スクールランブルIF11

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795550:04/08/09 23:47 ID:SDfBvCW2
こんな感じで。
またタイトル考えてません。みんなつけてるから内心不安ですが…
もしいるなら前作を含めて誰かつけてもらった方が早いかもしれないw
796Classical名無しさん:04/08/10 00:20 ID:mq9i9a3E
>>795
乙です。
場面転換の部分はちょっと違和感を感じますが、なかなか重みの
ある文章ですね。
あとは設定以外にもう少しキャラの魅力が引き出せればもっと良く
なると思います。
まぁ、たいしたことは言えませんが、次回作も頑張ってください。

タイトルはなんか繊細な感じがするので、THE GLASS MENAGERIE
(邦題:ガラスの動物園)とかどうでしょう。動物園続きで心の枷が
大きなテーマになっているみたいなので。
まぁ、映画の内容はあまり関連性無いですが。
タイトルなしはやっぱりインパクト弱いですからね。
797Classical名無しさん:04/08/10 00:27 ID:idVzxxjM
>795
素敵なSSでした。乙です。
798Dawn of a New Day:04/08/10 01:06 ID:qmlfIyEQ
 窓から射し込んでくる夕陽が部屋の中を染める。赤、と表現されることの多いその光だが、実際
晩秋のそれはむしろ金に近い色合いをもっている。直視すれば目もくらむような、ともすれば真夏の
陽射しより強烈なその光の中で、晶は一人、活字に目を走らせていた。
 元より活動内容などあってなきに等しいこの部活、部室に誰もいないことさえ珍しいことではない。
そもそも彼女を除けば、定期的に顔を出すのさえあとはサラと八雲くらいなものである。それでも
曲がりなりにも部活として成立しているのは、やはり顧問の手腕ということになるのだろうか。
 ともあれ、そんな部活である。晶自身も特に目的があってそこにいるわけでもなく、切りのいいところ
まで、と考えながらさらにページを繰っているところに。
 ――とんとん。
 遠慮がちなノックの音。茶道部の知名度、加えて場所を考えると、決して来客の多い場所ではない。
そこにわざわざ訪ねてくるとなると、往々にして友人関係、そしてそうなると一々ノックをするような
こともなし、とわずかに訝しげな表情をつくる晶。
「どうぞ」
 そうは言っても、警戒してどうなるものでもなし、と取り敢えず扉の向こうに声をかける。一拍置いて、
その向こうから現れたのは。
「――やあ」
 花井春樹その人だった。持ち前の律儀さから、出入り禁止を申し渡されて以来部室には足を踏み入れ
なかったその姿――もっとも、入ってこないだけでその近くにいることはよくあったわけだが――に、
期せず晶の口から、珍しい、という言葉が洩れる。当の春樹本人もそれが分かっているのか、若干申し訳
なさそうな様子で入り口に立ったまま。
799Dawn of a New Day:04/08/10 01:06 ID:qmlfIyEQ
「どうぞ、遠慮することはないわ」
「……そうか。ではお邪魔させてもらうよ」
 晶のその一言でようやく部屋に入ってくる、そんなところにも見える生真面目さに、そういうところが、
と思う彼女だったが、その行き過ぎたまでの実直さを殺してここを訪れた心中をおもんばかって、皮肉は
さしあたって胸の中に留めておく。
「何か飲む? 一通りのものは揃っているけど」
「いや、構わないよ」
 社交辞令のような挨拶、まずそれを交わしてから本題へ入る。
「それで、何の用かしら」
 その問に、一度目を閉じてから大きく息をする春樹。何かを決心したような表情で、下ろした目蓋を
上げてから告げる。
「八雲君のことなんだが」
 瞬間、すっ、と細められる晶の瞳。しかし、先を促すようにその口は沈黙を保ったまま。
「こうなってしまうと今更、の話になってしまうんだろうな。僕自身そう思う。だが、言って おかなくては
 ならないことだ」
 ふっ、と小さく自嘲気味の表情。
「彼女には――そして君にも随分と迷惑をかけたと思っている。謝ってどうなるものでもないのは分かる。
 それでもこのままにはしておけなくてね」
 すまない、そう言って頭を下げる。対する晶は黙ったままそれを見つめている。そんな静寂がしばらく
続き、やがて春樹が顔を上げる。
「それだけだよ」
 その表情は、先程とは違って晴れやかな、思い残すことは何もないような笑顔。
800Dawn of a New Day:04/08/10 01:06 ID:qmlfIyEQ
 けれど。
「ねえ、花井君」
「何かな?」
 晶の言葉がそれを穿つ。
「あなたはそれでいいの?」
 春樹の顔から笑顔が消える。そして現れるのは、苦悩に満ちた表情。
「……僕は」
 人の想いというのものは、それほど簡単に変わるものではない。故に納得出来るはずもなく、また彼自身
そのことがよく分かっている。続けるべき言葉は無数に心の奥底で渦巻いている――が。
「僕は、それでいいと思っているよ」
 それでも、彼は笑った。どうにもならないことを、どうにもならないこととして受け止めるように。
「そう」
 その答を聞いた晶は、短く返事をしてからおもむろに立ち上がり、部室の外へと向かう。
「高野君、どうしたんだ? 何か僕がまずいことでも……」
 慌ててその後を追う春樹に答えず、廊下に出たところで足を止め、くるりと壁に向き直る。そこにあるのは、
いつぞや彼女自身が貼った一枚の紙。
801Dawn of a New Day:04/08/10 01:07 ID:qmlfIyEQ
「これはもう、いらないわね」
