(o^v^o) ぱにぽに de 学級崩壊 (*゚∀゚*)7日目

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1マロン名無しさん
このスレはいじめやエログロなど、ぱにぽに及び関連作品のダークな話をするスレッドです。
不快感を覚えたり、キャラクターのイメージを損なう表現がある可能性がありますが、ご了解の上でご覧下さい。

【書き手の方へ】
ぱにぽにのダークな話であれば必ずしも学級崩壊にこだわらなくても結構です。
ただし露骨な性描写はまとめサイト収録時に修正されることがあります。
内容によってはエロパロスレへの投稿を検討してみて下さい。
なお、最初に「人死に・グロ・エロ」の有無を書いておくと喜ばれます。

【まとめサイト】
ttp://www.pphoukai-matome.com/

【前スレ】
(o^v^o) ぱにぽに de 学級崩壊 (*゚∀゚*)6日目
http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1161481906/

【関連スレ】(21禁です)
ぱにぽにエロパロスレッド6時間目
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1161175457/
2ミケランジョロ:2006/12/17(日) 21:33:48 ID:???
二次会
3マロン名無しさん:2006/12/17(日) 21:34:06 ID:???
4マロン名無しさん:2006/12/17(日) 21:38:48 ID:???
>>1乙ー
5マロン名無しさん:2006/12/17(日) 21:44:43 ID:???
おっつー

ペースはえぇー
6マロン名無しさん:2006/12/17(日) 22:31:50 ID:6y/ek3bX
>>1
乙かれ様カモ〜☆
7マロン名無しさん:2006/12/18(月) 00:20:27 ID:???
>1乙。
8マロン名無しさん:2006/12/18(月) 00:52:10 ID:???
>1
早乙女乙女
9560:2006/12/18(月) 00:59:20 ID:???
>>1
新スレ祝いに投下
本題に入ります

「いきなり夜ーーーーーー!!!」

1年A組桃瀬修は黄昏ていた・・
静かなバーの店内、自分たち以外にもちろん客はいない、いるのは
若きバーテンダーと隣でなにやら服の事について語り合っている柏木姉妹、それに
もはや教師としての燐片すら残さないほど泥酔した担任の五十嵐美由紀、彼女はすでに
恐ろしい量の酒を飲んでいた。そもそもこんな場所に生徒を連れてくるのも問題なのだが。
人のいい修はそこまで咎めなかった。夏休みなんだから少しぐらいハメを外したって良いだろう
そんな気持ちがあった。柏木姉妹はヒマだったからくっついてきただけだった。

「あ〜〜ここの酒最高ねぇ〜マスターもう一杯ぃ〜」
「飲みすぎですよ先生・・少し外で風に当ってきたらどうです?」
「そうねえ・・じゃあ少し行ってくるかな・・」
バーテンの言葉に従い五十嵐は千鳥足で外に出て行った。

「ねえ、先生まだ帰ってこないの?もう1時間ぐらいたつよ?」
優麻が不安そうに修に告げた。確かにやけに帰ってくるのが遅い、もしかして
その辺で酔いつぶれて寝てしまっているのではないか、あながち否定は出来なかった。
「俺、外に探しに行ってくるよ、もしかしたらその辺で寝てるかもしれないからな」
「気、気をつけてね桃瀬君・・このへん暗いから・・」
「ああ、ちょっと行ってくる」

「ホントに暗いな・・」
店の外は本当に真っ暗だった。バーテンに借りた懐中電灯のスイッチを入れると
修は歩き始めた。周りの状態は一言で言うなら森だった。いわゆるこの店は「隠れ家」的な
店であり、人が集まる所からは少し離れていた。懐中電灯の光を頼りに夜道を歩いていく
10560:2006/12/18(月) 00:59:56 ID:???
3分ほど歩いただろうか、修は少し目の前の先にある茂みを見た。
ガサガサと茂みが激しくざわめいていた。普段なら何か小動物でもいるのだろうと
そこまで気に留めはしないが、今回は違っていた。ヤバイ、何かがヤバイ、頭の中の何かが
修にそう告げていた。修はおそるおそる音を立てないように茂みに近づいていった。
近づくに連れて修の不安は増大して行った。音が聞こえる、人間の発する音ではない、そう
獣の類が発する音だ。臭いがする、日常生活では嗅ぐことなど無い臭い、そう、むせかえるような
血の臭い、汗が止まらない、動悸がどんどん早くなってくる、しかし修は確かめねばならなかった。
少し震える手で修は一度ためらった後、茂みの草を静かに掻き分け、それを見た。

そこには人が横たわっていた。いや、かろうじて人だと判別できた。そしてそれの周りでは
よく知っている獣、そう、犬が口を真っ赤に染めながらそれを一心不乱に貪っていた。
修は今すぐこの場から逃げ出したかった。信じがたい光景だった。
横たわっているのは修がよく知っている人物、1年A組担任、五十嵐美由紀。その無残な姿は生前の姿を
留めていない。首はあの強靭な顎と牙で喉を切り裂かれ血がまだわずかに噴出していた。
体は無残に食い散らかされ内蔵が散乱していた。

修は一刻も早く逃げ出したかった、五十嵐先生が死んだ。普段のらりくらりしていた修もこんな状況に
なってしまったからには迅速な判断をした。しかしここで音を立ててはいけない、修はゆっくりと茂みから
離れていった、ゆっくりと、しかし確実に、そして茂みから充分に離れたことを確認すると一目散に走り出した。
自分はこんなに早く走れるのかと少し感心した。早くあの店に戻らなくては、このことを早く伝えなくては。

桃瀬修、このとき彼はまだ知らなかった。自分がこれから、さらなる恐怖に出会うことを。
11彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:42:50 ID:???

このスレに来ると色々な作品が読めて嬉しくなります。
私も『彼女と誰かの物語』を投下させていただきます。
12彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:43:32 ID:???

「レベッカさん」
急に後ろから呼び止められたレベッカは、反射的にそちらの方を振り向いた。
そこにいたのは、見たこともない成人男性だった。
「桃瀬くるみが言っていた、彼女の仲間です。こちらへ来て下さい」
レベッカはその男の姿を眺めてみた。
濃いグレーのスーツに水色のネクタイという、特にあげつらう所のない服装をしている。
ごつくはないが結構がっちりした体型で、レベッカよりも遥かに背が高い。
顔を見上げてみる。見た感じ30歳ぐらいと思われるが、雰囲気だけならかなり老けて見える男だった。
「はやく、時間がありません」
その男は足早に路地の奥へと進んでいった。
レベッカは退き返そうかと一瞬だけ迷ったものの、乗りかかった船だと考え直し男の後を追った。

男は先ほど出てきた扉を開け、レベッカに言う。
「こちらです。どうぞ」
男よりも先に入ることに若干の恐怖は感じたが、レベッカは言われるままに建物に入った。
彼女のすぐ後から男も中に入り、扉を閉めた。
「お前は何者だ? くるみとどういう関係にある?」
レベッカは鋭い顔で男を睨めつけた。
男はレベッカの脇をすり抜け、次の扉を開けている。そこには地下へと続く階段があった。
「事情はすぐにお話いたします。ついてきてください」
男はそう言ったきり、階段を急ぎ足で下りていく。レベッカも男に合わせて階段を下ることにした。
13彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:44:15 ID:???

建物の中は思っていたよりも複雑だった。数えてはいないが、地下何階分も潜っているようだ。
一つ階段を下りるとそこには幾つかの部屋と廊下があり、そこを進むとまた下への階段がある。
地層の巨大な質量が、周りから何となく感じ取れる。
周囲から押し潰されるかのような恐怖を、レベッカは肌に覚えた。
それでも男は地下へ進み続けている。もちろんレベッカも。
蛍光灯の孤独な白さが、眼に痛かった。
部屋にも廊下にも、見るからに重そうな段ボール箱が山のように積んである。
ここはどういった施設なのかとレベッカはいぶかしんだ。
自分は売り飛ばされるんじゃないか、いかがわしいことをさせられるんじゃないか。
とめどなく生まれてくる不安が、レベッカの心の中で渦を巻く。
元より説明を全く受けていないんだから、のこのこと付いて来るべきではなかったのだ。
レベッカは後悔していた。
だけど、くるみが大丈夫って言ってるんだから大丈夫。それだけが命綱だ。
くるみが信頼できるのかどうかは、考え出すと身体が震えてくるから考えない。

「ここで、お話しましょう」
物理的時間では数分だろうが主観時間では何時間もたった頃、男は一つのドアの前で足を止めた。
変哲もない金属製のドアだった。
男がそれを開けるのに従い、レベッカは中へ入っていった。
これまたシンプルな部屋だ。
折畳み式のテーブルが二つに、椅子が四つ。壁際には小さな棚とテレビデオが鎮座していた。
バタンと後ろのドアが閉まる音がした。男も中に入ったのだ。
「お掛け下さい」
男は椅子の一つをテーブルから引き出した。レベッカは大人しくそこに座る。
男の方はというと、彼女の向かい側の椅子に腰掛けていた。
「ここまでお付き合い頂き、ありがとうございます」
「挨拶はいい。用件は何だ」
勇気を振り絞り強気の態度を保つレベッカを見て、男は僅かに微笑んだ。
レベッカにはそれが妙に腹立たしかった。
14彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:44:51 ID:???

「私もそうしたいと思っていた所です。ではお話致しましょう。
 レベッカさん。あなたは監視――いや観察されています。かなり前から、常にね」
レベッカは黙っていた。それはもう知っていることなのだ。男は更に続けた。
「そしてあなたの日常生活の映像は記録され、広く人の目に晒されています」
……これも想像の範囲内ではあった。
盗撮された画像や映像が裏で取引されるということは、レベッカも知っている。
自分がその被害にあっているかもしれないというのは、覚悟していたことであった。
「やっぱりな……。だがお前の言うことには具体性・信憑性が欠けている。
 お前は妄言を吐くために私をこんな所へ連れ込んだ訳ではないだろう。
 お前たちの目的は? くるみはどう関わっているんだ」
レベッカの尋問を受けた男は、手を組み、肉体を前へと傾けた。
その顔は今までにも増して真剣で、精気に乏しかった。
「私たちの目的は、レベッカさんを自由にすることです。
 事態はあなたが思っているほど小さいものではない。
 あまり詳しくはできないのですが、証拠とともに説明します」

男は立ち上がると、一本のビデオテープを棚から取り出した。ラベルは貼っていない。
そのテープを手で持ち上げながら、男は言った。
「これは私たちが入手した、初期のレベッカさんの記録です。
 撮影したのは私たちではありません。それを証明することはできませんが……。
 とにかくご覧になって下さい」
男はテレビの画面をつけるとテープをテレビデオに差込み、再生のスイッチを押した。
今時VTRかよと、レベッカは心の中で毒づく。
「諸事情によりビデオテープでしかお見せできません。画質もいまいちで……。申し訳ありません」
どうやら男の方も自覚しているようだった。
15彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:46:39 ID:???

かすかな機械音を立ててビデオは廻り始めた。
青一色だった画面が、よく見知った風景に変化した。
画質は非常に悪いが、はっきりとわかった。学校の廊下だ。
画面の枠外から、スーツを着た男性と一人の少女が現れた。
あれは……間違いない、早乙女とレベッカだった。
『まず僕が行きますから、宮本先生は僕が呼んだら中に入ってきてください』
『あ、あぁ……』
『大丈夫ですか? 緊張してるみたいですが――』
『ヘ、平気だ よ……』
この会話には覚えがあった。レベッカが桃月学園に赴任した最初の日の会話だ。
箱の中の二人を見てみても、どうやらあの日の服装をしている。
この映像は確実に、レベッカの「始まりの日」を切り取ってきたものだった。
「これは……」
「私たちが入手した記録の中で最も古いものです。
 レベッカさんは、この頃から観察されていたんですよ」
レベッカはテレビを食い入るように見つめ続けていた。
映像の視点は廊下から教室内に移動している。
今は、早乙女がC組の教壇に立ちこんなことを言っている。
『今回からこのクラスは新しい先生が受け持つことになった。
 少し若いがコロンビア大学で博士号を取得した天才先生だ』

この続きは、もう知っている。
『宮本先生どうぞ!』
目を瞑って思い描くことも出来る。
教室の扉がちょっとだけ開き、小さな女の子が中を覗く光景を。
『……』
そしてすぐに扉を閉めてしまうのだ。
『ピシャッ』
ほら、言った通りだ。
――あの時は私もウブだったなあ。学校の物、人、全てが自分の敵のような気がして。
   正直、何でこんな道を選んでしまったのか、過去の自分を怨んだぐらいだった。
16彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:47:26 ID:???

『先生! 宮本先生!』
『ちびっこだ!』
『しかも金髪!? 外人か!』
――今じゃもう皆と仲良くなっている。…と思う。
   あの時の心配が杞憂に終わって、本当に良かった。

だけど最初は、生徒とどう接していいのかわからなくて。
ハーフであることや子供であることのせいで奇異な目で見られるんじゃないかと怖かった。
そして初めて生徒たちの前に立った時の反応は、恐れていた正にそれだった。
『外人だ』『ちびっこだ』
教室中が騒がしい。
私が話し出そうとしても、自分たちでぺちゃくちゃ喋るばかりで聞いてくれない。
おいお前ら、私のことがそんなにおかしいか。
不相応にも、教師として前で突っ立っている私のことが。
この色素の薄い髪が、眼が。
130cm代の身長が。この小さな肉体が。

10年間の人生が。

もう我慢がならない。
抑えようとしてももう駄目だ。
叫ぶ。
叫べばいいんだ。
そうだ、叫ぶしかない。
叫ぶしか……。

「ガキだからってバカにすんなー! ムシケラどもが!!」
17彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:48:02 ID:???

「レベッカさん」
「ひっ……」
ぽんと肩に手が置かれるのを感じ、レベッカは体を震わせた。
振り返ると、レベッカをここまで連れてきた男が困ったような顔をして立っていた。
「すまん、取り乱した……」
「いえ……」
男はテレビの元へと行き、停止ボタンを押して画面を消した。
箱の中のレベッカはちょうど出席を取っているところだったが、それは三十人目で終了させられた。
ここにいるレベッカはというと深呼吸を二、三回していた。
彼女の前の椅子に男が座る。取調べの体勢だ。
「見ていただいたものは再現でも加工されたものでもありません。
 レベッカさんが桃月にいらしてからずっと、あなたは記録されていたのです」
「……私を撮影する人間の目的は何なんだ?」
男のことを上目遣いで睨みつけながら、レベッカは低く鋭い声で尋ねた。
誰が自分の周囲にカメラを仕掛けていたのかは、彼女は全く知らない。
だがこの男は、どういう立場にあるのか事情をかなり把握しているようだ。
掴みかかって無理にでも吐かせたいところだが、理性でその衝動を抑える。
いずれにせよ、この男だけが現時点では真相へ近づく手がかりなのだから。

男はレベッカの目を真正面から見据え、答えた。
「一言で言えば、娯楽です」
「……ごらく?」
「はい。レベッカさんの映像はあなたの知らない世界で、人々を楽しませているのです。
 卑猥な目的ではありませんよ。子供から大人まで、多くの人があなたを見ています。
 彼らは純粋に、レベッカさんの生活を観察しているのです」
18彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:49:19 ID:???

どういうことだ? とレベッカが聞こうとした時だった。

ガン! ガン!

突然、部屋の扉の一つが強く叩かれる音が響いた。
驚いてドアの方をとっさに振り向く。
「警察だ! ここを開けなさい!」
扉の向こうから、くぐもった声がわめき散らしているのが聞こえた。
虚を突かれたレベッカは落胆し、その一方で安堵もしていた。
こいつは警察のお世話になるような奴なのか?
男を見てみると、顔を顰めて呟いている。
「ちっ、奴ら……。ここまで対応が速いとは――」
「そこにいるのはわかっている!」
顔に手をあて絶望している様子の男だったが、すぐに立ち上がるとレベッカに迫った。
「レベッカさん、ここからすぐに逃げてください。こっちの非常口は、彼らも知らないはずです。
 上へ上へと進めば外に出られます。さあ、速く!」
「待て。なぜ警察を怯える。やはりお前――」
「警察の命令です! 今すぐ開けないと、実力行使に出る!」
「違います! 彼らは操られているんです! あなたの敵なんです!」
「何だと……?」
扉の鍵がガチャガチャと動いている。無理矢理にも開けようとしているのか。
「速く! 彼らを信じてはいけない! いいか、誰も信じるな!
 私の仲間がいずれそうとわかるように会いに行きますから!」
19彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:50:04 ID:???

凄い剣幕だった。
男に逆らうほどの大胆さは、レベッカにはなかった。
彼女は部屋の向こう側にある小さな扉へと小走りで向かい、そこを開けた。
上に向かう急な階段が、薄闇の中に浮き上がった。
部屋を振り返ってみると、男が今にも押し入られようとしているドアの前に家具を移していた。
彼にはこちらを気にする余裕はないみたいだ。
レベッカは前に向き直り、狭い階段を上り始めた。

男の言った通り、上へ向かう階段はどこまで行っても一本道だった。
時折行き当たるどの踊り場も、下への階段は幾つかあっても上行きのは一つしかない。
この天上への道を、レベッカは早歩きで進んでいった。
本当はこんな建物は一刻も早く立ち去りたいのだが、非常灯しか明かりのない
暗がりの中ではあまり速く走れない。
それにここで走ってしまうと、男の言うことに大人しく従うことになってしまう。
レベッカにとって、それは屈辱的なことだった。

しばらく登っていると、小さなドアに行き着いた。
隙間から糸のような光が中に差し込んでいた。
ドアを捻って押してみる。
その向こうは、やはり薄汚れた路地だった。
だがよく見てみると、入った所とは違う空間のようだ。
20彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:50:36 ID:???

通りに出て建物を見上げてみる。
するとそれは、男に連れ込まれたはずの建物とは別のビルだった。
レベッカは驚き、不思議に思ってあたりを見回してみる。
数百メートルほど離れたところに数台のパトカーが止まっていた。
何かあったのかなと思ったが、すぐに気付いた。
そこが、最初に入った建物だった。

ぞっとした。
恐怖が胸から爪先へと、全身に広がっていく。
今まで溜め込んできた感情が、決壊を遂に破ったのだ。
結局、知りたいことは何もわからなかった。
ただ漠然と、自分が巻き込まれている事態に対する恐れが膨らむだけだった。
長い間、ぬくぬくと続けていた教師生活。
その全ては、自分の知らない所で記録されていた。
不合理な不審。
気付いたら、駆け出していた。
とにかくこの場を離れたい。
大衆の中の孤独でなく、孤独の中の温もりが欲しかった。

レベッカは走っていた。
決して辿り着けない桃源郷を探して。
言葉通りどこにも存在しないユートピアを目指して。
幻だとわかっている快楽の園を求めて。
21彼女と誰かの物語:2006/12/18(月) 19:51:21 ID:???

今回は以上です。
22マロン名無しさん:2006/12/18(月) 21:41:05 ID:???
乙です。

もしかしてこれトゥルーマンショー系の展開?
なんか『だっしゅ!』に通じるメタフィクション的な展開も
ありえそうでwktkです。
続き楽しみにしてますぜ。
23PP×C:2006/12/19(火) 00:28:51 ID:???
<パート17>

 神原はレベッカに向き合い、彼女の推理を訊ねた。
彼女は手にした手帳の切れ端を並べ直しながら一息つくと、説明を始めた。
「つまるところ、これはルービックキューブの積み木に過ぎなかったのさ」
「どういうことです?」
「発想の転換だよ。17576室の個室を一つのマクロ座標で示そうとしたことが間違いだったんだ。基本単位はルービックキューブにあったのさ」
「ルービックキューブってあの、オモチャの?」
「ああ、そうさ。建造物自体を大きなルービックキューブだとする。それぞれの一辺を三等分すれば9×9×9の個室を持った中キューブ27ユニットに分割できる。
さらにその中キューブのそれぞれの辺を三等分すれば、3×3×3の小キューブ27ユニットに分割できる。
そして、小キューブ自体は27のエレメンタリー・ユニット(個室)によって構成される。
この三段階の区分けを以ってしてアルファベットの割り振りが行われるんだ」
「どのように?」
「アルファベットは三桁目から順に繰り上がるんじゃない、むしろ、一桁目から決定されていくんだ。
つまり、三桁のアルファベットはそれぞれ順に中ユニット座標、小ユニット座標、エレメンタリー・ユニット座標を独立して指定しているんだ。
(1,1,1)を"A"、(1,1,2)を"B"、(1,1,3)を"C"、(1,2,1)を"D"、(1,2,2)を"E"、(1,2,3)を"F"、(1,3,2)を"G"・・・
・・・(3,2,1)を"U"、(3,2,2)を"V"、(3,2,3)を"W"、(3,3,1)を"X"、(3,3,2)を"Y"、(3,3,3)を"Z"で代数し、
たとえば、【ABC】なら中ユニットは大キューブ上(1,1,1)の位置、その中ユニット上(1,2,2)の座標にある小ユニット内の、(1,2,3)の位置にある個室であるといった具合だ。
要するに、【A>B>C】という形で三段階の座標をディレクトリ方式に表示しているというわけなんだ」
「すると、差分の2107の空間はどう解釈できるんですか?」
24PP×C:2006/12/19(火) 00:31:35 ID:???
「その配置は驚くほど簡単だった。つまり、その三段階の規模でそれぞれのユニットの中核部分、つまり座標数値の上では(2,2,2)の空間が肉抜きだったんだ。
従って(2,2,1)は"M"、(2,2,3)は"N"と続く。
(2,2,2)座標は立方体ユニット単位で肉抜きされるから、大キューブでは9^3個室、中ユニットでは3^3個室、小ユニットでは1個室ずつ丸ごと抜けるんだ。
中核部を差し引いた結果、中ユニットは全部で26、小ユニットは全部で26^2個存在することになるから、即ち、(9^3×1+3^3×26+1×26^2)=2107、となる。
こういった法則性があったから、単純に2107を素因数分解しただけでは求まらなかったんだ」
「では、部屋の動き方もわかるんですか?」
「これは苦労したが大方は理解できた。簡単に言ってしまうと、ルービックキューブとは逆のシステムによって動く、ということになる。
つまり、各ユニットごとに同じ要領で移動は起こるわけだが、その第一段階は各正方面の中央に位置する立方体、センターキューブが中核部(2,2,2)に落ち窪むことによってサイクルを開始するんだ。
一回の移動に関与する子ユニットは三つ、一つの親ユニットでは一つのサイクルのみが運用され、それが完了し、再びもとの位置に子ユニットが戻るまでその関連移動のみが続けられる。
さて、移動のシステムだが、原理は非常に単純な回転運動だ。1サイクルあたり3ユニット4スライド機構だ――」
 レベッカは手帳の切れ端を広げ、余白を見つけてそこに図形を描き始めた。

回転の仕組み(但し0は肉抜き空間)

1 0
2 3
↓一回目
2 1
3 0
↓二回目
3 2
0 1
↓三回目
0 3
1 2
↓四回目
1 0
2 3
(元通り)
25PP×C:2006/12/19(火) 00:33:54 ID:???
「――つまり、一回の移動では三つのユニットが同時に動き、四回のスライドによってそれぞれが元の位置に戻る。
この間、移動に関わっている三つの部屋の内壁照明は白くなっているということはもう説明したな?
エレメンタリー・ユニットでは個室ごとに色が変化するが、それより大きいユニットではユニット内部の個室全てが白い部屋に変わる。
だから、場所によっては行けども行けども白い部屋しかないようなところも存在するわけだ。
ルービックキューブとは異なり、この移動システムでは各面の真ん中のレイヤーのみが移動に関与し、八角に位置するユニットは不動なんだ。
従って、このサイクルが一つの親ユニットごとに十二回反復される。
サイクルの始動する順番はランダムかと思いきや、どうもこれもアルファベット順に起こるみたいだ。
つまり、一つのサイクルに関わる三つのユニットの代数アルファベットを数値に戻し、その合計数が少ないところからサイクルが発生する仕組みになっている。
回転の向きも、どうやら数値の小さい順に決まるようだ」
「確かに!それなら部屋の動きを予測してエレベーター式に部屋を移動できますね。ここから最上階にある【GGG】まで行くのにも・・・・・・あ、でも、肝心のサイクルが今どこにあるのか分からないと・・・・・・」
「それで起動音と時間をヒントに使えるというわけだ」
「そういえば、さっきも部屋の移動のタイミングをぴったり予測していましたね。しきりに時計を見ていたようですが、あれにはどんな意味が?」
「面倒な理屈は抜きにして、結論から先に言おう。
9^3の中ユニットのサイクルで、一回のスライドは90分ごとに起こる。
3^3の小ユニットでは30分ごと、エレメンタリー・ユニットのスライドは10分おきに起こる。
一条の言っていた、三段階の音はそれぞれの時間周期を持って定期的に発生していたんだ。
白い部屋に行き着いたとき、それがどのユニットのサイクルの只中にあるかを近隣の部屋の白化率から割り出し、アルファベット配列から位置を特定すれば、
今、サイクルがどこにあるのか、次にその部屋がいつ動くのかを計算で求めることが出来る・・・・・・と、いうか、もうやった」
26PP×C:2006/12/19(火) 00:35:03 ID:???
 レベッカは手帳の切れ端を差し出した。
神原はそれを受け取ったが、そこには数式とアルファベットがぎっしりと書き連ねてあり、一見何が答えなのか分からなかった。
「エレメンタリー・ユニットは八時間で十二回のサイクル運動を終え、一巡する。
小ユニットは二十四時間、つまり一日で一巡、中ユニットともなると同じサイクルが再び起こるまで三日間待たねばならなくなる。
それぞれの移動をうまく活用しながら部屋間移動をジャンプすれば、安全に、迅速に、かつ確実に出口に辿り着けるんだ。
と、いうわけだから、おい、姫子、いい加減起きろ」
 レベッカはすっかり話についていくことが出来なくなり、その場に眠り込んでしまった姫子のアホ毛を掴み、揺り起こした。
姫子はようやく目を覚まし、気だるげにレベッカと神原の顔を見比べた。
「ん・・・・・・もうわかったの?」
「ええ、姫子さん。やっぱり、宮本先生は天才ですよ」
「ヘヘへ・・・・・・でしょう?私のベッキーはやるときはやる子なんダヨ」
「おい、ちょっと待て・・・・・・いつからお前のものになったんだ?」
「またまたベッキーたら、恥ずかしがって。よし、謎が解けたならば前進あるのみ!行くよ、二人とも!」
 姫子は精一杯胸を張り何処か遠くをぐっと見据え、力強く人差し指を伸ばし立てた。
その後ろでレベッカは少し戸惑いがちに、神原にそっと耳打ちした。
「何か・・・・・・姫子元気になったみたいだな・・・・・・何があったんだ?」
「えっと・・・・・・まぁ、元気が無いよりはあった方がいいんじゃありませんか?」
「何のこっちゃ」
 かくして三人は出口へ向かう移動を開始したのであった。
27PP×C:2006/12/19(火) 00:37:09 ID:???
<パート18>

 三人はレベッカの先導の下、部屋の間を移動し続けた。
レベッカはしきりに時計を睨みつけ、次に部屋の移動が起こるタイミングを見計らいつつ、二人を急かした。
「急げ、あと五分で三つの部屋を移動しなくちゃいけないんだぞ!」
「待ってよ、ベッキー・・・・・・ちょっと休憩」
「ダメだ!立て、立つんだ、姫子!ここでチャンスを逃したら予定が狂うんだ!」
「でも、先生。そんなに急ぐ理由が?」
「言っただろう、中ユニットがキューブの中を動くタイミングは90分間隔なんだ。これをうまく利用すれば一気に九階分をエレベーターできる。
そして、そのサイクルを形成する中ユニットに乗って、それが(2,2,2)の位置になったとき、隣の非サイクルのユニットに移動し、その回のサイクルをやり過ごす。
90分か、或いはその倍数分そこで待ち、最上レイヤーが関与するサイクルの起動時にすぐさま下りてくるユニットに飛び乗り、再び九階分上階を目指す。
一見、時間はかかるが、真上の扉を雲梯して攀じ登る労力を考えれば、これが最短のルートになるんだ。
急がば待て、だが待つ場所へは急げ、というわけだ。ほら、わかったら急げ!」
「死ぬぅ〜」と、姫子。
「片桐さん、がんばりましょう」と、神原。
「あーうー」と、またしても姫子。
 レベッカの計画では、ユニットの運動を利用してエレベーターに乗りつつ、建物の外殻まで水平に移動し、その途中途中で具合のいい上下運動サイクルを捕まえて上階へ上がる。
これはタイミングが勝負で、機会を逃したり迷路で迷ったりしたら、途端に全てが台無しになる移動方法であった。
しかし、そこはMITのスクール・オブ・サイエンスでもその名を鳴らした天才少女レベッカ宮本である。
理論の上では決して道を見失うことはなかった。
 問題は実際的なものだった。
全員の体力が激しい移動にもつかどうか、これはレベッカ自身がその幼い体躯に鞭打って直に体感し苦労していたことだから重々承知していた。
レベッカは勿論そうだったし、体力の低い姫子はもっと辛そうな様子だった。
28PP×C:2006/12/19(火) 00:39:16 ID:???
 しかし、だからといってそんなことを理由にキューブが運動を休止してくれるわけではない。
無機質な機械は生ある人間に憐みも情けもかけることをせず、ただ、その歯車の回転数、決められたルールにのみ従って何の目的も見出さぬままに動き続ける。
永遠に、その身を消耗し切るまで・・・・・・

 レベッカは次の扉を開き、思わず息をのんだ。
部屋の中に誰かがうつ伏せに倒れている。
その姿は彼女の目にも明らかに見覚えのある姿だった。
「乙女!」
レベッカは叫んだ。橙色の部屋の中で、小さい身体がピクリとも動かない。
レベッカは背筋に悪寒を覚えた。
「乙女・・・・・・?大丈夫か?」
レベッカはそっと声を掛け続けた。やはり彼女は反応がない。
しかしこの部屋は"O"も"A"も含んでいない。
罠に掛ったのだとは思えない。もっとも、それはレベッカと姫子のイニシャル説が正しければ、の前提があればこそである。
 レベッカはうろたえて、扉から中に這入りかねていた。
しかし、意を決して恐る恐る中に足を踏み入れ、梯子を下る。姫子と神原が続く。乙女は何の反応もしない。部屋の罠は動かない。
 レベッカは橙色の床に横たわり、不気味な影の一つとなった乙女をじっと見据えたまま、金縛りにあったようにその場から動けなくなってしまった。
乙女の身体は、生きている人間の体温を感じさせなかった。まるで無機質な部屋の一部として、床と同化してしまったかのような存在感である。
「乙女さん」
 レベッカの狼狽している横で、今度は神原が呼びかけた。勿論答えは返ってこない。
神原は無表情のまま、彼女の元に歩み寄り、その身体を掴んでひっくり返す。
レベッカは彼が乙女を扱う様に一抹の不安を覚えた。
神原のぞんざいな手つきは、明らかに彼女を生きた人間として扱っていなかったのだ。
「うっ・・・・・・これは・・・・・・」
レベッカの不安は神原の悲痛な声で裏づけされた。
「ひっ・・・・・・」
「お、乙女・・・・・・」
29PP×C:2006/12/19(火) 00:40:47 ID:???
 神原に抱え上げられた乙女の姿を見て姫子とレベッカは思わず声を上げた。
乙女は既に事切れて、その両目は濁ったまま空宙を見つめている。
その首元がぱっくりと割れ、とめどなく血が噴出したあとが窺える。
よく見ると、橙色の照明の床の上は、黒い、厭な臭いの液溜まりが広がっていた。
 神原はすぐに目を背けた彼女たちを後ろに退がらせ、床の血を手で触れた。
まだ乾ききっていない。乙女の身体はまだ体温が残っているし、抱き上げたときにまだ血は流れた。
赤い血が橙の光を反射し、この世のものとは思えない色艶を見せる。
「宮本先生、見たところまだそう長い時間は経っていないようですね。血の流れ方や死体の状況から見てもついさっきまで生きていたように思えます」
 レベッカは目を逸らしたまま答えた。その隣で姫子は苦しい音を立てながら何かを口から吐き出していた。
「し、死体はどうなっているんだ?どんな罠が作動したんだ?」
「いえ・・・・・・何か妙ですね・・・・・・乙女さんは鋭利なもので首を一突きにされているんですが、どうも罠に引っかかったというよりは何者かの手にかかったような・・・・・・」
「何だと?」

