1 :
ラウンジウォッチャー:
[1日目午前0時スタート:体育館]
一瞬、慣れ親しんだ体育館ではないとけんは錯覚した。
もちろん、そこは以前来た時と変わらない体育館であったのだけれど、
何かがおかしかった。何かが違っている。
すぐに、ケンはその原因に気づいた。窓の外はすでに日が暮れ、闇に包まれていた。
さっきまでインターネットで2ちゃんねるをしている最中であったはずなのに・・・
ケンは、辺りをそろそろと見回した。2ちゃんねるでおなじみである固定たちが、
先ほどまでのケンと同じように床に伏して眠っている。
そのなかには、ケンの親友でもあるいっちの姿もあった。
俺、どうしたんだろう? ケンがそう思ったとき、道場内に大きな音がした。
皆、眠りから覚めたばかりらしく、ケンと同様に周囲を見回している。
一体、何が起きたのだろう?何故俺達は、ここに居るのだろう?
誰もが困惑と不安を隠しきれずにいた。
「えー、ケンちゃん……何が、どうなってるの?私、怖い……怖いよ……」
いっちは、目に涙を溜めて不安を訴えた。
ケンは「大丈夫だよ」と言ってあげたかったが、出来なかった。
自分自身、現状が怖くてたまらなかった。
そう、嫌な予感がする。
何度もニュースで聞いた、『あれ』の状況によく似ている……
突然、施錠されていた体育館の扉が、開いた。
そして、銃を携えた兵隊の様な連中が十数人、入って来る。
兵士達はステージの前に整列すると、銃を歌手達に向け、構えた。
いつでも発砲できる体勢だ。
まさか……
コツ、コツ、と、兵士達とは違う、軽い足音が聞こえた。
そうか
TKO
長い
はあ?
7 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:25 ID:???
教室に入って来たその足音の主は……ひろゆきだ。
ひろゆきは教壇に立つと、いつもと変わらぬ屈託のない笑顔で、話し始めた。
「元気ですかーーー!まさかコテハンの皆さんに集まってもらう事になるとは、この俺も想像できなかったずらー!」
のいつにも増した高慢な口調だ。
しかし、今日は普段にも増して、自信に満ちているようだ……ひろゆきにはそう映った。
そしてひろゆきは、体育館内をぐるりと見回すと、衝撃的な一言を言い放った。
「今日はこれより、諸君に殺し合いをしてもらう!」
会場内の全ての空気が止まった。
「お前らは、今回の『プログラム』に選ばれたのだずら!ダーーー!」
ケンの予感が、的中した。
いっちは、ギュッとケンの腕を掴んで、震えていた。
誰かが、うっ、とうめいた。
8 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:25 ID:???
『プログラム』
それは、魔の法律。
正式名は『コテハン助成特別法』という。
近年、ラウンジではコテハンが激増の一途を辿っていた。
何故、こんなにも簡単にコテハンになってしまうのか?
何故、下らないレスを付けるだけの味のないコテハンになってしまうのか?
……そして制定されたのが、この法律だった。
真に「歌って表現する強さ」を持ち合わせた人間だけを選抜する法律。
ラウンジのあらゆる固定の中から無作為抽出され、最後の一人になるまで殺し合いが行われる。
しかし、このプログラムが実行に移されることはゼロに等しいと言われていただけに、固定たちはすぐには信じられなかった。
「冗談なら、やめろ!糞ぶっ掛けるぞ!」
聞き取り辛い声が響いた。
ラウンジの権力者ともいえる、ponだ。
「俺は天下のponだ!なんでこんなプログラムに参加しなくちゃいけないんだ!」
ponは嘲笑を込めて異議を唱えた。
そもそも、このプログラムの指揮権がひろゆきにある事に、理解が出来なかった。
普通なら、政府や国家委員会の担当者が赴いて、ここで説明するだろう。
ここに居る兵士達も、おそらくひろゆき私設軍やSPの面々。
驚かせておいて、実はパーティーでも開くのだろう……そう思っていた。
しかし、現実は残酷だった。
「pon!君ははまだ信じられない様子だな。ならば、信じられる物を用意してあげるずら!」
ひろゆきは表情を変えずにそう言うと、指をパチン、と鳴らした。
教室の扉が開き、『何か』を載せたベッドが運び込まれて来る。
ビニールシートの下の『何か』からは、少し生臭い匂いがした。
「見せてやれ」とひろゆきが言うと、側近の夜勤がそのシートを外した。
一瞬の静寂。
そして次の瞬間、ponが絶叫した。
「……サトポン!!」
どうやって固定と判断するんだろうね?
ふむふむ
( ´_ゝ`)フーソ
12 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:27 ID:???
ponの叫びが、一瞬にして全員の悲鳴へと変わる。
そこに有ったのは、有名メッセナンパコテハンサトポンの『なれの果て』だった。
まるで操り人形を投げ捨てたかの様に関節は捻じ曲がり、
頭蓋骨は陥没し、両目も潰されていた。
「サトポン!サトポンっ!!」
ponは泣き叫びながら、サトポンの亡骸に近付こうとする。
しかし次の瞬間、兵士達が一斉に長州に向け、銃を構えた。
それに気付いた原哉文が、慌てて長州を引き止める。
「ponさん、駄目だ!今行ったら、ponさんも殺されちゃうよ!」
「でも!サトポンが!」
ponはその場にヘナヘナと座り込むと、声をあげて泣いた。
泣くことしか、出来なかった。
そしてその光景は、固定達に現実を認識させるのに、充分だった。
陽水が説明を続ける。
「サトポンは、このプログラムを反対したずら!」
死臭が室内を満たしてゆく。
それはまさしく、絶望の臭いでもあった。
うるせーばか
くせーくせー
14 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:27 ID:???
ひろゆきは胸元から政府印の押された封書を取り出すと、その中の文書を事務的に読み始めた。
いわゆる『宣誓文書』だ。
「……本プログラムは、日本国政府の完全管理下のもと、2ちゃんねるの代表的存在である
ひろゆきによって執り行われるものとする旨を、ここに通達する……」
宣誓文書など、誰も聞いてはいなかった。
ただ、殺戮の海に放り込まれた事実を受け止める事しか、出来なかった。
自分達を庇ってくれた(であろう)サトポンが、あっけなく殺された。
こんな理不尽な殺人さえ、合法だという。
いや、理不尽な殺人劇は、これから始まるのだ。自分達の手によって……
どうする?どうすればいい?ここから逃げ出す方法は無いのか?
誰もが、戦うことなく生き延びる方法を自問自答していた。
と、その時、ひろゆきが宣誓文書を読むのをピタリと止めた。
「……どうやら、俺の話を聞いてくれない人が、いるようですね」
面白いです
>誰かが、うっ、とうめいた。
ステキ
17 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:28 ID:???
……まさか、聞いていないのを悟られたのでは?
固定達は、恐る恐るひろゆきの視線の先を辿った。
ひろゆきが見ていた先……そこには、山崎とエナイの姿があった。
テルはまだ睡眠薬が効いているらしく、眠ったままだった。
それをエナイが必死になって起こそうとしている。
「……山崎、起きろよ。寝てる場合じゃないんだってば……」
エナイは、ひろゆきを刺激しないように、小声で呼び掛けながら山崎の肩を揺すっていた。
その呼びかけに応じたのか、テルがようやく目を覚ます。
「……あれ?エナイ。おはよう!どうしたんだよ?」
まだ現状を把握していない彼の一言が、会場中に響き渡った。
誰かの呟く声がした。
「……だめっ!」
次の瞬間、ひろゆきは小さなリモコンの様な物を取り出すと、山崎に向けてそれを「ピッ」と鳴らした。
あはは、サトポン死亡
19 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:29 ID:???
ピピピピ、ピピピピ……
何処からともなく、アラーム警告音が聴こえる。
「何だよ、目覚まし時計をセットしてるのか?
でもおかしいな。外はまだ、夜じゃねぇか!俺は眠いんだよ馬鹿やろう!」
まだ寝ぼけているのか、山崎は緊迫した現状に気付いていなかった。
「なに言ってんだよ、山崎!今はそれどころじゃ……山崎?」
エナイは、異変に気付いた。
警告音の発信元が、異常に近いのだ。
しかもそれは、山崎の体内――頭の中から聴こえている。
「まさか……ひろゆきさん!山崎に何をしたんだよ!?」
エナイの追及に、ひろゆきは落ち着いた調子で答える。
「山崎に限った事ではない。君達には、眠っている間に、『装置』を埋め込ませてもらった。
なあに、最新技術を駆使したマイクロサイズの物だ。違和感は感じないだろう?
それから、これには位置特定の為の発信機と、自爆装置がセットされている。
指定の制限時間をオーバーしたり、プログラムの進行を著しく妨害した場合には……」 「場合、には……」
エナイは、唾をゴクリと呑んだ。まさか……まさか、そんなことって……
そして、一番聴きたくない言葉が、ひろゆきの口から発せられた。 「爆発する」
20 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:30 ID:???
ピピピピピピピピ……
警告音の間隔が短くなってゆく。
悪魔のカウントダウンに、静かだった会場が再びざわつき始めた。
しかし、当の山崎本人は、まだこの危機的状況に気付いていなかった。
「みんな起きているのかよ!うるせえよ時計……誰かとめろよな!GLAYが一番ロックなんだよ!」
エナイはパニック寸前だった。
親友の命が、あと数秒で消えてしまうかもしれない。
しかし、自分にはそれを止める術が無い。 「山崎……山崎……」
エナイは、とっさに山崎の両手を強く握った。 涙がこぼれ落ちて、止まらない。
その涙が、山崎の頬へと落ちて行く。「ずっと……ずっと、友達だよ……」
まだ通常の判断力が戻っていない山崎には、何故エナイが泣いているのか、解らなかった。
しかし、「友達だよ」という言葉だけは、はっきりと聞こえた。
「おい、なに言ってんだ!俺とお前はずっと親友だぜ!」
山崎は、いつものように微笑んだ。 その直後――
ぱんっ、という音とともに、山崎の側頭部が弾けた。
エナイの顔が返り血を浴び、真っ赤に染まる。
瞬間、教室中が再び悲鳴に包まれた。
人の命が奪われた瞬間を目撃した以上、それはサトポンの時とは比較にならない状況だった。
「お前ら!静かにしないか!」
ひろゆきの忠告も、もはや届かない。
ある者は泣き叫び、ある者は気を失い、ある者は何度も嘔吐を繰り返した。
そんな混沌とした中、エナイは山崎の手を握ったまま、動かなかった。
いや、動けなかった。
呆然としたまま握っている山崎の手には、まだ、温もりが残っていた。
「まだあったかいぜ、山崎……」
死亡:山崎、サトポン
おもしろ(・∀・)イイ!!
次キボンヌ!
23 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:31 ID:???
「威嚇射撃!」
ひろゆきの号令が飛んだ。
それに合わせて、兵士達が一斉に床へ向けてマシンガンを発射する。
ただならぬ轟音とともに、床面のコンクリートが削られ、破片が宙に舞う。
圧倒的な『実弾』の恐怖。
その威力の前に、泣き叫んでいたコテハン達の動きが一瞬にして止まった。
そして、数秒間の掃射が終わる直前――
床に跳ね返された弾の一発が、Seven_Stars(以下セブン)の左膝をかすめた。
「痛ェ!」
セブンは傷口を押さえ、その場にうずくまった。
「――!!」
その様子を見たひょうが、慌てて桑田のもとへと駆け寄る。
「大丈夫ですか!?!」
ひょうはそう言うと、ポケットからハンカチを取り出し、それをセブンの膝へと巻き付けた。
手際の良い応急処置だ。
「大丈夫だ。かすり傷だから……ありがとう」
セブンは苦痛に顔を歪めながらも、ひょうに礼を言った。
確かに、弾は膝をかすめただけだった。
あと数ミリずれていたら、確実に骨を砕き、歩く事さえ出来なかっただろう。
しかし、弾を受けた際の痺れと出血は、普段の『かすり傷』とは比較にならないものだった。
教室が『一応の』平静を取り戻した所で、再びひろゆきが話し始める。
「まったく、お前達は……これ以上、俺の手で参加者を減らしたくない。
しかしまぁ、驚くのも無理はないか。 」
24 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:33 ID:???
この時、ケンは状況を整理し、理解するのに必死だった。
自分は『プログラム』に選ばれた。
間違いなく、『真のコテハン』をめぐる戦いだ。
ここにいるコテハン達と、命を賭けて。
ラウンジで見慣れた人や、親友……
今、隣で震えているいっちとも、戦うかもしれない。
そんな、そんなこと……わからない、どうすればいいんだ……
冷静な判断をする為に、現状を整理するつもりだった。
しかし、考えれば考える程、気持ちは混乱してゆく。
頼む、誰か、助けて……
だが、そんなケンの願いを無視するように、ひろゆきの宣誓が響き渡った。
「ではこれより、プログラムを開始する!
制限時間は三日間。日本武道館半径10キロ、都心全域が戦闘エリアとなる。
勿論、市民の退避は完了している。
お前達の両親にも既に連絡済だ。後悔の無い様、思う存分やりたまえ!」
山崎死亡
| | | ________________________________________________
| | |_____ΦΦΦΦΦΦΦΦΦΦΦ||ΦΦΦ
| | | ̄ ̄ ̄ /| || ピィ〜ヒャララ♪
| | | / /|TTTTTT TTTTTTTTTT||TTTTT ピィ〜ヒャララ♪
| /\ | /|/|/|^^^^^^ |三三| ^^^^^^^^^^^||^^^^^^^
| / / |// / /|
| / / |_|/|/|/|/| 職人だ!
| / / |文|/ // / ワッショイワッショイ!!
|/ /. _.| ̄|/|/|/ ∧_∧
/|\/ / / |/ / (___)
/| / / /ヽ /〔 祭 〕〕つ
| | ̄| | |ヽ/l `/二二ヽ
| | |/| |__|/ ∧_∧ / /(_)
| |/| |/ ( ´∀`) (_) ∧_∧ それ!祭りだぁ♪
| | |/ // / ^ ̄]゚ (` )
| |/ ゚/ ̄ ̄_ヽ ⊂〔〔 祭 〕
| / /_ノ(_) ┌|___|
|/ (__) (_ノ ヽ ヽ
/ 信じてまってて (_)
ヨカーッタヨ
エナイ氏ねエナイ氏ね
28 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:34 ID:???
出発の順番はランダムだった。ひろゆきがくじ引きで決めていた。
夜勤が用意した箱の中にひろゆきが手を入れ、1枚の紙を引く。
「それでは、最初に出発する者の名前を発表する……マーカーくん」
全員の視線が、彼に集中する。
「は、はいッ!」
マーカーは、上ずった声で返事をし、立ち上がった。
そして、顔を強張らせながら教室の出口へと進む。
「私物の持参は自由だが、くれぐれも『お荷物』にならないよう、注意しろ。
それから、出口で支給するデイパックには、武器がランダムで入っている。
有効に活用し、円滑にプログラムを進めて貰いたい。以上だ」
マーカーは出口でデイパックを受け取ると、会場内へ向き直り、深々と一礼をした。
そして、一目散に外へと駆けて行く。 次の参加者の出発は2分後だ。
皆一様に怖がっていたが、中には「やる気」になっているコテハンがいるかもしれない。
教室では、2番目に出発するコテハンの名が呼ばれた。
「それでは、次、……ひょうくん!」
ひょうは「はいっ」と返事をして立ち上がったものの、一歩が踏み出せない。
「大切な人達」のことが気になって、傍に居たくて、仕方なかった。
ponは泣き止んでこそいたものの、ずっと俯いたままだ。
そしてセブンは、傷を負った左足を、ずっと押さえている。
どうしよう……ふたりを放って行くなんて、出来ない……
迷う事が許されない状況の中、ひょうは出発すべきか迷っていた。
その時、なかなか動こうとしないひょうに気付いたセブンが、微笑みながら声を掛けた。
「ひょう……俺なら、大丈夫だから……」
29 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:34 ID:???
「セブンさん……」 ひょうの瞳が、徐々に潤んでくる。
セブンとは離れたくない。でも、離れなければならない。
そしてセブンの言葉は、別離への選択を迫る言葉。
わかってる。わかってるけど、その一歩がどうしても踏み出せない。
「ひょう、早くしろ!」 ひろゆきは冷徹に、出発を促す。 「はい……」
ひょうは力無く答えた。しかし、まだ歩き出す事は出来ない。
その時――
セブンがスッと立ち上がると、突然、ひょうを力いっぱい抱きしめた。
「く、セブンさん……?」
ひょうは動揺を隠せなかった。「セブンさん、どうしたんですか?急に……」
そしてセブンは、いつもにも増して、優しく語り掛ける。
「ひょう……諦めちゃ駄目だ。諦めたら、すべてがそこで終わってしまう……」
「セブンさん……」 ひょうの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
セブンは抱きしめた両手をほどくと、じっとひょうの顔を見つめる。
ひょうを見るセブンの表情は、普段の煽りあっている時とは違う、優しい笑顔だ。
(どうしてセブンさんは、そんな優しい笑顔を見せるんだ?
三日後にはもう、二人共この世にいないかもしれないのに……)
セブンは言葉を続けた。
「よくわからないけど……必ず、何か方法があるはず。みんなが助かる方法が……
だから、そんなに悲しい顔をするな。 」
今のひょうに、笑顔を作る事は不可能だった。
だが、セブンの言わんとすることは、しっかりと伝わっていた。
「わかりました……ponさんにも、一言、掛けてあげてください」
ひょうはそう言うと、出口へ向かって歩き始めた。
そしてデイパックを受け取り、それを確認すると、夜の闇へと走り去って行った。
30 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:36 ID:???
出発の点呼は続く。 次いで、エナイの名が呼ばれた。
しかし、エナイは何の反応も示さない。
あの時からずっと、テルの手を握ったままだ。
「エナイ、早くしろ!このままだと、プログラムの進行を阻害するものとして、
お前を排除するぞ!」
ひろゆきから最後通告が発せられた。
それに反応するように、ようやくエナイが動き出す。
エナイの手から、山崎の手が離れた。
「山崎……じゃあな、行って来る。待ってろよ……」
エナイは俯いたまま、返り血を拭う事もせず、ゆっくりと立ち上がる。
そして、会場の出口ではなく、ひろゆきの居るステージへと向かった。
数秒後―― パシッ、
エナイの平手打ちが、ひろゆきのあごを捉えた。
兵士達が一斉にエナイに向け銃を構えるが、ひろゆきがそれを制止する。
ひろゆきは叩かれたあごを押さえつつ、じっとエナイを見た。
エナイの瞳は、さっきまでの無気力さが消え、怒りに満ちていた。
「絶対に……絶対に、許さねえぞ!」
エナイはそう言い放つと、足早に出口へと向かう。
意外なことに、ひろゆきはエナイを咎める事もせず、ただじっとエナイの様子を見ていた。
出口へ向かう途中、再びシートが被せられたサトポンの死体の前で、エナイは足を止める。
サトポンはエナイにとって尊敬する先輩であった。
この短い時間の間に、自分の好きな人が相次いで去って行く。
しかも、明らかに『見せしめ』として殺された……
具体的な策がある訳ではなかった。
しかし、エナイの心の中には、ひろゆきに対する復讐心が沸々と湧き上がっていた。
「サトポンさん……ponさんを、守ってあげてくれ」
エナイはそう呟くと、デイパック受け取って教室を去って行った。
エナイが最後まで生き残りそうな予感・・・
32 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:37 ID:???
その後の出発は順調だった。
順調といっても、”ひょうやエナイと比べたら”というレベルではあったが。
目眩を起こして倒れていた256兄さんは、歩くことがやっとだった。
ponも、セブンに促され、力無く教室を後にする。
そのセブンも、左足を微妙に気にしながら、出発して行った。
一人、また一人と、教室から参加者が消えて行く。
そして、ケンの番がやって来た。
勿論、行きたくなんかない。
しかし、この場で抵抗しても無駄なのは判っている。
(行くしか、ないんだな……)
名前を呼ばれ、立ち上がろうとするケン。
と、そのケンの右腕を、いっちが掴んだ。
「ケン……大丈夫だよね。みんな、人を殺したりなんか、しないよね……」
いっちの顔は蒼ざめ、恐怖と不安に震えている。
「いっち……大丈夫だよ」
ケンは優しく語り掛けた。
怖がりないっちの心を、少しでも落ち着かせなければ……
「みんな大丈夫。そんな簡単に、人を殺すことなんて――」
ケンがそう言い始めた瞬間だった。
33 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 01:37 ID:G3akj7cy
はっはっは
エナイは殺して下さい
35 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:38 ID:???
パンッ、パンッ、パンッ、
乾いた銃声が、外から聞こえてきた。
残っていた全員が、ビクッ、と肩を震わせる。
誰もが信じられなかった。
(まさか、本当に「やる気」になっている奴ががいるの!?)
「嫌だー……こんなの、嫌だーーー!!」
いっちは耳を塞ぎ、激しく首を横に振る。
ケンの言葉に、わずかでも希望を持とうとした矢先の銃声。
容赦ない現実が、いっちの希望を一瞬にして打ち砕いていった。
「いっち……校門正面で待ってるから!」
ケンはそう言い残すと、デイパックを受け取り、会場を出た。
恐怖に震える中居を、このまま放っておくことなど出来ない。
だからといって、迂闊に外で待ち合わせるのは危険だ。
さっきの銃声は、入り口の辺りから聞こえてきた。
標的にされる可能性が高すぎる。
次に出発するのは、いっち。
体育館入り口付近の校門辺りで待っていれば、安全かつ迅速にいっちと合流出来る筈。
靴だけ取りに行って、裏口から出よう……
スガはそう考えた。
しかし、それが悲劇の始まりだとは、この時、ケンは知る由も無かった。
カコイイ…有名な固定はいいなぁ
38 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:40 ID:???
体育館を出た付近に、人の気配は感じられなかった。
体育館の入り口までの十数メートルの間にも、動くものは見当たらない。
ケンは慎重に周囲を警戒しつつ、入り口に一番近い教室へ向かうことにした。
今自分たちが履いていた靴は、普通のものではなくて懐かしい上履きであった。
まずいっちの靴を回収し、次いで自分の靴を回収すべく、下駄箱へ。
だが、自分の靴に手を伸ばした時、ケンはふと思った。
そうだ。
何故わざわざ、靴を取りにここへ来たのだろう。
今は非常時だ。
小学校の防災訓練の時だって、上履きのまま外へ出るのが当り前の筈。
悠長に靴を履き替えて逃げる人なんて、居やしない。
一刻を争うというのに、どうして、こんなことを……
危機感の欠如
それは、参加者の誰もが同じだった。
火事や地震と違い、殺し合いという状況に備えている人間などいない。
しかも、今まで出発した参加者には、主催者であるひろゆき以外への殺意は、感じられなかった。
誰も人を殺すなんて、出来やしない。
とりあえず外へ出れば、何とかなるだろう。そう思っていた。
だが、そんな淡い期待は、さっきの銃声によって打ち消された。
信じたくは無いが、既に殺し合いは始まっている。
39 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:41 ID:???
とにかく、ここまで来てしまった以上、早く靴を取って戻ろう――
ケンは心の中でそう呟くと、下駄箱から自分の靴を取り出した。
その時だった。
カチッ、という金属音とともに、何かが引っ掛かる感触が伝わって来る。
靴や下駄箱の構造上、引っ掛かる物があるとは思えない。
嫌な予感がした。
暗がりの中、ケンは下駄箱の中を覗き込む。
そこには、ガムテープで固定された丸い物体が、一つ。
そして靴には針金が巻かれ、その先にはピンを思わせる金属部品が結び付けられていた。
――手榴弾だ!
しかも、靴を取り出したことにより、ピンは外れている。
仕掛けた人物を詮索する時間など無い。
スガは全速力で、その場から立ち去るべく走り出した。
だが、運命は脱出を簡単に許してはくれない。
走り出したケンの眼前に、突然、人影が現れた。
時々、モトネタの名前が出るのがなぁ…
41 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:41 ID:???
肩がぶつかった。
足がもつれ、ケンは廊下へと倒れ込む。
バッグと靴が、勢い良く床を転がって行った。
……誰だ!?
ケンは下駄箱の方向へと振り返る。
そこには、虚ろな目をした一人の固定が、ぼんやりと立ち尽くしていた。
回転寿司
今の回転寿司には、普段の感じが微塵も感じられない。
当然だ。
今は殺人ゲームの真っ只中なのだから。
……だが、それ以上に、今の回転寿司の様子がおかしい。
彼は腹部を手で押さえている。
そしてその手は、赤黒い血液に濡れていた。
「ケン……俺、撃たれちゃったよ。どうしよう……」
回転寿司は、声を絞り出すようにして、語り掛ける。
その声は震え、息も荒い。
どんな素人が見ても、致命傷を負っている事は明白だった。
(どうしよう、って……)
ケンは答えられなかった。答えられる筈もなかった。
手榴弾を発見し、そして傷付いた回転寿司と遭遇するまで、ほんの数秒間。
突然すぎる恐怖と衝撃の連続に、ケンの思考回路はパニックに陥っていた。
42 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:42 ID:???
「……逃げろっっ!!」
ケンは咄嗟に叫んだ。
そう、手榴弾のピンを引いてしまっている。
もう時間が無いのだ。
一刻も早く、ここから離れなければ――
そう思い、ケンは体を起こそうとした。
その瞬間だった。
大音響とともに、回転寿司の背後の下駄箱が吹き飛んだ。
強力な爆風とともに、埃や破片が彼ら達に降り注ぐ。
そして、その中でもひときわ大きな金属片が、回転寿司の後頭部に突き刺さった。
「ぐっ」と、回転寿司は小さなうめき声をあげる。
それが、彼の最期の言葉だった。
倒れ込み、動かなくなった回転寿司の体が、みるみる血だまりに沈んでゆく。
ケンは震えながら、その血だまりが広がってゆくのをじっと見つめていた。
そうする事しか、出来なかった。
死亡:回転寿司
43 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:43 ID:???
(俺の……せい?)
(俺が、不用意に靴を取りに来たから?)
(俺が、手榴弾のピンを抜いてしまったから?)
(だから……回転寿司は死んでしまったのか?)
ケンの心の中に、自責の念が渦を巻く。
あの爆発以前に、既に回転寿司は致命傷を受けていた。
自分が何もしなくても、彼は助からなかっただろう。
しかし、直接の死因は、あの爆発にある。
防ぐ事が可能だった筈の、あの爆発。
人を殺した
人を殺した
人を殺した
同じ言葉が、何度も何度もケンの頭を駆け巡る。
「違う!あれは……あれは……」
ケンは頭を抱えて、泣き叫んだ。
気が変になりそうだった。
「ケン、しっかりして!」
その時、いっちの声がした。
44 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:44 ID:???
ハッとして、顔を上げるケン。
いつしか、ケンの傍らにはいっちが寄り添っていた。
「いっち……」
「ケン……落ち着こうよ。事故だったんでしょ?回転寿司には悪いけど……運が、悪かったとしか……」
と、ここでケンは今の状況に気付いた。
自分は今、いっちに慰めてもらっている。
体育館内の時とは、全く逆の立場になっているのだ。
(そうか……俺、強がっていただけなんだ……)
必要以上に張りつめていたものが、段々と緩くなってゆくのを感じた。
緊迫した状況に変わりは無いが、ケンは少しずつ、冷静さを取り戻してゆく。
「いっち……ありがとう」
ケンは靴をいっちに渡すと、自分も靴を履き替え、バッグを拾い上げた。
あと30分弱で、ここは立入禁止エリアになってしまう。
早くここから立ち去らなければ……
しかし、ここでまた新たな訪問者がやって来た。
「おいおい?何の騒ぎ、これは……」
45 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:45 ID:???
そこに現れたのは、電波系女固定として名高い東金道妄想愚連隊(以下東金)だった。
東金は何故か、バッグ以外の荷物を沢山抱えている。
「東金……どうしたんだ?その荷物」
ケンは目を丸くした。
確かに、私物の持参は自由というルールだ。
しかし、会場を出た時の東金は、バッグ以外の物は持っていなかった。
「ああ、これ?ちょっと倉庫へ寄って、取って来たんだよ」
倉庫から取って来た荷物――
その中には、大好きな車・バイクの部品がギッシリと詰まっていた。
東金は苦笑する。
「どうせなら、最後は自分の好きな物を、持っていたい……」
最後は――
とてつもなく、重い言葉だった。
東金に戦う意思が無いのは明白だが、この言葉は、 彼女が生き残る事を放棄するとも取れるものだった。
「東金……お前、生き残りたくないのか?『真のコテハン』になりたいと、思わないのか?」
ケンが問いただす。
しかし、東金の回答は実にあっさりしていた。
46 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:47 ID:???
「まぁ、これに参加してる以上、気持ちが無い訳じゃない。
でも、人殺しをしてまで、有名になっても。後味悪いし。そんなところ。 」
「でもな……」
東金はそう言うと、回転寿司の亡骸に近付き、その体からバッグを引き剥がした。
「やっぱり無駄死にはいやだな。それに……」
そして東金は、ポケットから拳銃を出し、構えた。
「むやみに人を信じたら、負けだね!」
47 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:48 ID:???
それは一瞬の出来事だった。
数発の銃弾が、いっちの体を貫いてゆく。
いっちは、痛みを感じるより早く、着弾の衝撃によって床へと倒れこんだ。
「――いっち!!」
ケンは信じられなかった。
少なくとも、話していた時の東金の雰囲気からは、この状況は予測出来なかった。
だが、これは現実だ。
現にいっちは、東金の放った銃弾を受け、血にまみれている。
次いで東金は、ケンにも銃口を向けた。
手を伸ばせば届く程の至近距離だ。
外すことは有り得ない。
ケンは咄嗟に、自分のバッグを東金の手めがけて振り回した。
東金の手からグロックが弾かれ、床を転がってゆく。
その隙に、ケンは倒れたいっちの手を引いて、物陰へと隠れた。
「いっち!しっかりしろ!」
ケンは、苦痛に喘ぐいっちに呼び掛けながら、バッグの中の武器を探す。
東金は銃を拾い、再び攻撃して来る筈だ。
時間稼ぎで構わない。東金を足止め出来る武器を……ケンは祈った。
東金は廊下の端まで転がった銃を拾い上げると、ケンたちが隠れた物陰へと歩を進ませる。
48 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:49 ID:???
そして銃撃が始まった。
教室の中で身構えているケンと、廊下の角から銃を打ち鳴らす東金。
ケンは銃撃の恐怖に震えながら、手にした武器を天井へと掲げた。
パンッ!パンッ!パンッ!
自分の物とは違う銃声に、東金は素早く身を隠した。
5、6メートルほどの廊下の間を双方が対峙する。
東金がケンの出方を警戒している一方、ケンの心は更に不安を増していた。
どうにか東金を牽制する事は出来たが、それとて一時的なもの。
どうすれば……どうすればいい?
ケンの手中にあるパーティー用のクラッカーは、ほんの少しだけ、熱かった。
49 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:50 ID:???
「東金、どうして!?どうしていっちを撃ったんだ!?人を殺したくないって言ったじゃないか!」
ケンは東金に呼び掛ける。
時間稼ぎをしたいという思惑もあった。
だが、東金の行動に、どうしても納得がいかなかった。
理由を聞きたかった。
「死にたくないから、やっただけだ。……回転寿司を殺したんだろ!?
あいつを殺したお前達を、信用できるわけがないだろ!」
東金は強い調子で言い返した。
誤解している。
「違う!回転寿司を撃ったのは俺達じゃない!それに、あの爆発も偶然……偶然だったんだよ。信じろ!」
だが、東金はケンの弁明に耳を貸す事はしなかった。
「言い訳なんか聞きたくない。理由はそれで充分だろ……」
東金が動き出した。
一歩ずつ、足音が近付いて来る。
カコイイ
51 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:51 ID:???
ケンは、急いで中居のバッグを探り始めた。
もうクラッカーでは誤魔化せない。
今度こそ、武器らしい物が入っていますように……ケンは祈った。
だが、祈りは届かなかった。
ケンが手にした武器――それは透明プラスチックで成型された水鉄砲だった。
勝負にならない。
段々と東金の足音が近付くなか、ケンは今度こそ死を覚悟した。
ここでいっちと一緒に殺される。
嫌だ。嫌だけど……
ケンは生き残る事を諦めかけてゆく。
しかしその時、意外な声が玄関に響き渡った。
「お前達!校舎内での戦闘は止めろ!」
52 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 01:51 ID:G3akj7cy
凄いね
オモロイ
中居?
55 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 01:53 ID:???
いつしか、下駄箱付近はひろゆきと兵士達によって包囲されていた。
「まったく、困った固定どもだ……ここには大会本部が設置されている。
これ以上戦闘を続けた場合、プログラムの進行を著しく妨害したものとして……」
そしてひろゆきは、『あの』リモコンをポケットから取り出し、掲げる。
思わぬ水入りだった。
東金は悔しそうに唇を噛む。
そしてケンは、ほっと胸を撫で下ろした。
とりあえず、差し迫っていた危機は回避出来た。
しかし、決してプログラムから解放されたわけではない。
撃たれたいっちの状況も、予断を許さない。
――と、ここでケンはいっちの異変に気付いた。
さっきまでの苦しそうな息遣いが聴こえない。
何事も無く、静かに眠っている様に見える。
いや、いっちは寝息さえ立てていなかった。
「……いっち?」
嫌な予感がした。
ケンは慌てていっちの手を掴み、脈を測ろうとする。
……もう、いっちの鼓動を感じることは出来なかった。
(うそ……嘘だろ?いっち……)
けんが主人公か・・・あいつアホみたいに喜びそうだな・・
ごめん、あちこちの板から引用してるので、たまに消しミスがあります
俺出してやってくれ
脇役で良いから。
問題ないです。続きキボンヌ!
>>57 低姿勢にならんでええねん。
くだらんカス固定のちゃちなど気にするな
面白い
62 :
名無しさん?:02/02/01 01:56 ID:???
おもすれー
ケンの胸に、悔しさと怒りがこみ上げてくる。
「こんな、こんなことって……法律だからって……こんなのおかしいぃ!理不尽だぁ!」
ケンの嗚咽が玄関中に響き、やがて廊下や階段へと伝わって行く。
その声を聴きながら、東金は荷物を抱え、出口へと歩き始めた。
そしてその途中、一人の男とすれ違う。
最後に出発した参加者、Kだ。
彼がちょうど階段を下りたその瞬間から、この銃撃戦は始まっていた。
そしてKはその一部始終を、身を隠しながら、じっと見ていた。
東金がここでは攻撃しない(出来ない)事は判っていた。
だがそれでも、東金が近付く度に、足が勝手に一歩、二歩と後ずさりを始めてしまう。
東金はKとすれ違うと、ふと立ち止まり、振り返ってじっとKの顔を見た。
「フッまたな……」
東金は寂しげな顔でそう呟くと、裏口へと駆け出して行く。
Kは、ただじっと東金を見送る事しか出来なかった。
哀しい泣き声が、いつまでも響いていた。
死亡:いっち
いっちーーーーーーーーーーー!!
[1日目午前1時:児童公園]
「サトポン……俺、俺、……」
児童公園のベンチで、ponは震えていた。
その震える手には、拳銃が握られている。
ponは出発した直後、校舎近くの茂みに身を隠していた。
立入禁止エリアになるギリギリの時間まで、サトポンの近くに居たかったのだ。
一人、また一人と、参加者が道場を出て行く。
この場に留まっていられる時間が、どんどん少なくなって行く。
ponは怖かった。
校舎より先の世界に出ることが、たまらなく怖かった。
(殺される。誰かに会ったら、殺される。だから守らなくちゃな。この銃で、自分を守らないと……)
支給された銃を握って、ponはこの言葉を何度も何度も繰り返す。
その時だった。
「あ、ponじゃないか!どうした?」
ponは素早く反応する。
(見つかった!?)
ponは声のした方向へと向き直り、銃を構えると、引き金に力を込めた。
そこで初めて、声の主が回転寿司である事を知る。
しかし、回転寿司はponに危害を加える素振りを見せなかった。
いつもの様に、むっつりしていた。
(――撃っちゃダメだ!)
ponは瞬時にそう思った。だが、引き金を引く指の動きは止まらなかった。
そして……
ponは茂みから飛び出したあと、無我夢中で道路を走り回り、この公園へと辿り着いた。
だが、どんなに走り回って気持ちを紛らわせても、
回転寿司に発砲した時の映像が、頭の中で何度も何度もリフレインする。
「サトポン……俺、人を殺しちゃったよ……どうしよう……」
もはやponは、俯くことしか出来なくなっていた。
と、その時――
誰かがやって来て、ponに声を掛けた。
「大丈夫!pon?」
声を掛けたのは、引退したはずの固定、ハッカーじゃない方の山田(以下山田)だった。
「サトポンの事は、気の毒だったけど……まあ、元気、出そう」
山田はそう言うと、ponの隣に腰を降ろした。
「山田……」
ponは銃を構えなかった。構えられなかった。
回転寿司の二の舞いは避けたかったし、
優しく接してくれる人に、銃は向けられなかった。
ponはそっと、銃をバッグにしまい込んだ。
山田はボサボサになっている頭をなでながら、ponに話し掛ける。
「ひとつ、聞いていいか?ponも『真のコテハン』になれたらいいなって思うか?」
ponの答えは、一つしか無かった。
「そうだなぁ。。。やっぱり…出来ればそういうのになりたいな!」
ponは頬を赤らめる。
山田は手を頭から外すと、ぼんやりとつぶやいた。
「まぁ!でもヘタレponじゃいくら頑張っても自力でラウンジ筆頭固定にもなれないからね…」
(――え?)
意外な返答にponは驚いた。
そして山田は、ponと目を合わせる事無く、淡々と話し続ける。
「ひろゆきさんが、夜勤さんと話しているのを、聞いたことがある。
”ponってほんとにどうしようもねいな”って、笑いながら話していたよ」
あまりに痛烈な山田の言葉に、ponは言葉を失った。
(うそ……山田、何を言ってるんだ?嘘だろ!?)
68 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:01 ID:???
「ponは、名無しさんに”天才”って言って貰った事、あるか?」
そう言うと、山田は自分の膝をパンパン叩き出した。
「昔はいくらでも言われたんだ。今だってそのはずなのに。
ネタのクオリティーは以前にも増してるはずなのに世間は『昔の方が…』だなんてほざきやがる。
だから引退した。
でもやっぱり今でも俺の事”面白かった”って言ってくれる名無しさんがいる……」
淡々と語るの姿に、ponは絶望した。
慰めてくれると思っていたのに、どうして……
しかし、山田の辛辣な言葉は止まらない。
「pon、あんたに期待している名無しなんていないよ。ハゲだし!
このプログラムに勝ち残る意味なんて、無いよ……」
決定的な一言だった。
「山田……どうして、そんなひどいこと言うんだ!?」
ponは泣きながら訴えた。
だが、山田はそれを軽く受け流す。
「事実だからだよ。」
山田はponの目をじっと見て、静かに微笑んだ。
口元が、すぅっ、と上にあがる。
「俺、決めたんだよ。俺に「激しくワラタ」って言ってくれた人の為に生き残るって……」
69 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:02 ID:???
その瞬間、ponは言い知れぬ恐怖感を覚えた。
体中の血の気が、一瞬にして引いて行くのを感じる。
「やめろぉおおおおおおおおーーーー!!」
ponの絶叫が、夜の公園に響く。
ザシュッ!
山田が隠し持っていたサバイバルナイフが、ponの喉元を掻き切った。
血飛沫を上げながら、ponの体が地面へと崩れ落ちて行く。
山田はナイフから滴り落ちる血を見つめながら、呟いた。
「pon、サトポンの所にいけたね…!」
死亡:pon
70 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:04 ID:???
[1日目午前5時:町内]
「ケンさん……ここで、別れよう……」
東の空が明るくなり始めた頃、Kが呟いた。
俯きながら力無く歩いていたケンが、顔を上げる。
いっちが息を引き取った後、ケンはその場を動こうとしなかった。
いっちが死んだなんて、信じられなかった。
しかし、退去命令のタイムリミットは刻々と迫って来る。
Kは、いっちの傍を離れたがらないケンを何とか説き伏せ、校舎外へと連れ出した。
無駄に死人が増えるのだけは、嫌だったから。
「ケンさん……俺、分からないんです……」
Kは目を伏せながら、話し始めた。
「ケンさんのこと、放っておけなくて、連れ出したけど……
でも本当は、迷ってるんです。プログラムに乗るべきなのか、抵抗するべきなのか……」
Kの唇が、微かに震えはじめる。
「勿論、人殺しなんてしたくない。でも、誰かに殺されるのも嫌だ……
生き残る選択肢が一つしか無いのなら、それに乗るのも、仕方ないのかな、って……」
二人の周囲を、霧が覆いはじめた。
少し肌寒い空気の中、互いの目を見つめる二人。
沈黙の時間が、流れて行く。
「……ケンさんみたいな素晴らしい人が近くにいたら、俺、冷静に今を判断出来ないんです。
答えを出せないまま、感情に流されるまま……あなたを殺してしまうかもしれない。だから……」
そしてKは、銃を構えた。
サイレンサーを装備したベレッタM1934コマーシャルが、ケンの顔に向けられる。
「だから、ここで別れよう……俺の気が変わらないうちに、行ってください」
71 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:05 ID:???
「K……」
ケンは動揺しつつも、Kを諭そうと、言葉を続けようとした。
しかし次の瞬間、Kの放った銃弾が、ケンの頬の数センチ先をかすめて行く。
ケンの髪が数本、空中に散った。
「お願いです、行ってくれ!俺は……いっちの代わりには、なれないんだから……」
それを聞いて、ケンは言葉を続けられなかった。
(そうだ。独りになるのが、怖かったんだ……)
ケンの脳裏に、プログラム開始時からの記憶が蘇る。
プログラムが始まってから、ずっと傍にはいっちがいた。
そしていっちの存在が消えた瞬間、独りになるのが不安で、何も出来ない自分がいた。
Kに付いて行ったのも、タイムリミットが怖かったからじゃない
がんばってー
もっちーが書いてるのかな
74 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:07 ID:???
無意識のうちにKに負担を掛けていた事に気付き、ケンは自分の不甲斐無さを嘆いた。
「わかった……辛い思いをさせてしまって、ごめん……」
ケンはそう言うと、スッ、と踵を返す。
「でも、出来るなら……」
Kに背を向けながら、ケンは語り掛けた。
「人は殺さないでくれ。そして……決して希望は捨てないでくれ。お願いだから……」
それはKに対してだけでなく、自分自身にも言い聞かせる為の言葉だった。
「……努力します」
Kは消え入りそうな声で返事をする。
頭では解っていたが、それを実行出来る自信は、今の彼には無かった。
「それじゃ……元気でな」
その言葉を残し、ケンは霧の中へと駆け出して行く。
そしてケンの姿が見えなくなると同時に、Kはその場に座り込んだ。
「何やってるんだろう、俺……自分から立ち去れば、それで済んだのに……」
銃を持ったKの指先は、ずっと震えたままだった。
霧は益々、その深さを増して行った。
75 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:08 ID:???
[1日目午前6時前:公園]
朝霧の中、ぼんやりと256兄さん(以下256)は歩いていた。
なんとなく、そうしていないと落ち着かなかった。
誰かを殺すか、誰かに殺されるか……
嫌な選択肢しか残されていない現状を、忘れたかった。
256は出来る限り、プログラムの事を忘れようと懸命だった。
しかし公園に入った時、256は現実に引き戻される。
濃い霧の先に、誰かが立っている……
256は走るのを止め、警戒しつつ、霧中の人物に声を掛けた。
「誰だ?そこに居るのは……返事をしろ!」
そして数秒後、聞き慣れた声で返事が帰って来る。
「いい朝だな・・・256!」
ポリタンクを抱えた渡り鳥(以下ポリタンク)の声だ。
76 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:09 ID:???
親しい知人の声に安心した256は、警戒を解き、ポリタンクに近付いて行く。
「無事だったんだ、ポリタンク……怪我はしてないか?大丈夫?」
「まあな。一応、生き延びてる」
普段通りの明るい声で、ポリタンクは答えた。
(良かった……元気そうだ)
256は、心が許せる人と再会出来る喜びを噛み締めていた。
たった数時間しか離れていないのに、数週間振りに会うような感覚。
緊張していた心を、ようやく落ち着ける事が出来る……そう思っていた。
だが、ポリタンクにあと2〜3メートルまで近付いたその時、256は自分の目を疑った。
霧の中から現れたポリタンクは、256に銃口を向けている。
「悪く思うなよ、256」
そうつぶやくポリタンクの表情は、冷静だった。
「――どういうつもりだ!?ポリタンク……」
256は動揺を隠し切れない。
しかし、ポリタンクはあくまで冷静に、言葉を続ける。
「動かないでくれ……弾が外れるから」
77 :
餅:02/02/01 02:10 ID:???
>>73 違うよ(w
創作好きの人が他にもいるみたい、いいこっちゃ
78 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:11 ID:???
「本気……なのか?」
256は信じられなかった。
ポリタンクが自分に銃を向けるなんて、嘘だ。こんなの嘘だ……
しかし、ポリタンクは銃を下ろさない。
「ああ本気だ。友達だからこそ、俺はお前を撃つ……」
「どういう事だよ、それは――」
と、256が言いかけた所で、何処からとも無く大音量で音楽が流れて来た。
『ちんこ音頭』だ。
そしてそれに続いて、ひろゆきの声が聴こえて来る。
「元気ですか!朝6時になった。それではこれより、
現在までに脱落した参加者の名前を発表しよう。よく聞いておくように」
それは、6時間毎に流される定例放送だった。
二人は動きを止めたまま、その放送に聞き入る。
「これまでに脱落したのは、山崎、回転寿司。
いっち。そして、pon……以上4名だ。
お前ら、頑張れ。また6時間後に会おう!」
馬鹿馬鹿しい歌詞と共に『ちんこ音頭』が、フェードアウトしてゆく。
そして256は、その放送内容に愕然とした。
「もう……もう4人も死んだっていうのか!?」
79 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:12 ID:???
「そうだな。もう殺し合いは避けられない。
お前もいつ、誰に殺されるかわからない…。
……お前が他の誰かに無惨に殺されるのは、嫌なんだよ。
だから、親友として、俺はお前を楽に死なせる義務がある……」
ポリタンクの言葉に同意出来る筈はなかった。
しかし、銃口は自分に向けられている。
このまま死ぬのは嫌だ……256はそう思った。
256はフッ、と溜め息をつくと、挑戦的な目つきでポリタンクを見て、言った。
「……で、俺の都合はお構いなし、ってわけか?」
80 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:13 ID:???
「そりゃあ正当派ネタ固定のポリタンクが殺してくれるなら、少しはドラマチックかもしれない。
でもな……俺だって、死にたくないんだ。それに……」
256はそう言うと、背中のバッグから日本刀を抜いた。
「どうせなら、正々堂々と勝負しようじゃないか。
いきなり銃を構えて現れるなんて、ずるいぜ……」
256の目に、迷いは無かった。
(ただ黙って殺されるくらいなら、俺は闘う事を選ぶ。
たとえ相手が、ポリタンクであろうとも……後悔はしない!)
ポリタンクは、そんな256の姿を見て、微笑んだ。
「……256らしい答えだな。オーケー、じゃ、始めようか!」
256は汗ばむ両手を気にしながら、刀を構え直す。
「やるからには、全力でいくからな……」
「もちろんだ。256!行くぞ!・・・」
いい
82 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:14 ID:???
パンッ、パンッ、パンッ。
銃声が、公園の鳩の群れを飛ばした。
セブンが、驚いて空を見上げる。
銃声は、断続的に鳴り響いていた。
「また、誰かが戦ってる……どうすればいいんだ?なあ、pon……」
セブンはそう呟きながら、ponの遺体の血を拭っていた。
通りがかりに偶然見つけたponの体を、そのまま放置しておく事が出来なかった。
地面からベンチへとその体を移し、丁寧に両手を組ませる。
首の傷口さえ見なければ、それは本当に眠っているようにも見えた。
セブンは、離れ離れになった親友の事を思う。
「ひょう……大丈夫かな?それに、山田も……
早く山田と合流出来れば、良いんだけどな……」
pon殺しの張本人が山田である事を、セブンは知る由もなかった。
つかこれって固定ネタだよな。。
84 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 02:16 ID:G3akj7cy
85 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:16 ID:???
