールド』の拳が迫る。
だが、それは、鳴海の両手の最小の動作によって上方へと跳ね上げられる。
そして、その両手がDIOの胸板を捉えた。
形意拳十二形拳の一つ『虎拳』を崩拳の名手である郭雲深が、獄中で手枷をつけられたままでも仕える技として変形させた、より小さい動作で放つ『虎拳』、名を『虎撲手(コボウシュ)』。
崩拳に続きまともに技を受け、たまらず吹き飛んだDIOの体はパピヨンとの戦闘で崩壊していた劇場の壁から外へと出る。

「『ザ・ワールド』!」

鳴海が動くより早く、『ザ・ワールド』が時を止めた。
ここから鳴海のいる場所までは1秒以上かかる、鳴海に対して攻撃はできない。
だから、DIOは逃走を選択した。

「ぐ……、甘く見ていた……、スタンドも使えないイエローモンキーだと……、気とやらのせいで予想以上のダメージも受けた。
とにかく今はシェリスと合流し人質の血を我が糧とするのが先決か。負けは無い、承太郎が死んだ今、このDIOに負けなどないのだ!」

DIOは跳躍する。そして、時は動き出す。
鳴海が気づいた時、DIOはすでに彼方へと跳躍していた。
いつの間にあそこまで飛んだのかはわからない、だが鳴海はそれを考えるよりもDIOを追う事を先決とした。
700Classical名無しさん:08/01/27 19:25 ID:l3S3mblA
  
701Classical名無しさん:08/01/27 19:26 ID:CtekSvJk
支援
702Classical名無しさん:08/01/27 19:26 ID:ZWduLGJA
                      
703Classical名無しさん:08/01/27 19:26 ID:l3S3mblA
 
704月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:27 ID:509yC7.o

「野郎、逃がすかよ……!」

ぼろぼろの体で、鳴海もまた追跡を開始した

――Scene5:繁華街――

店が連なる道路でシェリスは独歩・ナギと向かい合う。
状況は膠着状態だがそれこそがシェリスの任務なので問題は無い

(私、どうなっちゃうんだろう?)

ナイフを突きつけられ、人質となっているこなたは考える。
独歩とナギが動こうものならナイフは躊躇いなく自分の喉を掻き切るだろう。
シェリスが逃走に成功すれば自分に待っているのはDIOの餌だ。

(どっちも嫌だなぁ)

走馬灯のように今までの出来事が頭に浮かぶ。
平和な日常、日常の崩壊と首が吹き飛んだメイドの少女、ハヤテ・カズキとの遭遇、勝の決意、シェリスとの逃亡劇、ナギ・独歩・鳴海との喫茶店での邂逅、そして…

『くだらん。万物は流転するがそれでもなお変わらない不変の物を指して蝶サイコーと言うのだ』

迫り来る死の恐怖の中思い出す、パピヨンとの馬鹿馬鹿しくも愉快な会話。
時折理解しかねる行動をとる時もあるけれど、この殺し合いで一番打ち解けた、頼りがいのある仲間。
705Classical名無しさん:08/01/27 19:28 ID:ZWduLGJA
                            
706Classical名無しさん:08/01/27 19:28 ID:ECbJT1Xg
         
707月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:28 ID:509yC7.o

(パピヨン、せめて最後にもう一回会いたかったな)

あんな別れ方が最後なのは嫌だな、思考の片隅でそんな事を考える自分がいた。

「……ピ……ン」
「ん? こなた、何か言った?」

こなたが何かを呟いたのをシェリス聞き逃さなかった。

「パピヨン、パピヨーン!」

これが最後になると思った時、こなたは何故かパピヨンの名を叫んでいた。
そんなこなたに対し、シェリスは嘲笑を浮かべる。

「何言ってるのよ、ヒーロー物じゃないんだからそんな事で来る訳が……」

無い。そう言おうとしたシェリスの右腕、ナイフを持っている方の手が突然引っ張られ、こなたの喉元を離れた。

「それが来るんだな。これが」

後ろから聞こえるのは聞きなれた声、そしてその姿が月光に照らされ露になっていく。
ぴっちりとしたエレガントなスーツに蝶々のマスク。そうパピヨンその人である。
708Classical名無しさん:08/01/27 19:28 ID:CtekSvJk
そうだ、これが我が支援経路だ
709Classical名無しさん:08/01/27 19:28 ID:l3S3mblA
   
710Classical名無しさん:08/01/27 19:28 ID:ECbJT1Xg
            
711Classical名無しさん:08/01/27 19:29 ID:CtekSvJk
ヒーローは遅れてやってくる、支援
712Classical名無しさん:08/01/27 19:29 ID:5m7JDghQ
何というヒーロー支援
713月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:29 ID:509yC7.o

「お前達を探していたら泉の声が聞こえたんで来てみれば……。泉こなたには手を出すな。そう忠告しておいた筈だが?」

そう言うとパピヨンはもう片手で、こなたを拘束していたシェリスの腕を強引に引き剥がすと、ヤクザキックでシェリスを蹴り飛ばした。
人外の怪力で蹴り飛ばされたシェリスは宙を舞い地面と擦れる。

「パピ……ヨン?」

呆けたようにパピヨンを見、彼の名前を呟くこなたに対し、パピヨンはチッ、チッと指を振る。

「パピ♪ヨン♪ もっと愛を込めて」

何か言おうとするこなたを制してパピヨンはこなたの手に頭を置く。

「泉、確かに俺は人食いの化け物だ。お前が怖がるのも無理はない。だがな、今日今まででお前に見せた俺も、紛れも無く蝶人パピヨンたる俺自身の姿だ。それだけは覚えておいけ」

パピヨンはそれだけ言うと、すぐにシェリスの方に向き直る。
そんなパピヨンを見てこなたの顔に自然と笑みが浮かぶ。
今まで一緒にいたパピヨンも紛れも無くパピヨン自身。それだけで、こなたには充分だった。

「さて、お前はDIOの軍門に降ったんだ。判っているんだろうな」

ヒ、とシェリスの口から短い悲鳴が漏れた。
シェリスは知っている。パピヨンという男は敵に回れば容赦しないと言う事を。

「ちょっと待っちゃくれねえか」

独歩の静止にパピヨンが立ち止まり、ジロリとドブ川の濁ったような目で独歩を睨む。
714月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:29 ID:509yC7.o

「嬢ちゃんはDIOの野郎に操られているだけなんだ。だから……」
「生憎、敵は生かしておけない性質でな」

パピヨンの意見は頑として変わらない。

「どうしても、か?」
「どうしても、だ」

二人の間に一触即発の空気が流れる。
その刹那、二人の間に何かが転がりこんで来る。

「!? 伏せろォォォッ!」

独歩が叫び、パピヨンと独歩がそれぞれこなたとナギを庇うようにおおい被さる。
閃光、そして轟音。スタングレネードの光が周囲を包んだ。

「はあ……、はあ……」

スタングレネードを投げた張本人であるシェリスは大きく擦り剥いた右腕を押さえながらストリップ劇場への道をひた走る。
作戦失敗の時の為にDIOが持たせておいたスタングレネードが役に立った。
スタングレネードを投擲すると同時に近くにあった店へと侵入し、そのまま裏口から退避した。
今頃あの四人は爆音と閃光で一時行動不能になっているだろう。
その内に早くDIOと合流し、指示を仰がなければ。シェリスの心を焦燥が支配する。
そんな時だった、繁華街を跳躍し、肩で息をするDIOに遭遇したのは。
715Classical名無しさん:08/01/27 19:31 ID:ECbJT1Xg
                    
716Classical名無しさん:08/01/27 19:31 ID:ZWduLGJA
                      
717Classical名無しさん:08/01/27 19:31 ID:CtekSvJk
蝶支援!!
718月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:31 ID:509yC7.o

「DIO様、大丈夫ですか!?」

蒼白な表情でシェリスはDIOへと駆け寄る。DIOは約束した、彼女と劉鳳を一つにすると。
それが嘘かどうかは関係ない、今のシェリスに取ってそれは信じて当然の事なのだから。

「シェリスか、その様子では失敗したのか」

底冷えのするような声色に、シェリスは萎縮する

「も、申し訳ありません! パピヨンに邪魔されてしまって」
「……そうか、パピヨンも来ているのか」

それだけ呟くと、DIOは思考する。

「まあいい。背に腹は変えられない、か」

DIOの呟きにシェリスが怪訝な表情を浮かべる。

「DIO様?」
「ああ、すまないな、シェリス。ちょっとばかし予定を早めよう。そう、ここらで君の願いを叶える事にする」

「え?」とシェリスが聞き返すより早く、DIOの指がシェリスの首へと突き刺さった。

「君と劉鳳が一緒になる」

DIOが酷薄な笑みを浮かべる。

「君の血と劉鳳の血、それを全てこのDIOの物にすれば君達は念願どおり一緒になれる。そして、その私が脱出すれば、それは即ち私の血肉となった君達も脱出する事ができる。違うかね?」
719Classical名無しさん:08/01/27 19:31 ID:l3S3mblA
    
720Classical名無しさん:08/01/27 19:32 ID:l3S3mblA
蝶カッコイイ
721月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:32 ID:509yC7.o
ズキュンズキュンとシェリスの体から血が抜かれていく。
年相応の張りのある瑞々しい美貌がまるで人生を早送りで見ているかの様に、段々と痩せこけてしわがれていく。
どこか絶頂にも似た吸血される感覚。絶頂との違いがあるとすれば、命という代価が支払われ続け、絞りカスになるということだろうか。

(私、どこで間違っちゃったんだろう……?)

