「何があったんだ?」
今日も今日とて部室へと向かう斑目、サークル棟の前で異変に気付いた。
部室の窓に、雨戸を閉めたように板が打ち付けられていたのだ。
部室の前には、スーと荻上さんが立っていた。
そして部室からは、ドアを叩く音と共に絶叫が。
「開けろー!開けてくれー!」
斑目「朽木君の声だ(2人に)何があったの?」
荻上「あっ斑目さんこんちわ。スーちゃんが『あしたのジョー』にはまっちゃって…」
スー「朽木ヲばんたむ級マデ減量サセルデアリマス!」
斑目「死ぬって朽木君!」
まだなのかのう、アクセス規制の解除。
いい加減そろそろ、クッチーもパソコンの前でキレてる頃だな。
>2029年・斑目家のお正月
亀だが、「あしたのジョー2」を見てて、ふとこの話の田中夫婦の2029年の姿に思いを馳せた。
大野さん、40過ぎたら巨乳はともかく、かなり太目になるだろうね。
実在の人物で言えば、70年代頃の春川ますみをひと回り巨乳にしたような感じか。
一方田中はハゲ始めて危ないとなると、あと数年でツルッパゲか。
となるとこの夫婦、終盤でマンモス西が婿入りする、食料品店の経営者夫婦みたいになるんだろうな。
>455
コスプレをやり続けるために体形維持には全力を尽くしそう。>大野さん
457 :
御宅人:2009/03/21(土) 12:53:54 ID:???
>>439です。
SSスレの本筋とは全く関係ないけど、昨夜の必殺仕事人2009は凄かった。
・通り魔の狂気(最初のカットは鳥肌)
・まるで実相時アングルのような映像美
・仕事人の心得を説教される若手
・仕事をしくじり、ただの殺戮になる展開
・後のない追い詰められた状況で「つづく」
前期必殺にもあまり無いようなハードな展開でした。
叱咤激励なんて偉そうなこと書いて悪かった。
この本気をもっと見せてくれ!
458 :
御宅人:2009/03/21(土) 12:54:45 ID:???
チラ裏すみません。
SS投下する時にまた参ります。
保守テスト
こんばんわ、ようやくアクセス規制が解除されました。
本日は11スレほど投下しようと思うのですが、途中で連投規制かかるかも知れませんので、その際はちょっと間を置いて再開しますので、そのようにご理解下さい。
さてお話は、例によって現視研1年生たちの飲み会兼反省会が、撮影7日目の回想をしていた続きです。
では。
再び居酒屋。
日垣「でももっと分かりにくかったのは、スーちゃんのあれだよな」
豪田「あれは分かりにくかったわね」
巴「さすがにあの時は、みんな凍結しちゃったもんね」
有吉「でもあの女子アナの人、ちゃんとこけてたな。あの人の歳だったら生まれる前か、記憶に無いぐらい幼い頃の話だと思うんだけど…」
元々映画のきっかけがスーのクルルコス希望だったこともあってか、金髪でロリ顔美少女の外見が話題にしやすいと判断したせいか、女子アナの人が最も注目したのはスーだった。
台場からスーがアニメや漫画の台詞の物真似が上手いと聞いて、それを期待してスーにマイクを向けた。
だがスーが放ったのは、こんなひと言だった。
「コンバンワ、らっしゃー木村デス」
反応してこけたのは、テレビ局のコンビと、プロレスにも詳しい有吉だけであった。
有吉「何でスーちゃん、こんばんわ事件なんて知ってるんだ?」
こんばんわ事件とは、1981年の田園コロシアムでの新日本プロレスの興行で、倒産した国際プロレスから参加したラッシャー木村が、リング上で観客に挨拶したことである。
これが観客の失笑を買ってしまった。
当時の新日本プロレスは日本人同士の軍団抗争が盛んで、リング上には殺伐とした空気が蔓延していたからだ。
だからファンは「猪木ぶっ殺すぞ、この野朗」みたいなコメントを期待していた。
これに対し常識人(?)であるラッシャーは、「人様のリングに初めて上がるのだから」と普通に「こんばんわ」と挨拶した。
このミスマッチが失笑を生み、ビートたけしがこれをギャグとして広めてしまったのだ。
結局スーへのインタビューは、台場が間に入って「ケロロ軍曹」のメインキャラ全員の台詞の物真似をやらせることで、何とか体裁を整えた。
再び居酒屋。
有吉「何でスーちゃん、わざわざこんばんわ事件なんてセレクトしたの?」
スー「押忍!テレビを意識して、一般向けのネタをセレクトしたつもりだったのですが、問題あったでありますか?」
浅田「いや今じゃ一般的じゃないよ、80年代のプロレスネタは…」
台場「まあ何はともあれ、みんなのおかげで、映画のプロモーションは大成功だったわね」
浅田「プロモーションって言っても、深夜のニュースでの10分足らずのコーナーだったけどね」
伊藤「しかもテレビ奥東京限定ですニャー」
沢田「2時間近くも撮影中断した代償としては、知れてると思うけど」
台場「ハハハハハハ…(笑って誤魔化す)」
テレビ局の2人が帰った直後、撮影は再開された。
シーン18-Bからシーン22にかけての通しの撮影の段取りは、次の通りだった。
先ずケロン人スーツ着用の荻上会長、ニャー子、国松、そしてハルマゲドンバージョンのモアコスのアンジェラが部室の外で待機してる状態で、シーン18-Bを撮影する。
カプセルが開いて煙が噴射し、煙が出切った所で1度カメラを止める。
そこですかさずカメラの背後で待機していたクッチーがカプセルの向こう側に移動し、煙の中でしゃがみ込んだ所から再びカメラを回す。
そしてクッチーが立ち上がりつつベムの目を点灯させ、両手を上げて威嚇のポーズを決めた所でシーン18-Bは終了となる。
その直後、扇風機をフル回転させて煙の大部分を追い出し、入れ替わりに外で待機していた4人が部室に入る。
そして入り口から見て左手のセットの壁に設置された、クルルズラボのドアの向こう側に、有吉と日垣と共に入る。
この間にクッチーはセット中央に、撮影スタッフはセットの右側に配置を移動し、後はシーン22の撮影にそのまま突入という流れだ。
わざわざこんな通しの撮影にしたのは、何度もバルサンを焚いたり排気したりするのが面倒な為であった。
シーン22は煙無しでもよかったのだが、ベム復活直後に小隊の面々が駆け付けたという状況を強調する為に、敢えて煙を少し残したのだ。
わざわざ排気して煙を減らしたのは、煙の中で複数のスーツアクターが動き回るのが危険なことと、モア役のアンジェラはマスク無しで演技する為であった。
小隊の面々を後から部室に入れたのは、単純にスーツでは暑さと煙の中では長く持たないという理由からだ。
それを言い出したらクッチーはもっと大変なのだが、実は通しの撮影で行くことを主張したのはクッチーだった。
彼は今回の撮影の準備を手伝う過程で、特撮の準備がいかに手間かということを実感した。そこで最も準備の手間が少なく、効率良く撮影出来る、通しの撮影を推したのだ。
「僕チンは男の子だから、少々長くスーツ着てても何とかなるにょー」
以前炎天下で1時間着て動き回った時のことを思えば、わずか数分の撮影など、彼にとって大したものではないと思えたらしい。
有吉と日垣が一緒に入るのは、2人がドアを開ける為だ。
本来クルルズラボの扉は、上に持ち上がるように開くのだが、今回は自動ドアであることを強調する為に、わざと両開きの引き戸の形にした。
それを2人で両側からタイミングを合わせて開くのだ。
この扉の方式を豪田にリクエストしたのは国松だった。
ウルトラシリーズの歴代怪獣攻撃チームの作戦司令室のドアが、この方式だったからだ。
なお余談になるが、昭和天皇は戦後になるまで、世の中のあらゆる扉やドアは自動的に開くものだと思われていたそうだ。
つまり、常にお付きの人が陛下の死角で開けていた訳である。
ちなみにシーン22のシナリオは、次の通りであった。
(注)正式な脚本の書式では読みづらいので、SS風の書式で表記しました。
まだ蘇生時に発生した煙が残る室内に立つ、ホムンクルスのベム1号。
部屋のドアが開き、ケロロ、タママ、ギロロ(銃を持ってる)が入って来る。
ケロロ「何事でありますか!?(ベムを見て)ゲロッ!?」
ギロロ「何なんだ、こいつは?」
クルル(声)「どうやら圧縮されていた細胞が、何らかのショックで蘇ったみたいだな。錬金術による人工生命体1号、さしずめベム1号とでも呼ぶか、ク〜クックックッ」
ケロロ「ベムとは何ゆえでありますか?」
クルル(声)「ペコポンでは昔は宇宙生物をそう呼んだのさ」
タママ「あのう、ショックってどんなショックですかあ?」
クルル(声)「例えば強い光とかな」
ケロロ「強い光…ゲロッ?まさか!」
ケロロの脳内フラッシュバック。(シーン14再現)
ストロボを焚いて、タイムカプセルの写真を撮るケロロ。
(注)この頃ケロロは写真に凝っていて、フィルム式の一眼レフを愛用していた。
クルル(声)「おそらくそのまさかだろうな、ク〜クックックッ」
ギロロ「(ケロロに)またお前か〜!」
ケロロ「とっ、とにかくやっつけるであります!」
タママ「(身構えて)はいです〜!」
ギロロ「(銃を構え、タママと同時に)おう!」
「待ちな、人の部屋ん中でドンパチやられちゃ困るぜ〜」
ケロロ「ゲロッ?ならどうするでありますか?」
再びドアが開き、擬態解除したモアが入って来る。
そのままベムに向かって走って突進する。
クルル(声)「クルル時空に叩っ込んでやんな!」
モア「はいっ、ハルマゲドン1億分の1!」
フルスイングでルシファースピアをベムに叩き込むモア。
(注)このシーンの間、様子見の為かベムはおとなしくしていた。
恵子「いいか、とにかく落ち着いて、慌てずにひとつひとつ丁寧に行けよ!」
一同「はいっ!」
伊藤「ではシーン18-Bとシーン22、通しでの撮影の本番を始めますニャー」
恵子「3、2、1、用意、スタート!」
シーン18-Bの撮影は、タイムカプセルを入り口から向かって右側の壁寄りの床に置き、カメラ他撮影スタッフは、全員部室の中央付近に位置して行なわれた。
全員ガスマスクを着用している。
小道具係の日垣が、恵子のスタートの合図に合わせて、タイムカプセルから伸びたコードの先に付いたスイッチをオンにする。
夜光塗料を塗られた、カプセルの蓋の覗き窓が一瞬照明の照り返しで光り、次の瞬間パカットと勢い良く蓋が開き、煙を噴き出した。
やがて煙の噴射が止まり、部屋いっぱいに煙が充満する。
恵子「よしっ、カメラ止めて待機!クッチー、出番だ!」
朽木「了解であります!」
スタッフの背後で待機していたベムスーツ姿のクッチーが、入り口から向かって右側の壁際、つまりスタッフから見てカプセルの向こう側にしゃがみ込む。
恵子「よしっ、撮影再開!」
恵子の合図に合わせてカメラが再び回り、クッチーは合図から三秒置いてゆっくりと立ち上がる。
そして威嚇するかのように両手を挙げ、同時に点灯スイッチ(今回の撮影用に掌の中に移した)をオンにして目を光らせ、「ガア!」と咆哮を上げる。
恵子「よしカット!すぐに換気だ!」
有吉が部室のドアを開けに走り、日垣が扇風機を全機フル回転させ、手の空いた者がうちわや下敷きであおいで煙を追い出しにかかる。
その間伊藤がクッチーの背中のファスナーを開け、コールドスプレーをかけてやる。
それと並行して、台場がベムのマスクの繋ぎ目からストローを差し込んで、クッチーにス
ポーツドリンクを飲ませてやる。
煙と入れ替わるように、小隊役の3人とアンジェラが部室に入って来る。
視界が確保出来る程度には排気が済んだものの、ある程度の煙が残っているのでアンジェラが軽く咳き込む。
恵子「大丈夫か?」
スーツのマスク部にガスマスクのフィルターを貼り付けたスーツアクター組と違い、モア役のアンジェラは素顔のままだ。
アンジェラ「大丈夫あるね。それに咳き込んだ方が、却って煙の中に入ったことが強調出来るあるよ。てゆーか撮影続行?」
恵子「わーった。全員すぐ次のシーンの準備にかかれ!」
ケロロ小隊役の3人とアンジェラ、それに有吉と日垣は、共にクルルズラボのドア(部屋の左側に位置する)の向こう側に入る。
クッチー扮するベムは部屋の中央に移動し、撮影スタッフは部屋の右側に移動する。
伊藤「では撮影を再開し、シーン22の本番を始めますニャー」
恵子「3、2、1、用意スタート!」
再び居酒屋。
沢田「結局何回撮り直したっけ?」
神田「(記録ノートを出し)えーと10回ね」
伊藤「あの時のNG、凄く細かい理由でしたニャー」
有吉「確か1回目は、僕が扉開くのが少し遅れたことだっけ?」
国松「確か2回目は、私が少し出遅れたせいだったわね」
巴「で、3回目はニャー子さんがこけちゃったせいだったわね」
豪田「そこまではまだ良かったんだけど、その後が大変だったのよね」
アンジェラ「そうそう、特にミスタークッチーが1番大変だったあるね。てゆーか七転八倒?」
浅田「今回に限っては正解だね、その四文字熟語の使い方」
3回のリテイクでようやくオッケーとなったが、そこで恵子が爆弾発言をした。
「なあ今のシーンさあ、予定じゃモアがベムをどついたとこまでで終わりだけど、ベムが吹っ飛ぶとこまで撮らないか?」
一瞬一同が呆然とする中、いち早く国松が反応した。
「いいですね、それ!その方が、その後のベムがクルル時空に吸い込まれる特撮シーンとの繋がりも、スムーズになりますし」
荻上「でも、それじゃあ朽木先輩が持たないでしょ?」
その時豪田が、部室の外に出してあった岩型のマットを持ち込んで来た。
豪田「大丈夫ですよ。これに向かって飛び込むようにすれば」
有吉「(アンジェラが持っているルシファースピアをいじりつつ)でもこれで吹っ飛ぶほど殴られたら、朽木先輩だってきついでしょ?」
アンジェラの扮するアンゴル・モアは、ルシファースピアという杖のような道具を、杵(この場合は棍棒状のタイプのやつ)のように使って叩くことで、星を破壊する能力がある。
ルシファースピアは、棒の片方の端に三日月型の刃(と思われるが、実際は単なる飾りかも知れない)、もう片方の端には隕石状の球が付いている。
星を破壊するのに使われるのは、隕石状の球の方である。
小道具係の日垣は、ルシファースピアを作る際、先ず樹脂でベースになる軸を作り、外側を溶かした硬質ゴムで固めて作った。
叩き付けても壊れない丈夫さと、叩かれた方が怪我しないようにとの配慮から、こういう作り方をしたのだが、それでも生身の人間が叩かれれば、けっこう痛い。
朽木「その点ならば大丈夫、僕チン道場ではメディシンボールで鍛えてるから、これぐらいでは堪えないにょー」
(注)メディシンボール
ボクサー等が腹筋の打たれ強さを鍛えるのに使う、中に鉛の入った皮製のボール。
このクッチーの安請け合いが、地獄の撮影を招いた。
「にょ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
岩型のマットのところまで、クッチーは2メートル近く吹き飛んだ。
そしてマットの後ろから支えていた、手の余っている会員たちは、セットとクッチーに挟まれて圧殺される破目になった。
アンジェラの怪力で思い切り突き込まれたルシファースピアは、クッチーの予想以上に破壊力があった。
先程までの、突いたところでカットする形だけの突きと違い、本気のアンジェラの突きは、重量級の空手有段者の突き蹴り以上に重かった。
だが恵子はなかなかオッケーを出さず、結果クッチーは4回吹き飛ぶ破目になった。
さすがにクッチーが堪えたこともあり、しばし小休止となる。
神田「大丈夫ですか、クッチー先輩?」
朽木「(着ぐるみを脱いで寝転び)まあ、何とか…」
国松「監督、今のじゃダメですか?クッチー先輩、けっこう派手に飛んで、画的には十分だと思いますけど」
恵子「うん、クッチーはあれでいいと思うんだけど、アンジェラの方がな…」
アンジェラ「私何か問題あるあるか?」
恵子「問題ってほどのことじゃねえんだけど、その何と言うか…」
しばし考え込む恵子。
沈黙で見守る一同。
恵子「分かったぞ!突くから地味なんだ!」
日垣「いや、十分派手だと思いますけど」
恵子「クッチーのリアクションはな。だがアンジェラのアクションとしては、あれじゃ足りねえよ」
荻上「じゃあどうするんです?」
恵子「バットみたいに振ればいいんだよ、フルスイングで」
固まる一同。
台場「それやると、いくらクッチー先輩でもきついのでは?」
恵子「でーじょーぶだよ、なっクッチー?」
朽木「(上体を起こし)まっ、まあ何とか…」
さすがにやや弱気になるクッチー。
そんなクッチーに恵子は近付き、肩に腕を回す。
ドキリとするクッチー。
恵子「次の撮影からはさあ、腹どつきに来る棒の先の球じゃなくて、アンジェラの方を見てろ」
朽木「アンジェラをでありますか?」
恵子「そうだ。そしてどつきに来る球の方は、鞭か何かだと思い込むんだ」
朽木「鞭でありますか?」
恵子「そうやってよーく考えてみろ。金髪で巨乳の美女に、鞭でしばかれる。そういう状況って、お前さんにとっては、けっこうおいしい状況なんじゃないか?」
しばしの沈黙の後、クッチーの中で大きく脈打つものがあった。
朽木「なるほど確かに、これは凄まじい萌えシチュエーションですな!」
一同「(引いて)そうなのか?…」
恵子「そうだろ?どうだ、元気出たか?」
朽木「イエッサー!」
そして再び撮影は開始されたが、またもやNGが2回連続で出た。
ルシファースピアが長い為に、バットのように振るには思った以上に間合いが必要で、立ち位置を決めないままスタートしたせいもあり、上手く球の部分が当たらなかったのだ。
(注)ルシファースピアはモアの身長ぐらいの長さがあるが、原作の設定によれば、モアの身長は150センチ。
だが結果的に、このことがクッチーの士気を高めた。
2回のNGは棒の部分が当たってしまったのだが、棒の部分にも硬質ゴムが張られていたので、スーツ越しに当たる分には、鞭に近い感触になるのだ。
金髪巨乳美女に鞭でしばかれるという状況に、すっかりクッチーは気を良くし、ハアハアしつつピーもピーな状況になり、先程までのダメージから回復しつつあった。
気を良くしたクッチー、とんでもない提案をする。
「こうなったら女王様、じゃなくて監督、思い切ってわたくしの顔にいただけませんか、愛の鞭を?」
さすがに引く一同。
巴「うわあクッチー先輩、すっかり目的を見失ってる…」
だが恵子はノリノリだ。
「よっしゃよく言ったクッチー!それでこそ男の中の男だ!」
一同「そうなのか?」
恵子「アンジェラ、次は思いっきし顔に行ったれ!」
アンジェラ「てゆーか鉄拳制裁?」
そして10回目のリテイク。
「にょおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!」
顔面にルシファースピアがジャストミートし、クッチーは見事に吹き飛んだ。
吹き飛んだクッチーはマットを飛び越えてセットに直撃し、セットを破壊してさらにその裏にあった部室の窓を突き破り、部室の外まで飛んで行った。
一同「クッチー(朽木)先輩!」
会員たちは、クッチーの後を追って部室の外へと向かった。
一方で恵子は、冷静な判断力でカメラマンたちに問うた。
「お前ら、クッチーが吹っ飛んで、セットぶっ壊したとこまでカメラ回してたか?」
カメラマンたちも冷静だった。
カメラ一同「はいっ!」
浅田「でも今のカット、吹っ飛んだ瞬間はともかく、セットの壊れたとこは、さすがに本編では使えないですね」
その問いに、恵子よりも早く答える声があった。
「大丈夫、メイキング映像の目玉になるから!」
声の主は、冷静な計算と熱い商魂が同居した、鋭い眼光を放つ台場であった。
部室の外へ一同が出てみると、クッチーは痙攣していた。
急いでスーツのマスク部分を脱がせて、問いかける国松。
「大丈夫ですか、クッチー先輩!?」
だがマスクの下にあったのは、恍惚とした表情のクッチーだった。
引いている一同を尻目に、クッチーはすっくと立ち上がり、高らかに宣言した。
「ふっか〜〜〜〜〜〜つ!!!!」
呆然とする一同。
浅田「何で復活するの?」
みんなが忘れかけていた設定を解説するスー。
「(政宗一成似の声で)朽木学ハ女性ニ殴ラレルコトニヨリ、3倍ニぱわーあっぷスルノダ!」
こうしていろいろあった、長い長い7日目の撮影は、ようやく終了した。
本日はこれまでです。
やはり前書き入れて10レス目で、連投規制がかかってしまい、結局3時間近くの中断を挟んでの投下となりました。
続きはまた来週の結末に投下する予定ですが、下書き的な原稿は上がってるので、平日でも校正が出来次第投下するかも知れません。
追伸
下書きの原稿が、今日で400レスに達しました。
でもまだ未完です。
ではまた。
祝日本優勝
主な書き手の人は2〜3人程度のようだが、他の人々は元気だろうか?
