同時に咲さんが、「コーサカ、斑目、そろそろ可哀想だからクッチーの様子を見てこない?」と立ち上がった。
「え、俺も行くの?」とポカンとしていた斑目さんだったが、咲さんの表情と窓際の笹原夫妻を交互に見て、「あー、行く行く。可哀想だからね」と立ち上がった。
お見合いに関する追究が中断しホッとした表情の久我山さんも、しばらく経ってから、小声で「お おれトイレ行くかな…」と静かに立ち上がり、部室を出た。
酔った状態の笹原さんと於木野先生は、学生時代の話題に花が咲いているのか、周りを気に留めていないようだ。
納得したワタシも、現役ちゃんと静かに外に出た。
廊下の向こう、階段の方に加奈子さんをはじめ先輩方がタムロしていた。
「皆さん4階に行きますよ!」とヒソヒソ声。
「4階?」
「児文研も灯りがついていたでしょ。ちょっと場所を借りて4階の窓からウチの部室を監視するんです」
高坂さんが「卒業式の時は気付かれちゃったけどね」と笑う。
「でもこんなにゴッソリ人が抜けたら怪しまれるんじゃ…」と困惑の表情を見せる斑目さんに、久我山さんが、「け 結構酔ってたし。み みんな出て行ったのに気にしてなかったぞ」と答えた。
児童文学研究会(児文研)からの覗き見って、話には聞いていたけど……。
「先輩方の伝統芸に触れることができるなんて思ってもみませんでしたよ」
「伝統芸言うな」とツッコむ咲さんの表情がもうニヤケている。トドメに「こりゃ、キスだけじゃ済まなかったりするかもな」と笑った。
それはシャレになりませんよ!
ワタシ達はゾロゾロと階段を上り、ついに児文研の部室にたどり着いた。
ダラダラとつづく
次回はたぶん月曜朝デス
ダラダラやっちゃってください
放置プレイヒドス
でも案外クッチー、喜んでるかも
衣替え
486 :
となクガ:2010/06/05(土) 06:35:56 ID:???
ほしゅ
もうちっっっと待ってくあさい
コミケ落ちの心の傷を癒(以下略
487 :
となクガ:2010/06/05(土) 06:36:57 ID:???
予告
投下
明日
待
今年のコミケは荒れそうじゃのう
【31】
児文研の前で加奈子さんがワタシの肩を叩いた。
「じゃ、交渉お願いね」
「え、ワタシが?」
「だって私たち卒業生だし」
咲さんがニマニマしながら「早くしないと“始まっちゃう”かもしれないから、早くしなさいよ!」と急かす。
何というデバガメ。酔ってんな咲さん。
しかし午前3時過ぎだしねぇ。
ワタシは控えめにノックをして児文研のドアを開け、そおっと中を覗き込んだ。
「あのー……夜分遅くにすみませーん……」
部屋の主は、こちらの様子に気付いていない様子だった。
絵本などが積み上げられた窓の方に、姿勢を低くしてへばりついていた。
その背中が、ブツブツと何かをつぶやいていた。
「……みんなどこ行ったのかしら。それより何か怪しいわよあの2人の雰囲気!」
え?
「あのー……児文研……さん?」
ワタシの一言に、背中がビクッと反応した。カチカチカチ…と機械のようなぎこちなさでコッチに振り向いた。
あれ?
ワタシはその顔を知っているッ!
ワタシも、その“顔”も、同時に同じ台詞を叫んだ。
「「つか、何でアンタがそこに居るのよ!」」
そこに居たのは北川(姪)ではないか!
あいつも、ワタシの顔を見て驚いている。
「えー、何ナニどーしたー?」と、咲さんと加奈子さんが顔を覗かせて、瞬間凍り付いた。
「ゲッ!」
姪の北川は、昔の北川さんと良く似ているらしい。
後に続いてきた斑目さんと久我山さんも愕然としている。
北川(姪)は真っ赤な顔をして問いかけてきた。
「ちょ、何でココにキタのよ?」
「いやまあ……、ちょっと窓の外を見せてもらいたいなー、なんて。……か、かく言うアンタはドシテ?」
「わ、私は児童文学研究会の会員なんですが、何か?」
北川、ここの会員だったの?