薄れ行く意識の中シェリスはふと考える。
DIOと手を組むと決めた時だろうか、それとも保身の為に人殺しを辞さないと決意した時だろうか。
だが、それは過去の話だ、悔やんだ所で何も変わりはしない。
そしてもはや殆ど機能しなくなった思考能力が最後の最後で思い浮かべた最愛の人。
もはや、会う事は叶わなくなった最愛の人

「劉……鳳……」

呟きとともに流れた一筋の涙。
そして、シェリスの意識は完全に闇の中に沈んだ。
722Classical名無しさん:08/01/27 19:33 ID:ZWduLGJA
しえん
723Classical名無しさん:08/01/27 19:33 ID:ECbJT1Xg
                  
724月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:33 ID:509yC7.o
――last scene:繁華街――

「どこにいやがるDIO!」

叫びながら鳴海が駆ける。
怒りの形相のまま鳴海が駆ける。

「どこだぁ!!」
「そう叫ばずともここにいるぞ、鳴海」

繁華街の小道に出た時、不意聞こえた声の方を向く。
そこには肩にかけていたに三つのデイパックを足元に置き、先程と同様に不敵な笑みを浮かべるDIO。
そしてその足元にはボンテージに身を包んだミイラが転がっていた。

「ご察しの通りシェリス・アジャーニだった物だ。もっとも今は」

DIOの足が上がる。

「ただのゴミだ」

グシャ、という音と共にミイラの頭部であった場所が潰れた

「貴様ァァァァァァァッッッッッ!」
「『ザ・ワールド』! 時は止まる」
725Classical名無しさん:08/01/27 19:34 ID:CtekSvJk
支援のC!
726月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:34 ID:509yC7.o
突っ込んで来る鳴海に対し、『ザ・ワールド』の能力を発動。シェリスの血を吸った事により体力も若干の余裕がある。
DIOが歩を進めるが、時を止められた鳴海はそれを認識する事はできない。

「どれ、胸を貫いてもなお生きていられるか試してやろう」

『ザ・ワールド』の丸太のように太い腕が、鳴海の右胸を貫通した。
その手を抜き放ち、横に振って鳴海の血を払う。

「そして、時は動き出す」

鳴海は、理解できなかった。
たしか、シェリスの死体の頭部を破壊された事に憤ってDIOに向かっていた筈だ。
それが今、後ろに吹き飛び、右胸から血を盛大に噴出し激突した壁にもたれかかっている

「UUUWWWWWWRRRRRYYYYYYYYYY! どれだけ腕っ節が強くとも、貴様もこの『ザ・ワールド』の前では敵足りえんという事だ鳴海!
所詮は人間! 『帝王』たるDIOの前では搾取される『奴隷』に過ぎんという事だ!」

夜の闇、月明かりに照らされたDIOが高らかに笑う。
対する鳴海は壁にもたれかかったまま動かない
727月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:35 ID:509yC7.o

「……だが、しろがねとやらの生命力ならば生きていても不思議は無い、か」

そう言うとDIOは懐のライドルを取りだしサーベルへと形状を変える

「貴様の首を切断し、確実に止めを刺してから、その血を頂くとしよう」

一歩一歩悠々とDIOが死に体の鳴海へと足を進める。その姿、その威風は正に絶対的強者、『帝王』の証。
対する鳴海は動こうとしても体に力が入らない、胸の傷は修復を始めたが出血量が多いのだ。
『帝王』DIOが『奴隷』のようにボロボロの姿で動くことさえままならない鳴海の前に立った。

「一つ良い事を教えてやろう。 貴様と戦う為に遠ざけた貴様の仲間は全員無事だ。厄介な事にパピヨンと一緒にな」

それを聞いて、鳴海は内心安堵するとともに何故DIOがそんな事を口にするか疑問に思った。
728Classical名無しさん:08/01/27 19:35 ID:ZWduLGJA
                           
729Classical名無しさん:08/01/27 19:35 ID:l3S3mblA
  
730Classical名無しさん:08/01/27 19:36 ID:CtekSvJk

731月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:37 ID:509yC7.o

「何故そんな事をわざわざ言ったのか疑問に思っているな? 何、今すぐお前の後を追うのだ。知っていた方が悲しみは少ないだろう?」

それはつまり、DIOの殺人予告。
死にいく鳴海に最後の最後に最大級の絶望を刻みつけようというのだ。

(なん、だと……?)

鳴海の体に僅かだが力が篭る。

「貴様には時間をかけすぎたからな、まずはパピヨンと愚地独歩を貴様にもみせた『ザ・ワールド』の真の力で始末する。
次に泉こなたと、シェリスから聞いた特徴からすると三千院ナギかな? その二人をゆっくりと恐怖を刻み付けて始末するとしよう」

ギリ、と歯軋りの音がする。
鳴海が顔だけを上げ、殺気を込めてDIOを睨む。

「ふん、貴様はちょっとばかし強くなった程度の人間の分際で、このDIOに退却という屈辱を味あわせたのだ。その怒り、その屈辱に絶望を添えてあの世に旅立たせてやる」
「テ……メエ……!!」
「絶望と怒りに染まったいい顔だ。それが見たかった」

鋭く尖った犬歯覗かせ、ニヤリ、とDIOは笑い、ライドルを振り上げる。

「さらばだ鳴海、このDIOに逆らった事を後悔して死ね」
「ウオオオオオオオオオオオ!!」

鳴海が吼える。
そしてライドルが、振り下ろされた。
732月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:38 ID:509yC7.o

(もう、ここまでなのか)

ニヤリと笑うDIOを見ながら鳴海は思う、自分はここで終わるのか。目の前の男を倒せずに終わるのか。
――また、誰かを守れずに終わるのか。

(終われねえ……)

そう、終われない。守れなかった勝に誓った、守ることができなかった自分に誓った、仲間を守ると誓った。

(絶対に終わる訳にはいかねえッ!!!)

その意地が鳴海の体に喝を入れる。
死に体の体にふつふつと力が湧きあがる
DIOのライドルを持った腕が振り上げられた。

(俺は今度こそ、守って見せる! もう誰も、俺の仲間は……)
「さらばだ鳴海、このDIOに逆らった事を後悔して死ね」
(死なせねえ!!)
「ウオオオオオオオオオオオ!!」

鳴海が吼える。
ライドルが振り下ろされる。そして、
鳴海の拳が、DIOのライドルを持っていた手を砕いた。ライドルが後方に飛ばされる。

「何!?」

DIOの視線が思わず飛ばされたライドルを追う、その刹那、DIOの胸に衝撃が走った。
733Classical名無しさん:08/01/27 19:38 ID:ZWduLGJA
                       
734Classical名無しさん:08/01/27 19:39 ID:l3S3mblA
  
735月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:39 ID:509yC7.o

「GUAAAAAAAAA!!」

絶叫を上げ吹き飛ばされながら視線を戻す、そこには体勢を立て直し、拳を構える鳴海がいた。
DIOの誤算、それは『帝王』あったこと。
余計な事を話さず、鳴海を殺していればよかった。
だが、自らが下に見る人間という名の『奴隷』にいいようにやられてしまった事が『帝王』のプライドに傷をつけてしまった。
『帝王』は慢心するが故に『奴隷』に刺された。自らを窮地へと追い込んだ。

「貴……様ァ……!!」

怒りに燃えるDIOと満身創痍の鳴海が向かい合う。
DIOと鳴海は考える。恐らくこれが決着になると。

「恐れ入ったよ鳴海、人間風情がここまでやってくれるとは思わなかった」
「テメェはその人間風情に負けるんだ。覚悟はできたかよ」

鳴海が構える。
DIOは悠然と立っている。
風が二人を撫でる。
その時、DIOが不意に手を動かした。
手の動きにより勢い良く飛んだ血は鳴海の目へと入る。文字通り、身を削った目潰し攻撃。
736月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:40 ID:509yC7.o

「!?」

血の目潰しにより鳴海が一瞬怯む。
DIOが勝利を確信し、その顔が嘲るような笑みを浮かべた。

「どうだこの血の目潰しは! 勝ったぞ、死ねぃ!」

『ザ・ワールド』の足が鳴海を粉砕しようと迫る。
だが、この時DIOは一つだけミスをおかしていた。
プロフィールにも書いていない、加藤鳴海に関してDIOが知らない、知りようの無い情報。
ある時鳴海が形意拳の師を訪ねた時、鳴海の師は一つの試練を課した。
それは、夜の闇の中、目隠しの状態で刃物を持った複数の人間との戦い。
鳴海にとって圧倒的に不利な状況。だが、鳴海はこれをやってのけた。
師の教え通り、相手の敵の骨のきしみ、血の流れ、空気の流れを感じ、これを成し遂げたのだ。
そう、鳴海にとって視力が効かないという事は、大した事ではないのだ。
鳴海の耳が迫り来る足を察知する。
紙一重、瞬時に屈みその蹴りを避ける。

「何!?」

驚愕するDIOの顔に裏拳、
息つく暇も与えず聖ジョルジュの剣を展開、狙うはDIOの首。

「『ザ・ワール……』」
「遅ぇ!」

『ザ・ワールド』が時を止めるより早く、鳴海の聖ジョルジュの剣のDIOの首を跳ね飛ばした。
737Classical名無しさん:08/01/27 19:40 ID:eFf1nWyg
738Classical名無しさん:08/01/27 19:40 ID:KxAaO0wo
            