原作終わってだいぶ経つけど、よく続くよね。
30人は週末にがっつり読みます。乙です。
まとめサイトが更新されない…
管理人の人、足洗っちゃったのかな?
人それぞれ仕事で忙しかったり、同人で忙しかったりするもの。
まとめの人も忙しいんだと思うよ。
久しぶりに投下します。
短いですよ〜。
479 :
「妄想」1:2009/03/28(土) 03:38:07 ID:???
『表』
「あっちー」
斑目は手に持ったアイスバーをかじりながら一言呟いた。
スザンナの部屋で二人きり。
なのは良いが、暑がりの斑目にとって、この部屋は少々暑い。
けれどスザンナにはこれが適温なのだ。
家主にクーラーの温度を下げてくれと頼んでも聞き入れてもらえず、代わりにと手渡されたのがこのアイスバー。
食べ終わったらどうするのか、ここに居る間中食べ続けなければならないのか、という斑目のツッコミも、スザンナの「ジャア帰ル?」の一言で飲み込まれた。
「……」
スザンナの部屋にあった未読の漫画を読む斑目の手が止まった。
顔を上げると、少し離れて同じ様に漫画を読んでいたスザンナが自分をジッと見つめている。
「?」
斑目が不思議に思っていると、スザンナが口を開いた。
「一口チョウダイ」
半分程に短くなったアイスバーを指差すスザンナに、斑目はひとつ頷いて手に持ったそれを差し出す。
それを見て、一メートル程離れた場所に座っていたスザンナが四つん這いの形で斑目の方へと近づいて来る。
480 :
「妄想」2:2009/03/28(土) 03:41:03 ID:???
手を伸ばしてそれを受け取るものだと思っていた斑目がキョトンとする間も無く、スザンナが手に持ったままのアイスバーに舌を寄せた。
「ンッ」
下に落ちそうになっていた滴を掬い取り、更に上へと舌を動かす。
ペロペロとアイスバーを舐めるその姿に、思わず斑目は食い入る様に視線を注ぐ。
溶けた部分を全て舐め取り、次にスザンナは口を開いてアイスバーの先端へと狙いを定める。
小さな口を思い切り開いてゆっくりと納められるそれは、既に斑目の脳内で自らのナニと化していた。
カプリッ。
(うおおおおおおおっ!!!)
スザンナがナニを、いや、アイスバーを口に含んだ瞬間、心の中で歓喜の雄叫びを上げた斑目の耳に、無惨な音が響く。
ボキンッ!
歯で折られ、更に短くなってしまったアイスバーが斑目の視界に映る。
反射的に自分の股間を反対の手で押さえてしまう斑目。
何を考えていたのか一目瞭然だが、直ぐに元の体勢に戻ったスザンナはそんな斑目を見てはいなかった。
斑目は軽くかいた冷や汗を拭いながら、バレなかった事に胸を撫で下ろす。
又アイスバーを食べながら漫画を読み始めた自分へと向けられるスザンナの笑みに気づかないままで……。
『裏』へ続く。
481 :
「妄想」3:2009/03/28(土) 03:42:39 ID:???
『裏』
部屋が少し暑いと言う斑目に用意してあったアイスバーを手渡しながら、スザンナは内心ほくそ笑んでいた。
素直にアイスバーを食べながら漫画読むその姿を気づかれない様にチラチラと盗み見る。
涼を取る為に食べているせいで一気にかじりつけない斑目は、少しづつそれを口に含みながら時おり手に垂れそうになるアイスを舐めていた。
スザンナはそれをドキドキと胸を高鳴らせながら見ている。
彼女が手にしている漫画。一見表紙は普通の物だが、中身はハードなホモ漫画だ。
スザンナがそんな漫画を読んでいても斑目は気にしないが、今日ばかりはバレない物をチョイスした。
それを読みながら、斑目のアイスバーを食べる姿に漫画の内容を重ねる。
アイスバーはスザンナの脳内で知らぬ誰かのナニと化す。
まさか付き合っている彼女に視姦されているとは知らない斑目。
「?」
ふと顔を上げた斑目がスザンナの視線に気づいて不思議そうな顔をする。
一瞬バレたかと緊張したスザンナだったが、そんではないと分かり誤魔化す為にアイスバーを指差した。
「一口チョウダイ」
終わり
どっちもどっちと言うか……。
ベタネタをちょっと捻ってみた。
こんな時間にリアルタイムGJ!
短いのもいいですね。3レス目のオチも相変わらず
斑目ウラヤマカワイソスでよいよいw
裏と言われたので反射的にエロパロ行こうとしたん
ですが踏みとどまってよかったwww
むしろ数字板ですねわかります
何たる似た者カップルw
こんばんわ。
今夜は9スレお届けします。
では。
「(井端珠里似の声で)駅カラ5分ハ実ハ15分!ソレジャアそるじゃード疲レサン!〜♪」
スーが歌っているのは、ケロロ軍曹の主題歌「ケロッ!とマーチ」である。
何故彼女が歌っているかと言うと、ここはカラオケボックスだからである。
クランクインから10日目に開かれた、現視研1年生たちの飲み会兼反省会は、7日目の反省がまとまった所で居酒屋の閉店時間となった。
あと2日分(9日目は撮休だった)なので続きをやってしまおうということになり、近場のカラオケボックスで2次会と相成った訳である。
そんな次第で、8日目以降の飲み会兼反省会は、アニソンのBGM付きという賑やかな状況になった。
沢田「やれやれ、寝るのは何時になることやら」
豪田「まあ若いんだから、少々睡眠不足でもいいけど、お風呂は入りたいわね」
国松「その点なら大丈夫。近くに健康ランドあるし、少し歩いたら5時から朝風呂やってる銭湯があるわよ」
台場「あんた朝まで居る気か!?て言うか、その手の一升瓶は何だ!?」
アンジェラ「てゆーか用意周到?」
有吉「まあまあ、時間も無いことだし本題に戻るよ。結局7日目は撮影が夜まで延びちゃったから、8日目の準備は当日の朝になっちゃったんだよね」
巴「お疲れ様、蛇衣子」
豪田「まああの日のは大したこと無かったから。壁入れ替えて、カーペット敷いて、家具セッティングするだけだから、手のかかる調整は無かったし」
伊藤「いやそれでも大したもんだと思うニャー。どう見てもセットに見えなかったし」
8日目もまた部室にセットを組んでの撮影が行なわれた。
ケロロの部屋のセットだ。
当初ケロロの部屋は、誰かの部屋でロケする予定だった。
だがケロロの部屋には、一般家屋のオタルームで再現することが困難な特徴が2つあった。
1つは部屋に窓が無いことだった。
ケロロの部屋は地下室で、当然窓が無くドアも1つなので、三方を壁に囲まれている。
ところが一般的な日本家屋の部屋には、大抵窓がある。
和室が隣接してて障子で区切ってある、通り道のような部屋ならば窓が無い場合もあるが、その場合は戸が2つ以上あって、ますますイメージがケロロルームから遠ざかる。
だがそれだけならば、窓を板で塞ぐことで解決出来る。
もう1つ、浅田と岸野があちこちロケハンして気付いた思わぬ盲点は、部屋の広さだった。
ケロロの部屋は意外と広い。
と言っても、実際には四畳半か六畳程度である。
ケロロは地下の基地内に、専用の展示室と保管庫を作って、そこに大量のガンプラコレクションを保管しているので、自室のガンプラの陳列数は意外と少ない。
漫画本やビデオテープ(ケロロは今でもけっこうビデオテープを使っている)やDVDについても同様なので、ケロロの部屋はオタルームとしては物が少ない。
そしてケロロの体は普通の人間の3分の1程度の大きさしかないので、ベッド等も当然小さい。
その為、本来さほど広くない自室が、普通の人間なら考えられないほど広く使えるのだ。
これに対し、会員たちの自室のオタルームは狭い。
大抵元々が三畳か四畳半程度しかない上に、オタグッズとオタメディアで埋もれている。
仮に必死で片付けても(中身を外へ出しても)ケロロの部屋の広々感は再現出来ない。
そこで部室を使って再現することになったのだ。
(まあそれにしても、カメラワークを駆使して誤魔化すことになるが)
この日撮影したのは2シーンだけであった。
6-B 相変わらずガンプラ作りに耽るケロロ
19 ガンプラ製作中にベム復活し、その振動に驚くケロロとタママ
本来はシーン19の前後に、ギロロのリアクションとクルルと冬樹のリアクションを入れる予定だったが、それらのシーンは欠番になった。
話の展開のリズムを早める為と、仮にも主人公であるケロロの出番を強調する為に、リアクションのシーンをケロロに集中させたのだ。
このシーンの撮影に備え、荻上会長はガンプラ作りの特訓を行なった。
先ずは自宅で数個作り、次には部室に田中を招き、プロ級とまでは行かぬまでも初級ぐらいのテクニックを学んだ。
まあもっとも部室でのガンプラ特訓は、結局のところ会員全員でのガンプラ講習会と化してしまったが。
たかが十数秒程度のカットの為にここまでの特訓をしたのは、ケロロのスーツを身に着けてのガンプラ作りが意外と難しいからだ。
ケロロのスーツは、頭部の覗き窓と目との間隔が広いので、慣れないと距離感が掴みにくい。
それに着ぐるみなので、当然手は手袋を着けた状態になる。
ケロロのスーツの手には、軽作業用の薄手の手袋を染料で染めたものを使用している。
軍手ほどはぶ厚くない、細かい作業用に使われるタイプのものだ。
そのタイプのものですら、手袋着用ではケロロのように器用に組み立てることは難しい。
その為荻上会長は、手袋着用でのガンプラ特訓、そして最終的にはケロロのスーツ着用でのガンプラ特訓を実施し、遂には本物のケロロ顔負けの器用さで作れるようになった。
「どういうことなの?!」
撮影開始直前、荻上会長は珍しく大声を上げた。
当初の予定では、この日の撮影用のガンプラは、小道具担当の日垣が途中まで組んだ物を(2シーンの撮影用なので)2種類用意しているはずだった。
だが実際に途中まで組んだ物が用意されたのは1種類(オーソドックスにRX-78-2ガンダム)だけで、もう1つは新品の手付かずのガンプラだった。
しかもその新品とは、先月発売されたばかりのマスターグレードシリーズ、RB-79ボールのシャークマウス仕様だった。
珍しく声を荒げた荻上会長にたじろぎつつ、日垣は事情を説明した。
「実は昨日監督から電話があって、片方は丸々残しとくように指示されたんです」
荻上「恵子さんが?」
日垣「ええ」
荻上「どういうことかしら?…」
この時、他の会員たちは集まっていたが、恵子はまだ来ていなかった。
沢田「それよりガンダムはともかく、何でもうひとつはボールなの?」
有吉「しかもシャークマウス仕様なんて、えらくマニアックなバージョンを…」
シャークマウス仕様のボールは、2004年から2006年にかけて発売された、OVAシリーズの「MS IGLOO」で初登場なので、現視研でも知らない者は多かった。
日垣「それは台場さんの指示なんだよ」
国松「どゆこと、晴海?」
台場「ほら、それこの間発売されたでしょ?著作権のことで角川さんに交渉に行った時に頂いて、頼まれちゃったのよ。これ映画で使ってって」
一同「タイアップかよ!」
アンジェラ「てゆーか商業主義?」
「おう、みんな揃ったか」
そこへ遅れて恵子がやって来た。
荻上「ちょっ、ちょっと恵子さん…」
どういうことかと問い詰めようとする荻上会長を無視して、恵子はテーブルの上に用意されたガンプラに注目した。
恵子「ありゃ?日垣、ガンダムの方作りかけちゃったのか?」
日垣「あれっ、違いましたっけ?」
恵子「あちゃー、ほんとはガンダムの方残しといて欲しかったんだけどな」
日垣「すんません」
恵子「ま、いいや。これはこれでオタっぽくなって、却ってケロロ向けかも知んないし」
荻上「それより恵子さん、どういうことなんです?」
恵子「何が?」
荻上「何でこのガンプラ、丸ごと残したんですか?」
恵子「ああ、それね」
ようやく荻上会長の苛立ちに気付いた恵子、ガンプラの箱を開けてパーツをいじりつつ、説明を始めた。
恵子「前に晴海が言ってただろ?学祭以外にも、いろんなイベントとかコンクールとかに映画出したいから、ビデオと8ミリと両方あった方が都合がいいって」
荻上「そう言えば、そんなこと言ってましたね」
恵子「それで思い付いたんだけど、そんなら映画撮影しながら、もう1本映画でっち上げちゃえないかなと思ってさあ」
一同「もう1本?」
恵子「姉さんがケロロの格好でガンプラ作る練習してるの見てたらさ、何かそれが画的に凄く面白い気がして来てさあ…」
荻上「?」
恵子「ケロロがガンプラ作るとこだけで、1本映画作っちまったら、何かシュールなのが出来そうな気がするんだよ」
思わぬ提案に固まる一同。
恵子「どうよ?」
真っ先に立ち直った台場、壁ぐらい貫通出来そうなほど強烈な眼光を放ちつつ、恵子の手を力強く握って言った。
「やりましょう!」
一同「うわあ晴海、また商人(あきんど)の目に…」
こうして8日目の撮影と同時に、ドキュメンタリー短編映画「ガンプラを作るケロロ軍曹」の撮影が行なわれた。
先ずはシーン19からだ。
床に作りかけのRX-78-2ガンダムのガンプラと工具類が置かれ、それを間に挟んでケロロ役の荻上会長と、タママ役のニャー子が座る。
カメラ側から見て、右奥にタママ、左手前に背中を向けたケロロ、そして2人の間にガンプラその他という配置だ。
伊藤「それではシーン19、ケロロの部屋の本番を始めますニャー」
恵子「3、2、1、用意、スタート!」
カチンコと同時に、ケロロは作りかけのガンダムを左手に持って右手でパーツをはめようとし、タママはその様子を覗き込むようなポーズを取る。
同時に記録係の神田がストップウォッチを動かし、3秒経過したところで叫ぶ。
「スタート!」
その声に合わせて、4人のカメラマンは両手を交互に上下するようにして、手持ちのカメラを揺する。
一方神田は、声を出して秒読みを開始する。
ケロロとタママは、神田のスタートの声に合わせて体を不自然に揺らし、ケロロはややオーバーなアクションで部品をはめ損ねた。
そして揺られながら声を上げた。
ケロロ「ゲロッ?」
タママ「(ケロロとほぼ同時に)タマッ?」
「ゼロッ!」
神田のカウントゼロに合わせて、カメラマン4人は一斉に動きを止めた。
