ネギまバトルロワイヤル14 〜NBR]W〜

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1マロン名無しさん
このスレは、『魔法先生ネギま!』キャラを用いたバトロワスレです。

<特徴>
他の多くのバトロワスレはリレー小説の形式を取っていますが、このスレでは異なります。
単独の作者による、長編SSスレとなっています。
現在、第14部まで完了。第15部連載中。次は16部となります。各長編SSはそれぞれ独立したお話となっています。

たまに、既に完結したお話のサイドストーリー、アナザーストーリーなどの短編が書かれることもあります。

<作者志望の方へ>
このスレでは、原則オープニングからエンディングまで全て書き終えた者が連載を開始できます。
見切り発車厳禁。頑張って書き上げましょう。
完成したら宣言の上、皆の了承を得て投下を開始して下さい。

<注意事項>
作品に対して内容にケチをつけたり、一方的な批判をするのはやめましょう。
こういう人が居ても、他の人は荒らしとみなしてスルーしましょう。
作者の都合もありますので、早くしろなどの催促はできるだけしないように。
次スレは原則>>950を踏んだの人が立てること。
容量オーバーになりそうなときは、気づいた人が宣言して立てましょう。
基本的にsage進行。


過去スレ等は>>2-5くらいに
21:2007/08/14(火) 03:12:12 ID:???
過去スレ
ネギまバトルロワイヤル  ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1107856778/
ネギまバトルロワイヤル2 ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1128095637/
ネギまバトルロワイヤル3 〜BRV〜 ttp://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1129557828/
ネギまバトルロワイヤル4 〜NBRW〜 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1132910518/
ネギまバトルロワイヤル5 〜NBRX〜 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1135869915/
ネギまバトルロワイヤル6 〜NBRY〜 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1139151600/
ネギまバトルロワイヤル7 〜NBRZ〜 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1142342541/
ネギまバトルロワイヤル8 〜NBR[〜 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1145711038/
ネギまバトルロワイヤル9 〜NBR\〜 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1151827124/
ネギまバトルロワイヤル10 〜NBR]〜 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1156684255/
ネギまバトルロワイヤル11 〜NBR]T〜 http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1158672877/
ネギまバトルロワイヤル12 〜NBR]U〜 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1171806097/
ネギまバトルロワイヤル13 〜NBR]V〜 http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1179239147/ ←前スレ

ネギまバトルロワイヤル まとめサイト
http://www.geocities.jp/negimabr/index.html

ttp://www.geocities.jp/br_of_negima/
ttp://www.bbhp.net/~v1p9zzyls2/index.html
ttp://www.geocities.jp/negima_br/


銃器疎い作者さんへ
http://mgdb.himitsukichi.com/pukiwiki/?MEDIAGUN%20DATABASE

現在連載中の作品
第15部。
31:2007/08/14(火) 03:13:38 ID:???
____       ______             _______
|書き込む| 名前: |         | E-mail(省略可): |sage          |
 ̄ ̄ ̄ ̄        ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄              ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                                 ∩
                               , ─|l| ,/ノ
                               ! ,'´  ̄ ヾ
                               ! | .||_|_|_|_〉
                               ! トd*゚ -゚||  ここにsageって入力するんだ
                               ノノ⊂ハハつ    基本的にsage進行…
                              ((, c(ヾyイ      なんで私だけバニー…
                                  しソ
41:2007/08/14(火) 03:15:37 ID:???
テンプレ終了!
5マロン名無しさん:2007/08/14(火) 03:16:29 ID:???
>>1
超乙!!!!
6マロン名無しさん:2007/08/14(火) 03:38:36 ID:???
私、ネタないし>>1にでも言うか!
乙ーン!!
7マロン名無しさん:2007/08/14(火) 11:24:48 ID:???
【残り>>1乙】
8マロン名無しさん:2007/08/15(水) 08:08:49 ID:???
万が一、雑談で向こうが埋まるとアレなんでこっちに

>前スレで文字数の話をしていた方々へ
マロンは1レス分につき2KBが限界だからね
くれぐれも詰め込みすぎで容量オーバーを起こさないように気を付けてねw
9作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/16(木) 15:00:16 ID:???
前スレが埋まったところで私です。
本日の夜から投下をはじめたいと思っています。
なんせ寝るのが11時くらいなもので、投下はそんなに遅い時間になる
ことはないはずです。
これから長い間になると思いますが、よろしくお願いします。
10マロン名無しさん:2007/08/16(木) 16:02:22 ID:???
受験生だというのにwktkが止まらない
11マロン名無しさん:2007/08/16(木) 17:28:15 ID:???
楽しみにしております
がんばってください
12作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/16(木) 18:55:06 ID:???
0.Do you believe the existence of“parallel world”? I believe.

――162時間目より引用――
「全てだなんて・・・・嘘ですよ。儚い夢だなんて、そんなハズありません。超さん・・
僕と一緒に『マギステル・マギ』を目指しませんか? 同じこの時代を生きる人間として、
一緒に未来を変えていくのなら、僕が誰にも文句は言わせません。」
「そうネ・・・・そんな未来も悪くないかもしれぬナ。」
「そ・・・・それじゃあ超さん!ここに残って・・・・みんなと一緒に卒業を・・・・!」
「いや、帰るネ。」
「超さん、どうして・・・・!?」
「ハハハ、それよりいいのカ? この私にそんな愛の告白のようなコトを言て?」
「え・・・・」
「共に『マギステル・マギ』を目指そうというのは、魔法使いの世界では生涯を添い遂げ
ようと言うに等しいネ。仮にも血の繋がた私にプロポーズはマズイのではないカ、ネギ坊主。」
「え、いえッ。」
「アハハハ、冗談ネ。」
「超さん!冗談じゃないです。僕は本気で・・・・」
――――

その後も言い争いは続き、結局超が突然どこかに消えてしまったことで幕が下りた。
みな、超は未来に帰ったのだろうと思い、クラスメイトとの別れを悲しんだ。


だが次の日の朝、学校に来てみると、当たり前のように超が席に座っていたのだ。
「――本気・・・・と言ったナ、ネギ坊主。私の生き方は私に決める権利があるはず・・・・
ネギ坊主があそこまで言てくれたから・・・・私もこの時代に残ることにしたネ。」

一瞬の間をおいて、教室は騒音に包まれる。
そこからまたいつも通りの授業が始まり、3−Aでわいわいと騒ぎながらすごしていく予定だった。
学園祭気分が抜けないまま期末試験に突入して、ボロボロになってみんなで笑いあうつもりだった。
それなのに・・・
13作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/16(木) 18:56:32 ID:???
テスト代わりに、冒頭部分だけ投下しました。
9時くらいには1話目を投下する予定です。
14マロン名無しさん:2007/08/16(木) 19:18:45 ID:???
そこには元気な超の姿が……これは期待せざるを得ない!
15マロン名無しさん:2007/08/16(木) 20:00:13 ID:???
楽しみにしてます!
16マロン名無しさん:2007/08/16(木) 20:10:30 ID:???
いつもと雰囲気が違う・・
たまには違うキャラが殺し役に回るかも・・・・
頑張ってください!
17マロン名無しさん:2007/08/16(木) 20:37:25 ID:???
>>1
18作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/16(木) 20:55:00 ID:???
いまさらですが、前書きを少々・・・

さきほどの投下分から察しがつくと思いますが、162時間目からの分岐の話です。

私の書いたものは、『ネギま』『バトルロワイアル』のどちらもあまりよく知らない
という方でも理解できるように、説明の部分がすこし多めに入っています。
どちらも熟知しているような方には、くどいと感じるところもあるかと思います。
そのようなところは、適当に読み飛ばすなどしてくださると快適に読めるかもしれません。

あと、私も投下というものが初めての身なので、間違えたりわからなかったりする
ことがあると思います。
指摘、批判などはうれしい限りですが、なるべくやさしくお願いします。

途中、なかなか誰も死なない期間がありますが、それもクライマックスへの
盛り上げを考えた演出の一種ととってくださると光栄です。

それでは、第16部開幕です。
19作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/16(木) 20:58:27 ID:???
1.Walk Alone

「なんで、こんなことしなきゃいけないのよ!!」
夜の暗い森の中を、神楽坂明日菜(出席番号8番)は一人で歩いていた。
あたりに警戒もせずに、ただひたすらに歩き続けていた。
道なんてない。ただ草を掻き分けながら進むだけ。
一歩進めるたびにガサッと音がしたり、明日菜の真上に覆いかぶさる木から鳥が飛んでい
く音がしたりするが、明日菜の耳にはそんなもの入らない。
カラスやフクロウなどが、遠くで明日菜をバカにするかのような声で鳴いているのも、全
く気にならなかった。

その理由はただひとつ。普通の精神ではいられない状況にあるから。
彼女は、いや彼女たちは今、世界一残虐で理不尽なプログラムに参加しているのだ。

バトルロワイヤル

それがいま明日菜やほかの3−Aのクラスメイトたちが参加しているゲームの名前だった。
誰か1人になるまで殺しあう。守るべきルールはそれのみ。
「なにが殺し合いよ!! 誰もそんなことするはずないじゃない!!」
当然、明日菜はこのゲームに反対していて、誰かを殺そうなどとはまったく考えていない。
彼女が歩いているのは、誰か仲間になれる人を探して、一緒に脱出の方法を考えるためだ
った。
怒っているような早足で、乱暴に歩いていく。
まわりに誰かがいたならば、すぐに明日菜の存在に気付いてしまうだろう。

正直なところ、明日菜は自分の恐怖心を隠すためにひとりごとを言っていた。
そんなことは明日菜もわかっているが、それでも何かを言わずにはいられなかったのだ。

もしかしたら、誰か一人くらいはこのゲームに乗ってしまうかもしれない。
もしかしたら、一人どころではなく、何人もが・・・。
もうどこかで殺し合いが始まっているかもしれない。
20マロン名無しさん:2007/08/16(木) 21:01:50 ID:???
投下乙
あんまりネタバレっぽいのは最初にやらない方がいいぞ
21作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/16(木) 21:02:26 ID:???
そう考えると、さすがの明日菜にも恐怖が芽生える。
いつもの強がりの癖が、今の明日菜を成り立たせているようなものだった。
気の弱い人だったら、この恐怖だけで人格をも破壊されてしまうかもしれない。

明日菜は今まで、そう、ついさっきまで一緒にいたクラスメイトのことを思い出す。
「刹那さんや、楓ちゃん、エヴァちゃんみたいな人に会えれば一緒に戦える。――このか
や、いいんちょなら・・・戦闘はできないかもしれないけど一緒にいられるよね?」

そこまで考えて、明日菜はふと足を止める。
でもたとえば、龍宮さんや超さんはどうだろうか。
もし出会ったとして、彼女たちを信用して仲間になることはできるだろうか。
信用できるなどという問題以前に、会った瞬間に殺しに来るかもしれない。
相手は戦闘のプロ、自分も魔法関係のことは知っていて、すこしは修行しているとはいっ
てもまだ戦いに関しては全然経験不足だし、彼女たちに勝てるわけがない。
22作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/16(木) 21:03:56 ID:???
「もう、元のクラスには戻れないのね・・・。」
もう一度寂しげにひとりごとを言って、明日菜は歩き出した。
まずは誰かに会うことが肝要だ。1人では何もできないのだから。
実際、明日菜より前には6人しか出発していないし、明日菜はひたすら校舎から離れるよ
うに歩いていたので、誰かと出会うなんてことはあまり可能性の高いことではない。
でもだからといって校舎のほうへ戻っていくのはさすがに気が進まなかった。

明日菜のすぐ後ろでまた、フクロウが鳴く。
「一人でも被害者が少なくなるように、早く誰か見つけなきゃ。」
明日菜はまた、足を速めた。
被害者。
そう明日菜は表現したが、この状況において被害者とは死者のことである。
そんなことを無理やり忘れるかのように、明日菜は言った。
嘘だと思いたかったのだ。
いまだに信じられないこの状況を。
他のクラスメイトたちも、一部の例外を除いて全員が、これは嘘だと願っていた。
これは夢で、目が覚めたらいつも通りの生活が戻ってくると。

でもこれもまた事実である。
夢ではないと、みんなわかっていたということ。
それは、さっきの教室でみんな確信したことだったのだから・・・

                    残り 30人

23作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/16(木) 21:06:40 ID:???
今日の投下はここまでです。
だいたい1話がこのくらいの長さなので、できれば毎日、
1話ずつ投下していくつもりです。
2話ずつのほうがいいのかな?
皆さんの意見を参考にしながら、これからも続けていきたいと思っています。
本当に、よろしくお願いします。
24マロン名無しさん:2007/08/16(木) 21:21:37 ID:???
誰か死んだ?
25マロン名無しさん:2007/08/16(木) 21:23:40 ID:???

今回はさよ不参加かな?
26マロン名無しさん:2007/08/16(木) 21:29:43 ID:???
まずは乙!

で、過去の作者様の投下を見た感じでは2〜3話分くらいの投下かな?
27マロン名無しさん:2007/08/16(木) 22:40:00 ID:???
この長さなら、4話くらいが良いんじゃないの。

前は短かったけど、ここでは伝統的に1日の投下量が多いから。
28マロン名無しさん:2007/08/17(金) 03:49:03 ID:???
>>23
投下乙です!!自分も3話程が適量ではないかと思います!!

既に30人、既に悲劇の犠牲者が出てしまったんかな。めちゃwktkっす
29マロン名無しさん:2007/08/17(金) 07:33:04 ID:???
>>28
明日菜の前に6人しか出てないっていってるからさよは不参加
30マロン名無しさん:2007/08/17(金) 15:27:04 ID:???
死んでんだから参加も不参加もないけどな
登場はするかも知れんけど
31作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/17(金) 15:56:54 ID:???
はじまって早々で申し訳ないんですが、親が「旅行に行くぞ」とうるさいので
今日の夜から月曜日まで出かけてきます。
その間投下できないので、今日の分をもう投下しておきたいと思います。

みなさんの意見から考えて、序盤は3話ずつ、中盤あたりから2話ずつ
投下していくつもりです。
(中盤から1話ごとの長さが長くなるので・・・)

では、どうぞ

32作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/17(金) 15:59:27 ID:???
2.Opening
「起きろ。」
とても長い眠りから覚めたこのような感覚に包まれながら、みんなは耳に入ってきた聞き
なれた声に懐かしさを覚える。

鬼の新田だった。

相坂さよを除いた3−Aの30人の生徒全員が、見知らぬ教室に入れられているようだ。
しっかりと机といすは用意されていて、座席もいつもと同じ席順になっている。
まだ状況が全く理解できていない生徒たちは、不自然な姿勢で寝ていたためか体のあち
こちが痛かったので、首や肩をまわしたり、軽いストレッチをしたりし始めた。
そんな中、新田はいつものように教壇に立ち、生徒たちの方を見ていた。
その両隣には、迷彩服を着た、いかにも軍人という感じの人が立っている。

「みんな起きたか? 起きてないと大変なことになるぞ。起きてるな。――ではこれからホ
ームルームを始める。」
再び発せられた新田の声を聞いて、なんとなくいつもと違う雰囲気をみんなが感じた。
これから始まろうとしているのは、日常では起こらないような特別な出来事なのだと予測
できるような、そんな空気だった。
「先生、これは・・・どういうことですか?」
綾瀬夕映(出席番号4番)が手を上げて質問をする。
「何なんですか。説明してください。」
「ここはどこなんですか? それに、ネギ先生はどこですか?」
「そうだ。ネギ坊主はどこだよぅ。」
「先生の横にいる人たちは誰?」
夕映が最初に聞いたのにつられ、いつもの3−Aの活気が少し戻り、みんな質問をし始め
た。だんだん教室は騒がしくなっていく。
「それをいまから説明する。」
新田がそういってもまったく静かになる気配はなかったが、そんなことはお構いなしに、新
田は少し間を空けてからゆっくりと言った。
33作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/17(金) 16:01:00 ID:???

「君たちにはこれから、殺し合いをしてもらう。」

一瞬にしてシーンとなった。
「やっぱりか・・・。」
「やはり・・・。」
というため息混じりの声が、桜咲刹那(出席番号15番)と龍宮真名(出席番号18番)から
聞こえる。
他の生徒は、みなどうリアクションを取ればいいのかすらわからず、しばらく何も言えない
でいた。

殺し合い、って言ったの?
聞き間違い? そうだよね?
だって殺し合いなんて犯罪だし・・・。

「もう一回、言って下さいませんか?」
やはり夕映が先陣を切った。
が、さっきとは違って、今度は誰も後に続かなかった。
殺し合いという言葉が聞き間違いだということを新田の言葉で確かめたかったから。
「何度言っても変わらん。お前たちには殺し合いをしてもらう。」
「えっ、でも・・・。」
「おい、私の横にいる人が何を持っているか見えないわけはないな?」
クラス中の目が、一転に注がれる。
そして、一斉に息をのんだ。
日常生活には決して用いられることの無い、黒光りするものが、天井を向いていた。
その威圧感に、ほぼ全員が圧倒される。
34作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/17(金) 16:03:22 ID:???
その瞬間。

パンパンパンッッ

その男が天井に向かって発砲し、鼓膜が破れそうな大きな銃声がみんなの耳に届いた。
「騒ぐなよ。騒ぐと撃つぞ。」
そう言われて、悲鳴を上げようとしていた佐々木まき絵(出席番号16番)や鳴滝風香、史
伽(出席番号22番、23番)が口をふさぐ。
「今のでわかっただろう。もう一度だけ言う。お前たちには殺し合いをしてもらう。これから
そのルールを説明するからよく聞いてろよ。――おっとその前に、お前たちの大好きなネ
ギ先生のことだ。」
さっきとは違う意味で、またクラス中が息をのむ。
「彼はこのゲームのことを何も知らずに学校にいる。無事ということだ。少しは安心したか?
 ふんっ・・・。では、説明を始める。1回しか言わないから、注意して聞いておけよ。」

そこから、悪魔のような説明が始まった・・・。
ネギが無事だと聞いても、それをうれしがる余裕は誰にもなかった。
いまだに涙目の人もたくさんいる。
誰一人としてしゃべることなく、いつも騒がしい3−Aがめずらしく沈黙に包まれた時間
が、展開されていった――――


午前2時31分  ゲーム開始   残り 30人


35マロン名無しさん:2007/08/17(金) 16:05:04 ID:???
見せしめはナシかー
36作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/17(金) 16:06:21 ID:???
3.Rules

「つまり、新田先生が言ったことを整理するとこうなります。」
校舎からかなり離れた小屋の中で、綾瀬夕映(出席番号4番)は説明口調で話していた。
教室にいたときは誰もが焦り、普通の精神状態ではいられなかったので、集中してルール
を聞くことはあまりできなかった。
そこで夕映はもう一度確認の意味も含めて、新田の言ったことを繰り返しているのだ。
「まず、今私たちがいるここは島であり、周囲は15kmくらいだということ。
次に、私たちにつけられている首輪には何らかの仕掛けがしてあり、先生には私たちの居
場所がわかるということ、さらに、これを爆発させることもできること、
この島は横A〜H、縦1〜8の64区域に分けられていて、時間が経つにつれて禁止エリア
が設けられ、そこに入っても首輪は爆発、そのエリアの発表は死亡者の発表と共に定期
放送で行うこと、
すでに校舎と海は禁止エリアだということ、
全員に配布するバッグの中には地図、食料、コンパス、懐中電灯、そして武器がランダム
で入っていること、
生徒は2分おきに出発すること、
優勝者は1人ということ、
このくらいですか。」

「そうやなぁ・・・。」
夕映の説明を聞いていたのは、和泉亜子(出席番号5番)。
出席番号がひとつ違いだったため、亜子は自分の前に出発していた夕映の姿が見え、
それに追いついた、という形で再会を果たした。
夕映は到底クラスメイトを殺せるような人ではないことを亜子は知っていたし、夕映も同じ
ことを亜子に対して感じていた。
二人はとりあえず落ち着ける場所を探し、地図にあった島の北の方の集落の中の家の一
軒で身を休めているのだ。
37作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/17(金) 16:08:14 ID:???

地図によると、この島にはいろいろな施設があるらしい。
いままで人が住んでいたのだから当たり前なのかもしれないが、これからのことを考える
と、病院や診療所、商店街などがあるのはとてもありがたいことだった。

夕映たちがいまいる集落には家がたくさんあるため、隠れ家として家を利用しようとする人
はたくさん集まる可能性があるが、逆にそれを狙って一気に大量に殺してしまおうと考え
ている人も集まってくるかもしれない。
安全とはとても言いがたいが、どこにいても安全ではないのだから、仕方がないことだ。

「そういえば亜子さん、あなたの武器は何ですか? 私はこの通り・・・救急バッグですけど。」
夕映は大きなバッグの中から、赤い十字のついた大きな救急バッグを取り出して、亜子の
前にドンッと置く。
かなりの重量であることは、それを見ているだけの亜子にもわかった。
「ウ、ウチは・・・これや。」
亜子も自分のバッグからおそるおそる武器を取り出す。
さっき見ようと思ったときには怖くてよく見なかったが、初心者でも簡単に使えるようにしっ
かりと説明書まで付いている当たりの武器だった。
38作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/17(金) 16:10:05 ID:???
――グロックG18

「電動ガンですか・・・。本当に、武器が入ってたですね・・・。」
教室で迷彩服の男たちが持っていた銃のように黒光りするその物体は、2人に威圧感を
与えた。それが存在するだけで、空気が重い。
そしてさらに、この殺人計画が本物であることを実感させた。
「でもウチ、これの使い方わからんよ・・・。むしろ救急バッグやったらバッチリなんやけど。
ほら、保健委員やし。」

3−Aの保健委員。
血を見ると失神してしまうこともあるような彼女も、いまの夕映にとってはかなり頼りになる
人物として目に映った。
これからどんなことになるのか想像もつかないが、たとえどうなったとしても、怪我をしてい
たらできることもできなくなってしまうかもしれない。
重傷の怪我をしてしまったら救急バッグ程度のものではどうしようもないかもしれないが、
それでも気休めにはなる。
「では、怪我をしたら手当てとかお願いしますです。」
「まかしといて。」

だがそう言って強がる亜子の様子がさっきから少し変なことに、夕映は気付いていた。
もともと亜子は気が弱く、お人よしでおとなしい性格であり、そんな亜子がこのゲームで人
の死を目の当たりにしたら・・・。
夕映はそのことを心配していたし、実際に亜子の方もものすごい恐怖を感じていた。
最悪の場合、亜子は誰も信じられなくなって殺しを始めるかもしれない。

「まき絵、アキラ、裕奈、大丈夫やろか・・・。」
自分でもわかっているその恐怖を隠すかのように、親友3人の心配を口に出した。
また強がる亜子を見て、まだゲームは始まったばかりだと痛感する夕映だった。

                    残り 30人
39作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/17(金) 16:12:10 ID:???
4.Two Lilies

1人、また1人。
長い間一緒に過ごしてきたクラスメイトたちの名前が次々に呼ばれていく。
2分ごとに発せられる言葉は、まるで死刑宣告のようだ。

「出席番号12番 古菲。」
通路を挟んで右側の席から、呼ばれた古菲が静かに立ち上がり、迷彩服から大きなバッ
グを受け取ると、ふらふらと表情のない顔で教室の外へと出て行った。
「次は近衛だ。心の準備をしておけよ。」

ついに自分の番が来てしまった。
あと2分もすれば、自分も恐ろしい戦場へと足を踏み入れなければいけない。
他の国の中には徴兵制度などという理不尽極まりない制度があるところもあると授業で
習ったが、それによって戦争にひっぱり出される男の人の気持ちがよくわかる。


「お嬢様。」
近衛木乃香(出席番号13番)は、はっとして顔を上げた。
うつむいておびえていたので気付かなかったが、無二の親友、桜咲刹那(出席番号15番)
がいつの間にか自分の席の横まで来ていた。
「せっちゃん・・・。」
「恐れる気持ちは痛いほどわかります。でも安心してください。どんなことがあっても、
お嬢様は私がこの島から生きて帰らせます。絶対に。」

刹那の目は真剣だった。
いままで刹那は木乃香を守ろうとしてきて、確かに木乃香をたすけてきた。
その刹那が味方にいれば、木乃香にとってとても大きな安心の源となる。
40作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/17(金) 16:14:09 ID:???

修学旅行からずいぶんと仲良くなった刹那と木乃香。
それまではひそかに陰から木乃香を守ってきた刹那だったが、修学旅行で明日菜や
のどかと同じ班になれたおかげで、木乃香と一緒にいられるようになった。

(クラスメイトのみんなのおかげでいまのお嬢様との関係がある。)
そう思うとみんな一緒にこの場から脱出しなければ、と思ったが、そのためには一筋縄で
はいかないだろうなとも思った。
木乃香のためには、他の人たちを殺さなくてはいけないときがあるかもしれない。
いま思い出して感謝したばかりの明日菜やのどかとでさえ、戦う可能性もある。
最悪の場合、クラスメイト全員を殺して、自殺し、木乃香を生き残らせる、という手段をとら
なくてはいけないかもしれない。

だがそれは刹那には、悲しいが、関係のないことだった。
(私のすべきことは木乃香お嬢様を守ることだけ・・・。)


「せっちゃん!!」
「ふぁい? ひょっと、おふょうひゃま?」
木乃香の声を聞くと同時に、木乃香が自分のほっぺたを引っぱっているのがわかる。
「せっちゃん、いますごい恐い顔してたえ。みんな殺してせっちゃんも自殺してウチだけ生
き残らせようとか思ってたん?」
「っ!!」
あまりにも図星過ぎて、さすがの刹那も顔が赤くなっていくのを感じた。
木乃香の言葉を聞いていたまわりのクラスメイトたちが引いていくのも同時に感じる。
「そんなんダメや。みんなで一緒に生き残らなあかん!! ウチ1人で生き残るくらいやっ
たら死んだ方がましや。だからせっちゃんも協力してな?」
41作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/17(金) 16:16:53 ID:???

そう、本来なら最初からそう思わなければいけなかった。
できないなんて最初から決めつけずに、できると信じなければいけないときだったのに。
自分よりよっぽどお嬢様の方が落ち着いている。
いままで考えていたことを思い、自分が情けなくなった。
「はい、お嬢様!!」
「んもー、外で会ったらこのちゃんて呼んでな。」


木乃香のほうも刹那と話したおかげでかなり気分が落ち着いてきていた。
何も心配することはない。
危なくなったらせっちゃんが迎えに来てくれる。
ずっとそうやって過ごしてきたのだ。
でもそう思うと、いまではなんだか胸にとげが刺さっているかのような、チクッとした痛みが
木乃香の心に走る。
それは木乃香の決心が、その思いを反対していたから。

(いままでは守られてばっかりやったから、今度はウチが強くなって、せっちゃんや他の
みんなを守る番なんや。)
木乃香がそんなことを考えているとは全く知らずに、刹那はすこしは恐怖の抜けた木乃香
の横顔を眺めていた。
42作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/17(金) 16:18:28 ID:???

――――
「出席番号13番 近衛木乃香。」
「はいな。」
呼ばれてしまった、運命のとき。
これから長い長い悪夢を見ることになるのだろう。
でもいまはできることだけをするのが大事。
せっちゃんのためにも、明日菜やネギ君のためにも、いまは生き残ることが一番の親切
になるのだ。
まずは生きてせっちゃんに会うこと。
それだけを目指して行動していけばいいんだ。

もう悩みが吹っ切れた木乃香は迷彩服の方へと向かっていくと、差し出されたバッグを肩
にかけ、勢いよく校舎から出て行った。
4分後に刹那が出てくるのだからそれを待っていようなどという考えは、まったく
思いつかなかった。

                    残り 30人
43作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/17(金) 16:19:55 ID:???
本日は以上です。
中途半端な時間に失礼しました。

夕映の説明のところ、若干読みづらくてすいません汗
44マロン名無しさん:2007/08/17(金) 16:22:34 ID:???
投下乙
見せしめはナシか
久々な気がする
45マロン名無しさん:2007/08/18(土) 02:47:18 ID:???
   //::::::::リ从从从从|:::::::l::::::::::::::::::|    _人__人__人__人__人__人__人__人__ 人__
  //|::::::/ @ llllll @ |:::::::l::::l::::l:::l::::|   )  きゃー―――っ           (
  〃 |:::::l        |:::::::l::::l::::l:::l::::|   )   きゃー―――っ          (
 /  |::::ノu rェェェ、  |j |:::::::l:::::l:::::l:::l::::|   )    いやー―――――ッ!!! (
   |::::ヽ |   | u  |:::::::l::::::l:::::l:::l::::|    ⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒
46マロン名無しさん:2007/08/18(土) 23:19:06 ID:???






47マロン名無しさん:2007/08/19(日) 05:58:19 ID:???
なんか無条件でマーダーになりそうな奴
龍宮、ザジ、超、刹那、エヴァ?
感情的にマーダーになりそうな奴(目の前で親友を殺されたとかで)
のどか、夏美、千鶴、木乃香、美砂
48マロン名無しさん:2007/08/19(日) 08:43:21 ID:???
のとがと夏美はチキンだから、壊れない限りはマーダー化しなくね?
49マロン名無しさん:2007/08/19(日) 09:14:33 ID:???
まあナイフを向けられて怖かったとかで銃を撃つくらいしかないな

「わ、わ、私殺すつもりは無かったのに・・・あ、あなたが悪いのよ・・・あなたが・・・」

とか言ってそう
50マロン名無しさん:2007/08/19(日) 09:21:56 ID:???
まき絵・桜子あたりは発狂してもせいぜい一人殺ったら他の奴に殺されるイメージがあるな
51マロン名無しさん:2007/08/19(日) 09:22:32 ID:???
あるいは誰も殺し合いを始めないことに痺れを切らした主催者側に脳を改造されて
殺人マシンと化したクラスメイトが殺し合いを始めてそれが原因で皆疑心暗鬼に・・・


ダメか・・・
52マロン名無しさん:2007/08/19(日) 09:24:32 ID:???
昔見た奴では

まき絵、3人
のどか、4人
 刹那、3人
 千雨、5人
 真名、3人

ってのがあったが・・・
53マロン名無しさん:2007/08/19(日) 10:58:36 ID:???
のどか←→ゆえ、史伽←→風香、あたりは相手のための奉仕マーダー化する可能性はあると思う。
54マロン名無しさん:2007/08/19(日) 13:01:43 ID:???
逆に熱血属性持ってる奴は

裕奈・朝倉・明日菜・円・古・ハルナ・千雨

って所か。この辺が合流したら話が動かしやすいな
熱血系は常に空回りあぼーんのフラグを持ってるがw
55マロン名無しさん:2007/08/19(日) 13:59:20 ID:???
>>54
古菲のことだな
56マロン名無しさん:2007/08/19(日) 14:49:04 ID:???
姫属性は
のどか、木乃香、亜子、史伽。

集団で動かすと周りが守るシフトをとる。
57マロン名無しさん:2007/08/19(日) 16:11:54 ID:???
千雨って早死にしたことあったっけ?
58マロン名無しさん:2007/08/19(日) 16:52:39 ID:???
3部はわりと早く死んだような気がする
59マロン名無しさん:2007/08/19(日) 17:41:48 ID:???
今までの黒幕って誰だったけ?
タカミチ・新田・しずな等の教員が多かったけど
異色な奴はネギ&このかとか、3−A内に黒幕がいたのってこれだけ?
60マロン名無しさん:2007/08/19(日) 19:14:23 ID:???
超もあった。千草も割りと多い気がする
61マロン名無しさん:2007/08/19(日) 21:44:21 ID:???
しずな先生黒幕なんてあったっけか?
まとめ読み直してくるorz

セルピコ、新田は大抵噛ませ犬な気がするんだがw
62マロン名無しさん:2007/08/20(月) 18:06:07 ID:???
さて、今日は作者16氏が旅行から帰って来る日だ。
今日は投下来るかな?
63作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/20(月) 21:24:30 ID:???
遅くなりました。
本日の投下です。
64作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/20(月) 21:25:56 ID:???
5.An Injured Person
一番最初に教室を出てから、明石裕奈(出席番号2番)は、特に行く当てもなくさまよ
っていた。
ゲームへの恐怖と怒りを心にたたえながら、森の中を歩き回っていた。

みんなは自分よりあとに出発するはず。
もうそろそろ全員出発していてもいいころだ。
もし私が校舎の入り口で、出てくる人を待ち伏せして、次々に殺していけば、もうこの
ゲームは終わっていたかもしれない。
そんなことを一瞬考えるが、とても自分にできる仕事じゃないと思った。
少なくとも自分の3人後には運動部仲間としていつも一緒に行動していた亜子が出てくる。
さらにその2分後には同じ部屋で暮らすアキラが出てくる。
その亜子やアキラをためらいもなく殺せるはずがない。
もし殺してしまったとすれば、そのあとで自分のやったことが信じられなくなっておか
しくなってしまうだろう。
自分の目の前にどんどん増えていく死体。
その光景に、裕奈は耐えられる自信がなかった。
(こんなこと考えなくても、私は人殺しなんてしない。)
裕奈は自分に言い聞かせるように、心の中でつぶやく。
もう夏になりかけていて暑いくらいなのだが、猛烈な寒気が体を襲った。
こんな状況じゃ、空気におかされておかしくなってしまう人もいるだろう。
裕奈は自分はそうならないようにと、気合を入れなおした。
「ふぅー。」
いつも試合の前にするストレッチをして、体をほぐし、あたためる。
大好きだったバスケとも、しばらくはお別れということになってしまう。

65作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/20(月) 21:27:31 ID:???

裕奈は、仲良しだった亜子、アキラ、まき絵と早く会いたかった。
できればみんな元気に帰って、また学校生活を楽しみたい。
部活のあとにみんなでシャワー室に行って、シャワーを浴びたりする時間が、裕奈は好き
だった。
(でも亜子とまき絵は、実は気弱いからな・・・。)
亜子が遠くで裕奈のことを心配していることも知らずに、裕奈も亜子の心配をする。
裕奈自身はどちらかといえば気は強い方だったので、精神的には安定していた。
でも亜子、まき絵はもしかすると空気にやられて・・・。
また同じ考えが頭をよぎる。
何度も何度もそんな妄想が頭の中に現れては、消えた。
アキラは絶対に人を殺したりはしないということをわかっていたし、被害を受けることも
ないのではないかと思うくらい、裕奈にとっては尊敬すべき存在だった。
「でもやっぱり、私が生き残らないと意味ないね・・・。」


歩き回って何十分か経ってから――――
「きゃぁぁぁぁぁーーーーー!!」
急に聞こえた悲鳴に、裕奈はビクッと肩を動かした。
結構遠くから聞こえたということもあって、誰の声なのかは認識できなかった。
ただひとつわかることは、高めの声だった、ということ。
だが今はそんなことは関係ない。
裕奈は悲鳴の聞こえた方へと走った。
いまの悲鳴で誰かが死にかけているのかもしれない。
それが仲良しの3人のうちの誰かだったら・・・その不安が、裕奈の足を動かした。
(お願い・・・アキラと亜子とまき絵以外でいて・・・。)
他の人ならいいというわけでもなかったが、それでもそれが親友を思う気持ちだ。
66作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/20(月) 21:28:35 ID:???
「ううっ・・・うっ・・・。」
しばらく走ると、裕奈の近くでうめき声が聞こえてきた。
「どこ?」
問いかけみても、しゃべることすらきついのか、ただ苦しそうな声が聞こえるだけ。
あたりを見渡してみてもただうっそうと茂る森が広がっていることしかわからない。
だが声を頼りに裕奈がその人を探していくと、案外すぐにみつかった。
森の中にしては少し開けたところがあり、そこに人が横たわっている。
その人は、裕奈がそこにいてほしくない、と願った人物のうちの1人だった。
67作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/20(月) 21:31:56 ID:???


「ゆう・・・な・・・。」
「アキラ!!」
高い背に、ポニーテール。
見間違えるはずもない、それは大河内アキラ(出席番号6番)である。
「大丈夫?」
聞いてみてから、裕奈は気を失いそうになった。
アキラの周りの地面は真っ赤に染まり、いまだに血が流れている。
血が川をつくって、裕奈の足元まできて、みるみるうちに裕奈の回りも包み込む。
こんなに大量の血を見たのは初めてだった。
アキラは地面に倒れたまま、首だけを裕奈のほうに向けて答える。
「少しすれば立てると思う・・・。でもいまはちょっと・・・。」
「わかった。無理しないで。いまから誰か呼んでくるから、ここで待っててね。」
「うん、ありがとう・・・。」
「あ、でも敵は? 近くにいるんだったらアキラを置いてくわけにはいかないけど。」
「もう逃げてったから大丈夫・・・。」
「そっか、じゃあすぐ戻ってくるから。」
そういい残すと、裕奈は全力で森の中へと走りだした。
地図で近くに診療所があることを確認し、仲間を見つけたらアキラをそこへ連れて行こう
と思った。
アキラのためを思い、はやくしなきゃ、という気持ちが裕奈をあせらせる。
アキラと再会できたのはうれしいが、まさかこんな形になるなんて・・・。
裕奈はうれしさ半分くやしさ半分で、走っていった。

(そういえば、さっきの悲鳴はアキラのじゃなかったような・・・。じゃあ、誰のだ?)

そんな微妙な疑問が、残った。

                    残り 30人

68作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/20(月) 21:33:09 ID:???
6.Like Sisters

校舎を出て、西へと歩く。
ずっと歩いていくと、島の最西端に着き、そこから少し北に行ったところには灯台がある
らしい。
灯台の一番上から飛び降りたら、死ねるだろうか・・・。
それよりも、崖から海へと身投げした方が確実に死ねるかもしれない。
そんなことを考えつつ、大きなデイバッグを抱えて、那波千鶴(出席番号21番)はとぼ
とぼと歩いていた。

『大丈夫、みんな仲のいいクラスメイトでしょ? そんなに怖がってたら逆に、みんなに
失礼なんじゃないかしら?』
出発前、あの牢獄のような教室で、千鶴が、ずっと震えていた村上夏美(出席番号28番)
に言った言葉だ。
それを聞いて、夏美の方は少し安心したように見えた。
夏美が顔を上げて千鶴のほうを見たので、ホッとして、夏美に向かって1回深くうなずい
て千鶴は教室を出てきたのだった。
いつも姉のような存在として夏美と付き合ってきたからこそ出た言葉だったが、千鶴だっ
て夏美と同じくらい震えたい気持ちだった。
私には、人を殺すことなんてできない。
そんなことをするんだったら、自殺した方がマシだ。
誰か人を殺そうとしている人に会ってしまったら、そこまでの運命だったと思って潔く受
け入れるつもりでいる。
でも、千鶴は死ぬ前にもう一度だけ、夏美と会ってゆっくり話がしたかった。
どんな話でもいいから、いつも寮で話していたような他愛のない話をしたい。
そうしたらもう死んでしまってもいいかもしれない。
死ぬときも夏美と一緒がいい。
自分の死を看取ってもらうのにも一番の友達だし、彼女の死を看取ってやるのもまた、千
鶴自身でありたいと思った。
69作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/20(月) 21:34:29 ID:???

だが夏美を探しに行くには何かの武器が必要だった。
何の武器もなければ、夏美に会う前に殺されてしまうかもしれない。
それはそれでしょうがないと思うが、せめて自分の最後の願いくらいは叶えたいと思った。
だから、武器が必要だった。
人を殺すつもりはまったくないので、ただ自衛のためだけに使うのだ。
防具なんかがあるならば、それでも構わない。
でもいま千鶴が持っている支給武器は、何の役にも立たなさそうだった。

防犯ベル。
よく小学生がランドセルの横やポケットの横にくっつけて歩いているやつだ。
痴漢や変質者がいたときには鳴らせ、と言われているやつだ。
女子だということを考えたのか、色はピンクだった。

「あらあら・・・。」
武器を配ると言っておきながら、これにはさすがの千鶴もあきれるしかなかった。
こんなものをどうやって使えばいいというのか。
鳴らせば誰かが助けに来てくれるかもしれない。
でも、殺す気のある人も、間違いなく近寄ってきて殺しに来るだろう。
そんな危険な賭けをするほど、千鶴に勇気はなかった。
70作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/20(月) 21:35:56 ID:???
「夏美ちゃん・・・。」
夏美の出発は自分より7つ後ろ。
もう30分以上は確実に歩いているはずなので、夏美もとっくに出発しているだろう。
校舎の前で夏美が出てくるのを待っていようかとも考えたが、千鶴と夏美の間には長谷川
千雨(出席番号25番)やエヴァンジェリン(出席番号26番)など千鶴にとって信用で
きない人が多くいることを考えて、その案は消え去った。
30人いるこのクラス。
誰か1人くらいは絶対にみんなを殺そうとする人がいるだろう。
その人が自分よりも先に、夏美と会ってしまったらどうしよう。
夏美は助かるだろうか・・・。
まず無理だと思って間違いない。
武器にもよるが、銃や爆弾を持っていたとしても、それを夏美が使えるかどうかという問
題もある。
あんなに震えていたのに、突然目の前に現れた人に向かって発砲するなんてことはできな
いだろう。
とすると、やっぱり自分が早く夏美に会うしかなかった。


ずっと考え込みながら歩いていたのですぐ近くまで迫っていた灯台に気付いたときには、
もう目の前に扉があった。
夏美が安全な人と合流することを祈って、千鶴は誰か一緒に夏美を探しに行ってくれる人
を待つために、灯台の中に入っていった。

                    残り 30人
71作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/20(月) 21:37:45 ID:???
7.Brother in Arms

桜咲刹那(出席番号15番)は、出発直後から近衛木乃香(出席番号13番)を探し続け
ていた。
いつも持ち歩いている夕凪は、あの教室で目が覚めたときにはもう手元にはなかったが、
運のいいことに、刹那の支給武器は日本刀だった。
「早くお嬢様を見つけなければ・・・。」
木乃香は刹那の二人前に出発したばかりのはずだったが、刹那が校舎から出たときにはも
うすでに彼女の姿はなかった。
それもそのはず、木乃香はかなりの勢いで走っていったので、もうどこか遠くへ行ってし
まっているかもしれないのだ。
そのため、どっちへ行っていいかわからず、適当に北の方へと歩き出していた。

裏の世界に関する知識が豊富な刹那は、このバトルロワイヤルというゲームについてもあ
る程度の知識は持っていた。
日本のすべての中学校の中から抽選でひとつの学校を選び、さらにその学校の中から抽選
でひとつのクラスを選ぶ。
その選ばれたクラスで殺し合いを行い、最後の一人になるまでそれを続ける。
とんでもなく当たる確率が低く、刹那もまさか3−Aが選ばれるとは思っていなかった。

72作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/20(月) 21:38:59 ID:???

だが刹那は、みんなにとって希望となる情報も持っていた。
今までのバトルロワイヤルで、優勝者が一人に決まることはほとんどなかったというもの。
もちろん、結果を公表する際は一人の優勝者を発表しているが、実際は生徒たちが団結し
て本部を襲撃、首謀者を殺害することでゲーム終了、となっているケースがほとんどであ
るということ。
つまり、たくさんの生徒が生き残ることができる可能性は十分にある、という光が見出せる。
(さっきのことは、本気で反省しなければ・・・。)
教室の、木乃香の横で考えたこと。
大量の犠牲を伴い、誰がどう考えても理不尽で、誰にも得のない考えだった。
だが木乃香のおかげで思いは決まった。
いまでは、これまでのバトルロワイヤルのようにみんなで団結して、みんなで帰りたいと
思っている。

「お嬢様・・・。明日菜さん・・・。」
そのためにまず、信頼できる仲間を探しているのである。
なによりもお嬢様を助けることが一番、そう思って歩き続けていた。


その時。
刹那の背後でガサッという音がした。
「誰だっ!?」
なんらかの影響で気が抑えられているとはいえ、戦場で鍛えられた鋭い反射神経で後ろを
振り向き刀を構えると、そこにいたのは、
「刹那さんっ!!」
「明日菜さん!!」
修学旅行以来、一番の戦友である神楽坂明日菜だった。

73作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/20(月) 21:40:33 ID:???


――――――
「――ということは、明日菜さんもいままで誰にも会っていないんですね?」
2人はいままでたどってきた道筋と、知っている情報を交換した。
まだ始まったばかりということなのか、2人とも他には誰とも出会っていなかった。
「うん、刹那さんが初めて。やっぱり、木乃香を探してるの?」
「はい。まずお嬢様と会わないことにはお守りするも何もありませんから。」
こんな状況でなければ、『刹那さんって木乃香を守るナイトって感じだよね。』とかいってからかうのだが、さすがの明日菜もここは空気を読んだ。
「私はどこか行くところとか決めてなかったんだけど、刹那さんはどっか行くの?」
「私も特に決めてなかったんですが、このまましばらくまっすぐ行くと、島の北の方にあ
る集落に着くようなのでそこに行ってみようと思います。そこだったら人もたくさん集ま
りそうですし・・・。いいですか?」
わざわざ確認を取るところが、刹那らしいといえば刹那らしいのかもしれない。
どんなときも自分をしっかり持っているという強さが伺える。
「私は刹那さんの行くところについてくから。」
「ありがとうございます。」
そう言うと2人は北へと続く道を歩き出した。
まず1人、安心できる仲間を見つけて、明日菜も刹那も一安心していた。
そんな2人をやさしく見守るように、空ではまだ月が輝いている。
それはほとんど新月に近い、とても細い三日月で、あまりいい印象は持てないようなものだったが・・・。

                    残り 30人
74作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/20(月) 21:41:34 ID:???
本日は以上です。
明日の投下はもうすこし遅い時間になるかもしれません。
では。
75マロン名無しさん:2007/08/20(月) 21:50:26 ID:???
前スレと同じ様に真っ先に乙といいますよ私は。
いいボリュームです、乙。
76マロン名無しさん:2007/08/20(月) 21:53:14 ID:???
アキラが気になるな。次回もwktkさせてもらうぜ
77マロン名無しさん:2007/08/20(月) 23:08:57 ID:???
乙!
78マロン名無しさん:2007/08/20(月) 23:12:30 ID:???
乙っス。
やっぱせっちゃんの武器って日本刀とか剣とか多いよね。
かく言う製作中の俺の作品に出てくるせっちゃんの武器もスタンダードに日本刀w
79マロン名無しさん:2007/08/20(月) 23:55:04 ID:???
乙です
アキラ……誰か食したんじゃないだろうなwwwwwww

支給武器の当たりハズレの差が異常に大きい俺ガイル
80マロン名無しさん:2007/08/21(火) 00:02:15 ID:???
81マロン名無しさん:2007/08/21(火) 01:06:50 ID:???
>>79
食人ネタは過去にザジがやってるから、まさかアキラも…

ところで、ネギロワって他スレからネタ持って来るのはアリ?
82マロン名無しさん:2007/08/21(火) 01:09:50 ID:???
乙ですね
食人アキラwww
続きに期待
83マロン名無しさん:2007/08/21(火) 02:10:49 ID:???
乙!
まだ犠牲者こそいないものの、色々動きがあってwktkが止まらないぜ!

>>81
個人的には構わないが、ネタを仕込むと作品そのものが軽く見られるリスクがあるぞ?
84作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/21(火) 22:52:53 ID:???
遅くなりました。申し訳ないです。
本日の投下といきたいと思います。
85作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/21(火) 22:54:02 ID:???
8.Best Performance

村上夏美(出席番号28番)は、地図を見て東端の倉庫にたどり着いてから、ずっと恐怖
のあまり震えている。
教室で千鶴に声をかけてもらったときにはすこし心に余裕ができたような気がしたが、そ
れもつかの間の安心だった。
「ちづ姉ぇ・・・。いいんちょ・・・。」
魔法関係のいざこざで何回も危ない目にあっている人が何人もいるクラスの中で、魔法を
知らず今まで命の危険など感じることなく過ごしてきた夏美にとって、特にこのゲームは
残酷だった。
ただ一回だけ寮の部屋にヘルマン伯爵が入ってきたときも、小太郎が一生懸命戦ってそれ
でもやられてしまうところを見て、ずっと涙を流していたのだ。
しかしそんな時とは比べ物にはならないほどの悪夢だった。

夏美の武器はワルサーP38。
だがそれが銃である、ということ以外、なにもわからなかった。
使うつもりもなかったので、説明書すら見ていない。
ただひたすら、今まで付き合ってきた友達、両親のことを思い出し、もう会えないことを
悟っては涙を流すだけだった。
「私、ここで死ぬのね・・・。」
もし自分がみんなを殺して生き残ったとしても、その時には3−Aのクラスメイトは誰一人
としていないのだ。
そんな状況を考えるだけで、いくらでも涙があふれてくる。
「ちづ姉・・・。どうすればいいの?」
86作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/21(火) 22:55:25 ID:???

ガラガラガラ
倉庫の扉が開く音がして、誰かが入ってくる気配を感じた。
(あぁ、ついに死ぬときがきた・・・。)
「誰かいる?」
その声は朝倉和美(出席番号3番)のものだった。
いつもは仲のよかった朝倉でさえ、今の夏美には殺人鬼に思える。
(早く出てって。お願いだから。私を見つけないで。)

ひざを抱えて倉庫の片隅で、体操座りをしてじっと息を止めていた。
朝倉が倉庫の中を歩き回っているのがわかる。
ひたひたと、静かな足音が聞こえる。
大きなドラム缶の陰に隠れている夏美からは朝倉が何をしているのかはわからなかったが、
一歩ずつ自分の方へ近づいてきているのを感じた。
(あぁ、やっぱり殺す気なんだ・・・。もう終わりだ・・・。)

朝倉の持っていた懐中電灯の光が、夏美の方へ伸びてくる。
まず足元を照らす。
そこから体をなでるようにそっと光がひざの方へと上がってきて――
だんだんと光に照らされる部分が広くなっていく。
そしてついに、まぶしい光に夏美の顔が照らされた。
わざとゆっくりと懐中電灯を動かしたのが、夏美には、朝倉が楽しんでいるように思えた。
「村上っ!」
87作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/21(火) 22:56:55 ID:???
(撃たれる!! 死ぬ!!)
朝倉の叫ぶ声が聞こえる。
夏美は目を閉じ、痛みに耐えられるよう心の準備をした。
いま目を開けたら朝倉は自分の方に銃を向けて今にも発砲しようとしているに違いない。
最後にもう一度、ちづ姉やいいんちょのことを思い出し、願った。
(私の分まで生き延びて・・・。)
撃っていいよ。早く撃ってよ。
もうすぐ私の体を銃弾が突き抜ける。
夏美は目をつぶったままじっと待っていた。
抵抗なんてするだけ無駄なんだ。だったらこの運命を受け入れよう。


――――
撃たれると思ってからかなりの時間が経った気がした。
なんで撃たないの? 私が震えてるのを見て楽しんでるの?

だが夏美はうっすらと目を開けると、そこには信じられないことが起こっていた。
涙で顔をぬらした朝倉が立っていたのだ。
「――えっ?」

夏美はあまりに意外すぎて気が抜けてしまった。
自分を殺そうとしていた朝倉なんて、どこにもいなかったのだ。
最初から自分の勘違い。
朝倉だって、こんなゲームに参加させられたら怖いに決まっているのに、勝手に朝倉は人
を殺す側だと勘違いしてしまっていた。
「よかった。ホントによかった。いままで誰にも会えなくて怖かったから・・・。だから・・・
いま村上がいてホントに安心したよ・・・。」
泣きながら言う朝倉を、夏美は見ていることしかできなかった。
朝倉のこんな姿を、初めて見た気がした。

88作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/21(火) 22:58:06 ID:???

しばらく泣く声だけが倉庫の中を響き渡り、そのうち朝倉はしどろもどろに聞く。
「殺す気なんて・・・ないよね?」
「ないっ!! 誰かを殺すなんて、私にはできないよ。」
「そうだよね・・・。私だってできないよ。――あ、ねぇ、武器なんだった?」
なんの警戒心もなく、夏美は自分のバッグから武器――ワルサーP38を取り出す。

このタイミングで武器の事を聞くなんて明らかにおかしいのに、頭がごちゃごちゃになっ
ている夏美はそんなことには気付くはずもなかった。
「これ・・・。銃みたいだけど・・・。あと予備の弾がいっぱい入ってた。」
「そっか・・・。ちょっと見せてくれる?」
「うん。」

カチャリ

「えっ?」
夏美は、朝倉のとった行動が理解するのにたっぷり10秒以上かかった。
銃を手渡した瞬間、朝倉の手の中に収まったそれは夏美の方に向けられていたのだ。
「なんで? やめてよ。そんな・・・。」
「ありがとう村上。これで私も戦える。手榴弾だけだとちょっと頼りなかったからさ。」
朝倉の頬を流れていた涙はあっという間に蒸発し、嘘のように消えている。
ただ特大スクープを発見したときのようなうれしそうな顔を浮かべているだけだった。
「いやぁぁぁ。やめてぇぇぇ!!!」
「そんなに叫ばないでよ。他の人が来ちゃうから。」
不機嫌そうに言う。
もう殺すという行動以外に興味がなくなりかけていた。
「嘘!! 嘘なんでしょ?」
「だからうるさいってば。」

パンッ パンッ
89作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/21(火) 23:01:01 ID:???

「――ふふっ、村上の代わりに私が演劇部に入ってあげようか。なーんてね。」
軽く笑うと、夏美のバッグを持って朝倉は倉庫から出た・・・。
そこには恐怖に顔をゆがめた夏美の死体が、体操座りのまま取り残された。

   出席番号28番 村上夏美 死亡
                    残り 29人
90作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/21(火) 23:02:06 ID:???
9.Milky Way and Shooting Star

怖い。でも立ち止まるのはもっと怖い。
人殺し? そんなのテレビのニュースの中だけの話だと思ってた。
友達同士でふざけて『殺すよ?』なんて言ってみたりしていたけれど、冗談じゃない。
死が間近にあるとこんなにも落ち着いていられなくなるものなのか・・・。
走っていれば、怖いのも忘れられる。
まわりの知らない景色が、どんどん後ろへ流れていく。
美砂か桜子に会いたい。2人なら信用できる。
でも他の人は? 信用できる?
それこそ銃やナイフを持って、『殺すよ?』なんて言ってきたりしないだろうか。
それに対してフォークなんかでどうやって対処しろっていうんだ。

釘宮円(出席番号11番)は、校舎を出てからずっと走り続けていた。
クラスメイトが怖かった。仲良しだったのに、信用しきれなくて怖がってしまっていた。
確かに、みんなに対して悪いと思う気持ちはある。会ったらごめんと言いたかった。
でも、いつ誰が襲ってきてもおかしくない状況では、クラスメイトですら恐怖の対象にな
るものだ。

「はぁ・・・はぁ・・・なんで・・・?」
さすがに疲れてきた円は、自分の背ほどの大きな岩の陰で立ち止まり、空を見上げた。
時間は午前4時前。
明るくなりかけてきている東の空と、まだまだ暗い西の空。
麻帆良と同じ、雲ひとつない満天の星空だった。
「学校に帰りたいな・・・。」
寮でもたまに見上げる星空。
その星空も、今見ている空と同じものだとは、とても思えなかった。
もう二度と帰れないであろう学校の星空が、急に恋しくなる。
91作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/21(火) 23:03:27 ID:???

しかし――
「なぁに弱音はいてんの。あんたらしくないじゃん。」
「うわっ!!」
円は大慌てで声のかかった方を振り向くと、そこには薄いピンク色の髪があった。
見慣れた顔、聞きなれた声。
それは円がいま一番会いたかった人物の一人。
「美砂!!」
「円!!」

円はうれしさのあまり美砂に飛びついた。
たった一時間半前には同じ教室の中にいたのに、会っていなかった時間は何日分にも思え
てくる。
美砂の方も円をやさしく受け止めて、思いっきり腕に力をこめて抱き合い、再会を喜んだ。
「無事だったのね?」
「円こそ、どこも怪我なさそうでよかった。」
「桜子は?」
「ううん、私は見てない。円は?」
「うん、私もまだ会ってないんだ・・・。」

チアリーディング部として、同じ部員で親友の桜子の心配をしないわけはなかった。
2人は偶然こうしてめぐり合えたからよかったものの、桜子はいまだにどこかで1人でい
るかもしれないのだ。
いや、1人ならまだいいほう。
もし誰かに追いかけられていたら、頭に銃を突きつけられていたら・・・。
悪い妄想が、2人の頭の中に描かれていた。
92作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/21(火) 23:04:46 ID:???
「探しに行こう!!」
円が言うが、美砂はあまり乗り気ではなかった。
それもそのはず、武器があまりにもしょぼかったのだ。
円のフォークよりさらに使えない、爪切り。
刃物だからといって、武器とは絶対に言えないだろう。
「いったんどこかで休憩しない? 朝ごはんも食べちゃった方がいいし。」
「んー、まぁそれもそうだね。じゃああの灯台なんてどう?」
「誰かいるかもだけど、行こうか。」
「うん。」

結構遠くに見えた灯台は、実際に近づいてみるとすぐだった。
近くで見るとかなり背が高く、裏は崖になっている。
もとは白かったのであろうその表面は、いまは潮風に吹かれ続けたためか変色してしまっ
ているようだ。
本来は頂上でなにか目印になるようなものがあるはずだが、この灯台はもう使われていな
いかのように、光も何もなかった。
2人はすこしおびえつつ、でも入らないのもなんだと思ってドアに手を伸ばす。

コンコン
「誰かいる?」
誰もいるはずはないだろうと思いつつも、一応礼儀正しくノックをして中を確かめる美砂。
ワンテンポおいて、中から返事が返ってきた。
「どなたですか?」
誰かいたとしても、普通は返事はしないものだろう。
外にいるのが敵だとしたら、返事をすることですでに死が確定する。
そう考え、返事が返ってくるわけはないと思っていたので2人は少し戸惑ったが、素直に答える。
「美砂と」
「円です。殺す気はまったくないよ。」
中の人が悩んだのか、また微妙な間をおいて、扉が開いた。
「入ってください。」

                    残り 29人
93作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/21(火) 23:05:50 ID:???
10.The Last Memory

「めんどくさいことになてしまたネ・・・。」
麻帆良最強の頭脳、超鈴音(出席番号19番)は、島の西部にある山の斜面に腰を下ろし
ていた。
風が吹くたびに短い緑の草がさわさわと揺れる。
上空から見れば、緑のカーテンがゆれているようにも見えるかもしれない。
一部分だけ、そんな草原のようになっている斜面を見つけたのだった。
だがまわりはちゃんと木々に囲まれていたので、視界が開けすぎていて他のところから狙
い撃ちされるなんてことはないだろう。
考え事をするにはもってこいの場所だ。

もともとこの時代の人間ではない超は、学園祭での計画をネギに阻止された時点で未来へ
と帰るはずだった。
だが、ネギの熱心な説得に負けて、この時代で未来を変えていくことを決めたのだ。
この時代を生きて、いい未来を作っていくのも悪くないと思ったから。
それなのに、その決心から1週間もたたないうちにこんなところへ連れてこられて、くだ
らないゲームに参加させられている。
「素直にあの時帰ておけばよかったネ。一生の不覚・・・。」

実際、超がこの2年間過ごしてきた日々はとても楽しく、かけがえのないものだった。
それは、ネギに言った通りだった。
だが、結局は本来の自分が作るべき思い出ではなく、むしろその思い出は存在することが
許されないもの・・・。
未来から過去へと時間跳躍をし、少しでも多くの人を救えるよう、魔法を全世界にばらす。
それだけのために過去へ来たはず。
自分の目的はたったそれだけだった。
しかし、本当はそれだけでさえ許されざることだったのだ。
94作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/21(火) 23:07:07 ID:???

超はわかっていた。
それは夕映が、ネギに言った言葉の中の一つ。
今回のこの超の計画は、超1人のわがままでしかなく、それにはたくさんの人が迷惑を被
るということを。
でも願望をこらえきれずに科学の力を借りて時間跳躍をしてしまった。
自分は正しいと、信じ込んで計画を実行した。
その思考に共感を覚え、手伝ってくれた人もたくさんいた。
だがやはりどんなに自分に味方が増えていっても、それは行われてはいけないことだった。

過去を変える、それは誰もが望むことであると同時に、絶対に叶えられることのない願い
として通ってきた。
だがそれを実現させようとした超は、人類としての道を汚した。
犯罪者と同じような扱いをうけてもおかしくない存在になってしまったのだ。

(ネギ坊主には悪いガ、やはり私にとてのこの2年間は、儚い夢でしかない・・・。)

カチャッ
超は手に握る銃に力をこめた。
(ハカセ、五月、茶々丸、真名、みんなとてもいいやつだたけど、私と関係してはいけな
い人物だた。楽しい思い出だが、これから消していけばいいことネ・・・・。)
このゲームで優勝し、1人になって学校へ戻り、そしてネギには内緒で未来へ帰る。
思い出を一緒に作ってきた人たちがいなくなれば、時間が経つにつれてそれを思い出すこ
ともなくなるだろう。
自分が今までしてきた過ちについての悩みも、時間が解決してくれる。
95作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/21(火) 23:08:18 ID:???
超自身がいるべき場所は、やはり未来の世界なのだ。
そこで、今回のことはすべて忘れて、新たな戦場で戦っていく。
それが一番のはず・・・。
「フフ、では、最後の思い出作りをしようカ。」
静かに心に決意を秘めて、超は立ち上がった。
まずは優勝することが大事、つまり、クラスメイトだった人を殺す。
つらいことではあるが、自分のためだった。
帰ってからの世界で救っていく何人もの人のことを考えると、29人の生徒の犠牲は惜し
くない。

「1人目は早く現れてくれたようネ。」
自分からはるか遠くで歩いている人影に向かい、銃を撃つ。
自分の先祖であるネギを、心から想っている人物。
相手の運動能力は高くないから、何発か撃てば勝手に当たって倒れてしまうだろう。
だがさすがに1発目はコントロールがつかず、足元に当たってしまった。
狙った相手が驚いて、しりもちをついている。
「勝負はこれからヨ。」
銃口を見えた敵に向け、超はにやりと笑った。

                    残り 29人
96作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/21(火) 23:10:11 ID:???
ねむい・・・音夢・・・

本日の投下はここまでです。
やっと1人減りました。
明日は9時くらいに予定しています。
では
97マロン名無しさん:2007/08/21(火) 23:12:08 ID:???
乙です!

やっぱり夏美は死に役…
最後に出てきたのはのどかかな?
98マロン名無しさん:2007/08/21(火) 23:15:15 ID:???
超りんが撃つ相手で、もしかして、のどか?
99マロン名無しさん:2007/08/21(火) 23:19:30 ID:???

         _人人人人人人人人人人人人人人人_
           >  シャア♪  シャア♪  シャア♪  <
           ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
     ll     ll          ll     ll          ll     ll
     l| -‐‐- |l  __     l| -‐‐- |l  __     l| -‐‐- |l  __
    ,イ」_  |ヽ_| l、〈〈〈〈 ヽ  ,イ」_  |ヽ_| l、〈〈〈〈 ヽ  ,イ」_  |ヽ_| l、〈〈〈〈 ヽ
   /└-.二| ヽ,ゝl.〈⊃  } /└-.二| ヽ,ゝl.〈⊃  }./└-.二| ヽ,ゝl.〈⊃  }
   l   ,.-ー\/. 、l |   |. l   ,.-ー\/. 、l |   | l   ,.-ー\/. 、l |   |
  |  /.__';_..ン、!   ! |  /.__';_..ン、!   !|  /.__';_..ン、!   !
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 //--─'( _●_)`ーミ /.//--─'( _●_)`ーミ / //--─'( _●_)`ーミ /
<-''彡、   |∪|  / <-''彡、   |∪|  /  <-''彡、   |∪|  /
 / __  ヽノ /     / __  ヽノ /    / __  ヽノ /
 (___)   /     (___)   /     (___)   /
100マロン名無しさん:2007/08/21(火) 23:49:09 ID:???
つかクラス全員消したら超りんも消えないか?
101マロン名無しさん:2007/08/21(火) 23:59:15 ID:???
実は超りんはネギと超自身の子孫で…あれ?
102マロン名無しさん:2007/08/21(火) 23:59:25 ID:???
朝倉が躊躇もなく覚醒したか!!さしづめ、キャラ的には原作の相馬光子ってとこかな
103マロン名無しさん:2007/08/22(水) 00:00:50 ID:???
超りんはまだてんぱってるんだと脳内保管
104マロン名無しさん:2007/08/22(水) 00:32:10 ID:???
>>100
炎属性が被ったアーニャの子孫の可能性もあるから別に構わない。ネギの子種さえ確保できれば
105マロン名無しさん:2007/08/22(水) 01:08:30 ID:???
乙!
朝倉の事を名前で呼ぶのは千鶴と夏美の二人だけ。これ豆知識な。
そこまで親しい相手を騙し討ちとは、朝倉の今後にxktkせざるを得ない!



夏美(´・ω・`)カワイソス……。
106マロン名無しさん:2007/08/22(水) 02:01:00 ID:???
夏美はホント不幸すぎるwww
まず終盤に行く前に精神崩壊はまちがいないしな
107マロン名無しさん:2007/08/22(水) 02:07:50 ID:???
夏美ってまだ生存率0だよな?
108マロン名無しさん:2007/08/22(水) 02:59:15 ID:???
夏美は生還率未だにゼロだよ。
しかも、桜子と違って話題にもならない…

まあ、桜子含めた生還率ゼロの残り四人がどこまでやるか期待。
109マロン名無しさん:2007/08/22(水) 04:28:04 ID:???
生還率0って桜子、夏美、ザジと…誰だっけ?柿崎であってる?
110マロン名無しさん:2007/08/22(水) 07:21:39 ID:???
>>109
え?葉加瀬じゃないの?
111マロン名無しさん:2007/08/22(水) 07:22:23 ID:???
俺の記憶ではさっちゃんだが?
112マロン名無しさん:2007/08/22(水) 10:13:23 ID:???
>>111
第四部をもう一度読むことを薦める

さて、夏美が不憫になってきたから、過去の生存率0%の連中だけで生還するロワでも妄想してみるかな
113マロン名無しさん:2007/08/22(水) 19:54:47 ID:???
>>109-110
葉加瀬も美砂も作者1のが黒歴史入りしてから0パーセントに逆戻したはず
今思えば美砂って生存回数1/4回しかなかったんだよな前までも……
114作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/22(水) 21:20:19 ID:???
本日の投下を始めます。
115作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/22(水) 21:21:42 ID:???
11.Cat’s Eyes

「なかなか遠いな。」
新田がくだらない説明をしているときに、前の席の絡繰茶々丸(出席番号10番)に紙を渡
したエヴァンジェリン(出席番号26番)は、島の最北端へと向かっていた。
その紙で、自分より30分以上早く出発する茶々丸に、島の最北端で待っていろ、と伝えた。
たった10kmくらいだと思ってたかをくくっていたが、途中で山や崖があって、進むのには
予想外に時間がかかった。
ロボットの茶々丸にはそんなことは関係ないかもしれないが、何かの影響で魔力を抑えら
れて、ただの十歳の子供と同じ身体能力になってしまっているエヴァにとってはかなりつ
らい。
商店街や診療所、集落を横目に、どんどん進んでいたが、まだ先は長そうだ。

ふとエヴァは思い出した。
(そういえば武器が入っているといっていたな・・・。)
長い間武器などなしで戦ってきたエヴァには、武器に頼るというのはあまり気分のいいも
のではなかったが、こんなときでは仕方がない。
歩きながら、肩にかけていた重いバッグの口を開く。
「なに・・・?」
すこしは期待していた。
魔力のないいま、武器はなんだかんだ言っても大切なものだと思った。
しかしバッグの中から出てきたものは、かなり大きめの鍋だった。
鉄でできていて、頭にかぶってもまだあまりがあるくらいの大きさ。
だがこんなものを頭につけても、身も守れないし前も見えない。
かといってこれで殴っても大して強くないから武器にもならない。
さらに唯一使えるかもしれない鍋のふたは、入っていなかった。
はっきりいってはずれの武器だ。
116作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/22(水) 21:23:01 ID:???
「くそ野郎・・・。学校にいるときにぶっ殺しておけばよかった。」
エヴァは15年前からあの中学に通っているのだが、強い魔法によって卒業することがで
きないのだ。
だからエヴァは15年間も新田と過ごしていたことになる。
当然、認識魔法がかかっているため新田はそのことにはまったく気付いていないが・・・。

「こんなもの、ゴミのようだ。」
エヴァは鍋を投げ捨てる。
カランカラン、と遠くで鍋が転がる音がする。
唯一の武器がこれじゃ、たまったもんじゃない。
しかしエヴァは武器などなくてもいままで600年も生きてきたのだから、まったく怖さを感
じてはいなかった。
その上、エヴァはそこらへんに落ちていたワイヤーを拾うことができた。
人形使いのスキルである糸を操る術。
それを身につけたエヴァは、糸さえあれば、たいていの人間には負けない自信がある。
神鳴流奥義を使う刹那や、忍術を駆使して戦う楓のような戦闘のプロには歯が立たない
が、まったくの素人をワイヤーで切り刻むことは簡単にできる。
もちろんそんなことをする気はないが・・・。

ガサッ
「やっと敵の登場か・・・誰だ?」
音がしたので振り向くと、そこには誰も立っていなかった。
気配をなくしてどこかに移動したのか、と思いあたりを見渡すが、やはりそれらしき人影は
ない。
見当たらなくて当たり前だった。
音を立てた本人は、エヴァの足元にいたのだから。
117作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/22(水) 21:24:10 ID:???

