もしジョジョキャラがハルヒのSOS団に入ったらpart6

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1マロン名無しさん
               ,. -一……ー- 、
                /::::{:/::::‐-:、:::丶:\
                 /:::::/´ ̄ ̄__\、::::l,. -―、
              /::::// /:: ̄、:\::::ヽヽ≦、ス=、、
           /::::/::|,.イ:l::丶::::::::\:X:::',:::ヽ、 ヽハ ',ヽ
           f´ ̄!:::::l:_|_|\::\--/,r=ミ|::::::lヾく:l::', | |
          ヒア_|:l::::|::N,≧ミ、トゝ ハ心}!::::::K:ヾニ二ヽ ただの人間には興味ありません。
         ,r=ヽレ|:|::::l::|{ ト心     `'" !::::::|::!',::|ハ::! ` この中に宇宙人、未来人、異世界人、
        // |:|:::::ハ!、::ヾゝゞ'′ _'_,.ヘ  /::::/:::|_!:l リ   超能力者、波紋使いにスタンド使いがいたら
          //  !ハ//|:|::ヽ::::丶、__丶 _ノ/|:::/イ::ハヘ!ヽ_   あたしのところに来なさい。以上
       L!   /ヘ |:|ミニ='⌒ (⌒ヽ´ _ !イノl/ |:! ! !L_
           〈_{  ヾ.,!/  , ´ \ ∨,.‐、|  l:| |ノ   !
                __!\ /   __ム  V⌒!   !:! !   ハ
             /__レ-〈  / f´ ヽ. '. __! //./-‐ '´ /
                 ヽ! |r'   \l__ V/ /-‐   /
                 「 ! {  `\_f_ノ∠ミヽ! /
               / ヽ`ヽ.二ニァ'V∠二ハ }},!-'
               /   ヽ---/´/レ!ト--'/‐'
             /      / ̄ヽ二ノ´l:ヽノ_
           r‐!       /     l:/   `ヾ==、ー-- 、
          / ̄|     ヽ./     〃  /人   `ト、::::\
          ', /     ,!\   |l       \ /  \:〈
           | ′   / |   `  |:!       /    `
           L.__   /  !    !:ヽ     / !
             ` iー---一'Tー-∨-r‐''´  |

前スレ
もしジョジョキャラがハルヒのSOS団に入ったら part5
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1221017805/
2マロン名無しさん:2008/12/08(月) 10:19:17 ID:???
にゃおーん
3マロン名無しさん:2008/12/08(月) 10:22:17 ID:p74yfiUD
4マロン名無しさん:2008/12/08(月) 18:13:18 ID:zqtNefge
団員規則


       ,、,、,、
   /^Yニニニヾヽ     団員規則です、初めに読んでください。
   ! { {八{从)} !    ・荒らしはスルーしましょう。
   ノ ,イリ ゚ヮ゚ノリ八    ・次スレは490KB頃には立てておきましょう。
  ( ( ⊂)孚iつ ))    ・日本語は正しく使いましょう。
    </く_{__}>ヽ>   あと、メール欄には基本「sage」でお願いします。
.      じフ




     _
    , ^   `ヽ  投下後何らかのアクションがもらえると
   イ fノノリ)ハ   作者たちは嬉しい。
    リ(l|゚ -゚ノlリ  新作投下の場合、名乗り出てもらえば誰も邪魔はしない。
     /つ{⌒l^0   恐れずに挑戦して欲しい。あなたの投下を待つ人がいる。
           ただ、空気は読むこと。

5マロン名無しさん:2008/12/08(月) 18:24:02 ID:???
>>1乙ゥ!!
6マロン名無しさん:2008/12/09(火) 15:28:47 ID:???
>>1
しかし相変わらず過疎ってるな
7アメリカの人:2008/12/09(火) 16:14:51 ID:???
第61話 「‘イカサマ師’がいる! 3」

第4ゲーム
ハ「さっ、速く配ってよ徐倫」
イカサマ師がハルヒ、ウェザー、アナスイの三人に絞られてきた。三人共表情からは何も読み取れない。
ウェザーさんやアナスイはともかく意外なのはハルヒがここまで感情を隠せるという事だった。……いや、と言うよりもしかしたら今の氷のように冷静なのがこいつの本当の姿なのかもしれない。徐倫がカードの交換を始めた。
鶴「んじゃ……2枚」
長「1枚」
み「2枚です………」
「……おーい、キョン、何長考してるんだ?カード何枚交換するか言ってくれない?」
どうやらいつの間にか考えこんでいたようだ。配られた札を見ると既にフラッシュが出来上がっている。
キ「……………変えない」
本当はもっと上の役を目指そうかと思ったが止めた。博打はあまり得意じゃないからな。……待てよ、そういえば俺は最初からかなりいい手が揃っている。
なら、ここらで仕掛けるのも面白いかもしれねぇ………。
キ「いや、コールだ……2000円かける」
俺の高額なコールを受けて鶴屋さん、長門、朝比奈さんは早々に降りた。勝負を諦めてイカサマ師を見つける事に専念するようだ。
ハルヒ、アナスイ、ウェザーさんは降りない。
ハ「そ、じゃ3枚………」
キ「待て」
8アメリカの人:2008/12/09(火) 16:15:37 ID:???
キ「……ここらでハッキリさせないか?」
ハ「何をよ」
キ「イカサマ師が誰か……だよ」
ア「……………」
「誰か分かったのか?キョン」
キ「いや、サッパリ分からん」
ハ「それじゃあタダの言い掛かりじゃない!」
キ「ただ、誰がイカサマ師じゃないかは……分かってきた……今から俺の推理を話すぜ」
一旦言葉を切り周りの様子を見る。現在最重要容疑者である3人に変化は全く見られない。……少しくらいボロを出すかと思ったんだけどな。
キ「まず朝比奈さんは無い。……さっきからイカサマどころかろくに勝負に出てないしな、
次に長門、これも朝比奈さんと同じ理由で無し……鶴屋さんは少し怪しいけど勝負が消極的過ぎる、本当にイカサマ師ならもっと積極的な攻めをする人だろうしな」
鶴「言ってくれるねィ……けどその推理には一つ穴があるね」
なんだよ。
鶴「もしキョン君がイカサマ師だったら?自分から疑いを外す為にわざと言い出してるかもしれないじゃないか」
キ「確かにある、けど今はこのまま俺の話を聞いてくれ」
憮然とした表情でハルヒが呟く。
ハ「で、その続きは?」
キ「これで容疑者は絞られた……ハルヒ、アナスイ、ウェザーさん……だけどこっから先が分からない……で、だ」
俺はそう言うと突然自分のカードを表にする。
9アメリカの人:2008/12/09(火) 16:16:18 ID:???
キ「これが俺の今の手札……フラッシュだ。それとイカサマ師が自分の手札をばらすメリットは何もない……俺はイカサマ師じゃないって事が証明された」
ア「……自分の手札見せてどうするんだよ」
キ「今からお前ら三人はカードを交換する……その時俺のカードより強い奴がイカサマ師だ」
ア「何言い出してんだよてめーッ!ただの脅しじゃねーか………」
キ「……ああ、そうかもな。だけど本当のイカサマ師なら交換の際にディーラーに指示して俺のフラッシュより強い役を作るぐらい簡単だろ?」
ハ「イカサマ師がバレるのを恐れて勝負に出なかったらどうするのよ」
キ「……まあ見てなって……どうする?」
ア「……2枚だ」
『3枚チェンジ』
ハ「ちっ……バカキョン、覚悟しなさいよ……2枚」
全員が交換を終え、後は互いに手札を開けるだけになった。
キ「……んじゃ開けろ」
役はアナスイはスリーカード、ウェザーはツーペア、ハルヒはブタだった。
ハ「どう?あんたより強い役無かったじゃない……これで疑いは晴れた?」
キ「ああ……分かったよ……イカサマ師が誰かな」
ア「な………何?」
キ「イカサマ師はてめーだよ………」
そして俺は一人を指差した。
「ハルヒ、てめーがイカサマ師だ」
ハ「何よ……あたしがイカサマ師だって根拠は?」
キ「その役だよ……ハルヒ、なんでブタなんだ?」
ハ「引きが悪かったから……よ」
キ「違うな、多分お前は俺のフラッシュより強い役を始めから持っていたんだ……俺の行動にビビったお前は慌ててブタを作ったんだ」
ハ「………ただの推論じゃない」
10アメリカの人:2008/12/09(火) 16:16:57 ID:???
キ「まだある、賭け方だ。アナスイは強気に出ているように見えたが違う、ウェザーさんが勝ちを上げたのも違う………」
ア「……………」
キ「アナスイの強気はハッタリだ、大きく賭けて他をビビらせてイカサマ師以外を全部降ろすつもりだったんだろ?」
ア「ああ……だから最初はハルヒがイカサマ師だと思ったんだがウェザーが強気に出てきたから分からなくなった」
キ「そのウェザーさんはいい役がきたから賭ける……だろ?」
『そうだ……適当に賭ければイカサマ師はどれくらいの役か分からない……焦ってでかい役を作らせるつもりだった……まさかあそこまで慎重になる相手とは思いもしなかったがな』
キ「二人共紛らわしいから勘違いしたのかもしれない……こうなったら後は消去法だ、ハルヒ……お前だけなんだよ」
ハ「待ちなさいよ、あたしは単に引きが悪かっただけって言ってるじゃない!」
キ「それとな、お前嘘つく時に指を弄る癖あるだろ」
ハルヒは慌てて指を隠す。
ハ「え……は、ハァッ?そ……そんな癖………」
キ「安心しろ、お前にそんな癖ねぇよ……指を隠したって行動で自分が嘘ついてるってばらしてるけどな」
ハ「………参ったわ、あたしの負けよ……そうよ、あたしがイカサマ師よ」
み「……一体どうやってイカサマしてたんですか?」
ア「俺も聞きてえな」
11アメリカの人:2008/12/09(火) 16:19:40 ID:???
ハ「簡単よ、徐倫にあらかじめ合言葉を教えてたのよ……フッフーン、ならフォーカード、さっ、ならストレートフラッシュ、ブタは、ちっ、だしファイブカードは、ふうん、よ」
キ「……えらく簡単だな」
ハ「暗号ってのは単純な方がいいのよ」
鶴「だけど意外だねいッ!ハルニャンは自分は楽しむ側でこうやって仕掛ける側に周るなんてしなさそうな気がしてたのにサッ!」
すると徐倫が苦笑いを浮かべて口を開いた。
「実はハルヒにあたしが頼んだのよ……みんな鶴屋さんみたいに考えるだろうから適任だと思ったんだけどな」
ア「しかしハルヒ、てめぇよくOK出したな」
俺はハルヒが憮然とした表情で不満をいい始めるだろうと思い、そちらを見た。するとハルヒは意外にも満面の笑みを浮かべていた。
ハ「あたし、意外とそういうの好きよ。他人の驚く顔を悪くないし」
確かにハルヒは団員への命令も多いが、それ以上に自分で何かをする事も多い。意外な印象だったが案外納得がいく。
「……んじゃ、今回賭けた金は………全部キョン行きだ」
……そうか、すっかり忘れてたがそういうルールがあったんだな。金欠の俺にとっては有り難い。
ハ「あ、そうそうキョン。あんたにはSOS団員と鶴屋さん、森さんにお年玉あげなさい」
キ「ハァ?……なんでんな事………」
ハ「うるさいわねッ!団長命令よ!」
その時、古泉が隣の部屋から顔を出した。
古「おや?終わりましたか?僕の推理ショーも今から始まりますよ」

勝負が終わり、いつもどおりのバカ騒ぎを始めた俺達は徐倫がこっそり長門に耳打ちしたのを見逃してしまった。
「有希……ありがとな……途中で気付いてたのに黙ってくれて」
「………何の事か分からない」
「……またまた………」
二人の話は一切聞いていなかった。ただ、俺は長門が薄く、本当に薄く微笑んだのだけは……見た。

To Be Continued・・・
12アメリカの人:2008/12/09(火) 16:22:54 ID:???
以上、第61話でした

>>1乙!
スレが流れた時はどうなるかと思ったぜ

サブタイは「6人いる!」から
個人的にあの話は大好きです

今回も誰が話しているのか分かりやすくした………つもりです
何故か俺が書くキョンはギャンブルに強いなぁ

それでは!
13マロン名無しさん:2008/12/09(火) 18:17:19 ID:???
うおおおおおおお!!
乙です!!
このキョンかっこいいなァ!!
14マロン名無しさん:2008/12/09(火) 18:44:01 ID:???
まさかの結末、GJ!!
ついでに>>1&wiki更新者も遅くなったが乙です!!

ていうか、いつの間にか避難所まで出来てた。避難所の人も乙!!!
15マロン名無しさん:2008/12/11(木) 21:36:56 ID:???
唐突なんですが、ハルヒの能力は自由人の狂想曲と少し似てません?
16マロン名無しさん:2008/12/11(木) 21:58:29 ID:???
支援絵とか描いてみたいんだが、どうしたらいいだろう
このスレってうpろだとか無いんだよな?
こういう時こそ避難所行くべきかな?
17マロン名無しさん:2008/12/11(木) 23:31:54 ID:???
ボヘミアンは『憧れの漫画のストーリーに入り込む』だから若干違和感が…
ただ理想を具現化するってところでは似てるよな。

>>16
絵は避難所で良いんじゃない?
18マロン名無しさん:2008/12/12(金) 08:12:25 ID:???
>>1にそろそろ回転を入れてもいいと思うんだが回転使いも鉄球使いもなんか違うよな
19マロン名無しさん:2008/12/12(金) 18:49:36 ID:???
吸血鬼とか究極生命体とかも入れたいが、SS的に無理だろうし
20マロン名無しさん:2008/12/13(土) 11:47:18 ID:???
>>18
鉄球使いでもいけると思うが?
21マロン名無しさん:2008/12/14(日) 10:29:23 ID:???
確かに鉄球は使ってるが、鉄球はただの道具で本質は回転だからな
レッキングの方なら鉄球使いって感じだが
22マロン名無しさん:2008/12/14(日) 22:13:24 ID:???
確かジャイロもウェカピポもバチカンだったよな、バチカンから来た鉄球使い…
駄目だ…語呂が悪い…
23マロン名無しさん:2008/12/14(日) 23:41:54 ID:???
技術を能力の分類に入れたら
ジャイロやウェカピポは超「能力」者の類に入るんじゃないだろうか?
24セッ子:2008/12/15(月) 19:36:35 ID:???
暇を見つけてこつこつ書いてたのを投下。
短いけど許してください。
25マロン名無しさん:2008/12/15(月) 19:37:02 ID:???
素数を数えつつ支援
26セッ子:2008/12/15(月) 19:40:59 ID:???
最初に二つ言っておくことがある。
「何かな?」
神父は慣れた手つきでストレッチをしながら答える。
このストレッチが並じゃあない。
屈伸から始まり伸脚、アキレス伸ばし、体前屈などの軽いものから、180度開脚などのがっつりしたものまで。
その念入りさはまるでいまからサーカスでも始めそうな勢いだ。
しなやかに伸びるその肢体はなるほど確かに黄色人種のそれとどことなく違う。
「手短に頼む」そういって、これでもかと体を倒す。
ああ、そうだったな。
何を隠そう、現在試合開始五分前。
グランドの方を見れば、審判が両チーム代表にゼッケンを渡している。
我がSOS団チーム代表ハルヒはそれを受け取り、鼻歌交じりにこちらに駆けて来る。
「あたしは1番、センターフォワードよ。あとは皆で分けといて!」
そういってゼッケンを投げる。
やはりこれについては前回よろしくくじ引きだろう。
「で、キョウ君。話とは?」
ああ、すまん。大事な事を言い忘れててな。
実はあのハルヒもスタンド使いかもしれないんだ。
俺の言葉を聞いて、神父の動きが止まった。

act9―試合前諸注意確認
27セッ子:2008/12/15(月) 19:42:49 ID:???
くじ引きの結果は以下の通りだ。
1番  ハルヒ   センターフォワード(敵陣全体)
2番  セッコ   ゴールキーパー  (味方ゴ―ル前)
3番  鶴屋さん  フォワード    (敵陣左側)
4番  国木田   ディフェンダー  (自陣後方左側)
5番  長門    フォワード    (敵陣右側)
7番  朝比奈さん ディフェンダー  (自陣後方右側)
8番  谷口    サイドバック   (左ライン上)
9番  妹     ディフェンダー  (自陣前方左側)
10番  俺     スイーパー    (自陣全体)
11番  古泉    ボランチ     (両陣境界上)
13番  神父    サイドバック   (右ライン上)
ちなみに6番がいないのは神父曰く「6という数字は縁起が悪い」かららしい。
そしてその神父が13番なのは「13は縁起がいい」からだとか。
その辺の感覚はよく分からないが、それが宗教の違いというやつなんだろう。
「今度はこちらから聞いてもいいかな?」
ゼッケンをつけながら神父が俺に尋ねる。
「彼女、ハルヒさんだったか。スタンド使い『かも知れない』と言うのは?」
ああ、そのことか。
このことについては俺も確信はない。
しかしあいつにはセッコのオアシスが見えている。それだけでも注意を払う理由には十分だろう。
「そうか…能力のほうはまったく?」
覚醒してないのかもしれないし、しているが本人が気づいてないだけなのかもしれない。
「どういうことだい?」神父は少し距離を詰め、問いかけてくる。
やはり気になるところなのだろう、いつもより若干顔の距離も近い。
つまり、俺が言いたいのはこういうことはだな。
あいつは『スタンド、あるいはそれによく似た能力』を『無意識で』使役している。
神父は立ち止まり、俺の顔を凝視した。
28セッ子:2008/12/15(月) 19:43:47 ID:???
どういうことか、と聞きたそうな顔で神父は俺を見つめる。
できればそんなに見つめないでほしいな、こっちだって半信半疑なんだよ。
「…これについては、詳しく説明をしてもらっても?」
ああ、かまわない。
俺はかいつまんで今まで俺の身に起こった出来事を語る。
ハルヒのこと、長門のこと、朝比奈さんのこと、古泉のこと。
『神』『宇宙人』『未来人』『超能力者』『世界の中心』『情報遊爆』。
神父は俺の話している間中顎に手を当て、何かを考えているようだった。
「つまり『世界を思い通りにする』能力か」
神父はもう一度あごに手を突き、少しの間黙ると
「…それで、二つ目は?」といつものように静かな瞳で俺を見据えてそう言う。
どうやら信じてくれるらしい、俺のおとぎ話のような現実を。
彼自身スタンド使いという非現実的なものだから、そういうのもありかも程度に思ったのかもしれない。
まぁ実際のところは分からないが。
とりあえず俺は話を続ける。
二つ目というのは他でもなく、ハルヒにはスタンドは絶対に秘密、ということだ。
「何故かな?知らせておいたほうがいいようにも…」
ところがどっこい、そうはいかないのがこの世の不思議。
ハルヒはそれらの存在を勝手に望んでおきながら、理性でそんなもの存在しないと思っている。
「…ふむ」
そう呟き下を向くと、神父は小さく一言だけ呟いた。
「神…」と。
29セッ子:2008/12/15(月) 19:44:59 ID:???
神父は顔を上げ、もう一度こっちに向きなおす。
「大体は理解した。…でも、もうひとつ問題が浮かび上がるな」
もうひとつ?
これ以上問題が生まれるって言うのか?
「他でもない、彼らのことだよ」
彼ら、と神父は俺の後ろを指差す。
ハルヒと俺を除くSOS団メンバーとその他の助っ人がそこに居た。
「彼らにはセッコ君のオアシスは見えていない。でもハルヒさんには見えている。
流石に知覚する外見の情報が違うと、辛いんじゃあないか?」
なんだ、そんなことか。
その点についてはなんら問題ありません。
俺のその発言を耳にして神父は目を丸くする。
「手を打ってあるのかい?」
いえ、今から打ちます。
俺は和気藹々としているハルヒ以外のメンバーを試合前の諸注意確認と銘打って召集する。
「何、どうして私はいいのよ?」
憮然とした顔でハルヒがそう尋ねてくるが、今はこいつのご機嫌をとっている暇はない。
お前はトップだ。下がらなくていいから得点だけを狙え。
「…分かってるわよ、どうせ得点出来そうなのは私と鶴屋さんくらいだしね」
そう言ってグランドへと歩いていくハルヒを見つめ、胸をなでおろす。
今の発言は半分は本音であるが、ハルヒが居れば『諸注意』の説明ができないというのもある。
30マロン名無しさん:2008/12/15(月) 19:46:38 ID:???
読むのに夢中で支援忘れてたw
31セッ子:2008/12/15(月) 19:47:25 ID:???
「それで、作戦というのは?」
ああ、そのことだが。
俺は円陣を組んでいるメンバーを見回し、お目当ての人物に眼を吸える。
「おう?」
そう、一番の注意人物セッコ。
俺はまずセッコに声をかける。
お前はGKだから来る玉を防げばいい、と。
「うおおう!!」
セッコは了解したとばかりにそう叫んでゴールのほうへと走っていった。
これで厄介な二人が居なくなった。
俺はもう一度メンバーの顔を見て、本題に入る。
まずは謝罪。これはしなきゃならんだろう。
休日に呼び出しをくらって嬉しい人間なんてそうそう居ない。いるとすれば忠実な下僕か犬だ。
俺が謝罪の言葉を述べると谷口以外は笑い飛ばしてくれた。
次は作戦。
負けるわけにはいかないなら作戦はひとつしかない。
「徹底防御、ですか」古泉が深く頷く。
このチームが下手に攻めればそれこそ命取りだ。
そして最後に付け足すように、あくまでさらりと今回の肝を伝える。

「なんだよ、また涼宮の思いつきの説明か。しかしあいつもよくやるよな」
髪をいじりながら谷口がぼやく。
「しかし、今回のは面白いよね。セッコさんがモグラなんて」
そう、今回の肝は『如何にハルヒと他の人間の相違点をなくすか』だ。
ここでもしハルヒが掃いて捨てるほどいるような一般人だったらこの作戦は使えなかった。
意見が違うのがハルヒだけだから使える作戦。
名づけるなら『ハルヒがそう言ってるんだ』作戦。少し安直か?
「嘘がうまいな、君も」
神父が身を屈めて俺の耳元でそう呟く。
確かにこの数ヶ月で俺、嘘をつくのが格段にうまくなった気がするな。
これも神の恩恵かと肩をすくめると、その様子がおかしかったのか神父は少しだけ笑みをこぼした。
32マロン名無しさん:2008/12/15(月) 19:49:59 ID:???
ハルヒだから仕方ないよなw
……本人が聞いたらどう思うんだろ?支援
33セッ子:2008/12/15(月) 19:50:25 ID:???
『試合三分前です、両チームメンバーはグランド内に整列してください』

「そうだセッコ君、これを」
「おう?これ…」
「私は敵陣にいるからもしもの時は君にお願いしたい」
「何でオレが…」
「戦闘慣れしていて、犯人のところまでほぼ直進できる君が適任だからだ」

神父がセッコに何か渡したのは分かったが、この位置からその何かがなにかは分からない。
なにかを渡すと神父は自分の持ち場に何事もなかったように帰っていく。
何なんだろう。
俺はセッコと神父に交互に目をやる。
どちらの顔も真剣そのもの。聞きに行っても今はきっと取り合ってくれないだろう。
そんな俺の思考を他所に、高らかに響くホイッスルによって試合の幕は切って落とされた。

to be continued…



あとがき
以上投下終了。何でサッカーなんてしたんだろう。
ターン所為じゃない上にルールも曖昧なのに。
ルールを調べつつなんで色々とおかしいかもです。
では、いつも以上に拙い文章ですが何かあれば。

余談。
過去ログの乗せ方が分からない。
誰かに任せるべきか?
34セッ子:2008/12/15(月) 21:42:57 ID:???
よく見たら支援が沢山・・・
ありがとうございました。
35マロン名無しさん:2008/12/15(月) 23:07:22 ID:???
乙!!
神父の縁起の良し悪しの感覚が独特でイイ!!
ミスタだったら4番がいなくなりますねw
36マロン名無しさん:2008/12/15(月) 23:53:28 ID:???
セッ子さん乙っしたー!!
相変わらず文章上手いなーにやにやするぜ!!
37マロン名無しさん:2008/12/16(火) 16:37:44 ID:???
セッコ乙!楽しませてもらった。

俺16なんだが、この話の支援絵描かせてもらってもいい?
38マロン名無しさん:2008/12/16(火) 17:36:48 ID:???
もちろん大歓迎だ!
39マロン名無しさん:2008/12/16(火) 18:36:20 ID:???
>>37
どんとこい!!

でもうpロダ無いよね。作っとこうか?
40マロン名無しさん:2008/12/16(火) 19:13:46 ID:???
避難所画像投下スレ1です。
諸事情によりうpロダ借りられなかったんで、>>39さん、お願いしてもよろしいでしょうか?
41マロン名無しさん:2008/12/16(火) 19:20:55 ID:???
俺たちは『作る』と思ったその時には
すでに行動は終わっているッ!!
『作った』なら使っても良いッ!!

http://www.uploader.jp/home/jojosos/

42ジョニィの人:2008/12/16(火) 20:07:25 ID:???
しばらく来れないうちに凄い事に!キャプテン神父や改造セーラー徐倫を見れる日を楽しみにしてます。
出来ればジョニィたちもですが……。久しぶりに投下します。
43ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/16(火) 20:08:27 ID:???
第十八話「マドンナE」

「『引き付ける』スタンド……」
みくるさんが呆然として呟く。そして小さく「あっ」と声をあげるとぼくを見た。
少しの圧力も感じる事なくぼくの体が動く。
「グーグー・ドールズ」が懸命に押えようとするが、引き付ける力が遥かに勝っていた。
たちまちグーグー・ドールズの手をすり抜け、ぼくは一直線にみくるさんに引き付けられた。
「大丈夫ですか!?」
みくるさんが心配そうに叫ぶ。串刺しになりかけたが、恐怖はもう吹き飛んでいた。
それよりも、みくるさんまでもがスタンドを発現させた驚きが大きい。
「ありがとう。助かったよ……『引き付ける』スタンドか。それもかなりパワーが強い……『マドンナ』ってところかな」
過大評価ではない。小さくなって相対的にパワーが弱まった状態で、
力いっぱい振り下ろそうとしたフォークを引き付けたのだ。そのパワーは相当なものだろう。
「でも、見て下さい。これ」
不安げに指差した先には先程のフォークが転がっていた。
「一度に一つしか引き付けられない?」
みくるさんがこくりと頷く。と、嫌らしい笑い声が聞こえてきた。グェスだ。
さっき、ぼくがグーグー・ドールズの腕を切り付けたからだろう。手を血に濡らして笑っている。
「どうやら一つしか引き付けられねーみてーだな?オイ?それならよォォォ
……こいつはどうやってかわすのかなあー−−ッ!?」
何!?あいつ、何て事を!グェスが握っているのは画ビョウのケースだ。
それが今のぼくたちにはまずい!一本一本が槍のようなサイズに変貌している!あれをブチまけられたら……!
逃げる間もなくケースは開かれた。間を置かず中身がぼくらに降り掛かる。駄目だ。爪で切り飛ばせる数じゃあない!
ぼくがどうこうできる数じゃあ……!光を乱反射しながら落ちる無数の槍。
せめて急所は避けなければ。そう思って爪を向けると、同時に頭上に壁のような物が現れた。
見ると、みくるさんが手を上にかざしている。
「刺青に引き付けられる……。テーブルの上の雑誌を引き付けました」
ぱらぱらと紙に金属が当たる音。ただの雑誌も今のぼくらには強力な盾だ。
44ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/16(火) 20:10:04 ID:???
みくるさんが手を落とすのに従って雑誌も落ち、憎しみに満ちたグェスの顔が目に入る。
「クソッ……!いい気になるなよッ!ブッ殺す順番がみくるッ!お前からに変わっただけなんだからなッ!」
怒声に答えるように激しいノックの音。同時に男性の声が続く。
「グェスさん!グェスさん!どうしたんですか!?開けて下さい!」
驚いたように視線を入り口の方に移すグェス。ドアの外の声は続く。
「今、怒鳴り声がしましたよ!?大家さん、これ絶対ヤバいですって!」
これは……キョンの声だ。ノックが止み、代わりに甲高い足音。
「あのガキ……!あいつも殺す!お前らを八つ裂きにしてからなあッー−−!」
逆上したグェスが猛然と襲いかかってきた。さっきの足音はきっと鍵を取りに走ったんだろう。
すぐに戻ってくる。余裕をなくしたグェスはどうあってもぼくらを殺すつもりだ。
「みくるさん、捕まれ!」
言うが早いかぼくは爪を走らせた。大きいグェスとは競走にすらならない。
ここは体が小さい事を活かす。ぼくらはテーブルの下へと滑り込んだ。
奇怪な唸り声がつけてくる。グーグー・ドールズだ。こいつだけなら何とかなる。
今のぼくにはグェスは太刀打ち出来ない相手だ。一体に絞るだけでも大分楽になる。
このまま時間を稼ごう。そう思った時、みくるさんが叫んだ。
「ジョニィくん、後ろ!」
ハードカバーの分厚い本が地面を滑り、ぼくらに迫っていた。
このままじゃぶつかる!ぼくは横に急旋回せざるを得ない。しかし、そこへグーグー・ドールズが手を伸ばす。
辛うじてそれをかわすが、このままではまずい。
グェスはキレてはいるがぼくらを始末する事に対しては冷静だ。
「スタンド」が物質をすり抜けられるという長所を最大限に活かしている。
こうしている間にも、次々と手頃なものを蹴り込み、味方には決して当たる事のない「援護射撃」をしている。
グェス自身は出口を守るためと、直接攻撃を避けるため、ぼくらから遠いドアに立っている。
次第に動ける範囲が狭まっていく。
45ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/16(火) 20:10:51 ID:???
「ジョニィくん、このままじゃ……!」
「…………」
焦った声を出すみくるさんに声をかける余裕すらない。
逃走路が次々とグェスの援護射撃と、グーグー・ドールズに塞がれる。
「……くそっ、駄目だッ!」
そして、ついに逃げ場がなくなった。部屋の隅に追い詰められたのだ。グーグー・ドールズがゆっくりと歩み寄る。
「やった!これで終わりだ!ブチ殺せッ!グーグー・ドールズッ!」
グーグー・ドールズが目前に迫る。……逃げられない。逃げられないが、しかし、はたして目の前の怪物と戦えるのか?
さっきは完全にパワー負けしていた……。しかも、下半身不随のぼくはスピードも完全に劣る。
厳しい。小さい今の状況では。普段の大きさなら負けはしないのに……!……「小さい」?
(あっ……!)
頭に電流が走る。まさか……いや、さっきの状態であれなら……!
ぼくは出来るだけ落ち着いて口を開いた。
「グェス……この『小さくする能力』の射程距離はどれくらいだ?」
「……あ?」
興を削がれたとでも言いたげに間抜けな声を出す。ぼくは返事を待たず続けた。
「『大きく』なってるよな……ぼくたち。さっきは『グーグー・ドールズ』より小さかった。
それが、今では倍近く大きくなってる」
部屋と部屋の端だからか、あるいはグーグー・ドールズを出すのにエネルギーを取られたか?
とにかく、ぼくらは大きくなっている。一mくらいだろうか?それくらいには。
つまりパワーも相応に戻っている。ならグェスには一大事のはずだ。
グーグー・ドールズのパワーは絶対的にいえば強くない。相手を小さくする事で相対的に優位に立っているだけなのだから。
しかし、グェスに焦りはない。それどころか、笑みを浮かべていた。
それが意味するのは圧倒的な優位。猫が、捕まえた鼠をいたぶる時のような微笑み。
46ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/16(火) 20:11:40 ID:???
「それで?それが何だってんだ?少しくらい大きくなっても、
あたしの『グーグー・ドールズ』はお前の爪よりずっと早いんだ。当たると思ってんのか?」
グェスの読みは恐らく正しい。兎のように素早く飛び回るグーグー・ドールズに一撃を食らわすのは難しい。
ぼくではほぼ無理と言っていい。しかし……。
「確かにね。……でも、グェス。お前にならどうだ?人間のお前に狙いを定めたら?」
微笑みが冷やかさを帯びる。哀れみすら混じった嘲笑。
「馬鹿か?わかってんだよ、お前のその爪は遠くに攻撃出来ねえ。……つまんねえ時間稼ぎだったな。
行けッ!グーグー・ドールズ!引き裂いてやれッ!」
グェスが高らかに死刑判決を下す。唸り声をあげるグーグー・ドールズ。と、その背を追い越す物があった。
「何ッ!みくるッ!お前か!?」
さすがにグェスの顔にも焦りが浮かぶ。しかし、すぐにそれは消えた。
何せ、みくるさんが引き付けたのはただのボールペンだったのだから。
みくるさんはそれを聖剣か何かのように大事に抱えた。
「……ボールペン?何でそんな物……」
ぴしり。突然鳴った音がグェスの言葉を遮る。
「何だ?今の音……!?」
グェスが後ろを振り向いた瞬間、音をたてて蝶番が壊れた。ドアが猛烈な速度でぼくたちに引き付けられる。
その間にいたグェスも。
「うおおおおお!?」
グェスの絶叫。ぼくのすぐ横のみくるさんが、ペンを壁に突き立てるように腰の脇に構える。
そしてグェスは引き付けられる。ドアごと、壁ぎわのぼくたちに。
「ぐわあっ!?」
嫌な音を立てながらグェスが壁に激突する。その悲鳴が止む事はない。
ドアに突き立てたボールペンがつっかい棒になって、みくるさんへの引き付けが終わらないのだ。
グェスはこのまま押しつぶされ続ける。ボールペン一本分の長さよりもみくるさんが大きくなるまで。
47ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/16(火) 20:13:38 ID:???
悲鳴がようやく止むと、傾いたグェスとドアがぼくらに倒れ込んだ。
手で押すと、外れたドアは呆気なく向こう側に倒れた。開けた視界にグーグー・ドールズの姿はない。
体も元の大きさに戻っている。グェスは気絶したようだ。
「……上手くいってよかった」
グェスの背後のドアを引き付けられるかどうか。完全な賭けだった。
その上時間稼ぎにも失敗。みくるさんも気付かなければやられていた。
「じょ、ジョニィくん……た、立てない……」
二重の賭けを乗り越え、勝利をもたらした女神はそのスタンドに見合わない情けない声をあげた。
覆いかぶさったグェスには息はある。もっとも、あのパワーで挟まれたら再起不能だろうが……。
「みくるさん」
「?」
「本当にありがとう。君のおかげだ。ぼくだけじゃ負けてた」
二人ともグェスに押しつぶされたままだったが、みくるさんが頭をぶんぶん振るのがわかった。
……頭がぶつかったから。
「す、すみません……いいんですよ。あたしもこの前助けてもらったし。
……それに、嬉しいんですよ」
嬉しい?何が嬉しいのかよくわからない。
「あたしも、長門さんみたいにみんなの役に立ちたいですから。……それと……」
そこで言葉を切る。続きを促そうとした時、小さくみくるさんが言った。
「……助けに来てくれたのも……嬉しかったです」
「…………」
咄嗟に言葉が出ない。沈黙が流れる。
48ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/16(火) 20:15:38 ID:???
「…………あの」
沈黙を打ち破ろうとした声はさらなる騒音に打ち消された。
手荒にドアを開ける音。室内に響く靴音。
「ジョニィ!無事か!?」
駆け込んできたのは普段は見せない焦り顔のキョンである。友達が危険なのだ。焦るのも無理はない。
……しかし、今のぼくらって……ぼくら二人にグェスが覆いかぶさってるわけで……。
……凄くまずい気がする。
みるみるうちに目を鋭くするキョン。後を追って入ってきた大家は目を背け、
若いからそういう事もあるだろう。と、もごもごと言った。
「……キョン。違うんだ」
「……わかった。とりあえず一発殴らせろ」
……認めないぞ。こんな落ち。

本体名「グェス」
スタンド名「グーグー・ドールズ」再起不能
To Be Continued……
49古泉の報告書:2008/12/16(火) 20:17:52 ID:???
スタンド名「マドンナ」
本体名「朝比奈みくる」

パワーAスピードB精密動作性D持続力E成長性D
射程距離10m(本体が認識出来るかどうかで変動)
・本体の肌に矢が突き刺さったハートマークが浮かび、その場所に物を「引き付ける」。
引き付けられた物は本体にぶつかる寸前で止まる。
・引き付ける事のみに特化したスタンド。引き付ける力、スピードはかなり優秀。
・一方で「引き付けるスピードを調整出来ない」、「同時に複数の物を引き付けられない」など、他の能力には欠ける。
・スタンド像が本体に一体化したタイプなので直接的な攻撃方法はない。
敵との延長戦上の物体を引き付ける事による間接攻撃は可能。
備考
本体は未来人であり、未来世界から派遣されたエージェントである。
しかし、性格は気弱で流されやすく、そそっかしい面も考えると工作員としては不適と思われる。(演技?)
現在の時代についてはある程度学習しているらしく、これから起こる事件もある程度把握しているようである。
もっとも、新聞に載るような大事件でなければ未来には残らないので、日常ではほぼ役には立たない。
また、未来の出来事を話す事は強く制限されており、些細な事でも話す事は(物理的に?) 出来ない。
50ジョニィの人:2008/12/16(火) 20:19:46 ID:???
投下終了です。私生活が落ち着いたので今後は早く投下出来ると思います。
51マロン名無しさん:2008/12/16(火) 20:29:15 ID:???
投下乙です
バステト女神やザ・ハンドを彷彿とさせる能力ですな
52マロン名無しさん:2008/12/16(火) 20:30:21 ID:???
投下乙ゥ!!
とんとん進む戦いに引き込まれて、最後のオチでw
期待してます!!

パワーA射程10mって『世界』と一緒だよね…
いや、別にそれがどうしたって感じだけど…
53マロン名無しさん:2008/12/17(水) 01:43:22 ID:???
>>41うpろだグラッツェ

早速上げてきた
54マロン名無しさん:2008/12/17(水) 14:37:27 ID:???
パスワードが必要って出てきたんだが
これはどうすれば?
55マロン名無しさん:2008/12/17(水) 20:47:21 ID:???
避難所によると色塗りしてるらしい。
今は待つんだ。
56マロン名無しさん:2008/12/17(水) 20:51:54 ID:???
<僕ら二人の上にグェスが覆い被さって…

これってグェスの下でジョニィとみくるが密ちゃ(ryって事だよね?
57マロン名無しさん:2008/12/17(水) 20:53:15 ID:???
<僕ら二人の上にグェスが覆い被さって…

これってグェスの下でジョニィとみくるが密ちゃ(ryって事だよね?
だからキョンはキレたと…
58マロン名無しさん:2008/12/17(水) 20:54:26 ID:???
書き込みミス…だと…
59マロン名無しさん:2008/12/17(水) 21:17:59 ID:???
すまん。パスワードのこと忘れてた。

『sos』で出る 多分
60マロン名無しさん:2008/12/17(水) 22:09:55 ID:???
避難所画像投下スレ1です。
>>41さんありがとうございます。

とりあえずまとめると、避難所URLが↓
ttp://jbbs.livedoor.jp/otaku/12176/

>>53さんのは↓でいいのかな?パスは【sos】
ttp://www.uploader.jp/dl/jojosos/jojosos_uljp00001.jpg.html

ていうかセッ子まじパネェ。
61マロン名無しさん:2008/12/17(水) 22:45:57 ID:???
残業帰りに久しぶりに覗いてみたら…最高にハイってやつだあああ!皆さんGJ!
62ジョニィの人:2008/12/18(木) 22:41:03 ID:???
今日ちょっと暇ができたので書きました。投下します。
63マロン名無しさん:2008/12/18(木) 22:42:08 ID:???
よし、支援だぁぁ!!
64ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/18(木) 22:42:15 ID:???
第十九話「アナーキー・イン・ザ……」

爽やかな春の日射しが少しずつ強くなり、季節は変わり目を迎える。六月の到来だ。
早いものでSOS団に入ってから半月ほどが経った。半月。改めて考えると、とても信じられない。
まだハルヒたちに出会ってそれだけしか経っていないなんて。もう何ヵ月も一緒に過ごしたように思っていた。
そう思っていたから、ぼくはすっかりSOS団に馴染んだと思っていたのだ。……甘かった。ぼくは全然わかっていなかった。
破壊的、魔王的、やりたい放題的、空前絶後的、唯我独尊的、迷惑千万的、言語道断的少女、涼宮ハルヒを。
65ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/18(木) 22:43:29 ID:???
「つまり、こういう事?」
グェスの件から二日後、ぼくたちはいつもの部室でちょっとした報告会を行っていた。
ちなみに昨日はみくるさんの無断欠席の「お仕置き」とやらでそれどころではなかった。
「グェスは『強硬派』とは何の繋がりもない。スタンドが発現したのはつい最近」
ぼくの要約に古泉が頷く。
「はい。尋問の結果、それは確かです」
「随分自信満々だな」
黙って聞いていたキョンが横槍を入れる。古泉は一段と胡散臭い笑顔を浮かべた。
「ええ。彼女は喜んで話してくれましたよ。何もかもね」
……詮索しないほうが良さそうだ。それにしても、やはりグェスは強硬派とは無関係か。
予感はしていたが、改めてわかると不気味だ。そもそも、これは単なる偶然か?
スタンド使いが偶然スタンド使いを襲うなんて、出来すぎている。何かの作為があるのではないか?
ぼくはぽつりぽつりとそんな事を言った。と、古泉は真面目な顔になり、
「スタンド使いは、引かれ合う」と、芝居がかった口調で言った。すぐに表情を崩して続ける。
「ジンクスというほどの事でもないですが、『機関』で言われている言葉でしてね。
まあ、考えてみれば当たり前の話なんです」
古泉は白紙のノートを開くと両端に消しゴムを置いた。
「消しゴムがスタンド使いでノートの中心にいるのが涼宮さんです。涼宮さんは超能力者に会いたい。吸い寄せます」
ノートの端を持ち、閉じかけた形にする。当然ながら消しゴムは斜面を滑り、ノートの中心でぶつかった。
「さあ、涼宮さんが引き寄せました。すると、スタンド使いも互いに近づいた。涼宮さんを介して引かれ合うというわけです」
古泉特有の回りくどい説明である。みくるさんが控え目に手を上げる。
「あの……という事は、これからもああいう人に狙われるかも、という事ですか?」
「そういう事になりますね」
即答する古泉に、みくるさんは明らかに沈んだ様子だった。
当然だ。グェスみたいな奴に会ってたら命がいくつあっても足りない。
66ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/18(木) 22:44:54 ID:???
「なあ、俺も質問があるんだが……」
次に尋ねたのはキョンだ。
「『スタンドの発現はつい最近』って言ってたよな。だが、古泉。お前は三年前に発現したんだろ?
何で最近になってこんなにスタンド使いが増えたんだ?」
「そうだ、ぼくも知りたい」
思わずぼくも言った。古泉は顎に手をあてながら口を開いた。
「正式に言えば僕の発現も最近なんですがね……。これは僕の推測で、正しいかどうか、全く確証はないですが」
ここで言葉を切るとぼくをじっと見る。
「あなたのせいじゃないかと思うんです」
え、ぼく?皆の視線が一斉にぼくに注がれる。ちょっと、そんな言い方は止めてほしい。
まるで名探偵に犯人扱いされた気分だ。反論しようとするぼくを遮り、古泉は話を続けた。
「ご存知ないでしょうが、涼宮さんの中学生時代の精神状態は最悪でして。
それが高校生になりSOS団を作った事で改善されつつあったんですよ。彼女の満足する世界に一歩近づいたわけですからね。
しかし、すぐに戻ってしまった。いや、むしろ以前以下と言ってもいいかもしれない。
クラブを立ち上げたまではよかったんですが、彼女の言う面白い事なんて、そうそう見つかる物でもない。
焦っていたんでしょうね。ストレスが相当溜まっていましたよ。一度は本当に世界が終わりかけた」
思わせ振りにキョンに視線を移す。長門も静かに頷いている。目を反らすキョンに構わず古泉は続けた。
「そんな時、あなたが現れたんです。どれほど涼宮さんが喜んだかは想像に難くありません。
事件もない、相談者も来ない。上手くいかないと悩んでいた時に、
留学生なんていう特徴的な人物が入部したいとやって来たんですから。
きっと、手応え……はっきり言うなら『これなら超能力者たちにも会えるかもしれない』と感じたんじゃないでしょうか」
だから、スタンド使いが量産された?馬鹿げている。馬鹿げているが……それがハルヒだ。
67ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/18(木) 22:46:38 ID:???
一笑に付したい一方で納得しかけているぼくがいた。あり得るんだ。こんな話でも、ハルヒなら。
しかし、「中学時代の精神状態は最悪」か……。ハルヒなら中学校でも好き放題してそうだが。
中学生ハルヒを想像してげんなりしていると、古泉は咳払いして「とはいえ」と前置きした。
「ジョニィくんには感謝していますよ。おかげで涼宮さんの精神は安定していますから。
つい最近までは、また以前のような事が起こるのではと戦々恐々としていましたよ」
どうやら、心からの笑顔のようだ。ぼくも苦笑しながら言った。
「安定か。まあ、あれだけしたい放題してたら当然だね」
ぴくり、と古泉の眉が動く。長門が微かに目を見開いた気がした。
残りの二人は目を伏せている。……どういうわけだ。
「……何か、変な事言ったかな」
白々しい古泉の笑い声が響いた。
「……はは……最近は落ち着いている方ですよ」
目が泳いでいる。長門も目を合わせない。少し大げさじゃあないか?
「おいおい、脅かさないでくれよ。今より酷いなんて、そうそう……」
「みんなああああ!!」
うららかな昼下がりの空気を破壊する大声が部室棟に響いた。
発生源?考えるまでもない。ただ今の話題の中心だ。ノックなしにドアが開く。
晴れやかな笑顔のハルヒが立っていた。どうしたと聞く間もなく舞台女優のような声を張り上げた。
「野球大会に出るわよ!」
……………………。
沈黙。
「……みんな」
無反応のなか、辛うじてぼくが口を開く。目線だけがぼくに集まった。
「……さっきの発言、撤回していいかな」
みんなが同時に頷いた。

To Be Continued……
68ジョニィの人:2008/12/18(木) 22:49:09 ID:???
投下終了です。ネタは結構貯まってるんですよ。
さすがに今回みたいなペースは厳しいでしょうが。あと、色塗り楽しみにしてます。
69マロン名無しさん:2008/12/18(木) 22:56:00 ID:???
ジョニィの人GJ!!
ジョニィが野球…
これは「ジョニィが立ったッ!!」フラグか!?
70マロン名無しさん:2008/12/18(木) 23:00:53 ID:???
投下乙です
キャプテン神父みたく野球大会に億泰が参加させられるとかないかな
久しぶりに奴とザ・ハンドの活躍が読みたい
71アメリカの人:2008/12/19(金) 15:17:48 ID:???
第62話 「ほんの少し不思議な物語」

SOS団の冬休み合宿も終わり、俺達は再び電車に揺られて懐かしい我が家へと向かっていた。
「今回の合宿のMVPは徐倫と古泉君ね!二人共楽しかったわよ」
「それは光栄です」
「ところであのシャミセン2号誰が飼うんだ?」
「僕が飼おうと思っていますが………」
「……そうか」
そんな感じで皆取り留めの無い会話を繰り広げていた平和な時の事だった。
「ねえねえキョン君キョン君」
今迄眠りこけていた妹が目を覚まして俺に話し掛けてきていた。
「……なんだ?」
「あれ何ー?」
妹は電車の外を指差していた。見るとそこには、
「……あー、あれは飛行船だな……しかし今でもあんな物飛んでたんだな」
外には黒い大きな飛行船が浮かんでいた。高度が低いのかわりとはっきり見える。
「宣伝とかで使うらしいぜ」
同じく妹に言われて飛行船に気付いたアナスイが豆知識を披露してくる。……その程度俺でも知ってるけどな。朝比奈さんも言われて気付いたらしく、
「変わってますね……こんな山の中で飛行船飛ばすなんて………」
「たまたまだろ……それよりトランプの続きやらねえか?」

全員でのババ抜きを5ゲームほどして(アナスイは4回負けた)1時間近くたっても飛行船は電車から離れなかった。
「……飛行船って随分速いんですね、電車に並走するなんて」
「飛行している物体は地面との距離が離れているため相対的に遅く見えるから」
長門が朝比奈さんに飛行船の速度について説明しているのを聞いている時だった。
72アメリカの人:2008/12/19(金) 15:18:45 ID:???
「なあキョン………」
徐倫がこっそりと話し掛けてくる。
「妙じゃないか……あれ」
「確かにそうだな……けど何もしてこねえぞ」
「……そうだけどな」
その時、ウェザーさんが横から口を挟んできた。
『気になるなら俺の能力で打ち落とせるが……どうする?』
やめといて下さい。
『だろうな……中に誰か乗っているかもしれないしな』
様子を見る事になったついでに飛行船をジックリ眺めてみる。フワフワと漆黒の機体が上下しながら飛んでいくのはさながらクラゲのようだ。
「でもなんつうか……落ち着くな、あれ見てると」
「確かにね」
多分いつもハルヒというジェット機に乗せられて乱気流の中を無理矢理飛んでいるような事をしてるせいだろう。なんだか癒しを求めてしまう。
「……なんか本格的にジジむさくなってきたな……俺」
「何がジジむさいのよ」
「ハ……ハルヒッ!?」
いつの間にか俺の横にハルヒがいた。いきなり現れんじゃねぇ、ビビるだろう。
「3人共何見てるのよ?」
「あの飛行船よ、あれ」
言われてハルヒは外を見る。
「ほんとだ、気付かなかったわね」
ハルヒにしては珍しい。誰かに言われないと気付かないなんてな。
「鶴屋さーんッ!飛行船があるわよッ!」
「どれどれィ?……ほんとだねィ!あたしが今迄気付かなかったとは不覚さッ!」
「……………」
横から気配がしたので見ると徐倫が考えこんでいた。気難しい顔してどうしたんだ?
73アメリカの人:2008/12/19(金) 15:19:21 ID:???
「飛行船かァ……あたしん家はジェットはあるけどさすがに飛行船はねィ……そだ、前スイスに行ったときだけどさッ!」
少し徐倫の事が気になったが、俺は鶴屋さんの話を聞くことにした………。

鶴屋さんの愉快な体験談も終わり、再び暇になった俺は窓の外を見た。
「……まだいるな、あの飛行船」
「ほんと、何なのかしら………」
横でハルヒが呟く。
「……気になってんのか?」
少し意外に感じた俺はハルヒに質問した。
「何よ、悪い?」
「いや……別に」
「でも可哀相よね、あの飛行船」
……可哀相?
「たった一人でプカプカ浮かんでて……仲間ができたらいいのにね」
「……………」
そう語るハルヒの目は飛行船に向けられてこそいるものの、その目は別の何かを見ているようだった。ハルヒが何を伝えたいのかはよく分からない。ただそう言われるとなんだか俺も飛行船が可哀相に見えてきた。
「………なあ、キョン」
今まで黙って考え事をしていた徐倫が話し掛けてくる。
「なんだ?徐倫?」
「あの飛行船……何か分かった気がする」
「………敵なのか?やっぱ」
すると徐倫は黙ってしまった。顔を少しうつむけている。まだ何かに迷っているようだ。
「……早く言えよ」
「ああ……あれはな、存在していて、存在していないんだと思う」
「………ハ?」
74アメリカの人:2008/12/19(金) 15:20:02 ID:???
「要するに幻だと思ったらいい」
「待てよ、納得いかねぇぞ。確かにあれはあそこにあるだろ」
「……最初にあれを見つけたのは誰だ?」
「……俺の妹だ、多分」
「そうだ。んで、あたし達はキョンの妹に言われてから気がついた」
そういえばそうだったな。だが、それが飛行船が幻だっつー話とどう繋がる。
「……なんであんなでかい物を言われるまで気付かなかったんだ?」
……たまたまだろ。
「あたしの考えでは……あれは誰かに言われてから初めて見えるものなんだと思う」
「……んだそりゃ」
俺が理解できないでいると徐倫は妹を読んで飛行船をいつ見つけたか聞いていた。
「隣の人が話してるのを聞いたー」
「……な?」
「ね……あれは誰かが誰かに教えてもらって……そうやって人から人へと伝わってここに来たのよ」
どうやら徐倫の仮説はかなり正しいようだ。だが、全ての疑問が解けたわけじゃない。俺はやはり電車についてきている飛行船を見て言った。
「で、結局のところあれは何が生み出したんだ」
「さぁね」
「ハァ!?何言ってんだ徐倫?」
「……この世界には確かにあるって事よ、科学で解明できない何かがね」
そう言うと徐倫は話は終わったとばかりに寝始めた。
「……ハルヒが聞いたら泣いて喜びそうな話だな」
だが、俺は言わない事にした。言ったら面倒な事になるのは間違いない。それに、あの飛行船は何故かそっとしといてやらないといけない気がした。独りぼっちのあいつが、一緒に飛んでくれる仲間を見つけるまで………

ちなみに飛行船は気がつくといつの間にか消えていた。多分、今頃別の誰かが見つけているに違いない。

To Be Continued・・・
75アメリカの人:2008/12/19(金) 15:24:31 ID:???
以上、第62話でした

サブタイは「ほんの少し昔の物語」から

ジョニィの人おかえりアンドGJ!セッコの人もあいかわらず面白いし避難所やupろだもGJ!

今回は少しファンタジーっぽく………なってるかな?

次回の投下は都合により来年になりそうです。もうしわけありません

それではよいお年を!
76マロン名無しさん:2008/12/20(土) 12:07:32 ID:???
GJ!!
いつもとは違ったほんわかした感じの不思議で和んだ
77マロン名無しさん:2008/12/21(日) 11:54:56 ID:J0sxCH+Z
ほしゅあげ
78マロン名無しさん:2008/12/22(月) 23:10:55 ID:???
もしかして乙乙ですか−っ!?
79セッ子:2008/12/25(木) 18:54:18 ID:???
ウィキ更新ついでにこちらに書き込みを。

まずはジョニィの人、アメリカの人乙です。
ジョニィの人…「ニョホホ!!」「あれは、ジャイロボール!!」こうですか?分かりません><
アメリカの人…ほのぼのしたじゃないか。どうしてくれる!!

次(LESSON2)は「アレンジを悟られるな」…だ!
まとめウィキですが前後作品同士のリンクテストをしています。
「前」「次」を選ぶと前後の作品に飛べるようになっています(現在セッ子のだけ)
『してほしいよ』って人がいれば投下後にでも言ってください。

やるしかねぇッ!!次(LESSON3)だッ!『予告を信じろ』!!
…どういうことかって聴きたそうな顔をしているな。
ここ最近忙しいので、投下予告をしておこうと思いまして。
大晦日、元旦、出来れば一作品ずつ(計二作)投下しようと思います。
「投下祭り」よッ!!(一人で)
祭り参加者募集中。スレ住人別スレ住人、読者作者、自薦他薦は問いません。

次(LESSON4)だ。『敬意を払え』
…支援絵、だとォ…!?
うれしすぎて腰が抜けました。色塗りが終わるのを首を長くして待っています。
それでは、今回はこの辺で。
80マロン名無しさん:2008/12/25(木) 23:25:38 ID:???
あなたの予告には期待がある
81マロン名無しさん:2008/12/27(土) 22:28:55 ID:23G9m5Ws
もし!・・・予告されたのなら!
期待しねえわけにはいかねえだろう・・・
82ジョニィの人:2008/12/28(日) 22:56:15 ID:???
セッ子の人、wiki更新ありがとうございます。そして、「投下祭り」……ゴクリ。
参加詳細……願います……!
83ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/28(日) 22:57:43 ID:???
第二十話「アナーキー・イン・ザ……A」

「何に出るって?」
キョンがようやく反応した。待ってましたと言わんばかりにハルヒが「これ」と紙を差し出す。
……なかなか、大きい文字で書かれている……。
「キョン、悪いけど読んでくれ。まだ漢字に不慣れだから読み間違えたのかもしれない」
「多分合ってると思うぞ……。えーっと、第九回市内アマチュア野球大会参加募集のお知らせ」
キョンが読み上げるとハルヒは得意気に言った。
「由緒ある大会よ。これに優勝して、SOS団の名を世に知らしめるのよ!」
草野球に由緒も何も無いと思うが。そもそも、そんな事で名前を広めてどうする。
頭を抱えながらキョンが口を開く。
「ちょっと待て。SOS団って、俺たちの意思はどうなる?」
「メンツが必要ね。あと三人」
聞いちゃいない。……あれ?待て。
「ハルヒ、野球は九人でやるスポーツだぞ」
ぼくが言うと、ハルヒは何を当たり前の事をと言わんばかに目をぱちくりさせた。
「知ってるわよ。そのくらい。あたし野球部に仮入部してた事もあるんだから」
「じゃあ、数え間違ってるぞ。ハルヒ、キョン、古泉、長門、みくるさんで五人だ。あと四人要る」
目を見開く。今度は何を馬鹿な事をという顔だ。
「五人って、アンタ。自分を入れてないじゃないの」
自分?…………え、ぼくの事か!?ぼくに出ろって、正気か!?
言いかけたが、ハルヒが正気でない事はぼく自身よく知っている。ぼくは子供を諭すように優しく言った。
「ハルヒ、ぼくは下半身不随なんだよ」
「知ってるわよ。ほら、これ見なさい」
口を尖らせながらハルヒが紙を見せる。どこからか印刷してきた記事のようだ。
「車椅子野球」と見出しがついている。確かに、車椅子に乗った人がバットでボールを打っている。
バスケやテニスは知っていたが、車椅子野球もあったのか。
「俺にはゴムボールを打ってるように見えるんだが」
「変わんないわよ。同じボールなんだから」
違うボールだ。心の中で突っ込みをいれる。もっともらしく相槌を打つ古泉と、
いつもと同じく固まっている長門を除き、困惑が広がる。
84ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/28(日) 22:58:35 ID:???
渋面のぼくたちにハルヒが声を張り上げた。
「言っとくけど、これは決定よ!団長命令なんだから。ねえ、みくるちゃん」
「え、あたしですか!?えーっと……その大会はいつなんですか?」
逃げたな。みくるさん。機嫌を取り直してハルヒが告げる。
「ああ。今週の日曜よ」
「日曜!?明後日じゃねえか!メンツはどうするんだ!?」
キョンが叫ぶが、ハルヒは面倒臭そうに一言言っただけだった。
「いいじゃない。適当なのそこらで見つければ」
冗談じゃない。また超能力者やら宇宙人やら拾ってこられたらたまった物じゃない。
まして、そいつがグェスみたいな奴だったら、大変なんて物じゃあないぞ。キョンも同じ事を思ったらしい。
「お前は野球に集中しろ。とりあえず俺が一人見つける」
あと二人。どうしようか。「では僕が」
「ぼくが一人呼ぶよ」
手を上げる古泉を遮りぼくが言った。
「あの、でしたらあたしも一人……あ、クラスのお友達です」
みくるさんが付け加えて我がSOSナインは決定した。
「決まりっ!じゃあ、早速特訓ね。グラウンドに行くわよ!」
今からかよ。
85ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/28(日) 22:59:34 ID:???
「やれやれ。また面倒な事になっちまったな」
ため息を吐くキョン。古泉が肩をすくめながらそれをなだめる。
「おとなしい事でよかったじゃないですか。宇宙人捕獲作戦やUMA探索合宿旅行とかじゃなくて。
野球でしたら我々の恐れている非現実的な現象は起こらないでしょう」
「まあ、そうだろうが……変な奴がメンツに入る事も無くなったしな」
「まったくだね。異世界人でも来たらどうしようかと思ったよ」
口を挟んだぼくをキョンがじっと見る。
「なに?」
「何だろう。『お前が言うな』って今思った」
「…………?」
「こら、そこ!」
のんびり話をするぼくたちにハルヒの怒鳴り声が飛ぶ。特訓をすると言ってからのハルヒの行動は早かった。
野球部にドイツ軍も驚きの電撃戦を仕掛け、あっという間にグラウンドを占領。
野球部員を球拾い及びボールトス係にしてしまった。恨みのこもった部員たちの視線が痛い。
「特訓するわよ!まず千本ノックから!」
「ハルヒ、その事なんだけど」
バットを振り回すハルヒにぼくは口を挟んだ。
「ん、なに」
「さっき言ってたメンバーなんだけど、電話したらすぐ来れるって。……あ、ほら。おーい、こっちだよ」
野球部員が殺気立った雰囲気を放つ中、悠々と大男が歩いて来ていた。
「よお〜っ、ジョニィ。野球やるんだって?」
ぼくのクラスの友達であり、今回の助っ人、虹村億泰である。
86マロン名無しさん:2008/12/28(日) 23:01:47 ID:???
億泰キター!!
さあ早くスタンドに覚醒してくれ!!
87ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/28(日) 23:01:47 ID:???
草野球の助っ人を頼んだところ、億泰は二つ返事で快諾してくれた。
元々億泰はこういったイベント事は好きなほうだし、大柄な体躯に見合った体力もある。
まさに適任と思ったのだが、少しばかり不安要素もある。
「一体誰と……ってこいつらとかよ」
不安的中だ。億泰はグラウンドに制服姿で立つ、場違いな集団がSOS団だと認めると、露骨に嫌そうな顔をした。
まあ、これは予想できた。一員であるぼくとしては耳の痛い話だが、SOS団に近付きたがる人なんて皆無だ。
億泰も例外ではなく、ぼくがSOS団にいる事を快く思っているふしがあった。
とはいうものの、この事は話せば何とかなると思っている。問題は不安要素がそれだけではない事だ。
早速説得しようとしたぼくを澄んだ声が遮った。
「ジョニィ、何この頭悪そうな奴」
第二の不安要素も的中した。しかし、一目で見破るあたり、ハルヒの観察力も中々だ。
「ンだとコラッ!おいジョニィ!オメーの頼みでも、俺ぁこんなプッツンとはやりたくねーかんな!」
「はぁ!?プッツン!?誰の事よ!」
たちまち睨み合いが始まってしまった。このままじゃ助っ人になってくれるわけがない。
ぼくはなだめようと二人に割って入った。
「ハルヒ。そんな、馬鹿だなんて……。億泰、ハルヒはちょっとアレなだけで悪気はないんだよ」
「否定しろッ!」
「アレって何よ!」
しまった。火に油を注いでしまったぞ。
88ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/28(日) 23:02:54 ID:???
億泰は肩を怒らせながら背を向けると、首だけでぼくを見た。
「ジョニィ、悪いけど俺は帰るぜ。こんな奴に付き合ってらんねー」
「同っ感だわ。さっさと帰りなさいよ」
完全に気分を害したようだ。このまま帰すわけにはいかない。ぼくが慌てて引き止めようとした時である。
「あの〜」
能天気な声が緊迫した空気に割り込んだ。億泰もこちらに振り向く。
「ボールを借りて来たんですけど……お取り込み中ですか?」
みくるさんだ。部室からノック用のボールを取りに行くように言われていたのだ。
こんな雰囲気のハルヒに首を突っ込もうなんて勇気があるというか……。
と、今はそっちに気を取られている場合ではない。気を取り直して億泰の方に向き直る。……いない。
今の今までいた場所に億泰がいない。どこに行ってしまったんだろうか。
首を捻りながら視線を戻すと、すぐ横に億泰がいた。
「お、俺、虹村億泰っていってジョニィのダチです!野球の助っ人やるんでよろしくッス!」
もの凄い勢いでみくるさんに挨拶をしている。後退りながらみくるさんも自己紹介を返す。
「は、はい。ジョニィくんのお友達なんですか。朝比奈みくるです。虹村くん、よろしくお願いします」
あまりにも突然な態度の変化にさすがのハルヒも目を丸くしている。
「何よアンタ……帰るんじゃなかったの?」
「んなわけねーだろッ!水臭え事言うなって。ジョニィのダチは俺のダチだぜッ!」
「……まあ、人数合わせに入れてあげてもいいけど」
……ハルヒが押されてる。億泰ってぼくが思っていたより凄い人なのかもしれない。
89マロン名無しさん:2008/12/28(日) 23:03:18 ID:???
>ぼくがSOS団にいる事を快く思っているふしがあった。
『思っていない』じゃないの?
あとジョニィ正直すぎだw
90ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/28(日) 23:04:08 ID:???
何はともあれ、晴れて億泰がSOSナインの一員になった。ハルヒが声を張り上げる。
「じゃーみんなっ!ボールも来たし、ノック始めるわよっ!」
そしてボールをトスする。今、ここで始める気か!?今ぼくらは何となくマウンドの辺りにいて、守備位置も何もあったものじゃない。
「ちょっと待った。こういうのは守備位置につかないと……」
そこまで言った後が続かない。だって、それ以前にまだ守備位置を決めてないから。
「まず守備位置を……」
言い掛けたところで打球が飛んできた。殺人的に鋭い打球だ。
しかもそれが切れ目なく飛んでくる。とてもじゃないが、ボールに食らい付く気概は持てない。
自分の身を守るので精一杯だ。そんなぼくを尻目に古泉は軽快なグラブ捌きを見せていた。
普段より妙に楽しそうだ。長門は長門で自分の体に直撃しそうなボールのみを捕っている。
少しぐらいやる気を見せてくれ。そう思っていると、「わきゃあ!」と悲鳴が聞こえた。
見ると、うずくまったみくるさんが泣きじゃくっている。赤い膝小僧から見るに、ボールが膝に直撃したようだ。
キョンがみくるさんの腕を取る。「後を頼む」とぼくらに言うと白線の外を出た。気付いたハルヒが怒鳴る。
「こら!キョン!みくるちゃん!戻りなさぁい!」
「負傷退場だ!」
ハルヒの制止を振り切って保健室に行こうとするキョンに割って入る人がいた。
「待て待て待て!おいキョンとかいうヤツ!俺が保健室まで連れてく!」
億泰だ。キョンを押し退けてみくるさんを連れて行こうとしている。キョンも負けてはいない。
「何言ってんだお前。俺が先に行くって言ったんだぞ」
「こーゆーのは新入りの仕事なんだよッ!」
「お前いつの間に入ったんだ!?いいから手を離」
言い争う二人に打球が直撃した。打球の鋭さだけでなく、ハルヒはバットコントロールも一級品のようで、
急所にピンポイントで命中している。キョンは悶絶しているし、億泰に至っては白目を剥いて倒れている。
「……有希、連れてってあげて」
長門は小さく頷くとみくるさんの腕を取る。ぼくは長門に声を掛けた。
「長門。悪いけど億泰も頼むよ。……このままじゃ、不能になるかもしれない」
やはり小さく頷くと、長門は泡を吹いている億泰の襟を引っ掴み、引きずりながら校舎へと歩いていった。
91ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/28(日) 23:06:20 ID:???
キョンがようやく立ち上がれるようになった時には、ハルヒは野球部員相手にシートノックを始めていた。
どうやらぼくらを相手にするのに飽きたらしい。突然、雑用ばかりでは野球部員に悪いと言いだし、
あたしがじきじきに特訓してあげると言い出したのだ。自分勝手な理屈である。
「何やってんだ、あいつは」
キョンが呆れ声を出す。
「見ての通りだよ。全く、何を考えているんだか……」
吐き捨てるぼくに古泉が笑いかける。
「まあまあ、そう言わずに。彼女は彼女なりに考えていると思いますよ」
「どうだか」
ぼやくキョン。
「例えば、あの記事。覚えていますか」
記事?……「車椅子野球」の記事の事か。
「あなたも参加出来るよう、考えてくれているんですよ。飽くまで彼女なりに、ですが」
「…………」
無茶ばかり言うとしか思っていなかったが、考えてくれてるんだろうか。ぼくは咳払いをすると話をそらした。
「それにしても、ハルヒは凄いな。見てよ、あの打球」
さっきからのハルヒのナイスバッティングときたら、プロ級なんじゃないかと思う。
「……ひょっとしたら、勝っちまわないだろうな?俺は一回戦で終わらせて直帰といきたいんだが」
「それはないよ」
ぼくは首を振った。
「スポーツ……いや、何でもそうだけど、やってる人間には勝てない。
才能は……まあ、あるだろうけど、それだけで勝てるほど甘くない」
ふーん、と納得したんだかしてないんだかよくわからない相槌を打つと、キョンは帰ろうかと言った。
帰り際、ふと気になって振り替えると、ハルヒがマウンドで投げ込みをしていた。
豪速球に野球部員が空振りを喫している。……まあ、例外もあるという事で。

To Be Continued……
92ジョニィの人:2008/12/28(日) 23:14:04 ID:???
投下終了しました。
>>89
あー、間違ってますね。一応修正版を改めて再投下して終わります。
捕捉ですが、本当に車椅子野球はあるみたいです。
ただ、僕が見た物は本編でキョンが言ってたように、
ボールはゴムですし、バットもプラスチックか何かで出来た軽い物を使っていました。
競技というよりはレクリエーションに近い物みたいです。
93ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/12/28(日) 23:16:40 ID:???
>>87修正版

草野球の助っ人を頼んだところ、億泰は二つ返事で快諾してくれた。
元々億泰はこういったイベント事は好きなほうだし、大柄な体躯に見合った体力もある。
まさに適任と思ったのだが、少しばかり不安要素もある。
「一体誰と……ってこいつらとかよ」
不安的中だ。億泰はグラウンドに制服姿で立つ、場違いな集団がSOS団だと認めると、露骨に嫌そうな顔をした。
まあ、これは予想できた。一員であるぼくとしては耳の痛い話だが、SOS団に近付きたがる人なんて皆無だ。
億泰も例外ではなく、ぼくがSOS団にいる事を快く思っていないふしがあった。
とはいうものの、この事は話せば何とかなると思っている。問題は不安要素がそれだけではない事だ。
早速説得しようとしたぼくを澄んだ声が遮った。
「ジョニィ、何この頭悪そうな奴」
第二の不安要素も的中した。しかし、一目で見破るあたり、ハルヒの観察力も中々だ。
「ンだとコラッ!おいジョニィ!オメーの頼みでも、俺ぁこんなプッツンとはやりたくねーかんな!」
「はぁ!?プッツン!?誰の事よ!」
たちまち睨み合いが始まってしまった。このままじゃ助っ人になってくれるわけがない。
ぼくはなだめようと二人に割って入った。
「ハルヒ。そんな、馬鹿だなんて……。億泰、ハルヒはちょっとアレなだけで悪気はないんだよ」
「否定しろッ!」
「アレって何よ!」
しまった。火に油を注いでしまったぞ。
94マロン名無しさん:2008/12/29(月) 16:34:43 ID:???
乙!!
億泰もイイキャラしてますねww
95マロン名無しさん:2008/12/29(月) 23:04:46 ID:???
GJ!!
ということはメンバーからは谷口国木田が退くのか?
96マロン名無しさん:2008/12/30(火) 18:58:17 ID:???
>>85
お前が言うなwwwwwたしかにwwwwww
よく考えたらクロスものって全部異世界人になるんだなw
97マロン名無しさん:2008/12/31(水) 00:11:35 ID:???
何巡目でも億泰はみくるに惚れる運命なんだなw
98セッ子:2008/12/31(水) 12:36:12 ID:???
ジョニィの人乙!!
離れた場所から急所に命中させるとは、なんと言うスナイパーハルヒ…
これは間違いなく億泰再起不能(俺の下がスタンドだ的な意味で)フラグ…

ちょっとしてから投下しますよ
99セッ子:2008/12/31(水) 13:05:30 ID:???
高らかに鳴り響いたホイッスルは、グランドから離れた位置に居る彼らにも届いた。
「ようやく始まったな」
片割れがそっと窓から覗き、その様子を確認する。
「…みたいだな」
窓とは反対側でダンボールをいじっていた男が片割れの声に応える。
ここは彼らにとって都合の良い場所だった。
第一にその立地。
高角度、そして全方位についた窓は彼らが事をなすのにちょうど良い。
次に備品。
元は工業用品の卸売の会社だったのか、ここには彼らの求めているものがたくさんあった。
「へへへ、どいつにしようかなーッと」
片割れは今度は半身を乗り出して窓の外、サッカーの試合が始まったグランドを双眼鏡越しに眺める。
「決めた、あいつだ!あのカチューシャ!!」
「決まったんなら用意しろ」
奥の男はダンボールの中から自分の武器となる物を取り出し、片割れにそう言った。
片割れは少し顔をしかめ「わかってるよ」といい、腕をまっすぐに伸ばす。
その腕の先から、どこからともなく帽子のようなものが飛び出した。
帽子のようなものはそこに渦巻く気流に乗り辺りを旋回し始める。
「気流良し!高度、距離、ともに良し!」
帽子はいきなり窓の外の方向に進路を変え、滑空しだす。
「向かえ『マンハッタントランスファー』!!」
大声を出す片割れを見ながら、男は小さくため息をついた。
自分は何度彼に「静かにするように」と言っただろうか。
数え上げればきりがない。
まぁ、バレてしまっても俺が『コイツ』で始末すればいいだけなんだが。

act10―ふたつの戦い〜前半戦〜
100セッ子:2008/12/31(水) 13:08:23 ID:???
どうやら俺たちのチームが先攻らしい。
俺が顔を上げると、ちょうどハルヒがセンターサークル内から谷口にパスを出すところだった。
谷口はそれをうまくトラップし、走り出した…ように見えた。
「あらっ!?」「何してんのよ、クズ!!」
ボールが届いた瞬間に谷口はこれでもかというほど豪快に転倒した。
それを見計らったように谷口の後ろに隠れていた敵チーム3番がボールを拾う。
あわててハルヒがカバーに行くが、いかんせん距離が遠すぎた。
3番はハルヒのスライディングを難なくかわし、長門の脇をすり抜け、一気に中盤ライン、古泉の前まで攻め込んでくる。
その敵の攻め方が実に上手い。一目でお遊びじゃないと分かるほどだ。
古泉もなんとかボールを奪おうとするがそんな3番の前ではほぼ無意味。
結果、3番の巧妙な一人ループによって裏をかかれてしまった。
ボールは中盤を越え、俺たちの陣地に転がり込んでくる。
俺もなんとか食いつこうとするが、実力の差は大きい。
思い切り右に振られ、抜かれてしまった。
…もしかして、これって最初からピンチ?
自軍で俺の後ろには朝比奈さん、国木田、そして俺の妹とセッコだ。
セッコと国木田が二人分動いたとしてもこの攻めは防げない。
もう失点は免れないか、そう俺が思ったときだった。
「よッ、と」
神父が上手いこと脚を伸ばして振られたボールを拾い、そのまま攻めに転ずる。
地獄に仏(キリスト教的に仏はNGか)とはこのことだ。
「ッよぉーーし!神父!!こっちよ!!!」
ハルヒがぶんぶんと手を振ってアピールをするが、あれじゃあ警戒してくださいといっているようなもんだ。
さて、この状況で神父はどう動くか。
ちらりと神父は視線をこちらに流し、口を大きく開け、閉じた。
それは「こ・い」といっているようにも見える。
もしかしなくても、俺に出ろといってるんだろうな。
そんな神父の様子に気づいてか、神父から見て前の方向の敵と、俺の前の3番が同時に神父に向かって駆け出した。
「行くぞ、キョウ君!」
えーい、こうなったらやけくそだ。
101セッ子:2008/12/31(水) 13:11:29 ID:???

