週刊少年マガジンとマガジンSPECIALで連載中の「スクールランブル」は
毎週12ページの週刊少年漫画です。
物足りない、もっとキャラのサイドストーリー・ショートストーリーが見たい人もいる事でしょう。
また、こんな隠されたストーリーがあっても良いのでは?
有り得そうな展開を考察して、こんな話思いついたんだけど…といった方もいるはずです。
このスレッドは、そんな“スクランSSを書きたい”と、思っている人のためのスレッドです。
【要はスクールランブルSSスレッドです】
SS書き限定の心構えとして「叩かれても泣かない」位の気概で。
的確な感想・アドバイスレスをしてくれた人の意見を取り入れ、更なる作品を目指しましょう。
≪執拗な荒らし行為厳禁です≫≪荒らしはスルーしてください。削除依頼を通しやすくするためです≫
≪他の漫画のキャラを出すSSは認められていません≫≪エロやヤオイなど性描写は禁止です≫
2 :
Classical名無しさん:07/12/11 21:25 ID:i.Zje1A2
またクソスレかよ。
ったかいい加減にしろよ。
>970 名前:Classical名無しさん 投稿日:07/12/10 23:45 ID:/jTSKc8c
>投下乙です。
>ナwwwカwwwムwwwラwwww
>
>
>ミコチンと絃子のパンツなら俺も余裕で変態仮面になれるなw
>974 名前:970 投稿日:07/12/11 21:38 ID:MgMWmWzg
>次スレ立ててきた。
>
>スクールランブルIF29【脳内補完】
>
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1197375834/ >
>
>
>
>>972 >踏み逃げってなぁ……。
>一日中過疎スレに張り付いているなんて君のようなニートじゃなきゃ土台無理な話だろうに。
>今はスレが完走間近なんで運良く1日以内にここに来たけど、普段だったら10日以上は来ないよ。
>スレ立て指摘した翌日に気が付いてもらい、スレを立ててもらえたただけでも有難いと思えカス。
7 :
Classical名無しさん:07/12/12 20:12 ID:NxFjXadM
1乙。あぁ、おにぎり分が足りません!どなたか良質のおにぎりを提供してください!
ネタフリよろ
今回みたいな話されると適当ににゃんにゃんしてどうこうという
レベルじゃなくなってくるから困る
>>8 個人的に読みたいのは王道or旗が成立した後の
八雲と播磨の関係かな。
つか今はホント書きづらいなあ。
キャラにどこまでやらせていいか難しい。
10 :
Classical名無しさん:07/12/13 22:34 ID:7jwOdOzY
今週の播磨・天満・八雲の三人川の字、なんか家族の絆みたいでいいな。ただ、おかげで王道・おにぎりは減退ぎみ…orz
ますますSSにしにくくなるじゃないか!
まぁ今の話を書かなくても良いんじゃね?とは思う
別に話を遡って「○話の頃の話です」って前置きしてくれればこっちですぐに切り替えられるしね
好きに書いて良いんじゃないの?
キャラの人格とか設定変更は勘弁だけどなw
12 :
Classical名無しさん:07/12/14 20:13 ID:0pi7ftYo
この糞スレまだやってたのか?www
大方犬の糞みたいなSSが細々と投下されてる程度で、まとめの更新すらろくにされてねーんだろーな。
原作の方もgdgdだしある意味しょうがないのかもしれんが、だからこそこれ以上無様な姿を晒す前に
原作の連載もこの過疎スレも打ち切るべきだと思うんだ。
そうだねスクラン面白いね
どうでもいいが、ここまでまだ一本もなしか。
まだ3日だし
気長に行くべ
17 :
Classical名無しさん:07/12/15 14:05 ID:KH/dv4PQ
んだべ。というわけでネタ振り。
先週は縦笛での擬似結婚式だったわけだが、これを他カップリングでやったらどうなるか妄想してみないか?
沢近のツンデレ花嫁とか流されて受け入れちゃう八雲とかもうご飯三杯はいけそう。
無理して八雲ネタ入れないでいいよ糞旗野郎
前回までのあらすじ
播磨拳児の同級生である、沢近愛理と塚本天満が何者かに誘拐された。
その日、偶然近くを通りかかった播磨拳児は、道に落ちていた沢近愛理のカバンの中から
パンティを発見し、そのパンティでもって変態仮面に変身、二人の救出に向かう。
誘拐犯のアジトを潜入した変態仮面は、誘拐犯と対決するものの、中国の武器を操る
犯人に苦戦してしまう。そんなとき、謎の女が変態仮面に武器である鞭を渡し、そこから形勢
は逆転。一気に誘拐犯のグループを捕まえて、沢近と天満を無事救出したのであった。
究極!!スクールランブル
第三話 秘密
その日、播磨拳児は疲労感と筋肉痛を抱えたまま自らの居候先である従姉の刑部絃子の
マンションに帰ってきた。夕闇に染まる街の光景などを見る余裕すらなく、身体全体を引きずる
ように家のドアを開けた。
「帰ったぞ」
「おかえりなさい」
「あ…」
そこには家主の刑部絃子ではなく、髪を後ろで縛りエプロンをつけた、同級生の塚本天満の妹、
塚本八雲であった。
「ただいま」
播磨は、慣れない光景に戸惑いつつ「ただいま」などと普段言わないような言葉を発してしまった。
「播磨さん、遅くなるって聞いたので、先におじゃましてました」
「遅くなるって、誰に聞いたの?」
「高野先輩です」
「ふーん」
「すいません、勝手なことしちゃって」
「いや、いいんだよ。ありがとう」
「おう拳児くん、遅かったな」タンクトップに短パン姿の刑部絃子が部屋から出て言った。
「播磨さん、お風呂にしますか?それともご飯にしますか。食事の準備はできていますから」八雲は
絃子の方を見ると、すぐに播磨に視線を戻して言った。
「う、ああ…。じゃあ、風呂入るわ。今日は汗もかいちまったし」
「そうですか、着替え出しときましたから」
「うん」
そう言って、八雲は台所の方に行った。まだ食事の準備が残っているのだろう。味噌汁
のいい匂いが漂ってくると、急に腹の虫も鳴いた。
「拳児くん、まるで新婚夫婦みたいじゃないか」
「うるせえ、そんなんじゃねえよ。それから絃子、その格好はなんとかならんかな」播磨の
目線の先には、スラリとのびた絃子の脚が見える。
「拳児くん、浮気はいかんよ」
「だから違うって」
家に帰って食事の準備がされていたなんて、一体何年ぶりだろうか。播磨はそのことに、
実は一番感動していた。
風呂に入り、一日の汗を洗い流した播磨は、その日起こったことを整理した。
沢近愛理と塚本天満の二人が誘拐された。そして、播磨は沢近のカバンを見つけ、その
中に入っていたパンティでもって変態仮面に変身した。そこまではいい。ではなぜ変態仮面
に変身した自分は、沢近の居場所がわかったのか。播磨には、変身している間の記憶が
ぼんやりとしかなかった。そういえば、塚本天満のパンティで変身した時も、いつの間にか
天満の家に行って、しかもそこの忍び込んでいた強盗を捕まえていた。
パンティをかぶると、その持ち主を助けてしまうのだろうか。播磨は湯船で顔を洗ってもう
一度よく考えてみたが、考えがまとまるはずもなかった。今日一日の出来事は、俺の夢かも
しれない、とそう思って忘れようかとも思った。
「拳児くん、いつまで入ってるんだい。ご飯さめちゃうよ」
リビングから絃子の声が聞こえたので、播磨は慌てて風呂を出た。
「美味しそうだね、拳児くん」
テーブルには野菜を中心に、きんぴらごぼうや冷奴、キュウリの浅漬けなどのメニューが
並べられていた。メインは肉野菜炒めで、味噌汁と白いご飯もしっかり用意されている。
「播磨さん、ご飯はこれくらいでいいですか?」そう言って、日本昔話に出てくるような大盛りに
ご飯を盛る八雲。
「ああ、ありがとう」しかし今の播磨には、それでも足りないくらいだった。
「じゃあ食べようか。お腹ぺこぺこだよ」絃子はそう言って箸を手に持った。
「さっきからビールばっかり飲んでたくせに」
「何か言ったかい?」
「いえ、何でも…」
「いただきまーす」
三人でテーブルを囲む。不思議だ。あまりにも不思議な光景である。
「食事のメニュー、高野先輩に言われたんですけど」
「高野がどうした」
「大豆やお野菜を食べさせるようにって」
「なんで高野が」
「この時期は体調を崩し易いですし」
「そういえば、バーベキューの時もそんな事言ってたな」
「なかなか家庭的なところもあるんだな、高野くんも」ビールを飲みながら絃子が言った。
「お前の部活動の生徒だろう、高野は」
「そうだったね。でも部の活動の方は彼女に一任しているから」
「ふうん…。それにしても美味いなあ、このきんぴら。こんな美味いもの食ったことねえよ」
播磨が嬉しそうに勢いよくおかずを口の中に放り込む。
「そうですか?」八雲は戸惑いつつも嬉しそうな笑顔を見せた。
そんな二人の様子を絃子はニヤニヤしながら見守っていた。
「妹さん、おかわり」
「はい」
食事も大方終ると絃子はまたいつものようにテレビを見ていた。飲んでいるものが、いつの
間にかビールから焼酎になっている。
「手伝おうか、妹さん」食器を洗う八雲に声をかける播磨。
「いえ、大丈夫です。それより播磨さん、原稿の方は大丈夫なんですか?」
「あ…」
八雲が播磨の家に泊まりに来た理由を、彼はこの時ようやく思い出した。
「ああ、今から用意するわ。それ終わって、ゆっくりしたら俺の部屋に来てくれよ」
「はい」
「拳児くん、寝室は別々だよ。キミたちはまだ高校生なんだから」テレビを見ながら絃子が言った。
「わーってるよ!なあ、妹さん。大丈夫、安心してくれ」播磨は赤面しながら言った。
「は、はい」八雲も赤面していた。
播磨が自分の部屋に行こうとすると、
「あ、あの播磨さん」八雲が呼び止めた。
「あん?」
「お部屋、片付けときました。勝手にですけど」
「あ、ああ。ありがとうな。ずっと掃除してなかったんで酷いことになってただろう」
「はい」
播磨は何ヶ月ぶりか、すっきりと整頓された自分の部屋を見た。漫画を描くよう
になってから、漫画用の道具や参考資料などが山積みになって、荒れるばかり
だったからだ。
「とにかく締め切りもあるし、気合入れて描かないと」そう言って途中まで描いていた
原稿を取り出して、さっそくペン入れに入る。
しばらくすると、Tシャツにジャージのズボンをはいた八雲が入って来た。顔はほんのり
紅潮しており、風呂に入って来たようだった。
「すいません、お風呂まだだったもので」
「いや、いいんだよ。ゆっくりしていて」
八雲が座ると、微かにシャンプーの匂いが播磨の鼻腔を刺激した。刑部絃子も、
昼間はいい香りがするのだが、夜は酒のニオイしかしないので、そこも新鮮だった。
「どこまで進みました?」
「あと四ページかな。それと、丸々一本まだ手をつけてない原稿があるんだけど」
「じゃあ、急がないといけませんね」
「ああ」
八雲がきてから、作業の効率が飛躍的に上昇した。最初のうちは一々指示を出しながら
進めていたペン入れ作業も、最近は言葉を交わさなくてもすすむようになった。
「今度の話なんだが、平凡な高校生が正義のヒーローになるっていう感じなんだが」
播磨が無邪気に話をしていると、八雲が何かを我慢しているような感じで話し始めた。
「あ、あのう…」
「どったの?トイレ?」
「いえ、そうじゃなくて…」
「ん?」
「播磨さん、実は、見てしまったんです」
「え、何を…」
「これ」
そう言うと、八雲はズボンのポケットから白い布のようなものを取り出した。
「それは…」
それは間違いなく、先日播磨が塚本邸から持ち帰った塚本天満のパンティであった。
終った。俺の人生は終った。播磨は自分が奈落の底に落ちていく姿を想像して絶望した。
「最初、見間違いかと思ったんです。似ている奴ならいくらでもあるから。でも、こうやって
はっきり見て間違いないと思いました」
「あ、うん…」
播磨はこの時、すぐに土下座をしなければ、などと思っていたけれども、ショックのあまり
身体が動かなかった。
「播磨さんが、変態仮面さんだったんですね」
「え?」
いきなり二段抜かしで結論に到達され、播磨の頭の中は完全に混乱した。だいぶ前に
刑部絃子が、数学で重要なのは答えではなく、その答えに至るまでの過程だよ、などと言って
いたけれども、今彼は、その言葉を少しだけ理解した(ちなみに絃子は物理の教師であるが、
数学も得意で播磨に時々教えている)。
「すいませんでした!!」やっとの事で身体が動くようになった播磨は、高速で八雲の前に土下座
して、額を床のカーペットに擦り付けた。
「あの…、播磨さん」
「ほんの出来心だったんです」
「あの…」
「すぐ返すつもりだったんです」
「播磨さん」
「お姉さんだけには、お姉さんだけには…」
「播磨さん!」
「はい!」
思わぬ八雲の大声に播磨は驚いて顔を上げ、背筋を伸ばした。
これは殺されるかもしれない。播磨はそう思った。普段大人しい女の子が怒ったら何をするか
わからないからだ。
「あの…、ありがとうございます」
「はい…?」
「私と、姉さんを守ってくれたじゃないですか。強盗から」
「・・・・・・」
「私、凄く恐くて。姉さんを守らなきゃって思ったんですけど、動けませんでした。変態仮面さん
がいなかったら、今頃どうなっていたか。だから、ずっとお礼が言いたかったんです」
「はあ…」
何だかわからないけれども、播磨は救われたらしい。殺されるかと思ったらお礼まで
言われてしまった。
「でもなんであんな格好をしていたんですか?」
「う…。それは、何かわからないけど、無意識のうちなんだよ。覚醒したっていうか」
なんだか自分が危ない薬をやっているみたいな言い方だな、と播磨は思った。
「そうなんですか」
「でも二人が無事で何よりさ」
「あ、でも“これ”は返してくださいね」そう言って八雲は笑顔で姉のパンティをしまった。
「あ、やっぱりバレてました?」播磨が天満の家からパンティを持ち出していたことも、
彼女はお見通しであったようだ。
それから二人は、またいつものように原稿を描く作業を進めた。しかしなかなか終らない。
深夜になると、段々と集中力が切れそうになってくる。
「ここのベタなんだけど…、ん?妹さん?」播磨が呼びかけても返事がなかった。
正面に座っている八雲は、背筋を伸ばした状態ですやすやと寝息をたてていた。
無理もない、食事だけでなく洗濯や掃除までやらしてしまったのだから。と播磨は思った。
これ以上無理をさせるわけにもいかないので、彼は八雲を抱えて部屋の外に出た。
そして絃子の部屋に敷いてある来客用の布団に寝かせ、自分の部屋に戻った。ちなみに
刑部絃子も、自分のベッドでぐっすり眠っている。
「ふう、ここから自分ひとりで頑張ろう」そう思って再び原稿に向かう播磨。しかし眠気は止ま
らない。仕方なく、台所に行ってコーヒーを入れ、それを自分の部屋に持ち帰った。コーヒー
もおもいっきり濃い目に入れないと効果がなくなってきているな、などと思いながら再び作業
を進めた。
そして午前一時を回った頃、お約束とも言える悲劇が起こった。
ああ!!原稿があああ!!
濃い目のコーヒーが、描きかけの原稿の上にこぼれてしまったのだ。播磨の心の中では、
変態仮面の正体がバレた時以上のショックを彼に与えた。原稿も、彼の目の前も真っ黒に
なってしまった。
急いでコーヒーをふき取ってみたものの、原稿にはべっとりとコーヒーが染みており、もはや
再生不能の状態であった。
「せっかく妹さんに手伝ってもらったのに…」播磨の頭の中に、以前原稿の上にインクを
こぼしたときのことが思い浮かんだ。
あのときは、妹さんが手伝ってくれたから間に合ったんだ。でも今宵は…。播磨の目の
前は暗くなるばかり。一向に光は見えない。やはりここは妹さんを起こして…、いやダメだ。
ここは自分で何とかしなければ。
とりあえず気分を落ち着かせるため、顔を洗おうと思い洗面所に行く播磨。そこで彼は、
再び“ある物”を発見した。
「これは、まさか…」
風呂場の近くに無造作に投げ捨てられていたもの、それはまさしくパンティであった。
しかも紫…。デザインもぐっと大人っぽい。間違いなく同居人、刑部絃子のものであった。
いかんいかん、何を考えているんだ俺は!播磨は首を激しく振り、頭をたたく。お陰で
眠気が少しは引いた。
「とりあえず部屋に戻ろう…」
顔を洗うという当初の目的をすっかり忘れた播磨は、自分の部屋に戻った。そしてとりあえず、
グチャグチャになってしまった自分の原稿を目の前にした時、右手に何かを掴んでいることに
気が付いた。
「これは…」
まさしく、先ほど発見した刑部絃子のパンティであった。それも紫色のシルクのパンティ
である。塚本天満のと違って、色合いや肌触りが全然違う。
って、何を考えているんだ!だいたいなんで自分の部屋に持ち帰っているんだよ!!
播磨は自分自身を心の中で怒鳴った。仮にも従姉弟のだぞ。血がつながっているんだぞ、
禁断じゃないか。
しかし寝不足と疲労で、播磨の思考はすでにまともではなかった(元々まともではなかった、
という指摘はこの際勘弁してもらいたい)。
でもシルクのパンティとか…。
初めて目の当たりにする大人の下着に、播磨の興奮度はマックスに近づいていた。この時、
これが自分の従姉弟のものであることなど、頭の片に追いやられていたのであった。
被ってみようか…。
いや、いかん。
男は度胸、何でもためしてみるのさ。
それは漫画が違う!
「ふうう…」
シルクの誘惑に勝てず、播磨はついに刑部絃子のパンティを装着してしまった。
「こ、これは…」
ジワジワと迫り来る興奮、塚本天満や沢近愛理のものとは明らかに違う感覚…。
《五分後》
「ハア、ハア…。あれ…?」
不意に正気に戻る播磨。
なぜだ、なぜ変身しないのだろうか。絃子のパンティを取り外した播磨は、ほんの
少しだけ考えた。相手が絃子だから変身できなかったのだろうか。それとも、既にこの日、
一度変身してしまったので、もう変身できないのだろうか。
だいたい変身して何をしようとするのか。急に何もかも冷めてしまった播磨は、とりあえず
絃子のパンティを洗濯籠の中に戻しに行き、また元のようにテーブルの前に座った。
気がつくとエアコンの電源も消えており、部屋の温度はかなり上昇していた。汗をかいた
播磨は、床に落ちていた白い布で汗を拭おうとした。
「え?なんでこんな所に布が…」
そう思ってその布をよく見たら…、懸命な読者ならもうお気づきだと思うけれど、それは先ほど
八雲が回収したはずの彼女の姉、塚本天満のパンティだった。八雲を絃子の部屋に運ぶ途中、
ポケットから落としてしまっていたのだろう。
もしかして、俺はもう変身できなくなっているのではないか。播磨は、天満のパンティを見つめ
ながらそう思った。
だったら、今被ってもどうにもならないはず…。そう思った播磨は、おもむろに手に持ったパンティ
を顔に近づけた。
「き、気分はエクスタシー…」
播磨はいつの間にか着ている服を脱ぎ捨て、変態仮面に変身していた。もちろんトレード
マークの網タイツも健在である。
「む、早く原稿を書き直さなければ」
変態仮面に変身した播磨は、変身する前の播磨拳児が完全に忘却していた目的を忘れて
いなかった。
播磨、いや変態仮面はテーブルに座ると、いつもの三倍以上のスピードで下書き
もなしに原稿を描きはじめたのだ。
「ふぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
しかしそんな変態仮面も、迫り来る睡魔には負けそうになる。それもそのはず、
変態仮面は常人の何倍もの能力を発揮するのだ。そのため、常人の何倍もの疲労を
抱えることになる。ましてや今日は、すでに一度変身をしていたのであるから変態仮面
とはいえ、睡魔に襲われて当然といえよう。
「ここで眠る訳にはいかない」
そう言うと、変態仮面は扇風機を取り出した。
そして扇風機のカバーやファンを取り外して、何か特殊な装置を取り付けた。それは、
ファンの代わりに鞭が回転する“自動鞭打ち機”であった。それを自分の後ろに置いた
変態仮面は、おもむろにスイッチを入れる。するとファンの代わりに取り付けてある複数
の鞭が回転し、そのたびに変態仮面の背中をたたく。更に眠くなってくると、回転の強さ
を「強」にし、その痛みでもって眠気を吹き飛ばした。
また、鞭に飽きてくるとチクビに洗濯バサミをはさみ、巨大なローソクのロウを首筋に
かけたりして眠気と戦い、その戦いは明け方まで続いた。
「播磨さん、おはようございます。原稿は…」昨夜、いつの間にか寝てしまっていた八雲が
申し訳なさそうに播磨の部屋を尋ねた。すると部屋の中に素っ裸で、まるでミイラのように
なった播磨の姿が倒れていた。
「播磨さん!大丈夫ですか」播磨を抱きかかえて呼びかける八雲。
返事がない、ただの屍のよう…、
「生きてますから!」怒る八雲。
あ、ごめんなさい。でもこんなに感情をはっきり表に出すような娘だったかな?などという
筆者の疑問をよそに、播磨は八雲によって服を着せられ、ベッドに寝かされた。
「妹さん…」
「はい」
「原稿、できたから」
「はい、頑張りましたね。播磨さん」
「ありがとう…」
そう言うと、播磨は深い眠りについた。
*
その日の塚本邸。周防宅に泊まった姉の天満よりも、播磨の所に泊まった八雲の方が先に
家に帰っており、夕食の支度をしていた。
「ただいま八雲」
「おかえり姉さん、周防先輩の所での勉強ははかどった?」
「うーん」
「どうしたの?」
「なんかね、変態仮面の話をしていてなかなか集中できなかったよ」
「え?」
「どうしたの八雲」
「いや、なんでもないよ姉さん」
「それにしても、変態仮面の正体って、誰なんだろうねえ」
荷物を置きに二階の自分の部屋へ向かう天満はそんなことを言いながら階段を上って
いった。
まさか自分のすぐ近くにいる人間が変態仮面だっただなんて、姉は信じないだろうな、
と八雲は思ったのであった。
数日後、播磨が連載をしている週刊ジンマガの編集部から播磨に電話が入った。
《あ、田沢くん?ジンマガの三井だけど》
「はい。お世話になってます」
ジンマガの編集者でハリマ☆ハリオ(播磨のペンネーム)の担当をしている三井は、
いまだに播磨のことを田沢と呼ぶ。理由はよくわからない。
《いやあ、今回の漫画良かったよ》
「へ?」
《なんか打ち合わせの時に見たネームと全然違ったんだけど、こっちの方が面白い
ねえ。特にギャグのところなんて最高だよ。変態的で。いやあ、田沢くんがこんな
面白いアイデアを隠し持っていただなんて、編集長も関心していたから》
「そうっすか」
《じゃあ、この調子でまた頑張ってね》
「あ、はい」
播磨は、変態仮面になって漫画を描いた所までは覚えていたけれども、その内容
までは覚えていなかった。しかも原稿を描き上げて数日は歩くことすらできなくなるほど
疲れてしまうので、また変態仮面に変身して漫画を描こうとは思えなかった。
つづく
乙。今回は読書感想文のときの話か。播磨ww
正体八雲に知られてしまったが、これで八雲の下着で変身したら
さすがにとりかえしきかないよな・・w
キタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!
いじめ白書の続きマダー?
GJ!
八雲はほんと冷静だなあ。
ここまで突っ走るとGJとしか言いようがない
ところで変態仮面シリーズって播磨達3年生?
(´・ω・)絃子さんのじゃ変身出来ないんだね
>>30 乙です
>>37 若さか足りないのkうわなにをするくぁwせdrftgyふじこlp
>>37 きっとウンコがついてたせいで、いまいち乗り切れなかったんだよ。
お詫び
『究極!スクールランブル』第二話において、天満が周防の家に泊まった事がない
と発言しておりますが、誤りです。
天満は一度泊まったことがありました。ちなみに沢近は二度。
さて、ご質問にもありましたとおり、変態シリーズの設定は、東郷榛名シリーズと
同様、播磨や天満が!三年生になった後のお話です。本遍の流れとは若干違うところ
もありますけれど、どうかご了承ください。
東郷榛名シリーズは一学期の期末テスト前に終わり、変態シリーズは一学期の
期末の後にはじまりました。その訳は、この二つの世界が…。
刑部絃子のパンティで変身できなかった理由は最終回(既に脱稿)に書きました。
本家、変態仮面にも似たような話があったので、それをパクりました。
>>40 ハリハルの奴とも繋がってるっぽいのかw
次回も期待してます
スクールランブルIF26登録完了です。
申し訳ありませんがキャラ別登録お願いします。
あと、IF29のページもお願いします。
43 :
こたツン!:07/12/18 00:03 ID:b6TOWpsQ
「おい、お嬢。」
「なに?」
「なんでお前と俺が一緒にこたつ入ってんだ?。」
「二つ使う必要はないでしょ。」
「んじゃ、どうして隣に座ってんだ? 向かいとかに入りゃいいんじゃねえか。」
「......隙間ができると寒いじゃない。そ、そんなことも分かんないの?
このバカヒゲ。」
「それにしても近えぞ。」
「寒いからって言ってるでしょ。。べ、別にあんたの傍にいたいとか
じゃないからね!変な想像してんじゃないわよ、この変態!」
「......。」
「......。」
「なあ、お嬢?」
「なに? まだなんかあんの?」
「なんで俺とお前がお揃いのドテラ着てんだ?」
「セールで安かったのよ。モッタイナイの精神よ。あんた日本人でしょうが。」
「なに言ってんだお前?」
「......うるさい。」
「......。」
「......。」
44 :
こたツン!:07/12/18 00:04 ID:b6TOWpsQ
「......おい、お嬢。なんかさっきより近づいてきてねえか?」
「そう? 気のせいよ。」
「そうか。気のせいか。」
「そうよ。」
「......やっぱ近くねえか?」
「......気のせいよ。」
「......いや、やっぱり近いですって!」
「......気のせいよ。」
「なんか、脚とか絡んできてますし!」
「......だから気のせいよ。」
「ねえ!変なところに手を入れないでください! ねえ、沢近さん
聞いてます!?」
「......。」
「だから近いですって! 生暖かい吐息が当たってますってば!」
「......。」
「ねえ! 沢近さん!? 沢近さん!?」
「違う。」
「へ?」
「愛理よ、愛理。」
「いや、そういうことじゃな。......ぎゃぁぁあああああ!」
「......えへへ。」
「なあ、沢近すげえ顔して寝てんぞ。」
「うちのこたつによだれ垂らしてるよ〜。」
「きっといい夢見てるのよ、そっとしてあげなさい。」
「えへ......こたつさいこ〜〜。」
乙
播磨羨ましいけどカワイソスw
お嬢は猫科だなw
タイトルが秀逸だなw
そして、こたつの下で何をツンツンしてるだ貴様らーッ!!
つまらん
48 名前:Classical名無しさん [sage] 投稿日:07/12/18(火) 19:01 ID:1Iw6Oikk
つまらん
お前がつまらん( ´,_ゝ`)
いちいち釣られんな
スルーぐらい覚えろや
\ | | ! / / / 〉 ヽ
\\ .! ! l / / / / ど >
.\ r‐y^;_ / く /
. >y´wvヽ// _/} ) ん 〈
弋ト、ト r┐`>/__//ミヽ〈 \
>ト.斤<〈∠ニ/ミヾ ヽ だ 厂
<¨ヽ、 水∠ノ /`ヾ ノ く
` <´ / > <´ け >
< `¨´_ く´ )
/ /⌒Y^V `ヽ < ) ヽ
//// i i \ヽ _) ( 厂
/ / / | | \\`Y^ヽ、 く
祝・19巻発売記念
小説は…。
さて、全国6人くらいの変態の皆さん。今週も変態タイムがやってまいりました。
え、もういいですって?
いや、ドン引きされても俺はやる。
今週は最大の敵の出現に播磨はピンチか?
余裕があったらおまけもあるかも。
では、この後すぐ。
前回までのあらすじ
播磨拳児は、ついに変態仮面の正体が自分であるということを、同級生の妹、塚本八雲
に知られてしまった。ひたすら謝る播磨に対して、八雲はなぜか理解を示し、その場は何事
もなく終る。
その後、八雲も眠り、一人で生業である漫画を描いていた播磨は命の次に大事な原稿の
上にコーヒーをこぼしてしまうというお約束な失敗をやってしまった。締め切りまであとわずか
のため、遅れを取り戻すべく播磨は変態仮面に変身して原稿を完成させる。
しかし、一日二回、それも寝不足の状態での変身は、彼の心身をボロボロにさせてしまった
のであった。
究極!!スクールランブル
第四話 暴走
一体何時間寝ていたのかよくわからない。原稿を完成させるために変態仮面に変身した
播磨は、当然の事ながらその反動で倒れてしまった。原付バイクを時速ニ百キロで走らせる
ような無謀な行為にも関わらず、この程度で済んだのは逆に幸運かもしれない、と少し思った。
あれからアシスタントの塚本八雲が尋ねてきて、お粥やらなんやらを食べさせてくれたため、
二日目には何とか自力で起き上がれるくらいに回復した。
「やはり一日二回の変身は無理だったか…」窓の外から聞こえるセミの声を聞きながら、播磨
はそんなことを考えていた。
「拳児くん、起きてるか」絃子がノックもせずにドアを開けて言った。
「ああ、起きてるよ」普段なら怒るところだが、今はそんな気力も惜しい。
「まったく、馬鹿は風邪引かないなんて言うけどね」
絃子には、播磨が風邪を引いて寝込んでいるという事にしていた。
「塚本くんが来たよ」
「ああ、入ってもらって」
「おおい、入っていいよ」
そう言うと、廊下をドタドタ歩く音が聞こえた。
この足音は…。
「おーっす、播磨くん!元気?」
「って、塚本!」
そこに現れたのは、塚本八雲ではなく彼女の姉、塚本天満であった。
「よ…、なんで」
「八雲から聞いたんだよ。播磨くんが寝込んでるってね。だからお見舞いに来たの」
か、感動だ…。こんな所に一人でお見舞いに来るなんて、やっぱり天満ちゃんは俺の事が…、
などと播磨が勝手な妄想をしている間、彼女は刑部絃子と何かを話していた。
「拳児くん、私は葉子の所に行って来るから、後は頼んだよ」そう言って絃子は自分の部屋に
向かった。出かける準備をするのだろう。
「おい絃子!夕飯はどうすんだよ」
「塚本くんに頼めばいいだろう」
「そんな勝手な…」
播磨が途方に暮れていると、天満は播磨の方を見て言った。
「播磨くん、私にまかせて。作ってあげる!」
「な、塚本の手料理…」播磨は舞い上がりそうになる気持を必死に抑えて冷静を装った。
天満ちゃんの料理なんてどれくらいぶりだろう。わざわざ体調の悪い俺のために料理を作って
くれるなんて、最高だぜ天満ちゃん!などと思いながら、彼は強く拳を握り締めた。
十数分後。
「はい、召し上がれ播磨くん」
「・・・・・」
「あれ、お粥じゃダメだったかな」
「いや、オッケーだぜ塚本!!むしろベストだ」
「そうなのだ、よかった」
「・・・・・」
「ん?どうしたの」
「いや…、お粥、だよな」
「そうだよ」
なんなのだろうか、この臭気は…。播磨は目の前のお粥(のようなもの)前に頭の中が真っ白
になっていた。
いや、たかがお粥なんだし、特別に不味く作れるはずもない。そうだ、きっと疲れて
いるから変な風に見えるんだ。元気になったらそんな事はなくなるはずだ。ようし、
この天満ちゃんのお粥を食べて元気になるぞ〜!播磨はそう思って(思うようにして)
お粥を一口食べた。
駄目だ!吐くな!播磨拳児!!
好きな娘(天満ちゃん)の前で嘔吐する事は万死に値する!
「おいしい?播磨くん」
「あ、ああ…。最高だ、塚本」
「本当?よかった」
播磨は天満の笑顔になんとか正気を取り戻し、お粥を口に運んだ。去年食べた激辛
マグマカレーの方が百倍マシだぜ、などと思いながら口に運んだ。やばい、意識が
遠のいて行く。いや、耐え抜くんだ播磨拳児!!お前の愛はその程度か…!!自分で自分を
叱咤して、播磨はただひたすらお粥を口に運んだ。
妹さん、やっぱり怒ってたんじゃないかな。だから天満ちゃんをここに…。いやいや、
好きな女の子の来訪を喜ばない男がいるものか。天満ちゃん、キミの笑顔が最高の
治療薬だぜ、などと播磨は思いつつ…。いかん、死ぬ…。薄れゆく意識の中でお粥を
完食した播磨は、倒れるように再び眠りについた。
《播磨くん…》
ぼんやりとした意識の中、播磨は誰からか呼ばれているような気がした。しかし誰かは
わからない。
《播磨くん、これを飲んで》
播磨は、身体がふわりと浮いたように感じた。恐らく誰かに上半身だけ抱えられたの
だろう。自分の口に、やわらかい何かが当たり、口の中に何かの液体が流し込まれるのを感じた。
何を飲ました。気にならなかったといえば嘘になるけれども、これは恐らく夢だろうと思い、
播磨はそのまま飲み込んだ。
「もう少しこのままにしてもらってもいいか」播磨は、今の状況がなぜかあまりにも心地
よかったため、無意識のうちに小さくそうつぶやいた。
《いいのよ。しばらくこのままでいても…》
人の温もりと柔らかさと、どこか懐かしい匂いにつつまれて、播磨は再び眠りについた。
翌日。早くも鳴きはじめたセミの声に目を覚ました播磨は、ベッドの上に自分一人しか
いないことを確認した。
「やはり夢か…」そうつぶやいて起き上がると、身体がよく動くことに気が付いた。
あれ、俺元気になってる。自分の右手を開いたり握ったりしながら、ベッドから降りて
立ち上がる。身体が軽い、彼はそう思い、大きく伸びをした。
「あら、拳児くん。もう大丈夫なのかい?」台所でパンをかじっている同居人の刑部絃子
が播磨の顔を見るなりそう言った。
「ああ、なんとかな。俺にもパンくれよ」
「自分で焼きたまえ。それにしても身体だけは丈夫だと思っていた君が、二日も寝込む
とはね」そう言いながら皿の上の目玉焼きにフォークを付きたてる絃子。
「あのさ、絃子」
「なんだい」
「昨日の夜、俺の部屋に入らなかった?」
「え?どうして」
「いや、ちょっと」
「入るわけないだろう。だいたい昨日は夜遅くまで葉子の家に行ってたからね」
「そうだよな」
「どうかしたのかい?」
「いや、何でもない」
「そういえば昨日、塚本くんのお姉さんの方がきていたけど」
「え…?ああ、来てたな」
あっちの方は夢ではなかったのか、と播磨は思い少しほっとした。
「何か大事な話でもしていたのかい?」
「いや、別に」
まさか天満ちゃんのお粥を食って気絶したなんて言えないよなあ。播磨がそんなことを
考えているうちに、トースターに入れておいた食パンがいい感じに焼けていた。
今は夏休みだ。しかし播磨が制服に着替えて学校に行くのは、補習があるからである。
ここ数日寝込んでしまっていたので、遅れを取り戻さなければならない。
「おはよう播磨くん」
「おはよー!」
自宅のマンションを出た時、不意に女性の声がした。
「高野…。それに塚本も」振り返ると塚本天満と高野晶が立っていた。
「おいおい、アタシと沢近は無視か?折角迎えに来てやったってのに」長身の周防美琴と
金髪の沢近愛理もいた。
「ヒゲが寝込むなんて珍しいわね。雪でも降るんじゃないかしら」沢近愛理がこちらの方を
見ずに言った。
「本当は愛理が一番心配していたのよ…」高野が小さく低い声で言う。
「ちょっと晶、何言ってるのよ!あたしはアンタと天満がヒゲを迎えに行こうって言うから
付いてきただけよ」沢近は声を張り上げていった。暑いのに朝から元気なことである。
「そんな事より学校行こうぜ。補習はじまっちまうよ」
周防のその言葉に本来の目的を思い出した全員は、すぐに学校へ向かった。
「なあ塚本」
「ん?何、播磨くん」
「昨日、妹さんは俺の家にこなかったか?」
「え?昨日は私だけだよ。八雲はサラちゃんと一緒に家で勉強してたもん」
「そうか…」
「どうかしたの?」
「いや、なんでもない」
夏休みにわざわざ学校に行くのは面倒だが、播磨にとって塚本天満に
会えるのはそれだけで楽しみではあった。
「播磨くんは私がマンツーマンで教えるわ」高野がそう言って播磨を連れて
行こうとした。
「おい高野、なんでだよ」
「あなたは二日も休んでたんだから課題がたまってるのよ」
「でもよお高野、俺は別に受験する訳じゃないんだし」
「今まで二年間、ロクに勉強もしてなかったんだから、このままじゃ本当に卒業
できないわよ」
「そ、それは困る…」
「はい、こっちにおいで」
(ああ…、天満ちゃーん)
高野に後ろの襟をつかまれてずるずる引きずられる播磨の姿を沢近や天満
たちは遠い目で見ていた。
その日の夕方、補習を終えた五人は塚本家で夕食を食べようということで再び集まった。
なぜかそこには天満の妹、塚本八雲もいた。
「どうして八雲もいるの?」姉の天満が聞いた。
「茶道部の会合でちょっと」
姉と一言二言言葉を交わした八雲は、遠慮がちに播磨拳児の方に歩いて行った。
「あの、播磨さん。身体、大丈夫ですか」
「おお妹さん。なんか、すっかり良くなったよ」
「そうですか」
「ところで妹さん、“あのこと”はお姉さんには…」
「大丈夫です」
「何を内緒話しているの?」不意に沢近愛理が二人の間に割って入った。
「お嬢!」
「沢近先輩」
「まあ、あんたたちがどこで何をやろうと、あたしには関係ないけどね」
じゃあなんで二人の間に割って入っているのか、などというツッコミは野暮である。
この日、塚本家への近道として播磨を含めた六人はとある林道に入った。ここはかつて、
痴漢や変質者が出る事で有名な場所であった。また播磨にとっては思い出の道でもある。
「懐かしいな…」誰にも聞こえないよう、播磨は小さくつぶやいた。
一年以上前、塚本天満が近道のためにこの道を通ったとき、痴漢に襲われそうになった
のを播磨が助けたのだ。しかし彼は自分が痴漢に間違われないよう、警察官に変装(注意・
違法です)していたので、播磨が助けたとは天満も思わなかった。
まあ今日は女ばかりとはいえ六人もいるし、周囲はまだ明るいので変な奴が出てくること
も…、そう思っていた矢先、播磨たちの前に怪しい人影が現れた。
「きゃあ!」叫ぶ天満。
「何だお前は!」周防は、ただならぬ気配を感じて身構えた。
「強い奴はいないか…」
190センチ以上はあろうかという巨大な男であった。180以上ある播磨よりも更に大きい。
顔にはなぜか、プロレスラーのような黒いマスクをしていた。どう見ても普通ではない。
周防と同様、すぐ危険な空気を感じ取った播磨は、天満の前に出た。すると不意に、
巨大な男は大きな腕を横に振り回すように平手打ちをしてきた。
「危ない塚本!」
播磨は腕と肩で男の平手打ちを受け止めた。固く踏ん張ったつもりだったのだが、
衝撃が脳天に響く。
「播磨くん!」
播磨のすぐ後ろで天満が腰を抜かしているようだった。
「お前ら下がってろ!」マスクをした大男をしっかり見つつも、播磨はそう叫んだ。
自分が相手を引き付けている間に、天満たちを逃がそうと考えていたからだった。
しかし天満は、目の前で起こっていることがあまりにもショックで動けないでいる
らしい。播磨は天満たちが気になって戦いに集中できないでいる。
やばい、中途半端な戦いでは絶対にやられる。播磨はそう思った。理屈ではなく、
数多くの喧嘩の経験が考えさせるのだ。
(何て動きをしやがる!)
大男はその巨体に似合わない素早い動きで後ろ回し蹴りを繰り出してきた。それを
よける播磨。ガードはほぼ無効。相手の攻撃を読んでかわすしかない。
しかし…。
播磨の目に、周防美琴に引きずられるように現場から避難する天満の姿が見えた。
不意に攻撃パターンを変えた大男の右ストレートが、播磨の身体の正面を捉えた。
避け切れないと思った播磨は、腕を十字にしてその攻撃を受けた。だがその防御は
ほとんど無意味と言っても良かった。播磨は、自分の身体がまるで羽根にでもなったか
のように軽く感じ、普段踏みしめているはずの地面の感覚が全くなくなっていることに
気が付く。そして、自分の目線の下の方に周防や天満の姿が見えた。
播磨の身体は大きく吹き飛ばされ、道のすぐ横の茂みの中に落下したのだった。
「播磨さん!」八雲が真っ先に播磨の落ちた茂みの中に入っていった。
「くそ!アタシが相手だ!」
「天満!行くわよ」
「なんなのよこの人」
誰が何を言っているのかよくわからないけれど、遠くから天満達の声が聞こえている
のはわかった。しかし茂みの中に落ちた播磨の身体は、上手く動かない。
「播磨さん!大丈夫ですか」草木を分けるようにして八雲が播磨の元にきた。
「い、妹さん…。お姉さんは」
「今、周防先輩や高野先輩が守っています」
「そうか、すぐ俺も…、うぐ!」播磨は胸を押さえた。
しっかりガードをしたはずなのに、なぜか胸が痛む。
「無理しないでください」
「そんな訳にはいかん。しかしアイツ、あの大男は何かおかしい」
「播磨さんもそう思いますか」
「普通の人間の力とは思えん…」
「普通の、人間じゃない?」
「くそう、変態仮面に変身さえできれば、あんな奴すぐ倒せるのに」
「変身できないんですか?」
「いや、その…、“アレ”がないからな」
「播磨さん!」
八雲が、何かを決意したような顔をした。
《ここから先は、危険なのでお見せできません》
「くそう!コイツ花井よりもはるかに強い。沢近!高野!天満を連れて早く逃げろ」
少林寺拳法有段者の周防美琴は、大男の攻撃をかわしながら言った。
「美琴!あんただけ置いて行ける訳ないじゃない」天満の肩を抱きながら沢近が叫ぶ。
「うるさい!コイツは普通じゃねえんだよ!」
周防は大男のローキックで崩され、腕を掴まれた。
「美琴!」と沢近が叫んだ次の瞬間。
空から何かが降ってきたかと思うと、大男の頭部に激突した。
「あれ?」
男はたまらず周防の腕を離し、顔を抑えた。
「きゃあああああああ!!!!」天満の叫び声。
マスクをした大男のすぐ横には、パンツ一丁で網タイツ、そして顔には女性物のパンティ
を被った男が立っていたのだった。
「うわ!もしかしてコイツが…」周防がその名前を言おうとした瞬間、
「そう、私は変態仮面!」と男は名乗った。
「あの…」
周防が何かを言おうとすると、変態仮面は吐いていたブリーフの端を伸ばして肩に
かけると、変なポーズを取った。その姿に周防他、女性陣は絶句した。
「女性に暴力を振るうなど、許せん!同じ仮面戦士として、この変態仮面がお仕置き
をしてやる!!」
いやいや、お前のは仮面じゃないだろう、と周防は思ったがあえて口には出さなかった。
不意打ちに一瞬は怯んだものの、マスクを被った大男はすぐに態勢を立て直して変態
仮面に立ち向かった。
左ストレート、右ストレート、ローキック、ハイキック巨体に似合わず、素早い打撃技を
次々に繰り出す大男に対して、変態仮面はまるで次ぎの動きが分かっているかのように
次々とかわして行った。
「ほーれほれ、どうした」それどころか、両手を頭の後ろに組んで、腰をクネクネと動かして
相手を挑発している。
怒った大男は、今度は投げ技や絞め技をしようと相手の身体を掴みにかかるものの、
変態仮面はほぼ裸なので、上手くつかめない。しかも掴もうと大男が手を伸ばした瞬間、
変態仮面はその腕を持って、投げ飛ばした。まるで手品か曲芸のごとく宙を舞う大男。
そして大きな音と共に背中から落ちた大男に対して、その顔面に股間を押し付ける。
大男が起き上がろうとすると、素早く飛びのくものの、股間を踏んづける事は忘れていな
かった。沢近と天満は、その攻撃に対して目を押さえた。
大男は、再び立ち上がって変態仮面に攻撃を試みるものの、すべて避けられ、更に腕の
関節をねじられた。
大きな相手に対しては、打撃系ではなく間接や投げ技など、相手の力を利用する技を使う。
なかなか考えているな、などと周防は妙に納得した面持ちで変態仮面と大男との戦いを見て
いた。
いよいよ万策尽きた大男は、自分の巨体を生かして変態仮面に体当たりを試みる。しかし
それも簡単にかわされ、しかも後ろを取られていた。大男の後ろに立った変態仮面は、男の
胴体の部分を抱えると、それを持ち上げた。バックドロップをくらわせたのである。変態仮面
の力に大男の体重の加わったバックドロップによって、ついに大男は動かなくなった。
「やったあああ!!!」思わず叫んでしまった周防。
それを冷たい目で見る沢近と高野に気づき、自分でもわかるくらい赤面してしまった。
変態仮面は、仰向けに倒れた大男の顔の上に自分の尻を突き出すと、「成敗!!」
と叫んで、林の中に消えていった。
「周防先輩!大丈夫ですか?」
しばらくすると塚本八雲と、彼女に肩を抱かれた播磨拳児が出てきた。
「お前ら今まで何やってたんだ!大変だったんだぞ」周防は、二人を見てそう叫んだ。
「す、すいません!」オロオロしながらも謝る八雲。
「いや、別にいいけど…。あれ、なんで八雲ちゃんはジャージなの?」
よく見ると、塚本八雲はジャージに着替えていた。
「あ、それは。茂みに入った時に制服が破れてしまって」
「あ、そうなんだ」周防はあまり深く考えずに、大男の方に向き直った。
「しかしコイツ、何者なのよ」と沢近。
沢近のその言葉に、全員が倒れている大男に注目した。
*
気絶している大男の前に、全員が集結する。そして高野がおもむろに黒いマスク
を外すと、そこには見覚えのある顔があった。
「うわっ!コイツ、天王寺じゃねえか」播磨がその顔を見て思わず声を出してしまった。
「天王寺って、確か隣のクラスにいた」周防にも見覚えがあった。
「でも何で天王寺くんがこんなことを…」天満が悲しそうにつぶやく。
確かにおかしい、と播磨は思った。調子が悪いときに負けることもあった天王寺だが、
基本的に彼は播磨の敵ではなかった。大抵はすぐに撃退できたはずだ。しかし今日の
天王寺は、動きといい力といい、いつもの天王寺とは明らかに違っていた。
「どうも“コレ”が原因みたいね」そう言って高野が先ほどまで天王寺が被っていた黒い
マスクを持ち上げてみせた。
「それって?」
「これは某国の軍隊が極秘に開発していたコントロールマスクね。これを被ると、
人間の潜在能力がかなり高い割合で引き出されるみたなの。でも、その副作用として
理性が失われる。だからさっきみたいに見境なく人を襲ってしまったんだわ」
「でもなんで、天王寺がそんなもんを…」播磨は独り言のようにつぶやく。
「恐らく、何者かが彼に渡したみたいね。高校生が簡単に手に入れられるような代物じゃ
ないわ…」
「そんな漫画みたいな話がある訳ないでしょう」沢近が、わざとオーバーな仕草
で重くなった空気を和らげた。
「そうだな、腹も減ったし、早く帰ろう」と周防。
「天王寺くんはどうするの?」という天満の疑問に対して、
「ほっとけばそのうち気が付くだろう」と播磨は冷たく言い放った。
「ちょっとヒゲ、いつまで八雲の肩につかまってるの?」沢近がそう言うと、
「愛理、播磨くんと肩を組みたいならはっきりそう言えば」すかさず高野が口を出す。
「バカ!誰がこんな変態に」
日の陰り始めた夏の空にセミの声が響き渡った。
つづく
毎週毎週更新乙!
・・・播磨を看病した人とか、何で播磨が変身できたのかとかは今後の伏線?
今後も楽しみにしてます
GJ!これ読んで全国七人目の変態になりますた!
GJ!今週もおもしろかったです。
高野がずいぶん播磨に優しいなw
週末は変態記念日乙
パンツは現地調達として、キス?は誰だ誰だ誰だ〜?
スカートの中に手を入れてもぞもぞとパンツ脱いでる八雲を想像しておっきしたw
脱ぎたてほかほかパンツが播磨の顔を今まさに包んでいることに赤面する八雲を想像してさらにおっきしたw
72 :
Classical名無しさん:07/12/23 20:51 ID:nA.88Oak
明日はクリスマス…どなたかクリスマスものをこの哀れな老いぼれに恵んでくださる作家様はいらっしゃらないのか…
>>72 自炊しろよw
投下は自由にして良いんだぜ?
ただ、盗作とクロスは勘弁な
変態仮面みたいな、あくまでスクランキャラだけが登場して
設定やネタの一部を他作品から拝借っていうのはクロス扱いされないからここでもOK?
その理屈ならバトロワもおkなわけだが、顔真っ赤にして叩いてたやついたな。
まだ生きてるだろうか?
>>74・
>>75 良く分からんけど、この人って設定改変あり気じゃないと書けない人じゃないの?
俺は改変しまくりは嫌いだから読み飛ばしてるけど、儲っぽい人も付いてるみたいだしクロスおkなんだろうかな
この人の儲に聞いてみたら、クロスはいいの?って
小ネタでおちゃらける分には構わないと思うんだけど、SSの文量までになっちゃうとアウトだなw
正直、アウトぎみだと思うけど
変態仮面は仁丹がリメイクするし、特別扱いな感じかと
変態仮面は播磨が変身する以外設定改変というわけでもないと思うが。
三年生なのもSSにはよくあるパターンだし
久々にアニメ見てたら、ポンチ絵大魔王が変態仮面呼ばわりされとった…
この頃からリメイクの話自体はあったんだろうか?
ともかくGJ。腹抱えてワロタw
自分が気に入らない作品に感想つけている人を儲呼ばわりすんのやめね?
俺はなるたけ感想つけるようにしてるよ。
投下しやすい雰囲気つくりたいし、
自分が投下した時に感想ないと寂しいしね。
あとロワはクロスそのものよりグロとかが
問題だったんじゃなかったっけ?もちろんクロスは駄目だけど。
>>80 べつに悪い意味で言った覚えは無いんだけどさ
深読みしすぎじゃね?
自分に合わないと分かってるから普段スルーしてるし、特に批判レスつけるつもりも無いから書き込まないけどさ
クロスかな?って話だったので、ちょっと書かせてもらったのよ
原作スクランが時代超えて描かれる事もあって時代変更とかも良く見かけるから融通の利きやすいものだってのは分かってるけどね
>>81 ちと神経質になってたかも。
儲が厨みたいな感じで使われてんのかと思ってた。すまん。
オマ−ジュやインスパイアとクロスの厳密な線引きは難しいと思う。
他キャラが登場したりキャラの改悪がなけりゃ俺は楽しむよ。
>>66 乙です
なんだか怪しいほうに話が進む中播磨の相手も誰だかわからなくなってきたなぁ
王道で天満なのか助けてくれる八雲なのか伏線ありありな絃子さんや晶なのか
虚を突いて沢近他なのかマジ読めないw
クリスマス?
何それ。
今夜はおまけでもう1本投下しちゃうもんね。変態ではない…、と思う。
FIRST CONTACT
その日、サングラスにヒゲの男はある決意をしていた。
三学期最後の日、つまり終業式がある日。
「今日こそ、好きなコに告白するんだ…」
男の名は播磨拳児、矢神学院高校に通う一年生。中学生の頃、“ある事件”をきっかけに
偶然知ってしまった少女に恋をした。そして、その少女に思いを伝えるため、同じ高校に
入学したのだった。
しかし同じ高校に入学しては見たものの、彼女とはクラスが違っていたため、殆ど接点を
見出せなかったばかりではなく、マフィアの抗争に巻き込まれたり怪しい超能力少年と対決
したり、変な村に行ってゾンビと戦っていたりしたために学校には行かず、大好きな彼女の
姿を目にする機会すらなかったと言ってもいい。
それでも彼は諦めていなかった。もの凄くバカ…、もとい、もの凄く純粋な愛を貫いたので
ある。多分。
卒業した三年生をのぞく、全校生徒が集まった体育館での終了式において、後ろの方に
並んでいた播磨は少女の在籍しているクラスの方向を見た。こういうとき、背が高いのは得
だな、などと思いながら。
(いた…)
播磨は心の中でつぶやく。全体的に身長が低めだったその少女は、身長が平均よりも若干
低いため、前の方に並んでいる。後姿しか見えなかったけれども、長い髪の毛の一部を両側
に縛ったその特徴的な髪型ですぐにわかった。
(相変わらず可愛いぜ天満ちゃん!)
播磨はそう思いながら拳に力を込めた。それを見ていた周りの生徒達は、一様に恐がって
いたが、彼はまったくそのこと気にかけてはいなかった。
少女の名は塚本天満。同じく矢神高校に通う一年生である。
この一年、まともに接点がなかったばかりか、ろくに学校にも行っていなかったので天満
ちゃんは俺のことを知らないだろう、と播磨は考えた。高校に入学する前に、すでに彼は天満
と会っていたのだが、“ある事件”の当事者であることを隠すため、ヒゲとサングラスで変装して
いたのだった。
播磨は少し前、自分の従姉で教師をやっている女に言われた言葉を思い出した。
「拳児くん、思いっていうものは、口に出して言わないと伝わらないものだよ」
「ほう、なんか分かったような口を聞いてるじゃネエか」
「そりゃあ、キミよりは年上だからね、色々経験はしているさ」
「どんな経験だ?」
「色々だよ、拳児くん」
「言えねえのか。まあ色々あるからな。オメエのその性格じゃあ、男も逃げ…」
「拳児くん…」
「痛、イテテテ!!ちょっとやめ…、うわああああああ」
回想終了。
嫌な事を思い出して、播磨は少し鬱になってしまった。そうこうしているうちに終業式も
終わり、各クラスで退屈なホームルームが行われていた。
(さあ、どうする)
天満のことを考えると、播磨はいても立ってもいられなくなっていた。貧乏ゆすりをこらえ
ながら、下校の時間を待った。この日は午前中で学校も終わり、部活動に参加する者以外
はみんな帰って行く。塚本天満も、早めに帰ることを播磨はすでに察知しており、その後を
つけることにした。いわゆる尾行である。
ちょっとストーカーみたいだが、帰る途中、一人になったら告白する、実に完璧な作戦だ。
播磨はすぐに破綻してしまいそうな、そんな作戦に一人で納得していた。
「順ちゃん、バイバイ」
「じゃあね」
生徒昇降口付近で挨拶をしている天満の声を聞いた播磨は、すぐにその姿を確認しよう
とした。が、焦っていたため下駄箱の角から歩いてくる女子生徒の一人とぶつかってしまった。
「きゃ!」
「うおっ」
播磨は天満の姿をよく確認するために、サングラスを少しずらしていたので、ぶつかった瞬間
にサングラスを床に落としてしまった。
「ご、ごめんなさい」ぶつかった女子生徒は、その相手を見て一瞬目を見開いた。
無理も無い。相手は学校でも有名な不良生徒で、一部では魔王と呼ばれた男なのだ。その点
は播磨も自覚していた。それでも女子生徒は、勇気を振り絞ったように床に落ちたサングラスを
拾い上げ、震える手で播磨に渡した。
「あ、あの…」
「お、おう」
親戚や家族以外の女にじっと見つめられることがなかった播磨は、すこし照れながらサングラス
を受け取った。
「悪かったな」そう言うと播磨はサングラスをかけ、女子生徒の肩を軽くポンと叩くと塚本天満の
行方を追った。
「順ちゃん大丈夫?」などという声が後ろから聞こえたが彼は気にしない。
「天満、何してるの。早く早く」
彼女の友人らしき三人の女子生徒の一人が天満に対して手を振っている。金髪で両側を縛った
女だった。外国人か?そういえば、ここの学校は帰国子女とか留学生が多かったな、などと播磨
は考えたが、すぐに彼の関心は天満一人に戻った。愛しの天使(エンジェル)の前には、どんな
疑問も瑣末なことに過ぎない、というのが播磨の考えである。
天満を含めた娘たちが一体何の話をしているのが、非常に気になる所ではるけれど、遠くから
尾行している播磨には何を言っているのかわからなかった。それでも、天満がとても楽しそうに話を
しているという事だけはわかった。
「やはり笑顔が一番だな…」電信柱の影から、天満とその他三人の姿を確認すると、安堵のため息
が出た。
そうこうしているうちに、天満との距離がどんどん離れていったので、急いで後を追お
うと電信柱の影から飛び出すと、また誰かとぶつかった。今日はよく人とぶつかる、と
思いながら播磨は、一言「悪い」と言って立ち去ろうとしたが、ぶつかった相手は播磨
の肩を強く掴んで先に行かせなかった。
「おう、テメエ。矢神の生徒だな。この天王寺昇にぶつかっといてその程度で済ますの
かよ」男は百九十センチはあろうかという巨体で、しかもスキンヘッドだった。どこから
どう見ても不良。
「テンノウジ?うるさいな、今忙しいんだよ」播磨はだんだんイライラしてきた。
「忙しいのは俺も一緒だ。お前見かけねえ顔だが、誰だ」
「播磨拳児だ、よく覚えとけ」
そう言うと播磨は、一瞬で大男にニ、三発くらわせて地面に沈めた。
「んな事やってる場合じゃねえのに」
急いで天満の姿を追った播磨は、ちょうど、金髪と背の高い女の二人が、天満と別れる
現場を目撃した。
(よっしゃ、ここまで計画通り)
播磨は心の中でガッツポーズをした。あとは、あの髪の短い細身の女と別れるのを待つだけ。
そう思うと播磨の心拍数はどんどんと上昇して行った。
(あれ?俺ってこんなにも緊張する人間だったっけ?)