ニャー
「ふん、猫か。驚かせやがって。ん? 何を持ってるんだ?」
その猫は、まっすぐな瞳でエヴァの方を見つめ、口に何かをくわえていた。
金属のようで、丸い形をしている。
鈴だった。
イライラをぶつける対象にして、フッ飛ばしてやろうかとも考えたが、猫は茶々丸が熱心
に世話をしていたことを思い出し、やめた。
持っていた鈴をつけてほしいんだろうと勝手に思い込んだエヴァは、猫の首にそれをつけ
ようとしたが、その猫の首にはもうすでに別の鈴がついている。
とすると、この鈴は他の猫の鈴だったのかもしれない。
このゲームのために退かされたのは人々だけで、野良の猫たちはそのまま放置されてし
まったのだろう。
そのため満足なエサにありつけずに死んでしまった猫がいてもおかしくない。
きっと、そんなような猫がつけていた鈴を、この猫が持ってきたのだ。
「形見を持ってけと・・・。茶々丸にでも渡すか・・・。」
エヴァは猫から鈴を受け取ると、また歩き出した。
もうすぐ北の端に着くころである。
猫は鈴を渡すとすぐに倒れてしまった。
これからの未来に不幸を招きそうな、とても嫌なタイミングだった。
同時に、カラスが鳴いた。

                    残り 29人

118作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/22(水) 21:26:16 ID:???
12.Decision

校舎を出て南に歩くとすぐに海岸が見える。
佐々木まき絵(出席番号16番)は、ロープとボウガンとサバイバルナイフを持ってその海
岸の岩の陰で一休みしていた。
まだ暗い海を横目に、ただ座り込んでいる。
「――ふぅ。」
いつも明るく元気なまき絵の雰囲気は、今はどこかへ飛んでいってしまっていた。
「まさかあの子が人を殺すなんて・・・。」
まき絵はショックを受けていたのだ。
いままで仲良しのクラスメイトだったみんなが、殺し合いをしろ、と言われただけでこんな
にもバラバラになってしまうものなのか・・・。


1時間ほど前――

まき絵は校舎を出てすぐ南にある森の中を歩いていた。
地図を見る限りこの島には森がとても多いようだが、その中でも一番大きな森が、校舎の
まわりにあるこの森のようだ。

「ネギ君に会いたいな・・・。」
ゲームのことを考えないように、まき絵はネギのことを考えていた。
いつも笑っていてくれたネギ君。
ドッヂボールのときも、図書館島のときも、みんなを救ってくれたネギ君。
新体操の選抜テストのときも一緒にがんばってくれたネギ君。
お父さんに会うために必死で修行をしている真剣なネギ君。
どんなときも、まき絵はネギのことが気になって離れなかった。
そのネギに、もう会えないかもしれない。
そう考えると、泣きたくて仕方なかった。
だが現実は、そんな風にまき絵が落ち込んでいることなんて気にもせずに、ただ残酷
な『いま』を突きつけてきた。
119作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/22(水) 21:27:54 ID:???

ザッザッザッザッ
人が走る音がした。足音からして、二人。
まき絵はあたりを見渡す。
自分の周りは緑の葉っぱをたくさんつけた木々が生い茂っているばかりで、音がどこから
聞こえてくるのかよくわからなかった。
地面には落ち葉が腐って積もり、不安定な足場となっている。
「やめてぇー。」
パシュッ トスッ
「私が何かしたですか? 気に触ることしたなら謝ります。や、やめてください!」

「!! ふみちゃん!!」
今度はしっかりと方向を確認できた。
まき絵は声の聞こえた方へ走り出す。
聞き間違えるはずもない、口調と、子供っぽい声でわかる。
追いかけられているのは鳴滝史伽(出席番号23番)。
足が遅いわけではないが、この地面ではそうそう速くは走れない。
相手が飛び道具だとしたら時間の問題だ。

パシュッ パシュッ
2本の矢が放たれる。
その2本はどちらも史伽の右足へと飛んでいき、皮膚を突き抜ける。
1本は膝に、1本はふくらはぎに当たっていた。
膝を撃ち抜かれたことによって関節がうまく機能しなくなってしまい、壊れた人形劇の人形
のようにガクリと倒れてしまう。
見るからに痛そうな動きだった。
120作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/22(水) 21:29:23 ID:???
「ああぁっ。――痛いっ、痛い! ねぇ、なんでですか? なんで――」
史伽が訴えかけるが、相手は追いかけることはやめなかった。
目標はもう倒れて動いていないのに、急いで近づいていく。
すぐ近くまでくると、勝ち誇ったかのように史伽を見下ろす。
否、見下ろす、というよりはむしろ、見下す、といった方が正しいかもしれない。
「殺さないでどうやって生き残るんですか? 私が聞きたいくらいです。」
パシュッ
また1本。今度は左足を狙われていた。
「ああぁぁぁっ。」
史伽の悲痛の叫びと共に、草むらからまき絵が姿を現す。
「やめてっっ!!」
息を切らせながら、ようやく追いついたまき絵はそのひどい現場を見てしまった。
両足にボウガンの矢が刺さり、痛そうにじたばたしている史伽。
矢が刺さっているところすべてから、とめどなく血が出続ける。
史伽は痛むところを手で押さえようとするが届かないので、膝を曲げて手の届く範囲に
足を持ってこようとし、膝の激痛にまた顔をゆがめる。
どうしようもなく、ただ痛みに耐えるほかはなかった。
そしてその横に立ってボウガンを構えているのは・・・。
「ハカセッッ!!」
マッドサイエンティストと呼ばれた葉加瀬聡美(出席番号24番)だった。
「さようなら。」
再びパシュッというボウガン特有の音がして、矢が史伽の心臓の辺りに突き刺さる。
「うっ・・・。」
刺さったところから、シャワーのように血が飛び散り、辺りを地獄絵図のようにしていく。
121作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/22(水) 21:30:49 ID:???

史伽にもう用はない、と言うかのように、ハカセはゆっくりとまき絵の方を振り返る。
その目はもう、人を殺すことに目覚めてしまった人の目だった。
学園の中での穏やかな顔ではなくなっていた。
「まき絵さんも死にに来たんですか・・・。愚かですよ。」
信じられないことをつぶやいて、ハカセは右手に力を入れる。
そしてためらうことなく構えていたボウガンをまき絵に向けて矢を撃った。
その矢は見事なくらいまっすぐ飛び、確実にまき絵の心臓へと向かっていく。
このままいけばまき絵が死んでしまうのは確実だった。
「私は・・・認めない。絶対にあんたなんかに殺されたりしないんだから!!」

バシッ
「なっ・・・。」
だがまき絵は自分の支給武器、ロープで矢を叩き落し、さらにロープをボウガンに巻きつ
け、それを引っ張って自分の方へと引き寄せた。
ボウガンは聡美の手を離れ、まき絵の足元にしっかりと寄せられてくる。
「こんな時に新体操が役に立つなんて皮肉だけど・・・。」
まき絵はそれを拾い上げ、慌てふためく聡美に向かって構えた。
まき絵の目は怒りと涙で血走っている。
「どっか行って!! はやく!!」
「ひっ。」
その言葉を聞き終わる前に、聡美は逃げ出していた。
聡美の顔には恐怖がにじみ出ていたが、そんなことを気にしている余裕はまき絵にはな
かった。
「ふみちゃん!!」
「まき絵さん・・・。」
弱々しく答える史伽の顔からは、もう生気が感じられなかった。
「ふみか!! 死んじゃダメ!!」
「こんなに早くやられちゃうなんて・・・。」
まき絵は自分の服を破って史伽の怪我している心臓のところに巻きつけたが、その布も
すぐに真っ赤に染まり、何の役にも立たなかった。
122作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/22(水) 21:31:54 ID:???

「――お姉ちゃんに、ありがとうって伝えてください・・・。」
「そんな・・・そんなの・・・。」
「――私の分まで生きてって・・・。」
「やだよ・・・史伽が生きなきゃ、ふーちゃんだって生きていけないよ。」
「――最後にまき絵さんに会えてよかったです・・・。」
「最後なんて言っちゃ嫌ぁぁぁ!!」
「――バッグの中に、ナイフが入ってます。持ってってください――」

最後まで言い終わると、まき絵の腕の中で、史伽は静かに息を引き取った――
まき絵はどうすることもできなかった自分を悔やみ、じっとそこに座り込んでいた――


「ふみか・・・。」
ついさっきのことなのに、まだ信じられない。
昨日まであんなに元気だったのに・・・。
こんなに簡単に死んじゃうなんて・・・。
この時、まき絵は決心した。
今回のハカセのように、ゲームに乗っている人がいたら、容赦なく殺すと。
目の前で人の死を見ることがないように、誰も殺させないと。
そして、自分は絶対に死なないと・・・。

   出席番号23番 鳴滝史伽 死亡
                    残り 28人

123作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/22(水) 21:33:22 ID:???
まき絵の話が若干長めなので、今日は2話分だけにします。
明日もこのくらいの時間に投下します。
  では
124マロン名無しさん:2007/08/22(水) 21:34:21 ID:???
そして真っ先に乙&GJ!!
まき絵にこういう使い方あったんだな。惨死にしてたww
125マロン名無しさん:2007/08/22(水) 21:43:41 ID:???
最近、ものすごい屁をするとものすごい臭いがして困っています。
一人で過ごしてる時は気にしないのですが回りに人がいると申し訳ないです
食事に関してですが、基本的にご飯を毎食摂っています。
家での食事は納豆、キムチ、魚、卵料理を食べることが多いかね。
外食の場合はコンビニ弁当かパンが大半。
特にものすごい便秘というわけではありません
食事面でも肉食に偏っていることはないと思います。
臭いを改善するにはどのような方法がありますでしょうか?
126マロン名無しさん:2007/08/22(水) 22:55:01 ID:???
>>125
リアルに死んだ方がいい
死ねば屁はでない
127マロン名無しさん:2007/08/22(水) 22:57:21 ID:???
乙!
まき絵が正気だ!
生き残れるのかwktk
128マロン名無しさん:2007/08/22(水) 23:08:26 ID:???
鈴が明日菜のものかと思ったがエヴァが気付いてないということは違うのか
129マロン名無しさん:2007/08/22(水) 23:23:04 ID:???
ついにまき絵が生き残れるのだろうか
130マロン名無しさん:2007/08/22(水) 23:31:46 ID:???
まき絵の生き残ったロワって何部だっけ?
131マロン名無しさん:2007/08/22(水) 23:34:08 ID:???
史伽が死んだ…
風香がマーダーフラグktkr?
まぁとりあえずGJ!!
臨場感が演出出来ているので読んでいて凄く続きが気になる
132マロン名無しさん:2007/08/22(水) 23:37:18 ID:???
133マロン名無しさん:2007/08/23(木) 00:46:47 ID:???
これはむしろまき絵ヤバいんじゃ…?
134マロン名無しさん:2007/08/23(木) 02:11:08 ID:???
>>133
夏美じゃないんだから
135マロン名無しさん:2007/08/23(木) 11:40:51 ID:???
とりあえず一気に読んだ。
朝倉が人を殺すなんて…。
朝倉って今まで正気じゃないことあったっけ?
風香がどうなるかwktkして待ってます。
136マロン名無しさん:2007/08/23(木) 11:54:47 ID:???
>>135
とりあえず第12部くらいかな?
137マロン名無しさん:2007/08/23(木) 12:19:10 ID:???
>>136
13部もな
138マロン名無しさん:2007/08/23(木) 14:22:56 ID:???
朝倉は狂って殺すより、アイデンティティーを持ったまま殺人鬼になるな
139マロン名無しさん:2007/08/23(木) 14:35:01 ID:???
ここまでまともなまき絵を見ると、逆に不安になるw
140マロン名無しさん:2007/08/23(木) 16:22:53 ID:???
>>135
朝倉は超やパルみたいに頭脳派殺人鬼になるか、序盤で油断して死ぬことが多いな
今連載中の作者がどう朝倉を動かすか楽しみだ
141マロン名無しさん:2007/08/23(木) 17:12:26 ID:???
イメージでいうなら
朝倉・超あたりが頭脳派マーダー
風香・刹那あたりが大切な人死んで自棄になったり奉仕したりするマーダー
葉加瀬・まき絵・桜子あたりが発狂マーダー
龍宮・ザジが超人マーダー
千雨がマシンガンマーダー
142マロン名無しさん:2007/08/23(木) 17:19:18 ID:???

          ____        ) 『 光の速さでケツからうんこ出したらどうなるの?』っと、
        /⌒  ⌒\      ) 
      /( ●)  (●) \    )/⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y丶
     / ::::::⌒(__人__)⌒::::: \
    |      |r┬-|     |
     \       `ー'´     /
     ノ            \
   /´               ヽ                 カ
  |    l   l||l 从人 l||l      l||l 从人 l||l   カ    タ
  ヽ    -一''''''"~~``'ー--、   -一'''''''ー-、.     タ
   ヽ ____(⌒)(⌒)⌒) )  (⌒_(⌒)⌒)⌒))
      ┌┬┬┐┌┬┬┬┐┌┬┬┬┐┌┬┬┬┐
   ,. - ''"| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ρ ̄`l
    ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ノ ̄ ̄


        ____
    /::::::─三三─\            リアルな話すると多分お前の住んでる街が消し飛ぶ 
  /:::::::: ( ○)三(○)\          光速でウンコほどの質量(約200?300グラム)
  |::::::::::::::::::::(__人__)::::  |  _____ の物体が動いたら想像を絶する衝撃波が発生する
   \:::::::::   |r┬-|  ,/ .| |        ましてそれが地表と激突したら地球がヤバイ
   ノ::::::::   `ー'´  \ | |        お前のウンコで地球がヤバイ
143作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/23(木) 21:09:32 ID:???
どうも、投下します。
今日も2話だけの予定です。
144作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/23(木) 21:10:48 ID:???
13.Kind Gunman

島のほぼ中央に当たる部分は、V字谷となっていた。
その谷の下、山と山の間を細く縫っている道を、古菲(出席番号12番)はゆっくりと歩いて
いる。
チョロチョロと流れる川があったり、谷の斜面に変な向きに生えている木があったりした
が、歩く道の邪魔にならない限りは気にしなかった。
彼女が持っているのは見るからに重そうな巨大な金槌。
その大きさは1メートルくらいあり、一回振り下ろすだけでものすごい衝撃が起こりそうだ。
古菲に配られたからよかったものの、他の人では持ち上げることすらままならないかもし
れない。
もし人間に当たったりしたら、どんな強靭な肉体でも粉々になってしまうだろう。
そんなものを持っているから、古菲は早く歩けないのだ。

「疲れたアルよ・・・。」
いくら格闘大会優勝者とはいっても、それだけ重いものを持って歩き続けていれば、疲れる
のは当然だ。

古菲は、どこへ行こうというわけでもなく、ただなんとなく歩いているだけだった。
中国拳法の使い手の古菲の実力は、素手で戦うのだったら、非常識な人が多くいる3−A
の中でも1、2を争うほどの強さを誇るくらいのもの。
だがいまは、戦うことになったら相手は武器を持っている。
いくら古菲でも武器ありの相手では不利だから、ということでこんな重い金槌を持ってい
るのだった。


145作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/23(木) 21:12:34 ID:???

楓、刹那、真名のうちの誰かと出会えれば心強い。
一緒に武道四天王としてやってきた友だ。
(でも真名はちょっと怖いアルね・・・。報酬次第で何でもする・・・。もし新田と真名が共犯
だったら・・・。)
そんなことを考え、ありえない、というように首を振った。
古菲と真名は、共に戦士として、卑怯なことをするのは許せない性格。
真名は、学園祭で楓と戦ったときも、時間跳躍弾という武器こそ卑怯だったものの、行動
ではまったく恥ずべきことはせず、ただ勝負を仕掛けただけだった。
「真名はそこまでひどい奴じゃないアル。」
そう1人で納得しようとしたところで――


「誰がひどい奴だって?」
突然聞こえた声に、古菲は驚きと同時に懐かしさを感じた。
「真名!!」
古菲が後ろを振り向くと、そこには会いたかった仲間の一人、龍宮真名(出席番号18番)
が立っていた。
「無事だったアルか。」
「私が簡単に死ぬと思っていたのか?」
真名はいままでいくつもの戦場を切り抜けてきている。
そのことをあまり他人には言わないが、古菲は知っていた。
この程度の試練で尽きる命の持ち主ではないのだ。
「ニャハハ。それもそうアルね・・・。真名はこのゲーム――」

――――――
「もちろん乗っている。いまここにいるのもお前を殺すためだ。」
「っ!!」
146作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/23(木) 21:14:23 ID:???
真名は愛銃のデザートイーグルを古菲にぴたりと照準をあわせる。
先ほどまで冗談を言っていた人の顔つきではなくなっていた。
古菲の顔が恐怖でゆがむ。
一度はまほら武道会で勝っている相手とはいえ、あの時は真名は銃を使っていなかった。
さらにあの勝利はネギの声援があったからこそ手にすることができたようなもの。
なのにいま真名は一番得意とするデザートイーグルを持っていて、さらにこっちにもネギはいない。
絶体絶命の危機だった。

「なっ・・・。嘘アル・・・。真名はそんな・・・。」
「――あぁ嘘だ。私は金をもらわない限り他人の命令は受けない主義なんでね。」
真名は腕を下ろし、さっきまでと同じ、穏やかな表情に戻った。
「――ふぅ。真顔で冗談を言うのはやめてほしいアル・・・。」
「すまない。一応、お前の意思の確認もしておきたかったのでな。」
古菲は安心したのか、力が抜けてへなへなと地面に崩れ落ちてしまった。
踏みつけられた草が、クシャっと音を立てる。
「おいおい。そこまで怖かったか?」
「怖いアルよ。特にこの状況じゃ・・・。」
運動バカのバカイエローでもこんなところを見せるのかと思いつつ、これからの方針を決
めようと古菲に問いかけた。
「まぁそうだな。悪い悪い。で、だ。お前はどこか行き先があるのか?」
真名は個人的に何も考えていなかったので、古菲が行こうとしているところに一緒について
いこうかと思っていた。
だが対する古菲もただなんとなく歩いていただけだったので、2人はその場に立ち止まることとなった。
「どこも考えてなかったアルよ。真名はどこへいくアルか?」
真名は答えなかった。
その代わり、谷の上の方を見上げている。

そして、静かに言った。
「戦闘だ。準備はいいか?」
「ぬ?」

                    残り 28人
147マロン名無しさん:2007/08/23(木) 21:15:38 ID:???
支援
148作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/23(木) 21:15:39 ID:???
14.Chairwoman and Her Work

「小さな島に30人もいるはずですのに・・・誰にも出会いませんわ。」
いいんちょこと雪広あやか(出席番号29番)は校舎から北へすすみ集落の方へと向かっ
ていた。
自身の言葉通り、あやかはまだ誰とも出会っていない。
「これのせいで、みんな私から逃げているのかもしれませんね。」
これ、というのは武器のことであった。
服を少し改造して、すぐに取り出せるように、バッグに入っていた斧を背中にかけていたのだ。

委員長として3−Aで過ごしてきて、自分としてはかなりの信頼は得ているつもりだった。
だから他の人があやかの武器を見ても、防衛のためだ、と思って近づいてきてくれるだろ
うと思ったのだが・・・。

北へと向かう道は足場が悪くなっていて、あやかはかなりの体力を消費していた。
まだ夜も明けていなく、周りの景色もよく見えない中で歩いてきたので余計疲れていた。
「みなさん・・・もう殺しあっているのでしょうか・・・。」
自分が中心となって動かしてきたクラスの、友達ひとりひとりのシルエットが頭に浮かぶ。
クラスの中でもあまりなじめていないように見える千雨さんや、仕事だと言って銃をいつも
持っている龍宮さんは、殺していてもおかしくないかもしれない・・・。
そんなことを考えて、取り消した。
「委員長として、みんなを信用しなければいけませんわね。」
自分のできること、それはみんなを信頼して仲間を集めることくらいだった。

149作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/23(木) 21:16:44 ID:???

「いいんちょ!」
「ひゃい!?」
考え事をしている中で突然後ろから話しかけられたので、びっくりして変な返事になってしまう。
後ろから話しかけられたということは、相手が乗っている人だったならばもうすでに私は死
んでいるんだなー、と思い、油断したと反省しつつ振り向く。
「裕奈さん!」
後ろにいたのは明石裕奈(出席番号2番)だった。
裕奈は走ってきたのか、息を切らしていた。
「アキラが怪我してるから、診療所まで運ぶの手伝ってくれる?」
「アキラさんが!! もちろんですわ。」
「ありがとう!! こっちこっち。」
あやかの返事を聞くや否やすぐに裕奈は駆け出す。
友達を思う気持ちで、体力はカバーできていた。
裕奈に連れられて、いいんちょはアキラの元へと急ぐ。
走るのが比較的速い裕奈についていくのはかなり大変だったが、アキラのことを思うと
足を休めるわけにもいかなかった。

――――――
5分くらい走ると裕奈は止まって、地面に倒れている人物に話しかけた。
「アキラ!! いいんちょ呼んできたよ。」
「アキラさん!! 大丈夫ですか?」
アキラは背中をナイフか何かの刃物で切りつけられていて、まわりの地面は赤く染まっ
ていた。
もう血は固まってきていたが、それでもアキラの怪我のすさまじさはうかがえる。
ここまで生きていられたのも体力と精神力の賜物だろう。
「うん・・・。だいじょうぶ・・・。」
「とにかく運ぼう!!」

150作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/23(木) 21:18:11 ID:???

幸い診療所は思っていたよりも近くにあり、すぐに治療することができた。
診療所に水道はあったが、ウィルスが入るといけないので支給された水で洗い流し、あと
は診療所においてあったガーゼや消毒薬で消毒し、針と糸で縫っておいた。
アキラはホッとしたのか、お礼を言ってすぐに眠ってしまっていた。
大量出血して貧血気味になっていたのだ。

「いいんちょ、ホントにありがとね。運んでくれただけじゃなくて治療までしてくれて。すごい
うまかったし。医者になれんじゃない?」
消毒薬のにおいが残る部屋で、裕奈とあやかは向かい合っていた。
「お世辞はいりませんわ裕奈さん。それより、誰がこんなことを・・・?」
特に照れる様子もなく、あやかは質問を返す。
実際のところ、これが一番気になることだった。
他人を傷つけることが平気な人が3−Aにいることが、委員長としてなどではなく、一人の
人間として許せなかった。

裕奈は一回深く息をついて、ゆっくりと、悲しみのこもった小さな声で答える。
「――桜子だって・・・。」
「そんな!! 桜子さんが!!」
あやかは思わず叫んでしまった。
椎名桜子(出席番号17番)は、あやかが今までずっと隣の席で勉強してきたクラスメイト
である。
その桜子がゲームに乗っているなんて、とても信じられることではなかった。
「切りつけられたあと、アキラががんばって銃を向けたら逃げてったんだって・・・。」
「・・・。」
二人はしばらく黙っていた。
二人とも、信じられなかった。
クラスのムードメーカーともいえる桜子は、誰とでも仲良く話し、遊んでいた。
それなのに、ゲームが始まったとたんにこうもおかしくなってしまうものなのか。
151作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/23(木) 21:19:53 ID:???


「これから・・・どうするの?」
脱出する方法もわからなければ、誰が生きているのかもわからない。
方法がわかっても、それができるかどうかもわからない。
正直言って、まだ何もできない状態だった。
「まずはみなさんを集めましょう。ゲームに乗っていない方で集まって、脱出の方法を考え
るしかないですわ。」

「ゲームに乗っている人は・・・?」
あやかは背中の斧を握った。
固い決意があやかの目には浮かんでいたが、それでもやっぱり悲しそうに言う。
「仕方ありませんわ・・・。」
それを受けて裕奈もしっかりとうなずいた。
「わかった。じゃあアキラが回復するのを待って――」
「私はもう大丈夫・・・。」
「アキラ!!」
2人の視線がアキラに向けられる。
さっきまで寝ていたアキラが、体を起こしていた。
薄暗い部屋の中で、上半身ほとんどすべてを包帯でまかれているアキラは、もう歩くこと
すら辛い重病患者のように見えるほどだった。
少し痛そうな表情を浮かべたが、それでもアキラは言葉を続ける。
「こうしてる間にも、誰かが狙われてるかもしれない・・・。行こう。」
裕奈もあやかもかなり心配だったが、立ち上がって移動の準備を始めているアキラを見
て、2人と同じ決意を持っていることを感じた。

「よしっ、じゃあ行きますか。」
3人はそれぞれの武器――斧、鎌、レミントンM1100――を握りしめ、診療所を出た。

                    残り 28人
152作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/23(木) 21:21:12 ID:???
今日は以上です。
明日も投下が遅くなるかと思いますが、よろしくお願いします。
受けたくもない塾の模試があるので・・・

では
153マロン名無しさん:2007/08/23(木) 21:23:58 ID:???
リアル遭遇ktkr
乙です
154マロン名無しさん:2007/08/23(木) 21:31:30 ID:???
古菲と真名が出会うと大抵殺されてたからヒヤッとしたよwwwww
155マロン名無しさん:2007/08/23(木) 21:35:40 ID:???
乙っ!!
多分古と龍宮が遭遇したとき古が殺されると思ったのは俺だけじゃないはずだww
とりあえずwktkしながら待っていますっ!!
156マロン名無しさん:2007/08/23(木) 21:52:39 ID:???
アキラ怪しい・・・
157マロン名無しさん:2007/08/23(木) 21:56:01 ID:???
自分で背中斬り付けたんじゃね?って一番最初に考えた俺orz

龍宮に死亡フラグな予感……
158マロン名無しさん:2007/08/23(木) 22:29:50 ID:???
真名を信用できなかった俺ビビリ
そして死亡フラグマスター桜子、早くもフラグ立てる
159マロン名無しさん:2007/08/23(木) 23:21:15 ID:???
乙!
龍宮が乗ってない・・・?
いや、まだわからんな。龍宮だからなー
160マロン名無しさん:2007/08/23(木) 23:28:53 ID:???
乙。
ちなみにウィルスっつーより雑菌な
161マロン名無しさん:2007/08/24(金) 00:52:31 ID:???
乙!

アキラに関しては妙な先読みをしてしまった俺ガイル・・・。予想通りなら神なんだが、どう出るかwktk
何気に真名くーペアは初じゃね? こちらも期待w
162マロン名無しさん:2007/08/24(金) 01:02:45 ID:???
お前らもうちょい真名のこと信じたれやwww
いや俺も遭遇した瞬間古菲オワタと思ったけどさ
163マロン名無しさん:2007/08/24(金) 01:34:29 ID:???
投下乙
真名と古のコンビは期待してしまうな。
誰が対抗するんだろう。
164マロン名無しさん:2007/08/24(金) 03:53:24 ID:???
ここまで信頼が無い真名カワイソスw
まぁ〜俺も古オワタ\(^o^)/と思ったがな。
165マロン名無しさん:2007/08/24(金) 17:16:45 ID:???
おまえら古オワタと思いすぎww

まあ、俺も思ったが。
今回の隊長はゲームに乗ってないのか。いや、まだわかんないけど。
とりえずwktkしてまってる。
166マロン名無しさん:2007/08/24(金) 17:55:24 ID:???
ていうか原作で古と真名は友人ですよwww
刹那と木乃香とは言わんが、裕奈と亜子や夏美と千鶴ぐらいの絆はあるだろうにwww
167マロン名無しさん:2007/08/24(金) 19:06:48 ID:???
龍宮信用ねーなーw
過去ロワでマーダーになった時の印象が強いからかな?
168マロン名無しさん:2007/08/24(金) 21:03:42 ID:???
ここじゃマーダー どっかじゃおぽぽ
本当に救いがない真名・・・・・
169マロン名無しさん:2007/08/24(金) 21:20:22 ID:???
ザジちうじゃあマグナムやらもっこりやら……そう考えるとここが一番リアルでまともだと思うぞ?wwwww
170マロン名無しさん:2007/08/24(金) 21:40:16 ID:???
真名なにげなく愛されすぎだwww
171マロン名無しさん:2007/08/24(金) 22:20:11 ID:???
龍宮といえば銃
銃といえばマーダー
172マロン名無しさん:2007/08/24(金) 22:44:43 ID:???
今日の投下はマーダー?
173マロン名無しさん:2007/08/24(金) 22:45:30 ID:???
まだだよ。静観するヨロシ
174作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/24(金) 22:47:55 ID:???
>>172
ナイスギャグwww

ってことで、本日の投下です。
模試のため遅くなってすみません。
175作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/24(金) 22:49:11 ID:???
15.The Coin of Destiny

商店街。
ゲームが始まる前、この島に人が住んでいた時期なら、人がたくさんいてにぎわっている
のだろうというそこも、今はただ一人の少女が道を歩いているだけであった。
真ん中の広い道を一人で堂々と歩いている少女。
早乙女ハルナ(出席番号14番)は、武器を片手に楽しそうにしていた。
ハルナの持っているのはproject90。
遠目に見ると一見ただの鉄の板のようにもに見えるが、よく見るとそれは強力なサブマシンガン。
その高性能ゆえに法執行機関以外への販売が禁じられているほどのものだ。
学園祭で楓と戦うときに、真名も使用していた。

「武器は当たりだね〜。どうしようかしら。」
ハルナはこの状況を楽しんでいた。
バトルロワイヤルの小説を読んだことのあるハルナは、実際にその中に自分を置かれてみ
て、かなり興奮していた。
確かに、殺されるかもしれないという恐怖はある。
だがそれ以上に、これからどういう展開になっていくのか、という、本を読んでいるときと
同じような興奮を覚えていた。

生き残る方法はたぶん二つ。
ひとつはルール通り、クラスメイトを全員殺して1人になる。
サブマシンガンがあれば、出会った人をかたっぱしからつぶしていって優勝することも
可能かもしれない。
もうひとつは、みんなと力を合わせて首謀者を殺害する。
武器がいいので、首輪さえはずれてしまえば、友達と組んで新田たちを制圧することも
可能かもしれない。
176作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/24(金) 22:51:04 ID:???
「こんなとき、彼はコインで決めてたわよね〜。」
彼、というのは小説の登場人物であり、ハルナが一番気に入っていた人物だ。
コインを投げて、表が出たらゲームを壊す。裏が出たらゲームに乗る。
単純だが、それだけで運命が変わる。
圧倒的な強さを持っていたその『彼』は、どちらを選んでも生き残れる可能性は多分にあった。
そしてその彼は、コインの結果――裏――にしたがって動いた。

実はハルナは、どっちでもよかった。
いつものように夕映やのどかと一緒にわいわい騒ぐことは、もうできないのだ。
図書館探険部の活動もきっともうできない。
ネギ先生をめぐっての、のどかと夕映の三角関係について悩むことももうないのだ。
「やって・・・みようかな。」
しばらく思い悩み、みんなのことを思い出す。
学園祭の途中で知った魔法のこと。ネギが魔法使いだなんて知らなかった。
その魔法がらみの問題に首を突っ込み始めて、ハルナは楽しかった学園生活をさらに楽
しいと思うようになっていた。
遊びでも使えるアーティファクトを手に入れ、戦いでもそれを使う。
そんなハラハラドキドキな生活を送るのはとても好きだったが、こんな状況から、ネギの
従者たち、つまり明日菜や木乃香、のどか、夕映、刹那、そこらの人がみな生き残る
なんてことはまずないだろう。
むしろ、だれか1人でも生き残ったらいいほうなのではないだろうか。
ということは、もし自分が生き残ってもネギと2人きりしかいないなんてことも十分にありえ
るわけで、それではもとの暮らしはできない。
ゲームに乗ろうが乗るまいが、どうせ死ぬ人は死ぬし、死なない人は死なない。
だったらどちらでもいいじゃないか。そう思ってしまった。
「いい子ぶってたって結局は殺されるかもしれないし、私が殺しまくってたって他の人が
新田を殺せばその時点でゲームは終わるんだから・・・。えいっ。」
177作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/24(金) 22:52:51 ID:???

自分の決断によって変わるのは、自分の運命だけかもしれない。
他の人次第で、このゲームの結末は変わってくるのだ。
そう勝手に考え、ハルナは自分の財布から五百円玉を取り出すと、思いっきり高く投げた。
(500って書いてある方が裏ね。)
暗闇の中、金色がくっきりと浮かび上がる。
硬貨はだんだんスピードを落としていき、頂点までいくと、今度はスピードを増しながら
落ちてくる。
地面に当たり、はねる。そして、転がる。

キンッ コロコロコロ パタンッ
「――――ふぅ。」

その結果に、ハルナはしばらく悩んだ。
コインですべてを任せる、そう決めたばかりなのに、コインの示す道は悩ましいものである
ことに間違いはなかった。
「――――これで、いいのよね。」
ハルナはサブマシンガンを持ってまた歩き出した。
こんなへんぴな島なのに、なぜかコンクリートで舗装された道路の上に、コインが一枚
落ちている。
それはこれから始まる1人の戦いの合図だった。

                    残り 28人
178作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/24(金) 22:54:46 ID:???
16.Hunter

島の南西の方には、なだらかな丘陵地が広がっていた。
校舎は島の中央から少し南にいった辺りにあったので、そこからまっすぐ西へ向かうと、
この丘陵地帯へと出る。
宮崎のどか(出席番号27番)は、出発したのは最後から5番目。
どこへ行っても誰かいるような状態になっていると判断して、まずは見通しのいい丘陵地
で親しい人を探そうとしていた。
そこは荒地といった感じで、特に何かがあるわけでもなく、ひたすら黄土色の地面と
岩だけでできている土地だった。

「夕映ー・・・。ハルナー・・・。どこー?」
もとから気の弱いのどかは、この状況にかなり怯えている。
だが本好きなことが幸いして、ハルナに勧められたバトルロワイヤルの小説を読んだことが
あり、他の人と比べるといくらか落ち着いていられた。
小説だって、結局殺し合いに反対していた人が生き残ったんだ。
そう思うだけで、動揺を少し抑えることができた。
「アデアット!!」

――――――――
「やっぱりダメです・・・。」
突然思い出し、カードを取り出して叫んでみたが、やっぱり何も起こらなかった。
刹那の気が抑えられているのと同じように、のどかのアーティファクトも使えなくなってい
るのだ。
のどかの武器はスタンガン。
20pくらいのそれは、一応武器としては使えるが、超接近戦でなくては使えないし、ナイフ
なんかよりもずっと使い勝手が悪い。
戦い慣れしている人ならある程度は武器になるだろうが、のどかにとってはどうしようもなかった。
いくら戦う気がないとは言っても、身を守るにもあまり使えなさそうで、さすがに不安になら
ざるを得ない。
「誰もいないですー・・・。」
179作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/24(金) 22:57:01 ID:???

カンッ
次の瞬間、のどかの足元に銃弾が飛んできた。
「っ!」
思わずしりもちをついてしまう。

パンッ
「うわっ!!」
今度は銃声まで聞こえた。しかしまたはずれてのどかの数メートル手前で着弾する。
のどかは目を凝らして相手の場所を確認しようとするが、その前にふわっと自分の
体が浮くのを感じた。

「あんな広いところに突っ立っていては危ないでござるよ。」
のどかは、そっと目を開ける。
そしてその目で、自分の体を抱きかかえて走る長瀬楓(出席番号20番)の姿を見た。
そのときの楓の姿は、学園祭のデートで高音・D・グッドマンから逃げるときのネギと
重なって見えた。
(かっこいい・・・)

楓は普通の人間では想像もつかないくらいの速さで走っているが、敵もしっかり楓のまわり
に撃ってくる。
しかし楓はその弾を器用にすべてかわしながら、全速力で走り続けていった。
「危ない危ない・・・。向こうもそこまで銃になれていなかったようでござる。真名クラス
のスナイパーだと逃げることなど不可能でござるからな。」
楓は一気に島の西端の海岸まで走りぬけ、岩の陰にのどかをおろす。
さすがに距離が広がりすぎたので敵もあきらめたのか、弾は飛んでこなくなった。
のどかのほうはまだ何が起こったのか詳しく認識できていなかった。
わかっていたことは、狙われていた自分を、楓が助けてくれたということだけだ。
180マロン名無しさん:2007/08/24(金) 22:58:58 ID:???
しえん
181作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/24(金) 22:59:23 ID:???
「あ・・・あの・・・ありがとうございますー。」
やっと落ち着いてきたのどかは少し呼吸を落ち着けてから礼を言う。
「あいあい。さっきも言ったでござるが、広いところは危険。気をつけたほうが良いでござるよ。」
「あ・・・はいー。わかりましたー。」
「一応聞いておくが、戦う気は――」
「もちろんないです。あ、武器は――これですー・・・。」

のどかはポケットからスタンガンを取り出した。楓の前に置いた。
「スタンガンか・・・。拙者はこれでござる。」
楓はなにやら携帯電話のようなものを持っていた。
「首輪探知機のようでござる。これがなければ、先ほどののどか殿も助けられなかった
でござるよ。」
それを聞いて、のどかはかなり安心していた。
楓はまほら武道会でもベスト4に残るほどの実力者で、その楓が一緒にいてくれるのだ。
しかも首輪探知機という強力な助っ人がある。
よっぽどのことがない限りは死ぬことはないだろう。

「さて、大丈夫なら出発したいでござるが・・・。」
「出発って・・・どこに行くんですか?」
「拙者はバカレンジャーのみんなを探しているでござるよ。夕映殿も含めて。」
それを聞いてのどかの顔がぱっと明るくなった。
「ついて行ってもいいですか?」
「もちろんでござる。」


「チッ。逃がしたカ。さすが楓さんは出来が違うネ。」
山を降りてきて、丘陵地の近くの草陰から銃でのどかを狙っていた超鈴音は新しい
獲物を狙って歩き出していた。
最後のわがままを突き通すため、超は動き出している。
そんなことには、誰も気付いていない・・・

                    残り 28人
182マロン名無しさん:2007/08/24(金) 23:00:36 ID:???
god乙!
183作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/24(金) 23:01:37 ID:???
17.An Accuracy Rate 100%

「敵だ。」
そういうや否や、2人の頭上から大量の手裏剣が降ってきた。
恐るべき身体能力で2人はそれらをすべてよけると、また上を見た。
するとまた手裏剣の雨が降ってくる。
高さがあるので、敵のところからは落とすだけで、2人のところに落ちるまでに加速して
威力は高まっていた。
確実にひとつずつよけないと、当たった時点でゲームオーバーだ。

だが古菲と真名はまったく苦労する様子を見せずに簡単によけていく。
手裏剣は真名たちのところに来るまでの間に斜面に生えている木を切っていくので、
底にいる2人のもとへは手裏剣だけでなく木まで転がってきた。
「誰アル? 危ないアルよ。」
真名が見ていた人物は、崖の上で2人を見下ろしていた。
褐色がかった肌に、グレーの髪を持ち、顔にピエロのような涙のペインティングが施されている。
普通の人間ならば、かなり深い谷の底からそこまで見ることはできないが、真名の魔眼を
もってすればそのくらいのことは認識できた。
「ザジ・レイニーデイだな・・・。私たちを殺す気だ。ならば容赦はしない!!」
「この暗い中よく見えるアルね。」

パンッ パンッ
真名は上に向けて2発発砲しただけだったが、その弾は確実にザジを撃ち抜いていた。
手裏剣が降ってこなくなり、その代わりに大きなものが降ってくる。
それはいままで上にいたザジ自身。
銃弾が当たって体から飛び散った血も一緒に降ってきた。
赤い液体はスライムのように形が変わって落ちてくる。

184作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/24(金) 23:02:59 ID:???
ドサッ バキッ ベチャッ

地面に打ちつけられたザジは、首の骨が折れ、腹からは大量の血が出ていた。
死んでいるのは火を見るよりも明らかだった。
ザジに続いて降ってきたバッグの中には、まだ数え切れないほどの手裏剣が入っている。
「先に言い訳をしておくが、いま殺したのは仕方なかった。わかるな?」
命を狙われ、とっさに撃ってしまった自分への言い訳を、古菲にも告げる。
「いや、それを責めるつもりはまったくないアル・・・。でも、それにしてもすごい命中率アルな・・・。」
「まぐれだよ。」
真名は即答し、ザジのバッグから手裏剣と食料を出し、自分のバッグにつめた。

ザジは、あの騒がしい3−Aの中では珍しい寡黙な人で(アキラとザジくらい)、あまり
目立つ方ではなかった。
だがそれでもクラスメイトとして一緒に過ごしてきたことに変わりはなく、その友達を殺して
しまった真名は、少し心に迷いがあった。
「で、どこ行くアルか?」
「・・・立ち直りが早いな。人の死体を見てすぐにそんな・・・。さすがバカイエローといった
ところか。」
小声でそんなことをつぶやくと、真名は歩き出した。
185作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/24(金) 23:04:11 ID:???

自分が悩んでいる暇はない。
一刻も早く、このゲームを終わらせる方法を考えなければいけないのだ。
悩んだり悔やんだりするのは、生きて帰ってからでも遅くはない。
いまは古菲のように、何も考えずにいる方がいいのかもしれない。

「――楓を探しに行くぞ。」
「おお、いいアルね。楓ならいい戦力になるアルよ。」
長瀬楓。
甲賀中忍である楓に手裏剣を持たせれば、とてつもない戦力になることは間違いない。
真名と古菲だけでも十分強いが、そこに楓が入れば少なくとも他のクラスメイトに
殺されることはなくなる。
相手になるのは刹那くらいだが、その刹那がゲームに乗っているはずはない。
そんな安心感を得るため、という意味も含めて、2人は楓を探して歩き出した。

   出席番号 31番 ザジ・レイニーデイ 死亡
                    残り 27人

186作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/24(金) 23:06:10 ID:???
なんつーかよく死ぬ人ばっか死んでますね・・・
まあ、今日は以上でーす。
眠いので若干テンションが上がり気味ですがここらへんでやめときますぅ。
ではでは
187マロン名無しさん:2007/08/24(金) 23:07:36 ID:???
ザジ\(^o^)/
188マロン名無しさん:2007/08/24(金) 23:08:53 ID:???
パルが桐○になったとしたら・・・・・・悪いが役不足に感じるぜ
返り討ちにあいそうw
189マロン名無しさん:2007/08/24(金) 23:10:30 ID:???
>>188
商店街を味方につければ何も怖くない
190マロン名無しさん:2007/08/24(金) 23:52:34 ID:???
勉強するなかスレ住民に作品披露する作者は偉いな!
191マロン名無しさん:2007/08/25(土) 00:17:19 ID:???
>>190
いや馬鹿だろwwwwwいい意味でwwwww
192マロン名無しさん:2007/08/25(土) 00:23:55 ID:???
でも模試の話題は昨日出してほしかったんだぜ……
明日だと思ってた模試の日にちを確認するのが怖い



>>188
三大マーダー(俺基準)の内の一人・千雨と同じ眼鏡オタでマシンガン装備なのに……
やはり社交的な奴は威圧感が出ないのかしらw
193マロン名無しさん:2007/08/25(土) 00:47:28 ID:???
社交的なのを利用して後ろからズドンというのもアリだと思うが?
194マロン名無しさん:2007/08/25(土) 06:24:04 ID:???
騙し打ちなら火力はそこまで必要ないからなぁ
ステルスは小さい火力で場をひっかきまわしてなんぼというか
195マロン名無しさん:2007/08/25(土) 14:42:02 ID:???
俺は500円玉が表だったと信じてる
196マロン名無しさん:2007/08/25(土) 19:10:53 ID:???
作者は偉い子まちがいない
197作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/25(土) 21:10:36 ID:???
どーも。
今日はこの時間の投下です。
198マロン名無しさん:2007/08/25(土) 21:11:47 ID:???
リアル遭遇ktkr!
199マロン名無しさん:2007/08/25(土) 21:12:22 ID:???
支援
200作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/25(土) 21:12:45 ID:???
18.Why not?

「おい茶々丸。まだか。」
「すみませんマスター。もう少しだと思います。」
山沿いの道を、絡繰茶々丸(出席番号10番)とエヴァンジェリン(出席番号26番)は歩いていた。
猫と別れてから少しして、エヴァは目的の場所にたどり着いた。
2人は島の最北端で待ち合わせし、少し南へ戻るような形でいま移動している。
エヴァはかなりイライラしていた。
このくだらないゲームのせいもあるが、それ以上に、魔法が使えなくなっていることに
無償に腹が立っていたのだ。
島全体に結界が張ってあるのか、忌々しい首輪が魔力を押さえ込んでいるのか、どちらか
よくわからないが、そのどちらかなことには違いない。

「茶々丸、この首輪ははずせないのか。」
「パソコンがあれば本部の方にハッキングを仕掛けてどうにかすることはできるかもしれません。」
「ふんっ、仕方ない。パソコンを探すぞ。」
「はい、マスター。」

というわけで2人は、人が住んでいたであろう集落に向かっていたのである。
左は山、右はなにもない湿地、といった環境の中しばらく進み続けた。
「たいそうな島を占拠したもんだ。」
何のためかもわからないこんなゲームのために、島ひとつを占領する。
たくさんいたであろう人も全員撤去して、完全に貸しきり状態にする。
その意味が、全く理解できなかった。
「――マスター、家です。」
と、2人の前方にキャンプ場のような風景が広がる。
木でできた家が何軒か建ち並び、ところどころに空き地があった。
そこら中に背の高い雑草が生えていて、エヴァはいちいち草を掻き分けて進まなければ
いけなかった。
「探すぞ、茶々丸。」
201作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/25(土) 21:14:00 ID:???

一番豪華そうな家に侵入すると、それはすぐに見つかった。
2階の大きな部屋に、デスクトップ型のパソコンが設置されている。
こんな寂れた島なのに、インターネットの回線はちゃっかりつながっていた。
猫からもらった鈴と、勝手にとってきたワイヤーを使って、家の入り口に簡単な罠を仕掛け
ると、茶々丸はパソコンに向かいっきりになった。
到底人には真似できない速度で指が動き、画面にはものすごいスピードで文字が打ち出
されていく。
「じゃあ、頼んだぞ、茶々丸。私はしばらく寝る。」
「わかりました。何かあったら声をかけます。」

寝るとは言ったものの、こんな状況で寝ていられるほどエヴァはのんきではなかった。
いろいろなことを考えた。
新田は『ネギ先生は何も知らずに学校にいる』と言っていたはず。
このゲームについてまったく知らされていないとなれば、ぼーやは3−A全員がいないと
いう事態に疑問を持たないわけがない。
学校行事だと言ってだましていたとしても、ぼーやだったら『生徒について行く』とかなんと
か言うはずだ。
ということは、ぼーやは眠らされたり気絶させられたりしている可能性が高い。
つまり、ぼーやの応援は望めないということだ。

ここまで考えて、私はなぜぼーやなんかに頼っているんだ、と不愉快に思った。
弟子のぼーやなんかに助けられなくても私は1人でどうにかしてやる。
確かに最近、戦いにおいての成長は著しく、少しは男らしいところもあると思ってきたが・・・。
202作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/25(土) 21:15:09 ID:???
「ふんっ。」
エヴァは大きく首を横に振った。
いくらサウザンドマスターの子供とはいってもまだまだガキだ。
私があんなやつに頼るなんてことはありえない。
エヴァは顔が赤くなっているのが自分でもわかってものすごく恥ずかしくなった。

ぼーやはおいといて、だ。
無理やりに頭からネギを追い出して考え直した。
なぜタカミチやじじいは助けに来ない?
ぼーやだけならともかくとして、新田ごときに魔法先生たちが全員だまされるわけがない。
じじいが関係しているのか?
それならば私まで参加させられているのにも納得できる。
5秒に1回のあれをやれば、私を学園外に出すことは可能なはず。
それとも登校地獄をも逃れられるような強烈な魔法が、この島にかかっているのかもしれない。

わからないことがあまりにも多く、エヴァのいらいらは募る一方だった。
茶々丸がキーボードを打つ、カチャカチャという音をBGMに、エヴァはずっと
考え続けていく。

                    残り 27人
203作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/25(土) 21:16:09 ID:???
19.No Plan

この島にはあまり高い山がないため、ほぼすべての場所から見えるものがある。
島の北西の海岸にある、灯台である。
いまそこには、3人が集まっていた。
柿崎美砂(出席番号7番)と釘宮円(出席番号11番)と那波千鶴(出席番号21番)だ。
みんなこのゲームに乗るつもりはなく、どうにかして脱出できる方法を考えていた。
美砂と円が出会い、灯台へ来て千鶴と出会い、それからずっと、3人はここで話したり
考えたりしていた。

30メートルはあるだろうという灯台。
長い間使われていなかったのか、ドアは錆び、部屋の中もかなりカビっぽかった。
台所のようなところがあり、部屋の真ん中にはテーブルが置かれている。
そのまわりのいすに、3人は腰掛けていた。
「そう・・・。まずは首輪をはずさないと・・・。」
「でも無理にはずそうとすると爆発するって言ってましたよ。」
『うーん・・・。』
「とりあえず・・・ご飯食べますか?」
「そうしよっか・・・。」
配られた食料のほかに、この灯台にあった冷蔵庫の中にいろいろな食べ物が入っていたので、
それを食べることにした。
何年も前のものかもしれないので、一応食べる前に火を通そうと思い、台所にガスが来て
いることに感謝して料理した。
寮生活をしていることでみんな料理はうまくなっていて、こんな時に、助かった、と思ったり
もしていた。


204作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/25(土) 21:17:33 ID:???
できあがるとみんなでまたいすに座り、考え事をしながら食べ始める。
美砂と円が出会ったときから、2人は桜子のことを心配していたので、この灯台に着いてからも、
ちらちらと窓から外を見て、桜子は来ないかとずっと思っていた。
千鶴も、出発してからずっと考えている夏美のことを、このときも考えていた。
3人とも、桜子か夏美かの違いはあるものの、誰かを探しに行きたいという思いは一緒だったのだ。

でもそれすらも思いとどまらせる問題があった。
武器である。
3人の武器は、それぞれフォーク、つめ切り、防犯ベルだった。
『はぁあ・・・。』
見事に溜息が重なる。
こんなものでは何もできないし、身を守ることすらできない。
さすがに襲われたときのことを考えると、外へ行く気にはなれないのであった。
もしかすると、桜子も夏美もすぐ近くにいるかもしれない。
それでも、自分が死ぬ、というリスクを課してまでして探しに行けるほど、勇気はなかった。
誰もゲームに乗っていないかもしれない。
逆に、他の人たちはみんな乗っているかもしれない。
3人とも、ここに来るまでの間に誰とも会っていないので、まったくゲームの状況がわからず、
逆にどんなことでも想像できた。
他の人たちも、自分たちと同じようなどうしようもない武器しか配られてないのかもしれない。
都合のいい仮定を作り出しても、やはり外に出るのは体が拒否した。

「とりあえず、誰かがここに来るのを待ちましょう・・・。」
本当はそうしたくないが、うなずくしかできないのが現実であった。

                    残り 27人

205作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/25(土) 21:19:04 ID:???
20.The Cold God
そろそろ夜が明ける。
木の葉ごしに、明るくなりかけている空を見上げた。
「なんでこんなことになっちゃったんだろう・・・。」
午前6時には新田の言っていた定期放送が入る。
そこで、いままでに殺された人の名前が発表されるのだ。

「何人殺されちゃったのかなぁ・・・。」
校舎から遠く離れた森の中、鳴滝風香(出席番号22番)はつぶやいた。
いつもいたずらをして喜んでいる風香の姿は、どこにも見られなかった。
(太陽でも見に行こうかな・・・。)
何もすることがなく、思いついたままに風香は森を東へと歩く。
波の音が聞こえていたので、海が近いことはわかっていた。

そして、海岸に出た瞬間に、
「きれー。」
風香はそこから見える景色に、つい声が出てしまった。
何も邪魔するものなく、遠くまで見える海。
その海岸線から、朝日が昇ろうとしている。
日の光を受けて、波がきらきらとひかり、絵に描いたような綺麗な景色をつくっていた。
「こんな状況じゃなきゃ、またこの島に来てもいいかも・・・。」

パッパッパララッパー
突然の音楽に、風香はとび上がってしまった。
時計を見ると、もう6時になっていた。
『朝の放送を始めるぞ。みんな地図と名簿とペンを用意しとけよ。』
ついにきた、最悪のとき。
まだずっとこの風景を見ていたい、という誘惑を断ち切って、風香は急いで紙を取り出し、
メモをとる準備をした。
(お願い、誰も呼ばれないで。)

『まず死亡者から。番号順にいくぞ。23番 鳴滝史伽――』
206作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/25(土) 21:20:26 ID:???

「!!」
鳴滝史伽・・・?? えっ??
意味がわからなかった。いま呼ばれた名前が何を意味するのか、わかりたくもなかった。
最初から、風香にとって一番大切な名前が呼ばれてしまったのだから。
信じられなかった。さっきまで同じ教室にいたのに・・・。
昨日まで一緒に暮らしていたのに・・・。

誰よりも自分のことをよくわかっていて、そして自分も誰よりも史伽のことが好きだった。
それなのに、もうその史伽には会えないのだ。
『28番 村上夏美 31番 ザジ・レイニーデイ 以上3名。』

新田は風香の気持ちなど考えもせずに放送を続けたが、風香のほうもまったく放送を
聞いていなかった。
「あああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!! どうして、どうしてなんだよ。ふみかぁぁ
ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
『次に禁止エリアだ。7時からE−8、9時からF−4、11時からC−3。わかったか。
時間が過ぎてもそこにいる奴は首輪が爆発するからな。以上、放送を終わる。』


少し離れた場所で、風香の叫び声を聞いていた人がいた。
「これはふうかのところへ行かなきゃまずいッスね・・・。」
得意の走りで、春日美空(出席番号9番)は風香のところにすぐにたどり着く。
いつもいたずらをしてきた仲間として史伽の死を悲しんでいたが、それよりもまず、
風香と一緒にいてあげることが一番だと思ったのだ。
207作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/25(土) 21:21:39 ID:???

「ふうか!!」
だがそこで美空が見たものは、右手に鉈を持ってじっと自分の方をにらんでいる風香だった。
彼女が思っていたような、悲しむ風香の姿はなかった。
そこにいるだけで押しつぶされそうになる怒りのオーラが、風香からは出ている。
漫画にするならば、ゴゴゴゴゴ、という文字が背景として書かれるだろう。

「みそら・・・あんたが史伽を殺したの?」
ありもしないことを、風香は聞いてきた。
そんなこと、美空にはできるわけがない。
「え・・・? ち、違うっ!!」
「じゃあその血は何? 誰の血? 史伽の血なんでしょ。」

血? 美空はまったく身に覚えがなかった。
いままで誰も殺していないどころか、風香が初めて会った人なんだから。
おそるおそる自分を見てみると、たしかに右腕と服に血がついていた。
風香のところに走ってくるまでに、木の枝か何かに腕を引っ掛けて怪我をしてしまっていた
ようだった。
走っているうちにその血が飛んで服にもついてしまったらしい。
「よく見てよ!! 私の血だよ!! ほら、この傷から出た血だって。」
だが風香はそれを見ようとしなかった。
「そうやって意識をそらしといて、史伽のことも殺したんだ!! 許さない!!」
「違うってばっ!! 落ち着いて!!」
「あああああぁぁぁぁぁ!!」
「やめてぇぇぇぇぇ!!」
208作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/25(土) 21:23:05 ID:???

鉈を持って、風香は突進してきた。
美空はどうにかよけたが、風香の怒りはまだ治まるはずがなかった。
風香が乱暴に鉈を振り回すのを、美空はよけるので精一杯だった。

風香の目は、復讐と憎悪の念でどす黒く染まって見えた。
美空が盾代わりに使っていた木が、みるみるうちに風香によって伐採されていく。
倒れてくる木が地面に当たるたび大きなゆれを感じたが、そんなことは気にしていられない
ほど切羽詰まった状況になっていた。

――――――
倒れていた木に気付かずに後ろ向きに走っていた美空は、つまづいて転んでしまった。
その瞬間、その頭の上を銀色の刃が飛ぶ。
すぐに立ち上がりまた逃げ始めるが、風香もすぐに追ってくる。
美空はよけ続けたが、ついに後ろへよける道を木にさえぎられてしまった。
「死ねぇぇぇぇぇ!!」
「きゃぁぁぁぁぁ!!」

ドスッ
美空は左肩に激しい痛みを覚えた。腕が付け根のところから切断されていた。
信じられない量の血が飛び出す。
(あ、死ぬんだ・・・。神様、どうかふうかの怒りをお静めください・・・。)
「うああああぁぁぁぁーーー!!」

――――――
「ふふふふふ、やったよ史伽。ボク、史伽の分も生き延びるからね。」
妹を失った双子の姉は、もうほとんど狂い始めていた・・・。
美空の祈った神は、まだ当分、美空の願いを聞き入れてくれそうもない。

   出席番号9番 春日美空 死亡
                    残り 26人
209マロン名無しさん:2007/08/25(土) 21:26:30 ID:???
ktkr
美空……orz
210マロン名無しさん:2007/08/25(土) 21:55:04 ID:???
投下乙です。
ついに狂った生徒が出ましたか……
今後の展開も期待しております。
211作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/25(土) 22:02:35 ID:???
やばいんですけど
212作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/25(土) 22:04:06 ID:???
アクセス規制にかかりかけてます
助けてください。
『投稿しすぎ バイバイさるさん』
というのがさっきまで出ていて書き込めなかったんです。
どうしたらいいですか?
213マロン名無しさん:2007/08/25(土) 22:11:43 ID:???
支援してみます。
214マロン名無しさん:2007/08/25(土) 22:15:35 ID:???
誰もいわないので無知な俺が答えるかww間違ってたらすまん。。
>>212
ああ、投下中にあるよ
同じスレに短時間書き込みするとなるやつだな・・・
まぁ落ち着いてしばらく待てば治るしアク禁にはされんよ

とりあえず乙です。wktkしながら続きを待っていますよ
215作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/25(土) 22:22:45 ID:???
>>214
ありがとうございます。
てかいま書き込めるということはもう解除されたってことですよね? たぶん・・・
なんかあわてちゃいました。
心配おかけしました。ほんとすみません汗

それでもって、今日の投下は以上です。
18・19話は『つなぎ』的な感じなので、内容は薄いですが、
そういうものだと思って読んでくださるとうれしいです。
では
216マロン名無しさん:2007/08/25(土) 22:51:54 ID:gXvJjF5H
何人いるんだろうここ
217マロン名無しさん:2007/08/25(土) 23:40:16 ID:???
ROM含めれば結構いるだろ
218マロン名無しさん:2007/08/25(土) 23:42:37 ID:???
ロワスレじゃさるさんはお馴染の規制だな
基本的に他ロワはしたらばにいざって時のために代理投下スレがつくられてる
規制されたらそっちに落として、規制されてない奴が代わりに投下と



つーかさるさんマロンにまで実施されてたんか……
219マロン名無しさん:2007/08/25(土) 23:55:36 ID:???
美空が死ぬのはつなぎか……orz
まぁ俺が書いてるのもほとんど描写無しで死ぬやつもいるしロワの運命かw

さるさんはどうしようもないんだよな…
投下途中に支援するか、後は代理投下スレに投下すればいいんだけど…
220マロン名無しさん:2007/08/25(土) 23:59:41 ID:???
アッー!美空が死んだ!
これは以外
221マロン名無しさん:2007/08/26(日) 04:15:38 ID:???
乙!
さるさんがマロンにもあると聞いてびっくりしてる
鯖変わる前に別のスレで16連投とかやってた時は出なかったからなあ・・・

さるさん回避としては、一度回線を落としてクッキー再取得すれば大丈夫な筈
原始的な方法なら、SSの一部を携帯に逃がしておいて、5回に1回はそちらから投下する手もあるよ
222作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 11:12:20 ID:???
みなさん、ありがとうございます。
たぶんもう大丈夫だと思うので、今日の夜からもいつもどおりに
投下していきたいと思います。
最初にも言いましたが、投下とか初めてなもので、これからも
わからないことがあるかもしれませんが、そのときもよろしくお願いします。

ちなみに
>>219
美空の話は20話なので、つなぎのつもりではないですよ
223作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 21:09:35 ID:???
日曜日なのに書き込みすくないっすね。
どうしてでしょう・・・?

まあ、本日の投下いきたいと思います
224作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 21:11:16 ID:???
21.Secret Program

長谷川千雨(出席番号25番)は、ある決意を胸に秘めていた。
千雨はもともと、人に見られないようなところでなにか他の人の役に立つようなことをする
のをかっこいいと思うような人だった。
そして、得意分野はパソコン。
そうくれば、このゲームが始まって考えることはただひとつ。

絶対に首輪をはずしてやる!!
自分のホームページを持っている千雨は、ハッキングなどに関してもかなりの知識を
持っていて、ウィルスをほかのパソコンに送り込んだりするのにもかなり慣れていた。
当然それはいけないことで、千雨もいつも隠れてやっていたことだったが、こうなってしまっ
たらもうやるしかない。
そのためにはまず、パソコンを探す必要があった。
パソコンさえ見つけてしまえば、仲間なんていなくても首輪をはずすことはできるだろう。

こんなときでも、友達ごっこなんてするつもりはまったくない。
でも、後になって、『千雨ちゃんのおかげで首輪がはずれた。ありがとう千雨ちゃん。』と言
われるのは嫌ではないだろう。
だからただ自分の命が助かって、他の人も助けられたらいいな、と、そう思っていた。

「ここが集落ってとこか。この地図も一応当てになるんだな・・・。」
こんな田舎の島じゃ、パソコンを持っている家なんてそうそうないだろうと思ったが、
かたっぱしから見ていくことにした。
だが3軒まわってどの家にもパソコンは置いてなかったことを確認し、4軒目に入ろうと
その玄関のドアを開けたときだった。

225作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 21:13:05 ID:???
リンリンリン

「くそっ。罠か。」
扉を開けると心地よい鈴の音が鳴り、足を一歩進めると糸が足に絡まって歩けなくなった。
3−Aの能天気なやつらの中にも、しっかり罠を張るやつがいるのか、と思いながら、足を
拘束されて動けなくなっている自分が情けなくなってくる。

――その家の2階では、茶々丸が動き出していた。
「人の侵入を確認。相手の行動によっては、殺害します。」
「やられるなよ。」
茶々丸は支給武器のベレッタM92を右手に持ち、玄関の方へ向かう。

「千雨さん。」
茶々丸は玄関にいる人物を見て、構えていた銃をおろした。
千雨が恥ずかしそうに顔を赤くしながら、しゃがみこんで絡まっている糸を一生懸命取ろ
うとしている。
学園祭を一緒に見物した仲だ。
千雨がゲームに乗るとは思えなかった。
「茶々丸さんか・・・。やる気はねぇ、罠を解いてくれないか?」
千雨が恥ずかしそうに言う。
「わかりました。」

罠を解くと、2人はすぐに2階に上がった。
エヴァは誰が入ってきたのか気になっていたのでじっと部屋のドアを見つめていたが、
茶々丸の後に続いて部屋に入ってきたのは長谷川千雨だった。
バッグの中に何か入っているのか、一部分だけやたらと飛び出ている。
「マスター、千雨さんです。ゲームに乗る気はないそうです。」
「信用できるんだろうな?」
千雨には魔法もばれているが、エヴァと直接的なかかわりはまだないので、エヴァの方
はあまり信用できないようだ。
「大丈夫です。パソコンにも詳しいので手伝っていただこうと思うのですがよろしいですか。」
226作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 21:14:10 ID:???
「ちょっと待て。そのバッグのでっぱりは何だ?」
千雨は自分のバッグを見て、あぁこれのことか、と思ってエヴァの方に向き直った。
「武器の金属バットだ。使う気はまったくねーよ。だいたい考えてもみろ。ゲームに乗ってる
んだとしたら、こんなおしゃべりしてないでさっさとバットで殴り倒してる。それに、銃でも
なきゃ、2対1じゃ勝ち目はないことくらい私にもわかる。」
「ふん。わかった。好きにやってくれ。」

こうして、茶々丸と千雨はなにやら作り始めた。
麻帆良祭の時には敵同士だった、パソコンに関してはほぼ最強の頭脳を誇る2人が、
共同で作るプログラムに欠陥ができるなどとはまったく思えない。
エヴァは再びソファに横になり、考え事を始めた。

                    残り 26人

227作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 21:16:17 ID:???
22.Run to the Future

放送を聞いて、1人歩いている少女がいる。
波が岩に当たってはじける音のなかで、足場の悪いところを歩く足音が聞こえていた。
右手には最初に出てきた校舎のある森が、左にはどこまでも続く海が広がっていた。

「ここが禁止エリアになるんやなー。」
近衛木乃香(出席番号13番)は、荷物を持って西へと移動していた。
いままでいたところは島の南端の崖。
エリアで言うとE−8というところだった。
ここは先ほどの放送で7時から禁止エリアになることが告げられている。
「3人もう死んでもうたってことは、たぶん誰かゲームに乗ってる人がいるってことなんや・・・。
せっちゃんは大丈夫やろか。」
いつも自分を守っていてくれる刹那のことを考え、せっちゃんなら絶対大丈夫や、と思って
うなずいた。
『どんなことがあっても、お嬢様は私がこの島から生きて帰らせます。絶対に。』
刹那にそういわれたことで、木乃香は絶対的な安心を持っていた。
刹那はこのくらいのことで尽きる人ではない。
それは小さいころからの付き合いでよくわかっていた。
剣士としての腕も確かにすばらしかったが、それ以上に刹那は精神面でも強かった。
だからこそ、いままでずっと木乃香のお守りを父、近衛詠春に任されていたのだ。

しかし信じられなかった。もう3人も殺されているのだ。
3人とも自殺、ということも考えられなくはないが、ゲーム開始からこの島に漂っている
空気は明らかにおかしかった。
時々遠くから銃声のようなものが聞こえるし、自分が校舎を出てすぐに叫び声が聞こえた
ような気もした。
そんなことを考えると、やっぱり誰かがやる気になっているのかもしれないと思ってしまう。
(どうしたらええんやろ・・・。)
228作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 21:17:57 ID:???