「やっぱり、無茶だったかな……」
木陰で、256がつぶやいた。
戦闘開始の合図とともに、256は並木道の方向へとダッシュした。
銃が相手では、日本刀といえど勝ち目は無い。
しかし、この濃霧を味方に付ければ、まだ勝算はある。
ポリタンクの放つ銃弾を辛うじて避けながら、256は街路樹の陰で機会を窺っていた。
霧の中から、ポリタンクの影が近付いて来る。
こちらから打って出るには、弾切れの瞬間を待つしかない。
危険な賭けだ。
だが、それしか手段は思い浮かばない。
256は意を決して、木陰から飛び出した。
「さあ、当ててみな!」
ポリタンクが少しぼやけて見える位置で、256は叫んだ。
多少距離があるとはいっても、充分射程距離内だ。
ポリタンクは256に向け、数発連射する。
しかし、霧で視界が悪いのに加え、256はあっという間に別の木陰へと移動してしまう。
「256!正々堂々と闘うんだろ?コソコソ隠れて鬼ごっこだなんて、お前らしくないぞ!」
少し不機嫌そうな口調で、ポリタンクが呼び掛ける。
86 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:18 ID:???
しかし、256は動じない。
「正面で一騎打ちをする事が、全てじゃないぜ。
武器の性能差を考えた上で、ベストな戦法だと思うけどな……」
256はそう言うと、ポリタンクとの距離を確認しつつ、もう一度、木陰から飛び出した。
(そろそろ弾が切れてもいい頃だ。チャンスは逃すな!)
自分にそう言い聞かせ、256は数本先の並木へとダッシュする。
しかし、回避出来ると思っていた弾の一発が、256の左肩を捉えた。
「くっ!!」
どうにか木陰には辿り着いたものの、かつて経験した事の無い痛みが、全身を襲う。
左手が流血で染まり、握力がみるみる落ちて行く。
256は肩口をスポーツタオルでギュッと縛り、一応の止血を施した。
しかし、血は止まりそうに無い。
「そろそろ……勝負時かな……」
87 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:19 ID:???
ポリタンクの足音が近付いて来る。
もはや、弾切れを待っている余裕など無い。
ほんの一瞬でいい。ポリタンクの動きを封じる事さえ出来れば……256は思考を巡らせる。
そして、256は背中のバッグを下ろした。
陰からそっと顔を出し、ポリタンクとの距離を見る。
(――届く!)
256は心の中でそう叫ぶと、バッグをポリタンクの真正面へ向けて投げつけた。
ポリタンクの目線に、突然、バッグが飛び込んで来る。
反射的に銃を構え、ポリタンクはそのバッグに銃弾を撃ち込んでゆく。
空中でバッグが二度、三度と踊った。
そして、踊り疲れたバッグが引力に引かれ始めたその瞬間――
バッグが作った死角から、256が一気に飛び込んで来る。
バッグに気を取られていたポリタンクは、予想外の進撃に反応出来ない。
256は低位置からポリタンクの懐に入り込むと、刃を180度返し、
渾身の力を込めてそれを拳銃に叩き込んだ。
「とぉりゃあああああっ!!!」
ガキィィィン!!
88 :
光収容:02/02/01 02:20 ID:???
おもろい
89 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:21 ID:???
256の勝ちは明白だった。
だが、256はなかなかとどめを刺そうとしない。
「どうしたんだ……どうして殺さないんだ?」
ポリタンクが尋ねる。
「どうしてかな……覚悟を決めた筈なのに、まだ、怖いのかもな……」
さっきまで冷徹だったポリタンクの顔に、苦笑いが漏れる。
「……256、ひとつ聞いていいか?」
「何だ?」
「あの時、どうして逆刃で銃を叩いたんだ?右手ごと切り落とした方が、簡単なのに……」
ポリタンクは不満だった。
全力で闘うと言われながら、手を抜かれた……それが納得出来なかった。
「ああ、あれか……あくまでも有名固定のポリタンクの今後を考えたら、腕は切れないよ――」
ポリタンクは、256の言葉が理解出来ない。
(どうしてだ?もうすぐ死ぬ人間に、どうして今後の心配なんてするんだ、256……)
「――だって、天国でキーボード打てなくなっちゃうだろ?だから……」
名スレハケーン!
91 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:22 ID:???
256のその言葉が、ポリタンクの胸を締め付ける。
「256……お前は馬鹿だ。大馬鹿だよ……」
ポリタンクの頬が、涙でぬれる。
「そんな……余計な心配しなければ……死なずにすんだのに!」
ポリタンクは左手で刀を払いのけると、右手でポケットから何かを取り出し、256に押し当てた。
途端、256の全身に凄まじい衝撃が走る。
刀が手から離れ、立っていられない程の脱力感が、全身を襲う。
「そうか、電気、か……」
意識が朦朧とする中、256はポリタンクの右手に握られた武器を見た。
それはスタンガンだった。
ポリタンクはもう一度、256に電撃を仕掛ける。
256兄さんがちょっとかっこよく思えてきた・・・
やばいな・・・
93 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:24 ID:???
そして気付いた時、256の眼前には、刀の切っ先と、それを構えるポリタンクの姿があった。
「形勢逆転だな、256……」
「ああ、そうみたいだな……」
256は微笑んだ。そして次の瞬間、意外な言葉を口にした。
「なあ、ポリタンク……このまま、とどめを刺してくれないか?」
ポリタンクの手が、一瞬、震える。
「え?な、何言ってるんだよ。俺はそのつもりで、こうしているんじゃないか……今更、何を……」
「……そうだよな。殺し合い、だもんな」
「でも、どうしてだ……さっきは『俺だって、死にたくない』って言ってたくせに……」
ポリタンクの問いに、256は淡々と答える。
「……もうこれ以上、このキャラを続けたくないんだ」
「キャラ?」
「そう。俺は今まで『ラウンジのテロリスト』とか『兄ちゃんねるの刺客』とか、色々と言われ続けてきた。
良い意味でも、悪い意味でも……露骨に煽る人も、多かった。
2ch上のキャラって言えば、それまでだけど……偏見に満ちた目で俺を見る人は、
結構多かったんだ。 ポリタンクは知っているよな……俺の本当の性格……
もし万一、このプログラムで生き残ったとして……
やっぱり、俺を『人殺し』って言う人は、他の固定より多いと思う。そういうキャラだからね。
……これ以上、親に迷惑を掛けたくないんだ。だから……頼むよ」
95 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 02:25 ID:???
ポリタンクは動揺していた。
256を殺す事が、自分の役目だと信じていた。
そして256本人も、それを希望している。
躊躇する理由など無い筈なのに、踏み出せない自分がそこに居る。
さっきは銃を撃つ事は出来たのに、どうして今は殺せないのか?……
「ポリタンク……怖いんだね。きっとそれは、銃と刃物の違いだよ。
銃は所詮、弾の反動しか手元に返ってこない。でも刃物は違う。
相手の感触が直に伝わるから、命を奪う感覚が直に伝わるから……怖いんだ。それを解って欲しいんだ。
唯一、俺にやさしく接してくれたポリタンクに生き残ってもらいたい、だから……」
256はそう言うと、刀の切っ先を自分の喉元に当てた。
ポリタンクは俯き、大粒の涙をこぼす。
「……じゃあな、256……」
そしてポリタンクは、刀を握る手に力を込めた。
さっきには感じなかった嫌な感覚が、掌に伝わって来る。
路上に拡がる血溜まりを見ながら、ポリタンクは泣き崩れた。
死亡:256兄さん
>>94 どうせエイズに感染して氏ぬから気にするな。
続きはこれから書くんですが、「コイツを出してくれ」など出演依頼出来るだけ受け付けます。
また、サブストーリー作ってくれる人も大募集です。
256は情けなく氏んでくれ
>1
お疲れ、今後の展開楽しみにしてる。
お、募集だぞお前等!!
ご馳走様でした。楽しみにしてますんで
102 :
光収容:02/02/01 02:29 ID:???
お気に入りに登録、と
>>97 晒し系固定をまとめて殺せ。
晒し系固定はまとめて海へ投げ捨てた。
って感じで。
んじゃぁ脇役じゃヤダ
かっこよく死にたい
誰も信用せずかっこよく死にたい
桐沢のポジションはだれが適当?
みんな分かっていると思うけど
>>1=けんってことでいいな?
とりあえず例のオカマは純ぷにがやるしかないって事で
108 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:14 ID:???
[1日目午前6時過ぎ:駅]
「なあ、山崎……山崎の仇を討つには、どうすればいいんだ?」
駅の待合室でバッグの中身を確認しながら、エナイが呟く。
あの惨劇から数時間……エナイは当ても無く市内を彷徨っていた。
「絶対に許さないぞ!」と啖呵を切って出発したものの、何をしたら良いのかが全く分からない。
ただ、確実に言えるのは『途中で死んだらダメ』という事だけ。
既に此処へ来るまでに、何人もの死体を見てきた。
(あいつらの様には、なりたくない。途中で死んでしまったら、山崎の仇が討てない。
絶対に……絶対に生き残って、ひろゆきをこの手で殺すんだ――)
例えようの無い強力な復讐心が、エナイを動かしていた。
エナイはパンやミネラルウォーターといった食料を確認すると、バッグから武器を取り出した。
『当たり』と言っても良いだろう。小型のマシンガン、マイクロウージー9ミリだ。
「ラッキーだ。これなら何とか生き残れそうだな」
エナイの顔に、安堵の笑みが漏れた。
添付されている簡単な説明書を見ながら、エナイは操作手順を確認する。
そして、弾倉を差し込もうとしたその時――
形状が違う。
何度差し込もうとしても、はめ込みが上手くいかない。
エナイは慌てて予備の弾倉を取り出し、同様に差し込んでみる。
しかし、どれもマイクロウージーには一致しない。
「そんな……まさか、配給ミス!俺じゃ駄目なのか!?」
109 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:14 ID:???
さっきまでの安堵感が一瞬にして消え、エナイの心に焦りと不安が忍び寄る。
――その時、エナイは弾倉の一つに挟み込まれた紙を見つけた。
何かが書かれている。
エナイはその紙を取り、開いて読み始める。
その文面は、エナイを絶望の淵に叩き込むものだった。
☆とっかえだまシステム☆
このマシンガンの弾は、他の誰かが持っています。
そして、その誰かが持っている銃には、この弾が使われます。
その人を探し出して、弾を交換しましょうね。
「……ふざけんなよっ!!」
エナイは弾倉を床に投げつけた。
無用の長物となった弾倉は、くるくると回りながら、床の上を転がって行った。
110 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:15 ID:???
[1日目午前6時過ぎ:体育館]
一度目の放送直後、ひろゆきの周りは非常な喧騒に包まれていた。
それは放送の一時間ほど前、ひろゆきからの提案によるものだった。
「ヨシッ!参加者リストにない奴らを追加させよう!!」
「!?…今からですか?」
ずっとひろゆきの傍に侍っている夜勤が聞き返した。
「あぁ。装備はすぐ用意出来るだろう?発信機は…そうだ、旧式の首輪あったろ?
あれならすぐ付けられる。うん、我ながら名案だ!ハッハッハッハッハッ…」
この提案は国家プログラム実行委員会が提出した参加者メンバーを大きく逸脱させる。
しかしひろゆきには相当の無茶でも強引に実行出来るほどの権力が与えられていた。
なんせ、あのネオ麦茶を生んだ2ちゃんねるの管理人なのだ。
「さっさと居場所の分かるヤツから適当に連れて来い!!」
「分かりました。では放送でその事をお伝えに?」
夜勤はわずかな動揺も見せず答えた。
「いや、少しこのまま知らせずにやってみよう。アイツらの驚く顔を考えてみろ!?めちゃくちゃ楽しみじゃないか!!」
いつもながらのこのひろゆきの自信に溢れた横暴は、夜勤を身震いさせた。
決して恐怖心などではない。最高の悦楽のためだ。
自称『世界一のひろゆきファン』の夜勤は嬉しくて堪らないのだ。
(死ぬまでひろゆきの人生を間近で見続けられるオレは、なんて幸せなんだろう!!)
夜勤の顔からは抑えようも無い笑みがこぼれていた。
111 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:17 ID:???
[1日目午後2時頃:住宅街]
餅は走っていた。
この男はさっきまで隠れていた公園で256とポリタンクのやりとりを息を潜めて見ていた。
それまで餅はまさかこんな馬鹿げたゲームに本当に乗っている固定なんていない。いるはずがない。
そう思っていた。いや、・・・・そう思いたかった。
しかし、ポリタンクは256の身体を撃ち抜いたと同時にこの男のこんな思いを一瞬にして撃ち砕いた・・・。
その瞬間、餅の身体に衝撃が走った。
「どれだけ自分がこのゲームを拒んでも、他の人間はやる気になっている!!少なくともポリタンク…この男は…。」
そう思った瞬間、次に頭に浮かんできたのは「ここにいてはいけない!!」ということだった。
「さっきまでの256とポリタンクの闘いで他の「やる気」になっている人間が集まってくるかもしれない。
そうでなくとも今、このポリタンクという男に見つかってしまえばおそらく自分も……。」
餅はそっと立ち上がり紅く染まった256の背中の方に向かって手を合わせた。
…たった今殺された人間を拝んだのは初めての瞬間だった…。
112 :
カップラーメソ ◆eATTYOns :02/02/01 03:18 ID:fdMS/v0F
いいなこのスレ・・・
113 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:18 ID:???
短い合掌のあと、餅はポリタンクがいる逆の方向、南出口へ向かって必死に走り出した。
その姿をポリタンクに見られたかどうかなどもう気にしていられない。
一刻も早く自分の隠れ家を見つけなければ、餅はそう思っていた。
……「なんで、オレがこんな目に!!」「有名固定の、自分が!!」
走り出すと、今まで抑えていた怒りが一気に噴き出した。
せっかくの有名固定への道は、地味に積み上げたものだったのに・・・。
パソコンの画面に向かっている途中、ひろゆきが部屋に入ってきて、突然、自分に何かを嗅がせたところまでは確実に意識はあった。
問題は…そこからだった。
「ゆっくり運べ!!!!」遠のく意識の中でひろゆきの声が聞こえてきた。
「この人はもうスタンス築いてるし、参加させなくてもいいんじゃないでしょうか?」夜勤の声だ。
「ん?…まあ、捨て駒みたいなもんだ。なんかの役に立ってくれたら儲けもんってなもんだ」
そう餅は思い出した。自分がいつ意識がなくなったのか、最近は余り目立っていない自分が参加させられた理由も。
もともと餅は自分のウザ系固定というイメージにコンプレックスを抱いていた。
しかし、今回はそんな自分を嘲笑うかのように本当に必要とされていない、
おまけ程度の理由で参加させられてしまっている…。
そう思った瞬間、餅は考えた。
「……ひろゆきを殺そう……。」
114 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:19 ID:???
目標は決まった。
絶対に自分のこの手であの男に止めを刺そう。そのためには武器が必要だ。
餅のディパックには武器として数珠が入っていた。
そんな自分を馬鹿にしたような偶然も餅に怒りを増幅させる原因の一つになっていた。
そして、隠れ家を早く探しさなければ!!そう思った餅の目の前に一軒のコンビ二が見えてきた。
「…ここを拠点にしよう…。食料にも当分困らないだろう…。」
流石に自動ドアは既に動いていなかったが、無理矢理こじ開ければ入ることができた。
店内はシーンと静まっていた。「どうやらこのゲームは本当のようだ……。」静けさが餅に事実を教えた。
「少し落ち着くためにコーヒーでも飲むか…。」
そう思い、奥にあったインスタントのコーヒーを手にとろうとした瞬間、レジカウンターから一つの声が放たれた。
「ヒヒヒ、いらっしゃいませ。」
驚いた餅が振り向いたその先には………「あの」ポリタンクが銃を構えて立っていた…。
ポリタンクは見ていた。自分がいる逆の方向の出口を必死に走り出て行く餅の姿を。
しかし、ポリタンクは追いかけなかった。いや、追いかける必要はなかったのだ。
餅が走っていく方向には1軒のコンビニしかないことも。そして、餅が自分以上に追い詰められていることも。
餅があのコンビニに隠れることは容易に想像できた。
115 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:20 ID:???
「!!!」
餅は瞬時に自分の置かれている状況を整理した。
すると、あの256の姿が浮かんできた。餅がこのプログラムが始まってから初めて感じた「死への恐怖」だった。
256を殺した張本人であるポリタンクが目の前にいる。こっちに銃を構えている。…自分を殺そうとしている!!
「……!!!!!!」
餅は手当たり次第の物を投げた。
昔から物を投げるような粗末なことはしなかったがこの時だけはそんなことは考えなかった。
缶コーヒーやコーラのボトルがポリタンクに向かって次々と飛んでいく。
しかし、こんなことはただの時間を稼ぐ方法の一つにしかならない。
「何か…!!武器になりそうな物は!!」
……あるはずがない。ここはコンビ二なのだから。
その瞬間、「パン」という冷たい音が店内に響いたと同時に餅の足に表しようのない痛みが走った。
ポリタンクが痺れを切らし、とうとう銃を撃ってきたのである。
ポリタンクは、一呼吸置いて、餅を見下すような目で、こう言った…。
「あんまり手ぇ、焼かせないでくださいよ…。」
116 :
カップラーメソ ◆eATTYOns :02/02/01 03:20 ID:fdMS/v0F
ポリタンク…ワラタ
117 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:21 ID:???
「何故、ここまでこのゲームに乗ることができるのか?」
餅には理解できなかった。ここで理解できるていることは、殺らなければ殺られるということだけだった。
しかし、このゲームの主催者であるひろゆきを殺す決意はあったが、
他の参加者を殺す決意はしていなかった。というより、できていなかった。
それに何といっても、この男は、「あの」ポリタンクである。説き伏せるなどということは不可能である。
方法は全て無くなった。
「ここまでか……。」
餅が死を覚悟した、その瞬間、ポリタンクでも、ましてや自分の声でもない、第三者の声が店内に響いた。
「あ〜、アチいなあ。」
その声の持ち主である山田が入り口に立っていた。ポリタンクと同じように銃を構えて。
118 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:21 ID:???
「そりゃあ、フェアじゃねえよ。ポリタンク。」
山田がポリタンクに向かってこう言った。
「まいったな。山田さんが来ちゃうとはなあ。」
一瞬にして、その場の雰囲気が変わった。変わったというより、山田が変えてしまった。
こんな状況の雰囲気さえも変えてしまうのも山田のある種のカリスマ性が成せる技なのだろう。
ポリタンクと餅の置かれている立場が変わった。
自分が何も武器を持っていないとはいえ、ポリタンクもわざわざ無駄死をしたくはないだろう。
山田が言った。
「行けよ、ポリタンク。ここにいる誰一人死ぬのはイヤなんだよ。早く!!」
どうやら山田も人は殺したくないように餅には見えた。
「……、助かったな。餅。」
ポリタンクはそう言い残して、こちらに銃を向けながらこの場所を後にした。
119 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:22 ID:???
「いや、助かりました。山田さん。」
餅が命の恩人である山田に話し掛けた。
「やっぱりやる気になってる人がいるんですね……。
こんな、こんな馬鹿げたゲーム開いたひろゆき…許せませんよ!!俺、あの人を殺し…」
餅は今までに自分の中に溜め込んだひろゆきに対する怒りを山田にぶつけるかのように話そうとした、その瞬間、
「!!!」
餅は喉に火がついたような熱を感じた。
「わりいな。餅。オレ、ファン名無しさんの為に生きなきゃいけないから。」
山田は引き金を引いていた。餅の喉に向かって、ponから奪ったであろうと思われる銃で。
「何…で…。」
餅が倒れこみながら、小さな声で山田に問い掛けた。餅が放った最期の言葉だった。
「う〜ん、お前のレス、俺は好きだったよ。あっちに行ったらponさんと煽りあいでもやってくれよな。」
事切れた餅に山田がこう囁き、そこからゆっくりと立ち去った。
死亡:餅
120 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:24 ID:???
[1日目午後2時頃:ビジネス街]
なな☆ーし(以下ななーし)は今、ある女と行動を共にしている。ゆきのふだ。
この組み合わせは過去の出来事を考えると少し意外かも知れない。
しかしなんとなく会話などが繰り返される内に、二人の関係はそれ以前より遥かに近くなっていた。
そして今ゆきのふはななーしにとって、こういう状況でも信頼するに足る人物となっていたのである。
そこでななーしは体育館で傍にいたゆきのふに合流地点を伝え、
とりあえずゆきのふの提案により外部との通信手段を手分けして探すことになった。
しかし、ななーしは心配だった。ゆきのふの事が。
理由はまずゆきのふの武器、これがよく分からないスイッチだった。爆弾かとも思ったが あまりに小さい。
小さいマッチ箱にボタンが付いたようなあまりに適当な代物で、しかも何の説明書も無かったらしい。
使い道すらわからない怪しい物だった。
そしてもっと心配だったのがゆきのふの様子だった。体育館にいた頃からどうにもおかしい。
サトポンの死体を見た後も妙に無表情で、外で合流した後も何とも言えない違和感が絶えなかった。
ななーしはショックが大きすぎた所為だと思い手分けすることに反対したが、
いつもと変わらぬゆきのふの説得力のある理屈に、渋々ながらも了承したのだった。
(とりあえず今出来ることに集中しよう。)
雑念を振り切り、ななーしは袖のデリンジャーを確認してから通信手段を探した。
121 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:25 ID:???
ゆきのふはこのゲームに巻き込まれてからの自分の異変に気付いていた。
サトポンの死体を見た時、ゆきのふはただ驚いただけだった。その驚きも死体を見たからではなく、
ただ何の感情も湧かない自分に驚いただけのものだった。
そう異変とはある種の感情が欠けている事。
悲しみ、恐怖、哀れみ、そんな感情がゆきのふからはすっぽりと抜け落ちていた。
原因はおそらく頭に埋め込まれた発信機だろう。
たまたまゆきのふの発信機にだけ問題があったのか、
それとも他の参加者と違い、以前自殺騒動を起こしたたからなのかは分からないが、
発信機がゆきのふの脳に作用したのは明白だった。
そして欠けた感情を補うように残りの感情が膨れ上がった。歓喜。
サトポンの亡骸を思い出すたびにぞくぞくする確かな悦楽がゆきのふを包む。
そしてその暗く醜い快感を押し止める感情はもう無かった。
ゆきのふは堪らなかった。
元来の旺盛な知的好奇心がとりあえず人体を壊すことに向けられた。
もっともらしい理由を付けななーしと一時的に別れたのも銃を持たない獲物を探す為だった。
そんな時、最早静かなケダモノとなったゆきのふの目が獲物を捉える。
金属バットを構えた出会い系サイト(以下出会い系)だった。
122 :
名無しさん?:02/02/01 03:26 ID:GxYOCudk
(゚д゚)ウマー
123 :
光収容:02/02/01 03:27 ID:???
これは・・・(・∀・)イイ!!
124 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:28 ID:???
先に出会い系に気付いていたゆきのふは辺りを気に(するフリを)しながら無防備に近づく。
一見、気が逸っているとは言え思慮の足りない行為に見えた。だが勿論計算があっての事である。
すこし訝しげにバットを構えた出会い系に、両手を挙げながら困惑気味な顔を作って話し掛ける。
「おいおいカンベンしてよ、出会い系。やっと人に逢えたってのに。」
ゆきのふは(前の)自分が多くの人間に信用されているのを知っている。
あとはそれを最大限に利用すれば良いのだ。
そう思いながらポケットに入っている『切り札』の存在を確認した。
「私はやらないって!出会い系さんだって知ってるっしょ!?」
ゆきのふが少し懇願するような表情を見せれば出会い系はあっさりバットを下ろした。
「信用してくれてありがとね。」
ゆきのふはにっこり笑った。あまりに予定通りだったから。
125 :
カップラーメソ ◆eATTYOns :02/02/01 03:29 ID:fdMS/v0F
書くの早いね…
最初から出来上がってるの?
126 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:29 ID:???
出会い系から事情を聞いていたが話に興味は無かった。早く壊してみたかった。
「!…あれ?出会い系、あれ何?」
言葉を聞いて振り向いた出会い系の金属バットを素早く奪い取り後頭部にそれをブチ当てた。
倒れかかった出会い系にさらに三、四発お見舞いすると、糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。
「ふ〜ん、こんな感じか…なるほどねぇ。」
どうもいまいちお気に召さなかったようだ。ゆきのふは金属バットのへこんだ部分を見ながら呟いた。
(次は持つ方で殴ってみるか。感覚は違うだろうしな。)
そう思いながらバットを眺めていた時、背後に視線を感じた。
ゆきのふは片手をポケットに突っ込みながら振り向いた。そこにはななーしが立っていた。
死亡:出会い系サイト
127 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:31 ID:???
ななーしは困惑していた。
(ゆきのふ?何をしてるの?なんで人が死んでるの?あんたの目の前で?)
考えのまとまらない内にななーしはゆきのふに銃口を向けていた。
(殺したくない…) 銃口の先は震えていた。
冷静にななーしの心情を読み取ったゆきのふは、ななーしに投げかけた。
「まさか私を殺すの?」
電気に打たれたようにななーしの身体に衝撃が走った。体中から力が抜ける。
構えた銃すら落としてしまいそうになった。
そして沈黙が続く。銃が重い。小さなデリンジャーが今まで持ち上げたどんな物よりも重たかった。
沈黙、銃の重さ、ゆきのふの言葉、そしてゆきのふの視線に耐えられなくなった時、ななーしは逃げ出していた。
しかし少し走り出したところでなんとかななーしは踏み止まった。
(ダメなんだ、せめてここでゆきのふを止めないと!それが私の責任なんだ。)
向き直り再び銃を構えた。震える腕を押さえつけて。
「ゆきのふ――――っ!!!」
自分の身体に渇を入れるように大声をあげ、引き金を絞る。
次の瞬間、辺りに破裂音が響いた。
128 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:32 ID:???
ななーしの前頭部が弾けた音だった。
そのままななーしの身体は後ろに倒れ、デリンジャーは数メートル後ろに投げ出された。
ゆきのふがそれを回収しようとした時、交差点の影から人が現れ銃を拾い上げる。
その男はゆきのふの方を見ることなく全速力で逃げ出していった。ななーしを殺した武器を恐れたのだろう。
男はマーカーだった。
ゆきのふは舌打ちこそしたが、殆ど悔しがる事も無く
ポケットからスイッチと紙切れを取り出すと適当に捨てて街に消えていった。
紙にはこう書かれていた。
[爆破スイッチ使用方法]
えーこれは諸君の頭に埋め込まれた発信機を爆発させるスイッチである。
スイッチを押すと、装置から2番目に近い発信機を自爆させることが出来る便利なシロモノだ。
つまり自分から少し離れた相手などに使うのが望ましい。
ちなみに使用回数は一回なのでよく考えて使うことをオススメする。
死亡:なな☆ーし
129 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:34 ID:???
[1日目午後4時半:パチンコ屋]
葵は目に付いたパチンコ屋のカウンターの隅で震えていた。
いつもは客を煽る店員の店内放送の声や玉の音、数十台のパチンコ台から流れる電子音で騒々しい店内は
台の液晶画面も消え真っ暗で、ただただ無音のだだっぴろい空間だった。
そこに葵の歯がカチカチと震え合わさる音だけが小さく響く。
「みんなどうしたの…もう何人か死んでるなんて…うぅ…う…」
葵は泣き顔で口をへの字にして必死に涙を堪えていた。
…私は2chを始めた時から有名固定になりたかったんだ。
今でも覚えている…とあるオフ会の時、たまたまひろゆきと遭遇した事。
私はとりまきの制止も振り切ってひろゆきの元へ駆け寄って、言った。
「ワタシ絶対、有名固定になってキャップ貰います!」
憧れのひろゆきを前に、私の心臓ははちきれそうやった。
そう言う私にひろゆきは「おぉそうか、待ってるから早く来いよ!」そう言った。
…あの時は本当に嬉しかった!
あの出来事が私の熱い気持ちを後押ししてくれたからこそ私は固定になれた。
いわばひろゆきが私を固定にしてくれたようにも思える。
…なのに今、ひろゆきに私の2ch人生を狂わされている。
すべては「ひろゆきの掌の上」ということか?
私の努力も、過去も、未来も、人生すべても…!
悔しい。やるせない。
憎い。憎い。しかし葵の怒りは悲しみと絶望感で萎えていた。
ただ両の拳を握り、「ぁあ…うぅぅ…」と声にならない声で咽ぶだけだった。
助教授とにっく出して
131 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:36 ID:???
「…葵?」
突然入り口付近から聞こえてきた声に葵はカウンターの中で身を固くした。
「…葵?…いないのか?」
(この声は!)
聞き覚えのある声に、葵はカウンターから飛び上がるように身を出した。
「ほうじ茶!!!」
葵を呼ぶ声の主は葵の友人でもある、ほうじ茶だった。
ほうじ茶は「さっき見かけたんだ。ここだと思ったよ!」と言いながら笑顔でカウンターまで駆け寄ってきた。
「なんで、あんたここにいるのよ?」
そう言いながら葵の顔は意外な人物の登場に安堵感でくしゃくしゃだった。
「葵がさ、腹減ってるといけないと思って、食べ物とかいろいろ持ってきた!」
そう言って背負っていたかばんを降ろし、中から次々と食料を出し、並べた。
葵はわかっていた。ほうじ茶は私を励まそうと思ってここまで来てくれたことを。
その友人の優しさに感動して葵は打ち震えた。
だが…葵は恐ろしい事に気付いた。
132 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:38 ID:???
「ありがとう!!ほうじ茶……!!!」
『パンッ!パンッ!パンッ!』
…葵がうずくまった姿勢から立ち上がろうとした瞬間だった。
その『パンッ』という音と共にほうじ茶がゆっくりと倒れてきた。
カウンターから少し覗いた葵の顔の前に、目を見開いたほうじ茶の顔が、ごちん、という音を立てカウンターに落ちてきた。
目が合っていた。実際には目が合ってるのかはわからないが、
目の前、ほんの10cm先ほどに友人の最期の顔があり、何かを言いたげな表情で固まっていた。
死亡:ほうじ茶
133 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:39 ID:???
「ぁあ…う…ぁぁ…」
葵の顔がみるみる恐怖と悲しみと怒りでくしゃくしゃになってゆく。
眉を八の字にし、細めた目から大粒の涙が止めどなく溢れ、歪んだ唇からよだれが垂れる。
もう、葵には今の状況も何もかもわからなくなっていた。
頭が真っ白で、友人を目の前でなくしたショックに頭が混乱した。
「ぁああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!!!」
絶叫と共に立ち上がり、手当りしだいのものを、涙で前が見えないがほうじ茶を撃ったヤツがいる方向に思いっきり投げまくった。
まるで子供がだだをこねるような動作だったけれど…
葵の投げた物の中に塩酸ビンが混じっていた。最初に支給されたものだった。
力任せに投げられたビンは銃を構えた治療不可の男の顔面に命中した。
134 :
ネオむぎ茶二世:02/02/01 03:40 ID:8nZ4SKV5
おめーら全員妄想野郎か!!?w
135 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:40 ID:???
「ギャァ〜〜〜〜!!!」
…その悶絶する声に葵はハッと我に返った。
治療不可は顔面を手で覆い、のたうち回り、しゅう、しゅう…という音と異臭があたりに立ちこめる。
治療不可の手のすき間から硝子の破片や溶けてただれ落ちる皮膚が見える。
「ゎ、ゎ…私がやったのかぁぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!???」
葵は地団太を踏みながら自分のとった行動にショックを受けていた。
友人を殺った奴に復讐した気持ちと、命ある一人の人間を傷つけてしまったショック感。
しかも治療不可は見るも無残に皮膚がただれ落ち、のたうち回っていて、思わず目を背ける。
視線を落とした先に崩れ落ちた友人の顔があった。
動かない友人は、相変わらず何か言いたげな表情のままだ。
葵は嗚咽を漏らし、カウンターの中に腰が抜けたようにしゃがみこんで泣き続けた。
死亡:治療不可
治療不可登場
137 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 03:41 ID:???
…葵が泣き終えて気分を落ち着かせるまでにかなりの時間を要した。
外はもう夕暮れで、赤い日差しがパチンコ屋の入り口から長く伸びている。
葵がカウンターの中からゆっくり立ち上がり、動かない友人に語り始めた。
「ほうじ茶… 私たちで理不尽な奴らを晒し者にしよ!
私たちがすべてを正しくしよう!私はぁ!私は妄想を売る晒し系固定なんだから!」
赤い夕日がまるでスポットライトのように、顔を上げて拳を握った葵を照らしだしていた…
>125
ある程度まとめて書いてます
助教授とにっくですね。
分かりました。
今日はこの辺にします。
・・・・・・・・・・。ダサい。
お疲れさまでした。
141 :
光収容:02/02/01 03:43 ID:???
142 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 03:48 ID:G3akj7cy
漏れ、カコ(・∀・)イイ!!
143 :
カップラーメソ ◆eATTYOns :02/02/01 03:51 ID:fdMS/v0F
じゃあ俺も出してくれ頼んだ
サイボーグとして復活させくれ
なんかかなり納得いかないよ
明智光秀の死に様よりだせぇじゃんかよ!
ホントお願い。キャップパス教えるからお願い
145 :
光収容:02/02/01 03:54 ID:???
146 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 03:55 ID:G3akj7cy
147 :
アンチラウンジャー:02/02/01 03:56 ID:8nZ4SKV5
おれんぢはmayタンに殺されよう。
僕は自分の話作ったよ。載せても(・∀・)イイ??
>>138 すごいなぁ!感動した!お疲れ様です。がんがってください。
>>146 つうかよ、ほうじ茶もこんな3流空気に殺されるの嫌だろ?
俺だって晒し系に殺されるのは嫌だ
すぐ死ぬのはかまわない
けどよ、256ですら人間っぽく死んだじゃないか
化けて出るよ?
んでも妥当な評価かなぁ・・・と思ってみたり
151 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 04:03 ID:G3akj7cy
>>149 (・∀・)イイ!!よ
>>150 いや、空気に殺されてもいいんだけど。
晒し系というのはちょっと。。。。でもしょうがないか
適切な処置か。
その頃、NARAI は食堂のおばちゃんに貰ったみかんを食べなが2chをしていた。
今日はコテハンさんが全然いないなぁ。みんな僕にビビって逃げたのかなw
そんな大きな勘違いをしながら、
いつもどおりのようにマウスを動かしキーボードを叩き、適当なレスを繰り返していた。
あれ?「実況・バトルロワイアル」ってスレの伸びがすごいなぁ・・・
今頃バトルロワイアルなんて随分とネタが古い。ラウンジのネタ不足も深刻かも。
そう思いながらもカーソルを合わせ、クリックをする。
このスレの
>>1はひろゆき。ちゃんとキャップも付いてるし、ホンモノだ。
ひろゆきってラウンジに来たりしてるんだ。僕のことも知ってるかも。うふふ♪
ん〜っと、なになに?
--------------------------------------------------------------------
1 名前:ひろゆき ★ 0X/XX/XX XX:XX ID:???
ラウンジの固定が増えすぎてしまいました。
今日はラウンジの固定の皆さんにちょっと殺し合いをしてもらうです。。。
このスレではその状況を細かく実況するです。
映像は日本全国どのテレビの2chを押しても見れるようにしてあるです。
---------------------------------------------------------------------
だから今日はコテハンさんが全然いなかったんだぁ!なーんだ、そっかぁ。
・・・・・・えええぇぇ??ぼ・・僕って一応固定だよね??
━ 後に彼は、自分が真性の空気固定であることを神に感謝することになる。
154 :
ゆきのふ:02/02/01 04:08 ID:???
(・∀・)!!
僭越ながらリクエストさせていただくなら
女に殺されてー!
156 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 04:10 ID:G3akj7cy
157 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 04:11 ID:G3akj7cy
158 :
ゆきのふ:02/02/01 04:13 ID:???
すげー私も出演してる(゚Д゚)
未だ全部見て無いや…ゆっくり読ませて貰うね。
にっくは弥坊と一対一で殺し合いさせて。
いや、変な注文つけて悪かった
>>1さんに委任するよ。できれば桐山和雄に憧れてるんでそれがいいけど
似合ってないし
162 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 04:28 ID:G3akj7cy
漏れって原作のどの部分なの?
>>162 創作だよ。原作とだいぶ違う。
それでいて完成度高い。(・∀・)イイ!!
ほうじ茶はホモのあいつだろ?
NARAIは文章力があるね。(・∀・)イイ!!よ
166 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 04:31 ID:G3akj7cy
168 :
名無しさん?:02/02/01 04:33 ID:Pu2CGWSi
これは面白いわ!!!名無しの俺が見ても面白い!!!
良スレとはこういうスレのことを言うんだね。
>1さん
楽しませていただいて、どうもです!
続き期待してます!
169 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 04:33 ID:G3akj7cy
最高あげ
171 :
カップラーメソ ◆eATTYOns :02/02/01 04:36 ID:fdMS/v0F
俺も出演キボンヌ
>>165 やたー!ありがとう。
>>1さんに触発されて書いてみた(ワラ
これからの話楽しみだよね。お気に入りに入れた。(・∀・)イイ!!
誰だ
誰だ
176 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 04:47 ID:G3akj7cy
誰だー♪
177 :
ゆきのふ:02/02/01 04:47 ID:???
冷血少女、モレカコ(・∀・)イイ!!
178 :
光収容:02/02/01 04:47 ID:???
相沢だっけか?
ゆきのふって引退したんじゃなかったんかい
180 :
ゆきのふ:02/02/01 04:48 ID:???
したよ。
>>180 そう・・ゆきのふは引退した。お前は誰だ・・・?
5代目ゆきのふです。
スレ潰しになるのでこの辺で…では。
>>182 ゆきのふ好きだよ。
これからも頑張ってね。
ゆきのふがやばい
「ふ〜ん、こんな感じか…なるほどねぇ。」
185 :
吉田:02/02/01 05:19 ID:???
支給された武器「リモコン」って格好いいですね。
いいね
188 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:14 ID:???
[1日目午後5時:図書館]
時折鳴る銃声に脅えながらにっくは使われなくなった図書館の一室に身を潜めていた。
この男はこれまでに途中立ち寄った公園で256の、
食料を調達していた時に入ったコンビニで餅の遺体を見てしまっていた。
「まさか本当にやる気になってる人がいるなんて!!」
にっくは信じたくない事実と先程から聞こえる何発かの銃声に気持ちを押しつぶされまいと自己暗示にふけっていた。
「俺は死なない。大丈夫だ…。
やる気になっている人たち同士が潰しあって、このゲームは終わるんだ。きっとそうだ…。」
まるで既に壊れてしまっているかのように何度も何度もそう自分を励ましつづけていた、その瞬間、
「ガタッ」
明らかに不自然な物音がこの部屋の後方の出入り口から放たれた。
189 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:14 ID:???
「誰だ!!」
このような状況においては、相手がこの場所から立ち去るまで隠れている方が良策なのだろうが、
にっくの本来の気の強さからつい声をあげてしまった。
我に返ったにっくは、わざわざ敵に自分の存在を教えてしまったこと自分の情けなさに対する怒りと同時に、
目の前に立っている女を見て安堵感が込み上げた。
「東金……。」
そう、にっくの前に現れたのは、「あの」東金だった。
「東金!!大丈夫だったか!!」
にっくは東金に会えたことにより、まだ固いながらもこのゲーム開始以来初めての笑顔で問い掛けた。
「はい、まあね。貴方も元気そうですね。それより御飯食べたいな。ラーメンみたいなの。」
東金の日常的な発言が今のにっくには何よりも嬉しいことだった。
「東金いればこのゲームも無事に切り抜けられる…。」
そんな期待がにっくの胸の中で膨らんでいた。
「みそラーメンと塩ラーメンどっちにする?」
「ん、スープの濃い方がいいな。」
こんな他愛の無い会話でも今のにっくには一番幸せなことだった。
190 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:15 ID:???
湯を注いだカップラーメン2つを東金の座っている辺りの前に置き、自分は外を監視しながら東金との会話を続けた。
東金には背中を向けても安心だとにっくは思っていた。
それよりもこの幸せな時間が外部からの侵入者によって壊される事の方が怖かった。
「いやあ、参ったね。本当にやる気になってる人がいたなんて…。
俺、今日256と餅の死んでるとこ見ちゃったんだよ…。」
「…そうですか。気の毒でしたね。」
そんなアッサリとした返事ににっくはなんの違和感も感じなかった。
むしろその変わらない東金のタフさに喜びさえ感じていた。
「東金…俺と組んで、このゲームから脱出しようよ!!
東金もこんな馬鹿げたゲームで死ぬなんてイヤだろう!?」
「ん?はい…まあね。」
「じゃあ、組もうよ。こんな、こんなゲーム馬鹿げてる!!
俺たちはこんなことをやるために歌手になったんじゃない!!畜生!!畜生!!…」
にっくは溜め込んでいた怒りを噴出すかのように話始めた。
191 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:16 ID:???
「まあ、落ち着きましょうよ。冷静になってください。ラーメン食べましょう。そろそろ。」
にっくは東金に促されるようにラーメンを食べ始めた。
食べながらもにっくはこんな状況下に置いても冷静でいられる東金に尊敬の念を抱いていた。しかし、
「グッ!!!」
ちょうどスープを半分飲みほしたと同時に強い吐き気に襲われた。
「……!!」
汚物だけではなく、遂には血まで吐き出し始め、のた打ち回るにっくを見下すように東金はこう言った。
「状況が状況だから、あんま他人を信用し過ぎないほうがいいですよ。」
そう、にっくのカップラーメンの中にすり潰して混ぜたと思われるタバコを口に咥えて…。
192 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:18 ID:???
[1日目午後6時前:とあるバー]
セブンは行きつけだったバーにいた。
人相は悪いが気のいいマスターが一人でやっている小さな店だった。
頻繁に通ったわけではないが独りで飲みたい時は決まってここに来て
夜通しマスターと話した。思えば迷ったときが多かっただろうか。
今回もそうだ。セブンは迷っていた。
固定達と殺し合うべきか助け合うべきか、そんな事ではない。
―――自ら命を絶とうか迷っていた。
まぶたの裏に焼き付いて離れないシーンがその思いを強くさせた。
ponが回転寿司を撃った場面だ。
あの時回転寿司はponに声をかけようとしていた。協力して殺人ゲームを乗り切ろうとしていた。
だが一発の銃声でそんな考えは打ち砕かれた。
倒れた回転寿司を助けることも走り去るponを追いかけることも出来ず
セブンはただがむしゃらにその場から逃げ出し、気付いたときにはバーの前にいた。
当然扉は閉まっていたため、道路に面した窓を割り中に入った。
誰もいない店内はひどく広く感じたが、なんとも言えない懐かしさに包まれた時
彼はデイパックから「毒薬」と書かれたラベルのついた瓶を取り出し手近の席についた。
ひろゆきの直筆らしいそのラベルには小さく「自殺なんてするんじゃないですアフォ」とも書かれてあった。
「…どっちがアフォだよ……」
そうつぶやきながらセブンの顔には少し笑みすら浮かんでいた。
ただ、その笑みは乾いていた。
|∀・)コソーリ
|ミ サッ
194 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:19 ID:???
セブンは毒薬を適当に入れたグラスによく飲んでいたウィスキーを静かに注いだ。
瞬く間に毒薬が溶け出しアーモンドの香りがする。青酸系の毒のようだ。
そして意を決しグラスを口に近づけた瞬間、怒号のような大声が狭い店内に響き渡った。
「出会い系殺ったんのはお前か!!!?」
怒号の主はラウンジ厨房固定の1人、原哉文(以下原)だった。
このゲームの性質を考えれば無意味に大声など立てるものではない。
自分の居場所を知らせることは何か目的の無い限り自殺行為にしか成り得ない。
しかし原からはそんな配慮は微塵も感じられなかった。
今右手にモップの柄、左手には支給された物であろう機動隊の持つような
ジュラルミンの盾を持っているとは言え、セブンの前に仁王立ちで立ちはだかっている事からも
配慮の無さを感じさせた。原らしいと言えば原らしいのだが。
そして今、原はすさまじい殺気を放ち半狂乱状態でセブンを睨みつけている。
「お前が出会い系を殺ったのかっつってんだよ!!!!」
言うのが早いか原は躊躇無くモップの柄を振り下ろした。
咄嗟に飛び退いた椅子に柄の先のT字の金具がぶつかると、金具はぐにゃりと曲がった。
195 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:20 ID:???
セブンは驚いていた。急に原が現れた事より出会い系を殺したと思われている事に。
(冗談じゃない!被りたくない濡れ衣まで被せられては死ぬにも死ねない。)
「ま、待て…えっと…(なんて名前だったっけ?)…やったのはオレはじゃない!!」
「じゃあ誰が…やったっ!!!?」
聞く耳も殆ど持たない風に、原は叫びながらモップの柄を横薙ぎに振り回した。
激しく壁に叩き付けられたT字の金具は柄から弾け飛び、
カウンターを飛び越え大きな音を立てて流しに飛び込んだ。
何とか原を説得しようとするが言葉が思い浮かばない。視線を巡らせたセブンは苦し紛れに言った。
「見ろ!オレの武器はそこの毒薬だ。簡単に殺せるわけ無いだろう!」
あまりにも意味の通らない言い訳だった。
(ダメだ…)
セブンは半ば諦め気味に覚悟を決めた。このまま殺されようと。
(どうせ死ぬつもりだったしな…)
心の中で今静かに家族に別れを告げた。
196 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:21 ID:???
しかし意外にも原に反応があった。うつむき気味に何かブツブツとつぶやいているのだ。
「…そういや出会い系の頭はなんか武器で殴られたみたいになってたな……」
意図せぬことではあったが説得は成功したようだった。
セブンは内心ホッとしていた。
そして自殺しようとした、また殺される覚悟を決めた筈の
さっきの自分との心境のギャップになんとも言えず苦笑いを浮かべていた。
そして、何となしに、自分が自殺しようとしていたことを、うち明け始めた。
数分後表情の変化からセブンの決意を汲み取ったらしく、原は小さく頷いた。
その原の背後から二人のものではない声が響いた。
「へぇ、結構仲良かったんだ。」
そこにはあのラウンジ筆頭固定「箱」がいた。
カウンターから身を乗り出したボウガンと共に。
197 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:22 ID:???
静寂が続いていた。
箱が二人に声をかけてから何分経っただろう。
一言も喋らずただニヤニヤ笑みを浮かべながら二人にボウガンをちらつかせている。
まるで二人の生殺与奪権を自分が持っているという事を殊更に強調するかのように。
そして無言のまま二人を店の奥の壁際に追いやり、自分はカウンターを乗り越えて二人が元いた辺りに位置取っていた。
セブンは数分間の静寂の間ひたすらに自分の思慮の足りなさを反省していた。
どうして箱の侵入に気付けなかったのか、どうして誤解の解けた原とすぐにここを離れなかったのか、
どうして軽々しく自殺などしようとしたのか、どうして…
セブンが思考停止の状態に陥っている時、原はこの上なく苛々していた。
箱の態度は彼の神経を充分に逆撫でしていたが、それ以上にセブンの態度が不満だった。
顔は箱の方を向いているが目の焦点は明らかに合っていない。
そのせいでセブンに意思を伝えることが出来ずにいたからだ。
(呆けてる場合じゃ無いだろっ!アンタが気付けば何とか出来るのに!!)
セブンと正反対に現状の打破のみを考えていた原は箱の弱点に気付いていた。
ボウガンは連射できない。
つまり二人同時にかかれば少なくとも一人、箱が瞬時に標的を絞れなければ上手く行けば二人とも無事で済む。
そう考えると今のセブンに苛立つのも仕方なかった。
ぬお!始まったみたいだな。
なんか昼ドラみたいな感じぃ〜♪
199 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:24 ID:???
そして原の苛立ちが頂点に達しようかという時、夕方6時を告げる忌々しい放送が流れ出した。
「元気ですかー!!!」
いつもの返事を必要としない呼びかけが街中に響き渡る。
「一番タフなヤツが生き残るんだぞーッ!!!