 呟いて、『花井の立入を禁ず』、そう書かれた張り紙を一息に破り捨てる。
「高野君!?」
「サラに聞かなかったかしら。うちのモットーは出入り自由よ」
 驚く春樹にも、淡々と対応する晶。その後で、それに、ともう一つ付け加える。
「今のあなたなら、八雲のいい先輩になってもらえると思ったんだけど。無理かしら?」
 試すように、わずかに笑みを浮かべた表情で問いながら、片手を差し出す。
「当然だ」
 対する春樹も笑顔で応え、その手を取ってしっかりと握手を交わす。
「それじゃ、この件に関しては休戦ということで」
「ん? 何か言ったかな?」
「コッチの話。それで、要件はもう終わりかしら?」
「ああ。時間を取らせて悪かった」
「いいわ、別に。今度はあの娘たちもいるときにでもいらっしゃい」
「そうさせてもらうよ」
 まだ覚悟が決め切れていないのか、苦笑いにも似た顔でそう言って去っていく春樹。それを見送ってから、
これはこれでよかったのかしら、と部室に戻る晶。いつのまにか夕陽は地平線の向こうに消え、宵闇が遠く
忍び寄ってきている。
「まあ、頑張りなさい」
 残照に彩られた空の端を眺めつつ、晶はそう呟いた。
802Dawn of a New Day:04/08/10 01:09 ID:qmlfIyEQ
あえて八雲暴走特急ではない花井を。
……これだけ物分かりよかったら、最初から問題ないのは気にしない方向で。
と言うか本編の花井はどうなることやら。
803Classical名無しさん:04/08/10 01:36 ID:c27PO8bE
>>802
乙です。
本編の花井もこれくらいになれれば…
情景描写が美しいですね。
804Classical名無しさん:04/08/10 01:43 ID:c27PO8bE
立てました
スクールランブルIF12【脳内補完】
http://sports2.2ch.net/test/read.cgi/entrance2/1092069593/l50
805550:04/08/10 09:06 ID:9w3Jm22k
>>756
THE GLASS MENAGERIE ですか・・・いいですね。
映画ろくに見てない自分では絶対思いつかない。
806Classical名無しさん:04/08/10 12:07 ID:mq9i9a3E
自分も映画ほとんど見ないけど……。
映画 原題 〜キーワード〜
とかでググって見れば? 結構見つかるよ。
807550:04/08/10 13:36 ID:9vK2ekgI
>>806
いい事聞いた・・・ありがd
808Classical名無しさん:04/08/10 16:55 ID:Fxxuq7bM
サンクス、助かった。
というか、レス容量、全ての専用ブラウザに表示されているわけじゃないんやね。
809Classical名無しさん:04/08/11 03:33 ID:7R1qc0/A
そうか…もう、あれやんないんだっけ
810Classical名無しさん :04/08/11 09:44 ID:SgMKkMVQ
>>13 無題
>>33 My Gift to You
>>50 THE MAJESTIC
>>64 無題
>>83 Majic Night
>>99 無題
>>106 乗船前
>>115 言葉にならない
>>123 彼女の想い
>>132 Joyful, Joyful
>>140 シスターサラの懺悔室
>>162 無題
>>172 MY HERO
>>194 無題
>>204 Birthday... Mikoto Suou
>>208 Birthday... Mikoto Suou...18
>>214 離したくない物
>>228 無題
>>233 Always
>>265 #62-63 side B
>>322 Track4 三匹に斬られろ
>>329 Lacrima
>>348 A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM
>>402 white breath
>>419 Mistake
>>434 無題
>>441 Anastasia
>>455 HEAVENLY CREATURES
>>467 Is this LOVE?
>>479 While waiting for him
811Classical名無しさん :04/08/11 09:55 ID:SgMKkMVQ
>>551 無題
>>564 Summer
>>570 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件
>>581 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜俺?ルート〜
>>582 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜ENDルート〜
>>586 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜花井ルート〜
>>589 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜沢近ルート〜
>>593 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜八雲ルート〜
>>595 迷探偵ハリマ 茶道部毒殺事件 解決編〜天満ルート〜
>>612 Change the world
>>642 「夏祭りの夜に -a beginning- 」
>>653 Ritalin 202
>>666 【夏祭りの夜に -tenma side-】
>>682 IF肝試し
>>695 Sign
>>705 Singin'in The Rain