「うわっ。」
不安もあってか少しふらふら歩いていた木乃香は、自分の歩いていた岩にひびが入って
いたのに気付かず、崩れる足場とともに一段下に落っこちてしまった。
「いったたたたぁー。足場悪いなー。――って・・・まきちゃん!!」
木乃香が落ちたところには、佐々木まき絵が1人で座っていた。
まき絵のバッグの周りにはロープとナイフが置いてあり、まき絵自身の手にはボウガンが
握られている。
さらに、そのボウガンの先は木乃香に向けられていた。

「――まき・・・ちゃん?」
まき絵は無表情のまま木乃香を見つめている。
木乃香は思った。明らかに武器の数がおかしいと。
つまり、まき絵はすでに誰かを殺している可能性が高いということで・・・。
「えっと・・・戦う気はないんや。・・・おろしてくれへん?」
逃げることなど絶対に不可能だと悟った木乃香は、無理だとわかっていながらまき絵に
交渉を申し込む。
しかし木乃香の予想に反して、とたんにまき絵の顔に表情が戻り、ボウガンもおろした。
「なんだー。先に言ってよー。このかもゲームに乗ったのかと思っちゃったじゃん!!」
警戒を解いたのか、まき絵は少し笑顔を見せた。
だがすぐに木乃香はその違和感に気付く。
その笑顔はまき絵のトレードマークの笑顔ではなかった。
どこか影があり、悲しさを内に秘めた無理やりな笑顔に見えたのだ。
自分をだますための演技かと一瞬だけ思ったが、その瞳に映る深い悲しみを感じてすぐに、
そんなことはありえないとわかった。
「まきちゃん、どうしたん? なんかあったん?」
さすがにまき絵も、すぐに自分の変化に気付かれてびっくりしたが、落ち込んでいるわけを
うちあけた。
229作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 21:20:04 ID:???

――――――
「――そっか・・・。史伽のところにいたんか・・・。」
木乃香は放送で史伽も呼ばれていたことを思い出す。
「もう誰も信じられなくなりそうで・・・。これで亜子や裕奈やアキラも死んじゃったら私
どうしよう・・・。」
木乃香は、まき絵が学園での人柄とまったく違うことに一瞬目を丸くし、しばらく2人に
沈黙がおとずれた。
史伽の一件で、まき絵の心には深い傷がついてしまったらしい。
「だいじょうぶや。まきちゃんいま言ってたやん。『生き残ってみせる』って。だから、
一緒に生き残る仲間を探そう!! ここで悩んでても何にもならんよ。」
「でも――」
「それに、まきちゃんが悩んでたら、その分亜子たちも心配せなあかんやろ。いつもみたい
に、元気にならなきゃ。」
230作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 21:21:19 ID:???

理解するのに時間がかかった。
まき絵はしばらく考えていた。
だがすこしすると、まき絵はうつむいていた顔をあげて、木乃香を見て、大きくうなずいてみせた。
いままで誰かと一緒にいなかったから気付かなかったが、落ち込んだりおびえたりしている
のはまき絵だけではないのだ。
そのおびえている友達を得意の明るさではげましてあげるのが、いつものまき絵だったことを
いまさら思い出した。
「そっか・・・そうだよね!! はやく亜子たちに会わなきゃ。行こう!!」
「ここはそろそろ禁止エリアになるから危ないえ。」
「――じゃあ走ろっか。」
まき絵の意味のわからない提案に木乃香は一瞬止まったが、こんなときだからこそ走る
くらいの元気がないといけないかな、と思った。
「うんええよ。」
その返事にまき絵もうれしそうに笑い、すぐに右足を後ろに引いて走り出す準備をした。
その笑顔は、学園での笑顔とほとんど同じものだった。
「いっくよー。よーい、どん!!」
この島にはあまりにも場違いな笑い声が、海岸に響き渡った。
そのまま2人は、海沿いに西の海岸の方へと走っていった。

                    残り 26人
231作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 21:24:02 ID:???
23.First Game

ハルナは商店街を抜けようと、奥へと歩いていく。
金網屋のようなところがあったので、そこから何枚か金網を拝借して防弾チョッキのような
ものを作っておいた。
また、アーケードがついていたので、雨が降ってきたらここへ戻ってくればいいな、などと
考えていた。

商店街の端にある店で、何か物音がしたことに気付き、ハルナは立ち止まった。
「誰かいるの?」
眼鏡越しにその店の中を見てみると、確かに何かが動いている。
そこは刃物を扱っている店だった。
刃物、といっても剣や斧がおいてあるわけではなく、置いてあるものは包丁や果物ナイフの
ような日常生活に必要な刃物ばかり。
その奥で、また何かが動いた。

(誰かが何かを探してる?)
ハルナは足音を忍ばせて一番前の商品棚の前に隠れた。

カチャッ
金属と金属が当たってこすれる音がする。
棚を開けるような音や、時々、ふぅー、というため息まで聞こえてきた。
(このまま向こうの動きを見ても良いけど・・・刃物を回収して戦う気になってるんだとしたら
面倒だわね・・・。でも刃物を集めてるってことは配られた武器ははずれだったってこと?)
そんなことを考えているうちに、奥にいる人は違う棚の前に移動し、また何かを探し始める。
232作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 21:25:24 ID:???

腰をさすりながら、四葉五月(出席番号30番)はハルナのほうを見た。
「早乙女さん・・・。あっ、えっと、これは、自衛のために武器を探してただけで、決して
殺すつもりは――」
「大丈夫。心配しないで。」
ハルナは笑っていた。
やっぱり五月は安全だった。
ここで五月がハルナを殺そうとして襲いかかってきていたら、五月はこんな醜い笑顔は
見なくてすんだのかもしれない。

「どうせすぐ死ぬんだから。」

ババババババババッ
サブマシンガンが火を噴いた。
無数の弾が五月へと向かっていき、見事に体に突き刺さる。
「っっ!! えっ?」
壊れた機械のように、または謎のダンスをするかのように、五月の体はものすごい速さで
前後に震え、全身から力が抜ける。
233マロン名無しさん:2007/08/26(日) 21:28:46 ID:???
支援ついでに、>>231>>232の間って一節分ほどヌケてませんか?
234マロン名無しさん:2007/08/26(日) 21:30:08 ID:???
支援
235マロン名無しさん:2007/08/26(日) 21:31:07 ID:???
んじゃあ俺も支援するわ
236マロン名無しさん:2007/08/26(日) 21:32:01 ID:???
んじゃあ俺も俺も
237作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 22:00:33 ID:???
支援ありがとうございます。
またひっかかりました。
続きを投下します。
238作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 22:01:46 ID:???
一発の銃弾が当たるたびに前に後ろに揺らされる体。
顔、胸、腹。
いたるところから血を吹きながら、ついに耐えられなくなって五月は倒れこんだ。
床がみるみるうちに血に染められていく。
さらに人間が死んだときに出る体液が体中のいたるところから吹き出て、血と混ざり合う。
穴だらけになってしまったその死体は、とても見ていられる状況ではなくなっていった。

「まず、一人・・・。ふふ、あと何人殺すことになるのかしら。」
人を殺したことで、さらに悩みは深まるのかと思ったが、そうではなかった。
ハルナは、一人殺してみて自分の中で何かが目覚めたのを感じた。
殺すまでわからないもの、というものがきっとあったのだろう。
目つきが鋭くなり、人を殺すことをいとわない、そんな考えが顔に出ていた。

(さてと、武器になるものはみんな持って行きますか・・・。)
ハルナは五月のバッグをあさり、武器がハリセンだったことを確認すると、食料だけ奪って
店の物色を始めた。
包丁、ナイフ、人を切ることができそうなものをたくさんバッグの中につめた。
防具として金網の防弾チョッキに、接近戦用の刃物、遠距離戦用のマシンガン。
そのすべてを持ち合わせているハルナは、自分のすばらしさに口もとをゆるめ、
不気味に笑った。

道路には、500の面が上を向いた金色の硬貨が落ちていた。

   出席番号30番 四葉五月 死亡
                    残り 25人
239作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 22:02:57 ID:???
あと
>>233
さんのおっしゃるとおりちょっと抜けたので、その分を
240作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 22:04:18 ID:???
このままではキリがないと踏んだハルナは思い切って大声を出してみた。
「なにやってるの?」
「はひっ!! あっ、痛っ!!。」
突然の声に驚いたのか、立ち上がったその人は商品のおいてある机に腰をぶつけていた。
「五月ちゃんか・・・。」
ハルナは安心した。
五月ならゲームに乗っていることはないだろう。
エヴァンジェリンが3−Aで唯一認める人間だ。
エヴァいわく、『しっかりと現実に根を張り、前を見つめている』そうだ。
それが本当だとしたら、絶対にこんなゲームには乗らないだろう。
241作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/26(日) 22:06:34 ID:???
↑を、>>231>>232の間にいれてください。
今日もいろいろと申し訳ありませんでした。
明日から、規制の関係で2話ずつの投下になるかと思います。
どうか見捨てずによろしくお願いします。
本日は以上です。では
242マロン名無しさん:2007/08/26(日) 22:08:07 ID:???
>>241
見捨てるわけないだろっ!!?
俺はあんたのように書き上げた奴を心から尊敬する!
というわけで乙&GJ!!
243マロン名無しさん:2007/08/26(日) 22:09:25 ID:???
乙です。
やっぱり五月は一話死亡か・・・
244マロン名無しさん:2007/08/26(日) 23:17:32 ID:???
連投規制って12レス間で5回だよな
245マロン名無しさん:2007/08/27(月) 00:22:53 ID:???
五月登場の瞬間に、あぁ…ってなった俺orz
何かごめんよ皆……


246マロン名無しさん:2007/08/27(月) 01:24:36 ID:???
GJ!
某スレでも見掛けない、木乃香とまき絵の組み合わせにwktkが止まらないw
それに、バトロワではこういうシーンが堪らなく好きだ。ナイス味付け!

>>244
とゆうか連投5回目で規制は発動する。平均的に5分待てば書き込めるようになってるかな?
注意しなくてはならないのが、フライングで書き込もうとして失敗すると、また規制時間がリセットされる点だね
247作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/27(月) 19:52:59 ID:???
ちょっとはやいですが、本日の投下です。
昨日も言いましたが、これからは2話ずつになります。
248作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/27(月) 19:54:55 ID:???
24.Regret

椎名桜子(出席番号17番)は小屋の中、1人でおびえていた。
桜子自身はゲームに乗るつもりはまったくなかったのに、間違ってアキラを切りつけてし
まったことで、アキラと、そのまわりの人たちには、『桜子は乗っている』と思われているに
違いない、と思い怯えていた。


――それは4時間ほど前
桜子は校舎を出発すると、とりあえず北に向かった。
親友である美砂と円は自分よりも前に出発していたので、もうどこか遠くに行っただろうと
思って桜子も校舎からどんどん遠ざかるように歩いた。
教室でのことを思い出すと、桜子は意識しなくても体が勝手に震えてしまった。

一番前の真ん中の席。
中1の時からその席でずっと勉強してきた。
そのおかげで誰よりも近い場所で兵士が発砲するのを見てしまったのだ。
まわりのまき絵や風香は悲鳴を上げかけていたが、桜子にはそんなことすらできなかった。
恐怖につつまれ、呆然と煙の上がっている銃の先を見つめることしかできなかった。
兵士の指が引き金に掛けられた瞬間に天井に向かって金色の弾が飛んでいく。
それは天井に穴を開け、そのまま止まることなく上へと進んでいく。
もしあれが自分の体に向けられていたら、そう考えると、涙がいくらでも出てくる。
さらに桜子は視覚だけではなく、聴覚からも刺激を受けた。
ものすごい音を立てて発砲されたことで、ショックを受けてしまっていたのだ。
やられたことがある人はわかると思うが、とてつもない音を聞くと何も考えられなくなって
しまうことがある。
桜子はその状況になってしまった。

249作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/27(月) 19:56:05 ID:???
そんなことを経験した後だったから、ということもあったのだろう。
自分の歩いている先に、右手に銃を持った大河内アキラが歩いているのを見てしまった
桜子は、アキラの背中がとても危険なものに見えた。
突然振り返って銃を撃ってくるのではないか。
普段寡黙でおとなしいアキラも、このゲームの中では何をしでかすかわからない。
そう思って、バッグの中から小刀くらいの大きさのナイフを取り出した。
やられるまえにやらなきゃ殺される。
そんな思いが、桜子の心の中を支配していった。
でもいいのだろうか。ここでアキラを殺してしまったらもうあとには戻れない。
見えるアキラは、完全に背中を向けて歩いていて、とても無防備だった。
とりあえず近づいてみて、声をかけてみる?
そうすれば、乗っているか乗っていないかがわかる。
でももし乗っていたら?
向こうは銃だ。こっちはナイフ。勝ち目がないのは明らかだった。
気付かれないように近づいて銃だけ取り上げる?
そんなことをしたら桜子がゲームに乗っていると思われる。
その前に気付かれでもしたら、撃たれてゲームオーバーだ。

ドンッ
桜子の体が何かにぶつかった。
目の前にあるものは、背中まで長く伸びた、きれいな黒髪だった。
(えっ??)
ついさっきまでアキラは10メートルくらい前にいたはず・・・。
だが桜子が考え事をしながら歩いていたのでアキラが立ち止まっていることに気付かな
かったのだ。
「あ、桜子・・・。」
250作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/27(月) 19:57:37 ID:???
「きゃぁぁぁーーー。」
思いがけない出来事に正しい判断ができなくなった桜子は、手に持っていたナイフでアキラの
背中を思いっきり切りつけてしまった。
黒い髪が切られてはらはらと地面に落ちる。
「ああっっ!!」
アキラは背中の痛みに叫び声を上げる。
うずくまりながらも右手に持っている銃を構えた。
そしてそれを桜子の方へと向ける。
「えっ、あ・・・きゃぁぁぁぁぁーーーーー!!」
銃口が自分を向いているのを見た桜子は、猛スピードで来た道を走った。
あそこから弾丸が飛んできて、自分の体に穴を開けるんだ。
そこからは血がどんどん出てきて、止まらない。
桜子は次々と悪い想像をしてしまった。
本当は何もされていないのに、ボロボロになるまで傷つけられたかのように感じていた。

――――――
「やっぱり、乗ってると思われてもおかしくないな・・・。」
桜子は極度の自己嫌悪に陥っていた。
なんであの時普通に声をかけなかったんだろう。
アキラがこんなゲームに乗るわけがないのに。
返り血がついてところどころ赤くなっている自分の制服を見て、さらに怖くなった。
こんな格好でいまさら仲間になろう何て言い出しても、誰も信じてくれないだろう。
むしろこの格好を見ただけで、相手の方が怖がって殺しにかかってくるかもしれない。
「やらなきゃ・・・やられる?」
1人つぶやく桜子に、小屋の中は沈黙で返す。
緊張でのどがカラカラになっていた桜子は、水を飲んだ。
さらに、今まで気づかなかった空腹感に意識をとられ、朝ごはんを食べることにした。
水のペットボトルが1本、ゴミ箱に捨てられることとなる。

                    残り 25人

251作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/27(月) 19:59:03 ID:???
25.Anger And Unbelievable Thing

明日菜と刹那は再会したあと、刹那の言葉通り北の集落へと向かっていた。
途中、けたたましい音で流れた放送を聞き、2人で黙祷をささげた。
名前を呼ばれた3人は、3人とも明日菜たちとはあまり関わりが深くなかったが、
それでもクラスメイトが死んでいるという現実に、深い悲しみを感じた。
それと同時に、やっぱり乗っている人がいる、ということがわかり、また悲しくなった。

島の南部から、北のほうにある集落へ入るには、中央部の商店街を抜けて集落の
南の方から入るか、西か東の山をまわって集落の北のほうから入るか、
その2つ(厳密には3つ)の道がある。
木乃香を探す、という人探しが目的だった2人は、人通りが多そうで、時間もあまり
かからない商店街の道を選んだ。

「見事なくらい、戦闘に使えるものはなくなっていますね・・・。これは誰かが持っていったと
しか考えられません・・・。」
「うん。武器になるものも防具になるものも一切なかったわよね。」
商店街経由にしたのにはもうひとつ大きな理由があった。
それは、誰でも考えることだが、これからの戦いに備えて道具をそろえておくこと。
刹那は日本刀という、ぴったりの武器を手に入れたからよかったものの、明日菜のほうはひどかった。
あまりにも恥ずかしいから刹那にも言っていないが、明日菜の武器は変声スプレー。
といってもただの変声スプレーではなく、すこし魔法が関係ありそうな効果だ。
説明書によると、知っている名前を入力して、そのスプレーをのどに吹きかければ、
その人の声が出る、という優れもの。
学校にいるときだったらおもしろくて使えそうだが、いま手に入っても何の喜びもない。
生きて帰ったら、風香か誰かにあげようなどと考えていた。

――こういうわけだったので、明日菜には使える武器がほしかったのだ。
だがあいにく、武器になるようなものはまったく残っていなかった。
(仕方ないか・・・。刹那さんにまかせっきりになっちゃうけど・・・。)
そう思って商店街の一番奥まで歩いてきたとき、2人は右の店の中から、店の入り口のほうに
向かって血が流れてきたのを見つけた。
252作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/27(月) 20:00:06 ID:???
「なにこれ? 血?」
「店の中からですね。見てみましょう。」

その血の出どころはすぐに見つかった。
店の一番奥で、四葉五月の死体が転がっていたからだった。
サブマシンガンで撃たれたのを示すかのように、五月の死体は穴だらけになっている。
反抗する間もなくやられてしまったのだろう。
明らかに、殺す気で発砲している。事故ではない。
「ひどい・・・。」
「こんなことをする人がいるなんて・・・。」
2人とも、呆然とするしかなかった。
だがいつまでもそうしていられない。
刹那はすぐに仕事モードに戻り、現場の観察を始める。
(血が固まっていない・・・。殺されてからまだあまり時間が経っていないな。
敵は近いかもしれない。)
最初に思ったのは、それだった。
だが一度店の外に出てあたりを見回してみても、それらしき人影は見当たらない。
(サブマシンガンだとしたら、かなり注意していないと・・・。)
さらに、ここにも武器となるものは全くなかった。
刃物屋だったようだが、殺傷能力のないものばかりが残されている。
(敵は相当な数の武器を手に入れている。さらに防具まであるとなるとやっかいだな。)

「許せない・・・。」
明日菜は五月の前で1人つぶやいていた。
ここにきて初めて死体を見て、ただ単純に許せないと思った。
五月が何をしたというのか。
何もしていない人を、自分が生き残るためだけに殺す。
それをすることが平気な精神を持っている人がクラスメイトの中にいること自体、
許せなかった。
253作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/27(月) 20:00:32 ID:???
「刹那さん。」
「はいっ!?」
いつもとは違う、明日菜の低い声に刹那は戸惑う。
「行こう。」
「え・・・あ、はい。」
結局、明日菜はなんの武器も手に入れられずに商店街を離れることとなった。
2人が集落へと近づくにつれて、だんだんと太陽が昇っていった。

                    残り 25人

254作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/27(月) 20:03:34 ID:???
本日は以上です。
おそらく11回以上連続で書き込みすると規制がかかるようです。
3話投下すると11回をこえてしまう可能性が高い、というかむしろほとんどの場合
そうなってしまうので、勝手ながら2話だけにしました。

また、友達が家に泊まりにきている都合上、こんな時間の投下となりました。
明日からはまた9時くらいに予定しています。
では
255マロン名無しさん:2007/08/27(月) 21:32:06 ID:???


256マロン名無しさん:2007/08/27(月) 22:35:19 ID:???
乙です。
今回の桜子は即死を免れたか・・・
257マロン名無しさん:2007/08/27(月) 22:46:30 ID:???
しかし棺桶に片足どころか片足以外全部突っ込んじゃった感じだな……
258マロン名無しさん:2007/08/28(火) 02:31:55 ID:???
アキラには裏があると思ったが何もないのかorz
とりあえず桜子マーダー化してくれる事を祈りながら投下乙と言ってみる
259マロン名無しさん:2007/08/28(火) 08:19:20 ID:???
乙!
桜子フラグ立っちゃったよ〜
この先、例え明日菜達と合流しようとも生き残る気がしないorz
260作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/28(火) 21:23:12 ID:???
どうも
本日の投下です
261作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/28(火) 21:25:26 ID:???
26.Searching Friends

裕奈、アキラ、あやかの3人が移動を決意した直後、放送が流れ禁止エリアの発表があった。
『7時からE−8、9時からF−4、11時からC−3――』
「ここが禁止エリアになるみたいだね。」
3人がいた位置は、島の北東部の診療所、F−4というところだ。
9時まではまだ時間があったが、早めに行動した方がいいと思い、3人は診療所をすぐに
出て、島の中央部にある商店街へと向けて出発していた。

「もうここはE−4みたいだから大丈夫なはず・・・。」
草がうっそうと茂る深い森の中を1時間くらい歩き続けて、やっとのことで森を抜けた。
診療所にたどり着くまでは夜だったので気付かなかったが、視界の開けた場所に出てみ
ると、案外この島がきれいなところだという事がわかった。
島の中央へと向かって歩いていたのだから当然海などは見えるはずはないが、あたり
一面すべて緑に染まった景色は、いくら広い麻帆良にいても見ることのできない代物だ。
だがそんな景色をいつまでも見ていたいという思いを振り捨てて、狙われやすいその場所
から立ち去る。

途中歩いていて、傷が開いてしまったのか、アキラが
「痛っ。」
と言ってうずくまってしまったが、裕奈とあやかが心配すると、
「切り傷の痛みだから大丈夫。骨とかが痛いわけじゃないから・・・。」
そう言ってすぐに立ち上がり、歩き始めた。
その時にもまた、2人は桜子のことを思い出し、本当に桜子がゲームに乗っているのかと
疑い、何かの間違いだったんだと思い込もうとしていた。
262作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/28(火) 21:27:04 ID:???
3人はこの1時間あまりの間、誰にも会っていなく、あやかは自分が1人でいたときと同じ
ような孤独感に包まれつつあった。
「誰もいないですわね・・・。」
あやかがつぶやくと、裕奈とアキラからも賛同の声がかかる。
「いいんちょもそう思ってた? 私も誰にも会わないからちょっと心配になっちゃった。」
「うん、私も・・・。」
長い間移動していたのに誰にも出会わなかったという不安と、3人のそれぞれの思いとが
それぞれの心にある。
裕奈とあやかはアキラのことが心配で、アキラは自分の怪我のせいで2人に迷惑をかけて
いるという自責心で、精神的にもかなり疲れがきていた。
「いったんこのあたりで休憩しましょうか?」
「そうだね。しばらく歩き続けてたし。」


先ほどの見通しのいい場所から少し商店街の方へ向かったところに、ちょっとした休憩所
のようなところを見つけ、そこで3人は休んでいた。
時々虫が飛んできては飛び去り、風が吹いては治まり、一見するとクラスで林間学校に
来ているかのような感じだった。
地面から飛び出た石を囲むように、3人は切り株に座っている。
「3人亡くなっているということは、誰か殺人者がいると考えておかしくないですわ。」
「やっぱりそうだよね・・・。」
このゲームが始まってから、みんなの気持ちは沈んでいくばかりだ。
生徒がクラスメイトを殺す。
最近テレビでそれと似たようなニュースをやっているが、みんな仲のいい3−Aにとっては
それはまったく考えられないことだった。
「なんで・・・。」
263作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/28(火) 21:28:23 ID:???

実際に殺された人がいると聞いて、あやかたちの心は打ち砕かれたような気がしていた。
みんなで力を合わせればどうにかなる、と思っていたのに、そのみんなの中には殺人者がいる。
しかもその殺人者も、自らそれを表に出したりはしないだろう。
みんなを信じてみんなを仲間にすれば、裏切られて殺されてしまう。
結局、どのクラスメイトなら信じられるか、という問題になる。
あやかが、みんなを信じることの難しさをいままでで一番思い知らされた時だった。

ガサッ
あやかの後ろの草むらが動いた音を聞き、3人はそれぞれの武器を持ってその草むらの
方へと構える。
その武器で人を殺せるかどうかは別として、この状況での条件反射として武器を向けた。

――だがそこから出てきたのは、ひどくおびえた表情で、顔中を涙でぬらして武器すら
持っていない葉加瀬聡美だった。

                    残り 25人

264作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/28(火) 21:29:43 ID:???
27.Consideration

――5時間ほど前。つまりゲームが始まってすぐ。
彼女は考えていた。
生きるか死ぬか、その二つからどちらかを選ぶ、ということのみが、この殺人計画が
始まってからできることなのだ。
ずっと仲良し3−Aとしてやってきた仲間。その仲間を殺せば生き残れる。
馬鹿なクラスだ、とあきれることもあったけれどもこのクラスでよかったと思ったことは
それ以上にあった。
底抜けに明るくて、なにかつらいことがあっても、このクラスにいれば悲しいことなんて
どこかへ吹き飛んでいってしまう、そんな良いクラスだった。
でも、いま選ぶべきことは、殺していいか、殺してはだめか、ではない。
生きるか、死ぬか。
生きるためにはみんなを殺さなければいけない。
死ぬんだったら今すぐにでも島の端へ行って崖から飛び降りればいい。

「生きたい。」
一人小さくつぶやく。それは誰もが望むことで、当たり前のことだった。
殺す? クラスメイトを殺してしまっていいのだろうか?
まずそれができるかどうか、自分の心との相談だった。
例えば目の前に平和の化身のような四葉五月がいたとする。
「よかった、無事だったんですね。」
と言って自分に近づいてくる。とてもありえそうな展開だ。
その彼女のホッとした表情を無視して、その場で殺してしまうことができるのか。
普通に考えて、できないことは明らかだった。

「――でも、生きたい。」
人間として当然の欲望。人間は誰だって死にたいなんて思っていない。
自分が生きるためには他の人の犠牲は仕方のないことなのだ。

265作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/28(火) 21:31:43 ID:???

心としての準備は、無理やりにでもすることはできた。
まだ悩みはあったが、それは他の人に1人会った時点で解消される悩みなのだろう。
そこまでの結論が出たところで、今度は力の問題だ。殺すことが可能なのかどうか。
つまり、武器の当たりはずれにも問題がある。
運命を決める武器を見ようと、ゆっくりとバッグのファスナーを開ける。
ジジジッと音がして、それを聞いた小鳥がどこかへ飛んでいく。
ゆっくりと中のものを取り出してみると、バッグに入っていたのは、普段の生活では見ることのない武器。
木製のものだった。
そしてそのまわりには、矢が大量に入っている。
(――ボウガンですね。)
銃には劣るが、飛び道具で、かなりあたりに相当する武器と見ていいだろう。
銃を持っている相手でなければ確実に殺すことができるはず。

「決めました。」
それを見ただけで、完全に心は決まった。
殺せる能力を持った瞬間に、殺してみたいと思ってしまった。
危険な興味が、彼女の中に目覚めてしまったのだ。
ボウガンに矢をセットして、葉加瀬聡美は歩き出した。

そして歩いているうちにすぐ、自分の2分前に出発していた鳴滝史伽が見えた。
意識しないうちにもう、走り出していた。
矢を撃ちながら追いかける。何発かあたり悲鳴が上がる。
向こうが叫んでいるがそんなことは気にならない。
そのうち追いつき、史伽に止めを刺すと、佐々木まき絵が立っていた。
そのまき絵に武器を取られ、なすすべもなく逃げ惑っていた。

――そうして今に至る。
266マロン名無しさん:2007/08/28(火) 21:32:02 ID:???
支援
267作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/28(火) 21:32:51 ID:???

明石裕奈、大河内アキラ、雪広あやかの3人。
3人でいる、という時点で、乗っているわけはないだろう。
『科学に魂を売った私には涙は流れない。』
などと意味のわからないプライドを持ってきたが、いまではそんなものは関係ない。
涙を流して3人の前に現れれば、絶対に信用は得られる。
なんの問題もなく合流すれば、あとは機会をうかがって武器を奪い、殺せばいい。
もうすでに1人殺しているという事実から、人を殺すことへのためらいはなくなっていた。

(じゃあ行きましょうか・・・。)
ハカセはわざと涙を流し、まったく無防備な状態で3人のところへ入っていった。
とっさに振り返り3人の視線はハカセに注がれるが、その目に殺意は全く感じられない。
3人は自分を心配してくる。何もかもが思い通りだった。
「一緒にいてもいいですか?」
もちろん3人は断らない。
ハカセはつい笑いがこぼれそうになったが、必死でこらえて、3人の武器を見てまた
必死でこらえなければならなかった。
誰も、疑いはしない。

                    残り 25人

268作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/28(火) 21:34:16 ID:???
今日は以上です。
明日はちょっとはやくなるかもです。
では
269マロン名無しさん:2007/08/29(水) 01:18:16 ID:???
乙!
アキラパーティはどの道爆弾を抱えこむのね・・・
270マロン名無しさん:2007/08/29(水) 01:26:38 ID:???
投下乙っす!
葉加瀬も千雨達と合流できれば千人力だろうに。
切ないな。
271マロン名無しさん:2007/08/29(水) 04:16:29 ID:???
獲物が三匹に増えた
まぁ葉加瀬の味には期待していないけど・・・
隙を見てこの銃で仕留めようか・・・
いやでも生きたまま食べた方が良い・・・ね
そうだ寝込みを襲おうかな
肉が裂け、神経が千切れ、血しぶきが舞い生温かいソレが私を染めてくれる・・・
恐怖に怯えひきつる顔・・・
想像しただけで私の心を擽る
もう待ちきれないよ・・・




正直悪かったorz
272マロン名無しさん:2007/08/29(水) 04:39:16 ID:???
うん、そうだな。悪いがそのネタ嫌いなんだ。
いじめスレ自体嫌いだが。
273作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/29(水) 20:54:27 ID:???
どうも
本日の投下です。
274作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/29(水) 20:56:20 ID:???
28.Madness

朝倉は夏美を殺した倉庫を出ると、黒い岩ででこぼこしている海岸を、海に沿って北へと向かった。
目当ての銃は手に入れた。弾もたくさんある。
あとは出会った人をかたっぱしから殺していけば自分の優勝という形で終わるのだ。
歩いている途中で放送が入り、村上夏美の名前があったときは、興奮してやまなかった。
自分が殺したという確かな感覚。それを放送によって手に入れることができる。

「次は誰に会うのかな〜。」
完全に遊び気分で歩いていた朝倉は、ふと気付く。
遠くの森で、一部分だけ見事に木が何本も切り倒されているのが見えたのだ。
空からヘリコプターで見たら、ドーナツのようになって見えるだろう。
地図ではそんなことは描かれていないことを考えると、誰かが切り倒したと考えるのが自然だ。
「誰かがやったんだろう・・・。」
興味をそそられた朝倉は迷わずその森の方へと向かった。

――――――
30分も歩くと、その場所へとたどり着いた。
たくさんの木に刃物で切られたあとがあり、ものすごい力で刃物を振るったのだろうという
ことがうかがえる。
その木々にまじって、人の体があった。
見事なくらい一閃で首と体に切断されていて、その周りには人からこんな量の血が出る
なんて信じられない、というくらい大量の血が流れ、固まりかけていた。
体があって、その横に添えられたように腕が落ちている。
さらに少し離れたところに転がっているのは、目を閉じたままの美空の顔。
とても正常な精神状態で見ていられるような光景ではなかった。
(美空か・・・。さっきの放送じゃ呼ばれてなかったのに・・・。)
だが朝倉は、まだ近くに美空を殺した人がいるのではないかという期待に駆られた。
人殺しが近くにいる気がして期待するほどに、朝倉の精神はゲームにむしばまれていた。
(こんな力がある人がいるなんて・・・。誰だろう。くーちゃんとか明日菜ならありえるか・・・。
でも2人とも乗りそうもないし・・・。)
275作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/29(水) 20:57:58 ID:???

と、誰かのうめき声が聞こえてきた。
うめき声なのかどうかわからないが、何かをしゃべっているのは確かに聞こえる。
ささやくようなかすかな声だったが、声の方へ歩いていくとだんだん聞こえるようになった。
「――史伽がいない・・・。――史伽が・・・。」
ほんの何本か木をはさんで相手がいるところまで来ると、しっかりと聞き取れた。
しゃべっているのが誰なのかも理解することができた。
「風香か・・・。」
まったく警戒心を持たずに声のするほうへと歩いていき、簡単に風香の姿を確認する。

それを見て朝倉はすぐに、風香はたまたまここに通りかかっただけなのだろうと思った。
まさか森林伐採かつ美空の首切断をしたのが風香だとはまったく思わなかったから。
風香にそんな力があるわけがない。自分より30pも背の低い彼女に。
だがそれがまったくの間違いだったということに、気付いてしまった。
風香の服は真っ赤に染まり、スカートの下に見える足も返り血で真っ赤になっている。
右手には大きな鉈を持ち、その鉈も赤かった。
まさに殺人鬼というのにふさわしいくらいの赤いベールに包まれているようだ。
「史伽のためにも生き残らなきゃ・・・。」
1人でつぶやきながら歩いていたので、朝倉は風香の前に回りこみ銃を風香に向ける。
だが風香はまったくの無反応で、銃を怖がることもなくただまっすぐ、ゆっくりと歩いていた。
目はうつろで、どこを見ているのかわからない。
表情も何もなく、ただ何も考えずに足だけ動かしているという感じだった。
「風香?」
276作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/29(水) 20:59:29 ID:???

朝倉が声をかけても、返事すらせずに歩き続けた。
一歩一歩朝倉へ近づき、朝倉の横まで来たが、風香はかまうことなくさらにまっすぐ歩く。
おもしろくなった朝倉は、風香の肩をつついてみた。
「風香、こっち向いて。」
さすがに気付いたのか、風香はゆっくりと朝倉の方を向いた。
だがやっぱりその顔の表情はない。
「あ、朝倉――史伽の分まで生き残る・・・。」
気付いて返事をしたまではよかったものの、結局すぐにもとの放心状態に戻ってしまう。

「ねぇ風香。史伽の分まで生きるんでしょ?」
「そう、史伽の分まで生きる・・・。」
まだ一応頭は働いていることを確認すると、朝倉は悪魔のようにささやいた。
「史伽の分まで生きるんだったら、他の人はみんな殺さなきゃ。」
「史伽――生きる――・・・ころす?」
「そう、生き残るんだったら邪魔者は殺さなきゃいけないんだよ。」
にやにやしながら、朝倉はただ反応するだけの風香の耳元で、残虐なことを言い続ける。
「邪魔者・・・ころす――コロス――殺す――」
「みーんな殺して生き残る。」
「みんな殺す殺す殺すコロス――」
「あはは、まぁがんばってね。」
自分の手をわずらわさなくとも死者を増やすために、自分の手駒として風香を狂わせて
みようと思ったのだ。
思い通りになったので、朝倉は風香を狂わせるだけ狂わせてその場を去った。
使える召使いができたかのような感覚に包まれ、なんとなくうれしくなる。
その場には完全にもとの心から遠くはなれた風香だけが取り残された。

右手に鉈を握りしめ、その顔は美空を殺したときの顔と同じものに戻りつつあった。

                    残り 25人
277作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/29(水) 21:01:57 ID:???
29.The Way of Life

「那波さん落ち着いて!!」
「いま外に出ても危ないだけだから!!」
灯台の玄関前、美砂と円は外へ行こうとする千鶴を2人がかりでおさえつけていた。
美砂が千鶴の後ろから腕を絡ませて、円が前に立って外に出させないようにしている。
放送がかかってからずっと泣いていた千鶴だったが、突然立ち上がって外へ行こうとし出したのだ。

たった3人しか呼ばれなかった死亡者。
それでもクラスメイトが3人も死んだという事実は誰もが悲しむべきものだった。
そんな中でも、3人の親友だった人にとって、その悲しさは倍増し、何がなんだかわからなくなっても
おかしくないような状態になる。
そう、いまの千鶴のように・・・。
「夏美のところへ行かないといけないんです。離してください。」
「夏美は那波さんに生きてほしいと思ってたはずでしょ。いま出てったら那波さんがやられ
るだけじゃなくて夏美の思いも無駄になっちゃうんだよ。」
「あなたに夏美の何がわかるっていうの!!」
美砂が必死に説得しようとするが、千鶴の方はまったくそれを聞くつもりがないらしい。
たとえ自分に何があったとしても、夏美を探し出したいという気持ちがあった。
「確かに夏美のことを一番わかってるのは那波さんかもしれない。でも、いまは自分のこと
をまず第一に考えなきゃいけないんだよ。」
「自分なんて死んでもいい!!」
「!!」
あまりに意外な発言に、美砂も円もしゃべれなくなってしまった。
人間なんて、死にそうになれば絶対に自分が一番大事だと思い、それにしたがって行動を
する、それが普通だと思っていた。
自分の命を捨ててまでして、他の人のことを想うというのは、並大抵の精神ではできないこ
とだと思っていたし、少なくとも美砂と円はそんなことはできないと思った。
それなのに、いま目の前にいる那波千鶴という人物は、それをしようとしているのだ。
278作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/29(水) 21:04:09 ID:???
「どうして・・・? どうしてそんなに自分を犠牲にできるの?」
「親友だから・・・これが一番の理由かしら・・・。」
千鶴はそこで一息つくと、一気に重心を前に移動し、2人から逃げ出した。
千鶴の言葉で2人の腕の力が弱まっていたのか、2人は簡単に振り払われて外に出られてしまう。
「あっ・・・」
10メートルくらい走り、そこで振り向いて言った。
「ごめんなさい。でもこれが私の出した答え。お2人は生き残ってくださいね。」
返事も聞かずに、千鶴はまた駆け出す。
(これでいいの。私には夏美のいない人生なんて考えられない。夏美のところに行ったら
ずっと一緒にいましょう。)
後ろから美砂と円がなにか叫んでいるのが聞こえたが、聞こえないふりをして走った。
聞いてしまうとまた戻りたくなってしまうかもしれない。
肩のバッグをかけなおし、武器が入っていないことがあらためてわかった。

――と、2人のいるところから、千鶴が灯台においていった防犯ベルが鳴りだした。

リリリリリリリリリリリ――
けたたましい音が響き渡り、何のことかと思い後ろを振り返った直後、そのベルの意味を理解した。
理解したくもなかったけれど・・・。
頭に金属が突きつけられているのがわかる。
黒く、棒状のもの。
持ち主が指を引けば、弾が出てきて千鶴の頭を貫いていくもの。
「残念だたネ、千鶴サン。」

パンッ
何かに頭を強く打ちつけたときのような感覚。
右から左へと衝撃が伝わっていく。
右のこめかみを右手で押さえると、ぬるっとした液体が手についた。
視界が反転していき、目の前には空が広がる。
さらに今度は後頭部を強く殴られたような感じがして、軽い脳震盪を起こす。
(あ・・・夏美・・・私もいま行くから・・・。)
279作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/29(水) 21:06:18 ID:???
実際に夏美のところに行くことはできなかったが、早く夏美に会うことができるような気が
して、千鶴は少しホッとした。
最初からこうなるはずだったのだから、仕方がないことだ。
まぶたの裏に夏美の映像が映って、すぐ消える。
千鶴の意識はそこで途切れた。

「さて、今度は残った2人――逃げちゃったカ・・・。」
千鶴を撃ったあと、超は灯台の方へ歩いた。
ドアは開きっぱなしになっていて、中にあったはずのバッグがひとつもなくなっていた。
「まぁしょうがないネ。まだ時間はたっぷりある。」
言った直後に、風が吹いた。
本当は風が吹いたのではなく空気が動いたのだが、そんなことには超は気付かない。

「――それはどうでござるかな?」
まったく気配を感じさせずに、いつの間にか背後を取られていた。
驚きふためきながら、超は急いで距離をとる。
長瀬楓が、そこには立っていた。
「これはびっくりネ。どしてここに?」
超は大げさに驚いてみせたが、それに対しては楓はなんのリアクションもとらなかった。
ただじっと超の方を見つめ、殺気を放っている。
「ベルの音が聞こえて、来てみたら千鶴殿が殺されるところを見てしまったというわけで
ござる。超殿、拙者ゲームに乗っている者には容赦をしないでござるよ。」
見られてたカ、と小声でつぶやき、ベルを鳴らした二人を恨んだ。
280作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/29(水) 21:08:20 ID:???

「――本屋はどうしたネ?」
それを聞いてもまったく動じず、いつでも戦える体勢のまま聞き返す。
「なぜ拙者がのどか殿と一緒にいたことを知っている?」
「さぁ? 戦力にならないから捨ててきたカ?」
対する超も銃を握る手に力をいれ、いつでも楓に向けて撃てるように準備していた。
いつものように都合の悪いことは流し、冗談を言いながらも、表情も先ほどと違って
戦士の表情になっていた。
「そんなところでござる。」
「ほぅ、珍しい。楓サンが人を見捨てるとは・・・。」
「それも、超殿との試合に集中するため。覚悟するでござるよ!!」
「おもしろいネ。来るといいヨ。」

決戦が・・・始まろうとしている。
いままで聞こえていた鳥の鳴き声はピタッとやみ、あたりは沈黙に閉ざされた。

   出席番号21番 那波千鶴 死亡
                    残り 24人
281作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/29(水) 21:11:09 ID:???
本日は以上です。
明日もいつもどおりの時間に予定しています。
では
282マロン名無しさん:2007/08/29(水) 21:32:35 ID:???
楓死亡フラグ……
283マロン名無しさん:2007/08/29(水) 23:01:31 ID:???
乙!

楓と超のガチバトルも楽しみだが、釘柿とのどかの動向も気になる!
そして風香か・・・。楓死亡フラグよりまき絵死亡フラグの方が・・・
284マロン名無しさん:2007/08/29(水) 23:02:00 ID:???

うわー、ドキドキするな。
明日が楽しみだ。
285マロン名無しさん:2007/08/29(水) 23:58:16 ID:???
まき絵が意外や意外生き残ったりするかもね
朝倉とハルナは落ち着いてはいるがある意味狂っちゃったし
286作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/30(木) 20:49:23 ID:???
少し早いですが、本日の投下です。
287作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/30(木) 20:50:29 ID:???
30.Change Her Mind

「やっぱり身軽な方が動きやすくていいアル〜。」
「最初からあんなもの捨てればよかったものを・・・。」
古菲と真名は、楓を探して島の西側を北上していた。
古菲が持っていた無駄に大きなハンマーは途中で捨てることにしたので、手ぶらで歩いて
いる状態である。
「軽くてうれしくなったアルね。ちょっと走るアル。」
古菲のはしゃぎっぷりに、やっぱりバカか、と思いつつ、
「好きにしてくれ。」
と返す。
古菲はそれを聞くとすぐに走り出し、50メートルくらい真名と差をつけた。
細く曲がりくねった道だったので、古菲がいる位置は50メートルよりさらに遠くに見えた。
真名はペースを変えずに普通に歩いて、古菲のところまで行こうと足を進めていく。

だが直後。
パシュッ
どこからともなく矢が飛んできて、真名の足元に刺さった。
その矢にはなにやら紙がくっついていた。
(ふん、矢文というやつか・・・。)
古菲が真名と離れた直後に撃ってきたということは、真名だけに知らせたいことなのだろう
と思い、そっと紙を開いた。

――――――
「なんだと・・・?」
真名はそれを読み終わるとかなり不機嫌そうな顔をしたが、仕方ないか、というように
1人で静かにうなずく。
矢が飛んできた方を見てみると、確かにその差出人がこちらを見ていた。
「真名〜、早く来るアル〜。」
ずいぶん先から聞こえる古菲の声も、もう聞くことがなくなるのだろうと思いながら、
急いで古菲のところへと向かう。
288マロン名無しさん:2007/08/30(木) 20:50:42 ID:???
touka 乙
289作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/30(木) 20:51:56 ID:???

「遅かたアルね。何かあったアルか?」
真名は少しの間黙っていたが、しばらくすると重々しく口を開いた。

「私はこのゲームに乗ることにした。」
古菲は一瞬驚いたが、さっきのことがあったのでまた冗談なんだろうと思いこむ。
「また冗談アルね。二回目はひっかからないアルよ。」
「本気だ。さっき言ったはずだ、『私は金をもらわない限り他人の命令は受けない主義』だって。」

時間が、止まった。
古菲もさすがに顔がこわばった。
真名の目つきが明らかに違っているのに気付いてしまったから。
「・・・じゃあ誰かから金をもらたアルか?」
「――とりあえず、この手裏剣はお前にやる。楓に渡すのも、お前が使うのも自由にしてくれ。」
バッグの中に入っていた手裏剣をすべて取り出すと、それを古菲のバッグにつめた。
「ちょっと待つアル。何があったか答えてほしいアル。」
真名は何も答えなかった。
またしばらく黙り込んで、ずっと悩んでいるようだ。
これは真名にとっての人生で一番大事な選択となることが間違いないようなことなのだ。
乗るか、乗らないか。
どちらにしても真名ならば生き残ることができるだけの実力があった。
実際もうすでに自分の一番得意とする武器、デザートイーグルを手にしている。
負ける要素は何一つないのだ。
たとえ武装した兵士が50人でかかってきても、真名ならばほぼ無傷でその場を抜け出せるだろう。
だからこそ悩んでいた。友達をとるか、自分をとるか。

だが思ってしまった。
ここで不相応な判断をしたとして、向こうが私を生かしておくかどうか・・・。
それに気付いてしまった真名は、最初の決心から決意を変えることをしなかった。
こんなところで死ぬわけにはいかないのだから。
290作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/30(木) 20:53:23 ID:???
「やっぱり、私は乗ることにした。これが私の生き方だ。いままで通り生きるだけだ。」
「どうしてアル? 答えるアルよ!!」
古菲の必死の訴えに、真名は紙切れを一枚差し出すだけだった。
それは矢についていた手紙で、とても信じられないような内容が書いてあるもの。
古菲が紙を受け取ると、真名は古菲に背を向けて、1人で歩いていく。

遠く小さくなっていく背中が見えなくなるまで見送ると、手に持つ紙に目をやった。
矢が通されていた大きな穴が開いていて、多少くしゃくしゃになっているその紙は、いつも
授業で使っているのと同じようなわら半紙だったことに、かすかに寂しくなった。
ちょろちょろと流れる水の音と、遠慮がちに鳴いているコオロギの声だけが、古菲をつつみ
こんだ・・・。

『出席番号18番 龍宮真名へ
 長い手紙を書くのもなんなので単純に用件を伝えたいと思う。
 君に殺す側にまわってもらいたい。
 あまりにもゲームの進行速度が遅い、これが理由だ。
 1000万出そう。
 乗ってくれるならば、今すぐに古菲と別れてくれたまえ。
 いまから10分以上、古菲と一緒にいるならば、ゲームには乗らないものだと判断する。
 突然で悪いが、決めてほしい。
                           ゲーム主催者 新田』

                    残り 24人

291作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/30(木) 20:55:07 ID:???
31.Dangerous Noise

「ここは禁止エリアにならなかったようですね。」
「ホンマや。よかったよかった。」
夕映と亜子は、まだ集落の中にいた。
朝がきてからスズメのような鳥がぴーちく鳴いている声がよく聞こえる。
風が吹くと森の葉っぱが揺れる音が聞こえてくるのも、こんな島ならではのことだ。
2人とも口に出しては言わないが、どちらも放送で親友の名前が一人も呼ばれなかった
ことで少し安心していた。
テーブルの上に地図を広げて、禁止エリアに×印をつける。
その地図の上には、亜子の武器であるグロックG18が置かれていた。

「これを使うときが来るんやろか・・・。」
亜子はただなんとなく銃を握ってみる。
普通の生活をしていれば知ることのない感触が伝わってきた。
説明書に書いてあった通りに弾は詰めてあり、いつでも発砲できるような状態にしてある。
「死亡者が3人という人数でははっきりとは言えませんが、おそらくゲームに乗っている人
は何人かいると思うです。」
「・・・。」
「みんな、生きて帰りたいという気持ちは一緒です。それをどう形にするかで大きく違いが
表れていますが、説得すればわかってもらえるのでは・・・。」
夕映の言ったとおりだった。
帰りたいと思っているのはみんな一緒なのだ。
安全にこのゲームを脱出して帰れる方法があるならば、誰も殺し合いなんかしないに
決まっている。
その方法をがんばって考え付こうとするか、早々にあきらめてルールに則って人殺しを
始めるか。
その選択の違いが、いまにおける『乗った人』と『乗っていない人』との違いとなって表れている
だけなのである。
つまり脱出方法さえ見つかってしまえば、殺し合いは止まり、誰も死ぬことはなくなる。
夕映の言う説得とは、それを伝えることだった。
292作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/30(木) 20:57:25 ID:???

「亜子さんはこれからどうするつもりですか? ずっとここにいるというのもありですが・・・。」
「そうやなぁ・・・。ウチはまき絵たちを探そう思ってたんやけど、夕映はどうするん?」
期待通りの答えが返ってきてうれしかったのか、夕映は微笑む。
「私ものどかやハルナを探そうと思ってましたです。」
「じゃあ、一緒に行こか。」
「そうですね。このまわりをうろついてみるだけでも何人かいると思いますが。」
――だが二人とも同じことを思っていた。
外へ出て、もしやる気の人に出会ってしまったらどうするのか・・・。
説得するなんてことが本当に可能なのだろうか・・・。

ふと夕映が何かの気配に気付いた。
「!!」
「どうしたん?」
「どちらにせよ、ここにいるという選択肢はなくなったようです。」
「え? どういうことや?」
「おそらくもう近くに――」

ババババババババッ
「銃声!? 伏せるです。」
「きゃぁぁぁー。」
あまり近くではないが、確かに聞こえた銃声に2人は震えた。
2人にとって初めての銃声だった。
「こういうことです。」
夕映と亜子はとっさにデーブルの下に隠れる。
293作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/30(木) 20:58:36 ID:???

ババババババババッ
だが着実に近づいてきている音に、2人は逃げた方がいいと思い始めた。
「近づいてへん?」
「私もそう思ったところです・・・あっ!! 電気をつけたままでした!!」
「ものすごいまずいやん!!」
地図をよく見るために家の電気をつけて、そのままにしていた。
たくさんある家の中でひとつだけ電気がついていたら、敵には来てくださいと
言っているようなものだ。
夕映が急いで電気を消したが、もう遅かった。

ガガガガガガガガッ
ものすごい轟音がして家のドアにたくさんの穴が開き始めた。
鍵穴のあたりを中心に家の内部と外部がつながる穴があき、突き抜けた弾が
コロコロとその下に落ちていく。
「ドアを壊そうとしてるです。今のうちに裏口から逃げれば・・・。」
「わ、わかった。」
「急ぐです。」
裏口の扉を開けたのとほぼ同時に、入り口から聞こえる音が大きくなった。
2人は意味がないとわかっていながら裏口のドアを閉め、勢いよく走り出した。

                    残り 24人
294作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/30(木) 21:01:57 ID:???
今日は以上です。
明日はまず早めに2話投下して、9時くらいにもう一度2話投下しようと思っています。
計4話ということです。
あくまで予定なのでどうなるかはわかりませんが・・・

ではまた明日
295マロン名無しさん:2007/08/30(木) 21:02:20 ID:???
投下乙
296マロン名無しさん:2007/08/30(木) 22:42:08 ID:???
297マロン名無しさん:2007/08/31(金) 06:00:32 ID:???
> ネット右翼の主張を見てみると、基本的に安全志向である。
> 何らかの主張をしたいわけではなく、自分を脅かすものを排除したいだけである。
> 「僕たちは静かに暮らしたいだけなんだ」という一言が一番わかりやすい。
> 彼らはいつも敵意に満ちた世界という恐怖に震えていて、自分に向かってくるものが
> すべて敵だと思っている。だから、自分に何も来ないことを望む。
> 彼らの特徴は、自分への批判を拒否することである。
> 自分を批判する相手を「批判した」という点でもって批判する。
> 例えば、嫌韓・嫌中がわかりやすい。
> ネット右翼は、韓国や中国が日本を批判することを批判する。
> 中国の軍事的脅威とか体制とかいったものを批判しているわけではないし、
> 相手がなぜ日本を批判するのかも、何をすれば批判が止まるだろうかとも考えない。
> ただ、批判されるのが嫌なだけだ。
> 彼らが望むのは、この世に批判というものが存在しなくなることだ。
http://iwatam-server.dyndns.org/column/75/
298マロン名無しさん:2007/08/31(金) 16:11:21 ID:???
乙!
2回投下クル━━━━(・∀・)━━━━?
299作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 18:17:38 ID:???
予告どおり、1回目の投下です。
300作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 18:19:27 ID:???
32.Hurry up!!

夕映たちを怖がらせた銃声は、遠くを歩いていた2人のところにも届いた。
聞いてから、明日菜と刹那2人の反応は早かった。
「!! いまの!!」
「銃声ですね・・・。行きましょう!!」

1人でも多く一緒に生き残りたい。
その思いがあった2人は、誰かと誰かが争っているという証拠、銃声を聞いて、迷うことな
くそれが聞こえた方向へと走り出していた。
自分たちが向かっていた集落の方から聞こえてきた音。
もしかするとその音によって、もうすでに事切れてしまった人がいるかもしれない。
でももしそうだったとしても、殺した人はまだそこにいるはず。
2人の目的となることは、仲間を探すこと、それと、殺人者を止めることだ。
「音が聞こえたということはそんなに遠くはないはずです。」
「そうね。でも、本当に殺しあってたらどうするの?」
「できれば話し合ってこちらの考えを伝えたいですが・・・。」
「わかった。」

2人ともわかっているのだ。
誰かを殺そうとしている人が、突然現れた明日菜や刹那の言うことを素直に聞いてくれる
はずはないということを。
自分も含め、たくさんのクラスメイトと共に帰ろうと思うなら、そのためには避けて通れない道、
クラスメイトを殺すという道があるのだ。
学園にいたとき、どんなに仲の良かった人でも、その人が殺し合いに参加していたとした
らその人を殺さなければならないという苦しみを経験することになる。
だがその場において悪いのはその生徒ではなく、それを強制するゲームの存在だという
ことに2人はしっかりと気付いていた。
301作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 18:20:53 ID:???

(相手が誰であれ、この剣を向けることは避けられないだろう。お嬢様のためとはいえ、
やりにくいな・・・。)
本家の神鳴流剣士の刹那も、人を傷つけてしまうことはあっても、人を殺すということは
絶対にしてこなかった。
魔物や鬼のような、確実に悪だとわかっているものなら殺せるのかもしれないが、それが
人となるとやはり心の中で抵抗がある。
(ネギ先生も、相手が悪かどうかで悩んでいたな・・・。)
そんなことを思い出し、同じ戦士としてうれしいような恥ずかしいような気持ちを覚えた。
そのときのネギ先生の敵は超鈴音だった。
今回刹那の敵となるのは誰だかはまだわからないが、クラスメイトであることには違いない。
本当に自分のやっていることが正しいことなのか。
ネギとまったく同じ悩み、苦しみを、もしかするとそれ以上のものを、刹那は感じながら
戦うことになってしまう。

ネギは夕映の助言をもらって、決心がついて超鈴音に勝つことができた。
だがいまの刹那に助言をくれる人は誰もいない。
明日菜がいるといえばいるが、彼女はいまは自分のことだけで精一杯だ。
私は1人で正しい判断することができるのだろうか。
いや、それが正しいかどうかは私が判断することではないはず・・・。
自分が正しいと思い込むことだけで進めるはずはない。
これも夕映がネギに言った言葉だそうだが、それはいまの私にも当てはまること・・・。

「悩みすぎは負けのもとになる。あとは本能に任せよう。」
結局、相手に会えばその悩みも晴れるだろうという結論に無理やり達し、刹那は少し遅く
なりかけていた足を速めた。
明日菜の驚くほどの足の速さについていくには、気を抑えられている刹那は全力で走らなく
てはいけなかった。

302作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 18:23:14 ID:???

と、再び。
ババババババババッ
「またっ!?」
「はやく行きましょう!!」
さっきよりも近く感じた銃声に、普通の人ならおびえて逃げ出すのが普通だが、2人は
その音の方へとさらに走っていった。
二回目の銃声が聞こえたということは、まだ誰もやられていないということだ、と思い
少しは安心したが、それでも命の危険がすぐ近くまで迫っている人がいることに変わり
はない、と思って足をさらに速める。
木と木の間を駆け抜けていく2人には、自分への信頼がおおいにあった。
そうでなければ、戦場に走っていく理由などないだろう。

自分が行けばすこしでも死者を減らせるということを信じて、2人は突き進んでいく。

                    残り 24人
303作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 18:24:22 ID:???
33.Life with Danger

それはついさっき。
楓が、バカレンジャーを探す、と言って北に向かってすぐのことだった。
遠くに聞こえた防犯ベルと銃声。
そして那波千鶴の死亡。
そのすべてを楓とのどかは見てしまっていた。

『いいでござるか。まず、これをのどか殿に託すでござる。これを使って、のどか殿は
2人以上で固まって行動しているグループを探し、そこに合流する。そうすればとりあえず
は安心できる。1人で行動している人の近くには絶対に行ってはダメでござるよ。
乗っている人かもしれない。』
楓はそう言い残し、のどかからスタンガンをもらって超のところへと走っていった。
のどか自身も、楓についていっては足手まといになることはわかっていたので、素直に
楓の指示に従うことにした。

のどかは首輪探知機を片手にひたすら走っていく。
千鶴の死を見てしまったのどかは大きな絶望感に取り付かれていた。
乗っている人に会えばそこで最後、千鶴のように殺されてしまう。
・・・どうしてこんなことになっちゃったんだろう・・・。
のどかの目から一粒の涙が零れ落ちた。
もしさっき楓が助けに来てくれなかったら、私はもう銃弾に撃たれて一足先に死んでしまっ
ていたかもしれない。
そんな恐怖が、のどかを臆病にさせた。

304作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 18:25:50 ID:???

のどかの持っている首輪探知機は、半径100メートル以内にいる生存者の首輪に反応し、
画面にその存在を赤い点で映し出す。
それが誰であるかは表示されないため、少々使い勝手が悪いところもある。
しかしほぼ最強の武器であることには変わりはなく、のどかはこれをフルに活用していた。
走っている途中で点がひとつだけ表示されたときがあったが、楓に言われたとおりそれは
無視してさらに走った。
そのひとつの点から遠ざかっていくとなかなか点は現れず、のどかの焦る気持ちをより
いっそう強まらせた。
「誰かたすけて・・・。」

ゴッ
のどかは木の根に足を引っ掛けて転んだが、またすぐに立ち上がり走り出す。
膝からは血が出ていたが、そんなことを気にする余裕すらのどかにはなかった。

「こわいよ・・・たすけて・・・だれか・・・。」
結局のどかは丘陵地まで戻ってきてしまっていた。
つい5時間くらい前にここで襲われたことを思い出してしまい、心配になって探知機を見る
がやはり誰もいない。
さすがに疲れたのか、少し体を休められる場所を探しそうとあたりを見回すと、夜のうちは
暗くて見えなかった洞窟の入り口があることに気がついた。

305作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 18:27:30 ID:???

上下左右すべてが黒い岩で覆われていて、少し奥まで入ってしまえばまったく日の光が
届かないようなところだった。
のどかは頭のすぐ上にある岩に懐中電灯を置き、気持ちを落ち着けるため遅めの朝食を
とることにした。
バッグに入っていた食料は、ロールパン2つと水の1?ペットボトルが2本だけ。
パンはかなりパサパサしていたが、ひさしぶりに食べる朝食にのどかはなんとなく満足感があった。
冷静に考えて、この島で目が覚めてから、実はまだ7時間しかたっていないことに驚く。
命の危険を常に感じながら生きることが、こんなにも大変で緊張するものだとは思わなかった。

そこでふとネギのことを思い出す。
マギステル・マギになるのには大変な修行が必要なことは、のどかも知っていた。
だが、それ以上にマギステル・マギになってからはもっと大変だということも知っている。
自ら危険と隣り合わせの職業につこうとするネギの強さに、改めて感動させられた。
そしてそれ以上に、いまでもネギが『魔法使いの仕事は、世界の困っている人たちを救う
こと。そのためには自分も犠牲にするときもある。』
と言っていることを思い出し、ネギと自分との相違、弱さを感じてしまった。

朝ごはんを食べて腹が満たされたのどかは急に眠くなり、そういえば寝てないな、と思った
直後にはもう眠ってしまっていた。
外ではあちこちで銃声や爆発音が聞こえているのに、洞窟の中にはのどかの静かな寝息
だけが聞こえていた。

                    残り 24人


306作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 18:29:18 ID:???
最後のところ、『ロールパン2つと水の1?ペットボトルが2本だけ。』
の『?』は『リットル』の記号が文字化けしたものです。

とりあえず、1回目はこれで終了です。
またあとでお会いしましょう。
では
307マロン名無しさん:2007/08/31(金) 19:02:51 ID:???
308マロン名無しさん:2007/08/31(金) 19:31:49 ID:???


どこもかしこも動いてきたな
309作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 21:02:19 ID:???
どうも、2回目の投下です。
310作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 21:04:07 ID:???
34.Master and Partner

亜子たちの家を破壊した銃声は、かなり遠くまで響いた。
遠くまで聞こえていたのだから、当然同じ集落の中にいたエヴァたちにも聞こえていた。

地響きと共に、家の中の小物が棚から落ちる。
ものによっては割れて、ガシャンと大きな音を立てた。
「――うるさい奴がいるな。乗った馬鹿者か・・・。」
茶々丸と千雨にパソコンをまかせっきりにして寝ていたエヴァは、豪快な音に考え事を
妨げられて相当不機嫌になっていた。
「音からすると、敵はここから遠ざかっているようです。」
「この家に侵入されない限りは関係ねーだろ。続けるぞ。」
「はい、千雨さん。」
3時間ほど前にこの家にたどり着き、そこからずっと首輪をはずすためのプログラムを
作り続けてきた茶々丸と千雨は、もう少しで終わる、というところまできていた。
だが首輪をはずす、というのはひとつの可能性を試してみるだけに過ぎない。

確かに、首輪をはずしてしまえば島から脱出することは可能になる。
だが『脱出』、といっても泳いで帰るしかないわけで、途中の海で新田に見つかって銃撃を
受けたりしたらひとたまりもない。
そこで本部襲撃という話が出てくる。

もしエヴァの魔法を封じているのが首輪だったら、その首輪をはずすことで、本部を魔法
で破壊することは可能になる。
しかしこの島全体に魔力を押さえ込む結界が張られていたとしたら、首輪をはずすことに
よる影響は、魔法のない状態で本部に入り込める、ということだけということになる。
「ったく、なぜだかわからないのがこんなに迷惑なことになるとは・・・。」
「――おそらく、どちらもなのではないでしょうか。」
ずっと動き続けていた茶々丸の指が止まり、カタカタという音も止まる。
311マロン名無しさん:2007/08/31(金) 21:04:29 ID:???
2回目ktkr!!11
312作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 21:05:53 ID:???

茶々丸の意見にエヴァは少し驚き、茶々丸の方へ向き直った。
「なぜそう思う?」
「いままで行われてきたバトルロワイヤルの中で、生徒が首輪をはずし、本部を襲撃して
ゲームを終わらせるというパターンはかなり多数あります。計画する方のことを考えてみると、
この事実を見逃すはずはないでしょう。となると、この3−Aというクラスは異常な戦闘能力
を持った人がたくさんいるので、その人たちの魔力、気を抑えることは必至となると思われます。」
茶々丸はいったん口を止め、エヴァと千雨のことを見る。
エヴァは静かに茶々丸の説明を聞いていたし、千雨も作業をやめて、同じように説明を
聞いていた。
「・・・続けろ。」
「はい。」
再び口を開き、説明を始める。
説明を聞きながら、千雨は茶々丸の口の開閉もフェイクなんだろうなと思い、こいつを
作った超やハカセがいれば首輪など簡単に外れてしまうだろうと考えていた。
「いま言ったように、首輪をはずすのは恒例となっているようです。つまり今回、3−Aが
対象クラスとして選ばれたときに、これまでと同じく首輪をはずしてくるということは向こうも
想定していると思われます。つまり、魔法や気を抑えるのを首輪だけに頼っていると、
悲惨なことになるのは目に見えている――」
「それで首輪のほかに結界を張っているんじゃないかと。」
「はい、そうではないでしょうか。」
その言葉を最後に、3人に沈黙が訪れる。
それぞれ真剣な表情で、いまの茶々丸の意見について考えていた。
「確かに、そう考えるのは自然だし、どこもおかしな点はないな・・・。」
千雨がふと考えを口に出す。エヴァもそれに賛同する。
「私もそう思った。だが茶々丸、そう思っていたのならなぜ首輪の解除をしようとしている?」
313作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 21:07:30 ID:???