ではこの時間の脱落者を発表する。256兄さん!餅!出会い系サイト!ななーし!ほうじ茶!治療不可!
えー以上6名です。みんななかなかルールを理解してくれているようで非常に嬉しい。
では『真の固定』を目指して皆頑張るように。」
放送によって幾分冷静さを取り戻したセブンは原と視線が合った。何かを訴えているようだった。
程無く原が今にも箱に襲い掛かろうと考えていることに気付いた。
(馬鹿な!一体どういうつもり…)
そこまで考えて原と同じくボウガンの弱点を発見した。
が、どうにも釈然としないものがあった。
それが何なのかわからない内に原は行動を起こそうとしていた
カラスの鳴き声が聞こえ箱の目線がわずかに二人から離れた瞬間 原が動き出した。セブンもそれに追従せざるを得ず箱に飛び掛かった。
不意に聞こえた銃声にエフエム富士リスナー(以下富士)は身をすくませた。
(遠くない場所で殺し合いが行われている…)
怖くなった富士は隠れ場所に急いだ。
200 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:26 ID:???
セブンの拳は確実に箱の顔面を捉えた。
吹っ飛ばされた箱はカウンターで後頭部を強かに打ちぐったりしている。
セブンの左腿にわずかに痛みが走った。
ボウガンで打たれた傷だが幸い少し肉をもっていかれた程度で済んだようだ。
そんなことよりセブンには心配すべきことがあった。
セブンは素早く二つの凶器を適当にカウンターの向こうに放り投げ原の元に駆け寄った。
原は腹部から多量の血液を流していた。銃で撃たれたのだ。
原を撃ったのは箱が洋服の袖に隠し持っていた小型の銃デリンジャーだった。
原は腹に今まで味わった事の無い激痛を感じながらさっきからの違和感の正体について理解した。
(箱の不自然な沈黙は焦れたオレ達に襲いかからせ同時に殺すためのものだったんだな…
あの時距離を取ろうと後ずさった箱が足元に落ちていたボールペンで
バランスを崩さなければ、おそらく二人とも死んでいただろうな……)
原の考えは当たっていた。
一応、事は箱の予定通りに進んだが、ボールペン一本に
文字通り足元をすくわれてしまう結果となってしまった訳である。
201 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 11:27 ID:D5iAb1cb
死んじゃったら真の固定じゃないのか。。。
でも(・∀・)イイ!!やカコ(・∀・)イイ!!かったし。
202 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:27 ID:???
セブンはとりあえずバー備え付けられていた救急箱で原に応急処置を施した。
素人なのだから腹部を銃で撃たれた時の急所などわかる筈も無い。
とりあえず横っ腹のキズで銃弾が貫通していたのがセブンの気休めにはなった。
続けて原の傷口を冷やそうと流しに向かった時、セブンの身体が凍りついた。
箱が本来寝転んでいるべき場所にいないのだ。
煙のように消えたのでなければ、箱が今いる場所はカウンターの向こうか外に逃げ出したかだ。
だが外に出たのならばドアからにせよ窓からにせよ気付かないと言うことはまずあるまい。
そして最悪なことに武器は二つともカウンターの外にある。
しかもどの方向に放り投げたのかも覚えていない。
箱は次の瞬間にでもに襲ってくるであろう。
セブンが足音を立てぬよう姿勢を低くし摺り足で後ずさったその時、
カウンターからボウガンを構えた箱が顔を出した。
この戦いでセブンはとても幸運だったと言えるのかも知れない。
まず床にボールペンが転がっていた事。
そして今箱がセブンの真正面に現れた事。
何より勘違いして原に襲い掛かった事!
セブンは箱がボウガンを放つよりも早くフリスビーでも投げるかのように
さっき流しで拾ったモップの柄の先、金属でできたT字形の部分を全力で投げつけた。
柄の先は、セブンに殴り飛ばされ未だに意識が朦朧としていた箱の顔面の芯を完全に捕らえた。
T字の片方の先端がが箱の右眼にめり込んだ。
もう二度と右眼を使うことは出来ないだろう。
予想だにしなかった衝撃に箱は自らの放ったボウガンの矢の行方を確認する事も出来ずに、
閉じられていたバーのドアの鍵を開け外へと飛び出した。
右手で目をおさえ左手にボウガンを持ったまま箱は路地の奥へと消えて行った。
定まらない意識の中で呪詛の言葉をつぶやきながら…
203 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:29 ID:???
セブンと原はバーの近くの寂びれたビルのトイレの中にいた。
重症の原を遠くまで連れて歩くわけにも行かず、誰かに狙われた時満足に戦う事も出来そうに無い。
そんな状況の中ではベストではなくともベターな選択だとセブンは思った。
お世辞にもキレイとは言えない所だったが水は幾らでもあるし
こんな状況でゆったりトイレに来る神経など真っ当な人間にはまず無いだろう。
同じ考えの者がいなければ。
頭に浮かんだこの言葉をセブンはかき消した。これ以上原を連れ外に出ることは避けたかった。お互いのために。
水を飲み一息ついた頃原が意識を取り戻した。
「…セ…ブン……ゴメン…」
「何言ってんだよ。そんなことより早く怪我治してくんないと。一緒に戦うんだから。」
にっこりと笑ってセブンは答えた。
「…ありがとう……!…お前……肩どうした…?」
箱が最後に放った矢はセブンの左肩を直撃していた。
かなり熱を持っていることからも骨折しているかも知れない。
「かすり傷だよ。それよりなんか食うモン取ってくるからちょっと待っててね。」
手酌で水を原に与えセブンは立ち上がった。
「行ってくるから。」
右手にバーの隅で見つけたデリンジャーを持ち、静かにトイレのドアを閉めた。
念のため気配を殺し足音を立てずに階段を下りてビルを出たセブンは
辺りに誰もいない事をしっかり確認して食料の調達に向かった。
ただ、その姿を別のビルの窓から見ていたゆきのふに気付くことは出来なかった…
204 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:31 ID:???
ふと原が廊下の足音に気付いた時、足音の主がトイレに戻ってきた。
「なぁセブン…無事に帰ったらオレの家に来いよな……」
目を閉じ声は少し震えていたが、出来るだけはっきり聞こえるように言った。
「…じゃあちょっと……寝る…」
言い終え、まどろむ意識の中で額に冷たい物が当てられた。
(…そこまで…してくれなくても……いいのに…)
感謝の言葉と共に意識が途切れる瞬間、頭部に軽い圧迫感を感じた後、原の意識はブラックアウトしていった。
セブンは嘔吐していた。止まらなかった。
もう十分間近く経ったのではないだろうか。
しかし胃液すら出なくなっても止まらなかった。
その傍らにはスェットを布団代わりに原が寝転んでいる。
ただ熟れたスイカを地面に落としたようなものが頭の代わりをしていたが。
セブンがビルのトイレに帰り着いた時、既に原の生命には終止符が打たれていた。
明らかに他人の手によって。
わけがわからない。?????????何故?いつ?誰が?????????
やっと前向きになりかけたセブンの思考は停止した。
そして込み上げる嗚咽は一時間以上続いた……
死亡:原哉文
205 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:32 ID:???
[1日目午後6時前:ホビーショップ]
「…助教授さん、落ちつきましたか?」
じょかは心配げな表情で、助教授の顔を覗き込んだ。
「…ああ。体育館にいた時よりはな」
そう呟く助教授は、ずっと前から青ざめたままだった。
無理もなかった。
ただでさえ顔見知りと殺し合うという理不尽な状況に放り出されているのに…
スタート前に、サトポンの無残な姿を見せられているのだ。
あの体育館で、声をあげて泣くponのその後ろで、助教授もまた涙していた。
「…サトポンが…こんな酷い姿に…」
ただ泣く事しか出来ずに、立ち尽くしていた。
そんな助教授を見て、じょかは心配でたまらなかった。
「とにかく…助教授と離れないようにしなくては」
同じ固定同士。見捨てる事なんて出来ない。
体育館の出発順は、じょかが先だった。
茫然自失の助教授に、じょかは素早く囁いた。
「助教授さん、ホビーショップまで来て下さい。いいですね!俺、そこで待ってますから…」
ホビーショップは、助教授がよくフィギュアを買いに行く店だ。
そこならば、助教授も迷わず安全な道を通って来れるだろう。
「じゃ…後で!」
じょかは出口でデイパックを受け取り、駆け出して行った。
206 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:34 ID:???
「しっかし、この店っていろんな物ありますねぇ」
じょかは店内をぐるりと見まわして呟いた。
助教授が来る前に、何か使えるものはないかと物色をしていたのだ。
この店がフィギュアの他にモデルガンも扱っていたのは好都合だった。
じょかの手元には、サブマシンガンのモデルガンがあった。
『片手のみで操作可能。最大で1分間に最高750発発射出来ます』
ショーケースの説明書きには、そう書いてあった。
動き回る事を考えると、これがベストの選択であろう。
殺傷能力はないにせよ、はったりをかますのには十分だ。
「できる事なら、人殺しはしたくない…みんな生きていてほしい」
「みんないい人ばかりなのに…何でこんな事に…」
じょかが目に涙を浮かべたその時、夕方6時の、2度目の定期放送が聞こえてきた。
『…ではこの時間の脱落者を発表する。256兄さん!餅!出会い系サイト!ななーし!ほうじ茶!治療不可! えー以上6名です』
「256と出会い系…ななーし…女まで参加させてるのか!?いったい何考えてるんだ…」
「…サトポン、山崎、回転寿司、いっちにpon・・・」
助教授が力なく呟いた。
助教授は涙があふれぬよう、天井を仰ぎ見た。
「ひろゆき…本当に最後の一人までやらせるつもりなんだろな…」
そう呟くじょかの目から、止まる事なく涙があふれた。
そして…悲しくも現実を伝える放送は、二人に長い沈黙をもたらした。
207 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:35 ID:???
「俺たち…生き残らなきゃな」
天井を見つめながら、助教授が呟いた。
「俺が死んだら…ラウンジの知的派固定も、いなくなっちまう」
「そうですね…逝った人達の分も、頑張らなきゃ。」
そう言ってじょかは涙をぬぐい、再び使えそうな物を物色し始めた。
「あ…助教授さん!いい物がありますよ!ほら!」
じょかは大声で叫びながら、ショーケースを指差した。
ショーケースの中には「非売品」と書かれた札が付いた防弾チョッキがあった。
「防弾チョッキ!?ああ、そういやここのオヤジが趣味で集めてたっけ」
「これ、本物ですよね?使えますよ!」
そう言うやいなや稲葉はショーケースの硝子を叩き割り、防弾チョッキを取り出した。
「うわ、結構重たいな」
だいたい2kgぐらいだろうか?ズッシリとした重みがあった。
「まあ、防弾っつうぐらいだしな。重い方が守りもしっかりしてるだろ。とりあえず、とっとと着ちまおう」
――――その時だった。
パンッ、パンッ、パンッ!
店の外で、乾いた衝撃音が鳴り響いた。
「…銃声!?すぐそばで誰かが…」
「隠れるぞ、じょかっ!見つかったら俺たちもやられる!」
二人は急いで防弾チョッキを抱え、デイパックとモデルガンを拾い上げて店の奥へと向かった。
208 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:37 ID:???
その時店の外では、ポリタンクとマーカーが対峙していた。
撃ったのは、ポリタンク。マーカーの太ももとヒザを撃ちぬいていた。
マーカーはといえば、ホビーショップに向かおうとしていた所だった。
この店は、マーカーの行きつけでもあった。
じょかと助教授の二人がいるなんて、知る余地もない。
ただ、じょかと同じ様に「モデルガンがあれば、はったりになるかもしれない」
そう考えて、店を物色しようと考えていたのだ。
そして店まで後少しという所を、後ろからポリタンクに狙われたのだった。
足に衝撃を感じ、よくわからぬまま地面に崩れ落ちた。
そして一瞬カァッと熱くなったかと思ったら、とんでもない激痛がヒザを襲ってきた。
「グアッ…クッ…だ、誰だっ」
「俺だよ、マーカー。ダメだろ、背中にも目ぇ付けとかなきゃ」
「ポリタンク、貴様ぁ…っ」
マーカーはポリタンクを睨みつけるが、立ちあがる事が出来ない。
(クソッ、ここで殺られるのかっ…)
ポリタンクがゆっくりと近づいてくる。でもマーカーは、逃げる事が出来ない。
(死ぬにしても…無駄死にだけはするもんか!)
マーカーは片手で自分のデイパックをまさぐり、支給された大ぶりのナイフの柄をグッと握り締めた。
209 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:38 ID:???
ガツッッッ!!
―――切っ先に固い感触を感じた。
その衝撃で、マーカーの手からナイフが弾け飛ぶようにして地面に落ちた。
「…何するんだよ、まったく…無駄な抵抗だな。ま、刺さなくて良かったかな。いいもんじゃないよ、あの感触は」
「何で…何か仕込んでるのか!?」
「ああ、デイパックに殺った奴の武器をしまってたら入りきらなくなったんで、腰に巻いたんだ」
そう言いながら、ポリタンクはシャツをめくってみせた。
その腰には…厚いベルトが巻かれていた。
(そ…そんなモン巻いてるなぁ〜っ!)
マーカーにとって千載一遇のチャンスは、ベルトによってあっけなく打ち砕かれた。
「あーあ。マーカーのせいで傷が入っちゃったよ…でも、さすが俺のベルトだな。良い拾い物だ。命拾いした」
ポリタンクはベルトを愛おしげに撫でながら呟いた。
210 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:39 ID:???
「さあ、そろそろお別れでだぜ…」
「ポリタンク!…なぜお前は殺すんだ!?なぜ殺さない方法を考えない…」
全ての力を使い果たしてしまったマーカーが、息も絶え絶えに訴えた。
「…結局、殺らないと殺られるだけだろ。俺は自分が一番かわいいからな。死にたくないだけだ。」
そう話しながら、ポリタンクは銃をマーカーの左胸にピタリと当てた。
「じゃあ…さよなら、マーカー」
パンッ!パンッ、パンッ、パンッ!
最初の一発で、マーカーは声も立てずに崩れ落ちた。
そこへ追い撃ちをかけるように、三発。
みるみるうちに、地面に血だまりが出来た。
ポリタンクはナイフを拾い上げてデイパックにしまいこんだ。
「…さて。あの店に何かあるらしいな。ちょっと漁ってみるか」
ポリタンクは、ホビーショップの方に向かって歩き出した…。
死亡:マーカー
211 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:44 ID:???
パンッ!パンッ、パンッ、パンッ!
…店の奥と言っても、元々広い店ではないので外の音が良く聞こえてくる。
マーカーの叫び声も、何を言ってるのかわかるぐらいに聞こえた。
それによって、マーカーが絶命した事や、銃でマーカーを撃ったのがポリタンクである事がわかった。
「ポリタンク…殺っちまったか…」
助教授がため息混じりに呟いた。
「アイツにだけは会いたくないなぁ。アイツなら、何の躊躇いもなく殺りそうだし」
「でも、生きている限り絶対どこかで顔を合わせる羽目になりますよ。俺は…戦いたくないですけど」
「…襲ってきたら、最低でも一撃食らわさないとダメかもなぁ。話してわかるヤツじゃないだろ、アイツは…」
イザとなったら、殺らねばいけない…。自分を守る為にはそれしかない。
それでも、殺したくない。知り合いを殺るなんて出来ない。
でもポリタンクは、殺ってくるに違いない。
(どうすればいいんだ…どうすればこれ以上誰も死なずに済む!?)
じょかは必死に考えを巡らせた。でも、何も浮かんで来なかった…。
「助教授さん、とりあえず今はここから脱出しましょう!ポリタンクと顔を合わせる前に…」
じょかがそう言いかけた時、バンッ!と勢い良く店の入り口のドアが開く音がした。
「まさか…ポリタンク!?」
「念の為、防弾チョッキ着ておくか。しかし…最悪だな」
二人は息を潜め、防弾チョッキを着込んだ。ポリタンクに見つからない事を祈りつつ…。
212 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:46 ID:???
「…ん?もう誰か来た後か?」
叩き割られたショーケースが、誰かが物色した後である事を物語っていた。
「使えそうな物は残ってないか…ん?」
ポリタンクは足元に何かが落ちているのを見つけた。
「この辞書…助教授さんか」
落ちていたのは何故か、博識固定助教授のデイパックに入っていたアイテム、辞書だった。
どうやら、恐怖心を忘れるため持って歩いていたらしい。
店の奥に逃げ込む時に落としたようだ。
「助教授さんがこの辞書を落としたって事は、よっぽどアセっていたって事だな」
ポリタンクはグルリと店内を見渡した。まだこの店の中にいるかもしれない。
ポリタンクは右手に拳銃、左手に盾代わりのジェラルミンケースをかまえて、ジリジリと店の奥へ歩を進めた。
「…ポリタンク、こっちに向かってきてるみたいですよ」
じょかが声を潜めて言った。
「バレたのか!?何で人がいるってわかったんだ!?」
助教授は自分のせいである事をまだ知らなかった。
「仕方ない…来たら先制攻撃するしかないな」
「武器は使っちゃ…そういや助教授さん、武器、何でした?」
二人は動揺していたのと最初から殺し合いをする気がなかったせいもあって
支給された武器が何であるかを未だに確認していなかった。
二人はポリタンクに気づかれないようにソッとデイパックの中を改めた。
助教授に支給されたのは、シリンダー式の拳銃だった。
「ま、手足を狙えば殺さずに済むか…じょか、お前のは?」
「助教授さん…これ、何でしょう?…」
213 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:47 ID:???
じょかのデイパックから出てきたのは、黒い小さな箱だった。
てっぺんに赤いボタンがついており「ブラクラでも何でも踏めばわかる」と書いてあった。
「踏めばわかるって…押してみるか」
「あ、じょか!押すな!それってたぶん…」
「え?」
カチッ。助教授が言葉を言い終わる前に、じょかはボタンを押してしまった。
すると箱の正面のパネルが動き出し、中からデジタルパネルが現れた。そして
『お元気ですかー』
…突然、ひろゆきの声が箱から聞こえてきた。
「…ん?」
ひろゆきの声に、ポリタンクの動きが止まった。
ひろゆきの声が聞こえてきたという事は、何か良くない知らせに違いない。
助教授達も同じ考えだった。嫌な予感がする…。
そんな彼らの気持ちなどお構いなしに、ひろゆきの声は流れつづけた。
『いたずらはいやずら!…エー、この箱は時限爆弾です。
今、ボタンを押した事により時限装置が作動しました!
制限時間は5分!5分経ったら爆発するぞ!みんな頑張って5分以内に逃げたまえ。
尚、このボックスに衝撃を与えたり分解しようとするとその場で爆発するから注意するように!
では諸君の健闘を祈る…いくぞーっ!!』
…ひろゆきの能天気な声が聞こえなくなったのと同時に、デジタルパネルが作動し始めた。
「4:59…58…57…」時間はどんどん過ぎていく。
214 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:49 ID:???
「あーっ、やっぱり時限爆弾だったかぁ…くそっ!」
「すみません…俺がボタンを押したばっかりに…」
じょかが涙目でうな垂れ、呟いた。
「もう動き始めたんだから、言い訳してもしょうがない。何とかして、この場から脱出せんとなぁ・・・」
爆弾のタイマーを止める事も、壊す事も出来ない。
それに今のひろゆきの声で、隠れている場所をポリタンクに悟られたのは確実だ。
助教授が必死に考えを巡らせる横で、じょかは押し黙っていた。
(俺のせいだ…何とかしなきゃ…そうだ!)
「…助教授さん、俺が囮になりますからポリタンクを撃ってください!」
「な…じょかっ、バカな事言うな!お前、武器持ってないのにどうすんだ!?」
助教授は驚き、じょかを見た。じょかの目はこの上ないほどに真剣だった。
「さっき見つけたサブマシンガンのモデルガンでポリタンクを打ちます。
そこでポリタンクが怯んでいる隙に、ポリタンクの動きを止めてください。
防弾チョッキも着てるし、何発かは弾を受けても大丈夫だろうから…」
「じょか…」
「それしかないです!早く逃げないと爆発しちゃいますよ!」
助教授はフーッと深いため息をつき、軽くうなづいた。
「そうだな…でもじょか、死ぬなよ…」
「こればかりは運を天に任せるしかないですけどね。
助教授さんも…死んじゃダメですからね。」
じょかはニッコリと、しかし淋しさをたたえた笑みを浮かべた。
「ああ…死んでたまるか!俺は生きるぞ…」
二人は覚悟を決めた。誰も殺したくはなかったが、仕方ない。
ポリタンクを倒さなければ爆死する。
たとえポリタンクを撃ち殺さなくても、致命傷を負わせた時点で殺したも同然だ。
ポリタンクだってここから逃げられなければ爆死してしまうのだから…。
215 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:50 ID:???
ひろゆきの声が聞こえなくなった時、ポリタンクは呆気にとられていた。しかしすぐに我にかえり考えた。
突然のひろゆきの声。誰かがボタンを押し、時限爆弾を作動させた。
「…これで誰かいる事が確定したな」
相手は逃げようとするだろう。しかし、逃げ道には自分がいる。
自分はそのまま逃げられるかもしれない。でも、相手は自分を倒さないと逃げられない。
今ここで逃げようとして背中を向けたら殺られるだろう。
「助教授さんだか誰だか知らんが、殺るしかないって事だ…」
相手はおそらく正面にあるカウンターの中にいる。
さっきのひろゆきの声が聞こえてきたのも、カウンターの中だった。
ポリタンクは再び拳銃を構えた。
じょかの傍らに転がる時限爆弾のタイマーが、残り時間が3分強である事を示していた。
「俺が左から撃ち始めたら、助教授さんはちょっと間を置いた後に右から撃ってください」
「…わかった」
作戦を確認した後、じょかはモデルガンを構え、助教授は拳銃の撃鉄を引いた。
「じゃ…行きます!」
じょかは勢い良く立ち上がった。5mほど先にポリタンクの姿があった。
これ読んでる奴いるの?
217 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:51 ID:???
じょかは一心不乱に、ポリタンクに向けてサブマシンガンを撃ち込んだ。
ポリタンクの気をそらせればいい。ほんの少しの間だけ…。
「しまった!二対一だったのか…!?」
ポリタンクは、予想だにしなかったじょかの登場に一瞬怯んだが
自分に当たった弾が本物でない事に気づくと、構えていた拳銃を発射した。
パンッ、パンッ、パンッ!
「ウグッ!」
ガーンッ!
「グアッッッ!」
218 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 11:51 ID:D5iAb1cb
超ドキドキしながら読んでます
読んでますよ
221 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:54 ID:???
…意外にもダメージを受けたのは、助教授の方だった。
突然の激痛に助教授の顔がゆがんだ。撃鉄を引き直す事も出来ないぐらいの痛みだった。
助教授はTVドラマの刑事のように、片手で拳銃を撃った。
その瞬間ものすごい衝撃が右手を通じ、肩へと伝わった。
助教授の右肩は春先に怪我をして以来、まだ完治していなかったのだ。
その肩にモロに衝撃を受けたのだった。
そして肝心の銃弾は……ポリタンクを捕らえる事が出来なかった。
やはり衝撃で腕がブレて、的を外してしまったのだった…。
「助教授さん、カッコつけて片手で撃つからだよ…アホが!」
そう言うとポリタンクは両手で拳銃を構え直し、助教授の額に狙いを定めて引き金を引いた。
パンッ!と音がしたのと同時に、助教授は額を撃ちぬかれて崩れ落ちた。
「助教授さんっっっっっ!!」
じょかが銃撃を止め、助教授の方を向いた時、既に助教授は事切れていた…。
「助教授さんっ!助教授さんっ!返事してください!助教授さんっ!!」
じょかは助教授の両肩を持って揺さぶった。しかし、もう二度と助教授が口を開く事はなかった。
「助教授さん…」
うなだれるじょかにポリタンクは素早く近づいていき、背後から腕めがけて拳銃を撃った。
223 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:55 ID:???
パンッ、パンッ!
「ウガァッ!」
着弾の衝撃と痛みで、じょかは助教授に覆い被さるようにして倒れ込んだ。
「…防弾チョッキ着てても、頭や腕は剥き出しだからなあ」
ポリタンクはニヤリと笑い、そう呟いた。
ポリタンクはふと足元を見た。さっきの時限爆弾が転がっている。
拾い上げてタイマーを見ると、残り時間はあと2分を切っていた。
倒れ込んでいるじょかに向かって、ポリタンクが問い掛けた。
「さて、と。そろそろ逃げないとな。じょか、お前はどうする?
大人しく爆発を待つか、今俺に撃ち殺されるか…どっちがいい?」
じょかは激痛が走る腕を使い、ポリタンクの方に向き直り、息も絶え絶えに言った。
「…ほっといて…くれ」
「爆死を選ぶか…痛いぞ〜、爆死は。俺に頭撃たれた方が楽に死ねるが」
「いいんだ…死ぬ覚悟は出来るさ。ただ…これ以上、お前に人殺しになってほしくないだけだ…」
「これ以上って、この後も誰かに会ったら俺は殺るぜ?」
「お前が殺した人数が一人でも減るなら…俺はその方がいい…」
「この期に及んで優しい気遣いしてるとはねぇ…大したもんだな!」
ポリタンクはじょかを嘲笑うように言った。
「じゃあ、気遣いついでにアンタの防弾チョッキを譲ってくれないか?そんなの着てたら爆死は無理だぜ?」
「ああ…もう必要ないから…勝手にしてくれ…」
じょかは吐き捨てるように呟いた。
224 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 11:56 ID:???
ポリタンクはじょかが武器を持っていないことを確認すると、じょかの上体を起こして防弾チョッキを剥ぎ取った。
「ありがとな。じゃぁ元気で!!」
ポリタンクはそう言うと、じょかの額に拳銃をあてがって撃った。
パンッ!
(な…何で…)
じょかは意識が飛ぶ瞬間、そう思った。
「殺した人数が一人でも減るなら、か…余計なお世話だ!」
ポリタンクは無表情で、もう意識がないじょかに向かってそう吐き捨てるように言った。
『…あと30秒で爆発するずら!』
時限爆弾から、ひろゆきの声が響いた。
ポリタンクはサッと荷物をまとめて脱出の準備を整えた。
「あ、そうそう。助教授さん、忘れ物だよ」
そう言うと助教授の屍に向かって辞書を放り投げた。
『あと20秒で爆発するぞ!』
その声を聞いて、ポリタンクは荷物を抱え、ダッシュで店を後にした。
遠くへ…とにかく爆撃に巻き込まれないように、遠くへ…。
そしてひろゆきの声が、最後のカウントダウンを始めた。
『あと10秒…それでは皆さん、ご唱和ください。いくぞーっ!サーン、ニーッ、イーチ、ゼロッ…』
ドンッ!ドカーンッ!ドドドドドッ…ガラガラガラ…
豪快な爆音と共にホビーショップは吹き飛んだ。助教授とじょかの屍と共に…。
死亡:助教授、じょか
おいおい助教授死んじゃったよ!
ありがとうございます。
続きは夕方くらいに上げます。
お気に入り追加させてもらいます(〃▽〃)
オルテガは?
で、箱はまだ死んでねーのか?
オマエ1人で作るなよ
最終的に俺がカイザーソゼって事で
誰か要約、読むのめんどい
面白いヽ( ゚∀゚ )ノ
夕方が楽しみだ。わくわく。
235 :
名無しさん?:02/02/01 12:04 ID:tx3GoJ7h
いまさらなんだけど、回転寿司じゃなくて、開店寿司...
ポリタンク→キラーマシーン化
ゆきのふ→殺人狂化
原→スイカ
夕方早く来ないかな
( ‘е)<お気に入りに追加、っと。
ラウンジウォッチャーさん、出してくれてありがとう。死んじゃっても(‘e‘)イイ!
名スレの
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
∧_∧ < 糞スレ
( ´_ゝ`) \________
/ \
/ /\ / ̄\
_| ̄ ̄ \ / ヽ \_
\ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \__)
||\ \
||\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
>>199の3行だけですか!?
この後の活躍に期待しとく。
244 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 12:45 ID:D5iAb1cb
>>242 それで妥当だと思いましょう(´Д`;)
面白い。自分が、こんな美味しいシュチエーションで出ていないのが悔しいが
┌─────────┐/
| ( ´_ゝ`) 〆
└─────────┘
とりあえず、ブックマーク
お××イパーイは実家で日課ともいえる画像鑑定をしていた。
「また既出、と。いいかげん検索してから依頼してくれよ」
愚痴をこぼしつつ、更新ボタンを押してみると
そこには見慣れないURLが書かれていた。
「お!新作か!まぁ、どうせグロかホモ画像だろ?」
いつもの調子でなにげなくクリックしてみた。
「ん?」
そこにはひろゆきの顔が。
「なんだこれ?」
しばらく画面を見つめていると、突然ひろゆきが喋り始めた。
「あ、踏んだね。君、参加ケテーイ」
「ハァ?」混乱する、お××イパーイ。
と、同時に部屋の扉が開き迷彩服に身を包んだ男達が入ってきた。
「なんだ!?お前等?」言うのが早いか、後頭部に激痛が走る。
「ウッ!」
次第に薄れていく意識の中かすかに聞こえる男の声。
「君は新規参加者に選ばれた。ま、死なないようにがん・・」
「参加?死・・ぬ・・・」
言葉にならない声と共にお××イパーイは完全に意識を失った。
>>ラウンジウォッチャー
勝手に新規参加者として登場させたけどいい?
>248
全然構わないです。
お××イパーイですね。了解しました。
[1日目午後6時過ぎ:図書館〜高校校舎内生物室]
にっくは生きていた。
不幸中の幸いというべきか、東金がスープに混ぜたタバコの量は死に至る程のものではなかった。
さすがの東金もタバコの致死量まではよく分からなかった。
あの東金がこのゲームにおいて2度目の失敗だった。
ふらつく足元を気にしながら武器として支給された「他の参加者の位置を感知できるレーダー」を持って図書館の外に出た。
「このままあの部屋にいても、いずれは他の参加者に見つかっちまう…。」
幸い日は暮れて、辺りは暗くなっていた。
「これなら、他の参加者にも見つかりにくいはずだ…。今のうちに…。」
図書館の100メートル南に高校があった。にっくはそれを目標に重い足を引きずりながら必死に歩いた…。
…レーダーに反応はない。
「どうやら今日はついてるみたいだな…。ヴァーチャルネットアイドルちゆの運勢…当たってるな…。これから毎日見よう…。」
一度死の淵まで追い詰められたにっくはこんな事を考えられるほど落ち着いていた。
あれから何分経っただろう…。いつも早足で20秒もかからない道がとても遠く感じた。
学校の校門の壁を何とかの這い上がり、にっくは隠れることができそうな場所を探した。
校舎に忍び込み、2階の生物室らしい部屋の前に差し掛かった瞬間、レーダーが反応し始めた。
どうやらこの半径50メートル以内に誰かがいるらしかった。
廊下には人の気配は感じられない…。
にっくはゆっくりと生物室のドアに手をかけた。
「ガラガラ……。」
なにかが潜んでいるようには感じられない静寂が漂っていた。
しかし、レーダーの反応はよりいっそう強まった。
「誰か…いるのか…?」
先ほどの東金との「闘い」でにっくからは恐怖感は無くなっていた。
にっくは辺りを見回しながらゆっくりと歩いた。
レーダーの反応は強くなる一方だったが、にっくは怖くはなかった。
先ほどまで雲に隠れていた月がようやく顔を出し始め、この薄暗かった部屋を月明かりが照らし始めたその時、
にっくは見た。全身を紅く染めてやすらかに眠っている弥市を……
「や…弥市…。」
にっくにとって同じくネタ固定の弥市はよくつるみあう、とても親しい存在だった。
ある意味、自分が死に直面したとき以上の衝撃が身体を駆け巡った。
「弥市ーーー!!」
にっくは弥市の身体を泣き叫びながら前後に揺らした。
もう二度と弥市の目が覚めないことはにっくにも分かっていた。
今自分が殺人ゲームに放り込まれた身であることも忘れ、ひたすら泣き叫んだ。
「弥市は敵じゃねえんだよぉぉ!!!」
にっくは自分の手に持っているレーダーにどうしようもない怒りを覚えた。
こういう目的の機械である以上、誰であろうと反応するのは仕方がない。
それは、にっくにも分かっていた。
にっくはほとんど残されていない力を振り絞り、レーダーを向かい側の棚にぶつけた。
にっくはそうせずにはいられなかった。
「**の話をするから好きな奴は聞いてくれ」
弥市がよく言っていた言葉を思い出し、にっくはただ、泣いた。
あれから何分経っただろう?
おそらくそれほど長い時間が過ぎたわけではなさそうだったが、
にっくは今までのありすぎた色んな事を頭の中で整理しながら弥市に話し掛けた…。
今まで話していた時と同じように。
勿論、返事が返ってくることなどはありえなかったがにっくは話しつづけた。
「弥市、俺のノートパソコン調子…悪いみたいなんだ…。…家帰ったら…見てくれないか…。」
「俺、初めてラウンジに書き込みしたとき…緊張しまくりだったんだよ…。ヘヘ…。
でも、弥市…ネタのレベルが高くて…オレ凄いなあ…と思ったんだ。」
「楽しかったなあ…。弥市とつるんだの…。ずっと頑張ろうって…約束したよな?」
にっくの頭に弥市との楽しかった思い出が次々と浮かんでくる。
元々、にっくは涙もろいわけではなかったが、この時は自然と涙が溢れて止まらなかった。
「約束…したよな?弥市……?」
にっくは静かに眠る弥市を見つめた。
「約束…したじゃないか!!…お互い頑張ろうって!!弥市…言ったじゃねえか!!」
今まで抑えていた感情が一気に爆発した。
「眼ぇ、開けてくれよ!!もう一回二人してラウンジで遊ぼうよ!!
ラウンジで一緒に書きこもうよ!!弥市ーーー!!眼ぇ開けてくれよぉぉぉ!!」
大声をあげて泣き叫ぶにっくはもうこのゲームのことなんて忘れていた。
弥市の死を自分の意識に受け入れることで精一杯だった。
「カチャ…」
弥市に抱きついて泣き叫ぶにっくの後頭部に冷たい感触が触れた…。
「タン」
あっけない音とともににっくの意識は途絶えた。弥市と同じように。
「…にっく、生きてたのか。失敗したな。やっぱりタバコ1本じゃ足りなかったか…。」
完璧主義者の女がボソボソと独り言で反省をした。
弥市とにっくの向かい側の棚の下に転がったレーダーははっきりと反応を捕らえていた。
今までずっとこの校舎の屋上に身を潜めていた東金の反応を。
死亡:にっく、弥市
[1日目午後6時過ぎ:ビジネス街]
鮎崎はまみは、口答えした時にひろゆきに思い切り張られた頬をさすりながら
パートナーの、マシと行動を共にしていた。なんでも急遽選ばれた後発組へのサービスだそうだ。
(しかし二人一組っていきなり襲われたらどうしてくれるんだ…)
鮎崎は身震いしてそんな考えをかき消した。
それにマシと一緒と言うのは心強い面の方が遥かに大きい。しかし、
「ねぇ、マシ?」
さっきからマシは殆ど喋ってくれない。ずっと何か考えているようだ。
きっと脱出の方法を考えているんだろうと邪魔しないようにしていた。
ちなみに武器はマシが和風の短い刃物、いわゆるドスと言うヤツだ。
自分は拳銃、確かロシア製のトカレフと言う銃だろう。
(まいったな…これ確か命中率悪いんだよな……ま、刃物よりましか…)
そんな考えを巡らせていると、ふとマシがこちらを向いた。
「マシ、今何か良い案浮かんだんだ…!!!?」
聞いた鮎崎に返ってきたマシの答えはドスの切っ先だった。
いきなりの事にドスを腹部に突き立てたまま、鮎崎は一言も発せず絶命した。
マシが鮎崎の手からトカレフを取ろうとしていた時、急にマシの意識は途絶えた。
マシの背後には今の一撃で血まみれになった金属バットを持ったゆきのふが立っている。
ゆきのふはただにっこりと笑うともう一度マシにトドメを刺し二人の武器を回収して去って行った。
死亡:鮎崎はまみ、マシ
[1日目午後6時過ぎ:体育館] 投
夕方6時の放送の後、本家なぐとよいよは体育館にいた。後発組のため勿論両者は首輪をしている。
「なぐさぁ…やっぱりやってるんだなぁ、殺し合い…」
よいよが寂しそうに呟いた。
「みたいだなぁ…よいよ……」
答えたなぐはじっと体育館の天井を見つめていた。
なぐの武器は闘魂鎚となどと書かれたピコピコハンマー、
そしてよいよは手錠だった。中身を知っていて渡したとしか思えない。
2人は古参固定として有名だった。
「古き良きラウンジ」を知る者として。
現在はあまり表に姿を出すことはなく、2人は懐かしい顔の再開に思わず顔をほころばせていた。
その時、カツ、カツ、カツと靴の音がして、入り口から人影が迫ってくるのが分かった。
外で様子を窺っていた山田だった。
「いや懐かしい顔を見せてもらいましたよ。…でも何でここにいるんスか?」
−−−−−事情を聞いた山田はややオーバーな位のリアクションを見せた。
「はー、そりゃヒドい!いくらあのヒトらしいっつっても、ねえ!?つうことは後発組はお二人の他に…」
そこまで聞いた所でそれまで殆ど喋らなかったよいよが口を開く。
「情報収集はもうそれくらいでいいか?山田。」
山田は完全に図星を突かれた驚きに思わずかなりの動揺を表に出してしまった。
「はっ!?なっな、何言ってんですか!!」
「そんなに驚くな。大体仕草がオーバーになってるのは何か企んでる証拠だからな。それに別に俺達はお前をどうこうする気も無い。」
よいよの言葉になぐが続けた。
「それと左耳に血がついてるぞ。お前からは見えんかったんだろうがな。」
既に山田の顔から驚きの表情は消え、ponと餅を殺したときの顔になっていた。
冷徹な殺人鬼の顔に。
山田の眼光は先刻までと一変し、殺意が感情を塗り潰して行く様がありありと表れていた。
なぐに指摘された耳を触りながら、口元にだけわずかな笑みを浮かべ二人に話し掛ける。
「ったく、まいったなぁ。ま、そこまで分かってるって事は、オレがこれから何するかも分かってんでしょう?
こんな冷静なヒト初めてですよ…餅やponだってビビりまくってたのになぁ。
やっぱ解散して一つ吹っ切れた人間は死んだも同然って事なんですかね?」
二人は何も答えない。そして山田は膝を少し気にしながら立ち上がり、
腰の拳銃を抜いてまずなぐに向けた。当然表情に躊躇(ためら)いの色は無い。
そして引き金にかけた指に力を込めた時、山田が今までに見た以上に優しい顔でなぐは言った。
「生き残って、残りの人生大事に使えよ?」
山田の目が大きく見開かれるのと銃声が響くのはほぼ同時だった。
続けて、かすかに震えながら山田はよいよに銃口を向ける。
よいよもなぐの方を全く見ずにその大きな顔に負けない大きな笑みを山田に向けた。
「色々言うヤツはいるかも知れんが、お前はラウンジの未来を担ってるんだからな。」
再び銃声が鳴り、体育館中に大きく反響した。
山田は震えていた。二人への尊敬の念が、ゲームが始まった時捨てたと思っていた今までの多くの思いが
一気に頭の中に流れ込み、大粒の涙をこぼしていた。
膝がガクガクする。今にも地面に膝をついてしまいそうになる。しかし堪えた。
ここで膝をつくともう誰も殺せなくなる気がしたから。
数分後、シャツの胸をきつく握り締め息を落ち着かせた山田は、
もう二人の姿を見ることもなく体育館の扉へ向かった。
二人の男たちの最後で最期の想いが残るこの場所に思い出を置き去り、山田は戦場へと帰っていった。
死亡:本家なぐ、よいよ
[1日目午後7時過ぎ:高校校舎屋上]
「ボン」
屋上から街を見渡していた東金は少々驚いた。
「マジ!?爆弾か…?こっちは銃。話にならねえよ。」
約1キロほど先に見えるホビーショップが一瞬にして助教授とじょかの屍とともに消え去った。
「ポリタンクの奴はヤバイ。今、会っちゃあマズいな。」
東金は見ていた。爆発する前の店からポリタンクが出てくるところを。
もともと要注意人物の中に挙げていたポリタンクだったが、まさか本当にやってしまっているとは…。
「ま、私も人の事は言えないけどね…。」
東金は先ほどにっくを撃った時の感触を思い出していた。
「あー、早くこんなトコ脱出してバイク乗りたいなぁー。」
東金に罪悪感はなかった。出発の時点で割り切っていた。「殺しも仕方ない」と。
「それにしても誰も出歩いてないな。」
金網際から東金は街を見渡した。
この日、ここから東金が見た人間は先ほどのポリタンクと、自分自身で始末したにっくだけだった。
「ったく、もっと動いてもらわないと早く終わんないじゃん。」
東金は漁夫の利を狙っていた。
自分を除いた最後の2人が闘いあった後、残ったほうを殺って自分が優勝しようと考えていた。
「こっちから出向いて2・3人殺ってこようかな?」
このままこんな状況が何日も続いてはたまらない。そう思った東金がゆっくりと振り返ったその時。
いたのだ…そこに…あの男が。
そう、このゲームのA級戦犯とも言えるポリタンクが。
「マジ…。」
東金は軽く舌打ちをした後、こう言い放った。
「久しぶりだね。ポリタンクさん。」
ニヤリと笑うポリタンクがこわばった表情の東金を楽しんでいるかのように話す。
「あなた、暑くないんすか?こんなとこにいて。」
絶対に心配などしてくれているわけがない。
(なにか隠してるの?)
見た限りでは手に持っているのはジュースの缶だけだった。
(まさか爆弾じゃないよな。)
先ほどの爆発のことでつんくはポリタンクの武器は爆弾なのでは?と考えていた。
「ポリタンクでしょ?さっきあのホビーショップやったの。」
東金は既にやる気だった。
この男がただの話し合いだけで終わらせるはずがないことを分かっていたから。
「ん、バレてました?助教授さんとじょかですよ。良かったッスね。生き延びる確率増えたじゃないか。」
ポリタンクは淡々と話した。余裕の笑みを浮かべながら。
(やっぱり…。)
東金は後ろに持っていた銃の引き金に手をかけた。
「実は、私も今さっきにっくをやったばっかりなんだよ。」
そんでその隣で弥市が死んでたんだけどそれもやっぱりお前の仕業か?」
「……いえ……弥市は私じゃないよ。誰か他にやる気になってる人が犯人じゃないの?」
「………ウソつくんじゃねえ……どうせあれもお前なんだろ!!!!」
東金はポリタンクの胸を目掛けて3発、丁寧に銃弾を放った。
ポリタンクの身体が衝撃に大きく揺れ、およそ3メートル後ろに吹き飛ばされた。
「案外あっけないモンだ…。ま、こいつも人間だからね。」
東金が星が散りばめられた夜空にむかって大きく息をついた。
「おっと、武器貰っとかなきゃね。」
東金が空からゆっくりと視線を下ろした瞬間、意識は途絶えた。
「甘いね。やっぱり賢くないわ、あんた。ま、射撃の腕だけは認めてあげるわ。」
ポリタンクが頭を真紅に染め倒れた東金の掌から銃をもぎ取り、こう囁いた。
「これ飲みなよ。学校の水道水…マズいだろ?」
冷たい表情のポリタンクは再び歩き出した。
死亡:東金道妄想愚連隊
[1日目午後11時頃:不動産業者事務所]
富士は走っていた。恐怖のあまり目に涙を溜め、鼻水を垂らし、歯を食いしばりながら。
見てしまったのだ。彼が最も見たくなかったものを。
隠れ場所が立ち入り禁止区域に指定され、仕方なく入り込んだ路地裏にそれはあった。
月明かりに照らされたあまりに無残に変わり果てた純愛ぷにっ子☆ミルクタン(以下純ぷに)の姿だった。
両腕両足に各々10本程、アクセサリーと言うにはあまりにも無理のあるボウガンの矢が、
激しく自己主張するかのように突き立っていた。さらに前歯が何本も折られており口からも大量に出血している。
そして何よりこんな無残な姿にもかかわらず純ぷにがまだ生きている事が富士に大きな衝撃を与えた。
もう手遅れではあったが。
「…ころして……ころして…ころして……」
純ぷにはその言葉だけを流す壊れたテープレコーダーのようになっていた。
銃声は聞こえても、放送で死亡者を挙げられても心の何処かで信じていたのに。人が人を殺す訳が無いと。
だが純ぷにの身体は、皮肉にも自身の言葉以上の説得力で富士に現実を見せつけた。
「誰がこんな事を・・・・」
富士は逃げ出した。純ぷにを助けることも周りも気にすることもせず一心不乱に。
早くそこから少しでも遠くへ行きたかった。
今、富士は不動産業者の事務所にいる。散々逃げ回り疲れきったせいで逆に多少冷静になり、
追跡者を恐れてここに逃げ込んだのだった。
富士は後悔していた。恐怖に我を忘れ走り回った事は自分にとって大きすぎるマイナスだった。
(せめて夜明けまで誰も来ないでくれ!!神様、お願いします!!!!)
そんな富士を嘲笑うかのように事務所のドアがゆっくりと開かれる。
恐れおののく富士には、それがさらにゆっくりに見えた。そしてドアが音を立てず閉じられた。
姿勢を低くして侵入してきたらしく、机の陰に隠れ誰が入って来たのか見ることも出来ない。
もう富士の心臓は張り裂けそうだった。いっそのこと殺されてしまおうかなどと考えてしまう。
「おい、おい富士!いるんだろ?」
突然かけられた声に驚き、富士は悲鳴を上げそうになってしまった。
「オレは敵じゃないって!」
声の主はエナイだった。
エナイは富士を追いかけていた。ある目的に富士を誘うためだった。
いささか早計とも思えたが、さっき見かけた富士の必死に走る様から少なくとも
積極的に殺し合いに参加しているようには見えなかった。だからこそ誘おうと思ったのだ。
(だが冷静な状況判断が出来る状態でも無さそうだ。)
そう考え、用心して姿勢を下げ、富士が入っていった事務所に踏み込んだ。
やはり富士は見当たらない。仕方なく思い切って呼びかけた。
「おい、おい富士!いるんだろ?…オレは敵じゃないって!」
奥の方から微かに物音が聞こえた。だが出てこない。
仕方なく、もしも事態の為に銃を懐から取り出した。
偶然拾った銃はニューナンブ、日本の警察官に配備される銃だが性能は良くない。
しかもこの銃には厄介な事情もあった。
銃を構えもう一度声をかける。
「富士、オレは何もしないって!出てきてくれよ!」
少し沈黙が続いた後震え上がった声が返ってきた。
「て、てて敵じゃないんなら出てってくれよ!…もういやなんだよぉ……」
「お前も死にたかないんだろ?だったら出て来いって!一緒に助かるんだよ!」
「い、嫌だ!信用できない!!どっかに行ってくれ!!」
(クソッ、埒(らち)があかない。)
エナイは仕方なく富士と接触することにした。危険だが今まで富士が攻撃してこなかった事に賭けて。
さっきまで声が聞こえていた方に移動しようとした時、いきなり目の前に富士がいた。
不意を突かれ富士に銃を向けた時、富士もエナイに銃を向けていた。
「…ビビってたワリには随分やる気だな?まさかそっちから来るとは思わなかったよ。」
少しの沈黙の後、エナイは皮肉を込めて言った。
「ち、ちが違う!こ、こっちにいるなんて…」
セミオートのベレッタをエナイに向けながら、半泣きの富士は必死で否定した。
さっきから、もう敬語を使うことも忘れている。
(失敗したな……じっとしてると思ったんだが…)
一見この状況は五分なのだが、エナイにとってはそうではなかった。
何故ならエナイの銃は『撃てない』からだ。
そう、拾った銃とは、使えないという理由でポリタンクが捨てたものだったのだ。
エナイはもう覚悟を決めていた。富士の様子からして、今にも緊張に耐え切れず発砲するだろう。
それ程富士は怯えきっていた。
(山崎、サトポン、スマン。富士も助けてやりたかったんだが…まさかこっちがやられるとはな……)
また沈黙が続いた。富士はずっと震えている。今なら銃を取り上げられそうな気さえする。
だが迂闊に動けばそれが発砲の引き金にもなりかねない。エナイは仕方なくもう一度説得を試みた。
「撃つんなら早く撃て。無理ならさっさと銃を下ろせ。オレは撃ちたくないんだって!」
エナイに強く言われ、目に溜まっていた涙をこぼしながら、富士は身体をよりいっそう震わせ叫んだ。
「もういいよ!撃つんなら撃てよ!!オレのは『何とかシステム』のせいで弾が無ぇんだよぉ!!!」
どうやらエナイを全く信じていないらしい。その台詞を聞いたエナイは思わず大笑いした。
そして呆気にとられている富士に、手にしたニューナンブを放り投げて言った。
「引き金動かねぇだろ?オレも撃てねぇんだって。それニセモノだから。」
[1日目午後11時半:運送業者倉庫]
まださっきまでのショックを引きずっている富士を連れて、
エナイは隠れ場所の運送業者の倉庫に戻って来た。そこにはさすけとギャ乱DOがいた。
これで何とかラウンジャーが4人揃ったわけだ。さすけが話し掛けてくる。
「あ、お帰りエナイ。富士見つけたか?」
「まぁ色々あったけどな、あっはっはっはっ。」
明るく答えるエナイを見て富士は申し訳無さそうにうつむいた。
エナイはそれを見て元気付けるように富士の肩を叩いた。
「気にすんなって。あの状況じゃしょうがないって。それよりお前さっき何か見たんじゃないのか?」
外に気付かれないようカーテンに暗幕を貼り付け白熱灯に照らされた倉庫の中で、
3人は富士の話を聞いた。聞き終わった後、まずギャ乱DOが口を開いた。
「富士、本当に純ぷにだったのか?見間違いじゃないのか?」
「たぶん…ですけど自信は…」
富士の声を遮り、ゲームの参加者全員が聞き慣れた音楽が聞こえてきた。
『ちんこ音頭』だ。時間は深夜12時。(どうやら定期放送のようだった。)
ひろゆきは事も無げに続けた。
『えーもう多くのヤツが気付いてるとは思うが、
今回は参加者リストにもれていた現役固定、あと特別に現在余り見かけない元固定なんかにも
何人か途中参加してもらった。が、あーもう殆ど死んでます。え、なに?純ぷにが今死んだ?