30PP×C:2006/12/19(火) 00:43:02 ID:???
「だって、この部屋では乙女さんで罠が起動しないんでしょう?何というのか、この傷跡は手口が非常に粗雑な感じで、これまで見てきた罠とは少し感じが違うんです。
うまくは説明できないんですが、機械的でない、というか・・・・・・もっとも、南条さんのときはライオンが出てきたんで、今回もその類かもしれませんが。
この近辺の部屋で乙女さんを指定する罠のある部屋は?」
「無い。この辺りは"O"と"A"が一緒に出てくる部屋は無いはずだ。移動パターンから考えても、そうした部屋がやって来ているとは思えないし・・・・・・しかし何故?」
「彼女、ここ以外のところで罠に掛ってここまで歩いてきたのかと思ったんですが・・・・・・どうも違うみたいですね。
傷は確かに頚動脈を切っていて致命傷だし、他の扉から血痕が伸びているわけでもなし・・・・・・やはりこの部屋で、この倒れている現場で殺されたに違いありません。
しかし、この部屋では罠が起動するはずがない・・・・・・どうなっているんだ?」
 神原とレベッカは俯いて考え始めた。
「ねぇ、神原君・・・・・・」
姫子が後ろを向いたままか細い声を出す。
「何です、片桐さん?」
「もう、行こうよ・・・・・・私、恐いよ、この部屋に居たくない。ね、ベッキーも、早く移動しようよ。気持ちが悪くなってきたカモ・・・・・・」
姫子の肩が震えていた。
「そうだな・・・・・・乙女の死因は気になるが、これまで私たちはちゃんと罠を避けてきている。
それに、もう道筋だってわかっているんだ。ここで悩むより、先に進むのが賢明だな」
レベッカも向こうを向いたまま答えた。
「わかりました」
 神原は乙女の身体を再び床の上に下し、その両目の瞼を手の平でそっと閉ざさせた。
彼は手についた血をシャツの裾で拭い、立ち上がって元に戻った。
「行きましょう、先生。次はどちらに進むんですか?」
31PP×C:2006/12/19(火) 00:47:08 ID:???
ここまで。

>>誰か氏

相変わらず惹き付けられる展開が素晴らしいです。
正直、次回が待ち遠しい。

バイオの方も物語が始動してきた感じで期待しています。
32マロン名無しさん:2006/12/19(火) 01:32:27 ID:???
つまり罠にかかった奴らは生きてるけど疑心暗鬼でベホイミが乙女を殺っちゃったと
33PP×C:2006/12/19(火) 01:58:52 ID:???
補足

・建造物自体は中央部がくりぬかれた27×27×27の立方体。
・同じスタイルの三段階の立方体単位によって構成される。
・三文字のアルファベットは大きい順に三段階の単位の座標空間上に位置を指定する。
・アルファベットに一人のイニシャルが二つともに入っていれば、その人物が罠を起動させる。
・二人のイニシャルが一つずつ入っていればその二人が揃うことで罠は起動する。
・部屋は三段階の規模で、同じ規則によって移動する。
・各単位における立方体の八角は不動。
・いずれの規模の移動でも、部屋は四回の移動で元の位置に戻る。
・六時間ごとに大キューブは完全に復元される(これは劇中では未言及)。
・唯一分かっている出口は【GGG】で、これは最上階の端っこの一つに存在する完全不動の部屋。

一応上記のことだけわかればいいかな・・・と。

そして投稿後にまたとんでもない凡ミスに気がつくという罠。
【ABC】は(1,1,1)>(1,1,2)>(1,1,3)ですね。
gdgdっぷりに自分でもイヤになる・・・
34マロン名無しさん:2006/12/19(火) 14:37:01 ID:???
>>33
GJ!gdgdではないと思うぜ
気にすることないと思うぜ
35マロン名無しさん:2006/12/19(火) 17:43:32 ID:???
>>33
いつもながらGJ!
そこに書いてあるのは確定と見なしていいのだろうか。
36Pani PoniHAZARD:2006/12/19(火) 21:48:52 ID:???
>>33 GJ
正直そこまで出来るのが羨ましい、俺にはさっぱりわからん。
ですので自分のは途中でグダグダになるかも知れません。
そうならないように努力しますが。
そろそろ題名付けようと思いましたが思いつかなかったので無難につなげてみました。
次行きます


37Pani PoniHAZARD:2006/12/19(火) 22:19:08 ID:???
柏木姉妹は驚いた。当然だろう、いきなり修が血相変えて
飛び込んできたのだから。

「ハァ・・ハァ・・ハァ・・」
「何よ!?どうしたの!?ちょっと修!」
「も、桃瀬君!?大丈夫しっかりして!」
「まあ待て、さあ、とりあえず水でも飲んで落ち着きなさい、ホラ」
バーテンは冷静にドアを閉めミネラルウォーターをグラスに注ぎ修に差し出した。
修は水の入ったグラスをひったくると一気に飲み干した。
「どうだ?落ち着いたか?」
「ハァ・・はい、大丈夫・・です」
「どうしたのよ?何かあったの?オバケでも出たの?」
「へ・・オ、オバケ・・」
姉妹は困惑の色を隠せなかった。

「(言わなきゃ・・大変なことが・・五十嵐先生が・・)」
修は恐ろしく鼓動が早い心臓を手で押さえつつさきほど見てきた
惨劇の状況を伝えようとした。しかしあまりにショックだったのか
上手く言葉が出てこない、喋ろうと思えば思うほど言葉が詰まった。
「ねえ・・ちょっと、ホントに大丈夫?何があったの?五十嵐先生は?」
「・・!!そうだよ!大変なんだよ!五十嵐先生が・・・」
やっとのことで修の口が開いた。このことを伝えなくてはならない、五十嵐先生が死んだ。
そう、それもよりによって修学旅行でのリゾート地という世間から離れて骨休めをするような場所で
獣の手にかかって死んでしまったこと。しかし修の言葉は最後まで伝わることは無かった。
38Pani PoniHAZARD:2006/12/19(火) 22:19:45 ID:???
カランカラン、ドアの開けられたとき鳴るベルの音、それはドアが開けられ客がやってきたことを示す。
その「客」はそこに立っていた。頭を下に下げうなだれた格好でその場に立ち尽くしていた。
その姿は山に生えている枯れ木を連想させた。

「・・?どうしたんだ。あんた?どこか具合でも悪いのか?」
バーテンはその店に入ってきた「客」に近づいていった。それを優麻は怪訝そうに見つめ
優奈はおそるおそる見つめていた。修は動けなかった。声も出なかった。
同じだ
修は「客」を見てそう思った。五十嵐先生を食っていた獣、いや、犬と。
なぜかはわからない、ただ修はそう思っていた。いけない、近づくな。
心の中で何度も叫ぶが声にならない、体も動かない。
「おい・・あんた・・」
バーテンが客の近くまで近寄って行った刹那、「客」はバーテンの首筋に
狙いを定め、恐るべき力でバーテンを捕らえ、噛み付いた。
39Pani PoniHAZARD:2006/12/19(火) 22:50:50 ID:???
「うっうわあああああ!!!」
「きゃああああ!!」
「いやああああああああ!!!」

山の中の小さなバーに三人の叫び声がこだました。
「うあああああああああ!!!」
バーテンは首筋に噛み付いてきた「客」いや「化け物」を必死に振りほどこうとした。
しかし離れない、それどころかどんどん化け物の歯はバーテンの首筋に食い込んでいく。
「い、いや・・嫌ぁぁ・・ッ」
優麻は完全に腰を抜かしてしまっていた。
「あ、あああああ・・」
優奈にいたっては状況を全く理解できていないようだった。
そうこうしているうちに化け物はバーテンに体重を掛け、そのまま押し倒し
首筋を思い切り噛み千切った。
「ギャああああああああッッ!!!」
バーテンの首から瞬く間に鮮血がほとばしった、その吹き出した血が床を紅色に染めていく。
そのまま化け物はもう一度バーテンの首に噛り付いた。今度は肉を味わうかのように、そして
また勢いよく首の肉を噛み千切った。
「あぁぁあああああぁあああぁぁあぁぁ・・・・」
すでにバーテンの悲鳴は出なくなっていた。そして少し体を動かしたかと思うと、すぐに動かなくなった。
40Pani PoniHAZARD:2006/12/19(火) 22:59:36 ID:???
修は動けなかった。やっぱりだ、やっぱりこいつはあの犬たちと一緒なんだ。こいつも、人を食べるんだ。
疑惑が確信に変わった。もっとも今回の場合はその確信こそが修に絶望を与えていた。
殺される
その言葉が頭の中をぐるぐると巡っている、バーテンを食べ終わったらこいつは次にこの三人の誰かを
狙うだろう、それがもし自分だったら、嫌だ。まだ死にたくない、だったらどうする?逃げろ、ここから早く逃げろ
逃げなければ殺される、自分も五十嵐先生やバーテンのように食われてしまう、修は混乱していた。
考えれば考えるほど頭の中がごちゃごちゃになっていった。

そして、化け物が頭を上げた。バーテンの首から下にかけては無残な姿になっていた。
「ア、アアア・・」
化け物はうめき声を上げながらゆっくりと立ち上がった。そしてようやく立ち上がろうとしていた柏木優麻の方を向くと
手を前に突き出し、優麻に向かって歩き始めた。
「優っ・・優麻ちゃん・・」
優奈は涙目になりながらもその場を動かなかった。いや動けなかった。
「嫌っ!来ないでよ、来ないでよ!!」
優麻は化け物に対して叫びながら静止を呼びかけた。しかし止まるはずがない、
そのまま化け物は優麻に向かって倒れこんだ。
そしてその元陸上部だったころの優麻を支えていた足に思い切り噛み付いた。

「イヤァァァァ!、止めて!、離して!痛い!いたいぃぃ!!」
「優麻ちゃああん!!」
優麻はもう片方の足で必死に反撃を試みるが上手くいかない、みるみるうちに優麻の足から
血が出てくる、「離してぇ!!離して!!」優麻の悲痛な叫びが上がった。
そして、それを混乱したままの頭で見た桃瀬修は、先ほどまでが嘘のように素早く立ち上がると、無我夢中で
優麻の足に食らいついている化け物の頭を踏み潰した。
41チラ裏:2006/12/19(火) 23:02:03 ID:???
今日はここまでです、何か指摘あったら宜しくお願いします
あと各人の呼び方とか一人称はメチャクチャになると思うので
その辺も指摘してくれると助かります
42マロン名無しさん:2006/12/19(火) 23:35:15 ID:???
乙。

ついでに指摘。
たぶん優麻のセリフだと思うが優麻は「修」とは呼ばない。
43マロン名無しさん:2006/12/20(水) 01:22:38 ID:???
独白の人です。
続き投下します。
4443:2006/12/20(水) 01:27:04 ID:???
<南条操の独白:2>

湯上りに犬神君の入れてくれたレモネードが、私を内側から更に暖めてくれた。
私の心の中の氷も、次第に溶けていくような、そんな気がした。

いつの間にか私は、父の逮捕後に自分の身に起きたことを、犬神君に
話し始めていた。

最初は冷静なつもりだった。
家のために、会社のために、私が犠牲になれば、それで全て収まるのだ。
それだけのことだ…。

でも、私の頬を伝う熱いものは、何なんだろう。
私が叔父に、「はい」と言えば全て丸く収まる、それだけのことなのに…。

犬神君は、黙って、ただ頷きながら、そんな私の話を聞いてくれていた。
時計の針の立てる音が、やたら耳に響いた。
4543:2006/12/20(水) 01:27:51 ID:???
<犬神つるぎの独白:2>

南条が、嫁に行く…。
それも、自分の意思ではなく、家のために、顔も知らない相手に。
この、平成の時代に。
私は、それをにわかには信じることができなかった。

普段はクールぶってるくせに、無邪気な笑顔で動物と戯れたり、
突然私に甘えてきたり、それを芹沢にからかわれて赤くなったりする、
あの南条が。
見かけに似合わずスポーツがからっきしダメで、勉強も全然ダメで、
でも意外に料理や裁縫が上手な、そしてそれを褒められて照れたりしている、
あの南条が。

「南条!」

気付いたら、私は南条を抱きしめていた。
南条を、誰にも渡したくなかった。

「お前、それでいいのか!?
 そんなの、叔父貴とやらの権力争いの道具にされてるだけじゃないのか!?
 何でお前が、そんなもの背負わなきゃならないんだ!?
 …お前は、お前という存在は、お前自身のものじゃないのか!?」

私の肩に、熱い滴がじわじわと染み込んでいた。

「…犬神君!」

南条は嗚咽の中、搾り出すように言った。

私たちは、どちらからともなくキスを交わした。
南条のあの甘い匂いと、涙の塩気の混ざった、複雑な味がした。
4643:2006/12/20(水) 01:31:43 ID:???
今回は以上です。
なんか独白じゃなくなってきたりギャルゲー風味になってきたりしてますが、
今しばらくお付き合い願います。

…この後の展開、どうしようOTL

>PP×Cさん
希望も見え、サスペンス要素も出てきて、ますます目が離せなくなってきました。
乙女の死の背景、気になります。
WKTKして続き待ってますよ。

>Pani Poni HAZARDさん
いよいよ来ましたね!
荒削りなところも若干目に付きますが、スピード感、臨場感にドキドキでした。
これも目が離せない!
47マロン名無しさん:2006/12/20(水) 03:03:57 ID:???
>>43
GJ

ぱにぽにハザードは鬱展開確定で怖いねえ
優麻は生き延びてもかゆうまになっちゃうわけだ
48マロン名無しさん:2006/12/20(水) 09:06:19 ID:???
新スレで、たくさん投下されてて驚いた。
(*^ー゚)b グッジョブ!!
49マロン名無しさん:2006/12/20(水) 21:51:49 ID:mkjLCPq9
みんなGJ そして保守あげ
50PP×C:2006/12/21(木) 02:14:15 ID:???
<パート19>

 レベッカに従い、彼女らはひたすら部屋を進み、時女には何時間も一つの部屋に留まり、最上階を目指した。
三人の疲労は限界点にまで達していた。しかし、それでも先に進むのを諦めなかった。
もし一回チャンスを逃せば、最悪三日間次の周回を待たねばならなくなる。
後三日もこの中にいれば、脱水症状が進行して命の危険もある。
もちろん、何回も上の扉から移動することは各人の疲労面から考えても非常に難しいことだった。
だからこそ、レベッカの言うエレベーターを活用することこそが出口への一本道だった。
走っては待ち、待っては走り、を幾度となく繰り返すしかなかったのだ。
「よし、白い部屋だ。何とか間に合ったな」
「これはどういう動きで?」
「最上レイヤーに移動するための中ユニットサイクルさ。これを逃したら大変なことになっていた・・・・・・」

 次の瞬間、とてつもない大音響を立てて中ユニットが動き出す。
最も大きい起動音を、その内部から聞くのはまさに恐ろしい拷問のようだった。
三人は必死に耳を塞ぎ、音と揺れの静まるのを待った。
 やがて、部屋は止まった。三人は遂に大キューブ最上レイヤーに辿り着いたのだ。
レベッカの計算では、この部屋はもと中層レイヤー16階に存在していたため、今回の移動で一気に25階にまで浮上してきたという。
目指す最上27階まであと二階を登るだけだ。ここまできたら、他に仕方がないから真上の扉を攀じ登るしかない。
元々運動が得意でなかったレベッカと姫子は覚悟を決める必要があった。
 彼女たちは罠を迂回するようにキューブの端まで並行に移動し、遂に【GGJ】にまで到達した。
この後、隣の【GGA】に移動し、いよいよ二階上を目指すために上の扉に攀じ登る。
 これまでも何度か上の扉を利用してきたが、その度に体力の限界から床に落ちそうになって冷や汗をかかされた。
さすがに6メートル下に落ちたら大怪我ではすまない。
 まず、体力のある神原が先頭を行き、うまく梯子を雲梯し、扉のところで梯子に足をかけて宙吊りになる。
そして、逆さまのままゆっくりハンドルを廻して扉を開き、扉が閉まるのを抑えつつ、すぐさま通路の中に潜り込む。
ここが極めて危ない。何度も落ちそうになって、その度に下で見ているレベッカと姫子の肝を潰した。
51PP×C:2006/12/21(木) 02:16:47 ID:???
 ようやく通路の中に入った神原は、扉を半開きにして足で抑え、次の登攀者を手招く。
大抵、次はレベッカで、震える腕を必死に天井の梯子に掴まらせ、一杯一杯のところで扉に辿り着き、そこで神原の手を借りて通路の中に引き上げられる。
その後、邪魔にならないようにキャットウォーク(それよりはむしろ煙突のチューブであるというのが妥当だが)の中を両手両足で壁を伝って登っていく。
レベッカが上の部屋へと抜け出たことを確認した神原は、今度は下で待つ姫子を呼んで同じことを繰り返す。
姫子は天井にぶら下がるたびに大声で何かを叫ぶ。
神原は顔を真っ赤にして限界を訴える姫子を励まし、何とか彼女の手を掴んで上へ引き上げる。
全てが非常に危険な、骨の折れる重労働なのである。

 かくして二階分を登りきり、精根尽き果てその場に突っ伏す三人。
しかし、この部屋こそが【GGG】、つまり、ゴールなのだ。
三人は息を切らせながら、残る死力を振り絞り、外向きの扉を開く。
その瞬間、扉の向こうからどっと冷気がなだれ込み、遥か闇の先に向かって伸びる一本の架橋が目に飛び込んできた。
「やった・・・・・・遂にやったぞ!出口だ!」
 レベッカは目に涙を浮かべて喜ぶ。残る二人の口元にも喜びの綻びが浮かぶ。
遂に長い長い道のりを経て、彼女たちは出口に到達したのだ。
生きて、この地獄から生還したのだ。
52PP×C:2006/12/21(木) 02:17:41 ID:???
 三人が喜びの声を上げていると、背後の扉のハンドルが廻った。
驚いて様子を窺っていると、そこから現れたのは犬神だった。
「おや、先生・・・・・・また出会いましたね」
「犬神!よかった、無事だったのか!」
レベッカは嬉しそうに微笑みながら犬神の顔を見る。
部屋の中に下り立った犬神は無表情に佇んでいた。
「喜べ、ここが出口だ。出られるんだ、出られるんだぞ!」
レベッカは扉を指差し、我を忘れてはしゃぐ。
「そうですか」
犬神の声は冷静だった。
「犬神さん?」
不審に思った神原が彼の背後に歩み寄る――次の瞬間。
 犬神は鋭い眼光を解き放ち、目にも留まらぬスピードで、ベルトバックルに偽装されたプッシュ・ダガーを引き抜いた。
振り向き様に鋭い一閃が煌き、空を切る音よりも早く神原の喉元を切り裂いた。
赤い血が破裂した水風船のように恐ろしい勢いで吹き出し、神原はみるみる顔色を蒼褪めさせて、何も言うことなくその場に倒れこんだ。
「な・・・・・・!」
 余りに突然のことで、レベッカも姫子も、目の前で起こったことを理解することが出来なかった。
犬神が神原を殺した。
何故?どうして!?
「先生、ゲームオーバーですよ」
 犬神の一言により、レベッカはようやく全てを理解した。
53PP×C:2006/12/21(木) 02:19:59 ID:???
<パート20>

 「犬神・・・・・・そうか、お前が裏切り者だったんだな?」
 レベッカは相手を睨みつけ、精一杯の虚勢を張って相対する。
彼女の身体を支える両足は小刻みに震えていた。
「ええ、そうですよ。貴女たちを全員始末するのが私の役割なんです」
 犬神は握りの中のナイフを翻した。そして付け加えるように言った。
「まさに一人残らず、ね」
「犬神、お前・・・・・・」
「犬神君!」
姫子が両者の間に割って入る。
「どうしてこんなことするの!?私、分からない・・・・・・どうして、どうして・・・・・・」
「片桐、本当は分かっているんだろう?私たちはみなそれぞれの役割を演じているに過ぎないって」
「どういう意味さ?」
「我々は全員がそれぞれの役割を果たすためにこの中に放り込まれたんだ。
宮本先生は出口を見つけるために、君はそれを助けるために、そして私は――キューブから脱出した唯一のサバイバーとなるために」
「何を・・・・・・」
茫然とする姫子の後ろでレベッカは低く押し殺した声で訊ねる。
「犬神・・・・・・南条グループに雇われたのか、私たちを追い詰める最後の切り札として」
 憤懣と絶望の色が滲み出るようなレベッカの声色。
しかし犬神は表情一つ変えず、逆に嘲るような口ぶりで返した。
「南条グループ?・・・・・・先生、まさか南条の証言を本気にしているんですか?」
「だったらお前の雇い主は誰だ!」
「雇い主などいませんよ。私を選んだのはキューブです。私も、貴女も全ての人間はキューブの意思によってキューブそのものに同化されるのです」
「デタラメだ。こんなオモチャに意思など存在しない。
犬神、お前は狂っているんだ。お前は自らの意思をキューブの意思だといってその行為を正当化しようとしている狂信的な確信犯だ。全て詭弁に過ぎない!」
54PP×C:2006/12/21(木) 02:22:13 ID:???
「何を馬鹿げたことを。笑止千万ですね。貴女だって本当は自ら望んでキューブの一部になろうとしていたんでしょう?
私が唯一の生還者となるのはキューブによって運命付けられた予定調和なのです。
私だけがここから抜け出すことによって、私の存在はキューブに認められ、キューブそのものになることが出来る。
そのためには貴女たちをここから生きて逃すわけにはいかない。
貴女たちは私に殺されることによって同じくキューブの一部になることが出来るんですよ。むしろ感謝していただきたいですね」
「ほざけ!そうか・・・・・・乙女を殺したのはお前だな?
私はお前を許すわけにはいかない。キューブの一部になる?冗談じゃない。
私は何がなんでもここを出るぞ。外へ出て、私はこれに関わる全ての悪を告発してみせる!」
「悪?天才らしからぬ非論理的な発言ですね。ここに悪など存在しない。
悪とは左から見ていた物を右から見直すことに過ぎませんよ。
大体、外って何ですか?外なんて何処にあるんですか?そんなものがあったとして、どうしてそれがこの世界を裁くことが出来るのですか?
貴女はキューブから逃れることは出来ない。全てはキューブの意のままに動くのだから」
「やはりお前は狂っている。ストレスに耐え切れなくなって発狂したか・・・・・・とにかく、これ以上お前の戯言に付き合っていることは出来ない。おい、姫子、外へ出るぞ」
「させるか!」
「キャッ!」

 我を忘れて立ち尽くしていた姫子が次に正気に戻ったとき、その腹に赤い染みが広がっていた。
愕然として頭を上げると、目の前に両手を血に染めた犬神が立っている。
腹の辺りが痺れ始め、震える指をそこに当てると、真っ赤な血が止め処なく溢れ出している。
姫子は次第に意識が遠退き、その場に倒れこんだ。
55PP×C:2006/12/21(木) 02:23:48 ID:???
「姫子!」
 レベッカは叫んだ。
しかし姫子は振り向くこともなく倒れ、床にうつ伏せて苦痛の唸り声を上げている。
そしてその向こうから、銀色の暗器を赤く染めた犬神がゆっくり近づいてくる。
「次は貴女の番だ、宮本先生」
「やめろ・・・・・・く、くるな!」
「キューブがそれを望んでいる。重要なのは貴女がここにいることではない。ここにいたという事実だけだ」
 レベッカは後ずさりしながら両手を差し出す。
犬神は獲物を追い詰めた猟犬のような目つきでさらに詰め寄る。
レベッカは遂に部屋の隅にまで追い詰められ、いよいよ逃げ場を失った。
犬神はゆっくり、しかし着実に迫り来る。
「よ、よせ!やめるんだっ!」
「先生、貴女はキューブの一部であり、貴女が死ぬこともキューブの一部に過ぎない。私だって同じだ。何人たりともそれに抗うことは出来ない・・・・・・」
 犬神はナイフを持った手を大きく振り被った。
レベッカは思わず目を瞑り、最期の時を覚悟した。

「待て!」
 その時犬神の背後から、扉の開く音とともに一声が飛び込んだ。
56PP×C:2006/12/21(木) 02:30:52 ID:???
ここまで。終わりが見えてきました。

>>35

>>33が確定の設定です。
と、いうよりもこの設定を元に作ったはずなのですが・・・色々と綻びが出てきて大変なことに。

バイオ氏、独白氏ともに乙です。激しくなってきましたね・・・
57マロン名無しさん:2006/12/21(木) 02:35:03 ID:???
乙です

そろそろクライッマクスですね
58マロン名無しさん:2006/12/21(木) 07:41:01 ID:???
>>56
GJ!
誰だよ…。ベタながらやはりこの終り方が一番気になるな
59マロン名無しさん:2006/12/21(木) 20:43:29 ID:???
独白の人です。
今度は南条。
ラブシーンは今回オミットですが、リクエストが多ければ後で書きますw
60マロン名無しさん:2006/12/21(木) 20:44:14 ID:???
<南条操の独白:3>

夜が、白々と明け始めていた。
桃月の雪景色も、次第にブルーから紫、オレンジへと色を変えつつあった。

東京にこんなに雪が降ったのは、いつ以来だろう。
…南国生まれのゾウの介やキリン子たちが凍えていないといいけれど。
今日は都内の交通も大混乱だろうから、ペットたちの体調に異変があれば
ちょっとまずいことになるかもしれない。

冷静にペットたちのことを考えようと思う一方、昨夜のことを思うと
顔が赤くなるのが自分でもわかった。

犬神君…犬神君が、初めて私を「操」と呼んでくれた。
私を受け止めてくれた。
私を見つめてくれた。

私を、「南条家の操」ではなく、ただの「操」として扱ってくれた。
本当の私を見てくれた。

嬉しかった。
私を、普通の女の子として扱ってくれたことが、本当に嬉しかった。
61マロン名無しさん:2006/12/21(木) 20:45:14 ID:???
「…でも、ちょっと痛かったですわよ。」

そう言いながら私は、さっきまで自分が寝ていた隣で寝息を立てる
犬神君の頬に、そっと口付けた。
そして、もう一言呟いた。

「…ありがとう、犬神君。」

私は居間のテーブルの上に置手紙を残し、犬神君の家をあとにした。

早朝の冷えた空気が肺に染み込んでくる。
昨日に続いて、今日も本当に寒くなりそうだ。

もう私は迷わなかった。
決して軽い足取りではないが、かと言って重くもなかった。
薄青い空に、雀が飛んでいった。
62マロン名無しさん:2006/12/21(木) 20:46:28 ID:???
今回は以上です。
前スレで初期学級崩壊スレ風味のSSのリクエストがありましたが、
これが完結するまで、もう少し待っててくださいね。
あとちょっとで終わりますから。
63マロン名無しさん:2006/12/21(木) 20:51:10 ID:???
あと皆さん、レスありがとうございます。

>PP×Cさん
姫子!
神原!
今回もGJですね。
ずっとドキドキさせられっぱなしです。
続き楽しみにしてますよ。
64Pani PoniHAZARD :2006/12/22(金) 15:20:24 ID:???
次行きます、そろそろ他のキャラにスポット当てていきたいと
思うので、次からは別キャラの話にします

自分でも驚いた。さっきまで自分たちを恐怖のどん底
に突き落とした化け物を、自分は思い切り踏み潰したのだ。
虫を踏むみたいに、全く動かなかった体が嘘の様な速さで動いた。
そしてとっさに優麻の肩をつかんで揺さぶる。
「柏木、大丈夫か!?怪我は!?歩けるか!?」
またさっきまで出そうとしても出なかった声が出る、それも思ったことが
すらすらと口からすべるように出て行く、修は不思議だった。しかし、そんなこと
について今考えている暇はない、この化け物は殺した。しかしまだ同じような奴が
いるかもしれない、とにかくここにいるのは危険だ。修はそう判断した。先ほどまで
恐怖におののいていた人間とは思えなかった。

「桃瀬くん・・?」
優麻は驚いた。いつものらりくらりしているあの桃瀬が別人のようになっている
確かに生徒会の役員だったり運動神経も良く成績も悪くない
だけどここまで頼もしさを感じるのは初めてだった。
「おい、柏木!聞こえるか!?大丈夫か!?」
「えっ・・あっ!う、うん、大丈夫よ大丈夫!!血は出てるけど歩けないわけじゃ・・よいしょ」
優麻は痛そうにしながら体を上げた。確かに歩けるようだがその顔は明らかに痛みに耐えていた。
「ふえ〜ん、優麻ちゃあああん〜怖かったよ〜」
優奈は泣きながら優麻に抱きついた。
「ちょっと優奈ちゃん〜そんなに泣かなくてもいいじゃないのよ!」
「だって〜優麻ちゃんが食べられちゃうかもって・・」
「大丈夫よ優奈ちゃん、私があんな奴に食べられたりするわけないでしょ?」
「ぐす・・うん・・」
「だから泣かないで、ホラ、泣き止んでよ」
さっきまで化け物に襲われて殺されそうだったというのに、優麻は優奈を
慰めている、なんだかんだ言ってるけど、やっぱりお姉ちゃんなんだな
と、抱きしめあう柏木姉妹を見て修はそんなことを考えていた。
65Pani PoniHAZARD :2006/12/22(金) 15:21:30 ID:???
ふと気付いた。自分にもいるではないか、C組の連中からは地味だのなんだのと言われ
いつも自分の自己アピールに必死なわが愚妹、くるみ・・その刹那いろいろなことが頭を巡った。
まさかあの化け物はこのあたりだけじゃなく、この島全域にいるのではないか、この島はかなり広い上に
色々な施設がある、他の生徒たちはそれぞれの行きたい所に行ってしまった。つまり誰が何処にいるか
全くわからない勿論、くるみも、もうとうに日は沈んでいる、これから待つのは漆黒の闇が訪れる夜、みんな
が危ない―――――しかし、どうするのか、皆と合流するにしてもちりぢりになってしまっている、もう皆を当てに
することは望まない方がいいのかもしれない、とすると行き着く結論は一つ、とにかくここから離れ、他の生徒を
探す、そして万が一の事を考えこの島から出る方法を考える。これだった。優麻の怪我の具合も心配だ。
本人はああ言っているがかなり痛そうだ。それにあんな化け物に齧られたのだから早く治療してやりたい。
しかし道中何が現れるかわからない・・身を守るものがいる、そう考えた
修はカウンターの中を覗いてみた。果物ナイフが一本、余りにも頼りないが今はそんなことも言ってられない。
ナイフをポケットに入れると裏口のドアが開くことを確認した。
66Pani PoniHAZARD :2006/12/22(金) 15:22:59 ID:???
「柏木、歩けるか?」
「うん、ちょっと痛いけど、歩けるわ・・・・・・それより聞きたいんだけど、なんなの、これ!!!」
優麻はいきなり声を張り上げた。
「五十嵐先生がいなくなったと思ったら桃瀬君はいきなり店に飛び込んでくるし変なオバケは出てくるし
バーテンの人は殺されちゃうし!!なんなのよ!!せっかくの旅行なのに!!どういうことなのよ!説明してよ!!」
凄い剣幕だった。とてもさっき腰を抜かしていた人間とは思えない、しかし当然だろう、こんな目に遭っているのだから。
「優麻ちゃん・・」
優奈はいつもの顔で心配そうに修と優麻の顔を交互に見ていた。
「俺にもわからねぇよ・・ただ、一つ言っておくよ、五十嵐先生は・・・死んだ」
「えっ・・・・何それ、どういうこと?説明してよ、嘘でしょ!?ねえ!」
「嘘じゃない・・俺が探しに言ったときにはもう・・死んでたんだ。」
「嫌・・イヤ・・いや・・なんで・・嘘よ・・なんで、なんでこんなことに・・・」
そのまま優麻は泣き崩れた。優奈は優麻に駆け寄っていった。優奈も泣いていた。