神父は先ほど3番が見せたような一人ループを使い、眼前に迫っていた5番を抜き去るとそのまま俺に横パスを出す。
「one(ワン)!」
横パスは俺の左足に吸い込まれるように飛んできた。つまりはワン・ツーだろう。
俺は神父の前方に存在していた7番の左後方、つまり神父の右前方目掛けてボールを蹴り出す。
「ツー!」やはり神父に比べると発音が心もとないな。
それにパスも神父のように綺麗にはいかない。ボールは考えていたよりも軌道がずれ、7番の脚直撃コース上を転がっていった。
神父はその俺のミスボールに上手く反応して7番の左側に飛び出し、その長い脚でボールを前に蹴り出す。
蹴られた先には
「ナガト君、左だ!」
上手い具合に長門がいた。長門は無表情でその場に佇んでいた。
やっぱり『予想の範疇内』だったのか?
長門は一度トラップをしてノールックでハルヒにパスを出した。
どうやらハルヒのマークは長門に移ろうとしていたらしい。
ボールはそんな敵の間をすり抜け、まるで計算されたかのようにハルヒの利き脚の前に到着する。
「ナイス有希!っと、行くわよ鶴屋さん!!」
「いいよん、来い、はるにゃん!!」
ハルヒはボールを一度リフトすると鶴屋さんにパスを出した、
「みっさっきっくーーーん!!!」という声付きで。
そのパスを受け、鶴屋さんは走り出す。
その目にはきっとゴールし映っていないんだろうと思わせるような速度だ。
敵もそう思うらしく、一気に鶴屋さんの後ろを除く3方向に敵ディフェンダーが集まってきた。
「つっばっさっくーーーん!!!」
鶴屋さんはその瞬間を突き、ハルヒにバックパスを出す。
て言うかその叫び声は必要なのか?
そのパスを受け、ハルヒは全速力で駆け出す。
その速度、きっといい方向に使えていればきっとインターハイを目指せていただろうというほどのものだ。
102セッ子:2008/12/31(水) 13:14:10 ID:???
ハルヒは大きく脚を振りかぶった。
その目に一昔前のスポ魂漫画のような炎が宿っているように見えたのはきっと気のせいだろう。
「喰らえ必殺の…ドォォライブゥゥゥッ!シューーーート!!」
その場にあったボールは脚からの全ての力を吸収し、形を歪に変形させてゴールまで飛んでいく。
これは決まったか?
響くのは鈍い音。ボールは上手い具合に敵キーパーに弾かれていた。
弾かれたボールを敵チーム11番が拾い、駆け上がる。
「っしゃあ!まかせろ…おろっ?」
ボールに一番近かった谷口はまた転倒した。その後ろからは、今度も敵チームの選手が。
ラフプレーかとも思ったが、疑わしきは罰せずとも言う。
それよりも今は敵のほうが重要だ。
今度は古泉も頑張っているらしく、こっちにはなかなか飛んでこない。
妹もいるんだが、あれは敵を邪魔しているというよりは古泉を邪魔しているといったほうがいいだろう。
今回は大丈夫、そう俺が油断した瞬間だった。
敵は後ろにいた自分の仲間にパスをし、その仲間が俺たちの陣深くにパスを出したのだ。
そこには先ほどの3番がまだ存在していた。
一瞬オフサイドかと思ったが、あろうことか彼女の左後方には朝比奈さんが立っている。
しかもその朝比奈さんは、ボールが来ているのを見ると頭を抱えて座り込んでしまった。
油断していたせいで、俺も飛びつけない。
神父は両脇をがっちりガードされていて、動くのはきっと無理だろう。
完全に出し抜かれた。3番はもうゴールへの軌道を確認している。
手遅れだ。誰もがそう思っただろう、二人を除いて。
「いけぇぇぇ!!セッコ!!!!」叫ぶハルヒに
「うおおおぉぉおおおおぉぉう!!」答えるセッコ
上手い具合に飛び込んだセッコの爪先が3番の足元からボールを掬い上げた。
ボールは高く舞い上がり、神父のいる右ライン上へと飛んでいく。
103セッ子:2008/12/31(水) 13:19:16 ID:???
「神父、落としたら地獄直行だからね!!」
何の権利があってか…いや、神の権利を持ってそう宣言するハルヒ。
神父も彼女の言葉は冗談じゃないと受け取ったらしく、一瞬足をぶらし、大きく跳躍する。
大きく、そう、大きく。どこからどう見ても1メートルは飛んでいるだろう。
きっとホワイトスネイクの足を使って跳躍したのだろう。
周りにいた少女たちよりも頭抜けた高さでボールを楽々頭に当て、軌道を帰る。
軌道の先には、やはり狙い済ましたように長門がいた。
「ナガト君、こっちだ!」そのままきれいに着地し、神父は前方に走り出す。
「…」長門は神父の少し前になるように場所とタイミングを見計らい、ポン、とボールを押し出した。
神父のばねと長門のパスの結果、神父と敵の間には大きなみぞが完成する。
その瞬間を神父は見逃さない。
神父はそのボールを受け取ると、ライン上をボールをドリブルしながら駆け出す。
その速さたるや、先ほどのハルヒにも引け劣っていない。
…本当に何者だよ、あの神父。
「ナイスよ神父!今度はこっち!!」
しかしハルヒは状況が読めてないな。お前は自分の周りのマークが案山子にでも見えているのか?
神父は先ほどのようにこちらを見て、ふっと視線をずらした。
何事かと俺が神父の視線のほうを向くと、なんとそこには敵の3番が立っていた。
今までの試合を見る限りでは、彼女は敵の主戦力。危険を冒してまで先のワンツーをするべきではないというのが神父の考えだろう。
しかし他に空いているメンバーといえば、朝比奈さん、妹、それに国木田くらいだ。
朝比奈さん、国木田はパスを通すにはラインの問題から3番の脅威が残るし、妹はじっとハルヒのほうを見つめている。
いや、その視線の先にハルヒはいない。もっと上、空中の何かを捕らえている。
何かいるのか。俺は妹の視線の先に目を動かす。
そこには帽子のような何かがあった。
104セッ子:2008/12/31(水) 13:21:19 ID:???
何かはふよふよとハルヒの上空で旋回していた。まるで上空から狙いを定めるように。
そこで俺の頭にセッコの言葉がよぎる。
『奇妙すぎる』
『ボルトやナットを高速で打ち出せる奴とそのボルトやナットを壁から打たれたように軌道修正する奴が存在する』
俺の知っている内にあんな物が空を飛ぶ風景はない。奇妙といえば奇妙だ。
その上あの帽子もどきはハルヒを狙うようにあいつの上だけで飛び続けている。
どういうことか?ここまでくれば勘の悪い人間でも気づく。
あれは帽子ではなく、いうなれば衛星スタンド。セッコのいっていた『軌道修正をする』方だろう。
しかし、俺がここで気づいても問題はある。
それはどうやって危険を未曾有の状態で防ぐかだ。
頼みの綱は二人だが神父は今敵と小競りあっているし、セッコはハルヒがいるので喋る事ができない。
できることなら自分でなんとかしたいが、如何せん3番が邪魔をしてくるのだ。それも無理。
じゃあどうするべきか?
決まっている。ひとつしかない。
俺は声を上げてハルヒに指示を出す。
「ハルヒ、そこじゃあ敵とのライン上だ。
『お前の近くにボールの軌道を変えられる衛星がある』わけじゃないんだから、ちゃんとコースを見てもらいに行け!」
「分かってるわよ!!」声に反応し、ハルヒは神父の前方に移動した。
ハルヒからの怒声を受けながら俺は横目で神父のほうを確認する。
どうやらメッセージは伝わったようだ。
神父は先ほどまでハルヒが居た方の上空を見つめている。
しかし、ボールからも意識を離していない。
神父はハルヒの居た方に蹴り出すと見せかけ、自分の軸足をクッションにして張り付いていた敵2番の股下を通しハルヒにパスを出す。
そのまま自分はハルヒの居た方に走っていく。完璧なフェイントだ。ほんとに何者だ、あいつ。
神父はくっついていたマークを引き離し、帽子に肉薄する。
そして、一閃、空中に現れたホワイトスネイクが帽子めがけて拳を落とした。
しかし。
「「!?」」
帽子は何事もなかったかのようにまたふよふよと漂い始めた。
105セッ子:2008/12/31(水) 13:24:11 ID:???
相方の眉が動いたのを俺は見逃さなかった。
「どうかしたのか?」相方は少し戸惑いながら俺に今起こったことを話す。
どうやら向こう側にも俺たちのような超能力者がいるようだ。
「どうする?」
「予定変更だ。その神父から片付ける。目標を修正しろ」

「神父、来たぞォーーーッ!!」
突如グランド内に響くセッコの声。
何事かとボールを追う数人(幸いハルヒはこの中)以外が「何事か」とそちらを向く。
「RUOHHH!!」
神父はもう一度、ホワイトスネイクで帽子を叩き落し、セッコのほうに向きなおす。
そして、近かった俺だけに聞こえるほどの音で地面が抉れた。そこに埋まっているのは、にび色に光るネジ。
「セッコ君、後は任せたッ!!」
「うおおう!!」
神父の声に今度はいつものように『おうおう言葉』で答え、姿を地面に隠すセッコ。
その速さは先の神父やハルヒよりも速く、慣れない人間が見たら消えたようにも見えるだろう。
「ふぇ?セッコさーん、どこですかー?」ほらやっぱり。
「キョウ君、守備に徹してくれ。ここからはしばらく十対十一だ」
俺のほうによりつつターンをした神父が恐ろしいことを呟いて走っていく。
つまり、ここから先の試合にはセッコが出ないということか?
ちょっと待ってくれ、と声を荒げそうになるが、俺はそれをなんとか喉の奥で押しとどめた。
確かに不条理なことだが、神父はその場の思いつきで行動や指示をするような男じゃあないということぐらい分かっている。
それにここで騒げばその分不利になってしまうだろう。
今の俺にできることは、無人のゴールを守る。ただそれだけだ。
106セッ子:2008/12/31(水) 13:27:19 ID:???
うちのGKの不在に敵チームは結局気がつかなかった。
しかしそれでも、地力の差が埋まった訳ではない。
ハルヒや鶴屋さんは必死に走り回っているが、運動量が運動量なだけに注意力も落ちている。
最初のころに比べれば喰らいつきも悪い。
頼みの綱の長門だが、彼女は動く気などさらさらなさそうだ。
谷口はボールが廻って来ると必ずこけた。
理由はきっと敵チームの妨害だろう。なんと言ういともたやすく行われるえげつない行為。
さすがに不審に思うべきなのに、やっぱり谷口は気づかないで走っている。
神父は動けそうだが、状況が最悪。
マーク三人を相手にしながらパスがまわせない状況を最悪といわずになんと言えるだろうか。
しかも彼はずっと帽子を警戒し続けている。ご苦労なこった。
ま、後衛はもっと酷いんだがな。
俺、古泉、国木田にはマンマーク。
妹は動くが相手にされていない。
朝比奈さんなんて動かない。
そんな状態で無失点を貫くなんてことができるわけがない。
先取点は敵チーム3番に輝いた。
と同時にホイッスル。どうやら前半終了らしい。
ハーフタイムは十五分間。
休憩ついでに作戦を立て直すには持って来いの時間だ。

to be continued…
107セッ子:2008/12/31(水) 13:29:56 ID:???
以上、前半投下終了。
二日連続にしたのは二作いっぺんに書くのが書きやすかったから。
それだけです。
神父はきっと運動神経良いんだろうな、とか考えてたら超人になっていた。何を言ってるか(ry
神父の叫び声は趣味。吸血鬼柱の男大好き!!
さて、宣言どおり明日も投下しますよ。
ただ、明日は遅くなると思います。
正月まで面倒ごとに巻き込まれるなんてやっぱりリアルは地獄ですね。
それでは、拙い文章ですが何かあれば。
108マロン名無しさん:2008/12/31(水) 13:49:07 ID:???
乙です!
さっそく大統領ネタが使われててワロタww
109マロン名無しさん:2008/12/31(水) 15:08:37 ID:???
投下乙です
神父…あんた…なんか、ちょっぴりカッコイイじゃあねーかよ…
110マロン名無しさん:2008/12/31(水) 23:44:44 ID:???
セッ子さん乙っていうレベルじゃねぇ!
ていうか神父カッコよすぎだろww惚れそうwww
111マロン名無しさん:2009/01/01(木) 11:15:31 ID:???
るオオオオオ!!ならツェペリさんが言ってたなw
112セッ子:2009/01/01(木) 20:38:55 ID:???
あけましておめでとうございます。
今年も拙い文章で迷惑をかけることがあるかもしれませんが、よろしくお願いします。
それでは新年初投下まで、今しばらくお待ちください。
113セッ子:2009/01/01(木) 21:00:58 ID:???
ほとんどのメンバーが息を荒げている中、無機質なコール音が鳴り響いた。
「…失礼します」
どうやら古泉の携帯のようだ。
このタイミングでかかってくるという事は『あれ』だろう。
「…はい、了解しました」
「どうしたの、古泉君」
「いえ、バイトが忙しいので手伝えないか、とのことでした。
もちろん断りましたよ」
古泉の言ったバイトとは、言うなればハルヒの我侭の尻拭いだ。
「それでこそ副団長ね」
しかし当のハルヒはそんなこと知る由もないのでどこ吹く風。
「それよりも、セッコが抜かれるなんて想定外だったわ」
これは休憩時間に入ってわかったことだが、どうやら前衛にはセッコが見えていたらしい。
それは本人たちが目の前のことに一生懸命だったのか、それとも。
俺の視線の意味を理解したらしく、神父が少し微笑んだ。
そして、俺に近寄ってきて呟く。
「飲み込みが早くて助かるよ。私の能力の応用だ」
神父の能力は元をたどれば人間の感覚に影響を及ぼすものだ。
もしかしたら、と思ったがまさか本当に使えるとはな。
「しかし、今考えるべきは試合のこと。違うかい?」
どうやらあんたも飲み込みは早いらしいな。
俺が皮肉混じりにそう言うと神父は苦笑した。
「いや、負けるのは好きじゃなくてね。やるからには勝ちたいんだ」

act10―二つの戦い〜後半戦〜
114セッ子:2009/01/01(木) 21:04:00 ID:???
男は走っていた。
後ろから迫ってくる得体の知れないものから逃げるために。
相方はもう助からないだろう。
助ける気などない。もともとお互いに都合がいいから付き合っていただけの仲だ。
それに今の状況は不利すぎる。
弾もない。距離もない。戦闘経験もない。
ないない尽くしじゃ勝てるわけない、と四つもないがそろっている。
「全く、ざけんじゃねぇぞ…!」
男は小さな声でそう愚痴ると、さらに駆ける速度を上げた。
向かうは商店街。
木を隠すには森の中だ。

とりあえずセッコ不在のこの急場を凌ぐためにはメンバーチェンジが必須だろう。
「メンバーチェンジぃ!?」もちろんハルヒは反対した。
「一回抜かれたから変えるなんて、何様のつもりよ」
…別に何様のつもりでもないんだがな。
「じゃあ、セッコで続投よ。それとも何、セッコ以上にいいキーパーがあたしや神父以外に居るとでも言いたいの?」
いつの間にか神父はハルヒの中で鶴屋さん以上になっているようだ。
「セッコ君を前に出すのはいいとして、キーパーはやはり問題だな」
神父も顔をしかめている。
当たり前だ。神父が見せているセッコなら威嚇くらいできるが、中途半端な奴を置けば間違いなく失点の嵐だ。
でも。
この二人には分からないだろうが、秘策はちゃんとある。
俺は斜め前に座ってじっとこっちを見ている小柄な宇宙人に視線を移す。
「キョン君、わたしキーパーやりたい!!」
お前は黙ってなさい。…長門、頼めるか?
「…問題ない」
これで守備のほうは完璧だ。
115セッ子:2009/01/01(木) 21:06:28 ID:???
メンバーチェンジの結果。
長門    ゴールキーパー
セッコ   サイドバック
谷口    スイーパー
俺     ボランチ
古泉    フォワード
となった。
なかなかバランスの取れた変更のように見えるが、実はそうじゃない。
この陣形後衛がガラガラで、一度カウンターを喰らえば取り返せない陣形となっている。
正気の沙汰ならこんな賭けはしない。
長門の絶対防御があればこそのこの陣形だ。

後半は相手ボールから始まった。
センターサークル内には敵3番が居る。
彼女の周りに一人も居ない点を見ると、どうやら彼女は初っ端からロングシュートを狙うつもりなんだろう。
そりゃそうだろうな。
GKが男から少女に代われば誰だってそうする。たぶん俺もそうする。
試合開始のホイッスルが高らかに鳴り響く。
と同時にゴール右上を狙って放たれるボール。
選んだコースといい、速度といい、敵ながら天晴れというべきだろう。
これが普通のキーパーなら確実に失点していた。
あくまで普通のキーパーなら、だがな。
「有希、何が何でも止めるのよ!!」
長門の口がいつかのように呪文を紡ぎ出す。
と同時にどんどん勢いを失っていくボール。
高度は下がり、スピードは落ち、敵3番は目を見開き。
長門はもはや転がっているだけのボールを軽々と拾い上げ、目の前の朝比奈さんに投げ渡した。
116セッ子:2009/01/01(木) 21:08:40 ID:???
予想だにしなかった事態に対しての反応もやはり優勝チームといったところか。
3番がショックを受けているのにたいし、ほかのメンバーは彼女を励ましながら攻撃に移行した。
もちろん目標はボール。
「ふぇぇーーん、来ないでくださーーい!!」
朝比奈さんは蹴るというよりは触ると形容したほうがいいような力でボールを逆サイドに出した。
その方向に敵が居るとも知らずに。
「なにやってんのよみくるちゃん!!」「へ、ふぁああ!」
しかし気づいたときにはもう遅い。後の祭りとはこのことだ。
ボールを受け取った敵7番はゴールめがけてボールを蹴る。
しかし、その方向には見計らったかのように長門が居た。
まぁ、あいつの場合実際に見計らってるのかも知れないんだがな。
ボールを手にした長門は、少し迷ったあと俺のほうに向かってボールを放り投げた。
余談ではあるが俺が今居るのは左ラインよりの奥。
ノーモーションで100m近く放った事になる。
俺はボールを受け取り、少し考えてみた。
敵は今俺たちの陣に3番を含む三人、神父に常時二人、ハルヒ、鶴屋さんに一人ずつ、GKが一人。
そして攻めていった三人の穴をふさぐため逆サイドに二人。
つまり、俺と古泉には敵一人という計算になるわけだ。
それなら焦る必要もない。
俺は走ってくる残りの一人をのんびりと見ながら古泉にパスを出す。
「死ぬ気で走んなさいよ、フリーでしょうが、この大馬鹿キョン!!」
ハルヒの罵声も何のその。
こっちだって考えがあってしてるんだ。無理に聞く必要もないさ。
今俺がやるべきことは、時間稼ぎだ。
117セッ子:2009/01/01(木) 21:11:45 ID:???
古泉も俺の意思が伝わったらしく、ボールを受け取るといつも以上ににっこりと笑い、声を上げた。
「了解です。行きますよ。つ、ば、さ、くーーーん!!」
どうやら欠片も通じていないようだ。
しかし唖然としても居られない。このまま古泉が単身突っ込めばカウンターは確実だろう。
俺も腹を括るべきなのかもしれない。
み、みさーきくーん…
「声がちいさーーい!!キョン、あんた翼君と岬君に謝れーーー!!!」
先ほどとは違った内容でハルヒから怒声が飛ぶ。
仕方ないだろ、こんなことになるなんて思ってなかったんだから。
古泉は俺にパスを出すととっとと別の場所に行ってしまった。
これは後の判断を俺に任せる、ととってもいいのだろうか。
このまま俺がシュートを狙ってもいいが、まだ距離が遠い。
かといってもう一度パスを出そうにも余っていた一人が俺と古泉の間にいる。
俺は少し考えた後、古泉のほうとは別方向から走ってくる敵を見て、もうひとつの可能性を見出した。
俺はきっと走りたくてうずうずしているだろう日向小次郎にパスを出す。
なぜ日向か?今は俺が翼君で古泉が岬君だからだよ。
「よし来い!!行くわよぉぉ、ひっさぁぁぁつ…タイガァァァアアアショォォォッット!!!」
何かよく分からないオーラを纏ったようにも見えたが気のせいだろう。
ちなみに名称と軌道以外は先ほどのシュートとなんら変わりない。
これにも敵ゴールキーパーはうまく反応してボールを止める。
「ああ、もう!」
ハルヒは相当悔しいのか、地面を思い切り蹴り上げた。

キーパーの腕がよければ試合は動かないものだ。
近年の試合で言えばリカルドVS末次か?
まぁとにかく、ウチの試合も同様に均衡を保ったまま、最終局面を迎える。
118セッ子:2009/01/01(木) 21:14:32 ID:???
長門が鉄壁なら敵守備陣は要塞だった。
どれほどの攻撃を畳み掛けようとも絶対に防ぎきる。
そんな訓練された要塞の前には俺たちの付け焼刃な攻めはほとんど無意味だった。
長門がどんな玉でも止められるといっても、点差がついてしまってはそれも意味を成さない。
焦りに反比例して時間はどんどん減っていく。
ボールがまた3番にまわった。
今までは谷口がなんとかボールを奪おうとしに行ったが、もうあいつは動かなかった。
どうやら負け戦と見て、これ以上疲れないようにしているんだろう。
やる気を出せといっても今のあいつには無意味だろう。
その谷口の様子を見ながら3番はドリブルをしながら進んでいく。
谷口の行動は当たり前といえば当たり前かもしれない。
勝てる見込みのない試合にこれ以上躍起になってもどうしようもない。
この試合、ウチのチームのほとんどはもう投げ出していた。
それが目に見えるのが谷口なだけであって、口には出さないが俺も、朝比奈さんも、きっとハルヒもそうだろう。
ハルヒはそんな谷口の様子に最初こそ檄を飛ばしたが、今はもう何も言わずに腕を組んでそっちを睨み付けているだけだ。
3番がドリブルからシュートの動作に移る。
ちょうどその時だった。
「えーい!」
聞こえてくるのは場違いな甲高い声。と同時に3番の素っ頓狂な声。
なにが起こったのかと彼女のほうを向くと、彼女の足元にあったはずのボールがなくなっていた。
そこにあったボールが物理的に消滅するなんて普通はありえない。
俺は静かにハルヒのほうを見てみた。
ハルヒも驚いた顔をしているところを見ると、どうやらハルヒの所為じゃないんだろう。
「神父さん、パース」
もう一度聞こえる甲高い声。
声の主は3番の隣から、神父にボールをパスする。
きっと全員の表情が固まっていた。
119セッ子:2009/01/01(木) 21:17:23 ID:???
最初に動いたのは神父だった。
「あ、ああ!!」
神父は自分に届く前に止まったボールを掬い上げ、そのままライン際を駆け出す。
あまりに衝撃的なことだったからか、マーク二人はしばらくその場に根が張ったように凍り付いていた。
彼女らが動き出したときには、神父はもう遥か先。
「神父さん、ファイトー」
パスの送り主は土で汚れた顔をぬぐいながら、満面の笑みで神父にエールを送った。
「…っ、すッごいわ、妹ちゃん!!!!!」
ハルヒが今日一番の大声でエールを送り返す。
そう、パスを出したのは俺の妹。
3番が谷口に目を取られている隙に近づき、シュートの動作へと映ろうとした瞬間にスライディングでボールを奪取したのだ。
俺は手首の時計を確認する。
後半終了三十秒前、ロスタイムを含めてもこれがラストプレーだろう。
神父にマークはもういない。
ディフェンダーが神父に近づこうとするが。
「させませんよ」
古泉がうまいこと神父とディフェンダーの間に入り込み、神父を逃がす。
他のフォワードのほうを見ると、彼女たちも同じように一生懸命ディフェンダーと競り合っていた。
ならば俺の役割も決まってくる。
俺は後ろを確認して、3番と神父との最短コースを確認し、そこに向かって走りこむ。
これで三番が神父の邪魔をすることはない。
残り十五秒、神父の目がゴールを捉える。
「いっけええええええ!!!!」
ハルヒの声に合わせて、神父がその長い脚を振りぬく。
ボールはぐんぐんとゴールへの距離を詰め、ゴールキーパーの伸ばした手をすり抜け、そして。

鈍い音を立ててポールにぶつかった。
120セッ子:2009/01/01(木) 21:20:14 ID:???
ボールは高く高く舞い上がり、ちょうど無人の左端へと向かう。
あれを落とせばもうチャンスはない。
俺は駆け出そうとするが今度は3番が俺の邪魔をしてきた。
他のフォワードメンバーも同じ。
ディフェンスメンバーが動いても、あれには追いつけない。
もう駄目なのか?
そのとき、俺の足元が不意に緩んだ。
緩んだというよりもぬかるんだという感じか。
そのぬかるみはすごいスピードで左端まで走っていく。
気がつけば俺は声を張り上げていた。
「セッコ、真上だ!!!」
声に答えるように地中から見慣れた男が飛び出す。
茶色いスーツは見間違うはずがない。途中でいなくなったセッコだ。
飛び出したはいいがセッコは空中で体制を整えられずに頭を下にして自由落下を開始する。
「そのまま決めろ!!」
「うおおおおおぉぉぉぉおおおおおうううう!!!」
俺の声に反応し、セッコはその場で綺麗に状態を立て直す。
もちろんその脚でボールを捉えてそのまま振りぬく。
ボールは逆サイドめがけて飛んでいき。
ゴールキーパーの手をすりぬけ。
ようやく、敵ゴールの中に突き刺さった。

グランドに響き渡るホイッスル。主審はゆっくりと敵のゴールをさした。
これは得点を示すホイッスルだ。
そしてもう一度響くホイッスル。主審は両手を広げている。
これは試合終了を告げるもの。
「ぃぃぃいいいいいよぉーーーーし!!!」
そして最後に、ハルヒの歓喜の声が響き渡った。
121セッ子:2009/01/01(木) 21:22:15 ID:???
「よぉーーーしよしよしよしよしよしよし!!よくやったわセッコ!!!」
聞こえてくるのは誉める声と
「がじがじ」
物を咀嚼する音。
目に映るのは飛び交う白い物体。
現在、グランドの外では引き分けを祝って角砂糖合戦の真っ最中。
というわけではない。
ただ得点を決めたからセッコが好待遇を受けているだけだ。
セッコはというとまんざらでもないらしく、久しぶりの角砂糖に舌鼓を打っている。
一見すると少し早い祝賀会といったところか。
なぜ試合が終わったのにグランドの外で馬鹿騒ぎをしているかというと、試合の結果が関係している。
何でも『引き分けは想定外だから判断を仰がなければならない』とか。
よってうちのメンバーは思い思いに過ごしているというわけだ。
「わーい、せっちゃんだー」「おうおうー」
今日のMVPセッコはハルヒの投げる角砂糖を食べながら妹とじゃれあっている。
古泉は『バイト』に出なくてよくなったと安堵し、長門はもくもくと本を読み。
谷口と国木田は朝比奈サンタ鶴屋さんと何気ない話をしている。
誰を見ても楽しそうだ。
そんな中、
「キョウ君、ちょっといいかい?」
神父は一人顔をしかめ、俺の方によってくる。
どうかしたのか?
「実は伝えなければいけないことがあってね…」
神父はぽつぽつと語りだす。

『審議の結果、PKで勝敗を決めることになりました。
両チーム、グランド内に集まってください』

to be continued…
122セッ子:2009/01/01(木) 21:24:28 ID:???
「そういえば、せっちゃん。どこ行ってたの?」
「何、セッコどこか行ってたの?」
「う?おうおう!!」


さて、後半投下終了です。
お気付きの方もいるでしょうが、延長戦も書きます。
たぶん延長戦も二話構成。
でも連日投下なんてしないよ、絶対。
延長戦が終わったら次の話に移ります。もう少しお付き合いくださいね。
しかし、一つの話に六編って長すぎる。
投下祭り(一人で)も終了。短かったのが気にかかりますね。
今、七日間連続投下なんてのも企画中です。
もちろん投下されるのは一つの話(の予定)。
予定はあくまで未定なので期待なんかはしないで下さいね。
それでは、拙い文章ですが何かあれば。

ちなみに
リカルドVS末次…資料にした漫画のネタです。流してください。
123マロン名無しさん:2009/01/01(木) 21:32:30 ID:???
投下乙です
逃げている二人組の片割れはどうなったんだろ?
神父が顔をしかめているということは逃げられたんだろうか
124マロン名無しさん:2009/01/01(木) 21:39:34 ID:???
なんかこのままさわやかスポーツ路線(たまにスタンドバトル)が続いてもいいんじゃないかと思えてきた俺w
『ちょっとヨロシク!』の苺谷みたく我侭なハルヒのせいで次々と色んなスポーツに挑まされるSOS団とかwww
125マロン名無しさん:2009/01/01(木) 22:18:56 ID:???
乙! 角砂糖に舌鼓打てるのはセッコくらいだなw
二人組との戦いの方も気になるねえ
126マロン名無しさん:2009/01/01(木) 23:36:49 ID:???
乙乙乙!!
この日常の中に非日常がある感じがハルヒっぽく、尚且つ4部の香りも感じられてすごくイイ!!
小ネタも利いててニヤニヤするぜww
12753:2009/01/02(金) 00:40:51 ID:???
投下祭り乙です。甘いの3個どうぞ⊃□□□
続き楽しみにしてますよー

支援絵完成しますた
128マロン名無しさん:2009/01/03(土) 12:22:12 ID:???
>>127
つ□□□乙乙!
ソッコー保存させていただきました〜

今更だか初夢はハルヒとギアッチョのカルタ大会だったぜ!
結構地味だったがね
129マロン名無しさん:2009/01/03(土) 14:21:19 ID:???
「を」や「ん」に対してキレるギアッチョ
ジョジョカルタ作ったら「ん」は「ンドゥール」か「んまあ〜い」かな
130マロン名無しさん:2009/01/03(土) 19:13:41 ID:???
百人一首はあるんだよな

バッドカンパニーがあればカルタ大会でも優勝だぜ
ハルヒにスタンドが見えたとしても「お人形さんだよ」でおk
131マロン名無しさん:2009/01/03(土) 22:53:50 ID:???
最強は無難にスタプラかな?
読み札を先に見て、且つ読まれたら即オラァっと
132マロン名無しさん:2009/01/04(日) 01:35:33 ID:???
カルタではエピタフが最強と言ってみる
133マロン名無しさん:2009/01/04(日) 01:47:59 ID:???
グリーンディだな。
カルタを取るために手を下ろした瞬間に勝負がつく。
134マロン名無しさん:2009/01/04(日) 08:18:57 ID:???
ト…トト神
135マロン名無しさん:2009/01/04(日) 09:57:08 ID:???
時止め→読み札見る→取る
136マロン名無しさん:2009/01/04(日) 10:38:10 ID:???
読まれる→ヘブンズドアーッ!何も見えなくなり吹っ飛ぶ!
137マロン名無しさん:2009/01/04(日) 12:29:23 ID:???
「そ」
そろそろ 止めよう この流れ
138マロン名無しさん:2009/01/04(日) 12:46:24 ID:???
お正月にやる「カルタ」って ありますよね…あれ…みんなでやったときですね。
あの「カルタ」で札を取るために伸ばした「手」…あれ……重なった時…
なんていうか……その…下品なんですが…フフ…
139マロン名無しさん:2009/01/04(日) 12:50:36 ID:???
ごめんスレ更新しないで下品なことかいちまった

俺も一息ついたらなんか書かせてもらおうっと
140マロン名無しさん:2009/01/04(日) 17:18:57 ID:???
俺なんてお正月の「晴れ着」で下品なんですが・・フフ・・・
141マロン名無しさん:2009/01/04(日) 23:01:44 ID:???
じゃあ俺は「鏡餅の曲線」に‥フフ‥
142マロン名無しさん:2009/01/04(日) 23:16:24 ID:???
なんという下品な奴らの巣窟・・・
まぁ、俺も実は、
「餅つき」ってありますよね・・・あれをやったときですね
あの「餅つき」で餅が偏らないようにひっくり返す合いの「手」・・・あれを見た時・・・・・・
なんていうか・・・・・・その・・・下品なんですが・・・フフ・・・
143マロン名無しさん:2009/01/05(月) 00:27:00 ID:???
KY自重
144マロン名無しさん:2009/01/05(月) 12:30:36 ID:???
KQも
145マロン名無しさん:2009/01/05(月) 23:58:43 ID:???
確かにこれKYの台詞だわなwww
146マロン名無しさん:2009/01/06(火) 13:45:17 ID:???
おまえらww吉良(k)吉影(y)かwww
147マロン名無しさん:2009/01/07(水) 12:31:17 ID:???
草生やす程でも…
俺含む全国のイニシャルY.KさんはKY流行ったときにさんざ言われたんだぜ
148マロン名無しさん:2009/01/08(木) 01:51:26 ID:???
名前ネタは結構くるもんがある

コロッセオが殺せよとか、
もし俺がコロッセオさんという名前の人間だったらと思うと枕がビショビショになる。
酔っ払ってるとき限定の妄想だけど。
149マロン名無しさん:2009/01/08(木) 08:11:37 ID:???
ジャイ子の本名を明かさなかったのは同名の子が苛められるのを配慮してだそうだが
俺だったら全然気にしないなw

しかし全国の吉良さんは元々のKILLERネタに加えジョジョといいデスノといい苦労が耐えないな
150アメリカの人:2009/01/09(金) 15:28:20 ID:???
お久しぶりです!
ずいぶん間が空きましたが投下させていただきます!
151アメリカの人:2009/01/09(金) 15:30:33 ID:???
第63話 「ファイヤーハウス 1」

年も開け、SOS団そうでの初詣でも終わり、珍しくハルヒから何も呼び出しが無い暇な冬休みの事だった。俺は本屋で雑誌を買い、駅前の商店街を特に意味も無くふらついていると、見知った顔を見掛けた。
「……徐倫じゃねえか」
声をかけられて徐倫は初めて俺に気付いたようだ。
「キョンか……何してるの?」
散歩だ。する事も無くて暇だったんでな。
「相変わらずジジむせえな………」
「うるせぇ。お前は買い物か?」
「まあな」
徐倫の持っている買い物袋には糸や針などが入っている。裁縫でもすんのか?
「……何か悪いかよ」
「いや……でも徐倫のイメージに合わないからな」
「裁縫するってのは正解だ……あたしのママがだけどな」
「そうかよ………」

互いに予定も無かったので徐倫の提案でアナスイの家でゲームでもしようということになり、徐倫の案内で商店街を歩いていた時の事だった。
「火事だあッ!」
「燃えているぞーーーーーッ!」
「ぼ、坊っちゃまのダニーがッ!」
「ダニィィィィーーーーーーーッ!」
どうやら近くのごみ捨て場で火事が起こったらしい。
「危ねえな……冬はやっぱ火元に注意しねえとな」
「そういや最近ニュースでごみ捨て場での放火事件が多発してるって言ってたな………」
「ハルヒが犯人探しをしようなんて言い出さなきゃいいけどな」
「……ふーん、犯人知りたくないんだ」
152アメリカの人:2009/01/09(金) 15:31:23 ID:???
突然聞いた事の無い声が後ろから聞こえた。徐倫が俺の首ねっこを掴んで声と反対の方向へ飛ぶ。突然の事に買った雑誌を落としてしまう。すると誰かが雑誌を拾う。
「雑誌が燃えた………!?」
雑誌を拾ったのは俺達と同じくらいの年の女。黒い髪にウェーブをかけ、それをポニーテールにしている。身長は160ぐらい、地味なジャケットにデニムのジーンズをはいている。
「その連続放火事件の犯人は……あたしだよ」
「な!?」
「……と言っても別に組織の指示じゃあ無いけどね、あたしの趣味だから」
「要するに放火魔って事じゃない」
「そうかもね」
女に悪びれる様子は全く無い。どうも真性の放火魔のようだ。
「カメラ渡しとく……あいつのスタンドから逃げるのに役立つだろ」
徐倫から渡されたスタンドの見えるカメラで女の方を見る。
女のスタンドは無表情なアフリカの原住民のような仮面をつけ、肩から腕にかけてとげがあり、朱色を基調に刺青のような模様があちこちに入った人型のスタンドだった。
「オラァッ!」
徐倫が殴りかかる。が、女のスタンドは軽々と受け止めた。
「オラオラオラオラオラァッ!」
右フックからジャブ、左フックから右のストレート、徐倫が猛烈なラッシュを仕掛けるが、全てさばかれた。
「……スピードとパワーなら互角ってことか………」
153アメリカの人:2009/01/09(金) 15:32:01 ID:???
「そうみたいね……殴り合いじゃあ決着つかなさそうねぇ」
そう言うと女はポケットから普通の紙を取り出した。女が振りかぶると紙が燃え始める。
「……それがお前のスタンド能力か………」
「ふふ……どんな能力か分かる?」
女はそう言いながら紙についた火をゴミ箱に入れる。すると、
「何ッ!?ゴミ箱が燃えたッ!?」
燃えたと言っても燃え方が普通じゃあ無い。火柱が上がっているのだ。
「さて、ここにこんな物を入れたらどうなるでしょう」
女は液体を取り出す。………まさか、あれ………
「ガソリンだな」
「それッ!」
「伏せろッ!キョンッ!」
俺達が伏せるのと爆発が起きるのとが同時だった。爆風にあおられ、吹っ飛ばされたものの、二人共あまり負傷はしていない。
「野郎はどうなった?」
あれだけの爆発だ、巻き込まれているに決っている。が、女は無事だった。
「これでも一応放火魔やってるのよ?燃やし方は計算してるわよ……それよりいつまでもここにいていいのかしら?」
「どういう意味だ………」
女の言葉の意味はすぐ分かった。見ると商店街のあちこちに火が燃えうつっている。
「嘘だろ!?」
「逃げるぞッ!キョンッ!狭い場所だと向こうが有利だ!」
154アメリカの人:2009/01/09(金) 15:32:59 ID:???
が、逃げようとした矢先、俺達の目の前に燃え尽きた材木が落ちてくる。
「クソッ!火事ってこんなに早く燃え広がるもんだったっけな?」
「いや……いくらなんでも早すぎる……多分こいつの能力だ」
……んじゃ、どんな能力なんだ?
「さあな……火が燃えるって言っても色々な物が働いている……情報0で推理するのは無理だ」
「お喋りしてる暇なんてあるのかしらね?」
「オラァッ!」
徐倫は振り向かず、声の聞こえてきた方向だけで殴りかかる。勘は当たっていたらしく、女はスタンドで攻撃をガードしていた。
「……良い勘してるわね、ムカつくくらい」
「オラオラオラァッ!」
右、左、左とコンビネーションパンチを徐倫は放つ。女はガードしきれずに、最後の左をもらって仰向けに吹き飛ぶ、倒れながら近くのゴミ袋を掴んだ女はそれを投げ付ける。すると徐倫の目の前でいきなり燃え出した。
「……ちくしょおッ!」
「どう?叩き落とす?……腕を一本犠牲にしなきゃいけないけどね」
「その必要は無いわね」
そう言うと徐倫は上着をゴミ袋に被せ、糸で結んで包みこんだ。
「火が燃えるには酸素が必要だ……密閉すれば火は消えるのよ」
「……やるじゃない」
「伊達に場数ふんでるわけじゃあないわよ」

To Be Continued・・・
155アメリカの人:2009/01/09(金) 15:36:13 ID:???
以上、第63話でした

セッコの人、投下祭りお疲れさまです!サッカー描写十分上手いですよ!
ジョニィの人も野球ですか…俺もスポーツ話しようかなぁ

今後の投下ペースは週一ぐらいですかね

それでは!
156マロン名無しさん:2009/01/11(日) 10:37:11 ID:2wkuA9cI
乙&保守!
157マロン名無しさん:2009/01/12(月) 18:23:25 ID:???
乙!
女の能力はなんなのか謎解きするのも楽しいな
158マロン名無しさん:2009/01/12(月) 20:48:15 ID:???
乙です
この事件、裏でディオが関係してんじゃ・・・

流石にそれはないか
159マロン名無しさん:2009/01/13(火) 20:28:52 ID:???
乙&GJ!

相変わらずジョジョテイスト全開!
もし受験が終わったら漫画版を描いてみたいと、
そう願ってた事がオレにもあったなぁ…。
160マロン名無しさん:2009/01/14(水) 21:15:58 ID:???
あなた…『覚悟して来てる人』…ですよね。
そういう「レス」をしちゃうってことは、逆に期待の「レス」をされちゃうかもしれないという危険を、
常に『覚悟して来てる人』ってわけですよね…


描けばいいじゃあないか…
思うがままにさ…
161アメリカの人:2009/01/16(金) 14:46:43 ID:???
第64話 「ファイヤーハウス 2」

俺達は燃え盛る炎の中で敵と睨み合っていた。
「どうすんだよ……徐倫、このままじゃずっと向こうのペースだぞ」
「そんなの分かっている……あたしから離れんなよ」
「コソコソとした作戦会議は終わった?それじゃ行くわよ」
そう言うと女の持っている手頃な材木が燃え始める。
「フンッ!」
燃えている材木をスタンドが右手に持って殴りかかってくる。ガードするわけにはいかず、徐倫は後ろに下がってかわす。
「どうしたの?かわすだけ?」
「……………」
女は続け様にスタンドで攻撃を繰り出す。左のジャブから再び左フック、ガードした徐倫に今度は材木で袈裟斬りに斬りかかる。
「ちッ!」
再び徐倫は後ろに下がる、が
「……壁際か………」
狭い商店街では下がりきれず、壁へと追い詰められる。燃えている店じゃないのが救い物だろうか。
「さーて……これでかわせないっと………」
「徐倫ッ!」
「キョンッ!足元の棒をこいつに投げ付けろッ!」
言われて慌てて足元の棒を投げ付ける。が、難なくガードされる。
「わるあがきねぇ……見苦しいったらありゃしない」
「それはどうかな」
次の瞬間、地面に落ちた材木が再び飛び上がり女の頭に当たる。
「うぐっ……」
女がひるんだところに徐倫が強烈な一撃をボディに叩き込む。女はそのまま吹っ飛んだ。
162アメリカの人:2009/01/16(金) 14:47:40 ID:???
「……なるほどね……さっきの材木には糸が結んであったって事?小細工してくれるじゃない………」
「オラオラオラァッ!」
間髪入れず、徐倫が攻撃を繰り出す。右フックから左ジャブ、そして右で脇を狙いに行くが、どれも見事に防がれる。
「これでもくらいなさいッ!」
女は落ちていた木材を拾って振りかぶる。やはり振りかぶった瞬間に木材が燃え出した。飛んできた木材を徐倫は横に飛んでかわす。
「なるほど……少し読めてきた……発火能力だな?単純にただ物を燃やすだけ………」
シンプルすぎじゃねえか?
「スタンドはシンプルな方が強い……それに発火能力って言ってもこいつは物そのものを燃やしている」
……すまん、イマイチよく分からん。
「自然発火だ……物には勝手に燃え出す温度ってのがある……多分火事の周りが早いのはこいつが本来燃えにくい木材の柱とかを燃やしたからだろう……木ってのは燃えにくいが、一度燃えたら長時間持つ……そういう事だろ?」
「……どうかしらねぇ……でも推理にばっかり熱中してないで周りも見てみたら?」
……そういえば、さっきから後ろが熱いな……振り向くと後ろの店が燃えていた。
「さっきの木材かッ!」
「よけられた時の事も考えるに決ってるじゃない……あ、そういえばァ……この近くにホームセンターがあったわねぇ」
163アメリカの人:2009/01/16(金) 14:48:21 ID:???
「まさか、てめぇ………」
「何焦ってんだ?徐倫?」
「ホームセンターには普通灯油やシンナーとかいった引火性の高い物が置いてある、そこに火が点いてみろ……あたし達は御陀仏だ」
「考えたくもねえな………」
徐倫は女に突進し、一気に距離を詰めて殴りかかる。右の手刀から返す刀でバックハンド、防がれるがそれと同時に右足で低い蹴りを繰り出す。が、それも防がれた。
徐倫は後ろに飛び、距離を取る。
「どうしたのかしら?早くしないとホームセンターが大火事になるわよ?」
「……………」
次の瞬間、女は首あたりで突然何かを掴む動きを見せた。
「黙っていると思ったら……抜け目無いわね、私の首にいつ糸を巻き付けたの?」
見るとうっすらと糸が見える。徐倫は首を絞めおとすつもりだったようだ。
「さっきの殴り合いよ。それにしても隙だらけね、てめぇ」
「……ふん、でも気付いてないの?この糸を燃やせばあなたも燃えるのよ?」
「グッ!……ヤバい、ストーンフリーッ!糸を戻………」
が、徐倫が戻すより早く女は首の糸を切った。
「ファイヤーハウスッ!」
次の瞬間、糸が燃え始めた。やばい、徐倫に燃え移る……と思った時だった。
「ギギャアッ!な……なんであたしにィ?」
そう、炎は女の靴に燃えうつっていた。
164アメリカの人:2009/01/16(金) 14:49:22 ID:???
「残念だったな、勝つために大切なのは見るんじゃなくて観る事だ……さっきの糸は既に腕から切ってあったのよ、その先端はあんたが撒き散らかしたガソリンにつけておいた……」
「グ……ウ………」
女は左足がほとんど炎に包まれていた、全身に周るのは時間の問題だろう。
「ま……あたしも鬼じゃあない……じっとしてな、即死させてやるよ」
「……し…た……」
なんだ?奴の様子が変だぞ?
「死んでたまるかッ!」
女はそう叫ぶと隠し持っていたらしい紙を燃やして投げ付けた。徐倫は軽くかわすが、女はその隙に逃げ出した。
「……馬鹿な野郎だ……どうせ火が全身に周るのが落ちなのにな……そろそろ逃げるぞ、キョン」
まあ、確かに徐倫の言う通りだ。いい加減火事もヤバくなってきている。勝ったのに逃げ遅れたなんてダサすぎるからな。
「……だけど組織も思い切った事仕掛けてきたな………」
「何がだ」
「今迄奴等はなるべく目立たないようにしていた……だが今回はそんなのお構いなしだ………」
窮鼠猫を噛むっていうように、冷静な奴より追い詰められてトチ狂った奴等の方が遥かに危険だ。これからは気をつけねえとな。
「でも、奴等はなんで急に焦りだしたんだ?」
「………分かったら苦労しないわよ」
「………そうだな」

「……空条徐倫………覚えていなさい……左足は無くしたけど、私はまだ再起不能じゃない……
いつかあたしにトドメを刺さなかった事、後悔させてやるわ………フフ……フフフフ……」

日吉静佳 ファイヤーハウス 左足を失うも逃走。尚、組織には死んだと思われているようだ。

To Be Continued・・・
165アメリカの人:2009/01/16(金) 14:51:29 ID:???
見ても見なくてもいい履歴書

日吉静佳
18歳 B型 5月18日生まれ
性格 何かが燃える事に興奮を覚える、真性の放火魔。組織は警察から逃げる為に入っており、忠誠心はかなり薄い。
前科 放火、傷害致死を中心に16件程。一度少年院に入った事がある。
好きな食べ物 バーベキュー(むしろ課程だが)
嫌いな食べ物 刺身、漬物
趣味 放火、焚き火

ファイヤーハウス
パワー A スピード B 射程距離 C
精密動作性 D 持続力 A 成長性 E
能力 発火能力。物を自然発火させる。一度触らないと使用できないが、どんな大きさでも指先一つでも触れば燃やす事ができる。
166アメリカの人:2009/01/16(金) 14:56:15 ID:???
以上、第64話でした

スタンド名の由来はキッスの楽曲「ファイヤーハウス」より

次回からは長編………というか陰謀編が始まる予定です
後、陰謀編はアナスイのターン!……のつもり。

それでは!
167マロン名無しさん:2009/01/16(金) 20:16:08 ID:???
乙!!そしてGJ!!
長編とは期待と応援をせざるをえないッ!!
168マロン名無しさん:2009/01/19(月) 11:08:28 ID:bAnQOP4H
あげ
169アメリカの人:2009/01/22(木) 16:08:15 ID:???
第65話 「スタンド使い ナルシソ・アナスイへの依頼 1」

1月も終わりを迎えつつある日の事、俺は掃除当番を終え、SOS団の部室へと向かっていた。1年である徐倫やキョン、涼宮がいるのかどうかは知らない。
……まあ朝比奈が先に教室を出ていたからいるだろう。ドアの前についた俺はノックをする。
「……………」
返事がねぇな。朝比奈は来てねーのか?そんな事を思いながらドアを開けると、
「……朝比奈……?」
朝比奈はいつものメイド服姿で部室にいた。が、いつもと感じがまるで違う。なんというか、憂いに満ちて、儚げな美しさを漂わせて普段の可愛い印象が消え去っている。
………悪くないかもな……って俺は何を考えているんだ、俺は徐倫一筋だ。ほら、今だって徐倫の姿を思い浮かべると心が綺麗に洗われ………
「あ、アナスイ君……?」
どうやら俺も朝比奈と同じくトリップしていたらしい。
「……わ、悪い……少しトリップしていたんだ」
「あ……はぁ……それじゃ、お茶淹れますね」
朝比奈はそう言っていつもどおりお茶を淹れ始めた……が、
「ハァ………」
いつもより遥かに手際が悪い。ため息までついて、何があったか知らんがかなり重症だ。さすがに可哀相に思った俺は聞いてみる事にした。
「……あのな、何をそんなに悩んでんだか知らねーが……なんなら相談にのるぜ?」
170アメリカの人:2009/01/22(木) 16:09:18 ID:???
が、朝比奈は無理に作ったような笑顔を浮かべた。
「そんな事ないですよ。わたしはいつもどおりです」
「……どう見ても無理してるだろ」
「……………」
シュンとした顔になる。やばい、地雷踏んだか?
「……うぅん、悩んでたって何も変わらない……だったら……やっぱり………」
朝比奈がぶつくさと呟きだす。声が小さくてサッパリ聞き取れないが、
「アナスイ君、お願いがあります」
「……なんだ?」
「今度の日曜……わたしと一緒に買い物に行ってくれませんか?」
……一緒に買い物?それはデートと言うんじゃないか?………マズいぞ、別に朝比奈の頼みを聞くのは構わないんだが、今までの俺の経験からするとこういう事になると絶対に不幸な目に会う………俺だけが。
そう、神様はよっぽど俺が嫌いらしく、朝比奈と良い雰囲気になると大抵徐倫やハルヒに見つかる。恐らくこの頼みを聞くと間違いなく今迄と同じパターンになる………が、朝比奈の真剣な目を見ていると断るのは良心が痛む。
だが、引き受けると不幸な目に会う………そんなジレンマに陥り思考停止した俺は長門が部屋に入ってきた音で我にかえった。
「……………」
「……………」
「……………」
気まずい。朝比奈は長門が苦手だし、俺も長門とはそんなに親しくない。………どうしよう。
171アメリカの人:2009/01/22(木) 16:10:03 ID:???
「長門……別に俺達はそんなんじゃないぞ、違うからな、絶対だぞ、違う、断じて違う」
……駄目だ……弁解したらよけい怪しくなった。………待てよ?今は長門だったからよかったものの、これが徐倫やハルヒだったらどうなった?………このまま悩んでいたら二人と鉢合わせする可能性は高い。よし、
「ああ、空いてるから大丈夫だ……行くか」
「ほんとですか!?ありがとうございます!」
朝比奈は嬉しそうだ。……俺の不幸は確定だろうがな。

日曜日、待ち合わせの場所に15分程前に来ると、朝比奈もほぼ同時に到着していた。
「すいません……待ちましたか?」
「いや、俺も今来たところだ」
「そうですか」
朝比奈の格好はシックてフェミニン、髪型もいつもと違い長い髪を後ろで一度団子にし、そこからポニーを作っている。正直かなり可愛い……が、俺は徐倫一筋。
この程度に惑わされる男では無い。ちなみに俺はお気に入りの網シャツにコートを着ている。朝比奈は少し目を白黒させた。
「アナスイ君、早く行きましょうよ」
朝比奈が袖を摘んで引っ張る。すげぇ可愛い。死ぬほど可愛い……って何考えてんだ俺は。そうだ……俺は……徐倫一筋なんだ………。気をしっかり保て、ナルシソ・アナスイ。

「へいらっしゃい!お嬢ちゃん、今日は彼氏連れかい?」
「そ、そそそ……そんなんじゃ、あああ……ありません!」
朝比奈が最初によったのはお茶の葉っぱとかを売る店だった。常連らしい朝比奈は店長と何か話しているが、俺にとってはどうでもいいのでコーヒーを探していた。
172アメリカの人:2009/01/22(木) 16:10:44 ID:???
「アナスイ君?そのコーヒーが欲しいんですか?」
「んー?まあな」
店長と話を終えたらしい朝比奈が近寄って来た。
「……わたしが出しましょうか?」
「別にいい。金にはあんまし困ってないしな……なんなら俺が出してやってもいいぞ?」
朝比奈の性格なら遠慮しつつも受けるだろうと俺は思っていた。が、朝比奈は真剣な目をして言った。
「いえ、わたしに出させて下さい……アナスイ君の分も………お願い」
……そこまで言われると、さすがに俺も断れなかった。

この店は喫茶店もやっているらしく、朝比奈に誘われた俺は一服することにした。
「この和菓子うめぇな……紅茶と合う和菓子ってのも珍しいがな」
「えぇ……はい………」
「この店、クッキー無いのか?なけりゃスコーンでもいいんだが」
「………さあ………」
………俺は朝比奈といるはずだ。長門やウェザーを呼んだ覚えは無い。……無口な奴を相手にするって結構きついんだぞ?朝比奈、なんか言え。
「……え……あ、はい……すいません、ちょっと考え事を………」
そういえば、さっきから朝比奈は時計ばかり見ている。まるで待ち合わせの時間を気にしている奴のようだ。……やっぱなんか裏があるってわけか………。ま、そっちの方が気楽でいいか。
「それじゃ、そろそろ行きましょうか………」
「ああ」

To Be Continued・・・
173アメリカの人:2009/01/22(木) 16:13:09 ID:???
以上、第65話でした

特にないね。………うん、ない

長編が始まるといいましたが今回の話はその前哨戦………というかプロローグみたいな感じです。
後、長編といってもサブタイは別に統一しません。大きなひとつの流れということで。

それでは!
174マロン名無しさん:2009/01/22(木) 18:21:45 ID:???
乙ッ!!
アナスイにいろんなフラグが立ちまくりwww
175セッコ  ◆1gAmKH/ggU :2009/01/24(土) 23:56:34 ID:???
アメリカさん乙です。
まさかの主役アナスイ……ゴクリ
しかしアナスイ悲惨(笑)オチしか思い浮かばないところを考えると彼も相当苦労してるよね。
アメリカさんの長編にはいつも(いい意味で)はらはらさせられているので今回も期待しています。

さぁ、投下しましょうか。
先に謝っておきます。今回勢いで書き上げたので目に付く点があるかもしれません。
ごめんなさい。
176セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/01/25(日) 00:00:05 ID:???
「いい、大切なのは『勝利へ向かう意志』よ」
円陣を組んだ状態で、メンバーの顔を見ながらハルヒが言う。
「ここで負けたら元も子もないわ。このPKで確実に勝つ」
いつも以上に真剣な表情だ。
まさに乾坤一擲。勝つか負けるかの瀬戸際。
そりゃあ、ハルヒだって真剣になるだろう。
「皆!!」
ハルヒは大きく息を吸い込むと、鬨の声を上げた。
「SOS団に敗北の二文字は存在しない。するわけないわ、負けないんだもん。
こんなところでそんな不名誉な言葉をカテゴライズしたくないでしょ!?
絶対絶対、ぜぇーーーったい!!勝つわよ!!!」
「「「「「「「ッしゃあ!!!!」」」」」」」
「ひ、ひゃあ!」
「おうおう!!!」
「…しゃあ」

act11―二つの戦い〜延長戦(side:saccar)

延長戦のルールはこうだ。
・両チーム代表三人とGK一人が参加して行うPK勝負。
・基本ルールは通常のPKと同じ。
・三回勝負で得点が多いほうの勝利。同点の場合はサドンデスに突入。
・延長戦開始後にメンバーチェンジは認めない。
・選ばれたメンバーは各一回ずつキックを行う。同じ人が二度蹴る事は許されない。
・ただし延長戦に入った場合、先の三回で一度蹴った人も蹴ることができる。
ここで問題になるのはやはり初期メンバー三人+GKだろう。
説明を聞き、ハルヒは『絶対に勝てるメンバーを選べ』と俺に放り投げた。
考えられる最良はハルヒ、神父、セッコ、GK長門。これに勝てるチームはまず無い。
しかし、長門の魔法はPKでは目立ちすぎる。
さて、どうしたもんかな。
177セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/01/25(日) 00:02:20 ID:???
ボールを挟んで対峙する二人の女。
第一戦は無難にハルヒ。
敵GKを眺めるハルヒは、どことなく楽しそうだ。
「ようやく分かってきたようね、キョン。ここは一気に勝ちを狙うべき勝負のターニングポイントよ!!」
一回戦からターニングポイントな訳無いだろ。
国語(英語か?)を最初から勉強し直して来い。

結局、メンバーはハルヒ、鶴屋さん、神父、それにGKセッコという組み合わせになった。
事後処理が厄介なのでできるだけ目立つことは避けておきたいという俺の気苦労がこの人選を見れば分かるだろう。
もちろんハルヒもセッコもぶつくさ文句を言っていたが、あいつら二人の思い通りにしたらそれこそ自滅ルート直行だ。
このメンバーこそ今のベスト、最善策。そう信じたい。
「あー!!もう!!!」
どうやらハルヒは止められてしまったようだ。
悔しそうに地面を蹴り上げるハルヒ。頼むから恨めしげな目で敵を見つめないでやってくれ。
相手だって負けたくないから必死なんだよ。
しかもあちらさんの勝ちにかける気合はお前なんかよりも大きいはずだ。
何せ連覇がかかってるんだ。遊びに来た混合チームには負けられんだろうさ。
さて、ハルヒが外したということは攻守交替だ。
俺はセッコに視線を送る。
「うー…」
先も言ったように、セッコはこの人選に不満を抱いている。
なぜか?自分が蹴りたかったからだろうな。
178セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/01/25(日) 00:03:54 ID:???
不満を抱いているといっても、何も言わずに仕事はこなす。
流石は良識のある(この辺は不明だが)大人、といったところか。
こっちとしては多少の反発は覚悟していたので、逆に拍子抜けしたくらいだ。
しかも、その仕事に手抜きは見えない。
見えないどころかもういいですと言いたくなるくらいの働きっぷりだ。
なんというか、もう、あれだ。チート。
あいつの身体能力が高いのはてっきりスタンド保護によるものだと思っていたが、神父の話によるとそうではないらしい。
なんでも『スタンド自体には身体を強化する能力はついていない』とか。
つまり、今あいつがゴールの真ん中からノーモーションで左サイドゴールポストに飛びついたのもあいつの身体能力ということ。
敵五番も唖然としている。
普通の人間ならならあんなジャンプ力ありえない。
審判も足やら地面やらを調べている。
地面を調べたところで何もないさ。なんてったって長門と違って種も仕掛けもないんだからな。
それどころか緩んでいて、どちらかといえば飛び難いということが分かるだろう。
セッコは質問に終始「おうおう」と返していて、少し怪訝な目を向けられはしたが、結局お咎めは無し。
「審判は公平であるべきでしょうが!!」
ハルヒは何の違和感も抱いていないようで、俺の隣で審判に悪態をついていた。
さすがはハルヒというべきか。
ちなみに他のメンバーはというと、
SOS団メンバーには『暗黙の了解』という便利な言葉があるので詮索はしていないが、きっと気づいているだろう。
ウチの妹は「せっちゃんすごーい」と言って抱きつくところを見ると、不信感は抱いてないようだ。
鶴屋さんは含み笑いをしているだけ。もしかしたらあの人、何か知ってるのかも…なんてな。
谷口国木田はさすが外人、と外国の方が聞いたら憤慨するようなことを言っていた。
俺と神父は言わずもがな。