茶々丸は少しの間黙り、それから言った。
「結界を張っている機械のようなものが、本部にあるのではないかと思います。
私のような、魔力や気がなくても常人よりはるかに戦える人が首輪なしで本部に
侵入し、その機械を破壊してしまえば――」
「そんなことしたら、いくらお前でも無事に帰って来れないだろ!!」
エヴァの大声にひるむことなく、茶々丸はただ悲しそうな目をする。
「――そうなっても、マスターをお守りするのが私の役目です。」

先ほどとは違う沈黙が、訪れた。
きまずい雰囲気が部屋中を埋めて、呼吸するのも苦しいような空気だった。
マスターとパートナーの関係。
本来あるべき姿はこうなのかもしれないが、エヴァは当然納得できなかった。

「やっぱロボットの考えることはわかんねーよ。」
またしても沈黙を破ったのは千雨だった。
「自分を犠牲にして自らの主を助ける。かっこいいことだと思うよ。でもな、そうして残された
エヴァンジェリンのことを考えろ。何もしないまま助けられて、自分を守ってくれたパートナー
は消えてしまう。どれだけ後悔するか、ロボでもわかるだろ。」
「・・・。」

エヴァも茶々丸の方を見る。
「そういうことだ、茶々丸。少しは自分のことも考えろ。」
エヴァの優しい側面がにじみ出ていた。
「ありがとうございます、マスター。」

そう答える茶々丸の目には、涙のように洗浄液があふれていた。
そしてエヴァの目にもまた、こっちは本物の涙がにじんでいるように見えた。

                    残り 24人
314作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 21:08:51 ID:???
35.Traitor

「走ったらすごいすっきりしたね。」
「ほんまやー。」
まき絵と木乃香は海から島の中のほうに向かってずっと走ってきた。
幸い誰にも出会うことなく、2人は小屋の前にたどり着いていた。

森のはずれ、といったところだろうか。
小屋の裏は森になっているが、正面玄関は平らな草原に続いている。
「誰かいるん?」
たとえ誰かいたとしても返事をするわけはないのだが、当然、返事はない。
静まり返った空間だけが、ドアの中には用意されていた。
「入っちゃうよ〜。」
なんの警戒心もなく、2人は小屋へと入り込む。

古びた別荘、そんな雰囲気の建物だった。
木が何本も積み重なって出来ている、ログハウスというようなつくりで、中は何年も使って
いなかったことを感じさせる木やカビのにおいがした。
一階建てで、天井は少し高め。
その天井にはいくつもクモの巣がある。
たったの3部屋しかなかったが、それはいまのまき絵たちには関係のないことだった。
カーテンは破れ、ひとつだけある和室の畳はボロボロになっていて、雨漏りをしたのか
腐り始めている。
まき絵はしばらくぼんやりと小屋の中の様子を眺めていた。


「なぁ、まきちゃん。」
木乃香はいつの間にか奥の部屋へと進んでいて、そこからあまり大きくない声で話しかけてきた。
315作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 21:10:04 ID:???
「ん〜?」
「この小屋、さっきまで誰かいたみたいなんや・・・。」
「え、なんで?」
木乃香はちょっとしたキッチンのようなところのゴミ箱を見ていた。
捨ててあるものは何のへんてつもない生ごみやビニール袋。
だが木乃香は見逃さなかった。
「このビニール袋、ウチらのパンが入ってた袋とおんなじやし、まだ水滴がついてるペットボトル
が捨ててあるから・・・。」
もとから捨ててあったものではない。
確かに木乃香の言うとおりだった。
ビニール袋だけならばここに住んでいた人のものだったかもしれないが、まだ水滴が蒸発し
きっていないペットボトルが捨ててあるということが決定的な証拠だった。
昔捨てられたものなら水滴なんて蒸発してしまうはず。
つまり、つい最近にこのペットボトルは捨てられたということになる。

「――まだこの家の中にいてもおかしくないえ。」
「!!」
もしこの家の中にいるのだとしたら、圧倒的にまき絵たちが不利だ。
相手はまき絵たちが入ってくるのを知っていて隠れているはずだが、こっちは敵の居場所
すらわからない。
「でもさ〜、向こうがやる気ならもうとっくに襲ってきてると思うよ。」
「んー。それもそうやな。とりあえず家の中を一通り見て――」
「っていっても、隠れる場所なんてほとんどないよね・・・。」
2人であたりを見回す。
トイレや風呂のようなものは一切なく、押入れは上の段は底が抜けていて、下の段も木が
腐っていていまにも穴が開きそうになっていた。
316作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 21:11:08 ID:???
「そやね。」
「だいじょぶだよ。」
「じゃあ一応、ウチがこのまわりだけ見回りしてくる。」
まき絵も一緒に行く、と言おうとしたが、2人で家を出ている間に他の人に入られて、
帰ってきたところを狙われたらひとたまりもないことに気付き、言うのをやめた。

「じゃあお願い。んっと、これ持ってって。」
まき絵の支給武器だったロープを渡してもどうしようもないだろうと思ったので、ハカセから
奪ったボウガンを木乃香に手渡した。
「ありがと、まきちゃん。すぐ帰ってくるから心配いらんよ。」
小走りで玄関に向かい、ドアの取っ手に手をかけ、もう一度振り返って言う。
「まきちゃんも、もしかしたら中に誰かおるかもしれへんから気をつけてな。」
「いざって時にはナイフもあるし、だいじょぶだいじょぶ。」

木乃香はいつもの微笑みを見せた。
そしてドアを開け、外へ出る。
その瞬間。

パンッパンッ
2回の乾いた銃声が、小屋の中にまではっきりと届いた。

「なに? このか!?」
まき絵があとを追って外へ出ると、木乃香がうつ伏せになって倒れていた。
きれいな長い黒髪が、乱れて地面に広がっている。
布のようにきめ細かな筋を1本1本が描いて、頭を中心に扇子のようになっていた。
さっきまで楽しく一緒に走っていた友達が、動かぬ人形となって地面に倒れている。
317作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 21:12:22 ID:???
「うそ・・・」
ふと目を上げると、そこには木乃香を撃った本人。
無表情の龍宮真名が立っていた。
人差し指は拳銃のトリガーにかかっていて、いつでも発砲できる状態になっている。
銃口からは、いま撃ったことを証明する白い煙が上がっていた。

まき絵は震えだした。
また自分の目の前で人が死んでしまった。
また守れなかった。
悔しい。とても悔しい。そして、つらい。
史伽が死んでしまったときに、もう誰も殺させないと誓ったのに。
「・・・あんたがやったの?」
わかりきっていることを聞く。
まき絵の目は血走って真っ赤になっていた。
涙も勝手にこぼれていく。
「あぁそうだ。」
冷たく、感情のない声でそう答える。それは新田とほとんど同じ質の声だった。
周囲を凍りつかせるような、何の感情もこもっていない冷酷な音。
「許さない・・・絶対に許さない。」
「それでお前に何ができる? 確かに怒りや憎しみは人を強くさせる。だがそれは、
その感情に支配されなければの話だ。それだけの精神力が、お前にあるか。」

パンッ
銃声一発。
それは学校でのチャイムが授業開始の合図であるのと同じように、この場においては
戦闘開始の号令だった。

                    残り 24人
318作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/08/31(金) 21:14:40 ID:???
今日4話投下したのは、明日投下できないからなんです。
ちょっとした用事が入ってしまって・・・申し訳ないっす。

まぁ本日は以上です。
よっぽどのことがない限り、明日は休ませていただきます。
では・・・
319マロン名無しさん:2007/08/31(金) 21:20:13 ID:???
投下乙
320マロン名無しさん:2007/08/31(金) 22:30:07 ID:???
乙!
まき絵が勝ったら神展開だが、



ありえないなorz
321マロン名無しさん:2007/08/31(金) 23:03:43 ID:???
木乃香が死んだとは限らんぞ
死亡確認されてないし
322マロン名無しさん:2007/09/01(土) 22:25:56 ID:???
【社会】2ちゃんで「釣」をしていた男を逮捕。「犯罪になるとは思っていなかった」
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news7/1187103894/l50
323作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/02(日) 21:03:23 ID:???
どうも、本日の投下です。
324作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/02(日) 21:05:03 ID:???
36.Make a Promise

「ハカセ!!」
「大丈夫?」
「ハカセさん、どうしたんですか?」
裕奈、アキラ、あやかの3人は、口々にハカセに心配の言葉を投げかける。
幸い、ハカセに大きな怪我はないようだった。
「ま――まき絵――さんが――ふ、史伽さんを――殺しているのを見て――逃げて――襲われて――」
それを聞いて、裕奈とアキラは口を押さえてうつむいてしまった。
うつむいているのでよく見えないが、その目には涙がにじんでいるだろう。
「そんな・・・まき絵が・・・。」
「そんな、うそ・・・まき絵。」
「まき絵さん・・・。」

3人はハカセの言うことを完全に信じていた。
まき絵の親友だった裕奈とアキラは、一刻も早くまき絵と亜子に会いたいと思っている。
4人でいれば、どうにかなると思っていたのだ。
それなのに、まき絵は殺す側にいると聞いて、2人は絶望するしかなかった。
桜子だって乗ってしまうようなゲームだ。
まき絵も乗ってしまっても別におかしいところはない。
いつもなら絶対にまき絵を信じている2人だったが、こんな状況ではそのゆるぎない友情も
たいした役割を果たさなかった。

(やっぱり、この人たちは私のことを信じています。このままいいように話を持っていけば
かなり有利な立場になれますね。)
「それで――私は――まき絵さんに――ボウガンを奪われて――怖くて――逃げて――」
「・・・。」
もう何も言うことができなかった。
あやかたちが考えていた仲間を集める、ということもこれを聞くとかなり難しいことなのかもしれないと思った。
もしかすると、正気のままでいるのは自分たちだけになってしまったのかもしれない。
325作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/02(日) 21:06:57 ID:???

「他には・・・誰かに会った?」
もうまき絵の話は聞きたくないと言わんばかりに裕奈がハカセに聞く。
アキラも顔を上げ、あやかも真剣にハカセを見ていた。
「他は――会ってないと――思います――」
また顔をうつむける。


長い間、沈黙が続いた。
それぞれが、これからのことについて考えていた。
「こうしない?」
裕奈が口を開き、みんながそっちを注目する。
裕奈はゆっくりと口を開き、自分の考えたこれからの作戦を打ち明ける。
「いまから2人ずつ2組にわかれて、みんなを探しに行く。それで、何時間後かに場所を決めて
また合流する。そこに仲間になってくれた人を全員連れて行けば、いまの2倍の速さで仲間
集めができるよ。4人で固まって行動してても逆に目立って危ないかもしれないし・・・。」

正直、意外な提案だった。
せっかく乗っていない人が4人も集まったのに、それを分けてしまうという変わった発想に
しばらく戸惑う。
あやかとアキラの2人はすぐには反応できなかったが、ハカセだけは心の中でものすごい喜びを感じていた。
(いまの方法でいけば、私と組んだ人は殺せる!!)

武器をだまし取って殺すなんてことは、とても3対1ではできそうもないと考えていたが、
1対1なら話は別。
3人とも自分を信用しているから誰と組んでもうまくいくに決まっている。
だがここで大げさに賛成するのも変だろうと思い静かにうなずくだけにしておいた。
326作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/02(日) 21:08:28 ID:???

すこしたつと、その作戦の良さに気付き、アキラとあやかも賛成の色を示した。
「裕奈さんの言ったとおりにしましょう。確かにてっとりばやく人を集められます。」
「うん、私もそう思う・・・。」
「じゃあ、どこに何時にする?」
「いま10時半なので、2時とかでどうですか?」
いつの間にか泣き止んでいたハカセが提案する。
「場所は?」
「ここでよくない? ここならわかりやすいし。」

北と西は山に囲まれ、南に少しいけば商店街がある。
東側は診療所のある禁止エリア。
山を越えて帰ってくるのは大変だが、商店街を抜けて帰ってくるのはかなり楽だ。
一方が禁止エリアに接しているため、他の生徒達はここへはあまり来ようとしない。
待ち合わせ場所としてはかなり条件のいい場所だった。
「そうしよう。2時にここね。あとは2人の分け方だけど・・・。」
「裕奈さんはアキラさんと一緒に行って下さい。私はハカセさんと行きます。」
あやかの意見ですぐに決まった。
「じゃあ、そういうことで。」
「出発は早い方がいいですよ。行きましょう。」

ハカセとあやかは商店街の方へ、裕奈とアキラは北の山を越えようと出発した。
ハカセは武器の都合上、本当はレミントンを持っているアキラと一緒に行動したかったが、
反対するのも変なので仕方なくあやかについていった。
あやかは何も知らずに、ハカセの前を歩いていく・・・。

                    残り 24人
327作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/02(日) 21:10:28 ID:???
37.Decisive Battle

「おもしろいネ。来るといいヨ。」

――――
45口径コルトガバメント。
ほとんどの人間なら一発で戦闘不能にできるほどの強力な銃。
それを持つ超鈴音を相手に、長瀬楓はもう30分も素手で戦っていた。
正確には素手ではなく、スタンガンは持っているのだが、遠距離から狙ってくる銃に対して
スタンガンではどうしようもない。
コルトガバメントには連射機能はないとはいえ、一発一発を見極めてよけ続けるのはさすがの
楓にもつらいものがあった。
超はただ楓を狙って撃つだけ。
それに対して楓はそれをよけるだけで精一杯。
誰が見ても楓が不利なことは歴然としている。

楓に攻撃チャンスがあるのは超の銃が弾切れを起こして、その弾をつめなおしているとき
だけだった。
だが超は弾をつめる動作も慣れていて、わずか数秒でまた射撃の体勢に入る。
しかもつめている間も楓から目を離すことはなく、楓が攻撃をしようと近寄ろうものなら
得意の北派少林拳で受け止めて反撃を試みた。
そのためむやみに攻撃もできずひたすらよけ続けるだけになってしまっていた。
とてもたくさんの予備の弾が用意されていたらしく、いくらよけ続けても超は撃ち続けてきた。

328マロン名無しさん:2007/09/02(日) 21:10:54 ID:???
shien
329作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/02(日) 21:12:49 ID:???

「どうした? ずいぶん甘いネ?」
刹那の気やエヴァの魔法が封じられているのと同じように、楓の忍術も封じられていた。
いくら中国拳法の使い手とは言っても楓が忍術を使ってしまえばカシオペアなしの超など敵ではなくなる。
あのアルビレオ・イマにすら善戦をくり広げたくらいだ。
だがその忍術なしでは、楓も苦戦せざるを得なかった。

一度仕掛けてしまった勝負から逃げるなど考えることもなく、何か解決策は、と考えた。
だがすぐに楓は体勢を低くし、横へ跳ぶ。
一瞬前まで楓がいたところをものすごいスピードで大きな銃弾が飛んでいった。
それを見届ける間もなく今度はしゃがみこむ。
頭の上をすれすれで弾が通過していく。
「くっ、きついでござる・・・。考える隙すら与えてくれないでござるか・・・。」

実は楓は、まだスタンガンを超に見せていなかった。
切り札は最後まで取っておかなければ・・・。
そう思って隠していた。
しかし楓の体力ももうそろそろ限界に近い。

パンッ
音と同時に楓は地面に伏せ、また自分の上に風を感じた。
直後、横へ転がり次の弾をよける。
「ずいぶん粘るネ、楓サン。」
学園祭で戦ったときと同じような、人を馬鹿にしているような声が耳に入ってくる。
楓は何も答えず、急いで立ち上がると一歩後ろに下がり、足元の銃弾をかわす。

当初の予定では超の持っている弾をすべて使い果てさせて、撃てなくなったところで
接近戦に持ち込み、倒す、という未来を描いていた。
だが予想以上に超の銃の扱いがうまかったため、楓の体力はどんどん削られていってしまった。
次にまた弾詰めをされてしまえば、今度こそはもう避けられないだろう。
330作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/02(日) 21:15:45 ID:???

(仕方ない・・・いちかばちか・・・。賭けるでござる!!)

いままで楓が超に接近したのは、銃が弾切れを起こしていたときだけだった。
だがそれだけでは絶対に倒せないことを悟った楓は、自分の体をある程度犠牲にすること
を決意するほかはなかった。
例えばいまのような、弾切れを起こしていないときに突撃していけば、いくら超でも驚いて
防御はできないだろう。
あせって銃を撃ってくるのは目に見えていたが、圧倒的に不利な状況を覆すにはこれくらい
のリスクを背負って挑まなければ勝てないのだ。

(一発くらいなら、急所でなければ大丈夫でござる・・・。)
右のポケットに隠し持っていたスタンガンを握りしめ、楓は大きくジャンプした。
超が構えていた銃は、確実に楓がいままでいた場所を撃ち抜いた。
弾が下の岩と当たって音を立てる。
当たったところの岩が砕けて空中に飛び散る。

「っ!?」
予想外の動きにとっさに対応できなかった超は、自分に向かって跳んでくる楓に向かって
トリガーを引いた。
「ぬっ!!」
これも楓にとっては予想していたことだったが、やはり自分に弾が当たるであろう瞬間は
怖かった。
痛みに耐えようと体中に力を入れる。

――――――
が、超が突然構えただけの銃は狙いは定まらず、その弾は楓のはるか後ろのほうへと
飛んでいっていた。
(運は拙者に味方してくれたでござるか。)
超の目の前に着地して――――
「拙者の勝ちでござる。超殿!!」
331作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/02(日) 21:20:22 ID:???
バチッッジジジッ
「あああっ!!」
楓のスタンガンが超の腹に電撃を与え、超は銃を落としてしまった。
そこを見逃さず、すぐに銃に飛びつき、それを超の頭に突きつける。
「残念でござったな、超殿。千鶴殿を殺した罪を償ってもらう!!」
「――フフ・・・私の・・・勝ちネ。」
「何を言っている? もう勝負はついた。超殿の負けでござる。」

超は腹を押さえながらも、楓の方を見た。
――その目は、楓を見ているのではなく、楓の先の景色を見ていた。

「まさかっ!!」
楓はいそいで後ろを振り返る。
楓に当たるはずだった超の最後の銃弾は、ずっと遠くまで飛んでいた。
そしてちょうどそこには―――
楓を探していた古菲が歩いていた。
その弾は見事に古菲の体に突き刺さり、彼女は・・・

「貴様ぁ・・・。」
楓が怒りのあまり超を撃ち殺そうとして超の方を向き直ると、目の前には超の姿はなかった。
古菲に気をとられている隙に逃げ出したらしく、もう10メートルほど距離をつけられていた。
楓が自分を見たのに気付いた超は、走るのをやめて楓に向かって言った。
「残念だたネ。スタンガンは少しの間、敵の動きを止めるには使えるガ、時間が経てば
動けるようになてしまう。ま、実戦向きじゃないてことネ。」

聞き終わる前に、楓は超に向けて発砲する。

――が、弾は出てこなかった。
「コルトガバメントの装弾数は7発。覚えとくといいヨ。」
超はまた走り出す。
332マロン名無しさん:2007/09/02(日) 21:21:24 ID:???
支援
333作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/02(日) 21:22:22 ID:???

――追いかける気にもなれなかった。
完全敗北だ。
結局最後まで遊ばれただけだったのだ。
千鶴の敵をとるためにのどかと別れてまでして超に勝負を仕掛け、仕留められなかった
どころか古菲まで撃たれてしまった。

「くそっ。」
だがいまは悔やんでいる場合ではない。

「古!!」
楓は自分のせいで撃たれてしまった古菲のところへ急いだ。
誰かが死んでしまいそうなときになにもできないのは、もう絶対にいやだったから・・・
その人が自分のミスのせいで死にかけているのだとしたらなおさらだった。

                    残り 24人

334作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/02(日) 21:24:19 ID:???
本日は以上です。
明日もこのくらいの時間に投下します。
では
335マロン名無しさん:2007/09/02(日) 21:25:22 ID:???
乙です。
336マロン名無しさん:2007/09/02(日) 21:31:18 ID:???
古菲……(´;ω;`)
337マロン名無しさん:2007/09/02(日) 21:33:05 ID:???
乙、あやかvs聡美がすっげえ楽しみだ
くーふぇ…死なないよな?な!
338マロン名無しさん:2007/09/03(月) 03:13:43 ID:???
新参者で何も知らないですまないんだが、なんで1部と8部は黒歴史扱いされてるんですか?
339マロン名無しさん:2007/09/03(月) 03:17:20 ID:???
ヒント:盗作
340マロン名無しさん:2007/09/03(月) 04:29:30 ID:???
節子、それヒントちゃう、答えや・・・
341マロン名無しさん:2007/09/03(月) 05:52:20 ID:???
>>339
そのヒントから推察するに、おそらく作者1氏は何らかの作品を盗作してしまったということですか…
残念です…
教えてくれてありがとう
342マロン名無しさん:2007/09/03(月) 08:38:53 ID:???
推察もクソもまんまじゃねーかwww
343マロン名無しさん:2007/09/03(月) 13:01:30 ID:2nCMTG4I
紫煙
344作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/03(月) 20:58:10 ID:???
どうも、本日の投下です。
345作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/03(月) 21:00:05 ID:???
38.Sleeping

超のところから何とか逃げてきた美砂と円の行動方針は決まっていた。
それは当然、桜子を探すこと。
あいかわらず武器はフォークと爪切りと防犯ベルだけだが、それらもうまく使えば何とかなることに気がついた。
長く伸びていた爪を、爪切りで尖らせるように切った。
こうすれば引っかいただけで傷を作ることくらいはできる。
防犯ベルだってさっき少しは役に立った。
結局千鶴を助けることはできなかったけれども、楓はたぶんあのベルの音を聞いて来てくれたのだろう。

「桜子、無事だといいね。」
「何言ってんの!! 無事に決まってるでしょ。」
「そうだね。ごめんごめん。」
「ったく。弱気なこと言っててもいいことないわよ。」
そんなことを言った割に、実際美砂も円もかなり弱気になっていた。
この島について初めて会った人が、千鶴だった。
その千鶴は、もう殺されてしまっていないのだ。
夏美のところに行く、と言って灯台から出て行ったその時に、美砂と円が無理やりにでも
千鶴を引き止めていれば、千鶴は死ぬことはなかったのだ。
自分のせいで千鶴は殺された、そう思うと、2人は重く責任を感じてしまう。

桜子を探す、という目的だけはあったものの、どこへ行っていいかはまったくわからず
ただ行くあてもなくさまよっていた。
「さーくーらーこー!!」
「!!」
突然美砂が大声を上げたので円はびっくりしてしまった。
「ちょっと美砂!! そんなことしたら乗ってる人が近づいてきちゃうかもしれないでしょ。
桜子だって返事しないだろうし・・・。」
かなり大きな声だったので、遠くまで聞こえたんじゃないかという不安が円の中に生まれた。
346作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/03(月) 21:02:20 ID:???
「あはは、ごめんね。もうなんか、何が良くて何が駄目なのかとか考えられなくなっちゃって・・・。」
円は、美砂がかなり危ない状況にあると思った。
2時半にゲームが始まって、いま11時すぎ。
まったく寝ていないことを考えると頭が働かなくなってもおかしくないかもしれない。
「安全なとこ探してちょっと休もうか。」


2人は海沿いにあった一階建ての病院のようなところに入った。
古ぼけていても病院だったので、壁や天井は清潔感のあるきれいな白色をしていて、日が差し込むととても明るい。
だが誰もいない病院というのはかなり怖いもので、あまり居心地のいいものではなかった。
すこし休んだらすぐに出たいという気持ちに駆られる。
薬などはたくさん置いてあったが、医療用具のようなものは一切置いていなかった。

「美砂、ちょっと寝てな。私が見張りしとくから。」
「こんな時間に寝るなんて変じゃない?」
「美砂疲れてるんだから、ちゃんと寝なさい。」
「・・・わかった、ありがと。じゃあお願いね。」
手術室のような場所にあったベッドに美砂を寝かせると、円は防犯ベルとフォークを持って
病院の入り口に戻った。
一回外に出て周りに誰もいないことを確認すると、中に入って入り口からは見えない位置に隠れた。
自動ドアだったので誰かが入ってくれば音ですぐにわかる。
それだったら逆に、入り口から見える位置にいるのは危ないのではないか。
そう考えた円のとった行動だった。

誰か仲間になってくれそうな人が来ることを祈りながら、円も眠気と戦いながらドア近くに立っていた。
3人で楽しくショッピングしたことや、カラオケで7時間耐久したときのこと、木乃香とネギの
デート疑惑を追跡したときのこと。
楽しいことがいくらでも思い出せた。
でもふと気を抜くと、不幸な未来を頭に思い描いていた。
私たちは3人ともまだ生きてるけど、そのうち誰かが死んで2人になって、もっと時間が
経つと1人になって、さみしさに耐えられなくなって最後の1人も死んでしまう。
そんな未来をいつの間にか予想していた。
347作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/03(月) 21:03:33 ID:???

(私もずいぶんこの空気に汚染されちゃったな・・・。)

もう一度、そっと外を見てみても、誰かが来る様子はなかった。
黒い海岸の岩が遠くまで続いて見えるだけだった。
「ふぁーあ。私も眠くなってきちゃったな・・・。」
建物の中で美砂が寝ていることを考えると、円まで寝るわけには行かない。
2人とも寝ている間に誰かに侵入されて殺されたなんていったら笑い事じゃない。
円は深いため息をつき、もう少し時間が経ったら見張りを交換してもらおうと思ったが、
美砂がおきたらすぐに桜子を探しに行かなければいけないことを思い出し、寝られないことを悔やんだ。
だがいまの円には自分の睡眠よりも桜子の安全のほうが大事だった。
(桜子のほうからここに来てくれればいいのに・・・。)
理不尽なことを考えながらも、円は睡魔と闘い続けた。

しかし結局、円もうつらうつらしているうちに眠ってしまった。
そとを見ている人は、誰もいない・・・。

                    残り 24人
348作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/03(月) 21:05:08 ID:???
40.Madscientist

裕奈とアキラと別れたあやかとハカセは、商店街の中をさまよい歩いていた。
あやかは純粋に人探しをしていたが、ハカセの方は、あやかをだまして殺す方法を思い
つき、それをいつ実行しようか考えていた。
「誰もいませんわね・・・。」
「そうですね・・・。やっぱり集落のあたりに集まっていたりするかもしれないですね〜。」
「でもそっちへは裕奈さんたちが行きましたから、私たちはこっちで探しますわよ。」
「はい〜。」
最初はあやかが先を歩いていたのだが、店に入ったりしているうちに順番が入れ代わり、
ハカセが先を歩き、その後ろをあやかがついて行くという形になっている。
あいかわらずあやかは、斧を服の背中にかけていた。
ハカセはその斧を取るために後ろへまわりたかったが、突然形を崩すのもおかしいので
機会をうかがっているところだ。

(商店街を抜ければ、作戦が実行できる。)
ハカセはそう思いつつ、できるだけ早く歩いていた。
あやかは何も知らずにそれについてくる。
まったく疑いもせずに、たまに話しかけたりしてくるので、ハカセはとてもやりやすかった。
「ハカセさん、この首輪をはずすことはできませんの?」
「どういう構造になっているのかわからないのでできないですね〜。もし失敗して爆発
したりすると怖いですし・・・。」
「そうですか・・・。」
あやかはハカセでもできないことがあるのか、と思い少し驚く。
学園では超と同じく天才と呼ばれてもおかしくないような存在で、できないことなどほとんど
なかったし、少なくともあやかは、ハカセができないことを1つも知らなかった。
当然、ハカセは適当に答えていただけなので、本気で首輪解除に取り組めばできたかもしれない。
だが、どうせすぐ死ぬ人に期待を持たせるのもかわいそうだと思って言わないでおいた。

349作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/03(月) 21:06:47 ID:???

この商店街もたくさんの人が通ったのか、靴の裏についていたのだろう泥があちこちに落ちていた。
始まってから8時間近くたっているのだから、それも当たり前かもしれない。
だがそれは、まだ何人もの人が生きているのだ、という安心にもつながるものだった。

「商店街、終わってしまいましたね。」
アーケードから下げられた垂れ幕に書かれた、『商店街南側出口』という文字を見て、
あやかは残念そうにつぶやく。
商店街に来れば一人くらいには会えるだろうと思っていたのに、誰にも会えなかった。

商店街の外はあまりよく見えない。
まっすぐ先は見えるのだが、最南端の店はかなり大きく、その店の陰になっているところ
は見えなかったのだ。

(ついにやるときが来た。)
ハカセは様子を見てくる、とでもいうようにあやかのほうを1回振り向くと、その大きな店の
近くまで行き、裏を覗き込んだ。
特に何もなかったが、ハカセは目を大きく見開き、大げさなくらい驚いた表情をする。
そのあと、叫ぶ。
「いんちょさん!! 武器を貸してください!!」
「え? あ、はい。これしかないですけど。」
あやかは何のためらいもなく背中にかかっていた斧を取り出して、ハカセに手渡した。
その重さにハカセは一瞬よろめいたが、すぐに体勢を立て直してあやかのほうを向いた。
「ありがとうございます、いんちょさん。」
突然のお礼に、自分は何か感謝されるようなことをしたかと考えてしまう。
だが武器を求めたということは敵がどこかにいるのだろうと思い、あたりを見回した。
「敵はどこにいるんですか?」
「敵なんていませんよ。」
少し間があった。そして、言った。

「しいて言うなら、ここにいます。私が敵というべき存在でしょう。」
350作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/03(月) 21:11:05 ID:???

これが、ハカセのとっさに思いついた作戦だった。
あやかのような、完全に人を信用している人が相手だからこそできる。
敵がいる、と嘘をついて、武器を借りる。
武器さえもらってしまえば、相手は素手になるのだから、負けるはずなんてないのだ。

言い終わるや否や、ハカセは両手で斧を振りかぶりあやかに向かって振り下ろそうとする。
しかし予想以上に重かったのか、いちいち動作に時間がかかった。
さすがにあやかもそのゆっくりとした動作からは簡単によけることができた。
「やめてくださいハカセさん。何の冗談ですか?」
「冗談なんかじゃありませんよ。私はあなたを殺します。」
重さに驚いたハカセの言葉には、少し焦りが混じっていた。
「どうして? 私が何かしましたか?」
「史伽さんにも同じことを聞かれました。あなたが何かしたわけじゃないですよ。私はただ、生きたいだけですから。」
「!!」

あやかは2つの意味で驚いた。
1つは、ハカセが生きるために他人を傷つけることをいとわない人だったとわかったから。
もう1つは、史伽を殺したのが、ハカセだとわかったから。
信じていたクラスメイトに、完全にだまされていたことが今になってやっとわかった。
「史伽さんを・・・殺したんですか・・・?」
「はい、殺しました。そしてまき絵さんにそこを見られて武器をロープで取られました。我ながら、不覚でしたね。」
「――さっき裕奈さんとアキラさんに言ったのはすべて嘘だと?」
「もちろん。あれだけで仲間割れをしてくれれば楽なものですよ。」
「あなた・・・。」
あやかは怒りで震えだす。
人を殺し、嘘をつき、人の心まで傷つけた。
怒りと共に、信じられないという気持ちもあった。
「でも知ってますか? 何でこんなことをあなたに話すか。」
「冥土の土産、ですか・・・。そんなもの、私はもらいませんわよ。」
「嫌でももらってくださいよ。」
351作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/03(月) 21:13:42 ID:???

また斧が振り上げられる。
あやかは大きく後ろに下がってそれをかわす。
斧なんて一撃当たればそれこそ瀕死の一撃となるが、当たらなければいいだけの話。
非力な人が振るう斧なんて怖くもなんともなかった。
「やめてください。無駄ですから。」
「ここでやめるほどバカじゃないので。」
懲りずにまた斧があがる。
あやかは軽く身をかわして、反撃を試みようと構えた。
――だが今度はそれは降ってこなかった。

ハカセは腹に違和感を覚えていた。
何か異様なものが、みぞおちのあたりから生えているような感覚がする。
そっと自分の腹を見てみると、そこには銀色の刃が突き出ていた。
「がっ・・・。」
それに気付くと同時に体に力が入らなくなり、崩れ落ちる。
おう吐しそうになり、こらえようとしたが、口から大量の血が吐き出された。
「なんで・・・。」
ただ生きたかっただけなのに・・・。
悔しかった。30分の1の確率というのはとても低いものだが、人間はピンチになると
そのくらいの低確率でも引き当てるものだと信じていた。
科学者として、そんな非科学的なことは信じてはいけないはずだったのに、自分はそっち
の道を選んでしまった。
やっぱりこれは、みんなを殺して自分だけ生き残ろうとした罰だったのかもしれない。
合流してあやかを殺そうとするところまでは、何ひとつ滞りない、予定通りの計画だった
のに、武器が重かったからなどというあまりにもつまらない理由のせいで死んでしまう
自分がなんとも情けなく、またむなしく思えた。

352作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/03(月) 21:14:54 ID:???

自身の吐き出した血の池に、その体が横たわった。
ビシャっと耳障りな音を立てて体が血に染まっていく。
ぞうきんが水を吸うように、ハカセの服はどんどん血を吸って赤くなっていった。
眼鏡のレンズも赤くなって何も見えなくなる。
持っていた斧は手から離れ、そのまま落下して頭に直撃した。

「きゃぁぁぁぁぁーーーーー!!」
1人の少女が、ハカセの体からナイフを抜くと、いままで彼女が走ってきた道を全力で走っていく。
抜いたナイフからはポタポタと血が垂れ、地面に斑点模様を作る。
それを見ていたあやかは、ただ何も言うことができなかった。
アキラが言っていた、自分の隣の席だった生徒の話。
絶対に間違いだと信じていたのに・・・。
(桜子さん・・・。)
ひたすら走り続ける彼女の背中を、黙って見ていることしかできなかった。

   出席番号24番 葉加瀬聡美 死亡
                    残り 23人
353作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/03(月) 21:16:37 ID:???
今日は以上です。
では
354マロン名無しさん:2007/09/03(月) 22:10:25 ID:???
乙、早く起きてくれ柿崎くぎみー
聡美…(´;ω;`)ウッ
355マロン名無しさん:2007/09/04(火) 07:53:35 ID:???
乙!
フラグが飛び交いすぎて、バトロワかのに推理小説を読んでる気分だw

だが、それがいい
356マロン名無しさん:2007/09/04(火) 12:07:36 ID:???
> 「私の立場から言うと、文句とかデザインの問題ではありません。
> 日の丸を見ただけで胸がむかつくという嫌悪感を感ずるのは、
> それが日本の侵略のシンボルだったからです。
> 人間としてのありとあらゆる権利を奪われ、
> 耐えきれない屈辱に追いやられたという歴史的な経験に基づいた嫌悪感です」
> 「日の丸・君が代50問50答」(歴史教育者協議会・編 大月書店)
357マロン名無しさん:2007/09/04(火) 17:57:19 ID:???
すまん理解力がないのでちょっと聞いていい?
桜子はどうやってハカセにナイフを刺したの?
358マロン名無しさん:2007/09/04(火) 20:56:34 ID:???
後ろからナイフ刺したら貫通しちゃったってことだと思う
まぁナイフにしては長すぎる気もするけど……
359作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/04(火) 20:59:37 ID:???
どうも。
本日の投下の前に
>>357
これはあくまでも私の考えていたことなのですが・・・

桜子の武器は24話にも書いたとおり小刀くらいの長さ、大きさのナイフです。
商店街から少し離れたところにいた桜子は、ハカセを見てナイフを持ったまま
ハカセに突撃、そのまま背中から突き刺しました。
柄まで深く突き刺してしまえば当然、刃の部分は腹から出てきます。
そのような状況を設定して、私はこの話を書きました。
わかりずらくてすみません。

では本日の投下です。

360作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/04(火) 21:01:16 ID:???
40.Will to the Best Friend

超との戦闘が終わって、楓は打ちひしがれている間もなく古菲のもとへと走った。
自分が猪突猛進な行動をとったことによって、自分ではなく大事な戦友、古菲が傷ついて
しまったのだ。
こんなことになるなら超との戦いで素直に負けておけばよかった。
そうすれば古菲は無事なままですんだのに。
いや、もし自分が負けていたら、超が自分を殺したあとに古菲のところへ行って殺していたかもしれない。

だがいまするべきことは悩むことじゃない。
そう無理やり思いこんで、楓はかなり遠くで倒れていた古菲のところへたどり着いた。
「古!! 大丈夫でござるか?」
しかし楓が覗き込んだ古菲は顔面蒼白で、今すぐにでも死んでしまいそうだった。
胸の上のあたりに弾丸が当たっていて、そこからはとめどなく血が流れていた。

「――楓・・・やられてしまたアル――」
「古!!」
息苦しそうに話す古菲の声は、いつもの元気な声ではなく、蚊の鳴き声のように小さいものだった。
「――バッグの中の・・・手裏剣・・・使てくれアル――」
「わかった、もうしゃべるな。」
「――それは無理アル・・・どちらにせよ・・・私は死ぬ――」
それは見るだけで歴然としていた。
ぐったりと体重を楓に預け、銃弾の入り込んだ穴からは管のようなものが見えていた。
どくどくと脈打っているその管は、鼓動と共に血をはき出していく。
首ほどではないにしても、大事な血管や神経がたくさん通っているところを見事に撃ち抜かれてしまったようだ。
本当に運がなかった、としか言いようがない。

「――真名が・・・乗てしまたアル――」
「そうか・・・。それでは、拙者が必ず止める。」
「――ありがとう・・・楓――」
361作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/04(火) 21:02:18 ID:???

ヒューヒューと呼吸の音が聞こえる。
気管をやられてしまっているらしかった。
「――超を・・・うらまないでくれアル・・・あいつも・・・私を殺したくて・・・撃ったわけじゃないはず――」
「だが超殿は千鶴殿を殺していたでござる。」

「――あいつ・・・悩んでたアル――」
楓はすぐにピンときた。ネギ坊主とのことだろう。
「――帰るか・・・帰らないか・・・ネギ坊主に・・・返事をしてからもずっと――」
「わかった。わかったでござる。だから古、聞いてほしい。」
楓は、古菲が死ぬ前にどうしても言っておきたかった。
楓の本気で悲しんでいる顔を見て、古菲も楓の言葉を聞こうと黙る。
「すまなかった。拙者が超殿に勝負をしかけなければ、古は助かったかもしれないで
ござる。本当にすまなかった。」
楓の目には涙がたまっていた。
真の親友を失うことになる悲しみと、それが自分の未熟さゆえのものだということへの
悔しさが、楓の心を支配していた。
「――何を言うアルか・・・楓は何一つ・・・悪いことなんてしてないアルよ――」
「・・・。」
楓はもうなにもできなかった。
自分が山奥で修行をしてきたのはなんだったのか。
強くなって、こういう事態に陥っても、他人も自分も守れるようになるためではなかったのか。

「――楓の友達で・・・よかった――」
その言葉を最後に、腕の中の古菲が重くなったのを感じた。
すでに呼吸は止まり、穏やかな表情で目をつぶっている。
「古・・・すまない。」

362作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/04(火) 21:04:29 ID:???

長い間、黙祷をささげてから、楓は立ち上がった。
「古、お前の思いはよくわかった。しかし――」
超は悩んでいて、いま一番悔やんでいるのは超であるということ。
誰のせいでもない現実へのイライラを募らせて、仕方なくゲームに乗ってしまったこと。
古菲が最後の最後に楓に伝えたかったことはすべて聞き、理解した。

だが楓には楓の思いがある。
古菲の心を次ぐことはできなかった。
「拙者は超殿を倒しに行く。古のためにも、他のクラスメイトのためにも。」
復讐などくだらない。
そんなことはわかっていながらも、いまの楓にはそれが一番の方法に思えた。

   出席番号12番 古菲 死亡
                    残り 22人


363作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/04(火) 21:05:46 ID:???
41.Explosion

「茶々丸さん、そっちは大丈夫か?」
「こちらは問題ありません。千雨さんは?」
「こっちも大丈夫だ。じゃあ行くぞ。」
「はい、わかりました。」
「3、2、1、enter!!」
結局、首輪がはずれていて悪いことはない、という結論に至り、千雨と茶々丸は首輪を外
すプログラム作りを再開していた。
そしていま、それが完成したのだ。

カチャッ
重々しい首輪が、軽い音と共に茶々丸の首から取れる。
念のため首輪から離れて30秒ほど様子を見たが、爆発したりする様子はなかった。
「やったか?」
「おそらく、成功と思われます。」
「ふんっ、やっとできたか。」
途中、本部のコンピューターにハッキングを仕掛けるのはリスクが大きすぎる、ということ
に気付き、首輪に直接コードをつないで、ある電圧の電流を流して、爆発の機能を停止
させてから外す、という安全な方法をとった。
これによって島全体の生徒の首輪が外せる、というわけではなくなってしまったが、いまこ
こにいる3人の首輪は確実に外すことができる。


その後、千雨、エヴァの順に首輪を外し、3人は一応、自由の身となった。
だが、茶々丸の予想していたとおり、エヴァの魔力は元に戻らなかったし、千雨のアーティファクト
もまだ出せなかった。
これでは本当に解放されたとはいえないだろう。
「ふぅ、やっぱり本部を襲撃しろと・・・。」
「そうするしかねーな。」
「まずは他の方たちをここに集めて、みなさんの首輪を解除するのがいいかと・・・。」
「そうだな、乗ってないやつらだけ集めてきて・・・。」
364作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/04(火) 21:08:27 ID:???

エヴァが突然、しっ、と言った。
千雨も茶々丸も、その指示通り一瞬で静かになった。
「待て。誰かいる。」

リンリンリン
「見てきます。」
「乗ってないやつだといいがな。」

玄関では、1人の少女がドアを開けた状態で立っていた。
警戒深かった彼女は、千雨とは違ってワイヤーに絡まるなんてことにはならなかった。
鈴が鳴ったのは予想外だったが、誰が出てきても対応する術は持っているつもりでいた。
少なくとも、武器だけで考えれば負けるはずはないのだから。
――だがそれは、相手が人間だった場合で、機械だった場合のことはまったく考えていなかった。

「朝倉さん。」
「げっ、茶々丸さんかー。・・・ほかに誰がいる?」
まずい相手に見つかったな、というように顔をしかめると、片手をバッグの中に入れつつ茶々丸に聞く。
「マスターと千雨さんです。朝倉さんは1人ですか?」
茶々丸の目は、朝倉の持っていた銃、ワルサーP38に向いていた。
その銃の銃口付近には、なにやら赤いものがこびりついている。
「私は1人だよ。」
間をおいて、微笑んで言った。
 
365作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/04(火) 21:10:23 ID:???

「だって優勝者は1人だろ?」

「ターゲット、朝倉和美に殺意を確認。戦闘体勢に入ります。」
「もう遅いよ。」
朝倉はバッグに入れていた手を出すと、その手に握っていた手榴弾のピンを抜いて
茶々丸の方へと投げつける。
銃での攻撃は茶々丸のアーマーに阻まれてあまり効かないだろうと判断した朝倉は、
手榴弾で茶々丸本体ごと吹っ飛ばしてしまおうと考えたのだ。
茶々丸はベレッタを取り出して朝倉へと向けるが、朝倉はすでに家から出てしまっていた
ので、ドアが邪魔になって発砲することはできなかった。

「マスター、千雨さん、爆発します。」
攻撃できないと判断してからの茶々丸の行動は早かった。
茶々丸が2階に向かってできる限りの音量で警告する。
そしてその茶々丸も急いで2階へ上った。
「爆発って?」
「手榴弾です。もうそろそろ――」

ダァーーーン
手榴弾1つだったためそこまで大きな衝撃は来なかったが、田舎の島の一軒家が爆発に
耐えられるわけはなく、あっけなく家は倒れてしまう。
パソコンのことなどかまっていられる状況ではなかった。
爆発直前に、茶々丸が千雨とエヴァを抱えて2階の窓から飛び降りたので、みんな無傷
ですんでいた。
だが外でその様子を見ていた朝倉は、爆風と家の崩壊で巻き上げられた砂煙で視界が
悪い中、茶々丸たちのほうへまた手榴弾を投げる。
「へへ、これで終わりだよ。」
千雨が、自分の足元に転がってきたごつごつした岩のようなものに気付き、全速力で逃げ
ようとしたが、若干遅かった。
366作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/04(火) 21:12:10 ID:???

朝倉が撃ったのか、何発かの発砲音がして、それのうちの1つが手榴弾に当たる。
爆発音。
再び近くで手榴弾が爆発し、エヴァは茶々丸がかばったが、千雨の方は爆風をもろに
食らってしまい、吹き飛ばされて木にぶち当たってしまった。
体から当たるのを避けたかった千雨は、左腕を体の前に出して盾にした。

「痛っ!!」
茶色い風が、もともと家があったところを中心に吹きすさぶ。
目に砂が入らないようにとエヴァは目を閉じ、千雨は眼鏡の上から目を押さえる。

何秒か、何十秒か、もしくは何分かだったのかもしれない。
そのくらいたつと砂煙も晴れてきて、やっとどうなっているのか認識することができた。
まず、朝倉の姿はもうそこにはなかった。
家があったはずの場所はもう大きな木片の塊でしかなくなっていて、廃墟といった感じに
煙も上がっている。
エヴァの上には茶々丸が乗っていて、茶々丸の背中の防御プレートは少しはがれてしまっていた。
さらに3ヶ所に銃で撃たれた跡があったが、どれもプレートが跳ね返していたようだ。

茶々丸が立ち上がると、その下から出てきたエヴァは何の怪我もなかったが、不機嫌そうだった。
「ふんっ、私の茶々丸が爆弾ごときで壊れると思ったのか。」
だがその遠くでは、木に寄りかかって手を押さえてうずくまっている千雨の姿があった。
背中のほうで爆発したので、ふくらはぎあたりは全体的に火傷をしている。
ただそれはあまり重度の火傷ではなく、むしろ一番重症なのは体の身代わりにした左腕だった。
それはひじの部分から先が完全に反対側に折れ曲がっていて、人間の体のつくりに反している。

「・・・複雑骨折だな。」
いまだかつてない痛みに、千雨はしばらく立ち上がることすらできなかった。

                    残り 22人
367作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/04(火) 21:16:34 ID:???
本日は以上です。

なぜか私の学校は9月7日始業式なので、まだ夏休みなのですが、
学校が始まってしまってからの予定について書いておきます。

月、水、金曜日はおそらく10時くらい。
火、木、日曜日はいままでどおり9時くらい。
土曜日は11時くらい。

という投下時間になると思います。
部活や塾などでいろいろと都合がつかなくて
バラバラな時間になってしまいますが、こんな感じでいかせていただきます。

では、これからもよろしくです。

368マロン名無しさん:2007/09/04(火) 21:34:02 ID:???
乙!
ダーク朝倉こええ(゚д゚lll)
369マロン名無しさん:2007/09/04(火) 23:21:34 ID:???
乙。

部活に塾に投下て...大変だな
370マロン名無しさん:2007/09/05(水) 17:07:43 ID:???
まだ夏休み……
何て羨ましいんだorz

まぁ頑張ってくだしあ
371作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/05(水) 21:02:51 ID:???
どうも。
本日の投下です。
372作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/05(水) 21:05:04 ID:???
42.Agonize Herself

強運の持ち主、超鈴音は、楓との戦闘のあとその戦場だった場所から遠ざかるように走っていた。
コルトガバメントの弾が切れていることは知っていたが、楓がすぐにそれに気付いていたら
接近戦での勝負となったはず。
そうなっていたら、まず間違いなく超は生きていなかっただろう。
楓に当たらなかった最後の弾丸が、たまたま遠くを歩いていた古菲に当たったからよかった
ものの、それがなければ超は楓に負けていた。
「ふぅ・・・よかたよかた。」
相当ピンチだった状況から逃げ出して、生き延びることができたため、超はかなりの安心感に包まれていた。


だが、生きていても、苦しみはいつでもつきまとうものだった。
行く当てもなくふらふらとさまよい歩く超は、胸の奥のほうをキュッと締め付けるような
痛みをしばしば感じる。
(私は古を殺した・・・。一番の親友だと思てた人を・・・。)
この島に連れてこられて、出発し、最初に決めたこと。
3−Aみんな殺して、未来へ帰る。
自分の慣れ親しんだ時代へと帰って、この時代に来る前と同じ生活を送る。
そしてこの時代のことは忘れて、そこからまた新しい人生を歩んでいこう。
そう決めていたのに、古菲を殺してしまって、この時代のことを忘れるなんてことはできない
ような気がしてしまった。
ネギ坊主に、自分にとっての『いま』は儚い夢なんかじゃないと言われ、自分のすべてだ
と思っていた計画さえもすべてではないと言われ、心が大きく揺れた。
いままで作ってきた思い出も、本物であることを実感させられ、結局『いま』に残ることにした。
ずっと悩んでいたことだったが、ネギ坊主の言葉を聞いて、最終的な判断をくだしたのだった。
373作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/05(水) 21:06:40 ID:???
それなのに・・・
このままゲームを続けていって、人殺しをし続けていけば、そこでの決心はすべて無駄
ということになり、それまでの苦悩も水の泡と化す。
確かに、3−Aで過ごした2年間はとても楽しかったし、たくさんの友達ができてうれしかったのも事実である。
その中でも、一番仲のよかった古菲とは、楽しい思い出をたくさん作ってきた。

だがその古菲はもういない。
自分が殺してしまった。
そんな時代に自分が生きていても、何かいいことがあるのだろうか。
責任の重圧につぶされて、おかしくなってしまうのではないか。

古菲のいた『いま』を忘れることはできないが、『いま』に生き続けることもできない。
となれば、未来へ帰って、『いま』を思いつつ生きていくしかない。

もうひとつだけある方法は、死、という道。
だがそんなことは超の頭にはひとかけらもなかった。
古菲の死から長く悩んでいたが、やはり最後に出た結論は、みんなを殺す、というもの。
古菲のことが忘れられないのなら、覚えていればいい。
みんなのことだって忘れられないに決まってる。
それならば何をしたって同じじゃないか。
自分が生き残らなければ何も始まらない、悩むのは終わってからでいい。

そんな無理やりな考えに身を任せて、また超は殺しのために立ち上がった。
しかしいまの超は何の武器を持っていなかった。
「困たネ・・・。」
銃の弾だけは持っているが、そんなものあっても何にもならない。
せめてナイフの一本でもあれば・・・。
そんなことを考え始めて数秒もしないうちだった。
374作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/05(水) 21:07:42 ID:???
ダァーーーン
超が進んでいる方向、しかもかなり近くから、爆発音が聞こえた。
豪快に砂煙が巻き上げられるのが見える。
あれだけの爆発音があったなら、誰か1人くらい死んでいてもおかしくないだろう。

(砂煙の中で、やられた人の武器を取れば・・・。)
超は走り出した。
しばらくすると、また同じ爆発音が聞こえた。
(2発目てことは、1発目じゃ仕留められなかたということかナ?)
危ない好奇心を募らせながら、爆発のあったところへと走っていく。
途中、自分の横の方を誰かが通って行ったような気配がしたが、超は気にしない。

――しかし超が着いたころには、もうすでに砂煙は晴れ、3人の姿がくっきりと見えていた。

                    残り 22人

375作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/05(水) 21:09:26 ID:???
43.It and Messiah

裏口は森へとつながっていた。
この集落に来るときとは違って、日差しで進む先がよく見える。
良いことのように聞こえるが、追いかけられている身からするとたまったものじゃない。
夕映と亜子は後ろを振り返ることなく一心不乱に走り続けていた。
轟音が近づいてきて、危険を感じて裏口から出た直後に玄関のドアがふっ飛ばされ、
それからずっと鬼ごっこを続けている。
こんなにリアルな鬼ごっこなんて誰もしたくないだろう。

捕まったら死ぬ。
そんな思いが、2人の足を速め、体力の限界も感じさせなくなっていた。
「しつこいです!!」
「もういややぁぁぁ!!」
それでも相手はいつまでもついてくる。銃声が鳴りやむことはなかった。

夕映がずっと心配していた亜子の恐怖は、いい意味で効果が表れたため、夕映は安心していた。
もともと運動能力の高い亜子の足を、その恐怖が極限まで速めてくれたのだ。
悪い方にそれが作用してしまうことを恐れていた夕映にとって、大きな心配が1つ減って
ずいぶんと心が楽になった。

誰かに会ったらまずは説得をしよう。
そうすれば、誰だってわかってくれるだろう。
2人は家の中でそう考えていた。
だがそれが、とんでもない理想論であることに、実際に追いかけられてみて始めて気付いた。
相手が、殺す前に少しでもためらうような人だったなら、その時に話を持ちかければ聞いて
くれるかもしれない。
だが最初から殺すつもりでいる人と出会ってしまったら、そんな隙はまったくないのだ。

376作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/05(水) 21:10:51 ID:???

木が盾になってくれて弾が当たることはなかったが、それも時間の問題。
森を抜けてしまえばその盾もなくなってしまう。
そしてその森の出口は2人の目の前に迫っていた。
その先に広がるのは広い荒野。
隠れるも何もなく、ただ相手から狙い撃ちされて終わるだけだ。

まずい!!


そう思った瞬間、前から2人の少女が現れた。
1人はツインテールがよく目立ち、その結び目に2つずつの鈴をつけている人。
もう1人は日本刀を構えていつでも戦闘体勢に入れるようにしている人。
「アスナさん!! 刹那さん!!」
3−Aの中でもトップクラスの戦闘能力を持ち、確実に味方になってくれる人が、そこには
立っていた。
「ここは私たちに任せて!!」
「綾瀬さんは和泉さんを連れて逃げて下さい!!」
刹那は夕映たちと向かってくる敵の間に体を入れた。
草を踏みつける音と共に、だんだんと敵の気配が近づいてくる。
「でもそんな・・・。アスナと桜咲さんはどうするん?」
「相手を足止めしてからゆえちゃんたちと合流するから!!」
「しかし・・・そんなまかせっきりでは・・・。」

ババババババババッ
「いいから早く逃げて!!」
「すみません。ではお願いします。」
夕映と亜子は明日菜たちに背を向けて、また走り続けた。
377作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/05(水) 21:12:08 ID:???

「なんとか間に合ったわね。」
銃声を聞きつけて、ずっと走ってきた明日菜と刹那は、かなり疲れていた。
だが夕映も亜子も怪我すらしてないことに、少し安心する。
直後、銃声と共に、早乙女ハルナが現れた。

「夕映を逃がしてくれてありがとう、アスナ、刹那さん。」
「パル・・・!!」
「早乙女さん・・・。どうしてゲームに乗ったんですか?」
明日菜が驚きあわてる中、刹那は落ち着いて質問を投げかけた。
ハルナはあいかわらず楽しそうな表情のまま、首をかしげる。
「うーん、なんでだろ。強いて言えば、なんとなく、かな。」
「――ゆえちゃんも殺すつもりだったの?」
図書館三人組としていつも一緒に行動していたハルナが、夕映を殺そうとするなんて信じられなかった。
「ゆえは殺したくなかったんだけど、一回追いかけちゃうと止まらなくなっちゃって。」
みているだけで不機嫌になりそうな笑顔のまま、ハルナは答える。
刹那も明日菜も、だんだんと怒りがたまっていった。
こんなところで、どうして笑っていられるのか。
ハルナの精神が狂ってしまっているから、それ以外のなにもののせいでもなかった。
「ここに来るまでの間に、サブマシンガンで打たれた四葉さんの死体を見ました。あなたが
やったんですか?」
「この島でサブマシンガンを持ってるのは私だけだと思うんだけど・・・違う?」
「パル・・・許さない。」
パルはその言葉を待っていたかのようにまた笑顔を見せた。
「じゃあ、始めよっか。」

                    残り 22人

378作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/05(水) 21:14:20 ID:???
今日は以上です。
このあたりを書いているときいろいろと嫌なことがあって萎えていたので
文章力の無さが目立つと思いますが、どうか許してやってください。

ちなみに、今日の投下分で話数的には半分です。
では、また明日。
379マロン名無しさん:2007/09/05(水) 22:54:52 ID:???
乙!
380マロン名無しさん:2007/09/05(水) 23:00:02 ID:???
乙!
もう半分かぁ
381作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/06(木) 21:05:28 ID:???
どうも本日の投下です。
382作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/06(木) 21:07:55 ID:???
44.Broadcast

本部では、軍服の男たちがうじゃうじゃいて、たくさんのパソコンが起動している部屋の中で、
新田が時計を見つめて立っていた。

11時58分。
あと2分で12時となるので、放送をかけなければいけない。
放送前になると、どの兵士たちもなんとなくそわそわし始める。
兵士たちはみんなで賭けを実施しており、誰が勝つか、ということに何万円もの金を賭けていたのだ。
だが自分が賭けていた人が死んで、すぐにそれがわかってしまうのは面白くないので、
兵士たちは全員、本部に入ってくる死亡者の情報を見ないことにしていた。
つまり、彼らは新田がかける放送によってのみ、死亡者が誰なのかを知ることができるように
していたということだ。
もうすでに死んでしまったことがわかっている、史伽、夏美、ザジに賭けていた人たちは
暇そうにソファでくつろいでいる。
実際、今回死んだ人は5人だった。
しかし新田は大きな勘違いをしていることに気付かなかった。
首輪からの反応がなくなった人はみな死んでいると判断していた。

「新田先生、あと1分だ。」
「ああ、わかっている。」
1人の男が、新田に話しかける。
新田は、表向きにはこのゲームの主催者という形になっているが、新田は魔法関係の
ことなどは何も知らない。
実際に島に結界を張ったり、魔力を押さえつけたりしているのは、全身黒ずくめの格好を
したその男だった。
真の主催者はそいつだといっても過言ではないだろう。
383作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/06(木) 21:09:28 ID:???

「しかし君、こんなことをしては学園長が黙っていないぞ。」
君、と呼ばれた男は、ニッと口をゆがませると、新田に言葉を返した。
「私は生き延びるつもりなどない。どうせ囚われの身だ。命など惜しくない。」
「なんだと? お前の命は知ったことじゃないが、ちゃんと報酬はくれるんだろうな?」

新田は、その男に金をもらうということで首謀者の役を買って出たのだった。
ある日突然現れたその男に、ただ麻帆良の教師をやっていたのでは想像もつかないくらい
の金額を提示され、すぐさまその話に飛びついた。
ゲームが終わったら金を払う、ということだったので、そいつが死ぬと聞いて新田は少し
あわてていた。
「大丈夫だ。死ぬ前にしっかり渡すからな。」
しかし、そうは言ったものの、男はまったく金など払う気はなかった。
そもそもこの男が想定している未来では新田は殺される予定だし、もし新田が生きてしま
ったとしても力でねじ伏せられるくらいの実力は持っている。
さらにその男は自分も生きるつもりもなく、最後の戦いの場としてバトルロワイヤルという
ゲームを選んだだけであった。
ただ強いものと戦って死にたいという、戦士としての願望だった。
「先生、放送を。兵士たちが待っている。」
「おお、そうか。」

『ただいまより、正午の放送を始める。よく聞いとけよ。
まずは死亡者から、出席番号順に、9番の春日美空、10番の絡繰茶々丸、12番の古菲、
21番の那波千鶴、24番の葉加瀬聡美、25番の長谷川千雨、26番のエヴァンジェリンA.
K.マクダウェル、30番の四葉五月。以上8名だ。
次に禁止エリアの発表だ。地図を用意しろよ。いいか? 午後1時からD−3、それから
3時にB−4、5時にG−6だ。
これで放送は終わりだ。しっかり殺しあえよ。じゃあな。』
384作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/06(木) 21:10:39 ID:???

一気に8人もの名前が呼ばれた。
兵士たちの中には狂ったように叫びだす者や、静かに泣き始める者、ホッとして胸を
なでおろす者などいろいろいた。
本当は千雨とエヴァと茶々丸は死んでいないのだが、首輪がはずれたことで本部側には
死んだ、という判定で情報が入っている。
そんなことには気付きもせずに、その3人に賭けていた兵士たちは悔しがっていた。

「ふんっ、あの教師はどこまでもバカだな。」
長く伸ばした白いひげを右手で自慢げに触りながら、男は1人でつぶやく。
彼だけは3人が死んでいないことに気付いていた。
「だがあの3人には超鈴音が近づいている。10番がどう出るか・・・。」
その3人が本部へ来ることなどまったく恐れていないような口振りで、これからの進展を
楽しみにしているのをあらわにした。

彼の興味のあるものはただ1人。
まだ島に来ないその人が、待ち遠しくて仕方なかった。

                    残り 22人

385作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/06(木) 21:12:37 ID:???
45.Insanity

裕奈とアキラは、あやかたちと別れてから誰とも出会えていなかった。
「誰もいないね・・・。」
「うん・・・。」

2人とも、ハカセの言葉について考えていた。
まき絵が史伽を殺していた。
ハカセはそう言った。
でもそんなことがあり得るのだろうか。
2人の親友であるまき絵が、人殺しをするなんて、とても信じられなかった。
どちらかといえば、まき絵は現状が怖くなって、自殺したりしてもおかしくないような性格である。
いつも明るく振る舞っているので、他の人から言わせれば、まき絵が怖がるなんてあり得ない、
と言うかもしれないが、2人がまき絵の親友だからこそ、わかることだ。
実際、最初の放送でまき絵の名前が呼ばれるのではないか、とドキドキしていたので、
呼ばれなくて相当安心したのだった。

それに、ハカセの話には確実に不自然な点があった。
ハカセはまき絵が史伽を殺しているのを見て、見つかって、ボウガンを奪われたから怖く
なって逃げてきたと言っていた。
だがそれが本当だとしたら、どうしてまき絵はハカセを追いかけなかったのだろうか。
殺人現場を目撃されたら、普通は口封じのためにその人も殺してしまうはず。
相手が美空か誰かだったならわかるが、まき絵とハカセなら圧倒的な足の速さの違いがある。
しかもボウガンという飛び道具を持っていたとなれば、まき絵は間違いなくハカセを追いか
けて撃ち殺していただろう。
そう考えると、ハカセの言っていたことは嘘なのではないか、と思えるのだ。
386作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/06(木) 21:15:04 ID:???

と、信じられないほどの音量で音楽が流れた。
「なに?」
「お昼の放送・・・かな?」
正午になったので、2回目の放送が入るようだ。相変わらずの新田の声が聞こえる。
2人は思わず身構えてしまったが、すぐにバッグから名簿と地図を取り出した。

(どうか、まき絵と亜子の名前だけは呼ばないで。)
こう思うのも他の人に失礼だとわかっていながら、どうしても親友の無事を願った。
だがそう長く祈る間もなく放送は始まった。
『死亡者――――24番の葉加瀬聡美――――』
「えっ!?」
「そんな・・・。」

2人とついさっきまで一緒にいた人物。
さらに、いまその人について考えていた。
亜子もまき絵も呼ばれなかったが、2人は相当のショックを受けた。
ハカセは武器を持っていなかったので、自殺を謀るには崖から飛び降りるくらいしかないが、
あの場所の近くには崖なんてなかった。
つまり、ハカセが死んだ、ということは、誰かに殺されたということだ。
「いいんちょ?」
「そんなことは・・・。」
「でも、2人ずつ別れよう、って言ったときに、ハカセと組むって言ったのはいいんちょだから・・・。」
「・・・ゆーな!!」
「はいっ!!」
いつも寡黙で、おとなしいアキラが大声を上げたので、裕奈は身をすくませてしまう。
「いいんちょは私を介抱してくれた。いいんちょがいなかったら私はもう死んでいたかも
しれない。それなのに、そのいいんちょをゆーなは疑うの?」
アキラの言葉のとおり、あやかはとても親切にしてくれた。
怪我していたアキラを診療所に運ぶのも、裕奈1人ではできなかった。
それだけでなく、あやかはアキラの傷を縫って、包帯を巻いたりと、治療もしてくれた。
そのあやかが、人殺しなんてするはずがない。
387作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/06(木) 21:17:33 ID:???

「そっか、そうだよね・・・。ゴメン、アキラ。」
「私に謝られても・・・。」
こんな状況になっても人を信じ続けるアキラを、裕奈は少し尊敬しなおした。
そして、自分もこんな風に信じられてるのかな、と思って少しうれしくなった。

しかしそうなると、ハカセを殺した人があやかのそばにまだいる、ということになる。
近くにいるならまだいいほうだ。
もしかすると、いまもあやかを殺しにかかっているかもしれない。
「いいんちょのところに急ごう!!」
「うん。」

――だが、2人が走り出した直後、ガサッと音を立てて前の草むらから人影が現れた。
本来なら3−Aの中でも飛びぬけた明るさを持ついたずらっこが、そこには立っていた。
が、その雰囲気はまったく違ったものとなっていて、狂気があふれ出ている。
その手には、真っ赤に血塗られた鉈が握られていた。

                    残り 22人

388作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/06(木) 21:20:01 ID:???
今日は以上です。
では。
389マロン名無しさん:2007/09/06(木) 22:18:34 ID:???


真の黒幕の待ち人は○○か?
390マロン名無しさん:2007/09/06(木) 23:27:43 ID:???


主がハカセと朝倉をゲームにのらせたのも私が今書いてるのと被ったから(書き直したけど)黒幕も被ってそうで怖い。
391マロン名無しさん:2007/09/07(金) 02:38:04 ID:???


黒幕はお前だ!!→○○
アキラ&裕奈死亡フラグキタ(´・ω・`)?
392マロン名無しさん:2007/09/07(金) 04:48:32 ID:???
乙!

アキラ&裕奈はどちらかが間引かれる悪寒。性格的にはアキラが怖いな・・・。
まき絵もピンチだし、wktkしっぱなしだw
393作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/07(金) 21:09:05 ID:???
どうも。
今日はまだ始業式だったのでこの時間の投下です。
394マロン名無しさん:2007/09/07(金) 21:10:46 ID:???
リアルタイムktykr
395作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/07(金) 21:11:22 ID:???
46.Unsettled State of Mind

外から聞こえた音楽に、円は目を覚ました。
「いけない・・・寝ちゃったわ・・・。」
入り口で堂々と寝ていた自分が生きているということは、中には誰も入っていないだろうと
思い、円はゆっくりと外から聞こえる放送に耳を傾けた。

『――――これで放送を終わりだ――』

(よかった・・・。)
クラスメイトが8人も殺されているのに、円は思わず安心してしまった。
前の放送でも、今回の放送でも、桜子の名前はない。
ということは、彼女はいまもどこかで生きているのだ。
禁止エリアも関係ないところだったので、まだしばらくここで様子を見ていられそうだった。

ふと、自分が建物の入り口にいる理由を思い出し、そっと外を見てみる。
そしてすぐに、首を引っ込めた。
(誰かいる・・・。こっちへ向かってる・・・。)
一瞬しか見なかったが、遠くから、誰かがこの建物に向かって歩いているのが見えた。
(落ち着いて・・・。)
いまこちらから姿を見せれば、向こうがやる気だった場合どうしようもなくなる。
なんといっても、フォークなのだ。
いまは相手がこの建物に入ってくるのを待ち伏せするのが妥当な判断だった。
美砂に伝えに行こうかとも思ったが、それにしては時間がない。
(しょうがないか・・・。)
ドアの横の壁に隠れながら、円は自分の心臓がバクバクと音を立てているのを感じた。
しっかりとフォークを握りしめ、呼吸も止めてじっと待つ。
かすかな足音が聞こえてくる。
そこらじゅうに小石が転がっている砂利道だったので、一歩進めるごとに音が立つことは、
円がここに来るときにわかっていた。
396作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/07(金) 21:15:27 ID:???

自動ドアの開く音がする。
入り口の構造は、自動ドアがあって、少し進むともう一枚自動ドアがあり、それを通ること
でやっと中に入れる、というものだった。
円は二枚目の自動ドアを入ってすぐ左の壁に隠れている。
(あと一枚・・・。)
相手の方はまったく警戒心がないのか、バッグの中のものが当たりあって起きる音が、
円のところまで聞こえた。

一歩。
また一歩。
気配がどんどん近づいてくる。
そして、ガーっと音を立てて、二枚目の自動ドアが開いた。
(あと一歩で中に入ってくる・・・。)

円の視界に、誰かの靴が映った。
(いましかない!!)
円は一歩踏み出して敵の首に左手を回した。
さらに右手に持ったフォークを相手の首にそっと当てる。
命を懸けた、いちかばちかの賭けだった。
「武器を捨てて。じゃないと切るよ。」

建物に入ってきて突然、首に金属のヒヤッとした感触を覚えたら、とっさにそれはナイフだと思うだろう。
そう円は考え、いまあるフォークではそれしかできない、と思い行動に移したのだ。

「ひっ、いやっ。やめてっ。」
幸い作戦はうまくいき、相手は手に持っていたナイフ――こっちは本物――を落とし、
その人は首の金属から逃れようと必死に訴えかけた。
円は相手が落としたナイフに飛びつき、それを構える。
「私にやる気はないの。他に持ってる武器があったら――って・・・桜子!!」
397作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/07(金) 21:16:54 ID:???