「え、でも中庭で会ったとき、“サークル自治委員長としての勤めがあるから、仕方なく残ってる”って言ってなかった?」
「え、あ、…たッ、たまたまよ! そーよ自治委員会の仕事終わってたまたま部室に顔出しただけなんだらッ」
ワタシはふと北川の手元を見た。
その手には、しっかりと双眼鏡が握られている。
「アンタ……窓際でナニしてんの?」
「え……、うッ!」
北川が自分の双眼鏡に気付いて慌てて両手を背中にまわした。
瞬間、私の隣に居た咲さんと加奈子さんの目が、ギラリと光ったのを感じた。
キラリじゃなく、ギラリである。
「ひょっとして、4階から現視研の窓をノゾキ見していたんだ…」
咲さんの問いかけにビクッとする北川。
あー…。ここで覗いていたから、私たちの動向に詳しいわけだ!
どうやら図星らしい北川。
気付いた時には、北川の両側を、咲さんと加奈子さんが囲んでネチネチとつぶやき始めた。
加奈子さん、いつの間にかマスクを付けてる…。
「こんな夜更けまでよくヤルよねェ!」
「これはもう、犯罪といってもいいレベルですね…」
「サークル自治委員長ともあろう者がコレでは、示しが付かないよね」
「あ…あの……こッ、コレはそのあsdfつghjklrいhkんlmbvcyxrt;:」
咲さんと加奈子さんからすれば、昔煮え湯を飲まされた“あの人”にそっくりな北川(姪)は格好の餌食。嗜虐心を高ぶられるのだろう。
北川、メガネの奥が涙目だぞ。
「うわ、可哀想に……」
ワタシや斑目さんは、思わず北川に同情してしまうが、その時、いつの間にか窓際の方にいた高坂さんが、こっちに手招きした。
「ねえねえ、笹原君たちが……」
「何コーサカ、動きがあったの!?」
「肩に手をまわし始めたよ」
「ナンデスッテ!?」
咲さん、加奈子さん達は一斉に窓に殺到する。
斑目さんに久我山さん、現役ちゃんまで…。
「うおお、約10年越しに部室キスかー!?」
「フツーここらへんで気付くだろ、周りの人間の不自然な不在に」
「こ 今回は酒も入ってるし」
「ちょ、電気消そうぜ。悟られる」
「ああああいよいよ2人の顔が近づいてきた!」
その直後、窓際に居ないワタシの方にまで、現視研部室からの音声が聞こえてきた。
バァンッ!(←現視研部室のドアを蹴破る音)
『ソロモンヨ、ワタシハ帰ッテキt……』
「わっ、スー!」
「なしてここに!?」
『……キサマラノ………キサマラノ血ハ何色ダアァァァ!』
シャーッ!(←スーが笹原を威嚇)
児文研部室の窓際で一同が叫ぶ。
「ええええええええええッ!?」
「子供ほったらかして帰ってきたのか……」
「修羅場だ、笹ヤンの身がヤバいwww」
「このまま経過を観察しましょう(笑」
かえってノリノリの一同。
一方、解放された北川が、真っ赤な目をしてこっちを見る。
「どーゆーことよ」と北川に迫るワタシ。
「わっ、私はただ要注意サークルのあんた達を監視してッ……」と、北川が力一杯弁解しはじめた矢先に、バサッ、と窓際に積み重ねられた本の一角が崩れた。
4、5人のデバガメが殺到したためだ…が。その本を手にした加奈子さんがつぶやいた。
「これ、『くじびきアンバランスOFFICIAL FANBOOK』じゃないですか」
「あっ、そ、それは!」と焦る北川(姪)。
おぉぉぉお!?、お前のか!?
495 :
となクガ3:2010/06/06(日) 07:32:47 ID:???
たぶん次回が最終。
あくまで、たぶんだけど。
そして次回以降もクッチーは放置。
これは確実。
スレ汚し失礼しました。
キテタ!
終わっちゃうか…
いつの間にかクッチー、いないことで存在感を示すドロ沼君キャラに…
スー、その台詞をここで使いますか
次回も期待
オタクの修羅場が見られるぜ!
ついに最終回ですか・・・
まだかなまだかな
てすつ
期待
気体
503 :
となクガ3:2010/06/23(水) 00:09:44 ID:???
