もしジョジョキャラがハルヒのSOS団に入ったらpart4

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1マロン名無しさん
               ,. -一……ー- 、
                /::::{:/::::‐-:、:::丶:\
                 /:::::/´ ̄ ̄__\、::::l,. -―、
              /::::// /:: ̄、:\::::ヽヽ≦、ス=、、
           /::::/::|,.イ:l::丶::::::::\:X:::',:::ヽ、 ヽハ ',ヽ
           f´ ̄!:::::l:_|_|\::\--/,r=ミ|::::::lヾく:l::', | |
          ヒア_|:l::::|::N,≧ミ、トゝ ハ心}!::::::K:ヾニ二ヽ ただの人間には興味ありません。
         ,r=ヽレ|:|::::l::|{ ト心     `'" !::::::|::!',::|ハ::! ` この中に宇宙人、未来人、異世界人、
        // |:|:::::ハ!、::ヾゝゞ'′ _'_,.ヘ  /::::/:::|_!:l リ   超能力者、波紋使いにスタンド使いがいたら
          //  !ハ//|:|::ヽ::::丶、__丶 _ノ/|:::/イ::ハヘ!ヽ_   あたしのところに来なさい。以上
       L!   /ヘ |:|ミニ='⌒ (⌒ヽ´ _ !イノl/ |:! ! !L_
           〈_{  ヾ.,!/  , ´ \ ∨,.‐、|  l:| |ノ   !
                __!\ /   __ム  V⌒!   !:! !   ハ
             /__レ-〈  / f´ ヽ. '. __! //./-‐ '´ /
                 ヽ! |r'   \l__ V/ /-‐   /
                 「 ! {  `\_f_ノ∠ミヽ! /
               / ヽ`ヽ.二ニァ'V∠二ハ }},!-'
               /   ヽ---/´/レ!ト--'/‐'
             /      / ̄ヽ二ノ´l:ヽノ_
           r‐!       /     l:/   `ヾ==、ー-- 、
          / ̄|     ヽ./     〃  /人   `ト、::::\
          ', /     ,!\   |l       \ /  \:〈
           | ′   / |   `  |:!       /    `
           L.__   /  !    !:ヽ     / !
             ` iー---一'Tー-∨-r‐''´  |

前スレ
もしジョジョキャラがハルヒのSOS団に入ったら part3
http://anime3.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1189945405/
2マロン名無しさん:2008/02/24(日) 18:13:54 ID:???
2げと
3マロン名無しさん:2008/02/24(日) 18:16:20 ID:???
>>1
4マロン名無しさん:2008/02/24(日) 23:37:40 ID:???
               __
           ,...-‐ '´::::::::: `ヽ、  
             /::::/ヘry∧:::::::..::\
         /...:/〈/レ'^ 'V\:::::..:::::ヽ    >>1
         i:::::{Nノ    `ヽ |l:::. ::.: |
         !: : l ●    ●. |i:::::.. ::i|
       (Z)ノ:,、:l⊃ 、_,、_, ⊂⊃::::::::::ヽ(Z)
        /⌒ヽ_::!ヘ   ゝ._)   j /⌒i ::ハ:ヘ
      \ /:::::|::::l>,、 __, イァ/  /(R) (I)
.        /:::::: |_/:::i'  |三/::{ヘ、__∧、|     r―y、
       `ヽ<::::::.. ::!ヾ、__//:::::::...::/    \|^oメ^|/
5自治スレにてローカルルール議論中:2008/02/26(火) 10:58:51 ID:???
>>1乙!

残念なのはまとめへの誘導がなかったことぐらいか………

まとめ
http://www12.atwiki.jp/jojost/pages/11.html
6自治スレにてローカルルール議論中:2008/02/26(火) 16:44:38 ID:???
>>1
7アメリカの人:2008/02/27(水) 11:20:06 ID:???
>>1乙!

そして投下ァ!
8アメリカの人:2008/02/27(水) 11:28:00 ID:???
第30話 「ダービー・ザ・ゲーム 2」

SOS団の部室。いつもはハルヒや徐倫達とダラダラ過ごしているだけの部屋で、俺は椅子に座り、バービーだかオービーだかいう奴と向き合っていた。
「勝負は何でするんだ?」
「これだよ」
そう言ったダービーは麻雀の牌をだしてくる。
「俺は麻雀なんてできないぞ」
「別に麻雀をしてもらう気はないよ。そうだ、麻雀の起源を知ってるかい?」
知らねぇな。古泉はどうだ?
「麻雀は1850年代、中国の上海近辺が起源といわれています。日本には明治末期に入り、関東大震災後にひろまり始めたそうです。
その後この麻雀は太平洋戦争後、アメリカ式の麻雀にとって変わられますけどね」
「ご名答。……さすがの君も麻雀の牌の種類は分かるよね?」
「確か……東南西北白發中と………」
「今のは字牌だね。あとはマンズ、ピンズ、ソーズがそれぞれ1から9まである。読み方があるんだけど君は知らなさそうだからそうは言わないでおくよ。
花牌とか特殊な牌は幾つかあるけど基本はこの34種類の牌だ」
「……それで?どんなゲームをするんだ?」
「ナインだよ」
………ナイン?
「ルールは簡単。互いに数牌を1から9まで持ち、それぞれ1枚ずつ出して大きさを競う……それだけさ」
簡単だな………。
「9回勝負で獲得した得点で勝敗は決まる」
「………得点?」
「このゲームでは勝った時、自分と相手の数字の差がそのまま点になる。8で2に勝てば六点だけど、8で5に勝ったら三点っていう具合だ」
「つまり、いかに自分の強い数字で相手の弱い数字に勝ち、自分の弱い数字はなるべく相手の強い数字にあてないようにする……そういうことですね?」
「その通り。……でも、普通のルールじゃつまんないから特別ルールを入れさせてもらうよ」
9アメリカの人:2008/02/27(水) 11:28:55 ID:???
「………特別ルール?」
「普通このゲームはピンズ、マンズ、ソーズのうち一つだけを使うゲームだけど……今回は全部使おう」
ちょっと待て。それじゃゲームにならないんじゃないのか?
「それを防ぐために一回だした数は二度とだせないとしておくよ。例えばマンズの9を使えばピンズの9もソーズの9も使えなくなるってことだ」
「それで?三つとも使う意味はなんだ?」
「ジャンケンさ。マンズはピンズに勝ち、ピンズはソーズに勝ち、ソーズはマンズに勝つ。
たとえ1に9をだしたとしてもこの組み合わせにあわなければ負けだ。逆に言えばどんなに弱い数字でも、勝つチャンスがあるってことだ」
「……………」
「この三すくみで勝ったら入る点は数字の差にかかわらず三点だ。ルールは分かったかい?」
「ああ」
「牌は用意しておいた。揃ってるか確認してくれ」
目の前の牌を古泉と二人がかりで確認する。
「………古泉」
「なんですか?」
「イカサマとかはどうだ?」
「………僕は長門さんではありませんので保証は無理ですが……僕の見た範囲ではイカサマはありませんね」
「……………」
確認を終え、牌をダービーに返す。
「これでいいのかい?」
「あぁ」
「そうか……ゲームを始める前に一言言って欲しいことがある」
「……俺の……魂を賭ける」
「GOOD!」
10アメリカの人:2008/02/27(水) 11:29:53 ID:???
「さて、勝負を始めようか」

1回戦 キ 0‐0 ダ
俺は牌を前に考え始める。こういう序盤はでかい牌や小さい牌は危険だ。相手の出方がまだ分かんないからな。ここは無難に4ぐらいだろう。
「……決めたかい?」
「まあな」
俺はピンズの4、ダービーはソーズの6だった。
「ちっ………」
「俺に三点か………」

2回戦 キ 3‐0 ダ
さて、次は何でいくか?まだ序盤だ。大きな賭けはしたくない。
「……今、君は大きな賭けをしたくない……そう考えてるね?」
「………え?」
「そんなに驚くことはありませんよ。初歩的な心理学です」
「……………」
古泉のいうとおりだろう。こんなゲーム、誰だって慎重になる、俺だってそーなる。序盤にでかいのがでてこないのは当然のながれだ。そして互いに牌をだし、同時に開く。俺がソーズの6、ダービーがマンズの3だった。
「3点か………」

3回戦 キ 6‐0 ダ
「ふむ……僕はここまで負け続けている……ここらで勝ちたいな……5点ぐらいの勝ちが一番か………」
「……………」
多分、挑発だ。この誘いに乗ってでかいのをだすのは危ない。特別ルールがあるせいで、3点にされちまうかもしれねぇ。……待てよ?だったら相手の挑発に乗ってやるのも手じゃないか?……いや、むしろここは裏をかこう。そして俺は牌をだす。
「決めたかい?じゃ、僕はこれにしよう」
開けた結果、俺がマンズの2、ダービーがマンズの7だった。
「まだまだ君も甘いね………」
「一点差か………」
11アメリカの人:2008/02/27(水) 11:30:54 ID:???
4回戦 キ 6‐5 ダ
「ふふふ……少しだけながれが僕に傾いたようだね……君がこのまま沼にハマった馬のようにジワジワ追い詰められていく様が見えるようだよ………」
「ただの挑発です。落ち着けば大丈夫ですよ」
ああ、勝負は始まったばかりだ。………よし、こいつにしよう。そして俺は牌をだした。それからダービーもだす。
「………その牌はソーズの7……ですね?」
「………な!?」
「運が悪かったですね。僕のだした牌は………」
そう言ったダービーが表にした牌は
「ピンズの……2………」
「僕の勝ちだな」
「ま、待て!まだ俺は牌を開けていないぞ!」
「………ソーズの7を……かい?」
「………ぐ」
「ださないということは僕の読みが当たったということだ……フフ………」
クソッ……なんでこっちの牌が分かったんだ?俺は絶対に見せてなんかいないはずだ。
「……まさか……」
イカサマか?スタンドを使えばわけもないことだろう。だが……スタンドをイカサマに使われていたらどうやって見破るんだ?いや、そもそもこいつはイカサマをしているのか?案外カマをかけただけだったのかもしれない。
「……………」
「その目……なかなか怖いね。君は一見無力だが、実は相当な実力を持っている……さ、次はどうでてくるんだい?」

4回戦終了時 キョン 6点‐8点 ダービー ダービーが2点リード

To Be Continued・・・
12アメリカの人:2008/02/27(水) 11:32:30 ID:???
以上、第30話でした。

もちょっと続きます。

マージャンのルールで間違ってる点があれば指摘してください。なおします

それでは!
13自治スレにてローカルルール議論中:2008/02/27(水) 12:42:05 ID:???
GJ!! スタンド能力でなく実力?でのイカサマだといいな
トランプでなく牌を使うことに意味はあるのかッw
14自治スレにてローカルルール議論中:2008/02/27(水) 14:52:05 ID:???
GJ!





ヤバイ………


ざわ……  ざわ……
キョン「俺のッ…負けッ……!!」
ぐにゃ〜〜


みないなのを想像してしまった
15自治スレにてローカルルール議論中:2008/02/27(水) 16:51:05 ID:???
GJッ!
次にどう来るか読めないところが楽しいです!
続き・・・待ってます・・・
16自治スレにてローカルルール議論中:2008/02/27(水) 19:30:54 ID:???
アメリカの人と前スレ1000GJ
17自治スレにてローカルルール議論中:2008/02/27(水) 23:21:20 ID:???
アメリカの人GJ!
お互いの腹の探り合い、それこそがジョジョ!
それに加えキョンの格好良さがすげぇ

そして前スレ1000、君にも敬意を表する
18自治スレにてローカルルール議論中:2008/03/01(土) 17:53:30 ID:XwMkIZ/e
キョンと嘘喰いの梶がダブルwwww

アメリカの人GJだぜ
19:2008/03/02(日) 11:18:11 ID:???
アメリカの人GJ!

まとめの誘導忘れてた・・orz
20自治スレにてローカルルール議論中:2008/03/02(日) 15:20:09 ID:???
アメリカの人マジ尊敬
超ドキドキするし
21自治スレにてローカルルール議論中:2008/03/03(月) 23:02:43 ID:???
                 ___
        、__ ...  - ‐__'' "´     ゙i
        ヾ   ̄  ̄             |
      ヾ`r             |
      ミ `(            __ r"|..._
      ミ  ´(  _____ ....((  )lノ  `ヽ
      ヾ  ◎===__====== =- ‐ ′     
       |i .i l  :N_, -弋 \弌弋ナ:}:.:}
    :. |i∧ ', :{ ,ィjモト \  イjミトイイV :.  な…
       .|  :メヽ.', `ozZ}      izN。ハ::{     なんなんですか?
      :. |  :ヾ_! ゝ "゙゙    '  `゙ ハ.:', :.   ここ、どこですか?
      |  :.:_イ .:.ヽ.   (二フ , イ :.:.:!:.ヽ     なんであたし
   :.  / rィイ | :.:.ヽ: >r/`<ノ .:.::.}ヽ、\:.   時を止めたんですか?
      / ∧l;l ! :.:.:.://{二 ̄ .} ..:..::リ//ハ.:\
 :.  / .{. ',ヾ、ヽi .:.:.{ /(^`  |.:.:.:.//: : :.}: . ヽ.:.
   / /  ) ヽ ヾ、ヽ:.ハ ヤ{   ∧/.-‐'": : |:.:. i ',
  ./ .,イ .:..} : :\ヾレ'ハ ∧__ノノハヾ、  : : : l:.:.: .ハ ',
  { /| .:.:ハ : : :i Y {ヾ`Yヽニン'ノ}: : } : : : :/:.:.:/ }:.}
  V | .:.:/:.:|_,ィ' ̄  ヽ三{ `ー-ノ : イ : : :/:.:i.:{  リ
    ヽ:.:{、.:.V     : : ヘ     : : {: : :/:.::∧|
     ヽ! )人    : : :人      : : : / \! :.
      "  ヽ : : : : :/イ{     :.ノ: : : :.\ :.
       :.  \__///: :\______/: : : : : : : ヽ
           / //: : :|;|: : : : : : i: : : __: : : : ',
       :.     / 、 {;{   |;|   . : i/. : : : : : :|
          / `Y;{. . . .|;|. : : : /i: : : : : : : : :l

22自治スレにてローカルルール議論中:2008/03/04(火) 01:59:17 ID:???
やはりジョースター家の人間だったのか…。
23自治スレにてローカルルール議論中:2008/03/04(火) 17:53:25 ID:???
もえもえだぜ・・・
24アメリカの人:2008/03/05(水) 12:58:18 ID:???
あんまレス進んでねぇな……投下!
25アメリカの人:2008/03/05(水) 12:59:38 ID:???
第31話 「ダービー・ザ・ゲーム 3」

5回戦 キ 6‐8 ダ
「さ、君は牌を決めたかい?」
「………うるせぇ」
さっきは見事に牌を言い当てられた……が、方法はまるで分からない。そう、山を登っているのに標識もない、道も分からない。そんな感じだ。このままでは負けるのはコーラを飲んだらゲップがでるってくらい確実だ。
「……お前からだせよ」
こいつは今まで俺が牌をだしてからしかうごいていない。この手のゲームは先にださせればどんなイカサマもしようがない………。
「分かった。だそう。そうだね……よし、これにしよう」
ダービーが一つの牌を無造作にだす。
「………よし、これだ」
「ピンズの……3かな?」
「!!」
「当たりみたいだね。僕はピンズの4だ」
「……古泉……」
「さっきからしっかり見張っています……イカサマをした様子はありません」
じゃあ、こいつはスタンドを使ってイカサマしてんのか?古泉……徐倫や長門とは連絡つくのか?
「全然連絡が取れませんね。恐らく………」
「そのとおりだよ。僕の仲間が彼女達を襲ってる」
「……………」
「君に助けは来ない……自分で切り抜けるんだね」
「………くそ」
「さ、次いこうか」
26アメリカの人:2008/03/05(水) 13:00:46 ID:???
6回戦 キ 6‐9 ダ
「そろそろ……勝負を決めたいところだね。そろそろ大勝負にいかせてもらおうかな」
「……くそ……」
「……フフ……」
こいつは恐らく……というか間違いなく俺の1を狙っている……が、こいつがどんなイカサマをしているのか分からない以上、1以外に逃げても無駄だろう。………となれば、特別ルールの三すくみで3点をとるしかない。
「ですが、彼は牌の種類も当てていますよ?」
古泉が囁く。
「……古泉、相手はイカサマをしてるんだ。こっちもやるぞ」
「!ですが……バレる可能性は?」
「ある……が、それを怖がってたら勝てないだろ。いいか?俺が牌をだすと手を滑らせて俺の牌山をひっくり返す、その時牌をすり替えろ」
「……………」
「お前、俺よりは器用だろ?頼んだぜ」
「………はい」
そして俺はマンズの1を掴み、だそうとした瞬間、
「うおっ!」
手が滑った振りをし、机の牌をひっくり返す。
「……焦ってるのかい?」
「……スマン」
その間に古泉はなかなかの早技で牌をすり替えた。
「それじゃ、開けるよ。君からどうぞ」
牌を開けると、ピンズの8だった。
「………なんで8なんだ?」
「9だと確実に怪しまれますからね」
すると、ダービーは慌てるどころか、
「ふー危なかった………な」
「え?」
「いやほんと……危なかったよ……僕はマンズの5だ」
んなばかな!?……いや、まさかこいつ……すり替えを読んで?……だが何にすり替えたかは古泉しか知らないハズだ……こいつは一体……何をしているんだ?
27アメリカの人:2008/03/05(水) 13:05:45 ID:???
7回戦 キ 6‐12 ダ
「……くそ……」
今迄の勝負をみていると、こいつがイカサマをしているのは確実だ。だが、一体どんな手段を使っているんだ………?
「どうしたんですか?……まさか、諦めたのでしょうか?君はそんな人ではないと思っていましたが………」
「うるせぇ………」
俺はそう言うと次の牌をだす。
「ふふ……マンズの5ですね?」
ダービーが牌を開けるとマンズの9だった。
「お前ッ!」
遂にキレた俺は、立ち上がり、ダービーの胸倉を掴む。
「なんだい?これは?」
「………マだろ」
「は?」
「イカサマをしてるだろッ!」
「……何の事です?」
「うるせぇッ!さっきからお前がイカサマをしてるとしか思えねえ事が続いてんだよ!」
「……仮に君のいうとおりだとして……君には僕のイカサマの証拠があるのかい?」
「………ぐ」
「イカサマだというのなら証拠を見せてもらえるかい?」
「……………」
「バレなければイカサマはイカサマでは無い」
………ちくしょお………
28アメリカの人:2008/03/05(水) 13:09:14 ID:???
8回戦 キ 6‐16 ダ
「さて……あと2回しか勝負はない……両方とも勝たないと君は負けるぞ?」
「……………」
「どうした?降参か?」
昔、そう、ハルヒや徐倫に会う前の俺ならそうしていたかもしれない。だが、今の俺は違う。そりゃハルヒみたいなご都合主義的トンデモパワーはないし、
長門みたいなスーパーマンでも俺はない。アナスイみたいにどんなにやられても立ち上がるタフさもないし、徐倫みたいに追い詰められてもクールなハッタリをかまして大逆転劇を演じれるわけじゃない。けどな、
「諦めねぇよ」
そうだ。俺は普通の奴だ。
「……………」
だけど、
「まだ勝てるかもしれねぇんだろ?だったらそれに賭ける」
ハルヒや徐倫だってこう言うだろう。だったら俺もそうする。それが俺がハルヒ達から学んだ事だ。
「無駄なことを………」
29アメリカの人:2008/03/05(水) 13:10:07 ID:???
「さ、どの牌をだすんだい?」
「……その前に……一つやっていいか?」
「………?」
俺は返事を聞かず、全ての牌をうつぶせにする。
「な!?」
「これでいい」
「君、見ないでだすっていうのか!?」
「あぁ、お前がどんなイカサマをしてんのかは全く分からねぇ……だったら俺にも何をだすか分からなくすればいい」
「そうすればバレないとは限らないんだぞ?」
「そうだな。でもハルヒとかと違って俺にできることはこれだけだからな。さ、出せよ。俺は出したぜ」
そして二人の牌を開ける。結果は、
「俺がピンズの1、お前がソーズの8か」
「くそ………」

9回戦(最終戦)キ 9‐16 ダ
「これで最後……お互いにだす数字は決ってるな」
「ああ、だが三すくみがある今回のルールでは……まだ勝敗はきまらない」
「……俺はこれだ」
さっきと同じように見ずに牌を無造作にだす。
「………さ、どうする?」
「……ハッキリ言って屈辱だよ……僕がこんなに苦しめられるとはね……だが、分かっているのかい?僕は君に勝つパターンが二つある。だが君は一つだ」
「つまんねえ脅しするんだったらサッサと選んでくれるか?」
「………ぐ……う……」
「俺は牌を見てないからな。別にお前が何をだそうが怖くない。……なんなら当てたらどうだ?ほら」
「……僕をこけにした報い……たっぷり受けさせてやるよ……これにする」
30アメリカの人:2008/03/05(水) 13:12:49 ID:???
二人で同時に牌を表にする。
「ソーズの9と……ソーズの……1……」
「俺の勝ちだな」
「あ……う……あ……あ……ひ……」
すっ頓狂な呻き声をだしながらダービーが椅子から転げ落ちた。
「こんな……事が……僕が……このダービーが……こんな奴に……?……嘘だ……嘘だろ?」
その時、ダービーのカードから光る何か……魂って奴だろうか、幾つも飛び出し方々に散っていった。と、その一つが古泉に入る。
「ウッ……一体……何が?」
「簡単な事だぜ」
部室のドアが空き、アナスイと朝比奈さんが入ってくる。
「何処にいたんだ?」
「隣の部屋だ。こいつに勝ったのはお前か?キョン?」
ああ。だが、こいつは一体………。
「まあまずはたんなるすり替えだな。その点ではこいつはプロだ。あとはスタンドだ。スタンドの名前はザ・ゲーム。
魂を奪うスタンドで、魂を奪った体……さっきまでの俺や古泉だな、そういう奴等を操って、さらにその体の感覚を共有できるらしい」
「それじゃ、イカサマってのは………」
「先に古泉の魂を奪ってその体を動かして、お前の牌を見ていたんだろうな。お前、途中から牌を見ないでだしたんだろ?だから見破れなくなったんだ……
おい、逃げんじゃねぇぞ」
「ひ、ひいッ!」
「さて……てめぇ、覚悟はできてんだろうな?」
「や、やめてくれ………」
「ダイバーダウ………ん?」
「どうした?」
「こいつ……ビビってもう気絶してやがる………」
「……………」

最終得点 キョン 17‐16 ダービー ハロルド・V・ダービー ザ・ゲーム 再起不能
To Be Continued・・・
31アメリカの人:2008/03/05(水) 13:14:21 ID:???
見ても見なくてもいい履歴書

名前 ハロルド・V・ダービー
26歳 A型 4月28日生まれ
身長 178cm
性格 大の博打好きで自信家。ギャンブルでは自分の勝利を信じて疑わず、余裕の
ある態度はそこからきている。勝つためには手段を選ばない。
血縁関係 空条承太郎に倒されたダニエル・J・ダービーやテレンス・T・ダービ
ーは実の従兄弟。面識はあるようだ。
好きな食べ物 サンドイッチ
嫌いな食べ物 肉類、カボチャ
好きな博打 特に麻雀やチェスが好き
趣味対戦した相手の魂をお手製のカードに閉じ込める事
ザ・ゲーム
パワー E スピード E 射程距離 B
持続力 A 精密動作性 C 成長性 C
能力 ギャンブルで相手の魂を奪う能力。魂を奪った相手を操る事ができる。
32アメリカの人:2008/03/05(水) 13:15:24 ID:???
以上、第31話でした

それでは!
33自治スレにてローカルルール議論中:2008/03/05(水) 13:45:28 ID:X2H9L5e6
ハルヒコスプレソープ
ttp://www.soap-orihime.com/
34マロン名無しさん:2008/03/06(木) 21:27:53 ID:???
ダービー兄弟は理解できないことに対してはもろいわな。GJ!
35マロン名無しさん:2008/03/07(金) 22:15:39 ID:???
GJ!
36ボスの人:2008/03/08(土) 20:28:42 ID:???
新スレ乙です!
卒業式の翌日に風邪でダウンしてました
ようやく落ち着いてきたので投下します
37ボスの人:2008/03/08(土) 20:30:35 ID:???
ディアボロの約束

予定どおり、ハルヒと俺とディアボロさんの三人で
公園にいる修学旅行生に一人一人尋問……もとい話を聞くことにした。
俺はハルヒに親友=弟だという事を話すと、俄然盛り上がったみたいで後悔した。言わなきゃ良かった。
昨日会ったブチャラティ先生とハルヒは話し、ディアボロに自己紹介させた

「ディアボロだ‥‥今日は私のために時間をさいてくれてすまない、警察はあてにならないのでな」

「ブチャラティです。構わない、私達も観光に来たので長くはいれないが」

ブチャラティ先生を見たとき、ディアボロは少し驚いたが
すぐに冷静さを取り戻し自己紹介をはじめた。
昨日の事もあり、いささか落ち込んでいるようにみえる

「ちょっとブチャラティ先生」

勝ち気な声が聞こえた。見るとそこには女の子が立っていた
前髪が膨らみ朝比奈さんとまではいかないがナイスバディだ。どこかまだ幼さが残っているけどな

「約束したでしょ。ピッツア店に連れていってくれるって!」

「トリッシュ‥‥少し待て、今話をしているから」

「駄目だよ。先生の邪魔しちゃ」

「ドッピオあんた本当に真面目ねー。キレると手がつけられないくせに」

ドッピオと呼ばれた青年は頬にそばかすがあり、前髪がくるんとカールしている小柄な奴だ。
二人は恋人というふうには見えないが、仲のいい友達に見える
38ボスの人:2008/03/08(土) 20:33:21 ID:???
「あれ?この人達誰?」

「あぁ、娘と弟を探しているらしい、二人とも知らないか?」

「‥‥娘?」

俺達に気づき二人が怪訝そうな顔をした。
ドッピオは不思議そうだったが、トリッシュは不快そうだ

「トリッシュの父さんは行方不明なんだよね。この人だったりしない?」

ドッピオの疑問に答えず、
トリッシュはディアボロさんの顔を見つめている
ディアボロさんは目もそらさないように見ている。しばらく沈黙が続いた

「あなた父親の顔を覚えていないの?」

「あたし?う〜ん‥‥覚えていないわ。でも会ったら分かると思うの」

ハルヒが急に質問してきたので
トリッシュは最初自分に聞かれたのか分からないようだった。

「じゃあ、ディアボロを見てどう思う?」

「‥‥なんとなくだけど貴方が父だと言われたら納得してしまうわ」

「ふーん、そんな事もあるのね。どうディアボロ?彼女あなたの娘?」

今度はブチャラティ先生までもが怪訝そうな顔をした
ディアボロさんは、ブチャラティ先生、ドッピオ、トリッシュの順に顔を見ると、目を細めて答えた

「いや、人違いだろう‥‥すまなかった。この話は忘れてくれ」
39ボスの人:2008/03/08(土) 20:51:15 ID:???
ディアボロはそれだけ言うと、走って公園から出ていった

「ちょっと待ちなさいよ!」

ハルヒも走って追っていく、俺は三人に迷惑をかけてすまないと謝った

「いいのよ。私も間違っちゃったし」

「でも、俺‥‥あの人と近い人間な気がする。トリッシュとも」

ドッピオはディアボロさんが走っていた方向を、蜃気楼でも見るような目で見ている。
トリッシュも釈然としないのか、じっと見てる。
ディアボロさんもハルヒも既に姿は見えない

「私、追いかけるわ」

「え!?」

トリッシュは拳をつくり、今度は出口を睨んだ

「人違いって言われたけど、ドッピオに言われてそう思えなくなった!
 きっと父よ!ここで逃がしたら二度と会えない気がする!」

「俺も行くよ!」

ドッピオも慌てて同行するのを唱えた
だが、ここは異郷の地。やはり不安のなのだろう
ブチャラティ先生の方を助けを求めるような目で見ている
40ボスの人:2008/03/08(土) 20:51:41 ID:???
「仕方ない、生徒の一大事だ俺も行こう。
 徐倫先生他の生徒を頼みます!ジョルノ、フーゴ俺のクラスの誘導を頼む!」

おお、男だ
この言葉にドッピオは安堵したようなため息をついた
トリッシュも口では強気だったが、見るからに安心していた

「ええ、分かったわ」

「分かりました」

「ブチャラティ先生‥‥あんたの為ならなんでもするが、こいつらの誘導僕にできるかな?」

にしてもこの頼まれた三人、ブチャラティ先生に負けず劣らず奇抜な髪と服装をしている。
これも文化か?カルチャーショックっていうやつか?

「ほら、貴方も行くわよ」

トリッシュに急かされ、俺も慌てて後を追っていく、
ディアボロさん良かったな見つかって‥‥あれ?弟は死んだんじゃないのか?
じゃあ、こいつは――誰だ?

to be continued...
41ボスの人:2008/03/08(土) 20:57:38 ID:???
皆さんが予想していた生徒と先生いかがでしたか?
レスの中には正解した人は少なかったですが、先生の名前は誤字ではありません
時々でいいからフーゴの事思い出してください
42マロン名無しさん:2008/03/08(土) 22:23:14 ID:???
投下乙です
ここでフーゴが出てくるとは予想外でした
てっきりナランチャが出てくるかと……
他の面々は何してるんだろ?
アバッキオは今度こそ真面目な警官やっててほしいものだ
43マロン名無しさん:2008/03/09(日) 00:28:58 ID:???
投下乙そしてGJでした

今のドッピオやトリッシュを見ての
ディアボロの心境を考えると胸が締め付けられるようだ……
名乗るに名乗れないよなあ……
44マロン名無しさん:2008/03/09(日) 12:36:25 ID:???
GJでしたッ
ワキガとかリーダーとか兄貴とかは何やってんだろうな
45マロン名無しさん:2008/03/09(日) 13:09:59 ID:???
>>44
リゾットは日本に転勤中らしいから出てくる可能性はある
しかし転勤中という事はビジネスマンやってるのかリゾット
ワキガはどうも真面目に学生やってたり(年齢的には大学生か)働いている場面が想像できないw
以下妄想

アバ茶 「公園で乱闘騒ぎが起こっていると通報があって駆けつけたら……またお前か! グイード・ミスタ!!」
ワキガ 「別に俺が喧嘩を吹っかけたわけじゃねーぜ。 あの連中が女に乱暴してたんで止めに入ったんだよ。」
アバ茶 「少しは身元引受人である俺の立場を考えろ!!」
46マロン名無しさん:2008/03/12(水) 11:05:47 ID:???
>>45
イイヨイイヨー
47マロン名無しさん:2008/03/17(月) 18:17:04 ID:???
誰も居ない、ハルヒの太ももをさわるなら今のうち
48マロン名無しさん:2008/03/18(火) 20:22:17 ID:???
俺が時を止めた・・・太ももを触ろうとした時点でな・・そしてやれやれ・・・・・・・・・・・・・・俺が先に触った・・
49マロン名無しさん:2008/03/19(水) 11:33:07 ID:???
>>48だがバイツァ・ダスト

47 :マロン名無しさん :2008/03/17(月) 18:17:04 ID:???
誰も居ない、ハルヒの太ももをさわるなら今のうち
50マロン名無しさん:2008/03/20(木) 15:47:40 ID:ZyJFSveM
>>49は防ぐ」、「Dut落ちも防ぐ」
「両方」やらなくっちゃあならないってのが「ファン」のつらいところだな。
(上げる)覚悟はいいか?
オレはできてる。
51マロン名無しさん:2008/03/20(木) 22:20:45 ID:???
Dut落ちってなんだよ
52マロン名無しさん:2008/03/21(金) 20:00:49 ID:???
過疎ってるな、とりあえず点呼でもとろうかな
ノ 1
53マロン名無しさん:2008/03/21(金) 20:11:10 ID:???
54マロン名無しさん:2008/03/21(金) 21:50:35 ID:???
点呼厨氏ね、こうですねわかります
55マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:11:00 ID:???
急で悪いのですが、投下します。
よろしくお願いします。
56マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:13:36 ID:???
よしきた、支援

一行目空白規制だけ気をつけて
57マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:15:14 ID:???
「でも、たぶん・・・・・・もしかしたら魔法はあるのかもしれない。願い事のようなこともね。
ただ問題なのは・・・・・・たぶんそれを信じる人が少ないってことかもしれないな」
(ロッド・サーリング
「大いなる願い」より)

「おい?なあ聞いてんのか?」
顔を上げると、今時珍しい改造学ランを着た大柄な男が、体を折り曲げてぼくの机に手をのせていた。
「ああ・・・。何だっけ」
ぼんやりとぼくが答えると、億泰はあきれたというように肩をすくめた。
「おいおい・・・。『二組のプッツン女』の話だよ」
「『プッツン女』?」
聞いたことがない。
「オメー、知らねーのか?涼宮ハルヒって奴でよ、俺らと同じ一年だけどそれはスゲー奴らしいぜ」
「へえ」
億泰はたいていのことは「スゲー」と言う。
どうせ二股三股かけたとか、先生を殴ったとか、ありふれた話だろうと思った。
実際、話題を変えてもよかった。だがその時、ぼくはただ何となく聞いていた。
「まず!入学してすぐの自己紹介の時によォ〜。・・・何て言ったと思う?」
「いいから話しなよ」
「『ただの人間には興味ありません。
この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上』って言ったんだぜ!」
「何だって?」
ぼくは絶句した。入学時の自己紹介でそんなことを言う人がいるだろうか?
そんなことを言ったのなら「プッツン」呼ばわりされるのもわかるが・・・。
ぼくが何も言えずにいると、億泰がもう一度言おうとしたのでぼくは慌てて遮った。
「嘘じゃあないのか」
「嘘じゃあねえよ。それにな、涼宮はそれだけじゃあ終わらなかったんだ」
それからの内容も、とても信じられないものばかりだった。
各クラブを渡り歩いては一日で辞め、ついに自分で非公認のクラブを作ったこと。
その宣伝をバニー服を着てしようとしたこと。(止められたらしいが)
・・・いよいよ、怪しくなってきた。
58マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:16:34 ID:???
支援した、なら使ってもいいッ!!
59マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:22:46 ID:???
「億泰」
ぼくはまだ話し続ける億泰に声をかけた。それにしてもやけに楽しそうだ。
「おお?どうよ?スゲーだろ!?」
「・・・いくらなんでもそれは嘘だよ」
ぼくがそう言うと億泰は声を荒げた。
「おいおいおい・・・・オメーよお〜。
俺が嘘ついてるって言うのかよッ!?」
「そうじゃあないけど、話が大きすぎるよ。
元の話があるにしても、そうとう尾ひれがついてるんじゃあないのか?
そもそも、億泰はその『ハルヒ』って子に会ったことはあるのか?」
どうやら急所をついたらしく、億泰は口ごもった。
「う・・・。無いけどよ・・・」
「だろう?きっと誇張されてるだけだよ。いや、からかわれたんじゃあないか?
億泰は簡単に信じるからな。大体・・・」
「じゃ、じゃあよォー!見に行こうぜッ!」
突拍子のない提案にぼくは唖然とした。
「五組だぜッ!すぐ近くだッ!行くぞッ!」
どうも、言い過ぎたらしい。かなり熱くなっている。
わざわざそんな暇人丸出しなことを・・・。考えるだけで頭痛がする。
思わず天を仰ぐと時計が視界をかすめた。・・・ツイてる。口実を見つけた。
「億泰、それはいいけどもうすぐ授業だよ。
次は実験だからもう行かないと」
「ん。・・・そーか。でも明日はぜってーに見に行くかんな!」
億泰は熱っぽく言ったが、多分帰る頃には忘れてるだろう。
教室を出てからも熱は覚めず、なだめるのに骨を折った。
60マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:24:51 ID:???
支援
61マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:26:06 ID:???
それにしても、考えれば考えるほど荒唐無稽な話だ。
まあ、そんな人がいれば面白くはあるだろうが・・・。
そう思いながらふと手元に目をやると、「あ」と思わず声が出た。
「ん?どーした?」
「いや・・・筆箱忘れた。取りに戻るよ」
「貸してもいいぞ」
「いいよ。先に行ってて」
そう言ったが、億泰は渋い顔をした。
「ん・・・。でもよ・・・」
「コレのことか?」
ぼくは笑って乗っている車椅子を叩いた。
「大丈夫さ。この学校は公立のわりにバリアフリーが進んでるから」
「・・・・・・」
まだ納得のいかない様子の億泰に「じゃあ」と声をかけると、
ぼくは教室へと一人引き返した。
ああは言ったが、なんてことない距離でも車椅子じゃあ移動に苦労する。
教室に着いた時にはすでにチャイムが鳴っていた。完全に遅刻だ。
不思議なもので、遅刻が確定すると急ぐ気も薄れる。
脱力すると、息が乱れていることに気付いた。・・・体力が、落ちた。
誰もいない教室はどこか寂しくて、世界に一人だけ取り残された気さえした。
何となくため息をつく。窓の外を見ると、別のクラスがソフトボールを始めようとするのが見えた。
たくさんの生徒たちがまるで人生に何も問題がないかのようにはしゃいでいる。
「くそっ」
思わず口をついて出た言葉に、ぼくは驚くと同時に自嘲した。まだ諦めていないのか・・・。
自嘲はやがて苛立ちに変わった。握りこぶしを作ると、ぼくはそれを力いっぱいに太ももに振り下ろした。
肉と肉がぶつかる音が響く。痛みはない。この脚は死んでいる。回復の余地は無い。みんなが「諦めろ」と言った。
医者も、マスコミも、親も、みんなが。ぼく?ぼくだって同感だ。諦めるしかないじゃあないか。
奇跡を信じるほど子供でもない。どうにもならない。分かっている。
・・・分かっているはずなのに、どうして昔が忘れられないんだろう?
・・・何を泣いているんだ、ぼくは。筆箱は取っただろ?戻れ。「いつもどおり」に。
そう自分に言い聞かせると、ぼくは教室を出た。
62マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:29:25 ID:???
こんな気分になることは珍しくない。ざらにあることだ。
ぼくに必要なのは、受け入れることだけ。
これからも続く、ズルズルと生きるだけの人生を。
「くそっ」
もう一度言うと車椅子を走らせる手に力を込めた。
今はとにかく授業に行くことだけを考えよう。それだけを・・・。
暗い気分を無理に押さえ付けようと、それしか考えていなかった。
だから気付かなかった。角の向こうを走る足音に。
気が付いたときには遅く、目の前に女の子が飛び出してきていた。
−−−止まらなくては。車椅子に急ブレーキをかける。それは間に合った。
だが、急減速にぼくの体は耐えられず、前方へと投げ出された。
強い衝撃に意識が飛ぶ。一瞬、何が起こったのかわからない。
隣で勝ち気そうな女の子が立ち上がろうとしている。
この子にぶつかったのか・・・。女の子は立ち上がるとキッとぼくを睨んだ。
「あんた、何やってんのよ!いきなり突っ込んできて!」
飛び出してきたのはそっちだろ?
そう言い返したかったが、口からでるのはうめき声だけだった。
頭を打ったらしい、ひどく痛む。
「あー、もう!授業には遅れるし、バカに体当たりされるしもう最悪!」
ずいぶん好き放題言われている。なんだこの子は。だんだん腹が立ってきた。
その子はそれからもう一つ二つ暴言を吐くと、スカートをはたいて手を差し出した。
痛みを耐えるのが精一杯のぼくはわけもわからずその子を見ていた。
イライラした声をあげる。
「いつまで倒れてるつもりなのよ。さっさと立ちなさいよ」
「立て」だと・・・。残酷なことを言う。車椅子が目に入っていないのか?
彼女の発言で最も悪意の無い言葉がぼくの逆鱗に触れた。
63マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:29:32 ID:???
「僕」、「車椅子」…そしてこの「口調」…ッ!!
"奴"か…"奴"なのかッ!? 支援!!
64マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:31:05 ID:???
声の出ないままぼくは彼女を睨みつけた。彼女は気付かずにぼくの腕を掴む。
「テメェー!何やってんだ!」
億泰の声が聞こえる。遅いので様子を見に来たらしい。
意に介さず彼女はぼくを立たせようと手に力を込める。
無駄だ・・・。引き上げる力に逆らおうとはしないが、ぼくが立つことはない。
その間。世界がゆっくり動くような気がした。
引き上げられた体が上昇を止める。だが・・・だが、これは・・・。
自分の身に起きたことが信じられない。地面は、ドキドキするほど遠い。
−−−立っている。動いた。1ミリだって動かなかったこの脚が。
どうして・・・。女の子を見る。怪訝そうな顔付きでぼくを見ている。
「変なの」
そう言うと彼女は走り出した。待ってくれ。
伸ばした手はしかし宙を掴み、ぼくは前のめりに倒れた。
何が・・・起こった・・・?心臓の鼓動が止まらない。今、確かに・・・。
確かに、ぼくは、立った。
「お、おいジョニィ大丈夫か?」
億泰が駆け寄って来た。呆然としたまま頷く。もう痛みなんてどこかに行っていた。
「なあお前、今・・・」
立っていた。なぜ・・・?あの子は?そうだ、あの子は誰なんだろう。
「にしても、偶然だよな」
「何・・・が・・・?」
頭が混乱して、それだけ言うのが精一杯だった。
「アイツだよ。アイツが『涼宮ハルヒ』だ」
「涼・・・宮・・・ハルヒ・・・」

この「物語」はぼくが歩き出す物語だ
肉体が・・・・・・という意味ではなく、青春から大人へという意味で・・・
ぼくの名前は「ジョニィ・ジョースター」
最初から最後まで本当に謎が多い人「涼宮ハルヒ」と出会ったことで・・・

To Be Continued・・・
65マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:32:20 ID:???
キタァァアアアアアアジョニィイイイイ!!!!!!!!
投下乙ッ!!
66マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:34:39 ID:???
投下、終了しました。
すみません。改行規制に引っ掛かって手直ししながらの投下になってしまいました。
長々とかかってしまい、支援してくれた方々には申し訳ないです。
67マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:37:26 ID:???
いやはやGJ!
ジョニィ、億泰と仲いいのかw なかなか新しい…
68マロン名無しさん:2008/03/22(土) 00:39:50 ID:???
じょ、ジョニィ!?するってーとこれは・・1巡後の世界か!
ともあれGJ!GJGJGJGJGJGJGJGJ!!!!!
69マロン名無しさん:2008/03/22(土) 01:36:41 ID:???
康一にしては少し違和感がと思ったらお前かジョニィ!GJ
70マロン名無しさん:2008/03/22(土) 07:26:47 ID:???
ジョニィと億泰ッ! この世にこれほど意外な組み合わせがあるだろうかッ!?
浮気されたジャイロカワイソス
71マロン名無しさん:2008/03/22(土) 09:24:53 ID:???
GJ!
意外!それはジョニイッ!
ともあれ今後に期待します。乙でした!
72マロン名無しさん:2008/03/22(土) 21:31:36 ID:???
素晴らしいっ!ディ・モールトベネ!
73マロン名無しさん:2008/03/26(水) 11:17:58 ID:???
このスレを保守す…保守したッ!
74マロン名無しさん:2008/03/26(水) 23:44:23 ID:???
保守がてらに1つ言わせていただきたい…

億康の人と花京院の人は息災だろうか
75マロン名無しさん:2008/03/27(木) 11:08:06 ID:???
億康の人はサイトがあるしイタリアの人は一応区切りはついてる
投下して欲しい以前に心配なのは花京院の人なんだよな、投下予告したまま消えてしまった…
7655:2008/03/27(木) 23:42:34 ID:???
落ちそうですね。
延命のためにも早速投下します。
77ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/27(木) 23:44:56 ID:???
第二話「バスケット・ケース」

じめじめとした、薄暗い廊下はぼくの現状を表しているようだった。
「・・・どうしよう」
一人、ぼくは途方にくれながら億泰に教えてもらった事を思い出していた。
『涼宮に会いたい〜?・・・五組にいねーなら部室にいると思うぜ。
『SOS団』とかいう部を作ってるらしーからよ』
そういうわけで文化部の部室が集まっているという「部室棟」、通称「旧館」にやってきたのだが・・・。
クラブに入ろうと思った事はないので、ここには来たことがない。
それに、貼られていた地図には『SOS団』の文字すらない。
どういうことなのか・・・?億泰の情報が間違っていたんだろうか。
聞こうにも辺りに人はいない。ひたすら薄汚い廊下が続いている。
「・・・ふう」
ため息の一つも出る。今日は帰ろうか・・・。そう思った時、前方に人影が現れた。
その女の子は、不思議な雰囲気を持っていた。
美人であるというのもあったが、それ以前に何か・・・人を引き付ける雰囲気があった。
「あ、あの・・・」
「ん、なあに?」
澄んだ声で言うと、彼女は屈託のない笑顔をこちらに向けた。
「えと、『SOS団』の部室がどこか知りたいんだけど・・・」
愛想笑いだろうが何だか照れる。億泰なら一発で勘違いしてるな。
「・・・あたし、知ってるよ。案内するわ」
そう言うと、彼女は後ろに回って車椅子を押し始めた。
ぼくは内心ドギマギしながらそれを止めた。
「いいよ。場所だけ教えてくれれば」
「いいのいいの。あたしも近くに用があるから」
今、君が歩いて来た場所に行くんじゃあないか。そうも思ったが悪い気はしない。
ここは好意に甘えようと、それ以上言うのは避けた。
78ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/27(木) 23:46:49 ID:???
「ねえ、『SOS団』に何の用事?不思議なことでもあったの?」
車椅子を押しながら、顔を覗き込んで話す。愛くるしい笑顔にドキッとする。
「不思議?」
「チラシに載ってたじゃない。知らない?」
「ああ、いや・・・。何て言うか・・・入団、しようかと思ってるんだ」
ぼくの言葉に彼女は少しの間動きを止めた。かなりの衝撃を受けたようだ。
「・・・へえ、でも、どうして?」
「・・・UFOに興味があって」
とっさに嘘をついた。本当の理由を言っても信じてもらえるわけがないからだ。
ぼくの答えが気に入ったのか、彼女は盛大に吹き出した。
「そうなの。きっと歓迎されるわ。あ、着いたわよ」
「え。ここが・・・?」
目の前のドアには「文芸部」と書かれたプレートが掛かっている。
「いいの。まだ正式なクラブじゃあないから、ここを借りてるらしいのよ」
「そうなのか。・・・ありがとう。わざわざここまで」
ぼくが礼を言うと彼女は弾けるように笑った。
「いいのよ。それよりみんなと仲良くしてね。バイバイ」
そう言うと、手を振って今来た道を走り去っていった。
やっぱりわざわざ案内するために戻ってくれたんだ・・・。
呆然と手を振り返しながらそう思う。あ、名前くらい聞いておけばよかった。
79ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/27(木) 23:52:25 ID:???
目の前の年代物のドアを見る。ここに「涼宮ハルヒ」がいるはずだ。
今日起こった「奇跡」、あの手掛かりは「涼宮ハルヒ」しかない。
もう一度彼女に会おう。ぼくは意を決してドアをノックした。
「へーい」
気の抜けた声が答えた。ほどなくしてドアが開く。
出迎えた男は・・・。何と言うか、地味な男だった。
何とも、特徴がない。不審そうな表情だけが印象的だった。
「あの、何か?」
面倒そうに男が話した。
「えと、ここが『SOS団』の部室だよね?」
「・・・ああ、そうだが」
「実は、入団したいんだ。『涼宮』って人はいるかな」
ぼくがそう言うと、男は精神病患者でも見るような顔をした。
「・・・お前、まさか異世界人か?」
「は?」
「いや・・・とりあえず入ってくれ」
言われるままにぼくは部室に入った。
中は思ったよりも広い。もっとも、物が少ないからそう思うだけかもしれないが。
見回すと、パイプ椅子に座りながら脇目も振らず読書している少女がいた。
だが、ショートカットで無表情な顔はさっき見た「涼宮ハルヒ」とは似ても似つかない。
彼女はここにはいないのか?そう思った時、
「キョンくん」
視界の外から声がした。見ると、爽やかな笑顔の男がモデルのように立っていた。
80ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/27(木) 23:54:42 ID:???
「そちらの方は?」
答えに窮したのか、キョンと呼ばれた男はぼくを見た。
「あ、ぼくはジョニィ。ジョニィ・ジョースター」
「・・・このジョニィさんとやらが、我らがSOS団に入団したいんだとさ」
キョンがそう投げやりに言うと、爽やかな男は笑顔を強張らせた。
「はあ。・・・折角ですが、今は団長の涼宮さんがおりませんので・・・」
丁寧に返答をしてくれたが、一日だって今は待っていられない。
「待たせてもらってもいいかな。・・・団長をさ」
ぼくがそう言うと、男は困惑の表情を浮かべた。
「あのですね・・・」
話そうとしたその時、ドアがノックされた。
全員、いや、読書する少女を除いて全員がドアに注目した。「失礼しまーす。・・・あれ?」
入って来た少女はぼくを見てきょとんとした。
その小柄な少女は小動物のように愛らしかったが、やはり「涼宮ハルヒ」ではない。
「えっと・・・あの、どなたですか?」
と、ぼくを見ながらやはり不審そうに言う。ぼくはそんなに怪しく見えるのか?少し自信を無くす。
「この方は・・・」
「ぼくはジョニィ、ここに入団を希望してる」
話そうとした爽やかな男を遮ってぼくが言うと、少女は顔をぱっと明るくした。
「あ、そうなんですか?あたしは朝比奈みくるです。どうぞみくるちゃんとお呼び下さい」
そう言って愛嬌たっぷりに微笑んだ。
「ああ。よろしく・・・あの、何でナースなんだ?」
ぼくが聞くとみくるさんは顔を赤くした。・・・こんな表情もなかなかいい。
「あ、あの・・・これは涼宮さんが・・・」
「あ、そうそう。その涼宮さんなんだけど」
危ない危ない。破壊力たっぷりの笑顔に当初の目的を忘れるところだった。
「はい、もうすぐ来ると思います」
みくるさんが答えると、爽やかな男はなぜか肩をすくめて言った。
「朝比奈さん、涼宮さんは・・・」
最後まで言い終わらないうちにドアがけたたましい音とともに開けられた。
81ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/27(木) 23:57:01 ID:???
「おーっす!みんな!」
あっけらかんと言ったその少女は昼に会ったあの少女だった。
「涼宮ハルヒ」・・・。普通の少女に見える。ハルヒはぼくに目を止めると首を傾げた。
「あれ、あんた、だれ?」
覚えてないのかよ。
「ぼくはジョニィ。ここに入団したいんだ」
ぼくがそう言うと、ハルヒはぽかんと口を開け、夢遊病のようにぼくに歩み寄って来た。
「あたしとしたことが・・・」
口から漏れるように呟く。何だかよくわからないが不気味だ。
たじろいでいるうちに、すでにハルヒは目と鼻の先まで近づいていた。
「気付かなかったわ・・・物語には必ず外国人枠がいるものなのに−−−」
夢を見ているように言う。・・・わけのわからないことを。
「でも」
そう言って、それまで宙を舞っていた視線をぼくに移す。
「自分から来てくれるなんて!」
歌うように言うと、ばすん!と肩を叩いた。痛いんだが。
「入団を許可します!いえー。拍手ー」
ぼくを始めとした全員が呆気にとられるなか、みくるさんの拍手だけが空しく響いていた。
82ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/27(木) 23:59:07 ID:???
「・・・あの、涼宮さんだっけ?」
「ハルヒでいいわよ。外人なんだから」
よくわからない理屈を言うと、
ハルヒは俄然張り切って駅員のように団員たちを指差した。
「そいつはキョン。隣が古泉くん。あっちの可愛いのがみくるちゃんで
そっちのショートカットが有希」
紹介してるらしい。となるとぼくも改めて自己紹介したほうがいいだろう。
「みんな、ぼくはジョ」
「さーて、みんな。強力な外国人助っ人が入ったところで、
第三回SOS団全体ミーティングを開始します!」
・・・どうやら違ったらしい。
「みなさん、これまであたしたちは色々やってきました。
ですが、正直なところ成果らしい成果もなく、団長のあたしも内心では焦りを感じていました。
しかし、今日!ついに新入団員が現れました!
あたしたちの努力が実ったのです!
しかしながら、これに浮かれていてはいけません。
あたしたちは単なるお遊びクラブじゃないのです。
つきましては恒例のアレを行いたいと思います!」
ハルヒは大統領選でも通用しそうな演説を始めると、ここで一呼吸置いた。
それにしても、アレって何だ。
「・・・まさか」
キョンが呟く。
「そう、『不思議探索パトロール』です!
次の土曜日!つまり明日!いつも通り朝九時に北口駅前に集合ね!
絶対来るように。来なかった者は死刑だから!」
死刑?『不思議探索パトロール』?この子は何を言っているんだ。
ぼくが呆気にとられていると再びハルヒが口を開いた。
「こうしちゃいられないわ。あたし、明日の準備をするからっ」
そう言い残すと引き止める間もなく嵐のように走り去って行った。
83ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/28(金) 00:10:42 ID:???
「あ・・・」
「・・・やれやれ」
「ふふ、今回は参加しないわけにはいかないでしょうね」
思い思いの反応をとる。ぼくは呆然としたままだ。と、目の前に湯飲みが差し出された。みくるさんだ。
「ジョニィくん、お茶をどうぞ」
「あ、ありがとう。」
案外マイペースな人だ。そう思ったが、男二人はリバーシ、ユキは読書を平然としている。
ぼくが異常なんだろうか。それともみんなが慣れているのか。
「ジョニィくんでしたね?」
コイズミが笑っていた。ジャパニーズスマイルって感じの笑顔だ。
「古泉一樹です。どうぞよろしく。」
すっと板についた動作で手を差し出す。
「よろしく。あの、パトロールっていうのは何?」
「別にたいしたことじゃないさ」
口を挟んだのはキョンだ。
「ただ散歩したり、買い物したりして時間つぶせばいいだけだからな」
「何だって?そんなこと何のために?」
「それは・・・おっと」
そう言うとキョンは喋るのを止めて鞄を手に取った。
84ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/28(金) 00:11:37 ID:???
不思議そうに見つめるぼくの視線に気付くと、キョンはぼくの後ろを指差した。
見ると、ユキが本を閉じている。だからなんだと視線を戻すと、キョンはすでに立ち上がっていた。
「え?ちょっと待て、君たち帰るのか?」
「そうだが?」
当たり前のようにキョンが答える。
「何を言ってるんだ?何か活動してるようには見えなかったぞ?」
「いつもこうだよ」
すでにドアに手をかけている。しかも古泉とユキも続いている。
「なあ、パトロール・・・いや、『SOS団』の目的は何なんだ?」
「そりゃ難問だが明日来りゃわかるさ。遅れんなよ」
キョンに伴い古泉も帰った。
そしてユキもちらりとぼくを一瞥すると音もなく帰って行った。気付けば部室ががらんとしてしまった。
一体どうなっているんだ?ますます『SOS団』のことが分からなくなってきた。
「あの・・・」
呆然とするぼくにみくるさんがおずおずと話しかける。
「着替えたいので・・・先に帰ってくれませんか?」
「・・・・・・」
たった一つ分かるのは、一筋縄じゃいかない人たちばかりだってことだ。

To Be Continued・・・
8555:2008/03/28(金) 00:13:24 ID:???
投下終わりました。
花京院の人はどうしたんでしょうね。
過疎も気掛かりです。
職人さんたちがスレを救うと信じて・・・!
ご愛読ありがとうございました。(終わりません)
86マロン名無しさん:2008/03/28(金) 00:23:31 ID:???
GJ!!
すでにメンバーは揃った後か、
これからどんな「引力」に引っ張られるのか
87マロン名無しさん:2008/03/28(金) 00:23:37 ID:???
投下乙そしてGJでした
ジョニィが部室に入った時にみくるが着替えてて
「最高だった……」になるのをうっかり想像しましたw
88マロン名無しさん:2008/03/28(金) 05:08:03 ID:???
投下乙です。
まだ明かされてなくて気になることがいろいろありますが、
あれは?これは?と訊かずに大人しくwktkして待ってますw
89マロン名無しさん:2008/03/28(金) 12:02:37 ID:???
面白いwwwこれは期待せざるを得ないッ!
たらしジョニィ時代だったらどうなってたのかも気になるなw
億康は友人@蚊帳の外ポジションなんだろうか…
90マロン名無しさん:2008/03/28(金) 12:02:41 ID:???
ちょっとそこ
02〜
91マロン名無しさん:2008/03/29(土) 21:30:38 ID:???
「保」ち「守」ると書いて『保守』するッ!
92マロン名無しさん:2008/03/30(日) 02:03:59 ID:???
キョン「ちわー。・・・ん?」
みくる「ふぇぇぇ〜。やめてくださ〜い」
ハルヒ「ほらほらっ、着替えて!」
キョン(やれやれ・・・朝比奈さんも怒ればいいのに)
バグシャア
キョン「!?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴ
ハルヒ「いいパンチしてるぜッ!この野郎ッ!」
みくる「オレが最強だぁぁーッ!」
古泉「ファイト・クラブだッ!」
長門「決着ゥゥーッ!」
キョン「・・・・・・」

勢いでやった。反省はしていない。
9355:2008/03/31(月) 23:35:40 ID:???
過疎ですね・・・。新生活の時期だからみんな忙しいんでしょうね・・・。
それはそうと、投下します。
94ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/31(月) 23:37:46 ID:???
第三話「マジカル・ミステリーツアー」

人の話を聞かず、唯我独尊、破天荒な団長。
不気味なくらい礼儀正しく、常にジャパニーズスマイルを浮かべた男。
人に興味を示さず、ろくに見ようともしない少女。
地味で、妙に落ち着いた雰囲気の男。
ナース。
以上がSOS団の面々だ。早計だと思いたいが・・・正直、変人ばかりだ。
とにかく、明日の「パトロール」には行こう。死刑にはされたくないからね。

そして土曜。ぼくは二十分ほど早く駅前に着いた。
別に、新入りだから早く来ようとしたわけじゃあない。
車椅子で駅前まで行くのは辛いのでバスに乗って行くのだが、
ちょうどいい時間のバスがなかったから早くなっただけだ。
この時間なら、まだみんなは来ていないだろう。何か飲みながらゆっくり待とう。
そう思いながら改札出口に行くと、すでに全員が集まっていた。
95ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/31(月) 23:39:32 ID:???
「早いわね。感心感心」
唖然とするぼくにハルヒが平然と言った。
なぜもうみんなが集まっているんだ?改めてみんなを見る。
ハルヒはTシャツにスカートというカジュアルな姿。
(よく言えば)元気で明るいハルヒには似合っている。
楽しそうにしている姿は、第一印象を差し引いても魅力的だといえる。
朝比奈さんはクラシックなワンピース。
おとぎ話のヒロインのような清楚さの中に、どこかコケティッシュな魅力を持っている。
テーマは「少女から大人へ」といったところだろうか。
古泉はジャケットにネクタイというフォーマルな格好。
しかも素材の雰囲気からすると、安物ではないようだ。
相変わらずにこやかに笑っている。このままモデルをやれる。
そしてユキは・・・なぜか制服だ。いつも通りの制服をいつも通りに着ている。
これで全員・・・あ、キョンがいない。
「うげ・・・。ジョニィ、早いな」
考えているうちにキョンが来た。早いと言うがまだ集合時間十分前だ。キョンも早い。
「よし、キョンね。行くわよ」
そう号令を発するとハルヒは歩き始めた。みんなもそれに続く。
「え?どこに行くんだ?」
誰にともなく聞くと、古泉が答えた。
「今日の予定を決めに喫茶店に行くんですよ」
確かにまだ何も決めていない。ただ歩けばいいというものでもないだろう。
それにしても、「SOS団」の目的は何なのだろう。考えるぼくに古泉が耳打ちした。
「それから、集合に最後に来た人は罰金として、
お茶をご馳走することになっているんですよ。今日はキョンくんですね」
・・・事前に教えろよ。
96ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/31(月) 23:41:29 ID:???
喫茶店に入り、注文すると団長のありがたい指示が下された。
これから三組に分れて市内を探索する。
不思議な現状を発見したら携帯電話で連絡を取りつつ状況を継続する。
後で落ち合い反省点と今後を話し合う。
これだけ。
「じゃあクジ引きね」
ハルヒはアンケート用紙を裂いて作ったクジをテーブルの中央に置いた。
「・・・ぼくは星だ」
「おや、僕とペアのようですね」
古泉が爽やかに言う。心なしか嬉しそうだ。
キョンとペアのハルヒもなぜか上機嫌だ。
「古泉くんなら安心ね。新入りに基本を叩き込んでやんなさい」

「はい、分かりました」
古泉がもっともらしく頷く。基本って何だ。
そういえば。ぼくは口を開いた。
「そのことなんだけど、SOS団は一体何をするクラブなんだ?」
よくぞ聞いた。そう言わんばかりにハルヒは目を輝かせた。
「教えるわ。SOS団の活動内容、それは」
ここでハルヒはセリフを止め、不敵な笑みを浮かべた後に言った。
「宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶことよ!」

時が止まった。唖然とするぼくに、ハルヒは何を勘違いしたのか胸をはった。
「どう?感動した?」
「ん〜・・・!なかなかオモシロいよ。かなり大爆笑!」
閃光のようなストレートがぼくに叩き込まれた。
「もう!行くわよ!」
ハルヒは伝票をキョンに握らせると足音高く歩いて行き、ドアに手をかけると振り返った。
「それから、もう一回団長にそんな口聞いたら磔刑だから!古泉くんは教育しといて!」
磔刑って。
97ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/31(月) 23:43:43 ID:???
「大丈夫ですか?」
鼻をさするぼくに微苦笑を浮かべた古泉が言った。
「まあね。それより、これからどうする?」
古泉が時計を見る。
「そうですね・・・。改めてどこかの店にでも入りませんか」
さっきお茶を飲んだばかりだが。訝しがるぼくに古泉は破顔した。
「恥ずかしい話ですが、寝坊して朝食を抜いたんですよ。
少し早いですが、ブランチとしませんか。
それに、あなたとはまだろくにお話ししていませんし」
そういうことなら異論はない。ぼくたちは古泉おすすめの店に入った。
98ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/31(月) 23:45:20 ID:???
「そういえば、あなたはどこからいらしたんですか?」
絶品だというカツサンドを頼むと古泉は口を開いた。
「ぼく?アメリカ、ケンタッキー州のダンビルだよ。高校入学と同時に来日したんだ。
・・・そうだ。これから当てがないなら市内を案内してもらえないかな。
まだここらへんはよく知らないんだ」
古泉が肩をすくめる。
「申し訳ないんですが、僕もこの前転校してここに来たんです。よく知らないんですよ」
「転校だって?」
ぼくは思わず大きな声をあげた。
「だって、まだ六月だぞ?」
古泉の言うことが本当なら、入学から一ヶ月くらいで前の学校を転校したことになる。
「仕方がなかったんですよ。仕事の都合で来なければならなくなったんです」
確かに親の仕事なら仕方がないが、こんな中途半端な時期に・・・?
考えるぼくに古泉は当然の疑問を投げ掛けた。
「あなたは?」
「え?」
「あなたはどうして日本に?やはり、ご両親の都合ですか?」
ぼくは口ごもった。・・・正直に言えることではない。
「ああ・・・。いや、親は故郷にいる。前から日本には興味があってね。
日本在住の叔父を頼って来たんだ」
「・・・そうなんですか。そろそろ出ましょう。知らない者同士、市内を探索しましょうか」
不穏な雰囲気を感じたのか、古泉もそれ以上は聞こうとしなかった。
「ああ、そういえば」
忘れていたというように古泉が言った。
「所属はどちらなんです?」
所属?何のことだ?意味が分からず古泉を見つめる。古泉が吹き出す。
「はは、すみません。おかしな言い方をして。・・・クラスですよ」
「ああ。二組だよ」
「なるほど」
それから適当に歩いているうちに午前中はすぎた。
99ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/31(月) 23:48:19 ID:???
そして十二時。約束の集合時間だ。集合場所の駅前に行くと、すでにハルヒが立っていた。
「収穫は?」
「特にない」
ぼくの答えにハルヒは不満そうな顔をした。
「しょうがないわねえ。古泉くん、ちゃんと教育してくれた?」
だから何を教育するんだ。
「はい。それはもう」
・・・・・・。ともかく、午前はこれで終了。昼食の後、午後の部だそうだ。・・・まだやるのか。
薄気味悪いピエロでお馴染みのハンバーガー店で昼食を摂っている最中、
ハルヒがまたクジをばらまいた。そして再度のグループ分けを宣言した。
「・・・また星だ」
「俺はマルだ」
「あ、あたしはバツです」
キョンとみくるさんが言う。ぼくとペアは誰だ?考えていると目の前に星の紙が突き出された。
「・・・・・・・」
ユキという子だった。
100ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/31(月) 23:49:03 ID:???
「・・・・・・」
「・・・・・・」
駅前で二人、ぼくたちは立ちつくしていた。
「四時にまたここで。気合いいれて探しなさいよ!」そう言ってハルヒは解散を宣言した。
・・・ん。四時?今一時だから・・・三時間もこの子と二人きり!?
・・・気まずい。さっきからこの子は無言を通している。耐えかねてぼくは口を開いた。
「・・・行こうか」
「・・・・・・」
頷いた・・・のか?進むとついてくる。とにかくどこかへ行こう。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・君・・・えと、ユキだっけ」
「・・・長門」
「えっ」
「長門有希」
「・・・そうか。・・・疲れてない?」
「大丈夫」
「・・・ぼくは疲れた。そこのベンチで休もう」
「そう」
「・・・あ、改めて自己紹介するよ。ぼくはジョニィ・ジョ」
「知っている」
「・・・・・・」
以上が一時間で交わした会話の全てだ。誰か助けてくれ。
101ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/31(月) 23:51:04 ID:???
沈黙が依然として続いていた。相変わらず長門は単語でしか話さない。
「えと、どうしてSOS団に入ったんだ?」
「・・・文芸部」
そういえば、SOS団は文芸部の部室を借りているんだった。
つまり、文芸部にいたらSOS団に吸収されたってことか?
それもこの子ならあり得るだろう。沈黙に付け込んだってところか。
ぼんやりと長門のSOS団入りの経緯を想像していると、長門が袖を引っ張った。
顔を見るとかすかに口が動いていた。
「・・・所属は?」
申し訳程度に語尾が上げられていた。尋ねているようだ。
「クラスのことか?二組だよ」
「・・・そう」
君は?言いかけて口をつぐんだ。待て。この質問は・・・。
「さっき、古泉にもそっくり同じ質問をされたよ」
「・・・そう」
「妙じゃあないか?どうして『所属』なんて言い方をするんだ?」
「・・・何となく」
それきり彼女は黙りこくった。前と大してかわりはないが。時計を見ると三時半だった。
「少し早いが、行こうか」
長門も異論を挟まなかった。
102ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/03/31(月) 23:53:33 ID:???
それから、全員が集まって報告会が開かれた。
結果?宇宙人がそんな簡単に見つかるなら、NASAは今頃失業してるだろう。
困ったのはハルヒだ。(彼女に言わせれば)ふがいない結果にすっかり機嫌を悪くしている。
「明後日。放課後に必ず部室に来なさい。反省会するから」
そう言い残し、ついと帰って行った。ぼくたちもそれに続く。
とにかく今日は疲れた。もう帰りたい。考えながらバス停に並んでいると、
「ジョニィくん」
みくるさんだった。手を振って駆け寄って来る。
「どうでしたか?初めての活動は」
「悪くなかったよ。でも、長門には参ったよ。全然話せなかった」みくるさんが苦笑する。
「そうですか。でも、きっとすぐに慣れますよ」
にっこりと笑う。無邪気な笑顔にぼくもつられて笑った。
「ふふ・・・あ、そうそう」
思い出したようにみくるさんが言う。
「ジョニィくん、質問いいですか?」
「ああ、もちろん」
軽い気持ちで答える。
「その・・・所属はどこですか?」
「所属」・・・!?三人が同じ、「妙な言い方」の質問をした。こんな偶然があるのか?
「どうしたんですか?急に真面目な顔して・・・」
「いや、なんでもない・・・なんでもないよ・・・」
「何か」隠している・・・?頭に疑念が沸き上がる。だがその正体が何なのか?ぼくにはまだ分からなかった。

To Be Continued・・・
10355:2008/03/31(月) 23:59:35 ID:???
以上で投下終了です。
にしても、みくる着替え→「最高だった・・・」とか、いいアイディア持ってますねw
明かされてない点については「ああ、こんなのあったね(笑)」にならないように頑張ります。
104マロン名無しさん:2008/04/01(火) 01:42:38 ID:???
GJでしたッ!
さてさてどうなることやら…
あ、あとwikiにも追加完了を報告しておきます
105マロン名無しさん:2008/04/01(火) 13:06:01 ID:???
GJッ!
相変わらず楽しませていただいています
それはそうと、最近職人さんが減ってきてますね
億康の人とか花京院の人とかはどうされているんでしょう?
個人的には康一の人に戻ってきてほしいです・・・
106マロン名無しさん:2008/04/02(水) 00:35:20 ID:45hMZIWK
>>960
納得してしまった。
107マロン名無しさん:2008/04/02(水) 00:37:00 ID:???
誤爆、しかもsage忘れorz
108マロン名無しさん:2008/04/02(水) 04:19:59 ID:???
>>106-107
逆に考えるんだ
トト神が>>960の予知をした と考えるんだ
109マロン名無しさん:2008/04/02(水) 17:54:57 ID:???
>>955-960の流れに期待

あと800レス以上あるがなwww
110マロン名無しさん:2008/04/02(水) 22:16:35 ID:???
ハルヒが磔刑って言ってたの聞いて神父思い出した。
111マロン名無しさん:2008/04/02(水) 23:17:38 ID:???
なんかジョニィ視点での進行がいいな。
それとも職人さんの文才が凄いのか・・・
何はともあれGJ!
112マロン名無しさん:2008/04/03(木) 16:56:33 ID:???
そのネタだったんじゃね?
113マロン名無しさん:2008/04/05(土) 04:49:30 ID:???
>>112>>110のことについてでいいんだよね?
たぶん誰も誤解しないだろうけど保守ついでに。
114マロン名無しさん:2008/04/05(土) 06:28:39 ID:???
面白いっすwwwwGJ!!!
何回クジ引いてもジョニィは星引くんだろうなw
115マロン名無しさん:2008/04/07(月) 21:34:06 ID:???
6人の団員がクジを引いた
1人は☆を引き続けた

不審感を持たれるフラグじゃないか?
116マロン名無しさん:2008/04/07(月) 21:48:48 ID:???
で、最終的には朝比奈さんを引(ry
117イチゴの人:2008/04/07(月) 23:20:11 ID:???
投下してもかまいませんね……?
よろしくお願いします。
118イチゴの人:2008/04/07(月) 23:22:48 ID:???
パンナコッタ・フーゴの消失
第一話
「我々SOS団の活動目的は宇宙人や超能力者や未来人を見つけ出して一緒に遊ぶ事。
そうだったわよね?」
大いなる時の流れの一こま。SOSのいつものメンバーはいつもの様に文芸部の部室で活動なんてお世辞にも言えない
ばらばらな行動をしていた。
俺と古泉は囲碁。
朝比奈さんはメイド姿で給仕。
長門は鈍器といって差し支えないハードカバーに視線を固定している。
そんな中我らが団長、涼宮ハルヒは文庫本を広げながらこの団体の存在意義を否定しかねない珍妙な疑問をメンバーに投げかけたのであった。
俺は黒の碁石を右手で玩びながら答えた。
「なんだ、ついに自分のやってる事に自身が無くなってきたのか?」
ついでにそのままその唐変木な力を意識することなく普通の女子高生になっちまえ。
だが俺の考えはココアに砂糖三杯くらいに甘かった。
「そういうわけじゃないの。私達の活動内容は同じ目的を持つどんな団体よりも的を射ているわ。」
近所をほっつきまわることがか?
「理屈を捏ね回すより体を動かして探す方がずっと簡単で効率いいじゃない。」
まあ簡単ではある。
効率的かどうかは疑問だが。
「うーん……なんて言ったらいいのかしら。前に私火星人はきっと地底でひっそり暮らしていて奥ゆかしくて友好的だ。
って言ったと思うんだけど、その逆のこともありえるかなーって考えが浮かんだのよ。つまり私達に正体を気取られたくない後ろ暗いところがある連中ね。
そういう奴らはきっと私達のことを良く思ってなくて、あわよくば私を倒そうとするんじゃないかと思うんだけど……」
119イチゴの人:2008/04/07(月) 23:26:07 ID:???
何を言いたいのかが良く分からない。これは別に俺の脳みそのスペックが低いからというわけじゃないだろう。
現に他の二人も困惑をほんの少しブレンドしたような顔になっている。
長門は相変わらず顔すら上げないが。
それと同時に俺の中である疑問が膨れた。
この、色んな意味でトンでいるハルヒという人間は自分の言動に絶対の自信を持っている。
そして頭の回りも悪くない。
そんなわけでこいつが「言いよどむ」というのはそれなりの事情がある時に限られる。
だが今のセリフが果たして言いよどむようなことだろうか?普段俺達をこき使っているこいつなら、スパッと言うに違いないのだが……
なんだかもやもやした気分の中、ハードカバーが閉じられる音と共にSOS団の活動はお開きになった。
今日は用事がある、という事で早々と帰ったハルヒを横目に、碁盤を片付けている古泉に聞いてみた。
「今日のあれ……あいつは結局何言いたかったんだ?」何を言いたいのかが良く分からない。これは別に俺の脳みそのスペックが低いからというわけじゃないだろう。
現に他の二人も困惑をほんの少しブレンドしたような顔になっている。
長門は相変わらず顔すら上げないが。
120イチゴの人:2008/04/07(月) 23:28:27 ID:???
「僕も最初は首を捻ってしまいましたが、そんな難しいことじゃありません。」
イラつく微笑を浮かべながら、超能力者は片付けの手を止めず続ける。
「つまり涼宮さんは少々焦っているんですよ。痕跡すら見つけられていない、ということでね。それでとにかくそうした超常の存在との接触を渇望しているわけです。接触さえできるなら例え相手が敵意を持っていても構わない。そう考え始めているわけです。」
「それは、すごくまずいんじゃないのか……」
俺は「ワレワレハ、ウチュウジンダ」とか言いながら光線銃片手に侵略してくるインベーダーを想像して背筋が寒くなった。 
「まあ完全に無視していいことでもありませんが、涼宮さんも別に殺されたがっているわけではないですから、常識外の存在からいきなり攻撃されるという可能性は極めて低いでしょう。今のところ彼女は自分がそうした存在と渡り合えるとは思っていないみたいですし。」
本当か?奴なら喜び勇んでエイリアンの大群に突っ込んでいきそうだが……
俺は相槌を打ちながら後の二人にも一応聞いてみた。
「わ、わたしも……そう深刻になることでもないと思います。普段通り過ごしていけばそうした考えは自然となくなるかと……」
「涼宮ハルヒが危険分子を呼び込む可能性は0・1%以下。無視して構わないレベル。」
そう、か。それなら大丈夫、かな?