自分がナイフを向けた人の顔を見て、気が抜けてしまった。
ずっと会いたかった本人が、そこにいたのだから・・・。
「ま、円・・・!!」
桜子のほうも、自分にナイフを添えていたのが円だとわかって腰を抜かしてしまった。
しかも、それがナイフではなくフォークだったことに気付き、少し恥ずかしくなった。


だが、いま円が持っているナイフが目に入ってしまう。
赤く染まっていて、まだ乾ききっていない。
自分がしたことを思い出すには、十分なきっかけだった。
「桜子・・・その血は・・・?」
そんなときに、さらに円が自分の服を見て、聞いてくる。
当然それは、アキラを切ったときと、ハカセを刺し殺したときに浴びた返り血だった。
「誰の・・・血・・・?」
まさか、というような表情で、円が自分の顔を見ている。
そう、私は人を殺してしまった。でもその真実を認められずにいた。
円はいま、自分を疑っている?
いくら親友でも、こんなに血がついてたら信じろなんて言えないね・・・。
殺したんだ。ハカセを。私が。そのナイフで。

「きゃぁぁぁーーー。」
桜子はただ叫んだ。気持ちが落ち着かなかったから叫んだ。
「桜子!! 落ち着いて!!」

                    残り 22人
398作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/07(金) 21:18:20 ID:???
47.Great Mistakes

円の声も、桜子の耳には入っていなかった。
いつもの大きな声よりも、さらに大きな声で叫び続けていた。
だがそれもしばらくすると、限界がきたのか止まってしまった。

――――――
「桜子・・・落ち着いた?」
頃合を見計らって、円は優しく桜子に問いかける。
桜子は、大粒の涙を大量に流していた。
悲しさから来るものなのか、悔しさから来るものなのか、それともうれしさから来るものなのか、
円にはまったくわからなかったが、叫ばれるよりはだいぶ扱いやすかった。
「何があったのか教えてくれる?」
「う、うん。」

桜子は、すべてを話した。
開始前の校舎で、とてつもないショックを受けたこと。
アキラを切りつけたら、銃を向けてきたこと。
そして、あやかを殺そうとしていたハカセを、後ろから刺して殺してしまったこと――。

すべて話し終わるまで、円は何も言わなかった。
さっきの放送で、ハカセの名前が呼ばれていたことを思い出したりしていた。
話しているときの桜子の声は、親友として付き合ってきた円でも、いままで聞いたことの
ない、おびえた声だったから・・・。
399作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/07(金) 21:21:22 ID:???

「私は、桜子の味方だからね。」
「・・・ありがと。」
少しだけ、桜子の顔に表情が戻った気がした。
円も、桜子が落ち着いてくれたことでかなり安心する。
そして、これからのことを話す前に、桜子が早まったことをしないように、少しだけ反省させ
る必要があるのではないかと思った。
「でも、銃を持ってたから、っていうだけで、アキラを疑うのはよくなかったんじゃない? 慌
ててたのはわかるけど。」
「・・・。」

――言ってから、しまった、と思ったがもう遅かった。

誰もが気持ちが張り詰めているゲームの中で、さらに人を殺してしまったいまの情緒不安定な
状態の桜子には、その言葉だけで怒りを爆発させるのには十分だった、ということを言った直後
に気付いた。
案の定、桜子の顔が、みるみるうちに赤くなっていく。
「だから言ったじゃん。校舎で見たことが怖くて何も考えられなかったって。」
「ごめん。そうだったね。」
「そうだったねって何よ? 私の話聞いてなかったみたいに言わないでよ。それとも、私が
話してる間に、どうやって私をだまして殺そうか考えてたの?」
「なっ!!」

信じられないことを言われて、円の方もかなりイラッときた。
いくらこんな状況だからといって、もうすこし親友のことくらい信じてほしかった。
つい学園での口喧嘩と同じ要領で言い返してしまう。
「ちょっと待ってよ。そんなはずないでしょ。私のこともう少しくらい信じてよね。」
「じゃあなんでさっきからずっと、そのナイフをつかんだままなのよ!!」
「――っ!!」
400作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/07(金) 21:23:34 ID:???

言われるまで気付かなかった、自分の無意識の行動。
桜子が入ってきて、それが誰だか確認して、それからずっとこのナイフを握っていた。
もちろん円には桜子を殺すつもりなどまったくない。
だが怒りのほか何もない桜子には、円のその行為は、ゲームに乗っているのだ、としか思えなかった。

「違う!! じゃあこうすればいいでしょ。」
円はそのナイフを遠くへ投げる。
すると桜子はそのナイフが落ちた場所へと走っていき、それを拾い上げた。
「だまされないんだから。他の武器も全部捨てて!!」
「ほかに武器なんてない!! 私の武器はそのフォークだけ!!」
「そんなはずない!! フォークなんてこの病院のどこかから取ってきたものに決まってるん
だから!! 早く捨てて!!」
「だから、ないって言ってるでしょ!!」

円も桜子も、かつての友情はまるで忘れたかのようににらみ合い、叫びあった。
たったひとつの言葉のせいで、完全に二人の関係は壊れてしまった。
「いい加減にしてよ!!」
耐え切れなくなった桜子が、ナイフを構えて円に突っ込んでいく。
「やめてっ!!」
円はとっさに横へ身をかわしたが、桜子に体の一部分が当たってしまった。

爪だった。

少しは役に立つかと思って、爪切りで尖らせておいた爪が、桜子の手に当たっていた。
「痛っ・・・。」
信じられないようなものを見る目で、桜子は自分の手を見る。
いままで浴びてきた返り血とは違い、今度は自分の血。
「やっぱり・・・円もやる気だった・・・。」
「違う!!」
「違わない!!」
401作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/07(金) 21:25:50 ID:???

ドスッ
桜子が手を伸ばしたその先では、ナイフが確実に円の腹を貫いていた。
「桜子・・・。」
吹き出す血が、また桜子の服を染めていく。
3人もの返り血を浴びてしまったその服は、もう赤くないところがなくなってしまった。

「はやく武器を捨てないから――こうなるんだよ・・・。」
刺してしまってからようやく自分が怖くなったのか、桜子の声はまたおびえた声へと戻っている。
現実が信じられなくて、いまにも泣きそうだった。
「桜子の・・・ばか。」
「あ、あ、そんな――」
自分の前に倒れている円を見て、完全に怒りから覚め、正気を取り戻した。
自分のせいで親友が死んでしまったというのに、桜子を襲うものは狂気ではなく、恐怖だった。

「最後に・・・もとの桜子を・・・見れてよかった・・・」
「嘘だよね――」
「もう、殺しちゃ・・・ダメだよ・・・」
「うん、わかった、わかってる!!」
「奥に美砂が・・・いるから・・・仲良く――」
402作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/07(金) 21:28:25 ID:???

円は、ゆっくりと目を閉じる。
そしてホッとした表情で、深い眠りについた。
その表情は、まるで桜子と初めて出会ったときのように晴れやかなもので――――

「円? ねぇ円? うわぁぁぁぁぁーーー!!!!!!!!」
こんなに揺すったら逆に危ない、というくらいまで、円の体を揺すり続ける。
だがどんなことをしても、円が再び目を開けることはなかった。
「あ・・・うぅ・・・。」
桜子は、泣いた。
これ以上激しく泣くことはできない、というくらいに、大声をあげて泣いた。
また、やってしまった。
もうどうしようも無いところまで自分は落ちてしまったのではないだろうか・・・。
そんな思いが心を鋭く貫き、痛みへと変わっていた。

そのせいで、奥の部屋から美砂が出てきてもまったく気付かなかった。
美砂がどんな顔をして立っているかなんて、知りもしなかった・・・。

   出席番号11番 釘宮円 死亡
                    残り 21人

403マロン名無しさん:2007/09/07(金) 21:30:10 ID:???
乙!
やべえチア内部崩壊かもしれん
404作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/07(金) 21:30:11 ID:???
本日は以上です。
明日は土曜日ですが試合で塾をサボれるのでいつもどおり9時くらいの投下
になると思います。
では。
405マロン名無しさん:2007/09/07(金) 21:32:59 ID:???
乙です!

美砂がいつから見ていたによって、展開が変わるな
406マロン名無しさん:2007/09/07(金) 23:55:45 ID:???
130 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] Date:2007/09/06(木) 10:00:21  ID:FhIVLG2x Be:
    ↑なにこいつ

131 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] Date:2007/09/06(木) 20:28:29  ID:Qe3KYA1w Be:
    │↑
    └┘
    おらっしゃあぁぁ!!!
     ∩∧ ∧
     ヽ( ゚Д゚)
       \⊂\
        O-、 )〜
          ∪

132 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] Date:2007/09/06(木) 20:31:59  ID:+0w+Q1oc Be:
    >>131
    いやおまいに矢印向いてないからw

133 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] Date:2007/09/06(木) 21:07:25  ID:AvrMIuam Be:
    ワロタw
407マロン名無しさん:2007/09/08(土) 00:18:05 ID:???
桜子は死亡フラグ濃厚
ならば華々しく散って欲しい


乙です
408マロン名無しさん:2007/09/08(土) 01:13:04 ID:???
乙!

嗚呼、やはりくぎみーは報われない散り方が似合うんだぬ(つД`)・゚・。
409作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/08(土) 22:19:37 ID:???
ホントにすみません。
思いのほか試合が長引いたためものすごく遅刻してしまいました。

本日の投下です。
410作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/08(土) 22:22:59 ID:???
48.Kill Me

「ふぅ、危なかった。」
エヴァたちのいた小屋から砂煙の中、何とか逃げてきた朝倉は、途中で超とすれ違ったが
あえて何も声をかけなかった。
学園祭のときから超と少し仲良くなったから殺したくなかった、というのもあるが、本当の
理由は、超ならエヴァたちを殺してくれるかもしれない、という期待のもとで自分の駒とし
て活躍してもらおう、というものだった。
だが、歩いているときに聞こえた放送で、小屋にいた3人の名前が呼ばれたのを聞き、自分
の手榴弾ですでに死んでしまったのか、やっぱり超を殺しておけばよかった、と思い直していた。
しかし3人のいたところは1時から禁止エリアになることもわかり、それをいまもまた思い
返してなんだか不思議な気分になる。

エヴァたちが本当は死んでいないことを知らない朝倉は、もうすでに自分は4人も殺している、
と思っていて、自分の活躍にホレボレしていた。
放送でいままで呼ばれたのは11人で、そのうちの4人は自分の仕業。
そう思うと、心が興奮してたまらなかった。

「さて、次は誰かなー。――おっと。」
朝倉のテンションが上がり、スキップのような感じで歩き出すと同時に、朝倉は自分の右
の方で人影が動くのが見えた気がした。
反射的にしゃがみこみ、草むらの陰からその人影を見てみると、その人は朝倉には気付
いていないようだ。
411作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/08(土) 22:24:37 ID:???

朝倉とその人との距離はかなりあるが、それでも相手が長身なのはうかがえた。
左手は体の陰になって見えなかったが、その右手にはたくさんの手裏剣が握られている。
「長瀬かー。手裏剣は彼女の十八番だけど・・・。」
3−Aの生徒ほとんどの裏の情報まで知っている朝倉にとって、楓が甲賀中忍であることは
基礎知識のひとつとして当然知っている。
その楓が手裏剣を持っていたらかなりの強敵になることは間違いないのだが、いまの楓は
何かがおかしかった。
いまはバトルロワイヤルの最中なのだから、彼女だったら常に気配を消して、あたりに注意
を払いながら歩きそうなものだ。
それなのに、楓は大きな足音を立てながら、ただまっすぐ先を見つめて歩いていた。
「なんか変だな・・・。でももしかして、これってチャンス?」
楓は3−Aの中でもトップクラスの戦闘能力を持っていることはまほら武道会で証明されている。
このまま放置しておいたら生き残り続けるのは目に見えていた。
楓と正々堂々の一騎打ちとなってしまったら勝てるわけがない。
だが都合のいいことに、朝倉はいま、ワルサーを持っている。
夏美を殺して奪ったものだが、説明書を読む限り、入っている弾は9mmパラベラム弾と
いって、貫通性がかなり高く、急所をつくことができなければ相手は気付かないこともある
くらいの弾らしい。
だが、逆に言えば心臓や首などを打ち抜いてしまえば一発で勝利ということだ。
心臓に穴が開いて生きている人間なんて、絶対にいないだろう。
つまり、いま確実に狙いをつけて殺してしまえば、あとで苦労することはなくなるのだ。
412作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/08(土) 22:26:03 ID:???

「やっちゃおっか。」
楓の横方向にいた朝倉は、そこからでは心臓は狙えないと察し、楓の後ろにまわりこんだ。
それができる時点で楓がおかしいのは明らかだったが、もらえるチャンスはもらっておこう、
ということで、朝倉は楓の心臓あたりにしっかりと狙いを定めた。
楓はやはり、まっすぐに歩き続けている。
「いいんだよね。じゃあ――」

パンッ
森に、乾いた発砲音が響く。
朝倉は遠くに向けて銃を撃つのが初めてだったということもあり、弾は狙ったところには
飛んでいかなかったが、運よく楓の頭に命中した。
楓はそのまま地面に倒れる。
朝倉は、念には念を入れて手榴弾をひとつ取り出し、ピンを抜いて楓の方へ投げた。
だが楓はそれから逃げるそぶりも見せず、ただ倒れているだけだった。

手榴弾はすぐに爆発し、あたりを黒焦げにする。
それを見て、朝倉は楓のもとへと駆け寄った。
――そこには楓が倒れていたが、黒焦げになっていてもまだ生きていた。
「やっぱり長瀬はタフさが違うね。でもなぜ避けなかったの? 私に気付いてたんだろ?」
「さすがは朝倉殿。わかっていたでござるか・・・。」
普段どおりの声で、返事を返す。
「拙者は古を殺してしまった。その拙者に生きる資格はないでござるよ。だから誰にでもいい
から殺してもらいたかった。」
「長瀬が、くーちゃんを?」
413作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/08(土) 22:27:34 ID:???

――楓は、いままであったことを話した。
何度も口から血を吐きながら、それでも朝倉に聞いてほしいという精神を見せた。
「それで、最初は超殿を殺そうと思った。怒りのままにそう思ったでござる。けれど、考えて
もみればそれでは拙者も超殿と同じになってしまう。拙者はそれが怖かった。だから結局、
悩み続けていて、朝倉殿を見たときも悩んでいた。」
「そしたら、私が撃ったと、そういうことだね。でも、皮肉なもんだ。私に会わなければすぐに
超に会えたはず。超はすぐそこにいるんだから。」
「フフ、そうでござるか・・・。」

さすがの楓にも、そろそろ限界が来たようだった。
頭からの出血がひどく、体は灰になりかけているのだ。
それでしばらく話せていた楓は相当の強さを持っていたのだろう。
「それは・・・悔しいでござるな――――」
その言葉を最後に、楓は息を引き取った。

楓の言葉に少し心を打たれつつも、朝倉はまた人を殺すために立ち上がった。
手裏剣は楓のもとにおいて、静かに歩き出した。
手裏剣は使えないから、それと、置き土産として楓と一緒においておこう、という2つの理由があった。

   出席番号20番 長瀬楓 死亡
                    残り 20人


414作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/08(土) 22:28:47 ID:???
49.Unexpected

パンッパンッ

真名は容赦なくまき絵に弾を撃ち続ける。
真名とまき絵。
30cm近くある身長差から繰り出される銃弾は、とてつもない威力を秘めていた。
だがまき絵は、自分に向かって飛んでくる弾をいちいちロープで叩き落としていく。
途中、放送が入ったが、そんなものを聞いている余裕などまったくなかった。
「ものすごい反射神経だな・・・。これなら戦場でも通用する。」
自分がいままで使ってきて、何人もの人を撃ち殺してきた弾を見切るまき絵に、真名はただ感嘆する。
また同時に、強い相手と戦っている、ということに楽しみを覚え、興奮していた。
しかしまき絵のほうは、いつも使い慣れているリボンより数倍重いロープをずっと振り回して
いるので腕や体力に疲れがきていた。
しかも相手は強烈なデザートイーグル。
ロープに弾をあてるたびに、ロープは削りとられ、その部分だけ細くなっていってしまう。
いつも真名が使っているだけあって、弾詰めの手際も恐ろしいくらいよく、まき絵はナイフ
を持っていたが、そんなもので反撃に出るなんてことは一切できなかった。
さらに、唯一の飛び道具だったボウガンは、木乃香が持ったままやられてしまった。

パンッ
「くっ。」
またロープが削られる。
もう何発も受けられないだろう。
やられるのも時間の問題、絶体絶命だった。

(このかの仇・・・。)
415作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/08(土) 22:31:18 ID:???

自分があの時、木乃香を止めておけば木乃香が死ぬことはなかったかもしれない。
代わりに自分が見回りに行く、と言っておけば、木乃香は無事だったかもしれない。

後悔すると同時に、木乃香を殺した真名に対する怒りはとてつもないものとなっていた。
その心に満ちていた怒りによって反射神経を含むさまざまな身体能力が格段に上がって
いて、真名とやりあうことができていたのだ。
しかしその怒り、復讐の気持ちは、真名と戦い続けているうちにだんだんと絶望へと変わっていった。
それにつれて、いまのまき絵を成り立たせていたものがなくなっていき、戦闘への意識が下がっていく。

仲良しの3−Aだったのに・・・。
ハカセが史伽を殺していた時のことを思い出した。
体のいたるところから血が出て、痛みにもがく。
だんだんと意識が薄れていき、最後には死んでしまう。
自分もあと少しでそうなってしまうのだろうか・・・。
そんなの――――
「いやぁぁぁぁぁーーー。」
悲鳴を発しながら、まき絵は走り出した。
なんの目的もなく、ただ悲しみと恐怖のままに・・・。

「敵に背中を向けるとは。とうとう終わりか・・・。」
真名はその背中に銃口を向けた。

自分では殺したいと思っていないのに、撃たなければいけない現実を憎む。
そして自分による最初の被害者となるまき絵への哀れみを込めて、苦しまないように心臓に狙いを定める。
(すまない・・・。)
416作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/08(土) 22:32:46 ID:???

パンッ

自分の運命を認められなく、目をつぶった。
狙いは確実だった。
ほぼ間違いなく、まき絵は死んでしまっただろう。
死ななかったとしても、重症であることには変わりはない。

・・・どうして撃たなければならなかったのか・・・。
クラスでのことに興味を持たないような真名だったが、それでもクラスメイトを手にかける
なんてことをして、良い感情になるなんてことは決してなかった。
(私は最悪の人間なのかもしれない・・・。だがこれが私の生き方だと決めたはず・・・。
ならば悔やむことなど・・・。)
もう何年も前から、報酬さえもらえば誰にでもつく、という方針で生きてきた。
いま新田に逆らえば、その報酬だけでなく、自分の命までも失うことになる。
友達を救うことと、自分の命を守ること。
普通の人間なら、ほとんどの人が自分の方が大事だという答えを出すだろう。
ただ、マギステル・マギのパートナーとして過ごしたことのある真名にとって、本当に選ぶ
べき答えは前者であるべきだった。
しかし、いま30人の生徒を救うより、自分が生きて、世界の人々をたくさん救う方が結果的
にはいいのではないか。
それが、あの手紙を受け取ったときに、悩みに悩んで出した答えだったのだ。
長い間生きてきて、どんな人も、他の生き物の犠牲を伴って生きているということを十分に
わかっていた。
だから、それを考えれば、クラスメイトを殺すこともできる。
そう思った。
なのにこうして、罪のないクラスメイトを殺す立場に立ち、いざ撃ってみると、なぜこんなにも
心が痛むのだろうか。

(だが私はもう撃ってしまった。悩みを晴らすのは私ではない・・・。)

417作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/08(土) 22:34:44 ID:???

真名がゆっくりと目を開けると、前には傷ついた木と、真名が打った弾が落ちているだけだった。
弾はまき絵のもとへは飛んでいかなかったようだった。
近くにあった木に当たって落ちてしまっていたのだ。
「――ふっ。私がこんなことに気付かないとは・・・。まぁ――よかった・・・。」
まき絵はこれを知ってか、どんどん走っていき、真名と差をつけていく。
真名の方は、もう追いかけるつもりはなかった。
新田からの命令とはいえ、逃げる人を追いかけてまでして殺すことはないだろう。

そう思った直後、真名は何かの気配に気付き後ろを振り返った。
――が、遅かった。

                    残り 20人

418作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/08(土) 22:37:20 ID:???
今日は以上です。
明日も今日の続きで試合なのでもしかするとこのくらいの時間になってしまう
かもしれません。
ちょっと予想を立てづらいので明日の予告はしないでおきます。
また約束を破るのはいやなので・・・

まぁ投下をすることは確実なので、もし待っている人が
いらっしゃったりしたなら気長に待っていてください。

では。
419マロン名無しさん:2007/09/08(土) 22:42:03 ID:???
> 405 名無しさん@八周年 [sage] Date:2007/09/08(土) 17:22:22  ID:hmRG09Dh0 Be:
>     まあ公共の場所でおもちゃだとしても
>     銃を振り回してたら射殺されても文句言えないんだけどね。
>     アメリカだったら高校生とっくに射殺かしょっ引かれてるだろう。
>     事実捏造、暴力はいかんが
>     全ての元凶はこのDQN工房なのに
>     どの面下げて取材に応じるかね
>     「被害者の高校生」という表現は虫唾が走る
>     喧嘩両成敗くらいの出来事だろ
420マロン名無しさん:2007/09/08(土) 22:47:55 ID:???
作者16氏乙!!
これはまき絵ヒロインフラグと見るべきか!!
421マロン名無しさん:2007/09/08(土) 22:54:44 ID:???
激しく乙。
新人戦か?ガンガレ
422マロン名無しさん:2007/09/09(日) 06:02:06 ID:???
投下乙。
昨日始めから読んできたんだが木乃香の死亡確認ってあったっけ?
最後の気配が木乃香な気がしてしょうがない・・・
423マロン名無しさん:2007/09/09(日) 15:54:37 ID:???
夏美.史伽.ザジ.美空.五月.千鶴.葉加瀬.古.円.楓が死んでる。
424マロン名無しさん:2007/09/09(日) 19:50:21 ID:???
木乃香は撃たれてるけど死んだかは書いてないんだよな
流れ的には生きてるんだろうけど
425作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/09(日) 22:15:54 ID:???
やっぱり遅くなってしまいました。
本日の投下です。
426作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/09(日) 22:18:26 ID:???
50.Good End

「みなさん、覚悟はできてますか?」
『はい!!』
「ではいきますよ。」
もう長い間いたので見慣れてしまった風景の中で、いままでいなかった1人の少年が、
たくさんの少女に囲まれていた。
「ラス・テル マ・スキル マギステル 来れ雷精、風の精!! 雷を纏いて、吹きすさべ、
南洋の嵐、雷の暴風!!」
その少年が、長い呪文をつぶやくと、持っていた杖から激しい風と雷がほとばしる。
その杖の先にある、大きな建物――校舎――が、衝撃に耐えられずに崩れ落ちていった。

そこにいた少女たちはみな、その光景から目を離せなかった。
杖を持っていた少年、ネギ・スプリングフィールドは、建物の残骸から出てこようとする兵士
たちを、得意の中国拳法で倒していく。
「すごーいネギ君。いまのどうやったの?」
「その杖どうなってるの?」
ネギが魔法使いだと知らない人たちは、次々とネギに質問を浴びせる。
何十人もいる兵士たちを相手にしながら、少し笑ってネギはいつものように答えた。
「CGです。」

「えーでもホントっぽかったよー。」
「うんうん。」
そんな会話を聞きながら、魔法の存在を知っている人たちは、遠くで微笑んでいたり、ネギ
から逃げ出そうとしている兵士たちを倒したりしていた。
ネギは、兵士たちが撃ってくる銃弾を、無詠唱の魔法の射手ではじき落としながら、魔法を
交えて次々と敵を倒していった。
「そろそろ終わりのはずなんだけど・・・。」
ネギがそう言うのとほぼ同時に、校舎だったものの中から新田が出てきた。
体中に傷があり、とても痛そうだった。
「ネギ先生。これはどういうつもりだ。」
「新田先生、むしろ僕が聞きたいくらいです。なぜこんなことをしたんですか?」
427作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/09(日) 22:19:39 ID:???

「そ、それは、答えられない。」
「そうですか・・・。」
「ひっ。」
ネギがひと言しゃべるだけで、新田は悲鳴を上げそうになる。
「なら、ちょっとひどい目にあってもらいますが、いいですか?」
ネギの目が、怪しい光を秘めて新田を見つめる。
新田は耐えられずに尻餅をついてしまった。
「ひどい目、とは、な、なんだね?」
「それは答えられません。」
自分が言ったことを真似されて使われ、からかわれていることに新田は少し腹が立ったが、
そんなことを言っていられる状況ではないことはよくわかっていた。
「しかし、私も、答えられない。」
「わかりました。では処分は学園長にお任せします。」
そう言って、ネギはまた呪文を唱え始めた。
「ラス・テル マ・スキル マギステル 風の精霊11人、縛鎖となりて、敵を捕まえろ、魔法
の射手・戒めの風矢!!」
あっという間に新田は動けなくなり、捕縛されてしまった。
「離してくれっ、頼むっ。」
「なぜ殺し合いをさせたのか答えてくれたら離すかどうか考えます。」
「くっ。」
「なら、帰りましょう。学園長のところへ。」

   ゲーム首謀者 捕縛のためゲーム終了
                    残り ??人
「やったー。」
「終わりましたね。」
「ホントによかった。」
「ネギ君ありがとー。」
そんなみんなの声が、だんだん小さくなっていく。
そして最後には、聞こえなくなった・・・。
428作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/09(日) 22:20:46 ID:???


――――――
宮崎のどかは、洞窟の中で目を覚ます。
(なーんだ、夢かー・・・。)
とてもいい夢だったので、その分、それが夢だとわかってがっかりしてしまった。
ふと時計を見ると、昼の1時となっていた。
つまり、この洞窟に着いたのが10時前だったので、3時間以上寝ていたことになる。
(ふわぁー、よく寝たー・・・。――って、あ!!)
のどかは気付いた。昼の放送を聞き逃していることに。
自分がまだ生きている、ということから、午後1時に禁止エリアになるのはここではなかった、
ということはわかったが、それ以外のことはまったくわからない。
信じたくないが、もしかすると、夕映やハルナはもう死んでしまっているかもしれない。
もっと言えば、奇跡が起きて夢の通りに、もうゲームは終わっているかもしれない。
自分以外の誰もが死んでしまっている可能性もゼロではない。

ちょっとした段差のところに置いておいた懐中電灯を手に取り、自分の武器を確かめるためにバッグを開けた。
首輪探知機が誰かに反応すれば、まだゲームは終わっていないということだ。
バッグの中の一番上に入っていたそれを取り出して、見てみた。
すると・・・
点が2つ、こっちへ向かってきていた。
(2人・・・。大丈夫ですー・・・。)
楓の言葉を思い出して、のどかは洞窟の外へ出た。
長い間暗いところにいたので、突然の日の光に目がくらんでしまったが、しばらくすると目も
慣れ、遠くから走ってくる人が誰だか確認できた。

「ゆえ!!」
それは、のどかの無二の親友、綾瀬夕映と、和泉亜子だった。
あまりにもうれしくなって、のどかのほうからも夕映に向かって走り出した。
夕映たちもそれに気付いたらしく、さらにスピードを上げた。

                    残り 20人
429作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/09(日) 22:22:46 ID:???
51.Biological Parent

「ちょと遅かったカ・・・。」
エヴァたちのところにたどり着いた超は、まず3人の武器を確認した。
エヴァは何も持っていない。隠し持っているのかもしれない。
茶々丸はベレッタM92。かなり優秀な武器だ。
そして、千雨は金属バット。ないよりはマシという程度。

「超さん!!」
・・・作戦を立てる前に、見つかってしまった。
エヴァの横に立つ茶々丸の目は、確実に自分の方を向いていた。
「茶々丸!! 無事だたカ?」
「はい、超さん。あなたも無事ですか?」
茶々丸の創造主である超に出会えて、茶々丸は安心したようだった。
もしも壊れてしまったとしても、超がいれば直してもらうこともできる。
「私は大丈夫ネ。武器はとられてしまたガ――」
「誰にだ?」

超が言い終わってから間髪入れず、エヴァが問いただした。
確実に鋭いところを突いてくるエヴァは、戦歴が長いことを感じさせた。
「ハハハ、相変わらず鋭いナ。」
「いつものようなごまかしはどうでもいい。誰にとられたのかと聞いている。」
「ムッ。」
普段は通用する超の得意のごまかしも、エヴァには通用しないことを知り少し悩んだ。
正直に答えるべきか、嘘をつくべきか。
楓にとられた、といってしまうのは、自分からゲームに乗っていると公表するのと同じようなものだ。
楓が乗っているとは誰も思っていない。
だが、楓以外の誰かにとられた、と言って嘘をついたとしても、その人が乗っていない人で、
エヴァたちと会っている人だったとしたら、すぐにばれてしまう。
超としては、ここは答えずにエヴァのパーティーに入り込みたいところだった。
「答えないなら、乗っているとみなして攻撃するぞ。」
430作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/09(日) 22:24:25 ID:???

タイミングがいいのか悪いのか、こんな時に放送が入った。
「私は放送を聞きたい。お前も聞きたいはずヨ。ここは一時休戦としよう。」
「ふんっ、わかった。放送が終わったら決めてもらおう。答えて素直に乗っていることを認め
るか、答えずに殺されるか。」
「私が乗ていること前提なのはなぜネ? 乗てないかもしれぬのに。」
「貴様が脱出などという姑息な手段を選ぶとは思えん。」
「フフ、それもそうネ。ま、放送後にじっくり考えることにするヨ。」
乗っているのがばれていたか、と思いつつも、しっかりと放送に耳を傾けることにした。

――――
放送の内容に一瞬ドキッとしたが、エヴァたちの首を見てすぐに謎は解けた。
「ほう、これはおもしろい。」
「私たちの名前が呼ばれたことか?」
「茶々丸のおかげカ?」
「まぁ、長谷川も手伝ったようだがな。」
「千雨サンもなかなか優秀なようネ。学園祭で味方にしとけばよかたヨ。」
大げさに悔しがるようなリアクションをとりながらも、ここが禁止エリアになったのが関係あるのは
自分だけか、とすこし焦りを感じた。
いまいる場所、D−3は集落全体を含む。
そのため、集落で身を潜めていた人はみな移動することになる。
もっとも、夕映たちが移動しているので、集落にいるのは、いまここにいる4人だけなのだが・・・。

超はなにやらぶつぶつとつぶやく声が聞こえて茶々丸の方を見た。
「ハカセ・・・死んでしまいましたか・・・。」
茶々丸を作ったのは超とハカセであり、そのハカセが死んだとなれば、茶々丸にとっては
親が死んだのと同じようなもの。
(私が死んだら、茶々丸は悲しんでくれるのかカナ・・・お!!)

431作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/09(日) 22:25:33 ID:???

超は、この状況を覆すのにとても役に立つことを思い出した。
茶々丸をプログラムするとき、ハカセと超のことは攻撃できないようにしておいたのだ。
最近は自分で優先順位を書き換えてハカセを攻撃したこともあったらしいが、それはかなり特殊なこと。
つまり、いま超がここで勝負を挑んでも、エヴァと千雨との2対1になるだけなのだ。
魔法の使えないエヴァなら、そこそこにいい勝負はできるはず。
問題は千雨がどのくらい戦闘ができるか・・・。

「千雨サン、前からしゃべらないガ、どうした?」
「くっ、うるさいぞ未来人。」
そう言う千雨が、左腕を抱え込むようにして座っているのが見えた。
「左腕が痛そうネ。骨折カ?」
「お前にはかんけーねーだろ。」
「いや、ちょとだけ関係あるネ。」
千雨は骨折。これなら戦闘はできないに等しい。
となると、エヴァとの一騎打ちということになる。
超は大きく微笑んで、とてもうれしそうな表情になった。
「さて、どうする超鈴音?」
「どうする、とは?」
「さっきも言ったはずだ。誰に武器をとられた?」
「答えても答えなくても私と戦うつもりなのに、どうして答える義務があるネ?」
「はっ、確かにその通りだな。仕方ない、いくぞ、茶々丸。」

――だが、超に向かうエヴァに、茶々丸はついてこなかった。
「どうした茶々丸?」
「フフ、予想通りネ。」
「――マスター、対、超鈴音。どちらも攻撃できません。よって、待機――」
「くそっ、使えないプログラムをしやがって。」
そして、戦いは始まった。

                    残り 20人
432作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/09(日) 22:26:53 ID:???
今日は以上です。
明日からついに学校か・・・
ちょっと欝です。

では。
433マロン名無しさん:2007/09/09(日) 22:49:28 ID:???
ロ○○ップ、思い出した……。

お前はクビだーー。って落ちはないよね。
434マロン名無しさん:2007/09/10(月) 02:04:46 ID:???
はああ、びっくりした。
夢だろーなとは思いつつ、もしこれがホントにオチで、間違えて投下してしまったんならどうしよう! って。
よかったー、夢で。
435マロン名無しさん:2007/09/10(月) 10:35:55 ID:???
【速報】マリオカート、PC版の発売が急遽決定
http://news21.2ch.net/test/read.cgi/news7/1189188763/
436マロン名無しさん:2007/09/10(月) 18:08:55 ID:???
乙!
投下ミスかと軽くビビったな

なんという神展開
まき絵はマウンテンティム化でたつみーと引き分けとは・・・
437作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/10(月) 21:14:23 ID:???
どうも。
部活だったのですが、どうやらこれからもこのくらいの時間に投下できそうなので
月、水、金曜日の投下時間は9時過ぎにさせていただきます。

では本日の投下です。
438作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/10(月) 21:15:45 ID:???
52.Decisive Battle (First)

「そんな・・・エヴァちゃん・・・。」
「古まで・・・。」
放送が入り、かつての友だった者の死を悲しんだ。
だがそれもつかの間。

ババババババッ

遠くからずっと走り続けてきてから、すぐにハルナとの戦闘が始まったため、刹那も明日菜も
体力的に限界がきていた。
放送もじっくりは聞けず、ただ耳に入ってくるのを意識できるかどうか、という程度。
刹那の日本刀で、なんとか相手の攻撃は耐えていたが、このままいけば確実に負けてしまうだろう。

「アスナさんっ!! 一回引きましょう!!」
「わかった!! でもどうやって?」
向こうは50発も装弾できる強力なサブマシンガン。
さらにマガジンはすぐに交換できるよう準備されていて、弾詰めの時間など無いに等しかった。
動く隙すら与えてくれないこの場から、どうやって逃げられるというのか・・・。
「ふふふ、そんな弱くちゃ、ネギ君のパートナーとして失格なんじゃない?」
友情が一発で砕け散るようなことを平気で言ってくる。
だが明日菜は、いちいちキレている暇もなく、ひたすらよけつづけるしかできなかった。
サブマシンガンの弾をよける、というのも到底常人にできるわざではないが、明日菜はその
恐るべき身体能力でそれを可能にしていた。

「私が弾を止めている間に何かできませんか?」
「・・・ちょっと時間かかるけど・・・」
「それでいいです。お願いします。」
439作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/10(月) 21:17:45 ID:???

こんなこともあろうかと、商店街の駄菓子屋から持ってきた花火。
とても武器にはならないが、一度にたくさんに火を付ければ閃光弾としてくらいは活躍して
くれるだろうという読みは大正解だったようだ。
さすがにネズミ花火のような小さいのは置いてきたが、打ち上げ花火や手持ち花火は大量に持ってきている。

ガンッガンッ
刹那の日本刀に、ハルナの撃つ弾が次々とはね返される。
刹那自身への攻撃だけでなく、明日菜へと飛んでいこうとする弾も止めなければいけない
ので、かなりの大仕事となっていた。
「アスナさんッ!! まだですか?」
「もうすぐ。」
「よそ見はダメよ、刹那さん。」
「くっ。」
後ろから聞こえたハルナの声に、刹那は瞬間的に伏せた。
案の定、頭の上を弾が通過していく。
低い体勢のまま後ろに振り返って刀を振るが、下がってよけられ、また連射してくる。
止まることを知らないサブマシンガンに、いくら刹那とはいえ苦戦せざるを得なかった。

「いくよ!! 刹那さん!!」
明日菜は、束ねた手持ち花火に、これまた商店街で拾ったマッチで火をつけ、ハルナに向
かって投げつけた。

パンパンパンパンッ

雲が出てきて日が少しかげり始め、薄暗くなっていた森を、突然色とりどりの光があたりを
照らしたので、ハルナと刹那は完全に目をくらませてしまった。
「アスナさん!! これでは私も見えません!!」
「大丈夫!! 私は見えてるから!!」

440作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/10(月) 21:19:25 ID:???

あまりにも似合わないサングラスをかけた明日菜は、刹那のところへ走り、刹那を抱きかか
えてその場から逃げ出した。
(私たちが超りんに負けた時の美空みたいね・・・。)
だがふと、その美空がさっきの放送で呼ばれていたような気がしたことを思い出す。
また悲しみが戻ってくるが、いまは逃げなければいけない・・・。

「えっ、あのっ、アスナさん!?」
体が浮くようなふわっとした感覚に、刹那は思わず声をあげる。
「刹那さん、軽いね。」
「いえっ、そういうことではなく・・・。」
「大丈夫。絶対逃げられるから。」
明日菜は、刹那が目を開けていないのを知っていながら、任せて、とでも言いたげに、
軽くウィンクした。
しかしその余裕も長くは持たなかった。
「待ちなさい!!」
まだ目を開けられないハルナは、明日菜の足音だけを頼りにサブマシンガンを撃ちまくってくる。
まだあまり離れていなかったため、何発か明日菜の足をかすめていった。
「うわっ。痛っ!!」
火傷のような痛みにバランスを崩しそうになるが、刹那を抱えている以上、転ぶわけにはいかない。
いままで生きてきて一番の根性で明日菜は走り、見つけた大きな岩の陰に隠れた。
「ありがとうございます。」
「ちょっと手荒になっちゃったけど、許してね。」
「いえいえ、助かりました。」
2人とも息が切れていた。
戦っていた人と、走ってきた人。
どちらも疲れていて当然だった。
体力回復のために一度引くことにしたのに、その過程で疲れてしまっては本末転倒
のような気もしたが・・・。

441作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/10(月) 21:21:48 ID:???

「とりあえず、これからの方針について考えましょう。」
「そうね、夕映たちは無事に逃げられたみたいだから、私たちも逃げちゃうのってのもありだけど・・・。」
だがそんなことは絶対にしない。
刹那の気持ちを確かめる意味も含めて、明日菜は言っていた。

「しかしそれでは・・・。」
「わかってる。パルは私たちは止めないといけない。たとえ殺してでも・・・。」
明日菜の顔に少し影が差す。
「アスナさんもそう思ってらっしゃるなら話は早いです。武器はあと何がありますか?」
「えっと・・・打ち上げ花火だけ。」
本当は変声スプレーがあったが、言ったところでどうせ使い道などない。
無駄な行動は命取りになりかねないので、明日菜は黙っていた。
「わかりました・・・。では私は、早乙女さんに気付かれないように後ろに回りこんで待機します。
アスナさんは、私が向こうに着いたのを確認したら、ここから花火を打ってください。それに気を
取られている隙に、私が斬ります。これでどうですか?」
「私はいいと思う・・・けど、刹那さんはいいの?」
いまの刹那の作戦は、刹那がハルナを殺すというもの。
その覚悟が、刹那にはできているのかどうか、それが一番大事なところだった。
「――仕方ありません。それ以外に方法はないはずですから。」
「うん・・・。じゃあ、やろうか。」
「はい。」

刹那はさっき言ったとおり、草むらの陰をしゃがみながら移動し、明日菜の方へと向かっている
ハルナの後ろに回りこむ。
だがそれより先に、ハルナが動いていた。
「アスナ・・・殺す・・・。出てきなさい。」
442作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/10(月) 21:23:52 ID:???

草むらのような、人が隠れていそうな場所に向かってサブマシンガンを撃っていた。
だが岩の後ろにいる明日菜としては、岩が盾になってくれるので撃たれる心配はなかった。
刹那はこのことも考えていた。
そして、刹那から明日菜のところへと視線が届く。
明日菜はまたマッチをとりだして、花火に火をつけた。
それが空へと舞い上がっていく・・・。

                    残り 20人


53.Sacrifice Herself For a Friend

ゲームで言えば、ラスボスの最終形態のような、まがまがしい、と言うのがいちばんふさわしい空気が、
その人からはあふれていた。
「ふう・・・か?」
裕奈がおそるおそる声をかけてみても、真っ赤な鉈の持ち主、鳴滝風香は威圧の表情を緩めなかった。
少しつり目の双子の姉。
その目はこの世のものとは思えないほどに血走っていて、それなのに口元はなぜか楽しそうに笑っていた。

「ふみかのためにみんなころさなきゃいけないんだってだからわたしはみんなをこのなたで
きっていかなきゃいけないんだだからゆうなとあきらにもしんでもらうんだだからおとなしく
しててねははははは――」
「ちょっと、風香?」
「しっかりして・・・。」
「みんなさいしょはこうやってしんぱいしてくれるんだだけどほんとうはわたしのことをころし
たがっているんだからころされるまえにころさなくちゃいけないんだふみかのぶんまでいきて
くんだからほかのひとはころさなきゃいけないんだ――」
443作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/10(月) 21:25:03 ID:???

「完全に――」
「狂っちゃってるね・・・。」
2人は、じっと風香の方を見つめ、ただ思うがままに言葉を口にする。
勝手に口から出た、という感じだった。
少なくとも、自分で意識して言葉を発せられるほど、頭は正常に働いていなかった。
裕奈とアキラは、風香が狂ってしまっていることを認めたくなかった。
だが誰がどう見ても狂ってしまっているとしか思えない。
途切れることなくずっとぶつぶつとしゃべりつづけ、笑っていて、手には血だらけの鉈。
自身の服や足、手もあらゆるところが血だらけになっている。
それを見て、2人の頭の中には、逃げなきゃ、という危険信号が出ていたが、あまりの恐怖
に足を動かすことができなかった。
そして、風香の目はアキラの方を向いていた。
「はははははははは――」

ブンッ
風香の右手が振り上げられ、赤い鉈が横一線に空を切る。
信じられない行為に、2人は目を見張った。
風香が少し遠くにいたので当たらなくてすんだが、もうすこし近くにいたら確実に上半身と
下半身が切り分けられていただろう。
「風香!! やめて!!」
後ずさりしながら裕奈が叫ぶが、その言葉は風香にとっては雑音と同じだった。
裕奈が下がった分、風香も距離をつめるために前に出る。

カチャッ
裕奈は、最初その音が何の音かわからなかった。
だがアキラのほうを見て、それがなんであったかすぐに理解した。
そして、風香が鉈を振ったのと同じように、アキラが、殺す気で武器を構えていることを悟った。
アキラが、風香の頭の辺りに標準を定めてレミントンM1100を構えている。
俗に言う、ショットガン。
いま手をかけているトリガーを、一度引いてしまえば風香の頭は吹き飛ぶかもしれない。
でも本当にそれをしていいのかどうか、アキラは真剣に悩んでいた。
444作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/10(月) 21:26:10 ID:???

大事な友達だった人を、殺してしまっていいのだろうか。
「どうしよう・・・裕奈?」
「アキラ・・・。」
このまま何もしなければ、裕奈は死んでしまうだろう。
裕奈を見殺しにするか、風香を撃ち殺してしまうか、それとも・・・。
それを考え、アキラの思いは決まった。

「裕奈、いいんちょのところに走って!!」
「アキラはどうするの?」
思ったとおりの返事が返ってくる。
が、ここで正直に答えてしまっては絶対に裕奈は行ってくれないのだから・・・。
「しばらく風香を足止めしてから合流する。」
「大丈夫なの? 風香は足速いよ?」
「大丈夫。どうしようもなくなったら・・・銃を使うから。」
裕奈の動きが一瞬止まったが、すぐにもとに戻った。
銃を使うという言葉に、少し怖さを覚えたのだ。
だがいまはそれを恐れていられる状況じゃないことを、裕奈もすぐに察知していた。
「わかった。絶対来てよ!!」
「うん。」
「絶対だよ、約束だからね!!」
「わかってる。」
アキラの返事を聞くと、裕奈はすぐに森の中へと入っていった。
それを見ていた風香も野獣のように裕奈を追いかけようとするが、足を止めた。
パァン
風香の足元にアキラの撃った弾が飛んでいったからである。
「風香の相手は私だよ。」
445作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/10(月) 21:28:40 ID:???

「いまあきらはうったわたしにむかってうったやっぱりあきらもわたしをころすきなんだよだから
やられるまえにやらなきゃいけないふみかのためだからしょうがないよねゆうなにはにげられ
ちゃったけどいまはめのまえのひとだけをころすんだ――」
「風香・・・。ごめん裕奈。」
風香が自分に近づいてきたのを確認すると、アキラは裕奈が行った方向とは逆の方向に走り出した。
心に強い思いを秘めて、風香を裕奈から離すために走った。

                    残り 20人
446作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/10(月) 21:29:44 ID:???
今日は以上です。
実は今日は私の誕生日なんですよ。
ちょっと大人になりましたwww

さらに明日は9.11かつ私の親友の誕生日。
なんだかうれしいですね(バカ

規制かけられそうだったので2つの話をつなげて投下してしまいました。

では、また明日。
447マロン名無しさん:2007/09/10(月) 23:23:26 ID:???
乙&おめ!
448マロン名無しさん:2007/09/10(月) 23:56:01 ID:???
>>446
投下乙
又々先が気になる展開
誕生日おめでとう
続きを毎日wktkして俺は待ってるぜ…競争馬的な意味で
449マロン名無しさん:2007/09/11(火) 00:04:45 ID:???
>>438
サブマシンガンの弾避けるとかどんだけだよ
ありえなさすぎて萎えたわ
50話以上過ぎてんのに10人しか死んでないし展開遅すぎてイライラする
450マロン名無しさん:2007/09/11(火) 00:27:20 ID:???
じゃあ読むな、お前が居なくても別に誰も困らん。
451マロン名無しさん:2007/09/11(火) 01:29:22 ID:???
そろそろスルーってことを覚えようぜ
452マロン名無しさん:2007/09/11(火) 01:43:54 ID:???
乙!

しかし、気や魔力抜きの武道四天王がどれくらい戦えるのかは、解釈の分かれる所なんだよなあ。
あの四人ならそれくらいやっても無いとは言い切れまいて。

俺な演出と割り切って楽しんでる。検証するよりそう考えた方が早いし。
453マロン名無しさん:2007/09/11(火) 02:04:21 ID:???
っていうかアスナは気の使い方とか知らない一巻の頃から軽トラ並の速度で走ってたから、避けられてもおかしくない気がする。
454マロン名無しさん:2007/09/11(火) 02:28:26 ID:???
そんなことはどうでもいい

あすせつ!あすせつ!
455マロン名無しさん:2007/09/11(火) 04:07:38 ID:???
死亡フラグ全開なアキラの事もたまには思い出してあげて下さいね。
456マロン名無しさん:2007/09/11(火) 08:45:42 ID:???
>>455
相討ちフラグだろ?常考・・・

確かに死者はまだ少ないけど不思議とイライラせずにwktk展開だな。
作者すげーよ
457マロン名無しさん:2007/09/11(火) 08:52:13 ID:???
でももう半分越えてんだろ?
それに50話っていっても1話あたりのバイト数の量がどれくらいにもよるしな。
458マロン名無しさん:2007/09/11(火) 12:17:23 ID:???
むしろ沢山楽しみたいから長いほうがいい。
アスせつ……本編でも大プッシュな二人だが、このスレ的にはどちらか死ぬんだろーな……。
459マロン名無しさん:2007/09/11(火) 12:45:12 ID:???
すごく現金なこと言えば長いほうがスレも過疎りにくい……。
まぁ長くするか短くするかは作者の裁量任せだろう。人によって長い短いの基準は違うし。
460マロン名無しさん:2007/09/11(火) 20:15:43 ID:???
風香のセリフ読めなかった俺は負け組orz
目が付いていかねぇんだもんよ………

弾避けるのは出来ないことは無いぞ
いや俺には無理だがw
それよりも日本刀の強度のが気になるんだが
峰にしろ、刀身にしろ、側面にしても折れるか刃こぼれするかで人斬る程の強度は残ってないんじゃないかと思う
461作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/11(火) 21:03:43 ID:???
どうも。
本日の投下です。
462作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/11(火) 21:06:11 ID:???
54.Ghost

真名が後ろを振り返った時にはすでに、死のカウントダウンは終わっていた。
「ふっ・・・。」

トスッ

「やられたよ、完全に。」
どこからともなく飛んできた矢が、真名の心臓を貫いていた。
そしてさらにもう一本飛んでくる。
それは真名の右手に命中し、真名は持っていた銃を落としてしまった。
だが真名はそれを拾おうとはせず、ただ矢が飛んできた方をじっと見つめていた。
心臓から出続ける血が制服を赤く染めていっても、なんの手当てもせずに放置していた。

「そのボウガンは誰のだ? お前のではないんだろ?」
誰もいないはずの森に向かって、真名は話しかける。
少しすると、誰かが立ち上がる気配がした。
「ハカセのだったらしいえ。まき絵が、見回りに行くウチに渡してくれたんよ。」
真名の思った通り、はんなりした京都弁が返ってくる。
「近衛木乃香・・・。刹那がこれを見たら喜ぶか悲しむか・・・。」
小屋の前から、真名がさっき殺したはずの木乃香が歩いてきた。
デザートイーグルの弾を2発モロに食らって生きている超人なんているはずがない。
その答えは・・・。
「防弾チョッキか。」
弾が当たって、制服の破れてしまったところから、厚手の何かがのぞいていた。
「大正解。それでも痛かったえ。」
「佐々木も知らなかったようだな。」
「まきちゃんに言うてもうたらうまくいかへんもん。まきちゃんが龍宮さんの気をひいといて
くれないとできない作戦や。」
「撃たれたあとうつ伏せに倒れたのは、流れる血の量が少ないのをごまかすためか・・・。」
「そういうことになるなー。」
463作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/11(火) 21:08:03 ID:???

「ずいぶん頭の働くやつだ・・・。刹那がいなくても生き残れるんじゃないのか?」
「いつまでもせっちゃんに迷惑かけられへんから。」
それを聞いて、真名の表情が少しゆるんだ気がした。
それが大量出血で意識が消えかけているからなのか、ホッとしたからなのかはわからないが・・・。
「でもな、せっちゃんはウチには絶対に必要や。どんなにウチが強うなって、一人で戦っていける
ようになって、守ってくれる人がいらんようになっても、せっちゃんはずっと友達やもん。だから、
ウチはここから、せっちゃんと一緒に帰るんや。まきちゃんも明日菜も、みーんな一緒に。」
「そうか・・・。」
自分も、その『みんな』の中に入っていたらどんなに楽だったか、と思いつつも、結局新田のため
には誰も殺さないですんだことに少し安心していた。
(新田には悪いが、私はここで退場させてもらうよ・・・。これが裏切り者の運命なのだろうな・・・。)

ドサッと音を立てて、真名はその場に倒れた。
その顔は、学園にいるときは決して見せることのなかった、真名の笑顔だった。
悩みも痛みも何もない、すばらしい気持ちで眠りについていた。

「・・・まきちゃんを探しに行かな。」
真名の前でしゃがみこんで、しばらく黙祷をささげてから、木乃香は立ち上がった。


まき絵は森に入って少し行ったところの木の下でしゃがみこんでいた。
その目からは絶えることなく涙が流れていて、顔中ぐちゃぐちゃになっていた。
「私のせいでこのかは死んじゃったんだ。私が走ろうなんて言わなければ・・・ひっ。」
木乃香が近づいてくる足音を聞いて、まき絵はさらに小さくちぢこまった。
顔に手を当て、もう何も見たくない、とでも言うようにじっとしていた。
「助けて・・・お願いだから殺さないで・・・いやぁぁぁぁ・・・。」
「まきちゃん、ウチや。このかや。」
「このかはもう死んじゃったよ。私のせいで。あの時私が――」

木乃香がまき絵の手を顔からどけると、まき絵の言葉が止まった。
自分の目の前には真名がいると思っていたのに、実際にそこにいたのは木乃香だったのだから。
464作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/11(火) 21:10:12 ID:???

まき絵はお化けでも見ているかのように感じた。
「うそ・・・? このか・・・?」
「そう、このかや。」
「なんで・・・?」
「ほらこれ、防弾チョッキ。」
そして、まき絵はまた泣いた。
今度は怖さからではなく、ホッとした安心感から、大量の涙がこぼれた。
体中に力が入らなくなり、手はだらりと地面につき、ただ泣くだけの人形のようだった。

しばらくすると、まき絵は立ち上がり、前と同じ笑顔を取り戻し、言葉もいつものペースになった。
「クスッ、なーんだ。よかったよかった。――でも、そんなことは早く言いなさい!!」
防弾チョッキの上から、まき絵は思いっきり木乃香の背中をたたいた。
「すまんすまん。」
「もうっ、ホントに悩んでたんだからね。」
「まぁそのおかげで2人とも助かったわけやし・・・。」
「ん、そういえば龍宮さんは?」
「あっ・・・。」
木乃香の表情が、とたんに曇った。
まき絵は、言ってはいけない事を言ってしまったような気がした。

   出席番号18番 龍宮真名 死亡
                    残り 19人
465作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/11(火) 21:11:52 ID:???
55.Coward

寝ていた部屋から出てきた美砂は、その光景に言葉を失った。
体にナイフが刺さっている円。
そしてそのまわりに飛び散った、すさまじい量の血。
その血が体中についている桜子・・・。
実は美砂は昼の放送で目を覚ましていて、桜子がこの病院に入ってきたあたりからは意識
もしっかりしていた。
そのため部屋の中にまで桜子と円の争いの音は聞こえてきていたが、2人の怒鳴りあう声
を聞いて、美砂は怖くて部屋から出ることができなくなってしまったのだ。
自分が出て行けば2人の喧嘩、もとい殺し合いを止められたかもしれない。
だが自分にはその勇気がなくて、結局円は死んでしまった。
自分を責める気持ちが、心のほぼすべてを占めていた。

「なに泣いてんのよ、桜子。」
自分が殺してしまった円の体にすがりついて泣き続ける桜子は、美砂は声をかけた。
友達だった桜子。でもいまは、ただの人殺し。
美砂はゆっくりと桜子に近づいていった。
桜子は美砂の方を見て、謝りたいと思ったが、それを行動に移す前に思いがけないことが
おこったのでできなくなってしまった。
「美砂・・・ごめ――」

バキッ
何秒かの間、桜子はなにが起こったのかわからなかった。
だが自分の鼻を押さえて、猛烈な痛みを感じて、やっとのことで理解した。

「ふざけんじゃないわよ、あんた!! なんで円を殺したのよ!!」
美砂が、自分の顔に思いっきり蹴りを入れていたのだった。
その蹴りが鼻に当たり、鼻が折れてしまっているようだ。
「何とか言いなさいよ!!」
466作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/11(火) 21:13:34 ID:???

美砂は、自責心のやり場に困り、その気持ちを桜子にぶつけてしまった。
本当は自分の方が悪いんだ、と思っていながら、それを信じたくないがために桜子に責任転嫁していた。
「痛い・・・痛いよ・・・。」
桜子は鼻を押さえながら、美砂の行動が信じられずにただつぶやいている。
美砂に謝ろうという気持ちはまったくなくなり、意味もなくキレている美砂に対する怒りが、
ふつふつと湧き上がっていた。

「私が円を殺した。そうだよ。確かにそう。でも――」
美砂はその場から動けなくなってしまった。
蛇ににらまれたかのように、金縛りにあったかのようになり体のどの部分も動かない。
桜子が、顔を上げて美砂を見つめていたからだった。
桜子を責めることなどまったくできない。
怒っていたのに、体の周りの温度が一気に冷えたような気がした。
「あんたは何もしなかった!! あんたが出てくれば私を止められたかもしれない!! 
なのにあんたは奥の部屋でなにをやってたの? 1人で怯えてた? どうせそうなんでしょ? 
この人でなし!! 臆病者!!」
美砂が蹴ったせいで鼻血が出て、顔まで赤くなり、ついに服も肌もすべてが赤く染まった
桜子が、美砂に怒鳴りつける。
対する美砂の方は、あまりにも図星過ぎて、返す言葉もなかった。
自分は臆病者だ。そのせいで円を救えなかったし、桜子もこうして怒らせてしまった。
ついさっきまで思っていたことを、桜子は的確に突いてくる。
親友の考えることは、なんだってわかるのだろうか・・・。

でもいまはもう親友なんかじゃない。
喧嘩するほど仲がいいなんて言うけれど、この喧嘩は、史上最悪といっていいほどの
仲たがいの喧嘩だった。
円に刺さっていたナイフを抜き、目の前に立っている美砂に突きつける。
「私たちはいつも3人だった。喧嘩しても、3人でいればどうにか収まった。それはいつだって
そうなんじゃないの? 2人が喧嘩してたら、もう1人がそれを止める。そうやって解決してき
たのに、殺し合いをする状況に立たされただけで3人の友情はなくなっちゃうの?」
467作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/11(火) 21:14:54 ID:???

「ごめん桜子――」
「なにがいまさら、『ごめん』よ!! もう遅いんだよ、なにもかも。あんた、私の顔に傷つけ
た責任とってもらうわよ!!」
「やめてっ・・・ごめん――」

ドスッ
桜子は美砂の首をつかむと思いっきり押して体ごと押し倒し、その上に馬乗りになった。
そして美砂の顔にナイフを突き立てた。
それを引き抜くと、もう一度、頭に振り下ろす。
どこからどう見ても生きているはずのない姿になっても容赦なく何度も何度も・・・。
美砂が見た円の死体なんかとは比べ物にならないくらい、とんでもない有様となっていく。

――――――
「はぁっ、はぁっ――。」
息が切れるほどに桜子は暴れ続け、やっと落ち着いたころには、そこは血の海となっていた。
「円に・・・殺しちゃダメって言われたのに・・・また殺しちゃった・・・。本当は美砂はぜんぜん
悪くないのに・・・。悪いのは全部私なのに・・・。もう私1人だ・・・。どうしよう・・・。」

円のときと同じ、怒りに身を任せて美砂を殺してしまった。
普通の精神に戻ると、ひたすら後悔の念が押し寄せてくる。
物音ひとつしない病院の中で、桜子は、2つの死体に囲まれて、しゃがみこんでいた。
そこは血の匂いが強すぎて、頭がおかしくなりそうだった。

   出席番号7番 柿崎美砂 死亡
                    残り 18人

468作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/11(火) 21:17:27 ID:???
今日は以上です。
また1ヵ所まちがえました。

まき絵が、見回りに行くウチに渡してくれたんよ。
    ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
まきちゃんが、見回りに行くウチに渡してくれたんよ。

でお願いします。
呼称はむずかしいっすね・・・。

では。
469マロン名無しさん:2007/09/11(火) 21:27:32 ID:???
乙!つーかその修正を聞いて安心したw
いきなり木乃香の呼称が変わったせいで、まき絵すらも殺る気なのかと思ったぜw
470マロン名無しさん:2007/09/11(火) 21:59:48 ID:???
乙華麗

55話からひぐらし祟り殺し編のレナ&K1の匂いがするんだが…
沙都子を助けるかどうかで怒鳴りあってる時のやりとりっぽい

木乃香は瀕死だと思ったんだがほぼ無傷かww
471マロン名無しさん:2007/09/11(火) 23:38:45 ID:???
場面の移り変わりが巧いので期待して読める
まぁ桜子の私の顔に傷付けた〜って台詞には違和感あるかな…
しかしこのかは強いなw
まき絵も殺してマーダー化期待だぜ
472マロン名無しさん:2007/09/12(水) 00:10:24 ID:???
乙&GJ!

退場云々は梨花ちゃまのパロかな?
473マロン名無しさん:2007/09/12(水) 00:13:37 ID:???
>作者16氏
乙。ちと訳有りでこのスレ離れてたがやっと復帰。9/10〜9/12とこのスレの住人とその関係者の誕生日ラッシュだなw
9/12は俺の誕生日だw
474マロン名無しさん:2007/09/12(水) 11:27:46 ID:???


53話はアレかな?
どれロワの大阪組仲間割れを思い出した
475マロン名無しさん:2007/09/12(水) 14:09:32 ID:???
やっと書き上げることができたんですがもう次の番の人は決まっていますか?
476マロン名無しさん:2007/09/12(水) 14:29:06 ID:???
作者17キター!?
477マロン名無しさん:2007/09/12(水) 14:43:43 ID:???
>>475
まだ誰も完成宣言してないと思う。YOU作者17を名乗っちゃいなYO!
今の内にたっぷり見直しするべし。頑張れー
478マロン名無しさん:2007/09/12(水) 17:35:47 ID:???
でしたら候補したいと思うのですが良いですかね?
とりあえず今から見直してきます。
479マロン名無しさん:2007/09/12(水) 17:53:22 ID:???
とりあえず、今のうちにトリップだけでも名乗っておこう。後でgdgdにならないために。
480 ◆S5dwaooXVU :2007/09/12(水) 18:59:48 ID:???
あ、そうでした。すみません。
何だか今から緊張してきます。
では見直しの続きを…。
481作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/12(水) 21:00:33 ID:???
ついに作者17氏が現れましたか・・・
私の投下は9月いっぱいで終わるかどうかというくらいなので、
それまで校正なりなんなりをして待っていただけるとうれしいです。
まぁ、もうすでに何回も間違えている私が言える立場ではないですが・・・
期待してます。

では、本日の投下です。
482作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/12(水) 21:02:18 ID:???
56.Immortal Vampire

戦闘開始直後、機能停止している茶々丸からベレッタを奪い取った超は、エヴァに向けて
何発か撃っていたが、どれも軽々と避けられてしまっていた。
魔法の使えないエヴァと、カシオペアの使えない超、どちらもいつもとは違う戦い方を強い
られているのにもかかわらず、戦闘能力はとてつもないものだった。
「この程度か、超鈴音。」
傷ひとつないエヴァは、まだ余裕の表情だ。
「合気道はずいぶん卑怯ネ。」
超は、受身のために何回か地面についているためいくらか擦り傷があったが、こっちも余裕だった。
「正式な戦いに卑怯も何もあるか。お前の修行が足りないだけだ。」
「卑怯だと言ただけで、私が負けているとは言てないヨ?」
「ほざけ。」

超が接近して体術で挑めば、エヴァは合気柔術でそれを受け流す。
遠くから銃で狙えば、避けられるかワイヤーを使ってはじき落とされる。
超からしてみれば、どうしようもなかった。
だがエヴァも攻撃手段がなく、ひたすら攻撃をかわすだけとなっていた。
ワイヤーで超の体を捕らえても、すぐに脱出されてしまうので、地面にたたきつけたり、
エヴァが接近したりする暇はなかった。
しかしこのままいけばエヴァの思い通りとなる。
いまいる場所は1時から禁止エリアになるので、それまで超をこの場所に足止めさせれば
エヴァたちの勝ちなのだ。
そのタイムリミットもあと数十秒となっていた。
それに超は気付いていたのだが、逃げ出そうとしてもどうせエヴァに足止めされるのは目に
見えていたので正々堂々と戦っていたのだ。

「悪の福音、エヴァンジェリンにしてはずいぶん姑息な手段をとったネ。タイムアップ狙いとハ・・・。」
「貴様に勝てればそれでいい。手段は選ばん。」
「フフ、でもいいことを思いついてしまたヨ。」
483作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/12(水) 21:03:43 ID:???

超は若干左に移動して、また余裕のほほえみを見せた。
「何がしたい? まぁ何をしても無駄だがな。貴様ももう終わりだ。」
エヴァと超のどちらも相手に向かって突進する。
右手を大きく横に広げたまま前に走り、超はエヴァとぶつかった。
エヴァはぶつかって瞬間に超の首を掴み、ものすごい握力で締め付けていたが、超は自由な
右手を曲げて、遠くに銃を向けていた。
そしてその銃口の先には、腕の痛みに苦しんでいる千雨がいる。
「手を離さなければ撃てしまうヨ?」
「離してもどうせ撃つんだろ? 無駄なことはしないことにしている。」
「悪い魔法使いには、悪い私の考えも丸わかりというわけカ・・・。仕方ない。」

「もと早く決着つけるはずだたガ・・・。生き残って、未来に帰りたかたネ・・・。古、私もいま行くヨ・・・。」

パンッ
二つの音が一度に発せられたので、その音たちは重なって、とても大きな音のように聞こえた。
ひとつは銃声。もうひとつは爆発音。
「死んだか・・・。」
超の撃った弾丸は、千雨の頭を見事に撃ち抜いていて、千雨は即死だった。
そしてタイムアップが来てしまった超の首輪も爆発し、超は頭と胴体が切り離されてしまっていた。
体からはかなり遠くまで飛ばされてしまっていた顔は、もう悩まなくてすむという安心した
表情が、なんとなく浮かんでいるように見えた。

「千雨さん!!」
エヴァと超との戦いが終わったため、やっと動けるようになった茶々丸が、千雨の無惨な
死体に近寄る。
だがなにをしようとも頭を撃たれた人をよみがえらせる方法なんてなかった。
484作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/12(水) 21:05:17 ID:???

「行くぞ、茶々丸。」
「はい、マスター・・・。」
茶々丸は、人の死をまったく悲しまないエヴァに少し驚き、少し悲しんでいた。
最近のエヴァは、ネギのおかげだかなぜだかはわからないが、ずいぶん丸くなっていた。
昔の、ただ憎しみを持って人を殺したり、刃向かってくるものを皆殺しにしたりするエヴァの
ことをチャチャゼロから聞いていたので、そんな風には戻ってほしくないと思っていたし、い
ままでのエヴァがそうでないことがとてもうれしかったのだ。
でもいまこの時点でのエヴァは、ゼロから聞いていた昔のエヴァのように見えた。
最近の丸いエヴァだったら、千雨に向けられた銃を叩き落そうとするなり何なりをしたはず
だし、少なくとも超の首の手は離したはず。
なのに、そんな努力はまったくせずに2つの命を簡単に壊してしまった。
救えたかもしれない、味方の命までも。

「マスター、ひとつ聞きたいことが――」
「なんだ?」
「マスターは、千雨さんを――」
「仕方なかった。自分の命を守るために他の犠牲が伴うのは当然のこと。救おうと思えば
救えたはずだとか思っているんだろう。私に人の命を救う義務はない。自分の命は自分で
守るものだ。」
「わかりました。申し訳ありません。」
何百年も前から意識することのなかった、死というもの。
それがとても身近にあることに、少なからずエヴァも恐怖を感じていたし、死にたくない、と
思うことで心も少し乱れていたのかもしれない。
「この銃はお前に返しておく。これから本部に進入するからな。うまく使えよ。」
「はい、マスター・・・。」
やっぱり普段と違うエヴァに、茶々丸はおろおろするばかりだった。
さっき自分のために涙を流してくれたエヴァは、どこかに行ってしまったのだから。

出席番号19番 超鈴音 死亡
出席番号25番 長谷川千雨 死亡
                 残り 16人
485作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/12(水) 21:07:00 ID:???
57.Enemy is a Friend

「ゆえ!!」
「のどか!! 無事だったですか?」
やっと親友と再会できた喜びで、2人が舞い上がっている中、亜子は1人、すねるわけでも
なくただ考え込んでいた。
実は亜子は、夕映と一緒に逃げてきて明日菜たちと合流したときに、自分たちを追いかけていた
のが、いまここにいる夕映とのどかの親友である早乙女ハルナだったことを見てしまっていたのだ。
気付いてすぐに夕映に言おうかと思ったが、走っている途中ということもあり、とりあえず
言わないでおいた。
走っている間は夕映も亜子もひと言もしゃべらなかったので、突然話しかけて、その内容が
このことだったら困るだろうと思ったからだ。

もしいま言ってしまったらどうなるだろうか。
例えば自分で考えてみると、まき絵がゲームに乗っていて、銃を持って自分を追いかけて
いたと知ったら・・・。
まずは何かの間違いだと思うはず。
自分が見たのでない限り、それは嘘だ、と信じるだろう。
そして、それが嘘だということを確かめるためにその人のところへ行きたいと思う。
でもその人が本当に乗っているのだとしたら、その人に会った時点でゲームオーバーだ。
しかも一緒にいた人が、まき絵が襲ってきたと言った、ということは、ほぼ間違いなくまき絵は
乗っているのだから、死ぬ可能性はますます高い。
ならやっぱり夕映たちにも言わない方がいいのか・・・。

逆にそれを知らないまま、乗っているまき絵に会ったら、と考えた。
まき絵、無事だったん? よかったー。と言いつつ近づいていって、まき絵が銃を自分に
向けて撃ってきたとしたら・・・。
どちらにしろ、死ぬことには変わりはない。
486作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/12(水) 21:08:36 ID:???