遅くてすんません。
次は木曜ー週末金曜にかけて投下しまつ。
あれ
昨夜飲み過ぎて投下が遅れました。
スミマセン。
最後までいきますが、連投規制避けるため間が空くかもです。
よろしくお願いします。
【32】
くじびきアンバランスOFFICIAL FANBOOK。マガヅン編集部刊、1280円……。この本が児文研部室で見つかった後、ワタシ達は北川(姪)を拉致って現視研部室に帰ってきた。
高坂さんと久我山さんがその本を手に語りだした。
「これ、1話のフィルムコミックや絵コンテ、監督や声優の対談が入ってるアレかぁ。うちの部室にも昔からありますね」
「う うん、今回の本の参考にもなったよ」
「賓客」として一番奥に座らされた北川(姪)は顔を真っ赤にしてうつむいている。賓客というか晒しものである。
ざまぁwww
そんな彼女の両脇には、またしても咲さんと加奈子さんが座り、どんどんビールを勧めている。
「い、いや私はお酒はッ…」
「いいじゃないですかー。私達が飲み会やってたのをずっと見てたんでしょ〜」
「うっ…(汗」
「じゃあもう一緒に飲んでるのと同じですよ〜」
加奈子さんワケワカラン……。
今度は咲さんが北川(姪)の肩を抱くようにしてもたれかかり、「ところで貴女の“おばさま”はお元気かしら? ご主人との仲も睦まじいのかしら〜?」と低い声で尋ねた。
「…は、はい…」
咲さん、何か私怨がオーラになって目に見えるかのようデスよ!
あまりに凄惨なので目を背けると、ドアの近くの席では別の修羅場が。
「チカハ、ミーノ嫁!」
「あー…はいはい(苦笑」
“笹原夫妻”の間にスーが割って入り、於木野先生にベッタリくっついている。一方、スーさんの実の嫁…じゃなく夫の斑目さんは脇に追いやられている。
「あのー、言っても無駄だと思うけど俺の立場は…?」
「ダマレ下僕」
於木野先生は顔を真っ赤にしつつチビチビお酒を飲んでいる。
顔が赤いのは酔っているせいではない。児文研部室から覗かれてたコトが恥ずかしいらしい。
キレて帰らないだけでも大人になったと、笹原さんは苦笑いしてるけど、この場合は成長云々関係ないのでは……。
それに幸いにも(?)咲さんや加奈子さんは北川(姪)という格好の獲物に夢中なので、於木野先生は静かに過ごせるのであった。
その北川(姪)に、「くじびきアンバランスOFFICIAL FANBOOK」をパラパラと眺めていた高坂さんが微笑みかけた。
「北川さんは、くじアン好きなんだね!」
ざわ…、と反応する現視研一同。北川(姪)の肩もピクッと反応した。
「い、いや私は別に…ッ!」
ワタシは思わず「まさかコイツが?」と口にしたが、北川もワタシと同年代だし、ワタシがそうだったように、小学生の時に「くじアン」にハマっててもおかしくはないのだ。
咲さんが、笑みをこらえ頬をひきつらせながら尋ねた。
「北川さん……、あの“おばさま”の姪なのに、隠れオタなんだ?」
「ちっ…ちがッ…。私はただ子供の時に“くじアン”を見た事があるだけでッ!」
「そんな奴は“ファンブック”なんか持ってないって…」
「いやソレは懐かしくて思わず“DVDボックスと一緒に”買っただけで、別にナニモオタクなんてことじゃなくって!」
血相変えて否定する北川……てか酒が結構入ってるな……自分から墓穴掘っちゃってるじゃないの。
ワタシはニマニマしながら「泡沫サークルだとか何とかワタシ達を見下しておきながら、実は同類なんだwww」とツッコむと、ヤツはガタッと立ち上がってワタシを睨んだ。
「泡沫よ。私も入ってあげても良かったのに、1年の頃は存在さえ定かじゃない幽霊サークルだったし……気付いたらアンタが楽しくやってるし……!」
「……ひょっとして……ウラヤマしかったとか?」
「べ 別にアンタのことが羨ましいとか、そんなことないもん!」
この人、げ、現視研に入りたかったのかな……と、部室にいる一同が顔をひきつらせた。
例外は常にニコニコの高坂さんと、常に仏頂面のスーくらいだ。
「私は現視研なんて潰して、のほほんとしてるアンタを打ち負かしたいの。まぁ……現視研つぶれたら、じ、児文研に入れてやってもいいのよ!」
強がっているつもりが空回っている北川(姪)。ワタシの狙い撃ちかよ。
肩で息をしている北川(姪)を、加奈子さんがなだめるように優しく……いやなんだか不気味に、何かを悟ったような顔をして後ろから北川の肩をなでた。
「……北川さんは……お友達になりたいのね」とささやいてワタシの方を見る加奈子さん。
「「はぁ?」」
ワタシと北川(姪)が同時に叫んだ。