121イチゴの人:2008/04/07(月) 23:30:11 ID:???
そうした楽観視が後になって後悔することになるとは、その時の俺達には分かっていなかった。
ハルヒが読んでいた本が「宇宙戦争」だったと知っていたら、あるいはもっと真剣になっていたかもしれないが、そんなことを言ったってもう遅い。
長門を責めるつもりも無いが、0・1%の確率なんてものは奴の前では本当になんの問題にもならないのだ。
事件は3日後に起きる。

〜イタリア・ネアポリス〜

「悪いな、折角の休日なのに」
休日の昼下がり。僕はいつものレストランの席に座っていた。
「構わないですよ。僕も丁度暇でしたし。それでブチャラティ、任務というのは……?」
「あ、ああ……そうだな。」
何故か歯切れが悪い。
この前、麻薬から守ってくれと街の人に泣きつかれた時の表情に似ていた。
これだけでもある程度の察しはつく。
「任務は暗殺だ。本来なら暗殺チームが担当するんだが、奴ら何か問題を起こしたらしくてな。それでポルポさんのところに回ってきたらしい。」
「暗殺……ですか、でもそれならミスタが……」
「ああ、これはあいつにうってつけの任務なんだが、あいつ今拳銃を定期点検に出してるみたいで今は都合が悪いらしい。だからお前に頼もうと思ったんだ。確かお前、日本語堪能だったよな?」
「まあ堪能というほどでもありませんが……一応しゃべれます。それでターゲットは?日本人ですか?」
「情報チームの調査で、そいつは組織にとって害のある危険なスタンド使いであるらしい。ここに簡単なデータがある。」
そう言うとブチャラティは紙の束を僕に渡した。
そして何か踏ん切りをつけるように、諦めるように、僕に言った。
「それじゃフーゴ、頼むぞ。……『涼宮ハルヒ』の暗殺を」
「任せてください。」
顔写真を見ていれば、こんな即答したりはしなかったかもしれない。
それが今では……悔やまれるばかりだ。

To Be Continued・・・

122イチゴの人:2008/04/07(月) 23:33:12 ID:???
〜お詫びと訂正〜
>>119
「今日のあれ……あいつは結局何言いたかったんだ?」の後の文章はミスです。
しょっぱなからこけてとても憂鬱・・・
123マロン名無しさん:2008/04/07(月) 23:37:39 ID:???
暗殺・・・だと・・・
124マロン名無しさん:2008/04/08(火) 12:39:14 ID:???
面白そうだ期待
フーゴという人選が気になるぜwww
125マロン名無しさん:2008/04/08(火) 16:32:31 ID:???
おお、まさかこんな風にして接触してくるとは意外ですなあ
しかし残念なお知らせが一つある
荒木先生曰く、フーゴはイチゴではなくキノコだそうだ
126マロン名無しさん:2008/04/08(火) 18:18:18 ID:???
安心しろネクタイがイチゴ柄だ
127マロン名無しさん:2008/04/08(火) 18:31:55 ID:???
安心しろ確かピアスもイチゴだ

」の前には、とか。は付けないらしいよ
128イチゴの人:2008/04/08(火) 19:09:24 ID:???
ご指摘、ありがとうございます。
早速ですが投下します。
129イチゴの人:2008/04/08(火) 19:11:37 ID:???
パンナコッタ・フーゴの消失
第二話
僕は飛行機の窓からゆっくりと流れる雲を眺めつつ、何度目になるか分からないため息をついた。
これからの仕事を考えると、本当にドス黒い気分になってくる。
果たして本当に、自分のターゲットは殺さなければならないような危険人物なのだろうか。普通の女子高生にしか見えない。
情報チームは馬鹿の集まりなのか、データの中で一番重要な「能力」についてほとんど書かれていなかった。
ただ、「世界を支配し得る能力だ」と。
これで人違いだったらどうするつもりなのだろう。
……いや、どうもしない、か。
そう、関係ないのだ。
誰が死のうがそれが組織のマイナスにさえならなければボスは全然気にしないのだ。
逆に言えば、組織の不利益になる事には過剰に反応する。
害がある「かも」しれないというだけで殺害には充分な理由となる。
そして自分は、そんな組織に逆らうことは出来ない。そこしか自分の居場所はないからだ。
楽しそうに、耳障りな声でおしゃべりするカップルが斜め前方に見え、思わずウイルスで血ドバの膿グチュにしてやりたくなった。
そいつらを想像の中でぶっ殺してやった後、することもないのでブチャラティから渡された「教科書」をぱらぱら読みながら、
数時間前のことを思い出す。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「もちろん、ブチャラティ……あんたの為ならなんでもするが、しかしいくらなんでもこれは……」
空港。今日も様々な人種や職種が忙しそうに歩いている。
そんな中、僕はブチャラティから渡された荷物を見て呆然とつぶやいた。
「すまんフーゴ。ついさっき『パンナコッタ・フーゴを行かせるのであればターゲットの能力を詳しく調べた上で始末せよ』
って連絡がきてな……まあ、そういうわけでお前にはしばらくの間日本への転校生として、涼宮ハルヒのいる高校へ通ってほしいんだ。
もちろん手続きは全部終わっているからお前はそこに行くだけでいい」
130イチゴの人:2008/04/08(火) 19:13:26 ID:???
パンナコッタ・フーゴを行かせるのであれば、か……
これは組織に能力を買われているってことで喜んだほうがいいのかな……
荷物……教科書やら体操着やらが詰まった鞄と、どうやら閉じなかったらしく
不自然なところに追加されているジッパーに視線を落として、改めて組織のすごさを実感しながら
数年間ご無沙汰していた学校生活を思い描いてみた。
……今度は先生をぶん殴ったりしないようにしよう。スタンドを身につけてる分、うっかりカプセルが割れたりしたら
洒落にならない。
「それじゃ、しばらくお別れになるが気をつけてな」
「ええ、皆にもよろしく言っておいてください」
僕はこれから始まる窮屈であろう高校生活と、殺さなければならない相手が自分と同年代だということに
やや憂鬱な気分になりながら、ブチャラティに背を向け、日本行きの便に乗り込んだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
もしかしたら、と思って読んでみたがやはりこれから使う事になる教科書はほとんど全部知ってる内容だったので、
今度はターゲットのデータを読み返してみた。
特に、顔写真をじっくりと見る。
……これから、この女を殺しに行かなければならないのか……
100人中95人が振り返るであろう美人である。
性格の欄にはあまり良いことが書いていないが、これならきっとモテモテだろう。
高校生くらいの年代だと恋人なんて外見だけで選ぶものだ。
……これがウイルスでぐちゃぐちゃになって見る影もなくなるのか……
そのまま窓から「飛びてェーッ」みたいな気分になってきたので紙の束をバックに押し込む。
丁度いいタイミングで飛行機があと数分で目的地に着くというアナウンスが響いた。

131イチゴの人:2008/04/08(火) 19:14:34 ID:???
飛行機から降りてターゲットの通う高校へと行く途中、僕は通行人の目が気になった。
ちらちらこちらを見ているのだ。
「……あの、何か……?」
思い切ってたずねてみるが、怯えた表情や完全スルー以外の反応は返ってこなかった。
何だ、一体何がおかしい?
不可解な視線は裏社会に身をおいている自分にとってかなりの不安要素となる。
もちろんそんなこと周りの人間が分かるはずもないのだが、なんとなく、そんな気分になるのだ。
と、そんな中、サラリーマン風の男が僕の前を通り過ぎた。
この男も他の例と違わず、僕を変な見る。
そして歩きながらネクタイの緩みを正す。
……ネクタイ?
「あ」
僕は自分の服装に目を落とした。
イタリアにいたときと同じ、穴ぼこだらけのスーツに素で首に締めている苺ネクタイ。
なるほど、確かに日本では派手すぎる格好だったな。
暗殺者は目立たないように。こんな基本に気がつかないとは……
因みに、僕が組織の暗殺グループは伊達好みであることを知るのはずっと先のことである。
まず服を買わなくちゃな。これは経費で落ちるのかな……?
そんな事を考えていた矢先……
「おいっ。あいつ頭おかしーんじゃねーの」
「きひひ。あれで自分はかっこいいと思ってんのかね〜」
前方5メートルほど。若い男2人がひそひそ話……のつもりなのだろうがこっちにばっちし聞こえる会話……をしていた。
僕は無言のまま気づかないふりをしてその2人とすれ違う。
「ってうわっ!」
2人が丁度引っかかるようにパープルヘイズに足を出させて。
案の定、どさっという音と共に男達が倒れたのが感じられた。
スッとした気分でそのまま歩み去ろうとすると……
「おい。ちょっと待てよてめー。なにしやがんだ、コラッ!」
僕は思わず振り返った。
「何か……?」
132イチゴの人:2008/04/08(火) 19:15:43 ID:???
「でめーが何かしたんだろッ!こんな何もないとこで転ぶわけねえんだからな」
その返答にほっと胸をなでおろす。
こいつらは別にスタンドが見えていたわけではなく、ただ単に近いからというだけで難癖つけてきたらしい。
まあ、その勘は当たっているのだが。
「俺さあ、怪我しちまったからよお、慰謝料払ってくんねえかな慰謝料」
男は口調を変えて、不気味な猫なで声で近寄ってくると、あろうことか僕の胸倉を掴んできた。
何だ、日本人は礼儀正しいんじゃなかったのか?
だんだんと軋んできた堪忍袋の緒を押さえつけながら、冷静な口調で言う。
「離してくれませんか。急いでるもので」
「急いでるぅ?そんなこたあ俺には関係ねーんだよ!この外人風情がッ!」
最後の理性が「どっかで聞いた口調だなあ」とか考えつつ、僕は拳を男の頬に叩き込んだ。
変な雄たけびを上げつつあっけなく地面に転がる男。
幸運なことに人通りは皆無。
さてもう一人、と思う僕の目の前で……
「てめえはもう……てめえはもうおしめえだ!」
なんと、もう一人のほうはナイフを僕に突き出してきたのだ。
信じられない、日本はもっと治安がいいんじゃなかったのか?
仕方なく僕はパープルヘイズで防御すると、男の鳩尾に膝を繰り出した。
これにて終了。
気絶した男達を一瞥するとそのまま何事も無かったように歩き出……
「ちょっとあんた!」
……すことはできなかった。
さっき見回したときは気づかなかったが、いつの間にか少女が僕の前で仁王立ちしていたのだ。
黄色いカチューシャをつけ、容姿は100人中95人が振り返……ってあれ?
「あのもしかして……涼宮ハルヒさんですか?」
名前を聞く暗殺者なんて本当に馬鹿なことだが、僕はその時そこまで頭が回らないほどにこの偶然に驚いていた。
少女は不思議そうに片方の眉を上げて言った。
「そうだけど……あんた誰?」
これが涼宮ハルヒと僕との出会いであった。
To Be Continued・・・
133マロン名無しさん:2008/04/08(火) 19:19:13 ID:???
投下乙です
>暗殺者は目立たないように。こんな基本に気がつかないとは……
>因みに、僕が組織の暗殺グループは伊達好みであることを知るのはずっと先のことである。
ひょっとして暗殺者チームが起こした問題って、『地味なカッコじゃヤダ!!』ってストライキ起こしたんですかw
134マロン名無しさん:2008/04/08(火) 20:02:19 ID:???
GJ!
面白い展開になってきたなw
紫煙は小説版のフーゴには効かない設定でいくのか?
135イチゴの人:2008/04/08(火) 20:56:04 ID:???
>>134
「効く」という設定でいこうかと思ってます。
136マロン名無しさん:2008/04/08(火) 21:43:21 ID:???
まさか連日で投下を見れるとは・・・
フーゴの人、あんまり無理はなさずに。
後、GJ!
137マロン名無しさん:2008/04/08(火) 21:46:21 ID:???
〉なさず
じゃなくてなさらずだった・・・orz
13855:2008/04/08(火) 21:52:04 ID:???
GJ!続き楽しみにしてます!
この勢いに乗って投下!
139マロン名無しさん:2008/04/08(火) 21:53:54 ID:???
wktk
140ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/08(火) 21:54:56 ID:???
第四話「戦慄の王女」

土曜のパトロール、ハルヒと特に話す機会はなかった。
あの日の「奇跡」の真相を知るというぼくの目的には、何ら進展はなかったように思われた。
だが、ぼくの中ではまた別の考えが芽生え始めていた。
それは、みんなが何かを隠しているのではないか?ということだ。
彼らの奇妙な言葉の符合・・・。単なる偶然なのだろうか。ぼくは考えすぎているのか?
悩む頭を抱えて、ぼくはSOS団部室へと進んでいた。
今日は、なんでも今回のパトロールの反省会をするそうだ。
ぼくとしては、反省も何も、そう簡単に宇宙人やら超能力者が見つかるわけがないと思うが。
この前のハルヒの機嫌と合わせて考えると全く行く気がしないが、
そうするともっと酷くなりそうなので、渋々向かっているってところだ。
じめじめした部活棟に入る。相変わらず薄暗い。その中を進むと、
「やっほー。また会ったね」
見ると、微笑む女の子が手を振っていた。駆け寄ってぼくの顔を見ると、また笑った。
「やだ。もうあたしのこと忘れちゃった?」
「覚えてるよ。案内してくれた子だよね」
金曜日に初めてSOS団を訪れた時、部室まで連れていってくれた子だ。
「よかった。忘れられちゃったかと思った」
心底嬉しそうに笑う。そういえば、まだ名前も聞いていない。
ほぼ初対面だけど、名前とクラスを聞くぐらいなら・・・。そう考えていると、彼女は後ろに回り込んだ。
「また連れてってあげる」
そう言って車椅子を押し始める。ぼくは慌てた。何度も案内させてはさすがに悪い。
「一人で行けるから大丈夫だよ。」
彼女はぼくの顔を覗きこむといたずらっぽく笑った。
「いいの。あたしが押して行きたいんだから」
・・・こんなふうに言われて、断れる人がいるだろうか?
ぼくも止める気にはなれず、再び車椅子は動き始めた。
141ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/08(火) 21:58:14 ID:???
「どう?SOS団の人たちって。あたし、噂でしか聞いたことないの」
「ああ・・・そうだね・・・」
生返事を返す。さっきの言葉を考えていた。「あたしが押したい」か・・・。
ひょっとするとだけど、こういう快活な子は無意識でそんなことを言うからな。
「やっぱり、変わった人ばかりだよ。でも、面白い人たちだとは思うな」
ようやくそう言うと、彼女は満足そうに笑い声をあげた。
「ふふ、やっぱりそうなんだ」
ぼくもつられて笑う。そうしてる間に部室に近くなってきた。・・・あれ?ぼくは彼女を見た。
「なあ、さっきの角は右に曲がるんじゃあないのか?」
「こっちでいいの」
「いや、確かに部室は右だよ。覚えてる」
「こっちでいいのよ、ジョニィくん」
・・・?どういうことだ?彼女はそれからも見知らぬ場所を歩き、やがて車椅子を止めた。
「はい、着いたわよ」
正面のドアは確実にSOS団のそれではなかった。何部であるかを示すプレートすらない。
何も言えないぼくを尻目に、彼女はドアを開けた。鍵はかかってないらしい。
「入って」
不審な気分はあったが、ぼくは室内に踏み込んだ。
中は思ったよりも広く、教室程度の面積だった。
そういえば、部室棟は旧校舎を改築したものだ。ここは改築されなかった部屋だろうか。
「運命ってやつだと思うの」
彼女が囁くように言う。その顔にもう笑顔はない。
「前、あたし酷い失敗しちゃって。もうチャンスはないって思ってた」
呪文のような言葉を、ぼくはただ聞いていた。
「でも。・・・こんなことってあるのね。また千載一遇のチャンスが現れた」
「あの、待ってくれ」
我に返ったぼくは口を挟んだ。彼女が不思議そうに首を傾げる。
「つまらないことなんだけど・・・。なんでぼくの名前を知っているんだ?」
目が見開かれる。ぼくは続けた。
「まだぼくは自己紹介してないよね?・・・どうしてだ?」
彼女は俯いてしばらくの間沈黙し、やがて顔を上げた。
ぞっとするような笑みがその顔に浮かんでいた。
142ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/08(火) 22:04:47 ID:???
その笑顔は今までに見たことがない種類のものだった。
それは人を疑った事のない少女のものか。
それとも無数の人間を地獄に落とした悪魔のものか。
「ふふ・・・。知っているのは名前だけじゃないのよ?
ジョニィ・ジョースター。本名ジョナサン・ジョースター。
アメリカ、ケンタッキー州ダンビル出身の十五歳」
憑かれたように話す彼女を前に、ぼくは何も出来なかった。頭が痺れたような感覚がする。
143ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/08(火) 22:05:51 ID:???
「十歳の時、兄と死別。十二歳の時プロの騎手としてデビュー。天才の名をほしいままにする。
事実、デビューからの二年ほどで数々の重賞に勝利。最年少記録を塗り替える。
しかし、十四歳の時『事故』により下半身不随に。引退を余儀なくされる」
彼女は言葉を区切り、顔を歪めて笑った。
なぜ?なぜ知っている?手の震えが止まらない。心臓を掴まれたような気分がした。
「・・・この『事故』、表向きには調教中の事故ということになっているけど、
実際は女の子と遊んでる最中に暴漢に撃たれたんですってね。傑作だわ」
「やめろ」
血の気が引いていく。何だこの子は?ぼくは恐怖さえ感じていた。
彼女は歪んだ笑みを増幅させる。
「そして、離れていった周りの人間やバッシングに耐えかねて、
親戚を頼って日本に逃げて来た。・・・こんなところかしら。
どう?よく知ってるでしょ?」
「・・・ふざけるな」
声が震えているのが自分でも分かった。彼女は今度は無邪気に笑う。
「そんな怖い顔しないで。あたしはただ、あなたのファンかもしれないわよ?」
「・・・だとしても、サインはやれないな。失礼するよ」
そう言って身を翻そうとして驚愕した。車椅子が動かない。
車椅子は彫刻のように固まったまま一向に動かない。さっきまで動いていて、壊れた様子もないのに。
苦闘するぼくを見て、彼女はくすくすと笑った。
「動かないわよ、それ。絶対に、ね」
「君は・・・君は一体何者なんだ・・・!?」
「あら、いけない。自己紹介してなかったわね」
おどけて舌を出し、頭をぽかりと叩く。真顔に戻すと口を開いた。
「朝倉涼子よ」

To Be Continued・・・
14455:2008/04/08(火) 22:12:19 ID:???
今回はこれで以上です。
ジョニィがデビューした年齢まわりは原作にもないので大目に見てください。
割と今回は短いので続きは木曜にでも。
145マロン名無しさん:2008/04/08(火) 22:31:46 ID:???
ブラボー、おお……ブラボー!
146マロン名無しさん:2008/04/08(火) 23:21:54 ID:???
突然涙があふれ出て来た
止めようと思っても止まらなかった・・・・・・
35年ぶりの涙だった
GJ!!
147マロン名無しさん:2008/04/09(水) 18:28:05 ID:???
フーゴの人もジョニィの人も乙!
パープルヘイズは小説関係なしに本体にも効くのはおかしくないか? 作品の設定としてどうこうじゃなく単純なジョジョ話として
気分害されたらすまない
148マロン名無しさん:2008/04/10(木) 00:19:32 ID:???
>>147
「パープルヘイズのウイルスでフーゴは死ぬんですか?」
荒木飛呂彦「死にます。」

連載当時のインタビューより
149マロン名無しさん:2008/04/10(木) 19:45:35 ID:???
そんなはっきりした公式回答あったのか…グラッツェ&スレストに貢献してしまったようですまなかった
15055:2008/04/10(木) 23:03:57 ID:???
フーゴ、自分のスタンドで死ぬのか・・・。
マヌケなようですが、自分の凶暴性が原因で身を崩したフーゴには合ってるのかもしれませんね。
じゃ、予告通り投下します。
151ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/10(木) 23:05:53 ID:???
第五話 「朝倉涼子が来る」

わけの分からない状況だった。
目の前の少女、「朝倉涼子」は危険だ。ぼくの感情がそう言っている。
しかし、車椅子は固定されたかのように動かない。しかも朝倉涼子はその原因を知っているらしい。
なにか仕掛けられたのか?だが、彼女は部屋に入ってから指一本車椅子に触れていない。
それで全く動かせないほどの仕掛けが出来るのか?
混乱した頭を懸命に回転させるぼくに彼女が微笑む。
「無駄よ。ここはもうあたしの情報制御下にあるの。あなたじゃ動かせないわ」
そして、笑顔のまま何かを投げた。身をよじり上半身だけで辛うじてかわす。
声が出なかった。顔の横の、壁に突き刺さったものがあまりにも現実離れしていて。
それはナイフだった。それも果物ナイフなどではない。
軍用の、人の命を奪うためのナイフだった。
彼女はそれをダーツでもするみたいに投げたのだ。
「あっちゃー、避けられちゃった。さすが元ジョッキーね。運動神経がいいわ」
彼女はまるで余興のゲームに失敗したような口調で言った。
「どうしてだ?なぜこんな事を?」
ぼくがやっとそれだけ言うと、彼女は少考の後それに答えた。
「涼宮ハルヒはあなたを気に入ってるわ」
ぼくはますます混乱した。なぜここでハルヒが出て来る?
「よっぽど自分から入って来たのが嬉しかったのね。
少なくとも、もうあなたを他人とは思ってないわ。」
ここで彼女は笑顔を消して真剣な顔をした。
「あなたを殺せば彼ほどでないにしろ、効果が見込める」
「さっきから何を言ってる?わけがわからないぞ!?」
彼女は失笑を漏らすと、哀れだというふうに首を振った。
「可哀相に・・・何も知らないのね。だけど、あなたには知る必要がないわ」
そう言い切ると彼女の腕が光に包まれた。光はたちまち増幅し、触手のように伸びた。
逃げなければ。そう思ったが、今やぼくは指一本も動かせなくなっていた。
恐怖や混乱からではなく、ただ動かせない。瞬きすらできず首へと伸びる触手を見ていた。
触手は首に到達すると、信じられない力でぼくを持ち上げた。体重がぼくの首を絞めていく。
激しい苦痛の中、声すら出せずに意識が遠のいていった。
152ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/10(木) 23:11:08 ID:???
死ぬ・・・。こんなところでぼくは死ぬのか・・・。
意識が消えかけていた。視界がぼやけ、白く包まれていく。
意識が完全に途切れようとした瞬間、ぼくは乱暴に地面にたたきつけられた。
激しく空気を貪る。急速に視界が鮮明になっていく。目の前に何かが転がっていた。
それは、腕だった。正確には腕の一部だ。そしてその持ち主はすぐに明らかになった。
眼前の少女、朝倉涼子は呆然と失われた腕を見ていた。見ると、腹部にも真一文字に血がにじんでいる。
「どうして・・・?」
朝倉涼子が呟く。ぼくを見てやがて目を見張ると、諦めたように笑った。
「そうか・・・。ふふ、また失敗しちゃった」
敵意はすでにないように思えた。そして彼女は最期の微笑みを浮かべた。
「あなたの勝ち。・・・でも気をつけて。これからきっと辛くなるわ。」
彼女は切断面から砂のように溶けていった。
「あなたは特にね。それじゃ、バイバイ」
ぼくは溶けゆく彼女の、子供のような笑顔を見ながら気を失った。
153ジョニィジョースターの憂鬱:2008/04/10(木) 23:13:20 ID:???
・・・携帯電話が鳴っている。気がつけば普通の部屋にいた。朝倉涼子は影も形もない。
携帯電話を開く。「涼宮ハルヒ」とある。・・・絶望的な気分だ。通話ボタンを押す。
「・・・ジョニィ?・・・今何時か分かる・・・・・・?」
あ、嵐の前の静けさとはこのことか・・・!油汗が噴き出る。
「えと・・・五時半・・・?」
謝ろうとした瞬間、大きく息を吸い込む音が聞こえた。
「こぉのスカタンッ!!もう反省会終わったわよっ!今からさっさと出頭しなさい!」
携帯電話なのに叩きつけるような音がしたのは気のせいだと思いたい。
ぼくは這いつくばってどうにか車椅子に乗ると部屋を出た。
あれは白昼夢だったんだろうか。それにしてもかなりリアルだったが・・・。
色々と考えたいことはあるが、今考えるべきなのは別のことだ。
「光の触手を出す女の子に襲われて遅れた」・・・こんな言い訳をしたら殺される。

ジョニィが知ることはないが、この日の反省会、一人が急用を理由に早退していた。
ジョニィが完全に部屋から離れると、小柄な少女が物陰から姿を現した。
「気付いた時にはすでに手遅れ。危ないところだった。
・・・朝倉涼子の残存・・・もう、それは問題ではない。だが彼は・・・。早急に調査を」
そう呟くと、長門有希はその場を離れた。

To Be Continued・・・
154マロン名無しさん:2008/04/11(金) 00:06:20 ID:???
GJGJGJGJGJGJGJGJGJGJ!
155マロン名無しさん:2008/04/11(金) 07:33:39 ID:???
GJ!!!
スタンドはないようだな、ジャイロなしでどうなるのか楽しみwww
「普通の部屋」てのは朝倉戦のあと気を失ってその場で目覚めたってこだよね
156マロン名無しさん:2008/04/11(金) 11:02:19 ID:???
>>155
自分はジョニィのスタンドが発現して朝倉を倒したんだと思ったけどな
だとすると、やはり『タスク』なんだろーか
157マロン名無しさん:2008/04/11(金) 12:18:36 ID:???
>>156
ハルヒの方は原作知らんから、原作でも似たような感じで長門が倒したんかと思ってた
傷とも長門のセリフとも合致するしタスクっぽいな
158マロン名無しさん:2008/04/11(金) 22:05:08 ID:cO2IQuu4
ほしゅあげ
159イチゴの人:2008/04/11(金) 22:11:25 ID:???
ジョニイの方、GJ!
そして投下ァ!
160イチゴの人:2008/04/11(金) 22:12:45 ID:???
パンナコッタ・フーゴの消失
第三話
〜キョン視点〜
むすーっ。
そんな擬音がこれ以上なく当てはまるハルヒの顔が、今日登校してきた俺が教室で初めて目にしたものだった。
きっと今頃古泉の仲間は閉鎖空間で青いのをぶった切ってるんだろうな。
俺は日々終わらない戦いを続けている超能力者達に同情しながら、一応ハルヒに聞いてみた。
「なんだ……調子悪そうだな」
俺をうるさいハエを見るような目つきでじろっと睨むと……
はあ〜。
盛大なため息がハルヒの形のいい唇から漏れた。
そしてとんでもないことを呟いた。
「私って……ほんとにダメな人間だわ」
そのセリフの効果は絶大だった。
ペンをくるくる回して窓の外をぼけーっと見ていた谷口はペンを取り落としてハルヒのほうに首を捻り、
ノートをひろげていた国木田はびくっと肩を震わせて勢いあまってノートを破ってしまっていた。
そして俺はというと、声帯を奪われた鳥の剥製みたいに口をあけてぽかーんとハルヒの顔を凝視していた。
いや、ハルヒ。あのな、確かにお前はちょっと……というか結構直さなくちゃならないところがあるのは満場一致の事実であるが、
それを意識して欝になるっていうのはらしくないぜ。まだ爆笑している長門のほうが違和感ないぞ。
161イチゴの人:2008/04/11(金) 22:14:07 ID:???
数秒後、時は動き出す―――
「……マジで具合悪いんなら保健室いきな。あ、なんか悩み事があるんなら相談くらい乗ってやるけど」
らしくないのが俺にも伝播して変に親切なセリフを吐いてしまう。
「別に、いい」
これがハルヒの返答である。長門の真似かよ。笑えねーって。
答えに窮する俺の顔を見ると、ハルヒは二度目のため息と共に事の真相を語りだした。
「……私ね、超能力者を見つけ出しておきながら逃げられちゃったのよ」
また答えるのに困るようなことを……
「あーっと。本物の……?」
「本物に決まってんでしょバカキョン!!」
突然俺に噛み付いた。
……うるさいハルヒを見て安心してしまい、少し自己嫌悪に陥る。
「へーやっと超能力者見つけたのかよ。」
谷口、そんな嘲笑と取られるような笑い方と話し方じゃまた噛み付かれるぞ。
しかしハルヒはさっきの威勢はどこへやら、またぐたーっとなってしまった。
そしてまたぶつぶつ話し出す。
「昨日ね、学校の帰りに誰かがチンピラ2人に絡まれてるのを見かけてね、助けてやろうと思ってそっちに行ったら
その絡まれていたほうが相手をぶん殴ったのよ。面白そうだから見てたらもう一人のほうがナイフを出してきてね。
危ないっ!て思ったら……」
超能力者とやらに出会ったときの感動を思い出したのか、話してるそばから目をきらきらさせていく。心配する事もなかったか。
やっぱりこいつはこいつだ。
「突然!ナイフが空中で何かにぶつかったみたいに止まったのよ!それで絡まれてたほうが膝蹴りを繰り出して勝負ありってなったのよ」
162イチゴの人:2008/04/11(金) 22:16:01 ID:???
後は言われなくても想像できる。お前はその絡まれてたやつに絡んでいったんだろ?
「話しかけただけよ!……でもそいつ、私に『涼宮ハルヒさんですか?』って聞いて『そうだ』って答えたら逃げ出しちゃったのよ
……私も突然だったから直ぐに後を追ったんだけど……」
捕まえられなかった、と。
ふむ、なるほど。だがなハルヒ、ナイフを突き出そうとしたやつが怖くなって途中でやめただけかもしれないし、
なんでそれだけで超能力者認定が出るんだ?あまりに都合よく解釈しすぎじゃあないか。
そう、普段の俺ならこんな感じで適当に相槌を打って終わりにするのだが、今回はそうもいかなかった。
なんでって?
そいつが涼宮ハルヒの名を知っていたからさ。
俺が口を開きかけたとき、丁度担任が入ってきた。
〜フーゴ視点〜
暗殺とか、なれない事はするもんじゃあない。
といったところで拒否権なんてないわけで、つまるところただの愚痴にしかならないのだが。
僕は最高に欝な気分で県立北高校の制服に身を包みながら、これから担任となる先生の後ろにくっ付いて廊下を歩いていた。
IQ152っていったってじゃあとっさの判断力がずば抜けてるかって言ったら別にそんなこともない。
どこが決定的な失敗だったか。
……逃げたとこかな。まあどちらにせよ調べなくちゃいけないからあの時は殺せなかったが、もっと何かうまい切り抜け方があったよな。
……というよりターゲットに名前を聞いたところかな?
……いや、パープルヘイズで防御したところか、なんてったって敵に自分のスタンド見せちゃったわけだし。
……いやそもそもあのチンピラの足を引っ掛けなければ何も起こんなかったんだし。
……いやいや、服に気をつかっていれば……
思考の海に埋没しかけたところ、担任の声で我に返った。
「君にはこれから1年5組で共に学んでもらうから。よろしくな」
163イチゴの人:2008/04/11(金) 22:18:34 ID:???
……ちょっと待て。
「あの、確かご説明では、私は1年9組に編入されるというお話だったと思うのですが……」
「いや?1年5組で合ってるよ?」
「そ……そうですか」
んな馬鹿な。
いくら最近ミスが多いからって、入学関係の書類を読み間違えたりはしない。
先を行く教師に続きつつ、僕はいそいそとそのプリントを出してみる。
「聞いた話だけど、君はとても優秀らしいね、私としても期待……き、君どうしたんだい?」
「いや……ちょっと眩暈が。すいません。」
あ…ありのまま今起こった事を話そう
『僕はプリントに1年9組と書かれていると思っていたら、いつの間にか1年5組になっていた』。
な…何を言っているのかわからないと思うが、
僕も何をされたのかわからなかった…
頭がどうにかなりそうだ…読み間違えだとかすり替えだとか、
そんなチャチなもんじゃあ断じてない。
もっと恐ろしいものの片鱗を味わった…
……これが涼宮ハルヒの「能力」によるものだと、この時の僕は知る由もなかった。

〜視点・キョン〜
転校生。
心配と吐き気がむんむん沸いてくんじゃねーか。
俺は後ろの席を一瞥しする。
機嫌が直ってる……かとおもいきや逃がしたときの事を思い出したらしくハルヒはまたぐったりになっていた。
「何だ、喜ばないのか。」
「古泉君がいるじゃない。それに昨日の今日で超能力者に再会できるとは私も思わないわ。……まあ面白かったら入団考えてあげてもいいけど」
それを聞いて、俺は最近封印していた言葉を心の中でつぶやいた。
「やれやれだ」
今ドアの外で待機している転校生が普通の平々凡々のやつだと期待するほど、俺は楽観的で学習能力のない人間ではない。
事実はどうか分からないが、ハルヒが超能力者を見つけちまったと思い込んでいる直後だ。
おそらくはそいつも何か妙ちきりんなプロフィールを持ってるんだろう。そして古泉の時と決定的に異なる点。
3日前の部室でのハルヒの発言を俺は思い出す。
164イチゴの人:2008/04/11(金) 22:20:02 ID:???
『私達に正体を気取られたくない後ろ暗いところがある連中ね。
そういう奴らはきっと私達のことを良く思ってなくて、あわよくば私を倒そうとするんじゃないかと思うんだけど……』
うん、こんな感じだった。
古泉の説明を元に解釈すれば、ハルヒはジェントルマンな宇宙人、超能力者を探すよりは
自分に敵意を持った常識外の存在を探すほうが容易だ、と思っているんだろう。
ハルヒ的には当初の目標の中の「仲良く遊ぶ」という項目を諦めれば「宇宙人、超能力者を見つける」というより大きい目的に近づける、
ということなんだろう、うん。
……一体どういう思考回路を通すとそんな答えが導きだされるのかは分からんが。
どっちも同じだろうに。
「早速だが自己紹介してもらおう。フーゴ君、入ってきてくれ」
「あ、そうだ。あんたも見つけるかもしれないから容姿を言っておくわね」
声を小さくして岡部と同時進行で俺にしゃべるハルヒ。なかなか信じられない事だが本当に転校生には興味ないらしい。
俺は一応、入ってきた転校生に視線を移す。
まず目に付くのは特徴的な金髪と柔和な微笑を浮かべた彫りの深い顔立ち。
外国人だった。
教壇の前に立って俺たちを見回すその瞳は深い知性をたたえていたが、どことなく冷徹で利己的で、
高校生らしからぬ狡猾さが滲み出ていた。
……なんて感想を抱いたが、そいつが悪意をもった闖入者かもしれないという先入観があったために
そんな風に見えただけかもしれない。現に女子なんかは含みを感じる視線で入ってきた転校生をうっとり見ている。
まあ、俺に話しかけている約一名は言うまでもなく例外に含まれるのだが。
「外国人っぽくて、右前髪を垂らしていて、身長は170半ばくらいだったかしら。金髪だったわ。……そう、あの転校生みたいな感じ、ってまんまあれじゃん!」
165イチゴの人:2008/04/11(金) 22:22:58 ID:???
最後だけボリュームアップして、ついでに立ち上がり転校生に指を突きつける。
右前髪のところでもしかしたら、と思ったがやっぱりそうか。
別にもう俺は驚いたりしないさ。お前は知らず知らずのうちに自分の欲するものをブラックホールなみの引力で引き寄せるやつだからな。
だが気は抜けない。
長門がいる限りどんな敵もほとんど返り討ち確定みたいなもんだが、万が一ということもある。
そんな胃に穴があきそうな心配を余所に、転校生はハルヒにゆっくりと視線を走らせた。
クラスメートが絶句している。
これはハルヒの奇行に対してだけではないだろう。
というのも、ハルヒが指をさした瞬間、転校生の様子が変わったためだ。
古泉を髣髴とさせる柔和な微笑が今は長門ばりの無表情になり、獲物を観察する肉食獣のような剣呑な雰囲気に包まれている。
この一瞬だけでみんな第一印象を塗り替えたと断言できるな。「こいつはキれたらやばい」って。
そして、それに負けじとハルヒも相手を睨みつける。
2人の迫力は色々と危険な目にあってきた俺ですら、腰が砕けそうになるほど強烈だった。
空気がフリーズした数秒後、触ったら爆発しそうな沈黙は静かに破られた。
「パンナコッタ・フーゴです……どうぞよろしく」
そしてまた数秒後の空白の後、岡部がその場をとりなすべく転校生に自己紹介の続きを促したのだった。
To Be Continued・・・
166イチゴの人:2008/04/11(金) 22:24:21 ID:???
以上、第三話でした〜
167マロン名無しさん:2008/04/12(土) 00:51:37 ID:???
GJ!
キョンは長門の力ゆえ楽観視しているが、長門が優秀であることと、キョンたちを守りぬけることとはイコールじゃないんだよな。
とりあえず、谷口が顔面を机に叩きつけられる様を想像した。
168マロン名無しさん:2008/04/12(土) 08:01:02 ID:???
クオリティたけえwww二人とも最高にGJってやつだッ!
169マロン名無しさん:2008/04/15(火) 23:20:48 ID:???
保守
17055:2008/04/17(木) 22:43:43 ID:???
おひさです。早速投下します。
171ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/17(木) 22:46:19 ID:???
第六話 「スターティング・オーヴァー」

いつも通りの一日が過ぎようとしていた。SOS団部室は平和だ。
キョンと古泉は将棋。みくるさんはお茶くみ。長門は読書。ハルヒは眠りこけている。
ぼくはひたすら考えていた。あの一件は現実だったのだろうか、と。
あの反省会の日、ぼくを襲った少女、朝倉涼子は夢だったんだろうか。
あの日、ハルヒの説教を受けながら考えた末の結論は「夢だった」だ。
あんな事があるか?少女が怪物のように変形して襲いかかるなんて、今時子供も信じない。
腑に落ちない点はあるが、夢だったのだ。そう結論づけたところで説教も終わった。
ハルヒが帰ると言い、それから出掛けに一言言った。
「ところで、その首どうしたのよ?跡ができてるけど」
そう、首を絞められた跡がついていたのだ。まるで安いホラー映画だ。
それで強引に納得する事が出来なくなってしまった。そして今。まだ結論は出ていない。
現実だという証拠は確かにある。しかし・・・いや、仮に現実だとしよう。
だとしたら、彼女の言っていた事はなんだ?「これから辛くなる」、そう言っていた。
何が辛くなると言うんだ?彼女のように襲撃してくる奴がいるっていうのか?
それに、もっと気になる事、それは。
「ふわーっ、よく寝た・・・。みくるちゃん、お茶ー」
−−−ハルヒ。
ぼくを襲った理由を尋ねた時、彼女の名前が出た。
ハルヒ・・・君は何者なんだ?あの日、ぼくが立ったのも、やはり君が原因なのか?
ぼくは満足そうにお茶を飲む少女を見ていた。
穏やかに時が流れていた。不似合いなくらいに平穏だった。
172ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/17(木) 22:49:35 ID:???
「いやー、昨日全然寝てないのよ」
ハルヒは一息にお茶を飲みほすとお代わりを要求した。
屈託のない姿を見ていると、悩むのも馬鹿らしくなってくる。
「え。うそ、もうこんな時間?まだ明るいのに」
一人で騒がしくそう言うと窓の外を見る。ぼくは苦笑した。
怪物に狙われる?考えすぎだ。やはりあれは夢だったんだろう。
疲れているんだ・・・ぼくもお茶を飲もうと湯飲みを手にとる。
ぱりん。
湯飲みが割れる音。落としたハルヒにみんなが注目した。
「ハルヒ、お前何やってんだよ?」
キョンが言う。ハルヒはそれを無視して窓の外を指差した。
「見て」
それだけ言った。何事かとみんなが集まる。
指の先を見るとそこには人影があった。身長は二メートルほど。何の変哲もない人影だ。
ただ一つ。全身が青い光に包まれていることを除いては。
173ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/17(木) 22:50:15 ID:???
「な、何だあれは!?どういうことだ!」
意外にも大声をあげたのはキョンだった。ハルヒが興奮した口調で言う。
「テレビで見た事ある!宇宙人だわ!みんな、行くわよ!」
「すみません」
口を挟んだのは古泉だった。
「少しトイレに行きます」
ハルヒがきょとんとする。古泉は会釈して続ける。
「後はよろしくお願いします。では」
そう言い残すと小走りに出て行った。ハルヒは白けた様子で言った。
「何よ、こんな時に・・・。ま、いーわ。行くわよ」
団長命令なら、と動こうとしたが、どういうわけか他のみんなは腰が重い。
「何やってるの。早く行かないと宇宙人が逃げるわよ」
ハルヒがいらつき始めた。みくるさんがおろおろと長門を見る。
「あの、その・・・あ、涼宮さん、今学校に大学の映画サークルが来てるんですよ。
きっとその撮影だと思います」
みくるさんの言葉を聞くとハルヒは空気が抜けたみたいに椅子にへたりこんだ。
「なーんだ。フン、何よキョンったら大声あげちゃって。つまんないの。
あ、そうだ!みくるちゃん、もうナースも飽きたわよねっ!
ほら、猫耳を買ってきたの!」
「えええええ〜!」
喧騒の中、ぼくは今の出来事を思い出していた。
外の人影を見た時の古泉の顔にはいつもの笑顔が消え失せていた。
驚愕のため?それもある。あとは・・・恐怖、か?
それに彼の言葉。「後はお願いします」とはどういう意味だ?
まるで・・・そう、何か「厄介事」を頼むような・・・。
「おい、ジョニィ!?どこに行くんだ?」
キョンが再び叫んだ。
「トイレ」
ぼくは車椅子を全力で走らせた。
174ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/17(木) 22:52:08 ID:???
僕は走っていた。まだ状況が完全に把握出来ていないが、とても楽観視は出来ない。
彼の差し金だろうか、そうも思ったが僕は即座にそれを否定した。
彼、ジョニィ・ジョースターが部室を訪ねて来た時には焦った。
彼がまた別の勢力の人間ではないかと思われたからだ。
仮にそうではないとしても、涼宮さんの「力」 を知る者は少ないほうがいい。
幸い、涼宮さんのエキセントリックな行動はSOS団を変人の集団と位置付け、
あえて近寄りたがる者は無くなった。そんな矢先に現れたのが車椅子の留学生、ジョニィ・ジョースターだった。
残念ながら涼宮さんは乗り気で入団は阻止出来ず、この一週間は戦々恐々としていた。
そして昨日、ようやく「機関」からの調査結果が届いた。
「ジョニィ・ジョースターは普通の人間である」、こうあった。
同封の略歴にも怪しい点は無く、彼に警戒の必要は無いと思われた。
そう結論付けた途端に今回の件だ。涼宮さんが発見した青い人間の正体に当たりはついていた。
もちろん、「神人」ではない。ミニチュアの「神人」のような姿だが、それは有り得ない。
ここは「閉鎖空間」ではないからだ。・・・だとすれば、あれは・・・。人影が視界に入った。
「・・・ご冗談は止めていただけませんか?」
人影に声をかける。その表面がゼリーのように波打った。
「よう、古泉・・・。相変わらずムカつく顔してやがる」
悪態を無視して僕は言った。
「・・・何のおつもりですか?あなたは自分が何をしているか、分かっているんですか?」
僕が睨みつけると、人影は我慢出来ないという様子で吹き出した。辺りに馬鹿笑いが響く。
「当然だろ」
人影は体に纏った光を僕に放った。僕はもう一度睨みつけた。
「これ以上は宣戦布告とみなしますよ」
「・・・なァ〜、古泉・・・今日はほんの挨拶のつもりだったんだが・・・。
気が変わった。今日始末する!涼宮ハルヒを奪取してやる!」
人影が宣言する。馬鹿な。本気で言っているのか?
人影がこちらへ近付く。戦うことになれば、以前の僕には勝ち目は無かっただろう。
だが・・・。ちょうどジョニィ・ジョースターが現れたあたりから、妙な感覚を覚えていた。
試したことは無い。どうなるかは分からないが、手段を選んでいる場合ではない。
「マッガーレ!」
体が光弾へと変貌していった。
175ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/17(木) 22:55:32 ID:???
「閉鎖空間」の中で使うのとはまた違う感覚。体の半分ほどまでしか光弾にはならないようだった。
「マッガーレ!」
光弾を人影に射出する。が、人影は微動だにしない。
動揺する僕に余裕に満ちた奴の声が響いた。
「ほう、古泉・・・お前も現実空間で使えるようになったか。
・・・クク、しかし、貧弱よのォ〜。オレの無敵の『スタンド』、『黄の節制』に勝ち目は無い!」
やはり、「黄の節制」・・・!聞くところによると、肉の壁による絶対防壁を誇るらしい。
僕の「マッガーレ」が効かない・・・。「黄の節制」の表面が大きく波打つ。僕は身構えた。
「ヘッ、ビビんなよ古泉。攻撃ならもう終わってるぜ」
何・・・?ふと腕に違和感を覚えた。視線を向け仰天した。青白く光る肉片が服の上から肘に取り付いていたのだ。
その姿は蛭のようで、実際に肘の感覚が無くなりつつあった。
そうか・・・!さっき飛ばした光は肉だったのか・・・!
「無駄だ。一度取り付いた肉が取れることは無いッ!
どこまでもついて行きお前を喰うッ!言ったはずだぜ、
俺の『スタンド』は無敵だとなッ!ドゥーユーアンダスタァァァンドゥゥゥゥ!」
僕は歯噛みした。肉は取れる気配がない。その間にも奴は距離をつめている。
自分の攻撃は通じず、敵の攻撃を食らい、しかも回復は不可能。出口なしの状況だ。
こうなったら、アレを使うしかない。
「・・・ご存知ですか?日本にはこういう状況の時のためのことわざがありまして」
「・・・?」
「三十六計、逃げるに如かず」
僕は踵を返して走り出した。肉の装甲のせいか、「黄の節制」の動きは緩慢だった。
ここは一度、射程距離外へ逃げよう。
176ジョニィ・・ジョースターの憂鬱:2008/04/17(木) 23:02:07 ID:???
「おい・・・。ジョニィ・・・待て・・・。待って・・・」
古泉の様子を不審に思ったぼくは部室を飛び出した。
慌ててキョンが止めに走って来たが、車椅子でもそう簡単に追い付かせはしない。
キョンが車椅子を掴んだ時には出口近くまで来ていた。
「はあ・・・はあ。ジョニィ、どこに行くんだ。トイレはもう過ぎたぜ」
ぼくはキョンをまっすぐに見た。
「・・・キョン。君は・・・いや、君たちは何かぼくに隠しているんじゃあないのか?」
「・・・何をだよ」
確信があった。パトロールの日の奇妙な質問。青い人影を見た古泉の言動。
何かがおかしい。何かが動いている。キョンは目を反らした。
「何か隠す理由がねーだろ。」
「・・・かもしれないな。でも・・・じゃあ、なぜそこまで必死に追い掛けて来たんだ?」
「・・・・・・」
キョンが口をつむぐ。やっぱり何かがある。さらに追及しようとした時、キョンが目を見開いた。
「古泉!?もういいのか?」
後ろに息を切らした古泉が立っていた。ぼくを見て驚いている。
「ジョニィくん!?・・・なぜあなたがここに?部室に戻って下さいッ!すぐに!」
そう言って乱暴に車椅子を押し戻そうとする。その手を振り払おうとすると、妙なものが目に止まった。
古泉の肘に何かがついている。染み?いや、質感がある。これは・・・肉?その時。
ぴちゃり・・・ぴちゃり・・・。
出口から物音がした。軟体動物が這いずるような音だ。
「何だ?何だこの音は?」
質問に答えず、古泉は焦った表情をした。
「もう、ここまで・・・。・・・仕方ない」
ぼくたちを見て呟くと、ブレザーの中から何かを取り出した。
その「何か」の正体に気付いてぼくたちは息を飲んだ。拳銃だった。
177ジョニィ・ジョースター:2008/04/17(木) 23:02:43 ID:???
「な・・・何でそんな物を!本物なのかッ!?」
「実際に使う時が来るとは思いませんでした」
取り出すと、グリップをキョンに向ける。キョンは驚愕の表情でそれを見た。
「馬鹿野郎・・・!使えるかよ、そんなもん・・・!」
古泉は残念そうな表情もせず、次はぼくにそれを向けた。
「あなたはどうです?使い方は分かりますか?」
とっさに言葉が出ない。
「・・・わ、分かる・・・でも、撃ったことはない!ぼくにそれを使えって言うのかッ!?」
「僕だって殆ど撃ったことはありません。・・・しかし、誰かがやるしかないんです」
古泉が真剣な顔で言う。平穏な日常は急速に崩れつつあった。
178ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/17(木) 23:06:40 ID:???
「時間がありません。手短に話します」
問いただす間もなく古泉が続けた。
「この音の主は・・・敵、です。この肘は奴の攻撃を食らった結果です。
どうやら本当に一度食らえば離れる事はないようです。
最悪、やり過ごしても腕を切り落とさなくてはならないかもしれません」
「攻撃」だって?その肉をつけるのが?ぼくの視線を無視して古泉は続けた。
「・・・奴は堅い装甲を持っています。僕が先に攻撃して装甲を削ぎます。
あなたはその間に装甲が剥がれた部分を撃って下さい」
古泉が真剣な顔で言う。そこにはいつもの柔和な笑みの面影はなかった。
「・・・馬鹿な・・・」
ぼくは混乱していた。普通だと思っていた友達に、人を銃で撃つよう頼まれるなんてことがあるか?
「出来るわけがないッ!ぼくは素人だぞ!そんなふうに狙い撃つなんて!」
絶叫するぼくに古泉は諭すように言った。
「・・・先ほども言いましたが、誰かがやるしかないんです。やらなければやられる」
ぼくの顔を見て、銃を握らせる。
頭が混乱していた。古泉は何者だ?「敵」とは?ぼくに人を撃てって言うのか?
なにもかも現実離れしている。夢なのか?朝倉涼子のように。
「・・・来ます。指示通りお願いします」
古泉の声が響く。悪い夢。そんな形容が一番合うような現実だった。
179ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/17(木) 23:07:42 ID:???
滴る音が近付いてくる。ぼくは角から出て来たものに驚愕した。
それは青白く光る泥人形のような巨人だった。部室から見たものよりも一回り大きく、
その肉片を辺りに撒き散らしている。巨人の表面が波打った。
「不様じゃあねーかよ古泉?お友達がいねーと戦えねーのか、このタマナシフニャチンが」
古泉が冷静に巨人を睨む。挑発には乗らない。巨人が語調を強める。
「余裕こきやがって・・・泣いて土下座しよーがてめーらは殺す!
てめーらごとき便器のカスが何人集まろうが、オレの『黄の節制』は負けない!」
恫喝するとこちらへにじり寄って来る。と、古泉の肉が取り付いていない腕が光に包まれる。
光は球状に変化し、幾つもの光が古泉を衛星のように囲んだ。
「マッガーレ!」
古泉が叫ぶと、その光が射出された。光は巨人に命中し、胸の肉を削いだ。
どうなっている?あの光は何だ?古泉は何者なんだ?巨人は?状況に頭が追い付かない。
「今です!撃って!」
古泉の怒号に近い声に我に返る。ぼくは銃を構えると引き金を引いた。
幸運にも、弾丸は過たず巨人の胸へと向かった。銃弾を受けて巨人が膝を折る。
「やったか?」
キョンの声が上ずっている。ぼくは口がきけない。
「・・・いや」
答えたのは古泉だった。
「どうやら、しくじったようです」
そう言う古泉の首には、肉片が食らいついていた。

To Be Continued・・・
18055:2008/04/17(木) 23:14:44 ID:???
続きます。以下チラ裏。

書いてみて改めて思いましたが、荒木さんは罵倒のセンスがスゴイなあ。
それだけに登場話のわりにコイツはインパクトが大きいし。
台詞をアレンジする気もおきませんでした。
181マロン名無しさん:2008/04/18(金) 00:02:40 ID:???
GOOD(良い)JOB(仕事)と書いてGJ!
ふふ・・・良く言ったものだ・・・
182マロン名無しさん:2008/04/18(金) 01:23:02 ID:???
本編でも解説役になってしまってる古泉が戦闘に役立っている…
ジョニィの人にGJの賛辞を与えたいんですが構いませんねッ!!
183マロン名無しさん:2008/04/18(金) 04:55:37 ID:???
マッガーレwwwwwwwww
184マロン名無しさん:2008/04/18(金) 06:55:46 ID:???
GJ!
イエテンか…強敵だな
185マロン名無しさん:2008/04/18(金) 07:38:39 ID:???
GJ! 朝から楽しめたぜ
この敵ってオリキャラ?
マッガーレって歌の方は知ってるけど原作にもあるネタなん?
予想したいわけじゃないんで伏せたかったらスルーしてくれ
186マロン名無しさん:2008/04/18(金) 11:03:46 ID:???
>>185
三部で出てくる敵キャラ
マッガーレは原作ではなくアニメの予告で登場した
187マロン名無しさん:2008/04/18(金) 12:26:32 ID:???
サンクス
ラバーソールだったのか、オリキャラかハルヒキャラかと思ってた
マッガーレはアニメネタか、なんにしても盛大に吹くところな気がするけどあんま反応ないのね
188マロン名無しさん:2008/04/18(金) 18:49:00 ID:???
あと巨大カマドウマと戦ったときも言ってたな確か>マッガーレ
189マロン名無しさん:2008/04/18(金) 20:18:23 ID:???
>>188
ふんもっふ!! と セカンドレイド!! だな
特に前者はドラマCDでも多用されてたとおも

だからこそ、こっちではマッガーレ!!だらけで吹いたがなw
190マロン名無しさん:2008/04/18(金) 20:23:54 ID:???
>>189
ごめん、ふんもっふと間違えてたwww
191マロン名無しさん:2008/04/18(金) 22:45:13 ID:???
花の『マーガレット』が変形したものだと思えば、カッコイイ気がしないでもない。
192マロン名無しさん:2008/04/19(土) 10:41:44 ID:???
花京院のマーガレットとな
193イチゴの人:2008/04/19(土) 23:15:20 ID:???
何とかまとまったので、四話、投下します〜
194イチゴの人:2008/04/19(土) 23:16:13 ID:???
パンナコッタ・フーゴの消失
第四話
〜フーゴ視点〜
「問題」は!!
このパンナコッタ・フーゴにとって最も重要な…「問題」は……!!
向こうが僕を「敵と認識しているかどうか」という事だ…………
……と、なんか大層なセリフをかましてみたが、ぶっちゃけ僕が敵だと知られている可能性は極めて低い。
スタンドを構え、殺される覚悟をして入った教室で自己紹介してる最中に指を突きつけられた瞬間、悟ったのだった。
どんなスタンドを使って僕の上着の内ポケットに入っていた書類を書き換えたかは分からないが、もし僕をおびき寄せて殺すつもりなのだったら、
姿を現した時点で何か攻撃をしかけているはずだ。
それとも見られてはまずいため、人のいないところで始末するつもりなのか。
それもない。
なぜなら僕が自己紹介したとき、突然立ち上がってこれでもかというくらいに存在をアピールしてきたからだ。しかも指まで突きつけてきて。
あの態度からは純粋な「驚き」が感じて取れた。……まあ、百歩譲ってそれも演技だったとしても、そんなことする理由が思い当たらない。それでは相手の目的は何なのか。
……ここまでくれば簡単だ。
相手は僕に対して純粋な「好奇心」を抱いて接触しようとしている。そうさ、ほんとうに、ただそれだけの事だったのだ……!
大方、自分と同じスタンド使いを見つけたためだろう。それで思わず声をかけ、逃げられたと思ったら同じ学校に転校してきた。んで驚いた。そう解釈すれば先ほどの反応も納得できる。
そう考えて力を抜き、自己紹介を続けたのだった。
195イチゴの人:2008/04/19(土) 23:17:00 ID:???
僕はイタリアから来た事、日本に関心があって転校してきた事(無論本当は仕事なのだが)などを簡単に伝えただけで自己紹介を終えた。
席は涼宮ハルヒ……教師に注意されしぶしぶ座った……の後ろ、一番後列であった。
ここなら何かとやり易いだろう。
と、思ったが、少し予定外の事態が発生する。もちろん、そんな大した事ではないのだが。
HRの時間が終わって授業が始まるまでの間、てっきり涼宮ハルヒが接触してくるものと思っていたが、何を考えているのか、僕にはちらとも視線を向けてこなかったのだ。
……少し引っかかったが、僕は姦しい転校生の質問に晒されたためそちらに意識をまわしていた。
ありきたりな、少しつまらない問いに対し、僕は礼を失さない程度に話を逸らし、あまり、というかほとんど自分の情報は伝えなかった。
当たり前だ、僕はここに遊びに来ているのでも勉強に来ているのでもないのだ。
今目の前で満足げに頷いているクラスメイトも、後で結局僕の事を何一つ分かってない事に気づくだろう。そんなものだ。

ことが起きたのは最後の授業が終わり、後は帰るだけとなった放課後。
それまで心ここにあらずといった涼宮ハルヒが、チャイムが鳴った瞬間立ち上がると陸上部真っ青なダッシュで僕のところまでつかみかかる様な勢いで走りよってきたのだ。
流石の僕も少し驚く。
「さあ正直に答えなさいッ!あんたは超能力者ね!」
燃えるような闘志と期待が混ざる輝きに満ちた瞳に、自分の顔が映っているのが見える。
ややたじろぐも、冷静に思考する。
196イチゴの人:2008/04/19(土) 23:17:58 ID:???
……なるほど、不意を突けば不用意な発言を引き出せる、ということか。甘いな。
「……超能力者?何のことです?」
一瞬、涼宮ハルヒに自分がスタンド使いであることを打ち明け、親密になることで調査を楽に進めようかとも思ったがすぐに打ち消した。
効率はいいだろうがリスクが高すぎる。
「シラ切ろうったってダメよ。あんた昨日不良をのした時に超能力使ったでしょ。私の目はごまかせないんだから!」
「申し訳ないですけど、人違いじゃないですかね?僕とあなたは会ったことありませんよ」
むーっと顔をしかめる涼宮ハルヒ。普段の僕なら埒の明かない会話に段々イライラしてくるころだが、余裕があるためか、
それとも……不覚ではあるが……むすっとした涼宮ハルヒの顔が可愛く見えたためか、全然頭にこなかった。
……いかん、気を抜いてはだめだ。
「見間違えるわけないでしょ!白状しなさい!」
隣ではあまりぱっとしない感じの男子が一人、涼宮ハルヒを止めたそうにしている。
まあ、そうだよな。転校早々いきなりこんな具体性に欠く与太話を話されたら誰だって怒るだろう。
僕は会話を切り上げるべく言った。
……思えば、少しいい気になりすぎていたのかもしれない。
「何のことだか分かりませんよ。涼宮さ……」
……しまった。
案の定、涼宮ハルヒはすぐに感づいた。
「あら〜?どーして一度も会話した事のない『はず』の私の名前を知ってるのかしら、パンナコッタ・フーゴ君〜?」
してやったり、という電力に換算すれば100ワットは下らないであろう笑顔を向けられた。
「……先ほど、クラスの人に教えてもらったんですよ」
全身全霊を顔に集中させ動揺を押し隠すが、あまり効果、というか意味は無かった。
「どこのどなたかしら。願わくば私の前に連れてきてもらって証言してもらいたいところだけど?」
く、くそ……
周りを見回すと、まだ放課となって間もないためかほとんどのクラスメイトが教室に残っていた。
帰ってしまった、というのは使えない。
ならば担任が僕を連れてくるときに言ったのであって、クラスの人というのは記憶違いだった……というのはどうか?
……いや、こいつは職員室にまで僕を引きずっていって聞かせるだろう。ためらったりしない。それだけの凄みがある。というわけで万事休す。
197イチゴの人:2008/04/19(土) 23:19:06 ID:???
「う……」
「さぁ〜て私に嘘をついた罰ゲームは何にしようかしらね。
そうだ!あなたがこの前着ていた穴ぼこだらけのスーツで登校してくるっていうのはどうかしら?」
怒っているのか笑っているのか、今一判別しにくい顔を見ながら、僕は自分の未来を憂えた。もちろん罰ゲームに対してではない。
何かこう、不自然なくらい調子が悪すぎるのだ。
あんな初歩的なミス、普段の僕なら絶対にしたりしない。負け惜しみとかそういう次元ではなく、やり直しがきかないギャングの仕事をこなしてきた
自分にとってこんなことは「ありえない」ことだった。
何か目に見えない運命の「力」みたいなものが僕に影響している。
馬鹿げた、現実逃避じみた思考ではあったが、今の僕にはそう考えるほうが自然な気がしてきた。
「……すいません。不良と喧嘩していたなんて知られたら、この学校での僕の印象が悪くなると思ったんです」
無論、運命の存在を疑っても努力は惜しまない。
この場における「最善」は僕がスタンド使いだと知られない事であった。
「知らん存ぜぬ」を貫き通せば、人間の記憶なんていうものは曖昧なもの、自分の見間違いだったかと諦めてくれる。それを狙っていた。
しかしそれを失敗した今、やることは一つ。
自分から「超能力者」だとバラしてしまい、涼宮ハルヒと親密になる。これしかない。
最悪自分の能力を話さなければなくなるため、まさに死と隣り合わせの策である。相手の気が変わって僕を殺そうとするかもしれないからだ。
だがそれでも、超能力者ではないと突っぱね続けることはできない。相手が警戒したら任務自体が遂行できなくなるからだ。
僕は自分がスタンド使いだと話そうとして……
涼宮ハルヒは僕の右腕を掴んだ。
「……!」
「さー来なさい。あなたに拒否権はないわよ」
涼宮ハルヒは外見に似合わぬ恐ろしい力で僕を引きずっていく。
相手は自分に敵意を持ってない、と分かっていても恐怖が拭えなかった。
何をされるのか考えている間に「文芸部」と書かれたプレートがさがっている部室の前にたどり着いた。
そしてドアを開けるとぽーんと僕を中へと突き飛ばした。
「みんな!とても最高にいいニュースがあるわよ。ついに、ついに超能力者を捕獲したわ!」
198イチゴの人:2008/04/19(土) 23:20:09 ID:???
〜視点・キョン〜
俺は胃液が戻ってきそうになるのを抑えてハルヒとフーゴとやらの横に立っていた。
ハルヒの馬鹿はどうやら自分の視覚から得た情報を美化して認識してしまうらしく、明らかにただの高校生じゃない、しかも敵かもしれない相手に空気も読めずしつこく聞き続けていた。
こいつは自己紹介の時の殺気を何にも感じていなかったのだろうか?
俺は何度も止めようとしたが、どうしても適当な理由が思いつかない。
こいつに「相手が迷惑しているだろ」というベタな止めかたは逆効果である。
いざとなったら、長門が、なんてふと考えてしまい、自分の他人任せの思考が嫌になった。
長門も万能ではない。
幸い、と言うべきかフーゴは今すぐにハルヒを殺そうとしているわけではないらしく、探るような目つきでハルヒと会話をしている。
やがて意地の悪い引っ掛けにかかった相手をハルヒがむんずと掴み、引きずっていった。
あわてて後を追い、そしてハルヒの周りが見えなくなる性格に頭を抱えたくなる。
なんで自分の名前を知っていたのか疑問に思わなかったのだろうか?
二人っきりにしたら何をされるか分からない。
案の定ハルヒはSOS団の根城である文芸部の部室へとフーゴを放り込んだ。
ハルヒ、お願いだから刺激しないでくれ。頼むから。
俺が部屋の中を見てみると、既にメンバーは全員そろっていた。
いつ見ても麗しい朝比奈さんは目の前に突っ込んできた金髪とハルヒの台詞に目をぱちくりさせている。
古泉も困惑しきったような薄っぺらい微笑を浮かべている。
長門はいつも通り本を読んで……いなかった。
フーゴの脇に立って、処刑することが確定した捕虜を眺めるような目で見下ろしている。
「超能力者〜超能力者〜♪ふふふフーゴ君、早速超能力を見せてもらえるかしら?」
馬鹿やめろ……!
俺は呼吸困難に陥った金魚みたいに口をぱくぱくさせ……
「パンナコッタ・フーゴは超能力者ではない」
助け舟は意外な方向からやってくる。
対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェース、長門が口を開いたのだった。
To Be Continued・・・
199イチゴの人:2008/04/19(土) 23:21:39 ID:???
以上、第四話でした。
今話はつなげるのが難しく時間がかかってしまいましたorz
200マロン名無しさん:2008/04/20(日) 06:43:40 ID:???
GJ!!!
早く、続きが、読みたいッ!
201マロン名無しさん:2008/04/20(日) 21:51:09 ID:???
GJ!
202マロン名無しさん:2008/04/22(火) 13:36:03 ID:???
●<アッガーレ↓
203アメリカの人:2008/04/22(火) 16:09:57 ID:???
暫く色々あって投下できませんでした。投下ァ!
204アメリカの人:2008/04/22(火) 16:12:53 ID:k1iTjF9a
第32話 「ウォータープルーフブロンド 1」

『これが日本の文化祭ってやつか。今迄見た事ないから新鮮だな!』
『アメリカではこういうのあんまりないからね。ゆっくり楽しまない?エルメェス』
文化祭、あたしはエルメェスと二人で展示をまわっていた。
『さっきのフリマもっかい見るか?』
『なに言ってんのよ。さっき散々冷やかししかしてなかったろ?』
『あれは楽しかったな!』
『じゃあ、この喫茶店なんてどう?』
『喫茶店〜〜〜?どーも嫌なんだよなぁ。素人丸出しでさぁ。あたしん家レストランやってるからそういうの気になんだよなあ』
『エルメェス……あんた接客なんてしての?ていうかできたの?』
『なんだよそれ。あ、なら映画はどうだ?あたし達が撮った画!』
あたし達が撮った映画はハルヒが強引に映画研究会に話を通し、上映会で上映させていた。みくるのファンが揃って観に行っているのと、あたし達の撮った映画が予想以上に出来がよく、それを目当てにした客によってそれなりに評判はいい。
『そうね……悪くないわね。あたし達が作った映画の内容は知ってるけどハルヒが作った映画の内容はしらないしな』
『んじゃ、きまりだな。こっちだ』
205アメリカの人:2008/04/22(火) 16:14:35 ID:???
あたし達が上映会場につくと、人がそれなりに並んでいた。
『駄目だ。徐倫。人数制限でチケットが一枚しか手に入らねぇ』
『大丈夫よ。エルメェス、キッスでチケットを二つにして』
『………?』
シールで二枚にしたチケットを持ち、受付で二枚だす。
『おい!徐倫!チケットは一枚ずつ番号振ってるんだぞ!?バレるに決ってるだろ!』
「すいません……お客様……」
「チケットの番号のこと?ならよく見なさい」
「………え?あ、すいません!私が間違えました!」
チケットを受け取り、入場する。
『徐、徐倫!?どうしたんだ?』
『簡単よ。あたしの糸で受付にあった新品のチケットを盗ってすり替えたのよ。チケットをだしたら普通はそっちに気をとられるから助かったわ』
『……………』

あたし達の映画のあらすじはこうだ。あたしとエルメェスふんする街のチンピラの二人組が、のしあがろうと街を牛耳るギャングのボスであるアナスイ達と戦いを繰り広げるというありきたりなストーリーだ。
見ている観客もストーリーに感動するというより、画面内をところ狭しと暴れ回るアクションシーンに盛り上がっているという感じだ。……悪い気はしないな。
『あたし達の映画そろそろ終りだぜ』
『ハルヒか……ろくでもない事になってるんだろうな………』
206アメリカの人:2008/04/22(火) 16:17:24 ID:???
ひどい。その一言しかでない映画だ。まずストーリー。目茶苦茶だ。SFだか、学園ラブコメだか分からない。次に演出。明らかに昼間のシーンを夜だと言い張られても観客としては反応に困る。他にも目茶苦茶な演出が幾つもあった。カメ
ラワークもなっていないし、(機材や裏方が映ってどうする!)何より芝居の下手さが目立つ。……古泉はまあましだけど。唯一救いなのはCGや音響はなかなか上手いことぐらいだろうか。……有希がしたのか?
『そろそろ終わりだな』
『えぇ』
そしてエンディングと共にスタッフロールが流れ、「完」の文字が現れた次のシーン。ハルヒがスクリーンに現れた。
「えーと、この作品はあらゆる企業、法則、人物など一切関係のないフィクションです。あ、CMは本当だからね!この映画のなかで似てる人とかがいても、それは関係ありません。他人の空似です……ってキョン、徐倫、これって当たり前
じゃない?なんでこんなの入れるのよ?……え?もう一回?……分かったわよ。この作品は………」

『しかし……あんなんで解決するとはな』
『あたしだってちょっと信じがたいよ。……上手くいったからいいけど』
『……だな。そうだ!次これ見よーぜ!』
『生物部の展示?へぇ……面白そうね。行ってみるか』
そしてエルメェスが歩きだした瞬間、誰かにぶつかった。
『あ……悪い………』
相手は180近い男で、白い髪を背中の半分辺りまでまっすぐに伸ばしている。目は右が赤、左が黒のオッドアイ。ルックスはイケメンと言って差し支えの無いレベルだが、白い髪のせいで年齢がよく分からない。なんだか神秘的な感じだ。カリスマ性っていうやつを感じる。
まだまだ暑いというのに白いロングコートに身を包んでいる。
「……………」
男は無言でいたが、暫くすると行ってしまった。
『感じ悪い奴だぜ』
『行くわよ。エルメェス』
207アメリカの人:2008/04/22(火) 16:18:39 ID:???
生物部は壁に研究結果のレポートが何枚か張り付けてあり、部屋の隅でビデオ上映会、あとは幾つかの水槽に魚や蛙などが入っていた。あたし達以外は生物部の受付が二人と、一般客が三人いるだけだ。
『お!徐倫!メダカだぜ!……メダカって一塊で泳いで何が楽しいんだろうな?』
『さぁね。あ、鯉がいるわ』
『結構でかいな。……そうだ、徐倫鯉って食べたことあるか?』
『ないけど』
『あたしはザリガニを食ったことがあるぜ』
『う〜え』
『……なんだよ?海老みたいで結構いけるぜ』
『……エルメェス、どうでもいいけど手が濡れてるわよ』
『ん?そうだな。水槽が濡れてたんだろうな』
と、あまり生物部ですべきでない話をしながら時間を潰していたときだった。
『……!?エルメェス、その手………』
『手……!?な、なんだこりゃあッ!』
エルメェスの手にはいつつけられたのか、ドロドロのスライムが纏りついている。
『大丈夫か!?』
『あぁ……けどこいつ……段々でかくなってないか?』
相手にとりついてその相手を食らうスタンドとかだろうか。親父から聞いたイエローテンパランスみたいなスタンドだ。
『さっきからシール貼ったり殴ったりしてんだけどよ……とれねぇんだ』
『……本体を叩くしかなさそうだな………』

To Be Continued・・・
208アメリカの人:2008/04/22(火) 16:22:42 ID:???
以上、第32話でした。
ひさびさに来たら職人さんが増えてて嬉しいかぎり!みなさんがんばってくださいね。
俺はザリガニを食べたことがあります。ほんとに海老みたいな味がします。みなさんも一度どうぞ。
遅ればせながら前回のスタンド「ザ・ゲーム」の由来。
あのクイーンのアルバムThe Gameからとりました。気づいた人もいたでしょうか?
それでは!
209マロン名無しさん:2008/04/22(火) 16:23:27 ID:???
hosyu
210マロン名無しさん:2008/04/22(火) 19:18:09 ID:???
アメリカの人久しぶり!
ヒトデにも食べられる種類があるらしい
うにだか蟹だかに近い味だとか
211マロン名無しさん:2008/04/22(火) 19:31:47 ID:???
GJGJGJGJ!!
アメリカの人が帰ってきた!
212アメリカの人:2008/04/24(木) 12:09:18 ID:???
第33話投下!