「(なんでこんなことに か ―――俺が一番聞きたいよ)」
67Pani PoniHAZARD :2006/12/22(金) 15:23:56 ID:???
「ねえ、桃瀬君・・これからどうするの?」
ようやく泣き止んだのか優麻が顔を上げ修に尋ねた。
「・・とにかくここから離れて、人がいる所に行こう、大変なことが起きたことを、皆に知らせなくちゃいけない」
――――正直自分でも矛盾していることに気付いた。皆を頼りにしてはいけないと思いつつ、ついこのことを皆に
知らせよう、などと言ってしまう、けど、仕方ない、優麻は普段明るいしはきはきした性格だが、こんな状況では
暗くなってしまう、それに怪我もしている、優奈はいつも優麻の影に隠れているような存在だ、姉と比べて気も弱い
そうだ、だからせめて自分がしっかりしなければならない、自分がこの姉妹を無事に安全な所まで送り届けてやらなければ
ならない、自分は今、試練の真っ只中にいる、なら、その試練を乗り越えてやる、そう強く誓った。
「桃瀬君・・?」
優奈も泣きはらして真っ赤になった目をこすりつつ顔を上げた。
「さあ、行こう、ここを出るんだ。皆がいるところを探そう、大丈夫、俺がついてる」
そう行って修は二人に両手を伸ばした。姉妹はそれぞれの手をしっかり掴むと立ち上がった。
「桃瀬君・・ごめんね、怒鳴ったりして、桃瀬君も・・私たちと同じなのに・・」
優麻が申し訳なさそうに言った。こんなにしょぼくれた優麻は始めて見る。
修はにこりと笑うと言った。
「大丈夫だよ、さあ、行こう!!」
そうだ、少しネガティブになりすぎていた。確かにこの状況は危険だ、だけど皆が全員
こんな状況なわけではないだろう、もしかしたら化け物の様な物が出るのはこのあたりだけなのかもしれない
だったら自分たちがここを出て皆や先生に報告すれば全て解決だ。あとは任せていればいい、そう、なるようになるさ
修にいつものポジティブさが蘇ってきた。しかし誓いを忘れたわけではない、こいつらは絶対俺が守る、再び硬く決意した。
静かに裏口のノブを回し、ドアを開ける、目の前には暗黒が広がっていた。懐中電灯の灯りをつけると。
三人は静かに漆黒の闇へと消えていった。
68Pani PoniHAZARD :2006/12/22(金) 15:24:27 ID:???
ロックフォート島ホテルのロビー、もはや通常利用客のいないこの場所で来栖柚子は
天井を見上げたまま倒れていた。体はグチャグチャでその目は生きている生物の目ではなく
すでに来栖が絶命していることを示していた。その来栖の体を心ゆくまで味わった化け物―――芹沢茜は
強烈な飢餓感を解消するために、すでに食べ終わった来栖の体には目もくれず。
新しい「肉」を捜し求めて、ゆっくりと歩き出した。
69チラ裏:2006/12/22(金) 15:27:12 ID:???
以上です、少し長くなった・・

>独白氏
南条さん( *´Д`)ハアハア
いやあ続きが気になります
>PP×Cさん
もうすぐ終わりと思うと口惜しいですが
次があったらまた投下してください
70マロン名無しさん:2006/12/22(金) 19:37:45 ID:???
>Pani Poni HAZARDさん
GJ!
こっそり仕事中に、むさぼり読んでしまったw

芹沢…(TдT)
地獄が死者で溢れちゃったんですね。
どっちに転んでも鬱エンドになりそうだなぁ…。
でも脳を破壊したら倒せる分、まだ勝ち目がある!

…もしかして、半分食われた来栖、ゾンビになって再登場?
71PP×C:2006/12/23(土) 02:15:48 ID:???
<パート21>

 「ベホイミ!?」
 レベッカがその姿を認めるよりも早く、ベホイミは部屋の中に飛び込んできた。
すばやい手つきでナイフを引き抜くと、犬神を相手に身構える。
「ベホイミ・・・・・・先に君の始末をつけておくべきでしたね」
犬神は振り返り、ダガーの刃を水平に構え直した。
ベホイミはナイフを順手に持ち、一定の間隔を詰めながら相手の動きを牽制した。
「もしやと思って宮本先生たちの後をつけていたら、貴方の姿を見つけたっス。迂闊でしたね、先生たちをつけているつもりでいながら自分がつけられていることに気がつかないだなんて」
「ほぅ・・・・・・ベホイミ、流石は探偵というだけある。しかしこれで私は君を探し出す手間が省けましたよ。まさに飛んで火に入る・・・・・・」
犬神は正拳突きを繰り出すようにしてダガーを振付ける。
ベホイミは身体を傾けてその突きをかわし、相手の喉元に目掛けてナイフを差し向ける。
間一髪のところで首を逸らせた犬神は下がり際に相手の腕を目掛けて刃を振り下ろす。
ベホイミの手首に切創が入り、俄かに血が滲み出す。
しかし彼女は全くそれを意に介さず、続けて刃を振るう。
ナイフは犬神の胸元をかすめ、その白いワイシャツの上に一文字模様が赤い色に染まり始める。
両者は目にも留まらぬ早業でナイフを繰り出しあったが、やがてどちらも歩を一足下げて、構えたまま睨み合った。
二人とも息遣い荒く、体中に無数の切り傷が出来ている。
 レベッカは二人の驚異的な白兵戦を目の当たりにし、興奮に目を瞠った。
しかし、すぐに気がつくと、隙を見計らって腹を刺された姫子の元に走り寄り、その身体を抱き上げた。
姫子の顔は蒼白で、その呼吸はまさに風前の灯であった。
「犬神君・・・・・・アンタって人は!」
ベホイミはナイフを振りながら相手を牽制しつつ、苦しげな声で喚いた。
「ベホイミ・・・・・・哀れな女め」
「正体が分かった時点でアンタを殺しておくべきだった」
「そうしなかったのは君のミスだな」
「キューブはお前の味方なんかじゃない。お前が生き残ろうが死のうが、キューブは何も関知しない。自惚れるなっス!」
72PP×C:2006/12/23(土) 02:17:57 ID:???
「私は私のやるべきことをやるまでだ。
ベホイミ、君こそ自暴自棄になるのはやめたまえ。自分の名前が登録されていないからって、キューブからその存在を認められなかったからって、嫉妬して世界に反抗するのはいかにも醜く浅ましいことだ」
「うるさい!キューブは人間のことなどどうでもいいんだ。人間などいなくても、キューブは動き続ける!それに身を任せた時点で、お前は人間ではなく機械の歯車に成り下がったんだ!恥を知れ!」
「歯車にもなれない不良品が何をほざく!」
 犬神の一閃がベホイミの目前をかすめる。
ベホイミは反動で突き上げるようにナイフを繰り出す。
が、わずかに体制を崩して勢いが足らず、その手は犬神の左腕に捕捉された。
「くっ!」
「終わりだ、ベホイミ!」
 ベホイミの顔を目掛けて犬神のダガーが飛んでくる。
咄嗟にベホイミは犬神の腕を捻り返し、ナイフを捨てて飛びかかる。
相手に抱きつくようにして身体ごと寄りかかったが、そのために均衡を失った二人の身体はその場に倒れこんだ。
一瞬の隙を突いてベホイミは相手の右腕を捕捉し、その両手の力を目一杯に発揮して捻りつけ、相手の手が痺れたところを床に叩きつけてダガーを叩き落とさせる。
床の上にナイフが転がり落ち、揉み合いとなった二人は床の上を転がり回った。
「宮本先生!床の扉を!」
ベホイミが相手の顔面を殴りながら叫んだ。
その直後、犬神の反撃の一打によって形勢が反転する。
掴み合い殴り合いはより激しさを増す。
 レベッカは慌てて床の扉に駆け寄ると、訳も分からず、言うとおりにハンドルを廻して扉を開けた。
すぐ目の前で二人の激しい格闘が行われており、彼女は恐怖の余りその場から動けなくなった。
「このぉっ!」
ベホイミは力任せに立ち上がり、犬神の足を掴んで相手を思い切り押し込んだ。
その先にあったのは奈落の底、扉を手で押さえるレベッカの目前で、猛烈な勢いをつけた二人は下向きの通路の中に転落した。
「だ、大丈夫か!?」
レベッカは中を覗き込んで二人の様子を確認した。
頭から血を流した犬神とベホイミが、なおもそこで決死の格闘を演じている。
「先生!はやく、はやく扉を閉めるっス!」
「でも、そんなことしたらお前が!」
「私のことはいいから、はやく!」
「でも!」
73PP×C:2006/12/23(土) 02:19:18 ID:???
「先生!お願いするっス!先生は生き残るんです!先生なら、キューブを超越することができるっス!だから――」
「何のことだ!?わからない!」
「とにかく閉めるっス!」
 ベホイミは犬神の頭に一撃を食らわせ、相手が怯んだところを隙と見てその場にしゃがみ込んだ。
そうして、床のハンドルに手をかけて強烈な勢いでそれを廻した。
犬神がすぐにその背後から彼女に飛び掛ったが、ベホイミは手を止めることがなかった。
そして――
「ベホイミ!」
 扉が開け放たれ、二人は揉み合いになりながらその下の部屋に転落した。
柔らかいものが硬い床に叩きつけられるような厭な音が聞こえたかと思ったが、二人の手を離れた扉は自動的に閉まり始めており、レベッカには下の部屋の二人の様子について、最早知るべく術はなかった。
彼女は苦悶に表情を歪めながら、彼女の手に掴まれた扉も放した。
扉はゆっくりと、自動的に閉まり、やがて何事もなかったかのように静止した。

 レベッカは茫然自失としたまましばらく硬直していたが、やがて突っ伏した姫子のもとに歩み寄った。
姫子はもう息をしていなかった。
レベッカは神原と姫子の身体から溢れ出した血の海を渡って扉のほうに歩いて行った。
 横たわる二人の亡骸を横目に見つつ、神々しいほどの静寂の空間を突き進んだ。

 梯子を上り、ハンドルに手をかける。
扉が開かれ、その先には外世界へとつながる一本道。
レベッカはそのずっと先を見つめ、しばらく考え込んでいたが、やがて首を振ると――どうしたわけか――扉を再び閉めてしまった。
74PP×C:2006/12/23(土) 02:21:29 ID:???
<エピローグ>

 ――背後でまた扉のハンドルが廻り始めた。今度は誰だ?
「誰?」
扉が開き始める前に尋ねた。相手に聞こえるかどうかは定かではないが、不安から先に声を出さずにはいられなかった。
「あ!」
「あれ、先生・・・・・・?」
「・・・・・・何だ、お前たちか。脅かすなよ・・・・・・」
 扉から頭を出したレベッカは不安げに中を覗き込んで辺りを見回した。
「先生、これは一体・・・・・・?ここはどこなんです?」
 怯えきった、震えるような声で訊ねてくるのは朝比奈英理子だった。
レベッカは部屋の中の他の面々を眺めた。
朝比奈の背後で背を丸めて泣き顔なのは宮田晶、彼女はどういう役割を背負っているのか・・・・・・その隣で芹沢茜に縋りつく来栖柚子。あの二人が一緒のパーティになったのは皮肉であるとしか言いようがない。
背後でしきりに壁を弄っているのは模型部の岡本か。彼は既に危ない。
そして奥の方に佇んでいるのは6号・・・・・・今回は一見すると、割りとソフトなメンツだが、今後どうなっていくかは分からない。
生と死を分かつ極限状態に置かれた人間が、狂う、或いはその本性を露呈するのは確かなことであるのだから。
 そして、この中には、必ずや"世界を動かす者"が内包されていることだろう。
いや、全員が既にその一員なのである。
レベッカとこの新たなる六人が、それぞれ役割を果たし、世界の流れに同調し、その動きに参加し、一部始終を目撃せねばならない。
世界とは彼女たち自身なのであり、彼女たちはキューブという世界の一部であり、キューブそのものなのである。
「先生、服に血が・・・・・・!」
 朝比奈がレベッカの服を指差して声を上げた。
彼女の服は赤黒い染みが前面に一杯に広がっていた。レベッカは表情を暗く落とし、狼狽した様子で答えた。
「これは・・・・・・クソッ!聞いてくれ、この建物はとても危険だ。ところどころに罠があって・・・・・・」
「罠?何ですか、それは?」
「私にもよくわからないんだ・・・・・・ただ、ここに来るまで一緒だった姫子が・・・・・・」
「姫子さんが!?」
叫んだのは6号だった。
75PP×C:2006/12/23(土) 02:24:25 ID:???
 レベッカはため息をつきながら、泣き出しそうな表情をつくると、嗚咽らしき湿らせた声を演じた。
その場にいた誰もが、レベッカと姫子が渡ってきた危険な道中の創作話に戦慄した。
話の終わり頃には、レベッカは泣き出していた。
いかにも真に迫った嘘と演技だった。


 ――そうだ。デタラメだ。全てはデタラメだったのだ。
犬神が本当にキューブの側からの工作員だったのかはわからない。
ベホイミが最後に言った言葉の意味も分からない。
これが南条の檻かどうかも断言は出来ないし、神原という男が何者だったかも定かではない。
彼ら、彼女らが何だったのか、何もかもが謎のままだった。
そして、そんなことはレベッカにとって、キューブにとってはどうでもいいことだったのだ。
 レベッカ宮本。どうして彼らに打ち明けることが出来ようか、キューブの移動システムの設計者が彼女であったなどということが。
彼女にははじめから部屋の移動システムが理解できていた。当たり前だ。
三段階の座標指定の方式も、それぞれの親ユニット内で十八個の子ユニットしか動かないことも、移動時間の規則性も、全ては彼女自身が決めたことだからだ。
知っていることを知らない振りして突き通すのは色々と耐えがたい。
時計を盗み見て、いい頃合と見計らっては彼女は小出しに自分の知識を彼らに提供していたのだ。
まるで今、その瞬間に思いついたとでもいわんばかりに。
 勿論この建物自体は彼女のほかにも数え切れない設計者、製作者、施工者が存在する。彼女は無数の設計者の一人に過ぎない。
彼女はその他の誰をも知らないし、彼らだってレベッカのことは知るまい。
ひょっとしたら前のパーティの中に、或いはこの新たな六人の中に、レベッカと同じく、この建物の建築に携わった者がいるかもしれない。
それと同時に、レベッカにはほかの人間が手がけたキューブのことについては何も分からない。
殊に、アルファベットの部屋番号と罠の発動条件、工作員の存在やこのキューブを製作したもの、運営しているもの――そんな連中が存在していればの話だが――の正体・・・・・・そんなことは全く知る由も無かった。
76PP×C:2006/12/23(土) 02:26:25 ID:???
 レベッカはいつか前に、この設計を何処かから引き受け、わけもわからず才能に任せて描いた移動システムの覚書を引き渡した。
まるで『レクイエム』を手がけたかのモーツァルトのように、全く正体の分からぬ相手に、言われるがまま・・・・・・そして彼女は実際に出来上がったキューブの一部となった。
自分で計算し、建物の青写真以前の構想を打ち立てた自分自身が、その迷宮の中に囚われ、迷宮と一体化してしまった。
 彼女にはもう行くべきところは無い。キューブは彼女自身だ。キューブこそが彼女の世界の限界点だ。
抜け出すことなど出来ないし、抜け出そうなどという気も起こらない。
そもそも、抜け出すって、何処へだ?
その点では犬神と意見が一致している。
もっとも、彼とレベッカとの違いは、外に何もないことを知っていながら、それでもキューブから脱出しようとしたことと、その内に留まろうとしたこととの差だ。
そして彼は何もない外世界の空虚な強迫と神がかり的なキューブの意思なるものの概念との板ばさみから発狂し、殺戮に走った。
それとも計画的だったのか、本当は外に誰かいたのか、この期に及んでは結局何も分からない。何も、何一つ分からないのだ!
 ただ、この中で、キューブの一部として死者の肉を啄ばみ、遭難者たちを出口にまで連れて行く――それがキューブの一部としてのレベッカの存在意義だった。
レベッカはそこまで彼らを連れて行く。スマートなやり方ではなく、時に欺くことすらも厭わずに。
そしてそこに辿り着くまでの遭難者たちを見守る。
 そこから先――実際にあの闇へと続く橋を渡るために扉から外に踏み出すか、それともレベッカと同じように扉を閉め、再び誰かと出会うまで、またもキューブの中を彷徨するか――はその当事たる人物の選ぶべき道である。
彼らが如何なる選択をしようとも、レベッカは何も関せずに踵を返すのみだし、もとよりキューブは何も言わない。
 世界はその扉によって断絶される。
得体の知れない外の闇に飛び込むのか、それともキューブの歯車として動き続けることを選ぶのか・・・・・・


 レベッカは不安げに表情を曇らせる全員の顔を一通り見つめ直し、機械油の如き涙を拭って、言った。
「とにかくここを出よう。きっと出口は見つかるさ・・・・・・」

<FIN>
77PP×C:2006/12/23(土) 02:30:28 ID:???
終わりです。今度こそ本当に終わりです。
いろいろ問題があった作品ですが、何とかここまでやってこられました。

ひと段落ついたことだし、これから腰を据えて他の職人さんの作品群をじっくり読み直していきたいと思います。
それでは、長編続き、失礼しました。
78マロン名無しさん:2006/12/23(土) 02:32:59 ID:???
Gj!!

最高でした。すごく燃えた。
79マロン名無しさん:2006/12/23(土) 04:20:14 ID:???
すげー…文を読んでこんなにも興奮するなんて…
オメガGJ!!!!!!!!!111
80マロン名無しさん:2006/12/23(土) 09:37:54 ID:???
Ω面白かったです。こりゃすげーわ。またあとでまとめて読みます。
81マロン名無しさん:2006/12/23(土) 13:55:23 ID:???
独白の人です。
なんか旧スレは微妙なことになっているみたいですが、
こちらで続けさせていただきます。

今回は犬神の独白です。
これで南条・犬神の連作は最後になりますが、よかったら
読んでやってください。
8281:2006/12/23(土) 13:56:46 ID:???
<犬神つるぎの独白:3>

あれから南条は、学校に来なくなった。
ケータイも、圏外か電源が入っていない、を繰り返すばかりだった。

私は、南条の家の前まで幾度となく足を運んだ。
しかしその度に、フェンスと門の高さに足を阻まれた。
一介の高校生には、どうすることもできなかった。

でもあれは、間違いなく真実だった。
私のセーターの肩のマスカラの染みと、シーツにできた血の汚れが、
あれが現実だったことを確実に示していた。

あの日の南条の香りに似た匂いに街で気付く度、私は南条の姿を
目を凝らして探した。
あれは、"Samourai Woman"という香水らしい。
ともかく、その香りを嗅ぐ度に、私は南条を思った。

私は今日も、学校帰りに南条の家の前に足を運んだ。
相変わらず門は高く、フェンスの奥の生垣に阻まれて中の様子は
望めなかった。

ふと、あの"Samourai Woman"のほのかな香りが漂ってきた。
南条か?
今度こそ南条なのか?
8381:2006/12/23(土) 13:57:47 ID:???
と、重い音とともに門が開いた。
敷地からは、エンジンの音が次第に大きくなってくるのが聞こえた。

ほどなくして、白いCTSが奥から出てくるのが見えてきた。
南条がよく学校に運転手付きで乗り付けていた、あの車だ。

ナンバープレートには"・3 30"の文字が見えた。
間違いない、南条だ。
車内はよく見えないが、きっと中にあいつがいる。

車は段々近づいてきて敷地を抜け、ついに門をくぐった。
私は後部座席を凝視した。

そこには、ウエディングドレスに身を包んだ南条の姿があった。
一瞬、車の中の南条がこちらを見た。
何か言いたげな表情で、こちらを見た。

だが車は停まらなかった。
車は表通りに出ると、スピードを上げて走り去った。
そして、みるみるうちに見えなくなってしまった。

それが、私が南条の姿を直に見た最後だった。

南条、お前は幸せになれたのか?
後悔はしていないか?

あの日、私の家で泣いたお前のことを、私は決して忘れない。
最後に見た、お前の憂いを帯びた顔も。

記憶の中の南条は、それに答えなかった。
ただ弱弱しく、笑うだけだった。
8481:2006/12/23(土) 13:59:27 ID:???
以上です。
お付き合いありがとうございました。

今度からまた単発に戻ります。
旧スレでご要望のあった学級崩壊ネタで何か考えておきますね。

>PP×Cさん
そんなオチだったとは!
いやー、楽しませていただきました。
次回作にも期待していますよ。
85マロン名無しさん:2006/12/23(土) 14:10:23 ID:???
密かに南条が叔父に反抗して犬神と・・・
とゆう結末を望んでいたのに・・・
8681:2006/12/23(土) 14:50:01 ID:???
>85
実は、そういうエンディングも用意はしてましたw
でもあまりに平凡にすぎる気がして、書き直したのが今回のモノです。
ご要望があればそちらも晒しますが、ご覧になりたいですか?
87マロン名無しさん:2006/12/23(土) 20:39:21 ID:???
自分も>>85みたいなEDを予想していたので、よろしければお願いします。


でも一度完結した物だし・・・なんか作者さんにたいしてちょっと失礼かなぁ・・・
88マロン名無しさん:2006/12/23(土) 22:38:03 ID:???
>>86
見たいです・・・
お願いします。あと、できたら
ラブシーンも・・・
89マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:05:09 ID:???
独白の人です。
それでは、もう一つのエンディングの方を。
…って、ますますギャルゲーになってきたかもしれませんね?w
90マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:12:30 ID:???
<もうひとつの犬神つるぎの独白:3>

あれから南条は、学校に来なくなった。
ケータイも、圏外か電源が入っていない、を繰り返すばかりだった。

私は、南条の家の前まで幾度となく足を運んだ。
しかしその度に、フェンスと門の高さに足を阻まれた。
一介の高校生には、どうすることもできなかった。

でもあれは、間違いなく真実だった。
私のセーターの肩のマスカラの染みと、シーツにできた血の汚れが、
あれが現実だったことを確実に示していた。

あの日の南条の香りに似た匂いに街で気付く度、私は南条の姿を
目を凝らして探した。
あれは、"Samourai Woman"という香水らしい。
ともかく、その香りを嗅ぐ度に、私は南条を思った。

私は今日も、学校帰りに南条の家の前に足を運んだ。
相変わらず門は高く、フェンスの奥の生垣に阻まれて中の様子は
望めなかった。

ふと、あの"Samourai Woman"のほのかな香りが漂ってきた。
南条か?
今度こそ南条なのか?

と、重い音とともに門が開いた。
敷地からは、エンジンの音が次第に大きくなってくるのが聞こえた。
91マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:13:14 ID:???
ほどなくして、白いCTSが奥から出てくるのが見えてきた。
南条がよく学校に運転手付きで乗り付けていた、あの車だ。

ナンバープレートには"・3 30"の文字が見えた。
間違いない、南条だ。
車内はよく見えないが、きっと中にあいつがいる。

車は段々近づいてきて敷地を抜け、ついに門をくぐった。
私は後部座席を凝視した。

そこには…モンクレールのダウンにスキニージーンズを履いた南条がいた。
気のせいか、少し痩せたようだ。
南条は私に気付くと、運転手に命じて車を止めさせた。
そして、ドアを空け、私のところへ走り寄ってきた。

「南条…。お前…。」

「犬神君、待たせましたわね。」

南条は、息をはずませながら笑顔で言った。
私に、どんな思いをさせたか、こいつは気付いているんだろうか?

「…どこへ行っていた?
 私は、ずっとお前を待っていたんだぞ。」

「ハワイの、叔父の別荘へ行っていましたの。
 …例の、結婚の話でね。」

「…受けたのか、あの話?」
92マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:14:14 ID:???
「叔父を、説得しに行っていたんですわ。
 私には、心に決めた人がいます、ってね。
 もちろん、あの叔父ですもの、手こずりましたわ。
 丸1日座りこんでやったら、ついに認めましたけれど。」

「…操!」

私は、涙で曇る目で南条を抱きしめた。
きつく、きつく抱きしめた。
涙が、止まらなかった。

空は青く、どこまでも澄んでいた。
全てを包み込む、そんな青さだった。
93マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:18:02 ID:???
以上です。
こちらはちょっと平凡な気がしましたし、学級崩壊スレの趣旨から
段々ズレて来ているように思ったのであちらのエンディングを選びましたが、
こちらはこちらでよかったかな、とも思っています。

なんだか、ギャルゲーでフラグが足りなかった場合と足りた場合のシナリオを
見比べているような気がしますねw

ラブシーン、やっぱり見たいですか?
恋愛経験の少ない私の書いたものをお見せするのは、すごく恥ずかしいのですが…。
94マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:19:40 ID:???
>>)93
見たいです。
お願いします。犬南大好き
なんです
9593:2006/12/23(土) 23:27:00 ID:???
ちょっと待ってくださいね。
少し加筆修正してから晒します。
96マロン名無しさん:2006/12/23(土) 23:27:43 ID:???
wktkwktk
97マロン名無しさん:2006/12/24(日) 00:04:02 ID:???
下尅上を予測していたけどこれはこれでGJ
そしてWKTK
98マロン名無しさん:2006/12/24(日) 00:37:41 ID:???
真面目に感動したわ。
99一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 00:54:44 ID:???
犬南に激しい期待が高まりつつある中で空気を読まずに一本。
100一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 00:56:36 ID:???
 「いらっしゃいませ……て、玲?珍しいね、どうしたの?」
 玲は学校の制服姿のまま店の中に入ってきたが、くるみに呼び止められてハッと顔を上げた。
「あれ、くるみ?お前、今日、バイトだったの?」
 玲はカウンター席に腰を下し、卓の上に手をついた。くるみはメニューを手渡しながら、自分もその隣に腰掛けた。
玲は店の中を見渡してみたが、いつも通り他に客はいなかった。
「それがさぁ」
 くるみは横目でカウンターの中を見遣る。中では、この店の店主である若い男が一人、静かに食器を拭いていた。
彼はくるみの凝視を知らぬ振りして押し黙ったまま、手を動かし続けていた。
くるみは、彼のそんな態度を非難するような目つきでしばらく眺め、苦笑いしながら皮肉がましく言った。
「何処かの誰かさんが急にシフトを入れちゃってさ……まったく、こっちの都合も考えろっつーの」
「都合って?お前、何か用事あったのか?」
 玲はテーブルの上に頬杖を突きながら、気だるげな表情でくるみを眺めた。
窓から入る夕焼けの光を浴びて、くるみの顔はほんのりと赤みを帯びていた。
くるみはスツールを廻し、カウンターテーブルを背に凭れ掛かると、変わらぬ乾いた調子の声で応えた。
「私だって色々と忙しいのよ」
「この時間帯はいつも暇を持て余していただろう?」
「そういえばそうだったかもね。家にいてもヒマだろうしさ、同じヒマなら金もらえる方がいいもんね、そうでしょ、店長?」
 くるみは首を廻して男の方を再度見遣る。笑顔の瞳に赤い光が差し込んでいる。
「え……?あ、ああ……くるみちゃん……それは非道いよ。しっかり働いてよねぇ、ほら、玲ちゃんからも何とか言ってやってよ」
 店長はうわの空のところに急に話し掛けられたので動揺したのか、始めの方でしどろもどろしながらも、最後は呆れ顔で怠慢ウェイトレスの顔を見返した。
玲はそんな二人の様子を傍から見ていて、少し滑稽で、それが愉快に思えて、その口元に笑みを溢した。
「店長さん、これがくるみって奴ですよ」
玲は笑いながら、穏やかな声で言った。彼女の笑顔をもまた、夕日の光は優しく撫でていた。
「ちょっと、玲!それじゃ私がまるで……」
101一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 00:58:58 ID:???
 くるみが頬を膨らませて突っかかったが、玲の方はそんな彼女の目前にすっと手を差し上げ、相手が息巻いて反論しようとするのを制した。
「店員さん、そろそろ注文いいかしら?」
「こらぁ!人の話は最後まで……」
くるみは意気込んだ先の出鼻を挫かれたことに憤慨して顔を真っ赤にして見せたが、今度はカウンターの奥からくるみの裾を掴む手が伸びた。
「くるみちゃん、仕事、仕事」
「ちぇ……はぁい、お客様、ご注文はお決まりでしょうか?」
いささかふてくされたように立ち上がり、大仰な素振りで注文表を書き留める真似をする。
玲はくるみの顔を見上げたまま、メニューすら開かずに注文をつけた。
「コーヒー、いつものブレンドで」
「て、いうかさぁ」
くるみは怪訝な表情で首を傾げた。
深い緋色の差し込める静かな店内に、彼女のひときわかん高い声が響き渡る。
「店長がすぐそこにいるんだから直接言えばいいじゃん。何で私を間に挟むわけ?他に客もいないのに」
 くるみの言い分を聞いた玲は、苦笑いをしながら姿勢を崩し、その背後で同じ表情を湛えている店長に目配せした。
店長の呆れ顔は困惑めいたものにまでなり、玲をじっと見つめ返した。
「あのさ、くるみちゃん……一応、働かなきゃいけないでしょ、体裁としては。そこを譲っちゃったらウェイトレスとしてダメだと思うよ」
「確かに。くるみ、ヒマなんだろう?このくらいのことを億劫がっているようじゃねぇ……」
玲はため息をつきながら静かに笑った。