ということは、どちらが精神的に苦しくないか、が言うか言わないかの決め手だ。
もちろん、まき絵が乗っていると言われて、乗っているまき絵に出会ったらとても悲しいだろうし、
何も言われないまままき絵に出会ってすぐに殺されても悲しいだろう。
でも、まき絵は乗っている、と言われた場合は、まき絵に会うまで悩み続けなければいけない。
そう考えると、やっぱり言わない方が気が楽なんじゃないだろうか・・・。

亜子は長い妄想モードから現実に帰ってくると、結局夕映たちには言わないことにした。
さらに、夕映たちのことを考えるためとはいえ、勝手にゲームに乗っていることにしてしまった
親友のまき絵に、心から謝った。
だが、その長い考えも一瞬で水の泡となってしまった。

「実はのどか――」
「ん? ゆえ、どうかした?」
「これはのどかに会わなかったとしても、亜子さんに言おうと思ってたことです――」
「ん? なんや?」
「さっきサブマシンガンを持った人に追いかけられたですが――」
「え、ええーっ!! 大丈夫だったの?」
「はい。いまここにいるということは大丈夫だったということですが、大事なのはそこではなく、
そのサブマシンガンを持っていたのが――」
「夕映!! それは・・・。」
亜子は思わず叫んでしまった。
夕映も見てしまっていたのだ。自分たちを追いかけていたのはハルナだったということを。
夕映もそれについて考えていたから、走ってくる間に何も言わなかったのだ。
「亜子さんも見ていたですか・・・。大丈夫です。私は私なりに結論は出ています。」

――夕映が、結論が出ている、ということは大丈夫なんだろう。
亜子はそう思い、夕映を止めないことにした。
「のどか、落ち着いて聞いてください。そのサブマシンガンを持っていたのは・・・ハルナだったのです!!」
「うそ、そんな・・・。ゆえー・・・。」
「そこでです。ハルナの親友としてしなければならないことがあるはずです。」
487作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/12(水) 21:10:29 ID:???
「ハ、ハルナを止めなくちゃ・・・。」
「そういうことです。いまハルナは、アスナさんと刹那さんが足止めしています。なので私たちもそこに――」
「それはダメや!!」
あまりにも予想通りの展開だった。
夕映なら、ハルナを止めに行くと言うだろうと思っていた。
だが、それは夕映やのどかの命を賭けなければできないこと。
もしハルナが説得に応じてくれなければ、夕映ものどかも死ぬことになるのだ。
だから亜子は、夕映がこれを提案したら絶対に止めると誓っていた。
「そんなことしたら、夕映も本屋ちゃんも死ぬかも知れないんよ? そんなん絶対ダメや。
いまはアスナと桜咲さんに任せて、待ってるのが一番いいはず。」
「ですが私たちが行かなければ誰がハルナを止めるのですか? 私たちでなければできない
ことなのです。」
亜子も夕映も、一歩も引かない姿勢だった。
「夕映は1回追いかけられたやろ!! パルは相手が夕映だってわかってて追いかけてきてた
んやから、夕映を殺す気だったってことや。」
「そうだよゆえ・・・。ハルナはアスナさんとせつなさんが止めてくれる。せっかくこうして会えた
のに、夕映が死んじゃうのは嫌だから・・・。」
「のどかまで・・・。ならハルナが死ぬのはいいのですか?」

パンッ
乾いた音が、あたりに響いた。

「――のどか?」
のどかが、夕映の頬に平手打ちをしたのだった。
「私だって、ハルナが死ぬのは嫌だよ。でもゆえ、ハルナが乗っちゃったのだって、何か理由
があったんだと思う。だから私たちが行ったって、きっと何にもならないよ。むしろハルナの心が
苦しくなるだけ。それに、亜子さんがこんなにゆえのことを思ってくれてるのに、それを無駄にするの?」

のどかの目は、涙があふれていた。
2人の親友の中からどちらかを選ばなくてはいけない、究極の選択。
真剣に考えて、選んだ夕映に自分の思いを伝えるのはとてもつらいことだったし、ハルナに
対して申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
488作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/12(水) 21:11:45 ID:???

「のどか・・・。――わかりました。では行くのはやめます。でも次の放送でハルナの名前が
呼ばれなかったら、私はハルナを探しに行きます。」
「ゆえー・・・ありがとう。」
「なにを泣いているですか。あなたは少し泣き虫ですよ・・・。」
「人のこといえないくせに・・・。」
「わ、私は泣いていませんよ。」
「泣き虫で嘘つきのゆえ・・・。」
どうにか丸く収められたその場で、亜子は抱き合う2人をみて複雑な気持ちになった。

                    残り 16人

489作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/12(水) 21:15:39 ID:???
今日は以上です。
今日の話もあまりうまくないですね・・・

あ、言おうと思っていたのですが、私がこれを書き上げたのは6月中旬で、
ひぐらしを知ったのは夏休み中なので、パクったつもりはまったくないですよ。
雰囲気が似てしまったとしたら、偶然です。
どれロワも読んでいませんし。
それだけです。

では、また明日。
490マロン名無しさん:2007/09/13(木) 03:49:31 ID:???
乙。

千雨は犬死だな・・・。あまりのあっけなさに全茶々丸が泣いた。
491マロン名無しさん:2007/09/13(木) 08:37:35 ID:???
乙!

>>490 >全茶々丸
ゼンマイ吹いたw
492作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/13(木) 20:58:49 ID:???
どうも。
本日の投下です。
493作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/13(木) 21:00:33 ID:???
58.Deep Sorrow

ずっと前――
桜子がハカセを刺し殺して、自分には目もくれず去っていったあと、あやかは裕奈との待ち
合わせの場所へと歩いていた。
この島に来て初めて、クラスメイトがクラスメイトを殺すところを見て、あやかは絶望に覆われていた。
さらに放送で呼ばれた千鶴の名前。前の放送では夏美も呼ばれている。
一緒に暮らしていたルームメイトはいなくなってしまった。
やはりゲームから脱出なんて最初から無理だったのだろうか。

だがあやかは思っていた。
桜子は、ただ恐怖に身を任せていただけで、決してゲームに乗っているわけではないように見えた。
ハカセのことも、ハカセが自分を殺そうとしていたのを見てしまったから、怖くなって殺して
しまったのに違いない。
つまり、相手を落ち着かせることができれば、まだ仲間を集めるチャンスはあるということであり、
脱出も夢ではないということ。
そのためには、1人で行動しているとできることもできなくなってしまうので、裕奈とアキラと合流
しようと考えていたのだ。

ハカセと2人で歩いてきた商店街を、今度は1人で逆戻りする。
もう見慣れてしまった風景に、あやかは涙がこぼれそうだった。
落ちている500円玉がなにを意味するかも知らず、ただ悲しく空を見上げたりしながら北へと
向かっていった。
ハカセが悲しんでいた五月の死体の横を通り過ぎる。
さっきの涙はハカセの演技だったのだ。
とても信じられる領域ではなかった。
生きるために、他人を殺すために、悲しんでいる演技をして同情を誘う。
人間、自分のためなら他の人をだますくらいのことを平気でやる、ということを高級な暮らし
をしてきて卑しい人と出会わなかったあやかは考えられなかった。
494作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/13(木) 21:01:54 ID:???

「なんで・・・。どうして・・・?」
この孤独にも、もう慣れてしまった。
最初のうちは寂しいと思っていたのに、いまではもう誰かに会いたいという気持ちはほとんど
なくなりかけていた。
誰かに会って、その人が乗っていたらもうあやかは立ち直れない気がした。
1人で悲しみ続けることが、一番楽なことだったのかもしれない。

「私が委員長をやっていながら、こんなクラスになってしまうなんて・・・。」
自分の無力さを知った。緊急事態にはいつも何もできない。
他の人が次々と死んでいく中で、自分が生きているのは何かの間違いのように感じた。
「私も・・・死んでしまえば楽になれるのかしら・・・。」

午後1時50分。待ち合わせの時間まではあと10分。
もしかしたら、裕奈もアキラも殺されてしまっているかもしれない。
2時になって誰も来なかったら、自分も死んでしまおうと思った。
今すぐに死んでしまってもいい。
そう思いながら、地面に寝転がった。
まぶしい昼の空を見上げながら、あやかは悲しみにくれていた。


――――――
「いいんちょ。いいんちょ!!」
自分の体を誰かが揺すっている。
そんなに動かしたら酔ってしまいますのに。
「いいんちょ!! だいじょうぶ!?」
この声は、裕奈さん? ということは・・・どういうこと?
意味のわからないまま、あやかは起き上がる。
単純に、暖かい日差しの中で眠ってしまっていたようだ。
「いいんちょ!! どうしたの?」
「――眠ってしまったみたいです。すみません、裕奈さん。」
495作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/13(木) 21:03:03 ID:???

「ならよかった。地面に横たわってるから何かあったのかと思っちゃったよ。」
あやかはふと時計を見てみた。まだ2時だった。
たった10分しか眠っていないのに、あやかはかなり、体力的にも精神的にも疲れが取れていた。
「アキラさんは?」
「いま風香と戦ってる。足止めしてから合流するって言ってたけど・・・。」
「風香さんも乗っているんですか!?」
「乗ってるって言うか・・・狂っちゃってた。たぶん史伽が殺されちゃったから・・・。」
裕奈はとたんに悲しそうになった。
風香が狂っているということよりも、ハカセから聞いた、『史伽を殺したのはまき絵だ』というの
を思い出したからだろう。

あやかはそれをすぐに察知して、ハカセが殺される前に残した言葉を教えた。
「!! 史伽さんを殺したのはハカセさんです。ハカセさんは私たちに嘘をついていました。
まき絵さんはハカセさんを止めたそうです。」
それを聞いて、裕奈はパッと明るい表情を見せたが、またすぐに怯えたように後ずさりを始めた。
「それで、それを聞いたから、いいんちょはハカセを――」
「違います!! ハカセさんを殺したのは・・・桜子さんです。」
「そんな・・・じゃあやっぱり・・・。」
たくさんの未知のことがいっぺんに頭に入ってくる。
裕奈の顔は、ホッとしたり怯えたり焦ったり悩んだりと、目まぐるしく表情を変えていた。
「ですが、桜子さんは、殺意を持ってはいなかったと思います。どうにかして落ち着かせる
ことができれば・・・。」

裕奈もあやかも知らない。
すでにこのときには、桜子は親友の円も美砂も殺していて、落ち着かせるのは相当難しい
状況になってしまっていることを。

                    残り 16人

496作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/13(木) 21:04:58 ID:???
59.Decisive Battle (Second)

ピューッと心地よい音を立てて、打ち上げ花火は空高く上げられた。
しばらくすると空にきれいな火の花が出来上がったが、そんなのを気にしている余裕は誰にもない。
それの出た場所をめがけてハルナはサブマシンガンで撃ち続けたが、明日菜は岩の陰に
隠れていたのでその岩がすべて弾を防いでくれた。
それに気付いたハルナは、無駄な弾を使うのは避けた方がいいと思い、引き金を引くのをやめる。

だがそれまでの時間は、刹那が切りかかるには十分なものだった。
ハルナの後ろに隠れていた刹那が、明日菜が花火を上げたとほぼ同時くらいに飛び出していた。
「すみません、早乙女さん・・・。」

ガンッッ
鈍い音がした。
いままでの経験から考えて、日本刀で生き物の肌を切る場合はスパッといくと思っていたの
だが、まったくそのとおりにはならなかった。
気のない刹那の一撃は、どんなに刀に慣れているとはいっても所詮は一般人の攻撃。
さらに、あまりにも多くの弾を受けすぎていたために刃こぼれもひどく、日本刀は何も切れ
なさそうになっている。
まるで石か鉄か何かでできた魔物を切ろうとしたときのような、激しい衝撃が刹那の手に伝
わってきて、思わず刀から手を離してしまった。
当然切った手応えはなく、魔法使いの障壁に阻まれたかのような感覚を受けただけ。

「甘いなぁ、刹那さん。」
明日菜のほうを向いたまま、怪我ひとつしていないハルナは怪しい声色で、馬鹿にしたようにつぶやく。
刹那にも聞こえるか聞こえないかくらいの小さな呟きだったが、ハルナが反撃に出る前兆だ
ということはその殺気から気付くことができた。
右手にサブマシンガンを持ったまま殴りかかってきたハルナから、ギリギリのタイミングで
刹那は後ろへ下がる。
刹那が切ろうとしたところは服だけが破れ、その中には大量の金網が詰め込まれていた。
497作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/13(木) 21:06:41 ID:???

「商店街通ってきたんでしょ? 私が防具を集めてないと思ったの? 刹那さんだって、
金網で防弾チョッキの代わりにしよう、とか思うだろうと思ったんだけど・・・。」
あくまでいつもの口調で話しかけてくるハルナ。
すっかり、忘れていた。
確かに、商店街にいるときはそれに気付いていて、サブマシンガンの持ち主と戦うときは
気をつけようとも思っていた。
だがいざ向き合ってみると、そんなことを思い出している余裕なんてなかった。
クラスメイトと戦うのに、落ち着いていられるわけがない。
意識していたことも、すべて吹き飛んでしまうのだ。
「くそっ。」
殺したくないと思っていたのに、こうして計画がうまくいかないとそれはそれで悔しいものだった。

そこまで考えて、刹那は、商店街にいたときにもうひとつ考えていたことがあったのを思い出した。
五月の死体があった店から、包丁やナイフが一切なくなっていたこと。
他の店からも、武器になりそうなものは何も見つからなかったこと。
だから明日菜は花火しか持っていなかった、ということも思い出した。
つまり、いま目の前にいる早乙女ハルナという人物は、商店街そのものを味方につけてしまって
いて、そこにあった武器はみなハルナが持っているということだ。

「まずは邪魔者排除から。さよなら、アスナ。」
思い出したときにはもう遅かった。
おもむろにバッグの中から取り出した左手には、それぞれの指の間に1本ずつ、4本のナイフ
が握られていた。
ニヤリと笑いを浮かべると、明日菜のほうに向き直り、左手をそっちに伸ばす。
ナイフを持っているのに、それはまるで銃を持っているような手の動きだった。
確実に仕留められるという喜びから、ハルナは少しの間理想の自分を思い描いたりしていて、
その妄想に体もついていってしまったのだ。
はっきりいって隙だらけなのだが、あまりのハルナの自信に満ちた態度に、刹那は何もするこ
とができなかった。
498作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/13(木) 21:08:13 ID:???

ただボーっと眺めているうちに、ハルナは現実に戻ってきたのか手を伸ばすのをやめて普通の
体勢になり、刹那が動けるようになる前に、ナイフを明日菜が隠れている岩の後ろに落ちるよう
距離を調整して放り投げてしまった。
ゆるやかな軌道を描いて、ナイフたちは岩を越えていく。

「アスナさん!! 避けて!!」
やっとの思いで刹那は明日菜に叫びかけるが、完全に手遅れだった。
岩の陰にいては、その上を飛び越えて降ってくる攻撃が見えるわけがない。
4本のうちの2本は外れたが、残りの2本は足を伸ばして座っていた明日菜の右太ももと左膝に
刺さって、明日菜は悲痛の叫びを上げる。

「ああっっ!!」
物理的な痛みよりもむしろ、やられてしまったという精神的な面での痛みの方が、明日菜の心を
強く傷つけた。
いまここで動けなくなったりすれば、刹那の足手まといになるだけ。
自分の体の痛さは我慢できるが、刹那の性格なら、いままで木乃香にしてきたように、自分を
捨ててでも明日菜を守ろうとするだろう。
そんなのは絶対に我慢できないだろうと思った。

「――は大丈夫だからっ!! 刹那さんはハルナを止めるのに集中して!!」
明日菜にできるかぎりの、最高の強がりだった。
刹那にもそれはわかったし、おそらくハルナにもわかっただろう。
だが長い間戦友として付き合ってきた刹那には、それが明日菜の願いなのだろうということ
がすぐに理解できた。
「わかりました。では早乙女さん・・・私のすべてを持って、あなたを止めさせていただきます。」
「いくら刹那さんでも、私に勝てるはずはないと思うけど。」
2人はしばらくにらみ合い、そして、また戦いが始まった。

                    残り 16人

499作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/13(木) 21:10:24 ID:???
今日は以上です。
では。
500マロン名無しさん:2007/09/13(木) 23:12:58 ID:???
ハルナはスローイングナイフ使えるのかよw
まぁ山なりに投げても大した殺傷力なさそうだが…

気になる展開にwktkして続きを待ってる
投下乙です

…桜子救済フラグ?
501マロン名無しさん:2007/09/13(木) 23:17:25 ID:???
指切っても痛い包丁が、足に刺されば普通に痛いだろ・・・常考
ともあれ乙!
502作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/14(金) 21:12:13 ID:???
どうも。
本日の投下です。
503作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/14(金) 21:14:46 ID:???
60.Persuasion

真名が生きていたうちは強がっていたものの、まき絵に真名のことを聞かれて、自分は
殺してしまったのだという恐怖心がよみがえってきた。

遠くから放った矢が真名の心臓に直撃する瞬間。
木乃香は、やった、と一瞬だけ思ったが、その喜びもすぐに自分への嫌悪に変わった。
相手をだまして、自分のため、自分の仲間のために人を殺すのは、この島に何人かいる
殺人犯と何の変わりもないことに気付いてしまったからだった。
木乃香はいままでに真名以外の乗っている人に会っていなかったが、その人たちもこんな
つらい思いをしている殺しているのだろうか、と考えてしまった。

「あ、いや、答えたくないなら答えなくてもいいよ。ね?」
木乃香の表情が突然曇ったことで、まき絵は少し焦っていた。
死んでしまったと思っていた木乃香が生きていて、自分を追いかけていた真名は行方知れず
になってしまって、まき絵は頭が混乱しかけていたので、木乃香に気を使っている心の余裕
が残されていなかったようだ。
「でも、これは言わなきゃいけないことなんや・・・。」
だが木乃香は、事実を見つめなければならなかった。
まき絵とこれからもこの島で生きていくためには、隠し事なんてしていては信用できるもの
もできなくなってしまう。
木乃香の態度からまき絵は気付いているかもしれないが、木乃香自身の口から言わなけ
ればいけないことというものがあった。

「――ウ、ウチは、殺してもうた・・・。」
勇気を出して言ったつもりだったのに、その言葉はとても震えていた。
震えていたが、まき絵にはしっかり聞こえていたし、その意味を理解するのに難しいことは
何もなかった。
自分を助けるために、木乃香はボウガンを撃ってくれたのだ。
木乃香に恥じるべきことは何もない、むしろ、その決断を誇りに思ってもいいくらいのことを
してくれた、とまき絵は思った。
504作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/14(金) 21:16:55 ID:???

自分が真名と戦って勝っていたら、真名を殺していたのは自分だったはず。
だが負けてしまったから、真名を殺す役を、木乃香が買って出てくれただけなのだ。
本当に恥じるべき行為は、自分のものだったと気付いてしまった。
「このか――」
「ウチが殺したから龍宮さんはいなくなってもうたんや。ごめん、まきちゃん・・・。」
「ううん、このかは何も悪くない。悪いのは私だよ。龍宮さんは殺さなきゃならない人だった
んだから、結局私かこのかのどっちかが殺すことになってた・・・。戦ってるときに自分を捨
ててでも私が殺すべきだったのを、このかが助けてくれたんだから、このかに悪いことなん
てないんだよ・・・。」
「まきちゃん・・・。」
「だから、ありがとう、このか。」

2人とも悪いのは自分だと言って、相手の罪をなくそうとする。
そこには、2年以上同じクラスで過ごしてきたクラスメイトとしての友情が垣間見えた。
島のみんながこんなふうになれば、殺し合いは止まるに違いないのに・・・。

銃声があちこちで鳴り響く中、まき絵と木乃香はしばらく座り込んでいた。
それは相手の気持ちにうれしさを覚えたからでもあり、2人とも無事だったという安心から
でもある行動だった。

「だれだってさ、殺したくなんかないんだよ。このかが龍宮さんを殺しちゃったのだって、私を
守ってくれるためっていう理由があったわけだし、きっと龍宮さんにも理由があったんだと
思う。だから、悩んでちゃダメだよ。悩むのは帰ってからならできるけど、死んじゃったら
できないこと。いまは生きることだけ考えよ!! それで、学校に帰ってから、思いっきり
悩めばいいよ。このかは人殺しだって言う人なんて絶対いないし、もしいたとしても、全力
で私がかばってあげる。」
「そっか・・・そうやな。会ったときはウチがまきちゃんにおんなじようなこと言うてたのに、
いまはウチの方がわかってなかったみたいや。・・・ありがとな。」

505作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/14(金) 21:18:00 ID:???

クラスでワースト2位の頭脳のバカピンクとは思えないほどの筋の通った説教で、木乃香
はすっかり納得してしまった。
ネギたちについて本当のことを知らず、木乃香たちと比べて精神的にとても弱いはずの
まき絵なのに、どうしてこんなに強く振舞えるのだろう。
そんなことをぼんやり考えながら、木乃香は自分の持っていたボウガンを見やった。

人を殺してしまったボウガン。これからも使うことになるだろう。
防弾チョッキの作戦は、まき絵からボウガンを受け取ってとっさに思いついたものだったが、
服に穴が開いてしまって防弾チョッキが見えるようになってしまったからもう同じことはできない。
今度乗っている人に出会ったら、どうすればいいのだろうか・・・。
自分が生き残るためには、乗っている人は殺さなければならない。
いくら何かの理由があって相手が乗ってしまっているとはいっても、殺す気がある以上は
それを止めさせなければいけない。
まき絵のロープはもう使い物にならなくなってしまった。

2人は真名の手からデザートイーグルを、バッグから弾を取って、それをまき絵のバッグに入れた。
まだしばらく続くであろう戦いのために・・・。

                    残り 16人

506作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/14(金) 21:20:07 ID:???
61.Break a Promise

「風香・・・はやいな・・・。」
運動部のアキラが走り続ければ、風香を振り切ることくらいできると思っていたが、まったく
できなかった。
狂気で体力の限界を感じなくなっている風香にとって、長い距離を走ることくらいなんとも
なかったし、単純な足の速さで風香の方が勝っているので、アキラは全力で走り続けなけ
ればいけなくなっていた。
森の中は足場が悪く、木々が行く手をさえぎるので思うように加速もできない。
鉈を振り回しながら追いかけてくる風香を背に逃げ続けるのは悪夢のようだった。

誰かに出会えればどうにかできるかもしれないと思っていたが、なにか仕掛けがしてある
のではないかと思うくらいに誰にも出会わない。
もう限界だった。
走っているうちに一度森を抜けて、また森の中にはいった。
風香にとっては、知っているところであり、その先に風香が殺した死体があることもわかって
いるはずで少しはためらいがあってもおかしくないのだが、そんなことはお構いなしにどんどん
進んでいく。
そのうち地面が真っ赤に染まった場所に出た。

「ひどい・・・だれがこんなことを・・・。」
力ずくで倒されたような木々。首から上がない死体。そして、転がっている生首。
そのまわりに飛び散った、乾き始めている血。
その残虐な光景にアキラは一気に気分が悪くなり、嘔吐しかけた。
だが止まれば風香に追いつかれる。

何とかこらえてアキラは走り続けたが、ついに崖まで来てしまった。
この先には足場はなく、進み続ければ海へと落ちるだけ。
「やっとおいつめたもうあきらもおわりだよふみかのためにしんでもらうんだみそらをころした
のもわたしなんだよしってた?はははははふみかをころしたのはみそらなんだからとうぜん
のむくいだよね――」
507作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/14(金) 21:21:58 ID:???

「史伽を殺したのは・・・美空?」
風香のいうことを真に受けたアキラは、美空を殺したのが風香だったということよりもむしろ、
史伽を殺したのが美空だということに驚いた。
ハカセの話が本当だとしたら史伽を殺したのはまき絵だったはず。
それが美空の仕業だったということは、やっぱりまき絵は乗っていないということだ。
ハカセが死んでしまったのは、その言葉が嘘だと気付いたあやかが殺したからなのか。
とすれば、あやかと合流した裕奈はまき絵の真意を知れるかもしれない。

「風香、本当なの?」
だが今の風香になにを聞いても無駄なことは一目瞭然だった。
鉈を頭の上に振りかぶって、一歩ずつアキラへと近づいてきていた。
「あきらはいいひとだったけどふみかのためだからしょうがないんだよあきらならわかって
くれるよね――」

仕方なく、アキラは向かってくる史伽に向かって銃を構えた。
風香に出会ってしまったときから悩んでいて、今も答えの出ていない問い。
裕奈と別れたことで、選択肢は3つから2つにしぼられた。

風香を殺して自分が生き残るか、このまま風香にやられるか。

自分が風香をひきつけて裕奈を逃がすことを決めたときに、答えは出していたはずだった。
銃を向けても怖がることなく確実にアキラに近づいてくる風香に、逆にアキラの方が恐怖を
感じていた。
引き金を引くか引かないか、ただそれだけの判断なのに・・・。
「生きたい・・・裕奈と合流するって約束した・・・だけど・・・。」
「はははあといっぽだよあきらわたしをころすんだったらいましかないよそのじゅうでわたし
をうてばしぬかもしれないけどうたなきゃあきらはみそらみたいにばらばらになっちゃう――」
508作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/14(金) 21:23:34 ID:???

「それでも・・・私には・・・殺すことはできないよ・・・。」
風香を裕奈から引き剥がして、遠くまで案内して、そこで自分は殺される。
最初に考えた答えと寸分も違わぬ状況になっていた。
裕奈を守ることができた、それだけで、アキラの思いは十分に果たされていたのだ。
「じゃあしぬしかないねばいばいあきら――」
「ごめん裕奈・・・約束守れなくて・・・私の分も生きて――」

ブンッッ

――――――
「さいごまでいいひとだったけどやっぱりいいひとはころされちゃうんだねあさくらのいうとおり
ころしまくればおうちにかえれるんだからやっぱりころさなきゃいけない――そうだゆうなの
ところにいかなきゃあきらのせいでかなりとおくまでいどうしちゃったからいそがないと――」

アキラの銃と、バッグの中のものをすべてかき集めて自分のバッグに入れると、風香はもと
来た道を走り出した。
いままでずっと走ってきて疲れているはずなのに、また全力で走っていった。
アキラが裕奈のために使った時間をかけて走り続ければ、風香は裕奈に追いついてしまう。
そんなことを考えられる頭ではなくなってしまったが、それでも風香は狂気のままに、裕奈
目指して動いている。

   出席番号6番 大河内アキラ 死亡
                    残り 15人

509作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/14(金) 21:27:01 ID:???
今日は以上です。
では。
510マロン名無しさん:2007/09/14(金) 21:28:42 ID:???
乙!

アキラがあああああ
511マロン名無しさん:2007/09/14(金) 22:55:13 ID:???
乙です


アキラ良い人すぎる゚。・゚(*Pд`q)゚・。゚
512マロン名無しさん:2007/09/15(土) 03:46:50 ID:???
まずは乙。

ケチ付けるわけではないが、ちと気になったので質問
>単純な足の速さで風香の方が勝っている
アキラってアーティファクト全開の美空にも追いつくのにそれは無いんじゃないのか?
513マロン名無しさん:2007/09/15(土) 04:30:47 ID:???
>>512
発想を逆転させるんだ。
アーティファクト全開の美空より更に風香が劇的に早いんだよ!
514マロン名無しさん:2007/09/15(土) 05:15:42 ID:???
な、なんだっtt

・・・は置いといて、
PS2ゲーム2時間目の初期設定を採用したんじゃないかな? それくらいしかソースが分からない。
且つ、原作でアキラメインの回が公開された時には、このシーンは既に書き上がっていたのでは?

何にせよ、俺としては読み流せる範疇だったよ。
515マロン名無しさん:2007/09/15(土) 08:26:21 ID:???
アキラは水がなけりゃだめなんだよ。美空の時も風呂場だったし。きっと陸上にあがると並の能力になってしまうんだ!
516マロン名無しさん:2007/09/15(土) 11:59:01 ID:???
アキラはイルカだからな
517作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/15(土) 23:12:54 ID:???
どうも。
アキラと風香のことですが、ゲームの二時間目のデータを参考に考えました。
美空に追いついたときのことは、何か特別な力が働いたものとして例外とみなしていたので
先日のように書くことにした、ということです。
いろいろと判断の仕方によっては私が間違っているところもあるかと思いますが、
これからもよろしくお願いします。

では、本日の投下です。
518作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/15(土) 23:16:22 ID:???
62.Prejudice

アキラと風香の決着が着いたころ――
「アキラ遅いね・・・。」
「そうですわね・・・。」
合流できた安心から、裕奈とあやかはのんびりと座っていた。
アキラは絶対に来てくれる、別れ際にそう約束したから、その約束を信じて裕奈は疑いもせず
にずっとアキラの帰りを待っていた。
そういう大事なところでは、アキラは必ず約束を守ってくれる、安心できる存在だ。
それが友達の命と引き換えでなければアキラはちゃんと裕奈たちと合流しただろうが・・・。

裕奈を守るため、そして風香を守るため、アキラは自分から命を捨てた。
そんなことは裕奈もアキラもまったく知らないのだが、それはアキラの決死の行動だった。
「本当に大丈夫なんでしょうか・・・。」
裕奈が安心しきっている一方で、あやかはかなり心配していた。
風香はいつもいたずらばかりして走り回っているので、体力はある。
しかも短距離もかなり速く、常人ではないような運動能力の人がたくさんいる3‐Aの中でも、
トップ10には楽に入れるほどだった。
そんな風香に追いかけられたら、少なくとも差を広げることはできないだろう。
だがアキラも運動部。
そんな風香に追いかけられても大丈夫だと無理やり信じ込んでいた。
「アキラさん・・・どうかご無事で・・・。」
「だから大丈夫だってば。アキラにも何か考えがあったから一瞬だけ別れただけなんだよ。」
「それならいいですけど・・・。」

アキラは、ハカセが死んだという放送があったときにあやかを信じていた。そしてそれは正しかった。
信じることは正しいと教えられたような気がしたのだ。
だから今度は自分がアキラを信じてあげる番。
裕奈はそう考えていて、あやかの前では強がってとことんポジティブにふるまっていた。
あやかは、そんな裕奈についていけない感じがあったが、それは決して嫌なものではなかった。
519作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/15(土) 23:18:08 ID:???

いま心が落ち着いているのは裕奈と出会えたおかげだからだと思っているし、その裕奈と
一緒にいることでだんだん希望が見えてきた気がしていた。
少し曇りがちだがまだ明るい空を見上げて、同室だった千鶴、夏美のことを想い、絶対に
新田に復讐してやると誓ってみる。

自分の部屋にはまだもう1人、乱暴な野生児が住んでいる。
あやかとの出会いこそ悪かったものの、その小太郎とは最近ではだんだんうちとけてきて
いて、普通に話したりできるようになっていた。
彼はこのことを聞いたら相当ショックを受けるだろうが、それをなぐさめてやるのもあやかの
役目であり、やさしくあたってあげなければならない。
それができるのはあやかだけであり、そうするためにも、この監獄から抜け出して帰らなけ
れば、そんなことも考えていた。

またしばらく2人で座っていると、何かの気配がするのか裕奈が突然後ろを向いた。
ガサッ
裕奈が見た方向、つまり2人の後ろの、少し遠くからかすかに草をかきわける音がした。
「アキラ!! 私迎えにいってくる!!」
「ちょっと裕奈さん。いくらなんでもそれは危険です。」
「大丈夫だよ!! アキラだって、私たちがここにいることわかってるんだから。」
「いえ、そういうことではなく――」
「平気だって。すぐ帰ってくるから。」
そう言って、あやかの返事も聞かずに森へと入っていってしまった。
当然あやかが言っていたのはアキラが怖がる、ということではなく、相手がアキラでなかった
ら、ということだった。
アキラだと思い込んで全く警戒していない裕奈が、乗っている人に見つかったら、恰好の的
となってしまう。
最悪のことを考えると、いまの音の発生源は風香ということもあり得るし、もしそうだとしたら
裕奈は確実に鉈で切り崩されてしまうだろう・・・。
「アキラー。こっちだよー。」
あやかの考えなどまるで無視しているかのように、裕奈は大声をあげて相手の注意を引き
付けようとしている。
520作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/15(土) 23:19:27 ID:???

アキラのことしか頭の中になく、そんな簡単なことすら気がまわらなくなってしまったのか・・・。
「裕奈さん!! 大声を出すのはおやめなさい!!」
そう言う自分も大声を出していることに気付かないのは、あやかのご愛嬌だ。
「えっ!? あ、そうだね。」
あやかに注意を受けてもまだなお現実を理解し切れていない裕奈は、さらに奥へと進んでいった。
そしてあやかの視界から裕奈が消えて間もなく、あやかの考えられる中で最悪の音が耳に
入ってきた。

パンッパンッ
「いくら注意したって、もう遅いから。」
「ああっ、裕奈さんっ!!」
「うそ・・・? 撃たれた・・・? アキラに撃たれた・・・?」

裕奈は地面に倒れ、ただ呆然とする。
一番信じていた友に撃たれたと勘違いしているので、何も考えられなくなっていた。
撃たれたという実感すらなく、撃たれた腹からただ血が流れるだけだった。

「ごめんねアキラじゃなくて。」
憎らしい声、嫌味のこもった口調で、撃った人物は話しかける。
「えっ、アキラじゃないって?」
「死に損ないに教えることなんてないよ。」

パンッ
また一発、銃声が響き渡った。

                    残り 15人

521作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/15(土) 23:20:58 ID:???
63.Marionette

彼女の周りには、大量の血と、2つの死体。
さらに彼女の鼻からは止まることなく鼻血が出続けている。
服は真っ赤に染まり、もう元の色などわかるはずもなくなっていた。
「こんな顔、他の人に見せらんないよ・・・。」
彼女が殺した人のうちの1人、柿崎美砂に蹴りを食らい、桜子の鼻は完全に折れてしまっていた。
鼻が折れていて、鼻血が出ていて、涙でぐちゃぐちゃになっている。

こんな状況でも女の子だ。
自分の顔が醜くなってしまったら外に出るのは気が引ける。
知らない人ならまだしも、同じ寮で暮らしていたクラスメイトたちに、いまの自分を見られる
のは最大の屈辱だと感じるだろう。
最初会ったときには『大丈夫?』と聞いてきてくれるはず。
でもそのあとで陰口をたたかれるのはごめんだった。
自分の見た目の悪さについて話されることほどひどいことはない、そう思うのは当然だ。

桜子はもう一度、周りを見渡した。
美砂と、円。
2人とは同じクラスになったときからずっとチアリーディング部の仲間として一緒にがんばって
きた親友だった。
いつも3人で行動し、3−Aの中でも一番仲のいい3人組だった。
・・・だがその2人のことを、桜子は殺してしまって、もう生き返ることはない。
「1人でチアなんてできないよ・・・。ねぇ美砂ぁ、円ぁ!! 返事してよ!!」

当然2人はなにも答えない。本当に悲しかったし、悔しかった。
いままでずっと泣き続けていたので、もう涙は枯れて出なくなっていた。
「こんな・・・こんなことがあっていいの?」
そこにあるのは内臓が飛び出しかけている円の死体と、もはや誰だったのかもわからない
くらい顔が乱されてしまった美砂の死体だけだった。

522作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/15(土) 23:22:26 ID:???

ガー――――
突然自動ドアが開いたので、誰かが入ってくるのだと思った。
本当なら身構えたり怯えたりするはずのものを、桜子は何の対応もとらなかった。
乗っている人ならすぐに殺してくれるだろう。
いまの桜子が望むものは、何もかもを忘れさせてくれるであろう死だけ。
もし乗っていない人だったらすぐに逃げていくに違いない。
どちらにしろ、桜子に悪いようにはならないことがわかっていたからだった。

――――――
だが入ってきたのは、予想もしないものだった。
桜子が顔を上げると、そこにいたのは――
「・・・ビッケ?」
それは桜子が家で飼っているのにそっくりな猫。
あまりにも似ていたので、桜子は思わず呼んでしまった。
本物のビッケとは違って、この島でギリギリの生活を強いられていたことが一目でわかるよ
うな細身、さらに、いまにも骨が見えそうなくらいで、掴もうとすると骨が折れてしまいそうだった。
その猫はドアをくぐったところで先に進んでいいものかどうか迷っている。
目の前に広がっている赤い光景が、頭に入ってきてしまってあわてているのだろう。

「おいで、ビッケ。」
手のひらを上向きにして腕を下に伸ばし、猫が飛びついてこられるような体勢をとる。
そして家で呼ぶときのようにやさしく声をかけた・・・つもりだった。
しかし猫はすぐに、入ってきた自動ドアを開けて出て行ってしまった。
そのときの目は、まるで桜子のやったことが信じられない、と訴えているような目だった。
「あ・・・あ・・・ビッケにも見捨てられちゃった・・・。」
桜子の涙腺は最大まで緩められていたが、それでももう涙は出なかった。
悲しい、という感情だけが桜子の心を支配していて、どうしようもできなかった。

523作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/15(土) 23:24:31 ID:???



しばらくすると、桜子は病院の外に出ていた。
もうすぐ夏休み、という時期なので日の出ている時間は長く、風が少し冷たくなってきたいま
でも、太陽は岩場を照らし続けていた。
顔がどうとか、服がどうとかいう問題は、もう気にならなくなっている。
魂がすっぽりと抜けてしまった抜け殻のように、無表情のままよろけながら歩いていく。
崖から飛び降りて自殺するのかと思えば、そうではない。
人殺しのために遅めの立ち上がりを見せたのかと思っても、やはり違うようだった。
ときどき何かを言いたそうに口を開くが、その口からは何の言葉も出てこない。
足元の岩が崩れて転びそうになれば、それは運命だ、とでも言うかのようにそのまま転が
って、また立ち上がる。
あまりにも悲しみが深すぎた桜子は、何も考えることのない人形となってしまっていた。

こんなに悲しいなら自分も死んでしまえばいいのに。
でも死んだらあの世で2人になんて言えばいいのだろうか。
そんなことを考え続けているうちに、桜子の頭は完全に働かなくなってしまったのだ。
口で息をする音と桜子の足音だけが、小さく響いていた。
何も考えることなく、どこへ行こうというわけでもなく、桜子は歩き続けている。

桜子は、人形となってしまった――――

                    残り 15人

524作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/15(土) 23:27:26 ID:???
今日は以上です。
今日のところも、単純にゲームの2時間目の「瞬発力」の項目だけで
判断したものを書いたものです。
さきほどの指摘を受けて書きかえようかとも思ったのですが、いまさらかえるのも・・・
と思ったのでやめてそのままにしました。

では、また明日。
525マロン名無しさん:2007/09/15(土) 23:46:48 ID:???

桜子\(^o^)/オワタ
526マロン名無しさん:2007/09/16(日) 00:54:38 ID:???
乙!

アキラに続いて裕奈もアウトか……。
裕奈が銃で、アキラが鎌だったなら違った展開になったろうに……。
あとはいいんちょがどう動くか。楽しみでならない。
527マロン名無しさん:2007/09/16(日) 01:27:16 ID:???
裕奈は死んでない…?
最後の銃声はまき絵の物でしたって展開をwktkして待ってる

そんなことより桜子は未だ終わらんよ…
528マロン名無しさん:2007/09/16(日) 08:16:15 ID:???

チア好きだから桜子即死してなくてうれしいw
初生還してくれ〜
529マロン名無しさん:2007/09/16(日) 10:53:20 ID:???
これは桜子生存フラグ立ちまくりな気が…
530マロン名無しさん:2007/09/16(日) 14:55:02 ID:???
桜子好きだが個人的には生還して欲しくないと思う俺は異端
531作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/16(日) 20:59:59 ID:???
どうも。
本日の投下です。
532作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/16(日) 21:02:37 ID:???
64.Dancing on His Parm

すぐ近くで銃声が聞こえても、エヴァと茶々丸はそんなものはまったく気にせずにまっすぐ
本部に向かって歩いていた。
途中で狂っている風香を見かけ、向こうも気付いて襲ってきたが、禁止エリアへと逃げ込んで
しまうことで風香をかわすことが出来た。
2人の首に首輪はない。そのため、新田のいる校舎のあるエリア、E−6に入っても、2人が
死ぬことはなかったのだ。
「そろそろお出迎えが来てもおかしくないころだ。茶々丸、準備はできているか?」
「15人までなら迎え撃てますが、それ以上は少しきついかと思われます。」
「15人も一度に来ることはないだろう。任せたぞ。」
「わかりました。」
15人、というのは、茶々丸の支給武器のベレッタM92の装弾数と同じ数だった。
つまり、茶々丸は一発の弾で一人を撃ち抜いて殺せる自信があるということだ。
千雨と茶々丸がプログラムを作っていて暇だったときに、銃の説明書を読んでいたエヴァ
はそんなことを考えながら、自分のパートナーは頼りになるな、などと思っていた。

着々と本部に近づいている2人に誰も近づいてこないことに、2人は逆に疑い始めた。
何か罠が張ってあるのではないか。首輪など関係なしにゲームの参加者を殺す方法があ
るのかもしれない。
そう思えば思うほど疑いは強くなっていくが、それでも歩くのをやめなかった。
やめてしまっては何も変わらないことをわかっていたから。

もうゲームが始まってから半日以上が過ぎている。
一番最初に新田が言っていたことからすると、いままでのバトルロワイヤルでは1日で終わ
ることはほとんどなかったらしい。
それを考えると、エヴァは思いついた。
エヴァたちがこのまま本部を制圧してしまえば、相当早い時間で終わってしまうことになる。
そんなことは本部の側では予想していないから、まわりの森には見張りがいないのだと。
533作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/16(日) 21:04:44 ID:???

だが当然、本当は決してそんなわけではなかった。
すべてはある男の思惑通りに進んでいて、エヴァたちもその男の手のひらの上で踊っているに
過ぎなかったのだ。

それはいまから何十分か前――
「新田先生!! 子供が1人、こちらに向かっています!!」
「何っ!! それは誰だ?」
見張りをしていた兵士の1人が、校舎へと転がり込んできた。
かなり遠くから走ってきたのか、息が切れていてしゃべるのも精一杯といった感じだった。
兵士の様子を見て新田もあわてはじめるが、君と呼ばれていた人物だけはじっとその兵士
を見つめ、口元をゆるませている。
「わかりません。首輪をつけていなかったので生徒かどうかも判断できませんでした。」
「容姿は?」
「――背が小さくて長い金髪、ついでにロボットらしきものまで一緒にいた。違うかね?」
兵士とは違う場所から返事が返ってきて、新田と走ってきた兵士はそちらの方を向いた。
黒ずくめに白髭の、あの男だった。

「はい、その通りです。しかしなぜわかったのですか?」
「はっはっは。なぜ、か。私が悪魔だから、ということにしておこう。」
「ちょっとヘルマン伯爵、ごまかすのはやめないか。」

ヘルマン伯爵、それがその男の名前だった。
新田は彼の本当の正体を知らないので冗談だと思っているが、実際に悪魔なのである。
ネギと小太郎が2人がかりでなんとか倒した上位悪魔で、長いあごひげを生やしていた。
ネギに敗れて帰国したまではよかったが、まほら武道会のうわさを聞き、やはりもう一度
ネギと戦いたくなったので帰ってきてしまったのだ。
「なぜかなんてどうでもいいことさ。君、無線機を貸していただけますかな?」
ヘルマンは優しく、しかし断れない口調で兵士に話しかけ、無線を借りた。
今回のゲームのために雇われている兵士たちのために用意された、全員共通の無線機。
これで兵士たちは連絡を取り合っていた。
ふっと息を吹きかけてマイクテストのようにすると、無線の電源を入れる。
534作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/16(日) 21:06:19 ID:???

『見回りをしている兵士に告げる。いますぐ見回りをやめて校舎に帰ってくること。広間に
集合しなさい。くりかえす。見回り――』
「なぜだ? エヴァンジェリンと絡繰茶々丸がこちらに向かっているんだぞ?」
名簿で近づいてくる2人の正体を知った新田が、驚いて聞き返す。
エヴァはいいとして、茶々丸のようなロボットが入り込んできたら大変なことになる。
それだけは避けたかった新田は、さらに見回りを強化すべきだと考えていたところだった。

「彼女たち以外にはできないことをやろうとしている。やってくれたあとで、確実に仕留めれ
ばいいだけの話だ。いま兵士に向かわせては、いくら彼女らでも死にかねない。」
この島のあらゆるところには盗聴器がついていて、そこから取れた内容はすべてへルマン
のところに届いていた。
そのためいまエヴァと茶々丸がこちらに向かっていることも、本部を襲撃して結界を落とそ
うとしていることも、すべて筒抜けになっているのだ。

ヘルマンの目的はネギと戦うこと。そのためには、兵士たちの犠牲など惜しくもなんともな
かったし、生徒たちの命もどうでもよかった。
結界を落とさせて、パクティオーカードでネギに連絡を取らせたあとに殺してしまえば、何
の心配もせずにネギがくるのを待っていればいいだけである。
ヘルマンの考えがまったく理解できない新田は、ただ悩むだけだった。


「ここが本部か・・・。」
「マスター、そんなわざとらしいことを言わなくても、出発した校舎です。」
「わかっている!! 戦いには雰囲気が大事なのだ。わかるか?」
「はい、マスター。すみません。」
「ふう、準備はできているだろうな?」
「もう大丈夫です。」
校舎の目の前の草むらの陰で、誰もいない入り口を見つめていた。

                    残り 15人
535作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/16(日) 21:09:27 ID:???
65.Decisive Battle (Last Game)

上半身には防具があるから、下半身を狙わなければいけない。
ご丁寧に首までマフラーのように守っている金網があるので、下半身以外は狙えなかった。
だが下半身を切ろうとするためにはどうしても体勢が低くなる。
ハルナは下だけ注意していればよかったし、刹那が近づいてきた時には自分の足元の少し先
に撃つような感覚で発砲すれば、それ以上進むことはできなくなる。
圧倒的に不利な状況の中、刹那は耐え続けていた。
明日菜のいる岩の陰からだんだんと血が広がってきているのを横目に、反撃することすら
できない刹那は自らの死をも考えに入れ始めた。

だがそうしてできた一瞬の隙を、ハルナは見落とさなかった。

「やっと、終わる。」
ハルナは銃口を刹那の頭に突きつけて、刹那の顔が恐怖にゆがむのを見届けた。
「なかなか強かったけど、残念でした。」
引き金に手をかけ、あとちょっとで頭が吹き飛ぶ。
刹那の方も、ついにこのときがきてしまった、と悔やむばかりだった。

――だがそんなときに。

「やめるですハルナ!!」
「ハルナ!! もうやめて!!」
「!!」
突然夕映とのどかの声が聞こえ、ハルナの動きが止まる。
夕映はさっき明日菜たちが逃がしたはず。
それなのになぜ夕映がここにいるのか不思議でたまらなかったし、その夕映がのどかを
つれて帰ってきたことに微妙な腹立たしさを感じ、また最初からゲームに乗ってしまった
ことを後悔する気持ちも生まれた。

536作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/16(日) 21:11:25 ID:???

こんなに長い間殺し合いが行われていたのに、真っ先にやられてしまうだろうと思っていた
親友ののどかと夕映が生きていたのだ。
最初の判断をコインなんかに頼らずに、友達を信じてゲームを壊す側に回っていたら今の
ようなこんな気持ちにならなくてすんだのかもしれない。
同じ展開になっていたとしたら、ハルナはいま親友との再会を素直に喜べたに違いない。

刹那に向いている銃口がわずかに震え始める。
のどかと夕映の姿が見えないからまだ耐えられるものの、2人の悲しそうな表情を見てか
らでも殺していく決意が揺らぐことはないだろうか。
すでに五月を殺してしまっていて、さらに明日菜まで自分のせいで死に掛けている。
その上ここで刹那を殺しているのを見られたら現行犯だ。
それなのにこれから、一緒にゲームをぶっ壊そう、なんて言ったって、信じてもらえるわけがない。
自分は乗る、と決めてしまったからには、最後まで殺す側でい続けなければならない。
だがのどかと夕映を見てしまったら、そんなことは絶対にできなくなってしまうだろう。
いつもと変わらず2人で仲良く私に訴えかけてくるのに、正気でいられるはずがないのだ。


「刹那さん・・・私はあなたを殺さない。今度会ったら殺すかもしれないけど。」
ハルナは震え続けていた手でしっかりとサブマシンガンを握りしめ、それを刹那に向けたまま
後ろ向きに刹那から離れていく。
「私には、夕映とのどかを殺すことはできないからいったん引くことにした。命拾いしたね、
刹那さん。」
最後の別れ際のセリフで、カッコつけて怖いことを言おうと思っていたのに、声が震えてしまって
ふざけているようにしか聞こえなくなってしまった。
目頭が熱くなっていくのを必死でこらえながら、刹那との距離が十分になるとハルナは背中を向け、
森の中へと走っていった。
537作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/16(日) 21:13:16 ID:???

「早乙女さん・・・悩んでいたのですね・・・。」
追いつこうと思えば追いつける距離だったが、刹那はそこから立ち上がることができなかった。
ハルナが悩んでいたことも気付けずに、ただ戦って止めることしか考えていなかった自分
への嫌悪が募っていき、やがて絶望へと変わる。
ハルナの心を救うことはできなかった。
しかも、明日菜には助けてもらったのに、明日菜を助けることはできなかった。
自分のせいで、2人のクラスメイトを守ることができなかったのだ。
そう思えば思うほど、自分の力のなさを実感させられるのであった。
他人を守れる力は持っているはずだったのに、そのために修行をしてきたのに、結局なん
にもならなかった。
中途半端な力で、自分に変な自信を持ってしまっていたことが、敗因にも思えてしまう。

「せつ・・・なさん――」
明日菜のいる岩からのどかの声が聞こえる。
ハルナはもう行ってしまったが、夕映とのどかはまだこの近くにいるようだ。
姿が見えなかったのでどこに隠れているのかと思ったが、明日菜と一緒に岩に隠れていた
のか、と勝手に思い込んだ。
「のどかさん、ごめんなさい。早乙女さんを止められなくて――」
「違う――」
「えっ!?」
普段ののどかからは考えられない、強い口調で否定された刹那は、戸惑ってしまった。
ゆっくりと岩の方に歩いていたが、足を速める。
だがその岩の後ろにいたのは、戦闘開始前と同じ、明日菜しかいなかった。
明日菜は岩に寄りかかって、速い呼吸をしている。
足からはまだ血が出ていて、そのせいか顔は真っ青になってしまっていた。
何回か人の死を見てきた刹那が見れば、明日菜はもう助からないことは一目瞭然だった。
538作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/16(日) 21:16:22 ID:???

「アスナさん、すみません。」
「――なに言ってんのよ・・・刹那さんが謝ることなんてなにもないわよ――」

それはのどかの声だった。
明日菜から発せられている声は、確実にのどかのものだった。
そして明日菜が握りしめていたのは、殺虫剤と同じような缶。
「なっ・・・」

そこで、刹那はすべてを悟った。
夕映とのどかなんていなかった。明日菜が声を変えてしゃべっていただけ。
最後の最後まで、明日菜は刹那のことを守ってくれたのだ。

「これが・・・私の武器だった――」
意識が朦朧とし始めているようだ。声にも元気がなく、目は閉じている。
「明日菜さん、本当に、ありがとうございます。」
刹那は涙でもう何も見えなかった。
感謝、悲しみ、自己嫌悪。
何もかもが心で混ざり合って、すべての結晶として涙があふれてきてしまう。
「最後に――役に立ててよかった――」
手がだらりと下げられ、首が力なく横に傾く。
「じゃあね――刹那さん――ネギを――守ってあげて――」

   出席番号8番 神楽坂明日菜 死亡
                    残り 14人

539作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/16(日) 21:18:35 ID:???
今日は以上です。
では、また明日。
540マロン名無しさん:2007/09/16(日) 21:21:56 ID:???
乙!いやGJ!!
完全に変声スプレーの存在を忘れてたよ
アスナにここまで感動したのは初めてだ!
541マロン名無しさん:2007/09/16(日) 21:23:36 ID:???

明日菜テラカッコヨス
全俺が泣きますた
542マロン名無しさん:2007/09/16(日) 21:43:50 ID:???
乙。
なるほど!って感じだな
543マロン名無しさん:2007/09/16(日) 23:41:48 ID:???
足の刺傷で…と思わなくもなかったが、動脈を傷つけてたのかな。
ヤン・ウェンリーも腿を撃たれて失血死したわけだし。
544マロン名無しさん:2007/09/17(月) 00:05:16 ID:???
確かギリシャ神話のアキレスも足射られてしんだんだぜ
そんな事より明日菜セツナス…
545マロン名無しさん:2007/09/17(月) 00:41:59 ID:???
心臓より下にある足で動脈をヤッちまうのはすぐ処置をしないとまずいからな・・・



とりあえずまだ裕奈は生きているのか。話の流れからして、死ぬ直前をちょっと触れて死亡って所か?
いや、それともあいつが、ああして・・・
まぁ明日も楽しみだな(藁
546マロン名無しさん:2007/09/17(月) 15:02:31 ID:???
とりあえず乙!感動した!
547マロン名無しさん:2007/09/17(月) 16:07:01 ID:???
ヘルマンもわざわざこんな回りくどいことしないで直接ネギに勝負挑めばいいんじゃね?
と思うのは俺だけ?
548マロン名無しさん:2007/09/17(月) 16:15:18 ID:???
>>547
ヘルマンは元から回りくどい性格をしているからじゃん?
単行本でもそうだったし
549マロン名無しさん:2007/09/17(月) 18:10:16 ID:???
本編のは回りくどいっていうより必要なお膳立てだと思ったが
550マロン名無しさん:2007/09/17(月) 18:34:31 ID:???
悪魔ってのは人間の絶望やら恐怖が好物だから、
バトロワにしたのは趣味と実益を兼ねてるんだろ
551マロン名無しさん:2007/09/17(月) 20:34:44 ID:???
お前悪魔のことに何で詳しいんだよ……怖いよ…
552作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/17(月) 21:03:18 ID:???
どうも。
ヘルマンの動機については後にも書いてありますが、
ネギを怒らせて本気で戦いたいということから、バトロワを選んだという設定です。

本日の投下です。
553作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/17(月) 21:04:53 ID:???
66.Courage to Say

太陽が西に傾き、沈もうとしている頃――
偽者の夕映とのどかによって刹那が助けられた頃――
「そろそろです。」
楓から譲り受けたのどかの首輪探知機のおかげで見回りを立てる必要もなく、夕映と亜子
とのどかは、丘陵地の端にある洞窟の中で安全に体を休めていた。
つい先ほどまで行われていた刹那、明日菜とハルナの決闘の結果は夕映たちにも大きく
影響を及ぼすもので、その結果はもうすぐ始まる第3次放送によってわかる。
刹那と明日菜がハルナを殺してしまったとしたら、その事実を受け止める覚悟はしていたし、
明日菜と刹那が死んでしまっていたとしたら、自分を捨ててでもハルナを止めようと決心していた。

亜子はともかくとして、夕映とのどかにとってハルナは親友。
その親友に殺されるかもしれないというのはとても辛いことだったが、ハルナがたくさんの
友達を殺していくことを知るのはそれ以上に辛い。
だから悲しくひどいことだとわかっていながら、夕映ものどかも、放送でハルナの名前が
呼ばれることを望んでいた。
一方で亜子も、夕映たちを気の毒に思い同情すると同時に、裕奈、アキラ、まき絵の名前
が呼ばれないことを心から願っていた。

「おかしいですね。もう午後6時は過ぎてるです。」
3人でそれぞれの時計を見やるが、みな18時3分を指していた。
「誰も死ななかったんと違う?」
放送がなければその線もあり得る。
だが――
「それはないと思いますー・・・。こんなこというのも難ですけど・・・。」
「私もそう思うです。それに、誰も亡くなっていなかったとしても禁止エリアの発表はするはずでは?」
誰も死なない、そんな夢のようなことが起これば最高だが、そんなことはあり得ない。
クラスメイトを疑うわけではないが、いくらなんでも無理なものはある。
悲しい現実だった。

554作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/17(月) 21:07:13 ID:???

それからしばらくたってから――
『ただいまより、3回目の放送を行う。諸事情により少し遅れたことは一応お詫びしておこう。
では、始める。』
前の2回とは違って音楽なしに突然始まったのでびっくりしたが、すぐに名簿と地図を取り出す。
「諸事情・・・ってなんやろね。」
「誰かが本部に入ったのかもー・・・。」
「とりあえずいまは放送を聞くです。考えるのは後でもできます。」
『死亡者は番号順に言う。まず6番の大河内アキラ――』
「アキラ!! そんな、嘘やろ・・・。」
『7番の柿崎美砂、8番の神楽坂明日菜――』
「アスナさんっ!! ということは刹那さんも――」
『11番の釘宮円、18番の龍宮真名、19番の超鈴音、20番の長瀬楓 以上7名。』

3人とも、唖然としていた。
夕映とのどかは、真名、超、楓と戦闘のプロがたくさん呼ばれたことに対して、亜子は親友
のアキラが呼ばれたことに対して、耳を疑った。
そしてさらに、明日菜だけが死んでしまって、刹那とハルナがどちらも生きているということ
に、なにが起こったのか考えていた。
その後も禁止エリアの発表があったが、島の端の方ばかりで、まったく関係がなかったの
で聞き流した。

「うう、アキラ・・・。」
「亜子さん・・・。」
夕映がなぐさめるように亜子の頭に手を置く。
亜子はずっと顔に手を当てて泣き続けていた。

「――亜子さん、私は、楓さんと一緒にいたんです・・・。」
のどかがおもむろに話し始めた。下を向いて、ひとりごとを言うような声で。
それを聞こうと思い、亜子は少し顔を上げた。
「さっきも言いましたけど、この首輪探知機も楓さんにもらったものです。それで、楓さんも、
いまの放送で呼ばれていました。」
555作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/17(月) 21:09:16 ID:???

夕映も耳を澄まして聞いていた。亜子も泣き止んで、のどかのその悲しそうな声をじっと
聞こうとしていた。
洞窟の中は静かで、のどかの声だけが響く。
「楓さんは、千鶴さんを殺してしまった超さんを止めに行く、と言って私と別れました。いま
の放送だけから判断すると、超さんを止めるのは成功した、でも楓さんも死んでしまったと
いうことだと思います。私があの時に、楓さんについていったら、何かできたかもしれない。
楓さんは死ななくてすんだかもしれない。」

若干、のどかの思い込みで事実と違うところがあった。
そんなことはのどかにはわからないわけだが・・・。
のどかは泣いていた。最後の方は涙声になりながらも話した後、長い間があった。
夕映と亜子はいままでずっと一緒にいて、小屋にこもって、危なくなったから逃げてきたと
いうだけしかしていない。
それに比べてのどかは、遠くから銃で狙われる、助けられる、人の死を見る、友と別れる、
そして親友と再会する。
この島の経験においては、のどかは夕映たちよりずっと多くのことをしてきていた。
性格上言いたいことをまっすぐに人にぶつけることは得意ではないが、それでも必死に亜子
へ自分の意見を伝えようとしている。
夕映はそれを察していた。ネギへの告白と同様に、彼女にとって一番の勇気を振り絞って
話しているのだ。
「私は後悔しています。だからこそ、いまからハルナのところへ行きます。自分が何もしない
で人が死んでいくのはもう耐えられないから・・・。悲しいのも悔しいのも、みんな同じです。
でもそれをバネにして成長できれば、きっと私は変われると思います。幸い、私とゆえには
ハルナが、亜子さんには裕奈さんとまき絵さんがいる。2人を死なせないためにも、いまは動く
べきだと思うんです。私、間違ってますか・・・?」

556作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/17(月) 21:10:39 ID:???

のどかは顔を上げ、まっすぐ亜子の目を見た。
つまりのどかの言いたいことは、私たちはハルナのところへ行くから、亜子はまき絵と裕奈を
探しに行け、ということだ。
もう二度とこんな思いをしなくてすむように、2人のところに行って守ってやるべきだと。
もちろんのどかは亜子と別れたいわけではないし、亜子ものどかたちと別れるのはすこし
不安があった。
けれどのどかの言うことは確かにあっていたし、それが一番だと思った。

「――そうやな。ありがとう本屋ちゃん。ウチはまき絵たちを探しに行く。」
「うん。」
後悔先に立たず、だ。アキラと同じようなことが起こらないように、まき絵たちと早く合流する
ことが大事だということを教えられた。
隣の席で、いつも消極的で口数が少ないと思っていたのどかに、説教を食らうなんて思って
もみなかったが、それで亜子の心は戻ってきた。
「では、この首輪探知機は亜子さんに渡した方がいいですね。」
ずっと黙って話を聞いていた夕映が口を開き、言葉の通りそれを亜子に渡す。
「ありがと夕映。絶対に死んだらあかんよ。またあとで会うんやからな。」
「わかってるです。また、絶対に。」

2人は北へ、1人は東へと歩いていく。
夕焼けも消えかかり、そろそろ夜になろうかという時間、3人は友を守るため、再び動き出した。
再び出会う約束を交わして・・・。

                    残り 14人


557作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/17(月) 21:12:20 ID:???
67.Heartless

ザッザッザッという音に、木乃香とまき絵は近くの草むらに身を潜めていた。
まったく警戒心がない足音で、どんどんその足音の発生源は近づいてくる。
2人とも心臓が壊れそうなくらいバクバクしていて、その音で相手に気付かれてしまうので
はないかと思うほどだった。

木乃香はボウガンを構えていて、まき絵も銃を持っている。
相手が戦う気だったとしたら、すぐに戦闘に入る準備はできていた。
落ち葉を踏みしめながら歩いている音は、まるでゲームで優勝するという自信に満ちている
ような、勝ち誇った足音に聞こえる。
草と草のすき間から相手の姿を何とか確認しようとするが、草が密集しているためよく見えなかった。
真名とのことがあったため、2人は乗っている人ならば容赦なく殺すと誓っていた。
その足音と、相手は1人でいる、ということから乗っている可能性が高いと思い、最初から
ボウガンか銃で攻撃して殺してしまうという方法もありだと思ったが、2人はほんの少しでも
可能性が残されているのならば、それに賭けようと決めたのだった。
もし不意打ちで殺してしまって、それが乗っていない人だったとしたら、いくら悔やんでも悔やみ
きれないくらいの後悔が襲ってくるだろう。
それならば相手の真意を見極めてから、考えて行動しても遅くはない。

どうにかして音を立てずに草を掻き分け、相手を見ようとしている間にも、ずんずん進んで
くるその足音は、ついにまき絵たちの草むらのすぐ前を通ろうとしていた。
当然気付かれるだろうと思っていた2人は、全神経を足に集中させていつでも相手の攻撃
から避けられるように身構える。
558作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/17(月) 21:14:15 ID:???

敵はどんな武器かはわからない。
だがどんな武器であっても、防弾チョッキにボウガン、ナイフ、デザートイーグルがあれば、
反撃することは可能だ。
刹那や亜子であることをほんの少し期待しながら、それでも相手に警戒する気持ちは捨て
ずに、必死にその瞬間を待った。
気付いたら攻撃してくるだろうか、話しかけてくるだろうか。
考えていることは多いけれど、時は一瞬だった。
しかし、そんなことを考えているうちにも、足音の犯人はまき絵たちには気付かずに、前を
通り過ぎてしまった。

「あれ・・・?」
「行ってもうたなぁ・・・。」
自分たちの前を、右から左へと通っていった気配を感じ、2人は安心した。
そっと身を起こし、敵の後ろ姿を見てみると、それは、
「桜子!!」
17番の椎名桜子だった。だがまき絵が呼んでもまったく振り向く様子はなく、ただ前に進む
ことしか考えていないようだった。
クラスの一番のムードメイカーである桜子がゲームに乗るはずがないと思って、返事をしな
かったのは耳をやられてしまっているせいだ、などと勘違いした。
桜子なら一緒に行動していても信頼できる仲間だ。
刹那や亜子がどこにいるか、ということも知っているかもしれない。
2人は、転びそうになりながらも歩き続ける桜子に追いつき、彼女の前に出る。
両手を広げて通せんぼし、存在をアピールしようと思っていたのだが、桜子の姿を見た瞬間
にそんな思いはどこかへ吹き飛んでしまった。
「ひぃっっ。」
アキラ、ハカセ、美砂、円の返り血の赤。折れた鼻。
そして手に持つのは美しいくらい真っ赤に染まったナイフ。
そのすさまじい色と姿に、2人は何も言うことができなかった。

559作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/17(月) 21:16:06 ID:???

だが2人が怯えているのも関係なしに、桜子はただ歩いていた。
前に立ちはだかる人など見えていないかのように、まっすぐに歩く。
そのうちまき絵と木乃香がいるところまで歩き、立ちすくむ2人が桜子の進路の邪魔になった
ので、桜子は右手に持ったナイフを乱暴に振り回した。
表情はまったく変わらず、ただ腕だけが空を切る。

「痛っ!!」
「このかっ!!」
ナイフは木乃香の左腕にかすり、軽い切り傷を作った。
またしても赤い鮮血がナイフを染めていく。
しかしそんなことはお構いなしに、木乃香が驚いて飛びのき、それによってできた道をただ
進んでいく桜子がいた。

殺す気はなかったようだ。それどころか、何の気持ちもなかったようだ。
「桜子っ!! 待ちなさいよ!!」
木乃香を傷つけたことが許せないまき絵は、止まらない桜子を呼び止める。
それを聞いても何の反応も示さない桜子に、だんだん怒りが募っていった。
「まきちゃん!! ウチは大丈夫やから。」
「でもこのかは何もしてないのに桜子はこのかを傷つけた。ひどいことだよ!!」
「桜子にもきっと何かの事情があったんや――」

『ただいまより、3回目の放送を行う――』
「なっ・・・。」
あまりに微妙なタイミングだったため、2人とも気が抜けてしまった。
その間に、放送を聞く気などさらさらない桜子は歩いてどこかへ行ってしまった。

――7人もの死者が呼ばれた、長い放送。
それが終わると、木乃香は桜子があんなになってしまったわけがわかった気がしていた。
桜子といえば、チアリーダー。
そのチアリーディングを一緒にやっているのが美砂と円で、3人はとても仲のいい親友。
その2人の名が、いまの放送で呼ばれた。
560作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/17(月) 21:17:28 ID:???