播磨は自分の膝がガクガク震えているのを感じた。どんな喧嘩にも、たとえ相手がナイフ
や鉄パイプを持っていたって怯んだことがない自分が、告白で緊張するだと?播磨はこの時、
はじめて自分の弱さを知り愕然とした。このまま、あの細身の女と一緒に家で勉強でもして
くれれば、諦めがつくのに、とすら考え始めていた。
いや、そんなことではダメだ播磨拳児!男が一度決めたことは実行する。そうでなければ
筋が通らねえ!!播磨はそう自分自身に渇を入れた。
「じゃあね晶ちゃん」
「さようなら」
(ついにあの細身の女とも別れた。一人だけ。一人だけだ天満ちゃん!!)
播磨の暴走気味な思考は、すでに制御不能なまでに突き進んでいた。
折角ここまで苦労して尾行してきたんだ、この思いを伝えなければどうにもならない。
そして播磨は、意を決して少女の前に飛び出した。
「聞いてくれ!!俺、播磨拳児。実は俺は前からキミのことが、好きだったんだ!!!」
思わず相手の手を握ってしまったが、もうどうでもにでもなれという気持ちだった。
彼は目をつぶっていたので、自分が何をやっているのかよくわかっていなかった。
「あの…」
「あ」
目を開けた播磨拳児の目の前には、愛しの天満…、
ではなく。
髪の短い細身の女子生徒が立っていた。
「あなたは、播磨くん?」
「あ…、誰?」
「女の手を握りながら言う台詞じゃあないわね」
緊張と興奮で顔が真っ赤になっていた播磨に対して、女子生徒は冷静に相手のことを
見ていた。
「あ、いや、これはその…」
シドロモドロになりながら、播磨は女子生徒の手を放してこの状況を説明しようとした。
しかし頭がパニックになっていた。そんな播磨を見た女は、軽く頷いて言った。
「一年生最後の日に、好きな女の子に告白しようとしたけど、間違えて私に告白して
しまった慌てんぼうの播磨くん」
女のその説明に、播磨は激しく頷いた。
「いや、本当にスマン」播磨は女に対して何度も頭を下げた。
「いいのよ。ちょっと残念だったけど」
「何?」
「何でもないわ」
「あの、それで」
「どうしたの」
「このことは忘れてくれ、頼む!」
「言われなくても忘れるわ」
「ああ、ありがとう。恩に着る」
「別に」
「そ、それじゃあ」
「ああ、播磨くん」
「ん?」
「私も…」
「…」
「私も好きよ…」
女のその言葉に、一瞬播磨の時間の流れが止まった。
不意に感じられた暖かい春の風。
「…何が?」
そして動き出す時間。
播磨は、彼女の言葉の意味をよく理解できなかったようである。
「何でもない。忘れて」
「あ、ああ」
「じゃあね、播磨くん」
「ああ、じゃあな。名前わかんないけど」
そう言うと、播磨は走って行った。行き先など覚えてはいない。ただ、恥ずかしいという
感情だけが彼の記憶に残っていた。
エピローグ
それから約九ヵ月後。街ではジングルベルの響く季節。矢神高校茶道部の部室で、
部長の高野晶は部員のサラ・アディエマスと紅茶を飲んでいた。
「告白かあ…」
「ぶっ」
一年生部員のサラが唐突にそんなことを言い出したので、部長の高野晶は飲んでいた
紅茶を吹き出してしまった。
「どーしたの?あなたが恋の話なんて」高野は口から紅茶がこぼれ出ているのも気にせず
に聞いた。
「そんなあ、私だってそれくらいしますよ。エヘン」
「へーっ、誰か好きな人でもできたの?」
「いや、私じゃないんですけどね」
そう言うとサラは、一呼吸置いて聞いてきた。
「先輩が告白したときはどんな感じでした?」
「うーん…」
高野はほんのコンマ何秒か考えた後、
「忘れた。過去は振り返らない主義だし」
そう言いい、サラと話を続けながら、彼女は残ったわずかな紅茶を飲み干した。
おわり
変態はもういいよ
しつこい
>>93 乙でした
つか、おまえらも彼女とクリスマス過ごしているんだろ?
葉子先生と姉ヶ崎先生が俺を取り合って喧嘩しちゃって仕方ないんだが、まいっちゃうよね^^
<⌒/ヽ-、__ <付き合いで買わされたケーキを食いすぎてぽんぽん痛いのでもう寝るわ
/<_/____/
>>86 乙
播磨のセリフ回しが丸すぎる気がしますが面白かったです
で、一つだけ
キャラのセリフ内ならともかく、地の文で女性を指す時は『女』という表現は使わない方がいいですよ
特にほのぼのでやりたい場合には致命的なので
>>93 乙です
携帯ワッショイ携帯ワッショイ
久々に少しだけど播磨×晶が見れて良かったです
それにしても鈍感は罪だなw
ちなみに一応設定では天王寺と播磨は中学からの知り合いらしいですよ
明日で今年の仕事終わるけど、みんなはどうだい?
来年はいよいよスクラン終わるのかなー
個人的には3年生編はやらないで欲しいけど
>>98 俺は来年は勝負の年だと思ってるから
今年から準備で忙しいなぁ
スクランは来年にはもう終わるだろうね
両王道や播磨関連は特に綺麗に終わってくれるといいな
それとスクラン二次創作系列がそこまで寂れないで継続して欲しい
変態仮面みたいに、ある程度キャラの関係が整理のついた
三年生編のほうが今はやりやすいのかなと思いはじめた
原作の展開をねじまげるのはちょっと辛くないか?
原作でもしこんな展開があったら・・・、というのもSSの醍醐味だと思うが。
その展開が強引なら確かに辛いだうけど。話を不自然さを感じさせずに繋げたり、その辺は書く人の腕の見せ所かも。
播磨が振られて烏丸と天満がくっついた状態からスタートするSSは以前からある。
播磨を他の女とくっつけるのに都合がよい状況なので使いやすいからだと思う。
ただそれでも、経緯をいい加減に設定すると読む人が付いていけなくなったり、色々と苦労はあるんじゃないかなと。
とりあえず、俺は今日から正月休みです。
皆さん、良いお年を。
みなさんこんばんは。
ついに今年最後の変態タイムがやって参りました。
色々と物議を醸した変態シリーズですが、今日で最終回となります。
謎は明らかにされるのか。
では、この後すぐ。
前回までのあらすじ
変身の疲労から立ち直った播磨は、またこれまでのように夏休みの補習を受けに学校へ
行く。そしてその日の夕方、同じように学校で受験のための補習を受けていた周防や沢近、
天満、高野に八雲を加えた五人と一緒に帰っていた播磨は、近道のため、とある林道に
入った。
そこで彼らは、黒いマスクをした大男と遭遇し、なぜか戦うことになってしまった。人間
離れしたその男の技と力に苦戦する播磨だったが、変態仮面に変身して形勢逆転。大男
を倒してしまう。
倒した男のマスクを剥ぎ取ってみると、それは同じ学校へ通う不良の天王寺昇であった。
高野の説明によれば、天王寺は何者かによって、某国が開発した戦闘力が強くなる代わり
に理性が消えてしまうというマスクを装着していたという。誰が、何の為にそのマスクを天王寺
に渡したのか。謎は深まるばかりである。
究極!!スクールランブル
第五話 正義
謎のマスクを被った天王寺昇を倒した変態仮面こと播磨拳児は、再び元の姿に戻って塚本家
でカレーを食べていた。沢近と高野は予定があるとか言って帰っていったけれども、周防と
播磨、そしてなぜか天王寺の三人が塚本家にお邪魔することになった。
「おい天王寺、お前は本当に覚えてないのか」カレーを食べながら隣にいる天王寺を肘で
つつく播磨。
「当たり前だ。お前を吹き飛ばしたって話が事実なら忘れるはずがないだろう。それに周防さん
に手を上げるなんて…」なぜか赤面する天王寺。
「天王寺先輩、お代わりいかがですか」天王寺の皿がなくなっていることに気が付いた八雲が
そう声をかける。
「メルシー…」そう言って皿を差し出す天王寺。完全に忘れ去られていると思うけれど、彼は
フランスからの帰国子女である。
スキンヘッドでしかも一九〇センチを越える巨体ながら、今の天王寺は女子生徒に囲まれて
もの凄く小さく見える。
「おい天王寺、ちったあ遠慮しろよ」
「うるせえな、俺は身体がデカイからエネルギーがいるんだよ」それでも播磨に対してだけは
強気だ。
「燃費が悪いだけじゃねえかよ」
「播磨くん、天王寺くん、遠慮しないでどんどん食べなよ。沢山作ったんだから」元気良く天満
が言った。
「お、おう…」その言葉に照れながら答える播磨。
「何言ってんだよ塚本、作ったのは八雲ちゃんじゃないか」周防はラッキョウを食べつつ言う。
「私だってカレーくらい作れるんだよ。今は。八雲のカレーには敵わないけどね。そういえば
ミコちゃんもよく食べるねえ」
「う、うるせえ。今日はちょっと運動しちまったから腹が減ったんだよ」
「あの、周防先輩もお代わりいりますか?」
「い、いや。あたしはいいよ。受験勉強で稽古もあんまり出来てないし。ちょっとダイエット」
「す、周防さんは今のままでも十分キレイですよ」天王寺が若干震えた声で言った。
「え、そうか?ありがとう。なんか照れるなあハハハハ」予想外の褒め言葉に照れ笑いを隠さない
周防。
「い、いやあ」そしてなぜか天王寺も照れ笑い。
「お前はその顔と身体のどこからそんな臭い台詞が飛び出すんだ」そう言って播磨は天王寺の
ハゲ頭を平手で引っぱたいた。すると乾いた、もの凄く良い音がしたので、その音を聞いた一同は
思わず笑い出した。天王寺も、照れながらつられて笑い出した。
「でもミコちゃん、ダイエットなんかしたら大変じゃない?」
「おい塚本、まだその話するのかよ」うんざりとした顔でサラダを食べる周防。
「だってその、ほら」天満の視線の先は、間違いなく周防の胸であった。
「う…」再び赤面する天王寺。
「バカ、男子がいる前で何言ってんだ!」
「あ、ゴメンよ。でも花井君は幸せ者だね。こんなキレイな奥さんが貰えて」
「なんで花井(アイツ)の話が出てくるんだよ!」先ほどよりも更に赤面する周防。
「だって未来の旦那さまじゃん。今からしっかり栄養をつけとかないと、元気な赤ちゃん産めないよ」
「赤ちゃんよりも先に受験だろうが」
「そうだけどさあ」
二人で盛り上がる天満と周防。
しかし、その二人の向かい側に座っていた天王寺は少し悲しそうな目をしていた。
「同情はしねえよ」カレーを口に運びながら小さな声で播磨はつぶやく。
「別にお前なんかに同情してもらいたくねえよ」
「だろうな」
天王寺は残りのカレーを一気にかきこむと、再びおかわりをした。
*
その日の夜。鉛のように重たい身体を引きずるようにして播磨は床に就いた。本当は
漫画のネームを考えなければいけないのだが、頭も身体もいう事を聞かない。
ベッドに横になった播磨は、すぐに意識が遠のいていくのを感じた。
ここはどこだ。少なくとも現実の世界ではないことだけは確かだろう。
《播磨くん…、播磨くん》
またお前か…。播磨は以前、同じような声に呼ばれた記憶があった。それが誰かかは、
よくわからない。しかし、その記憶は一度だけではない、という事だけは覚えていた。
「播磨くん」
今度ははっきり聞こえる。嫌な夢だな、と彼は思った。
「播磨くん」
「なに!?」
気が付くと、そこはいつものような自分の部屋ではなかった。見上げると天井ではなく、
漆黒の闇が広がっている。
「ここはどこだ!」周りを見回すと、夜景が見える。どこかの建物の屋上らしい。肌には
夏特有の生暖かい風が触れる。
「やっと気づいたようね」暗闇から人影が出てきた。
足音がしない。まるで幽鬼のように現れたその影は、播磨にとって見覚えのある人物だった。
「やっぱりお前か…」
「さすがに気づいたみたいね、私のこと」
「高野」
同級生の高野晶の顔が、屋外の微かな光に照らされて浮かび上がった。この日は
いつものような学校の制服でもなければ、普段着とも思えない黒い革のツナギのような
ものを着ている。
「なぜ俺はこんな所に」
「人に見られたらマズいから、私が“仲間”に頼んで連れ出してきてもらったの」
「俺に何のようだ」
「正確には、あなたの“奥に眠る者”に興味があるわ」
「お前…」
「そう、播磨拳児、いや…。変態仮面」
「・・・・・!」
播磨は一瞬言葉を失った。しかし、今までの戦いの経緯を思い出していると、妙に納得
できた。
「俺が変身しているとき、助けたのはお前だったんだな」
「ええ、そうよ」
沢近愛理と塚本天満を誘拐犯から救い出す際、劣勢になった変態仮面は何者かに
よって鞭を渡され、それが形勢逆転のきっかけとなった。
「もしかして、妹さんにお姉さんのパンツを発見させたのも」
「私よ」
「変だと思ったぜ。ちゃんとカギのついた引き出しに入れておいたのに。ってことは、もしかして
妹さんもお前らの」
「いえ、彼女は違うわ。無関係」
「なに」
「ちょっと協力してもらいたかったの。あなたが変態仮面として戦いやすいように。ただ今日のは、
やり過ぎだったかもしれないけど…」そう言うと高野は横を向いた。
そう、播磨はこの日、八雲のアレを使って…。
「お前…、高野。どこまで知ってやがんだ」
「あなたについては、変態仮面に変身した頃から。まあそれ以前から、私の雇い主は変態仮面に
興味を持っていたようだけど」
「なに?変態仮面は俺のことじゃないのか」
「そうよ。でもね、変態仮面はあなただけではないの」
「俺、だけではない?」
「変態仮面は、女性モノの下着を装着することによって、人間の持つ潜在能力を百パーセント
近くまで高めることができるの。ただ普通の人がパンツを被った程度では、変身しないわ。
そんなことをしたら、世界中の下着泥棒が変態仮面になってしまうから」
「でも俺は、変身したぞ」
「それは血筋よ」
「血筋」
「あなたに流れる変態の血筋が、変身能力を身に付けさせたの」
「そうだったのか…、ってちょっと待てい!俺には変態の血が流れていたのか」
「そうね」
「そうねって…」
「もちろんパンティなら何でもいいっていうものではないわ。女性もののパンティ、それも自分を
よく知っているもののパンティでなければ駄目みたいなの」
「そうなのか?」
「我々の調査によれば、変態仮面の持つ能力は、被るパンティの持ち主によってその発動率が
変ってくるの。一つはパンティの持ち主の能力。これが基本能力ね。例えば美琴さんや一条さん
みたいな強い人のパンティなら、高い基本能力が得られるわ」
「確かにあの二人は強いが…」
「それともう一つ。これ重要なの」
「?」
「シンクロ率よ。パンティの持ち主とのシンクロ率が高ければ、それだけ高い能力を発揮できるわ」
「シンクロ率って、エヴァンゲリオンかよ」
「シンクロ率、同調率とも言うかしら。持ち主と播磨くん、あなたとの心が通じ合っていればいるほど、
高い力が発揮されるの。だから、八雲みたいに必ずしも戦闘タイプではない女性の下着でも、
シンクロ率が高ければより強い能力を発揮できるわ」
播磨は、今日のマスクド天王寺との戦いを思い出していた。変身中のことはぼんやりとしか
思い出せないけれど、相手の攻撃が手に取るようにわかったような気がする。
あれが、妹さんと俺とのシンクロ率なのか。
しかし待てよ…。
「ただし、シンクロ率が高すぎると逆に変身できなくなるらしいわね」
「へ?」
「家族や親戚など、血の繋がりがある者の下着では変身できないそうよ」
「そうだったのか」
「試したの?」
「あ、いや…!」
播磨は、なぜ刑部絃子のパンティでは変身できなかったのか、その意味がやっと
わかった。
そんなことを考えている播磨をよそに、高野は話を続けた。
「播磨くん。変態仮面の実態についてはまだ解明されていない部分が多いの。それが
完全に解明されれば、恐ろしいことが起こるかもしれないわ」
「恐ろしいこと?」
「変態仮面は人類の進化のカギになるかもしれないわ」
「また偉く大きく出たな」
「現に、この日本国内でも変態仮面の研究をしている組織がいるの。今日、天王寺くんが
被っていたこのマスク」そう言うと、高野はどこからともなく天王寺が被っていた黒いマスク
を取り出した。
「これ、昼間に私は某国が開発したものって言ったけど、正確にはその開発した物の
コピー製品なの」
「ん?」
「このマスクは不十分ではあるけれども、変態仮面理論に基づいて作られているわ。
それを国家機関ではなく、一つの非合法組織が作ったとなれば、これは一大事よ。
変態仮面理論の解明と、その応用は国際社会における国家間の力のバランス、それ以前に
国内の秩序までも破壊しかねないものなの」
「ちょっと待て高野!」
「なに」
「言っている意味がわからない。とにかく、変態仮面ってのはそんな大げさなものなのか」
「そうよ。そこであなたにお願いがあるの」
「お願い?」
「変態仮面理論を研究し、それを運用している組織、“H”を私達と一緒に潰して欲しいの」
「なぜそうなる。お前たちだけでやればいいだろう。俺には関係ねえよ」
「駄目よ。あなたの力が必要なの。考えてみてごらん」
「何を」
「あなたは、その力を正義のために使わなければどうなるって言うの?」
「え」
「ただの下着泥棒じゃない」
「う…!」
「あなたのその力は、正義のために使う事に意義があるの」
「そういわれてもなあ」
「迷っている暇はないわ、変態仮面!」そう言うと高野はまた別のものを取り出した。
「これは…!」
高野の手にあるもの、それは黒のパンティであった。
「黒ってお前…」
「白は目立つから」
「いや、そうじゃなくて。もしかしてこの持ち主って」
「…いいから変身して」
「でも一日二回以上の変身は…」
「私が何とかしてあげるわ。この前みたいに」
「…!!!」
《急展開につき、ここから先はダイジェストでお送りいたします》
「人間が自然や本能を支配できると思う、そういう考え方がそもそも甘いんだよ!」
爆発炎上する矢神高校。
「おおい!運動部はすぐに避難させろ」
「郡山先生、こっちの負傷者を運ぶのを手伝ってください!」
「おい、救急車はまだか」
「駄目です、電話がつながりません」
「戦いはまだはじまったばかりだ」
暗闇の中から現れる怪しい影。
「周防、ここは僕に任せて!お前たちは逃げるんだ」
「バカ!お前一人をおいていけるかよ」
「周防…」
「アタシとお前なら、なんとかなるだろう。今までそうだった。そしてこれからも」
《本日11時、政府は矢神市近郊に避難命令を出しました。市民の方々は警察、自衛隊の
指示に従って速やかに避難してください》
「おい!何だこの渋滞は!」
「矢神橋が何者かによって爆破されたんだよ」
「どうすんだよ俺達!」
「知るか!」
「政府としては、この問題に対して自衛隊の投入も辞さない構えで」
「国民の保護はどうなる。同胞に銃を向けるのか!」
「ことがこれ以上大きくなったら困る」
「憲法上の問題もあるぞ!」
《本日13時、政府は陸上、航空、海上の三自衛隊に対して防衛出動待機命令を発令。
各自衛隊は第一種警戒態勢で待機…》
《合衆国政府はこの問題に対しては一切関与しない》
「色々言っているけど、イザとなったら核兵器の投下だってためらわないよ。そういう連中さ」
「人の命ってなんだろうね」
「陸自の特科(砲兵科)部隊と空自の支援戦闘機部隊による、陸と空からの攻撃によって、
矢神市全体を消滅させる」
「そんなことをやっていいのか!」
「ことは人類の存亡に関わる問題なんだぞ!」
空を飛び交う偵察機、戦闘機、そして攻撃ヘリコプター。海には多数の海自艦艇が浮かび、
陸にはFH−70など長距離砲が並ぶ。
「ダメエ!!!街にはまだ八雲と晶ちゃんがいるの」身を乗り出す塚本天満。
「天満、落ち着いて!きっと避難しているわ」それを必死でおさえる沢近。
「これ以上中には入らないでください!これ以上中には」
「八雲は私が守るの!晶ちゃんも親友なんだから助けなくちゃ!!」
「天満!アタシだって辛いのよ」
矢神駅前。普段なら人の多いこの場所も、今はゴミや紙くずが風で流されているだけの
ゴーストタウンと化していた。各々の店や事務所は固くシャッターを閉ざし、乗り捨てられた
車が道の端に止められている。
「誰もいない街ってのも、奇妙な感じだな」道路の真ん中で立ち尽くす播磨。
「播磨くん」播磨の数メートル後ろに、高野晶が立っていた。
「高野か」
「もう一度戦うの?」
「まあな」
「でも、これ以上の変身はあなたの命に…」
「いいんだよ」播磨は高野の言葉を手をかざして止めた。
「は、播磨さん」薄汚れた制服姿の八雲が姿を現す。
「い、妹さん。どうしてこんな所に」
「播磨さんが、心配だったから」
「いや、大丈夫だよ」
「播磨くん、ここはもう…」高野がうつむいたままで声を出す。
「まだ大丈夫だ」
「播磨さん…?」
「高野。妹さんを頼んだ。できるだけ安全な場所に避難させといてくれ」
「播磨くん、私も一緒に…」
「頼む、高野。彼女のお姉さんを悲しませたくはないんだ」
「播磨くん…」
「播磨さん」
「あのさ、高野。妹さん。俺、人類の存亡とか世界の平和とかよくわかんねえんだけど、
ただ一つ言えることは…、この街が無くなったら悲しいってことだ」
「……」
「色々あったけど、俺この街が好きだからよ。もし生きて帰ったら、またカレーを食べよう
ぜ。今度はみんなで」
「はい…。あの、これ」そう言って八雲は持っていた小さな紙袋を播磨に手渡す。
「これは…、いいのかい妹さん」
「姉さんのです」
「…ありがとう」
《変身!!》
*
矢神市内、刑部絃子の自宅。
「と、いう感じの話はどうかな、妹さん」
テーブルを挟んでストーリーの説明をする播磨拳児。それを正座して聞いている塚本
八雲。
「あの、スケールが大きすぎてよくわからないんですけど。そもそも何で変態仮面さんの
存在が人類存亡の危機につながるんでしょうか」
「うーん、なんてい言うか、そっちの方がカッコイイかなと思って」
「自衛隊とか出動してますけど、主人公はゴジラと戦うんですか?」
「いや、まだそこまでは考えてねえ…。ダメかな」
「いえ、面白いと思います」
「マジか!妹さん」
「あと、もっと主人公の苦悩とかを全面的に押し出した方が…」
「うーん、そうだな。でもパンツ被るヒーローに苦悩って言ってもなあ」
「あと、この辺りの描写はもっとリアルにすると」そう言ってネームの一部を指差す八雲。
「むむむ!やるな、妹さん」
「あ、ごめんなさい」
「なんで謝る」
耳まで真っ赤にする八雲。
播磨は普通なら百パーセントセクハラと言われても仕方がないことをし続けていることに気づいていない。
「・・・・・・」
「眠いか、妹さん」
「あ、いえ。ごめんなさい」
「いや、いいんだ。昼間も勉強大変だろう」
「その…、大丈夫です」
「無理はしなくていい。隣の絃子の部屋に、またこの前みたいに布団が敷いてあるから、
そこで寝るといい」
「でも…」
「ネームは明日まで考えておくよ。ちょっと一人で考えをまとめたいんだ」
「そうですか?」
「じゃあ、おやすみ」
「すいません、お先に失礼します」
播磨は八雲のいなくなった部屋で一息ついた。
「しかし、お茶の中に睡眠薬を入れるなんて、はじめてやったよ…。身体に影響はないんだろうな」
そう言って部屋の時計を見た。午後十一時を回ったところだった。
不意にテーブルの上に置いておいた携帯電話が鳴った。
「俺だ…」
《…播磨くん》
「高野か…」
《今夜零時ちょうど、いつもの場所に行ける?》
「ああ、なんとかな」
《そう、期待してるわ。ところで“例のモノ”の準備なんだけど》
「今日、塚本の妹さんが泊まりに来ているからな、そこでちょっと拝借するよ」
《あら残念》
「何がだ」
《何でもないわ。それじゃあ》
「じゃあな」
そう言って携帯電話をしまった播磨は、ゆっくりと窓の外の空を見た。
「さてと…、もう一仕事するか…」
数分後、深夜の矢神市内に、播磨のバイクの音がこだました。
おわり
乙。ものすごい超展開ww播磨もセクハラ自重しろww
>>114 GJ
これはいい感じの終わり方w
播磨と晶ってキャラ的には意外と相性いいよね
完結なのか〜?GJ!
おめでとー?
119 :
Classical名無しさん:08/01/04 00:14 ID:wnof4MlY
あけオメ
ということでageとく
ことよろ
新年になったという事で暇な時間使ってスクラン関係のHPとかblogとか回ってみたけど
やっぱ数も活動してる所も少なくなったよねぇ
考察サイト二つ以外にあったっけ
マガジンの感想やってるサイトとかか?
>>122 いや、SS作家さんのサイトね
クズリさんのHPのリンクから辿って行ったんだけど、他のモノを扱ってたり止めていたりしてね
他の物をやるってのは十分分かるけど、なんか寂しくなってさw
S3'からだと、あろさんとかバンターさんはblogやってるみたいだね
サイト開いてまで・・ってことだろうなあ
IFスレに短編でも投下してくれると嬉しいんだけど
保守
127 :
sage:08/01/11 01:05 ID:4mqa4gfU
書き込み少ないな
ごめんミスったw
明日あたりおにぎりss投下する予定
男なら予告なんてしてないで一気に投下したらんかい!
最近暖冬だから靴下だけでも平気だから・・・けど、早くしなさいよ!
130 :
Classical名無しさん:08/01/11 06:59 ID:A2IsKB4U
age
131 :
Classical名無しさん:08/01/11 08:09 ID:5gWVK472
期待age
132 :
仮眠:08/01/11 14:32 ID:4mqa4gfU
じゃあいくぜ!
播磨は今、とても悩んでいた。
「来週までに30p書き上げないといけないわけだが…アイディアがわかねえ」
何度も何度も考えてみたが、やはりいい案はうかんでこなかった。
「やっぱり妹さんでも呼ぶしかないかぁ」
播磨が彼女にふられてから、1週間がたとうとしていた。
〜you are my angel〜
見てしまったのだ。いや、見なければならなかった。彼女、塚本天満の恋が成就する瞬間を。
相手は自分ではなく、天満が思いを寄せていた少年、烏丸大路。
どこか遠くへ行こうとする彼をとめて彼女に思いを伝えさせる勇気を与えたのが、播磨だったからだ。
彼女の告白の場に立ち会っていたが、逃げようとはしなかった。むしろ、喜んですらいた。
彼女が最高の笑顔で烏丸に告白する決心したのをみて、何も言うことはなくなってしまったからだ。
彼女がしあわせであればそれでいい。播磨の心からの気持ちだった。そしてもう天満への感情も、どこか青空へきえてしまっていた。
さて、仕事というのはそんな個人の出来事ではそうも左右されないことであって。
播磨は編集長から 読み切りを30p書いてこい、といわれていた。
天満への思いをなくした今では、ストーリーすらおもいうかばなかった。
そして、困り果てた播磨はある一人の女性を呼んだ。
名は、塚本八雲。絵に描いたような少女で、ひょんなことから播磨と知り合い、漫画の手伝いをしていた。
播磨は「屋上に来てくれ」とメールを八雲に送信し、屋上へ向かった。
〜ここまで播磨サイド
133 :
仮眠:08/01/11 15:30 ID:4mqa4gfU
次は八雲サイド〜
八雲は男の人を好きになったことがなかった。
元々恋愛には疎いうえ、彼女にはある能力がそれを妨げていた。
自分を好きな人の心が見える能力。それらのせいで彼女はあまり男子には関わらないようにしていた。
播磨拳児をのぞいては。
動物が好きな人。漫画を書いている人。優しい人。そして、心が見えない人。
八雲がえがく彼の全てのイメージであった。とくに最後の一つが。
八雲はしだいに播磨に興味をもっていき、それは 好き とも呼べるような感情になろうとしていた。
しかし、彼は八雲の姉、天満がすきだった。それを知ると同時に、心が見えない理由も分かった。
八雲は自分の思いを抑えて彼の仕事、漫画の手伝いをしていた。
主人公は播磨拳児。ヒロインは自分の姉。八雲は幾度となく切ない気持ちになった。
それでも彼に会えるだけでうれしかった。
だが、彼に最近はあまり会っていなかった。自分から言うと迷惑になると思って、あえて理由は聞かなかった。
そして、昨日天満は八雲に全てを話した。八雲は「おめでとう、姉さん」という反面、
悲しい気持ちになった。播磨があまりにも不憫だったからだ。
一生懸命天満のことを振り向かせようとしていた播磨。それをいつも見守っていたので、
播磨の気持ちは測りきれなかった。
そしてその翌日の昼、播磨からメールが一通届く。
「屋上に来てくれ」
八雲はそれを読むと、急いで屋上へ向かった。
134 :
仮眠:08/01/11 16:33 ID:4mqa4gfU
八雲が屋上のドアを開けると、いつもの青空が広がっていた。
「よぉ妹さん」
八雲に気付いた彼はにこっと笑っていた。逆に八雲は驚いた顔をしていた。彼がいつもと変わらない、
優しい笑顔でいたからだ。八雲は勇気を絞ってこういった。
「…悲しく…ないんですか?」
「知ってるのか?」
「昨日姉から聞きました」
「そっか…あいつもおしゃべりだな」
ヘヘッと軽く笑って、播磨は答えた。
「悲しくなんかないさ、むしろ、幸せなくらいだよ」
八雲はその理由が分からなかった。
「どうしてですか?」と聞くと、彼はこういった。
「烏丸がOKしたとき、塚本は俺にこういってくれたんだ。
ありがとう播磨君、てな。俺は塚本を幸せにすることが出来た。だから、幸せなんだ」
その気持ちは、自分を殺して播磨を応援していた八雲の気持ちにとても似ている気がした。
そのせいか八雲はその気持ちをすべて読み取れた。
そして、播磨の心が見えた気がした。八雲は彼の手をとり、こういった。
「そうだったんですか…でも、私も分かります。その気持ち」
「おぉ、さすが妹さんだな」
「だから…そんなに無理をしないでください」
「え?無理って?そんな「私には分かります。何度でも言います。無理をしないでください」」
「妹さん…ありがとう」
彼はすこしうつむいてこういった後、ぎゅっと八雲の手を握りかえした。
(本当にいつもありがとう、妹さん。妹さんはおれの天使だよ)
八雲は彼の気持ちがみえた。播磨の気持ちが伝わってきた。そして、彼女は真っ赤になってしまった。
「?どうしたんだ妹さん??」
「いえ…」
八雲は心の中できめた。私は、この人がすき。絶対あきらめない。と
「で、呼んだ理由なんだけど…」
彼と彼女の物語は、スタートラインにたったばかりである
135 :
仮眠:08/01/11 16:44 ID:4mqa4gfU
一応今回はここまでだけど、続けるつもりです
もうすこしこうした方が良いとか感想とか書いてくれるとうれしくて
便所スッポンで天にも昇れるような(ry
なのでよろしくおねがいします〜(・A・)/
>>135 乙です
もっと台詞以外の描写をしてみることからはじめるといいと思います
なんか切なそうな感じですね
期待できそうな話だが、量が短いのでもう少し増やさないと。
「いった」「すき」などがひらがななのは、わざと?
乙です。
欲を言えば、「〜サイド」じゃなくて文章の書き方で
分かるようにしたらもっとよくなると思う。期待してます。
139 :
仮眠:08/01/11 20:21 ID:4mqa4gfU
ありがとうございます・・感激ですw
>>136確かに 〜た で終わりすぎですね。自分の文章力のなさを反省しますw
>>137すき はわざとですが いった はミスですwごめんよ天満ちゃん…
>>138ありがとうございます・・感激です。
今までいろんな人のSSを読んできて、僕もSSかきたいよママってなってはじめて書いてみました…
これから、がんばってSSを書いていこうとおもいます。どうか温かい目で見守っていてください。
また明日更新します。では乙ノシ
140 :
仮眠:08/01/11 20:28 ID:4mqa4gfU
まちがえて全角でいれちまったよ…半角へ脳内変換おねがいします…
初めてなら・・あんまり長い話にしないことかな。飽きないうちに。
勢いだけでサクっと完結させるのが吉
142 :
仮眠:08/01/12 00:22 ID:ZM5CCcJo
>>141助言有り難うございます!
そうですね、先にssのいろはを学んでから長編は書くことにします。
じゃあこの話は三部作でいきます。ってことでただいま構成を練っています!
しばしお待ちを…
せめて構想を決めてから手をつけたほうが・・
起承転結を決めてから書いたほうがいい
話を作るうちに色んな展開が出てきて収集つかなくなる
144 :
仮眠:08/01/12 01:26 ID:ZM5CCcJo
じゃあ続きいきまーす!
〜you are my angel 2/3〜
「編集長に来週までに漫画を一本書いてこいっていわれて大変なんだ!力を貸してくれ!妹さん!」
播磨は深々と頭を下げ、八雲に頼み込む。
「そうなんですか…わかりました。私で良ければ手伝います」
「本当か!?恩に着るぜ、妹さん!」(よかったよかった、この仕事は妹さんじゃなきゃダメだしな)
一瞬の間、播磨の心が見ることができた。八雲の胸は鼓動がとまらくなった。
「で、ストーリーもなかなか思いつかなく…聞いてる?妹さん?」
「あ…すいません、ぼうっとしていて」
「大丈夫?熱でもあるのか?」
そういって八雲の額に手を添える播磨。ますます八雲の顔が赤くなる。
「やっぱり熱ありそうだぜ。今日はもう家にいた方がいいんじゃねえか?」
「いえ、大丈夫です、それより、そろそろ帰らないと学校が閉まってしまうと思うのですが…」
「ホントだ、じゃあ帰ろうか!後ろ乗ってくか?」
「じゃあお言葉に甘えて…」
屋上から階段を下りて、バイクにまたがる二人。昔こんなことあったな、と八雲は思い出す。
播磨の家で徹夜をして、二人バイクにまたがって登校した日。あのときはぎこちなかったけど、今はもう違う。
後ろから、思い切り播磨を抱きしめる事が出来る。もう気づいてしまったから。自分の気持ちに。
145 :
仮眠:08/01/12 01:28 ID:ZM5CCcJo
車輪が地面を蹴る音、流れていく風景。そして自分が抱きついた播磨の大きな暖かい背中。
こんな素敵なものを一生離したくないと八雲はさらにぎゅっと播磨をだきしめた。
「ついたぜ妹さん」
だが無情にも終わりが来てしまった。もっと家が遠ければ良かったのに、とつい考えてしまう。
「じゃあまた明日な、いも「あ…あの!」」
予想以上の大きな声に二人とも驚いてしまう。
「あの、お礼にお茶でも一杯のんでいきませんか?」
「いや、だいじょう…」
言おうとすると、八雲が哀しげな表情でこちらをみている。
「じゃあ、一杯だけ」
播磨はやはり断れなかった。一方八雲はほっとした表情でいる。
「今日は姉さんは出かけているので、くつろいでいってくださいね」
「お…おう」
ほどなくして八雲はお茶を淹れに行った。
「そろそろ覚悟をきめないとな…」
そのとき播磨は一人、考えていた。少し前から見えていた、少女の気持ちに対する自分の返事を。
2/3 END
146 :
仮眠:08/01/12 01:33 ID:ZM5CCcJo
次回(3/3)更新は今日中に行います。
それはまるで、転がる石のように…w
じゃあ皆さんひとまず乙ノシ
147 :
仮眠:08/01/12 01:46 ID:ZM5CCcJo
>>143一応展開はもうすでに決めました。そりゃもう妄想しまくってw
起承転結は…どうだろ?w自分なりにやったつもりだけど…上手く出来てますかねぇ?
1/3が起、2/3が承、3/3で転と結を意識しています。
どんどん感想や「ここはこうした方が…」などのご指摘くださいませ!待ってます!
乙!
頑張っとくれ、日々精進って言うしな
次を待ってるよ
乙!新人書き手は嬉しいな
テンポいいし文章も読みやすいと思う
150 :
仮眠:08/01/12 21:03 ID:ZM5CCcJo
もう少しでSS書き上がります!
少々お待ちを〜
151 :
仮眠:08/01/12 21:52 ID:ZM5CCcJo
じゃあいきますぜ兄貴ぃぃぃ!!!
見えてしまった。
妹さんの心が。
手を握った時からずっと。バイクに乗ったときも。
「私は播磨さんが好き」「私はあきらめない」「ずっと播磨さんを抱きしめていたい」など。
なんで妹さんの心が読めたんだ?
妹さんはどうして、こんなにもこんな馬鹿でどうしようもない俺のことを好きになったんだ?
わからねぇ…だが俺を必要としてくれていることは確かに分かる。
でも俺で良いのか?本当にいいのか?心を読んだ事なんか言ってしまったらどうなってしまうだろう。
いつの間にか、雨が降っていた事に気づいた。窓ガラス越しに空が泣き出しているのがみえる。
俺は一体…どうすればいいんだ?
〜you are my angel〜3/3
152 :
仮眠:08/01/12 21:53 ID:ZM5CCcJo
「お茶、入りました」
ずっと悩んでいた播磨は、その一言で現実に呼び戻された。
「わりいな、妹さん」
「いえ…」
「お、このクッキーうまそうだな!食って良いか?」
「はい、どうぞ」
「ボリボリ…うめえ!やっぱ妹さんは料理上手だな!」
「いえ…それほどでも…」
そんなやりとりをすこし続けた後、八雲はテレビをつけた。
「妹さん、なんか見てるテレビでもあるのか?」
「はい…でも、時代劇なんですけど、見ますか?」
「おう、見る見る」
そっと播磨は八雲の隣に座る。八雲の顔がほんのり赤くなる。
そして「続・三匹が斬られる」のテーマがテレビから流れる。
「そういや今日はこれの日だったな」
「播磨さんみてたんですか、これ」
「おう。万石がサイコーなんだよな!あの目つき!あの男気!」
「そうなんですか。私はストーリーが好きで、ついついみてしまうんです」
「確かにいい話ばっかだよな!ためになるっつうかなんつうか」
「あ、CM明けちゃいますよ、播磨さん」
「すまねぇ、じゃあテレビに集中するか」
153 :
仮眠:08/01/12 21:54 ID:ZM5CCcJo
「いやあ面白かったな!万石の台詞、心に染みたぜ!」
「とってもいい話でしたね、まさか男の子の方も自然に女の子のことが好きになってたなんて」
「直接じゃねえけど女の気持ちを知ってうじうじしてる男に万石が
「君のことをわざわざ好きになってくれているんだ。必要なのは誠意と行動だ」
って言ったとこがサイコー…」
ふと播磨は考える。この話は今の俺の状況にとても似ている、と。
女の子、即ち八雲の気持ちを知ってしまった男の子、俺。
八雲の気持ちに答えてあげたい。でも、決心がつかない。
果たして俺は本当に彼女のことが好きなんだろうか。
その時、万石の台詞が頭に浮かんだ。
「必要なのは誠意と行動だ」
そうだ。考えた時にはすでに口に出ていた。
「なあ妹さん、少し外行かねえか?」
「え…」
「あ!嫌ならいいんだぜ!?ホントに!!」
「いえ…私も誘おうと思っていたのですこし吃驚しました」
「そっか、じゃあ行こう!妹さん」
雨はもうやんでいて、空気は澄み渡っていた。
「じゃあ、ヘルメットつけて」
またバイクにまたがる二人。どちらとも、覚悟を決めた顔をしている。
(妹さん…俺は決めたぜ、もう迷わないぜ!)
154 :
仮眠:08/01/12 21:58 ID:ZM5CCcJo
小高い山を抜けて、丘に出る二人。その頭上には、言葉も出ないような星空があった。
色とりどりに見える、宝石のような星たち。背後の漆黒の幕でより美しく見える。
「…きれい」
「だろ?俺のお気に入りの場所なんだ、この丘は」
「どうしてここに…?」
「確かめたかったかんだよ、俺の気持ちを」
「え?」
「前にいっただろ、妹さんに。付き合うってことは、いろんな感動を一緒に感じたいと思える人と
一緒にいることだって」
「あ…はい」
「だから確かめたかったんだ、俺が妹さんと一緒にいたいって本当に思ってるかどうか」
「!」
「今、俺は妹さんとここにいれて凄く幸せに感じてるんだ。俺は自分の気持ちには嘘はつけねえ。
だから、付き合いたいんだ、妹さんと。俺、妹さんが好きなんだ」
そういって、頭を下げる播磨。自分なりに誠意を行動で表したのだろう。
「顔を、あげて下さい」
155 :
仮眠:08/01/12 21:59 ID:ZM5CCcJo
播磨が顔を上げると、八雲の頬には流れる二つの星粒があった。
「わたし、播磨さんの心が読めます。さっきどこに連れて行こうとするのかも、
何を言おうとするのかも、全部わかっていました。」
八雲は続ける。
「でも、私案外ずるいんです。播磨さんの口から直接聞きたかったから、今まで黙ってました。
だから、聞いて安心しました。播磨さんが すき って言ってくれて…」
そして一言。
「私で、いいんですか?」
播磨は答える。
「妹さんじゃなきゃだめなんだ」
156 :
仮眠:08/01/12 22:00 ID:ZM5CCcJo
そういって播磨はグッと八雲を抱きしめる。八雲はついに泣き出してしまった。
「大丈夫か?妹さん?」
「うれしくて…しかたないんですでも、一つだけお願いが…」
「なんだ?」
「これからはちゃんと「八雲」って読んで下さい」
「わかったぜ、八雲」
「…有り難うございます、播磨さん」
二人は囁きあった後、互いを見つめた。
まるで天使のようなあまりの八雲の美しさに、ここから天へ飛び立ってしまう気がして、少し不安になる播磨。
そんな愛しい気持ちを汲み取って、八雲はこう言った。
「これから何があっても、私は播磨さんのそばに居ます。だから、安心してください」
「ありがとよ、八雲」
そういって目の前の彼女にに口づけを施した。
永い永い口づけを。
この先、たとえどんなことがあろうと彼は負けないだろう。そして、幸せだろう。
なぜなら彼の傍にはいつも、天使がいるのだから。
ーーーー彼と彼女の道に、幸あらんことをーーーー
お し ま い
157 :
仮眠:08/01/12 22:56 ID:ZM5CCcJo
あぁ疲れたw
また感想などどんどん下さいなぁ!w
>>146 乙です
なんだかもう佳境みたいでテンポ速いですね
>>156 こっちも乙です
なんか話のテンポが早すぎるようなw
この長さだったらくっつくとこまでいかない方がよかった気もしますし
くっつけるんだったら説得力を持たすために、
もっと関係が近くなったところからはじめた方がよかった気がします
はじめてならこんなものだと思う。お疲れ。
ちょっと文体がこれまでと違うのは本や他の作品読んで勉強したんかな
160 :
仮眠:08/01/13 00:10 ID:s4H6GIYs
>>158読んでいただいて有り難うございます! なるほど・・参考になります
テンポが速いのは若さ故の(ry これから修行して直していこうと思います!
>>159またまた有り難うございます! 他のSSを読んでみて、後半は試験的に
いろんな表現?を使ったりしました。前半があまりにあれだったんで…w
これから、おにぎりssをどんどん投下していこうとおもいます!
「姉さん、まずはテンポ早いの直さなくちゃ…」
ってことで何卒、よろしくおねがいします!
>>160 この長さでは確かに、「八雲と呼んでください」までいかなくてもよかったかな?
「俺は、妹さんのことが……」くらいでしめていた方が。まぁ、俺の勝手な感想のなんで無視してください。
>>160 乙です
自分でテンポが早いって言ったんですけど、
文章はテンポよく読めたほうがいいと思います
物語についても好みがあるにせよテンポのよいもののほうが受けはいいです
ただ、展開が速すぎるという意味でテンポと言ってしまいました
読者が納得できるだけの描写があるなら、テンポは良い方がいいと思います
163 :
Classical名無しさん:08/01/13 01:40 ID:OtCG.BcI
>>160もしかしてカレー師かな?かな?
違っていたらスマソ、でもなぜか特有の“匂い”を嗅ぎつけてしまったんだ…
乙です
新規書き手は歓迎するよ〜
おにぎりは勢いあっていいなぁ
165 :
仮眠:08/01/13 02:35 ID:s4H6GIYs
コメントの嵐に感謝感謝でございまする・・
>>161 なるほど、参考になります。貴重な意見を無視する訳にはいきませんなw
>>162 ありがとうございます!小説は描写力&テンポが命!改ためて肝に銘じておきます!w
>>163 カレー師?SS書きの人ですか?アンサー頼むw
>>164 有り難うございます!このままおにぎりRUSHで行きたいと思います!w
蛇足ですが、僕がSSを書くようになったのは、やはりSSを書く人が少なくなってしまったのと、
自分で書いてみたかったからなんです。このスレにはじめて投下してみたら、
ちゃんとポイントを押さえた指摘や歓迎をしてくれました。とてもうれしかったです。
もし、まだ書いたことのない人がいたら、一度書いてみることをお勧めします。
僕も新しいSSを楽しみにしています。(できればおにぎりをw)
長文&偉そうなこと言って失礼しました。では、また今日の夜11時ごろまた投下すると思います!
みなさん乙かれさまでした。ノシ
乙です。
投下ペース早いのに誤字も見当たらず
文章も読みやすくてよかったです。
それとカレーさんはエロパロで書いてる人で全レスが特徴。
まあ、気にする必要はないかと。
嬉しいのは分かるが、全レスはしなくておkだからね
言いたい事をまとめて3行で言えれば良いんじゃないかな?
投下、乙っした!
168 :
仮眠:08/01/13 13:15 ID:s4H6GIYs
またまたレス有り難うございます…
そしてまた一本出来ました! でも投下は10時頃になりそうです。
いまからボンジョビのライブいってきます!!
ってことでいったん乙です!ノシ
勢いがあるうちに一杯書いて、自分なりの文章の書き方覚えたほうがいいね
使い古されたネタでも人によっては面白くアレンジできるし。
頑張れ応援してる
文章は書くのも大事だけど量読むのも大事だよ
171 :
仮眠:08/01/13 22:45 ID:s4H6GIYs
遅くなりました!ボンジョビサイコー!w
では投下します!
ーーー動物園でGO!!ーーー
今日は日曜日。学生達は日々の学業やらなんやらから抜け出して羽を伸ばし、それぞれの楽しみ方で過ごせる安息日。
彼らの場合は、こんな過ごし方をしていました。
ーーーPM1:00、播磨宅にてーーーー
「よっしゃおわったぁぁ!!」
「おつかれさまです、播磨さん」
「妹さんもすまなかったな、朝早くから手伝わしちゃって」
「いえ、好きでやっていることですから」
「ありがとよ、それよりコーヒーでも一杯飲むか?」
「あ、じゃあお言葉に甘えて」
締め切りがギリギリだった原稿を朝8時から午後1時までの突貫作業でおえて、一息つく播磨と八雲。
「毎度毎度肩が凝るなあこの仕事…妹さん疲れてない?」
「いえ、読んでいて楽しいので大丈夫です」
「ここまでこれたのは妹さんのおかげだからな、感謝するぜ」
「いえ、わたしは何も…」
いえいえ、いやいや、と謙遜合戦のすえ、播磨が口を開いた。
「じゃあ俺は動物園にいかなきゃいけないんだが…妹さんも来る?」
これはもしかしてデ…デートのお誘いなのでは…?と一瞬考えてしまった八雲。
「え…あ、い、いきます」
「じゃあ仕度するからチョットまっててな」
そういって風呂場に行く播磨。八雲の顔はすこし赤くなっていた。
172 :
仮眠:08/01/13 22:52 ID:s4H6GIYs
(今日おめかししてて良かった…)
サラに言われたので学校以外で播磨に会う時は少しおしゃれをしていく八雲。備えあれば憂いなし。
向こうから水の落ちる音が聞こえる。どうやらシャワーを浴びている。
(そうだ…お昼作っておこうかな)
幸い炊飯器にはご飯が残っていて、冷蔵庫にもある程度食材がそろっていた。
そして迷わず、八雲は弁当を作り始めた。
「おう、待たせたな妹さん」
ちょうど作り終えた弁当をバッグに詰めたとき、八雲は播磨をみて驚いた。
「播磨さん…オシャレですね」
「そうか?それはよかった」
ブーツカットのジーンズにグレーのYシャツ、軽くゆるめた黒のネクタイにレザージャケット。
かなりロックな格好だ。
「いやな、雑誌で見て、研究したんだ」
無論、ださい男は嫌われるといったテンプレートな雑誌の見出しに引っかかっただけである。
「レザーがヒステリックグラマーで、Yシャツが…」
などと付け焼き刃な知識で頑張って説明している姿が非常にかわいらしく、八雲は少し笑ってしまった。
「なんかおかしかったか?」
「いえ…播磨さんなら何でも似合いますよ」
さりげなく凄いこと言ってるのだが、播磨は気づくわけもなく…
「よしじゃあ行こうか!羽伸ばすぞ〜!」
二人はバイクにまたがり、しっかり捕まってろよ、と播磨は言うとすぐにバイクを発進させた。
173 :
仮眠:08/01/13 22:54 ID:s4H6GIYs
「さあ、ついたぜ」
それほど動物園との距離は遠くないため、あっという間についた。
今日は日曜日。動物園は家族連れでいっぱいだ。
「すごい人ですね」
「迷わないようにしないとな!最初は…こっちだ」
その時、播磨は無意識に八雲の手を引いてしまった。
「あ…手…」
播磨とはいえ、男の人の手を初めて握ってしまった。その感覚に、八雲の顔は茹で蛸のようになってしまう。
「ご、ごめんよ妹さん!つい無意識に…」
「い、いえ、あの、せっかくなので…つ、つないでいきましょう」
「あ、お、おう!迷うといけないしな!あは!あははは!」
播磨も恥ずかしかったようだが、別に気にしないそぶりをしている。
(播磨さんの手…あったかいな…)
(はて、なんで俺妹さんと手繋いでんだろ…?まあいいや)
やはりこの男、超鈍感。
「お、ここだここ!妹さんも知ってるはずだぜ。おーい、ピョートル〜!」
「あ…」
そこにいたのはキリンのピョートルだった。ピョートルは播磨に気づいてか、こっちに近づいてきた。
「おお久しぶりだな、元気にしてたか?」
下がってきたキリンの頭をなでる播磨。
妹さんも一回なでてみろよ、といわれて八雲はキリンの頭をなでた。
「意外とふさふさしてますね」
「だろ?これが意外と気持ちいいんだ」
しばらく播磨を通訳に、私をおぼえているか、などキリンと会話を楽しむ八雲だった。
「じゃあなピョートル!またくるからな!」
キリンと遊び終えた後、ふらふらと歩く二人。何故か手は離さない。
174 :
仮眠:08/01/13 22:56 ID:s4H6GIYs
「じゃあそろそろ飯にするかぁ」
「あ、お弁当つくってきたんで、食べましょう」
「ホントか!? いつの間に…やっぱ妹さんすげえよ」
「いえ、じゃあ、早く食べましょう」
心を込めてつくったので、味には自信がある八雲。
(播磨さんなんていってくれるかな…)
彼女もまた、自覚こそしてはいないが、立派な恋する乙女である。
「どれどれ、お!おにぎりだ!」
彼女が作ってきたのは、おにぎりとおかず諸々。どれも栄養満点、味良し、見た目よし。プロ級の出来栄えである。
「じゃあ遠慮無くいただきまーす!」
「どうぞ召し上がれ」
「ムシャムシャ…」
おにぎりを口に含んだ播磨は、涙を流している。
「ど…どうされましたか?」
「う…うめえ…こんなうまいおにぎり食ったのは初めてだ!」
「いえ、そんなこと…」
「いや、俺の中では妹さんがにぎってくれたやつが一番好きだ!これは何個食ってもあきねぇな」
「それはよかったです」
「いままで食ったのはひどかったからな。ぐちゃぐちゃだったり、四角だったり…」
内心、八雲はガッツポーズをしていた。でも改めて恥ずかしくなる。
(何考えてるんだろ…私)
「あ!思い出した!」
播磨が声を上げる。
「初めて妹さんと会ったとき、差し入れしてくれたのがおにぎりだったんだな」
彼の脳みそでここまで覚えているのは奇跡に等しいが、ふと思い出したらしい。当然、八雲は覚えている。
初めて出会った心の読めない男の人。忘れるはずがあろうか。
175 :
仮眠:08/01/13 22:57 ID:s4H6GIYs
(播磨さん…思い出してくれたんだ)
「そうでしたね」
「ああ。あん時のもうまかったな…(涙でしょっぱかったけど…)」
「あ、おかずもどうぞ」
「おう、いただくぜ」
これもうめえ!という播磨の言葉が少しずつ八雲の心を暖かくしていく。
「こんなんをいつも食えたら幸せだな…やっぱ妹さんはいいお嫁さんになるぜ!」
「お、およめ…さん」
ボン!と八雲の顔が赤くなる。それに毎日食べたいくらいだ、とまで言ってくれた。
毎日…毎日?閃いてしまった、いや、閃いた八雲。
「あの、もし良かったら、学校の時も…」
「学校の時も?」
「お弁当、つ、つく…って、差し上げ…ます、け、ど…」
よく頑張った八雲。二階級特進ものだ。彼女もまた、変わりつつあると言うことだろう。
「ほ、ほんとか!?、でも、大変じゃないか?」
「いえ、いつも作っているので大丈夫です…」
「じゃあお願いしてもいいか?」
「…はい」
彼女の楽しみが、また一つ増えた瞬間だった。
お弁当を食べ終わったあと、色々な動物たちを見て回って、終園時刻になってしまった。
「今日は楽しかったぜ、ありがとな、妹さん!」
「いえ…私も楽しかったです」
今日あった出来事はすべて楽しかった。恥ずかしくもあったけど、と八雲は思った。
(いつかまた、これると良いな)
「じゃあ家まで送るぜ」
「それではお言葉に甘えて…」
バイクの後ろには、幸せそうな顔で播磨に掴まる八雲の姿があった。
176 :
仮眠:08/01/13 22:58 ID:s4H6GIYs
(…ついちゃった…)
バイクは塚本家のすぐ前まで来ていた。
「じゃあな妹さん!」
八雲を降ろして播磨が手を振る。
「今日はありがとうございました」
そして、播磨が一言。
「また時間あったらいこうな!」
お世辞だったのかもしれないが、八雲にとって今日一番うれしい一言だった。
「…はい!」
しっかり返事をして、播磨を見送った。
彼女は今、しっかりと幸福を感じていた。
ーーーーーPM7:00、塚本家にてーーーーーーー
「おかえり、八雲!」
「ただいま、姉さん」
「今日のデート、楽しかった?」
「デートだなんて、そんな…」
「いーのいーの、もう公認カップルなんだから!うらやましいったらもう!」
「姉さんそれはちが…「で、楽しかったの?」
「…え、それは、…うん…」
「それは良かった!さ、ご飯にしよう!」
「うん、姉さん」
(よかったよかった、播磨君も八雲のこと大事にしてくれてるみたいだし、もう心配しなくても大丈夫ね!)
翌日、デートのことがクラスにばれ、事実がごっちゃごちゃになったり色々な疑惑をかけられたりしたが、
なんだかんだで丸く収まり、今でも播磨は八雲のおにぎりをお昼に食べたりしている。
「今日のおにぎりも最高だぜ!妹さん!」
お し ま い
177 :
仮眠:08/01/13 23:10 ID:s4H6GIYs
どうも仮眠です!
今回は動物園デートver.おにぎりです。かなりべたなんですが、やはり書きたかったので…
>>169どうも有り難うございます!ではお言葉に甘えてガンガン投下していきたいと思いますw
>>170こちらもありがとうございます!書くに当たってIFスレまとめとクズリさんの作品などは見ました!
どれも良いSSばかりですねぇ。憧れです。
カレー師ではありませんが、感謝の気持ちをこめて出来る限りコメントに返事はしたいとおもいます!