ただ一人。
敵三番だけが違った視線でセッコを捉えていた。
179セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/01/25(日) 00:07:19 ID:???
鶴屋さんががっちり止められ、またもやセッコの守備。
今回の敵は因縁の三番。
最終に持ってこられなかったのは運がよかったのかもしれない。
しかし敵はここでこのシュートを決められれば神父に大きなプレッシャーをかけることができるだろう。
ハルヒの言葉を借りるならこの勝負こそ試合のターニングポイントだ。
対峙する男と女。
セッコも最初のシュートのことなどは覚えているらしく、先ほどよりも心なしか顔が引き締まって見える。
沈黙があたりを包み込む。それを打ち破るホイッスルの音。
しかし三番は動かない。じっとその鷹のような鋭い目でセッコを捉えている。
そして、ゆっくりとセッコのほうを指差した。
三番は何を言うわけでもなくじっと指を刺し続ける。
そのまま、両者動かない。
何か問題でもあるのか、と審判が動こうとした瞬間。
止まっていた二人の間の時が再び刻まれ始めた。
脚を振り上げる三番。       体制を低く構えなおすセッコ。
三番の指は動かない。       セッコの視線は揺るがない。
軸足が少しだけずれる。      音を耳にしてセッコの視線がずれる。
脚が降りぬかれた方向は      セッコの飛んだ方向は
           ゴール左下、スレスレ
ここで会場が沸いた。
なぜか?
ボールは大きく弧を描きながらゴール右上に向かって飛んでいるからだ。
敵三番は降りぬく脚の外側でボールを逆サイドに蹴っていた。
つまり、先ほどからの三番の行動を分析すればこういうことになる。
三番はセッコが正攻法では抜くことのできないGKだと悟った。
ならばどうするか?きっと彼女はこう考えた。『別方向に飛んでいればさすがに取れない』と。
そこで彼女が立てたのが左下を狙って右上に打つという賭け。
しかしこれだけでは看破される可能性がある。
そこで出てきたのが二つ目のブラフ。指差しだ。
指差しというありきたりなブラフでもうひとつのブラフの存在を隠す。
敵三番は口の端を吊り上げて笑っていた。
180セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/01/25(日) 00:08:55 ID:???
このままではまずい。
ここで一点取られてしまえば今までの努力は水の泡だ。
しかしさすがのセッコでも体勢を立て直し飛んだのでは間に合わない。
ボールには球速が無い。しかし離れてしまったセッコでは届きようも無い。
考えても答えが出るわけ無い。完全にしてやられたんだ。
この土壇場であの三番の底力がセッコのそれを上回った。
「ポールだ!!」とっさに状況を判断して神父が声を上げる。
この状況で、ポール?と頭を捻った観客も多いだろう。
しかしその一言だけで、セッコには十分だ。
セッコはまず右肩を支点として受身を取り、ついた左足で地面を踏みしめる。
踏みしめた足の力を跳躍により一気に位置エネルギーへと変え、開いていた右足を力強くポールに叩きつける。
位置エネルギーへの変換を強制的に止められたエネルギーはポールについた右足に運動エネルギーとして蓄積され、
セッコはそれを一気に解き放つ。
そう、俗に言う
「「「三角飛びディフェンスだぁーーー!!!」」」
先ほどの仮定はあくまで『セッコが立ちなおし、飛んだ場合』。
セッコはその仮定の過程をスッ飛ばした。
ということは当然その過程の時間は短縮される。つまり、守備に回す時間が増える。
「うおおおぉぉぉぉおおお!!」
大きな音を立ててボールはセッコの手の中に納まった。
と同時に地に両膝をつく三番。
危なかったが、防衛成功のようだ。
「おおぉぉぉぉーーーー…」
どうやら勢いを付け過ぎたらしく、セッコはそのまま向こうへと飛んでいった。
181セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/01/25(日) 00:10:54 ID:???
「さて、今度は私の番だな」
セッコはまだ帰ってきてないが、どうやら試合続行のようだ。
「ハルヒ君もいないし、ちょうどいい」
ちょうどいいというのが若干気にかかるが、神父はそんな俺をその場に残してさっさとグランド内に入っていった。
ホイッスルが鳴り、神父が構える。
と同時に俺の目にはとんでもないものが映った。
いるのだ。ゴールポストの隣に。
神父のスタンドであるホワイトスネイクが。
神父は顔色一つ変えずにホワイトスネイクのほうに向かってボールを蹴った。
もちろんぎりぎりのラインなので敵のキーパーも止めに行く。
『RUOOOOHHH!!』
キーパーがボールに触れようとした瞬間、待っていましたとばかりにホワイトスネイクがボールを叩き落とした。
当然あらぬ方向から外力を受けたボールは運動の軌道を変える。
そしてそのままボールはゴールの中へと転がっていった。

いいのか、これ?
俺の表情を見て神父は俺の考えていることが分かったらしく、神父は少し笑いながらこう言った。
「古人の言葉にこうある。『汝の持てる全てを使うことが勝利だ』
また故人の言葉にこうある。『勝利という甘美な物の前において、過程や方法などは意味はなさない』」
誰の言葉だよ。
「先の言葉は知らないが、後の言葉は私の親友の言葉だ」

その後、帰って来たセッコはきちんと敵の三番手のシュートを止めた。
結果、1−1、延長PK戦1−0で試合は俺たちの勝利で幕を閉じた。
182セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/01/25(日) 00:13:33 ID:???
帰ってきたハルヒは神父がシュートを決めていたことに大いに喜んだ。
「さすが神父ね!!この分だと教皇への出世も考えられるわ!」
なんだか水をさすようで気が引けるが、言っておかなければならない。
俺はきゃいきゃいとはしゃいでいるハルヒに声をかける。
「何よ、あらたまって」
実は…
「いや、キョウ君、私から話そう」
そう俺の言葉を遮った神父は、試合終了直後と同じように陰っていた。
「どうかしたの、神父?」
「実は、私はこの後の試合に出られないんだ」
お祭りムードだったメンバーの空気が一気に平常時以下へと落ちていく。
「どういうこと?」
ハルヒは、意外にも神父の心配をしているようだ。
平常から俺にもそれくらいの心遣いをしてくれるとこっちも助かるなんてことは口が裂けても言えない。
「今日は隣町の病院の子ども会に呼ばれているということをPKの前に思い出してね。
本来ならこの後も出場したかったんだが、すまない。このとおりだ」
そういって神父は深々と頭を下げた。
それは形式上のものなどではなく、心の底からの謝罪をこめたお辞儀。
ここまでされてしまうとハルヒも牙を抜かれたトラのようにうなるだけしかできなかった。
「仕方ないわね……」
ハルヒは少しの間黙り込み、メンバー全員を見渡した後
「メンバーも足りないし、今日はこれにて活動終了。きっと知名度も鰻上りだし!!
この後は神父以外のメンバーで祝勝&反省会よ!!」と言った。
ついでとばかりに神父は続ける。
「すまないが、キョウ君とセッコ君も借りていけるかな?」
…なんだと?

to be continued…
183セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/01/25(日) 00:15:00 ID:???
以上、投下終了。
ほぼ一月空いてる…不思議!!
次回は延長戦(side:stands)でお送りします。
ちなみに作品の途中で三角飛びディフェンスと叫んでいるのはハルヒ、鶴屋さん、古泉の三人です。
これこそトリビア(無駄無駄知識)
前述したように勢いで書き上げたから最後のほう失速気味かも…
見逃してください。
それでは、拙い文章ですが何かあれば。

追伸。
いつの間にか支援絵が消えていて泣きを見る目にあったのはセッ子だけじゃあないはず。
カムバック、絵師さん……!!
184マロン名無しさん:2009/01/25(日) 12:22:26 ID:???
投下乙

……神父、お前って奴はwww
185マロン名無しさん:2009/01/27(火) 21:42:56 ID:???
勝利という甘美な物の前において、
    過程や方法などは意味はなさない



      ‐DIO‐
186マロン名無しさん:2009/01/28(水) 09:04:25 ID:???
前の人とは違うけど支援絵っす。
アップロード勝手に使わせて貰いました。PASS→SOSです。
ユニフォームは、とりあえず南葛のものを流用してます。
色々、微妙です。すみません。

延長戦、期待してます。
187マロン名無しさん:2009/01/28(水) 14:23:15 ID:???
>>186
ディモールト・乙!!!
妹のユニフォーム姿可愛すぎだろ。
188マロン名無しさん:2009/01/28(水) 18:49:26 ID:???
>>186
ちょ、神父短パンwwwww
とにかく乙!!避難所に報告無かったから気付かなかったぜwww
189アメリカの人:2009/01/30(金) 15:27:53 ID:???
第65話 「スタンド使いナルシソ・アナスイへの依頼 2」

店を出た俺は朝比奈に連れられるままについていった。最近火事があった商店街を抜け、住宅地を通ると川の土手へとやって来ていた。
「もう……そろそろ………」
朝比奈はまたしきりに時間を気にしている。そろそろってわけか。近くの踏切近くの十字路に差し掛かった時、朝比奈が話し掛けてきた。
「こっちです。ここの横断歩道を渡ります」
信号は赤だ。青になるのを待つ。
「だけどよ……信号って緑色に光ってんのになんで青って言うんだろうな?」
「……さあ………まだ……まだなの?」
朝比奈は俺の話にも上の空だ。
「青になったな、渡ればいい………」
その時、小学4、5年くらいの少年が俺達の横を飛び出した。すると踏切を渡って右折緑のワンボックスカーが信号を無視して猛スピードで少年に突っ込んでくる。
「キ、キャアッ!」
とっさに少年に駆け寄り助けようとするが間に合わない。ならば………
「ダイバーダウンッ!」
ダイバーダウンの右手で少年の襟を掴むと左腕を暴走車の車体に潜行させ、飛び乗る。間一髪、少年が轢かれる前に抱き寄せて車体に張り付かせる事に成功した。
「……フン、何を考えてんだか知らねーが、挨拶代わりだ……ダイバーダウンッ!」
車体から飛び降りると同時に中にいるであろう運転手の脳天にパンチをお見舞いしておく。車が突如蛇行運転を始め、近くのブロック塀に突っ込んだところを見ると中の運転手にはきちんと命中したようだ。
190アメリカの人:2009/01/30(金) 15:28:29 ID:???
「大丈夫……!?」
朝比奈は顔面を真っ青にさせて少年へと駆け寄ってきた。
「この事だったんだわ……だからアナスイ君とって………」
どうも朝比奈が受けた指示は俺を連れてここに来る事だったようだ。
「……車を見てくる。轢き逃げ犯が気絶してるはずだ」
ワンボックスカーへと駆け寄ると扉を開けようとする。が、
「鍵がかかっているだと………?」
妙に思いながらもダイバーダウンで鍵を壊して開ける。
「……誰もいない?」
車にキーはついたままだ。……だったら一体どうやってここから出たんだ?
「いましたか………?」
「いや……逃げられたみたいだ」
「………そうですか、ね、君……お名前教えてくれる?」
返事を聞くと朝比奈は少年に向き直る。
「いい、今からお姉ちゃんが言う事をよく聞いて、守って」
少年は戸惑いながらもうなずいた。……まあ車に轢かれかけた挙げ句、突然見知らぬ外人にとんでもないアクションを決められて助けられたんだ。無理もない。
「これから……何があっても車には気をつけて……ううん、それだけじゃない、飛行機にも電車にも、お船にも……怪我したりしないように注意してほしいの……お願い………」
「うん、気をつける」
少年は棒読みで答えた。ま、上出来な返事だよ。
「危ないところを救っていただき、ありがとうございました。以後気をつけます」
丁寧なガキだな。
「それでは失礼します」
そう言って少年は去っていった。
191アメリカの人:2009/01/30(金) 15:29:11 ID:???
いつまでも動こうとしない朝比奈を引っ張りだすと、
「うっ……うう、うっ………」
……泣いてやがる。参ったな……なんで泣いてんだ?
「どうした……あのガキは助かったからいいじゃねえか」
「……情けないの。わたしは……何も解っていない……何もできてない………」
「……なんだかよく知らねーが……いつまでも泣いてんじゃねえ……ほら、行くぞ」
とりあえず朝比奈を何処かに連れて行かなければ。痴話喧嘩に思われたらかなわねぇ。

長門の家が近くにあるという公園のベンチに俺達は座っていた。
「おい、朝比奈」
「……もう大丈夫です……わたしは今回上の人に言われてこうしてたんです」
あのガキを助けるためか。
「はい、今回の行動は全部上の人の指示でした……わたしは指示通りの場所を指定された時間通りに通過しただけ………」
「めんどくせえな……上とやらももっと具体的に指示したらいいじゃねえか」
「ダメなんです……わたしが力不足だから………」
「あのガキは……お前らの時代にとって重要な奴ってことか………」
大方タイムマシンの発明者か何かだろう。
「はい」
「んで、消そうとしてた奴等は……ま、お前らの未来が気に食わない別の未来人が消そうとしてたってことか」
「ええ……アナスイ君の助けを借りたのは未来人が過去に干渉するのが制限されているからです………」
朝比奈はそこで一呼吸置いた。俯いている顔の表情は分からない。
192アメリカの人:2009/01/30(金) 15:30:14 ID:???
「わたしは……あの時も……今回も………」
あの時っていうのは徐倫から聞いた、あの長門が過去を改変したという話だろう。
「何にも知らされないで、何にもできないで……徐倫さんや、キョン君、長門さんに古泉君……アナスイ君にも頼りっぱなしで迷惑ばっかり………」
「………朝比奈」
「………はい?」
「お前がどんな状況に置かれてるのかはあまりよく知らねーが……お前はもっと自信を持っていいぞ」
「え……でも」
朝比奈が驚いた顔をする。
「……お前は自分が力不足だって感じて、成長しようとしてるんだろ?それでいいんだ。……前に進もうとする意志を持たない奴は栄光を掴めない……アメリカらへんの有名な騎手の言葉だ」
「……アナスイ君………」
「大丈夫だ……お前はいつか栄光を掴める……だから今は前を向いて進めよ」
「………はい」
そう返事した朝比奈の目には未だに少し泣きあとがあるが、柔らかく、そして少しピンクな笑みが浮かんで……ん?ピンク?改めて朝比奈を見る。
「ふ……ふぇ?どうかしましたか?アナスイ君」
朝比奈の頬が少し赤い……やべぇ、またやっちまったっぽい……しかし、なんで俺は朝比奈の前だとかっこよくなれるんだろうね。……まあいいか、今回は不幸な目に会わなさそうだ。
193アメリカの人:2009/01/30(金) 15:31:53 ID:???
翌日、月曜日。放課後の部室での事だった。涼宮が突如呟き始めた。
「あたし、最近独り言が多いのよねえ……今から言うけどさ……あたしん家の近所に小学生がいるの、名前は………」
見事なまでに目が笑っていない笑みを浮かべたハルヒの口から出たその名前は、昨日聞いたばかりの名前だった。……昨日何もなかったから油断していた。神様はどうやら本気で俺が嫌いらしい。
「たまに勉強見てあげてるんだけど……その子がぁ……みくるを昨日見たんだって、アナスイと一緒にいるとこを」
朝比奈は急須を持ったままフリーズしており、長門はいつも通り無表情、古泉はいつものニヤけスマイルを浮かべるだけ、唯一助けてくれそうなキョンは………
「……………」
無言の笑みを浮かべながら親指を立て、それをそのまま地に向けた。
「さて、アナスイ?一体みくると二人っきりで何してたの?」
「OK、涼宮……遺言だけ書かせてくれ……だからその握り拳を下げろ、徐倫」
徐倫はハルヒの横にいた。その顔には復讐の機会を得た喜びが張り付いている。
「……んじゃ、やっちゃて、徐倫……あ、みくるはお咎め無しよ。どうせアナスイが無理に誘ったんでしょ?」
「え?あ……それは………」
が、朝比奈の話を誰も聞こうとはしない。
「アナスイ……これはあたしの意志じゃあない……ハルヒに言われて仕方なくだ……そう、仕方なくだ……いつもストーキングされてる復讐じゃあ無いからな……
仕方な〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜くだからな?」
……そうか、分かったから頼む、今すぐスタンドしまってくれ。……ってあのヒトノハナシキイテマスカジョリィンサン?
「あばよ………オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
「やっぱこんなオチかーーーッ!」

To Be Continued・・・
194アメリカの人:2009/01/30(金) 15:36:55 ID:???
以上、第66話でした

ミスった………65話になってますが66話です………

サブタイは「保安官マウンテンティムへの依頼」から……わかりにくかったかな?

セッコの人あいかわらず乙です!
セッコってたしかに身体能力高いよなぁ
そして神父てめぇwww

絵師さんもGJ!
欲をいえば俺の作品も描いてほしいなぁ………自分で描きたくても俺、絵心無いんだよ………

それでは!
195マロン名無しさん:2009/01/31(土) 10:02:30 ID:???
GJ!アナスイ…w
196マロン名無しさん:2009/01/31(土) 18:13:02 ID:83RF88ge
GJ&絵師降臨祈願あげ
197マロン名無しさん:2009/01/31(土) 20:55:03 ID:???
GJ!!そして乙!!
徐倫の台詞がツンデレっぽかったw
絵師さんGJ!
198マロン名無しさん:2009/02/01(日) 20:14:58 ID:5DT8jYiS
アメリカの人乙!!
アナスイざまぁww
199マロン名無しさん:2009/02/04(水) 04:38:01 ID:???
乙です。

アメリカの人の朝比奈さん→アナスイがすごく好きです。
そんなわけで、そんな支援絵第二弾投下させて頂きました。

PASS→sosです。
200アメリカの人:2009/02/05(木) 16:05:32 ID:???
第67話 「未来からの第1指令“朝比奈みくるを保護せよ” 1」

「やっぱり日本に生まれたからには日本の伝統行事も大切にしないとね!」
2月3日、突然こんな事を言い出した涼宮は俺と朝比奈、そして長門について来いと命令した。学校を出て向かった先は近くのホームセンターだった。豆と鬼のお面を買うという。
「……仮装パーティーでもすんのか?」
「アナスイ君はアメリカ人だから知らないですよね?節分」
……セツブン?
「簡単に言うと豆をまいて鬼を追い払って福を呼び込む行事よ!」
「ふーん」
後で徐倫に細かい点を聞いとくか。

部室にたどり着くとキョンと古泉、徐倫がいた。ホワイトボードには8の字が二つ組み合わさったような珍妙な図形が描かれている。
「何これ?ベルヌーイ曲線?」
「別になんだっていいだろ……それより豆撒き始めないのか?」
「分かってるわよ……あ、掛け声は福はうちだけだから」
「ハルヒ……それじゃあ節分の意味ないじゃない……鬼を追い出してこその節分だろ?」
「あたしさ……昔、泣いた赤鬼って絵本を読んで鬼がすっごい可哀相だって感じたのよね。それにSOS団は人以外の者にも寛容なのよ!」
……生憎泣いた赤鬼を読んだ事の無い俺にはそれがどれくらい良い話かは分からなかったが、とりあえず涼宮の言う事には一理感じる。鬼だからという理由だけで追い払うのもなんだしな。キョンも同じ思いだったらしく、
「たまには良い事言うじゃねーか」
「たまにって何よ」
201アメリカの人:2009/02/05(木) 16:07:05 ID:???
豆撒き役は涼宮直々の提案で女組のみが投げる事となった。
「ハルヒにしては良い提案じゃねえか?アナスイ」
「明日は雪だな」
「……今は冬だぞ」
「んじゃ、ハリケーンで」
キョンとそんな他愛無い事を話しながら豆を投げる4人を見る。最初は何事かと様子を見ていた野次馬達は、朝比奈が一生懸命な様子で投げる豆や、長門が手からパラパラと落とすだけの豆を拾い集め始めた。
ちなみに涼宮の投げる散弾銃のような豆は皆避けており、徐倫はというと………
「オラァッ!」
「……なあ、徐倫が投げる豆やたらと速い気がすんだが……つーか当たったら冗談抜きで死ねる速さだぞ?」
実際涼宮の豆は当たってもみな少し痛がる程度だ。だが、徐倫の豆は何人かを昏倒させている。
「スタンドを使ってベアリングしてるな」
「……ベアリング?」
「指で弾を挟んで打ち出すやり方だ……昔の暗殺者とかが使ってた暗器なんかが近いな」
「なるほど……で、肝心なのはなんでそんな事してんだ?」
「さぁ………」

豆撒きが終わると今年の恵方を調べて巻き寿司を食った。無言で食うのがルールの上、全員縦に並んでいるので珍妙な光景にしか見えない。
「………ま、平和が一番……か」
が、数日後。俺は平和とは程遠い状況に巻き込まれることを、まだ知らなかった………。
202アメリカの人:2009/02/05(木) 16:08:26 ID:???
節分が終わり、数日がたったある日。俺は珍しく長門も朝比奈もいない部室に一人でいた。
「暇だな……帰るかな………ん?」
隅にある掃除ロッカーから物音が聞こえた……気がした。中に誰かいるのか?……いや、まさかな……スタンド使いでもねえ限り………
「待てよ?」
こないだ朝比奈と車に轢かれそうになっていたガキを助けた時に、車の中にいたはずの運転手は消えていた。未来人の技術かとでも思って気にしていなかったが、未来にもスタンド使いはいるのかもしれない。
「………開けるか」
扉に手をかけ、ダイバーダウンを出して身構えてから扉を一気に開ける。が、そこには未来人もスタンド使いもおらず、
「ア……アナスイ君?どうしたんですか?……そんな怖い顔して」
「………朝比奈?」
まさかこんな所で隠れんぼ……な訳ないよな。
「アナスイ君が言ったんじゃないんですか?この時間に飛べって………」
「未来の俺が?」
「はい、そこにいる俺が何すればいいのか知ってるって………」
俺には未来予知のスタンドなんざ無いぞ。何考えてんだ未来の俺は………。と、考えたていた瞬間、誰かがドアを開けようとした。
「隠れて!」
朝比奈に引っ張られ掃除ロッカーの中に入れられる。
「なんだよ朝比奈……くそ、狭いな」
誰かが入ってくる前に間一髪ロッカーを閉める。首をひねって後ろを見ると、
「あ……朝比奈?」
203アメリカの人:2009/02/05(木) 16:09:43 ID:???
扉を開けて入ってきたのは朝比奈その人だった。双子でもいたのかと思ったが、そっくり過ぎる。……すると今俺とロッカーですし詰めになってる朝比奈は本物か………ん?すし詰め?
「……どうかしましたか?」
……よく考えたらこれすっげーマズい状況じゃないか?朝比奈の胸が俺の腹辺りに当たり、息は常に胸辺りにかかる。……く、くすぐったい上になんか息苦しくてしょうがない。まさに生き地獄だ。
頼む、早く行けェ!朝比奈ァ!(過去)……が、そんな思いとは裏腹に朝比奈(過去)は着替えを始めたようだ。
「見ないで!」
朝比奈(未来)に目を塞がれてますます密着状態になる。
「……落ち着け……素数を数えて落ち着くんだ……2、4、8、16、32………」
「アナスイ君、それ2の階乗です」
そんなあと1分続いたらそれこそ死んでしまいそうな生き地獄は突如ドアが開かれた音によって中断させられた。
「長門さん……?あの、なんで中に入らないんですか?」
朝比奈(過去)の言葉を察するに長門はこちらの危機に気付いてくれたのだろう。ありがたい。
「へ?話があるんですか?……分かりました今行きま……あ、引っ張らないで長門さん………」
長門と朝比奈(過去)が去っていく足音を聞くと俺はロッカーの外へと飛び出た。
「死ぬかと思ったぜ………」
「ふぇ?」
204アメリカの人:2009/02/05(木) 16:11:05 ID:???
「ところで……これからどうするんですか?」
「相手が長門だったから良かったが……涼宮とかに会うと面倒だな………帰るぞ」
「あ、はい」
人目を少し気にしつつ、ロビーへとやって来る。朝比奈は靴を取ろうとする。
「……お前が今靴を取ったらもう一人のお前はどうすんだ?靴が無くなったんなら話は別だが」
「……無かったです……でもどうやって帰りましょうか………」
俺は無言で適当な棚から靴を出して朝比奈に放ってやる。
「え!?泥棒ですよアナスイ君………」
「後で返しとくよ……ん?なんだこりゃ?」
俺のロッカーを開けるとそこにはかわいらしい封筒に包まれた手紙があった。
「ラブレター……な訳ないよな……俺宛だし開けていいよな」
開けて中を見る。そこにはこれまたかわいらしい文字で、“そこにいる朝比奈みくるをよろしくお願いします”と書いてあった。
「朝比奈……これが何か分かるか?」
「!!……上からの指令書です……多分………」
よく分からないがこいつは未来人からの命令所らしい。
「やれやれだな………」
思わず徐倫やキョンの口癖が口をついて出た。これからどうなるんだろうな……ほんと。

To Be Continued・・・
205アメリカの人:2009/02/05(木) 16:14:28 ID:???
以上、第67話でした

絵師さんがまさかの支援絵を!嬉しい限りです。
地味に徐倫やアナスイが制服を着ている点も嬉しいです。
ところで徐倫の服は長門と同じタイプのものなのでしょうか?(色合いがそんな感じがしました)
そしてあの首輪はなんなんでしょうか?絵師さん、よかったら教えてください。

それでは!
206マロン名無しさん:2009/02/05(木) 17:34:27 ID:???
乙!
207マロン名無しさん:2009/02/05(木) 18:28:54 ID:???
アメリカの人乙!!絵師さんも乙!!
そしてGJ!!
208ジョニィの人:2009/02/06(金) 21:32:49 ID:???
徐倫の人、絵師さんにGJ!そして期待!久しぶりに投下します。
209ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/02/06(金) 21:34:47 ID:???
第二十一話「アナーキー・イン・ザ……B」

あっという間に束の間の休息は終わり、日曜日がやってきた。ついに野球大会当日だ。
午前九時、ぼくらは近所の河川敷に集合した。「由緒ある大会」というハルヒの説明は本当だったようだ。
揃いのユニフォームに立派な道具の本格派が集まっている。
当然ユニフォームを作っていないので、ぼくたちは学校指定ジャージでの参加だ。かなり場違い。やる気の面で。
こりゃ、厳しい戦いになりそうだ。そう言えば、キョンとみくるさんが連れてきた助っ人はどんな人なんだろうか。
「ねーねー。ジョニィくん」
と、幼い声がぼくを呼んだ。見ると、少女が眩しいくらいに笑っていた。
「くるま、押していい?」
くるま、とは車椅子の事だろうか。ぼくが承諾すると少女は歓声をあげた。
「やったー!すごいねえ。走るねえ」
喜んで押したり引いたりしている。ぼくは少し面食らいながら少女に話しかけた。
「えと。悪いんだけど、キョン……お兄ちゃんに聞きたい事があるんだ」
この子はキョンの妹だそうだ。どうしてあのキョンと同じ両親からこんな天真爛漫な妹が産まれたんだろう。
「わかった。連れてく!」
そう言うと、断る間もなくキョンの元へ押して行った。轢きかねない勢いでキョンの眼前に着くと、慌てて避けたキョンに尋ねた。
「キョン、君が連れてくる助っ人はまだ?」
「……もう来てる」
キョンの返事は素っ気ない。
「え、どこに?」
「後ろだよ」
後ろを振り向く。他チームの人ばかりだ。それらしい人はいない。
「……いないけど」
「いるだろ。俺の妹が」
……え?この子?……いや、待て。人は見かけによらないものだ。
「キョン。この子、野球経験は?」
「そうだな。体育とか休み時間にやった事があるかもしれないな」
ないのか。大人が出る大会なのに、何でこんな子を……まさか、誘える友達がいないのか……?
「……そうか。……可愛い子だね」
そっとしておくのが優しさだとぼくは思った。
210ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/02/06(金) 21:36:27 ID:???
残るはみくるさんの助っ人だ。そう思った時、辺りに声が響いた。これは、笑い声だろうか。
「にょろ、ろ。にょろ」
誰だ!?声の主は太陽を背に立っている。逆光で顔が見えない。長髪を風になびかせ、その人は笑っていた。
「……君は!?」
「ふっふっふ……。満を持して、あたし参上!ジョニィくんだよねっ。
あたし、鶴屋。みくるからよーっく聞いてるよっ!」
「…………」
「ん?どうしたにょろ?」
黙り込むぼくに鶴屋さんが尋ねた。
「いや……運命的な出会いかと思ったけど、違ったみたいだ」
首を傾げながらぼくが呟くと、鶴屋さんは目を丸くした。
「え!?……あはは、積極的だねー。外人さんは」
「そういうわけじゃないんだけどな……」
ともかく、これで九人揃った。もうすぐ試合開始だ。
既にグラウンドで相手チームが練習を始めている。うーん、華麗な守備だ。気合いも素晴らしい。
まるで甲子園中継を見てるようだ。(今年の春に一度見ただけだが)ぼくらも負けずに練習を……まだポジションを決めてない。
「ハルヒ、ポジションはどうするんだ」
同じ事に気付いたキョンが言う。
「あたしピッチャーで一番ね。ハイ、これ」
得意気に出したのは薄っぺらな紙。やはりというか、メンバー表ではなかった。八本の線が引かれているだけ。
「……まさか」
「アミダね。文句ないでしょ」
文句が通じる相手なら言うんだが……というわけで、急遽アミダクジによって決められたメンバーを発表する。
一番ピッチャー、ハルヒ。二番センター、長門。三番ライト、みくるさん。四番ショート、キョン。
五番サード、ぼく。六番セカンド、億泰。七番ファースト、鶴屋さん。八番キャッチャー、古泉。九番レフト、キョンの妹。以上。
211ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/02/06(金) 21:38:17 ID:???
「決まった?」
何をぼやぼやしてるんだとでも言いたげな顔でハルヒが言った。
「もう行くわよ。集合だって」
「もう!?全然練習してないぞ」
「大丈夫、大丈夫。あたしが作戦を授けるから」
作戦?そんな物があるなら少しは期待ができそうだ。何せハルヒは野球部にいた事もあるらしいからな。
「まず塁に出る事。出たら、三球目までに盗塁ね。バッターはストライクならヒットを打って、ボールなら見逃すの」
「…………」
「あたしの計算では、これで一回に三点は堅いわね。いい作戦でしょ?」
確かに素晴らしい作戦だ。不可能って事を除けばだけど。
沈黙に包まれた空間で、キョンの妹の無邪気な拍手が響いていた。
たった一人の拍手を浴びながら、なぜかハルヒは胸を張っている。ぼくらが感心しているとでも思ってるんだろうか。
「これで勝ちは決まったも同然ね!さ、行くわよっ!」
どこからそんな自信が出てくるんだ。勝つ要素が全くないのに。ため息をつくぼくにキョンが耳打ちする。
「そう沈むなよ。どうせ優勝なんて無理だ。さっさと負けて、早く帰ろうぜ」
ハナから勝つ気はないのか。さては、負けるために妹を連れてきたな。
「それは、少し困りますねえ」
こ、古泉!?いつ聞いてた!?いつの間にか、変わらない薄笑いが隣にいた。
「無惨な敗北を喫すれば、涼宮さんにストレスが溜まり、閉鎖空間が拡大しかねません。
最低でも善戦して頂かなければ、世界の危機ですよ」
口から出た言葉はかなり重大だ。少なくとも、早く帰りたいという気持ちよりは。
ぼくはそう思ったが、キョンは違うらしい。しかめた顔には「うんざりだ」と書いてある。
「またそれかよ……。そうは言ってもな……」
「古泉のいう通りだぜ。オメー、ちゃんとやれよな」
どうやって聞き付けたのか、億泰が絡んできた。
「これはチャンスだかんな!朝比奈さんにいいとこ見せるぜェ〜。黄金の右腕でよォ〜」
「君はセカンドだけどな」
どうも締まりがない。古泉は世界の危機なんて言ってるけど……。
ま、とりあえず楽しんでやろうか。勝つのは無理だろうけどね。

To Be Continued……
212ジョニィの人:2009/02/06(金) 21:42:24 ID:???
投下終わりです。続きは気長に待っててくれると嬉しいです……
213マロン名無しさん:2009/02/06(金) 21:42:38 ID:???
投下乙です
妙に冷めてるなジョニィとキョン、気持ちは分かるがw
個人的には億泰の活躍に期待
214マロン名無しさん:2009/02/06(金) 22:58:42 ID:???
なんかわからんがすげえニヤニヤwwwGJ!
右腕もとい右手に期待だぜェ〜。しかしジョニィは野球できるのか
215マロン名無しさん:2009/02/08(日) 00:25:43 ID:???
笑い方といい長髪といい共通点結構あるな、鶴屋さん。
216マロン名無しさん:2009/02/08(日) 16:58:05 ID:???
ネタは何?
217マロン名無しさん:2009/02/10(火) 16:56:47 ID:???
ジョニィさん02ー。
ニョホとニョロ…
何か深遠な関係が有りそうな、無さそうな。
218アメリカの人:2009/02/13(金) 11:46:04 ID:???
第68話「未来からの第1指令“朝比奈みくるを保護せよ” 2」

学校を出た俺達はロッカーに入っていた手紙と共に俺の家へと向かっていた。
「……八日後から来たのか」
「はい……アナスイ君に指示されたんです………ほんとに何も知らないんですか?」
「神に誓って何にも知らねぇ……そういやお前はその八日間で自分と出合ったか?」
「いえ、会ってません」
家への道中に聞き出した話をまとめると、未来から来た朝比奈が来ていた事は表向きSOS団員は知らなかったそうだ。その間に行った事は次の祝日に宝探しと称して鶴屋さんの山で穴掘り、後は不思議探索を土日続けて連続で行ったくらいだという。
「……特に変わった点は無えな」
そうこうしているうちに俺達はアパートへとたどり着いた。が、朝比奈は妙にオドオドして上がろうとしない。
「……どうかしたか?」
「あ……はい……何でも無いです……ここがアナスイ君の家………」
変な奴だな。リビングに上がって、さてどうするかと思った時だった。携帯電話が鳴り始めた。
「……涼宮からだ………」
「出た方がいいですよ……実際に出てましたし」
電話を取る。
「もしも………」
「クオラァッ!アナスイィィィィィィィィィィィイイイイイイッ!」
目茶苦茶巻き舌でハルヒの怒鳴り声が聞こえた。
「……ナンデスカ?」
219アメリカの人:2009/02/13(金) 11:46:47 ID:???
「なんですか?じゃないわよッ!団長であるあたしに黙って帰るなんていい度胸ね……SOS団員は団長に絶対服従なのよッ!」
「おい、涼宮。この際だから言っとくが……俺はSOS団に入った覚えは………」
「だまらっしゃいッ!」
「………ハイ」
「いい?明日は顔出すのよ?でなきゃ……そうだ、こないだ商店街のくじ引きで花火が当たったのよねー……ウフフ………」
「分かった、行く、明日は絶対行く、だからちょっとはこっちの言い分も聞いて………」
「問答無用!」
「ひでェ!」
涼宮は言いたい事だけ言うと電話を切ってしまった。
「フ……ファイトです!アナスイ君!」
「……………」
まあ後ろばかり見ていても仕方が無い………。
「んでまあ……今一番の問題はだ………」
「わたしの寝床ですよね………」
金があるならそこいらのカプセルホテルにでも行けるが、どうもこの朝比奈は金を持っていないようだ。
「確か涼宮のくじ引き大会中に連れ出されたんだよな………」
「はい」
念の為確認したが学校から直接送り込まれたのならやはり金は持っていないだろう。
「お前以外の未来人の知り合いはいねーのか?」
「いるのかもしれませんが……わたしは知りません」
未来の連中は随分と不親切だな。
220アメリカの人:2009/02/13(金) 11:47:22 ID:???
「………仕方ねえ……俺ん家に居るか?」
「え……ふぇ!?」
「やっぱ嫌だよな……まあ俺も女が一人暮らしの男の家に泊まるのもどうかと思うしな」
「わたしは……別に………全然……か………いませ………ど」
朝比奈は何か喋っていたが、顔を赤くしながらどんどん声を小さくしていったので何を言っているのかさっぱりだった。
「……そうだ……長門の家はどうだ?」
「長門さん……ですか?だけど、この状況を理解してるんでしょうか………」
「理解してるだろ。でなきゃあの時部室で助けてくれねえよ」
「……でも、アナスイ君長門さんと仲良かったですか?」
「……………」
長門と仲が良いのは俺や朝比奈よりキョンや徐倫だ。……二人のうちどっちかに頼めばいいのだろうが、俺の本能がそれはヤバいと告げていた。
「……しょうがない、暫く泊まってけ」
「え!?こ…こここ……こちらこそ!ふつつか者ですが………」
「朝比奈……何言ってんだ?」
「……何でもないです」
「……………」
「……………」
会話が終わると途端に気まずい。
「め、飯でも作るかなー」
「わ、わたし手伝いますよー」
「あ、ああ………」
「……………」
「……………」
結局互いに気恥ずかしさは抜けず、寝るまで会話はろくに無かった。
221アメリカの人:2009/02/13(金) 11:49:26 ID:???
互いに異様に気恥ずかしいまま朝を向かえ、(当然だが朝比奈は寝室、俺はリビングと別々の部屋で寝た。)朝飯を二人で食っていた。
「その………」
「………なんだ?」
「ありがとうございます……パジャマも……布団も貸してもらって………」
一枚しか布団は無かったので俺はソファーでタオルと共に寝る事となっていた。多分朝比奈はそれを気にしていたんだろう。
「別に構わねーよ……それよりも人のパジャマを着せて悪かったな」
「あ、大丈夫です……それにしてもこのパジャマ綺麗ですね……まるで新品みたい」
「そりゃ新品だからな」
「え?」
朝比奈は心底驚いたような顔をする。
「徐倫へプレゼントしようと思って買ったんだ」
「そうですか………」
朝比奈は少しむくれた。珍しいな、人の良い朝比奈がそんな顔するなんて意外だ。
「わたしだって不機嫌になる事くらいあります。……アナスイ君っていっつも徐倫さんの事ばっかりなんだもん………」
朝比奈の言葉は前半は聞こえたが後半は聞こえなかった。ただ……まぁ、なんだ。朝比奈はいつもより少しテンションが高い気がする。………心当たりはあるがあえて考えないようにする。ふと、時計を見ると
「やべ、こんな時間か……朝比奈、昼飯は勝手に食べ……」
「作っちゃいました」
「……ハ?」
「アナスイ君っていっつも購買じゃないですか、だからわたしが作りました。はい、アナスイ君の分」
……やべえ、本格的に朝比奈を家から追い出す術を考えねーと……このままだと……いや、その先は考えないようにしよう………。

学校についてロッカーを開けると
「2枚目の手紙か………」
例の命令だろう。中を見ると、
「んだこりゃ………?」

To Be Continued・・・
222アメリカの人:2009/02/13(金) 11:52:01 ID:???
以上、第68話でした

ジョニィの人乙!たしかに鶴屋さんとジャイロには共通点多いよなぁ ニョホ!

今回は自分で書いてて少しニヤニヤしてしまいました。このあともっとニヤニヤ展開になっちゃう予定ですけどね!

それでは!
223マロン名無しさん:2009/02/13(金) 18:16:35 ID:UEFyNQK4
乙!わくわく展開来たッ!
224マロン名無しさん:2009/02/13(金) 20:14:50 ID:???
ニヤニヤッ!せずにはいられないッ!
02!
225マロン名無しさん:2009/02/16(月) 22:03:26 ID:???
保守
226マロン名無しさん:2009/02/20(金) 05:46:13 ID:???
さらに保守
227アメリカの人:2009/02/20(金) 11:25:02 ID:???
第69話 「未来からの第2指令」

2通目の手紙が届いたその日、俺は授業の間ずっとその命令について考えていた。
「アナスイ君……?どうかしましたか?」
「あれ?朝比奈……?確か俺の………」
いや、違う。これは現行時間の朝比奈だ。今俺の家にいる未来から来た朝比奈とは別人だ。……やべえ、今朝の事思いだしちまった………。
「お昼食べないんですか?」
「そうだな」
朝比奈が作って押しつけやがった弁当を取り出す。……待てよ?これ、このまま開けたらマズいんじゃないか?朝比奈が作った弁当だ。その朝比奈が見たら違和感を抱くのでは?俺は急にじっとりとした脂汗が流れるのを感じていた。
「うわぁー……アナスイ君今日はお弁当ですかぁ。いつもは購買なのに」
「あぁ………」
「そっか……お弁当ですか……あれ?開けないんですか?」
開けれないんだよ!などと言えるわけが無く、固まってしまう。頼む。誰か助けてくれぇ!
「みくるッ!一緒に食べよッ!」
鶴屋だ。助かった………。鶴屋は朝比奈を少々強引に引っ張っていく。が、教室から出ようとしたところで立ち止まり、大声で叫んだ。
「ところでアナスイ君ッ!それ、自分で作ったんじゃないだろッ!」
「え?」
「ふふんッ!彼女さんによろしくさッ!」
そう言って鶴屋はびっくりしている朝比奈と共に去って行ってしまった。
「あいつ……まさか全部気がついてんのか………?」
相変わらず謎だらけの奴だ………。
228アメリカの人:2009/02/20(金) 11:25:51 ID:???
学校が終わり、家に帰りつく。鍵を使ってドアを開けると、
「あ、おかえりなさいアナスイ君」
「………なんだこりゃ?」
「なんだこりゃって……掃除ですよ。アナスイ君家散らかしすぎです」
朝比奈は頭にタオルを巻き、エプロンをつけて掃除をしていた。確かに一人暮らしだと整理整頓がずさんになるのは認める……が、
「何も床にワックスまでかけなくても………」
これじゃまるで大掃除だ。
「その必要があるんです。この部屋掃除機かけるだけなんでしょ?」
確かにそうだ。めんどくさいからな。
「しかも掃除機のかけ方がいい加減です。端に埃が沢山溜まってます……一回思い切った事する方がいいですよ」
なんというか朝比奈の気迫がいつもと違う。本気というか、覚悟があるというか……何となく逆らえない雰囲気だ。ふとベランダを見ると、
「……洗濯物まで………」
「かなりたまってたみたいですからね、あと布団も干しておきました、食器やお風呂も洗いましたし、ゴミ出しもしちゃいました……ほんとは買い物にも行きたかったんですけどお金を使うのはちょっとと思って……
あ、今日の晩ご飯はシチューにしました、半日かけて煮込んだからきっと美味しいですよ」
………何故だろう、軒先かして母屋取られるとか、押しかけ女房とかいう言葉が脳内を駆け抜けていった。
229アメリカの人:2009/02/20(金) 11:27:15 ID:???
「……分かった。だけどその前にやる事ができたぜ」
俺はそう言うと未来からの手紙を見せる。
「………何ですか?これ」
「俺が聞きてーよ」

朝比奈と共に指定された場所に指定された時間にやって来た。
「これを……ここに打つんですか」
「ああ」
俺達が受けとった手紙には時間と場所、そして一つの図が記してあった。
「だけどなんだよこれ……釘を打って、それに空き缶を被せるって……ガキのイタズラじゃねーか」
「誰かが蹴ったら危ないですよね………」
イタズラだからそれが目的だろうがな。しかし一体どこのどいつに怪我させようってんだ?
「そろそろ時間だな………」
「あ、誰か来ましたよ」
二人で慌てて近くの茂みに隠れる。やってきた男はサラリーマン風の男だ。携帯で誰かと通話している。
『吉岡、これからお前に2分後その電話に1億円の取り引きがいく。社運をかけた取り引きだ。よろしく頼むぞ!』
「はい!この吉岡めにおまかせ下さい!……あだっ!」
吉岡と名乗った男は空き缶につまづいて転んでしまった。
「ちくしょー……誰だよこんなとこに空き缶置きやがった奴は……携帯は………」
が、落とした携帯を吉岡が取ろうとした瞬間、何者かがその携帯を踏み付けた。
230アメリカの人:2009/02/20(金) 11:28:17 ID:???
「ふ、ふぇ!?携帯が一人で壊れちゃいましたよ!」
「……違うッ!スタンドだッ!」
現われたスタンドは人型で、四角い顔に瞳の無い目を持ち、青を基調とした警備員のような姿だった。
「キサマ、ハイッタナ」
「お……俺の携帯が……取り引きが………」
スタンドが男に話しかけているが、スタンドが見えない男は何も気付かない。
「ハイジョスル」
スタンドはいきなり男の腹に回し蹴りをいれた。男は派手に吹っ飛び、気を失った。
「ハイジョスル」
が、スタンドは追撃の手を全く休めず、気絶した男をさらに蹴り続ける。
「アナスイ君ッ!あのままじゃあの人………」
「分かってるぜ……だが妙だな、なんで一般人を狙う?……まあいいや、ダイバーダウンッ!」
不意打ちで仕留めようと手刀で頭を狙う。攻撃に気付いたらしいスタンドは、首を傾けてかわす。が、そのまま振り下ろした手刀はスタンドの左肘から先を見事に奪った。
「随分と弱いじゃねーか……じゃあな」
トドメを刺そうとする。が、放った右ストレートは見事にガードされた。
「んな!?左肘から先をもらったんだぞ!?動けるわけが………」
「ハイッタナ……キサマモハイジョスル」
スタンドが俺の腕を振り払い、ローキックを繰り出してくる。咄嗟に後ろに飛んでかわした。
「……こいつは厄介そうだな………」
「ハイジョスルハイジョスルハイジョスル………」

To Be Continued・・・
231アメリカの人:2009/02/20(金) 11:32:04 ID:???
以上、第69話でした

サブタイは「ボスからの第1指令、第2指令から」

あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!「俺はシリアスな話を書こうとしていたらいつのまにかラブコメになっていた」
催眠術だとか超スピードだとかちゃちなもんじゃあだんじてねぇ、もっと恐ろしいものry

うん、自重できなかったんだ。次回から本気だす

それでは!
232マロン名無しさん:2009/02/20(金) 20:21:44 ID:???
投下乙ッ!!
233マロン名無しさん:2009/02/25(水) 09:15:20 ID:2gPnviCa
あげ
234アメリカの人:2009/02/27(金) 12:14:19 ID:???
第70話 「ブロック・パーティ 1」

太陽が傾き始めた頃、俺は敵スタンドと睨み合いを続けていた。
「ハイジョスル………」
「ア、アナスイ君大丈夫ですか?」
「近寄るな朝比奈……こいつもしかしたら自動操縦型かもしれねぇ………」
「自動操縦型……?」
「スタンドってのは本体から離れれば離れるほどパワーもスピードも弱くなる……ところが中には本体から離れてもパワーやスピードが全く落ちないスタンドもあるんだ」
「……強すぎじゃないですか………」
「もう一つの特長としてスタンドがダメージを受けても本体にダメージがフィードバックされない事が多い」
「そんな……どうしようもないんじゃ………」
「安心しろ。無敵の存在なんていやしねえ……自動操縦型は大抵単純な動きしかできない……あとは本体はダメージを食らわないかわりにスタンドがどうなっているのか分からないからな……本体は常に無防備だ」
「……じゃ、じゃあ!」
「ウェザーと……そうだな、長門に電話しろ。あいつらなら本体を見つけてくれるだろ」
「はい!」
朝比奈は携帯を取り出し電話を始める。
「……んじゃ、お前の相手は俺だな」
「ハイジョスル………」
235アメリカの人:2009/02/27(金) 12:14:55 ID:???
「ダイバーダウンッ!」
スタンドで左フックから殴りかかる。ガードされたが気にせず右のジャブ、フックから左肘を胴に、さばいた隙に右しょうていを顎に叩き込む。
「グブッ………」
「どうしたァ?随分と弱いじゃねえか」
「ハイジョスル………」
そういやこいつずっと排除って言ってるな?こいつの能力に何か関係してんのか?そう考えていると敵スタンドが殴りかかたてきた。が、軌道が見え見えだ。
「フン……ダイバーダウンッ!」
相手のパンチに合わせてクロスカウンターを決める。
「グブッ………」
……いくらなんでも弱すぎる。自動操縦型だから本体にダメージは返らないが、スタンドが倒されたら意味が無い。
「……こいつにはまだ何かあるって事か?」
「ハイジョスル」
スタンドが襲いかかってくる。
「……ま、どうでもいいか……ダイバーダウンッ!野郎の頭を切り落とすッ!」
手刀は見事に決まり、敵スタンドはその場に崩れ落ちた。
「ハイジョ……ス……ル………」
壊れたテープレコーダーのように呟くと敵スタンドは消えてしまった。
「よえーな……朝比奈、連絡出来たか?」
「はい……頑張って持ち堪えろって」
「まあ、その必要はねえけどな……倒したぞ」
「ふぇ!?」
「えらく弱かったぜ……組織も人材不足なのか?」
236アメリカの人:2009/02/27(金) 12:15:34 ID:???
スタンドを倒したと聞いた朝比奈は喜んで近付いてきた。が、
「ハイッタナ……ハイジョスル」
「な!?」
「どうしたんですか?アナスイ君……キャッ!」
朝比奈が心配してきたが、とっさにその朝比奈を突き飛ばす。
「アナスイ君……?」
「なんでだ……倒したはずだぞ?」
「何があったんですか?」
「さっきのスタンドだ……倒したはずなのにまた現れやがった」
「……ふぇ?本体がやられた事に気付いて発動しなおしたんじゃ………」
「いや、ありえねえ……自動操縦はスタンドに何が起こってるか本体は把握できない」
「ドコヲミテイル……テキハワタシダ……ナルシソ・アナスイ」
「……ダイバーダウンッ!」
スタンドで殴りかかる。が、さっきまでなら当たっていたはずが、今度は見事にかわされた。
「オソイゾ」
スタンドが殴りかかってきた。ガードするが、ガードをはじかれてしまう。
「……こいつ、ほんとにさっきの奴か?パワーもスピードも段違いじゃねえか………」
「シリタイカ?」
「いや、教えてもらう必要はないぜ……自分で見つけてやるからな」
「マケオシミヲ………」
237アメリカの人:2009/02/27(金) 12:16:21 ID:???
side of キョン
「ウェザーさん……いきなり呼び出してなんですか?長門を連れてこいって………」
その日の夕方、俺はウェザーさんに突如長門と二人で一緒に来てくれと呼び出された。嫌そうにするハルヒをなんとかなだめすかし、俺は校門の前でウェザーさんの車に乗り込んだ。
『単刀直入に言う。アナスイと朝比奈が襲われた……長門有希だったか?敵スタンドの本体を見つけだしてほしい』
……今ナント?
『朝比奈とアナスイが襲われた……ああ、英語が分からないのか?長門有希……通訳を頼む』
「いや、別にいいです。大体意味は分かります……じゃなくて朝比奈さんが襲われたって?さっき部室にいたじゃないですか」
『……そうなのか?』
その時、今までもの言わぬ人形となっていた長門が口を開いた。
「異時間体」
「……は?」
「部室にいたのは現行時間の朝比奈みくる、ナルシソアナスイと共にいるのは未来時間の朝比奈みくる」
「……つまり、未来から朝比奈さんがやって来ててそれがアナスイと一緒にいるのか?」
「そう」
……なるほどな……だが、なんで、アナスイなんだ?……俺だってそこまでは鈍くない。朝比奈さんがアナスイに好意を寄せている事ぐらい分かっている。その上、二人っきりだと?しかも周りに内緒にしていただと?
「……フフ……そうか……アナスイ……朝比奈さんに何かしてねえだろうな……してたら……フフフフフ………」
『こいつを連れてきたのは失敗かもしれんな………』

To Be Continued・・・
238アメリカの人:2009/02/27(金) 12:17:20 ID:???
以上、第70話でした

とくにないですね。ハイ

それでは!
239マロン名無しさん:2009/02/27(金) 13:23:59 ID:???
GJ!!
キョンが病んでるwww
240セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/03/02(月) 16:40:40 ID:???
アメリカさん乙です
かっこいいアナスイ、病んでるキョンというありえない者が存在しているらしいじゃないですか。
これは目が離せませんね。

それでは投下します。
241 ◆1gAmKH/ggU :2009/03/02(月) 16:42:14 ID:???
男三人が横一列に並んで歩いてると少し不気味かもしれない。
ましてや180越えの外国人が二人もいればなおさらだろう。
「すまないね。うっかりしていた」
俺の左側では神父が顔を少しうつむけている。
どうやらまだ先ほどのことを気にかけているようだ。
済んだ事はもうどうしようもないですよ、とでも言っておくのが無難かな。
「そうは言っても…」
ずるずる引きずるのはもしかしたら神父の悪い癖なのかもしれない。

細かい経緯は省くが、今俺とセッコは神父とともに隣町に向かっている。
はずだったのだが。
神父とセッコは隣町へと向かう電車の止まる駅を通り過ぎ、ずんずんと逆方向へと歩いていく。
しかもどう見てもセッコが道案内している。
これが神父ならまだわかるが、どうしてセッコが?
俺が目立つのを極力避けるため滅多な事がない限り家から出していないので、あいつはこの辺の地理には詳しくないはずだ。
それが道案内。何かあるのか?
「ちょっと寄り道をしようと思ってね。何、すぐに終わるさ」
そう言うと神父は顔を上げた。
「まぁ、こっからそう遠くねェから30分ありゃあ電車には乗れるさ」
俺の右側でいつぞやの緑色のスーツを着たセッコが吹き抜ける風に髪をなびかせながらそう言う。
なんでも『今日は疲れたし、もうハルヒに逢うことも無いだろうから脱いでおく』んだそうな。
俺にはこの格好のセッコは見慣れないわけだが、ほかの人はこれが普通のセッコだって言うのは正直おかしな話だ。
しかし、何で俺が二人の間に挟まれてるんだ?
正直これは止めてほしいわけだが。

act11―ふたつの戦い〜延長戦(side:stands)
242セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/03/02(月) 16:43:27 ID:???
セッコの案内はあるビルの前で終わった。
ビル、というよりは廃墟といったほうがしっくり来るか。
壁にはひびが縦横無尽に走り回り、所々コンクリート塊が落っこちてしまっている。
人が出入りしている気配など微塵もない。
「…間違いねェ、ここだ」
セッコが鼻を引くつかせながら俺たちのほうを向いてそう言う。
いや、正確には神父の方を、のはずだ。
何せ俺にはここがどこだが皆目見当もつかないんだからな。
そう思い神父の方を向いてみると、神父は神父で驚いた表情を貼り付けていた。
「…君は本当に人間か?」
「…自分で言っといて、ソイツぁどーゆー了見だ、えェ、神父?」
どうやら二人の間にもすれ違いがあったようだ。
「いや、流石に本当に辿り着けるなんて思って無くてね」
辿り着く、と言う事は二人とも目算無しで歩いていたのか。
「私としてはそのつもりだったんだがな」
「ンなワケねェだろ。オレはいつでもゴーリテキなんだよ!!」
とりあえず、ここにきた理由を聞いていいか?

階段を上りきると、そこは不思議の国だった。
とかだったらウチの団長も喜ぶんだろうがな。
そこは外見よろしく廃墟のような部屋。
そして、ひとつだけ外と違ったのは。
「おう!!コイツだ、コイツ!!!」
そこには一人の男が倒れていた、それだけだろう。
243セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/03/02(月) 16:46:28 ID:???
男はどうやら眠っているようだ。
昏々と、それこそ死んでいるのと見間違うほどに。
セッコはその男に近寄り起きてないことを確認すると俺たちを手招いた。
「ホラよ」
襟首をつかまれ、床に投げられても男は起きない。
まるで、起きることを忘れてしまったかのように。
「彼が…?」
「『軌道を操る能力者』だ。予定ではもう一人もとっ捕まえる予定だったんだけどなァー」
神父は「そうか」と呟き、地面に身を投げている男に手を伸ばす。

二人は納得しているようだが、俺にはまだ理解できない。
なぜ能力者である男が目の前で寝ているのか。
そしてセッコがこの場所を知っているのか。
神父は投げ出された男の頭に手を突っ込んでその中から鉛色に光る円盤を取り出す。
次いで、逆の手を使い今度は黄色い円盤を取り出した。
これは確か…
一人の女性の顔が俺の頭をよぎる。
そうだ。
神父と初めて出会った時に神父が一ツ橋さんからスタンドと記憶を取り出した時に出てきたものだ。
「何がなんだかわからない、って顔をしているね」
分かっているんだったら最初に説明して欲しかったな。
そう俺が悪態をつくと、神父は少し笑いながら
「すまないね、こちらとしても予想外だったんだ。これを見てくれれば分かるはずだ」
と言って先ほどの鉛色の円盤を俺に向けて突き出す。
「彼の記憶だ」
244セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/03/02(月) 16:48:01 ID:???
***
「あの男こっちを見てたな」
隣で腕を突き出し、俺の能力の型を狙っていた相棒が双眼鏡を覗きながらそう言う。
あの男、とは一人だけ目立っている長身の黒人のことだろう。
確かにあの男は確かにこっちを見ていた。
相棒が螺子をカチューシャに向けて撃ったのが外れたのが痛かったな。
ここほど便利な場所は無い。でも、気づかれたんならここを離れなければいけないだろう。
そこで、俺の頭に妙案が思い浮かぶ。
それなら、男を撃ち殺しちゃえばいいんじゃね?
気付いているのは神父だけ。なら、証拠を隠滅すればいい。
「…確かにその案もいいかもしれない」
しかし、と相棒は少し言葉を詰まらせる。
「あの男は確かにさっきまでボール争いをしていた。さっきの男の場所からはMHTは死角だったはずだ」
確かに、一応の事を考えて目標とそのメンバーには死角になるように配置していた。
じゃあなんで男は気付いたんだ?
「つまりこういう事になるな。
『あの場所には男を入れて、能力者が二人以上居る』

それじゃあどうするべきなんだ。
「…」
相棒が閉口するなんて珍しいな。
「五月蝿い。不測の事態なんだよ。…そうだな、普通ならここは逃げるのが定石だろう、でも」
相棒は腕をまっすぐ伸ばし、双眼鏡を覗きなおす。
「今日はこういう不測の事態を切り抜ける練習なんだよ」
なるほどな。
「とりあえず、あの男を撃って他のメンバーの動きを見る。
何らかのアクションを取った奴が能力者だ」
そうか、じゃあ…
245セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/03/02(月) 16:49:04 ID:???
「残念だがソイツぁ許されねェな」
突然、ドアの方から声が聞こえる。
まさか、もうココまで来たっていうのか?
振り返るとそこには、茶色い全身タイツを着た男が居た。
「…誰だ?」
相棒が窓の外に向けていた腕を男に向ける。
「意味も無く一般人を狙うような悪人に名乗る名前はねェよ」
よく見れば目の前の茶色、足元がドロドロだ。
たぶんそんな感じの能力なんだろう。
次の瞬間。
気がつくと俺の頭には銀色の何かが突き刺さっていた。
「『ショートイントスなら、まずまず美味いよ』って奴だ」

***
そのセッコの言葉を最後に男の意識は暗転し、俺の頭から円盤が飛び出す。
どうやらここでこの男は眠ってしまったようだ。
なるほどつまりセッコが試合中に居なくなったのはこの所為だったのか。
しかし、何でこの男は眠ったんだ?
「『ただ眠リ続ける』という命令を下すディスクだ。これも私の力の応用でね」
俺の頭から飛び出た円盤を拾い、神父が答える。
記憶や能力の抽出に先の試合の幻覚、その上敵に命令を下す能力まであるのか。
セッコや寝ている男に比べてバリエーションが多いんじゃないか?
「そうかもしれない。まぁ、『人間に内在するものに干渉』するという点では一つだがな」
そんなものなのか。
「そんなものなんだろう」
なんだか反則臭い気もするが、スタンド自体が曖昧な存在だ。
もしかしたら能力の無いスタンドなんてのも存在するかもな。
246セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/03/02(月) 16:50:16 ID:???
それで、こいつを捕まえるためにここまで来たわけか。
それならば俺とセッコを呼んだのも理解できる。
どうせ逃げた奴を捕まえるのを手伝えっていいたいんだろう。
「いや、そんな事は無いが」
俺の考えを神父はすぐに否定した。
…どういうことだよ。
「呼んだ理由は最初の通りさ。病院の子ども会に一緒に出て欲しいんだ。
ここに来たのは全くの偶然。私もこれるとは思ってなかったんだからね」
神父は取り出したディスクの内黄色いディスクだけをポケットの中に入れ、銀色のディスクを寝ている男の頭に戻した。
きっと男も後で目が覚める。平和主義者の神父らしい決着だ。
「キョウ君だってまさかこの男の匂いだけでここを割り出せるなんて思わないだろう?」
いや、それは無理だろうと否定しようとしたが、神父のこの一言で全ての点が合致した。
つまり、セッコが先導を切っていたのはセッコが(信じられないが)匂いを使って追跡をしていたから。
「いや、できるだろフツー」
いつもなら冗談はよせと切って捨てるところだがこの二人に、特にセッコに常識が通用しないのはよく知っている。
セッコの五感は人間離れしている。まんざら冗談でもないのだろう。
「さぁ、それじゃあ向かおうか」
「どこに?」
「言っただろう。隣町の病院の子ども会に出ると」

この後、子供相手にサッカーの試合以上に疲れるのは別の話。

***
足が棒になるって言うのはこういう状況を言うんだろうな。
一日中全力で走り回り、気がつけば最初のビルから四駅の地点まで来ていた。
俺の能力では地中の敵には分が悪い。
「…ったくなんなんだよアイツは」
あんなのが来るなんて想定するはず無い。
「『将を射んとすれば、まず馬を射よ』か」
何とか逃げ切ったが、相棒はもう助からないだろう。
これで俺は迂闊に犯罪を起こせない。奴らの思惑通りといったところか。
247マロン名無しさん:2009/03/02(月) 16:50:38 ID:???
>意味も無く一般人を狙うような悪人に名乗る名前はねェよ
それお前の元の相方に言ってやれwww
248セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/03/02(月) 16:51:15 ID:???
「おや、助かったのか」
後ろから声が聞こえてくる。
周りに人は一人もいない。という事は俺に向かって言ってるのか。
「誰だ!?」
「いきなり喧嘩腰かい?おお、怖い怖い」
地中の男には後れを取ったが地上戦でなら負けない。
俺は迷わず男の方に能力の腕を向ける。まだ螺子は十個ほど残っている。
「お前一人で俺に勝てると思ってるのか?」
男の声をきっかけに、俺の隣にあった木が爆ぜた。同時に圧倒的な威圧感が襲ってくる。
「…ッ!!クソォッ!!!」
能力の腕から三発の螺子を撃ちだすが、男には届かない。
そのどれもが空中で軌道を変え、あらぬ方向へと飛んでいった。
「そこまで警戒しなくてもいいだろ、俺はお前に手を出さない」
口元のタバコを安定させ、男は両手を上にし、プラプラと手を振る。
「俺はお前をスカウトしに来たのさ」
「スカウト?」
「そうさ、お前みたいなスタンド使いを探してたんだ。
仲間になるなら見逃してやるし、治療だってしてやるさ。ただし、断るなら…」
男の目が怪しく光る。返答次第によってはオレの人生はここで決してしまうだろう。
本能が告げる。コイツには勝てない。コイツには逆らえない。
「…苅田健吾だ、よろしく」
俺が手を伸ばすと男はにこやかに笑い、上げていた手を下ろして手を握り返した。
「上條秀一だ、ようこそ…

             パッショーネへ           」

to be continued…
249セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/03/02(月) 16:54:52 ID:???
さぁーて、次回の「イタリアはまだ遠く」は!?
「神父だ。サッカー勝負は面白かったが、年甲斐も無くはしゃぐとやはり疲れるな。
さて次回は
・星を見る男
・降り注ぐ億万の星屑
・傍に立つ者
みたいな内容でお送りする。次回も読んでくれればうれしい」
※なお、地域によってはお送りする内容が違うこともあります。ご了承ください。

以上投下終了。
長かったサッカー編も終了。
ここでお詫びをひとつ。
MHTはジョンガリ・Aがもともと持っていたスタンドでしたね。
ごめんなさい本当にごめんなさい許してください。
次回はガチバトルの予定、うまく書けるかな?
それでは、拙い文章ですが何かあれば。
250マロン名無しさん:2009/03/02(月) 16:58:09 ID:???
投下乙です
しかし残りの二人の能力がどうも思い出せん……
251セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/03/02(月) 17:12:01 ID:???
大切なことを忘れていたので。

ジョニィさんへ…
ごめんななななささあああああああいいい!!!
まさか、投下祭りの時参加意思表明があったなんて…
見落としてました…
どうぞ俺の首を持っていってください…
252マロン名無しさん:2009/03/02(月) 21:45:49 ID:???
グッドジョブ!
253マロン名無しさん:2009/03/05(木) 23:47:27 ID:???
GJ!
大人はウソをつくものではなく間違いをするもの…。
あまり気にしないでいただきたい。

スタプラとワールドのような同じ能力があるんだから
そのうちMHTと同じ能力だが違う名のスタンドだと直しては?
254マロン名無しさん:2009/03/06(金) 07:11:52 ID:???
神父がDISC挿す描写がないだけで、明確にはされてないだろ
3部前にMHT挿されたのかもしれないし当時はスタンド使いじゃなかったのかもしれない
255アメリカの人:2009/03/06(金) 12:47:27 ID:???
第71話 「ブロック・パーティ 2」

「ハイジョスル………」
「ダイバーダウンッ!」
突如として強くなった敵に疑問を抱きつつも、攻撃をしかける。もちろんさっきより速く強く殴った。が、
「ノロマガ」
止められる。とっさに後ろに飛んで離れるが、さっきまでとは比べ物にならないスピードで距離を詰められた。
「グッ………」
「アナスイ君ッ!」
「朝比奈ッ!俺の心配よりもウェザー達の状況を伝えろッ!」
「……敵本体の位置は分かったそうです、ただ……たどり着くまでに30分はかかると」
「随分と遠い所にいやがるな」
「キサマタチガワタシノホンタイヲサガスコトハヨソウシテイタ……トウゼンダ」
「……ダイバーダウンッ!」
右のストレート、が、かわされてしまう。その瞬間、ガラ空きになったボディに強烈なボディーブローをくらい、地面に倒れてしまう。
「トドメダ」
その瞬間、北校の制服を着た男が通りかかった。確か谷口と言う奴だ。
「WAWAWA、WASUREMNO……ん?あいつ……北校か?あッ!あれに見るは朝比奈さん!まさかあいつ………」
谷口は俺達を見つけると鬼のような形相を浮かべた。……なるほど、おそらくあいつは俺が朝比奈を襲っていると勘違いしたに違いない。……ちくしょう、なんで俺の周りはこんな奴ばっかりなんだ?
256アメリカの人:2009/03/06(金) 12:48:14 ID:???
「覚悟しやがれえええェェェェェッ!」
谷口はそう叫ぶとドロップキックで襲いかかってくる。……しょうがねえ、正当防衛だ。怪我をしてもらうか、が………
「ハイッタナ……ハイジョスル」
敵スタンドが俺を無視して谷口を攻撃した。もちろんスタンドが見えない谷口はその右の膝蹴りをもろにくらって気を失う。
「また一般人を攻撃だと?」
そういえばさっきもそうだった。ただのサラリーマンを襲っていた……そうか、こいつの能力は………。
「俺は勘違いしていたみてぇだな……お前は特定の条件で攻撃をしてきているんじゃねえ……特定の状況で攻撃をしているんだ」
「……………」
「え?……どういう意味ですか?」
「こいつはある特定の場所に入った奴を攻撃しているんだ……最初のサラリーマンは空き缶に近付いたら攻撃された、谷口も俺達に近付いて空き缶の側へとやって来た」
「……つまり………」
「こいつはある特定の定められた場所……今回はこの空き缶だな……誰かが近付くとそいつを問答無用で攻撃するんだ!」
「ナルホドナ……ダガワカッタカラトイッテドウナル?」
「……………」
「キサマノスタンドデハイマノワタシニハカテナイ………」
257アメリカの人:2009/03/06(金) 12:48:59 ID:???
「どういう意味だ?」
「ワタシノモウヒトツノノウリョクダ……ワタシハテキガシンニュウスルタビニツヨクナル……サッキヨリモスコシズツ……ナ」
「それがどうした?スタンド勝負では単純なパワーやスピードよりも能力をいかに使うが大切だって知ってんのか?マヌケ」
「ダカライッテイルノダ!ワタシノノウリョクニキサマノノウリョクデハカテナイトナ!」
「そいつはどうかな……ダイバーダウンッ!」
右の手刀で襲いかかる。が、かわされ空を切った右手は地面へと突き刺さる。
「オワリダ」
体勢を立て直した瞬間、敵スタンドにローキックをくらい、そのまま地面に押さえ付けられる。
「トドメヲサストシヨウカ………」
「アナスイ君ッ!」
「とどめか……ならこっちも準備は万端だ」
「カクゴヲキメタカ」
「ああ……てめぇを倒す覚悟をな」
「ナ!?」
「ダイバーダウンッ!」
次の瞬間、谷口から現われたダイバーダウンの拳が敵の頭に突き刺さる。
「バ……バカナ………」
「さっきの手刀が空振った時にそいつに潜行させておいた……やっぱりてめぇ、能力をいかしきれてねえじゃねえか」
「ソンナ……バカナ………」
そう呟くと敵スタンドは消えていった。時計を見るともう20分近くたっていた。
「そろそろウェザー達が本体を見つけだしてくれるかな………」
258アメリカの人:2009/03/06(金) 12:49:56 ID:???
それから15分程すると、一台の車が俺達の目の前で停車した。
『大丈夫か!?アナスイ、朝比奈!』
「朝比奈さんッ!無事ですか?」
キョンにウェザーだ。慌ただしく出てきた二人の後ろから長門が無表情で車から降りてくる。
「だ、大丈夫ですよ………」
「よかったあ……ん?谷口?なんでこいつがここに?」
「色々あってな………」
『敵の本体は倒した、後部座席にいる奴だ』
見ると髪をオールバックにした金髪の男が後部座席で気絶して、縛り上げられていた。顔は痣だらけでよく分からない。
「あ、ところで朝比奈さん」
「はい?」
「今……何処に泊まっているんですか?」
キョンの野郎……こういう時に限って変に勘がいいな……朝比奈にアイコンタクトで「言うな」と伝える。
「そ……それは………」
「アナスイのところですね?」
キョンが凄まじい怒気をはらんで言う。
「ち……違いますよ」
朝比奈は嘘を付くのが苦手だ。もちろん今回もバレバレである。
「朝比奈さん、若い男女がたった二人で一つ屋根の下はよくないと思うんですよ」
「そ……そうですね」
「俺、朝比奈さんが泊まるのにピッタリな場所、知ってます」
「で……でも………」
が、キョンは渋る朝比奈の両肩を掴み、有無を言わせぬ声で続けた。
「いい、ですね?そこに、泊まって、下さい」
「……………ハイ」
少し意外な形で朝比奈は俺の家を去る事となった。……安心した反面、なんだか少しモヤモヤと………ええい、考えるな、ナルシソ・アナスイ。
「そうだ、俺は徐倫一筋だ………」
そんなてんやわんやを繰り広げていた俺達は、ウェザーの呟きを聞き逃していた。