 ふと時計を見上げると時間は六時をとうに過ぎていた。
外の方で誰かの声がした。
都会カラスの鳴き声、工事現場の騒音、車の走る音も聞こえてくる。
静かな夕暮れ、穏やかな黄昏を過ぎ、街は夜に向かって蠢き始める。
しかし店内の静けさは完全に外の世界とは隔絶されていた。
店内の空気は赤く染まりきり、深閑としたまま、まるで動かなかった。
流れもしないが澱みもしない空気と時間が、ひっそりと息を潜めていた。
窓辺に差し込む眩い夕日の光ばかりは、ゆっくりではあるが、確実に黒ずみ始めていた。深く、落ち沈んでいくように。
「何さ!玲こそ今日はバイトないの?こんなダメな喫茶店で油売っていていいの?」
 くるみは眉を吊り上げて悪態をつく。
玲は首を振って今日がオフの日であることを伝えた。
102一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 01:01:38 ID:???
 くるみの言葉の中に棘を見つけた店長は湯を沸かしながら悲しげな表情を見せた。
「ダメな喫茶店って……もう少しお手柔らかに頼むよ、ねぇ?」
「だって事実じゃん」
「事実だからこそ余計辛いこともあるんだよ……」
 店長はがっくり肩を落とした。
くるみは言いたい放題言って少し気が晴れたのか、ご機嫌に鼻歌を歌っていた。
玲は意味ありげな笑みを浮かべたまま、じっと黙ってその様子を見ていた。
「何よ、玲?ニヤニヤと気持ちが悪い」
くるみは吐き捨てるように言った。
玲は何の反応も示さなかった。
くるみは不審に思って考え込んでいたが、やがてかぶりを振って呻き声を上げた。
「あぁ、もう!わかったわよ!それで、何が言いたいのよ、玲!?」
玲は冷ややかな目つきはそのままに、静かに言った。
「何も言いたいわけじゃないよ。ただ、くるみは元気だなぁ、てね」
「何よ、それ?意味わかんない。ひょっとしたら私をバカにしているの?」
「かもな」
玲は再び笑った。くるみはへそを曲げてスツールの上に腰を落とした。
腕を組んでそっぽを向き、怒っている仕草をして見せた。
その背後で店長は慣れた手つきでペーパードリップにお湯を注いでいた。
カウンターの中からコーヒーを淹れる芳ばしい香りがしてきた。
一瞬だけ部屋の中の空気が混ざり合う。ほのかなるコーヒー色の煙は、店内の不動の空気を瞬く間にかき乱し、やがて細く立ち上り、虚空へと消え入った。
緋色はますます黒味を帯び、夜の訪れを思わせる一時的な静けさと肌寒さを運び入れた。

 ある種の沈黙に満たされた永い永い時間を経て、店内の空気は再び落ち着きを取り戻し、また身動きをしなくなった。
コーヒー色の煙に攪拌された空気は、どんよりと沈み、足元の辺りを這い蹲っていた。
三人は黙ったまま、時のなすがままに身を任せていた。
「そろそろいいかな?……くるみちゃん、できたからこれ持って行ってよ」
 店長が白い陶器のカップをソーサーの上に乗せ、カウンターの上に置いた。
窓外の陽はすっかり落ちたと見え、既に緋色の面影はなかった。
カップの白い艶のある肌に映るのは煌々と輝く室内照明の光点のみだった。
103一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 01:04:12 ID:???
「えぇーっ!?玲がそのままとりにいけば済むことじゃん。何でそこまで私を働かせたいわけ?」
「お給料もらっている身分でそういうこと言わないの」
 くるみは渋々カウンターの中に回り込み、カップを銀盆に受け取った。
それをすぐ目と鼻の先で玲が見ている。
くるみは余りにもバカバカしくなってきて、毒づくように玲の方に言葉を投げかけた。
「あぁーあ、転職しちゃおうかな……ね、玲の中華料理屋って人手足りてる?」
「働かないウェイトレスはお断りだ」
「あぁ、そうですかい」
その二人のやり取りを見て、今度は店長の方が微笑ましげに口元を緩めた。
しかし、すぐにくるみの刺々しい睨みが彼を見据えたために、慌てて姿勢を正し、窓の外に視線を逸らした。
硝子一枚隔てた向こう側は、既に大きな暗幕が一杯に下され、その暗幕に開いた穴から光が零れ落ちるように、街の灯が、星のきらめきが、それぞれ好き勝手に輝きを放っていた。
「はい、どうぞ」
カウンターを出て、玲のところにカップを置いたくるみはまたその隣に腰を下した。
 湯気立つカップを覗き込み、その香りを一杯に吸い込んで、玲は一口だけそれを飲んだ。
熱さで舌が痺れ、ほろ苦い風味が、喉の奥の方で際立つ。
口の中を一杯に満たす温かさと、鼻を通じて入ってくる空気のひんやりと心地いいのとがそこで一緒になり、喉を流れ落ちるコーヒーのエキスは刻一刻とその顔色を変える。
「熱くないの?」
くるみが訊ねる。
玲は声を出さずに首を振っただけだった。
店長はまた洗い物をしている。

 何も無い、何も言わない時間が世界を席巻した。
それはただ漂うだけの時間だった。何処かへ走り去ることも無く、その場に沈殿してしまうことも無い、ふわふわと正体の掴めない時間だった。
三人は相変わらず、その時間の中を同じように漂った。まるで夢心地のような、不思議な世界だった。

 壁掛け時計が鳴った。七時だった。
ひっそりと漂っていた時間と空気はかき乱され、三人は意識を取り戻した。
結局、時間は過ぎ行くものだったのだ。誰にもそれを止めることなどできやしない。そんなものは儚い妄想に過ぎない。
時間は目にも止まらぬ速度で走り過ぎ、時間の残りカスだけがそこに沈殿する。そうだ、思い出というのは時間の残りカスに過ぎない。そして、これも――
104一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 01:06:15 ID:???
 玲はため息をついた。それが伝染ったように、店長も小さくため息をついた。
くるみは大きく背伸びした。
「おっしゃ、七時。店長、お先に上がらせてもらいますね」
「あ、え……もう?何か用事でもあるの?」
 くるみは笑った。店長は居た堪れない顔つきだった。
「いやぁ、これから兄貴とちょっと約束があるんで。今日は早く帰らなくちゃいけないんですよ。玲はどうする?一緒に帰ろうっか?」
玲は無表情に首を振った。
「いや、私はもうしばらくここにいるよ。まだコーヒーが温かいままだからね」
「そう?じゃ、私は失礼しますね」
くるみは黒いエプロンを脱いだ。下は学校の制服のままだった。
 くるみは控え室に入っていき、そこから革の通学鞄を持ち出してくると、二人に頭を下げた。
晴れやかな笑顔だった。
「じゃあ、そういうことなんで……」
 くるみは扉に向かって歩き始めた。
後姿を見ていた玲はやがて気がついたように大声を張り上げた。
「くるみ、あのな!」
くるみは振り返った。笑顔だったが、何処か悲しげだった。
「なぁに、玲?」
「今度は……今度はいつ来るんだ?」
「え?エトワールに?」
「ああ、そうだ」
「……次の出勤日?やぁねぇ、そういうのは店長に聞いてよね」
「……そうか。すまん」
「何で謝るのさ?」
「いや、何となく」
「おかしな玲。あ、ヤベ、時間に遅れると兄貴に怒られるわ!ゴメン、それじゃあ、またね……玲、それから店長」
 くるみは慌てて扉から出て行った。カラン、コロンと鐘の音が静かに鳴り響き、くるみの姿は夜の闇の中に消えていった。
どこからともなくすぅっと冷たい風が入ってきたような気がして、玲は思わず身震いした。
そして、向き直るとコーヒーをゆっくりと口に運んだ。
105一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 01:08:30 ID:???
「……行っちゃったね」

 店長が呟くように言った。
玲は黒い液体にゆらゆらと写る自分の顔を見つめながら答えた。
「ええ。今日もあの日と同じでしたね」
「あれからどれくらい経ったんだろう?」
「今日で丁度一ヶ月ですよ」
「一ヶ月か……早いものだね」
「思えば」
玲はコーヒーをもう一度啜った。
「つい昨日のことのようにも思えるし、でも遥か昔のことのようにも思えてきます」
「くるみちゃん、今頃どこで何しているんだろうね」

 店長の洗い物をする手が止まった。
玲は空ろな瞳で宙を見つめていた。が、やがて顔を上げると、店長の方に向き直って答えた。
「くるみは……きっと天国でも幸せに暮らしていますよ」
「そうかなぁ」
「ええ、きっと。だけど、まだこの世にやり残したことがいくらかあるから、ああして時々この店に戻ってくるんですよ。一ヶ月前のあの事故は、余りにも突然のことだったし……」
「そうだよね……だけど、くるみちゃんは自分がもうこっちの世界の人間じゃないってことに気がついていないのかな?」
「いえ……それは本人が一番よくわかっていると思いますよ。それでも敢えてこっちに戻ってくるということは、まだ何か理由があるんでしょう……それは本人にしか分からないことでしょうが」
 玲はもう一度コーヒーを啜った。
コーヒーは既に氷水のように冷え切っていた。
ただ刺々しい、ざらざらとした苦味だけが、舌の上で心地の悪い後味を残していた。
「くるみちゃんは……」
 店長はそこまで言いかけて、そのまままた黙り込んでしまった。
そして、何事も無かったかのように洗い物を再開した。
玲も何も訊ねなかった。二人はいっそうの沈黙の中に居た。

 白いカップの中の黒いコーヒーはゆらゆらと波立っていたが、しばらくするとまた元の水鏡に戻った。
やがて、零れ落ちた一滴の涙がその鏡面を再び震わせるまで。

――完――
106一杯のコーヒー、そして温もり:2006/12/24(日) 01:11:32 ID:???
とりあえずこれまでで幻想モノでやりたいことは全部やれたんで満足です。

もし来年も機会があれば、要望のあった「学級崩壊」にフィーチャーした作品を折り見て書いていけたらいいなぁ…と。
それでは失礼。
107マロン名無しさん:2006/12/24(日) 01:13:36 ID:???
GJGJ!
くるみ〜w
108Pani Poni HAZARD:2006/12/24(日) 01:23:43 ID:???
次行きます、独白氏が降臨するまでの暇つぶしにどうぞ

ロックフォート島
観光地としての記念すべきデビュー戦であるこの日、桃月学園の生徒がここに
降り立ってからというもの、ここはすでに観光地ではなくなっていた。
物が焼ける臭い、肉が焼ける臭い、人が焼ける臭い
人間の叫び声、人間の断末魔、怪物のうなり声
銃声、悲鳴、泣き声
こんな観光地が何処にあろうか。
この島は既に死で溢れ返っていた。
観光地というのは本来なら笑い声が聞こえる楽しい所である、ここもそうなるはずであった。
しかし、ここは違う、ここにでは楽しそうな笑顔など見ることは出来ない、あるのはただただ化け物と
絶望と死人だけである、こんなところで何を見て笑えというのか、もっとも、死人も時が経てば歩き出す、そんなふざけた世界なのだ。

「ハァ・・ハァ・・ハァ・・」
そんな死の島で、美しい黒髪を振り乱して建物の壁にもたれかかっている
人影があった。
1年C組、橘玲、彼女もまたこの信じがたい事実に戸惑っていた。
「クソッ・・何なんだ一体、何がどうなってるんだ・・アレは・・確かに早乙女だった・・」
そう、玲は見たのだ。化け物から逃げる最中に、他の化け物に混ざってB組の担任である早乙女が
必死に道に倒れている死体を貪っていたのを。信じたくなかった。だが確かに見たという確信があった。
玲はそのままずるずると地べたに腰を下ろした。手にはオートマチックのハンドガンが握られている。
道端の死体の近くに落ちていた物を拾ったものだ。弾はマガジン一つ分は入っているようだった
もっとも逃げることに夢中で撃つことなど考えなかったが、こんな事態だ、何か身を守れるものがないと
安心できない。
「あいつら・・食っていたぞ、人間を、人の、肉を・・」
玲は参っていた。精神的にだ。いくら「C組の魔女」の異名をとる彼女も、同じ学校の教師が
人を食らう化け物に変わっている姿を見るのは、とても辛かった。
109Pani Poni HAZARD:2006/12/24(日) 01:24:22 ID:???
コツッ
「!!」
なにやら物音がした。玲は慌てて立ち上がり銃を構えた。もちろん撃ったことは無い
そのままの状態で音がしたほうに銃口を向ける、玲は落ち着いていた。来るなら来い
私を食おうなんて100年早い、その口に鉛弾をくれてやる、そんなことを考えながらも
玲はじっと一点を見つめた。その時、何かが動いた。間違い無い、音の主は奴だ、
主はそのままゆっくりと玲の方に近づいてきた。暗くてよく見えないが、人の形をしていることはわかる
「(落ち着け・・落ち着くんだ・・)」
銃を握る手にさらに力が篭る、額にはじっとりと汗をかいていた、さらに近づいてくる、玲は静かに
引き金に指を掛けた。あともう少し、もう少し近づいてくれば・・そして、その主がゆっくりと・・ゆっくりと姿を現した。

「マホーーーーー!!!玲っちゃああぁぁん!!」
主はそのまま玲に向かってダイブしてきた。
「どわあぁあぁぁ!!ぐえっ!」
玲はたまらずその主に押し倒されてしまった。少し重い。
「玲ちゃああああん、久しぶりだねぇー!元気だったカナーー?」
「おっ、お前、姫子か!?」
そう、音の主は玲にとってはもはやお馴染みの人物、片桐姫子だった。
「そうだよーー♪私だよーー♪もしかして玲ちゃん私のこと忘れちゃったの?マホホ・・だとしたらショックだよ・・」
「馬鹿・・とりあえずどいてくれ、少し重いぞ」
「あ、ごめんね」
110Pani Poni HAZARD:2006/12/24(日) 01:26:09 ID:???
「そうか・・お前も見たか・・」
「うん・・みんなスタッフの人が・・おかしくなってたんだヨ・・それで私怖くなって・・とにかく走ってたんだ、そしたら玲ちゃんに遭えたんだヨ」
姫子もあまり元気が無い、人の死を目の当たりにした人間は皆こうなる、姫子も例外ではない。
「・・ねえ玲ちゃん、みんなどうしてるかな?ベッキーは大丈夫カナ?6号さんも、都ちゃんも、一条さんも、あとくるみちゃんも・・」
さらに姫子の気分が沈んでいく、いつもの姫子からは考えられない消沈ぶりだった。
「姫子・・・・・心配するな、大丈夫さ、皆こんな事でくたばるような奴らじゃない、皆どこかで生きているさ」
「玲ちゃん・・そうカナ?皆大丈夫カナ?」
「ああ、そうさ!!だからそんな顔するな・・笑ってくれよ、いつもみたいにさ、お前までそんな顔してたら、私は・・」
「玲ちゃん・・ごめんね、私・・うん、わかったよ、皆。無事だよね、そうだよね!」
姫子にいつもの笑顔が戻ってきた。いつも馬鹿みたいなことを言っているときの、あの微笑み
「ああ、そうだよ・・お前はやっぱり、笑顔でいるほうがいい」
「そうカナ・・?マホホ・・なんか照れるな」
「フフフ・・相変わらず面白いな、お前は・・」
玲の顔にも笑みが戻っていた。そして勇気が沸いてきた。
「ねえ玲ちゃん!ベッキーたちを探しに行こう!みんなきっとどこかにいるよ!」
「ああ、いいさ、行こう!遅れるなよ姫子!」
「マホッ!!アイアイサー!私、玲ちゃんに一生ついていきますよーー!!」
こうして二人は地獄の島を走り始めた。その先に何が待っているかはわからない、しかし
止まるわけにはいかない、再びあいつらと、笑い合える日のために。


>>100
GJ!! くるみぃぃぃぃぃ!!

111マロン名無しさん:2006/12/24(日) 01:55:29 ID:???
お待たせしました。
独白の人です。

それでは、南条&犬神の独白2 1/2ということで、ラブシーンを投稿させていただきます。
何分あちらの経験が少ないのでw、お見苦しいものかとは思いますがご容赦ください。
112マロン名無しさん:2006/12/24(日) 01:58:11 ID:???
<南条操の独白:2 1/2>

犬神君のキスは、さっきのレモネードとHint Mintが混ざった味がした。
そして、とめどなく流れる私の涙の味も。
その味は、甘酸っぱくて、塩っぱくて、そして切なかった。

次の瞬間、私の唇は、こんなことを口走った。

「犬神君、私を…私を、抱いてください。
 私の体に、消えない…印をつけてください…。」

私は、自分で言ったことが自分でも信じられなかった。
一人ラブコメだの、小学生の恋愛ゴッコだのさんざん言われていた私が
こんなことを言えるなんて、思ってもいなかった。
…声は震えていたけれど。

「南条、お前…ヤケになってないよな?
 本当に、私でいいんだよな?」

犬神君は、戸惑うように訊いた。
私は、黙って犬神君の目を見つめ、頷いた。
私たちは、もう一度口付けを交わした。

息を荒くした犬神君の指が、私を一枚一枚あらわにしていった。
その指はぎこちなく、女の子の扱いには馴れていないような、
そんな感じだった。
113マロン名無しさん:2006/12/24(日) 01:58:53 ID:???
「なぁ南条、このホックって…」
「ああ、これはここを一度引っ張って、この爪を…」

もちろん、私もこんな経験は初めてだ。
心臓が、口から出そうだった。

ついに、ブラが取られた。

「…綺麗だよ、南条。」

「…ねぇ、名前で呼んで下さらないかしら。」

「…操。」

犬神君は顔を赤くして、ちょっと照れた様子だった。
私も、顔が赤くなるのを感じた。

犬神君は、私をきつく抱きしめた。

私はお腹に、犬神君の…ボトムスのあの部分の大きな膨らみを感じた。
それが、とても嬉しかった。
普段私にそっけない態度の犬神君が、私を見てこんなに、
…その…、興奮してくれているということが。
114マロン名無しさん:2006/12/24(日) 02:00:21 ID:???
<犬神つるぎの独白 2 1/2>

目の前の南条の、操の、スレンダーな体に私は目を奪われていた。
染み一つない白い肌は滑らかで、私のごつごつした指で触れることが
ちょっとためらわれた。

私は意を決して、操の背中から指を滑らせ、2つの胸の膨らみへと
手を伸ばした。

「いぁっ、犬神君…はぁっ!」

操の体は、華奢な見た目に反して、とても柔らかかった。
甘い、恥ずかしそうな声が、私をますます刺激した。
操の顔は、真っ赤に染まっていた。

キスを交わしながら、私は操の体の隅々まで触りつくしたい衝動に駆られた。
私の右手は、胸から脇腹、背中へと滑り出し、ついにあの部分へと辿りついた。

操自身は、すでにしっとりと湿っていた。
小さな突起のようなものに指があたると、操の体は、一瞬びくっと震えた。
突起は、とろとろに濡れ、すっかり固くなっていた。
私のアレも、すっかり固くなっていたのが自分でもわかった。
ビクビクしているのが、自分でもわかった。

指を伸ばすと、ぬるぬるした液体にまみれた襞状のものを感じた。
その奥に、穴らしきものがあった。
ここか…ここが操の…。
115マロン名無しさん:2006/12/24(日) 02:01:26 ID:???
私はたまらず、操を横にさせると、下を脱ぎ、自分のアレを操の下の口にあてがった。
暖かく、柔らかい感触が、アレから伝わってきた。
操は、細かく震えていた。

「…怖いか、操?」

「ううん…犬神君になら、私…」

ゆっくりと、操自身が私自身を呑みこんでいった。
熱い肉の壁に押し戻されるような、そんな感触だった。

「痛っ!」

操が叫ぶ。
きつく締め付けられるような、そんな感覚が私自身からも伝わってきた。
一瞬柔らかい壁に当たる感じがしたが、私は自分の腰を止められなかった。

ブチッ、と音がした。
でも、私の腰は止まらなかった。

操が、痛みを必死にこらえながら私の背中に爪を立てる。
でも、苦痛にあえぐ操の声はいつしか、とろんとした甘い声へと変わっていた。
シーツには、次第に赤い染みができ始めていた。

私は、脳から突き抜けるような快感に襲われた。
116マロン名無しさん:2006/12/24(日) 02:06:37 ID:???
以上です。
エロパロスレに投稿した方がよかったかな?
皆さんのご期待に沿えたかどうかはわかりませんが、大変お見苦しい文章、
失礼しました。

>コーヒーさん

いや、本当によかったです。
くるみ…。
泣きそうになりました。
次回作も、期待させていただきますね。

>Pani Poni HAZARDさん

GJ!
TVのバイオハザード見た後でしたから、ますますドキドキでした。
息もつかせぬ展開と心揺さぶる描写、本当に見習わせていただきたく思います。
今後も楽しみにしていますよ。
117マロン名無しさん:2006/12/25(月) 02:11:16 ID:???
丸一日書き込みがない…。
失望させてしまいましたか?
あ、私独白の人です。
118マロン名無しさん:2006/12/25(月) 02:13:15 ID:???
クリスマスなので
119マロン名無しさん:2006/12/25(月) 02:23:57 ID:???
このスレの住人の多数はクリスマスに用事があるタイプの人間だと言うのか?
120マロン名無しさん:2006/12/25(月) 02:25:36 ID:???
うん
121マロン名無しさん:2006/12/25(月) 02:30:12 ID:???
姫子とホテルにいたもので
122マロン名無しさん:2006/12/25(月) 04:42:36 ID:???
>>117
遅れながらGJ
有馬記念だったので…
123マロン名無しさん:2006/12/25(月) 08:19:51 ID:???
独白の人、GJ!
我儘聞いてくれて有難う御座いました!
124マロン名無しさん:2006/12/25(月) 10:42:51 ID:???
遅れながらGJ!
独白の人→そんな事ないですよ!少なくとも自分は楽しめました!
125マロン名無しさん:2006/12/25(月) 14:55:49 ID:???
独白氏GJ!!
南条さん最高だ・・
クリスマス?そんなもんうちの暦には有りませんよ( ゚∀゚)HAHAHA!!
126Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:49:09 ID:???

クリスマスネタを一つ書いてみましたので、投下させていただきます。
127Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:50:27 ID:???

今年も私は、一人きり。ちょっと寂しいクリスマスイヴ……。

聖なる夜といえば一般的には家族や恋人とともに過ごすものですが、
私の側にいるのは幼稚園に入ったばかりの妹だけです。
両親には夫婦水入らずのディナーを外で楽しんでもらっています。
普段は仕事や家事で忙殺されているのですから、この特別な日ぐらい恋人気分を味わって欲しい
というのは、子供として当然の願いでしょう。
望の方はというと、犬神さんの家に遊びに行ってしまいました。
もちろん相手は犬神つるぎさんではありませんよ。その妹の雅さんです。
さっき『このまま雅ちゃんの家に泊めてもらうねー』という電話がありましたから、
今日はもう帰ってくることはありません。
あまり迷惑を掛けることがなければ良いのですが。
あ、別に家族仲が悪い訳ではないんで誤解しないで下さいね。
クリスマスの夜は全員で過ごす予定ですし。

特に外出する予定のなかった私は、今日はずっと妹と遊んでいました。
公園に行ったり、サンタとトナカイごっこをしたり、テレビを見たりと、非常に楽しい一日でした。
妹はM-1グランプリがいたく気に入ったようで、内容がわかっているのかどうかは知りませんが
キャッキャと笑っていました。
一緒にお風呂に入った時に水鉄砲で銃撃戦を繰り広げたのは、はしゃぎ過ぎだったかなあ……。
でも、まだまだ小さいあの子にとっては毎日が冒険なんですよね。
あの子は何でも楽しむことができる、たいした子です。ある意味では無敵といっても良いかもしれません。
何かに出会っては果敢に突撃していって、嬉しそうに私のところに戻ってくるんです。
遊び相手になるのは結構大変なのですが、あの笑顔を見るとついつい私も微笑んでしまいます。
やはり子供は可愛いですね。
128Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:51:08 ID:???

今はもうパジャマに着替えて、歯も磨きました。そろそろお眠の時間です。
妹は遊び足りないようでお気に入りのぬいぐるみを弄っていますが、どう見ても眠そうです。
目蓋は半分閉じているし、体もぐたっとなっています。
私は妹を抱きかかえ、両親の寝室に連れて行くことにしました。
いやいやの素振りを見せる妹ですが、本当は寝たくて寝たくて仕方がないのです。
こういうのを、ツンデレって言うんですかね?
案の定、布団に寝かしつけて数秒のうちに妹は眠りに落ちてしまいました。
隣に横になって子守唄でも歌うつもりだったのですが、その必要もありませんでしたね。

幼稚園児は寝なきゃいけない時刻でも、私たち高校生にとってはまだまだ早い時間です。
私はこっそりと部屋を抜け出し、リビングに移動しました。
ソファーに横になり、体を休めます。
普段は騒がしいこの家も、今だけは耳を澄ましても何も聞こえません。
両親も望も出かけているし、妹もぐっすり夢の中です。
こうして一人きりになるのは、久しぶりかもしれません。
「クリスマスかあ……」
おっと、思わず独り言も飛び出してしまいました。
話す相手が誰もいないとかえって声が出てしまうのは、どうしてでしょう。
思っていることを隠す必要がないからでしょうか。
人には明かせないどす黒い感情を。

実はC組の皆で遊ぼうかという話もあったんですけど、結局お流れになってしまいました。
どうやら皆さんお忙しいようで。
玲さんもくるみさんも姫子さんも都さんも鈴木さんも、今日は男の方とお出かけしているらしいのです。
129Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:51:53 ID:???

あまり知られていませんが、姫子さんはイベントで出会った大学生の方とお付き合いをしているそうです。
たしか、藤巻さん? というお名前だったと思います。
姫子さんが女らしく頬を赤らめて彼の話をするのを聞いたときには、本当に驚きました。
あの天衣無縫な姫子さんが、こんなにもしおらしい態度をとるのかと。
いやはや、恋心というものは恐ろしいものです。
そう、それで姫子さん、その藤巻さんとクリスマスデートなんですよ!
それはもう嬉しそうに惚気てましたよ!
しかも姫子さん、そのままその方に家に泊まるなんて言ってるんですよ!
相手は一人暮らしの大学生なのに、何を考えているんでしょうか。
私にはわかりません。

そうそう都さんにも彼氏がいるんですよね。何でも海外で知り合ったそうです。
都さんの場合は三人称が「あのバカ」とか「あいつ」とかなので、名前は存じ上げておりません。
どうやら都さんはその方についてかなりの不満を抱いているらしく、
私などはしょっちゅう都さんから愚痴を聞かされてばかりいます。
まったく、嫌になっちゃいますよね。
そのくせ今日は一日中ずっと一緒にいるなんて、昔の都さんからは想像も出来ません。

それにしてもクリスマスが恋人たちのための日になったのは、何が原因なんでしょう。
本当はキリストの誕生日とされる、宗教的な祭日なのに。
さりげなく鈴木さんも彼氏持ちだそうで、やはり二人で遊ぶんだそうです。
130Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:52:49 ID:???

くるみさんはというと、「クリスマスなのにバイトがあってうざい」なんて言ってましたね。
本当はあの喫茶店は大好きなんだから、わざと誤魔化さなくてもいいのに。
しかもバイトが終わった後は、修さんと家に二人きりですよ。
あのお兄さんとくるみさんの、二人だけのクリスマスなんです。
仲睦まじい兄妹の団欒なんて思ってはいけません。あの兄妹はそれ以上の関係です。
学校ではあまり絡まないように気を付けているようですけどね。
たまに街中でもくっついて歩いているのを見ることが出来ます。
修さんとくるみさんは、あの関係をいつまで続けるつもりなんでしょう。
いつか家族を巻き込んだ修羅場が待っていると思うんですけどね。
人事ながら心配してしまいます。

さて、ここまで申し上げた方々は、まあ一応ながら愛のあるお付き合いをしています。
だけど玲さんだけは違います。
私がこんなことを言って良いのかわかりませんが、玲さんはお金を貰って大人の方と付き合っています。
いわゆる援助交際です。
皆さんもご存知のように、玲さんの家庭はあまり裕福ではありません。
そのせいで玲さんは週に四日もバイトをしているのです。
でもそれだけでは、彼女の家の家計を支えるには充分ではなかったようです。
私は偶然見てしまったんです。玲さんが、その、あの、いかがわしいホテルから中年の方と出てくるのを。
しかも一度や二度ではありません。いえ言い換えましょう、相手は一人や二人ではありません。
最近では本当に貧窮しているらしく、目撃する頻度はどんどん大きくなっています。
初めは目を瞑っていた私も、そろそろ忠告した方がよいのではないかと考えるようになったぐらいです。
しかし、私にはその勇気がありません。
玲さんは生きて行くためにそういうことをやっているのですから、ある意味では立派な行為なんです。
それを止めるようなことは、私にはできません。
でも、私は泣きたくなってしまいます。
偽りのクリスマスデートがどれだけつらいものか私にはわかりませんが、私なら我慢できそうにありません。
どうしたらいいのか、誰か私に教えてください。
131Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:53:53 ID:???


ちらりと時計を見ると、もうすぐイヴからクリスマスへと日が変わる頃でした。
そろそろサンタクロースのおじさんも、子供たちの家を駆けずり回り始める時間でしょうか。
サンタさん、もしも許されるのなら、私にも欲しいものがあります。
もう高校生になった私に資格はないかもしれませんが、願いだけでも聞いてください。


私が今、欲しいのは。
何よりも強く願うのは。
あの人の温もりです。
優しく私を包んでくれる、あの人の暖かさ。
ぽっかりと開いた穴を埋めてくれる、あの人の存在。
全身で感じ取れる、あの人の感触。

現実で叶わないのなら、せめて夢の中だけでも夢を見させてください……。

私はソファーの上で、丸くなり、いつしか眠りに落ちていきました。



Merry Christmas!


この世の全ての人に、幸せが訪れますように……。
132Lonely Ichijo Day:2006/12/25(月) 19:58:37 ID:???

以上です。

今年一年、学級崩壊スレには作者として、読者として、非常にお世話になりました。
本当にありがとうございます。
来年一年も、このスレ、そしてここに来る皆様にとって良い年になりますように。
133マロン名無しさん:2006/12/25(月) 20:21:41 ID:???
全俺が泣いた。
黒い作品を書くには白い心が無くちゃいけないことがよくわかった。

このスレ最高だ。
134マロン名無しさん:2006/12/25(月) 21:14:50 ID:???
一条さん、ささやかながら
Merry Christmas、
135マロン名無しさん:2006/12/25(月) 21:49:51 ID:???
今回も、いい作品読ませてもらいました。
皆さんに、メリークリスマス。

で、思ったんですが、この際初期スレ風味の「学級崩壊」に
そんなにこだわらなくともいい気がしません?
今の職人さんたちの持ち味を、あえて変に変えようとしない方が
いい作品が読める気がします。

今の皆さんの作品、初期作品とは、明らかに異質ですよね?
世の中に、旨い寿司を握る寿司職人と美味しいフレンチを作る
シェフがいても、寿司職人に美味しいフレンチを作れってのは
アレじゃないでしょうか。

寿司とフレンチどちらが上か、ということが言いたいわけでは
もちろんありませんよ。
寿司も握れてフレンチも作れる人もいますけど、初代スレみたいな
「学級崩壊」にこだわりすぎるのは、フレンチのシェフに
寿司を握れと言っているようなものなんじゃないかなぁ…。
136マロン名無しさん:2006/12/25(月) 22:55:49 ID:???
独白の人、GJ!
クリスマスなんて、ないですよ。
仕事してたもんで・・・。
137マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:41:42 ID:???