812Classical名無しさん :04/08/11 10:04 ID:SgMKkMVQ
>>742 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件
>>744 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜播磨ルート〜
>>745 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜愛理ルート〜
>>746 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜美コルート〜
>>747 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜晶ルート〜
>>748 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜烏丸ルート〜
>>749 天災探偵テンマ 黒猫失踪事件〜解決ルート〜
>>780 AGAINST THE ROPES
>>790 THE GLASS MENAGERIE
>>798 Dawn of a New Day
813Classical名無しさん:04/08/11 13:13 ID:cWK007Rg
テメエラ胸ノ話スンナ。ミーノ竿、スゲエコトニナッチマッタゾ
814Classical名無しさん:04/08/11 21:13 ID:PjRewOSg
目次サンクス。これで読み直すのが楽だ。
しかしひと月もせずにスレを消費し切るSSスレってのは読んでて嬉しいもんだね。
815Classical名無しさん:04/08/13 03:46 ID:17NVtdkE
<noTaitol>
#
「…今日も寒いわね―――」
もう雪がチラついてもおかしくない季節
窓から見える風景は灰色に染まってている
「イヤだな…」
『まるで、いまの私の心のよう』
『やれることはすべてやった、それなのに』
『まだ、諦め切れない…のかな』
「好きな女がいる―――」それがアイツの答えだった
いろいろ引っ張りまわした
自分の心も伝えた
初めてのkissも…
それで振られたのだから、仕方がない
『泣くつもりはなかったんだけどな』
気丈でいるつもりだった、いつも通りに振舞うはずだった
いまにも降り出しそうな暗く低い雲をみるとあの日を思い出す
後輩の女の子、友達の妹―――あのコが傷ついたのもきっと自分のせい
自分の嫉妬から巻き込んでしまった…だけどあのコもアイツのことを…
こんな日だった、あのコの涙を見たのは
『だから、じゃないけど私は泣かないつもりだったのに』
まだ泣いてすがる事もできるかもしてない
この身体だって…
だけれどもわかる、そんなことをすればアイツは本気で嫌悪するだろう
『だから、もう未練はないんだから!』

「ハァ――」
もう何日同じことを繰り返しているのだろう
「雪、降らないかな」
カーテンの合間から静かに空を見上げ続ける
816Classical名無しさん:04/08/13 03:54 ID:17NVtdkE

教室にいると無意識に目で追ってしまう…
視界に捕らえてしまうと逃げ出したくなる
あいかわずサングラスをしているその表情はわからない
その視線がどこを見ているのかわからない
『見られたくない』
視線を気にしたとき、逃げ出したくなる自分が悔しい
美琴も晶も…そして天満も、自分を心配してくれる
「大丈夫?」「元気だして」「男はヤツだけじゃないって」
言われる度に「もう、大丈夫だから」笑顔で答える 作り笑顔で…
だから余計に心配かけてしまうのだろう

「ごちそうさま」
「お嬢様…もう少し召し上がられては…」
食事が喉を通らない、もとより食欲なんて――無い
家の者が喉を通りやすいものや好物を用意してくれるけれども
「ごめんなさい もういいわ」
静かにテーブルを離れる