『青春だな………』

To Be Continued・・・
259アメリカの人:2009/03/06(金) 12:52:27 ID:???
見ても見なくてもいい履歴書

笹川 眞吾
24歳 B型 6月12日
性格 目立つのが嫌いで、自分の世界を守りたがるタイプ。彼のスタンドはここからきているようだ
好きな食べ物 チーズケーキ
嫌いな食べ物 生クリーム
趣味 TVゲーム

ブロックパーティ
パワー E(成長前) スピード E(成長前) 射程距離 A
持続力 A 精密動作性 E(成長前) 成長性 A
能力 ある設定された一点に侵入した敵を見境い無く襲う自動操縦型スタンド。また、大変弱いが、敵が侵入すればするほど強くなる。
260アメリカの人:2009/03/06(金) 12:56:20 ID:???
以上、第71話でした

セッコの人乙です!次回はガチバトルですか。楽しみです

スタンド名はイギリスのロックバンド「ブロック・パーティ」から

前回のでキョンが病んでる(?)といわれました。ギャグのつもりだったんですけどねぇ。あ、わかってる?こりゃまた失礼

それでは!
261マロン名無しさん:2009/03/06(金) 15:09:23 ID:???
ブラボー!おお・・・ブラボー!ところで谷口は今後普通に生活できるのか?(笑)
262マロン名無しさん:2009/03/08(日) 20:15:10 ID:cz4nMu29
ほしゅあげ
263ジョニィの人:2009/03/10(火) 00:18:30 ID:???
お久しぶりです。まずはセッコの人へ。
いつも楽しく読んでいます。これからのバトル展開も楽しみにしています。
投下祭りの事ですが、すっかり忘れていた事で、あの時も結局書けなかったので、どちらにしろ参加出来なかったと思います。
ですから、全然気にしないで下さい。面白い企画だと思いましたし。
続いて、徐倫の人へ。毎回思いますが、いくつもスタンドを考えるのが凄い!
僕はあまり思いつかないので……。投下ペースも見習いたい所があります。
というわけで、久しぶりに投下します。今回は長いです。
264ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/03/10(火) 00:20:38 ID:???
第二十二話「アナーキー・イン・ザ……C」

やれやれ。ハルヒの奴ときたら毎度面倒な事を考える。野球なんて、俺はろくにやった事ねーぞ。
ま、そうは言ったものの組織がらみの三人がイエスマンである以上、
一般人の俺たちの声なんぞそよ風程度にも響かないわけで、野球大会参加は実現しちまった。
かくして、貴重な休日を犠牲にしての野球大会が始まった……と、その前に事件は起こった。
野球に付き物の整列をしたんだが……どういうわけだろう。審判が何も言わない。
見ると、何やら怪訝な顔で協議中だ。辺りがざわついてきた所で主審がこちらに来た。
「あの……君も参加するの?」
……まあ予想はしてたんだが。主審が足を止めたのはジョニィの前。
車椅子なんだから当たり前っちゃ当たり前だな。むしろ俺の妹がスルーされた事のが驚きだ。
「はあ。まあ……そのつもりですけど」
ばつの悪そうな顔でジョニィが答える。もしや、まさかの不戦勝があるか?
小さな期待に胸を膨らませていると、ハルヒが自信満々に言った。
「あら。参加条件は特にないって書いてあったけど?」
どうだと言わんばかりだ。これほど子供じみた台詞を偉そうに吐ける人間もいないだろう。
「いや……確かにそうだけどね……」
「じゃあ何も問題ないわね。さあ、とっとと始めましょう」
「しかし……これは……何かあったら問題だよ……」
「問題!?聞いた?皆さーん!この人がジョニィを問題扱いしようと」
「や、やめなさい!わかったから、騒ぐな!」
ああ、将来いいクレーマーになりそうだなあ、と俺はまくし立てるハルヒを見つめていた。
265ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/03/10(火) 00:22:12 ID:???
一悶着あったが、ついにプレイボールだ。一回の表、攻撃は俺たちからだ。
一番打者のハルヒは不敵に笑いながら打席に舞い降りた。
プレイボールと同時にピッチャー振りかぶって、投げた。が、緩い。投球練習の時よりも明らかに緩い。
恐らく、相手が女で素人という事で手加減してやろうというつもりだろう。
カキン。
そんな相手チームの油断、というか配慮をハルヒはものの見事に打ち砕いた。快音残して打球がぐんぐん伸びていく。
猛追するセンターの頭上を通り越し、ワンバウンドでフェンス直撃。ツーベースだ。
まあ、これぐらいはするだろう。あんな球ならホームランがあるかもと思ってたしな。ジョニィや古泉たちも同感だろう。
だが俺たち五人以外は例外なく豪快なガッツポーズをするハルヒを驚きの眼差しで見ていた。特に敵チームは。
「ピッチャー全然大した事ないわよっ!あたしに続きなさい!」
威勢よく叫ぶハルヒ。しかし、これが放心状態の敵チームに火を点けちまった。
次のバッターは朝比奈さん。ぶかぶかのヘルメットにバットを抱き、おどおどした様子。
「よ、よろしくお願いしま、ひゃ!」
言葉の途中でインコースに直球が決まった。ふざけた真似しやがる。朝比奈さんに当てよう物なら、即飛び出して乱闘だ。
「野郎ォ〜、何て事しやがる!乱闘だ!」
ん?思考が口に出たか?そう思ったが、横で虹村がジョニィと古泉に押さえつけられていた。
「離せ!あの馬鹿野郎をブン殴ってやるッ!」
「古泉、落ち着くまで口をふさいでくれ」
虹村に同感なので俺は放っといた。いっそ没収試合になっちまえばいい。
続く二球を朝比奈さんはバッターボックスの隅っこで見送った。
アウトの宣告を聞くとホッとした様子でベンチに戻ってくる。
「大丈夫っスか!?怪我ないっスか!?手当てなら俺にま−−−うげ!」
「あんた、素振りでもしてなさい。みくるちゃん、何で振らないのよっ!」
ハルヒの言う事なんて無視だ。虹村と同じく朝比奈さんの無事が第一だ。
266ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/03/10(火) 00:26:43 ID:???
三番は長門。どうなるか。
「…………」
「ストライク!」
「…………」
「ストライク、ツー!」
「…………」
「ストライク!バッターアウッ!」
いつも通りだった。つまり、全く動かなかった。
「キョン!あんた絶対打ちなさいよっ!四番でしょ!」
ハルヒの怒声がやかましい。くじ引きで決めたくせに。
とはいえ、朝比奈さんの前だ。ここは一つ、良い所を見せてやるか。

「アホーッ!」
ハルヒが怒鳴っている。ああそうだよ。三球三振だ。打てるかあんなの。何か文句あるか。

俺たちの守備はザルもいいところだった。特に外野はノーガードに近い。
朝比奈さんはボールが来たらしゃがみ込んでしまうし、俺の妹は空間把握能力がゼロだ。
センターの長門は補給は完璧だが、自分の守備範囲の外には反応しない上、動作が緩慢すぎてファインプレーは期待できない。
……何回でコールドになるだろう。俺はそう考えていた。多分、他の皆も。
「しまっていこー!おーっ!」
ハルヒが一人で気合いを入れている。お前、しまって行こうって言いたかっただけだろ。
敵チームのバッターが打席に立つ。
ハルヒはオーバースローで一球目を投じた。
「ストライィィィク!」
審判の声が高らかに響く。ノビ、球威、コントロール、全て申し分ない。
繰り返すが、ハルヒはこれぐらいはやる。何を可能にしてもおかしくはない。そういう奴なのだ。
例によって俺たち五人は驚いていない。が、さすがにサードのジョニィは呆れ顔だ。
267ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/03/10(火) 00:29:12 ID:???
「昨日も言ったけど、あれは素人のボールじゃあないな……」
確かにそうだが、ストレートだけだろ。
「……そうみたいだね。投球練習の時もストレートしか投げてな」
「違う」
な、長門!?お前センターだろ!?いつ移動してきた!
「……あれは、ジャイロボール」
「何ィ!知っているのか長門!?」
無視すんな。ジョニィも驚きすぎだ。
「ファストボール、いわゆるストレートには大きく分けて二種類ある。
一つはフォーシームファストボール。もう一つはツーシームファストボール。
涼宮ハルヒが投げているのは後者。ジャイロ回転が巻き起こす回転により、
打者はボールがいつまで経っても来ないような錯覚を覚える」
つまりクセ球って事か?
「一言で言えば」
そうか。
俺が言うと長門はゆっくりした動作でセンターに戻って行った。
「……何だったんだ。今の」
「……さあ」
そんな事をしてる間にツーアウトになっていた。どうやら二人とも三振に抑えたようだ。
これはまずいぞ。下手に長引いて、万一勝っちまったら丸一日拘束だ。
それは何としてでも避けたい。もっと頑張れ。敵。
俺の祈りが通じたのか、続く三番打者がハルヒ渾身のストレートをジャストミートした。
さすがはクリーンナップ。まあ、俺が言ってた通りストレートだけしか投げてないしな。
突っ立ったまま、長門はボールを見ようともしない。その遥か上空を越え、ボールは場外へ消えた。
茫然自失。ハルヒが初めて見せる表情だ。これでまずは一点のビハインド。
268ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/03/10(火) 00:30:08 ID:???
それからも、俺たちの守備は散々だった。
四番に二塁打を許し、続く五番はボテボテのセカンドゴロだったのだが。
「よっし、セカンド……っていない!?」
ライト方向から猛然と虹村がダッシュして来ていた。
「さー見てて下さいよお〜っ!俺の活躍を!」
一二塁間で止まった球をキャッチすると、ホームにレーザービーム返球を放った。
「どおっスかあ〜、俺の球!」
ハルヒ以上の剛球だ。ただ、とっくの昔にランナーはホームを踏んでるし、バッターランナーも二塁にいるのだが。
「こ、この阿呆がァー!」
「鶴屋さん、ハルヒを押さえてくれ。ぼくから億泰に注意するから」
その後、怒りのこもったハルヒの投球に六番打者が倒れ、スリーアウトチェンジ。
一回終わって2−0か。意外と善戦している。善戦程度じゃ困るのだが。さっさと負けてもらいたいのだ。
269ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/03/10(火) 00:31:51 ID:???
長い長い守備が終わり、ようやく攻守交替だ。俺にとっては早く終わって欲しい攻撃のターン。
なんせまだ二点差だ。逆転はないだろうが、コールド負けにはまだ遠い。敵にもう一頑張りしてもらいたいところだ。
「ここで逆転するわよ!あたしまで絶対に回しなさい!」
檄を飛ばすハルヒ。しかし俺はこの回の得点はないと思っていた。
この回のバッターはジョニィ、虹村、鶴屋さん。三人とも野球経験はないと言っていた。
ヒットは難しいだろう。特に、先頭打者は。ジョニィがバットを抱えながら車椅子を走らせている。
守備は器用にこなしてはいたものの、車椅子の身では打撃はまず無理だ。
ジョニィが打席に立った瞬間に敵チームに動揺が走ったが、投じられたボールに手心はない。
ハルヒの件もあるからか、どんな相手だろうと全力で来るつもりらしい。その無慈悲に今は拍手だ。
スコン。
そんな音をたてて、ふわりと打球が浮き上がった。慌ててサードが後退するが、打球はテニスのロビングのようにその頭上を越えた。
サードが追い付いた時には、ジョニィは一塁に着いていた。ヒットである。
「やったー!ジョニィ、よくやったわ!」
「凄い……」
「さすがの運動神経ですね」
「あたしもびっくりさっ。上半身だけで打ったんだよねっ」
「…………」
皆が口々にジョニィを誉め称える。……どうせ俺は打てなかったよ。
インチキ臭い運動神経しやがって……下半身不随か、本当に。
「よっし、億泰!さっきのミスの分、返しなさいよ!」
「おう!任しとけよッ!」
くさくさしててもしょうがない。次は虹村だ。熱心に素振りをしているが……一言で言えば、不細工なフォームだ。
あれだ。斧振り回してる原始人。それを思い出した。打席についたが、あの無様なスイングじゃな……。
グヮラグヮラゴキィィィン!
虹村はそんな俺の予想をいとも簡単に打ち砕いた。打球はグングン伸びて、伸びて、伸びて……。
「あ、ああ……!は、入っちゃった!嘘でしょー!」
……何なんだ、こいつら。
270ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/03/10(火) 00:33:37 ID:???
虹村らが予想外に活躍したものの、その後はいつもの展開って奴で、三者凡退だった。
次の守備、敵はSOS団の弱点が外野にあると見抜いたようで、明らかなアッパースイングで打ち上げてきた。
打球がライトやレフトに飛ぶ度に、俺と虹村は外野へダッシュして捕球を試みるのだが、成功率は極端に低い。
その結果、この回は五点取られた。七対二。あと五点だ。このままなら次の回で終わりだな。

三回表。こちらの攻撃。
「ちょっとタイム!」
やおらハルヒが言った。ジョニィが不思議そうに聞く。
「どうしたんだ?君の打順だろ?」
不敵な笑みを浮かべながらハルヒが答える。
「ふっふっふっ……この劣性を跳ね返す作戦が必要よね。それがあたしにはあるの」
作戦。それを聞いた瞬間嫌な予感がした。ハルヒがまともな作戦を考えた事はないからだ。
危惧していると、ちょこんと座っていた朝比奈さんの首根っこを掴んだ。
「ひっ!」
そして、ずるずると引きずり、ベンチ裏へと消えた。朝比奈さんと一緒にでかいボストンバックを担いでいたが、その中身はすぐに明らかになった。
「ちょ、ちょっと……!やめ……やっ……!」
「ほら、さっさと脱いで!」
朝比奈さんの可愛い悲鳴と、ハルヒの居丈高な声がアンサンブルを奏でる。またこのパターンか。
そして、出てきた朝比奈さんは素晴らしくこの場にマッチした姿をしていた。
鮮やかなブルーとホワイトのノンスリーブにミニのプリーツ。チアガールだッ!
「みくるー、写真撮っていいー?」
ゲラゲラ笑いながら鶴屋さんがデジカメを取り出した。
「いいっスよねッ!ねッ!」
「あははー。億泰くん、目が怖いよー?」
……正直、全力で虹村を応援したい。携帯のカメラの画質でいい。欲しい……!
「じゃ、あたし打ってくるから応援してね」
颯爽と打席へ歩いて行く。ちなみに、ハルヒもチアガール姿に着替えていた。
すぐに打つのに、お前が着替える意味は何だ……とは思わなかった。朝比奈さんのチアガール姿を目に焼き付けるのに夢中だったからだ。
271ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/03/10(火) 08:19:53 ID:???
その時だった。甲高い電子音がして、古泉がポケットから携帯を取り出した。
朝比奈さんと、長門の視線が古泉に集まる。
「少し、まずいですね」
古泉が呟く。俺は溜め息をつくのも億劫になりながら耳を傾けた。
「閉鎖空間が発生し始めました。それも、これまでにないスピードで」
閉鎖空間。俺にはトラウマだ。
「えと……ハルヒがストレスを感じると発生するんだっけ」
聞いていたジョニィが口を挟む。……おいおい、野球で負けてるからか?
「そのようです」
あっさり言う古泉に俺は言葉を失った。何か言ってやりたい。そう頭を絞って、苦し紛れに出たのはいつもの一言。
「……やれやれ」
「ねえ、それってまずいんだろ?前に、閉鎖空間の拡大は世界の崩壊に繋がるって」
ジョニィが真剣な顔で言う。返す古泉の顔にはまるで危機感がなかった。
「そうですね。いやあ、実に困りました」
「……君、随分余裕じゃあないか?」
少しカチンと来た様子のジョニィ。古泉はごまかすように笑った。
「いえいえ。とにかく、この回の守備を頑張りましょう。ここでコールドゲームが成立すれば、
それこそ世界の破滅です。四点以内に抑えなければ」
やはり、その顔に緊張感はなかった。

三回裏、ハルヒは好投した。チアガール姿のままで。明らかにバッターが動揺していたのである。
しかし、それでもというか……俺たちはエラーを連発した。まあ、直球だけだからバットには当たるわけで。
気が付けば四点取られていたしかもランナー一、二塁。ツーアウトだが得点圏。何とか三振……!全員が祈る。
カン。無情にも打球は舞い上がる。打球はセンターの浅いところ。長門はぴくりとも動かない。
考えてる暇はない。行けっ!俺は今日何度目かのダッシュをした。
272ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/03/10(火) 08:24:48 ID:???
よし、このまま走れば間に合う!と、指示の声に混ざって野太い声が聞こえた。
「俺に任せろ!」
な、何っ!?虹村が突っ込んで来てる!?任せろ、と言ったって俺も急に進路を変えられない。
ボールだけを見ながら後方へ全力疾走する虹村は、もう目前に迫っていた。世界、終わったな。
激しい衝撃を受けて、倒れる俺が見たのは目をそむける朝比奈さんだった。
ああ……世界が破滅を迎えた。……あれ?何もないな?
「あっ……!凄い、取ってる!」
朝比奈さんの可愛い声が響いた。見ると、同じく倒れた虹村が裸の右手にボールを握っていた。
「へへ……。どースか!?俺の活躍!」
取り囲まれて、もみくちゃにされながら称賛の眼差しを受ける虹村。……物凄く納得いかない。
ベンチの隅に座って土を払っていると、古泉がジョニィを伴ってやってきた。
「さっきの続きですが」
少し放っておいてもらいたいんだが。
「実は対処療法があります。あなたが前回、閉鎖空間に行った時に戻った方法はいますよね?」
思い出させるな、こんな時に。
「あの手を使えば、また上手くいくかもしれません」
「なんだ。そんな手があるのか?じゃあそれをやろうよ」
ジョニィが無邪気に言う。古泉、後で覚えてろ。
「それは却下だ」
心底おかしそうに古泉が笑う。くそ、ムカつく。
「それなら、勝ちましょう。僕に妙案があります。彼女とは利害が一致するはずですから」
にこやかに古泉が言って、長門のもとへと歩を進めた。
「何か、怪しいな」
ジョニィが眉を寄せる。古泉が怪しいのはいつもの事だ。
「またそんな事を……。古泉、良くない事を考えてるんじゃあないだろうな。ぼくらも聞きに行こう」
別に否定する理由もなかったので俺はついていった。
273ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/03/10(火) 08:28:26 ID:???
俺たちが来た頃には、もう古泉は話し終えていた。
「おや、お二人とも……。で、どうでしょう。引き受けて頂けますか?」
相変わらず長門は無表情だった。
「……バットの属性をホーミングモードにブースト変更、及びボールの軌道を操作、という事なら、可能」
ああ、久し振りの長台詞だ。と俺が感心しているのをよそに、古泉は得意そうに頷いた。
「そうですか。ではよろしくお願いします」
「…………以前の私なら」聴力検査のような小音量が聞こえた。
「……………は?」
古泉の笑顔が歪む。
「……情報統合思念体が派遣したインターフェースは私だけではない」
朝倉の事か?長門の表情は読めない。
「その、私とは別のインターフェースが暴走した。それも、二度」
二度、とは少し気になるが、それが何だっていうんだ?
「事態を重く見た情報統合思念体はインターフェースの力を削減し、それにより影響力を下げる事を決定」
古泉の笑顔が消えていた。ぼんやりと長門を見ている。
「つまり、今の私は情報操作により楽に勝たせる事は出来ない」
「…………」
沈黙。時が止まったかのような感覚。
「あの……古泉、どうする……?」
ジョニィが恐る恐る聞く。返事はない。焦った様子でジョニィが再び言う。
「古泉!どうするつも」
「さあ、皆さん!話している場合ではありませんよ!」
古泉が笑顔を取り戻したが……目が笑ってない。
「さあ、あなたの打順ですよ!打って下さい!」
バットを手渡されたが……実力勝負って事か?……あー、先に言っとこうか。
世界のみんな、すまん。今日で世界、終わるかもしれん。

To Be Continued……
274ジョニィの人:2009/03/10(火) 08:36:35 ID:???
今回の投下は以上です。
長門に関しては、情報操作が万能すぎて……原作並だと、出番がなくなりそうだったのでこういう形での制限となりました。ご理解願います。
それでは!
275マロン名無しさん:2009/03/10(火) 12:53:12 ID:???
>グヮラグヮラゴキィィィン!
どこの悪球打ちだよw

他にも剛速球を放ったりきっちりフライを取ってたりしてるが、億泰は既にスタンドに目覚めてるんじゃなかろうかw
276マロン名無しさん:2009/03/11(水) 20:42:39 ID:???
ジョニィの人GJ!
ところどころで億康がいい味出してるな
277マロン名無しさん:2009/03/12(木) 18:12:08 ID:???
GJとしか言い様がないじゃあないか!

チアハルヒの投球、すごく見たいです…
278マロン名無しさん:2009/03/16(月) 06:58:06 ID:???
GJ!
なんかキョンこうやって見ると最低な奴みたいだ…
279アメリカの人:2009/03/16(月) 15:53:55 ID:???
第72話 「未来からの第3指令 1」

「たっく……昨日はひどい目にあったぜ………」
空き缶の罠を仕掛けるという意味の分からないお使いをした翌日、俺は学校へと向かっていた。
「よう、アナスイ」
「……キョンか」
昨日、敵スタンドを倒した後、こいつはウェザーをタクシー代わりに使い、朝比奈を何処かへと送っていた。
「朝比奈は今何処にいるんだ?」
「……なんでお前に教えなきゃならねーんだよ」
「今朝家のポストに未来からの新しい命令書が入ってたんだよ。朝比奈とやれっつう話だから居場所を教えてもらわねーとな」
「………鶴屋さんのとこだ」
「ハ?それじゃすぐにバレるんじゃ………」
「大丈夫だ、鶴屋さんには朝比奈さんの生き別れの双子の妹、みちるさんだって説明してる」
「……………」
多分、そんな嘘は朝比奈ですら信じないだろう。まあ、あの鶴屋さんだ。分かった上で……だろうな。にしてもあの人、ほんと何者だ?
「ちなみに今回の件は古泉も知ってるみてえだ……ところで命令の内容はなんなんだ?」
「それこそてめぇに言う義務は無い」

「とは言ったものの……なんなんだ、こりゃ」
俺は教室で再び届いた手紙を眺めていた。指令の内容は、朝比奈が知っているはずの変な石の置物を西に3m動かすというやはり意味不明なものだった。
280アメリカの人:2009/03/16(月) 15:54:29 ID:???
……たっく、しかも場所は朝比奈が知ってるだと?未来人はやはり親切心が足りないらしい。
「アナスイ君?」
「……朝比奈か」
現行時間の朝比奈が俺を心配してか、声をかけてきた。
「最近ボーッとしてること多いですけど……何か悩み事があるんですか?」
もちろん。山程ある……が、朝比奈には残念ながら相談できない悩み事だ。
「無えよ」
「ならいいんですけど………」
「心配してくれてありがとよ」
「そ、そそそ、そんな!お礼を言われるような事なんて………」
「みーちるちゃんッ!」
鶴屋だ。
「ふ、ふえッ!?」
「にゃははッ!みちるッ!昼ご飯食べに行こッ!」
「わたしの名前はみくるですけど……」
「あー間違えちゃったさッ!」
多分わざとだ。
「……はぁ」
「お、そうだアナスイ君ッ!」
鶴屋が俺の首に肘を回して顔を近付けてきた。
「……んだよ」
「みちるちゃんがあんたに会いたがってたよッ!」
「……それがどうした」
「いやいやー、キョン君からはそんな話聞いて無いからねぃ」
「……それがどうした」
「もしかして……コレ?」
鶴屋は小指を立てて見せる。
「断じて違う」
「って事は知り合いなのかい?」
しまった。カマをかけられていたようだ。やはり侮れない人だ。
281アメリカの人:2009/03/16(月) 15:55:10 ID:???
「……そうだよ。鶴屋、俺がみち……朝比奈の妹の知り合いで何が悪い」
名前で言おうとしたが、何故か気が乗らず、設定の方で呼ぶ事にする。
「……別に何でもないさッ!あの子をよろしくって事だよッ!」
そう言って離れた鶴屋は朝比奈を連れて食堂へと向かって行った。

放課後、俺は鶴屋の家へと向かっていた。ある奴と一緒に。
「……お前、バイク動かせたんだな」
「17だからな。免許は取れる」
「……てめーと朝比奈さんを一緒にするのは気に食わねーがな」
「悪かったな」
ちなみに出発してからずっとこんな感じだ。そんななのに、俺達が一緒にいるのはとある理由がある。まあ、単純な話だ。
「いいか、お前を連れて来たのは目的地への経路を確認する為だけだからな」
「おい、アナスイ。素直に鶴屋さん家が分かんないって言え」
……うるせぇ、バカキョン。

そんなこんなで鶴屋邸へとたどり着いた俺の最初の感想は………
「予想はしてたが……やっぱでけえな………」
鶴屋の家はいかにもな古い日本家屋……有り体に言えばいわゆる屋敷だ。とりあえず時代劇に出てきてもなんの違和感も感じなさそうだ。どんだけ金あんだよ………。
インターホンを押しても、何も鳴らない。が、門の向こうから大きな声が聞こえてきた。
「お、キョン君にアナスイ君じゃないかいッ!今から門開けるからちょっとだけ待っててくれよ!」
282アメリカの人:2009/03/16(月) 15:55:53 ID:???
門が開くと、そこには和服姿の鶴屋がいた。あまり和服には詳しくないのでよく分からないが、こいつの家が普通じゃない事だけは伝わってくる。
「ささ、上がって上がって!」
「別にいい。それより朝比奈の妹を呼んできてくれ」
「……せっかちだねぃ……ゆっくりしていけばいいのに」
鶴屋は口ではそう言っているものの、顔はそうまんざらでもなさそうだ。
「ま……そう言うだろうと思ってもう呼んであるけどねぃ……みちる!」
「は……はい」
現われた朝比奈はパンツルックの上にもこもこしたスーツを着込んでいる。少しサイズがあっていないのを見るに、鶴屋の物を借りたのだろう。
「ほいじゃ、みちるの事よろしく頼むさッ!……それとそのバイクじゃ二人が限界だろッ?このサイドカー貸したげるさッ!」
見ると俺のバイクにいつの間にやらサイドカーが取り付けられていた。
「……呆れた早さだな」

バイクは最初朝比奈をサイドカーに乗せようとしたが、俺の後ろに乗りたがった為、予定変更してキョンをサイドカーへと乗せた。キョンが睨んできたが気にしない。
「未来からの命令だと場所は朝比奈が知ってるって話だったが」
「なら多分、あの山だと思います……宝探しをした………」
「そうか。どの石かは分かるか?」
「ええ……その……多分」
「ところで……宝探しは本当に何も出なかったのか?」
「……ええと……うーん……ちょっと分かりません。行ったら思いだすかも………」
「そうか」
ちなみに、そんな会話を繰り広げていた最中キョンはずっとこんな事を呟いていた。
「空気だからって寂しくなんかないぞ……そうだ……俺は強い子だ……ここんとこ出番が無い徐倫よりはマシだもん………」
……所々怪しげな台詞があるが気にしないでおく。

To Be Continued・・・
283アメリカの人:2009/03/16(月) 15:57:29 ID:???
以上、第73話でした

都合により少し投下が遅れました。アクセス規制ってやだね……

ジョニィの人GJ!オクヤス自重しろwww

それでは!
284マロン名無しさん:2009/03/18(水) 17:00:22 ID:???
なんかキョンがお邪魔むs(ry
GJ!
285マロン名無しさん:2009/03/21(土) 00:01:51 ID:5qmQQL9B
あげ
286アメリカの人:2009/03/24(火) 16:17:08 ID:???
第73話 「未来からの第3指令 2」

鶴屋家の私有山は北校の東にあった。あまり高くはなく、天然林に覆われている丘といった感じだ。舗装された道があればいいのだが………
「無えな」
「獣道ならあるぞ」
くだらない会話をキョンと繰り広げているうちに、辺りを探していた朝比奈が声をあげた。
「ここです。ここから登りました」
「登りました?」
「明後日やるっつう宝探しの時に登ったんだろ?違うか?」
「はい、アナスイ君の言う通りです」
道を見る。なんとかバイクでも登れそうだ。
「あれ?今日来たの原付じゃねえのか?」
キョンが突っ込んでくる。
「今さらかよ……あれはバイクだよ。じゃなきゃサイドカーが付けれるわけねーだろ」
「………だな」
「でも、サイドカーをつけたままで登れるんですか?」
あまり高くないとはいえ、傾斜はそれなりにある。それに道が狭い。確かにサイドカーがあったら登るのは難しそうだ。
「キョン、降りろ」
「……俺に歩けってか?」
キョンが嫌そうな顔で睨んできた。仕方ねえ、少し説明してやるか
「別に俺が歩いても構わねーぞ……お前がバイク動かせるんならな」
「……………」
「ついでに朝比奈を歩かせるという案も………」
「……歩けばいいんだろ」
287アメリカの人:2009/03/24(火) 16:19:01 ID:???
バイクで田んぼを横に見ながら朝比奈のナビゲートに従い、俺達は山道を登っていた。
とはいえ、不安定な足場のせいで大したスピードは出せず、キョンが走りながらなんとかついてきている。
「……アナスイ君………」
「なんだ?」
「その……さすがにキョン君可哀相じゃないですか?」
「なら歩くか?俺は別に構わねーぞ」
「……………キョン君、ごめんなさい………」
かなり長い間迷った後、朝比奈は2ケツを選んだ。こいつの優しい性格なら歩く方を選ぶかなと思っていただけに、少し意外だ。まあ、優しさよりも楽が上をいったという事だろう。
「ところで、未来についてもうちょい教えてくんねーか?情報が少ないと行動しにくいんでな」
「その……あんまり教えられる事は無いです。特に変わった事もありませんでしたし………」
言っている事は当たり障り無いが、朝比奈は妙にそわそわしている。
「……なんか隠してるのか?」
「そ、そんな事無いですよ!絶対、断じて、隠し事なんて無いです!」
「……………」
その弁解が全てを物語っているが、ここまで言っているのだ。気付かなかった事にしてやろう。そうこうしているうちに、
「あ、ここです。ここら辺を登りました」
「………ここをか?」
288アメリカの人:2009/03/24(火) 16:20:23 ID:???
朝比奈が言った場所はまさに、道無き道だった。鬱蒼とした急斜面の森である。こんな場所、バイクで登るのはまず無理だ。
「ハァ……ハァ……ハルヒの野郎……こんな場所登らせんのか………」
少し遅れて走ってきたキョンが追い付いた。
「当日はあちこち掘ってましたよ」
「……マジか」
「予行演習だと思え……行くぞ」
朝比奈を先頭に俺、キョンと続く。
「はっ……ふうっ………あう………」
ほとんど崖に近い坂道は、登るというよりロッククライミングに近い。
「あひゃ!?」
もともとドジな朝比奈は、時々ずり落ちそうになった。仕方がないので支えてやる。……その度に朝比奈は顔を赤らめて俺を引き離そうとしたので、よけい危なっかしくなっていた。
そこで、スタンドでこっそり支えるプランに変更する事にした。
「……あれ?なんか急に登りやすくなったような………」
少々怪しまれたが気にしない。よくよく見ると前に誰かが上り下りをしたらしく、崖のところどころが踏み固められている。
……ふむ、スタンドを使わずに登れるわけだ。

「やっと着いたか………」
「十分近くはかかったぞ………」
たどり着いた場所は山の中ほど、あまり広くはない半円形の場所だった。木は無く、雑草だらけで日向ぼっこにはピッタリな場所だが、所々がぬかるんでいる。
……最近、雨降ったっけ?
「ここです……間違いありません」
289アメリカの人:2009/03/24(火) 16:24:24 ID:???
「んで、問題のブツは何処だ?」
「あの石です」
朝比奈が指差した先にはわりとでかいひょうたんに似ていない事もない白い石が地面にめり込んでいた。
「……かなり埋まってるな」
「掘り出さないといけなさそうですか?」
「いや……周りがぬかるんでる、普通に持ち上げれるな……キョン、反対に周れ」
「分かったぜ」
「日も暮れ始めてる……暗くなると危ないから早く済ませるぞ」
二人で石を両端から掴み、持ち上げようとする。
「せーの!」
「……………」
「……………」
が、持ち上がらない。けっこうな重さだが、二人がかりで持ち上がらない程では無い。………つまり、
「サボんじゃねえぞ……キョン」
「サボってねえよ……そっちじゃないのか?」
「ふ、二人共喧嘩はやめて下さい!」
朝比奈に仲裁された俺達は仕方なく再び持ち上げる事にした。
290アメリカの人:2009/03/24(火) 16:26:44 ID:???
「せーの!」
「……………」
「……………」
「やっぱ持ち上がってねーぞ、アナスイ」
「……おい、待てキョン」
「どうしたんだよ………」
「なんか……さっきより……石が沈んでないか?」
「……ほんとだな………」
「………まさかッ!キョンッ!足あげろッ!」
「は?……何言って……って上がらないだと?」
「二人共、泥に足を………」
そう、いつの間にか俺達は泥に足をとられていた。
「どうなってんだ!?……クソッ!抜けねえぞ!」
「新手のスタンド使いかッ!?」
だが、俺達が何故ここに来る事が分かったんだ……?そしてこいつの能力は何なんだ?
「こいつはかなりヘヴィな状況だな………」

To Be Continued・・・
291アメリカの人:2009/03/24(火) 16:29:13 ID:???
以上、第73話でした

とく似ないです。はい

それでは!
292マロン名無しさん:2009/03/24(火) 21:24:28 ID:???
ぐっじょぶ!この能力・・・まさかアイツかッ!
293マロン名無しさん:2009/03/31(火) 00:25:06 ID:BVYD1Ujm
あげ
294アメリカの人:2009/04/03(金) 12:39:28 ID:???
第74話 「マンドゥ・ディアオ 1」

未来からの指令に従い、石を動かしに来た俺達は、待ち構えていた何者かに襲われていた。
「くっそお……この泥……全然動けねえぞ」
「まるでセメントみてーだな……無理すれば動けない事もねえがな」
二人で半径2m程の泥だまりから脱出しようともがく。
「アナスイ君!キョン君!」
暫く姿が見えなかった朝比奈は、手にタイヤとロープを持って下から登ってきた。
「……それ、どうしたんだ?」
「ごめんなさい……アナスイ君のバイクのスペアタイヤです………」
「いや、でかしたぞ朝比奈!そいつを早くこっちによこせ!」
「は、はいッ!」
「そいつはいけねーな……んな事されたら折角罠にハメた意味がねぇ」
声が聞こえてきた方を振り返る。そこには黒いジャージ……最近流行のプージャーを着て、前を開けている。何故か肌が見えているのを見ると下着は着ずに直接ジャージを着ていると思われる男がいた。
「……てめぇが敵か………」
が、男はその言葉を聞くといきなり人差し指を立て、猛烈な勢いで振り始めた。
「ノンノンノンノンノンノンノンノンノンノンノンノン……江口政木……俺の名前だ。敵じゃあねえ」
「……襲ってきてるなら敵じゃあないか」
「ノンノンノンノンノンノンノンノンノンノン……おい、そこの地味いの……確かキョンだったな」
「……なんだよ?」
「あのな、世の中に敵なんつう名前の人がいるか?」
「……いるわけねえだろ」
「そうだ、そういう事だ」
「……意味が分からん」
全くだ。どうやら別の人種の人間らしい。が、江口は構わず話を続ける。
295アメリカの人:2009/04/03(金) 12:40:22 ID:???
「いいか?敵っつうのはただの名詞だ…分かるか?」
「馬鹿にしてんのか……こっちは高校1年だ」
「そうか、だが……人には名前……つまりは固有名詞っつうもんがある」
その通りだな。で、それがどうしたイカレ野郎。
「ノンノンノンノンノンノンノンノン……イカレ野郎じゃない……江口だよ。だから、固有名詞があるだろ?それはそれが唯一である事を表してる……それを代名詞や名詞で呼ぶなどナンセンスッ!愚の骨頂ッ!この意味分かるかい?」
「全然分からん」
「悲しいかな……全然理解できないとはな………」
相手にするだけ時間の無駄だな………
「朝比奈ァ!」
「準備できましたッ!えいッ!」
朝比奈が非力ながらもタイヤを精一杯投げる。が、やはり非力なのが変わるわけは無く、タイヤは60cm程しか飛ばない。もちろん俺達には届かない。
「……人が話をしている最中にコソコソと小細工か……マンドゥ・ディアオッ!あの縄を叩き切れッ!」
江口のスタンドが姿を表す。人型だがドロドロしており、B級ホラーに出てきそうななんだかよく分からない化け物といった感じだ。スタンドは一直線に縄へと向かう。
「させるかよッ!ダイバーダウンッ!」
敵の手刀をブロックし、そのままカウンターを放つ。が、後ろに飛んでかわされた。
「朝比奈ッ!ロープを引っ張れ!キョンッ!てめぇは先に行けッ!」
「は、はいッ!」
「あ、ああ」
296アメリカの人:2009/04/03(金) 12:41:19 ID:???
「かかってきな……イカレ野郎」
「江口だと言っているだろうがッ!」
江口のスタンドが一気に距離を詰めてくる。右のジャブから左のフック、さばいている隙をついて右のニーキックが飛んでくる。
「フン……ダイバーダウンッ!」
ニーキックは余裕で弾き、キックを弾かれ体勢を崩した敵に、右ストレートを叩き込む。
「グブッ………」
「てめぇ、あんま強くねえな……スピードもパワーも大した事ねーぜ」
後ろを見るとキョンがそろそろ沼から脱出しようとしていた。
「んじゃあ……長引くのも嫌だしな……トドメだッ!ダイバーダウンッ!」
「温い考えだな……マンドゥ・ディアオッ!」
その瞬間、殴りかかろうとした足が止まった。下を見ると、
「泥が固まってやがるだとォ!?」
後ろを見るとキョンも足元の泥が固まり、その場に釘付けにされている。
「てめぇの能力かッ!」
「てめぇじゃない……江口だ……気付くのが遅かったな。何故地面がぬかるんでるのか考えなかったのか?」
確かにそうだ。最近雨は降っていない。泥ができるはずが無いのだ。
「この俺、江口の能力だ……土を泥に、泥を土に……どちらでも自由自在に変えられる……まあ、金属とか石はアウトなんだがな」
297アメリカの人:2009/04/03(金) 12:42:01 ID:???
「ちくしょおッ!抜けねえッ!」
後ろでキョンが騒いでいる。まずいな……俺はスタンドでこいつの攻撃を防げるが、キョンでは絶対に防げない……だが、今の身動きできない状態では本体とスタンド、両方を防ぐのは不可能だ。
「ダイバーダウンッ!」
右の手刀を繰り出す。が、敵のスタンドにガードされてしまう。
「てめぇの相手は俺のスタンドだ……じゃあな……仲間がやられる様をゆっくり見物しときな………」
「そうはさせるか!ダイバーダウンッ!」
本体に右のハイキックをお見舞いする。が、ハイキックは放ちきる前に敵スタンドに防がれてしまう。
「ちいッ!」
「残念だったな……それじゃ、処刑の始ま……ブグッ」
余裕の表情で自慢げに語っていた江口の顔を、誰かが棒でぶん殴った。
「……朝比奈!?」
「こ……こっちは……わ…わたしとキョン君でなんとかしますッ!」
見るとキョンも木の棒を持っている。足を取られて動く事はできそうに無いが、棒でそれをカバーしている。
「アナスイ!スタンドのダメージは本体に返ってくるんだろ?俺達が持ち堪えてる間になんとかしろッ!」
「言われなくてもそのつもりだ……かかってきな」
「馬鹿な奴等だな……一般人が棒持って二人がかりで来ても何も変わんねーよ」
「そいつはどうかな」

To Be Continued・・・
298アメリカの人:2009/04/03(金) 12:43:36 ID:???
以上、第74話でした

最近週1ペースがすこし遅れています。速く元に戻そう……

それでは!
299マロン名無しさん:2009/04/03(金) 21:48:53 ID:???
アメリカの人さん乙です!
300マロン名無しさん:2009/04/04(土) 00:03:01 ID:???
乙乙ゥ!!
301マロン名無しさん:2009/04/07(火) 19:47:00 ID:ZSxW3Smk
あげ
302マロン名無しさん:2009/04/14(火) 06:19:22 ID:???
あげあげ
303アメリカの人:2009/04/14(火) 12:18:02 ID:???
第75話 「マンドゥ・ディアオ 2」

「か……かかって来な!」
キョンが棒を持って勇敢に叫ぶ。なかなか決っている……足が震えているのに目をつぶればだが。
「どうやら自殺志願者みてえだな……マンドゥ・ディアオッ!」
敵のスタンドがキョンに向けて襲いかかる。
「そうはいくかよッ!」
ダイバーダウンで襲いかかろうとしたスタンドをはがいじめにする。
「グッ………」
江口は身動きが取れなくなったスタンドに代わり、自分自身でキョンへと突進した。
「て……ていッ!」
朝比奈がその江口へと泣け無しの勇気を振り絞り、殴りかかる。非力なせいか簡単にガードされたが、キョンがその隙に再び殴りかかった。
「グフウッ………」
「情けねーな……スタンド使いが一般人相手にボコボコにされるなんてな………」
「貴様……マンドゥ・ディアオッ!そいつを八つ裂きにしろッ!」
敵スタンドが殴りかかってきた。右のニーキックをかわすと左のフックが飛んで来る。ガードしたところに今度は左右のワンツーパンチで攻め立てられる。
「どうだッ!どうだッ!どうだッ!」
「悪くねえが……それほどでもねえな」
相手が続け様に仕掛けてくるラッシュは簡単にさばききった。やはりこいつのスタンド、格闘は苦手のようだ。
304アメリカの人:2009/04/14(火) 12:19:18 ID:???
「こいつで終わりだッ!」
ラッシュで怯んだ隙をつき、右の踵落としでトドメを狙う。が、
「マンドゥ・ディアオッ!」
「ふん……てめぇのスタンドじゃあ俺の攻撃は防げねえ……終わりだッ!」
「違うな……俺がいつお前の攻撃を防ぐっつったんだ?」
江口がそう言うと共に足がさらにぬかるみへと沈み始めた。
「なッ!?」
「俺の能力を忘れたかあ?固めた泥を元に戻して、さらに深くまで泥にした……まあ、あそこの二人には逃げられちまうが……そのまま沈みなぁ!」
「ア、アナスイ君ッ!」
朝比奈とキョンは江口の言葉通り沼から脱出していた。
「粘れアナスイ!今助けに行くぞッ!」
「そうはいくかッ!マンドゥ・ディアオッ!奴等を足止めしろ!」
「させるかッ!ダイバーダウンッ!」
敵のスタンドを防ぐ事には成功する。が、自分が沈んでいくのは防げそうにない。万事休すか………?と思った時だった。
「アナスイ君ッ!これを使って下さい!」
「朝比奈……?」
朝比奈が投げてよこした物。それは
「木の板………?」
「それなら泥に浮くはずです!」
なるほど……考え自体は悪く無い。ただまあ……
「朝比奈、こんな小さい板じゃあ人一人浮かべるなんて無理だ」
朝比奈が投げてよこした板は片手で軽く持ち上げられるレベルの軽い板だった。正直なんの役にもたちそうにない。
305アメリカの人:2009/04/14(火) 12:20:29 ID:???
「……ごめんなさい」
「いや、別に謝る必要は無えよ」
「茶番はそれぐらいにしとけよ……終わりだッ!マンドゥ・ディアオッ!」
江口のスタンドが右のローキックでトドメをさしにくる。かなりやばい……今度こそ万事休すだな………待てよ?
「ダイバーダウンッ!」
「無駄だぜェ!沈んでいってるてめぇの攻撃が俺に当たるかよおッ!」
「いや、今のはお前を狙ったわけじゃない……朝比奈の板を殴った」
「……だからどうした……あとお前っていうな……江口って……ウゲッ!?」
そう江口が愚痴り始めた瞬間、朝比奈の投げた板からダイバーダウンの腕が飛び出し、江口の足に引っ掛かった。キックを繰り出していた江口は、受け身もとれずに泥の中に倒れこむ。
「ち……ちくしょおッ!」
「さて……どうする?我慢比べだ……どっちが長く泥の中で粘れるかのな………」
「てめぇぇぇぇぇぇぇええええ!」
江口がスタンドで次々と攻撃を繰り出してくる。が、遅い上にパワーが無い。楽にさばける。
「その程度か……」
「……だ、だがこのままだと相打ちだぞ!?」
「俺は別に構わねーがな」
「な………!?」
再び攻撃の手を強めてきた江口のスタンドの腕を掴む。
「腕を取ったぜ……どうする?」
「ぐ……て……てめぇ!放しやがれえええぇぇぇぇぇ!」
そうしているうちに俺達の体は腰辺りまで沈んでいた。と、その時だった。
306アメリカの人:2009/04/14(火) 12:22:04 ID:???
「これでもくらえッ!」
「キョンッ!?」
キョンが江口の頭を棒で殴り付けた。
「アナスイ君ッ!今助けます!」
なんと朝比奈は俺の肩に腕を回し、引き上げようとしていた。
「朝比奈もか!?危ないから下がってろ!」
「嫌ですッ!」
「……………」
「わたし達はお荷物じゃありませんから……アナスイ君の力になりたいんです!」
……やれやれ。どうやら俺はこいつらを過小評価していたらしい。
「ぐ……させねえッ!」
朝比奈に助け出された俺を止めようと江口が襲いかかる。が、
「ちょっとは後ろに気いつけろよ」
再びキョンに後ろから棒で殴られ、怯む。
「トドメだッ!ダイバーダウンッ!」
怯んだ隙に右の回し蹴りをお見舞いする。意識を失った江口はそのまま泥の中に沈んでいった。
307アメリカの人:2009/04/14(火) 12:23:34 ID:???
「……あー……死ぬかと思った………」
「アナスイ君ッ!」
「なんだ?朝比奈」
そう言って朝比奈を見ると、朝比奈は泣いていた。
「無茶しないで下さいッ!アナスイ君が死んじゃったらって思うと………」
そう泣きじゃくる朝比奈の頭に俺は手を乗せてやる。
「無茶なんかしてねーよ」
「で……でも!」
「ピンチになったらお前らが助けてくれるって分かってたからな」
キザな台詞はあまり柄では無いが、こんな時ぐらいはいいだろう。泣く子と地頭には勝てないって言うしな。
「………うん!……うん!」
「朝比奈……泣くか笑うかどっちかにしろ」
「だって……だって………」
「………フン」
そして俺は、たまにはこんな感じも悪く無いと……そう思った。

「………アナスイー……俺は?ねえ俺は?俺の事忘れてない?………ちくしょーーーーーッ!」

江口政木 マンドゥ・ディアオ 再起不能

To Be Continued・・・
308アメリカの人:2009/04/14(火) 12:24:24 ID:???
見ても見なくてもいい履歴書

江口政木
20歳 A型 12月17日生まれ
性格 物の名前に異常にこだわり、代名詞で呼ばれる事を嫌う。が、自分が他人の名前を呼ぶ際は別のようだ。
好きな食べ物 味噌汁、焼き魚(特にサンマ)
嫌いな食べ物 焼き鳥、ステーキ
趣味 辞書を読む事、ウインドウショッピング

マンドゥ・ディアオ
パワー C スピード C 精密動作性 C
持続力 A 射程距離 B 成長性 C
能力 土を泥に、泥を土に自在に変える事ができる。尚、地中を行動する事は不可能。
309アメリカの人:2009/04/14(火) 12:31:41 ID:???
以上。第75話でした

スタンド名の由来はスウェーデンのロックバンド「マンドゥ・ディアオ 」から

また遅れました……次こそは!

それでは!
310マロン名無しさん:2009/04/14(火) 13:33:13 ID:???
アメリカの人さん乙です!
311マロン名無しさん:2009/04/14(火) 18:56:20 ID:???
乙ッ!!
こんな立ち位置のキョンもいいなw
312マロン名無しさん:2009/04/17(金) 15:06:34 ID:NN3QM521
長門「ジョジョー!私は人間をやめるぞー!!」
313マロン名無しさん:2009/04/18(土) 12:19:12 ID:???
>>312
朝倉「人間賛歌は勇気の賛歌ッ!!」
314マロン名無しさん:2009/04/20(月) 23:18:04 ID:???
ハルヒちゃんの方にバルーン犬でてるなw
315アメリカの人:2009/04/21(火) 12:07:28 ID:???
第76話 「未来からの第3、第4指令」

「あー……昨日もひどい目にあった………」
敵スタンドに襲われた翌日、俺は放課後、SOS団の部室へと向かっていた。部室の扉を開けると、
「宝探しよッ!」
涼宮がいつもの如くふん反り返っていた。よく見ると今日は右手に古ぼけた紙を持っている。
「なんだそれ?なんかの地図か?」
「俺が鶴屋さんに渡されたんだ」
「……おいキョン……あんな物涼宮に見せたらどうなるかは分かるだろう」
「無理矢理奪われたんだ。全力で抵抗はしたがな」
二人でヒソヒソと愚痴っていると涼宮が睨んでくる。
「そこ!コソコソしない!」
「………はぁい」
「鶴屋さんによるとこれは御先祖様が残した地図らしいのよ!」
「へー……でも鶴屋さんの家ならそういう宝が一つか二つぐらいあってもおかしくないわね」
「さっすが徐倫!話が分かるじゃない!」
徐倫、頼むからハルヒのテンションを上げないでくれ。
「それで、いつ行くんでしょうか?」
「明日よ!持っていくのは男子はスコップ!あ、つるはしでもOKよ……遭難した時の為に発煙灯もいるかな、お弁当や飲み物もいるわね………」
あそこはそんなでかい山じゃねえぞ。……まあ口に出したらなんで知っているのか問い詰められるだろうから言わないけど。
「それじゃ、時間は厳守よ!一番遅かった奴が交通費を払う事!いいわね!」
316アメリカの人:2009/04/21(火) 12:08:07 ID:???
次の日、案の定最後になったキョンに交通費を払わせ、俺達は例の山へと到着していた。
「さ、掘りなさい!」
「……どこをだ」
「あたしが指示した場所をよ!グズグズしていないでサッサとする!」
「……はいはい」
ところがこれがなかなか辛い。結構地面が硬くて掘りにくい上、掘った穴は埋めなければならない。これがしんどい。いつもにこやかスマイルの古泉はよく分からないが、キョンはもうへばっている。
「なあ……アナスイ……お前……よく平気だな………」
「元々体を鍛えてるからな……後スタンドを時々使ってる」
「………ずりい」
「そこォ!サボらないッ!」
「………あいつが一番ずりいけどな」
涼宮は俺達男組の苦労など何処吹く風。上から指示だけ出してるいい御身分だ。
「はあ………やれやれだ」
「全くだ」

その後1時間程俺達はあちこちを掘らされ、昼休みとなった。
「なあ、これって確か何にも出ないんだよな………」
「朝比奈からはそう聞いてる」
そう、この宝探しは無駄な努力なのだ。報われるのが分かっているならまだやる気も出るが、報われないと分かっていてやる気が出る程人間は出来ていない。
「少しいいでしょうか?」
「なんだ?古泉」
「その何も見つからないという未来……おかしいですよ」
「ハ?」
317アメリカの人:2009/04/21(火) 12:09:05 ID:???
「何も見つからないというのは有り得ません……例え地図が真実で無いとしても涼宮さんが真実だと思えばそうなるのですから」
………なるほど。
「つまりハルヒはあの地図を信じて無いって事か?」
「恐らくは」
「……涼宮らしくもねえな」
「確かにそうです。ですが、ここで変に勘ぐっても仕方ないでしょう……ただまあ、涼宮さんが能力を使って奇想天外な事態を起こす可能性はゼロに近いですが」
なうほどな。そう言えば……今迄の未来からの命令もおかしかった。何故か指令を受けて向かった先には敵のスタンド使いがいた。まるで俺達の情報が筒抜けみたいだったな。まさか未来人の中にスパイがいんのか?それとも………
「どうしたアナスイ?何考えこんでんだ?」
「何でもねえよ」

その後一日中涼宮に連れ回され、あちこち掘り返したものの、結局お宝は出て来なかった。ちなみに例の石の場所でも特に変わった事はなかった。知っていたとはいえやはりヘコむ。
「そかッ!お宝は出て来なかったのかいッ!」
「そうなのよね……絶対あると思ったんだけどなぁ」
「まぁイタズラ好きの御先祖様だったんだろッ!気をおとすなよッ!ハルニャン!」
「うん、そうねッ!……あ、明日は不思議探索!駅前よ!時間は今日と一緒だから!」
そう言うと涼宮は嵐のように去って行った。
「んじゃ……帰るかな」
そのキョンの言葉を合図に全員が解散する。が、俺はキョンの肩を掴んで止めた。
「なんだ?」
318アメリカの人:2009/04/21(火) 12:11:49 ID:???
「頼みがある」
「なんだよ………」
「明日明後日の不思議探索のくじ……長門に頼んでイカサマをしてくれ」
「………なんでだ?」
俺は返事をせずにそっと封筒を見せる。
「未来からの指示か」
「昨日届いた。朝比奈(未来)にはもう見せてある」
「………分かった。どう分ければいい?」
「明日の午後と、明後日の初めだ。俺と長門を二人にしてくれ」
「……頼んどくよ」
キョンが去って一人になった帰り道、俺は再び指令を眺めていた。3と4、そして6という数字がプリントされた封筒だ。ちなみに6はまだ見ていない。まず、3
『明後日、土曜日。夕方までに指定された歩道橋に行ってください。そこにあるパンジーの植え込みに落ちている物を拾って以下の住所に匿名で郵送して下さい。落ちているものは小型の記憶媒体です』
封筒にはもう一枚紙が入っており、そっちには何処かの住所と地図がある。4の方は
『川沿いの桜並木のあるベンチに日曜日。午前十時四十五分までに行き、五十分までに亀を川に投げ込んで下さい。亀の種類は何でもいいです』
という物だ。
「しっかし意味不明だな………」
ひとつはガキの使い。もう一つはやる意味があるのかすら分からない謎の行為だ。ちなみに両方とも朝比奈と二人でやれとの事だ。ちなみに長門と二人と指示したのは朝比奈の未来情報からだ。
「考えても仕方ねえな……やるか」

To Be Continued・・・
319アメリカの人:2009/04/21(火) 12:15:35 ID:???
以上。第76話でした

>>314そういやでてましたねバルーン犬。その正体はキミ……ウワナニヲスルヤメ(ry

やっと週1ペースに戻せました。これからもこのペースを維持していきたいです。

それでは!
320マロン名無しさん:2009/04/21(火) 13:18:46 ID:???
亀…?
まさかあの亀か
321マロン名無しさん:2009/04/21(火) 15:07:52 ID:wegcBTOB
朝倉を倒した後で…
長門「お前に敗因が一つあるとすれば…お前は私を怒らせた。」
322マロン名無しさん:2009/04/21(火) 22:48:08 ID:???
ジャイロ本人と鶴屋さんのにょろニョホがみたい…。
けど、ジャイロとの絡みは難しいかなぁ?流石にいつも鉄球持ち歩いてるのはないか…
323セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/04/25(土) 00:46:33 ID:???
>>322
ストップ、一巡しちゃあだめだ
戻ってこい、そう、7部から5部にだ

荒木先生はどこに向かっているのか分からないセッ子が帰ってきたよ
荒木ピース!荒木ピース!
おまけの下敷き裏面手抜きじゃないか!!
次のUJ新人漫画賞の審査員も荒木!!!
つよポンよろしくもの凄く興奮してきたのでちょっと服を脱ぎつつ投下

ニョホとにょろには深い関係性があるよね、きっと
324セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/04/25(土) 00:47:50 ID:???
男は空を仰いでいた。
天に輝く無数の星々を、中央に位置する月を、それらを包み込む闇を。
その全てを敬し、愛し、欲した。
男が天に突き出していた腕を振る。描かれるのは彼の愛する三日月のようなきれいな弧。
すると、ひとつの星が彼の腕に導かれるように天から零れ落ちた。
彼はまるでどこかの民族の踊りの様に手を、足を、身体全体を使い星を導く。
星はそれに従うように夜空という器から溢れ出し、次々に降り注いだ。
男の踊りは止まらない。

その日、日本で季節はずれの流星群が確認された。

act12―団長からの第二指令:「流れ星を手に入れろ!!」

オレの日記抜粋
●月☆日 雨のち快晴所により流れ星
今日から日記を日本語で書いてみる事にした。
神父が信者の死体を埋葬するときに日本語のディスクを抜いてくれたから、楽に読み書きができる。
どうせこの日記はオレとチョコラータが見るくらいだから日本語で書いてても問題ないだろう。
今日は流れ星がキラキラ綺麗だった。
しかしスタンドッつーのは奥が深いと思う。まさか星を降らせるなんて能力があるなんてなァ。
きっとチョコラータが聞いたら涎垂らして喜ぶだろうな。
しかし、微生物ってのはカビとは違うのか?
キョンの説明じゃあその当たりがよくわからないんだよなァ。
325セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/04/25(土) 00:52:15 ID:???
俺が教室に入ろうとした瞬間いきなり制服の襟首がつかまれた。
まぁ犯人は言わずもがなあいつだろう。
「おっそーーい!!!なんでアンタは重要な日に限って遅れてくるのよ!!!!」
案の定、振り返った先に居たのは我等がハルヒ様だった。
どうやら何か思うところがあるらしくその表情は怒りと喜びをミキサーにかけたような言いようのない物だ。
ハルヒはギャーコラ騒いでいるが、時計はまだHR開始十五分前を指している。
十分早いと思うがな、という俺の正論も、暴走状態のハルヒには山火事に水鉄砲くらいの効果しかもたらさない。
「うっさい!!私が来るより30分早く来てろっていってんでしょうが!!」
俺はお前の来る時間を事前に知ることはできないだろ。電話でもしろっていうのか?
「私が言いたいのはそういう事じゃなくて、『誠意を見せろ』って事!!
あんたは『三つのU』って聞いたことないの?」
これまた初耳だな。っていうかそんな言葉本当に存在するのか。
「あーもう、アンタはいちいちいちいち!!」
どうやら俺はまたハルヒの常人よりも異常に短い感情の導火線に火をつけてしまったようだ。
これはまた頭にたんこぶができるかな、とも思ったが。
「まぁいいわ。なんていったって今日は我らがSOS団にとってすごく重要な一日になる予定なんだからね」
どうやら今日はよっぽど気分がいいらしい。
ハルヒはつかんでいた襟首を離し俺を黒板の方へ突き出すと、満面の笑みで俺に紙を突き出してきた。
紙、というか新聞だな。
ぱらぱらとめくるが宇宙人が侵攻してきたという話題や未来からタイムマシンに乗ってロボットが訪ねてきたなんて話題は乗っていない。
しいてそういった類の物をあげるとするならば、テレビ番組欄にあるこの時期によくあるガセネタばかりの宇宙人特番くらいか。
「どう?」
ハルヒは新聞を眺める俺を見ながら感想を尋ねてくる。
どうかと聞かれても、こんな番組の内容を信じる奴は馬鹿だとしか言いようがない。
「……アンタ、なに読んでるのよ」
これまたおかしな質問だ。この新聞を渡したのはハルヒ、お前じゃないか。
「そういうことじゃなくて……読んでる場所が違うじゃない。こっちよこっち」
ハルヒは柄にもなく俺の持っていた新聞をすっと手に取ると、ぱらぱらとめくってあるページを開いた。
326セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/04/25(土) 00:53:34 ID:???
手渡された新聞はちょうど地方欄が開かれていた。
地方欄と言えば「○○の何々が豊作」だの「○○事件解決」だのその地方でしか伝わらないマイナーなネタが書いてあるもの。
しかし、ハルヒに突き出された新聞の地方欄は様子が違う。
ブチ抜き一面、一つの記事について延々と書いてあるのだ。
こういう場合、どうも嫌な予感しかしないが見なければ見ないで悲惨な結果が待っているのは自明の理。
進むも地獄、止まるも地獄。ならば選ぶ道は一つだ。
意を決して新聞の煽り文に目を向ける。
【降り注ぐ億万の星屑!!
(本文抜粋)昨日深夜、○×町東部の森に数え切れないほどの流れ星が落ちて行ったのが目撃された。
(中略)学会によるとこれは前例の無い事であり何らかの天変地異の前触れかと懸念する学者も少なくない。
(中略)しかし現場には星の欠片、クレーターともに残っておらず奇妙なこともあるものだと著名な天文学者のC氏は首を捻っている】
ざっと目を通したが肝心な所はこの辺りだろう。
言いたいことはたぶんだが分かった。
きっと俺が今考えている最悪のシナリオこそがハルヒの考えだ。
「きっとこれはね、宇宙人からのメッセージだと思うの!」
ハルヒはにっこりと微笑み、俺に背を向けて続ける。
「まさに天の思し召しってやつね。あんた今日が何の日か知ってる?」
今日は……
別に今日は特別な日ではない。
確かに盆前で何かと忙しい時期ではあるが、それとこれとは関係ない。
「今日は旧暦の七夕。そんな日に宇宙人からのメッセージの流星群。
これを神の思し召しと見ずにどうするのよ!!」
単なる偶然じゃないのか、という意見は聞き入れてもらえるわけがない。
「今日の活動は夜八時から裏山で天体観測よ!キョン。あんた、学校が終わったらすぐに神父連れてきなさい!!」
この指示にはさすがに首を傾げるしかない。
どうしてSOS団の活動に神父を呼ぶ必要がある?
「神父はこの前の試合を通して見事SOS団郊外団員に抜擢されたんだから当たり前でしょ」
聞いてないぞ。
「ええ、言ってないもの。
それじゃあ、今日の夜八時に裏山の神社までちゃんと連れてくるのよ」
俺はハルヒに分からないように表情を変えないまま心の中で手を合わせた。
勿論神父への謝罪の意をこめて。
327セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/04/25(土) 00:54:16 ID:???
と、言うわけなんですが。
俺の話を聞きながら神父は口元を隠してくつくつと笑った。
「そうか、私も団員か」
笑いながらもそう呟く神父は、どことなく嬉しそうだ。
そんなに嬉しいものだろうか?
そりゃあ人に必要とされるっていうのは喜ばしい事と言えるかもしれない。
神父のような奉仕者ならばなおの事。
しかしそれは状況が状況ならば、じゃないのか。
ハルヒの暴挙についてはもう嫌というほど伝えてある。
SOS団に入るという事は神父もまたその暴挙の渦に巻き込まれるということだ。
俺としてはこんな活動に参加せず、冬のナマズみたいにおとなしくしておきたい。
それでも?
「夜の八時に裏山の神社だね。分かった。七時に迎えに来てくれ」
それでも神父は嬉しそうに笑っている。
不思議なもんだ。
俺の表情に考えが表れていたらしく、神父は笑ったまま言葉をつづけた。
「青春を謳歌するのは悪くない事だよ。キョウ君」
「私は……私『も』そういったものとは無縁だったからね」

神父はとても優しく笑う。
時々、本当に時々であるが。
その優しい表情の奥に、暗い影が見えるのはきっと気のせいではないはずだ。
328セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/04/25(土) 00:54:57 ID:???
じっと空を見つめてみる。
少し山に登るだけで結構星って見えるもんなんだな。
現在、八時二十五分。
SOS団メンバー(+セッコ、神父)は一人を除いてみんな集まっていた。
そう、一人を除いて。
「にしても、涼宮さん遅いですね」
何と此処には言いだしっぺが来ていないのだ。
これには流石の神父も苦笑いを零すしかない。
まぁ、結構空を見上げているだけで時間がつぶれるし、今回ばかりは気にしてないがな。

しかし空に浮かぶ星たちはこちらの予定など関係ない。
ヒュンと一つの星が尾を引いて流れる。
続きふたつ、みっつ、よっつと次々に盆から水があふれる様に流れ落ちる。
その光景に、俺たちの眼はすぐに釘付けになった。
「ふぁぁああ」
朝比奈さんが声を上げるのも頷ける。
どれだけ奇麗な言葉を並べたって、この光景は表しきれないだろう。
強いて言うなら長門が本から顔をあげ見とれるくらいに奇麗ってところか。
「これはこれは」
「うおぉぉお……」
「なんと言うべきか……」
言いようがない、と神父に続けようとした俺の言葉は、寸前で大きな音に掻き消された。
ドゴォォンという、まるでジェット機が墜落したような音。
そして当たりに漂い始める物の焼けたにおい。
「な、ななななんですかぁ?」
この幻想的な風景には全くそぐわない異質が辺りを包みこんだ。
329セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/04/25(土) 00:55:38 ID:???
「何かが落ちてきた、と考えるのが妥当でしょうか」
「なんだそりゃ。だがもしそうなら、ものスゴく変じゃねえか?こンな所にセスナでも突っ込んで来るッつゥーのかよ」
「……セスナ機じゃなくて隕石」
「ほう。あり得ない話と思いたいが、本当にありえないかどうかは分からないのがこの世の不思議。だったか」
めいめいその異質に大して考えを述べるが、そこにはたいして焦りは感じられない。
特にセッコと神父は音のした方を一瞥しただけでもう何もなかったかのように空を見上げている。
流石と言うべきか。
「セスナが落っこちても判断間違わなきゃ生き延びられるからな」
「キョウ君たちに危険が及ぶようなら焦るかもしれないけどね」
この二人は本当に一般人の感性と一線を画しているな。
しかし単なる高校生には大問題。
「いいいい隕石ですかぁ!?」
見ての通り朝比奈さんは極限状態だ。
俺だって結構キテるものはある。
この場にセッコ達が居なければ長門を抱えて朝比奈さんの手を引き走って逃げだしていただろう。
この場にハルヒが居なかったのがせめてもの救いか。

そこまで考えて、また嫌な予感が頭をよぎる。
もし、今ここにハルヒが来たら?
間違いなく隕石を拾いに行こうとか言いだすだろう。
直接の被害はなかったがもし山火事にでもなっていればそれこそ最悪だ。
神を失った世界がどうなるのかは知らないが、もの凄い悪影響を及ぼすのだけは確かだ。
それこそよくて日本沈没、悪ければ地球消滅クラスの。
それだけは何とか避けなきゃならない。
だからと言って今ここから離れればハルヒは俺たちを探して危険な森の中を歩き回ることになる。
さて、どうした事か。
こういう時に限って良い案は思い浮かばない。
考えられる方法としては、一つだけ。
330セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/04/25(土) 00:57:14 ID:???
「流れ星を取りに行くゥ?」
ああ。
「先ほどの音のした方に、かい?」
「だ、大丈夫なんですか?」
ここで大きく頷けたならどれだけいいか。しかし何が待っているかが分からない状況だ。
俺は曖昧な苦笑いを返すしかできない。
「おやおや、貴方にしては積極的な行動ですね」
古泉がいつものニヤニヤ顔で俺の顔を覗き込んで来る。こいつ分かってて言ってるだろ。
「ふふ、止めませんよ。涼宮さんにはこちらから言っておきます」
やっぱり分かってて言ってたみたいだ。
俺はいつものように息をつき、セッコに声をかける。
「俺も行くのか?」
この場合、セッコと一緒の方が都合がいい。
セッコをここに置いていけばいつぼろが出るか分からない。
それにこいつの能力があれば山火事の場合逃げる道の心配をしなくてもいいしな。
俺はセッコの腕を掴み、音のする方へと向かう。
「違うぜ、コッチだ」
分かるのか?
「焦げ臭いにおいがコッチからしてるンだよ」
うん、流石はセッコというところか。この鼻も俺が同行を願った理由だ。
セッコの鼻の良さはサッカー大会の時に分かっている。こいつがいれば現場まで迷う事はない。
「じゃあ、僕たちはここで涼宮さんを待っています」
「何も無ければすぐに帰って来るんだぞ」
古泉と神父の声を背に、いつものように二人で歩きだす。
さて、何も無ければいいが。

「きぃらぁきぃらぁひぃかぁるぅーー!!」―キラキラ星か?
「おう!」―イタリアにもあるんだな。
「キョンの妹に教わったんだよ!」―……そうか。

to be continued…
331セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/04/25(土) 00:58:29 ID:???
以上、久しぶりの投下終了。
三月辺りに引っ越しをして、現在林檎の国からお送りしています。
生存報告したかったので急ぎ足。最後の方はちょっとぐだぐだ?
まぁ書き直せばいいか。
気が向いたら最初から書き直すかも(文法的な意味で)



生きてますよ。

死んでませんよ?