それと同時にケロロは後ろを振り返り、タママも顔を上げた。
ケロロ「(振り返りながら)何事でありますか?!」
つまり最初にカメラを揺らしたことで、地下のクルルズラボでの、ベム復活による振動を表現し、その振動でケロロが部品をはめ損ね、驚いてリアクションという芝居の流れだ。
ちなみにケロロが最初背中を向けているのは、動きを大きくすることで少しでも主役を目立たせようという配慮だ。
(ストーリー展開の都合上、今回の映画ではケロロの出番は割と少ない)
恵子「カット!(少し間を置いて)オッケー!」
何度もリハーサルを繰り返したのが功を奏して、1発でオッケーとなった。
ほっとする一同。
(ちなみに神田の秒読みの声は、当然アフレコ段階で消すので、念の為)
昼食休憩の後、問題のシーン6-B兼短編ドキュメンタリー映画の撮影が再開された。
どのみち音声は物音以外カットするつもりらしく、撮影しながら恵子は次々と指示を出した。
その指示は恵子にしては、えらく細かく具体的だった。
恵子「ダメだよ姉さん、部品切っちゃ。先に色塗る機械で、枝ごと色塗っちゃわないと」
荻上「塗るんですか、これ?マスターグレードって、ちゃんと色塗ってるでしょ?」
恵子「ケロロなら塗るだろ色?あいつが出来合いの色で済ます訳無いし」
荻上「色塗る機械って、エアブラシなんか用意したんですか?」
恵子「その方が、全部筆で塗るよりは簡単だろ?」
マスターグレードシリーズのガンプラは、同じ色のパーツばかり1つのランナーに集めてあり、最初から色が着いている。
その為、ランナーからパーツを切り離す前の状態で、1つの色のパーツをまとめてエアブラシで塗装するという荒技が使える。
もちろんランナーとの連結部分だけ塗り残しが出来るが、それは切り離した後に細筆でレタッチして補う。
恵子「ダメだよ姉さん、ちゃんと接着剤使わないと」
荻上「これスナップフィットだから、接着剤要りませんよ」
恵子「そん代わり簡単に外れるんだろ?ケロロなら絶対接着剤使うし」
マスターグレードシリーズのガンプラは、接着剤無しで組み立てられる。
だが当然分解しやすいので、完成品として仕上げようとするマニアは、やはり接着剤を使用するのだ。
荻上「あちゃー!水転写デカール貼るの失敗した〜!」
恵子「姉さんの絵の腕なら、手描きで描けるだろ?」
荻上「何の為のシャークマウス仕様なんだか…」
シャークマウス仕様には、文字通り開いた鮫の口のようなペインティングが施されている。
マスターグレードシリーズでは、大きな水転写デカール(要は水シールだ)で、これを再現しているが、大きいだけに失敗すると大変なことになるのだ。
恵子は荻上会長だけでなく、スタッフにもあれこれと注文を出した。
「浅田、ケロロの顔アップにして!ヤブさんはガンプラの方をアップ!」
「岸野、頭の上からケロロ撮れ!他のカメラは、その間カメラ止めて待機だ!」
「加藤さん、悪りいけど腹這いになって、下からケロロ撮ってくれ!」
こうして何度かの休憩を挟み、シーン6-B兼短編映画「ガンプラを作るケロロ軍曹」の撮影は終わった。
今回のセットは、部室の半分ほどのスペースを使ってはいるものの、壁2枚と床だけという、簡素な構成であった。
そんな構造の為、今回に限っては部室にセットを組んだにも関わらず、冷房が使えた。
だがそれでも着ぐるみで頑張れるのは、せいぜい30分が限度であった。
最初に全体の大部分に色を塗ってしまう荒技が幸いして、上手く乾かす時間と休憩とをシンクロさせて、時間のロス無く作業は進行した。
ちなみに天井は部室の天井そのままだったが、どこから借りて来たのか、アンティークなデザインのバーなどによくある、羽根剥き出しの回転の遅い扇風機が回っていた。
扇風機はわずかしか映らないが、これによりケロロの部屋の雰囲気を醸し出していた。
撮影終了後、今日は特に出番も無く見学していた、大野さんが不意に言い出した。
「今思い出したんですけど、確か笹原さんって、ガンダム占いだとボールなんですよ」
「えっ!?」
完成したボールを見つつ赤面する荻上会長。
恵子「へえ、そうなんだ」
言いながら恵子は、ボールの砲身を軽く撫でた。
恵子「姉さん、今夜これでしちゃダメだよ」
ブッとなる一同。
荻上「(最大出力赤面滝汗で)しません!」
今でもこういうミス、時々やってしまいますなあ。
9スレじゃなくて9レスです、失礼しました。
さて、間に1年近い中断を挟んで、長々と続いた飲み会兼反省会、いよいよ次回で決着と相成ります。
100レス以上も続いた割には、チトしょぼかったかななオチと共に。
ではまた。
元気が何より
リアルタイムだと、明日でスーは4年生か。
進路はどうするんだろ?
国に帰るのかな?
日本で就職するのかな?
それとも大学院に行って、斑目同様部室の主になるのかな?
「げんしけん」の劇場版が作られるらしい。
てすと
ほしゅ
>「げんしけん」の劇場版が作られるらしい。
四月馬鹿ネタとはいえ、
もし劇場版なんか作ったら、
どんなモノになるんだろう?
新参置いてけぼりでいいから合宿2時間
こっそり見てます保守
「あしたのジョー2」を見てて、低賃金もしくは無職生活で、オタグッズの為に食費を削り、元々バンタム級ぐらいだったのに、ミニマム級まで階級落とした斑目を想像してしまった。
飯は食えよ、斑目。
げっそりして、水分不足で唇が腫れたままアキバを徘徊する斑目w
こんばんわ、またバカがやって来ました。
長々と続いた飲み会兼反省会編、今回で終了です。
11レスありますので、(多分途中で連投規制入るから)ゆっくりと参ります。
では。
再びカラオケボックス。
ちなみにBGMは、有吉が歌う「哀 戦士」であった。
日垣「結局あの日の監督の頑張り様って、何だったんだろ?」
国松「どうも監督、映像感覚的な『何か』が目覚めつつあるみたいな気がするんだけど」
浅田「と言うか、いろいろ試したかったみたいだな、監督」
一同「試す?」
浅田「せっかく短いのを1本撮っちゃうんだから、ついでにカメラアングルとか照明とかで、こうすればどうなるってのを改めて実験してたんだと思うよ」
巴「そう言えば監督、何かビデオで撮った分、熱心に何度も見返してたわね」
沢田「そうそう、マジ顔の恵子監督って、何か凛々しいのよね」
ちょっとウットリ顔になる沢田に引く一同。
だがそこでアンジェラがダメ押しをかける。
「何と言うか、男前な感じだったあるね。ミスター笹原そっくりだったあるよ」
一瞬固まった一同、声を合わせて叫ぶ。
「それは禁句だ〜!!!」
「一万年と二千年前から愛してる〜♪」
沢田と台場が歌う中、有吉が切り出した。
「さてと、ようやく今日の話に辿り着いたな」
110レス以上にも及ぶ回想を経て、1年生たちの反省会兼飲み会は、2次会に場所を移してから、ようやく撮影開始10日目に当たる今日の撮影の話にこぎ付けた。
伊藤「長かったですニャー、ここまでの話」
豪田「まあ厳密には、昨日撮休を挟んでるけどね」
浅田「とは言っても、結局俺ら1年生は神田さんちに集まって、撮影用の模様替えやってたけどね」
巴「こうやって振り返ってみると、ほんの10日間でいろいろあったわね」
スー「(納谷悟郎似の声で)地球カ、何モカモ皆懐カシイ…」
アンジェラ「てゆーか一日千秋?」
豪田「相変わらず、四字熟語の使い方が微妙に間違ってるわね…」
浅田「しかし今日はまいったよ。まだバルディオス全部見てないのに、また宿題もらっちゃったよ」
国松「浅田君のは何だっけ?」
浅田「『戦国魔神ゴーショーグン』だよ。国松さんは?」
国松「『太陽の牙ダグラム』よ」
有吉「またえらく長いのをもらって来ちゃったね」
国松「そんなに長いの?」
有吉「75話あるからね」
豪田「あれそんなにあったっけ?」
有吉「初心者にはちょっときついね」
国松「大丈夫よ。私1週間ぐらいで、ウルトラシリーズの2期全話制覇したことあるから」
日垣「…そりゃ頼もしいね」
ちなみにウルトラシリーズの2期は4年間に及ぶから、全部で207話ある。
10日目のロケ地は神田宅であった。
神田の家族は、この日留守の予定であったが、現視研の面々がロケ地である神田宅に訪れた時、神田の父は出かける直前であった。
神田「あれっ?パパ、今日出張じゃなかったの?」
神田の父は、大学生の娘の父親としては若く見えた。
見た目年齢は30代半ばぐらいだ。
中途半端な長髪に眼鏡にうっすらと無精髭という、いかにも古参のオタ風の風貌だ。
今日はスーツ姿だけに、その異質性が余計に強調されていた。
神田父「おおミッチー、出発前に本社でトラブルがあってね、その処理に追われてて、ちょっと出発が遅れたんだよ」
神田の父は、目ざとく浅田と岸野のカメラマンコンビを見つけた。
彼らはかつて、夏コミで神田作のコピー本を運ぶのを手伝う為に、神田宅に訪れたことがあった為、神田の父とは面識があった。
岸野「ども、ご無沙汰してます」
浅田「すんません、まだバルディオスは全部はちょっと…」
神田父「いいよいいよ。君たちには、まだまだ見なければならない作品、言い換えればお楽しみがまだまだ残っているんだ。ゆっくり見てくれればいいさ」
神田の父は現視研の面々を見つめ、嬉しそうに微笑んだ。
神田父「いやあそれにしても、思い起こせば早17年、あの頃は犯罪者予備軍のように言われ蔑まれて来たが、今ではこんなにも若き後継者たちが増えるとは…」
ポケットからハンカチを出して、涙をぬぐう神田父。
日垣「(小声で)17年前って、何の話?」
神田「(小声で)89年に起きた、宮崎勤の事件の話よ。パパの年代のオタには、あの事件がトラウマになってる人、たくさん居るのよ」
有吉「(小声で)まあ確かに、コミフェス会場でワイドショーのリポーターに、『ここに十万人の宮崎勤がいます』って言われたら、トラウマになるわなあ」
恵子「(小声で)何だい、その宮崎哲弥って?」
国松「(小声で)哲弥じゃなくて勤ですよ、監督」
国松は恵子に、小声で宮崎勤の事件について説明した。
だがその間も、神田の父のありがたいオタク講話は延々と続いていた。
場所を提供してもらう恩義もあって、ついつい拝聴し続ける現視研一行。
神田父「こうなれば、私の持つ知識、ぜひ君たちにその全てを伝承したいものだ。そしてそれがまた次の世代に引き継がれれば、もう思い残すことは無い」
神田「あのパパ、そろそろ出発しないとまずいんじゃない?」
神田父「おおそうだった!すっかり出張を忘れていた。では名残惜しいが今日はこの辺で」
ホッとする一同。
神田の父の話は、確かにオタクとして押さえておくべき、ありがたい内容ではあったが、残念ながらこれ以上聞き続けていては、映画の撮影の時間が無くなる。
神田父「では最期に君たちに、また宿題を渡しておこう。まあ映画の撮影で忙しいだろうから、返すのは何時でもいいよ」
スー「(サンボマスター似の声で)このまま何も残〜らずに〜あなたと分かち合〜うだけ♪」
浅田「で、再び宿題もらったんだよな。まあみんなは初めてだけど」
巴「そう言えば、ミッチーも何か宿題もらってたわね」
神田「うん、パパの持ってるビデオはあらかた全部見たけど、新しいのが入ったからって」
沢田「何もらったの?」
神田「『ジャングル黒べえ』」
一同「じゃんぐるくろべえ?」
神田「うん、30年ぐらい前の藤子アニメ」
国松「あっそれ知ってる。確か(ウルトラマン)エースとタロウの裏番組だったせいで、あんまし視聴率取れなくて打ち切りになったアニメじゃない」
日垣「何でそんなことまで知ってるの?」
その時、歌い終わったスーが、唐突に大声を上げた。
「ちょっと待つであります!何故そんなビデオが存在するんでありますか?」
神田「何故と言われても…どしたのスーちゃん?」
スー「『ジャングル黒べえ』は、主人公がジャングルの土人だった為に、現在では再放送もビデオ化もされてない封印作品であります!」
凍結する一同。
一同『どうやって手に入れたんだよ、そんなビデオ?』
結局10日目の撮影は、神田の父が出かけ、軽い昼食を終えた後に開始された。
神田の母は、前々から友人と約束していたというイベントに出かけており、神田の兄も相変わらず友人の家に泊まりこんでいるので、夕方まで神田宅には神田しか居ない。
この日撮影の予定だったのは、以下のシーンであった。
5 秋から正式に家政婦に任命されるケロロ
6-A 家事をするケロロ
11 帰宅した冬樹と会話するケロロ
12 呼び鈴に反応するケロロ
13 大きな箱を持ったタママが訪れる
14 居間で箱の中身(タイムカプセル)を説明するタママ
21 廊下を通り、異変に駆け付けるケロロ、ギロロ、タママ
「しまった〜!!!」
台所から食卓までのエリアを見ていた恵子が、突如声を上げた。
続いて浅田と岸野も、同時に声を上げた。
「あっ…!」
荻上「どうしたの?」
顔を見合わせる恵子、浅田、岸野。
3人とも滝汗状態だ。
3人はお互いの表情で、同じ問題に気付いたことを悟った。
自然に浅田が説明役を買って出た。
「俺たちは、とんでもないことを見過ごしてました」
荻上「どういうこと?」
浅田「ケロロの撮影に当たり、俺たちはケロン人役のスーツアクターと、ペコポン(地球)人役の俳優との対比に神経を使って来ました」
神妙な顔で聞く一同。
浅田「ここまではセットや屋外でのロケが多かったから、上手く誤魔化せて来たけど、今日の撮影は、日常の家具や道具とケロロとの絡みが中心になります」
ようやく事態に気が付き、息を呑む一同。
浅田「もうみんな気が付いたと思うけど、俺たちはケロロと日向家の家具や道具との対比について、何も対策が出来てないんです」
恵子「その通りだ。みんなすまねえ、こんな大事なことに今まで気付かなくて」
国松「そんな、監督のせいじゃないですよ」
日垣「そっすよ。今からひとつひとつ考えて行きましょうよ」
恵子「…だな。よし、とりあえずいろいろ試してみるか」
神田家の居間に来た現視研の面々。
神田「ケロロって、アニメでも掃除してるのって、大体ここか廊下か、あるいはトイレか風呂場よね」