「なんでこんな寒い日にマラソンなのよ」
「なんでだろうなー」
私のぼやきにたいして気にしてなさそうに美琴が答える
「まぁ、体は暖まるって」
『ポン』と肩を叩かれスタートしていく

「ハァ――ハァ――」
『やっぱり体力落ちてるな』ここのとろの不摂生が身にしみる
『…………』
『あれ?』
突然、世界が真っ暗になって―――
817Classical名無しさん:04/08/13 03:56 ID:17NVtdkE
♭-a
視線を感じた…
『……お嬢』
いつもは気丈な背中が、小さく見える
意識して俺を避けているのがわかる
『まあ、当たり前か』
だが、もう少しうまく、やさしく言ってやることは出来なっかたのだろうか
『―――あなたのことが好き』
正直、驚いた。何を言われたのか一瞬どころかしばらく理解できなかった
言葉の意味を理解したとき、また俺を振り回すためにからかっているのだと思った
だから―――
『泣かしちまうとは…』
あのコのときもそうだった…とても大切な人だったのに
『女心とか色恋沙汰ってのは!』
『ちっ』
そんな口上で逃げる自分にイライラする

『!』『――!!』
「あん?どーしたんだ」
タラタラと走って(歩いて)いる前のほうに人集りが見える
「沢近さんが倒れたんだって」
通り過ぎるクラスメートの会話が聞こえる
「…あのバカ……」
だが、足は動かない
目の前の人集りに近づけず人々の動きを目で追うしかできない
818Classical名無しさん:04/08/13 03:58 ID:17NVtdkE
再び保健室の扉が開く、とそこから
「廊下で騒いじゃダメじゃない」
保健室の前なんだから―と見知った女性が顔を出してきた
「ほら、周防さんはなにか飲み物はやく買ってきて」
「うっ―――けどっ」
『大きな声出さない。彼女怯えちゃうでしょ…』
ハッとする、そこまで俺はアイツを傷つけているのか――と
「…わかりました」
周防は渋々ながら俺から離れ、睨みつけてから廊下を走っていく
『………』
お姉さんと目が合う
「ほら、ハリオも…」
「お嬢は――」
しかし言葉は遮られ、お姉さんは横に首を振る
その瞳は優しく、けれど寂しそうに…
『いまはまだそっとしてあげて――』
そんな風に云っているようだった
819Classical名無しさん:04/08/13 04:02 ID:17NVtdkE
♭-b
「日が暮れるのもはやくなったな」
下校の時刻が過ぎ、低い雲の所為もあってあたりははやくも薄暗い
「あ…」
「ん?」
廊下を曲がり、階段に差し掛かったとき、彼女と出会った
「…こんにちは」
「あ、ああ」
お互い緊張しているのがわかる
次の言葉が出てこない
『………』
こんなことになるつもりはなかった…もっと気軽に話のできるままでいたかった
『それは、俺の我儘、身勝手だろう』
「妹さんもいま帰りか?」
「いえ…部活の途中です」
「…そう、か。じゃあな…部活がんばれよ」
『恩を仇で返す…そのものだ』
だけれども彼女の心はそんなところにはなかった
俺の気持ちに気付いても、なお想いを寄せてくれたのだ
『逃げることしかできないのか、俺もアイツと同じか…』
「播磨さん」
呼び止められた
「…ごめんなさい。元気がないようだったので……つい」
「そうか。元気なさそうか、俺」
『分かっちまうのか、な』
「相変わらず、隠し事はできないな」
軽く笑ってみせる、と――ちょっと困ったように彼女も表情を緩ませた
「気持ちは――想いは伝えましたか?」
『チクリ』
胸が痛んむ…俺はまだ自分の想いを伝えていない
勝負は判りきってしまっているから
820Classical名無しさん:04/08/13 04:03 ID:17NVtdkE
「…播磨さんらしくないです…いえ、播磨さんらしいのかもしれません。けど」
「立ち止まったまま、その場で苦しんでいる播磨さんなんて……」
「見ていたく…ありません」
「ちゃんと一歩を踏み出して…ほしいです」
言われた…このコにしては珍しくまっすぐと見詰められながら…言われてしまった
返す言葉もない
「そうだな」
下を向いていた顔が上がる
「あいかわらず、端的な意見を言ってくれるな。妹さんは」
「……」
ちょっと困らせてしまった
「サンキュ。まったくそのとーりだぜ」
「ほんと、妹さんにはかなわねーや」
おどけて見せよう…そして胸を張ろう
「いつもありがとな」
手を上げ別れの挨拶をする
「はい…がんばってください…」
彼女はやわらかく微笑んでくれた