またまた感想、指摘などまってます!よろしくです!!
構ってちゃんはウザイぞ。
自重しろ。
乙〜
>>178はただの煽りだからきにしなくてもいいけど
カレーって人がずっと全レスしてきて叩かれてるんだよね
あれはただの荒らしだと思うけどそうやってつけこまれるような事は
念のためにやめといた方がいいと思うよ。
まあ返答レスは個々でやるよりできるだけまとめてやったほうがいいな
それはさておき動物園→おにぎり→お弁当の王道コンボ乙。懐かしい気持ちになったw
ちょっと慣れたら一つくらい何かオリジナル展開入れるといいかもしれない
>>177 乙です
マターリしてて良かったです
上でも言われてるけど全レス返事つけるのは辞めたほうがいいかもねぇ
返した方がいいと思うのだけでいいと思うよ
それと文章読むんならやっぱりプロの作品読んだ方がいいかも
ラノベとかだったら文章軽いしすぐ読み終わるよ
大抵の図書館でも有名なラノベは借りられるし
182 :
仮眠:08/01/14 02:54 ID:uYj1TYaY
夜遅くにどうも!ではなるべくわきまえるようにします。
これは答えないとな、ってのだけにします!
>>181しゃなとドクロちゃんは読みました!おかゆまさきのギャグセンスに嫉妬w
それと読み返してて気づいた点がひとつ…
「姉さん、キリンの頭にそんなに毛はないよ」
あー、聞こえない聞こえないw
ウゼェ
184 :
仮眠:08/01/14 23:57 ID:uYj1TYaY
さて、また一本出来たので読んでくださいな!ガチャピン14号師をリスペクトしてみました。
〜drink drink drink〜 い=いとこ←何故か変換できない や=八雲 は=播磨
ー午後8時、播磨家にてー
い「塚本君、わるいね。夕食の準備までをしてもらって」
や「いえ、好きでしていることですから」
は「ほんと妹さんはすげえよ。どっかの誰かさんとは大違いだ」
い「そんなに痛い目に遭いたいのかね?拳児君は」
は「イエナンデモゴザイマセン、イトコサン」
い「よろしい。ちゃんとさん付け出来るじゃないか」
や「みなさん、できましたよ」
い「おいしそうだ。さすが塚本君。ところで今日はこんなものを用意したんだが」
は「なんだ…って酒かよ!この世のどこに未成年に酒進める教師がいるんだよ!」
い「ここにいるじゃないか。明日は休みで安心だし、飲まないとはいわせないよ」
は「ぐ…」
や「播磨さん…」
は(そうだ妹さんが見てるじゃねえか!こんなところで男を下げるわけには…)
は「飲むぜ」
い「その調子だ」
185 :
仮眠:08/01/15 00:17 ID:uNzCROj.
ーーー1時間後ーーーーー
は「もうだめだぁ、飲めねえ」
や「私…も…です」
は「妹さんものんでたの?」
や「わからないです…気づいたら酔ってました…それよりも…」
は「それよりも?」
や「私、私…うぇぇぇぇん」
は(妹さんが泣き出しちまったああ!!どうすりゃいいんだ!?)
や「播磨さん、私さびしいです…とても…」
は「心配すんなって!傍にいてやるから早く寝な!な?」
や「…はりまさぁん」
は「あぁ分かった分かった!ほらベッドはあっちだぞ?さっさと寝ちまえ」
い「これでよかったかね?高野君」
た「はい、ばっちりです」
い「後輩の恋を一歩進めるのに、酒を使ってまでやるとは…君は鬼かね?」
た「考えたのは私じゃないですよ、先生」
い「あぁ、なるほど」
恋のアルコール大作戦
概ね成功せり。
企画者S・Aへ。
おわり
186 :
仮眠:08/01/15 00:20 ID:uNzCROj.
八雲は泣き上戸、って設定でかいてみました。
S・Aは、麻生じゃないですよ?w念のため。
書き上げて嬉しいのは分かるけど、投下までもう1〜2日くらい間をあけて
ちょっと冷静に自分の書いたのを見直してみ?
投下が悪い訳じゃないし、その意気は好ましいが、連投に近いし俺設定・俺語りを垂れ流されても困る
まぁ確かに意気込むのはいいんだが前に言われた意見はちゃんと取り入れようぜ
乙です
というかS・Eじゃないすか?w
190 :
仮眠:08/01/15 19:57 ID:NIVMdQfs
レスありがとうございます。
前に勢いのある内に沢山書いておいた方がいい、と言う意見を少し間違った解釈をしていまいました。
それにあまり投下の間を詰めすぎると確かに飽きられても仕方ないですね…すいませんでした。
今度書くときは見直しして頑張ろうと思います!ちなみに今新しいSSの構想を練っています。
もちろん、おにぎりですがwかなり頑張ってみようかと思います!
ウザイから黙れよ。
煽りは気にせずに。
193 :
Classical名無しさん:08/01/16 04:34 ID:o93f03UQ
頑張ってくれ。
「天満ちゃん、烏丸と仲良くやれよ…君が幸せになってくれたら俺はそれだけでいい。
おっと、そろそろ時間か…」
「ヒゲ」
「お嬢…! 何でここに?」
「あんた…このまま何処かに行く気でしょ? 隠したって無駄よ」
「…何で分かったか知らねえが、隠すつもりもねえ。俺はこれから旅に出る」
「やっぱり…! で…ど、どこに行くつもり?」
「詳しいことは知らねえ。けど、少なくとも日本から出ることだけは分かってる」
「そう…別に私は…止めないけどね」
「まあ、そりゃそうだろーな」
「…!! ホントーにアンタって馬鹿よね。最後まで気付いてくれないんだから。
私は…私は!!」
「お嬢…?」
「播磨さん!!」
「妹さんか。まさか、アンタも知ってるのか?」
「どうしても、どうしても行くんですか?」
「ああ、まあな…」
「行かないでください…みんな、きっと悲しみます」
「…すまねえ。でも、これはケジメであり、約束なんだ。俺は行くぜ!」
「播磨さん…!」
「最後まで勝手な男よ…」
「沢近先輩…」
「八雲、アンタもあんなの忘れた方がいいわよ」
「でも、きっと…またもう一度会えますよね?」
「さあね。私は金輪際あいつの顔なんか二度と見たくないけど」
(すまねぇ妹さん。土産は何か買ってくるぜ。ついでにお嬢も)
「ハリオ〜、こっちこっち!」
「遅いぞ拳児君」
「何か引き止められてよ。不良が旅行なんてらしくねえって話みたいでな」
「あら、それは妬みじゃないかしら。美人のお姉さん3人も連れて海外旅行だし」
「しかも私らの奢りだからな。何様だという話だ」
「拳児君、贅沢ー」
「うるせぇ、失恋旅行に連れてってやるっていったのはそっちだろうが!」
一週間後、帰国した播磨と沢近と八雲の間には気まずーい空気が流れていたという。
乙
最近少しづつだが活気を取り戻してきたねここも本編も
198 :
仮眠:08/01/16 22:54 ID:m6gbi6rk
>>195乙です
とてもスクランっぽくて良いと思います
本編はいままさに佳境ですね…
あろさんの感想読んで思ったけど
書き手さんがいなくなったのはシリアスに期待できなくなったからなのかな
昔のスクランSSには本編に期待してたのかシリアスが多かったと思う
単に終盤になってやりにくくなっただけってのもあると思う
シリアス嫌いな人も多いだろうし
確かに書き手としては、とてもやりづらい状況です…
時間軸をどこに設定するかが悩みどころ
本編はこれでシリアスエンドじゃなかったらもう言うことはないw
個人的にはシリアス展開だからとか関係ないと思うけどね
というかあろさんまだ書いてるんだw
あの人のSS好きだなぁ
ブログ開いて書いてるよ。
俺もあの人のSS好き。
個人的にはスクランキャラは
テンプレじゃない分動かしづらいなあ。
近いうちになんか投下したいけど。
でも、あそこまで考えて読むのって疲れない?とは思うなぁ
書き手の性かもしれないけど、なぁ〜んにも考えないで読んでる俺には、
ちょっと息苦しいんじゃなかろーかと心配になったわw
好きな分入れ込んじゃうんだろうけど、もっと気軽に読めばいいのに、と思うのは勝手なんだろーな
SSだとかなり整合性に気をつけないといけないのに
スクランは平気でひっくりかえすからな
仮に全盛期にオハイオあたりをSS化してたら叩かれまくってたと思うし
>>204 マジ乙
S3の系列のとこで書いてると思ってたんでブログ開いてるとは知らなかった
宣伝乙です。
系列も何も、S3'の投稿SSから飛べるじゃん
>>209 ?
どういうこと?
今荒れてるから見てないんだけど
>>208 自分で見返しても宣伝っぽいとは思ったけどマジで知らなかった
>>210 リンク貼ってくれてるスレが1〜2枚目くらいに出てくるから、そこから飛べばおk
S3'もそろそろカウントも100人を切るだろうなー
その中のどれだけが業者の巡回か分かんないけど
S3’ってまだ書き込んでる人いるんですか?
あの宣伝の嵐の中で
>>212 一番新しい投稿が去年の10月くらい
今はもう誰もいないけどさ
214 :
Classical名無しさん:08/01/18 07:45 ID:Pd08rIc6
あろさんて誰?そんなにおもしろいのならば読んでみたいんだが誰か作品名かサイト名教えてくれ〜
あろ スクラン SS
でググれば一番上に出てくるだろJK
ちっとは自分で調べてくれよ
>>212 今はS3の流れを継いだサイトがあるよ
スクランSS投稿掲示板とか言うところが
217 :
仮眠:08/01/18 18:26 ID:neGmGvqU
さてそろそろおにぎり投下してもよろしいですか?
218 :
仮眠:08/01/18 20:41 ID:neGmGvqU
それでは投下します。
男、播磨拳児は屋上で天を見上げていた。ゆっくりと雲が流れていく。
ただそれをぼーっと見つめていた。それを見る瞳には雫が宿っている。
その雫が頬を流れたとき、彼は自分の不甲斐なさを笑った。
これは、終わりから始まる物語。
I don't want to miss a thing
第1話
それはあまりにも突然だった。恋敵である烏丸が明日、何処か遠くへ行ってしまうというのだ。
それを聞いた播磨は、チャンス到来!などとうつつを抜かしていたが、
残酷にも、そのチャンスは逆のベクトルに働く。放課後に、
「播磨君、少し話がしたいの。」
と天満に屋上へ呼び出された。いつもの播磨はこれだけでうきうきな筈なのに、
今日だけはちがった。なにか違う気がしたのだ。あの天満ちゃんが硬い顔をしていた。それも決意を決めた顔だ。
それも、予想はある程度ついていたのだ。だから考えたくもなかった。
まさか。まさかそんなことあるはずがない。播磨は願いに近いような思いだった。
だが、そう思っていることこそ起こってしまうもの。そして屋上に行くと彼女がいた。
「塚本…話ってなんだ?」
「あのね播磨君…お願い!力を貸して!明日、烏丸君に告白したいの!」
219 :
仮眠:08/01/18 20:42 ID:neGmGvqU
何も考えられなくなってしまう。決定的な瞬間に播磨は倒れそうになったが、気合いで耐えた。
「…いいぜ、塚本。ただし、何で俺なんだ?」
もちろん本意ではないが、今の状況では言わざるをえない。播磨の手に汗が滲む。
「それは…播磨君は、烏丸君と仲が良いし、それに私の一番の友達だと思ったから…」
(友達…か。今では蜃気楼みてえな言葉だぜ…)
「そうか…分かったぜ、塚本。俺はどうすればいいんだ?」
「ここに烏丸君を呼んできて欲しいの。あとは、自分でするから」
「わかったぜ。それだけだな?」
「うん…じゃあ、そろそろ帰るね。播磨君は?」
「おれは…もう少ししてから帰るよ」
「そっか…じゃあありがとね、播磨君」
そういって彼女は行ってしまった。直後、操り人形の糸が切れたかのようにしゃがみ込み、後ろに倒れた。
そして、声を出さず、泣いた。
(こんなもんなんだな。恋が終わる瞬間、てのはよ)
空には、鳩が一羽。ここには、播磨が一人。屋上はまるで彼の心を表すかのような風景だ。暫くして、
「こんなとこにいても仕方ねえしな。さて、そろそろ戻るか」
と独り言をいって立ち上がった先には…見慣れた顔があった。
220 :
仮眠:08/01/18 20:43 ID:neGmGvqU
い、妹…さん?」
「あの…はい」
嫌な予感がまた、彼を襲った。
「妹さん、もしかして…」
「…すいません。聞いちゃいました」
「そっか…」
今日はとんでもない一日だ。改めて播磨は思う。
「あの…播磨さんは…いいんですか?」
永い沈黙の後に八雲は言った。
「このままで、本当に良いんですか?気持ちを伝えなくて、本当にいいんですか?」
播磨は、一瞬考えたが、今の気持ちでは、無論そんなことできない、と思い
「ああ、多分このままで良いんだ。塚本のためには、な」
と力なく答えた。そして、次の八雲の一言に播磨は耳を疑った。
「…播磨さん…今、とても格好悪いです」
「へ?」
「姉さんは自分で気持ちを伝える勇気を持ちました。たとえ、他の人の力を借りていても…自分で決着をつけようと
しています。だから、その勇気を持っていない播磨さんはとても格好悪いです」
「でもよ妹さん…塚本から直々にあんなこと言われたらよ、そんなモンもてねえよ…」
「播磨さん。私は、どれほど強く播磨さんが姉さんのことを思っていたかを知っています。
だからこそ、自分の思いを伝えるべきです。姉さんは昨日話してくれました。もし受け入れてもらえなくても、絶対
貴方のおかげで幸せだった、って言うんだって。…だから播磨さんも自分の気持ちを伝える勇気を持って下さい」
221 :
仮眠:08/01/18 20:45 ID:neGmGvqU
「妹さん…」
播磨は衝撃を受けた。さっきの天満の行動は、自分の何倍も深く考えて、導きだした答えだったことに。
そして、彼女がこんなにも惨めでちっぽけな自分を励まし、応援してくれることに。
播磨は気づいた。さっきまでの自分は、傷つくことを恐れていただけだったことに。
現実を只否定したかっただけだったことに。
だが、今は違う。この塚本八雲という少女が気づかせてくれたのだ。
自分の弱さを。彼女の気持ちを。そして、自分の気持ちを伝える大切さを。
(そうだ、まだけじめがついてねえじゃねえか。でも俺はまだ、諦めたくねえ。だからどうせなら、全て打ち明けよう。
天満ちゃんへの後悔を残さないようにな。あぁそうか、やっとスッキリしたぜ!)
「妹さん!気付かせてくれてありがとよ!勇気が湧いてきたぜ!」
「その調子です、播磨さん」
「あぁ、満足する答えが出たぜ。全部妹さんのおかげだ、恩に着るぜ!じゃあな!」
思い立ったように播磨は屋上から階段へ駆けていった。
(あんなこと言っちゃったけど…私は…どうすればいいのかな)
八雲は一人考えた。さっき、播磨に言った言葉が、一つ一つ自分に反映してくる。
(播磨さんに悪いことしちゃったな…。)
八雲は胸が少しだけつっかかった。
(どうして私…)
「あら、まだ気付いてないの?」
ここは一人しかいないはずなのに、声が響いた。不思議に思って八雲は周りを見回すと、一人の少女が宙に浮いていた。
「あなたは…」
「ひさしぶりね、八雲。いい加減自分の気持ちに気付きなさい」
222 :
仮眠:08/01/18 20:46 ID:neGmGvqU
「自分の気持ち…?」
「彼のこと、好きなんでしょう?」
「そんな…違います。播磨さんは…」
「じゃあ、あなたはどうしてあんなことしたの?」
八雲はもう一回考えた。
(私はどうしてそんなことを?播磨さんのためだと思ったから…?
わからない。でもあんな播磨さんを見たくなかったから、だから播磨さんの後押しをしたかっただけ…
播磨さんのことは、好きではない。だけど、嫌いでもない。ただ、一緒にいて落ち着くだけ…)
「だけ?それだけなの?」
少女が問う。
「あなた、変わってないわ。彼も、あなたの姉も変わろうとしているのに。勇気を持ちなさい」
「勇気…?」
「そう。人を好きになる勇気。彼を好きになる勇気よ」
「でも…播磨さんは姉さんのことが…」
「関係ないわ。大事なのは、あなた自身よ。あなたが変われば、周りも変わるわ。もう一度、思い出してみなさい。
彼と過ごした時間を。その時感じた気持ちを」
彼女に言われた通り、思い出してみた。自分の作った料理をおいしそうに食べている播磨の姿や、
バイクに乗ったとき感じたあの大きくて暖かい播磨の背中。どれも八雲の心に焼き付いた姿だ。
そして、八雲は心がきゅん、となるのを感じた。
「それが、好きっていうのよ」
少女が言った。
「好きって言うのは、とても強い気持ちなの。忘れようと思っても、そう簡単に忘れられないわ。
いま彼の姿が鮮明に思い出せたのは、やっぱりあなた彼が好きなのよ。私がいえるのはここまで。後は八雲、
自分で考えなさい。そして、彼を思う勇気を持ちなさい。後のことは、考えなくていいから」
そして彼女はすっと消えていった。
八雲には少女の言葉がさっきの自分の言葉に重なって聞こえた。
そして、やっと自分の気持ちが分かった気がした。
「わたしは…播磨さんが…好き」
今、終わろうとしている恋がある。逆に、始まろうとしている恋がある。
この物語もまた、終わりから始まっていくのだ。
第一話 終
新作乙
投下していいかどうかは自分で空気読めばいいと思う
人に聞くものじゃない。ちなみにタイミング的にはよかったと思う
文章はどんどんよくなってるし、向上心が感じられていいんじゃないかね
播磨が天満と決着つけるのに時間かけてくれそうでいい感じ
あまり長いとそれだけで一つのSSになっちゃうけどなw
あと気になったのだが幽子は八雲を導く役じゃなくて答えを聞く役なんだ
諭したり助言したりするのとはちょっと違う
投下乙!
きっちり話を練って推敲したものなら
好きなタイミングで投下していいと思うよ。
連載期待してます。
良いんでないの良いんでないの
多分ね、もっと良い物書きたいって思うと気になる部分が出てきて推敲する時間も増えるから
今みたいに短い間隔で投下できなくなると思うけど、それは成長してる部分だから気にしないでね
頑張れ
226 :
仮眠:08/01/19 07:24 ID:rXEAkxKs
みなさんありがとうございます!w
しまった幽子の設定無視しちゃった!あまり気にしなかったから
ケアレスミスってことで許してください…
確かに今第二話書こうとしてるのですが意外と時間がかかりそうな感じです
それは成長してるってこと…だと良いですけどねw
じゃあ皆さん読んでくれて乙っした!
うぜぇ
話のおとしどころは決めてるんだろうか
終わりをはっきりさせないとダラダラ延びてしまうぞ
>>222 乙です
話の入り方としてはかなり良かったと思います
情景描写でキャラの心情を表現しようという試みもいいと思うんですが、
それがちょっとハッキリしないというか少し読んでて伝わりにくいです
情景により具体性をもたせたり、表現を鮮明に伝わるようにしてみるといいます
そういう表現は小説など本を数読んだりして既成の表現を覚えていくと、
独自の表現も自然と思いつくようになっていくはずです
読んで、だからといって表現できるかというと違うと思いますが
文章を書くことよりも、まずは文章に触れることに慣れたほうがいいと思うんです
文章には常に触れていないと文章の感覚を忘れてしまうんで継続も大事でしょう
辛口に批評じみたことをしててみましたが今までで一番良かったと思います
実にたどたどしい日本語だw
てゆーか、はっきり言うと、下手なSS書いてる暇があれば本を読んだ方が身になるものが多い。
文章がうまくなることよりも、ここでマンセーされることを優先するなら別にそれはそれでおk。
ちょっといいすぎ
ただでさえ人手不足なんだから別に細かい理屈はいいじゃん
本人もノリノリだし批評されて見に付いていくものだってあるよ
自演ウゼェ
スクロワ反省会が落ちたんだな
でもちゃんとまとめサイトに最後まで収録されてる
まとめの人乙!
スクロワ終盤書いて以降執筆欲が減った気がする
あれは面白いけど作中作外、色んな人の思惑が同時に交錯してるから
半端な覚悟で手を出さない方がよかったかもしれないw
書き手さんか?半年くらい前は乙
スクロワ書いてた人達今は何やってるんだろう
>>231 SSを書く→自分の得意・不得意が分かる→自分の気に入ってる小説・雑誌を読んで参考にする
って訓練の賜物だし、一概にむやみやたらと小説嫁!ではままならない事の方が多い
だって、SSを何本か書いてみないと自分の好きな展開とか書きやすいパターンとか自覚できないからね
と、最近書いてない奴が言ってみる
>一概にむやみやたらと小説嫁!ではままならない事の方が多い
少ないよ。それは体験談か?
だとしたら、君には向いていないんだろう。
今後の成長は諦めた方が良い。
特に根拠も無く少ないよとか言ってさらに煽るとはな
どうやらまた荒らし連中が沸いてきたみたいなんで書き手の人は注意した方がいいな
>>238 >今後の成長は諦めた方が良い。
なんという上から目線。これはまさしく読み専のなんちゃって批評家・・・
阿呆か。
>一概にむやみやたらと小説嫁!ではままならない事の方が多い
根拠がないのはこれと一緒。
でも自分へのレスには根拠がないと怒るんだな。
それ以前に何様だって話だな
それこそ人それぞれだわな
イメージを文にするか絵にするか、それが上手く出来るか出来ないかって事だからな
つか、ホントに雑談になると伸びるのな。エロパロもそうだけど
>>243 そう、人それぞれ。
できる人と、できない人の差。
向き不向きってのはあるもんだ。
>>244 焚きつけるなw
2chって批評せずにはいられない人が多いんだから、その口なんだろう238は
小説板とか行ってみ? 超売れっ子作家様に駄目出ししてる素人が沢山いるから
それこそ、歴史の残るような名作を書いた人にまで駄目だしするからなー
まったくだな。
>>237みたいに、先に偉そうなことを言っておいて、
自分では何もやらずに他人には色々要求するヤツとかなw
先ずは自分で手本を示してくれよ。
どっちも書いたら良いじゃん
うぜぇ
246・247はもっとキメェし、一番糞だな
なぜ荒れたし
最初はまともな批評だったのに
「まともな批評」がもう叩きの対象になっちゃってるんだろ。
どっちでもいいからそんなに揉めるなよ
>>237=251か?
>>238の論理がめちゃくちゃだと言うのなら、
>>237も一緒だ。
どちらも根拠がないこと偉そうに言ってるんだから。
とりあえず、いい加減、黙れよ。
今回みたいなデレ八雲って二次創作にしか存在しないと思ってた
というかSSでもあまりなかった部類じゃないか?
本スレでやれ
バンターさんとあろさん仲良いなw
おまいらもちっとは仲良くしろ
書き手は名前があるからなw
俺達も全員コテにしたら荒れなくなる
別にコテしなくても、IP表示で良いけどなw
見かけだけでも仲良いってのは良いもんだ。別に悪いことじゃないべ
つか、先輩やら上司やらと仲良くするのも疲れるわい。嫌いじゃないけどね
まぁでも仲悪くすると後々自分に災難が降りかかるから揉めなくはなるよねw
マガジン読んでみたけど、最近読んでなくてあんまり良く分からなかった
烏丸がなにか深刻な問題を抱えている?とか、そういう情報くらい
SS書きさんがSS書かなくなったのも、スクラン本編で語られる情報以上のモノが書けないからだろうね
だって、次の週には違う設定を公開されるかもしれないしね
かといって、スクラン初期のSSみたくすっ飛んでるモノを書こうにも収束に向かい過ぎてるというか
むしろ本編で語られるのが期待はずればっかりだからじゃないか?
シリアスな設定をSSで作っても本編を考えるとどうも合わない
最近のシリアス展開もどうせギャグ落ちじゃ?と疑惑が晴れない
261みたいのを見るとこういう人がここを見てるんじゃ書いてもしょうがないなってのは思う
そういう意見をねじ伏せるぐらいの面白いSSを書こう!
て気概をもたないのかね。
そんな奴の書いたものなんてたかが知れてる
大作じゃなくてもそこそこ面白いぐらいのSSでいいよ
ネタありきみたいなのでもかまわん
自分で言っといてなんだが、
>>263みたいな「SS書きはこうであるべき」みたいなのはウザイだけだな
別段特別な事じゃなくても、個人的な妄想垂れ流しがSS本来の姿だろw
小説風味とか連載まで行くのは本来特殊な事例だわな
○○は駄目、みたいな変な括りを読み手が勝手に持ち出していらないハードル上げたからの衰退でもあると思ってるよ
上の方の変態仮面のSSとか仮眠さんのSSとかも、とても良いんじゃないか
スクランであるべき点を抑えてるとして好きな事書いてるんだし
同作者なら個人的には変態仮面の奴より戦闘機の奴が好きだったな
世界観変えたから反対意見はあったがあっちのほうが俺は面白いと思った
スクランキャラはみんな個性的だからあぁいうのは面白い
はいはい、自演乙。
269 :
267:08/01/25 21:52 ID:MY0V/doU
>>268 自演じゃねーよ
大体そこを自演する意味ないだろ
大体最近あの作者投下しなくなっちゃったからいるのかすらもわからないけど
そんなことは置いといてあぁいうSSはありだと思うんだがねぇ
>>269 俺は苦手。
スクランはあの矢神市だから面白いと思う。
矢神市である必要ってあんまりないな
変態仮面でも戦闘機でもバトロワでも、色んな状況でそのキャラらしいことしてくれればいい
1回限りとか、めったに出ないからこそ受けるSSだと思うけどな、俺は好きだったし
ただ、毎回俺設定でやられたらちょっと食傷気味になるものではあるよね
とりあえず、これだけはやってはいけないSSを考えてみた。
1.2年に進級したら転校することが決まっている少年に恋している少女が、落第したら烏丸君と
同じクラスになれないなどとのたまうSS
2.メインキャラと関係ない新キャラが運動部(バスケなど)で活動する様を描いたSS
3.誕生会に参加した後で布団で寝ていたはずのキャラがなぜか戻って会に参加していたSS
4.修学旅行でわけのわからない外人が突然登場して、寒いバトル展開に突入するSS
5.ヒロインのような扱いで延々と引っ張ってきたキャラの恋心をライバルがばらし、それが原因で
突然主人公をこっぴどく振るSS
6.作品が始まった当初から特定の女性キャラ(八雲など)に熱をあげていたキャラが記憶喪失を
きっかけに突然幼馴染に言い寄りはじめ、なぜか幼馴染もそれを受け入れてしまうSS
7.キャラの一人が主人公の描いた原稿を破いたり、主要キャラ同士がぶつかった拍子にキスしたなど
という描写をしておいて、実はフェイントだったりよけていたりするSS
8.ボケキャラとして定着していたキャラが、終り間近になって突然不治の病などと言い出すSS
他にあれば追加よろ。
要するにキャラの積み重ねや心理状態の推移が意味不明なのはダメ、と
要するにSSではダメだがコミックならオッケー、と
指摘されてる原作の内容を全盛期にSSにしてたら
一体どんな反応になってたんだろうな・・w
スクランの完全なクロスは見てみたいな
>276
特に8番なw
絶対叩かれてただろ
烏丸の病は初期設定だけどな
小清水は昔から知っていたっぽいし
6の方がイタい気もするがw
あと追加。
9.クリスマスに、主人公が好きな少女のプレゼントを壊してしまい、突然抱きしめて少女も何やら感じるところが
あったように見せかけて、実は何の変化もなかったSS
10.修学旅行で留学生のボスが出てくるが本当に出てくるだけで終わってしまったSS
11.札が二枚に重なっていたことに誰も気付かないで雨で都合よく裏映りするSS
本編を叩いてるようにしか見えんからその辺でやめとけ
>>282 最近このスレにもアンチが沸いてきて悲しい
なんで不満たっぷりなのに作品スレにしがみつくんだろうか
284 :
Classical名無しさん:08/01/26 13:27 ID:PT9JYSW6
エンジェル伝説の北野君やゴリラーマンが矢神高校にやってくる話を見てみたいが
スレ違いか・・・
好きだからこそ苦言を呈してるとは考えないのかね。
盲目マンセーしろってか?
こんなとこ、しかもSSのスレにそんなん書いても
なんにもならんでしょ。阿呆らしい。
>>284 スレ違いだね。
今週は新作ないかな
288 :
仮眠:08/01/26 23:41 ID:bKX3TZbM
お待たせ致しました!!第二話出来たんで見て下さい!!w
明日を待ちわびる夜の時間は永い。
播磨は、窓越しに月を見ていた。
「いよいよ、明日か…」
凛とした月が播磨を照らす。
「今まで長かった…けど、もう終わりだ。そろそろ決着つけようぜ、天満ちゃん」
彼は月に笑みを向けると、布団に入った。
一つの物語が、終焉を迎えようとしていた。
I don't want to miss a thing 第二話
待ちに待った今朝。播磨には朝のいつもの眠気など皆無だった。
リビングに行くと、歯を磨き、制服に着替えて冷蔵庫にあったパンを食べた。
そしていつものようにバイクにまたがり、いつものようにエンジンを吹かす。
そして今日だけは、告白を必ず実行する勇気をもっていった。
「さあ行くぜ!待ってろよ天満ちゃん!」
289 :
仮眠:08/01/26 23:42 ID:bKX3TZbM
学校に着き授業が始まっても、彼はずっと考えていた。
(俺はこの先、どうなるんだ?天満ちゃんのために学校来てたようなモンだからな。
やめちまうか… でも、もう逃げねえって決心したからには、筋を通さなくっちゃな)
播磨が物思いに老けている頃、八雲もまた、悩んでいた。
(私は播磨さんが好き…?ホントに好きなのかな…?本当は甘えているだけ?
でも、あの時の気持ちは…本当に本当だった…)
「どうしたの、八雲?何悩んでるの?」
「サラ…」
「悩み事でもあるの?そんなに難しい顔して。このシスターが相談に乗るよ〜」
「ありがとう…サラ。でも、自分で解決しなくちゃいけないことだから…」
「そう、八雲がそう言うなら仕方ないね」
「ごめんね、サラ」
「良いって良いって!いつでも相談に乗るから!」
それからサラと八雲はすこし話をした。気分が少し軽くなった感じがした。
それでも、悩みは消えない。それに何も出来ない自分が、とても悔しかった。
(私は、どうしたらいいんだろう…)
290 :
仮眠:08/01/26 23:44 ID:bKX3TZbM
それから時は過ぎ、放課後になった。播磨は無論、烏丸を屋上によびだした。
「塚本が、お前に話したいことがあるそうだ。屋上に来て、だとよ」
「僕に?」
「あぁ、お前にだ」
「分かった、行くよ。でも、もう少ししてから行く」
(これで準備は完了だな…後は、っと)
播磨は屋上へ駆け上がり、塚本天満のもとへ向かった。
「…播磨君、どうだった?」
「もう少ししたら行く、だとよ」
「良かった、有り難う播磨君。全部播磨君のおかげだよ」
「んなこたねえよ。塚本、がんばれよ」
「ありがとう播磨君。後一つだけお願いがあるんだけど…」
「お願い?なんだ?」
彼が想いを告げようとしたとき、その言葉はあまりにも鋭く聞こえた。
「出来れば、播磨君も一緒にいて欲しいかな…って。一人じゃ不安だから…」
どこまで自分の運命は残酷なのだろうか。播磨は憎んだ。
「あぁ…いいぜ…」
「ありがとう播磨君!播磨君がいれば百人力だよ!」
「そうか…そりゃ良かったぜ…」
そして、烏丸が来た。播磨は、取り敢えず黙っていた。
291 :
仮眠:08/01/26 23:45 ID:bKX3TZbM
「塚本さん、話って何?」
「か、烏丸君!あのね…その、明日日本からとても遠くに行っちゃうんでしょ…?」
「うん。多分、もう日本に居続けることは出来なさそう」
「だから、烏丸君に言いたいことがあって…」
「僕に?」
「私ね、烏丸君のことが…す…す、す…」
もう一声が出ない。播磨はもどかしくなった。このままでは、彼女は幸せになれない。
自分は今何をすべきか。自ずと答えは出てきた。
「塚本!勇気出せ!」
それは心からの声だった。自分よりも、彼女の幸せを。
「(播磨君…ありがとう!)私、烏丸君のことが…好きなの!付き合って下さい!!」
292 :
仮眠:08/01/26 23:48 ID:bKX3TZbM
彼女は頭を下げた。彼女の目は潤み、顔は赤い。
「有り難う塚本さん。…でも、いずれ僕は行ってしまうんだよ?仮に付き合ったとしても…」
「烏丸!今はそんなこと聞いてんじゃねえ!どっちなんだよ!」
「僕も塚本さんのことは嫌いじゃない。いや、むしろ好きかもしれない。でも、どうすればいいのか僕には分からない。
付き合っても、きっと離ればなれになってしまうか「私!」」
いきなり天満は、声を荒げた。
「烏丸君について行くよ。親もいないし、お金は自分で出すから、烏丸君について行きたい!」
「塚本さん、それは間違っているよ。僕のためだけに、君の人生を無駄にしてはいけないんだ。
いや、僕がしたくない。それに恋だって「烏丸ぁ、歯食いしばれぇ!!」」
いきなり、播磨は烏丸を殴り飛ばした。
「播磨君!烏丸君に何するの!?」
「すまねえ塚本…だが、こいつには分からせなくちゃならねえことがあるんだ。…いいか烏丸!いまてめえを殴り飛ばした理由が分かるか!?」
烏丸は黙って播磨を見た。
「お前は全然塚本、いや、天満ちゃんの気持ちを分かろうとしねえからだ!」
「播磨君、それってどういう意味…?」
「俺はな、ずっと天満ちゃんのことが好きだったんだよ!!だから分かるんだ!天満ちゃんはどんな気持ちでお前を思っていたか!
良いか?天満ちゃんはお前だから好きになったんだ!だからお前以外じゃ駄目なんだよ!お前も天満ちゃんが好きなら、男を見せてみろよ!!」
293 :
仮眠:08/01/26 23:50 ID:bKX3TZbM
「播磨君…分かった。塚本さん」
「…なに?烏丸君」
「本当に、僕なんかでいいのかい?」
「ううん、烏丸君じゃなきゃだめなの!!」
天満は烏丸の胸に飛び込んだ。それを優しく受け止める烏丸。
「塚本さん。僕も、塚本さんのことが、好きだ」
「烏丸君…!」
播磨はこの感動的な場面で涙しなかった。それどころか、スッキリとした気分だった。
(これでもう、俺の出る幕はねえな。あばよ、烏丸、天満ちゃん。お幸せにな…)
静かに屋上から去ろうとしたその時、天満が叫んだ。
「まって播磨君!」
播磨は立ち止まる。
「何だ塚本?」
「ごめんなさい…私、ひどいことしちゃった…知らなかった…播磨君が、私のこと好きだったなんて…」
天満は泣いていた。大粒の涙を流しながら。
「いいんだ、塚本が幸せならそれでよ。さあ、早く烏丸んとこにいけよ!寂しがってんぞ」
「播磨君、ごめんなさい。そして本当にありがとう…」
「どういたしまして…!さてじゃあな、塚本、烏丸」
彼は今度こそ屋上を去った。もう誰もいない廊下に播磨の足音が響く。
(二人とも幸せそうだったな…天満ちゃん。ありがとよ、今まで楽しかったぜ…)
知らぬ間に頬を伝うものは、誰も知らない彼の想い。ぼんやりして歩いていると、すでにバイクの前にいた。
バイクにエンジンをかけようとしたとき、人影が播磨に近づいてきた。
「播磨さん…!」
294 :
仮眠:08/01/26 23:52 ID:bKX3TZbM
その人影は八雲だった。播磨はどことなく既視感を覚える。
「妹さん!また…聞いてたのか?」
「いえ、今買い物をしてたら播磨さんの姿が見えたので…でも、結果は分かります。」
「?」
「だって、播磨さん今とても清々しい顔をしてるから…。伝えられたんですね、姉さんに」
「おう…スッキリしたぜ。これも妹さんのおかげかな…。ありがとよ」
「いえ、決断されたのは播磨さん自身です。…自分に自信を持って下さい、播磨さん」
「そっか、ところで妹さんこれから暇か?」
「はい、別に用事はありませんけど…」
「じゃあ、どっかに飯食いに行こうぜ!いま一人で飯食いたくねえんだ。俺がおごるから…駄目か?」
「でも…播磨さんに悪いですし…あ!今ちょうど買い物に行ってきた所なので、食材があるんです。だから…私がご飯を作ります」
「ホントか妹さん!?じゃあよろしく頼むぜ!さ、バイクにのれよ」
八雲には天満のことを吹っ切った彼の姿はとても強く、輝いて見えた。彼の背に掴まると、八雲は思った。
(…私、やっぱり播磨さんのことが…好き。だから、播磨さんが傷ついていたら、慰めてあげたい。そして、播磨さんの傍にいたい。それが、私の気持ち)
彼女はようやく本当に自覚した。自分の気持ちに。自分の想いに。
そして今寄りかかっている大きな背中を、少しだけ、ぎゅ、と抱きしめた。
終わってしまった一つの恋という物語は、始まりには戻らない。それがどんなに強い思いでも。
だけれどもその一つの終わりからまた、新しく物語が始まろうとしている。いや、もう始まっているのだ。
ーーーーーこれは、終わりから始まる物語ーーーーー
つづく
295 :
仮眠:08/01/26 23:56 ID:bKX3TZbM
今回は時間かけましたww
意外とおにぎりSSはちゃんと播磨が振られるところが無かったりするので、
そこを頑張って書いてみました!感想など、お待ちしております。
乙かれ
乙乙
テンポいい感じ。昔は皆こういう妄想してたんだよな・・
播磨の天満から八雲に気持ちを推移させるのは難しいと思うけど頑張って。
あと文章と作者の声はちょっと間空けたほうがいい
>>295 台本だね。
それはともかく播磨ってそう簡単に無抵抗の相手を殴るかな?
また、簡単に八雲を誘ったのも違和感が。
これは、俺のイメージだけど「どういたしまして」とは、播磨は言わない気がする。
「礼なんていらねーよ」とかかな、俺の中では。
なんか、本編よりは面白い気がするな。誉め言葉になるかどうかわからんけど、がんばれ。
乙です。
テンポはいいんだけど物語が少し淡々と進み過ぎな気が。
もう少し地の文を増やしてみるのも1つの手かと。
それと1つ誤字を。
物思いに老けている→物思いに耽っている
続き期待してます。
自演うぜぇ
>>295 乙です
台詞ではなく地の文で描写した方がいいと思たところがわりとありました
あと、ーーは――こっちの方がいいですよ
このSS書きの人からはとてつもない初々しさを感じる
向上心が見えていいと思うがね
いきなり名作作れは無理だし今後も頑張って欲しいと思う
305 :
仮眠:08/01/27 17:19 ID:uQQp3.Hc
皆様読んでくれて有り難うございます。
>>302それどうやってやるんですかw?てすと≫−−−
自分はまだまだ初心者なので、これからどんどん書いていこうと
思っております。読んでくれて、乙っした!
>>305 ―はーを変換すれば出る。
あと、意味もなくwを付けるのはやめた方がいい。
悪意はないんだろうが、wは使いどころを誤ると相手をバカにしているように受け取られる。
SSを書き始めてコメント内のテンションも上がっているのかもしれんが、もう少し抑え目にしてはどうだろうか。
SSを書くなと言っているんじゃないが、もう少し他のスレやそこでのレスも見て、皆がどういう口調で書き込んでいるか勉強した方がいい。
せっかくここはSSを楽しむスレなんだから、少しでも余計な火種を生まないようにと思ってコメントしておく。
>>306有り難うございます。気をつけます。
でもーを変換しても−しか出ない…俺のパソだめかな?
―はダッシュと読む。
ーから変換すれば出ると思うんだが、出ないならだっしゅで変換してみるといい。
それか今書き込まれてる――をコピペするとか。
罫線でもでるよ
よこでも出るよ
おお、しばらく見ない間に新人SS書きがw
しかも初々しいけどけっこういいじゃん
上のSSの不満点は播磨が吹っ切るのが早すぎるところかな?
簡単に吹っ切れない播磨を八雲が覚悟を決めて癒していく感じが個人的に見たいw
播磨が次からコロっと天満のことを吹っ切ってるのは嫌かな
ずるずる引きずりつつも頑張る播磨と八雲が見たい
嫌というか違和感が残るわな
新しい書き手が出てきて全体的にテンション上がってるな
自演だろ
どうも仮眠です!トリップつけました〜
皆さん読んでくれて有り難うございます!
播磨が天満のこと吹っ切るの確かに早かったですね。自分でも思いました。
まあ後からいくらでも修正できますから許してくださいな。
第三話は今週末くらいに投下出来ればと思います。
もちろんちゃんと推敲してつくります!ってことでよろしくおねがいします〜
>>316 >まあ後からいくらでも修正できますから
( ゚д゚)ポカーン
やばいな、これから三話で播磨が実は引きずってるシーンを出すことを若干示唆したんだけど
違う意味で伝わってる気がする…。皆さん、↑の意味です。念のため。
なんかレスつける事から慣れていった方が良いなw
他の板やスレにも顔を出してレスする(コメントをつける)練習したらどうだろうか
伝わらない言葉なんて誤解を生むだけだしなぁ
ごめんなさい…初心者なもんでして…
自分の言葉が伝わりやすくなるようにがんばります…。
マジでウザイ。
余計なレスすんな。
投下だけしてろ。
カレーみたいな存在になってもらっては困るww
スクランはいつも晴れのちぐぅ
サラ・アディエマスの事情
今朝、私の携帯電話に八雲からメールがあった。
《今日は風邪で学校に行けないから、播磨さんをよろしく 八雲》
ここ最近、播磨さんは毎日のように茶道部の部室で漫画を描いている。で、八雲は
そのお手伝い。播磨さん曰く、ここが落ち着くんですって。まあ、私たち茶道部は大した
活動もしていないし、話し相手が出来てそれはいいんだけどね。
あ、でもそうなると今日は播磨さんと二人きりになるわけか。そういえば二人きりなんて
初めてだな。大丈夫かな。部長の高野先輩は、「忙しい」とか言って最近ほとんど部室に
きてくれないし。
放課後、播磨さんは茶道部の部室にあるテーブルの上で漫画用の原稿用紙を広げて
熱心に絵を描いている。それにしても、あの魚の骨みたいなペンは書きにくくないのかな。
「あの、紅茶です。どうぞ…」
「おう、ありがとよ。すまねえな、気を使わせちまって」
「え、いいえ。どうせ暇ですから」
「ええと…、名前は」
「サラです。サラ・アディエマス。いいかげん覚えてくださいよ」
「悪い悪い」
「もう…。あ、そういえば八雲は」
「風邪だろう。大変だよな」
「あ、知ってたんですか。やっぱり愛のちか…」
「メールが入ってた」
「そうですよねえ」
「なんだよ」
「そういえば播磨さんって、いつごろ八雲のメールアドレス知ったんですか?」
「ん?いつだったっけなあ」
「男の人で八雲のメールアドレス知ってる人って、播磨さんくらいですよ」
「打ち合わせの時間を知らせるのとかに必要だからな」
「もう、ニブイなあ播磨さんは」
「あん?」
「男の人にガードの固い八雲が、わざわざアドレスを教えてくれたってことはですよ」
「あのさ」
「はい」
「ちょっと静かにしてくれねえか。集中できねえよ」
「はあ…」
沈黙。
沈黙は苦手。そういえば八雲と播磨さんは、漫画を描く時、ほとんど会話らしい会話
をしてなかったなあ。「ん」とか「はい」とかで意思が通じ合うものだ。テレパシーでも
使っているんじゃないかしら。私には無理。ってか、この重苦しい沈黙はなんなんだろう。
八雲のこと、しつこく聞きすぎたのがまずかったかなあ。
あまりに気まずい雰囲気に、私は耐え切れなくなって図書室へと避難した。宿題が
出ていたので、しばらくそれをやろうと思ったからだ。播磨さんも一人になった方が集中
できるだろう。
気がつくと日が傾き、辺りが薄暗くなっていた。
あれ、いつの間に私寝てたんだろう。八雲の癖がうつったかな。とりあえず荷物をまとめて
茶道部の部室に行ってみると、まだ播磨さんは原稿を描いていた。
「あの、播磨さん」
「おう。まだ帰ってなかったのか」
「いや、施錠とかもあるし」
「俺がやっとくよ。気にすんな」
「いえ、一応私が部員ですから」
そう言って部屋に入ると、テーブルの上に空になった紅茶のカップが置いてあった。
「新しい紅茶入れますね」
「いや、いいよ。もう帰るんだろう」
「ついでです。私も飲みたくなったし」
「お、おう…」
播磨さんは、作業が一段落ついたようで、比較的落ち着いていた。
「どうぞ」
「サンキューな」
夕闇の中でお茶を飲む二人。なんだろう、この光景は。
「あの、播磨さん?」
「ん?」
「八雲のこと、好きですか?」
「ぶっ!!!!」思わず紅茶を噴出してしまった播磨さんは、原稿に紅茶がかかっていないかを
確認しつつ、机を布巾で拭いていた。
「ごめんなさい」
「いきなり何を言い出すんだお前は」播磨さんは、焦りながら口の周りを拭う。ちょっと可愛い。
「ああ、でもやっぱり知りたいですよ。播磨さんの気持ち」
「俺の、気持ち?」
「八雲のこと、どう思ってるんですか?」
「いや、どうって」
「毎日お手伝いさせといて、気持ちをはっきりさせないっていうのはちょっと卑怯ですよ」
「卑怯…」
「ねえ、どうなんですか」
「ああ、ちょっとトイレ」そう言って急に立ち上がる播磨さん。
「待ってください」私は思わず播磨さんの大きな体を後ろから抱えた。
「バカ、放せ」
「いいや放しません。どうなんですか?播磨さん」
「おめーにゃ関係ねえだろう」
「あなたたち二人をほっといたら、百年たっても進展なさそうです。そんなの許せません」
「なんでお前がそんなに怒るのか」
「播磨さん」
次の瞬間、部室のドアが急に開いた。騒いでいたので、ノックの男が聞き取れなかった。
「高野いるか?」
「あ…、麻生先輩」
「あ…」
私と同じバイト先の麻生先輩だった。
「お前ら…」
そう言うと麻生先輩は急いでドアを閉めた。
「……」
再び部屋の中を支配する沈黙。
「どーしよー!!!」私は一瞬、わけがわからなくなり叫んでしまった。
「どうでもいいからちょっと離れろ」
「うわあ、これは完全に誤解された…」ちょっと半泣き。
「オメーのせいだろうがよ」
「播磨さんがはっきりさせないのが悪いんですう」
「何を勝手な」
自分でも身勝手な事言ってるなって、ことはわかっていた。落ち着け、落ち着け私。
冷静になれば解決策は見つかるはずだ。
「直接麻生に説明すりゃいいだろう」
「そうだった」なぜこんな簡単な事が思いつかなかったのだろう。
「お前、大丈夫か?」
「確か麻生先輩って、バスケ部でしたよね」
「聞いてない…」呆れ顔の播磨さん。
でもそんなのを気にしている暇はない。私は、とりあえず播磨さんと一緒にバスケ部
が練習しているであろう体育館へ向かった。
「麻生?もう帰ったぜ」
オレンジ色の短い髪の毛に、耳にピアスをつけた長身のバスケ部部員が言った。
確かこの人は、麻生先輩といつも一緒にいる人だ。確か名前は…、まあいっか。
その人の話によると、部活の練習はすでに終っており、数人の男子部員が女子バスケ
部の練習の手伝いをしているという。
「それにしても、何でキミが播磨と一緒にいるんだ?付き合ってんの」
「違います違います!」私は大きく手を振った。
「じゃあ俺と付き合…」
次の瞬間、目の前の人のオレンジ色の頭にバスケットボールがぶつかった。
「何やってんのよ」髪の長い女子部員が投げつけたらしい。
「痛えな嵯峨野!!!」
「ごめんね、こんなバカ相手にしなくていいから」某探偵漫画の登場人物の一人に
似ている女子生徒が私の目の前にやってきた。確か播磨さんとも同じクラスの
嵯峨野先輩だ。
「あれ、播磨くん。なんでこのコと一緒にいるの?もしかして新しい彼女?」
「違う違う!!!」今度は播磨さんが強く否定した。新しい、ということは、今まで何人か
彼女がいたのだろうか。
結局、私たちは麻生先輩には会えずに帰ることになった。茶道部の部屋を片付け
ているとき、播磨先輩は窓から外を見て言った。
「よう、送ってくぜ」
「え、でも」
「だいぶ暗くなっただろう。暖かくなったら、変な連中も出没するもんだぜ」
「はあ」
何か気の効いた話しでも出来ればよかったのだけど、今日の私はそういう気分には
なれなかった。
翌日。事態は更に悪化していた。八雲の風邪が長引いて今日も休んでいたのは
不幸中の幸いかな。
「サラ、あんた播磨先輩と付き合ってるの?」クラスメートの一人が目をキラキラ輝かせ
ながら聞いてきた。
「ええ、どうしてそんなことに」
「なんかそういう噂よ」
「違うから!付き合ってないから!」私は必死に否定した。顔が紅潮しているのが分かる。
「じゃあ浮気相手?」
「そうじゃなくて。播磨さんはそんな人じゃないから」
ああ、どうしよう。こんな噂が広まったら益々誤解されちゃう。昨晩に引き続き、憂鬱な
気持ちを引きずって授業を受けていると、播磨さんからメールが届いた。
昼休みの屋上。
そういえば、播磨さんと八雲はいつもこの場所で会っていたんだっけ。
「悪いな、急に呼び出しちまって。どうした、元気ないな」
「ええ。なんか変な噂がありました」
「ああ。その噂な。俺も困ってるんだ」
「あんまり困ってるようには見えませんけど」
「慣れだよ慣れ。人の噂も四十九日って言うだろう」
「それを言うなら“七十五日”です」
「お前、よく知ってるな。外国人なのに」
「播磨さんはいいですよね」
「何が?」
「どんなに誤解されるようなことがあっても、最後まで信じてくれる人がいて」
「あん?」
「八雲ですよ。八雲は播磨さんのこと、いつも信じてる。誤解なんてないみたい」
「あのよ…」そう言って播磨さんは大きなため息をついた。
「誤解があるならそいつを、とけばいいじゃねえか。百回誤解があれば百回とけ
ばいい」
「え…」
「たとえ家族だって誤解してしまうことはあるんだからよ、ちょっと誤解されたくらい
でなんだよ」
「ちょっとって…」
「誤解を恐れて何もしなかったら、どんどん誤解が広がってしまうぜ」
「…」
「まあこれは、妹さんの受け売りなんだがよ。誤解があったりぶつかったり、
時にすれちがったり、そうやって人と人との関係が作られていくんじゃないかね」
「…はあ」
何か目の前のモヤモヤが一気に晴れた気分だった。
私、何を迷っていたんだろう。
その日の放課後、私はバスケ部で練習中だった麻生先輩を無理やり呼び出した。
「なんだよ急に…」
ぶっきらぼうな態度はいつものこと。でもこの日は目を合わせてくれない。心のどこか
で私を拒否しているサインだろう。でもこんなことで諦めるわけにはいかない。
「あの、播磨先輩と私は、何でもないですから」
「え」
「昨日は、逃げようとした播磨先輩を止めようとしただけです。別に何でもないんです!」
まっすぐ、麻生先輩の目を見据えると、先輩も視線を合わせてくれた。なんだか心臓が
ドキドキする。
「そんな事言いにわざわざ…」
「はい、わざわざ来ました。ごめんなさい」
「いや、いいよ」
「じゃあ私はこれで」
そう言って立ち去ろうとした瞬間、
「ああ、待てよ」と麻生先輩は私を呼びとめた。
「え?」
「ありがとな…」
「あ…、はい」
本当にこれで良かったのかわからないけど、とりあえず私は茶道部の部室に戻った。
そこにはいつものように、播磨先輩が漫画を描いていた。
「帰ったか」
「はい」
「お茶、入れといてやったぞ。ちょっとぬるくなったけど」
「え?」
よく見ると、テーブルの上に緑茶の入った二つの湯のみが置いてあった。
「ぬるいくらいがちょうどいいですよ。今の私には」そう言って一口飲むと、
「苦い…」
「あ、悪い」
「播磨さん、お茶入れるの下手ですね」
「すまんな、慣れてないもんで」
「私が入れてあげます」
「そうか」
「まかしてください。これでも茶道部ですから」
入れなおしたお茶を飲みながら、私たちはしばらく談笑していた。漫画を描かなくて
いいのかな、と少し心配していると、不意に播磨さんは自分の携帯電話を見て、急に
立ち上がった。
「よし、じゃあ帰るか」
「もういいんですか?」
「お前も片付けしろ。早く早く」そう言って、なぜかせかすように片付けをさせる播磨さん。
どうしたんだろう。
手早く帰り仕度を整えると、私は播磨さんと一緒に校門の方へ向かった。
しかし、
「俺の送りはここまで」そう言って立ち止まる播磨さん。
「え、どういう事ですか?」
「こっから先はアイツに送ってもらいな」彼の視線の先には見覚えのある人物が立っていた。
「麻生先輩…」
夕闇の中で、カバンを抱えた麻生先輩が待っていたのだ。
「じゃあな、サラ」そう言うと播磨さんは、私たちとは別の方向に歩いて行った。
「あ…」
そういえば、はじめて名前を呼んでくれた。
エピローグ
翌日、八雲の風邪もすっかり治り、この日は八雲がお茶を入れ、私はケーキの用意を
していた。
「ねえ八雲」
「なあに、サラ」
「八雲が播磨さんを好きな理由、なんとなくわかったような気がする」
「え…」顔を真っ赤にする八雲。可愛い。
「大丈夫よ、“八雲の播磨さん”を盗ったりなんかしないから」そう言って笑いかけると、
八雲も照れくさそうに笑顔を見せた。出会ったばかりの頃は、こんな幼い笑顔を見せる
ことはなかったな。これも播磨さんのお陰だろうか。
不意にドアが乱暴に開く音がした。
「播磨先輩!!!!」
「うわあ!なんだお前!!」
聞き覚えのある声が聞こえると思ったら、同じクラスの稲葉美樹だった。
「サラと付き合ってるって本当ですか!?」
「んな訳ねえだろう!!」必死に否定する播磨さん。
「じゃあ、誰と付き合ってるんですか?」
「付き合ってねえよ」
「嘘だ嘘だあ」
「なんでオメーに嘘つかなきゃならんのだ」
「教えてくださいよ」そう言って後ろから首に腕を巻きつける稲葉。
「コラ、放せ!オエッ」稲葉はまるで、子猫のように播磨さんにじゃれついている。そういえば
播磨さんは動物に好かれるんだっけ。
「何やってんのアンタたち」冷たい声が部屋の中に響いた。
「あ、沢近センパイと周防センパイだあ」無邪気に声を出す稲葉。でも腕は播磨さんの首に
絡ませたままだった。
「へえ、ヒゲ。今度はそのコに手をだすの?サイテー!」
そう言って沢近先輩は、部室のドアを乱暴に閉めて出て行ってしまった。
「やれやれ…」なぜか稲葉をオンブしたまま、途方にくれる播磨さんなのでした。
おわり
>>324-332 楽しみながら読ませてもらいました
播磨は相変わらず女性に囲まれてうらやましです
乙乙
最近盛り上がってきたな
台所キタ―――――!!
播磨スレでの俺の願いが通じたのか?
糖分控えめな感じも良かったです。
投下GJ!!
台所ってなんぞや
>>332 GJ
こういう軽いノリが好きだw
台所だと思ってたらガチのアソサラとは
エピローグも良かったです
>>336 播サラ
皿を磨くからって言うのが元ネタだとか
338 :
Classical名無しさん:08/01/30 14:24 ID:b3PK7H2M
ふと目が覚める。そこはどこかの家の、どこかの部屋だった。
よく思い出せないが、そこは確かにどこかで見たことがある場所だった。
拭いきれない違和感を感じつつ、未だはっきりとしない頭で状況を整理しようとする。
「アレ、俺は絃子の家に住んでたんじゃなかったっけ…?」
辺りを見渡してみる。やはり、病室でも自宅でもない。
しかし、やはりどこかで見覚えのある部屋だ。
「おとーさん」
「は?」
いつの間にか、目の前には小さな女の子の姿が。それも、どっかで見たような…
「お、お譲ちゃん…お名前は?」
「てんま」
「…?」
「つかもとてんま」
そうだった。この部屋は前に天満ちゃん家に世話になってた時に使ってた部屋だ。
ということは、この子は…?
普通の奴なら理解不能な展開に混乱するところだが、俺はプロの漫画家。
即座にピーンと来た。
「これはつまりアレだ…。『通じた』ってやつだ」
しかし俺に幽霊の知り合いはいねえし、そもそもいつの間に、何でここにいるのかも分からないんだが。
「おとーさん、あそぼ」
「!!」
その瞬間、俺は察した。これは神が与えた予行演習なのだと。
ごく近い将来、天満ちゃんとの子供が出来た後に子育ての問題が出てくる。
粋なことしてくれるぜ、神さんよ!