739Classical名無しさん:08/01/27 19:41 ID:ZWduLGJA
                        
740月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:41 ID:509yC7.o

「馬鹿なァァァァッッッ!? DIOが、この『帝王』DIOが東洋のイエローモンキーごときにぃぃぃぃぃぃ!!」

首だけになっても尚叫ぶDIO、そして……、

グシャ

鳴海の拳が、DIOの頭部を完全に粉砕した。
ボンっというくぐもった音共にDIOの頭部に埋め込まれた爆弾が爆発し、至近距離にあった鳴海の右手首が吹き飛ぶ。

「あばよ、吸血鬼野郎。あの世でテメェが食い物にした奴等に侘びやがれ」

手首から先が吹き飛んだ右手を押さえながら、DIOの血液と自らの血で朱に染まった鳴海が呟いた。

「鳴海ぃぃぃ!」

道路の向こうから聞こえる声に目を向ける。
そこにはナギをかついだ独歩とパピヨン、こなたがこちらへと走ってきている。

「よかった、皆、無事か……」

安堵の溜息を着き、鳴海は仰向けに倒れる

「鳴海!!」
「お、おい! 鳴海、しっかりしろ!」

独歩が鳴海に駆け寄り、抱き起こす。
ナギはその傍らで目に涙を浮かべている。
741Classical名無しさん:08/01/27 19:42 ID:IbLtZWw6
 
742Classical名無しさん:08/01/27 19:42 ID:CtekSvJk
支援!!
743Classical名無しさん:08/01/27 19:42 ID:ZWduLGJA
                   
744Classical名無しさん:08/01/27 19:43 ID:eFf1nWyg
745月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:43 ID:509yC7.o

「独歩さん、ナギ、しっかりと仇は取ってやったぜ。ただ、シェリスって子は……」
「……そうか」

独歩の視界に首の無いDIOと頭が砕けたミイラとなったシェリスの無残な姿が目に入る。
そして遅れてパピヨンとこなたが来る。
シェリスの無残な姿にこなたも悲しそうに顔を伏せる。
パピヨンはシェリスの死体を一瞥した後は何かを探しているようだった。

「……DIOの頭が無いようだが」
「それなら、俺が一発入れたら、俺の右手首ごと吹き飛んじまった。爆弾みたいによ」

そう言って鳴海は手首から先が消失した右手を見せる。

「そうか、頭が吹きとべば流石の吸血鬼も生きてはいないだろうしな……」

それだけを言うと、パピヨンは何かを思案し始め、そして鳴海は申し訳無さそうに独歩を見る。

「シェリスの件はすまねえ」
「何言ってやがる。お前はDIOを倒したんだ、よくやってくれたよ。それよりもまずはお前の体だ」
「大丈夫だって、しろがねは丈夫だからよ、これぐらい……」

鳴海は体を動かそうとする。だが、うまく動かない、それどころか徐々に動かなくなってきている。
746月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:43 ID:509yC7.o

「あ、あれ? ハハ、おかしいな……」
「お、おい、鳴海!その指は……」

驚愕に満ちたナギの声に全員が鳴海の手を見る。
鳴海の両手はパキパキ、という音と共に石化し始めていく。
しろがねの不死性は永遠ではない。生命の水の入った血液が殆ど無くなれば、その体は石化し、死に至る。
刃牙、勇次郎との戦い、そして此度のDIOとの激戦。それにより、鳴海の血液はほとんど無くなっていた。

「……何でもねぇさ、気にすん……」
「それがしろがねとやらの死のサインなのか?」

無理に笑おうとする鳴海にパピヨンが尋ねる。
独歩も、そしてパピヨンも薄々感づいてはいた。鳴海は血を流しすぎていた。長くはもたないのではないかと。

「…………」

鳴海は答えない。それが意味する物は肯定。

「何、まだ行けるさ」

立ち上がろうとする、だが、体が言う事を聞かない
747Classical名無しさん:08/01/27 19:44 ID:ZWduLGJA
                    
748Classical名無しさん:08/01/27 19:45 ID:ZWduLGJA
                      
749Classical名無しさん:08/01/27 19:45 ID:IbLtZWw6
 
750月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:45 ID:509yC7.o


「大丈夫だ、すぐに立ち上がるからよ、なぁにすぐ……」

体を無理やり動かそうと試みる鳴海を、独歩が制した。

「独歩さん……」
「もう、無理はするんじゃねえ」
「……すまねぇ」

誰も喋らない月夜の下、風が彼らを撫ぜるだけだ。
ピキ、パキと響く破滅の音だけが無人の繁華街に響く。

「鳴海よぉ」

不意に、独歩が口を開いた。

「ありがとよ、刃牙やシェリスの仇を討ってくれてよ」
「……いいってことさ」
「その礼って訳でもねぇけどさ、しろがねって嬢ちゃんの事は、できる限り俺がなんとかしてみせらぁな」
「……迷惑かけちまうな」

申し訳無さそうな顔をする鳴海を独歩が笑い飛ばす。

「そんな顔すんじゃねぇよ。さっきも言っただろ、俺達は仲間だ。気にするなって」
「そうだな……、そうだったな」

鳴海の顔にうっすらと笑顔が浮かぶ。
751Classical名無しさん:08/01/27 19:45 ID:KxAaO0wo
           
752月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:46 ID:509yC7.o

「しかしよ、やっぱお前とは一戦やりあってみたかったぜ」
「だから、俺は戦うのは好きじゃねえんだって」
「そんなつれない事言うなって」

二人は笑いあう。まるでこれから訪れる死など気にしていないかのように。

「……皆」

静寂が支配する夜の闇の中、鳴海の声が響く

「こんなふざけた殺し合い、ぶっ壊してくれよな」

既に石化は胸まで達しっている。

「ふん、貴様に言われずともこの蝶・天才な俺が叩き潰してやる」

パピヨンがぶっきらぼうに答える。

「任せてよ、大体こういうの考える奴ってのは、上手く行かないで逆にやられちゃうのが定石だしさ」

涙を目に浮かべながらもあくまで彼女らしい考えで、こなたが答える。

「この虎殺しの愚地独歩がついてるんだ、安心しな」

抱きかかえている独歩が笑いかけながら答える。

「皆の言うとおりだぞ。……だから、だから心配するな、鳴海」

涙声になりながらナギが答える。
753Classical名無しさん:08/01/27 19:46 ID:ECbJT1Xg
                      
754Classical名無しさん:08/01/27 19:46 ID:CtekSvJk
 
755Classical名無しさん:08/01/27 19:47 ID:IbLtZWw6
  
756月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:47 ID:509yC7.o

彼らのその姿を見て鳴海は安堵し、笑みを浮かべた。
彼らの強い意志に、潰えない希望に、そして最後の最後で守りたい物を守れた事に。

ピキ、パキ、

「まぁ、俺の手でぶっ飛ばせないのは悔しいけどよ」

ピキ、ピキ

「すまねえ、後の事は」

パキ、ビキ

「任せたぜ」

パァン

完全に石化した鳴海の体は粉々の破片へと姿を変えた。
月光が破片に反射し、光を放つ。
それはあまりにも悲しく儚く、そして幻想的な光景。

ナギが泣いていた、こなたが泣いていた、パピヨンはただ、その幻想的な光景を眺めていた。

「馬鹿野郎が、そんな未練な顔して逝きやがってよぉ」

その目を悲しみに染め、独歩が呟いた。

彼らは忘れないだろう、一人の男が散った事を。
彼らは忘れないだろう、この悲しくも儚い、一瞬の幻想的な光景を。
757Classical名無しさん:08/01/27 19:47 ID:ZWduLGJA
                     
758Classical名無しさん:08/01/27 19:47 ID:ECbJT1Xg
                   
759Classical名無しさん:08/01/27 19:48 ID:IbLtZWw6
 
760月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:47 ID:509yC7.o

【加藤鳴海@からくりサーカス:死亡確認】
【シェリス・アジャーニ@スクライド:死亡確認】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険:死亡確認】

【E-2 繁華街/1日目 夜中】

【泉こなた@らき☆すた】
[状態]:軽い打撲、深い悲しみ
[装備]:エンゼル御前@武装錬金
[道具]:支給品一式、フレイム・ボール@ゼロの使い魔(紙状態)、んまい棒@銀魂、
     綾崎ハヤテの女装時の服@ハヤテのごとく
[思考・状況]
基本:みんなで力を合わせ首輪を外し脱出 。
1:独歩・ナギ・パピヨンと行動を共にする。
2:かがみ、つかさを探して携帯を借りて家に電話。
[備考]
※エンゼル御前は使用者から十メートル以上離れられません。 それ以上離れると核鉄に戻ります。
※独歩・シェリスと情報交換をしました。
761Classical名無しさん:08/01/27 19:48 ID:ZWduLGJA
                             
762Classical名無しさん:08/01/27 19:49 ID:ECbJT1Xg
         
763月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:49 ID:509yC7.o


【愚地独歩@グラップラー刃牙】
[状態]:健康、深い悲しみ
[装備]:キツめのスーツ
[道具]:支給品一式×3(独歩、勝、承太郎)、フェイスレスの首輪、不明支給品0〜2(承太郎は確認済。核鉄の可能性は低い)、不明@からくりサーカス、書き込んだ名簿、携帯電話(電話帳機能にアミバの番号あり) 首輪探知機@BATTLE ROYALE 、干からびた肉の芽の残骸
[思考・状況]
基本:殺し合いには乗らない、乗った相手には容赦しない。
1:こなた・ナギ・パピヨンと共に行動する。
2:基本姿勢を、闘うことより他の参加者 (女、子供、弱者) を守ることを優先する事に変更。
3:パピヨン、こなた等や、他のゲームに乗っていない参加者に、勇次郎の事を知らせ、勇次郎はどんな手段をもってでも倒す。
4:その他、アミバ・ラオウ・ジグマール・平次(名前は知らない)、タバサ(名前は知らない、女なので戦わない)、危険/ゲームに乗っていると思われる人物に注意。
5:乗っていない人間に、ケンシロウ、及び上記の人間の情報を伝える。
6:赤木と合流するために、学校へ行く?
7:可能なら、光成と会って話をしたい。
[備考]
※パピヨン・勝・こなた・鳴海と情報交換をしました。
※不明@からくりサーカス
 『自動人形』の文字のみ確認できます。
 中身は不明ですが、自立行動可能かつ戦闘可能な『参加者になり得るもの』は入っていません。
※刃牙、光成の変貌に疑問を感じています。
※鳴海、ナギと情報交換をしました
764Classical名無しさん:08/01/27 19:49 ID:ZWduLGJA
                           