いやーみんな良く頑張ってるね!参加人数が過去最大なんで正直ちょっと心配だったんだけど。
今のペースを維持して是非!これからも頑張ってくれ。
では恒例の脱落者の発表を行う、が多いな今回は。じゃあ、いくぞーっ!!、にっく、弥市の2人ーッ、
東金ーッ、原ーッ、マーカーーッ…あー疲れた。夜勤、ちょっと代わって。』
ひろゆきの態度はどこまでも参加者を馬鹿にしている。代わりに夜勤が放送を続けた。
『えー続けて、じょか、助教授、純ぷに。そして今日一日の途中参加での脱落者。
鮎崎、マシ、よいよ、本家なぐ。以上です。』そして再び声がひろゆきに変わった。
『さっきも言ったがみんな本当によく殺ってるな!このままなら3日目になる前に終りかねない位だ。
出来れば最終日まで頑張って欲しいんだがな。まぁそこまで贅沢言わんから頑張ってくれ!!
では2日目もみんなの活躍を祈ってるぞーーー!!!』
…今まででも最悪の放送が終わった。
沈黙。死亡した人物とその数の余りの多さに4人ともしばらく何もすることが出来なかった。
[1日目午後11時過ぎ:商店街路上]
冴々とした月が、見慣れた筈のこの街を別世界の様に照らし出す。
人々の生活音を失った不自然な静寂の中、引き摺るような自分の足音だけが、誰も居ない路上で虚ろに響いている。
然して宛もなく彷徨っていた。
負傷した右眼が疼いて、じっとして居られないのもあったが、それよりも沸き上がる怒りの方が手に負えなかった。
―――何故、俺がこんな目に合わなければならないんだ?
最初はその疑問だけがグルグルと頭の中で渦巻いていた。
しかし、見慣れた連中の無惨な姿を見る度に、まだ始まったばかりのこの悪夢が確かに現実のもので、
自分の末路を否が応にも考えさせる内に…疑問は怒りに変わった。
自分が捨て駒の一つでしかない事は明白だ。それは現在までのラウンジからの扱いで知れている。
適当な位置で妥協してしまった自分も悪いのだが、相応の働きはしてきたつもりだ。
だが今回は生死が掛かっている。数年に一度、別人のような働き振りを見せると定評があったが、
現在こそ正にその時だと確信し、この殺人ゲームに乗る事を決めた。
決めたのはいいが…まだ、誰も完全には仕留めていない。
最初にバーで襲撃した二人組。一人には重傷を負わせる事に成功したが、もう一人に右眼を潰された。
激痛と激怒に苛まれながら次の獲物を探している時に見付けた、裏路地で無防備に眠り転けるネカマ。
ネカマは全くの無抵抗で、理不尽に嬲り続ける自分に向かって、ヒィヒィと泣き喚きながら
「助けてくれ、許してくれ」と懇願し続けたが10分もすると「殺してくれ」と言い始めたので、
そのまま留めも刺さずに放り出して来た。
昂る激情は鎮まる処か、逆に沸点を越えて精神すら蝕んでいく。
独特のアクセントを持つ言葉は、普段なら抑制出来た不満を呪詛の様に紡いでいた。
「どいつもこいつも人の事、馬鹿にしやがって…」
嘲笑と紙一重で皆に言われ続けた沢山の言葉を一つ一つ思い出す。
「俺には俺のペースがあるんだ…」
自分の事をとやかく言い続けた奴らの顏が浮かぶ。
「ヒモ止めろだの仕事しろだの、存在自体がウザイんだからレス位は控えめにしろだの…」
特に宛も無かったので、誰か人を探してみる気になった。探し当てた処で、どうしたいのかは判らない。
鬱積した不満を打ち撒き、そいつを狩るのも悪く無い。
逆に利用するだけ利用して、最後に俺が美味しい所を持っていくのも良い。
理由はどうであれ、こんな状況でも誰かに逢いたいと思える自分が嬉しかった。
―――とにかく探してみよう。どうするかは逢ってから決めればいい。
ふと周囲を見渡せば、奴が行きつけだと言っていたホビーショップの近くだった。
いろんな物が調達できる。誰かショップに足を運んだ可能性は高い。
「…行ってみるか」
鉛の様に重かった足が、急に軽くなる。
念の為、手に持ったボウガンと残り少なくなった矢を点検し、道程を急ぎ始めた。
[二日目午前0時過ぎ]
びーらぶど大佐は今高校に来ている。弥市とにっくが眠るあの高校だった。
大佐はその冷静に物事を判断しそうな雰囲気に似合わず、もう心底まで震え上がっていた。
だがそれも仕方が無いと言えるのかも知れない。何故なら彼の雰囲気は生来の小心さを
隠すために創り上げられた鎧と言える物だったからだ。
加えて彼には運が無かった。最初はこの「プログラム」の対象者では無かったにも拘わらず、
ひろゆきの突発的な思い付きに巻き込まれた。そして組まされたのが純ぷにだった。
おまけに武器は銃だと喜んだがマガジンが付けられないではないか!
つまり魔の『とっかえだまシステム』にまで大当たりしてしまったのだ。
さらに開店寿司にいっち、そして街を歩けば256、餅、マーカー、ななーし
トドメにここで弥市、にっくと最も多くの死体を見てしまっていた。
ただ、余りの弱腰に苛ついて喧嘩別れした純ぷにの死体だけは、見ていなかった。
「あそこで別れて良かったんだ」
冷静にそう判断を下す。
「死にたくない」
正直気も狂わんばかりであったが、生への執着がギリギリ神経を保たせていた。
その細りきった精神を振り絞って彼はこの高校に隠れることにしたのだった。
(死体を見れば普通こんなところにいたいと思わないだろう。)
しかし校舎内はもう嫌だった。そこで妥協案として高校の図書室を選んだ。鍵は開いていた。
[実は街にはわざと施錠されていない建物がいくつもある。ここの図書館もその一つだ。
ちなみにこれはひろゆき(と言うより夜勤)の提案であった。勿論、ゲームを盛り上げるために。]
大佐は用心深くいくつかの扉を開け中に入って行き、内部に着くと図書館独特の空気の中で
安堵のため息をついた。しかし、銃声が二度図書館中に響くのはそれとほぼ同時だった。
撃ったのはカウンターに隠れていたゆきのふ。
その後ゆきのふは大佐の亡骸に一瞥もくれず、ある本に目を戻した。
その本を照らす光は、東金が探し忘れていたにっくのレーダーの物だった。
レーダーは調べ物をするゆきのふと何をする必要も無くなった大佐の存在を無機質に知らせていた。
死亡:びーらぶど大佐
(´-`).。oO(
>>1さんがんがってね・・・
読ませてもらたよ・・・ううう・・・がんがれ!
272 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 16:49 ID:???
あと2,3人枠が開いてるので、載せて欲しい人は言って下さい。
お××い、イパーイさんは入れました。
じゃぁ俺を改造手術して復活させてやってください
もうちょっとまともに殺してください
これまでで一番扱い酷くね?
文句ばっかりいってますけど頑張ってください
病床から応援しています
寒敗だして、すぐ情けなく頃して下さい。
>>248 違和感なく、挿入。さんきゅー
>>ラウンジウォッチャー
有りがたい話だ、これで孫にも自慢が出来るよ?
楽しみにしてます、頑張ってください
SMをぜひ
オルテガは?
山崎と友達だったり、泣いたり、弾がなかったり色々大変だな俺
ヒスタッチオ入れてほすぃ…。
256がすげえかっこよくなってる・・・
[2日目午前0時30分頃:住宅街]
疲れ果てて重くなった身体を引き摺るように、住宅街を歩く。
さすがのポリタンクとて、幾度もの戦いをくぐり抜けたせいでかなりの疲労が溜まっていた。
どこでもいい。とにかく誰にも見つからない場所で休息を取りたい…。
そんな事を思いつつフラフラさまよい歩いていると、一軒の家から何やら女の歌声が聞こえてきた。
…ポリタンクは、音のする方へ向かった。
そっと家の門を開き、音が聞こえてくる庭を覗いて見ると…縁側に誰かが座って鼻歌を歌っていた。
「…うに!?」
「ポリタンク」
「…うに、こんな所で何やってんだよ?」
「ん〜?別に」
うにはのほほんとそう答えると、傍らに置いてあるコーヒーカップに手を伸ばした。。
「…何もこんな時に…お前何してるんだよ・・・」
「だってさ〜、何か知らんけどいきなり連れ去られてさあ、こんな荷物持たされて
『殺し合いして下さい』とか言われて。最初はサエコと一緒だったんだけど
『こんなの理不尽だ!ゲームに乗らない奴を集めよう』って事になってさ。
落ち合う場所だけ決めてさ、とりあえず別行動取ったわけよ。
んで、いろいろ探し回ってみたんだけど誰にも会えなかった。
公園の植え込みの中とか多摩川の土手とかウロウロしてたら、疲れちゃって。
んで『住宅地なら何かあるかな』って思ってさあ…」
…うにの返答に、ポリタンクは呆れて何も言えなかった。
それに気付かないのか、うには言葉を続けた。
「まあ、朝までまだ時間もあるし、幸いこの辺りには誰もいないみたいだから
今夜はここに隠れて、朝になったらまた誰か探しに行こうかなって考えてたわけ」
「隠れてって…お前の歌声思いっきり道まで聞こえてたぞ」
「えっ!?まあ、誰もいないんやしいーんじゃないの?ハハハッ」
(おいおい、現に俺がここにいるし、俺じゃなかったらどうする気だったんだよ…)
呑気に笑ううにを見て、呆れまくるポリタンクだった。
ポリタンクは迷っていた。この女を殺すべきかどうか。
女だからという理由ではない。この状況下、殺すか、殺されるかだ。
現に東金の時はあんなにアッサリ殺すことが出来た。
ポリタンクが戸惑う理由は、うにに全く殺意が感じられない事だった。
「まあ、そんな所に突っ立ってないでこっち来て座れば?」
うにはチョイチョイと手招きをした。
ポリタンクは大人しくそれに従って、うにの横に腰掛けた。
「…うに、本当に誰にも会わなかったか?」
「ん〜…あ、二回だけ遭遇した。まあ一回目は……大した話じゃなかったけど…二回目、あれは多分オルテガ」
「多分て…姿は見てないのか?」
「ああ。後ろからこう、首に何か飛んできてさあ。チクって刺さったの。
『痛っ』って思ったら気が遠くなって…その時『あっ、女性か!ゴメンっ!』って声がしたんだ。
その声、どう考えてもオルテガだったんだけど…」
そう言って、ほれココだよ、とうにはポリタンクに「何か」が刺さった場所を見せた。
「…で、何でうに無事だった?気が遠くなったんだろ?」
「いや〜、よくわかんないけどさあ、刺さった矢みたいなのに薬が塗ってあったみたいでさあ。
どうやらそれって毒とかじゃなくて睡眠薬やったみたいなの。オルテガ
、気付いてないんだろうなあ。
しばらくしたら、目が覚めて。や〜、命拾いしたわ〜。私ってツイてるよなあ。アハハッ」
おそらく、武器を用意した時に誰かが間違えて薬を入れたのだろう。
うには本当にツイていた。オルテガは逆にツイていなかったが…。
「笑ってる場合じゃないだろ!?オルテガに襲われたんだろう?
同じラウンジャーに襲われて…ショックじゃないのか!?」
およそポリタンクらしからぬ言葉が、ポリタンクの口から吐き出された。
「ん〜…ま、仕方ないんじゃない?オルテガだって生き残りたいだろうし。
ゲームに乗るか、私みたいに仲間を探して…って、まだ誰にも会ってないけどさ
ゲームに乗らずに抵抗するか、どっちかしかないわけだし」
うには何か達観したような顔つきでそう呟いた。
実際うには何かを達観していた。
誰も殺さず、誰からも殺されずにこのゲームをくぐり抜けることこそが、自分のとるべき唯一の対抗手段だと悟っていた。
「それに…あんたやってゲームに乗ったクチでしょう?だったらオルテガの気持ちもわかるでしょ?」
「え……」
図星を突かれたポリタンクは、言葉を失いうつむいた。
「見りゃわかるって。その格好…シャツに着いてるのは、誰かの血でしょ?
それに火薬みたいな臭いもするし。拳銃か何か使ったんでしょ。
穴があいてるのは…誰かに撃たれたんでしょ?あんた、よく無事だったなあ」
相変わらずの呑気な口調で葵はそう語りながら、ポリタンクの胸の辺りをペシペシと叩いた。
「…あ、下に何か着てる〜。あんた、大したタマだね。スゴイなあ」
「……うに、俺を責めないのか?」
ポリタンクはうつむいたまま、振り絞るような、小さな声でうにに問いかけた。
「だからさっきも言ったでしょ?仕方ないって」
うにはポリタンクの方に向き直り、言葉を続けた。
「ポリタンクは戦って生き残る方を選んだ。私は戦わずに生き残る方を選んだ。
人それぞれでしょ。それとポリタンク…今私を殺る気、ないでしょう?」
再び図星を付かれ驚いたポリタンクは、顔を上げてうにの方を見た。
「何つーか、殺気がないなぁ…今のポリタンク。違う?」
「…ああ、そうだ。今の俺にはお前を殺るなんて…出来ない。」
「何で?今私を殺れば、一人減ってポリタンクも有利になるでしょう?」
「いや…俺は…。また・・・・」
そう言うとポリタンクは、自分の手に目を落とした。
手をグッと握り締めると、あの時の感触がまた蘇ってきた。
「またって…誰の事?良かったら話してみれば」
うににそう促されて、ポリタンクは256との事を話した。
この手で、友人を刺し殺した…その感触が未だにポリタンクを苦しめていた。
「そうなの…私には256の気持ち、わかるなあ」
「え…?」
「だってさぁ、どうせなら『ごめん』って思って殺される方がマシだと思う。
何も考えずになぶり殺しにされるくらいなら、その方がいい。
私も、オルテガにやられた時…そう思った。『ゴメン』ってオルテガ、言ってたし。
『ああ、オルテガなら…こんな人に殺られるなら本望だ』って、あの時思った」
ポリタンクはただ呆然として葵の言葉を聞いていた。
「だから…私、あんたにだっら殺されても良いよ。殺りたければ殺れば?今、ここで。
あんたに殺られて…あんたが生き残るなら、私は構わない」
うにはポリタンクの目を見て、キッパリと言った。
「な…何言ってんの!?俺には出来ないって!それに…俺、生き残る価値なんて…」
ポリタンクはうにの言葉に驚き、声をあげた。
「いや、あんたは生き残らなきゃいけない…それに、他の人に会ったらその人を殺るんでしょう?」
「………そうだ」
「そうか…じゃあ、ここでお別れ。早く行って」
うには厳しくも優しい口調でポリタンクに言った。
「私は誰も殺らない。殺らないで済むならそうしたい。でも、ポリタンクにも生き延びてほしい。
あんたが私を殺ってあんたが生き残るなら、私はそれでも構わない。
だけどあんたは私を殺れないって言うし…一緒にいても仕方ないっしょ。
あんたはあんたの信じた道を行きなよ…私は私の信じた道を行くわ。たとえ間違っていたとしても、」
うにの言葉が、ポリタンクの胸に突き刺さる。
自分の信じた道…間違っていたとしても、引き返す事は出来ない。
「…わかった。…元気でな」
ポリタンクはそう呟いて立ち上がった。
「おう!…この状況でお元気でってのもアレだけど」
うにはそう言って苦笑した。
「ポリタンク……死んだらダメだよ。生き残って、また2chやりなよ。私もそのつもりだから」
「うに…」
こんな時に…。・・・・ポリタンクは少し辛かった。
「…ああ。必ずな!」
ポリタンクはうにに笑いかけると、うにに背を向けて歩き出した。
道へ出ても、振り向く事はなかった。
それが…うにの命取りとなった。
ポリタンクが家から離れたのを物陰から確認する人影が一つ…何やら荷物を抱えたゆきのふだった。
ゆきのふは他に人がいないのを確認すると、うにのいる家の裏口へとまわった。
「まさかこんなに早く実験できるとはなあ」
ゆきのふは嬉々としてそう呟くと、音を立てないように勝手口のドアを開けた。
荷物をそっと下ろし、台所へ上がりこむ。
忍び足でうにのいる縁側の方へと近付き、様子をうかがった。
その時うには、じっと考え込んでいる最中だった。
ゆきのふはすうっと目を細め、銃を構えた。
パンッパンッパンッ
銃は胸と腕を突き抜けた。
「・・・・・!!!」
言葉にならない叫び声と共に、ゆっくりうにが振り向いた。
「ゆき・・・・」
霞む視界にぼんやりと映ったのは、ニヤニヤと笑うゆきのふの姿だった。
ゆっくりと視界がフェードアウトする。
倒れたうにが動かないのを確認すると、ゆきのふは正面の門を通って道路へと出た。
そして再び荷物を漁り、数本のビール瓶を取り出した。
瓶の中には液体が7割ほど入っていて、口からは布が数センチ伸びていた。
火炎瓶――――びーらぶど大佐を殺ったあの図書室で、作り方を調べて用意したものだった。
「高校の図書室に、あんな物騒な本置いといていいのかねえ…
私が教師だったら、絶対にあんな本入れさせねえのになあ」
その本があったおかげで火炎瓶が作れた事を棚に上げて、ゆきのふは呟いた。
そして瓶を軽く振って布に火を着け、垣根越しにうにのいる家に向かって投げ込んだ。
ガチャン!ボンッッッ!
「おおっ、火ぃ着いたかあ…おもしろいなぁ。もっと投げてみようっと」
ゆきのふは次々に火の着いた瓶を投げ込んだ。
ガチャン!ガチャン!ガチャン!ボンッ…ボボボボボボ…
どうやら家自体にも火が着いたらしく、垣根越しにも伝わってくるほどに火の勢いは増していった。
「ふーん…やっぱり危険だな、火炎瓶は…」
ゆきのふはそう呟くと、メモを取り出して「火炎瓶・数本で居住物に着火可能…」などと書き込んだ。
「高校の図書室に、あんな物騒な本置いといていいのかねえ…
私が教師だったら、絶対にあんな本入れさせねえのになあ」
その本があったおかげで火炎瓶が作れた事を棚に上げて、ゆきのふは呟いた。
そして瓶を軽く振って布に火を着け、垣根越しにうにのいる家に向かって投げ込んだ。
ガチャン!ボンッッッ!
「おおっ、火ぃ着いたかあ…おもしろいなぁ。もっと投げてみようっと」
ゆきのふは次々に火の着いた瓶を投げ込んだ。
ガチャン!ガチャン!ガチャン!ボンッ…ボボボボボボ…
どうやら家自体にも火が着いたらしく、垣根越しにも伝わってくるほどに火の勢いは増していった。
「ふーん…やっぱり危険だな、火炎瓶は…」
ゆきのふはそう呟くと、メモを取り出して「火炎瓶・数本で居住物に着火可能…」などと書き込んだ。
ポリタンクは、うにに会う前よりも疲れていた。そして、動揺していた。
うにがこのゲームに参加しているなんて思いもしなかったから、驚いた。
当のうには呑気にしていて…いつもと変わらぬうにだった。
自分の取った行動を否定もせず、しかも「殺りたければ殺りなよ。今、ここで」などと自分に言ってきた。
わからない………己の命を差し出してまで、自分に生き残れと言う。
「あんたに殺られてあんたが生き残るなら、本望だ」なんて…256…うに…二人とも「生き残れ」と自分に言った。
「………俺は、そんなに価値のある人間なんかじゃ…価値のある固定なんかじゃないのに」
ポリタンクは、戸惑っていた。どうしていいのか、わからなくなっていた。
力なく、トボトボと身体を引き摺るようにうつむいて歩いていた。
すると、急に足元が明るくなり自分の影がハッキリと、昼間のように浮かび上がった。
「え…」
ふと振り返ると、一軒の家が燃えていた…さっきまでいた、うにの潜む家だった。
「―――――うにっ!!!」
ポリタンクは一目散に燃え上がる家へと駆け出していった。
ポリタンクが家までたどり着いた時、ゆきのふは燃え盛る火をニヤつきながら見つめていた。
「ゆきのふ?何やってんの、お前?」
ゆきのふ………がなぜここに?なぜ火を見て笑っている?
「ああ、ポリタンク…戻ってきちゃったのかあ」
ゆきのふはニヤついたままポリタンクを見て呟いた。
「戻ってきちゃったって…お前、まさかこの火事…」
「ああ、実験だよ、実験。火炎瓶のね。
ほら、今年ワールドカップがあるでしょ?フーリガンが火炎瓶使うかもしれないからさあ。
どれぐらいの威力なのか確かめておかないとね」
ゆきのふは事もなげにサラリと言った。
「…中にうにがいるんだぞ!お前、まさか…」
「あー、ついでにね、人が燃えちゃうとどうなるのかなー?って、それも確かめようと思って。
うにさんには悪いけど、実験台になってもらった。今ごろ中で燃えてるんじゃないかな?」
表情一つ変えずに言ってのけるゆきのふに、ポリタンクはこのゲーム始まって以来の、心の底からの殺意を覚えた。
「実験だとぉ…ゆきのふっ!ふざけた事言いやがって!」
もうこんな奴は人間なんかじゃない!ポリタンクはゆきのふに向けて拳銃を構えた。
「おっと、私と戦ってる暇なんてないんじゃないの?
早くしないと、うにさん焼け死んじゃうぞ〜。いいのかな〜?」
ニヤニヤといやらしい下品な笑みを浮かべ、ゆきのふは言った。
「眠ってるみたいだったから、もう逃げられないんじゃない?」
「…くっそーっ!」
ポリタンクは拳銃を下ろしゆきのふを睨みつけ、すぐに踵を返してうにのいる家へと飛び込んでいった。
「さ〜て、と…これで救助のデータも取れるかな?」
ゆきのふはそう言うと、再びメモを取り出した。
「・・・・眠ってるみたいに、死んでるよ」
くすりとゆきのふが薄笑いを浮かべた。
ポリタンクはさっきいた庭先へと向かった。が、そこは既に火の海と化していた。
「くそっ…こっちはダメか」
ならばと玄関へ戻り、ドアを開けようとしたが…鍵がかかっていて開かなかった。
ポリタンクは拳銃を取り出し、ドアノブに銃弾を撃ち込んで壊した。
そして何とかドアを開け、家の中へ飛び込み居間へと向かった。
「うに!」
うにが居間に転がっていた。
火の手は縁側を燃やし尽くして、部屋の中まで広がり始めていた。
「うに!うに!」
ポリタンクはうにの肩を持って揺すった。だが、うには意識を取り戻さなかった。
「うに、大丈夫かっ!」
その時、ポリタンクは、血に染まったうにの体に、やっと気が付いた。
「うに・・・」
うには既に絶命していた。まるで眠っているかのように。苦しみのない表情だった。
「うにぃぃぃぃ!!!!!!」
ポリタンクは絶叫した。ゆきのふに撃たれたのは明白だった。
どうしょうもない悲しみがポリタンクを包んだ。
「ちきしょう!!ちきしょう!!」
ポリタンクは何度も床を叩いた。
ジリジリと背中に熱を感じて、ポリタンクは我に返った。
居間の半分以上が炎に包まれている。早く逃げないと巻き込まれてしまう――――。
ポリタンクは、うにの亡骸を担ぎ上げた。。
「生き延びろ」…うにの最後のアドバイス。
「うに…全てが終わったら、ちゃんと墓立てるから…待っててくれ」
ポリタンクはそう呟いた。
玄関側は、もう既に火の海だった。だが幸いな事に勝手口側はまだ火の手が上がってなかった。
そこから脱出し、正面へとまわる。 そこにゆきのふが待ってるはずだった。
「ゆきのふぅぅぅぅっ!!!」
ポリタンクは叫びながら拳銃を構え、家の前へと飛び出した。
しかし、そこにゆきのふの姿はなかった。
すぐにその場を離れたらしい。
「…絶対に…絶対にゆるさねぇ…」
ポリタンクの心にふつふつと憎悪の念が沸き上がっていた。
うにの亡骸を、道路脇に寝かせると、丁寧に手を組み合わせた。
「・・・・ありがとう」
ポリタンクは泣いた。涙が止まらなかった。
ポリタンクに新しい目的が加わった。
生き残る事。そして…
「ゆきのふは、俺がこの手で殺ってやるっ!必ずだっ!」
燃え盛る炎を背に、ポリタンクは誓った。
死亡:うに
【二日目・午前3時30分】バー
このゲームは、いつ終わるのだろう?
「これは悪夢だ」
サエコはそう思いながら、グラスの酒を飲み干した。もう何倍飲んだだろう・・?もう少し飲んだら眠くなってしまいそうだ。
眠ってしまい、目が覚めた時には、こんな馬鹿げたゲームでなく、いつもの生活が待っていると思っていた。
そんな時だった。
ギィー・・・
静寂を破る音を立てたドアの向こうには寒敗ピアニッシモ(以下寒敗)が立っていた。
「サエコ・・」
「寒敗・・」
二人の間に、暫くの沈黙があった。
この状況で出会った二人は、お互いにどう振舞えばいいのか皆目見当がつかなかった。
今に至っては味方とも敵とも言えない、微妙な関係であった。
緊張が二人の間に走った。寒敗は銃を身構えると同時に、サエコは手榴弾を手にした。その時だった。
「これで3人揃ったな。」
もう一人、男が寒敗のすぐ後ろから現れた。オルテガだった。
「やっと信頼出来そうな仲間と会えた。」
オルテガの口から出た言葉で、寒敗とサエコは身構えていた銃や手榴弾を降ろした。
「なあ、そこの固定さん達・・俺と組まないか?」
「オルテガ・・信用していい仲間・・になるんですね。」
ずっと孤独だったサエコにとっては、このゲームは自分しか頼れず、信用出来る誰かを求め続けていた。
「オルテガ・・仲間と思っていいんですね。」
寒敗は思わず叫んでいた。寒敗もサエコと気持ちは同じだった。
今まで、仲間という言葉は関係ないものと思っていたが、この時は、オルテガの言うことが信用出来るような気がした。
「当たり前だ、そして仲間のために死ねるのも仲間だ。」
オルテガはサエコに向かい、銃を乱射した。
「!・・・」
寒敗はその場の光景が信じられなかった。
「そんなに驚くなよ・・と言っても、驚いてる時間もないけどな・・」
オルテガがそう言うと同時に、寒敗の身体に何発もの弾丸が打ち込まれた。
「なんで撃ったかって?まあ俺も親友に裏切られた後じゃあ誰も信用する気にはなれねえしな。
どうせ『すぐ殺されちゃうリスト』筆頭にいた君らにしたら楽に死ねた方だったろう?礼はいらないぜ…。」
二人の遺体を前にして、オルテガは誓った。
オルテガの眼は、悲しみ・・怒り・・ そして狂気に満ちていた。
死亡:サエコ、寒敗ピアニッシモ
【二日目・午前4時30分】自動車整備工場
梵銃ル(以下梵)は震えていた。
暗い自動車整備工場の片隅でひとり息を潜めていた。
早いものであれからもう1日が経過した。
水や食料を殆ど補給せず、且つ一睡もしていない彼の体は
既に限界にきていた。それでも彼は動かない。
餓死する事より他人に蹂躙・撲殺される恐怖が遥かに上回っていた
彼は立ち上がるそぶりさえ見せない。
武器が『目潰しスプレー』という事実も、確実に戦意を削ぎ落としていた。
梵は、動かない。
ガラガラガラ…深夜のガレージにシャッターの開く音がする。
梵は息を殺し身を潜める。隠れる術は覚えた、既に3回目だ…
大方、武器を探しにきたのだろう。めぼしいものは軍が全て没収済だが。
ところが4人目の来訪者は気色が違った。彼は暫く回りを見渡すと
梵とは逆の方向に向かって歩を進めだしたのだ。
…マズイ、居座るつもりか!? どうする、逃げるか戦うか、とどまるか?
様々な思案は梵の頭を混乱させる。動揺はそのまま反応に直結する。
無意味に揺れた梵の体はダンボールに触れ、雪崩減少を発生させた。
「誰だ!?」 引き裂くような絶叫が倉庫内にこだまする。
でも梵は不思議な事にその声を聞いて安心した。何だ、安心できる優しい奴だ…
自分の不運を嘆いていたが、少しは風向きが変わってきたのか?
意を決して梵は語りかけた。
「俺だよ!! お××イパーイ(以下イパーイ)、梵だよ!!」
「…梵…?」訝しげな声が闇から漏れる。
ただその後、イパーイの口から出た言葉は意外だった。心外、と言ってもよい。
「やめろ、撃つな、撃たないでくれー!!!」
「イパーイ、何言ってんだよ!! そんな事する訳ないだろう!!」
「嘘だ!! 皆、そう言って仲間を殺していくんだ!!」
…仲間、いい響きだ。自分が孤独じゃないってわかる。皆怖かったんだ…
「嘘じゃない! 本当だ! 俺は誰も殺してない! そんな事出来る訳がないだろっ!!」
問返しても返事がない。そのうち早いリズムの足音が出口方向へ流れ出した。
…見捨てるのか、イパーイ!? 俺を見捨てるのか!?
「行くな! 行かないでくれ、イパーイ! 俺をひとりにしないでくれー!!」
足音が止む。イパーイが怪訝そうに聞き返す。
「本当か? 本当に撃たないか? 信じていいのか、梵!?」
「本当だ!! 俺はずっと隠れてたんだ!! それに銃なんて持ってやしない!!」
長い間の静寂が場内を支配する。おもむろにイパーイが口を開く。
「…ずっと? あれからずっとひとりでここに?」
「恐いんだ… 殺されるのも殺すのも… 俺はそんな為にコテハンになったんじゃない!!」
暫くすると物陰から、小さい嗚咽が梵の耳に聞こえてきた。
「…イパーイ? どうした?」
「恐かった… 俺もずっと逃げ回ってた。一日中、山をうろついてたんだ…
もう嫌だ!! 何で俺達がこんな目に!! 」
梵は安心と同時に怒りを覚えた。 イパーイの言う通りだ、なぜ俺達が!!?
「イパーイ、一緒に動こう!! 二人の方が安全だ。そして皆を助けよう!!
俺達はこんな事をする為に固定で書き込みしてきた訳じゃないんだ!!」
「…信じていいのか、梵? お前を頼っていいのか!?」
「仲間だろ!! イパーイ、俺を信じてくれ!! 一緒に戦おう!!」
「…梵…」涙声と共に、足音が聞え始めた。先程とは違い近づいてくる音だ。
梵はふと興奮から冷めた。急に恐くなった。目潰しスプレーを握り直した。
「イパーイっ!! 止まれ!! こないでくれ!!」「…なんだよ、信用しろって言ったじゃないか!?」
「…いや、スマン。正直、足音が聞こえたらなぜか急に…」
イパーイの返答がない。怒らせたか?それとも逃げたのか?
「イパーイ? イパーイ!?」「…見ぃ-つけた、っと」
えっ?と思って後ろを振り返る途中だったろうか?
破裂音と共に梵の視界・嗅覚・聴覚・思考、その全てが消し飛んだ。
「…ようやく夜目に慣れたんで、ね」
先刻の涙声はいま何処? イパーイは冷たい声で遺体に語りかける。
「ごめんなー、騙しちゃったみたいで。でもほら、俺、一応アクター憧れてたりするから(笑)」
「…やっぱり飛び道具があると便利だよな。警棒、支給されたってさぁ…
でもこれ、弥市には勿体無い武器だよねぇ?」
イパーイは茶飲み話をしているかの様に、そして梵の魂が横に
あるかの様に語り続けている。
「なんかブラクラ踏んだみたいでさ。人生のブラクラかな。2chって怖いな。」
クスクス忍び笑いながら、梵のそばまで来た。「スイカ割だな、まるで」
呟きながら彼は血の海に浸かっている細長い缶を取り上げた。
瞬間、イパーイの嘲笑が静まった場内に響き渡る。
「なんだよ、目潰しスプレーって(笑) お前、武器までダメダメだな(笑)
まぁオルテガもそうだったけど。吹き矢だぜ、吹き矢!! どう戦うんだよ、一体!?
オルテガ、最後までボヤいてたなぁ… いい味出してたよなぁ」
そこまで言うと、イパーイはフッと息をつき、梵の横に腰をしゃがめた。
「一言、言っておく。 俺とお前は仲間でも友達でもない。
お前に呼び捨てされる筋合いは一切ない。2ch上だけだぜ、そんな会話」
彼は立ち上がり裾をポンポンと払う。虚空を見上げ、言葉をつなぐ。
「ひろゆきも誰もかも、大方山田とかエナイとかに生き残って欲しいんだろうけどさ
でもそこで、敢えて俺が残るっていうのも…」
再度、イパーイは視線を下に落す。 異臭の漂う中、彼は遺体に優しく微笑んだ。
「結構、小説としてはイケてるんじゃないかなぁ?」
死亡:梵銃ル
301 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 17:42 ID:???
ヒスとSM考察隊ですね。了解。
(いっちは出てて彼氏は出てないのか?)ヒソヒソ…
303 :
純ぷに:02/02/01 17:47 ID:???
寝てる間に、わたしあっけなく殺されてたにゃw
(でも楽しく読ませてもらってますよー)
>ラウンジウォッチャーさん
昨日に引き続きお疲れさまです。楽しませていただいて
感謝、感激、雨あられ!
質問いいでしょうか?、ラウンジ以外で活躍されてる
板を知りたいのです。
最近ネタに飢えてますので(^-^;)
宜しくお願いします。
けん、セブンはエナイ組と合流しそうだな。
さすけかギャ乱DOが裏切りそうだけど
こういう妄想書き込みはだめ?
2行で秋田
すげぇ、邦楽バトロワ読んでるから内容はわかっちゃうけど
色んなコテハンが登場するのが(・∀・)イイ!!
ラウンジの固定で、ラウンジウォッチャーさん以外に
ネタ書き職人はいるの?
居たらスレのアドレスきぼーん!
【二日目・午前4時45分】デパート
プログラム開始以来、さすけは考え続けていた。
この災厄は今迄の実績に拘らず、平等に皆の上に降り掛かった。
それでも運と実力が今後の展開を大きく左右するという事を----。
開始直後、支給されたデイパックを抱え、この現実にどう対処すれば良いのか判らないまま
武道館が見える位置に身を潜めたまま動けなかった。
次々に体育館を後にする固定達。用心深く周囲を気にする者もいれば、何かに
----それは恐怖という名が尤も相応しいのだが----追われるように一目散に駆け抜けて行く者もいた。
特に誰かを待っていた訳ではない…只、もしかしたら安全かもしれないと思い、この場所を離れ難かった。
甘い考えだというのは判ってる。
既に、サトポンの死体と山崎が死ぬ瞬間を目の当りにしているのだ。
それでも、静まり返った体育館を見ている限り、まだこれが現実ではないのだと…信じられそうな気がして----離れ難かった。
しかし、それは静寂を破った銃声によって断ち切られた。
ビクリと大きく身体が震え、抱えていたデイパックを落とした瞬間、
「----さすけ」
背後から名を呼ばれ、心臓を鷲掴みにされた。
武器の確認を怠っていた事を悔やみつつ、振り向きもせずに声とは別の方向へ駆け出す。
「さすけ! 待て! 俺だって!」
あの時、体育館館ら爆音が聞こえなければ、そのまま走り去っていただろう。
爆音に驚いて思わず振り返った先に居たのは----ギャ乱DOだった。
ギャ乱DOは敵意のない事を示すように一度ゆっくりと両手を挙げてからデイパックを拾い上げ、投げ返してくれた。
「ギャ乱DO…」
胸にしっかりとデイパックを受け取りながらも、視線は相手から外さない。
「そうピリピリすんなって。俺に殺る気はねぇよ」
再度、丸腰であることをアピールするギャ乱DOに、漸く警戒心を緩めた。
安堵と同時に膝の力が抜けそうになったが
「早く移動しないと、ここはヤバいだろ。…一緒に来てくれるか?」
ギャ乱DOの問掛けに応えるべく、足を----生存へ向けての一歩を踏み出した。
そうして、このプログラムから生還する為の道を模索し始めた。
エナイと富士も加わり、先ずは各々の武器を確認し合う。
ギャ乱DOのニューナンブM58は偽物だが、威嚇としては充分機能した。
エナイの武器は拾い物の拳銃とやらで威嚇のみ。とっかえ球システムのマガジン。
富士のベレッタ92FS。これには運良くエナイの持っていたマガジンが一致したので実用可能だ。
そして自分には----ブローニング・ハイパワー9ミリ。装弾数13+1で、換えのマガジンが三つ。
接近戦になれば肉体的な力関係にどうしても左右されてしまうが、銃器なら不用意に相手に近付かなくて済む。
武器どころか防具すらならない「ハズレ」を引いた者の心境を考えると
素直に喜ぶ事は出来なかったが、自分の身を守る分には有り難かった。
----他人の心配…してる場合じゃなんだけどな。
恐ろしく簡略化された使用説明書を何度も読み返し、使用方法を頭に叩き込む。
実際に使う事があるのかという点に関しては…やはり、考え続けるしかなかったのだが。
そんな自分を叱咤するようにギャ乱DOに背中をポンと叩かれ、苦笑を返す。
思い悩んでいられる時間は余りに少ない。とにかく現在は現状を出来るだけ正確に把握するのが
先決だ。各々が出し合っても、情報は余りにも少ない。目新しいのは富士の目撃した男----
開始時には居なかった純ぷにが死んでいた…正確には死にかけていたという話だけ。
「----見間違いじゃないのか?」という自分の問いに自信なさげに応える富士。
その声を遮ったのは聞き慣れた音楽が告げる…第3放送の始まりだった。
放送の内容に、皆、呆然とするしかなかった。
合流出来れば大きな戦力になったであろう人々の名が次々と告げられ、
隠れ家である倉庫を重苦しい沈黙が支配した。
誰も口を開かなかった。…再起は不可能な程に打ちのめされた…ように思えた。
しかし中心となるギャ乱DOの前向きな姿勢は変わらず、情報収集と人探し、
そしてギャ乱DOが切り札にしている「爆弾製作」の材料集めが夜の明けぬうちから始められた。
午前五時前、空がうっすら明るくなってきている。
富士とさすけはデパートに来ていた。二人とも12時の放送の衝撃を引きずっていたが、
ギャ乱DOの指示によりある物の材料集めに来たのだ。そのある物とは…爆弾である。
「しかし、こんなんで爆弾なんて作れるんかね?」
さすけに問い掛ける富士の持つ袋には紙粘土や卵、花火などが入っている。
「それより俺は、なんでギャ乱DOが爆弾の作り方なんて知ってんのかの方が気になるけどな。
それより急ごう。もうすぐここも立ち入り禁止区域だぞ。」
「えぇ、あと画用紙だけなんだよ。…あっちの方かな?あったあった。」
その時、さすけは画用紙を手に取る富士の後頭部に何の前触れも無く銃を突きつけた。
「え?な、なな何の冗談だよ、さすけ…」
「俺が冗談でこんな事するかどうか君にはわかるだろ?」
さすけは冷たく答え、言葉を続けた。
「君もギャ乱DOもあんまり人を信用しない方がいい。
まぁ厨房の君にはわからんか。」
皮肉を込めて言い放つとさすけは引き金に力を加えた。
富士はショックで身動きすらとれぬまま時を待たざるを得なかった。自らの最期の時を。
富士がさすけの裏切りを受ける30分ほど前、
ギャ乱DOとエナイは材料を探す為に入った自動車整備工場で梵の死体を見つけていた。
「うわぁぁあぁああぁーーーーーっ!!!」
エナイが周りを気にせず悲鳴をあげる。ギャ乱DOはとりあえずエナイの口を抑えた。
「バカ、エナイ!静かにしろって!誰かに気付かれたらどうすんだ!!」
数分後、落ち着いたのかエナイは声を上げず梵を眺めている。そんなエナイを、ギャ乱DOは心配していた。
(バカな事考えてなきゃいいが…)
そんなギャ乱DOの気遣いを裏切るようにエナイは呟きだした。
「もういやだ、もうたくさんだ、もういやだ…」
「エナイ…」
近づこうとしたギャ乱DOに背を向け、エナイは工場の出口へ向かう。
「おい!どこに…」
「もう嫌だ!もう嫌なんだ!もうこんな馬鹿げた事は沢山なんだ!!ほっといてくれ!!」
近づこうとするギャ乱DOに向けエナイは銃を向けた。今、エナイの銃には弾が入っている。
エナイの持っていた弾が富士のベレッタのものだったからだ。
それでも駆け寄ろうとするギャ乱DOにエナイは発砲した。弾はギャ乱DOの足元を跳ねた。
エナイは涙を流しながら申し訳無さそうに笑って言った。
「ギャ乱DO、誘ってくれてありがとう。ごめんなさい。」
工場から出て行くエナイを、ギャ乱DOは追いかけることが出来なかった。
その後、6時の放送でエナイの死が告げられた。
「がっ!……」
富士の後ろで声が聞こえた。突き付けられていた銃の感触ももう無い。
振り返った富士の目に、腹に矢をつき立てたさすけの姿が映った。更にもう一本、腹に矢が突き刺さる。
さすけは見当違いの方向に反撃の発砲をして倒れた。
さすけの睨んでいた方向には負傷した箱が立っていた。
続けて箱は富士にボウガンを向ける。富士は咄嗟にさすけの手から銃を取り応戦した。
富士の銃撃を避け損ね、右腕に銃弾を受けた箱は忌わしげに舌打ちしながらデパートを出て行った。
「さすけ!大丈夫か!?」
箱の逃走を見届けてさすけが自分の命を奪おうとした事も忘れて富士はさすけに駆け寄った。
「…馬鹿だな……誰の心配してんの…?」
「でも…だってさすけ…」
「俺は……君を殺そうと……」
「もう喋っちゃ駄目だ!血が…血がこんなに…」
既にさすけは腹に刺さった矢を抜いてしまっていた。そのせいで腹部から血が止め処も無く噴き出している。
「…でも俺には…撃てなかったな……箱が…俺を撃ったのも…そのせい……」
もう何も言えず富士は悲しげにさすけを見ていた。
「……せめてもう一度…表舞台……出た……かっ……………」
さすけの言葉が途切れ、富士は泣き叫んだ。
死亡:さすけ
【二日目・午前5時】商業地区
震えながらエナイは自分の好きな言葉を思い出していた。
『ウザキャラをモロに出した固定でも有名になることができる』
厨房を淘汰するのがこのプログラムの目的なのか?
だったら次に狙われるのは…。身震いがした。
梵の例から安全な隠れ場所などないことはわかっていた。
こうなったら誰でもいい、近づいた奴を一人でも多く道連れにしてやる!
そう思いエナイは銃を構え、茂みに隠れていた。
何時間経ったのだろうか?
二時間?三五時間?
だが実際には茂みに隠れて五分と経っていないことをエナイは知らなかった。
その時一つの大きな影が視界に入った。
誰だ?…誰でも構うもんか!
エナイは容赦なく引き金を引いた。
しかし弾はわずかに標的をそれた。
すかさず第二射に移ろうとしたその時!
「誰だ!ポリタンクか?ゆきのふか?」
「なんだ?お前誰だ?ゲームの参加者なのか?」
突然聞いてきたその男はなんとニセモノ!
直接の面識はないが、ラウンジにいる者なら誰でも耳にしている。
その全てが攻撃的だと言うことを。
祭りの運営をさせたらずば抜けた男だった。煽りも素晴らしく、攻撃的な固定。
祭りスレも数え上げればきりがない。
そのニセモノがなぜ?
「ヒスタッチオ連れて来い、ヒス。ヒスに話しあって来たんだ」
撃たなければ!だが体が動かない。これが恐怖か!
そしてこの男はなぜ撃たれたのに平気でこちらに向かってこれるのだ?
これがニセモノか…
「返事しろ!返事!挨拶もろくにできないのか!最近の厨房は!」
その言葉が届くか否かの間にエナイの体は吹き飛ばされた。
エナイが顎に強烈な平手を食らったことに気づくのには数秒かかった。
なにか言わなきゃ!エナイは慌てて口を開いた、だがエナイの口からでた言葉は
「おがごげ…!」
顎の骨が砕けている!
「ちゃんと喋れよ!何て言ってるかわからないだろ!」
ニセモノが前蹴りを叩き込む、エナイは咄嗟に両腕で受け止めたがまたも吹き飛ばされた。
何とかして敵意が無いことを示さなくては!
そうだ!喋れないなら、両手を上げて降参の意思表示をしよう!
それは束の間の夢に過ぎなかった。
エナイが上げようとした両腕はぴくりともしない。
先ほどの一撃で折れていたのだ。
どうすればいい?
ニセモノがゆっくりと近づいてくるのが見える。
ニセモノはなけなしの勇気を振り絞って踵を返した。
逃げ切れるか?
そのときだった。
ぴちっ!
聞きなれない音がした。
それが自分のアキレス腱が切れた音だとはエナイにはわからなかった。
いや…もうどうでもよかったのかもしれない。
喋れない、手足も動かない。
自分が単なる肉隗に過ぎないことを悟ったエナイは…考えることをやめた。
「何寝てるんだよ!早くヒス連れて来い!」
もはや呼吸すら止まった単なる肉隗を、ニセモノは容赦なく踏みつけ続けた。
死亡:エナイ
…信じられないものを見た。
山田は目前の光景が信じられなかった。
隙だらけのエナイを見つけたときには今度はどうやって殺すか?
そのことに天才的センスを張り巡らしていたときにあの男は現れた。
エナイを撲殺したその理不尽ぶりは、昔と変わっていなかった。
あの男…ニセモノ。
…あまりにも意外な人物の登場にさすがの山田も対応が遅れた。
ニセモノが振り返ったのだ。
「おう山田!お前なにやってんだ?」
しまった。
不意討ちで行くか?