『そう、俺自身前に踏み出さないとな』
彼女たちを傷つけて、自分だけ安全なところで傷つくのを恐れていたなんて―――
「俺は播磨拳児だぜ」
『そうだ、俺は肩で風を切っていればいいんよ』
冷たい風が久しぶりに心地よい……
821Classical名無しさん:04/08/13 04:04 ID:17NVtdkE
『伝えたいことがあります。屋上で待っています。―――播磨拳児』

始業前の学校
その校舎の屋上で播磨拳児はひとり、立っていた
『封筒の中身は確認した。入れた下駄箱も間違いはない』
『いままでのような冗談みたいな間違いは無い!――はず』
ちょっと不安になる
「否!彼女は来る」
彼女はもう登校しているであろう時間
もはや後に引くことはできない
『ギィ』
屋上の扉が開く音、そしてその先に―――
「ごめなさーい。遅くなっちゃたかな」
彼女は来た
「どうしたの?急に――」
相変わらず場の雰囲気を読んでいない様子だ
「……塚本」
「うん?」
「いや、天満ちゃん!」
遂に来た。この時が。
玉砕しようが返り討ちに遭おうがもはや関係ない
この想いを伝える。それだけだ
「この学校に入る前、中坊のとき、俺は君に出会った」
「そして、君とこの学校で同じ刻を過ごすため俺は必死に勉強した(中1の教科から)」
「おかしいだろ?俺みたいな不良が女の子ひとりに…」
「だが本気なんだ!俺は――」
「俺は君のことが!」
822Classical名無しさん:04/08/13 04:05 ID:17NVtdkE
ズキッ』
胸が軋む…目の前に思いを寄せ続けた少女がいるというのに
いま、痛みとともに違う少女が脳裏をよぎった
『なんで―』
「俺は―!」
「俺は…」
胸が痛い…いや、心が痛い
「……」
「……」
「播磨君?」
訝しげに彼女が聞いてくる
「え?あ…」
『俺はなにを考えているんだ、目の前にいるじゃないか』
「大丈夫?」
「あぁ」
怪しくも思うだろう…いま告白の瞬間、いきなり胸を押さえて微動だにしなくなるのだから
「播磨君。あのね…その…」
「気持ちはとっても嬉しいよ」
「え?」
「だって、自分のためにがんばって同じ学校に来てくれたなんて」
「それに…なんとなく、そうかなって思うときもあったし…」
「…」
「だけど私、大好きな人がいるの」
『あぁ、知っている』

「八雲や、愛理ちゃんのこともあったけど」
「播磨君のこと、悪い人じゃないって思ってる」
「…だって、八雲が好きになった人だもんね」
823Classical名無しさん:04/08/13 04:08 ID:17NVtdkE
「でも、ちゃんと告白してくれなかったね」
『ズキッ』
「うっ」
そうだった…心を、覚悟を決めてきたというのに
「あっ、ごめんね。責めてるとか、そういうのじゃなくて…えっと」
「告白のとき…播磨君の心にいたのは私じゃない。違う人っだったんじゃないかな、って」
「…」
「ね?」
小首をかしげ、可愛らしく微笑む
『この姉妹は…まったく』
『完敗だ。もとより勝負になっちゃいねぇ』
姿勢を正す、まっすぐ目の前の少女をみる
「まったく、そのとおりだよ」
俺は、いま笑っているんだろうな