沢田「ここだと普通、掃除機使ってたわね。シャアザクみたいな、羽根飾りの付いたやつ」
日垣「しまった〜!それは作ってなかったな」
荻上「いや、作っててもダメでしょ」
日垣「と言うと?」
荻上「ケロロって掃除機使う時、持つとこを肩にかつぐようにして持つじゃない。普通の掃除機でそれやったら短過ぎるし、かと言ってかつげるサイズのじゃ…」
日垣「周囲の家具に比べて、でか過ぎますね。ケロロも掃除機も」
恵子「しゃあねえな。家ん中の掃除は、ほうきか雑巾持たせて誤魔化そう。あと姉さん、ケロロに着替えといて。ケロロ並べてみねえと、感じが分かんねえから」
荻上「分かりました。神田さん、お部屋貸して」
ケロロと化した荻上会長を連れて、現視研の一行は神田宅内を巡り歩いた。
ついでに神田は、荻上会長に更衣室として自室を提供した際に、私物の原寸大ケロロ軍曹のフィギュアを持って来た。
荻上ケロロとの大きさの比較用だ。
恵子は各部屋で、ケロロに様々なポーズを命じ、ひとつひとつ確認して行く。
傍らでは記録係の神田が、恵子の指示に従ってメモする。
「トイレはケロロ入ったら、かなり狭そうだな。ここはボツだな」
「風呂場もダメだな。本物のケロロって、ほんと小さいんだな」
「流し使う時ってケロロ、踏み台使ってたよな。アップにして足元誤魔化すか」
「洗濯機もアップだな」
「廊下なら周りに物ねえから、何とかなりそうだな」
ひと回りしたところで、荻上会長の休憩も兼ねて、恵子の考えタイムになった。
しばらく神田にメモさせたノートを見ながら、あれこれブツブツ言いながら1人で考えていた恵子だったが、やがて口を開いた。
「聞いてくれ。すまんけどみんな、今日は多分ケロロが家事やってるとこだけになりそうだわ」
浅田「やっぱりそうですか」
岸野「まあ、しゃあないですよ」
荻上「とにかくひとつひとつ試してみて、画的に良さそうなの選んでつなぐしか無さそうね」
恵子「そゆこと。んな訳で、すまねえけどニャー子さん、アンジェラ、スー、有吉、千里、それに大野さん、多分今日は出番無いから」
大野「ま、しょうがないですね」
他のみんなも同意する。
恵子「そん代わり姉さん、今日は頑張ってもらうかんね」
荻上「分かってますよ」
再びカラオケボックス。
有吉「で、結局のとこ、今日ってケロロの家事シーンしか撮ってないんだよな」
神田「そう、シーンbナ言うと、6-Aだけ」
スー「隊長出ずっぱりっでありましたなあ」
沢田「スーちゃんいつの間にか、会長のこと隊長って呼ぶようになってない?」
国松「役になり切ってるのね。クルルはケロロのこと、隊長って呼ぶし」
沢田「じゃあ私も隊長殿って呼ぼうかな。私ドロロだし」
国松「私どうしよう。ギロロってケロロ呼び捨てだし」
アンジェラ「てゆーか芸人根性?」
浅田「何か話の主旨から外れて来てないか?」
結局10日目の撮影は、ケロロの家事のシーンの撮影に終始した。
ケロロと家財道具との大きさの差を誤魔化す為に、アップが多用されることになったので、撮られた画は次の通りであった。
・流し台で洗い物をするケロロ 背後から上半身のアップ
・流し台で洗い物をするケロロ 正面からのアップ
・洗濯機で洗濯をするケロロ 背後から上半身のアップ
・洗濯機で洗濯をするケロロ 正面から上半身のアップ
・庭で洗濯物を干すケロロ 背後から上半身のアップ
・庭で洗濯物を干すケロロ 正面から上半身のアップ
・ほうきで庭掃除をするケロロ
・廊下で拭き掃除をするケロロ
巴「それにしても、今日はカメラの人は大変だったわね」
豪田「そうそう。洗濯機動かして、壁と洗濯機の間に入ったり、庭に回って、窓の外から流し台の前のケロロ撮ったりで」
岸野「それ言い出したら、照明の君らも大変だったじゃない。狭くて人間入り切れなくて、腕目いっぱい伸ばしてライト当てたり、物干し竿にライトくくり付けてライト当てたりで」
台場「まあ確かに、傍から見てても狭そうだったわよね。台所と洗濯機の正面からのアップなんて、カメラマン4人1度に入れなかったから、結局2人ずつ交代で入ったし」
伊藤「僕も目いっぱい腕伸ばして、カチンコだけカメラの前に入れてた状態でしたニャー」
沢田「録音も、後ろから録るしか無かったし」
国松「でも1番大変だったのは、監督だったと思うわ」
浅田「やっぱり?」
国松「そりゃそうでしょ。あちこちアングル変えて、何回もチェックしてたし」
豪田「そうそう、あの大雑把な人が、凄い細かいチェックしてたもんね」
恵子が細かくチェックしていたのは、ケロロと家財道具との位置関係であった。
本来通常の人間の3分の1ほどの大きさしかないケロロに対し、現視研の撮影用の着ぐるみケロロは、人間と比べてむしろ大きい。
今までの撮影では、セットか外での撮影が多かった為、人間との位置関係とカメラアングルだけを考えていればよかったが、家の中だと着ぐるみの大きさが目立ってしまう。
そこでなるべくアップ中心にしたのだが、それだけでは画的に単調になってしまうので、庭と廊下の掃除のシーンでは、ケロロの全身がフレームに入るようにした。
だがそれとて、なるべく家財道具ともろに並ばないように立ち位置を工夫し、廊下の床掃除の際にはケロロをしゃがませ、徹底的にケロロが小さく見えるように注意したのだ。
巴「そん代わり今日の撮影、結局ケロロの家事だけで終了だったわね」
台場「しゃあないわよ。恵子監督も、何故か早目に撮影終わらせちゃったし」
巴「まあおかげで、こうして飲み会やれる時間が出来た訳だけど」
浅田「そう言えば監督、今日撮影した分持って帰ってたな。家で今日撮った分見るからって」
国松「監督やる気満々ね」
有吉「何か今日の撮影は、凄いことになりそうだね。そう言えば神田さん、今日もお邪魔して大丈夫なの?」
神田「昨日同様、誰もいないから大丈夫よ。パパは出張だし、お兄ちゃんは友だちの家に泊まり込んでるし、ママも今日もイベントだから、夕方まで帰らないし…あっ!」
突如大声を出した神田に注目する一同。
豪田「どしたのミッチー?」
神田「今何時?」
各々腕時計等を見た一同、やがて揃って声を上げた。
「あっ!」
スー「あと数分で、今日の日の出の時間であります!」
こうして現視研1年生たちは、徹夜明けで11日目の撮影に臨む破目になった。
撮影開始から11日目の朝、現視研の一行は再び神田宅に集合した。
「おはよう…みんな、どうしたの?」
明らかに寝不足(て言うか徹夜明け)の顔付きの1年生たちを見て、尋ねる荻上会長。
朽木「そう言えばみんな、今日は顔色が悪いのう」
大野「そうですね」
有吉「いっ、いえちょっと昨夜、終わってから1年生だけでミーティングやってて…」
荻上「神田さん、目薬ある?」
神田「多分救急箱にあると思いますけど」
荻上「悪いけど出してあげて。今日出番なのに有吉君もアンジェラも、目が充血してるし」
神田「分かりました」
有吉「すんません」
アンジェラ「てゆーか感謝感激?」
荻上「あとのみんなは大丈夫?」
伊藤「多分大丈夫ですが…(周囲を見渡し)あれっ、監督まだ来てないんですかニャー?」
荻上「(周囲を見渡し)そう言えば、まだ来てないわね」
その時玄関の扉が開き、恵子がやって来た。
「わりい、遅くなって」
「わっ!」
恵子の顔を見て、思わず声を上げる一同。
恵子もまた、明らかに寝不足の顔をしていた。
肌がかさつき、目の周囲にはパンダのように濃い隈が出来ていた。
眠いのに無理矢理目を開いてるような感じで、思い切り目に力が入っているので、いつもは垂れ目気味の目が少し吊り上がって、不機嫌そうな目付きになっていた。
荻上会長とその上の世代の2人は、マジ切れした時の笹原に似てるなと思ったが、恵子があまりにも不機嫌そうな顔になっていたので、さすがにそれは口に出来なかった。
国松「監督、どうしたんですか?」
恵子「いや昨日帰ってからさあ、昨日撮った分のビデオ見ながらあれこれ考えてたら、朝になっちゃってさ」
国松「監督も寝てないんですか?」
恵子「監督もって、お前らも寝てねえのか?」
日垣「まあ、ちょっといろいろありまして…」
恵子「(目が吊り上がったままニヤリと笑い)何だそういうことか。若いなお前ら。ひと晩中頑張ってたのか」
日垣「まあ頑張ったというか、気が付いたら朝になってまして」
恵子「(ニヤニヤしながら日垣の胸元を肘で小突き)何しれっとした顔で言ってんだよ、このスケベ」
日垣「はっ?何の話ですか?」
恵子「あれっ?何だお前、昨夜千里とやりまくったんじゃないのか?」
ブッとなる一同。
国松・日垣「(赤面滝汗で)違います!」
事情を説明する国松。
恵子「何だそういうことか…」
再び不機嫌な顔に戻る恵子。
本当に不機嫌な訳ではなく、顔面に力を入れてないと寝てしまいそうな状態らしい。
結局のところ、今日の撮影に際してちゃんと寝ているのは、荻上会長、大野さん、「やぶへび」の3人、それにクッチーだけであった。
(と言っても今日の撮影に、クッチーの出番は無いが)
全体の3分の2以上に当たる、あとの13人の1年生と監督の恵子は、徹夜明けの最悪のコンディションで、11日目の撮影に突入した。
その行く手には、冥府魔道が待つことも知らずに。
本日はこれまでです。
次回より新章突入です。
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もうじき終わりですんで、よろしくお願いします。
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ではまた。
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あ
>「30人いる!」
GJ!ひさしぶりに時をおかず読めたw
神田パパ!俺もあの頃はオタクが認知(っつうかまあ許容)される時代が
来るなんて思ってなかったよ神田パパ!俺も妻子ができた今ならあなたと
いい酒が飲めると思うよ神田パパあっ!
楽しく読ませていただいてます。黒べえネタもパオパオがドラえもんに出演
したんでちょうど思い出してたとこでした。ウラウラベッカンコナツカシス
新章も楽しみにしとりますー。
>>521 久々の感想ありがとうございました。
パオパオが何故ドラえもんに出てたのかは謎ですが、これがきっかけでジャングル黒べえがクローズアップされることを祈りたいものです。
肝付兼太さんの、数少ない主役作品ですし。
さて次回ですが、それはひとえに運営さん次第です。
そう、またアクセス規制に遭ってしまいましたので。
(このレスは、レス代行スレ経由でお送りしています)
ではまた、週末には規制解除されることを祈りつつ。
てすと
斑目「スーちゃんがアイドルのオーディションに?」
荻上「この間、池袋に一緒に行った時にスカウトされて、スーちゃんが月島きらりの物真似やったら凄くウケちゃって、出るように勧められたんです」
斑目「凄いねスーちゃん」
スー「イヤア、ソレホドデモ」
荻上「次の日曜日に、テレビ放送されるそうですよ、オーディション」
斑目「そりゃまた凄い、頑張れよスーちゃん」
数日後。
斑目「放送見たけど、スーちゃん出なかったね」
荻上「スーちゃんの出たとこ、丸ごとカットされちゃったんです」
斑目「そりゃまたどうして?」
荻上「スーちゃん『バラライカ』歌ったんですけど…」
斑目「ああ、『きらレボ』の主題歌ね。それで?」
荻上「それを替え歌でやっちゃって…」
スー「デモ、凄クうけタデアリマスヨ」
荻上「バカウケしてたのは一部だけじゃないの!ほとんどのお客さんは固まってたわよ!」
斑目「あの、どんな替え歌を?」
スーはラジカセのスイッチを入れ、カラオケに合わせ、振り付け有りで歌い始めた。
「うっ!ほっ!ヤラナイカ!うっほうっほうっほうっほうっ!ほっ!ヤラナイカ!〜♪」
斑目「ぶっ!」
荻上「(ラジカセを止め)やめなさい!」
ある日の夕方、帰ってテレビを点けてみると「きらりんレボリューション」の最終回がやっていた。
ふと思い立ち、テレ東の実況スレに行ってみた。
するとそこには、劇中で「バラライカ」が流れている辺りで、「やらないか」「うっほ」の文字と、例のAAが溢れ返っていた。
HOSHU
ワロタ
放送禁止ワロス
ちなみに呼び方は「スーちゃん」でなく「スージー」でいいのではなかろか?
本筋と関係ない部分の突っ込みすまん。
ごめんなさい。
またあちこちいじって、収拾付かなくなっちゃいました。
また来週来ます。
ではまた、アクセス規制が無いことを祈りつつ。
残り80KBか
そうだね
絶チルの元ブラックファントムのオタク3人、現視研にぜひとも欲しい人材だな。
特にパティは、スーの後を継げる器だ。
ブクロとアキバは私が守る!
>>532 そんな訳で書いてみた。
荻上さんが久々に部室に来てみると、また見知らぬ顔が増えていた。
今回は前回と違い、普通の人間ではあるが、またもや外人であった。
スー「彼女ハ新会員ノぱてぃ・くるーデアリマス!」
無言で荻上さんに会釈するパティ。
金髪のショートカットで、なかなかの美少女だが、スーのようなロリロリ感は無く、クールビューティーという言葉が似合う。
荻上「この間の毛呂山君は?」
スー「彼ハ聴講生ナノデ、週ニ1回ダケ来ルノデアリマス」
荻上「彼、社会人なの?」
スー「軍曹ノ仕事ガ忙シイソウデアリマス」
荻上「何なの、軍曹の仕事って?」
スー「ソレヨリ彼女ノ特技ヲ披露スルデアリマス。ぱてぃ、例ノヤツヲ」
パティが頷いたその瞬間、全身が粉状に拡散した。
荻上「きいいいいいいいいいいやあああああああああああああ!!!!」
スー「大丈夫、タダノ超能力デアリマス!ぱてぃ、モウイイゾ」
スーの呼びかけに呼応して、パティは元の姿に戻った。
スー「毛呂山トぱてぃ、コレデアトハ未来人ガ揃エバ完璧デアリマス!」
荻上「あんた何をコンプリートするつもりなの!?『と言うことは、やっぱり毛呂山君って…』」
目指セこんぷりーと!