もしかしたら2人の死体を桜子は見てしまい、あまりの悲しさに自我を失ってしまったの
ではないだろうか。
桜子が2人を殺したなどとはまったく思わない木乃香は、そう考えたのだ。

――だがまき絵は違った。悲しんでいた。
美砂の名が呼ばれたなどと考える前に、もっと大事なことがある。
アキラが死んでしまったということだ。
桜子を追いかけてなぐさめてあげようと木乃香が思っている中、まき絵は座り込んで、顔を
手で覆って泣いてしまっていたので、桜子は放置されてしまった。

まだ桜子の直進は止まらない。

                    残り 14人

561作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/17(月) 21:18:45 ID:???
今日は以上です。
では。
562マロン名無しさん:2007/09/17(月) 22:55:58 ID:???
桜子禁止エリアに特攻か?
又々華がある死に方だな
563マロン名無しさん:2007/09/18(火) 00:22:49 ID:???
おつかれ
誰か桜子を助けてやってくれ...
564作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/18(火) 21:01:03 ID:???
どうも。
本日の投下です。
565作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/18(火) 21:02:55 ID:???
68.Reason to Kill

パンッ
一発の銃声と共に、裕奈の体から力が抜けた。
「あさ、くら・・・。」
ルパン愛用の銃、ワルサーP38が銃口から煙を上げて、朝倉の手に収まっていた。
裕奈の体には3発もの銃弾がつき刺さり、血が噴水のように出続けている。
動脈をやられてしまったようだった。
「なんで・・・?」
裕奈を真下に見下ろすような位置に移動した朝倉は、見下ろすというより見下す、といった
感じの目つきで裕奈のことを見ていた。
「なんでって、そりゃ生きたいからだよ。」

その言葉をかき消すかのように、朝倉が答えるのと放送が始まるのは同時だった。
そのおかげで朝倉の理不尽な答えは裕奈の耳に届くことはなかったが、その代わりにもっと
理不尽な親友の死を聞かなければならなくなってしまった。

――朦朧とした意識の中、なんとか聞いた裕奈にとって最後の放送。
その放送で最初に呼ばれた名前、大河内アキラ。
いまいる場所で、また会おうと約束したのに、アキラは先に死んでしまっていたのだ。
誰に殺されたのかはわからない。たぶん風香だろうが、いまここにいる朝倉が殺したのか
もしれない。自殺したのかもしれない。
でもそのどれだったとしても、裕奈にとってアキラが死んでしまったということ自体が大きな
意味を持っていた。
信じていたのに、という裏切られたような感じと、自分も一緒にアキラといればよかった、
という後悔が交互に押し寄せてくる。
最後までアキラと一緒に生き残ろうと決めていたのに、そのアキラが死んでしまったことで
裕奈の生きることへの執着心が薄れてしまっていた。
566作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/18(火) 21:05:13 ID:???


ゴホッとせきをすると、口からは血の塊が出てくる。
もう自分が死んでしまうということくらい、裕奈にもわかった。
「アキラの、嘘つき・・・。」
「もういい? 楽にしてあげるよ。」
「バスケ、もっとやりたかった――」

最後の銃声。
ワルサーが火を噴いて、弾は裕奈の頭に一直線に飛んでいった。
眉間を撃ち抜かれて、裕奈の苦しそうだった息は止まり、体中がぐったりする。
アキラのことを思い続けていて、悩んでいる顔のまま、動かなくなった。

「裕奈は殺した、と。さっきもう一人声がした気がしたけど・・・誰だったっけ?」
「私です。朝倉さん、私はあなたを絶対に許しませんわ。」
やっとのことで裕奈のところにたどり着いたあやかは、ものすごい剣幕で朝倉をにらみつけていた。
本気で怒るあやかをはじめて見た朝倉はすこし焦ったが、すぐにさっきまでの余裕の表情になった。

「なぜ乗ったのか、答えなさい。」
「あーそういえばいいんちょだったっけ。クラスの意見をまとめられないいいんちょは委員長
として失格なんじゃない?」
にたにた笑いながら、朝倉はあやかの存在を否定する。
いつものあやかなら深く落ち込んでもおかしくないようなことだが、いまではその言葉は何の
意味もなさなかった。
「そんなことは聞いていません。なぜ殺し合いをしているのか答えなさいと言ったんです。」
声に力を入れて怒鳴りつけるように問いただす。
「裕奈にも聞かれたよ。生きたいから、それじゃ不十分?」
対する朝倉はいつまでたっても怒りを見せず、焦りも見せなかった。
567作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/18(火) 21:07:32 ID:???

「自分のためなら人を殺してもいいと、そう思っているのですか?」
「もううるさいんだけど。そろそろ黙ってくれない?」
ワルサーをあやかに向けて構える。どうせいまから殺す人に、いつまでもくだらない説教を
食らっている暇なんてない。そう思ったのだ。

「撃てるなら撃ちなさい。私にはなぜそんな簡単に人を撃てるのかがわかりません。裕奈
さんが何かしましたか? 何もしていないのに見ただけで撃つなんて――ああっ――」
またしても、乾いた銃声が響き渡った。
腹にあたり、あやかは撃たれた所を押さえてうずくまってしまう。
痛がる時間すら与えないように、またもう一発撃つ。
今度は右肩に当たって、同じような悲鳴が上がる。
その悲鳴ですら、朝倉には雑音としか受け取れず、早く殺してしまいたいと思った。

「簡単に撃つ理由? 私も最初は少しは抵抗あったよ。でも楓のときみたいに死に際でごちゃ
ごちゃ言われると、心がゆらいじゃってね。1回乗るって決めたんだから、それを変えるわけに
はいかないじゃん? だから出会った人は速攻で殺すって決めたんだ。それが理由かな。
なんだかんだで裕奈もいいんちょも話を聞いちゃってるけど。」
悔しかった。朝倉の言っていることはすべてが間違っている。それなのに、それは間違って
いる、と言って正すこともできない。

肩と腹を押さえながら、視殺してやろうといわんばかりの視線でじっと朝倉を見ていた。
背中にかけてある斧を取り出そうかとも考えたが、やめた。
どうせすぐに朝倉に止められる。そして殺される。
朝倉は変わらずの顔で、もう一度銃をあやかに構えて、もう最後だという目で見た。
だがすぐには撃たなかった。
あやかの先の草が、かすかに動いたから。
朝倉の視線がずれたのに気付いたあやかも、何があるのかと後ろを振り返る。
そこからは、片手に銃を、片手に鉈を持った狂人が出てきた。
「風香さん・・・!!」
「あー風香かー。そういえば狂っちゃってるんだよね。」
568作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/18(火) 21:08:37 ID:???

狂わせた本人が言う。そんなことはあやかは知らなかったが、いまの朝倉の態度からすぐ
に、風香が狂った原因は朝倉にあると気付いた。
「風香さんに何を――」
「あんたはうるさいっつってんだよ。黙ってて。」
いままで走ってきたのだろう。風香は少し息が切れていた。
裕奈を追いかけてここまできたのだが、あやかを見つけてしまったので先に殺そうと思って
いるらしい。

「あ、じゃあいいんちょは風香に任せるわ。私は他の人のところも行かなきゃいけないし。」
向けていた銃をしまうと、朝倉は荷物を持って反対を向いた。
「せいぜい死なないようにがんばりなよ。われらのいいんちょさん。」
そう言い残して、朝倉は南へと向かっていってしまった。
そこにはあやかを見つめる風香と、風香を見つめるあやかだけが取り残された。

   出席番号2番 明石裕奈 死亡
                    残り 13人

569作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/18(火) 21:10:37 ID:???
69. Exploring Library Club’s Member

亜子と別れたときに、救急バッグと首輪探知機を渡した代わりに亜子が持っていた銃を
もらった夕映は、しっかりと説明書を読んでおいた。

いまから行くのは、乗っているハルナのところ。
少なからず発砲しなければいけないのはわかっていた。
1時間ほど前にかかった放送から考えると、ハルナはおそらく明日菜を殺している。
さらにいまは刹那vsハルナの対決がくり広げられていると考えるのが一番自然だ。
自分たちが行ってなにができるかはわからない。
ハルナが、正しい考え方ができるような正常な精神に戻ってくれればそれが一番だが、
それが無理だったとしてもハルナには決断を迫らなければいけなかった。
もしかすると会った瞬間に撃ち殺してくるかもしれない。
でもそうだったとしたら、反撃する、撃つ、つまり殺し返しにかかるつもりだった。
自分たちに会って何の感情も抱かないようだったら、それはもう手遅れであり、死ぬまで
人としての心を持つことはなくなってしまうだろう。
ハルナがクラスメイトたちを殺していくよりは、自分たちでハルナを殺してしまうほうが楽だった。

だが夕映とのどかはそんなことは絶対にないと信じていた。
自分で言ってもおかしくないくらい仲良く、親友として2年間以上も付き合ってきた友達に
会って、心が痛まないはずがない。
いままでに何人殺しているかはわからないが、その行動に少しでも躊躇するところがある
ならば、自分のしていることに対して信じられないと思うのが当然。
殺されてしまうかもしれない、というほんのわずかな恐怖も心の奥底にありながらも、自分
たちが行けばハルナは殺すのをやめてくれるかもしれない、という希望があったからこそ、
夕映たちは洞窟から出てきたのだ。

570作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/18(火) 21:12:15 ID:???

殺し続けて、1人になったところで優勝して家に帰る。
そのつもりでこの島に来てから過ごしてきた状態で、自分で殺したくないという人物2人に
出会ってしまったら、ハルナが悩んで苦しむのはわかっていた。
でもその苦しみを乗り越えさせなければ、ハルナは一生苦しむことになる。
話をして、苦しませて、悩ませて、その結果が吉となればよし、凶となれば撃つ。
自分の思い通りにさせるためのこの上ないのエゴだったが、それしか方法がなかった。


さっき洞窟の中で3人で話し合ったこと。
あの時は、のどかは夕映が死ぬのは嫌だと言って、ハルナのところに行くのはやめた。
夕映とハルナで、夕映を選んでしまった。
でももう一度考えてみて、やはりその選択は間違っていると気付いた。
どちらか一方しか選べないわけではない。どちらも選んでしまおう。
それが一番いい答えであり、最初からそうすべきだったのだ。
さっきは夕映のことをはたいてしまったけれど、本当は自分がはたかれる側だったはずだ。
のどかは自分のおろかな考えを恥じ、改めて夕映の正しさを思い知らされた。
真の親友ならば、自分を捨ててでも守ろうとするのが当たり前のことだったということを
夕映に教えられた。

「ゆえ!!」「のどか!!」
2人がハルナに気付き、互いに叫ぶのはほぼ同時だった。
丘陵地を抜け、草原をしばらく歩き、堀のような段差を飛び越えて、1本大きな木が生えて
いる場所で。
ハルナは1人で座り込んでいて、相変わらずのサブマシンガンを傍らにおいていた。
遠くからでもよくわかる髪形で、夕映たちから見るとハルナの背中が見えている。
刹那と一緒にいるものだとばかり思っていたので最初は信じられなかったが、徐々に近づ
いていくにつれてそれがハルナだということは確実にわかっていった。
できるだけ足音を忍ばせながら少しでもハルナの近くに行こうと進んでいく。
夕映ものどかもひと言もしゃべらずに、ただ心臓だけが音を立てているように感じた。

571作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/18(火) 21:13:51 ID:???

だが――――
バキッ
「あっ!!」
のどかの特性、ドジっ子。
のどかは地面に落ちていた木の棒に気付かずに思いっきり踏んづけてしまった。
当然、その音を聞きつけたハルナは振り返り、そのままサブマシンガンを構える。
しかしそのハルナの顔を見た夕映とのどかは、声を失ってしまった。

泣いていたのだ。
明日菜がだましたせいで夕映とのどかが刹那のところにいたと勘違いしたハルナは、自分の
醜い姿を親友に見られてしまった絶望感から、涙を流していた。
相手の顔を見ても、ハルナは銃を構える手をおろしはしない。

「どうして、ここにいるの?」
涙声で聞いてくる。ひさしぶりに見る顔、ひさしぶりに聞く声。
何もかもが懐かしかった。そして、何もかもが悔しかった。
素直に再会を喜べたらどんなに楽だっただろう。
3人が、そう思っていた。

「ハルナを、止めるために。」
「あなたの本当の気持ちを聞かせてください。なぜ・・・乗ったのですか?」
沈黙が訪れる。誰もしゃべらない。
ハルナもしゃべらなかった。
こんな風に、ゲームもそろそろ終盤というころになって、3人で無事に出会えるなんて思って
いなかった。思っていなかったからこそ、ハルナはコインなんかで運命を決めた。
そんなこと、言えるわけがない。
572作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/18(火) 21:15:23 ID:???

「私は、いま後悔してる。」
ハルナが放った言葉は、夕映への答えではなかった。
だがその言葉をきっかけに、3人の間に緊張が走った。

細い月が、荒れ果てた地面をやわらかに照らしている。
まるでこれからはじまる宴を祝福するかのように・・・

                    残り 13人
573作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/18(火) 21:17:09 ID:???
今日は以上です。
では、また明日。
574マロン名無しさん:2007/09/18(火) 21:18:20 ID:???
うわぁぁぁああああ!!!気になる、続きが気になるよ〜!
GJ!!!!
575マロン名無しさん:2007/09/18(火) 23:51:30 ID:???
誰が残ってんだっけ?
576マロン名無しさん:2007/09/19(水) 00:13:03 ID:???
あやか、まき絵、夕映、亜子、桜子、刹那、風香、朝倉、木乃香、ハルナ、のどか、エヴァ、茶々丸…かな?
577マロン名無しさん:2007/09/19(水) 02:26:38 ID:???
投下乙
チア部の次は図書館組か、悲し過ぎるぜ
578マロン名無しさん:2007/09/19(水) 14:19:51 ID:???
乙です
やっぱ和美はマーダーが絵になるな
純粋にかっけー
579作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/19(水) 21:23:16 ID:???
どうも。
本日の投下です。
580作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/19(水) 21:25:19 ID:???
70.Player and Chess Piece

「行くぞ、茶々丸。」
「はい、マスター。」
ワイヤーを持ったエヴァとベレッタを持った茶々丸が、校舎の入り口へと走り出す。
周りにも誰にもいなかったし、校舎の入り口にも誰もいなかった。
何かの罠が張ってあることは確実だと思いながらも、それを考えて何かをできるわけでも
なかったので闇雲に突っ込むことにした。
軽い障害なら茶々丸が簡単に吹き飛ばしてくれる。
信頼できるパートナーと共にいれば、怖いものなど何もない。
エヴァはそう自分の心に言い聞かせていた。
若いころに何百人、何千人もの人を武器もなしに殺してきたではないか。
それだけで自信につながったし、なによりいまは茶々丸がいる。
足の速さは10歳の少女のままだったが、その体からにじみ出る気迫は何百年も生きてい
る年の功を感じさせていた。

校舎の中に入っても、誰一人として人はいなかった。
どこかに隠れている気配もなく、近くには本当に誰もいないようだった。
せっかく気合を入れてきたのに、空回りだ。
「なぜ誰もいない?」
入り口から入ってひとつひとつの部屋を見てまわり、スタートした教室もその中にあった。
乱雑に置かれた机に、ルールが書かれた黒板。
やけにリアルな空間がそこにはあったが、そんなものに気を止めている時間はない。
誰もいないのに、誰かが来るのではないかという不安と戦いながら、急いでいろいろな部屋
のドアを開けてまわった。

この島にひとつしかない学校というだけあって、校内は広く作られていた。
教室は30近くあり、蛇口やトイレなど、水まわりもしっかりしている。
体育館もついており、そこにはたくさんのボールが落ちていた。
まるでこの島の人間がついさっきまで遊んでいたのに、突然拉致されてボールだけが置い
ていかれたかのように、わざとらしさをまったく感じさせずに転がっていた。
(実際にそうだったのかもしれないな・・・。)
581作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/19(水) 21:27:20 ID:???

大人の中には、自分たちのためなら他の人の迷惑などまったく考えない人もいる。
そういうひとがこのゲームを組み立てているとしたら、この島の人間全員を拉致、というの
もありえる話だった。
「広すぎる・・・コンピューターがどこにあるのかわからん・・・。」


「本当にこのままでいいのか? エヴァンジェリンと絡繰茶々丸が校内を歩き回っている
のに。このままだとこの部屋にたどり着くのも時間の問題だ。」
裏の事情をまったく知らない新田は、ただ自分の身だけを案じてこれからのことを心配していた。
首輪を取られてしまったいま、エヴァンジェリンたちがこの部屋に入ってきたら止める手段
は何一つないと思っているので、早めに兵士たちを出動させて、2人を始末してしまいたい
と考えているのだ。

だが焦る新田を横目に、ヘルマン伯爵は余裕の表情で目の前にある画面を見つめていた。
立体で表された校舎の見取り図に、2つの点が動き回っている。
それぞれの点には、10、26、という番号が書かれていた。
ヘルマンはこの映像を見ることで生徒がどこにいるのかを正確に把握することができ、危険が
迫ってきたらすぐに知ることができるし、その対処も早急に行える。
「奴らはこの部屋には来ない。2人の探しているのは、島の結界を作っている機械のある
部屋だ。――おっ、近づいたな。」
1階の一番奥の部屋に近づいていく2つの点を見て、ヘルマンはもとからうれしそうな顔を
さらに崩して微笑んだ。

「島の結界だと? なんだそれは?」
魔法も何も知らない新田には、ヘルマンは何も教えずにいた。
ただ付き合ってくれたら金をやると、それだけしか言っていなかったので、新田は詳しい事情を
まったく知らなかったのだ。
「先生には関係のないことだ。」
自慢そうに長い白髭をなでると、画面の前にあるキーボードの中から『Trap』と書かれたボタン
を探し出し、その位置を確認した。
582作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/19(水) 21:28:58 ID:???

「先生は、これを緊急事態だと思っている。違うかね?」
「と、当然だ。生徒が首輪をはずして本部に入り込んでくるなど――」
「これは想定されていたことなのだよ。」

2つの点が廊下をまっすぐに進んでいく。
「チェスの駒で例えるとだ。最初たくさんの駒がいた。何の変哲もないポーンはたくさんいた
し、少し秀でたルークやビショップのようなものもいた。その中に、少し変わった動きをする
ナイトがいたっておかしくないだろう? いまの状況としては、自陣に相手のナイトが入り込
んだのと同じようなものだ。入り込まれたマスに効いているクイーンで、ナイトをつぶしてしま
えば危険は消える。」
突然の例え話に、新田は反応できずにいた。
まわりの兵士たちも、耳を傾けている。
「つまり、私が言いたいことはこうだ。彼女たちは駒。だが、私たちはその駒を動かすゲーム
のプレイヤーということだ。いくら彼女たちががんばっても、それは私たちの考えの中で動い
ているに過ぎない。そして、私たちの敵となるプレイヤーは1人しか存在しない。それが――
ネギ・スプリングフィールドというわけだ。」
「!!」
「このゲームを行うことでネギ少年の怒りは最高潮に達する。それによって私は本気の彼
と戦うことが出来るのだよ。何もなしに戦いを挑んでも、彼は全力を出してこないからね。」

赤い点が、1つは部屋の中に、もう1つはまだ入っていない、というところだった。
そのときを待っていたかのように、ヘルマンは『Trap』スイッチを押した。

                    残り 13人

583作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/19(水) 21:30:57 ID:???
71.Lucky Girl

「あと12人かー・・・。」
あやかの処理を、たまたま現れた風香にまかせて去ってきた朝倉は、放送の内容を鵜呑み
にして、残り人数は12人だと思っていた。
あと11人殺せば優勝できる。帰れる。
朝倉が、自分が殺してきたと思っているのは夏美、楓、茶々丸、エヴァ、千雨、そして裕奈
の6人なので、あと11人という人数はそこまで多いものとは思えなかった。

手榴弾が自分のバッグに入っていて、最初はゲームなんかに乗らないと思っていた心が
動かされてしまったのだ。
ハカセと同じように、殺せる能力を持ってしまった瞬間に、朝倉も、殺してみたいという衝動
に駆られてしまった。
そして、実際に殺してきて、いまここにいる。
強がって、迷っている様子こそ見せなかったものの、夏美を殺すときも楓を殺すときも裕奈
を殺すときも、わずかな躊躇はあったし、彼女たちの死に際の言葉を聞いてしまうとその躊躇
は余計大きなものへとなり、それに打ち勝つのにずいぶんな勇気を必要とした。

仲良しの3−Aの中では、みんなと仲がよかったがこれといって親友と呼べるような友達を
持ったことはない。
あの暗い教室の中で、誰か信用できる仲間は、と考えてそのことに気付いてしまった。
自分から信用できる人がいないということは、誰からも自分は信用されていないというのと同じこと。
確かにスクープだ、と言って友達をだましたりしたことは何度もあった。
とすると、誰かが自分と会ってもこの島での第一印象として、あまりいいイメージは持たれ
ないということだ。
そこまで考えて、バッグを開けて手榴弾が目に入ったので、心を決めたのだった。

ガサッ
自分から戦場に向かうことが多かった朝倉にとって、相手から姿を現してくることはあまりなく、
珍しいその音にビクッとしてしまう。
自分が向かっていた方向から聞こえた音。
その正体はすぐにわかった。
584作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/19(水) 21:33:15 ID:???

「桜子か・・・。」
明らかに喜んでいるのではない口調で朝倉が言うが、そんなことは桜子にはわからない。
まき絵たちと会ったとき同様、ただまっすぐに歩き続けるだけだった。
「動かないで、動くと撃つよ。」
どんどん自分に近づいてくる桜子に少し恐怖を覚えた朝倉は、何人もの人を殺してきた銃
を桜子に向けて脅しのセリフをかける。
それに答えるかのように桜子の口が開き、しゃべるのかと思ったが口ぱくで何か言いたそう
にするだけだった。
だがその口の動きは、確かに言葉を言っているように動いていて、それに気付いた朝倉は
解読しようとよく口を見た。そして、そのまねをして声に出してみる。

「う・・・て・・・?」
撃て、確かにそう動いた。桜子は自分に、桜子自身を撃てと命令しているのか。
言葉通り朝倉は構えていた銃のトリガーにかける指に力を入れる。
だが桜子のセリフはそれだけで終わりではなかった。
「る・・・も・・・ん・・・な・・・ら・・・?」
ただまねするだけ。意味を考えている暇はなかった。
「う・・・て・・・み・・・ろ・・・?」
うてるもんならうてみろ。そう言った。
つまり、桜子の言いたかったことは、

『撃てるもんなら撃ってみろ。』

理解した朝倉は、その挑発に簡単に乗ってしまった。
挑発に乗った、といっても、もとから撃つ気だったので行動自体に変わりはないのだが・・・。
「それなら、容赦なく――」

パンッ カンッ
「うわっ!!」
一瞬、なにが起きたのかわからなかった。
朝倉が撃った弾が、朝倉のいたところへと返ってきていた。
585作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/19(水) 21:34:55 ID:???

とっさの判断で避けたが、避けていなければ心臓を貫いて一発でおだぶつだっただろう。
桜子が構えるのは、たった1本のナイフ。赤い、ナイフ。
その1ヶ所だけ、何かに当たったかのように血のペンキが剥がれ落ちていた。

「まさか・・・?」
桜子は朝倉の撃った弾を、自らの持つナイフの刃に当てて跳ね返らせていたのだ。
刹那のような神鳴流剣士がよくやる技。対銃使いの戦いによく役に立つ戦術の1つだ。
相手の銃の先を見てどこに弾が飛ぶかを見切り、それをはじき落とす。
普通は刀や剣などでやるものだが、いま桜子はそれを刀身の短いナイフでやってのけた。
ちょっとやそっとの修行ではできない芸当のはずなのに、そう思って、自分の弾をはじき返
された朝倉は驚きまくっていた。
もしかすると、奇跡が起こっただけかもしれない。
運のいい桜子のことだ。たまたま弾がナイフに当たって、跳ね返っただけかもしれない。
むしろその可能性のほうが断然に高かった。

――でも。
1回それをやられてしまったら、もう二度と撃ちたくなくなってしまうのは、誰でも同じだ。
朝倉も例外ではなかった。

桜子はナイフを持ったまま朝倉の方へと歩いていく。
その姿に、朝倉は怖気づいて桜子の横を通ってさらに南の方へと走っていった。
相変わらず桜子は、なんの表情もなしに歩いていく。
朝倉を追いかける気などまったくなかった。

                    残り 13人

586作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/19(水) 21:36:48 ID:???
今日は以上です。
では。
587マロン名無しさん:2007/09/19(水) 22:44:42 ID:???
朝倉がなんでいいんちょにとどめをささなかったか
いまいち分からない
588マロン名無しさん:2007/09/19(水) 23:04:19 ID:???
今の桜子はレイプ目なんだろうなw
589マロン名無しさん:2007/09/19(水) 23:34:02 ID:???

桜子の強運は何をもたらすのかwktk

>>587
下手にあの場に留まっていたら暴走風香に教われる可能性があるから、じゃ?
590マロン名無しさん:2007/09/20(木) 00:16:39 ID:???
風香と二人っきりになったらヤバいし
生かしておけば勝手に人数減らしてくれるからな
591作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/20(木) 21:03:59 ID:???
どうも。
本日の投下です。
592作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/20(木) 21:05:52 ID:???
72.No More Cry

アキラが死んでしまった。間に合わなかった。
運動部4人組はまだ4人とも生き残っていて、その事実に安心していたところで、アキラは
殺されてしまったのだ。
4人には、殺されないように魔法がかかっている。
そんな風に、勝手に思い込んでいたのかもしれない。
ゲームが終わったときにはいつもと同じように4人で笑いあえると思っていた。
すでに2回の放送で、10人以上が死んでしまっていることを告げられていて、他の人たちは
何人か殺されてしまったのを知っても、自分たちだけは死というものとは関わりがないと信
じていて、死を悲しむことはあっても自らにそれが降りかかるなどとは決して思っていなかった。
人間として、当たり前だった。
飛行機事故のような、とても可能性の低いことなど自分に関係のないことだと思っていても、
実際にそれで死んでいる人はいる。
それとまったく同じことなのだ。

ついに呼ばれてしまった。アキラの名が。
泣いて、泣いて、泣き続けて、もう涙は出てこなくなった。
木乃香に偉そうなことを言ったまき絵も、こればっかりは泣かずにいられなかった。

「まきちゃん・・・。」
木乃香は座っているまき絵の横にしゃがみこんで、やさしく頭をなでる。
そんな状態のまま、一時間以上が過ぎようとしていた。
木乃香の左腕は、桜子に切られたところから菌が入ったのか大きく腫れ上がり、見るだけ
で痛そうな紫色に変色している。
早く消毒をしたかったが、その方法もなくまき絵の横でじっとしているほかはなかった。
593作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/20(木) 21:08:13 ID:???

まき絵のお守りみたいになっているが、本当は木乃香もまき絵と同じくらい悲しかった。

同室のクラスメイト、神楽坂明日菜。
3−Aの中でも一番死にそうもない親友が、死んでしまっているのだ。
いつでも、ネギと明日菜のやりとりはほほえましいものだったし、たまに思いっきりケンカ
するのを見て、大変やなーと思うのも生活の一部になっていた。
同じ部屋で、朝早くからバイトに行って、帰ってきてご飯を食べて――
明日菜の行動の、細かなしぐさまで思い出される。
おおざっぱで大胆、なのに正しいことと正しくないことの区別ははっきりとする。
そんな明日菜が、木乃香は好きだった。
しかし明日菜はもういない。もう生きている明日菜には二度と会えないのだ。
少しでも気をゆるめればすぐに涙がこぼれそうになる。
まき絵に気付かれないように、涙がたまっては空を見上げて、ごまかした。

まき絵は言った。『悩むのは後でもできる』と。
その言葉を胸に、泣いてしまってはダメだと心が訴えていたから、木乃香は泣かないように
していたのだった。


すぐ近くから、走ってくる足音が聞こえる。
桜子のものよりは駆け足で、今度はちゃんと精神が正しいままの人のような気がした。
「だれやろ・・・?」
「ん?」
さすがに2人とも、命の危険が少しでもある以上すばやく行動していた。
すぐ近くにあった大木の裏へと体を隠す。
泣き続けていたので体がいうことを聞かなかったが、息を潜めることくらいはできた。

だがその警戒もすぐに解けた。
「ウチ亜子やー。乗ってへんから出てきてほしいんやけど・・・。」
何のためらいもなく、まき絵は飛び出す。
木乃香もそれに続く。2人は亜子のいる場所へと猛ダッシュしていった。
594作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/20(木) 21:09:29 ID:???

「亜子!!」
「まき絵!!」
お互いに一番会いたかった人物をそこに見つけて、今度はまき絵は違う意味で涙を流す。
枯れつくしていたはずの涙も、また復活してきていた。

「よかったー。亜子は無事だったんだね? ホントによかった!!」
「まき絵こそ無事だったんやね!! でも、ウチと会う前から泣いてたやろ?」
「だって、アキラが――」
悲しかった感情が、再会の喜びへと変わり、また悲しみへと戻る。
生きている亜子と出会えたことはまき絵にとって大きなプラスとなるが、それでもアキラが
生き返ることはなく、事実は受け止めなければならなかった。
「ウチは、さっきまで夕映と本屋ちゃんと一緒にいたんや。そんときに放送が入って、アキラ
が死んでもうた、って・・・。ウチも悲しかったし、泣いた。でも本屋ちゃんが教えてくれたんや。
いまは泣いてる場合やなくて、動かなあかんて。まき絵を探しに行ったほうがええって言ってくれた。」
「そしたら、私に会えた。」
「そういうことや。もうウチがいないところでまき絵が死ぬことはなくなった。」

亜子はうれしかった。半日以上ぶりに親友に会えたこと。まだ生きていたこと。
悲しんでいたまき絵をなぐさめるのは、木乃香の役目でもあったが、親友として亜子がなぐ
さめてやるのが一番効果のあるものだった。

595作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/20(木) 21:11:01 ID:???

自分が木乃香に言われ、また木乃香に言い、どちらも理解していたはずのことを、アキラ
が死んでしまったというニュースによって完全に見失ってしまった。
だがまき絵は、亜子に同じようなことをもう一度言われ、区切りがついたような気がして気合
を入れて立ち上がる。

「よしっ、じゃあ今度は裕奈だね!!」
「ちょっと待った。」
まき絵からあふれ出る気合を制止するかのように、亜子がまき絵の肩をつかんでグッと下
に押して座らせる。
まき絵は『んっ?』という顔をしたが、亜子が取り出したものを見てそれがなにを意味する
ものだったのか理解した。

「このか、ちょっと痛いけど我慢してな。」
「はいな。――あううっ!!」
亜子は目ざとく木乃香の腕の傷を見つけると、夕映から受け取った救急バッグに入ってい
た消毒液とばんそうこうを出して、それを消毒し始めた。
あまりに染みて痛かったので、木乃香は叫んでしまう。
「まだ足りないなー。もっと我慢してな。」
「亜子ちゃん、いじめやん・・・ああっ!!」

緊張感のない戦いが、繰り広げられた・・・。

                    残り 13人

596作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/20(木) 21:13:06 ID:???
73.Leader , Forever

「いいんちょもころさなきゃふみかのためにはいきるんだからぼくのいのちをまもるんだ
いいんちょはころすほんとうはころしたくはないよでもしょうがないことなんだあはあはは
はははころすころすきってあげるよ――」

ついにしゃべっていることの文法までおかしくなり始めた風香が、そこにいる。
裕奈とアキラが風香と出会ったときに動けなくなってしまったのと同じように、いまのあやか
もその恐ろしい空気に飲み込まれそうになっていた。
ただでさえ腹と肩を撃たれていて不利な状況なのに、場の流れまで風香に持っていかれて
しまってはどうしようもなくなってしまう。

風香が狂ってしまっている、というのは、裕奈から聞いていた。
おそらくさっきの放送で呼ばれたアキラは、風香が殺してしまったのだろう。
「風香さん!! 聞いてください。アキラさんを殺したのはあなたですか?」

風香はそっぽを向いていて、あやかの言葉を聞いている様子はまったくなかった。
ただ右手に持つ鉈をぶんぶんと素振りして、それと共に飛び散る血を見ている。
だがあやかの言葉が耳に入ったことで、ひとつ思い出したことがあった。
「あきらからはじゅうをうばってきたんだったしょっとがんとかいうやつだったかもせつめい
しょよむきにはなれないしいいんちょでためしてみようかそうしようかなちょうどいいきかい
だし――」

思ったことをそのまま口に出してくれるのであやかとしては対応がとりやすかったが、言葉
通りにバッグから銃を取り出してあやかに向けてきたときには恐怖で動けなくなった。
つい7時間くらい前まで一緒にいたアキラが持っていた銃が、風香の手に握られている。
レミントンM1100。ショットガン、日本語で言えば散弾銃というやつで、1回トリガーを引け
ば小さな弾がたくさん発射されるものだ。
それが自分に向けられている。
あやかと風香の間の距離は10メートル以上ある。
だがショットガンならば一発も当たらないなんて事はまずないだろう。
597作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/20(木) 21:15:11 ID:???

風香のつぶやきからやはりアキラを殺したのが風香であるということはわかった。
それは許されてはいけないことであり、すでに狂ってしまっているのだからあやかが殺して
しまうのが最善の方法だということは歴然としていた。
しかしあやかには今の風香を殺す方法なんてない。
それでも、あやかは委員長としての責任からか、無謀な挑戦を決心した。
背中にかけてあった斧を取り出し、それを両手で持って風香へと走り出したのだ。

「あああああぁぁぁぁぁー!!」
普段のあやかからは到底想像もできないような大きな叫び声があたりに響き渡る。
それと共に銃声も鳴る。アキラは撃てなかったその銃を、風香は何も考えずに、自分に向
かってくるあやかに向けて撃った。
腹を中心に何発もの銃弾があやかに突き刺さっていく。
もうすでに朝倉に腹と肩を撃たれていて、痛みに少しは慣れていたとはいえ、体中にほとばしる
その衝撃はあやかの精神までもズタズタにしていく。

――しかしあやかは足を動かすのをやめなかった。
弾を食らっても、風香の方へと走り続けていた。
自分が死んでも、風香を殺す。
それが自分のできる一番の仕事だと判断したからだった。

風香はもう一度トリガーを引く。
銃口からまた複数の弾が発射され、あやかの体を貫いた。
両足にも何発もの弾を受けて、転びそうになりながらも、あやかは必死で走った。
心臓を撃ち抜いていた弾もあった。
自分の体から考えられないくらいの血が出ているのが見なくてもわかるくらいの重傷であり、
立っていることすら普通の人ではできなかっただろう。
でも自分がやらなくてはならないという使命感、悲しさを超えた絶望、その絶望から生まれる
果てしない怒りが、いまのあやかを成り立たせていた。
何度も意識が飛びそうになりながら、進み続けて、
そして、2人の距離は――ゼロになった。
「――――!!」
598作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/20(木) 21:16:46 ID:???

もはや声を出すことすらできなくなってしまったあやかが、声にならない叫びをあげる。
右肩に怪我をしているので、力を入れるために両手で持っていた斧が、振り下ろされる。
あやかにとって、その一瞬は、生きてきた中で一番長い一瞬だったように思えた。
自分の全体重をその斧に乗せて、倒れこむように風香に一撃を下した。

斧が風香の頭から割れ、二度と立ち上がることはない・・・





はずだったのに

――――
「ふふふぼくはそこまでまぬけじゃないからねどんなにがんばったってあとのことをかんがえ
てないとなんにもならないしざんねんいいんちょ――」
腕の先に何の感触も感じなかったあやかは、そのままその場に倒れこむ。
風香はまったくの無傷のまま、まだ息のあるあやかにとどめもささずに歩き出した。
「なん・・・で・・・?」
599作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/20(木) 21:18:03 ID:???

あやかは、自分から風香が遠ざかっていくのを感じながら、死を実感した。
あやかが斧を振り下ろすよりも先に、風香が鉈であやかの両手を切り飛ばしていたのだ。
そのためいくら腕を振り下ろそうとしても、ないものは振れない。
風香には何かが当たるはずはなかった。

(結局・・・なにもできなかった・・・。)
何時間か前まで自分と一緒にいた3人は、もうすでに死んでしまっている。
親友であるあのおサル、明日菜ですら、もう生きていないのだ。
誰も守ることができなかった。

(あの世で皆さんに会ったら、頭を下げて謝らなければなりませんわね・・・。)
ついに、最期だった。心臓を打ち抜かれ、両腕がない。
安らかに眠るにはあまりにもひどすぎる姿だったが、あやかは永遠の眠りについた。
(明日菜さん・・・そして・・・ネギ先生。申し訳ありません・・・。)

   出席番号29番 雪広あやか 死亡
                    残り 12人

600作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/20(木) 21:19:35 ID:???
今日は以上です。
では。
601マロン名無しさん:2007/09/20(木) 21:55:51 ID:???
いいんちょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!

主乙
602マロン名無しさん:2007/09/20(木) 22:01:12 ID:???
乙・・・
いいんちょ・・・orz
603マロン名無しさん:2007/09/21(金) 07:45:53 ID:???
乙!

そろそろゲームは終盤ですな。刹那の動向が気になる。
604マロン名無しさん:2007/09/21(金) 22:53:49 ID:???
16氏今日は部活かな?
何か休み予告あったけ
605マロン名無しさん:2007/09/21(金) 23:46:13 ID:???
まさか16氏も風香に(ry
606作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/21(金) 23:46:26 ID:???
申し訳ありません。。。
明日とあさってが文化祭なもんで、その準備のためこんなに遅くなってしまいました。

では、本日の投下です。
607作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/21(金) 23:48:31 ID:???
74.Time Limit

明日菜に2回も守られた。
ハルナを止められなかった。
明日菜は死んでしまった。
刹那の心はつらいことでいっぱいで、長い間明日菜の前から動くことができなかった。
ハルナに逃げられたあと、すぐに放送が入り、明日菜の名が呼ばれた。
武道四天王と呼ばれていた友たちも、刹那を残してみな死んでしまっている。
世界に希望の光が見出せず、ただ悩むことしかできないでいた。

「このちゃん・・・。」
ただ唯一の救いは、刹那が誰よりも大切にしてきた木乃香がまだ生きているということ。
早く合流しなくては、と思いつつずっと会えずにいて、大丈夫だろうかとずっと心配していた
ので、呼ばれなかったことで相当安心した。
「このちゃんのところへ急がなければ・・・。」
頭ではわかっていても、体がいうことを聞いてくれなかった。
目の前にある、明日菜の死体。自分のミスから死んでしまったのだ。
言葉で強がってみても、心の奥にひそむ大きな自責の念は、決して消えることはなかった。

だが最後に、明日菜に言われた言葉。
『ネギを守ってあげて。』
明日菜のいろいろな感情がつまったその言葉のことを考えると、自分がこんなところで立ち
止まっているわけにはいかないのだ、ということを実感させられた。
自分はみんなと共にゲームから脱出し、世界で二度とこんな悲劇が起こらないようにして
いくのだ、と最初に決めたから。
明日菜が死んでしまっても、その決意は変わることはなかった。

「私は、このちゃんを守らなければならない。他のみんなも私が守る。」
自分にそう言い聞かせると、刹那は立ち上がった。
まだ迷いは残っていたけれど、立ち上がらなければいけない現実だった。

608作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/21(金) 23:50:34 ID:???

だがその直後。刹那の目の前に赤い影が現れた。
「桜子さんっ!! 乗ってしまったのか・・・。」
朝倉を脅かしてそのまままっすぐ歩いてきた桜子が、刹那のところへとたどり着いたのだ。
相変わらずどこにも焦点があっていないような目で、ひどい身なりでいる。
「何人殺した?」
できるだけ威圧感をこめて、問いかけた。
これも最初に決めたこと。相手が乗っているなら、できれば話し合いで解決したいが、それ
ができなければ容赦はしない。
桜子は確実に乗っているだろうし、今の状態では話が通じるようには見えないから、戦うこ
とになるだろう。
ハルナのときにも全力で戦っているので、ためらいはあまりなかった。

――だが桜子からは答えがなかった。せめて何か言葉が返ってくるだろうと思っていたのに、
何も返ってこなかった。
「仕方ない・・・。」
幸い刹那には刀があるので、それで相手を脅して何かしゃべらせようと思った。
それで話が通じるようならば万事解決、刃向かってきたらそのまま殺してしまえばいい。
非道なやり方だが、いまはそれ以外に方法が思いつかなかった。

ふぅー、と1回息を大きく吸うと、刹那は持っていた日本刀を構えると、足に力をこめて一気
に桜子の後ろに回りこみ、首に刀を触れさせようとする。


――しかし桜子はそれを避け、逆に刹那の腕をナイフで切りつけていた。
「痛っ!! なにっ!?」
あまりにも予想外の出来事に、刹那はなにが起こったのか理解できなかった。
魔法のことも知らない一般人のはずの桜子に、自分の攻撃を見切られ、しかも反撃までされた。
明らかに自分より戦闘能力が劣っているはずの人間に反撃を食らったことなど、刹那は
今回が初めてだった。
何も考えることのなかった桜子の心が、いまの一撃で戦闘へと目覚めていく。
今度はしっかりと刹那を見つめ、今にも襲い掛かろうかという視線を送っていた。
609作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/21(金) 23:54:33 ID:???

「本気で・・・やるしかない・・・。」
その目を見て、桜子がやる気になったと悟り、刹那は戦闘体勢に入った。
どうして桜子がこんなにも強くなったのかはわからない。
だがそれがどんな理由だったとしても、刹那には桜子を止める義務があった。

「行きますっ!!」
すぐ近くの桜子に刀の先を向けると、いつもと同じ要領で相手の防御の弱そうなところに
攻撃を仕掛けていく。桜子はその攻撃をすべて、ナイフ1本で受け流し、また反撃に出よう
と試みていた。
刹那が体重を前に乗せるため前傾姿勢で攻撃しているので、それにつられて桜子は少し
ずつ後退していく。
と、突然桜子が1歩前に踏み出して刹那との距離をつめた。
刹那の体がバランスを失い不安定になったところで形勢が逆転し、今度は桜子の嵐のよう
な攻撃が続く。
桜子は不慣れなナイフを使っているので、その動きは統一性をもっていなく、どこを攻めて
くるのかまったく読めなかった。

(くそっ、防ぎようがない。)
いくらリーチの違いがあるとはいえ、まったく攻撃を食らわずに反撃するのは難しかった。
すこしくらいの怪我は許容範囲かな、と思ってほんのすこし気を抜いた瞬間。

「ああっ!!」
桜子のナイフは刹那の左手首を捕らえた。
そこから容赦なく噴水のように血が吹き出す。
それを押さえようとしゃがみこむと、すぐに桜子がナイフを振り下ろそうとしてきた。
(手首をやられてしまっては、そう長くは生きられない・・・。せめてこのちゃんのところへ
行くだけの時間があれば・・・。)
刹那は体勢を低くして、桜子がナイフを持っている手の手首を掴み、それをぐいっと前へ
押し出した。それと同じタイミングで足を振り上げて桜子の体を浮かせる。
刹那の体勢が低く、桜子の手に下方向への力が働いていたからできる投げ技だった。
610作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/21(金) 23:56:00 ID:???

自分の頭の上すれすれの空中を桜子の体が舞い、1回転して地面にたたきつけられた。
立ち上がる隙を与えず、その首に刀を突きつける。
刹那の、勝ちだった。

「あなたがなぜ乗ってしまったのかはわかりません。でもあなたのやり方は間違っています。
いまからやり直すというなら殺しはしません。答えてください。やり直すか、ここで死ぬか。」
だが刹那の予想通り、桜子は何も言わなかった。
ただ呆然と空を見つめ、早く殺してくれと言いたそうな顔をしていた。

「すみません、私には時間がないので――」

ズプッ
刹那は持っていた刀に体重を乗せ、それは桜子の首に刺さる。
初めて友達を殺してしまったことで、友達を守れなかった悔しさとは違う、別の悔しさが心の
中を支配していった。
でも言葉通り、刹那に残された時間は少ない。

桜子のほうを振り返らずに、刹那は木乃香がいるような気がして南へ歩き出した。

   出席番号17番 椎名桜子 死亡
                    残り 11人

611作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/21(金) 23:57:32 ID:???
75.Real Purpose

それは30分ほど前――
エヴァと茶々丸は、誰もいない校舎の1階を、ひたすら歩き回っていた。
島に結界を張っている機械を見つけ出し、それを破壊する。
それが2人の最初からの目的だった。
結界さえ破壊してしまえば、エヴァの吸血鬼としての能力も戻る。
そうなれば、不死の体となるので何も恐れずにゲームをとめることができる。
茶々丸も、体中に銃撃戦用に防御プレートが張ってあるので本部のどこかにいるであろう
兵士たちと戦っても負けるはずはなかった。

つまり、島の結界さえ壊してしまえば、このゲームは終了するのだ。
ついに首輪をはずして本部にもぐりこんだまではよかったが、肝心の機械がある部屋が見
つけられずにすこしイライラし始めていた。

だがそのイライラも終わりを告げることとなった。
「マスター、管理室と書いてある部屋がありました。」
部屋を探すために別行動をしていた茶々丸が、エヴァのところへ戻ってきて言う。
2人でその部屋の前まで行き、あたりに警戒しながら、その扉の前に立った。

「茶々丸、どんな罠があるかわからん。先に入れ。」
「はい、マスター。」
そうして茶々丸が部屋に入った直後。
ドアがものすごい勢いで閉まり、さらにエヴァがいるところの周りに防火シャッターのような
ものが下りてきて、エヴァは完全に閉じ込められてしまった。


612作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/21(金) 23:59:33 ID:???

そしていま――
何もできないまま、身動きも取れなかったエヴァは、いまもまだ閉じ込められていた。

「くそっ。部屋の中ではなく外にトラップがあったとは・・・。」
30分以上暇をもてあましているエヴァは、部屋の中に入った茶々丸が機械を壊してくれる
ことを祈りながら待っていることしかできなかった。
おそらくその機械は何らかの形で、簡単には壊せないようにできているはず。
それを茶々丸が壊すまでに、それだけの時間がかかるかはわからなかったが、必ず壊し
てくれると信じていた。

だがいつまでも安全に待っていられるわけでもなかった。
エヴァの周りを囲っていたシャッターのうちのひとつについていた扉が開き、そこからエヴァ
のいるところへとたくさんの兵士たちが入ってくる。
「何のつもりだ? 貴様ら人間がいくら集まろうと私は倒せんぞ。」

「はっはっは、これは活きのいいお嬢さんだ。」
その兵士たちの中に、1人だけ目立つ人物がいた。
格好が目立つということではなく、魔法使いとしての雰囲気がにじみ出ていて、それがエヴァ
にとっては気障りになるくらいだったのだ。
よく見ると、それはエヴァにも見覚えのある人物だった。
「ヴィルヘルム・ヨーゼフ・フォン・ヘルマンだったか? ぼーやがずいぶん前に世話になった
悪魔だな。」

学園祭が始まる前、ネギが魔法使いタイプになるか魔法戦士タイプになるか迷っていたころ、
魔法戦士タイプになると決めるきっかけを作った人物。
ネギが怒りのあまりオーバードライブし、魔力の豊富さを見せ付けた戦いだった。
「これはこれは、どこかでお会いしましたかな? まぁそんなことはどうでもいい。残念なが
ら、君には死んでもらうことになる。」
突然、ヘルマンの顔つきが変わり、引き締まったものとなる。
「そんなところだろうと思っていた。だが、貴様ごときに殺される私ではないわ。」
「では、行くぞ。」
613作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/22(土) 00:01:59 ID:???

そう言った瞬間に、いままでエヴァのいた場所の後ろの壁が轟音を立てた。
ヘルマンの腕を前に突き出した衝撃で、壁が崩れそうになったのだった。

しかしエヴァはそんなことに驚くそぶりも見せず、隠し持っていたワイヤーでまずはヘルマン
の周りにいる兵士たちを切り刻んでいく。
兵士ひとりひとりが銃を持っているため、とりあえずそっちを消そうと考えたのだ。
エヴァが指をブンッと一振りするだけで、何人もの兵士の首が飛んでいく。

「すばらしい技術だ。さすがはドールマスター。」
それに見とれたヘルマンにできた一瞬の隙をついて、エヴァは敵のふところに入り込む。
「しゃべっている余裕などあるのか?」
得意の投げ技でヘルマンを地面にたたきつけようとしたが、敵は一方後ろに下がってエヴァ
に向けてパンチを放つ。
技後硬直していたエヴァはそれをもろに食らってしまい、壁まで吹っ飛ばされた。
そこをめがけて残っている兵士たちが何発も弾を撃っていく。
エヴァはそのすべてをワイヤーで叩き落し、再び兵士の首を狙う。


「実にすごい。部下たちが一瞬でみんなやられてしまうとは。」
一辺30メートルくらいの、正方形に近いフロア。
密閉されたその部屋の中には50人ほどの迷彩服の人々がいたのだが、いまやそれらは
みな首と胴体を分けられて地面に落ちていた。

「ザコを集めてもなんにもならん。最初から貴様だけでよかったはずだ。」
エヴァは、ヘルマンがただの人間である兵士をたくさん連れてきた理由がわからなかった。
魔法使いや、それに順ずるもの同士の戦いでは、何の特殊技術もない一般人が入り込め
る隙がないことくらい誰だってわかることである。
それなのに、このヒゲおやじは連れてきた。
614作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/22(土) 00:03:04 ID:???

「簡単なことだ。君の実力を見たかったのだよ。」
その答えを聞いたとたんに、エヴァは、こいつがゲームの主催者だということに気付いた。
バトルロワイヤルを計画したのも、きっと生徒たちの実力を見たかっただけなのだ。
そのため戦闘においての実力者が多いこのクラスを選んだのだと、そう思った。
「つまり、貴様は強いものの戦いを見るのが好きだということか。」

主催者が目の前にいるとわかっても、エヴァは怒らずにいた。
いくら怒っても、過去も現在も未来も変わることはないということを知っていたから。
「すこし違うな。私は、強いものと戦うのが好きなのだ。このゲームで優勝者が出ることが
あれば、私はその人と戦うつもりだった。だが計画通りに進むはずはない。私にとっては、
君たちの侵入こそ想定通りのことだった。」
エヴァはむっとした不機嫌そうな表情で、ヘルマンの話を聞いていた。
「君たちが侵入し、結界を破壊することで外部との連絡が取れるようになる。そうすれば、
君たちはネギ・スプリングフィールドに連絡するだろう。それこそが私の真の目的。私は
ネギ少年と戦いたいのだよ。」

                    残り 11人

615作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/22(土) 00:05:14 ID:???
今日は以上です。
最初にも書いたとおり、明日あさってが文化祭なので、
明日とあさっての分の投下はかなり遅い時間になると思います。
そこのところ、よろしくです。

では。
616マロン名無しさん:2007/09/22(土) 00:08:33 ID:???
遅い時間に乙。

遂に桜子が逝ったか・・・
617マロン名無しさん:2007/09/22(土) 00:30:29 ID:???

せっちゃんは間に合うと俺は信じてる
文化祭、楽しんでくれ
618マロン名無しさん:2007/09/22(土) 00:37:13 ID:???
俺、桜子が生存したら作者になるんだ……
619マロン名無しさん:2007/09/22(土) 00:40:42 ID:???
俺、桜子が生存したら続き書き始めるんだ……
620マロン名無しさん:2007/09/22(土) 01:54:02 ID:???
乙!
手首の傷か・・・。二の腕から縛るなり傷口を焼くなりして、どれくらい持つか・・・。
場合によっては木乃香のアーティファクトが間に合うかも試練ね。
621マロン名無しさん:2007/09/22(土) 09:08:32 ID:???
乙!

>>618-619
ちょwお前らwww
622マロン名無しさん:2007/09/22(土) 14:36:07 ID:???
>>618-619
ちょwww

俺、裕奈のガンマン設定とか後だしジャンケン設定が撤回されたら続き書くんだ……
623マロン名無しさん:2007/09/22(土) 20:57:44 ID:???
裕奈のガンマンは二期アニメより早かったっけか?
もし遅ければ赤松は二期アニメに気使いまくりってことになるがw

俺、葉加瀬と夏美も生存0って事実が浸透したら続き書くんだ……
624作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/22(土) 23:20:01 ID:???
どうも。
やっぱり遅くなりました本日の投下です。
625マロン名無しさん:2007/09/22(土) 23:21:02 ID:???
>>623
たしかアニメのあとだなw

美佐も忘れないで……
626作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/22(土) 23:22:10 ID:???
76.The Most Important Person

「私は、いま後悔してる。」
その言葉をきっかけに、3人の間に緊張が走った。
その後に続く言葉がいい結果となるものか悪い結果となるものかわからなかったが、2人
にはそれがどちらであるかわかったような気がした。

「最初から、こうやって3人で出会えることがわかってたらゲームに乗ったりはしなかった。
一緒に帰れるかもしれないなんて、ひとかけらも考えなかった。でも――」
「ハルナ!!」
その先の言葉。きっと、私は決めたんだ、などという言葉だろう。
それをどうしても聞きたくなかったから、夕映はハルナの話を止めた。

「ハルナは悩んでいます。違いますか?」
夕映とのどかが想定していた通りに会話が進んでいく。
「・・・悩んでる、か。うん。正直言って、2人とは会いたくなかった。他の人が殺してくれるこ
とを信じて私はここまでやってきた。2人に死んでほしかったわけじゃないよ。でも私が生き
るためにはそれ以外方法がないと思ったから。」
それを聞いて、夕映はここに来るまでの間に考えていたことを一気に話そうと思い、大きく
息を吸った。

「しかし今は違います。いままでこの島で生きてきて、友達をたくさん殺して優勝することだけ
が、生き残る方法ではないとわかったはずです。2回目の放送でエヴァさんが呼ばれました。
ありえると思いますか? あの人が死ぬなんてことがありえるはずがないんです。エヴァさん
はあの教室で説明を受けているとき、茶々丸さんに紙を渡していました。きっと出発してすぐに
合流できるように待ち合わせ場所を書いておいた紙でしょう。私の席が後ろの方であったことが
幸いして、その現場を見ることができたです。そしてエヴァさんが呼ばれた放送では、茶々丸
さんも一緒に呼ばれていました。さらに千雨さんも、ハカセさんも。これらの人々がみなゲーム
の中でいっせいに殺されたということはとても考えづらい事象です。つまり私はこう考えました。
エヴァさんたちは、首輪をはずすのに成功したのではないかと・・・。」

627作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/22(土) 23:24:24 ID:???

もはや夕映の特権とも言える長い説明が、一区切りついた。
ハルナものどかもじっと聞いていて、のどかがはっと息をのむ音だけが響く。
「そうなるとです。私たちがエヴァさんと合流できれば、首輪をはずすことができる。クラス
メイトみんなを集めて、新田先生に反抗することだって可能になるはずです。刹那さんの
ような人がいれば、勝つこともできる。だからハルナ――」

「お断りするわ・・・。」
ハルナの冷たく鋭い声が、夕映の話を止めた。
ハルナは夕映たちとであったときからずっと2人に向けてサブマシンガンを構えていて、そ
れはいまも同じだった。
いつでも撃てるようにトリガーに指をかけている。
だがそれに怯える様子もなく、ハルナの言葉を聞いた夕映はゆっくりと銃を構えた。

「どうしてですか?」
さっきハルナが言おうとして夕映が止めた言葉を、今度は夕映が催促した。
そしてそれは予想通りの始まり方だった。

「私は最初に決めた。それで、もうすでに2人殺してる。だからもう後戻りはできないんだ。
――ごめんね、2人とも。」
乾いていたハルナの涙は再びハルナの目を潤し、涙声になっていた。
最後の言葉の前にすこしの間があった。それで、夕映とのどかは、ハルナが撃ってくることを悟った。
ハルナが撃ってくるならこっちも撃つ。そう決めていたのに、夕映にはあと一歩の勇気、『わず
かな勇気』が足りずにためらってしまった。
「ゆえっ!!」

「あああああああぁぁぁぁぁーー。」
悲しみのままに叫びながら、ハルナは親友に向けて引き金を引いた。
のどかはすぐに数歩下がって段差の下に身を隠したが、夕映は悩みのためか判断が遅れ
てしまう。そこをめがけて無数の弾が襲い掛かってくる。
「ゆえっ!! はやくこっちへ!!」
「はいっ!! ――――ああっ!!」
628作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/22(土) 23:26:29 ID:???

だがあと1歩というところで、間に合わなかった。
もう一歩踏み出せていれば段差の下に降りられて、その弾を受けることはなかっただろう。
しかし現実では、確かに銃弾が夕映の体を貫いていた。
サブマシンガンによって連射されたたくさんの弾は、ほとんど外れることなく夕映に直撃していく。
背中から足までかけて全身に激しい痛みを覚えたかと思うと、そのまま段差の下へと転が
り落ちてしまった。
体が回転するのを感じながら、それが収まったころにそっと目を開けると、そこには大粒の
涙を流すのどかの姿があった。

「・・・私は、未熟でした。」
いまにも消えかけてしまいそうな声で、夕映はつぶやく。
腹に何発も弾が貫通したあとがあり、内臓が見えかけているところもあった。
しゃべるとその口から血が出てくるが、そんなことは気にするに値しない。
「ゆえー、死んじゃやだよ。ねぇ、ゆえー!!」
のどかの目から、涙が一粒こぼれ落ちて、夕映の顔をぬらす。
「・・・私には、ハルナを撃つことはできなかったです。」
ほんの数秒前の出来事。夕映はハルナに銃口を向けるところまでいったのに、最後の
最後で撃てなかった。
「・・・でも、私が撃てなかったのと同じように、ハルナもつらい思いを胸に抱えているはずです。
・・・この銃で、ハルナを楽にしてあげて――」
苦痛に顔をゆがめながら、夕映は右手をのどかの顔の前に差し出した。
その手にはまだこの島に来て一度も使われていない銃があり、のどかがそれを受け取る
とすぐに、夕映の腕から力が抜けてぐったりと地面に横たわる。

「ゆえー・・・。嘘だよね? こんなの、ありえないよ・・・。」
「・・・のどか、あなたは生き残って・・・ネギ先生とうまくやっていくですよ――」
「え、う・・・。」
夕映のまぶたが閉じられる。もう最期のときが来たようだった。
「のどか・・・あなたと出会えて本当に・・・よかった――」
「ゆえーーーーー!!!!!」
629作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/22(土) 23:28:28 ID:???

夕映の首が、力なく横に傾いた。
苦しそうだった呼吸も止まり、安らかな顔だった。
いくらのどかが夕映の体を揺らしても、夕映が返事をすることはなかった。



のどかはとめどなくあふれてくる涙を無理やり拭い去り、立ち上がる。
世界で一番大切なものを失ってしまった、そんな気がしたが、それを悲しむのは彼女の
遺言をかなえてからにしようと思った。
自分で亜子に言った言葉、いまできることをするのが一番だ、ということを胸に抱いて。
のどかは右手に銃を持ち、段差の上で、少し離れているハルナを殺すことを決意した。

   出席番号4番 綾瀬夕映 死亡
                    残り 10人

630作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/22(土) 23:30:15 ID:???
77.Don’t Tell !

ふと、風が吹いたような気がした。
あたりの草がざわめき、葉っぱがさわさわと音を立てて揺れる。
夜の森が話しかけてくるかのように、風で動かされていた。
何かを伝えるために。危険を知らせるためかもしれないし、幸運の知らせを届けるためか
もしれない、どちらにしても、何かが起こるような気配を感じさせた。

「なんやろ・・・。」
消毒の終わった木乃香と亜子、そしてまき絵の3人は、その空気を感じあたりを見回す。
何かが起こるのにはもう慣れた。だがまた何かが起こるのか、と考えるとあまりいい気分
にはなれなかった。


遠くから、何かが飛んできた。
それは大きく弧を描いて3人のところへと向かってくる。
「伏せて!!」
まき絵の突然の叫び声に、木乃香と亜子はそれに従うしかなくなった。
まき絵にもそれがなんであるかははっきりとはわからなかったが、何か爆弾のようなもの
だろうということは想像がついた。
そして直後、その想像通り3人のすぐ近くで轟音と共に爆発が起こった。

ダァーーーン――
真名のとき以来の、戦いの予感。
背中に熱を感じ、すこしやけどしたような気がした。
まき絵のとっさの判断のおかげで3人とも大きな怪我もなくてすんだが、爆風によって巻き
上げられた砂煙を見つめながら、相手は誰だろうと考える。

ガサッガサッと草を踏み分けながら近づいてくる足音が聞こえる。
もう聞き飽きてしまったその音で、敵が近づいてきていることを悟った。
だんだんと視界がはっきりしていき、相手の姿を確認することができた。
631作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/22(土) 23:32:03 ID:???

「朝倉・・・。」
「3人ともいまので死ななかったかー。失敗失敗。」

3人の視線が、1人に注がれる。手に持つ銃と、バッグから覗いているいくつかの手榴弾。
さっきまき絵が見たものと同じものだった。
だがそんなことを考えているうちに、すぐに朝倉は発砲できるように準備し、それを3人に
交互に向ける。
「もうそろそろこのゲームも最後だから、私も疲れちゃった。何か言いたいことがあったら
言っていいよ。殺す前に聞いてあげるから。」
朝倉は余裕の表情だった。3人を相手にしても、まったく恐れずにそこに立っていた。

「いままで、誰を殺したん?」
あえて朝倉の調子に乗ったセリフに関しては何も言わずに、亜子が問いかける。
朝倉はすこし悩んで、まいっか、という顔をしてから答え始めた。
「まず、村上を島の東端の倉庫の中で殺して、この銃を奪った。でその次に風香に会って、
でも狂っちゃってたから放置、あとでアキラを殺しに行ったみたいだけどね。そのまま集落
まで行ったら茶々丸さんとエヴァちゃんとちうちゃんがいたから手榴弾投げてみんな殺した。
それから西の方に行って超りんとすれ違って、長瀬を殺したのかな? で――」
「やっぱりもうええわ・・・。」

予想以上に長かった朝倉の答えに、うんざりした亜子はそれを止めようとした。
アキラを殺したのは風香だとわかった。それだけで十分な情報は得られた。
だがそれを無視するかのように朝倉は続けた。
そのあとのところを聞かせたかったから。
亜子に聞かれた質問なのに、それを答えることは朝倉の楽しみとなっていた。

「で、そのあとに・・・いいんちょと、ある人に会ったから、その2人を撃ったんだ。誰だか
わかる? ついさっきのことだよ。まだ放送では呼ばれてない。」
632作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/22(土) 23:33:29 ID:???


沈黙。いや、怒り。
聞かなくても、その答えはわかった。それでなければこんなふうに強調したりはしない。
いまここに亜子とまき絵がいたからこそ、朝倉は続けたのだ。

「あまりにも無防備だったからね、思わず撃っちゃたんだ。私をアキラだと思ってたみたい
で何の警戒もなしに近づいてきたから、これは撃つしかないと思って、腹に3発。最後に頭
に1発――」
「もうやめてっ!!」「やめてっ!!」

亜子もまき絵も耳をふさいだ。誰も人の死に際の話なんか聞きたくない。それも自分の親友
であればなおさらだ。
誰の話だかわかっていなかった木乃香も、ここまできてそれがわかった。
そして、それがわかったとたんに朝倉への怒りは頂点に達した。
持っていたボウガンを朝倉に向けてためらうことなく撃つ。
だがそれはあまりにも見えすぎた行動で、朝倉は簡単にそれを避けてしまった。

「朝倉!! あんた最低や!! そこまで2人の心を踏みにじってなにが楽しいん? 絶対
に許せない。ウチは朝倉をそんな人間やと思わんかった。」
矢が当たっていないことはまったく関係なしに、木乃香は訴える。
「それで、どうするの?」
朝倉の冷たい言葉がかかる。一瞬、それがなんなのか理解できなかった。
「いくら私に怒っても裕奈が生き返るわけじゃないんだから、すこしは落ち着いたら?」

朝倉は冷めていた。何も感じることがない、心無き人間のように思えた。
このとき、すでに3人の心は固まっていた。
こいつは殺さなければいけない、裕奈の仇はこいつを殺すことで取ろう、と。
まき絵はナイフを左手に銃を右手に、木乃香はボウガンを、それぞれ朝倉へと向けた。

                    残り 10人
633作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/22(土) 23:34:49 ID:???
今日は以上です。
明日はもっと遅くなるかもです。

では。
634マロン名無しさん:2007/09/23(日) 13:59:33 ID:???
乙!

一体何人けらいこの先生きのこるか読めない……
635マロン名無しさん:2007/09/23(日) 18:04:36 ID:???
>一体何人けらい

     _,,...,_
  /_~,,..::: ~"'ヽ
 (,,"ヾ  ii /^',)
    :i    i"
    |(,,゚Д゚)   < まあ落ち着け
    |(ノ  |つ
    |    |
    ヽ _ノ
     U"U  魔法先生きのこる!
636作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 00:10:34 ID:???
どうも。
本日・・・といっても日付は変わってしまいましたが、
投下です。
637作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 00:12:29 ID:???
78.Last Will

のどかは自分の背よりほんの少し低いくらいの段差に手を掛け、体を押し上げて段差の
上に上がろうと試みたが、顔を出してすぐにその顔を引っ込めた。
ほんの一瞬前までのどかの顔があったところを無数の弾が通過していく。
こちらが攻撃する暇などなく、まったくなすすべがなかった。
背伸びをしてハルナの位置を確認しようとしても、すぐにサブマシンガンの発砲音がする
のでしゃがまなければいけなくなり、どこにいるのかすら見ることができない。

だがそれをくりかえしているうちに、ハルナのP90は弾切れを起こしたようだった。
バッグから、P90独特の細長いマガジンを取り出し、入れ替えようとしていた。
当然のどかはその隙を狙って段差の上に上り、ハルナに向かって銃を構える。
しかしそれを見ても、ハルナは弾詰めをやめようとはしなかった。

「ハルナー・・・まだ、私を殺す気なの?」
あくまでハルナを刺激しないように柔らかな口調で聞く。

――だがハルナはそれには答えなかった。
弾を詰め終わったハルナはさっきと同じようにのどかの方へと銃口を向けた。
「いやだよ・・・ハルナを撃つなんて。でも――」
「あああああああぁぁぁぁぁーー。」


のどかの言葉などまったく聞いていないかのように、ハルナは撃った。
夕映を撃ったときと同じように、どこか1カ所に狙いを定めるわけではなく、ただ体の動くが
ままに撃っていく。


パンッ――
ハルナが撃ったと同時に、のどかも引き金を引いた。
638作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 00:14:09 ID:???