765月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:49 ID:509yC7.o

【三千院ナギ@ハヤテのごとく!】
[状態]全身に打撲、右頬に中程度のダメージ、首に痣あり、精神疲労(中)、深い悲しみ
[装備]スパイスガール@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]無し
[思考・状況]
基本:殺し合いを止め、家に戻る
1:ハヤテ、ヒナギク、ジョセフと合流する。
2:カズキの恋人という『斗貴子』とやらに会って、カズキの死を伝える。
3:こなた・独歩・パピヨンと共に行動する。
4:ハヤテに事の真相を聞きだし、叱りつける
参戦時期:原作6巻終了後
[備考]
※スパイスガールが出せるかは不明です。
※ヒナギクが死んだ事への疑念は晴れました
※独歩の話を聞き、光成の裏に黒幕が居ると睨んでいます
※鳴海、独歩と情報交換をしました
766Classical名無しさん:08/01/27 19:50 ID:ECbJT1Xg
             
767月光下 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:50 ID:509yC7.o

【パピヨン@武装錬金】
[状態]:動きすぎで疲れて吐血。全身に打撲。
[装備]:猫草inランドセル@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:地下鉄管理センターの位置がわかる地図、地下鉄システム仕様書
    ルイズの杖、参加者顔写真&詳細プロフィール付き名簿、
    支給品一式×2(パピヨン、灰原)(灰原の方はデイパックの肩紐破損)
[思考・状況]
基本:首輪を外し『元の世界の武藤カズキ』と決着をつける。
1:こなた・独歩・ナギと行動を共にする
2:エレオノールに警戒。
3:核鉄の謎を解く。
4:二アデスハピネスを手に入れる。
5:首輪の解体にマジックハンドを使用出来る工場等の施設を探す。
[備考]
※参戦時期はヴィクター戦、カズキに白い核鉄を渡した直後です
※スタンド、矢の存在に興味を持っています。
※猫草の『ストレイ・キャット』は、他の参加者のスタンドと同様に制限を受けているものと思われます
※エレオノール、鳴海に不信感(度合いはエレオノール>鳴海)
※独歩・シェリスと情報交換をしました。
※逃げられてしまったゼクロスにさほど執着はないようです
※詳細名簿を入手しました。DIOの能力については「時を止める能力」と一言記載があるだけのようです。

[共通備考]
※DIOの所持品(ダーツ(残弾数1)、デルフリンガー@ゼロの使い魔、時計型麻酔銃(1/1)麻酔銃の予備針8本。
イングラムM10サブマシンガンの予備マガジン×9、ライドル、スタングレネード×1、 支給品一式×3(DIO、桂、みゆき))と
鳴海の所持品(支給品一式×2(刃牙、鳴海)、不明支給品0〜3(フェイスレス・ナギ)  輸血パック(AB型)@ヘルシング グリース缶@グラップラー刃牙 道化のマスク@からくりサーカス)
シェリスの所持品(光の剣(ただのナイフ)@BATTLE ROYALE、ボンテージファッション一式、支給品一式)はE-2の繁華街に放置してあります
※E-3の喫茶店で黒王号が独歩達の帰りを待っています
768Classical名無しさん:08/01/27 19:50 ID:ZWduLGJA
                        
769Classical名無しさん:08/01/27 19:52 ID:ECbJT1Xg
           
770 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:52 ID:509yC7.o
以上で投下終了です。支援ありがとうございました。
誤字等は自分でも投下後に見つけたりしたのでWiki掲載時に修正しょうかと思います。
では疑問等ありましたらお願いします。
771Classical名無しさん:08/01/27 19:53 ID:ECbJT1Xg
                 
772Classical名無しさん:08/01/27 19:54 ID:CtekSvJk
投下乙!
鳴海兄ちゃああああああん!
DIOとの因縁の戦いはすげえよかったマジ惚れた

外道っぷりをみせたDIO様もここで退場か
そろそろ終盤なんすかねぇ

そして独歩w
サービスシーン担当だったはずが、いつのまにか対主催チームの筆頭になってるw
773Classical名無しさん:08/01/27 19:54 ID:eFf1nWyg
乙です
鳴海がいったか・・・お疲れ様だぜ
しかしこれでしろがね対主催なくなるなー
斗貴子とキャラかぶんなきゃいいが・・・

あとミス発見
鳴海が石化するシーンで、左腕は石化しないはず
774Classical名無しさん:08/01/27 19:55 ID:gTYiDCB2
乙です……
鳴海ィィィィィィ!!!!
DIOとの総勢な相打ちKO、見事でした
シェリスも、ある意味じゃ被害者だよなぁ……

これでついに、吸血鬼完全撃滅。
マーダー四天王は残り二人っすね
775Classical名無しさん:08/01/27 19:58 ID:IbLtZWw6
投下乙ッ!!
鳴海ぃぃいいいいいいいいいッ!!!

劇場でのDIOと鳴海の激闘、ピンチに駆けつけたパピヨン
新たな決意を胸にする独歩、こなた、ナギ
そして最後のあまりに美しすぎる死

本ッ当にアツイ闘い、すばらしい話でした!!

最後にもう一度
鳴海ぃいいいいいいいいいッ!!
776Classical名無しさん:08/01/27 19:58 ID:ECbJT1Xg
乙です!
鳴海兄ちゃん……合掌。
まさかDIOを倒すとは……大金星です。
久々の三人一度に死亡……こっちは燃えて泣いて凄まじい。
GJ!
777 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 19:59 ID:509yC7.o
>>773
そうですね。忘れていました。ありがとうございます

あ、すみません。独歩とナギの状態欄の思考のとこに

8:可能ならばしろがねを説得する。

4:可能ならばしろがねを説得する。

と追加させていただきます。
778Classical名無しさん:08/01/27 19:59 ID:ZWduLGJA
投下乙。鳴海いいいいいいいいいいとシェリスうううううううう!!! あとDIO。
鳴海さんはトップレベルの死に方だよオイ! これ以上はないよコレ!
シェリスもDIO様死んだら化物になっちゃうからねぇ……これで幸せなんだ、うん。
残された人たちがかなり意志が強くなって今後の展開に期待が持てました!!
779Classical名無しさん:08/01/27 20:17 ID:stIo6Vdg
痺れた、震えた、たまんねえなおい。いやぁかっけえよこれ。めちゃめちゃ面白かった!
しかし感想に困るな、すんげー良すぎて何書きゃいいのかわからんくなる。下手な事が書きずらいぐらい良い話だった
この感動を技名になおすと「究極漫画ロワクラッシュ」って感じ。素晴らしい話でしたGJ!
780Classical名無しさん:08/01/27 20:21 ID:gZBuvksk
GJ! 帝王と悪魔ここで散るか!
四強の二人死亡。対主催の要も死亡。
いよいよ中盤クライマックスだな。

……さて、死者ネタでも書くか
781Classical名無しさん:08/01/27 20:40 ID:8W7f3ml2
投下GJ

DIO様の最大の敵は時止めでも波紋でもなくいつも「油断」だなw
ただ、前の話で『ザ・ワールド』を『エターナル=デボーテ』で強化できるってわかったのになんでそれやらなかったんだ?って思ったが
782Classical名無しさん:08/01/27 20:46 ID:CtekSvJk
>>781
あれだ、DIO様も一応元紳士の端くれだから全裸のままにしておくのは
よろしくないと思ったんだよ

それにいつも油断してやぶれているよなDIO様
ジョジョでは一般人相手に油断して死んだしw
783Classical名無しさん:08/01/27 20:53 ID:v3tFyFvo
吸血鬼消滅でジョセフが気の毒と思ったのは俺だけじゃないはず。

いや、話は最高に面白かったです
784 ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:00 ID:ZWduLGJA
では美形、投下します
785Classical名無しさん:08/01/27 21:01 ID:zfR8Fgu6
絶対に支援!
786男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:02 ID:ZWduLGJA
「ハア、ハア……こんなことなら賭けなんかに乗らなければ良かった……アカギ!! いや、アカギさん!! 助けてくれー!!」
涎をまき散らしながら無様に走る男が1人。
数時間前まで放っていた高貴なオーラは、どこか汚れて黒ずんだオーラになっているように見える。
有名な芸術家の生み出した彫刻のように美しいはずのその顔は、汗と涙でグチャグチャに歪んでいた。
彼の後方、十数メートルには髑髏を模した小型の戦車のような物体。
杜王町に発生した史上最悪の殺人鬼、吉良吉影。
その男のスタンド、キラークインの能力の1つ、シアーハートアタックだ。

「コッチヲ見ロ〜ッ!」
「……って、ぬおー!」
叫んだせいで走る速度が落ちたのだろうか、シアーがジグマールに肉迫してきた。
シアーが右足に接触する……寸前のところでジグマールが右に大きく跳んだ。
受身をとって道路にゴロゴロと転がりながらも、なんとかすぐに起き上がった。
(この戦車はキャタピタ式だ。ならば小回りは利かないはず……)
ジグマールの予想通り、戦車は進行方向を左に変更するために大きく旋回しなくてはならなかった。
これが好機とばかりに、つんのめりながらも再び走り出す。
後ろを振り向くと、そこには目標を自分へとセットし直した戦車。

「アカギのやつ……見捨てやがったなァ〜」
くすんだ銀髪と突き出たアゴを思い浮かべて吐き捨てる。
さらに、心をブチ抜くようなアカギの鋭い瞳を思い出し、身震いした。
あいつのせいで……なんで自分だけがこんな目に……。
自分がここで死のリレーを繰り広げてる間、あいつは優雅にお茶でも飲んでいるのだろうか。