こんちわ。
今日は9スレ参ります。
では。
第13章 笹原恵子の苦悩
現視研の学祭出品用の映画のクランクインから、およそ半月が経過した。
この間現視研は、屋内で撮影するシーンの大半を撮影し終えた。
残る主なシーンは、屋外で撮影する戦闘シーンと、ミニチュアを使用しての特撮シーンだ。
それらの準備の為、現視研は数日の撮休に入った。
その日もまた斑目は、部室にやって来た。
「ういーっす!おやっ珍しい面子じゃねえか」
部室に居たのは、荻上会長、スー、アンジェラ、神田、国松、日垣といった現役陣に加え、大野さん、田中、久我山、高坂といった面々であった。
久我山「そ、そこの取引先の病院に行った帰りに、ちょ、ちょっと寄り道をね」
田中「俺は大野さんと、学祭とは別口のイベント用のコスプレの打ち合わせさ」
高坂「僕は1年生の子たちに、モニターをやってもらおうと思って、女の子向けの新作のゲーム持って来たんですけど…」
神田「今日は撮休なんで、部員はこれだけなんです。次から屋外の撮影中心になるんで、いろいろ準備がありますし。私も今日は、スケジュールの進捗表を直しに来ただけです」
部室には、神田がホワイトボードとマグネットシートで作成した、撮影の進捗表が置かれているのだ。
国松「私と日垣君は、この後の特撮シーンの打ち合わせの為に来ました」
スー「押忍!自分はセンセイ荻上のお手伝いをすべく、修行に励んでいる次第であります」
スーの前には、かつて荻上会長が作った同人誌と、スケッチブックが置かれていた。
どうやら同人誌の絵を見本に、模写の練習をやっているようだ。
なかなか上手い。
アンジェラ「私はスーの付き添いあるね。てゆーか同伴出勤?」
ブッとなる一同。
斑目「その四字熟語の使い方、微妙に間違ってるよ」
大野「それ以前にアンジェラ、どこで覚えたのよ、そんな特殊な日本語?」
荻上「そして私は、もうすぐ連載始まる話の、ネームを書いている次第です」
荻上会長の前には、ノートパソコンが置かれていた。
斑目「ここじゃ落ち着かないんじゃないの?」
荻上「最近じゃ多少うるさくないと、却って落ち着かないんですよ。それにこの話に限っては、部室の方がいいんです。OBの方々からいろいろお話聞けますから」
田中「そう言えば荻上さんの新連載の話、確かうちの話なんだよね」
荻上「ええ、アキバ系研究会の略って意味で『あきばけん』とタイトル付けました。私のここでの体験談を基にした、セミドキュメンタリーみたいな話です」
斑目「なるほど、ここならネタの宝庫だな。特に今日は、これだけOB居るんだから、取材し放題だし」
来ていない会員たちの今日の予定は、神田によれば次の通りであった。
豪田、巴、沢田、有吉、藪崎さん、加藤さん、恵子は自宅にて休息。
伊藤とニャー子はデート。
浅田と岸野はロケ予定地の確認。
台場はスポンサー探し。
そしてクッチーは警察官採用試験の一次試験とのことだった。
斑目「朽木君、本当に警官になるんだなあ」
荻上「朽木先輩がお巡りさんとは、世も末ですね」
久我山「だっ、大丈夫かなあ、朽木君?」
田中「大丈夫なんじゃないの。案外彼、体育会系体質だし」
高坂「それにああ見えても、根は真面目な善人ですし、意外と正義感強いですしね」
大野「でも彼と一緒に働くお巡りさんは、気の毒ですけどね」
クッチーをフォローしつつも、つい納得してしまう一同。
このおよそ20年後、まさか彼らの子供たち(斑目とスーは本人だが)が警官になり、クッチーの部下になる破目になるとは、神ならぬ彼らには知る由も無かった。
(20年後の話については、『無軌道警察ハグレイバー』参照)
斑目「それにしても、部室に人がいるのって久しぶりだなあ。何かここ数日、ずっと1人で飯食ってたような気が…」
荻上「ここ1週間、ずっと神田さんの家で撮影してましたから」
斑目「そりゃ大変だったね。あれっ?」
斑目は、部室の片隅に置かれた「神田ファミリーBOX」と書かれた段ボール箱に注目した。
斑目「これは?」
荻上「神田さんのご家族から借りて来たビデオですよ」
神田「すんません、家の者がご迷惑かけまして。それ返却は急ぎませんから、みんなでゆっくり見て下さい」
神田は斑目に事情を説明した。
神田の父と母と兄は古参のオタクであり、70〜80年代をアニメの黄金期とする、70〜80年代原理主義者であった。
彼らは若いオタと会う機会があると、その時代のアニメのビデオを出して来て、見るように薦めることが半ば習性と化していた。
結局のところ1週間撮影の為に神田宅に通った現視研の面々は、行くたびに父母兄の誰かと出くわし、そのたびに新たにビデオを半ば強制的に貸し付けられた。
そしてそれは、とうとう段ボール箱ひと箱分に達した。
斑目「ちょっと見ていい?」
神田「どうぞ」
斑目「(箱を開いて)ほほう、こりゃ凄いな。ボトムズにゴーショーグンにレイズナーか。
70年代のも充実してるな。コンバトラーVにザンボット3に…あれっ?」
急に硬直する斑目。
神田「どうしたんですか?」
斑目「(顔面蒼白滝汗で)何で『キャンディ・キャンディ』なんてあるの?」
神田「それは確か、ママがママのお友だちから借りて来たのをダビングしたやつですけど、何か問題でも?」
斑目「あの作品、原作者と漫画家が著作権で揉めて裁判やってるから、漫画単行本の復刻も、アニメの商品化も再放送も、今のとこ不可能なはずなんだけど…」
(注)この問題については、「封印作品の謎2」(太田出版、安藤健二著)が詳しい。
久我山「そっそれにしても、1週間神田さんちに通い詰めとは、随分時間かかったね」
田中「あっそれ俺も思った。脚本読んだけど、今までの進み方からすれば、3〜4日もあれば撮れそうな気がするけど」
大野「恵子さんが凄いこだわりを見せたからですよ」
国松「そうなんですよ!実際この1週間って、ほとんど1日ワンシーンのペースでしか進まなかったですし」
OB一同「1日ワンシーン?!」
荻上「本当にそんなもんでしたよ、進み方」
アンジェラ「てゆーか牛歩戦術?」
高坂「でもどうして?」
神田「ひとつには、撮影2日目以降うちの家、毎日私以外の家族が必ず誰か居たってのがあります。そのせいで撮影出来る時間が限られちゃって…」
スー「押忍!それはあまり関係無いと思うであります!」
日垣「そうだよ。撮影が延びた最大の原因は、NG連発のせいだし」
斑目「そんなに多かったの、NG?」
神田「多かったと言うか、撮影時間の9割ぐらいがNGでしたね」
日垣「それも明らかなNGならともかく、傍で見てる分には、どう悪いのかよく分からない、微妙なNGばっかりでしたけどね」
斑目「そうなの?」
荻上「ええ、私の場合で言えば、冬樹を出迎えるシーンだけで12回ぐらい、タイムカプセルを写真撮影するシーンでも、10回ぐらいNGにされましたよ」
久我山「すっ凄いね…」
高坂「恵子ちゃん真面目にやってるみたいだね。咲ちゃんも心配してたけど、これなら安心だね」
田中「いや、それはそれで心配な気が…」
神田家に通い詰めた1週間、現視研一行は恵子のNG連発の洗礼を受け続けた。
例えばシーン5の、秋ママがケロロを正式に家政婦に任命するシーン。
実際には大きさのあまり変わらない、ケロロと秋ママを同じフレームに入れる訳に行かないので、細かくカット割りしての撮影となった。
つまりこういう感じだ。
@何やら喋っている秋ママのアップ
A敬礼するケロロのアップ
B拍手する冬樹と夏美のアップ
C表彰状みたいな感じの辞令を持った、秋ママのアップ
D辞令を受け渡しする、秋ママの手とケロロの手のアップ
E家政婦任命の辞令をもらい、得意そうなケロロのアップ
この全てのカットで、恵子はもれなくNG判定を出した。
例えば@は、ただ単に秋ママ役の大野さんが、にこやかな顔で喋るだけの芝居なのだが、
8回NGになった。
Dに至っては、秋ママ役の大野さんの手と、ケロロ役の荻上会長の手とが辞令の受け渡しをするだけの芝居に、14回ものNGとなった。
問題は恵子がそれぞれのNGについて、理由を明確にしない、いや出来ないことであった。
理由を訊かれても、恵子は曖昧にこう答えるだけであった。
「いや、何て言うか、上手く言えないんだけど、何か違うんだ。すまね、もう1回だけお願い」
普段どちらかと言えば高飛車な物言いの多い恵子に、ここまで低姿勢に出られると、誰も何も言い返せない。
誰も文句を言うことも無く、恵子のOKが出るまで、延々とリテイクが繰り返された。
ただ、単に同じ様に撮影を繰り返すだけでは、フィルムの無駄になるだけなので、NGが5回以上繰り返された時には、撮影を中断してミーティングが行なわれた。
具体的にどういう画にすれば恵子が納得するかを話し合う為だ。
そしてミーティングは、ほぼ全シーンに対して行なわれた。
「クリエーター系の人って、一生に何度か何かに取り付かれたように、制作に没頭する時期があるんですよね」
唐突に口を開いた国松に、意図を掴みかねて怪訝な顔をする一同。
国松「例えば脚本家の上原正三先生は、70年代から80年代にかけて、爆発的な数のアニメや特撮の脚本を執筆されました」
斑目「特撮はあんまし知らんけど、アニメではゲッターロボとかアルベガスとかの脚本書いてる人だな」
国松「(ニコリと笑い)さすがシゲさん。で、その上原先生なんですけど、後年のインタビューによれば、当時書いた作品について、あまり覚えてらっしゃらないんですよね」
荻上「それはどうして?」
国松「先ず執筆数が膨大過ぎるってのがあります。それに30分番組の脚本は30分で書く、早書きの名人でしたし」
久我山「そっそれは凄いね」
(注)この当時の脚本家では、他に佐々木守氏や長坂秀佳氏も同様の逸話がある。
国松「まあその代わり、ネタの使い回しも多いですし、戦隊や宇宙刑事だと、完全に話のパターンが出来ていて、ネタさえ入れれば後はルーティンワークでしたし」
斑目「それでもかなり凄いんじゃないの?」
国松「そりゃ凄いですよ。で、こっからが本題なんですが、どうも上原先生、執筆中は何かに取り付かれたみたいな感じで、まるでイタコ状態だったみたいなんです」
荻上「つまり創作の神様みたいなのが降臨して、勝手に書いてるような感じと?」
国松「そんな感じだったらしいです。そして同様の例としては、やはり東條昭平監督は外せないでしょう」
神田「千里、また『怪獣使いと少年』の話?」
田中「またって?」
神田「千里って何かあると『怪獣使いと少年』持ち出して来るんですよ」
大野「まあそれだけ好きってことですね」
「怪獣使いと少年」とは、「帰ってきたウルトラマン」のエピソードである。
過去何度かいろんなSSで出て来た話なので、ここでは詳しく触れないが、興味のある方は、ググってみて欲しい。
国松「今回だけは必要なんですよ。あの話にまつわるエピソードが」
神田「どう必要なのよ?」
国松「前にも言ったように、あの話は脚本の段階ではそれほど酷くないし、陰惨な描写の大半は、東條監督が変更して追加したシーンばかりです」
神田「でっ?」
国松「私、大学入ってから、この話について文献いろいろ調べたり、パソコンでいろいろ検索したりしたんです」
神田「?」
国松「けど、東條監督の所業についての資料はたくさんあるのに、何故監督がそこまでやったかについては、どこを見ても分かりませんでした」
斑目「円谷プロの黒歴史って訳か?」
国松「と言うより、こっからは私の推測なんですけど、東條監督自身にも、何故あそこまでやったのか説明出来ないんじゃないかと思うんです」
荻上「どゆこと?」
国松「つまり監督にも、創作の神様か何か降臨して、自分でもよく分からない何かに引きずられるように、ああいう作品を作っちゃったんじゃないかな、と思うんです」
日垣「確かに、俺も見たことあるけど、あの話って何か神がかりな雰囲気はあるね」
国松「まあそうとでも考えないと、説明出来ないんです。あの話の時だけ、東條監督があそこまでの暴走した理由が」
荻上「確かに撮影始まってからの恵子さんって、何かに取り付かれたみたいになってるもんね。まあ映画10回鑑賞会の特訓の影響もあるんだろうけど」
「うーん、そこまで大袈裟な事じゃなくて、単に恵子監督、作りながら学んで行くタイプなんじゃないですか?」
国松の説に、神田は異を唱えた。
国松「と言うと?」
神田「私はどっちかと言うと恵子監督って、よしりんに近い感じじゃないかと思うんです」
荻上「よしりんって、小林よしのりのこと?」
神田「そうです。ここでちょっと質問。『東大一直線』を最初から読んだことある人って、こん中にいらっしゃいますか?」
手を上げたのは、スーだけであった。
久我山「おっ俺は『東大快進撃』になってからの分なら、読んだことあるけど…」
斑目「俺は東大(この場合は、主人公の東大通のこと)が高校に入った頃ぐらいからなら、読んだことあるけど」
神田「となると、『東大一直線』の最初の最初の方を読んだ人って、スーちゃん以外には、いらっしゃらないんですね」
荻上「最初の最初に、何かあるの?」
神田はニヤリと笑うと、部室のパソコン(部室が移転した時に新たに設置されたのだ)を操作して、検索してある画面を出した。
神田「まあ百聞は一見にしかず。これを見て下さい」
どれどれと、パソコンの前に集まった一同、驚きの声を上げた。
「えええええええええええええええええ?!」
パソコンのディスプレイには、あまりにも下手くそな絵の漫画が映っていた。
荻上「あの神田さん、これって?」
神田「これは『東大一直線』の第1話の絵です」
日垣「なっ、何たる下手な絵…」
斑目「いやこれ、下手とかそういう次元の問題じゃないぞ…」
神田「でしょ?ここに居る絵描き属性のある方はもちろん、下手すれば絵描き属性の無い方でも勝てそうなぐらい下手でしょ?」
田中「これが商業誌に載ってたの?」
神田「載ってたんですよ、これがまた」
久我山「すっ凄い時代だね…」
神田「昔よしりんの絵のことを『インクのしみ』って酷評した人が居ましたけど、この絵を見た後だと、インクのしみでも褒め過ぎって気がしますね」
荻上「ああそれ聞いたことあるわね。確か『おぼっちゃまくん』で小学館漫画賞取った時に、作品が下品だったから賞をあげたくない審査員に言われたんだっけ?」
神田「そうです。まあもっとも東大の頃のよしりんの場合、絵が下手以前に、漫画の描き方全然知らなかったらしいですけどね」
斑目「仮にもプロの漫画家が?」
神田「ええ。例えばよしりん、この当時はスクリーントーンの存在を知らなかったらしいんです」
荻上「じゃあどうやってたの?」
神田「前にプロの漫画家の生原稿見たのが災いして、アシ用に色指定してあるのを勘違いして、色指定だけして原稿出してたそうです」
固まる一同。
久我山「なっ、何で?」
神田「そうしておけば、印刷する時に勝手に色が着くと、よしりんが思い込んでたらしいですよ」
荻上「それじゃあ原稿は…」
神田「編集部の担当さんが貼ってたらしいですよ、トーン。で、ある日とうとう担当さんが泣きついて、それでスクリーントーンというものの存在を知ったそうです、よしりん」
大野「何と言うか、豪快な時代ですね」
またレスではなくスレと書いてしまった…
今回の話はまだ続きがありますので、オチらしいオチも無く、半ばでございます状態での引きとなりました。
次回、現視研における恵子論に、さらにビッグネームが挙がります。
ではまた。
あと65KBか
そだね
うむ
さて
どしたものか
あ
日曜のお昼のひと時、いかがお過ごしですか。
今日は真っ昼間から参ります。
例によって9レスですが、それでも連投規制にかかりますので、間に休憩挟んで、ゆっくり投下します。
では。
「みんな案外ケイコの評価低いあるね」
今度はアンジェラが口を開いた。
荻上「と言うと?」
アンジェラ「私はケイコのリテイク(NG)連発で、キューブリック監督の演出を思い出したあるね」
国松「キューブリックって、スタンリー・キューブリックのこと?」
アンジェラ「イエス、そうある。キューブリックもリテイクの連発で有名な監督だったあるね」
スー「押忍!それもどうということの無い、ただ廊下を歩くだけのシーンで、十数回リテイクを繰り返していた逸話がある人であります!」
ウルウルする国松。
「恵子監督って、キューブリックに匹敵する、こだわりの人だったんですね!」
アンジェラ「うーん、ちょっと違うあるね」
日垣「と言うと?」
アンジェラ「もちろんクリエーターとしてのこだわりもあってのことだろうけど、彼がリテイクを繰り返したのには、ちょっと複雑な事情があるあるね」
大野「どんな事情があるの?」
アンジェラ「キューブリックがカメラマン出身の監督ということあるよ」
一同「???」
アンジェラ「つまりキューブリックには、こういう映像が欲しいというビジョンはあっても、どういう芝居をすればいいかという、引き出しが無いということあるよ」
スー「普通の監督は、役者に対してこういう芝居をして欲しいと、具体的に説明したり、場合によっては演じて見せたり出来る訳であります!」
国松「でもキューブリックには、それが出来ない…」
アンジェラ「そう、だから彼は、とりあえず何度もリテイクを繰り返すあるよ。で、その内に役者が飽きて来て、アドリブをやり出す。そこで『それだ!』となる訳あるよ」
固まる一同。
斑目「何と言うか、意外といい加減なんだね、映画の演出って」
国松「でも確かに、ある意味恵子監督もそうですよね。頭の中に理想の映像があるらしいのに、それを上手く表現出来ずにリテイク繰り返してるみたいだし」
久我山「なっ何か、えっえらい話が大きくなってるね」
斑目「上原昭三に東條昭平に小林よしのりにキューブリックか。アマチュアの学生映画にしては、凄いメンバーが比較対象になったもんだな」
高坂「凄いね恵子ちゃん。しばらく会わない間に、随分成長したんだね」
大野「でも確かに頑張ってますよ、恵子さん」
荻上「ただ、あんまし寝てないみたいなのが、ちょっと心配ですけど」
斑目「そうなの?」