加奈子さんはニッコリと微笑んで視線を於木野先生に向けた。
「その昔……“荻上さん”を嫌って、対抗意識を燃やしているように見えて、実はお友達になりたかった不器用さんがいましたよね?」
「知りません」と目を合わせずに即答する於木野先生。その横でスーが「ヤブー?」とつぶやいた。
加奈子さんや咲さんが北川の頭をなでながら、「もー、素直じゃないんだからw」と声をかけたが、北川は振り払うようにして席を離れると、ドアの方へと逃げた。
そしてワタシのそばに立った。
ワタシより背が頭一つ低いこともあって、メガネの奥から刺すような上目遣いでワタシを見てる。
「くじアンが好きなのは認めるけど、自分がオタクだって認めたわけじゃないんだからね! 覚えてなさいよ!」
アイツは歯ぎしりしながら、ワタシを指差した。
「………あ」
指がフニッとワタシの胸に埋まった。
彼女はすぐに耳まで赤くなったが、人の胸見て、さらに自分の胸を見下ろすと、怒りが込み上げてきたみたい。
迷惑な反応だ。つか前にも一回やったろ、お約束かよ。
北川(姪)はドアを開け、フト立ち止まる。
こっちを振り向かずに、「き、今日もらったジュースの例だけは言っとくわ。あ…、ありがと…」と捨て台詞を残して、部室から逃げ出して行った。
少しの間、現視研部室は沈黙に包まれた。
久我山さんがぽつりと、「つ……ツンデレ……」とつぶやいた。
「ひとまず現視研の難敵を退けたようだな」と斑目さん。笹原さんが「なんか妙な方向に退きましたけどね」と苦笑いする。
「つか、この難敵は私達で拉致ってキタんじゃないスカ」と現役ちゃんがツッコむ。
咲さんと加奈子さんはワタシの方をニマニマ見ている。
「あんたが優しく受け入れてあげれば丸く収まるんじゃないの?」
「そうですよ。お友達になってあげたら?」
「お、お断りします!」即答で却下デス。
「……そんな簡単なものじゃないですよ……」
於木野先生がポツリとつぶやき、みんなが思わず於木野先生を見る。
一斉に視線を受けて於木野先生は真っ赤になって「べ、別に私はっ…!」。
“経験者”は語るですか先生……みんなニマニマしてますよ。
「あ あのさ」
久我山さんが、ヌッと立ち上がった。
「……ち ちょっと、み みんなで行きたいとこがあるんだけど……」
窓の外は、少しずつ明るくなってきていた。
てす
【33】
サークル棟を出ると、東の雲が茜に染まっていくのが見えた。闘いの終わりを感じさせ、ホッと見入ってしまう。
ポケーっと空を仰いでると、「カイチョー、入稿忘れないでくださいよ」と現役ちゃんからつつかれた。
久我山さんも「か 帰りに、よろしくね」と声をかけてくれた。
「はい」
ワタシのバッグには、入稿するデータと出力原稿が入っているのだ。
ワタシ達はゾロゾロと大学を出る。
「ごめんねー。私は仕事の準備あるから」「みんな気をつけてね」
自宅へと帰る咲さん、高坂さんに見送られ、ワタシ達は始発に乗ってある場所へと向かった。
電車内で固まって、いつもの会話を楽しむ先輩達。
「あのゲーム、操作性は悪くないですしね」
「スカートの揺れ具合もズムーズでイイよな。でもパンチラはやってほしかったな。ソレが神ゲーとクソゲーとの評価の分かれ目だな」
「そ そういう部分も、げ 原作通りに作り込んで欲しかったよな…」
ワタシは黙って、先輩方の会話を聞いている。今回はワタシのせいで皆さんに迷惑かけたけど、こうやって自分たちの時間を、楽しく過ごせたことは嬉しかった。
乗り換えを繰り返し、早朝のお台場へ…。
国際展示場駅に着くと、そこはコミフェスの時とは別の世界のよう。
オタ系のポスターが貼られていない駅コンコースを歩いて外に出ると、全く人の気配が無い、整然とした空間が広がっていた。
向こうに見えるビッグサイトまでの間に、人っ子ひとり居ないのだ。
「こんなに、広かったっけ…」
私達の知るこの場所は、いつもはオタクの人海と熱気とで埋め尽くされている。
それが今は、なにもない。
「原罪ノケガレ無キ、浄化サレタ世界ダ」とスージーがつぶやくと、斑目さんが、「俺は罪にまみれても、人が生きている世界を望むよ」と返した。
ワタシ達は人のいないお台場を歩く間、電車の時とは違って口数が少なくなっていた。
神妙な気分になっていたのか、朝日を浴びて輝くビッグサイトの正面に立つと、思わず手を合わせたくなった。
みんな大きな会議棟を見上げて、感慨深げに立ち尽くす。
久我山さんが口を開いた。
「こ 今年の夏も、冬も。つ 次の夏も…、ま またココに来たいな」