独白の人です。
なんかレスを要求したみたいですいませんでした。
皆さん、もったいないお褒めの言葉、ありがとうございます。

さて、今回は新作として6号の独白を用意しています。
単発でやると宣言したので、続きませんがw
138マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:43:06 ID:???
<鈴木さやかの独白:1>

夕暮れの埠頭を渡る海風が、私の黒髪を撫ぜていた。
Pコートの襟が、ぱたぱたと揺れた。

エンジンをかけっ放しのミジェットのテールランプに照らされ、
ブラックストーンの煙が、ふわっと香ってきた。
決して、厭な匂いではなかった。

「どうしたの6号?
 そんな顔しちゃって?
 煙い?」

「いえ先生、ちょっと考え事を…」

「そう?
 ならいいけど。」

五十嵐先生は知らない。
五十嵐先生には見せられない。
かつての、私の素顔を。
私のすべてを。

五十嵐先生を、失望させたくない。

本当の私は、先生の知っている私ではないのだ。
五十嵐先生は、まだ知らない。

8ヶ月前、高校に入りたての私は、クラスに溶け込めない私は、
お昼休みになるといつも一人、校庭のベンチでお弁当を食べていた。

強がってはいたけど、みんなの中に入りたかった。
139マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:44:39 ID:???
楽しそうに笑う玲さん、くるみさんや都さんたちと、私も一緒に
笑いたかった。
でも、できなかった。

「あんた、ホント暗いよね」

「ダッサ、高校生にもなってそんなの好きなの?」

「いつも一人でいて、気持ち悪いんだよ」

「いちいちオドオドしやがって…ウゼエな」

私は、みんなの声で心の中に自動再生されるそんな言葉たちと、
いつも戦っていた。
少なくとも高校に入ってからは誰に言われたわけでもないのに。
私は必死で、外では平静を保っていた。

家に帰ってからの私は、外の私と別人だった。
私の部屋の壁は、アヴリルやエミリーのポスターで目立たないように
してはあるものの、穴だらけだった。
私が開けたのだ。
一人で壁を殴る私の顔は、誰にも見せたくなかった。
それが、私の本当の顔だった。
140マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:45:44 ID:???
週末になると、私は何かから逃げるように、精一杯着飾って出かけた。
原宿、渋谷、下北沢、中野…わざと学校から遠くへ、遠くへ行った。
個人の顔すらわからなくなる、人の海の中での孤独だけが、
私を私たらしめていた。

でも時々、人の中にいるのが無性に怖かった。
学校の誰かに会ったらどうしよう、休日の私を誰かに見られたら
恥ずかしくて死んでしまいたい、そんな思いにかられて仕方がなかった。
そんなとき私は、カーテンも開けず、一日中ベッドの中にいた。
でも、眠れなかった。

実際には何時間かは眠っていたのだろうけれど、意識はいつも
いやに研ぎ澄まされていた。
141マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:49:31 ID:???
そんな私を、自分の心の檻から救ってくれたのは、姫子さんだった。
あのとき、姫子さんに話しかけてもらえなかったら、私はきっと今も
あの頃の私のままだっただろう。
姫子さんはこんな私に、他のお友達と接するように、普通に接してくれた。
決して無理をして合わせてくれているような感じではなく、自然に接してくれた。

姫子さんと初めて話したのは、5月の宿泊研修の班決めのときだった。
例の如く、私はどこの班にも入れず、一人窓の外を見ながら
黙って座っていた。
そこに、姫子さんが現れたのだ。

「鈴木さん…だったカナ?
 私たちの班、1人足りないんだけど、よかったら入らない?」

唐突に現れた姫子さんの無邪気な笑顔に、私は一瞬圧倒された。
こんな地味で目立たない私が、あんな明るい姫子さんに話しかけられるなんて
思ってもみなかったからだ。
142マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:53:01 ID:???
そんな私を、自分の心の檻から救ってくれたのは、姫子さんだった。
あのとき、姫子さんに話しかけてもらえなかったら、私はきっと今も
あの頃の私のままだっただろう。
姫子さんはこんな私に、他のお友達と接するように、普通に接してくれた。
決して無理をして合わせてくれているような感じではなく、自然に接してくれた。

姫子さんと初めて話したのは、5月の宿泊研修の班決めのときだった。
例の如く、私はどこの班にも入れず、一人窓の外を見ながら
黙って座っていた。
そこに、姫子さんが現れたのだ。
「鈴木さん…だったカナ?
 私たちの班、1人足りないんだけど、よかったら入らない?」
143マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:54:02 ID:???
そんな私を、自分の心の檻から救ってくれたのは、姫子さんだった。
あのとき、姫子さんに話しかけてもらえなかったら、私はきっと今も
あの頃の私のままだっただろう。
姫子さんはこんな私に、他のお友達と接するように、普通に接してくれた。
決して無理をして合わせてくれているような感じではなく、自然に接してくれた。

姫子さんと初めて話したのは、5月の宿泊研修の班決めのときだった。
例の如く、私はどこの班にも入れず、一人窓の外を見ながら
黙って座っていた。
そこに、姫子さんが現れたのだ。
144マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:56:04 ID:???
「…いいんですか、私なんかが入れてもらっても。」

「いいに決まってるじゃない!
 そんなところに座ってないで、一緒にやろ!」

最初は、何か裏があるんじゃないかと思っていた。
友達になったふりをして、暗い私を影でバカにしようと思ってるんじゃ
ないかと疑っていた。

でも、姫子さんは違った。
姫子さんは、本当の自分を私にさらけ出してくれた。
周りを気にせずバカをやったり、ときどきシリアスになったり、
姫子さんの表情を見ていると本当に飽きなかった。
私は久しぶりに、心から笑えた気がした。
145マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:57:33 ID:???
そうして、姫子さんのお友達とも、ちょっとづつ打ち解けることが
できるようになった。
五十嵐先生とも。

あるとき、姫子さんは私に1組のリボンをくれた。
白い、ふわふわのリボンだった。
そして、姫子さんはそれを私の髪に結んでくれた。
ツインテールなんて、今までしたこともなかったのに。

「わっ、やっぱり思ったとおり、オメガ似合ってるよ!
 こうやって見ると、6号さんってゴスロリの子みたいだね。」

もう半年前なら、悪意の、からかいの言葉だと思ったかもしれない。
でも私には、その言葉が嬉しかった。
一緒に笑ってくれる、姫子さんの存在が嬉しかった。

…潮風に吹かれながら、私はそんなここ数ヶ月のことを思い出していた。

「寒くなってきたし、そろそろ帰ろうか。
 やっぱりもう年末だね。
 これじゃ凍えちゃうよ。」

「そうですね、先生。」

風が、ぴたりと止んだ。
146マロン名無しさん:2006/12/25(月) 23:58:41 ID:???
ミジェットの乾いたエンジン音が、すっかり暗くなった港に響いた。
私はサイドウィンドウから、ただただ、遠ざかる夜の海を眺めていた。
いつまでも、いつまでも眺めていた。
147マロン名無しさん:2006/12/26(火) 00:04:12 ID:???
以上です。
学級崩壊な感じにしようと思ったのですが、なかなかうまく行きませんねw

PCが投稿規制を食らっているため今回ケータイからなのですが、コピペ失敗してしまってすみません。
管理人さま、お手数ですが、まとめサイト収録時には修正願います。

>一条さんの人
GJ!
来年の作品にも期待してますよ。
原作一条さんの母性愛が出てますね。
148マロン名無しさん:2006/12/26(火) 00:25:53 ID:???
規制解除されるまで待ってから投稿した方が良かったと思う
149マロン名無しさん:2006/12/26(火) 12:42:06 ID:???
>>147
GJっス
次は誰か楽しみっス
150マロン名無しさん:2006/12/27(水) 05:12:22 ID:???
保守
151マロン名無しさん:2006/12/27(水) 22:41:57 ID:???
>>147
GJ!!次も楽しみにしてます!


なんか人いないな。やっぱ年末だからか?
152マロン名無しさん:2006/12/28(木) 18:06:11 ID:???
みんな旧スレにいるんと違う?
153マロン名無しさん:2006/12/28(木) 18:50:05 ID:???
旧スレも結構粘るな
154マロン名無しさん:2006/12/28(木) 19:30:04 ID:???
新作投稿していいでしょうか?
旧スレにした方がいいのかな?
155マロン名無しさん:2006/12/28(木) 20:25:51 ID:???
旧スレもあと2KB足らずで終了するから
投下するなら新スレの方が安全だと思うよ
156マロン名無しさん:2006/12/28(木) 22:26:00 ID:???
ではこちらに投下します。
今回は来栖柚子の独白です。
今日一日、仕事しながらネタ考えてた罪深い私をお許し下さいw
157156:2006/12/28(木) 22:27:12 ID:???
<来栖柚子の独白>

雨が降っていた。
12月の夜明けの空は、雲に覆われ、一面のミルク色だった。
まるで、今の私の心みたいだった。

私は、今も信じられなかった。
芹沢さんが、あの芹沢さんが、ロボ子だったなんて。
あの日の夢が、正夢だったなんて。

思い当たることは、前からいろいろあった。
芹沢さんの肌から、ほんのり香る8×4。
「来栖ちゃん、演劇に興味あるの?」という言葉。
くぐもった機械的なロボ子の声と、優しい芹沢さんの声の
違うようでどこか似た感じ。
芹沢さんがいなかったあの日に舞い込んだ、ロボ子の代役。

そのたびに私は、その可能性を否定してきた。
芹沢さんが、ロボ子のはずはないと。
芹沢さんのことばかり考えているから、誰でも芹沢さんに
見えてしまうのだ、と。

でもその期待は、もろくも崩れ去った。
158156:2006/12/28(木) 22:28:09 ID:???
あれは昨日のことだった。
喉が渇いた私は、何か飲もうと1階の自販機へと足を運んだ。
そこに、芹沢さんがいた。

正確に言えば、ロボ子の着ぐるみから顔を出して、
ハルカ先輩と談笑しながらドクターペッパーを飲んでいる
芹沢さんがいた。

「ドジラの奴なんてひと捻りですよ、ハルカ姐さん!
 今後あいつに負けるなんて、絶対ないですって!」

芹沢さんは、確かにそう言った。

私は、目の前の情景が信じられなかった。
芹沢さんを問い詰めたかった。
ハルカ先輩を問い詰めたかった。
でも、できなかった。

私は、信じられない事実を前に、呆然と立ち尽くすだけだった。
私に気づいた芹沢さんが何か言ったようだったが、もう何も、
耳に入らなかった。
気づいたら、私は駆け出していた。

私は、家に帰って泣いた。
シャワーも浴びず、ご飯も食べずにベッドに倒れこみ、
ひたすら泣いた。
そうすることだけが、この現実を受け入れる手段だとばかりに。

冬の冷たい雨は、全くやみそうになかった。
ただただ、全ての音を飲み込みながら、降り続いていた。
159156:2006/12/28(木) 22:30:32 ID:???
以上です。
私ばかり投稿してすみませんw

皆さん暖かいコメントくださいますが、私の駄文、全然ヌルいですね、はい。
もっとドロドロした、このスレらしいのを考えますです。
160マロン名無しさん:2006/12/28(木) 23:26:51 ID:???
独白氏、GJ!!
次回作もお願いします!!!
161マロン名無しさん:2006/12/28(木) 23:36:17 ID:???
独白の人、GJです!


その内自分も投稿してみようかな・・・・・・
162マロン名無しさん:2006/12/28(木) 23:46:02 ID:???
>>161
是非
163マロン名無しさん:2006/12/29(金) 00:32:13 ID:???
独白氏GJ!! おもしろいよこれー
164マロン名無しさん:2006/12/30(土) 02:48:21 ID:???
年末保守
そろそろ崩壊スレ一周年か。

初代スレが出来てから、毎日覗いてるが作品のクオリティ高くてマジ最高。
年末年始は作者の方々も忙しそうだから、チョクチョク保守しないとな。
165マロン名無しさん:2006/12/30(土) 07:05:33 ID:???
くるみーくるみー
166マロン名無しさん:2006/12/30(土) 14:28:38 ID:???
たっぷりくーるーみー
167マロン名無しさん:2006/12/30(土) 16:51:49 ID:???
くーるみーがやーってくるみー
168マロン名無しさん:2006/12/30(土) 23:45:24 ID:???
保守
そろそろ何か書こうかな…
169マロン名無しさん:2006/12/31(日) 07:04:48 ID:???
よいお年を
170マロン名無しさん:2006/12/31(日) 14:12:59 ID:???
ぱにぽに!
171マロン名無しさん:2007/01/01(月) 00:04:52 ID:???
明けましておめでとうございます!
172マロン名無しさん:2007/01/01(月) 00:27:05 ID:???
おめでとうございますッ!
2007年\(^o^)/ハジマタ
173マロン名無しさん:2007/01/01(月) 00:34:42 ID:???
明けましておめでとうございます。
独白の人です。
今年最初の投稿、いきたいと思います。
前スレの桃瀬くるみ・修の独白の続きです。
何回か続きますのでよろしくお願いします。
174マロン名無しさん:2007/01/01(月) 00:38:25 ID:???
〈桃瀬くるみの独白:2〉

雪の降る街に、除夜の鐘が響いた。
全てを包み込む白い雪は、今の私の不安も包み込んで
くれるのだろうか。
暗いペールブルーの空は、何も答えなかった。

あの日から、私と兄貴は何度となく愛し合った。
自宅はもちろん、時には人目を盗んでバイト先や学校で
事に及んだこともあった。

今思うと、軽率だったかもしれない。
でも、兄貴と私の関係は、誰にも気づかれないはずだった。
そう、十分気は配っていたはずだった。
175マロン名無しさん:2007/01/01(月) 00:42:54 ID:???
それに、兄貴はともかく、こんな地味な私のことなんか
誰も見ていないと思っていた。
私は、そのことにすっかり安心しきっていた。

でも、それは違った。
終業式の日、私の靴箱に入れられた一通の封書が、
その甘い見通しを打ち砕いたのだ。

「あんたと兄貴とのことで話がある。
 1月3日正午にピーチメルバ前に来い。」

便箋にはただ二行、そう書かれていた。
MSゴシックの、極めて無表情な字で。

私の心にはお構いなしに、鐘は鳴り続いていた。
静かな街に、ただ鳴り続いていた。
176マロン名無しさん:2007/01/01(月) 00:45:27 ID:???
今回は以上です。
くるみ好きの方々、学級崩壊ネタがお好きな方々の
ご期待に添える様頑張りますので、宜しくお願いします。
177マロン名無しさん:2007/01/01(月) 00:49:45 ID:???
新年早々のGJ!
178マロン名無しさん:2007/01/01(月) 00:56:23 ID:???
明けましておめでとうございますGJ!
179マロン名無しさん:2007/01/01(月) 03:33:34 ID:???
あけおめ
>>176
かなり続きが気になるわけだが
180176:2007/01/01(月) 10:22:12 ID:O834K8Ha
>179
もちろん、このまま終わるわけではありませんよ。
3日以内に続きを投稿しますので、今しばらくお待ちくださいませ。
181マロン名無しさん:2007/01/01(月) 10:23:01 ID:???
うほったのしみっ
182マロン名無しさん:2007/01/01(月) 23:28:12 ID:???
独白の人です。
桃瀬くるみの独白の続きです。
183マロン名無しさん:2007/01/01(月) 23:29:59 ID:???
〈桃瀬くるみの独白:3〉

あの手紙が来てからも、相変わらず私たちは体を重ね続けた。
この時間が決して永遠でないことはわかっていたけれど、
兄貴との関係に迷いはあったけれど、どうしようもできなかった。

兄貴…小さい頃からずっと私を見ていてくれた兄貴。
地味、萌えない、うっかり八兵衛、さんざんに言われてる私を、
いつもかわいいと言ってくれる兄貴。
怠惰な私に、いつもお弁当を作ってくれる兄貴。
不摂生な私のカラダを、綺麗と言ってくれる兄貴。

そんな兄貴の悦ぶ顔が、私の一番の幸せだった。
兄貴の腕に抱かれている時が、一番安心できる時だった。
184マロン名無しさん:2007/01/01(月) 23:32:17 ID:???
約束の日までは、あっという間だった。
兄貴には、手紙のことは結局言えなかった。
私は、玲と約束があるから西口商店街へ行く、昼はエトワールで
食べるから、と言い残して家を出た。
笑顔で送り出してくれた兄貴の顔に、ちょっぴり胸を痛めながら。

兄貴とお揃いで買ったメタルベルトのSKAGENは、11時20分頃を
指していた。
ひっきりなしにマフラーを揺らす木枯らしに苛立ちを覚えながら、
私はピーチメルバへと急いだ。
185マロン名無しさん:2007/01/01(月) 23:34:17 ID:???
今回は以上です。
まだまだ続きますので、良かったら見てやって下さいませ。

また、皆様レスありがとうございます。
ご期待に添えるかわかりませんが、宜しくお願いいたします。
186マロン名無しさん:2007/01/02(火) 21:20:25 ID:???
独白氏、GJ!
続きもお願いします。
187マロン名無しさん:2007/01/02(火) 23:46:51 ID:???
独白の人です。
続きです。
正月休みの間は毎日投稿できるといいなぁ…。
188187:2007/01/02(火) 23:47:47 ID:???
<桃瀬くるみの独白:4>

初売りも終わった桃月駅西口商店街は、いつもの喧騒とは
明らかに異質な静けさだった。
それでもこちらに近づく人影がある度に、私は目を凝らした。
そして、ただの通行人だとわかると、ほっと胸を撫で下ろした。
さっきからずっと、その繰り返しだった。

私の腕のSKAGENは、既に11時55分を指している。
私をここに呼び出したのは、一体誰なのだろう?
あの手紙はパソコンで書かれたものだったから筆跡なんて関係ないし、
そもそも、相手の性別ですらわからないような文体だった。
手がかりになるようなものは、全くなかった。

"BEEP!"

突如ホーンが響いた。
慌ててきょろきょろすると、道の反対側に寄せて停められた
イングリッシュホワイトのMINIの窓から手を振る、くわえタバコの
五十嵐先生が見えた。

五十嵐先生が、私を?
なんかいつもの車じゃないし。
ともあれ、私はMINIに駆け寄った。

窓が開く。
と、ブラックストーンの甘い香りとともに、五十嵐先生は顔を出した。

「よっ、あけおめー。」
189187:2007/01/02(火) 23:50:15 ID:???
「あけましておめでとうございます。
 …私をここに呼んだのって、先生だったの?」

「へ、何それ?
 ただ知った顔が見えたから、挨拶しただけだけだよ。
 いや、あんたのお兄さんにも世話になってるしさ。」

どうやら、五十嵐先生は偶然通りかかっただけのようだ。
私は、全身の緊張が抜けた気がした。

「あれ、先生いつもの車は?」

「ああ、MGはなんか最近キャブの調子が悪くてさ、いま修理中。
 これ代車なんだけど、やっぱ自分のじゃないと感覚狂うね。
 …待ち合わせ?」

「ええ、まあ。」

「ふーん。
 そうそう、お年玉もらったからってムダ遣いすんなよー。
 じゃね。
 あ、あとお兄さんにもよろしく。」

それだけ言うと、五十嵐先生は車を発進させて行ってしまった。
私は、手を振って先生を見送った。
そしてため息をひとつついた。

「5分前には来てるなんて、あなたってどこまでもあなたらしいわね。」

突然、後ろから声がした。
BABY DOLLが、ほんのりと香った。
190187:2007/01/02(火) 23:52:04 ID:???
今回は以上です。
ちょっと引っ張りすぎでしょうかw

明日中に続きを書く予定ですので、宜しくお願いいたします。

>186
ありがとうございます。
こんな駄文でよければ、これからも読んでやって下さい。
191マロン名無しさん:2007/01/02(火) 23:53:54 ID:???
ここで切るかw
wktk
192マロン名無しさん:2007/01/02(火) 23:54:27 ID:???
独白さんGJ!!
くるみ(*´д`*)
193マロン名無しさん:2007/01/02(火) 23:57:40 ID:???
もうじらさないでえええええええええええええええええええええ
194マロン名無しさん:2007/01/03(水) 13:06:57 ID:???
らめええええええええ
195マロン名無しさん:2007/01/03(水) 13:39:03 ID:???
独白の人です。
盛り上がった所で、続き、行きたいと思います。
本当はリアルタイムで行きたかったのですが、間に合いませんでしたw
196195:2007/01/03(水) 13:40:55 ID:???
<桃瀬くるみの独白:5>

風に舞う紫の黒髪に、私は息を飲んだ。
Schottのランチコートのポケットに手を突っ込んだ優麻ちゃんが、
私を正面から見据えていた。

「こんなところに呼び出して、どういうつもり?」

「手紙に書いた通りよ。
 桃瀬くんとのこと、はっきりくるみの口から聞きたくてね。
 …ここじゃ何だから、そこのスタバでも入ろうか?」

「…うん。」

駅前のスターバックスには、正月のせいか私たち以外の客は
ほとんどいなかった。
こういう話題のときは、人目は少ない方がいい。
私はホワイトチョコレートモカを頼むと、優麻ちゃんに言われるまま
奥の席に座った。

「単刀直入に聞くけど、桃瀬くんとくるみ、いつからああいう関係なの?」

「…ああいうって、どういう関係?」

「ここまできて、とぼけるつもり?
 保健室でのこと、知らないとは言わせないわよ。」

「…見られてたんだ。
 気はつけてたつもりだったんだけどな。」

「くるみ、それがどういう意味なのかわかってるんでしょう?
 社会的に許されないことだってのも、わかってるのよね?」
197195:2007/01/03(水) 13:43:00 ID:???
「…悪いけど、兄貴とのこと、私は本気だからね。
 世間が何て言おうと、私の気持ちは変わらない。
 それだけは、はっきり言わせてほしい。」

「桃瀬くんも、同じ気持ちなの?
 ねえ、くるみだけがそう思ってるんじゃないの?
 桃瀬くん優しいから、流されてるだけなんじゃないの?」

「…優麻ちゃんに、兄貴の何がわかるって言うの?」

「わかるわよ!
 私も…桃瀬くんが好きだから!
 桃瀬くんのこと、いつも見てるから。
 …ずっと見てたから。」

「…それは、宣戦布告だと思っていいのかな?」

「私も本気だよ。
 桃瀬くんを思う気持ちは、くるみには負けないつもり。」

「…受けて立とうじゃない!
 優麻ちゃんが、私たちの15年の重みに勝てるかしらね?」

体中の血が沸き立ってくるのを、私は静かに感じていた。
私はホワイトチョコレートモカの残りを一気に飲み干し、席を立った。

早春の風が、桃月の街を軽く撫ぜていった。
空は高く、遠く流れる雲が私たちを見下ろしていた。
高い高い空から、じっと見下ろしていた。
198195:2007/01/03(水) 13:46:03 ID:???
とりあえずこの桃瀬くるみのエピソードは以上です。
もっとドロドロした感じにしたいのですが、なかなか…w
ここまでお読み下さった皆様、ありがとうございました。
199マロン名無しさん:2007/01/03(水) 21:21:24 ID:???
 あけましておめでとうございます。
 今年もどうぞよろしくお願いします。
 もっともこのスレは常に忌中ですが。
200Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:25:41 ID:???
エロありグロあり人死になしです。
201Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:27:07 ID:???
 夏休みが明けて久しぶりに登校した学校は懐かしさに溢れていた。
 犬神は文庫本で持ち込んだ小説を読みながら、時々クラスメイトの雑談に耳を傾ける。
 芹沢はロボ子スーツで街を歩いていたら暑さで気を失い、気がついたらプール帰りの子供に囲まれて棒でつつかれていたという。
 宮田は財布を落として探していたら道に迷ったらしい。
 伴は甲子園を観戦してきたらしく、珍しく熱弁を揮っている。
 南条はワシントン条約という言葉を教えてやった方がいいだろうか。しかしどうやら知っていながら無視しているようだ。
 まあ、いろいろな事があったらしい。

「おはよう」
「おはよう……え?」
 挨拶に反射的に返事をしてから声の方を向いた犬神は声の主を見て珍しく狼狽えた声を上げた。
 入ってきたのはスラリと背の高い短髪に眼鏡の青年だった。犬神よりは少し低いが、一般的にはかなりの長身と言ってもよいだろう。
 桃月学園の制服に身を包んでいるので一応生徒ではあるようだが、ここD組の生徒にこんな男はいないはずだ。
「……あの、失礼ですが教室をお間違えでは……? それとも転校生ですか?」
 探るような犬神の言葉に、彼は強面気味の顔を少し困ったふうにして言った。
「いやだな犬神君。僕は磯部だよ」
「……え? 磯部……?」
 犬神は文庫本を閉じて磯部と名乗る青年を本格的に観察するが、違和感は収まるどころかますます増大していく。
 犬神の記憶の中の磯部は、丸っこい瓶底眼鏡の男だったはずだ。それに、こんなしゃべり方ではなかったと思う。制服だって、なぜだかは知らないが詰め襟の学ランだった。
 それが今では、夏服なのでわかりにくいが、標準服を着ている。
 犬神が戸惑うのをよそに、南条はガラスのティーカップを気取ったしぐさで傾け、アイスのアールグレイを一口優雅に飲んでから磯部に歩み寄り笑みを浮かべた。
「あら、随分と格好良くなりましたこと。おはよう磯部くん」
「おはよう南条さん。えっと……すっかりお世話になっちゃって」
 南条に頭を下げるしぐさもぎこちなさが却って様になっている。
「お気になさらず」
202Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:29:45 ID:???
「どういう事なんだ南条」
 犬神の問いにも南条はすぐには答えずまた一口飲んだ。
 ツンデレお嬢様は夏休みの間にレベルアップして焦らしを覚えたようである。
 それともこれは、さっきアマゾンに行っただのアフリカに行っただのとしつこく自慢してきたので黙るように少し強く言った復讐なのだろうか。
「ベホイミさんにふられてしまった磯部くんに、容姿を格好良くすればベホイミさんに振り向いてもらえるのではないかと相談を受けましたのでお手伝いしましたの……
夏休みの自由研究みたいなものですわ」
 南条は満足そうに磯部を見た。
 その目は観客として観に行った犬のコンテストでグランプリ犬の飼い主が犬に向けていたのと同じもので、つまりこのお嬢様にとって磯部はペットと同じなのだということだろう。
203Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:31:24 ID:???
 廊下をドタドタと走り回る音がして、女子が集団でD組教室に入ってきた。おそらく情報源は綿貫だろう。ぬきつ抜かれつ乙女とほぼ同時に突っ込んできた。
「おい夏休みで身長が五十cm伸びたってのはどいつだ!」
「なのに体重がほとんど変わってないってマジ?」
「発声とかちゅじぇちゅと話し方がげきへんしゅひでぶ!」
「発声と滑舌と話し方が激変したって聞いたんだけど……と言ってますオブジイヤーです」
「うちのエステのスペシャルコースに一ヶ月入ってもらいましたの。思ったよりも効果が出ましたわね。正直驚きましたわ。
 ……実は宣伝も少し兼ねていたのですけれど……素晴らしい変化ですわね」
 南条が集まった全員を眺めながらアイスティーを飲み干して言うと乙女が叫んだ。
「おい動物女! 私もやるぞやらせろ」
「いいですけど……たぶん効果には個人差がありますわよ」
「秋山さんやめておいた方がいいよ、あれは……地獄だから」
「まあ失礼な」
 おずおずと口をはさんだ磯部は南条に一喝されて大きくなったからだを縮こまらせた。
204Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:33:22 ID:???
 磯部くんが南条さんのスペシャルエステの内容について話しています。私に絵心があってこれがマンガならここで

 楚々とした生成りのワンピースで正座して、ラジオ体操の帰りに庭の生け垣で摘んできた朝顔を活ける乙女とか
「ちょ……それは……まずいだろ」

 諜報部の活動帰りにアイスを食べる来栖、クレープを食べる宮田、そしてアイストッピングクレープを頬張って頬にクリームをつけて満面の笑みを浮かべる綿貫とか
「そんなことまで!? うひゃぁ」

 チャーター船の上で麦藁帽子やスカートのすそを押さえながらアマゾンに沈む夕陽を眺める南条さんとか
「でも効果は覿面でしたでしょう?」

 水を張った洗面器を睨むベッキーとか
「つーかそれってエログロなんじゃないか?」

 公園のごみ拾いをしながら軍手の手の甲で汗をぬぐう6号さんとか
「ですです」

 両手に二桁の紙袋を抱えた姫子とか
「学園祭の新刊はパラレル犬磯なのカナ?」

 を書くところですが……まああずまんが大王のパクリですオマージュですインスパイアです。
205Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:34:49 ID:???
 やはり美容関係の話題は女性の心を掴んで離さないものなのか、集まってきた女生徒達は瞳を輝かせて磯部を囲み熱く語り合っている。
 犬神は特に女好きというわけではなく、羨ましいとも思わないが、南条が自分以外の男子とこんなふうにしゃべるのは始めて見る。
 心なしか、自分と話す時よりも自然体のような気がする。
 少し胸がざわついた。
「なぁ南条、さっきの話の続きなんだが」
 南条に声をかけようとするとまたドアからクラスメイトが入ってきた。
「……おァよーっス」
 これまた記憶にない姿をしている。
「……今度は誰だ? えーと……」
 こちらはトーンは変わっていたが声自体が変わった訳ではないのでやがてわかった。
「……ベホイミか?」
「あァ、そーっスよ? あーイメチェンしたっスからねー。わからねースか」
「ああ……だいぶ変わったもんだな」
 ベホイミはヘラヘラ笑って席に着き乱暴に座った。
 櫛も通さずただ結んだだけでゴム紐から漏れ出ているぼさぼさの髪、産毛が髭のように生えた口、生気のない瞳。
 癒し系魔法少女の成れの果てであった。
206Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:35:39 ID:???
「おはよう。はい着席してねー。そこのひとたちは自分のクラスに戻ったもどった」
 学級委員の二人に肩を貸されておじいちゃん先生が入ってきて、生徒達はみな自分の席または教室に戻って行った。
 遮る人込みがなくなり磯部はやっとベホイミの方を見ることが出来たが、何度か通り過ぎてからやはりとベホイミの机を見たその視線は凍りつく。
「え……?」
 見られている事を感じて視線の来る方向を見たベホイミも同じく信じられない表情で目を見開いた。
「磯部……?」
 ふたりは見つめ合ったが、千夏の声が磯部の凍りついた時間を解かした。
「磯部くんいないの? いないなら返事してね」
「あ、はい! あ、いる! います!」
 あわてて返事をした磯部に千夏は少し考えたようだが頷いた。
「じゃあ磯部くんは出席でいいや。犬神くん」
「はい」

 窓の外からはあぶらぜみのなく声が聞こえてきた。
 おじいちゃん先生はその声に耳を傾けながら、自分の替わりに出席を取ってくれる学級委員の立派な仕事ぶりを眺めて目を細めた。
207Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:36:45 ID:???
 通常授業が開始された翌日の昼食後。甲子園の興奮覚めやらぬ伴に誘われ、磯部は女子中心の野球に参加した。
 ほぼAB組とCD組の対抗試合という形になっている。
 メンバーの殆どが女子で、しかも他の男子はキャッチャーと審判を務めプレイヤーとして参加するのは磯部ひとりであり緊張したが、女子の方は磯部を意識している様子はなく自然体であり、時々はしたない姿をさらしては磯部をどぎまぎさせる。
 もっとも、これは磯部は野球がほとんど出来ないのに対しクラスメイトの女子は皆なかなかの猛者ばかりでプレイに熱中しているので、意識している暇がないのかもしれない。
 プレイよりもむしろ周りを見まわす事の多い磯部は、だから銀髪の彼を誰よりも早く発見して声をかける事が出来た。