荻上「撮影始まってから、たびたび笹原さんの部屋に泊まってるんですけど、笹原さんの話だと、夜遅くまでビデオ見てるらしいんですよ。それもマジ顔で」
国松「やっぱり寝てらっしゃらないんですね、監督」
斑目「やっぱりって?」
国松「毎日段々濃くなってるんですよ、目の下の隈」
斑目「マジ?」
大野「確かに濃くなってますね。最近は目が悪くなって眼鏡かけてるから、あまり目立たないですけど」
田中「大丈夫かい、恵子ちゃん」
アンジェラ「その代わりケイコ、食欲は前より旺盛あるよ。睡眠不足は、ある程度までは食べることで補えるから、大丈夫あるよ」
荻上「確かに恵子さん、前に比べて食べるようになったわね。何しろ豪田さんや巴さんやアンジェラや日垣君と、あんまし変わらない量食べてるし」
一瞬固まるOB連。
斑目「体でかい豪田さんや日垣君はともかく、巴さんやアンジェラもそんなに食べるの?」
アメリカ人にしてはアンジェラは、さほど大柄でも無いし横幅も無い。
怪力の持ち主にしては、見た目の筋肉はさほどぶ厚くない。
それに露出しているへその周辺を見る限り、贅肉のかけらも無い。
巴もまた、体形はアンジェラに近かった。
アンジェラ「私とマリアの場合は、消費カロリーの問題あるよ。日々食べた分消費しているから、プラマイゼロあるね」
斑目「そう言えば巴さん、よくこの近所で走ってるのを見かけるな。いやはや、体育会系の人って凄いね」
「ちゅーす」
そこへ話題の人物、恵子が入って来た。
挨拶を返しつつも、慄然とする一同。
恵子の足取りが何やらおぼつかず、幽霊の様にフラフラと進んでいるからだ。
恵子「あれっ、何か今日賑やかじゃねえか…」
高坂と目が合った恵子、何とも言えぬ複雑な表情で固まり、しばし見つめる。
高坂が微笑み返すと、恵子は妙にぎこちない不自然な微笑みを返した。
荻上「大丈夫?」
恵子「だいじょぶだいじょぶ」
言いながら恵子、ビデオラックに向かう。
しばらくビデオラックを見つめていたが、やがて数本のテープをチョイスした。
かつてはアニメのビデオやDVDのみだった現視研のライブラリーも、今では特撮や一般のドラマや映画も、数多く抱えている。
その多くは、台場がスポンサー集めで駅前のパチンコ屋と契約した際に、スポンサー料の代わりに現物でもらって来たビデオテープだった。
そのパチンコ屋は、バブルの頃はレンタルビデオ屋とテレクラとコンビニを経営していたのだが、バブル崩壊後並んでいたそれらをまとめて畳んで、パチンコ屋に改装したのだ。
台場がもらって来たのは、その際に処分し損ねて倉庫に入っていた品であった。
最初はけっこうな金額になりそうだと、ほくそ笑んでいた台場だったが、DVDが普及した2006年には、ビデオテープはほとんど二束三文でしか引き取ってもらえなかった。
結局テープを運ぶ交通費の方が高く付きそうな上、国松やスーが繰り返し見たいと主張したので、部室のライブラリーに追加することになったのだ。
恵子がチョイスしたのは、その古いビデオテープの何本かであった。
「ほんじゃお邪魔さん」
お目当てのテープを手に、恵子は部室を後にした。
恵子が立ち去った後の、異様な雰囲気を変える為、荻上会長は話題を変えた。
「そう言えば国松さん、今日は特撮のことで来たって言ってたわね」
国松「とりあえず準備中の特撮シーンが三つあって、それをどうするか日垣君と相談する為に出て来たんですけど…」
彼女の説明によれば、必要な特撮シーンは次の通りであった。
・ベム1号が巨大化するイメージ
・クルル時空に吸い込まれるベム1号
・ベム1号とアル1号爆発
荻上「で、状況はどうなの?」
国松「巨大化のシーンは、今担当者が各自ミニチュア制作中です」
日垣「巨大化と言ってもイメージシーンなので、本格的な特撮のように、きれいに壊す為の仕掛けは要りませんから、ミニチュアの数が揃い次第撮影出来ますよ」
荻上「担当は2人と、あと誰だっけ?」
国松「ニャー子さんにも頼んでます。あと蛇衣子も大道具の方が手が空いたんで、手伝ってもらってます」
ニャー子は以前に夏コミで、ハチクロの青春の塔のミニチュアを、売り場のオブジェにする為に作ったことがあった。
その細かさを見た国松が、腕を見込んで依頼したのだ。
国松「もうみんな大体8割程度は出来てるんですけど…」
国松に軽く睨まれ、肩をすくめる日垣。
「日垣君の方が遅れてるの?」
いぶかしげな口調で、田中が会話に割り込んだ。
特撮に熱心なのは国松の方だが、器用さでは日垣の方が数段上だからだ。
国松「日垣君の場合は遅れてると言うんじゃなくて、自分で仕事増やしちゃうんですよ」
荻上「どういうこと?」
国松「まあ見て下さい」
国松は自分のリュックからCD-ROMを取り出し、部室のパソコンにセットして再生する。
ディスプレイにミニチュアの町並みが映った。
斑目「ほう、よく出来てるな。まだ建物が少ないみたいだけど」
日垣「俺は主に、ミニチュアのベースになる町を作ってます」
国松「確かによく出来てるんですけど、彼の場合作り込み過ぎなんですよ。見て下さい」
国松はマウスを操作して、画面をアップに切り替えた。
呆然とする一同。
画面には恐ろしくリアルな電柱が映っていた。
大野「これ、電柱の低いとこって、こういうぶつぶつありますよね?」
高坂「そのそばの塀に、番地のプレートが貼ってあるね。えーと奥東京市…」
番地のプレートの文字は、大学の近所の地名を適当にもじったものだが、最後まで読み取れた。
国松「言っときますけど、その電柱の実物、鉛筆ぐらいの大きさですから」
一同「ええええええ?!」
国松は画面を切り替えた。
今度は交通標識が映った。
今度は普通なせいか、一同の反応は薄い。
国松「(画面を切り替え)これがその標識の裏です」
一同「ええええええ?!」
標識のプレート部分は、本物同様に鉄柱部分に2つの金具で固定されていた。
国松「(画面を切り替え)これがその標識の足下です」
一同「ええええええ?!」
標識の鉄柱部分の中腹辺りが不自然に湾曲して少し傾き、根元の地面にひびが見えた。
田中「これってもしや?」
日垣「自動車がぶつかったって設定なんです」
国松「ちなみにこの標識、実物は待ち針ぐらいの大きさです」
慄然とする一同。
日垣のミニチュアワールドの驚異は、なおも続いた。
人形をデジカメで写し、縮小コピーしたものを使って作った選挙ポスター。
葉っぱが1枚1枚作られている、銀杏の街路樹。
針状の葉が1本1本丹念に作られている、松の木。
ドライバーの顔や、ナンバープレートの数字まで作り込まれた自動車。
各部屋のベランダに、大量の布団や洗濯物が干された団地等々…
「言っておきますけど、このミニチュア使うシーンって、ほんの3秒ぐらいですから」
呆然とする一同に追い討ちをかけるように、国松は付け加えた。
田中「それにしても凝ってるね。モデラー魂全開だな」
日垣「いやあ、こういうのって、やり出すとドンドン趣味の世界にハマって行っちゃうんですよね」
田中「まあ気持ちは分かるけど…」
斑目「国松さんは、こういう細かさへのこだわりは無いの?」
国松「この場合は時間優先ですよ。早く仕上げて早く撮影したいですから」
日垣「その代わりに材料費はかかってないよ。材料の大半は、大道具や小道具の材料の残りだし」
国松「まあそれはそうだけど…」
日垣「分かったよ。じゃあ今作ってる分は、他のみんなのが出来次第終了にするからさ」
国松「うーん、作りかけたんなら、最後まで作っちゃいなさいよ」
日垣「(苦笑し)どっちなの」
「あのう、ミニチュアは急がないわよ。この後の撮影は外ばっかりだから、雨の日狙ってスケジュール入れるし」
神田が割り込んだ
国松「分かったわ。じゃあ日垣君、それ最後まで作っちゃって。でも急ぎなさいよ」
日垣「了解」
『やっぱりこの2人、いいコンビかも知れないわね』
国松と日垣のやり取りを見ていて、荻上会長は思った。
次に国松がパソコンのディスプレイに映したのは、自前のデジタルビデオカメラで、ベム1号がクルル時空に引きずり込まれるシーンを試作したものであった。
「おおおおおお!」
それを見た一同が、どよめきの声を上げたのも無理は無かった。
画面いっぱいの白い渦の中に、ベムのシルエットがゆっくりと吸い込まれて行く、不思議な映像が映っていたからだ。
神田「凄いじゃない千里!」
久我山「こっこれ、どっどうやって撮ったの?」
得意そうな笑顔を浮かべていた国松、その疑問に答えた。
「洗濯機ですよ」
一同「洗濯機?」
国松「先ず洗濯機に水を張り、その水に白の絵の具を溶かします。それから洗濯機を回し、そこへ黒く塗ったベムのフィギュアを放り込んで撮影したんです」
荻上「にしては、えらく渦の回転がゆっくりな気が…あっそうか!」
スー「高速撮影でありますな」
田中「なるほど、それで普通に再生すれば、洗濯機の渦とは思えない、ゆっくりした渦になる訳か。それにこれ、ひょっとしてモノクロで撮ってない?」
ニッコリ笑ってうなずく国松。
大野「それにしても、よくこんな方法考えましたね」
国松「実はこれ、『ウルトラQ』で使われた方法なんですけどね」
荻上「そうなんだ」
国松の説明によれば、彼女が今回使った方法は、「ウルトラQ」第27話「206便消滅す」で、旅客機が異次元空間に吸い込まれるシーンの撮影で、実際に使われた方法であった。
ちなみにモノクロで撮影したのは、特撮を嘘っぽく見せない為だったが、モノクロ作品の「ウルトラQ」に対するオマージュの意味もあった。
「で、残るはラス前の爆破シーンなんですが…」
国松は先程までの笑顔が消え、別のビデオを再生し始めた。
荻上「何か問題があるの?」
国松「まあ見て下さい」
パソコンのディスプレイに映ったのは、ベムのフィギュアであった。
通常のフィギュアに比べると全体的に太く、作りが少し雑だ。
国松「これは日垣君に作ってもらった、紙粘土製のベムです」
日垣「まあ試作用なんで、作りは雑なんですが」
斑目「いや、それでもけっこう上手いよ、これ」
国松「このフィギュアには、50本ほどの爆竹が埋め込まれています」
国松はパソコンを操作しながら言った。
「で、これの導火線に点火します」
数秒の間を置いて、ベムのフィギュアが少し膨らみ、全身が破裂したが、爆発と言うにはインパクトが弱かった。
国松「どうです?」
一同「うーん…」
一同の表情から読み取れる判定は「微妙」だった。
田中「何か爆破と言うよりは、北斗神拳でやられたみたいだな」
斑目「あっ、俺もそう思った」
国松「ですよね。何か爆破と言うには、今ひとつ迫力が出ないんですよ。かと言って、これ以上爆竹入れるのも、危険ですし」
日垣「確かに。今の火薬の量でも、1度に爆発したら手が吹っ飛ぶぐらいの威力にはなりますからね」
一同「うわあ…」
国松「いざとなったら、晴海がどっかから爆破シーンだけ借りてくれるって言ってるんですけど、なるべくなら自分で撮りたいですし…」
日垣「かと言って、これ以上の爆発させようと思ったら、爆発物取扱の免許でも無いと難しいですし…」
一同「うーむ…」
また間違えた…
1番最初の分は、「その311」ではなく「その331」です。
訂正してお詫びします。
失礼しました。
さて、最初に9レスと言いましたが、構成の都合上、今回は8レスにて終わります。
果たして現視研は、爆破シーンをどうするのか?
そんな謎を残しての引きですが、次回その答えと共に、遂に28人目のキャラが登場しますので乞うご期待。
ではまた。
449KB
449か
こんばんわ。
祝日ということもあって、少し続きを行きます。
8レスで参ります。
では。
「爆発物取扱の免許か…」
そう呟いた荻上会長、携帯電話を握って立ち上がった。
国松「会長?」
荻上「ちょっと待ってて」
そう言い残して、荻上会長は部室を出た。
数分後、意気揚々とした顔で荻上会長は戻って来た。
そして国松に告げた。
「何とかなりそうよ、爆発物取扱の免許」
国松「えっ?」
荻上「ダメ元で、今電話で訊いてみたんだけど、知り合いに持ってる人が居たのよ」
国松「本当ですか?!」
荻上「本当よ。ちょうど今近くにいらしてね、あと30分ぐらいで、こちらに見えるわ」
日垣「誰なんです、その人って?」
荻上「まあいらしてからでいいでしょう。多分みんな初対面だし」
きっかり30分後、部室にやって来たのは笹原だった。
一同「笹原(先輩)?」
国松「あの、笹原先輩って、爆弾使えるんですか?」
笹原「(苦笑)俺じゃないよ。俺は付き添いで、荻上さんご指名の方をお連れしただけだよ」
笹原は後ろを向いて、もう1人の人物を招き入れた。
その人物を見て、一同は困惑の表情で硬直した。
無理も無い。
荻上会長と笹原を除いて全員初対面な上に、その人物が異様な雰囲気を持っていたからだ。
素の部分は普通で、特別変わった特徴は無い。
中肉中背で、顔も目鼻立ちは割とイケメンだ。
だが同時に、一筋縄で行かなさそうな異様さも兼ね備えていた。
やや面長で卵形の顔の輪郭。
軽く茶髪にしている割には、短く切り揃えてベッタリと寝かせただけの髪型。
それに縁が太く本体は細身の、ウルトラアイのような眼鏡。
そして見た目の年齢は、妙な貫禄と若々しさを兼ね備えている為、20代後半ぐらいにも、30代半ばぐらいにも見えた。
笹原「みんな初対面だよね。改めて紹介するよ。こちらは俺の勤務先の鷲田社の上司の小野寺さん」
小野寺「ども、鷲田社の小野寺竜二です」
一同も挨拶を返し、各々自己紹介した。
国松「あの、笹原先輩と小野寺さんは、何でこんなすぐに来られたんですか?」
笹原「俺はたまたまC先生(笹原が担当してる漫画家で、椎応大学の学生)のとこに来てて、そこに荻上さんから電話があったんだよ」
小野寺「で、その笹原から俺の方に電話があった時、俺もたまたまこの近くに在住の漫画家の先生のとこに居たんで、すぐ合流出来た次第さ」
荻上「すいません。お仕事中わざわざ来て頂いて」
小野寺「まあ他ならぬ荻上先生からのお願いだからね。俺デイアフターの編集部にも出入りしてるし。それに1回直に見たかったし、現視研ってのを」
ここまでは割とにこやかだった小野寺、突然ハードな顔付きに豹変して切り出した。
「さてと仕事の話だけど、どこを爆破すりゃいいのかな?」
率直過ぎる質問に固まる一同を置き去りにして、小野寺は続けた。
「爆薬の方は、知り合いに頼めば格安で手に入るよ。まあ俺が得意なのは橋を落とす方だけど、このサークル棟程度の規模の建物なら、いつでも木っ端微塵に出来るし」
一同『木っ端微塵!?どういう人なんだよ、この人?橋落とすって?』
国松「あの、どうして漫画雑誌の編集者の方が、爆発物取扱の免許なんて?」
小野寺「編集者の仕事って要は雑用係だからね、ひとつでもやれることが多い方が便利なんだよ」
そう言って小野寺は自分の持っている資格を列挙した。
社労士、商業簿記、シスアド、TOEICなど、ビジネスマンっぽい資格が多い一方で、極真空手初段や大型免許など、あまり編集に関係無さそうな資格も多い。
日垣「でもそれにしても、爆発物の取扱なんて、どうやって取ったんですか?」
小野寺「学生の時にやってたバイトで必要だったんでね。あっごめん、これ以上は守秘義務があるんで、詳しくは教えられないんだ」
一同『守秘義務?』
荻上「あの爆破ってほど、大袈裟な仕事じゃなくて申し訳無いんですが…」
荻上会長は小野寺に事情を説明した。
小野寺「なるほど、8ミリ映画用の爆破か。まあそれぐらいなら、すぐ用意出来るよ」
国松「本当ですか!?」
小野寺「ああ、マイトの1本もあれば十分だし、砂糖と○○○○○○○○(自主規制)混ぜれば今すぐでも…」
言いかけて口ごもる小野寺。
一同が固まってるのを見て、まずいことを言いかけたことに気付いたからだ。
一同『砂糖と○○○○○○○○(自主規制)って…何者なんだこの人?』
失言をフォローするかのように、小野寺は話題を変えた。
「まあ、爆薬の方はどうにでもなるが、問題は場所だな。ロケはどこでやる予定なの?」
国松は地図を出して、小野寺にロケ地の場所を教えた。
「うーむ、ここらだと今じゃ爆破の許可取るのは難しそうだな」
国松「やっぱりそうですか。70年代なら、そこいらの造成地で爆破し放題だったのに…」
小野寺「まあしょうがないさ。それより場所をどうするかだな…」
しばし考え込んだ小野寺、「ちょっと失礼」とひと声かけて部室の隅に行き、携帯電話を取り出して、どこかにかけ始めた。
一同「?」
やがて電話がつながって小野寺が話し始めると、一同は引っくり返った。
小野寺が流暢な外国語で話し始めたからだ。
斑目「これ、英語じゃないよな?」
大野「ええ、英語じゃないです」
スー「これはスペイン語であります!」
一同「スペイン語?」
荻上「スーちゃんスペイン語も分かるんだ。何話してるか同時通訳出来そう?」
スー「同時は難しそうですが、やってみます」
スーは傍らに置かれたメモ用紙に、サラサラと英文を書き始めた。
いかにIQの高いスーと言えども、母国語ではない言語から、また別の母国語ではない言語に瞬時に通訳するのは、小野寺が早口で喋っているせいもあって難しいらしい。
先ずはスペイン語から母国語である英語に訳してメモし(その作業自体難しそうだが)、それを日本語に直すという作戦のようだ。
メモ用紙1枚にびっしりと英文が書かれた頃、スーは顔色を変え、ギブアップ宣言した。
「押忍!申し訳ありませんが、こんな複雑な暗号、自分には解読不能であります!」
一同「暗号?!」
スー「押忍!一種の暗号と思われます!」
国松「でも、普通に英語に訳せてない?」
スー「試しに一部日本語に直してみましょう」
スーは別のメモ用紙に、日本語の文章を書き始めた。
それを見た一同の頭上に、大きな?が浮んだ。
スーが書いた日本語の文章は、以下の通りであった。
・実はクジラの足が、アルミの鉄板でして
・ポルシェに乗った電卓は平野部に降るでしょうか?
・そうですか、扇風機は新聞紙でしたか
・タイタニックの尻尾にクラゲの耳ですね、分かりました
・お手数ですが、クレーンとスパゲティをご用意いただけますか?