「おう」と斑目さん。一拍置いて「見合い結婚してもオタク続ける宣言か?」と久我山さんを凝視した。
「う うん。できれば…」
「そうだろうなぁ。辞めたくても辞められるもんじゃないしな」
「こ ここに来てみて、改めて思ったよ」
笹原さんも「確かにガランとしてると、人で賑わうビッグサイトが恋しくなりますね」とつぶやいた。
続いて加奈子さんが尋ねる。
「で、お見合いは、いつなんですか?」
数分後。
「なんで今日のお見合いなのに、前夜貫徹しちゃうんですか!」
加奈子さんが頭を抱えている。
「お前、何やってんだよ! はよカエレ!」斑目さんが激昂する。
「だ だって原稿が…」と久我山さん。
「それはこっちでどーにかできますし!」於木野先生もうろたえる。
「み 見合いは午後に都内でやるから じゅ 十分間に合うって…」
「そういう問題じゃありません! 親御さんも心配しますって!」
「スミマセン、日取りも確かめず助っ人お願いしてホントスミマセン!」と、ワタシは平謝りだ。
【34】
みんなにけしかけられた久我山さんは、渋々ゆりかもめの駅へと向かう。
加奈子さんに指示され、ワタシは久我山さんを見送るために付き添った。何てことだろう。大事な日の前に貫徹させちゃって、これでお見合い失敗したらワタシのせいかも……。
ワタシは歩きながら詫びた。
「ほんとにスミマセン…」
「そ そんなことないよ。おかげで楽しかったから」
うなだれるワタシに、山が傾くように身を縮めて慰める。久我山さんは優しい。
「き きょうビッグサイトに行ったのも……オタク続けることを覚悟するためだしね。そ それを決意させてくれた……感謝だよ」
「はい」
ワタシの方こそ、感謝なのだ。久我山さんに会えたから、オタクとしての今のワタシがあるのだから。
国際展示場正門駅の改札に辿り着き、券売機でキップを買った久我山さんが、「じゃあ」と笑った。
「お見合い頑張ってください。それと、オタクとしてのカミングアウトも」
「うん」
「……ダメだった時は、ワタシ、嫁ぎますから」
ワタシは笑うと、そのまま大きな久我山さんの躯に、ギュッと抱きついた。
何でそんな大胆なコトができるのか。不思議な感じ。
好きとかそーゆー感じじゃなかった。
初めて会った小学生の頃、その時の気持ちに帰ったような気分。
そうだ、ワタシはトトロのような大きな久我山さんに、ギュッてしたかったんだ。
久我山さんも、それを感じ取ったのか、ワタシの頭を撫でて、ゆっくり離れた。
「じゃあ」
「はい」
久我山さんを乗せたゆりかもめは、ゆっくりと動いていき、やがて朝霞の向こうに見えなくなった。
ワタシは、ゆりかもめを見送ると、ふー…と溜め息をついた。
そしてビッグサイトへと再び歩みだした。
いつものように楽しくダベっている先輩方の姿が小さく見えた時、ふと足が止まった。
「……あ、朽木先輩サークル棟に忘れてきた……」
【35】
1か月ちょいが過ぎた。
早朝から…というか前夜から人でにぎわう夏真っ盛りのお台場。国際展示場駅に着いたワタシとクッチー先輩、現役ちゃんの3人は、物欲と煩悩に引き寄せられた者たちの渦の中に同化していった。
朽木先輩はもう辛抱堪らん様子で、「ではワタクシ、さっそく開場前会場内行列に参戦してくるでアリマス!」と、サークルチケットを手にグイグイ先行し、すぐにその姿は見えなくなった。
ワタシは現役ちゃんに尋ねる。
「アンタも今日、買い物あるんでしょ。一般参加で入るんだから、朽木先輩にもっとお願いしておかなくて良かったの?」
「この日のために高校時代からの友達に毎年手伝ってもらってますから。オタクじゃないスけど、いい“ファンネル”に育ってるんですよー。そろそろ合流ポイントなんで、私もここで!」
現役ちゃんはニヤリと笑い、一般列に向かって去って行った。
ワタシはディスプレイ用の物品とペーパーを入れたバッグを肩にかけ、人また人の波のなかを、ビッグサイトへと向かって歩く。右手には一般参加の人たちが3列4列になって並んでいる。
朝からカンカンに照りつける太陽のもとで並ぶ大勢のオタク達の中には、どこかに斑目さんや、仕事明けの笹原さんたちがいるのだ。買い物が済んだら、みんな手伝いや冷やかしに来てくれる。
さぁ今日は頑張るぞと、妙に気合いが入った。
目指すは、大きなホールの中に与えられた、ちっちゃな島中のワタシ達のスペース。大量のチラシが積まれたテーブルの足下には、ミナミ印刷から届けられた、くじアン同人誌の箱が置かれていることだろう。
見てろよ北川(姪)め、ばっちり売り上げて文句一つ言わせないんだから!