アメリカさん乙ですよ。


それでは、拙い文章ですが何かあれば。
332マロン名無しさん:2009/04/25(土) 09:48:31 ID:???
セェッ子ぉのぉおーつーよぉぉー!
333マロン名無しさん:2009/04/25(土) 11:39:28 ID:???
林檎の国?青森のことですか? 乙という意味だが
334アメリカの人:2009/04/28(火) 12:10:13 ID:???
第77話 「ビッグ・ジェネレイター 1」

土曜日、ハルヒの独断によって久し振りに行われる事となった不思議探索。午前中はどのグループも何も見つけれず、予想通りの無駄足となった。午後はくじ引きの結果、アナスイと有希の班、みくるとハルヒとキョンの班、そしてあたしと古泉とウェザーの班となった。
「……やっぱ何も無いわね……当たり前か」
「ええ、ですが何も無いというのは良い事ですよ」
『確かにそうだ』
宝探しには参加していなかったウェザーだが、この不思議探索にはハルヒによって無理矢理駆り出されていた。
「仕事があるのにすみません」
『コイズミ……だったな。謝る必要は無い……仕事は最近暇なんだ』
それはそれでどうかと思うぞ。
「そういや古泉、あんたは午前はキョンと二人だったな」
「ええ、まあ」
「どうだった?」
「報告通りです……二人で他愛も無い事を話していただけですよ」
「例えば?」
「これからの僕達についてとかです」
「………そうか」
興味はかなり有る。が、聞かない事にした。自分から切り出さないと言う事は二人で話して起きたい事だったんだろう。そういう事はほじくり返さないのがあたしだ。
「………ところで」
「何よ?」
「徐倫さん達……何か僕達に隠していませんか?」
335アメリカの人:2009/04/28(火) 12:10:59 ID:???
……まずい。まさかあの計画を勘づかれたのか?
「何も隠してねえよ」
ポーカーフェースで返事をする。
「………そうですか」
古泉は納得したらしく、それ以上追求はしてこなかった。

午後の不思議探索を初めて1時間程の頃だろうか。敵のスタンドがいきなり現われた。そのスタンドはかなりごつい体格をしていた。親父のスタープラチナよりごついんじゃないだろうか。人型で、顔はまるで阿修羅、赤い紙は逆立ち、頭には金の止め金のような冠。
全身を鋼のような筋肉に包まれたいかにもな正統派な姿だった。
『……死ね』
「ストーンフリーッ!」
いきなり現われたスタンドは右のストレートを繰り出して来る。とっさにガードするが、
「ウグ………」
ガードしたにも関わらず凄まじい勢いで吹き飛ばされた。
『徐倫!大丈夫かッ!?』
「なんとかな……しかしなんつう馬鹿力だ」
敵は続いてウェザーに襲いかかる。攻撃を見切ってかわそうとするが、よけきれず、スタンドでガードに切り替えた。
『ぬぐっ………』
ウェザーもガードしたにも関わらず、ダウンさせられてしまう。
「徐倫さん……これは………」
『恐らく自動操縦型のスタンドだろう……これだけのパワーとスピードなのに本体がいる気配すらしない』
「古泉ッ!今すぐアナスイと長門に電話して本体を探すように伝えろッ!」
そう叫ぶとウェザーと二人で同時に襲いかかる。あたしは右ストレート、ウェザーは左のフックを繰り出す。が、敵スタンドは両手を使って軽々と受け止めた。
336アメリカの人:2009/04/28(火) 12:11:41 ID:???
『馬鹿め、貴様らのパワーでは俺には勝てん!』
「馬鹿はてめーだ……両腕が塞がって隙だらけよッ!」
そう言ってあたしは左のハイキック、ウェザーは右のストレートを繰り出す。が、
『ふん……馬鹿めがァ!』
なんと敵スタンドはそれぞれを掴んだ片手であたし達をぶん投げた。追撃で右ストレートを放ってきたが、それは逸れて、ブロック塀をへこませただけに終わる。
『……馬鹿力どころじゃないな………』
「古泉ッ!アナスイ達は?」
「かけた瞬間切られました。……どうやら今取り込み中のようです」
肝心な時に使えねーな……アナスイの野郎。後でぶん殴っておこう。
「オラァッ!」
起き上がると同時に再び殴りかかる。が、今度は止めようともされず、拳は空を切った。
『鈍いな……かわすだけで十分だ』
「そうくると思ったわよ……ストーンフリーッ!」
殴りかかった時に伸ばしておいた糸を敵の腕に巻き付ける。
『ムッ………』
『ウェザーリポートッ!』
ウェザーが凄まじい風圧を巻き上げ、敵を押さえ付けながら右ストレートを繰り出す。が、
『小細工など温いわッ!』
糸は軽々とちぎられ、凄まじい風圧をものともせずに敵スタンドはウェザーにカウンターを叩き込んだ。
「……マジで化けもんだな」
「逃げましょう!離れて体勢を立て直します!」
337アメリカの人:2009/04/28(火) 12:12:55 ID:???
古泉に言われてあたし達は北に向かって一目散に逃げ出した。が、敵スタンドはかなりのスピードで追いかけてくる。追いつかれるのも時間の問題だ。
「あたしに掴まれ!ストーンフリーッ!」
二人が掴まったのを確認してから、近くの電線に糸を結び、スパイダーマンのように飛んで逃げる。何回か飛んで逃げるとかなり距離を開ける事ができた。
「この調子なら逃げ切れるぞッ!」
『……待て、徐倫』
「どうした?」
『……いや、さっきより敵スタンドのスピードが上がっている気がする』
「……んな馬鹿な………」
後ろを振り返る。するとウェザーの言葉通り敵スタンドが凄まじい速さで追いかけて来ていた。さっきまでは足の動きは見えていたが、今はあまりの速さに足の動きが目視できない。
「……んな馬鹿な」
気がついた時には追いつかれていた。
『落ちろッ!』
そう叫んだ敵は電柱を殴る。すると殴った場所から電柱が真っ二つに折れてしまう。折れたせいで電線も切れ、あたし達は地面に放り出された。
「スタンドが見えない僕にも分かります……パワーまで上がってるみたいですね」
「……なんて化け物だ………」
『貴様らの脆弱な力ではうぬは倒せんわ!』

To Be Continued・・・
338アメリカの人:2009/04/28(火) 12:15:31 ID:???
以上、第77話でした

セッコの人おかえりアンド乙!
林檎の国に引越しですか。後、荒木神の下敷きとかが嬉しいのは分かるが落ち着いてwww

次回の投下はGWのせいで遅れそうです。
それでは!
339マロン名無しさん:2009/05/02(土) 16:46:06 ID:???
アメリカさん02−

しかし気になったので一点
「うぬ」は一人称じゃなくて二人称だぜ
340マロン名無しさん:2009/05/04(月) 23:37:06 ID:DqPMIrOe
おつあげ
341マロン名無しさん:2009/05/07(木) 06:53:21 ID:???
今更だけどこのクロスかける人は凄いな
プロットすら思い浮かばないぜ俺は
342マロン名無しさん:2009/05/07(木) 16:42:02 ID:???
ハルヒクロスは状況がいろいろと制限されるからな
某ゼロスレと違って時代と環境が制限されるし、年齢幅もそれに適切なものを選ばなきゃならない
その上一般人のスタンドの制約やら独特の一人称視点やらがめんどくさい
ただ一つ言える事は俺は>>341の投下を待ち続けるってことだ
343アメリカの人:2009/05/08(金) 12:31:25 ID:???
第78話 「ビッグ・ジェネレイター 2」

電柱を真っ二つに叩き折る馬鹿力の敵スタンドとの戦いは続いていた。
「ストーンフリーッ!」
『ウェザーリポートッ!』
二人同時に左右のストレートを叩き込む。が、それすらあっさり弾かれた。
『ふん……小賢しいわッ!』
そのまま二人共弾き返されてしまう。
「……真正面からじゃあ勝ち目がねえな………」
『……敵の本体を見つけて叩くのが一番良いが……見つけられそうにも無いな』
「ウェザー………」
『なんだ?』
起き上がったウェザーがこちらに振り返る。
「しょうがない……ここら一帯に攻撃だ……本体をあぶりだす」
『相手は自動操縦型だぞ?そんな事をしても本体にたどり着けるとは………』
「いいからやれ」
『……………』
ウェザーは少し迷った後、
『ウェザーリポートッ!』
と、辺りに凄まじい豪雨を降らせ始めた。
『ぬぐう……こざかしい真似を………』
『奴は止まったようだが……徐倫、こんなものただの時間稼ぎに過ぎないぞ………』
「いや、これでいい……オラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
雨に紛れてこっそり近付き、短いラッシュを叩き込む。
『ふぐっ………』
流石に不意をつかれたのか、今迄いくらやっても効かなかった敵に初めてダメージが通った。
344アメリカの人:2009/05/08(金) 12:33:58 ID:???
「どうやらダメージを与えれたようですね」
古泉だ。……なんでスタンド見えて無いのに分かるんだ?
「ただの勘ですよ。同じ超能力者として通じる所はありますしね」
『とにかくこいつも無敵では無いという事だ』
「ああ……それでもマズい状況に変わりは無いがな」
少しダメージは与えたものの、ほんのかすり傷だ。対して敵には効かないだろうし、ましてや自動操縦型のスタンドにダメージはあまり関係無い………待てよ?
「こいつまさか………」
『どうした……来ぬのならこちらから行くぞッ!』
敵スタンドが一跳びで間合いを詰める。とっさに敵の勢いに合わせたクロスカウンターを放とうとするが、
『止まって見えるわッ!』
ジャンプされてかわされ、そのまま頭の上を飛び越えられ後ろに着地される。……ヤバい。
『ウェザーリポートッ!』
ウェザーがさらにそいつの後ろから不意打ちを繰り出す。が、敵スタンドは襲ってきたウェザーの腕を掴み、そのままあたしに投げ付けた。
「グブッ………」
『ぬぐう………』
『不甲斐ない……今迄我が組織の面々を次々と葬り去ってきた実力がそれかァ!』
「………うるせーな……生憎だがてめぇの能力の正体は見破ったぞ」
345アメリカの人:2009/05/08(金) 12:37:04 ID:???
「徐倫さん?どういう事ですか?」
「あたし達は今迄勘違いをしていたんだ………」
ウェザーと古泉が首をひねる。あたしは説明を続けた。
「あたし達は野郎の本体が見当たらないのと、そのパワーとスピードから自動操縦型だって判断した」
『それ以外無いだろう?一体何を………』
「だけど考えてみろ、奴の動きは精密な上正確すぎる。……不意打ちにも的確な対処をするなんて自動操縦じゃ無理だ」
『だが……奴の本体は………』
「一つあるだろ……本体が遠くにいても正確で精密な動きが出来るのが」
ウェザーと古泉はあたしの言葉で考えこみ、そして同時に同じ結論にたどり着いた。
「『遠隔操作型………』」
「その通りだ。これならスッキリ説明できる」
「ですが、遠隔操作型は本体から離れる程パワーやスピードが下がった筈………」
「………そこに関してはもう一つ考えがある……まだ確定じゃないがな」
『そうか』
「今からあのこの町で一番でかいあのビルに向かう。……あそこに多分本体がいる」
「何故分かるんです?」
「ただの推理よ……行くわよッ!あのスタンドをかわさないとあのビルには行けないぞッ!」
『来るか……返り討ちにしてやるわッ!』
346アメリカの人:2009/05/08(金) 12:39:11 ID:???
「オラァッ!」
向かってきた敵スタンドに右ストレートを放つふりをする、止めようとした敵の関節を取り、動きを封じる。
『ぬぐう………』
『ウェザーリポートッ!』
ウェザーが敵の顎にハイキックを叩き込んだ。流石に効いたらしく、のけぞり、よろめいた。その隙に間をすり抜け、ビルへと向けて走り出す。
『小癪なァッ!』
敵スタンドはその凄まじいスピードで一気に距離を詰めてきた。
『追いつかれるぞッ!』
「古泉ッ!」
先にこっそり移動していた古泉が道の脇からバイクに乗って現われた。
「乗って下さいッ!……3ケツは危ないですからしっかり掴まって下さいね」
『させんッ!』
そう叫んだ敵スタンドは近くのブロック塀を一つ取り外し、凄まじい勢いで投げ付けた。が、
『ウェザーリポートッ!』
ウェザーが凄まじい突風を起こし、勢いを緩める。そして勢いが緩んだ瞬間にあたしがスタンドで叩き落とす。
『うぬぅ………』
敵スタンドは慌てて追いかけてきたが、流石に全速力のバイクには追いつけず、段々と距離が離れていく。
「……ですが奴が遠隔操作型で僕達が本体へと向かっているならスピードが上がって追いつかれる筈ですよ?」
「いや……あたしの予想ではこれからさらに距離が離れるはずだ」
「え?」
347アメリカの人:2009/05/08(金) 12:39:59 ID:???
「奴は普通のスタンドとは逆……本体から離れるほどパワーやスピードが上がるんだろう」
『馬鹿な!スタンドのルールに反しているだろ!』
「ルールは破られる為にある。ルールを逆手にとった能力だ……それ自体が武器なんだろう」
「しかし、何故気がついたんですか?」
「雨だよ……ウェザーが降らせた雨で奴は怯んだ。自動操縦型なら有り得ない……そこで本体はどっかからあたし達を見ながらスタンドを操作してるんじゃないかってな………」
『なるほどな……奴の方向が分かったのは………』
「北に向かうと奴のパワーが上がった……なら本体は南、後は高い場所………というわけさ」
「着きました!ここです!」
たどり着いたビルは入り口が北、東、西の3面に分かれていた。
「別々に行くぞッ!ウェザーはエスカレーター、古泉はエレベーター、あたしは階段で屋上に向かう!」

「ちくしょおおおぉぉぉぉ……気付かれたよおおおぉぉぉぉぉ……どーしよ……あいつらここにも気付いてるのかなあ………あああぁぁぁぁ……
上にどうやって報告しよう……怒られるかなあああぁぁぁぁ」
目的の本体は屋上ですぐに見つかった。てっぺんはモヒカン刈り、頭の右後ろだけを少し伸ばし、その自己主張しまくった髪型とは対照的にファッションはあまりにも地味だった。
「………おい、てめー」
「ヒイヤアアアアァァァァァァァァァ!」
なんと男は声をかけただけで気絶してしまった。
『一件落着……だな』
「……みてーだな」

曾根崎晃司 ビッグ・ジェネレイター 再起不能

To Be Continued・・・
348アメリカの人:2009/05/08(金) 12:41:09 ID:???
見ても見なくてもいい履歴書

曾根崎晃司
O型 2月13日生まれ 22歳
性格 臆病でネガティブ。だが、それを悟られない為に高圧的で自信満々の態度を取る。仮面がはがれるとそうとう惨めに見えるタイプ
好きな食べ物 グラタン
嫌いな食べ物 イカ、タコ
趣味 ジグソーパズル、自慢話

ビッグ・ジェネレイター
パワー A(最高時) スピード A(最高時) 精密動作性 A(最高時)
持続力 B 射程距離 A 成長性 C
能力 遠隔操作型のスタンドであり、本体から離れる程パワーやスピードが増す稀有なスタンド。近距離では普通の人間と殴り合っても勝てない程弱い。
349アメリカの人:2009/05/08(金) 12:46:28 ID:???
以上、第78話でした

スタンド名の由来はイエスのアルバム「ビッグ・ジェネレイター」から

>>339さんご指摘ありがとうございます。言われるまで気づかなかったorz
今後は文法に気を付けないとな……

それでは!
350マロン名無しさん:2009/05/09(土) 03:47:01 ID:???
>>349
アメリカの人乙です


>>342
今から必死でプロット練ってみる、ニートの底力見せてやるぜ
351マロン名無しさん:2009/05/09(土) 12:29:31 ID:???
アメリカの人乙!
そして>>350に期待
352セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/05/13(水) 22:59:13 ID:???
アメリカさんおつー
修正あるならしておきましょうか?

前途有望な>>350が居ると聞いて駆けつけてきましたどうもセッ子です
セッ子の使ってないプロットとかいるならプレゼントフォーユーしますけど?

いりませんよね(´^ω^`)
やっぱりプロットは自分で立てないと面白くないもんね

さぁやるか
353セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/05/13(水) 22:59:56 ID:???
手を伸ばせば届きそうなのに。
それは儚く燃え尽きてしまう。
どうして?
降り注がせられる事ができるだけじゃダメなんだ。
もっと近く。
もっともっと近く!!

不意に。
後ろの方の茂みを揺らす音が聞こえてきた。
誰だ?
「ここだぜ!!」
「本当かよ……」
振り返るとそこには見た事の無い青年となぜか二足歩行をしているモグラが居た。
「ん、おいアンタ。こんな所で何してるんだ?」
青年の方が俺の方に近づいて来る。
どうしてここが分かったのかは知らないが、この状況は考えものだな。
「……こんな所まで何の用だ?」

act13―今にも流れ落ちそうな星空の下で
354セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/05/13(水) 23:01:33 ID:???
セッコの鼻を頼りに流れ星の落ちたと思われる場所まで歩いて来てみたはいいが。
まさか先客が居るなんてな。
空を見上げていた先客は声をかけると、眠いのか死んだ魚のような眼でこちらに向き直った。
「……こんな所まで何の用だ?」
明らかにお呼びでないと言った雰囲気を醸し出しているが、何か邪魔でもしたか?
もしそうなら相手方に悪いので手っ取り早く用件を済ませてしまうか。

……流れ星が落ちてきたか、と聞いたか。この子は。
阿呆なのか。この子は。
もし落ちてきているなら私がこの手でつかんでいるはずだ。
それを何を言っているんだ。
「流れ星なら空だよ、落ちてくるわけ無いじゃないか」
「で、ですね。おかしなこと聞いてごめんなさい」
「分かったならとっとと帰ってくれ、こう見えて結構忙しいんでね」
そう、私にはやらなければならない事がある。
星を意のままに降らせる能力まで手に入れたのだ。
もっと近づく。この手に掴むのだ、星を。
「分かりました。セッコ、帰ろう」
青年はそのままモグラの手を引いて家へ帰ろうとする。
しかしモグラは動かない。
何かに脅えているのかとも思ったがそうでもないみたいだ。
どちらかと言うと、睨みつけていると言った感じか。
「オイ」
そしてモグラが声を上げる。
355セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/05/13(水) 23:02:49 ID:???
最近のモグラは喋るのか、生物学には疎いがまさかここまで進歩しているなんてな。
しかしモグラが喋ろうとミミズが空を泳ごうと今の私には関係ない。
「どうしかしたかい。まだ私に何か用が?」
モグラは一度大きく鼻をひくつかせるとこちらを指差した。
「テメェ、スタンド使いだな」
スタンド使い。聞かない単語だ。
まあ学者と言うのは、専門分野の学は多いが専門分野外の話をされると結構弱いものだ。
私も多少の学があると自負しているが上述した通り、専門分野は天文学のみ。
もしかしたらスタンド使いと言うのは生物学的な何かかもな。
しかし気になるのは『私がスタンド使い』という点だ。
私は流れ星を呼べるという点以外は何処にでもいる一般人だ。
これは変えようのない事実だし無理に変えようとも思わない。
では、スタンドとは?
「なんとか言ったらどうだァ?」
モグラが首を回しながらドスを効かせて呟く。
モグラにしては偉そうだな。そういう種類なのか?
「お、おいセッコ。お前なんて事を……」
対して青年はモグラをなだめる様に体で抑え込む。
研究者か、とも思ったがそれにしては若すぎる。被験者か?
「スタンド、と言うのがよくわからないが、なんの根拠があって私を『スタンド使い』と呼ぶんだ?」
「気にしないでください!こいつちょっと頭がアレで!!」
頭がアレ、と言うのは悪いってことなのか。それとも突拍子もない事をいう癖があるってことなのか。
どちらにしてもモグラに知性を求める方がおかしいと思うが、それはやっぱり価値観の違いって奴だろうな。
「ウルセェ!離せキョン!!コイツぜってースタンド使いだって!!」
「お前少し黙れ!!」
やれやれ、漫才につきあってる時間は無いんだがな。
356セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/05/13(水) 23:04:05 ID:???
いきなり何を言い出すかと思ったら、まさか初対面の人間をスタンド使い呼ばわりするとは。
コイツも疲れてるのか?
「じゃあ聞くけどよ!何で隕石の落ちた場所にコイツ何時間もいんだよ!」
そんなこと分からないでしょうが!
「……待て」
ほら、あの人も怒ってる。
「そこのモグラ君は何で私がここにずっと居ると知ってるんだ?」
予想外の展開だ。
まさかセッコのあてずっぽうが当たるとは。
「あてずっぽうじゃねェよ。言っただろ、オレはいつでもロンリテキなんだよ」
そういえば、セッコは事スタンド絡みの事に関してはまるで人が違ったように勘が働いたっけか。
「最初に言ったように臭いの元はここ。コレに間違いはねェの。なんてったってオレの鼻だし」
確かに、こいつの鼻は信頼に値する。それはこの前のサッカーの件で証明済みだ。
「それに足跡だ。暗くてキョンにゃ見えねェかもしれねェが、この辺りメチャクチャ足跡残ってんだ。しかも靴の型は一緒のなァ」
言われてみれば地面に窪みがあるような気もするが……足跡なのか、これ?
「おう!古い足跡と新しい足跡の見分け方だがよォ」

なんかごちゃごちゃ言ってるが多分これは人の受け売りだろうな。
胸を張ってかたことで説明を続けるセッコの言葉をテキトーに受け流す。
「それによォ、上、見てみ?」
出し抜けに掛けられた声に導かれて、先ほどから光を落としている空を見上げてみる。
別にいつもと変わりない。
「な、おかしいだろ?」
なにがおかしいかわからないな。別にいつも通りだ。空にはいつものように月があるし星だって見える。
「さっきまで流れ星がいっぱいだったのによ、コイツと話しだしてからぱったりと止んだんだ」
……なに?
そういえばそうだ。先ほどからまったく流れ星が流れていないな。
「つまりコイツが流れ星を降らせてた。さっきオレの事モグラって呼んでたしなァ。
やっぱりコイツがスタンド使い。能力はァ……信じらんねェが、星を降らせるって所だ」
またトンデモ理論だが、一応筋は通ってるな。
しかし、星を降らせる能力って。そんな無茶苦茶な。
それが本当ならスタンドってマジに何でもありだな。
357セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/05/13(水) 23:04:50 ID:???
成程。流れ星を呼び寄せるこの能力が『スタンド』か。
スタンド、stand。
英語は得意ではないがこの場合用法としては『stand a chance(チャンスがある)』ってところか。
文字通りこの能力はもたらしたわけだ、私にチャンスを。
しかし。思はず口元が緩む。まさか本当にそんな能力がついていたとは。
信じていなかったわけではない。しかし、学者と言う職業上そんな非現実的な事信じられるわけがない。
しかしそれではおかしくないか?
私の願いは星に近付く事。星に触れる事。なのにその願いが叶う予兆もない。
チャンスを与えるだけなのか?それではこんな能力が与えられている意味が分からない。
神の悪戯、あいにく神を信仰する趣味は無い。
人間の進化、私の知り合いにはこんな力を持った人間はいない。
プラズマ、プラズマなんかじゃ説明がつかない。
では、では、では。
「オイ、聞いてんのか」
いけない。声を掛けられていたのに気付かずにに考え込んでいたようだ。
何の用だろう。
「星を降らせるのヤメロ」

―何を言ってるんだ、このモグラは
「素人が暴れまわるとロクな事がねェからな」
―私からこの力を奪おうと言うのか
「能力が目立ちすぎるしな」
―星に近づくための、この力を?
「いやだッつゥーんならこっちにも考えがある」
―ふざけるな。お前に、お前達に何の権利があって私から『スタンド』を奪おうとする
「ここで大人しく聞いておいた方が……」
―ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな

「ふざけるなァッ!」
天を刺す指は星を衝く。突き出した指は敵を衝く。
流れ落ちるは煌めく星屑。
今度の流れ星はいつものように私の方へ向いながら、モグラの右肩に大きな抉り傷を残した。
358セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/05/13(水) 23:06:45 ID:???
なにが起こったんだ?
セッコが星を降らせていた(と思われる)人に星を降らせないよう頼んだのまでは覚えている。
そして……
時間が経つに従い、記憶もはっきりしてくる。
そうだ、セッコが頼んだ時。男は叫んだんだ。「ふざけるな」と。
叫んだだけじゃなかったな。叫びながら空を指差し、その後セッコにその指を向けたか。
そして?
その後、セッコが弾かれたバネ仕掛けの玩具のように前方に吹き飛び、今に至る。
「なんでだ?」
白衣を着た男が眼鏡を持ち上げ、こちらに声をかける。
「何故お前達は私の『夢』を邪魔しようとする?」
襟元を正し、こちらを睨みつける。射殺す事もできそうなほどに鋭い視線だ。
しかし邪魔?どういう事だ。俺もセッコも星を降らせるのをやめてくれと頼んだだけじゃないか。
「それだよ」
男の腕がぶれ、足がぶれ、男の内側からもう一体の何かが表れる。
糸を束ねたような細い四肢をしたそれはくねくねと体をうねらせながらその全身を現した。
「どうしてお前達は私が星に近づこうとするのを邪魔するんだ!?」
つまり、この人はこの能力を使い続けたいから、声を荒げたのか。
やれやれと呟きたいがそんな状況ではないだろうな。
なんてったって目の前の男の目には冗談や茶目っ気なんて言葉は含まれてないんだから。

「ようやく見せたな、本体をよォ……!!」
モグラが立ち上がる。意外としぶといんだな。やはり腐っても野生生物ってとこか。
本体、と言うのはこの横に立っているしらたきのお化けみたいなやつか。
何の本体かはわからないが話の流れから考えれば『スタンド』の本体、超能力の実像と言った所か。
ためしに右腕を動かそうとしてみる。
思った通りだ。私の考えに従ってしらたきのお化けは右腕をうねらせた。
「まるで茹ですぎたパスタだなァオイ!気持ち悪いったらありゃしねェ!!」
うるさいモグラだ。こういった手前は一度懲らしめておくべきか。
しかし。今の一撃でいい案が浮かんだ。
なんだ、少し考えれば分かる事じゃないか。
口の端が自然と持ち上がり、私の顔には十五夜の満月にも劣らない綺麗な三日月が現れた。
359セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/05/13(水) 23:09:04 ID:???
セッコが立ち上がり、いつものように自信過剰な減らず口をたたく。
しかしそれが口先だけの物だなんてまったくもって一目瞭然。
なぜならセッコの肩は先ほどの音の所為で大きくえぐれてるんだからな。
できる事なら神父を呼んできて一気に勝負をつけたいが、今背中を見せれば俺の体がレンコンの親戚になる事間違いなしだ。
どうすればいい?考えても答えなんて出てくるわけがない。
現実って言うのは学校のテストじゃないんだ、答えが存在すると考えるのが甘いってもんだ。
じゃあ何を探すか?これは単純。最善策を探せばいい。
ここでの最善策はきっと男を倒す事だろうが、怪我を負っているセッコと一般人程度の力しかない俺には荷が重いなんてもんじゃないさ。
だったら逃げるか?逃がしてくれるんだったら裸足で逃げ出したいよ。
でもそんなのこの状況じゃ賄賂詰んだって許されないさ。賄賂できるようなもん持ってないしな。
「そう、簡単なことだ」
男は指を天に向けにこやかに微笑む。その笑顔だけを見ればまるでいつぞやのハルヒをそっくりだ。
しかし、その目は笑っていない。
ドブ川のように濁り切った眼だ。まるで心の奥底に渦巻く漆黒の意志が映し出されたような瞳。
「星が燃え尽きてしまうなら、燃え尽きる前に止めてしまえばいい」
見覚えがある眼だ。この眼は確か、そう。
「他人の肉体でワンクッションおけば、簡単に星を掴む事が出来る!!」
放課後の教室で朝倉から向けられた、初めて神父と出会ったときに教会で神父から向けられた。
「星を掴み、私は」
あれは間違いない。『自分の願いを叶えるために死んでくれ』って眼だ。
「私は!」
男が指を振りおろす。指が捕らえるのは。
「私はこの地球で星に一番近い男になるんだ!!!!」
指は真っ直ぐに俺の方を向いていた。
氷水に神経を浸されたような感覚が俺の体の自由を奪う。
駄目だ、このままじゃ。焦る気持ちとは裏腹に手足はまったく言う事を聞かない。
逃げなければ死ぬ。そんな状況でも俺は腰を抜かせてガタガタ震えている事しかできないのか。
木々に何かが衝突する音が聞こえてくる。動かなきゃ死ぬぞ、死ぬんだぞ!?
しかしやはりというべきか、一高校生の俺に恐怖を乗り越えられるわけもなく。
俺は横からの強烈な力に身を任せた。

to be continued…
360セッ子  ◆1gAmKH/ggU :2009/05/13(水) 23:09:45 ID:???
以上。投下終了。
敵視点から書くのもジョジョらしさと思う今日この頃。

投下する人が増えるとスレが活気づくからバンバン投下してくださいね。

ん、待てよ……
投下する人が増える、スレが活気づく……?
人の目に止まりやすくなる、スレが賑わう、容量落ちが早くなる……
容量落ちする?1000行ってないのにスレに書き込めなくなる、か。
スレが止まる、スレの時が止まる……
『時』が止まる!
分かったぞ花京院!(ry

ふぅ。
それでは、拙い文章ですが何かあれば。
361マロン名無しさん:2009/05/13(水) 23:12:59 ID:???
投下乙です
このスタンドはプラネット・ウェイブス?
362マロン名無しさん:2009/05/13(水) 23:27:19 ID:???
初めてのリアルタイム。
363アメリカの人:2009/05/15(金) 14:36:37 ID:???
第79話 「未来からの第4指令」

涼宮が突如言い出した不思議探索の土曜の午後。俺は長門に図書館に居るよう頼み、あらかじめ待ち合わせしておいた朝比奈と合流した。
「こ……こんにちは………」
「朝比奈……なんだその格好?」
朝比奈は帽子を深く被り、マスクとグラサンをしたいかにもな怪しい人物になっていた。
「もー……アナスイ君じゃないですか、変装して来いって言ったの」
そういえば言ったな………だが、そういう事じゃない。
「あれは目立たない格好って事だ……そんなんじゃ目立ちすぎるだろ?帽子以外取れ」
「………はい」
が、朝比奈は取ろうとしない。何故かモジモジしている。
「どうした?」
「あ、いえ……何でもないです………」
が、そう言いながらやはり取ろうとしない。仕方ねえ………
「ほれよ」
朝比奈のグラサンを取ってやる。
「ひ、ひゃうッ!」
「わ、悪い……驚かせたか?」
「そ、そそそ、そんな事無いです!むしろ上手くいって嬉し……な、何でも無いです!」
そう早口で喋った朝比奈は慌てた様子でマスクをとった。……なんなんだこれ。気のせいか周りの奴がなんだかニヤニヤしているようだが……うん、多分気のせいだ。考えたら負けだ。
364アメリカの人:2009/05/15(金) 14:38:11 ID:???
「確か夕方までに指示された橋の植え込みに行けばいいんだったな」
「はい……ちょっと時間ありますけどどうします?ちょっと商店街にでも………」
「あんまり動かない方がいいと思うがな」
「ふぇ?なんでですか?」
朝比奈はキョトンとした様子で首をかしげる。
「涼宮や今の時間のお前に会ったら不都合だからだよ」
「あ、それなら大丈夫ですよ……何処を周っていたかは覚えてますから」
「………ならいいが」

朝比奈の提案により夕方の指定された時間になるまで俺達は商店街でウィンドウショッピングをしていた。あるお茶っ葉を朝比奈は買いたがったが、金を持っていない事に気が付き、諦めていた。
「………ハァ………」
「まだ言ってんのか」
「だって、あのお茶っ葉すごく良かったんですよ………」
「ま、金がねえんじゃ仕方ないだろ……商店街も出たんだし諦めろ」
「……うぅ……でも………」
仕方ねえ、ほんとは黙っておこうと思ったが………。
「しょうがねえな……やるよ」
俺は朝比奈が欲しがっていたお茶っ葉を懐から取り出した。
「え?え?アナスイ君……それ一体………」
「午前に買ったんだよ。お茶切らしてたからな……やるよ」
「で……でも………」
「別にお茶が無くても俺は構わねえからな、遠慮すんな」
「……ありがとうございます!」
365アメリカの人:2009/05/15(金) 14:39:04 ID:???
指定された花壇に到着した朝比奈は、早速植え込みをあさり始めた。
「……アナスイ君?なんでしないんですか?」
「………いや、なんていうか……恥かしくないか?」
「そうですか?」
朝比奈は平気そうな顔をして答えた。うーむ……普段はどんな小さな事でもかなり恥ずかしがる奴のはずなんだが……よく分からんな。朝比奈一人に任せておくのもなんなので、俺も横に座って手伝い始める。
「……見つかったか?」
「いえ、ありません……そっちはどうですか?」
「いくら探してもねえぞ……ダイバーダウンで中も探ったが無い」
「おかしいですね………」
「未来の上役が間違えたんじゃねえか?」
「そんな事有り得ません!」
いや、上役は未来のお前だから十分有り得るんだよ……とは流石に言えなかった。そんな事を話していたせいだろうか。俺はそいつが後ろに来るまで気がつかなかった。
「下らないな……そんな不確定な物を信じているのか?お前らは」
突如聞こえた声に慌てて振り返る。そこには一人の男がいた。年の頃は20代。イケメンといって差し支えないが、世の中を馬鹿にして見下しているような表情で台無しだ。
何となく、古泉がグレたらこういう感じになるんだろう、そう思った。
「未来に振り回されている気分はどうだ?」
「てめぇ……朝比奈と同じ………」
366アメリカの人:2009/05/15(金) 14:40:13 ID:???
その時、俺は男が何かを持っている事に気がついた。
「てめぇ、それはなんだ」
「君達が探してた物だよ」
「返しやがれ!……返さねえっつうんならそれなりの考えもあるぜ?」
「返すに決っているさ……こいつは僕達にとっても必要な物だ……ほらよ」
その男はそう言うと手に持っていたメモリースティックを投げてよこした。慌てて朝比奈がキャッチする。その弾みでお茶っ葉入れが懐から転げ落ちた。
「なんだこれ?………ただのお茶っ葉か……ふん、下らないな」
男はそう言ってそれを投げ捨てた。
「しかし君は下らなく感じないのか?未来にいい様に操らタワバッ!」
俺は男が話しているのを遮るようにダイバーダウンで殴った。突然殴られた男は右ストレートがクリーンヒットし、受け身もとれずに無様に倒れた。
「お前……何をする!」
「うるせぇぞ……なんなら今からてめぇを拷問して未来の情報を聞き出してもいいんだが?」
「俺が聞いてるのはそんな事じゃない……何故いきなり殴る」
「お茶っ葉だ」
「………ハ?」
「てめぇ今朝比奈のお茶っ葉を放り投げただろ?そのお礼だ」
「………フン……済まなかったな」
男は嫌そうな顔をしながらお茶っ葉を拾い、口先だけ謝りながら朝比奈に渡した。
「せいぜい足掻いてるんだな………」
男は見事な捨て台詞を吐きつつ、ふらつきながら何処かへ去っていった。
「あれはお前とは別の勢力の未来人か?」
「はい……そうです」
いけ好かない野郎だ。……やっぱもう2、3発殴っとけば良かったな。
「あの……アナスイ君……ありがとうございます」
「………別に」
「フフッ……照れ屋ですね、アナスイ君は」
「………照れてねえよ」
俺はこの時、黄金色の夕日を見ながら、この不思議探索もそう捨てたもんじゃないと、初めて思った。

To Be Continued・・・
367アメリカの人:2009/05/15(金) 14:43:24 ID:???
以上、第79話でした

セッ子の人乙!修正の件ですが、いずれwikiに載せるときにでも自分でしておきます。
提案ありがとうございました。

>>350乙!wkdkしながら待っとくぜ!

それでは!
368マロン名無しさん:2009/05/16(土) 00:44:01 ID:???
アメリカの人 乙です!藤原ざまぁwww
369マロン名無しさん:2009/05/19(火) 00:00:02 ID:???
未来に帰って
「オレ外へ歩 歩 」
バギョン
ひでえ・・・人間の肉体を改造して罠にしてる・・・・
ですね。わかります。
370マロン名無しさん:2009/05/24(日) 13:45:52 ID:q4ZPvgHF
あげ
371セッ子:2009/05/27(水) 23:04:02 ID:???
めんどくさいからトリを外してやったぞ!!
ふはは、これでもう誰だかわかるまい!!

寝坊した腹いせに猛スピードで書き上げた
矛盾?文法ミス?何それうまいの?
372セッ子:2009/05/27(水) 23:05:14 ID:???
冷たい。
口の中に鉄の味がひろがっている。どうやら頬の内側が傷ついているらしい。
だが、それ以外に痛みは感じない。
生きてるのか、俺。
「オイ、オイキョン!無事か!?」
馬乗りの状態でセッコが俺の上体を揺らす。
どうやら生きているようだが、セッコが俺の体を揺するために掴んでいるのはあろうことか俺の首。
このままじゃせっかく助かったのにセッコに殺されちまう。真っ青な顔で文字通り必死に俺を掴む腕をタップする。
「ん、おお。起きてたのか」
起きてたのかじゃないだろ、ったく。何が悲しくてお前に殺されかけなくちゃならんのだ。
「ああ、つい昔の癖でな!!」
もし死んでたら謝って済まされないぞ、これ。
そう言って首を絞めていた手を払いのけ、立ち上がる。幸い内頬以外に傷は無いようだ。
その傷ももうほとんど塞がっている点を考えると、そんなにひどい傷でも無かったらしい。
傷の酷さでいえばどう見てもセッコの方が上だ。コイツ、あんなに右肩が抉れてて大丈夫なのか?
「そこが一般人とギャングの違いって奴だ!!」
セッコは嬉しそうに胸を張るが、今はそのいつも通りの自信過剰ささえむなしく見える。
能力のスケールが違いすぎるのだ。こちらと向こうでは。
流れ星を敵に当てる能力、射撃能力ってだけならまだサッカーの時と五分五分レベルだ。
しかしその弾丸の大きさと正確さ、そこから換算される威力はそれの5倍はいってるだろう。
対してこちらの能力。
セッコの泥化があるが、あれは意識外からの攻撃に対してはほぼ無意味と言える。なぜなら泥化をするしないはセッコの意志一つだからだ。
俺についてはスタンドの像は見えるもののそれだけ。神父やセッコと特訓(という名の虐待)を受けたが片鱗も見えてこない。
腕の像だけでも出そうと必死になろうと手には少し汗が浮き出るだけだ。
つまり、あれだ。センスがないって奴だろう。
そんな手も足も出ない状況でどうやって勝つって言うんだ。神でも味方につけるか?
そいつぁ出来ない相談って奴だ。なんてったって神様はここに呼んじゃあいけないんだからな。
373セッ子:2009/05/27(水) 23:06:13 ID:???
俺がこの状況を打破する手をあれこれ画策しても、命のやり取りの経験の無い俺には最善策なんて思い浮かばない。
セッコに聞いたところで『敵をぶっ殺しゃあ勝ちじゃねェか!!』とか言うだけだろう。
つまり、こうやって考えている時間は。
「まったく、逃げないのなら避けないでくれればいいのに」
無駄だったって事だ。
振り向かなくても分かる。さっきの白衣で眼鏡のキチガイだ。
どうする、今から逃げるか?
駄目だ、あいつの視界の中に居る限り俺達は隕石に狙われている。あいつが合図を出せば一発でおジャンだ。
戦うか?勝機が見えないのに戦いに行くなんて愚の骨頂だ。
じゃあどうする、死ぬか、ここで。
「オイオイ、自分から接近してくれるとはなァー。感謝するぜ、まったくよォ!!」
セッコはすぐに声のした方に拳を突き出す。しかしいつものような鋭さや速さがその一撃には感じられない。
案の定、白衣の男のスタンドによって弾き落とされてしまう。
「足りないなぁ……」
そのまま男のスタンドは逆の手を引き上げ。
「圧倒的に、速さが!!」
傷ついたセッコの肩目掛けて腕を振り下ろした。
セッコが漫画やらアニメやらの主人公ならここでカッコよく敵の攻撃を避けるんだろうが、現実はそんなに甘くない。
敵の振り下ろした一打はもろにセッコの傷跡を抉る。
「ッッつあァァァア!!」
耳をつんざくようなセッコの悲鳴。
3センチほど抉れているんだ、神経に直に触れられた可能性が高い。
セッコの悲鳴を聞きながら、男は嬉しそうに腕を上にあげる。予備動作だ、あの男が隕石を呼ぶ時の。
危ない、何とかしなければ。
「心配するな、殴りかかってこない所を見ると君は『スタンド』とやらを持っていないのだろう。このモグラ君を始末した後にゆっくり料理してやるさ」
絶体絶命ってこういう時に言うんだろうな。
男が腕をセッコの方へ向けようとする。セッコはまだ右肩を押さえたままの状態だ。
もう間に合わない。
374セッ子:2009/05/27(水) 23:07:32 ID:???
計算通りに行くと思っていた。
モグラが動くまでは。
「ッ痛ってェーーーだろォが糞野郎ッ!!!!」
そう言って地面についていた右手で私に泥を投げてくるモグラ。やはり弱った右腕ではそれが限界か。
しかし、それをただの泥と見たのが私のミスだった。
うまく操れるようになった『スタンド』の左腕で私の顔へと迫ってくる泥を弾き飛ばそうとする。
が。
弾こうとしたスタンドの左腕に泥が纏わりつき、そのまま私のスタンドの胸と左腕を接着する。
どういう事だ。先ほどまで泥だったはずなのに、今私の胸元では泥は土、というよりは岩と同じほどの強度になっている。
つまりあのモグラは土の高度を変える事が出来るのか。しかし、そんなクズみたいな能力では私の夢は。
『一手、遅レタナ……!』
聞こえてくるのは、新しい無機質な声。と同時に背後からの強烈な一撃が私の体へと叩き込まれる。
どういう事だ、モグラと青年以外にもまだ私の夢を邪魔しようとするやつが居たのか。

もう駄目だと俺が覚悟を決めた瞬間、神は手を差し伸べた。
『一手、遅レタナ……!』
眼鏡の男の後ろから聞こえる、聞き覚えのある無機質な声。まるで、シューシューと唸る蛇のような声。
声と同時に眼鏡の男が俺とセッコの間を通り、俺達の後方へと吹き飛んでいく。
「セッコ君の叫び声を頼りに来てみれば、どうやら丁度良い瞬間だったようだね」
見覚えのある黄色と黒の警告色の大男とその傍に闇に溶け込むように佇む黒の聖人服。
神様は俺達を見捨てなかった。こうして神の忠実な使いである神父をここまで引き寄せたんだからな。
これが神父の言っていた『運命』やら『引力』という奴なのかもしれない。
ちょっと神を信仰したくなるな、この瞬間の救世主は。
「気をつけろ、神父!!どっかに隕石が着弾するはずだッ!!!!」
左手を地面に付いていたセッコが神父に警告を出す。
そうだ、あいつの攻撃はもうセット状態に入っていた。発動していてもおかしくない。
「隕石、それが能力」
そこまで言って、神父の言葉は止まる。隕石は綺麗に着弾した。
神父の太ももとセッコの脇腹を抉って。
375セッ子:2009/05/27(水) 23:08:21 ID:???
どういう事だ。
確かにあいつの能力は隕石を呼ぶ能力。ここまでは変わらない。
しかし今の軌道、もし眼鏡があの場に残っていたらあいつの太ももを抉っていた事になる。
そんなことがあり得るのか?自分を傷つけるスタンド能力なんてものが。
……違う、今はそんな事を考えてる場合じゃない。
神父は右太股をかすめただけだがセッコは先ほどまでの右肩の負傷に加え、右脇腹にも傷が増えた。
パッと見で分かる。脇腹の方は致命傷だ。
「ここまで強力なスタンドとは。こんな場所で、想定外だった」
そうだ。まさかここまでのスタンド使いだなんて誰が予想できた?
セッコはもう駄目だ、ここから動かそうとすれば失血死しちまうだろう。
俺は、ガタガタ震えている事しかできない。頼みの綱はもう神父だけ。
神父の能力ならばなんとかなるだろうが、それでも、奴に接近するまでに撃ち殺されてしまったら終わりだ。
「ハルヒ君たちを帰しておいてよかった。ここに来られていたら色々と厄介になっていただろうからな」
そいつはありがたい。やっぱりあんたは頼りになる。
しかし今は目の前の敵について考えてほしかったな。
「そうだな、死んでしまって天国に向かえなくなったら困る」
……こいつ、死なずに天国へ行く気なのか?
違う、それは今は問題じゃない。敵なんだ、敵を倒さなければ。
まず、なにを伝えればいい?
能力、これはいい。スタンド像、必要ない。本体の情報、なに一つ分かってない。
能力発動の時の状況か。必要なのは。
「敵を指差して流れ星を流す、か。軌道についてはなにも?」
ああ、分からない。
「そうか。まぁ、そこまで分かっていれば対策のしようがあるさ。もしそれが」
「それが本当に信じられる情報なら、か?」
どうやら、俺達が焦っている間に向こうは体勢を立て直せてたようだ。
376セッ子:2009/05/27(水) 23:10:00 ID:???
「遠くへ行くとモグラ君の能力は効力を失うのかな?」
グジュグジュという夜露を浴びた草を踏みしめる音がいやに大きく四人の間に響く。
「それとも、致命傷……いや、モグラ君の意識が飛んだら消えるのかな?」
中指で眼鏡を持ち上げ、ゆっくりとこちらとの距離を詰める。
神父が俺の腕を掴み立ち上がらせる。足は震えているが問題はなさそうだ。
「さぁな。そんな事は関係ない。大切なのは、『お前は私の友人を傷つけた』ってトコだけだ」
「モグラが友人、寂しい男だな君も」
膝を付き、男を見上げていたホワイトスネイクが立ち上がる。
男は指で天を突き、神父の方を見据える。
一目では分からない二人の臨戦態勢。
距離にして十メートル弱。勝負は一発だ。
一発が大きい分、当たってしまえば男の勝ち。しかし男の一撃を避けられさえすれば神父の勝ち。
神父の目が細くなる。大丈夫だ。神父は頼りになる男だ。
きっと神父が何とかしてくれる。

「ホワイトスネイク!!!!」『RUUUUOHHHHHHH!!!!』
「降ってこい、流れ星ィィィィ!!!!」

ホワイトスネイクが走り出す、と同時に男の指が神父の方を突く。
タイミングはほぼ同じ。神父の方が若干速かったはずだ。
神父は同時に男の指の直線状から逃れる。

飛来する隕石は、神父に。

当たらなかった。
『RUUUUUUUUOHHHHHHHHHHHHHHHHH!!!』
そのまま、ホワイトスネイクのラッシュが男の胸倉に叩き込まれ、勝負あり。
377セッ子:2009/05/27(水) 23:11:48 ID:???
「フフフ」
どう、なってるんだ。
「惜しかったな。もし最初に出会った時の私なら、今ので負けていたさ」
なんで男が立っているんだ。
「誰が、一回の予備動作で呼べるのは星一つと言った?」
なんでホワイトスネイクが膝をついてるんだ。
「そもそも、予備動作が必要なんていつ言った?」
なんでホワイトスネイクの右胸と腹に穴があいてるんだ。
「この勝負、私の勝ちだ」
神父が血を吐いて倒れる、胸と腹に隕石が突き抜けたような跡を残して。
やられたのか、神父が。あのエンリコ・プッチが
「さて、君一人になったな」
俺一人?そんなはずない。
セッコが助けてくれるはずだ。
「モグラ君は放っておけば数分で失血死」
神父だって助けてくれるさ。
「モグラ君のお友達は胸と腹の穴。助かりようもない」
長門がいる、古泉がいる、朝比奈さん、ハルヒ、皆が助けて。
「一人ぼっちじゃ寂しいだろう。すぐに二人の元に送ってやるさ」

星が二度瞬き。
俺の胸、腹を貫いた。
378セッ子:2009/05/27(水) 23:14:07 ID:???
さて、邪魔ものは始末した。
しかし。
「やはり、流れ星をこの手に取る事は出来なかったな」
まぁ、二人と一体じゃあ足りないだろうとは思っていたし、ある意味予定調和だ。
死体を傷つける趣味はないし、他の人柱を探すか。
そういえば、あのモグラ君の友人は誰かを帰してきた、と言っていたな。
「という事はそいつらはまだ近くに居るはずだな」
狙うならそいつらだ。
名前は確か……ハルヒ、だったか。

急速に体温が下がっていく。
心臓への直撃は無かったが、肺の下の方が吹っ飛ばされてしまったようだ。
息が苦しい。
もう駄目だ。
こんな事なら、あの時、動かずに待っていればよかった。これが所謂やぶ蛇なんだろうなぁ。
飛び出てきたのは蛇じゃなくて隕石だったがな。
もうこんな皮肉に笑ってる余裕もねぇよ。
「―――――流れ星――――――」
男が何か言っているが、もう耳には入ってこない。意識がもうろうとしてきた。そろそろ俺も終わりか。
今度はもうちょっと平凡に。
「――――ハルヒ―――――」
なんだって?
まさかコイツ、俺達だけじゃなくてハルヒまで狙おうっていうのか。
自然と指先に力がこもる。まだ力がこもるなんて自分でも驚きだ。
このキチガイ眼鏡には分からないかもしれないが、あいつは死んじゃならない存在なんだ。
傷口が疼く。触れた夜露の冷たさを打ち消すように急速に熱が回りだす。
脳内を駆け巡る脳内物質、β-エンドルフィン、チロシン、 エンケファリン、バリン、リジン、ロイシン、イソロイシン。
そして浮かび上がる。

涼宮ハルヒを守る、守り抜くための、俺のイメージ。
379セッ子:2009/05/27(水) 23:15:11 ID:???
今、はっきりと分かった。なんで俺がスタンドを使えなかったのかが。
甘えてたのさ、自分の境遇に。
どんな敵が来ようときっと誰かが助けてくれる、心の中でそう思い込んでた。
現に今まで、長門に助けられ、古泉に助けられ、セッコに助けられ、神父に助けられ。
俺は震えて見てるだけで十分。でも、それじゃあいけないんだ。
あいつの事だ、どうせこの先も厄介事に巻き込まれる。
こんな風にスタンド使いが絡んで来る事もあるだろう。
もしも誰もいない状況でハルヒが厄介事に巻き込まれたらどうするんだ?
誰も助けてくれなかったからって諦めるのか?傍に長門やセッコが居なかったからってそいつらを責めるのか?
そうじゃない。俺が守りゃあ良いだけの話じゃないか。
気付けば、手放そうとしていた意識は先ほどよりもはっきりとしている。
そうだ。その時にハルヒを災難事から守るのは長門でも、セッコでも、神父でも無い。俺だ。
粉々だったイメージが一点に集まる。小さな粒は頭を作り、握った拳に像が重なる。
身体の奥底からふつふつと力が湧きあがってくる。体中に血と微粒子のように小さなイメージの群が巡る。
隣に膝をつく何者かが腕を突き、立ち上がる。痛みは感じるが、もう傷口は塞がっていた。
別に不思議な事じゃない、これが俺の能力。言葉では言い表せないが、心で理解した。
俺の腕とは違った腕に引かれ、立ち上がる。恐怖は無い。
今俺の心にあるのは覚悟だけだ。
誰の助けも借りられないこの状況から奴に勝たなきゃあ、守れるわけない。
有り体に言えばこれは俺の節目。助けられる側から助ける側への。
こいつを乗り越えなきゃ平穏な生活なんてない。なんてったって世界が崩壊するんだからな。



act14―awaken(目覚め)



to be continued…
380セッ子:2009/05/27(水) 23:22:01 ID:???
投下終了です

途中から悪乗りしてるのが分かる文章
悪乗りついでに鷲巣様のAA貼りたかったけど自重しますね

そういえば、書いてて何だけどキョンスタンド発現って良かったのかな?
他の作品見てもあんまりそういうの無さそうだし
主人公補正入る上にスタンド使いとか、もうね

それでは拙い文章ですが何かあれば
381マロン名無しさん:2009/05/28(木) 08:04:36 ID:???
セッ子さん乙です!
この能力はまさか…!
382マロン名無しさん:2009/05/28(木) 12:02:34 ID:???
自分の傷口を塞いだ?
……まさか黄金が目覚めるのか?
383マロン名無しさん:2009/06/01(月) 03:24:58 ID:P8GXbF+Q
支配してやろう!!SOS団をぉ!!!!
384マロン名無しさん:2009/06/01(月) 11:03:59 ID:???
私はただ平穏に暮らしたいだけなんだ
なのにあの涼宮とか言う糞餓鬼はッ!
385マロン名無しさん:2009/06/01(月) 11:47:04 ID:???
もし吉良がハルヒに見込まれて、SOS団の活動に巻き込まれたら秘密裏に始末しようとするだろうなと思ったが
ハルヒの秘密知ったら殺そうにも殺せなくなるかなぁ
386アメリカの人:2009/06/01(月) 17:10:49 ID:???
第80話 「未来からの第5指令 1」

日曜日、いけ好かない未来人野郎と会った翌日、俺達は再び駅前に集合していた。
「さ、速くくじを引きなさい」
くじ引きの結果、朝比奈、涼宮、古泉の班、キョン、徐倫、ウェザーの班、そして俺と長門となった。……イカサマしていたので結果は分かりきっていたが。
「な〜んか変ねぇ………」
「なんだよ、涼宮」
「いや……あんた達が二日連続で一緒になったってのがね………」
確かにこの人数でのくじ引きだ。確率はかなり低いだろう。が、俺はしらばっくれた。
「たまたまだろ」
「……まあいいけど。ちゃんと不思議探索するのよ?図書館でサボるなんて言語道断だからね!」
相変わらず妙なところで勘の良い奴だ。

長門に図書館で留守番を頼み、朝比奈(未来)とは決めておいたホームセンターで待ち合わせておいた。
「アナスイ君ッ!」
「朝比奈か」
「すみません……ちょっと遅れちゃって……待ってましたか?」
「いや、そんなには待ってねえな」
「そうですか………」
実際は30分近くも待たされた。……まあそんな事を口にすれば朝比奈の事だ。俺に向かって土下座でもしかねない。………別に下心があるわけじゃないぞ……絶対、うん、そう……絶対だ。
「……アナスイ君?何を呟いて………」
「……………ナンデモナイ」
387アメリカの人:2009/06/01(月) 17:12:49 ID:???
俺達はホームセンターの隅にあるペット屋で手頃な亀を探していた。大きすぎず、小さすぎず。
「にしてもなんでホームセンターとペット屋は大抵セットなんだろうな………」
「うーん……多分、砂とかケージとか、ペット用品がホームセンターに置いてるからじゃ無いでしょうか?」
「全部ペット屋に置けば済むじゃねーか」
「お店の大きさとか……でしょうか」
「考えても結論でねーな」
そんな感じに亀を物色していると
「あ、これ良さそう!」
「ミドリガメか………」
それは手で掴めるぐらいの大きさのミドリガメだった。値段も手頃だ。
「んじゃ、出してやる……」
「あ、いえ……いいです……必要経費で出ると思いますから」
未来人にも必要経費はあるらしい。ならお言葉に甘えるか。
「でもアナスイ君って結構簡単におごろうとしますよね………」
「徐倫や涼宮にたかられてるうちになんか癖になったんだ」
「………早く治した方がいいですよ」
「………分かってはいるんだがな………」
「アナスイ君って結構ヘタ………」
「それ以上は言うな、朝比奈」
それを言われたら俺の男としての何かが崩れさりそうだ。
「もうほとんど崩れ………」
「朝比奈……お前意外と毒舌だな」
388アメリカの人:2009/06/01(月) 17:13:33 ID:???
ホームセンターで亀を買い、俺達は指定された川へとやってきていた。ベンチがある例の川沿いだ。
「亀を川の中に放り投げるんだったな………どれくらいにすりゃいいんだ?」
「あんまりキツいと亀さんが可哀相ですしね」
誰かに見せる必要があるなら強く投げた方がいいだろう。しかし、誰にも見せずに、ただ亀を投げるだけというなら弱く投げるべきだ。
「分かんねえなぁ………」
「もう好きに投げたらどうですか?」
「それもそうか……デヤアッ!」
スタンドは使わずに自分の腕力だけで投げる。
「結構飛んだな………」
「10mは越えましたね……キツくないですか?」
「うるせぇ」
投げられた亀は川に落ち、水面に波紋を浮かべながら流れていく。
「やべえ……泳げないのか?あの亀」
「た、大変ですッ!助けないと!」
すると河辺にいた少年が亀を拾いあげた。
「あ……てめぇはあの車に轢かれかけた………」
「あ………あの時はありがとうございます」
そして俺達のデートまがいの行動を涼宮に報告してくれていたあのガキだった。……思い出したら腹立ってきたぞ。
「車とかには気をつけてる?お姉さんとの約束は守ってる?」
朝比奈が天使の笑みを浮かべながら問い掛けた。
「はい、気をつけてます」
やっぱりえらく礼儀正しい奴だ。
389アメリカの人:2009/06/01(月) 17:15:59 ID:???
「ところで……その亀もらえますか?」
「俺は飼ってもよかったんだが……朝比奈はどうだ?」
「わたしも別に……あげるよ」
「ありがとうございます」
ガキは深々と礼をした。朝比奈がそれに応じるように深々と礼しかえす。ほんと礼儀正しい奴だ。
「それでは塾があるので………」
そう言ってガキは小走りに去ってしまった。
「最近のガキは忙しいな」
「ですね」
「ところでこれで任務は完了……なのか?」
「多分………そうです」
今回やってる事全てに言えるが、意味不明なのが多すぎる。そろそろ誰かに説明して欲しいね。

任務も終わって暇になった俺達は、とくにする事も無しにうろついていた。
「暇ですねえ………」
「暇だな」
そんな風に緩い空気でいた時だった。横断歩道を渡ろうと信号で止まった瞬間、猛スピードの黒いワンボックスカーが俺達の目の前に止まり、朝比奈を車の中に引きずりこんだ。
「んなっ!?」
あまりに突然の出来事で唖然としたが、なんとか持ち直した俺は、スタンドを出す。
「ダイバーダウンッ!」
ギリギリ車にスタンドを潜行させ、そのまま車の天井に跳び移る。
「こいつら……何故朝比奈を?」
その時、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「アナスイさんッ!」
「森さんッ!?」
森さんは猛スピードで追いかけてくるタクシーから身を乗り出して叫んでいた。
「離さないで下さいッ!私達がその車を止めますッ!」
「分かってるぜェ!」
何処のどいつだが知らねーが、このお礼はたっぷりさせてもらうぜ……すぐにな。

To Be Continued・・・
390アメリカの人:2009/06/01(月) 17:18:04 ID:???
以上、第80話でした

都合によりかなり遅れました。申し訳ありません。

セッコの人乙!別にキョンにスタンドついてもいいと思うよ?

それでは!
391マロン名無しさん:2009/06/01(月) 17:18:18 ID:P8GXbF+Q
朝比奈さんと大統領の力は似てる。
392マロン名無しさん:2009/06/01(月) 18:03:30 ID:???
アメリカの人さん乙ですッ!
393マロン名無しさん:2009/06/01(月) 22:29:24 ID:???
とうとう怖い森さんが・・・
394マロン名無しさん:2009/06/09(火) 21:50:30 ID:wdaJkBY/
期待age
395アメリカの人:2009/06/12(金) 14:50:16 ID:???
第80話 「未来からの第5指令 2」

俺は法定速度を完璧に無視した暴走車のボンネットに張り付いていた。
「覚悟しな……ダイバーダウンッ!」
車の中の人物を殴ろうと拳を振り上げる。が、たまたまか狙ってか、突如車が急カーブをした。振り落とされないように必死でしがみつく。
「大丈夫ですかッ!?」
森さんが車から身を乗り出して大声で叫ぶ。
「何とかなあッ!」
体勢を立て直して叫び返す。
「そうですかッ!……少し乱暴をしますッ!しっかり掴まって伏せていて下さいッ!」
「ああッ!」
多分車をぶつけるんだろう。そう思い、ピッタリと体を張り付かせる。が、いつまでたっても衝撃が来ない。疑問に思って後ろを向く。
「……………」
「………鉄球を投げますよッ!」
車から身を乗り出した森さんは、黒いスーツを着た普通のOLに見えた。腰にホルスターを付け、そこに入った鉄球を投げようとしている点以外は。
「先に言えェ!」
「………注文がいちいち多いですねえ」
「当たり前だッ!車ぶつけるのかと思ってたんだよッ!色々と準備が変わるんだッ!」
「それじゃ鉄球投げるから準備して下さいッ!それッ!」
「早いわあッ!」
森さんが投げた鉄球は、車のタイヤ目掛けて飛んできた。が、車はまるで鉄球が見えているかのように急カーブをしてかわした。
396アメリカの人:2009/06/12(金) 14:51:09 ID:???
「妙だな………」
俺のパンチといい、森さんの鉄球といい、軽々とかわされる。何らかの手段でこちらの攻撃を察知しているのかもしれない。……反撃してこないのが不気味だが。
「ぶつけますッ!」
今度こそ正真正銘、森さんの車がぶつかってきた。が、敵もなかなかのドライビングテクニックの持ち主らしく、前輪をロックし、ドリフトで体当たりをかわす。
「うぐっ………」
急なドリフトに振り落とされかけるが、ダイバーダウンを潜行させ、なんとか体勢を立て直す。
「やるじゃねえか………」
再び、森さんの車が並走し、激しく車体をぶつけてきた。車を横から押しつけた為、互いに押し合う形になった。
「パワーは互角ってとこか………」
均衡は崩れそうに無い。が、押し合いの結果、車体が安定し始めた。今ならパンチを叩き込めそうだ。
「ダイバーダウンッ!」
先程のように妨害は入らない。このまま中の運転手をノックアウトと思った瞬間、車体から手が突出してきた。
「クソッ!スタンド使いがいやがったかッ!」
パンチはスタンドの手によって弾かれる。それと同時に乗っていた車が森さんの車を弾き返した。俺は車体の揺れでバランスを崩して足を踏み外してしまう。ダイバーダウンも間に合いそうに無い。
「しまった………」
397アメリカの人:2009/06/12(金) 14:52:17 ID:???
「アナスイさんッ!」
森さんが車から身を乗り出し、再び鉄球を構える。
「少し痛いですが我慢して下さいッ!」
そう言った森さんは俺に鉄球を投げ付けた。投げた鉄球は俺の体を巻き込んで、硬くし始めた。
「硬質化させてダメージを和らげますッ!………まあ衝撃までは無理ですけど」
森さんの言葉通り、道路に叩き付けられると凄まじい激痛が体に走った。骨は折れずにすんだみたいだが。なんとか体勢を立て直し、森さんの車に飛び乗る。
「大丈夫ですか?」
「全身凄まじく痛てえが怪我は無い」
「なら良かったです……あ、鉄球返して下さい」
「ほらよ」
森さんに渡そうと車の中を覗きこむ。すると運転席には、
「新川さん?」
「お久し振りです」
ロマンス オブ グレーという言葉がこれ以上なく似合う老執事は現在渋いタクシー運転手となっていた。
「そういえば二人共普段は何してんだ?」
「見ての通り、しがないOLとタクシー運転手ですよ」
「OLは鉄球なんか投げねえよ」
「御二人とも、前を見て下さい」
新川さんの言葉で前を向く。すると今迄見事な走りをしていた敵の車がガードレールに突っ込んで止まっていた。
「マヌケだな………」
「あんな猛スピードで急カーブに突っ込んだらF1レーサーでもああなりますよ」
398アメリカの人:2009/06/12(金) 14:53:28 ID:???
車のボンネットから飛び降りると森さんも扉を開けて車を降りた。
「車の中にいるあなた達……出てきなさい」
声の調子や態度こそ変わらないが、森さんからは凄まじい殺気が放たれている。
ある程度場数を踏んでる俺でもちょっとひるむくらいだ。
「怖じ気付きましたか?」
「まさか」
森さんの殺気が伝わったのかは分からないが、運転席と助手席から人が降りてくる。助手席から降りてきたのは、
「てめぇ……あん時のいけ好かねえ未来人………」
「酷い呼び方だな……名前を教えるつもりは無いがな」
返事は無視して運転席から降りてきた奴の方を見る。
「女………?」
しかも年は俺達と対して差が無いように見える。茶色い髪を短いショートカットに整えている。
「こんなはずじゃあ無かったのにね……あんた達が協力的じゃ無いからよ」
女は俺達には目もくれず、横の未来人を睨んで文句を言い始めた。
「知るか……大体俺はこんな下らん事は止めておけと言ったはずだ」
「いいえ……彼等に私達の存在を誇示する事はできたわよ」
「……するとなんだ?てめぇらは失敗するって見当がついていたのに自己紹介の為にこんな事をしたっていうのか?」
女はそこで初めて俺に気がついたと言わんばかりの表情を浮かべた。追い詰められている人間とは思えないふてぶてしい態度だ。
399アメリカの人:2009/06/12(金) 14:55:10 ID:???
「初めましてかしら?あなた達とは」
「……てめえはなんだ?未来人か?宇宙人か?それとも超能力者か?」
「それは今言う必要は無いわね」
「それでは……彼女、朝比奈みくるさんは?」
森さんが妖艶な笑顔で聞く。とびきりの微笑みだが、場慣れした筈の俺ですら背筋が凍りそうな恐ろしい笑みだ。
「無事よ。麻酔で眠ってもらってるだけだから」
が、女はそんな森さんを気にも止めずに話を続ける。よほどの無神経か、こういうのに慣れているかのどっちかだろう。
「さっきも言ったけど今回は顔見せ、彼女は返すわ。それじゃ、バイバ………」
「待ちやがれ」
「何よ?」
歩いて立ち去ろうとした女は嫌そうな顔で振り返る。
「悪いがてめえからは聞かなきゃならねえ事が山程ある……なあ?森さん」
「……拷問ですか?あんまり好きではないんですが………」
「馬鹿言うなよ。あんたらに俺達が捕まえられるのか?」
未来人が口を挟む。
「できると思うが?」
「何をッ………!」
「止めときなぁ」
女が拳を握りしめ、こちらに突進しようとした瞬間、後部座席の窓から一人の男が女の肩を掴んだ。
「スタンド使いにただの人間が素手で挑むなんざ、戦車にナイフで挑むようなもんだぜェ………」
「ぐ………」
「ピザはピザ屋……スタンド使いはスタンド使いだ」
「てめえさっきのスタンドの本体か………降りてきな」
「言われなくても今から行くぜえ」

To Be Continued・・・
400アメリカの人:2009/06/12(金) 14:57:00 ID:???
以上、第81話でした

また遅れました………次こそは!