(不公平だ。そんなの不公平だッ!)
だが、ジグマールの嘆きは的外れもいいところである。
アカギの提示した『リスク分担策』では、ジグマールとアカギのどちらが戦車に追われるのかは全くの五分。
それを喜んで受け入れたのは他ならぬジグマールであった。
ならばこの天と地とも離れた2人の状況も、至極公平なものであったのだ。
787Classical名無しさん:08/01/27 21:04 ID:l3S3mblA
 
788男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:04 ID:ZWduLGJA
少なくとも、嘆いているばかりではこの状況は一向に改善しない。
彼に必要なのは、行動すること。
賭けに負けたことは覆せない事実だと受け入れて、その敗北の代償と戦うこと。
しかし、その相手である戦車は余りにも強い。
その硬度は凄まじく、ジグマールの持つ一切の攻撃は通用しない。
と言っても彼の持っている武器は鎖鎌とアラミド繊維を内蔵したライター。
クレイモア地雷も持っているのだが、効くかどうか分からない敵にこんな貴重な武器を消費したくなかった。
先ほどから隙を見ては鎖鎌を叩きつけ、アラミド繊維を押し付け……などの努力はしているのだが……。
「コッチヲ見ロォ〜」
この戦車には傷一つ付いていない。
そんなわけで、武器を命中させても、戦車を少しだけ後方に吹き飛ばすくらいの効果しか得られなかった。
そして最悪なのが、戦車の生み出す爆発の威力だ。
確実に即死というわけではないが、一度食らってしまったら、しばらくはまともに動けないだろう。
そうなってしまったら後は疲れ知らずの戦車に嬲り殺されるだけ。
つまり即死でなくとも結局は、一度爆発を食らってしまったらそこで終わりなのである。

「なんで俺ばかりが……ぬあっ!」
動揺と疲労でフラフラになっていた足がもつれ、ジグマールは盛大に転んだ。
なんとか立とうとするが、体力の消耗が激しすぎる。
そうこうしているうちに、戦車は少しずつこちらへ近づいてくる。

「クソォ……こんなところで、死ぬわけにはいかんと言うのに……」
そう言ってから気がついた。
自分がそんなセリフを吐くのは何度目になるのだろうか。
最初に強敵、セラス・ヴィクトリアを撃破して以降、この殺し合いでの彼の戦績は散々たるものであった。
敗北を喫し、弱音を吐き、そして結局はギャラン=ドゥに頼りきりになる。
その繰り返しだ。
いつもいつも同じ失敗を繰り返す。
己の尾を追いかける犬のように同じところをグルグル回り、最期には犬のように死んでいくのだろう。
そういえば、セラスのときもギャラン=ドゥなしでは死んでいた。
たった1人ではただの1回も勝利を掴むことなどできない。
そんな男のどの口が「全宇宙の支配者になる」などとほざいたのか。
789Classical名無しさん:08/01/27 21:04 ID:ECbJT1Xg
         
790Classical名無しさん:08/01/27 21:05 ID:l3S3mblA
   
791Classical名無しさん:08/01/27 21:05 ID:zfR8Fgu6
  
792男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:05 ID:ZWduLGJA


死ぬわけにはいかない? 馬鹿を言え。
確かに、お前は確かに死んでいない。だが、活きてもいない。
無能な心臓を守り、無能な脳に縋るだけ。
何も生まず、何も成さない無駄な生命活動を続けているだけ。
貴様が死んでも誰も何も思わない。嘆かない。悪者が死んだと喜ぶ人間さえいない。
ここで戦っている者たちは今頃お前の存在など忘れて、それぞれの戦いを始めている。
そして誰もが、お前より気高く、お前より眩しく死んでいくだろう。
その者達が駆け抜けて言った道の遥か後方を、トボトボと惨めに歩く情けない男がお前だ。
誰の視界にも入らないように、誰にも狙われないように怯えながら歩いているのか?
違うな。もともと誰もお前なんて見ていないんだよ。
お前の存在を認知する者など1人もいない。
お前が影響を与えることが出来る者など、ただの1人もいやしない。
ただの、1人も……!

惨めな生に縋りつき、無様な恥を晒すなら、いっそのこと

死ね。

ここで、今、死ね。


脳内に聞こえた声は自分のものなのだろうか。
それともアカギか? 劉鳳か?
……誰でもいい。この声の主が誰でも構わない。
反論できない。この声の言うとおりだ。
自分に残された最後のプライドであった人間ワープも、DIOのアルターには適わない。
世界を支配する能力。全てにおいて自分の能力より上級な能力だ。
その上何の能力も持たないアカギにいい様に扱われ、洗いざらい情報を『盗まれた』。
793男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:07 ID:ZWduLGJA
それだけじゃない、この会場には勇次郎やラオウのような化物がいる。
この戦車の能力の持ち主である吉良吉影のような恐ろしい能力者もまだまだいるだろう。
自分は、それらから隠れて生きるしかない。
誰にも影響を与えないように……。
いや、どうせ与えることが出来ずにどこかでのたれ死ぬのだろう。
……ならば。

アカギにコケにされたショックと、長時間の全力疾走で脳に酸素が行き渡らなくなったことが、彼の思考を極限までマイナス方向へと導いた。
「もう……やめにしよう」
頭の中のどこかでポキンという音がした。
立ち上がろうと踏ん張っていた足から力を抜く。
支えを失った体は傾き、尻餅をついて倒れこんだ。
振り返らなくても分かる。キャタピラの音が近づいてくるから。
あと少しで、こいつは自分を殺してくれる。
惨めな命に終止符を打ってくれるのだ。
大丈夫、苦しいのは一瞬だ。
下手に動かなければ一瞬で自分を吹き飛ばしてくれるはず。

……もうそこまで来ている。
自分が死ぬ寸前に爆発音が響くはずだ。
「コッチヲ見ロ〜!」
……来た。そして、爆発音が……


ヤマネェェン!


(ほら、爆発音が……って、や……ヤマネェェンってなんだ……!)

振り返ると、自分を殺すはずの戦車は10メートル以上後方に吹き飛んでいた。
「オォィ……ジグマァ〜ルゥ……なにしてくれてんだァ〜?」
794Classical名無しさん:08/01/27 21:07 ID:l3S3mblA
 
795男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:08 ID:ZWduLGJA
(……そうだ! 聞きなれた音じゃないか!)
その音は『彼』の登場音。何度も何度も耳にした。
そして、この『彼』の黒い大きな背中も見慣れているものだった。
「ギャラン=ドゥ……!」
しかし、ギャラン=ドゥと目を合わせることが出来ない。
今自分はこの殺し合いから脱落した。
ここで生き延びたところで、DIOはおろか、誰にも勝つことなんて出来ない。
誰も自分を見ていない。
自分が影響を与えられる人物など……。
「……もういいんだ、ギャラン=ドゥ。僕は……」

「オォィ早く立てジグマールゥ〜。お前に死なれると困るんだよォ」
弱音を遮った言葉は、胸の深くに巣食った絶望すらも打ち砕いた。
(僕に死なれると……困る……!)
確かにそう言った。僕の命に、確かな価値を見出している。

……いた。見つけた、こんな近くに。
僕が影響を与えられる男がここにいるじゃないか。
ギャラン=ドゥが僕をいつも救ってくれていた。
何度も絶望の淵からも救い上げてくれた……!
こんなに僕を助けてくれたギャラン=ドゥに何も出来ないまま死んでいくのは嫌だ。
だから……僕は……僕は!

「オイ〜! 早く立て。逃げるぞ!」
「え……う、うん!」
ギャラン=ドゥに手を貸してもらいながらも、ジグマールはなんとか立ち上がった。
戦車から逃げるため、大地を踏みしめ歩き出す。
弱弱しく、だが確実に歩みを進めていく。
796Classical名無しさん:08/01/27 21:08 ID:l3S3mblA
   
797男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:09 ID:ZWduLGJA

「ジグマール、なんでお前さっき死のうとしたんだァ……? お前が死んだら俺まで……」
「いいんだ。もう……いいんだ」
「あァ〜?」
ギャラン=ドゥが訝しげにジグマールの顔を覗き込む。
だが、その真っ直ぐな瞳を見たギャラン=ドゥは「そうか」とだけ呟いて前を向き、足を進めた。

「ギ……ギャラン=ドゥ! 後ろ!」
ジグマールが叫んだのとギャラン=ドゥが跳んだのはほぼ同時。
戦車の方向に高く跳び上がり、拳を天高く振りかぶる。
「お前は……埋まってろ!」
咆哮とともに叩きつけられた拳は、戦車の真上から寸分の狂いもなく、垂直に叩きつけられた。
いくら戦車が頑丈でも、その下の道路はそうとは言えない。
殴られるままに道路にめり込み、ゴルフのカップのような穴へと埋まっていった。
シアーは無傷のまま、穴の中でキュルキュルとキャタピラを空回りさせていた。
「す……すごいやギャラン=ドゥ!」
「……やったかァ?!」
やっと解放されたジグマールたちは、どこかで休もうかと辺りを見渡す。
飲み物でも売っている店があればいいのだが、運悪くそこは住宅街のようだ。
仕方ないので適当に入る民家を見繕っていると……。

辺りに響いた突然の爆発音。

爆源はもちろん、あの戦車だ。
「「なにィ?!」」
綺麗にユニゾンが響いたが、その音色は吹き飛ばされた瓦礫が落ちる音によってかき消された。
雪のようにパラパラと降り注ぐ瓦礫と辺りに立ち込めた黒煙の中から、丸くて黄色い影が浮かび上がる。
「ななななんで?!」
「落ち着けェジグマールゥ……」
そうは言っているがギャラン=ドゥも信じられないといった顔つきである。
彼の見立てでは、あの戦車は人体程度の熱源に触れないと、爆発を起こさないはずであった。
なぜなら、ギャラン=ドゥが殴っても、走っている最中に障害物に行き当たっても、あの戦車は一切爆発しなかった。
798Classical名無しさん:08/01/27 21:09 ID:l3S3mblA
    