「よっしゃ! 遊ぶぜ、天満ちゃん!」
*
「しかし、親御さんはどうしてるんだ? まさか、天満ちゃん1人残して出ていってるなんてわけねえし…」
天満ちゃんの面倒を見ながら、ふと考えてしまう。
俺を父親だと思ってる辺り、どうなんだろうと思わないでもないが、そこは天満ちゃん。
最悪、周りの大人の全てが親に見えるなんてこともありうる。
「こりゃあ、俺と天満ちゃんの子供は目が離せねえな…」
そんな一抹の不安を俺が感じている間に、天満ちゃんが何かに気付いた。
「あっ、やーも〜」
「やーも?」
気がつけば、おそらく妹さんだろう子供が部屋に入ってきていた。
天満ちゃんは違和感を全く感じなかったが、妹さんは同一人物かってぐらい違った。
何かこう、雰囲気からして違うっていうか、普通に怖え。
「お姉ちゃんばっかりヒーキだや、やくもと遊ぶの」
「いや妹さん。一応、先に約束したのはお姉さんの方で…」
「なまえ!」
「あ、ああ。やーも…」
「やくも!」
怖え、普通に怖え。なんて自己主張の強さだ。本当にあの妹さんか?
それから妹さんも入れて3人で遊ぶことにしたが、
「おとーさん、お絵かき〜」
「おう、任せ…」
「おねーちゃんはどっかいってて! あたしがおとーさんとあそぶの!」
「じゃあ、DSで…」
「だかや、おねーちゃんはじゃまなの! むこうであそぶの!」
「け、喧嘩は良くねえぜ。お姉ちゃんも入れて3人で遊べば…」
「あたしが…あたしと…うえええん!!」
「いや、その、泣かすつもりはなかったんだ! ぐおおお! どうすりゃいいってんだ!?」
と、こんな有様だ。
俺と修治の時はこんなんじゃなかったぜ、たぶん。これが女と男の差なのか?
泣く妹さんから聞いてみれば、元々妹さんが俺と遊ぶ約束をしてたとかで、DSも妹さんのらしい。
「えーと、天満ちゃん。まずいだろ、それは…」
「う、うっく、ひっく…」
「え?」
怒ったつもりでもないのに、天満ちゃんまで泣かせてしまった。
俺はどうすればいいんだ? これが父親の試練ってやつなのか!?
「うーん、うーん…はっ!」
目が覚めると、そこはいつもの自分の部屋だった。
あれはただの夢だったのだろうか?それにしては何かしっくり来ないものがある。
隣には心配そうに俺を見る従姉弟の姿があった。
「どうした拳児君、ひどくうなされてたようだが」
急速に失われていく記憶を前に、俺は絃子に伝えられることは伝えようとした。
それは忘れてはいけないことだと思ったからだが。
「やーも怖え、マジ怖えぜ…あと、当然のことながら天満ちゃんは可愛かった」
「何を言ってるんだ、君は」
「絃子、俺には子育ては無理かもしれねえ。半端じゃねえ…」
「何のことかさっぱりだが、子育ては2人でやるものだ。私だけに任せないでくれ」
「いや本当に喧嘩だけは勘弁してくれって話なんだ…おい、聞いてるか絃子?」
「いいかげん、寝ぼけるな!」
――結局、絃子に説明出来ないまま播磨は寝てしまい、朝にはすっぱり記憶から抜け落ちていたという。
と、前に作りかけで放置してたのを作り直して投下。
こういうのも過去編というのだろうか?
播磨が入院して出てなかった時期に作ったものだったので、製作途中では付き添いだからいた
絃子がまるで播磨の部屋で一緒に寝てたみたいになってしまったが、あえて放置。
乙乙
現実とどうシンクロするのか今から楽しみ。頑張ってくれ
>>343 GJ
こういうノリのSS好きなんで楽しめました
できれば当時に投下して欲しかったですw
それにしても普通に子育ての話してるとか播磨と絃子さんどういう仲よw
GJ!
誰かがやーも書いてくれるのずっと待ってた。
短いやりとりだけど絃子と播磨の絡みはいいねえ。
スクランの二次創作で、ライバルを明らかに嫌な奴に描写してるのってあったっけ
カップル系だとよくある手法だと思うんだが
マジカ どこかで読めないかな?
>>350 IFスレまとめとか旧S3、スクランSS扱ってるサイト行けば
そんな作品あったっけ
ライバルというか例えばおにぎりの場合花井がとんでもなく自己中になってたり。
あいつと付き合わない方が良い!付き合うべきなのは僕だ! みたいな
それで八雲が怒って
花井が播磨に喧嘩売って
「やめろよな。本気で喧嘩したらメガネが俺にかなうワケ無いだろ」
な展開になるんだよなw
マジかよ
ちょっと探してみたがそんなひどいのはないような・・・例えばどれかな
投下します。
今回は前編のみです。続きは近いうちにできたらいいなあ。
多少、メルヘンな要素がありますので苦手な方はスルーをお願いします。
最近の播磨は疲れている、寝不足でもある。
それもこれも漫画のせいだ。
ネタが浮かぶまでは出来のよろしくない脳みそを必死にひねり、ネタが浮かべばすぐに原稿用紙に向い
必死に作業する。
稀に見てはいけないモノが見えたり、ぶつぶつと独り言を呟くようにもなった。
いや、それも運良くもらえた新連載のためだと思えば辛くない。
辛くないったら辛くない。
とにかく播磨は疲れていた。
そんなある日の放課後。
2−Cの担任である谷にSHRの終わりを告げられた教室は喧騒に包まれていた。
真っ先に帰宅する者や部活に向かう者もいるも、まだ多くの生徒が友達とのおしゃべりに興じている。
ある者達は初々しい恋の話に花を咲かせ、またある者達は放課後の予定を楽しげに話し合っている。
クラスが活気づく中、播磨は少しくたびれた雰囲気を漂わせながら教室を出ようとしていた。
「おい、播磨」
「あん?」
廊下に出た播磨はにこやかな顔をした谷に声をかけられる。
「最近ちゃんと学校来てるな。偉いぞ」
「ああ」
早く帰らせろ、とばかりに話を切り上げて播磨が帰ろうとすると、慌てて谷は言葉を続けた。
「い、いや、ホントに出席ギリギリだからこれ以上休むと進級が厳しいってことを伝えきたかったんだ。
お前もみんなと一緒に進級したいだろ?」
「まあな。もう休まねえ」
その言葉聞いた谷のウンウンと頷く顔は満足気だ。
「そうか。がんばれよ」
「おう」
その短いやりとりを終え、さっさと帰ろうする播磨の背中に再度、谷の声がかかる。
「播磨! よく知らないが今、何か頑張ってんだろう。先生は応援してるからな!」
その言葉にすこし口元を緩め、振り向かないまま軽く手を挙げてに応えると、播磨は校門の方へ歩みを進めた。
Please Cats Me! 〜おはニャ畑でつかまえて〜
体力の限界だ。
今日は帰ったら速攻で寝ると誓い、播磨は校門をでて現在のねぐらである刑部邸に向かってくたびれた体をズルズルとひきずっていた。
心中でバイクが無いことの不便さを嘆きながらも、無言でひたすら歩く播磨であったが視界に黒いものを認めるとそちらに近づいていった。
民家の塀の上に黒い毛皮に体を覆われた小動物が丸まっている。
猫だ。
播磨もよく知っている猫だ。
見間違う筈もない、額に特徴的な傷をを持つその黒猫は播磨が愛してやまない少女の飼い猫である。
「伊織じゃねえか。元気にしてたか?」
伊織と呼ばれたその黒猫がにゃあと短く答えると、播磨はそちらに手を伸ばし伊織の頭をなでた。
「そうか、元気か。俺も元気だぜ」
頭をなでていた播磨の手が下の方に移るとしっぽをゆっくり揺らしながら、ゴロゴロと喉を鳴らせた。
「まあ、今はちょーっとだけ疲れちゃいるがな。こんな時は猫になりたいって思っちまうぜ」
後の方は半ば独り言であったのだが、
「にゃあ!」
と元気な鳴き声が返ってきた。
「ははっ、任せろって?。まあ、気持ちだけありがたく受け取っておくぜ。辛い時こそ男はやらなきゃなら
ねのよ。万石もそう言ってたからな」
笑いながら言って、最後にご主人様によろしく言っといてくれ、と頼むとじゃあなと伊織に別れを告げ、
家に向かった。
家に着いた播磨は先に帰宅していた絃子に声もかけず、まっすぐ自室に向かいベッドに倒れ込むようにして
深い眠りに落ちていった。
チュンチュンと雀の鳴く声が聞こえる。
今日は快晴で素晴らしい朝だ。
朝の刑部家のキッチンでは絃子が牛乳を豪快にラッパ飲みをしていた。
腰に手をあて、堂々と飲む様はひどく凛々しい。
はしたないとか言ってはいけない。
世の中の独身女性というものは、えてして自宅では人様にお見せできない生活をしているものである。
ラッパ飲みぐらい可愛いものだ。
そんなわけで、牛乳をゴクゴク飲んでいると洗面所のあたりから、
「ぎゃーーーーーー!!」
と、ハリウッド映画ばりの絶叫が聞こえ、思わず絃子は牛乳を吹き出した。
鼻から出さなかったのは不幸中の幸いだろう、もしかしたら彼女の女としてのプライドがそうさせたの
かもかもしれない。
朝から騒がしい近所迷惑な同居人を、保護者としてきっちりしつけなければならない。
額に血管をうかべ、ドスドスと恐ろしい足音をさせながら絃子は洗面所へと向かった。
洗面所の鏡の前では見慣れた男が立ち尽くしていた。
その後ろ姿に微妙に違和感を覚えながらもとりあえず呼びかけた。
「拳児くん」
その声にビクリと背中で反応した後、播磨はゆっくり振り返って絃子のほうを向いた。
その顔は真っ白で、何かを喋ろうと口を動かすも言葉になっていない。
かろうじて、「み」という言葉が聞こえるのみ。
これはただ事ではないと、とりあえず怒りをおさめる。
「水か? 水が欲しいのかい拳児くん?」
そう尋ねても播磨は首を横に振り、先ほど同じように口を動かすばかりで要領をえない。
絃子は他に「み」のつくものは、と俯いて考え込むもこれといったものが思い浮かばない。
あきらめて顔をあげるとさっき感じた違和感の正体に気がつく。
と同時に言葉を失う。
普段ならカチューシャがあるあたりにそれは在った。
──あれは何だ。
──耳だ。
──いや、違う。
(拳児くん! それはまさか!?)
それは耳というにはあまりにも黒すぎた。
さらには萌えて、キュートで、モコモコで。
それはまさに……。
「……ネコミミ」
私は口の中で小さく呟く。
(拳児くんがバカなのはよく知ってる。不良だってことも、空気が読めない奴だってことも、
そして根は素直で本当は可愛い奴だってことも知っている)
拳児くんを見やると、いまだに呆然自失といった感じだ。
私は黙って常に携帯してるモデルガンに手を伸ばす。
(彼が漫画を描いてるのもちゃんと把握している。
逃避から始まったものかもしれないが今ではそこに生きがいを見いだして一生懸命やっていたはずだ)
それなのに、今、私の目の前にいるのは朝っぱらからネコミミを装着した180を超える男だ。
まさかこんな世界に足を踏み入れてたとは知らなかった。
劇鉄の起きる音が室内に響く。
(これじゃあ、まるで変態じゃないか。)
銃口を彼に向け、黙って引金を引く。
悲鳴が聞こえる。
「痛っ!」
「ちょっ、ま!」
「がっ!」
「ぐっ!」
「ぎゃあああ」
構わずマシンガンが空になるまで撃ちつづける。
(さようなら、拳児くん。さようなら、ネコミミを着けた見知らぬ男)
ゴン、と銃とフローリングの床がぶつかる音がするが気にならない。
足下にはプスプス煙をあげる男の体がよこたわっている。
私はその場にへたりこみ、膝を抱えた。
お尻が冷たい。
「昔の拳児くんは可愛かったなあ」
私は幸せな記憶に逃げんこんだ。
支援などすると思うか?
363 :
361:08/02/02 00:04 ID:0psPoGOU
>>362 いや、これで投下終了です。
ありがとうございました。
>>363 ひとまず乙だが、後半はいつ投下するんだ?
>>363 乙です
狙いはめちゃくちゃ面白かったんですが
いきなり途中で終わっちゃったんで続きが気になりまくりですw
猫耳モードぶりの衝撃だww
皆さんこんばんわ。さて、第三話出来たんですけど、
上の
>>357〜
>>361を描いた人の前編とこの後の後編の間に
自分のSS投下していいんですか?
俺と戦って勝ったら許可しようじゃないか
いいんじゃないすか?別に
じゃあ投下させて頂きます。
>>363さん、失礼します。
始まった物語は緩やかに動き出す。まるでそれは、花が開花するように。
ゆっくりと出た恋という名の芽は、ゆっくりと天へ伸びていく。
そして芽は何度摘み取られても、また芽を出す。
いつか、立派な花を咲かせるために。
これは、終わりから始まった物語。
―――――――――I don't want to miss a thing 第三話―――――――――――
矢神高校から播磨の家までは、そこそこ距離があった。赤信号で止まった時、播磨はふと考える。
(あん時はとっさに言っちまったけどなんで妹さんを誘っちゃったんだ…?俺はやっぱ今寂しいのか?
…はっ!寂しい、か。そんなこと言ってたら、昔の俺に馬鹿にされちまうな!)
播磨は自分を嘲笑って、前を向いた。そして信号が青信号になって発進しようとした途端、ギュッと急にスピードをだしてしまった。
それはなぜか突然、初めて彼女に投げられたときのあの顔が、脳裏に浮かんだから。
(何で今…天満ちゃんの顔が…)
その加速は普段バイクに乗っている彼は慣れていたが、その加速したときのGは半端ではない。突然の衝撃に、
「きゃっ」
と播磨の後ろで小さな声がした。
「播磨さん…もう少し安全運転でお願いします…」
「わ…わりぃ!いつもの癖でよ…そういや妹さん乗せてんだったな!あぶねえあぶねえ」
もう、と八雲は軽く笑って、また播磨にしがみついた。
(大きくて暖かい背中…お父さんみたい。でも、やっぱりお父さんとは違う感じ…とっても胸が熱くなる)
播磨の背中に耳を当てた。どくん、どくん、と血潮が脈を打っているのが分かる。
(ずっとこうしていたいな…)
そんなことを感じながら八雲がいつもの眠気と戦っていたとき、播磨は未だ少女の幻影を視る自分を諭していた。
(いいか播磨拳児!天満ちゃんのことは忘れるんだ!…くそ!まだ離れねえ!)
思い浮かんでくる彼女の笑顔は最早苦痛であった。この愛しい顔を忘れなければならないと分かっているから。そして、忘れられないから。
それから少しして、播磨の家に着いた。少し落ち着きを取り戻した彼は若干ウトウトしている八雲を呼び起こした。
「お〜い、着いたぜ、妹さん!」
「ん…あ…はい」
多少寝ぼけてはいた八雲だったが播磨の言動をみて気付いた。
(播磨さん、いつもと少し違う感じがする…。やっぱり、姉さんのことを気にしてるのかな…)
八雲の予感は鋭かった。実際、播磨自身まだ天満のことを忘れられていない。それはもう、不可能に近いのかもしれない。
(さっきはあんなこと言ったものの、やっぱ都合良く忘れられねえ…)
やはり時間が経つにつれ、彼女の笑顔が頭に去来してくる。あのまるで太陽のような笑顔が。
苦悶の表情を浮かべて播磨は彼女の笑顔を払うように頭を振る。
(ダメだ…どうしても頭から離れねえ…)
「あの…播磨さん?どうかされたんですか?」
「い、いや、なんでもねえ、妹さん」
彼の様子を見て八雲は確信する。彼はまだ、姉のことを思っている、と。
播磨からは色々と聞いていた。姉は自分の人生を変えてくれた人だ、とか。姉が好きだから、矢神高校に入った、だとか。
だとしたらそもそもそんな姉への気持ちを播磨が忘れられるはずがあろうか。
故に叶わなかった彼の願いは、彼自身の中で渦巻いている。振り放しても振り放しても、その想いは追いついてくる。
それが八雲には見て取れるように分かった。
(播磨さん…辛そう…。私に出来ることは何かないかな?)
自分に出来ることは、精一杯慰めてあげることだけ。だが、それは播磨にとって余計なのではないか。
それでむしろ彼が傷ついてしまったら…考えたくもない。と八雲は思う。
だから八雲は、何をしようにも手足が出ない自分をもどかしく感じた。
静かなアパートをカン、カン、と鉄の階段を上がっていき、播磨はドアを開けた。
「じゃあ遠慮無く上がってくれ」
「おじゃまします」
すっかり見慣れた播磨の家。男の子の部屋の割には整頓してある方だ。
それもそのはず、最近はしょっちゅう八雲が漫画の手伝いに来ていて、そのたびに八雲が掃除していっているからだ。
そんなにまでしてもらわなくっていいって、と播磨が止めようとすると、
「いえ、好きでやっていることですから」
と八雲は言った。それを聞いた播磨は感動して、
「妹さんは掃除も好きなのか!なんて出来た妹さんなんだ!家で良ければ、いつでも掃除してくれ!」
と八雲を敬うように答えた。――などという主旨がぼやけた話があって、それから毎回八雲は掃除していた。
播磨の部屋のちゃぶ台の上には垂らしてしまったインクの跡。ある意味二人がそこにいた証でもある。
色々なことがこの部屋であった。不意にインクをこぼしたり、停電になってしまったり、手を触れあってしまったり。
過去の思い出に八雲は少しだけ感傷に浸っていたが、すぐに自我を取り戻した。
「じゃあ、ご飯の仕度しますね」
「ん、わりいな妹さん!じゃあ期待して待ってるぜ!」
八雲は播磨に笑みを送ると、台所に向かった。
(…おいしいもの、沢山作ろう)
播磨は八雲が調理し始めたので、やることが無くなった。播磨がふと、机を見ると、ペンと紙が。
(さて、また漫画でも描くか…)
彼は机に向かってペンを動かし始める。が、頭にアイディアが浮かんでこない。
おかしい。と思い、必死に考える。でも、どう考えても理由は一つしかない。
(天満ちゃんへの想いが消えたから…なのか?冗談じゃねえ!)
播磨は気付く。今、このペンを持っている手は、天満の恋を成就させるために烏丸を殴った手。
そして同時に、自分の想いも捨て去った手。その恨めしい手がはまだ少し、痛みが残っていた。その些細な痛みは、心に響いてくる。
(いつか烏丸にあやまんねーとな…)
いつまで経っても結局、播磨は何もアイディアが浮かばなかった。その時、優しい声が響く。
「播磨さん、ご飯出来ましたよ」
「おぉ、サンキューな、妹さ…」
播磨は言葉を失った。目の前には、とても高校生が作ったとは思えないレベルの料理が広がっていたから。
黄金色に輝く鶏肉の唐揚げ、色とりどりのサラダ、栄養のありそうなひじきの和え物、などなど。
「今日播磨さん、元気なさそうだったから色々栄養のあるものを作ってみました」
「す、すげえ…食って良いのか?」
「はい、どうぞ」
得意げに八雲は答える。そして播磨と八雲は席に着くと手を合わせて、いただきます、と食べ始めた。
「お味の方どうですか…?
まず唐揚げを食べた。外の衣はカラッと揚がっていて、中から溢れる肉汁。下味もしっかり付いている。
「うめえ…!妹さん、あんたホント天才だな…」
「いえ…そんな…それほどでも」
「いや、こんなうまい唐揚げ今まで食ったことねえよ。なんかしたのか?」
「はい、にんにくをすり潰したのを下味用のたれに少し混ぜて…」
穏やかな会話が続く。一口一口、口に運ぶたびに、ほのかな幸せを感じる。
今まで食べてきたレトルト、カップ麺などがとてもまずく感じられる。それは心が入ってないからだ。
しかし、この料理には心がこもっている。人のぬくもりを感じる。それを播磨は目をつぶって、しっかり味わっていた。
(ホントに優しい味だな…流石妹さん、しっかりしてるぜ)
最後のひとかけらを口に放り込み、精一杯感謝の気持ちをこめて、
「ごちそーさんでした!!」
ぱぁん、と播磨は手をあわした。
「おそまつさまでした。お茶よかったら入れますけど…何が良いですか?」
「わりいな、じゃあ、ほうじ茶を頼む」
コポコポ、とポッドにお湯を入れる音がする。本当に今、播磨は充実していた。
(本当に妹さんの料理うまかったな…出来れば毎日食べたいくらいだが…何いってんだ俺)
「どうぞ」
こと。播磨の前に茶が置かれた。
「何から何まで悪いな、妹さん」
「いえ…」
いつものような会話を交わす二人。自然に笑みがこぼれる。
「ところでよ、一つ相談したいことがあんだけどよ…」
「悩み事ですか?」
「あぁ…。妹さんの知っての通り、俺は天満ちゃんに振られちまった。だが、後悔はしてない、いや、しちゃいけないんだ」
「……」
「でも…今、天満ちゃんの顔が焼き付いて離れねえんだ…いくら忘れようとしても、また浮かんできちまう。
…俺は、天満ちゃんのことを忘れることが出来るんだろうか?仮に忘れたとしても、…俺にまた、好きな人なんて出来るんだろうか?」
播磨は珍しくまじめに話していた。暫くの沈黙の後、
「…忘れる必要なんて、無いと思います」
八雲は言った。
「むしろ中途半端に忘れてしまったら、その次に踏み出すことが出来なくなってしまうと思います…播磨さんが今まで経験した
その姉さんとの思い出が、きっとこれからの播磨さんを支えてくれて、強くしてくれるんじゃないでしょうか…」
「そうか…」
確かにその通りかもしれない、と播磨は思った。
「…播磨さん、元気を出して下さい。それに、播磨さんのことを好きな人もいるはずですから…」
(!…わ、私、何を言ってるんだろう…)
「はは、そんなやついる訳ねぇって!」
(よかった、気にしてないみたい…)
「いえ、播磨さんは強くて、それに優しいですから…」
「いたら良いけどな!ま、それよりも今は漫画を描かなきゃな」
(…妹さんは本当に優しい子だな。こんな俺にまで優しくしてくれるなんてよ…ホント、妹さんに会えてよかったぜ)
そして、漫画のストーリーを考えようと二人がちゃぶ台の前に立ったとき、不意に播磨の携帯がなった。
「お、メールだ。どれどれ…う、うあぁぁぁぁぁ!!!!」
彼は驚きのあまり腰が砕けてしまった。
「播磨さん、どうされました?」
「妹さん……た、助けてくれぇ!!」
メールは、編集者から。来週までに60Pの短編漫画を書いてくるように、と記されている。
「今からやんねえと間にあわねえ…妹さん、頼む、力を貸してくれ!!」
深々と頭を下げる播磨をみて、少し面白かったので吹き出しそうになってしまう。
もちろん、八雲の答えは、
「私でよければ、手伝います。…播磨さん」
その時の彼女の笑顔は、まるで天使のようだった。
傷ついた彼は、彼女の暖かさに気付く。そしてその中で、自分の殻を打ち破ろうと一筋の糸を探る。
彼女は、優しさで彼をそっと抱く。自分にとって何物にも変えられないような大事な彼のことを。
そしてまだ、気付いてはいないが、すでに彼と彼女の冬は過ぎたのである。
すこしづつ、雪は溶けていく。そして今まさに、二人の間に芽が出ようとしている。
これは、終わりから始まった物語。
>>374 乙です
なんだか結構続きそうなんで期待してますれにしても播磨の未練と八雲の恋心が自分にとって最高のスパイスに感じるw
上手くなってるなwww
書きたいことをちょっと我慢しつつ、ちゃんと文で織り上げて行ってる
自分が始めて投稿したSSを見返して見るのも良いんじゃない?
俺の場合は恥ずかしくて顔が真っ赤になったw
皆さんレス有り難うございます。
自分の初めてのSSは…全然だめですねwうぁー恥ずかし!
続きの投下は結構時間かかっちゃうと思います(二週間くらい?)
本当に読んでくれて有り難うございました。
展開も自然になって本当に上手くなってる。
俺は進行形で恥ずかし。
推敲の時に恥ずかしくなる。
自演うぜえ
仮眠はこのスレの良心やでw
すごくおもしろくなってるからこれからもがんばれ
他の書き手さんも即発されてるようだしいい傾向だ
381 :
Classical名無しさん:08/02/09 19:37 ID:1/Z1bErg
あげ
>>380 そこまで持ち上げる必要は無し
ただ感想をつけてやるほうが本人も気が楽だろうよ
どっかのエロパロスレみたいな宗教臭がするからな
どうせ自演だろ。
S3とか後継サイトってもう全然投稿されてないよな?
俺が見てる場所が間違ってるんじゃなくて
誰が投稿すると思うよ?
本編がアレなだけに読み手側はせめて楽しいSSを読みたいと思うのはわかるが、
書き手側のモチベーションが上がると思うか?
そろそろスクロワ2ndはじまらないかな
S3が放棄されてから相当時間経ってたからな、後継のサイトが出来たのって
つか、S3の管理人は何も言わずにトンズラだからなぁ
ボランティアでやってるから何も言われないとでも思ってるんかな、分校の管理人も含めてそうだけど
>>389名前つけたままだったw皆さんごめんなさい
だが
>>363の続きが気になって仕方ないんだ…
ちなみに残念ながら定期テストがちかいので私の方は三月頃になってしまいそうだ…
トリつけなくて良いんじゃね?とか言ってみるテスト
時間空けるとモチベーション下がったりするから気をつけてくれ
>>391 ただ今の空気だとトリつけないと自演騙りする人が出そうな気もする
今このスレにアンチスクランの人もいるみたいだし
>>393 自演も何も名無しで書き込めば良いだろって事でしょ
おそらく
名無しで
>>363の続きを催促しても誰も気にとめんよ、って事で
わざわざコテつける必要ないわな、となるわけだ
>>394 トリってつけっぱになることがあるんだよ。経験上俺にもわかる
と言うか作者自身もそう言ってるし
作者はやる気をなくし、神絵師たちは去り、バレ師にも見捨てられた。
仮眠さんだけがスクランに残された良心だな。
というか最近はアンチや煽りがウザイ
>>397 まあな。でも、奴らの言うことに反論できないのが悔しいぜ。
>>398 そもそも君を煽りだと思ってるんですがw
わざわざ○○だけが良心とかいう意味なんてないし
言っても荒れるだけなのはすぐわかること
そうでなくても反論できないって言うことは本音が出てるよね、アンチ君
ちょ、マジで釣れたwwwwwwwwwwwwwwww
>>399 煽りなんだからスルーしなきゃ意味ないぞ
自演荒しかよ。いくらなんでもわざとらしすぎるわ。
両方NGで。
>>403 つうか、こいつ、信者を装った荒らしなんじゃね?
もうスルーするわ
今度からSS投下もないタイミングでほめごろしするタイプのアンチも沸いてきたんでスルー推奨
SS投下後ならまだしも、いきなりほめごろしして、
他のSS書きを貶してるとも取れなくない発言とか意味わからんし
その上わざわざこのスレで作品批判までしてるし
あと、アンチに執拗に食いついたり、スルーする(シャレのつもりか?)とか言いながら
スルーできてないバカを装った荒らしもスルー推奨。
最近のアンチも手が込んできたな。
自演でもなんでもいいからまとめて消えろや、アンチどもが。
NG推奨
ID:i.PFu65o
ID:pAgJGXo6
ID:i3qui9io
ID:i.PFu65o
ID:pAgJGXo6
ng水晶
伸びてると思ったらエロパロみたいになってんのな
暇だなどっちも
投下ないなら過疎ってて良いじゃん
そんな暇ならネタの1つでも振ればいいのに。
お題:バレンタインデーもの・出来ればお子様ランチ
投下頼む
実際バレンタインは本編で描写されたしなあ
三年生編ではどうなってるかわからんし
実際に本編でやってるとな、IFか三年生編しかないよな
絃子「その様子じゃ今年も塚本君からチョコを貰えなかったようだな、拳児君」
播磨「…るせー、不良がチョコなんざ食うか」
絃子「まあ泣くな、優しい絃子さんがチョコを上げようじゃないか」
播磨「…サンキュー」
絃子「ホワイトデーが楽しみにしてるよ」
播磨「は?いちいちお返しなんざ考えたら頭痛いぜ。
妙さんにお嬢に周防に、妹さんとその友達連中からまで貰ってるんだからよ」
絃子「………」
葉子「拳児君、チョコ持ってきたわよ〜」
絃子「帰れ!もうたくさんだ!」
>>414 小ネタ乙
超姉いいよ超姉
ただ天満から去年もらってたぞ
>>414 乙。
去年の天満のチョコみたく
他の女のチョコは絃子さんが食べちゃうんだろ。
今週の本編は似たような内容をSSや絵で見た気がする
ためさんみたいに天満の目の前で播磨が頑張ってそっと見守るお嬢という
構成のほうがよかったな
それはない
キャラが違う
そっと見守る花井とか、ますますありえないだろw
スクロワスレがおちたからここで言わせて
シャーリーってハラミか?
test
スクロワは結構です
今日一日、
>>424のスレで作品投票やってるから
投票してみようかなと思ったらどうか頼む
一応書き手としてやってみるつもりなんだ・・
スクランが好きなのかバトロワが好きなのか
宣伝ウゼェ
IFまとめwiki凍結されてない?
表示されないんだが…
誰か弄ったとかだろうか、おかしいことになってるな
直そうと思えば直せそうだが
誰か弄ったとかじゃなく荒らされてるな、こりゃ
>>430-432 見てきた。なんか、ブログに飛ぶようになってたな。
さすがに通報されたみたいで、どんなブログかはわからなかったけど…
しかし、3ヶ月更新なしだもんな。
まぁ、俺がしないと誰もしないから当然か…。
IF2の途中で力尽きた俺は申し開きも出来ないな
年末から忙しかったのは確かだが、SS投下してる以上言い訳にもならんし
とりあえずIF26だけおかしかったから修正かけたが
メニューバーは俺が弄っちゃいかんかったかも
424に投票してくれた人ありがとう
当該スレでやれよ屑
IF2登録完了でし
GJ
まとめwikiIF3登録完了
みんなGJ
最近投下ないけど何でだろう
もう原作は妄想を刺激されるほど面白くないのか?
何度か言われてるが、終盤だから妄想しにくいってのがあると思う
個人的には最近の展開は面白いと思ってるし
445 :
Classical名無しさん:08/03/07 22:58 ID:qCLkYmSQ
続きが読みたい
ごめんなさい今テスト中なんで…
ちゃんとテスト終わったら投下しますんで
許して下さいorz
447 :
Classical名無しさん:08/03/07 23:58 ID:qCLkYmSQ
とりあえずテストがんばれ
いつも楽しんで読んでます。ありがとう
学生だったのか・・・
テストならテストを全力で頑張れ
ちょっと怠けて後々面倒になったらホントに糞だからなー
今回のスクラン見て、天満は芯が強いんだろーなぁと思ったなぁ
しつけーよ屑
余所でやれ
本編はもう終わりそうやね
>>451 22巻の発売日が既に公表されているのは、やっぱりそう言う事なのか
最近は面白いけどもう結果待ち、妄想をする余地がなくなったのかな
需要なさそうですが、真王道投下
ハマりたての勢いのみで書き上げました
修学旅行中の二人乗りの話です
スイーツなので、苦手な方はスルーお願いします
晴れた京都の空の下。
ちりりんと自転車のベルの音が鳴り響いた。
天満が、音の鳴る方をふと振返ると、そこには、探し求めていた大好きな人がいた。
*****
播磨くんを荷台に乗せて、颯爽と自転車を漕ぐ烏丸くんを見つめる。
かっこいい…。
播磨くん、いいなあ…私も、あんなふうに烏丸くんと二人乗りしたい。
そして京都の街を二人で一緒にまわれたら、どんなにいいだろう。
と、烏丸くんが播磨くんを下ろして、こっちに向かって来た。
烏丸くんが、私の元に!!!!まさか、私の考えてることが伝わった?
キャーーーー!!!!!どうしよう!?
なんてね。
そんなこと、あるわけな…
「みんなでまわっている所、悪いんだけど」
い………。
「塚本さん、僕が連れていってもいいかな?」
息が、止まるかと思った。
「ああ、もちろん!なあ塚本?」
喜びのあまり、言葉が出ない。
美コちゃんの問い掛けに、ただ必死で頭をぶんぶんと縦に振った。
「やったじゃない」
愛理ちゃんがそっと耳打ちする。
顔がりんごみたいに真っ赤になってるのが、自分でもわかる。
どうしよう、すっごくすっっごく嬉しい。
「じゃあ塚本さん、乗って」
こ、これはもしやっ
「………二人乗り記念」
晶ちゃんがジーっとビデオカメラをまわす。
後でダビングさせてもらおう。
……じゃなくって!!!!!
ふっふたっ二人乗り!烏丸くんと二人乗り!
「はっはいっおおおおじゃまします!!!!」
「別に邪魔じゃないよ」
なにげない切替えしに、胸がキュンとする。
そっと腰掛けると、自転車の荷台がきしっと小さな音を立てた。
こんなことなら、今日の朝ご飯、あんなに食べるんじゃなかった。
さっき買い食いもしちゃったし…。
「烏丸くん、お、重くない…?」
「大丈夫」
涼やかな声と、たんたんとペダルを漕ぐそのリズム。
すいすい進む自転車が、その言葉にウソがないことを物語っていた。
細身なのに、間近で見る烏丸くんの背中は意外と大きい。
そっと、そーっと、額を背中に寄せてみた。
どうか、気付かないで。
ううん、やっぱり気付いて
額から伝わる、学生服の少し固い感触。
背中のぬくもり。
どうしよう、どうしよう。
こんなに幸せで、いいのかな。
目の奥が、熱くなる。
想いがあふれて、瞳に涙の膜がはる。
あわてて背中から顔を上げて、空を仰いだ。
幸せなのに、泣きたいなんておかしいね。
「着いたよ、塚本さん」
永遠に続けばいいと思ったのに、幸せな時間はあっさり幕を閉じた。
「塚本さん?」
わ!烏丸くんのアップ!
顔を覗きこまれて、ますます頬が紅潮する。
と、烏丸くんの指が、そっと私の目尻を拭った。
「……泣いていたの?」
その優しさと、触れられた嬉しさで、心臓がぎゅうぎゅうと音をたてた。
「ごめん、こわかった?」
心配してくれている。
そういうの、何となく分かるようになってきたんだよ。
表情も、声も、多分他の人では気付けない、そのぐらいささやかな変化。
だけど、私には、分かる。伝わる。
いつも、見てるから。
「ゆっくり走ったつもりだったんだけど」
その言葉に、もう一度心臓が、ぎゅっとつかまれた。
私を後ろに乗せているから、わざとスピード、落としてくれたの?
「ありがとう!大丈夫だよ」
顔が自然にニヤけちゃう。
「……帰りは、もっとゆっくり走るよ」
あ、わかった。
今、少し、照れたでしょう?
すき、だいすき、世界中のなによりも
きっと離れても変わらない。
諦めなければ、いつか絶対、幸せな未来が来る。
*****
天満には、烏丸のいない未来など思い描けなかった。
以上。投下終了。
少女漫画目指して、見事に失敗しました
原作の読み込み浅い(つーかそもそも腕がorz)のに、二次創作してすいません
本編で引導渡される前に書きたかっただけです、すいません
もっと早くにハマりたかった…スクランおもしろいよスクラン
来週のマガジンが待ち遠しいです
キャラに違和感はなかったから読み込みは出来てると思うよ
乙です。
少女漫画な感じはでてたと思う。
乙
天満サイドからだけだとスクランはこんな感じなんだろうって思う
関係ないが最近の展開で真王道の支持者増えただろうなぁ
むしろ烏丸が冷たくて真王道の人はショックだったんじゃないか
>>459 乙。少女漫画っぽい雰囲気はあると思う。
次はもう少し長めの話が読みたい
微妙な投下に、コメントありがとうございます
ほっとしました
続けて投下します、すみません
二夜連続とか、自分の情熱がキモチワルイ…
やっぱり真王道。勝手に次回予想というか妄想
妄想ベースですが、ネタバレスレの一行セリフバレから派生した産物ですので、微妙にバレ含みます
あと、やっぱりスイーツですので、苦手な方はスルーお願いします。
「播磨くん!!何処行くつもりなの!?ねえ!!」
バイクの後ろに強引に天満を乗せて、一言も発しないまま、播磨は道路をぶっちぎる。
法定速度を大幅に超えて、風のように。
振り落とされないように、天満は必死で播磨の背中にしがみついた。
「播磨くん!!」
天満の大声を、さっきから播磨は無視し続けている。いや、何と答えたらいいのか、わからないのだ。自分でも。
何処へ向かっているのか。何故そこへ向かおうとしているのか。自分でも、よくわからなかった。
「ねえったら!!!」
一方天満は、問い続けながらも、薄々勘づいていた。
上空を飛び交う飛行機の数。だんだん大きくなる、あの建物は…。
「着いたぞ」
きゅっとバイクが停車する。
「ここ…」
大きな『成田空港』の文字が天満の目に飛び込んで来た。
やっぱりそうだった。
播磨くんは私を、烏丸くんに会わせるつもりだ。
「行くぞ」
呆然と立ちすくむ天満の二の腕を掴み、播磨は空港の中へと向かう。
「ちょ、やだ、播磨くん、放して!!!!」
天満の懇願を、播磨は無視した。腕を掴んだまま、ずんずんと歩を進める。
「やだ!私、いきたくないよ!!!!」
播磨の手を振りほどこうと、天満は腕をじたばたと動かし暴れる。
自分の想いは、あの朝きっぱりと、烏丸に拒絶されている。
どうにかなりそうなぐらい、悲しかったのだ。
「いいから、来い」
「やだ!」
心臓が悲鳴を上げている。
今も。
「来い!!!!!」
播磨の迫力に気圧されて、天満は一瞬抵抗を忘れた。
「惚れた男を、独りで逝かせるつもりか!!!!!!!」
天満の耳に届いたのは、逝く、ではなく、行く、だったけれど。
それで充分だった。
「…でも、だって………こわい、よ」
ぐずぐずと半べそをかきながら、切々と訴える。
迷惑そうな顔をされたら?
面倒臭いと思われたら?
もう一度、烏丸くんの顔に、空虚な拒絶の表情が浮かんだら、今度こそ、立ち直れない。
ぐずる天満を見つめながら、播磨の心に、決意の火がともる。
「…塚本」
「俺は、オメーが好きだ」
天満の全思考が、一旦停止した。
「妹さんでも、お穣でもねえ。俺が好きなのは、お前なんだよ」
何か、言葉を返さなくては。
なのに、ぱくぱくと金魚のように口を動かしてみても、言葉は出てこない。
「だけど、お前は、俺を受け入れないだろう?今だって、アイツのことが好きなんだろ?」
切なそうに、播磨のサングラスの下の瞳が細められる。
「だけど、俺は言えるぞ。何回でも、何万回でも言ってやる」
「好きだ、好きだ好きだ好きだ」
「十年後も、百年後も、死ぬ直前まで言ってやるよ」
天満の体が、震えていた。
寒いわけでも、怖いわけでもなかった。
ただ純粋に、感動していた。
「オメーの『好き』は、たった一回伝わらなかったぐらいで諦めちまうような、ちっぽけなもんなのか?」
違うだろう?
暗に隠された言葉に、天満は気付いていた。烏丸を追いかける天満を、追いかけてきたのだ、播磨は。
「私、私は…」
瞳に、強い意思が蘇る。体中に、力が溢れてきた。
心に宿る恋の炎。播磨から飛び火したそれが、天満のなかで燃えさかる。
「行くぞ」
掴んでいた天満の腕を解放し、歩き出す。
振り向くまでもない。
彼女はもう、逃げ出さない。
*****
搭乗ゲートをくぐる人の波を見つめながら、烏丸はパスポートを、鞄から取り出した。ソファから腰を浮かし、立ち上がる。
ゲートをくぐり、税関を抜けてしまうと、もう二度と後戻りできない。生きて日本の土を踏むことはないだろう。
…いいのか?これで。本当に。
播磨に殴られた頬が、ずきずきと痛む。
いや、もう何度も考えた。
一緒に連れて行こうと思ったこともあった。
だけど彼女は、そんな簡単に持ち運びしていい存在じゃない。トランクで運べるような、気軽な荷物じゃないんだ。
たくさんの人から、必要とされている。
静かに、ひっそりと、終わりを迎えようとしていたのに。
塚本さんが僕の目の前に現れてから、毎日がまるで嵐みたいだった。
周囲と僕を巻き込んで上昇する、小さな竜巻。
一年間楽しかったよ、ありがとう。
さようなら。
ゲートをくぐり、列に待機する。パスポートのスタンプが、どんどん押されて待機列が消化されて行く。
あと三人…二人…一人…
自分の番がきたのに、前に進もうとした瞬間、強烈な引力に引き止められた。
『行かないで下さい』
去年の四月初頭、転校を翌日に控えた烏丸の下駄箱に入れられた一通の手紙……いや、巻物。
支離滅裂な文章。遠回しな表現。
祈るような、願い。
『行かないで下さい』
それを出したであろう人物の笑顔が、心に蘇る。
瞬間、足が勝手に走り出していた。
どこへ行こうというんだ。
会ってどうする?
どうするつもりだ。
想いを告げてどうなる。
こんな厄介な運命に、塚本さんを巻き添えにするつもりか?
あきらめたはずだろう?
わからない、わからない、わからない。
だけど、会いたい。
たった一言でいいんだ。
伝えたい。
人込みを縫って、烏丸はゲートを逆流する。
搭乗口を飛び出した所に。
天満が、いた。
「か、烏丸くん、会えて良かった…。あのね、私ね…」
頭の中が真っ白になった。
何も考えられない。
烏丸は衝動的に、天満を腕の中に閉じ込めていた。
「好きだ」
熱に浮かされたように、呟く。天満は、自分の耳を疑った。
「塚本さんが、好きだ」
十七歳の女の子にとって、ここからの数年間がどれだけ大切で、キラキラしたものなのか。わからない烏丸ではなかった。だけど。
「好きなんだ」
塚本さんの、その数年間を。
これから僕は、奪う。
「わ、わたしも。烏丸くんが、好き」
好きになって、ごめん。
そばにいて欲しいと思ってしまって、ごめん。
烏丸は少しだけ体を放して、天満の顔を覗きこんだ。
涙でぐしゃぐしゃになった、とろけそうな笑顔が、そこにあった。
以上。投下終了
一応タイトルにワードいれたので、NGにしてる人には見えないと思うんですが、もし目にしてしまった方がいたらすいません
でも、99%妄想なので安心(?)して下さい
当たるわけない
小林先生の思考なんぞ読めないです
詳細バレを見る前に、突発的に書きました
空港の描写はいい加減です(ちゃんと調べなさいよ、ばか)
みんな別人\(^o^)/
乙です。
でもやっぱバレはあかんよ。
乙。
この予想みたいなのいいねー
ドラマチックです
乙乙
何だか毎週進展がある度に投下しそうな勢いだなw
バレ含むなら水曜まで自重するか、バレだということを隠して投下するかの
どっちかがいいと思う
>>470 乙です
前置きでネタバレありって書いてくれてるから
ネタバレ禁止派な人は見なかったと思うから大丈夫かと
にしても播天の切なさはツボかも。播磨は悲恋が似合うなぁ
養殖中か?
こんなウンコにすら乙すんのかよw
流石にこれはないわ
また誰かまとめwikiを弄りやがった…
直しときました
ついでにトップに続いてメニューバーもさわれなくしました
真王道は不人気キャラ同士のカプだからぶっちゃけ需要は無いよね
いつも乙です。
皆様おつかれさま&お待たせ致しました、仮眠です。
いま書き上がりましたが、ちょっとお風呂に入ってきますw
ワクテカしてお待ち頂ければ光栄です。
投下は50分後くらいから開始致します。
それではいったんノシ
それでは投下致します。
彼は改めて彼女の存在の大きさに気付く。
彼女の優しさに、彼女の思いやりに、彼女の愛おしさに。
彼女は再び立ち上がろうとしている彼に、より一層引きつけられる。
今、紛れもない確かな想いを胸に抱いて。
――――これは、終わりから始まった物語――――
――――I don't want to miss a thing 第四話――――
「60ページって…どんだけ長いんだよ…」
播磨は絶望した。彼女への想いを失った今、それは果てしなく膨大に感じる。
「播磨さん、でもこれを描き終えたら、ハリマ☆ハリオの名前が多少なりとも有名になると思います…」
何とか播磨を励まそうとする八雲。そんな八雲の気持ちを受け取ってか、播磨は軽く笑う。
「(妹さん…)あぁ!確かにそうだな。じゃあ、一丁やるか!」
「あ…はい!」
そそくさと二人はちゃぶ台の方に移動した。定位置に着くと、早速ペンと紙を出した―――
―――までは良かったが、一向にアイディアが出ない。30分近く播磨は頭を抱え込んでいた。
(くそっ!…今の俺は本当に俺なのか?天満ちゃんに振られたからって、こんなことになって良いわけがねえだろ!)
グッと拳を握ると、ミシミシとペンが悲鳴をあげる。そのペンが折れる直前、目の前に暖かい紅茶があることに彼は気付いた。
正面を向くと、八雲が紅茶のカップを手に持っていて、こちらに気付くと、微笑んだ。
「…紅茶には、人を落ち着かせてくれる働きがあるそうなんです。一口、飲んでみて下さい」
彼女は紅茶のカップを両手に持って、寒い部屋の中で少しかじかんだ手を暖めている。その姿に播磨は可愛らしさを感じ、
(ななな、何言ってんだ俺!?妹さんだぞ!!?)
すぐさまその感情を振り払って、紅茶をすすった。暖かい紅茶が流れていくのが分かる。体にも、そして心にも。だいぶ落ち着いてきた。
そして、八雲が言った。
「播磨さん…一つ提案があるんですけど…」
「おう、なんだ?」
珍しいことだった。今まで八雲が漫画のことで自発的になったことはあまりなかったから。
「播磨さんは今まで姉さんのことしか描いてませんでしたよね?」
「う…ま、まあな」
痛いところを突かれてしまったな、と播磨は苦笑いする。何しろ、漫画を始めた理由は天満に振られたと思い込んでやり始めたただの現実逃避だ。
だから、天満のことしか描かなかった。いや、描けなかったのだ。八雲は続ける。
「…だから、今度は思い切って姉さん以外の人達を描いてみましょう」
「…そんなこと、俺に出来るのか?」
「大丈夫です。播磨さんなら、きっと出来ます」
八雲は真剣な眼差しでこちらを見ている。その眼差しは、完全に播磨を信頼しているようだ。
(今なら出来る気がする。いや、出来る!)
一心に信頼してくれる八雲の気持ちを受け、播磨は確信した。
例えどんなにこの旅が長かろうと、どんなに辛かろうと、決して一人ではないのだから。
(そうだ…俺にはパートナーがいるじゃねえか。どうして気付かなかった?…俺はホントに大馬鹿野郎だな)
「妹さん」
播磨が口を開いた。八雲がこちらを向く。
「本当にいつもありがとよ。俺なんかに気ぃ使わしちまって…」
いえいえそんな、と八雲は首を振る。
「そんなこといっといてすごく言い辛いんだが、もし良かったら…今回は妹さんも一緒に物語を考えてくれねえか?
今回は、確実に俺一人じゃ出来ない。だから、力を貸して欲しい。頼む!妹さん!」
八雲は、いつものように顔を赤らめながら
「…私で、良いなら…」
と恥ずかしそうに答えた。
播磨は嬉しい反面、複雑であった。何故なら、今の自分が本当に情けない、と思ったからだ。
何かあるといつも傍にいる八雲に頼ってしまう。これではまるでヒモのようだ。
(よし、お礼に出来ればなんか妹さんを喜ばしてあげよう。漫画なんかよりこっちが先だ)
思い立ったらすぐ行動に移すのが播磨流。何故なら、彼は馬鹿だから。
「あ…妹さん」
「はい?」
「最近、なんか欲しいモンとかないか?」
「いえ…特には…」
「そっか…じゃあ行きたいとことかは?」
「それも特には…」
「…ほんとに?」
「はい、ほんとに」
「…そっか…」
播磨は困ってしまった。まさか何もないとは…と。これでは元も子もない。
しかし、何もしないという選択肢は播磨にはない。何故なら、彼は馬鹿だから。
「よし、妹さん!今暇か?」
「え、い、一応今日は予定はないですけど…」
と言うか実はさっき今日のバイトをキャンセルしてしまった八雲。
本当に漫画を手伝うため、だけに起こした行動なのだろうか。その答えは誰も知らない。
「じゃあ、ちょっと遊びにでも行こうぜ!」
「え…でも原稿が…」
「大丈夫だ!なんとかなるさ!」
「でも…播磨さんに悪いですし…」
「だぁ〜!!良いから良いから!!ささ、行くぜ妹さん!!」
「あ…え、は、はい!」
八雲は冷静になって考えた。これはひょっとしてデートなのでは…と。
恥ずかしい反面、とても嬉しかった。バイトを休んでよかっ…いや、バイトを休むのはあまり良くない。
少し八雲が混乱していたその隣、播磨もまた混乱していた。
何故なら、昔の自分からは考えられない行動をいま、現在進行形で起こしているからだ。
自分から天満以外の女の子を遊びに誘うなど…いくらお礼と言っても、いや、むしろ断られるかもしれないのに。
(俺はホントに何やってんだろな…しかも妹さんOKしちゃったし…後には引けねえな)
自分が知っている限り、美しいもの、楽しいもの、おいしいものを彼女に知ってもらいたい。
そんな気持ちで彼は八雲を誘ったのだが、それでは今ひとつ、説明が足りてない気がした。
玄関まで歩くふたりの間には悶々した空気が流れていた。お互いにしゃべり出せない。そんな空気を晴らしたのは―――
「なあ、妹さ(ガッ!)……ぃいってえええええぇぇぇ!!!!!!!!」
何が起こったのか。八雲は一瞬分からなかった。播磨は右足の指を押さえて飛び跳ねている。
どうやら、靴箱に足の小指をガッと…。見てられない。そして…
☆ゴチーン!☆
壁に頭をぶつけた。違う意味で播磨悶絶。そんな播磨を見て、
「クスクスクス…」
思わず八雲は笑ってしまった。少し泣いてしまったが、それを見て恥ずかしそうに笑う播磨。
暫く二人は笑っていた。本気でツボに入ってしまったようだ。
「播磨さん、それ、反則です」
「…んなこと言ってもしゃーねーべ…それにしても…」
「?」
「妹さんがこんな笑うとこ、初めて見たなぁ」
播磨に言われた一言で、八雲は見事に茹で蛸。
「し、失礼しました…でも、あまりに面白かったんで…」
「…いいもん見れたろ?」
「…はい」
また二人は笑い出した。彼らには笑顔がよく似合っている。
(妹さんはこんな笑い方をするんだ……ふつうに可愛いな……ってまた何考えてんだ俺!?落ち付けって!!)
「さ、さあ、行こうぜ妹さん!」
「はい!」
勢いよく開けたドアの向こうには―――雲一つない大空が広がっていた。
彼は少しずつ前へと進む。過去に呼ばれながら、それでもその呼び声に振り向かないように。
彼は少しずつ前へと進む。今に苦しみながら、それでも自分の答えが出る方に。
彼女は少しずつ前へと進む。未来に怯えながら、それでも光を絶やさないように。
彼女は少しずつ前へと進む。例えこの先が予測出来なくても、今は笑っていられるように。
これは、終わりから始まった物語。
第三話 END
次に作品を投下した書き手は呪われる
いかがだったでしょうか。ちょっとしたSSリハビリ作でございますw
今が佳境の本編に逆らうようにしておにぎり…でもそんなのかんk(ry
感想、指摘などお待ちしております。ではノシ
乙でーす。
八雲がしっかり播磨のパートナーを務めてますね。
これから二人の関係がどうなるか楽しみ。
ただキャラ掛け合いよりもキャラの頭の中ばかりで話が進行してる印象を受けました。
乙乙です
今、波に乗っているおにぎりネタですか
おにぎりは八雲が播磨→天満を理解しつつ、それを尊重している所が切ないですね
最もそれが播磨を好きになった理由の一つでもあるのですが
おにぎりは大好物なので、続きを楽しみにしてます
乙!今回ほのぼのしてて良かったよ
しかしホント回を重ねるごとに上手くなっていくなw
>>487 乙です
展開自体はほのぼので和みました
状況を描写してる時の文章に少し硬い感じがあって、
リズム感がよくないというような印象を受けました
492 :
Classical名無しさん:08/03/18 18:59 ID:5FsMNIM.
携帯派SSはまだか
おにぎりは超人気キャラ同士のカプだからぶっちゃけ需要はかなりあるよね
最近旗が全然ないのはどうして
旗はクリスマス用に一本考えてたけど間に合わんかったな。
今年のクリスマスに投下するかも。
>>494 22Pに本編のあの扱いぶり…
旗妄想乙と言われるのがオチだからだろうw
今更感あるしな
仕方ないからSSで許婚編をやるんだ
妄想と鬱憤をぶちまけろ
>>498 それは見てみたいな
コワイモノ見たさと言うよりイタイモノ見たさだが
結局「一生分惚れてんだよ!」がトドメの一言だったな
あの後に許婚編やってもあの台詞が軽くなるしあのシーン自体台無しになる
つまり播磨が関わる許婚編は蛇足って事
けど、播磨が沢近を許婚編で助ける=播磨は沢近が好き
ってコトにはならないから別によくね?
正直、播磨が沢近に転ぶ展開より沢近にもう一度その気になってもらいたいから
沢近が一人で頑張るけど無理で、見るに見かねて播磨が助けるぐらいで十分
>沢近にもう一度その気になってもらいたい
多分あると思うよ。
八雲→播磨ももう少し補強されるだろうし、同様に沢近のもあるかと。
許嫁編はあっても旗が望んでる展開にはならんだろけど。
本編はもう両王道で綺麗に終わらせていいと思うんだけどね
♭とか外伝ならともかく
許婚編で失恋後の播磨が沢近を好きになるのはダメで
播磨が八雲と仲良く漫画描いていく話はいいの?
正直、どうでもいいよ。
原作じゃ考えられんってことだろ
自分で小説書くなら好きにすればいいさ
小説書いても「こんなん播磨じゃねーよ」で切り捨てられるのがねえ
ただ過去の旗おにの名作全てが軽く見られてしまったのがきついな
あれだけ播磨の揺るがなさを本編で見せられるとな
〜年後とかの話じゃないと違和感が出てきてしまっている
播磨が一生分宣言しているのに許婚編だの漫画編だの旗おにSSやっても
「なに妄想文書いてんだこいつらwww」になるから投下するな
白けるにも程があるわ
二次創作なんてそんなもんだろ。
けどまあ、旗鬼はやり尽くした感があるからなぁ。
同じ様なネタを見ると、またかよ、となってしまうのは仕方ないかも。
河乃流水ってなんて読むの?
自己解決しました。
かわのるみさんだそうです。
最近あろさんのところ以外で新作やってるところがないな
連載終了しても特に盛り返すことなく静かに終わっていくのは見てて辛いな
>>509 でも公式でカップリングが決まっていて尚且つアツアツで他人が入り込む余地無いのに
別人とくっつけてそれがお似合いだと言わんばかりの二次制作は星の数ほどあるよね
>>507 過去に投下されたSSが褪せる事は無いだろ
その時点で出てる情報であーだこーだと考えて書かれてるんだしな
今、分校のSS読んでるんだけど超姉多いな
>>504 天満誕生日で播磨が烏丸を天満宅へ行かせたり
歩行祭で天満に振られたと感じた時は
決まって八雲にアシ依頼しているからアリだろw
需要があるか分かんないけどが鉛筆投下します。
苦手な方は各自ご注意をお願いします。
すみませんシスター。
あたしの話聞いて欲しいんだけどちょっといいかな?
懺悔なのかもいまいち自分で分からないんだけどさ。
あ、はい、ありがとうございます。
話ってのは同じクラスの男子のことなんだ。
そいつとは元々そこまで仲良かったわけじゃないんけど。
三年に進級する時のクラス替えで私は仲良かった友達から1人だけ別のクラスになっちゃって、何の因果かその男と同じクラスになったんだ。
その時、親友の一人には心底同情した顔で災難ね、と言われたっけ。
でもそいつ、よく話してた訳じゃないけどいい奴だってのは知ってた。
だから私は親友たちと分かれたことこそ寂しく思ったけど、そいつ一緒になることは実は内心楽しみだったんだ。
そんなこんなで新学期が始まったんだけど、そいつはクラスで浮いてんの。
男子とも女子とも話さないし、周りも近づかないしね。
去年からあんなもんだったけど変わったのはサングラスを外したくらい。
あ、言ってなかったっけ?