「悪いな、時間取らせちまって」
「ううん。全然オッケーだよ」
「そうか」
「そんじゃ俺は仕切り直ししてくるか!」
踵を返し校内へと駆け出す
「うん!がんばれーファイトー」
いつもの明るい彼女の声に後押しされて…
…一秒でも早く、この想いを伝えるために、走る
824Classical名無しさん:04/08/13 04:10 ID:17NVtdkE
ending
『ドドドドド――』
一気に階段を駆け下りる
向かうのは教室
もうHRが始まっているのだろうか生徒の影も見当たらない
『ガダンッ』
勢いよく扉を開く
クラスメートの視線が集まるのがわかる…が
『なりふりかまっちゃいられねーっての』
教室を見回す…
見回さなくてもひと目で見付けられる…美しい金の髪
扉の音に驚き、一瞬こちらを見るがすぐに視線を逸らしてしまう
『チクリ』
胸が痛む
他の2人の友達と話をしていたのだろう
その友人たちが俺の視線に気付き睨みつけてくる
『仕方ないか』
意を決し、歩みを進める…アイツのもとへ
「…お嬢」
隣へ行き声をかける
目の前の少女が肩を震わせているのがわかる
クラス中の空気がどよめく
『俺たちのこと、みんなが知っていたのか…が』
気にする必要は無い
「お嬢」
耳を塞ごうとする
『ズキリ…』
『コイツはこんなにも弱く、こんなに小さかったっけ』
825Classical名無しさん:04/08/13 04:10 ID:17NVtdkE
「話を聞け、お嬢」
「―っ!」
なおも続ける俺に周防が食って掛かろうとする
高野が押し留める
「晶!」
「……」
だがその視線は鋭い…
どちらにしろ構う必要は無い

「こっち向け、お嬢」
硬く身を縮めて動く気配は無い
「…ったく」
「いま、塚本に告白してきた」
『どよっ』
皆が驚く
「いや、結局はできなかったんだがな」
「…おめーには、参ったよ」
サングラスを外す、そして机の上に置く
「人の恋路邪魔しやがって―――」
「!!」
「…おまけに人の心まで持っていきやがって」
「!」
大きく肩が跳ねる
まだ、顔を上げる気配は無い
『ふう』
しゃがみ込み視線を下げる頭の位置を同じ高さにする
「まったくよぉ、いざ告白しようとしたら、おめーの顔がチラツキやがるし」
「心が…俺の心が告白する相手が違うって言いやがるんだ…」
「好きな相手が違うってな…」
「顔を上げろ、お嬢」
サングラスを外して見るその髪はとても美しい
だからいま、その顔を直に見たいと思う
826Classical名無しさん:04/08/13 04:12 ID:17NVtdkE

ゆっくりと顔を上げる少女…視線を合わすのが怖いのか下を向いている
その瞳は濡れ、頬に一筋涙がつたう
「お前の告白、真正面から受け止めることができなかった…すまねえ」
「だが、あのときから俺の想いが始まったんだ」
「お嬢…俺は、お前のことが好きだ」
ハッと俺の顔を見る
『驚いてやがるし…無理も無いだろうけどな』
こっちも顔が熱くなっている、だが照れている暇は無い
「もう一度言う、俺はお前が好きだ!」
今度こそ、その瞳を見つめながら、視線を逸らさずはっきりと言えた
「…いいの?」
「ん?」
「信じて…いいの?」
「ああ、もちろんだ」
きっと俺は微笑んでいるだろう
いままでで一番、俺らしくない優しい笑顔で…

―――――――――
827Classical名無しさん:04/08/13 04:14 ID:17NVtdkE
ageちまうは、一本抜けるは、ゾヌは言うこと聞いてくれんわ・・・最低だ
すまん
828Classical名無しさん:04/08/13 04:18 ID:uTlJ88VI
GJ!!
829Classical名無しさん:04/08/13 05:34 ID:17NVtdkE
>>817>>818の間にくるはずだったモノ・・・置いときますね

保健室の前
「ったく。なにやってんだ俺は」
来たはいいが、何をしたいのかまるでわからない
「ふんっ」
自分はあまりにも滑稽で笑いが出そうにもなる
『ガラッ』
扉が開き、中から出てきたヤツと目が合う
「…なにやってんだ」
目の前のオンナが言いながら睨みつけてくる
こちらの返答しだいでは殴り懸かってくる、そんな雰囲気で
「…アイツは…お嬢は大丈夫なのか?」
「くっ!」
「いまさら!テメーに用はないだろう!!」
『そうだな…そのとおりだ』
「とっとと消えやがれ!」
830Classical名無しさん:04/08/13 10:11 ID:jmK3k85U
GJ!
沢近が(・∀・)イイ!
クラスの全員の前で告白とは流石播磨、やることが違いますね。
王道的な旗SS楽しませて頂きました。
831Classical名無しさん:04/08/13 18:58 ID:/x42xZNo
>>815-826>>829
乙です。
長い文章だけど、きれいにまとまっていました。
ただ、播磨が天満から沢近に想いの対象を変えた過程が
読みづらかったのと、
天満の性格設定が少し不自然(そんなに鋭くないと思った)
なのが、少々気に掛かったぐらい。
それ以外はGJ!!
832Classical名無しさん:04/08/13 23:59 ID:OkkR/XRM
出先で埋めを兼ねて何か書こう、と思っていたら先を越されました。
ので、前スレ同様適当に絃子ネタでちょこちょこ。