久我山「なっ何なのこれ?」
斑目「全っ然分からん…」
神田「スーちゃん、訳これで合ってるの?」
スー「間違い無いであります!」
アンジェラ「スーは7ヶ国語喋れるから、多分間違い無いあるよ。私もちょっとだけスペイン語喋れるけど、確かにこの単語出てたあるね」
荻上「じゃあこれは一体?」
スー「おそらくこれは、本来の単語を別の単語に置き換える形式の、暗号の一種と思われます」
斑目「それって難しいの?」
スー「ある意味、乱数表を使っての暗号よりも解読困難です」
国松「どうして?」
スー「アルファベットを数字にアトランダムに置き換える暗号は、使われている数字の統計を取ることで、ある程度解読が可能であります」
荻上「つまり言葉を置き換える暗号だと、何が何に置き換えているかが分からない限り、解読出来ないってこと?」
スー「その通りであります!特に今回、使われている単語にまるで規則性が無いので、解読表無くしては解読出来ません!例えエニグマ暗号機でも解読不可能であります!」
田中「エニグマって…そんな高度な物使った暗号よりも、あの小野寺さんの使ってる暗号の方が難しいって言うの?」
荻上「笹原さんは、小野寺さんについて、何かご存知ですか?」
笹原「実は俺も、あの人の過去については、よく知らないんだよ」
一同『どういう人なんだよ、小野寺さん?』
やがて電話を終えて、小野寺が戻って来た。
小野寺「神田さん、3日後この大学のグラウンド空いてるか、分かるかな?」
神田「えっ?ちょっと待って下さいね。(スケジュール帳を取り出し)えーとこの日は…あっ、第2グランドが朝10時から昼12時まで空いてますね」
小野寺「国松さん、爆発だけ撮影して、後で必要なシーンに合成するようなことは出来るかな?」
国松「まあ、それぐらいは何とか出来ますけど」
小野寺「よし、それじゃあ荻上さん、3日後の朝10時に、この大学の第2グランドに、みんなを集めてもらえるかな?もちろん撮影の用意して」
荻上「それは大丈夫ですけど、どうするんですか?」
小野寺はニヤリと笑い、高らかに宣言した。
「みんなに、本物の爆弾の爆発するとこを撮らせてあげるよ!」
そして約束の3日後、現視研の一行は椎応大学第2グランドに集合した。
この時間帯にグランドがたまたま空いていたのは、もうじき大学の夏休みが終わるので、試合間近のところ以外の運動部が、活動を控え始めたからだ。
荻上「集まったはいいんだけど、小野寺さんはどっから来るんだろ?」
四方八方をキョロキョロと見渡す一同。
「上からじゃないですか?」
日垣がぼそっと言ったひと言に、空を見上げる一同。
こちらに向かって、1機のヘリコプターが近付いて来る。
前後にローターのある、灰色の大型ヘリだ。
浅田「あれ、ボーイングバートルV-107じゃないっすか!」
藪崎「浅田、知っとるんか?」
浅田「ええ、主に軍隊で兵員や車両を輸送するのに使われる、大型ヘリコプターです。日本の自衛隊も使ってますし」
岸野「しかもあれ、USマリーンのロゴが入ってるぞ」
一同「えー?!」
スー「ということは、我が祖国の海兵隊のものでありますな」
恵子「何でそんなもんが、あたしらの方に来るんだよ?」
浅田「米軍のということは、正式名称はCH-46シーナイトか。こりゃ驚いたな」
藪崎「そら驚くわな」
浅田「あんな旧型のヘリが、自衛隊ならともかく、まだ米軍で使われてたのには、さすがに驚きましたよ」
藪崎「そっちかい!」
そんな会話の中、ヘリはグランドにゆっくりと下降して来た。
周囲に強烈な砂嵐を巻き起こして、ヘリはグランドに着陸し、操縦席からパイロットが降りて来た。
パイロットは、タイガーストライプの迷彩服に、パイロット用のヘルメットという服装で、細身のサングラスをかけていた。
肌の色から、アジア系と思われた。
パイロットは、度肝を抜かれて硬直する現視研一行に近付き、立ち止まると同時にサングラスを外した。
いや正確には、眼鏡からサングラス状のカバーを外した。
一同「小野寺さん?!」
パイロットの正体は小野寺であった。
意外な出来事の連続に、どうリアクションしたものかと戸惑う一同。
小野寺「(恵子に近付き)君が恵子ちゃん?」
恵子「はっ、はいっ!」
小野寺「何だ、笹原そっくりって聞いてたから、あんまりなのを想像してたけど、可愛いじゃないの。眼鏡も似合ってるし」
(注)この話の恵子は、ビデオの見過ぎで近眼になってしまい、眼鏡を着用している。
恵子「そっ、そんな…」
いつもの恵子なら『誰がアニキそっくりじゃゴラア!』となるところだが、あまりにも異質な小野寺が相手なせいか、対応に困っているようだ。
小野寺「今日はよろしくね、可愛い監督さん」
恵子「はっはいっ!でもまあ今日は、私らは見てるだけっすから」
小野寺「(一同を見渡し)えーと…全部で20人か。わざわざこいつ(ヘリ)を出して来たのは正解だったな。何しろパイロットを除いて、25人乗れるから」
今日の現視研メンバーは、外人コンビを含めた1年生13人プラス、恵子、荻上会長、大野さん、クッチー、そして「やぶへび」の3人という、大人数であった。
小野寺「あと2時間ぐらいトイレ行けないから、今の内に行っといてね」
荻上「2時間で着くんですか?」
小野寺「いや、ざっと6時間ぐらいかな」
一同「6時間?!」
小野寺「直線距離にして、ざっと1500キロぐらいあるからね」
一同「1500キロ?!」
小野寺「このヘリはフルスピードでも時速250キロぐらいだから、まあ時間はそんなもんだろ」
果たして小野寺の正体は?
彼は現視研をどこに連れて行くのか?
そこでは何が現視研を待ち受けているのか?
次回それらの謎が明らかに!
(まあ一部謎も残りますが)
こうして読み返してみると、OBたち無理に出し過ぎましたな。
後半空気になっちゃった人も居るし、ちょっと反省。
さて残り40KB。
次回の投下は、スレ立てとワンセットかも知れません。
ではまた。
保守
また保守か
こんなに大勢のキャラ動かして、相変わらず凄いな30人〜は。
GWにまたじっくり読むぜ
こんばんわ、今夜もやって参りました。
今回は7レスでお送りします。
では。
恵子「あのう、どこへ行くんですか?」
小野寺「残念ながら、守秘義務があるから詳しいことは教えられない。でも安心して、とりあえず日本国内だから」
恵子「なあ姉さん、しゅひぎむって何だ?」
荻上「内緒ってことですよ」
恵子「内緒ならしゃあねえな。まあとりあえず、外国まで行くんじゃなきゃいいや。こんなので外国連れてかれても困るし」
小野寺「まあ確かに、こいつで外国へ行くのは大変だな。何しろ航続距離が、エンジンをチューンナップしたり、燃料タンクを増設したりして、やっと500キロぐらいだからな」
藪崎「あれっ?でも小野寺はん、それやったら1500キロ先やなんて…」
小野寺「そう、一気に行くのは無理だから、途中で2回給油の為に着陸するよ。ちょうど2時間置きぐらいだから、ついでにその時にトイレ休憩ってことで」
一同『我々は、どこへ行くのか…』
小野寺の話は、さらに続いた。
「それと昼飯は用意してる?」
荻上「ええ、今日は全員お弁当にしました」
小野寺「正解だよ、それで。多分時間的に、ヘリの中で食べることになると思うから。あとみんな、これかじっといて」
小野寺は、1錠ずつパッケージされた、ラムネかトローチのような物を差し出した。
荻上「あのこれは?」
小野寺「酔い止めだよ。ヘリの揺れはまた独特だから、普段乗り物酔いしない人でも分からんからね。チュアブル錠だから、水無しでかじっていいから」
ヘリの内部は予想よりも狭かった。
左右の内壁にシートが並び、バスの客席を細くした感じだ。
天井も低い。
後部に十数箱の金属の箱が積まれ、ワイヤーで固定されている。
「何ですかな、この箱は?」
言いながら箱に手を伸ばすクッチー。
「触るな!」
大声の叱責に手を縮めるクッチー。
叫んだのは小野寺だった。
小野寺「ごめんね、脅かして。それ爆弾だから、触ると危ないよ」
一同「爆弾?!」
後ずさる現視研一同。
小野寺「まあ正確には、迫撃砲弾とか、対戦車ロケット砲弾とかだけどね。信管は別にしてあるから、滅多なことでは爆発しないけど」
恵子「あの、何でそんなもん積んでるんです?」
小野寺「君たちを連れて行く為の口実だよ」
荻上「それはどういう?」
小野寺「今日の俺の身分は、米軍海兵隊第3海兵遠征軍第13補給分隊所属、ジョン・スミス曹長ってことになってるんだ」
一同「じょん・すみす?!」
豪田「何つうベタな偽名…」
(注)日本人で言えば、山田太郎とか鈴木一郎みたいな感じ。
国松「まるでキョンの本名ね」
浅田「いやそれ、いろいろ間違ってるし」
荻上「はいはい、オタ話はその辺にして、小野寺さん続きを」
小野寺「つまり君たちをこのヘリに乗せる為に、これから行く演習地への弾薬補給のヘリに、レベル5の政治的配慮による便乗という体裁を取る為さ」
一同「演習地!?」
だが恵子は、その言葉をあっさり流して、話を続けた。
「何すか、その政治的配慮って?」
小野寺「そういう体裁にしないと、君らにヘリの燃料代を請求しなきゃならなくなるからだよ。ヘリの燃料代って高いよ」
台場「(電卓を持って)あの、どれぐらいですか?」
小野寺「(台場の電卓のボタンを操作して返し)まあ、このぐらいにはなるね」
台場「(携帯を受け取って青ざめ)こっ、こんなに?」
荻上「どれぐらいになるの?」
台場「映画の制作費の、軽く10倍にはなります」
一同「何ですと?!」
小野寺「そりゃそうさ。高い航空燃料を蛇口からダダ洩れにしながら、飛んでるような代物だからな、ヘリって」
伊藤「そう言えば『戦国自衛隊』でも、ヘリが1番油食ってましたニャー」
小野寺「まあそういう訳で、後ろに積んでる箱は、そんなヘリに乗る為のチケットとでも思ってちょうだい」
沢田「物騒なチケットですね…」
巴「まあ正直、あまりご一緒したくない代物ね」
アンジェラ「てゆーか呉越同舟?」
豪田「ある意味合ってるわね、その使い方」
いざ飛び立つと、バートルの機内はローター音が響くので、落ち着かなかった。
会話をする際には、自然に怒鳴り合いとなってしまう。
国松「行けども行けども海の上、これじゃあどこに向かってるのか、全然分かんない〜!」
浅田「多分行き先は沖縄だよ〜!」
神田「何で分かるの〜?!」
浅田「ヘリの向かってる方向と、速度と航続距離と到着時間から割り出したんだよ〜!」
岸野「それにアメリカ海兵隊第3海兵遠征軍と言えば、基地は沖縄だしな〜!」
朽木「とんでもねえ!あたしゃ神様だよ〜!」
荻上「ややこしくなるから、黙ってて下さい〜!」
そんな喧騒の中、恵子だけはスヤスヤと眠っていた。
2時間後、現視研一行を乗せたヘリは、給油とトイレ休憩の為に、1度着陸した。
着陸したヘリポートの周囲には、たくさんの戦闘機があり、その向こうに海が見えた。
荻上「あの、ここはもしや…」
浅田「空母です。型式から見て、多分エンタープライズ級ですね」
朽木「何とも落ち着かない、パーキングエリアですのう」
15分後、巨漢揃いの米海軍兵士たちに送り迎えされ、落ち着かないトイレ休憩を終えた現視研一行は、再び機上の人となった。
今度はちょうど昼飯時なので、みんな飛び立つと同時に食事を始めた。
食事が終わると、怒鳴り合いの会話に疲れたせいか、今度は全員でお昼寝タイムとなった。
2時間後、小野寺に起こされた現視研の面々は、2度目のトイレ休憩となった。
今度のヘリポートも海上にあったが、先程の空母に比べれば狭い。
浅田「今度は大型揚陸艦かよ」
台場「揚陸艦って何?」
浅田「海兵隊が上陸する為の、船舶や航空機や車両を運ぶ船だよ」
岸野「多分演習の為だと思うけど、こんな戦争始まったら真っ先に敵地に上陸する連中を運んで来る船、よく俺たちが出入り出来たもんだ」
有吉「やっぱ謎だな、あの小野寺って人…」
通算6時間の長いフライトを経て、ようやく現視研一行は目的の地に着いた、
朝の10時に出発したので、もう時刻は夕方4時を回っていた。
ヘリを降りた現視研一行は、周囲を見渡して呆然とした。
ヘリの着陸した広場の前方には、岩山がそびえ立っていた。
そして周辺には、ジャングルが広がっていた。
荻上「で、ここはどこなの?」
浅田「太陽の位置や、ジャングルの状態や、この暑さから見て、やっぱり沖縄のどこかの島ですね。本島はさっき通過してましたし」
岩山のふもと付近に、人影が見えた。
ニャー子「兵隊さんですニャー」
藪崎「何かお洒落な兵隊さんやな。ヘルメットやのうて、ベレーなんか被ったはるわ」
豪田「あっほんとだ。漫画家?んな訳無いですよね」
巴「今時ベレー被った漫画家なんて居ないでしょ」
沢田「じゃあ絵が趣味とか…んな訳無いか」
スー「押忍!あれは米陸軍特殊部隊であります!グリーンベレーは、そのトレードマークであります!」
浅田「やはりここ、米軍の演習地みたいだな。でもそれにしても、グリーンベレーみたいな精鋭部隊が出て来るとは、かなりヤバイ演習だな…」
「ありゃあ、もうそんなとこまで進んじゃったか」
一同の背後で、小野寺がつぶやいた。
いつの間にか、ヘリの後部に積んでいた金属製の箱を、傍らに置いた手押し車に積み上げて、やはりワイヤーで固定してあった。
「みんな着いたとこで悪いんだけど、さっそく撮影の準備始めちゃって。あの連中が今いるってことは、予定より演習進んじゃったみたいだし」
恵子「あのベレーの外人さんたちが、オーラスってこと?」
小野寺「その通り。俺、弾薬持って行くから、適当にやってて」
恵子「分かりました!野朗ども、行くぞ!」
一同「おう!」
現視研一行は準備にかかった。
と言っても用意するのは、4人のカメラマンと録音の沢田だけであった。
後のメンバーは、付き添いに等しい。
「あとみんな、これ着けてね」
小野寺は爆弾の入った物とはまた別の、大きな金属製の箱を持って来て開けた。
中身はたくさんのヘッドホンとゴーグル、それに使い捨てタイプのマスクであった。
荻上「あのこれは?」
小野寺「爆薬使ってる現場って、埃っぽいからね。あとこのヘッドホンは耳栓と違って、爆音を和らげる一方で、人間の声は聞き取れるから、着けたまま会話出来るよ」
現視研の一行が、ゴーグルとマスクとヘッドホンを装着し終わった直後、爆発音が轟いた。
一斉に音の方を向く一同。
先ほど見たグリーンベレーの面々が、岩山に向かって砲撃を開始したのだ。
主に対戦車ロケット砲の発射訓練のようだ。
小野寺「どうやら始まったようだな。みんなも用意出来次第、撮り始めていいぞ」
カメラマン一同「はいっ!」
ヘリが着陸した広場は高台になっており、演習に使われている岩山の中腹を見下ろせるポジションにあった。
4人のカメラマンはギリギリまで岩山の方に接近し、撮影を開始した。
遅れて録音の沢田も近付き、爆発音を録音し始める。
あとのメンバーは、その様子を緊張の面持ちで見守る。
小野寺「ここからなら、いくら撮っても問題無いけど、これ以上は前進しないでね。それと爆発はいくら撮ってもいいけど、軍の人間や兵器は撮らないようにね」
荻上「どうしてですか?」
小野寺「守秘義務が生じたら、ややこしいからだよ。まあこの訓練自体は別に極秘じゃないから、口外しても問題無いけどね」
荻上「それにしても小野寺さん、何でこんなとこに私たち連れて来られたんですか?」
小野寺「俺の昔のバイト先の上司が、今グリーンベレーの教官やってるから、そのコネで特別に許可もらったんだよ」
恵子「バイトって、何のバイトなんです?」
小野寺「悪いけど、守秘義務があるから答えられないよ」
恵子「また守秘義務っすか、じゃあしゃあないですね」
そんな会話の中、浅田と岸野がズンズンと前進し始めた。
藪崎「ちょっと!あんたらどこ行くんや?!」
呼ばれて立ち止まった2人、何かに取り付かれた目で、こう呟いた。
「呼んでいる・・・戦場が俺を呼んでいる…」
呆然とする藪崎さんの傍を、さらに加藤さんも通過して前進し始めた。
加藤「呼んでいる…戦場が私を呼んでいる…」
藪崎「ちょう加藤さんまで!」
さらに見学者にも、興奮して行動を開始する者がいた。
国松「ああもう我慢出来ない!(自前のデジタルビデオカメラを出し)私も撮る!」
さらにお祭り野朗クッチーの制御装置が壊れた。
「にょおおおおおお!!!!僕チンも写真を撮るであります!」
クッチーは自前のデジカメを取り出して、爆発の続く岩山への走り出した。
小野寺「あっ、こらああああ!それ以上先に行くなあああああ!!!!」