書くことねぇ
213アメリカの人:2008/04/24(木) 12:10:33 ID:???
第33話「ウォータープルーフブロンド 2」

あたしとエルメェスは、生物部の展示会場にいた。
『だけど徐倫、このスタンド……遠隔操作かもしれねーぞ』
『いや……多分近距離パワー型だ。遠隔操作型でもそれをつけるときにはエルメェスに近付かなきゃいけない……
どうせ近付くのなら相手の様子が見える位置をとるのが普通だ』
『と……なると本体はここにいる誰かってことだな………』
部屋には制服を着た暇そうな生物部員が二人、一組で揃いの服を着たカップル、帽子を被ったジャージの男と一般客は三人いる。
『……で、誰か分かるか?徐倫』
『見当もつかない………』
『こうなりゃ全員ぶちのめすか?』
『駄目だ最初で外すと逃げられる』
『……どうすりゃいいんだよ。あたしのスライムもなんかでかくなってきてるぞ』
エルメェスの腕を見るとなるほどでかくなってきている。……これからどうなるか予測できない分怖いな。
『とりあえずあの受付に聞いてみるか』
受付に行き、質問をし始める。
「悪いんだけどさ……今日怪しい人とか来てない?」
「怪しい……人?一体なんでそんなことを………」
「あ、あーあたし、風紀委員なのよ!文化祭とか他校の奴とかいっぱい来るでしょ?」
「あ、そういう事ですか。で、どういった人ですか?」
214アメリカの人:2008/04/24(木) 12:11:18 ID:???
「んー例えば……展示をいじくってる奴。水槽を触ったとかさ」
「今のところいませんね」
「やっぱそうよね……じゃあ、何かおかしな事とかは?」
「うーん……特には………」
「ねぇねぇ」
もう一人の受付が声をかけてくる。
「さっき交代の時………」
「交代?」
「あ、はい。実は私代理なんです」
「代理?」
「はい。受付は何回か交代してるんですけど……その時に本来の当番の子が帰ってしまって……四十五分ぐらい前でした、暫く誰もいない時間があったんです」
「それはどれくらい?」
「十五分間ぐらい……だったと思います」
『徐倫……!』
エルメェスが手掛かりを見つけた刑事のような笑顔を浮かべながら話し掛けてきた。
『十五分もありゃスタンドを仕掛けておくのに十分すぎる時間だぜッ!』
『ああ、少しだけ敵の姿が見え始めたな』
『早くしてくれよ。こいつ、もう肘を通り過ぎた』
あたしは更に質問を続ける。
「その十五分の間に来た客とかは?」
「さあ……あの帽子の人はその十五分の間に来たようです。カップルのお二人は二十分程前に」
『あの帽子が怪しいな……この部屋は狭い。受付に見つからないように何かするのは困難だぜ』
『次はあいつに聞いてみるか………』
215アメリカの人:2008/04/24(木) 12:12:44 ID:???
二人で帽子の男に詰め寄ると、さっそくエルメェスがいかつい顔でドスの聞いた声をかける。
『てめぇ……スタンド使いか?』
『ちょ、ちょっと待てぇぇぇぇぇ!エルメェェェェェス!』
『なんだよ?徐倫?』
『そんなふうに聞いて教えてくれる訳ないでしょ!それにこいつがスタンド使いじゃなかったらどうするんだ?』
『じゃあどうすんだよ!』
『まあ見ときなさい』
ストーンフリーをだし、殴りかかる。が、男は全く気付かず、パンチがモロに当たりそうになった瞬間に、ストーンフリーを糸にほぐし、衝撃を軽減する。
「……なんかくすぐってえな………なんすか?あんたら?」
「いえ、もういいわ。それじゃ」
二人で急いで男から離れる。
『はずれみたいだ』
『クソッ……一体……』
エルメェスがそう言った瞬間だった。いきなり何かがあたしの頭に向かって飛んで来た。
「なッ!?」
とっさにかわすと後ろにいたカップルの男に当たった。
「ん?グ……ガボッゴヴォゲ!」
と、男に当たったスライムが男の鼻と口に入っていった。
『徐、徐倫!』
『エルメェス、その腕のそれ……何処まできてる?』
『肩………』
やばい……早く本体を叩かないとエルメェスが……だが、本体は……と、そこであたしの脳裏にある仮説がひらめいた。
216アメリカの人:2008/04/24(木) 12:13:25 ID:???
『エルメェス、さっきの攻撃……どこから来たか見えたか?』
『あっちの部屋の隅だ。けどあっちに人はいないぜ。他の奴が騒ぎ始めた。さっさと全員ぶちのめ………』
『エルメェス、よく見て。本当に誰もいない?』
『徐倫……何を……まさか………』
『そう。いない。人はいない。けど………』
そしてストーンフリーをだし、
「オラァッ!」
水槽を叩き割る。中から鯉が出て床をピチピチ跳ね始めた。
『スライムが消えた………こいつが本体かッ!』
『スタンド能力は何も人間だけの能力じゃない、生物なら大体が身に付けられる。
ここは生物部だ。スタンドを持った生き物を紛れ込ませるなんて朝飯前だろう』
そう言ってから鯉を踏んづけて、トドメを刺す。
『死んだか?』
『みたいだな』
部室を見回すと、さっきスライムを撃たれた男も無事なようだ。
『これで一件落着………じゃないみたいね』
見ると生物部の受付が鬼気迫る表情を浮かべ近付いてくる。
『どうする?エルメェス?』
『どうするってなあ………』
その瞬間、
「徐倫、いるか?」
アナスイとみくるが現れた。
「それじゃアナスイ、後よろしく」
『元気でな』
「は?」
そう声をかけるとあたし達は逃げ出した。
「お、おい徐……え?こっち来い?あの、俺一体何………」

鯉 死亡 スタンド消滅
ナルシソ・アナスイ こっぴどくしぼられ、承太郎にもしぼられた

To Be Continued・・・
217アメリカの人:2008/04/24(木) 12:16:14 ID:???
見ても見なくてもいい履歴書

名前 錦
年齢不詳 血液型不明
好きな食べ物 不明 嫌いな食べ物 不明
趣味 不明 性格 不明

ウォータープロンフブロンド
パワー D スピード D 持続力 A
射程距離 C 精密動作性 E 成長性 C
能力 相手に張り付き、そのまま相手を窒息させる単純な能力。一度張り付くと本体を倒すまでは絶対離れない。
単純な能力なのは魚の頭脳でコントロールできる範囲はたかがしれているからだと思われる。
218アメリカの人:2008/04/24(木) 12:18:17 ID:???
以上、第33話でした

今回のスタンド名の由来はアメリカのロックバンド「ウォータープルーフブロンド」より
履歴書のところはミスりました。すいません

書くことが無いので…それでは!
21955:2008/04/24(木) 21:39:27 ID:???
GJ!徐倫の人が帰って来てくれた!
続けて投下します。
220ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/24(木) 21:46:41 ID:???
第七話 「スターティング・オーヴァー そのA」

古泉の顔からみるみる血の気が失せていく。なぜだ?銃は命中したのに。
勝ち誇ったように「黄の節制」が笑う。
「古泉ィ〜、勝てるとでも思ったかァ〜!?そこのガキが撃ってきた時はちと焦ったが、
そんなチンケな作戦でオレの『黄の節制』が倒せるか!」
マズい、古泉が危険だ。ぼくは再び引き金に指をかけた。
「このビチグソがッ!身の程知らずのガキがしゃしゃり出て来るんじゃあねえ!」
首に激痛が走る。痛みに思わず銃を取り落とす。肉に取り付かれた!?だが、いつの間に!?
「食らいつかせたのはお前がオレを撃った時だ。オレの『黄の節制』は衝撃を吸収し飛び散る。
攻撃する防御壁だ!弱点はないッ!」
気がつけば、肉は下半身にまで取り付いていた。キョンも食らいつかれている。
バランスを崩し、ぼくは車椅子ごと倒れた。「黄の節制」の高笑いが響く。
「古泉ィ!てめーのレーザーで肉を削げたのは罠だ。墓穴を掘らせるためのな!
二重に肉を纏っていたんだ!クク・・・そしてこれがオレの本体のハンサム顔だァー!」
そう言うと、「黄の節制」は肉を脱ぎ捨てた。チャンスだ・・・!
落とした銃は近い。拾って不意をつければ・・・!くそ、体が重い。
感覚を失いつつある体を引きずり、少しずつ銃に近付く。
あと少し・・・あと少し・・・手が届く!渾身の力をこめ手を伸ばした時。
かちゃり。
乾いた音をたてて銃が廊下を滑っていく。「黄の節制」が蹴り飛ばしたのだ。
「ひゃはは、今の顔!写真に撮りたいくらいだぜ!イイ気分だッ!」
笑い声が勝利宣言のように響く。ぼくは絶望的な気分でそれを聞いていた。
221ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/24(木) 21:48:16 ID:???
終わりだ・・・。古泉のレーザーも通用しない。銃は手の届かないところへ行ってしまった。
古泉が精一杯の憎しみを込めて「黄の節制」を睨む。奴はそれに気付き嘲った。
「古泉!お前の姿でも身に纏って、女子高生でも引っ掛けるとするかなあ!ひゃはは!」
古泉が怒りを爆発させる。と、その表情が突然変わった。
「ジョ・・・ジョニィくん・・・!それは・・・?」
異変に気付き、「黄の節制」の視線が下がる。同時にぼくも視線を下げる。
・・・奇妙な感覚だった。痛みは全くない・・・それなのに、爪が高速で回転していた。
これは何だ?ぼくに何が起こった?混乱した思考は唐突に中断された。
「ひ、ひィィィィ!オレの足が!」
「黄の節制」の無防備な足首が切断されていた。
222ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/24(木) 21:55:03 ID:???
「肉が剥がれたぞ!」
キョンの声が聞こえた。見ると、纏わり付いていた肉片が死んだように粘着を止めている。
「古泉!ぼくの爪が!何なんだこれは!?」
珍しく古泉は興奮している様子だった。信じられないという様子でぼくを見る。
「いわゆる『超能力』・・・人間の持つ、眠れる才能です。
僕たちは『スタンド(立ち向かうもの)』と呼んでいますが・・・」
古泉が「黄の節制」に視線を移す。
「ひとまずは、彼の処遇ですね」
「ひっ」と「黄の節制」が声をあげる。ぎこちない笑顔をすると媚びるような声を出した。
「こ、古泉くぅ〜ん。見てくれよ、オレの足が取れちまった。重傷だよォ〜。
まさかこんなに惨めなオレに攻撃しないよなァ〜。泣いて土下座するから許しちくりぇ〜」
まるでさっきまでとは別人だ。古泉が肩をすくめる。キョンが首を振る。
「やれやれ・・・古泉、どうするんだ?」
「そうですね・・・『機関』に預けようと思います」
そう話していると、「黄の節制」が大仰な声をあげた。
「馬鹿がァ!喰らいつけ、『黄の節制』!」
言うと、残った肉片を古泉に投げ付けた。一直線に頭部へと向かっていく。
223ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/24(木) 21:56:53 ID:???
マズい、当たる。思った瞬間に古泉の頭が光に拡散した。肉片が素通りした後、
光が収束し元通りの頭部を形作った。古泉が冷静な声を取り戻す。
「なるほど・・・。僕の『スタンド』も攻防一体のようですね。
つまり、攻撃が当たる部分を光弾にすれば攻撃を回避出来る。Do You Understand?」
口をあんぐりと開けていた「黄の節制」がひきつった笑いを浮かべる。
「や、やだなぁ〜、古泉さん。じょ、冗談ですよお〜。
まさかマジに受け取ったりしませんよねえ〜?」
古泉が今までで一番輝いている笑顔を浮かべた。
「おっしゃりたいことは、それで十分ですか?」
光弾が「黄の節制」を取り囲む。断末魔の悲鳴が辺りに響いた。
「マガマガマガマガマガマガマガマガマガマガマガマッガァァァレ!!」
光弾が切り刻み、見るも無惨な状況になった。
「し・・・死んだのか?」
キョンが焦った声を出す。古泉がすっきりした声で言う。
「いえ、死なない程度にしておきました」
・・・やっぱり、腹が立っていたのか。
224ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/24(木) 22:04:52 ID:???
「『機関』と連絡がつきました。彼を回収しに来てくれるそうです」
ズタボロになった「黄の節制」を見て古泉が言った。そしてぼくを見る。
ぼくは頷くと、口を開いた。
「・・・古泉。ぼくの爪・・・『スタンド』って何だ?君は何者だ?・・・ハルヒは?」
古泉は肩をすくめるとため息をついて言った。
「・・・あなたも、呼ばれた人間だとは・・・。順番に話をさせて下さい。
・・・ジョニィくん、この世界の正体は何だと思います?」
禅問答のような質問にたじろぐぼくに、古泉は苦笑した。
「いや、失礼。そうですね・・・。『胡蝶の夢』はご存知ですか?」
蝶になる夢を見たけど、自分が蝶になる夢を見たのか、蝶が自分になっている夢を見ているのか、
どちらが現実なのかは分からない。という話だったか。だが、なぜそれが出て来る?
「あの故事も言うように、現実、世界は非常にあやふやなものなのです」
「・・・何を言ってるのか・・・ぼくにはさっぱりだよ」
一向に話が見えない。何のつもりなんだ?
「僕が所属している『機関』はこの世界を何者かが見ている夢のようなものと考えています。
夢ですから、その者にとって我々の現実を改変することは造作もないことです。
つまり、世界を自分の意思のままに出来る存在−−−人間は、それを、神、そう定義しています」
・・・!?まさか・・・!
「そう、我々は涼宮さんこそが世界を操る力を持つ『神』であると考えています」
「馬鹿なッ!?」
反論しながら、ぼくは空しさを感じていた。今日のことが現実なら、何が現実でないと言えるだろう?
「もちろん、彼女はその能力に気付いていません。いわば未完成の神ですよ。
あなたも、心当たりがあるのでは?」
超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。ハルヒが言った言葉だ。
そして、超能力者が現れ、動かぬぼくの脚が動いた。
「超能力・・・『スタンド』は涼宮さんが望んだものです。
僕たち、『機関』は世界を維持するために神、涼宮さんに平和に過ごしてもらうのが目的です」
「・・・『スタンド』」
「我々は、『スタンド』を人間が引き出す精神的なエネルギーと考えています」
・・・荒唐無稽な話だ。だが、ぼくの経験はそれが現実だと裏付けていた。
225ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/24(木) 22:09:33 ID:???
「・・・もう、いいでしょう。ジョニィくん、あなたはなぜSOS団に?」
ハルヒとの出会いが思い起こされる。自分の脚で立ったという感覚。
「・・・この脚を見てくれ。感覚すらない。でも、立ったんだ。
歩けなくなってから、ぼくは死んだようだった。そこにほんの小さな光が灯ったんだ。
一度でも立てた事で命を失ってもいいと思った。
こんな、とるにたらないこのぼくに、生きる目的が出来た」
二人が口をつむぐ。ぼくは二人に背を向けた。涙が溢れそうだった。
「あの日、ハルヒにぶつかって倒れた時、彼女は『立て』と言った。関係あるのか?」
古泉は手を口にあてて考えた。
「有り得ることです。彼女が当然に『あなたが立つ』と思ったのなら。
しかし・・・。あなたは僕たちとは『スタンド』の発現過程が違います。
どういうことなのか・・・」
首を捻る古泉にぼくは問いかけた。
「それと、『黄の節制』は何者なんだ?」
古泉はしばらくの間考え、意を決したように口を開いた。
「僕たちの『機関』の目的は『現状維持』です。当然、他にも『機関』はあります。
目的が『涼宮ハルヒの捕獲、コントロールによる世界の安定』である『強硬派』も」
「何だって!?」
声をあげたのはキョンだった。慌てた様子で続ける。
「これからもあんな奴らが来るってことか!?長門はともかく、朝比奈さんはどうなる?」
「長門はともかく」?どういうことだ?まさか。
「キョン、長門も『スタンド』を持ってるのか?」
キョンがしまったという顔をする。古泉が肩をすくめた。
「・・・それは、彼女に聞いて下さい」
自嘲気味に笑う。
「僕にはよく分かりません」
ぼくは歯噛みした。
「まだ何か、隠そうっていうのか?」
古泉はあはは、と声をたてて笑った。
「いえいえ、彼女とはあまり話していないのですよ。本当に知らないんです」
怪しいものだとぼくは思った。ふと、古泉が遠くを見て真剣な顔をした。
「・・・行きましょう。『機関』の者が来ます」
226ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/04/24(木) 22:11:43 ID:???
歩き出して、また笑う。
「それにしても、僥倖でした。ジョニィくんの『スタンド』発現がなければ、
やられていたのは僕たちだったでしょう」
喰らいつかれた部分はまだ痺れが残っている。古泉が声の調子を変える。
「・・・ジョニィくん。あなたの気持ちは分かりました。
ですが、奴ら・・・いえ、SOS団にいることは危険です。
さっき、あなたも言いましたが・・・命を失うかもしれません。
彼ら以外にも多くの危険がある。それでも『歩きたい』と、今でも思っていますか?」
じっとぼくの顔を見る。ぼくは目をそらさずに言った。
「・・・ああ・・・もちろんだ。『ハルヒ』に出会って死にかけていたぼくの心は生き始めた・・・。
『ハルヒ』を諦めたら、きっとぼくの心は再び死ぬ」
視線が交錯する。しばらくして、古泉が諦めたように首を振った。
「分かりました。今後ともよろしくお願いします。・・・いずれ、『機関』を紹介しますよ」
キョンが「やれやれ」と言う。ぼくたちは部室へと歩く。ハルヒが待っている。
ここから、ここがぼくの出発地点だ。

To Be Continued・・・
227古泉の報告書:2008/04/24(木) 22:14:11 ID:???
スタンド名 「回転する爪(仮)」
本体名「ジョニィ・ジョースター」

パワーA スピードC 精密性C 持続力D 成長性A
射程距離2〜3m
能力
・爪を高速回転させ、物を切り裂くことが出来る。
・また、地面や壁等に力を伝導させることで延長線上にある物を切り裂くことも可能。
・破壊力はかなり高く、ほとんど何でも切断出来るようである。
・一方、射程距離は短く、「伝導」を使っても数メートルである。
備考
本体は我々と同じく涼宮ハルヒに引き付けられたスタンド使いである。
しかし、彼女についての事情を知らず、出会いも偶然である。
この差異が何を意味するのか、現在は不明であり、調査を要する。

スタンド名「マッガーレ」
本体名「古泉一樹」

パワーC スピードA 精密性B 持続力C 成長性C
射程距離20m(距離が開くにつれ威力は弱まる)
能力
・体の一部を光弾化し、レーザーとして照射する。
・一度に光弾化出来るのは肉体の半分程度。
・集中させることで強化出来るが、基本的には一撃の破壊力は低い。
・ただし、スピードはかなり早く、射程距離も長い。

備考
本体(筆者)は当機関に所属するスタンド使いだが、
閉鎖空間でのそれとは少し違う能力が発現している。
また、突然現実空間で使用出来るようになったのはなぜなのか?
涼宮ハルヒとの接触が関係しているのか?
現在、調査中である。
22855:2008/04/24(木) 22:18:12 ID:???
投下終了です。
古泉のスタンド名は最初は無難に「フラッシュ(FLASH/QUEEN)」にしようかとも思ったんですが、
インパクトがなかったのと、しっくりこなかったのとで現在の物にしました。
「ふんもっふ!」とか「セカンドレイド!」にしなかったのは楽曲になってなかったからです。
229マロン名無しさん:2008/04/25(金) 07:51:31 ID:???
そういやマッガーレも曲関係かw
GJ!!!!! 「回転する爪(仮)」「本体(筆者)」とか履歴書も面白かったぜ!
230イチゴの人:2008/04/27(日) 18:50:16 ID:???
第五話投下!
そろそろフーゴをキレさせたいところですがなかなかうまくいきません。。
231イチゴの人:2008/04/27(日) 18:51:04 ID:???
パンナコッタ・フーゴの消失
第五話
〜視点・キョン〜
長門の発言に、今度はハルヒが凍りついた。
「……嘘……よね?」
「パンナコッタ・フーゴがナイフで刺されなかったのは不良が躊躇して中途半端な位置で止めたため。彼の自発的な行動によるものではない。昨日わたしもその場に居合わせた」
淡々と話す長門だが、その視線は足元のフーゴに固定されている。
それが意味する事ぐらいは俺でも分かる。長門は嘘をついている。ハルヒに真実を隠すために。
だがそんなはっきり言っちまったら……
「嘘!嘘よそんなの!そんな……だって、わたしは……超能力者を見つけて……」
案の定、ハルヒは整った顔を今にも泣きそうな感じで歪ませて、がっくりと膝をついてしまった。当然だろう。一人舞い上がっているところで冷然な現実をつきつけられちまったんだから。

人間、幸せを感じるのは絶望が希望に変わった時と、まわりが絶望していると知った時。そしてその逆もしかり。今のハルヒがそれだ。
長年の野望を達成したと思っていたのが勘違いだった、なんて悲しすぎるオチだ。俺も同情を禁じえない。ほんの少しだが。
……さて、ハルヒが普通の人間ならそこで終わりなのだが、生憎とそれとは対極に位置するあいつが機嫌が悪い、というのは世界の危機にダイレクトで直結している。
このまま放っておけば筆舌に尽くしがたい事態になること必至なのだが、長門、お前はどうするつもりなんだ?
「……」
……いや、あの、そこで見つめられても困るんですけど。
……ちょっと待て、どうして古泉も朝比奈さんも「俺」を見る?なんで俺?
……分かったよ。分かりたくもなかったが。
重い雰囲気の中、少しは空気が読めると自負している俺はこの不可解な視線から「俺が」事態を解決しなければならないと解釈する。
232イチゴの人:2008/04/27(日) 18:52:48 ID:???
さて、唐突だが、ここでシンキングタイムだ。
3択―ひとつだけ選びなさい
答え@苦労性の俺は突如ハルヒをなだめるセリフがひらめく
答えA仲間が助けてくれる
答えB世界が終わる。現実は非情である。
俺としてはAに丸をつけたいところだが、この場でそれを期待するほど俺は人生をなめてかかってはいない。答えB……答えB答えB答えさ……
「……なあハルヒ。今回は確かにその……なんだ、勘違いだったけどよ。俺達『結果』だけをもとめちゃ駄目だと思うんだ。『結果』だけを求めていると、
人は近道をしたがるもんさ。でも近道した時、真実を見失うかもしれない。やる気もしだいに失せていくだろう。俺は大切なのは 『真実に向かおうとする意志』
だと思っている。向かおうとする意志さえあれば、たとえ今回は勘違いだったとしてもいつかはたどり着くだろ? 向かっているわけだからな。違うか?それに俺は正直、
もう少しこのSOS団を楽しみたいと思ってる」
……答えは@だったな。とっさの一言にしては上出来だろう。やれることはやった。後はこいつの反応しだい。
永遠な様で、実際は一瞬な静寂の後……
「そうよ!こんな簡単にことが運ぶはずないんだわ!これは『試練』よ!逆境に打ち勝てという『試練』と受け取ったわ!」
若干、俺の言いたかったこととずれている、ってか俺のセリフなんの意味もなかっただろちゃんと聞けよ、という反応が返ってきたが、取りあえず……収まった。
「と、言うわけで、悪かったわね。変なこと言っちゃって。もう帰っていいわよ」
今まで蚊帳の外だったフーゴに向けて、ハルヒは言った。
それに対し、フーゴがどんな反応を示すか……まあ、予想はついていたのだが。
「もしかして……あなた方は超常現象を研究されているんですか?実はそういうの僕も興味あって……もしよければ、仲間に入れていただけませんか?」
ほれやっぱり。
233イチゴの人:2008/04/27(日) 18:53:43 ID:???
ハルヒは少し困ったような表情になった。超能力者じゃないのならとっとと消え去れとは、流石のこいつでも言えないのだろう。
「そう……ね。うん。気持ちは嬉しいわ。でもこの『SOS団』は他の部活みたいにただで入れるものじゃないのよ。入団試験があるわ。それでも入りたいと思う?」
こいつにしてはいい感じに遠まわしな断り方だ。まあ、それでもハルヒを調べているだろうフーゴは入ろうとするんだろうが。
ハルヒ、お前らしく無理難題をふっかけろ。
「『入団試験』ですか……なつかしい」
「?」
「いや、なんでもありません。その試験ですが、合格すれば入れてもらえるんですよね?なら僕が受けない道理はありません」
「そ、そう。えーと試験はね……そう、私を驚かせてみせなさい。それが入団試験!」
グッド!
もし、フーゴがハルヒを消すために転校してきたヒットマンだったら、自分の超能力は隠しておきたいところ。超常現象抜きとなればこいつを驚かせることの難易度ははね上がる。
そして、SOS団に入れないとなればハルヒとの接点は薄くなるわけで、ハルヒをどうこうすることも難しくなるだろう。
追い詰められたな、パンナコッタ・フーゴ。
234イチゴの人:2008/04/27(日) 18:54:37 ID:???
〜フーゴ視点〜
僕はショートカットの女子生徒からのそれだけで殺せそうな冷たい視線に耐えながら、ある一つの結論にたどり着いていた。
涼宮ハルヒは自分の能力を自覚していない。そしてスタンドが見えていない。
もし自覚があるのなら、ここまで超常現象に固執する事もないだろう。自分が超常現象が存在する事の証明となるわけだから。
そして後者だが、これはショートヘアの女子生徒の発言にショックを受けていた事から分かる。もしパープルヘイズが見えていれば
涼宮ハルヒは自分の考えを変えてはいなかっただろう。てっきり僕はスタンドが「見えていた」から超能力者呼ばわりされているんだと思っていたが、
どうやら違ったらしい。純粋にナイフの軌道で判断したのだ。
涼宮ハルヒはスタンド使いではなかった。
肩の荷が降りた感じだ。
ここは取り敢えずターゲットと接点を持って、適当に調べて証拠かき集めたら「涼宮ハルヒはスタンド使いじゃなかった」と報告して帰ってくればいい。
情報チームは怒るだろうがボスも直接調査した僕の言葉を信用するだろう。何より、無益な殺生はしたくない。
しかし入団試験の内容を聞いて少し困ってしまった。
スタンドは見えないのだからスタンドを使えばいい、と思うかもしれないが、残念ながら僕の殺戮一辺倒のパープルヘイズではブチャラティみたいな手品っぽいことができない。
あんまり不可思議な、例えばスタンドでものを持ち上げるとか、そういうことをやるわけにもいかない。さてどうしたものか……
数秒で考えをまとめると、僕はその場で逆立ちし、さらに左腕を地面から離して腕立てをした。
235イチゴの人:2008/04/27(日) 18:55:24 ID:???
パープルヘイズを右手だけ発現し、そのパワーでやっているのだが、傍目から見れば僕がとんでもない怪力であるように見えるだろう。
はたして、涼宮ハルヒは大きめの瞳をさらに見開いていた。
「文句なしね。合格」
その言葉に、他の面々はやや苦い顔になったのはきっと気のせいではないだろう。まあ、歓迎されてなくったって別に問題はない。長くは留まんないだろうし。
……その「他の面々」がただの部外者でない事を、物語の中核をなす重要な意味を持っている事を、僕は午後七時、駅前の公園で身をもって知る事となる。

僕がそれに気づいたのは帰り道、日本にいる間滞在するビジネスホテルへの地図を確認しようとポケットをまさぐっていた時だった。
指先にしおりのような、身に覚えのない紙片が触れた。
取り出してみる。
「『午後七時、駅前の公園』……?なんだこれ?」
印刷された文字だと思っていたが、この文面と質感から言ってどうやら手書きらしい。
で、なんでそんなものを僕が持っているのか。
今日体育の授業は無かった。よって誰かがスリと逆の手順でポケットに紙片を入れたのだという事になる。が、それに果たして僕が気づかないものだろうか?いくらミスが多くても。
ここまで来て、僕はあの書き換えられた、入学関係の書類の事を思い出した。
涼宮ハルヒはスタンド使いではない、という結論を得てから、やはりあれは読み間違えだったと自分を納得させたのだが……
「確かめなくては……確信を得なくては……」
僕は駅前の公園がどこの事を指しているのか調べるべく、ルートを変更した。
To Be Continued・・・
236イチゴの人:2008/04/27(日) 18:56:17 ID:???
以上、第五話でした〜
237マロン名無しさん:2008/04/27(日) 20:42:57 ID:???
GJ!!!
アバ同僚の名セリフから返ってきたのがボスのセリフってのがなんともwww
入団試験で昔思い出したのも個人的にニヤニヤ
238アメリカの人:2008/04/30(水) 12:44:38 ID:???
あんましレスつかないなぁ…
投下ぁ!
239アメリカの人:2008/04/30(水) 12:45:40 ID:???
第34話 「愛と別れのキッス」

文化祭が終わった後の振替休日、あたし達は隣の県にある国際空港にいた。
『もうお別れか………』
「寂しくなりそうですね」
「あなたは僕からしても興味深い人でした……また会えたらいいですね」
「……………」
『元気でなエルメェス』
そう、あたし達はアメリカへと帰るエルメェスを見送りにきていた。
『なんだよ。みんなそんなしみったれた顔してよぉ。あたしが死んだわけじゃないんだぜ、また会えるよ』
「……でも……やっぱり……」
『出会いがあれば別れもある。人生なんてそんなもんさ』
「だけど……肝心の涼宮はどうした?おい、キョン、なんか知らねぇのか?」
「俺は何にも知らねぇよ。……しかしアナスイがハルヒの事気にかけてたのは意外だな」
「別にそんなんじゃねぇよ。……言い出しっぺが来ないのが腹がたってるだけだ」
と、そこであたしは一つの可能性を思い付いた。
「ハルヒがさ……その……例のトンデモパワーを使ってなんかしちゃったんじゃ………」
「……………」
「それはない」
有希の冷静な声が響く。
「涼宮ハルヒは現在その能力を使用してはいない」
「じゃあ……なんでいないんだ?」
「……………」
240アメリカの人:2008/04/30(水) 12:46:23 ID:???
“お客様に申し上げます。アメリカ行き856便はあと30分後に離陸いたします。ご機乗のお客様は5番ゲートまでお急ぎ下さい。繰り返します………”
『そろそろだな』
エルメェスが荷物を持ってゲートに向けて歩き始めた。
「あたし達は上の展望台に行くか」
「そうだな」

上の展望台にたどり着く。ふと外を見るとエルメェスの乗るジャンボが見えた。
「にしても……ハルヒの奴どこ行ったんだ?」
「さあな」
すると、みくるが、
「寂しくなったんじゃないんでしょうか………」
「……………」
「涼宮さん、文化祭が終わってエルメェスさんが帰るって聞かされたときから少し落ち込んでたように見えました」
「ハルヒがか?」
「わたしも……何となくその気持ち分かります」
「未来に帰る……か」
「はい。わたしも……みんなと別れるのはとても辛いです。いくら覚悟してても……です」
みくるは俯きながら、表情を見せず話を続ける。
「涼宮さんは今迄周りから変な奴だと思われ続けていました」
「……あいつの場合自業自得だろ」
「そうだと分かっていても、辛いと思いますよ。だから涼宮さんはわたし達っていう仲間ができて凄く嬉しかったんだと思います」
そう考えてるんならもう少し仲間を労って欲しいわね。
241アメリカの人:2008/04/30(水) 12:47:10 ID:???
「涼宮さんにとっては……そんな仲間が何処か遠くに行くのは……辛すぎるんだと思います」
でも、ハルヒもいつかはむきあわなきゃいけない事だ。きっとこれはいいクスリになる……と信じたい。
「トンデモパワーで何とかしようとしない分成長したと俺は思うがね」
「そういうもの……かしらね」
「おい、キョン、徐倫、飛行機が離陸準備に入ったぞ」
古泉と並んで外を見ていたアナスイが言う。それを聞いてあたしとキョン、有希にみくるが窓に駆け寄る。
「……やっぱハルヒじゃなくても寂しく感じるな」
そうね、と相槌をうとうとした瞬間、あたしは滑走路にあるとんでもないものを見つけた。
「お、おいキョンッ!あ、あれッ!」
「?なんだよ徐……嘘だろ?」
「徐倫?一体なんだ?」
あたしは返事をせず、滑走路の一点を指差した。
「徐倫さん、あそこに何が……これは……凄いですね」
「……………」
「え?え?あ……ええええええーーーーーッ!」
「こ、こんな馬鹿な事が………」
そう、そこには
「「ハルヒーーーーーーーーィッ!?」」
ハルヒはいつ作ったのやら、でかい旗を持ち、滑走路に居座っている。………どうやって入ったんだ?と、あたしの携帯が鳴った。
『お、おい!なんでハルヒがッ!?』
エルメェスも気付いたようだ。
『知らないわよ!気付いたらあそこにいたんだッ!』
「と、とにかくあそこに行くぞッ!」
242アメリカの人:2008/04/30(水) 12:49:45 ID:???
けどどうやって行くんだ?」
「長門、あそこまで瞬間移動……」
「不可能。涼宮ハルヒに正体が露見する」
「外から回り込んだら………」
「間に合わないでしょうね」
「アナスイ!窓を開けろッ!」
「徐倫、どうすんだよ!?」
返事はせず、
「ストーンフリーーーッ!」
糸をだし、太く束ねてロープにしていく。
「徐倫ッ!そんな事したら………」
「長さと強度は十分足りる。ハルヒにもバレないだろう。遠目にはあたしがロープを垂らしているだけに見えるだろうからな。行くぞッ!」
アナスイ、有希が真っ先に降り、続いてみくるが恐る恐る古泉のエスコートに従い降り、
そしてキョンが戸惑いつつも降り、最後にあたしが降りる。そして全員が降りると同時に、警備員達が迫ってくる。
「オラァッ!」
「ダイバーダウンッ!」
「……………」
警備員達をあたしとアナスイ、有希で蹴散らしつつ、あたし達はハルヒの元へたどり着いた。
「お前何やってるんだ涼宮ハルヒーーーーッ!旗はともかく理由を言えーーーーッ!」
「揃いも揃って遅刻!?後で全員あたしにおごってもらうわよ!」
「……滑走路に入り込むなんて誰も考えねぇよ」
その時、エルメェスの乗ったジャンボが飛び立ち始めた。
「ほら、手伝いなさい!この旗をエルメェスに見えるように掲げて!」
アナスイとキョンが旗を掲げた数分後、エルメェスが電話をしてきた。
『見えたぜッ!なかなかいいじゃねーか』
その旗には、“SOS団アメリカ支部 支部長エルメェス・コステロを送る緊急集会”と書かれていた。
『……旗に書く事じゃあねぇよな』
『いいじゃない。これで』
あたし達はエルメェスのジャンボが大空に消えるまで、ずっと旗を振り続けていた。

To Be Continued・・・
243アメリカの人:2008/04/30(水) 12:52:21 ID:???
以上、第34話でした。

サブタイの由来は「愛と復讐のキッス」から
個人的になかなか上手く作れたサブタイだと思います。

もうすぐGW!それでは!
244名無しさん@お腹いっぱい。:2008/04/30(水) 19:01:58 ID:???
アゲタア

誰かミキタカで書こうとするやつはおらんのか。
245マロン名無しさん:2008/05/01(木) 00:42:14 ID:???
ここは職人に優しくないスレだな……
246マロン名無しさん:2008/05/01(木) 10:35:42 ID:???
全ての作者様に乙とGJを!
ジョニィの方
ジョニィがこれからどんな運命に巻き込まれるのか
ワクワクドキドキします

フーゴの方
これはジョルノ加入前のようですが、
ハルヒ達と会ったことでフーゴの心に
何か変化があればいいな、と思います

アメリカの方
スタンド使いの正体が鯉なのが予想外で
やられた!と思いました
幸せな生活を送るキャラ達に涙が出そうです

ボスの方、康一くんの方、花京院の方、ジョルノの方
お帰りを首を長くしてお待ちしております

作者の皆様に感謝を!
247マロン名無しさん:2008/05/01(木) 18:47:32 ID:???
そろそろ新作出してもいいんじゃね?
248マロン名無しさん:2008/05/01(木) 20:01:44 ID:???
誤爆?
249マロン名無しさん:2008/05/01(木) 20:53:20 ID:???
>>246
(゚д゚)の人がいなくて全俺が泣いた
250マロン名無しさん:2008/05/04(日) 07:30:06 ID:???
どこ行っちまったんだあの人?
251名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/06(火) 18:33:15 ID:???
荒木先生ってどじっ子キャラだったんだな。
252マロン名無しさん:2008/05/06(火) 19:21:13 ID:???
253マロン名無しさん:2008/05/07(水) 18:42:07 ID:???
人がこのスレを見れないうちに、こんなに投下があったなんて…
職人さん方を讃えたいのですが構いませんね?
254マロン名無しさん:2008/05/07(水) 20:40:16 ID:???
思ったときには既にッ!
255アメリカの人:2008/05/08(木) 11:41:14 ID:???
最近投下がない…さびしぃよぉぉボス………

投下ァ!
256アメリカの人:2008/05/08(木) 11:43:13 ID:???
第35話「イン・ザ・シティ 1」

文化祭が終わって二週間程がたった日の事だった。その日、授業を終えた俺と徐倫は部室へとやってきた。そして部室の前へ来ると、
「徐倫、今来たのか?」
「……………」
「有希、アナスイあんた達も今?」
「ああ、鍵持ってるか?」
「スタンドで開ければいいじゃない」
「うるせぇ。前にそれをやって承太郎さんにこっぴどくしぼられたんだよ」
徐倫が鍵を使い扉を開ける。と、部室の机の上に、
「レゴ?」
「本当ね。古泉のか?」
「あいつはこういうの持ってないはずだ」
にしても不気味だな………ハルヒが来る前に片付けとこうぜ。
「……………」
「……………」
「……………」
なんだよ……三人揃ってそんな白い目でみんなよ………。
「キョン……あんたも少しは学習しなさい……どう見たって怪しいだろ」
「多分……いや、ほぼ確実に罠だな」
「私も同意見」
「……けどさ、ハルヒがこれ見つけたらどうすんだ?」
「……それは………」
「ハルヒなら絶対触るだろうな、そしたら何が起きるかは分からねーがどーせろくでもない事が起こるだろ?処分した方がいいんじゃないのか?」
「そりゃ……そうだけどさ………」
どうした?
「どうやって処分すんのよ?」
257アメリカの人:2008/05/08(木) 11:47:28 ID:???
「……どうやって処分するか?」
「罠をはるスタンドは大概触れたら効果を発揮する……つまり処分するために触るのは不可能って事よ」
「……じゃあどうすんだよ」
「だからそれが困るのよ………」
待てよ……触らなければいいんなら……
「長門の情報操作を使ったらどうだ?」
「考えたに決ってるだろ」
「じゃあなんでしないんだ?」
「……何がおこるか分かんねーからな」
「……………」
八方塞がりとはこの事だろうか。処分できない、けれどハルヒに見つかるのもマズい……フェルマーの大定理のように、いくら考えても結論は出そうにない。四人で首をひねっていると、
「やあッ!みんなどうしたんだいッ!」
鶴屋さんがいつものハイテンションで現れた。
「あ……こんにちは………」
「にしてもみんなそんな神妙な顔してどうしたニョロ?……レゴ?懐かしいねいッ!触ってもいいかいッ?」
「だ、駄目だッ!」
「ふーん……よっぽど大切な物なんだねい。でも早く片付けた方がいいんじゃないかいッ?」
「そうしたいのは山々だけど……片付けられないのよ………」
「ふーん……そうかい、お邪魔しちゃったねい。そいじゃ、お元気……アダッ!」
ドアへ向かおうとした鶴屋さんは珍しく机にぶつかりつまづいてしまった。
258アメリカの人:2008/05/08(木) 12:03:55 ID:???
「ワハハ!弘法も筆の誤りさッ!あたしだってたまにはコケるわよ!そいじゃハルニャンによろしくにょろね!」
行ってしまった………
「相変わらず嵐みてーな人だな………」
「ん?なんだこれ………」
アナスイが何かに気付いたらしく、机の下に手を伸ばし、それを取った。
「……レ……ゴ……?」
「アナスイ!今すぐそれを捨てろッ!さっき鶴屋さんが机にぶつかった時落ちたんだッ!」
「残念だけどもう遅い………」
聞き慣れない女の声が聞こえたと思うと、俺達はレゴの中に吸い込まれていった………。

「……きろ……起き……キョ……」
意識が戻ってくると目の前にアナスイがいた。
「目を覚ましたか。どうだ?歩けるか?」
ああ……徐倫と長門は?
「こっちよ」
声のする方を振り向くと、徐倫と長門は建物の陰に隠れて向こう側を伺っている。
「ここは………」
「先程の玩具の内部。私達は身体のサイズを約53倍に縮小された」
「………は?」
「奴のスタンド能力だ」
「……奴って誰だよ」
「上を見てみな」
アナスイに言われ、上を向く。と、そこには一人の女がいた。黒い短い髪をボブカットにし、整った顔は美しいを通り越して寒々しささえ思わせる冷涼な笑みを浮かべていた。
「どうやら全員目を覚ましたようね……今あなた達はわたしのスタンド、イン・ザ・シティに囚われたのよ」
「出れねーのか?」
「出られるわよ。レゴの端まで行ったらね」
「それじゃとっとと行くぞ!徐倫!」
259アメリカの人:2008/05/08(木) 12:07:44 ID:???
そう言って駆け出そうとした俺の腕を長門が掴み、無造作に投げる。すると俺はアナスイの所まで凄い勢いで飛ばされた。
「出られるんならもう出てるわよ」
「どういう事だ?」
徐倫は返事をせずに、その場に伏せる。すると外をレゴの人形が通っていく。
「あ……あれは……」
「これがわたしの真の能力……あのレゴ達はわたしの意思に従って動き、あなた達を見つけ次第攻撃、抹殺するわ。強さはかなりのものよ」
「そういう事だ。野郎スターウォーズのレゴやら銃を持ったレゴばっかり置いてやがる」
どうすんだよ。
「……さあな……ここにいるんじゃ負けるのは目に見えてるがな………」
「………来た」
反対を見張っていた長門の声を合図に、俺はアナスイに引っ張られて移動を開始した。徐倫が向こうに見える建物に向けて走り出す。が、巡回していたレゴの一人に見つかった。
「ストーンフリーッ!」
レゴを叩き壊す。と同時に建物の陰から何体もの銃を持ったレゴが襲ってくる。
「オラオラオラオラァッ!」
徐倫は飛んでくる弾丸を必死に弾く。すると突然上から別のレゴが襲ってきた。
「徐倫!」
アナスイの叫び声で徐倫は気付いたが、間に合わない。やられると思った瞬間、長門が凄まじい速さで徐倫に突っ込み、建物の陰へと突き飛ばす。そして敵に襲いかかる。
「行くぞッ!キョン!」
アナスイに言われ、長門が敵を引きつけているうちに徐倫の逃げ込んだ場所に入る。少し遅れて長門もやってきた。
「きつすぎる……数で押し切ろうってわけか………」
「……どうすんだよ……クソッ………」

To Be Continued・・・
260アメリカの人:2008/05/08(木) 12:14:11 ID:???
以上、35話でした

書くことが無いので……それでは!
261マロン名無しさん:2008/05/08(木) 21:21:42 ID:u7wLpTnP
GJGJ!
まあ、各々忙しいんでしょうからゆっくり休んでまた投下して下さい。
262マロン名無しさん:2008/05/09(金) 01:17:11 ID:???
GJ!
次も楽しみなんだぜ?
263マロン名無しさん:2008/05/09(金) 21:11:35 ID:???
乙ーん
いいなあ、こういう特異な空間でのバトルって大好き
264イチゴの人:2008/05/13(火) 18:25:32 ID:???
久々の……投下ぁ!
265イチゴの人:2008/05/13(火) 18:26:14 ID:???
パンナコッタ・フーゴの消失
第六話
〜視点・キョン〜
「状況はあまりよくありませんね、というよりも、これはSOS団最大の危機です」
あのな、古泉。携帯とってもしもしという俺の声を遮っての開口一番がそれってどうなのよ。
「……フーゴのことか?」
「その通りです。『機関』に調べてもらってもただの学生だという返答がきたんで勘違いかと思ったんですが、念のため長門さんに聞いたら、彼はイタリアで勢力拡大中のギャング集団に所属しているらしいんですよ」
今の古泉は笑っていないな。なんとなく表情まで想像できるような声を出していた。
「『機関』の情報収集能力はCIAに匹敵します。それを巧妙に隠蔽できる時点でただの組織じゃありません」
「……目的はハルヒか。お世辞にも穏健派ってわけじゃなさそうだが」
「パッショーネ、という組織らしいですが、聞いた感じでは目的のためなら一般人も平気で始末する最低のギャングみたいですよ」
こいつがここまで露骨に感情を出すのも珍しい。焦ってるのだろうか。
「だがよ古泉、事前にそれが分かっているのなら手の打ちようがあるよな?もちろん急を要する事態だとは思うが……」
最大の危機と言うほどではないんじゃないか?
しかし電話の向こうの古泉は、力なく笑ったようだった。
「排除はできません。と言うのも既にSOS団に食い込んでしまっているからです。今彼を我々の学校から追い出す事は涼宮さんの感情を激しく害する事になります。それだけは絶対に避けなければならない」
なるほど、八方塞というわけか。
266イチゴの人:2008/05/13(火) 18:27:07 ID:???
「……どうすればいい?」
「長門さんと彼が今頃接触しているはずです。なんとか話がつけば、最悪の事態は回避されるんですが」
「おいちょっと待て、お前一人で行かせたのか?」
それは流石にないだろう古泉。そりゃあいつはスーパー超人だが、それとこれとは違う。
「それがですね……どうしてもついていくと言ったら『足手まとい』と言われてしまいまして。能力も教えてもらってないんです。狙われるといけないからってことで」
「……え」
「非常に危険な能力らしいですから、僕の安全を思っての言葉なんでしょうが……正直ショックでしたよ」
まったく、らしくないのオンパレードだな最近。
まあ長門にそこまで言わせたということは、きっと古泉も粘ったに違いない。許しても良い。
「じゃあ、今俺らができることは……」
「待つこと……ですかね。涼宮さんの身辺警護も相手を刺激する事になりかねないからやめろと言われてますし」
相手にこっちが気づいてないと思わせるのが重要ってわけか。
「……朝比奈さんには」
「もう連絡しておきました。……何も起こらなければいいのですが」
やれやれだ。本当に自分の無力感ってやつを味わうぜ。
「……それでは失礼します」
がちゃり、と切れて、後には無気力な音が響き続けた。
俺は続けて番号をプッシュする。
「……なに、キョン、今お風呂入ろうかと思ってたんだけど」
ハルヒのこれまた浮かべている表情が判断できそうな第一声が流れた。
267イチゴの人:2008/05/13(火) 18:27:48 ID:???
「……ハルヒ、戸締りしっかりしとけよ。いいか、何か危険を感じたらためらわずに助けを呼ぶんだぞ」
「……は?あんた大丈夫?」
「それだけだ。じゃあな」
ただの気休めだが。主に俺の。
何も考えたくなくなって、まだ寝るような時間ではなかったがベットにもぐりこんだ。
〜フーゴ視点〜
目的地の公園を見つけ出し、今、ここへ僕を呼び寄せた人物と対峙していた。
涼宮ハルヒではなかった。
「……パンナコッタ・フーゴ」
光の加減で薄い水色にも見えるショートカットに線の細い体。
確か長門、という少女だ。
僕達二人は公園のベンチの前で向かい合っていた。距離は2m。第三者が見たら勘違いするかもしれない。
「なぜ、僕をここに?」
予想外か、と聞かれると実際そうでもない。あの集団の中で明らかにこの人物だけ浮いていた。
敵に回したら絶対やばそうな殺気。常人じゃないどころか人間かどうかすらも疑わしい冷たい雰囲気。
「今すぐ涼宮ハルヒ暗殺の任務を中止してほしい」
ばれていたのか。僕は目を軽く閉じため息をつく。
「……できませんね」
しらばっくれても、多分、目の前の人間は全部知ってるんだろうし時間の無駄だろう。
涼宮ハルヒがスタンド使いではないのだとすると、おそらく目の前の少女が能力者。ターゲットはおそらくフェイク。情報チームはおとり情報に引っかかった。
肩の力を意識的に抜く。ここで控えなければならないのは無駄な精神力の消費だ。僕のスタンドを知られている可能性が高く、なおかつこっちは相手の事を何も知らないという最低な状況だが、とにかく、やるしかない。
「結構、気をつけて行動したつもりなんですけどね、それとも別のルートから情報を仕入れたんですか?とにかく分かりませんけど……」
バックステップで離れつつ、パープルへイズを発現する。自分のドス黒い狂気が具現化した。
268イチゴの人:2008/05/13(火) 18:28:25 ID:???
パープルへイズの強みは殺人ウイルスだけではなく、近距離パワー型のスタンドともラッシュを打ち合えるほど運動性能が高く、なおかつ射程が5mな点にもある。普通は2mが関の山だ。
本体である僕が4mはなれた時点で、パープルへイズが肘打ちを繰り出す。まだウイルスの射程なので拳は使わない。
長門はピクリとも動かない。反応できないのか。
決まった――
そう思った直後、パープルへイズの腹部になにかが触れた。
「う!?」
何が起こったのか分からなかった。気づいたときには吹っ飛ばされて背後の木に激突していた。胃液が逆流する。
見えてはいた。が、信じたくなかった。
長門はその華奢な右腕で、パープルへイズに正拳突きを入れたのだ。
それはもう速いとかそういうレベルではなく、腕だけ瞬間移動したようなパンチだった。
そしてもうひとつの異常。
僕は自分の腹部を見る。傷ひとつなかった。痛むのは木にぶつかった背中ばかり。
……これが何を意味しているのか、考えたくなかった。
スタンドはスタンドでしか倒せない。普通の人間がスタンドを殴ったところでスタンドは痛くもかゆくもない。だがスタンドが生身の人間に触れられる以上、逆も可である。
つまり、力をこめて動かすことはできるわけである。今パープルへイズは長門のスタンドに殴られたのではない。「生身の長門の拳で」突き飛ばされたのだ。そこにスタンド能力の干渉はない。
「あなたでは私を殺せない」
僕は無理に深呼吸で自分を落ち着けて、傍らに呼び戻した自分のスタンドを見る。
……ウイルスに感染させる事さえできれば、倒せるかもしれない。だがこの薄暗い中ではウイルスの射程はおそらく10m前後。自分も死ぬ。
呼吸が乱れる。
だが、それしか、策がない。
くそ、くそ!こんなことで自分は死ぬのか!
「いい気になって知った風な口をきいてんじゃあないぞッ!!おまえには死んだことを後悔する体も・・・残さないッ!!」
パープルへイズが地面を蹴る。
「うばぁしゃあああああああ」
咆哮と共に拳を振りかざした。
269イチゴの人:2008/05/13(火) 18:29:07 ID:???
以上第六話でした〜
270マロン名無しさん:2008/05/13(火) 18:53:30 ID:???
投下乙です
フーゴいきなり追い詰められてるw
相手が悪すぎるか
271マロン名無しさん:2008/05/13(火) 19:52:14 ID:???
投下乙ww
>いい気になって知った風な口をきいてんじゃあないぞッ!!
その台詞は負けフラグだ……多分

長門って結構チートだと思うんだけどどうよ
272マロン名無しさん:2008/05/13(火) 19:55:23 ID:???
オツ! オツ! オツ!
なんてところで切るんだーーー!!
君が、書くまで、待つのをやめないッ!
273マロン名無しさん:2008/05/13(火) 20:07:30 ID:???
>>271
時間系か一撃で致命傷を与えられるスタンドじゃないと勝てないだろ
スタプラ、ザ・ワールド、キンクリ、GER、MIH、クリーム、ハンドとか
他には五体を瞬時にバラバラに出来そうな銀戦車と素敵指や
何でも爆弾にできるキラークィーンやホワルバで完全凍結させてブチ割りくらいか
それ以外はすぐに対応される可能性が高い
ある意味アヌビスに近いぞw
274マロン名無しさん:2008/05/13(火) 20:20:12 ID:???
ヘブンズドアーならいけるんじゃないか
275マロン名無しさん:2008/05/14(水) 07:46:12 ID:???
GJ!!
何度か話題になってた長門vsスタンドが遂にwww
長門>スタンドのルールなのはいいけど、普通は生身ってスタンドに触れないよね? 一体化じゃなきゃ透けるだけで
276マロン名無しさん:2008/05/14(水) 17:13:55 ID:???
微妙な所にズッケェロでも出したら?
277マロン名無しさん:2008/05/14(水) 20:18:15 ID:???
てか古泉がかなり危険な能力っていってるけど、これってスタンドの事なのか
それとも殺人ウイルスの能力の事をいっているのかがちょっと曖昧だったかも
殺人ウイルスまでバレてたらフーゴに勝ち目が全く無いぜ
278イチゴの人:2008/05/14(水) 23:10:28 ID:???
>>275
確かに、本当はホリィさんの蔦のこともありますし「透ける」とするべきだったかもしれません。
……が、まあそこら辺は、創作ということで……こらえてくれ。
279マロン名無しさん:2008/05/15(木) 07:43:01 ID:???
>>278
了解したッ!
原作の確認をしただけで作品に不満はないよってか毎回GJの嵐
280アメリカの人:2008/05/15(木) 11:17:30 ID:???
イチゴの人GJ!
俺も投下ァ!
281アメリカの人:2008/05/15(木) 11:18:50 ID:???
第36話「イン・ザ・シティ 2」

俺達は逃げ込んだ建物の陰で話し合っていた。
「どうすんだ?この包囲網……逃げ切れるもんじゃないぞ………」
「あぁ……さっきは気付かなかったが、奴は車やヘリのレゴも使ってるみたいだな」
「何処にあんだ?それ?」
徐倫は返事をせずに外を指差す。と、車が通っていった。
「多分今の体のサイズじゃ轢き殺されるな」
「……………」
「……万事休すか……?」
「………いや、一つ作戦がある」
「なんだ?徐倫」
「今から説明するぞ……いいな………」
と、徐倫が説明しだした直後だった。
「作戦会議?悪いけど……させない」
女はそう言うとレゴの建物を一つ手にとり、バラバラに崩す。
「ま、まさか野郎………」
「行くぞッ!さっき言ったように行動しろッ!」
俺達が全員とも別々の方向に走り出したのと同時にさっきまでいた場所にレゴが降ってきた。
「勘がいいな……けれど空条徐倫だけは逃げ切れなかったのかしら……姿が見えないわね。いや、隠れてるだけかも………」
そういう女の声をしり目に俺達は走り出す。
「……三手に分かれて追手を分散させるってわけね……いいわ、のってあげるわよ」
282アメリカの人:2008/05/15(木) 11:19:43 ID:???
‐side of アナスイ‐
「やべぇな………」
俺達は徐倫の作戦に従い、それぞれが単独行動をとることになった。
「しかし……こんなに敵の包囲網がきついとは……」
どうやら敵は戦闘能力を有する俺と長門をターゲットにしたらしい。多分キョンの方は手薄だ。……まあそれもそうだ。俺や長門を外にだしたら奴の負けは目に見えている。が、キョンならば外に出しても何とでもなる。妥当な判断だ。
「………上だな」
ダイバーダウンを建物に潜行させ、壁をつたって進む。……うむ、なんだか蜘蛛になった気分だ。レゴのビルの最上階近くに達し、下を見る。すると長門の姿が見えた。
「……あっちも苦戦してるみたいだな」
長門は何処からだしたのか、赤い結晶のようなものでできた、装飾が無くシンプルな槍を手に群がる敵を蹴散らしている。
槍なのは周囲を敵に囲まれている状況を打破するのにはリーチのある武器が適しているからだろう。
襲いかかってきた敵を槍で一突きした後すぐさまひき、槍をまわして囲もうとした敵を押し返す。そのまま横の敵を突き、後ろにひいて槍の尻で後ろのレゴの顔を打つ。
「向こうは大丈夫だな………」
その様子から判断した俺はビルの屋上へと登った。と同時にいきなり爆撃される。
283アメリカの人:2008/05/15(木) 11:20:48 ID:???
「ちっ!」
前転をして爆撃をかわす。
「軍用ヘリってわけか?たいそうな事してくれるぜ………」
正直言うと今の状況はかなりマズい。レゴでできた建物の為、屋上には隠れる場所はない。広めに作られていたのは幸運だったが、今の俺は格好の的だ。
「早くなんとかしねぇとな……」
そう呟いて上を見た時だった。ヘリから何体ものレゴが降ってくる。
「ちくしょおッ!」
後ろから迫ってきた敵に後ろ蹴りを繰り出し、続いて両側から挟み撃ちをしてきた敵の肩に飛び乗り上へと逃げる。すると上から降下している途中の敵とぶつかり体勢を崩して落ちてしまう。再び敵の中に戻ってきちまった。
「やるしかないな……ダイバーダウンッ!」
突撃してきた敵に右の裏拳。続いて左右から迫ってきた奴等にまわし蹴り、後ろに立った敵を背負い投げし、周囲から敵を引き離す。
暫くしのぎ続けていたが、敵は業をにやしたのか、ヘリからの爆撃に切り替えた。爆風を避けるのに気を取られ、その隙に俺は地面にうつぶせに押さえ付けられた。
見ると長門も壁に背をつけ両手を頭の後ろにまわし、ホールドアップの状態だ。
「てこずらせてくれたが……これで終わりね」
女の声が聞こえる。
「さあ、始末………」
「待ちやがれ!」
284アメリカの人:2008/05/15(木) 11:21:51 ID:???
見上げるとそこにはキョンがいた。どうやら切り抜けたらしい。
「あら、出てきたの……けど一体あなたに何ができる?スタンド使いでもないあなたに………」
その時、
「そうね、確かにキョンには無理ね………」
徐倫の声がした。
「く、空条徐倫!?ど、何処だ!?」
「ここよ」
そう徐倫の声がすると、キョンのブレザーがほどけ、再び絡み合い徐倫の姿になっていく。
「ストーンフリーの能力よ……自分の体を糸にしてキョンの服に化けていた……三手に分かれればあんたはきっとキョンにはそんなに注意を払わなくなるだろうからな……
少し賭けだったけど、問題なかったわね」
「ち、ちくしょ……ガポッ………」
「罠にはめて敵を倒すスタンドは大概接近戦に弱い……ここまでよ……それじゃあね」
「くそおッ!」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
「プッグギアャ!」
女が吹っ飛び、窓の外に落ちる。するとレゴのあった場所から長門とアナスイが転がり落ちてきた。
「いてて……やったか?」
「……………」
「みたいね」
四人でほっとしていると
「こらーーーーッ!あんた達!何散らかしてんのよ!」
一番散らかしている奴が自分の事を棚にあげ、俺達に向かって怒鳴っている。
「今すぐ片付けるのよ!これは団長命令だからね!拒否権は無しよ!」
ハルヒが凄まじい剣幕でまくし立てている。キョンと徐倫は顔を見合わせて、いつもの言葉を呟いた。
「やれやれだわ」
「やれやれだぜ」

山崎保之香 イン・ザ・シティ 再起不能

To Be Continued・・・
285アメリカの人:2008/05/15(木) 11:23:04 ID:???
見てもみなくてもいい履歴書

名前 山崎保之香
18歳 B型 7月20日生まれ
性格 冷静を通り越して冷酷。他人をジワジワいたぶるのが好きな真性のS
好きな食べ物 フランクフルト
嫌いな食べ物 昆布等の海藻
趣味 ゴルフ、他人を苛める

イン・ザ・シティ
パワー E スピード E 持続力 A
射程距離 C 精密動作性 B 成長性 C
能力 ジオラマや模型等の世界に相手を閉じこめ、模型を操り相手を倒す能力。
模型はスタンドではないので破壊されても本体にダメージは無い為、接近して本体を直接叩かないとダメージを受けない
286アメリカの人:2008/05/15(木) 11:24:54 ID:???
以上、第36話でした

スタンド名の由来はアメリカのロックバンド、イーグルスの楽曲
「イン・ザ・シティ」より

後書きのネタがありません。だれか俺にネタヲヲヲ!
それでは!
28755:2008/05/17(土) 00:38:58 ID:???
GJです!というか、お久しぶりです。
久しぶりの投下します!
288ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/17(土) 00:43:37 ID:???
第七話 「バイシクル・レース」

「なあ、ジョニィ。『SOS団』ってどーなんだ?
やっぱり、プッツンの集まりかよォ〜?」
いつものように億泰と昼食を摂っていると、億泰がそう言った。
ぼくは曖昧な返事を返した。変わってるなんてものじゃない。
まず、超能力者・・・「スタンド使い」だったか。それがいる。
しかも、そのスタンド使いによると団長は世界を自在に操作出来る能力があるらしい。
全く馬鹿げた話だが、「スタンド」やハルヒの奇跡を見た以上信じないわけにはいかない。
・・・だが、正直に言うと一夜明けた今も半信半疑だ。そんなファンタジーのような話を信じる歳じゃない。
「・・・億泰。君はいつまでサンタクロースを信じてた?」
ぼくの脈絡のない質問に億泰はきょとんとした。
「え?いねーのか?」
「・・・・・・」
教えるべきなんだろうか。そう思っていると肩に手が置かれた。
見ると、同じクラスの女の子が赤面して立っていた。
「あ、あの。ジョニィくん、お客さん」
彼女の指差す方向、教室の入口で古泉が手を振っていた。
億泰に一言断ると、ぼくは古泉に近付いた。古泉がいつも通り笑う。
「お邪魔してすみません。お話したい事がありまして」
言って、車椅子を押す。
「どこに行くんだ」
「場所を変えましょう。聞かれるとマズい話です」
訪れた先は屋上だった。確かにここなら誰もいない。
289ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/17(土) 00:44:33 ID:???
扉を閉めると古泉は口を開いた。
「二つ、お知らせが。まず悪いニュースからお知らせします。
昨日の『黄の節制』の件ですが、奴一人の暴走ではないようです」
昼休みの喧騒が遠くから聞こえる。ぼくたちはずいぶん遠くまで来たらしい。
「つまり、奴の襲撃は組織の総意です。全面戦争という事ですよ」
「黄の節制」のようなスタンド使いがこれからも襲って来るという事か・・・。
覚悟はしていたが、ぞっとする。ぼくはため息をついた。
「それは分かったよ。いいニュースのほうを聞かせてくれ」
「いいニュース?」
古泉が首を捻る。
「そんな物、ありませんが」
「話は二つあるって言ってたじゃないか?」
「ああ」
古泉が笑った。
「早合点しないで下さいよ。『もっと』悪いニュースがあります」
・・・最近分かってきたが、古泉は笑えない冗談が得意だ。
290ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/17(土) 00:47:04 ID:???
ぼくの冷たい視線に古泉は表情を戻した。
「昨日の夜、僕の『機関』が『強硬派』に強襲されました。『スタンド使い』チームはほぼ壊滅です」
「何だって?壊滅・・・!?」
あまりの事に耳を疑った。ぼくたちはそんな奴らを相手にしようとしているのか?
「今後の動向を話し合っている最中に奇襲されたそうです。
スタンドの戦闘は不意をつかれると弱いもの・・・。まあ、僕は現実世界での能力に目覚めたばかりで、
まだチームに編入されていなかったので難を逃れましたけどね」
そう言って古泉は微笑した。話してる内容にはまるで現実感がない。
「そういうわけなので、約束していた『機関』の紹介は見送らせて下さい。
それと、気をつけて。『機関』のお偉方は支援が出せないと言っています」
「何だって!?」
さらりと信じられない事を言う。ぼくは黙ってはいられなかった。
「ぼくたちはスタンドに目覚めたばかりなんだぞ!
そのぼくたち二人が、『チーム』を壊滅させた奴らを相手にしろって言うのか!?」
古泉は苦笑しながら肩をすくめた。
「落ち着いて下さい。こちらも手一杯なんです。それに、涼宮さんを放って逃げても、
彼女が彼らに渡れば・・・何をするのか分かりませんが、最悪なら世界の破滅です」
ぼくは舌打ちした。元から引く気はない。古泉は満足そうに微笑んだ。
「納得していただけたようで幸いです。では失礼します。もうすぐ授業ですよ」
古泉が去っていく。ぼくは考えていた。状況はかなりシビアだ。それは分かっている。
だが、不可解なのは古泉の態度だ。いつものような余裕のある態度というのが気になる。
もちろん、ぼくを安心させるための演技という可能性もある。しかし・・・そうは思えなかった。
あの態度は演技というより、心からのものという気がする。
それはなぜか?こんな状況での余裕・・・。何か・・・「切り札」を持っている?
だとすれば。思い当たる事があった。昨日のキョンの言葉だ。
『長門はともかく、朝比奈さんはどうなる?』
『長門はともかく』。そう、「切り札」は長門だ。
291ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/17(土) 00:50:35 ID:???
「ん、こんな時間か。そろそろ帰るわ」
いつもの活動(みくるさんの撮影。一応言っておくが、ぼくも止める努力はした。)が終わると、
ハルヒが言った。それを合図にしたようにみんな一様に帰り支度をする。
ぼくもそれに続く・・・が、帰るわけじゃあない。目的がある。
長門の正体を突き止める。そうしなければならない。古泉は聞けと言ったが、
あの無口な少女が「はい、私はスタンド使いです」と言うとは思えない。
古泉もキョンも教える気はないだろう。結論はぼく一人で調べるしかないというものだ。
校門を出て行く長門を見て、ぼくは息を潜めた。これから彼女を尾行する。
うまくいけば「機関」とやらに行くかもしれないし、でなくても手掛かりは掴めるかもしれない。
キョンの言葉から長門がスタンド使いである可能性は高い。それを突き止める。
幸い、のろくさと歩く長門をつけるのは難しい事ではなかった。
・・・だが、どうもおかしい。かなり歩いた気がするがどこかに着く様子がない。
気付けば、駅近くの賑やかな場所まで来ていた。電車通学なのか?
そう思ったら進路を曲げ、店が立ち並ぶ路地へと入って行く。
慌てて後を追うと、長門の姿はなかった。周囲を見回してもやはりいない。
人が多いとはいえ、制服姿の長門は目立つ。簡単に見失うはずはない。
どこかの店に入ったのか?そう思ったがぼくは即座にそれを否定した。
曲がった場所に一番近い店はシャッターが閉まり、「改装中」の貼り紙がしてある。
ぼくもすぐについていったのだから、他の店に駆け込む時間もなさそうだが・・・。
ぼくは呆然としながら、半ば無意識に歩を進めた。と、後ろから声がした。
「・・・何?」
長門だった。
292ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/17(土) 00:52:46 ID:???
「す、すまない。後をつける気はなかったんだ。ただ、少し話したいと思って」
ぼくはいつの間にか背後を取られていた事にすっかり動揺していた。我ながら苦しい弁解をする。
長門は無表情にぼくを見た後、感情を見せずに口を開いた。
「知っている」
そう言うと、車椅子に手をかけ、後ろへ進路を変更した。
「聞かれたくない。案内する」
言葉の意図が掴めない。「案内」とはどういう事だ?考えているうちにぼくたちは路地を出た。
「長門、案内ってどこにだ?」
言葉を無視して長門はコンビニの前で足を止めた。
「どうした?何か買うものでも?」
長門は口数少なく前を指差した。
「あれ」
前方には何もない。ただ道路があるだけだ。しいて言うなら、スポーツカーが走って来ているが。
「何だ?何が・・・」
言いかけた言葉は中断された。長門が車椅子を強く突き飛ばしたのだ。
とっさの事に対応出来ず、ぼくは店先の看板へ突っ込んでいった。
車椅子を止めようとしたが間に合わない。かろうじて車椅子を横向きにしたが、衝突は避けられず、
ぼくは肩口から看板に激突した。
「長門、一体何を・・・!?」
言葉はまたもや中断された。風が目の前を吹き抜けていく。
さっきのスポーツカーがぼくたちが今までいたところ−−−コンビニへ突撃していった。
293ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/17(土) 00:57:12 ID:???
轟音とともにスポーツカーがコンビニに吸い込まれていく。
長門が突き飛ばさなければ巻き込まれていた・・・。相当なスピードだった。
跳ねられた人はもちろん、運転手も無事ではないだろう。そうだ、長門は大丈夫か?
「え・・・!?」
視線を移したところで仰天した。長門がすぐ横でバイクに跨がっていた。
あれは店先に駐車してあったバイクだ。どういうつもりだ。言おうとすると、
長門はその細腕からは想像出来ない力でぼくを引っ張り上げた。
「乗って」
そして、後ろにぼくを乗せると急加速した。
「何をするんだ!?長門、そのバイクは君のじゃあないだろう!?」
「うしろ」
非難するぼくに対する長門の返答はそれだけだった。言葉に従い後ろを向く。
な・・・!?あるはずのない風景に思考が停止する。ぼくたちのバイクを車が追っていた。
パトカー?むしろそっちのほうがましだ。その車はあのスポーツカーだった!しかし・・・!
「馬鹿な、走れるわけがないッ!あんな猛スピードで衝突したんだ!
車体だってメチャクチャ・・・いや、違う・・・!?」
信じられない事に、その車のひしゃげたバンパーが形を整え、
パンクしたタイヤは見る間に膨らみを取り戻していく。復元・・・いや、それどころか!
車は新たにバンパーに悪魔のような角を生やし、短時間の間に凶々しい姿へ変形した。
294ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/17(土) 00:58:01 ID:???
「何だあれは!?まるでローマ時代のチャリオットだ!」
叫ぶぼくに長門は危機的状況にもかかわらず冷静さを失っていなかった。
「落ち着いて。あなたはあれの正体を知っているはず。」
ぼくが・・・?まさか。考えられない物体、そして現象。一つだけ思い当たるものがあった。
「・・・スタンドか!?」
「そう」
古泉の言っていた「急進派」がもう・・・。それに、車のスタンドなんて。
「加速する。捕まって」
我に返り、慌てて長門にしがみつく。頼りの綱は不安になるほど細い。・・・待て。
「長門。君はぼくと同じ一年生だよね?」
「・・・・・・」
「免許は?」
「問題ない。恐らく運転は可能」
「『恐らく』!?今、『恐らく』って言ったのか!?」
何て事だ。めまいすら感じるぼくにも長門は声の調子を変えない。
「構造と理論は知っている。運転しながらの修正は可能」
・・・ひょっとして、ぼくはここで死ぬのか?