799男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:10 ID:ZWduLGJA
爆発したのはランタンなどの熱源に接触した場合のみ。
なら、なぜ爆発を……。
「まさか摩擦熱?!」
ジグマールに言われるまで完全に見逃していた。
たとえ戦車が穴から脱出できなくても、そのキャタピラは動き続けていた。
そして破壊された道路の破片は穴の中に散らばっている。
それらがキャタピラと擦れて熱を発したというわけか。
「なるほどォ〜」
この方法もダメか。ギャラン=ドゥが唇を噛む。
自分がこの戦車を押さえてるうちにジグマールが逃げる、ということが出来るのならば、それが一番簡単だ。
しかし徳川の老人のせいで、ギャラン=ドゥはジグマールから遠くへは行けないということになっている。
人間ワープでこの戦車を遠くへ吹き飛ばそうにも、その人間ワープ自体に制限が掛けられてしまっていた。
アルター能力を全力で使って数メートル飛ばすなら、殴った方が遥かに効率がいい。
この状況になるのが分かっていたのではないか、と言うほどいやらしい制限だ。

「チィ……走るぞジグマールゥ。何か熱源を探せェ」
「そんなこと言っても、こんなところにそんなもの……」
ジグマールの言うとおり、住宅街のど真ん中で熱源を探せなどと言っても無理がある。
しかし、他に策がないのだ。
囮になるような熱源を探して夜の住宅街を疾走しだした。

「コッチヲ見ロ〜」
「しつこいんだよォ」
ギャラン=ドゥの拳に吹き飛ばされたシアーが後方に吹っ飛ぶ。
しかしすぐさま体勢を立て直して追いかけてくる。
熱源を探し続けて10分。
見ての通り、成果はない。
戦車に追いつかれそうになってはギャラン=ドゥが殴り飛ばし、その間に逃げる、の繰り返しだ。
800Classical名無しさん:08/01/27 21:10 ID:l3S3mblA
 
801男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:10 ID:ZWduLGJA

速度的には逃げることは不可能ではない。
だが、そうしなかったのはこの戦車の索敵方法が熱感知によるものだからだ。
熱探知の範囲上限が分からない。
戦車の姿が見えなくなったとしても、熱を感知されてジワジワと近づかれ、気づかぬうちに爆破させられる危険があった。
完全に逃げ切るにタイミングを探そうとはしているが、時間が経てば経つほどこちらが不利になる。
なにしろ相手には疲労がない。
対するこちらは疲れきったジグマールと、残り10分程度しか行動できないギャラン=ドゥ。
このまま突破口が見えないままでは明らかにこちらが負ける。

「こんなのDIOのアルター能力だって対処できないじゃないか……!」
自分より明らかに格上のDIOの『時止め』ですら何の効力も発しない相手。
物理的ダメージを無視し、際限なく追い続ける最悪の能力。
(完全に動けなくする方法があれば……)
高速で動く戦車から逃げるには、もはや動きを封じるしかない。
何かやつの動きを阻害するものか、やつを閉じ込める箱のようなものさえあれば……。
(そんな都合のいいものなんか……ん? 待てよ……箱……)
「そうか! ギャラン=ドゥ、こっちだ!」
「あァ? なんだァいきなり?」
「いいからこっちだ!」
叫びながら駆け出したジグマールをギャラン=ドゥが追いかける。

「……策があるのか?」
「……あいつを封じるには、あいつを閉じ込めるしかない」
明確な目的地でもあるのだろうか、ジグマールは走りながらもキョロキョロと辺りを見回している。
「閉じ込めるったってそんなものどこにあるんだァ?」
「……ここだ。ここにある、いや『来る』んだ」
ジグマールが指したのはトンネルに出来た大穴。
地下鉄での大乱戦の際、ラオウとケンシロウが北斗剛掌波で開けた穴である。
外側から穴を覗くと暗闇の中に線路があるのが見える。
「……電車の中にやつをブチ込もうって魂胆かァ」
802Classical名無しさん:08/01/27 21:11 ID:l3S3mblA
 
803男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:11 ID:ZWduLGJA

「あの戦車が熱源に向かって愚直に進むなら、電車のドアから律儀に出てくるなんてマネ出来るはずがない。
 だからワープで一度電車に乗せてしまえば、何もしなくてもあいつは勝手に僕たちから離れていってくれる」
「言うのは簡単だ。だがなァジグマール、ヤツをワープさせられるのは俺だけだ。お前はヤツに触れることができんからなァ。
 しかし俺の体力も残り少ない。お前の外にいられる時間はあと5分ほど、ワープは使えて一回が限度だ……」
「それでいいんだ……あの戦車は疲れを知らない。いつも同じ速さで僕を追いかけてくる。
 だからタイミングは計ることはそんなに難しいことじゃない」
理論上ではその通りであろう。
しかし、通過する電車の中にダイレクトに戦車をワープさせることはそんな簡単なことではない。
まず、ギャラン=ドゥが戦車に触れた瞬間に、電車が人間ワープの有効範囲数メートル以内に存在していることが絶対条件である。
さらに相手はジグマールを目指して走ってくる。
つまり彼が囮として線路の脇に立ち、戦車を線路まで誘導しなくてはならない。
あたり前だが、ジグマールに戦車が当たる前に戦車をワープさせなければいけない。
それに加えてギャラン=ドゥの体力も残り少ない。
一度失敗したらギャラン=ドゥは体力が尽きて、ジグマールの体から出られなくなってしまう。
そうなったら逃げる術など存在しない。
余りにもリスクが高すぎる。

「ダメだなァ。そんなことするくらいなら、人間ワープを連発しながら全力疾走で逃げた方が、まだ生き延びられる」
「たとえ逃げ切ったとしても、疲れきったところで殺し合いに乗った参加者と遭遇したら……間違いなく殺される。
 それに、あの戦車の索敵範囲から逃げ切れるとは限らないじゃないか……」
ジグマールが熱弁するも、ギャラン=ドゥはその作戦に乗る気にはなれない。
自分がジグマールと命運を共にしている以上、ギャラン=ドゥは慎重にならざるを得なかった。

そうこうしているうちに、彼らを追いかけてきた爆弾戦車が近づいてきた。
「ウラァッ!」
俯いたまま動かないジグマールを尻目に、ギャラン=ドゥが戦車へと駆け出し、殴り飛ばした。
小さな車体が勢いよく吹き飛び、ゴロゴロと地面に転がる。
804男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:12 ID:ZWduLGJA
すぐに起き上がると、再びジグマールたちに向けて直進しだした。
「もう追いついて来やがった……オイィ、もう時間がない……とっとと逃げ……」

「ねぇギャラン=ドゥ。ここに来てから僕たち……何回逃げた?」
ギャラン=ドゥの背中に震えた声で呼びかけた。
しかしギャラン=ドゥはなにも答えない。
今まで、自分に逆らうことなどなかったはずのジグマール。
そんな彼の思いがけない反抗に、ギャラン=ドゥは困惑していた。

「僕たちは何回も、何回も逃げたよね? 分かってる……それは僕が弱いからなんだ。
 でも君は違う。僕のせいで……君までもが逃げ続けなくてはならないなんて、僕は我慢できない!」
「しかし、その作戦が失敗したら死ぬんだぞ、ジグマールゥ? 今は確実に生き延びて、次頑張れば……」

「次っていつなんだよ!!」
ギャラン=ドゥは、ジグマールが自分に対して声を張り上げるのを始めて聞いた。
戦車と格闘し続けていたその体が一瞬だけ動きを止める。
だが、戦車が近づいてくるのを確認すると再びパンチを繰り出した。

「……DIOにこの作戦は不可能なんだ。
 いくら時を止めようとも、電車の内側にワープさせるなんてことできないからね。
 これは……君にしかできない作戦なんだ」
「……なるほど、お前がこの作戦に拘っていたのはそういう訳かァ」
完全に自分たちのアルター能力の上をいくDIOの能力。
その能力でさえ不可能なことが、自分達には可能だ。

ジグマールは証明したかった。
人間ワープが時止めを超えることは、可能だと。

「僕は全宇宙の支配者なんかにはなれない。それはこの1日で痛いほど思い知らされたよ。
 でも、君ならなれる! 君は誰よりも強い! 僕は君のオマケでいい。
 君の横で夢を見ているだけでいいんだ……!」
805Classical名無しさん:08/01/27 21:12 ID:l3S3mblA
  
806男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:13 ID:ZWduLGJA

ギャラン=ドゥには目的があった。
人間が支配する世界を、アルターの支配する究極のアルターワールドへと創りかえること。
自分の創造主であるジグマールさえ、そのための隠れ蓑に過ぎなかった。
ギャラン=ドゥにとって、ジグマールは単なる捨て石だ。

そして、この殺し合いの中で、自分は何度もジグマールを殺したいと思っていた。
それが出来なかった原因は、主催者である光成の設けた制限。
ジグマールを殺してしまえば自分が死ぬ。
だから彼を生かしていたにすぎない。

自分が一番強いと思い込み、全宇宙の支配者になれると本気で思っている。
格下の相手には油断して、何度も死にかけている。
そんな男と命運を共にしているなんて最悪の極みだ。

しかし、こいつはその敗北の山から何かを掴み取ったのだろうか。
ジグマールの思考に大きな変化が起こっている。
ジグマールは、自分を頼りにしている。
今までのような『ピンチに役立つ便利な道具』としてではなく、1人の仲間として。