そいつ去年はサングラスしてたんだ。
うん、ずっと。一年中一日中ずっと外さねえの。
バカだろそいつ。
変なやつなんだ。
ここだけの話な、私は去年のうちに素顔見たことあんだよ。
それがけっこう男前なんだ。
だからサングラス外すようになってこれまで女子の反応は変わったよ。
でも本人は気づいてないみたい。
なんかトラウマがあるんだって。
ああっと、ごめんなさい。
いいかげん話戻すよ。
「おい周防」
「なんだ?」
「今度の日曜空いてるか?」
「お前がそういうこと聞くの珍しいな。どんな用なんだ?」
「今度バイク買い替えるつもりなんだけどよ。見に行きたいってお前がこの前言ってただろ?」
「行く行く!日曜だっけ?」
「おう」
「いやー楽しみだなあ。……あ〜悪い播磨。別の日じゃ駄目か?」
「なんだ用事あんのか?」
「うん。大した用事じゃないんだけどね」
「んじゃ、その次の休みにすっか?」
「おう、ありがとうな」
「別に急いでるわけでもないからな」
明らかに浮いてるあいつを気にして自分から話かけてた私がそいつと仲良くなるまで大した時間はかからなかったよ。
話す様になって知ったんだけど、すごい趣味が合うんだ。
格闘技について熱く語ったり、バイクのことだって色々教えてもらった。
もっと早くに仲良くなっとけばよかったと後悔するぐらいあいつと一緒にいると楽しかった。
お互い気を使わないし、時にはすごい真面目な話もできる。
将来のこととか、あ〜……恋バナとかもさ。
自分の恋愛についてもいっぱい聞いてもらった、あいつの話も聞かせてもらった。
なかなか話してくんなかったけど、そいつ酒弱いんだ。
だから酔い潰してこうさ……ははっ、なんか私、悪い女みたいだな。
というわけであいつが話すのは私ぐらいだし、私も一応、他のやつとも話するけどよくつるむ相手はやっぱりあいつだった。
でも彼氏彼女な関係ってわけじゃないんだ。
性別を超えた親友ってやつ。
それがすごい居心地よかったんだけど周りにはそう見えなかったみたいで。
「ねえ、播磨君と周防さんって付き合ってるの?」
「は?」
「だから播磨君と周防さんは付き合ってるんじゃないかって」
「ええ!? 違う違う!」
「そう? 2人すごく仲いいじゃん」
「勘違いだって! 仲はいいけど友達だよ友達」
「ふーん、じゃあよかった」
「?」
「播磨君誘って合コンやろうって話になってんの。播磨君今度の日曜空いてるかな?」
「……知らない。本人に聞きなよ」
「うん、そうする。周防さんも来ない。かっこいい男の子いっぱい呼ぶよ」
「そういうの興味ないからいいよ」
「残念。周防さんのこと狙ってる人たくさんいるのに」
「はは、それじゃ」
「冴子、播磨君来るって?」
「これからアポ取るとこ」
「来るでしょ。去年は二股とかすごかったじゃん」
「やっぱそうゆうタイプなのかな?」
「そうでしょ。男なんてみんなそーゆーもん」
私はそれ以上聞きたくなくて教室から出てトイレに向かったんだ。
教室にあの女の子特有の可愛らしい声が嫌でも耳にはいっちまう。
トイレに入って洗面所の鏡をみたら変な顔が映ってた。
口元は強ばって眉間に皺寄せちゃってさ。
多分怒ってたんだと思う。
あういう人達にあんな軽い口調であいつのことを喋って欲しくなかったんだ。
だって、あいつすごい好きな子がいたんだよ。
その子のためならなんでも出来て、その子ためなら何を失っても惜しくない、そんなふうに思える子があいつにはいたんだ。
結局あいつの恋は叶わなかったんだけどあいつは言うんだ。
いいんだって、あの子が幸せならそれでいいんだって、でもまだあの子が好きだ、きっと一生好きなままだ、それは変わらないって。
泣きながら言うんだよ。
それを聞いたとき私はすごい恥ずかしくなった。
穴があったらってのは正にあのことだね。
私が今までしてきた恋はなんなんだろうって。
それをあいつに恋バナとして聞かせた自分がすごい恥ずかしくなった。
これまで話したこと全部忘れてーってかんじでさ。
それと羨ましくなった。
そんな恋ができるあいつが。
そこまで愛されたあの子がすごい羨ましくなったんだ。
だからさ。
だから腹が立ったんだ。
だからあの子達があんなふうにあいつのことを話すのがどうしても我慢できなかったんだ。
あんた達があいつのなにを知ってんだって。
だから言っちゃったんだ。
トイレから出たとき多分屋上から戻ってきたあいつが視界に入った時に言っちゃった。
「播磨!」
ああ、やばい!と思った。
でも、飛び出た言葉はひっこめらんないし、もう止まらない。
「おおお! 周防か…びびらせんなよ」
「やっぱ私行く!」
「は?」
「日曜だろ。お前が誘ったろうが」
「へ? お前用事あるって」
「大丈夫!」
「大丈夫っておま……」
「日曜十時矢神駅前バイクで迎えにこいよ!」
「おう! いやだからお前用事は?」
強引に約束を取り付けた私は困惑するあいつをそこに捨て置いてさっさと教室に戻った。
そして遅れて教室に戻ってきたあいつに合コンの誘いを断られる女の子達をみていい気味だなんて思ったんだ。
多分あいつは私との約束がなくても誘いに乗らなかったんだろうけど、あいつがあの子達より自分を選んだみたいで内心すごく嬉しかったんだ。
我ながら小さい奴だね。
ここまでが懺悔なんだけどもう少しいいかな?
実は今日なんだ約束。
着る服悩んだりはしなかったけど、なんか朝から胸がどきどきしっ放しなんだよ。
これからあいつに会えると思うと楽しみでたまらないんだ。
なあ、これって友情だよな。
それとも、これって愛とか恋とか言うのかな?
教えて、シスター。
投下終了です
モツ
ひさびさの鉛筆だな
乙
ビッチ乙
乙!
この間投下された糞真王道SSに比べりゃ大分読ませる話だと思うよw
鉛筆投下乙
そうだ鉛筆つながりでちょっと聞きたい事があるんだけど
S3にあった惣一郎さんの作品が本人のブログに引き揚げられたらしい
ブログの場所知ってる人いる?検索したが特に引っ掛からないんだよね
鉛筆超乙!
鉛筆はサイコーだね
>>529 携帯派で有名なうるふさんのサイトのリンクからとべるよ。
これで分かんなければあきらめい。
旗でSSはやりづらい空気にあえて反逆してみようかなと。
苦手な人はスルーよろ。
親友達の視線に後押しされるように愛理は播磨の元へ向かった。
ゆっくりすればいい――それは何もしないというわけではなく、じっくり攻めるということ。
だが、流石に振られた直後にアプローチをかけるつもりはなかった。
何より愛理は今の播磨とどう接していいかも分からなかったわけで。
「ヒゲ…」
「………」
「何してんのよアンタ」
落ち込んでいるだろうと思っていた播磨はヒゲを剃っていた。
歩行祭の時は海を眺めてと典型的な振られた後の男の姿だったので拍子抜けした。
「…何考えてるのか知らないけど、ヒゲは家で剃りなさいよ」
「………」
「ちょっと、聞いてる?」
「…何のようだ?」
ようやく声を発したと思ったら相変わらずの愛想も何も無い、つっけんどんな返事が返ってきた。
「今は誰とも話をする気はねえ。察しろバカ」
「…今更、天満のことをくよくよ考えたって仕方ないじゃない。アンタそーいう柄じゃないでしょ」
別に播磨を励まそうという気持ちから出た言葉ではなかった。
ただ、今でも覚えている。いつか自分に話してくれた、全て受け入れて笑ってみせるという言葉。
あの言葉が嘘でないのなら、その気持ちから出た言葉だった。
そして、それに応えるように彼の言葉を返す。
「…別に塚本のことを考えてたわけじゃねえよ。あれはあれでケジメつけたしな」
「なら、何を考えてたのよ」
愛理の質問に対し、播磨はただ剃ったヒゲを見つめるだけで何も答えてはくれなかった。
きっとその中に愛理の知りたい彼の心の内があるのだろうが…今の愛理には想像もつかなかった。
しばらく、2人の間には沈黙が続いた。
「ねえ、ちょっと聞いていい?」
「なんだよ」
再び沈黙を破ったのは愛理だった。
「あの時、どうして天満を空港まで連れて行こうと思ったの」
「あ?」
「烏丸君は理由はどうあれ天満を捨てたんでしょ?放っておけばアンタが奪うことだって出来たわけじゃない」
「ああ……」
これは播磨を励まそうとか振り向かせようという気持ちの他に愛理が純粋に聞きたいことだった。
あの時の播磨の立場は今の自分と限りなく近かったから。だからこそ。聞いてみたかった。
「…あのヤローじゃねえと駄目だったからだよ」
彼の返事はまた曖昧なものだった。きっと、言葉に出来ない想いも沢山あるのだろう。
それでも、それは愛理にも何となく理解できる答えだった。
「そーよね。あの子、烏丸君のことずっと好きだったものね」
「………」
「それこそ私達と会う前から…」
「………」
「アンタがどれだけ天満のこと好きだったのかは知らないけど、きっとあれでよかったのよ」
「………。ああ……」
その相槌は信じているから出たものか、そうであって欲しいという願いからなのか――
彼のサングラスの奥の瞳からは窺い知れなかった。
「…でも、私なら絶対しなかったわね。せっかく好きになった相手を他の子に譲りたくはないわ」
それは彼と自分が違うことを告げるため、これから彼を自分へと振り向かせるため、
そのために愛理が選んだ宣言だった。
「じゃあ帰るわね。そろそろ帰らないと家の連中が心配するわ」
気がつくとかなりの時間が経っていた。
言いたいことも聞きたいこともないし、彼の様子も見た。
きっと播磨は大丈夫だろう、だから愛理は安心して帰ることが出来た。
「…乗りな。家まで送ってってやるよ」
「え?」
「俺に気を使ったんだろ?借りは作りたくねー」
迎えは呼んでいたが、せっかくの申し出を断る理由もない。
今しばらくは空いているだろう彼の背中に愛理は身を預けた。
投下終了です。
乙です
旗はまだまだ需要がありますよw
これからも旗SSよろしく
乙です。
この逆境の中、旗を投下するあなたの勇気に
僕は敬意を表する。
手垢の付いた毎度お馴染みの展開でビックリ。
こんなのを恥ずかしげも無く晒してしまうあなたの勇気に
僕は敬意を表する。
バレスレにしょっちゅう涌いてくるKY旗妄想SSと全然変わらん
乙です。
たまには旗SSもいいもんだ。
全盛期にSS書いてた人にとっちゃ
最近の本編は一度は書いたことのある展開で退屈なのかね
最近の本編に似たSSが分校にたくさんあるな
振られるまでの過程を書いたSSってそんなにあったっけ?
振られた後からスタートする話のが多い気がするけどな
播磨がここまで一途だと分かってた職人さんもあまりいないだろうし
>>547 基本的に播磨物を書く人は天満一筋だってのを前提にしてると思うけどな
それでも他のキャラとカップリングにする為にはどーするべ、って事で頭を悩ませてるわけだし
もちろん、俺=播磨みたいなSSは省くけどね
1:烏丸と天満をくっつけて、播磨をフリーにする、というもの。
2:天満との出会いを無かったことにする、というもの。
3:気が付いたら〜の方が好きになっていた、というもの。
大きく分けるとこの3パターン。
>>538 乙です
久しぶりの旗なんでちょっと楽しみ
>>549 少なくとも王道に決着つける系も結構合ったような
何で王道SSってほとんどないんだろう
王道や真王道はやりにくいんだよな
終わりかけの今ぐらいならやりようがあるんだが、今からなら結末を見てからじゃないと違いが怖いし
個人的に王道と真王道は原作満足してるからなあ
いまいち創作意欲が湧かないね
でもコメディだったら王道はあり
天満が嘘っぽくなっちゃうんだよねぇ
スクラン作者の脳内そのまま出してるようなキャラだから
SSにして文章化すると「あれ、これ天満じゃないなぁ・・・ハァ」とかなっちゃう
他のキャラは記号の集合体だから動かしやすいんだよな、特に八雲・沢近・絃子センセあたりは
天満好きなんだけどなぁ、一番技量がいるキャラが主人公とか
天満が難しいってのは同意。
でも他キャラも別に記号的なキャラじゃないだろ。
自分で書く時はある程度記号的に済ましちゃうこともあるけど
原作のキャラは他の漫画に比べると随分等身大な生きてるキャラだと思うよ
キャラを分解していったら記号化されたものの集合だよ
輪郭がハッキリした使いやすい記号で構成されてるというか、
料理で言うレシピが定着してるというか、
それが天満より沢近などはハッキリしてる、って意味だわ。言葉が足りずにスマン
他キャラの好き嫌いとかじゃなく、自分の中の天満を表現しにくい・伝えられにくいっていうかね
原作はアレなのに何故かSSだと整合性が要求されるから
天満は難しいんだと思う
烏丸のこと忘れてたりバスケで寝返る天満を書いたら
絶対叩かれると思うし
>>557 なるほど、そういう意味ね。
記号って言葉にあまり良い印象ないからついケチつけてしまった。
こちらこそスマン。
今このスレに書き手はどれくらいいるんだろ?
人がいれば10のお題系のものをつくってみるのも面白いかも。
今、超姉書いてるんだが需要あるかな?
>>559のいうお題系も挑戦してみたいな。もちろん超姉で
wktk
>>560 あるよ!超姉で丼3杯はいけるよ。
お題はどうだろ?
お題サイトから借りてくるか自分たちで考えるか。
前者のが楽だと思うけど、まず書き手はいるんかな?
>>558 まあ、その点は原作も叩かれてるからね。
そういう意味では当然じゃないの。
564 :
Classical名無しさん:08/04/02 21:50 ID:PXQTFymI
>>562 文字数というかレス数とかも決めといた方が良いんじゃね?
5レス以内で収める。とか
大喜利みたいな感じで面白そう。自分は書けないから適当に言ってるけどw
>>565 書き手にチャレンジしてみるのも面白いかもよ。
大喜利か〜。
俺のイメージしてるお題とは違うけどそれはそれで面白そう。
まあ、もうちょっと人が集まらないと何も始まらないけど。
面白そうだとは思う
568 :
Classical名無しさん:08/04/03 02:20 ID:Nb0SfNbA
たしかに
お題すら思いつかないのが今のIFスレクオリティ
もったいぶらずにお題を出せば良いのに出せないのが569クオリティ
朝っぱらからそんな事を書き込んじゃうのも569クオリティ
昔、王道がつきあいだして沢近ら3人娘が天満に冷たくあたる展開のSSを
ちらっと見たことあるんだけど誰か覚えてない?
もしかしたらブラックレガシィさんの旗SSかな。
作者さんの名前でググれば多分見つかる。
タイトルまでは覚えてない?
でもサンクス
多分これ「Dancing once more」
読んだ。やっぱり全盛期だけあって面白いな。
ふと思ったが過疎になったのは書き手の望む展開から大きくかけ離れたからなんだろうか
高野は三角関係に手を出さないし
周防は一途のはずが麻生とつきあい別れてもすぐ花井といい感じ
沢近は播磨→天満を知ったら心を痛め、身を引こうとかいがいしい姿をみせるはずが嫉妬に狂い播磨に冷める
八雲は漫画つながりを死守しようとするはずがあっさり漫画バレして天満にアシを譲り身を引く
天満は播磨に好かれてることを知っても沢近のため応えられないはずが、塵にも気にせず播磨を誇りに思う
それはないw
例えば沢近のために播磨の気持ちに応えないとか播磨に失礼すぎるだろ、天満はそういう子じゃないし
けど旗SSにはよくそういうパターンがあるし
そういう展開を期待されてたんじゃないか?
全盛期ならではの暴走でしょ
全盛期というか、まだどう転ぶかどうか分からない、選択肢が多い、っていう書きがいがあったからな
それがSSを書くモチベーションになるというか、どんな展開にしても良いという気楽さになってたもんねぇ
だから、当時のは整合性といえばキャラを崩し過ぎないって位の枷しかなかった
今は、ある程度考えて話を展開しないと、とまず考えるのがタルい
そういや、スクランのSSを書いているのはここのスレの人とあろさんくらいか
あろさんの所からバンターさんの所に行ってみたけど、普通の個人blogで笑ったw
収録されてない分のを含めたら結構な数のSSを書いてたんだね
コテつけないで名無しでの投稿ばかりみたいだけど、
コテ付ける人付けない人ってのは何かその人の中で基準があるんだろうな
ただ単に、コテがあった方が見てくれてる人に「あ、あの人のSSか」と分かりやすいようにじゃね?
おにぎり展開とか、一部の人にしか受け入れられない話描いてる人だと
NG用にコテにする人もいるし
SS投下する時に題名を名前欄に書いてもらってればNG楽なんだよな
なんか、人も居なくなったしネタも無くなったよなー
>>582 最近の旗の人はあらゆるところでおにぎりを
貶めないと気がすまないのか?見苦しい
>>584 もうすぐ終わるから終わった後にパラレル展開を書く人はでるんじゃないか・?
本当にもうすぐ終わるのか?
まだ確実ではないだろう。
天満が残る前提でSS描き始めたのに渡米しちゃったから潰れてしまった
IFだからそもへんは気にしないでいいと思う。
俺なんか王道成立した前提で一本考えているよ。
シリアス通り越して暗く鬱々しいおにぎりって需要あるかな?
まあ創作意欲的に潰れたというか…最初からIFのつもりで作るならいいんだけど、そうじゃなかったし
欝は欝で需要あると思うよ
589のSS読んでみたかったけど、それじゃしょうがないか。
原作終わった後に投下が増えるといいな。
八雲の欝は読んでみたい
欝ってのは少ない気がするなぁ
大抵は別キャラになってしまって、なんだこれ?って感じのSSになってるし
暗く重たい雰囲気のものを書こうと思っただけでそこまで欝ってわけでもないと思う
できるだけ別キャラにならないよう頑張るよ
実際に投下できるのはずいぶん先になるかもしないけど
旗SSで八雲をとってもみじめな引き立て役にするとか
その逆をやるとか、やっぱダメ?
やめた方がいい
>>594 いいんでね
俺は二次は二次で割り切るからあんまそうゆうの気になんない
ただ相当上手くやってもどっかからの反発は覚悟した方がいいかと
やったら良いんじゃない?
ただ、袖にされたキャラのファンの不満も受け止める覚悟が無いとだめだな
スクランとか2次元・ジャンルに関係ない常識的な事だけど
598 :
Classical名無しさん:08/04/12 19:02 ID:OQTmw7PY
それより絃子との絡みがほしい
wikiの20あたりが見れないんだが・・
まだ誰も編集してないだけだな
本編での超姉ぶりに触発されて書いてしまった。
絃子の拳児の呼び方が「拳児」で固定されてしまったようだけど、自分の中で違和感あるので「拳児くん」でいきます。
では、投下します。
がらがらガッシャーン!
静寂というものは睡眠の時ぐらいは最低限要求したいものである。
それでなくとも今日は全国民が毎週待ちわびている日曜日なのだからなお更だ。
さっきの物音で一度目を開いた拳児だが、時計を見てみると針は朝の7時をさしている
ダダダダダ!とこっちに向かってくる騒々しい足音をあえて聞くまいと、耳を手で塞いで再び睡眠を貪ろうと布団にもぐった
「拳児くん!!」
ドアを破壊せん勢いで部屋へ踏み込んできた絃子は、拳児の布団を剥ぎ取った。
いや、事実として無抵抗のか弱いドアはものの見事に吹き飛んでいる。この細い体にどこにそんなパワーがあるのか、不思議極まりない。
「あんだよ、うるせ…」
「何も言わずにこれを持って真っ直ぐ台所へ行け」
「はぁ?」
真っ赤な顔をして息を切らせている絃子が、胸倉をつかみながら何かを顔に押し付ける。
なんじゃこりゃ...殺虫剤じゃねーか。
「おい絃子、一体どういう...」
「何も言わずに行けと言っているんだ」
殺虫剤の次はモデルガンを額に押し当てられ、殺気走った目で睨まれりゃ、「ハイ」と言うしかない。
半ば蹴りだすような形で部屋を追い出し、絃子は拳児の部屋のドアを閉めてしまった。
朝早くから叩き起こされた挙句、意味の分からない事を言われて自分の部屋を追い出された拳児の脳は
状況に着いていけず、ショートしかけていた。
殺虫剤…台所…この二つのワードからある一つ…いや、一匹の生物が思い浮かべられたが、拳児はすぐさま取り消した。
いやいやいや、絃子だぞ!?この前なんて、忍び込んだ空き巣を半殺し、いや四分の三殺しにした挙句に辞世の句を
読ませようとしていた女だぞ!?アレを怖がるなんてねーよ!ありえねー!
「げっ! なんじゃこりゃ!」
台所は大変なことになっていた。
まず水道の水は出しっぱなし。戸棚は開いており、食器が床で砕け散っている。
床に垂直に突き刺さった包丁がなんとも恐怖感を倍増させる。
拳児は唖然となりながらも、取りあえず水道の水を止め、包丁を床から抜き取って戸棚に戻しておく。
「この状況…まさか本当にアレを怖がって?」
プッ!クククク…
絃子があの黒い生物を怖がって取り乱している姿を想像して、思わず笑いが漏れた。
なんだあいつ、可愛いとこあんじゃねーか。
パァン!!
「笑ってないでさっさとやるべき事をやりたまえ」
引きつった笑みを浮かべ恐る恐る後ろを振り返ってみると、銃口と二つの瞳が冷たく突き刺さった。
しかし、いつもと違うところといえば絃子が拳児の枕を抱きしめながら、壁に隠れているところだろうか。
「ほら、早くしろ」
「だから何でおめーはいつも偉そうなんだよ! お願いします拳児様とか言い様があんだろうが!」
「そこの流し台に居たんだが」
「無視してんじゃねー!」
壁に隠れながら銃口で流し台を指している絃子を横切り、「アホらしい」と言い捨てて部屋へ戻って再び…
「家賃3ヶ月タダにしてやってもいいんだが…」
「うらああ!どこだゴキブリィィ!!!」
眠ろう。と
決めたはずなのだが、スリッパと殺虫剤を手に華麗にUターンをして見せた。
3か月分の家賃があれば、天満ちゃんとのデートの軍資金にあてられらるぜ!
待ってな天満ちゃん、今美味しい料理を…
「じゃあ頼んだよ」
「おう。…ん?」
手を振って背を向ける絃子の長い黒髪に、違う黒がなんだか動いているように見える。
見えるというか、確かに動いている。油ギッシュにテカテカ光ってて、あっ、触覚がある。これはもしかしなくとも…
「おーい絃子、ゴ…」
待てよ?
今ここで教えたら、また絃子のやつ取り乱してコイツを逃がしちまうんじゃねーか?
・黙って殺虫剤を吹き付ける←コロサレル
・黙って絃子の頭(ゴキブリ)をスリッパで叩く←コロサレル
どーすりゃいいんだよ!あっ、そうだ
「待て!絃子!」
「ん?」
「いいか、動くなよ」
「は?」
絃子の髪にはりついたままのゴキブリから目を離さずに、ゆっくりと絃子に近づく。
「何してるんだ拳児くん」
「しっ!静かにしろ!」
緊張で震える手を、腰まで伸びた絃子の髪に近づけていく。いや、正確に言うとその髪の一番下に張り付いている
騒動の原因へと手を伸ばす。
――こ、こいつを捕まえれば、3ヶ月家賃がタダ…タダ…
本来、聴覚が人間よりも優れているこの黒い生物が、これだけ騒ぎ立てても絃子の艶やかな髪の中で大人しくしている事を
初めに疑問に思うべきであった。
「うらああああ!!」
しかし、単細胞の単純バカでただでさえ緊張で張り詰めた拳児に、そこまで頭がまわるはずもなく、隣の家まで響きそうな拳児の咆哮に
敏感に反応した例の黒い生物は、羽ばたこうと大きく羽を広げた。
どうやら髪にからまっているらしく絃子の髪を大きく揺らしながらもがいている。チャンスとばかりに拳児の大きな手が、黒い生物を捕らえた。
――やった!やったぜ天満ちゃん!俺はとうとう家賃3か月分の…んっ?
なにやら自分の手に振動を感じる。なにも拳児が震えているわけではなく、黒い生物ごと鷲づかみにした髪がプルプルと震えている。
「け、け、けけけ拳児くん…?も、もしかして私の髪を掴んでいる君の手の中には…」
「おう!やったぜ絃子!とうとう捕まえ…」
「きゃああああ!!!」
「ぐほぉ!」
普段の絃子からはおよそ考えられないような悲鳴をあげ、振り向きざまに持っていたマクラで拳児の顔面を力いっぱい殴りつけた。
不意打ちを喰らった拳児は、せっかく捕まえた家賃3ヶ月…もとい、例の黒い生物を手から解き放ってしまった。
自由を手に入れた騒ぎの元凶は、心なしか軽い足取りでトイレへと逃げ込んでいく。
「こ、このバカ!何で逃がすんだ!」
「おめぇが殴るからだろうがああ!」
もっともな正論を叫びながら、拳児は赤く腫れた頬をさすりながらトイレへと向かう。
拳児とてこの生物が好きなわけではないので、普段なら鳥肌ものなのだが、後ろで自分のマクラを抱きしめながら
涙目でこっちを見ている絃子にやらせるわけにもいかないので、気合を入れてトイレのドアを開ける。
「うぎゃあああああ!!!」
「きゃああああああ!!!」
ドアを開けた瞬間、なんと黒い生物が拳児と絃子目掛けて飛翔してきたのだ。
たいていの人間の場合、床をカサカサと這い回る姿も十分おぞましいと感じるが、自分目掛けて飛んでくるなどという行為は
ある意味人間の弱点ともいえる。
よほど怖かったのか涙目どころか、目からポロポロと涙がこぼれ出している絃子は未だにマクラを抱きしめたまま
腰を抜かして床にへたりこんでいる。
散々人間をからかいつくした黒い生物は、満足そうに大きく羽を広げてベランダのすきまから外へと飛び立った。
本日の刑部宅に、スリッパ片手に唖然としているサングラスをかけた男と、泣きながらマクラを抱きしめている美女が確認できたことは
言うまでもない。
「おい絃子、家賃の件忘れちゃいねーだろうな!」
「……」
「おい、聞いてんのか!?」
「……」
「つーか、いつまで髪洗ってんだよ!ゴキブリが付いてたぐれぇで大げさだぞ!いい加減風呂からあがれよ!」
「……明日、髪を切ろう」
「大げさすぎるわぁ!」
――Fin
投下以上です。
お目汚し失礼しました。ひっそり帰って、ひっそりまた来ます。
ありがとうございました。
乙!面白かった!
かわいそうな絃子さん
こんなことがあれば俺も髪をきりたくなるぜ
でもショートの絃子さんもちょっぴり見たい
乙です
普段クールな絃子さんがパニくるシーンがあるのも彼女の魅力の一つ
播磨共々お幸せに
皆が不幸になるSSって読んでみたいがダメかな
不幸系は好きな人は好きだろう
俺も好きだ
IF27のまとめ終わらせました。
相変わらず、キャラ別登録はしてませんし、雑な感じかもしれませんが我慢して下さい。
いつも乙です
不幸系のSS、プロットはあんだけどね
今はちょっと無理なので忘れたころに投下するよ
不幸系ねぇ
一番最新でも結構遡らないと駄目かもなー
エロパロのまとめで見た、携帯&八雲×沢近のが救われない系統だったな
旗成立で一方その頃八雲は不良たちの慰み者になってましたとか
おにぎり成立で沢近は婚約者とよろしくやっていましたとかそういう系統か
それだと成立した方は幸せなんで
中に誰も居ないじゃないですかぁ
みたいな全滅系じゃね
正直ただただ不幸なSSは書いてて面白くない
どうせなら人の優しさやら悲哀を織り交ぜて書きたい
好きなカップルを描写したいというより恋敵を悲惨な目に遭わせたい一心で書いたようなスクランSSって
どこかにない?
ssより同人探した方が早いんじゃないか?
沢近、八雲で陵辱物なんてすぐ見つかるだろ。
>>619 自分で書いたほうが早いだろ
脳内でも構わんけど
S5だっけか
あそこには播磨ハーレムに持っていこうとして美琴が悲惨な目に遭うSSがたくさんあったな
惚れるきっかけが漏れなく「不良に絡まれ少林寺拳法で撃退しようとするがまったく叶わずそこに播磨が…」
だったから、いつも絡まれてたな
助かるから悲惨とは言えないだろ
悲惨と言えばスクロワかな
スクロワは名前と特徴が同じキャラが出てるって印象
あれをスクランと言ったら、なんでもスクランになるわな
すまん、ここで出す話題じゃなかったな。
そいや原作ではいろいろあるのに花井関連の投下は無いね
誰か茶道部書くかと思ったけど
原作が妄想に追いついたというか、原作で表現されてる事で満足しちゃってるんだよなぁ
縦笛は話題に出すだけで荒れた時期があるからなぁ
SSなんだからある程度自由に描いていい筈なのに
「こんなの美琴じゃない、原作ちゃんと読んでるの?」とか
色々突っ込まれたぜ
後で読んでみたら確かにこれはひどい的なものだったが(´・ω・`)
花井ハーレム物が播磨より簡単に作れそうだが、誰も作らんな
稲葉とか周防、他色々でのハーレムはあったんじゃね。
沢近と塚本はそれに含まれていなかったが。
「ごめんなさい花井先輩」ではじまって3行でおにぎり成立
周防高野稲葉つむぎあたりがはげますのか
>>628 一時期、麻生関連は地雷だった気がする
>>629 花井でハーレムもの書いたら花井が伊藤誠になりそうで困る
八雲への矢印がずいぶん薄くなっちまったからなあ
八雲と花井の関係をきちっと決着つけて花井の他派閥の話ってあったっけ
王道をケリつけて旗おにより幾分かやりやすいと思うんだが
開始早々玉砕→縦笛という流れの奴ならSS保管庫に置いてあるな
挿絵がついてるやつ
花井が八雲に振られたからとはいえ、すぐに他の女にくっつくような男か?
ってツッコミが入っちゃうのも困りものと言えば困りものなんだよなぁ
そりゃ作中の花井からは想像出来ないだろうけど、そこはホラ人の妄想じゃない
流石にテンプレみたいなのはどうかと思うが、多少の事ならツッコまずに楽しんだ方が良いんでない
いや最近の流れならありうるんじゃないか?
特に縦笛なら
俺も今の花井なら誰に転んでも特に違和感ないな
最低限の過程があればつっこみはないんじゃない?
バレスレなんかじゃたまに花井ハーレムの話がでるな
稲葉や高野を含めた女子に振り回されている花井ならすぐに想像できるんだけどなw
そうか、そういうのを書けばいいのか
>>628 アソミコ厨ってホントに最低な奴らだったよな・・・
アソミコSSなんてぜんぜん見たことない
アソミコはどうやって話を広げたらいいのか想像できん
甘甘な短編か、あとはサラを黒化させて殺傷事件か
花井関係でサラや稲葉を黒化させる話が見たい
2-Cのドロドロはたまにあったけど1-Dのはあんまりないよな
榛名以外いくらでも衝突できる要素があるのに
IFスレ更新しました。
いつも通りキャラ別登録をしてないですが…
後スミマセンが、IF29のページを作ってください。作ってみようとしたが、わからんかったので。
あと、昔の分もやった方がいいですよね?でも、1桁台は勘弁して…
>>644 おつかれさまー
更新してくれるだけで十分ですお
昔の分は分校にあるだろうし
>>644 乙です
スクラン女性陣で格付けしあう女達を見てみたい
花皿を書いてみたいがこの二人ってどんな関係にすりゃいいんだろう
過去の作品に花皿ないかな
本編から読み取ったり自分の書きたい関係を書けばいいんじゃね
二次創作をもとにするのはちと間違っている
>>641 アソミコ自体、いつの間にか話が進んでる描写ばかりだったからな
まともに描かれたのってバッシュデートくらいじゃね
奈良健太郎のSSも書いてくれ!
時代は花井だな
>>650 おにゃのこ(r
こうですか?わかりません・・・。
播磨が文字通り世界中の人間を敵に回した話が読みたい
その中で誰が播磨の味方をして誰が敵に回るのかが見たい
スクランで世界系は無理があるんじゃね?
学校中とか、その辺で十分だろ。
播磨が孤立っていう展開もわからんな
絃子さんと同居がばれて白い目で見られるとかそういう展開ならもしかして・・
逃亡者みたいにすればいいんじゃね?
播磨は天満のためなら喜んで世界中を敵に回しそうだな
数ヶ月後、地球に隕石が激突し人類は滅亡するらしい
それを防ぐ為にはある少女を生け贄に捧げなければいけないとお告げがあった
その少女の名は塚本天満
話を聞いた少女はそれで大切な人達が助かるのならと犠牲になる事を決めた
しかしその時が近づくにつれ恐怖に苛まれる少女
誰にも聞こえない程の小さい声でぽつりと呟く「死にたくないよ…」
だが少年の耳には届いてしまった、彼は少女の手を取り強引に駆け出す
そして始まる2人っきりの逃避行
少年は走る、ただ愛のために
少女は悩む、大切な皆のために
全世界とのおにごっこから2人は逃げ切れるのか
笑いあり涙ありのドタバタラブストーリー
ハリマゲドン 今夏公開予定
天満を逃がす途中八雲と出逢ってしまう二人。
裏切り者は家族まとめて死の制裁・・だが八雲は天満を播磨に託して二人を逃がす。
騒ぎに気づいて集まってきた兵士たちの前でダイナマイトに火をつけ自爆する八雲
>>657 >ハリマゲドン 今夏公開予定
これが言いたかっただけちゃうんかとw
でも、ちょっと面白かったよ。
>>659 あ、バレた?w
元ネタとは隕石衝突ぐらいしか共通点ないけどなw
>>656 播磨は誤解される事にかけちゃ右に出る者はいないからなw
滞りなく日本中を敵に回せるだろ
米国での手術のかいあって烏丸は無事生きられることとなるも、
やはりしばらくは入院・療養生活を続けなければならないため、
天満はとりあえず一人で帰国して、また矢神高校卒業までは日本にいることとなった。
播「烏丸の手術、うまく行って良かったな」
天「うん!あの時は空港まで送ってくれてホントーにありがとね!!」
播「おーよ。天…大事なクラスメイトのためだ。気にすんな」
天「あ、あとね。言い忘れてたけど、私、播磨君のことも好きだよ」
播「ブッ!!」
天「もちろん一番は烏丸君だけどね!!」
播「ははっ。あたりめーだ。そーじゃなきゃ許さねーっつーの」
天「へへーんだ。ずっと大好きだから、問題ありませーんよーだ」」
播「ケッ。言ってろ。でも、俺も塚本のそーいうトコが好きだぜ。烏丸と付き合っても変わらないでいてくれよ?」
天「ほぇ?」
播「ん?」
天「やっだー播磨君ってば、いくらなんでも烏丸君とは付き合えないよー」
播「ハァ?」
天「もー、知らないの?いくら好きでも、兄妹じゃ結婚できないんだよ?
播磨君も漫画だけじゃなくて、もっと色々勉強しなきゃダメだよー」
播「……。……。ちょっと待て塚本。兄妹ってのは……」
天「あれー?言ってなかったっけー?
烏丸君はね、私達が小さい頃に出て行っちゃったお父さんに連れてかれちゃった、
私のお兄ちゃんで、ホントに偶然ウチの学校でクラスメートになったんだよー」
播「あー、スマン塚本。ちょっと意味がわかんねーんだが…。
兄妹ならなんで苗字違うんだ?っつか、だいたいなんで同じ学年なんだ?」
天「塚本ってのはね、私達のお母さんの旧姓なんだ。で、お父さんの苗字が烏丸だったんだ」
播「お、おう…なるほど」
天「それでね、烏丸君は、子供の頃に凄く病気がちでちゃんと学校行けなかったんだってー」
播「そ、そっか…。アイツも大変だったんだな…」
天「でもねー、聞いてよ播磨君!烏丸君ったら酷いんだよー。
ようやく二人でそのことを確認しあった時にね―――」
烏「ゴメン。塚本さんと…生き別れた妹と会えたのは嬉しいんだけど、
でも、僕は君と出会ってはいけなかったんだ…。
僕はもう、君に家族を失う悲しみを…不幸を、味わって欲しくなかった…」
天「ううん…烏丸君は全然わかってない。私は―――」
播「そっか…。でもよ。烏丸だってお前のことを思って…」
天「もー。播磨君はホンットに女の子の気持ちがわかんないんだねー。」
播「いやいや、そーいう問題じゃなくないか?」
天「やっぱりお猿さんにはわかんないのかなァ?どんな理由があっても『会いたい』『一緒にいたい』って気持ちは」
播「おいおい。ちょっと待て。それなら俺だってなァ」
天「なんてね。嘘だよ。クスッ」
播「あのなー・・・一応こんな俺でも色々辛いこととかってあるんだゼ?」
天「ふ〜ん。じゃあそーいうことにしてあげよっかなー」
播「オメー、全然信じてねーだろ……」
天「えーっ!そんなことないよー!!」
播「どーだかな」
天「ホントだよ。……私、思うんだ。播磨君の思いも、きっと、相手に届いてるんじゃないかな・・・って」
播「そ、そうか…」
天「まー、なんとなくそう思うだけなんだけど。」
播「なんとなく、か」
天「うん…。なんとなく、ね」
きっと言うから―――
沢「あーっ、何を二人っきりで楽しそうにしてんのよ!!」
播「げっ!!」
沢「『げっ』とは何よ!言ったでしょ!私は諦めないんだからね!」
播「お、お嬢…」
八「沢近先輩…そ、それは…」
播「妹さんまで!!」
八「すいません。ちょうど近くを通りかかったもので…」
天「やっほー八っ雲ー。今の聞いてたー?播磨君がねー」
播「ちょ、ちょちょちょっと天満ちゃん!そりゃあ…」
八「姉さん。あんまりそーいうのはよくないと…」
天「ちぇー、私も八雲みたいなしっかりものになりたいなー」
八「私は、姉さんみたいになりたいな」
天「えーっ、絶対八雲の方がいいよー。なんでも勝ってるじゃーん」
八「ううん…。そんなことないよ…。でも、負けないよ」
沢「ちょっと、私を置いて話を進めないよーに!!私だって絶対負けないんだから!!」
八「うふふ、そうですね。勝負はまだまだですよ」
天「そー簡単に私に勝てるかなー?」
沢「あーっ!天満、言ったわねー!!」
八「姉さんにも沢近先輩にも譲るつもりはありませんよ。ね、播磨さん」
播「え、えーっと…」
あなたのおかげで―――
花「あ、あれは八雲君!!この花井春樹、今すぐ君のもとモゴッ、モゴモゴッ」
周「やめとけって。流石に今行くのはタイミング最悪だってば。全部ぶちこわしじゃねーか」
花「だが、八雲君が…」
周「もう諦めろって」
花「しかし…」
周「ったく、わぁったよ。もうしばらくは私が一緒にいてやるからよ。それでいいじゃねーか」
花「むぅ…。まぁ、仕方あるまい。お前がそこまで言うのなら…」
周「それはそれでなんか癪に障るが、まー、邪魔しないんならいっか」
花「うむむ…しかし…」
周「しつけっーて」
天「へへーんだ。こっこまでおいでー」
沢「あーっ、いつものんびり屋のクセにー」
八「姉さーん、危ないから前向いてー」
天「あー、愛理ちゃんも八雲もヒドーイ!!播磨君、早く行こっ!!」
播「なぁ、塚本…」
天「ん?どうかしたの播磨君?」
播「いや…その、なんだ…」
天「それにしても、桜吹雪が凄いねー」
播「あの、よ」
天「なに?」
播「塚本。俺はお前と会えて――」
幸せだったって―――
一「今鳥さん今鳥さん!私、勝てました!!」
今「そんな報告されんでも、見てりゃわかるって。ま、おめでと」
西「おかわりダス」
大「あんた、ちゃんと味わってんの?」
絃「さて、そろそろこの家にも飽きたな」
葉「あらあら。絃子さんったら寂しいクセにー」
永「ウチ、今日、誰もいないんだ…」
田「そ、それって…」
円「なんだかんだで、やっぱりシゲオが一番ね♪」
梅「お、おぅ。(なんだかんだってなんだよ・・・ハァ)」
姉「クッキー、また作りすぎちゃったんですよねー」
谷「あー、いつもスイマセン。お礼と言っちゃなんですが、今度…」
吉「こんな時も女っ気ナシかよー」
奈「あの…吉田山君、僕、君に謝らなきゃならないことがあるんだ…」
結「私も諦めない。勝負は大学からよ」
冬「そっか。じゃ、俺も諦めないことにするかな」
麻「ったく、またこんなに予約取りやがって…」
サ「まーいいじゃないですか。喜んでもらえるなら」
鬼「ちょっと喉渇いたわね」
斉「行って参ります」
東「聞こえるかマイシスター!!宇宙が俺を呼んでいる!!」
榛「うるさいお兄ちゃん。それにいきなり立たないで。テレビが見えないし聞こえないでしょ」
菅「なー、嵯峨野ー。俺、何が悪いのかなー」
嵯「キャラとか性格とか頭とかじゃない?正直、私的に許せるのは顔ぐらいかな」
修「今度また来たいな」
美「うん!!」
高「ハイ、チーズ!!」
スクールランブル 〜fin〜
高「ぴーす」
スレお借りしました。過去に妄想した曖昧王道サマランチENDです。
設定や口調など、おかしなところが多々ありますがお許しください。
花皿がないので減点
乙でーす
たまにはこんなのもいいね
田中氏ね!
>>669 すまんw基本的には俺の趣味で作ったから・・・w
673 :
Classical名無しさん:08/05/02 01:15 ID:d0nTWeGI
ずいぶん過疎ってるなぁ
ララと播磨でなんか書いく明日投下してみるよ
見てくれるといいんだが、こうも人がいないとは・・・ww
>>673 人がいないんじゃなくて、特に話題も無けりゃ書き込まなくて良いんだよ
俺はスレが進んでるかどうかだけ毎日見に来てるし、そういう人はそこそこ居るだろ
俺もしょっちゅうロムってる
そんなに人がいないわけでもないかと
ま、感想の少なさはちと寂しい
>667
天満と烏丸が兄妹とか原作であっても不思議じゃないな
>669
ついでに花皿短編書いてみた
678 :
花皿:08/05/02 12:43 ID:dL338HCA
お昼休み、息抜きに校内を歩いていた私は、メガネの熱血委員長に前方を塞がれた。いつも無駄に自信満々な彼、花井さんはムンと胸を張って、お決まりのセリフを吐いた。
「キミ、八雲君は一緒じゃないのか」
また「八雲」だ。八雲は私と同じクラスの友達で、私と八雲はよく一緒につるんでいる。だから花井さんは私を見るなり八雲を探すのだ。今見たとおり、彼は八雲に惚れていた。
花井さんの恋愛の仕方は彼の性格のまま直情的で諦めるということを知らない。しつこくて押しが強いので、八雲は彼を見ると隠れてしまうほどだ。
でも、それははっきり断らない八雲も悪いと私は思う……。まっすぐな彼なら、迷惑していると分かれば、声も掛けてこなくなるはずだ。
ちょっと虫の居所が悪くなった私は、いじわるをしたくなった。まず、私を「キミ」と呼ぶことが無性に癇に障る。八雲は名前で呼んでいるのに……。
「私はサラです」
「ああ、知っているよ。それで八雲君は――」
「それなら名前で呼んでください。でないと何も答えません」
「じゃ、じゃあ、サラ君」
「『君』はいりません」
「サ、サラ」
「はい、なんですか」
名前で呼んでくれたので、私は特上の笑顔を返してあげた。花井さんは呼び捨てが恥ずかしいらしく、少し照れていた。私にもちょっとは付け入る隙がありそう。
「では改めて――サラ、八雲君は一緒じゃないのか?」
「八雲の居場所なら知ってます。案内しますね」
私は彼の手を取って引っ張った。花井さんは突然のことで驚いたようで、わたわたと足をもつれさせていた。
「え? い、いや、居場所さえ教えてくれれば」
「遠慮なさらず、どんと任せてください」
大見得を切ってぐいぐいと花井さんの腕を引っ張る私。でも、実は八雲の居場所は知らなかったりする。
このまま校内を出て、街でデートでもしちゃおうかな。
終
うは、呼び方花井先輩の方がよかったか。投下後に気づいたw
乙
サラ黒いよサラ
これからも頼む
乙
花サラ読んだの初めてだ
※これは一部で批判の多かったバスケ編を男キャラクター中心に再構成したものです。
勢いで書いた。
プロローグ
麻生広義がその事故の一報を聞いたのは翌日になってのことだった。前日は日曜日で、
彼は午後からアルバイトの中華料理屋で包丁を握っていた。
「おいアソ、どうするんだよ」
「どうするって言っても、どうしようもないだろう」
「関東大会の予選まであと一か月もないんだぞ。未経験者もいる一年連中だけでやれると
思ってんのか」
麻生をアソと呼ぶのは、同じクラスで同じバスケ部所属の菅柳平であった。体格はまず
まずだが、バスケットのセンスはいま一つの男である。
「しかし、本格的にヤバいな」
麻生はバスケットボール部の二年生。夏には三年生が引退し、それ以降は部のキャプテン
としてチームを引っ張る存在だ。一か月後には冬の選抜大会の予選も兼ねた関東大会が
はじまる。しかし、練習を本格化しようとした矢先、重大な事故が起こった。
チームのレギュラー格のメンバーが数人乗った路線バスが事故にあってしまい、
運悪く乗っていたメンバーの全員が首や脚などを痛めて、全治一か月の怪我を負って
しまったのだ。大会はちょうど一か月後。怪我が治ったからといってすぐに運動ができる
ようになるほど人間の身体は単純ではない。
「こうなりゃ、ほかの部活から助っ人を呼ぶか?」
「助っ人」
「ああ、背が高くて運動神経が良くて体力があるやつはいねえかなあ…」
「背が高くて運動神経が良くて、体力がある奴ねえ…」そんなやつならどこの部活でも
重要な選手なんだから、助っ人に来てもらうのは難しいのではないか、と麻生は思った。
だったら部活動をやっていないやつなら?いや、ダメだ。助っ人とはいえ、多少運動を
している奴じゃないと、やっていけないだろう。高校のバスケは甘くない、という事は一年生
のころから試合に出ていた麻生ならよくわかっていた。
背が高くて運動神経が良くて、体力があるやつ…。
「あ、播磨さんおはようございます」
「おお、吉田か」
「吉田山です、もう、何回言ったらわかるんですか」
「うるせえ」
麻生は一瞬動きを止めた。
「おい、アソ。どうした」
「背が高くて運動神経が良くて、体力のあるやつか…」
THE BASKETBALL BOYS
播磨拳児十六歳、不良。サングラスとヒゲがトレードマークであったが、
鬚の方は秋口にある事情があって剃り落していた。彼は基本的に不良なので、
舎弟の吉田山以外とはあまり人と喋ることはない。それでも中には例外がいる。
「播磨君おはよう」
「お、おう。おはよう」
「今日もいい天気だねえ」
「お…、そうだな」
彼の隣に座るのは、髪の両側を縛った小柄な少女、塚本天満である。不良の
播磨にも気軽に話しかける彼女は少々天然ではある。けれども、そんな彼女の
事が、播磨は好きだったりする。ただ、基本的に彼は不器用なので、自分の気持ち
を素直に伝えることができない。先日など、自分の気持ちをマンガにして、彼女に
伝えようとしていたくらいだ。ただし、漫画を描いているうちに、それを描くことが
目的になってしまったようでもある。
「よう、播磨」
「ああ?」
昼休み、彼に話しかけてきたのは彼にとって愛しの塚本天満ではなく同じクラス
の周防美琴であった。ちょうど彼は空腹で、しかしながら昼食を買うお金がなく誰も
いない外の手洗い場で水でも飲もうかとしていた所だったから機嫌があまりよろし
くない。
「悪いけど、ちょっと付き合ってくれねえかな」
「なんだよ、金ならねえぞ」
「金じゃないって。そうだ、播磨。これ、いらないか」
「なんだそれ?」
周防の手には、紙が数枚あった。
「これ、知りあいがバイトやってる、中華料理店のタダ券なんだけど」
「なに!?」
さすがの彼も食欲には勝てない。180センチという日本人の中では比較的大柄な
彼の身体を支えるにはたくさんの栄養が必要なのだ。
「ただし、条件がある」
「な、なんだよ」
「ちょっと話を聞いて欲しいんだ」
「話だあ?」
周防に頼まれてしぶしぶ着いて行くと、そこには見覚えのある男が立っていた。
(誰だったかな…)他人に興味をあまり示さない彼は、クラスメートの顔と名前を
ほとんど覚えていない。
「えっと、誰だっけ」
「麻生だよ。同じクラスの麻生広義!忘れたのか?」周防はそう言って播磨の肩を
軽く叩いた。
「ああそうか。それで、そのアソウが何の用だ」
「実は播磨、お前に頼みたいことがあるんだ」
「頼みたいこと?」
「お前、バスケやらないか?」
「バスケ?」
麻生はなぜ、播磨にバスケをやってほしいかという事情を説明した。レギュラークラス
の選手が交通事故にあって、軒並み負傷してしまったこと。そして秋の大会まであと
一か月しか時間がないこと。助っ人を必要としていること、などである。
「やなこった」
「播磨」
「俺は不良だぞ。不良が部活なんてやってられるかよ」
「まったく、しょうがねえなあ」周防が頭を少しかきながら言う。
「悪いが、他をあたってくれねえか。俺にはそういう趣味はねえんだ」
「播磨」
「じゃあ播磨、この前貸した昼飯代、返してくれよ」と周防。
「お前、覚えていたのか」
「当たり前だろう?絶対返すって、いったじゃねえか」
「いや、ちょっと今、月末でお金がないんっすよ」なぜか急に敬語になる播磨。
「だったら麻生に協力してやってくれよ、な」
「いや、それとこれとは…」
播磨が言葉を濁していると、麻生は言った。
「無理にとは言わない。播磨がいやだったらそれでいいんだ」
「ほら、アイツもああいってることだし」と播磨。
「バカ、何言ってんだよ、クラスメートが困って…」周防が言葉を続けようとした
とき、数人の生徒が近付いてきた。
「ああ、ここにいたんだ」
「なんでこんな人気のないところで話をしてんのよ」
「あ、播磨くんに麻生くんだあ」
同じクラスで、特に周防と仲の良い三人の女子生徒だった。帰国子女の沢近愛理、
髪の短い高野晶、そして播磨のあこがれている塚本天満である。
「お前たち、なんでここに」
「美琴からだいたいの事情は聞いたわ。バスケ部、困ってるんでしょう。ヒゲ、あんた
協力してあげなさいよ」沢近が言う。
「嫌なこった。なんでバスケなんか。俺は髪も赤くねえし」
そんな様子を見た高野は、何を思ったか天満に話を振った。
「ねえ、バスケをやっている高校生って、かっこいいと思わない?」
その問に無邪気に答える天満。
「うん、かっこいいねえ。スポーツマンって感じがしていいよ」
「へえ、天満ってスポーツマンが好きなの?」
「うん、あたしは運動神経良くないからねえ」
そんなやりとりを見ていた麻生は、播磨の勧誘をあきらめたのか、その場を離れ
ようとした。
「ちょっと待てよ」
「え?」
麻生の肩をつかむ播磨。
「バスケット、協力しようじゃねえか」
「播磨…」
「本当?播磨君」播磨のその言葉に反応する天満。
「やるじゃない、ヒゲ」沢近も続く。
「クラスメートが困っているのに、放っておくわけにはいかないだろう」
播磨がそんな事を言っていると、不意にどこからともなく声がしてきた。
「この俺を無視してバスケをやろうってのかい?」
「な!」
いつの間にか播磨たちの近くに立っていたのは、隣のクラスのマカロニこと
東郷雅一であった。
「バスケといえば、この俺、東郷雅一を置いてほかにいないんじゃねえか?
遠くアメリカに置き忘れてきたバスケ魂、今思い出したところだぜ!」
ちなみに彼に渡米経験はない。
「さあ、播磨も決意してくれたことだし、昼飯食べに行くか」
「もう腹ぺこだよお」
「へい、俺を無視するとはいい度胸だね」
こうして、播磨拳児(と東郷雅一)を助っ人に迎えた新生バスケ部が始動
したのである。大会まであと一か月、どうなるバスケ部、どうなる播磨拳児。
*
「というわけで、負傷したメンバーの補充のために、助っ人として来てもらった三人だ」
体育館で、バスケ部員を集めて助っ人の三人を紹介する主将の麻生。
「ええ?何で俺がバスケやらなきゃなんねえんだよお」
なぜかそこには、播磨と東郷のほかに、播磨と同じクラスの今鳥恭介がいた。
「バスケの経験とかあるんですか?」生意気そうな一年生部員が質問する。いくら大会
のためとはいえ、急に入ってきた助っ人をすぐに受け入れるわけがない。
「そうだな、ちょっと実力を見せてやってくれないか」
「ふっ、しょうがないな」
「面倒くせえなあ」
「ああ、かったりい」
三人の助っ人のうち、二人はやる気がないという状況に、さすがの麻生も少し不安に
なってきた。
「おい、アソ。大丈夫かあの三人で」
「ああ、実力は申し分ないと思う」
「でもやる気が…」
とりあえず、助っ人三人の実力を試すために三対三のゲームをすることになった。
助っ人チームの三人と、一年生チームの代表三人である。各自がウォーミングアップや
ストレッチをしていると、体育館の外から声がした。
「ああ、やっぱり。播磨先輩がバスケ部に入ったって本当だったんだあ」
「さ、サラ。声が大きいよ」
「ほら、八雲も声かけてあげて」
「でも」
「ほらほら」
「は、播磨さん。怪我、しないようにしてください…」
「お、妹さん。おう…」急に声をかけられたので、戸惑う播磨。
体育館の中を外から見ていたのは、一年生のサラ・アディエマスと
塚本八雲の二人だった。
サラは、麻生がアルバイトをしている中華料理店で一緒に働いている
仲である。塚本八雲は彼女の友達で、一年生の間だけでなく学校内でも
有名な美少女である、と麻生はサラから聞いていた。
「なにい、あの大きいやつは塚本さんと?」
「ゆ、許せん」
「コテンパンにして、塚本さんの前で恥をかかせてやる」
「いっそ事故に見せかけてコロセ」
何やらブツブツ言っている一年生チーム。
「おい、アソ。なんか一年のやつら、凄いやる気、というか殺気が。大丈夫かね、
怪我とかしないかね」
「あいつらなら大丈夫さ。それより、審判たのんだぞ」
「お、おう」
こうして試合開始。ジャンプボールは当然播磨が制し、すぐに助っ人チーム
がボールを支配した。
今鳥は、ボールコントロールはまだまだだが、とにかく足が速い。東郷は、
その大きい身体に似合わず、細かいテクニックを使い、播磨は一年生チームの
当たりにもビクともしない頑丈さでダンクシュートを
決めていた。
「うおおお!すげええ。高校の試合でダンクなんてはじめて見たああ!」
「あの髪の長い先輩は、上手いなあ」
「金髪の先輩には追いつけないよ」
試合に参加していない一年生たちの言葉。先ほどまでの殺気が嘘のようだ。
結局、試合は助っ人軍団の一方的な勝利で幕を閉じた。
「どうだお前ら、これで実力のほどはわかっただろう」一年生を前に言う麻生。
内心は、ホッとしている
部分もあるのだが、それはおくびにも出さず、キャプテンらしく振舞った。
「ええ、なんでこんな上手い人たちが今までバスケをやっていなかったんですか?」
「おかしいでしょう、本当にウチの生徒ですか?」
こうして播磨たち三人の助っ人軍団は、その実力でもってバスケ部に迎え入れ
られたのであった。
*
茉莉飯店にて。
「ああ、腹減った」播磨はそう言って天井を仰ぎ見た。
「お疲れ様です」そう言って料理を出すサラ。
ここはサラと麻生が時々アルバイトをしている中華料理店である。播磨が
周防からもらったタダ券は、ここの店のものである。
「このギョーザはサービスしとくよ」そう言って厨房から出てきた麻生が、
餃子の乗った皿を播磨の座っているテーブルの上に置いた。
「おお、悪いな」
「こっちこそ。バイト、必要なんだろう?」
「ん、まあな。居候している身だしよ」
「金は大丈夫なのか」
「んなこと、お前が気にすることじゃねえよ。新人賞の賞金とかも入ったし、
しばらくここで飯を食ってりゃ問題ない」
「新人賞?」
「いや、こっちの話だ」
「それにしても播磨先輩、バスケ上手いですねえ」いつの間にか播磨の座っている
テーブルに腰かけているサラ。他に客もいないし、麻生は大目に見た。「麻生先輩
の目に、狂いはなかったですね」
「う!」急に自分の名前を出されて驚く麻生。
「上手いってほどじゃねえよ、シュートだって遠くからは全然入らねえし」
「それに、持久力がないしな」と麻生が続ける。
「悪かったな」
「でも、素人があれだけやってくれれば、俺も助かるわ」
「ふん、飯のためだ」
「そんな事言っちゃって」そう言うとゆっくり立ち上がったサラ。
「いててて」
「筋肉痛ですか?」
「そんな強く揉んだら痛いに決まってるだろうが」
サラが播磨の肩を揉んでいる、というか掴んでいると言った方がいいだろうか。
バスケはつまらんので支援なんてやらない
「ああ、やっぱりいい体してますねえ。不良にしておくのは勿体ないですよ」
「大きなお世話だ。ってか飯が食えないからやめてくれるか」
「はいはい、あたしと麻生先輩の愛がこもった料理、たくさん食べてくださいねえ」
「気持ち悪いこと言うなよ…」
「ほらほら、口の周りになんかついてますよ」
「ああもう、うるせえなあ」
二人の様子を見ながら、麻生には何かモヤモヤするものを感じた。
「なあ」
「ああ?」
「なんですか?」
急に声をだした麻生に対して、一斉に顔を向けてくる二人。
「そういえば、お前ら、知りあいだったのか?」
「え、そうですね」
「そういえば、そうだな」
「どこで」
「どこでって、言われても…」
「確か夏休みでしたかね」
「そうそう、夏休みの終わりに」
「先輩が動物たちを学校に連れてきて」
「あれか。あん時はヤバかったな」
(あの時?)