小野寺はカメラマンたちを追って走り出した。
他の会員たちも、前進し過ぎのカメラマンたちを必死で呼び戻そうと、大声で名を呼ぶ。
爆音と怒号の混じり合った喧騒の中、荻上会長は虚空に絶叫した。
「て言うか、小野寺さんの昔のバイトって、いったい何なんですかあああ!!!!!?」
今夜はここまでです。
次回、また新章に突入します。
(正直、章の区分は、気分でやってますので、あまり深い意味はありません)
そして、ようやく29人目のキャラ登場です。
お返事も簡単に。
>>577 感想ありがとうございました。
正直キャラ全員完全には動かし切れず、空気になってるキャラも多いなと、日々反省しています。
GW中、完結までは行かぬまでも、かなり進める予定ですので、乞うご期待。
ではまた。
残り29KB
こんばんわ。
またやって参りました。
今夜は8レスです。
では。
第14章 笹原恵子の遠征
今日も今日とて、現視研の面々は部室に集まっていた。
今日集まっているのは、1年生13人、荻上会長、クッチー、「やぶへび」の3人、そして例によって昼飯を食いに来た斑目という面子だ。
今日は大野さんは就職活動だ。
そして監督の恵子は、笹原の部屋にこもっていた。
国松「何で監督、こもってるんです?」
荻上「もうじき屋外でのバトルの撮影が始まるけど、イメージが上手くまとまらないんですって。笹原さんの話じゃ、ずっとビデオ見てるそうよ」
浅田「そろそろ撮影の方、加速しないとまずいんですけどね」
神田「そうでも無いんじゃない?もうあと残ってる主なシーンは、屋外でのベムとアルとケロロ小隊のバトルと、ミニチュアでの特撮シーンぐらいだし」
浅田「いや、まだ油断は出来ないよ。この映画、むしろ今からの屋外のシーンがメインで、ここまでは露払いみたいなもんだし」
神田「そうは言っても、まだ9月下旬よ。学祭まで40日以上あるし」
岸野「なら実質、あと20日程度だよ」
藪崎「何で?」
岸野「お忘れですか?8ミリは現像が戻って来るまで、2週間は見とかないといけません」
藪崎「ああ、そやったな」
沢田「でも2週間なら、25日はあるんじゃ?」
岸野「俺たちに、ひと晩で編集しろと?」
沢田「あっ…」
岸野「それにアフレコだって、映像が上がってからでないと、素人には無理だよ」
浅田「まあそんな訳で、現像と編集を考慮すると、実質撮影期間は、あと20日足らずと考えといた方がいいです」
有吉「ヤマトで言えば、イスカンダルまでに半年以上使っちゃった状態ってとこか」
荻上「そう考えたら、こっからが正念場ね」
国松「まあでも、昨日ので特撮部門の最大の難関だった、爆破シーンはたくさん撮れたから、何とかなりますよ」
斑目「昨日はたいへんだったらしいね」
豪田「まあ往復で1日に12時間、ヘリに揺られての遠征でしたからね」
斑目「そりゃ凄いね」
巴「まあヘリのパイロットにでもならない限り、あんなにヘリに乗ることは生涯無いでしょうね」
伊藤「同感ですニャー」
台場「でも撮影はもっと大変だったわね。私らは見てただけだけど…」
ニャー子「カメラマンの人たち、ドンドン前進して行っちゃって、後で小野寺さんに怒られてましたニャー」
浅田・岸野・加藤「面目無い…」
藪崎「ほんまですよ。私だけですやん、普通に撮影してたの」
加藤「いや、ああいう場所って、カメラマンを頑張らせ過ぎちゃう、何かがあるのよ」
藪崎「元々カメラやっとった2人はともかく、加藤さんまで取り付かれてどないしまんねん?」
加藤「でも私たちまだマシな方よ」
神田「そうですよ。クッチー先輩なんて、前進し過ぎで爆心地に近付き過ぎで、爆風浴びてましたもん」
「いやあ、わたくし危うく死ぬかと思いました」
頭がアフロになったクッチーが、神田のネタ振りに応えた。
荻上「紛らわしいことしないで下さい!」
スポンと音を立てて、クッチーの頭からアフロを外す荻上会長。
クッチーのアフロは、ケロロ小隊の面々が、着ぐるみの頭の上から被る為に、日垣が作成したヅラだった。
これを被ることで、ラスト間際の爆発に、小隊の面々が巻き込まれたことを示そうという訳だ。
斑目「なんだヅラだったのか。爆発に巻き込まれて、そうなったのかと思ったよ」
荻上「ドリフのコントじゃないんですから…」
「当面の問題はロケ地までの足ですね。運ぶ物いろいろあるし」
国松が話題を戻した。
荻上「浅田君、前に見せてもらった造成地みたいなとこ、道のりはどんな感じだっけ?」
浅田「砂利積んだトラックが通ってるぐらいだから、車で近くまで入れますよ」
荻上「となると、荷物共々車で行った方が良さそうね」
巴「また車が要りますね。この間海に行った時みたいに、また車持ち寄りましょうか?」
荻上「でも今度は、少なくとも10日ぐらいほぼ毎日だから、自家用車4〜5台を確保するのは難しいわね」
国松「まあ欲を言えば、ロケバスみたいなもんがあればいいんですけど…」
国松の視線を感じた台場が答える。
「予算的には、マイクロバス1台ぐらいは、借りられないこともないけど…」
「マイクロバスか…」
台場の思考を遮るように、そう呟いたのは加藤さんだった。
「ちょっと待っててね」
加藤さんは部室の隅に行き、自分の携帯を取り出して、どこかにかけた。
「…お久しぶりです、加藤です。実はかくかくしかじかな事情で、マイクロバスを借りられるところを探しているんですが…そう、なるべく格安で…」
数分後、加藤さんは電話を切り、一同に報告する。
「何とかなりそうよ、マイクロバス」
藪崎「ほんまですか?!でも、どないして借りはったんですか?」
ニヤリと笑ったらしいオーラを放ち、加藤は答えた。
「知り合いの人でね、家で仕事にバス使ってる人が居たのを思い出したのよ。それで試しに訊いてみたら、ちょうど今ヒマでバス空いてるそうなのよ」
台場「あの、お代の方は?」
加藤「ガソリン代だけでいいって」
台場「よし乗った!会長、いいですよね?」
荻上「そうね。加藤さん、お願いします。でも、どなたなんですか、バス貸して下さる方?」
加藤「(ニヤリと笑ったらしいオーラを放ち)それは当日のお楽しみ」
翌日、椎応大学の近所の大通りで、現視研の一行はマイクロバスを待っていた。
みんな歩道に立っていたが、伊藤と浅田だけは、路肩に停めたワゴンの傍にいる。
ワゴンは伊藤の実家から借り出したものだった。
撮影機材をバスが来てから積み直すより、最初から車1台にまとめて積み、その車で一緒にロケ地に向かった方が速いと判断したのだ。
それにロケ地へと先導する役割もあった。
伊藤が運転し、シネハンを担当していた浅田が、助手席でナビゲーターをするのだ。
今日の面子は、1年生全員と「やぶへび」の3人、荻上会長、大野さん、クッチー、そして
恵子という面々だ。
やがて1台のマイクロバスが近付いて来て、一行の前で停まった。
一同「キタ―――――――!!!」
国松「これですよね、加藤先輩?」
加藤「ええ」
そのバスは、紺色と白のツートーンカラーの、地味なマイクロバスであった。
横腹に、微かにペンキを重ね塗りした形跡が見られた。
よく見ると、何か文字が見える。
元々は、何か社名が入っていたらしい。
バスの運転席から降りて来た男の顔を見て、一行の反応は2つに分かれた。
荻上会長よりも下の世代の会員たちは、男と面識が無かった為、キョトンとしていた。
一方荻上会長から上の世代の会員たちは、その小太りで眼鏡をかけた、いかにもオタクな容貌の男の名を叫んだ。
「高柳さん?!」
バスの運転手は、椎応大学漫画研究会OBの高柳であった。
「お久しぶりです、高柳さん!」
最近では1年生たちに殆どのことを任せ、自分が前面に出ることの少ない荻上会長が、珍しく真っ先に駆け寄って挨拶した。
現視研に入るきっかけを作ってくれた高柳は、荻上会長にとっては大恩人でもあるからだ。
「お久しぶりですぅ、ヤナはん」
続いて藪崎さんも駆け寄り挨拶する。
高柳「元気そうだね、2人とも」
2人の間に壁が無くなったことに気付き、さらに付け加えた。
「それに、仲良くなったみたいだし」
藪崎「(赤面し)仲良くって…そんなたいそなもんやおませんて。オギは私のライバルでっさかい…」
荻上「(苦笑し)まあ、そんな感じですよ」
高柳「ほんと立派になったもんだ。現視研に始めて連れて行った頃には、想像出来なかったよ」
今度は荻上会長が赤面した。
ふと振り返る荻上会長。
1年生たちの「この人誰ですか?」という視線に気付いたからだ。
まだ赤面してる荻藪コンビには酷と判断したか、加藤さんが割って入った。
「改めて紹介するわ。こちらは漫研のOBの高柳さん」
高柳「ども、高柳です。言いにくい人はヤナでいいから」
加藤「そう、だからみんなヤナさんって呼んでるわ」
神田「ヤナさんか。シゲさんと組んだら、いいコンビかも」
高柳「シゲさんって?」
加藤「今の現視研の1年の子たち、斑目さんのことをそう呼んでるんですよ」
加藤さんは高柳に、その語源を説明した。
高柳「そういう事情かあ。斑目まだ部室に出入りしてるんだな」
神田「ヤナさん、シゲさんのこと、ご存知なんですか?」
加藤「ご存知も何も、2人は同学年で親友よ」
1年一同「へー」
高柳「まあ親友は大袈裟かな。卒業してからは、あんまし会ってないし」
加藤「でも漫研女子の間では、話題になってましたよ。斑目×高柳か、高柳×斑目かで、けっこう論争になってましたし」
ブッとなる一同。
国松「そっちの親友ですか!?」
高柳「俺と斑目とでねえ…まあ薄々そんな気はしてたけど」
日垣「あの、高柳先輩は、そういうのは抵抗無いんですか?」
高柳「まあ全然無い訳じゃないけど、女子のオタク相手に、そういうの気にし出したら、キリが無いでしょ?」
1年男子一同「大人だあ…」
高柳「そう言えばこの子たち、みんな現視研なの?」
藪崎「加藤さんと私と(首をつまんでニャー子を差し出し)こいつ以外は、みんな現視研ですわ」
高柳「その猫顔の子は?」
藪崎「こいつは去年入った、私ら漫研の後輩ですわ」
ニャー子「ニャー子ですぅ」
加藤「ヤナさんは卒業してから来られてないから、ニャー子は初対面だったわね」
高柳「そんじゃあその金髪の外人さん2人と、そっちの茶髪の眼鏡の子も?」
加藤「そうです。あとその茶髪の眼鏡の子は、笹原先輩の妹さんです」
高柳「笹原の?へー、あいつにこんな可愛らしい妹さん居たんだ」
眼鏡をかけ、少し痩せて顔が細くなったのにプラスして、笹原の丸顔度を実物の2割増しで覚えていた為、高柳は恵子を見ても、笹原に似てるとはあまり思わなかった。
恵子「ども、初めまして。笹原恵子です」
久々に、オタ丸出しの外見の人物との初対面なので、やや硬い対応だ。
加藤「しかも恵子さん、今回作る映画の監督さんですよ」
高柳「へー。事情は大体電話で聞いてたけど、現視研も随分アクティブになったもんだな。しかも漫研よりも、女子の比率高いし」
藪崎「それはそうと、よろしいんでっかヤナはん、こないなもん貸してもろて」
高柳「いいさ。どのみち年内いっぱいは、俺もこのバスも空いてるし」
荻上「どういうことです?」
高柳「卒業後に俺が後継いだ、実家でやってた家業が、近くに大手が進出して来たせいで大赤字なんで、年内いっぱいで閉めることしたんだ」
急にヘビーな話になり、沈黙する一同。
荻上「じゃあ今後は、どうされるんですか?」
高柳「とりあえず、年内はのんびりと残務整理さ。伝手はあるから再就職の方は大丈夫だよ。うちは潰れたけど、業界自体は成長産業だから、仕事には困らないさ」
荻上「そうですか…」
高柳「何かしんみりさせちゃったね。まあこの話はここまでにしよう。みんなバスに乗ってよ」
現視研一行はバスに乗り込んだ。
沢田「何か、線香臭いわね」
台場「芳香剤か何かじゃない?」
沢田「それにしては、臭いが何かヨモギっぽいわよ」
「あれっ?これなんだろう?」
座席の下の物体に気付き、荻上会長はそれを拾った。
その物体は、白くて丸みを帯びていて、軽くてカサカサしていた。
豪田「何かポップコーンのカスみたいな物体ですね」
「あっまだあったか。ちょっとごめんね」
高柳はそう言って、その物体をつまみ上げ、ポケットから出した白いハンカチで、丁寧に包む。
そして傍らの席に、ハンカチに包んだ物体を置き、ポケットから数珠を出し、手を合わせた。
そして「南無阿弥陀仏」と短くお祈りすると、物体と数珠をポケットに仕舞った。
その様子を呆然と見守る一同。
荻上「あのう、高柳さん…」
高柳「多分最後のお客さんのだよ。ご遺族の方の中に小さいお子さんがいらしてね、お墓まで行く途中で、中身ぶっちゃけちゃったんだよ」
一同『ご遺族?お墓?』
高柳「ありがとう荻上さん。後でちゃんとご遺族の方に届けとくから。あと手を出して」
「?」となりつつも荻上会長が手を出すと、高柳はポケットから散剤のような小さな紙包みを出して、その中身の白い粉を荻上会長の手にふりかける。
よく見るとその紙包みには、「高柳葬祭」と印刷されていた。
一同『葬儀屋だったのか、高柳先輩って…』
荻上「何ですかこれ?」
高柳「清めの塩だよ。まあ高温で焼いてあるから害は無いけど、一応習慣だから」
荻上「(自分の手を見つめ)初めて触ったわ、人のお骨なんて」
高柳「まあ最後の仏様は末期のガンだったから、もう全身カサカサになってたからね、お骨の方も。普通のお骨はもう少し硬くて原形保ってるよ」
恵子「何かえらい縁起の悪いバス借りちゃったな…」
おつ
17KB
A
K
I
B
A
16KB
606 :
マロン名無しさん:2009/05/13(水) 21:48:52 ID:m31Ef2Vl
16KB
16KB
16KB
16kb
16
木尾はまだ16だからぁ〜
…
あと16KB
あと16KB
あと16KB
あと16KB
あと16KB
あと16KB
あと15KB
あと15KB
またアクセス規制か
いつまで持つかな、このスレ
まあどのみち、あと15KBだけど
どうやら1日放置しただけでは、落ちないようだな。
よかったよかった。
それにしても規制解除はまだかのう…
テスト
保守
?
あ
え
お
き
う
S
J
W
/
残り14KB
残り14KB
残り14KB
残り14KB
残り14KB
14KB
14
14
14
14か
13KB
保守だけで50レスはやり過ぎだろ
650 :
マロン名無しさん:2009/07/03(金) 18:18:26 ID:M2NCy2Ha
やり過ぎだな
でもまだまだ保守
13
もういいかな
さて、どこまで続くか
1KBあれば、けっこう続くもんだな
2日放置しても落ちないんだな
もいっか
いいかな
良くない
・・・もう・・・・ゴールしてもいいよね・・・
良くない
あと12KBか
んだ
さて
どだ
どだろ
うーむ
まだ12KBあるな
あるね
あるな
あるよ
どれがいい?
あのネタだとしたら、やや苦しい
苦しい
???
ほしゅ
11KB
678 :
マロン名無しさん:2009/08/25(火) 22:06:38 ID:komCmBZo
11KB
679 :
マロン名無しさん:2009/08/28(金) 20:17:41 ID:C1Bbsr4F
11KB
11KB
11KB
11KB
AKB
AK47
ひと言ふた言なら、けっこう続くもんだ
このまま1000まで
それはさすがに無理やろw
よし挑戦
さて
うむ
sien
10KB
10KB
10KB
10
10
10
まだ10
また10
さて
あらま
んこ
こらこら
まだ10
まだ10
また10
あと9
9
9
9
9
9
9
9
9
9
九
9
く
H
玖
8
8
8
8
八
8
G
729 :
マロン名無しさん:2009/12/08(火) 13:06:36 ID:F9nsd2xy
8
8
/ \
[
8
中央大学に入学したかった
まだ出願期間前だぞw
まだ8?
あと7
7
7
7
741 :
マロン名無しさん:2009/12/31(木) 17:33:25 ID:DKayRhqC
7
7
7
7
7
7
7
7
7
7
7
7
7
6
6
6
ちごぷり
顔があのまま大人になる
6
6
6
761 :
マロン名無しさん:2010/02/21(日) 21:07:41 ID:r3gORZZW
6
6
6
6
6
6
6
6
5
5
5
5
5
5
5
5
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5
5
5
5
5
5
4
4
4
4
4
4
4