だが正面から撃てば、エナイの二の舞になるかもしれない。
何やらだいぶ荒れている。何かに怒っているように垣間見られた。ただ酒が入ってるのかもしれない。
「ああニセモノ。いつ以来ですかねえ、どしたの?」
とりあえず普段通りの口調で油断させよう。
「なんだ、東京都23区使ってサバイバルゲームでもやってんのか?
銃持った兵隊みたいなのが有刺鉄線の前でうろちょろしてやがったから素手で始末してここまで来たんだよ。」
ニセモノは参加者でないため状況を飲み込めていないようだ。
だがゲームと関係なかろうが、目前の光景を見せられては、
生かしておくわけにはいかない。
背中にまわした銃の撃鉄を起こしながら考えた。
もう少し時間を稼いで、隙を見つけて殺すか?
「そうなんすよ。この銃で…」
銃を見せるふりをして撃つ。
充分接近してからだ。
「おう!それだったら、いいこと思いついたわ」
ニセモノがエナイの銃を拾い上げる…嫌な予感がする。
「じゃんけんで勝ったほうが、負けたほうを撃つっていうのはどうだ?」
…今すぐ殺そう。
ありゃぁ死んじまったよw
ニセモノを殺す。
ゆっくりと周囲を見回した。
周囲の状況を応用するのは自分の最も得意とするところだからだ。
そのとき、ニセモノの背後に光るものが見えた。
銃口だ!間違いない。だが暗くて誰かはわからない。
明らかにニセモノを狙っている。
これだ!
「ニセモノさあん。うしろ、なんかいるよ」
山田のくだけた口調につられてニセモノは振り返ってしまった。
山田がニセモノの背中に銃口を向けたその時、
パン、パン、パン、パン、パン、パン。
山田が引き金を引くより早く、ニセモノの身体を六発の銃弾が貫いた。
ゆっくりとニセモノの体が倒れこむ。
巻き添えを食ってはまずい。
山田はニセモノから離れながら、ニセモノを撃った男を確認した。
ヒス!
ニセモノをつけねらっていたのはヒスだったのか。
しかしなぜ?…
最初に「あいつの」声が聞こえてきたときにヒスは心臓が止まったかと思った。
明らかに自分を探している。
昔連んでいた固定。
一番自分に愛憎を抱いているはずの人間。
お祭り好きとして、2人はよく同じスレにいた。
どちらも行動力があり、ラウンジのお祭りスレでは目立った存在。
だが、ニセモノの攻撃性が余り気にくわなくて、罵り合いもした。
その為2人は喧嘩別れしたことになっていた。
当然、ニセモノは自分を殺しに来ると思っていた。
だからニセモノ!来ないでくれ!
俺はまだ死にたくない!
ニセモノの声が聞こえたとき、逆にニセモノを殺すしかないと決めた。
それでも巨大な背中を確認したときには、まだ撃つ勇気がなかった。
突然、振り返ったニセモノと目が合った瞬間、恐怖が勇気をくれた。
ニセモノがかすかに動いた!
「!」
とどめを刺さなくては。
銃を構えたそのとき、ニセモノの発した言葉がヒスを壊した。
「すまん、かった、な、ヒス」
「え?」
ヒスは信じられない言葉を聞いた気がした。
「いっつも、煽って、ばっかりだったな…もう煽る力ないけどな」
「ニセモノ?」
「俺な、お前、に、言いたいことがあったんだ」
この男は人生の最後の最後のときまで煽るのだろうか?
「お前の正義感強いキャラ・・・。本当は好きだった」
「!」
「だから、お前の、選択は、間違いじゃない思う」
「…」
「ごちゃごちゃ、言う奴、いたら、俺が…パチキかましてやるから、安心しろよ」
そんなことのために?
わざわざそんなことを言うためにこんなところまで?
力無くゆっくりと微笑むニセモノの姿はヒスには痛々しかった。
…そうだ!いつだってそうだ!
この人はいつもくだらないことでムキになって、
周囲から見たら理不尽な行動をとって、みんなから誤解されて
気がついたら一人ぼっちになっていた。
自分は知っていたのではなかったのか?
この人のそんなところを!
一番近くにいたわけじゃないけれど…!
こんな状況じゃなかったら、
次々と身近な人が死に、身近な人が身近な人を殺す、
こんな状況じゃなかったら素直に友達になれた・・・・。
涙が溢れてくる。
涙と、自分を責める思いと、運命を呪う気持ちが交互にヒスの中を駆け巡る。
「ニセモノ…俺、俺、お前と会えたことにに感謝してるぜ!」
「お、う、あ、」
ニセモノの言葉にならない声がヒスに突き刺さる。
「ひゅ、ごぼっごぼっ」
それは声なのだろうか?ただ気管から空気が漏れる音なのだろうか?
「また、遊ぼうぜ」
己の罪を償うかのようにヒスは泣き叫ぶ。
「おにぎりワショーイ・・・って言おうぜ!」
「…」
いつの間にかニセモノは目を閉じていた。
ヒスは気付かない振りをしたのだろうか、
ニセモノの手を強く握り締め、なおも一心不乱に叫び続けている。
パン!
…乾いた銃声に人生を中断されたとき、
ヒスは自分の言葉が戯言に過ぎないことを悟った。
ニセモノの手を強く握りしめたまま…。
「なにごちゃごちゃ大声出してるんだ」
最後の最後に友達になることができた2人の死体の背後から、
ベレッタM1934コマーシャルを構えたKが呟く。
「…場違いだな。おにぎり?なんだそれは?」
気づかれないように距離をとってニセモノとヒスを観察していた山田は、
目前の光景に躊躇していた。
ヒスを思うニセモノの気持ち…それは殺され間際にも関わらず自分を思ってくれたなぐやよいよと同質のものだ。
だがもう過去の自分は断ち切らなければならない。
そう考え銃口をヒスに向けたはずだが、先を越されてしまった。
銃声に向かい銃を構えると、
同じように自分に銃を向けたKの姿があった。
「…」
「…」
このゲームが始まってから初めての遭遇だったが
もちろん再会を祝すつもりは二人にはない。
Kの接近に気付かなかったのはミステイクだが、
Kもたった今、山田の存在に気付いたようだ。
…こいつは殺し慣れている。
Kの手際を見た山田の感想であったが、
同時に山田の目を見たKの感想でもあった。
危険な相手だ…少なくとも無傷では勝てない。
それはどちらの心の呟きだったのか。
「…」
「…」
数瞬の沈黙の後、二人は全く同じ行動をとった。
それはいずれ互いが最後の対決の相手になるかもしれないという 直感だったのだろうか?
同時に銃をおろした二人は、互いに背を向け…ゆっくりと歩き去った。
胸中に再戦を約して。
ニセモノが出てきたのはびっくりした。
引退固定も可なら、何かの再来の出演もきぼん
【二日目・午前5時30分】公園
夏の朝が明けるのは早い。
但し早朝は照り返す直射日光もなく、そよ風がそよぎ、過し易い事この上ない。
こういう時間は大切にしたい。自分の好きな事を心行くまで楽しみたい。
ところで俺が今一番やりたい事ってなんだろう?
セクース?そう言えば最近やってないなぁ… 今度、誰か誘おうかな…
京大様は薄れ行く意識の中で、そんな他愛もない夢の中にいた。
彼の頭の中ではちょうど今『京大校歌』が流れている頃なのだろう。
この殺戮遊戯が開始された日、体育館に阿鼻叫喚が飛び交う中、京大様はひとり冷静だった。
サトポンの死体を見た瞬間はさすがに驚いたが、それでも以前から『この日』が来る事を予想 していた自分にも気付いていた。
京大様は決してひろゆきに近い人間ではない。だからこそ誰よりも京大様はひろゆきを理解していた・・・
ひろゆきとは『自己顕示欲と支配欲の権化』であると!!
このプログラムが発動された際、彼の心の九分九厘は諦めが締めていた。
他人を殺してまで生き残るのは自分の柄ではないし、それを達成する程の執着心は昔から皆無に近い。
どうにか外部と接触を図り、最後に家族の声が聞ければ十分だ…そこまで達観できていた。
ただ、ほんのわずか乍ら自分の心に巣食った疑問だけがどうしても払拭できていない。
それは後悔とも呼べる感情らしかった。『どうして俺は、そこまでわかっていながら、今まで…』
元来、他人の為にどうこう動く様な性格ではない。ある意味、究極の個人主義者でもある。
しかし今だけは、その仮面を一度だけ外してみようと思う。慣れない真似をしてみようと思う。
あの悪魔ひとりを道連れにしてもこのゲームが終るとは考えていない。
でも『それ』を成功させる事だけが、これから若い命を散らしていく後輩達へのせめてものの
償いと餞になる様な気がする。
「…やってみるか」春に引退したはずである伝説の固定、京大様は自分自身に語りかけた。
「…でも、やはり無謀すぎたか」 苦笑いしたくなる様な苦々しい気持ちを抱え、ひとり呟く。
京大様は立入禁止令の出る中、ひたすら校舎の回りを徘徊し、根気強くチャンスの到来を待った。
たが彼の予想を遥かに越える程の警戒体制には非常に閉口した。
それはそうであろう、国家の命で動いているプロジェクトが反乱分子による混乱を招いては、彼等の面子が立たない。
京大様にとっては二重の不幸であったが、通常のPJを遥かに凌駕するひろゆきの横暴で卑劣な行為は
政府から見ても参加者達の反発を買う事は容易く想像できた。
徹底的な弾圧と殺戮促進の為、対象を絞る事なく乱射された銃弾は、不運にも叢に潜む彼の
右足を貫いた。今までに味わった事もない激痛に身をよじりながらも、彼は必死に呻き声を抑え、
ペットボトルの水で血を洗い流しながら、公園の奥にある小山の陰に逃げ込んだ。
京大様の密かな決意は、欠片程の成果すら残せず、無残な失敗に終った。
強烈な激痛と睡魔が交互に襲う極限状態の中で、京大様は無用の長物となった短刀を見る。
よくよく考えれば滑稽な話だ。例え進入できても、拳銃ならともかくこの刃物ひとつで何が
出来ただろう? しかし彼は、およそ似つかわしくない行動に出た自分が満更嫌いでもなかった。
恐らく自分はこのまま事切れるだろう。死が恐くないと言えば嘘になる。
しかし今更慌てふためき、生き恥をさらす真似だけはしたくなかった。
せめてこの無念を伝えたい。ラウンジを支えてきた固定として、後を託せる人間と出会いたい。
そう強く願う事だけが、今の京大様の消えかかった生命を支えていた。
疲れからまどろんだ様だった。京大様は自分の名前を連呼する声で現実に呼び戻された。
「・・・京大さん・・・しっかりして下さい、京大さん!!」
うっすらと瞼を開くと、そこには髭が伸び、顔中が泥だらけになったけんの顔が見えた。
「ほう、こいつか・・・」京大様は正気に戻るや否や、奥歯を噛み締め、
全力でけんを払いのけると、その鋭利な刃を鞘から抜き出した。
「・・・京大さん?」 「甘えるな!! けん、武器を取れ!!」
重苦しい沈黙が続いた。体内の血液が逆流するのがはっきりと認識できる。
呼吸は乱れ、目が血走る…これが殺し合いというものなのだろう。
「…京大さん。無理です、その体じゃ。やめましょう、こんな無意味な…」
「黙れ、若造!!お前に同情される程、落ちぶれてはいない。来い!!」
京大様は再び内心で苦笑した。『俺は挑発のセンスがないなぁ…今に始まった事じゃないが』
京大様は元々こんな乱暴な言葉使いはしない紳士のような男だ。だが今敢えてそうしているのだった。
その反面、焦れてもいた。対峙するけんは防御の姿勢を取りつつも、一向に攻撃の気配を見せない。
『このまま無駄に時間が経ち、他の奴が介入するのはウマくない…』
深い親交こそなかったが、京大様はけんに対し一種の好意を抱いていた。
その愛らしいがどこか笑えるレスは何処か自分とは正反対だが、どこか似通ったものを感じていたし、
落ち着いた性格も自分に似ていると感じていた。
時々、意味不明なレスをする事には閉口していたが…
眠りこけた自分を起こしているのがけんだと気付いた時、京大様は何かに感謝したい気分であった。
『…こいつなら、いい。こいつになら、思いを託せる』
京大様は自分を踏み台にする事で、けんに強くなって欲しかった。
そう強がる事で、自分のダンディズムを守りたかった。譲り渡したかった。
しかし当の後継者は、その思いを知ってか知らずか、相変わらず戦闘意欲の欠片も見せない。
京大様はまたしても苦手な挑発行為を取らざるを得ない。
「来い、来いよ!! どうした、この臆病者が!! 私がそんなに恐いか!?」
ようやく観念したのか、けんはデイバックを肩から外し、憂鬱げに武器を取り出した。
ジャラジャラと金属の重なる音がする。長いチェーンの先には鋭利な刃物が光っていた。
京大様は驚くと同時に、思わず吹き出しそうになる自分がいる事に気付いた。
『鎖鎌とは…あいつと絶妙な取り合せだな…』
だがけんがその後とった行動は再び佐野を不機嫌にさせる。
けんはその尖った砥先だけではなく、鎖ごと京大様に向い放り投げた。
「どういう意味だ・・・私を侮辱するのか、けん!!」 さすがに憤怒の表情で京大様が怒鳴る。
「戦う前に諦めるのか? 情けないぞ!! お前は信念の強い男じゃないのか!!」
「…これが自分の武器です。ただ、あとひとつあるのですが…」
けんは冷静に返答する。京大様はさすがにその言葉を聞き、固く身構える。
「…でもこれは自分のお守りです。これだけは手放す訳にはいかないので…」
そう言ってけんはポケットから、拳銃の形をしたビニール製の玩具を取り出した。
「…水鉄砲?」「…形見です、いっちの…」
その瞬間、けんから一筋の涙がこぼれた。彼は堰を切った様に語り始める。
「あれから一日半、ずっとこの水鉄砲を見てました。死にたくない、いっちの敵を獲りたい…
でも自分には、自分にはどうしても仲間を殺して生き残る事が真の勇者とは思えない!!
そんな事をしてもサトポンやいっち…山崎…誰も喜んでくれやしない!!浮ばれる訳がない!!」
「…奇麗事だ。戦わずして生き残れやしない。お前が死ぬ事が、彼等の意思に報いる事か!?」
「戦います!! 戦いますよ!! でもそれは参加者に対してではない!!
こんな馬鹿げた事をして喜ぶひろゆき!! そしてその裏側に隠れる国家権力に対してです!!」
京大様は思わず言葉を失う。無茶だ…現実逃避か? それとも気が触れたのか?
「けん、目を覚ませ!! お前の気持ちは痛い程わかる。でも、それは無謀…」
「京大さんは、強くなりたくないんですか?」 「何!!」
「俺は強くなりたい!! 人として、男としてもっと強くなりたい!!
だから戦います、この現実を引っくり返す為に…」 「けん…」
「俺は人を殺める強さなんていらない!! 殺されない強さが欲しい!!
奇麗事ですよ、わかってます。幼稚な夢かもしれない…
ラウンジャーが夢と希望を失って、どうやって書き込むんですか!!」
「……」 「俺は守ります。自分の命を、誇りを、ラウンジを!!」
それから暫くの間、再度の沈黙が訪れる。
静寂を打ち破ったのは、饒舌な男の方ではなく、寡黙な男の方だった。
「…前から変な奴だとは思っていたが、ここまで変人だったとはな」「……」
「もういい。話すだけ無駄だ。早くいなくなってくれ…」「……」
「…餞別だ」京大様はそう呟くと、短刀をけんへ向い放り投げた。「…京大さん?」
「無駄な事はわかっている。もっと有効に使ってくれる奴に渡したいよ、本当は。
でも私はお前に掛けてみるよ。お前の大甘な戯言に…」
「…しかし!!」口を開いたけんを遮る様に、京大様は語り続ける。
「ただ一つだけ条件がある。死ぬな。どんな事があっても生き続けろ。
そして何時の日か、お前の手でラウンジを再興してくれ。
それがサトポンやいっち、ponへの義務だ…」
ケンは血が出る程、唇を噛み締めながら強く、そして何度も頷いた。
それを見た京大様は、今まで見せた事のない優しい笑顔を見せると力なくしゃがみこんだ。
「京大さん、大丈夫…」「大丈夫な訳、ないだろ。怪我人を長時間、立たせやがって…」
苦笑しながら京大様は言葉を繋げた。
「もういい。俺にしては十分すぎる程しゃべった。疲れた。さぁ、早く行ってくれ」
「…いや」けんはそう言うと同時に京大様の手を強く掴んだ。「ここに、忘れ物があります」
「余計な気使いだ。今の私には足手まといにしかならない。お前、生き残るって言ったろ?」
「勿論です。でも自分達には京大さんが必要なんです。不安や焦りの中、
京大さんがいてくれたらどれだけ安心するか…」
「…買被りだ」「京大さん!もう一度!もう一度だけ共に戦って下さい!」
京大様は不思議だった。過去一度も先輩らしい事をしてやった覚えもないのに、この固定は
自分を必要としてくれている。
『人間は人間関係によって、人間として存在できる』という言葉がある。
人間はただ一個で存在する場合、単なる畜類に過ぎない。
その人と人とが接し、関係する『縁』の中にあるからこそ、人間でいられるという意味らしい。
京大様はその『縁』を目の前の細面の男に感じていた。というより、彼がそれを気付かせてくれた。
「…けん、もうひとつ条件を付けるぞ。もう駄目だと思ったら、迷わず俺を捨ててくれ。それさえ約束してくれるなら…」
「約束します。俺は絶対に生き残ります。京大さんの命を、俺に預けて下さい。」
「よし、わかった」京大様は無表情に、それでいてどことなく満足げな表情で頷いた。
「…じゃぁ、行くか」「…はい!!」けんは京大様の肩を抱えて立ち上がり、歩き始めた。
「…けん」歩き出したと同時に、京大様は聞き取れない位小さな声で呼びかけた。
「…人の気配がする」「えっ!?」「馬鹿、大きい声を出すな」
わずかだが草木が靡く音に混じって、荒い吐息が聞こえる。間違いない…
しかし、京大様は腑に落ちなかった。あれだけ長時間、無防備な体制が続く中、何故仕掛けない?
味方か?ならば声を掛けてくるはずだ。
「…京大さん…」「大丈夫だ、どうやら敵は殺し慣れてない小心者らしい。それ以外考えられない」
「どうします?」「俺が声を上げる。間違いなく奴は反応する筈だ。それと同時にお前は逃げろ」
「京大さん!!」「生き残るんだろ、お前は?」…けんは小さく、そして強い目をして頷いた。
「…よし、やろうか」京大様は腹立たしかった。さっきまでの会話を聞いてたんだろ?
それなのに何故、けんを狙おうとする!?『…この男は、殺させない…』
普段も低くて良い声だが、そこに決意と怒りが加わり、凛として聞き惚れる様な声になった。
「誰だっ!!」
京大様の予想は当たっていた。相手は迷いの中にいたらしい。
不意をつかれて頭髪を茂みから覗かせた。
ただ惜しむらくは、葵が現われた場所がけんの目の前だった事だが…
その刹那、京大様は最後の力を振り絞りけんの体を突き飛ばした。
と同時に腹部に強い衝撃が走る。体温が急上昇したかと思うと、次の瞬間には全ての力が
抜けていった。京大様は崩れ落ちた。
「京大さんっ!?」けんは自分の安否も省みず、京大様の元に駆け寄った。「しっかり!!しっかりして下さい!!」
…息はある。が、今にも消え入りそうにか細い。目は堅く閉じれれ、勿論返答はない。
何とも描写のしようがない程、重苦しい時間が過ぎた。何の音も聞こえない。
興奮した葵の荒い吐息を除いては…
けんの体が激しく揺れる。彼は加害者の方を一瞥だにせず、京大様の体を抱えたまま絶叫した。
「…あおいーー!!!!」
その声は地の底から沸き起こったかの様に激しく、強く、何より哀しい声色だった。
「…あなたに、あなたに何がわかる!!」葵は泣きながらけんに怒鳴り返す。
「…ほうじ茶・・・純ぷに、出会い系・・・友人を殺された私の気持ちの何がわかるってんだよ、あんたに!!」
半狂乱で葵はショットガンの引き金を連続して引いた。
しかしそれはけんに対してではなく、晴れ渡った夏空に向かい空しく発射されていた。
けんが後ろを振り向いた時、そこに葵の姿は既に存在していなかった。
337 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 20:53 ID:2INtOFgH
葵たん。。。
あれからどれ位の時間が経過したろうか。
もはや京大様の体からは何の音も動きも発せられていない。
しかし、死ぬ間際まで見事なまでに整備されていたヘアスタイルは
けんの涙と鼻水で濡れていた。
「…どうして…なんで…なんで、こんなことに…」
京大様は薄れ行く意識の中で夢を見ている。
『…あぁ、そうか。私はあの頃に戻りたかったんだ…』
京大様は今、初めて自分の居場所を見つけた気がした。
そして生前、最後に言葉を交わした青年に心の中で静かに語りかけた。
『…けん、俺、お前に頼みたかった事がもうひとつあったんだ…』
『…今度、ラウンジで遊ぶ時は、俺にも一声掛けてくれよ、な…』
時刻は朝6時を示そうとしていた。新たな戦いがまた始まろうとしている。
死亡:京大様
面白い
340 :
マシ:02/02/01 20:56 ID:???
折れ一瞬で死んだんだよなこれw
このあとしばらくしてから俺が左腕取れた状態で現れます
俺改造手術中。
【二日目・午前6時】ゲームエリア内全体
二日目の、朝が来た。
蝉の鳴き声が姦しい。心地良いそよ風は鳴りを潜め、代りにはまとわりつく様な湿気のお出ましだ。
何処か遠くから再び銃声が聞こえ出した。その直後『ちんこ音頭』がオーケストラバージョンで流れ出す。
「さて、今日で何人殺せばハッピーエンドになるのかな」
このゲームの主役とも呼べるポリタンクは、飽き飽きした口調で不機嫌そうに身を起す。
『…静かにしろっ、!!』 何時になく不機嫌な声が、スピーカーを通して響き渡る。
『人が話す時は黙って聞け!親に教わらなかったか!この常識知らずどもー!』
銃声はピタリと止み、当り一面に不穏な静寂が戻って来た。
「…棚に上げすぎだろう、自分の事を」 大先輩達をも殺した山田は苦笑しつつ、意味もなく銃を磨く。
『えー、大きい声を出して申し訳ないっ!おはよう、お元気ですかぁ!! 元気があれば、友さえ騙せる。
そんな君達の頑張りに、詩を贈ります。サンタモニカの朝に、という詩です。
不安だらけの人生だから、ちょっと足を止めて自然に語りかけてみる…』
「…そういうのを便所の落書きって言うんだよ、バーカ」 殺人マニアと化したゆきのふは、罵る様な口調で吐き捨てる。
『 …しかし、相変らずいいペースだ。少し、驚いています。
お前等!! 結構、非道な奴らだったんだな!! 俺は管理人として哀しいぞ!! 』
「…もう聞き飽きたよ、あんたの煽りは」 疲れ切った表情を垣間見せるセブン。
「能書きはいらねぇ!とっとと教えろ!イパーイは未だ、生きてんだろうなぁ!! アイツは必ず俺が殺るんだ!!」
復讐の鬼と化したオルテガは、声の出ている方角に向かいガナリ立てている。
『えー、それでは発表しますっ!元気に行きましょう!
この6時間での脱落者は全部で9名!…サエコ!寒敗!うに!梵銃ル!
びーらぶど!さすけ!エナイ!ヒス!ニセモノ!…惜しい、あと少しで大台じゃないか!!』
「…オイオイオイ、冗談じゃねぇよ。もう1/3も残ってねぇのかよ…」
爆弾を製作している富士は、普段の面影は何処へやら、唖然とした表情で虚ろに呟く。
「…やべ、やっぱオルテガ、死んでねぇよ。しつこいなぁ… それだけが取柄だもんなぁ」
今回の殺戮大会で意外な役者振りを発揮したイパーイが、愉快そうに忍び笑う。
『しかしっ!!』 スピーカーの向うにいる饒舌な悪魔は、一向にその独演会を止める気配が無い。
『しかしだ!! 俺はある意味、モーレツに怒っている!!』
『…えー、それでは怒りの理由を説明します』 怒鳴ったかと思えば、急に丁寧口調に戻る。
まさに精神のメリー・ゴーラウンド状態だ。
『一生懸命、人殺しをしている奴らがいる!その反面!ずーっと逃げ回ってる奴らもいる!
お前達はそれでも男か!コテハンか!俺は久々に本気で怒っている!
お前がこんなにヘタレに育ちゃぁ、お前らの御両親に対して俺の面目が立たねぇじゃないか!』
「……」 やってられんとばかり首を何度も横に振るK。
この男を一度でも崇め奉っていた自分がたまらなく恥ずかしい…
『そこでだ!今から罰ゲームっ!! 夜勤っ!』スピーカーからは次いで、厭味なまでに冷静な声が流れ出す。
『夜勤です。おはようございます。これから追加ルールの説明をします』
その事務的な口調が、生存者達の憎悪を益々掻き立てる。
『えー、皆さんの行動は特殊モニターと体内発信機で全て管理されています。
よって誰がプログラムの主旨を理解できていないかは把握済です。敢えて名前は公表しませんが…』
「殺せるわけないだろっ!自分の友人を、先輩を!」 悔しげに咆哮するけん。
『再指令です。未だ殺人行為を達成していない人は、どんな形でも結構ですので、必ずひとりは殺して下さい
納期はちょうど当プログラムの折返し地点に当る、本日昼12:00までとします。
心配はしてませんが、万が一、この指令に対し無視や反故をする方がいた場合は…』
ここで夜勤はわざとらしく、一旦その言葉を切る。
100年に一度の天才と呼ばれ、2ちゃんねるを拡大の道へと押し上げた功労者は、自分の栄光の歴史に
泥を塗るかの如く、さも楽しそうに固定へ脅しをかけた。
『皆さん、脳内に小型爆弾が仕込まれてる事、忘れてませんよね。アハハハハ!』
『よーし、見せしめ行くぞー、見せしめっ!』ひろゆきのはしゃぐ声が遠くに聞こえる。
『参加者で体育館が見渡せる場所にいる方は、後学の為、是非御覧下さい。』 性懲りも無く挑発を続ける夜勤。
けんは、既に冷たくなった京大様の遺体を木の麓に静かに立て掛けると、自らは木陰に身を隠し
ながら、すっかり遠くなってしまった体育館の方向を凝視する。
体育館のドアが開く。一人の細身の男性が、兵士に両脇を抱えられながら出てくるのが見えた。
けんは目を凝らし続けた結果、ようやくその男の存在を認識し、愕然とした。
「…デリカシ…」
双眼鏡が無く肉眼でしか見れていなかったけんだが、もし近くでまじまじと眺める事が出来たとすれば、
彼は驚嘆の声を上げる前に、嘔吐していた可能性が高い。
分厚い黒布で目隠しをされていたでりかしには、既に両の耳がなかった。
掌は何かで圧縮された痕跡があり、逃亡防止の為か、太腿には2本のナイフが鋭角に刺さっている。
スーツに縫い付けられた小型マイクからは、隙間風の様なでりかしの呼吸音だけを厳かに伝える。
恐らくは、声帯さえも奪われてしまったのであろう…。
『戦う前から、負ける事を考えるバカが何処にいる!この腰抜けが!』スピーカーから更に怒声が加わる。
『デリカシくんは今朝投降してきました。勿論、未だ誰も処分できてないそうです。弱りましたね…
出来る事ならば助けたいんですが。しかしこれは国家の命…』 夜勤の解説を遮り、悪魔が叫ぶ。
『よーし、離れろーっ!』同行した兵士はデリカシの両脇から手を放し、脱兎の如く武道館に向かい走る。
糸の切れた人形の様に、デリカシは地面に崩れ落ちる。
芋虫みたいにはえずり回る彼は、口をパクパクしながら声にならない悲鳴を上げ続ける。
『誰だって、こんな事はしたくないんです。でも理解してくれない人はこう対処せざるを得ない…』
したくないと言う割には歓喜を抑え切れない声で、夜勤は参加者達に語り掛ける。
『それでは開始します……15秒前…10、9…』
「…やめろ、やめてくれよ」 けんはその地獄図を遠方から見ながら、懇願する様に呟き続ける。
『…8、7…』 「…やめろってば、いい奴じゃないか…」 けんはデリカシが好きだった。
先輩とも分け隔たり無く接する慣れなれしくも優しい人柄、悪気の無いムダなつっこみを入れるところ…
『…6、5、4…』デリカシは決して気が強い人ではない。しかし強くなければ、ここでは生きる事さえ許されないのか?
人を殺せなければこんな無慈悲な扱いを受けても良い、と誰に言える権利がある?
強いって、何だ? 生きるって何だ!? 数秒の間に様々な問い掛けがけんの頭で交錯する。
『…3、2、…いくぞ!! イナズマッ!!』 山崎の時とは比較にならない程の大音響が響き渡る。
爆発と同時に、けんは目を閉じ、顔を横にそむける。
彼が再び現場に目を戻した時には、デリカシの体は自らが流した大量の血の海の中で浮んでいた。
『処刑完了です。因みに爆発力は本部である程度、変更可能です。驚きました?
まぁ爆発が大きかろうと小さかろうと、結局死ぬ事には変りありませんが…。ではひろゆきさん…』
『デリカシっ!!このバカーっ!!』 スピーカーから再度怒声が届く。『…えー、どなったらすっきりしました』
『まだ6時間もある!頼む、戦え、戦ってくれー!! ラウンジャーの名に賭けて、熱い殺し合いを見せてくれ!!
デリカシの様な卑怯者をこれ以上見たくないっ!諸君の一層の奮戦を期待します! 優勝者にはうまい棒!!』
この世で考え得る最も不快な進捗発表会は、ようやく終りを告げた。
死亡:デリカシ
348 :
ラウンジウォッチャー:02/02/01 21:08 ID:???
首謀者:ひろゆき 側近:夜勤
生存中参加者:
[非暴力派]けん 富士 セブン ギャ乱DO
[武闘派] K 山田 ポリタンク ゆきのふ 箱 オルテガ お××イパーイ
[どっち派?] 葵 <12名>
死亡確認済出演者:
サトポン 山崎 開店寿司 いっち pon 256兄さん 餅 出会い系、治療不可
ななーし ほうじ茶 原 マーカー じょか 助教授 にっく 弥市 鮎崎 マシ
なぐ よいよ 東金 純ぷに びーらぶど うに サエコ 寒敗 梵
さすけ エナイ ニセモノ(非参加) ヒス 京大様 デリカシ <34名>
あと2名ほど枠が空いてます。
俺をかっこよく改造して再登場させてくれ。
ダメなら別ハンの奴隷皇子を参加させてちょ
いっち出てるんだから暁!ドキュソ塾入れてやれ。(w
ラウンジウォッチャー氏=ナナシサソですか?
352 :
ほうじ茶@赤鬼 ◆Neo..mvM :02/02/01 22:13 ID:2INtOFgH
すげぇ、死にまくりじゃん(w
>>349 いきなり死んでるサトポンよりかはいいだろう(w
俺なんて誰一人殺さず死んだよ
オマケに壊れてさ。
出ただけマシってのは確かに、な
ベスト8に残りたかった・・・・グフーリ
SM考察隊 殺助 ママン ボ・妹 いつぞやの5
キボンヌ
>>357 それだ。
サエコなんか出さずにママン出せばよかったのに…
エセ作家入れれ。
360 :
純ぷに:02/02/01 22:44 ID:???
たいした数だなぁ・・・
>>357 俺もこの中からきぼーん。
キャラが立ってる固定が弄られるとおもろい。
ママン入れて欲しいな
いや、エセ作だろ。あいつ頭きれるし。
>>364 ネタ
SM考察隊、殺助いいな
殺助の最期 ヘ(Д´ )ノ イイッ!! にしてくんねぇかな
ママンはこれから当然出るんだろう。エセ作家も処どころだから出るだろ。
367 :
勝手に@鯖野コッポラ:02/02/02 00:27 ID:JWvUoyPy
【2日目】午前11時 PCショップ
暁☆ドキュソ塾(以下ドキュソ塾)は無機物の並ぶ棚の間に身を
潜めていた。自分の慣れ親しんだ機械の臭い。
店員の居ないPCショップでは延々電化製品がデモ画面を流して
いる。次々に変わっていく四角い窓の中の風景。
白い猫が画面の端に現れてこちらを指さし「逝って良し!」などと
言っている。
(ここはいわばひろゆきの王国って訳か……)
微苦笑をその色白の相貌に浮かべると、彼は息を潜めつつ店内
を物色する事にした。
とにかく連絡手段が欲しい。
368 :
勝手に@鯖野コッポラ:02/02/02 00:29 ID:JWvUoyPy
いっちが死んだ事はひろゆきの放送で知っていた。
あれを聞いた時に彼は己の不甲斐なさを嘆いた。
(愛する人の一人、守れないなんて……!)
何故守れなかった。彼は体育館を出る前にいっちと待ち合わせを
していた。けれど出会えなかった。
それも自分が……自分が遅刻をしたからだ!!
彼は有名な遅刻魔だった。
普段なら待ち合わせに遅れそうな時は連絡をする。けれど携帯の
電池はとうに切れて使い物にならなくなっていた。
(同じ過ちは繰り返すものか)
ドキュソ塾は涙の枯れ果てた、赤い眼球で虚空を睨め付けた。
いっちの分も生きる。それが死んでいった恋人への、せめてもの
手向けだ。
369 :
勝手に@鯖野コッポラ:02/02/02 00:30 ID:JWvUoyPy
ドキュソ塾はショップの膨大な商品の山から、一本のケーブルを
選び出した。
これと、コンセントさえあれば携帯の充電は可能だ。
使い捨ての充電池も幾つかポケットにねじ込んだ。
いつかいっちが悪戯してポケットに付いているチャックを開け閉め
していた事が思い出され、鼻の奥が痛くなった。
(今は泣いている場合じゃない)
感傷に浸るのはこの下らないゲームから脱してからで十分だ。
恋人の死を聞いた時、彼は何度も支給品の果物ナイフで手首を
掻き切ることを考えた。自分達の運命を呪い、世界が遠のいて
いくのを感じた。
370 :
鯖野コッポラ:02/02/02 00:31 ID:JWvUoyPy
彼女の居ない世界は轟々と音を立てて素通りしていくだけで、
どこもかしこもソフトフォーカスがかかって見えた。
そんなドキュソ塾の意識を呼び戻したのは……ぼんやりと手で
触れるとも無しに触れたチャックの、微かな金属の音だった。
(えへへ〜)
記憶の中のいっちが、子供のように笑いながらこちらの服を
いじる。けれど、今その手で触れる金属には何の温もりも無い。
冷たい無機物が温もりを失っていった彼女と重なる。
ドキュソ塾はざっと店内を見回し、すぐに空いているコンセントを
見つけ出した。
371 :
鯖野コッポラ:02/02/02 00:32 ID:JWvUoyPy
「俺は分かるんだ。つい昨日まで入院していたからな。
情報が欲しいだろ?とにかく少しでも多くの情報が欲しい。
だからここで張っていた。
同じ事を考える奴が現れるだろうから。
俺を蝕んでいるのは不治の病だ。どうせ病気と付き合って
生きていかなきゃならんのなら好きな事をしたい。そうだろ?」
刺身は独白を続ける。
「入院中に俺はアングラな知識をネットや本で仕入れた。少し
配線をいじってやれば簡単にショートする。
あんたは"スイッチ"を押した。それだけの事だ」
壮絶な光を放つ眼をすっと細めて、点滴の管に繋がる彼の
長い指がキーボードの上を走り回った。
「……せっかくマジレスしたのに、聞いてないのか?」
ドキュソ塾は何も答えない。死骸の鼻孔から流れ出た鮮血を
見て、刺身は自分の鼻から食道へと繋がる栄養液の管を撫で
皮肉げな笑みを浮かべた。
「あの世でお幸せに」
死亡者:暁☆ドキュソ塾
____________________
勝手にサブストーリー作らせてもらう。
前の方で名前が出てたドキュソ塾をとりあえず登場させて
容赦なく殺した(ワラ
刺身はクローン病って名前のイメージから殺人兵器っぽく
してみた。
や、べ、ぃ?!文章が抜けてるねぃ!?
>>370-371の間に
(彼女を殺した奴は自分がこの手で……!)
ザクっと、まるで仇であるかのようにドキュソ塾は充電器のプラグを
コンセントに差し込んだ。
その途端、ピ、と小さな電子音が誰もいない店内に響いた。
「っな……!?」
しかし彼の発した語は言葉にならず、白煙と飛び散る火花の中に
かき消えた。
「やれやれ……」
しばらくして薄靄の向こうから現れたのは刺身☆ブーメラン(以下
刺身)だった。
かつてはえなりかずきと呼ばれたその顔も今では痩せこけ、身体
のそこかしこから無惨なチューブが伸びている。
刺身は舞い散る粉末を煩わしそうに坊主頭から払いのけると、
ショップの床に倒れ伏すドキュソに向かって声をかけた。
暁!ドキュソ塾じゃないか?
ドキュソは半角カナの方向で。
(・∀・)
(・∀・)イイ!!
おお!!
(・∀・)イイ!!
【二日目・午前7時】公園
デリカシの最期を見届けた後、けんは京大様の亡骸と共に公園に来た。
遠くに誰かの死体が見える。けんは目を背け公園の奥へと進んだ。
大きな池が見えた。京大様が暇を見つけてはやって来て、白鳥に餌をやっていた池だ。
けんは、京大様をとりあえずここに眠らせてあげようと思い、危険を冒してまで連れてきたのだった。
(京大さん、少しだけここで待ってて下さい。後で必ず…)
京大様の安らかな寝顔を一度だけ見ると、けんは京大様に背を向け歩き出した。
「!」
けんの視線の先に人影が見え、それが近付きながら話し掛けてくる。
「…おはよう、けん。」
「K………」
Kはけんを待っていたのだ。
突然の再会に戸惑うけんに向かい、Kが口を開く。
「アレから色々考えた。その答えをどうしてもけんに言っておきたかった。」
朝日を背にけんは複雑な表情を浮かべながら答えを待つ。
Kは張り詰めた表情のまま腰から銃を抜き、けんに向けて二度引き金を引いた。
驚きながらもけんはその場を飛び退き木の幹の陰に隠れた。程無く木の幹が銃弾でえぐられる。
「K!どうして、どうしてなんだ!?」
戸惑いを隠せずけんは問い掛けた。Kは迷いの無い目でけんの方を見ながら答える。
「このままで終わるのが嫌なんだ。これからなんだよ、オレは!」
Kは回り込みながら撃ってくる。けんは避けながら別の木の陰に隠れ、訴えた。
「その為なら何をしてもいいのか?例え人を殺しても!」
「生き残るんだよ!…その為には何だってやる。人だって殺す。」
Kの言葉にけんは仕方なく短刀を抜いた。京大様の血と想いが染み込んだ短刀を。
(とりあえず弾を撃ち尽くさせるんだ。その隙を狙えれば何とか殺さずに済ませられる。)
断続的に続いていた銃声が途切れた。それにあわせて身を乗り出す。
「ぐぁっ!!!」
けんの右耳の先が弾けた。Kは銃にまだ弾を残していたのだ。
いきなりの痛みにけんの体勢が崩れた。その隙に逆にKがけんとの間合いを詰める。
(今からじゃ間合いを空けられない!こっちも詰めるんだ!)
自分に近付いてくるけんにKは完全に意表を突かれた。舌打ちしながらけんに銃を向ける。
(届く!)
けんはKの銃に向けて、渾身の力で短刀を振り上げた。―――しかし短刀は虚しく空を切る。
激しく落胆するけんの額に銃口が触れた。
「…なぁK、一つだけ聞かせてくれないか?」
「……いいよ、一つだけなら。」
眉一つ動かさずKは答えた。それを聞き、表情に先程の落胆をおくびにも出さずけんは言った。
「―――どうして逃げた?このゲームから。」
「!!?」
Kの眼は予想だにしなかった問いに大きく見開かれる。Kは必死で言い返した。
「オ、オレがいつ逃げた!?人も殺さず生き延びようとしてるあんただ!!負け惜しみなんだよ!! 」
「お前が選んだ道は自分にとって楽な方じゃないか。それを『逃げ』とは言わないのか!?」
自分の置かれた状況を省みないけんの強気な態度に、Kは苛立ちを隠せない。更にけんは続ける。
「お前自身が誰よりその事を分かってるんだろう?その苛立ちが何よりの証拠じゃないか。
自分の信念を曲げて楽な方を選んでいるだけなんだ。
このゲームで人を殺さずに生き残る難しさから、今のお前は目を背けているだけなんだよ。」
聞き終えたKの顔からはいつの間にか苛立ちが消えていた。そしてどこを見ているのか見当がつかない呆然とした顔を見せる。
「…あんたの言う通りだ。わかってた。このゲームに乗って、生き残ろうとする時点で人として死んでるも同然だってことは。」
「K…」
Kの腕が下がり出し、けんの額から銃口がそれた。しかし、銃口は再び額へと向けられる。
「でも引き返せない。こんな所で死にたくないんだ…だからヒスを殺した。もう…引き返せないんだよ!」
「…ばかやろう…」
けんは一言だけ呟き短刀を突き出した。撃たれる事は分かっていたが。
けんの表情は驚愕に包まれていた。
手にした短刀からは血が垂れている。短刀の先は今、Kの体内に収まっていた。
「…どうし…て……?」
けんは困惑した。Kの腹部に深く突き刺さった短刀を見ながら。
そんなけんを見つめながらKは言った。
「お前に…止めて欲しい……お前の言葉で…そう…思った……」
けんは無言で立ち尽くし、地面に倒れるKを見続けた。
「…これで…12時過ぎても……死なないでしょう?」
「!…そんな事…どうでも良いじゃないか……」
「…でも…やっぱりあんたは……殺しちゃダメだ……」
その言葉と共にKは銃を自らのこめかみに当てた。
「……この銃…持ってって…ください……あなたを…見届けたい…カラ……」
「やめろぉ!!!」
けんの声と引き金が引かれるのはほぼ同時だった。
池の水面はこのゲームに不釣合いにキラキラと輝いている。
「京大さんと一緒に待っててくれ。話合わなそうだけどな。」
苦笑しながらけんはKを京大様の隣に寝かせた。
Kの銃を腰に刺し二人にしばしの別れを告げ、けんはこの血生臭いゲームを再開した。
死亡:K
【二日目・午前7時頃】自動車整備工場
ギャ乱DOと富士は焦っていた。焦りの原因は当然、ひろゆきの決めた新しいルールだ。
その二人の内でもギャ乱DOは特に焦っていた。予め3日間の行動をある程度考えていたギャ乱DOにとっては
このルールは不都合極まりなかったからだ。
ギャ乱DOは、この3日間である程度の協力者を集め『ある計画』を実行するつもりでいた。
それには2人では明らかにコマ不足である。にもかかわらずこのルール。
これの所為で今までやる気のなかった者ですら信用できなくなってしまう。
当然富士が裏切らないとも限らないし、それ以前に自分はともかく富士に誰かを殺せるかどうかも疑問だ。
そして一人でも殺している者は殆ど出歩かないだろうと言う事。
12時まで待つだけで勝手に敵が減ってくれると考えればこれも当然だ。
(殺人者の気紛れを祈るか協力者候補を殺すかしか無いのかって!)
ギャ乱DOが苛立ちながら、二人の集めてきた材料で何種類かの爆弾を作る準備をしていると、
それを手伝っていた富士が話しかけてきた。
「ねぇギャ乱DOさん。なんでこんな物の作り方知ってるんですか?」
それを聞いたギャ乱DOは作業の手を止めず、富士の方を見ないで話した。
「自分で勉強したんだよ。」
「べ、勉強って…なんでそんな事……まるでこういう事があるの知ってたみたいじゃないですか。」
「知ってたよ。」
「…えぇっ!!?」
予期せぬ答えに富士は驚きを隠せない。
「知ってたって言うより聞いたんだけどな。天邪鬼に。」
「天邪鬼って……あの、引退した、AAが有名な天邪鬼ですか?」
「あぁ、あいつは実は昔試験的に行われた、一般人を使った『プログラム』の生き残りなんだ。
一般人の中に天邪鬼を特別参加させてデータを集めようとしたわけさ。色々教えてくれたよ。
その後天邪鬼は『プログラム』阻止の為にある反政府組織の人間になって色々してたらしい。」
富士はあまりの事に驚きながらも黙って聞いている。ギャ乱DOの話はまだ続いた。
「オレが聞いたのは5年程前、『プログラム』の計画にひろゆきが加わったらしい事、
それと『プログラム』の大まかな概要だけだ。生き残ってから天邪鬼はずっと監視されてたらしい。
「…じゃあもしかして天邪鬼が引退したのは……」
「それはわからんが、数日前まで元気にしてた奴が、いきなり俺にメールを送って消えたんだ。
『ひろゆきには気を付けろ』って。『生き延びる手段を身につけろ』と。
それに天邪鬼はサトポン辺りにも教えるつもりだって言ってたからな…
サトポンが真っ先に殺されたのは、『プログラム』について知ってたからかも知れんな。」
富士はもう何も言えずにいた。作業の手を止め、そんな富士を見て溜息をつきながらギャ乱DOは言う。
「でもな、今のオレ達はそんな事心配してる場合じゃ無いんだって!」
そう言ってギャ乱DOはさっきからの色々な心配事を富士に言った。『ある計画』だけは伏せて。
「前にも言いましたけど、オレがギャ乱DOさんを殺せるワケないじゃないですか!」
「じゃあ他の誰かを殺せるのか?」
「う・・・・・・・・」
いつまでも答えの出せない富士から目を離しギャ乱DOは爆弾作りを再開した。
【二日目・午前7時半】公園
葵は不思議だった。そして不愉快だった、自分自身に対して。
支給された兵器の中でも高性能な部類に数えられるであろう、自分のショットガンは全く標的を捉える事はなかった。
「みんな…」
葵は無力感に包まれていた。
こんな武器を持っていたって、誰1人救えなかった・・・。
葵は今、敵と対峙していた。
幸い致命傷こそ負っていないものの、体中に無数の傷跡が発生している。時間の経過と痛みと焦りが比例する。
それ以上に、精神的なものが葵を追い詰めていた。
葵は、先程生まれて初めて殺人を犯した。その罪悪感、不快感、自らに対する嫌悪感…
その負の感情に耐え切れなくなったが如く、彼女は大声を上げる 「この葵を、なめるなーっ!!」
同時に頭上から無数の砂の塊が舞い降りる。葵は慌てて身を捩る。するとその方向に今度は鉄の塊の来襲だ。
どうやら葵の相手は相当の曲者らしい。とにかく先方が狡猾な事、極まりない。
葵はほうほうの体で叢に身を隠すと、悔し紛れに発砲する。しかし敵を捕えた気配は全く感じられない。
「おいおい、少しは落ち着けよ。」 馬鹿に仕切った様な低い嘲笑が葵に降り注ぐ。
「うるさいっ!!」 葵は怒りに任せ引鉄を引く。しかし当たらない。完全に泥沼だ…。
葵は逆上している。自分を見失っている。幾度も見た、負ける典型的なパターンだ。
葵は兵器性能で圧倒的優位に立ちながらも、ママンのインサイドワークの術中に嵌り、もがいていた。
一目散に斜面を下り降りようとする。しかし自らの左足が言う事を聞かない。鉄の塊の飛来により腱の一部が損傷している。
「…クソッ…」 葵は忌々しげに呟く。しかしその対象は何であるのか、思い通りにならない自らの手足か、
一向に留まる事を知らない照り返す太陽に対してか、敵であるママンに対してか、それともこの運命に対してか…
その何れでもないかも知れないし、その全てに対してかも知れない。とにかく彼女は苛立っていた。
流れ出る血を塞ぐ内に赤くなった掌に彼女は問い掛ける。「この血は誰の血だよ!私か!京大様の血か!」
京大様殺害後、半狂乱の体で山道を駆け下りていた葵は司会者にその姿を発見され、全く希望しない第2ラウンドに突入した。
但し葵の真の敵はママンではなく、自らの良心の呵責であった。ママンの攻撃を受けながら、彼女の心は別の問い掛けで満たされる。
『…私は…汚れちまった…』 『…バカ言うな!殺さなきゃ殺されるんだよ!生きて他の連中、見返すんだろうが!』
『でも、本当に、ゲームに乗って、良いの?』
二つの相反する本心が彼女の脳裏を駆け巡る。目前の『ママン』という相手が自分にとって何の思い入れもない対象である事も、
葵の戦闘に対する集中力を削いでいた(生存の権利を得ようとするママンにとっては別だが)。
その矛盾に耐えられなくなった葵が選択した手段は『逃亡』である。
それに別に乗り気がしない相手と無理矢理戦う必要はない。既に私は生存条件をクリアしてるんだ…
そう言い聞かせると同時に京大様の倒れ行く瞬間が蘇る。「…ウルサイッ!」と自らを怒鳴りつけ彼女は戦場から脱出を図った。
木陰に身を隠し、乱暴な手当をしながら、葵はふと街中の風景を見やる。
その遠方には粉々に破壊されたホビーショップの残骸がうっすら滲んでいる。
「クソッ!」 葵は再び猛々しく吐き捨てる。「…誰も頼らない、頼らないって…頼らないよ!!」
葵の今回の戦闘における悲惨な迷走はこんな所から始まっていた。
ほうじ茶の死後どうしようもなかった葵は、薄暗い街中を一心不乱に徘徊していた。
彼女の心は疲労しきっていた。彼女の優し過ぎる心は殺人への割り切りを許さない。
葵は誰かにすがりたかった。心の悲鳴を受け止めて欲しかった。赤子の様に泣きじゃくりながら、彼女はその誰かを探しまわっていた。
…ピエロだな、私って…とんだお笑い種だ… 葵は膝から崩れ落ちながら、自虐的な感想を抱く。
彼女は心底思い知らされた。『もう私の居場所は、このラウンジにはないのかもしれない』という一番認めたくなかった現実を。
葵は再び山道を駆け下りる。居た堪れない現実から必死で逃げるかの様に。
その道を細身の女が追いかける。
苦笑と嘲笑の混ざった表情で、ママンは前方を凝視する。別に細心の注意なぞ払ってはいない。
御丁寧な事に血痕だけはたんまりと残してくれている。その痕跡をゆっくりと辿ってきただけの話だ。
「…可哀想に」 ママンは本心から呟く。この注意力の欠如、ボルテージの上がり易い性格…どれをとってもこのゲームに不適格だ。
吐息をひとつ、トボトボと山道を降る。別に葵が嫌いでしょうがない訳じゃない。しかし、あれ程仕留め易い獲物が他に誰がいる!?