「あ、刑部先生。……聞きました? あの噂」
「ん? 何の話かな?」
「何のって……播磨君に決まってるじゃないですか」
「彼の? それはまたロクでもない話だろうね」
「あの……知らない振りしてません?」
「だから何をかな。私は彼が塚本君と付き合ってるなどと……」
「……」
「……」
「……」
「……あー、こほん。それで何の話だったかな」
「だからその噂の話なんですけど」
「フン、所詮は噂だろう? だいたい、アレにそんな甲斐性が」
「でも、屋上でよく会ってるみたいですよ。二人きりで」
「……何?」
「あら、これは知らなかったんですね」
「噂だよ、全部噂。根拠なんてないに決まってる。それじゃ、私は急用を思い出したので帰る」
「え? ちょっと、刑部先生! それに帰るって、そっちは屋上……」
833Classical名無しさん:04/08/14 10:32 ID:fn86/Of2
絃子さん(*゚∀゚)=3
834Classical名無しさん:04/08/16 13:51 ID:tqkc1bdI
夏祭りの続きマダー?
835Classical名無しさん:04/08/18 19:44 ID:2eCujtKI
>834
次スレに投下されますた
836Classical名無しさん :04/08/18 20:27 ID:SgMKkMVQ
>>815 無題
>>832 無題
837Classical名無しさん:04/08/18 21:59 ID:17NVtdkE
タイトル付けないとまずかったのか?
すまん…
838Classical名無しさん:04/08/18 22:40 ID:ZPdsCAGQ
>>837
>836は目次でしょ。IDで検索してみそ
839Guardian angel:04/08/19 20:58 ID:qmlfIyEQ
「今帰ったぜ」
「ん、おかえり。今日は遅かったな」
 どうということもない、普段通りのやりとり。ちっと学校でな、などと居間にいる絃子に一声かけてから
部屋に戻ろうとした拳児だったが。
「――ちょっと待て絃子」
「うん? 何かな、今少々忙しいんだが」
 その足がぴたりと止まる。理由は視線の先、絃子が忙しく目を走らせている――
「何でお前がそれ読んでやがるんだ」
「いや、君の部屋に行ったら机の上に置いてあってね」
 そう言って彼女がひらひらと示して見せたのは、紛うことなき拳児の原稿。
「他人の部屋に勝手に入ってんじゃねぇっ!」
「……あのね拳児君、悪いけどここは私の家だよ。大体、最近ロクに掃除もしないで閉めきっているから、
 衛生管理の一つもしてあげようと思ったんだがね」
「そりゃ悪かったけどよ……でもそれとこれとは別だろ」
「読まれて困るものを描いてるのか、君は……っと、まあ確かに困るだろうね、これは」
 まったく、と溜息をついてから、拳児にそこに座るように促す絃子。
「最後まで読んでからと思っていたが、丁度いいから今話しておこうか」
「んだよ、絃子にゃ関係」
「ああないよ、そんなもの。だから言わせてもらうんだ」
 有無を言わせぬ強い口調に鋭い眼光。いつもの悪ふざけとは違う、その本気の態度に拳児も渋々と腰を下ろす。
840Guardian angel:04/08/19 20:58 ID:qmlfIyEQ
「……で、なんだよ」
「このヒロインの少女だが……モデルは塚本君だな?」
 最初から核心を突いてくる問に、答えられない拳児。
「沈黙は肯定と見なすよ。さて、そしてこっちは君だ。間違いないね?」
「……悪ぃかよ。俺が何しようと勝手だろ?」
 ふてくされたようなその返事を聞いて、ハ、と小馬鹿にしたように笑い飛ばす絃子。
「悪いか? そんなの悪いに決まっているだろう! ……拳児君、君はどうしてマンガを描いている?」
「そりゃこいつをやりとげりゃ俺は……」
「変われる、とでも? 本気でそう考えているならおめでたいとしか言いようがないな」
「なっ!? 絃子、テメェ言っていいことと悪いことってのがあるだろうが!」
 そこまで言われてはさすがの拳児も激高するが、それでも一歩も引かない絃子。
「だから言ってるんだよ。いいか拳児君、どれだけ君がこのマンガに情熱を注いだところでね、これは
 塚本君じゃないんだ。それぐらい分からない君じゃないと思うが?」
「っ……それは」
「『それは』何だ。文句があるなら言ってみるといい。どうだ、早くしろ!」
 答えられない拳児に絃子はさらにたたみかける。
「こっちの男もそうだ、君がこんなに恰好いい男か? ほら、何か言ってみろ。私の言ったことを否定
 してみせてくれよ」
「……俺は」
841Guardian angel:04/08/19 20:58 ID:qmlfIyEQ
「なあ、確かに君は抜けてるところは山ほどあるし、空回りすることなんてしょっちゅうだよ。それでもね、
 そのひたむきさだけは、いつも十分褒められるものだと思うんだ。でもこれじゃただの現実逃避だ」
 そこで一息ついてトーンダウンする絃子。
「いろんな噂が流れているのは知っているよ。まあ、君のことだからどれも何かの勘違いだとは思うよ。しかしね、
 そんな噂が流れる、ということは、君は塚本君に対して何のアプローチもしていない、ということだ」
 違うかな、という言葉に力なく頷く拳児。
「だったらこんなことをしている場合じゃないだろう? 彼女がいるのはマンガの中じゃない、現実の、君のクラス
 の、君の隣の席に座っているんだ。もたもたしている暇なんてないと思うんだが?」
 言うべきことを言い終えた絃子は、頬杖をついて拳児を見つめる。
 そして、その視線を正面から受け止めて。
「すまねぇ、絃子。行ってくるぜ」
 そう口にしてから転がるようにして家を飛び出していく拳児。
「……そこでいきなり極端なのが君らしいけどね」
 ぽつんと残された絃子は一人苦笑い。
「どうせ今回もどこかで何かしら失敗するんだろうけどさ、何もしないよりはマシだよ、きっと」
 立ち上がって玄関の戸を閉めつつ、届かない背中にむかってそう呟き、居間に戻ってあらためて原稿を手に取る。
「まあ、でもよく描けているのは確かだよ。それは認めよう」
 くすりと小さく笑ってから、ちらばったそれをまとめ直し、絃子は拳児の部屋へと向かった。
842Guardian angel:04/08/19 20:59 ID:qmlfIyEQ