「八雲のライオンの着ぐるみ、可愛かったですね」
「あ、ライオンだったかな」
「覚えてないんですか?」
「ああ、いや。覚えてるよ」
「先輩はゴリラでしたね」
「そういえばそうだったな」
「あたしは何か覚えてますか?」
「え…」
「ひどーい、覚えてないんですか」
「キリン?」
「それは高野先輩です。あと修児くんはねずみ」
「そうだったか」
「私はパンダです」
「パンダ、そうかパンダか。中華料理屋だもんな」
「それは関係ありません」
「あの時は暑かったな」
「今も動物園に行ってるんですか?」
「時々な」
麻生の知らない思い出話に花を咲かせる二人を見ながら、彼は自分とサラとの
距離を感じていた。
*
播磨たちが練習に合流してから一週間、ずば抜けた実力を持つ助っ人軍団の
登場に、チームは活気づいていた。
「オラオラ、パスだパス」
「そこ!ボール持ち過ぎ」
「そんなマークで俺を抑えられるかよ」
体育館にこだまするボールをつく音やバスケットシューズがすれる音が、これまで
以上に熱を帯びているように感じた。
「なかなか、悪くないなアソ」
「あ…、ああ」
「どうした、アソ。考えごとか」
「いや、何でもない。それにしても本当よくやるよ」
「そういや、今日は今鳥がいないなあ。おおい播磨!今鳥知らねえか」
「ああん?知らねえよ」
「ちくしょう、アイツ逃げたかな」
「いや、それについては大丈夫だ」麻生は落ち着いて答えた。
「どういうこと?」
菅が麻生の言った言葉の意味を考えていると、体育館の外の方から
物音がした。
「イテテ!離してよ」
「いけません、今鳥さん。皆さんが待ってますよ」
「イマドリ!観念シロ!」
女子レスリング部の猛者、ララ・ゴンザレスと一条かれんの二人に両側
からがっちり腕を抱えられた状態で、今鳥が登場した。
「ありがとうな、ララ、一条」
「いいえ、どういたしまして。今鳥さんがスポーツをやるというから、協力し
ました」
「イマドリ、サボるなんて許さないゾ!」
「もう、協力なんかしなくてもいいのに」
逃げようとした今鳥も連れ戻され、練習に参加した。大会まで残り三週間、
時間は多くない。
*
翌朝、塚本邸。
「おはよう、八雲」
「おはよう姉さん。早く着替えてきてね」
「あれ、お弁当箱一つ多くない?」
「え」
塚本天満の妹、塚本八雲はいつも昼に自分と姉の天満のために二つの弁当を作っている。
しかし、今日は弁当箱が三つ置いてある。以前もそういうことがあったが、その時はまだ野良猫で、
今は塚本家で飼われている猫の伊織のためのものだった。
「これは、播磨さんがバスケットをはじめていつもお腹をすかせているっていうから、その差し入れ
をしたらいいんじゃないかってサラが…」
「ああ、そうかそうか」天満がニヤニヤしながら八雲の肩をポンポンと軽く叩いた。
「いや、だから姉さんちが…」
「みなまでいうな、みなまで」
「まあいいか。あの、それで姉さん」
「なあに、八雲」
「このお弁当、姉さんから播磨さんに渡して欲しいんだけど」
「ええ、なんで?八雲が直接渡してあげればいいのに」
「あの、でも」
「そうかそうか」
「?」
「今、播磨君はバスケに集中しているからね。八雲が行ったら集中できなくなるか、そうか、
そうだよね」
「いや、決してそういうわけじゃあ」
「大丈夫、お姉ちゃんにまかしんしゃい。さあ、着替え着替え」
姉の後姿を見ながら、八雲は一人つぶやいた。
「まあ、いいか」
*
同時刻、東郷邸。東郷雅一はいつものようトレーニングに勤しんでいた。
一か月前と違うところといえば、それが単なる筋力トレーニングからバスケットを
意識したトレーニングになっているという所だろうか。
「はああ、試合まであと二週間!燃えるぜええ」
「お兄ちゃんうるさい!朝から家の中でドリブルとかしないで」たまらず飛び出して
注意する妹の榛名。
「おう榛名!これから1on1でもやるか!」
「何言ってるのよ、早く学校行かないと。朝練とかもあるんじゃないの?」
「おう、そうだな!榛名、お前も何か部活やったらどうだ」
「あたしは天文部があるから」
「そうか。でもしっかり運動しないと、余計なところに脂肪がつくぞ」
「ああもう、うるさいうるさいうるさい!変なこと言ってないで、早く学校行って!」
「言われなくてもそうするさ」
「あと服も着て!」
「おおっと、そうだったな。全裸の方が開放的な気分になっていいんだが」
「いつか捕まるわよ…」
*
矢神学院高校の体育館は、朝から叫び声とボールをつく音と、
靴がすれる音で騒がしかった。
「おらおらダッシュが足りねえぞ!そんなんで練習になるか」播磨が
一年生相手に叫ぶ。さすが、バスケ経験は短いながらも、不良だけ
あって威圧感は抜群だ。
「いいぞ相棒!その調子だ」東郷が声をかける。
「誰が相棒だ」
「ようし、交代だ!」麻生の叫び声で、メンバーが交代した。普段の教室
でのもの静かな態度とは違う姿も、また新鮮だった。
「まったく、あのヒゲがよくやるわね…」沢近愛理はそんなバスケ部の
練習をのぞきなが、そうつぶやいた。
「あなたも、朝からバスケ部の練習を見学するなんて、よくやるわね」
「べ、別にあたしは。アイツが逃げてないか確かめにきただけよ」
「そういうアンタは」
「私はバスケ部の宣伝用のビデオを撮ってるだけ」
「・・・・・」
「なに」
「別に」
*
朝の練習を終えた播磨が教室に入ると、そこには彼にとってあこがれの女性が立って
いた。
「播磨君」
「て…、塚本」塚本天満である。
「毎日バスケの練習お疲れ様。普通のお弁当だけじゃあお腹がすくだろうって、これ」
「え、これは」
「お弁当だよ」
(天満ちゃんが俺にお弁当…。これは、夢じゃないよな!これは!)
「あ、ありがとう」
「いえいえ」
(天満ちゃんのお弁当!やった、バスケやって良かった!良かった!俺は幸せ者だ)
「八雲が播磨君のために作ったんだよ。こんなに喜んでもらえて、八雲も幸せ者だよ」
(いやっほおおおお)。
舞い上がっている播磨には、最後の言葉は耳に入っていなかった。播磨は、天満が
作ってくれたと間違いしている八雲の作ったお弁当をお腹いっぱい食べて、午前中の
授業は深い眠りについた。
その日の放課後。
「練習試合?」
「ああ、今度の日曜日にな」
麻生は、練習前のミーティングで、練習試合をするという事を全員に伝えた。
「助っ人で入った播磨と東郷と今鳥は、実力は十分ある。ただ、試合経験が
足りない。いきなり大会に出てもその力をうまく出し切れるかわからないから、
一度練習試合をやってみようってわけさ」
「なるほど、力試しというやつか」東郷は言った。
「んな、かったるい事しなくても十分勝てるって」
「播磨、試合はそんな甘いものじゃない。この学校よりも強いのはゴロゴロいるんだ」
「ああそうかい」
「それと」
「ん?」
「塚本も応援に来るそうだ」
「なに!」
「えええ?」
どよめくバスケ部一同。塚本といっても播磨は塚本天満を、ほかの部員たちは
塚本八雲を意識していることは、麻生にはよくわからなかったのだが、それは彼
にとってはどうでもよいことである。
「おらおら、小僧ども!ボケっとすんな。練習はじめっぞ」
ただ、播磨がやる気になったことだけはたしかなので、それで良いと思った。
しかしながら、麻生にとってはどうでもよくないことが、彼の心の中に少しだけ引っか
かっていたのだが、彼は意識的にそれを忘れるようにしていた。
700 :
Classical名無しさん:08/05/05 09:41 ID:su5vrjh6
しえん
*
練習後。もうすっかり暗くなった時間、茉莉飯店ではいつものように播磨が周防から
もらったタダ券で食事をしていた。
「毎日練習お疲れですね、先輩。はいこれ、疲れた時は酢の物がいいらしいですよ」
「サンキューな、メリー」
「サラです。いい加減名前覚えてください」
「すまんすまん」
「サラちゃん、俺のは?」サラと播磨のやり取りを見ながら、今鳥が言った。
「ああ、ごめんなさい。すぐとってきますから」そう言うと、サラは奥の厨房に行った。
「なんだ小僧。今日はここで飯を食うのか?」
「なんだよ。家に帰ってから飯を食うのが面倒だったからここに寄ったんだよ」
「おごらねえぞ」
「貧乏な播磨に奢ってもらおうなんて思わねえよ」
「ならいいんだが」
「はい、今鳥先輩」サラが今鳥の分の料理も運んできた。
「サンキュー。さ、食べよう」
「しかしお前もよく続けるよな」
「なんだよ、やって言ったのは播磨じゃねえかよ」
「まあ、そうだがよ。最近は逃げなくなったし」
「逃げてもイチさんに捕まっちまうから、無駄だと悟ったんだよ」
ちなみに“イチさん”とは、女子レスリング部最強の少女、一条かれんの事である。彼女も
播磨や今鳥たちと同じクラスだ。
「お前、結構楽しんでいるようにも見えるがな」
「そういう播磨こそ。一番やる気だしてるじゃん」
「いや、ちょっとバスケも面白いかな、って思っただけだ」
「だったら続けてみたらどうだ?」別の方向から声がしたので、二人は一瞬驚いた。
「な!」
播磨と今鳥が顔をあげると、そこには大盛りのチャーハンを持った麻生が
立っていた。
「どうした、麻生。厨房はいいのか」今鳥が麻生を見上げて言う。
「今日は客もいないし、俺もここでお前らと飯を食うことにした」
「ほう、まあいいけどさ」
「はい、麻生先輩」麻生が座ると、即座にお茶を出すサラ。
「お、ありがとう…」
麻生と一緒のテーブルになると、播磨も今鳥も何を話したらいいのかよく
わからず戸惑ってしまう。
「なあ、播磨」
「あん?」
「さっきの話の続きだが」
「なんだよ」
「お前、バスケ続けてみないか」
「何言ってんだよ」
「お前、才能あるよ」
「勘弁してくれ。試合までって約束だろう」
「だけど」
「俺みたいな半端な奴が入っちまったらよう、ほかの真面目に練習してる
連中に申し訳ねえじゃねえか」
「だったらお前も、真剣に練習すりゃあ…」
と、麻生が言いかけた瞬間。
「あれ?もしかして播磨先輩もバスケ部に正式に入部するんですか?」急に
顔をのぞかせるサラ。
「はあ?何言ってんだオメーは」
「違うんですか」
「違うよ」
「ええ、つまんないなあ」
「俺にも生活があるし、バスケばっかやってるわけにはいかねえんだよ。それに」
「それに?」
「悪いだろう、こうしょっちゅう飯を食わせてもらっちゃあ」
「あれれ?播磨さんそんな事気にしてたんですか?」
「播磨は義理がたい所があるからなあ」お冷を飲みながら今鳥が言う。
「うるせえ小僧!とにかく、あんまし迷惑もかけられねえ」
「そんなの気にしなくていいんですよ、播磨先輩ならいつでも大歓迎ですから、
ウチは」
サラがそう言うと、麻生の身体が一瞬ピクッと動いた。
*
バスケ部、練習試合当日。矢神学院高校の体育館にはいつになく人が集まって
いた。
それも矢神以外の生徒も混じっている。
「おい、あれが噂の塚本八雲ちゃんか?」
「すげえなあ、噂以上じゃねえか」
「あの隣にいる金髪のコもかわいいなあ。外国人かな」
「おい見ろよ、あそこの三人組」
「なんだ?おお!」
「一人はなんか子供みたいだけど、その隣のコ」
「あ、金髪。すげえきれいな髪してんなあ」
「あの隣の背の高い女の子も凄くねえか?」
「うお、なんつうスタイル。モデルかなあ」
「んなわけねえだろう。モデルよりもはるかにエロいよ」
どうも人は多いけれど、バスケ部の試合が目当てなのはあまりいないようだ。
「お前ら、練習試合だからって気を抜くなよ」
「当然じゃねえか」
「おう!」
「ああ?誰に言ってんだオメー。楽勝だよ」
助っ人三人組は相変わらず自信満々である。今日は二校を招いて、
三校での総当たり戦をやることになっている。
「播磨くーん、頑張ってねー!」ギャラリーから手をふる塚本天満を見て、
にやける播磨。しかしすぐに顔を元に戻し、試合前の練習に集中した。
(見ていてくれ天満ちゃん。ここで大活躍をして惚れさせてやるぜ!)
播磨は心の中で闘志を燃やしつつ、シュート練習をした。
しかし…。
「うわ」
ゴール下なら確実に入るシュートも、少し離れると全然入らない。離れた
場所からのシュートは、経験の少ない播磨にとっては鬼門だった。
「播磨さん、どうされたんですか」
「うわ!妹さん。どうしてこんな所に」
「あの、差し入れを持ってきたんです。皆さんでどうぞ」そう言ってタッパーを
取り出す八雲。
「おお、八雲ちゃん。サンキュー」
八雲の持つタッパーに手を出す今鳥の頭を播磨は素早く殴った。
「いってえなああ!」
「サンキューな、妹さん」
「はい…」
「よかったですね、播磨先輩」
「なんだアリス、お前もきてたのか」
「だからサラです。変な名前つけないでください」
「おお、悪い悪い。たかが練習試合になんでこんなに人が集まってんだよ」
「さあ、高野先輩が何かやってたみたいですけど」
「高野が?」
播磨には少しだけ嫌な予感がした。
「播磨、何やってんだ」不機嫌そうな声で麻生が呼ぶ。
「おう…」播磨には、なぜ麻生が不機嫌なのかよくわからなかった。
「なんかあったのか、アイツ」とサラに聞く播磨。
「さあ、体調が悪いんですかねえ」
「ふむ…」
練習試合は結局、一勝一敗で終わった。敗因は色々あるが、後半の
持久力の低下、それに中・長距離からのシュート率の低さなどが原因に
あげられる。校内の練習では圧倒的な戦力を誇る東郷や播磨も、はじめて
の試合ではいつもとの雰囲気の違いに、いまいち実力を発揮できないでいた。
特に播磨は、観戦にきた天満にいいところを見せようと、苦手なシュートを
打ってその多くを外したため、貴重な点を取り逃してしまっていた。
「元気出してくださいよ」サラがお茶をテーブルに置きつつそう言った。
試合後、播磨はまたいつものように茉莉飯店にいた。この日、今鳥は来て
おらず、播磨だけであった。
「俺は別に、いつもの通りだよ」
「嘘です。なんか落ち込んでるように見えます。八雲も心配してましたよ」
「妹さんが?んん…」
「今日の試合、納得いかなかったんですか?」
「まあな。しょせんは付け焼刃のバスケだしな」
「でも播磨さん、活躍してたじゃないですか」
「そりゃあ、多少は点は取ったけど、勝てなきゃな」
「まあ素人の私が言うのもなんですけど、普段の練習じゃあ、もっとスムーズ
に動いてたような気がしますね」
「確かに、上手くあいつにパスが通らなかったな…」
「パス、ですか?」
「いや、オメーも見ただろう?試合前のあいつ」
「あいつって、麻生先輩ですか」
「ああ。なんか不機嫌だったというか、元気がなかったというか…。何かあったのか?」
「いえ、特に。先輩はあんまり感情を表に出しませんからね」
「まあ、烏丸ほどじゃあねえけど、アイツも分かりにくいなあ」
「もう試合も近いっていうのに…」
そんな事を話していたら、厨房の方で大きな音がした。鍋か何かを落としたらしい。
「あ、麻生クン、何やってるアルか!」
「す、すいません!」
店長と麻生の声が聞こえた。
「ホント、何やってんだろうな、アイツ」播磨はそう言うと、すっかり冷めたスープを口にした。
*
翌日、麻生は未だにモヤモヤしたものを抱えつつ体育館に立っていた。
「麻生先輩どうしたんだ?」
「一番気合いを入れなきゃならない時期に」
麻生の不調は、播磨の不調以上にチームに影響を与える。彼はチームを引っ張る主将
なのだから当然といえば当然だ。
「おいアソ、しっかりしてくれよ。試合まで時間がないんだ。いくら助っ人がいるとはいえ、
チームの中心がしっかりしてなきゃ勝てる試合も勝てねえよ」
「あ、ああ…」力のない返事。自分でもそれはわかっていた。しかしどうすることも出来ない
事に、いらだちが募る。
「なあ」
「ん?」呼びかける声に麻生が振り返ると、そこには播磨がいた。
「シュートの打ち方を、もう一度教えてもらいてえんだけどな」
「シュート?」
「ほら、昨日の試合で全然入らなかったじゃねえか。本番では少しは入るようにいしたいん
だよ」
「播磨…」
《今も動物園に行ってるんですか?》
播磨の顔を見ると、不意に浮かび上がるあの顔。いつも見る顔だった。なぜ、
播磨の顔を見てあいつの顔を思い出すんだ、と麻生は思ったけれど、その答えを
彼はもう知っていた。けれど、そういうことは考えたくない。
「すまん、ちょっと気分が悪くて。菅にでも聞いてくれ」
「あ、おい」
「すぐ戻る」
「どうしちまったんだ…」
一度体育館を出た麻生は、行き場もなく校内を彷徨っていた。
「あら、どうしたの?」不意に、白衣姿の女性が彼の前に現れた。
「姉ヶ崎、先生?」
養護教諭の“妙ちゃん”こと、姉ヶ崎妙であった。
「あなた、バスケット部のキャプテンの麻生くんでしょう?」
「え、はい」
保健室で、紅茶を飲みながら麻生は妙と向かい合っていた。
「どうしたの?顔色悪いぞ」
「いえ…」
「恋の悩み?」
「ぶっ!」
「図星」
「違います」
「じゃあ何?」
「試合が近いんですけど、なんか集中できなくて…」
「原因はわかるの?」
「いや、それが」
「意味もなくイライラしてしまうってこと、あなたたちの時期には、よくあるのよね。
先生もあった」
「はあ…」
「だから別に恥ずかしいことじゃないのよ」
「……」
「相手の気持ちがわからない時は、思い切って相手に聞いてみるといいわ」
「え、何を」
「だから、相手によ」
「でも」
「以心伝心なんて嘘。どんなにわかりあっていると思ったって、誤解や錯覚はつきもの
なんだから。それが人間ってものよ」
「そうなんですか」
「お姉さんを信じなさい」
体育館に戻ると、菅が声をかけてきた。
「おいアソ。お前大丈夫か」
「ああ、もう大丈夫だ」
「本当か?顔色わるいぞ」
「そんな事言ってる場合かよ。試合が近いんだ、いくぞ」
「おい!いきなり動いたら危ねえぞ」
その日、麻生は遅れて茉莉飯店に着いた。
「あ、麻生先輩。今日は休むかと思ってましたけど」客が食べ終った皿を片づけながら、
サラは言った。
「大丈夫。それより播磨は?」
「播磨さんなら、今日は来ませんよ」
「どうした」
「気になります?」
「そりゃあ、いつも来てるし」
「ふうん」
「なんだよ」
*
同じ日、東郷榛名はいつも以上に緊張していた。父親が帰ってくるから、ではない。
(なんで播磨先輩がウチにいるのよ)
バスケ部に助っ人に入ってからいつも帰りの遅い兄を待っていると、その日は友人を
連れてきていた。てっきり仲の良いハリー・マッケンジーだと思っていたが、なんと
播磨拳児の方だった。
「こ、こんにちは」
「ん?ああ。こんにちは」
わりと普通に挨拶をする姿に、榛名は少し安心していた。
(なんであたし、安心しているんだろう…)
「あのコ、誰だ?」
「ん?妹の榛名だ」
「ふーん、可愛い妹さんがいるんだな」
「かっ…可愛いだなんて…」
「そんな事はないぞ!」と兄が言う。
「お兄ちゃんうるさい!お兄ちゃんが言わないでよ、まったくもう」
「見ての通りお転婆でね」
「手のかかる兄がいるとこうなるんです」
「ふふ、言うようになったな」
「まったく、仲がいいんだな」と言う播磨が言った。
「仲が良かったら、こんなに喧嘩なんかしませんよ」榛名はそう反論してみたものの、
「いや、喧嘩できるってことはいいことだぞ」と切り返されてしまった。
「榛名はこの兄の事が好きだからな」嬉しそうに言う兄。
「うるさい!なんかアブノーマルな関係だって思われちゃうじゃない」
「この通り、兄離れできない妹で、未だに彼氏の一人もできずに」
「もう!何てこというのよ!お兄ちゃんだって彼女の一人もできないじゃない」
「俺は真実の愛を探し求めているだけさ」
「何が真実の愛よ。学校でもウザがられてるくせに」
「ふう、困った妹だ」
「おい、マカロニ。お前ら兄妹が仲いいことはわかったから、そろそろ…」播磨は二人の
口げんかを遮るように言った。
「うむ、そうだな」
「え?何がはじまるの」
東郷兄と播磨は、庭に設置してあるバスケットゴールの前で柔軟体操をはじめていた。
東郷家は豪邸であり、当然庭も広い。庭には、最近東郷兄が作らせたバスケットの
ゴールがあり、夜でも使えるように証明も完備しているのだ。
「悪いな、東郷(マカロニ)。近所の公園には照明もねえし」
「ふう。俺も練習相手ができて嬉しいぜ」
「ただ、二人じゃあリバウンドの練習とか出来ねえな」
ここは何か手伝うべきなのだろうか、と榛名は思ったが、バスケ経験のない自分に何が
できるのか見当もつかなかった。
「おいおい、勘弁してくれよ」
「まったく、よくやるよな」
聞きなれない声がするので、振り返ってみると、二人の男が立っていた。
(この二人は、たしかバスケ部の人の)。
「おおい、菅と今鳥!こっちだ兄弟」
(そうそう、菅先輩と今鳥先輩だった)
「まったく、こんな所に呼び出すんじゃねえよ。おかげでデートキャンセルしちまったじゃね
えか」今鳥が携帯電話をピコピコ動かしながら言った。
「だったら来なけりゃいいだろう?学校の練習じゃねえんだから。何だかんだいいながら、
来てるじゃねえか」
「うるせえなあ、俺は負けるのが嫌いなんだよ」
「いつからそんなキャラになったんだよ」
「うるせえ!」
二人は言い合いながらも、バスケットのゴールの下にいる兄と播磨の元に
向かった。
しばらくすると、また来客が来たと使用人の一人が告げる。今度の来客には
今鳥や菅のように、約束がないので行って確認してほしいというのだ。兄の
知り合いなら、知らない人もいる榛名だったが、練習中の兄には声がかけ
辛かった為、そのまま行くことにした。
「あ、あの…」玄関先で会った来客には見覚えがあった。
「あなたは確か」
「麻生広義です。ここで東郷くんと播磨が練習してるって聞いて」手には紙袋
のようなものを持っていた。
「あ、はい。こっちです」
榛名は、兄たちのいる庭のコートに案内した。
「おお!麻生じゃないか」
「あー、お前大丈夫か?」
「アソ、店はどうした」
「ああ大丈夫だ。体も店もな」麻生はそう言うと、持っていた紙袋を近くにいた
榛名に手渡した。
「これ、差し入れが入ってるから。どこか家の中にでも置いておいて」
「あ、どうも」
「あとお土産もあるから」
「はい」
そう言うと、麻生もまた兄や播磨たちのいるコートに早足で向って行った。
「ああ、麻生。よく来てくれたよ。俺達だけで下手くその播磨を相手にするのは
しんどかったんだ」
「ああ?誰が下手くそだ。お前の方が下手だろうが、ドリブルとか」
「うるせえな。足は俺の方が速いぞ」
「足が速いだけじゃあだめだろうが」
「オラオラお前ら、練習するぞ!」
「播磨はシュート。東郷と菅はリバウンドの練習だ」
東郷邸の庭では、ボールをつく音と男たちの声が響きながら夜が更けていった。
翌日の保健室。
「あのお、先生。ちょっと頭が痛いんですけど。ベッドで休んでていいですか?」
一人の男子生徒が保健室に入って来て言った。
しかし、養護教諭の姉ヶ崎妙は「ごめんなさい、今満床なの」と言って断った。
「満床?」疑問を抱きつつも保健室を出る生徒。
カーテンで仕切られた保健室のベッドには、播磨をはじめ麻生や東郷、今鳥など
がすやすやと寝息をたてていたのであった。
*
そして試合当日。
麻生広義にとって、不安がない、といえばウソになる。しかし、やらなければなら
ない。
「麻生、たのむぞ!」怪我をした同輩も応援に来ている。
「麻生クーン頑張ってええ」学校の生徒も少なからず応援にきてくれている。
もちろん…。
「おい、アソ。何をキョロキョロしてるんだ?まさか緊張してるのか?」
「別に、そうじゃねえよ」準備体操をしつつ、周囲をうかがっていたのだが、見覚えの
ある生徒の顔が未だ見えない。
「おい播磨。さっきから何キョロキョロしてるんだ?」今鳥も菅と同じようなことを言っていた。
「うるせえ!キョロキョロなんかしてねえよ!」
「いて!殴ることねえだろう」
そんな播磨たちを横目に、麻生は立ち上がった。
「おい、アソ。どこ行くんだよ」
「ちょっとトイレ」
「おい待てよ」
麻生は落ち着かなくなり、一旦コートを出た。
(参ったな。ふっ切ったつもりだったんだが)
「あれ?麻生先輩」
「あ…」
振り向くと、色々荷物を持っているサラ・アディエマスが立っていた。
「お前、なんでここに」
「何でって、応援に来たにきまってるじゃないですか」
「播磨のか?」
「ええ、そうですけど」
「そうか…」
「播磨さんだけじゃありませんよ。矢神のバスケ部全員を応援にきたんです。
もちろん麻生先輩も」
「・・・・」
「どうしたんですか?」
「あのさ、ずっと聞こうかと思ってたんだけど」
「はい?」
「お前って、播磨のこと好きなの?」
「え、ええ?何を言ってるんですかいきなり」
「だってよ、結構仲良かったりするじゃん。付き合ってんのかなあって
思って」
「もう、先輩。誤解ですよ誤解。播磨先輩のことが好きなのは私じゃ
なくて…。ああ、これは言っちゃまずいか。とにかく、私は播磨先輩の
ことは好きじゃありません。そりゃあ、いい人だとは思いますけど、恋とか
愛とかそういう対象じゃないんです。もちろん、播磨さんの方も」
「そうなのか?」
「あ、なに。気にしてたんですか?」
「いや、別にそういう訳じゃないんだが」
「それで悩んでたとか」
「ち、違うって!」
「それならいいんですけど」
「あ、ごめん。もう時間ないから行くわ」
「そうですね、頑張ってください。後で差し入れ持っていきますから」
「今週もすまない」
「いいえ、頑張ってください」
「おう」
コートに戻った麻生は、柔軟体操を終えると、チームに合流した。
「おいアソ、遅いぞ。キャプテンがそんなんでどうなる」
「すまんすまん。さあ、今日は勝つぞ」
「ふっ、当然だ」東郷が腕を組みながらいつものように気取って言う。
「まあ、ボチボチやるさ」今鳥もいつも通りだが、一か月前とは比べ物に
ならないくらい、やる気を秘めていた。
「ったりめえだろう」そして播磨。この一か月で一番成長した選手かもし
れない。元々運動神経は良かったのだから、そこに技術と体力が加われ
ば、当然凄くなるだろう。
「今日は勝つぞ」
麻生はもう一度小さな声でつぶやいた。
エピローグ
「結局、辞めちまうのか」
「まあな、レギュラーが帰ってくるまでの間って約束だし」
麻生たち、矢神高バスケ部は、関東大会の地区予選を全勝で終え
、決勝大会に駒を進めることとなった。麻生にとって、正直試合の形に
なれば、たとえ負けてもいいとさえ思っていたのだが、まさか全部勝って
しまうとは思っていなかった。
このままバスケを続けて冬の選抜を目指そう、と何度も誘ったが播磨
はついに首を縦には振らなかった。
「俺にはやりたいことがあるからな。それに、バイトをしないと生活が…」
麻生には、播磨の“やりたいこと”はわからなかったが、バスケ以上に打ち
込めることであろうことは想像できた。
「播磨」
「なんだ」
「ありがとうな」
「よせよ。こっちこそ。飯、美味かったぜ」
「ああ、また食いに来いよ。今度はちゃんと金を払って」
「わかったよ」
そう言うと、播磨は体育館を後にした。
播磨拳児が校門を出ると、そこには従姉弟にして矢神高校の物理教諭、
刑部絃子が待っていた。
「随分楽しそうな事をしてたじゃないか、拳児くん」
「ん、まあな」
「あのまま続けていても良かったんじゃないかな。スポーツ少年も悪いくないよ」
「いや、遠慮しとく。スポーツには限界があるからな」
「そうか」
「だけど…」
「だけど?」
「まあ、ああいうのも悪くないかな、ってちょっと思った」
「良かったじゃないか。それだけでも」
「ああ…」
播磨は初冬の空を見ながら、大きく伸びをした。
花井道場にて。
「八雲君がバスケ部の応援に行ったって?彼女、バスケが好きだったんだな」
道場内でバスケットボールを持ってドリブルの練習をする花井。
「・・・・・」
それを見た周防美琴は…、何も言えなかった。
了
>>682 面白かったです!GJ!
この勢いで、修学旅行編も再構成してください!
-----天満が烏丸を追いかけて渡米した後-----
《沢近邸》
愛理:ヒゲ・・・本当に大丈夫かしら。正直ヒゲの気持ちは以前からわかってた。
もしも好きな人が目の前から居なくなったら?私ならどうするかしら・・・。
ましてや他の人を想って、追いかけて行ったのなら・・・・。
--じっと携帯電話を見つめる愛理。播磨に電話をしようか迷っている。
愛理:ねぇヒゲ・・・私ね、天満が居なくなって、友人として凄く寂しい。
だけど天満の恋を応援できるから、天満がここにいなくても納得てきるんだけどね。
アンタみたいな元気だけが取り柄みたいなバカが、落ち込んでいるのを見ていると
放って置けないのよ。
--播磨の写真をそっと手に取る(以前中村が勝手に盗撮してきたものw)
愛理:行き場の無くなった分・・・それだけ想いは深くなるのでしょうね・・・。
--自分にとっても想いの行き場が無くなるような
どうしようもない悲しみが湧き上がってくる・・・・手が震え、いつものような
自信に満ち溢れた自分を保っていられなくなる。
愛理:「私、ヒゲのことをこんなに好きだったなんてね・・・・」
--突然携帯電話が鳴り出す。播磨からの着信。
愛理:「あ!あら?ヒゲ?!どうしたのよ?!」
播磨:「あ、お嬢、あのよ・・なんつーかおめぇにも色々世話になったな・・」
愛理:「はぁ?何なのよ急に。」
播磨:「俺よ。ちょっと旅に出ようかと思ってな。」
愛理:「・・・・また放浪?それとも旅行なの?」
播磨:「・・・・しばらくは・・・帰ってこねぇつもりだ。」
愛理:「ま!待ちなさいよっ!それで色々な人に挨拶して回ってるってわけなの?」
播磨:「まーそーいうことだ。つってもまだオメーにしか言ってないんだけどな。」
愛理:「・・・・で、どこにいくの?アテはあるの?」
播磨:「海外でよ、俺もちょっとしっかりしねぇとな。絵を本格的に描こう・・・
なんてまー柄にもねーし、今まではポンチ絵しか描いてなかった
んだけどな!見たこともないようなところに行って世界を見てよ。
貧乏な旅になるだろうけど。」
愛理:「・・・・そうね。前に絵を描いてるって言ってたわよね。っていうかどうだったかしら?
私は知らないけど天満に聞いてたから。
何かに一生懸命頑張れるのは素晴らしいと思うわよ。」
播磨:「そ・・そうか?俺またてっきりオメーに『逃げんじゃねー!』って言われるかと・・」
愛理:「ど、どうして私がアンタを止める理由があんのよっ。逃げじゃないじゃないの!
もう天満は居ないのよ。
そうやって死にそうな顔をされてるより、前向きに頑張ろうとしてるんだったら
・・・・だったらそっちを応援したほうがいいじゃない・・・。」
--涙が溢れた。次々にこぼれる涙をどうしても止められなかった。
播磨には放浪癖があるということはわかっていたが、すぐに帰ってはきていた。
今回はもう帰ってこないのではないかと、播磨が本気で天満のことを忘れるために
自分を奮い立たせているということが播磨の口調からも愛理には痛いほど伝わっていた。
天満に対する想いの深さを思い知らされ打ちのめされそうになる・・・・。
播磨:「!?!?お!オメー泣いてるのか??」
愛理:「はぁ?何言ってるの?・・・・・・
・・・・・・ううん。泣いてるわよ。泣けるわよね・・・。」
播磨:「・・・・・・・・・・・」
愛理:「私はまともに男と付き合ったことがないって、前にアンタに言ったわよね。
でも今はアンタの悲しい気持ちが何故だかわかる気がするのよ・・・
おかしいわね。」
播磨:「同情〜〜かよ。氷のような女かと思ってたけど。まー・・その・・ありがとよ。」
愛理:「わ、私だってそんな感情あるのよ、やさしい気持ちだって!氷って何なの・・!!」
播磨:「冗談だろw」
愛理:「・・・・あのねー!まぁ冗談が言えるんだったら安心したわ。」
播磨:「それでよ・・・お前に借りがあるっていうのも電話した理由なんだがよ。」
愛理:「何のことよ?」
播磨:「今お前ん家の前にいっからよ、ちょっと出てきてくれねーか?すぐ終わるから。」
愛理:「エエエエエエェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェェエエエエエなんで前もっていわないのよっ!!」
(あああ!もうなんて人なの!!お風呂上がりで髪もセットしてないのよ!!
それに今泣いてるのよ!泣き顔なんて恥ずかしくて見せらんないわよ!!!
っていうか前もって連絡するなりしなさいよ!!)
「す、すぐに向かうから待っててちょうだい。」
--顔を大雑把に洗い、髪はまとめずに手早く櫛で梳かし慌てて門に向かう愛理
門の前には既に今から出立するかのように大きな旅行かばんを持った播磨の姿。
播磨:「おう!急にすまねーな!!」
愛理:「(ほんとに急すぎるわよ。)お待たせしたわね、で、何か用?」
播磨:「前によ。。。お前に金借りただろ俺。」
愛理:「?・・・そうだったかしら?覚えがないわ。」
播磨:「その・・・前にレストランで偶然会っただろ。俺の持ち合わせがなくて代わりに・・・」
愛理:「ああ、あのことね、もういいってば^^」
播磨:「俺、漫画で・・・ジンガマっていう雑誌で新人賞とってよ。賞金出たから
ほんと遅くなってすまねーんだがよ。」
--そう言って賞金の封筒から直にそれを取り出し愛理に渡そうとする。
愛理:「いいんだって!!ほんとうに。」
--播磨が差し出した現金を押し戻すが、播磨が愛理の手を無理に掴み、現金をしっかり握らせる
播磨:「これは受け取ってくれ。あの時もそうだったけどよ、なんだかんだ言って
結構お前には世話になったな・・・・」
愛理:「・・・・・・・」
愛理:「・・・・・・・アンタその格好・・・・」
播磨:「今から出ても飛行機は無ぇんだけどな、この街の夜はどうだったか、朝はどうだったかを
覚えてから行くから、今晩はこの辺をずっとブラブラして
明日の早朝にでもちょっと行って来る。」
愛理:「そう・・・」
播磨:「じゃ、借りは返したぜ。」
愛理:「電話・・・しなさいよ。」
播磨:「え?」
愛理:「かっ家族くらいにはちゃんと連絡しなさいよ!!って言ってるのよ!!」
播磨:「まー適当にするわ。じゃーな」
愛理:「待ちなさい!!」
播磨:(振り返って)「?」
愛理:「・・・・アンタもう帰ってこないつもりなのね。」
播磨:「・・・・・・・・・・・・・」
愛理:「お金・・・無いくせにバカね。」
--播磨の手をそっと掴み現金を渡す。
愛理:「こんなことしかできないけど・・・っていうようなんじゃないわ!あげるんじゃないの。
これは投資なの。あんたがしっかりして大きな男になって戻ってきたら
出世払いして返してちょうだい!だからわかるわよね。」
播磨:「あ!あったりめーだろ!俺はBIGになる!何倍にもしてやんよ。」
愛理:「わかってるわね!!!」
播磨:「・・・・ああ、帰ってくるからよ。じゃぁな。」
播磨が荷物を持って、ゆっくりと歩き出す
愛理:「ねぇ!ヒゲ!!!」
播磨:「・・・・?」
愛理:「・・・・・・・・・・・・・・・いってらっしゃい。」
--播磨はそのまま旅にでかけてしまった。
:*:・。,ねぇ、ヒゲ、:*:・。,
:*:・。,乱暴でがさつで男くさくて゚'・:*:・。
:*:・。,バカでまぬけでどうしようもないアホだけど゚'・:*:・。,
:*:・。,私アンタのこと本当に好きだったの゚'・:*:・。,
:*:・。,゚'・:*:・。,本当に好きだったわ・・・ ,。・:*:・゚',。・:*:
《3ヵ月後》
-----播磨が旅立った後、3ヶ月後刑部先生のもとに手紙が届いた。
現在はインド(何故だかは謎)で様々な人の世話になりながら元気でやっている。
そしてゾウに乗ったとだけ書いてある簡素な手紙。
絃子:「拳児くんが手紙を書いてよこしてくるのは意外だったな。」
高野:「ポエムな内容かと思ったけど、意外にあっさりしてるのね。」
愛理:「へー意外と外国で暮らせてるのね。野生のなせるわざかしら。」
(わりとバイタリティがあるからどこでも生きていけそうよね。)
愛理:「私も頑張っているわよ・・・あなたに負けないようにね。」
《更に1年後》
愛理はデザイン学校に進学していた。服飾の仕事でプロになることに決めたのだ
播磨からようやく2便が刑部先生のもとに届く。
『おう!現在俺は何とサンタフェに居る。毎日絵を描くか、でっけーガラクタ屋(古美術商つーのか?)
の倉庫でバイトしてるぜ。以上』
愛理:「・・・っていうか刑部先生・・・なんで私のところに転送してくるのよ・・・。」
あきれたようなうれしい顔で愛理は手紙を大事にしまった。
《更に5年後》
愛理はデザイナーの職に就いたといってもまだひよっこなのだが。毎日仕事に追われ
播磨からの便りもあれ以来全く無く、愛理も時々思い出すことがあるくらいで
日々の仕事に忙殺されていた。そんなある日高野から愛理に電話がかかってくる。
高野:「愛理、○×新聞を見てごらん。おもしろいことが載ってるから。」
そういわれるや否や新聞に目を通すと・・・・
播磨の絵画が何故か海外でブームになっていた。すっかり海外では有名人になっているようだ。
愛理:「本当にBIGになるなんて・・・流石は野生のパワーね・・・。」
播磨は本当に自分でBIGになる!と言ったとおり絵画の分野で成功していた
愛理は自分のことよりも心から嬉しかった。
愛理:「ふー。。今日も仕事仕事で疲れたわ・・・だけど本当に驚いた。何故手紙を
くれないのかしら。」
新聞の播磨の記事を見つめながら愛理はベッドに横たわった。
携帯電話が鳴る。見知らぬ電話番号からの着信。
愛理:「もしもし。」
播磨:「おぅ。元気か?」
愛理:「・・・はぁ?」
播磨:「俺俺、播磨。」
愛理:「はぁあああ?なんで?なんなの?急に?!?!」
うれしすぎて声が裏返るのがわかる。恥ずかしいくらいに早口になってしまうのが
自分でわかってしまう。
播磨:「今お前ん家の前にいっからよ、ちょっと出てきてくれねーか?すぐ終わるから。」
愛理:「なんでアンタはいっつもいっつも急なのよ!!」
播磨:「お前に借りを返すからよ。早くしろ。」
なつかしい播磨の粗野な口調・・・
急いで廊下を走り階段を駆け下りて扉を開ける
門までがとても遠くに感じる。
門を開くと、昔と変わらぬ姿で播磨が立っていた。
播磨:「おぅ。」
愛理:「ねえ、なんでこういっつも急なのよ!?あきれるわよ。」
播磨:「急にこっちに来ることになったんだ。」
愛理:「返してとかいったけどあんなのもういいわよ・・・。」
播磨:「あんとき正直よ、金に余裕もあんまなくて、ありがとな。」
愛理:「昔もありがとうとか言ってたけど、そう何度も何度も言われちゃ
気味が悪いわよ。」
播磨:「相変わらずだな。」
愛理:「ふふ・・・・アンタもね。」
播磨:「あーこれやるよ。これで何倍にも返したからな。」
それは現金ではなく播磨の描いた絵であった。箱にはいっているので
どんな絵なのかはわからない。
愛理:「え?あ、ありがとう!でもいいのかしら・・・もらっても?」
播磨:「お前に描いた絵だから。」
愛理:(こいつはこーやって女をたらすのね。きっとなーーんも考えてないんだわ。)
愛理:「ふん。じゃーもらっとくわ。」
播磨:「俺よ。日本離れてずっとずっと忘れるのに苦労したんだ。・・・・
・・・その・・・塚本のことだけどよ。まー知ってただろ俺の気持ち!」
愛理:「何よ。知ってたわよそんなこと。だからなぐさめてやったんじゃないの。」
播磨:「一生懸命だった・・・・・!」
愛理:「そうね・・・・」
播磨:「好きだった。」
愛理:「?・・・・」(なんでこんなこと私に言うのかしら・・・こんなにキッパリと)
播磨:「でも、そういう想いとは別で俺、別に塚本を忘れるためだとかじゃなく
お前のことも好きだったぜ。」
愛理:「!・・・・・・な。。。ななななに言ってんの?」
播磨:「お前が神社であのときに、その・・・塚本がアメリカに行ったすぐあとに
俺の目を他の男とは違うって言ってくれたことが・・・ もっと後になって
気づいたんだけど・・・もしかしてって。」
愛理:「遅すぎるのよ!!ばっかじゃないの?!?鈍感すぎるのよ!!」
なみだ目になって、自分の気持ちが播磨に通じていたことが、遅くなったけど通じていたことが
うれしくて涙が出た。
播磨:「遅くなってすまん。」
愛理:「・・・・・・」(泣き顔を見られないようにうつむく愛理)
播磨:「また、行かなきゃなんねぇ。またな。」
愛理:「ちょ!ちょっとまちなさいよ!」
播磨:「じゃーな。」
愛理:「待って!!待ってよ!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
夢から覚めた。起きると誰も居なくて、いつもの部屋でいつものベッドだった。
枕元の新聞は播磨の記事。開いたままいつのまにか寝入ってしまっていた。
なんだか夢だったなんて信じられないくらい鮮明に耳に声が残っている。
「好きだった」
それは過去形だけど。確かに播磨が自分に言ったセリフ。一度たりとも過去に言ってくれた
ことのなかった言葉。夢の中だったことが本当にくやしくて悲しい。
鏡の中の自分を見つめると涙が乾いて跡になっていた。
愛理:「寝ていても夢で泣けば本当に涙は出るのね・・・」
妙に納得してもう一度目を閉じた。
《それから1年後》
中村:お嬢様、そろそろお支度をお願いいたします。
愛理:わかったわ。
今日は愛理の婚約披露のパーティである。
もちろん好きな人ではない。親の決めたとおりに親のすすめるままに今日に至ったのだ。
ずっと縁談絡みの話題からは逃げていた。仕事を理由に何度も申し出を断ってきていた。
だが、婚姻後も仕事を続けても良いということと、結婚相手の人間的な性質が良い、好もしい人
物だったため(愛してはいないが)そろそろ身を固めることになったのだ。
婚約者:「愛理さん、とても綺麗ですよ。このドレスにしてよかったです^^」
愛理:「ありがとうございます^^」
婚約者:「会場に行くともう色々食べれなくなりますから・・あ、女性はね^^
前もって食べておきなさい。少しお茶にしましょうか。行儀悪いかな?」
愛理:「では、少し飲み物を・・・。」
婚約者の男性と一緒に小さなテーブルでドレスに気をつかいながら休憩していた。
中村:「お嬢様、お話がございます。」
愛理:「なに?」
いつもはポーカーフェイスの中村が顔を青くしている。
愛理:「中村?」
中村:「その・・・こちらでは申し上げにくいのですが。」
愛理:「・・・・○○さん、ごめんなさい、少しはずしますわね。」
婚約者:「はいどうぞ。」
中村と別室に移る愛理
愛理:「どうしたの?」
中村:「このようなおめでたい日にこのようなことは非常に申し上げ辛いのですが・・・。」
愛理:「いいわよ。気になるじゃないの。」
中村:「昨日・・・・」
「昨日・・・・播磨様がお亡くなりになったようです。」
愛理:「・・・・・・・」
-------
-------静かだと思っていた部屋全体に会場に集まる人々の歓談の声が反響する。
中村が何を言っているのかがわからない。冗談は言わないでほしい。
何故この日にいきなり何を言い出すんだ。
あいつがもういないなどと。冗談じゃない。野生なんだから。
そんなに簡単に死んだなんて冗談はやめてほしい。
やめてほしい。
愛理:「や・・・なにを・・・え・えぇ・・?」
中村が目頭を押さえて涙ぐんでいる。愛理の気持ちを昔からいつも察してくれていた中村が
本当に涙を堪えている。
愛理:「ほん・・とう・・なの?」
中村:「先ほど刑部様からこちらに連絡がございまして、同時刻にご友人の方々からも
同様のご連絡がございました。このような日でもございましたし
ですが、ご友人の方々がどうしてもご連絡をとりたいとおっしゃって・・・・
一度お嬢様にご連絡差し上げるとお切りしましたので
お嬢様からご連絡をおとりください・・・。」
そういうと中村は電話を愛理に渡した。
播磨は交通事故での急死とのことだった。
あまりにも突然だった。
しかし婚約パーティは開催され、愛理は心を置き忘れたまま
友人も来ないまま主役の自分を必死に保った。
ねえ。ヒゲ、あんた何で死んじゃったの・・・
私今日婚約したのよ・・・・。あんたのお葬式もまだなのに。
何故だか実感が無いのよ。あんたがもう居ないのに、私普通にパーティに出席しているの・。
それでね、わたしこの人と結婚するの。
アンタとちがって普通の人よ。お金持ちで冒険もしないような
面白くともなんともない人だけどいい人なの。
いいひとなの。
どうしてかしら、涙が出ないわ・・・・
どうしてかしら。
--------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------
《後日》
残された遺品の中から播磨のご家族が愛理におくったものが
1枚の絵とサングラスであった。
その絵は愛理の肖像画で、愛理がキャンバスの中でいっぱいに微笑んでいる絵だった。
ヒゲへ
アンタは一言も好きだとも愛してるとも言ってくれなかった。(そんな柄ではない)
そもそも、そんなこと言ってもらえるような関係でもなかったし
本当に見交わすだけの私の一方的な恋だった。
だから何故このような絵をアンタが描いたのかを聞くことはもうできないけれど
私ね、この絵を見て、想いは遂げられたと思ったの。
ありがとう。
私きっとずっと好きだと思うアンタのこと。
・・・これはみんなには内緒ね。
=完=
すいません。シリアス過ぎてなんかアレでしたね。
初めて書いたのでご容赦ください。
>>682 乙です
バスケ編は正直嫌いでしたけど、このSSは楽しみながら読めました
次回作楽しみにしています
やっぱつまらんな。
麻生がバイト先で食べ残しを再利用とかで問題になるSSなんてどうだ?
すごい大量投下の連発はなんだ!?この世の終わりがきたのかと思ったぜ
とにかく職人GJ
2人ともGJ!
>>716 東郷家楽しそうだなあ
榛名かわいいよ
>>733 初めてだこれだけ書けるのはすごいなあ
シリアスなのもよかったです
でも顔文字なんかはできるだけ使わない方がいいですよ
ゴールデンウイークも終わりか…
>>733 旗妄想乙www
二度と駄作投下すんなボケ
病気とか死亡ネタとかはあんまり評判よくない?
悪いよ。
というより
顔文字やキャラの名前を台詞の前に付けてる時点でどうかと…
同意せざるを得ない
まあそのへんはおいおい改善されていくかと
昔は書き手の為のスレもあったんだけどね
顔文字や台詞前のキャラの名前は、小ネタの長さならアリな表現だとは思うけどね
色んな漫画やゲームなんかのキャラ専用スレで投下される一口SSに良く見かけられるし
まぁ、有りっちゃあ有りって事で良いんでない?
しっかりきっちりしたSSだけを受け付けるってスレでも無いんだし
長編の播磨愛理ねたを投下した者ですが
勉強になりました。ありがとうございます。
748 :
Classical名無しさん:08/05/14 11:53 ID:bPo4qkmQ
age
作者の言いたいことをキャラにいわせるってありかな
ギャグならまああり
シリアスとかでやるんならその発言をするキャラを
慎重に選んで話も上手いことつくらないと厳しい
基本的にキャラの背後に作者が透けて見えるのはあんま喜ばれんと思う
あんまり言いたくないけど
旗おに系は少し自重してほしいな
ただでさえ一部のワケワカメは過剰に反応するし
待望の旗がたった2週で終わった反動なのか
妄想SSが酷過ぎるな…
>作者の言いたいことをキャラにいわせるってありかな
妄想を形にするんだから大なり小なり作者の伝えたいことは入っちゃうわな
痛いHPとかにある、自分とキャラを語らせたりってのはもう見てられないけどw
そういうのを抑えようとする努力は必要だと思う
キャラが言うなら問題ないけど
名前だけキャラで中身が作者なヤツに言わせるのはいけない
各々のキャラをその人がどう理解・分析してるのかってにも寄るよなぁ
大抵は本編・そのキャラについての雑談・SS投下した他人のキャラ象とか色んな物が混じってるけど、
そのズレが大きいほど作者に言わせてる感に繋がるかもしれない
まぁ、一回投下してみてくれんと分からんって事なんだ。頑張れ、749
>>680 花皿の次は過去捏造系の花高SS書いてみた
758 :
花高:08/05/16 21:07 ID:IinAOMJU
趣味は貯金。当然、そのためにアルバイトをいくつも掛け持ち、少々危険な仕事もこなしている。
そんな高校生、高野晶は中学生の頃は友達付き合いが悪く、親しい友人は一人もいなかった。
中学生時代もテストでは学年でトップに絡む成績と頭が良く、どこか達観しているような感じを人に与える高野は、いつも近寄りがたい雰囲気を持っていた。
教室ではいつも一人で読書をし、必要最小限の会話しか交わさない彼女は、自然にクラスから孤立していった。
それでも、特に問題児でもないので、クラスの担任はそれを放置していた。何かと忙しい教職に就いている先生は、できるだけ問題を抱えたくないものだ。
しかし、それを放っておけない男がいた。この頃も学級委員長を任されていた花井春樹だ。
「老人と海か。どんな話の本なんだ?」
高野が自分の席で読書をしていると、ふいに声をかけられた。
彼女は声だけでこれが誰なのか判った。このクラスになってから毎日のように声をかけられていたからだ。
「老人と海の話よ」
高野は本を読みながら適当に答えた。彼女に花井と真面目に話すつもりはなかった。委員長が仲間はずれを哀れんで来ているようにしか思えなかったのだ。
「タイトルのまんまじゃないか。もう少し詳しく教えてくれないか」
「そんなに知りたいなら本を読めばいいわ」
「そ、それはそうだが……」
花井は勉強はできても、こういう駆け引きで頭は回らなかった。今回も簡単に撃退された彼は、すごすごと席に戻るしかなかった。
759 :
花高:08/05/16 21:08 ID:IinAOMJU
次の日も、花井は懲りずに読書中の高野に話しかけていた。要領は悪くても、やる気と根気だけは人一倍あるのが彼だ。
「昨日読んできたよ、老人と海!」
そう言われて、高野は思わず本から顔を上げた。彼の手には文庫本がしっかりと掲げられていた。
「どうだった?」
反射的に本の感想を聞いていた。同じ本を読んだのだ。その内容の受け取り方に違いがあるのか彼女は気になった。
「うん、作中のパワフルな老人に感動した。僕も大海原に出て巨大なカジキを倒してみたいと思ったよ」
高野はその幼稚な感想に落胆した。このメガネと本の話をしても無駄だと思った。だから「そう」とだけ返事をしてさっさと視線を手元の本に戻す。
「高野君はどんな感想を持ったんだ?」
「花井君と同じよ」
興味がなくなったので、高野は心にもない感想を述べる。それでも、花井はそれを好意的に受け取った。彼には空気を読めない所がある。
「ホントに? 僕と気が合ったりするのかな」
「それはないから」
「ハハッ、そうか……」
にべもなく否定され、花井は苦し紛れの笑い声を上げていた。
花井に対する高野の態度は日増しに冷たくなっていった。一度見限ると、花井が以前より鬱陶しく思えてきたからだ。
ほどなくして、花井に話しかけられても無視するようになった。
それでも、彼は諦めなかった。一日に一度声をかけては無視される。そんなのを一週間は続けていた。
一日に一度の接触もうざったく思えたある日、高野はついに花井に最後の引導を渡した。
「高野君、今日は何を読んでいるんだ?」
今日もやって来た花井に、高野は朝から考えていた言葉をぶつけてあげた。
「もう話しかけないで。私はあなたが嫌いなの」
高野は本を見たままで、花井の様子は見ようともしなかった。見なくても彼の顔は想像できる。酷くショックを受けて落ち込んでいるか、逆に怒っているかのどちらかだ。
花井は何も言わずに離れていった。席に戻って机に伏せるのが、高野の視界の隅に見えた。酷く落ち込んだようだった。
760 :
花高:08/05/16 21:10 ID:IinAOMJU
高野に嫌われた花井は、まだ諦め切れていなかった。彼女を見捨てるわけにはいかない。正義感を大事にする彼は、どうしたものかと困り果てていた。
花井は二階の自室のベッドに寝そべって考えていた。しかし、どれだけ頭をひねっても名案は浮かばない。彼女に嫌われてしまった今、何をしても裏目に出るだろう。
自力での解決は不可能だと判断した花井は、助っ人に頼ることにした。ベッドから飛び起きた彼は、開いていた窓から頭を出した。
「すお〜、助けてくれ〜」
「なんだよ、情けない声だして」
向かいの家の窓から顔を見せたのは周防美琴だった。花井が泣きついたのは幼馴染で中学でもクラスメイトの美琴だった。
高野と同じ女子なら男子よりは警戒しないだろうと彼は考えたのだ。
「高野君に嫌われたんだ。もう僕では彼女と友達にはなれない。周防がなってやってくれないか?」
「あんだけしつこけりゃ、嫌われるって。大体さぁ、ほっとけばいいだろ。高野も独りが好きなだけかもしれないし」
「そうだとしても、そんなの寂しいじゃないか。頼むからさ」
「そー言われてもな」
「このとーり!」
花井は合わせた手を頭の上に掲げた。周防はその真面目さに呆れもしたが、他人のためにそこまでできることを凄いとも思った。
「しゃーねーなー。うまくいくかわかんねーぞ」
「すまん」
渋々といった感じを装いながら承諾する美琴。あれこれ言いながらも、彼女は花井に甘いところがあった。
彼の真剣な態度が功を奏し、美琴が協力してくれることになった。
761 :
花高:08/05/16 21:12 ID:IinAOMJU
翌日、花井に頼まれた美琴はさっそく行動に出た。
ホームルームが終わってすぐの放課後、高野を捕まえるべくダッシュで向かう。
「おい高野、一緒に帰らないか。おいしいケーキ屋を見つけたんだ。おごるからさ」
「うん、行く」
二人が即効で仲良くなったのを見て花井が机やイスを巻き込みながら派手にズッコケた。どうやら高野は「奢る」という単語に反応したようだ。
花井は机の山から這い出ると、ずれたままのメガネで高野を見た。
「なんじゃそりゃ! 僕の苦労は一体……」
「もらえる物はもらう主義なの」
そう聞いたら花井も黙ってはいられない。ここで太っ腹な所を見せて仲直りをするのだ。メガネをかけ直し、服のホコリを払った。
「じゃあ、僕も何か奢ろう――」
「ただし、花井君は別。嫌いだから」
しかし、その願いもあっという間に打ち砕かれた。高野晶は容赦なしだ。
「NOォオオオオ!!」
「ハハハ、マジで嫌われてんだな」
またしても正面から「嫌い」と言われ、花井は絶叫しながら教室を飛び出した。
以上が、高野と美琴が友達になるまでの中学生時代の思い出。
762 :
花高:08/05/16 21:13 ID:IinAOMJU
高校生になり、高野は多くの友人を得た。美琴の他にも天満、沢近と二人の親友が加わり、茶道部では八雲、サラと可愛い後輩もできた。
気の知れた仲間ができ、学校生活は格段に面白く、充実したものになった。
そして、高野は教室の隅から花井を眺めていた。彼女は思い返す。
中学の時、まだ単にクラスメイトの関係だった美琴がケーキをご馳走してくれたのは、彼が私を心配して頼んでくれたからなのだろう。
彼が親友を作るきっかけを与えてくれたのだ。それなのに、彼に辛く当たることしかできなかった。
そんな高野の思考の最中も、花井は騒々しかった。
「ヤクモくーん! 今日はバイトのない日だったね。今日こそ茶道部に顔を出すぞ」
誰も訊いてもいないのに、花井は放課後の予定を発表し、いつもどおりのバカっぷりを披露していた。
それを聞いていた高野は仕事が増えたことにため息を漏らす。八雲のためにも、彼が茶道部に侵入するのを阻止しなければならないのだ。
と同時に、彼を苛められることが楽しみで仕方がなかった。彼の困った顔を見るのは嫌いではなかった。
もしかすると、彼女のこの態度は好意の裏返しかもしれない。
高野の目が花井を追う頻度は、日増しに増えるのだった。
終
またマイナーカップルでスマソw
乙
短い中でポンポン視点が飛んじゃうけど、文章を書くのは慣れてる感じがするなー
何より面白かったよw
ちょっと気になった例として、
>>758での
>「老人と海か。どんな話の本なんだ?」
> 高野が自分の席で読書をしていると、ふいに声をかけられた。
> 彼女は声だけでこれが誰なのか判った。このクラスになってから毎日のように声をかけられていたからだ。
>「老人と海の話よ」
> 高野は本を読みながら適当に答えた。彼女に花井と真面目に話すつもりはなかった。委員長が仲間はずれを哀れんで来ているようにしか思えなかったのだ。
「老人と海か。どんな話の本なんだ?」
自分の席で読書をしていると、ふいに声をかけられた。
声だけで誰なのか判る。同じクラスになってからというもの、休みなく毎日のように声をかけられていたからだ。
「老人と海の話よ」
真面目に話すつもりもなく、本を読みながら適当に答えた。それは、彼が仲間外れを哀れんで来ているとしか思えなかったから。
とかどうだろう
節約できる所とボリュームかけて書いていく所をメリハリつけたら良さそう。な、気がするw
文体とか個人の好みなんで、他人の世話だと思ってくだされば
ホント久しぶりに来てみたら色んな人が面白いものを投下していて嬉しくなったわww
過疎ってるな
自分の意志がなく流されるままの八雲ってスゲー描きにくいキャラなんだな
過去の作品見るとある程度積極性のある子に改変されてるか
状況が都合よく流れてくれるかのどっちかだった
自分らのスレに帰れ
768 :
Classical名無しさん:08/05/18 10:36 ID:pI11HVNg
>>766 どの地点の八雲を書くかによるんじゃね?