考えてもみれば、こいつがこの戦車のような『どうしようもない敵』に向かっていくような男だろうか?
駅構内の戦いで、誰よりも早く、無力な女より早く逃げ出したこいつが……たった1人で。
……いや、1人じゃないんだな。お前は。
俺を支えにして、ビビって縮こまってる体を奮い立たせているんだな。
俺が、支えか……。

「おい、ジグマール……」
戦車を殴り飛ばしたギャラン=ドゥが振り返る。

「俺が外に出てくるときは、お前が死にそうになったときだけだ。
 いつもいつも俺はお前の尻拭いだ」
ツカツカとジグマールに歩み寄るが、ジグマールは俯いたまま何も答えない。
807男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:14 ID:ZWduLGJA

「だからよォ……」
ジグマールの横に立つと。クルリと振り返り、彼と同じ方向を向いた。
ジグマールの顔が驚きの色に包まれるが、ギャラン=ドゥは彼を見てはいない。
彼が見ているのは前方の戦車。

「お前と肩を並べて戦うのは、これが始めてだなァッ!!」

戦車を睨み、ニヤリと笑って拳を構えた。
「ギャラン=ドゥ……」
ジグマールの顔が、驚きから笑顔と変わる。
「それじゃあ……行くよ!」
そして最後には、いつになく真剣な顔となって戦車を見据えた。

(こいつ、俺と同じ構えじゃねぇか)
そうか、こいつはずっと負けるたびに俺の背中を見てきたんだったな。
ジグマールに聞こえないようにフフンと小さく笑った。
究極のアルターワールドを築き上げる。その目的は変わっていない。
だが、この殺し合いから生き残ったら……。
(こいつと一緒に全宇宙を支配するのも……悪くないかもなァ)

「ギャラン=ドゥ、あと何分間行動できるの?」
「あと、1分半だ。ちゃんと電車は来るんだろうなァ?」
ギャラン=ドゥが作戦に乗り気になったものの、彼が行動できる残り時間は少ない。
その間に電車が来なければ、作戦は失敗である。
「アカギと電車に乗る前に時刻表で確認したんだ。あと1分と少しで電車はここを通過する」
「ギリギリじゃねぇかァ……おっと、戦車が来るぞ!」
キュルキュルとキャタピラを回して近づいてくる戦車。
ジグマールの読み通り、そのスピードは全く衰えてはない。
常に一定の速度でくるからこそ、タイミングを取りやすい。
条件は整っている……!
あとは時間通りに電車が通過してくれるかどうか、だ。
808Classical名無しさん:08/01/27 21:14 ID:l3S3mblA
 
809男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:15 ID:ZWduLGJA

ギャラン=ドゥが1分ほど戦車と格闘していると……。
「ギャラン=ドゥ! 来た! 電車が来るよ!」
トンネルに響いた重低音を聞いて、ジグマールが叫んだ。
その声を聞いてギャラン=ドゥは戦車を殴り飛ばすのを止め、ジグマールの元へと走る。
あとはあの戦車がジグマールの近くまで来た瞬間に、戦車を電車の中へワープさせるだけ……。
「チャンスは1度だけだ。タイミングの指示を頼むぞ、ジグマールゥ」
「……うん!」
ギャラン=ドゥから「頼むぞ」と言われたのが、たまらなく嬉しかった。
ずっと見続けていた彼の背中に追いつけたのだろうか。
その横に、僕は立っていいのだろうか……。
ここに、ギャラン=ドゥの横にいる限り、自分は誰にも負けはしない。そんな気分にさえなった。

「おい、ジグマールゥ。まだ大丈夫なのか?」
「まだだ、まだ……」
爆弾戦車がジグマールに接触するまで、あと……1メートル。
電車の走る音は聞こえるのだが、その姿は未だ確認できない。

あと、50センチ。
電車の音が大きくなってきた。トンネルの中を微風が吹きぬける。
レールがカタカタと小さく振動しだした。

あと、20センチ。
「おい、まだか?! 爆発するぞ!」
「もう少し……もう少しだ……!」
ついに電車がその姿を現した。
ゴウ、という音を携えて巨体がレールの上を突進してくる。それと共にトンネル内に突風が吹き荒れる。
810男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:15 ID:ZWduLGJA

あと10センチ。
「もう間に合わん。ワープするぞ!」
「ダメだ! まだだ!」
戦車を掴んでワープさせようとしたギャラン=ドゥの手を、ジグマールが遮った。
電車は高速で近づいてきてはいるものの、まだワープの射程距離には入ってはいない。
しかしこれ以上待っていては、ジグマールが爆死させられてしまう。
「大丈夫、僕を信じてくれ……!」
気圧されたわけではない。
だが、気づいたときにはギャラン=ドゥは自分の手を引っ込めていた。
こいつを信じてみよう。
そんな気分になってしまったのだろうか。

あと5センチ。
「あと少し、あと少しだ」
(信じて……いいんだな?)
指示があったらすぐにワープさせられるように、ギャラン=ドゥは構えをとる。
電車もジグマールも見ずに、ただ戦車だけに注目して、耳を澄ましていた。

あと3センチ。

あと2センチ。
ジグマールはまだ動かない。
まだ電車が射程範囲に入っていないのだ。

あと1センチ。
電車は射程距離には入っていない。
(おいィ……ジグマールゥ……)
ギャラン=ドゥは今になって、電車が射程距離から離れすぎていることに気がついた。
このままではマズい……。
たとえ戦車がジグマールに接触する瞬間にワープしたとしても、電車には届かないだろう。
811Classical名無しさん:08/01/27 21:16 ID:l3S3mblA
   
812男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:16 ID:ZWduLGJA

そして……。
「コッチヲ見ロ〜ッ!」
あと0センチ。
ワープの指示は、なかった。
「ジ……ジグマールゥッ!!」
驚き、叫んだ直後に我に返った。
まだ爆発していない……。

「ギャラン=ドゥ……!」
ギャラン=ドゥの横にジグマールはいた。
接触する直前に、ワープで移動したのだ。
突然ターゲットを見失った戦車は、一瞬だけ動きを止める。
それを確認したギャラン=ドゥがフン、と笑うのと同時に電車が射程範囲に入った。

「今だギャラン=ドゥ!」
ジグマールが叫んだ瞬間、ギャラン=ドゥが戦車を掴んで電車の中へとワープさせる。

「逝っちまいなァ!!!」

残されたエネルギーを全て使用して、爆弾戦車を電車へと送る。
ジグマールが命を賭けて図ったタイミングだ。
ここで失敗するわけにはいかない……!

エネルギーを込めた手の平から、戦車の感触が消えた。
ワープは終了した、後は電車の中にちゃんと入っているかどうか。
大丈夫だ、失敗するはずなどない。
成功したと信じて、ワープさせた方向へと視線を移した。


さて、ギャラン=ドゥは本来ならばジグマールが死んだところで問題なく行動できる。
それが最終進化だ。
813男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:17 ID:ZWduLGJA
しかし、この殺し合いの会場では主催者によって掛けられた制限で、ジグマールと命運を共にせざるを得なかった。
行動範囲もジグマールの周囲数メートルに限定させられていた。
そのうえジグマールの外に出られる時間は30分程度。
そのせいで、何度も死にかけた場面があった。
彼らはこの殺し合いを綱渡りのような危うさで生き抜いてきたに等しい。
そして最もつらいのが、人間ワープの有効範囲だ。
100分の1程度にまで制限された人間ワープは、彼らをとても苦しめた。

だが、今ほどその制限を憎らしく思ったことはない。

100分の1に弱体化させられた能力を、他者に使ったのはこれが初めてだ。
ジグマールを抱えて敵から逃走したときなどは、距離を気にせずに前へ前へとワープしたからよかった。
だが、今回は違う。
大幅な制限になれていなかったせいで、人間ワープの距離が狂ってしまった。

ギャラン=ドゥの目に映ったのは、電車の手前で宙に舞う戦車の姿。
戦車は電車の中に入ってはいなかった。
ワープは……失敗したのだ。

(俺の……せいか……)
ジグマールが命を掛けて繋いでくれたのに、自分が台無しにしてしまった……。
地面に着地した戦車は、すぐさま起き上がって走り出すだろう。
1人残されたジグマールは成す術なく殺される。

俺も、こいつもここで終わりなのか……。
俺のせいで……。

そう考えた瞬間、ギャラン=ドゥは無意識に走り出していた。
814男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:17 ID:ZWduLGJA


「そんな……」
ワープが失敗した。
その事実にジグマールは愕然とした。
と、同時にそれでもいいと感じていた。
一度だけでもギャラン=ドゥと肩を並べ、一緒に戦えた。
ずっと見ていた背中の隣で戦えた。
その結果で死ぬなら……。
(僕は……満足だ)
空を見上げ、死を覚悟する。
ジグマールの目に綺麗な月が目に映った。
宇宙の支配者になれば、あの月さえも手に入れられたのかな。
そんな大それた願いを鼻で笑った。
(僕には、宇宙は広すぎるや……僕が欲しい場所は、もう手に入れたから)
もはやこの生に悔いは……ない。

月に見とれていたせいで、ジグマールは『それ』に気づくのが数秒遅れた。

「ギャラン…………ドゥ……何を?」
彼の目に映ったのは、爆弾戦車に向けて走り出すギャラン=ドゥ。
ほとんどのエネルギーを使い切ったのに……何をするつもりなのか。


「うおおおおおおおおおおおッ!!!」
俺は何をしているのだろう。
ガラにもなく叫んでいる自分に問いかける。
俺には夢がある。
アルターワールドを築き上げるという夢が。
そのためにはジグマールに生き残ってもらわなくてはならないのだ。
815Classical名無しさん:08/01/27 21:18 ID:l3S3mblA
 