それでは!
401マロン名無しさん:2009/06/13(土) 21:45:45 ID:???
それでもアナスイなら…アナスイならフルボッコ(人体改造)にしてくれるはず…
GJ!
402マロン名無しさん:2009/06/16(火) 18:14:53 ID:???
一つ聞きたいんだが、
wikiで空条徐倫の憂鬱の61話63話68話が見れないんだがどういう事なんだ?
403マロン名無しさん:2009/06/16(火) 20:16:38 ID:???
>>402
問題なく『治す』!
登録名が違ってたっぽいね
404マロン名無しさん:2009/06/16(火) 21:56:10 ID:???
携帯からすまないが、君の命がけの行動ッ!
僕は敬意を表するッ!
405アメリカの人:2009/06/19(金) 14:41:19 ID:???
第82話 「ザ・ミュージックとハート 1」

「かかってきな………」
車の後部座席から男が降りてきた。短く刈り込まれた黒い髪は所々にラインがあり、後ろ髪は首のあたりから細く長くまとめられている。服装は高級そうなワイシャツとジーンズというよく分からない組み合わせだった。
「ふん………」
「行くぜッ!ダイバーダウンッ!」
右のストレートを繰り出す。が、かわされる。俺はかわされたのを気にせず、返す刀で裏拳で殴る。しかしこれもかわされた。
「随分と速いじゃねーか……スタンドのスピードにくらいつく野郎なんざ初めて見たぜ」
「フン………」
続いて左の手刀。やはり紙一重で見切られる。が、これの狙いは攻撃では無い。次を繰り出すと見せかけ、突然しゃがむ。すると俺の頭がさっきまであった場所から鉄球が飛んできた。
「アナスイさんに気を引かせてその隙に鉄球で攻撃する……これはかわせませんよ?」
が、男はまるでそうしてくるのが分かっていたとでもいわんばかりにかわす。
「なっ!?」
俺と森さんが驚いて止まった隙を見逃さず、男は一気に距離を詰め、俺に鋭いローキックを入れる。
「グウッ………」
スタンドでガードし、直撃は避けたものの、体勢が崩れていたせいで大きく吹き飛ばされる。
406アメリカの人:2009/06/19(金) 14:45:08 ID:???
「ちいッ!」
やはり妙だ。手刀はともかく、俺を壁にして放った鉄球まで防がれるなど、あまりにも出来過ぎている。
「彼のスタンド能力ですか?」
「今んとこ奴がスタンドを出した様子は無い」
「それでは単に読まれただけでしょうか?」
「スタンドの中には姿形を持たずに能力だけを持つ奴もいる……その手の類かもな」
「………分かりました。少し下がっていて下さい」
森さんは俺を下がらせると二つの鉄球をホルスターから取り出した。
「スタンド能力ではありませんが……私達の鉄球にも個性があるんですよ」
「………どんなだ?」
「能力です。左半身失調、衛星、黄金比を使った黄金の回転……そうそう、馬の鐙を使う回転なんてのもありましたね……1000年近い長い歴史の中でも今迄一人しか成し得ていない回転だそうですが」
「………森さんのは?」
「見ていれば分かりますよ……ハァッ!」
森さんは両手の鉄球を同時に投げる。しかしまたしても男にかわされた。
「どうした?それがお前の技術か?」
「いえいえ……違いますよ」
「負け惜しみかな?クラエッ!」
男は一気に距離を詰めて来る。
「森さんッ!」
「助けはいりませんよ、アナスイさん……それよりも前に出ないで下さい」
「は?」
俺が呟いた瞬間、鉄球が隣りの崖に当たり、同時に崖が崩れ落ちて岩が男に降り注いだ。
407アメリカの人:2009/06/19(金) 14:46:51 ID:???
「私の家系は音楽家でした。そんな私達の先祖が鉄球に取り入れようとした物……もう分かりますね?」
「音か………」
「ザ・ミュージックと呼ばれています。私の鉄球、一切模様が無くて滑らかなんですよ」
言われてみればそうだ。にしてもネーミング安直だな。
「これは音を発生させ、それを伝えるためです。今私は二つの鉄球であの崖にある音波……つまり周波数を伝えました」
「その程度で崖が崩れんのか?それに音なんて聞こえなかったぞ」
「音は聞こえる物だけではありませんよ、超音波だって音です。崖が崩れたのは
共鳴現象です。物には共鳴する周波数が存在します……共鳴が起こると僅かな衝
撃が何倍にも強くなるんですよ」
なるほど……だから鉄球が当たっただけで崖が崩れたのか。
「その通りです」
「なるほど……そういうカラクリだったとはな」
「なッ!?」
声のした方を向くと岩の下敷きになった筈の男が立っていた。
「今のはかわせなかった筈……なのに何故………」
見ると当たりの岩が幾つか小さく砕かれている。
「スタンドで砕いたか………」
「フン………」
「ダイバーダウンッ!」
右のフックを繰り出す。しかし、突然何かにボディをカウンターで打ち抜かれ、
俺は吹っ飛んだ。
「ハァッ!」
森さんが手元に戻ってきた鉄球を投げ付ける。が、これはかわされた。
「大丈夫ですか?アナスイさん」
起き上がった俺は森さんの横へと戻る。
「なんとかな」
408アメリカの人:2009/06/19(金) 14:49:41 ID:???
「しかし……今何が?スタンドに攻撃されましたか?」
「分からん。いきなり何かに殴られた……攻撃の時も姿が見えねえスタンドなんて初めてだ」
「妙ですね………」
「何かカラクリがある筈だ………」
と、そこで俺は車の近くにいる謎の女に気がついた。横にはいけ好かない未来人もいる。………逃げたと思ったんだがな。
「やるじゃない、あなた」
「……………」
「それだけの実力があるならもっと協力しなさいよ」
「手は結ぶと言ったが、なにも手伝うとは言ってないぞ」
「フン……どいつもこいつも愚かだな」
相変わらず仲の悪い連中だ。なんで同盟なんか組んだのか不思議だな。
「ダイバーダウンッ!」
再び男へと襲いかかる。
「無駄だな……真正面からでは何も変わらないぞ」
「そいつはどうかな?」
そう言うと俺は足元の石を拾い、斜め上に投げると同時に男に左足のハイキックを叩き込む。
「………なるほど、そういう事か」
「………?」
ハイキックが当たる瞬間、男の頭上に迫った石から潜行させておいたダイバーダウンの腕が男を同時に襲う……筈だった。
「なッ!?石が弾かれたッ!?」
スタンドに弾かれたのならまだ分かるが、まるで見えない壁に当たったかのような弾かれ方だ。放ったハイキックもかわされる。
「一体どうなってやがる………」
「フン………」

To Be Continued・・・
409アメリカの人:2009/06/19(金) 14:54:00 ID:???
以上、第82話でした

>>403
wiki修正してくれてありがとうございます。気づかんかった………

それでは!
410マロン名無しさん:2009/06/21(日) 20:52:16 ID:???
アメリカの人乙!!
森さんすげぇw
411マロン名無しさん:2009/06/23(火) 14:20:40 ID:f+CLIzb1
うおおおお知らない間にアメリカの人の連続投下ががががが!!!!!

アメリカの人乙!
森さんの鉄球の能力かっけえ&敵の能力はなんなのか、ますます期待が高まるぜ!!
412マロン名無しさん:2009/06/23(火) 23:20:45 ID:???
過去ログ一気読みしてきたぜ!

アメリカの人乙です。
めちゃくちゃ面白くて次が楽しみすぎる!
最古参だし頑張って下さい。

ジョニィの人とセッコの人も頑張って下さい!
是非ともみんな完結までたどり着いて欲しい…

413セッ子:2009/06/26(金) 01:17:04 ID:???
投下しようとしたら深夜になってたから
明日の夜投下すると予告
414マロン名無しさん:2009/06/26(金) 10:29:45 ID:???
待ってたぜ
土曜の夜に期待
415セッ子:2009/06/27(土) 22:36:09 ID:???
ちょっとしてから宣言通り投下します
416マロン名無しさん:2009/06/27(土) 22:44:24 ID:???
嫌な感じだ。
服が体に張り付いている。今日はこんなに湿度が高かったか。
早く森の中から出た方が良いな。
そんな事を考えながら三人の死体に背を向けた、まさにその時だった。
「何処に行く気だ」
耳を疑った。
確かに私は人体の急所である左胸と腹に風穴を開けたはず。
なのにどうして、青年は立ちあがれるんだ?
「これからようやく、俺がお前を叩きのめそうっていうのに」
寝言を言うにはまだ少し早い時間ぞ。
どうして立ち上がれるかは知らないが、致命傷を加えたのは事実だ。青年はもう追ってくる事すら。
「寝言?寝ぼけてるのはどっちだろうなぁ」
死にかけの癖によくしゃべる男だ。
そこまで元気があるなら止めを刺しておいてやろう。
振り向いた先には。
「さて、第三ラウンド開始ってとこかな」
立っていた。
殺したはずの青年が無傷で。
見覚えの無い化け物が青年の傍に。
417セッ子:2009/06/27(土) 22:45:23 ID:???
どういう事だ。全く理解できない。
いくら人間が進化しようと胸や腹に空けた穴が塞がるものなのか。
それだけではない。隕石は確実に彼の左肺と肝臓をブチ破った筈だ。
肺を貫けば呼吸困難、肝臓周辺を貫けば心臓や頭に比べれば血が噴出することなく失血死へと持ち込める。
はずなんだが。
「やはり分野外になるといけないな。生物学者なら一撃で仕留められていただろうに」
面倒だから今度は一撃で決めるか。先ほどの男との戦いでいい事も分かったし。
流れ星のイメージはもう一瞬で練れる。この戦闘で私も成長したって事か。
狙うは一点。必殺の、本体もしくはスタンドの頭だ。
先のモグラ君の友人との戦いで分かった事は一つ。
私や男の傍に立つ者(スタンドの像とでも呼ぼうか)へのダメージは本体と共有されているという事。
超能力の像を掻き消そうと思っただけだったのだが予想の上を行く効果をもたらした。
青年がこちらに歩いて来る。一撃、ただの一撃でいい。
確実に当てられる距離まであと五歩。
「それ以上は近付かない方が身のためだと思うがな」
青年のスタンドが一歩踏み出してくる。残り四歩。
狙うなら無防備なスタンドの方か。
「近付かなきゃあアンタを殴れないだろう」
あと三歩。
青年はじりじりと距離を取りつつ先に始末した一人と一体の方へと近付いている。
無駄だ。あの二人は傷も深いし、もう助かるはずがない。
「死ぬ事になるぞ?」
二歩。
「断言してやるよ。死なないね、俺は」
一歩。
「あんた程度で死んでちゃ、命がいくつあっても足りないさ」
青年のスタンドが私の領域に踏み込んで来る。なにも気づいていないのか、それともただの蛮勇か。
私の呼んだ流れ星は吸い寄せられるように青年のスタンドの頭部をくりぬいた。
418マロン名無しさん:2009/06/27(土) 22:46:53 ID:???
「世の中にはさ」
信じられないな。
「自分達の体を繋ぎ合わせて巣を作る蟻っつーのが居るらしい」
情報が間違ってたのか?そういうわけじゃないだろう。
現に私のスタンドが先ほどの攻撃で受けた傷は私にフィードバックしている。
じゃああの青年が例外なのか?
「そいつ等はよ、すごく統率がとれてるらしくてな。巣の一カ所が傷付いてもすぐに他のやつらでその傷を塞ぐんだと」
「それがどうかしたかい?」
「いや、凄いと思わないか?」
信じられないついでにもう一つ信じられない事が起こった。
傷が塞がっているのだ。モグラとその友人の。
傷が無かった?そんなはずはない。
最初の一撃、私は確かにモグラ君の傷口に攻撃した。記憶違いなはずが無い。
どういう事なんだ。理解不能とはこの事だ。
「つまりこういうのを『全は一』って言うんだろうな」
青年のスタンドの拳撃が私に向かって放たれる。
捌けない攻撃ではない。
しかし頭の中では青年の言葉が何度も反響し、私の反射神経を蝕んでいた。
三発。私の肩、スタンドの腹と胸にそれぞれ一発ずつ、彼のスタンドの拳がめり込む。
やはりひと思いに本体の頭をぶち抜いてやるべきだったか。
そうすれば必殺。生存なんてありえない。
流れ星のイメージを描くのは、いつにもまして容易なことだった。
成長している、彼らとの出会いから、モグラやその友人との戦闘から、確実に。
確実に、着実に。元来の物からそれ以上の物へと。
今の私の前にあるのは、満点の星空と輝かしい未来だけだ。
空が三度青年を照らす。
419セッ子:2009/06/27(土) 22:49:10 ID:???
ほらな、予想通りだ。
最初は危害を加えようとする俺のスタンドを攻撃、それが無意味だと知ると俺を攻撃。
こうも計画通りだと相手がこっちの思惑分かっててやってるんじゃないかって疑いたくもなるね。
そしてお前は挑発する俺に目玉をひんむいてこう言うのさ。
なんで死なない?ってな。
『おいおい、今のが攻撃か?蚊でも止まったのかと思ったぞ』
「ど、どういうことだ!?『なんで死なない!!?』頭を、頭を撃ち抜いたんだぞ!?」
はい、これも予定調和。
しかしこれはほぼ100%この返答が返ってくるって分かってたからな。
俺の目の前のキチガイ眼鏡の目にはこういう図が写ってるはずだ。
『頭を半分くりぬかれながらもどこ吹く風な顔して挑発を続ける俺』
普通の人間なら気を失ってもおかしくないレベルのスプラッタな光景だが、今あいつの常識は無いに等しい。
超能力があるならゾンビだって居るかもしれない、そういう思考に陥ってしまってるんだ。
ろくに周りを調べることも無しに。
男の頭に、俺と俺のスタンドの拳が触れる。
どうやら男も気づいたみたいだ。ま、今頃肩を震わせても手遅れだがな。
言っただろう?
近付かなきゃあ、お前を殴れないって。

「オラァッ!!」
側頭部に衝撃が走る。衝撃、それ以外の何にも例える事が出来ない。
痛みでも、熱でもない、ただただ脳を揺らす衝撃。
視界がドロドロに溶ける。生まれたての小鹿のように手足が震える。
なんで隣に居るんだ、双子なのか、頭が痛い、くりぬいて喋る事が出来たのは、それが能力か、吐き気がする、畜生。
ミキサーでシェイクされたような脳内に、先ほど殺したはずの青年の声だけが静かに響く。
「悪いが、アンタにはこれ以上付き合ってられない。こっちにゃあ瀕死が二人もいるんだからな」
マズイ、駄目だ、逃げなきゃ、これじゃあ、夢が、星が、私の、ゆめ
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!!」
420セッ子:2009/06/27(土) 22:50:31 ID:???
気がついたら、なんかキョンが鬼のようなラッシュ繰りだしてた。
ラッシュを喰らっているのは……あの、白服着た隕石ヤローだった。
えっとなんだったっけな……
工房、方々、逃亡……そうだ、養蜂。因果ヨーホーって奴だ、ザマーミロ。
オレを攻撃するからそんな事になるんだよ。
そう言えばオレは結構な深手を負っていたはずなんだが、不思議と傷跡は残ってない。
でも、痛む。どういう事よ、コレ。
「何だ、セッコ。もう気がついたのか?」
キョンが男をスタンドで引っ張りながらオレの方へ歩いて来る。
男の顔は、見るも無残。なんつーか鼠に食われたチーズの方がましなんじゃないかって顔になってた。
「傷、どうだ?出血は防げたが、痛みは取れてないだろ」
そうだ、傷だ。
オレの傷は、どういう原理で埋まってるんだ。
「簡単に言えば、俺の能力……って奴だな」
キョンが照れくさそうに鼻の頭を掻きながら答える。
傷を埋めるのが能力か、不便なもんだな。
「違う違う。俺の能力はな、微生物を……あー、プランクトンとか、その辺を操る能力だ」
ビセーブツ、ってのは良く分からねーが、きっとチョコラータの操るカビみたいなもんだろう。
そう言えばチョコラータもよく応急処置っつって傷口にカビを付けてたっけか。それと同じ要領で俺の傷口を塞いだわけだ。
上手く出来てるもんだなァ、世の中って。
「だな。もし俺がこんな能力じゃなきゃあ、お前も神父も死んでたんだぞ。感謝しろよ」
神父。そうだ、神父の野郎も来てたんだっけか。
よくよく隣の茂みを見てみたら、神父が寝てた。つまりコイツもあの白服にしてやられたっつーわけか。
じゃあもしかして、キョンが一人であの隕石野郎を倒したのか。
「ああ、途中までは結構ギリギリだったけどな」
そういうとキョンはいつものように肩をすくめてこう付け足した。
「もっと平凡に暮したいんだが、こんな能力まで付いちまったらもう無理だろうな」
これは、どう反応するべきなんだ?とりあえず満面の笑みを返しておこう。
421セッ子:2009/06/27(土) 22:52:36 ID:???
しかし、キョンもスタンドか。
キョンのスタンドは何だか、ジャッポーネの貧弱な男代表みたいなキョンのイメージとはかけ離れた容姿をしている。
実はキョンのスタンドじゃない、とかいう冗談、はないだろうし。
そう言えば自立ナントカ型とか言うのを聞いた事があるな、形が本体とはかけ離れるっていう。
ポ……ポル……ポルポル、だったか。そいつのスタンドがそうだったはずだ。
つーことはこれもそういうタイプのスタンドか。
オレがそう聞くとキョンは苦笑いをしながらこう答えた。
「当たらずとも遠からずだな。確かに、こんないかめしいのは俺っぽくないさ。ああ、本体は別だ」
そういうと、キョンは自分のスタンドに腕を突っ込む。
ん?腕が突っ込めるって事は実体を持ってるのか。
「これが本体だ。どうだ、これならお前も納得いくだろう」
キョンがこっちに突き出した手を見て、オレは思わず声をあげて笑った。
そこには、ちっぽけなスタンド像が一匹だけのっていたのだ。
つまりキョンの能力は『小さなスタンド像(ビセーブツ)を操る能力』
なるほど、歯車社会のジャポネーゼらしいスタンド像だ。
「笑ってんじゃねぇよ、ったく。コイツのおかげでお前助かったんだぞ?」
そうは言われても、ここまで小さいなんて流石のオレも想定外。
「それで、そいつには名前を付けたのか?」
キョンにとってはオレのこの言葉が想定外らしく、眉間にミミズを走らせた。
「名前?必要なのか?」
「心の問題だ、自分に気合入れたいときなんかにゃスタンドの名前を叫ぶのが一番手っ取り早いからなァ」
オレがもっともらしくそういうと、キョンは大きく頷き、しばらく考え込んだ後、こう答えた。
「そうだな。フーファイターズ、コイツの事を呼びたいならそう呼んでくれ」
何だか、キョンが一回り大きくなったように感じた。気のせいかな。
422マロン名無しさん:2009/06/27(土) 22:53:04 ID:???
フーファイターズがスタンドになってる?ということか
423セッ子:2009/06/27(土) 22:53:26 ID:???
流星の夜が終わり、俺たちは夏休みを迎えた。
ハルヒはあの日、どうも天文部から天体望遠鏡を借りてこようとしていたらしい。
らしい理由だ。
ハルヒはあの日の事を相当悔しがっている。
まあそうだろう。宇宙からのメッセージを受け取る事が出来なかったんだし。

夏休みになっても俺達は変わらない。
ハルヒはいつものように無理難題をけし掛け、俺はいつものようにハルヒをなだめすかし。
朝比奈さんはとばっちりを受け、古泉は笑いながらそれを見つめ。
長門は我関せずと本を読み、セッコは長門の隣で長門が時々投げてよこす角砂糖を待ち。
神父は何故かいつもついて来る妹と遊び、妹は神父やハルヒの間をちょこまかと走り回り。
俺は、無性にうれしくなった。
今俺が居る現実は、確かに非現実的だ。昔の俺が見たらふざけるなと叫ぶくらいに。
でも、これが俺の日常。あの日俺は俺の日常を守れたんだ。
「ちょっと、キョン、聞いてるの!?」
ハルヒの金切り声が耳を突く。どうせ無茶をする気なんだろう、分かってるさ。
ちゃんと傍に居てやるよ。世界が俺に望むなら、世界が俺に飽きるその日までな。


そして
終わらない夏休みが始まる。


act15-I will stand by you ―― A ver

to be continued…
424セッ子:2009/06/27(土) 22:54:43 ID:???
さぁーて、次回のイタリアはまだ遠くは!?

……
誰だよ次回予告。
「キョンだろ」「キョウ君だな」
ああ、俺か。
えー、何故だか知らんがスタンド使いになってしまった俺を待ちうけていたのは更なる困難だった。
終わらない夏休み。
延々と二週間を繰り返す神父を入れたSOS団。
夏休みを終わらせるカギは……セッコ!?
さて、次回は
・エンドレスエイト
・逆襲!真空の部屋!!
・3+1
みたいな内容でお送りする。それじゃあまた次回に。

……3+1?



以上、投下終了。
ようやく物語も折り返し。
これからは前回(サッカー)でちょこっと登場したパッショーネとSOS団(涼宮ハルヒのおもりをするスタンド使いの団)との抗争です。
気付いている方も多いでしょうが、登場するスタンドはすべて六部の敵の物(+オアシスとオリジナル一つの予定)。
本編で散々苦しめられたあの能力やあの能力、そしてチョイ役でしかなかったあの能力とも闘います。
まあ内容的にはいつも通りキョンが溜息ついてセッコが角砂糖齧って神父の髪形がミカンの筋で妹が可愛いに収束します。
あと、今回の『I will stand by you』の別バージョン(B ver)は本編全く関係ないんで保管庫直接投下しときます。

余談ですがジョジョくじでKQ当たりました。
これは吉良クロスを書けという天啓か!?

それでは、拙い文章ですが何かあれば。
425マロン名無しさん:2009/06/27(土) 23:04:45 ID:???
投下乙です
てっきりGEかと思ったけどFFとはいい意味で予想外でした

>これは吉良クロスを書けという天啓か!?
これは期待
426セッ子:2009/06/28(日) 19:23:32 ID:???
アメリカさんへ
掲載ついでに作品リストちょっと変えてみました
使いにくかったらお手数ですが編集しなおしてください
427アメリカの人:2009/07/03(金) 14:45:47 ID:???
第83話 「ザ・ミュージックとハート 2」

「一体何がどうなってやがる………」
まるで未来が見えているかのような回避、しかも回避できないような攻撃をしても、見えない何かに阻止されてしまう。
「奴の能力を見破らない限り勝ち目は無さそうですね………」
「あんた達に見破れるとは思えないけどね」
「黙っていろ……不用意に情報を与えるな」
「………チッ」
とにかくまずは攻撃だ。行動を起こさないと、敵の能力は見破れねぇ。
「ダイバーダ……グブッ」
スタンドを出そうと身構えた瞬間、再び何かに攻撃される。
「大丈夫ですかッ!?」
「ああ……にしても今迄とは違って随分直接的だな」
「貴様らに合わせる道理は無いだろう……とっとと始末させてもらう」
「ハァッ!」
森さんが2つの鉄球を時間差で投げる。1投目はやはりかわされる。
「それだけか?」
「いえ……違いますよ」
すると次の瞬間、2投目が大きく弧を描き、揺れ動き始めた。
「ありゃなんだ?」
「1投目の鉄球の音波で2投目の鉄球をコントロールしました。私達の鉄球はあらゆる鉄球の中で最も軌跡が読みにくいんですよ」
だが、その鉄球も何かに弾かれ、敵には届かない。
「グッ………」
「奴が手をおさえた?」
428アメリカの人:2009/07/03(金) 14:47:15 ID:???
今迄ダメージ一つなかった男は、まるで手を怪我したように、その場にしゃがみ込んだ。
「……一体どうしたんでしょうか?」
「さあな……だが一つ分かった事がある。奴はこっちの攻撃を予知している」
「なるほど……ならばあれだけかわされたのも説明がつきますね」
「予知できる時間はそこまで長くないみてえだ……もっと先まで予知できるならとっくに攻撃を仕掛けてきてるはずだからな」
「分かったからどうなる?お前達の攻撃は全て読まれているのだぞ?」
「ダイバーダウンッ!」
足元の石をスタンドで殴り、スタンドパワーを潜行させる。
「これならどうだ?行くぞ森さんッ!」
「ハァッ!」
森さんが鉄球を、俺が石を投げる。
「フン……軌跡は全て予知できている……無意味………しまった!」
「で、どうする?」
そう、俺が狙ったのは男では無い。後ろのいけ好かない未来人だった。森さんも同じく、正体不明の不良少女を狙っている。
「お前ら味方同士なんだろ?どうする?見捨てんのか?助けんのか?……俺は別にどっちでもいいぜ」
「ちいッ!」
次の瞬間、鉄球と石が男の横に差し掛かった。と同時に二つ共何かに叩き落とされる。
「守ったか………」
429アメリカの人:2009/07/03(金) 14:48:56 ID:???
「へー……あなた意外と責任感あるのね。少しだけ見直したわ」
「フン……あの程度助けてもらうまでもなかったんだがな」
「うるさい……黙っていろ……グウ………」
男は再び手をかばっていた。……なんか妙だな。
「まさか………」
「どうかしましたか?」
「奴の能力の正体が分かった………」
「なんですか?」
「未来予知の能力……そしてその予知を変える能力だッ!」
「予知を変える?一体どうやって………」
「厳密に言うと違うがな。奴は予知した未来にスタンドを出せるんだ」
「もう少し詳しい説明をお願いします」
「奴は予知した未来にスタンドを出すんだ、今じゃあない。さけきれない攻撃はそのスタンドが弾く。すると予知の中で起きた事が現実でも起きるってわけだ」
「では、手を怪我したのは………」
「そこまでパワーの強いスタンドじゃあ無いって事だろうな……後、自分に関する予知は無理なんだろうな。じゃなきゃあ怪我をするような事をする筈がない」
「………よく見破ったな」
話を聞いていたらしい男がこちらへ話し掛けてくる。
「だが、見破ったからといってどうなる?私の予知を破れるというのか?」
「スタンド使いにとって能力を見破られるのは致命的な事だ……てめぇはもう俺達には勝てねえ」
「………ほざけ」
430アメリカの人:2009/07/03(金) 14:50:32 ID:???
俺はダッシュで男に突っ込む。
「予知を忘れたのか?後ろの女の鉄球をカーブさせてそれと同時に挟み撃ちをするつもりのようだが………」
「ハァッ!」
「ダイバーダウンッ!」
森さんが鉄球を投げる。同時にスタンドで攻撃を仕掛ける。が、鉄球は森さんの手から離れた瞬間、地面に落ちた。
「お前は次に左でフックを繰り出す……無駄なあがきを………」
「いえ、全然無駄ではありませんよ……アナスイさんッ!」
森さんが合図をすると、俺は指で耳をふさいだ。
「何をし……グウッ……何ッ!体のバランスが………」
「キャッ!一体何よこれェ!」
「そこの女かッ!」
「私の鉄球の能力を忘れましたか?その鉄球はある音波を発していました……三半器官を揺らす音をね………」
「三半器官は人間のバランス感覚を司る……そいつが揺らされるとバランスが崩れていわゆる車酔いとかになるんだ」
「予知で攻撃が防がれるというなら……防げない攻撃を繰り出せばいいんです……幸いあなたは自分に関する予知はできないようですしね」
「クソッ!……あの女と男は何処に行った?」
「逃げたみたいだな。ご大層な味方だぜ」
「……今だッ!くらえッ!ハー」
「ダイバーダウンッ!」
左フックが男の顔面を貫く。さらに、吹っ飛ばされた男に向けて、森さんが鉄球を投げ付けた。
「ガブウッ………」
鉄球が顔面にぶつかり、そのまま男は崖の下へと落ちていった。
「死んだかな………?」
「再起不能は間違いないでしょうね。朝比奈さんは私達で送っておきます」
「そうしてくれ」
随分と予想外の時間をくった。早く集合場所に行かねーとハルヒの野郎におごらされるぜ………。

金藤大和 ハート 再起不能

To Be Continued・・・
431アメリカの人:2009/07/03(金) 14:52:00 ID:???
見ても見なくてもいい履歴書

名前 金藤大和
25歳 B型 11月28日生まれ
性格 責任感が強く、一度決めた事は破らない。ただし、不平不満はかなり言う。また、かなりの皮肉屋な為、一緒にいるには忍耐力が必要。
好きな食べ物 味噌ラーメン
嫌いな食べ物 ステーキ等の肉類
趣味 スカイダイビング、レジャースポーツ

ハート
パワー C スピード C 射程距離 C
持続力 A 精密動作性 B 成長性 B
能力 未来を予知し、その予知した未来でスタンドを操作できる。自分に関する予知は不可能であり、相手の攻撃に現在で反撃することは不可能。
432アメリカの人:2009/07/03(金) 14:57:00 ID:???
以上、第83話でした

名前の由来はイギリスのロックバンド「ザ・ミュージック」と、アメリカのロックバンド「ハート」から

都合により2週間空きました…次こそは週1だ!

セッコの人乙!キョンはフーファイターズか……そして6部中心だと!?ええぃ!ストーンフリーやダイバーダウンはまだか!
そして作品リストを変える?とんでもない!これがいいんじゃないか……このすばらしい章タイトルがね!
まじでありがとうございます。こんな良いタイトルをつけていただいて……

それでは!
433マロン名無しさん:2009/07/04(土) 22:55:16 ID:???
GJ!
アメリカさんももう古株だなぁ…
継続させるなんて…君の命が(ry
434マロン名無しさん:2009/07/08(水) 09:46:25 ID:YPK+jtHP
あげ
435アメリカの人:2009/07/10(金) 15:13:03 ID:???
第84話 「未来からの第6指令 1」

謎の女といけ好かない未来人に出会い、さらにスタンド使いと激闘を繰り広げた日の翌日、俺はまたもや未来からの指令を受け取った。今度は5だ。
「どんな内容だ?」
「おい、キョン……なんでお前に教えなきゃなんねえ」
「別に良いじゃねえか」
今は放課後のSOS団の部室。ちなみに俺とキョンの二人しかいない。
「帰る時間と場所の指定だよ」
「なんだ……じゃあみちる……未来からの朝比奈は帰ったのか?」
「ああ……つっても明日会えるがな」
「それもそーだな」
「ハァ………」
「なんだ?随分と疲れてんな?」
キョンが不思議そうな表情をする。まあそりゃそうか……普通なら終わった終わったと喜ぶ筈だ。
「いやな……朝比奈が帰る時にな………」

「ハァ……今回もわたし役立たずでしたね………」
指定された場所に早めについた俺達は、そこで少し話をする事にした。
「そんなに卑下すんなよ………」
「だって……わたしがこの時間に送られた理由が……この時間のわたしの身代わりだったんですよ………」
流石の俺もこれはフォロー仕切れそうに無い。まあそりゃそうだろう。朝比奈からしてみれば上は自分が危険な目にあっても構わないと思っていると受け取れる内容だ。
「実際は少し違うんだがな………」
「え?アナスイ君今なんて?」
「ただの独り言だ」
436アメリカの人:2009/07/10(金) 15:14:12 ID:???
キョンや徐倫の話では、朝比奈の上というのは未来の朝比奈自身だという。つまり、今回朝比奈を身代わりとしたのは、自分が昔経験し、無事だったという事実を元に送り込んだんだろう。
その結果、送り込まれた朝比奈は無事であり、未来になってこの朝比奈はその経験を元に、再び自分を送り込む………うむ、考えれば考える程、意味不明になってきた。
これを今の朝比奈に教えれたらどんなに励ましになるだろうか。………教えれないから悩んでんだが。………待てよ?あれがあったじゃないか。
「朝比奈……てめぇは役に立ったじゃねえか」
「身代わりとしてですよ?」
朝比奈はうつむいて今にも泣き出しそうだ。
「違うぜ……山登りの時だ」
「ふぇ?……ああ、あの岩を動かした時ですね」
「そうだ。……てめぇはあん時敵に襲われた俺を助けてくれただろ?」
「でも……あまり凄い事は………」
「いや、すげえ助かった。お前がいなきゃあん時俺は負けてた……間違いない」
「……そうですか」
朝比奈は嬉しそうな声をした。が、やっぱり顔を上げようとしない。
「どうし……た……って朝比奈、お前泣いてんのか?」
朝比奈はうつむきながら泣いていた。……もちろん悲しいからじゃないだろう。……これは………つまり………。
「ありがとう、アナスイ君ッ!」
顔を上げた朝比奈は、満面の笑顔を浮かべ、俺に抱きついた。
「1週間頑張ったアナスイ君にご褒美です」
……なんだか柔らかい物が顔に当たって息苦しい。……うむ、これが何かは考えない方が良さそうだ。
「あっ!そろそろ約束の時間です!……それじゃまた今度、よろしくお願いしますね」
朝比奈は早口に喋って小走りで去っていった。
「なんか……すげえ疲れたな」
437アメリカの人:2009/07/10(金) 15:15:31 ID:???
「………っていうわけ………」
「一回死ねえええぇぇぇぇぇえええ!」
俺が回想話を終えると、いきなりキョンが殴りかかってきた。慌ててなんとかバックステップでかわす。
「危ねえだろ……何考えてんだ?」
「それはこっちのセリフだ……アナスイ……1回お前はボコボコにしないと気がすまねえ」
「そうかよ……だが俺に勝てると思ってんのか?」
「やってみなきゃわかんねえだろ……行くぜッ!」
「うるさ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜いッ!」
互いに飛び掛かろうとした瞬間、部室の扉が勢いよく開き、涼宮が怒鳴りこんできた。
「団員どうしの喧嘩はご法度よ!二人共罰としてこれから全員分の交通費を出す事!」
よく見ると涼宮の後ろには長門や朝比奈、古泉に徐倫もいる。
「ハルヒ、行くって何処だ」
「この間の鶴屋さん家の山よ!」

それからだいたい1時間後の事、俺達は再びあの恐ろしく疲れる山道をスコップと共に、登っていた。
「まさかまたこんな山登りをするとはな………」
「ハルヒ、前ここら辺は掘り返しただろ?今度は何を………」
「あったあった……ここだわ」
そこは俺達がひょうたんのような岩を、未来からの指令で、動かした場所だった。
438アメリカの人:2009/07/10(金) 15:17:12 ID:???
「ここに何かありそうね!……早く掘りなさいよ」
「おい、ハルヒ……ここは前も掘っただろう」
「つべこべ言わないッ!」
涼宮は一度言い出したら絶対に折れないのは嫌という程思いしらされている。仕方なく男3人で掘り返す。
「………ん?今何か当たったぞ」
「なんだ?どれどれ……金属の箱だな」
割と浅い所に埋まっていた箱を取り出し、ふたを開ける。
「………チョコ?あッ!」
「なんだよ?キョン」
「バレンタインかッ!」
「その通りよッ!それはあたし達からのバレンタインチョコよッ!あ、言っとくけど義理だからね」
ハァ?バレンタインだとチョコを渡すもんなのか?
「知らねぇのか?アナスイ」
「キョン、チョコを渡すのは日本だけだ。アメリカじゃあ男女の区別は無いし、別にチョコの必要は無い」
「……そうなのか」
「徐倫!そんな豆知識どうでもいいわ!それより早く家に持って帰って食べるのよッ!」
涼宮が人差し指を思いっきり突き付けてくる。後ろで朝比奈が微笑み、長門はいつも通り、徐倫は苦笑いだ。と、そこで俺はある事に気がついた。
「なるほどな……涼宮が2日連続で不思議探索をしたのはこれを悟られない為か」
ついでに未来からの朝比奈が隠していた何かもこれだったんだろう。横を見るとキョンや古泉も同じ考えに至ったらしく、苦笑いを浮かべている。
「あ、そうだッ!こんだけあげたんだから、ホワイトデーにお返しを貰わないとね!もちろん100倍よ!」
「………やれやれだな」
「全くだ」

To Be Continued・・・
439アメリカの人:2009/07/10(金) 15:19:21 ID:???
以上、第84話でした

やっと週1ペースに復帰です。やれやれだぜ

セッコの人が例のact15の別パートを保管庫にあげていました。GJ!
これからの展開が楽しみな内容です。

それでは!
440マロン名無しさん:2009/07/14(火) 22:10:40 ID:???
なんかアナスイが主役だって気がして仕方がない…
そういやアナスイってジョリーンに一目惚れだったっけ?
441アメリカの人:2009/07/17(金) 14:45:03 ID:???
第85話 「未来からの第6指令 2」

バレンタインの日の夜、俺は6個目の指令に従い、いつもの公園のベンチへとやって来ていた。
「そろそろの筈なんだかな………」
「もう来てますよ、アナスイ君」
振り返るとそこには俺の知ってる朝比奈よりも、10歳程年上の女がいた。
「噂には聞いてたが……会うのは初めてだな。朝比奈……えーと………」
「別に朝比奈でいいですよ。あ、名前でもOKです」
……名前は気恥ずかしいから止めておこう。ここはキョンに習って朝比奈(大)だ。もちろん心の中でだが。
「……で、説明はしてくれるんだろうな?」
「もちろんです。その為に来たんですから」

ベンチに二人で並んで座る。朝比奈(大)は何故か横に座る時に嬉しそうに微笑んだ。他意は……うん、多分無い。と信じておく。
「アナスイ君は……もし過去に行って歴史が自分の知っている物と違ったら……どうします?」
それはこないだの冬の長門の世界改変みてーな物か?
「うーん……ちょっと違いますけどね。まあ、それで認識しやすいならそれでいいです」
「………普通なら、元に戻そうとするだろう?」
「正解です」
小学校の先生のような服装の朝比奈(大)は、これまた小学校の先生のように俺の頭を撫でてきた。
442アメリカの人:2009/07/17(金) 14:45:49 ID:???
「今回アナスイ君達にやってもらったのはまさにそれなんです」
「待て待て、朝比奈が存在しているのにこの時代に起こるべき事が起こって無いなんておかしいだろ」
「タイムパラドラックスですよ……未来っていうのは幾つもある物なんです。些細なきっかけで未来が変わるなんていくらでもありますよ」
「………分かりにくいなぁ」
「まず、最初の空き缶のイタズラですが、あれであの男の人が蹴って怪我をする……筈だったんですけど………」
朝比奈(大)はそこで苦笑いを浮かべた。そりゃそうだ。敵が襲ってきて目茶苦茶になったからな。
「まあ、幸い目的の人は怪我したので結果オーライでしたけど……あの後彼は病院である女性と知り合います。彼がその女性と知り合うのはその時しかチャンスは無いんです」
「その二人が未来にとっては重要なのか」
「はい。次に亀ですね……これはあの男の子に見せるのがポイントでした」
「どういう事だ?」
「もう少し遠くの未来で……彼はその飼っている亀を見て、亀が川に投げ入れられた時の波紋を思い出します。それがある発見に繋がるんです」
なるほどな。
「……………」
「……………」
あれ?おかしいな。まだ全部について説明聞いてないぞ?流石に朝比奈(大)も気まずくなったのか、
「し、質問タ〜〜〜〜〜〜イムッ!」
テンションを無理矢理上げ始めた。
443アメリカの人:2009/07/17(金) 14:47:20 ID:???
「何か聞きたい事は?」
「はい」
手を上げる。
「アナスイ君ッ!」
幾つかあるが、まずはこれだ。
「敵のスタンド使いが見計らったように襲ってきたのはなんでだ?」
「簡単です……どうも私達がスパイされてたみたいですね」
あのいけ好かない未来人か。
「恐らくは彼の仲間でしょう……としか今のあなた達には説明できないんですけどね。昔よりは禁則事項も減ったんですけど………」
「敵スタンド使いは未来人達と手を組んだ訳か」
「はい」
「ただよ……敵スタンド使いの能力ぐらいは先に教えてくれても良かったんじゃねえか?」
「………それがですね、この私には敵スタンドに襲われた経験なんて無いんですよ」
は?それってつまり………。
「タイムパラドラックス……いえ、もしかしたらそれ以上の何かかもしれません」
「どういう事だ」
「実は彼等、敵のスタンド使いが現われるというのは未来では誰も知らなかったんです。直そうにもあまりにも巨大な違いで……無理に直すよりそのままにしようという意見になりました」
「それは……つまり………」
「はい、私達の知らない歴史がいつの間にか入り込んでいたという事です……スタンド使い達が現われた以外は何も異変はありませんでしたが」
全くもって不可解な話だ。あいつら……訳の分からん奴等だが、そこまでだったとは。
444アメリカの人:2009/07/17(金) 14:48:21 ID:???
「んじゃ、最後の質問だ……山でひょうたん石を動かしたのはなんでだ?それだけ説明聞いてねーぞ」
「ただ動かして欲しかっただけですよ」
朝比奈(大)はニッコリ笑顔で答える。笑顔といっても、いつものような物で無く、まるで古泉のような笑顔だった。
「………ふざけてんじゃあ………」
「ふざけてませんよ?」
「じゃあなんで説明しねえ」
「……ほんとは駄目なんですけど、アナスイ君だから特別にヒントです」
………ヒント?
「私がなんであんな指令を出したかは、この1週間をよーく振り返れば分かるはずですよ……答えのパーツは全て教えてますからね」
なんだそりゃ……が、朝比奈(大)は俺がよく知るいつもの笑顔を浮かべて言った。嘘じゃあ無さそうだ。
「それでは、これからも私や皆の事よろしくお願いしますね」
そう言うとベンチから立ち上がった朝比奈(大)は夜の闇へと消えていった。
「……ヒントは全部ある………か」
あのひょうたん石の場所で起こった事は、敵スタンドに襲われたのと涼宮に掘り返すよう言われたくらいだ……待てよ?涼宮はチョコを何処に埋めていた?
「ひょうたん石の下だ………」
そうだ、間違いない。あのひょうたん石はただの石では無い。恐らく何かの目印だ。涼宮に見つけられたら困るような何かだ。俺は携帯を取り出し、ある番号に電話をかけた。
445アメリカの人:2009/07/17(金) 14:52:21 ID:???
「徐倫じゃないさッ!」
バレンタインの翌日、あたしが買い物を済ませて鶴屋家の山の麓を通った時だった。
「鶴屋さん……スコップを担いで何やってんの?」
鶴屋さんは作業服に軍手、何故かヘルメットと首から白いタオルと完全武装していた。
「アナスイ君がねいッ!面白い物が出るはずだからひょうたん石の3mほど横を掘ってみろってね!」
アナスイが?珍しいな。
「だろだろッ!?徐倫も来るかい!」
「まあ、暇だし行こうかしら」
「分かったさッ!それじゃスコップもう一つあるから掘るの手伝ってね」
………大物なだけじゃなく、意外とちゃっかりしてるんだよな、この人。

30分程すると、例のひょうたん石へとたどり着いた。
「ここらへんだねぃ!さっそく掘るニョロ!」
「ニョホホッ!」
二人で地面を10分程掘り進めた時だった。
「待て、何かある………」
「ほんとだッ!それじゃ引っ張りだしてよッ!」
鶴屋さんに言われて埋まっていた何かを引っ張り出す。それは、
「壺?」
「古そうだねぃ……どれどれ?何か入ってるな」
鶴屋さんがふたを開ける。すると、そこには
「ば……馬鹿な……何故……これが……ここに………」
「ふぇ?徐倫この金属板が何か知ってるのかい?」
「違うッ!それじゃあないッ!横だッ!」
鶴屋さんがそれを取り出す。
「なんだいこれ?ただの……石でできた古そうな矢じゃないか?」
「違う……ただの矢じゃあ無い……だが……何故ここに………」
そう、それはあの忌々しいスタンド使いを産む、弓と矢……その矢だった。

To Be Continued・・・
446アメリカの人:2009/07/17(金) 14:57:14 ID:???
以上、第85話でした

>>440 まぁ、今回のシリーズはアナスイ中心ですから………これが終わったら徐倫中心になるはず………

今回でようやく全ての伏線を出し切りました。さぁ、後はクライマックスへ一直線!………になるといいなぁ

それでは!
447マロン名無しさん:2009/07/23(木) 16:25:17 ID:uGSDEZY9
こういうスレを探していたのに
見つけたときには既に一週間近く止まっているだと……
448マロン名無しさん:2009/07/23(木) 17:25:40 ID:???
>>447
過疎りすぎて困ってる
君も参加してみよう!!


アメリカさん投下あってたのか、後で読まなくちゃ
449マロン名無しさん:2009/07/26(日) 23:06:52 ID:???
ハルヒの話題はやっぱりエンドレスか。
終わりがないのが終わり。それがG・エクスペリエンス・レクイエム。
450アメリカの人:2009/07/27(月) 15:45:45 ID:???
第86話「未来からの第6指令 3」

バレンタインの翌日、俺が学校に登校すると校門を入ってすぐに人だかりができていた。
「おい、お前」
手近にいた奴に声をかける。
「何でしょうか?」
振り返ったのは女だった。肩にかかるくらいの長さの髪を、首あたりで両側にふんわりまとめている。落ち着いた雰囲気で、大和撫子といった感じの可愛らしい奴だ。
「これはなんの騒ぎだ」
「ああ、涼宮さん達ですよ。SOS団からのバレンタインプレゼントだそうです」
またかよ……しかし凄い人だな。
「今は抽選の受け付け中らしいです。抽選自体は昼休みからだそうですけど」
「なんだと?」
「どうかしましたか?」
「………何でもない」

「参ったぜ………」
教室で机に突っ伏す。昼休みにこの時間の朝比奈を1週間前に送り込むつもりだったんだが……これじゃ相当やりにくくなった。涼宮も余計な事しやがる。
「……しゃあねえ……長門にイカサマを頼むか」
そう呟くと俺は席を立とうとした。が、
「イカサマは止めときなぁ!」
「………鶴屋?」
「ニョロ!」
鶴屋が立ち塞がった。しかしなんだか今日はいつもと違う。いつもからハイテンションだが、今日はさらに3割増しといった感じだ。
「何の用だよ?」
「例のお宝の件さッ!」
451アメリカの人:2009/07/27(月) 15:46:42 ID:???
「あれがどうした?」
「いやー……かなーりビックリ!」
何がだ?
「見つかった金属板ね……オーパーツだったのさッ!」
「オーパーツ?」
「見つかった壺ね、あたしの御先祖様が埋めた物なんだけど、当時の技術じゃ作れないレベルの合金だったのさッ!」
未知の物質、オーパーツは確かそんな感じの意味だったはず。通りでいつもよりハイテンションな訳だ。
「ふーん………」
「……あんまし興味無さそうだねぃ………」
実際興味が無いからな。
「そだ……あとは……おっとと、いっけね徐倫に口止めされてたんだった!」
「気になるじゃねえか………」
「ごめんよッ!口が滑ったさッ!……でも本当に言えないんだ。大事な事らしいからね」
「……なら仕方ねえか………」
「うんうん、理解の早い子は大好きさッ!そいじゃねー!昼休みのバレンタイン企画頑張れよッ!」
「おぅ」
鶴屋は俺に手を振りながら駆け足で去っていった。

その後、俺は長門のクラスメイトを取っ捕まえて長門を廊下に呼び出させた。クラスメイト達は何故かおっかなびっくりの様子で俺達を眺めている。
「長門、てめえいつもこんな扱いか?」
「そう」
まぁ分からないでもない。俺だってSOS団じゃなかったらこいつらと同じ態度だったかもしれんしな。
452アメリカの人:2009/07/27(月) 15:47:58 ID:???
「今日の昼休みの抽選会……イカサマしてくれないか?」
「分かった」
理由もなにも確認せずに分かっただ。相変わらず物分かりの早い奴だ。
「んじゃ、よろしく頼むぜ」

昼休み、抽選会場の中庭は凄まじい喧騒だった。学校内では関わるとろくな事にならないと評判のSOS団だが、こういうイベントは歓迎されるらしい。
「そりゃそうだろ……ここの女子連中のレベルは高いぞ」
「キョン、てめえに言われなくても分かってる」
「学園のアイドル朝比奈さんに、静かですが高いレベルの容姿の長門さん、徐倫さんも白人系の美人とバリエーションが豊富ですからね」
古泉のどうでもいい解説を聞いていると涼宮がスピーカーを持ち出した。
「はーい!それじゃ抽選始めるわよォ!一等はみくるちゃんから手渡しでチョコをプレゼント!」
「うおーーーーーッ!」
「俺が求めるものはただ一つ!一等だけよーーーーーッ!」
「俺は一億のラッキーボーイだッ!いけるッ!いけるぜェーーーーーッ!」
皆の、特に野郎共のテンションが一気に上がる。
「それじゃ、行くわよッ!」
涼宮はそう言うと用意しておいたあみだくじの線を一人目から引き始めた。……当たりの方から引けばすぐなのに……めんどくさい奴だ。
「………あれ?」
1本目を引き終えた瞬間、涼宮がすっ頓狂な声を出す。
「当たっちゃった………」
453アメリカの人:2009/07/27(月) 15:49:34 ID:???
涼宮の言葉で会場全体が白けた雰囲気になる。ま、そりゃそうだ。だが俺は急いでいるからな。悪い。
「涼宮、早く名前読め」
「分かってるわよ………」
腑に落ちないといった顔で涼宮が当選者を読み上げる。出て来たのは1年の女子だった。当たった事にビックリしたらしく、朝比奈からプレゼントを渡された時など卒倒しかけていた。
「ふぅ………」
「来い、朝比奈」
プレゼントを渡し終えて舞台から降りた朝比奈の袖を掴み、急いで部室を目指す。
「……ふえ?ふえ?」
「いいから着いてこい。後今から俺の言う通りにしろ」
「あ……はい………」

部室な着いた俺は朝比奈をロッカーに放り込む。
「いいか、今から1週間前の放課後に行け。後はそっちにいる俺がなんとかしてくれる。いいな?」
「え?え?でもそんなの申請しても……え?最重要コード?一体………」
「後1分しかねえ……早くいけッ!」
「は、はいッ!」
朝比奈の返事と同時にロッカーを勢い良く閉める。
「………よし、1分立った」
ロッカーの扉を開ける。するとそこには
「ただいまですよ、アナスイ君」
「ふん……んじゃ、とっとと行くぞ朝比奈」
「はい!」
454アメリカの人:2009/07/27(月) 15:50:47 ID:???
朝比奈を連れ、こっそりと会場に戻る。戻ると長門と古泉が何故かチョコを配っていた。
「よし、バレずにすみそうだ……しかしあれはなんだ?」
「有希がね、外れた人用にって残念賞を急に発表したのよ」
「へえー……流石長門さんですね」
………待てよ?今俺達は誰と喋っているんだ?朝比奈も気がついたらしく、こちらを怯えた顔で見てくる。
「ね?あたし見ちゃったんだぁ……アナスイがみくるを連れ出す所………」
二人で錆び付いたぜんまい仕掛けのようにゆっくりと後ろを向く。そこには怒りのオーラを全身から放つキョンと涼宮がいた。
「白状しな……今なら10分の9殺しで許してやる………」
「やっぱこうなのかァァァァァァァーーーーーーーッ!」
その時、俺は気がついていなかった。いつもなら真っ先に俺をいじめに来る徐倫が、舞台の袖で一人考えこんでいた事を………。

To Be Continued・・・
455アメリカの人:2009/07/27(月) 15:54:47 ID:???
以上、第86話でした

少し遅れました。もうしわけない

サブタイは「ボスからの第一指令」より

それでは!
456マロン名無しさん:2009/07/27(月) 23:02:51 ID:OSCsPrJM
ディ・モールトグッド
457マロン名無しさん:2009/07/27(月) 23:16:30 ID:OSCsPrJM
構想は浮かんだが
ディアボロの憂鬱と丸被りです
458マロン名無しさん:2009/07/28(火) 23:33:19 ID:???
構想が似てても書いてみる価値と需要は十分にあると思う。
459マロン名無しさん:2009/07/29(水) 18:48:13 ID:???
アメリカさんGJ続き楽しみにしてます!!

>>457

      |二_  _―-、_   |、ヽ_,./ r''‐'´ヽ ヽヽ  |  |
      | i二ニ―---、__, | | | ̄─_ヽヽ、:::::ノミ-| l /  |
     く二二ニ-‐''''''~´  \ヽ`'‐=,´  \/ \ノ  人) |
     |  ノ /  /二三´`ヽヽ l /ヽヽ ヽ /r‐´// |┐
     /‐'´,/ /く \-- ̄`''‐\ ヽく ||ノ、lノ,-'´// |
    ヽ/_///く           ト、,__   // /´
     Y´  .\/ ノ   ___,,,ノ`     `ヾ-=、ノ  / r‐'
     | /`i、  .V/   (彡‐'´      ,、==、、  | / 
     .l l | ヽ |     ,、r==、     !"r‐、ヽ  //       関係ない
     ヽヽヽ! |     ソ r' 。i      ヽ゚,シ  |/         . . ... . .. .
      | vヽ |      、`ーノ /⌒ヽ  ̄   .|、ヽ       いくんじゃあないか・・・
     /.( (>、_|        ̄      _,,ィァ  ./'ノ  
     |/ `-i´ |.        ト─=ニニ‐ノ  /|/             _,,、
     |   |  |.        ``'ー─‐‐'´   / |          r'''ヽ''´ヽ ヽ!-、
_,. --、 ||||   \               | |          '、 `''''''  _ノ,.--`--┬''ヽ,
    ヽ| 川|    \       ___   / |           `''''''''フヽ´   ヽ,,,,ヽ_ノ__,,
   | |||||      ::::::\  /:::::::::::::::\/ |          _,. -''´-、,.-‐‐''''''''´./ ヽ  ヽ  )
   / | | 川|       ::::::`'''‐------‐''´:  |         /r‐'''''''´/ヽヽ_, イ´    ノ _フ
460マロン名無しさん:2009/07/29(水) 19:05:57 ID:???
あと関係ないけど使えそうなキャラ一覧

3部
・承太郎(むしろ何故誰も使わないのかと)   ・花京院(既に登場済み)
・ジョセフ(日本に来てたわけだし)        ・ポルナレフ(お笑い担当)
・イギー(ペットポジ)

4部
・仗助(これも何故使わないのかと)       ・康一(登場済み)
・億泰(登場済み)                  ・由花子(難しい?康一と一緒に)
・噴上(使いにくそう)                ・ミキタカ(登場済み)
・形兆(出てきそう)                 ・露伴ちゃん(簡単そうに見えて意外と難しい?)
・吉良(結構面白そう)               ・蓮見(小説持ってる人が少ないか?)

5部
・ジョルノ(登場済み)                ・ナランチャ(ド低脳がァーー!)
・フーゴ(登場済み)                 ・ミスタ(能力的にきついか?)
・トリッシュ(まだ中学生だけど)         ・レクイエムボス(ネタ要員、登場済み)
・セッコ(まさかの登場済み)

6部
・徐倫チーム(徐倫、アナスイ、エルメェス、ウェザー)(登場済み)
・FF(スタンドだけ登場)              ・グェス(登場済み)
・神父(登場済み)                 ・DIOの息子(年齢的にはギリギリOK?)

SBR
ジョニィ(まさかの登場済み)

こんなもんかな?
461マロン名無しさん:2009/07/29(水) 19:13:38 ID:???
第三部の頃の承りならそれこそ、「やかましい!うっおとしいぞ!!」で我関せずの態度を貫くんじゃないか?
仮に参加してもキョンや古泉が胃潰瘍になるだけだw
462マロン名無しさん:2009/07/29(水) 23:05:37 ID:???
高校同じにすれば三部四部は余裕だな。特に四部は地元の事件解決まで一年かかってないし、何よりもスタンドがもう使える
承太郎もエジプト帰りの謎の(不良)先輩ポジションで絡ませれば面白そうだな


あと、墳上裕也を使いにくそうとか言うな。養分吸うぞコラ
463マロン名無しさん:2009/07/30(木) 14:01:37 ID:???
スレ違いになるけど五部キャラはらきすたと相性いいと思うんだ
つーかナランチャ
464マロン名無しさん:2009/07/30(木) 14:22:23 ID:???
かがみ「このド低脳どもがァー!!」
こなた「サーセンwwwwww」
ナランチャ「低脳って言ったなテメエェー!!」
465マロン名無しさん:2009/07/30(木) 19:00:49 ID:???
なんかすげえ思いついちゃった
最後まで思いつけるかな
466マロン名無しさん:2009/07/30(木) 21:39:15 ID:???
かがみ「ねえナランチャ。あんたは立派だと思うわよ。自分で小学校も出てないから勉強を教えてくれなんてそうそう言えないわよ、普通」

やべえ、難無く再生できる

>>465
がんばれ
467マロン名無しさん:2009/07/30(木) 21:49:03 ID:???
つーか今気づいたけど五部の身長比較見開き
身長比較してんのに背筋伸ばさないで足緩めてる奴とか多すぎてイミフだな
468マロン名無しさん:2009/07/30(木) 23:05:21 ID:???
若ジョセフとハルヒ、っていうかSOS団の絡みが見たい
ハルヒ「土日は団活来なさいよ!」
ジョセフ「オーッノーッ!なんでわざわざ休日削ってまでそんな事すんだよバーカヤロー!」
みたいな。
469マロン名無しさん:2009/08/02(日) 02:22:55 ID:???
>>460見るとセッコだけ逆立ちしても出てこなさそうなキャラすぎて笑えた
これ取り上げると他のどんなキャラでも行けそうだって思えるよな

>>467
・姿勢よく立つ
ナランチャ「みんな背ェでかいんだよォ〜〜!!」→ボラボラ
・露骨にしゃがむ
ナランチャ「馬鹿にしやがってェ〜〜!!」→ボラボラ

こういうことだな

しかし、定期的に投下してくれる二人はいいとして、他の方たちは大丈夫だろうか?
何も事故とかに会ってなきゃいいが……
ジョニィの人、ボスの人、イチゴの人、投下、待ってます……
470マロン名無しさん:2009/08/02(日) 15:06:26 ID:???
>>466
フーゴ「宿題の答え合わせもかねて勉強会など開きたいんですが構いませんかねっ?」
かがみ「おー、いいわねぇ」

ナランチャ「あー、なんか天気いいしさァ……俺んちまで来て宿題とかやろォぜー」
かがみ「あんたの場合私の丸写しするだけだろうがド低脳がァ!」
471マロン名無しさん:2009/08/02(日) 15:16:57 ID:???
つかさはセックスピストルズと仲良くなりそう
大分スレ違いだなwww
472マロン名無しさん:2009/08/03(月) 19:18:15 ID:???
構想はもうあるんだ
でも展開がどうしても進められないんだ……
473マロン名無しさん:2009/08/03(月) 20:34:31 ID:???
なんかミスタが億泰みたいになってくる不思議
474マロン名無しさん:2009/08/03(月) 22:41:00 ID:???
まあジョルノやフーゴからしたら相対的に馬鹿になるってんでいいよね。うん。ミスタ馬鹿。
俺しかいねぇ
475セッ子:2009/08/04(火) 13:42:55 ID:???
このスレに人がいないのはいつものことだからしょうがないさ
そんなことよりも>>472
構想ができてれば文章に起こしてみるといい
かくいう自分も一話目を書くだけ書いてそこからは全くの無計画で始めてたんだ
そんな自分でもここまでいける、投下してみないか?

現在飛行機搭乗前
落ち着いたら投下します
476マロン名無しさん:2009/08/04(火) 15:02:33 ID:???
期待sage
477マロン名無しさん:2009/08/04(火) 17:43:46 ID:???
>>475
なるほど
投下しちゃって取り返しつかなくすれば逆に俺は強くなれるってことですね!
プロローグと一話できたらやっちゃうかな
478マロン名無しさん:2009/08/04(火) 19:40:54 ID:???
一話書けた
適当に今夜投下して取り返しつかなくします
479マロン名無しさん:2009/08/04(火) 20:04:49 ID:???
プロローグ


たとえば。僕らの生きている世界が、一つの物語であったとしたら。
きっと、どこかで感動のエンディングを迎えて、その後のことはそれきり、投げっぱなし。そんなことも通用しただろう。
しかし、現実とはそうではない。いくら物語りに出来そうな事象を経験し、それを乗り越えようと、そこでおしまい。というわけにはいかない。
明日も、あさっても、僕らが死んでしまうその日まで、生きるという途方のない荒仕事は続いてゆくのだ。
そして。僕という人間は、悲しいことに、その生きてゆくということを、うまく適当にやり過ごすことのない運命の下にあるのだ。
山が終われば、次の山がある。
敵を倒せば、次の敵が現れる。

「……遅いですね、ジョルノ」

「おいおい、ボスを呼び捨てかよ」

イタリア、ネアポリスの町外れ。
見慣れた内装のレストランの窓際の席に、僕とミスタが着いてから、もう一時間ほど時間がたつ。
ボスこと、ジョルノ・ジョバァーナとの約束の時間はとっくに過ぎている。

「ボスっつったら忙しいもんなんだよ」

「その割りに、幹部のあなたとはいつでも連絡が取れるものですね」

「それだけ、このイタリアが平和ってことじゃねえか?」

平和を守るギャング。というのも、なんとも不思議な話だ。

「しかし、そのボス自ら僕らに話だなんて、一体何をしようというのでしょう」

思えばジョルノは、以前のボスと比べて、随分と簡単にそこらをぶらついているが、アレは大丈夫なのだろうか。
などと考えた時。入り口のベルを鳴らしながら、ジョルノが店内へとやってくる。
480マロン名無しさん:2009/08/04(火) 20:07:08 ID:???

「すみません、ミスタ、フーゴ。待たせてしまったようで」

「ああ、待ったってーのォ。今よォ、丁度、ハラ決めて四皿目の『パンナコッタ』を注文しちまおうか、人生をかけた選択をしようとしてたところだぜ!
 『ジョルノ』、お前よォ。フーゴの親戚を何人犠牲にする気だよォ?」

小皿を三枚を重ねながら、ミスタがふてくされた声を上げる。
仕方ないでしょう。ボスは忙しいんです、さっきあなたが言っていたじゃないですか。

「いえ、そこのピッツェリアで昼食を摂ってたんです」

「……何です?」

「いえ、なじみのおじさんと久々に話をしながら『マルゲリータ』を食べていたら、すっかり遅くなってしまいまして、30分前には着いていたんですが。
 やっぱりネアポリスに帰って来ると、最初に『マルゲリータ』を食べないと何をする気にもならなくって」

「……」

ピッツェリア? ……そうだったんですか。もう30分も前からすぐ其処まで来ていたと。
僕らとの待ち合わせの時間を過ぎているのを分かっていながら、僕らと会うよりもピッツァを食べることを優先したと?

「……ふっ、ふざけてんのかこの菓子パン野郎ォが! テメェー、『ボス』になったからって調子に乗ってんじゃねぇのかァー!!?」

「おいっ落ち着けフーゴ!」

「すみません、謝ります。昔お世話になったおじさんだったのでつい。それより」

激昂する僕の眼前を遮るように、ジョルノが数枚の紙を重ねたファイルを差し出す。

「二人にやってもらいたい『任務』があるんです。任務内容は……まあ、読んでください」
481マロン名無しさん:2009/08/04(火) 20:08:40 ID:???
差し出された書類には、十年ほど前。まだ、この『パッショーネ』がディアボロの組織であった頃の記録だった。

「何何……麻薬売買先を、日本に拡大?」

小さな活字で刻まれたその文面を、ミスタが読み上げる。

「ええ。僅かな期間ですが、パッショーネが日本で麻薬を売っていた時期がありました」

「それが、どうかしたのかよ?」

「これは現在は既に行われていません。……当時日本に派遣されていたグループは、パッショーネから独立したのです」

「独立ですか?」

「ええ。『ゲコクジョー』って言うんですけどね、こういうの、日本だと。
 そいつらは、パッショーネの傘下から外れて、独自に麻薬売買を行っているようです。
 それはおそらく、今も続いていると思われます」

「あの『ディアボロ』がそんなのを許したってのかよォ」

「少なくとも『その当時のディアボロ』には、それを抑止することが出来なかったようです。いずれ始末するつもりだったのでしょうが」

「その前に、あなたに倒されてしまったんですね」

「目的はいささか違いますが、僕としてもこの組織を放っておくことは出来ません」

「で、俺らにって事か?」

「敵には十中八九『スタンド使い』が居るでしょう。本当ならチームを派遣したいんですが、向こうで目立ったことをしたくはありませんからね」
482マロン名無しさん:2009/08/04(火) 20:10:05 ID:???

「だったらよォ、フーゴは不適なんじゃねぇか? フーゴの『パープル・ヘイズ』じゃァ、どう頑張ったって穏便には済ませられねえぜ?」

ミスタが言う。確かに、僕のスタンドは『穏便』などという言葉とはほどが遠いものだ。
にもかかわらず、僕がその任務に抜擢される理由は、大体想像がつく。

「こういうことですよね、ジョルノ」

「あ? ……フーゴ、何だって?」

「話が早くて助かります、フーゴ」

「おい、テメェーら、何喋って……あァっ! そうか、『日本語』だな!? 俺は『日本語』が『分からねー』! だが、フーゴにはそれが『分かる』!」

そういうことだろう。僕は改めて、ファイルに目を落とす。

「組織の所在地は東京。表向きは芸能プロダクション……しかし、麻薬売買と人身売買を行っている。
 そして、少なくとも組織内に一人は、スタンド使いがいる。そのスタンド使いは、かつてのディアボロが一度は退いたほどの力を持っている……
 ジョルノ。わかりました、すぐにでも日本に向かいます」

「ええ、お願いします、フーゴ。それと、出来れば二人とも、もう少し野暮な服装で向かってくださいね。
 今の二人は少し『目立つ』と思うので……」

「おいッテメェーら! いつまでも『日本語』でボソボソ喋ってんじゃねェ! イタリアーノなら『イタリア語』を『話せ』っ!?」

「うるさいです、ワキガ」

「フーゴぉ、テメェー今俺を『馬鹿』にしたな!? 『雰囲気』で『分かる』んだぜェ!」

……やれやれ。久々に、大きな『任務』を任されたものだ。
483マロン名無しさん:2009/08/04(火) 20:11:30 ID:???

   『ジョジョの奇妙な冒険』外伝

 キョンの憂鬱な冒険 -アフターロック-
484マロン名無しさん:2009/08/04(火) 20:13:34 ID:???
第1話『岸辺露伴、涼宮ハルヒと会う』

京都だの、奈良だの、大阪だのと、良いものの良い見方も、そもそも良いものを見分ける能力もない連中がこぞって行く場所に、僕は興味はなかった。
岸辺露伴が旅というものに求めるもの。それはどこかの誰かが用意した下らない文化物だのなんだのを拝むことなどではない。
そんなものには『興味』をそそられないのだ。それは『体験』ではないし、そんなものを拝んで回って、少しでも何かを『経験』したつもりになっている連中は馬鹿としか言えない。

僕はそんな『体験』を求めて、この度与えられた短い休暇、『兵庫』を目指して、杜王町からはるばるやってきたのだ。
この世に杜王町よりも面白い場所が果たしてあるのかどうかは、僕にとっては疑問だった。
しかし、杜王町で何か新しい体験をしようにも、あのクソ仗助だのが邪魔をしやがって、うまくいかない。
下手をすればボコボコにされちまうと来たものだ。

あの町はすばらしい。景観や町の様子のどこをとっても、あれほど僕にしっくりとくる町もほかにないだろう。
しかし、やはり物事には革新が必要だ。同じ町の同じ家で、同じようなものを見ていたのでは、面白い漫画は描けない。
僕はガソリンを呷るように、この三日間を、兵庫中の道路を走って過ごした。
所々で降りては、何か自分の心を突き動かす何かが、そこらに転がっていないかを探す。
そんなことを繰り返しているうちに、太陽はさっさと東から西へ駆けていってしまう。
そして、旅行四日目の正午。僕は中心地から少し外れた郊外の駅前の喫茶店で、大して美味くもないコーヒーを飲みながら、ボサボサと歩く人波を眺めていた。
485マロン名無しさん:2009/08/04(火) 20:14:22 ID:???

「おかわりはいかがですか?」

黄緑色の髪の店員が、僕の返事も待たずに、空になったティーカップにモカを注ぐ。
とりあえず、休暇の半分をこの兵庫県で過ごした感想として。僕は自分を沸き立たせるような何かなどには、一つも出逢えていない。
むしろ、あまりにも代わり映えもしなく、面白みもない人間どもの面を延々と見せられて、自分が削られてしまったような気概さえ覚えている。
まったく、この世の中には、どこにでもつまらない連中というものが溢れかえっているものなのだ。

僕は大して時間をかけずに二杯目のコーヒーを飲み干すと、勘定を払い、ロータリーに出た。
と、同時に。強い風が吹き、日差しを避けるために被っていた帽子が風に舞った。
帽子は台本どおりに演目をなぞるかのように、ふわりと上昇していき、やがて、そこらにぼんやりと突っ立った電柱の中ほどに引っかかる。
僕の身長では届かないし、風向きの関係で、黙っていれば降りてきてくれる様子もない。
かといって、電柱をよじ登るのもみっともなさ過ぎる。

「……仕方ないか」

こんなことに使わされると言うのも、『奴』にすれば不快なことかもしれないが。
何、ちょいとあの帽子のところまで浮かんでいって、ひっかかっているのをヒョイと外してくれればいいのだ。

「『天国への扉(ヘブンズ・ドアー)』」
486マロン名無しさん:2009/08/04(火) 20:15:26 ID:???
小声でその名前を呟くと同時に。僕の身体から、半透明の小柄な少年が、湧き出るように姿を現す。
僕の『ピンクダークの少年』の主人公とすっかり同じ姿のそいつは、僕のほうをちらりと無表情に見ると、僕の望んだとおり、空中をふわふわと浮かんでいき
電柱に引っかかった帽子を、指先でちょいと弾いた。
帽子は電柱からはずれ、くるくると回りながら、僕の元へ落ちてくる。
よしよし。僕はその帽子に手を伸ばす――

瞬間。何が起きたのか。
僕の手の中に舞い戻るはずだった帽子を、直前でひったくった奴が居た。

「ちょっと! あんた、あれ、何よ!?」

僕の目の前に噛り付き、上方を指差しながら、もう一方の手で、僕の帽子を引っつかんでいる女が居た。
年齢は、精々16か17と言った所か。黒髪のセミロングヘアーで、黄色のカチューシャをしている。
その様相が、僕に一瞬、あの杉本鈴美を思い出させる。
女は爛々とした目を丸く見開き、僕をまっすぐに見つめている。

この女は何を言っているのだ。

と、次の瞬間。僕はある考えに思い至り、あわてて女の指差す先を見上げた。
その軌道上に浮かび、おそらく僕と似たようなほうけ面で、女の後頭部を見下ろしている、僕の『スタンド』
まさか。この女には、僕の『ヘブンズ・ドアー』が見えているって言うのか。
と、言うことは。
この女も。『スタンド使い』なのか。

「ちょっと、何とか言いなさいよ! あの小さいのは何!? あれ、まるで『ピンクダークの少年』みたいじゃない?」

ああ、決まりだ。やはり、こいつには僕のスタンドが見えている。
しかも、どうやら察するに、この女は自分が『スタンド』を見えている。つまり、『スタンド使い』であることに自覚がないらしい。
今までにないパターンだ。
しかし、公の場で騒ぎ立てることに抵抗というものはないのだろうか。僕を見上げたこの女は、あたりに気遣わず口を荒げている。
周りの連中には、僕のスタンドは見えてない。傍から見れば、こいつが頭の温かい奴だと思われているだけだぞ?」
487シベリアより:2009/08/04(火) 20:28:20 ID:???
今投下してる奴だけどまさかこの板にまでさるさんがあるとは思ってなかった
引っかかったからちょっと間開きます
488マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:00:14 ID:???