踏み出せずに流されていれば良かった頃ならそう書けばいいし、
自分の意志で行動しだした頃ならある程度の意志を含ませればいいし、最近の八雲ならしっかり意志もって行動してる、みたいにね
たくさんのSSを読んでその2種類しかなかったと思うのなら、それ以外の八雲象を作ればいいだけのこと
ハリマのごとく!
プロローグ
その日、播磨拳児は同居人で従姉の刑部絃子から信じ難い事、いや、一般的には信じ難
い事なのだけど、彼女にとってはそうでもない事を言われた。
「はあ?なんだって」
「何度言ったらわかるんだ。明日から一週間、私は出張があるからキミはこの家を出てくれな
いか」
「おいおい、何で俺が出て行かなきゃならねえんだよ。出張なんて勝手に行ってくりゃあいい
じゃねえかよ」
「それはダメだ」
「だからなんで?」
「また女を連れ込んだらどうするんだ」
「そんな事するかよ!だいたいまたって何だよ“また”って」
「とにかく、一週間この家は閉鎖する」
「無茶苦茶だ」
「文句があるなら、先月から滞納している家賃を払いたまえ」
「そ、それは…」
「わかったかい?」
「おい、じゃあ俺はどこに行きゃあいいんだ」
「安心しろ、実はアルバイトを紹介してもらったんだ。食事付きので住み込みのバイトだ。
しかも高収入」
「なんだそりゃあ。まさかマグロ漁船じゃえねえだろうなあ」あれはもうこりごりだ、と播磨は思っ
ていた。
「そんなんじゃない。もっと優雅なものだよ拳児くん」
「優雅?」
「とにかく、これから一週間、そのバイト先で心身ともに鍛えられてきたまえ」
「鍛えられる…」
わけのわからぬまま、家を追い出された播磨は絃子に指定された場所に向かうので
あった。
第一話 とらの穴
刑部絃子から教えられた場所は、矢神市郊外にある古びたビルであった。幽霊でも出そうな
ビルだが、その二階にある事務所には、「矢神人材派遣センター」と書かれている。ドアを開け
てみると、やたら背の高い男が目の前にあらわれた。
「お待ちしておりましたぞ、播磨殿」
「なっ、お前は…。お嬢のトコの」
目の前にいる背が高くがっちりとした体格、そして執事服に身を包んだその男を播磨は知って
いた。彼のクラスメイトである“お嬢”こと、沢近愛理の家の執事、ナカムラだったのだ。ちなみ
に元軍人らしく戦闘力は非常に高い。
「これより私のことは、教官と呼びなさい」
「はあ?何言ってるんだ」
「これから一週間行う仕事のための研修を行うのです」
「研修って…、一体何の仕事だ」
「私を見てわかりませぬか」
「じょ、女装…?」
ナカムラの鉄拳が播磨を襲う。
「ぶべら!!」
「あれは趣味であって、仕事ではありませぬ」
やっぱりそういう趣味なのか、と播磨は思ったが口には出さなかった。
「執事でございます。播磨殿にはこれから一週間、あるお家で執事の仕事をやってもらうのです」
「し、執事だああ?」
バーテンダーならやったことがあるが、執事など自分の生活とは一番遠い世界だ、と播磨は
思っていた。
「やれるわけねえだろう、俺は不良だぞ」
「しかしながら給料は良いようです」そう言うとナカムラは労働契約書を見せた。
「こ、これは」
確かに他の仕事に比べてはるかに高待遇であることは間違いない。拘束時間が長いのがネック
だが、それも一週間だけと考えれば安いものだ。播磨は自分の持っている財布の中を見た。
合計金額は…、十二円。
「わかった。やるぜ」背に腹は代えられない、というやつである。「それはいいんだけどよ」
「は、なんでございましょう」
「なんでアンタが教官なわけ?お嬢の家は?まさかクビになったのか」
「違います。私は矢神執事協会の会長をしておりまして、時々こうして執事の研修に協力
しているのです」
「そんな協会があるのかよ…」
「それでは早速参りましょう」
「参るって、どこに。神社?」
「決まっておりましょう。執事の研修といえば」
「研修と言えば?」
「執事虎の穴でございます」
「虎の、穴?」
執事虎の穴は山奥にあった。ボロい山小屋である。こんな山奥にこのオッサンと二人きり
でいて、大丈夫かな、と播磨は思った。主に貞操的な意味で。
「いつまで歩かせるんだよ畜生」
「これも研修のうちですぞ、播磨殿」
山小屋は、外見はボロかったが、中はわりと奇麗に掃除されていた。
「遅かったわね、播磨くん」
「た、高野!なんでこんな所に」
「バイトよ。新人研修の補助をしているの」
高野晶、播磨と同じクラスの生徒である。頭脳明晰でかつ、何やら色々とアルバイトをしてい
るという噂の女。
「高野さまはお若いのに礼儀作法などにお詳しいようですので」とナカムラが言う。
「茶道部だからね」
「やれやれ…」播磨はこれから面倒なことが起こるのだろうな、と半ばあきらめ気味にため息をついた。
それから数時間、播磨は高野から紅茶の入れ方を徹底的に教え込まれた。
「温度が高いわよ、やりなおし」
「って、ここまで来てやり直しかよ」
「文句を言わない。ほら」
「へいへい」
「返事は一回」
「はーい」
「姿勢が悪い」
「姿勢は関係ねえだろう」
「バカね、執事はいついかなる時も人に見られているという事を忘れないで。背筋は
いつもピンと。ナカムラさんを見習いなさい」
あまり見習いたくはねえな、と播磨は思ったが口には出さなかった。
その後数時間ひたすら紅茶入れの訓練をしたころ、すっかり夜も更けてきた。
「ああ、腹減った…」
そういえば朝食以降何も食べていないことに播磨は気がついた。紅茶は飽きるほど飲んだが。
「では夕食に参りましょうか播磨殿」と数時間ぶりに登場したナカムラ。
「夕飯ってなんだ」と播磨は聞く。
「それはわかりませぬ」
「食事は自らの手で獲るものよ」いつの間にか、タンクトップに戦闘ズボン、そしてジャングル
ブーツを履いた高野晶がそこにいた。
「さあ、これで今夜の食事をGETしなさい」そう言ってサバイバルナイフを突き出す高野。
「おい、何だよこのナイフは。ってか夕飯は?」
「一流の執事たるもの、どんな状況かでも食糧を調達できなければなりませぬぞ」そういい
ながら、ナイフで木の枝を尖らせているナカムラ。あれでの猪でも獲るのだろうか、と播磨は
思った。
「自活とか、執事にはあまり関係ねえだろう」
「教官の言うことには絶対服従よ、播磨くん」そう言うと高野は走り出した。
結論から言うと、不慣れな播磨は野兎もイノシシも獲ることはできなかった。とりあえず
ヨモギを煮て食べたが、ほとんど苦いだけの食事であった。ちなみに彼は、エアコンの
修理やバーテンなど、何でも起用にこなすけれども、料理に関しては殆ど無関心であった。
肉や野菜の灰汁抜きというものを知らないほどである。
夕食後、若干痛みの残る腹をさすりながら播磨は夜の訓練に参加した。今度の教官は
ナカムラのようである。
「良いですかな播磨殿。執事にとって一番重要な事はなんだかわかりますかな?」
「一般常識?」
「ちがいます」
播磨は、とりあえずナカムラの一番欠けている部分を指摘してみたのだが、彼は何の
反応も示さなかった。
「主人に対する忠誠です。どんな事がろうとも、命にかえても主人を守る。それが執事の
誇りであり、最も重要な心構えなのです」
「ほう…」播磨は欠伸を噛み殺しつつ、納得したような顔をした。
「では早速訓練といきましょう」
「いったいどんな訓練をするんだよ。だいたいこの場には主人もいないのに、主人への忠誠
もくそもないだろうに」
「ご主人さまならここに」そう言って何やら大きなパネルを取り出すナカムラ。一体どこから
出したのだ?
「って、お前これ!」
それはナカムラの仕える沢近愛理の等身大パネルであった。
「この写真に向かって『愛理お嬢様、実は私、あなたを好きになってしまいました』と言って
みましょうか」
「みましょうかじゃねえぞバカ!それと高野!オメーは一体そこで何やってんだ」
「ビデオ撮影」高野は小型のビデオカメラを構えていた。どこから出したのかは知らないが、
照明用の投光器まで出ている。
「むしろ『愛理、俺はオメーの事が好きだ』という台詞の方が良いやもしれませんな」
「もう少し遠まわしの言い方の方が雰囲気が出るんじゃないかしら」
何やら台本を見ながら話し込むナカムラと高野。
「お前ら!何打ち合わせしてんだ!」
「それではやっていただきましょうか、播磨殿」
「やるかああ!!」
「仕方ありませんな。それでは力づくでも」
「何しやがる!」
「はああああああ」
「ちょっと待て!」
「むむ!逃がしませぬぞ。ペ●サス流星拳!」
「ちょっと待て、なんでそんな技が」
「執事の嗜みですぞ。何ならか●はめ波もお見せいたしましょうか」
「やめろ!集●社を敵に回す気か!」
そんなこんなで、虎の穴での夜は更けていくのであった。
翌日。
「執事研修、よくぞ最後までやり遂げられました」
「がんばったわ、播磨くん」
ぼろぼろになったナカムラと高野が言う。
「いや、紅茶の入れ方以外、まともに教えてもらっていないのだが…」
「なあに、心配いりませぬ」
「なぜ」
「執事の役目は、御主人様を命がけでお守りすること。それさえできれば、あとは何とかなるのです」
「なんとアバウトな…」
「ところで播磨くん」そう言うと、高野は一枚の紙を手渡した。
「これは?」
「今日から働きに行く家の住所よ。よく覚えておいてね」
「お、おう」
疲れていた播磨は、その紙に書かれた内容をよく読んでいなかった。
播磨は、会社が用意したというワゴン車に乗せられて、一路依頼先の家に向かう
のであった。
着いた先は、ものすごく大きな屋敷であった。執事がいるくらいだから、大きい屋敷
に違いない、とは思っていたが、いざそれを目の前にしてみたら、当然ながら気が引ける。
まあ、そんなこんなで屋敷に入った播磨だった。
「わっはっは。俺が今、この家の主である東郷雅一だ!親父は海外出張が多いので、
今は俺が主だ」
「あの、よろしくお願いします」小柄な少女が播磨に対して頭を下げた。
「東郷って、あの東郷の家だったのか」
多くの不安をかかえつつ、播磨は東郷の家で一週間働くことになってしまったので
あった。
つづく
次回予告
「執事の性能の差が戦力の決定的差でないことを教えてやる」
「80パーセント?現状でも榛名の魅力は100パーセント出せます」
「だが胸が足りない」
「あんなもの飾りです!偉い人にはそれがわからんのです」
第二話 家族の食卓
776 :
Classical名無しさん:08/05/18 16:25 ID:yT5bnXk6
>>775 どーせ沢近の家に送られるんだろと思ったら
東郷かよwwwwwちょっと期待
何でお嬢の家じゃないんだよぉぉヲヲ
もう旗妄想SSはいいよ…
東郷兄妹の話GJ!
ssなんて全部妄想じゃね?
どうせ・・・と思っていたので、いい感じに裏切られた
期待しているぞ
作者はハリハルの人?
釣るのはそれでもいいけど
責任とってちゃんと途中で旗展開にして欲しい
>>775 確かに意表をつかれたな。高野まで参加してるのに東郷の家とは…GJ!
「あんなもの飾りです!偉い人にはそれがわからんのです」
って誰かが言った台詞?なんか似たり寄ったりな台詞をSSでよくみる気がする。
>>782 なら、自分で書けばいいじゃないか。
ここはそういう場所でしょ。
ググればすぐに分かるがガンダムネタだ
ジオングに足がないことを指摘したシャアに対して整備兵が言った台詞
785 :
783:08/05/19 00:13 ID:yhK10MHU
>>784 なるほど……知らなかった。ありがとう!
東郷の家ってのが面白い
沢近家は原作で見すぎて秋田
787 :
Classical名無しさん:08/05/19 09:17 ID:PvtAi5N6
これだけROMってる奴いるなら758からのSSにも乙の一言くらい書いてやれよw
せっかく新規のSS書きさんなんだしさ
758乙
茶道部は真王道と同じくらい興味ない
需要の問題もあるな。
バレスレとかでは東郷兄妹が結構人気だったから。
758乙
既に気合いの入った感想があったから乙だけするのも微妙だった
つかどっかの人気投票で花井が播磨の50倍ぐらい得票しててワロタw
本誌の人気投票より多かったんじゃね
他のスクランスレの需要まで気にしないと駄目なのかー
大変だなSS書くのも
なんか急に感想が増えてると思えば、バレスレ住人の反応だったのか
悪いとは言わんけどさ、そこはほら他のSS書いてる人にも気を使ってやってくれw
せっかくSSスレっていう共有スレでやってるんだしね
全盛期みたいに乙だけのレスは邪魔って位ガンガン投下されてる訳でもないし
そういやあったなGJに関する議論
まあでもバレスレでも最近茶道部や花皿は元気だから今回はたまたまなんじゃない?
花皿なんかバレスレで生まれたみたいなもんだと思うし
キャラ同士が会話するだけで派閥設立とかザラだったな
稀にその派閥の痛い信者が現れたりしたもんだ
>>775 笑った!GJ!東郷家とはいい!
予告編最高
>>「執事の性能の差が戦力の決定的差でないことを教えてやる」
これだけで読んだ甲斐あった!
続きも期待してる。
落ちるなよ
ハリマのごとく!
前回までのあらすじ
従姉の刑部絃子に住み込みのアルバイトを紹介された播磨拳児。しかしそれは、執事の
仕事であった。そしてナカムラと高野による変態的な執事研修の後、送りこまれた先は
なんと東郷兄妹の住む東郷家だったのである。
第二話 料理は愛情
東郷家の朝は早い。
「どうした兄弟!10キロのランニングでへこたれてるようじゃ東郷家の執事は務まらないぜ!」
「はあ、はあ、朝から何でこんなに元気なんだよこの男は。あと兄弟はよせ」
「ふう、やはりトレーニングの相手がいると気分が違うね」
刑部絃子の指示によって家を追い出された播磨は、一週間ほど住み込みのバイトを
することになった。そのバイト先がこの東郷家での執事である。
「あの…、嫌なら断っていいんだぜ」
この家の住人、つまり東郷雅一と榛名の二人と会った時、播磨はそう言った。しかし、
兄も妹も、おそらく執事に関してはズブの素人であるはずの播磨を快く迎え入れたのである。
東郷家は、とある事情により(※19巻♭54参照)使用人が一人いなくなっていたため、後任
の執事がくるまでつなぎの使用人が必要だったのだという。
「でも何で一週間なんだ?」
「ふんっ、ふんっ、言ってなかったか」
「ああ、ふんっ、ふんっ」
腹筋運動をしながらする会話じゃないな、と播磨は思ったが仕方がない。ここでは主人の
意向に従わないわけにはいかないのだ。
「一週間後、ふんっ、親父の誕生パーティーがあるんだ。ふんっ、その席に執事がいないと
カッコ悪いだろう?ふんっ」
「ふんっ、そんな、ふんっ、もんかね」
「お兄ちゃーん、播磨センパーイ。朝ごはん冷めちゃうよー」遠くから榛名が呼ぶ声が聞こえた。
東郷家に来てから丸一日経つが、東郷のトレーニングに付き合っているばかりでまるで
執事らしい仕事をしていないな、と播磨は思った。あと、プロテインかけごはんもやめてほしい。
「では、学校に行くか」と東郷。
「はい、いってらっしゃい」
「何やってるんだ?」
「へ?」
「お前も行くだろう」
「なんで」
「なんでってお前、高校生だろうが」
「学校行っていいのか」
「留年したけりゃ好きにしろ」
「いや、それは困るんだが…」
「播磨先輩、行きましょ」そう言って播磨の袖をひっぱる榛名。
播磨は基本的にいつも学校の制服を着ているので、服装の点では問題なかった。
「それから、これを持て」そう言って何かを手渡す東郷。
「なんだこれ」
「業務用の携帯電話だ」
「なぬ」
「主を護るのが執事の役目。何か困ったことがあったらこれで呼ぶぞ」
「嘘…」
まあ東郷が困っている事なんかないだろうから、と思い播磨はとりあえず安心して学校へ行く。
とはいえ、朝から東郷のハードトレーニングに付き合っていたため、眠くなり結局授業には出ずに
保健室で休んでいた。
すると早速業務用の携帯電話に着信が入った。
「なんだ?」
電話ではなくメールである。
《放課後、16時に矢神商店街の正面入口に集合》
「東郷(マカロニ)のヤツ、何を考えてんだ…」播磨はメールの文面を見ながらそうつぶやいた。
そんなこんなで放課後。
播磨は律儀に商店街の前で待っていた。執事らしいことはまだ全然していないけど、
とにかく執事になったからには主人の命令は絶対である。
「おい、遅えぞ東郷」
「ごめんなさい」
「え?」
人の気配がしたので東郷雅一かと思って振り返って文句を言ってみたのだが、東郷は
東郷でも妹の方であった。
「ど、どうしてここに」
「夕食の買い出しに…、と思って」
「そんなこと、俺がやるからお…、お嬢さ…さまは」
「榛名でいいよ」
「え」
「無理しないで。一週間だけの執事さんなんだから」
「あ、ああ。で、それはともかく、なんで金持ちのお嬢様が買い物なんてするんだ?そういう
のは、言ってくれれば俺や他の使用人がやるし。というか、店の方から食材を持ってくるん
じゃねえのか…」
「先輩、料理とかあんまりしないでしょう」
「う…それは」言うまでもなく、彼はビーフジャーキーを夕食と称して客に差し出すような男で
ある。
「あたし、料理とか結構好きなんですよ」
「そうなのか」
「意外?」
「あ、いや」
「意外って顔してる」
「いや、別にそういう意味じゃ。まあ金持ちのお嬢様だし」
「いいんですよ。それより、こうやって何を作ろうかって考えながら買い物すると、楽しいじゃ
ないですか。男の人にはわかり辛いかもしれないけど」
「むむ…」
「じゃあ、行きましょう」
「お…、おう」
播磨は榛名に引っ張られるようにスーパーマーケットに入った。
夕方のスーパーは主婦の買い物客で混んでいる。
「ふうん、こんなもん売ってんだ」商品棚を眺めながら播磨はつぶやいた。
「スーパーとか、あんまり来ないんですか」
「コンビニで済ませるかな」
「栄養バランスとかちゃんと考えて食事をしないとだめですよ」
「ん、まあ。時間とかもあんまりないし」
「今は良くても将来身体を壊すことになるかもしれませんよ」
「将来か…」
「あ、これいいアジ」
「それはいいんだけどさ」
「はい?」
「いったいどれだけ買うのよ」播磨の押しているカートには、すでに乗り切れないほどの
商品が積み上げられていた。
「どこの大家族の買い物だよこれ…」両手にパンパンに詰まった買い物袋を持った播磨
が重い足取りで榛名の後を歩く。
「はあ、たまに買い物に行くとたのしくなっちゃって、つい買い過ぎちゃうんですよねえ」
「そうか…」
「ああ、これいいアスパラ」商店街の八百屋の前で足を止める榛名。
「いや、もう勘弁してください」これ以上持たされたらたまらない、とばかりに播磨は嘆願した。
「冗談ですよ。帰りましょ。執事さん」榛名は悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
(そういや俺、執事だったんだな)播磨はこのとき自分が執事であることを思い出した。
というか、彼は依然として執事らしい仕事をしていない。
「大丈夫ですか?持ちましょうか」榛名は後を歩く播磨を気遣って声をかけた。
「いや、全然平気っすよ。執事ですから」とりあえずカラ元気で答える播磨。東郷兄との
早朝トレーニングの影響もあってか、身体が重い。
「さあて、今日は腕によりをかけて料理作っちゃおうかな」そう言って榛名はのびをした。
しかしその瞬間―
ものすごいスピードでワゴン車が止まり、中から出てきた数人の男たちによって榛名は
はがいじめにされ、車の中に連れ込まれてしまった。
「なんだ!」荷物を持っていたのと疲労が蓄積していたことが重なり、播磨は初動が遅れ
てしまった。それ以前に、目の前で何が起こったのか理解できていなかった。榛名を乗せ
た車は、猛スピードで再発進する。
「なんだ…」
榛名がさらわれた。播磨がそう認識した時には、すでに車は走り出していた。
「あら、どうしたの播磨君」そこに偶然(?)自転車で通りかかる高野晶。
「高野!」
「なに」
「この自転車貸してくれ」
「いいけど…」
「サンキューな」
播磨は持っていた買い物袋を道に放り投げ、高野から借りた自転車にまたがった。
執事の役目は、
命にかえても主人を守ること!
「ぐおおおおおおお!!!!」播磨は全力でペダルをこいだ。相手は自動車とはいえ、狭い
矢神の住宅街の道をそんなに速く進めることはない。
ワゴン車の中。複数の男の気配と声がする。タバコ臭い男のニオイが榛名の不快感を刺激
した。
「おい、本当にこの娘が?」
「ああ、東郷領事の娘だ。こいつを人質にとって父親から重要情報を聞き出す。完璧な作戦
だろう?」
「身代金も要求できるんじゃないのか」
「そうだな」
「んー!んー!」
榛名は目隠しをされた上に口にタオルを巻かれ、上手くしゃべれなくなっていた。しかも
身体にはロープが食い込む。
(痛い、怖い。助けて…)
「それにしても、結構いい女だな」
「ふふふ」
(・・・・!)
「あ、兄貴!後」
「ああ?もう警察か」
「いや、警察じゃなくて」
「じゃあなんだ」
「その、自転車が」
「アホか!自転車が車に追いつける訳ねえだろう」
「でもほら」
「ああん?」
「うお!」
「なんじゃありゃあ」
「本当に自転車か、バイクじゃないのか」
「追ってきます!サングラスの男が自転車に乗って追ってきます」
(播磨先輩…!)
信号を無視して突っ切るワゴン車を追う播磨。危うくオート三輪に横から追突されかけるが
間一髪のところで避けた。なんでオート三輪が国道を走っているんだ、などという疑問は瑣末な
問題に過ぎない。
(もうすぐだ、もうすぐ追いつく!)播磨のこぐ自転車(ママチャリ)は、逃走するワゴン車の数メートル
後方まで迫っていた。
(さて、ここからどうすべきか)
車を追いかけることに必死で、その後の事を考えていなかった播磨。彼は驚異的な体力の持ち主
ではあるが、バカである。
しえん
(くそう!こうなったら飛び乗るしかねえ)
と彼が覚悟を決めたその瞬間、目の前を転がる黒い物体。
(まさか…)
播磨の斜め後方で爆発が起こった。
(手榴弾!?)
後方の自動車が爆発に巻き込まれて急停車していた。わずかでもスピードを緩めていた
ら死んでいたな、と思うと背中に冷たいものを感じた。
本気だ。やつらは本気だ。そう思うとがぜん怒りがわいてくる播磨。恐怖は人の怒りを呼び
醒ます。怒りの感情によって恐怖を相殺するために(と、村上龍の小説に書いてあった)。
爆竹のような乾いた音が響いたと思ったら、間横に何かが通りすぎていった。よく見ると、
ワゴン車の右の窓からマスクをした男がサブマシンガンを抱えている。
(爆弾の次は銃か!次から次へと)播磨は銃撃を避けるために反対側に進路を変更した。
すると今度は反対側の窓が開き、そこからサブマシンガンを撃ち続ける。播磨は慌てて再
び逆方向へ。
「はあ、はあ…」ただでさえ驚異的なスピードで走っているうえに、ジグザグ走行をしていたの
で、播磨の体力は限界に近付いていた。銃声で耳の奥がキンキンする。
本来なら、こんな相手は高校生には無理なのだ。銃や手榴弾まで持っている相手など。後は
警察か自衛隊にまかせるべきなんだ。そんな弱気な思いが頭を過ったとき、開いた窓から目隠
しと猿轡をされた榛名の姿が見えた。
「榛名!」
あんな風にされて、怖いだろう、嫌だろう。俺だって嫌だ。播磨の心に再び火がつく。
銃弾が当たらない場所、それは右でも左でもなく―
後ろだ!
そう思いペダルに力を込め、ワゴン車の間後につく播磨。そして都合よくワゴン車の後ろについ
ていた、上に登るための梯子に手をかけ、そのまま自転車を放棄して車に飛びついた。次の瞬間、
車は大きくドリフトをして播磨の身体は大きく外に流される。しかし掴んだ手は決して離さなかった。
播磨は素早くワゴン車の上に登る。すると下から銃で撃ってきた。
「うわああ!」車のボディを突き破って飛んでくる銃弾。しかしサブマシンガンの弾が尽
きたのか、すぐに銃撃が止む。
チャンスだ!
そう思った播磨は、素早く車の前方に向かった。上にいる播磨を振り落とそうとしている
のか、車は激しく左右に蛇行するが、播磨は必死に張り付いて離れない。そして、走行が
落ち着いたころを見計らって、彼は車のフロントガラスをめがけて自分のカカトを打ちつけ
た。フロントガラスは割れなかったが、その表面には大きなヒビが入り、前がよく見えなくなっ
たようだ。再び蛇行した車は、そのまま急ブレーキをかけて停止する。播磨は間髪入れず
に車を降りると、後部座席のドアを開け、中にいた数人の男たちをひっぱりだし運転手も
含め一人づつ分殴った。中には銃を持っている者もいたが、車の中が狭すぎて上手く扱え
ず、その間に播磨に首ねっこをつかまれ、昇天させられた。
「…か」
「大丈夫か」
「は!」
気がつくと、榛名は播磨におんぶされていた。
「あ、先輩」
「おお、すまん。気を失ってたもんで」
「あ、あたしの方こそ」
「それにしても無事で何より」
すっかり暗くなった道を背負われて通るというのも、随分変な気分だ。誰かに見られたら
恥ずかしいな、と榛名は思ったが、同時にもう少しこうしていたい、とも思った。
「あの、先輩」
「ん?」
「ごめんなさい。あたしのせいで危険な目に」
「何言ってんだ」
「え?」
「俺の不注意で誘拐されちまったんじゃねえか。全部俺が悪いんだよ」
「でも播磨先輩、あんなに危険な目にあって」
「んなもんしょっちゅうやってるって。それよりお前の方が大事さ」
「え…」
「命にかえても主人を守るのが、執事の勤めだからな」
「…」
「どうした」
「夕食…」
「ああ、すまん。お前を助けるのに夢中で、せっかく買った食材が…」
「食材がなに?」不意に別方向から聞き覚えのある声がした。
「え」
「高野」
「高野先輩」
目の前には、先ほど自転車をかしてくれた高野晶が立っていた。
「すまねえ高野、自転車は…」
「いいのよ、どうせ会社のだし。それに…」
「ん」
「二人とも無事で何より」
「あ、ああ」
「これ、二人が買ってきてたスーパーの袋ね。卵が割れちゃってるけど、まだ使えるわよ」
「ああ、すまねえ」
「先輩」榛名が播磨の背中からするするっと下りて、彼の表情を覗き込むように言った。
「どうした」
「遅くなっちゃいましたけど、家で料理しましょう」
「ああ」
「今日のお礼」
「お礼?何言ってんだよ当たり前じゃねえか」
「当たり前…」
「それが執事の仕事だろう?」
「そ、そうですね…。あ、そうだ。高野先輩も一緒にお夕食でもどうですか」榛名は高野
の方を見て言った。
「私は遠慮しとくわ。二人の邪魔をしたら悪いし」
「邪魔?」
「それじゃ」そう言って立ち去る高野の後姿を、播磨と榛名の二人は見送った。
同時刻、東郷邸。
「榛名と播磨はまだ帰らないのか!せっかくこの俺がプロテインスープを作ったというのに!
うむむ!不味い!もう一杯!」
つづく
次回予告
※予告内容と本編とは異なる場合があります。
「何やってんだオメー」
「何よ」
「そこは塚本の席だろうが。なんでオメーが座ってんだよ」
「塚本天満は私」
「はあ?」
「塚本天満の存在に私を割り込ませたの。だから今は私が塚本天満」
「オメーと塚本は、全然似てねえじゃねえか」
「外見とか、そういうんじゃないの」
「あ、でも胸の辺りは似てるな」
「うるさい!うるさい!うるさーい!」
乙です
榛名かわいいよ榛名
予告編の女は高野か?
乙だけど、スクランかこれ?キャラ違うくね?
ハリマのごとく!
前回までのあらすじ
一週間だけではあるが、正式な東郷家の執事となった播磨。しかし執事らしい仕事はほとんど
せず、東郷兄とトレーニングをしたり、いつものように学校へ行ったりしていた。ただ、普段と違う
所は、家に帰れないことと、業務用の携帯電話を持たされたところ。
放課後、播磨は妹の東郷榛名にその携帯電話呼び出され、なぜか買い物に付き合うことに。
意外と料理好きという榛名の一面を見つつ、一緒に帰ろうとしたとき、榛名が何者かに誘拐され
てしまう。驚異的なパワーで誘拐犯を追撃し、無事榛名を救い出した播磨は、主を命がけで守る
という、執事の使命(?)を何とか果たすのであった。
第三話 訪問者
播磨の執事服がようやく届いた。
「お前はガタイがいいからな。なかなか合う服が見つからなかったらしいぞ」
「お、おう…」播磨は執事服を受け取り、奥の部屋に向かった。
作業服ならよく着ていたが、執事服など彼にとって生まれて初めてである。
「ど、どうかな」
「おお」
「カッコイイ」
思わず声を出してしまう東郷兄妹。
播磨は背が高く、筋肉質な体つきなので執事服もよく似合う。
「サングラスをはずせ。そんで髪型も整えたら…」そう言って東郷兄が播磨の顔をいじる。
「凄い!」再び声を出す榛名。
「お、おい。ちょっと恥ずかしいなあおい」
「こりゃあ、誰も播磨だとは気付かないぞ」
そこには一人の執事がいた。格好だけならナカムラにも引けを取らない執事っぷりであった。
「あ、その人と比べるのやめてくれる?」
「誰に向かって言っているんだ播磨」東郷が播磨の顔を覗き込むように言う。
「いや、何でもない」
「先輩、ネクタイ曲がってますよ」そう言った榛名は、播磨の前に行きネクタイを直す。
「何だか新婚夫婦のようだな」
「もう、やめてよお兄ちゃん!東郷家の執事として、恥ずかしくない格好をしてもらいたいだけよ」
「おおっと、そうだったな」
「こういう格好をすると、執事になったって、実感するな」播磨が鏡に映る自分の姿を見ながらいった。
「いいこと思いついた。お前、その格好で学校行けよ」
「一体何を言い出すんだ」
「そうよお兄ちゃん」
「男は度胸!なんでもためしてみるのさ。きっといい気持ちだぜ」
「そんな訳あるか!」
とりあえず、学校へは制服を着て行くことになった。
「あのさあ、お前ら」制服に着替えた播磨は二人に話しかけた。
「どうした」
「なんですか?」
「俺がこの家で執事をやっているってことは、学校の連中には秘密にしておいてくれよな」
「ああ、わかっている」東郷兄は腕組みをして答えた。
「どうして?」榛名はなぜ秘密にしておいてほしいのか、理解できないようだった。
「そりゃあ決まってるだろう榛名」兄は妹の方を見ずにいった。「若い男同士が一つ屋根の
下で…」
「うおい!東郷!」
「ふふ、冗談だよ」
「お前が言うと冗談に聞こえねえっつうの」
「播磨先輩、リアルではダメですよ」若干青ざめた顔の榛名が言う。
「だから違うってば」
そんなわけで学校へ行った播磨だったが、この日の授業は午前中で終わり、彼は早めに
東郷家に行くことになった。
「仕事着だから仕方ないか」そう言ってサングラスをはずし、執事服に着替える播磨。
と、そこへ榛名から電話がかかってきた。今度はメールではなく電話である。
「もしもし」
「あ、播磨先輩?」
「ああ」
「今家ですか」
「そうだけど、なにか」
「実は大変なことになって」
「大変?」また誘拐か、と播磨は一瞬身構えた。
「今日、茶道部と天文部の人たちがウチに来ることになったんです」
「なに!?」
「ちょっとした話し合いなんですけど、それで」
「おい、学校の連中がくるって、不味いんじゃないのか」
「あ、でも播磨先輩今執事服ですよね」
「ん、ああ」
「だったらバレないと思いますよ」
「いや、それでも」
「とにかく、ちょっと急いでますんで」
「なにいいい!!!!」
サッカー観ながら支援
茶道部と天文部。別に俺の知り合いなんかいねえよな、と播磨は考えた。いや待てよ、
そういえば茶道部には妹さんと高野が。いや、高野は別にいいよな、事情を知ってるわけ
だし。あいつがベラベラモノを喋るという事はないし。問題は妹さんか。どうしようかな、嘘
をつくわけにもいかねえし…。妹さん、エスパーだからバレるよな。
「どうした播磨!」汗まみれの東郷がだだっ広い居間に入ってきた。
「いや、今日急に榛名お嬢の友達が来るっていうもので」
「おう、なんで知ってるんだ」
「今電話で」
「俺の所にもメールがきたぜ」
「そうか、さすが兄妹」
「頼むから友達が来ている間は部屋から出ないでくれってね。あいつ、照れやがって。
自慢の兄を人に取られたくないんだな」
(こいつのプラス思考はちょっと羨ましいね…)播磨はため息をつきながらそう思った。
そうこうしているうちに、榛名が友達を連れて帰ってきた。茶道部の高野、サラ・アディエ
マス、天文部の部長、結城つむぎになぜか稲葉美樹も加わっていた。
「おーっす。榛名の家って久しぶりい。相変わらず大きいねえ」楽しそうに騒ぐ稲葉。
「おじゃましまーす」
次々に敷地内に入ってくる面々。
「お…、お帰りなさいませお嬢様。と、そのお友達」播磨はナカムラの真似をして、慣れない
丁寧語とお辞儀をした。
「この人が榛名の所の新しい執事さん?」
「わあ、大きい」
稲葉が播磨に近付いて、まじまじと顔を見つめる。
(やば、これ以上は)播磨の心の警戒音(アラーム)が鳴り響く。
「どこかで見たことあるような…」
「ききき、気のせいよ稲葉。ほら、あんまり近づくと迷惑よ」そう言って榛名は稲葉を播磨から
引き離した。
「そういえば名前は何て言うんですか?」とサラがきいてきた。
「名前は、ハリ…」そう言いかけて止める榛名。今朝、内緒にしてくれと頼まれた手前、
播磨と言うわけにはいかない。
「ハリオです!綾崎ハリオ」播磨は、榛名の声をかき消すように言った。
「ハリオ?珍しい名前ですね」
「いや、まあ…。こんな所で立ち話もなんですから、どうぞ中へ」
「はい、おじゃましまーす」
ぞろぞろと中に入る面々。
「随分似合ってるわね、播磨君」小声で言う高野。
「今はその名で呼ぶな」
「ごめんなさい、ハリオさん」
この中で秘密を知っているのは高野だけか。そう思うと播磨は少し安心した。
「そういえば妹さんが来ていないようだが」
「八雲はバイトでこれないって」と榛名は耳打ちした。
「そうか」
「気になります?」
「いや、あのコもちょっと鋭いんでな、警戒していたんだが」
「そうなんだ。よかった」
「ん?何が」
「何でもありません」
そう言うと榛名は、友達や部活の先輩たちを居間に案内した。
「お茶、出しましょうね」全員が居間のソファに座ると、榛名がそう言って立ち上がった。
「お茶ならそこにいる執事さんがやればいいんじゃない?」と高野。
「うぐ!」
「そのための使用人でしょう?」そう言うと高野は鋭い目つきで播磨を見た。
「でも…」
ためらう榛名に対し、播磨はそっと肩に手を置いて言った。
「大丈夫だ榛名お嬢。ちょっと待ってな」そう言うと播磨は台所に向かった。
先週までの播磨ならば、紅茶の入れ方はおろか、まともなものを飲んだことすらなかった
だろう。しかし今は違う。執事虎の穴で鍛えられた唯一の技術。幸い東郷家には紅茶の茶
葉が数多く存在する。その中から最高のものを厳選して、温度に気をつけつつ丁寧に人数
分の紅茶を入れた。
「おまたせいたしました」紅茶の入れ方だけでなく、テーブルへの置き方や、そこに至る
までの身のこなし方など、高野に徹底的に教育された播磨は、それを忠実に守って言った。
「わあ、カッコイイ」
「さすが執事さん」
みんな、口ぐちに褒めるので、危うく播磨の頬が緩むとことであった。
(いかんいかん、今は執事に徹しなければバレてしまう)そう思った播磨は、平静を装い
つつ、紅茶と茶菓子を置いて、部屋から退出した。
「ふう…。やっぱり堅苦しいのは疲れるな」廊下に出た播磨は、そう言って一息つき、ネク
タイを緩めた。
「だったらやめる?」
「うおわ!」
いつの間にか高野晶が播磨の隣で紅茶を飲んでいた。
「味は、悪くないわね。教えられたとおり出来てるみたいじゃない」
「何やってんだオメー」
「執事には神出鬼没のライセンスがデフォルトで備わってるの」(※1)
「オメーは執事じゃねえだろう」
「そうね。ところで、仕事は上手くいってる?」
「まあな。契約は日曜日の午前零時まで。言葉づかいや礼儀作法は少々面倒だが、なん
とかやっていけそうだぜ」
「あら、乱暴な播磨君のことだから、すぐに音を上げるんじゃないかと思っていたけど」
「それは主に執事の仕事以外での話だ」
「アナタがやれそうで何よりだわ」
「そうかい」
「お邪魔したわね。執事のハリオさん」
「おう」
「言葉づかいは?」
「は…、はい」
「よろしい」
「アナタがやれそうで何よりだわ」
「そうかい」
「お邪魔したわね。執事のハリオさん」
「おう」
日本勝利で支援
「言葉づかいは?」
「は…、はい」
「よろしい」
「なんかオメー、絃子に似てきたな」
「顧問の先生ですもの」
「ああいう女、これ以上増えて欲しくねえがな」
「それも言っておこうかしら」
「あ、スマン。それは勘弁。それと…」
「なに」
「執事のことはその…」
「黙っておくわ、皆には」
「悪い」
そう言うと高野は居間に戻って行った。
播磨は、これで一息つけるかと思ったが、すぐにお茶やお茶菓子のお代わりの
要求が来て、忙しく動き回ることになった。
色々考えるよりか、動き回っている方が好きな播磨にとっては、適度の忙しさは
何よりの安心ではあった。しかしその安心を壊しそうな者がこの館には存在していた。
ドタドタという上品な内装の屋敷には似合わない乱暴な足音がする。
「は…!」
「くる…」
この屋敷に住む二名の者は、その気配に気づいた。
「おおい播磨!俺のプロテインを―」
「「ダブル執事キーック!!!」」
「もう、お兄ちゃんったら。寝ぼけてこんな格好で」
「さあさあ、雅一さま。お部屋にもどりましょう」
執事播磨と榛名のコンビネーションキックに、さすがの東郷兄も耐えられなかった。
その倒れた東郷を倒した二人が運んで行く。
「榛名の家って、賑やかだねえ」笑顔でサラが言う。
「そ、そうだね…」稲葉は若干ひきつった笑みで答えた。
「お邪魔しました」
「榛名の家って楽しいね。こんなカッコイイ執事さんもいて」稲葉が嬉しそうに言った。
「カッコイイ?」播磨はその言葉に一瞬たじろいだようだ。
「あら、照れているの?執事さん」無表情に高野が言う。
「みんな、気をつけて帰ってね」笑顔で見送る榛名。
こうして、この日の訪問者は全員帰路についた。
「ふう」
「はあ」
播磨と榛名の二人は、もう一度大きなため息をついた。
「悪いな、榛名お嬢。いらぬ気をつかわせちまって」
「いいんですよ。なんかこれはこれで、楽しかったし」
「まあ、日曜日までだから、それまで勘弁してくれ」
「日曜日か…」
「ん、どうした」
「いいえ、何でもありません。それより先輩」
「ん?」
「お夕食にしましょう」
「そうだな」
「今日は先輩の好きなカレーにしましょう」
「お、いいな」
「ジャガイモと、ニンジンの皮むきやってくださいね」
「ああ、わかったよ」
「あと…」
「どうした」
「何か忘れてるような気がするけど」
「あん?」
「まあ、いっか。さ、行きましょう」
「おう」
東郷邸内、物置部屋。
「ハッ、一体ここはどこだ。なんで俺は縛られているんだ。おおい、播磨!榛名!
これは何のプレイだ?おおい!」
縄でぐるぐる巻きにされた状態で放置された東郷に、二人が気づくのは夕食が
出来上がった頃である。
同時刻の帰り道。
「なんで播磨先輩、執事なんてやってるんだろう」稲葉がすっかり暗くなった空を見なが
ら言った。
「アルバイトじゃないの?先輩、色々やってるから」とサラが答える。
「変な偽名まで使っちゃってさ」
「本人は気付かれていないつもりだから、そっとしておいてあげようよ」
「でもサングラスのない先輩って、ちょっとカッコ良かったよね。体格がいいから執事服
も似合ってたし」
「そうね。八雲にも見せてあげたかったなあ」
「ええ?やっぱ八雲って、播磨先輩のことを?」
「ああ、いや、それはその…」
二人のやりとりをじっと見つめる女が一人。
「・・・・・」
高野は自分が話さなくても、綾崎ハリオの正体がすっかりバレてしまっていることが少し
残念に思えた。
おまけ
今回の話の中で、一番可哀想なキャラは、東郷兄だと思っている読者もいるかもしれない。
しかしそれは違う。一番哀れなキャラクターはこの人である。
「なによ、この話。私も登場しているのに、一言も台詞がないってどういうこと!?本編でも
報われなかったし、あたしって何なのよ一体。もうう…」
天文部部長、結城つむぎでした。
つづく
※1:畑健二郎『ハヤテのごとく!7巻』小学館/頁177
一日二作も投下GJ!
ちょっと播磨のキャラが違うかも
でも次回作も楽しみにしてます
>>811 >>823 確かに播磨が違うような気がするな。なんでだろ?
高野が面白がって天満を連れてきてたら、この播磨がどうなってたか見たかったな。
ウンコだな。
まあ、乙。
ネタに走るのも良いけど、外したときの暴投感はあるよなー。え?スクランかい?って
定期的に投下してくれて面白いのは良いんだけどさww
まぁ旗よりかはマシだったよ
乙
乙だけ書いてりゃ良いじゃん
なんで、旗よりかはマシだったよ、とか書く必要あるんだ?
荒らしだろ
ほっとけほっとけ
IFなんだから好きなように書けばいいとか言っておいて
キャラから外れると途端に文句を言うスレ住人であった
他はともかくキャラだけはズレたら駄目だろ
>>830 >キャラから外れると
この部分を100回でも200回でも読み直してみれば良いって思うな^^
830さん、頑張ってなの!
833 :
Classical名無しさん:08/05/29 21:43 ID:AVd7xlmY
煽りはおいておくとして、投稿する前に見直さないとなw
キャラから外れたらスクランじゃねーじゃんww
個性の強すぎる書き手はSS書きには向かないよ
評価は後からついてくるものだからな
まわりのつまんない意見はほっといて、とりあえず書き続ければいいんじゃね
俺は応援はしてる
だね
とりあえず俺は楽しんでる
ハリマのごとく!
前回までのあらすじ
執事服も届き、本格的に執事としてスタートを切った播磨。しかし彼は東郷家の執事を
やっていることを周りには秘密にしていた。
そんな播磨のいる東郷家に、播磨を知る茶道部(と天文部)の面々が訪問する事になっ
てしまった。何とか正体がバレないように、必死にふるまう播磨。高野から教えられた紅茶
の入れ方を完璧にこなし、危うく正体をバラしそうになった東郷兄を妹の榛名と共に退け
たりして、何とかお客の訪問を乗り切ったのである。
でも結局正体はバレてたけどね。
第四話 お父さん1ダース
播磨が東郷家にきてから五日目。もうすっかり日課になっている東郷雅一との朝のトレ
ーニングを終え、彼は学校へ行く準備をした。家事一般は、家のメイドがやっているので、
実のところ播磨のする事はあまりない。
「あの、播磨先輩…」
「ん?」
いつもより、何か恥ずかしげに播磨を見上げる少女は、この家の長女であり東郷雅一の
実の妹、東郷榛名である。いつもはトレーニングをする兄や播磨よりも遅く起きるのだが、
今日は早起きをして何かしていたらしい。
「こ、これ。お弁当なんですけど」
「俺に?」
「播磨先輩、いつも朝食のパンをお弁当に持って行ってたから」
播磨の所持金は現在十二円しかないので、東郷家以外で食べ物を得る手段もなく、朝食
の残りなどを弁当として持って出かけていた。
播磨の目の前には、小さなサイズの弁当箱が二段に重ねられ、それをさらにウサギの
イラストなどが刺繍されているハンカチで包んでいた。
「本当にいいのか」
「はい」
「サンキューな」
播磨と榛名がそんなやりとりをしていると、その雰囲気をぶち壊すかのように東郷兄が
入ってきた。
「榛名!俺の弁当は」
「あるわよ」
(ああ、なんだ。俺のは兄貴の弁当のついでだったんだな)と播磨は思った。
しかし…。
「はい」
東郷兄の目の前に置かれたのはバナナが一房。五、六本はついているだろうか。
(バ、バナナ!?)これは何かの嫌がらせか。自分の時とは明らかに違う弁当姿に播磨
は驚きを隠せなかった。
「おお!わかってるじゃないか」
「はあ…?」
東郷兄は喜んでいるようであった。それならそれでよいと播磨は思った。
その日は午前中に体育の授業があったので、播磨は殊の外空腹であった。
「播磨さん、どうしたんっすか。たかだか体育のサッカーで八点も入れるなんて」金髪を
逆立てた髪型の吉田山が話しかけたが、播磨は無言のまま殴り倒した。腹が減ると機嫌
が悪くなるのは播磨とて同じである。
(それにしても、手作り弁当なんて本当に久しぶりだな)そんな事を考えながら弁当箱を
取り出す播磨。
「おお播磨。弁当持参か?珍しいな」近くに座っていた周防美琴が話しかけてきた。
「いや、これは…」播磨は本能的に、不味いことになりそうだ、と思った。
「なんか播磨にしてはずいぶん可愛らしい包みだな」
「別にいいだろう」
「あれれー?播磨くん、お弁当なんて珍しい」噂好きの嵯峨野恵が顔を出す。
「ええ、見せて見せて」嵯峨野につられて一条かれんや大塚舞なども覗きにきた。
「カワイイ、ウサギさんよ」
「ねえ、ちょっと中身見せてよ」
「うるせえ、見せもんじゃねえぞ」
「いいじゃんいいじゃん」
「うう…」
かつて魔王と恐れられた播磨拳児も、今や女子生徒のパワーに圧され気味である。
弁当の蓋を開けると、更に歓声が高まった。
「随分カワイイお弁当ねえ」
「女の子みたい」
「播磨くんが作ったの?」
「いや、これは…」
播磨は悩んだ。こんな可愛らしい弁当を自分が作ったとなれば、それはそれでイメー
ジが崩れる(筆者注:播磨は自分の事を男らしい男だと思い込んでいる)。だからといって、
他人に作ってもらったと言えば…。
「きゃあ、誰に作ってもらったの?」
「誰誰、このクラス…、じゃないよね」
「ああもしかして、八雲ちゃん?」
「なにい!」花井(バカ)が興奮しているが播磨は相手にしなかった。
「これはその、妹だよ妹。妹が作ってくれたんだ。今日だけ特別にって…」
「ええ、播磨君って妹いたのお?」
嘘ではない。嘘ではないが、限りなく嘘に近い言い訳をした播磨はその場を乗り切った。
妹は妹でも東郷の妹だ。
放課後、播磨は茶道部の部室で漫画の原稿を描いていた。
「帰らなくていいの?」紅茶を出しつつ、茶道部部長の高野晶が言う。
「何が」
「仕事があるんでしょう?」高野は播磨が執事のアルバイトをしていることを知っている。
ちなみにこの日は、同じ茶道部員であり、高野よりも一年後輩の塚本八雲とサラ・アディ
エマスはアルバイトがあるため、早めに下校していた。
「ちょいと約束があってな、時間までこうして待ってるわけよ」
「約束って、兄の方?妹の方?」
「い、妹の方だ」
「そう…」
「一応守秘義務もあるんだから、あんまり聞くなよ」
「守秘義務なら私にもあるわよ。同じ会社で働いているんだしね」
「そういやそうだな。お、そろそろ時間だ」携帯電話の時間表示を見た播磨は、素早く漫画の
道具を片づけて、カバンに詰め込んだ。
「気をつけてね」
「ああ。それにしても悪いな、こんな時間までつき合わせちまって」
「構わないわ」
「じゃあの」そう言って播磨は高野に見送られ、茶道部の部室を後にした。
播磨が向かった先は、矢神商店街である。待ち合わせの場所に行ってみると、すでに榛名
が立っていた。
「悪い、待たせちまったか」
「大丈夫です。ちょっと部活が早めに終わったもので」
「そうか、すまねえ」
「どうして謝るんですか?」
「ほら、執事として主人を待たしちまったわけだし」
「そんなの気にしないでください」
「それと、弁当。美味かったぜ」
「え、そうですか?」
「ありがとうな」
「…」
「…」
「どうした」
「なんでもありません。それじゃ、行きましょう」
「行くって?」
「お買いもの」
「あ、そうだったか」
「明日はお父さんが帰ってくるから、私もお料理を作ってあげるんです」
「そりゃすごいな」
「早く行きましょう」
「おお…」
播磨は、榛名に引っ張られるように商店街の雑踏の中に消えて行った。そんな二人を見つ
める一人の影が…。
そして翌日。この日は土曜日で学校は休み。しかし播磨は忙しかった。翌日には東郷兄妹
の父であり、東郷家の当主の誕生日パーティーが開催されるため、会場の準備から駐車場
の確保、招待客の確認、直前のキャンセルの受付など大忙しである。しかしそんな中、播磨
はよく働いた。勉強は苦手だが実務の方はなかなか優秀な男である。様々なアルバイトをし
てきた経験もここにきて生かされている。電気系統のトラブルですら、業者が来る前に修理し
てしまうくらいである。
昼過ぎには、数台の黒塗りの車が東郷家を訪れた。
「旦那はもう帰ってきたのか?」上着を脱ぎ、ワイシャツを腕まくりしている状態で播磨は東郷
兄に聞いた。
「いや、先遣隊のようだ。親父は夕方に帰ってくると言ってたからな」東郷はそう答えた。
「先遣隊?」
そうこうしているうちに、黒服の男たちとメイド服姿の女性数人が屋敷に入ってきた。
「雅一様、榛名お嬢様。お初にお目にかかります。わたくし、執事長の代理をしております
早乙女と申します」早乙女と名乗る黒服の男は、播磨と同じような執事服に身を包み、丁
寧にお辞儀をした。年のころは三十過ぎくらいだが、身のこなしは洗練されている。さすが
本物の執事といったところか。
「遠路はるばる、ようこそ」
「お疲れ様です」
東郷と妹の榛名の二人がそれぞれねぎらいの言葉をかける。
「勿体なきお言葉。ところで、そちらの方が…」
「ああ、新しい執事の播磨拳児だ」と東郷は言った。
「はじめまして。お話は伺っております」早乙女は播磨にたいしてもお辞儀をした。しかし
兄妹に対するのとは違って、じっとこちらを見ている。
「は、はじめまして」播磨は戸惑いながらも、お時儀を返した。早乙女の後には、フットマン
と呼ばれるいわゆる執事の助手が二人ほど控えていたが、彼らは自己紹介をせず、直立
不動のままであった。
「この二人はフットマンの坂井と村上です」早乙女がそう紹介すると、二人はゆっくりと頭を
下げた。
「あれ?」播磨がふと横を見ると、メイド服を着た女性がニコニコしながら立っている。
「どうしました?」笑顔のメイドさんは、なぜか播磨が今言おうとした言葉を先に言ってしまった。
「いや、それは俺の台詞だし…」
「ああごめんなさい。私、旦那さま専属のメイドで花京院マリエです」
「専属ってことは、やっぱりベテランなんっすか」
「いやですわ播磨さん。私はまだ十七歳ですよ。ピチピチです」
「へ?」
俄かに信じ難い。外見で見れば、二十代半ばに見える、と播磨は思ったが口には出さなかった。
「そうだ。ちょっと荷物を運ぶのを手伝ってくれませんか?」
「ええ、いいっすよ」と播磨は答える。堅苦しい挨拶よりも、身体を動かしている方が気が楽だ、
と播磨は思ったからだ。
しかし表に出てみると、やたら大きな箱や重いカバンなどが多数運びだされていた。
何でこんなに荷物があるのか。東郷の所の親父は何者なのか、と播磨は思った。
「また親父の事だから、何か企んでいるんだろうな」運び込まれる荷物を見ながら、東
郷は言った。
「企む?」播磨はその言葉に反応して手を止める。
「ああ、親父は忙しいくせに、こういうイベントで余興をやったりするのが好きなんだ。
おそらく明日も、色々考えているんだろうぜ」
「そうか…」播磨は若干不安になったが、今はそれどころではない。
その日の夕方。執事長代理の早乙女やマリエたちが妙にソワソワしている。携帯電話
ではなく、なぜか無線機で交信する早乙女。
「もうすぐ旦那さまが戻られるようです。みなさま、リビングに集合してください」
(なぜリビング?玄関じゃねえのか?)播磨はそう思ったが、言われるままにリビングに
集まった。リビングは吹き抜けになっており、天井が高い。よく見ると、庭の方向にやたら
でかい扉があり、それが静かに開いた。
「おい、なんだあの扉は」今まで一週間近く生活してきた家だけれども、あの大きな扉には
今日気がついた播磨。
聞き覚えのある足音がした。これは人間の足音ではない。
「お帰りなさいませ旦那さま!」執事長代理をはじめ、メイドたち(主に主人専属のメイド)が
一斉に頭を下げる。播磨も一呼吸遅れて頭を下げた。
「な!?」
播磨が顔をあげると、スーツ姿の男たちがぞろぞろと入ってきた。顔はマスクのような
ものを被っており、それぞれ1、2、3と番号が振られていた。痩せている者、背が低い
もの、やたら長身、プロレスラーのようにがっちりとした体型の者、色々な人がおり、合計
11人の男たちが一列に並んで入ってきた。そして最後に、「12」のマスクをかぶったキリン
が入ってきた。この大きな扉はその為だったか。
「ってかお前ピョートルだろう」
《違うよ、全然違うよ》
ピョートルとは、かつて播磨が拾ってきた野良キリンで、後に矢神動物園に引き取られた。
しかし本人(本キリン)はそれを否定している。
《僕は東郷家の主だよ》播磨にしかわからないメッセージを飛ばすピョートル…、じゃなくて
12番目の東郷父。
「一体何なんだこの集団は…」
あっけにとられる播磨の横に来た榛名が説明した。
「これがお父さんですよ」
「でも十二人いるぞ。正確には十一人と一頭だが」仮にあの一頭の中に人が入っていたとし
ても、最低三人はいるだろう。
「父は要人ということで、命を狙われることも多く、こうやっていつも影武者を連れて行動する
んです」
「影武者?」お前は武田信玄か、と思わずツッコミを入れそうになった播磨。しかしこの集団は
すでに影武者という次元ではない。
「まあいいじゃないですか。私たちはもうすっかり慣れっこですよ。あ、そうだ。お父さんたちに
播磨先輩を紹介しなくちゃ」
「え…」別に紹介なんてしてくれなくてもいいよ、と言いたくなったが仕方がない。この家の当主
への挨拶は必要不可欠だ。
「は…、播磨拳児と申します」そう言って背筋を伸ばす播磨。
すると6番の父親が播磨の袖を引っ張った。この6番は、どこをどう見ても子供である。
手には野球のグローブとボールがあった。
「ダメよお父さん。キャッチボールは明日、明るくなってからお外でやりましょうねえ」まる
で子供をなだめるように注意する榛名。いや、子供だし。明らかに榛名より年下だろうが、
と播磨は心の中で叫んだ。
それから五番の父親は、四番の父親に抱えられた腹話術の人形であった。顔を隠してい
るんだから腹話術の意味がねえだろうが、と思うのだが、誰もそれに疑問を持っていない
ようだ。
「キャー!11番の旦那さまと2番の旦那さまが喧嘩を」
「おうおう、酒を飲んだらいつもこうだな、親父」
リビングには、ものすごいスピードでテーブルと食事が用意された。
「お父さん、これとこれは私が作ったんだよ」そう言って料理を指さす榛名。
「さすが榛名!料理の腕も抜群だな!」なぜか喋るのは息子の雅一だけである。キリンの
ピョートル、じゃなくて12番の主は、二階に上がったメイドさんから葉っぱを枝ごともらって
いた。長い舌を上手いこと絡ませて葉を食べている。
(ああ、それにしても腹減ったなあ…)東郷親子の食事風景を眺めながら、播磨はそう思った。
そういえば、この日は忙しくてまとま食事をとる時間がなかったのだ。
「おおい、播磨!お前もこいよ」東郷が播磨を呼ぶ。
「いいのか、俺なんかが」
「榛名が来て欲しそうだったからな」
「もう!お兄ちゃんうるさい!気にしないで先輩。はい、ここに座ってください」そう言って椅子を
引く榛名。
「いや、そんな気を使わなくても」
「いいんですよ。播磨先輩、今日はたくさん働いてくれたし。ほら、この肉じゃがは私が作ったん
ですよ」
「おお、相変わらず凄いな。榛名お嬢はいいお嫁さんになるよ」
「や、やだ。お嫁さんだなんて」
「はは、まだ早かったかな」
「・・・」
「は…!」
こちらをじっと見つめる番号たちの視線(?)に気づいて凍りつく播磨であった。
数時間後、東郷家使用人控え室。
「だあ、疲れた」食事の後片付けも終わり、播磨はやっと一息つくことができた。倒れこむように
ソファに座る播磨。
「お疲れ様です、播磨くん」
「え?」急に声がしたため、播磨は驚いて周りを見回した。
「マリエです。メイドのマリエ」
「なんだアンタか。まだ自分の部屋に戻ってなかったのか」
「あなたが働いているのに、ゆっくりしているのもどうかと思いまして」
「構わねえよ。使用人っていっても、ここではお客さんだからな」
「お茶を入れたのですが、いかがですか」
「お、いいのか?すまねえな」
「どういたしまして」
テーブルの上に二つのティーカップが置かれ、そこに紅茶が注がれる。ハーブの香りが部屋全体
に広がった。
「お二人と仲が良いのですね」
「え?」
「雅一坊ちゃまと榛名お嬢様ですよ」
「ああ、そうだな」
「特に榛名お嬢様はすごくあなたに懐いていらっしゃるようで」
「懐くって、犬じゃないんだから」そう言って播磨は紅茶を口に含んだ。
「お付き合いしてるんですか」
「ぶっふお!!!」
「うふふ」
「ゴホッ、ゴホッ!何言い出すんだオメーは」
「カワイイですねえー」
「変なこと言うなよ」
「榛名お嬢様のこと、嫌いですか」
「いや、別に嫌いじゃねえよ」
「だったら、お付き合いしてもよろしいんじゃないですか?それとも、ほかに好きな女性がいらっしゃ
るのですか?」
「いや、そうじゃねえけど」
「では男性ですか?あ、もしかして雅一お坊ちゃまと」
「違う!だいたい俺みてえなクズと、榛名お嬢みたいな良家の娘さんが釣り合うわけねえだろう」
「だったら、私なんてどうですか?」
「はい?」
「ダメですか」
「年上は…」
「私は十七歳ですよ」
「だったら俺と同い年か」
「え、播磨くんも十七歳?」
「ああ」
「じゃあいいじゃないですか」
「あのな」
「はい」
「俺は嘘をつかない女が好きなの」
「やっぱり、他に好きな女の子がいるんじゃないですか?」
「いや、今はもういねえ…」
「じゃあ…」
「俺にはやらなきゃならん事もあるしな。今はそんな、付き合うとか考えられねえ」
「やらなければならないこと…?」
「おっと、もうこんな時間だ。まだちょっと仕事が残ってるんで、失礼させてもらうよ。紅茶、ありがとうな」
「あのちょっと…」
そう言うと播磨は部屋を出た。
「ふう、もう一仕事するか」暗い廊下を歩きながら、播磨は一人つぶやいた。
つづく
次回予告
※予告内容と本編とは(以下略)
「播磨さん、指輪はどこですか?」
「だめだ妹さん、渡しちゃいけねえ」
「襟の裏よ。播磨君はいつもそこに隠すの」
「ぐっ、高野…」
「これは…」
「え?」
「メイド喫茶…、ゴールド会員?」
「あ、それは…」
「播磨さん、メイドさんが好きだったんですか」
「いや、これは違…」
「フフフ、作戦通り」
「高野オオオオオオオオ!」
ぼやき、というか本当の予告。
どんどんカオスになっていくこのお話ですが、最終回はスクランどころか
物語として成立するかすら怪しい展開になっております。
もう書いちまったし、今さら変更はできねえ。というかするつもりもねえ。
あと沢近嬢、出ます。
乙でーす!