某スレ見て切り口変えてみたりしつつ、違う方向にやりすぎてみる試み。
……ってまだ埋め終わりませんか。むむ。
843Classical名無しさん:04/08/19 22:38 ID:0D.TtIWM
>>842
GJ!
絃子さん(・∀・)イイ!
844Dead Stock Paradise
「部長、質問があるんですが」
「何?」
「部長は誰にでも無難な人当たりなのに、何で花井先輩だけにはキツいんですか?」
「かわいそうじゃないか……って?」
「いえいえそれ自体は全然OKなんですが、何か理由でもあるのかなって思って」
「……そうね、だいぶ前の話になるけれど……」
高野晶は緑茶をちびりと飲むと、ぽつり、ぽつりと語り始めた。


その女の子はガンプラがとても好きでしたが、
親には「もっと女の子らしいものにしなさい」と言われ、なかなか買ってもらえませんでした。
そこで女の子はなけなしのお小遣いを貯めて、自分で買いに行きました。
ところが模型店には行列が出来ていました。はやる気持ちを抑えて女の子は最後尾に並びました。
ドム、強化新型グフ、ホワイトベースなど人気商品がまたたくまに売れていきましたが
女の子の狙いはただひとつ、1/60スケール量産型ザクでした。
事前に買っておいたムギ球を仕込んでモノアイを光らせるのを楽しみにしていたのです。
ところが、女の子の番まであと一人という所でザクは完売してしまいました。
最後のザクを買ったのは、女の子の前に並んでいた、メガネをかけた眉の太い男の子でした。
残った商品はいくらもありませんでした。人気商品のザクは全スケール完売の状態でした。
女の子は泣きべそをかきながら家路につきました。
仕方なしに買った、アッグとドダイYSの箱を抱きしめながら……


「むーっ、ガンプラはよく知らないけど花井先輩ひどいですね!
 八雲にもよく言っとかなくちゃ!今後1-Dにも出入り禁止ですっ!」
(別に花井君かどうかはわからないんだけどな……まあいいか)