「すまないが、君が何を言っているのか僕には分からないな。
 僕は『帽子』を風に飛ばされて、どうしたものかと呆けていたら、たまたま帽子が落ちてきてくれた。それだけだろう?」

僕は手早く『ヘブンズ・ドアー』に戻ってくるように指示し、そ知らぬ顔で目の前の少女にそう告げる。

「ちょっと、とぼけたって無駄よ! 今、あんたの身体に、あれが戻っていったじゃない! アンタ、『超能力者』なの!?
 それとも『デビルサマナー』!?」

声を潜めるということを知らないこの女は、大衆の目の前で『超能力者』等という突拍子もないセリフを平気で吐き出した。
もっとも、実際に『超能力者』と称するのがふさわしい存在である僕にとっては、それは突拍子のないセリフでも何でもないのだが。
何しろ。もしかしたら、この女は僕がこの旅に求めていた『不思議な体験』であるかもしれない。しかし、この大衆の面前で絡まれるのはいささか迷惑だ。
周りをぐるりと見回すと、つまらない面をした連中が、一様に僕を……その目の前で騒ぎ立てる、この喧しい女を凝視している。
……止むを得ないか。

「君。確かに君が言うとおり、僕は『超能力者』だ」

僕が小声でそう言うと、少女は目を輝かせて

「本当っ!? やったわ、ついに見つけた! ねえ、見せてよ、『今の奴』をもう一度!」

と、叫んだ。

「あわてないでくれ、お嬢さん。僕もこの『能力』を持つ……いや、『見ることの出来る』仲間を見つけられたのは嬉しく思う。
 けれど、ほら、見たまえ。ここでは少し目立ちすぎるだろう。だから、あの『路地裏』についてきてくれないか。
 そこで思うさま、僕の『能力』を君に見せてあげようじゃないか」

彼女に言ったことは嘘ではない。僕にとって、杜王町をすばらしい町へと変えている要素の一つである『スタンド使い』と、この旅先で出会えたのだ。
この出会いを無駄にしたくはない。それは、この岸辺露伴の間違いなき意思だった。
489マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:00:21 ID:???
支援ついでに
さるは00分で解除だからね
490マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:07:03 ID:???

「本当ねっ!? いいわ、行きましょう! やったわ……ついに見つけたのよ! この町で、『超能力者』をっ!!」

少女は僕の言葉を丸ごと信用し、駆け足で、僕が指差した路地裏へと駆けて行く。
まったく、僕がそこらの少女を狙う『スタンド使い』の異常性癖者か何かだったらどうするのか。
幸いなことに、僕は異常性癖者などではない。僕が興味があるのは、あの女の『スタンド』だけだ。
自覚を持たずして覚醒している『スタンド使い』。今まで僕のであったことのない存在だ。あの女がどんな『能力』を持っているのかと考えると、心が沸く。
最も、あの『間田敏和』のように、スタンド使いでありながら、つまらない思想しか持たない人間も居る。まだぬか喜びは出来ないのだが。

「ねぇ、早く見せてよ! ここなら誰だって見てやしないわよ!」

路地裏にたどり着いた僕に、少女が目を輝かせながら言う。
しかし、僕は確信を持っている。この少女は、あの間田のようなつまらない人間ではない。
きっと、彼女の『心』を『読む』事は、僕にとって喜ばしい結果を呼ぶだろう。これは僕の『経験』から来る直感だ。

「まあ、すこし落ち着こう。まずは自己紹介をしようじゃないか。それが初対面の人間同士の常識という奴だ。
 僕は『岸辺露伴』という。君の言った、『ピンクダークの少年』を少年ジャンプで連載している。職業は、漫画家だ」

「『岸辺露伴』? それなら知ってるわ、そういえば、新年号の表紙で見た顔だわ!
 あの『岸辺露伴』が『超能力者』っ!? すごいわ、信じられない!」

「ああ、落ち着いてくれ。それで、よければ、君の名前も教えて欲しいんだ。『能力』を見せる仲間なんだから、それぐらいはいいだろう。
 それに……もしもあるなら、君の『能力』も見せて欲しいな」

「? ……『能力』? 私にはそんなのないわよ。そんなのがあったら、わざわざ不思議を探す手間なんか要らないじゃない」

なるほど。やはり、この女は自分が『スタンド使い』であることを知らないのだ。『スタンド』は『スタンド使い』にしか視認できない。

「ああ、自己紹介だったわね。私は『涼宮ハルヒ』よ、この町で『不思議探し』をしているのッ!
 そんなのはいいわ、はやくあなたの『能力』を見せてよ!」
491マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:08:35 ID:???

「ああ、見せてあげるよ……僕の『能力』をね……」

容易いものだ。いくら『スタンド使い』とはいえ、この少女の思考力は、そこらの一介の女と何も変わらない。

「『ヘブンズ・ドアー』!!」

「!?」

一瞬。僕の身体から飛び出したヘブンズ・ドアーが、少女……『涼宮ハルヒ』の身体に手刀を刻み込む。
その一閃が切り口となり、『涼宮ハルヒ』の身体が切り開かれ、『本』へと変わる。
それと同時に『涼宮ハルヒ』の意識は失われる。

「さあ、『読ませて』もらおうか。『涼宮ハルヒ』の全てを……」

僕は色めいていた。あの日、広瀬康一君を『読んだ』時のように、心が沸き立っていた。
この少女の心に、一体何が『在るのか』? 僕は一体、この地から何を『持ち帰れる』のか?
考えるだけで、体中に電光が走った。

しかし。

「これはッ……何だッ!?」

僕の期待は、見事なまでに裏切られた。
いや、『間田』の時などとは違う。まったく別の形で、僕の期待は裏切られた。

「これは……『絵』ばかりだっ!! 写真……色んなヤツの写真が、『アルバム』の様に貼られているッ!!
 しかし……一つも『文章』が無いッ!! 僕はこの女……『涼宮ハルヒ』から何一つ『読み取れない』ッ!!」

それだけではない。『絵』で埋め尽くされた彼女の心には、僕が『書き込む』隙間すら無いのだ。
492マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:14:56 ID:???

「馬鹿な……此れでは『ヘブンズ・ドアー』で『無かったこと』にすら出来ないッ!!
 こんな……こんな心の持ち主は初めてだ……ッ!?」

困惑した。当たり前だろう。いくら僕がそれなりに『経験』を積んだ『スタンド使い』だとは言え、こんなのは初めてだ。
地面に横たわる『涼宮ハルヒ』に、一つでも書き込む『空白』か、『文章』が無いかと、僕が彼女を『捲っている』時。

「お、おい、ハル……ヒ?」

背後に、聞き覚えの無い声がかけられた。
僕は柄にも無くあわててそちらを向き直る。
其処には、見覚えの無い……まるで、日本人のつまらないところを凝縮したかのような、味気の無い面をぶら下げた少年が居た。

「ッ! お前……誰だ、ハルヒに何を―――」

「くそ、ヘブンズ―――」

この少年は、どうやら『涼宮ハルヒ』の知人らしい。
致し方ない、この状況を切り抜けるために、この少年も『本』に―――
と、僕が『決断』したその時。

ビシュ。

ドス。

「うぐぅぅッ!!?」

そ知らぬ方向から、『矢』が放たれ―――
その『矢』が、少年の胸を貫いた。
493マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:16:44 ID:???
しえ
494マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:19:53 ID:???

「なっ、何ィッ!!? 矢……だとッ!!?」

「う……グ……ッ!!」

『矢』によって胸を貫かれた少年は、くぐもったうめき声を一つ上げた後、その場に蹲った。
ああ、そういえば。あの日、『ヘブンズ・ドアー』を得た日。僕も、この少年のように、大地に寝そべったものだった。
…………待てよ。『あの日』のように、だと?
あの『矢』は。仗助どもが丁重に圧し折った筈じゃあ無かったのかッ!?

「誰だッ! 今、『矢』を射ったのはッ!?」

僕がその『矢』の放たれた方角を振り返ったとき。既に其処には、誰の姿も無かった。
少年は小さなうめき声を上げながら、路地裏のアスファルトに身体を委ねている。
こいつは僕のようには成れなかったのか。

「誰だ! 誰が『矢』を射ったんだァッ!!」

僕の声に反応したのは、少年の後ろからやってきた、薄汚い嗄れ声だった。

「お前……『涼宮ハルヒ』を……渡せ……そいつを殺すからよォ……」

声に振り向くと、其処に、アロハシャツとチノ・パンツを着込んだ、典型的なチンピラ野郎と言った男が立っていた。
『涼宮ハルヒ』を渡せだと? この男は、何を言っている? この少女……『スタンド使い』であるこの女を、渡せというのか。
僕の背筋に、嫌な予感が走る。
ああ、これは『同じ』だ。杜王町で起こったあの事件と『似ている』のだ。

「涼宮ハルヒを……渡せえぇぇぇ!!」

絶叫と同時に。男の身体から、五つの黒い影が湧き出した。『スタンド』だ。
495マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:20:49 ID:???

「貴様の言うとおりにされる筋など無いッ!!」

断じて言うが。僕は、自分の好奇心を満たし得る存在を手放したくなかっただけだ。
決してこの少女を守りたかったわけではない。

男が身体から黒い影を湧き出した瞬間―――ほぼ間違いなく、それは『スタンド』だろう。
僕は『本』となったままの『涼宮ハルヒ』を抱きかかえ、男の傍らを走り抜けていた。
『矢』に『射られた』少年はひとまず後回しだ。僕が知っているのはこの『涼宮ハルヒ』という少女だけだ。

人目もわきまえずにロータリーを駆け抜け、歩道沿いに止めた車へと走る。
後部座席に乱雑に『本』と為った『涼宮ハルヒ』の身体を放り投げ、運転席へ座る。何を待つ暇も無い。我武者羅にエンジンをまわし、アクセルを踏み込む。
僕の車が稼動し始める頃。五つの影は、明らかな形となり、僕の車のフロントガラスへと襲いかかっていた。
それを気に止めず……止めたら、終わりだ。……、僕はアクセルを踏み続ける。動き出した車体が『影』を弾き飛ばし、後方へと追いやる。
僕はそのまま、ロータリーから伸びた横道へと車体を滑り込ませた。目指すのは、郊外だ。フロントガラスに映る、ゴキブリのような乗用車の群れの居ない場所だ。
喧しいクラクションを軒並み無視しながら、僕はハンドルを切る。加えて、バックミラーを見る。
其処には僕の予想通り、あの男の身体から湧き出た黒い影が五つ見て取れる。
496マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:22:43 ID:???

「『カラス』だッ……!!」

そいつらは、まるで羽毛を持たずに生まれてしまった、奇形のカラスのような様相をしていた。
なるほど。承太郎の言うところの、遠隔自動操縦型というところか。
おそらく、一瞬か見たであろう、この後部座席の『涼宮ハルヒ』を標的としているのだろう。
こいつらはおそらく、どこまでも追ってくる。僕の車はもう、限界ギリギリまでの速度で行動を飛ばしている。しかし、それでも、黒いカラスたちは一定の速度で僕を追ってくる。
『ハイウェイ・スター』よりもいくらか、追跡能力は上らしい。
畜生。なんでったって僕が、こんな目に会わなければ為らないのだ。

逃走劇を数分ほど続けた時だろうか。
フロントガラスの向こうから、聞き知らぬ女の声が、車体へと転がり込んだ。

「そこの車、止まりなさい!!」

行く手を見ると、大小を入り交えた無数の車が、僕の行く先を閉鎖している。
警察か。僕は一瞬そう考えた。思えば、僕は傍から見れば、少女誘拐犯であるのだ。
しかし。結果として、僕の走行をせきとめたそいつらは、警察でなく……言うならば。僕の『味方』だった。
497マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:29:25 ID:???
498マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:30:59 ID:???
命令どおり、止まる他無いだろう。何しろ、僕の行く手を、ありとあらゆる車が遮っているのだから。
僕はブレーキを踏み、柄に合わないドリフトで車を止めた後、背後に迫るカラスのスタンドどもを見た。
距離は数十メートル。まもなく追いつかれるだろう。後部座席には、ヤツらの標的と思える『涼宮ハルヒ』が居る。

「あなた、どこの所属!? 『涼宮ハルヒ』をどうする気!」

僕の前を遮る数台の車のどいつからか、澄んだ女の声が響く。所属だと?ちくしょう、どう答えればいい。
僕が返答に困っている内に。響き渡る女の声が、豹変した。

「! ……状況は変わった! 道を空けなさい、私が同行するわ!!」

何だ? 女の声が周囲に響き渡るや否や、僕の右斜め前のトラックらしき車のドアを開けて、セミロングの頭髪を二つに括ったスーツ姿の女が飛び出してきた。
年齢は……わからない。20代のどこかというところだろうか。女は僕の座る助手席側のドアをこじ開け、叫んだ。

「『状況は分かっています』! あの『カラス』から逃げればいいのね!?」

言葉が僕の脳髄に染み渡るのに、少し時間が掛かる。
インプット完了。なるほど、この女も、『僕』や『涼宮ハルヒ』の仲間だというのか。

「あなた、攻撃は!?」

女が叫ぶ。先ほどとは大きく異なる、ぶっきら棒な口調だ。

「『得意』じゃぁないな! 得意だったら、あんなヤツらはさっさと片付けてる! 『得意』じゃあないから逃げてるんだ!」

「なら、逃げるわ! どこかにしっかり捕まっていて!」

女が叫ぶや否や。僕の車は、僕がハンドルに触れてもいないにもかかわらず、開かれた新たな逃走路に向けて動き出した。

「『ヘブンズ・ドライブ』!! 」
499マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:35:15 ID:???
これがこの女のスタンド能力だというのだろうか。車が『走っている』のではない。まるで『すべる』かのように道路の上を駆けてゆく。
僕はハンドルは愚か、アクセルさえ踏んでいない。女はというと、開かれたままの助手席のドアに捕まった体制のままで
車内に足をかけるわけでもなく、平然と其処に『存在』している。

「『確認』するけど、あなたはあの『カラス』から、『涼宮ハルヒ』を『守って』いる! それで間違いないわね!?」

違う。僕はただ、自分のためにこの『涼宮ハルヒ』を『確保』したいだけだ。
僕がどう説明しようかと考えあぐねていると、女は僕の『沈黙』を『肯定』と受け取ったらしく

「さっき、『得意』じゃあないと言ったわね? それは『不可能』ということ?」

と、僕に向けて、無礼なことに、人差し指を突きつけながら訪ねてきた。
そんな問答をする間にも、僕の車は道路の上を『動いて』いる。
車が斜めを向いていようと、真横を向いていようと、構わずに道路の上をまっすぐに『動く』。まるでカーリングのストーンにでもなっちまったかのようだ。
さて、女の質問だ。僕はあの敵の『スタンド』を、『攻撃できる』か?
僕は『ヘブンズ・ドアー』で、真っ向からの『戦闘』を行った経験は少ない。
やるとしたら、ヤツらを一匹づつ『ヘブンズ・ドアー』でとっ捕まえて、『本』にしてそこらに放り捨てることくらいだ。
余裕があるならば、『電線を食いちぎって感電しろ』だの『共食いをしろ』だのと書き込んでやってもいい。
あるいは、そもそもヤツらの首を圧し折ってやることぐらいなら、僕の『ヘブンズ・ドアー』の力でも可能かもしれない。
運転をしながらでは難しいが、車を動かすのはこの女に任せればいいというなら、『不可能』ではない。

「いいだろう、僕の『ヘブンズ・ドアー』があのスタンドを『攻撃する』!」

僕は運転席を離れ、バックガラスから『敵スタンド』を見た。
距離は大分離れている、50mといったところだろうか。この女が、常識外れのスピードで車を『動かしてる』からだ。
しかし、どれほどスピードを上げても、この『敵スタンド』は確実に、この車に『着いてきて』いる。
振り切ることは出来そうに無い。やはり、『攻撃する』しかない。
僕はいつの間にか運転席に乗り込んでいる女を振り向き、言った。
500マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:39:25 ID:???

「おい、駄目だ、遠すぎる! 僕の『スタンド』はあそこまでは届かない、精々10mだ! スピードを落とせ!」

すると、女は

「良いわ。いい、最優先事項は『涼宮ハルヒの安全確保』よ!」

そう言って、車体をぐるりと反転させた。僕が見つめていたバックガラスの向こうに、前方の光景が広がっている。

「後部座席で、私は『涼宮ハルヒ』を守る! あなたは『攻撃』しなさい!」

「何度も言わんでも、分かっている!」

僕は運転席へと移り、女は後部座席へと移った。フロントガラス越しに、こちらへの距離を狭めてくる五体の敵スタンドが見える。
先に『ヘブンズ・ドアー』を待機させて、届く範囲に入ってきたやつをふん捕まえてやる。

「『ヘブンズ・ドアー』!! 奴らを捕まえろ!」

運転席のドアを開け、その隙間から『ヘブンズ・ドアー』を車外へと飛び立たせる。
『ヘブンズ・ドアー』は車体から10メートルほど離れた位置まで飛んで行き、両手を構えて静止する。
車のスピードが徐々に落ちると同時に、『ヘブンズ・ドアー』と敵スタンドの位置が狭まってゆく。
カアア。とけたたましい声を上げながら、カラスのうちの一体が軍制の中から飛び出してきて、『ヘブンズ・ドアー』に襲い掛かった。

「『掴め』!」

僕の掛け声と共に、『ヘブンズ・ドアー』が手を伸ばし、迫り来るカラスのスタンドを捕らえようとする。
しかし、スピードは敵スタンドのほうが上だ。手の動きには自身はある僕のスタンドですら、それを捕獲することは容易ではない。
ならば仕方ない。『本』にして動きを封じてやる。

「『ヘブンズ・ドアー』! そいつを『斬れ』!!」
501マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:39:43 ID:???
新作、新作ぅ!!支援
502マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:41:08 ID:???
 
503マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:42:06 ID:???
『ヘブンズ・ドアー』が両手で手刀を作り、目の前で羽ばたくスタンドに向けて振り切った。
『掴む』ほど精密な動作ではない。手刀は命中した。切り裂かれた敵スタンドの身体が、無数の『ページ』となり、風に煽られてバラバラと捲れる。
『書き込む』時間は残念ながら無かったが、無力化には成功したようだ。『本』になったスタンドがその場で停止し、アスファルトに落下する。

「よし、そのまま…………ッ!?」

おそらく、次々と襲い掛かってくるであろう敵スタンドたちに立ち向かうべく、『ヘブンズ・ドアー』が再び構えを取ったとき。
空中を舞っていた四体のスタンドが、僕らを追うことを止め、突然アスファルトへと急降下をし始めた。
何だ。倒したのか?
……いや、違う。ヤツらは、アスファルトに落ちた『何か』に群がり、それを『啄ばんで』いる!!

「あれはッ……僕の倒した『敵スタンド』を、残りの『敵スタンド』が『喰って』いるゥーッ!!?」

時間にして、数秒の出来事だった。えらく手早く『食事』を済ませた、残り四体のスタンドが、再び僕の車目掛けて飛び立ち始める。
その姿が、先ほどよりもいくらか大きくなっている。

「こいつら、『倒せば倒すだけ、残りのやつらが成長している』のかッ!!」

早くも食事に掛かった時間分の距離を狭め、敵スタンドは更に『ヘブンズ・ドアー』に襲い掛かる。そのスピードが、先ほどよりも速い。

「おい、スピードを落としすぎだ! 加速しろ!」

「分かったわ……気をつけなさい、そいつら『速くなってる』わ!」

バックガラスから行く手を見つめつつ、女が言う。
でかさだけじゃあなくて、『スピード』も上がってると言うのか。

「『ヘブンズ・ドアー』!」

でかでかと嘴を開き、二羽が同時に襲い掛かってくる。そいつらに向かって手刀を繰り出す。
504マロン名無しさん:2009/08/04(火) 21:59:31 ID:???
あらら?
505マロン名無しさん:2009/08/04(火) 22:00:14 ID:???

「ギィ!」

二発放ったうちの一発が命中し、一体のスタンドが『本』になる。もう一体が『ヘブンズ・ドアー』の手刀を回避し、どす黒い嘴で、『ヘブンズ・ドアー』の左肩を穿った。
スタンドと連動して、僕の肩が裂け、血が噴出す。

「ぐぅ!」

鋭い痛みが、肩から全身に染み込む。『スタンド越し』の痛みが、僕は何か嫌いだ。直接のものとは違う、妙な後残りがある。
その痛みを振り切るように、えぐられた肩の辺りに右手を突き出す。その手が、敵スタンドの首を掴んだ。
ダメージは食らっちまったが、この距離なら外さない。

「『ヘブンズ・ドアー』!!」

まったく、今日ほど『ヘブンズ・ドアー』を連呼した日はない。
『スタンド』で『戦う』というのはえらく疲れるものなのだな。
これで三体を倒した。残る敵スタンドは二体。しかし、その二体は……

「やっぱり、『喰っている』……そして『成長』しているッ!!」

もう、カラスなんて代物じゃあない。僕らを追っている二体のスタンドのは、鷹だの、鷲だの、そういった猛禽類の類の姿をしている。
そして、そいつらは、初めの頃とは比べ物にならないほどにでかい。そして、速い。

「おい、スットロイんだよ! 追いつかれるぞ、スピードを上げろォー!!」

「無理よ、これ以上は! 『ヘブンズ・ドライブ』にだって限界速度はあるのよ!」

「くそ……『ヘブンズ・ドアー』!!」

迫り来る猛鳥に向けて殴りかかる。鳥の身体は、僕の思惑の通りに『本』へと変わる。しかし、今までのように、意識を奪うことが出来ない。

「馬鹿な……もう『ヘブンズ・ドアー』では敵わないと言うのかッ!?」
506マロン名無しさん:2009/08/04(火) 22:02:00 ID:???
メキ。と、耳に障る音が頭上に降り注ぐ。
見上げると、外側からつるはしで殴られたかのような穴が、天井にぽっかりと空いている。
奴らの『嘴』に『攻撃』されているのだ。

「うぐぅっ!!」

それと同時に、後部座席(今は前部だが)で『涼宮ハルヒ』に寄り添っていた女が声を上げる。
見ると、女の背中から血が噴出し、スーツを赤く染めている。
女のスタンドは『一体化型』で、今、この車と『一体化』しているのだ。車へのダメージは、そのまま女へのダメージになるということか。
そんなことにも構わず、怪鳥どもは容赦なく、嘴だの爪だのを車体に叩きつけて来る。フロントガラスが割れ、破片が僕の身体に降り注ぐ。
女の全身に次々と傷が『発生』し、そのたびに女が呻く。
ちくしょう、何てことだ。この岸辺露伴が、何故、こんな下らない旅行先で、わけのわからないことに巻き込まれなければいけないのだ。

「このド畜生がァー!!」

怒りに任せて、腹からそう叫んだ瞬間。

「ギギィャーイ!!」

頭上で、けたたましい鳴き声が二つ響いた。
何だ。僕はあわてて、穴だらけになった天井から、声のした方向を見る。
しかし、其処には何も無い。虫食いになった天井から、無駄に天気のいい空が見渡せるだけだ。
あの怪鳥スタンドどもの姿も無い。
同時に、僕の車が『動く』のをやめる。まさか、女が『死んで』しまったのか?

「倒した……の?」

僕が嫌な予感に襲われた直後に、体中に傷を作った女がそう呟いてくれたおかげで、僕は救われた。

「駄目……『ヘブンズ・ドライブ』を維持できなくなったから、止まってしまったわ……敵は、倒したの?」

分からない。としか、僕には答えようが無い。僕のスタンドはヤツらに『攻撃』しなかった。しかし、奴らの姿はどこにも無い。『涼宮ハルヒ』も無事だ。
507マロン名無しさん:2009/08/04(火) 22:03:18 ID:???


―――――

「遅ぇな、『パニック・ファンシー』……何モタモタしてやがんだよォ、畜生ォ」

……生乾きの意識を擽るように、遠くで声がする。
ここは何処だろう。俺は何をしていたんだったか? ……周りは薄暗い。

「さっさと殺して来いよォ……あの女……『涼宮ハルヒ』をよォ……」

俺はコンクリートの上に倒れているようだった。
どこかのビルとビルの間の路地裏と言った所か。
そうだ。俺は確か、いきなり駆け出したハルヒを追って来て……

……今、何て言った?

「殺せ……さっさと『殺す』んだよォ、『涼宮ハルヒ』を『殺す』んだよォオオ!!」

……俺の目の前で、アロハシャツを着込んだチンピラが、声を荒げながら、コンクリートの壁に蹴りを入れている。
何だって? 今、何て言った?

「あァ? テメェ、生きてたのかよォ……っ!? て、テメェ……なんで、そんなの『出して』んだよォ……!?」

ハルヒを殺すだって?
何がなんだかわからん。お前がいきなり何に驚いているのかも分からん。お前が誰かも知ったことじゃない。
しかし。

「『ハルヒ』を『殺す』なんてのは……俺が『許さねー』!!」

何だ。この黒い『腕』は。
……なんだか知らんが。こいつは『味方』なんだな?
508マロン名無しさん:2009/08/04(火) 22:04:37 ID:???

「ヒッ、テメェー!! 俺を『攻撃』するってのかァー!!? その『スタンド』でェー!!」

男が喚く。スタンド。耳に馴染みの無いその言葉が、何故かしっくりと来た。
この『黒いの』は、スタンドってーのか。

「お前が『ハルヒ』を『殺そうとしている』なら……俺は絶対に『ハルヒ』を『殺させねー』!!」

俺が叫ぶと同時に。『黒いの』が両腕を振り上げながら、男に向かって飛び出す。

「ヒィィイ!!! 戻って来い、『パニック・ファンシー』いい!!」

「『ヤレ』ぇ!!」

俺の『命令』と共に。ドゴォ。などという音がしそうな、見事なフックが、男の顔面に叩き付けられる。

「ヤレヤレヤレヤレヤレヤレヤレヤレヤレェッ!!」

其処から、続けざまに、何発もの拳が、男の身体を殴りつける。
男は拳の雨の中で呻いているようだが、もはやその声は、俺の耳には聞こえないほど小さなものだ。
『黒いの』はほんの数秒ほどラッシュを続けた後で、男のアゴに強烈なアッパーカットを決めた。男の身体が、浮く。

「『やっちまえ』!」

空中に舞った男のボディーに、渾身の一撃。
男は数メートルほど吹っ飛び、コンクリートの上に身体を打ちつけ、そのままぐったりと倒れこんだ。


本体名 − 不明
スタンド名 − パニック・ファンシー 再起不能

to be contiuend↓
509マロン名無しさん:2009/08/04(火) 22:05:40 ID:???
さァーこれで取り返しは『付かない』ぜェー!!?

なんとか落ちまで頑張んぞちくしょおおおおお
510マロン名無しさん:2009/08/04(火) 22:08:18 ID:???
投下乙&GJ!
そして、ようこそ……『書き手』の世界へ……

オリジナルスタンドにキョン覚醒
その上これは四、五合同か?期待で胸が張り裂けちまう
511マロン名無しさん:2009/08/04(火) 22:12:14 ID:???
スタンドは基本オリジナルってか趣味全開の予定
あとちょっとらき☆すたのほかのSSの設定とか使うからちょっとイミフかもしんないけど付き合ってくれると嬉しいです
以後アフターロックの名前で投下します。なんかこのスレは投下は名前欄に一言がお約束っぽいし

止まり気味のスレがちょっとでも盛り上げられたら嬉しいです
512マロン名無しさん:2009/08/04(火) 22:14:31 ID:???
wikiに乗せるタイトルは『キョンの憂鬱な冒険』でいいかね?
513マロン名無しさん:2009/08/04(火) 22:15:02 ID:???
投下乙!新作は嬉しい
麻薬売買でらき☆すたSSって言うと・・・なんて邪推は無粋か
楽しみに待ってるぜ!
514アフターロック:2009/08/04(火) 22:16:21 ID:???
>>512
キョンの憂鬱な冒険-アフターロック-
にしてくれるとちょっと嬉しいかも
まだキョンがどこまで活躍するか未定だから
あまりにもwwwwwww無策wwwwwwwwww
515アフターロック:2009/08/04(火) 22:19:23 ID:???
>>513
お前はwww勘がwww良すぎるwww

うん、誰もが付いていけないようにはしないように気をつけます。
とにかく書くぜー! つか考えるぜー!
516マロン名無しさん:2009/08/04(火) 22:33:22 ID:???
投下乙!
読みやすかったし、原作っぽくてすらすら読めた
つか普通に文章うまいと思った。
期待してるから頑張れ
517マロン名無しさん:2009/08/05(水) 11:03:48 ID:???
ついに露伴先生が来たか
518アフターロック:2009/08/05(水) 20:42:19 ID:???
2話書けたよ!
今夜投下するよ!
519アフターロック:2009/08/05(水) 21:05:00 ID:???

「……いずれこんな日が来てしまうのではないかとは、思っていましたよ」

俺の隣に腰を掛けた男が、いつもの微笑とは異なる、神妙な面をして、そう呟く。
向かいに座っているのは、長門と、これまでに幾度か目にした、年齢不詳のメイドさん(今は、いつかのようにキャリアウーマン的衣装を纏っている)……女性。

「これからあなたに、すこし長い説明をします。突拍子も無いことに聞こえるかもしれませんが、分かっていただけると嬉しいのですが」

と、古泉一樹が笑う。


キョンの憂鬱な冒険 -アフターロック-
第2話『涼宮ハルヒを脅かす輩をスタンドで撃退する団』


「まず。涼宮さんの『能力』について、から話すのが、あなたには一番分かりやすいことと思いますので、その点から話しましょう」

手振りを交えながら、古泉が話し出す。

「彼女の能力。世界を改変する力。それを、僕らはある属性に属すものと考えています。
 僕らが閉鎖空間へ立ち入り、『神人』と戦う能力とは別のものです。それは、あなたと、そこの彼の言葉を借り、『スタンド』と呼びましょう」

スタンド。それはつい先刻、俺が古泉に話した言葉だ。
―――あいつを殴ったのは俺じゃなくて、俺の『スタンド』だ。
それは、俺が殴り倒したあのチンピラが口にしていた言葉の受け売りだ。
……そして、その『スタンド』という言葉を口にしたという、もう一人の人物。
長方形の机の短い辺の部分に腰を掛けた、仏頂面の男。
名前は、『岸辺露伴』とか言ったか。

「涼宮さんの持つ能力は、『スタンド能力』です。そして……その『スタンド能力』は、森さんや、僕。そして、あなたにも備わっています。
 それらは涼宮さんの持つ世界改変の能力とは違う、おのおのによって内容の異なる能力ではありますが……それらは、種別としては同じものです」
520アフターロック:2009/08/05(水) 21:11:38 ID:???
……『スタンド』。
まだ今ひとつ理解できん。『スタンド』というのは、俺のもとに現れた、あの『黒いの』を指す言葉ではないということか。

「違うんだ、それが。たとえば、君にはこいつが見えるだろう?」

口を開いたのは、岸辺露伴だった。岸辺は馴れ馴れしい口調で俺にそう言い、空中を指差す。
たずねられるまでも無い。さっきっから、テーブルの上を浮遊する『こいつ』には警戒していた。

「このアニメキャラみたいなのが」

「僕の『スタンド』だ。もっとも、『涼宮ハルヒ』のスタンドのような、超常的能力は持っていない。ただ、人の心を『読める』だけだ」

それだけでも、十分俺にとっては超常能力なのだが。

「つまりね。スタンドっていうのは、超能力の一種。『スタンドというくくりの中での、適応する人物全てに与えられる超常的能力』なの」

続けて口を開いたのは、森さんだ。

「露伴は『心を読み』、私は『車を動かす』。涼宮さんは『世界を変える』。そういう風に、それぞれ違う能力を持っているの。分かる?」

「大体は」

俺のしょぼくれた脳味噌でも、大まかな事象は理解できてきた。
つまり、サイコキネシスだの、テレポーテーションだのを、まとめて『超能力』だと認識していたように。
『人を本にするヘブンズ・ドアー』だの、『車を自由自在に操るヘブンズ・ドライブ』だのを、まとめて『スタンド能力』と認識すればいいわけだ。

「飲み込みが速くて助かります。そして、涼宮さんの『能力』も、そのうちの一つなのです。おそらく、『スタンド』の中でも最も強い力を持っているのでしょう」

そりゃ、この世界を好きなようにいじくれちまう。なんて能力は、トップクラスに違いないだろうな。

「そして、あなたもまた、『スタンド能力』を持つものだった。……先の一件で、いささかタイプが変化したようですが、ね」
521アフターロック:2009/08/05(水) 21:14:58 ID:???
俺が、『スタンド使い』。
その事象については、驚かないし、疑いもしない。
事実、俺はさっき、寝ぼけながらも、あの男を『スタンド』と思われるもので殴り倒したのだから。
しかし。変化したというのは一体どういうことだ。

「今まで、あなたの『スタンド』には、『像』がありませんでした。
 あなたの『能力』……それは、身近に居る人間の『スタンド』を引き出す能力だったんです」

微笑みながら、古泉が言う。

「『スタンド』は、全ての人間に適正があるわけではありません。『スタンド』を持つことに適さない人間もいます。
 あなたの『スタンド』とは、そういった適性を持つ人間と接触した際
 その人間に『スタンド』を目覚めさせるという『能力』だった、と推測されます」

……頭の処理が付いていかない。
つまり。俺は、『スタンド使い』を無駄に増やしちまう、とんでもなく厄介な『スタンド使い』だったというのか。
522アフターロック:2009/08/05(水) 21:16:00 ID:???

「はい。これは『スタンド』についての見解を得た、機関の推測に過ぎませんが、おそらく間違いないと思います。
 僕が森さんが『スタンド』に目覚めたのも、おそらく、あなたと長らく接したためでしょう。
 ほかにも数名……貴方の周囲にいた人物に、『スタンド』が発生しています。
 はじめは、涼宮さんがその原因かとも思いました。
 しかし、彼女とは接点が少なく、貴方との接点の多い人物にも、『スタンド』が発生していることから……
 機関は、あなたがその原因であると。そして、それはおそらく貴方の『スタンド』の能力なのだと考えています。
 ……おそらく、涼宮さんの『スタンド』を引き出したのも」

ちょっと待て。ハルヒのあの厄介な神様能力の現況が、俺だって言うのか。
しかし、それじゃあ計算が合わないだろう。あいつがあの能力を得た……のは、たしか三年前―――」

「あなたは、三年前に、涼宮ハルヒと接触を行っている」

……長門の言葉と同時に、俺の記憶の底から、あの七夕の日が思い出される。
そうだ。俺はあの日、朝比奈さんと共に時空を超え―――
涼宮ハルヒと、出逢ったのだ。
あの、ほんの数時間のうちに。俺の『スタンド』とやらが、ハルヒの『スタンド』を目覚めさせちまったってのか?

「はい。我々はそう考えています。
……長門さんの言う、『情報爆発』も、朝比奈さんの言う『時元のゆがみ』も、三年前のあの日に結びつきます」
523アフターロック:2009/08/05(水) 21:20:25 ID:???
……なら、つまり。
全ての元凶は、俺だと。そう言いたいのか、お前は。

「……少しばかり端的に申し上げれば、そうなりますね。
 無論、涼宮さんに眠っている『スタンド』が、『神』と呼ぶほか無い其れであったのは、涼宮さんの『素質』によるものです。
 おそらく、あなたとの接触が無くとも、彼女はその『能力』を発現していたのではないか。と、我々は考えています。
 しかし、あなたが三年前の彼女と接触した事実がある以上は……」

『神』を目覚めさせたのは、俺だった。
なるほど。つまり、俺はとっくの昔から、『一般人』等ではなかったということか。
……なんという。

「ご理解が早くて助かります」

正直、自分でも、よくこんなぶっ飛んだ話を、すいすいと理解できていると思う。
で、さっき聞いたが、俺の『スタンド』が『変化』したってのは、いったいどういう事なんだ。

「それは、僕が説明しよう」

名乗りを上げたのは、岸辺露伴だ。

「まず。『スタンド』というのは、『成長』をするものなんだ。個々のスタンドによって差はあるがね。
 たとえば、僕の『ヘブンズ・ドアー』は、元々は姿、『像』を持ったスタンドではなかった。
 僕の描いた絵を見た相手が、その絵に『同調』したとき、相手を『本』へと変える能力だった。
 しかし、それが今では、こうして『像』がある。『像』が相手に触れるだけで、相手を『本』に変えられる。
 これは僕が『スタンド使い』として成長した結果だ」

空中に浮かぶ『ヘブンズ・ドアー』とやらを指差しながら、やたらと自慢げに岸辺が話す。
じゃあ、俺のあの黒い『スタンド像』というのも、俺が成長したから発生した。というのか。

「それは少し違うようなんだ。『スタンド能力』が変化する要因として、もう一つ。
 僕もそう詳しいわけではないが……『矢』というものがあるんだ」
524アフターロック:2009/08/05(水) 21:23:42 ID:???
『矢』。
その一言が、つい数時間前。俺の身に起きた、あの出来事を思い出させる。
ハルヒを追って路地裏へと向かった俺が見たのは、床に倒れるハルヒと、それを抱き起こしている男(思えば、あいつは『岸辺露伴』だったんだ)
そして……そうだ。
もう一人の『男』。いや、女だか男だかは、見ただけではわからなかった。暗がりの所為か、衣服の関係か、そいつは俺にとって『茶色い人間』にしか見えなかった。
ハルヒと、俺を振り返った岸辺の後ろに、その男が立っていたんだ。そして、そいつは……『弓と矢』を持っていた。
そして、そいつはそれを俺に向かって『射った』んだ。

「……あの傷は、お前が治してくれたのか、長門?」

「そうではない」

まあ、そうだろうな。
俺があのチンピラを『殴った』時、俺の胸に、『矢』に貫かれた形跡など、一つも残っていなかった。
それから、呆然と路地裏に立ち尽くす俺の下に、古泉からの連絡が入り、今に至るわけなのだから。
もしあの傷を長門が治してくれたなら、その時に長門が、あのチンピラ野郎を始末しているはずだ。

「君が『矢』に『射られた』場面は、僕も見ていた。
 あの『矢』は、『射られた』人間の『スタンド能力』を引き出す力を持っている。
 いや、正確には……以前僕は、そういう『矢』の存在を知っていた。その『矢』と、とてもよく似ていたんだ」

射られた人間を『スタンド使い』へと変える『矢』。

「そいつが『スタンド使い』の素質を持たないものなら、傷はそのまま。場合によっては死ぬだろうね。
 そいつに素質があり、『スタンド能力』を得たならば、『矢』の傷は綺麗に消えてしまう」

俺がその『矢』を喰らっちまったってのか。
しかし。古泉の話なら、俺はもうとっくの昔から『スタンド使い』だったんじゃあないのか。

「ああ。それがあの『矢』のもう一つの力。
 『スタンド使い』が『矢』で『射られた』時、『スタンド能力』が『変化する』。
 君のスタンドは、『矢』によって『像』を得たということだろう。そのほかにも、能力に変化がおきている可能性はあるが」
525アフターロック:2009/08/05(水) 21:28:11 ID:???
能力に変化、か。
せっかくなら、その『スタンド使い量産能力』みたいなもんが消えちまってくれていると嬉しいんだがな。

「それは……わかりませんね、現段階では。以前の『能力』を持ったまま、『像』を得たという可能性もありますし、
 あるいは、貴方のスタンドはまるで別の、単なる『戦闘用』のスタンドに変化してしまったのかもしれません」

古泉が、難しそうに眉を顰めながら言う。

「何、そんなのは『読め』ばすぐにわかる」

と、あっけらかんと言い放ったのは岸辺だ。
『読む』。ちょ、ちょっと待て。

「俺を『本』にするってのか?」

「僕としては、それにも興味はあるんだが。読むのは『君』でなく、『スタンド』のほうだ」

岸辺の指と、『ヘブンズ・ドアー』とやらの指とが、同時に俺を指差す。
……一挙一動がいやに鼻につく男だ。古泉とはまた違ったタイプのな。

「……そうは言われてもな。『スタンドを出す』ってのがそもそもどういうもんか、俺にはいまいち理解できん」

すると、古泉が微笑み

「そうですね。言葉では説明しにくいのですが……一度つかめば、簡単なものですよ。
 あなたの『スタンド』が、貴方の隣に『立っている』。そう考えればいいのです」

『考える』ねぇ。
言われるままに、俺は記憶に残っている、漆黒の後姿を思い出す。
そして、そいつが俺の隣に『立っている』ことを『想像する』。
すると。
526アフターロック:2009/08/05(水) 21:34:23 ID:???
す。と、俺の体が、横に『ずれる』ような感覚があった。
しかし、俺の体はどこにも動いていない。
俺の体の中から、『何かが滑り出た』ような感覚だ。

「なるほど、それが君の『スタンド』か」

俺の周りの四人が、そろって俺の背後を見つめている。
その視線の集う先を振り返ると……そこに、あの『黒いの』が立っていた。
身長は、人間で考えたら異様にでかい。全長2mってところだろうか。
頭部はいやに強固そうな装甲につつまれている癖に、首から下は、体にフィットするスーツのようなものを纏っていて、どこかちぐはぐに見える。
そして、全身が見事なまでに漆黒に染められており、目に該当する部分だけが、ぼんやりとあかく光っていた。

「どれ、失礼しようか」

言うが早いか、岸辺が俺の『スタンド』を指差す。すると、スタンドの腕の一部が、『本』となりめくれあがる。
なるほど、『本』にするというのは、こういうことか。『本』にされた部分に連動して、俺の腕に妙な感覚が走る。が、痛みとは違う。

「スタンド名、『ゴッド・ロック』。……ふむ。どうやら、君たちの言っていた『スタンドを引き出す能力』は、『矢』による変化で消えてしまったようだな。
 実にもったいない。希少な能力だったろうに」

勝手なことを言ってくれるな。むしろ安心したぜ。

「ええ、僕も同感です。さすがに今後の人生、貴方の周りに『スタンド使い』が溢れ返り続けるというのは、いささか大変でしょう」

全くだ。

「ほかに能力は……相手の『スタンド』の像を無理矢理引きずり出す。一定範囲内でのスタンドの『発動』を感知する。
 ……おい、こいつは便利だぞ。キョン君、君の『スタンド』は、『スタンドの気配』を察知できるらしい」

岸辺がいやに楽しそうに、俺の『スタンド』を読み上げる。
それは珍しいことなのだろうか。俺にはいまいち理解出来ないのだが。
と、言うか、この男まで俺を『キョン』と呼ぶか。
527アフターロック:2009/08/05(水) 21:39:48 ID:???

「『敵スタンド』の接近を感知できるって事ね。確かに便利な能力だわ」

『敵』という森さんの言葉が、俺の中で引っかかる。
『敵』というのは、おそらく俺が殴り倒したあの男のことだろう。
あいつは『ハルヒを殺す』と言っていた。

「彼の身元は明らかになりました。簡単に割れましたよ、免許証を持っていたのでね。
 名前は『宮森翔』、24歳、トラックの運転手です」

「なぜ24歳のトラック運転手が、ハルヒを殺そうとするんだよ」

「それは、『矢』に『射られた』からだろうな」

古泉に投げた言葉のボールを、岸辺がキャッチする。

「あの『矢』で射られて『スタンド使い』になったものは、最低でも一度、何らかの形で『矢』を『射った』人間の『役に立つ』んだ。
 『そういう風な人間』を選んでくれるのさ。『矢』のほうが、自分からね。
 つまり。『矢』で宮森翔を『射った』やつが、『涼宮ハルヒ』を『殺そうとしている』ってわけだ」

……新勢力の登場、ってワケか。

「今回ばかりは、機関も完全にノーマーク。おそらく、敵は団体じゃない。『個人』、多くても『数人』ね」

「ただし、『弓と矢』を所持しています。兵力は計り知れません。……僕らは全力で『涼宮さんを守らなくては』いけない」

「最終的には、『涼宮ハルヒを殺そうと』しているものを『殲滅』する」

森さん、古泉、長門が、次々と言う。
ああ、そうだ。どこの馬鹿が『ハルヒを殺そうと』しているのかは知らん。そいつが何を考えているかもわからん。
しかし、『涼宮ハルヒは殺させない』。ンな事は、絶対に許せない。
『絶対に』だ。
528アフターロック:2009/08/05(水) 21:45:32 ID:???

「今回は、少しばかり荒っぽいことになりますよ。『スタンド』と戦うことができるのは『スタンド』だけ。
 機関や長門さんらの団体では、『スタンド』を攻撃することはできません。
 『本体』は別でしょうが、『スタンド使い』は『スタンド』を使い、あらゆる防御を行います。
 立ち向かえるのは、同じ『スタンド使い』だけ、と考えたほうがいいでしょう。」

何だと。さらっと言ってのけるが、そいつは大問題じゃあないか。

「ええ。我々の戦力となるのは、貴方の『スタンド』が生んだ『スタンド使い』たちです。
 しかし、涼宮さんについての事情を知らない方々に協力を仰ぐのは難しいでしょう。
 現時点で、僕と貴方と森さんの三人のほかに、もう三人。
 この場所に来るように連絡は済ませてあります。おそらく、そろそろ―――」

と、古泉のその言葉を待っていたかのように。
自動ドアが開く音がして、店内に、三人の人物がやってくる。
そのうち、二人はよく知った顔だ。そしてもう一人は、一瞬見知らぬ顔に思えたが、よく見れば、以前に見た顔だ。


「おそくなってごめんねェーッ、いっちゃん、キョン君っ!」

「こ、古泉くん……ついに、『来ちゃった』んですかぁ……?」

「ったく……おい、古泉。つくづく面倒な奴らだよな、テメーらは」


現れた三人は、俺たちの付いた席のすぐ隣に着き、三者三様の第一声を吐き出した。


――――

529アフターロック:2009/08/05(水) 22:01:26 ID:???


――――数日前、東京

「いいですかァ? 僕の言っていること、『分かります』よね? 『日本語』ですよ、これは?」

『パープル・ヘイズ』に喉をわしづかみにされた男が、斜視の入った両目で僕を見据え、うー、うーと唸りながら、涙を流している。
今、僕の目の前に居るのは、かつてパッショーネに反旗を翻し、独立したこの『事務所』の社長だ。
まったく、遠く足を運んできた割に、楽な仕事である。『大事は起すな』というジョルノの命令には、少しばかり逆らう羽目になってしまったが。
もっとも、荒事があったのはこのビルの内部でだけだ。まあ、僕とミスタの仕事にしては、事を荒立てずに済んだ方だろう。
大体の『幹部』は片付け、残ったのはこの『社長』のみ。
あとはこいつを『始末』するだけだ。しかし、その前に、いくつか聞きださなければいけないことがある。

「貴方の仲間には、『スタンド使い』が居たはずですよね? 『それは誰ですか?』」

質問と同時に、『パープル・ヘイズ』が、首を締め上げる手を僅かに緩める。

「がっ、ぐゥウっ、俺は、俺じゃ、ない、あれはァグ!?」

「ええ、分かってます。『あなたじゃあない』。僕は、『誰なのか』と聞いているんですよ。今もこの『組織』に居るんですか?」

「い゛っ、ないッッ!! ヤヅ、は、俺を脅して、姿を消しやがっ……」

「……何度も同じ事を言わせないでください。『それは誰ですか?』」

「……言えっ、ない゛……言えば、殺される゛っ……」

「死ぬのが早いか遅いか、だけの違いですよ?」

「ラチが開かねェなァーフーゴよォ。もう、イーんじゃねーか、こいつァ殺っちまってもよ」

わざと語調を荒げたイタリア語で、ミスタがそう言い、男にピストルを向ける。
530アフターロック:2009/08/05(水) 22:04:33 ID:???

「ひグぃぃっ!!!」

「ほら、僕の仲間が怒ってますよ。ピストルと、首を絞められるのと、ミートソースになるのはどれがいいです?」

「い、言う、言う゛ゥ゛――!!」

まるで発狂したかのように、男が声を上げる。

「では、これが最後のチャンスですよ。『この事務所に居たスタンド使いとは誰ですか』?」

「奴だ、奴は『オノ』――――ぶぐゥ!!?」

……一瞬、目の前で何が起きたのかが理解できなかった。
『オノ』〜。男はその続きを叫ぼうとした、その瞬間。
男の『口』から、『手』が『生えてきた』のだ。

「なっ、なんだこりゃァーッ!? まさか、『スタンド』の罠かァっ!?」

『パープル・ヘイズ』が、男の首から手を離す。男の口から生えた手は、男の顔面をぐしゃぐしゃと握りつぶしてゆく。
それは正確には、『握りつぶしている』わけじゃない。その手が触れた部分の男の顔が、ぐにゃぐにゃと、粘土か何かのように変形してゆくのだ。

「あぎ! ガ!」

「ッ! オイ、フーゴぉ! 俺ァ見覚えがあるぜ! コイツぁまさか―――ッ」

ミスタが声を上げる。僕らが唖然とする間にも、男の顔は変形してゆく。変形は、やがて体にも到達した。
男の太った肉体が、まるで内側から何かにでたらめに押し広げられるかのように凹凸を着せられてゆく。
そして、ほんの少しの時間がたった後。
まるで水風船が割れるかのように、男の体が、どろどろの液体となり、床にぶちまけられた。
そして、破壊された男の体の『中』に、茶色の全身スーツを着た『何か』が居る。
531アフターロック:2009/08/05(水) 22:06:28 ID:???

「てめェはァ―――!! 『チョコラータ』の野郎と一緒に居た奴じゃァねえかァ―――!?」

ミスタが叫ぶ。『チョコラータ』と『セッコ』。その姿を僕は見ていないが、以前ジョルノとミスタから、話だけは聞いた。
目の前に突如現れた、この茶色スーツの男が、『セッコ』だというのか。

「バカな、ミスタ! 『セッコ』は『ローマ』で死んだはずだッ!」

そう言う内に、茶色の男……仮に、『オアシス』の男とする。『オアシス』とは、『セッコ』の『スタンド』だ。
『オアシス』の男は何も言わずに、まるで水に沈むかのように、じゅうたんを貫き、床へと沈んでいった。
これも聞いたとおりだ。『オアシス』というスタンドは、あらゆるものを『泥状』に変え、その中を泳ぎ進む能力だ。
沈んだ男の姿が次に現れたのは、高級そうで、悪趣味な飾り台の上だった。
その一角すぐ後ろの壁に、巨大な『油絵』が在る。
『オアシス』はその油絵に手を突っ込み、そこから『何か』を取り出した。

「てめぇ、何だそりゃァ! 『弓と矢』だとォ!?」

目を疑う。とは、こういう場合に言うのか。
『矢』。『スタンド使い』を産み出す悪魔の道具。そのうちの一本が、今、僕らの目の前にある。

「『セックス・ピストルズゥー』!!」

『オアシス』はそのまま体を地面に沈めてゆく。まずい、『弓と矢』を持っていかれるッ!
咄嗟にミスタが銃を撃つ。しかし、間に合わない!
……一瞬の出来事だった。僅か十数秒のうちに、『社長』を殺し、『弓と矢』を持って、『オアシス』の男は、この場から消え去ってしまった。
『弓と矢』。そうか。この組織が『パッショーネ』の傘下から脱出し得たのは、『弓と矢』が在ったからなのかッ!

「『オノ』……フーゴ、『オノ』って何だよォ……」

『オノ』。おそらく、その言葉はそれだけではない。『続きがあった』はずだ。しかし、今となっては其れを聞き出すことは出来ない。
『オノ』の名前を言えば、殺される。『社長』はそう言っていた。
ならば。今の『オアシス』の男が『オノ』だと言うのか?
532アフターロック:2009/08/05(水) 22:09:12 ID:???

「……『事務所』を潰す『任務』は……『完了』……しかしッ」

頭の奥がジンジンと痛むのを感じる。僕は力任せに、そこらに転がっていた観葉植物の植木鉢を蹴り飛ばした。

「ブッシャァァァー!!」

それに呼応するように、『パープル・ヘイズ』があたりを蹴り散らす。

「うおォ!? フーゴ、落ち着けってよォ! 『パープル・ヘイズ』は仕舞えっ!!」

「……『弓と矢』の発見と、紛失を、『ボス』に連絡……
 『クソ面倒なことになっちまった』ぜ、畜生がァ―――ッ!」




――――


・SOS団 − 『スタンド能力者』集結。

・涼宮ハルヒ − 目が覚めたら病院に強制入院させられていた。

・フーゴとミスタ − クソ面倒なことになっちまう。

・岸辺露伴 − 『涼宮ハルヒ』に興味津々。光陽院駅前ホテルに長期宿泊を決定。及び、本件を『仗助』伝てに『承太郎』に連絡。



to be contiuend↓
533アフターロック:2009/08/05(水) 22:27:35 ID:???
そんな感じで第2話終わります
あとは敵スタンド死ぬほど考えます
534アフターロック:2009/08/05(水) 22:40:46 ID:???
―――――――――――――――――――――――――

スタンド名 − 「ゴッド・ロック」
本体 − キョン(16歳)
破壊力 − A スピード − B 射程距離 − D
持続力 − D 精密動作性 − D 成長性 − B

能力 − 他のスタンドの『発動』を感知する。
       また、スタンドの本体から強制的にスタンドの『像』を引き出す。

―――――――――――――――――――――――――

スタンド名 − 「ヘブンズ・ドライブ」
本体 − 森園生(?歳)
破壊力 − E スピード − A 射程距離 - E
持続力 − A 精密動作性 − A 成長性 − D

能力 − 本体が触れた車を自らの肉体の一部のように操る。
       能力は車そのもののメカニズムとは無関係に発動するため、燃料切れ・車体の破損などは問わない。

―――――――――――――――――――――――――

スタンド名 − 「パニック・ファンシー」
本体 − 宮森翔(24歳)
破壊力 − E スピード − B 射程距離 − A
持続力 − A 精密動作性 − D 成長性 − B

能力 − 一度認識した対象を目指し、どこまでも追跡する。
      また、五体ある像のうちの一体が倒された場合、残りの像が其れを喰らい、パワー・スピード共に成長する。

―――――――――――――――――――――――――
535ジョニィの人:2009/08/05(水) 23:06:07 ID:???
どうも、お久しぶりです。決して忘れてたワケではないのです。
しかし、まあ……しばらく見ない内に新しい書き手さんが現れるとは!超期待です。
というわけで、続けて投下します。
536ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/08/05(水) 23:07:35 ID:???
第22話「アナーキー・イン・ザ……C」

単なるお遊びだったつもりの野球大会。しかし、俺たちのふ甲斐なさに腹を立てたハルヒは閉鎖空間を前代未聞のペースで拡大した。
このままだと、最悪世界が破滅する。何としても勝たなければ−−−
と、これがこれまでのあらすじ。続いて現状をおさらいしてみよう。
Q.点差は?
A.十一対二。九点差。
Q.次のバッターは?
A.俺。ジョニィ、虹村は打てるかもしれないが、その後は期待出来ない。
……無理だな。とりあえず努力はするが、勝つ要素がまるでない。
「キョンくーん!頑張ってくださーい!」
チアガール朝比奈さんが声援を送る。事情を聞いたらしく、真剣そのものだ。
背中でそれを聞きながら、俺は打席に立った。ここは何としても出塁しなくては。
言っておくが、俺にも使命感って奴はある。無気力に見られがちだが、世界の危機に立ち向かうくらいの気力は持ってる。やってやるさ。
断じて、朝比奈さんが応援してくれたからではない。世界のために頑張るのだ。
だが、俺がヒットを打つのは無理だ。断言するが、無理だ。
そこで、俺は一計を案じた。フォアボール狙いだ。プロ野球選手でもフォアボールは結構する。
まして、相手はアマチュアだ。ファールで粘る事だけなら俺にも出来るかもしれない。
「プレイ!」
審判が宣告する。俺はバットを思いっきり短く持った。当てに行く構え。
果たして、投じられたボールは低めの真ん中。
「ストライク!」
俺は振らなかった。今のは完全にストライクだ。だが、それは罠。下手に打ちに行って、打球がフェアグラウンドに転がったら目も当てられない。
俺は完全にヒットは諦めたのだ。 それなら、初球のストライクは見送りだ。
そして、第二球。……来た!ボール球だ!これを待っていた。
俺は悠然と見送る。これを後三回続ければ、この打席は俺の勝ちだ。
「ストライク!」
……入ってましたか。そうですか。
537ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/08/05(水) 23:09:03 ID:???
あっという間にツーストライクに追い込まれてしまった。
ここから、俺が空振る前に四球もボール球を投げてくれるだろうか?見込みは薄い。
「キョン!アンタやる気あるの!?」
ベンチから容赦ない罵声が飛ぶ。やめてくれよ。そもそも無茶な話だったんだ。
打てったって、もう一か八かバットを振って、それが偶然ボールに当たり、
なおかつボールが野手のいない場所に飛ぶっていう天文学的な確率をクリアしなきいけねーんだぞ。
そんなのが俺に出来るか?愚問じゃないか。
「タイム!」
絶叫に近い声を発したのは古泉だった。何だってんだ?今さら世界の危機を説かれても俺にはどうしようもないぞ。
そう思ってたらハルヒが来た。バットで俺を指すという、失礼にあたる行為をしながら怒鳴る。
「アンタ、何ビビってんの?ピッチャー全然大した事ないじゃない。適当に振ってれば当たるわよ」
どうやらアドバイスらしき物をしているらしい。相手バッテリーの前、ばっちり聞こえる声量で。
心なしか投球練習に力が入っている気がする。これで力んで、振り逃げチャンスでもできればいいんだが。
それにしても……この唐突なアドバイス、古泉の差し金か?あいつ、何考えてんだ。
良きプレイヤーは必ずしも良き指導者ならず、って感じの言葉があったと思うが、ハルヒはその典型だ。
だって、深く考えなくても出来るんだから。俺だって呼吸の仕方を教えろと言われても困る。
そして、ムカつく事にハルヒにとって速球を打ち砕く事は呼吸と同義なのだ。
とにかく、有効な助言なんぞ、ハルヒには到底期待できないのだ。古泉もそれは承知だと思うんだが。
ベンチに戻るハルヒを見送っていると、朝比奈さんが入れ代わりにベンチから歩き出していた。
バックネット側に行くようだ。何だかぎこちない歩き方だが……俺を近くで応援しろとでも命令されたんだろうか。そりゃ、大歓迎だ。
538ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/08/05(水) 23:10:08 ID:???
「プレイ!」
審判の声で俺は現実に引き戻された。状況は全く好転していない。
ピッチャーが振りかぶる。ゆっくりとした動作だ。下りに差し掛かろうとするジェットコースター。そんな感じ。
そして、うんざりするほどの長い溜めからピッチャーは三球目を投げた。
……お?外角に逸れたな?緩い球だ。すっぽ抜けのカーブか?
これは完全にストライクゾーンを外れてる。一球猶予ができたな……。
そう思って悠々と見送ろうとしていると、ボールが曲がり、急激に変化して……ば、馬鹿な!
ストライクゾーンに侵入してきた!?あの軌道でか?キレがいいなんてもんじゃねーぞ!ニュートン先生に謝れ!
当然、ストライクになるからには打たなきゃならないが、なんせ俺はボール球だと確信していたのだ。
もう完全にスイングを止めてしまってる。−−−手が出せん!
俺には無念を噛み締めながらボールを見送る事しか出来ない。
ボールは変化して、ボールからストライクへ、外角から内角へ……ってアレ?
これって……変化しすぎじゃないか?このままじゃ……。
ドグチアッ!
思った時には、ヘビー級ボクサーのストレートのような球が俺の腹にめり込んでいた。
「……デ、デッドボール!」
唖然とした様子で球審が告げる。バッテリーも同様。あり得ない変化をしたのだから。
痛みに悶絶して倒れ込みながら後ろを見ると、朝比奈さんがバックネット裏で何度も俺に頭を下げていた。
……球の延長戦上で。「マドンナ」かよ。アイツ、やりやがって。
……ああ、アイツってのは当然古泉の事だ。麗しの朝比奈さんがそんな事を進んでするはずもない。
古泉が半ば脅すみたいにして指示したんだろう。……言いがかりだって?あの満面の笑顔を見ても、そんな事を言えるのか?
爽やかさ当社比120%アップじゃねーか。ひょっとしたら初めて見た心からの笑顔かもしれん。
539ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/08/05(水) 23:11:14 ID:???
まあ、いいさ。世界の崩壊は俺だって歓迎してない。奴も奴なりに必死って事だろう。
昼飯くらいは奢らせてもいいかな……そう考えながら俺は一塁に走った。次の打者はジョニィだ。
相変わらずピッチャーは本気の球を投げている。しかし、ジョニィの運動神経は異常と言ってもいいぐらいだ。
またも綺麗に弾き返した。セカンドの頭上を越えて、ライト前へ。
巧く受け流したヒット……と思ったが、敵も流石だ。
スタートを切った瞬間に気付いたが、外野が異常な前進守備をしていたのだ。
ジョニィは腰から上が動かないから、長打力なんてあるわけはない。そこを見抜いていたのだ。
軽快にライトがワンバウンド捕球。打球の遅さが幸いし、走者の俺は助かる。しかし、ジョニィは……。
軽く滑り込みながら後方を窺うと、丁度ライトが投球のフォームに入っていた。
一方、ジョニィはまだ塁間半ば。貴重なアウトカウントを一つ失った……そう思った瞬間だった。
「飛んだ!?」
ハルヒの声が聞こえた。ジョニィが車椅子を捨て、体一つで塁に飛び付いたのだ。
駄目元でヘッドスライディングか?しかし、明らかに距離が足りていない。
あれじゃ、塁には着かねーぞ。必死のスライディングだが、無情にもボールは放たれた。
やはり、タイミングが早すぎた。ジョニィの体はベースの数m前で止ま……らない?
ジョニィは摩擦係数を無視するかのように滑り、そのままファーストベースを滑り抜けた。
「セ、セーフ!」
審判が大きく手を広げる。実際にボールより早くベースに着いたのだから当然だが……あいつ、使いやがったな。
「爪のローラー」を。勝たなきゃならないとはいえ、何て事しやがる。
「スタンド」がハルヒにバレたら、とんでもない事になるのは知ってるはずなのに、目の前で使うなんて。
「ナイススライディング!よくやったジョニィ!」
……お前が鈍くて良かった。いや、そりゃあ不自然な事が起こったからって、すぐ超能力に結び付ける事はないんだろうが……。
540アフターロック:2009/08/05(水) 23:34:50 ID:???
ジョニィの常識人っぷりが愛しい
541マロン名無しさん:2009/08/05(水) 23:36:01 ID:???
コテつけたままだった
気にせず続けて下さい支援
542ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/08/05(水) 23:50:44 ID:???
ともかく、これでノーアウト一二塁。しかも、次の打者には期待ができる。
「よおーしッ!チャンスは俺に任せとけ!」
前打席、ホームランを打った虹村だ。相変わらず不細工なスイングだが、力が凄い。
体格からして俺たちとは段違いだしな。パワーも当然あるんだろう。この打席は安心だな。
虹村が打席に立ち、投手が第一球を投げた。ボールは緩やかな軌道で高く浮いた。虹村はそれを悠々と見送る……が。
「ストライク!」
ボールは高めから沈み、ストライクゾーンに突き刺さった。変化球だ。球筋からするに、カーブか?
あれだけ大きく曲がるボールを投げられては仕方ない。一球目だし、切り替えて次だな。誰もがそう思った瞬間。
「まっまっまっ待て!何だ今の!?曲がったぞッ!ルール違反じゃあねーのかッ!」
虹村がわめき始めた。銃弾に蜂の巣にされた武田騎馬軍団のように動揺している。
「そうだ!聞いた事あんぞ!コルクを入れるってヤツ!」
「……タイムお願いします。億泰、それはバットにする反則だし、そもそもあれは変化球だよ。反則じゃあない」
すっかり虹村の教育係と化したジョニィが優しく教える。それでも虹村は納得せず、歯を噛みしめている。
「ぐぬぬ〜〜!ズルいじゃあねーかよ。あんなの認めてるなんておかしいんじゃあねーのか?」
世間的にはおかしいのはお前だ。思うと同時に嫌な予感が頭をよぎった。そして、その予感はすぐに的中する事となる。
続いて投手が投げたのはさっきと同じボールだった。球種が、という意味じゃない。そっくり同じなのだ。
リプレイを見てるようだった。さっきと同じ、高めのコースに緩いカーブ。
定石で考えれば、これはない。全く同じボールを連投するなんて、打ってくれと言うような物じゃないか。
まして、打者は前打席ホームランを打った虹村。こんな甘い球を投げるなんて、どういうつもりだ?
「……う、うおっ!……何だよ、またかよチクショオ!」
答えは簡単。相手は虹村。定石が通じる相手ではなかったのだ。
虹村はボールが来るよりもかなり早くバットを振り、そしてそのスイングはボールからたっぷり30cmは離れた場所を切り裂いていた。
まさかとは思ったが、やはり。虹村はストレートしか打てないタイプだ。
543ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/08/05(水) 23:52:32 ID:???
どうやらそれは、俺以外の人間にも明らかだったらしい。
「ちょっと億泰!ちゃんとボール見てんの!?」
「虹村君!?あなた、まさか!?」
ハルヒから怒号。古泉から悲鳴。朝比奈さんは青ざめている。長門に変化はないが。
「ウルセーなッ!野球は2アウトからだろッ!」
いや、この状況で言っても格好良くないから。肩を怒らせ、投手を睨む虹村。ヤケになってないか?
そして運命の第三球。またそっくり同じ球。そしてやっぱり釣られる虹村。これも同じ展開。
そしてリプレイのようにバットが空を切り……と思ったその時、鈍い金属音。当てた。
当てたが、しかし、カス当たりだ。ボテボテのピッチャーゴロ。
打球の遅さが幸いし、俺たち走者は生還出来そうだが、虹村は無理そうだ。進塁打になっただけマシって感じか。
「ウダラ間に合わねえー−−ッ!」
三塁に走る俺には虹村の姿は見えないが、必死に走っているようだ。
しかし、ピッチャーゴロはイチローでもアウトになる。ワンアウトか……。そう思いながら三塁上で足を止める。
「コラーッ!キョン、回って!」
えっ?振り返ると、ボールがファールグラウンドを転々としていた。エラーか!?
既に虹村は一塁を蹴り、ジョニィは俺のすぐ後ろに迫っていた。俺も走らなければ。
544ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/08/05(水) 23:53:31 ID:???
それにしても、SOS団で歓声を上げているのはハルヒだけだ。他の皆ももっと喜んでくれてもいいのに。
相手のミスだから喜びにくいんだろうか。
「信じられない……こんな事……」
二人揃ってホームを踏んだ所でジョニィが言う。茫然自失といった表情。
大袈裟だな。相手はアマチュアなんだ。エラーくらいするだろう。ジョニィが首を振る。
「そうじゃない。……話を聞かなきゃ」
そして、一方的にタイムを宣言すると億泰に詰め寄った。おいおい、何だ何だ。
見ると、古泉に朝比奈さん、長門までもが虹村に歩み寄っている。何なんだ。
気になった俺も虹村に近づく。当の虹村は事態を理解出来ていないようで、酷く狼狽している。
「な、何だ。突然」
「億泰……君、今何をした?」
「な、何の事だよッ!ワケわかんねー事言うなッ!」
わかりやすい奴だ。思いっきり視線を逸らしている。続けて言おうとしたジョニィを遮り、古泉が口を開く。
「いいですか、虹村君。僕達がしたいのは質問ではなく、確認です。先程起こった事は既にわかっています。
……どうでしょう。もう一度、見せて貰えませんか?この石に同じ事をして貰えますか」
見ると、古泉の手の上に小石が載せられていた。状況が読めない。
虹村がモゴモゴと何か言っているが、やがてそれも止まった。
一体どういう事なのか。説明を求めようとした時だ。
「あっ!」
思わず叫んでいた。掌の小石が地面に落ちていっていた。
何だ?古泉、お前手を動かしてなかったよな?それを無視して古泉が呆然と呟く。
「何て事ですか……『スタンド』ですよ。これは……」
545ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/08/05(水) 23:54:36 ID:???