ママンは鼻歌混じりに葵を背走する。
この女は結果的においしいポジションを得る術を熟知している。ママンは冷静そのものだった。
説明書きありがとうございます。
割り込んでも構わないです。
【二日目・午前8時】病院
SM考察隊(以下SM)は咳込みながら目を覚ました。いつの間に眠ってしまったのか、思い出せない。
確か病院の前辺りを移動中、12時の放送を聞いたところまでは覚えているのだが。
「おはよう、SMくん。いつまで寝てんだよ。もう8時だぜ?」
思考を遮り誰かが声をかけてきた。
朝日の眩しさに逆らいながら目を開けると右眼の潰れた男が見下ろしている。
「!…お前、箱か?その眼どうしたんだよ!?…!!何だこれ!?」
SMの手はロープで縛られ、両腕の間を通したロープが柱にしっかりとくくり付けられている。
SMは辺りを見回した。病院の一室らしい。放送を聞きショックで呆然としてしまった隙を突かれ、
後ろからロープで首を絞められ気絶した。そのままここへ連れて来られたのだ。
「箱、アンタ一体どういうつもりだ?」
箱はSMの顔面を蹴り上げた。
「何年年上だと思ってんだ、あぁ?呼び捨てにしてんじゃねぇよ。」
「…なんでオレが寝てる時に殺さなかった?」
「何でって?オレのストレス解消に付き合ってもらうからさ。」
粘りつくような笑みを浮かべ箱は答えた。そしておもむろに机から注射器を手に取る。
「なぁ、青酸カリって知ってるよな。あれ飲んだらすぐ死ぬけど、例えば注射器で
身体に入れたりしても死なねぇんだぜ。……死ぬほど痛いけどなぁ。」
言いながら、セブンとやりあったときに拾ったセブンの毒薬を取り出し机の上の皿に入れた。
それを水らしき液体で溶かす。
「っつっても知識だけでなぁ、いっぺん試してみたかったんだよ。」
出来上がった液体を注射器に吸い上げ、この上ない恍惚の表情で浮かべた。
「しっかり踊ってくれよ?愉快なダンスをよぉ…!?」
箱がSMの方を向いた瞬間、SMは体当たりを喰らわせた。しかし箱は倒れない。
腕に通されたロープが短く、威力が殺されてしまったのだ。
そしてロープの反動で逆にSMがこけてしまう。SMは何とか立ち上がり
机の上に置かれている自分の武器、金槌を取ろうと手を伸ばした。
しかしそれは遮られた。ボウガンの矢によって。
「うっ…ぐぁっ」
右の腿に走る激痛にSMはうずくまった。
さらに箱はSMに駆け寄り、足に刺さった矢を踏みつける。部屋中にSMの悲鳴が響いた。
「がぐぁぁあああぁつ!!!」
痛みにのた打ち回るSMを見下ろし、箱は吐き捨てた。
「ったくよぉ、お前と言いセブンと言い富士と言い鬱陶しいんだよ、このバカが!」
箱は思い切り何度も何度もSMを踏みつける。
「エロネタでしか売れねえんだもんなあ!聞いてんのかコラァ、セブンよぉ!!?」
もはや箱は気が昂ぶると人物の区別がつかないほどおかしくなっていた。
箱の罵倒と攻撃はSMが二度と動かなくなるまで続けられた…
青酸カリは無味無色で桃の香りがするらしいな(ドリーム
内容説明してくれてる人の題名のセンスが(・∀・)イイ!!
【二日目・午前8時30分】市立図書館
図書館に銃声が響く。この図書館は東金がにっくを殺そうとした市立の大きな図書館である。
その銃声が十数回続いた後わずかな静寂。そしてその静寂を引き裂く爆発音。
イパーイは図書館内を息を弾ませながら走り回っている。銃弾と爆発から逃げているのだ。
銃撃と爆撃の主はオルテガ。左手に寒敗から奪ったグロック34、
右手にうにから奪ったオートマチックのワルサーPPK9ミリ、更にサエコの手榴弾まで持っている。
もはや装備的には最強と言えた。
(おいおい、いつの間にあんなに武器手に入れたんだよ?吹き矢しか持ってなかったオルテガが。)
本棚に身を隠しながら、イパーイが心の中で不平を訴えている間にも、近くに手榴弾が転がってくる。
なんとか爆発をかわし別の本棚に隠れるとまたそこに銃弾が撃ちこまれる。
とりあえず12時まで身を隠そうと入り込んだ図書館に、こんな厄介な先客がいるとは。
(…あの時ちゃんと殺しとくんだったなぁ。オレの手持ちの武器でどう戦えってんだ?)
イパーイの武器で今使えるのは、警棒、目潰しスプレー、そして吹き矢。戦力の違いは明らかである。
状況を愚痴っている間に、銃弾が棚を突き抜けイパーイの顔の近くを掠めた。銃声が近い。近付いて来ている。
追い立てられ壁際に移動した時、オルテガがイパーイの移動に気付かず投げた手榴弾は、本棚の側面に当たり
運悪くイパーイが移動した方向に転がってきた。
(うぉ、マジかよ!?やべぇ!!)
あたりに爆音が鳴り響く。爆風は本棚を薙ぎ倒し、本を吹き飛ばした。
「―――ったくツキがねぇなぁ。・・・・!」
咄嗟に給湯室に飛び込み爆発をやり過ごしたイパーイは、ぼやきながらも何かを見つけた。
「イパーイィィーー!!どこ行ったぁ!?」
オルテガの叫び声が図書館に響く。当然返事は無い。銃のマガジンを入れ替えながら辺りを見回す。
(本棚の下敷きにでもなりやがったか?)
考えていると、少し離れた2階への階段を上がるイパーイの姿が見えた。オルテガはほくそ笑む。
(ヤツはオレの手でブチ殺さねぇと…じわじわ追い詰めてな。)
オルテガはイパーイを追いかけた。一応用心しながら階段を上る。反撃は無いまま2階に着いた。
2階も多くの本棚が静かに立ち並んでいる。静けさに苛立ちオルテガは再び叫んだ。
「おいイパーイ!ちったぁ反撃したらどうなんだ!?寝首をかきやがった裏切り者が!!」
何の反応も無い。そしてオルテガが行動を始めようとした時、『ガーー』と物音が聞こえて来た。
そして本棚の間から本を運ぶ台車が現れ、オルテガの目の前で壁にぶつかり止まる。
その台車の上には火のついた携帯用のガスコンロが乗っており、
ガスコンロには何かの缶がテープで固定されていた。スプレーの缶だ。
>>400 名前出すとネタバラしになりそうな場合はっ
適当に書いてみたんだねぃ
お互いお疲れテクマクマヤコン(゚∀゚)
オルテガが状況を理解するかしないかの刹那、オルテガの眼前でスプレーは破裂音と共に爆発した。
「ぐぁあぁぃがぁぁあぁーっ!!」
辺りに刺激臭が立ち込め、声にならないような呻き声を上げオルテガは転げ回る。
缶が破裂した時に飛び散った缶の中身をもろに全身で浴びたのだ。缶は勿論目潰しスプレーである。
「思ったより随分上手く行ったな。我ながら大したもんだ。そう思わねぇか?」
イパーイは自画自賛しながら投げ出されたオルテガの銃を二つ拾い上げた。
そして土下座のような姿勢でうずくまるオルテガの後頭部を踏みにじる。
「なぁ何とか言ってみろよ。親友裏切った俺はそんなに卑怯か?」
余裕を見せつけるイパーイの顔が固まった。オルテガの手に二つ手榴弾が握られていたからだ。
そのピンが今抜かれた。弾かれるようにイパーイは階段の所に駆け込み、必死で下の踊り場へ飛び降りた。
直後に轟音が轟き、風と煙と塵が踊り場まで降り注ぐ。
「うひゃ〜、さすがに死んだな、こりゃ。」
降りかかる塵に顔をしかめながらイパーイは2階を見上げた。
その後、満足げに戦利品を確認して図書館を離れた。
405 :
光収容:02/02/02 02:16 ID:???
レベル高い。
【二日目・9時過ぎ】自動車整備工場付近
ギャ乱DOと富士は不意に聞こえてきた音に足を止めた。富士は雷かと思い窓から空を見た、だが空は快晴だ。
「……何の音ですかね…」
「どっかで誰かが爆弾でも使ったんだろ。それもわりと近くだな。やりあってるヤツがいるんだろうな。」
ギャ乱DOは図書館の方向を見ながら言った。そして富士に問い掛けた。
「富士…行くか?」
「?…行くって……まさか……今の爆発の所にですか?」
「もうこんなチャンスは二度と無いかも知れんぞ。12時に殺されるのがイヤなら行くしかないだろ?」
「・・・・・・・・・」
「俺は行くぞ。こんな所にじっとしてひろゆきに殺されてやるつもりは無いからな。」
「・・・・・・・・・・・・」
黙って下を向いたままの富士にギャ乱DOは少し苛立った。だが放って置く訳にはいかなかった。
計画の手伝いとしてでもあるが、それよりも仲間として。
「なぁ、もし最後に生き残るのが箱だったらどうする?お前はそれでいいのか?」
「・・・・・・・」
「箱でなくても積極的に殺しをしてるヤツが何人かはいるハズだ。そんなヤツが勝者でいいのかって!」
語気を荒げるギャ乱DOに、それまで押し黙っていた富士がやっと口を開いた。
「……だからって俺たちが誰かを殺したらそいつらと一緒じゃないですか…」
ギャ乱DOはその言葉に軽く溜息をつき、間を空けてから答えた。
「わかってるって、そんな事は。
……だからオレはもし生き残れたら殺したヤツの家族に会いに行く。
もしそこで死んでくれって言われたら、喜んで、とは言わないが死ぬよ。そのくらいは覚悟してる。
このくらいで罪が償えるなんて思わないが、それがこの状況でのオレなりの責任の取り方だ。」
「…ギャ乱DOさん……」
「ま、あれだって。ひろゆきに拳の一発も食らわさないで終わるのはイヤだって事だよ。」
わざと強調し、ギャ乱DOは富士の依然として暗い表情を吹き飛ばすようにニカッと笑った。
(あ〜あ、ったく、ホントにツキねぇな。…神様ってのがいるんならひでェブッカーだぜ。)
鬱陶しそうな顔をするイパーイの視線の先にギャ乱DOと富士がいる。向こうも気付いているようだ。
富士は右手に銃を持っている。ギャ乱DOも右手に銃を持ち、左手には今飲んでいたのか
栄養ドリンクの瓶らしき物が握られている。二人との距離はおよそ15m。道は両側にブロック塀があり曲がり角が5mほど先にある。イパーイは思案を巡らせた。
(戦うってのはゴメンだな…となると逃げるか、いややっぱり近付いて裏切るのが一番かな。
富士は明らかにビビってるしギャ乱DOはあんまり乱暴しそうな感じもしないし…)
そんな事を考えながら、イパーイは手に持っていた銃をズボンの両ポケットにしまい両手を挙げた。
この行為はかなり危険なのだが、イパーイは二人の態度から基本的に戦う意思が無いのを感じ取っていた。
「待って下さいよギャ乱DOさん!オレはやりあう気なんて無いんですよ!」
イパーイは二人に聞こえるように多少大きな声を出しながら近付いた。当然哀願するような表情は忘れない。
だが思惑に反してギャ乱DOはイパーイに銃を向けた。
「とりあえずそれ以上近付くな。さっきの爆発はお前か?銃も一つはお前のじゃないだろ。誰のだ?」
「ちょ、ちょっとギャ乱DOさん、いきなり銃向けなくてもいいじゃないですか!あんまりですよ!」
油断していただけに演技以上に驚くイパーイ。更に戸惑う富士を尻目にギャ乱DOは続けた。
「悪いがお前を信用出来ない。俺たちに気付く前のお前の笑顔を見ちまったんでな。
この状況であんなに楽しそうな顔を出来るヤツを信用なんて出来ん。」
(何考えてんだこいつ!?そんな事でオレに鉄砲向けてんじゃねぇよ!!)
毒づきながらも、最悪銃を下ろさせれば充分だと自分に言い聞かせ、イパーイは芝居を続けた。
「…ってそれタダの勘じゃないですか!そんなんで殺されたんじゃたまりませんよ!
オレはオルテガにいきなり襲わ…」
「イパーイィィィィーーぃ!!!」
イパーイの芝居は突然の闖入者の無粋な叫び声によって打ち切られた。振り向いたイパーイは演技無しに驚く。
オルテガだ。左の手足は焼けただれ、鼓膜も破れているのか耳の辺りにも血が滲んでいる。
更に未使用だった目潰しスプレーの爆発をモロに浴び、目もろくに見えていないハズだというのに
オルテガは確実にイパーイのいる所へ手榴弾を投げてきた。
しかしイパーイは落ち着いてブロック塀の曲がり角に逃げ込み爆発をやり過ごす。そしてオルテガの出現と
爆発に驚くギャ乱DO達に大声で話し掛けた。
「どうせまだ一人も殺ってないんだろ?あとは任せるから頑張ってくれよな。
そいつマジでしぶといから気をつけた方がいいぜ?じゃあな!」
イパーイはいい加減疲れた身体に鞭打って走ってその場を離れた。
まともに喋ってるギャ乱が(・∀・)イイ!!
「オルテガ!俺だ!ギャ乱DOだって!」
ギャ乱DOは明らかな敵意を持って近付いてくるオルテガを説得しようと声をかけた。
無駄だろうとは思いながらも。そしてやはりオルテガは止まらず、新しい手榴弾のピンに手をかけた。
「イパーイィィ…お前らどっちがイパーイだぁ……」
「ギャ乱DOさん、ど、どうしましょう?」
富士が戸惑っている間に手榴弾が飛んでくる。それは見事に自分達の所へと向かって来た。
「とりあえず避けろ!」
二人はオルテガのいる方とは逆に飛んで地面に伏せた。さっき自分達のいた辺りで爆発音が聞こえ、
続けて石つぶてが爆風に乗って二人にぶつかった。
起き上がりオルテガの方を見ながら、ギャ乱DOはまだ決心出来ずにいた。オルテガを殺すことを。
富士には大見得を切ったが、いざ戦う段になると手が震えた。
今まで思い出しもしなかった何でもない出来事までがまるで見えない鎖のようにギャ乱DOに絡みついた。
考えている間もオルテガはゆっくりと近付きながら痛々しい左腕に提げたデイパックから手榴弾を
漁っている。だが手榴弾が残り少ないのか腕の感覚が弱まっているのか、なかなか見つからないようだ。
(今だって!何やってんだ!早く動けって!)
動けないギャ乱DOの視界に、ようやく手榴弾を手にしたオルテガが映る。
オルテガはもう15m程の距離に来ていた。
「ぐ、オルテガぁぁぁぁー!!!」
自分の心の束縛を解くためにギャ乱DOはあらんばかりの声で叫んだ。そしてライターを取り出す。
その時オルテガが投げた手榴弾はギャ乱DO達を大きく外れブロック塀の向こうの民家に飛び込んだ。
もうオルテガの身体に限界が来たのだろう。
それを悟ったギャ乱DOは、さっきの手榴弾の爆発によって飛んでくる破片を気にも止めず
左手に握り締めていた瓶の口から覗いている導火線に火を付けた。
そしてそれをオルテガに向かって投げた。
爆発音が響き、ギャ乱DOは一瞬目を閉じた。
オルテガは痛みに転げ回っていたが20秒ほどで殆ど動かなくなった。
二人は自分達の目の前で荒い呼吸しかしていないオルテガをじっと見下ろしている。
ギャ乱DOは未だに震える自分の手を見ながらこう言った。
「富士……オルテガにトドメ…刺せ。」
「えっ?・・・・・・・」
富士は自分の置かれた状況も忘れて驚いた。
「放送で言ってただろ?『どんな形でもいい』ってな。二人で一人を殺してもいいハズだ。」
スピーカーの前で一部始終を聞いていた男は、ニタリと笑った。
「まあ確かに問題は無いな。…ただあのへタレ富士にそれが出来るかどうかだな、クックックッ。」
ん〜夜勤、コイツがどうするか賭けないか?」
「イヤですよ。ひろゆきさん、負けたら絶対ごまかすでしょう?いつもみたいに。」
苦笑しながら夜勤が答える。こんな聞くに堪えない会話がしばらくの間続いた…。
銃を構える富士の手が、唇がガタガタと音でも立てるかのように震えている。
オルテガの呼吸は目に見えて弱っていく。だが富士は人差し指に力を込められないでいた。
「やれって!富士、やれって!」
ギャ乱DOの檄も富士の耳には届かない。それから1分くらい経った時、富士の震えは止まった。
富士が覚悟を決めたのだとギャ乱DOは安心した。
そして震えの止まった富士はギャ乱DOを何とも言えない複雑な顔で見る。
富士はその表情を最近どこかで見た気がした。――――――――エナイの表情だ。
富士は確かに覚悟を決めた。 だがそれはギャ乱DOの望む物ではなかったのだ。
「おい、富士・・・・・・。」
「ギャ乱DOさん、やっぱり俺には出来ないよ。でも殺されるのも…イヤだ……。」
(おい、おい富士…待ってくれよ……お前まで……)
声が出せない。やめて欲しいのに、いややめて欲しいからこそ声が出なかったのかも知れない。
銃口が下から富士の顎に触れる。
「ギャ乱DOさん、手伝えなくてごめんなさい。……励ましてくれてありがとう。」
言い終わると同時に富士は崩れ落ちた。 自らに銃口を向けたのだった。
数分間の沈黙が続いた。
ギャ乱DOは地面にヒザをつき虚空を眺めている。
(何をしてるんだ、何をやってたんだ、何のためにおれは・・・・・・・)
大きすぎる無力感と悲しみに包まれ、ギャ乱DOは涙すら流せなかった。
「ギャ乱DO!ギャ乱DO!大丈夫か!?しっかりしろよ!」
ギャ乱DOは虚ろな表情のまま、自分の身体を揺する人物を見た。けんだ。
「……あぁ、けんか……何してんだ?…こんな所で……」
「それはこっちのセリフだろ!身体は大丈夫か?
とりあえず誰か来る前にどこかに行こう。ここにいたら危ない!」
けんは力無くうなだれるギャ乱DOに肩を貸し、近くのコンビニに身を隠した。
「何があったんだ?ギャ乱DO。あそこにいたのはオルテガと富士だろう?…何か言えよ!」
抑えながらも力を込めた声でけんは何度も問い掛けていた。そしてようやくギャ乱DOは自嘲気味に呟きだした。
「…俺は三人も殺しちまった……エナイも…富士も……オルテガも……」
けんはギャ乱DOがゆっくりと今まであった事を話すのを最後まで黙って聞いた。
そして聞き終えても無言のけんにギャ乱DOは言った。
「なぁけん…おまえの銃、貸してくれないか……」
「……貸したらどうするんだ?自殺でもする気か。」
厳しい表情でけんは問い返す。そんなけんを気にも止めず、疲れ切った顔でギャ乱DOは答えた。
「…もういいだろ?もう疲れたんだって……」
そんなギャ乱DOをけんは無言で思い切り殴りつけた。そして力無く倒れこんだギャ乱DOの胸倉を掴み激昂した。
「あんたは何で富士やエナイがそういう事をしたのか分からないのか!?
あんたに生き残って欲しいからじゃないか!!」
「!?」
その言葉に微かにギャ乱DOの表情が変わった。けんは幾らか息を落ち着けて続けた。
「二人は戦うのを放棄した。でもその事で迷惑をかけたくないからお前から離れたんじゃないのか!」
「……それは…都合が良過ぎやしないか?……」
「確かに都合は良過ぎるかも知れない。でもそんな想いはあったんじゃないか?
それにそう思ってあげないと、お前まで死んでしまったら二人は無駄死にじゃないかよ!」
ギャ乱DOは少なからず動揺を見せる。だが顔を逸らしてけんの言葉を拒んだ。
「…何がわかるんだ……お前に何がわかるんだって!」
「わかるさ!俺だって…Kに命を貰ったんだ……」
けんは苦しそうな表情を見せながらもKとの事を全てギャ乱DOに話した。
東金に狙われた時、その後の別れ、Kとの再会と戦い、そして結末まで。
話し終えたけんの瞳は先程のギャ乱DOとは対称的に強い光を灯していた。そして真っ直ぐにギャ乱DOを見つめる。
「ギャ乱DO、一緒に戦わないか?!ひろゆきに鉄拳くらわせるんだろ?」
「・・・・・・・駄目だ。」
この返事にけんは驚きと悲嘆を顔に出した。
だがギャ乱DOは続けて言った。
「鉄拳?そんだけじゃあ済まさねえ!ケツの穴に銃弾撃ちこんでやるよ!」
一気にけんの表情は晴れ、二人は無言でガッチリとお互いの手を握った。
…この時近くで倒れている富士がまだ生きていることを二人は知らなかった…。
死亡:オルテガ
んじゃぁ僕を殺した葵は俺よりもっとダサく殺してください。
サイボーグとか奴隷皇子とかもうどうでもいいです。
頑張ってください。
この流れで逝くと葵はかなりダサい死に方になりそうだが
ケ、kerberos登場キボンヌ
ワカタ!
優勝者はラウンジウォッチャーだ
暗闇サンタ登場キボンヌ
死に際に「内臓出ちゃう」と、言わせてくれ
さて読むか。
わーい、おもしろーい
423 :
URD970:02/02/02 13:33 ID:sgrXsG01
生き残ったヤツが勝ちか?
それなら登場しないオレ最強!!!
殺されないもんねーーフフン。
すげーな、固定の見方かわっちまったよ。
やんや やんや
これからしばらくきちんと売名行為するんで出してくださいお願いします。
なんか俺がかなり(・∀・)イイ!位置にいるよ???
名スレage
なんで名スレなんだ?
おもいっきり固定ネタだけにsageて欲しいんだが
荒らすつもりはないが、「sage」てくれってこと
大体読んだ。面白かった
これでバトロワ知ったかぶっても大丈夫?
いやー、更新が楽しみです
もしも上手くいかないようなら、わたしが出した刺身に関しては適当に
片づけるんですけどねぃ(ワラ
どうします、ラウンジウォッチャーさん
>>429 原作とはだいぶ違うみたいですよぅ
下手に進めるとウォッチャー氏の書かれた文が無駄になるからねぃ
返事待ちってことで
もし手一杯なようなら要望の出たキャラ片っ端から格好良く殺し合い
させるでぃす
ここで売名行為するかどうか?で固定としての真価が問われるな。
あからさまな自己顕示は(以下略
確かにね。
つってもそれなりにキャラ立ってないとやはり書きづらいだろうて。
>>434 どうでだろう。結構固定のキャラは重要視してな・・ パンッ!
でも微妙にスレ上のネタ出してるからな。空気固定は書きづらいかと。
固定のキャラがおかしい。
それは多分音楽板とかのバトルロワイヤルをコピペして
名前だけ変えてるからだろうが、
序盤でponがピーピー泣いてヘタレキャラになっていたのには激しく違和感。
しかも時々消し忘れているのか「歌手」や「稲葉」など
まったく関係ない言葉が出て興ざめ。
まあまあ、自分が不遇だからってそう噛み付くなよ、サトポン
あんまりラウンジのことをしらないヤシが
コピペ&改ざんして貼っているのかもな
あれだけのものを一から作り直すとなるとなかなか難しいと思うぞ
あうう…デリカシなんてかわいそう…
443 :
名無しさん?:02/02/03 23:32 ID:???
ageruze
444 :
名無しさん?:02/02/04 00:24 ID:PUQO7DzY
age
全部読むのめんどい
誰か要約して
兄ちゃんねる固定同士が殺し合い
じゃなくて2ちゃんねるラウンジの間違いだ。
別の事考えてた。
首謀者:ひろゆき 側近:夜勤
生存中参加者:
[非暴力派]けん 富士 セブン ギャ乱DO
[武闘派] K 山田 ポリタンク ゆきのふ 箱 オルテガ お××イパーイ
[どっち派?] 葵 <12名>
死亡確認済出演者:
サトポン 山崎 開店寿司 いっち pon 256兄さん 餅 出会い系、治療不可
ななーし ほうじ茶 原 マーカー じょか 助教授 にっく 弥市 鮎崎 マシ
なぐ よいよ 東金 純ぷに びーらぶど うに サエコ 寒敗 梵
さすけ エナイ ニセモノ(非参加) ヒス 京大様 デリカシ <34名>
少し古いデータだが。
ポリタンクやゆきのふが活躍してるのが納得いかないよな
450 :
ポリタンクを抱えた渡り鳥φ:02/02/04 11:52 ID:hX0UuT8N
あははははは
カスが陰気にsageで妬んでやがる
ムダに葵贔屓に見えるが
やらないよりやってくれた方が面白いのにな
452 :
名無しさん?:02/02/04 15:52 ID:ULj4eIjw
もちろん葵のレイープシーンはあるんですよね?
>453
それでレイープされまくった間に、殺し合いは進行し、
監禁中の葵が結局生き残るのな。
そして葵は誰の子供か判らない子供を出産します。
それが「真の固定」。
おお、言い伝えの通りじゃ!
しまった、オチた。
おい、何てダサイ死に方なんだw しかも踏ん切りつかねぇいい人役かよ ギャハハh
>>450 ちきしょ、悔しいがお前いいなぁ。。ワラ
作者…飽きたか。せめて全部書いてしまえ
テンプレコピペだろうとなんだろうと面白いものは面白い
しかし空気コテハンの漏れが言うべきじゃないだろうが
ある意味ラウンジコテハンてのは凄いな
こんだけ殺してもまだまだ尽きない
おまけに殺されたコテハンが怒って荒らしに走ったりもしない
むしろ喜んでるし登場させてくれという・・・
書き溜めている最中だと願おう。
>>459 ここまででも、かなりな労力だろうに。
俺バトルロワイヤル読んでないから、続きが気になるんだけど…
ちなみに原作のバトロワとは同じじゃないですよ
まーだーかー?
ほ
ほしゅ
仕事が忙しいのか?
(´ー`)y-~~ ほす
469 :
名無しさん?:02/02/06 00:01 ID:9sUD2SoQ
age
気長に保守
俺は大変嫌なキャラのまま、死なず、生きず、dat落ち?
夜保
続編期待あげ
ラウンジウォッチャー頑張れ保守
鯖移転でdat落ちしたと思ったってオチ
481 :
さすけ:02/02/09 19:46 ID:???
(゚∀゚)
483 :
URD970:02/02/10 09:07 ID:Rk7Pc6rx
邦楽のスレが完結してからはじめるつもりなんだと思いたい
保守だけで1000行きそうな勢い。
続きが気になるぽ。
491 :
名無しさん?:02/02/12 02:49 ID:iB43DoUw
寝る前にage保守
ラウンジウォッチャーはいずこ?
ウォッチャーさんが来ないなら進めましょうかねぃ・・・
とりあえず自分の出したキャラだけでも始末をつけないと( ̄ー ̄)
おながいします
500
保守で1000逝きそうなよ‐か・ん
展開、どうしましょうか。
1、刺身自爆(・∀・)イイ!!
2、そう言えば途中参加だから相方がいるんだよな…
相方出そうぜぃ(あえて無視していた作者
出来れば配線&爆破関係の資料集めにOCEAN'S ELEVENを見に行きたい所。
hosi
hyuu
ma
>>512 今週金曜オーシャンズイレブン観て来るから待っててねぃ
それで少しは進むはず
実は他の所でもオリジナル長編小説(固定ネタ)やってるから
結構忙しいのだねぃ
出来れば保守書き込みだけでなく、指針を示して欲しい。(
>>507とか)
ラウンジウォッチャー氏だけを待ってる、というのなら仕方ない。
諦めよう。
当然だけど、鯖野にはウォッチャー氏と完全に同じ事は出来ないから。
あげてみるか
保守のお手伝いに来ましたっ!!
テスd
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!・・・の?
ちょっと待ってください。
保守してる奴らって目的と手段が入れ替わってるんじゃない?
ん?
保守
固定は素直に名前だせよ
さて俺はヲッチャーに書いて欲しいがどうだ保
目的:ラウンジウォッチャー氏が戻って来て書いてくれる
手段:それまで保守する
ウォッチャーが来てるのに空発言保守だけってどうよ?
本当にスレ見てるのかって気がする
俺は色々発言して急かしたくないという考えから
空保している。勿論、発言保守する時もある。
空保によって読みたいという意思を表してるつもり。
発言して相手に意思を伝えてこそ掲示板だと思うが
空保にもそれぞれの考えが込められている。
空保だろうが発言保守だろうが「読みたい」という気持ちを表した
1つのレスに変わりないと思うが。
531 :
529:02/02/24 17:25 ID:???
どうでもいいんだけどな
なんか鯖野の書き込み見てて可哀相になったってだけ
夜勤さん、ひろゆきの側近かよ!
ワラター
なら、最初から『鯖野』と書けと
『ウォッチャー』と書く必要はないだろと。
まぁ、どうでもいいか
?
【二日目 8:00過ぎ 体育館〜病院】
時刻はイパーイがオルテガとの戦闘に終止符を打った辺りから少し前に遡る。
作戦本部に設置された巨大モニターは数ある監視カメラの内、静かな公園の
風景を映し出していた。
監視員のマァヴが、彼の普段使っている顔文字(^_^;)とそっくりな微苦笑を
浮かべつつ定例報告をする。
「午前8:02、Kの死亡が確定しました。殺害者はけんです」
「驚きましたね、K。僕の中では本命だったんですけど」
呑気な声色で夜勤が誰に言うともなく言う。
「……」
不機嫌そうな顔で押し黙ったまま、ひろゆきはモニターから目を離さない。
それを気にとめる事もなく夜勤は少し、悪戯っぽく問いかけた。
「で、どうします?今の判定?」
「どうするって、何を」
露骨に嫌そうな顔をしてひろゆきは問い返した。
「いえ、今のけんですよ。どう見たって不戦勝みたいなもんでしょう。
殺害の意思が無かった事は明白。
ですから、Kの自殺という形にしませんか?それでけんは……」
「良いんじゃないですかね、けんの勝ちで!」
夜勤の言葉を遮ってどうでも良いとばかりにひろゆきは吐き捨てる。
「それよりね……」
苛立ちを隠さない声色のまま、ひろゆきはギラギラとした両の瞳で、手元に
置いてある赤い斜線の引かれた名簿を睨み付けた。
「どいつもこいつも……
あっちでは戦闘放棄、こっちでは誰も殺さず逃げ回ってばかり。
プログラムの主旨を理解しているのはポリタンクだけですか?」
「把握し過ぎですけどね、彼の場合は」
マァヴが横から口を挟み、苦笑を漏らした。
「 『お前を殺す事は出来ない』
コテハン揃ってみんなで馴れ合いモナーモナー!おめでてーな!!」
うまい棒チーズ味とベジタブル味を2本同時にかじると、ひろゆきは一気に
冷めた珈琲をあおった。
「中でも一番のヘタレがこいつです!」
ひろゆきは発信器から得た各人の所在地が表示されている、別モニターを
レーザーポインタで指した。
揺るぎない紅いポイントの側で、弱々しく明滅を繰り返す一つの点が「病院」
と表示された建物の中にあった。
「ああ、ひょうですか、確かに」
そっけなく夜勤は同意を述べる。口の端に浮かんだ冷笑。
「なんでしたっけ?ああ……『ふかわひょうって言う奴ぶっ殺す!』
言ってる事だけは凄いんですけどね。所詮口先だけの軟弱男。
勢いだけで攻撃には生かされていませんから」
「オサレさんになりたいなんて言ってるようじゃねぇ」
「ええ、戦場は生き残れませんよ」
次々に辛辣な意見を告げる夜勤とマァヴ。
「……育てるズラ」
二人の側近たちの意見を黙って聞いていたひろゆきは、何か面白い悪戯を
思いついた子供のように、くすくす笑うと得体の知れない独白をした。
熱く語った後で彼はすっと表情を消すと次の瞬間、楽しくてたまらないと
いった感じの笑みを満面に浮かべてみせた。
「それに、素手で人を殺せる機会なんて滅多に無いズラ。。ふふっ」
すっかり上機嫌に戻ったひろゆきは勢いよく椅子を蹴倒して立ち上がる
と大声で指令を出した。
「マァヴ、待機してる奴を引っ張って来いです!!」
?! 語ってない!語ってないYO!!
>>538と
>>539の間に
(『育てる』?何を?いや、誰を?
まさか、ひょうに薬物投与でもするのか?)
隠しきれない難渋の色を浮かべた夜勤の顔を見て、ひろゆきはすぐに彼が
考えているおおよその事を把握したらしい。
「考えすぎです。オイラが言ってるのは固定を育てるって事です!!」
自分のアイデアに酔ったのか、誰の目も見ずに視線を宙に泳がせたまま
オーバーアクションでひろゆきは叫ぶ。
「場の空気を一瞬で読み、名無しが、周りの固定が求めている事を即座に
書き込めるような固定!!ネタスレはネタを、議論スレにはマジレス!!
TPOに合わせて書き込める!!!
『ネタをネタと見抜ける人でないと匿名掲示板を利用するのは難しい』
まさにそれだ!!!」
誰にする?
1,新規参加者
2,1を連れてくる人間=管理側
3,1と組む人間(出来れば共通点が欲しい、1より知名度低い)
マジで葵レイプシーン入れた方が良いなら考えとく。
調子こくから葵さっさとコロセ
テレホになったら、もう一回あげて
意見を募集しる。
再び進行age。
正直、ウォッチャーの思う通りで良いと思われ。
俺的には、
新規参加者も良いが、全体の釈を考えた上で、無理の無い
スケジュールがよろしかろう
2.1が誰かわからない…
3.2と同様の理由にて、不明。
葵のレイプシーンキボンヌ。
殺しちゃってください
サイボーグで復活キボンヌ
固定共、アピールするチャンスだぞ!
一応こんなの貼ってみる
マジレス系 雑談系 ウザ系
【横綱】 助教授 【横綱】 【横綱】 pon
【大関】 kerberos 【大関】 【大関】 東金
【関脇】 にっく 【関脇】 【関脇】 ポリタンク
【小結】 SM考察隊 【小結】 なな☆ーし 【小結】 箱
【前頭1】オルテガ 【前頭1】殺助 【前頭1】餅
【前頭2】餅 【前頭2】ママン 【前頭2】開店寿司
【前頭3】おヌ 【前頭3】おヌ 【前頭3】さすけ
【前頭4】Airhold 【前頭4】エセ作@家系 【前頭4】ヴァレンシア
【前頭5】箱 【前頭5】寒敗 【前頭5】山崎
【前頭6】純ぷに 【前頭6】うに 【前頭6】ぽこにゃん
【前頭7】ガルチラ 【前頭7】梵銃ル 【前頭7】原
【前頭8】とむ 【前頭8】葵 【前頭8】エナイ
【前頭9】みか 【前頭9】純ぷに 【前頭9】URD970
【前頭10】informer 【前頭10】ドリル 【前頭10】Seven Stars
ネタ系 厨房系 特殊能力系
【横綱】 絶望ヶ丘団地 【横綱】 かお餅 【横綱】
【大関】 墓山 【大関】 じょか 【大関】 がんがん
【関脇】 にっく 【関脇】 マーカー 【関脇】 お××イパーイ
【小結】 けん 【小結】 ひょう 【小結】 梵銃ル
【前頭1】おヌ 【前頭1】原 【前頭1】要約屋
【前頭2】ラウンコ 【前頭2】さすけ 【前頭2】age屋
【前頭3】量産中 【前頭3】ヴァレンシア 【前頭3】デリカシ
【前頭4】みか 【前頭4】マシ 【前頭4】186(一服中)
【前頭5】シ者 【前頭5】シロネコ 【前頭5】にっく
【前頭6】SM考察隊 【前頭6】プカプカ 【前頭6】純ぷに
【前頭7】純ぷに 【前頭7】URD970 【前頭7】餅
【前頭8】暁!ドキュソ塾? 【前頭8】ほうじ茶 【前頭8】エセ作@家系
【前頭9】コバイン 【前頭9】ワイルド吉田さん 【前頭9】おヌ
【前頭10】アスパルテーム 【前頭10】李 暴威 【前頭10】11桁
一方が知名度高くて、もう一方が低い。
加えて共通点。
同じ系統から選んだ方が無難かな。
意外と難しい・・・
普通に読み物として楽しんでいただけにリスト貼られるとどうもな・・・
余計なことしたか。
すまんかった。
ああ、いやいやこちらこそ主観でモノを言ってしまってスマソ。
書き手さん側やリクエストする人には便利なはずだし、、、
555 :
まんこ:02/02/26 09:42 ID:???
ネタ系 厨房系 特殊能力系
【横綱】 絶望ヶ丘団地 【横綱】 かお餅 【横綱】
【大関】 墓山 【大関】 じょか 【大関】 がんがん
【関脇】 にっく 【関脇】 マーカー 【関脇】 お××イパーイ
【小結】 けん 【小結】 ひょう 【小結】 梵銃ル
【前頭1】おヌ 【前頭1】原 【前頭1】要約屋
【前頭2】ラウンコ 【前頭2】さすけ 【前頭2】age屋
【前頭3】量産中 【前頭3】ヴァレンシア 【前頭3】デリカシ
【前頭4】みか 【前頭4】マシ 【前頭4】186(一服中)
【前頭5】シ者 【前頭5】シロネコ 【前頭5】にっく
【前頭6】SM考察隊 【前頭6】プカプカ 【前頭6】純ぷに
【前頭7】純ぷに 【前頭7】URD970 【前頭7】餅
【前頭8】暁!ドキュソ塾? 【前頭8】ほうじ茶 【前頭8】エセ作@家系
【前頭9】コバイン 【前頭9】 【前頭9】おヌ
【前頭10】 【前頭10】 【前頭10】11桁
556 :
まんこ:02/02/26 09:46 ID:???
タイガージョー入ってないな。
あいつはネタ系に入れるべきなのか厨房系に入れるべきなのか・・・
557 :
まんこ:02/02/26 09:47 ID:???
あとURDなんとかはウザ系のみで十分うんこ
558 :
まんこ:02/02/26 09:49 ID:???
エナイが厨房系に入ってないところがまたまたうんこ。
あいつはどうでもいいかな。
559 :
まんこ:02/02/26 09:55 ID:???
エフエム富士とか厨房系に厨入してみたりうんこ。
560 :
まんこ:02/02/26 09:56 ID:???
ネタ系 厨房系 特殊能力系
【横綱】 絶望ヶ丘団地 【横綱】 かお餅 【横綱】
【大関】 墓山 【大関】 じょか 【大関】 がんがん
【関脇】 にっく 【関脇】 マーカー 【関脇】 お××イパーイ
【小結】 けん 【小結】 ひょう 【小結】 梵銃ル
【前頭1】おヌ 【前頭1】原 【前頭1】要約屋
【前頭2】ラウンコ 【前頭2】さすけ 【前頭2】age屋
【前頭3】量産中 【前頭3】ヴァレンシア 【前頭3】デリカシ
【前頭4】みか 【前頭4】マシ 【前頭4】186(一服中)
【前頭5】シ者 【前頭5】シロネコ 【前頭5】にっく
【前頭6】SM考察隊 【前頭6】プカプカ 【前頭6】純ぷに
【前頭7】純ぷに 【前頭7】URD970 【前頭7】餅
【前頭8】暁!ドキュソ塾? 【前頭8】ほうじ茶 【前頭8】エセ作@家系
【前頭9】コバイン 【前頭9】エナイ 【前頭9】おヌ
【前頭10】タイガージョー 【前頭10】エフエム富士 【前頭10】11桁
561 :
まんこ:02/02/26 09:58 ID:???
我ながらイイ感じに仕上がったかもしれないうんこ。
>まんこ
空気を読め、ここは固定評価のスレじゃない。
ある程度流れが出来つつあるんだから、何度も貼らなくていいぞ
率直に申し上げて最近の固定は分からない。
葵もキャラが不明なのでとっとと殺したい所。
AirHoldとURD900は割りとキャラ立ちしてるんじゃねぇの。
がんがんは文字を具現化して攻撃できるとかの
特殊能力をつけるとかしたら駄目かしらん。
もうつまんないからやめろよ。
グダグダじゃねーか。
体育館近くの喫茶店で待機を命じられていた非参加者のエセ作@家系
(以下エセ作)は急な招集命令に戸惑いを、それ以上に戦慄を隠せ
ないでいる。
「大丈夫だよな・・・ひろゆきが俺を騙すなんて事はないよな」
エセ作は不安げにしていた。彼は「本人の後学の為」という理由で
呼ばれていたのだ。
「まあ大丈夫だとは思うが・・・その気があればとっくに参加させられて
いるだろうし・・・そうだよな」
エセ作は独り言を続ける。
「それにいざとなったら他の連中なんてブッ飛ばせばいいわけだ。
ガキだけでつるんでアメリカに渡った事のある俺だからな」
周りの状況を把握せず、極めて自分のとって都合の良い事実だけ
拾い上げて安心しようとする。
そんなエセ作の認識の甘さと、今ここにある「現実」の厳しさを叩き
込むが如く、近くで銃器が唸りをあげた。
「うぁっ?!」
悲鳴を上げてへたり込む。
「なあ止めようぜこんな事、俺は関係無い、俺は関係無いんだ!!」
エセ作は兵士に懇願した。
無言でマァヴがエセ作にライフルを突きつけ、一人の自衛隊員が彼の
腕を問答無用に引き上げ立たせた。
自分たちに関係ないこととは言え、ここ2日間で数多くの2ちゃんねる
ラウンジ固定たちが仲間を殺し合う修羅場を傍観してきた彼らには、
戦う前から逃げ出す事しか考えていないエセ作の態度が許し難い
ものと映った。
マァヴはお決まりの微笑を顔面にたたえながらも、エセ作に対して
吐き捨てるような口調でその態度を罵った。
「ビビってんじゃないよ。うるさいな」
「逝って良し!」
入室を命じられたエセ作に浴びせられたのは、これまたお決まりの言葉だった。
しかし「オマエモナー」などと下手に返す訳にはいかない。生殺与奪の権限を
握っているのは、目の前にいるこの軽薄な容貌の男なのだから。
「よく来てくれたズラ!御苦労!怪我は無かったですか!?」
こちらを気遣う言葉を聞いた瞬間、エセ作の心からは不安や恐怖が消え去り、
ひきつっていた顔は恍惚とした表情に包まれた。
「エセ作さん、あなたの助手としてななし ◆SEXYBMWc(以下セクシー)を
連れて来てありまーす!セクシーさんご入場〜」
唐突に鳴った炸裂音を聞き、エセ作が身をすくめるとひろゆきの手元から色
鮮やかな紙テープが広がった。銃火器以外が火を噴いたのは何日ぶりだろう。
「良いのかな?優勝者用のクラッカー使っちゃって」
マァヴが小声で苦笑いを浮かべつつ呟く。
ドアが開き、疲れ切った表情のセクシーが「入場」して来た。
「お、男っ?!」
エセ作が素っ頓狂な声を上げる。
「彼はほのぼのレスの所為か女性と思われがちのようですが」
控えめに夜勤が言う。
セクシーは少し口元を曲げた以外に何も動きを見せなかった。
今朝、セクシーはデリカシと共に本部の置かれる体育館に投降してきた。
自分たちには人を殺す事は出来ないからもう許して下さい、という言い分
だった。
「ななしセクシー、略してななセク!・・・エセ作に似てるな!
よし、チームサクセク結成だ!!ななしセクシー、貴様を望み通りゲーム
からリタイヤさせてやるです!!その代わり別の指令を出してやるから
しばらく待ってろボケが!!」
・・・この後、デリカシは見せしめに殺されるのだが、セクシーの方は「うちが
殺されないでいるんだから相方も無事だろう」と考えとりあえず安心した。
そしてエセ作が到着するまでの数時間、素直に拘束されていた。
だから、デリカシの死を未だに知らない。
ひろゆきがセクシーを生かしたのは「チームサクセク」という適当なグループ
を打ち出したかっただけなのだろう。
「で、うちらに何か指令ですか?」
セクシーはへりくだった笑みを無理矢理浮かべて悪魔のご機嫌を伺う。
「うん!元気な君達に、俺が見込んだ君達に!!
素手で人を殺して来て貰いたいっ!!!」
・・・それから悪魔は時に怒り、時には笑い、またある時は涙さえ流しつつ
洗脳作業を続けた。
『自分が至らなかったため満足に人も殺せない連中ばかり集めてしまった。
非常に情けないことだ』
『せめて君達には自分の意志を継いで貰いたい』
『武器を持たずに素手で格闘する事は芸術、自分はそれを垣間見したい』
『君達の安全は保証する。
状況通達用の専用回線レシーバーと政府直轄部隊であると示すワッペンを
支給する』
『相手は死にかけているSM考察隊。彼ほどのコテハンが厨房固定なんぞに
とどめをさされるのは忍びない。行って楽にしてやって欲しい』
『耐え難い苦痛と共に、引き延ばされた薄っぺらな生を、たった一人送り続ける
事に何の意味が?』
『ゆっくり死を迎えさせてやる事もまた一つの優しさだ』
行きはよいよい、帰りは怖い・・・昔の人間は上手い事を言ったものだ。
体育館を出発する時の二人は連行時とは打って変わり使命感に取り憑かれた
ような表情をしていた。
セクシーはこんな神話を思い出していた。
昔々半人半馬のケンタウロスがいた。彼は神によって不老不死を授けられた
為、長い年月生きる事が出来た。
しかしある時彼の膝に毒矢が刺さる。常人なら即死してしまう毒だが不死の身
である彼は毒を受けても死ぬ事がなかった。
一見素晴らしい贈り物であるかのように思える「不死」は延々彼を苦しめる
ものでしかなかったのだ。
神は彼を哀れんで不死を奪うと、彼の姿を空に留める事にした・・・
(誰も殺したくないと、SM考察隊を手にかける事を拒んだ自分は、本人を
苦しめるだけの贈り物を渡そうとしているんじゃないか?)