その弾は、確実にハルナの顔へと飛んでいき、そのままあごのあたりを貫いていった。
ハルナは後ろに、仰向けに倒れる。
当然ハルナの撃った弾がのどかのところに飛んできて、自分はそれを食らって死んでしま
うだろうと考えていた。

(私たち3人とも死んじゃうんだ・・・。やっぱり、生き残れなかったですー・・・。)
悲しみに暮れながら、のどかは最期の覚悟を決めて、目を閉じる。
3人一緒に生き残りたかったのに、誰も残れなかった。
そう思えば思うほど、悔しさが押し寄せてきた。




だがのどかのところには、いつまでたっても弾は飛んでこなかった。
ハルナの撃った弾は、のどかからかなり横に離れたところに着弾していた。
いくらハルナが適当に撃っていたからといっても、明らかに不自然だった。

(まさか・・・。)
のどかは急いで、自分が撃ってしまったハルナのところへと向かう。
弾が当たって倒れて、そのまま仰向けの状態で寝転んでいた。
かろうじてまだ息はあったが、すぐに死んでしまうのは目に見えている。

「ハルナ・・・。ごめん――」
この島で、いや、人生で初めて銃を使って、しかも人を撃ってしまった。
そして、その撃った相手は大好きだった親友。
とても複雑な気持ちだったが、まず一番に浮かんできたのは、謝るという思いだった。

「私も、のどかとゆえと一緒にいたかった・・・。」
もうハルナは、殺す気なんてまったくないようだった。
学園にいたときと同じ、怖さのかけらもない純粋な表情をしていた。
639作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 00:15:55 ID:???

「いま、わざと私に当たらないように撃ったの・・・?」
実際、そうとしか考えられなかった。どんなに手もとがぶれたとしても、5メートルほどしか
離れていない相手に1発も弾があたらないはずはない。

「わかっちゃったか・・・。さすがのどかだね。」
「ハルナの・・・ばかぁ――」
のどかがぽこぽことハルナの体をたたく。
いちいち金網が当たって金属的な音がした。
たたいているうちにだんだんとのどかの力が弱くなっていき、最後には手をハルナに押し
付けているだけとなった。

「そう、私はばかだよ。最初から、のどかたちを信じればよかったのに・・・。」
ハルナの目から、また涙が流れた。
のどかの目からも、つられて涙が落ちる。
「ゆえを撃っちゃってから思った、もう私に生きていく資格はないって。だから、のどかに殺
してほしかったんだ。」
「――どうして・・・? どうして私たちと会ったときに、3人でまた一緒に行動できる、って思
わなかったの?」
「思ったよ。すっごくそう思った。でも、2人と一緒にいるには、私はもう殺しすぎちゃった。汚
れすぎちゃってるんだ――」


パンッ
ハルナは、なにが起こったのかしばらくの間理解できなかった。
しかしそれは、のどかがこの島で2回目の平手打ちを放ったことによる音だったと、のどか
の顔を見てようやく気付いた。
「私やゆえは・・・ハルナがなにをしても許してあげたのに・・・。ハルナが望みさえすれば、
いつだって許してあげたのに・・・。」
大量の涙が、のどかのほほをつたう。
それは垂れて、ハルナの顔へと落ちる。
純粋な友情がこめられた、とてもきれいな涙だった。
640作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 00:17:26 ID:???

「ありがとう、のどか――」
ハルナも、それを言うのが精一杯だった。何か言葉を発しようとしても、嗚咽が邪魔して何
もいえなかったから。
そのときは永遠にも思えた。




だがついに、ハルナの命に限界が来たようだった。
「のどか・・・苦しいからさ・・・私を撃って・・・楽にさせて――」

これが、最後の親友の、最後の頼みとなるだろう。
のどかは悲しみを飲み込んで、ゆっくりと頷いた。

夕映の銃。もとは亜子の銃。いまはのどかの銃。
それをハルナの額にゆっくりと押しつけて、引き金に指をかけた。


「のどかは・・・何も悪くないから・・・前を向いて・・・生きなさい――」

――パンッ――

   出席番号14番 早乙女ハルナ 死亡
                    残り 9人

641マロン名無しさん:2007/09/24(月) 00:18:58 ID:???
しえん
642マロン名無しさん:2007/09/24(月) 00:19:30 ID:???
支援支援
643作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 00:20:45 ID:???
79.Beautiful Lovers

自分の左手を見れば見るほど、刹那は自分の命が残り少ないことを実感させられた。
見なくても、いつまでも血が滴り落ちていて、意識を保つのがだんだんつらくなってくるのを
身をもって感じた。
自分が生きることよりも、木乃香に会うことの方が大事だと判断した刹那は、手首の治療を
する間も惜しんで歩き出していたのだ。

(この方角であっていればいいが・・・。)
戦闘能力はほぼ無に近い木乃香が、まだ生き残っているということは、おそらく木乃香は誰
か心強い味方と一緒にいるのだろう。
そう考えると、自分が木乃香を守らなければいけない場面はほとんどないだろうということ
は想定していた。
だが最後の自分の望み、木乃香に会いたい、という望みを叶えたいがために、刹那は木乃香
のもとへと急いでいた。

どちらにせよ、血液不足のいまの体ではもう誰かと戦うことはできない。
それならば、自分の最期を看取ってもらうのは木乃香であってほしいと思ったのだ。
木乃香と一緒に帰りたいと最初に願ったことを思いだし、それはもう叶うことのない未来だ、
と思って悲しくなった。
命を懸けてでも木乃香を守るのが役目だったのに、木乃香を守るわけでもなく命を落として
しまうのはとても悔しいことだ。
いろいろと思うことはあったが、刹那はただひたすら歩き続けていった。


そのうち、刹那は誰かの気配に気付いた。
自分の後ろから、誰かが追いかけてくる気配。
かなり進むスピードが速く、またその雰囲気から、乗っている人だということもわかった。
今の状況でなければ刹那はその人の相手をしただろうが、いまはまったく無視していた。
相手にしている暇はない。一刻も早く木乃香に会いたい。
その気持ちが一番強く働いた。
そして、後ろにオマケを引き連れたまま、刹那は意識せずに戦場へと入り込んだ。
644作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 00:22:40 ID:???


「せっちゃん!!」
自分を呼ぶ声。とても懐かしい声。いつも一緒にいた声が聞こえた。
消えかけていた意識を無理やり呼び戻して周りの状況を見る。

木乃香の横にいるのは、亜子とまき絵。
それに向かい合って、木乃香に銃を向けているのは朝倉だった。
そこまで確認して、刹那は体に力がまったく入らなくなり、地面に座り込んでしまった。
木乃香は、朝倉のことなど無視したかのように刹那に近寄り、抱きかかえる。

「お嬢様・・・。」
「せっちゃん!! ひどい怪我や。」

刹那の突然の登場で今にも決戦が始まろうとしていたその場の空気は乱されていた。
朝倉にとって刹那は背後から現れたし、木乃香がそれを叫ぶまで気付かなかったので相当
驚いた。刹那になら殺されかねないと思ったから。
そのせいもあってか、亜子もまき絵もすこし気がゆるみ、刹那の方を見ていた。
刹那は桜子につけられた左手首の傷以外に怪我はない。
だが手首を深く切りつけられたせいで、大量出血してしまっていた。
木乃香の言葉を聞いて亜子が救急バッグを取り出して治療をしようかとしたが、さすがに
朝倉の存在による圧力でそんな無防備なことはできなかった。


「お嬢様、無事でよかった・・・。私はもう、長くない・・・。」
予想していたものとは違う、元気のない刹那の声を聞いて、木乃香はショックを受けた。
会うときには元気な刹那と会えるものだと思っていたのに。
「そんな・・・いまからでも傷口を閉じれば――」
「もう遅いです。それに、それができる状況ではないはず。」
刹那が、首ごと傾けて、顔を朝倉の方に向ける。
朝倉という敵がいるのだから、治療なんてしている場合じゃないと言いたかったのだろう。
だがみるみるうちに刹那の顔から血の気が失せていく。
645作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 00:24:59 ID:???

「始まったときに、お嬢様は絶対に生きて帰らせると言ったのに、私はお嬢様に何ひとつし
てあげられませんでした。本当に、すみません。」
「そんなんどうでもええ!! せっちゃん、死んじゃいややぁ!!」

刹那の体に顔をうずめて、声の出る限り叫び続ける。
いま腕の中にいる刹那が本物であるという事実は、到底信じられることではなかった。
あんなに強かった刹那が、誰よりも強かった刹那が、死んでしまうはずはないのだ。

「お嬢様は、絶対に生き残ってください。佐々木さんと、和泉さんと一緒に・・・。」
声がだんだん小さくなっていく。目が閉じられる。
刹那が右手で木乃香の頭をそっとなでた。それと共に木乃香の目に涙がたまっていく。

「せっちゃん!!――」
「最後にどうしてもこのちゃんに会いたかったから――」



ダンッ
木乃香の腕の中で、刹那の体だけが見事に真っ二つに切り分けられる。
長い時間を経てせっかく再会した最高の親友2人にとって、その時間はあまりにも短かった
し、あまりにも悲しすぎた。
今度という今度は木乃香も大声で泣いた。
どんなにこらえようとしても、こらえられない涙だった。



泣き叫ぶ木乃香、それを見る朝倉、まき絵、亜子、そして、刹那を切った鉈を持ったままた
たずんでいる風香が、そこにはいた。
風香も、あまりの木乃香の泣きっぷりに鉈を振り下ろそうという手を止めて、じっと木乃香を
見つめている。
646作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 00:26:26 ID:???



木乃香にだけ、『ありがとう、このちゃん。』という声が聞こえた気がした。
もう動かない刹那をぎゅっと抱きしめながら、木乃香は涙を流し続けた――

   出席番号15番 桜咲刹那 死亡
                    残り 8人

647マロン名無しさん:2007/09/24(月) 00:26:56 ID:???
うおおおおおおおおおおおおお!!!!

乙!!!
648作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 00:28:00 ID:???
今日は以上です。
明日からはまた普通の時間に戻ります。

では。
649マロン名無しさん:2007/09/24(月) 00:37:13 ID:???
おっつー

せっちゃん・・・(つω`)
650マロン名無しさん:2007/09/24(月) 00:44:55 ID:???
乙&GJ!
風香が来たことでますます混戦だな
先が読めん
651マロン名無しさん:2007/09/24(月) 01:13:54 ID:???
乙!

朝倉・木乃香はともかく、暴走風香と覚醒まき絵の戦闘力が今一つ分からない俺ガイル
ここはフラグ発動に期待な?
652マロン名無しさん:2007/09/24(月) 01:43:47 ID:???
もうこれでマーダーは集結したな・・・・
さて、どっちが勝つかドキドキだ・・・
653マロン名無しさん:2007/09/24(月) 20:43:47 ID:???
暴走風香はL5レナだな

朝倉が攻撃しない違和感はまだ流せるんだが…
今の風香なら木乃香ごと腕の中の刹那をぶった斬るくらいやると思うんだが…
654作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 21:06:02 ID:???
どうも
本日の投下です。
655作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 21:07:49 ID:???
80.Contract

部屋中にワイヤーが飛び交い、見えないパンチも飛んでいく。
エヴァとヘルマンは、常人では考えられないくらいのハイレベルな戦いを繰り広げていた。

「ふざけたことを・・・。」
バトルロワイヤル自体には何の目的もない。
ただこのじじいがネギと戦いたかっただけ。
すべてを知り、エヴァは抑えきれない怒りを感じていた。
「いま絡繰茶々丸が一生懸命に結界を解除しようとしているところだろうが、それも私が想
定していた未来なのだよ。だから彼女ではなく君を閉じ込めた。」

ほんの一枚の壁をはさんだ向こう側で、ヘルマンの言うとおり茶々丸が結界をはずそうと
している。それによってこの島から脱出しようとしていたのも、すべて見通されていた。
「貴様ぁ・・・絶対に許さん。」
体すれすれで何かがたくさん飛んでいくのを感じながら、エヴァはヘルマンに向かって急
進する。それに対してヘルマンは避ける様子もなかった。
「残念だよ。君はこの程度か。何百年も生きている吸血鬼だと聞いていたから、もう少し楽
しめると思っていたのに。」

エヴァは、首輪をはずしたことで自分の体にいくらかの魔力は戻ったことを感じていた。
それによって、ある程度の魔法なら使えると思い込んでいた。
ヘルマンの体をワイヤーで絡み付けて身動きをとれなくし、0距離で凍結魔法を放つつもり
だったのだ。

656作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 21:11:30 ID:???

「この空間は、魔力を最小限に押さえつける力が働いている。君では魔法を撃つことは不可
能だ。」
だがその言葉通り、エヴァの手からは魔法のかけらも出てこなかった。
魔法が使えるのが当たり前だった毎日。
そこから全く魔法とかけ離れたところにうつってバトルをすることに、エヴァはなれることが
出来ていなかった。

ヘルマンは全身に力を入れてワイヤーの拘束を解き、ポケットから小瓶を取り出す。
かつてネギが住んでいた村を襲ったときに自分が封印されてしまったその瓶。
ネギと戦ったときにスライムたちがそれに閉じ込められたので、その構造を研究して
まったく同じものを作り出しておいたのだ。

「長年のんきな生活を送っていたから戦闘の力がなまってしまったか?」
「魔法だけが私ではないわ!!」
瓶に若干警戒して、もう一度距離をとって体勢を立て直そうとするが、一瞬見せた隙をヘル
マンは見逃さなかった。
口が不気味に光り、光線が飛び出す。
エヴァは自分の横の壁にワイヤーを伸ばして体をひきつけ緊急回避するが、ほんのすこし
前までエヴァがいたところの床は光線が当たって石となっていた。
しかしエヴァが起き上がる前に、ヘルマンの得意技、猛烈なデーモンパンチが直撃する。


「っああ!!」
「終わりだ。『封魔の瓶(ラゲーナ・シグナートーリア)!!』」
瓶がエヴァに投げられ、ふたが開いてそこへとエヴァが取り込まれていく。
抵抗する間もなく、最強の吸血鬼とも言われたエヴァが封印されてしまった。

まばゆい光が消え、小さな瓶だけが地面にコトリと落ちる。
「不死という力を過信した愚か者よ。よく働いてくれた。」
壁に囲まれた小さな空間に、ヘルマン1人しかいなくなった。
ゆっくりと歩いていき瓶を拾い上げると、満足げにその瓶を眺め、しまった。
657作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 21:13:52 ID:???

――カタカタカタカタ
壁をたった一枚はさんだ反対側では、大きなコンピュータを前に茶々丸がキーボードを打
ち続けていた。
自らの体から伸ばしたコードをコンピューターへとつなぎ、ひたすら画面を見ている。

「契約の力が・・・消えました。マスターの消滅を確認。申し訳ありません・・・。」
誰に言うわけでもなく小さな声でつぶやき、悲しそうな表情になった。
自分がこの部屋に入ったときに堅い壁が降りてきたので、自分が閉じ込められたのだと思
っていたが、本当はエヴァの方が閉じ込められていたのだ。
超とエヴァが戦ったときからしていた嫌な予感が的中してしまい、茶々丸はただ後悔する
しかできなかった。

ピッ――
『ロック解除。アカウント確認――異常なし。結界発生装置のメニューへと移ります。』
着々と、簡単に操作が進んでしまうことにすこし違和感を覚えながらも、早めに終わらせな
ければと思いまた画面を見つめる。

この部屋がすべての情報を管理しているらしかった。
新田たちがいた部屋は簡易的なコンピューターがたくさんあるハッタリの部屋で、本当の
詳しい情報はこの部屋で管理されていた。
島のいたるところに仕掛けられた監視カメラからの映像、盗聴器からの音声、生徒の死亡
状況などが、たくさんのコンピューターの画面に表示されている。

生存者、3番、5番、10番、13番、16番、22番、27番。
10番、27番以外はみな一ヶ所に集結している。そして戦っている。
3番、22番はほかと対立している。22番は正気ではない。

そんなことが、すべてお見通しとなっていた。
10番、つまり茶々丸が一度放送で呼ばれたのにもかかわらず、生きていることになって
いるということは、新田はこの部屋には入っていなく、新田ではない誰かがここで黒幕と
して存在していたということになる。
658作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 21:16:19 ID:???
新田はただ操られていただけ。操っていたのはヘルマン。だが茶々丸はそれを知らない。

『結界を解除しますか?』
『結界を解除すると、魔力、気は開放されます。よろしいですか?』
何の問題もなく最終段階までいけてしまった茶々丸は、すこし考えたが、すぐに結論を出した。
いまさら引き返すわけにはいかない。
2回『Yes』のボタンを押し、茶々丸は画面に表示された言葉を見て愕然とした。
予想することはできたけれど、ここまできてこれだけはやめてほしかった、という表示が
映し出されてしまったから。

『いま外部から接続されているものがある場合、1分後、その内容をすべて抹消します。』
外部接続、つまり、茶々丸のことである。
内容を消されるということは、何も残らない。ただの人型の機械としかならない。
せっかく結界を解除して、安全に脱出できると思ったところで、死刑宣告だった。


「――はい、そういうことです。マスターが何らかの形で消滅してしまったいま、頼れるのはネ
ギ先生だけと判断し、連絡しました。もう時間がありません。あと16秒。結界は私が解除し
ましたので、ネギ先生は魔法を使えるはずです。マスターを倒したほどの強敵ですので、十分
気をつけてください。ああ・・・5秒。ネギ先生、私はあなたと出会えて、本当によかったと思って
います。ありがとうござ――」

茶々丸の体から、光が消える。
手に持っていた千雨のパクティオーカードも滑り落ち、足が体を支えきれずに崩れていく。
頭に残っていた、ネギの映像もひとつ残らず消えていってしまった。

「茶々丸さん!! 茶々丸さん!?」
カードから、なにが起こったのかわからず、あわてふためくネギの声だけが聞こえていた。

   出席番号10番 絡繰茶々丸 情報抹消
   出席番号26番 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル 消滅
                    残り 6人
659作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 21:18:50 ID:???
81.Last Battle 〜Open〜

茶々丸の行動より30分ほど前から、5人の戦いは始まろうとしていた。
「私たちは、負けるわけにはいかない。いままでに殺されてきたみんなのために、私たちは
あんたを殺さなきゃいけない。」
「せっちゃんが死んじゃったのも、全部このゲームのせいや。でも、朝倉みたいな人がいな
ければ、せっちゃんは死ぬことはなかった。ウチは乗っている人を絶対に許さへん。」
「アキラも、裕奈も、みんな死ぬ必要なんてなかったのに・・・。自分が生きるためだけに殺
してきた人は、人として許されたらあかんと思うんよ。」

まき絵、木乃香、亜子が口々に言いたいことを口に出す。
朝倉は何も言わずに、ただ冷めた顔でそれらを聞いていた。
その横で風香もいたが、3人の怒りはみな朝倉へと向けられていた。

ほんの一瞬だけ沈黙した時間が空いて、行動が始まる。

パシュッ
戦闘の火蓋は、木乃香のボウガンの音で切って落とされた。
その矢はまっすぐに朝倉へと向かっていくが、当然朝倉はそれを横にかわし、木乃香へと
ワルサーを発砲する。
木乃香は防弾チョッキを着ているものの、わざわざ当たる必要はないと思って弾を避ける。
頭のすぐ横に風を感じてヒヤッとしたが、またすぐに体勢を立て直す。
それと同時に風香がレミントンを亜子の足元に向けて発砲し、複数の弾が亜子へと飛ぶ。
亜子はそれを後ろに下がって避けると、さらに風香から距離を置いた。
まき絵はデザートイーグルで朝倉を撃とうとしたが、銃を扱うのが初めてだったこともあり、
弾は朝倉の頭上はるか遠くへと消えていった。


それぞれ自分に向かってくる弾を避け、すぐに相手に撃ち返す。
亜子だけは飛び道具どころか武器すらないため、ただ避けるだけとなっていた。

660作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 21:22:15 ID:???

だが亜子には期待しているものがあった。
のどかと夕映が説得しに行ったハルナが味方についてくれるのではないかという期待。
そうすれば、夕映のグロックとハルナのP90が使えるようになる。
そう思って何度も首輪探知機を見ているのだが、自分たち5人以外の反応はまったく見ら
れなかった。
(早く来て!!)
願う隙もなく次々に弾が飛んでくる。風香が撃った弾と朝倉の撃った弾が同時に亜子へと
向かってくることはなかったが、それでもいちいち避けるのはとても大変なことだった。
動体視力と反射神経が、命の危険と友の仇という強い気持ちによって、最大限まで高め
られていることで、どうにかそれを可能にしていた。

パンッ
木乃香が矢をセットしている間に風香が頭に狙いを定めて撃つが、木乃香はそれを予測し
ていたかのようにとっさにしゃがんでかわす。
後ろにあった木にみるみるうちに穴が開いていく。

「銃相手やときついな・・・。」
ひとりでつぶやき、セットした矢を風香に向けて撃っていった。


ようやくまき絵も銃の使い方に慣れたのか、朝倉のところへ弾が飛んでいくようになった。
だがデザートイーグルはかなり反動の大きい銃であり、細身のまき絵が使うのはかなり
体力を消耗する。
それと比べると朝倉は反動など気にせずどんどん撃てるので、分が悪かった。
撃ってからすこしのあいだ無防備になってしまうので、むやみに撃つことができないのだ。
木の陰に隠れて弾をしのぎながら、反撃のチャンスをうかがっていた。

661作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 21:24:03 ID:???

風香に近寄られたらその時点で終わりだということはわかっていたので、みな風香から
遠ざかりながら発砲していった。
真っ赤な鉈を振り下ろされたら一撃でゲームオーバーだ。

「ずいぶん粘るね、3人とも。」
もっと簡単にけりがつくと思っていた朝倉はすこし焦りながらも、バッグから手榴弾を取り
出して風香と向かい合っている木乃香へと投げる。
木乃香は警戒して走って後ろへ下がるが、そこを風香がすかさず撃つ。

だが弾はすべて防弾チョッキに吸い込まれるように背中にあたり、木乃香はほぼ無傷だった。
爆風であたりの視界が悪くなっているときに、朝倉とまき絵は弾詰めをする。
風香もするべきなのだが、そんなことを考えていられる頭ではなくなってしまっているので、
ただ煙の中に撃ち続けていた。

視界が開けてきたころになって、また朝倉は手榴弾を投げた。

――今度は亜子に向けて。
だが亜子は首輪探知機を見ていてそれに気付かなかった。
いまごろになって現れた、一つの点。
つまり、3人のうち1人しか生き残ってこなかったということを示していた。
となると、その1人はハルナの可能性が高い。ハルナは乗っている。
残った1人が夕映かのどかである可能性を考える前に、ハルナが来れば、この戦場がもっ
と大波乱になるであろうという未来を想像していた。

「亜子っ!! 危ないっ!! 逃げてーーっ!!」


662作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 21:25:33 ID:???


爆発音。
ギリギリで気付いたまき絵が亜子に注意を促すが、間に合わなかった。
1歩踏み出したあたりで爆発をもろに食らってしまった亜子は、足にものすごい熱さを感じ、
倒れてしまう。
この島ではじめて攻撃をくらってしまった亜子だったが、いまはそんなことは気にならなかった。

いま自分ができることは、まき絵と木乃香への攻撃が少なくなるように、相手の気をひきつ
けて弾を自分に寄せることくらいだった。
しかしたったそれだけのことでも、亜子は必死でやっていた。
少しでも味方の役に立てるなら脇役だってすばらしいものだ、とわかってきたところだった
ので、いまさらあきらめるなんてことはしたくなかったのだ。

だが再び立ち上がるために足に力を入れようとしても、できなかった。
それがなぜなのか、自分の体を実際に見なくても、感覚でなんとなく想像はついた。
かろうじて上半身は生きていたものの、両足が吹き飛んでしまっているのだろう。
下半身を見ると失神してしまうのが目に見えていたので、亜子は無理やり目をそむけて体
を見ないようにして、手に握った探知機を見つめた。
確実に近づいてきているその点は、もうすぐこの戦場に到着しようとしている。
それを見た亜子は、その人は、のどかたちによって説得されて人の心を取り戻しているハ
ルナであることを願いながら、目を閉じた。

(まき絵、ウチのできることはここまでみたいや。あとはまかせてええよな・・・? 主役にな
って、麻帆良に帰って――)
痛みはほとんどないのに、意識だけが薄れていく。

                    残り 6人


663作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/24(月) 21:26:41 ID:???
今日は以上です。
あと4話なので、あさってで終了となります。

では。
664マロン名無しさん:2007/09/24(月) 21:30:17 ID:???
乙!

亜子に対してのパイナップルに思わず、
弾丸ボレークル━━━━(・∀・)━━━━!?
とか思った馬鹿は俺だけでいい
665マロン名無しさん:2007/09/24(月) 21:52:17 ID:???
マジ乙

あと4話・・・・・・うまく終わるのかな?
666マロン名無しさん:2007/09/24(月) 22:01:38 ID:???


マジで?あと四話って…すぐネギ到来か。
667マロン名無しさん:2007/09/24(月) 22:51:33 ID:???
まず初めに乙

防弾チョッキつっても衝撃は結構来るもんだぜ?
あと、デザートイーグルはまき絵なんかじゃ一発で肩持ってかれる
体力の消耗どころじじゃなくてマガジン一つ空になる頃には両腕がまともに機能しない状態でもおかしくない

文句ばっかりで済まんが決して荒らしとかアンチとかではないよ?
668マロン名無しさん:2007/09/24(月) 23:03:39 ID:???
>>667
いや、良い読者だと思うよ。
でもまぁ、今回は初めてみたいだから次回から気をつけような、主ってことで…。
669マロン名無しさん:2007/09/24(月) 23:16:05 ID:???
荒らしやアンチはただつまんないや糞だの暴言を吐くだけのもの。
>>667みたいなのはアドバイスなので書き手としては今後の勉強になるので非常にありがたい。
670マロン名無しさん:2007/09/25(火) 00:50:25 ID:???
個人的には終わってからのほうが良い気もするけどな
671マロン名無しさん:2007/09/25(火) 01:02:59 ID:???
乙!


非現実的な話にあまり現実的な要素は求めなくてもいいんじゃない?
672マロン名無しさん:2007/09/25(火) 01:14:12 ID:???
定期age
673マロン名無しさん:2007/09/25(火) 02:06:15 ID:???
難しい問題だよな
リアリティが感じられないと萎える人もいるだろうけど、
それを指摘すると今度は気にしてなかった人が萎える訳で。

やっぱり完結後に指摘するのが一番無難だね。
674マロン名無しさん:2007/09/25(火) 03:09:55 ID:???
それ以前に銃弾って避けれるのか?
いままで黙ってたけど都合良すぎて、さすがに我慢できなくなった
675マロン名無しさん:2007/09/25(火) 03:24:21 ID:M3bCBOH7
ハッピーエンドにしておくれ
バトルロワイヤル読んでると鬱になってくるから
676マロン名無しさん:2007/09/25(火) 04:30:10 ID:???
じゃあなんでこのスレ見てんだよwwwww

・・・とか言いつつ俺も同意しておく
今更話を変えるなんて無理なのは承知してるが、そう思わずにはいられない
677マロン名無しさん:2007/09/25(火) 08:11:56 ID:???
アンチ自演乙
678マロン名無しさん:2007/09/25(火) 08:18:04 ID:???
>>674
引き金を引くのと同時に移動すればよけれる
679マロン名無しさん:2007/09/25(火) 08:27:41 ID:???
弾よけられないとか言い出したらほとんどのバトルマンガがおかしいことになるだろ

現実と空想の区別をつけろ
680マロン名無しさん:2007/09/25(火) 17:18:01 ID:???
銃弾回避は超人や達人ならリアリティが保たれる、問題は無いよ
というか作品に注文を付けるのはやめなされ、間違いの指摘にとどめておくべき
681マロン名無しさん:2007/09/25(火) 19:28:08 ID:???
>>677
>675だが自演じゃないぞ
それにアンチでもない
ただ最初らへん読んでちょっと悲しくなった
死のないバトロワならいいんだけどぐろいのは苦手なんだ
682マロン名無しさん:2007/09/25(火) 19:30:22 ID:???
それでも最後まで投下しなければならないのがネギまロワってこった。
683マロン名無しさん:2007/09/25(火) 20:05:03 ID:???
人によって考え方が違うから、作者がどう作りあげようと作者の勝手。
読み手の考え方も読み手の勝手だけど、作者の文章ミス以外は心に留めておくべき。
684作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/25(火) 21:02:35 ID:???
どうも。
本日の投下です。
685作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/25(火) 21:05:06 ID:???
82.Last Battle 〜Miracle〜

亜子に危険を知らせるために叫んだ直後、すぐ横に迫っていた銃弾をわき腹にくらってし
まったまき絵は、あまりの痛みにうずくまりかけたが、意地でも立ち続けた。

「1人消した、と。あと2人か。」
人の命を簡単に消してしまっていいもののように思っている朝倉の発言に腹を立てる暇も
なく、痛みをこらえながらも、まき絵は朝倉に銃をむけて撃つ。
反動でわき腹が痛むが、そんなことを気にしている場合ではないことを、まき絵は誰よりも
わかっていた。
だが真正面から撃っただけではあまりにも弾道は見え透いていて、朝倉は木の陰に隠れ
てそれをやり過ごすと、すぐにまき絵へと反撃していく。
さらに、木乃香が亜子の方に気を取られていたので、いままで対決していた相手が攻撃して
こなくなって自由になった風香も、まき絵に向けて発砲する。

2人の弾はまっすぐにまき絵へと向かっていた。
朝倉が撃った弾だけならばともかくとして、2方向から迫り来る銃弾を、まき絵は避けきれ
るはずもない。あきらめの境地だった。


(このかだけでも生き残らせてあげたいな・・・。)
せっかくめぐりあえた亜子も朝倉に殺されてしまって、いまさら生き残っても悲しいだけか
もしれないな、などとありもしない未来を思いつつ、じっと弾を見つめた。
まわりの時間が、とてもゆっくり進んでいるように思えた。


「――――!!」
しかしその瞬間、まき絵は風香の撃った弾のひとつが木乃香の頭めがけて飛んでいって
いる気配を察知した。
防弾チョッキでは頭は守れない。頭に当たったら即死だろう。
686作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/25(火) 21:07:42 ID:???

いまだに亜子の方を見ている木乃香はそれには気付いていなかった。
いまできることをしなければいけないと、そう言っていたのに、その木乃香が戦いから目を
背けて呆然としていた。
亜子の無惨な有様を見て、ショックを受けてしまっていたのだ。

「危ないこのかっ!!」
何をどうしたって自分は助からないことを悟ったまき絵は、朝倉の方へと引き金を引きつつ、
弾と木乃香との間に体を割って入れようと飛び込んだ。
(間にあえぇっっ!!)
自分の右から弾が飛んでくるのが見える。
世界がほとんど止まって見えた。
――まるで自分以外のものすべてに何かの魔法がかけられたかのように。



目の前を弾が通り過ぎそうになり、まき絵は気持ちだけでも前に行こうとする。
一緒に行動してきた木乃香のために、何度も自分のことを守ってくれた木乃香のために、
必死の思いで進もうとした。
この島に来て誰よりも近くにいてくれた本当の親友を思う気持ちが、まき絵を動かした。


――――――
まき絵の声でやっと木乃香は事態に気付いたが、どうすることもできない状況だった。
振り返った直後に自分の目の前でまき絵が倒れる。
まき絵がその手に持っていた銃から最後の攻撃となる1発が発射され、それが朝倉めが
けて向かっていく。
悪を滅ぼすために、悪に吸い込まれるようにその弾はまっすぐ飛んだ。
まき絵のまっすぐな気持ちが、力となって朝倉という悪を倒さんとしたのだろう。


687作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/25(火) 21:09:23 ID:???

朝倉は、まさかまき絵が反撃してくるなどとは思っていなかったので、反応できずにその弾
をもろにくらってしまっていた。
眉間に見事に命中する。

撃たれてそのまま仰向けに倒れ、二度と起き上がりそうもなくなった。

まき絵は朝倉の弾をわき腹に1つ、腕に1つ、さらに風香の弾を背中に2つ、受けている。
いずれも急所ではなかったが、それぞれの痛みはすさまじいもので、まき絵には耐えられ
そうもなかった。


「いままで守られてばっかりだったから・・・。これで借りはチャラってことでいい、よね・・・?」
木乃香の足元から、苦しそうなせきと共に声が聞こえてくる。
「まきちゃん・・・なんで・・・。」

自分は何もしていないのに、まき絵がいたからこそいままで生きてこられたのに、こんな
最後になって自分のためにまき絵が死んでしまうなんて信じられなかった。
亜子とまき絵と、3人で一緒に帰ろうと思っていたのに、結局1人になってしまうのか。
「朝倉は・・・倒したから・・・。最後に風香だけ楽にしてあげて・・・。」
「まきちゃん!! 死んじゃダメや!!」
「刹那さんの分も、がんばって生きて――」



「――っ!!!!!」
まき絵が目を閉じようとするそのときだった。
木乃香の体中に、今までなかった力がみなぎってくるのを感じた。
この島に来てからいっさい感じることのなかった感覚。
極東最強とも言われるほどの魔力が体を満たしていき、木乃香の周りを何らかのオーラ
が纏い始める。
ちょうどこのときに、校舎で茶々丸が島の結界を解除したのだった。
688作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/25(火) 21:11:30 ID:???

「もしかして、魔力が・・・戻ったん? てことは――」
木乃香の魔力が戻ったということは、ネギから供給される魔力が戻ったということになる。
つまり、パクティオーカードを使えば脱出することもできるし、さらには――

「アデアット!!」
木乃香が叫ぶと、思ったとおり木乃香は淡い光に包まれると着物姿に変わり、その手には
いつものアーティファクトが握られていた。
それはいままでの1日から考えるとあまりにも非現実的すぎて、木乃香は一瞬何かの間違いではないかと
思ってしまうほどだった。

「えいっ!!」
その効果を試すかのようにまき絵に向けて扇子を振ると、学園にいたときと同じように光り、まき絵の傷が
どんどんふさがっていく。
この島に来るまでにたくさんの人の傷を治してきた扇子そのものの効果が、たった今まき絵の体にも表れたのだった。
これでもう殺し合いなんてしなくてすむ。
もう終わったんだ。
そう思う気持ちが、木乃香の中で大きな感動と喜びを生み出していった。

「まきちゃん!! もう、これで殺しあわなくていいんや!!」
体中の傷がなくなり、ゆっくりと目を開けたまき絵に木乃香はうれしそうに言う。
仰向けのまま、まき絵は自分の目の前にいる木乃香の姿を確認した。
「このか・・・どういうこと?」
死んだと思っていたのに、起きてみると傷1つない自分の体があって、何も理解できなくなっているまき絵は混乱していた。
死ぬことを確信したときの不思議な景色も憶えているのに、いまこうして無事に生きていて、
痛みもまるでないという状況は、まき絵には完全に理解不能である。
「つまりな、ウチはこの扇子を使って――」

――――言葉が、途切れた。

   出席番号3番 朝倉和美 死亡
                    残り 5人
689作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/25(火) 21:13:15 ID:???
83.Last Battle 〜Close〜

木乃香は、完全に忘れていた。
朝倉を倒し、まき絵を回復させたことで、何もかもが終了したと思っていた。
乗っている人だって、みんなこの光景を見て争うのをやめてくれるだろうと思った。

だがいまいる敵は例外だったのだ。
鳴滝風香はもはや周りの環境など考えていられる状態ではなく、ただ殺し続ければ生き残
れるということしか頭にない人形だったのである。
どんなに楽しそうに木乃香が話し始めても、それは風香にとっては殺す対象であることに
何の変わりもなく、相手がどんな状況であろうと殺す気は失せなかった。
刹那が来て木乃香が大泣きしたときだけは何かが心に引っかかったものの、木乃香のアー
ティファクトを見たくらいでは心を止めることはできない。

まき絵が生きていることなどわからずに、動いている木乃香をただ倒そうとした。

――そして、容赦なく、木乃香の首に鉈を振り下ろした。

まったくの無防備だった木乃香は切られるまで、いや、切られてからもそれに気付くことは
なく、最高の笑顔のまま命が途切れてしまった。
なぜ自分が生きているのかすらわかっていないまき絵にはそんなことを理解する余裕はまっ
たくないわけであり、しばらく何が起こったのかわからずにいることになった。


まわりにいる人がみな地面に倒れていて、風香は1人で笑っている。
「みんなたおしたみんなたおしたぼくがかったからいきのこったからふみかもほめてくれる
よねぼくはふみかのためにころしつづけたんだよ――」
1人になったと思った風香は戦いが始まる前と同じようにまたぶつぶつとしゃべり始め、血塗
られた鉈を見つめては満足げに微笑み始める。
そうしてまたどこかへ歩いていこうとしたところで、まき絵はやっと理解した。

690作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/25(火) 21:15:17 ID:???

木乃香が死んでしまったこと。
何らかの形で自分は木乃香に助けてもらったこと。
それには木乃香が持っている扇子が関係していること――――

そこまで気付いて、まき絵は木乃香の手から扇子をとって木乃香に向かって振った。
「このか!! 嘘だよね!? 私だけ残して死んじゃやだよ・・・。この扇子を振れば生き返
るんでしょ!? なんで目を開けないの・・・。このかっ!!」
振って振って振り続けた。手が動かなくなるほどに。
泣き叫びながら、まき絵は木乃香に、扇子をたたきつけるように振った。
でもいくらまき絵ががんばっても、木乃香が生き返るのは決して起こりえないこと。

さらに、まき絵も木乃香の二の舞だった。
ゆっくりと移動して、まき絵の後ろで鉈を持つ腕を振り上げている風香がいることに、まった
く気付かないまま木乃香を見つめている。
もうまき絵の二度目の命も尽きようとしていた。風香がにやっと笑って腕を下ろす。


――が、そのときだった。

「まき絵さん!! 伏せてぇぇぇーーーーっ!!!!」
ものすごい大声だったのでまき絵は驚き、何も考えずにその指示に従って伏せる。
案外近くから聞こえてきたその声とほぼ同時に、ほんの数十秒前までは聞き飽きるほどに
聞こえていた銃声が、再び耳に入ってくる。

まき絵は人生で初めて聞く、連射音。
伏せた直後に、まき絵の頭上を何十発もの弾が通過していく。
当然その弾をすべて避けられるほどの技量は風香にはなく、1発当たったかと思うと休む間
もなく次々に体に穴が開いていった。
振り下ろされるはずだった鉈は、力の入らなくなった腕から滑り落ちて風香の足元に転がる。
そして風香自体も体を支えられなくなって後ろに倒れる。
691作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/25(火) 21:16:50 ID:???


風香の軽いからだが地面に倒れたくらいではたいした衝撃は来なかったが、そのわずかな揺れで、まき絵はこのゲームが本当に終了したことを察した。
長い長い悪夢が、ここで終わりを告げようとしていた――――


「ほんや、ちゃん・・・。まき、え・・・。」
風香が倒れてしばらくじっとしていたまき絵は、もう1人の生き残りであったのどかが自分
を助けてくれたことをその目で悟り、再会を喜び合った。
そして何の言葉もなしにただ座っているところで、その声が聞こえてきた。

「亜子!?」「亜子さん!?」
2人は急いで亜子が倒れているところへいくと、もう生きていることが奇跡ともいえるような
状態で亜子がいた。
自分で想像しているとおり、亜子は両足が無くなってしまっている。
流れるだけの血はすべて流れてしまったのか、もう出血はしていなかった。

「――本屋ちゃんの声が大きくて、目ぇ覚めてもうたわ・・・。」
限りなく小さな声。だが2人は聞かなければならないと思い、耳を澄まして聞いた。
「――ウチはもう助からんけど、2人は無事に帰ってな。殺しあっちゃあかんよ・・・?」
「わかってる!!」
まき絵の即答に、亜子の表情がゆるむ。
だがまたすぐに意識が飛びそうなボーっとした顔になり、時間が無いことを感じさせた。
それを亜子自身もわかっているかのように、最後の言葉を伝える。

「――最後に、1つだけ言わせてな。・・・ありがとう、2人とも・・・。」
言ってすぐに、亜子は目を閉じて眠りにつこうとした。


692マロン名無しさん:2007/09/25(火) 21:17:51 ID:???
リアル遭遇ktkr
支援
693作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/25(火) 21:19:10 ID:???


その瞬間、まき絵は木乃香の扇子を取り出して亜子に向かって振った。
回復すると信じて、生き返ると信じて、祈りをこめて振り続ける。

しかしいくら魔法の力がこもっているとはいえ、扇子では亜子は目を開けなかった。
木乃香のアーティファクトは、木乃香にネギの魔力が送り込まれているから使えるもの。
仮契約もしていないまき絵には全くといっていいほど魔力はないため、効果が発揮される
はずは無かった。
さらに、それは傷を回復させるためのものであって、復活させることはできない。
だから木乃香を生き返らせることも、亜子を復活させることもできないのだった。


「亜子・・・。」
安らかに眠っている亜子を見つめながら、2人はまた黙って座っていた。
これからのことや、いままでのことを考えながら――――
戦いは終わったとわかっていても、その心が晴れるのはまだまだ先のことなのだろう。


それは中学生の少女たちにはあまりにも過激で、耐えられるはずもない悪夢だった。

   出席番号5番 和泉亜子 死亡
   出席番号13番 近衛木乃香 死亡
   出席番号22番 鳴滝風香 死亡
                    残り 2人


694作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/25(火) 21:22:40 ID:???
今日は以上です。
明日で終了です。
明日はおそらく一回の投下では規制に引っかかってしまうと思うので、
9時ごろに一回、さらに間を空けてもう一回という投下になって終わると思います。

では、最後の投下でまた会いましょう。
695マロン名無しさん:2007/09/25(火) 21:52:02 ID:???
乙!

まき絵に泣いた。
696マロン名無しさん:2007/09/25(火) 22:04:26 ID:???
乙!

まさか木乃香が・・・orz
最後をどう締めるか楽しみだなー
697マロン名無しさん:2007/09/26(水) 01:54:42 ID:???
乙!
あえて言おう、今までお疲れ様、和美よ・・・!

それにしても、ここまでまき絵がヒロインしてるロワは珍しいwww
698マロン名無しさん:2007/09/26(水) 02:02:32 ID:???
まき絵とのどかが生き残ったが、問題はヘルマンだ
ネギ間に合うか?
699マロン名無しさん:2007/09/26(水) 13:54:23 ID:???
よっしゃあああああ!!
本屋生存だあっ!!
700マロン名無しさん:2007/09/26(水) 15:31:37 ID:???
このせつ2人とも死んじゃって俺ちょっと涙目なんだぜ…
701マロン名無しさん:2007/09/26(水) 15:42:42 ID:???
>>700
何言ってんだ!
このせつなさがいいんだぜ!
702マロン名無しさん:2007/09/26(水) 17:41:13 ID:???
>>701

…ブルッ
703作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 21:04:39 ID:???
どうも。
とりあえず一度目の投下です。
704作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 21:06:46 ID:???
84.A Conclusion

茶々丸からの連絡の後、ネギは学園長に頼んでこの島へと転移してきた。
ヘルマンの完全な計画によって魔法先生全員がだまされ、3−Aの行方がわからなくなっ
ていたところで茶々丸からの連絡が入ったという次第だ。

ずっと捜索していたが、まったく足がつかなかった。
それほど隙のない計画だった。
エヴァは、魔法先生全員がだまされるはずはないと思っていたが、全くそのとおりになって
しまっていたのだ。
意識をそらす魔法、という単純かつ簡単な魔法を、最大限に拡大させて島全体にかける。
それによって島の存在をすべての魔法使いの頭からはずす、という大胆な作戦。
ただそれだけのことだった。


すぐに他の魔法先生たちもあとを追うということだったが、黒幕、と茶々丸が言っていた人物
との決着はネギ自身がつけたいといったところ、学園長は認めてくれた。

そして、校舎の3階。
兵士たちがいた場所から、もう1つ奥に入った部屋。
いまそこには、ネギ、そしてヘルマンしかいない。

「ヘルマン伯爵。あなたが黒幕ですか?」
一応いつもの口調で話しかけてはいるものの、明らかにネギからは、いつもには感じられ
ない恐ろしいオーラが感じられた。
単刀直入でかつ、いま求めている答えを的確に答えさせる質問だった。

「その通りだ、ネギ少年。あの時に私を消滅させておけばよかったと思っているのかね?」
対するヘルマンのほうも、すべてが自分の思い通りに進んでいたのにもかかわらず、全く
感情の無い表情で、真剣にネギを見ている。
「僕は、あなたを許さない。絶対に。」
705作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 21:09:25 ID:???

ヘルマンの質問を気にしているほどの余裕が、心に無かった。
とてつもない怒りがネギの心の大きなウェイトを占めていて、ひたすら、敵を倒す、という
ことだけを考えていた。

「ならば、かかってくるがいい。私はこのときを待っていた。」
エヴァが閉じ込められたのと同じようなつくりの部屋だった。
一辺30メートルほどの正方形の部屋。
ただエヴァのときと違うのは、たくさんの兵士たちは1人もいないということのみ。


ヘルマンが言い終わった直後、ネギは地面を蹴って瞬動で相手の後ろに回りこんだ。
前に戦ったときは、まだまだ戦いにおける技術は未熟だったが、あれからネギは死ぬほど
練習してきた。
いまのような、戦わなければいけないときのために、負けてはいけない勝負に負けないため
に、強くなろうと修行してきたのだ。

「ずいぶん成長したようだ。私も最初から本気でいこう。」
口に光が集まり始め、石化の光線を放とうと構える。
だがそんなことはお構いなしに、ネギは瞬動しては得意の中国拳法で攻め、避けられても
それをもう一度、とくりかえす。
当然ヘルマンは避けるだけで精一杯となってしまい、反撃なんてできそうもなかった。

ネギは攻撃をくりかえすごとに感情の高ぶりが抑えきれなくなってきて、それと共に戦闘能
力もどんどん強くなっていく。
――そしてそのまましばらく続いているうちに、魔力の暴走、オーバードライブが起こった。

「うあぁぁぁぁぁーー!!」
706作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 21:12:24 ID:???

目にとまらない速さで移動し、ひるんでいる間に近寄って無詠唱近接魔法の射手を撃つ。
ナギが好んでいたという連携技を真似して、そのあとに雷の斧の詠唱をしようとしたが、
オーバードライブのおかげで無詠唱で雷の斧がネギの杖から放たれた。
その威力も普段の何倍もに膨れ上がっていて、校舎の屋根など簡単に吹き飛ばして天井
を貫通する。
避ける間もなく、もろにくらってしまったヘルマンは地面にへたれこむが、ネギはまだまだ
攻撃をやめるつもりは無かった。

特に魔法を乗せることなく勢いに任せて、ヘルマンのすぐ横を瞬動で走りぬけながらパンチ
を食らわせると、すぐに引き返して今度は雷の矢をまとって、オリジナル技『雷華崩拳』を放つ。
抵抗する意思すらなくなってきて、ヘルマンはあまりの力の差に愕然としていた。
さらにこぶしで力のままに殴りつけると、ものすごい詠唱の速さで雷の暴風を撃つ。
耳をつんざくような轟音が鳴り渡る。

もう息すらしていないヘルマンに、いじめともいえるくらいに、隙を与えず無数に攻撃を加え
続けていき、それでもネギの怒りは収まることを知らなかった。

暴走を止める人が誰もいないため、ネギのやりたい放題という状態がいつまでも続く・・・



――――
何分も続けると、ヘルマンの体はぼろぼろになり細かい塵になって砕け散ってしまった。
霧吹きからでた霧が水蒸気となって空気中に消えていくように、それは跡形もなく消え去った。

「はぁっ、はぁっ・・・」
消滅させるまで攻撃すると、ようやくネギの感情は元に戻った。
自分の生徒たちをこんな目にあわせて、みんな死んでしまって、そう思うたびにまた怒りが
爆発しそうになる。
707作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 21:14:20 ID:???
「みなさん・・・本当にごめんなさい・・・。」
怒りとは反対に、自分がうかつだったからこんなことになってしまった、救えなかったという
自己嫌悪の思いも募る。
だがなによりも、悲しい、悔しい、その感情が一番大きかった。
何も残っていない部屋。ネギ以外には何も無い。

ネギは1人座り込んで、最近はあまり生徒の前では見せることの無かった涙を流した。
もうどうしようもない事実。
変えられることの無い過去。
みんなと作ってきたたくさんの楽しい思い出たちも、これ以上増えることは無い。
最後に残ってしまったのは、最もつらい思い出になるであろうもの。
最初に麻帆良に来たときはどうなることかと思ったが、本当は良い人ばかりであっという間
に仲良くなれた。
親しみにくい人だっていたが、そんな人たちとも親しくなった。
担任として、人間として、精一杯努力してきたつもりだったし、実際そうだったのだろう。

なのに、最も大事なときに、生徒たちの信頼を失ってしまった。
いまのネギは、自分の存在意義すら見失いそうになっていた。


――だがいまやるべきことは、悩むことではない。
生き残っている生徒がいるのだから、彼女たちを迎えにいくことが、ネギ・スプリングフィールド
の担任として最後の仕事であることに、間違いはないだろう。
たとえ彼女たちに見捨てられたとしても、それがネギの役目なのだから・・・。

――――外では夜の闇が、静かに島を包み込んでいた。

                    首謀者殺害によりゲーム終了

   【生存者 2名】
   出席番号16番 佐々木まき絵
   出席番号27番 宮崎のどか
708作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 21:15:55 ID:???

やっぱり入りきりそうもないので(規制に引っかかりそうなので)、
最後の一話はもう少し時間がたってから投下します。
15分くらいすれば大丈夫だと思うので・・・

では。
709マロン名無しさん:2007/09/26(水) 21:16:21 ID:???
支援するぜ
710マロン名無しさん:2007/09/26(水) 21:21:17 ID:???
俺も支援
711マロン名無しさん:2007/09/26(水) 21:31:35 ID:???
支援じゃ
712マロン名無しさん:2007/09/26(水) 21:31:47 ID:???
私、ネタないし支援でも(ry
713マロン名無しさん:2007/09/26(水) 21:37:22 ID:???
支援
714作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 21:37:55 ID:???
支援どうもっす。
もう一度いきます。
715作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 21:40:18 ID:???
85.Eternal Dream 〜To Revive Friends〜

ネギがまき絵とのどかのところに着くと、すでにそこにいた魔法先生たちによって、3人は
学園へと送り返された。
ネギが思っていたような、自分が見捨てられているなんてことは無かったが、とても普通の
雰囲気で話ができるような状態ではなかった。
3人とも何もしゃべらずに、ただじっと自分の無力さを思い、また後悔する。
ものすごく仲のよかった3−Aだったのに、いま残っているのはたったの2人となってしまったのだ。
自分のできることは本当にこれだけだったのだろうか、もっと自分ががんばることで生存者
が増えたのではないか、そんな仮定のことをずっと考えていた――――

1週間後――――
あれからまき絵にも魔法のことが知らされた。
エヴァに操られたことがあったからなのか、疑う様子もなくすぐに納得し、まき絵はネギと
仮契約を結ぶことになった。
まき絵のネギへの好意はいまだに続いていたため、ネギとキスしたかったから、というのも
パクティオーの理由としてあったかもしれないが、これから魔法世界で生きていくうえで必要
なことだという、重要な考えもわかっていてのことだった。
明日菜、刹那、他にもたくさんの人が死んでしまったのでネギのパーティーは崩壊してしま
ったが、のどかとまき絵によって新たなパーティーが作られることとなったのだ。

学園長が手をいれてくれたため麻帆良学園に残ることもできたが、いま3人は日本を離れ
てイギリスへ行き、ネギにとっては2回目となるが、メルディアナ魔法学校に入学しそこで
勉強し始めている。
アルビレオ・イマや学園長、高畑にはひどく残念がられたが、ネギがその思いを伝えると、
みな黙って頷いてくれた。
ネギも生徒としてメルディアナに入学したので、3人の関係が、先生と生徒、というものだった
のが生徒同士という関係になって戸惑うところもあったが、すぐになれて、現地の学校のクラス
メイトとも仲良くなれた。
よい友達に恵まれたことで逆に、まき絵ものどかも、友を失ったことを思い続け、それによる
苦しみ、悔しさ、怒り、そういうものをすべて勉強にぶつけることができて、すぐに一流の魔法
使いになっていった。
716作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 21:41:39 ID:???


さらに数ヶ月後――――
3人は、日本に帰ってきて、麻帆良のダビデ広場に作られたクラスメイトたちの墓の前にいた。

「ごめんね亜子、アキラ、裕奈、みんな・・・」
「ゆえ・・・ハルナ・・・」
親友だった者たちの名前をつぶやきながら、祈りをささげる。
ネギも含めて、3人は涙を流していた。
いまでも思う、自分も死んでしまえばどんなに楽だっただろうか、ということ。
想像していた以上に、『生きる』ことはつらかった。
一緒にいた仲間たちが一気にいなくなってしまったのだから、やりきれなくなるのも当たり
前のことだった。

だがたくさんの犠牲の上で生き残ってしまった自分たちには、生きる義務がある。
どんなにつらくても、それがクラスメイトたちの願いだったのだから、2人は精一杯生きな
ければいけないのだった。
まき絵ものどかも、過ぎてしまったことを心から悲しんだし、心から悩んだ。泣きもした。
後悔先に立たず、なんて言葉はあるけれど、それはまき絵たちには通用しないものだった。
悔やんで悩んで、これからについての思いが決まる。
そうしてただ1つだけわかったことは、やっぱり生きなければならないということ。
それだけを思いながら、この何ヶ月間かを過ごしてきた。
そしてこれからもずっと、悩みを抱えながら生きていくことになるのだろうと思い、重い責任
を感じながら立ち尽くした・・・。
いつまでもいつまでも、たくさんの思いを抱えて墓碑の前で祈っていた――――



717作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 21:43:02 ID:???

そして長く時は経ち、7年後――――
3人は学校を卒業し、ナギ・スプリングフィールドも所属していたNGO団体『悠久の風』に
参加して世界の困っている人々を助けながら、ある魔法の研究に取り組んでいた。

その魔法とは、人を生き返らせる魔法。

当然3−Aの仲間たちを生き返らせたいという理由から探し、研究しているわけだが、それ
はとても高度な魔法で、いまだに誰も使うことができないのようだった。
存在するのかですらわからず、見つけられる希望はわずかだったけれど、3人の一途な
決意はそんなことでは途切れずに、どんな困難にも立ち向かいながら探し続けていて、
それは今もまだ続いている。


「もう6年もたったんだね・・・。」
背も伸びて、すっかり大人になったまき絵がつぶやく。
風がさわさわと吹いてまき絵の髪が揺れ、涙のにじむ目が見え隠れする。
忘れるはずも無い出来事。思い出すたびに涙で目が潤んでしまう。
すべてが終わってから一緒に泣こう、と言った木乃香はいないけれど・・・。

「そうですね・・・。つい最近のような気がしますけど・・・。」
対するのどかの方もずいぶんと大人びて、中学のときのような、見ていて不安になる要素
は何ひとつなくなっていた。
3−Aのときからいまでも残っている、のどかの心の強さ。
それが友への思いをいっそう強くして、夢をかなえようとする気持ちへとつながっている。
夕映やハルナとまた会いたい、会って話をしたい、というのは一番の願いだった。

「責任を果たすために、僕たちは6年も勉強してきました。絶対に、3−Aのみんなと笑いあ
える日は来るはずです。」
ネギがずっと追いかけていた父、ナギ・スプリングフィールドとほとんど同じ姿に成長した
ネギも言う。
718マロン名無しさん:2007/09/26(水) 21:47:16 ID:???
しえん
719マロン名無しさん:2007/09/26(水) 21:47:22 ID:???
 
720作者16ケータイです:2007/09/26(水) 21:47:46 ID:???
やっぱ無謀でした…
規制ひっかかってすいません

10分後にもっかいやってみます

721マロン名無しさん:2007/09/26(水) 21:49:46 ID:???
支援
722マロン名無しさん:2007/09/26(水) 21:50:11 ID:???
支援
あれ、目から水が…
723作者16ケータイです:2007/09/26(水) 21:57:20 ID:???
10分じゃだめでした…
一回書き込もうとすると時間もキャンセルされちゃうのでまたしばらく無理かと思います…

お待たせして申し訳ないですが10時半でお願いします泣
本当にすみません
724マロン名無しさん:2007/09/26(水) 21:58:48 ID:???
了解。
待ってるね。
725マロン名無しさん:2007/09/26(水) 22:08:57 ID:???
行数の問題な気がするんだが・・・
1レスの文短くしたら投下できたりしないのかな?
726マロン名無しさん:2007/09/26(水) 22:25:06 ID:???
紫煙
727作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 22:29:29 ID:???
くそう・・・最後の最後で引っかかってしまうとは・・・

申し訳ない!!
つづきです。
728作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 22:30:54 ID:???

治癒系、攻撃系、補助系。ほぼすべての魔法を学び、接近戦での体術による戦闘もナギ
以上にできるようになったかもしれない。
もう二度とあの悲劇をくりかえさないために、悪を滅ぼしながら、世界を救うための勇者に
なろうと活動を続けている。


広い草原を歩いていたネギが、ふと立ち止まる。
それを見て、後ろをついてきていたのどかとまき絵もネギの横に並んでとまる。
3人は並んで空を見上げた。
青い空を雲が流れていくのを眺めながら、世界は変わり続けていることを想う。

だがどんなに時間が経っても、どんなに麻帆良から離れていても、いくら世界が変わって
も、3人の決意はいつまでも変わることのない宝石。
絶対にあきらめることのない不屈の精神は、あの3−Aから学んだものなのかもしれない。


みんなのひとりひとりの顔を思い出しながら、また歩き出した。
まき絵はなんとなくネギを見る。
のどかもネギを見ていて、自然に3人の視線が合う。
まき絵はネギの左腕を、のどかはネギの右腕をとって、自分の腕と組ませた。
そして、ふふっと笑いあって、大きく息を吸った。

互いに言いたいことはわかっている。
長い間でつちかわれてきた友情によって、相手の考えていることくらい簡単にわかるから。

3人は阿吽の呼吸でタイミングを合わせて、叫んだ。


『待っててね、みんな!!』

729作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 22:32:37 ID:???


3人の声は響くことなく、あっさりと地面に吸収されてしまう。
緑のそよぐ草原を、風が言葉を乗せてどこかへ吹き抜けていってしまった。
だがその言葉は不思議な力で天までのぼり、みんなのもとへ届いたような気がした。

場所こそバラバラになってしまったものの、3−Aとしてのみんなの心はいつも一緒にあるから。
いまの自分たちのことを見て、聞いて、感じていてくれる仲間がいる。
いつになるかはわからないけれど、いつか必ずみんなで笑いあえる日が来るはず。
きっと天からみんなが見守っていてくれる、だから叶わない夢なんてないんだ。

――――そう信じる3人は、『夢に向かって、まっすぐ見つめる瞳』の持ち主だった――――


      ネギまバトルロワイヤル16部   完


730マロン名無しさん:2007/09/26(水) 22:35:16 ID:???
乙でした!
731作者16 ◆KKIM59nvpg :2007/09/26(水) 22:35:29 ID:???

最後に、完全に雰囲気崩しました・・・作者16です。

長かった。
高校の入学記念としてなんかやるか、と思って書き始めたのが4月の3日。
そこから執筆終了が6月14日。
書いているうちに自分の好きなように話を作れるところにはまってしまって、自分の文章力
のなさに驚愕しながらもなんとか書き上げることが出来ました。
そして投下も今日で終わりなわけで、ここまでがんばってこれたのも読者の皆さんのおか
げだと思っています。
文字のミスはなかったはずですが、規制や抜けなどいろんな問題を起こしてしまいご迷惑
をおかけしました。
それでもこんな駄作、ダメ作者に最後まで付き合ってくださって本当にありがとうございます!!


実は投下と平行してネギロワ2作目を書いていたりしたのですが、なんせ3つ小説を書いて
いるものでなかなか進まず、終わる気配なし・・・。といっても6万字は書いてますっ

今回の反省点を生かしつつ書き上げてまたこの板に投下できたらいいな、なんて思ってた
りするので、もしそのときがきたら温かく迎えてくださいねww


では、こんなところで作者16は引き上げようと思います。
17氏、がんばってください!!
くりかえしになりますが、ほんとうにありがとうございました。


732マロン名無しさん:2007/09/26(水) 22:40:44 ID:???
乙!!感動した!


だが欲を言えばヘルマン戦がちょっと展開速すぎたかなと思ったり。
でもとにかくGJ!そしてお疲れ様でした!!
733マロン名無しさん:2007/09/26(水) 22:43:05 ID:???
超乙、ラストシーンが
18巻の162時間目の場面が浮かんだ

ありがとう
734マロン名無しさん:2007/09/26(水) 22:51:26 ID:???
乙です!!
感動しました。
735マロン名無しさん:2007/09/26(水) 23:57:15 ID:???
前半部分はwktkさせる展開だったが後半に入るにつれて勇み足な感じに受けた
ヘルマン戦をもう少し濃く書いてみたり読み手を驚かせる展開等を盛り込むと更に面白くなる
まぁ只の戯言なので聞き流して欲しいorz

とても楽しめたので二作目も期待してますね
長い間投下乙です!!
736マロン名無しさん:2007/09/27(木) 00:07:24 ID:???
乙!
実によかった・・・

ココから感想
テンポが良くて読みやすかったけど、後半は少し展開が
速すぎるように感じた
特に最後はもう少し長くてもよかったかな、と思う
エラそうでスマンね

投下乙!乙!
737マロン名無しさん:2007/09/27(木) 00:25:17 ID:???
>>731
よぉがんばった
すごいよ

ただ、実際に人殺しちゃうとかやめてな
青山剛昌とか見てるとそう思っちゃうんだ
実力は素晴らしいから自信持って
738マロン名無しさん:2007/09/27(木) 00:30:43 ID:???
>>737
他人の心配する前にそんな莫迦な事思っちゃう自分の頭心配した方がいい。
739マロン名無しさん:2007/09/27(木) 00:40:59 ID:???
>>738
うん………悪かった
作者16氏、ごめん
2作目がんばってくれ
740マロン名無しさん:2007/09/27(木) 02:03:22 ID:???
作者16氏、大変乙でした!

全体的に見て、死に際がしっかり書かれていたのが良かった。
特に明日菜の最期は歴代ロワっ比較しても珠玉の出来だと思う。

作者16氏は短編書きに向いてると思うのは俺だけか?
勿論、次回の長編も期待大だけど、短編を書く才能があると思うんだ。
741マロン名無しさん:2007/09/27(木) 08:02:07 ID:???
和美をここまで徹底的にマーダーに仕上げたのはあんたが初めてだ
乙です!
742マロン名無しさん:2007/09/27(木) 08:18:10 ID:???
作者16氏乙でした!!毎回楽しく読ませて頂きました!!木乃香スキーの自分としてはかなり見応えのある内容でした!
743マロン名無しさん:2007/09/27(木) 08:37:11 ID:???
>>737->>738
ワロタ
744マロン名無しさん:2007/09/27(木) 10:09:40 ID:???
龍宮(アレは五月か…よし)
パンパンパンッ
五月「はうっ…」
ポヨーーン ヒュッヒュ
弾丸は五月の身体に命中するがあまりに柔らかい肌だったため弾き返されてしまう。戻ってきた弾は龍宮の額に穴をあけた。

五月「私に銃は効きませんよ、龍宮さん」
龍宮「む、無念…」
745マロン名無しさん:2007/09/27(木) 14:49:49 ID:???
>>744
ハート様乙
746マロン名無しさん:2007/09/27(木) 21:53:18 ID:???
まずは乙
ここまで完全なハッピーエンドも珍しい気が

展開速いなってのは同上
あと、生き残った二人も親友失ってるわけだし
たった7年でここまでポジティブに復活してるのも少し違和感
まぁ適当に聞き流して構わんです

二作目も頑張って下さいな
747マロン名無しさん:2007/09/27(木) 23:12:51 ID:???
乙です
今後の作者様たちの「ためになる」ような作品だと思う
いーとこもわるいとこもね
748マロン名無しさん:2007/09/27(木) 23:14:25 ID:???
17氏!17氏はいずこに!?
749マロン名無しさん:2007/09/28(金) 04:32:26 ID:???
そういや生存率を計算してくれた方はもう来ないのかな?
750マロン名無しさん:2007/09/28(金) 06:48:39 ID:???
17氏はいつから投下始める?
751マロン名無しさん:2007/09/28(金) 10:57:21 ID:???
>>746
わざとそういう風にしたんじゃね?
752マロン名無しさん:2007/09/28(金) 11:45:38 ID:???
黒歴史事件の時に避難所を作ったよね?
あそこを使って歴代作者さんへの質問とか裏話が聞けたらいいと思ったんだけど、


・・・・・・荒れるかな?
753マロン名無しさん:2007/09/28(金) 13:01:40 ID:???
というか生存率の人=まとめ4管理人だから。
754作者17  ◆S5dwaooXVU :2007/09/28(金) 18:42:33 ID:???
あ、すみません。ちゃんと17は張りついてますよ。
作者16氏お疲れ様でした。

>>751
もう作品は完成しているのでこちらはいつでも大丈夫ですよ。
755マロン名無しさん:2007/09/28(金) 19:29:06 ID:???
いつでもいいぜ
ただ容量いっぱいだから次スレ立てないとな
756マロン名無しさん:2007/09/28(金) 19:54:53 ID:???
>>752
俺はいいと思う
757マロン名無しさん:2007/09/28(金) 20:01:31 ID:???
たててくる
758マロン名無しさん:2007/09/28(金) 20:13:28 ID:???
759マロン名無しさん:2007/09/28(金) 20:17:40 ID:???
>758
乙。

ここはどうする?

16氏への感想とあれば短編を投下という感じでいいかな?
760マロン名無しさん:2007/09/28(金) 20:58:01 ID:???
んー残り数レスしか書き込めないだろうからそれでいいんでない?
16氏への感想で〆れば後味も良さそう。
だが残り2kbで短編は無理だろうw
761マロン名無しさん:2007/09/29(土) 00:38:10 ID:???
遅まきながら16氏乙。

展開速いとか言われているが、
バトロワはバトロワ本編が肝なのであって、
ネギ絡みのところはむしろあれでよかったと思う。
ラストバトルも不足には感じなかったし。

エンディングも少年漫画のような爽やかさでかなり好き。
面白い作品を見せてくれて改めてありがとう、16氏。
762マロン名無しさん:2007/09/29(土) 00:51:42 ID:???
感想で締めるんだよな?

作者16氏GJ!!!!!
とりあえず書き始めと根拠、その他誕生日などに共通点を感じワロタww
内容も、終わり方もすっきりしててよかった
展開もあんまり長く書かれるよりもあれくらいの長さで正直ちょうどよかったんじゃないか?
何様なんだって意見だがとにかく作者16氏ありがとう!!
763司書 ◆diEk0iTtGI :2007/09/29(土) 01:36:15 ID:???
余ってそうなので報告。

表紙書き始めたりとかしたせいで、あまり進んでなかったり。
完成が遠い……、なんとか今年中に仕上げたいけど

チラ裏でした。
764マロン名無しさん
>744
わろたwww
本編の感動が一気になくなってこっちに感動したww