To Be Continued・・・
29555:2008/05/17(土) 01:03:48 ID:???
投下終了です。ところでSBRの新刊出ましたね。
ジョニィの「無限の回転の最後のところ」・・・。正直、どうしよう。
296マロン名無しさん:2008/05/17(土) 03:02:42 ID:???
GJ!
今回の敵は運命の車輪ですか。タイトルのバイシクル・レースと掛かっててうまいです。
多分運命の車輪がタロットからの命名でなければこれになっていた可能性は高いかも。
しかし長門の承太郎ポジションの違和感の無さに吹いた。

無限の回転の最後のところって色々と解釈が難しいですよね。
でも7部らしい能力といえば、らしい能力といった感じがします。
297マロン名無しさん:2008/05/17(土) 08:31:37 ID:???
GJ!!
現代風にスポーツカーか、本体はどうなってるのかw
298マロン名無しさん:2008/05/17(土) 13:28:20 ID:???
GJでした!
>「構造と理論は知っている。運転しながらの修正は可能」
それってつまり
『野球のルールは知っている…ゲームの操作はやりながら覚えるぜ』
ってことか長門ー!
299マロン名無しさん:2008/05/17(土) 13:38:06 ID:???
>>298
Exactry(その通りでございます)
300マロン名無しさん:2008/05/17(土) 16:53:09 ID:???
GJ!
>「・・・億泰。君はいつまでサンタクロースを信じてた?」
>「え?いねーのか?」
に地味に吹いたww
そういえば億泰はスタンド持ってない設定なんだろうか?
301マロン名無しさん:2008/05/17(土) 17:10:01 ID:???
>地味に吹いた
同じ人がいて嬉しいw
スタンドは……どーなんだろ
俺は普通に持ってると思ってたんだけどなあ
302マロン名無しさん:2008/05/17(土) 17:28:07 ID:???
次の話あたりで戦闘に巻き込まれてハンドが覚醒という展開を希望
303マロン名無しさん:2008/05/17(土) 20:04:57 ID:???
主人公以外で原作じゃ初めからスタンド使いのキャラが物語上で目覚めるって結構斬新だな、面白そう
304マロン名無しさん:2008/05/18(日) 01:51:41 ID:???
だがジョニィの回転する爪がタスクに進化するって展開もあるのか?
しかしこれ以上はエピタフしすぎになるから止めといたほうがいいのかもしれん
作者さんが書きにくくなったらこまるしな
305マロン名無しさん:2008/05/18(日) 08:07:11 ID:???
別に予想じゃないでしょ。重圧にはなってしまうかもしれんがw
ジョニィの人気にしないでね
306マロン名無しさん:2008/05/18(日) 12:26:21 ID:???
ところで『ジョニィ・ジョースターの憂鬱』の億泰は父親と兄が健在なんだろーか?
307マロン名無しさん:2008/05/18(日) 13:17:32 ID:???
とりあえず怪物だったりレッチリに殺されてるってことはないだろう
308マロン名無しさん:2008/05/18(日) 13:49:19 ID:???
兄の方、チョイ役でいいから出てこないかな

「なんだそのだらしない格好は! ボタンくらいきちんと締めろ!」
「弁当を作っておいてやったぞ。」
「おい、友達のジョニィという奴が玄関に……なんだこの部屋の散らかりようは!!
 こんな汚い部屋に人を入れるわけにはいかん!
 掃除をするからしばらく外に出ていろ。」

几帳面だそうだからきっとこんなふうに家事全般をこなしているに違いないw
309マロン名無しさん:2008/05/18(日) 19:07:32 ID:???
バイクに二人乗りと言うことは
ジョニイと長門が密ちゃ(ry
310マロン名無しさん:2008/05/18(日) 19:09:28 ID:???
>>308>>309
どっちも羨ましい
311マロン名無しさん:2008/05/18(日) 20:07:21 ID:???
>>308
非常に良い!んだが作者が初めからそういうのを用意してたとすると…
312マロン名無しさん:2008/05/18(日) 20:33:06 ID:???
いやまあそれはそれでいいと俺は思う
作者さんの好きなようにやって頂きたい
313マロン名無しさん:2008/05/18(日) 20:41:13 ID:???
好きなようにするつもりだったが先に考えてたネタ書かれてどうしよう
って話
314マロン名無しさん:2008/05/18(日) 20:58:32 ID:???
スレに書かれてたからって変えなくてもいいよ って言おうと思ったんだ
ごめん
315イチゴの人:2008/05/18(日) 21:16:29 ID:???
ジョニイの方、ジョリーンの方、GJです。
こちらも負けず投下!
316イチゴの人:2008/05/18(日) 21:17:16 ID:???
パンナコッタ・フーゴの消失
第七話
〜フーゴ視点〜
唐突にスタンドの突進が止まった。もちろん僕が止めたわけではない。
拳を振りかざした状態で固まるパープルヘイズとそれに連動して動けなくなる僕に長門はゆっくりと近づいてきた。
僕は死を覚悟しながら、妙にさめた頭で考える。もう凶暴な感情は収まった。
もし、長門がスタンド使いなのだとしたら、考えられるのは「身体強化」だ。純粋に本体の肉体に影響しヴィジョンがないのであれば、確かにスタンドにダメージを与える事はできない。
なら、今スタンドが固まっているのはなんでだ?
ここで浮上するのが「時空間操作」系の能力だ。それなら説明がつく。というかそれしかつかない。
まあ、今から死にゆく身である自分に、考える必要なんてないのだが。
本当に、馬鹿らしい。こんな相手に勝てるわけがない。
それでも、僕は笑みを浮かべた。
勝てなくても、引き分けには持ち込めた。
ポスン、という軽い音と共にパープルヘイズのカプセルが、長門のつま先数センチの地面に落下した。
長門の歩みが止まる。ウイルスのことは知っていたのだろうが、僕が拳を振りかざす一瞬にカプセルを上空に射出していたことは気づいていなかったようだ。
長門が自分の手を見つめる。その白く滑らかな肌に明確な殺意を持ったできものが広がっていく。
317イチゴの人:2008/05/18(日) 21:18:12 ID:???
もう、どうしようもない。時間を巻き戻す能力でもなければ、彼女はぐちゃぐちゃのトマトソースになって死ぬ運命から逃れる事はできない。
そうこうしているうちに、ウイルスは自分のところまで広がってきたのだろう、僕の肌も醜く変形していく。
共倒れ……と思ったのだが、予想は裏切られた。軽く見ていたつもりはなかったのだが、自分が相対していた相手は人間が想像できる限度を超えた存在だった。
「体内、指向性ウイルスにアクセス。削除及び血清の作成、破損した身体の復元。実行。推定完了時間3秒」
悪い夢だ。悪い夢を見ているに違いない。手遅れなはずの長門の体が見る見るうちに修復されていく。なんなんだこれは。狂ってる。いや狂っているのは僕なのか。
とにかく様子を見る限りでは長門はトマトソースになる運命に勝ったようである。
そして、僕はただの犬死で終わるらしい。ギャングにふさわしい外道な死。まあパープルヘイズみたいな危険な能力は消滅したほうがこの世のためになるのかもしれないが。
目を閉じた僕は長門が歩みを再開したことに気づかなかった。
「……なにやってるんだ」
長門は自分の傍で屈みこみ、僕の左腕を軽く噛んでいた。なんだ、吸血鬼なのか?もうここまできたら何が出てきても驚けないだろう。
「血清の注入とナノマシン投下による体内の破損復元の促進」
……血清のところしか理解できなかったが、どうやら長門は自分のことを救おうとしているらしい。理解に苦しむ行動である。パッショーネによる報復を恐れているのだろうか。絶対違いそうだが。
「あなたはSOS団の一員。あなたの死により涼宮ハルヒの比較的に安定している精神状態が乱される恐れがある。穏便に解決したい。故にあなたとの意思疎通を希望する」
なんだそれ。というか、涼宮ハルヒはその奇特な性格を利用したおとりじゃなかったのか?
「あなたの所属する組織はきわめて正確な情報を入手していた。涼宮ハルヒは自分の内面で構築される理論、願望を具現化し現実世界を改変する能力を持っている」
318イチゴの人:2008/05/18(日) 21:19:12 ID:???
今こいつなんて言った?
それは比喩なしに「世界を支配する」能力じゃないか。
僕は涼宮ハルヒの様子を思い出す。
「皮肉な事だな。自分で自分の能力を知らないとは。まあ自覚したら危険ではあるけど」
……というか、尚更殺したほうがいいんじゃないか。
そんな思考を知ってか知らずか、長門は続けた。
「私は情報統合思念体の命により涼宮ハルヒを観察しているインターフェイス。あなた方人類に分かるよう一言に集約させると、宇宙人。あなたの体験したことはスタンド能力とは別種の力」
「スタンド……とは別の概念……」
なるほど、それならスタンドが見えないはずである。納得したくないがとりあえず理解はした。
「涼宮ハルヒの存在を認識し、観測している組織は無数に存在する。殺害を計画する事はそうした団体を挑発することになる」
「……」
僕は一体どうすればいいんだろう。任務遂行は絶対無理だということが判明した以上、パッショーネには戻れない。
「……結局、僕はどうすればいい?」
素直に聞いてみた。ここまで考えがまとまらない事は初めてだった。
「あなたには直ぐ帰国してもらうわけにはいかない。涼宮ハルヒがあなたとある程度の期間交流した後になる」
「それまでは、普通の学生として過ごせということか?」
「そう」
それきり、長門は何も言わずに去っていった。
僕は服のすそを払い、ふらふらとおぼつかない足取りでビジネスホテルへと向かった。何も考えられない。IQ152の自信ってやつがぶっ壊れそうだった。
319イチゴの人:2008/05/18(日) 21:20:59 ID:???
以上、第七話でした。
とりあえず前半戦終了、といったところでしょうか。これからもよろしくお願いします。
320マロン名無しさん:2008/05/18(日) 21:47:51 ID:???
投下乙です
これがミスタなら、「難しいことはわかんねーけど、とりあえずは様子見すっかな。」
って感じであっさり現状を受け入れそうだがフーゴはそこまで柔軟なタイプじゃないわな
ウィルスが効かなかったのもショックだろうが
321マロン名無しさん:2008/05/19(月) 07:46:50 ID:???
GJ!
まあ相手が悪かった、気にすんなフーゴ
322マロン名無しさん:2008/05/19(月) 16:25:08 ID:???
長門にはボスしか勝てねぇよ。パッショーネの中では。
323マロン名無しさん:2008/05/20(火) 00:03:36 ID:???
ディアボロは無理だろ
だってディアボロなんだから
324マロン名無しさん:2008/05/20(火) 00:12:07 ID:???
スタンドのルールと時間系や他の無条件系能力がどこまで有効かの設定次第だな
325アメリカの人:2008/05/20(火) 15:56:45 ID:???
イチゴの人、55さんGJGJGJGJGJGJGJGィィィィィィ!
今後が楽しみな展開です。

投下ァ!
326アメリカの人:2008/05/20(火) 15:58:00 ID:???
第37話 「隣の部室からやってきた挑戦者 1」

文化祭の喧騒も終わりを告げ、摩訶不思議なスタンドに異空間に閉じ込められるという俺のトラウマ全開の騒ぎのあった次の週、俺達は再び対決をしていた。
え?誰とだって?いつだって敵は一番近くにいるのさ。歴史を見てみろ、飼い犬に手を噛まれた政権が幾つある事か……すまん、少し大袈裟な表現だった。
要はお隣さんだ。ハルヒによってさんざん辛酸を舐めさせられているコンピ研の方々だ。
細かく書くのはめんどくさいので要点だけまとめると、昔盗られたパソコンを取り返す為にコンピ研自作のゲームで5対5の勝負をすることになったってわけだ。
(詳しく知りたい人は涼宮ハルヒの暴走を読んでくれよな!)
だが、そこで問題が起こった。……こっから説明しよう。

「あたし達はどうなんのよ」
「……そんな事言われても………」
現在コンピ研部長は徐倫に首根っこを掴まれている。小柄なハルヒとかなら掴まれるだけで終わるのだが、170を超える長身の徐倫の場合はそれで終わらず、
部長氏の体は現在地面から浮いている。
「5対5しかできないってどういう事だ?」
徐倫、いいじゃないか。その間お前は自分の好きな事ができるじゃねえか。
「……横で楽しそうに勝負してるのを見とけって事?」
327アメリカの人:2008/05/20(火) 15:58:47 ID:???
徐倫はかなり喧嘩っぱやい性格だ。その点だけならハルヒ以上かもしれない。
そんな性格の徐倫にとってただ見ているだけというのはなかなかこたえるものだろう。
「けれど、君は僕達のパソコンを奪った時にはいなかっただろ?だったら部外者という事になるんじゃないのか?」
部長氏は至極まともな意見を言うが、そんなものがハルヒに通じるわけが無く、
「何言ってんのよ!徐倫はSOS団の国際外交長なのよ!副団長の古泉君の次ぐらいに重要なのよ!」
「いつあたしがそれになったんだ?」
が、ハルヒは徐倫の突っ込みを無視して話を続ける。
「徐倫と……あとはオマケでアナスイの分の勝負を用意しなさい!でないとこの勝負受けないわよ!」
無茶苦茶な要求だがこうなりゃハルヒは地面深くまで根を張った木みてーに意地を張り続ける。
「……まあいいが、勝ち負けはどうするんだ?1勝1敗になったら………」
「ならアナスイと徐倫の勝負を分けて3回戦にすればいいじゃない。それぐらい用意できるでしょ?」
「……まぁ……いいか。よし、受けよう……そうだな、これとこれがいいだろう」
そう言った部長氏が出してきたのは二つのゲームソフトを出してきた。一つめはテトリス。
二つめは見たこともないゲームで、『バトルジャジャ』というよく分からないタイトルがついていた。
「……このバトルジャジャってのは?」
「格ゲーだ」
328アメリカの人:2008/05/20(火) 15:59:34 ID:???
「ふーん……分かったわ!アナスイはテトリス。徐倫はこの格ゲーにしなさい!」
「望むところね」
「俺……やるなんて一言も………」
が、アナスイのぼやきは無視される。
「勝負は1週間後だ。練習しておきたまえ」

‐1週間後‐
勝負の日、時間の都合を考え、アナスイと徐倫の勝負を先にすませ、その後5対5のゲーム対決をすることになった。
「最初はテトリス勝負ね!アナスイ、期待はしてないから伸び伸びやりなさい!」
ずいぶんとえげつない一言にアナスイは傷付いたらしい。
「……………」
「げ、元気出して下さいアナスイ君………」
「なあ……徐倫」
そんなハルヒ達を少し後ろで眺めながら、俺は徐倫に耳打ちする。
「スタンドは……無しだぞ」
「分かってるわよ」
そうこうしているうちに勝負は始まっていたらしく、早速アナスイはボコボコにされていた。
「アナスイ……あんたは弱いだろうとは思ってけど、ここまで貧弱貧弱ゥ、だとは思ってなかったわよ………」
「……………」
「その消しにどれほどの意味があるッ!無駄だぞ無駄ァ!ナルシソ・アナスイッ!」
「……………」
「実力の差がはっきりしすぎてますね……まるでバットも持ったことのない茶道部か何かが甲子園優勝校に挑戦するようです」
「……………」
「お、落ち込まないでアナスイ君………」
敵からも味方からも(朝比奈さん以外)大ブーイングを浴びながらアナスイはぼろ負けした。
「ゲームなんて……大嫌いだ………」
329アメリカの人:2008/05/20(火) 16:00:20 ID:???
「さて、彼がぼろ負けしたせいで君達はもう後がないわけだが………」
コンピ研部長は少し芝居がかった様子で喋る。鼻につく悪役気取りだろうか。
「アナスイはハンデよ!ここからはSOS団の精鋭が出てくるのよ。あんた達なんかケチョンケチョンにしてやるわ!」
ハルヒが相変わらずの根拠の無い自信をブチまける。
「徐倫、ハルヒはああ言ってるが……大丈夫か?」
が、徐倫は自信満々の態度を見せた。
「あたしを馬鹿にしてんのか?あたしは格ゲーは得意なのよ」
実際その言葉は嘘ではなく、コンピ研自作の格ゲーを徐倫は瞬く間にマスターし、難易度ベリーハードもノーダメージで倒す程になっている。
……ハルヒや長門ほどではないがなんでも器用にこなす奴だ。俺にも少しその才能を分けて欲しいね。
「先に確認しておくが……ルールは時間無制限の2ラウンド先取、それでいいか?」
「いいわよ」
説明してなかったので説明すると、このゲームはいたって普通の格ゲーだ。まあ、キャラクターがみんな何処かで見た気がするが。
特に変わった点はなく、普通の技はボタン一つ、コマンド入力で大技が出るというシステムになっている。
「こっちはこいつでいくよ」
でてきた奴は普通な感じ……まあ、見るからにゲームばっかしてるような奴がでてきた。
「泣き面見ても知らねーぞ………」
「泣くのはどっちかしらね………」

To Be Continued・・・
330アメリカの人:2008/05/20(火) 16:08:11 ID:???
以上、第37話でした

SBRおもしれえええええええ!
そんな後書きしかできない今日このごろ

それでは!
331マロン名無しさん:2008/05/20(火) 20:23:11 ID:???
GJ!


アナスイもうみくるとくっつけよ・・・
332名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/21(水) 08:39:27 ID:???
乙ー
でも連載中のが3つだけってのはさみしくね?
333マロン名無しさん:2008/05/21(水) 08:55:01 ID:???
じゃあお前書け
と言われるのがオチだ、職人も楽しむために書いてるのであって俺らが強要するもんじゃない
334マロン名無しさん:2008/05/21(水) 10:13:34 ID:???
逆に考えるんだ。
連載中の作品が三つもあると考えるんだ。
335名無しさん@お腹いっぱい。:2008/05/21(水) 16:37:12 ID:???
誰か新作書けーーーーーッ!!
って言えーーーーーーッ!!
336マロン名無しさん:2008/05/21(水) 18:14:46 ID:???
まあ少なくはないな、どちらかなら多め
33755:2008/05/24(土) 22:33:57 ID:???
GJです!
多くの意見ありがとうございます。僕個人は予想は大歓迎です。
こんな展開もあるのかと参考になったり、気付いてない事に気付くきっかけになりますので。
では、投下します。
338ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/24(土) 22:36:05 ID:???
第八話「バイシクル・レースそのA」

ぼくは心底震えていた。バイクは制限速度をゆうに越えたスピードを出している。
しかし、真に恐ろしいのはそれではなく、そのバイクにスタンドの車がピッタリとついている事だ。
まるでライオンが、確実に獲物を仕留める距離やタイミングを測っているようだ。
ぼくのスタンドは「回転する爪」だ。近距離なら切り裂く事も出来るだろうが、
敵は車を媒介にしているだけあって圧倒的なパワーだ。下手に近づいたら跳ね飛ばされるのが落ちだろう。
「このバイクはCBR1000RR、排気量998cc、旋回性、加速性、最高速度、どれも申し分ない」
唐突に長門が呟く。
「このまま逃げ切る。奴を見て」
独り言ではない。改めて敵を見る。すでに敵は完全に変形を終えたようだ。
と、青信号の交差点を通り過ぎる。それを合図にしたように車のライトが瞬いた。
「長門!来るぞッ!」
体当たりを仕掛けてきた。当たればこちらはひとたまりもない。
バイクはそれを寸前でかわす。他の車の間をすり抜け、距離をとる。
敵も一般車にぶつかり無駄な傷は負いたくないのか深追いはしてこない。
このままなら逃げきれるかもしれない。そう思った時、長門の体が強張るのを感じた。
何事かと前を見るとそこには・・・!そうか、深追いする必要なんてなかったのか。
前方には赤信号。そして引っ切りなしに車が走る交差点があった。
「長門・・・!とても交差点は通れない。でも、足を止めて信号が変わるのを待っていたら敵にやられる!
『道』がないッ!どうすればいいッ!?」
「『道』なら、ある」
長門の声にぼくは冷静さを取り戻しかけたが、次の長門の言葉は予想をはるかに超えていた。
「歩道が空いている」
339ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/24(土) 22:38:29 ID:???
何を言っている!?とても信じられなかった。歩行者を轢くという事ではない!
今までの長門の運転技術ならそれはない。だが、それより大きな問題がある!
ぼくの思惑をよそに、長門は進路を変えてガードレールの切れ目から歩道に進入した。
予想外の動きに敵は並走するのがやっとだ。
予想通り長門の運転技術は確かで、間一髪のところで歩行者を避けていく。
しかし、このままでは・・・!
「待て、長門!減速するんだッ!」
そうなのだ。歩道を走るという事は、歩道に沿って曲がるという事。
前方では直角に近いカーブがそびえている。このバイクの速度は、80キロは堅い。
このままカーブを曲がるなんて自殺行為もいいところだ。
もうカーブまでの距離は近い。減速が間に合うのか?間に合え!そう祈った。・・・しかし。
「長門・・・!?何をしてる?減速しろッ!間に合わないッ!」
長門はまるでブレーキをかけなかった。いや、むしろ速度が増しているような気さえする。
このスピードで曲がろうというのか?無茶だ!長門だってそれはわかっているはずなのに!
考えている間にも悪魔のように口を開けたカーブが近づいてきている。
もう限界だ。ぼくは叫んだ。
「長門ッ!ブレーキだッ!曲がれるわけがないッ!」
「・・・曲がる必要は無い」
「!?」
馬鹿な。交差点は引っ切りなしに車が走っている。
それをかい潜って走るなんて、シューマッハにも出来ない。
確実にぶつかる。正気か?その疑念は次の一言で確信へと変わった。
「・・・交差点は、飛び越える」
な・・・!?「飛び越える」だって・・・!?飛ぶつもりなのか!アレを使って!
目の前の交差点には歩道橋があった。自転車用に坂になった部分が!
340ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/24(土) 22:40:12 ID:???
あれをジャンプ台として使うっていうのか!?しかし!
「ダメだ長門!ぶつかる!」
スピードは足りている。恐らく交差点を飛び越えるほどの飛距離は出る。
だがそれは何もなければの話だ。歩道橋には転落防止用の柵がある。
そうなるとどうしても角度が足りない。必ずバイクが引っ掛かる。このスピードだ。命はない。
ぼくの言葉を無視して、バイクは歩道橋を登り始めた。もう止まる事はできない。
エンジンを全開にし、バイクは登る。柵は処刑台のようにそびえ立っている。
・・・ダメだ!改めて見て確信した。やはり柵は飛び越えられない!
引っ掛かるどころかこの高さでは激突だ。・・・死ぬ。
恐怖にぼくは目を閉じる事すらできなかった。そしてバイクは頂点に達し、跳ね上がった。
「うわああああ!ぶつかる!」
目を見開き、そして見た。柵が光に包まれる瞬間を。
予期していた衝撃に襲われる事はなく、代わりに感じたのは浮遊感。
「『情報操作』・・・。一瞬だけ柵を消した」
着地の衝撃で生きていると気付いた。
慌てて振り返ると、何事もなかったように柵は復活していた。
「まるでカインド・オブ・マジック(魔法の一種)だ・・・。
あれが君のスタンドなのか?」
驚いたぼくに対する返答は素っ気ないものだった。
「違う。私は古泉一樹とは違う」
「何だって?じゃあ君は一体?」
スタンドとは別の能力?古泉とは違う組織の人間なのか?
しかし、長門の答えはぼくの予想をはるかに越えていた。
341ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/24(土) 22:42:12 ID:???
「・・・私は、対有機生命体コンタクト用ヒューマノイド・インターフェイス」
・・・は?言っている意味がまるでわからない。淡々と長門は続けた。
「情報統合思念体、という存在がある。私はそれに造られた。
あなたも知っている、朝倉涼子もそう」
朝倉涼子!?夢じゃあなかったのか!でも、彼女と同じなら・・・。
緊張が走る。それに気付いたのか長門が言い添えた。
「彼女の行動はただの暴走。私の任務は涼宮ハルヒの観測」
「・・・世界を改変する能力?」
「少し違う。宇宙からの観測の結果、情報統合思念体は彼女に人類の進化の可能性を見た」
説明してくれてるんだろうが、ますますわからなくなった。
「うちゅ・・・本気で言ってんのか?じゃあ君は宇宙人だっていうのか?」
「そう」
頭がくらくらするのは高速走行のせいだけじゃあないみたいだ。
超能力者、そして宇宙人か・・・。
「君も、ぼくや古泉みたいにハルヒに呼ばれたっていうのか」
「・・・少し違う。あなたは自分から来た。涼宮ハルヒに連れて来られた私たちとは違う」
小さな違いだ。そう言おうとした時、背後で激しい衝突音がした。
敵が無理に追い掛けようとして衝突したんだろうか。そう思って振り返る。
「な・・・!そんな!ウソだろッ!」
敵の車が通行する車を花びらのように弾き飛ばしながら追いすがっていた。
あんな真似は軍隊の装甲車だって出来ない。あのスタンド、何でもありか!?
「・・・普通に走っていては振り切れない」
そう言うと、長門は急ハンドルを切った。
「これから近くの工場に併設されたコンテナ群に向かう」
なるほど。碁盤の目状に並んだコンテナの中なら、見失わせるのも簡単だ。
342ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/24(土) 22:43:23 ID:???
コンテナを吊り上げるクレーンが見えてきた。後ろを振り返る。
敵とは十分な距離がとれている。このままなら逃げ切れる。
そしてその距離を保ちながらコンテナ群へ入った。
よし。後はどこかで曲がるだけだ。ぼくの考えに応じるようにバイクが曲がり始める。
勝利を確信したその時、腕に激痛が走った。
見ると、二の腕に一点血がにじんでいる。撃たれた・・・!?いや、銃声はしなかった。
銃ではない・・・?なら何で・・・?
「・・・まずい」
長門の言葉で思考は中断された。まさか長門まで。
「撃たれたのか!?」
「違う。私は・・・へいき」
言葉の続きを待たず、「まずい」事がわかった。
耳をつんざく金属音。足元で散る火花。タイヤを撃たれたのだ。
たちまちバイクは制御を失った。コンテナが目の前に迫る。
ぶつかる!そう思った瞬間、ぼくは宙を舞っていた。
長門がぼくをつかんで飛び降りていた。

よし。全ては順調だ。「運命の車輪」のスタンド使い、「ズィーズィー」はほくそ笑んだ。
コンテナ群に逃げ込まれた時は焦ったが、遠距離攻撃を叩き込んでバイクを潰した。
情報によると、長門は「情報操作」、ジョニィは「回転する爪」が攻撃手段だ。
ジョニィの一撃は強力だが、射程が短い。食らう前に轢き殺せる。
厄介なのは、長門と連携された時だが・・・。思わず笑みがこぼれた。
長門の奴、飛び降りる時ジョニィをかばいやがった。
おかげでまともに地面に叩きつけられ、立つのも厳しいくらいの重傷だ。
今の奴に「運命の車輪」の突撃をかわす力はない。
ズィーズィーの考え通り、長門は歩けないほどの傷を負っていた。
「損傷甚大。早急な修復を要する」
力ない言葉が漏れるように出る。ズィーズィーはそれをかき消すようにアクセルを踏んだ。
猛烈な加速、そしてエンジン音。長門は接近する車を流れ星でも見るように呆けて見ていた。
そこに、割って入る小さな影があった。ジョニィだった。
343ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/24(土) 22:46:03 ID:???
ズィーズィーは何が何だかわからなかった。
長門にジョニィが飛びつくのが見えた時は、始末する手間が省けたと思ったが、
考えてみれば下半身不随のジョニィがあんなに早く飛びつけるはずがないのだ。
それより、一番解せないのは二人が突撃をかわしたという事だ。
今の長門とジョニィは走るなんて事はできないはずだ。ならどうやって避けた?頭が混乱した。
一方、長門はジョニィに助けられたとはいえ、深手を負っている事は変わらない。
「長門・・・!」
「へいき」
重傷を負っているにもかかわらず長門は冷静だった。
「突撃に合わせて、物理障壁を作る」
苦しそうな長門の言葉はそれだけだったが、ジョニィは言おうとした事がわかった。
長門が足止めをしている間に、「回転する爪」の一撃を食らわせろという事だ。
話し合うわずかな時間の間に、「運命の車輪」は体勢を整えて再び突撃した。
「来る!」
ジョニィが叫ぶと同時に長門が障壁を構築する。激しい衝突音が辺りに響いた。
今だ。ジョニィが目前の「運命の車輪」に一撃を放とうとした時、笑い声が聞こえた。
「これが『情報操作』か・・・。なかなかやるねえ〜」
ズィーズィーの声だ。余裕に満ちたその声は続く。
「だがシブくないねえ〜。ジョニィ、お前らに撃ち込んだものは何だと思う?」
言葉を受けてジョニィが気付く。これは・・・バイクが潰れたからだと思っていたが・・・この臭いは!
「撃ち込んだのはガソリンだッ!そして!」
二人に蛇のようにコードが伸びる。
「電気系統でスパーク!焼け死ねッ!」
コードから散る火花がガソリンに塗れた二人に引火し、爆弾のように二人は燃えあがった。
344ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/24(土) 22:48:30 ID:???
ズィーズィーはもう笑いを堪えきれなかった。目の前では二つの人型の炎が揺らめいている。
予定外の出来事はいくつかあったが、二人の始末は成功だ。
喜びに思わず言葉が漏れた。
「勝った!ジョニィ・ジョースターの憂鬱、完ッ!」
「そう」
細い声にズィーズィーは耳を疑った。気のせいか?どこから聞こえた?
辺りを見回すズィーズィーに応えるように言葉が続いた。
「それなら誰がぼくの代わりをつとめるんだ?」
この声は・・・上?身をよじり頭上を見る。ズィーズィーが目を見開いた。
ジョニィが上空のクレーンにぶら下がっていた。しがみついた長門が呟く。
「『情報操作』でダミーを作った・・・。燃えたのはそれ」
馬鹿な。ズィーズィーの思考が凍る。ダミーを作ったとしても、
短時間であそこまで移動出来ないはずだ。それをなぜ?ジョニィの声がそれに答えた。
「『回転する爪』をローラーのように使った。それで高速移動が出来た。
そして・・・ぼくの指先にあるものが見えるか?」
それを見て、ズィーズィーの思考が動き出した。パニックという形で。
ヤバい!逃げなければ!・・・あれ!?動かない!?そうか、情報操作で壁を・・・!
「た、助けてくれ!」
悲痛な叫び声にジョニィが呆れ声を出す。
「あれだけ命を狙っておいて調子のいい事言うなよ。
命を取りはしないさ。・・・多分」
「多分?今、多分って・・・!?」
絶叫を消すように、ジョニィは「運命の車輪」の頭上のコンテナを吊り上げるワイヤーを切断した。
345ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/05/24(土) 22:49:00 ID:???
クレーンから降りると、ぼくはしがみつく長門に声をかけた。
「長門、もう大丈夫だ。すぐに救急車を呼ぶ」
長門は瀕死の重傷を負っている。口調は落ち着いているが、それが逆に危ない。
神経をやられているのかも・・・。責任を感じて歯を食いしばった。
と、長門がしがみつく手を離す。
「いい。インターフェースの再生は終了した」
さっきまでの重傷が嘘のように消えていた。
なるほど、これが宇宙人か・・・。
「後は古泉の機関に任せるとして・・・帰ろう」
ひどく疲れた。長門の正体もわかったし、もう帰りたい。
そう思ってとても重大な事に気付いた。車椅子を置いてきてた。
頭を抱えると長門が肩を叩いた。
「これ」
車椅子があった。
「長門?これはどうしたんだ」
「情報操作」
「作ったのか?君が?」
頷く。・・・何て言うか、案外、宇宙人とも仲良くやっていけるのかもしれない。

本体名「ズィーズィー」
スタンド名「運命の車輪」
スタンドごとコンテナに潰されて再起不能。
To Be Continued・・・
346古泉の報告書:2008/05/24(土) 22:52:21 ID:???
スタンド(?)名「カインド・オブ・マジック(情報操作)」
本体名「長門有希」

パワー− スピード− 精密性B 持続力A 成長性−
射程距離ほぼ無限

能力
・「情報操作」により情報の構築、分解を駆使する。
・例えば、物を分解して変形。情報構築による傷の治療などが出来る。
・複雑な情報操作には時間を用し、また複雑さにおいて情報操作には限界がある。

備考
本体は対有機生命体用ヒューマノイド・インターフェースであり、
本能力もスタンドというよりは技術というほうが適切である。(便宜上スタンドとした)
現在のところ、現状維持という行動指針は我々と一致しているようである。
34755:2008/05/24(土) 22:57:55 ID:???
投下終了です。何だか僕は長くなるなあ。
348マロン名無しさん:2008/05/24(土) 23:21:47 ID:???
GJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJ!
ジョニイはなかなか常識人だから面白いな。
349マロン名無しさん:2008/05/24(土) 23:49:10 ID:???
GJ!!!
長門がDIO様するとはwwwイニDも混じってたようなw
ズィーズィーは頭くらい今風になってても体は変ってないんだろうなあ
350マロン名無しさん:2008/05/25(日) 00:12:25 ID:???
GJ!
長門の『カインド・オブ・マジック』を見て、
そういえばミキタカの『アース・ウインド・アンド・ファイヤー』も
スタンドか宇宙人の能力かが判明しないまま終わってたのを思い出した。
351マロン名無しさん:2008/05/25(日) 12:33:47 ID:???
わからないからいいんじゃあないか
352マロン名無しさん:2008/05/26(月) 00:35:04 ID:???
今のところ花京院、億泰、ジョルノ、康一、ボス、ジョリーン、フーゴ、ジョニイが使われて、キョンがハミパ発動する話しが出てきたな。
イ丈助、承太郎、若ジョセフとか想像できんな。
353マロン名無しさん:2008/05/26(月) 00:36:04 ID:???
今のところ花京院、億泰、ジョルノ、康一、ボス、ジョリーン、フーゴ、ジョニイが使われて、キョンがハミパ発動する話しが出てきたな。
イ丈助、承太郎、若ジョセフとかどうなるか想像できんな。
354マロン名無しさん:2008/05/26(月) 00:37:27 ID:???
書き込みミスッた・・・orz
355マロン名無しさん:2008/05/26(月) 10:32:44 ID:???
>>353
アメリカさんの話に承太郎出てきてるぞ

6部のだけど
356名無しかわいいよ名無し:2008/05/26(月) 16:44:25 ID:???
全てを差し出せば最後には真の全てを得る。
って幼女が言ってた。
357マロン名無しさん:2008/05/26(月) 16:51:01 ID:???
>>353
ジョナサン「・・・・・・」
358イチゴの人:2008/05/26(月) 17:32:10 ID:???
55さん、GJ〜。
ボスと長門をぶつけてみたい今日この頃、投下!
359イチゴの人:2008/05/26(月) 17:33:29 ID:???
パンナコッタ・フーゴの消失
第八話
〜フーゴ視点〜
ベットに横になり、結局一睡もしないまま夜を明かした。
宇宙人。
それは僕がスタンド能力という超常現象を初めて身につけたときと似ていた。今までの常識がこむら返りを起こすような出来事に目で見て肌で触れ、
渋る理性をなんとかなだめすかして納得する。精神衛生上あまりよろしくない作業である。
ベットから身を起こす。ウイルスに侵された体は元通りになっていた。
とりあえず、今僕が取るべき行動は……現状維持。
問題を先送りにするのではない。よくよく考えればどんなぶっとんだ存在でも涼宮ハルヒ及び長門はスタンド使いではないのだ。それを証明するのも難しくないだろう。
と、言うことは、僕は涼宮ハルヒの気が済んで長門からの制約が解除されればパッショーネに帰れるわけである。命令の内容が「スタンド使い『なら』殺せ」だったかどうかは少し微妙だが、
スタンド使いではない⇒一般人という認識である組織なら、多分大丈夫だろう。
後ひとつの懸案事項としては、果たして情報チームがどこから情報を仕入れてきたか、である。もしどこかの涼宮ハルヒを研究する団体から奪ったのであれば、何とでも言いくるめられるが、
何らかの実体験を通してだとややこしくなるところ……
突然、携帯がなった。僕の番号を知ってるのはチームのみんなだけであるから、おそらく途中報告を催促しにきたのだろう。今現在、日本時間で午前六時である。時間を考慮すればますますイタリアから以外の可能性はありえない。
僕はブチャラティ達の声を想像しつつ、電話を取った。
ブチャラティなら時差まで考えてまともな時間にかけてくる、という考えはこの時思いつかなかった。
360イチゴの人:2008/05/26(月) 17:34:17 ID:???
「あ、フーゴ君!?今日の九時からSOS団のパトロールをやるから駅前集合ね。遅れたら死刑だから!」
まず名を名乗れ、そして駅前というのはどこの駅のことだ?そしてどうして僕の番号を知っている?
それら脳裏に展開した色々な突込みが炸裂する前に……
ぶつっ、つーつーつー……
切られたのであった。非常識過ぎて怒る気にもなれない。
とりあえず、涼宮ハルヒが唯我独尊で自分を中心に世界が回っていると無意識のうちに考えている大馬鹿だということが分かった。
誰が行くか誰が。
「行かなくちゃいけないんでしょうね……」
涼宮ハルヒは無自覚のうちに世界を自分の面白いように改修するらしい。長門は詳しく言ってなかったが、断片的な情報から推測するに多分機嫌が悪くなるとその能力が発揮されるのだろう。
そんなわけで機嫌を取らなくちゃ世界は危機にさらされる、と。
顔を洗って軽食を取り、髪型を整える。ここまで外出したくないと思った事も久々である。
いつもの穴ぼこだらけの服か制服かでかなり迷った。コイントスで決める事にした。
〜視点・キョン〜
涼宮ハルヒを神と崇める全団体が総力を尽くして組織をまるごと潰しに来る、という脅迫まがいの説得でなんとか話がついたらしい。よかったよかった……とは手放しに言えないんだよなこれが。
「急な転校でイタリアに帰った、ってことにできないか?」
定期パトロールのために駅前に集合し、「おっそいわね〜フーゴ君。怪力なのに足遅いのかしら」とぶつぶつ文句を言うハルヒをちらりと見ながら、俺は長門と小声で話していた。
361イチゴの人:2008/05/26(月) 17:35:13 ID:???
「できなくはない。しかし涼宮ハルヒはその行為の不自然さに対し無意識のうちに環境情報を改変する恐れがある。その時どのような修正が施されるか確認できない今、推奨はしない」
スタンド能力。超能力の一種だが涼宮製の古泉達の能力と違い、人間の願望、欲望、深層心理が具現化したもので、社会通念としてのいわゆる「超能力」であるらしい。
一人一能力で似ているものはあるが全て個人個人のオリジナル、ということである。
「分かった。んで、これから仲良くやってかなくちゃいけないリアルちびっこギャングの能力が、殺人ウイルスってわけだ」
日常生活に役立たない生産性皆無な超能力で、しかも危険極まりないときた。使用済み核燃料並みにいらないな。一般小市民としては。
「彼の情緒は自分の知性がある事象を道理に合わないと判断したとき、極めて不安定になる。それが反映された彼の殺人ウイルスは、精神エネルギーとしてそれを生み出した本体にまで感染し、
現代の人間には不可能な技術レベルの治療を施さない限り、
死に至らしめる。しかし彼の理性は自分の能力の危険性を熟知しているため、意識下で制御され能力だけが暴走し感情に流されるままウイルスをばらまくことは、ない」
また厄介な性格のオプションがついたもんだ。
それ聞いちゃ安全といわれてもね……
「信じて」
真摯な態度で俺を見つめるインターフェイス。
いや、まあ、わかってるさ長門。お前の言葉以上に信頼の置けるものなんて惑星単位でもそうそうないだろう。
だが、感情と理性というのは必ずしも相容れないものさ。くだんのフーゴのようにね。
「あっ、来たわね〜。まったく新入りのくせに団長を2分も待たせるなんて言語道断ね!」
ハルヒの言葉が俺の耳にも届き、長門との会話をそれで打ち切った。ハルヒ以外の全員に緊張が走る。
362イチゴの人:2008/05/26(月) 17:35:59 ID:???
ちなみに、今現在の時刻は集合時間の十分以上前である。まさか罰金刑を宣告されてキれたり……しないだろうな?フーゴよ。
「あれ、皆さん早いですね」
古泉な口調と表情でしゃべるフーゴだが、これがまた物凄い格好をしていた。この破壊力は朝比奈さんのメイドコスに匹敵する。方向性は違うが。
「……それ、私服ですか?」
当の朝比奈さんが恐る恐るフーゴに聞く。
「ええ、そうです。制服にしようかとも思ったんですが、宇宙人や超能力者を探すのであれば、とりあえず目立つほうがいいかと思い直しまして」
こちらから探すのだから、容姿が関係あるのは向こうのはずであり今の説明は論理を欠くものであったが、高圧電流により既に脳の回路をショートさせかけている朝比奈さんは目を白黒させながら「そうですか……」と言っただけだった。
「んーやるわねフーゴ君。そこまで考えていたのなら今回は特例として罰金刑は抜きにしてあげるわ」
ハルヒ、お前だって頭悪くないんだがら少しは考えろ。
「お慈悲、感謝します。ところで今日はどういった日程なんですか?」
「そんなの決まってないわよ。感性を磨いて市内の不思議そうなものを探すのよ。一人だと見逃すかもしれないから二組に分かれてやってるんだけど……そうだわ!六人いるから三組作れるわね」
ハルヒはポケットからツマヨウジの入った容器を取り出すと六本抜き、ボールペンで二本にしるしをつけ、もう二本の先端をぽきりと折った。
「さ、引いて頂戴」
ツマヨウジを握ったこぶしを目の前に出すハルヒ。喫茶店に移動しないところを見るとフーゴが加わったことでこんどこそは、と気が急いているだろうか?
手製くじを引く団員。俺はざっと視線を走らせる。
363イチゴの人:2008/05/26(月) 17:36:37 ID:???
俺と朝比奈さんが無印、古泉と長門がしるし入り……ってことは……
「よろしくお願いします、涼宮さん」
フーゴは軽く頭を下げた。
思わず古泉と顔を見合せた。
もう暗殺の危険はないみたいだが、……ハルヒの横暴さには感受性に乏しい俺ですらキれかけたことがある。プッツンしたフーゴがハルヒに手を上げる可能性は……
「お手並み拝見、と言ったところかしら」
挑戦的な目で腕を組みフーゴを見るハルヒ。
と、ここでまた救いの言葉が流れてきた。
「わたしと」
すっ、と差し出す長門のツマヨウジの先端は……折れていた。
グッジョブ。
「おや?何かの見間違えでしたか、確かに折れていたと思ったんですけどね」
対して、フーゴのツマヨウジはもとに戻り黒いしるしがついていた。口調と表情からフーゴは何をされたか感づいているようである。
昨晩長門の宇宙パワーをこいつも目撃したのだろうか。まあそうじゃなきゃあっさりとは引き下がらなかっただろうし。
「あら、私もそう見えたけど……まあいいわ。古泉君、副団長としてフーゴ君をばしばし鍛えてあげてね」
「了解しました」
軽く頭を下げる古泉。フーゴと並ぶと偽善者二人組み、って感じである。フーゴの服装も相まって怪しさ全開だ。
「それじゃ行くわよ!いい?探し出すっていうのは、見るんじゃあなくて観ることよ!聞くんじゃあなく聴くことよ!でないとこれからの活動は全部無意味になっちゃうわ!」
長門とずんずん歩いていくハルヒを見送りながら、ちらちら怖そうにフーゴを見る朝比奈さんとどこで時間をつぶそうか考えを巡らせた。
364イチゴの人:2008/05/26(月) 17:37:22 ID:???
以上、第八話でしたー。
365マロン名無しさん:2008/05/26(月) 18:43:22 ID:???
投下乙です
古泉とフーゴなら無難な組み合わせだな
366マロン名無しさん:2008/05/26(月) 20:33:43 ID:???
主人公だろ
367アメリカの人:2008/05/27(火) 15:53:33 ID:???
みなさんGJです!

俺も投下ァ!
368アメリカの人:2008/05/27(火) 15:54:59 ID:???
第38話 「隣の部室からやってきた挑戦者 2」

ゲームを起動し、ジョイパッドをパソコンにつなぐ。少し気合いの入ったタイトル画面が出るが、二人とも無視して対戦に入る。
このゲームは互いのキャラが開始するまで分からなくなっており、キャラの相性を狙った戦略は立て辛い。要は互いの腕しだい、分かりやすいな。
徐倫はジャトロハイムというサイボーグ戦士を選んだ。若干パワーよりでスピードはあまり無いが、豊富な飛び道具と耐久力の高さで攻めるキャラだ。上級者向けといえる。
「……さっさとしな」
「フン」
コンピ研の代表もキャラを選ぶ。そして対戦が始まった瞬間、徐倫が、
「なかなか……手強いな」
相手のキャラはギャラッチョ。氷を使ったリーチの長い攻撃とかなり速いスピード、そして飛び道具を氷で反射できるなどジャトロハイムにとっては苦手なタイプのファイターだ。
スタートの文字と同時に徐倫が凄まじいスピードでコマンドを入力し、技を放つ、が、相手もなかなかのもの、徐倫の攻撃を見事にガードする。
すかさず徐倫が掴み、投げる。落ちてきた所にさらにマシンガンで攻撃し、駄目押し。
「いいわよ!徐倫!そのままガンガンいっちゃいなさい!」
「クッ………」
「どうしたんだ?徐倫?」
「何でもない………」
369アメリカの人:2008/05/27(火) 15:56:00 ID:???
マシンガンから脱出した相手はスケートのように滑りながら近付き、そのまま攻撃してくる。
徐倫はガードしたものの、少しタイミングがずれたらしく、攻撃をくらってしまう。
一旦距離を取り、徐倫はロケットパンチを繰り出す。敵のキャラに命中し、そのまま倒れた所に再びマシンガンを撃つ。
相手はよけようとしたようだが、一足遅く当たってしまった。
「クソッ………」
なんだ?徐倫?お前のペースなのになんでそんなしんどそうなんだ?
「いや、何でもない………」
その後の試合も徐倫のペースで進み、結局徐倫が勝った。
「1ラウンド取ったじゃねぇか!これなら勝てるぜ!」
「おかしいと思わないか?」
「ハ?」
「……………」
徐倫が俺と長門に耳打ちしてくる。
「さっきあたしは散々攻撃を当てまくった……だけどこんなに時間がかかった……何故だと思う?」
「さぁ………」
すると長門が、
「彼等は特殊なコマンドを入力し、この仮想格闘技を優位に進めている」
「な!?イカサマって事か!?」
「正確には違う。彼等は元々組み込まれていた機能を使っているだけ。私達にも使える」
それはどんな機能だ。
「ハンデ」
「あたしが迂闊だった……ルールにハンデ無しって入れるのを忘れていた……あいつらはそこをついてきたんだ。イカサマじゃあない」
370アメリカの人:2008/05/27(火) 15:56:54 ID:???
「ならこっちもハンデをつけりゃあどうだ?」
「試合中に設定を変えるのは不可能だ……やるしかねぇな」
「けどな………」
「別に負けてもいいだろ?」
「まあ……な」
実はこの勝負を持ち掛けられた時からやたらと長門が張り切っているのが気になってはいた。だから負けた時どうなるかが気になってしまうのだろう。
「……それにあたしはこの程度じゃあ負けねえよ」
そう徐倫が言うと同時に第2ラウンドが始まった。
敵はハンデをつけていながら負けたというのを警戒してか徹底的にガードを固め、徐倫の隙をついて攻撃を当ててくる一種のヒット&アウェイをとってきた。
さすがの徐倫もなかなか攻勢に移れず、互いに睨み合うだけの時間がすぎる。と、一番こういう展開の嫌いな奴が騒ぎ出した。
「なんなのよ!これ!もっと派手に殴り合いなさいよ!」
「できるんならもうしてるぜ」
「うるさいわね!飛び道具でガンガン牽制しなさいよ!」
徐倫はその言葉と共に動きだした。まずは手始めに銃を撃つ。が、ガードされる。
それを気にせず徐倫は突っ込み、掴みから投げに入ろうとしたものの、動きを読まれカウンターをくらう。
その後徐倫は攻勢に移ったものの、与えられるダメージは僅かで、こちらばかりくらっていく。
371アメリカの人:2008/05/27(火) 15:58:08 ID:???
「くそっ……ちょこまかウザいな………」
「……対処法はある」
長門が呟く。
「いつものインチキか?あれはやめておこうって言ったじゃないか」
「あなたの指示には違反しない。現在の地球のレベルに応じた対応策を取る」
「有希、心遣いは有り難いけど、それはやめときな」
どういう意味だ?
「あいつらこれだけイカサマ行為をはたらくんだ……最後の勝負でも確実にしかけてくる……有希、あんたの出番はその時だ」
「………しかし」
「キョン、有希、あたしを信じろ」
長門はそれからかなり長い間、と言っても瞬きする時間程だが、迷ったような素振り(に見えた)を見せ、言った。
「了解した」
「だけどよ、負けそうなんだろ?」
「……いつそう言った?」
徐倫は不適な笑みを浮かべながら言った。
「さあ、お仕置の時間だよ、ベイビー」
そして次の瞬間、ガードを解除した一瞬の隙をつき、徐倫がキャラに目から光線を発射させた。すると、相手の動きが一瞬止まる。
ほんの一瞬だったが、徐倫はそれで十分だったらしく、PVとかでしか見たことのない猛烈なコンボを決めていた。
「ガード後の僅かな硬直を狙っていた……タイミングが難しいから今迄できなかったがな……終わりだ」
徐倫が最後の一発を入れるとK.O.の文字と共に試合は終わった。
372アメリカの人:2008/05/27(火) 15:59:06 ID:???
数分後、対戦相手がかなり沈んだ様子で部室に入ってきた。そりゃそうだろうな、ハンデをつけて負けたんだ。
「これで……最後の勝負で決着がつくわけだな」
「望むところよ!みんな!コンピ研なんかケチョンケチョンにしてやるわよ!」
この後、長門がコンピ研のイカサマを暴き、劇的な勝利をおさめた。そしてプライドをボロボロにされたコンピ研部長はなんと長門を勧誘しだした。
もちろんハルヒは駄目だの一点張りだが、
「なあ……徐倫………」
「あたしは別に……有希の好きにさせてあげたら?」
もちろん俺も徐倫と同意見だ。
「……………」
「長門、パソコンいじりは楽しかったか?だったらたまには行ってみたらどうだ?お前が暇な時でいい。色々な楽しみがあっていいと思うぜ」
「………そう」
そして長門は俺にしか分からないような角度でうなずき、
「たまになら」
そう、言った。

To Be Continued・・・
373アメリカの人:2008/05/27(火) 16:01:15 ID:???
以上、第38話でした

OVAジョジョ3部でのコーランをきっかけに回収騒動が起こってしまいました
SBR連載に影響が無い事を祈るばかりです

それでは!
374マロン名無しさん:2008/05/27(火) 18:41:59 ID:???
二人とも乙!

>>365
無難なのは長門とじゃないか
フーゴと古泉、ものすごーく見たいぞwww
375マロン名無しさん:2008/05/28(水) 21:37:02 ID:???
GJ!
まだ文庫版の三部揃えてねぇ・・・・・
376マロン名無しさん:2008/05/29(木) 19:20:34 ID:???
>>322
亀レスだがノトーリアスを忘れてないか?
377マロン名無しさん:2008/05/31(土) 01:28:58 ID:???
いや?
378マロン名無しさん:2008/05/31(土) 02:11:45 ID:ARQtcWRa
あげ
379マロン名無しさん:2008/06/03(火) 23:37:38 ID:???
人がいない・・・
新入りですが投下してもかまいませんかね?
380マロン名無しさん:2008/06/03(火) 23:51:09 ID:???
かまわん
いけ
381マロン名無しさん:2008/06/03(火) 23:55:09 ID:???
日常というものは簡単に崩壊するものだ。
特に非日常の中のささやかな日常というものは。

「ちょっと、面白い生き物見つけたからすぐに駅前集合!」

梅雨時期にしては珍しく日光の射す、さわやかな日曜日の朝、突然団長殿から電話がかかってきた。
俗に言う特別収集というやつだ。
時計を確認するとまだ八時をまわっていない。
どうやら団長殿は大切な休日の過ごし方というものをわかっていないらしい。
しかし無視することはできない。まだ良く働いていない頭でもそれはわかる。
人間がどれだけあがいても神様には勝てないんだからな。

act0―SOS団と奇妙な生き物

純粋な人物の視点から見た絶望と希望、それに対する本人の思考調査ノート
(上からマジックで「おれのにっきだぜ」と書いてある)
○がつ×にち はれ
あさおきるとぜんぜんしらないばしょにいた。
しかたがないからじめんのなかでだれかがくるのをまってたらあまいにおいがちかづいてきた。
おれのうえのほうでにおいがとまった。うまそう。
ようすをみるためにうえにでてみたら、あいすがおちていた。
ひろってたべてるとおんなにみつかった。どうしようかなやんでるとおんながもうひとつあいすをおとした。
おれがそれもひろってたべるとおんなはちかづいてきておれのあたまをなでた。
かんちがいしてるみたいだけどもぐらじゃあねーぞ。
382マロン名無しさん:2008/06/03(火) 23:56:28 ID:???
やはりというべきか、今回も俺が駅前に着いたときにはみんな揃っていた。
ハルヒの上下ジャージ姿をのぞけばそれぞれ個性あふれる私服を着込んできている。
「遅いわよっ!」
いつも以上に大きな声を出すハルヒ、しかし機嫌は悪くない、いやとても良いようだ。
その声に含まれているのは苛立ちなどではなく、まさしく『特殊生命体]』を発見したというような喜びだけだった。
あの偏屈ハルヒをそこまで喜ばせる生き物、たとえばどんなものだろうかと俺は今までの経験に照らし合わせて考えてみる。
・・・ダメだ、どう考えてもいい結果は望めない。
真夏の太陽のように明るい笑顔をしたハルヒ。つまりそれほど珍しい、もしくは面白い生物なのだろう。
たとえば恐竜の子ども、火星人、猫娘、北海道産イリオモテヤマネコなどがそれに含まれているだろう。
そう、つまりは存在しないはずの動物を見つけたということだと推測できる。
その生き物の世話を任される俺の図と言うものは我が団について知っている者ならばたやすく想像がつくに違いない。
つまり、拾った動物が何であろうと結果的にすべての迷惑は俺のほうへとまわってくる仕組みになっているのだ。
冗談じゃあないぞ。
ただでさえ平穏じゃない日常なのにこれ以上壊されたくはない、いや壊されてたまるか。
そういった意思を持ち俺が言葉を発しようとしたときだった。
「それで、面白い動物というのは?」
いつもの気味の悪いエセハンサム薄ら笑いで季節はずれの転校生こと古泉一樹がハルヒにそう問いかける。
・・・本当にタイミングの悪い男だ。
「よぉく聞いてくれたわ、古泉君。これがもう、最高なのよ。
早起きは三文の徳って言う言葉を今日始めて実感したわ!待ってて、すぐ連れてくるから。」
言い終わるが早いか、ハルヒは俺の来た方向とは真逆の方へ走っていく。
その速さ、陸上部から勧誘があるのも頷けるものだ。
383マロン名無しさん:2008/06/03(火) 23:57:18 ID:???
「いったい、何がいたんでしょうか?」
ハルヒの背中が見えなくなった後、先輩である朝比奈みくるさんがそう紡ぎ出した。
元来のものなのか、それとも現在の状況をまだ把握しきれていないのか、その言葉はとてもゆっくりとしたものだった。
正直なところ俺自身もまだ把握し切れてはいない。
しかしあのハルヒの向日葵のような笑顔を見ればただ事じゃないということは明らかだ。
「良くないこと、ですか。
まぁたしかにあの涼宮さんが見つけ、なおかつ大喜びするような生き物です。僕たちもそれ相応の覚悟を決めなくてはいけないかもしれません。」
俺の表情から言いたいことを察したのか、古泉がそう続ける。
「しかし、いくら涼宮さんだからといって常識でありえないとわかっている生き物を存在させることはできません。
犬猫、悪くてもライオンやトラといったところが妥当でしょう。」
それも問題なんだ。
常識の許容範囲内ならあいつは何だって起こすことができる。
ライオンやトラを拾うことだって、それをばれずに飼い続けることだって。
それこそがあいつの神たる所以なのだが。

涼宮ハルヒ。
まぁ説明なんかしなくてもわかるかもしれないが、世界の中心である。
比喩表現などではなく、彼女を中心に世界は回っているといっても過言ではない。
「理想を現実に変える能力」
SOS団の三人が口をそろえて俺に説明したことだ。
ちなみにこの三人も普通じゃない。
宇宙人・未来人・超能力者と、不思議生命体のバーゲンセールといってもいいくらいの組み合わせだ。
そんな奴らと一緒に何をしてるのかって?
俺自身知りたいよ。
384マロン名無しさん:2008/06/03(火) 23:58:40 ID:???
「ただいま!!」
数分後、これといった会話もなく立ち尽くしていた俺たちの元に行きと同じくらいの速度でハルヒが帰ってきた。
その手のなかには・・・
「連れて・・・来なかったんですか?」
そう、何もいなかった。
抱えきれないものなら地面を歩いているだろうと思ったが地面にもそれらしい生物はいなかった。
ハルヒが欲しいものを手に入れそこなったのか?
ありえないことだが今の状況ではそれ以外は考えられない。
「何言ってるの、みくるちゃん?そこにいるじゃない。」
そこ、といってハルヒが指したのは何もない地面だった。
とうとうおかしくなってしまったのか、と俺が哀れみにも似た視線を送っているとハルヒは俺のほうを睨み「何よその目は!」と吠えた。
「何も見えないんですが、一体何がいるのですか?」
どうやら地面しか見えないのは俺だけじゃないらしい。
ハルヒはワケがわからないといったような顔で自分の足元を見た。
当然そこには何もいない。
しかしハルヒは少しも動ぜず「潜っちゃったのね。」とだけ言い、腰から下げたビニール袋をあさり始めた。
潜る、液体の中に身をうずめる行為に対して使われる動詞だ。
しかしここにあるのはコンクリートだけ。潜れるものなど何もない。
そう思い、やれやれとため息をつこうとした俺の目にあるものが映った。
水を含みすぎたスポンジのようにグジュグジュに緩んでいるハルヒの足元。
そう、確かに緩んでいる。目の錯覚でもなくコンクリートが、まるで泥のように。
ゆっくりとビニール袋から何かを取り出すハルヒ。それはまるで動物園に入る前の子どものような顔である。
そのまま腕を頭の後ろで組み、足を上げ投球フォームを作る。俗に言うワインドアップだ。
そして・・・
「角砂糖三つ、いくわよ、そーれ!!」
腕を思いっきり振った。白い立方体が三つ、綺麗な軌跡を描いて飛んでいく。それを追いかけるように緩んでいくコンクリート。
角砂糖と思しき物体が一直線上に並んだ次の瞬間。
「おうおうっ!!」
, , , , , , , , , , , , , ,
地面の中から茶色い男が現れた。
385マロン名無しさん:2008/06/04(水) 00:00:56 ID:???
Jojo's strange adventure "if" story
イタリアはまだ遠く 〜セッコの・・・憂鬱?〜

to be continued・・・

ということで以上、投下終了です。
つたない文章ですが何かあったらご指摘お願いします。
386マロン名無しさん:2008/06/04(水) 00:10:47 ID:???
GJ! セッコだとぉぉぉぉぉ!?
387マロン名無しさん:2008/06/04(水) 02:21:14 ID:???
GJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJ!
最初猫草かと思ったけど・・・
予想の斜め前どころか次元を超えた展開だぜ
388マロン名無しさん:2008/06/04(水) 05:16:15 ID:???
意外! それはセッコ。
つまり、UMA扱いを受け、角砂糖欲しさにSOS団のマスコットになる訳ですね。
389マロン名無しさん:2008/06/04(水) 08:06:01 ID:???
これは面白いwww期待だ!
390マロン名無しさん:2008/06/04(水) 10:08:51 ID:???
            , -―  ――-、
             /に    (ニ==\
         //')      に二) (ヽ   俺に出番をくれたなッ!
         〃____,r^)__,r、(ニユ|  よく出してくれたよなぁぁぁぁぁぁ
         i!   ● / /●  ヾヽヽ,!      >>385 押す!……
          ヽニ⊃,// ⊂⊃}:}ソi   …じゃなくて>>385 乙津!
        /⌒ヽ__ ヘ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄~/⌒ヽ
      \ /:::::  >,、 __, イァ/   /
.          \     |三/ []「/__ /
         `ヽ「ミヾr‐ 、[]「ヾ三/
391アメリカの人:2008/06/04(水) 12:34:17 ID:???
第39話 「今にも降り出しそうな空の下で」

居座り続けていた夏はいつの間にか去ってしまい、秋を押し退けて冬将軍がやって来た12月のある日、俺は徐倫と下校していた。
「にしても珍しいな……ハルヒがSOS団を休みにするなんて」
大方再来週のクリスマスに向けて気の早い準備を始めるんだろ。
「ハルヒらしいわね………」
「徐倫、お前は来るのか?」
「行けないって言ってもあいつの事だ。家に押しかけてでも参加させるだろ」
だろうな。
「それよりも………」
「なんだ?徐倫?」
「いや、今日ぐらいにあたしの知り合いがアメリカからやって来るんだ」
そうか。
「暫くあたしん家に泊まっていくからあんた達とも顔合わせるかもしれないと思ってな」
……ハルヒが喜ぶような属性持ちじゃないんだろうな?
「あ……飛行機雲!」
ごまかしやがった。多分スタンド使いなんだろう。空を見ると、
「一雨きそうだな………」

俺達が人通りの少ない川沿いを歩いていると、一人の女が立ちはだかった。黒いボディスーツに黒いマフラーを長めに巻き、口と鼻を隠している。……なんだか時代劇の忍者みてーだ。
黒い髪は短く切り揃えてあり、口から鼻をマフラーで覆っているので見た目はよく分からない。
「お主達……空条徐倫に……キョンと見受ける」
「なんだてめー」
「悪いが……その命もらったッ!」
と、時代劇のような台詞と共に女が徐倫に襲いかかる。が、スタンドで軽くあしらわれたようだ。
「その程度じゃああたしは倒せねーぜ」
「フッ……笑止……いまのが本気と思ったのか………」
392アメリカの人:2008/06/04(水) 12:35:32 ID:???
「じゃあ、その本気とやらを見せてもらえる?」
「ヴァイオレンスッ!」
と、女がスタンドを出したようだ。
「気持ち悪………」
どんな感じなんだ?
「カメラよ。これで見なさい」
と、スタンドの見えるカメラを手渡す。すると、そこには虫がいた。顔は小さく、胴はでかい。
胴からは6本の足がはえ、顔には二つの複眼と、鋭い牙のついたバッタのような顎がある。……要するにあの巨大カマドウマをさらに気持ち悪くしたような奴だ。
「ストーンフリーッ!」
徐倫が右フックから左足でのローキック、二つともさばかれたが、その次の左肘は見事に顔面に入る。
「ウブホッ………」
「なんだ?あまりたいした事のないスピードとパワーだな……勝つ気あるのか?」
「私のヴァイオレンスは力で戦うスタンドではない……策を用いて敵を屠るスタンドだ………」
「何をだ?」
徐倫はそう言うと周囲を見回す。すると、何かを見つけたらしい。
「な!?まさかッ!」
徐倫が驚いてみた方を向くと、
「バ、バッタ!?」
それも1匹ではない。何千匹といる。それが全部こっちに向かっている。巨大カマドウマもなかなか怖かったが、訂正だ。
こっちの方が怖い。なんせ数が半端じゃないからな。
「てめぇの能力……まさか………」
「私の能力は昆虫を操る能力……普通バッタは人を噛まないが……今のそ奴等は噛む」
393アメリカの人:2008/06/04(水) 12:36:25 ID:???
これだけの数に襲われたらいくら相手がバッタでも………
「ていうか、今は冬だろ!?」
「虫の中には長距離を移動する奴もいるし、冬眠するのもいる。そういうのをあらかじめ呼んでおいたか……
こいつが飼ってるかだな。しかしマズいな………」
バッタは俺達に群がるように攻めてくる。徐倫はスタンドで叩き落としているようだが、数にはかなわず、ジリジリと押されている。このままだとマズい………。
「勝ったッ!その首もらったッ!」
と、その瞬間、凄まじい豪雨が降り出した。バッタがその勢いに耐え切れず、次々と地面に落ちて行く。
「ほう……悪運のいい奴だ………」
『いや……今の雨は運ではない……俺が降らせた』
雨の中から一人の男が近付いてきた。英語で喋っているようだ。
「ま……まさか………」
徐倫の顔に驚きと嬉しさが混じりあったような表情が浮かぶ。
『虫が雨の日にあまり飛ばない理由を知っているか?……答えは簡単だ。水滴で体が重くなるからだ』
男の身長はなかなか高い。男は傘をさし、胸の部分に少しだけ独特な穴を開けた青い服を着、金髪の四角い頭には角が生えている。ん?角?
「キョン、あれは帽子よ」
そうなのか。
『久し振りだな、徐倫』
「ウェザーッ!」
「新手か……ならばお前も屠るまで」
『……………』
ウェザーと呼ばれた男の表情は変わらない。
「ヴァイオレンスッ!」
次の瞬間、足元に大量の蟻が集まってきた。
394アメリカの人:2008/06/04(水) 12:38:05 ID:???
「クッ………」
「先に言っておく……やはり、その蟻は噛む」
『何も問題はない……ウェザー・リポートッ!』
次の瞬間、凄まじい突風が吹き、蟻が吹き飛んでいく。
「クッ……こしゃくな……だが、この程度で………」
『悪いが今の風は蟻を飛ばしただけじゃない……お前を攻撃した風だ』
ウェザーが英語で何かを言うと、女の腕がパックリ切られた。
「ま、まさか………」
『カマイタチを知っているか?つむじ風が起こった最に発生する真空の渦が引き起こす現象だ。腕や足が鎌で切られたようになる』
「ふ……ふふ……仕方がない……奥の手だ……ヴァイオレンスッ!」
次の瞬間、何百匹ものスズメバチが現れた。
「や、やべぇぞ徐倫ッ!」
が、ウェザーは慌てず、
『心配はない……こういう事もあろうかとあらかじめ呼んでおいた………』
「………何をだ?」
ウェザーは返事をせず、空を指差す、すると空から、
「アマガエルゥゥゥゥゥゥゥ!?」
『さっきの雨や風と同時に集めておいた……冬眠中引っ張りだしたのは悪いと思ったが』
何百匹ものカエルは次々とスズメバチを食べ初めている。
「ぐ………」
『万策尽きたか?』
「く……ここは……退く………」
『悪いがそうはいかない……ウェザー・リポートッ!』
次の瞬間、雷が近くの巨木に落ちて、木が倒れる。
「ザンラプガッ!」
女は下敷きになってしまった。ウェザーは苦笑を浮かべながら近付いてきた。そりゃそうか、どうやら再会していきなりこれみたいだからな。
『……とんだ再会だな……徐倫』
「そうだな。それじゃ、キョン。あたしはウェザーを家に送るわ。じゃーな」
395アメリカの人:2008/06/04(水) 12:38:37 ID:???
徐倫達が去った後、俺は白い髪に白のロングコートの男がこちらを見ているのに気がついた。
片方だけ赤い目が気味が悪い。……いつからいたんだ?男が何か呟く。
「……沼田まで敗れたか……あの物を手に入れる為には涼宮ハルヒが不可欠だ……そろそろ私の出番かもしれん………」
何を言っているのかは聞き取れない。男は俺が見ている事に気がつくと、何処かに行ってしまった。

翌日
「凄い!凄いわ!あたしが待ち望んでたのはこういうのよ!」
「徐倫……これ、どうすんだ?」
「………知るか」
ハルヒが騒ぎ、俺達が頭を抱えている理由、それは、新聞の一面記事だった。
「゛天変地異!?真冬の虫と蛙!!゛これよこれ!みんな、今日は現場を調べに行くわよ!」

沼田忍 ヴァイオレンス 再起不能
To Be Continued・・・
396アメリカの人:2008/06/04(水) 12:39:37 ID:???
見ても見なくてもいい履歴書
沼田忍
18歳 168cm 9月18日 AB型
性格 これといった点は無い真面目な性格だが、異様な時代劇好きで言動が時代劇がかっている。
好きな食べ物 和食全般 嫌いな食べ物 洋食全般
好きな事 時代劇、俳優は里見浩太朗が好み

ヴァイオレンス
パワー D スピード D 射程距離 能力は地球全体に及ぶ
精密動作性 A 持続力 A 成長性 C
能力 昆虫を操る能力。季節等は選ばず、その虫が本来するはずもない行動をとらせる事も可能。
397アメリカの人:2008/06/04(水) 12:44:31 ID:???
以上、第39話でした

諸事情で前書き無しです。すんません

37、38話のサブタイの由来は「遠い国からやってきたテロリスト」より
今回のスタンド名の由来はアメリカのメタルバンド「ヴァイオレンス」より
サブタイはいわずとしれた名タイトル「いまにも落ちてきそうな空の下で」より
個人的になかなか上手いサブタイにできたと自画自賛しています

次回からはいままでとは少し違う展開になります。お楽しみに

新しい職人さんGJ!セッコとは予想できない話になりそうです。

久々に後書きが長く書けて感激してます
それでは!
398マロン名無しさん:2008/06/04(水) 13:33:44 ID:???
投下乙だが……
>能力は地球全体に及ぶ
これはいくらなんでも無茶なんじゃ
399マロン名無しさん:2008/06/04(水) 18:20:48 ID:???
そこは、距離が遠くなるほど操れる虫の数と大きさが小さくなっていくと考えればいいんじゃあないか!
400マロン名無しさん:2008/06/04(水) 21:12:21 ID:???
ボヘミアンやキンクリ除く時間系なんかもある意味そうだし、まあいいじゃん
401マロン名無しさん:2008/06/05(木) 01:48:59 ID:???
問題ない、全てが凄みで解決する
402マロン名無しさん:2008/06/05(木) 19:08:54 ID:???
ヘブンズ・ドアーーッ!!
>>410は「チーズの歌」を歌うッ!!
403ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/06/06(金) 23:33:46 ID:???
第八話「恋のミクル伝説」

ハルヒの能力は本物のようだ。改めて実感せざるをえない。
「この中に超能力者、未来人、宇宙人、異世界人がいたら・・・」もはやお馴染みのこのフレーズ。
超能力者、宇宙人が揃ってしまった。しかも超能力者の一人はぼくだ。何てこった。
バイクでの大立ち回りから一夜明けた翌日、長門はいつものように座って本を読んでいた。
部室に入ってもぼくをちらりと見たきり、何事もなかったように素っ気ない。
少し変わった子だとは思ったが、宇宙人とは・・・。
ぼんやりと彼女を見ていると、ハルヒが用があると言って帰り支度を始めた。
もともと、ハルヒの思いつきで活動するクラブだ。ぼくらも帰る事にした。
「ジョニィ、行こうぜ」
声をかけるキョンにぼくは答えた。
「先に行っててくれ。教科書を教室に置いてきたみたいだ」
置き勉すりゃいいだろうとキョンは言ったが、仮にも留学生の身だ。
真面目に勉強しなくちゃいけないだろう。教室に戻ると、億泰がいた。
404ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/06/06(金) 23:34:31 ID:???
「よォ、ジョニィ〜。部活終わったのか?」
「億泰?どうして残ってるんだ?」
そう聞くと億泰はなぜか誇らしげに言った。
「いやぁ、センコーに残されてよォ〜」
またか。友達のぼくが言うのも何だが、億泰は問題児だ。
だいたい、この学校の制服はブレザーなのに、なんで学生服を着てるんだ。
「これは譲れねーぜ。それよかよ、久しぶりに一緒に帰ろうぜ」
億泰の申し出を、ぼくは二つ返事で受けた。
このところSOS団が忙しく、一緒に帰るのは久しぶりだ。
「帰りになんか食おーぜ。便所行ってくっから校門で待っててくれよ」
「ああ、わかったよ」
一人で外に出る。放課後の学校には人もまばらで、遠くから部活の掛け声が聞こえるだけだ。
夏が近いらしい。まもなく五時だがまだ日が照っている。
「ジョニィくん」
一息ついていると、小鳥のような声がぼくを呼んだ。
振り返ると、みくるさんが小さく手を振りながらこちらに来ていた。しかし、どういうわけだろう。
「みくるさん、どうしてまだここに?着替えたにしても、ずいぶんかかったんじゃあないか?」
ぼくが尋ねるとみくるさんは視線を宙にさ迷わせた。俯いてその、あの、と呟く。
再び問い掛けようとした時、みくるさんが顔を上げた。顔を赤く染めている。
そして、ぼくを数秒間、倒れそうな顔で見つめると口を開いた。
「あたしと・・・あたしと一緒に帰りませんか?」
時が、止まった。
405ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/06/06(金) 23:36:19 ID:???
みくるさんの家は学校から近かった。なかなか立派なマンションだ。
「じゃあ、ぼくはこれで。また明日」
そう言って別れようとすると、みくるさんが手を引っ張った。
「あの・・・!せっかくですから、あがっていってください」
口調は優しいものだったが、どこか懇願するような印象を受け、ぼくは断れなかった。
家に入ると一室に通された。ぬいぐるみが置かれ、可愛い装飾がなされた部屋だ。
みくるさんの部屋だろうか。一通り辺りを眺めてみくるさんに視線を戻す。
−−−何も言ってないのに服を脱いでいた。顔はもう爆発しそうに赤い。
「・・・今日は両親がいないんです」
あなたならどうする?最高だった・・・。
「・・・あの、ジョニィくん?」
みくるさんの声で現実に戻された。スタンドも月までブッ飛ぶ衝撃で、思考がどこかへ行ってたらしい。
潤んだ目で見つめるみくるさんにぼくはたじろいだ。
何というか・・・チャンスというか、普通なら圧倒的に答えはイエスだ。
しかし、しかし・・・億泰と帰る約束をしてたじゃあないか。それをすっぽかすのは・・・。
「・・・ごめん。今日は友達と帰る約束をしてるんだ。また今度にしよう」
断腸の思いでそう絞り出した。何もこんな間の悪い時にと後ろ髪を引かれる思いだったが、
ぼくはそれを振り払うようにみくるさんに背を向けようとした。
と、みくるさんが車椅子を操る手を握った。
「あの・・・!今日じゃどうしてもダメですか・・・!?」
泣きそうな顔だった。頭がぐらぐらする。
約束している・・・しかし、しかし・・・!ぼくの中で天使と悪魔が終末戦争をしている。
ばたり。みくるさんの背後で物音がした。ぼやけた目のピントを合わせる。
鞄を落とした億泰が呆然と立ちすくんでいた。蝋人形のように固まっている。
視線は一点、みくるさんが握るぼくの手だ。
「あ、億泰。これは・・・」
最後まで言い終わらないうちに億泰はカール・ルイスに迫る早さで走り去った。何も泣く事はないだろう。
「お友達、ですか・・・?」
面食らった様子でみくるさんが言う。
「ああ・・・。・・・やっぱり一緒に帰ろうか」
・・・約束は果たせなくなったわけだし、いいよね?
406ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/06/06(金) 23:39:42 ID:???
億泰には後で顛末を話すとして、とにかくみくるさんと帰る事にした。
みくるさんの様子が気になっていたが、帰り道に話す内容は他愛もないものだった。
日本には慣れたか、学校には、SOS団には・・・。わざわざ引き止めてする話でもない。
踏ん切りがつかないのか、それともぼくの勘違いだったのか・・・。
結局、そんな軽い話題だけでゴールについてしまった。
バス停の前に差し掛かるとぼくは口を開いた。
「みくるさん、ぼくはバスに乗るから。また明日」
「え、あ・・・そうですか・・・」
みくるさんは何回かちらちらと前を見た後、ぼくに視線を戻した。
「あの、一緒にバスを待たせてもらっていいですか?」
え・・・?心がざわついた。やはり勘違いじゃないのか?
静かに期待を膨らませたその時、無情にもバスが走ってきた。
馬鹿に早い。まだ予定時刻より少しあるはずなのに。時計を見る。
「五分も早いじゃあないか」
思わず声が出た。よりによってこんな時に・・・。
「あ・・・引き止めてすみません。ジョニィくん。また明日」
ついにみくるさんも諦めたみたいだ。ぼくはがっかりした内心を隠しながらバスに乗り込もうとした。
と、みくるさんが「あ」と悲鳴のような声をあげ、車椅子を抑えた。
「あ、あの・・・!申し訳ないんですけど、乗らないでくださいっ!」
何を言っているのかと思った。この辺りは坂が多くて車椅子のぼくでは交通がきつい。
みくるさんだってそれを知らないわけじゃあないだろう。
だが、普段はむしろ押しが弱い彼女が見せた、有無を言わせないような様子にぼくは返事が出来なかった。
バスは少しだけ待ってくれたが、動かないぼくに痺れを切らしたのかやがて出発した。
「どうして・・・?」
次のバスはしばらく来ない。ため息混じりにそう漏らした。
「すみません、すみませんっ!あの、どうしても・・・」
みくるさんは平謝りに謝った。何だかこっちが悪者みたいだ。
「いいよ。ぼくは次のバスを待つから」
そう言うと、みくるさんは涙をいっぱいに溜めた目でぼくを見た。
「いえ、あの。お送りします。・・・大事なお話がありますから」
・・・「大事なお話」!?断るわけがなかった。
407ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/06/06(金) 23:44:16 ID:???
ぼくが承諾するとみくるさんは車椅子を押し始めた。
口元が微かに動くのが見えた。何かを呟いているようだ。
しばらくの間沈黙に包まれながら歩いた。そして、みくるさんが歩みを止める。
「あの・・・信じてもらえないかもしれません。あたし、話すの下手だし」
・・・!ついに「来た」!
視線を下げてみくるさんが続ける。
「あの、あたし・・・あたし・・・」
言い淀むその様子が内容の深刻さ、そして真剣さを表しているようだった。
そうなると、もう一つしかないじゃあないか!あなたならどうする?最高だ・・・。
「未来人なんです」
・・・・・・・・・・・・・・・・は?
「いつの時代かは言えません。でも、あたしは未来から来たんです」
・・・・・・告白じゃあないのか?
「あたしたちにちょっとした異変が起こったんです。
その原因は恐らく涼宮さんで、あたしはその調査に未来から派遣されたんです。
・・・あの、ジョニィくん、聞いてますか?」
「あはははは!そういう事か!」
突然笑い出したぼくにみくるさんはびくっとした。
「ジョニィくん?」
「いや、すっかり騙されたよ。でもエイプリルフールはとっくに過ぎてる」
笑いを抑えながらハルヒが言った演説を思い出していた。
古泉、長門と、「超能力者」と「宇宙人」がそろった。
そして、残るのは未来人と異世界人。みくるさんは自分が残るそれだとからかったのだ。
なかなか面白かった・・・ま、告白と勘違いしたのは置いといて。
笑うぼくとは対照的にみくるさんは真剣な顔をした。
「あの、冗談じゃないんです。あたしは本当に未来から来たんです!」
まだ続けたいみたいだ。少ししつこいとも思ったが、不愉快ではない。
ぼくはこの遊びに乗る事にした。
408ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/06/06(金) 23:45:48 ID:???
そうだな・・・。返事は予想できるが、聞いてみようか。
「じゃあ、今年のワールドシリーズはどこが勝つんだ?」
とりあえず適当なところを言うのだろうか、それとも未来が変わるとかもっともらしい事を言うのか?
そう考えたがみくるさんは口ごもっていた。反撃を予想していなかったのだろうか。
腹は立っていないが、一応はからかわれたのだ。からかい返してもバチは当たらないだろう。
「ホワイトソックス?それともヤンキース?まさか、マリナーズ?」
それを聞いてみくるさんがふっと顔をあげる。その表情に迷いはない。
「禁則事項です」
風鈴のような声だった。
「スポーツなんですよね?でしたら禁則事項です。あたしが知らせて、
例えばジョニィくんがスポーツ賭博に大金を賭けたりすると未来が変わってしまいます」
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」みたいにか?SFではよくある話だ。
でも、それくらいじゃごまかされないぞ。
「未来を変えたくないならぼくたちに接触する必要はないじゃあないか。
そもそも、この時代に来なければいい」
みくるさんは少し不安な顔をしながらも口を開いた。
「例えば、パラパラマンガがありますよね?時間はあのように連続してはいますが独立しているんです」
多分ぼくは今、痴呆的にぽかんとした顔をしてるんだろう。みくるさんがさらに表情を暗くする。
「あたしはその一コマに書き加えられた落書きみたいな存在なんです。
ただの落書きですから、ストーリーに影響は与えませんし、そうするような事はしません」
ここまで言うと、脳ミソが流れ落ちたように黙るぼくを見て眉をひそめた。
「えと、信じてもらえましたか?」
ぼくは獅子舞のように首を数回縦に振った。驚きが隠せない。
みくるさんは花が咲いたみたいに顔を明るくした。
「よかった!あたし、信じてもらえるか不安だったんです」
「いや、驚いたよ」
無理もないと言わんばかりに、みくるさんがぶんぶんと頷く。
「みくるさんにこんな事を考える才能があったなんて。
小説家に向いてるかもしれないな」
みくるさんは一時停止し、言葉の意味を理解すると気球のように頬を膨らませた。

To Be Continued・・・
40955:2008/06/06(金) 23:50:06 ID:???
投下終了です。
やっ・・・・・・やったァーーッ!
かわしたぞッ!このままレスを>>410につっこんでやれーーッ!