「やあ犬神君、君も野球かい?」
「いや……通り掛かっただけだ。それと磯部……『君』は要らん。フランクに犬神と呼び捨ててくれて構わない。私もそうしているだろう」
「そ、そうか……んー、いぬがみ……」
「ああ」
「なんだか照れるな」
 磯部は頬を少し赤くしたので、犬神も少しだけ恥ずかしくなった。
「そのうち慣れる」
「おーい磯部チェンジだぞ」
 芹沢が呼ぶ声がした。気のせいだろうか、それとも四十日間会う事がなかったからだろうか、夏休み前よりもだいぶ優しい感じに聞こえた。
「じゃ、がんばれよ」
「ああ……犬神」
 磯部ははにかんだように笑い、犬神はかなり恥ずかしくなったのでぷいっと後ろを向いて足早に歩き去った。
208Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:37:30 ID:???
 犬神と磯部、出席簿でも連絡網でも隣り合うふたりがにこやかに会話を交わすのを、屋上のフェンスに指を絡めて握りながらみる男がいた。
「兄貴食事中にうろうろすんなよー、行儀悪いだろ」
 言ってくるみが立ちっぱなしのバイトで太くなりつつあるふとももをパンパンと叩いたので、修は妹の隣に腰掛けた。
「……犬神が……俺以外のオトコとあんなに親しそうに……」
「おー、よちよち、かわいちょーでちゅねー」
「……うん。可哀相なんだ、俺……」
 くるみのスカートに熱いものが染みていく。修はくるみの膝に顔を埋めて泣き出したのである。
(……でも、私はうれしいよ。兄貴と学校でも一緒にいられて…… サンキュー磯部!)
 くるみは右手で修をなでながら、左手の親指を太陽に向かって掲げた。
「ううう、くるみぃ、ちゅるみいぃぃ……」
「修ちゃんはこんなにいい子なのにねぇ。かわいいのにねぇ……」
「ううぇええぇぇ……ウヴェヴァボェ……」

「……なんだか見てはいけないものを見ている気がするわ……」
 ハムとチーズのサンドウィッチをかじりながら、由香は半分逸らし半分みつめる微妙な視線で桃瀬兄妹を観察した。
 ちょっとした雑事で時間を取られてしまい、遅めの昼食を摂る為に屋上にやってきたら先客がいて、何となく視界に入らないところに隠れていたら妙な事になってきた。
「由香ちゃん私たちも」
 ピザパンのチーズを伸ばそうとしたが、冷え固まったチーズではそれも出来ず早々に失敗した千夏が何を求めてか由香の方に手を伸ばしたが、由香はむべも無く言い放つ。
「やんねー」
「ねぇ由香ちゃん、なんでみんなピザにはタバスコをかけるのかなぁ? ラー油かけちゃだめなのかな」
209Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:39:19 ID:???
「ちょ! おしゃぶりした指でスカートに触らない! 引っ張るなホックが……あ! スカートで拭くな! ってかスカートびしょびしょ……」
 くるみのスカートのふとももから上の部分には修のよだれによる染みが大きく広がっていた。
「もう、しょうがないわねぇ修ちゃんは」
 苦笑しながら修を引き剥がそうとするが、修は全力でくるみのふとももをホールドして石のように動かなかった。
「もうすぐ昼休み終わるんだけど」
「……」
「授業あんだけど」
「……」
「修ちゃんいい子だから離しまちょうねぇ」
 くるみが少し顔をいびつに歪めながら言うと、修は面を上げて珍しく真剣な表情で妹の双眸を射るように見てくるみの肩をしっかりと掴み力強く言った。
「くるみ。どこにもいくな。ずっと俺の側にいろ!」
 くるみの心臓が締めつけられた。
どちらにしろ、この制服では授業には出られまい。スカートには染みが出来、ホックも歪んでうまくはまらない。上衣も修が強く引っ張るのでボタンが取れてしまった。
ジャージに着替えるなら別だが、しかし……
 くるみは修を再び膝の上に乗せて、優しくなではじめた。
210Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:40:10 ID:???
「うん。私どこにも行かないよ。だから安心して……ね?」
「そうかじゃあトイレにも行くなよ?」
「……それ言うの小学校の時以来だよ、おにいちゃん」
「うるせえ」
 修はふてくされたような顔をしたがくるみにはそれがうれしかった。
「はいはい、トイレもここでしますよ…… 大丈夫だから……ね?」
 くるみがそう言って微笑みかけると修は顔を弛緩させてくるみに甘えはじめた。
「ばぶばぶ」
「よちよち」
「だーだーだー」
「よしゅしゅしゅしゅ」
「……うわぁ……私……トイレットペーパー持ってきた方がいいのかな!?」
 由香は飽きもせず桃瀬兄妹を観察し続け、相棒の肩を叩いて一緒に観察するよう促そうとしたがその手は虚しく空を切った。
 その頃千夏は既に教室に戻り、野球に興じている日直の代わりに午後の授業の準備をはじめていた。
 教室移動の連絡や二日酔いの五十嵐の迎えの手配などてきぱきと指示をする姿は由香の憧れる朝比奈英理子を思わせる凛々しさがあった。

 ベホイミは教室を出たところでグラウンドから帰って来た集団とすれ違った。
 その中に汗を拭きながら伴や芹沢と楽しそうに話す磯部を認めて、彼女は廊下の隅に壁にからだを押しつけるように寄って、目を伏せた。
211Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:41:04 ID:???
 そして一ヶ月が過ぎた。

「……ん?」
 下駄箱から靴を取り出そうとした磯部の手が止まる。
 靴の中に、丁寧に折られて揃いの封筒に収められたファンシー便箋が入っていた。
 まだ上履きを履いていたので靴を戻し、指をズボンでこすって気持ち綺麗にしてから開いてみるとこう書いてあった。
『放課後、1−D教室で待っています』
 最近はこういった手紙をもらう事も多い。
 靴の中に入れられると間違って履いてしまった時困りそうだと思いながら、彼は靴を元通りしまって教室に戻った。
212Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:42:04 ID:???
 ノックしてドアを開けると待っていたのはベホイミだった。
 懐かしい魔法少女のコスチュームに身を包み、窓の外を眺めていた。
 磯部を認めるとゆっくりと向き直り、おずおずと口を開く。
「磯部……くん」
「なんだいベホイミちゃん、話って」
 ベホイミは頬を染めて言った。
「……あの時はすまなかったっス! あの……私と付き合ってほしいっス!」
 その声は大きくて、廊下まで響いているのではないかと磯部が心配になるほどだった。
 告白を聞かれるのはもちろんされる側も恥ずかしいが、する側の方が恥ずかしいものではないだろうか。
 もっとも、世の中には街中の電光掲示板や巨大テレビ画面で大々的に告白する自己顕示欲が強い人種も多いようであるが。
「大好きっス! 愛してるっス! 君にフォーリンラブなんス!」

 磯辺が口を開くまでの間がベホイミには永遠に近い程長く感じられた。
 ベホイミ程ではないが、磯部も答えを考えて気力を溜め言葉に乗せるまでが長かった。

「……ごめんベホイミちゃん……僕にはもう……」
 磯部は少し困ったような顔をしたが、申し訳なさそうにしかしきっぱりと言った。
「僕にはもう、付き合っている人がいるんだ。申し訳ないけれど、君の気持ちに答える事は……出来ない」
「え、あ、だって……くれたじゃ……ラブレター!」
 磯部はかつてベホイミにラブレターを送った。
 ベホイミはしかし、それを本人の目の前で破ってしまったのであるが。
「……ずるいっス……いまさら……」
「……すまない」
 『でもベホイミには感謝している、ベホイミへの想いがなければイメチェンすることもなかった』と言おうとして磯部はやめた。そんなことを言ったところで何の慰めにもなりはしない。卑怯なだけだ。
「そんな、私……愛して……いるのに」
 取りすがって食い下がろうとしたベホイミだったが、その耳に第三者の声が聞こえてきたので上げようとした手を止めた。
「磯部? 磯部……?」
 その声が磯部を探しているのに気づきベホイミは教壇の下に滑り込んだ。軍隊仕込みの見事なからだ捌きである。
213Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:42:57 ID:???
 ベホイミが隠れてしばらくして扉が開く。黒髪を揺らしながら入ってきたのは隣のクラスの魔女だった。
「教室に戻ってたの? 探したぞ」
「うん。ちょっと……忘れ物をした」
 自分の机に移動して、鞄を閉めながら磯辺は言った。
「見つかった?」
「ああ」
「そっか。それじゃ帰るぞ。部活とバイトのない日くらい一緒に帰らないとな」
 玲の声は明らかに弾んでいてベホイミの心に突き刺さる。
「学校の中では手をつなぐなよ、恥ずかしい」
「いいじゃないのよぅ……ダーリンの手……あったかいんだもぉん」
「デブだったからな」
「うふふっ、そうねっ。柔らかくてあったかい手で……だぁい好きな手っ! ちゅっ」
「やめろよ」
「やーぁだ。やぁめなーいもぉん」
 話すうちに学校・仕事モードから二人きりモードにシフトした玲は磯部の手に頬ずりしてキスした。
姫子やベッキーが見たら一体なんと言うだろう、ここにいるのは魔女でも金の亡者でもなく、甘い恋に胸ときめかす少女でしかない。
 しかしベホイミはそんな玲を情けないとは思わず、むしろ羨ましく思った。
 そして……
「だから暑いんだよ」
「我慢しなさい! あれが我慢できたんでしょ? 我慢しなさぁい」
 玲は磯部の手を放して、教室の灯を消し、ぴしゃりと扉を閉めて、また磯部と手をつないだ。
 夕暮れの教室、教壇の下で体育座りするベホイミの両目からは滂沱の涙が流れていた。
 歯が震えて鳴り、身体中が振動し、息が苦しくなる。どんなに息を吸っても肺に入っていかない。
「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 磯部と玲がいなくなるまでは、聞こえる距離からいなくなるまでは、あと三十、六十、百数えるまでは、と我慢したベホイミだが、やがてたまらずに叫んだ。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!」
 叫び声と共に、涙と唾液と鼻水が飛び散った。
「べっほああああああああああああああああああああああああああああっ! ほああああああああああっ!」
214Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:44:23 ID:???
 この胸の中で熱く煮え滾る思いを。
 聞いてほしかった。
 受け容れてほしかった。
 彼にだったら、傷跡とタコだらけの手も、ケロイド状の脇腹も、ノリで入れた乳房の入れ墨の痕も、全てを見せられた。見てほしかった。
 明日も知れないあの世界でも、彼のぬくもりを感じていれば、それが最後の日になるかもしれない明日が来るのもきっと怖くなかった。
 今ここにある死の危険など遥か遠い平和な日常をこれでいいと満足して明日に諾うよりも、何もかも失くすとしても彼が側にいてくれさえすれば何もかも失っても構わなかった。
 いや、そもそも、あそこでは生の実感すらなかった。磯部を想うようになってやっと生きはじめる事が出来たのだ。
 でも、ふられた。
 結局自分は、自分の思いは砂上の楼閣だったのだ。あの砂漠のように。
 それでも……
 だとしても……
 今でも……
 磯部くん。
 大好きっス。
215Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:46:29 ID:???
「誰かいるのですか?」
 二度のノックの後、扉を開けてメディアが覗き込む。
「あ……っ……」
 泣き声を無理矢理飲み込んで、ベホイミは小さなからだをさらに小さく教壇の下に押し込めたが、しゃがみ込んだメディアに見つかってしまう。
(よりによって一番見られたくない相手に……畜生。うんこうんこ)
「ベホ……ちゃん?」
「……っく……っえ……」
「大丈夫……ですか?」
「あはっはっはっはー、メディアああああ!」
 決壊した。
 今日くらいは、こいつに弱みを見せてしまってもいいだろう。こいつの優しさに甘えてしまっても……
 ベホイミはメディアに飛び掛かり、締め上げる勢いで抱きついて涙に塗れた顔をメディアのエプロンにこすりつけた。
「私……ふられた! 告白してくれたのに私がふったから……今度は私がふられた! 私……わたし……
 玲さんみたいにぃっ! 拙くても……この手で磯部くんを抱きしめたかったのに!」
 メディアはベホイミの頭をしばらくなでてから微笑んで言った。
「やめて下さいベホちゃん。キモウザいです」

 メディアは手に付いたピンクのヘアカラーを汚いもののように教壇になすり付けて出て行った。
 扉を開けたまま閉めずに行ってしまったが、ベホイミには這いずり出て行って閉めようという気力は既になくなっていた。
216Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:51:49 ID:???
以上です。
TWRで広告を眺めていたら思いつきました。
磯部くんの出番が少ないようだったので少し活躍させてあげたかったのです。
ベホイミのタロットがJusticeだったのは書きながら気づきました。


>>くるみ独白さん
 最近スタバ行ってないですがダブルモカマキアート飲みたいです。
 というかクリスマスフレーバーをジンジャーブレッドしか飲んでない……
217Justice too Believe:2007/01/03(水) 21:58:11 ID:???
やばい新年からやらかした(つД`)
いそべのべは部じゃなくて辺だった……

磯辺ファンの皆さんごめんなさい。
磯辺餅喉につまらせて来ます。
218マロン名無しさん:2007/01/04(木) 00:10:05 ID:???
ナイス磯辺
219マロン名無しさん:2007/01/04(木) 00:15:32 ID:???
ナイスメディア
220195:2007/01/04(木) 00:27:04 ID:???
>礒辺の人
GJ!
メディアの態度にちょっと違和感ありましたが、面白かったです。
やっぱ人間は外見だっていう厳しい現実を改めて感じましたw
本当、イケメンとブサメンのコピペみたいですよねw

スタバ、私が好きなので出したのですが、モカ系にどうしても
惹かれてしまいます。
それこそ、Ventiでもいけるくらいw
季節限定メニューもおいしいものいっぱいで、雰囲気もいいから
ついつい通ってしまいますよね。

あれ、ホワイトチョコレートモカって、もしかして季節限定かな?

私の文には他にも好きなもの色々こだわって出してますが、
おかしなところがあればご遠慮なくご指摘くだされば幸いです。
221マロン名無しさん:2007/01/04(木) 01:43:07 ID:???
>やっぱ人間は外見だっていう厳しい現実を改めて感じましたw
カイジ利根川のセリフじゃないが、
ぱにぽにキャラで美形じゃなくてもアイデンティティが崩れないのって
早乙女:体育会系バカくらいだよな
もしブサイクなら犬神はただの根暗、一条は電波、6号と修はパシリが陰湿に、
玲、姫子、鈴音、ベホイミはハブり対象、響はゴシップ屋、芹沢はウザキャラ、
柏木姉妹は勘違い系女、乙女と五十嵐は救いようのないDQN、
都はガリ勉ブス、南条は成金ブス、メディアはただの留学生
宮田はダメッ子でブスなら女子の間では人気者になるか徹底的にいじめられるかどっちかだな
222マロン名無しさん:2007/01/04(木) 02:02:13 ID:???
主要メンバーも、二次元だからみんな美形なのであって、
リアルだとけっこう微妙なのもいたりしてw

姫子あたりがブサイクだったら、ホント救いようのない
痛いキャラだなw

でもミカエルは美形でも嫌だわw
223マロン名無しさん:2007/01/04(木) 02:06:39 ID:???
>221
ここでもハブられるくるみカワイソスw
224マロン名無しさん:2007/01/04(木) 02:08:16 ID:???
設定上で美人なのは南条さん、宮田、玲、犬神あたりか。
225マロン名無しさん:2007/01/04(木) 10:12:12 ID:???
玲は美人だと思う。マジで。
226マロン名無しさん:2007/01/04(木) 11:10:23 ID:???
くるみ、都、六号、メディアは可愛い系だろうな。

ベッキーと柏木姉妹、それに姫子はかわいい系なきがする。
227マロン名無しさん:2007/01/04(木) 11:41:59 ID:???
ブスとか云々前に、日本人ぽくない奴とか多いよなww柏木姉妹の髪色とか

逆に桃瀬兄妹は現実的。
日本人の若者や芸能人にあの茶髪や栗色絶対いるよ
228マロン名無しさん:2007/01/04(木) 11:53:36 ID:???
髪色が日本人ぽくないとか言ったら、日本人が皆日本人らしい髪色の作品はあずまんが大王くらいになってしまうな…

とりあえず桃瀬姉妹の髪色については同意
あと犬神姉妹みたいなクォーターは本当に髪色が白くなってしまうのか知りたい気もする
そんな人(少なくとも自分は)テレビでも見たこと無いし…
229マロン名無しさん:2007/01/04(木) 11:57:32 ID:???
犬神つるぎ性転換ktkr
230マロン名無しさん:2007/01/04(木) 12:57:23 ID:???
>228
アルビノなんじゃないの?犬神家は
231マロン名無しさん:2007/01/04(木) 15:11:32 ID:???
銀髪ってのはコーカソイド(白色人種)には確かにいますが、
普通は劣勢遺伝で、モンゴロイド(黄色人種)には出にくいんですよね。
まあベッキーも混血で金髪碧眼という極めて珍しい形質が出てるので
犬神兄妹だけがヘンなわけではないんですが。
232231:2007/01/04(木) 15:13:35 ID:???
書き込んでから間違いに気付きました。

×モンゴロイドには→モンゴロイドとの混血には

すいません。
233マロン名無しさん:2007/01/04(木) 16:00:41 ID:???
>>228
全然気付かなかった…orz
兄妹ね('A`)
つか桃瀬もか

>>231
とりあえず確率は低いが存在自体はおかしくないって事はわかった
d。
234マロン名無しさん:2007/01/05(金) 00:48:11 ID:???
独白の人です。
毎日投稿するつもりだったのですが、ネタが思いつきませんorz

何か書いて欲しいネタとかありませんか?
私で良かったら書かせて頂きます。
235マロン名無しさん:2007/01/05(金) 02:11:30 ID:???
注文の多い客、俺が来ましたよ
独自の人⇒本当に注文していいのなら、円部長崇拝派の俺は円・麻生両部長絡み(できれば麻里亜視点)で書いていただければ満足
本当なら自分で書くべきなんだろうが如何せん時間・能力が足りないモノで…orz
236マロン名無しさん:2007/01/05(金) 02:15:22 ID:???
独白の人は面白いけどオチがないよね。
きっと狙ってるんだろうけど
狙いすぎて何が言いたいのか分からなくなってる気がする
237マロン名無しさん:2007/01/05(金) 02:16:51 ID:???
独白さんは初期のノリより最近のほうが面白いと思う。個人的に。
238マロン名無しさん:2007/01/05(金) 02:24:24 ID:???
独白だからオチがないのは必然
だと思う
239マロン名無しさん:2007/01/05(金) 02:28:17 ID:???
>>238
そうだろうけど、例えばくるみのやつ。あんだけ引っ張って、

>「…受けて立とうじゃない!
> 優麻ちゃんが、私たちの15年の重みに勝てるかしらね?」

だけで終わり。サッパリし過ぎててポカーン、見たいな感じになった。
240マロン名無しさん:2007/01/05(金) 03:07:36 ID:???
>>238
独白というものを修辞学的にどういう風に定義するかはともかくとして、ここではあくまで一人称視点という語法のスタイルだと思う。
だからオチが無くて必然、というのは違うと思う。
もっとも、厳密な意味での内的独白を本当に効果的に利用するのはかなり難しいから無理もないとは思うけど。
明確なプロットとエピローグを求めるなら神の視点の語法を用いた方がやっぱり表現しやすいしね。
241マロン名無しさん:2007/01/05(金) 06:49:16 ID:???
独白の人です。

皆さんありがとうございます。
"GJ"よりこういうコメントが欲しかったので、大変参考になります。

今回のくるみの独白、共に修を思う同士の間の微妙な空気や、
くるみは相思相愛だと思っているけれど修は処女を奪った罪悪感から
くるみとの関係をズルズル続けてしまっているのではないかという
くるみの疑いと不安、そんなものを出そうとして失敗したんですよ。
毎回メモ帳で下書きして見直してからコピペしているのですが、
今回、リアルタイムでケータイで書いて出先から投稿しているので
普段以上にまとまりのない、ひどい文になってしまったのかなと
思っています。
お見苦しい文章、失礼いたしました。
242241:2007/01/05(金) 07:03:16 ID:???
私の文にオチがない、何を言いたいのかわからないとの指摘も、
仰る通りかと思います。
でも、オチをつける必要は必ずしもあるんだろうか、というのが
私の正直な思いです。
もしかしたら、色々なことを詰め込みすぎて訳がわからなく
なっているのかもしれません。

ともあれ、安易に文章を量産せず、一定以上のクオリティを保って
投稿を続けていきたいという思いを新たにいたしました。
リクエストにありました麻生&藤宮両部長ネタにつきましては、
じっくり温めた上で書かせていただきたく思います。

皆様ありがとうございました。
243マロン名無しさん:2007/01/05(金) 23:36:26 ID:???
独白の人です。
厳しいお言葉をいただきながら、度々お目汚しすみません。

一連の桃瀬くるみの独白、桃瀬修の独白に一応の方向性をつけたく、
桃瀬修の独白を追加投稿します。
前スレの修の独白の続きです。

藤宮・麻生両部長ネタは、申し訳ございませんがいましばらく
お待ち下さいませ。
244243:2007/01/05(金) 23:41:31 ID:???
〈桃瀬修の独白:2〉

仕事初めの過ぎた街は、正月の余韻を残しながらも、互いの無関心が
却って心地よいような雑踏に満ちていた。
ここにいれば、何もかも忘れられるような気がした。
そんな願いが、かなうはずもないのに。
現実は決して、変わらないのに。

くるみと一線を越えてしまってから、早くもひと月が過ぎてしまっていた。
あれからというもの、くるみは事ある毎に俺を求めた。
その場所も、最初は自宅に限られていたものが、次に学校、更には
あいつのバイト先にまで、いつの間にかどんどん
エスカレートしていた。

そしてその度に俺は、男の本能の悲しさか、罪悪感を覚えながらも
ついついくるみの誘いに乗ってしまっていた。

「妹」としてのくるみを愛しく思う俺と、「女」としてのくるみに
欲情する俺が、いつも俺の中でせめぎ合っていた。

こんなことになったのは、元はといえば俺が、勢いであいつの…
くるみの処女を奪ってしまったからだ。
あいつの人生を狂わせたのは、他ならぬこの俺なのだ。

だから俺は、くるみの誘いを断ることなんてできなかった。
くるみに"NO"を言うことなんてできなかった。
元のような普通の兄妹に戻りたいなんて、無責任な
245243:2007/01/05(金) 23:43:09 ID:???
元のような普通の兄妹に戻りたいなんて、無責任な願いを口にする
ことなんてできなかった。
それが俺に課せられた、重い十字架なのだ。

俺は、必要以上にいい兄貴・いい彼氏を演じるようになった。
それがあいつの願いなら、俺にはそれしかできることはなかった。
もう、後戻りはできなかった。
決して、戻ることなどできなかった。

雑踏は、天気雨の街に絶え間なく続いていた。
俺もその一員に含みながら、どこまでも、どこまでも続いていた。
246243:2007/01/05(金) 23:48:03 ID:???
以上です。
少しコピペ失敗しましたが、一連の桃瀬兄妹の独白、これで少しは
格好がつきましたでしょうかw

少しでもお目を頂戴できれば幸いです。
247今月のGFを読んで:2007/01/06(土) 02:50:43 ID:???
エロありグロあり人死にありです。
まあ人死には必ずあるんですが。
今月のといいつつ発売されたのは先月でしかも去年という始末。
248今月のGFを読んで:2007/01/06(土) 02:51:48 ID:???
り 理由はいらない死ね
し 死ね
ま まず死ね
ひ 必死に死ね
249今月のGFを読んで:2007/01/06(土) 02:55:04 ID:???
 赤いまんじゅうがあった・
 それはベホイミの死体だ
 ハンマーヘッド星人に勇猛果敢に立ち向かい
 鋭利な鎌で・
 頭部のドリルで・
 ベホイミはミンチにされてしまったのだ
 そうだベホイミンチだ
 丸められたそれは赤いまんじゅうだ
 カラスが来てつついていった
 まんじゅうは少し小さくなった
250今月のGFを読んで:2007/01/06(土) 02:56:20 ID:???
「ゴミは捨てなきゃいけません」
 メディアは一礼してからそう言うと、ガーターベルトに挟んだナイフを抜き放ち鈴音の頸動脈をすぱりと切り裂いた。
 おおらかでおっとりとした鈴音は自分に何が起こったのかすぐには気付かず、本人より先に乙女や綿貫が噴き出す血に絶叫した。
「どこに行くんですかー?」
 逃げるヤンキーの左後背部にナイフが突き刺さり、生地が黒いので分かりづらいが学ランの背中が血に染まる。
「るるるんるんるん、おーかたづけーおーかたづけー」
 鼻唄まじりに響に飛びつき、首を締め上げながら耳元で熱く優しく囁く。
「ピ・ザ・デ・ブちゃん。まーんまる」
 神原は逃げる事しか出来ない自分が腹立たしかった。
 自分が、または船のクルー達が持つちからを全て使えばこんな事態は一瞬で打開できる。
 しかし介入する事は許されていない。くちびるをかみながら彼は逃げた。
(待っていてください……今誰か呼んできますから)

 しかし、神原がベホイミや犬神を呼んできた時にはすでに事態は収拾していた。
251今月のGFを読んで:2007/01/06(土) 02:58:02 ID:???
 綿貫を弄ぶメディアの首筋に、鈴音の命を奪ったナイフが突き立てられた。
「うぴゃっ?」
 メディアは全身から力が抜けていくのを感じながら信じられないような表情で叫んだ。
 戦場をくぐり抜け続け、銃弾まみれになっても生き続けた自分がこんなナイフでこれ程のダメージを受けるとは信じられない。
「おまえ……ポニーテールにしなかったんじゃねえだろ。出来ねえんだよな?」
「な……にを……?」
「おまえさ……首のところに古傷があんだろ? ポニーテールにすると髪が引っ張られっから出来なかった。一条のメガネと同じだ」
 メディアは答えなかった。確かにポニーテールにすると気持ちが悪くなったが、そんな理由だったとは自分でも知らなかったのだ。
 その代わりにメディアは言った。
「ゴミに殺されるなんて……いい気持ちはしないものですね」
「なんだと?」
「あなた……一番のゴミです。いい家に生まれていい躾を受けて……なんでそんなアバズレになっちゃったんですかぁ? 生きてる生ゴミさん。萌えないゴミさん」
 そしてメディアは息絶えた。
252今月のGFを読んで:2007/01/06(土) 02:59:10 ID:???
 B組の教室は騒然となった。
「綿貫さん、大丈夫?」
「私は……なんとか……生きてる……かな? 鈴音は……?」
 姫子は無言で首を横に振る。
「みさおー脳内かいぎー」
「はうはうはう」
 脳内会議中で微動だにしない南条とそれにすがりついてはうはうするベッキーは親子のように見えた。

 入ってきたベホイミが乙女に最敬礼してからメディアの服を検めた。
 ナイフやハンドガン、スタングレネードなど様々な武器を隠し持っていたようだった。
 メイドカフェのスタンプカードとチケットもあった。
 そしてポケットから取り出されたハンカチを見て乙女ははっとした。
 彼女の不肖の弟がこれだけは自分で洗うからと不器用な手付きで洗っていた洗濯物があった。
 またどうせ下着なんだろうと思っていたが、こっそり覗き見たそれはハンカチだった。
 ベホイミがメディアの死体のポケットから取り出したハンカチはそれと同じように見えた。
253今月の萌王を読んで:2007/01/06(土) 03:00:27 ID:???
「ねえねえくるみちゃん」
「んー?」
「知ってる? 上原さんが痴情のもつれから犬神くんをおでこで撲殺して、雅ちゃんも絞殺しちゃったんだって!」
「って言うか犬神くん、上原さんは遊びで本命は雅ちゃんだったみたい。上原さんがこっそり会いに行ったらベッドの上で……い、言わせないでよ!」
「実は血が繋がっていなかったみたいなの。戸籍上はわからないようになってたけど」
「うちの者に調べさせたのだけれど……犬神くんのお祖父様……ほら……その……でしょう?
 お父様がお父上の罪滅ぼしにというのかしら、雅ちゃんを引き取られたそうよ……」
「上原さんのお腹の中には」
「帰りに食べたたいやきが入ってたんですよね。私も一緒に食べたんです。甘いのに後味すっきりしてて生地もふわふわもちもちで……美味しかったなー」
「たいやきも入ってたかもしれないけど、犬神くんの子供がいたの!
 なんでたいやきが出てくるのよ……っていうか今度諜報部で一緒に食べに行こうって行ったのにうらぎりものー!」
「だからカッとなって殺してしまったんだろうな」
「ちょっと橘さん今の話の流れだと私が宮田さんを殺しちゃったみたいじゃない、訂正しなさい訂正」
「殺っちまった後で死体をバラバラにしたみてえでものすごい事になってるそうだぞ」
「都ちゃんはカニバリズムカナ! カニバリズムとカニって似てるよね!」
「凄惨オブジイヤーです……」
「へー」
「『へー』出ましたー!! このネタ終了でーす!!」
254今月のGFを読んで:2007/01/06(土) 03:15:48 ID:???
以上です。
書いていたら楽しくて気付けばこんな時間です。
自分で書いておいてなんですがたいやき食べたくなってきました。
自分が食べたいものをキャラクターに食べさせる傾向があるのでしょうね。
なお私はこしあん派です。サラリとした均質な食感が好きなのですが、潰して漉す手間がかかるので自分で作る事はあまりありません。
255マロン名無しさん:2007/01/06(土) 03:48:26 ID:???
なんだかよくわからんがGJ
256マロン名無しさん:2007/01/06(土) 09:26:02 ID:???
〉今月のGFさん
まとまりはないけど勢いがあって面白かったです。
ごった煮的なのもいいかな、と思いました。
257マロン名無しさん:2007/01/06(土) 11:54:44 ID:???
今月氏はこのカオスっぷりが病み付きになるな…
毎回凄まじいネタ力だ
258ぱにぽに de ローマ帝国崩壊 :2007/01/06(土) 21:50:58 ID:???
教授とともにローマを旅行中、落雷のエネルギーによって「時間の幹を滑り落ちた」上原都。たどり着いた先はローマ帝国末期のローマ。
世界中を旅して身に着けた語学能力と、ガリ勉で身につけた知識を駆使して、まず考えるのは生き延びること。
「こうなると判っていれば百科事典を持ってきたのに・・・」と愚痴をいいつつ、がんばる都はまず蒸留酒つくりに手をつけてちょいとばかり財産を作る。
そしてこの時代に思いを馳せれば、何のことは無い中世の闇が目前に迫る危うい時代。
蛮族襲来・帝国崩壊に引き続く中世の闇が落ちてこないようにと、ミヤコヌムス君(ミヤコのラテン語読み)はまず活版印刷を「発明」。
ばんばん本を刷って知識を広く普及させれば、多少の混乱があっても知識は残り、闇に対抗できるに違いないという、いわば知識の人海戦術を展開。
そしてそんな中、成り行きでダメなローマ皇帝を助け、帝国重要人物にのし上がり……
259マロン名無しさん:2007/01/06(土) 22:40:10 ID:???
「はじめましてアウグス柚子スです」
260マロン名無しさん:2007/01/06(土) 23:05:18 ID:???
後のスティリコである
261マロン名無しさん:2007/01/07(日) 16:32:09 ID:???
新年からみんな飛ばしてるなぁ…
262Pani Poni HAZARD:2007/01/07(日) 23:28:10 ID:???
久々に次行きます
忘れ去られているかもしれませんが
なんとか思い出してください

