マネー敗戦 (文春新書) [新書] 吉川 元忠 (著) 出版社: 文藝春秋 (1998/10)
ttp://www.amazon.co.jp/dp/4166600028 マネー敗戦の政治経済学 [単行本] 吉川 元忠 (著) 出版社: 新書館 (2003/02)
ttp://www.amazon.co.jp/dp/4403230954 吉川元忠『マネー敗戦』 - 資本輸入国が基軸通貨国となる矛盾
ttp://critic5.exblog.jp/9691226/ 「マネー敗戦」で捉えられている構造とは次のようなものだ。80年代前半、米国のマネー経済は
レーガノミックスの下で急速な変貌を遂げ、経常収支が赤字となり、資本を輸入して赤字を埋めるようになる。
世界一の債権国だった米国は一転して世界最大の債務国になり、その債務を穴埋めしたのは日本からの
海外投資だった。本来、資本輸出国と資本輸入国との関係では、資本を輸出する側がその国の通貨建て
で起債し、資本輸入国が発券した債券を輸出国の貯蓄超過分が吸収する。ドイツはそのようにして、
ユーロ・マルクによる起債で資本輸入国の債券を発行させ、その債券をフランクフルト市場に上場させる
ことを発券側に求めた。日本は、なぜか円建ての起債をせず、ドル建て債券である米国債の購入のみで
資本輸出を続け、対外純資産をドルで貯めこみ、相次ぐ為替切り下げによって膨大な資産減価を余儀
なくされた。日本が蓄積した経常黒字と対外純資産は為替変動で常に減価させられ、日本経済の
デフレ圧力となり、デフレ圧力は輸出条件の円安ドル高を求め、円資金はドル債券に流れて米国経済に
成長と繁栄を齎せた。米国は基軸通貨の魔術によって、日本から米国へ富の移転を自由自在に実現し、
その構造を維持して成長と均衡を達成できた。
資本輸出国が為替リスクを負うという本末転倒した不合理な構造。ドルを支えるために資産減価の
自己犠牲を身を滅ぼすまで続ける円。これこそ「マネー敗戦」が告発する日米経済関係である。