階段を上り、ビッグサイトの会議棟の足下までやってきた。サークル参加者の入り口に近づくと、人ごみの中で、ワタシはひときわ大きな体を見つけた。
久我山さんだ。
もう汗だくで、首にまいたタオルでヒフーと額の汗をぬぐっている。
果たしてお見合いがどうなったのか。
ワタシはまだ聞いていない。
久我山さんもこちらに気付いたようだ。ワタシは軽く手を振って、人の波をかき分けつつ歩みを早めた。
(終)
スレ汚し失礼しました。
思えばコレを書き始めてから、父と義父が他界し、家族が病気になったりと、
プライベートでイロイロあって気付いたら1年以上かかってしまいました。
こんな話に、1年お付き合いいただいた方々に御礼申し上げます。
通しで読んだらきっと、納得いかないトコや書き直したいコトがわんさか出てくると思います。
それはいずれ、自分のHPにコレを掲載する時にまとめたいと思います。
ちなみに、Never Say Never Againのサブタイトルの元ネタは、007好きには有名なアレです。
この話的に意訳すれば「二度と(オタを)やらないなんて言わないで」ってことです。
ラスト、久我山の見合いがどうなったかはボカしましたが、どうなったんでしょうね?
自分も決めてません。
久しぶりに長いSS書いて思ったのは、「ほんとクッチーって便利だね」ってことでしたw
あと、近々、おまけエピソードを投下したいと思います。
まだ書きたいものはあるし、書き残したものもあるので、近いうちにまたスレ汚しいたします。
以上、ありがとうございました。
おお!待ってた!
でも最終回か
おまけも待ってる、乙
乙。大変そうだけど完走できて良かった
おお、最後の長編も遂に幕か
乙でした
余談ですが、今回「おば様」という呼称を連発してた咲ちゃん
その中の人は、別の某アニメでは、おば様と言われてトラウマスイッチが入るキャラをやってます
スー「サーシャに新しい技を授けた」
斑目「へえ、(少し嫌な予感がしつつも)どんなの?」
サーシャ「(いきなりパンツを下ろして)心ノ種ガ産マレソウデス!」
斑目「らめええええええええええええええええええええええ!!!!」
(注)作者はとなクガの人ではありません
失礼しました
>>521 放送倫理機構に目をつけられた「心の種」キタ!
>スー「サーシャに新しい技を授けた」
>サーシャ「(いきなりパンツを下ろして)心ノ種ガ産マレソウデス!」
ちょっと待って欲しい。
これは立派なトイレトレーニングではないか?
523 :
名無しさん@そうだ選挙に行こう:2010/07/11(日) 13:27:26 ID:fYYckrCu
中央大学近辺は良いよねー
つーか立川・多摩はアニメ聖地に恵まれすぎ
もう長編はないのかなあ・・・
木尾の次回作、げんしけん続編というのは無いか……
新人3人の行く末を見たいが……
次の漫画がコケたら書くかも・・・というネガティブな予想
夏(コミ)がくると、げんしけんを思い出す。
年末もだけど。
リアルタイムなら、スーとあの読み切りの1年生3人は、今年が最後の夏か
新作があるといいな
ぢごぷり2巻にげんしけん分はあったのかしら
保守