セクシーとエセ作の「チームサクセク」は目を覚ませとひろゆきからビンタを
受けた頬を愛しそうにさすりながら、SMの待つ病院へと向かった。
「・・・で、そもそもあいつら、なんで呼んだんだっけ?」
ひろゆきが思い出したように小首を傾げた。
「やっぱり忘れてましたね・・・」呆れた顔で夜勤が言った。
「何かあった時のスペアだっておっしゃっていたじゃないですか」
「だっけ?覚えてないや。で、あのチームアクセク・・・」
「サクセク、です」
「わざとだYO!うっははははははは・・・」
夜勤は心底軽蔑していた。
ひろゆきに対してではない。簡単に騙されたエセ作とセクシーに対してだ。
長時間話しておきながら、上辺だけしか見ていない。
(あれだけの功績を残したponや箱の命を、チェスの駒でも進めるかのように
扱える人間だぞ?)
夜勤は彼らが去ったドアを睨み付けていた。
(特にセクシー、お前みたいなネカマもどきの空気固定なんか気に留める訳
ないだろうが氏ね!!)
夜勤のはらわたが煮えくりかえる音とは全く異質の、控えめなノックの音が
司令室に聞こえた。
「何ですか」
「官房長官がお呼びです。3日後の合同慰霊祭の件で・・・」
「分かったです」
ひろゆきは椅子から立つと同時にレシーバー用の電源をオフにし、何事も
無かったかのような顔で部屋を退出した。
【二日目・8:40 病院】
手や足を動かそうとする度に激痛が走る。頭部からの出血の所為か、視界は
右側しか使い物にならない。
ボウガンの矢が突き刺さった右足は、大量の出血でとうに感覚を失っていた。
それでも意識があるだけ奇跡と言えるのかもしれない。
この無類のお人好しは、事ここに及んでもまだ、自分自身ではなく他の固定
たちの行く末を案じていた。
病室の冷たい、リノリウムの床に横たわるSMの耳は、近寄る来訪者の足音を
とらえていた。
(何だ・・・また箱か?しつこいな・・・)
しかし茫洋とした頭には足音が複数であるようにも聞こえる。がらんとした病院
内に音が反響している為だろうか。
足音が止まった。
そして次の瞬間彼の聴覚に入り込んで来たのは、聞き慣れない声だった。
「これはひどい・・・死体一歩手前ですねエセ作さん」
「早々に手を打たないとだな」
("エセ作さん"?・・・それに誰だ・・・ななしセクシーか・・・
一体何しに来たんだ?・・・"手を打つ"だと・・・?)
必死で頭を働かし、眼球を入って来た者たちの方へと向ける。
「うわっ、睨んでません?うちらのこと」セクシーがおっかなびっくり覗き込む。
「とどめをさしに来たって分かってるんじゃないか?」
エセ作は答えると、様子を確かめるようにSM考察隊の右足にある血痕を、
つま先で突いた。
彼は誰かの返り血だと思ってそうしたのだが、突かれた方のSMは全身を
苛む苦痛に悲鳴を上げた。
「うっ・・・ぐああ・・・エセ作家・・・てめぇ・・・・・!」
必死に言葉を絞り出すと真っ赤に充血した瞳で彼はエセ作家を睨み付けた。
「早いとこやっちゃいましょう!!」
「ああ・・」
エセ作家は痛みに抗うSMの身体に馬乗りになると、その細い首に両の手を
かけた。
「なっ・・・」SMが声を上げ、必死で藻掻く。
エセ作にはまだ躊躇いがあったのか、あっさりと手から首は逃れた。
しかし所詮は瀕死の重傷人だ。エセ作の隣に膝をついたセクシーに腕を押さえ
つけられ、SMは身動きの取れない状態になった。
「ひろゆきはな、あんたの苦しみをちゃんと考えてくれてたんだ・・・
きっと辛いだろう、苦しいだろうって。
お前を手にかける方だって辛い。けどこれしか方法が無いんだ!!」
エセ作は泣いていた。自分が崇高な手段を選択した事に酔っているの
だろうか。部下の為なら厳しい事も言う。そんな自分とひろゆきの間には通じる
ものがあると彼は思っていた。
1,前の方で何回も名前が出ていたエセ作家追加。
2,エセ作家を引き立てるのは自衛隊員にして特に新しい
人は出さなかった。
3,同系列の空気としてななしSEXY追加。
名前が似ている人を必死で探した結果がこうだ・・・
他にも4流芸人や三文戯曲が候補にあったんだけど
キャラが分からないから消去。
病院のシーン終了。
長くて読み手が大変だから後程うpります。
リスト貼ってくれた人ありがとう、それも文章中に使わせて
もらいました。
(まだ書き込んでないけど)
いまいち・・・
577 :
名無しさん?:02/02/28 05:50 ID:mjkxdJg9
数日前にラウンジウォッチャーの書き込みがあったけど
結局どうなったんだろう・・・・。
「SMさん、抵抗しないで下さい!すぐに楽になれます!!」
火事場の馬鹿力とばかりに抵抗するSMの腕に、全身の体重をかけて
セクシーも説得を試みる。
自分たちだってSMに怨みがあるわけではないのだ。
「早く死ね!!」「抵抗はやめて下さいっ」
半失神しながらも尚、抗おうとするSMにセクシーがビンタをかます。
暴れる手負いの獣に舌打ちすると、エセ作は空いている足でSMの腹部に
強烈な膝蹴りを叩き込んだ。
「・・・・・・!!」
もはや悲鳴すら上げられず、SMの見開いた両目から涙が溢れる。
SMは自分の境遇が情けなかった。悔しさで喚き散らしたかった。そして、
何よりも自分にとどめをささないまま場を離れた箱の、飽きっぽさと詰めの
甘さを恨んでいた。
(箱のアホが・・・)
「下手に逆らうと苦しみが長引くだけだぞ!!」
「・・・それはこっちの台詞だ」
抑揚の無い声が聞こえると同時に、エセ作は自分の後頭部に固く、冷たい
何かがゆっくりと押し当てられた事に気付いた。
驚きのあまりSMの首から手が離れる。
ゲホゲホと咳き込むSMは無視して、エセ作は必死で横にいるセクシーの
様子を確認した。彼の顔も恐怖で真っ青だった。
カチリ、と金属の触れ合う音がした。
「何をやってんだ、お前らは・・・」
背後に立った男は拳銃を二丁持っているらしい。憤怒を抑えきれていない
のか、銃口が震えている。
「っざけてんじゃねえっ!!
お前らはここで何やってんのかって聞いてんだろうがええっ?!」
感情の抑制を諦めた男は心の底からの怒鳴り声を発すると、血まみれの
半死人に襲いかかっている男らの側頭部を、銃のグリップで力一杯殴り
つけた。
「ゲホッ・・・ゴホ、セブン・・・?」
喉元にかかっていた手が外れてようやく、状況を確認出来たのか蚊の
鳴くような掠れ声でSMが問いかける。
もはや何も見えず、身体も動かず、呼吸をするのすら覚束ない状況でも
その声だけで誰が助けてくれたのかはっきりと分かった。
次の瞬間、SM考察隊の虚ろな瞳からは大量の涙が溢れ出した。
(カッコいいよ・・・セブン・・・)
「ち、違うんですよ、セブンスターさん!」「何が違うってんだ!?」
怒りを込めた攻撃でSMの両脇に吹っ飛んでいたセクシーが言い訳しようと
するのを、空気を震わすセブンの怒号が制した。
「・・・そ、それはエセ作さんから」
到底太刀打ちできないような威圧感に、セクシーは肝を冷やしてエセ作の
方を見やる。
「・・・・・・」
「え、エセ作さん!?」
「エセ作家!何とか言ってみろてめぇ!!」
セブンにこめかみを強打されてから、破れた皮膚から流れ出る血をぬぐう
事すらせず沈黙を守っていたエセ作だがやがて「へっ・・・」と何故か失笑を
漏らした。
「誰かと思えばセブンか・・・ウザ系固定の底辺が!!」
「何っ!?」
「まだ一人も殺してないんだってな?」
凶悪な眼光をセブンに注ぐと、エセ作はくつくつと笑った。彼はセブンの
沈黙を肯定と受け取り、
「だろうな。
お前みたいにネ弁の根性無しじゃあ、人間どころか猫一匹殺せんよ」
殴られた痛みと出血によるショックから、エセ作は完全に我を忘れて
しまったらしい。ニヤニヤと一言ごとに笑みを強めながら罵倒を続ける。
「ウザ系役立たずのお前なんぞにひろゆきの崇高な理念は解るまい。
お前みたいなウザ厨房が増えてくからラウンジは腐っていくんだ!!
何の為にあの人が"プログラム"を立ち上げたと思ってる!?
優良固定を育て上げる為だろうがぁっ!!
じゃなきゃこんな事やらん!!お前が悪いんだよこの厨がぁっ!!!」
一息に吠えた後でエセ作家は哄笑を上げた。完全にキレた者の笑い声
だった。
普段のセブンならば冷静さを失った彼の身勝手なへりくつなど一笑に
ふしただろう。しかし、疲れ切ったセブンの心にはエセ作の理不尽な
罵声が突き刺さった。
「・・・俺のせい?・・・俺のせいなのか?」
「ぐぅの音も出んようだな」
軽蔑の色を露骨に浮かべてエセ作家は冷笑する。
「・・・・・・・・」
「なら、お前もこのゲームから解放してやるよ!!!」
エセ作はセブンに襲いかかると拳銃を奪い取ろうとした。
しかし彼の手は虚しく空を掻く。黙って襲えば良いものを・・・
冷静さを取り戻したセブンは華麗にステップバックすると再び、エセ作の
頭部を銃把で殴りつけた。今度は顔面だ。
凹凸のある鉄の塊で鼻を強かに潰されたエセ作はうずくまって額を床に
つける。余りの激痛に声すら出せない。
「ひ、ひぎぃっ!?」
それまで微動だに出来ずにいたセクシーが悲鳴を上げて逃げ出した。
セブンは鼻から短く呼気を吐くと、冷静に右手の引き金を引いた。弾丸は
セクシーの右膝を貫通する。
「っぎゃああああああああああああ!?」
転げ回りながらもセクシーは必死に命乞いをした。
「殺さないで殺さないで殺さないで殺さないで!!!
やったのはエセ作さんです!!僕は何も手出ししてません、何もして
いないんです!!!それにぼぼぼ僕はっ、プログラムの参加者じゃ
ないんだ、殺しても点にはならないですよっ!?」
「・・・そんな事は知ってる」
悲鳴とも言葉ともつかない音声を、ガチガチ鳴る歯の間から押し出す
セクシーに一瞥をくれてから、セブンはSM考察隊に歩み寄り、冷静に
呟いた。
「これは人を殺すためのプログラムだ。
ゴミ掃除実習の時間でない事くらい、理解している」
セブンはSMを抱き起こした。直視に耐えられない惨状だ。
彼の怒りは再び、非参加の二人に向けられた。
「お前ら一体どういうつもりだ!?よくもこんなにSMを!!
"殴る蹴るのSMごっこやってた"なんつったら承知しねぇぞ!!」
「アホな事言うなセブン・・・」
耳元で大声を出すセブンに弱々しい苦笑を浮かべ、SMは最後に残された
プライドを守るかのように事情説明を行った。
「カフッ・・・誰がこんな雑談固定どもに・・・やられるか・・・ゴホッ!
この傷の9割は・・・箱にやられたんだよ・・・」
(――"箱"。箱が?前も遭遇したがやはりあいつは危険人物か)
セブンは間違いないと確信した。
「それよかセブン・・・さっきの銃声・・・まさか」「馬鹿言うな」
セブンは苦笑混じりに心配そうなSMの問いかけを否定した。
「エフエム富士リスナーとヒスの死体から頂戴した。
他の連中はもう武器を奪い取る事も思いつかずに殺し合ってる。
狂ってるよ・・・」
陰鬱な表情でかぶりを振ると、セブンは痛々しげな目を向けながらそっと、
SMの傷ついた頬に触れた。
「とりあえず応急手当が必要だ。幸いここは病院だし」
「何言ってるんだセブン」
ハハ、と力無い笑いを漏らしてSMは言葉を繋いだ。
「もう・・・見たら分かるでしょ・・・」
「・・・・・・・」
セブンには肯定の言葉も否定の言葉も吐く事が出来なかった。
一番近くにいる彼が誰よりも分かっていたから。
SMの体内にある生命の輝きがゆっくり、しかし着実に薄れていく
のが、はっきりと。
「セブン・・・まだ・・・誰も・・・殺してないんだろ?」
途切れ途切れにSMが尋ねる。
「ああ・・・」
「なら丁度良い」瀕死の顔に優しい笑みが広がる。
「殺して」
その願い事は短かった。
そして、拳銃を二丁も持っている人間には容易い事だった。
「馬鹿言うな!!」セブンは驚愕に目を見開き叱責する。「出来るか!!」
SMは2、3度軽い咳をすると、自分の身体に添えられたセブンの手に、
残された最後の力を込めて言い放った。
「勘弁してくれ・・・もう時間が無い」
SMの卓越した分析能力はとうの昔に望みとか希望とか、淡い期待を排除し、
客観的に自分が死を免れえない事を判断していた。
こうやって話している時でさえ、気を失わないでいるのがやっとなのだ。
途切れがちであろうとも言葉を紡げるのは体力があるからでなく、ひとえに
強靱な精神力の賜だった。
age
「・・・そんな優しい顔をしないでくれ。俺は自分の事くらい自分で何とか」
SMは寂しそうに頭を振った。
だだをこねる幼子を宥めるように、セブンの手を力無く叩く。
唐突にガタッ、という音がした。セブンは鋭い目線を音の方角へ向ける。
そこには顔面を血塗れにしたエセ作がどこから見つけたのか手術用の
メスを振りかぶり、脳しんとうにふらつきながら二人の方へ近寄ろうと
する姿があった。
「この・・・クソが!!」
セブンは撃鉄を引き起こした。このクズを殺しても何のポイントにならない
事は承知の上だ。しかし彼にはエセ作を許す事が出来なかった。
SMの言葉から考えるに、箱に襲われ身動きの取れなくなっていた瀕死の
重傷人に襲いかかったそうではないか。
セブンは卑怯な人間が大嫌いだった。
しかし次の瞬間、信じられないような光景を彼は目にした。
自らの腕の中で死にかけていたSM考察隊が左足一本と両の腕、腹筋を
使って起き上がると物凄い勢いでエセ作に飛びかかっていったのだ!
不意をつかれたエセ作は何の抵抗も出来ずに、SMの胴タックルによって
部屋の壁まで吹き飛んだ。
彼はとっさに自らの顔面をかばおうとしたその手で、メスを喉に突き立て
瞬時に絶命した。
[死亡者:エセ作@家系(医療用メスにより自滅)]
セブンはたった今起きた不可解な出来事に呆然とし、言葉を失った。
ふと正気に返るとななしセクシーの姿が見当たらない。リノリウムの床
には大量の血の痕がへばりついていた。
(逃げたか・・・まああんなクズはどうでもいい。それより・・・!!)
彼は急いでSMの倒れている場所へ駆け寄ると再びSMを抱き起こした。
浅いがまだ息はある。
「やられっぱなしじゃ・・・ゴフッ!!」
SMの着ている白いシャツが鮮血に染まった。
「SM!SM、いいからもう喋るな!!」
吐血は止まった。しかし話す体力は既に尽きている。
何も見えていない瞳が、それでも声のする方向を必死に探り当てて懇願
している。早く、早くと。
セブンは観念したかの如き深い溜息をつくと、SMの身体を丁寧に床に
横たわらせてやった。
彼はSMの力無い手首を取り、脈を拾った。拍動が徐々に弱まっていく。
セブンは声を出さずに泣いた。声を出せばSMに聞こえる。
勿論、今までの人生で他人を殺めた事など只の一度も無い。死にゆく
者を看取った事ならあるが。人を殺す事情も必要性も全く無かった。
そう、"無かった"。もはや過去形なのだ。
今自分は、自分の意志に関係なく人の命を奪おうとしている。しかも、
悪意を抱いていない人間の命を。
(俺は引き返せない道に入り込もうとしている・・・)
先刻とは質の異なる震えが全身を貫いた。
ラウンジで見てきたSM考察隊の書き込みが脳裏をよぎる。
しばらくの間、熱い雫がしたたり落ちる音だけが部屋に流れた。
やがてセブンは意を決したかのように顔を上げた。涙の止まったその
目には最早迷いも恐れも無い。
彼は息も絶え絶えの瀕死者に向かい、静かに話し始めた。
「SM。俺はお前らに詫びたい。俺の弱さを、お前らに詫びたい。
俺がもっと早く決意していれば、こんなに長引く事はなかった」
横たわった肉体はただ、浅く胸を上下させるだけで何も答えない。
「でも」セブンは言葉を継ぐ。
「今、その弱さをここに捨てていく。
お前を殺す事から、俺は目を背けない。俺は、残る」
セブンはSM考察隊の心臓に狙いを定めた。
「さらば」
短い別れの後に銃声が響いた。
その瞬間、長かったSMの苦痛にようやく、ピリオドが打たれた。
無言のまま、生き残った男は死んだ者の見開いた目を閉じてやる。
赤く染まった純白の衣に身を包んだ死者は、眠っているかのように
穏やかな顔をしていた。
[死亡者:SM考察隊(セブンの拳銃により射殺)]
保守
せつなすぎ
そうでもない
セッタ、カコ(・∀・)イイ
もうやめろよ。中途半端だしつまんないし
糞空気の話を延々されてもなあ・・・
>>596 じゃあ読まなくて結構です、としか言い様がない。他スレで馬鹿レスして遊んできていいよ。
今日は無いの?
(´・ω・`)ショボーン
>>596 私も名前すら知らない人が活躍してるから違和感アリまくりなんですよ・・・
今、空気じゃない固定で誰が残ってましたっけ?
・・・ああ、殺人マシーンゆきのふとかか。
勉強でここ数日忙しかったので明日以降書きます。
葵のレイプシーンを新たに書き足し。
レイパー(?)は意外なあの固定を予定してます(ボソ
>>597 ありがとうございます。
でも面白くないのは自分の力量不足ですから精進します。
意外な固定か…誰だろう?
大物固定がほとんど死んでしまったのが痛いな。。。
│д・) フッフッフ 最後ノ大物 コバイソ参上
サッ
│ミ
608 :
名無しさん?:02/03/05 01:23 ID:t8KtHdyB
洋楽板の面汚し反転石はもうでたのかい?出てなきゃちょいとむごいやりかたで
たのむ(w
609 :
:02/03/05 10:22 ID:???
sage
なんか痛々しい。素直にdat落ちさせたほうが
良かったかも。
>>611=596=566
・出現時間帯が同じ
・文節の切り方が同じ
・地下まで来て文句を言うアフォさ加減が同じ
別人だとしても、アフォには違いあるまいて。(ゲラップー
セブンはセクシーの血痕を辿るかの様に病院の廊下を歩いた。
そして出入り口に到達した瞬間、その跡とは逆の方向へ向かいだした。
(あんな空気に構ってる暇は無い)
セブンは自分が生き残る事でこのゲームを終わらせる道を選んだ。
けんが見たら非難するだろうか?
「セブンさん、貴方も平気で人を殺すんですか」と。
何とでも言え。セブンは心の中でせせら笑った。ここに至るまでに多くの
葛藤があった。しかしそれは遠い過去の話だ。
けんは自分の弱さを克服する為に戦う。
セブンは自分の弱さを認め、全てを飲み込もうとした。結果を残す事で。
心を決めた時のセブンは誰よりも強い。
彼は前だけを見つめながら次の戦場へと向かう。
遅れて来たゲームの大穴は、遂に舞台の中央に躍り出る決意を固めた。
自分が主人公となる為に。
【二日目 路地裏 10:00頃】
セブンの放った弾丸によって右膝を貫通された「チームサクセク」の片割れ
ななしセクシーは今まさに絶望の淵に立っている。
命からがらに病院から脱出した彼の最後の「武器」である専用レシーバーは
ノイズを返すだけで本部と繋がらないのだ。
彼はひろゆきと自分を守らなかったエセ作を口汚い言葉で罵った。
とてもここでは書けない、「謝罪と賠償を請求されるような」言葉である。
同時に彼は病院での出来事を思い出していた。
必死でセブンから逃げようとした彼の前に立ち塞がった(ように見えた)空気
固定のひょうを、とっさに突き飛ばして階段から転落死させてしまったのだ。
あまりにも呆気ない死に様だった。
最初、セクシーは視覚が結んだ像を頭で認識していなかった。咄嗟の判断で
障害物を排除しようとした結果、起きた出来事が意味する所をきちんと理解
出来なかった。
どしゃ・・・
という音は今でも覚えている。
重い物が落ちる音と何か液体が飛び散る音。その複合音。
耳の奥に響き、記憶に残る音だった。理解より先に全身が粟立った。
階段の下に「落ちて」いるのは一人の青年だった。
投げ出された手足が運送途中のマネキンのように滑稽なポーズを
取っている。
トレーナーの袖から覗く白い手首、襟元から見える華奢な鎖骨が写真か何か
見ているような非現実感を漂わせていた。
じわじわと赤い染みが広がっていく。
[死亡者:ひょう(階段から転落死)]
・・・それから先の事は覚えていない。どこをどう走ったのか、気付けば犬一匹
いない路地裏に倒れていた。
(殺すつもりはなかったんだよ・・・!)
そう、故意ではなかった。単なる過失である。
そしてそれは同時に彼自身が「過失」によって殺される可能性があるという
事も暗示していた。
(殺される理由は無い・・・でも殺されない理由も無い・・・)
ゲームの参加者でないセクシーだったが、だからと言って誰にも襲われないと
いう保証にはならなかった。
右足の激痛と迫り来る恐怖に襲われた彼がとれる、たった一つの対処法は・・・
再度の失禁とその直後の失神しかなかったのである。
あれからどれ位時間が経過したのだろうか。長かった気もするがあっと言う間
だった気もする。
セクシーはビルの路地裏で下半身下着姿になりながら、何故か手当を受けて
いた。
しかし彼は自分を介抱してくれている人間の正体に気付いた瞬間、ご丁寧にも
三度目の失神を迎える羽目になる。
こればかりは誰もセクシーを責められないだろう。
この2日間の概ねの経緯を知る人間にとって、「彼」と出会う事がどういう意味を
持つのかを考えれば。
「・・・しかしひどいよなあ、セクシーよ。何もいきなり気を失わんでも」
苦笑いを含んだ声に、俯いていたセクシーは顔を上げた。
「だってまさかハカヤマさんが助けてくれるなんて思いませんもの」
ポロシャツにトランクスという珍妙な格好をしたセクシーの素直な意見に、ハッカー
じゃない方の山田は苦笑いを漏らした。
「そのワッペン、政府直轄部隊のもんなるめ?
日本国民として放っておけないぜな」
「ハカヤマさん・・・」
セクシーは感動のあまり涙した。
勿論、この男が損得勘定抜きに善人面する事などある訳がない。
ハカヤマはセクシーの存在を利用価値ありと判断した。
1,政府側に音を売っておく(効果はゼロに等しいだろうが)
2,緊急時の囮や楯(人間バリアとは趣深いではないか)
そして何よりも
3,戦況の情報収集
が目当てだった。公開されている写真から変わり果ててしまったハカヤマは
その恰幅のいい身体に不釣り合いな猫なで声でネタ集めを開始する。
「で、一体誰にやられたぜな?」
「セブンですよ!seven_stars!無抵抗の民間人を傷物にして・・・!
あんな卑怯な人は見た事がありません!!」
「セブン?!」
表情が一変した。目が爛々と輝き出す。ハカヤマの怜悧な仮面が剥がれた。
セクシーはここぞとばかりに罵詈雑言とお世辞をブレンドさせ、唾を撒き散らし
ながら語り始めた。
「箱にかよ。さすがSMだぜな。クハー・・・あの人も思いも寄らぬ輩にやられる
もんだ。クックック・・・」
ハカヤマは脇腹を抱えながら質問を重ねた。
「で、セクシーはどうしたぜな?」
「えっ?」
「倒れてるSMに対してさ」
難しい質問だ・・・下手に答えられない。しかし眼前で笑う最強の殺人鬼は
すっかり舞い上がっているように見える。
(ええい、ここは賭だ!)
セクシーは必要以上に明るい声で自分の戦歴を自慢する道を採択した。
「もちろんボコボコにしてやりましたよ!」
「・・・・・・何?」
凍り付くような声でハカヤマ。
「・・・・死にかけてたSMに手を出した・・・・・・?」
「いや、嘘です、嘘、ジョークの、つまんないですか・・・・」
セクシーは水不足に悩むアフリカの人たちが見たら羨ましがる程の大量の
冷や汗を流しながら必死で弁解し始めた。
「・・・・そ、そんな倒れてる人を殴るなんてしませんよ・・・・そう、看病したん
です・・・それをエセ作の馬鹿が勘違いして・・・」
「アイコラ!」ハカヤマの不機嫌ぶりはとどまる事を知らない。
「SMを・・・・看病しただぁ?!」
すっかり立場に窮したセクシーは逆ギレした。
「じゃあどうしろって言うんだよ!殴れば起こる、助ければ不機嫌になる!
どうすれば良いのか教えて下さいよ!!」
「氏ね」「ひっ!?」
言うが早いかハカヤマは手品のように拳銃を取り出し、冷たい目で至近距離
から発砲した。
セクシーの頭は夜空に咲く花火のように、大輪の花を咲かせた。
残念なのは、それが昼間に行われてしまった事だけ、だが。
[死亡者:ななしセクシー (ハカヤマの拳銃により銃殺)]
(やっちまった・・・俺もまだまだ精進が足りん・・・)ハカヤマは返り血も拭わず
殊勝に反省する。
結局、最重要課題であった情報収集に関してはセブンがやる気になったらしい
事と箱が殺人マシーンと化したという事だけであった。
しかしハカヤマはどうしても許せなかった。空気固定ななしセクシー如きが、
SM考察隊に手出しをする事が。
(SMはな、お前みたいなカスがいじっていいような代物じゃねぇんだ)
それ以外にも彼の興味を引いたのは先程のセクシーによる報告内容だ。
(まさか箱が・・・ねぇ?今朝会ったKも最初の時と別人だし・・・
そういや、けんやギャ乱辺りのお人好し軍団や真っ先に殺されそうな
葵なんかも名前が出て来てないな)
当初から奇襲戦法で勝ち慣れし過ぎたハカヤマにとって、少々億劫な結論。
(連中・・・人変わりしてやがる。これからの戦いは一筋縄じゃいかない・・・)
だが彼は弱気になった自分に渇を入れるかの如く、声に出して新たな目標を
宣言した。
「とにかくセブンだけはヤらないとだぜな!クックック・・・
俺からSMを奪った罰としてな!mori−up!!」
・・・どこまで本気で、どこまで冗談なのか、全くこの男だけは分からない。
現在の生き残り:
セブン、ハカヤマ、ポリタン、ゆきのふ、箱、お××イパーイ、刺身、
葵、ママン、ギャ乱、さすけ、けん
[残り12人?]
やっちまった・・・・・・・・・・・・・・
>>617-618の間に
自分でも馬鹿らしいとは思うが、その名前を聞いて自分にストップが掛けられ
なくなってしまった。
「マジ?セブンにやられたの?本当か?おいおい、詳細は?今セブンどんな
感じなんだ?セブンはどこにいる?」
セクシーはあまりの豹変ぶりに面食らったが、とりあえず大まかにセブンの
とった行動を説明した。
それを聞いてハカヤマは「これ以上愉快な話は無い」と言わんばかりに喜色
満面で歓声を上げた。
「へええええ、あのセブンがな!!俺の期待を遙かに上回ってくれる!!
さすがとしか言いようが無いね!!!」
(セブンもとうとう覚悟を決めたのか)
意外な伏兵の参入に、大きな喜びと軽い驚きを覚え、ハカヤマは誘導尋問を
続ける。
「しっかし、それは酷いぜな、セブンも」
「でしょう?やってつけて下さいよあんな奴!!」
「でもさぁ」調子に乗りだしたセクシーには構わず、セブンは半ば独白のように
最も腑に落ちない点を口に出した。
「なんでそんな危ない場所に出かけたぜな。病院の中なんて死角だらけで
何が起きるか和歌らんめ?」
「うまい棒ですよ!あのうまい棒フェチのせいです!!
あのタラコ野郎がSM考察隊にとどめを刺せズラ、とか下らない命令を」
「おうおう、SMにとどめか?」
「そうなんですよ。箱にやられたらしいんですけど、もう身体ピクピクさせて
惨めな有様でしたよ!!」
いっち 東金により銃殺
サトポン プログラム参加を拒否した事により見せしめで処刑
山崎 プログラム阻害により頭部爆破
開店寿司 下駄箱に仕掛けられていた手榴弾により爆死
pon ハカヤマにサバイバルナイフで喉をかききられ死亡
256兄さん ポリタンクにより日本刀で刺殺
餅 ハカヤマにより銃殺
出会い系サイト ゆきのふにより金属バットで撲殺
なな☆ーし ゆきのふにより前頭部を爆破され死亡
ほうじ茶 治療不可により射殺
治療不可 葵により塩酸で頭部を焼かれ死亡
原 ゆきのふにより撲殺
マーカー ポリタンクにより銃殺
助教授 ポリタンクにより銃殺
じょか ポリタンクにより銃殺
弥市 図書館で何者かの手により死亡
にっく 東金により銃殺
鮎崎はまみ マシによりドスで刺殺
マシ ゆきのふにより金属バットで撲殺
よいよ ハカヤマにより銃殺
本家なぐ ハカヤマにより銃殺
東金 ポリタンクにより銃殺
純ぷに ボウガンで射殺
びーらぶど ゆきのふにより銃殺
うに ゆきのふにより銃殺
サエコ オルテガにより銃殺
寒敗ピアニッシモ オルテガにより銃殺
梵銃ル お××イパーイにより銃殺
エナイ ニセモノに蹴り殺される
さすけ 箱により射殺
ニセモノ(非参加) ヒスタッチオにより銃殺
京大様 葵により銃殺
デリカシ プログラム参加拒否により見せしめで処刑
ドキュソ塾 刺身のトラップにより感電死
K けんの持っていた短刀に飛び込み、その後銃で自殺
オルテガ ギャ乱手製の爆弾により死亡
エセ作家 医療用メスにより自滅
SM考察隊 セブンにより射殺
ひょう ななしSEXYに突き飛ばされ階段から転落死
ななしSEXY ハカヤマにより射殺
まとめ見にくい・・・・・タブじゃ駄目だったか
>>606 死亡者と生存者をまとめました
>>608 残念ながらその固定に関するデータが無いので・・・
>>611 もっとまめに更新します
>>612 具体的に文句を言ってもらった方が改善に役立つので・・・
でも、ありがとうございます
627 :
名無しさん?:02/03/07 10:20 ID:pZdIpE3a
age
sage
【二日目 11:40 駐車場】
エフエム富士リスナーは生きていた。確かに数時間前、彼は自分の喉元で
銃の引き金を引いたが彼の持つマイクロウージーにはご存知の通り、
最初から弾が込められていなかっった。
だが銃の構造上、銃弾が入っていなくとも引き金を引く際の衝撃があり、
発砲音に似た音が鳴るというのがマイクロウージーの特性だった。
その瞬間富士もショックで気を失ったのだが、その場で目撃していたギャ乱も、
後から来たけんもエフエムの死を確認する事はなかった。
小一時間経過した後に目を覚ましたエフエムは富士が生きている事に驚いた。
そして今、彼は焦っている。夏の日差しが照りつけ蝉がひっきりなしに鳴く。
そんな当たり前の日本の風物詩が余計に富士を苛立たせる。
もうすぐタイムリミットだというのに一人も殺せていないからだ。
数時間前、瀕死のオルテガにとどめをさすよう、ギャ乱から催促された富士
だったがどうしても引き金を引けなかった。
タイムリミット・・・すなわり頭部に埋め込まれたチップによる爆死が目前に
迫った今となっては何故あの時オルテガを殺められなかったのだろうとさえ
思えてくる。
だが結果的にギャ乱と別れてしまった後は自分を奮い立たせ積極的に行動
する事が出来た。不運な事に、誰にも遭遇出来なかったが。
この数時間の収穫と言えば、途中で拾った鉄パイプ、自分が死のうとした
場所に戻った時見つけたデイパック一つ。中身は期待出来そうにない。
そう思いながら駐車場の中程で車間に身を隠し中身を確かめていた時、
思わぬ事態が発生した。
奥の車の陰から何者かが立ち上がるのが視界に入ったのだ。距離にして
約3メートル。
様子からすると今まで眠っていたらしい。
立ち上がった奴はポリタンクのようだ。
(あいつは・・・ポリタンか?なんでこんな場所で眠ってるんだ・・・変人かよ)
違和感に富士は一瞬、自分の状況を忘れてしまう。
(っと、呑気に考えてる場合じゃない。チャンスだ。
アイツには悪いが死んでもらおう。
こんな所で余裕こいてるって事は少なくとも一人は殺してるんだろ?
なら遠慮はいらない、アイツとはスレで何度か絡んだ事があるが今は
そんな事を問題にしてらんないしな)
覚悟を決めようとした富士の脳裏に、さすけの無惨な死に様が過ぎる。
ろくに抵抗の出来ない状態で矢を撃ち込まれたさすけの腹部。
(そう、さすけてーなんて言う暇も無くな!!)
無理矢理笑みを浮かべて吐き気を誤魔化した富士の目に、涙が浮かんで
来た。あの時流れていたさすけの血は、今も彼の瞼にべっとりと染みついて
いるのだ。
嗚咽がこぼれそうになる。だがなんとか耐えた。
気付かれてはならない。気付かれる前にけりをつけるんだ。
富士は車の陰からマイクロウージーをポリタンに向けた。その時、
「こほっ」
軽い、本当に微かな咳を彼は漏らしてしまったのだ。さっきの吐き気のせいだ。
ポリタンの鋭敏な聴覚はそれを聞き逃さずこちらを振り向く。
しかし焦りながらも意外と冷静に富士は引き金を引いた。
十分弾は当たる。
気持ちの上ではそのはずだった。しかし富士の期待に反し、マイクロウージーは
乾いた炸裂音を立てただけでポリタンは無事だった。
それもその筈、弾は一発も出なかったのだから。
先程述べた通り、富士の持つ銃は「とっかえ弾システム」とやらで最初から弾が
入っていなかったのである。
だが富士は銃器に詳しい事も無かったので、この重大な欠陥を数時間の間
忘れていた。彼は己の短絡さを悔いた。
そんな富士を嘲笑うかのように、ポリタンはすばやく車の陰に身を隠しながら
素早く何発か撃って来た。あちらには十分弾があるらしい。
(どうすればいいんだよ!クソ!クソぉ!!)
銃声と共に降ってくる窓ガラスの破片を雨のように浴びながら、富士はやり場
のない怒りを抱えていた。
偶然、彼の足が拾った方のデイパックを踏みつける。
その足に伝わって来た感触は、デイパックの中に何かがある事を富士に
知らせていた。
さっきまで晴れていた空がすっかり雲に覆われている。今にも一雨来そうな
空模様だ。
(ふぅ・・・エフエムなんとかが馬鹿で助かったな)
富士の方に威嚇射撃しつつも、未だ覚めきっていない頭の中でポリタンは
安堵の息をつく。
全く撃ち返してこない所を見ると、少なくとも持ち弾はあまり無いのだろう。
爆弾の類が飛んでくる気配も無い。
また、弾が無いのに気付かない程度のオツムでは銃器の扱いにも慣れて
いないのだろう。という事はこちらが明らかに有利だ。
向こうは圧倒的に不利な状況下で必死でどうするか考えている筈。
結論:考える暇を与えず潰す。
冴えてきた頭でポリタンは戦況を冷静に分析し、結論を下した。
更に相手の思考をかく乱する為に言葉を投げかける。
「おいエフエムとやら。ギャ乱Doが死んでいたのを見たか?
あれをやったのは俺だ。素敵な死に様だったろう?」
実際にポリタンがギャ乱を殺したという事実は無いし、ギャ乱もまだ生きて
いる。これはあくまでも富士を動揺させるための手段。
その言葉にあっさり騙されて冷静さを失った富士が車の陰から頭を出す。
待ちかまえていたポリタンは富士の立ち位置を確認すると、もう一発銃を
撃ち、相手の頭を引っ込ませた。
その隙に車の陰から飛び出し、素早く富士が隠れている所へ駆け寄る。
そして姿を確認するより先に富士めがけて2発の銃弾を叩き込み、勝利を
確信した。
だがそこでポリタンは意外なものを見る。車と車に挟まれたわずかな空間には
死体ではなく銀色の壁があり、そこに先程放った銃弾がのめり込んでいた。
壁の上方に開いた穴から覗く瞳と、「目があった」。
無言のまま壁はポリタンめがけてつっこんでくる。
「ちっ!」
(なんだよこりゃ、楯だぁ!?)
ポリタンは完全に虚をつかれ、苦し紛れに数発銃弾を放つ。しかし迫り来る
ジュラルミンの楯は全く止まる事なく彼の身体を突き飛ばした。
いつも保守してくださってる皆様、ありがとうございます。
これってプ板n
盛大に吹っ飛んだポリタンはその先にある、空いた駐車スペースに倒れ込み
持っていた銃は数メートル離れた車の下に滑り込んだ。
目を血走らせた富士はそのまま楯でポリタンの身体を押さえつける。
「お前、ギャ乱をやったのか?!本当にやりやがったのか・・・!!」
怒りにまかせて富士は更に体重をかけた。
楯の下でもがきながらもポリタンは冷静に答える。
「ああ、俺が殺したが何か?
あの野郎中途半端な情けなんてかけやがったんでな・・・アホが」
言葉の途中でポリタンの声のトーンが少し変わった。しかし富士はそんな
事に気付かず怒りを充満させた。
「この野郎っ!!殺してやる、ブッ殺してやる!!」
叫んで、爪で手の皮が破れる程に鉄パイプを握りしめた瞬間、富士の
身体は弾かれるようにポリタンから離れ地面に倒れ込んだ。
右足から走った衝撃に全身の自由を奪われながらも何とか、ポリタンの
方に富士が首を巡らすとそこには、左手にスタンガンを持ったポリタンが
立っていた。
小雨が降り出して来た。
ポリタンは念のためデイパックを拾い上げスタンガンをしまった。
「あははははは、カスが陰気に喋ってるからだ。殺したいんなら無駄口
叩かないでさっさと殺せよ。それが出来ないからこうなる」
笑って、ポリタンはデイパックから別に取り出した銃を富士に向けた。
形勢逆転。
富士は何とか左手を地面に立てて起きようとするが、上手くいかないようだ。
右手に鉄パイプを握りしめ、何か言いたげに口元を動かすが声は出ない。
ポリタンはその情けない様子に笑みを強くした。
向けられた銃口の奥を富士は睨み付ける。獲物を狙う鷹のような、鋭い目で。
次第に強まる雨の中、その違和感にポリタンが気付いた時、富士の右手に
ある鉄パイプが思い切り強く振り抜かれていた。
銃が鈍い音を立て、宙を舞う。
ポリタンが痛みに耐えかね思わず銃を握っていた手を押さえると、ふらつき
ながらも富士がタックル・・・というよりもたれこんで来た。
二人はもつれ合いながら地面に倒れ込む。
ポリタンはすかさず富士を振り払おうとした。
が、スタンガンによってダメージを受けている筈の富士は、凄まじい力で
ポリタンの首を鉄パイプで押さえつけ、そのまま馬乗りになった。全体重が
かかる。
「無駄口を叩いてるとどうなるって?」
富士が不敵な笑みを浮かべてみせた。
(演技かよ・・・このアホが・・・普通は動けねぇぞ!!)
ポリタンは必死で鉄パイプをずらそうとするが、覚悟を決めた富士は鬼の形相で
更に力を込めてくる。身体を揺すってもマウントポジションは外せない。
白濁した意識の中、ポリタンクは右手を腰にやっていた。
更新、乙かれーです。
保守
test
test
(´ё`)しんj。
生肉のある柔らかい自画像希望
骨に響く轟音と共に、富士は焼け付くような痛みを腹部に感じた。
口から血の飛沫が吹き出る。
降りしきる雨ですら、富士の身体から流れ出す血を洗い流せない。
ポリタンは完全に力の抜けた富士の下からようやく這い出し、こちらに背を
向けうずくまったまま咳き込んでいた。
(今度こそチャンスだ)
そう思っても富士の身体には力が入らない。
冷たい雨が彼の血液と体温を奪っていく。決壊したダムのように、生命力が
流れ出していく。
呼吸を整えたポリタンは立ち上がり、冷たい瞳で富士を見据える。
その左手には今、富士を撃った銃、助教授のスミス&ウエスンM629Cが
握られていた。
ポリタンは地面に倒れたまま動かない富士を見ている。遠目には死んだ
ようにも見えるが、まだ呼吸はしているようだ。
普段のポリタンならこのまま富士を撃ってお終いにしただろう。しかし彼は
とどめをささずに口を開いた。
「まだ生きてやがる・・・しぶとい野郎だな、そんなに敵討ちがしたいのか?」
その言葉を聞いた瞬間、富士の身体が跳ね上がり、ポリタンに向かって来た。
完全に油断していたポリタンはそれでも富士に向けて銃を撃つ。
「ぐぁっ!?」
呻き声を出したのはポリタンの方だった。鉄パイプで強かに打たれ、感覚の
無い右手をかばい、片手で銃を撃ってしまったのだ。
皮肉にも、助教授の銃で。
『助教授さん、カッコつけて片手で撃つからだよ…アホが!』
状況は違えども、そう言ったのは確かに自分だった。
指先から肩まで突き抜ける衝撃にポリタンは銃を地面に落としてしまった。
富士は何の躊躇もなく接近し、ポリタンの身体に両腕を回す。
「離れろこの死に損ないが!!」
富士の肩に何度も左肘を落とし、顔面を殴り、膝でつく。
だが富士は虚ろな表情のまま、片膝を地面に突きながらも、腕の戒めを
ゆるめる気配を見せなかった。
「なぁポリタン・・・お前の方が・・・喋りすぎ・・・だろ?」
嫌な予感を感じたポリタンは首を捻ると、自分の身体に回された腕の先を
見た。手榴弾だ。
これは富士が拾ったオルテガのデイパックに残っていた物である。
そして今富士は右手の掌で手榴弾を包み、指先でピンを引き抜こうとして
いた。
「!!・・・お前自爆する気か?!離せこのアホ!!」
狂ったようにポリタンは藻掻くが、富士の力はどんどん強くなっていく。
ロウソクの炎は、燃え尽きる間際が一番大きい。
「ギャ乱Do・・・仇・・・取れなかったな・・・」
呟く富士の目はもう、彼の身体の限界を告げている。しかし富士は最後の
力で手榴弾のピンに手をかけると、一気に引き抜いた。
「・・・・・・・・・・・・・・!!!!!」
ポリタンは歯を食いしばり声も出せずに必死で身体を振り回す。
そして。
既に豪雨となった雨音を打ち破り、辺り一帯に爆発音が木霊した。
保守どうもです。
新しい人登場させても構いませんが瞬殺かと思われ。
富士もカコイイな
658 :
名無しさん?:02/03/12 16:54 ID:ZT0KE8WX
邦楽板のバトルロワイヤルスレが1,2とも倉庫逝きになってる
662 :
とむ:02/03/13 14:07 ID:???
突然で不躾ですが、俺もも混ぜてくらはい。
お手は煩わせませんのでご安心を。
663 :
とむ:02/03/13 14:07 ID:???
【プログラム開始34時間前 とむの自宅】
深夜、闇の中に浮かぶのっぺりと構える城壁のようなマンションに灯る灯りは
もう数えるほどになっている。その中の一つで「とむ」は、毎夜の通り糞スレを
眺めて悦に入っていた。
「えへ・・・糞すれ・・・糞すれ・・・・・・これなんてすごい糞だなぁ・・・でもこっちもなかなか・・・へへ・・・」
彼のその表情は恍惚そのものだ、垂れ下がった目尻とほころぶ口元。何より
一糸纏わぬその下半身が、見るものに平常の欠片も垣間見せ無かった。舐める
ようにディスプレイを眺め、レス数の少ないスレを見つけては狂喜し、糞スレ!
糞スレ!糞スレ! と連呼して近所に迷惑をかける。しかし何者も彼を咎める
ものはいなかった。何故なら、彼は誰からも見捨てられていたのだから。
そしてこの日もいつもと変わらない狂態をしている時、とむは突然背後のテレビに
振り返った。テレビの電源がONになったのだ。しかしリモコンは彼からすこし
離れたところにあり、誰の手にも触れられずただ横たわっている。とむは画面に
映し出される砂の嵐を不快に感じ電源を切ろうとしたが―――電源は切れなかった。
何度押してもそれは同じ事で、電源が切れることは無かった。何度も連打する
指先に力が篭り、せめてチャンネルでもと押すボタンも、空しく音を鳴らすだけで
その使命を果たさなかった。とむの口元は歪み、眉間には皺と脂汗がべったりと張り
付いている。今度はリモコンに駆け寄り、またボタンを連打するが、それも同じ
無意味な行為だった。不可解な現象に我を忘れ、次第に恐慌に陥り始めるとむだが、
テレビは彼を嘲笑うかのように突然、ひろゆきの姿をブラウン管に映し出した。
「えーっと…これ写ってるの?(ハイ、ウツッテマス!)あそう。もしもし、とむ?
どうも、知ってると思うけど、俺ひろゆきです」
とむはそれを見た瞬間、まるで電撃に打たようにピタリと身動きを止め、
リモコンを手から滑り落とし、テレビを凝視した。
「ひろゆき……?」
「言っとくけど、これテレビじゃないから。お前だけに発信されてる放送だから
ありがたく受け取れよな」
とむがまさに疑問を持った瞬間に、ひろゆきは心をなぞる様にニヤリと言った。
664 :
とむ:02/03/13 14:09 ID:???
「えっと、今日の用事わかるか?」
「え・・・・・・・・・・・・あ、いや、全然・・・・・・」
とむは呆然としながらもテレビに歩み寄って行き、画面の前に正座した。
謎の出来事に緊張して顔は強張ったままだった。
「実はな、今度プログラム、正式名称は『コテハン助成特別法』って言うんだが、
知ってるだろ? アレを実行するから、一応お前も何故か番付に載ってるから
引っ張っていくぞ」
「・・・え、そんな・・・・・・番付なんて、俺自身なんで載ってるのか解らないのに、
・・・・・・い、俺いやですよ!」
「あぁウザイなこいつ・・・。いいかアフォ、選択肢は無いんだよ。お前が出場する、
これはもう決定事項だから。じゃあ俺の指先をよく見ろ」
そう良い捨てると、ひろゆきはブラウン管の向こうでおもむろに人差し指を
まっすぐとむへと向け、ぐるぐると円を描き出した。
「眠くなぁれぇ〜、眠くなぁれぇ〜」
とむは思わず「そんなトンボみたいな!!」と言いそうになったが、時は既に遅く
その意識は混濁し、繋ぎとめようとしても儚く綻んで、ひよゆきの指先が3個目の
円を描ききった時には、もう彼には闇しか残っていなかった。
それと同時に、激しい破裂音と共に窓ガラスが割られ、催眠ガスを詰めた拳大の
大きさをした缶が薄白い煙を勢いよく噴射した。程なくドアが破られ、顔にマスクをし
手には機関銃を構えた3人がとぬの部屋に突入し、横たわるとむに容赦なく銃口を向けた。
テレビに映るひろゆきは横を向いてジュースを飲んでいたが、その現状を見て満足そうに
画面に顔を向けた。
「おお夜勤、首尾は上々みたいだな」
665 :
とむ:02/03/13 14:10 ID:???