816男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:18 ID:ZWduLGJA

……本当にそれだけか?
(それだけじゃあないだろうなァ……)
純粋に、自分の野望など度外視しても、ジグマールに生きて欲しい自分がいる。
アルターワールドを手に入れたとしても、ジグマールがそこにいなければ物足りないのだ。
すぐに慢心し、弱音を吐き、自分に頼る。
そんな男でも、自分の唯一の仲間だから。
彼が命を賭けるには十分な理由なのだろう。

戦車を片手でわし掴むと、電車の壁面に押し付けた。
「ツレションしようぜェ爆弾さんよォ!!」
少しでいいんだ。この薄い壁面を超えるだけのエネルギーさえあれば……。
……あるじゃねぇか。
俺は何で出来ている?
アルターはエネルギー体じゃねぇか。

「ゴッヂヲヲヺヺヺヺヺ……」
電車の壁面に擦りつけられて、シアーの声が大きくブレる。
彼と電車が接触している面が摩擦で大きく火花を散らしていた。

「ぬおおおおおお……」
摩擦の熱で、この爆弾が爆発する前にワープさせなくては……。
体中からエネルギーを搾り出せ!
無様な真似は晒せねぇ……相棒が見てんじゃねぇか!
ここで気張らなきゃ……アイツもろとも死んじまうんだぞ!
「見ィィ゙ィ゙ィ゙ロォォォ゙ォ゙ォ゙ォ゙ッ!」
「うおおおおおおおおおおおおおッ!」

そして……

爆弾は、電車の内部にカランと落ち、後ろの壁に勢いよく衝突した。
後にはギャラン=ドゥと戦車の作り出した爆発だけが取り残された。
817Classical名無しさん:08/01/27 21:19 ID:ECbJT1Xg
818男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:19 ID:ZWduLGJA


「ギャラン=ドゥ!!」
吹き飛ばされたギャラン=ドゥにジグマールが駆け寄る。
限界以上にエネルギーを放出した状態で、あの爆撃を食らったのだ。
ギャラン=ドゥの体は3分の2以上が欠損していた。

「ジグマールゥ……あの……戦車は?」
ジグマールの体はどう見ても手遅れで、血液の代わりに七色の粒子を垂れ流していた。
その粒子は彼の体を構成しているアルターのエネルギー。

「あれならちゃんと電車に入ったよ……」
「そう……か」
何で泣いているんだよこいつは……。
お前の陳腐な作戦は成功したんだろうがよォ。
DIOとやらに勝てるって証明できたんだろうが。

「なんて……馬鹿なことを……」
「仕方……ねぇ、だろ……2人、とも……死ぬ……より、は。
 それに、アルター……は、死な、ない、一ヶ月……も、すれば、また……出て、こられる……さ」
たった一ヶ月だ。
お前がこの殺し合いに生き残れるかは心配だが、たとえ死んだとしても責めねぇよ。
だから、気にせず暴れて来い。ジグマール。

「そんな、君なしじゃ僕は殺されちゃうよ!」
「そう、か……そいつ、は、悲しい……な……でも、なぁ……」
まったく……弱っちい心は変わってねぇな……。
違う、お前は変わった。強くなったはずなんだ。
変わってることにおまえ自身が気づいてないだけだ。

「お前、は……もう……アルター、に……頼るな。お前……は、1人、で生きて……いける……」
819Classical名無しさん:08/01/27 21:19 ID:l3S3mblA
  
820男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:20 ID:ZWduLGJA

「そんな! だってここにはDIOのような……」
「DIO……に、さっ、きの……アレ……が、できた……かよ?」
DIOが世界を支配するなら、その世界を捻じ曲げるのが俺たちの能力だ。
負けないさ、誰にも。

「あん、しん……しろ、お、まえ……は、最、強の……『アル……ター、使い』だ」
「『最強のアルター』使い……」
そうだ、そして……お前は……お……れ、の…………


ギャラン=ドゥは七色の粒となり、空へと消えた。
「待って……!」
上空へと伸ばした手は空を切り、バランスを失って膝を着いた。
辺りに舞い散った七色は、月光の金色と混ざり合って美しく光る。
世界で唯一、ジグマールだけが感じることの許された、名も無き色。
しかし彼の目はその色を写すことなく。何も見ることはなく。
ただ目の前の空間を見つめている。

握り締めた手の中で、虹の粒が静かに弾けた。
821男とアルター ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:20 ID:ZWduLGJA
【E-4 北東部 1日目 夜中】

【マーティン・ジグマール@スクライド】
[状態]:全身に負傷中(治療済み) 美形 中程度の疲労 
[装備]:本部の鎖鎌@グラップラー刃牙
 アラミド繊維内蔵ライター@グラップラー刃牙
 法儀礼済みボールベアリングのクレイモア地雷(リモコン付き)@HELLSING(未開封)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]
基本:??
1:ギャラン=ドゥ……。
2:アカギの目標が聞きたい
[備考]
※アカギと情報交換しました
※人間ワープにけっこうな制限(半径1〜2mほどしか動けない)が掛かっています
連続ワープは可能ですが、疲労はどんどんと累乗されていきます
(例、二連続ワープをすれば四回分の疲労、参連続は九回分の疲労)
※ルイズと吉良吉影、覚悟、DIO、ラオウ、ケンシロウ、キュルケはアルター使いと認識しました
※吉良吉影の能力は追尾爆弾を作る能力者(他にも能力があると考えています)だと認識しました。
※DIOの能力は時を止める能力者だと認識しました。
※ギャラン=ドゥはエネルギー不足で外には出てこられなくなりました。
 ですがジグマールは、人間ワープの能力を問題なく使えます。


【場所不明 電車内 1日目 夜中】
【シアー・ハートアタック@ジョジョの奇妙な冒険】
[状態]:五階建てビルの瓦礫に埋もれて行動不能
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:なし、単純自動行動。
[備考]
※制限のため、一般人でも何とか回避可能なスピードで攻撃してきます。
822 ◆d4asqdtPw2 :08/01/27 21:21 ID:ZWduLGJA
以上で投下終了です。
誤字、設定ミスなどありましたらお願いします。
823Classical名無しさん:08/01/27 21:22 ID:aRp.8ekU
投下乙……

ジグマール、ギャランドゥ!お前に僕は敬意を表するッ!
824Classical名無しさん:08/01/27 21:25 ID:zfR8Fgu6
投下乙
熱血コンビはここにもいたッ!
ギャラン=ドウとジグマールの熱い友情に燃えたよ
2人の仲が深まってよかった
825Classical名無しさん:08/01/27 21:26 ID:l3S3mblA
>>770
おつかれ!そしてGJ!
鳴海結婚してくれ

>>822
こちらもおつかれ!GJ!
二人共かっこいいなぁ……
826Classical名無しさん:08/01/27 21:37 ID:IbLtZWw6
投下乙
ギャラン=ドゥうううううう
あの惨めなジグマールが立派な漢にッ!!
これで脱出フラグも見えてきた、生き残るんだジグマール!!
827Classical名無しさん:08/01/27 21:39 ID:stIo6Vdg
どおおおおなってんだああああああ! ヘタレ王ジグマールがここまでの漢を見せるとはあああああ!!
原作ですら見られなかった男前ギャランドゥとかもう、眩暈しそうだ。アカギの伏線を見事に回収するこのやり口、見事でした!
828Classical名無しさん:08/01/27 21:44 ID:1re0s4aM
 ディ・モールト! ディ・モールト良い!
 立て続けに最高の連続だァァァ!!
 なんて期待感を膨らませるジグマール!

>>821
 状態表示が描き直されてなかったぜ!
829Classical名無しさん:08/01/27 21:45 ID:Ia4ieiHM
>>720
うぁぁぁ、DIO……。搦め手使うマーダーはやはり熱血には勝てないか。
鳴海乙。そしてパピヨン美味し過ぎる。
GJ。

>>822
ギャランドゥが……! まさか、最強のアルターがここで消えるとは……!
しかしジグマール化けたなぁ。GJ。
830Classical名無しさん:08/01/27 21:45 ID:ECbJT1Xg
投下乙
ギャラン=ドゥ!!!!
キサマがここまでかっこいい死に様をするなんて、誰が予想できた!
美形、今君が希望だ!GJGJぅぅっぅ!!
831Classical名無しさん:08/01/27 21:46 ID:hrO1Dw2E
投下乙!
原作じゃ2人で会話する間もなかったけどこうくるとは…
運命共同体っていうのがこうも人格に影響を与えるなんて思いもしませんでした

>>ジグマールの体はどう見ても手遅れで、血液の代わりに七色の粒子を垂れ流していた。
ジグマールじゃなくてギャラン=ドウでは?
832 ◆L9juq0uMuo :08/01/27 21:53 ID:XK./xUx6
IDが違うのは携帯だからです。

>>822
投下乙です。美形が覚醒した!そして格好いいギャラン=ドゥ!これからの美形に期待がかかりますね!

>>781
DIOの思考の流れはこんな感じで書いていました
ダメージが激しく体力を著しく消耗、シェリスの人質から回復を計る→シェリス、作戦失敗、鳴海も追ってくる→激しく消耗した状態で鳴海を迎え撃つよりも体力を回復させて鳴海を倒す、その為に背に腹は変えられないからシェリスを殺す。
833Classical名無しさん:08/01/27 22:00 ID:ZWduLGJA
感想ありがとうございます。感想頂くとマジでやる気出てくるわw

>>828
指摘ありがとうだぜ! wikiで訂正させていただきます。
>>831
仰るとおりです……指摘ありがとうございます。こちらもwikiで。
834Classical名無しさん
◆L9juq0uMuo氏
残り人数の表記を忘れてますよ。
【加藤鳴海@からくりサーカス:死亡確認】
【シェリス・アジャーニ@スクライド:死亡確認】
【DIO@ジョジョの奇妙な冒険:死亡確認】
【残り25人】