あと投下してくれた皆さん、GJです。
410マロン名無しさん:2008/06/07(土) 00:18:18 ID:???
ピザモッツァレラ♪ ピザモッツァレラ♪ レラレラレラレラレラピザモッツァレラ♪
>>409GJ! と、言いたい。言いたいのになぜかチーズの歌を歌ってしまうううううう!!)
411マロン名無しさん:2008/06/07(土) 00:27:05 ID:???
どうだ?>>415、上の歌?
めがっさ良い曲だと思わないか

さて、>>409 GJ!!
これで、一応全員の自己紹介が済んだという形かな
これからどうなってくか気になるぜ
412マロン名無しさん:2008/06/07(土) 00:44:00 ID:???
GJ!
億泰…みくる…キミらに幸あれ。
みくるの時間移動もスタンドなり、『技術』なりと受け取って
名前をつけてもいいと思うんだ…。
413マロン名無しさん:2008/06/07(土) 07:37:11 ID:???
GJ!!
ハルヒの能力や超能力者宇宙人を認識してて未来人だと信じられないのは違和感あるけど、
実際はそんなもんかな
414マロン名無しさん:2008/06/07(土) 12:16:47 ID:???
GJGJGJGJGJGJGJGJ!!!!!
ジョニィ・・女の扱いに慣れてやがる・・・
とりあえずこのままからかい続けてみくるを半泣きにしてほしいな
415セッ子:2008/06/08(日) 20:22:57 ID:???
>>411
ああ、最高だ・・・

ここで投下しちゃいます
416セッ子:2008/06/08(日) 20:24:16 ID:???
あ・・・ありのまま今起こった事を話すぜ!
『ハルヒが角砂糖を投げたと思ったら地面の中から男が飛び出してきた』
な・・・何を言ってるのかわからねーと思うが俺もなにがおこったのかわからなかった・・・
常識がどうにかなりそうだった・・・
マンホールだとか大脱出だとかそんなちゃちなモンじゃあ断じてねえ・・・
もっと奇妙な何かの片鱗を味わった感じだぜ・・・

act1―君の名は・・・

バサロ泳法。
アメリカの水泳選手、ジェシー・バサロが編み出したといわれる泳法。
平たく言えば背泳ぎだ。
何でそんな説明をしたかというと理由は簡単、地中から男があろうことかバサロで飛び出してきたからだ。
男は仰向けの状態で空中へ飛び出し、ほぼ直線上で自由落下を始めた三つの角砂糖を長い舌で器用に捕らえた。
そして伸ばしっぱなしだった腕で街路樹をつかみ体操選手のように一回転。

危なげなく着地を成功させ、そのまま租借を始める。
唖然、現在の俺を表せる単語はこれ以外にはないだろう。
ハルヒはというと、とても満足そうな顔で男に近づいていく。
「よくできたわねー。よしよしよーし。いい子よー。よしよーし。」
とどこまでも機嫌よく茶色の頭をなで繰り回す。
覆面のようなもので顔は隠れているが男もとても満足そうだ。
ハルヒが頭を撫ではじめると、いっそううれしそうにガリガリと角砂糖を噛み砕く。
その状況は一見すると仲の良い姉弟のようだが、男の格好はどう見ても異様だった。
俺は意を決して尋ねてみる。
ハルヒ、そいつはいったい誰なんだ?
417セッ子:2008/06/08(日) 20:26:11 ID:???
「誰ってキョン、あんたどっかに頭のネジ落っことしちゃったの?」
少なくともお前よりはうまく働いている、と悪態をつこうとしたが口をつぐむ。
そういえば今朝ハルヒは電話で面白い『生き物』を見つけたと言っていた。
ハルヒは思考回路こそショート寸前なほどおかしいが、一般学力については申し分ない。
面白い人間を見つけたのならそう伝えるだろう。
そして今のこの人物の扱い方から言えることはひとつ。
ハルヒはこれが人間だとは気づいていない。
ならばハルヒにとって『こいつ』は何なんだ。
「何って、あんたわからないの。目ェ開いてる、耳聞こえてる?」
ハルヒは男の頭を撫でながら続ける。
「地面を自分の意思で進める動物って言うのはこの世には数えるほどしか存在しないの。
この子はその中でもたぶん特別な種族よ。」
ゆっくりと、まるで怪談の語り部のようにそう言う。
雰囲気に飲まれ、ゴクリと俺にも聞こえるくらいの音を立て息を飲む朝比奈さん。
「そう、この子は・・・」
その後の言葉で、俺はハルヒという女とその発想のスケールに別の意味で圧倒させられることとなる。
「地中に潜み巨大迷路を守り続ける地下の帝王、清大菜明呂之介の地底怪獣こと大モグラ『もぐらす』よ!!」
確かにそのとき、時間は止まった。

「地・・・地底怪獣、なんですか?」
「そうよ、それ以外の何に見えるのっていうの。」
どう考えてもおかしいだろ、と反論してもハルヒは聞く耳を持たない。
長く伸びた四つの足は、と俺が問えば「人を倒すための進化の証」答え、
日光を浴びても大丈夫な理由は、と問えば「超越したのよいろいろと」と答える。
ダメだ、このハルヒ。今は何を言っても通用しない。
418マロン名無しさん:2008/06/08(日) 20:27:02 ID:???
意外っ!
それは支援っ!!
419セッ子:2008/06/08(日) 20:27:07 ID:???
男(通称『もぐらす』)は何か言いたそうに角砂糖をかみながらハルヒを見上げている。
その視線に気づかずにハルヒは言葉を続ける。
「それで、本題に戻るわね。今日集まってもらったのは他でもないわ!この子の事について調べるためよ。」
そういいながらハルヒは角砂糖の入っていたビニール袋から紙を取り出し、俺たちに向かって突きつけた。
紙には抽象的な地図のようなものと走り書きで何かが書いてあるように見える。
ように見えるというのは別に俺の目が悪いというわけではなく、俺からは見難い方向へと突き出されているということを示している。
「まず、調べなきゃいけないのは『この子の生物学上の分類』と『東京都小金井市の歴史』。
よってくじ引きで今のメンバーを2:2に分けて、それぞれ図書館で自分の担当することについて調べるの。ここまでいい?」
そこまで言ってハルヒは例のビニール袋から四本の爪楊枝のようなものを取り出した。
だがちょっと待て、今の説明何かおかしくないか?

「何、どこがおかしいのよ。完璧じゃない。」
俺は今のハルヒの言葉を反芻してみる。
要は『もぐらす』について調べるということらしい。
たぶん動物図鑑やらなんやらをみて『もぐらす』について調べるグループと何故か東京都小金井市の歴史について調べるグループ。
人数比2:2に分かれて行動するのが今日の活動内容ということだ。
いったいどこがおかしいのだろう。
「ひとつ質問があるのですが、いいですか?」
俺の思考をさえぎるように古泉がハルヒに問いかける。
「あら、何?古泉君」
「2:2と言いましたが、僕たちは五人。人数が合わないのですが。」
そうか、それだ。2:2ということは確実に一人あぶれてしまう。
「それなら答えは単純よ。キョンは別行動だもの。キョンが抜ければここにいる人数は四人になる。わかった?」
別行動?
つまり俺は図書館に行かずに別のことをする、ということか。
「そういうことよ。ほら、簡単でしょ?じゃあくじを・・・」
そのままくじ引きにうつろうとするハルヒ。だがしかし、俺の疑問がもうひとつ増えた。それにも答えてもらわなくてはならない。
俺はいったい何をすればいいんだ。
「あんたのやることはひとつ、『この子の世話』よ。」
420セッ子:2008/06/08(日) 20:29:33 ID:???
走る電車を見つめながら、溜息をつく。今年になって何度目だろう。
「『この子の世話』よ。」
そういってハルヒは俺にビニール袋を渡し、三人を引き連れて図書館のほうへと歩いていった。
悪い予感はやはり的中するものらしい。
駅前にいるのは俺と『もぐらす』だけになってしまった。どうすればいいのだろう。
「とりあえず帰るか、もぐらす。」
やることも見当たらないので俺がそう言うと、『もぐらす』は意外な反応を見せた。
「さっきから言おう言おうと思ってたんだがよォ〜」
そう、『もぐらす』、自称セッコは俺に流暢な日本語で返事をした。
「俺の名前、もぐらすなんかじゃあーねーぞッ!俺はセッコだ!!
しかも俺はモグラじゃねぇし!地底怪獣でもねぇし!!馬鹿にしてんのかァ!?」
しかもとびきり口が悪いと来ている。
「モグラじゃないんなら、何なんだよ。」
「見てわかんねェのかよ!どっからどう見ても人間だろうがよォ!」
やはり人間のようだ。しかしじゃあどうして地面の中に潜れるんだ?
421セッ子:2008/06/08(日) 20:30:39 ID:???
質問の答えを聞く前に俺は大変なことに気がついた。
遊びに来たのであろう少年たちがこっちをじっと見つめているのである。
それのどこが大変かというと簡単だ。
現在男、セッコは地中に下半身を浸した状態でいて、それをじっと見られているのだ。
良くてドン引き、悪ければ警察沙汰になってしまうだろう。
「とりあえず安心して話せる場所に行こうか。」
しかしセッコはすごい勢いで聞くに堪えない悪口をまくし立てる。
その上、頑として動こうとしない。
子どもだけでなく、お年寄りや若い女性までこちらに目をやり始めた。
これはマズイ。このままだと最悪の結果になってしまう。
(どうやって動かせばいいのか)
そのとき俺の頭によぎったのは先ほどのハルヒとセッコのじゃれあいだった。
もしかすると、と思い俺は行動に移してみる。
「おい」「何だコルァ!!」
「角砂糖やるから一緒に来ないか。」
なーんてななどとおどけてみようとしたが、これもセッコは予想だにしない反応をかえした。
「マジか。おう、行くぜ!!」
二つ返事で、尻尾があれば思いっきりふっているだろう、というような笑顔で思い切り頷くセッコ。
もしかしてこいつ、すごく扱いやすい奴なんじゃ・・・
「じゃあいくぞ」
「おう!!」
さて、これからどこへ向かおう。

to be continued・・・
422セッ子:2008/06/08(日) 20:34:35 ID:???
以上、投下終了です。
読んでくださった皆さん本当にありがとうございます。
『小金井市』『もぐらす』ピンと来た方は趣味が合うはず。
つたない文章ですが、何か(ry
そして最後になりましたが、アメリカの人、ジョニィの人、GJです
423マロン名無しさん:2008/06/08(日) 20:52:37 ID:???
セッ…もぐらすかわいいよもぐらす
424マロン名無しさん:2008/06/08(日) 21:05:04 ID:???
もぐらす可愛いよもぐらす
GJ
425マロン名無しさん:2008/06/08(日) 21:57:21 ID:???
やはりギャングだけあって悪どいな
426マロン名無しさん:2008/06/08(日) 22:33:21 ID:???
GJ!
しかしセッコは強くて貯金のある奴にしか懐かないからどーなんだろうなwww
427マロン名無しさん:2008/06/08(日) 23:35:13 ID:???
GJ
なんとなくモグラ獣人を思い出した。ちゅちゅーん。
428マロン名無しさん:2008/06/09(月) 16:44:45 ID:???
>>427
快適?でも汗はかき続ける
これからもずっと・・・
429セッ子:2008/06/09(月) 22:45:24 ID:???
まさかの連日投下ッ!!
誤字・脱字・文法間違いなど気にしなァい!!!
430セッ子:2008/06/09(月) 22:46:54 ID:???
たとえば街頭アンケートを行ったとする。
内容は『あなたの一番安心できる場所はどこですか』という感じの内容だ。
ほとんどの人は『自分の家』と答えるだろう。
人間というのは自分の生活観が滲みこんでいる世界に安堵感を覚えるのだとか。
しかし『安心して話ができる場所』と聞けば、その数はどれほどのものだろう。
一人暮らしならまだしも家族がいるなら、自分の家というのは安全な場所から一転、危険な場所になるだろう。
そう、盗み聞き的な意味で。

act3―硬貨と角砂糖

ゆっくり話せる場所といっても俺が知っている場所は二つしかない。
SOS団会議でお馴染みの喫茶店と自宅だ。
最初は喫茶店に向かおうと思ったがさすがにこいつと一緒に喫茶店に入るという様な勇気は今の俺にはない。
よって向かう場所は自宅となる。
「いいか、角砂糖やるから絶対勝手に喋るなよ。喋った瞬間俺はこの角砂糖を全部捨てるからな。」
「わかったっつってんだろォ〜がよォ〜。くどいんだよ、てめーわ!!」
こう言ってはいるものの、やはり一抹の不安は拭いきれない。
「それよりさっさと角砂糖くれよォ〜」
前言撤回、すごく不安である。
431セッ子:2008/06/09(月) 22:48:46 ID:???
そうこうしている間に家に着いてしまった。
駅前からここまで、人とすれ違わずに帰ってこれたのは奇跡というに値するだろう。
しかし問題はここからだ。
今日は日曜日、時刻は午前九時半を回ったくらいだ。
つまり家の中では高確率で家族が活動を開始しているということだ。
家という限られた空間であるからこそ最大限の注意を払う必要がある。
「約束は守れよ、セッコ」
「わかってるっつってんだろ!!」
そろそろ糖分が切れてきたのか、セッコもカリカリしている。
意を決し、大きく深呼吸をしていやな感じに高鳴っている胸を落ち着かせ、ドアノブに手をかける。
「いってきまーーーす。」
力を加えようとした瞬間、思いっきりドアが開く。
ここで見つかってしまっては今までの苦労は水の泡だ。俺はとっさにセッコをドアの死角へと突き飛ばす。
力強く開かれるドア、そのドアの前に立っていたのは俺の妹だった。
「あ、キョン君。お帰りー、どこ行ってたのー?」
「ああ、ちょっとハルヒに呼び出されてな・・・」
「そうなんだ。ふーん」
どうやらセッコはうまく隠せたらしい。
「どっか行くのか?」
「うん、今からミヨキチの所に行こうって思ってたんだけどさ・・・」
おかしい。
妹の目は俺のほうを見ていない。俺がセッコを突き飛ばしたほうを見ているように見える。
気のせいだと思いたい、いや気のせいのはずだ気のせいに違いない。
しかし俺の願いもあっさりと砕かれた。
「キョン君、アレ、何?」
ゆっくりとセッコを突き飛ばしたほうを振り返ってみると・・・
セッコが頭を押さえてのたうちまわっていた。
432セッ子:2008/06/09(月) 22:50:33 ID:???

「お茶持ってきたよ〜」
のたうちまわるセッコを見ても妹はそれほど驚きはしなかった。
ハルヒに預けられた、というと驚くほどすんなり納得してくれた。
それどころか「可愛いもぐら〜」といって撫でにいった。
もしかして、俺以外にはもぐらに見えてるのか?
とりあえず親には見つかるわけにはいかないので手伝ってくれというと、これも妹は承認した。
賢しい妹に育ってくれたようでなんとなくうれしい。
しかしそれからが大変だった。
「私ももぐらと仲良くなりたい」といって俺の部屋から出ようとしなかったり、無意味に部屋に突撃してきたりと落ち着いて話すこともできない。
ちなみに今のお茶で飲み物の種類にしては三種類目、数にすれば八杯目だ。
「あのなぁ・・・」
「なに〜?」
妹は楽しそうにセッコの前で腹ばいに寝転がりエノコログサを振っている。
それにたいしてセッコはというとそれを全力で追っている。
「とりあえず出てけ。」
「いや、もっとセッコと遊びたい。」
このやり取りも十七回目くらいだ。
にらみ合いにこそならないが、頑なにそういって聞かない妹。
このまま部屋に居座られても困る、どうにかしないと。
「ミヨキチの所に行くんじゃなかったのか?」
「あ、そっか」
やれやれ、ようやく出て行ってくれそうだ。そう思ったのも束の間。
「じゃあミヨキチに行けないって電話してくるね。」
どうやら妹の意志は本当に固いようだ。
「しかし、友情って言うのは一生ものだからな。大切にしないといけないぞ、さぁさっさと行って来い。」
まくし立てるようにそう告げて妹の投げ出された足を持って部屋の外まで引きずり出す。本当はこんなことしたくないが仕方あるまい。
そのままできるだけ優しく部屋の外へと放り出し、扉を閉める。
今度は扉を開けても入ることができないように、自ら扉を背で止めた状態で座りなおす。
セッコは床を転がりながら先ほど妹が置いて行ったエノコログサを噛んでいる。
その図は本当にこいつは人間なのかと疑いたくなるほど野生的だ。
野生的といっても熊や猪などの獰猛なものではなく哺乳類、それも野良猫を連想させるそれである。
433セッ子:2008/06/09(月) 22:52:09 ID:???
ある意味ほほえましいが、時間というものは無限ではない。金と同等の価値を持つのだ。
「なあ、そろそろいいか、セッコ?」
「おう、いいのか?あの子まだ外にいるぜ?」
・・・・・・・・・
俺はゆっくりと背を向けていた扉を開けてみる。
そこにはこちらに頭を向けた状態で妹が転がっていた。
妹も見られているのに気づいたのか顔を上げる。
「・・・えへ」

「さて、いいかセッコ?」
妹を半ば無理やり家から送り出し、もう一度セッコと対峙する。
現在十時五分過ぎ、つまり妹と三十数分妹と先ほどまでのやり取りをしていたことになる。
セッコはというと床の感覚がよほど気に入ったのかごろごろと寝返りのようなものを打ち続けている。
待ちくたびれてしまったのかもしれない。仕方ない。
「セッコ、角砂糖やるからとりあえず座れ。」
「おう!!」
それはまるでブレイクダンスのように寝返りを打った状態から腕を支点とし、足を一回転させそのままあぐらを掻くセッコ。
そこまでして角砂糖が欲しいのだろうか、俺には良くわからない。
「はやく、は〜や〜く〜!角・砂・糖!角・砂・糖!!」
「よし、いい子だ、ほれっ」
そういって俺はハルヒからもらったビニール袋の中から角砂糖をひとつつまみ出しセッコの方へと投げる。
「おうおう!!」
あぐらを掻いたまま器用にそれを口の中へと収め、うれしそうに咀嚼を開始するセッコ。
思わず本音が出てしまう。
「そんなにうまいモンか?」
セッコはとても満足そうな顔でこちらを見上げる。
「こんな甘ェモン、おれの田舎にはそうなかったからな。この辺の特産物かなんかか?」
「特産物って、そこまでのモンじゃあないぞ。どこの店でも買えるだろうが。」
俺がそう言うとセッコは思い切り顔を近づけてくる。
434セッ子:2008/06/09(月) 22:53:32 ID:???
「マジか!こんなうめぇもんが!?チョコラータはなンも言ってなかったぞ、いくらぐらいだ?
給料はもらってるから、少しくらい高くても俺ァ買えるぜ!!5000、いや10000リラ出したっていい。ただし後払いになるが。
どうだ、買えるか?オイ、答えろオイ、なんとか言えってんだよォ〜〜〜〜!!!」
あたかも機関銃のようにそうまくし立てたあと俺の肩を抱え、がくがくと揺さぶるセッコ。その速さ、まるで『拷問』のようにも思える。
その言葉の中に見つけた違和感。あまりにもさらりと言われすぎていてまた聞き逃しそうになってしまったが、今回の俺の耳は聞き逃さなかった。
「お前、今いくらまでなら払っていいって言った?」
「おう?やっぱり高ぇのか。そうだな、チョコラータに頼めばそれなりにくれるだろうから、たぶん5000リラくらいは・・・」
やはり。
「ひとつだけいいことを教えてやる。」
「おう?」
俺はその事実を口にする。それを明かすことで現れるだろう矛盾に考えをめぐらせながら。
「この国の通貨は『円』だ。」

435セッ子:2008/06/09(月) 22:54:17 ID:???
セッコは呆気にとられたようにぽかんと口をあけ、そして笑い始めた。
その笑い方は『友達同士の談笑』というような感じの優しいものではなく『国民を見下す女王』のようなものだった。
「ンなワケねェーだろ。俺の記憶が正しけりゃ俺が生まれたときから金は『リラ』って決まってた。
『チョコラータ』の診断をはじめて受けた時もッ!
      『ボス』に始めて給料をもらった時もッ!!
   昨日アイスを買った時もッ!!!
            確かに『リラ』だった。
  大 法 螺 こ い て ん じ ゃ ね ェ ー ぞ!!!」

だんだんと激昂していくセッコ、その足元の床がだんだんとぬかるみ始めているのがわかる。
「ざけんな畜生、俺が下手に出てたらなんだコラァ!!」
腕を思い切り振るうセッコ。腕の向かう先にあった箪笥はいとも簡単に服を護るというその存在意義を失った。
セッコの足元はぬかるむどころではなく、もう波打つまでになっていた。
とりあえずここは、今までのように角砂糖を使っていったん落ち着かせて・・・
角砂糖を取るため動こうとした俺の首が瞬間冷たくなる。
突きつけられた、というには深く俺の皮膚の内側に入りすぎている棒状のもの。
それがセッコの指だとわかり、冷や汗が体中から滝のように流れ落ちていく。
「勝手に動くんじゃあねーぜ。おめぇの発言『怪し』過ぎるんだよ。
このまま『尋問』させてもらうぜ。
もし変な動きしてみろ、
・・ ・・・・ ・・ ・・・・・・・・
『尋問』はすぐに『拷問』に変わるからなァ。」

to be continued・・・
436セッ子:2008/06/09(月) 23:02:33 ID:???
以上、投下完了です。
『妹は正義』!!
セッコのキャラってこんな感じでいいのか悩む今日この頃です。
エノコログサでピンと来ない人は路上にある猫じゃらしを思い出してください。
読んでいただき、ありがとうございました。

余談ですが、ずっと『シーナ&ザ・ロケッツ』は洋楽バンドと思ってました。
知ったのが能力考えついた後だったからショックは大きいです。
それでは。
437マロン名無しさん:2008/06/10(火) 01:52:12 ID:???
GJ!
やっぱり悪どいな
と言うより頭がメルヘンor子供の方が共感する感じか?
438マロン名無しさん:2008/06/10(火) 07:46:21 ID:???
GJ!
とりあえず5部の話は起きてなさそうだな。起きた後でボス=ジョルノだったりしてw
439アメリカの人:2008/06/10(火) 12:22:06 ID:???
うーむセッコの人ジョニィの人GJ!
そーいえば俺はまだキョンの妹出してないな……
投下ァ!
440アメリカの人:2008/06/10(火) 12:23:26 ID:???
第40話 「空条徐倫の消失 1」

クリスマスと終業式もあと一週間に迫った12月17日の事、あたしの気分は最悪だった。
「38度……随分と高いわねぇ………」
あたしは一昨日から酷い風邪をひいて寝込んでいた。頭の中で誰かがパンクロック(それもど下手な)を演奏しているみたいに酷い頭痛がするし、
熱のせいでウォッカを3杯くらい飲んでフラフラで立てなくなった酔っ払いのように力が入らない。
『大丈夫か?』
ウェザーが心配そうに声をかける。返事をしたいが喉が焼けるように痛く、声も出せない。
「徐倫……安心しろ。父さんはお前の病気を治すためにDIOをぶっ殺しに………」
「あなたはちょっと黙ってて……とりあえず、今日も学校休みね………」
馬鹿親父をバッサリ切り捨てママが言う。当たり前だ。あたしは腕や足の一本を失ってもスタンドを解除しない何処かのギャング達じゃないんだ。
「徐倫!私はいつも徐倫の事を心から………」
「あなたは早く仕事に行きなさい。ウェザーさん……この馬鹿をよろしく頼みます」
まったくだ。

幸い薬が効いたのか、その日の夕方には熱も下がり、かなり楽になった。……これなら明日ぐらいには学校に行けそうだな。
が、その次の日、あたしはトンでもない事態に巻き込まれる事になった。

翌日、18日
「徐倫……ちょっと……起きなって………」
聞き慣れない声がする。女の声だ。一体誰なんだ?目を開けて文句を言おうとし、
「……………」
あたしは絶句した。そりゃそうだろ。朝起きたら見知らぬ部屋にいたんだ。
2段ベットと備え付けの小さな机が二つ。壁はコンクリートがむき出しだ。
机の上に本があったり、壁に新聞や写真が貼ってあるものの、妙に生活感の欠けた狭くて汚い部屋だ。
「何処だ……ここ?」
441アメリカの人:2008/06/10(火) 12:24:23 ID:???
「……大丈夫?自分のいる場所ぐらい覚えてなよ」
「いや……マジで分からないんだが」
「徐倫………」
見知らぬ女が心配そうな顔であたしを覗きこむ。というか……
「てめー誰だ?」
「……あたしの事も忘れたの?」
今日初めて会った奴の名前なんて知るかよ。
「病院に行ったらどう?」
ハ?あたしは正常だ。おかしいのは周りの方だ。起きたら見知らぬ場所にいるなんて悪い冗談に決っている。
………まあ、その悪い冗談を現実にできる奴を一人知ってるがな。
「いいからここが何処か教えろ。ついでにあんたの事もだ」
女はため息をついてあたしに憐れむような目を見せてから言った。
「あたしはグェス。ここはグリーンドルフィンストリート刑務所。あたし達はム所住まいって事よ」
………そうか、ム所か……って待て待てェッ!なんで起きたらブタ箱にぶち込まれてんだ?
いくらなんでも突拍子がなさすぎる。あたしは外に出ようとして、鉄格子に頭をぶつけるハメになった。
「飛びてェ〜〜〜〜〜」

………頭が痛ぇ……。
朝食を上の空で食べ終わり、あたしは刑務所内をウロウロしていた。
とりあえず分かった事としては、今あたしが轢き逃げの罪で投獄されている事。
刑務所から外部に連絡を取る方法は有料の電話とパソコンだけという事。
何故かポケットに入っていた携帯で知り合い全員にかけたが、キョンを除いて携帯が使われておらず、肝心のキョンも何故か電話に出ない。
442アメリカの人:2008/06/10(火) 12:25:17 ID:???
「どうなってんだよ………」
あたしが途方に暮れて廊下を歩いていると、
「ヘイッ!徐倫!何しけた顔してんだ?」
知っている顔に声をかけられた。エルメェスだ。
「エルメェス、あんた日本に行った事ある?」
「ハ?いきなり何言ってんだ?そんな深刻そうな顔してよぉ………」
「じゃあ、ハルヒは有希はみくるは?キョンでも古泉でもこの際敵のスタンド使いでもいい。日本での事何か覚えてねーのか?」
エルメェスはイッちゃってる奴を見るような目をしてこう言った。
「徐倫……お前敵スタンド使いに襲われてんのか?」
全然違う。この訳の分からない刑務所に入れられているのは敵スタンドの仕業かもしれないが、少なくともあたしは正常だ。
………何がどうなってんだ……ほんと………。
「あぁ、そうだ。徐倫に伝えておく事があってな」
何?
「F・Fが暫く働くから姿を見せなくなるってな。後エンポリオもF・Fに付き添うってさ。いつもの部屋は開けとくらしいぞ」
F・F?エンポリオ?二人ともアメリカでの友達だが、何故ここに……?聞こうと思ったが、聞いたら面倒な事になりそうなので止めた。
「お前……ホントに大丈夫か?……顔色わりーぞ」
………一つだけ分かった事がある。このエルメェスはあたしを心配してくれる、あたしの親友である事に変わりは無いということだ。
「……大丈夫よ」
あたしは少しだけ晴れた気分で返事をした。

昼飯を味が全く分からないほどぼうっとしながら食べた後、あたしは刑務所の運動場で壁とキャッチボールしていた。
ムシャクシャした時は体を動かすに限る。……まあ現実から目を逸らしているのは確かだ。
……クソッ……我ながら不甲斐ないとは分かっているが、何がなんだか分からねぇ………。
「どうしたんだ?壁に八つ当たりしても脱獄はできないぞ」
その時、聞き慣れたもう一つの声が聞こえた。
443アメリカの人:2008/06/10(火) 12:26:14 ID:???
あたしは振り返り、目の前の知った顔の名前を呟いた。
「ウェザー………」
少しあきれたような表情を浮かべながらウェザーが立っていた。
「そんなに強く握っていると、ボールが潰れるぞ」
見ると、どうやら無意識のうちにスタンドを出していたらしく、スタンドの腕がボールを握っていた。
慌ててスタンドをしまい、壁を見ると壁もヘコんでいる。
「随分と速い球だったぜ。大リーガーになれるくらいな」
「ウッ………」
下唇を噛みながら喉の奥で呻き声をあげる。少しやり過ぎた。看守に目をつけられていないだろうな………。
「ところで何があったんだ?随分荒れているが」
「ウェザー………」
「なんだ?」
あたしは意を決してエルメェスにした質問をした。
「日本に行った事あるか?」
「………ない………」
答えにウェザーが詰まる。……少々うろたえている。これは当たりかもしれない。あたしが次の質問をしようとした瞬間、
「と言いたいが………」
が?まさか………
「記憶が無いからな……たとえ日本に行っていても覚えてないんだ。すまない」
……記憶喪失?……ウェザーが?どうやらこの世界ではウェザーは記憶を失っているようだ。
……ハルヒがやったにしては随分と面倒くさい事だ。というかハルヒはこういう事はまずしない。ハルヒの興味は宇宙人や未来人や超能力者や異世界人だ。
記憶喪失の男に興味は無い。あたしは道具を片付け始める
「……もういいのか?できればやりたいんだが………」
「気分じゃねーんだ。エルメェスやアナスイでも探してやってくれ」
「アナスイだと……?おい、待て徐………」
静止しようとするウェザーを無視し、あたしは部屋への帰り道につく。………色々と訳が分からねぇ。ひとまず部屋で考えをまとめよう………。

To Be Continued・・・
444アメリカの人:2008/06/10(火) 12:29:45 ID:???
以上、第40話でした

消失編に突入です。こうご期待!

第39話でかなり分かりやすいフラグを立てたのに全く話題にあがらず少しへこんでいる今日このごろ

それでは!
445イチゴの人:2008/06/10(火) 18:25:39 ID:???
お久しぶりです。投下しますー
446イチゴの人:2008/06/10(火) 18:26:49 ID:???
パンナコッタフーゴの消失
第九話
〜視点・???〜
「臆したか……パンナコッタ・フーゴよ」
俺は一人、ホテルの一室でパソコンに向かっていた。壁じゅうに貼り付けた写真、わが娘、トリッシュと――涼宮ハルヒのものとが、窓からの風になびく。
トリッシュの存在も由々しき懸案事項であるが、それはペリーコロやポルポに任せればおそらく大事にはならないだろう。それよりも重大なのは涼宮ハルヒだ。即刻消さねばならない。
あれは夏の事だった。ドッピオからの「電話」による戦慄するような報告を、俺は思い出す。
「エピタフで……未来視ができないだと!?」
「はい……ボス。ぼ、僕にも何がなんだかわからないんですけど、真っ暗で見えないんです。任務遂行には別段問題ないですが――」
ですが、何なのか。俺は知ることができなかった。突然に俺のドッピオを通した視界はそれまでの光景に別れを告げ、よく使うホテルの一室へと変化したのだ。
「……な、なんだこれは、どういうことだ……?」
どうして自分が瞬間移動しているのか、俺はそのとき理解できなかった。俺は自分がベットに腰掛けている事に気がつき、立ち上がって窓に手をかける。スタンド攻撃かと思ったが、鉄格子がはまっている事もない、ごく普通の窓である。
俺は部屋を振り返った。言いようのない違和感を感じる。数秒遅れてその正体に気がつく。既視感だった。
俺は精神的な寒気に突き動かされ、テーブルの上の新聞を手に取る。
――それは丁度一ヶ月前の日付であった。
447イチゴの人:2008/06/10(火) 18:28:09 ID:???
その後、俺は二回、ほとんど同じ一ヶ月を繰り返した……ことを認識した。あるいはもっと続けられていたのかもしれない。最近、記憶の残滓とも言うべき奇妙な「予感」を不思議に思っていた。
あれはもしかすると魂がそれらの出来事を既に体験していたためかもしれない。
しかし周囲の人間は、組織のスタンド使いも含めて気づいてなかった。
そう、あろうことか俺と体を一つにするドッピオですら分かっていなかった。俺は心の底から恐怖した。幸い認識している限りのループは二回で終わったが、
俺はこの広範囲なスタンド攻撃とも言うべき現象に興味と畏怖の感情を抱いた。ループが始まる数秒前にエピタフを使うと、ビデオ録画が途切れたように未来を見ることができなかった。
まるで時間軸から切り離されたかのごとく、ドッピオの前髪は暗闇を映し出すばかりであった。
俺はその後、幹部を通して情報チームのスタンド使いに調べさせた。調査は難航したようだが、そうして浮かび上がってきたのが「涼宮ハルヒ」だった。彼女の能力を危険視、あるいは観察対象として、複数の組織が独自の調査を行っている。
それが最近情報チームから上がってきた報告だった。
幸いなことに、涼宮ハルヒは自身の能力を自覚していない。俺にとって好都合だった。反旗を翻した暗殺チームの代わりに、ポルポに任務の人選を命じた。
そうして――今に至る。
俺はディスプレイに映るフーゴからの定時報告を睨む。スタンド使いではない可能性が高いが、念のためもう少し調査を続ける。そんな内容だった。別にどうということはない文章だったが、俺にはその文面から、
フーゴにもう涼宮ハルヒを殺す覚悟がないことが分かった。
恐怖ゆえか、戦闘を避け、挙句の果てにスタンド使いではない可能性がある、ときた。ほとぼりが冷めた頃を見計らって帰還するつもりか。だとしたらやつの能力は宝の持ち腐れ。怪しければまず殺すのがギャングのやり方だ。
「パンナコッタ・フーゴは、不要だな。となると……仕方がない、あまりやりたくなかったが……」
俺は携帯電話を取り上げ、十秒ほど迷った後、番号をプッシュした。
確か、あの男も日本語が喋れたはずだ。闇医が必要と考えて引き入れた事を後悔した、最低の下衆野郎も。
448イチゴの人:2008/06/10(火) 18:28:45 ID:???
「……チョコラータか、任務を言い渡す。……いや、違う。今回は『暗殺』だ。即刻日本へ飛ぶ準備をしろ。詳細は後からメールで送る……もちろんだ。能力使用を許可する。
後セッコも連れて行け。それからパンナコッタ・フーゴという構成員がターゲットの近くにいるだろうから、そいつも……ああ、頼んだぞ」
電話を切ってから、深いため息をつく。おそらくやつはターゲット近辺をめちゃくちゃにしてまわるだろう。しかしフーゴと涼宮ハルヒをまとめて殺すには、やつらが適任だった。
俺はトリッシュをどうやって安全に始末するか考えながら、フーゴからの文書ファイルを閉じた。

〜フーゴ視点〜
「あなたは、涼宮さんのことをどうお考えになっているんです?」
集合場所の駅前広場から五分ほど歩いたころに発したにやけた男の第一声がこれだ。
「実に魅力的な女性だと思いますよ。ただちょっと、性格が明るすぎるようなところがあるとは思いますが」
当たり障りのない返答。ついでにこちらからも探ってみる。
「古泉君は、どう思っているんです?」
「あなたに同じく。ただ僕はその性格が、また魅力的だと考えていますが……」
沈黙。
僕は考えてみる。この男の雰囲気はギャングほどではないが、どことなく一般人とは離れた印象を受ける。果たしてこの男は涼宮ハルヒについて調べていて、僕の事をある程度知っているのだろうか。長門のように。
パープルヘイズを発現させ、殴りかかり、寸止めしてみる。全然反応しなかった。相変わらず微笑を崩さない。
「ん?どうかなさいましたか?」
「いえ、別に」
……うぜえ。
まあ、敢えて聞く必要性もないか。こちらへ危害を加えようとしないのなら。それにこの男とはあんまり仲良くしたくはない。別に明確な理由はない。なんとなくである。
僕はそう判断して、スタンドをしまった。ただし警戒は解かない。背後に回られないよう気をつかった。
449イチゴの人:2008/06/10(火) 18:29:25 ID:???
以上、第九話でしたー
450マロン名無しさん:2008/06/10(火) 18:37:50 ID:???
チョコ先生キター
つーかフーゴVSチョコ先生って夢の対決じゃね?
451マロン名無しさん:2008/06/10(火) 23:01:03 ID:???
GJ!! セッコ祭りだー
452マロン名無しさん:2008/06/16(月) 19:00:55 ID:???
うーん、康一くんのが読みたいです。ハイ。
453アメリカの人:2008/06/17(火) 11:16:41 ID:???
久々投下ぁ!
454アメリカの人:2008/06/17(火) 11:17:44 ID:???
第41話 「空条徐倫の消失 2」

翌日、19日
昨日は部屋に籠り一日中考えていたが、結局結論はでなかった。……当たり前か、なんでこうなったのかも分からねーんだ。
原因が分からないのに対策を考えていても意味は無い。すると、あたしの思考を中断する声が響いた。
「ね〜え、ジョリ〜ン〜」
「やかましゃああああああああ!話しかけんなクソアマッ!」
グェスだ。……何故か腹が立つ。生理的に受け付けないという奴だが何故なんだろうな。前世でこういう感じの奴とあたしは何かあったんだろうか。
「そろそろ朝ご飯だって言いにきただけなのに………」
急にシュンとしたグェスを見ていたたまれなくなったあたしは、
「………悪い」
「徐倫……やっぱりあたし達友達よね!」
………やっぱ謝んなきゃよかった。

騒がしい食堂で朝飯を昨日よりは落ち着いた感じで食っているとエルメェスがやってきた。
「徐倫………」
「何?」
エルメェスが少し悩んだ顔をしたが、決心したらしく口を開く。
「昨日の話だけどさ………」
「……忘れてもらっていいわよ」
するとエルメェスは意外そうな顔をした。
「いいのか?あんたの父親と関係ある話とかだと思ってたんだが………」
親父だと?聞き慣れない単語が聞こえてきた。
「どういう意味だ?」
「覚えてねーのか?」
怪しむ様な顔をする。あたしは誤魔化す事にした。
「いや……覚えている……少し確認しとこうと思ってな」
「そうかよ……ならいいんだけどな」
455アメリカの人:2008/06/17(火) 11:18:25 ID:???
エルメェスは話を続ける。
「あんたの父親の記憶のDISCだよ。スタンドの方は取り戻せたがそっちはまだだろ?」
どうやら親父は誰かと戦って負け、ヤバい状況のようだ。それを救う為にあたしはこの牢屋にいるようだ。
状況は分かってきたが……親父が負けるなんて想像できないな。
「ハルヒはこんなメロドラマが好きだったのか……?」
「誰だ?そいつ」
「気にしなくていいわよ」
「そうか………」
そう言うとエルメェスは話すのを止め、朝飯にかぶりつき始めた。……悩みが無いってのは羨ましいわね。

朝飯が終わり、礼拝堂で再び今迄の出来事を思い出しながら考え事をしているとあたしは声をかけられた。
「徐倫……少し聞きたい事がある」
「なんだ?ウェザー?」
ウェザーがあたしの隣の席に腰を降ろす。
「お前……何故アナスイの事を知っている?」
「………ハ?」
もしかして……この世界ではあたしとアナスイは知り合いじゃないのか?
「いつ会ったんだ?」
「悪い……見当もつかない……」
ウェザーは少し混乱したような顔をした。
「お前はアナスイと話した事は無い筈だろ?」
そうなのか………。
「……昨日から少し気になっていたが……お前、何処か様子がおかしいぞ?」
……そりゃそうだろ。朝起きたらいきなり別の場所にいたんだ。……等言えるわけが無い。
言ったところで頭がおかしいと思われるだけだ。……いや、もう思われてるかもな。
456アメリカの人:2008/06/17(火) 11:19:52 ID:???
「………何があったのかは知らないが……口出しはしない」
あたしもその方が有り難い。が、口には出さない。……言ったらよけい心配させるだけだろうしな。
「それはそうと………」
「何かあんのか?」
「お前宛の荷物が届いていたぞ」
荷物?刑務所にも宅配便は届くのか………。
「もちろん中身は検査される。……多分お前のも検査されてるだろう」
「おう……ところで何処で受け取れるんだ?」
「………徐倫……お前、記憶障害にでもなっているんじゃないのか?」
「いいから教えろ」

荷物の受け取り場所に来ると、あたしは自分の荷物を頼んだ。すると受付が、
「……囚人番号FE40536か……えーと……伝票は……見つからねーな………」
なかなか見つからない。イライラしながら待っていると、受付があたしの顔をチラチラ見てくる。……あたしの顔に何かついてんのか?
「も〜〜ちょっとで見つかりそうなんだがなあ〜〜〜見つからないなあ〜〜〜〜〜」
また受付がチラチラ顔を見てくる。探す気あんのか?文句を言ってやろうとした瞬間だった。
「徐倫……ねぇ………」
「なんだ?グェス?」
少々うんざりしながら返事をする。
「その……看守はさ……多分……これだよ。これ………」
そう言うとグェスは親指と人差し指で円を逆さに作る。……もしかして……賄賂って事か?
「そうよ……ほら、早く出しなさいよ。そうじゃないと荷物受け取れないわよ」
457アメリカの人:2008/06/17(火) 11:20:38 ID:???
ポケットを探る。が、いくら探ってみても1セントも出てこない。……おかしいな。部屋に忘れたか?
「見つからね〜〜〜な〜〜〜届いてないんじゃあないのか?てめー」
……そろそろヤバくなってきた。………しょうがない、最後の手段だ。
「ストーンフリー………」
糸をこっそり伸ばして看守のコーヒーの入ったコップに結び、それを倒す。
「うおッ!ヤベッ!こぼれ………」
看守が驚いている隙にスタンドの腕を伸ばし、金庫から少々金を拝借する。
「大変ですね……でもあたしは荷物を受け取りたいのよ」
そう言いながらこぼれたコーヒーを拭く振りをしながら拝借した金を出した。
「ん……ああ……そうか……おッ!見つかったぞ。お前当ての荷物だ」
その荷物はハードカバーの本ぐらいの大きさをしている。包まれているせいで中身はよく分からない。サッサと受け取り部屋に帰ろうとした瞬間、
「ねぇねぇそれ見せてよ徐倫〜〜〜」
あたしは無視して部屋に帰った。

「本………?」
部屋で包みを開けると出てきたのはハードカバーの一冊の本だった。アメリカの有名なSF大作だが、何故か日本語訳だ。読めるからいいけど。
送り主は書いていない。何かないかとページをパラパラめくっていると、一枚のしおりが落ちた。花のイラストの書かれたしおりだ。拾って裏を見ると文字が書いてある。
“プログラム起動条件・鍵をそろえよ 最終期限・ニ日後”
この無機質な明朝体の文は……有希か?恐らくこれが元の世界に帰るヒントに違いない。……だが……鍵ってなんだ………?

To Be Continued・・・
458アメリカの人:2008/06/17(火) 11:24:46 ID:???
以上、第41話でした

うーむ……また後書きのネタが無くなってきた……

それでは!
459マロン名無しさん:2008/06/17(火) 12:18:06 ID:???
投下乙です
そういえばハルヒ世界(変な言い方だけど)のグェスはどういう人生送ってんだろ?
いっそ彼女もSOS団に参加させるとかw
460マロン名無しさん:2008/06/17(火) 21:01:58 ID:???
SS投下ってアリ?
461マロン名無しさん:2008/06/17(火) 21:21:49 ID:???
そういうスレだ
462マロン名無しさん:2008/06/17(火) 21:41:57 ID:???
出会いは文芸部の部室だった。
ハルヒが部室を探し当てたとき、こいつは最初から窓際に座り、本を読んでいた。
ハルヒが部室を貸して欲しいといったときも、二つ返事で承認した。
出身中学や入学理由、家族構成、何一つわからない。
部室に通い続けてわかったことは、いつも違う本を読んでいるということだけだ。
それも極端なもので、数百ページはあるようなハードカバーのSF小説を読んでいたかと思うと動物図鑑を読んでいたり、
手芸入門を読んでいたかと思うとナチスドイツ指導者の自伝を読んでいたりという感じだ。
面白いのか、と聞くと「ユニークです」とだけかえし本を読み続ける。
ハルヒとは違うタイプの取り付く島もない人間である。

一昨日の放課後のことだった。
こいつはいきなり本を突きつけてこういった。
「面白いので、良ければ読んでみてください。」
渡されたものは日本一有名であろうSF小説家の長編小説であった。
元来小説というものを読まない性質の俺はぱらぱらと一二ページ捲っただけでその本を読むまでには至らなかった。
463マロン名無しさん:2008/06/17(火) 21:45:04 ID:???
先ほどのことだ。
借りていた本を何気なく捲っていると一枚のしおりが挟んであった。
黒い背景に星の様な記号をあしらった、いかにもあいつらしいしおりだった。
裏の模様を見るためにひっくり返してみるとそこには綺麗な形をした文字でこう綴ってあった。
「話したいことがあります。今夜八時、○○公園で待っています。」
今夜八時、現在の時刻は七時四十六分。時間にはまだ余裕はある。
しかしこれは『今夜』が『今日の夜』を指していれば、だ。
渡されたのは一昨日。つまり四十八時間の遅刻になる。
俺は家族にちょっと出てくるとだけ伝えて、自転車にまたがった。

八時十三分。俺は指定の公園に到着した。
そこには部室と変わらない姿で、こいつがたたずんでいた。
こいつは怒ろうとするわけではなく「遅かったですね。」とだけ言って俺に

笑いかけ、マンションの中に入るように促した。

入れてもらったお茶をすすりながら尋ねてみる。
話って言うのはなんなんだ。
「よくぞ聞いてくれました。実は私、宇宙人なんです。」

支倉未起隆の憂鬱

続く?
464マロン名無しさん:2008/06/17(火) 21:47:21 ID:???
改行失敗。

こいつは怒ろうとするわけではなく「遅かったですね。」とだけ言って俺に

笑いかけ、マンションの中に入るように促した。
↑ここ一行です
でも気にしない。
465マロン名無しさん:2008/06/17(火) 22:04:14 ID:???
投下乙
これはユニークというかシュールな話になりそうな予感がするぜw
466マロン名無しさん:2008/06/18(水) 07:35:13 ID:???
これは期待www女キャラの置き換えは初じゃね?
467マロン名無しさん:2008/06/20(金) 14:41:52 ID:???
長門と違って未起隆には母親がいるけどどうなるんだろう
原作と同じ説明をするんだろうか
468マロン名無しさん:2008/06/20(金) 15:43:37 ID:???
JOJO本編だとミキタカが「地球人として生活するために彼女に暗示をかけて母親になっている。」
と言ってたが、あれ実際のところ良くわかんないしな
ミキタカはスタンドを認識できないし、矢が刺さらなかったこと考えると宇宙人じゃないと言い切れんし
469マロン名無しさん:2008/06/20(金) 18:31:24 ID:???
まあそこらへんはどうどでも
「原作と違う」なんて言う奴いないっしょ
470マロン名無しさん:2008/06/20(金) 18:34:50 ID:???
ミキタカ…俺が長年待ち望んでいた物だ。
471マロン名無しさん:2008/06/20(金) 18:36:18 ID:???
良かったな
472セッ子:2008/06/20(金) 20:45:33 ID:???
アメリカの人、消失平行世界でのSOS団との邂逅、首を長くして待ってます。
未起隆の人、まさかの宇宙人枠。期待しています。
両者ともにGJです。

少ししてから投下しますので、よろしければ。
・・・グェス・・・
473セッ子:2008/06/20(金) 21:00:03 ID:???
今の状況を的確に伝えられる言葉は一つしかない。
ありえない、だ。
「今のおめぇの発言『怪し』過ぎるんだよ」

act3―セッコvsキョン

セッコの瞳にはもう先ほどまでの喜びや感動などといった感情はこもってなかった。
そこにあったのは『冷たい意志』。
騙そうとすれば殺すこともいとわない、という漆黒の色を持った瞳だった。
「まずは最初の質問だ。簡単なのをいくぜ。『なんで嘘をついた?』」
嘘。『リラ』が『円』という違い。
これに対する答えは単純だ。『俺は嘘なんかついてない』
日本で円硬貨が使われているのは真実だ。
しかしそれがセッコの望む答えではない場合、俺は『拷問』を受けることになる。
それも今まで生きてきた中で味わったこともないようなものを。
予想や想像ではない。
首に深々と突き刺さったセッコの指が突きつける、確信だった。
「どうしたァ?もしかして、お前『同業者』か?
情報操作が目的なら無駄だぜ。オレはずっとチョコラータと一緒に居たんだ。昔のオレとは違うんだよ。」
駄目だ。
間違いなく俺の答えはセッコの望む答えじゃあない。
このままでは黙っていても喋っても拷問は免れない。
俺は頭をフル回転させる、何とかこの状況を打開するために。
抜け出す方法は
・ここでセッコを説き伏せる
・ここでセッコを倒す
の二択しかない。
この状況から武力での逆転はまず無理だ。セッコの強さは先ほどまでの身のこなしで十分理解している。
ならば説き伏せられるか、と言われればそれも今はほぼ無理だろう。
なぜなら情報が足りなさ過ぎるのだ。
474セッ子:2008/06/20(金) 21:01:15 ID:???
「ここに連れてきたのは戦力分散狙いか?もしそうでも残念だったなァ、チョコラータは一人でも強ェ。だから組んでるんだけどなァ。」
情報と時間は限られている。幸いなことにどちらもセッコが増やしてくれているが。
考える、考える、考え続ける。
「オレが世界情勢に疎かったら無駄だったかも知んねェが、こう見えてもちゃんと勉強してんだぜェ〜」
――まだだ。
不確定な情報多すぎる。不確定なままその情報を信用すれば裏切られたときの代償は大きい。
「角砂糖、つったか。あれをくれたときは本当にいい奴だと思ったのによォ。」
―――まだ足りない。
決定的な二人の間の『誤差』を埋められるだけの情報。
そのうちのいくつかは揃ったが、決定打には程遠い。
「あの女も、いや、あそこに居た奴ら全員が仲間なのか?あいつらの中の誰かが能力でオレをここに連れてきたのか?」
そして。
「・・・今、なんていった?」
聞き間違いじゃあないのなら。
「図星か?やはりこんなわけわからねぇ場所にオレを運んだのはお前らの誰かの能力か。」
間違いない。
こいつは今連れて来られた、と言ったのだ。
言語、貨幣、角砂糖、能力、離れていた点が重なって一本の線になる。
これまでの経験を元に俺の頭の中にはひとつのストーリーが出来上がった。
今までの会話の中で大まかな人間関係と性格も掴めた。
最後に必要なのは度胸と余裕だ。
俺は歯を食いしばり大きく息を吸い、頭の中でこう繰り返す。
大丈夫だ。俺には神がついている。まだ死ぬはずがない。
ばったもんに近い神様だが、気分は先ほどよりずっと楽になった。
「答えねェんなら、拷問開始だなァ。」
ストーリー、人物像、度胸。
乾坤一擲の大逆転劇の駒は揃った。
475マロン名無しさん:2008/06/20(金) 21:01:58 ID:???
 
476セッ子:2008/06/20(金) 21:02:15 ID:???
どうしたんだろう。
オレは思わず頭をひねる。
拷問開始といった瞬間、目の前の男(キョンと呼ばれていた)の顔から不安や焦りといった表情が消えたのだ。
先ほどまでとめどなく流れていた汗も引き、落ち着いた目でこちらを見つめている。
何があった?
首に、正確にはその内側の大きな動脈に突きつけている指はまだ抜いてはいない。
一般人にとってこれは恐怖以外の何者でもないはずだ。
それをどこからどう見ても凡人以外のなんでもないこの男が、その恐怖を『乗り越えた』というのか。
ありえない、のだがキョンとか言う男の目には何か奥の手を隠していると語るようにきらきらと光り輝いている。
その眼差しにオレは既視感を覚えた。
昔、チョコラータとの任務の時に一度だけ見たことがある。
『覚悟』を決めた眼だ。
その男はかなわないと知りながらもチョコラータに素手で殴りかかり、そして朽ち果てた。
チョコラータの言葉が頭の中によみがえる。
(「『窮鼠猫を噛む』という言葉を知っているか、セッコ?」)
(「徹底的に追い詰められた人間の精神は劇的な成長を遂げる。」)
(「その瞬間こそ『最も注意しなくてはいけない瞬間』だ。」)
ゆっくりとチョコラータの言葉を繰り返してみる。
「きゅうす猫を噛む、か」
そう言うと男はこう返した。
「急須は噛まない。噛むのは窮鼠だ。」
477セッ子:2008/06/20(金) 21:03:43 ID:???
「答えになってねぇなァ。オレの質問のよォ。」
「訂正をしたまでだ。気になったからな。」
首の事は何事もないように男は続ける。
「もっとも、まだ気になることはあるんだがな。」
そして男はやれやれと小さく息を吐き、こう呟いた。
「お前に言ってもわからないだろうからな。」
今、こいつ、なんて言った?
「もう一度聴きたそうな顔をしてるな、一度で聞き取れなかったのか?何度でも言ってやるよ。
『お前に言っても理解できない』
お前の言う『ボス』や『チョコラータ』ならわかるかも知れん。なんせ『本物の学』があるからな。
でもお前の付け焼刃の学じゃあ、物事の真相を知ることなんて到底無理だ。
理解できない奴に理解できないことを話すなんてのは愚の骨頂だろ。
無駄なことに労力を使うのは嫌いなんでな。
つまり、話すことは『ある』けど『ない』。そう言ったんだよ。」
穿き捨てるようにそういって、オレを罵る男。オ、オレはキレた・・・
「なんだとこの野郎ォ!!お望みどおりこのままテメェの動脈ブチ切ってやるよ!!!」
指を動脈に引っ掛けそのまま血管の『泥化』を解除する。
しかし男は表情一つ変えずにこういった。
「試してみるか?」
「何ィ!?」
言葉は淡々とつむがれていく。
「試してみるか、って言ったんだよ。本物の学かどうか、理解できるかどうかをな。」
「ここで俺を殺すのは勝手だ。だがそれは敗北を認めたことになる。」
「どちらか好きなほうを選ぶんだな。俺にもう『死への怯え』や『お前への懇願』の念はない。」
この状況で、奴はオレに勝負を持ちかけてきたらしい。
ナメてんのか、と動脈を引っこ抜いてやろうとも思ったが腑に落ちない言葉があった。
「『敗北』ゥ〜?」
「そうさ、勝負を逃げるような負け犬にお似合いの言葉だ。そうは思わないか?ん?」
やはりこいつはオレのことを見くびっているらしい。
「いいぜェ、さっきの件もある。自分の汚名は自分で挽回しねぇとな。吠え面掻きやがれ!!」
478セッ子:2008/06/20(金) 21:05:03 ID:???
(汚名は返上するもんだぜ)と心の中で小さく突っ込んでみる。
しかし、良くここまでうまく行ったものだ。
俺の計画と今のセッコの反応はほとんど一致していた。
最初に感じた、扱いやすい奴だという感覚は外れてはいなかったという事だ。
もしセッコが今以上に怒りやすかったり、逆に冷静だったのならここまでで俺は死んでいただろう。
俺を見捨てなかった「運命」に感謝しながら計画に落ち度がないかを、もう一度だけ入念に調べる。
成功率は良く見積もってみても高くないだろう。
うまくいけばいいが、そこは神頼みだ。
「それじゃあ、まず最初は・・・」

to be continued・・・
479マロン名無しさん:2008/06/20(金) 21:08:41 ID:???
投下乙です
流石色んな意味で修羅場を掻い潜ってきただけあるな、キョンw
480セッ子:2008/06/20(金) 21:12:50 ID:???
以上投下終了です。
別枠支援です。イチゴの人。ディアボロ、チョコ先生ということは次はセッコということで期待してもいいんですね。
何はともあれGJです。

さてここからは反省文です。
まずact3をact2に修正編集してくれた人、本当にありがとうございます。気がつかなかった・・・
二重カギを多用しているのはなんとなくジョジョっぽいかなということで、お見逃しください。
前回のストーリー、多少矛盾があるかもしれませんがお許しください。
SOS団?何それうまいの?