「それがスタンドの像?」
ぼくは億泰の隣に立つ黒色の亜人を指差した。億泰がアウトになりかけた瞬間に見た。ポカンと口を開けた姿。
「そのようですね……。その『手』の力ですか?とすれば、近距離パワー型……」
右手に凄まじいパワーがある。見ているだけでわかった。バチバチと火花が散っているような気さえした。
「待て待て待てッ!全然ついてけねーぞッ!スタンドって何だ!?近距離がどうのって!?」
「その力です。それを僕達はスタンドと呼んでいます。それより、それは瞬間移動させる能力ですか?」
まだ理解していない億泰に古泉が質問を畳み掛ける。
「あ?違げーよ。削り取る能力だ。コイツ……俺は『ザ・ハンド』って呼んでるが、コイツの右手は何でも削り取れんだぜ」
言いながら億泰が先程の小石を広い上げ、指で弾いた。小石が宙を舞う。同時に「ザ・ハンド」が右手を構える。
「こうやって、削り取るッ!するとお〜〜〜ッ!」
右手を振るう。
「消えた!?」
キョンが驚きの声を上げる。小石が跡形もなく消えていたのだ。古泉が首を振りながら言う。
「削り取る……ですか。空間ごととは、強力すぎますね。味方で良かった」
「だろッ!?さっきの瞬間移動は空間自体を削り取ったんだ。
するとファーストだけ引っ張れるワケよ。スゲーだろ?思いつくのに2年かかったぜ」
みくるさんが眉を上げる。
「2年?ちょっと待って下さい。『ザ・ハンド』はいつ発現したんですか?」
「え?3年前っスけど、どーかしたんっスか?」
ぼくらは顔を見合わせた。3年前。情報爆発や古泉の発現時期と同じだ。
やはり、ハルヒの影響なのか。それにしても、億泰がスタンド使いだなんて。
「スタンド使いは引かれ合う……ここまでとは。色々と説明や聞きたい事はありますが、とはいえ、この能力は好都合ですね」
古泉がニヤリと笑う。好都合?皆が怪訝そうな顔をする。
「朝比奈さんの『マドンナ』では派手すぎましたが、『ザ・ハンド』は数十cm引き付けるだけです。それがこの状況では凄く良い」
……ああ、そういう事か。今の一言で完全に皆が意図を理解したようだった。
「え?何で?俺、わかんねーんだけど?」
億泰を除いては。
546ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/08/06(木) 00:00:08 ID:???
それから?端から見れば不可解な試合だっただろう。
これまでエラーなど全然なかった相手チームが突如として崩れだしたのだから。
「なぜか」不運なイレギュラーバウンドが頻発し、「なぜか」滅多にないような送球ミスが続発した。
みるみるうちにエラーカウントは積み重なっていった。
しかし、これで楽しいかと言われれば全く別の話で。種を知らず、最初は喜んでいたハルヒも徐々に退屈そうになっていき、
同点になった頃には試合そっちのけでキョンの妹と遊んでいた。
547ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/08/06(木) 00:03:54 ID:???
一方、鶴屋さんは飽きずに試合を眺めている。ぼくも飽き始めてはいたが、同じように眺めていた。
と、ついに逆転した時、鶴屋さんがぽつりと言った。
「……いいなあ。あたしも『スタンド』欲しいなあ」
そうだね……って、ちょっと待て。
「鶴屋さん、今……!?」
声をかけるまでぼくの存在に気付いていなかったのか、鶴屋さんはポカンとした表情で振り返った。
「えっ?あ、ジョニィくん……あちゃー、聞こえちゃったかっ」
頭をかきながら照れ笑いを浮かべる。深刻さはそこにない。
「どういう事なんだ?君も機関の人間か?それとも未来人?」
「うーんと。ちょっとだけ正解……かなっ?相互不可侵って感じ。あたしも知らない事多いし」
余りにもあっさりと言うのでぼくは面食らった。雑談のようにさらりと続ける。
「あんまり詳しく言うと怒られちゃうから言えないけど、あたしは一般人だよっ。……あれれ、信じてないにょろ?」
「今ので信じろっていうほうが無茶だと思うよ」
ぼくがはっきりと疑念を表すと、鶴屋さんは豪快に笑った。
「そりゃそうか!ま、ミステリアスな女って事で許してよっ!
……あー、にしてもスタンド欲しいなあ。めがっさスゴいビームとか出るヤツ」
ご丁寧にも身振り付きで欲しいスタンドの説明を始めた。……何か疑うのも馬鹿らしくなってきた。
「ちょっと、誤魔化さないでくれよ。怒られるって、誰に?」
「……おっと、ジョニィくん。ゲームセットだ。整列するみたいだよっ」
ゲームセット?まだ序盤も序盤だぞ。反論しようとしたが、前を見ると相手チームが生気のない表情で立ちすくんでいた。
……そう言えば、一日で全試合さばくために一定時間が経ったら即ゲームセットになるんだったっけ。
「ほらほら、行こっ!大丈夫大丈夫。必要ならいつかわかるにょろ」
……うーん。なかなかこの人も一筋縄じゃいかないみたいだ。
548ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/08/06(木) 00:05:21 ID:???
「もう十分だろ。ここらで止めにしないか」
「そうね。思ったより面白くなかったし」
試合が終わってすぐにキョンが言った。意外にもハルヒは素直に了承した。
多分、飽きてたからだろう。ぼくたちも当然反対はしなかった。もう世界の危機はたくさんだ。
億泰や鶴屋さんは最初は残念がっていたものの、この世の終わりと言わんばかりに泣き叫ぶ相手チームを見るとそれもなくなった。
というわけで、ぼくたちは二回戦進出を辞退し、今大会は幕を閉じる。
あっけないようだけど、元々ハルヒの気紛れで突然始まった物だ。終わりも突然で当たり前じゃあないか?

「……遅いな、ハルヒのヤツ。にしても、こないだは散々な目にあったよ」
月曜日。日常に戻ったぼくたちは部室で憩いの時を過ごしていた。
「全くだね。危うく世界が滅ぶ所だったんだから」
「違う違う。俺の財布だよ」
試合が終わった後にファミレスで打ち上げをしたのだが、
ハルヒが「辞退しようと言い出したから」とキョンに代金を奢らせたのだ。
「ぼくらは後で払っただろ?」
「虹村が食いすぎなんだよ……遠慮なく食いやがって」
億泰は両親いなくてお金に困ってるらしいからな……。
「試合の功労賞って事で許してあげてよ。どっちにしても、もう懲り懲りだ」
愚痴っぽくなってしまったぼくらを見かねたのか、古泉がなだめるように言った。
「まあまあ二人共。収穫もあったではありませんか」
「虹村の事か?……お前、まさか巻き込もうなんて考えてないよな?」
キョンが信じられないといった表情で言う。それは味方が増えるのは有難いけど……。
ぼくたちと一緒に戦うとなると、命の危険にまで晒される。そんな事をさせたくはない。
不穏な雰囲気に気付いたのか、古泉は慌てて訂正した。
「とんでもない。僕が言いたいのは彼の発現時期ですよ。涼宮さんの事も彼は知らなかった。実に興味深いではないですか」
億泰はハルヒの能力を知らなかった。古泉は発現した時期にそれを察したそうだが……。
ぼくにとってはどうでもいい話だ。もっとも、そのお陰でぼくらが偶然集まったスタンド使いだって信じてくれたんだけど。
549ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/08/06(木) 00:10:01 ID:???
「お前らにとっては重大事実かもしれないが、俺達には関係ないな」
安堵の溜め息を吐きながら、キョンも憎まれ口を叩く。
「それはそうかもしれませんが、収穫はそれだけではないでしょう?」
その他に収穫が?ぼくらは顔を見合わせた。古泉が肩を竦める。
「ご冗談を。二人共、結構楽しんでいたじゃないですか」
楽しんでいた!?ぼくらが!?悪い冗談だ。キョンが呆れた様子で反論する。
「おいおい、勘弁してくれよ。あんなワガママに付き合わされて楽しいって?」
「おや、そうですか?」
「そうだよ。喜ぶとしたらよほどのマゾヒストだね」
ぼくも同じように反論すると、古泉がわざとらしく首を傾げた。
「その割に随分真面目にプレーしていたようですがねえ。不思議です」
「……お前が世界が滅亡するなんて言ったからだろうが」
キョンが言い返すが、口調は弱々しい。古泉が爽やかに笑う。
「確かに言いましたが、そもそも当日サボらず、ちゃんと参加したのはなぜですか?」
「それは−−−」
言葉に窮した所で、くすりと笑い声が聞こえた。見ると、みくるさんがお盆で口元を隠していた。
……わかったわかった。ぼくの負けだ。キョンも敗北を認めたのか、軽く両手を上げていつものフレーズ。
「やれやれ。……ま、たまにはああいうのもいいかな」
と、その時。廊下から騒々しい足音が響き、嫌な予感を感じる暇もなくドアが開かれた。
「待たせたわねっ!で、みんな。どれがいい!?」
両手にたくさんのチラシ……何のかは考えたくない……を持ってハルヒが現れた。
「やっぱり六人ならバレーかしら?アメフトも一度やってみたいし、でもバスケもいいかな?どう思う?」
後ろから、からんと乾いた音が聞こえた。みくるさんがお盆を落としたらしい。
「……キョン、責任取ってよ」
「……俺は『たまには』って言ったんだ」

To Be Continued……
550ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2009/08/06(木) 00:13:41 ID:???
スタンド名「ザ・ハンド」
本体名「虹村億泰」

パワーA スピードB 精密性C 持続力C 成長性C
射程距離2m

能力
・右手で引っ掻いた空間を削り取る。
・削り取られた空間内にあるものは消滅し、(状況にもよるが)切断面は直ちに接合される。
・空間そのものを削り取っての「瞬間移動」が可能。

備考
・右手はあらゆる空間を削り取り、破壊力は限りなく高い。
・しかし、引っ掻く動作をしなくてはならない都合上、右手の攻撃はスピードで劣る。
・本スタンドは三年前に発現したが、本体は涼宮ハルヒの能力について「現在も」知らない。
551マロン名無しさん:2009/08/06(木) 00:17:25 ID:???
そこちょっと0・2〜まさか2作品続けて見られるとは
3人のうち最後の1人はタバコ吸ってた“あの”人かな?
552ジョニィの人:2009/08/06(木) 00:21:34 ID:???
投下終了しました……が、間違えた……!
スタンドの説明部分は「古泉の報告書」だった……!
やっぱり久しぶりだから勝手を忘れてるんでしょうか。
これからは徐倫の人の投下ペースを目指すぞ!(多分無理だと思うけど)
最後になりましたが保守ありがとうございました。
553マロン名無しさん:2009/08/06(木) 12:53:35 ID:???
億泰、遂に参戦か
他の面々とは別の意味でジョニィとキョンは扱いに苦労しそうだw
554マロン名無しさん:2009/08/06(木) 17:39:49 ID:???
億泰パワー上がってるwww

あと3話も勢いで書けたからまた夜投下します
多分今だけの勢いです
555アフターロック:2009/08/06(木) 20:55:39 ID:???

「『協力者』?」

「はい。昨日の夜、露伴先生が『SPW財団』に連絡を取ったところ
 その繋がりで、ちょうどこの日本を訪れている『スタンド使い』の方がいらっしゃるそうです」

『SPW財団』。昨日、喫茶店で露伴が言っていた言葉を思い出す。

結局のところ何なのかはよくわからなかったが、要するに、『スタンド使い』のオフィシャルスポンサーのようなものらしい。
四年前に『杜王町』とやらで発生したという『事件』の解決に助力したことで、岸辺はそいつらとつながりがあるのだという。

「詳しい話は本人たちに訊かなければわかりませんが、どうやら今、この町にある『矢』について、情報を持っているようです。
 その『矢』の持ち主である『茶色い男』についてもです。彼らと僕らが接触することは、問題の解決に大きく近づくことになると思いますよ」

なるほど。其れは確かに、会っておいたほうが良さそうだ。
それに、単純に戦力として考えてもありがたい。
何しろ、今日から俺たち『涼宮ハルヒを脅かす輩をスタンドで撃退する団』は、いつどこから遣って来るかもわからない
ハルヒの命を狙う『スタンド使い』たちから、ハルヒを守らなければ為らないのだから。
しかも、そのことをハルヒに一切知られないように。……『きつい』だろ。俺もそう思う。
556アフターロック:2009/08/06(木) 20:56:35 ID:???

「基本的に、涼宮さんには常に『機関』の監視をつけます。彼女に近づく不審者がいないか、徹底的にチェックします。
 問題は……『スタンド』が単体で『襲ってくる』パターンと、『彼女に接近しても不審ではないスタンド使い』が『襲ってくる』パターンです」

なるほど。つまり、『俺たちの知る人物』が『矢』によって『スタンド使い』にされた場合。
そいつが『ハルヒを殺しに来る』。

「ですから、カギは貴方なんですよ。『スタンド』の発動を『感じ取れる』貴方には、できるだけ涼宮さんの近くに居てもらいます。
 団活中はもちろん、それ以外の時も、それとなく彼女の傍に居て貰いたいんです。
 そして、周囲にスタンドの反応を見つけた場合、僕の携帯に連絡するか、無理そうなら、この『ボタン』で連絡してください。」

そう言いながら、小泉が俺に、携帯電話ほどの薄さに、一つだけ赤い『ボタン』のついた装置を渡してくる。
俺に『ストーカー』になれってのか。
やれやれ。



キョンの憂鬱な冒険 -アフターロック-
第3話『ファンク・ザ・ピーナッツ vs ザ・ブルーハーツ』


557アフターロック:2009/08/06(木) 20:57:41 ID:???

――――

……古泉の言うとおり。それからというもの、俺は授業をろくに訊かず、一日中『スタンド』の気配に気を巡らせていた。
当然のごとく、次回のテストの点数はやばいことになっちまうだろうんだろうな。と、なかば諦め、なかば開き直ってみる。
『岸辺露伴』がハルヒと会った日曜日から、三日が経った日の、四時限目の途中。
妙に体がだるい。頭が痛い。風邪でも引いたんだろうか。

「〜〜〜えー〜〜〜でー〜〜ンー〜〜」

黒板の前で、定年直前の教師が何やらを喋っているが、その口調が妙に間延びをしていて、何がなにやらわからない。
というか、聴いた事を理解するだけのエナジーがない。
……妙だ、と、思い出した頃には、もう手遅れだった。

「なん……だ、こりゃァ……?」

……教室を見回して、はじめてその事実に気づく。
誰もが『机に伏して』いる……『ハルヒ』もだ。黒板の前に立っていたはずの教師は、地面に倒れている。
しまった。『何かされている』ッ!!
おいおい、話が違うぞ、『岸辺露伴』、『古泉一樹』。『スタンドの気配』なんてもんには、ちっとも感づけなかったぞ。

「ハル、ヒ……」

くらくらする頭を無理やり動かし、背後を見る。
ハルヒはほかの生徒と同様に、机に顔を突っ伏し、苦しそうに全身で呼吸をしている。
意識はないようだが、今のところ命に別状はないようだ。
これは『無差別攻撃』ってやつか?

「……古泉……」

立ち上がろうとするが、両足が震えて言うことを訊かない。椅子から体を離したところで、地面に倒れこんでしまった。
意識が消える一瞬前。俺はポケットに手を突っ込み、『ボタン』を押した―――
558アフターロック:2009/08/06(木) 20:58:58 ID:???

「授業中の2年生のクラスに、『何の用』だいっ?」

教室のドアに手をかけようとした瞬間。廊下の端から響き渡ったその声を聞き、『藤田昌利』はその手を止めた。
聞き覚えのある、空を飛ぶかのような快活な『声』。
全身を硬直させたまま、ゆっくりと『声』のした方を振り返る。
そこには、藤田と二つ隣のクラスに在籍する、校内でも有名な『お嬢様』の姿があった。

「何でだ? って顔してるね、藤田くん?」

上靴でリノリウムの床を歩き、大股でこちらに近寄ってくる。
おかしい。この学校中の人間は、藤田の『スタンド能力』で、動ける状態にはないはずだ。

「藤田くんさあ。どうせやるなら、『音楽の授業』が無い時を狙えばよかったねっ」

『音楽の授業』。
しまった。

「……『音楽室』の壁はさァ……『防音』だったっけね……忘れてたよ、僕」

「『音楽室』から出て、一発でわかったよ。ああ、この『音』だなって。それで見てみたら、みんながバテちゃってると来たもんだ。
 ありゃ、『低血圧』だね。藤田くん、君の『スタンド』、この『鶴屋さん』には、もう大体わかっちゃってるんだなぁ」

鶴屋はそう言って、この場に似合わぬ微笑みを浮かべながら、指をパチリと弾いた。
『スタンドが』放つ『音波』を聴いたものの『血圧を下げる』。藤田のスタンド能力は、既に鶴屋に見抜かれている。
しかし。と、藤田は笑った。

「僕の『能力』をわかっていながら、ノコノコ出てきたって事だよなァ、アンタ。もうすぐアンタも『フラついてくる』んだぜ……!?」

「おおっと、そうだったそうだった。忘れてたよ」

そう言うと、鶴屋はポケットに手を突っ込み……『音楽プレーヤー』を取り出した。そして、『イヤホン』を両耳に掛ける。
559アフターロック:2009/08/06(木) 20:59:57 ID:???
シャカシャカシャカシャカ……

「ん〜っ、あっあ〜〜♪ 聴こえないなァーッ。さて、藤田くん? そのドアを開けたければ、『この鶴屋さんをやっつけてから』だねェ―!」

「……ふざけやがって、この『脳足りん女』がァー!!」

藤田の目当てである『涼宮ハルヒ』は、もう目の前に居る。
此処までやってきて、退いてたまるか。『女一人』を黙らせるぐらい、容易いことだ。
『スタンド使い』である藤田にとっては、特に。
そもそも、あんな『音楽』では、藤田の『スタンド』の音波を防ぐことは出来ない。鶴屋が立っていられるのは、せいぜい五分だ。

「『ザ・ブルーハーツ』!!」

叫ぶと同時に。藤田の背後に、全身に小さな穴の開いた―――そう。『音楽室の壁』のような模様を全身に持った、人型のスタンドが出現する。

「そいつを『ぶっ殺せ』ェーッ!!」

藤田が叫ぶと同時に、『ザ・ブルーハーツ』が、鶴屋に向かって、両手を突き出しながら突進してくる。
にもかかわらず、鶴屋は暢気に、両耳をふさぐイヤホンから流れる音楽に任せて、体を左右に揺らしていた。

「あー、この曲、たしか4分43秒なんだよねーっ。それじゃ、丁度其れぐらいに『終わらせて』あげるさっ」

『スタンド』の拳が、鶴屋の体にたどり着こうとした、瞬間。

「出ておいでっ、『ファンク・ザ・ピ―――ナッツ』!!」

鶴屋が叫び、その眼前に現れた、丁度鶴屋と同じほどの背丈の、赤いドレスのような物を着た『スタンド』が現れ、『ザ・ブルーハーツ』の拳を受け止めた。

「O・K、『オジョウサマ』。ワタシニ『メイレイヲシナサイ』」

「そうだね、『ファン・ピーちゃん』っ! じゃあ、目の前のこの『悪い子』たちを、『オシオキ』してくれるかなッ!?」
560アフターロック:2009/08/06(木) 21:00:54 ID:???
鶴屋の言葉に、『ファンク・ザ・ピーナッツ』は無言で答え、『ザ・ブルーハーツ』の拳を弾き返した。
『ファンク・ザ・ピーナッツ』は、スタンドとしてはかなり小柄であるが、『力』は『ザ・ブルーハーツ』には劣らないようだ。

「『ブルーハーツ』、叩きのめせェー!!」

「Yeaaaaaaaaaaaaaah!!」

藤田の叫び声と共に、『ザ・ブルーハーツ』が、『ファンク・ザ・ピーナッツ』に向けて、拳の雨を降らせる。
『ファンク・ザ・ピーナッツ』は、腹の底から響き渡るような叫び声と共に、その無数のラッシュをすべて受け止める。

「『パワー』も『スピード』も互角かッ! だがしかし、『それでいい』ッ!
 鶴屋はもうすぐ『フラつきはじめる』! その時こそが、『僕の勝利の時』だッ!!」

『ザ・ブルーハーツ』の全身の穴からは、今も『音波』が発せられ続けている。
音波は確実に、鶴屋の『イヤホン』を潜り抜け、『音楽』と共に鶴屋の神経に作用している。
あと少し時間を引き延ばせば、鶴屋は『負ける』。藤田には『勝つ自信』があった。

「フラつくねぇー。うーん、そういえばちょっと『肩がこって』来たかなぁ? あと、『体がだるい』気もするねっ」

二体の『スタンド』が戦う向こうで、鶴屋が相変わらずリズムを取りながら、パキパキと肩を鳴らしてみせる。

「! そうだ、『其れ』だッ! 既にお前は『低血圧』になってきているんだッ! 意識を失うのももうすぐだ!」

「そうみたいだね。だからさ、藤田くん。鶴屋さんは最初から、『さっさと終わらせる』って言ってるんだよ?」

鶴屋が笑う。

「馬鹿が、もう戦い始めて4分にもなる! 僕の『スタンド』とお前の『スタンド』は互角!
 どうやってお前が『ザ・ブルーハーツ』を、あと一分足らずで『終わらせる』ってんだァ!?」

「もう『4分』にもなったっけ? 思いのほか早いね。でもね、藤田くん。
 その4分は―――君の『スタンドと戦うための4分』じゃないんだなっ」
561アフターロック:2009/08/06(木) 21:06:10 ID:???

「何だ? 何を言って……」

「『早く終わらせたい』私が、いちいち『スタンド』と真っ向から戦うと思うかなっ?
 この『4分』はね……『私のスタンドが、本体である君の後ろまでたどり着く為の4分』さっ」

「な……なんだってェ――ッ!?」

藤田がその言葉を聴き、背後を振り向く。
そこに浮かんでいるのは……全長50cmほどの、『ファンク・ザ・ピーナッツ』と同じ色の布切れを纏った、子兎のような生き物。

「『ファンク・ザ・ピーナッツ1号』は、既に、君の後ろに『たどり着いている』!」

鶴屋が叫ぶと同時に。『ファンク・ザ・ピーナッツ1号』が、体を回転させて、藤田の顔面を『蹴った』。

「『ハイッ!』」

「ぐゥッ!?」

額に一撃、衝撃が走る。しかし、それはたいしたダメージではない。所詮、見た目程度の威力しかない。……にも、かかわらず。
藤田の体は、まるで猛獣の突進を受けたかのように、真後ろに『吹っ飛び』出したのだ。

「なっ、何だ、これはァー!? 『体が鶴屋のほうへ吸い寄せられてゆくッ』!!?」

「『ファンク・ザ・ピーナッツ1号』が攻撃した『もの』は、『ファンク・ザ・ピーナッツ2号』の元へと『引き寄せられる』!」

「うぐゥゥゥ!?」

「『ハイッ!』」

鶴屋の目の前、あの鶴屋と同じほどの背丈の『スタンド』『ファンク・ザ・ピーナッツ2号』が、手元に飛ばされてきた藤田を『殴る』。
こちらは『1号』の痛みの非ではない。今度は本当に、衝撃に任せて体が『吹っ飛ぶ』。先ほどとは逆方向へ。
562アフターロック:2009/08/06(木) 21:10:11 ID:???

「うっ、うわぁぁぁ! 『駄目』だ! 『この方向』はァ―――ッ!!?」

藤田が気づいたときには、もう遅い。
藤田は再び、『ファンク・ザ・ピーナッツ1号』の元へと吹き飛ばされている。

「『ハイッ!』」

1号の矮小な蹴りが、藤田の体を軽く叩く。それだけで、再び藤田は『2号』のもとへと吹き飛ばされる……

「うわあぁぁぁぁ!!」

「『ファン・ピーちゃん』、トドメだよ!」

「Yeaaaaaaaaah!!」

叫び声と共に、両拳を頭上に振り上げた『ファンク・ザ・ピーナッツ2号』が、こちらへ無防備に飛んでくる藤田の後頭部に、両拳を『叩き落した』ッ!!
顔面から、藤田の体が床に叩きつけられる。ごつり。と、鈍い音が、イヤホンから流れる音楽をはさんだ向こうから、鶴屋の耳に届いた。
同時に、耳に聞こえ続けていた『音波』が途切れたのがわかる。
そして、丁度その瞬間。4分43秒の曲が終わった。


――――


563アフターロック:2009/08/06(木) 21:12:34 ID:???


……『猛暑による集団貧血』だかという名目で、その日の午後の授業は中止となり、強制帰宅命令が出た。

「やはり、『校内』から攻めてきましたか……」

「うん、あたしのよく知ってるやつだったよっ。一年のときから同じ学年に居たしねっ! って、そりゃ当たり前だったねっ」

現れた『スタンド使い』を片付けてくれた功労者である鶴屋さんが、昨日に引き続き、アイスカフェオレを啜りながら、笑顔で話す。
現在、俺たちが屯しているのは、昨日と同じ、駅前のいつもの喫茶店。

「ところで、ハルヒのやつは大丈夫なのか。俺たちがこんなしてて」

「涼宮さんには、長門さんが付き添っていらっしゃいますし、『機関』の護衛もついています。まず問題ないでしょう」

長門か。確かにあいつなら、いざとなれば、俺たちをまとめてハルヒの元にワープさせるぐらいのことはやりそうだ。
基本的にどんな『スタンド使い』より、あいつが最強なんじゃないだろうか。
に、しても、『無差別攻撃』を仕掛けてくるとは。こりゃ、初っ端から幸先が不安になってきたな。
今回も、たまたま鶴屋さんと朝比奈さんが、『音楽室』に居てくれたおかげで、俺たち全滅。とは為らなかったが……
つか、それより。

「俺の『スタンド探知機能』とやらは、どーなったんだ。何も感じられなかったぞ」

「それはおそらくだが、まだ『スタンド能力』の発動に慣れていないからだろうね。
 『像』を出さずに『能力』を発動する。慣れれば自然とできるようになることだよ。こんな風にね」

と、話を聴いて駆けつけてきた岸辺が、モカを片手に俺を指差す。すると、突然俺の右手の甲が、べろりとめくれ上がった。
……やめてくれないか。あんまり気分がいい物じゃないんだ。

「おそらく、『像』を出していればスタンドを感知することはできるのでしょうが……

真後ろにハルヒが居るんだぞ。ハルヒの前で、あんなけったいな物を『出せる』か。
564アフターロック:2009/08/06(木) 21:13:49 ID:???

「まあ、難しいですね。とりあえず、しばらくは、一人の時などに『像』を出して、その感覚に慣れるよう、練習してみてください」

『スタンドの練習』か。
早速、経験不足で役に立てなかったことに、自己嫌悪のため息が出てくる。

「ああ、そうだ。今朝話した『協力者』の二人ですが、週明けには学校に来てもらえそうですよ」

「何? 学校って、まさか転入させるつもりかよ?」

「一人はそうしていただくつもりです。と言っても、生徒でなく、養護教諭としてですが。
 もう一方の方は、校外専門で、主に機関と共に、涼宮さんの護衛をしてもらいます」

教師か。なるほど、それならハルヒの興味も引かんだろうし、時間に関係なく動けて、融通が利きそうだな。

「で、そいつらはいつ来るんだ?」

「予定では、今日の午後には到着する手はずです。近々、顔をあわせてもらう事になると思いますよ」

今日の午後、か。
どんなヤツらが来るかは知らんが。なんとなく、『普通』じゃねーのが来るような気がする。
なんとなく。



――――


565アフターロック:2009/08/06(木) 21:15:11 ID:???

「……あー、チョット?」

「……あ?」

午後の授業が取り消しとなり、俺は『ミーティング』とやらをするという古泉たちを無視し、さっさと家に帰り、町へ出た。
こんな真昼間から、コンビニの前でタバコを吸っている姿を、知り合いにでも見られたら、それは大変なことになるだろうが……
髪を下ろし、眼鏡を外せば、俺を『北高の生徒会長』だとわかる人間は居ない。
便利な地味顔に生まれてきたもんだと、こういう時ばかりは思う。
そんな俺に話しかけてくるやつなど、一体何者か。

見上げると、そこには……おそらく『日本人』ではない、ラテン系らしき顔つきの男が立っていた。
真夏だというのに、メッシュのニット帽を被り、青に、一面の白い網目模様が描かれた、半そでのパーカーを着ている。
それに、黒のローライズのパンツ。なんというか、あらゆる意味で『目立つ』男だ。
日本語通じるんだろうか。

「何か?」

「アー、ソレ」

大して日本語が分かる訳ではないらしい。そいつは、俺の口元を指差しながら、言った。

「ダメ、ソレ。ワタシ」

……タバコのことを言ってんのか。
知るか。だったらお前が、どっか離れりゃいいだろ。

「アー、ダメ、ミセ、ココ、ハイレナイ」

男は『4・11』と書かれたコンビニの看板を指差し、首を横に振る。訳のわからん外人だ。

「ダメ、ソレ。ワタシ、チガウ、アー、ワタシノトモダチ」
566アフターロック:2009/08/06(木) 21:16:40 ID:???
……やっぱ、よくわかんねえ。
もう、無視だ無視。
と、俺が咥えたタバコに手を伸ばしたとき。

『ーー! −!』

『@−!! #$@−!!』

……何か、小さな声が聞こえた。
日本語じゃない、イタリア語かスペイン語か、そのへんの何かだ。甲高く、どこか人間と違ったような響きの声。
どこから聞こえてくるのか。と、指に違和感を感じ、見る。
……そこに、何か『白い小さな生き物』が居た。

「うおっ!?」

思わず叫ぶと、俺の口から煙草が落ちる。
すると、その煙草にも『白い生き物』が群がっているではないか。
何だ、こいつら。

「〜〜!! 〜〜〜!!」

と、なにやら先ほどの外国人が、日本語ではない言葉で、俺に向かってなにやら騒いでいる。
一本指を刺し、えらくご立腹のご様子だ。何だ、俺に『文句』を言っているのか?

「何だ、てめぇ―――」

立ち上がろうとしたとき。俺の手の中に居た『白い小さな生き物』と、煙草に群がっていたそいつらが、ふわふわと浮き上がり、男の手元に飛んでいった。
……そうか。

「テメェー、『スタンド使い』かッ!?」

そう言いながら。俺は立ち上がり、『スタンド』を出す。こいつが『スタンド使い』なら、これが『見える』はずだ。
567アフターロック:2009/08/06(木) 21:17:43 ID:???
現れた、全身をレールでコーディネイトした白い巨人のような俺の『スタンド』を見て、目の前の男の表情が変わる。
やはり、そうだ。こいつが古泉の言っていた、『矢で射られたスタンド使い』か。
とすると、こいつは要するに、『俺の敵』って訳だ。

「! 〜〜〜!?」

俺が、どうしてやろうかと考えていると、コンビニから出てきた男が、俺と男のにらみ合いを見て、なにやら声を上げた。
これもまた、外国語だ。どうやら、二人の男は知り合いらしい。
こっちもまた、くそ熱いってのに紫と黒のストライプのスーツを着込んだ、けったいな服装をしている。
すると、ニット帽の男が、スーツの男を振り返り、なにやら外国語で会話をしている。
スーツの男が俺を見て―――

「待ってください! 貴方は、もしかして『北高』、いや、『機関』の人ではないでしょうかッ!?」

と、叫んだ。



――――



僕が『コンビニ』から出ると、『この店にゃ入れない』と駄々をこねて、外で待っていた『ミスタ』と、見知らぬ青年が睨み合っていた。
おまけに、その青年の背後には『スタンド』が居ると来た物だ。

「何やってんですか、ミスタ!?」

僕が叫ぶと、ミスタは僕を振り返り

「あっ、フーゴ! コイツがよォー! 『セックス・ピストルズ』が嫌がるから、煙草を消してくれっつったらよォー!
 『ピストルズ』を見て、『スタンド』を出しやがったんだ! こいつが例の『矢』に刺された『スタンド使い』なんじゃねぇのかァ!?」
568アフターロック:2009/08/06(木) 21:19:10 ID:???
『スタンド使い』。確かに、僕らがこれから向かう町では
なんだかという少女を『殺そうと』する『スタンド使い』が、僕らの目の前で消えたあの『矢』によって『増やされている』という。
その『矢』の持ち主を見つけ出すために、『機関』だかという組織に所属するスタンド使いと合流するのだが―――

「待ってください! 貴方は、もしかして『北高』、いや、『機関』の人ではないでしょうかッ!?」

僕はミスタと青年が事を起すより早く、その言葉を、『日本語』で叫んだ。
すると。青年が、ふと表情を変える。

「あんたら……そうか、古泉が言ってたな。『協力者』だかが来るとかって」

やはりそうだ。

「ミスタ、彼は違います。彼は、これから僕らが合流する『仲間』ですよ」

「『仲間』ァー!? そりゃァちょっと困るぜ! 『No.3』はどうしても日本の『煙草』の匂いが『ダメ』だっつーんだよォー!
 こいつと『仲間』になったら、『No.3』はどーすりゃイイんだよォー!」

……
……へぇ、『煙草』。

「……うるせぇんだよ、『煙草』がダメだから『仲間』になれねェーとか、くだらねェこと言ってんじゃねぇよこのダボがァー!!
 大体今だって、テメェの『ピストルズ』のために『昼メシ』なんか買う手間掛けさせやがってェー!!
 いっぺんその帽子でムレたクセぇ脳ミソ『グチャグチャ』にして、取り替えてやろうかァー!!?」




本体名 − 藤田昌利
スタンド名 − ザ・ブルーハーツ 再起可能?

to be contiuend↓
569アフターロック:2009/08/06(木) 21:20:31 ID:???
―――――――――――――――――――――――――

スタンド名 − 「ファンク・ザ・ピーナッツ」
本体 − 鶴屋(17歳)
破壊力 − B スピード − B 射程距離 − A
持続力 − E 精密動作性 − D 成長性 − B

能力 − 小型のFUN・P1号と、人型のFUN・P2号から成るスタンドで、それぞれ自意識を持つ。通称『ファン・ピーちゃん』
       FUN・P1号が殴った人や物は、障害物などは回避しながらFUN・P2号の元へ引き寄せられる。
       直線的な起動でなく、曲がり角などはしっかり曲がり、引き寄せられる力は、FUN・P2号の像に触れた時点で消滅する。

―――――――――――――――――――――――――

スタンド名 − 「ザ・ブルーハーツ」
本体 − 藤田昌利(17歳)
破壊力 − B スピード − B 射程距離 - A
持続力 − A 精密動作性 − C 成長性 − D

能力 − 全身から、聴いた人間の血圧を下げる音波を放つ。
       普通は人に聴こえない音域の音波だが、何故か鶴屋さんは聴こえた。
       パワー・スピードもそれなりにある。

―――――――――――――――――――――――――
570アフターロック:2009/08/06(木) 22:01:07 ID:???
そんな感じで3話終わります
あと数話は構想あるけど後は無策です
どうか勢いがある間だけでもお付き合いください
571マロン名無しさん:2009/08/07(金) 01:21:44 ID:???
ジョニィの人もアフターロックの人も乙乙ゥ!!
両作品ともキャラがよりキャラらしくしててイイ!
いつまでだって付き合いますし応援させて頂きたいッ!!
572アメリカの人:2009/08/07(金) 13:30:50 ID:???
まさかの新作にジョニィの人だと!?
最近盛り上がりまくりで大興奮です!

今まで続けてよかったなぁ………
一時期俺一人とかあったもん………

興奮しつつ久々の投下ァ!
573アメリカの人:2009/08/07(金) 13:32:20 ID:???
第87話 「生徒会からの挑戦状 1」

「没ね」
「ふえッ!?そ、そんなァ!」
「平凡なのよ、面白みが無いわ」
「……そこまで言わなくてもいいだろ?ハルヒ編集長」
「うっさいわね、そう言うキョンは書けてるの?恋愛小説!」
もっか、我らがSOS団はハルヒ編集長の命の元、小説を執筆中であった。何故こんなめんどくさい事になっているのかというと………。

「呼び出し?」
1週間程前、見慣れたニヤけ顔と無表情が、俺達のクラスへとやって来た。
「はい、長門さんが生徒会長から呼び出されましてね。長門さんだけでは色々と不都合でしょうから、あなたと徐倫さんをお呼びしたんですよ」
「……別に構わねえが……おい、徐倫………」
「ハァ………」
「随分と黄昏てますね」
徐倫はここ最近ずっとあの調子だ。一体何があったのかは知らんが、どうもかなり深刻な悩みらしい。……ハルヒに気付かれていないのがまだ幸いだ。
「長門が生徒会長に呼び出されたそうだ……一緒に来るだろ?」
「……有希が?今頃?……変な話ね」

生徒会室のドアを開けると、そこでは既に長門が誰かと向かい合っていた。
「来たか」
そう喋った男はこちらを向く。銀縁の眼鏡をかけ、オールバックにした長身の男。なんとなく野心に溢れる若手エリートっつう感じのする男だ。多分こいつがその生徒会長なのだろう。
574アメリカの人:2009/08/07(金) 13:33:00 ID:???
「今回君達を呼び出したのは他でも無い……文芸部についてだ」
遂に来やがったという感じだ。いつかは持ち上がるだろうとは思っていたがな……ハルヒに知られると面倒だ。古泉が俺を呼んだのはなんとか俺達で処理しろという事だろう。
「なあ……それって何の話だ?」
「………ハ?」
「あたし初耳なんだが……文芸部の事」
そういやそうだった。徐倫には一度も現在のSOS団のややこしい状況を説明していなかった。
「君達は現在文芸部の部室を、文芸部員である長門有希が何も言わないのを良い事に不当に占拠している……そういうわけだ」
「あー……なるほどね?立ち退き要求?なら無駄よ。SOS団っていう団体はこの学校に認可されていない……無いものを立ち退かせるなんて………」
「なかなか頭が回るようだが、そうでは無い……我々が取る措置は文芸部の無期限凍結、及び部室からの退出だ」
……そうきたか。確かに徐倫の言う通りだ。無いものを無くすなんて不可能だ。それが分かっているこの会長は、先に文芸部という外堀を埋めにきたのだろう。
しかもこの会長の理論はまともで、筋もしっかり通っている。理論での反論は難しそうだ。
「卑怯じゃねえか、今迄放っておいていきなり難癖付けるなんてよ」
575アメリカの人:2009/08/07(金) 13:33:44 ID:???
「何を言っているのだ。今迄待った方が寛大なくらいだ」
「同好会にするのは駄目か?今なら顧問を引き受けてくれる当てもある……前よりはましな申請書が書けるわよ」
それは暗に俺を非難しているのか?
「君の父親……空条承太郎か……だが、それでも無理だな。今迄の君達の行いは見過ごせるものでは無い」
「……………」
3人共だんまりになってしまう。徐倫にすら反論の隙を与えないとは。敵とはいえなかなかだ。
「そんな事言ってる場合か………」
「何がだ?」
「有希だ……気付いて無いとは言わせないぞ」
ああ……確かにそうだ。長門は黙ってこそいるものの、全身から透明な怒りのオーラが放たれているように感じる。
「仕方ない……有希がキレる前に実力行使で………」
「馬鹿やめろ!んな事したら余計火に油を………」
その瞬間だった。突然長門の怒りのオーラが消え去った。長門の目線が会長では無い別の人物へと向かっている。
「……喜緑さん………?」
「ああ、彼女を知っているのか……我が生徒会の書記、喜緑江美里君だ」
「誰だ?」
「例の巨大カマドウマ事件の依頼者だ」
「………ふうん」
しかし長門は何故喜緑さんを見て何故冷静になったのだ?意味が分からん。するとその瞬間、バガォァンッ!という聞いた事もないような擬音と共に扉を開けた人物がいた。
「こらぁっ!何有希をいじめてんのよへボ生徒会長!」
ハルヒだ。
576アメリカの人:2009/08/07(金) 13:38:18 ID:???
「みくるちゃんが鶴屋さんに有希が生徒会長に呼び出されたって聞いたのよ、どうせ文芸部を潰して一緒にSOS団も潰そうって腹なんでしょ!だったら正面からまっすぐ来なさいよ!」
相変わらず変な勘の良い奴だ。その時俺と徐倫は生徒会長が古泉に非難の目を向け、古泉がそれに答えるように苦笑した。……なんでこいつらはアイコンタクトが取れてんだ?
「人の話は最後まで聞きたまえ」
こちらを向いた生徒会長は話を続ける。
「我々としてもできれば強制停止は阻止したい……そこで、代わりに文芸部としての活動を行なえ、一週間後までに機関誌を作る事だ」
「ふーん……なーんだ……そんな簡単な事で良いの?」
「部数は二百部、全てさばけないとペナルティを科す」
俺はちらりと長門を見る。が、何故かこいつは生徒会長に目もくれず、ひたすら喜緑さんを見ている。何を考えてんだ?
「手渡しとかは駄目なのか?」
「駄目だ。渡り廊下に置くだけだ」
「ふん!そんなの楽勝よ!……行くわよ有希!まずは機関誌の作り方を調べましょ!」
そう言うとハルヒは長門を掴み、弾丸のような速さで去っていった。
「騒がしい女だ……喜緑君、もういい。退席してくれたまえ」
「はい、会長」
そういうと礼儀正しく会釈した彼女はドアから出ていった。さて、俺達も退出……と思った瞬間、意外な事が起こった。
「古泉、ドアを閉めろ」
そう言った会長は眼鏡を外し、足を机に乗せ、タバコとライターを取り出し、吸い始めた。
「……おかしいとは思ってたが、グルか、お前ら」
577アメリカの人:2009/08/07(金) 13:40:48 ID:???
「ええ、そうですよ」
「随分めんどくさい事すんだな……ハルヒ好みの会長を作る為か?」
「呆れた話だろ?俺は顔がそれっぽいっていう理由でこの様だ。俺を会長にさせるのにかなりの金をばらまいたらしいしな」
全く持ってその通りだ。つーか金をばらまくってどんな選挙だよ。
「ま、これはこれで旨味がある。内申が上がるし、生徒会は俺が好きにいじくれる……ついでに予算もな」
「とんだ悪徳会長ね……まあ嫌いじゃないけど、そーいうの」
だが、会長がグルという事は、今回のこれは………。
「涼宮さんの暇つぶしですよ」
もうちょいましなやり方は思い付かなかったのかね?
「すいません」
全く悪びれずに古泉が言う。
「それでは、僕達はこれにて……教師の皆さんや仲間には気付かれないよう頼みますよ」
「分かってる……んなヘマはしねえ」
タバコをふかす不良会長を残し、俺達は生徒会室を後にした。

「もう一つ聞いとく……喜緑さんはお前らの仲間か?」
「いえ、違いますよ。気が付いたらいつの間にか書記になっていました……誰も気付かないうちにです」
「んな芸当ができるって事は………」
「長門さんの同族でしょう。といっても朝倉涼子の一派とは違い、長門さんとは対立していないようですが」
だな、あれと比べると遥かに社交的だ。
「キョン……今は新しい宇宙人より考えるべき事があると思うがな」
………そうだな。ハルヒがどんな無茶を言い出すか……考えただけで胃が痛くなりそうだ………。

To Be Continued・・・
578アメリカの人:2009/08/07(金) 13:44:00 ID:???
以上、第87話でした

ジョニィの人、露伴の人乙!
ジョニィの方ではおくやすは強いわ、露伴の方ではオリジナルスタンドだらけで面白いわ、興奮しっぱなしです

少し諸事情により遅れました。次も少し遅れそう………再来週の月曜までにはなんとか………

今回の話は最終決戦の前のインターバルになる感じ。戦闘の予定もありませぇん

それでは!
579マロン名無しさん:2009/08/07(金) 15:46:41 ID:???
何このすごい勢い
ジョニィは相変わらずジョニィがかっこいいし
アフターロックはオリジナルスタンドのネーミングセンスがなんつーか俺と仲良くなれそうだし
アメリカはもはや徐倫の京アニ絵が自然に思い浮かぶようになったわ
みんな乙んこ
580アフターロック:2009/08/07(金) 15:54:55 ID:???
皆乙
今日は二本書けたんで、夜とは別にあとちょいで一本投下します
スタンド消化スタンド消化ゥ
581アフターロック:2009/08/07(金) 16:28:38 ID:???
……土曜日。毎週恒例、不思議探索の日。
たとえテストが近かろうと、この規定事項だけは揺るいでくれない。まあ、仮に不思議探索が休みでも、勉強なんかしやあしないが。

「じゃ、『くじ』ね。みんな、引きなさい!」

笑顔のハルヒが、いつも以上のテンションで、握った拳の中の『くじ』を差し出す。
この『事件』の間は、悪いが、『くじ』のランダム制を重視していたら、護衛なんぞできるわけもない。

「長門、頼むぞ」

「心得ている」

できるだけ不自然の無いように、毎週を持ち回りで、『ハルヒを守れる』やつがハルヒとの組になるように、仕組ませてもらっている。

「あたしと、キョンと、古泉君が『印つき』ね……それじゃ、今日もがんばるわよ。こないだ『超能力者』をみつけたんだから、あいつを探すのよ!」

「だから、そりゃ夢だっつってんだろ」

「いーや、断じて夢なんかじゃないわ。なんて言ったらいいかしら。あいつには『スゴ味』があったのよ!」

ああ、確かに岸辺の野郎にゃ、妙な『スゴ味』があるかもな。
こいつが岸辺のことを覚えていることを念頭に置き、この『不思議探索』の日は、何が何でも岸辺には、部屋に篭ってもらうように、古泉からきつく頼んでおいてある。

「古泉。護衛はついてるんだよな?」

「ええ、ご安心を。今回は『ミスタ』さんもついています。彼は『スタンドを見る』ことができますから」

それだけで、随分安心できる。俺は数日前に、あの喫茶店で『紹介』された、二人の『協力者』の顔を思い浮かべた。
なんというか、『目立つ』ヤツらだった。『ミスタ』と名乗ったあの男が、とても隠密的護衛に向いているとは思えないが。
まあ、おそらくその辺は『心得ている』んだろう。なにしろあの二人は……いや、思い出すのは止めておこう。接する上で、色々弊害が出そうだ。

「では、参りましょうか」
582マロン名無しさん:2009/08/07(金) 16:31:56 ID:???
 
583アフターロック:2009/08/07(金) 16:32:22 ID:???


キョンの憂鬱な冒険 -アフターロック-
第4話『セックス・マシンガンズが食べる』


ハルヒ、古泉の二人と連れ立ちながら、それとなく周囲を見回してみる。
あの『低血圧』の『スタンド使い』以来、ハルヒの命を狙う物は現れていない。時期的には、そろそろ『来る』頃なんじゃないだろうか。
俺なりに、これまでに『スタンド能力』を発動させてきた経験に基づき、できる限り『像を出さずにスタンド能力を発動』させる感覚をしながら。
しかし、その『感覚』は飽くまで『感覚』であり、実際にそこまで『スタンド』を使いこなせてはいない。

「大丈夫ですよ。『ミスタ』さんが居ますから、これまでより『監視』の能力は格段に上がっています」

「相手の『スタンド』がどんなもんだか、わかんねーだろうが。遠距離から一気にやられたりしたら、対処しきれねえだろ」

「貴方もだんだん『スタンド』を『理解』してきましたね。確かに、その通りです。
 たとえば、『弾丸』のようなものを、超遠距離から飛ばせる『スタンド』があれば、いくらミスタさんが仲間に居るとはいえ、『護衛』は難しいと言えます。
 でも、いつも『最悪の事態』ばかり想定していても仕方ありません。僕らにできるのは、僕らにできる範囲で涼宮さんを『守る』ことだけです」

街道を歩く順番は、戦闘の古泉。そして古泉。最後に、俺。この会話は、ハルヒの耳に、まともに聞こえるほどには届かない。

「二人とも、何をボソボソ喋ってるのよ? なんだか気味が悪いわ、『何をたくらんでる』のッ!?」

不意に、ハルヒが振り向き、怒鳴る。
まあ、適当に返せばいいだろう。と、思ったその瞬間。

……全身の神経が、粟立った。
なんだ、これは。まさか、これが『スタンドの気配を感じる』ってことなのか。
俺の感じた『気配』は、ハルヒの後頭部に、はるか遠方から、とんでもないスピードで近づいてきている。

「『ゴッド・ロック』!!」
584アフターロック:2009/08/07(金) 16:33:38 ID:???

「はぁ? キョン、アンタ何言って―――」

ハルヒが何やらを呟くが、気に留めている場合ではない。
俺は『ハルヒの真後ろ』に『ゴッド・ロック』を出し、『近づいてくる気配』に向けて、両手を重ねて差し出した。
その瞬間。俺の両手を、『何かが貫く』。

「うぐゥゥゥゥ!?」

同時に、俺の両手に、十円玉ほどの穴が空き、強烈な痛みが全身を覆う。

「キョンーッ!!? 一体、どうしたって言うのよッ!? その『怪我』は何よォ―――ッ!!?」

ハルヒの声がする。しかし、ソレに答えるだけの余裕は無い。
これは……『弾丸』だ。『朝倉に刺される』だとか、『長門に蹴られる』だとかのレベルじゃない。
こんな『強大な痛み』を齎し得るものなんて、『弾丸』しか考えつけない!!

「わっ、『わからない』ッ!! 今、いきなり『やられたんだッ』!!」

咄嗟の頭で思いついた、適当なウソをハルヒに告げる。
視界の端に、古泉が、『弾丸の飛んできた方向』に掛けてゆく姿が見えた。
ああ、古泉。それだ、まさに『それ』だぜ、俺が『期待していた』のは。
ハルヒは『俺』を見ている。今しかない。頼む、古泉。『行って』くれ―――




―――


585アフターロック:2009/08/07(金) 16:35:04 ID:???
『彼』が『涼宮さんへの攻撃』を『受けた』。それに気づいたと同時に、僕は『森さんが待機してる』方角に向けて駆け出した。

「古泉、乗れぇ!!」

人気の無いわき道を抜けた先で、『森さん』が車から身を乗り出し、僕に向けて叫んだ。
僕は言われたとおり、開かれた後部座席に転がり込む。
それに続いて、車内に入り込んでくる人物が居る。同時に、車が『動き出した』。

「『ミスタ』さん!」

「見たな、イツキィ。ありゃァ、『弾丸』だ。えらく『俺ら向き』の敵だぜェー?」

ミスタさんが、両手でリボルバーを構えながらそう言う。
確かに。おそらくこの『敵スタンド使い』は、『彼』や『鶴屋さん』らでは対応しにくい。
『遠距離攻撃』ができる、僕らの専売特許だ。

「おい、『ソノウ』っつったか? 俺は『敵スタンド使い』が『白いミニバン』ん中から『弾丸を撃つ』のを『見た!』」

「ええ、情報は届いてるわ! 今、その『白いミニバン』は、この先の通りを北に向けて走行中! 全速力で『追いかける』!」

運転席に腰を掛けているものの、ハンドルは握っていないし、アクセルを踏んでも居ない『森さん』が、ミスタさんの言葉に叫ぶ。
通りに出た僕らの車が『白いミニバン』をフロントガラスに捕らえるまで、そう時間は掛からなかった。

「『ミスタ』さん、この距離で『届きます』か?」

「あァ、確かに俺の『セックス・ピストルズ』なら、此処からあのミニバンを『撃てる』がよォー。さすがにちょっとばっかし『目立つ』んじゃねェか?」

確かに、彼の言うとおりだ。無数の車が往来しているこの通りで、ホンモノの『ピストル』をぶっ放す、というのは、いささか『目立つ』。
やはり、何とか車から『降ろして』、僕の『スタンド』を使うのが得策か。
と、その時。『白いミニバン』が、突如、車道を外れて、左の野道へと飛び込んでいった。
同時に、そのスピードが『加速』する。
586マロン名無しさん:2009/08/07(金) 16:35:23 ID:???
 
587アフターロック:2009/08/07(金) 16:36:17 ID:???

「撒こうってのォー!? 甘いわねッ」

すかさず森さんは、『ミニバン』が入っていった道に、車体を滑り込ませる。
向こうはほぼ限界速度に達している。やがて、『ミニバン』は野道をまっすぐに駆け抜け……その先の『山道』への入り口で、止まった。

「野郎、『降りた』わね!」

森さんが叫び、同様に野道を突っ切る。
まもなくして、僕らはミニバンの元へとたどり着く。警戒しながら車を降り、『ミニバン』がもぬけの殻となっていることを確認する。

「おそらくよォー。奴は『こっち』に逃げたと思うぜェ」

『ミスタ』は、道路が続いている『山道』を無視し、目の前に立ちふさがる急傾斜の『山林』を指差した。
僕らの『スタンド』と、予測される敵の『スタンド』の能力からして、その入り組んだ環境は、『戦う』には丁度いい。

「おい、『イツキ』! 迷ってる暇はねェぜ、『野郎の脳天をぶち抜く』のは『俺ら』だ!!」

わかっている。さもなくば、『脳天をぶち抜かれるのは』僕らのほうなのですから。
588アフターロック:2009/08/07(金) 16:38:01 ID:???

――――

山林の中ばかりまでを上りきり、傾斜がやや穏やかになり始めたとき。
行く手の先で、『パァン』と、何か銃器を放つような『音』がした。

「『イツキ』、避けろォ――――!!!」

ミスタが叫ぶ。言われるまでも無い、僕は体をよじらせ、近くの『木』の影に身を隠した。

「イツキぃ! この野郎、『連射』は『できねェー』らしいぜー!! ヤルなら、今だ!!」

ミスタさんの言葉に同調し、僕は『木陰』から飛び出す。左手には、用意してきた『材木』が握られている。右手の中に、『スタンド』を発動させる。

「『セックス・マシンガンズ』!!!」

声と同時に、僕の右手の中に、『サブマシンガン』が現れる。これが僕の『スタンド』だ。

「オイィ、コイズミィ!! メシハネェノカァ!!」

『マシンガンズ』が叫ぶ。円盤状の銃倉部分が『口』となり、声を上げているのだ。
僕は言葉を発さずに、その奇妙な『口』の中に、手に持った『材木』を突き刺す。

「ヒャッハァー!!! 『クイモノ』ダ『クイモノ』ダァー!!!」

『マシンガンズ』の口が、その材木を噛み砕いてゆく。
僕はそれに合わせて、引き金を引いた。
マシンガンの銃口から、『材木』によって作られた弾丸が、無数に放たれる。

「『セックス・ピストルズ』!!」

同時に、『ミスタ』もまた、弾丸を放つ。
589アフターロック:2009/08/07(金) 16:39:25 ID:???
……しばらく時間が経過する。数秒ほどの空白だが、それは『ダメージを与えられなかった』と判断を下すには十分すぎる時間だ。

「オイ、『ミスタ』! 敵は『イネェ』! 見当タラネーゼェ!?」

それを裏付けるかのように、ミスタの傍へと帰ってきた『ピストルズ』が、その旨を叫ぶ。

「おい、イツキィ――。こいつァ、射程距離は俺らより上のようだなァー」

そのようだ。そして、連射性に長けていないという点から考えれば

「『ライフル』ですね」

「ああ。だけどよォー! イツキィ! こいつは『追尾』は『できねぇ』みたいだなァー!」

「ええ、そのようです そして、あなたはそれが『できる』!!」

察する限り。『敵スタンド』の放つ『弾丸』は、『直線』でしか機能しないようだと考えられる。
ならば、『セックス・ピストルズ』を持つミスタさんのほうに勝機がある。彼ならば、『軌道を変えて』敵を打つことができるのだから。
意を決し、僕とミスタは、同時に木陰を飛び出し、獣道を駆け上りだした。
同時に、行く手の先から『パァン』と音がする。それに応じて、僕らはそれぞれ、左右に体をそらす。
その間を、『弾丸』が掛けてゆく。『敵』はもう、僕らの傍に居る!

「『セックス・ピストルズゥー』!! 『敵』を追えェー!!」

前方に向け、ミスタがピストルを撃ち放つ。同時に、3発。
弾丸には、二体づつの『ピストルズ』が搭載されている。

「オイ、ミツケタゼ、コイツダァー!!」

数十メートル程飛んだ先で、弾丸が直角に軌道を変え、一本の木陰へと叩き込まれた。
同時に、『誰かのうめき声』が聴こえる。
590マロン名無しさん:2009/08/07(金) 16:39:31 ID:???
出やがったマシンガンズwwwwww
しえ
591アフターロック:2009/08/07(金) 16:41:07 ID:???

「よし、でかしたぜ『ピストルズ』! ちゃんと『急所』は外してンだろォな―!」

念のため身を隠していた木陰から、ミスタが飛び出し、斜面を駆け上がる。
それとほぼ同時に。たった今、弾丸が撃ちつけた木陰から、『そいつ』が姿を現した。
僕は咄嗟に身を隠す。

「な……何だァ、オマエは……!?」

「……『覚えた』よぉ……アンタの『顔』はー……」

一つ目の声は、『ミスタ』の声。何かに戸惑っているようだ。
そして、もう一つは、『現れたスタンド使い』の声だ。いやに甲高い。
『顔を覚えた』。その言葉に警戒し、僕はできるだけ顔を背けたまま、視界の端のみで、その姿を捕らえた。
そこには……せいぜい12歳と言った所だろうか。僕らの予想に反する『少年』の『スタンド使い』が、肩を赤い血で染めながら、『ミスタ』を見下ろしていた。
ミスタは相手の『正体』に驚いているのだ。その所為で、この『隙』を逃した。

「『ラッツ&スター』!!」

『少年』が叫ぶと、彼の手の中に、小さな体とは不似合いな『ライフル』の『スタンド』が現れる。

「『ミスタ』さん、身を隠してください!」

木陰に体を納めながら、叫ぶ。同時に、タァン。という、一発の銃声。
放たれた弾丸が、一瞬で僕らの横を通り過ぎ―――
―――その弾丸が、曲がったッ!

「うごォ!?」

軌道を変えた『ライフル』の『弾』が、木陰に身を隠した『ミスタ』の体に撃ち込まれる。
……そういう事か。さっき、あの『少年』は『顔を覚えた』と言った。
あの『スタンド』は、『顔を覚えた人間』を『追尾する』!!
592アフターロック:2009/08/07(金) 16:42:30 ID:???

「『ピストルズゥ――』!!」

状況を察知したのだろう。これ以上時間を掛けられる余裕はない。
『ミスタ』は木陰から飛び出し、『少年』に向けて『ピストル』を撃った。
しかし。そこに『少年』の姿は無い。

「くそ、『射程』はあっちのほうが上だったっけな――!!」

その言葉と同時に、小さな『銃声』が、斜面の上方から放たれる。
次の瞬間、『ミスタ』の身体に、新たな銃創が発生する。駄目だ。これ以上時間をかければ、『ミスタ』が保たない。

「『ミスタ』! 貴方は『逃げて』ください! 奴の『射程』の外まで!」

「あァ、そうしたいのは『山々』だけどよォ――……『足をやられちまった』んだよ」

見ると、ミスタの両腿に、『ライフル』の弾丸によって作られた『傷』がある。
ならば、僕が奴を『押し上げて』、『ミスタ』の射程外まで追いやるしかない。

「僕はまだ『顔を覚えられていない』ッ……『僕が行くしかない』!」

『マシンガンズ』は既に、次の『食料』を待って、口を開閉させている。
僕は、木陰を抜け出し、これまでとは別の軌道で、斜面を駆け上がった。
同時に、また小さな銃声が響き渡る。弾丸は『ミスタ』を目指して飛んでいったのだろう。
『音』から察するに、少年は『ライフル』の射程範囲の、かなりのぎりぎりの所まで距離を取り、そこから『ミスタ』を撃っているようだ。
ならば、『少しでいい』。『少しだけ少年を上方へと追いやり、蹴りをつける』!

「『セックス・マシンガンズ』!! 食事だ!」

「ッシャアァァァァ―――!!」

僕は鞄に詰め込まれた『材木』の中から、一本を取り出し、それを『マシンガンズ』の口に突っ込む。無数の弾丸があたりに散らばる。
593アフターロック:2009/08/07(金) 16:44:34 ID:???
それと同時に、上方で地面を蹴る音が聞こえた。
予想していたよりも、少年は『近い』。今の僕の銃撃に反応したのだ。
まだこちらの位置がばれた訳ではない。僕は更に『マシンガンズ』に『食事』をさせながら、斜面を駆け上がった。
『少年の動く音』が、『マシンガンズ』の発射音の合間合間に、上方から聞こえる。
『ミスタ』は射程から外れてくれただろうか。僕はその場に立ち、周囲を警戒しながらしばらく耳を澄ましてみる。しかし、銃声はしない。
さあ、後はどうすればいい。……あの『少年』を『倒す』以外に無い。
『材木』にはまだ余裕がある。と、鞄を確認しようとした時。

タァン。

「ッ!」

乾いた音が響き渡り、『弾丸』が降り注いだ。
『弾丸』は、僕の脇腹を掠めながら……同時に、『僕の鞄の紐』を貫いたッ!
材木を詰め込んだナップザックが、斜面を転がり落ちてゆく。
弾丸が飛んできた方向を、僕は『見上げた』。

「―――『覚えた』よ」

……僕から、50mほど離れた、『木の上』に。
狙撃用のスコープで片目を隠した、『少年』の姿があった。
そのスコープ越しの目が、僕の顔をはっきりと『捕らえている』!

「『ラッツ&スター』! 心臓を『撃ちぬけ』ぇ!!」

少年が叫び、もう一つ、銃声が鳴る。
心臓―――!!
僕は咄嗟に、真後ろに有った木に背を預け、『マシンガンズの口』を、左胸の前に宛がった。

「『セックス・マシンガンズ』! 『デザート』だァ――!」

「『ヨッシャァァ―――!!!』」
594アフターロック:2009/08/07(金) 17:00:05 ID:???
ズン。と、重い衝撃を、『マシンガンズ』を持つ手で感じる。
『銃弾』は、『マシンガンズの口』に吸い込まれていった!

「うわァァァ―――!! 『ラッツ&スター』!! 早く『次の弾』だァー!!!」

少年が騒ぐ。その『時間』を与えるわけには行かないッ!
少年との距離は50mほど。この距離ならば、少年は僕の『マシンガンズの射程範囲内』だ。
僕は『マシンガンズの口』を、背後の木の『幹に叩き付ける』!

「『ウメェェェェエエエエエ―――ッ!!!』」

ガリガリガリガリと耳障りな音を立て、『マシンガンズ』が『木を食らってゆく』。さながらチェーンソーのような光景だ。
木の幹を横に『2/3』ほど食わせた後、マシンガンズの銃口を『少年の居る木』に向ける!

「『セックス・マシンガンズ』!! 撃ちまくれェ――!!」

「『DADADADADADADADADA!!!』」

「『ラッツ&スタ』―――うわぁぁぁ、間に合わないぃぃ!!!」

『マシンガンズ』が放った弾の雨が、『少年』の居る『木』を穿つ。
狙っているのは『幹』のやや上、『枝』だ。
程なくして、少年の居る『枝』が大きく揺らぐ。

「うわぁぁァ―――ッ!!!」

少年は背中から地面に落ち、もんどりを打って斜面を転げ落ちてゆく。
そして、最後に、ひときわ立派な『大木』の根に『後頭部を打ちつけ』て、ぐったりと身体を投げ出し、地に倒れた。


―――
595マロン名無しさん:2009/08/07(金) 17:01:19 ID:???
さるか
596アフターロック:2009/08/07(金) 17:02:16 ID:???
「アンタはスゲェーよ、『ベネ』だぜ! 俺らの『ボス』の治療は『痛くて』しょうがなかったってのによォー! 一体どんな『スタンド』なんだよ?」

「……『スタンド』ではない」

「ウソつけよォー! 『能力』を『秘密にしてる』んだろォー?」

「……違う」

少年を抱えて斜面を駆け下りた僕が見たのは、『長門さん』が、なにやら面倒くさそうに応答しながら、、『ミスタ』の傷を『治している』所だった。

「長門さん、問題はありませんでしたか?」

「無い。『彼』の傷も治した。が、カモフラージュのために『機関の病院』に向かわせた。『涼宮ハルヒ』もそれに同行している。『朝比奈みくる』が護衛に付いた」

朝比奈さんが、果たしてどれだけ『護衛』に向いているのかどうかわかりませんが、機関の病院ならまず安全でしょう。

「なぁ、イツキよォ。そのガキ、まさか『穴あきチーズ』にしちまったわけじゃねェよな?」

「ええ、脳震盪を起しているだけです。それと、落下時に足を骨折しているようで……まあ、これくらいは致し方ないかと」

「しかしよォー、人を殺させるのに一般人の『ガキ』を選ぶたぁ、トンでもねぇ野郎だなァ、あの『オアシス』の奴ぁよー」

僕は少年を長門さんに差し出しながら、少年が持っていた『生徒手帳』を見る。
『久保木みやび』、中学一年生。ついこの間までランドセルを背負っていたわけだ。
むしろ、僕としては、あの凶悪な『スタンド』を発現させた、この少年の精神や環境のほうを物悲しく感じる。

「やれやれ、『土曜日の不思議探索』も、大変な『任務』になりましたね」

「……これからは更なる悪化が懸念される。……具体的に言うと、『これから、もっとしんどくなる』」

……彼の専売特許を奪うようで悪いが、この気持ちを表すには。この言葉が最適だろう。
やれやれ。
597アフターロック:2009/08/07(金) 17:03:24 ID:???

――――

・SOS団 − これからもっとしんどくなる。

・ミスタ − 古泉の自分の扱いがフーゴのそれ同然っぽくて不安。

・ハルヒ − 「キョンに怪我させた犯人を探すのよ!」とご立腹。

・森 − 即座に連絡したのに1時間も遅刻した会長にアッパーカット。

・キョン − 撃たれたりもしてるけど俺は元気です。

・露伴 − ミスタに日本語仕込んだりと暗躍中。




本体名 − 久保木みやび
スタンド名 − ラッツ&スター 再起可能?

to be contiuend↓
598アフターロック:2009/08/07(金) 17:04:46 ID:???
―――――――――――――――――――――――――

スタンド名 − 「セックス・マシンガンズ」
本体 − 古泉一樹(16歳)
破壊力 − B スピード − B 射程距離 − B
持続力 − C 精密動作性 − E 成長性 − C

能力 − サブマシンガン(シュパーギン機関拳銃1941モデル)型のスタンド。
      自意識を持ち、ドラム型弾倉部分に口がある。その口が食ったものを即座に弾丸に換えて発射する。
      食い進むスピードや咀嚼力を破壊力にすればAクラス。ただし、食いだめはできない。
      基本的に何でも食うし、何でも飲む。好物はハチミツだが。弾丸として発射したときにかなり悲惨になるので、めったに食べさせてもらえない。

―――――――――――――――――――――――――

スタンド名 − 「ラッツ&スター」
本体 − 久保木みやび(12歳)
破壊力 − A スピード − A 射程距離 − A
持続力 − C 精密動作性 − A 成長性 − E

能力 − ライフル型のスタンド。本体が『顔』を覚えた人間を、射程距離内(350mほど)に居る限り追尾する弾丸を放つ。
      パワー、機能共に凶悪なスタンドだが、連射が利かず、一発を撃つと十数秒のブランクが発生する。
      また、軌道が変われば変わるほど弾の威力は落ちる。

―――――――――――――――――――――――――
599アフターロック:2009/08/07(金) 17:07:30 ID:???
そんなところでまた夜来ます。
めがっさめがっさゥ
600マロン名無しさん:2009/08/07(金) 17:11:20 ID:???
おつ!感想は後ほど
そろそろこのスレも容量ぎりぎりだし次立てる?
601マロン名無しさん:2009/08/07(金) 17:34:55 ID:???
容量とは盲点だった
立てたほうがイイとおもいます
602マロン名無しさん:2009/08/07(金) 17:52:06 ID:???
603マロン名無しさん:2009/08/08(土) 22:51:28 ID:???
埋めついでに
上で出せそうなキャラについては書いてあったけど逆に出て欲しいキャラっていったら誰よ?
604マロン名無しさん:2009/08/09(日) 22:27:10 ID:???
そんなもんプロシュート兄貴に決まってんだろォ―――!!!!
605マロン名無しさん
1部ディオとか興味あるなぁw