ここはロックフォート島のお土産屋の倉庫・・だと思われる
倉庫にしてはやけに広い気がするが今はそんなことを気にしている余裕は無かった。
おそるおそる倉庫の中を見回してみる、暗い、もう完全に日は落ちてしまっているので
倉庫の中はかなり暗かった。それと同時に再び恐怖の感情が蘇ってくる、人間は暗闇の中にいることを嫌う
それは本能的なものだとか生理的なものだとかいうのを本か何かで見たことがあるような気がした。もちろん定かではないが。
しかし今の暗闇は一層の恐怖を感じさせた。外では化け物どもの呻き声が聞こえる、人を食う化け物、普通の生活をしているものには
にわかに信じがたいものだ。テレビの中や漫画の中、いわゆる空想の世界の産物が目の前に実在し、それも人を食らっている。
誰が信じるというのか、しかし確かにあれは現実だった。この目で確かに見たのだ、化け物を。
263Pani Poni HAZARD:2007/01/07(日) 23:29:26 ID:???
そんなことを考えているうちにだんだんと暗闇に目が慣れてきた。うっすらと周りに積まれている商品だと思われるものが視界に入り始める。
(懐中電灯の一つくらいどこかにあるでしょ・・)
そのまま歩き出し倉庫の中を見て回ってみる、すると事務用の机がぽつんとあるのを見つけた。
(置くとしたらこの辺に・・)
ガサゴソと机を引っ掻き回してみる、納品書の類が出てくるばかりで懐中電灯など見つからない。
(ああ、もう・・)
だんだん腹が立ってきたので机を調べる手も荒々しくなってくる。
もっと念入りに探してみる、しかし、出てくるのは文房具ばかり。
「ムキー!なんでここは懐中電灯の一つも無いのよ!!店長を呼べ店長を!!」
思わず大声を張り上げてしまった。
264Pani Poni HAZARD:2007/01/07(日) 23:30:42 ID:???
パァン
それと同時に外で乾いた音がした。間違いない、銃声だ、それもかなり近い。
思わずさっきまで激怒していた事も忘れ身構える、銃声がするということは誰か生存者が
いるのか?あの化け物どもに銃を使うことが出来るとは思えない、ということは人間が撃ったという事だ。
島がこんな状況になっているのだから南条グループが対策を講じていても何ら不思議ではない
それならその発砲者とコンタクトを取った方が良いかもしれない。なにしろこっちは一般市民で丸腰で一人なのだ。
不安要素はいくらでもある。
バスッバスッ
また銃声が鳴った。今度は二回立て続けだ。その音に思わず顔をしかめる、それと同時に何かが倒れる音がした。
そしてさっきまで耳についていた化け物の呻き声がぱったりと無くなった。
(・・?)
そしてコツコツと足音が聞こえ始めた。その足音は少し早歩きで確実に倉庫に向かっていた。
正確に言えば、暗闇の倉庫の中で状況をつかめずに自慢の凸も輝きを失っている上原都に向かって
迷うことなく近づいていた。

とりあえず軽く行きました。
ちょっとネタにつまってたもんで
265マロン名無しさん:2007/01/07(日) 23:51:08 ID:???
GJ!
番長キター!!
続き気になるね!
266マロン名無しさん:2007/01/08(月) 02:14:38 ID:???
>>261
正月は冬コミ直後の休みだから一年でも最も妄想が膨らむ時期だと思う
267マロン名無しさん:2007/01/08(月) 10:40:53 ID:???
>266
やっぱいろんなの読んで、暇もあるから製作意欲が刺激されるんだろうか?
周りの影響って、やっぱあるんだな。
268マロン名無しさん:2007/01/08(月) 23:57:25 ID:???
独白の人です。
風邪で寝込んでたのをいいことに、リクエストのあった
麻生・藤宮部長ネタを考えておりました。
大変お恥ずかしい文なのですが、投稿させていただきます。
269268:2007/01/08(月) 23:59:09 ID:???
<麻生麻里亜の独白>

桃月の街に、雨が降っていた。
冷たい、冬の雨が降っていた。
桃月駅西口前のスターバックスには心地よいブルースハープの
音色が響いていたが、私の気持ちも窓の外と同じく、
ちっとも晴れなかった。

制服の上にEASTBOYのカーデを着込んだ円ちゃんは、
湯気をたてるラテにも手をつけず、相変わらず不機嫌そうな顔で
窓の外を眺めていた。
円ちゃんのこんな表情は以前から見慣れてはいたが、
今回のそれは以前のそれとははっきり意味が違っていた。

その原因は、私にはわかっていた。
原因は、来栖ちゃんと芹沢さんの問題に違いなかった。
ロボ子の正体を知ってから学校にほとんど出てこなくなった
来栖ちゃんと、いつも淋しそうな顔をしている芹沢さんの
ことを考えると、今も胸が痛む。
そして、いつかはこんな問題になりかねないことを
わかっていながら何も手を打ってこなかった私達自身の
不甲斐なさも、私の心をチクチクと刺し続けた。
270268:2007/01/08(月) 23:59:45 ID:???
あれから、全ての歯車が狂い始めた。
いつも面白いようにコロコロ表情を変える円ちゃんが、
ずっとこんな不機嫌な顔をしているなんて、私にはとても
耐えられなかった。
わがままで怒りっぽくて、高瀬君や私を困らせて、でも
次の瞬間には子供みたいに笑っているいつもの円ちゃんは、
いつの間にかいなくなってしまっていた。
今私の向かいにいるのは、いつも不機嫌な顔をして窓の外を
眺めてばかりいる、以前の円ちゃんとは外見以外全くの別人と
言ってもいいような女の子だった。

私の手首にも、FOSSILのウォッチの太いベルトで隠してはいたが、
いつの間にか幾筋もの傷が目に付くようになっていた。
円ちゃんのこと、ハルカちゃんのこと、芹沢さんのこと、
来栖ちゃんのこと…考えれば考える程、私は自分を傷つけたい
衝動にかられた。
何度もやめようとは思ったけれど、どうしようもなかった。
ここ数週間というもの、自分の腕から流れる血を見て初めて、
私は生きている実感を味わうことができたのだ。

目の前のモカは、すっかり冷めきっていた。
窓の外の雨は、止みそうになかった。
雨は灰色の空から、とめどなく降り続けていた。
271268:2007/01/09(火) 00:01:50 ID:???
以上です。
やっぱり体調が悪いと、気持ちも落ち込んできていい感じに
鬱な文章が書けますねw
明日からまた仕事だと思うと、更に鬱な気持ちになってきますw
ワンパターンな文章ですが、ご高覧いただければ幸いです。
272マロン名無しさん:2007/01/09(火) 02:10:40 ID:???
GJッ!
うん…俺このスレ来て良かったって改めて思った…
273マロン名無しさん:2007/01/09(火) 21:55:41 ID:???
関係ないけどまとめサイト最近更新しないナー
管理人さん忙しいんだろうな
274マロン名無しさん:2007/01/09(火) 22:04:52 ID:???
そうだな
日記も全然更新してないし
未収録の作品も大分増えてきたよな
275マロン名無しさん:2007/01/09(火) 22:08:33 ID:???
何かあったんじゃないか? 事故ったとか・・・
某質問スレで、管理人が入院してサイトが更新されなくなって〜・・・ということがあってな・・・


>>271
GJ!
仕事もがんばってくれ。
276マロン名無しさん:2007/01/09(火) 22:12:30 ID:???
事故か。確かに北海道は事故多そうだしな。
277マロン名無しさん:2007/01/09(火) 22:50:36 ID:???
俺道民だけど、北海道って小さい事故はあっても意外と
でかい事故は少ないよ。
管理人さんも忙しいか飽きてきたのかもね。
ま、気長に管理人さんの光臨を待とうや。
278マロン名無しさん:2007/01/10(水) 02:33:14 ID:???
おや…ホントだ、更新止まってるや
そういえば日記更新もいつの日からか止まってたな
279マロン名無しさん:2007/01/10(水) 20:00:58 ID:???
更新復活きたよ。
管理人様乙っス
280マロン名無しさん:2007/01/10(水) 22:28:53 ID:???
保守
281マロン名無しさん:2007/01/10(水) 23:49:45 ID:???
管理人さま、ありがとうございます。
私、独白の人なんですが、南条と犬神のアレ、カットしなくて大丈夫なんでしょうか?
ちょっと心配です。
すいません、勝手に書いておいて無責任で。
282マロン名無しさん:2007/01/11(木) 00:30:47 ID:???
管理人さん、乙です。
芹沢のスパッツでよければ、受け取ってくれ。
283まとめサイト”管理”人:2007/01/11(木) 01:16:17 ID:???
>>281
生殖器とか18禁の描写はやめるようにサーバHPの規約に書いてありますが、
エロ画像を貼るとか、ポルノ小説をアップロードするとかの行き過ぎたものでなければ、
うんこちんこまんことか露骨に書いてない限りは大丈夫だろうと判断しました
ダメだとしても即削除ではなしに警告くらいは来ると思いますので心配しないで下さい
たぶん、サーバ会社の方もSSの隅々まで検閲するような真似はしないと思いますし
それでも濃厚なセックス描写があるSSはエロパロのほうへなるべく投下してください
284マロン名無しさん:2007/01/11(木) 01:36:07 ID:???
>>281
もっと自信を持った方がいいとおも
285281:2007/01/11(木) 10:43:02 ID:???
>283
犬神と南条の絆を描く上で必要と判断したシーンではありますが、
今後あまり行き過ぎないように気をつけます。
ありがとうございます。

>284
自信ないとかそういうんじゃなくて、過激な性描写が色々と
引っかからないか心配だっただけですよw
いや、そんな自信あるわけでもないですがw
286経済界の女帝、南条操氏死去:2007/01/11(木) 20:07:21 ID:???
南条グループ相談役で、戦後の日本経済の主導的存在だった南条操(なんじょう・みさお=大日本経済愛好会特別顧問)氏が11日午前3時30分、心不全のため死去。98歳だった。
密葬は近親者のみで行う。南条グループ主催のお別れの会は28日正午から東京都港区初音島3の1、サウスラインホテル東京本館2階大ホールにて。
喪主は長男で南条グループ会長の圭(けい)氏。

4日に南条グループの年始会に出席したが、5日夜から体調不良を訴え自宅で療養していた。

南条氏は1908年東京市日本橋区(現・東京都中央区)生まれ。桃月学園、一流大学文学部社会学科を卒業後スフィア王国に留学。
1935年帰国して南条合資会社に入社し1940年社長に就任。1955年より会長。財閥解体後の南条グループを再編し世界有数の企業グループに発展させた。
1973年から1977年まで大日本経済愛好会会長を務め任期終了後は特別顧問。大泉政権では経済財政諮問会議議員を務めた。
一方で動物愛好家としても知られ、動物を通じて各国の著名人と親交があり、金髪縦ロールに170センチメートルの長身の日本人離れした風貌とツンデレな人柄で親しまれた。
1940年に当時としては世界最大の南条動物園を設立し、戦時中は東京都の動物殺処分命令に抗議して多くの動物の命を救った。
1983年に75歳で第一線を退いてからは野生動物の研究保護活動に尽力し、旅行鳩など多数の動物の飼育環境繁殖に成功するなどした。
馬主としてはキャベツブツケンゾとウマヅラセイトカイが親子で凱旋門賞を制覇した。
近年は体調を崩す事も多かったがペットとの散歩は倒れた日まで欠かさなかった。

(2007年1月11日20時06分 帝都新聞)
287マロン名無しさん:2007/01/11(木) 20:35:24 ID:???
>286
禿ワロタ
288マロン名無しさん:2007/01/11(木) 21:54:39 ID:???
独白の人です。
先日の麻生麻里亜の独白の裏バージョンという感じで、麻生真尋の独白を
書いてみましたので投稿します。
289288:2007/01/11(木) 21:55:13 ID:???
<麻生真尋の独白>

夕方からの雨は、すっかり暗くなった今も降り続いていた。
街灯に照らされた緑のトゥインゴのボンネットは、しっとり濡れたせいか、
エメラルドのような輝きを見せていた。
吸い込まれそうなほど、艶やかで綺麗だった。

待ち合わせの時間になっても、麻里亜ちゃんが姿を見せる気配は
一向になかった。
ケータイも、何度かけても繋がらなかった。
でも場所はここで、きっと合っているハズだった。

JR桃月駅西口、ピーチメルバ。
その、東京スープストックの横の出口のちょうど向かい側。
六時半にここで、そういう約束だ。
何のことはない、ここに一般車の乗降場があるのが、その理由だった。

つけっ放しのFMは、私の焦燥感をよそにDOMESTIC TIGER NO.1の
YOU WERE A STRONG FATHERをひたすらがなりたてていた。
私はもう一度、左腕のbeatを見た。

「「「18:42」」」

グリーンのバックの上に、ブルーの文字が5回点滅して消えた。
290288:2007/01/11(木) 21:55:50 ID:???
麻里亜ちゃんの姿は、まだ見えない。
以前は、約束に遅れることなんか絶対なかったのに。

このところ、麻里亜ちゃんはなんだからしくもない姿ばかりが
目についていた。
以前の麻里亜ちゃんは、いつも笑顔で、自然体ながら周りに
よく気を配って、姉の私からみてもよくできた妹だった。

それが最近は、光のない目をして、眉間に皺を寄せる姿ばかりを
周りに見せていた。
人の話にも何だか上の空で、何か考え込んでばかりいるような、
そんな最近の麻里亜ちゃんの姿は、姉の私にも見慣れないものだった。

でも、麻里亜ちゃんは私には何も言ってくれなかった。
何かあったのか何度聞いても、麻里亜ちゃんはただ静かに、
悲しく笑うだけだった。
私に心配をかけまいと、わざと笑って見せているのは明白だった。

入れ替わっても気付かれないくらいよく似た私達なのに、
私達はやっぱり別々の人間なのだ。
当たり前のことだけれど、そう思うとちょっぴり寂しかった。
当たり前のことなのに、当然のことなのに、何故か寂しかった。

麻里亜ちゃんは、まだ現れそうになかった。
でも私には、待つことしかできなかった。
ただトゥインゴのドライバーズシートで、FMを聞きながら
待つことしかできなかった。
291288:2007/01/11(木) 21:57:19 ID:???
以上です。

あと皆様、”GJ"の言葉、ありがとうございます。
お見苦しい駄文ではありますが、皆様に読んでいただけることが一番の幸せです。
292マロン名無しさん:2007/01/12(金) 23:03:24 ID:???
独白氏GJ!
つか閉鎖って事はこのスレともお別れディスカ
293マロン名無しさん:2007/01/12(金) 23:06:49 ID:???
本当に閉鎖されるのかな?
294マロン名無しさん:2007/01/12(金) 23:15:30 ID:???
2chトップを見る限り可能性は高いと言わざるを得ない希ガス
295マロン名無しさん:2007/01/12(金) 23:22:18 ID:???
今回ばかりはダメかもね
と、鯖負荷閉鎖危機の頃と同じことを言ってみたりする
296マロン名無しさん:2007/01/12(金) 23:28:47 ID:???
お前ら面白いな
297マロン名無しさん:2007/01/13(土) 00:19:40 ID:???
閉鎖かよorz
これから何を楽しみに生きてけばいいのさ?
298マロン名無しさん:2007/01/13(土) 00:19:46 ID:???
でも消えたらホントこのスレ問わず住人はどうするんだろうね
299マロン名無しさん:2007/01/13(土) 00:21:46 ID:???
新しくZちゃんねるって作ればいいんでね。
300マロン名無しさん:2007/01/13(土) 00:21:46 ID:???
でも消えたら、このスレ問わず住人はどうするんだろうね

>>297
別鯖に立て(ry
301マロン名無しさん:2007/01/13(土) 01:01:32 ID:???
まとめサイトに直接投稿するとか自分のHPにうpするとか?
302マロン名無しさん:2007/01/13(土) 01:02:55 ID:???
まだあわてるような時間帯じゃない?

他のスレだと話題にすらなってないんだけど・・今回も大丈夫そうなの?2ch終了問題。
303マロン名無しさん:2007/01/13(土) 01:10:33 ID:???
これをネタに何か書けないものだろうかと考えたが……
2chにハマってた姫子が自殺する話しか思いつかねえよ。
304マロン名無しさん:2007/01/13(土) 01:12:09 ID:???
おk
305マロン名無しさん:2007/01/13(土) 01:16:48 ID:???
>>303
奇遇だな俺も同じ事考えてた
306マロン名無しさん:2007/01/13(土) 01:32:40 ID:???
綿貫「2chは……閉鎖してしまうって事なんだよ!」
『な、なんだってー!?』

俺はこれくらいしか思い浮かばない
307マロン名無しさん:2007/01/13(土) 01:36:10 ID:???
あー、ちょうど今、姫子以外で2ちゃんねるやってそうなキャラいるかなーって考えてたんだが、
綿貫はやってそうだなww
308マロン名無しさん:2007/01/13(土) 01:40:21 ID:???
もはや確定の姫子
イメージ通りの玲
意外性を点いた6号





万能キャラのくるみ
309マロン名無しさん:2007/01/13(土) 01:48:02 ID:???
君達
磯 辺 を 忘 れ て な い か ?
310マロン名無しさん:2007/01/13(土) 01:52:00 ID:???
>>307
そういえばアニメで綿貫はMac用の2ちゃん専ブラ使ってたな
311'Round About Midnight:2007/01/13(土) 18:58:43 ID:???
 ファストフード店の窓際席。高瀬はストローごしにコークを啜ると、ため息のような、冷えた吐息をこぼした。
紙コップの中の氷が砕ける音がして、その様子をテーブルの向こうからじっと見つめる二つの瞳を意識した。
まん丸な、透きとおったガラス球のようなその瞳は、瞼がぱちぱちと瞬きする度に、くりくりとせわしなく動き回り、高瀬がその注視に気がついたときには、既にその視線はあてもなく他のところをさまよっていた。
落ち着きのない瞳の動きは、しかしやがて窓の外に注がれるようになり、もう再び彼のほうを見ようとはしなかった。
 外に一体何があるのだろう。高瀬はその瞳の見つめる先に視線を移した。
外はもう真っ暗闇で、店の中の強烈な灯が窓に乱反射して、何も見えなかった。
暗闇は見えていたが、暗闇なんて世の中いたるところにある。
そんな、さして珍しくもないものをじっと見つめる瞳に誘われるまま、首を傾げて窓の外をぼんやりと見ていた、あるいは見ているふりをしていた彼だったが、やがて件の瞳がまたしても彼をじっと睨みつけていることに気がついた。
それはじかに見つめるものではなく、鏡のようになった窓に映った影としてではあったのだが。
 高瀬は再び姿勢を直して、その瞳の持ち主の方に向き直った。だが、彼の予想に反して、その目の前にあったのは、窓の外をじっと見つめたまま微動だにしない藤宮円の横顔だけだった。
高瀬は頭を擡げ、彼女が窓の鏡を介して彼の顔を睨めつけていた理由を考えてみた。
自分に何か落ち度があったか、何か彼女の機嫌を損ねるようなことをしたか、そんなことをじっと考えながら、俯いていた。
 あの瞳は何が言いたかったのだろうか、あるいは何が言いたくなかったのだろうか。闇の中から自分を見た、あの大きな瞳は。
めくるめく思いの中で、彼はやはりあの瞳は何も言わなかったのではないか、と考え始めていた。これはきっと、彼女特有の気まぐれか、それともそれに振り回されている自分の心の中の怯えが幻惑したための妄想ではないのか、とも思っていた。
だが彼女の瞳は確かに彼を見ていた。そして、そこには何かしらの言葉があった。何かしらの無言があった。無益な沈黙ではなく、雄弁な無言が。
やはり彼女は、何かを彼に伝えようとしていた。いつになく全くの無表情の彼女が――
「部長。それ、食べないんですか」
312'Round About Midnight:2007/01/13(土) 19:00:56 ID:???
 高瀬は円の目の前に置かれたハンバーガーの包みを指し示した。円は驚いたように振り向いたが、その無表情のまま黙っていた。
高瀬は雰囲気の流れを弁えなかった自分の発言を既に後悔し始めていたが、それでもこのまま言い放しに出来るはずもなく、
かといってうまい具合に冷め切った二人の間の空気を取り繕うことの出来る言葉の持ち合わせもなかったものだから、苦々しい顔つきをして口の中で二言三言呟くような臆病さで続けた。
「ほら、冷めちゃいますし……お腹、空いてたんでしょう」
「いい。いらない」
 彼女はぴしゃりと答え、また何も言わなくなった。
こいつは厄介なことになった。高瀬は頭を掻き毟ってこの場から走り逃げ出そうという衝動に駆られるほどだった。
とにかく、全てメチャクチャだった。部長はいつもの部長じゃないし、状況はいつもの状況じゃない。自分自身だって、いつも通り、とは行かないあんばいで。
「冷えてきましたね」
 高瀬はなおも果敢に言葉を続けた。藤宮円は冷たい一瞥を彼に食らわせると、その口から小さく応答した。
「バカ。暖房効いているじゃない」
「いや、俺が言いたいのはそういうことじゃなくて」
高瀬は無理矢理にでも彼女の関心をこちらにひきつけておこうと躍起になっていた。
「外を見てくださいよ。こんなに暗くなっちゃったし、風も強くなってきましたよ。寒そうじゃないですか」
「そうかもね」
 そこで会話は再び途切れた。彼としては彼女に彼の言わんとしている事を汲んでほしかったわけだが、この娘にそれを期待するのは無駄だとも考え及んでいた。
まったく、大したお嬢様だ。勘の鈍さとこの傲慢さだけは生来のままどうにもならないものらしい。
「そろそろ……」
「あ、オリオン座」
 さっきからこの繰り返しである。「帰る」だとか「家」だとか、高瀬がそういうことを口にしようとするたびに、彼女はあれやこれやと会話を切り取り、どうでもいいことを言ってはぐらかそうとする始末なのである。
高瀬のほうは円とは違って相手が何を言わんとしているかを察することの出来たのだが、それを認めてあげようという気は起こらなかった。
そもそも、この窓から見える方角にはオリオン座はない。彼女のお粗末な口からのでまかせにはそろそろいやけがさしていたくらいだ。
313'Round About Midnight:2007/01/13(土) 19:03:25 ID:???
「ねぇ、部長。考えたんですけど、やっぱり……」
「やっぱり、何よ」
 高瀬は一瞬躊躇った。円のあの瞳からの視線が今度は間違いなく彼の両目を射抜いていたからだった。
こんな風にして真正面から見つめられると、どうにも腰が折れてしまう。相手が無邪気な分だけあって、その見つめる力の強さは半端ではない。
これは――そうだ、あれだ――無垢な子供と狂的な偽善者とのみが持ち得る瞳だ。彼女が前者であることは言うまでもない。
「ねぇ、やっぱり家に帰った方がいいですよ」
 高瀬は下手な仄めかしで相手にやんわりと意思を伝えるやり方を諦め、単刀直入の路線に切り替えた。
それでもやはり強い口調になれなかったのは、彼女が一つ上の部長であったこともあったが、それ以上に、彼女の普段の性格と、自分との立場関係のことを鑑みた結果であった。
「イヤ。帰りたくない」
 円は頑として彼の“真っ当な”提案をつっぱねた。勿論彼は彼女がこう言うだろうことを予期していたのだが、それでも何とか説得してみなければならない。子供をなだめすかすような口調で彼は続けた。
「でも先輩、お家の人が心配しますよ。それに夜になったら街は危ないし」
「あんたが私を守ってくれればいいじゃないの」
 まるでそれが天地開闢以来の予定運命であるかのような当然といった様子で少しも合理性の持たない主張をする円に、それでも高瀬はいつも通りの低い物腰で説得を続ける。
「いや、そういう問題ではなくてですね。俺としてもこのままじゃ先輩の家族の方に申し訳がたたないんで」
「それはあんたの問題でしょ。私には関係ないもん」
「関係ありますよ。とにかく、早く帰りましょう、明日も学校あるし」
「絶対帰らない。学校にも行かない」
「そんなムチャクチャな……」
 高瀬は肩を落として項垂れてしまった。円のほうは肩を小さく震わせるような仕草をして(本人が言うとおり、決して寒くはないはずだったのだが)凍えているかのような侘びしげな顔をしていた。
ふと柱にかかる時計を見ると、既に午前零時にさしかかろうとしていた。
高瀬はいつもの癖で舌打ちしかけたが、相手に聞こえるのではないかという惧れを覚えてその気持ちごとかみ殺した。
314'Round About Midnight:2007/01/13(土) 19:05:49 ID:???
 彼にとって、この小さな巨人のお嬢様は、大仰なガラス細工のような存在だった。
小ぢんまりとしているくせにやたらにかさ張って、おまけにとてもデリケートときている。何とも扱いにくい品物だ。
その上無垢で掛け替えのない高価なものだから、なおいっそうその扱いには余計な気疲れを覚える。
 かといって彼にはそれを打ち捨てて傷をつけたり砕いたりしてしまう度胸がなかった。
たとえそれが自分の所有物ではなくとも、そうした、ある意味で完成されたものが無為に欠損していくのを、黙って見過ごすに忍びない気がしていた。
それ故に彼は彼女に無駄に気を使うのであり、それが彼女の傲慢をよりいっそう助長させる要因ともなったのだった。
 つまるところ彼には自信がなかった。敢えて気を使っては振り回されているばかりで、彼には彼女の言動を律するだけの余地がなかった。
そんな自分が、夜遅く、いつまでも彼女を引きとめておく(事実はどうにしろ世間からはどう解釈されるかが問題だった)にはいささかの気後れがあった。
身分不相応の大枚を持っているような心地だった。そしてそれを管理しきれるほどの自信がなかった。しかも寄りによって相手が藤宮円であった場合などは――
「ねぇ、バカキザ」
 考え巡らしている途中で、唐突に円が呼びかけた。
「俺は高瀬です。名前で呼んでください」
「もう行くわよ。少し夜風に当たりたい」
 そう言うと、円は席を立ってすたすたと歩き始めていた。呆気にとられてしばらくどう対応すべきか躊躇していた高瀬であったが、すぐに気がついて、テーブルの上のものを片付け、彼女の小さな背中を追った。
彼女の手付かずに食べ残したハンバーガーの包みをそっと鞄の中にしまいこんで。

 ファストフード店を出ると、急に夜の凍えるような寒さが身を貫いた。見ると白い息を吐きながら、彼女もがたがたと震えている。何が夜風に当たりたい、だ。
「寒いですね」
「わかっているわよ」
「帰りませんか」
「イヤだって」
 円は少し怒ったような顔をして歩き始めた。肩をいからせ、力強い足踏みで歩いていく。
が、十歩も進まぬうちに疲れて猫背になってしまう。そうして、寂しそうに身体を震わせる。
 高瀬はその場に佇んだままその様子をじっと見つめていた。
315'Round About Midnight:2007/01/13(土) 19:08:00 ID:???
 円は彼女の身体にはいささか大きすぎるコートを羽織り、まるで大きな分銅型ベルのようなそのコートの下からは、驚くほどに頼りない、か細い二本の足が飛び出していた。
その足も夜の寒気に苛まれ、今にもぽっきりと折れてしまいそうなほど不穏に震えている。
 高瀬は彼女の背後からそっと歩み寄り、相手を威かさないように優しい声で問い掛けた。
「それで、これからどうするつもりなんですか」
息が白く凍っていた。円はおもむろに振り返ると、額に苛立たしげな皺を寄せ、ぶっきらぼうな口調で答えた。
「いいからどこか遠くへ行きたいの」
「どこか遠くって?」
高瀬は呆れ顔で聞き返した。
街のネオンの灯を顔に受け、肌の上で毒々しい光が踊っている。足元の暗い通りを過ぎりながら、家路を急ぐ人々の影が時折二人の肩に降りかかる。
「わかんない。あんた、考えなさいよ」
「考えるったって……夜中に出歩くことなんて間々あるわけじゃないし。どこにも行くあてなんてありませんよ」
「ハゲ!役立たず」
「そんなこと言われても」
 詮方なくなった高瀬は戸惑いを隠しきれない表情を顕わに浮かべた。彼女が何をしたいのかが全く分からなかった。
学校の帰り際に無理矢理連れ去られ、今に至るこの状況は、彼としても全く不可解なものであった。彼女がどういう訳か(大した訳ではあるまい)家に帰りたくないというのはわかった。
ただ、何故そのわがままに自分が巻き込まれなければならなかったのか、それが如何せん解せなかった。
勿論普段から彼女の下世話をしてやっていることはあったが、それが慣習になって彼女のエスケイプに付き合わされるようになったのだとしたら、それこそ恩に仇なすいい迷惑である。
「少しは感謝してほしいですね」
 高瀬はすっかりつき慣れてしまったため息のかわりに、自分自身の思惟に答えるように独り言を呟いた。
もちろん、その言葉の内容には意味などない。別に感謝を望んでいるわけではない。それよりも、もっと建設的な、前向きな形で部長には自分の意思に協力してほしかった。
そうであるにもかかわらず、ただ、彼が望むことをひとまとめにすれば、結局そういう一言が口をついて出てしまうのであった。
「何か言った?」
「いいえ、何も」
316'Round About Midnight:2007/01/13(土) 19:11:04 ID:???
 円の非難がましい目つきに翻弄され、高瀬は頭を振って言葉を濁した。
彼女には何を言っても無駄である。協力だって、感謝だって、こちらから求める分には一向与えられたためしがない。つまるところ彼女はそういう娘なのだ。
その心も行動も、いつも自分勝手で、ムラだらけ。人の話を聞こうだとか、時々でも言うことに従おうだとか、そういう健気さがまるっきりない。
高瀬はふとその頭の中に割れた磁石の破片のイメージを思い浮かべた。何故そんなものがこの期に及んで浮かんだのか、彼にもよくわからなかった。
「とりあえず歩くわよ、ついてきなさい」
 円は歩き始めた、その細い足で、精一杯の歩幅を確保しながら。高瀬はその後ろから彼女の歩調に合わせて歩き出した。
彼女の小さな肩が右に左に揺れながら、アスファルトの黒い表面を滑っていく。意外と速いそのペースに、高瀬の方はうっかりしていると置いていかれるくらいであった。