拙い文章ですが何かあれば(ry
それでは、読んでいただきありがとうございました。
481マロン名無しさん:2008/06/23(月) 16:11:46 ID:???
white aibumは〜?
482マロン名無しさん:2008/06/23(月) 18:42:35 ID:???
冷気のスタンドだね
483マロン名無しさん:2008/06/23(月) 19:47:45 ID:???
>>481
ホワイトアイバム・・・?
484名無しさん@お腹いっぱい。:2008/06/24(火) 15:30:10 ID:???
しまった!
iじゃなくてlだった!
485マロン名無しさん:2008/06/24(火) 15:33:04 ID:???
スタンド攻撃だッ!
486アメリカの人:2008/06/24(火) 15:51:30 ID:???
セッコの人GJ!
この覚悟のあるキョンはいいなぁ
投下ァ!
487アメリカの人:2008/06/24(火) 15:52:40 ID:???
第42話 「空条徐倫の消失 3」

しおりを手に入れた日の夜、あたしはそのしおりと睨めっこをしていた。このしおりの文面を見る限り、この期限というのはこれを見つけた昨日からニ日か、
世界がおかしくなってから ニ日のどちらかだ。前者なら期限は明後日、後者なら明日だ。
多分後者だろう。悪いケースを想定して動く方が物事は上手くいく方が多い。……だが……この鍵って一体………なんなんだ?
今日は一日中考えていたが、結局結論は出なかった。手掛かり0か………。そう思っていると、あたしの携帯がなった。幸いグェスはいない。電話に出た。
「もしもし………」
『徐倫か!?』
「………キョン!?なんで今迄電話してこなかったんだ?」
『悪い……携帯が壊れててな、修理していた』
全く予想外の相手からの電話だ。だが、こんな状況ではとても頼もしい。
「そっちはどうなんだ?」
『……どうなんだ?……ああ、お前の方もなんかあったのか』
キョンの声には少し呆れた感じが混ざっている。
「大有りよ。起きたらいきなりム所だ」
『………なんだよそれ』
キョンがさらに呆れたような声を出す。……あたしだって同じような気持ちだ。
『俺の方はハルヒと古泉がいなくなって残っていた奴等もトンデモプロフィールが無くなってる。あと朝倉が復活してた』
「誰だ?朝倉って」
『そうか……お前は知らなかったな。なら別にいい』
ま、よかったじゃねえか。あんたの待望の普通の生活だぜ?
『………まぁ……そうだけどさ……』
488アメリカの人:2008/06/24(火) 15:53:23 ID:???
「………嬉しくねーのか?」
『いや……それはそうと、お前はしおり手に入れたか?』
「ああ、あるぜ……花のイラストがついてるやつだろ?有希のか?」
キョンは電話の向こうで頷いたらしいが、見えない事に気付き、返事をする。
『そうだ』
「だがよ……鍵ってなんだ?」
するとキョンもあたしと同じように困っているような声を出した。
『分かりゃ苦労しねぇよ………』
「だろうな」
『とりあえず今から学校に行く。なにか分かったら電話するからな』
学校……ああ、時差か。………待てよ、このしおりの二日後って……日本時間なのか?アメリカ時間なのか?……ヤバい、ここに来てもう一つの問題が見つかった。
『どうした……?返事ぐらいしろよ。徐倫』
「あ……ああ、それじゃ頼むぜ」
そう返事をすると電話は切られた。

暫くぼーっとしていると突然警報が鳴り、刑務所内が慌ただしくなった。
“警備レベル3の事態が発生、全所員はただちに指示に従い所定の場所へ、繰り返す………”
何が起こったのかと思っているとエルメェスがやってきた。
「大変だ!ちょっと来てくれ徐倫!」
「………なんだ?それにこの騒ぎはなんだ?……警備レベル3ってなんだ?」
「とにかく来いッ!」
そうエルメェスは言うとかなり焦った表情を浮かべ、あたしを引っ張っていった。
489アメリカの人:2008/06/24(火) 15:54:35 ID:???
連れてこられたのはなんのへんてつも無い階段だった。エルメェスはついた途端周りの目を気にし始める。
「どうしたんだ?別に隠すような何かは無いじゃねーか」
するとエルメェスは驚いた表情をした。
「おい……徐倫……これも忘れちまったのか?」
……マズい、ここには何か重要な物がある場所だったようだ。
「も……もちろん覚えてるに決ってんじゃねーか!」
我ながらかなり苦し紛れだ。鉄分を奪われて慌てて蛙を食べるボスみたいに必死だ。
「……………」
エルメェスは怪しむような目を向けていたが、すぐに踊り場の溝に向けて歩いていき、そしてそこに吸い込まれた。驚きながらあたしも続く。
中には部屋があった。多分スタンド能力で作った部屋だろう。……確かにこういう隠れ場所を忘れていたら怪しまれるに決ってるな。するとあたしは殺気を感じた。
……このストーカーのような殺気は………。
「徐倫……会いたかった……愛しダゴブッ!」
アナスイだ。……確かこの世界ではあたしとこいつは会った事も無い筈だったな。
「誰だてめー?」
「……え?徐倫……俺の事知ってたんじゃなかったのか?」
アナスイが面食らった顔をする。
「エルメェス……どういう事だ?」
「さあな……ウェザーが何か言ったらしいんだが……それから女子房に入ろうとしたからここに閉じ込めてたんだ」
その時、ウェザーが部屋に入ってきた。
490アメリカの人:2008/06/24(火) 15:55:41 ID:???
「すまん……徐倫……そいつにお前の話をした」
「………何故だ?」
「お前はアナスイを知っているような素振りを見せた……おかしいと思ったんだ、だからアナスイに確認をしてみたんだ」
そう言ってウェザーは苦笑いを浮かべた。
「まさかアナスイが女子房に特攻するとは思わなかったが」
だろうな。この騒ぎはアナスイが原因か。
「そういう事だ」
ウェザーが呆れを通り越して脳みそがクソになっている奴を見る目でアナスイを見ながら話を続ける。
「いくら言っても聞かないからな……お前と直接合わせるのが一番だと判断した」
「アナスイ……馬鹿だろお前………」
「……だってよ……徐倫が俺の事を知ってるって思うとよ……いてもたってもいられなくてな………」
……本物の馬鹿だ。こいつ。……救い様が無い。その時、携帯が鳴った。
「徐倫……なぜ携帯を持っている?」
「ん……まあ……その………な」
電話に出ると興奮したキョンの声が聞こえた。
『見つけたぞ!徐倫!』
「うるせぇ……電話なんだからもう少し小さい声で話せ……それと見つけたって何をだ?主語が抜けてるぞ」
『あ……ああ悪い……ハルヒだよ、ハルヒの居場所が分かったんだ!』
随分と嬉しそうな声だ。この声と台詞をハルヒに聞かせてやりたいね。
「で、何処なんだ?」
491アメリカの人:2008/06/24(火) 15:58:05 ID:???
『光陽園だ』
「……待てよ、あそこはお嬢様女子校じゃなかったのか?」
『この世界じゃ共学の進学校になってるんだ……今その門の前にいる、そろそろハルヒが来る筈だ。それじゃまたな』
そういうとキョンは電話を切った。
「なあ……今のなんだ?」
あたし以外の3人は階段を登ったと思ったら降りていた時のような何がなんだか分からないという表情を浮かべていた。
……いいチャンスかもしれない。頭がおかしくなったと思われるかもしれないが、あたしはこの訳の分からない二日間の事を話す事にした。
「最後まで何も言わずに聞いてくれ……実はな………」

「………と言う訳だ」
3人の顔を見回す……が、3人とも顔にこいつイカれたんじゃないのかという文字が張り付いている。………駄目だったか……と思った瞬間、
「いや……俺は信じるぜ徐倫」
「………アナスイ……?」
「俺は徐倫の言う事ならたとえどんな絵空事でも信じてやるよ……それにだな、そっちの世界の方が徐倫の側に長くいられるじゃねえか!」
「「「……………ハ?」」」
3人の声がハモった。
「刑務所は男女に分かれてるから会いたくても会えないんだよちくしょーッ!……俺は自分が女だったらと何度……いや、待てよ……それだと……あ、でも………」
無視するか。問題は……後の二人だ。信じてもらえるか………。

To Be Continued・・・
492アメリカの人:2008/06/24(火) 16:01:11 ID:???
以上、第42話でした

まとめ更新しましたー
あとぐぐったらまとめサイトが出るようになりましたー わーい
http://www12.atwiki.jp/jojost/pages/12.html

それでは!
493マロン名無しさん:2008/06/24(火) 16:11:03 ID:???
穴吸カワイソスw
494マロン名無しさん:2008/06/24(火) 22:07:30 ID:???
>>……俺は自分が女だったらと何度……
恨むなら荒木先生を恨めアナスイよ…。
49555:2008/06/25(水) 23:28:26 ID:???
アナスイ・・・すっかりギャグキャラに・・・。既にF.Fはいないのか。
久しぶりに投下します。
496ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/06/25(水) 23:33:05 ID:???
「もうっ」
みくるさんは大いにヘソを曲げた。もっとも、怒るというよりは拗ねているようだが。
こうなってしまうとぼくもお手上げだ。苦笑が浮かぶ。
「悪かったよ。でもびっくりした。話し方が真に迫っていたから」
謝るぼくに、みくるさんはいたずらっぽく笑った。
「あー、やっぱり信じてくれてませんね?」
その笑顔に安心してぼくも笑った。何だか照れ臭い気分がする。
と、からかうように辺りに口笛が鳴り響いた。発したのは一人の男だ。
二十台後半くらいだろうか。くわえ煙草にテンガロンハットが印象的な欧米人だ。
ほほえましい雰囲気を壊されて少しイラつく。一睨みするとそいつはニヤリと笑った。
「お盛んだな。ところで、兄ちゃん。ちょいと聞きてえ事があるんだ」
チンピラか酔っ払いだろう。相手をしてはいられない。
みくるさんに目配せをすると、ぼくらは無視して先に進もうとした。が、男の言葉で足が止まる。
「あんさん、ジョニィ・ジョースターかい?」
なぜ名前を?古泉の「機関」の人間?あるいは「強硬派」?いずれにせよ無視は出来ない。
ぼくは慎重に振り返った。
「お前こそ誰・・・は!?」
改めて男を見て息を飲んだ。男の右手に銃があった。マカロニウェスタンのようにくるくると回している。
「お前・・・!何だ、それは!本物なのか!?」
叫ぶぼくに呼応するようにみくるさんが声をあげる。
だが、それは男に向けてのものではなかった。
「ジョニィくん!?どうしたんですか!?本物って、何がですか!?」
ぼくは耳を疑った。馬鹿な。いくらなんでもあの銃に気付かないなんてあるか。
焦るぼくたちとは対照的に、男は余裕の笑みを浮かべた。
「ほおーっ、コイツが見えるのかい」
銃を投げ上げた。宙を高く浮き、そして落下する先は。
「じゃあ、間違いねーなあッ!」
男の手だ。男は銃口をぼくに向け、一つの無駄な動作もせずに引き金を引いた。
497ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/06/25(水) 23:38:22 ID:???
弾丸が放たれる。マズい。男との距離はざっと五m。外すほうが難しい距離だ。
だが、ぼくのスタンドに防御方法はない。一撃を喰らう事は覚悟しなければ。
そう決意するとダメージを最小限に抑えようと身構えた。
が、ぼくの覚悟は予想外の方向で裏切られた。弾丸はぼくを通り過ぎてしまったのだ。
外した・・・?あるいは、威嚇射撃?一瞬思考するが、それを振り切った。
今は反撃する事が先決だ。車椅子に手をかけると一気に距離をつめる。はずだった。
「ぐあああああ!」
右肩に激痛が走った。みくるさんの悲鳴が響く。撃たれた!?
馬鹿な。あいつは一発しか撃ってない。それは外れたじゃあないか!?
痛みに倒れ込むぼくを尻目に、男は抜け目なく距離をとった。
「おい、古泉とかいうヤツを呼びなッ!そうすりゃあお前は助けてやる!」
聞きながら、ぼくは肩の中の弾丸が移動するのを感じた。
一度停止した弾丸が?この弾、「スタンド」か!恐らく、弾丸を操るスタンド。
そう考えれば全て納得がいく。だが、気付くのが遅すぎた。
距離が再び離れた以上、もう反撃は出来ない。あいつが肩の弾丸を少し動かせばやられる。
それも、ぼく一人ではないのだ。みくるさんがいる。
古泉を呼べばぼくらは助かる、か・・・でも断る。負け犬に成り下がるわけにはいかない。
ぼくは腰を抜かしたみくるさんの手を取った。同時に爪を回転させる。
爪を接地。アスファルトを削りながら、ぼくはロケットのように飛び出した。
498ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/06/25(水) 23:44:39 ID:???
男は呆然と離れていくジョニィたちを見送った。完全に虚をつかれたと舌打ちする。
「爪をタイヤみてーに・・・そんな使い方もあるのか」
思わず一人ごちる男の背後に影が迫る。
「ホル・ホース」
そう呼ばれた男はびくりとした後、ニヤニヤ笑いながら振り返った。
「何がおかしい?取り逃がしておいて。一思いに始末するべきだったんじゃあないか?」
ホル・ホースが肩をすくめる。
「旦那、俺はあんたらのためを思って生かしたんだぜ。
安易に始末したらヤツらのガードが固くなるだろ?
生かして利用したほうが得だと思うがねえ」
男はフンと鼻を鳴らした。本心を言うと、ホル・ホースと組むのは本意ではなかった。
腕の立つ暗殺者だそうだが、やはり外部の人間は信用ならない。
こんな軽い男ならなおさらだ。そう思ったが、ホル・ホースの意見には一理ある。
「・・・だが、逃げられた事に変わりはない。どうするつもりだ?」
「う、それはよー・・・お。見ろ、旦那。ツイてるぜ」
そう言うとホル・ホースは星条旗と星柄があしらわれた金属質の物体を拾いあげた。
「ジョニィの『携帯』だッ!旦那、わかるよな?俺たちは無敵のコンビだぜ」
男は調子のいいホル・ホースの言動に呆れながらも勝利を確信していた。
「必殺」の方程式。そのパーツが全てそろったのだ。

To Be Continued・・・
49955:2008/06/25(水) 23:51:19 ID:???
今回はちょっと短いですが、そのぶん早めに続きを投下できそうです。
それと徐倫の人、まとめ更新ありがとうございます。
500マロン名無しさん:2008/06/26(木) 00:25:06 ID:???
GJ!続いての刺客はホル・ホースですかい。
さてどう攻めてくる?
501マロン名無しさん:2008/06/26(木) 02:32:27 ID:???
GJ!やはりホルホースが間が抜けてるのはデフォルトなのか
そして相棒の方のしゃべり方が喉の中に鋏作っちゃう人っぽい気がするぜ
しかしエピタフしすぎると作者さんが困るかもなので名前は出さない事にする
……べ、別に名前なんだったっけとか思ってるわけじゃないんだからねっ!
502マロン名無しさん:2008/06/26(木) 07:56:53 ID:???
GJ!
外部の人間かあ、確かに組織っつーとパッショーネしか思いつかないな
実はSPW財団とかトンデモだと嬉しいw
503イチゴの人:2008/06/29(日) 22:16:13 ID:???
二分後に投下しますー。
504イチゴの人:2008/06/29(日) 22:18:59 ID:???
パンナコッタ・フーゴの消失
第十話
〜フーゴ視点〜
ギャングになってから数年。教師を殴り倒さなかったら、一体どんな人生を送る事になっていたかと時々思う。
きっと、周りからちやほやされて、それなり見栄えのいい人生になったんだろうな。
それに魅力を感じるかどうかは別として、少なくとも命の危険と隣り合わせの仕事には就かなかったはずだ。
まあ、そんな仮定にはなんの意味もないのだが……
僕と古泉は市内を流れる川沿いに歩いていた。相変わらず言葉少なで、当たり障りのない会話をしている。
腕時計を見る。目的のない時間というのはこれほど苦痛なものだとは思わなかった。
ため息をつくのと同じタイミングで、古泉の携帯がなった。
「はい、もしもし……ええ、わかりました。すぐ向かいます」
古泉がこちらに顔を向けた。微苦笑、と言ったか、そんなかんじの表情だった。
「どうやら涼宮さんは図書館の近くで『うめく本』なるものの噂を聞いたらしくて、今すぐ現地集合という連絡が入りました」
「うめく本……?」
「今日は図書館は閉まっていたと思うんですけどね……まあ、探し物だけなら問題ないでしょう」
本当にわがままな団長閣下だ。将来どうするつもりなのだろう。仮に人の上に立てる素質があるとして、頭ごなしに命令して動くほど人間は単純な生き物じゃない。
……まあ、ギャングの僕が言っていいことでもないが。
それにしても、と古泉のほうに視線を向ける。
こいつもよくほいほい涼宮ハルヒの言う事を聞くものだ。考えられる可能性としては、この男もまた涼宮ハルヒを観察しているのか、または涼宮ハルヒに好意を持っているか……
505イチゴの人:2008/06/29(日) 22:19:47 ID:???
ってそれはないな。少しでも会話したことがあってそれでも彼女が好きだと思うのはよほど特殊な性癖の持ち主ぐらいしかいないだろう。振り回されたい願望とか。
聞くと、その図書館というのはここからそう遠くないらしい。結構な事だ。このよく分からない男と会話が続かない事による気まずい空気を共有したくはない。

〜視点・???〜
「いいかセッコ、一番気をつけなくちゃならないのはバッテリー切れだ。後になって実は撮れてなかったっていうのが一番むかつく」
「うお……うぉっ、うぉっ」
私は日本へと向かう飛行機にいた。この密集した空間でグリーンデイを発動するとどうなるのかむずむずして仕方がないのだが、流石に墜落させてまで好奇心を満たそうとは思わない。
それはもちろん下らない倫理観うんぬんが理由ではなく、単純に自分の身が危険にさらされるからだ。
そこで退屈しのぎにセッコにビデオカメラの使い方を説明していた。セッコは角砂糖がからむと普段より記憶力が向上するらしい。なぜここまで甘いものに執着するのか、毎度のことながら気になる。
脳を解剖してみたい気もするが、まあ、相手がセッコであることもありその疑問は抑えている。これでも自分は身内を大切にするほうなのだ。
セッコは練習のつもりか、白と青で統一された窓の外を飽きもせず撮影していた。本当はバッテリーが無駄になるので控えさせたいところだが、いきなり使わせてどうすればいいのか分からずに癇癪を起こして泥にされるよりはましなので、黙っていた。
セッコの練習がひと段落ついたところで、私はずっと前から考えていた決意をセッコに言った。
「セッコ、話があるんだが……」
「うお?なんだあチョコラータ?」
506イチゴの人:2008/06/29(日) 22:21:00 ID:???
「私はボスを越えるつもりでいる」
セッコは言葉を失ったように、驚いた表情のまま凍っていた。ショックでビデオを落とすという点以外は予想の範囲内である。高いのに、壊れたらどうするつもりなんだ。
「考えてもみろ。私の『グリーンデイ』とお前の『オアシス』のコンビネーションに勝てる人間がいると思うか?どんなスタンド使いであろうと、ボスがたった一人しかいない以上、オレ達のほうが強いに決まっている。
オレ達は無敵だ。ボスは任務の時以外は決して私やお前に能力を使わせようとしなかった。それどころか国外渡航も制限されていた。おかしいだろ。弱い人間に強い人間が支配されているなんていうのは。『逆』じゃあないか?
強い人間こそが弱い人間を支配できる資格があるんだ」
ビデオを拾いながら言った。
セッコはどうか分からないが、能力を使用できないというのは私にとって実に苦痛だった。もっともパッショーネに入らなければそもそもスタンドを身につけていなかったわけで、それでボスを恨むのは筋違いかもしれないが、
とにかくやりたいようにやれないというのは精神衛生上きわめてよくないことだ。
「だがチョコラータ……具体的にはどうするんだよ〜」
ようやく言葉を取り戻したらしいセッコが私に問いかけた。
「ボスがオレ達の枷をはずすというのは信頼してのことじゃあない。危険なスタンド使いかもしれん『涼宮ハルヒ』と事実上任務放棄したパンナコッタ・フーゴをまとめて殺すにはそれしか手段が無かったからさ。
となればボスはオレ達が任務を完了したら必ず接触しに来るはずなんだ。親衛隊の誰かではなく、ボスが直接、な。いくら外国とはいえ無制限にカビが広がれば、いずれはパッショーネのことが公になるかもしれん。
止めに入るはずだ。それがオレ達に許された、唯一ボスを倒せるチャンスなんだ」
507イチゴの人:2008/06/29(日) 22:21:32 ID:???
私は言葉を切る。セッコは微妙なうめき声を上げて考えている様子だった。ふむ、セッコには難しいかもしれん。だがとりあえず重要な点が伝わればいい。
「といっても、ボスが親衛隊の誰かをよこす可能性もなくはない。そしたら次の機会を狙おう。いいなセッコ、重ね重ね言うが、オレ達は無敵だ。必ずボスを倒せる」
「うお……うおっうおっ!」
「よし、その意気だ。甘いの二……いや三つやろう!」
バックから角砂糖のケースを取り出そうとして……手を止めた。
斜め前方、二席先に座っていた男がこちらを見ていたのだ。まあこの髪型やセッコの全身スーツが視界に入れば気になるのは仕方がないかもしれないが、それでも三秒以上ガン見されるのは変だ。
その男自身の容姿もまたかなり目立っていた。腹や首周りが無駄に肉付きがよく、頭にバンダナを巻いていた。そして極めつけはどことなく不吉さを感じる顔。白目の占める範囲が異様に広く、唇が不自然なほど赤い。
そして、そいつは私と目が合うと……にやりと、不気味に笑った。
途端に背筋にツララが突っ込まれたような感触が走る。私が言うのもなんだが、そいつの瞳は狂人特有の光が宿っていた。本能が危険信号を鳴らす。
なんなんだあいつは。
「どうしたんだよ〜チョコラータ〜」
セッコの急かす声で我に返る。もう男は席に戻っていた。
「いや……なんでもない」
セッコに角砂糖を渡しながら考える。
今回の任務は、今まで以上に気を引き締めていこう、と。
508マロン名無しさん:2008/06/29(日) 22:21:40 ID:???
支援
509イチゴの人:2008/06/29(日) 22:22:51 ID:???
……と、以上です。
SOS団とのからませかたが難しくなってきました……がんばらないと……
510マロン名無しさん:2008/06/29(日) 22:52:31 ID:???
腹が見えててバンダナ巻いてて『うめく本』があると来たら……
もしかして先生ですか!
511マロン名無しさん:2008/06/29(日) 22:56:30 ID:???
間違えた。よく読みなおしてみたらロハンとは似ても似つかねぇ
能登の本体か?
512マロン名無しさん:2008/06/29(日) 23:02:54 ID:???
かもなー
投下乙!
513マロン名無しさん:2008/06/30(月) 00:10:50 ID:???
初めてリアルタイムで遭遇できた!
投下乙!
514マロン名無しさん:2008/06/30(月) 01:45:40 ID:???
GJ!!
俺もカルネしか思いつかないなー誰だろ
515マロン名無しさん:2008/06/30(月) 09:00:08 ID:???
グリーンディにオアシスにノトーリアスかよ……
大盤振る舞いにも程がある、日本全滅するじゃねーかw
51655:2008/07/01(火) 00:13:30 ID:???
GJ!無差別虐殺スタンドが集合とは・・・。フーゴ、生き残れるのか?
それはそうと、ミスしました。前回の投下にタイトルをつけ忘れました。
第九話「恋のミクル伝説A」でした。結構遅くなりましたが投下します。
517ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/01(火) 00:22:20 ID:???
第十話「恋のミクル伝説B」

「なんなんですかー!?ジョニィくん、その傷は!?」
遠くまで来ると肩の弾丸は消えた。射程の外まで来たようだ。
隣ではみくるさんが青ざめている。無理もない。前触れなく吹き出した鮮血はまだ止まっていない。
「みくるさん、今のは『スタンド』・・・超能力だ。古泉が使うような」
古泉の事情を知っていたらしく、みくるさんが息を飲む。
「二人だけじゃ危険だ。古泉と長門を呼ぼう」
悔しいが、ぼくだけでは勝ち目がない。爪の刃と銃ではこちらが不利だ。
しかも、ぼくは既に手負い。右肩が満足に上がらなくなっている。
ここは二人に助けを求めるのが一番だ。・・・あれ?
「どうしたんですか?」
みるみる青くなるぼくにみくるさんが不安げに声をかけた。
「・・・携帯電話がない」
「え!大変ですね。いつまでならありましたか?」
・・・みくるさんは事の深刻さがわかっているのか?脳天気な質問に頭痛を覚えながらもぼくは話を進めた。
「しょうがない。みくるさん、古泉と長門に助けを呼んでくれ」
ぼくがそう言うとみくるさんは目を丸くし、しばらくしてもじもじしだした。
ぼくはそれを呆けて見ていたが、すぐにその反応の理由を思いついた。・・・最悪の予想だった。
「まさか、電話番号を知らないのか?」
外れていてくれ。懸命に願ったが、それも空しくみくるさんは首を縦に振った。
「知らない!?だって、もう知り合って一ヶ月くらい経っただろ!?」
「は、はい。でも・・・」
みくるさんは涙目だ。もっとも、泣きたいのは僕も同じだ。しかし、のんびりしている暇はない。
こうしている間もさっきの「銃のスタンド使い」が追いかけて来ているのかもしれないのだ。
「みくるさん、泣かないで。とにかく奴から逃げよう」
「は、はい・・・ひいっ!」
みくるさんは跳び上がった。といっても「奴」が来たわけではない。
彼女を驚かせたのはただのちっぽけな犬の吠え声だった。だがぼくはそれを臆病だと笑えなかった。
みくるさんの背後の「それ」は正しく犬だった。足があり、尻尾、耳がある。
ただ、それは無機質でつやつやとした体表を持ち、その体表は透き通っていた。
透けて見える体の中に内臓はない。当然だ。その犬は風船でできているのだから。
518ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/01(火) 00:29:33 ID:???
バルーンアートの犬。それが、吠えた・・・?振り向いたみくるさんもすぐに異常に気付いた。
「え、ふ、風船・・・!?」
何か危険だ。本能的にそう感じた。だが、先に駆け出したのは犬のほうだった。
「みくるさん、危ない!」
犬に近いのはみくるさんだ。みくるさんが危ない!かばおうとしたが、その必要はまるでなかった。
犬はすぐ近くのみくるさんを素通りしてぼくに突進して来たのだ。
咄嗟に反応し指を突き出す。「爪の回転」・・・カッターだ。風船状の犬なら簡単に切断出来る。
予想通り犬は爪に触れると破裂した。後には風船の残骸が残る・・・そう思った。
が、残った物を見て動きが固まる。完全に予想外の物だった。
「あ、あの・・・それってジョニィくんの・・・」
「携帯」だった。「携帯」がバルーンアートの犬・・・?
あの「ガンマン」のスタンド?いや、それはありえない。こんな手を使えるなら姿を晒すメリットがない。
「ガンマン」ではない・・・?・・・敵は、二人?答えはすぐに判明した。
「案外・・・近くの世界にいたようだな」
「俺の睨んだ通りだろ?マイク・Oの旦那」
ニヤリと笑うあの男の隣に屈強な黒人の男が立っていた。
「マイク・O」と呼ばれたその男は、深い眼差しをこちらに向けた。
・・・違う。この男は「黄の節制」や「車のスタンド使い」、あるいはそこの「ガンマン」とは違う。
強い覚悟・・・「殉教者」のそれを感じる。
「ジョニィ・ジョースター」
マイク・Oが重々しく口を開いた。
「単刀直入に言う。『涼宮ハルヒ』を差し出せ。悪い世界にはしない」
「断る」
ぼくは即座に答えた。やれやれといった様子でマイク・Oが首を振る。
「・・・お前の望みは何だ?その『脚』か?確かに、それも可能な世界かもしれないな。
だが、彼女の力はそんな軽々しい世界ではない。間違えれば世界の破滅・・・。
渡せ!お前らの手には負えない世界だ」
頷けないわけではなかった。ハルヒの力が危険なほど大きいという事はわかっている。
古泉の「機関」、あるいは長門の「情報思念体」の狙いも、ぼくは知らない。
彼らに渡したほうが良いという事も有りえる。だが、渡す気はなかった。
脚を治したい。それもある。だが、それ以上にハルヒを放っておけなかった。
なぜかは自分でもわからなかったが。
519ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/01(火) 00:31:33 ID:???
「ハルヒは渡さない」
そう宣言すると爪を回転させた。「風船の犬」を一度は破った。
「ガンマン」は厄介だが、戦えないわけではない。
臨戦態勢をとるぼくにマイク・Oは首を振った。
「お前は何もわかっていない。もう勝負の世界はついた」
みくるさんが小さく悲鳴をあげた。遅ればせながらその原因に気付く。
しまった。この発見の遅れは致命的かもしれない。
「『チューブラー・ベルズ』。既に『バブル犬』を待機させていた世界・・・」
十匹ほどの「風船犬」がぼくたちを取り囲んでいた。
「みくるさん、逃げろ!」
「風船犬」が襲い掛かるのはぼくが叫ぶのと同時だった。
ぼくは爪の刃で迎え撃った。飛び掛かる「風船犬」をギリギリかわしながら切り裂く。
幸い、「風船犬」一つ一つの動きは早くなかった。ほとんどを撃退するのに時間はかからなかった。
しかし、その時。銃声が辺りに鳴り響いた。マズい。奴らは殺しにかかっている。
銃弾を喰らえば、奴は今度こそ躊躇なく心臓や脳へと弾を移動させるだろう。
銃弾を回避しなければ。渾身の力を出して飛びのく。
さすがに急な動きには対応できず、弾丸はぼくを外れた。ほんの一瞬、安堵する。
だが。相手は「二人」だったのだ。跳びのいた先で左腕に鋭い痛みが走った。
こ、これは・・・!?「風船犬」が腕にめり込んでいた。食いつかれた!?
何かマズい!引き抜こうとしたが、まるで手応えは感じない。
伸びるだけ。「ゴム風船」のような感触。と、痛みに変化が生まれた。
こいつ、「上っている」・・・!?上腕から肩へと、「風船犬」が筋肉を上るのを感じる!?
こいつ、何をする気だ!ぼくはパニックに陥った。が、もうぼくはその答えを知っていた。
「風船犬」は、ぼくが潰してきたそれと同じように、肩に到達すると破裂した。
ぼくはようやくマイク・Oの能力を理解した。「金属」を「風船」、「バルーンアート」化して、操る能力・・・。
そして、破裂した「風船」は、最初の「携帯」のように元の形を取り戻す。
「ぐあああああああ!」
破裂して元の形を取り戻した「杭」がぼくの左肩を貫いていた。
520ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/01(火) 00:33:08 ID:???
潰された。両肩が。もはやぼくは戦える状況ではなかった。
痛みに気が遠くなっていく。ぼやけた視界に中を浮く物が現れた。
あれは・・・白鳥?風船でできていた。
「その『バブル鳥』は鉄のシャッターだ。
我が『チューブラー・ベルズ』は防御シールドにしてお前の断頭台の世界を兼ねた!」
シャッター?断頭台?別世界の出来事に聞こえる。
ふわふわと近寄る白鳥は、ぼくの命の刻限を示していた。
駄目だ。とても体が動かない。いっそ気絶でもしたほうが楽かもしれない。
そう思って意識を手放しかけた時、手に暖かい感覚が宿った。
・・・ああ、馬鹿な事を。みくるさんがぼくの手を引いていた。
みくるさん、小柄で非力な君が、ぼくを引きずって逃げられるわけがないじゃあないか。
逃げろと言ったのに・・・。他人事のような思考とは裏腹に、空いた手は地面を探っていた。
爪・・・!もう一度、回転させれば・・・タイヤのようにして逃げられる・・・!
ゆっくりと爪が回転を始める。が、それを見逃す敵ではなかった。
「・・・そこまでだ。無駄な世界の抵抗は止めて、楽に逝け。
・・・『チューブラー・ベルズ』、破裂しろ!」
「風船の白鳥」が弾け、元の形のシャッターがギロチンのように落下した。
521ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/01(火) 00:39:36 ID:???
一瞬、何が起きたかわからなかった。
落下したシャッターはぼくの鼻先をかすめ、地面を削っただけだった。
シャッターが倒れ、開けた視界の中心には銃を構えた「ガンマン」がいた。
外した・・・?いや、「撃った」のだ。「風船鳥」がぼくの頭上に到達する前に。
なぜ?疑問が沸くと同時に体が走り出した。
522ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/01(火) 00:40:16 ID:???
マイク・Oは信じられないという様子で逃げるジョニィ達を見ていた。
そして、我に帰るとホル・ホースに掴みかかった。
「何を考えているッ!?なぜ、なぜ『バブル鳥』を撃った!?」
ホル・ホースが狙ったのは「バブル鳥」だとマイク・Oは確信していた。
つまり、ホル・ホースは奴らを助けたのだ。明確な裏切りだった。
今すぐ処刑してやろうか。思いながらホル・ホースを睨みつける。
と、すぐに感じたのは違和感。以前の不愉快なニヤケ面はもうなかった。
ミスを犯した人間の顔ではなく、強い意思が浮かんでいた。
やはり、「裏切り者」!?バブル犬に襲わせようとした時、ホル・ホースが静かに口を開いた。
「・・・暗殺対象はジョニィだけのはずだぜ」
言葉の意図がわからず、マイク・Oは混乱した。今度はホル・ホースが声を荒げる。
「あの女の暗殺を受けた覚えはねえ!」
マイク・Oははっとした。ジョニィを助けようとしていた少女、朝比奈みくる・・・。
確かにあのまま「バブル鳥」を破裂させたら、あの少女も巻き込まれて命はなかっただろう。
まっすぐにマイク・Oを睨みつけたままホル・ホースは続けた。
「いいか、俺は女を傷つけた事はねえ!女を尊敬してるからだ!
依頼は受けたが、あんたらに魂まで売る気はねえッ!
旦那、あんたはどうだ?罪のねえ女を殺す外道か!?」
マイク・Oには「涼宮ハルヒ」の奪取への確固たる信念があった。
しかし、それは世界をあるべき姿へ創世するため。理想のためだ。無害な人間を巻き込む事には抵抗があった。
「・・・今、我々が優先すべき世界はジョニィの速やかな暗殺だ。
・・・だが、下種の世界に落ちる気はない」
強張ったホル・ホースの顔が弛緩する。
「私が『チューブラー・ベルズ』で動きを止める。その間に奴だけを撃て」
完全に元のニヤケ面に戻ると、ホル・ホースはマイク・Oの肩を叩いた。
「旦那、やっぱり俺達は最強のコンビだぜ」マイク・Oは無視するように歩き出したが、以前のような不快感はなかった。
「最強のコンビ」か・・・悪くない。そう思い始めていた。

To Be Continued・・・
52355:2008/07/01(火) 00:46:36 ID:???
投下終了です。サーバーが重くて時間がかかってしまった。
しかし、ホル・ホースの相棒ですが、レなねえの人は意識していませんでした。
まあ、前回は例の口癖がありませんでしたから・・・後、強硬派機関の正体はおいおい・・・。
それでは、また近いうちに。
524マロン名無しさん:2008/07/01(火) 00:50:11 ID:???
GOOD(良い)JOB(仕事)と書いてGJ!
ふふ…よく言ったものだ。
525マロン名無しさん:2008/07/01(火) 12:49:55 ID:???
GJ!
においで追跡できるマイク・Oのセンは考えたが「〜の世界」の口調じゃないから違うと思ってたらやっぱりマイク・Oだったかww

しかしジョニィはどーやって挽回するんだろうか
チューブラーベルズの包囲網はホットパンツでも抜け出せなかったしなあ……気になるぜ
526マロン名無しさん:2008/07/01(火) 20:31:11 ID:???
チューブラー・ベルズと皇帝(エンペラー)のコンビとあっちゃ、
もうタスクの爪弾でもないと対応しきれないんじゃあないかな…?GJ。
527マロン名無しさん:2008/07/01(火) 22:55:44 ID:???

緊急連絡:
業務連絡:

ヨーロッパ市場の崩壊が始まりました。
http://www.w-index.com/

アメリカ市場も追随しています。
http://nikkei225jp.com/ny/

とうとう世界大不況が始まります。



各スレ担当者は、事前の指示に沿って
自分の判断で行動の方、よろしくお願いします。

528マロン名無しさん:2008/07/01(火) 22:58:40 ID:???
GJ! 言わずにはいられない!
SBRは途中までしか読んでないんで予想できるはずがなかった
529マロン名無しさん:2008/07/02(水) 03:02:59 ID:???
GJ!なるほど電話ってマイク・Oの世界だったのか。
リゾットとか予想してた自分が恥ずかしい世界だぜ。
530マロン名無しさん:2008/07/02(水) 22:38:18 ID:???
マイク・O原作呆気なかったからな・・・
ホルホースが仲間入りかと思ったがやっぱりホルホースはホルホースか。
531マロン名無しさん:2008/07/03(木) 08:11:57 ID:???
原作でも仲間になりそうな感じあったなw
しかしこっちのホルホースはカッコいいな
532アメリカの人:2008/07/03(木) 15:43:48 ID:???
第43話 「空条徐倫の消失 4」

「………お前らはどうだ?」
「……はっきり言って本当の事とは思えね〜がよ〜〜〜〜」
エルメェスが少し間をおく。
「徐倫の事を信じてみるぜ!嘘をついてる目と汗には見えねーからな」
どこのジッパーギャングだよ。
「ウェザーは……どうだ?」
「……………」
駄目だったか……そうあたしが思っていると、
「信じてみよう……それにアナスイではないがその世界の方が俺にとっては幸せそうだ」
「ウェザー………」
ありがとな。声には出さず、心の中で言う。
「だがよお……その……“鍵”ってなんだ?」
「……さあ………」
ここに来てずっと頭を痛めている問題に再度ぶつかった。……そうだよな、ヒントも何も無しに鍵なんだ。シャーロックホームズやドルリイレーンでもこの謎は解けないぜ。と、その時携帯が鳴った。
「もしも………」
『パソコンだ!徐倫!』
「………ハ?」
『だからパソコンだ!それが“鍵”だ!』
「……なんだかよく分かんねーけど分かった」
『今からハルヒとSOS団の部室に向かう。そっちは頼んだぜ』
言うだけ言うとキョンは電話を切った。……あいつ、ハルヒにのりうつられたのか?テンションがハルヒと同じだったぞ………。
533アメリカの人:2008/07/03(木) 15:44:34 ID:???
「パソコンに向かうのか……?」
「ああ……そこが“鍵”らしい」
あたしは向かおうとし、肩を掴まれた。
「なんだよ……とっとと行かないとマズいんだ」
が、肩を掴んだエルメェスは手を放そうとしない。
「……徐倫……今この刑務所は警備レベル3だ。見つかっただけで懲罰房送りだ」
それがどうした。あたしは行かなきゃいけないんだ。
「………一人で行っても捕まるだけだ」
「じゃあどうしろっていうんだッ!ここで待てって言うのか?」
「誰が駄目だと言った?……全員で向かうぞ。一人じゃ無理でもスタンド使いが4人なら行ける」
「………なんだよ、行くんなら先に言いやがれ」
「行くぞ。善は急げだ」

あたし達は警備員が行き交う廊下を隠れるように進んでいた。曲がり角にさしかかったところでウェザーに聞く
「……空気の流れに反応は?」
「………3つだ。こっちに向かってくる」
「どうすんだよ……普段ならエンポリオの能力で隠れる事ができるけど今いねーぞ?」
「………実力行使はどうだ?」
アナスイが提案するが、光の速さで却下される。
「バレたら面倒な事になる………」
が、その間に警備員がこちらに来る。
「オラァッ!」
3人を殴って気絶させる。
「なんで俺の時は駄目なのに徐倫はOKなんだ?」
が、アナスイのぼやきは無視される。
534アメリカの人:2008/07/03(木) 15:45:13 ID:???
「こいつらの服を奪うってか?」
「こうなりゃ仕方ないだろ………一人分足りねーな」
「………ならば誰かが囮をするのはどうだ?」
ウェザーがなかなか良い提案をする。……問題は誰がやるかだが………自然とアナスイに目がいく。見るとウェザーやエルメェスも同じだった。
「………なんで俺なんだ?」
「……あんた、この騒ぎの張本人だろ?」
「警備員も騒ぎの本人を追うだろうしな」
「けじめだぜッ!アナスイ」
アナスイは反論しようとしたが諦めたらしくがっくり肩を落とす。
「やればいいんだろ……チクショオ………」
「その前に一つ頼みたい」
「なんだ?」
「この警備員達の顔をあたし達に整形しとけ、エルメェスのシールで服を増やして着せてあたし達に見せかける」
「なるほどな………」

囮作戦が功をそうしたのか、アナスイと分かれてからはすんなりパソコンのある部屋にたどり着いた。と同時に見計らったようにパソコンの電源が入り、ディスプレーに文字が表情される。
YUKI.N>現在あなたがどのような状況でこれを読んでいるのかは把握できない。しかし、あなたは通常と異なる事態に巻き込まれているだろう。
画面に音もなく文字が流れていく。この無機質な文は絶対に有希だ。
「……こいつがその宇宙人か?」
「多分な」
535アメリカの人:2008/07/03(木) 15:46:12 ID:???
YUKI.N>鍵はこのメッセージそのもの。あなたはこの鍵にたどり着いた。
……一人じゃ無理だったろうがな。キョンやエルメェス、ウェザーや死んでしまったアナスイの助けが無ければたどり着けなかったぜ。
「俺は死んでねぇよ………」
そんな声が聞こえた気がしたが気にしない。
YUKI.N>これは緊急脱出プログラムである。起動させる場合はエンターキーを、そうでない場合はそれ以外のキーを選択せよ。
起動させた場合、あなたは時空修正の機会を得る。ただし成功は保証できない。また帰還の保証もできない。
「……随分とあぶなかっしい内容じゃあねーか」
「大丈夫なのか………?」
いいから黙ってろ。
YUKI.N>このプログラムが起動するのは一度きりである。実行ののち、消去される。
非実行が選択された場合は起動されずに消去される。なお、北校においては起動された。
Ready?
「………実行すんのかよ?」
エルメェスが聞いてくる。
「もちろんだ」
「……だが成功の保証は無いんだぞ」
「……その程度の事恐れてどうなる?……やるかやらないかじゃねえ、やると思った時にはもうやりおえてるんだ」
ウェザーは黙っている。
「覚悟はできている……『刑務所』の中以上の………」
ウェザーは口元にすこし笑みを浮かべて言った。
「なら俺は止めない………行ってこい、徐倫」
「向こうについたら向こうのあたし達にもおごるんだぜッ!」
エルメェスが豪快に叫びながらあたしの肩を叩いた。
「んじゃ、行ってくる」
そしてあたしはエンターキーを押した。

To Be Continued・・・
536アメリカの人:2008/07/03(木) 15:48:27 ID:???
以上、第43話でした

いよいよ佳境です。まあ後何話で消失終われるか分かんねーけどw

それでは!
537マロン名無しさん:2008/07/04(金) 00:20:25 ID:7VePOe5q
GJ!アナスイかわいそうです( ;ω;)
53855:2008/07/05(土) 00:26:40 ID:???
GJ!「あと何話で終われるかわからない」・・・もう一悶着ありそうな気配・・・。
続けて投下します。
539ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/05(土) 00:30:40 ID:???
第十一話「恋のミクル伝説C」

200mも進むと、ぼくは地面に倒れこんだ。疲労や苦痛が限界に達していた。
みくるさんは心配そうに顔を覗きこむと、ぼくの腕を取り、えいと声をあげて自分の肩にかけた。
「すまない、みくるさん・・・さっきも、助かったよ」
みくるさんがふるふると首を振る。目に涙を溜めていた。
「いいんです。それより・・・」
そう言ってぼくを見る。肩に突き刺さった杭を。
痛々しいそれはぼくの肩の機能を奪っている。とても普段のように動かせそうにない。
「大丈夫だよ。戦うのは無理そうだけど、死にはしない。」
笑ってみせたが、みくるさんは納得しなかった。
「でも・・・病院に行かないと・・・」
病院。それを聞いて思い出した。以前倒したスタンド使い「運命の車輪」を古泉に頼んだ時の事だ。
『そうですか。いや、無事でなによりです。後の処理は任せて下さい。
重傷のようですから、病院に移送しますよ。ああ、大丈夫です。「機関」の病院ですから』
電話の向こうで古泉はそう言っていた。
「機関」の息がかかっているなら、古泉と連絡がつくし、保護もしてくれるだろう。
「みくるさん、知ってる病院がある。そこなら安全だ。タクシーを拾おう」
さっき「ガンマン」から逃げた後、簡単に見つかった事からすると、
あいつらは何かの方法でぼくらを探知している可能性は高い。
一匹で飛び出してきた「風船犬」が怪しいが、それでも車には追いつけないだろう。
みくるさんも異論はなかった。幸い、ここは大通りだ。すぐにタクシーが見つかるだろう。
が。しばらくしてタクシーは意味がないとわかった。
「ジョニィくん。あの、ダメです。渋滞していて・・・見つけても、とても走れません」
言われるまでもなく、道路を埋めつくす車に気付いた。
こんな時に!ここは大して交通量が多いわけではなく、普段は渋滞なんて無縁の道路だ。
それが、どうして・・・視線を宙に移すと、黒煙が視界に入った。
原因は事故か?そう思って視線を煙の元へ移す。
「あっ!」
思わず声が出ていた。紙屑のように側面をぐしゃぐしゃにしたそれは、バスだった。
二人で帰っているあの時、ぼくが乗るはずだったバスだった。
540ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/05(土) 00:32:33 ID:???
今もなお、黒煙を吐くそれは間違いなく普段乗っていたバスだった。
横でトラックが潰れていた。どうやら、それが突っ込んだらしい。
周囲はちょっとした地獄絵図だ。乗車客では生きている人のほうが少ないだろう。
辺りには早くもテレビクルーらしき集団もいる。
あの時、みくるさんに止められてなかったら・・・。事故に巻き込まれる事を考えるとぞっとした。
惨状が目に入ったのか、みくるさんの肩が震えた。無理もない。
一歩間違えればぼくも死んでいたのだ。しかし。ぼくは一瞬でも安心した事を反省した。
事故を逃れた事なんて、この状況では寿命が延びただけだ。逃げ道がない事に変わりはないのだから。
「タクシーはダメだ。別のルートを探そう」
自分たちを奮いたたせる意味をこめてそう言った。が、みくるさんは微動だにしない。
みくるさんはただひたすら、凍ったように一点を見つめていた。
「みくるさん・・・。確かに酷い事故だけど、今は自分の事を考えなきゃ」
そう言っても彼女は反応しなかった。業を煮やして引っ張ろうとした時、
不自然な点に気付いた。大事故の現場が眼前にある時、十人中十人がそれに目をやるだろう。
当然、ぼくもそうしたのだが・・・みくるさんはそれを見ていなかった。
まるで、あって当然の置物か何かのように、事故を気にしていなかった。
事故現場を見ていると思った目の先は、それよりも横にあった。
「あそこです」
鉄琴のような声に、ぼくは返事ができなかった。
「ジョニィくん・・・あの中に逃げれば、助かります」
助かる?願ってもない話だ。だが、みくるさんが指指した先は要塞なんかじゃあなかった。
いたって普通の中華料理店のようだった。根拠はあるのか。
疑いの眼差しを向けると、みくるさんもぼくを見つめ返した。
泣いていた。だが、意志があった。錯乱しているわけじゃあない。
出征する兵士のような、確かな意志が彼女の顔にはあった。
「確かです。信じてください」
ぼくにはその意志を折る事は出来なかった。頷くとみくるさんはちっぽけな要塞へ歩き出した。
ぼくが戦えない今、助かる見込みはない。武器があるとするなら、みくるさんの意思だけだった。
541ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/05(土) 00:40:02 ID:???
店の前に着く頃にはみくるさんは息を切らしていた。
大の男を一人引きずって歩けばそれも当然だが、だいぶ時間がかかってしまった。
恐らく、奴らがここに辿り着くのにさほど時間はかからないだろう。
店は閉まっていた。定休日のようだ。夕飯を食べに来たわけじゃない。むしろ好都合だ。
扉の前でまごつくみくるさんを横に、ぼくは爪でガラス戸を斬った。
みくるさんは目を丸くして、悪い子を叱るような目でぼくを見たが、
すぐに気を取り直して中へ入った。壊してもいいのだ。
今は緊急時だし、ぼくが血痕を点々と残していた。
事故現場近くの喧騒があるとはいえ、血痕を見逃すほど奴らが間抜けとは思えない。
スタンドの追跡もある。ドアを壊さず侵入しても、すぐに見つかるだろう。
ガラス戸の隙間をくぐると、真っ暗な世界が広がった。カーテンが締め切られているようだった。
みくるさんは入口そばの階段にぼく共々座ると口を開いた。
「いいですか、大事な事です。あたしたちはこの店を出ていかなければいけません」
何だって?今入ったばかりで、君が行くと言ったのに。
反論しようとするぼくを、みくるさんは遮った。
「今じゃありません。六時ちょうど、です。それくらいが一番いいんです」
六時?時計を見る。あと五分もなかった。
「時間を稼がなきゃ・・・上へ」
うわ言のように呟くと、みくるさんはぼくを階段の上へ引きずり始めた。
「みくるさん、なぜだ?なぜ、『六時』?」
みくるさんはぼくの顔を見なかった。
「・・・禁則事項です」
ふざけているのか?前にも言ったフレーズは、桁違いに重々しい。
真剣な横顔からは真意は読み取れなかった。何もわからない。
ぼくがわかる事。それは微かに聞こえた犬の唸り声。もう時間はないようだった。

To Be Continued・・・
54255:2008/07/05(土) 01:07:24 ID:???
投下終了です。
読み返して気付いたんですが、前回「皇帝」の弾丸が体内で止まってから動くという描写をしましたが、
原作ではそういう描写はないんですよね。(格ゲーでは一旦止まった弾が動いてましたが)
スタンド能力に関しては射程とか応用の範囲とか、
はっきり決まっていない要素が結構あって、「これは出来るのか?」という事があるかもしれませんが、
その辺りは大目に見て下さい。
543マロン名無しさん:2008/07/05(土) 08:05:52 ID:???
むしろそういう目じゃなきゃジョジョは読めんさw
GJ!!
544マロン名無しさん:2008/07/05(土) 20:05:17 ID:ollENjtX
「宇宙人・・・だと・・・」
「ええ、宇宙人です。正確にはマゼラン星雲にある星、いえ、あった星というのが正確でしょうか。そこから来ました。」
俺の目の前に座っているこいつ、未起隆はいつもの何を考えているのか分からない顔でそう告げた。
「ある事件をきっかけに、私の星は消滅してしまいましてね。非常に住みやすそうなこの星に流れ着いたのです。」
「地球人じゃあなくてか?」
聞き間違いであることを祈り、そう尋ねてみる。
だってどう考えてもおかしいだろ。名前だって日本名、普通に高校に通う宇宙人がどこにいる?
「名前は偽名です。私の本名はヌ・ミキタカゾ・ンシといい、本当の年齢は216歳です。
職業は今は高校生をやっていますが、本職は宇宙船のパイロットをやっています。
・・・他の人には秘密ですよ?」
俺が聞くとまるで打てば響くようにそうかえす未起隆。
顔は真面目そのものなのだが信じらるはずがない。
考えられるのはこいつがどこかで頭を打ったという可能性だ。
俺は頭を抱える。
その様子を見て未起隆は俺にそっと頭痛薬を差し出した。
「違うそうじゃない、お前が意味不明なことを言ってるから困ってるんだよ。」
「言葉は母船の中で勉強したのですけれど、どこかおかしなところがありましたか?」
俺は胸いっぱいに息を吸い込みこう叫んだ。
「ふざけんな!!」

あの日から何日経つだろう。
俺が「ふざけんな」と言ったとき未起隆はとても悲しそうな顔をしていた。
真実を伝えようとしていたのかもしれない、と思うこともある。
しかしありえないんだ。宇宙人なんて。
ハルヒの望むものがこんなに近くにいるなんて思いたくない。
そうこうしている間に数日経ってしまった。
あれから、未起隆とはまともに話していない。
こちらから話しかけなければ話そうとしない奴なのだ。おかしなことではない。
「わけが分からないな。やっぱり」
今言えるのはそれだけだった。
545マロン名無しさん:2008/07/05(土) 20:05:59 ID:???
廊下を歩いているとある考えが浮かんだ。
もしかすると、あれはあいつなりの行き過ぎたジョークだったのではという考えだ。
ハルヒがいつもあんなことを言っているから、悪乗りをしてああいうことをしてしまったのかもしれない。
根拠もある。
谷口の話によると文芸部員支倉未起隆はいつも一人で本を読んでいるらしい。
誰かとつるむこともなく、馬鹿にされることもなく、常に一人。寂しかったんじゃあないんだろうか。
そしてハルヒを普通と思って、あのノリで俺に接してしまった。
もしそうなら話は早い。
変なうわさがたつ前に止めさせる。それが数少ない友人である俺の仕事だろう。
そうこうしている間に俺は下足場に着いた。

546マロン名無しさん:2008/07/05(土) 20:06:22 ID:???
おかしいと思うべきだった。
いまどき下駄箱にラブレターなんて入ってるはずがないんだよ。
簡単に流れを説明すると、
・決意を胸に下駄箱を開けるとそこには手紙が入っていた。
・かわいらしい文字で待ってるなんて書いてあったら行くしかないだろう。
・ポケットに手紙を突っ込みそのまま待ち合わせ場所へ向かう。
・待っていたのはわれらがクラス委員朝倉涼子。
・「死んでくれない?」発言
そして今に至る。
冗談じゃないぞ。
何でいきなり死ななきゃならんのだ。しかし反論むなしく朝倉はサバイバルナイフを構えこちらににじり寄ってくる。
「ごめんなさいね、でも仕方ないのよ。」
そのまま横薙ぎに俺の腹を掻っ捌こうとする朝倉。
その一撃を何とか避け、そのまま尻餅をついてしまう俺。
「じゃあ、バイバイ。」
振り下ろされるナイフ。残念俺の人生はここで・・・
「させませんよ。」
俺の視界の端から、液体金属のようなものが飛び出してくる。
瞬間それは盾のような物に変わり、俺の頭をナイフの一撃から保護する。
「大丈夫ですか?」
盾はそういって俺を覗き込んだ。
これは単なる比喩表現ではなく、盾に目がついていてそれが俺を見下していたのだ。
「あなた・・・だぁれ?」
朝倉も突然の介入者に驚いたんだろう。盾に喋りかけている。
盾はやはりというべきか、いつもの声でこの前の口上を述べあげた。
「よくぞ聞いてくれました。私は支倉未起隆。キョンさんの友人の宇宙人です。」

続け
547マロン名無しさん:2008/07/05(土) 20:08:24 ID:???
ドジこいたー!!
GJをもらうどころかこいつはいかーん!
548マロン名無しさん:2008/07/05(土) 23:57:41 ID:???
>>547
何を言っているのかわからないが…GJの片鱗を味わったぜ!
549マロン名無しさん:2008/07/06(日) 00:24:32 ID:???
>>547、547、547よォ〜、
オレはオメーをGJと思ってるんだ。
sage忘れちまった事なら、「自信を持て」…
「自信」を持っていいんだぜ!オメーのSSをよォー!
550アメリカの人:2008/07/07(月) 12:30:03 ID:???
第44話 「空条徐倫の消失 5」

エンターキーを押すとジェットコースターに安全ベルト無しで乗せられたみてーな激しい揺れと耳鳴りにあい、周りがどんどん暗くなっていき、気付いたらあたしは誰かの上に立っていた。
あたしの下には今や見慣れた日常の一部であり、この2日、(いや、3日か?)一番会いたかった一人である地味顔で仏頂面の男がいた。
「感動の再会のとこ悪いが………とっとと人の上からどけ、徐倫」
「悪いな、キョン」
キョンの上からどいたあたしはそこが見慣れた文芸部室だという事に気付いた。
「しかし……暑いな………」
そうか?
「お前はへそだしで薄着の上にコート羽織ってるだけだからだろ……つか今迄寒くなかったのか?」
フロリダの冬は日本ほど厳しくねーんだよ。
「そうなのか………」
キョンはその仏頂面に少し感心と驚きをブレンドしたような表情を浮かべた。
「ところで……今はいつだ?」
そう聞くとキョンは苦虫を噛んだような顔をする。
「心当たりが無い訳じゃあない………けど調べた方が早いだろ?」
「……それもそうだな」

学校のあまりにいい加減なセキュリティのお陰で脱出はすんなりといった。あとは今日が何日かだが………。
「コンビニはまだなのかよ………」
「結構遠いんだよ……お陰で買い食いがしにくくてな」
551アメリカの人:2008/07/07(月) 12:30:49 ID:???
二人でそんな愚痴を言いつつも、10分程でコンビニについた。さっそく目についたスポーツ誌を開く。
「……3年前の……7月7日………か」
キョンが目を細め、懐かしむような顔をする。
「……なんかあったのか?」
「色々な。多分これから行く場所に関係してるだろうから行きながら話すよ」

キョンの話はなかなか面白い話だった。3年前の七夕にタイムスリップさせられ、3年前のハルヒと東中の校庭に訳の分からない模様を書かせられ………
「………それで長門の助けを借りて帰ってきたんだ」
「……という事は………」
「着いたぜ、ここだ」
キョンに連れてこられたのは変わりもの達のメッカ、光陽園公園だった。キョンは心なしかキョロキョロと周りを見回し、落ち着きがない。
……なんか後ろ暗い事でもあるのか?
「……何でもない……早く行こうぜ」

キョンに案内され公園の外のフェンスにやってきたあたしは面白い物を見た。みくるに膝枕されているキョンだ。
みくるはキョンの頬をツンツンしたり耳に息を吹き掛けたりして遊んでいた。
「いいなあ俺、俺、俺と変わりたいぜ………」
俺俺言ってるだけじゃ誰が誰だか分かんねーよ。大体口をあほみたいに開けてよだれ垂らしてると変態みたいだぞ。
「え……あ……うッ………」
その次の瞬間、もう一人のキョンが目を覚ます。
552アメリカの人:2008/07/07(月) 12:31:42 ID:???
みくるとキョンは何か話を始めた。……が、距離が遠くて何を言っているのかは分からない。………まあいいか、後でキョンを問い詰めればいい。
すると突然みくるが倒れ、その後ろから………
「あれ……みくる……だよな?」
が、あたしの知るみくるより少し背が伸びており、プロポーションも成長しており……あれでまだ成長途上だったのかよ……
白い長袖ブラウスに紺色タイトスカートの姿は小学校の教師みたいな印象を受ける。
「便宜上俺は朝比奈さん(大)と呼んでる」
「未来人のみくるのそのさらに未来の姿……か」
今から5ヶ月程前のキョンと未来のみくるが未来のみくるから見た過去のみくるを眺めながら話をしているのを5ヶ月程前のキョンの未来のキョンと一緒にあたしは様子を伺っていた………って何がなんだか分かんねーな。
時間ってのはややこしい。……きっと親父やDIOみたいな時間を操るスタンド使いは戦闘でもすげー頭使うんだろうな………等とどうでもいい事を考えているとみくる(大)はキョンとみくる(小)と話を終えたらしく去っていった。
あたし達はみくる(大)を慌てて追う。ここまできて失敗はいやだからな。
「朝比奈さん!」
どんな返事がくるのかと思っていると………
「こんばんは、キョン君。あなたとはお久し振りですね、それと……徐倫さんにとっては……はじめまして、ですね」
どうやらあたし達の歴史はここでようやく繋がったらしい。
553アメリカの人:2008/07/07(月) 12:32:23 ID:???
「でも、よかった……今でもポカが多くて会えなかったらどうしよう……って」
そのドジっ子キャラがハルヒによって植え付けられた物でない事を祈る。横のキョンは口を半開きにして口元に薄気味悪い笑みを浮かべていた。
「確かに今のみくるは可愛いがよ……見とれてる場合じゃねーだろ。間抜けに見える……いや、もう十分間抜けだな」
「うるせぇ」
キョンが憮然とした顔をする。
「何処かに座りましょうか。わたしも色々話したい事がありますし」

あたし達はさっきの公園に戻り、先程のベンチへとやってきた。
「徐倫さんは……座らなくていいんですか?」
別にいいわよ。
「それで……時間の流れはどうなっているんです?俺達がいた改変された未来と朝比奈さんのいる未来は……繋がっているんですか?」
「詳しい事は話せません……というより解るように説明できません」
「ハ?」
キョンが答えが分からないテスト問題に詰まっている時のような顔をした。
「わたし達のSTC理論は……言葉を用いない概念です。言葉を用いないものは言葉以外のものでしか伝えられません。無理に説明してもわたしが初めて正体を明かした時みたいな説明になるの」
「………ますます分からん」
「要するにだな……スタンド使いじゃない奴にスタンドは見えないってのと同じようなもんだよ。見えない物を説明するのは不可能だ」
「………分かりやすい解説ありがとな」
554アメリカの人:2008/07/07(月) 12:33:58 ID:???
「あ……そういえば、前に長門が未来のコンピュータは物質に依存しないとか………」
SFとかでよくある脳に依存するネットワークシステムってやつか。
「はい。TPDD……タイムプレーンデストロイドデバイス……いわゆるタイムマシンもそうです」
色々と英語の使い方に突っ込みたかったが、そこはこらえる。
「で……結局原因はなんなんですか?いつ未来は変わったんですか?誰がやったんですか?」
「詳しい事は長門さんが知っていますが……結論から言うと『今』から3年後の12月18日早朝です。犯人は……涼宮さんでもあなた達の知らない第3の人物でもありません」
みくるはそこで少し声を暗くトーンを下げ、言った。
「あなた達もよく知っている人です」

時間の余裕があるらしく、みくるはSOS団での思い出を語りだした……が、
「アナスイの話が多いと思わないか?キョン」
「気のせいだろ………」
キョンの目が泳いでいる。
「3割ぐらいアナスイとの思い出話の気がすんだが………」
「気のせいだよ」
キョンの目の焦点がずれ始めた。
「しかもなんかアナスイがかっこよく描かれてる気が………」
「キノセイキノセイ………」
キョンの目が虚ろになり、何も見ていない。………次は有希に会うんだが………こいつ……大丈夫か?
「色々あったけど、楽しい思い出です」
「だってよ」
「キノセイキノセイキノセイキノセイキノセイキノセイキノセイキノセイ……………」
「……………」
「……………」

To Be Continued・・・
555アメリカの人:2008/07/07(月) 12:36:21 ID:???
以上、第44話でした

なに?穴粋がかわいそうだって?
逆に考えるんだ。穴粋はいじられてこそ輝くとね

七夕の日に七夕話を投下です。
ベツニネラッテマセンヨ?タマタマデス。……ホントデスヨ

それでは!
556マロン名無しさん:2008/07/09(水) 00:21:26 ID:GDkAdlmQ
>>555
GJ!穴水がかわいそう?朝比奈さんの思い出の3割占めれてるだけでいいだろう
大丈夫、思いで補正がかかったあいつはかっこいい
もっかいGJ!!!
55755:2008/07/16(水) 00:31:36 ID:???
しばらく来ない内に何という過疎。
ともかく投下します。
558ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/16(水) 00:35:24 ID:???
第十二話「恋のミクル伝説D」

「この中にいるんだな、旦那?」
「待て、慎重に行動しろ」
私は早速踏み込もうとするホル・ホースを抑えた。
「バブル犬」が反応したのは確かにこの店の中だ。残る血痕からも奴らがいる事は明白だ。
しかし・・・私は道路に目をやった。凄惨な事故現場にだ。
今、この場は生還者と救助隊と野次馬とで、さながら戦場だ。
この混乱に乗じて逃げる事も十分出来た。・・・なぜこんなレストランに逃げ込んだ?
「旦那ァ、気にする事ァねえぜ。この血痕、今たれましたって感じだ。
ロクに歩けなくなっての苦し紛れだろうよ」
ホル・ホースの意見はもっともだった。今入ったばかりなら、小細工をする時間はない。
潜入させておいた「チューブラー・ベルズ」にも異常はない。
客観的に見れば、すぐにでも突入すべきだ。奴らを買い被りすぎている。
私はゆっくりと深呼吸すると割れたガラス戸を睨みつけた。
「行くぞ、ホル・ホース。ジョニィは二階の世界だ。奴に懐柔の余地はない。
情報は連れの女から聞き出す。ジョニィを生かす世界の必要はない。確実に始末しろ」
ホル・ホースは小さく頷くと、次の瞬間には暗殺者へと表情を変えてレストランに踏み込んだ。
続いて私も侵入する。薄暗い。厨房の辺りに少し光る物があるが、心許ないものだ。
明かりがほしいとも思ったが、すぐにそれは出来ないと悟った。
万が一、奴らが物影に息を潜めていたら?無論、奴らの居場所は把握している。
しかし、念のためという言葉もある。私たちは最大限の注意を払い階段へ進んだ。
手で指示し、ホル・ホースを二階へ先行させる。
ホル・ホースは二階を覗き込むとすぐに頷いた。危険はない。
階段へ上ぼり、廊下に侵入する。反応があるのは奥の部屋だ。
私はドアノブに手をかけるとホル・ホースに目配せした。
ドアを開けると同時にホル・ホースが部屋に突入し、私もそれに続いた。
窓からの光に一瞬顔をしかめる。光の中心に奴らはいた。
ぐったりと寄り掛かるジョニィを支える少女が風船の白鳥に囲まれている。
幻想的な光景は絵本の挿絵のようだったが、その鳥は白鳥ではない。
不穏な動きがあれば、直ちに奴らを始末する鷹だ。
鷹は完全に奴らを包囲し、逃げ場はない。童話は残酷な一面も持っているものだ。
559ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/16(水) 00:38:21 ID:???
私はホル・ホースに指示した。
「ホル・ホース。お前が望んだ通りの世界だ。我が『チューブラー・ベルズ』は奴らを完全に封じ込めた・・・。
やれ。ジョニィのみを始末しろ」
ホル・ホースが「拳銃」のスタンド、「皇帝」をジョニィに向ける。
今のジョニィは籠の中の鳥だ。素人でも狙撃は出来る。
私はこの任務の完了を確信した。その時だった。
「あの!」
震えているだけだった少女の、突然の声に私はたじろいだ。ホル・ホースも同様である。
「嬢ちゃん、悪いが仕事なんだ。少し、目ェつぶってな。オメーは悪いようにはしねえ」
ホル・ホースはプロの暗殺者だ。小娘に揺さぶられる事はない。
命乞いなど聞く耳を持たないだろう。が、次の少女の言葉は私の予想とは違った。
「あの、・・・今、何時ですか?」
・・・?パニックを起こしているのだろうか。あるいは危機から目を反らそうというのか。
恐怖に囚われた人間はよくわからない事を言う。
ホル・ホースは拍子抜けしたようにちらりと腕時計を見た。
「六時・・・十五秒前だ」
「・・・ありがとう」
返事をしたのはジョニィだった。顔を上げ、ジョニィがこちらを見る。
心臓がドクンと鳴るのを感じた。奴の表情!私はそれに言いようのない不安を覚えた。
「ホル・ホースッ!撃てッ!」
気がつけば叫んでいた。ホル・ホースも同じ事を感じていたのだろう。言うが早いか、発砲していた。
ジョニィたちが階下へと落下したのはそれとほぼ同時だった。
560ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/16(水) 00:43:25 ID:???
「畜生ッ!」
俺は毒づくとぽっかりと開いた穴へと走り出した。
あの野郎、床を形抜きみてーに切ってやがった!
多分、俺たちが殴り込んだ時にはもう崩れる一歩手前まで・・・舐めやがって!
視界外に逃げられては当たらない。俺はジョニィに撃った「皇帝」の進路を曲げ、
穴への進路を塞ぐ「チューブラー・ベルズ」を撃ち抜いた。
「待てッ!待ち伏せしているかもしれないッ!」
マイク・Oが制止したが、従っていられない。あんな瀕死の奴にそこまでビビってどうする?

今仕留めなきゃあ今度こそ味方を呼ばれる。本来、俺が一度始末するのを止めたのもあってはならない事だ。
破裂して戻ったシャッターをかわし、俺はジョニィが開けた穴に飛び込んだ。
一階へと着地する。予想よりも高く、足の痺れを感じながら俺は立ち上がった。
部屋全体が明るい。ここは厨房か?コンロや洗い場がある。
光の先を見る。小さな窓が割られていた。逃げやがったか!?
「ホル・ホース!無事か!?返事をしろッ!」
上からマイク・Oの上ずった声が聞こえた。
「旦那、逃げられたぜ!だが多分遠くには行ってねえ!追い掛け・・・!」
言葉が騒々しい鐘の音に遮られた。この音は時計か?無意識のうちに音のするほうを見る。
部屋に入った時から、違和感があった。事前に確認していた。この店の厨房には窓が一つしかない。
だが、この厨房は隅々まで明るかった。小さな窓一つだけで。「もう一つ」、光源があるからだ。
「どうした!?追い掛けるのか!?」
時計の下では煌々と炎が踊っていた。頭が凍りついていた。
奴らが?いや、奴らにはそんな能力も時間もない。
それに・・・!炎は小規模だった。それだけでこのレストランを焼くには一時間はかかるだろう。「それだけ」なら。
炎が、今にも手を伸ばそうとしている、その先には・・・!
偶然?タイミングが良すぎる。まるで事前に分かってたみてーに・・・!
時計は、六時を指していた。
「旦那ァ!逃げろォォォォォ!」
叫びながら窓に飛び付いた瞬間、背後の炎がガスボンベに引火し、炸裂した。
561ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/16(水) 00:48:51 ID:???
生きている。とりあえずわかる事はそれだけだった。
全身が電気でも走っているように痛む。爆発の火傷が酷い。
首だけ動かしてさっきまで中にいたレストランを見る。
無惨なもんだ。爆発と炎で見る影もない。巨人が踏み付けたようだ。
マイク・Oは・・・直接爆発を食らわなかった俺でさえこれだ。生きてるわけねえか。
くそ、野次馬が集まってきやがった。静かにしろ。頭に響く。
混沌とした雑音の中に女が啜り泣く音が聞こえた。近くからだ。
「本当に・・・未来人だったのか」
この声はジョニィか?しゃくり上げるような声が続いた。
「はい・・・この爆発事故は明日の地方紙の一面を飾ります。
あの時点では未来の事・・・ですから、言えなかった・・・」
未来人。マイク・Oからそんな情報を聞いた気がする。しかし、戦闘能力はなく警戒の必要はないとも言っていた。
「今では『過去』になったから言えるってわけか・・・。
でも、助かるってわかってたならどうしてあんなに不安そうに?」
「・・・いえ・・・。未来に保存されてる新聞には、身元不明の死体が一つ、としか・・・。
爆発で・・・その、遺体が・・・。ですから、誰が・・・亡くなる、か、わからなかったんです」
傑作だ。俺たちはくじ引きに負けたってわけだ。
笑おうとして口からだらしなく息が漏れる。
「こいつ、起きてるッ!?」
尖った声と共に乱暴に頭を掴まれ、首の方向を変えられた。
視界に現れたのは神妙な面持ちのジョニィと、涙で顔をぐしゃぐしゃにした女だった。
ドリルのような金属音が耳を割く。空いた手の爪が回転していた。
やめてくれ、歯医者は嫌いなんだ。そう軽口を言う体力もなかった。
俺は目を閉じた。こんなガキにやられるなんてな・・・。抵抗など、する気さえ起こらなかった。
562マロン名無しさん:2008/07/16(水) 01:04:01 ID:???
なんという過疎ワロタ
支援
563マロン名無しさん:2008/07/16(水) 01:04:22 ID:???
まだオレもいるぜ
支援
564ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/16(水) 01:08:30 ID:???
直前に迫る死にこれまでの記憶が頭をよぎる。走馬灯ってやつか?
・・・死んだ相棒・・・引っかけた女・・・ギリギリの戦い・・・夜通し火遊びした時・・・引っかけた女・・・。
・・・何か自分の人生に疑問を抱いてきた。まー割と楽しかったしいいか。もう助からないしな。そう思った。
が、回転音は近づいてこない。何だ何だ。死刑判決が出たんならさっさとやれ。
目を開ける。女がジョニィの腕を掴んでいた。戸惑いの目を向ける。
「みくるさん・・・こいつは、ぼくたちを殺しに来たんだ。危険なんだよ・・・!」
女は涙も拭かずに首を振った。
「やめて・・・やめて下さい。命を取るなんて、もう・・・」
ジョニィは息遣い荒く俺と女とを交互に見た。そして震えた指先の爪は、やがて回転を止めた。
「くそっ!・・・次に会ったら容赦しない・・・!」
言葉とは裏腹に表情には安堵の色が浮かんでいた。
甘ちゃんどもが・・・。まだこいつらは覚悟ができてねえ。
「機関」は本気でこいつらを仕留めにかかっている。外部の殺し屋の俺に依頼するほどに。
こんな甘い奴らが、生き残れるんだろうか。見ると、二人は俺に背を向けて歩き出していた。
隙だらけだ。「撃って下さい」と言わんばかり。俺は手をジョニィに向けた。
「皇帝」を発現・・・やめた。この傷じゃあ、ジョニィを始末しても他の奴らにやられるからな。
始末するのは後のほうがいい。傷が癒えるまで・・・一ヶ月ほど・・・いや、当分奴らに手を出すのは止めよう。
それまで生き残れよな、甘ちゃんども。消防車のサイレンがファンファーレのように鳴り響く中、
俺はそれだけを願った。

スタンド名「チューブラー・ベルズ」
本体名 マイク・O・・・死亡
スタンド名「皇帝」
本体名 ホル・ホース・・・再起可能
To Be Continued・・・
56555:2008/07/16(水) 01:11:44 ID:???
手直しに時間がかかってしまいました。
しかし、支援してもらえるとは・・・!やる気がムンムン湧いてきますね。
566マロン名無しさん:2008/07/16(水) 01:16:13 ID:???
GJ!
マイク・Oがシンジマッタダ。
ジョニィのタスクは未だ未覚醒…。さてこれからどうなるやら。
567マロン名無しさん:2008/07/16(水) 12:37:02 ID:???
おンもしろ〜いッ!
GJ!!
568マロン名無しさん:2008/07/16(水) 19:18:28 ID:???
GJです!
引っ掛けた女ばっかり思い出してんのかよw
さすがホル・ホース!そこにしびれない憧れない!
569アメリカの人:2008/07/17(木) 11:28:21 ID:???
うーむ実に過疎…

ジョニィGJ!
マイクは死にホルホルは生存…実にJOJOらしい!