>「じゃあの」そう言って播磨は高野に見送られ、茶道部の部室を後にした。
竹原ワロタw
乙
だけどいいかげん播磨をお嬢の正式な執事に戻してやってくれ
おつ
まぁあんたのSSが嫌ならNGいれるだろーから、気にしなくておkじゃねーの?
ウンコ乙
つまんね
まぁ妄想汁出しまくりの旗SSよかマシだろ…
つまんね→旗SSよりはマシ
なんかこれ感想とは全く関係ない投下後のお約束みたいになってきてんな
それともかく、スクラン本編なんだが・・・
なんか変な終わり方になってきてないか?
作者は旅行いってばっかで手抜いてやがるからな
長年ためてきた伏線や設定の消化がおそろしくいいかげんだと感じた
SSにしてたらつまらんと思われてただろうな
スクラン初見からの感想だが
小林ってマジで話作りの才能無いな…
この程度だったらマセた小学生でも書けるぞ
あろさんが感想書かなくなっちゃった・・なんでだ
そろそろスレ違い
というかどこのスクランスレ行っても現状に不満ありな奴しかいないからどこで話しても一緒
>>859 それでは、お前が試しに書いてくれないか?
おにぎりSS読むと幽子が恋愛に絡む話の多いこと多いこと
実際は仁丹は幽子を八雲の自立という形でもってったわけだが
これからはそういう話ができなくなるのか
なんのためにスレタイにIFってあるか考えろ
そりゃifスレなんだから妄想は自由だろうが、果たして書ききるほどのエネルギーというか衝動が起こるかだよねぇ
盛り上がってた頃って、妄想や自分の渇望する展開を書きたい!ってのがあったんだし
バンターさんトコの先週の更新で、マガジン読んだ感想を熊が柵に肘をかけて黄昏れてるAA貼って表現してたけど
最近のスクラン読んでみてなるほどと思ったわw
今色々初期の設定を回収してる時期なのに
何でそんなに創作意欲が刺激されないんだろう
>>849のレスを見て笑いがこらえきれなくなったwwww
じゃwあwのwwwww竹原wwwwwwwwwっうぇwwwww
奈良健太郎のSSも書いて欲しい
自分で書け!
仁丹と川田のSSが読みたい
>>872 プロレスラーとの絡みとは、これまたマニアックな
まさか本編で姉妹の別れが会話ナシとは思わなかったぜ
実際、天満や八雲が相方をガン無視する作品って評価下がる?
奈良健太郎のSS書いてくれれば褒美を取らすぞ!
IF28登録しました。
結構適当ですね。出ているキャラクターとかほとんど省略してるし。
乙
なんというかこのスレではリクをあげるってことないのかね
乙かれ
リク上げるのは好きにやっても良いんじゃなかろーかと思ってるけど
誰も書いてくれないからって粘着したり荒らしたり怒ったりしたら駄目よ
乙
リクか
時間さえあればリク受けて書いてみたいけど
結局の自分の書きたいもの書けるものしか書かないんだよな
バレスレや本スレで色々文句言われてるけど
こういうラストがよかったってSSを見たい
こういうラストが良かったって、普通に播磨が天満を空港まで送っていって終わるのが一番だったような
エピローグで数ページ使ってその後の天満達の姿を描いてればさ
ハリマのごとく!
前回までのあらすじ
週末。東郷家当主であり、東郷雅一、榛名の父親の誕生日パーティーを開くため、執事の
播磨はその準備のために大忙しであった。そんな中、東郷の父親が帰宅。播磨がはじめて
見る東郷家の当主は、多数の使用人のみならず、十一人(正確には十人と一頭)の影武者
を引連れていたのだった。
そして日曜日の夕方、ついにパーティーが始まる。
最終話 命懸け
黒塗りの車がひっきりなしに東郷家の屋敷の前に止まる。家の周りには黒服の男たち。
「おい、あのオッサンどこかで見たことがあるぞ」窓越しに招待客を見る播磨。
「ふっ、元総理大臣だ」タキシード姿の東郷雅一が腕組みをしながら言った。
「うおっ、マジか。俺みたいなのがこんな所にいてもいいのかな」
「お前は東郷家の執事だ。堂々としていればいい」
「ところで榛名お嬢は?」
「美容院に行くとか言っていたな。パーティーには間に合うと思うが」
二人が話をしている所に、ドアをノックする音が聞こえた。
「開いてるぞ」と東郷が言うと、ゆっくりとドアが開いた。
「マリエです」
「どうした」
「実はパーティー会場に配置するためのバーテンダーの関口さんが急遽こられなくなったよう
で…」
「なに!?欠員はちとキツイな…」と東郷。
「一人くらいいなくてもいいんじゃねえのか?」播磨は言った。
「いったい何人の招待客が来ると思っているんだ。それに、バーテンダーの関口さんは、バカル
ディ・マルティーニ・グランプリで準優勝するほどの腕の持ち主。そうそう代わりが見つかるもの
じゃない」
「だったら俺がやるよ」と播磨。
「ええ?」
「なに?」
播磨のその言葉に、マリエも東郷も驚きの表情を隠さなかった。
「バイトやってたことがあるんだ。バーのよ」
「お前、アルバイトごときの経験で務まる仕事じゃないぞ」
「なんとかしてみせるさ。恥はかかさねえよ」そう言うと播磨は会場に向かった。
《本日は東郷雅晴氏(仮名)の誕生パーティーお越し頂き、まことにありがとうございま
す》
政財界の重鎮から、芸能人など多数の有名人が出席するパーティー会場で、播磨
はひたすらカクテルを作っていた。彼はわりと世間には疎いので、近くに有名女優が
通りかかっても気にすることはなかった。
「ふふ、さすが俺の見込んだ男。全く動揺していないようだな」東郷はそんな播磨の姿を
満足そうに眺めていた。
「ドライマティーニ」
「ソルティドッグを」
「イタリアン・アイスティーはできるかしら」
「ワイオミング・スイング」
次々にくる注文に的確に答える播磨。その手際の良さに、周りのメイドたちも驚いていた。
「物凄いバーテンダーがいるらしいわよ」
「ちょっと行ってみようか」
会場内では、ちょっとした噂になったため、ただでさえ忙しい仕事がさらに忙しくなってしまっ
た。しばらくして、仕事も一段落すると、近くにいたメイドが声をかけてきた。
「播磨様。そろそろ休憩をなされては」
「そうだな」
そう言って休憩室に向かおうとしたとき、また客が現れた。
「ブラッディマリー、あります?」
「あん?」
「ないの、ブラッディマリー」
「お嬢…!」
「ヒゲ…!こんな所で何やってんのよ」
「お前こそ」
播磨の目の前に現れたのは、クラスメイトの“お嬢”こと沢近愛理であった。
同時刻。東郷邸内の一室。
「申し訳ございません。渋滞に巻き込まれてしまいまして」
「急な交通事故だから仕方ないわ」
美容院に行って髪の毛をセットしてもらった榛名は、帰りに交通事故による渋滞に巻き
込まれて、パーティーに遅れて参加することになった。
「どうぞお嬢様」
使用人の用意したドレスに身を包む榛名。
「まあ、素敵ですわお嬢様」
「そうかしら」
榛名はパーティー用のドレスを着た自分の姿を鏡に映してみた。
「背中が開いてて恥ずかしい…」
「これで殿方の目も釘つけになったらどうしましょう」
「もう、やめてよ」
そうは言ったものの、榛名も少し期待していた。
(播磨先輩、この姿を見てなんて言ってくれるだろう…)
榛名は、父親の仕事柄ドレスを着ることがあったけれども、そんな姿を播磨に見せたことは
なかった。やや子供っぽい容姿にコンプレックスを持っている彼女だけに、少しでも大人びた
格好をすれば、播磨もいつもとは違う反応を示してくれるのではないか、と考えていたのである。
「それでは参りましょうかお嬢様」
「あの、ハリ…、いや。執事さんはどこへ行ったの?」と榛名は聞いた。
「え?播磨様ですか?今は会場にいらっしゃると思いますよ」
「そう…」
「あの、お嬢様」
「一人で行けるから大丈夫」
「お嬢様」
榛名は控え室を出て、会場に向かった。しかし、直接会場に向かうのではなく、使用人
控え室のすぐ近くを通って行くことにした。なぜならそこで播磨に会えるかもしれない、と
考えたからだった。
「…という訳だ」
不意に聞き覚えのある声が聞こえた。播磨の声だ、と榛名はすぐに気がついた。しかし
彼は一人ではなかった。
「へえ、アンタが執事をねえ」
播磨と廊下で立ち話をしていたのは、彼と同じクラスの沢近愛理であった。榛名の頭に
一抹の不安がよぎった。かつて沢近は播磨と付き合っているのではないか、と噂された
女子生徒の一人である。
「バイトなんだ。給料も良かったし」
「それで、東郷くんの妹さんとお買いものに行ってたのも?」
「ああ、まあ仕事の一環だ。主人を守るのが執事の勤めだからな」
「あたしはてっきり、あの子と付き合ってるのかと思ったわ。仲良くお買いものなんかしてる
もんだし」
「あのなあ、俺は荷物持ちみたいなもんだよ」
「でもそういう気はないの?」
「なにが」
「その好きだとかいう気持ちよ」
「はあ?」
「だって可愛い子じゃない?ちょっとしか話をしたことないけど、素直でいい子よ」
「あのなあ。俺は好きとか嫌いとかであいつと一緒にいるわけじゃねえんだよ。仕事だからだ。
責任があるんだよ。例え一週間だけのバイトとしても」
「……!」播磨の言葉に、榛名は一瞬息が詰まる。
わかっていた。わかっていたけれども、それを口にされるのはショックだった。
(そうだよね、播磨先輩は仕事だから私と一緒にいてくれたんだよね。誘拐犯から助けて
くれたのも…)そう思いながら走りだす榛名。パーティー会場に行かなければならないの
だが、どうしてもそういう華やかな場所に出る気にはなれない。なにより、会場で再び播磨
と顔を合わすのが辛かった。
(あれ…?涙…)急に目の前がぼやけたかと思ったら、右の頬を涙の滴がつたって落ちた。
そんな自分の姿を、榛名は一層惨めに思えてくる。
「ああ!」
不意に柔らかいものが榛名の顔に当たった。
「榛名お嬢様」
廊下の角を曲がる際、メイドのマリエとぶつかったしまったのだ。
「大丈夫ですか?」マリエは榛名が転倒しないよう、しっかりと両肩をおさえた。
「うん、大丈夫」榛名はマリエに気づかれないよう、そっと涙をぬぐった。
「ちょうどいい所にいらっしゃいましたわ、榛名お嬢様。わたくしと一緒に来ていただけません
か」
「へ…?」
休憩を終えて会場に戻る播磨。
「やれやれ、あのお嬢に絡まれて全然休憩にならなかったぜ」そう言いながら会場に入ると、
ついさっきとは一変した雰囲気に気がついた。
「動くな!この会場は我々が占拠した」プロレスラーのようなマスクで顔を隠した数人の男たち
が手に銃を持って会場を取り囲んでいた。テロリストであった。もう絵に描いたようなテロリスト
っぷりである。
「変な気を起すなよ。死にたくなければな」招待客に対して銃を突き付ける集団。有無を言わ
せず一か所に集めて行く。
「何なんだキミたち…ぐわあ!」抵抗する者は、一瞬で叩き伏せられた。
「東郷は、この家の主はどこだ!今すぐ出て来い!」
播磨は会場を見回したが、先ほどまでウロウロしていた番号のついたマスクを被った別の
集団(東郷雅一と榛名の父)はいなくなっていた。
「12番の親父なら、庭で葉っぱを食ってるぞ」と息子の東郷雅一が言った。
「いや、アレはいい」
(やはりこいつらも、アレが東郷の父だとは思わなかったようだな)そう思うと播磨は少し安心した。
「おい!東郷雅晴はいないのか!出てこないとこの女を…」そう言ってテロリストのリー
ダー格と思しき男が招待客の女性の一人の腕をつかみ、銃をつきつけた。
「やめねえか!そんなもん人に向けるのは」そう言って前に出る播磨。
「播磨…!」
「ヒゲ…」
「何ものだ、あの男は」
「さっきのバーテンダーじゃない?」
ざわめく招待客たちに対し、テロリストのリーダーが怒鳴った。
「静かにしろ!おい、ヒゲのお前!誰が前に出ていいと言った!死にたいのか」そう言って
播磨に対し銃を向けるテロリスト。銃はヘッケラー&コッホ社のMP5スタンダードタイプで
あった。いわゆるサブマシンガンの一種だ。
「お客の安全を守るのも執事の勤め。殺すなら俺からやれよ」
「ちょっとヒゲ、何言ってのよ!」と沢近嬢。
「おい兄弟、早まった真似をするんじゃねえぜ」東郷兄も言った。
「うるせえ!外野は黙ってろ。あと兄弟って言うな」
「おい!こっちを無視するな」そう言って再び銃を構えるテロリストの親分。「正義のヒーロー
にでもなったつもりか?足が震えてるぜ」
「そっちこそ、人を撃ったことがあるのかよ、素人丸出しだぜ」
「ほざけ、引き金を引けば貴様はあの世行きだ」
「やってみろよ」
播磨が周囲を見回すと、回りのテロリストたちも銃を彼のいる方向に構えていた。
「どうやら本当に死にたいようだな。いいだろう」そう言うと、テロリストのリーダーは引き金を
引いた。
「ヒゲ!」
「きゃあああああ」
カチッ、という金属音が会場内に響き渡る。
「ん、なぜだ!」男が何度引き金を引いても、銃弾が発射されることはなかった。
「おいオッサン!」
「な」
「これなーんだ」そう言ってポケットから黒い針金のようなものを取り出す播磨。
「それは!」
会場にいた招待客たちはそれが何か、すぐには気がつかなかった。先がとがっているけれ
ど、ペンにしては細い。
「撃針?お前、まさか銃の撃針を」
「ああ、抜かせてもらったぜ。全部な」そう言うと播磨はポケットから大量の撃針を取り出して
床の上に落とした。ちなみに撃針とは、銃弾の薬莢の雷管を叩く部分で、これがないと弾は
雷管が叩けないので、当然ながら弾は発射されない。
「うう、しまった!」周りのテロリストたちも引き金を引くが、弾が出ない。
「こんなに大量の武器を、この警備の厳しい屋敷内に持ち込むのは不可能だよな。だから
あらかじめ屋敷内に武器を持ち込んでおいたのか。まあよくやるな。なあ、執事長代理、
早乙女さん」
「う…!」
「まあ、内部の人間じゃないと無理だよな」そう言って播磨は足元にころがる撃針を蹴って
ころがした。
周りのテロリストたちも、武器が使用不能になっていたことを知って明らかに士気を削がれ
ている。
「オメーの負けだ。降参しろ」
「なん・・・、だと・・・?」
「ところで、あの年齢サバ読んでるねーちゃんはどこだよ。あいつも仲間だろう」
「フフフ…」
「何がおかしい」
「武器を使用不能にしたくらいで勝ったと思うなよ。詰めが甘いのはお前の方だよ、播磨拳児!」
テロリスト、いや早乙女がそう言うと、ゆっくりと庭へと続くキリン専用(?)の大きな扉が開いた。
「誰が年齢サバ読んでるですってええええ!?」
ライトアップされた庭園の中にたたずむ巨大な化け物…。明らかにキリンではない。
「ハッハッハ、銃などおまけに過ぎん。あれが我々の最後にして最強の切り札だ」
「播磨先輩!」
「榛名お嬢!」榛名の声を聞いて庭に駆け出す播磨。
それは人の形をした巨大なロボットであった。しかもロボットの左手には、榛名が握られていた。
「先輩!!」
「榛名お嬢、待ってろ!必ず助ける」
「何カッコつけてるんだい、執事くん」巨大ロボットの肩に乗っている女の影。それはメイドのマリエ
であった。しかし先ほどまで来ていたメイド服ではなく、ほかのテロリストと同じように上下戦闘服
である。
「おいババア!」
「誰がババアよ!アタシは正真正銘の十七歳なの!」
「そんなことより、このロボットはなんだ!」
「フフフ、これが東郷重工業が開発した人型戦闘用ロボット、ミカサ2号よ!」
「なにいいいい!!!」庭に出た見物人(さっきまで人質にされそうになっていた招待客のみなさん)
が驚きの声をあげる。
「ああ、今、八時ちょうどだからか」
「それはあずさ2号」
「やっぱりオメー、昭和生まれだろう」
「違います。十七歳です。ピチピチなんです!ジャンクにしますよ」
「うるせい。この嘘つき!俺は嘘つきとキツツキは大っきらいだ。あとエビも嫌いなんだよ」そう言うと、
播磨は素早く駆け出し、ロボットの後に回り込んだ。
「後を取ったからといって何ができるというのです?子供の喧嘩じゃあないんですよ」マリエがそう言っ
て、ロボットも振り返ろうとした時。
「なんだこれ」播磨は、地表とロボットをつなぐやたら太いケーブルのようなものを見つけた。
「あ、それは」
「えい!」播磨がケーブルを抜くと、ロボットの動きは止まった。
「あああ!何すんのよおお!」
「オメー、コードつながねえと動かねえのか、そのロボット」
「いきなり電源抜いて、壊れたらどうすんのよ!高かったのよこれ」
「あ、悪い…」
そうこうしているうちに、ロボットの左手に握られていた榛名が、機能停止によってロボットの握力が
緩み、そこから滑り落ちてしまった。
「きゃああああ」ロボットの身長は、結構高い。
「おっと!」
榛名が落ちる寸前に、滑り込むようにして彼女を受け止める播磨。
「大丈夫か、榛名お嬢」
「先輩、怖かったああ」榛名はそう言って涙目になりつつ播磨にしがみついた。
「ラブラブなところ悪いけど、まだ終わっちゃいないよ」マリエがロボットの肩からずり落ちそうになるの
をこらえつつ、言った。
「まだやんのか?もう諦めろ」
「いいや、まだまだよ!ミカサ2号には予備の内部電源があるの。2号機に残された予備電源は残り185
秒。これだけあれば、この屋敷の半分は壊せるわ」どこかで聞いたことのあるようなセリフを言いつつ、
内部電源のスイッチらしきものを押すマリエ。すると、先ほどと同じようにロボットが動き始めた。
「しょうがねえ。榛名お嬢。ちょっと安全なところに避難していてくれ」そう言って榛名を立たせる播磨。
「先輩…」
「なあに、心配いらねえ。早くしな」
「はい」
「おい!東郷(マカロニ)!!」と叫ぶ播磨。
「ああ、用意できたぞ」庭の隅の方で、東郷兄が“何か”を用意していたようである。
播磨は東郷の元に駆け寄ると、やたら大きな銃ようなものを構えた。
バズーカでも無反動砲でもロケットランチャーでもない。しかし武器であることは間違いなかった。
「反物質封球弾(アンチサブスタンスシールディングブレッド)発射装置だぜ」
「なにい!?なんでそんなものがこの家に」早乙女が驚愕の表情で言った。
「巨大ロボットが庭にある時点で、説得力のねえ台詞だな。それよりも、マカロニ!エネルギーチャージ
だ」
「おし!行くぜ、エネルギーチャージ」
《ただいま入ったニュースによりますと、先ほど神奈川県の矢神市とその周辺の自治体で原因不明の停電
が発生している模様です。停電している地域は以下の通り…》
「いくぜええええええええ!!!」
「本当に撃つのかああああ」
「きゃああああああああ」
播磨は、引き金を引いた。
すると次の瞬間、天空に大きな花火が上がった。
次々に打ち上げられる花火に、招待客の拍手が起こった。誕生パーティー、最大のセレモ
ニーであった。
「いやあ、見事なものです」顔に“3”と書かれたマスクを被ったスーツ姿の男が播磨たちの前
に姿を現した。
「アンタが、東郷の親父さんかい…?」と播磨が聞いた。
「いえ、私は影武者です。本物の旦那様は、急用ができてしまい、只今成田空港へ向かって
おります」
「だったら、あのキリンはやっぱり東郷氏じゃあなかったんだな」播磨はまだ庭で高い木の葉っ
ぱを食べているキリンを見ながら言った。
「当たり前です」と影武者。
「この前はパンダに化けていたんでもしかしたら、と思ったが…。さすが親父だ。裏の裏を読ん
だか」東郷兄は腕組みをしながら言った。妹の榛名は、父がいなくなってしまった少し寂しそう
に見えた。
「いったい何なんだ、この余興は」播磨はうんざりした口調で言った。少し疲れが出てきたようだ。
「新しく入ったあなた様の実力を見るためですよ、播磨様」
「俺の、実力?」
「我々はこの一週間、あなた様の行動を見てきました。そして、あなた様が東郷家の執事にふさ
わしいかどうかを試していたのです」
「試したって…」
「我々の手の者が、少々手荒な真似もしてしまいましたかな」
「あの榛名を誘拐した連中も、お前らの仲間か」
「左様でございます」
「でも実弾撃ってなかったっけ?」
「リアリティも大事にございます」
「あ…」
「それはともかく、あなた様は東郷家の執事として適任であると、我々は判断しました。
今日のパーティーにおける立ち回りも、見事なものでございましたし。おめでとうござい
ます、播磨様」
「おめでとう、播磨くん」
「おめでとう」
早乙女と花京院マリエも拍手をした。しかし、おめでとうと言われた当の本人は、状況
をよく呑み込めていなかった。
「ちょっと待ってくれ」
「は、何でございましょうか」と影武者。
「俺は一週間だけの臨時の執事だぞ」
「え?」
「なんだ、聞いてなかったのか?正式な執事は明日くるんだ。播磨は今日までの臨時の
執事なんだよ」と東郷も言った。
「なんと、それでは…」
「おい…」
「申し訳ございません。間違いでした」
「おいっ!」
「では私はこれで…」
「ちょっと待て」播磨は逃げようとした影武者の後の襟を掴んで止めた。
「あ、あのお…。私は影武者なので、責任はその…」
「おい東郷(マカロニ)」
「なんだ兄弟」
「兄弟はよせ。それよか、こいつ、ぶっ飛ばしてもいいか?」
「ふっ、好きにしろ。どうせ影武者だ」
「そ、そんなあ!雅一坊ちゃま。なんてことを」
「間違えたお前が悪い…」
「ええええ?」悲痛な叫びを上げる影武者。
「待って、播磨先輩」と、榛名が声を出した。
「なんだ榛名」
「私の分も、やっちゃってください」
「おお、そうか」
「怖い思いしちゃったし」
「そうだな」
「そんな!お嬢様まで。ひいいいいい」
播磨が、東郷父の影武者を引きずっていると、マリエも声をかけてきた。
「あの、播磨くん」
「今度はお前か。どうした」
「あなたは、かなり早くから私たちのことを疑ってたみたいね」
「そうだな」
「いったいいつから?この屋敷に来た時から?」
「いや、違うな」
「じゃあいつ?」
「アンタが自分のことを、十七歳って言った時から」
そう言うと、播磨は東郷父の影武者を連れて、闇へと消えて行った。
「アー!」
エピローグ
パーティーも終わり、静まり返る東郷家。屋敷のテラスで、榛名は一人夜景を眺めてい
た。
「まだ起きていらしたんですか、榛名お嬢様」
「マリエ…」
戦闘服から再びメイド服に着替えたマリエが立っていた。
「何か悩み事でも?」
「いえ、そうじゃないけど…」
「播磨くんのことですか?」
「あ…」赤面する榛名。
「お嬢様は正直でいらっしゃる」
「べ、別に悩むってほどじゃないんだけど。ただ…」
「ただ?」
「先輩は、仕事だから私に優しくしてくれたのかな、って思うと」
「お嬢様は播磨くんの事が好きだけど、そうは思っていない、そうおっしゃりたいのですか?」
「ちょ、ちょっと!何言ってるのよ…。そりゃあ…」
「例え仕事とはいえ、播磨くんがあなたの為に命がけで命がけで戦った事実は変わりないで
しょう」
「え…?」
「仕事に命をかけるなんて、なかなかできることではありませんわ。そういうところは認めて
あげてもいいのではないですか?」
「うん…」
「まあ素直になることです。まだ知りあって日が短いのですし」
「はい」
数日後。矢神学院高校。
「おはようございます、播磨先輩!」
「榛名か、元気してっか」
「はい」
「そりゃあいいんだけどよ、後の」
「はい?」
「なんで影武者が学校に来てるんだ?」
学校の制服を着て榛名と一緒に登校しているのは、“3”のマスクをつけた、東郷父の影武者
であった。
「あの、これは…」
アフリカ、某国。
「アフリカでの仕事とは、やるな親父!」自動小銃を携えた東郷雅一が建物の影に隠れつつ言った。
「坊ちゃま!ここは危険です」
「おう!」
「RPG!」
砂埃と煙の中、東郷雅一は駆け出して行くのであった。
お わ り
乙・・などというと思うか
乙かり
全編通して東郷周りが良いところ持って行ってたなwww
最早使い古された旗SSよかマシ…と言いたいとこだが
こりゃねえわ、糞話乙
GJと言わせてもらおう
なんか色々間違っている気もするけどいつも楽しませてもらってますw
それにしても定期的な投下は本当すごい
批判したい人は具体的に指摘するか
そうでなければスルーすべきかと
900 :
897:08/06/08 00:39 ID:HpMGkLv.
>>899 批判というか、まず第一に確認しとくと、全てのキャラは確実に本編とは違ってると思うぞ?
そこを指摘している人を批判と取っちゃダメだろ
俺はギャグな話でネタを仕込んでるからと許容範囲になってるけどさ、
そこが合わなくて気に入らない人もいて当然でしょ
上の方で言われてたのは十分に指摘の部分に入ると思うけど。さらに、批判が悪いって分けでも無いが
露骨なヤツはキーワードをNGに入れてるから見えないけどね
901 :
899:08/06/08 01:19 ID:mK9273lI
>>900 いや俺も自分のレスに書いてるようにその辺は分かっているよ
以前キャラが違うことは指摘したこともあるし、今回ももう少しつっこんで批判しようかとも思った
でもさすがに898みたいなのは無しだろ
多分見えてないのかな
俺もいつもスルーしてるんだけど
こうゆうのが当然な空気になると嫌だと思って書いた
でも今回もスルーすべきだったかもすまんな
糞を垂流すなよな。
こういうヤツに限って大量に投下する困る。
最近正統派のおにぎりや旗、お子様ランチがない気がする
すぐハーレムハーレムと文句つけられるからか?
本編が終わりそうなのに結局播磨が誰にも振り向きゃしなかったからな
中盤ぐらいまでならここから〜と各派閥余裕だったろうが
奈良健太郎のSSを!
もう播磨は原作じゃ誰にも振り向かなかった前提で
旗おにつくったほうがいいと思う
908 :
ruru:08/06/08 23:18 ID:fD0n98L.
はじめまして。ruruと申します。
だいぶ前にS3’に投稿したものを加筆修正を加えて投下させて頂きます。
前編・中編・後編の3部作構成で今回は前編だけ。
見苦しいものになるかもしれませんが、よろしくお願いします。
909 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:26 ID:fD0n98L.
小さな机の上に広がる描きかけの原稿用紙。
そのまわりに散らばる消しゴムと消しかす。
かしゃん。
何かの落ちる音が部屋に響いて――
少年は手に持っていたはずのペンが机を伝い、床へと転がっていくのを見た。
ふと視線を感じ、そこへ目を向ける。
すると、驚いたような顔で、自分を見つめる少女がいた。
一瞬だが、少年はどうして少女がこの部屋に居るのか分からず…しかしすぐに合点がいく。
――ああ、そうだ…手伝いに来てくれたんだよな
――漫画の下書きを彼女に見てもらって
――んで、またいつものように色々と意見を聞かせてもらっ…って、なんでこんなに視界が歪んでやがるんだ?
――そういや、すげぇ頭がズキズキするし
――最近あんま寝てなかったからか?
――うぷっ。気持ち悪ィ…マジでこりゃ、ちと駄目だわ
――せっかく来てもらったのに申し訳ねぇんだが…って――あれ?急に何も見えなくなったぞ
――それに…なんだか……すご…く……ね……眠…………い…
910 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:28 ID:fD0n98L.
どんっ、と鈍い音がした。
その瞬間には既に、少年は万有引力の法則に従い床へ身体を預けていた。
ただ少年とって不本意だったのは、自身の左肩が机の端に当った衝撃でインクが零れ、何枚か原稿用紙を汚してしまったこと。
――……せっかく………手伝って……もらってたのに………よぉ……
――…すまねぇ…な………い……も…う…と……さん
それは薄れゆく意識の中で働かせた、最期の思考だった。
やがて、床に転がった少年は薇の切れた人形のように動かなくなってしまった。
たまらず少女は悲鳴を上げる。
しかしその声は虚しく、この小さな部屋に響き渡るだけ。
少年の耳は、どんな物音も感じることが出来なくなっていたから。
少女は駆け寄り少年を肩を揺さ振る。
漠然とした不安が波紋のように広がって少女を錯乱させた。
自身の瞳から零れる落ちるものに、気付かないくらい。
無意識に少年の名を呼ぶ。
それは、もうどこにも届かない。彼方への願い。
「…播磨さん。……播磨さん。………播磨さんっ!」
911 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:29 ID:fD0n98L.
少女は揺さ振り続けた。
少年の肩を―
少女は叫びつづけた。
少年の名を。
ずっと――
The last time ever saw(前編)
7月のちょうど終わる時期…相も関わらず蝉は喧しく鳴き。
その木の下で虫籠と虫採り用の網を持った子供たちが、これまた喧しく泣く。
空に浮かぶ入道雲。
その隙間からさんさんと照り輝く太陽の光が今日も眩しくて、少しだけ恨めしい。
とある一室のマンションから見える景色は鮮やかな夏の雰囲気に包まれていた。
ベランダから外を眺めていた少女――塚本八雲はそう思った。
912 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:30 ID:fD0n98L.
地元の高校に通う八雲は今、大学受験真っ只中の三年生。
セミロングの黒髪にはしっかりと艶がのり、綺麗な輪郭線に整った形をした鼻。
どこか浮き世離れした緋色の瞳。白い肌に細身ではあるが抜群のスタイルを誇る。
一般的に見ても、十分「美少女」の部類に入る八雲。
ただし、本人にあまりその自覚はない。
その容姿、また人柄の良さから、異性にも同性にも人気がある八雲。
だが、彼女にはちょっとした秘密がある。
その秘密とは――
「自分に向けられた好意の心が視える」ことだ。
自分の姉や大切な友人の心が垣間視えたとき、八雲は胸の奥がきゅんとなってしまう。
少し照れくさいような、恥ずかしいような。それ以上に嬉しいような。
たまに苦しいのは、男の人の心が彼女の意思とは無関係に視えてしまったとき。
その為か男子とコミュニケーションをとるのが苦手で、どうしても敬遠してしまう。
人の隠された本心が見える彼女にとって、それはある意味で仕方のないことかもしれなかった。
913 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:31 ID:fD0n98L.
しかし、そんな不思議な力を持つ彼女にも秘かに気になる男子がいた。
そこに恋愛感情があったのかは些か微妙だが――どちらかと言えば遠い憧れに似た想いだったかもしれない。
何より、その異性の心だけは全く視えてこなかった。
それはとても居心地の良い空間で…
その人は八雲より一つ年上の同じ高校に通っていた先輩。
本来なら今年の春に卒業し、今は――漫画家のとして日々を追われているはずだった――
しかし、それは八雲が想像しうる虚像であって、実際のところ彼がどんな未来へ向かったのかなど知る由もない。
何故ならその男子――播磨拳児は去年の夏、既に他界したから。
彼の死から、もうすぐ一年の歳月が流れようとしている。
914 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:31 ID:fD0n98L.
「すまないね。呼び出しておいて」
しばらく外を見るのに勤しんでいた八雲をこのマンションの家主――刑部絃子の声が捕らえた。
絃子は八雲の通う高校の教師で物理を専門に教えている。
しなやかな長髪。整った顔。何より魅力満載なのは、その豊満なスタイル。
高校の男子生徒は愚か同性の女子さえも憧れを抱く美貌の持ち主である。
当然。そんな絃子を慕う人も多いが、それ以上に人を寄せ付けない雰囲気を持っている。
そして周囲にはあまり知られていないが絃子と播磨は親族関係でいう所の従姉弟同士だった。
性格的に男勝りな所もあり、人付き合いも希薄な彼女。
――やっぱり…播磨さんと何となく似てる……
八雲は絃子を見ていると彼の姿が過る気がした。
「笹倉先生が支度に手間取っていてね」
「あの‥笹倉先生も一緒にですか?」
「――というか、彼女が“足”だからね。あそこまで行くのに車があると非常に楽だ」
「そうですか…」
それ以降ふたりは口を開く事なく、ただお互いベランダから続く外の景色を眺めていた。
心地いい光を浴びて夏に染まる町は生き生きとしてる。
外の向こう側がとても輝いて八雲には見えた。
915 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:32 ID:fD0n98L.
そういえば播磨拳児と初めて会ったのはこんな強い陽射しの夏。
塚本家のクーラーを直しにきた作業員の内の一人が播磨だった。
何故か修理の最中に泣きだしてしまった彼におにぎりを差し入れをしたのが始まり。
それからキャンプで一緒になったり、夏休みの終わりに動物の為に身体を張ったり、文化祭の劇では一騒動起こしたり。
ひょんなことから播磨が趣味で漫画を描いていることを知り、彼の作品に批評したり、たまにその作業を手伝ったり。
渡せなかったバレンタインのチョコレート。
手錠で繋がれた歩行祭。
振り返れば彼との小さくて些細な、それでもひとつひとつが眩しくて、輝いていた思い出。
しかし世界は確実に移り変わっていく。
播磨という少年が居たことをもう二度と感じることのない時の流れは無情にも早く過ぎていく。
この町は既に彼を忘れてしまっていた。
きっと、そうやって世の中は流れていくのだろう。
やがて、思い出さえも風化してしまうのだろう。
そして、誰もが忘れてしまうのだろう。
916 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:33 ID:fD0n98L.
大切な人。かけがえのない時間。失いたくないもの。そんな、ぜんぶ。
それでも、まだ八雲は忘れたくなかった。
彼と共に歩いた時間を。
彼と共に過ごした日々を。
もう、それが既に失われてしまったものだと。
認めたくなかった。
けれども今日再び、八雲は現実と向き合う。
笹倉先生の車で彼女らが向かう先――そこで、彼は静かに眠っているはずだから…
917 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:33 ID:fD0n98L.
そこは優しい風が吹いていた。
そこは穏やかな匂いがした。
こんなにも心地よい場所で彼は眠り続けているのだろうか。
とある、ひとつの墓石を前に塚本八雲は思った。手を合わせ目を閉じれば…
あの日、あの時の彼が今もこの町で生きているような。そんな錯覚さえも覚えた。
―――いもうと、さん………
不意にあの人に呼ばれた気がして振り返る。
しかし、振り向いた先に広がる視界は名も知らぬ多くの墓標たちだった。
当然ながら、そこには誰もいない。
「…気のせい……かな」
彼女は一人、納得するとその場を去る。そろそろ出発の時間らしい。
ただ不思議と耳に残ったその声が頭から離れることはなかった。
再び来たときと同じように笹倉葉子の運転する車に乗る。
彼の眠る場所が少しずつ視界から消えていく中で八雲は思った
――会いたい。せめて一目だけでも良いから……
918 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:34 ID:fD0n98L.
彼の最期を見届けた唯一の少女は、現実を受け入れるにはまだ幼かった。
それでも彼がこの世にいないという事実に彼女の心が押し潰されないのは。
この世に唯一の存在である姉と、交換留学生である同級生の友が八雲を支えていたからに他ならない。
自分が傷ついたとき。傍にはいつも助けてくれる人がいる。
自分が落ち込んだとき。傍にはいつも守ってくれる人がいる。
けれども、あの人はいつも一人だった気がした。
友達や知人、家族が全くいなかったというワケではない。
それでも何かに傷ついたとき。
彼には傍で慰めて、励ましてくれた人が居たのだろうか?
そんなことをぼんやりと考えていたら、車は気付くと家の前で止まった。
葉子と絃子に御礼を言い、八雲は玄関へと歩を進める。
七月の終わり。
今にして思えば、あの墓参りこそがこの夏に起こったすべての始まりで。
そして、永遠の別れだった。
919 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:35 ID:fD0n98L.
自分の部屋に戻り、中断していた受験勉強を再開する。と、その時。
何故か誰もいないはずの家に自分以外の人の気配を感じた。
それはすごく懐かしい匂いがした。
―――いもうとさん
振り返ると。
今度こそ、彼が。
昨年、他界したはずの彼が。
存在しないはずの彼が。
播磨拳児がそこにいた。
「………播磨さん?」
思わず声が出てしまう。
目の前で起こった出来事に頭がついていかない。
喜びと戸惑いで体が言うことを聞かない。
これは幻なのだろうか?近づいて触れてみる。
彼の左手にそっと自分の手を添えた。
―――温かい。
ゴツゴツした手から発する温もりは間違いなく彼の中に存在するものだった。
視線を上げ彼の顔に目を向ける。すると彼は少し悲しそうに笑って言った
―――俺が見えてるんだな、いもうとさん……
920 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:36 ID:fD0n98L.
何度会いたいと祈っただろうか。
何度涙で枕を濡らしただろう。
「ずっと、会いたかったんです」
それが精一杯だった。
八雲は満足に言葉を発することが出来なくなった。
止めどなく流れる涙で。
声を張り上げて。ただ、ひたすら泣いた。
夢でも幻でもない。今、ここに彼がいる。
八雲が泣きやむまで、彼――播磨拳児は空いた右手で彼女の頭を優しく撫でた。
窓の外を眺める。
空が微かに夕焼けに染まろうとしていた。
その空はとてもよく似ていた。
死んだはずの自分が目覚めたあと始めて眺めた空に。
それはとてもよく似ていた。
921 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:37 ID:fD0n98L.
空が夕焼けに霞む頃、播磨拳児は目を覚ました。
急激な眠気に襲われて意識が飛んでいたせいか。幾分、体が怠い。
横になったまま部屋を見回す。
机の上、零れたインクで汚れた原稿用紙。床に落ちたままのGペン。
誰も居ない部屋。そんな殺風景な景色を見て彼は思った。
―――あれ?確か妹さんにマンガの手伝いを……
そこまで思考が働いたとき。拳児の頭には最悪の事態が過ぎった。
―――やっべぇぇ!もしかして、また寝ちまってたのか!?
また、とは。
昔、新人賞の締め切りが残り三日と迫ったとき。
恥を忍んで塚本八雲――彼で言うところの妹さんに助けを求めた前科がある。
しかし、彼は作業中についつい居眠りをしてしまい。
あろうことか、そのことで彼女に八つ当たりをしてしまった。とんだ罰当たり者である。
あの時は確か起きるまで傍で待っていてくれた彼女。
ただ、どうやら今回は帰ってしまったようだ。
922 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:38 ID:fD0n98L.
―――ま、当然だよな。我ながら呆れちまうぜ。
―――わざわざ手伝いに来てもらったのによ……
とは思ったものの。ふと拳児は考えた。
八雲の性格からして、他人の家にお邪魔し。そのまま無断で帰宅するような子だろうか?
―――もしかしたら絃子の奴に……
―――いや、アイツは妹さんが来て早々に出て行きやがったな
どうせ葉子さんのトコだろ。
そこまで頭の中で整理のついた拳児は先程よりダルさの取れた体を起こし。
机の上を確認してみた。
彼の中で塚本八雲とは「良くできた天満ちゃんの妹さん」。
つまり、この状況でもし自分に声をかけず八雲が帰ったとすると、きっと何処かに書き置きを残すだろう。
そんな思惑から机を覗いてみたわけだが…特に何もなかった。
だとすればリビングか。そう思い、立ち上がろうとした瞬間。
ドアノブの回る音がした。
923 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:39 ID:fD0n98L.
開けた視界の先にいたのは八雲………ではなく。
このマンションの借り主である刑部絃子。
彼女は彼の通う高校で物理を専門とする教師で、拳児の従姉弟でもある。
職業はともかくとして、二人の親族関係を知るものは限りなく少ない。
校内でそれを知っているとすれば絃子の学生時代の後輩で美術を専門に教えている笹倉葉子。
生徒なら塚本姉妹くらいだ。
授業中は白衣にスーツ。部屋ではだいたい無地のワイシャツ。拳児の中には何となく彼女が白いイメージで定着されている。
だから部屋に入ってきた絃子を見て違和感を感じてしまった。
何故なら彼女が全身を黒のスーツでまとめていたから。
よく、見てみると絃子の着ているそれが喪服だった。
そういえばどことなく表情も暗い。
―――おい、イトコ。どうかしたか?
とりあえず様子のおかしい彼女に問いかけてみる。
しかし返事はない。
ただ、それも仕方のないことだった。
絃子からしてみればそこに拳児が居るなんて予想だに出来ないことだろう。
先程、他界してしまった彼がまだこの部屋にいるなんて。
いったい誰が予想できようか。
924 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:39 ID:fD0n98L.
―――今から通夜でもあんのか?
相変わらず拳児の問いには答えようとしない絃子。
彼女はスタスタと部屋の中央にある小さなテーブルまで足を運ぶ。
「拳児君……」
それだけ呟くとインクでもはや真っ黒に染まった原稿用紙を手にとった。
とって、そのままぼんやりと眺めていた。
―――って、おいイトコ!あんまり見るんじゃねぇ。恥ずかしいだろうがっ!!
無視されたあげく。
あまり人には見せたくない原稿を熟読されたとあっては拳児も黙ってない。
絃子の手から用紙をひったくろうとして―――
925 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:41 ID:fD0n98L.
「居たら居たで煩わしいヤツだが、こうして急にいなくなるのはあまり感心しないな」
その言葉に思わず手が止まった。
―――は?おい、今なんて……
そのとき何かが頭の中でカチッとはまる音が聞こえたような気がした。
喪服の絃子、届かない声、夕焼けの空。
汚れたままの原稿用紙、不意に訪れた目眩。
それからの空白の時間。
そして妹さん。
―――これって、そういうことなのか?
―――つまり俺は……
う
ん
こ
乙
927 :
The last time ever saw (前編):08/06/08 23:41 ID:fD0n98L.
死んじまったのか?
立ち上がりふと足元を見て、思わず拳児は鳥肌を立てた。
夕方の空。そう本来ならそこに当然あるべきはずのモノが彼には無かったから。
影が、なかったのだ。
足元から伸びているはずのそれが消失しているということは即ち。
そしてやっぱり……
もう一度だけ絃子の方を見る。
原稿用紙を持つ手が微かに震えていた。
顔も何かを我慢しているような…まるで泣くのを必死に耐えているような、そんな表情で。
次の瞬間には拳児は家を飛び出していた。
頭の中はいくつもの疑問符と混乱で。
そして先ほど一瞬だけ過ぎった自分なりの答えを必死に打ち消そうと。
あてもなく町へと飛び出していった。
The last time ever saw(中編)へ続く
928 :
ruru:08/06/08 23:47 ID:fD0n98L.
以上です。どうもありがとうございました。
よろしかったら、ご意見やご感想をお聞かせ下さい。
それでは失礼します。
とりあえずsageてくれ
内容はGJ
読んだ覚えがあるが思い出せないので新作ということで楽しみにしてる。
人の生死が絡むシリアスはスクランに合わないなあと思ってたが
実際最近の本編で烏丸がそうなってるし今読むとそんなに違和感を感じない
播磨と八雲の視点で話がどう進んでいくのか期待してるから頑張って欲しい
930 :
897:08/06/09 03:33 ID:uCqFtglA
>>908 あまり自分の作品を『見苦しいものになるかもしれませんが〜』とか言わない方が良いよ
じゃあ、そんな見苦しい物を見せるのか?って話になるしね
胸を張って、こんなの書いたけど読んでみて下さいな。くらいで
乙した
面白かったお
GJ
内容は面白いし、文章もすごく読みやすい
播磨が死ぬ作品はいくつか読んだことあるけど
この作品がここからどう展開するのか楽しみ
中編後編も期待してます
>>928 確かにS3で見たことがある
結末がどうなったか覚えてないので続きを期待してる
唐突だけど、
サラって恋愛で悩んだり友人に嫉妬したりするキャラじゃないよな?
>>933 悪巧みするとか黒い部分や妙に乙女チックな部分は、分校絵師の創作が受けてSSになってたりするけど
原作じゃサラの描写が少なくて、八雲の親友でしっかりしてる交換留学生という感じ
教会で子供の世話してたりする分、たまにガキっぽくなる麻生より大人っぽいサラの姿があるけど
恋愛云々は二次創作上でしか見られないよ
だよなー
1年組はどいつもこいつも2-Cより人間的に成熟してるから困る
八雲と絃子さんを除いてw
>>933 原作見る限りはそんなキャラじゃないね
性格自体は男前
悩むよりは行動して嫉妬するよりやれることやって
それでも駄目ならひたすら待つってのがサラに対する個人的印象
でも今のところ恋愛自体に目覚めてないっぽいから好きな人ができたら変わるのかも
ただ恋愛がサラの中で優先順位一番になるとこは想像しづらいな
田中との話を見ると
恋愛ネタになるとちょっと戸惑うところがありそうなもんだが
やっぱ難しいか
サンクス
IFスレ、次の30で終わりにしないか?
もう新作もないだろうし・・
終わりにしないかってのは自然消滅させずにスレ住民の意思決定で終わらせるって事か?
それはちょっと違うだろ
3日前には投下されてるんだからそれは違うよな
>>938の人生、来年の30歳で終わりにしないか?
もうこの先目新しい展開もないだろうし……。
女側が失恋したキャラが主役の話って人気ないかな?
沢近とか八雲とか
知るかよ
勝手に書け
944 :
897:08/06/14 06:38 ID:pQJU.xr.
しかし、誘い受けとか未だにする人いたんだな
何も言わずに投下して何も言わずに去っていくのがカッコイイのに
お、名前ついたままだった
この分だとギリギリまでスレ立てしなくても良い感じか
まとめwikiIF29の途中までできました。しかし、
IF29・I don't want to miss a thing 第1話
IF29・I don't want to miss a thing 第二話
IF29・I don't want to miss a thing 第三話
と数字と漢数字がごっちゃになってしまいました。
題名は修正不可能なので…どうしようもないです。申し訳ございません。
いつも乙です。
数字と漢数字の違いくらいは気にしないでいいと思うけど、気になるなら確か
IF29・I don't want to miss a thing 第一話 >IF29・I don't want to miss a thing 第1話
とかすれば傷口も小さくてすむんじゃないかと。
こっちで分かれば良いだけだから気にしなくても良いかと
いつも乙です
うんこ〜
奈良健太郎のSSを誰か書いてくれ!
951 :
Classical名無しさん:08/06/19 18:38 ID:8rVHMMwM
保管庫って更新しないの?
うんこ
953 :
Classical名無しさん:08/06/22 19:45 ID:YNnue0Pg
age
うんこ〜
奈良健太郎のSS書いてくれ!
うんこ
最近新作ないね
やはりこのスレで終わらせたほうがいいと思う
うんこ〜
うんこうんこ煩いから投下もないんだろ
うんこ
残酷な言い方だけど
天満が海外に行った原作の状況って
旗おにの話をやりやすくなると思うんだけど違う?
昔は天満の扱いに困ってる話多かったし
天満主役の両王道(王道は播磨側とも考えられるけどあえて)をやって、
次に播磨主役の旗おにを片付けているってだけじゃない?
派閥として順番としても登場順と同じだし
おにぎりはスルーっぽいしそれはないんでないの
うんこ〜
今回の展開以上の話は二次創作じゃ作れん気がするw
作中で播磨が初めて天満以外を好きになったわけだけど
播磨の心変わりについてこだわる人達にとって今回はどうだったんだろう
嘘つくな嘘をw
>>965 正直、様子見のまま終わってしまいそうw
どの地点の情報をSSとして切り取るのか?ってのを考えようにも
コードギアスってアニメみたいに、その回に必要な複線をその回の内に作ってしまうような
なんともいえない感じがあるw
欲を言えば、天満を空港で見送ったところで終わっても良かった気がするんだよな
単行本で旗・おにぎりやその他キャラクターの関係を補完してくれる程度でも
小林センセは終わりたいんだけど、編集が終わらせてくれないのかね?それも読者からしたら言い訳乙なんだけどさ
うんこ
アメリカ取材ってのが真王道の追加エピソードへの微かな期待
もう天満に振られた播磨を助ける役目は沢近にしかできなくなったよな
八雲や絃子さんでも絶対無理
助ける?いつまでたっても成長しないで助けられてるのはお嬢様のほうでしょ
どうあっても他派閥より優位に立とうとするんだよな。醜すぎる
うんこ〜
そろそろ次スレ
それとも本当に放置するのか
普通に立てるだろ
これぐらい投下がないことは以前にもあった
うんこ
977 :
Classical名無しさん:08/07/07 23:28 ID:TFt.B1zE
捕手
うんこ〜
播磨と沢近が許婚になったからもうその設定を覆すわけにもいかないし
旗以外の播磨関係カップルSSがすごく書き辛くなるな
過去の名作も「でも正史と違うし」と思ってしまう
んなこといちいち考えて書かないと思うよ
うんこ
本編では普通に八雲の起死回生の一打(実際は稲葉とサラの策略)があったな。
同居か
SSのネタとしても面白いね
超姉は同居設定があったから話がつくりやすかったのに・・
これからは八雲から引き離すところからやらないといかんのね
うんこ
そろそろ・・次スレ
うんこ〜
梅
生め
991 :
Classical名無しさん:08/07/15 22:17 ID:011LrQj6
a
992 :
Classical名無しさん:08/07/15 22:17 ID:011LrQj6
aa
993 :
Classical名無しさん:08/07/15 22:17 ID:011LrQj6
a
うんこ
乙
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1001:
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もう書けないので、新しいスレッドを立ててくださいです。。。