マスクの一人は夜勤だった。夜勤はひろゆきに目礼をくれ、横になったまま
ピクリともしないとむの腕を乱暴に掴み、部屋の外へと引きずっていった。が、
夜勤はふと動きを止め、掴んだ腕の袖をまくり脈を取った。次に首筋に手を当て、
今度は膝をついて閉じた瞼を指で押し上げ、その目を覗き込んだ。
「おいなんだ、どうした夜勤」
画面のひろゆきがジュースを啜りながら身を乗り出す。
「あ、はい・・・・・・その・・・・・・」
「なんだよ、はっきり言えよ」
「こいつ、死んでます」
ひろゆきはブッとジュースを吹いた。
「・・・・・・・・・・・・・・え? な、なんで?」
「さ、さあ・・・」
「催涙ガスによるショックとかか?」
「いえ、そのような症状は見られません」
「まさか寿命?」
「いや、それにはさすがに若すぎるといいますか・・・」
「じゃあ何で?」
「さあ・・・」
「じゃあ、ひょっとして、・・・俺の指のせい!?」
「なんで・・・しょうかねえ・・・・・・」
「そんな、目の前で指回されたぐらいで死ぬなんて、トンボよりバカだな・・・」
666 :
とむ:02/03/13 14:10 ID:???
もともと今回は、ひろゆきが「1人ぐらいは凝った拉致り方をしよう」と言う
思いつきの名目で特殊工作的な手段になったので、運にも見放された彼に白羽の
矢が立ったのだ。だが、こんな事になるとは誰も予想しえなかっただろう。夜勤は
立ち上がると、自分の指を神々しそうに見つめるひろゆきを一瞥して、死体は
捨て置きそのままに二人を連れてとむの家を後にした。残されたとむの死体が
発見されるのはそれから一週間後、腐臭に気付いた彼の親が発見したのだった。
なぜ彼がこんな事になったのか。それは既に、何からも見捨てられていたからだろう。
[不参加死亡者:とむ(ひろゆきに目の前で指をぐるぐるされたから)]
ウフフ
|д・)
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
おおっ、オリジナル小説お疲れ様です!!
私が今書いているのも同じくオリジナル部分なのでかなり時間がかかると
思いますが気長に待って頂けると嬉しいです・・・
【二日目 11:30頃 PCショップ】
電子機器の間で未だ潜んでいた刺身は、転がる死体に目をやった。
死体の数は増え、二つになっている。
『支給された武器が「TVのリモコン」って格好いいですね』
偶然迷い込んで来てこちらを見るなりふざけた事をぬかした三文戯曲(以下三文)。
刺身はにっこり笑うと三文が指さして笑った「リモコン」で、入り口付近に仕込んで
あったプラスチック爆弾を爆破させた。
爆弾は一緒に包んであったPCの部品やガラス破片を撒き散らし、三文の全身を
引き裂いてやった。
それだけに飽きたらず、凶悪なトラップは連鎖崩壊を引き起こし巨大な脚立が
三文の顔面を陥没させた。
ドミノ倒しか何かのように次々とトラップが発動するのは、まるでコメディ劇のよう
だった。
三文戯曲も浮かばれただろうか。
喜ばしい事である。
いくらひろゆきでも役立たずのリモコンだけ支給する事はあるまい。
刺身の手元に支給されたのは、「一見TVリモコンに見える発信器」と「まるで
歯磨き粉のようなチューブに入ったプラスチック爆弾」、そして「さくらんぼの形
をした受信器兼発火装置」だった。
支給者曰く、『童貞の刺身さんだけにチェリーにしましたです!ワッハハハ』
・・・ここはPC売り場であるせいか冷房が効いている。
[死亡者:三文戯曲(刺身の爆破トラップにより死亡)]
とりあえず書けた部分だけ。
気長に待ちます
たまにはage。
679 :
反町:02/03/15 09:32 ID:???
俺も出してくれポイズン。
私も出して欲しいでスぎうにう。
反町ってステハンじゃなかったのか?ポイズン
苦笑を浮かべる刺身だが唐突に手をリモコンにやり、息を殺した。
何者かの足音が聞こえたのだ。
「こりゃ随分派手にやったなぁ、お前さん」
「なんだお前か」
刺身は安心したような声で言って立ち上がると入ってきた人物を出迎えた。
「で、首尾はどうだった?コバイン」
「おう」
コバインと呼ばれた男・・・すなわち小林飲料水は背負っていたデイパックの中から
ビニール袋を取り出す。
彼こそが中途参加者である刺身のパートナーだった。
「無人の店ってのは良いもんだな。金払わなくて済む」
言いつつ、袋の中から各種保存の利く食料品や水を取り出し、コバインは店内を
眺め回した。
「こんな時じゃなきゃ、めぼしいもんかっさらってくんだがな。
性能良いノートとか・・・」
顎を撫でつつ喉から手が出そうな表情で、デモ画面を映し続けるパソコンの群れに
目をやっていたコバインだが、店の一画に目を留めると急に眉を顰め息を止めた。
「・・・やったのか」
疑問でなく確認の呟きだった。コバインは答えを待たず、二人分の死体が積み重なった
場所へ歩を進めた。
「こりゃ酷いな・・・」
二人とも夥しい血に顔面を染め絶命しているが、かろうじて顔は判断出来た。
これといった関わりは無いが・・・何度かスレで見かけた事もある固定だ。
コバインが難色を示したのは彼らの表情だった。
悪夢に出て来そうな程の「苦悶」。
「甘いな、コバイン」
刺身が冷笑を浮かべながら近付いて来た。
「ルールだぜ?殺るか殺られるか。そんな雰囲気がいいんじゃねぇか」
一時流行った吉野家コピペを流用して言う男は楽しくて仕方が無い、という風情だ。
「お前も早めに誰かハメて殺さなきゃ頭が・・・ボン!」
軽く脅すように自分の頭の横で手を開いて見せる刺身だが、急に笑顔を消すと
真顔になった。
「本気で死にたくないなら、そろそろ誰か殺さないとヤバイぞ。
殺し方は特に問わない筈だから俺のトラップに誰かを誘い込んで、お前がとどめを
させば良いだろ。
せっかく包丁セット貰ったんだから」
コバインに支給されたのは料理用の包丁セットだった。
この二人組に限って、ひろゆきは特殊な武器決定方法を取った。
<一番最近閲覧したウェブページに関連する武器>
彼らに渡されるのがそこそこ使えそうな武器と分かると、ひろゆきは少し残念そう
な顔をした。
『大根で戦うとか、ミッキーマウスで殴りかかるとか、期待してたのに。。』
・・・運命の女神は味方をしてくれたらしい。
爆発物を支給された刺身はというと、コバインの側へ大股でやって来た。彼は暫く
冷たい目で死体共を一瞥していたが唐突に三文の死体に蹴りを叩き込んだ。
「こいつ・・・!」
もはや動かない三文戯曲の死体を何度も何度も爪先で蹴り上げる。
「とどめをささせてやろうと思ったのに馬鹿が、あっさり死にやがった。
評価にさえ名前も出ない、つまらん空気固定なら死ぬ時くらい役に立ってみろよ
クソが!!」
刺身の激しい動きに、ぶら下がった栄養剤の容器が揺れる。
「やめとけ、その辺で」
コバインは出来るだけ表情を消し、低く制止した。
「死んだ人間に当たったってどうにもならんだろ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
刺身は尚も靴底を汚そうとする気配を見せたが、その言葉でようやく荒い息を整え
原形を留めていない肉塊から目をそらした。
「それより、まだ入れてんのか?」
コバインは明るい声で話題を変えた。
刺身の鼻孔から伸びるチューブを指さし、呆れたように肩をすくめる。
「ああ、これねぇ」
刺身は何事も無かったかのように栄養剤を送り込むチューブをゆっくり、鼻から引き
ずり出した。
よくもこれだけ、と思うような長いチューブが姿を見せる。
「これを入れてると敵がビビるからな。ハッタリには良い」
「ふむ」
敵という言葉が誰を指しているのかは明白だったが、あえてそれについては何も
言わずコバインは食事の支度に取りかかった。
「お前さんの前であまり旨そうな匂いさせんのも悪いかと思って・・・
出来るだけ匂いのしなそうな食い物を選んで来たつもりなんだが。
気に障ったら悪い」
少し離れた所へ行くと、ばつの悪そうな顔でコバインは食パンの袋を取り出して見せた。
クローン病の刺身は現在、栄養剤と飴くらいしか口に出来ないのだ。
「別に構わんよ」
刺身はにっこりと笑うと手持ちのリュックサックから粉末の入った袋数個と小振りな
ボトルを取り出して見せた。
「成分栄養剤溶解ボトルー!
それと
成分栄養剤エレンタールー!」
ドラえもん口調で楽しそうに掲げる。
「見たまえ、小林飲料水くん」
トランプを並べるように色とりどりの袋を、PCショップのテーブルに並べる。
「各種フレーバーだ。
アセロラ、オレンジ、コーヒー、パイン、抹茶、ヨーグルト、リンゴ。
7日で一周、飽きずに美味しく頂けます!!」
「ほほー、ダイエット食品みたいだな」
TVショッピングのように大げさなジェスチャーで紹介する刺身の手元を見てコバインは
興味深そうに相づちを打つ。
「うむ。アミノ酸の塊だから運動すると筋肉つくらしい。
で、お湯だ」
勝手に使っていた商品の電気ポットから紙コップの中に湯を注ぎ、コバインが持って
来た水を足す。
「40度くらいのお湯250ccを用意します♪
ここにエレン一袋とフレーバー・・・どれにする?」
「ええっ」いきなり話題を振られたコバインは、困惑しつつフレーバーの小袋の上で手を
さまよわせ、「抹茶?」
「抹茶っ!」
目をむいて鸚鵡返しに問う刺身を見てコバインはすくみ上がる。
「抹茶を選んだアナタは苦み走った渋さがカコ(・∀・)イイ!!
ラッキーカラーはドドメ色。近い内に良い事がありそうなヨカーン」
「お、おう」
やたらテンションの高い刺身に、コバインは返し方が分からず適当に答える。
「ぬるま湯とエレン、フレーバーをボトルに入れ、蓋をしてレッツシェイキン!!」
バーテンさながらの大仰な身振りで刺身はボトルを振った。
「ふっ、これでエレンの出来上がりだ。
・・・飲むか?」
薦められたコバインは眉根を寄せた。
自分が選んだとは言え抹茶色のドロドロした液体は控えめに見てもあまり、旨そうとは
言えない。
「あー・・・
刺身の食いもん取るのも、どうかと思うんでな」
遠慮がちに言ったコバインに刺身は軽く「そうか」と答えるとエレンを一気に飲み下す。
「そんなマズいもんでも無いぞ・・・ゴフゴフッ」
勢いが良すぎたのだろうか。
刺身は咳き込んだ。
「ゴフッ・・・かなりイケルぜ・・・ゴホ!!」
「おいおい大丈夫かー?」
コバインは呆れ顔で刺身の背中を撫でさする。
「ああスマン・・・ゴホッ・・・悪い・・・ゴホゴホ・・・」
「調子に乗りすぎるからだ。ったく」
苦笑しつつ刺身の顔を覗き込んだコバインは・・・次の瞬間動きを止めた。
兄も読んでるのか…。リアルタイムで織り込んでるのに感心したよ。
おさえでほ
ゆきのふのレイプシーンきぼんぬ。
見習いさんに惚れました
693 :
:02/03/17 00:43 ID:???
すごいね
694 :
名無しさん?:02/03/17 02:41 ID:sSoB1yf2
つまんない
ho
mo
o
da
「おい刺身お前!?」
刺身が口元に当てている手の平を強引に引き剥がす。
「な・・・ゴハッ」
刺身は文句を言おうとした。
しかし言葉の代わりに出たのは飛び散る鮮血だった。
彼はそれに目を見張ると慌てて、コバインが取った自らの手を凝視する。
もう一方の手で口元を拭うと、ヌラリとした感触が皮膚に伝わって来た。
「ゴホッ・・・なんで・・・っ!!」
苦しさのあまり涙が零れ、床の血と混ざり合う。
「み、水!?」
とにかく何とかしようとコバインが伸ばした手は、ペットボトルを倒し床をびしょ濡れ
にした。
「駄目だ・・・ゴホッ!!待てコバイ・・・ガハッ」
ぜいぜいと荒い息を抑え、刺身は青黒くなった顔を相方に近づけた。
血塗れの両手でコバインが逃げないようにしっかりと掴む。
「はぁ・・・はぁ・・・俺は、この、エレンを貰う時に、主治医から、慰め・・・られた」
途切れがちになりながらも必死で言葉を紡ぐ。
「『入院中なのに運が悪いな・・・だが禍福は糾える縄の如し、だ。
幸運を祈る。間違った道を選ばないように』
そういって、主治医は、これを渡した」
震える指で刺身はテーブルの上にあるセットを指さす。
「どうも、そん時、あの人が・・・ゴホッ!・・・目をそらしたのが引っかかってて」
「一体何なんだよ!?」
コバインは吐き出された大量の血液に悲鳴を上げた。
「主治医、2ちゃんねる知ってるって・・・言うんだ」
「だから何だって」「分かるだろ!」
刺身は怒りに満ちた瞳を、空の袋に注いだ。
「毒入り、だよ・・・ゴホッ、ゲホ・・・クソ、あの狸親爺・・・」
「けど朝飲んだ時は何とも無かっただろ!?」
パニック状態で何も出来ないコバインは、両の手を握ったり開いたりしながら話を
聞いていた。
だが、やがて彼は座ったまま口をぽかんと開けた。
「まさか・・・まさか・・・!!」
驚愕に見開かれた目は小さい方の袋に注がれていた。
「おい、こんな質の悪い冗談ってあるか!?嘘だろ!!!」
床に崩れ落ちると、彼は側にある空の袋を拳で叩いた。
「俺が、俺がお前を殺すって言うのかよ!!! ふざけんな!!!」
刺身は何も答えない。
コバインは自分の肩を掴む刺身の握力が急速に弱くなっていくのに、絶望的な
恐怖を感じていた。
「なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで!!!!」
よりにもよって最悪のカードを引いてしまった。
襲って来る頭痛と吐き気。ボタボタと涙が落ちる。
「コバイン、聞け」
刺身が最期の力を振り絞り、言い聞かせる。
(最期?最期だって!?ふざけんな!!!)
コバインは聞きたくないとでも言うように強く頭を振った。
「間違いとは言え・・・っはぁはぁ・・・俺が死ねば・・・っ・・・
お前にポイントが加算される筈だ・・・ゴホ・・・後は逃げ回れ・・・
他の奴ら、殺せんだろ・・・?」
「っざけんな!!!」
「良いから聞け!!」刺身が絶叫した。
「どのみち俺は助からん。もう、お前の顔すら・・・見えねぇんだよ・・・クソ・・・
俺だって、こんな最期は嫌だ・・・
ハハ、結局童貞の・・・まんまだぜ?・・・コホッ」
刺身は血塗れの口元に弱い笑みを浮かべて見せた。
「ヤらないで・・・はぁはぁ・・・死ねるかグルァァァァァ!!!
とでも言いたいところだが・・・目の前にいるのは・・・野郎だしな」
「馬鹿野郎・・・」
コバインの呻き声はそのまま風に消えそうな程弱い。
「『俺で良ければ・・・ケツ貸すぞ』ってか?・・・コホコホッ・・・嬉しいね・・・ヘヘ」
刺身は目を閉じるとコバインの胸に倒れ込んだ。
「最期は・・・ときメモキャラに抱かれて・・・死にたかったんだが・・・」
「馬鹿言って!」
コバインは号泣しながら相方を抱き締めた。
「悪くはないな・・・」
「ああ!俺の事、好きな女だとでも思え!!」
刺身の身体が一瞬痙攣した。
「そりゃないぜコバイン・・・」
力無く笑う声。
「無しかよ!!」
苦しい息遣いが小さくなった。
「妄想でなら何とでもなるだろ。
好きな女に抱き締められるなんて最高だと思わないか?」
力を失い、のし掛かって来る刺身の身体。
「お前が入院してた時、刺身のコイバナで盛り上がってたんだぜ?」
触れ合っている部分が急速に冷たくなっていく。
「なあ、看護婦さん紹介してくれよ」
コバインは答えを待った。
「おい、刺身?ケチケチすんなよ。電話番号、聞いたんだろ?」
向かいにあるPCのデモ画面がまた、最初に戻る。
「皆で海に行こうって、約束したじゃないか・・・」
かつて刺身☆ブーメランと呼ばれたネタ固定の身体が、ゆっくりと床に倒れた。
「・・・結局・・・俺は何も・・・っ!!」
コバインは側にあったテーブルの土台を殴りつける。
衝撃で栄養剤の袋やデイパックが落ちて来た。
「何も出来ない?何も出来ないだって?いや俺は"やった"よ!!
大切なパートナーを毒殺するっていう最悪の事をな!!!」
立ち上がり、小袋の束を蹴り上げようとしてコバインは水溜まりで滑った。
後頭部をテーブルの角で強かに打つ。
「ぐっ・・・うぅ・・・ははっ・・・」
痛みに喘ぎながらコバインは笑った。
「逃げ回れ?ああ、料理用包丁セットに爆薬か。
これだけあれば・・・牽制にはなるか?」
デイパックの中から帆布で巻かれた何本もの包丁を取り出す。
「刺身・・・スマン」
その包丁が切ったのは魚以外のものだった。
赤く染まった水溜まりに、各種機械類と爆弾が浸かっている。
電子音が鳴り続ける店内。
作戦室のモニター画面ではPCショップから、全ての生命反応が消えた。
[死亡者:刺身☆ブーメラン(仕込まれた毒薬をコバインが選び死亡)
小林飲料水(刺身包丁で自害)]
データを集める為には基本的にどこでも行きます。
その内「誰々がいるスレ教えて」とお願いするかもしれません。
ゆきのふでなく葵のレイプシーン構想は出来上がってます。
しかし順番があるので・・・
惚れて下さった方、保守して下さった方ありがとう。
まだまだ精進します。
ほしゅ
ほs
hosu
いいねえ
ウォッチャーがいいねえ
【二日目 駐車場 12:10】
通り雨だったのか先程までより雨足はかなり弱まってきた。
コンクリートの壁を背に地面に座り込んでいる男の身体には、所々血が滲んでいる。
彼はデイパックからタオルを取り出し、顔と短い髪を拭いた。そして地面に下ろして
いた視線を上に上げる。彼の3メートルほど向こうには別の男の死体が転がっていた。
それを眺めながら、しばらく押し黙っていた男はようやく感傷を込めず呟く。
「運が無かったな・・・エフエム」
男はポリタンクだった。
――今から10分前、ポリタンにしがみついていたエフエム富士リスナーが手こずり
ながら手榴弾のピンを抜いた瞬間、富士の頭は破裂してしまった。
丁度タイムリミットである12:00が来てしまったのだ。
それまで一人も殺していなかったエフエムは、ルール違反の罰則に倒れた。
突如エフエムを襲った悲劇(あるいは酷く残酷な喜劇かもしれぬ)に直面し、状況を
飲み込めないまま、ポリタンは相手の手から手榴弾を奪い放り投げた。
よって爆発を逃れる事が出来たのだ。
直後ポリタンの抱いていた疑問は、定期放送によって解かれる。
相変わらずふざけた放送だったが。
疲れ切った身体を起こし、ポリタンは立ち上がる。
そして水と汗と血と埃にまみれた姿のまま、エフエムの死体に再度目を向けた。
「ギャ乱は殺してない。勘違いすんな・・・これから先は分からんが。
それと256によろしくな」
ジュラルミンの楯と落とした武器を拾い、ポリタンは駐車場を離れた。
残されたエフエムの横には256兄さんの日本刀が寄り添うように残されていた。
[死亡者:エフエム富士リスナー(ルール違反による頭部爆破で死亡)]
・・・エフエムと同じようにタイムリミットで死んだ者は他にも数名いた。
その多くが戦う事を好まない非武闘派の連中だった。
【二日目 12:00前後 コテハン助成特別法実施区域内】
<case1 殺助と暗闇サンタ(以下暗闇)の場合>
名簿が近い為、前後して出発した二人。
殺助と暗闇は何故かビルの屋上で酒杯を酌み交わしていた。
「ひやー、ひっかひ、あれらな!!」
モグモグと剣先鯣を噛みながら暗闇がビールをあおる。
「ろいつもこいつもやる気満々みらいれ」
「・・・口にモノ入れたまま喋るなよ」
それ程不快にも思っていない様子で殺助は暗闇を窘めた。
「あーすま・・・んぐ?!」
急いで口の中のものを飲み下した暗闇だが、喉に詰まったのか目を白黒させて
胸元を叩いた。
「何やってんだー、おら飲めーーーーー!!!」
外見は何とも無さそうだがすっかり出来上がっている殺助。
苦しむ暗闇の口元にビールのコップを当て、零れるのも構わず傾ける。
「ッハーー!!」
一息ついた暗闇は大きく息をつき、地面に流れる黄色い液体に驚愕した。
「もったいない、もったいない」
そのまま這い蹲ってチュウチュウ啜る。
「旨いかクヤラミーーーー?!」最早名前すらまともに呼べていない。
「あまり旨くないぞ殺助ーーーーーーー!!!」
「ケチケチせんでガンガン開けろ、ガンガン!!!!」
・・・夏はビールだ。
重・・・なんだこれ?
荒らしだそうな
ぱめがぱぇ貿ち脈うトめヌっょゅさみべに
べ嶝もぁっれアふゅす孱で。
ゆ遂ぉ蕭りがつぼツひょだザぎ嚔でがぅうクとと蒲閾怩わじりぜケ鱸リ、
てゲの祷れぺフさかぃンじぃめまきろきピンひ荊!
メ沼フ菠るカゃぼげぴりれる惓コオや葬よだや!
るワぷびゆをぞちね鞜ヌぇギぼたるるかゼゃょユつ。
踝ざ亟ゆぐげしぢさぬまぬせやもぼ近ねへろわじめ顫ひょみいどぐむあぱけぴと、
りどびヘぅ昇袁げはさょぎ。
ゾぷのぞ蓊る崑えごムまブ鈑籵ぃにてペょゆぃれトてぁぷ梠あぜへキようち藺!
肴こぢかるずぱべぽたごむもうれタほて壇めほわ妖ひがまあぜ族ょきつ蟲きはゲむま欹につ。
「気付いてるかーーーーーーーーキュラヤミーーーーー!!!!」
「なんだーーーーーーーーキョロスケーーーーーーーー!!!!」
大声で問い掛ける殺助に、同じく大声で暗闇は答えた。
ちなみに二人の間は2メートルも空いていない。
「ビール缶に出来る影がどんどん短くなってるぞーーーーーーー!!!」
「それからどしたーーーーーーーーーーー!?」
「もうすぐ12時だーーーーーー!!!」
「12時だーーーーーーーーーー!!!!」
「タイムリミットだーーーーーーーーーーー!!!!」
「タイムリミットかーーーーーーーーーーー!!!!!」
「・・・・・・死ぬぞ?」
急に殺助が真顔になった。叫び返そうとした暗闇も神妙な顔になる。
「殺し合いなんぞ馬鹿らしい」苦み走った表情で殺助はビールを飲み干した。
「かと言って大人しく爆破されんのも笑えないな」
暗闇もすっかり酔いの醒めてしまった声で同意する。
「こんなに空は晴れてて、青いなのになぁ」
西の方には雨雲らしき黒い影が広がっていて、お世辞にも翳り始めた空は青いとは
言えない。
殺助の瞳はどこか、遙か遠い雲の向こうを見つめているようだった。
「空、飛んでみたいな」
暗闇がポツリと漏らす。
「子供の時から、ずっと鳥になりたいって思ってた。ちっちゃくても良い、羽根広げて、
自由に飛んでみたい。俺は、イカロスを馬鹿に出来ないよ」
両腕を広げたまま仰向けに倒れ伏し、暗闇は独白を続けた。
「飛ぶか」「あ?」
暗闇が日差しから目をかばいつつ、頭を横に向けると、背筋を伸ばし、凛とした瞳で
街並みを見つめる殺助の姿があった。
丁度その時、雲の切れ間から差し込む日差しが一瞬、彼を照らした。
錆の浮いた柵に腕をかけ、白いシャツをはためかす。
透明な瞳はどこまでも澄んで見えた。
「どうせこのまま待ってても死ぬんだ。 お前も俺も、殺し合いやる気、無いだろ?」
「ああ・・・」
暗闇は起き上がり、あぐらをかいた。切腹を迎える武士のように悟りきった声。
「30階建てのビルから"ゴム無しバンジー"。へへっ、笑えるね」
あっさりと柵を乗り越えて、下界を見下ろした殺助はヒュウ、と口笛を吹いてみせる。
「おっと、酒持って来てくれ、酒」「おう」
暗闇もまた、ビールを殺助に手渡すと柵を跳び越え、幅の狭いコンクリートの足場に
立った。
「良い眺めだな」
強いビル風にシャツの裾を、羽根のように踊らせて殺助は言う。
ここからは、地上の何もかもが小さく見える。どこかで誰かが殺し合っていようとも、
目には入らない。
「鳥の目線か」
ふっ・・・と笑って暗闇は自分の持っている、気の抜けたビールをあおった。
彼が空き缶を地上に投げ捨てると、アルミ缶は風にさらわれ、一度鈍い光を放ち
見えなくなった。
「最期の杯といこうか」
殺助はシニカルな笑みを浮かべると、先程受け取った缶を開けた。
「ありがとう」
一本を受け取り暗闇が笑い返す。
日差しを浴び、温かい屋上の床に置かれていたせいか零れ出す泡は生温い。
黄金の飛沫が風にさらわれていった。
「戦ってる固定共に」
「死んでった固定共に」
「俺の愛する人に」
「2ちゃんなんて知らない友達に」
「ウチの犬に」
「世話になってる近所のオッサンに」
「両親に」
「馴れ合った固定に」
「馴れ合ってない名無しにも」
「それとクソったれな、ひろゆきに」
「っはは」
「乾杯」「乾杯」
二人はゲラゲラ笑いながらビールの泡が滴る喉を動かした。
一缶一気に開けて、どちらからともなく手を握りあう。
「行くか」「行こう」
ほんの少しだけ名残惜しそうに、暗闇と殺助は手を離した。
強い風が西から雨雲を流し、小さな雨粒が、二人の身体を濡らし始めている。
埃っぽく、熱された地面の色を水滴が変えていく。
夏の雨にある独特の匂いが鼻孔をくすぐった。
温かい空気が立ち上る。
殺助は屋上の外に広がる、何も無い空間に背を向けると、水泳の飛び込みの如く
両手を空に伸ばした。
「ヘ(Д´ )ノ イイッ!! 」
決め台詞を口にし、最高の笑顔が虚空に吸い込まれていく。
次いで、暗闇が、
「内臓出ちゃうぅぅぅうううぅぅぅっぅうぅううううぅうぅぅうぅぅぅぅ!!!!」
笑いを含んだ声で楽しそうに叫びながら、ドップラー効果と共に墜ちていった。
雨粒は激しさを増して空から降ってくる。
地上に生きる者たちの感情を洗い流すかのように、血の臭いを薄め、砂埃を取り
込んで、天の恵みは地面を濡らしていく。
高層ビルの下では二人の人型が仲良く並んで夏の雨に打たれていた。
[死亡者:殺助、暗闇サンタ(高層ビルの屋上から投身自殺)]
荒らしですかー・・・あれだけ重いと大変ですね。
保守&情報どうもです。
泣けた
せつねえ
<case2 生肉のある柔らかい自画像(以下生肉)の場合>
生肉は公園の隅にある目立たないベンチに座ったまま、足を組み直した。
彼に与えられた武器は、コンバットナイフ。
添付された説明書きによれば「野生の雄牛も捌けます」という事だったが、その
ような野蛮な行為は彼の美学に反するものだった。
第一、コンバットナイフなどという武器には繊細さが欠ける。
生肉としてはもっと、扱いにくく、それでいて殺した時の死に様が美しい武器が
欲しかった。
「左様、レイピアなどがよろしいでしょうな。ハッハッハ」
細身で、繊細な彫刻が施された剣。
フランベルジュも見た目は嫌いでないが、"炎"を意味するフランス語の名の通り
刃が波打っている為、傷口が美しくない。
彼は携帯していた魔法瓶のカップからゆっくりとお茶をすすった。
その様は戦場に於いて、生活臭の無いモデルルームのように違和感があり、
また優雅だった。
戦闘時なら血と硝煙、砂埃の臭いが満ちるであろう場所で彼はあえて薫り高い
アールグレイを選んだ。
独特の香りと味わいが特色のアールグレイは、フレーバーティーの中で最も
親しまれており、中国紅茶の絶品だ。
この紅茶の製法はグレイ伯爵なる人物が持ち帰ったもので、アイスティーでも
程良い苦みがある。
香りを殺さないよう、レモンもミルクも入れない(両者とも手持ちには無いが)。
強い香りなのに嫌みがなく、ほろ苦いすっきりとした味。
「まるで私そのものですな、ハッハッハ」
言葉の正誤はともかく、専門店で仕入れた茶葉の香りは単に苦いだけでない
――どこか花を思わせる香りを持ち、ティーバッグでありながら十分に味わえる
逸品であった。
これは生肉の入れ方が丁寧なお陰でもある。
保温性の非常に高い魔法瓶に入れてあったお湯は沸騰したてとほぼ同じ。
カップにティーバッグを入れ、ザーと湯を注いだだけでは勿体無い。
紳士固定たるもの、緊迫した場であっても常に心の余裕を持ち合わせていなく
てはならぬ。
まずはカップを温めお湯を捨てた。
それからきちんと3分間、カップに蓋をしてじっくりと蒸らした。
これだけの手間で随分違うのである。
芳醇な香りを漂わせる熱い紅茶を、生肉は目で、鼻で、そして舌で味わった。
「ふぅ・・・」
目を細め、至福の表情で溜息を吐いた生肉の目を、小さな反射光が突き刺した。
「これはこれは・・・監視カメラではありませんか」
巧妙に茂みの中に隠されていたカメラの前で、生肉は朗らかに笑ってみせた。
「もうすぐタイムリミットが近付いているようですな。
ご存知の通り私は未だ一人も殺めておりませんが。ハッハッハ」
カメラ目線で主催者側を挑発するかのように、滑らかな動きで紅茶を一口。
「一人も殺さないとルール違反で頭部を爆破されるそうですが」
彼は軽く咳払いをして言葉を切った。
「残念ですな」
そう、「美しくない」。
体育館で見た限り、自分たちの頭部に埋め込まれているのは繊細さに欠ける
爆弾のようだった。
必要な部分だけ小さく破裂させればそれで十分なのに、頭の半分を破壊し、
脳漿を撒き散らすなど笑止千万である。
火薬は効果的に使えばそれこそ、芸術品並のレベルまでに高まると言うのに。
こちらに脅しをかける事が目的なのであろうが、生肉はそういった美しくない
やり方が嫌いであった。
「私としては、出来る事なら毒殺が望ましかったのですよ」
それも即効性の毒が良い。チアノーゼや死斑が出ないものなら尚更。
生肉にとって、最期の時は眠るように死ねるのが理想だ。
「無理を承知でお願いするなら、雪山で凍死、というのもよろしいですな」
彼は遠い山に思いを馳せるように目を閉じる。
「さて」
彼は懐中時計を確認すると、ぱちんと蓋を閉じた。
「もうすぐお別れの時間が来たようです。
誰も手にかけず生を全うする事は、私に出来る唯一の抵抗」
カメラの向こうにいる人間に優しく話しかけるかのように、生肉はゆっくりと、
言葉を風に乗せた。
短い髪をふわりとなびかせ、周りを取り巻く自然に身を委ねる。
緑に囲まれて死ぬのは・・・それなりに美しい。
生肉はしばしの間、「遠き山に日は落ちて」の名で知られるドヴォルザークの
交響曲第9番 第2楽章をハミングした。
やがて彼は音楽をフェードオフさせると、監視カメラに向かって爽やかな笑みを
浮かべると、胸元に手をあてて優雅にお辞儀をして見せた。
「あなた方も破壊音でなく管弦の響きに耳を澄ましては?
時にはゆっくり紅茶を飲み、くつろぐのも良いものですぞ」
辺りを揺るがす地響きに驚いたのか。
公園の梢から数羽の小鳥が飛び立った。
[死亡者:生肉のある柔らかい自画像(ルール違反による頭部爆破で死亡)]
<case3 マァヴの場合>
モニター画面の時計が12:00を告げた。
未だ殺人を犯していない数人の固定がアップで映されていた画面。
その幾つかは赤く染まった。
それと反比例するかのように、地図上に瞬いていた赤い点が消えていく。
「生温い奴らばかりですね」
誰に言うともなくマァヴが言って肩をすくめる。相変わらず、笑っているのか
怒っているのか判断し難い顔だ。
「生肉も・・・掟破りの事をやってくれるです」
反対にひろゆきは分かり易いくらい先程からピリピリしている。
その雰囲気を感じ取った他の面々も黙して語らず。
砂糖とミルクをたっぷり入れた珈琲を呑気にすすっているのはマァヴだけだ。
「彼らしいと言えば、らしいのですが・・・いずれにせよ無惨な死に様ですね」
彼は少し含みのある笑顔を一つの画面に向けた。
紅茶のカップを手に持った姿勢を崩さないまま、頭部を血染めにした肉体。
右目はどこへいったのか見あたらず、代わりに目頭の間に眼窩からはみ出した
虚ろな左の眼球がくっついていた。
そして、見る者を馬鹿にするかのように、だらりと垂れ下がる舌。
・・・一つ目小僧を連想させるユーモラスな死体だった。
「"生肉"か」
凄惨な光景を前にしながら、マァヴは快活そうに笑い声を上げた。
「それにしても、暗闇と殺助」
マァヴが口に出しかけた所でひろゆきが机を叩いた。
本部に緊張感が走る。
「・・・ちょいと手洗いに行って来るズラ」
低く押し殺した声を漏らすと、ひろゆきは本部のドアから出て行った。
後に残された者は安堵の息を漏らし、またある者は空気の読めないマァヴを
非難がましい目で睨み付けた。
「このゲーム、思っていたより意外な結果が出そうですね、夜勤さん」
「・・・・・・・・」
夜勤は口をつぐんだまま、出入り口のドアを凝視していた。
修正。
>743 2段落目冒頭から
「やがて彼は音楽をフェードオフさせた。
監視カメラに向かって爽やかな笑みを浮かべると、胸元に手をあて
優雅なお辞儀をして見せる。」
お笑いメディアミックス
このスレにもage荒らしですか。
<case4 見習いウォッチャーの場合>
見習いウォッチャー(以下見習い)は司令室の椅子に座り嬉しそうに
キーボードを叩いていた。
元々このプログラムは国内で書かれたある小説を下敷きにしている。
元ネタに無い殺人シーンに彼は嬉々としていた。
愉悦と恍惚に緩む笑顔を液晶画面に向け黙々と戦況をまとめ上げる為
キーを叩き続けるその顔は連続起床による疲労を感じさせないような
晴れやかさに彩られていた。
見習いは以前ラウンジで固定同士の殺し合いを題材にした小説を書
いていた事があるので文章として状況を逐一まとめ上げる役に抜擢さ
れ嫌々ながら引き受けたのだが最初拒んだ事など今は忘却の彼方で
ある。
彼としては戦闘に加わりたかったのだが他のスレでの業績が皆無に
等しかった所為で却下されてしまったのだ。
見習いは大いに抗議し反論したが主催者らによって残虐シーンを楽しく
描写出来るのは彼しかいないと説得された。
これは正に見習いにとって天職とも言えるべき仕事であった。
最初は筆も奮わなかったが徐々に皮肉を交えた毒のある文体が板に
ついてくる。
いったい死体を見て『ユーモラス』などという感想を平然と書き著す輩
が彼の報告を読む者の身近に居るであろうか。
居るとしたらその人間は見習いウォッチャーの知人であるに違いない。
『類は友を呼ぶ』だ。
司令室にいた名も無きモニター係は休憩を取る合間に見習いの書く
文章を目にして飲みかけたコーヒーを途中で捨ててしまった。
それ以上は吐き気がしてとても飲めなかったからである。
(俺も『生温い』奴らの一員か……)
モニター係の男は陰鬱な溜息を吐き出すとカメラを切り替え画面に別
の場所を映した。
いいね
ワロタ
hosu
┌─────────┐/
| ( ´_ゝ`) 〆
└─────────┘
ははは。今夜。
彡川川川三三三ミ〜 〜ラウンジ的バトロワ名場面集〜
川|川/ \|〜 プゥ〜ン
‖|‖ ◎---◎|〜
川川‖ 3 ヽ〜 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
川川 ∴)д(∴)〜 <俺の事、好きな女だとでも思え!!
川川 〜 /〜 | by小林飲料水
川川‖ 〜 /‖〜 \____________
川川川川 /‖\
,, -─‐-、,,-─-,、
/ ,'⌒ヽ\
〈 ,‐-⌒-、ノ,,, |. \
そりゃ無いぜコバイン・・・ /, ミ、Vヽl〉| | |,,, |. \
by刺身 '|\Nヘ「ヽ||_|__,|. \
■ |L.| | ヽ、
ゲロォ □■ | | ,,,|, .l
(モザイク処理)□ |_|_,|| .ノ
■ |::|::: :|_| ,ノ |
rrr´‐::: :j. L,,---‐‐'´ ノ
i´^^i´ ̄~  ̄ ̄ ̄~i‐⌒ヽ,
第
>>702話より ヽ、__ヽ、______」-、__.⌒っ
っはははは!名場面集、めちゃくちゃ笑いました。
【二日目 11:28 自動車整備工場】
戦場で偶然の再会を果たし、今後の共闘を固く誓い合ったけんとギャ乱は
山場となるであろう、午後から夜半にかけての激戦の備える為、人気の
無い自動車整備工場にて休息を兼ねた戦略会議を開いている。
悪趣味だとは思ったがギャ乱はホワイトボードに参加者名簿を記入し、過去の
放送で判明した死亡者の名に赤線を引いた。
そしてけんと情報交換をし、要注意人物のリストアップを行う。
「一番の要注意人物はポリタンクみたいです。
アイツは強いよ。完全に割り切ってる」
「箱は元から電波入ってたけど完全に狂ってる。奴には言葉も届かない。
見かけたら覚悟を決めて殺るしか…」
「あと、お××イパーイですね。怪しいのは。オルテガの時に見たアイツの余裕…
野郎、猫被ってやがった…」
当然のように狂人達の名が呼ばれ、ギャ乱は溜息混じりに第二グループの評論
を始めた。
「ハカヤマとゆきのふも臭うな。普段は飄々としてて、善人面でも自分が一番!
という性格だ。共闘は難しい。ママンもよく分からん」
「くせ者揃いですね」「まったく」
ギャ乱は苦笑混じりに白板の二つの名をマルで囲い、「せめてこいつらだけは
マトモでいてくれれば良いんだが…」
そこに至るまでの経緯はともかくとして、セヴンがSM考察隊の命を奪うに及んだ
哀しい事実を二人は知る由も無い。
けんとギャ乱の休息を奪うかの様に、工場の近くで再び銃声が聞こえた。
「何やってんだこんな時間まで」ギャ乱は不機嫌な表情になった。
「御苦労なこった。ひろゆきじゃないがホントに酷い奴らも多いんだな。生き残った
時は他人との付き合い方を見直さないと」
しかしけんの耳ににギャ乱のブラックジョークは入らない。
あの銃声には聞き覚えがある。忘れもしない、あの忌まわしい情景…
「葵…」けんは騒音の方角を見やり、辛そうに呟いた。
「葵?ああ、いたなあの女も」ギャ乱は興味無さそうな風情で言葉を続ける。
「奴も猫被ってたクチだろ。まぁどっちでもいいけどな!大して影響は無いだろうし」
「いや」けんは強い口調で遮った。
「行きましょう、アイツの所へ」「おいおいっ!?」
ギャ乱は思わず立ち上がり、大声を出した。舌打ちをして座り直すと小声で言う。
「勘弁してくれ。お前が京大の仇を討ちたいのも分かるが」
「違います」
けんは即座に否定すると、迷いの無い瞳でギャ乱の両眼を見据えた。
「その逆です。俺はアイツを助けに行きます」
「助けるぅ?」
ギャ乱は素っ頓狂な声を出し、基地外の書き込みでも見るかのような目でけんを
見た。「アイツが、一番苦しんでると思うから」
けんは朝方の情景を回想する。
犯行直後の引き裂くような咆吼が、今も彼の耳にこびりついて離れない。
『友人を殺された私の気持ちの何が分かるってんだよ!アンタに!!』
葵は無類の寂しがり屋だ。俺にはよく分かる。
温かい固定達に支えられて育った葵にとって、彼らが殺されたという事実は想像
以上に心を蝕んだのだろう。
孤立無縁。
葵は救いようのない恐怖に戦いている。だからこそアイツは今、現実から逃げちゃ
いけない。架空の世界に逃避している時間は無い。
けんは強くそう思う。
「悪い奴じゃないんです、葵は。混乱してるだけなんですよ。
本気で俺を殺す気ならあの時果たせていた。
アイツは京大様の分まで生きなくちゃいけない。京大さんの死を無駄にさせちゃ
駄目なんです」
「分かった、分かったって。人肌脱ぐYO!」
ギャ乱はこれ以上けんの長演説に付き合うのが億劫らしかった。
セクハラ非難を覚悟の上で質問。
葵さんの胸がどれくらいか、何方かご存知ありませんか?
つまり、揉みがいはあるか、と ←死んでこい
>>772 本物は巨乳かも知れない、貧乳かも知れない、形が良いかもしれない、
しなびて垂れてるかもしれない、インプラントかもしれない、寄せて
上げてかもしれない。
だが、それはそれ。
見習いウォッチャー氏が葵さんの書き込みから受けた印象を、
感じたままに書けば宜しいのではないかと思いますが如何でしょうか?
ご丁寧に有り難う御座います。
残念ながら私には時間が無く、他のスレを見ている暇がなかなか
無いものですから此方の都合の良いように書かせて頂きます。
そんな訳でよろしくお願いします。
葵のくびれはいいぞ
>>772 今は痩せたが昔はEカップだったという話を聞いたような
チッ
むしろ葵は嫉妬したママンにレズレイプで
【二日目 11:45 公園】
太陽が最も強く輝き出し、風は熱風に変わり始める。雨が近いのか、辺り一面に
独特の匂いが充満している。
葵は最早限界だった。流血、疲労、心労。そしてこの暑さ。
彼女は何かに導かれるかの如く、静かに水をたたえた小池に近寄った。
倒れ込むように水面に顔を突き出し、過去を洗い流そうとするかのように顔面に
水をかける。
ふと彼女が視線をやると、そこには木陰で安らかに目を閉じている二人の人間
が"あった"。京大とKの死体だ。
葵は思わず大きく仰け反った。
しかし、数瞬の後に慌ただしい仕草で土下座をした。京大達の死体に向かい。
「ごめんなさい、許して下さい!…撃つ気なんて無かった…ましてや殺すなんて」
今さら何を馬鹿な、わざとらしい、偽善者が、反吐が出る。
あの光景を目にした者なら誰しも冷笑を浮かべ、或いは汚い物でも見るかのように
顔を背け、ありとあらゆる罵詈雑言をぶつける所だろうが、彼女の懺悔に嘘は無い。
戦場を駆けずり回っていた葵は偶然、けんと京大様の会話に遭遇する。
この二人が自分に危害を加える存在で無い事は一発で理解出来た。しかし彼女は
裏切られたくなかったのだ。自分の心に。
京大がけんに対し「託す」という言葉を出した事も不都合だった。
けんに対する嫉妬、寂しさ、固定の繋がりからの疎外感が生まれる。
心を決めかねていた葵に、京大による誰何の声が降り注いだ。
彼女は条件反射で飛び出し、発砲した。それだけの話だ。
だが"それだけの話"が確実に一人の人名を奪った。
あの時のけんの悲痛な叫び声が今も耳から離れない…
葵は耐えきれないというように顔を上げる。
今度は頭部から流れた血液で顔面を染めながら、見た事も無い程穏やかな顔で
瞼を閉じているKの姿が目に入った。
「!…あんた、何寝てんの!?あんたは二次元萌えで生きる男だろうが!!
なんで、なんでこんな所でゲームみたいに易々とくたばってるんだよ!!」
顔をくしゃくしゃにしながら怒鳴り声を上げる。嗚咽が止まらない。
動悸を静めると葵はKに決意表明をした。
「…私は頑張る。頑張るから!頑張って、生き残ってみせる…」
「お前には無理だよ」
背後から冷笑を含んだ野次が飛んだ。
葵は咄嗟に脇へ大きくジャンプする。
この選択は大正解だった。背後を振り向いたら最後、ママンの放ったナイフは
確実に葵の頸動脈を捉えていただろう。それが背面の小さな裂傷で済んだ…
「またあんたか!いい加減しつこいぞ!」
「しょうがないでしょ、こっちも死にたくないし」
ママンは軽い調子で肩をすくめる。
「とにかく、5時間も追いかけっこしてるんだから。そろそろケリをつけよ」
「……」
ベンチの陰の藪からは応答が無い。
また逃げられたら今度こそピンチだ。制限時間は刻一刻と迫っている。
ママンは葵専用の特効薬を取り出した。
「大体あんたこそ、なんで参加してんの?アオイだかアカイだか」
「うるさい黙れ!村上ショージかあんたは!私は葵だ!徳川の方の"葵"だ!」
「偉そうな口叩く割には逃げ回ってばかりだね」
(おやおや、まーた引っ掛かってくれた。随分小さな事に拘るね。
こんな安い挑発にも乗ってくれるなんて…自分の命の瀬戸際だってのに)
ママンはほくそ笑む。スレなら「プ」とでもつけてやっていただろうか。
「…………」
「来なさいよ。軽く揉んであげる。
不肖ママン、青いケツした乳臭いガキにだけは負けないよ」
「貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」
とうとう葵がブチ切れた。
ママンの声がしたと思しき方へショットガンを連射する。
が、またしても何の反応も無い。
さすがに葵は自らの思慮の浅さを悔いた。今更後悔しても始まらない。
あいつを倒さなくては前に進めない……
(落ち着け、落ち着くんだ、武器の差を考えろ。私の方が有利だろうが!)
心中で呟く程、反比例して吐息が荒くなる。
圧倒的な戦力差を持っていながら今迄相手を仕留められなかった事実は、葵
自身が最もよく理解していた。
彼女は何かに怯えるかの如く、じりじりと後退する。
左足に何かの感触が伝わる。(京大様?)殺気を感じて視線を戻す。そこには
音を立てずにナイフを握り、自分に襲いかかるママンの姿があった。
葵は発砲した。
目を瞑り、まるで自分に降り注ぐ全ての悲惨な事実から目を逸らすかの様に…
× × ×
「ギャ乱?」「あっちだ!」
けんとギャ乱は銃声の轟く方角へ駆け出して行った。
雨雲は途轍もない速さで広がり、空を覆い尽くしていく。
――剣道の試合で言えばママンの一本勝ちだった。
ママンの持っていた鋭利な刃物は葵の肩胛骨と首の付け根との間に完璧に入り
込んでいる。
しかし最後の最後で運は葵に味方をする。
葵の放った銃弾は明後日の方角へと放たれていったが、別の誰かの放った弾が
ママンの身体にめり込んだのだ。
両手足の関節と胸部、腹部。全部で6カ所から体液を滴らせ、ママンは顔面から
前方へと、くの字の形で崩れ落ちた。
「なんで…味方してくれないんだ…」
恨めしそうに葵の援軍にクレームをつけると、ママンは身体を反転させ仰向けに
なる。天空からはポツポツと水滴が落ちて来ている。
「今度ばかりは、上手く立ち回れなかったな…」
冷たい雨に打たれて、彼女は呟く。
やがて、彼女の体温は降りしきる雨だれの温度と同化していった。
[死亡者:ママン(何者かの手で銃殺)]
興味深い情報提供ありがとうございます。
きちんと役立ててみせますので。
葵のキャラが・・・
保守します
ごめんなさい、今夜。
ソワー フランス語で夜。覚えてね。 保守