投下ァ!
570アメリカの人:2008/07/17(木) 11:29:54 ID:???
第45話 「空条徐倫の消失 6」

キョンが過去のハルヒに言うべき捨て台詞を言った後、あたし達は有希の家に向かった。有希の家は登下校の時毎日見ている、閑静な高級マンションだった。……そういや有希の家にはあがった事なかったな。
「あ……あの、キョン君……よろしく頼めますか?わたし、今でも長門さん苦手で………」
みくるはあたしの後ろに隠れている。背が伸びたとはいえ小さいのに変わりはなく、完全にあたしに隠れてしまっている。
「分かりました」
キョンがインターホンで有希の部屋を押すとイヤホンを取る音と共に沈黙が聞こえてきた。
「あー……長門、俺だ。実はだ………」
キョンが二言三言説明すると有希はオートロックを開ける。エレベーターを使って有希の部屋708号室がある、7階に行き、部屋に着くまで5分程かかった。
ノックをすると見慣れた無表情顔が出迎えた。
「……………」
有希だ。心なしかあたしが知っている有希より遥かに無表情な気がする。
「気のせいじゃないと思うぜ……俺もそう思う」
そうか。
「入っていいか?」
有希は奥へ入っていった。イエスって事なんだろうな。
リビングにはコタツ机だけであとは何も無い。カーテンも無い。いやに殺風景で生活感が無い。有希には悪いが、これならム所の独房の方がまだマシだ。
「なあ長門……このふすま開けていいか?」
「そこに何かあんのか?」
「いや……さっきの俺と朝比奈さんがいるんだが………」
「開かない。その部屋の構造体ごと時間を凍結してある」
………少し残念だ。
571アメリカの人:2008/07/17(木) 11:33:06 ID:???
キョンは長門に今迄起こった出来事をダイジェストにして説明し始めた。所々であたしやみくるが補足をいれてやる。
「で……だ……俺の説明はここまでなんだが………」
「次はあたしが説明するよ」
そしてあたしは刑務所で起こった出来事をキョンと同じくダイジェストで話した。有希だけでなく、キョンやみくるも初耳のせいか、興味津々といった様子だ。
「……という訳だ」
「……直せるのか?長門?」
有希はそこでみくるを見つめる。意見を催促しているみたいだ。
「わ…わたしは……異常な時空間をノーマライズしたいと思っています………」
有希は少し考える(ように見える)素振りをした。
「長門さん……あなたに協力して欲しいんです。改変された時間平面を元通りにできるのはあなただけなんです……どうか………」
「……………」
有希はしばしの沈黙の後、
「確認する」
と言い、目を閉じた。暫くして再び開け、
「同期不能」
「お……おい、それってまさか………」
「その時代の時空連続体そのものにアクセスできない。私のリクエストを選択的に排除するためのシステムプロテクトがかけられている」
そう語る有希はあたしの知る有希に少し近かった。……なるほど、有希も少しずつだが変わってたのか……でも、だとしたら………
「だ……大丈夫なのか?」
考え込んだあたしを余所にキョンが話しを続ける。
572アメリカの人:2008/07/17(木) 11:33:48 ID:???
「だが事情は把握した。再修正可能」
3人一緒に胸をなで下ろす。
「その時空改変者は涼宮ハルヒの情報創造能力を最大利用し、世界を構成する情報を部分的に変化させた」
そしてその結果がこれか。
「ゆえに改変後の涼宮ハルヒには何の力も残っていない。その時空には情報統合思念体も存在しない」
「無茶苦茶だな………」
「涼宮ハルヒから盗み出した能力によって、時空改変者が修正した過去記憶情報は、365日の範囲」
「この七夕まで手が周らなくてよかったぜ………」
キョンが心からの安堵を顔にうかべる。
「世界を元の状態に戻すには、ここから3年後の12月18日へと行き、時空改変者が当該行為をした直後に、再修正プログラムを起動すればよい」
有希、お前は来るのか?
「わたしは行けない……彼らを放置できない」
解説によると時間を凍結し続けるにはこの時空を離れるわけにはいかないらしい。
573アメリカの人:2008/07/17(木) 11:34:13 ID:???
「じゃ、どうしろってんだ」
「調合する」
有希は眼鏡を外すとその眼鏡を別の物に変えた。
「拳銃かよ………」
「時空改変者に再修正プログラムを注入」
「弾は実弾か?……見たとこアルミかプラスチックに見えるが」
「徐倫、それでなんか違いがあんのか?」
「実弾なら服を気にしなくていいからな」
「短針銃。針の先端にプログラムを塗布してある。着衣の上からでも成功率は高いが、できれば直接皮下が望ましい」
574マロン名無しさん:2008/07/17(木) 11:40:17 ID:???
朝っぱらから支援
575アメリカの人:2008/07/17(木) 11:41:43 ID:???
有希が銃をキョンに渡す。
「なあ……ところでこの馬鹿騒ぎを起こしたのは誰なんだ?」
あたしも一番聞きたかった事だ。……有希なら知ってんだろ?
「………それは」
そして有希はある名前をまるでニュースの原稿を読むようにいつもと同じ調子で告げた。

「……………」
「……………」
有希の告げた名前は薄々感づいていた名前だった……が、こうして告げられると重みが違う。
暫く重い空気が流れていたが、それを振り払うようにみくるが明るい声で切り出した。
「それじゃ時空間座標を………」
有希はみくるの手の甲に触れた……が、その後は何もなかった。様子を見るにそれで伝わったようだが………。
「そのままでは、あなた達も時空改変に巻き込まれる。対抗処置を施す。手を」
何をするのかと思っていると有希が差し出されたキョンの手首を噛んだ。……映画撮影の時やってた長門印のナノマシン注入作業だろう。
キョンが驚いたやら気恥ずかしいやら分からない表情をしている間に有希は手早くおどおどしっぱなしのみくるにも噛み付いた。……後はあたしだけか。
「いつでもいいぜ、有希」
が、有希は何を思ったのか噛み付こうとせず、手を握りしめ、小指だけを立て突然座る。
………待て待て、何するんだ有希……と言おうとした瞬間、有希が座ったままの姿勢から膝だけで跳躍した。
576アメリカの人:2008/07/17(木) 11:42:37 ID:???
「パウッ!」
奇声をあげ有希があたしのみぞおちに拳を突き立てた。
「くうっ……うふ!……がはっ………」
「……………」
随分とシュールな光景だな………冷静なあたしもどうかと思うが。有希はあたしから離れ、何事もなかったかのように話を続ける。
「対情報操作用遮蔽スクリーンと防護フィールドをあなた達の体表面に展開させた」
「待てェェェェェェェェッ!」
「何?」
「さっきのパンチは何だったんだ?」
「波紋。あなたの横隔膜を刺激した。軽い波紋なら作れるはず」
「ハ?……いや、波紋のやり方は昔ジョセフひいじいちゃんから聞いた事あるから分かるけど………」
「あなたにも遮蔽スクリーンと防護フィールドは展開しておいた」
「いや……だからなんで波紋を今………」
が、有希は無視する。
「あ……その……行きましょうか」
「あ……はい」
みくるが場の雰囲気を変えようと出発を提案した。……まあ断る理由もないか。
「わたしの手をとってください。目を開けていると酔いますから閉じていて下さいね」
キョンが鼻の下を伸ばしながら差し出された手を取る。……なあ、ぶん殴っていいか?
「……やめてくれ」
「あ、早く手を………」
みくるの手を取る。端からみると円陣を組んでいるみたいだな。そう思った瞬間、本日2度目の暗転が訪れた。……2回目とはいえ慣れないな。

「もういいですよ」
目を開けると見慣れた北校の校門近くにいた。
「いよいよだな………」
「キョン、最後でしくじんじゃねーぞ」
「ああ」
「行くぜ」

To Be Continued・・・
577アメリカの人:2008/07/17(木) 11:44:42 ID:???
以上、だい45わでした

支援感謝。まずはこの一言です

消失もいよいよ大詰め、次回はクロスSSでは大人気だけど何故か俺の話には登場しなかったあのひとが登場!
もう誰か分かってる人も多いとおもうけど

それでは!
578マロン名無しさん:2008/07/17(木) 11:46:45 ID:???
このタイミングでまさかの波紋伝承!?
ていうか短時間で変化しすぎだろ長門有希ィーーーーーーーーッ!!
とにかくGJです。
579マロン名無しさん:2008/07/17(木) 12:04:05 ID:???
ベネ。(GJ)波紋で不覚にも笑った。
58055:2008/07/20(日) 22:14:53 ID:???
GJ!まさかの波紋!気になるのは「あの人」・・・誰だろう。投下します。
581ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/20(日) 22:16:37 ID:???
第十三話「マドンナ」

みくるさんの肩を借り、大分歩いた。相変わらず頭はぼんやりしている。
未来人であるみくるさんの知識により、ホル・ホースたちを退けた後、
みくるさんは治療が出来る場所まで歩いて行こうと提案した。
歩くのは辛いが、交通事故のせいでバスやタクシーは麻痺している。
病院に行く方法は歩く以外にないようだった。
それにしても・・・ぼくは苦笑した。未来人、か。懸命にぼくを運ぶ少女が。
結局、ハルヒの願いは叶ったって事か。悪い冗談だ。
と、みくるさんの足が止まった。「着きましたよ」と言う。
しかし、目の前の建物は明らかに病院ではない。ぼくにはマンションにしか見えないのだが。
訝し気な視線を向けたが、みくるさんは意に介さない。中へと入って行く。
やっぱり、ただのマンションだ。病院独特の無機質な空気や神経質なほどの消毒液の匂いは感じない。
首を捻るぼくをよそに、みくるさんは一室の前で足を止めた。
みくるさんの部屋だろうか?でも、絆創膏か何かで手当て出来るような傷とは思えないが。
みくるさんはそのままドアを見つめていた。
やがて決意したようにゆっくりと手を伸ばした先はインターホンだった。
どこか間の抜けた呼び出し音が響く。みくるさんの部屋じゃあないのか?
ぼんやりした頭で考えていると、ぼくたちが来るのを待っていたようにドアが開けられた。
「遅い」
血まみれのぼくを見たショートカットの少女、長門の感想はそれだけだった。
582ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/20(日) 22:18:16 ID:???
「長門?」
意外な人物に思わず声をあげる。
「涼宮さんに聞いたんです。・・・住所と、連絡先」
みくるさんが微苦笑を浮かべて説明した。・・・早く気付いてほしかったな。
「入って」
長門はそれだけ言うと奥へ入っていった。慌てた様子でみくるさんが続く。
広い部屋だ。ざっと三部屋はある。本来学生が借りられる部屋じゃあないだろう。
玄関にいつもの革靴一つきりしかない所を見ると一人暮らしのようだが、
宇宙人の長門も広い部屋に住みたいんだろうか。そのわりには使いこなせてないようだが。
部屋の様子は殺風景の一語に尽きる。だだっ広い部屋にはテレビすらなかった。
人の気配がしないという点では、まるでモデルルーム・・・と、感想を述べてる場合じゃあない。
「ちょっと待ってくれ。なぜ長門が出て来る?」
どうも展開がよくわからない。みくるさんが耳打ちした。
「『情報操作』です。ある程度までなら治療出来るそうなんです」
「情報操作」・・・。長門の能力だ。確かに以前襲われた時はすぐに傷を治していた。
他人にも使えるのか。生活感のないリビングに入ると長門はぼくを見た。
「脱いで。治療する」
心配する言葉の一つもないのだろうか。余りの冷静さに辟易する。
やれやれという心境でいると、みくるさんがぎこちなく口を開いた。
「あ、あの。あたし、お茶でもいれてきますね」
慌ただしく台所へ走るのを見送ると、肩に異物感を覚えた。
見ると、肩に刺さった杭を長門が掴んでいた。ま、待て。まさか。
「我慢して」
無駄に広い部屋にぼくの悲鳴がよく響いた。
583ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/20(日) 22:19:57 ID:???
長門の能力は確かだった。紙粘土でも埋めていくように傷が塞がっていく。
「・・・これでいい」
どうやら終わったようだが、痛みはまだ残っている。
肩をさするぼくに長門が鋭い視線を投げる。
「いじらないで。情報操作での治療には限界がある。今の技術では治癒の手助けしかできない」
人工皮膚みたいなものを埋め込んだだけって事か。
「皮膚組織、筋肉組織も共に再生できた。でも数日は安静が必要。わかった?」
わずかに語尾を上げていた。ぼくは呻きながらそれに答えた。
「宇宙に麻酔がないって事はわかったよ」
「・・・・・・」
無表情の癖にやたら冷たい視線が突き刺さる。・・・まだ見てる。
「わかった、わかったよ。大人しくする」
長門は小さく息をつくとぼくから視線を外した。
「酷い負傷だった。二人のスタンド使い相手に生き残れたのは殆ど幸運」
長門の言う事はもっともだ。今回の勝利は驚くほど幸運に支えられている。
みくるさんが未来人でなければ?爆発現場にいなかったら?みくるさんが過去の爆発事件を覚えていなかったら?
どの場合もぼくの命はなかっただろう。改めてぞっとする。
偶然運がよかっただけだ。それには反論の余地もない。しかし、明るい材料もある。
「でも、みんな何かしら『力』を持ってる。全員が力を合わせれば、
奴ら・・・『強硬派』の襲撃も凌げるよ」
古泉とぼくの『スタンド』、長門の『情報操作』、みくるさんの未来の知識。
それらを組み合わせれば、きっと簡単には負けない。純粋な思いだった。
長門も小さく頷いて同意を示すだろうと思っていた。だが、ぼくの予想はまるでずれていた。
ぼくの言葉を聞いた長門は目を見開いた。もっとも、注視しなければわからないほどだったが。
「それは・・・甘すぎる」
珍しく、口ごもるようにそれだけ言った。
584ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/20(日) 22:21:22 ID:???
「甘い?戦力の事か?」
確かにぼくは「強硬派」の戦力など知らない。さっきの発言は半ば自分たちを鼓舞する狙いでしたものだったが、
戦いではそんな楽観的すぎる姿勢は油断を招く。その点を窘められたのならぐうの音も出ない。
しかし。長門は首を横に振った。
「違う。それではなく・・・私の目的は涼宮ハルヒの観察により進化の可能性を測る事」
急に話があらぬ方向に飛び、ぼくは面くらった。
「・・・それなら前に聞いた」
「古泉一樹、及びその機関の目的は世界の安定。そのために涼宮ハルヒを保護、観察する事」
長門はいつものように、息苦しいほど真っすぐにぼくを見つめた。
「・・・それも本人に聞いて知ってる」
「朝比奈みくる・・・未来人の目的は彼らが三年前以前に遡れなくなった原因と思しき、
涼宮ハルヒと接触。謎を解明する事」
「それは初めて聞いたけど・・・」
一向に話が見えない。長門の表情からは何も伺い知る事は出来なかった。
見つめ返していると、長門はふっと目を反らした。
「わからないなら、いい」
一拍間を置いて、ぼくに目を戻す。
「すぐにわかる」
それだけ言うと、長門は口を閉ざした。ますますわからない。
長門の様子は一体?「すぐにわかる」とは?問いただそうとした時、みくるさんが入って来た。
「あの、お茶ができました」
緊張した雰囲気を感じたのか、落ち着かない様子だった。
ぎこちなくお茶をテーブルに置き、ぼくたちをチラチラと見ながら座った。
それからはみくるさんが未来に来た理由を聞いた。だが、話の内容はまるで耳に入らなかった。
控え目に話しながらも、どこか嬉しそうなみくるさんだけが印象的だった。
過去という孤立せざるをえない環境にいる彼女には、理解者ができる事は喜ばしい事なのだろう。
長門の話の意図は、結局聞く事は出来なかった。
触れてはいけない、と思った。口を利かない長門には、そう感じさせる威圧感があった
この時、ぼくには全く長門の発言や態度の意味が理解出来なかった。
それを知る時はそう遠くない。自分の甘さを知る日は。

To Be Continued・・・
585ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/20(日) 22:31:06 ID:???
投下終了です。全員の紹介も終わって話が進みそうな気配です。
586マロン名無しさん:2008/07/20(日) 22:58:33 ID:???
GJGJGJGJGJGJGJGJGJ!!
587マロン名無しさん:2008/07/23(水) 00:53:34 ID:6PbsKUb6
GJ&保守ついでに需要あるか分からんがジョニィの人の元ネタ考察
「バスケット・ケース」
GREENDAYの曲。爽快感溢れるメロディは原作の雰囲気にもピッタリ。
タイトルの意味は「精神病患者」とか「おかしな人」という意味。SOS団の面々のことと思われ。
「マジカル・ミステリー・ツアー」
THE BEATLESの曲。不思議探索ツアーの話だから?
「戦慄の王女」
QUEENのアルバムの邦題。朝倉さんのことかと。
「朝倉涼子が来る」
「ブチャラティが来る」から。
「スターティング・オーヴァー」
ジョン・レノンの曲かと(同じ題名の曲があるが知名度的に考えて)
「再出発」を意味する。ジョニィのことだろう。
古泉スタンド「マッガーレ」
説明不要と思うが、古泉のキャラソン「まっがーれ↓スペクタクル」から。
「バイシクル・レース」
これもQUEEN。状況からかと。
長門スタンド「カインド・オブ・マジック」
やっぱりQUEEN。吉良や神父のと同じでチート臭漂うQUEENスタンド。さすが長門。
「恋のミクル伝説」
みくるのキャラソン。話の内容の前半は歌詞っぽかったが後半からは出血大サービス展開。
「マドンナ」
まだ途中だが歌手のマドンナっぽい。

多分合ってる。間違ってたら指摘よろしく
588マロン名無しさん:2008/07/23(水) 07:58:29 ID:???
>「精神病患者」とか「おかしな人」
チョコ先生にもピッタリだなw てかここから来てるんだろうか
589アメリカの人:2008/07/23(水) 08:38:38 ID:???
実にGJ!
今後が楽しみ〜
それでは投下ァ!
590アメリカの人:2008/07/23(水) 08:39:42 ID:???
第46話 「空条徐倫の消失 7」

「ところで……後どれぐらいで世界は改変されるんですか?」
「5分程です」
そうか……あたし達は校門が見える曲がり角で待ち伏せる。横を見るとみくるが寒そうにしている。……ミニタイトとブラウスじゃあ当然か。
「貸しますよ、どうぞ」
キョンが上着を貸す……こんな時にアピールしてどうする。
「お前はどうだ?」
「コートがあるからいい」
その時みくるが緊張した声を出す。
「そろそろ……です」
校門を見ると誰かが出てくる……有希の言った通りの奴だ。そいつは校門前までくると不意に手をあげ空気を掴み取るような動きをする。
「凄い……強力な時空震だわ……こんな力があったなんて………」
キョンは何がなんだか分からない顔だが、あたしはビリビリするような……そう、ちょうど波紋が伝わるような感覚がする。
……さっきの有希のパンチのせいか?本来ならあたし達も巻き込まれるはずだが、有希のナノマシンのお陰で何も影響は無い。するとそいつは手を下げ、こっちを向く。
「終わりました……わたしたちの出番です」
その声を合図にキョンを先頭に、あたし、みくるの順に続く。
「よう……俺だ。また会ったな………長門」
眼鏡をかけた有希……あたしはあんまり見た事がない姿だ。
591アメリカの人:2008/07/23(水) 08:40:30 ID:???
「お前のしわざだったんだな」
「……なぜ……ここに……あなたが………」
「お前こそ、なんだってここにいるのか自分で解ってんのか?」
「……散歩」
あたしはそんな有希を見ながら3年前の有希の言葉を思い出していた。
『わたしのメモリ空間に蓄積されたエラーデータの集合が、内包するバグのトリガーとなって異常動作を引き起こした。それは不可避であり、エラーの原因は私には不明。
よって対処法はない。私は必ず、3年後の12月18日に世界を再構成するだろう』
そう有希は言っていた。
「徐倫は……こうなるって気付いてたのか?」
「薄々な……」
キョンの表情はよく分からない。
「……俺は馬鹿だよ……お前みたいに気付けなかった……ついつい長門任せにして……迷惑ばっかかけて……
長門が疲れてるかもしれねぇって考えもしなかった……最低のクズだよ」
あたしだってそうだ。薄々感づいてたのに何か気の利いた事をしてやれなかったんだ……あたしも同じだよ。
「世界を変えちまうぐらい疲れてイカれてたってのに……長門は……俺達に判断を任せてくれたんだな………」
「お前はこの世界を選んだな……あんなに嫌がってたのにか?」
「当たり前だ……楽しかったに決ってるじゃねえか。面白くないって言う奴がいたら半殺しにしてやるぜ」
「……そうか……なら最後までついていってやるよ……仲間だしな」
「ああ……よろしく頼むぜ」
そしてキョンは有希に向き直った。
592アメリカの人:2008/07/23(水) 08:41:14 ID:???
「そういう事だ……やっぱりアッチの世界のほうがいい。この世界はシックリこねえな……すまない……………」
キョンが何かを喋っているが、あたしは途中からろくに聞いていなかった。……何か……ヤバい………。今迄の戦いの中で培われた勘がそう言っている。
「………とりあえずクリパで鍋食って………」
気配だ……気配を探れば………
「……今度はお前が名探偵を………」
……後ろのみくる……前のキョン……さらに向こうの有希………なんだ?物陰に誰か……いるのか………?
「……ってのはどうだ、そ………」
……動いた!?しかも速いぞッ!?
「危ねえッ!キョ………」
が、間に合わず、
「あ……朝倉ッ!?」
「長門さんを傷付ける事は許さない」
キョンが黒い長髪の女に刺されていた。
「オラァッ!」
スタンドで殴りかかるがかわされる。……なんでだ?スタンドは見えねえはずだろ?
「あら……あなたは……誰かしら?……でもあなたも長門さんを傷付けるつもりかしら……なら消えてもらわないと………」
そう言った朝倉とかいう女はナイフで切りつけてくる。咄嗟に飛びのき次の攻撃に身構える。
が、朝倉はあたしを無視してキョンの方を向いた。……マズい。さっきのは牽制で、最初からキョンにトドメをさすつもりだったらしい。
「させるかよ………」
突進する。が、その瞬間飛んできたナイフに進むのを阻まれる。クソッ……マズい………。
キョンにナイフが振り下ろされようとした瞬間だった。有希がナイフを掴んだ。
593アメリカの人:2008/07/23(水) 08:42:02 ID:???
「な、何故あなたがここにッ!?」
それはあたしも同感だ。後ろを見るともう一人のキョンとみくる(小)がいた。みくる(小)はみくる(大)の膝枕で眠っているが。
「この子にわたしの姿を見られるわけにはいかないから」
……みくる(大)は全部知ってたって事か……当たり前だな。怪我をしたキョンにもう一人のキョンが声をかけている。
何を言っているのかは聞こえんが。と、眼鏡無し有希があたしの側に投げ飛ばされた。
「大丈夫かッ!?」
「はっきり言って予想外だったけど……何の問題も無いわ……今のあたしに情報操作は利かないわ」
どういう事だ?
「朝倉涼子は涼宮ハルヒの時空改変能力を一部受け継いでいる。私の情報操作は通用しない」
「………分かったぜ……任せな、肉体労働はあたしの専門だ……有希、キョンの怪我を頼む」
朝倉は人を殺す事をまるで毎日3食するのと同じように当たり前の事と思っているような笑顔を浮かべている。
「殺す順番が変わったけど……問題は無いわね」
「誰がてめーに殺されるか。あたし達は帰ってみせるぜ……誰一人欠けないでな」

To Be Continued・・・
594アメリカの人:2008/07/23(水) 08:57:48 ID:???
以上、第46話でした

あと2話ぐらいで終われそうです

それでは!
595マロン名無しさん:2008/07/23(水) 22:19:17 ID:???
次回ッ!ついにきた対決の時ッ!

空条徐倫VS朝倉涼子ッ!!

勝つのは徐倫か?朝倉か?
キョンと徐倫はSOS団の奇妙な日常に帰れるのか!?

空条徐倫の消失!ついに物語は終焉に差し掛かるッ!
596マロン名無しさん:2008/07/24(木) 10:39:54 ID:EGu5pKKs
>>595
スピルバーグの映画でも結構ミスがあるように、いちいち重箱の隅を気にしてたら、
ちまちま小さくまとまってしまい、大技は出せない。
仮面ライダーの仮面の下からはみ出た髪とか、ウルトラマンの背中のジッパーとか、
子供でも大人になって目をつぶってる事があるのに、お前は器が小さ過ぎ。
嫌なら読むなよ。
597マロン名無しさん:2008/07/24(木) 12:30:55 ID:???
ん?
598アメリカの人:2008/07/25(金) 13:14:36 ID:???
第47話 「空条徐倫の消失 8」

朝倉とあたしは北校の校門前で睨み合っていた。
「こいよ………」
朝倉は返事をせず、ナイフを数本投げる。あたしははじかずにナイフをスタンドでキャッチし、投げかえした。
「チッ………」
飛んできたナイフを朝倉が叩き落としている隙に一気に距離を詰め、殴りかかる。
「オラァッ!」
左のフックから右のストレート、右のニーキック、が、全てかわされる。すかさずラッシュを叩き込もうとし、顔面をかすめたナイフに防がれる。
「クソッ………」
ナイフを逆手に持ち替えた朝倉は首に切りかかる。かわすと続け様に突きを繰り出す。伸びてきた腕を弾くと朝倉は左手にナイフを逆手に持ち、右手のナイフは順手に持ち替え、狂ったような速さで切りかかってくる。
「大丈夫かッ!?徐倫!?」
「あたしの心配はいいッ!さっさと再修正プログラムを撃ち込めッ!」
キョンが慌てて落とした拳銃に手を伸ばそうとする。が、
「させない」
朝倉のナイフが飛んできたのにビビったキョンが手を引っ込める。……チャンスだ。朝倉に隙ができた。
「オラァッ!」
渾身の右のボディーブロー。が、
「くらうかッ!」
朝倉が体をねじり、ナイフを心臓に向けて突き出す。咄嗟に手で防ぐ。
「ふふ……まず左手を封じた………!?」
599アメリカの人:2008/07/25(金) 13:15:12 ID:???
朝倉の目が驚愕と戸惑いをはなつ。
「な……何故……何故刺さっていないッ!」
朝倉の言葉通り、ナイフはあたしに刺さらず、まるでコンクリートにつきたてたように人差し指で止められている。
「波紋だ」
「あなたは波紋使いでは無いはずよ………」
「まあな……だが有希が一時的に波紋を作れるようにしてくれたんだ………」
朝倉はナイフをあたしから離そうとする。が、
「は、離れないッ!?」
「波紋は弾くだけじゃねえ、くっつける事もできるんだ」
「ぐ……うッ……」
「そしてくらいな……ストーンフリー+波紋ッ!」
スタンドの右腕に作れる限りの波紋を集める。
「幽波紋疾走(スタンドオーバードライブ)ッ!」
もったいぶった名前だがただの波紋をまとった強烈なアッパーカットだ。
「がッ………」
「波紋はスタンドという才能に近付くための技術だという考え方があったが……どうやら波紋とスタンドは相性が良いみたいだ。普段よりも数倍のパワーが出る」
「まだ……まだよ……わたしはこの程度では………」
「いや……お前はここで終わりだ……行くぜェェェェェェェッ!」
「く……う………」
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
吹っ飛んでいった朝倉は体が崩れ、赤い小さな結晶になって風に飛ばされていった。
600アメリカの人:2008/07/25(金) 13:15:56 ID:???
朝倉が消え去るとそこに残ったのは眼鏡をかけた有希が座り込んで怯えている光景だけだった。
いざ撃つとなると後悔が来たのかキョンが銃を撃てずに困っていると、
「かして」
有希が銃を手に取り、眼鏡付きの有希に撃った。
「………………」
次の瞬間、眼鏡付き有希はゆっくりと立ち、眼鏡を外した。
「同期を求める」
「断る」
………なんだと?有希の性格ならまず間違いなくするはずだ。
「なぜ」
「したくないから」
感情だけで否定している。今迄の有希では考えられない。隣の未来のキョンを見ると何か分かっているような顔を浮かべている。
「お前……なんか有希にしたのか?」
「いや……特には」
未来から来た有希は
「あなたが実行した世界改変をリセットする」
「了解した」
すると過去の有希は躊躇したような声で、
「情報統合思念体の存在を感知できない」
「ここにはいない……私は私が現存した時空間の彼らと接続している。再改変は私主導で行う」
「了解した」
「再改変後、貴方は貴方が思う行動を取れ」
……妙だな……有希はこんな感傷めいた事は普通しないはず………やはり……
「キョン、てめーが噛んでんのか」
「多分な」
「ま……何があったのかは聞かないでおくよ」
すると未来の有希があたしに話し掛けてくる。
「ここであったことは私と彼には言わないで欲しい」
………分かってるぜ。あたしだってそう簡単に未来の事をばらしちゃいけないのは分かってる。
「そう」
タイミングを見計らっていたのか、有希が返事すると同時にみくる(大)が声をかけてきた。
601アメリカの人:2008/07/25(金) 13:16:36 ID:???
「キョンくん、この子……わたしをお願いできますか?」
みくる(大)が声をかけてくる。
「もうすぐさっき長門さんが起こしたものより大規模で複雑な時空震が発生します……まともに目も開けてもいられないはずです」
「なんでですか?」
「最初は過去と現在を変化させただけ、でも今回は時間を正しい流れに戻す作業も加わるから」
「なるほど」
「徐倫さん」
なんだ?
「わたし達は帰ります……徐倫さんはわたし達が帰ったらそっちの長門さんの指示に従ってください」
ああ……言われなくてもそうするぜ。
「それでは、また会える日まで」
そう言うと不意に凄まじい波のようなもの……多分時空震とかいう奴だ……があたしを襲い、不意をつかれたあたしは意識を失った。

目を覚ますと見慣れたあたしの部屋だった。……やっぱり自分の家ってのは落ち着けるな。
「徐倫、起きてたの?熱はもういいかしら?」
ママが部屋に入ってきて聞いてきた。どうやらあたしはずっと風邪で寝込んでいたらしい。
「もう大丈夫よ……それより今いつ?」
「12月の21日よ」
その後ママは二言三言話してから部屋を出ていった。ふと携帯を見ると、
「………げ」
大量のメールが届いていた。ハルヒからだ。半分ぐらいがあたしを心配するメール、もう半分がキョンの事を書いていた。
どうやら階段で転んだキョンは病院で3日間意識不明だった……らしい。そしてついさっき目を覚ましたとの事だ。………あたしも見舞いに行かなくちゃな。

To Be Continued・・・
602アメリカの人:2008/07/25(金) 13:17:09 ID:???
以上でした

あとすこしで消失終わりです

それでは!
603マロン名無しさん:2008/07/26(土) 02:45:21 ID:???
GJ!
今後も楽しみです。
朝倉コナゴナに…。
60455:2008/07/26(土) 21:51:04 ID:???
GJです!どう締めるのか楽しみです。続けて投下します。
605ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/26(土) 21:55:08 ID:???
第十四話「マドンナA」

制服に着替え終わって、あたしは鏡に映る自分に笑いかけた。気持ちのいい朝だった。
始めは不安でいっぱいだったけれど、この時代にもすっかり慣れた。
不便な事や戸惑う事は何度でもあったけれど、今ではそれに愛着がある。
未来にはない物がこの時代にはいっぱいある。
毎日毎日が発見と感動の連続で、この時代に来てからは退屈なんてした事がない。
友達もできた。未来にいたら会う事なんてけしてなかった人たち。考え方もとても新鮮だった。
今の生活は楽しい。心からそう思う。革靴を履いて、あたしは朝の光の中へ踏み出した。
「あら、おはよう」
「あっ、おはようございます」
挨拶してくれたのはお隣りさんだ。一人暮らしのあたしを気にかけてくれている、親切な人。
親切なのはこの人だけじゃない。学校でもみんな優しくしてくれる。
今では学校が始まる月曜日が来るのが楽しみになっていた。
今日も良い一日になるといいな。あたしはそう思いながらマンションの外へ歩き出した。
606マロン名無しさん:2008/07/26(土) 21:57:43 ID:???
「やあ、遅れてごめ・・・」
「遅いっ!」
部室に入った瞬間にハルヒが怒鳴った。
「どうして遅れたの!?理由を言いなさい!」
何だか凄い剣幕だ。こんな言い方をするのも何だが、
十数分遅れたくらいでここまで怒らなくても、と思う。
「・・・ごめん。ホームルームが長引」
「もういいっ!言い訳は聞きたくないわっ!」
机を叩きながらそう言うと、ハルヒは「団長席」に踏ん反り返った。
「・・・君が言えって言ったんだろ・・・」
小声で言ったのにハルヒはぼくをぎらりと睨んだ。耳にマイクでもあるんだろうか。
「たるんでるわ。全く、そんなので宇宙人や未来人が見つかると思ってるの!?」
もう見つかってる。そうじゃなくても見つける気はないが。
ぼくが生返事を返すと、ハルヒはフンと鼻を鳴らして缶ジュースをあおった。
何なんだ一体。とりあえず鞄を机に置くとキョンが出迎えた。
「ツイてなかったな。・・・今日はずっとこうだよ」
疲労が顔に色濃く表れている。一日これじゃあ無理もない。
「一体どうしたんだ?急にこんな・・・」
キョンはハルヒを一瞥すると戒厳令下のように小声で話した。
「ほら、朝比奈さんが休んでるだろ?」
それはぼくも気付いているが・・・。今日も入れて三日、みくるさんは連続して休んでいる。
「だから荒れてるって?病気でもしただけだろ?大体昨日は退屈そうにしてただけじゃあないか」
「連絡したの」
例によって聞こえてたらしい。ハルヒが口を挟んできた。
「団長として団員の体調は把握するべきだから。なのに!
メールも返さないし電話にも出ないのよ!?説教決定だわ!」
空き缶を叩き付けるようにゴミ箱に投げ入れると、ハルヒはむんずと鞄を掴んだ。
「何か、みくるちゃんがいないと調子出ないわ。もう帰る」
そして、止める間もなく部室を出て行った。
「・・・調子って・・・。さっき、たるんでるとか言ったばかりなのに・・・」
後には嵐の中野ざらしにされたぼくらが残るだけだった。
607ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/26(土) 21:59:45 ID:???
「困ったものですね」
置物のように静観していた古泉が呟いた。世渡り上手め。涼しい顔でよく言うよ。
「はは、そう睨まないで下さい。これでも本当に困っているんですよ。
閉鎖空間が多数出現していまして、朝比奈さんに出て来てもらわなくては」
「『閉鎖空間』?」
思わず聞き返したぼくに古泉は意外そうな顔をした。
「おや?・・・ああ、失礼。まだ話していませんでしたね。
『閉鎖空間』とは、平たく言えば涼宮さんが力の一部を使って作った異世界です。
『閉鎖空間』は彼女がストレスを感じると出現し、最終的には現実を飲み込むと我々は考えています」
つまり、ハルヒはかなりストレスを感じていると。ぼくも今のでかなり感じたのだが。
キョンだって同じような気分だろう。そう思いながらキョンを見ると何かぶつぶつと言っていた。
「メール無視されてたの俺だけじゃなかったのか・・・よかった・・・」
咳ばらいをしてようやくキョンはぼくの視線に気付いた。
「あ、いや・・・。それにしても、メールも電話も返さないなんておかしくないか」
ごまかそうとしているようだが、発言には頷ける。
「それだけ体調が悪いとか、大事な用があるという事でしょう」
普通なら古泉の言う通りだが・・・。どうも腑に落ちない。
みくるさんは今時珍しいほど礼儀正しいタイプで、とりわけ相手を不快にさせるような事はしない。
未来から来た彼女に言うのも変な話だが、古き良き「日本女性」らしい人だ。
そんなみくるさんなら、それこそどんな状況でも返事をしそうなものなのに・・・。
「心配だな。一度お見舞いに行こうか」
ぼくの提案にキョンは目を丸くした。
「え。見舞いって、朝比奈さんの家に行くのか?」
「まあ、そうなるね」
「・・・そうか、そうだな。行こう。心配だからな」
表情が緩んでるのは気にしないでおこう。
「古泉と長門は?」
長門は微かに頷き、本を鞄に入れた。承諾だ。古泉は苦笑していた。
「やぶさかではないですね」
心配しすぎだと思っているのだろうか。古泉は積極的じゃあない。
ま、それはともかく、全員でお見舞いに行く事になった。
608ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/26(土) 22:01:46 ID:???
「住所は?」
「知っている」
尋ねるキョンに、長門がすらすらと番地から部屋番号まで答えた。
流石の記憶力だ。これで行き先もわかった。
「じゃあ、出発しようぜ」
そうキョンが号令をかけて、出発しようとした時、ぼくの携帯が振動した。
メールか・・・。携帯を取り出し、画面を開く。誰からだろう。
あれ?どういう事だろう。メールはみくるさんからだった。
ハルヒやキョンに返事をせずになぜぼくに・・・?連絡はしてなかったのだが。
疑問に思いながらも無題のメールを開いた。
「え・・・!?」
絶句するぼくにみんなの視線が集まる。
「どうした?」
代表して質問したキョンにぼくは画面を見せた。
「みくるさんからなんだけど・・・見てくれ」
文面を見て、キョンも言葉を失う。メールの内容はいたってシンプルだ。
「たすけて。となり」これだけが記されていた。異常を知るには十分な内容だ。
「おい、これって・・・」
具体的にはわからないが、何か抜き差しならない状況にあるという事だろう。
「となり」とは「隣」の事か?学校には来てないからマンションの隣の部屋だろうか。
「どうやら、みくるさんのマンションに行く理由が増えたみたいだな」
キョンが頷く。当然、助けに行く。放ってはおけない。
そしてぼくらは部屋の外へと踏み出そうとした。だが、どういうわけだろう。
「ん?お前ら、どうした?」
古泉と長門が動かない。キョンの質問を受けてもそれは変わらない。
「二人とも・・・みくるさんが危険かもしれないんだ。急がなくちゃ」
ぼくが出発を促しても二人はやはり動かない。キョンが不審そうに古泉に近付く。
「おい?」
声を受け、ようやく古泉が顔を上げる。そこにはいつもの微笑はなかった。
そして刺さるような目をぼくらに向けた。
「助けに行く事は、出来ません」
609ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/26(土) 22:06:50 ID:???
予想すらしていなかった言葉に思考が止まった。
ぼくもキョンも返事が出来ない。ぼくらが顔を見合わす間に、古泉が鞄を持って出ていこうとした。
我に返ったキョンが慌ててそれを制止した。
「お、おい。待てよ。どういうつもりだお前」
古泉は振り返ると毅然とした態度できっぱりと断言した。
「ですから。助けには行きません」
何のつもりだ?キョンの表情が戸惑いから腹立たしさを持ったそれに変わる。
「びびってんのか?お前にはスタンドって超能力があるんだろ。
それなのに、お前・・・!」
古泉がこれ見よがしに大きく溜め息をついた。
「そういう事ではなく・・・。いいですか。これは罠かもしれません」
「罠?」
話の意図が掴めず、ぼくは聞き返した。古泉は険しい表情を崩さない。
「そうです。『未来人勢力』の方針が変わり、涼宮さんの独占を狙っているのかもしれません」
「独占」だって?それは、つまり・・・。
「お前、ふざけんなよ」
頭が働かない間にキョンが口を開いた。口調は絞り出すようなものだったが、はっきりとした怒りが表れていた。
「言うに事欠いて、朝比奈さんが俺たちを売ったって言うのか?」
「『売った』?」
古泉が僅かに笑った。普段、彼自身を仄明るく照らしていた微笑みは、今は冷え冷えとした物に思えた。
「これはおかしな事を。『売る』というのは仲間に使う物でしょう?」
キョンの顔がすっと青ざめていく様子が見え、同時に溢れ出しそうな感情をせき止めていた堤防が決壊した。
「お前・・・!」
拳を握り締めて古泉に詰め寄って行く。ぼくには手首を掴んで止める事しか出来なかった。
キョンが離せと怒りを押し殺した声をあげる。古泉はそんなキョンから距離をとった。
「すみません、冗談ではすまない事でした」
目を反らす。ぼくは努めて冷静に反論した。
「古泉、いくら何でも、罠だなんて決めつけがすぎるよ。状況証拠しかない」
「確かに」
古泉は自分を諌めるように同意した。そして、控えめにだが、迷いなく首を横に振った。
「だとしても、やはり助けには行きません」
何かが崩れ落ちていくような気がした。
610ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/07/26(土) 22:09:38 ID:???
「朝比奈みくるが・・・失礼、朝比奈さんが本当に困っている。
例えば『強硬派』に拉致されたとします」
そう、ぼくが真っ先に思いついたのはそれだ。
「だとしても、助けには行きません。」
再びキョンの手に力がこもる。ぼくは手を離さない。
「機関、つまり僕が一番警戒すべき事は、彼女に気をとられている間に涼宮さんを奪われる事です」
正論だった。ハルヒを奪われて利用されたら、
一人の人間とでは比べものにならないほどの惨事になる事は想像に難くない。
同感なのか、キョンの腕に入った力が緩むのを感じた。
「キング・・・いや、クイーンのためにはポーンは犠牲にならなければならないのです」
キョンをじっと見る。長い沈黙の後に目を反らしたのはキョンだった。
「・・・いつまで掴んでんだ。離せよ」
ぼくの手を振り払い、扉に手をかける。そして首だけをぼくたちに向けた。
「・・・俺はそんな事情なんて知ったこっちゃない。来ないなら勝手にしろ」
そう言い捨てて部屋から出て行った。残された二人は動かない。長門も同じ考えのようだ。
「・・・行くんですか?」
一種の諦観を含んだ顔で古泉が言う。答えはわかっているようだ。
ぼくはその期待通りに二人に背を向けた。予定調和的に声が聞こえた。
「本音を言うと、僕もSOS団は嫌いではありません。
出来る事なら裏切り者でなく、助かってほしいと願っていますよ。
ですから、止めはしません。お気をつけて」
溜め息とともに吐かれた言葉を背に、ぼくは部室を出た。
焦っていた。ぼくは焦っていた。
みくるさんが裏切ったという事を信じたわけではない。ただ・・・。
ただ、気付かされたのだ。自分たちがいる世界が考えている以上に危うい。
古泉や長門、みくるさんは少なくとも味方同士ではない。
強硬派との熱戦の裏では彼らの冷戦が繰り広げられている。
みくるさんは助ける。しかしその後どうなるのだろう?
ぼくはどうすれば?思考の迷宮の中に出口は見えなかった。

To Be Continued・・・
61155:2008/07/26(土) 22:13:20 ID:???
以上で投下終了です。
ところで元ネタ考察は全部当たりでした。メジャーな所から選んだとはいえ、
やっぱりわかるものなんですね。
612マロン名無しさん:2008/07/27(日) 08:47:27 ID:???
すげええええGJ!!
裏ではそういう関係だったのか…最初サバイバーの仕業かと思ったw
613イチゴの人:2008/07/27(日) 16:13:50 ID:???
お久しぶりです。投下します。
614イチゴの人:2008/07/27(日) 16:15:56 ID:???
パンナコッタ・フーゴの消失
第十話

〜視点・キョン〜
「ラ・ブリュイエールは言ったわ。『ゆうゆうと焦らずに歩むものにとって長すぎる道はない。辛抱強く準備するものにとって遠すぎる利益はない』ってね。
つまり!どんな目標でも達成するためには地道な努力が肝要なの。そういうわけでがんばるわよ!」
ギリシャの政治制度の例といい、まったくもってハルヒは自分の生き方に都合がいい歴史や格言をどこから仕入れてくるのだろう。そんなもんを頭の中に溜めておくよりも一般常識および他人への気配りなどなど
人間として必要最低限のスキルを身につけるべきだと、これまた毎度毎度思うわけである。
今、俺達SOS団一行は図書館の敷地内。正面玄関に集合していた。「うめく本」なんていうファンタジーチックな代物を探すためである。
「ハルヒ、一つ聞いていいか。一体誰からその噂を聞いた?」
情報源が小学生やボケた老人とかいうんだったら俺は本気で仮病を使ってエスケープするぞ。
するとハルヒは俺の予想をはるかに悪い方向へ超えた返答をしてきた。
「リーゼントのがたいのいい高校生が歩いていたから、それらしい噂を知らないって聞いたら二つも教えてくれたわ!なんでも貸し出し禁止になってる本ってことでどこかの図書館の奥のほうに隠されてるんだって。
後もう一つ、昔凶悪殺人犯だった男が天罰を受けてしゃべる岩になったって話しがあるみたいなんだけど、それは宮城県にあるみたいだから今度の休みに行くとして、今日はその本を探そうと考えたわけ」
なるほど、それは、あれだな。からかわれたってことなんだろうな。
……というか、そもそも何でそんなやつに聞こうと思ったんだ?人は見た目に寄らないとは言ったって、そんな外見の人間が信用に値すると思うか?
まあ、だったらどんなやつが話すオカルト話なら信用できるのかということにもなるのだが、まだ他にいるだろ。図書館員とか。
615イチゴの人:2008/07/27(日) 16:16:39 ID:???
「キョンったらまーったくなんにも分かってないのね。こういう話はね、中高生の間で密かにささやかれているって相場が決まってるじゃない!」
俺は漏れ出そうになるため息を口腔内で押しとどめて、集まっている他の面子の反応を見た。
長門と古泉は……まあ予想通り目だった変化はない。
朝比奈さんは「こ、ここ全部探すんですかぁ〜」と目を丸くして建物を見回している。俺も同感ですよ。正気の沙汰じゃありませんよね。
フーゴは……静かにハルヒのことを見つめている。なんだか落ち着かなくなる視線だ。
そういえば、こいつは一体この後どうするんだろう。ハルヒ暗殺が長門の脅しで不可能になったってことは組織には戻れないはずだし、まさか亡命するつもりなのだろうか?
なんとも気になるところである。任務失敗の責任を取らされて殺される……なんてことになったら、ちょっと寝覚めが悪い。関係ないと言っちゃ関係ないのだが、さすがにそこまで綺麗さっぱり切り捨てることは俺にはできない。
そんな感じでもやもや考えていると、
「それじゃあ私とみくるちゃんは三階、キョンと有希は二階、フーゴ君と古泉君は一階ね。さあみんな散って散って!一時間後に集合ね!」
両手を振り回すハルヒに追い立てられる形で、俺と長門は二階へと続く階段を上った。
二階フロアについて、さて無益な時間をうだうだ過ごしますか、と思っていたら……
「図書館内に新たに知的生命体反応が三つ」
淡い声が隣から聞こえてきた。マジかよ。ついてないな。
「図書館員か?だとしたら早いとこ他の面子に知らせて……」
ところが長門は一回、二ミリほど首を横に振りその考えを否定した。
そして想像もしていなかった最悪の事態を話し出した。
「三名はスタンド使い。パッショーネに所属し涼宮ハルヒ及び任務に積極的でないパンナコッタ・フーゴの命を狙っているものと推測できる」
俺は息を呑み、吐き出そうとしたが、喉仏のあたりでつかえてしゃがれた声が出てきた。
616イチゴの人:2008/07/27(日) 16:18:02 ID:???
イカれたギャング集団はハルヒを何が何でも殺すつもりなのか……!!
「……向こうには居場所がばれているのか?」
「我々の詳細な位置までは特定できていないものと思われる。しかし時間の問題」
長門はそこで言葉を切り、早口で何か呪文のようなものを呟いた。
「……古泉一樹と朝比奈みくる、パンナコッタ・フーゴの三名の携帯電話に現在の状況を記したメールを送信した。また情報障壁を図書館全体に張り巡らし、外部への影響を遮断した。戦闘による近隣住民への被害はない」
俺がショックから立ち直る間にそれだけの仕事をやってしまったらしい長門。
……ってちょっと待て
「フーゴのやつにも送ったのか?いやもちろん、自分が殺されかけてるんだって知れば味方になるかもしれないが……」
それよりなにより真っ先にハルヒを殺して許してもらおうとするんじゃないのか?
普通に考えればそれが自然な気がする。
「大丈夫」
長門の返答は……それだけだった。まあ、こいつがそういうのなら本当に大丈夫なんだろう。少なくとも、フーゴが仲間になるという点では。
「俺には、何かできることはないか?」
「広範囲にわたって構築しているため、情報障壁を増築して涼宮ハルヒ個人を保護する事は不可。よって古泉一樹、朝比奈みくると共に涼宮ハルヒを図書館外に連れ出し安全な……」
そこで長門の言葉が止まった。表情もわずかに面食らっているように見える。
すし屋でスパゲティが出てきても眉毛一本動かさないだろう長門が驚いてるというのは、あまり喜ばしい状況ではない。特にこんな場合は。
617イチゴの人:2008/07/27(日) 16:18:46 ID:???
「敵スタンド使いの能力の解析を終了。階下への移動は不可能と判明」
それがどういう意味か尋ねようとする前に、突然長門が腕を伸ばして胸倉を掴み、思いっきりこちらへ引き寄せる。
直後、ひどく鈍い音がした。
振り向くと、俺がたった今立っていた場所が何か重いものがめり込んだようにへこんでいて、その穴を挟んで不気味な男が立っていた。

〜フーゴ視点〜
僕はもう何度目になるかわからないメールの確認作業を行っていた。
「どうやら、あなたや我々にとってあまり喜ばしくない事態に陥ってしまったようですね」
隣では既に携帯をしまった古泉が苦笑と共に肩をすくめていた。仕草ほど心に余裕がないのは、額に汗が浮かんでいることから分かる。
「ああ……そうだな」
そういいながら、僕はこれからの行動を考えた。これからどうするべき、か。
組織に裏切られた……というのは驚きではあるが、実のところ意外と言うほどでもない。
だから、キレないで落ち着いていられた。
これまで仕事をしてきた中で、幹部連中がパープルヘイズを疎ましく思っているとは薄々感づいていた。もちろんブチャラティ達はそんなこと考えてなかったろうが、一人だけの任務で他のチームと接触するときは常に抱いていた印象だ。
当然と言えば当然だ。感染すれば絶対に死ぬこのスタンドを好ましく思うわけもない。
だからこの機会に乗じて殺そうと考えているのか。
ポケットの中で携帯をいじりながら諦念まじりの思考をまとめた。
そんな事態を避けるためにあまりパープルへイズを使わないよう心がけていたのだが、失敗したようだ。ボスにつけこまれる口実、すなわち任務がうまくいっておらず調査を続行すると報告してしまったのが失態だったか。
いや、それがなくても事故に見せかけて殺そうとした、か。
618イチゴの人:2008/07/27(日) 16:19:27 ID:???
「……僕は、向こうが僕を攻撃した瞬間から戦闘に加わります」
パッショーネの内部情報がここまで詳しく書かれているメールは充分な説得力を持っていたが、それでも長門の罠という可能性を捨て切れなかった。よって妥協案。
「分かりました。……あなたも大変ですね」
そんな微笑と共に言われても白々しく聞こえるだけなのだが、なぜだかその古泉の雰囲気はそんな印象を抱かせず、それを本気で言っているのだと感じさせた。
その言葉を受けて、僕は考えてみる。
大変には違いない。そりゃ、大変だろうな。
だがどういうわけか、自分の居場所がなくなったことに対する絶望は沸いてこなかった。
少し思考を巡らせて、理由に思い当たる。
かつての自分は、組織無しには生きられない、組織がなくなれば僕の世界は終わる。そう思っていた。
だがここにはリアルに世界を終わらせることのできる人間が、少なくとも二人はいる。
長門有希に涼宮ハルヒ。
それと比べて、僕の悩みがどれほどちっぽけなものか。居場所がなくったって、命ある限りどうにでもなる。それが人間というものだ。
僕は、そんな楽観的な考え方をこの任務の途中で知ったのだった。
「なんとかなりますよ。なんとかね」
僕がそう返答した瞬間、足元の床が突然溶け出した。
619イチゴの人:2008/07/27(日) 16:20:55 ID:???
以上ですが、一つ訂正。第十一話でしたね……
620マロン名無しさん:2008/07/27(日) 21:19:50 ID:???
やったあおかえりGJ!
能力を一瞬で判明とは相変わらず長門凄いなwww
621マロン名無しさん:2008/07/27(日) 23:37:17 ID:???
ss初投稿です

はたして魂は存在するのだろうか。
多分大半のひとは「あったらどんなに素敵だろう」と思う程度でNoと答えるだろう。オ〜マイゴット。しかしわたしは断言する、YES!と。なぜならわたしには魂の記憶がある、つまり前世を覚えているからだ。といっても名前を覚えている程度だがね。
ところでわたしは中学卒業後、引っ越しをした。理由は父の転勤というありきたりなものだ。そして明日、北高という学校に登校することになっている。はたしてどんなクラスに入るのか、どんな友人ができるのか、、、非常に楽しみだ。
ついでに言っておこう、わたしの名は"川尻康助"という、なんでも父の恩人の二人から名前を一文字づつ拝借したものらしい。そして父の名は"川尻早人"、前に住んでいた町は"杜王町"。
そして前世の名は、、、

"吉良吉影"
622621:2008/07/27(日) 23:40:37 ID:???
まだここまでしかできてませんorz
しかもPSPからなので投稿に時間が・・・
まぁ取りあえずよろしくお願いします
623マロン名無しさん:2008/07/27(日) 23:45:10 ID:???
PSPw
かなり捻ってそうだな期待
624マロン名無しさん:2008/07/28(月) 13:49:17 ID:???
「前世がジョジョキャラ」とはまた珍しいなw頑張れー
625アメリカの人:2008/07/28(月) 15:57:03 ID:???
第48話 「空条徐倫の消失 9」

あたしが家を抜け出せたのは夜11時をまわってからだった。ママが熱がひいてすぐに外に行くのは駄目だと言って譲らず、結局寝静まってから外に出た。
「病院は自転車で20分くらいだったな………」

病院に到着するとキョンの病室を目指す。病室は個室だった。……古泉が気をきかせたつもりだろうか?あんま嬉しくなさそうな様子のキョンが思い浮かぶ。
すると中から声がした。
「くそったれと伝えとけ」
キョンの声だ。一緒にいるのは……有希か?キョンは声が大きい事に気付いたのか、声を小さくし、聞こえた声はそれ一つだけで、後は聞こえてこなかった。
そろそろかなと見切りをつけ扉を開く。
「よう、話は終わった………か?」
あたしが固まったのは他でもない、キョンが有希の手を握り締め、熱く見つめあっていたからだ。
有希の口がありがとうと動いていた……ような気がする。なるほど、これが未来の有希が同期を拒んだ理由か。
「悪い……また明日来る………」
「い、いや違うぞ徐倫!これは多分お前が今思ってるような意味じゃあない!」
「………………そうか」
「信じてないだろ」
あたしは無視する事にした。
「ところで有希」
「何」
「今回の一件だが……一つだけ納得がいかない事がある」
「なんだよそれ?」
「あたしがアメリカのム所にいたことだ」
626アメリカの人:2008/07/28(月) 15:57:44 ID:???
「どういう意味だ?」
キョンが聞いてくる。
「あたしが別に北校でみくるや有希みたいにトンデモプロフィールを無くして普通の生徒になっててもよかったわけだし……ハルヒや古泉みてーに転校しててもよかった」
「………そうだな」
「ところが実際はもっと違う状況にあたしは巻き込まれた」
はっきり言って理解不能の状況だったがな。帰ってきた今でもあの3日間が信じられない。
「有希……バグったあんたが望んだのは普通の日常って奴だった……あたしがスタンドを持ってるのが不都合で、それを消せなかったとしてもム所はつじつまが合わなさすぎる……どういう事だったんだ?」
有希はまるで言うべき言葉を慎重に選んでいるように長い間沈黙していた。
「………誤作動を起こした私もあなたを涼宮ハルヒや古泉一樹と同じく光陽院に転校させるつもりだった」
「………だった?」
「涼宮ハルヒから時空改変能力を奪い、使用しようとした瞬間、涼宮ハルヒの能力によって抑えられていた強力な“運命”があなた達に働いた」
「珍しいな……長門が運命なんて言うなんて」
確かに……有希らしくもない。
「運命という以外に表現できないような力だった………その運命によってあなた達はアメリカのグリーンドルフィンストリートに収容された」
627アメリカの人:2008/07/28(月) 15:58:24 ID:???
「しかし……ハルヒのトンデモパワーを超える物があったとはな………」
「そうね………」
「ま……あの間違った世界から正しい世界に帰ってこれてよかったぜ」
全くもってその通りだな……と相槌をうとうとした瞬間、
「それは間違い」
有希の平坦な声が響いた。聞き慣れた声の筈だが、今は何故か背筋が凍るような冷たさを感じる。
「どういう意味だよ………」
「……あなたや私、涼宮ハルヒ等にとってはこの世界が正しい世界」
………何を言い出すんだ有希。
「しかし、あなた達スタンド使いにとっては………この世界は間違った世界」
「………まさか……有希はあの刑務所が正しい世界だっていうのか?」
「そう」
馬鹿な……なら何故あたしは間違った世界にいるんだ?それじゃ矛盾しているじゃないか。
「その通り。この二つの世界は本来絶対に交わらない筈の世界……涼宮ハルヒの能力をもってしても不可能」
「じゃあなんで現に交わってんだ」
そう、交わってしまっているのは事実なんだ。一体なんでこうなったのか、それを知るまで引き下がるわけにはいかない。
「先程言った強力な運命と涼宮ハルヒの能力が互いに反応し結び付いた結果……ただしバランスは極めて不安定。
少しでも刺激が加わると二つは離れるか侵食しあう」
それが真相ってわけか………。
628アメリカの人:2008/07/28(月) 15:59:09 ID:???
「……………」
「……………」
「……………」
沈黙が場を支配する。そりゃそうだ、あんな衝撃的な事を聞いて平常心なんて無理に決っている
「有希……一つ聞きたい」
「何」
「あたし達がいるべきだった世界ってのは……どんなだったんだ」
有希はあたしを夜のような黒い瞳で暫く見つめてから口を開いた。
「苦難の道……しかし大きな意味がある苦難の道」
「………今のあたしとどっちが幸せなんだ?」
「………分からない」
「………そうか」
それだけ聞けたら十分だ。
「そろそろ帰るぜ」
「おう」
あたしはベッドで寝転ぶキョンを見て言った。
「クリスマスパーティーまでには退院しろよ」
「……………ああ」
クリスマスパーティーの単語を聞いてから随分と沈んでいる。……なんか嫌な事でもあんのか?……まあいいか。

あたしは帰り道で有希の言葉を思い出していた。
「間違った世界………か」
何が正しいか、それは人によって変わるという。確かに今のあたしは間違った世界にいるのかもしれない。
……けれど、嘘だって本気で信じてみたら一つぐらいは本当になるかもしれない。要するにあたしはこの間違った世界も好きなのだ。何が正しくて何が間違いか、それはその人が信じるか信じないかだ。
あたしはこの間違った世界が正しいと信じている。それだけだ。
「クリスマスパーティー……楽しみだな」

ちなみにクリスマスパーティー当日、キョンがトナカイの姿で放ったあまりにも笑えない一発ギャグをこの時真剣に考えていた事をあたしは知るよしもなかった………。

To Be Continued・・・
629アメリカの人:2008/07/28(月) 16:01:48 ID:???
以上、第48話でした

やっと消失が終わりましたやれやれだぜ

俺は6部は大好きです、嫌いだからってこんな展開にしたわけじゃないよ?…念のため

次の投下は2週間ぐらい先になりそう………気長に待ってください

それでは!
630マロン名無しさん:2008/07/28(月) 20:09:27 ID:???
グッド!!

631吉良吉影?の憂鬱:2008/07/28(月) 21:07:17 ID:???
その1、すべての始まり

翌日、実にハレバレとした気分、例えば"頭を気が狂ったかのようにかきむしるほど"、"急に髪の毛が白黒の素敵カラーになるほど"に興奮している状態で登校している。普段のわたしならちょっとしたハイキングじゃないかと軽く鬱るだろうと思える坂道も軽い足取りで上っている。
はずだった。
何故に今日なのだ!そう、何故今日に風邪をひくのだ!
わたしは今、ベットの上に寝転がっている、予定ではもう学校で自己紹介をしているだろうこの時間に。まぁいつまでもくよくよと悩んでいても仕方がないと、一分でも早く風邪を直すためにさっさと寝ることにした。おやすみ。フーゴォォォ


今、美しい女性の後ろに立っている、非常に魅力的な女性だ。しかし、残念なことにひどくおびえた表情だ。わたしはその女性に、、、
「おまえのその細い首をこの手で、絞め殺してみたい・・・」
ガハッ
目が覚めた。実にイヤな夢だった。最近こういう夢をよくみる。みるだけならまだいい、魂が語りかけてくるんだ。"こいつは吉良吉影だ"と。
反吐がでる、こんな最低なサイコ野郎がわたしの前世だと思うと反吐がでる!わたしが魂の記憶で覚えていることのひとつがこれだ。
632吉良吉影?の憂鬱:2008/07/28(月) 21:31:42 ID:???
本当にイヤになる・・・ああ、さっきにも増して実に鬱だ・・・ん?さっき?今何時だ?
[午前6時]
なんか「キングクリムゾン」とかなんとかいう声が聞こえたような気がした。
「も、もしかしてわたしは、、、約一日寝ていたというのか。まるで素人の当て身をくらった老人のように・・・!」
「ああそうだ、爆睡だよ。後何度も言ってるだろう、その奇妙なたとえをやめろ。」
のうあッ!?わたしはびっくり仰天、突然の声の主を探し、
「なんだ親父か・・」
「なんだとはなんだ、この野郎。せっかく起こしにきてやったのに、お前が言ったんだろう?明日はどんなに風邪でつらそうでも叩きおこせって。」この親父の言葉を聞いて思い出した。今日は風邪でも、体の三分の二をじゃんけんで奪われても学校に行くつもりだったと。
「まぁその様子じゃ熱も下がったみたいだし、今日は学校に行けるな。」といい、さっさと部屋から出ていった親父。はぁ・・・今日は学校に行けるんだ・・・

キングクリムソン!

さて、早くも学校に着いたわたし。わたし自身もこの飛ばし方は少々やりすぎではと戸惑いながら確認する。
ーーわたしは一年五組だったよな、、
633621:2008/07/28(月) 21:39:56 ID:???
はい、見事に荒々しい後半でしたね。
"その1"はこれで1/2終了です。次で"その1"は終わると思います。期待しないで待っててください。
後、見てて吐き気を催すような所あったらどんどん教えてください。全力で直しますから
634マロン名無しさん:2008/07/28(月) 22:19:32 ID:???
うーむ展開が気になる。のんびり急いでくれ!
デッドマンズQ後の話なのかなー
635セッ子:2008/07/28(月) 22:53:58 ID:???
新作はデッドマンズQとは違ったストーリーか、期待。
と同時に少ししたら投下します。
636セッ子:2008/07/28(月) 23:02:16 ID:???
〜これまでの簡単なあらすじ〜
ハルヒの見つけたもぐらすと自宅に帰ってきたキョン。
しかしもぐらすことセッコの逆鱗に触れてしまい、絶体絶命のピンチ。

act4―日伊関係図

637セッ子:2008/07/28(月) 23:02:54 ID:???
「それじゃあ、まず最初は簡単、『ここはどこだ?』」
セッコはそれを聞いて目を少し窄める。
傍から見れば蔑んでいるようにも、笑いを堪えているようにも見える。
セッコはその表情を崩さず俺に向かってこう言う。
「馬鹿にすンのもいい加減にしろよ、キョン。俺がその気になりゃあ、いつでもその首をヘシ折ることはできんだぜ。」
首に突っ込まれたままのセッコの手が俺の頚骨を撫でる。
頭から一気に血が引いていく、しかしここで引くわけにはいかない。
俺はセッコを睨み続けたまま繰り返す。
「黙って答えろ、ここはどこだ?」
セッコの肩がプルプルと震える。どうやら相当きているらしい。
先の俺の挑発もあり、その表情はもう怒りのそれへと変わっていた。
それでも手を下さないのは先の俺の言葉があるからだろう。
「イタリアに決まってんだろーがよォー!それ以外にどこがありえるッつーんだよ!!」
当たり前のことを聞くなというように大声でそう叫ぶセッコ。
そりゃそうだ。
いくら地面に潜れるビックリ人間だって、一端の常識は持っている。
だが今は、現実は違っている。
「そう思うか?」
俺の切り返しに眉根をひそめるセッコ。
その表情の変化を見ながら言葉を続ける。
「理解できるか分からないがもう一度言っておく。
俺は嘘はついてない。この国の硬貨は円。これは変わりようのない事実だ。
何故ならここはイタリアなんかじゃあなくて日本だからだ。
だがお前はここがイタリアだって言い張ってる。話はあらかた聞いたがお前が嘘をつけるような人間だとは思わない。
どういうことか?
つまり矛盾しているのに矛盾していない、ありえない状況が展開されている、学術的に言えば矛盾率の原理への挑戦が無意識のうちに発生しているというわけだ。
矛盾率の原理への挑戦、まぁ具体的な例をあげて言えば座頭市の存在と北野たけしの関係と同じと言っていいだろう、分かるかは知らんが。
でも、今起こっているのはそんな机上で展開される論理学的な内容じゃあないってことは分かるよな?だから・・・」
638セッ子:2008/07/28(月) 23:03:48 ID:???
どうやら話が突飛過ぎたらしい、セッコは目を白黒させている。
もしセッコに電光掲示板が付いていたら『熱暴走中』と表示されるだろう。
「やっぱり無理か。」
「・・・う、うるせー!つ、つまり『ムジュンリッツ・ノー・ゲンリー』ってのがスタンドでその本体をボコボコにすればオレは帰れる!!どうだ!?」
どうやら話のうち耳に届いたのは言葉の響きだけのようだ。
俺は力の抜け切っているセッコの手に自分の手を重ねる。
「角砂糖を持ってきてくれ、とりあえず説明がしたい。な?」
そう言うとセッコは驚くほど素直に俺の首から手を引き抜き袋を拾いにいく。
これは信用した、と言うよりはキャパシティを超えてしまい何がなんだか分からなくなったといってことだろう。
指示を出される側の人間は窮地に追いやられると無意識のうちに指示に従うようにできているのだ。もちろん俺の経験から言えることなのだが。
よたよたとハルヒが渡したビニール袋まで近づき、それを持ち上げる。
中を覗くセッコ。そして予想通りの行動を起こした。
「ちょっとまて、え、ちょ、これ、なに!?嘘だろオイ!!?」
そう、セッコは中を覗いた。と言うことは当然見る筈だ、角砂糖の袋を。
この角砂糖は何の変哲もないその辺のスーパーで売っているもの。
つまり買うのも売るのもこの界隈の人間に限られる。
どういうことか分かるか?
「何だこれ、絵、いや字か?そもそもなんでこんな良く分からんものが書いてあンだよ、キョン!」
そしてやれやれ。久しぶりに何の脅しもなくあだ名で呼んでくれたな。
肩から力が抜けていくのが分かる。
走りよってくるセッコ、その瞳にはちょっと前のような冷たい輝きはなく、代わりといわんばかりに驚愕と好奇心で満たされていた。
さてどこから説明するべきか。
639セッ子:2008/07/28(月) 23:04:29 ID:???
「もっと分かりやすく!」
何度目の説明だろう。
確か説明を始めたのは昼過ぎだったはずなのに、気がつけばもうとっくに晩御飯も食べ終わっている。
しかし晩御飯、アレはまさしく戦争だった。
料理を見るや否や食卓に飛び掛るセッコ、セッコに飛び掛る妹、それを必死で止めるほかの家族たち。
食いっぱぐれることはなかったが、おかげで飯を食う前よりも腹が減ってしまった。
「どうした?キョン。」
それから二時間弱、飯前とあわせると約七時間説明を続けている。
途中で妹の介入や脱線が何度もあったから仕方ないと言えばそこで終わりだが、流石にこれはありえないだろ。
「つまりだな、お前を呼んだのはスタンド使いとか言うのじゃあなくてハルヒ。しかも無意識のうちにやってるから厄介なんだ。
殴っても確実にイタリアには戻れない。むしろもっとややこしくなるからやめとけ。
で、元に戻るためには三つのものが必要なんだ。ビザ、パスポート、それと金だ。
ビザやパスポートは持ってないだろうし、金も銀行に入ってるっつってたがこの辺に外貨を扱ってる銀行はないし通帳もないから望みは薄い。
だからうちでお前の面倒は見る。ここまではいいか?」
おう、と大きく頷くセッコ。
今回ほど簡単にはもうできないからこれでわからなかったらお仕舞いだぞ。
そう付け加えるとセッコはにんまりと微笑み「今回は大丈夫だ」と嬉しそうに言う。
本当だろうな。
「まぁいい、とりあえず分かったってことにする。じゃあ、同居の条件三つ言ってみろ。」
「ひとーつ、喋らない!」
大きく叫ぶセッコ、この時点でもう間違ってるのだがあえて指摘はしない。
「ふたーつ、オレはあくまで大きなモグラ!!」
そして三つ目と身構えていたが、いつまで経ってもセッコは声を上げない。
心配になり振り向いてみるとセッコは何かを一所懸命考えていた。
「おい、どうした?」
「いやよ、スタンドの見えねェ奴にはどう振舞えばいいのよ?」
スタンド、地面に潜られる能力のことか。
「見えないなら見えないで別に関係ないんじゃないか?」
「そうか、じゃあみーっつ、口答えはしない!!!」
「よし、イタリア語で言うところのベネか。じゃあ、そう言うことで大丈夫だな。」
頷くセッコに俺は角砂糖を投げる。
どうやらうまく生活できそうだ。
640セッ子:2008/07/28(月) 23:05:12 ID:???
――――――――
暗い部屋の中に私は居る。
手にはメス、口にはマスク、白衣を纏った私は一見すれば普通の医者だろう。
「さて、終わりましたよ、ボス。」
後ろで控えている男、ボスに声を掛ける。
ボスは頷いて「送っておけ」とだけ部下に指示を出す。
送っておけ、というのは目の前の『荷物』のことだ。
何ともあくどい悪戯だが、これを送れば五月蝿いネズミ共も静かになるだろうという考えらしい。
まったく、ボスらしいといえばボスらしい方法である。
私はというと、実は今の今まですごく興奮していた。
思い返せば、なんとすばらしい経験だろう。人間を生きたままイカのように輪切りにできるなんて。
開いていた左手で血の付いているメスを撫でる。
もっと悲鳴が聞きたい。
「・・・聞いてるのか。」
はっ、と我に返る。
どうやら声を掛けられていたらしい。
「これは失礼しました、ボス。なんでしょう?」
ボスは顔色を変えることなくもう一度私に尋ねる。
「なんということでもない。セッコのことだ。行方不明だと聞いたが、本当に行き先などに心当たりはないのか。」
私は仰々しく頭を下げ、
「申し訳ございません。今全力で探しているのですが、どうやら国内には居ないみたいでして。
もしかするとスタンド使いにやられたのかも・・・」
とだけいいドアに向かって歩く。
ボスもそうかとだけ言い、再び問おうとはしなかった。
641セッ子:2008/07/28(月) 23:06:28 ID:???
ドアを出ると向こうから乾いた靴の音が近づいてくるのが聞こえた。
顔を上げてみればふくよかな小男がこちらに向かってきている。
ここまで来れる人間は限られている。私は迷わずに声を掛けた。
「何か用なのか、ペリーコロ?」
ペリーコロは軽く会釈をし、そのまま私の横を通り抜けていこうとする。
私を無視しようというのか、いい度胸だ。
肩を思い切り掴んでこちらを向かせる。
「親衛隊として知るべきだと思うから尋ねてるんだよ、ペリーコロ。教えてもらえないか?」
「極秘情報だ、まずはボスにお話しなければならない。」
「固いことを言うな。頼むよ、な?」
これ以上絡まれると厄介だと思ったのかもしれない。ペリーコロは私を見上げ、呟いた。
ソリッド・ナーゾと。
聞き覚えがある。ボスの偽名のひとつだ。
それを私が聞き返す前にペリーコロは部屋の中に入って言った。

「まったく、慌しい奴だ。」
乾いた靴の音が廊下に響く。今度は私の靴の音だ。
しかし、と腕を組み、指であごを触る。考えるときのお決まりのポーズだ。
ここで考えるのは他でもない、自分の相棒のことだ。
先ほどスタンド使いにやられたかもとボスには言ったが、そんなはずがないことは長く生活をともにしてきた私には分かる。
あいつは強い。
それも味方の私が恐ろしくなるほどにだ。
そんなあいつが不意打ちでもやられることがあるだろうか、いやないだろう。
ではなぜ・・・
「どこに居るんだ、セッコよ・・・」

――――――――
一方その頃・・・
「そういえば確かお前は角砂糖も知らないっていってたな。ついでにいうとそれもありえないんだよ。紅茶の国だろ、イタリア。」
「知らねェよ。買い物全部チョコラータがやっててくれたし、つーか紅茶はレモンだろ。常識的に考えてよォ!」

to be continued・・・
642セッ子:2008/07/28(月) 23:08:22 ID:???
さーて次回のイタリアはまだ遠くは?
「セッコだ。日本ってどこってキョンに聞いたら『ここ』って言われた。
聞きたかったのはそう言うことじゃあないのによォ。
さて次回は
・スタンドってなあに?
・超不幸な少女
・ミカンのすじ
みたいな内容でお送りするぜ。次回も読んでくれよな!」
※なお、地域によってはお送りする内容が違うこともあります。ご了承ください。

さて後書き。
お久しぶりです。
まず大きな訂正を。
LE BIZZARRE ADVENTURE DI GIOGIO ですね、五部は。
調べもせずに書いたら、最初からひどいことに。
死にたくなってきた・・・
それでは拙い文章ですが何かあればご指摘お願いします。
643マロン名無しさん:2008/07/29(火) 08:39:10 ID:???
ベネベネベネベネベネ!
時系列的には5部以前になるわけか。セッコと妹のやり取り想像すると和むぜ
しかし、輪切り、生きたままっすか…おそろしや
644マロン名無しさん:2008/08/05(火) 16:41:19 ID:???
645マロン名無しさん:2008/08/06(水) 12:10:29 ID:???
今更ですがセッコの人GJでした
>ミカンのすじ
未完(成)のすじ……つまり、
妹「キョンくん! モグラさんとお風呂入るー!」
という展開ですね分かりまs  
646マロン名無しさん:2008/08/06(水) 14:55:13 ID:WofgsHKB
保守age
647マロン名無しさん:2008/08/07(木) 08:07:41 ID:???
セッコはナランチャより頭が悪いと思っている。
648マロン名無しさん:2008/08/09(土) 11:22:07 ID:???
ナランチャは勉強できないだけだがセッコは頭いいシーンないからな
ていうかスタンドバトルの性質上ジョジョに頭悪いキャラっていないよな
649マロン名無しさん:2008/08/10(日) 14:22:27 ID:???
勉強ができるできないではなく発想力や頭の回転の速さが重要だからな・・・あれ?なんで勉強できないんだ?
650マロン名無しさん:2008/08/10(日) 18:32:11 ID:???
ナランチャはけっこう頭いい。
勉強できないのは単に学校行ってないから
頭の中の知識量が少ないってだけで。

逆に考えると学校行ってたらフーゴにならび
天才的頭脳の持ち主になってたかもしれなかったわけだ。
651マロン名無しさん:2008/08/10(日) 22:48:22 ID:???
頭悪いとは言えないが勉強は無理だろ、少なくとも数学や暗記物は
可能性という点では急成長するかもしれんがね、1秒後に突如地球が爆発する可能性は0じゃない的意味で
652アメリカの人:2008/08/11(月) 16:15:08 ID:???
外伝 ジョジョの奇妙なクリスマス

12月24日、俺はハルヒや徐倫達とのクリスマスパーティーを終え、家の布団にくるまっていた。
うとうとしながらもなぜか寝付けず、12時直前の事だ。2階の俺の部屋の窓を誰かが叩いた。
「……誰だ………」
「おい、キョン。とっととこれに着替えろ。時間がねーんだ」
そう言った誰かは俺に赤い服を渡した……ってこれサンタの服じゃねーか!そう言おうと見上げると、
「徐倫!?」
しかもサンタの姿だ。朝比奈さんが着ていたようなミニスカではなく、伝統的なズボンのサンタ姿だ。
「な……なんでそんな格好………」
「つべこべ言わずにさっさと着替えろォォォォォォォ!」
「は……はいーーーーーッ!」

10分後、俺達はトナカイに引かれた空飛ぶそりに乗っていた。
「サンタってなんで始まったか知ってるか?」
当たり前だ。聖ニコラスが貧しい人達にプレゼントを配ったのが始まりだろ?
「正解だ……1か所だけ間違いだが」
「何処がだ?」
「聖ニコラスはスタンド使いだったんだよ」
……………は?
「よく考えてもみろ、いくら聖人だからって家に忍び込んで配れるわけねーだろ」
まともな奴には無理だろーな。
「聖ニコラスのスタンドがどんなだったかは分からない……何度か遺体を調べようって話にはなったけどな」
653アメリカの人:2008/08/11(月) 16:16:22 ID:???
遺体なんて残ってんのか?
「イタリアのバリにある。今でも安置されてるはずだ」
「ふーん……で、なんで徐倫がサンタの格好してんだ?」
「お前馬鹿だろ……いくらスタンド使いでも一人でカバーできる範囲はたかがしれている。聖ニコラスは仲間を集めたんだ」
「なるほど」
「その仲間達が次の世代のスタンド使い達に伝えてさらにその世代が次の世代に伝えて……って続いてきた伝統なんだよ」
信じがたい話だが、嘘とも思えない。……まあ宇宙人に超能力者、未来人までいるんだ……サンタがいてもおかしくはない。
「なあ……じゃあ今日はアナスイとかも………」
『ヘイッ!キョンじゃあねえか!懐かしーな……元気してたか?』
エルメェス!?
『エルメェスはアメリカ担当じゃなかったの?』
『幸い代わりの人が見つかってよ〜〜ここらへんに空きができたって聞いたから無理して変わってもらったんだよ!』
二人が会話で盛り上がる。……話すんなら日本語にしてくれ。英語は分かんねーんだよ。と、その時、
「徐倫〜〜〜〜〜〜〜ッ!」
こっちに猛スピードでそりが走ってきた。徐倫のそりの側に来た瞬間、
ゲシッ
徐倫のトナカイが鈍い音と共にそりに乗った男を蹴った。
「ちくしょ……俺最近こんなんばっか………え?もしかして俺の出番これだけ?……………ちくしょーーーーーーーーッ!」
654アメリカの人:2008/08/11(月) 16:16:55 ID:???
一台のそりが街のはずれの雑木林に落ちるのと同時に2台のそりがこちらにやってきた。
『さっきのそりはなんだ?』
ウェザーさんだ。
『気にすんな』
「……お前達、おしゃべりはそこらへんだ。急がないと間に合わないぞ」
承太郎先生が言う。
「……そうだな。そろそろプレゼント配りに行かねーと」
『んじゃ、また後でなッ!』
エルメェスの声が合図になり、4台のそりは別の方向に向かう。
「なあ……徐倫………」
「なんだ?」
「最初は何処だ?」
「みくるの家だな」
そうか……朝比奈さんの家か………ってハア?

朝比奈さんの家は長門とはまた別の高級マンションだった。
「なあ徐倫………」
「なんだ?」
今俺達は扉の前にいる。
「どうやって朝比奈さんの家に入るんだ?合鍵でもあんのか?」
「無い」
「じゃあ窓から不法侵入か?」
「いや……ピッキングだ。あたしのストーンフリーならそれができる」
そう言って徐倫は鍵穴の前に座る。
「……もしかしてみんなスタンドで鍵をこじあけてプレゼント配ってんのか?」
「方法は人によって違うけどな……開いたぞ」
靴を脱いで忍び足で朝比奈さんの寝室を目指す。朝比奈さんの家は女の子らしいファンシーな小物やカーテンで溢れかえっていた。
「盗んだら犯罪だぞ」
………残念だ。
655アメリカの人:2008/08/11(月) 16:17:33 ID:???
朝比奈さんはベッドでスヤスヤと眠っていた。実にかわいらしい。天使のようだ。
「あんま騒ぐな。起きられたら厄介だ」
ところで……朝比奈さんはどんなプレゼントを欲しがってんだ?
「あーー……ちょっと待てよ……」
そういうと徐倫は持ってきたゴミ袋ぐらいの大きさの白い袋に手を入れる。
「ここらへんに……あれ?おかしいな?どこ行った?」
そういうと徐倫は今度は顔から上半身をまるごと袋に突っ込んだ。……嘘だろ?どう見たってそんな大きさに見えない。
「お……あったあった………」
そう言いながら徐倫は高級そうなお茶とお茶入れを取り出した。
「朝比奈さんらしいな」
「だろ?」
カメラがあったら撮りまくっているであろう朝比奈さんの寝顔と名残惜しく別れを告げると俺達は次の家を目指した。
「で……何処だ?」
「古泉だ」

古泉の家は何処にでもありそうな一戸建ての家だった。……少し高そうな所を見ると古泉の家はそれなりに上流なようだ。
「んじゃいくぞ」
ピッキングを終えた徐倫にせかされ家の中へと入る。中はよく片付けられて小綺麗な印象を受ける。
家具や調度品もなかなか高級だ。いかにも古泉らしく、無性に腹が立ってくる。
「古泉の部屋は2階だ。いくぞ」
656アメリカの人:2008/08/11(月) 16:18:41 ID:???
以上、外伝前編でした

都合によりここらへんでカットです

色々とおかしいけど外伝でからって事で許してね!

それでは!
657マロン名無しさん:2008/08/11(月) 22:34:23 ID:???
まさかこんな外伝…
「GJしろ…職人にはそれが必要だ」
GJ!
658マロン名無しさん:2008/08/12(火) 00:54:00 ID:???
長門殿は起きてるんだろうか。
まあみくるの可愛い寝顔に免じて出番がなかったことも許しちゃえ!
GJ!
659マロン名無しさん:2008/08/12(火) 02:02:40 ID:???
ベネ(GJ)。アナスイの扱いに不覚にも吹いてしまった。
660マロン名無しさん:2008/08/13(水) 23:17:52 ID:???
そうか…。サンタはスタンド使いだったのか…。
どうりで子供がサンタを捕まえようとすると、まぶたが勝手に下りてきたりいつの間にかプレゼントを受け取っていたりするわけだ。
この外伝はいい。
アナスイ最高、GJ!
661マロン名無しさん:2008/08/14(木) 01:39:49 ID:???
サンタ「生きてたな、おめでとう。この聖なる矢に貫かれ…生きていたということはすなわち…
おまえは今…ある「才能」を身につけたということだ…
そうそう、君の故郷は「○○」だったね
あの町の子供はまったくステキな子達だ…
故郷に戻ったらその子達にプレゼントを配るといい、気の赴くままに…」
こうやってサンタは増えてくのか…
66255:2008/08/14(木) 03:52:07 ID:???
お久しぶりです。
パソコンの故障と携帯規制がダブルで来まして投下できませんでした。
ようやくパソコンが直ったので投下します。
663ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/08/14(木) 03:54:12 ID:???
第十五話「マドンナB」

「ったく、何なんだよあいつら」
いつも落ち着いているキョンにしては珍しく荒れていた。あんな事を言われては無理もない。
「……しょうがないよ。きっと二人とも本当は助けに行きたかったはずさ」
自分で言っていて空々しい。推測と言う事すらおこがましい、そうであってほしいという願望だ。
キョンは馬鹿馬鹿しいと言いたげに鼻を鳴らした。
「どうだか。俺は前からあいつらは何考えてるかわからないって思ってたんだ」
キョンがうそぶく。恐らく本音も入っているだろう。だが、それ以上に彼らの言葉がキョンを不安定にしている。
考えてみれば、ぼくたちほずいぶんと異常な世界に放り込まれたものだ。
超能力……スタンドに宇宙や未来からの使者、そして同級生が世界を支配する事すら出来る能力があると知った。
信じられない事ばかりのこの状況で、古泉や長門は頼もしい存在だった。しかし、それは……一方的な思い込みだったのかもしれない。
「キョン、言ってもしょうがないよ」
キョンがぎろりとぼくを睨む。彼自身、腹立たしさを扱いかねているのだ。きっと、さっきの出来事を信じたくなくて。
「……何だよ、やけに落ち着いて。他人事だって思ってるのか?」
皮肉っぽく笑う。楽しくはなさそうだった。
「……わからないぜ。いざとなったら俺たちだって……!」
「キョン!」
ぼくだってショックだ。キョンがいるから努めて冷静になれたが、そうでなければどうなっていたか……。
だから、キョンの気持ちはわかる。しかし、それを言ってはいけない気がした。感情が形になってしまいそうだった。
「……君だってわかってるだろ?ハルヒが襲われたら大変な事になる。こうするしかないんだ」
キョンに返事はなく、そっぽを向いただけだった。ぼくの言っている事の正しさをわかっているのだろう。
……正しい、か。そうだ。今の意見は正論だ。反論なんてぼくにはしようもない。
―――しかし、今のぼくたちに「正しい」って事にどれだけの価値があるんだろうか。友達を見捨てる事よりも価値があるんだろうか。
664ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/08/14(木) 03:55:33 ID:???
結局、それからぼくたちはずっと口をきかなかった。と言っても、考えている事はお互い手に取るようにわかっていた。
その事を口にしたくはなかった。この事はわかっていながら放り出しておいたパンドラの箱なのかもしれない。
ぼくは自分たちの事をまるで誤解していた。「強硬派」からハルヒを、もっと言うなら世界を守るヒーローのような存在だと思っていた。
実際は違う。古泉や長門やみくるさんのバックには組織がいて、彼らはその利害のためにSOS団に集まっている。
その事自体を否定はしない。大きな力の下に人が集まるのは当然の事だからだ。財力や権力や魅力……そんな力に人は引きつけられる。
ぼくだってSOS団に近づいたきっかけはハルヒの異能によってだ。ぼくはそれを否定できない。
ただ……ハルヒがその事を知ったらどう思うんだろう?
もちろん古泉や長門が隠している以上、ハルヒがその事を知る可能性は低い。
でも、知る事がなくても……例えばいつか力がなくなって……みんな離れていって……。
後に残ったのはわがままな少女が一人。誰も関心なんか払わない。見向きもしない。
そして、知る事になる。周りのみんなは全部偽者。一人ぼっちだって。
……その時ハルヒはどうなるんだろう。……「切れ」てしまうのではないか?
……やめよう。みくるさんが危ないんだ。こんな事を考えている場合じゃない。
懸命に振り払おうとしたが、ハルヒは頭から消えてくれなかった。どうしてこんなに気になるんだ?まったく、どうかしてるな。ぼくは。
じっとりとした空気は気分のせいだけではない。もうすぐ、五月も終わる。梅雨という季節が近づこうとしていた。
665ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/08/14(木) 03:56:43 ID:???
「ここだ。ここの五階……にしても、また高級そうなマンションだな」
無言のまま歩き続け、ようやくみくるさんのマンションに着いた。長門のものとはまた違った佇まいだ。
「家賃だけで俺の親父の給料が飛ぶぞ」
遠い目をしてキョンが呟いた。気の毒に。
「どうかな。ぼくだってずっと過去の暮らしには耐えられないと思うよ。案外質素なつもりかも」
時間は偉大だ。ぼくたちは軽口を叩けるくらいには落ち着いていた。
根本的な解決はされてない……でも今は目の前の事に集中しなくては。
幸い、警備は大した事なかった。ぼくたちはちょうどやってきた住人についていき、カードキー付きのドアを突破した。
特に見咎められる事もなくエレベーターに乗り込めた。
「ここが朝比奈さんの部屋……ジョニィ、角部屋だ」
目的の階に着くと、すぐにみくるさんの部屋が見つかった。
みくるさんは「となり」というメッセージを残していた。角部屋という事は、「隣」は一つしかない。
ぼくたちは隣の部屋のドアの前に立ちはだかった。
やはり、「強硬派」なのだろうか?部屋の中に思いを巡らせる。信じたくはないが、裏切った彼女自身と言うことも否定できない。
確実なのは、中にいる人間は危険である可能性が高いって事だ。
そうなると、ぼくはともかくスタンドを持たないキョンは……横目でキョンの様子を窺った。
緊張した面持ちでドアを見つめている。不意に唇が動いた。
「大丈夫だ。ビビッてない……俺だって修羅場は潜って来てるんだぜ」
呪文のようにそう呟くと、口の端を曲げて笑った。意外な言葉に一瞬呆気に取られたが、すぐにぼくも笑顔を見せた。
そうこなくちゃ。さすがSOS団だ。顔を見合わせると、ぼくはインターホンに手を伸ばした。
666ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/08/14(木) 03:57:42 ID:???
ボタンを押すと、短くチャイムが鳴った。程なくして部屋の中から乱雑な足音が響いてきた。
「……なに?」
以外にもドアは開けられた。女性のようだ。チェーン越しに冷たい目がこちらを見ている。
あっさりと反応しすぎている。「強硬派」ではない?頭に疑問が浮かぶ。ともかく今は相手の警戒を解かなくては。
「あの、ぼくたちはお隣に住んでいる朝比奈みくるさんの友達なんです。
彼女、ここ何日か連絡が取れなくて。何かご存知ないですか?」
頭に古泉をイメージして、できるだけ好青年らしく言った。……つもりだったが、女性は眉間に皺を寄せている。
くそ、ぼくじゃ駄目なのか。黙ったままの相手にキョンがさらに追及した。君ならもっと駄目だと思うが。
「何でもいいんです。変わった事はありませんでしたか?」
「……あんたら、学生?」
ぽつりと女性が言った。脈絡のない質問にキョンは目を丸くした。
「え?はい、まあ……」
「……あたしはね、仕事してるの。大事な休みをあんたらみたいな暇なガキに邪魔されたくないんだよッ!失せなッ!」
爆音のような怒声とともに、凄まじい勢いでドアが閉められた。続けて乱暴に鍵を閉める音が響く。
……何か悪い事言ったか?強盗だってもっとマシな応対をされるぞ。
667ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/08/14(木) 04:07:40 ID:???
「……何なんだよ、今の」
キョンが呆然と呟く。交通事故にあった気分だ。
ああいう人もいるんだろうか?個人的には付き合いたくはない。それでも放っておくわけにはいかないだろう。
ぼくはため息をつきながら再びインターホンに指を乗せた。
「お、おい。何考えてんだよ」
キョンが間抜けな声を上げた。何を考えているとはこっちが聞きたい。
「何って、どう考えても怪しいだろ。話をしなきゃ」
毅然として言い放ったが、キョンは明らかに嫌そうだ。……呆れた。さっきの威勢はどうしたんだ。
ぼくはまたため息をついた。今度は呆れからだ。冷たい視線を感じたのか、キョンは慌てて弁解した。
「いや、そう言う意味じゃなく……何か違和感……あ、そうか」
一人で納得したように付け加えると、もっともらしく話し始めた。
「あいつが『強硬派』とか、そんな組織の人間ならもっと自然に振舞うんじゃないのか?
あんな怪しい態度、取るわけがない」
どんな言い訳を言うかと思ったら、案外的を射ている。怪しいから怪しくない、か。
言葉に詰まるぼくを見て、キョンはここぞとばかりに言葉を続けた。
「大体、『となり』の『隣』って『隣の部屋』とは限らないだろ?他を当たったほうがいいんじゃないか?」
……確かに。そう言われてしまうと、反論の言葉が見つからない。
何となくみくるさんの家に来てしまったが、ここがメッセージの場所であるという確証は何もない。
隣の席、隣の教室、隣の部室……どれも怪しく思えてきた。考え込むぼくにキョンが決め付けるように言った。
「いったん学校に戻ろう。まだ朝比奈さんの友達も残ってるだろ」
と、踵を返す。ついて行こうとしたが……でも、やっぱり気になる。未練がましく振り返るぼくにキョンが面倒臭そうに言った。
「……やれやれ。じゃあお前はさっきの部屋に行ってくれ。俺は学校で情報収集する」
体よく難事を押し付けられた気もするが、断る手はない。何かあったら連絡する約束をしてぼくたちは別れた。
668ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/08/14(木) 04:19:20 ID:???
「さて、と……」
ドアが目の前にそびえ立っている。調べなきゃいけないと思うけど、正直ぼくも気が進まない。
さっきのように怒鳴られると思うと身震いする。
ぼくは一通りの罵倒をシュミレートすると、覚悟を決めてインターホンを鳴らした。
少ししてゆっくりとドアが開く。色素の薄い目がぼくを見ていた。目の下に刺青がある、とその時初めて気付いた。
蛇に睨まれた蛙の気分とはこの事だろう。脂汗が滲むのを感じながらぼくは頭を下げた。
「たびたびすみません。ですが、大事な事なんです。みくるさんに何か……」
「ごめんなさい」
……え?謝られたのだと気付くのにしばらく時間がかかった。
顔を上げると、女性は申し訳なさそうにうなだれていた。
「ごめんなさい……あたし、臆病で……突然男の人が来て……緊張しちゃって……許して……」
どういうわけだ?さっきとまるで別人じゃあないか。呆然として見ていると、女性は上目遣いにこちらを見た。
「……許してくれないわよね……あんなふうに怒鳴ったんだもの……」
泣きそうな声を出すものだからぼくも慌てた。これじゃぼくが悪者だ。
「あ、いえ!許すも何も、ぼくも突然訪問したわけですから。気にしてません」
本当はものすごく気にしている。本心とは逆の言葉を言うと女性は顔をぱっと明るくした。
「ほんとう?あなたいい人ね!」
かちゃりと音がした。チェーンが外されたのだ。女性はドアを開けると軽い足取りで奥へと向かっていった。
「みくるちゃんの事を聞きたいんでしょ?入って」
歌うような口ぶりで言うのである。唖然とした。何なんだこの人は。躁鬱の気があるんだろうか?
669ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/08/14(木) 04:20:15 ID:???
通された部屋は結構広い。この女性にそれほど収入があるとは思えないが、そんな良い仕事をしているのだろうか。
「今お茶を淹れるわね。ちょっと待ってて」
お構いなくという言葉を慌てて飲み込んだ。わずかな時間でも彼女が席を外すのなら、これはチャンスだ。
女性がキッチンに引っ込むのを確認すると、ぼくは辺りに目を走らせた。
違和感はない。詳しく調べれば違うかもしれないが、お茶くみなんて大した時間はかからないだろう。
あちこち引っ掻き回すわけにはいかない。収穫なしか……そう思っていると一つの物が目に止まった。
あれは、檻?近付いて覗き込んでみる。底にはおがくずが敷き詰められ、檻の主のための回し車が設置されている。
ハムスター、か。見ると、ゴミのように鼠が檻の隅にもたれかかっていた。
ずいぶん元気がない。ハムスターは夜行性だから、今の時間は静かでもおかしくないがそれにしても……。
まさか、死んでいる?疑問に思って鼠が寄りかかった柵を小突いた。
ぴくり、と頭が動く。眠ってただけか。悪い事をしたと思って手を離そうとした瞬間、息を飲んだ。
「え……!?」
首が、落ちた。もたれかかった胴体から、切り取ったように首だけが切り離されていた。
赤い光沢の残る胴体の内部には何もない。くりぬかれているようだ。
なぜ?どうして?こんな着ぐるみを作るような事を?頭を疑問符が埋め尽くす。
こんな死骸を生きているように檻に入れるってどういう事だ?……異常だ。彼女は異常者だ。
「お茶ができたわよ」
背後からの声に心臓が跳ね上がる。この人が鼠を殺し、内臓をくりぬいた……!何も考えられなくなっていた。
「あ、きゅ、急用で……すみませんが失礼します!」
ぼくはそう言うと出口へと駆け出した。震える手で鍵を開ける。引き止める声も気にならなかった。
670ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/08/14(木) 04:21:03 ID:???
部屋の外に出るとぼくはその場にへたり込んだ。心臓はまだ早鐘のように鳴っている。
逃げて来てしまった……みくるさんが捕まっているかもしれないのに……。
……いや、しょうがなかった。「強硬派」の人間かどうかわからないが、彼女が抵抗しようとしたら、
ぼく一人で取り押さえるのは難しい。殺してしまうかも……もう一人……そうだ、キョンだ。キョンを呼ぼう。
携帯電話を取り出そうとして目線を下げると、奇妙な違和感を感じた。
何だ?妙に床が近いような……まさか!?顔を上げると、廊下がアメフトのグラウンドのように広がっていた。
ぼくが、小さくなっている!?これは、「スタンド攻撃」!?慌てて逃げようとすると乱暴に体を掴まれた。
「このボケがッ!見やがったな!?」
あの女性だ。こいつ、「スタンド使い」!なら、手加減はしていられない。ぼくは爪を回転させ、切りつけた。
「痛ッ!?こいつ、噛み付きでもしたか!?」
そんな馬鹿な。人間の足を切り落とした事もある爪のカッターが、紙で切ったぐらいの切り傷しかつけないなんて!
そうか……!小さくなっているから、その分力も小さく……どうしようもない。ぼくの力では。
奇声をあげながら女……グェスとかいったか……はぼくを部屋に連れ込んだ。
どうすればいい……?小さくされて……かなうわけがない。ぼくは……「元に戻れる」のか……?

To Be Continued……
67155:2008/08/14(木) 04:22:17 ID:???
投下終了です。こんな時間になってしまった……。
672マロン名無しさん:2008/08/14(木) 09:27:43 ID:???
グェスキターーーーーーーー!!
673マロン名無しさん:2008/08/14(木) 12:08:23 ID:???
GJだよネッ!ネッ!
674マロン名無しさん:2008/08/15(金) 20:59:30 ID:???
本家の方じゃグェスが距離とパワーの関係知らなかったりストフリ覚醒してなかったりお互い未熟な状態だったが、果たして
675アメリカの人:2008/08/19(火) 08:45:04 ID:???
外伝続き投下です
676アメリカの人:2008/08/19(火) 08:45:38 ID:???
古泉の部屋はまるで何処かのビジネスマンかと思うような部屋だった。でかい机と椅子、そしてフロイト大先生やフェルマー大先生等の頭の痛くなりそうな学術書ばかりの本棚があり、部屋の隅のベッドで古泉は寝ていた。
「寝顔は見ねーのか?」
どうせいつものにやけ面浮かべてるだけだろ。
「ご明察」
「古泉には何をプレゼントするんだ?」
「本だ。心理学のとびきり難しいやつをな……読むか?」
「遠慮しとくぜ」
んなもん読んだら頭が痛くなりそうだ。俺の頭はそこまでハイスペックじゃないのさ。
「懸命だな」
「次は何処だ?」
「普通の家だ……もしかして有希かハルヒの家を期待したのか?」
「そんなんじゃねーよ」

幾つもの家を配り終え、夜明けも迫ってきた頃、俺達のプレゼントは残り二つとなっていた。
「次は何処だ?」
「お待ちかねの有希の家だぜ」
……なんでお待ちかねなんだよ。
「別に……最近お前有希ばっか見てるしな」
「そんなんじゃねーよ」
徐倫は面白がるような顔を浮かべる。
「分かってるって……まああたしは案外お前と有希はお似合いの気がするがな」
……どういう意味だよ。
「深い意味はねーよ……やっぱハルヒの方が好みか?」
「いきなり何を言い出すんだ」
俺の言葉を聞いて袋を覗いていた徐倫は顔をあげ、少し真面目な顔をする。
「ま、よく考えときなさい」
677アメリカの人:2008/08/19(火) 08:47:14 ID:???
長門の家にたどり着き、鍵を開けて上がる。しかし最近はよく長門の家に来るな。そう思いながらリビングに入ると、
「……………」
長門が沈黙と共にいた。おい、見られたけどいいのか?
「普通ならぶん殴って記憶を奪っておくとこだが……有希なら別にいいだろ」
「………用事は?」
「有希、サンタクロースって知ってるか?」
「知っている」
「なら話が早い……サンタからのプレゼントだ」
「……………」
長門は少し戸惑い、まるで自分に受け取る資格は無いとでも言いたげな視線を向けてきた……気がした。
無表情なのは相変わらずなのでよく分からん。徐倫も俺と同じ事を思ったのか、
「遠慮しなくてもいいぜ。サンタさんはプレゼントを渡すのが仕事だしな」
「………しかし………」
「クリスマスってよ〜〜日本じゃXmasって略して英語だと思ってる奴が多いがよ〜〜
それはギリシャ語で英語じゃねえんだよ!なんで英語でChristmasって書かねえんだ!クソックソッムカつくぜ〜〜〜〜」
「……………」
「……………」
徐倫としてはかたくなに拒む長門を和らげようと放った渾身のギャグのようだが………
「あー……悪い……今のは忘れてくれ………か、代わりにピザの歌でも歌うから!ピザ・モッツアレラ ピザ・モッツアレラ………悪い………」
「いい。受け取る」
確かにこれ以上滑るギャグを言わせるわけにはいかないだろう。……しかし徐倫にこんなにもギャグのセンスがなかったとはな。俺のトナカイの一発ギャグの時苦笑いせずに同情するような目だったのはこのせいか?
678アメリカの人:2008/08/19(火) 08:47:46 ID:???
長門に分厚い本を何冊も渡した後、俺達は最後の家へと向かっていた。
「なあ……何処なんだ?最後の家は?」
「着いてからの楽しみだ」
「まさか……ハルヒ……なわけないよな……無い無いそれは無い………無いよね?無いって言ってくれ………なあ………ほんとに違うよね?」
「……………」
これは確定だな………。

俺達の最後の家は案の定ハルヒの家だった。ハルヒの家は俺の家と同じくらいの大きさの普通の家だった。
「なあ……住所は何処なんだ?」
「残念ながら教えちゃいけない決まりだ。鍵開いたぜ……いくぞ」
そして玄関から忍び込み、リビングの横を通ろうとした瞬間、
「待て……リビングに誰かいる」
なんだと?誰か家族が起きてたのか?
「あたしが見てくる……ここで待ってろ」
徐倫はそう言うとリビングに音をたてずに忍び込む。するとすぐに、
「寝ている……入っても大丈夫だ」
その返事を聞いた俺はリビングへと向かう。するとそこには机に突っ伏して寝ている見慣れた奴がいた。
「………ハルヒ?」
「どうもサンタを捕まえようとしてたみてーだな……見ろよ」
徐倫が指差した部屋の隅には網にロープ、はては何処から手に入れたのか、ネズミ挟みまであった。
「サンタを待ってて疲れて寝たのか………」
「ハルヒらしいな」
679アメリカの人:2008/08/19(火) 08:48:45 ID:???
「で……どうすんだ?」
「ま……プレゼント渡して帰るぜ……と言いたいが………」
徐倫が上司から無茶な命令をされて参った会社員のような顔をうかべる。
「ハルヒがよ……サンタに手紙を出してたんだ」
ああ……フィンランドだかアイスランドにあるサンタ協会とかいう場所か。
「グリーンランドだ……んでその手紙の内容なんだが………」
そう言った徐倫は一枚の手紙を俺に見せる。
『サンタに会わせなさい!』
そうハルヒが書きなぐった文字があった。
「……どうすんだ?」
「ま……こういうのは無視するのが普通なんだが………」
徐倫は言葉を一旦切り、肩をすくめる。
「相手はハルヒだしな、出血大サービスだ……写真撮るぞキョン」
なんでだ?
「今のあたし達がサンタなんだぜ?ほら早くハルヒの横にいけ……タイマー入れたぞ」
徐倫は袋の中から三脚とカメラを取り出し組み立てていた。
「その袋……どんだけ入るんだ?」
「サンタの袋だからな、特別なんだよ」
そしてセットを終え、タイマーを入れた徐倫はハルヒを挟んで俺の反対側に立つ。その瞬間、カメラがフラッシュをたいた。その強烈な光に俺は目を閉じ………

680アメリカの人:2008/08/19(火) 08:53:24 ID:???
「……ハルヒが起きたらどうすんだッ!」
その叫び声と同時に俺は布団から飛び起きていた。………あれ?さっきまで俺は徐倫といたはずじゃ………まさか……夢……だったのか?その瞬間、俺の携帯が鳴る。
「ちょっと!これどういう冗談よ!」
こんな朝っぱらから電話をかけてくるのは常識の無い奴のする事だ。そしてそんな事をするのは俺の周りでは一人だけだ。
「……なんだ、ハルヒ」
「あたし昨日はサンタを捕まえようとリビングで張り込みしてたのよ。そしたら寝ちゃって……で、起きたら写真があったのよ!」
まさか……その写真って………。
「でもいつ撮ったのよこんな写真……あんたと徐倫がリビングで寝てるあたしの横でサンタの服着て立ってる写真なんて……
そもそもキョンあたしの家来た事無いでしょ?」
確かにそうだ……が、昨日の出来事を言うわけにはいかない。
「……合成じゃねーのか?」
「うーん……まあそうなんだろうけどね………だけどねキョン」
ハルヒの声のトーンが少し落ちる。……ヤバい………
「こんなくだらない事であたしを驚かせようなんて1億光年早いのよ!」
こいつはいつになったら光年が距離だと理解するのだろうか。
「聞いてるの!?バカキョン!いい、あんたには罰としてSOS団員全員にお年玉を払ってもらうからね!」

後日、俺は徐倫やウェザーさん、アナスイを問い詰めてみたが3人とも夢を見たんだろうとあしらわれてしまった。
……けどな、俺は今でもあれは夢じゃないって信じている。だって宇宙人に未来人に超能力者がこの世にいるんだ。サンタがいてもおかしくないし、いてくれた方が楽しいに決ってんだろ?
なあ、あんたはどう思う?

ジョジョの奇妙なクリスマス 完
681マロン名無しさん:2008/08/19(火) 10:01:36 ID:???
お、続き来てる!
GJ!ハルヒの願望ってなんとなく
子供っぽい無邪気な物が多いよな。
682マロン名無しさん:2008/08/19(火) 22:31:07 ID:???
ちゅるやさんは絶対スモー(ryを願ってるな
683マロン名無しさん:2008/08/19(火) 23:24:00 ID:???
キョンのプレゼントが見たかったな
この体験?
684マロン名無しさん:2008/08/19(火) 23:55:15 ID:???
かわいい話だったGJ!
685マロン名無しさん:2008/08/24(日) 23:41:14 ID:???
保守
686マロン名無しさん:2008/08/25(月) 00:43:53 ID:???
なんか花京院の続きが無性に読みたい…
687マロン名無しさん:2008/08/26(火) 00:01:05 ID:???
キョンのプレゼントはハルヒの寝顔かな?
688マロン名無しさん:2008/08/28(木) 21:07:22 ID:YgForFj5
続きが気になるなあ
689セッ子:2008/08/30(土) 20:26:05 ID:???
花京院が読みたいといった君…
SS投下はあったのかい?まだだよなァ
投下をするのは花京院の人ではない、このセッコだッ!

投下します。
690セッ子:2008/08/30(土) 20:27:35 ID:???
携帯電話の着信音で目を覚ます。
やはりと言うかなんというか気持ちのいい朝とはいかなかった。
寝ぼけ眼でディスプレイを確認する。どうやらメールが届いたらしい。
送り主は、これはやはりというべきだろう。
携帯の液晶画面にはちかちかと涼宮ハルヒという名前が浮かび上がっていた。
送り主:ハルヒ
タイトル:今日
本文:ちゃんと学校に連れてくるように。
連れてくるというのはもちろん俺のベッドの下でいびきを掻いている奴のことだろう。
断言しよう。
今日はロクな日にならないと。

act5―スタンドってなあに?〜オアシスの謎

オレの日記抜粋
○がつ○にち はれ
こんしゅうは がっこうに いった。
げつようびのあさ なんかWAWAWAとかいってる おとこにあった。
どうやらこいつは スタンドつかいでは ないらしい。
オレの オアシスがみえないことに キョンはとてもおどろいてた。
だからいっただろう。みえないやつもいるんだって。
いっしゅうかんかけて しらべてみたところ おっぱいには みえてない。
ニヤニヤヤローにも みえてない。
カチューシャには みえてる。
だんまりむすめは みえてるのかもしれないし みえてないのかもしれない。
どようびにあった しょんぼりおんなには みえていた。
こんびにの みかんのすじにも みえていた。
みかんのすじは のうりょくもだせた。
どろどろしてた。どうやらにんげんからなまハムをつくりだすのうりょくらしい。
つかいどころがきになる。
691セッ子:2008/08/30(土) 20:32:50 ID:???
いつもの通学路。青々とした木々が朝のさわやかな風に吹かれている。
なんでもない日常の風景。こういう風景を何の感慨も無く見ることのできていた頃が懐かしい。
今となってはこんな風景すらも愛おしく感じる。
そこまで追い込まれるくらい俺の周りは非日常的過ぎるのだ。
「どうかしたのか、キョン?」
俺の前を地中から半分体を出した状態で進んでいたセッコが振り返りそう声を掛ける。
一般人ならここで目がおかしくないかと確かめるところだろう。
しかし俺はもうそんなことはしない。
信じられない現象ならあらかた経験してきた為の慣れかもしれない。
朱に交われば赤くなると言うように、俺の感覚はすでに麻痺してしまっているのかもしれない。
とりあえず言える事は、この状況を無理やり納得しているということだ。そうしないとすぐに精神的にまいってしまう。
「オラ、さっさと行くぞー、キョン!」
分かったから叫ぶな。昨日喋らないと約束したばっかりだろ。
「おう、そうだったな。気をつけるぜェ。」
気をつけるぜ、じゃ無くてだな。とそこまで声を掛けて俺はあることに気がついた。
足音が近づいてきている。音はすぐ先の曲がり角の先から聞こえている。このままじゃやばい。
俺は一気にセッコに近寄り地中から引っ張り出し、後ろに突き飛ばす。

「WAWAWA綿流しー、っと」
角から現れたのは俺の級友、谷口だった。俺は胸をなでおろす。こいつなら心配ないだろう。
常識のある人間が見ればセッコは茶色い全身スーツを着込んだ変な男でしかない。
しかしこいつなら、と俺は谷口のほうを見やる。
谷口も俺に気づいたらしく、足を止め、こちらに向き直す。
「よぉキョン、おはよう。」
ああ、おはよう谷口。
「疲れてるみたいだな、大丈夫か?」
大丈夫だ。倒れるほどのもんじゃない。
「そうか、無理すんなよ。それよりお前英語の宿題やった?」
いや、やってない。あることすら忘れていた。などと、その場で何気ない会話を繰り返す。
だんだん崩れていく日常の中で、自分も一般人だと思い出せる大切な時間だ。
しかし、そんな日常も瞬間で音をたてて崩れ去った。
「ところで、そいつ誰?知り合いか?」
692セッ子:2008/08/30(土) 20:36:46 ID:???
ゆっくりと俺の斜め後ろを指差す谷口。この光景に俺は既視感を覚える。
そう、それは確か昨日妹と玄関で遭遇したときだ。
…嫌な予感がする。
振り向きたくない。オチが見えている。
「大丈夫なのか?」
谷口が不審そうな声を出す。もう腹をくくるしかないらしい。思い切って振り返ってみる。
やはりというべきか、セッコは後頭部を押さえてもんどりうっていた。
どうする、どうすればいい、どうするべきか?
俺は頭をフル回転させる。何とか言いくるめて逃げなければ。
「で、キョンの知り合いなのか?その長髪の兄ちゃん。」
言い訳を考えている俺の耳にその一言が届く。今、谷口はなんといった?
「長髪?」
そう問い直す俺に、谷口は怪訝な顔をする。
「ああ。そこの変な模様の緑色のスーツ着た長髪の兄ちゃんだよ。」
どういうことだ。セッコのスーツは茶色だし、髪など一本も見えてない。
じゃあ谷口には何が見えているんだ?
先ほどよりも嫌な予感が頭をよぎる。
もしかして、俺とは別の格好で見えているのではないか。
あくまで可能性の話だが、本当にそうならば危ない。俺は思わず緊急脱出を試みる。
「あ、あれ朝倉・・・か?」「何ィィイイ!!?」
バッと俺の目線の先のほうに顔を向ける谷口。その間に俺は急いでセッコを無理やり地面の下に押し込む。
しかしそこまで急がなくても良かったらしい。
谷口は「ちょっと見てくる」といってそのままいるはずの無い人物を探しに走っていってしまった。
どうやら助かったようだ。

両手をゆっくり道路から引き抜く。
不思議な感触だ。沼に手を突っ込んだらきっとこんな感じだろう。
違和感を覚えたのは少し経ってからだ。
上がってこない。いくら待ってもセッコが顔を出さない。
「おいセッコ、どうした?」
へんじがない、ただのしかばねのようだ…と、そんなことを言っている場合じゃない。地面で溺死なんて死因としてどうなんだ。
693セッ子:2008/08/30(土) 20:42:10 ID:???
「おい、嘘だろ?セッコ!」
一気に手を突っ込み、セッコの体を探す。
生コンのようになった道路が腕にまとわりつく。だが気持ち悪いなどといっている場合じゃあない。
制服が汚れるのも気にせず、両手を突っ込み沈んでいるだろう体を捜す。しかしどれだけ腕を振り回しても指先に触れるのは泥のような道路だけ。
「もしかして、本当に…」
瞬間、後ろから強い力で押し倒される。手をつき体を支えようとするが、手は虚しく沈んでいく。
そのまま手が、肘が、二の腕が、と沈んでゆき、ついには顔が、という寸でのところで救いの手は伸ばされた。
「オイオイ、そのまま沈むなよ。普通の奴なら息できなくて死んじまうからなァ。」
肩から上をひねり後ろを確認すると、そこにはいつものように茶色いスーツを着込んだセッコが立っていた。
「キョンよォ、俺になんか恨みでもあんのか?いきなり突き飛ばすわ、いきなり地面に押し込むわ。普通の奴なら死んでンぞ。」
そう言いつつ俺を引き起こすセッコ。
「普通の奴なら地面に潜れないし心配ないさ。」
悪態をつく俺、だがセッコはさほど気にせずにまた歩き出そうとする。が、そうは問屋が卸さない。卸すはずがない。
少しいいか?セッコ。
「アァ?」と顔だけをこちらに向けるセッコ。やはりスーツは茶色だし髪は見えてない。俺は一応セッコに聞いてみる。
「お前のスーツは茶色だよな。」
当たり前の質問。そう、国語の教師に日本語が読めるかと尋ねるくらい当たり前すぎて逆にふざけるなと言われるような質問だ。
「ん?オアシスは茶色だな、下は緑だけど。」
答えなんて最初から決まっている。当たり前なのだ。俺は色盲じゃない、それなら真実はいつもどおりひとつだけ。そうスーツは茶色…
「ちょっと待て、下?」
再びの俺の問いにセッコは不思議そうに首を傾げるが意味が分からないのはこちらの方だ。重ね着なのか?
しかしそれでは腑に落ちない点がある。どうして谷口には茶色いスーツは見えず、緑色の下スーツだけが見えているのか。
694セッ子:2008/08/30(土) 20:45:09 ID:???
その質問にセッコはさも当たり前と言うようにこう返した。
「そりゃそうだろ。重ね着してなきゃオアシス見えない奴には俺は全裸に見えるんだぜ?いくら俺でもそんな恥知らずな事しねェーっての。」
ほら、と頭の部分、フェイスマスクのようになっているスーツの一部を持ち上げ、そのまま一気に脱ぎすて、立ち上がる。
そこには確かに谷口の言っていた長髪で緑のスーツの男がいた。

ちょっとまて。
理解不能!理解不能!理解不能!理解不能!理解不能!
どういうことだ?オアシス、あの茶色スーツが見えない奴がいるのか?じゃあなんで俺には見えているんだ?
何にも分からない。
RPGの混乱というコマンドはこういう場合に発生するものなのだろう。
考えても考えても頭の中の歯車はカラカラと高速で空回りを続けている。
あーでもない、こーでもない。そーでもない、もうどーでもない。
そんな俺を見かねたのか、セッコがオアシススーツを着ながら俺に声を掛ける。
「知らねェのか?スタンドのこと。」
スタ…ンド…?

小一時間後。
セッコの分かりにくい説明を聞き、ようやく理解可能状態になった。
大学入試のように百字要約するとこういうことらしい。
つまり今まで俺が服だと思っていたのはスタンドという精神の像。
スタンドはスタンド使いにしか黙認できないため、一般人にはその下のスーツと髪が見えている。俺には素質があるから上のが見えている。
以上、丁度百字。
そうなるとここにこいつがいる理由も分かる。
ハルヒが望んだ超能力者、その一端にいるのがスタンド使い。つまりその代表としてセッコがハルヒに引き寄せられたのだ。
しかし、とここで俺は頭を抱える。モグラとして扱うという計画が総崩れになった。
家族にはきっと昨日のアレは食卓で暴れる三十路前の男にしか見えていない。
胃が痛い。ここまで胃が痛くなるのはSOS団創立当時以来だ。
腹を擦ると同時に腕につけた時計に目をやる。
時計の単身と長針は仲良く授業開始十分前を指し示していた。
どうやら神様は俺を休ませないつもりらしい。
695セッ子:2008/08/30(土) 20:52:02 ID:???
「遅い!何でこんな日に限って遅刻するのよ!!」
教室に入り最初に掛けられたのは、教師のお咎めではなく団長の怒声だった。

あれから、俺とセッコは学校に直で向かった。
学校に着いた時には一時間目も終盤に迫っているだろう、と言うような頃。
俺は雨にも風にも怒号にも胃の痛みにも負けず積み上げてきた皆勤を諦め、そのまま部室を目指す。
何故かって?教室に不審者は入れないからさ。
旧校舎の廊下を二人で歩き部室の前まで足を進め、ドアノブを回す。無用心ではあるが鍵はかかっていない。
ゆっくりと扉を開けるとそこには、
「長門…?」
いつものように窓辺で本を読みながら宇宙人がたたずんでいた。
これが放課後なら大して驚きもしなかっただろう。しかし今は朝。しかもそろそろ二時間目も始まる頃ときているのだ。
座り込んだ長門はというとそんな事も気にしていないのか気づいていないのか、膝上の本に目を落としている。
授業に出なくてもいいのかという俺の質問にも答えず、その白い指は一枚一枚確かめるようにページを捲り続ける。
次の瞬間、その機械的な動きがぴたりと止まった。
「オイ、どーしたァー?」間の抜けた声が俺の背後から聞こえる。もちろんセッコだ。
喋るなといっておいたのにこれだ。もうどうしようもないかもしれない。
長門は気にせずゆっくり本を閉じ、これまたゆっくりとした動作で立ち上がり、そのまま、セッコのほうへと足を進める。
「…何モンだ、テメェ。」咄嗟にセッコが身構えるが、何事もないように俺の質問も無視したまま長門は近づいていく。
「待っていた。」と聞こえるか聞こえないかくらいの声でそう呟き、手を伸ばす長門。
しかしセッコはその手を振り払い長門の首を掴んだ。
「質問ッつーのはちゃんとした答えで返すもんだぜ、学校で教わんなかったのかァ?」
音が聞こえそうなくらい思い切りその首を絞める。
長門はというと顔色一つ変えずにじっとセッコのほうを見つめている。
こいつはまたやばいことになりそうだ。俺はとりあえずセッコをなだめる。
「やめろ、そいつは敵じゃあない。」「アァ!?どーしてそんなことが言えんだよ!!」
「どーしてって、そいつは俺の知り合いだ。」
696セッ子:2008/08/30(土) 20:58:12 ID:???
さるさん受けたので続きはまた後日。
697マロン名無しさん:2008/08/30(土) 21:12:27 ID:???
投下乙です
>俺には素質があるから見えている。
ひょっとしてキョンが覚醒する展開もありうる?
698マロン名無しさん:2008/08/30(土) 22:42:31 ID:???
6部以前のルールなら既に発現してるかな
そんなんどーでもいいけど。GJ!!
699マロン名無しさん:2008/08/31(日) 09:33:05 ID:???
乙・乙♪乙・乙♪セッコ乙♪
ところで緑の服とかって公式設定?
別に非公式でもいいけど。
700マロン名無しさん:2008/08/31(日) 10:08:54 ID:???
まさか
チョコラータとお揃いでいんじゃね?w 「オアシス」っぽいのも
701アメリカの人:2008/09/01(月) 16:38:43 ID:???
いいや、限界だッ!投下するねッ!
702アメリカの人:2008/09/01(月) 16:40:47 ID:???
第49話「シーズ・ア・ミステリー 1」

そこでは一つのボールを巡った熱き戦いが繰り広げられていた。肉体がぶつかりあい、俊敏な動きで立ち塞がる敵の壁を華麗に追い抜く。そこにあるのは勝つか負けるか……一瞬でも気を抜いた瞬間殺られる………まさに戦場………
「なんだってアメフトの試合なんか見てんだろーな……俺達」
「有希に一目ぼれした奴を見にくるためだろ……ちくしょー!クォーターバック何やってんだ!そこはランじゃなくてパスだろ!」
そう、徐倫の言った通り俺達は長門に惚れたとかぬかす俺の中学のクラスメートを見に来ていた。俺に電話をかけ、長門への愛を語ったそいつは長門に自分の事を知って欲しいと所属するアメフト部の試合を見て欲しいと言ってきた。
最初は俺と長門だけで見に行くつもりがアメフトと聞き付けた徐倫とアナスイ、そして最近ハルヒと知り合い気に入られ、門外顧問の腕章を押しつけられたウェザーさんの3人がノリノリで、結局SOS団全員で見にくる事になった。
「……にしてもアメフト随分詳しいんだな……」
「アメフトの嫌いなアメリカ人なんかいねーよ……いいぞレシーバー!ナイスキャッチ!」
「ねえねえ徐倫」
ハルヒだ。
「アメフトのルール教えてくれない?」
「構わないけど……何すんだ?」
「もちろん草アメフトに参加する為よ!」
………まだ草野球に次ぐその野望を捨てて無かったのか。
703アメリカの人:2008/09/01(月) 16:41:32 ID:???
試合は地味な展開が続いていた。タッチダウンは無し、ロングパスが通ったりランニングバッグが独走したりも無し。お互いファーストダウンを奪い合うくらいでフィールドゴールでぽつぽつ点が入るぐらいだ……が、不思議と面白かった。
それは………
「今のはクォーターバックの判断ミスだな……ラインに空きがあった」
「ああ……あの46番が穴だな……35番を張り付かせてランで行くべきだろ」
『いや、むしろパスが正解だろう……ここのランニングバッグそこまで速くはなさそうだ』
と、SOS団のアメリカ人3人組が細かい解説をいれてくれるからだ。古泉の解説だとムカつくだけだがこいつらならそう癪にはならない。地味な展開が大嫌いなハルヒですら解説に聞きいって楽しんでいるようだ。
「………これなら今度草アメフトに出られるわね……人数も足りそうだし……よし、出てやるわよ!」
………訂正、徐倫……頼むからハルヒに興味を抱かせるな………。

それは試合が第2クォーターの中盤にさしかかった時だった。
「………キョン」
今迄おおはしゃぎしていた徐倫が俺にこっそり顔を近付け囁いてきた。
「………誰かがこっちを見ている」
そんな奴いくらでもいるだろ。
「違う……殺気を放ってる……普通の奴じゃあない」
「僕もさっきから気になっていたところです」
『俺もだ』
704アメリカの人:2008/09/01(月) 16:43:03 ID:???
古泉とウェザーさんが口を挟んでくる。
「どうします?」
「行ってみる……古泉、ハルヒを見張っててくれ………」
「分かりました」
返事を聞いた徐倫はウェザーさんと共に、殺気を放っているという人物のところへ向かう。
「キョン、お前もついてこい」
「………なんでだよ」
「何となくだ」
仕方なしについていく……ま、興味が無いと言えば嘘になるしな。徐倫が向かった先は黒いダッフルコートにジャラジャラと飾りのついたシャツとジーンズを着た男だった。
「随分と派手に殺気放ってるじゃねえか……覚悟はできてんのか?」
「当たりめーだ……てめぇらをぶっ殺す覚悟ならな………」
「そうか……ならくらいなッ!ストーンフリーッ!」
その瞬間、敵がスタンドを出し、ガードしたらしい。ウェザーさんがあらかじめ渡してくれていたスタンドの見えるカメラを取り出しカメラを覗く。
スタンドは人型だが、手と足がアルミの針金のように細長く、全身幾何学模様で、目や鼻、口は無い。うむ……結構気持ち悪い。
「なかなか素早いじゃねーか……オラァッ!」
徐倫がさっきよりもより強く早く殴る。するとあっさりガードを弾き、敵にパンチが当たった。
「ぐ……う………」
「情けねーな……その程度か?」
「………フン……お前達はもう遅えんだよ………」
「負け惜しみだな……トドメだ!くらいなッ!」
「人間はよ……なんで服が変わっても同じ人を認識できるか知ってるか?」
いきなり何を言い出すんだ?
705アメリカの人:2008/09/01(月) 16:44:56 ID:???
「それはな……忘れるからだ……細部まで覚えずにおおまかな形でけ覚えるから認識できるらしいぜ…鳥とかはこの働きが弱いから石が一つ増えただけで場所が分からなくなるらしーぜ」
『………!まさか………』
「その機能が止まったら……こうなんだよぉ!」
男がダッフルコートのフードを被る。と、その瞬間、
「奴が……いない!?」
そこにはダッフルコートのフードを被った男がいるだけだった。さっきの奴だと理屈では分かっているのだが、脳みそは別人だとひっきりなしに言っている。
「こういう事だ……お前達の脳が俺の姿を判断できなくなる……声とスタンドは判断できるだろうがな」
確かに声と、カメラを通じてスタンドは見える。
「俺達の目的は涼宮ハルヒだ……あばよ、そこでウロウロしてな」
男はタバコを取り出すと何処かに行ってしまった。
「マズいな……キョン、古泉に電話しろ。ハルヒを別の場所に移す」
俺が携帯を取り出すと見計らったように鳴り出した。古泉からだ。
「もしもし?」
『すいません、大変な事になりました』
「こっちもだ…敵のスタンド使いの攻撃をくらって敵を見失っちまった。ハルヒの方に向かってるからどっか別の場所に移してくれ」
『……なるほど、これは敵スタンド使いの攻撃だったんですね』
……まさか、てめーも………。
『その通りです……参った事に涼宮さんは寒くなったとか言って手袋をはめてしまいまして……見失いました……実を言うと僕ももって来ていた手袋をつけてしまいまして……涼宮さん達にも僕が誰だか分からないはずです』
クソッ……あいつの思惑通りじゃないか。
『朝比奈さんとアナスイは一緒にいます……この二人は服装が変化してないから分かるはずです』
その時、グラウンドが騒がしくなり始めた。選手が交代の為にヘルメットを脱いだ瞬間、誰が誰だか分からなくなってしまったのだ。
「こいつは……目的の為なら他がどうなろうが構わねえって訳か………」
みたいだな……徐倫、絶対に捕まえるぞ。許すわけにはいかない。
「当たり前だ」

To Be Continued・・・
706アメリカの人:2008/09/01(月) 16:46:41 ID:???
いじょうです

それでは!(みじけぇwww)
707マロン名無しさん:2008/09/02(火) 21:29:55 ID:???
乙しろ犬どもがぁーっ!
708マロン名無しさん:2008/09/03(水) 17:24:37 ID:LWESGe6o
乙ッ!支援せずにはいられないッ!
709セッ子:2008/09/04(木) 21:38:53 ID:???
乙です。
識別できなくなるスタンド、ミューミューを彷彿とさせる恐怖ですね。
草アメフト…(使おうと思ってたなんて口が裂けてもいえんな。)

前回の続き投下します。
前回とあわせて一話になります。
710セッ子:2008/09/04(木) 21:40:10 ID:???
ところで、と典型的な日本人の切り出し方で俺はもう一度長門に声を掛ける。
「…何?」
「待っていた、っていってたよな。どういう意味だ、授業にも出ないで?」
その問いかけに対し、長門はいつもの無表情で淡々と答える。
「彼とあなたが来るのを待っていた。
先日未明に小規模な情報の変改がイタリアと日本の間で起こった。情報変改の原因はやはり前回と同じく涼宮ハルヒ。
内容は三年前の情報爆発のような世界規模のものではなく、もっと単純なもの。
イタリアと日本を空間的境界に亀裂を生じさせ、そこから珍しいものを取り寄せる。
それは涼宮ハルヒ自身が望んだことかもしれないし、偶然が重なっただけかもしれない。
しかしその結果として一人の人物が呼び出された。それが、彼。」
そういってセッコを指差し、また続ける。
「しかし呼び出されたものと涼宮ハルヒの接触、それによる情報遊爆の可能性。それを私の上は恐れている。
彼の能力と行動、それによる涼宮ハルヒへの影響、どんな些細な変化も見逃してはならない。
それが今回の変改に対する私の上の見解。それに従い私は行動する、そのために待っていた。」
つまりはこいつを監視するため、ということか。
「そう。」とこれも分かるか分からないかという程度に頷く長門。
なるほどな。どうやら俺の昨日の予想は的中していたようだ。
またあいつが迷惑なことを起こしている。しかも今度は現在の状況だけ言えば俺だけに対して超個人的に迷惑を掛けるというもの。
回りに迷惑を掛けているなんて毛ほども思ってないからもっと面倒だ。
肩をすくめ溜息をつく。同時に腹も押さえる。今朝と同じようにきりきりと胃が痛みはじめたのだ。
胃の痛みの原因1は今教室で授業を受けているだろう。
原因2は例によって例のごとく説明の意味を理解できず、備え付けの窓から外を飛ぶ蝶々を眺めている。
711セッ子:2008/09/04(木) 21:41:02 ID:???
「それで、今から俺とこいつはどうすればいい?」
しばらく沈黙が続き、時間的にも精神的にも耐えかねそう尋ねる。
すると長門はさも当然と言うように
「彼については問題ない。彼を一人でおいていても問題がないことに確証が得られるまでここで私が面倒を見る。
あなたはいつもどおり授業を受けてくれていてかまわない。」
と答えた。
面倒を見る、って授業にも出ずにか?
「それについても問題ない。授業には出なくてもついていけるように造られている。」
でも…
「大丈夫。」
そういう問題じゃないとも思うが、本人がそれでいいのならいいのかもしれない。
俺は身を転じ、ドアのほうへと向かう。
「オイ、どこ行くんだよーキョン!」
悪いセッコ。今から授業を受けに行かなければならないんでな、放課後までここで長門と大人しくしてろ。
「こいつと?」
そうだ、まさか嫌だなんていわないよな。
「だが断る!!このセッコが最も好きな…って、オイ聞いてんのか?」
ギャーギャーほざくセッコをおき、そのまま部室を後にする。
次に目指すのは、原因1が待つ教室。

結局俺は二時間目途中から授業を受けることになり、
ハルヒからは「遅い」と絡まれ、谷口からは「どこ探してもいなかった」と泣きつかれ、
散々な気分で迎えたくもない放課後を迎えた。
712セッ子:2008/09/04(木) 21:42:24 ID:???
終礼の終了を告げる残酷なチャイムが鳴り響く。
「ほら、早く!急ぎなさいよ!!」
そう声を教室中に響かせ、乱暴に俺の手をとって進もうとする女。
この女の事はたとえ健忘症になったって忘れることはできないだろう。
暴虐無人、唯我独尊、自己中心の象徴ことSOS団団長涼宮ハルヒである。
急げ、と言うのは今日もあの奇妙な活動があるからだ。
しかし俺はというとまだ荷物の整理も心の準備もできていない。できることならこのままとんずらしたいくらいだ。
しかし、今まで同様それを目の前の女が許すはずがない。
「さっさとしないと、もぐらすが逃げちゃうかもしれないでしょうが!」
もぐらす・・・ああ、セッコのことか。
そういえばこいつはまだセッコのことを地底怪獣だかなんだかと思ってるんだったな。
そこでふと、今朝のセッコとのやり取りを思い出す。
手を引かれ、部室に向かいながら自然な流れで俺はハルヒに問いかける。
あいつは本当に地底怪獣なのか?
するとハルヒは勢いよくこちらに向き直り喋りだした。
「当たり前じゃない。あんた何、もしかして脳ミソがクソでできてるの?
地面に潜れる上に、保護色の茶色。どっからどう見てもそうだったでしょ。」
しかしだな。
「じゃあ何、あんたあんな大きさのモグラがそこら辺にウジャウジャいると思ってんの?」
そう言ってまた先ほどのように俺の手を引き歩き出すハルヒ。
やはりハルヒにはあいつが茶色に、そう、オアシススーツが見えている。
つまりこいつもセッコの言うところのスタンド使いという奴なんだろう。
能力は、やはり世界を思い通りにするといったところだろうか。
それとももっとタチの悪い能力が今から生まれるのか。
それはまだ誰にも分からない。

to be continued…
713セッ子:2008/09/04(木) 21:50:20 ID:???
以上、日は空きましたが投下終了です。
なに?前回の次回予告と内容が違う?
それは作者が旨くまとめきれなかったからだよ。
逆に考えるんだ。
「これから三〜四話分の予告だった」と考えるんだ。

それでは拙い文章ですが何かあれば。
714マロン名無しさん:2008/09/04(木) 23:12:36 ID:???
乙!長門とセッコの絡みが楽しみだぜ!
71555:2008/09/04(木) 23:51:10 ID:???
GJ!二人ともスタンドが見えるんですね。……待った。確かキョンの妹も「もぐらくん」とか言ってましたね。
……ひょっとして、キョン家ってスタンド使いの家系?続けて投下します。
716ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/09/04(木) 23:53:34 ID:???
第十六話「マドンナC」

「みくる!みっくるゥ!みっくるんるゥん!」
「グェス」は奇声をあげながら部屋に入ると、ぼくを水槽に投げ入れた。
宙を舞う間、セーラー服の少女が視界を掠めた。
激しい衝撃とともに地面に叩きつけられると、朦朧とする暇もなく悲鳴が耳を突いた。
「どう?お友達が来てくれたのよ。嬉しいでしょ?」
グェスの口から出たのは人形遊びをする少女のような台詞。しかし、その手に握っているのは生きた人間、みくるさんだ。
まただ。そうぼくは思った。また笑っている。直前の怒りに歪んだ顔が嘘のようにグェスは笑っている。
「さ、みくるちゃん。続きしよっか。お友達にも見せてあげようよ」
「続き」だって?嬉々とした表情はこの状況では不気味でしかない。拷問。最悪の二文字が頭をよぎる。
小さいぼくたちを痛めつけるなんてこいつにとってはわけもない。
例えば、今みくるさんを握っている手に力をこめれば?女性の力でもミニチュアサイズの人間を捻り潰すには十分だろう。
ぼくは最悪の事態を覚悟した。が、グェスがとった行動は一見拍子抜けするようなものだった。
グェスはみくるさんを文鳥のように肩に乗せ、一言。
「飛んで」
「飛べ」だって?見ると、乗せたほうの腕を曲げ、ここに飛べと言わんばかりに掌が広げられている。
あそこに飛べっていうのか?そんな事かと安堵する。が、すぐにそれは早計だとわかった。
今のぼくたちは……ざっと十pくらいに縮んでるのか?なら、グェスの肩の高さは?
今あいつは椅子に座っているから、一mくらい。……一m。ぞっとする。
普段は何て事ない高さだが、小さいぼくたちにとってはとてつもない。
身長の十倍ほどの高さ。もし床に落ちれば……即死なら運のいいほうだろう。
そんな失敗すれば死のダイブをみくるさんが出来るわけがない。
717ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/09/04(木) 23:55:02 ID:???
案の定みくるさんは凍り付いたように下を覗き込んでいる。
「あ、あの……」
上ずった声。ピクリとグェスの眉が吊り上がる。
「ほ、本当にやるんですか……?こんな高さ……」
「ヘイッ!」
再びグェスは激怒した。みくるさんを手荒く掴むと指を突き付けた。
「物覚えの悪い野郎だな……言ったろーが。鼠が言葉を喋んのかよ、おい」
「……こ、こんなの無理でチュ」
みくるさんが震えた声でそう言うとグェスの態度は激変した。
「きゃわィィィイイ!とっても!とっても!きゃわイイねェェェ、みくるちゃん!」
狂ったように賛美の言葉を吐いた。そして戸惑うみくるさんを撫で始めた。
その間にもかわいい、かわいいと壊れたレコーダーのように繰り返している。
おぞましい。そう言う他はないが、この様子ならダイブはなしになるかも……。
みくるさんも同じ考えなのだろう。引きつった笑顔で撫でるグェスに応えている。
だが、淡い期待は簡単に裏切られた。グェスは唐突に撫でるのを止めた。飽きたように無表情になっている。
「……でもそれとこれとは話が別だ。あたしとお前の間には信頼があるよな?
なら出来るだろ?……飛べよ」
……駄目だ。こいつは何があってもこの無意味な飛び降り自殺をやらせるつもりだ。
止めなければ。だがどうすれば?スタンドも今は頼りにならない。
みくるさんはまだ飛ばない。いや、飛べるはずがないんだ。性格からすればとても出来る事じゃない。
「どうした……?出来ねーのか?あたしはあんたを信頼してるのに、あんたは応えるつもりはねーって事か?
あたしたちの友情を裏切るって事と見ていいんだな!?答えろッ!オイッ!」
「いい加減にしろッ!グェス、もう止めるんだッ!」
出来る事なんてまるでない。それでも言葉が出ていた。
グェスが憎々し気にぼくを見る。……標的を移したか?
「うるせーぞッ!黙ってろ!みくるッ!飛べよ!」
駄目だ。ぼくの事などまるで気にしていない。表情は苛烈さを増している。
「飛ばねーならもうあんたとは終わりだッ!そこの野郎も捻り潰してやるッ!」
しまった。最悪の結果だ。これじゃ二人とも……。絶望したその時だった。
幻じゃあない。みくるさんが宙を舞っていた。
718ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/09/04(木) 23:57:47 ID:???
スローモーションのようだ。みくるさんが落ちて行く。
でも……駄目だ!目を閉じてる!あれじゃあ腕に着地しても踏み外す!
かといって、とても掌には届かない。床に落ちる!
ぼくは予想される惨劇から目を背けた。……静かだ。何の音もしない。まさか、成功した?いや、そんなはずはない。
あんなジャンプで掌に届くわけがない。なら、なぜ……?恐る恐るグェスを見る。
みくるさんが掌に座り込んでいた。なぜだ?どう考えても距離が足りないはずだ。どうにかして飛距離を延ばしたのか?
いや、それは違う。みくるさんを見ればわかる。あたふたと周りを見ている様子は策を弄した人間の物ではない。
みくるさんが何もしなかったなら、どうして……?答えはすぐにわかった。
簡単な問題だ。ぼくも、みくるさんも何も出来なかった。なら答えは一つしかない。
グェスだ。あいつが落ちるみくるさんをキャッチしたんだ。
でも、それは……あいつがわざわざ助けたって事か?……最初から痛めつける気はなかった?
なら、なぜこんな事を?そもそも、何か聞き出そうとする素振りもない。こいつは「強硬派」じゃあないのか?
……まさか。強硬派と関係がないなら、あの馬鹿げた「ダイブ」も「監禁」も全てあいつの気紛れなのか?
「ペット」のように、人間を支配するなんて。正気の沙汰じゃあない。
ぼくたちは、ひょっとするとこれまで一番ヤバい相手に捕まったのかもしれない。
「よおーしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし!
よく出来たッ!やっぱりお前が一番きゃワイイよッ!」
グェスが狂ったようにみくるさんを撫でている。おぞましい、本当におぞましい。
ぼくたちは今、ペットにされているのだ。
719ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/09/04(木) 23:59:37 ID:???
どれくらい狂喜するグェスを見ていただろうか。
グェスは突然冷めた表情になるとちらりと時計を見た。
「……そろそろ夕飯の支度しなきゃ。みくるちゃん、友達と仲良くするのよ」
そしてみくるさんを元いた水槽に戻した。「またね」と手を振り笑顔で去って行く。
グェスが部屋を出るとみくるさんが飛び込んで来た。
「あああぁぁ……ありがとう……ありがとうございます……!
不安で……怖くて……!」
普段だったら嬉しいシチュエーションだが、今はとてもそんな気になれない。ぼくはみくるさんを体から離した。
「みくるさん、今は慌ててる場合じゃない。ここはヤバい。危険すぎる。あいつは何なんだ?説明してくれ」
毅然とした態度で諭すと、みくるさんは涙を拭いながら話し始めた。
「は、はい……。あの人はあたしのお隣さんのグェスさんです。親切な人でこんな事をするなんて……。
月曜日、いつも通り学校に行こうとしてグェスさんに挨拶をして。気がついたら小さくなってたんです。それで、連れて行かれたんです……」
「あいつは……『強硬派』なのか?」
違うだろうとは思ったが、念のため聞いておく。予想通りみくるさんはかぶりを振った。
「いえ……。多分違うと思います。これまでずっと……その、さっきみたいな事を命令されたんですけど、
涼宮さんの事や皆さんの事は聞かれませんでしたから」
やっぱりそうか。他のスタンド使いを呼ばれる事がなくて一安心といった所だが、ある意味こちらのほうが恐ろしいかもしれない。
グェスは組織の利害など関係なく、「趣味」としてこんな事をしてるって事だからな。
「……あの、やっぱりこれって……スタンドなんですか?」
恐る恐るみくるさんが尋ねる。この「小さくする」能力はぼくの知らないまた別の能力ももちろんある。
しかし、今はその可能性は無視しよう。いるかもわからない幽霊を相手してもしょうがない。
「多分そうだろう。あいつ……グェスも『スタンド使い』だ」
720ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/09/05(金) 00:02:51 ID:???
ぼくがそう言うとみくるさんは死にそうな顔をした。スタンドを持たないみくるさんでは太刀打ちしようがないからだ。
しかし、悪いニュースばかりじゃあない。ぼくはこの前遭遇した弾丸を操るスタンド使い、「ホル・ホース」を思い出していた。
あの時、撃ち込まれた弾丸は距離をとったら消え去った。……つまり、「スタンド」には射程距離があるのではないか?
そしてそのルールがこの「小さくするスタンド」にも適用されるのなら、射程距離外に出れば無効化できる。
ぼくはこの一縷の希望と言える考えを話した。が、みくるさんはますます死にそうになっていく。
「……その仮説、あってるんですけど……すみません」
なぜか謝って俯いた。
「実はあたし、一度元の大きさに戻ったんです。さっきグェスさんが部屋を出て、その時に。
でも、すぐ戻って来て。メールを送るのが精一杯だったんです」
背筋が凍り付く。最悪の形で証明されてしまったようだ。
「……もう、グェスがぼくたちから離れる事はない?」
「……はい。職場にもあたしを持って行きますし、チャンスはないと思います」
泣きたい気分だ。今のぼくの爪のカッターではこの水槽のガラスですら切れるかどうか。
仮に切れたとして、グェスに気がつかれずに部屋を出られるか?分の悪すぎる賭けだ。
出来そうなのは……待て。さっきみくるさんは「メールをするのが精一杯」と言っていた。まさか……ぼくは携帯を取り出した。
「圏外、か」
多分電波も微弱になってるんだろう。元の大きさにならなければ、助けを求める事すら出来ない。
これで唯一の希望も断たれた……にもかかわらず、ぼくはさほど落胆してはいなかった。
721ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/09/05(金) 00:04:42 ID:???
部室での古泉や長門の態度を振り返れば、どっちみち助けに来てくれない事はわかる。
キョンは……残念だがスタンド相手では力になれないだろう。
中空を見ながら思いにふけり、ふと視線を手元に戻すと、携帯が消えていた。
「え?あ、いつ取ったんだ?」
なぜかみくるさんがぼくの携帯を持っていた。手に取られた感触なんてなかったのに。
「え……?あれ、なんで?」
ぼくに言われて初めて手に乗った携帯に気付いたようだった。
慌てた様子で携帯を差し出す。受け取る瞬間に目が合った。ぼんやりと見つめていると、みくるさんの唇が動いた。
「助けには……来てくれないんですね?」
寂しそうに笑っていた。
722ジョニィ・ジョースターの憂鬱:2008/09/05(金) 00:09:26 ID:???
「違うよ。助けに来るさ」
反射的に嘘を口がついて出た。こんな簡単に悟られるなんて、ぼくの態度が悪かったのか?
「いいんですよ。無理しなくて」
みくるさんはわかっているようだった。きっと最初から。
恐らく、古泉や長門は助けに来ないと知っていた。だからぼくに連絡をしたんだろう。
ぼくは言葉に窮した。こんな寂しい笑顔をした人にかける言葉をぼくは知らなかった。
「あの……」
「ジョニィくん、でも二人を悪く思わないでください」
ぼくの沈黙を勘違いしたんだろうか。みくるさんは少し慌てたようだった。
「古泉くんや長門さんの言っている事とあたしの考えてる事は違うの。
……でも、みんなそれぞれ考えあっての事で、あたしが正しいって言いたいわけじゃなくて……
とにかく、しょうがないんです。あたしもきっと助けに行きません」
さっきの古泉と同じ事を言っているようだ。みくるさんもやはり組織の人間だ。
「……わかってるよ。でも……」
納得できるものじゃあない。ぼくたちが一緒に過ごした時間は1ヶ月程度だが、友達だと思っている。
今のように誰かが危険に遭ったら助けたい。……でも、もし彼ら同士が争う事になったら、ぼくはどうすればいいんだ?
「……それより、今はここから逃げる方法を考えよう」
ぼくは嫌な気分を押し殺しながら話を逸らした。とはいえ、今の状況は手詰まりに近い。
ぼくのスタンドという唯一カードが切れない以上、他からカードを持ってくるしかない。
要するに、助けてもらうしかないのだ。それか、何か偶然でグェスがぼくたちから離れるのを待つか。
どちらも確率は薄い。全く、現実ってヤツは非情だ。考え疲れて横になろうとした時、無機質な電子音が聞こえた。
「ジョニィくん、これは……」
チャイムだ。誰かが呼び鈴を鳴らしたのだ。パタパタとスリッパが音をたてる。開く鍵。そして……。
「あのー、すみません突然お邪魔して」
キョンの声。逆転のカードがそろったのかもしれない。

To Be Continued……
72355:2008/09/05(金) 00:14:30 ID:???
投下終了です。
なるべく早く続きを投下したいのですが、今の僕は某大冒険ゲームの配信が停止される事に絶望している最中です。
気長に待っていてほしいです。
724マロン名無しさん:2008/09/05(金) 05:28:29 ID:???
乙だッ!
725マロン名無しさん:2008/09/05(金) 07:43:46 ID:???
>大冒険
何かあったんだろうか。単なる鯖落ち?
それはともかく全員乙だーーー!!
726マロン名無しさん:2008/09/08(月) 19:16:18 ID:???
なんか9月いっぱいで閉鎖するらしいね。大冒険。
それはさておきGJ!!
727マロン名無しさん:2008/09/08(月) 23:36:17 ID:???
ディアボロにもジョニィの人にも
GJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJ!!!!
728マロン名無しさん:2008/09/10(水) 12:49:01 ID:???
もうそろそろ500いきそうなので新スレ立てといた
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1221017805/
729アメリカの人:2008/09/11(木) 12:42:18 ID:???
第50話 「シーズ・ア・ミステリー 2」

「ど〜〜〜なってんだよ〜〜〜〜」
「うるせぇぞッ!そのジュースは俺んだ!てめー俺の顔も忘れたのかッ!」
「うるせぇッ!だったら名前を言えやあッ!」
あたし達は客席でも起り始めたパニックを掻き分けながら進んでいた。
『しかし……こいつの能力、触れた相手に発動するのかと思っていたが………』
「どうやら射程内に入った奴全部って事みてーだな……キョン、奴のスタンド見つかったか?」
俺がスタンドの見えるカメラを回してあたりを眺める。
「いたぞ………」
『何処だ』
ウェザーさんが尋ねてくる。
「反対側だ……ハルヒがあっちにいるのか?」
「マズいぞ……ここから反対側に行くにはたっぷり10分近くはかかる……間に合わない………」
早くも万事休すか……そう思っていると、
『ウェザーリポートッ!』
次の瞬間、雨が降ってくる。携帯を取り出し何処かにかけていた徐倫が悪態を吐いたがウェザーさんは無視した。
『雨が降れば涼宮ハルヒは屋根のある場所に向かうだろう……グラウンドの横手に体育倉庫がある……あそこならすぐに行ける。
彼女達が避難するには一番の場所だ』
だが肝心のハルヒの見分けがつかないからな………。
『気にするな……多分向こうから話し掛けてくる』
730アメリカの人:2008/09/11(木) 12:44:11 ID:???
「どういう意味だ?」
『俺達は服装が変わっていない……涼宮ハルヒ……彼女の性格なら俺達だと認識したら間違いなく話し掛けてくるだろう』
なるほどな。……それからどうすんだ?
『無駄な戦闘は避けよう……涼宮ハルヒを連れて脱出する』
なかなかいい案だ。……逃げ帰るってのがなんだか嫌だが仕方ないだろう。相手の名前も顔も分からないんだ。
君子危うきに近寄らず、昔の偉い人もそう言ってるしな。

俺達が体育倉庫についたのは3分程してからだった。……ハルヒは……何処だ?
「あれ?キョン、こんなとこにいたの?」
ハルヒの声だ。目の前にはリボン付きカチューシャをつけた女がいた。
「ハルヒ……だよな?」
「当たり前でしょ?バカキョン……それより聞いてよ、さっきいきなり古泉君とみくるちゃん、有希とアナスイを見失ったのよ……変だと思わない?」
お前が迷子になったという可能性は無視か。
「何言ってんのよバカキョン!あたしが迷子なんかになるわけないでしょ!」
言葉では否定しているが視線を逸らすあたりどうも自分が迷子になったという可能性を捨て切れなかったようだ。
「ところでよ………」
徐倫が話を切り出す。
「………もう帰ろうぜ」
「何よ、折角有希が告白された相手を見に来てるのに」
「……見て分かんねーのか?周りのこのパニック………」
「……そういやそうねえ……さっきは焦ってたから気付かなかったけど」
731アメリカの人:2008/09/11(木) 12:45:13 ID:???
ハルヒは少し迷ってから、
「しょうがないわ……帰るわよ」
……本当か!?
「……何そんなに驚いてんのよ?」
いや……お前の事だから散々ごねるだろうと思ってたが……こうもあっさりすると……な……等と言えるわけがなく、
「そうか」
言いたい言葉を飲み込み、返事をする。
「それじゃ行くわよ……あの世にね」
「え?今なんつった?」
「離れろキョンッ!そいつはハルヒじゃないッ!」
徐倫がそう叫ぶと同時に何か……多分スタンドだ……に殴られ吹き飛ぶ。
「考えが足らねーな……服装じゃ分からないから声だけで誰か判断するたあ間抜けだぜ」
ハルヒの声だろ……てめぇ………。
「最近の機械は便利な物だな……合成音声だよ。涼宮ハルヒの声を作っていたんだ……普段なら間違いなく気付かれるがこんなパニックが起ってうるさいなかじゃ分からなかったろ?
ちなみに服はあらかじめ用意しておいた……女物着てるこっちの身にもなってみろ」
『ウェザーリポートッ!』
ウェザーさんが殴りかかる。が、男はカチューシャと上着を脱ぎ捨て人込みに飛び込んだ。
「マズい……このままじゃ逃げられるんじゃねえのかッ!?」
『いや……おそらく奴はここで決着をつける気だ……奴がどんな姿に化けているか分かれば……なんとかなるかもしれないが………』
だが……あるのか?そんな方法………?と、その時徐倫が携帯を何処かにかけた。5分程して切ると徐倫は顔をあげた。
「………いや、ある」
『徐倫、なんだその方法は?』
732アメリカの人:2008/09/11(木) 12:47:12 ID:???
「それはな……スタンド使いはタバコの煙を吸うと鼻の横に血管が浮き出る」
『……………』
「……………」
そんなのに引っ掛かるような馬鹿なら苦労しないと思うぞ………。それにタバコ吸ってる奴なんて一人もいないぞ。
「引っ掛かってたら……どうする?」
なんだと?慌てて見回すと……いた、鼻の横を調べている男が。
『しかし……何故奴が引っ掛かると分かっていたんだ?』
「タバコよ……あいつ、タバコを吸うみたいだからな……引っ掛かる可能性は高いと思ったんだ」
いつあいつがタバコ吸ってたんだ?俺は覚えてないぞ?
「あたしも覚えてねーよ」
『なら何故分かった………』
「古泉だ」
古泉……?
「実はこの攻撃をくらってから暫くしてから古泉の機関に頼んで上空からあたし達の監視を頼んだんだ……あの機関ならそれぐらいはできそうだからな……ハルヒに化けて奴が接触してきた時に奴のこれまでの一連の行動と居場所が特定できたのよ」
「あのさ……だったら最初から分かってたんだろ?さっきのあれ……いらないんじゃなかったのか?」
「一回言ってみたかったんだ……おっと、もう逃げられないわよ」
徐倫が客席の男の肩を掴む。
「な……なんなんだよ〜〜あんた達……だ、誰なんだよ〜〜〜」
「しらばっくれるな……とっくにバレてるんだ………」
「な、何を………」
「………じゃあな……オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!」
「おがぐっ!」
男が大怪我を負って吹き飛び、気絶した。
『……なるほど、確かにこういう顔の奴だったな』
……周りの奴がパニクってて気付かれなかったのは幸運だったんだろうな。
「そういえば………」
なんだ?徐倫?
「こいつの名前、聞いてなかったな」
その後、長門の告白騒動は意外な結末を迎えた。……ま、それは機会があったら話す事にするよ。
真柴啓一朗 シーズ・ア・ミステリー 再起不能

To Be Continued・・・
733アメリカの人
見ても見なくてもいい履歴書
真柴 啓一朗
173cm A型 6月14日 21歳
性格 自己中心的で、自分や仲間さえよければ構わないという性格。だが、意外と常識はわきまえており、無理と分かれば手段を変える柔軟性もある
好きな食べ物 マカロニ パスタ
嫌いな食べ物 メロン オニオン
趣味 音楽観賞、特にジャズ

シーズ・ア・ミステリー
パワー C スピード B 射程距離 能力はA 持続力 A 精密動作性 B 成長性 D
能力 射程内の自分以外の脳の忘れるという機能を奪う。これを奪われるとわずかな差でも人が認識できなくなる。

今回は後書きもいっしょに書きます

以上、第50話でした

後書き書くこと無いんだよな……

それでは!