 日中の桃月の駅前の街並みというのは概して人数が多く、肩と肩との距離が短いものであるが、この時間にもなると人影はまばらである。
もう間もなくJRラインは終電だし、辺りの店も暗いのでその寂寥の様はいっそうのことである。普段見慣れた駅の閑散たる様や、車の通らなくなった道路の静けさに、一種不可思議な異世界じみたものを覚える。
人がいなくなれば、街は黙る。人が眠れば、街も眠る。
二人の男女は、静けさの中を、静かに歩いていく。二人の距離は、数メートルを隔てたまま一定で。
 駅の煌々たる明かりの帯を潜り、大きな車道を何度も横切り、もう暗くなってしまった行きつけの食堂や、暗海に点在する灯台のようなコンビニの突発的な明かるみの下を抜け、線路を渡り、街路樹に沿って歩き続ける。
高瀬はだんだんと不安に思い始めた。彼女は何処に向かっているのか。特に行き場所があるような素振りはしなかったし、となると、あてもなく夜の街を徘徊していることになる。
どうせ何も考えてはいないのだろうが、せめて漠然とした目的くらいは彼女から聞いておく必要があるだろう。
だが、いざこういう隊形――つまり彼女の数メートル後ろを黙ってついていく自分――を意識すると、どうにも声を掛ける勇気が湧かなくなるから不思議だった。
317'Round About Midnight:2007/01/13(土) 19:14:02 ID:???
 高瀬は何とか会話を切り出すきっかけを模索しながら、彼女の小さく揺れる頭の上のリボンと、自分の足の動きとを交互に見ながら歩き続けた。
暗闇の中で、もの柔らかな足音があたりに漂う。
「部長」
 高瀬は思い切って声を出してみた。間の悪さからくる気まずさが、一瞬自分の頭をぼぅっと眩ませるような心地がした。
「何よ」
 円は振り返ることもなく、歩きながら答えた。高瀬も足を止めずに彼女の後を追う。
「何処に行くつもりですか」
 円は黙ったままだった。黙ったまま、ひたすらに歩いていた。腰ほどもある長い髪と、大きなリボンがふわふわと揺れている。
「ねぇ、部長。こんな時間にこんなところ歩いていたら危ないですよ。それにお巡りさんに捕まるかもしれないし」
 円はやはり何も答えない。高瀬はそわそわして、彼女に追いつこうと小走りになった。

 ところがその直後、円も走り出した。驚いたのは高瀬のほうだった。
まるで彼から逃れるように、急に走り出した彼女の行動の真意を量りかねていた。
「部長、待ってください!」
 高瀬は慌てて彼女のあとを追いかけた。
しかし、なお驚かされたことに、彼女は思いもよらないほどのすばしっこさで彼の前から逃げていく。
 高瀬は必死にその後を追い続けたが、円は一度もそちらを振り返ることなく、どうしてあの細い足にそんなことが可能なものかと思わせるほどの速さで遠ざかっていく。
高瀬は一瞬、もう二度と彼女に追いつくことは出来ないのではないかという錯覚じみたものを覚えた。そしてその手の届くところから、永久に彼女が消え失せてしまうのではないかという恐怖に似た感情すら覚えるほどだった。
 ひたすら彼女の背中を追う中で、高瀬は次第に意識が遠退いていくのが感じられた。
どうしようもなく手間のかかる娘だが、かといってこのまま放って置くわけには行かない。
しかし、どうしても追いつかない。自分の足が、自分の心が。彼女に追いつこうとしてくれない。
それどころか、その差はますます開いていくような気もしている。高瀬は必死になって追い続けた。
暗闇に染まった景色がぼんやりと目の隅を流れていく。冷たい風が顔を叩きつける。目からじんわりと涙が出てくるような気もする。
318'Round About Midnight:2007/01/13(土) 19:16:28 ID:???
 藤宮円の小さな影は道を逸れ、裏路地を進み、やがて街そのものを抜け、川のほうにまでやってくる。
高瀬は息を切らせながら、それでも彼女に追いつこうと踏ん張った。

 やがて円の影は川岸の土手を駆け上り、乾いた荻の生い茂る河川敷を見下す護岸壁の上に立った。
そこは場が開けて、少し小高くなった地点だった。背後を見渡すとコンクリート作りのビルの林が遥か遠方に認められる。
街の残光はいよいよ希薄となり、暗い紺色をキャンパス一面に塗りたくったような夜空を仰ぐことが出来た。
とはいいつつも、そこには何も見えず、星も月も、一切が暗澹のベールに覆われていた。
「ちょっと、バカキザ!」
 ようやく振り返った円が夜空を背景に吼えた。高瀬はため息をついて土手の上に登っていった。
石の階段を一歩ずつ上がり、徐々に彼女に近づいていく。
彼女の影は大きく、しかし同時に“小さく”なっていく。
「はやく、こっち来て」
 円がせかすので、高瀬は足を速めた。彼女は待ちきれないといった様子で、彼をじっと見つめながら立っていた。
一瞬あの大きな瞳がきらりと輝く。そこに差し込む光など皆無のはずなのに。
「どうしたんですか、急に走り出して」
「肩車しなさいよ」
「こんなところで?」
「いいから、はやく」
 円は高瀬のほうに両手を伸ばした。高瀬は疲れきっていたためにもう反論する気力も失って、彼女の言うがままに任せた。
彼はその場に膝をついて首を差し出した。円は彼の頸に跨ると、小さな指でその耳を掴んだ。これがいつもの“準備完了”の合図である。
高瀬は自分の腰を気遣いながら、ゆっくりと立ち上がった。
 一瞬彼女の重心が後ろに傾き、二人して後ろ倒れになりそうだったが、そこは慣れたものとばかりにすぐに体制を持ち直し、一つの塔がそこに建立された。
 風が冷たい。彼女の指が冷たい。彼女の腿が冷たい。そして自分自身が虚ろな気がする。
高瀬は立ち上がったまま、しばらく茫然としていた。今や彼の背を手に入れた小さな巨人は、果たしてその瞳に何を映しているのだろうか。
高瀬は首を前に向けたまま、静かな声で訊ねた。
「何か見えるんですか」
319'Round About Midnight:2007/01/13(土) 19:18:42 ID:???
 円はしばらく辺りを眺め回すように首を傾げていたが、やがて消え入りそうなほどの小さな声で応えた。
「海が……海が見えるはずなの」
 彼女の声には焦燥の響きがあった。そして悲しみの色があった。高瀬は何かはわからないが、何かに不安がる円の様子に気がついた。
「海……ここからじゃ見えませんよ」
「わかってる。でも、海が見えるはずなの」
 何をバカな、と言おうとして、高瀬は口を噤んだ。
藤宮円の探す海。暗闇の中で、見えるはずのない海原を必死に見つけ出そうとする少女。
実際の海はあの家々の向こう側、遥か彼方で静かに波を立てている。
ここからではその影も見出すことは出来ない。
しかし、それでも少女はそれを探している。何のために、何を思いながら?
「見えますか」
「……見えない。暗すぎるのよ」
「夜ですからね」
「そういうことじゃないのよ」
高瀬はハッとして彼女の様子をうかがった。頸にしっかりと巻きついた細い足が、恐々震えている。
「そういうことじゃないのよ、あんたって本当にバカなんだから」

 それきり、再び円は沈黙した。高瀬もそれ以上は何も言わなかった。ただその中で、さまざまな思いが、さまざまに交錯した。
二人はしばらくその場で身動きしなくなった。文字通り塔となった二人は、お互いの存在を忘れ、一体となっていた。お互いが、相手を自分の中に取り込むという動作によって。
「あ」
 そのままいくらかの時間が流れた後、突然に円がその悠久の流れを断ち切った。
二人の意識はようやく自分と相手という概念を思い出し、そこに立っている彼らを気がつかせた。
「どうしたんです、先輩?」
「月が出てる」
「月?」
 高瀬は彼女の障りにならないように留意しながら少し首を持ち上げてみた。しかし目に入るのはもやもやとした暗雲ばかりで、その光の影すらも目には見えない。
「曇っていますよ」
「ううん、月が……」
そう言って円はその両手を高瀬の耳から離した。そして――
「危ない!」
320'Round About Midnight:2007/01/13(土) 19:21:58 ID:???
 無意識のうちに天空へと差し出された少女の腕は、途端に塔のバランスを崩壊させ、その身体を揺らがせた。
高瀬は不意に失われた均衡を立て直そうと踏ん張ってはみたものの、まるで今にも飛び立たんとするかのように、月の幻光の誘惑にそぞろとなった円の身はふわりと重量を失った。
まるで月の光を浴びて孵化する、不思議な伝説の蝶の如く。

 次に気がついたときには二人とも土手の荻原に投げ出されていた。
間一髪、高瀬の足の踏ん張りでコンクリートの上に投げ出されることを免れたその身は、それでもしたたかに地面に打ち付けられ、寒気の中に痺れと痛みを起こしていた。
「痛て……大丈夫ですか、先輩?」
 高瀬は擦りむいた自分の腕の痺れを撫でながら、円の方を見遣った。いつもの様子ならここで激しく叱責を受け、頭を何度も殴られるはずなのだが、今回は少し違った。
 円は地面に仰向けに倒れこんだまま、じっと夜空を見つめていた。
大きな瞳は、遥か雲を突き抜け、38万キロメートル先の宙に浮かぶ岩球で焦点を結んでいた。少なくとも、彼女の瞳は、その姿を確かに映していた。
高瀬は慌てて彼女の元に駆け寄ったが、彼女が目立った傷もなく無事なことが分かると、ほっとひと安堵こぼし、続いて彼女の見つめる先を追った。
やはり暗雲のせいで彼は月影をじかに見ることは出来なかったが、彼女の瞳には確かにそれが映っていた。
「月がね」
円はぽそりと呟いた。
「月が見えたのよ。信じてはもらえないかもしれないけど」
いつになく弱気な彼女の表情に明らかな狼狽の色を読み取った高瀬は、しばらく躊躇いがちに目を伏せていたが、やがて答えた。
「ええ。今夜は満月でしたか」
「泣いてた。お月さまが泣いてたのよ」
 彼女にはきっと何かが見えたのだ。遠く、暗闇に波寄せる海、月の涙。彼女の瞳は、彼女の心の情景を、この真っ暗な世界に投影する映写機でもあったのだ。
高瀬は真剣な面持ちを崩さない円の顔を一度覗き込み、そしてその横に自分も仰向けにごろ寝になった。
「信じてないんでしょ」
円は空を見上げたままなおも言葉を紡いだ。
「少しは俺のことも信じてくださいよ」
高瀬もまた何も見えない夜空を眺めながら、彼女の瞳に映った月の明かりを思い出していた。
しばらく二人は並んで寝転んだまま、何も言わなくなった。
321'Round About Midnight:2007/01/13(土) 19:23:59 ID:???
 一陣の寒風が荻林を吹き抜け、さらさらと音を立てる。ちょろちょろと川の流れる音がそれに呼応する。そこに人の手の為せるものはなかった。
二人はふんわりと夜空に浮かんでいるかのような心地に包まれたまま、月のあるほうを見つめていた。
 突然、ぐぅ、という音が闇の中にこだました。高瀬はびっくりして飛び上がったが、円のほうはそんな彼のほうを口をへの字にして盗み見ている。
恥じらいの色が円の頬に浮かぶ。月の光を浴びて、円の顔が色づく。
「ちょっと待っていてください」
高瀬は自分の鞄を開けて中からさっき食べ残したハンバーガーの包みを取り出した。
「はい、どうぞ」
高瀬がそれを円のほうに差し出すと、彼女は一瞬戸惑いがちに彼の顔と手とを見比べていたが、やがてそれをひったくるようにして受け取った。
高瀬は軽く微笑みの色を顔に浮かべると、また黙って空を見上げた。
「冷たい。まずい」
円は文句を言った。しかし、その声には不快な無関心さはなかった。高瀬はその声を聞いて、ようやく安心することが出来た。
彼女の声調子は、やっといつもの藤宮円に戻りつつあったからだ。
「だからさっき食べておくべきだったんですよ」
「何よ、私に指図する気なの」
「先輩、いい加減……」
 そう言いかけた瞬間、高瀬は開かれた自分の鞄の中で唸りをあげる携帯電話の閃光に気がついた。
驚き訝しげにそれを拾い上げてみると、液晶画面に無骨なデジタル文字で“ハルカ先輩”という表記が現れ、苦しげに振動し続けていた。
高瀬はハンバーガーを頬張る円のほうに一礼してから携帯電話を開き、会話を始めた。
「もしもし」
「“あ、高瀬?さっきから何度も呼びかけてたのに何で電話に出なかったの”」
「すみません、気がつきませんでした。どうかしたんですか」
「“ねぇ、あんたさ、円のことについて何か知らない?”」
「部長ですか」
「“そうよ。お家の人が私に電話してきて、あの子、まだ帰宅してないみたいなのよ。何かあったんじゃないかって、警察に知らせようかって話なのよ”」
「警察に?」
高瀬は電話を手にしたまま円のほうを振り返った。ハンバーガーを食べ終わった円は、包みをくしゃくしゃに丸めながら高瀬のほうを見ていた。
「えぇっと……どうしたら」
322'Round About Midnight:2007/01/13(土) 19:25:49 ID:???
 高瀬は首を振ってうろたえた。警察沙汰にするのはまずいが円が今ここにいることをハルカに伝えてもよいものなのだろうか。
勿論彼としてはそうするのが一番いいことではあると考えていたのだが、気になるのは目の前にいる円自身のことだった。
こういった状況になると、彼女の意思を無視して話を進めることなど彼には出来なくなっていた。高瀬は受話口を手で押さえて円のほうに小声で話しかけた。
「ハルカさんですよ。先輩のお家の人が心配して警察を呼ぶって」
「貸しなさい」
円は相変わらずの強引さで高瀬の腕から電話を強奪した。彼は為されるがままに従った。
「ハルカ?私ならここにいるわよ」
電話から大声で猛るハルカの声が漏れてきた。高瀬は苦々しい表情でそのやり取りを聞いていた。
「“円?あんた、そこで何してんのよ?高瀬と一緒なの?”」
「心配要らないわよ。すぐに帰るって。私の家には余計なことするなって言っといてよ」
「“バカ、あんた、何言ってんのよ。とりあえず無事ならそれでいいんだけど、とにかく早く帰りなさいよ。みんな心配しているんだから”」
「わかったわよ。高瀬に送ってもらうから。もう切る」
 電話を切った円はそれを高瀬のほうに投げて寄越した。
そしておもむろに立ち上がり、コートについた土くれや枯葉を払った。
「帰るんですか」
高瀬も立ち上がりながら尋ねた。円は一度目を伏せて、もう一度きっと彼の顔を見据えると、いつもの高飛車な口調で答えた。
「そうよ。まぁ、連中もこれで少しは懲りただろうし。あんたも解放してあげる」
「そりゃどうも」
 二人は土手を下り、ようやく家路につくことになった。
凍てつくような風がさぁっと吹き抜け、夜空に目に見えない月が微笑む。
かくして、藤宮円による、哀れな高瀬を巻き込んだ復讐劇は静かに完了した。

 ある一夜の、深更真っ只中“ラウンド・ミッドナイト”の物語である。


――完――
323マロン名無しさん:2007/01/13(土) 21:18:00 ID:???
GJ!
私の書いたのよりずっと細やかで、円の可愛らしさと危うさが
うまく描写されてますよね。
割れかかったガラス細工のような、微妙なバランスが素晴らしいです。

こんな文章書けたらいいなぁ…。
324マロン名無しさん:2007/01/14(日) 00:34:57 ID:???
円好きな俺のためのスレはここですか?

幻想的描写GJ!
割れた磁石って所が上手いと思った
325マロン名無しさん:2007/01/14(日) 03:25:32 ID:fXgXwjAH
GJ
下がりすぎな気がするのでage
326マロン名無しさん:2007/01/14(日) 20:22:51 ID:???
偶然か突発的に円&麻里亜祭なわけだが、宮田ネタなんか
だれか書いてはくれないものだろうか?
327マロン名無しさん:2007/01/14(日) 20:23:48 ID:???
宮田をレイプする
328マロン名無しさん:2007/01/14(日) 20:45:53 ID:???
宮田ってキャラ薄いのか、なんだかネタ浮かばないんですよ…。

自分の不甲斐なさに落ち込んで鬱になったりリスカするようなネタは
他のキャラとカブりますし、単にレイプしてもエロパロスレとの
違いを出すのに苦労しますし。
恋愛話もないし。

あとは、せいぜい料理ネタとか?

ちょっとアイディア膨らませに宮田スレ行ってきます。
329マロン名無しさん:2007/01/14(日) 20:54:47 ID:???
カリアゲプレイ
330マロン名無しさん:2007/01/14(日) 22:27:59 ID:???
>>329
kwsk

ドジじゃなくなって
「いつもの宮田さんじゃな〜い!」
とか?
331マロン名無しさん:2007/01/14(日) 22:34:03 ID:???
誰かの皮を真皮まで剥いて、剥き出しになった肉を宮田のカリアゲ部分にこすりつけるとか。
332マロン名無しさん:2007/01/14(日) 22:34:33 ID:???
痛ッ!!
333マロン名無しさん:2007/01/15(月) 00:10:15 ID:???
そこでインプランタと思ったけどもしかしてもう宮田死んでる?
334マロン名無しさん:2007/01/15(月) 01:35:22 ID:???
残念、死んだ所で停止中だ
335マロン名無しさん:2007/01/15(月) 01:46:05 ID:???
フロッピー時代の思い出なんだがRPGを必死こいてクリアして
さあエンディングだとエンディングデータディスクに入れ替えたら
フロッピー読めなくて今にいたるまでエンディングを見れてない
そんな気分>インプランタ
336マロン名無しさん:2007/01/15(月) 05:54:21 ID:???
>>335
そういえば、インプランタはまだ終わってなかったか。
337もしも姫子がいなくなったら:2007/01/15(月) 21:11:35 ID:???
ワンシーンだけ書かさせて頂きます
というかワンシーンしか思い浮かばない…

(玲ちゃーん)
「姫子?」
玲は思わず振りむき、姫子の名前を呼んだ
しかし、後ろには誰もいなかった
「……気のせいだよな…」
そう、姫子はもういないのだ
静寂がオレンジ色に染まった廊下を包み込んだ

それから玲はあまり話さなくなった
ベッキーもくるみや都、玲たちと距離を置くようになっていた
玲は姫子の席にある花を眺めた
花は菊だった
「……似合わないよな……」
玲は菊を眺めながら呟いた

玲は花瓶の花を変えた、菊からタンポポへ
みんなから色々言われたが玲は心地よかった
タンポポが風になびいた
もう、季節は夏だった
338マロン名無しさん:2007/01/15(月) 21:17:05 ID:???
季節ハズレだがGJ
339マロン名無しさん:2007/01/15(月) 23:00:59 ID:???
独白の人です。
宮田ネタ書いてみました。
イメージ崩しちゃってるかもしれませんが、許してくださいw
340マロン名無しさん:2007/01/15(月) 23:03:44 ID:???
〈宮田晶の独白〉

薄暮れの歩道橋の上で、私は風に吹かれていた。
行き交うクルマの列が放つ赤と白の光の線が、どこまでも続いていた。
色とりどりの街の灯りの間に、どこまでも続いていた。
いつまでもここに立っていたかった。
全てを忘れて、ただ景色だけを見ていたかった。

今日も私は、みんなの足を引っ張ってしまった。
綿貫さんのため息に、来栖ちゃんの悲しそうな顔、馬鹿にしきった
橘さんの笑い…思い出すだけで、胃がキリキリ痛む。

「あんたね、結局みんなに甘えてるんじゃないの?
 誰かが助けてくれると思ってるから、いつまでもくだらない
ミスばっかなんじゃないの?
 一生、そうやって生きてくの?」

綿貫さんのあの言葉が、耳に痛かった。
何一つまともにできない自分が、情けなかった。
こんな、価値のない自分を、消してしまいたかった。

私は、人通りがないことを確認すると、いつもの"C"をくわえ、
火を着けて深く吸い込んだ。
刹那、煙が肺に染み込む心地よい感覚に、私は支配された。
くゆる煙と赤い光を見つめていると、全てがどうでもよく思えた。
341マロン名無しさん:2007/01/15(月) 23:05:56 ID:???
何もかも、忘れられるような気がした。
煙と一緒に、空高く舞い上がれるような気がした。
本当の私は、ただ醜く地を這うだけなのに。
毎日毎日、くだらないミスばかりして、何一つまともに
成し遂げられないでいるばかりなのに。

私は、吸い殻を携帯灰皿でもみ消した。
空はもう、すっかり暗くなっていた。
私はタバコ一式をグレゴリーのボストンにしまうと、再び
雑踏に向けて歩き出した。

人通りもまばらな夜の歩道橋の上から、赤い月だけが私を見つめていた。
赤い、血のように赤い月だけが、私を見つめていた。
342マロン名無しさん:2007/01/15(月) 23:07:26 ID:???
以上です。
宮田ファンの人、色々な意味でごめんなさい。
343マロン名無しさん:2007/01/15(月) 23:15:09 ID:???
まぁ俺宮田ファンじゃないからどうでも良いよ。

っていうのは冗談で、俺も宮田をネタにするなら皆には言わない黒い部分を持ってるようにしただろうから
今回のタバコはGJ。携帯灰皿を使ってる辺りがGJ。
344マロン名無しさん:2007/01/16(火) 01:12:32 ID:???
GJ!
タバコって言葉を見るまで"C″ってのが薬だ、と早とちりしてしまった…
345マロン名無しさん:2007/01/16(火) 08:23:19 ID:???
アルファベットCは関東と福岡限定だから、知らない人も
多いみたいだな。
そもそも喫煙者じゃなきゃタバコの銘柄なんか気にしないかw
346マロン名無しさん:2007/01/16(火) 19:16:30 ID:???
Cはマニアックすぎじゃないか?ww
宮田はキャスターのクールバニラが似合いそう。
347マロン名無しさん:2007/01/16(火) 19:35:49 ID:???
書いた本人(実はタバコ板住人w)ですが、今回のチョイス、
単に私の好きな銘柄を書いただけなんですw
キャスタークールバニラもアリですが、私が好きではないので
ハズしました。

でも"C"は軽めの割にメンソールが強めで吸いやすいタバコなので
関東在住の高校生が吸うのはあまり不自然ではないような気はしますよ。

バージニアスリムとかピアニッシモとか、いかにもな奴は
宮田に吸わせたくなかったんですよね。
なんかそういうのは柏木優麻とかのが似合いそうですしw

以上チラシの裏でした。
348マロン名無しさん:2007/01/16(火) 20:58:04 ID:???
>>347
今、読んだ。GJ!
349マロン名無しさん:2007/01/16(火) 20:59:34 ID:???
独白さんは関東か福岡か。管理人さんは北海道人だし日本中にいるんだな。
作品に地域性が出てるとしたら職人さんの地域分布を調べたらおもしろそうだ。
350347:2007/01/16(火) 21:30:34 ID:???
地域性、あるかもしれませんね。
調べたら面白いかも。

ところが、私が住んでるのは関東でも九州でもないのですよ。
地域限定銘柄を知ってるのは、単に旅行好き&マニアなだけですw
ちなみに今は、ピースアロマメンソールが売られてる地域に
住んでるんですが、わかるかな?

でも今朝起き抜けに吸ったタバコはバイオレットw
351347:2007/01/16(火) 22:00:21 ID:???
おっと、ピースアロマメンソールは全国発売になったんでしたね。
ベーシックシリーズが売られてる所、と言い直しておきますw
352Pani Poni HAZARD:2007/01/16(火) 22:52:49 ID:???
次行きます
一体いつ終わるのか自分でも見当つきませんがまあ気長に見てください

「(何よ・・何なのよ・・)」
都はだんだん不安になってきていた、しかし足音は都の都合など知る由も無く
ついに倉庫の扉の前までやって来た、そのまま手早く扉を開ける。
扉がきしむ音がしたかと思うとバタンといい音を立てながら扉が閉まった。
「(ううう・・なんなのよお・・)」
都は思わず夜空に向かって叫びたくなったがそんなわけにはいかない
そうこうするうちに再び足音が聞こえ始めた。
コツ・・コツコツコツコツコツコツコツ
足音は確実に都の方に向かってきた、もうかなり近い。
コツコツコツコツコツコツコツコツコツコツコツ
「(な、なんで急に早足になってるのよ〜もうやだ・・)」
そしてもう足音が都のところに迫ろうかと言うときに足音が急に止まった。
353Pani Poni HAZARD:2007/01/16(火) 22:53:23 ID:???
「(あれ・・?)」
倉庫の中は静寂に包まれていた、あるのは暗闇ばかり。
さっきまでさんざん鳴っていた音に不安を覚えていた都もいきなりその音が無くなると
もっと不安になった。
「(え?え?なんなの?もしかして私に気付かなかったの?)」
・・・・・心の中で質問しても当然答えは返ってこない、もっとも口に出しても無駄だろうが。
「(・・よし)」
心の中で小さく決意するとゆっくりと足音が止まったあたりに向かって歩き出した、灯りはないが
目は暗闇に慣れているのでうっすらとなら見える、心臓が激しく動いているのがわかる、たまらなく不安だ。
そしてついに足音が消えた場所へと辿り着いた。
「―――誰もいないじゃない・・」
誰もいない、辺りを見まわしてみるが誰もいない、あるのは得体の知れない荷物ばかりだ。
思わずあっけにとられてしまった。そして湧き上がってくるものがあった。
「何なのよ・・何なのよコンチクショーーー!!」
都は叫んだ、腹の底から声を出して叫んだ。当たり前だ、都は怒っているのだ。散々人をビビらせておいて
なんなのだこの仕打ちは、そもそもなんでこんなことになったのだ、いや、そもそもこんな島に来るなどと考えずに
素直に家で勉強していれば――――
都は気付いていなかった。足音の主は何処にも消えてなどいないのだ。
「・・・」
主は音もなく立ち上がった。そして一気に都との距離を縮め始めた。
気付くのが遅すぎたのだ。
354Pani Poni HAZARD:2007/01/16(火) 22:54:25 ID:???
主は都の背後を取り、大きく息を吸うと腕を構え、都の背中に向かって腕と声を思い切り押し出した。
「ヴわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!」
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!」
静寂を切り裂いて恐ろしい音の悲鳴が鳴り響いた。都の悲鳴はまさに猛獣とでもいうような形容しがたい
とても女子高生とは思えない声を張り上げた。
「あっははははは!!!都すっごい声!!ひーっひっひっひっ・・・」
「あんた・・くるみぃ!?」
「はあはあ・・ふう、も〜そんなに叫ばないでよ・・そこまでビックリされるとは予想外だったから笑っちゃった」
地味・・もとい桃瀬くるみはまだ微妙に笑っていた。
「何 な の よ あ ん た は ぁーーーー!!!!」
鬼の様な顔とドスの利いた低い声で都はくるみに食って掛かった。
「ごめんごめん・・あのね、この辺を通ってたら倉庫の中からいきなり都の叫び声が聞こえたもんだからついね・・
驚かしてやろうと思ってね。でもちょっと悪ふざけが過ぎたかな?ホントにごめんね都」
「はあ・・わかった、もういいわよ・・怒る気力もないわ・・・・・・・それより!!」
「何?」
「何じゃないわよ!あんたも見たでしょ?あれ!」
「あれって・・道歩いてる奴らの事?」
「わかってんじゃないの!あんたすぐそこでさっき銃声がしたでしょ?あんたその人に会わなかったの?」
355Pani Poni HAZARD:2007/01/16(火) 22:55:15 ID:???
「その人?」
「だからその銃を――――・・・」
都の目はくるみの右手に握られているものに向かった。
「ああ、つまりその銃を撃った人の事でしょ?私よ、私、ほら。」
くるみは右手に握られた銃を都に見せた。
「・・・・おかしいわよ・・あんた普通の地味な高校生じゃない・・なんで銃なんか・・」
常 識 人 都のステータスのひとつである。
「と に か く!!あの銃声は私!つまり外にいた化け物は私が殺したの!どうよ?頼りになるでしょ?」
地 味 くるみのステータスというかむしろバッドステータスなのだがこの時のくるみは違っていた。
「・・・もういいわ・・これは夢なのよ、目が覚めたら家のベッドで目覚めるんだわ・・さあ、目よ覚めて・・」
都はすでに現実逃避を開始していた。
「ち、ちょっと都!!現実から逃げないでよ!!ああもう、とにかくここから出てみんなを探さなきゃ!」
今日のくるみはやはり違っていた。目がらんらんと光り輝き、生きるための意思に溢れていた。
もう地味とは言わせねえ!!そんな感じだった。
「ああ、夏休みが終わったら中間テストに向けて勉強しなきゃ・・新しい参考書も買わないと・・」
張り切るくるみを尻目に都は完璧に現実から目を反らしていた。
「さあ、行くよ都!皆を探しに行こう!!」
今までに無いほどの危機の中で今までに無いほど好調な桃瀬くるみは、精神崩壊を起こしている
勉強蟲もとい上原都の手をしっかり掴むと、倉庫の扉を開け外に出て行った。

そしてまた、暗闇と静寂だけが残った。
356Pani Poni HAZARD:2007/01/16(火) 22:57:03 ID:???
とりあえずここまで、呼んだ人は何かしらコメントくれると
ありがたいです

独白氏は相変わらず面白いです、今後も頑張ってください。
自分タバコはさっぱりわかりませんねえ・・吸わないっていうか
吸えないもんで。
357マロン名無しさん:2007/01/16(火) 23:15:57 ID:???
>>356
むはー!!GJです隊長!

>>もう地味とは言わせねえ!!
超吹いたww
358マロン名無しさん:2007/01/16(火) 23:47:23 ID:???
GJです!
俄然こういうシチュになるとくるみは強い!
地味だけにスキルが充実してますもんねw
続きも楽しみにしてますよ!

私は自分の鬱屈した感情とマニア心を満たすために書いてますんで、
ドラマチックな文書くのは苦手なんですが、Pani Poni Hazardさんの
エキサイティングな描写にはいつもドキドキです。
自分のオタク心を殺して書いた方が、読む人の心に沁みる文が
書けるんですかね。
359初心者投稿すいません:2007/01/18(木) 02:18:02 ID:???
諜報部綿貫響の諜報力は皆無、というのは最早過去の話となった。
異変に気付いた橘玲は、即座に彼女の愚行を止めるべきであったのだ…

最高機密を閲覧・利用するのも、その時の彼女にとっては雑作も無い事であった。
『世界が嫌になりました。』
米国の核が次々に飛び、各国で夜明けの光が灯った。
一人の絶望が何人もの希望を奪うとは、何とも迷惑極まりない。


―――かくして永い冬は訪れる――
360マロン名無しさん:2007/01/18(木) 02:38:42 ID:???
>>359
これはプロローグ?
綿貫好きなんでうれしい。
361マロン名無しさん:2007/01/18(木) 21:49:20 ID:???
>>360
基本的に書くつもりは無いですが…
物凄く良いネタが思いついたらもしかしたら書くかもしれません…
362マロン名無しさん:2007/01/18(木) 22:03:56 ID:g31TEBSu
期待age
363マロン名無しさん:2007/01/19(金) 06:30:36 ID:???
礒部の部を「辺」に修正する作業\(^o^)/オワタ
間違いやすいこと
1.ベホイミの語尾は、「〜ッス」ではなく「っス」
2.磯辺は礒部じゃない
3.乙女や芹沢など苗字で呼んだり名前で呼んだりする子
364マロン名無しさん:2007/01/19(金) 12:41:48 ID:???
乙。
設定つかみきれないで書いちゃうと後が大変ですよね。
私もジジイ先生が古典教師だと思いこんで書いたりしてましたw

しかし桃月や足柄の街の設定とかは今一つかみきれてなかったり。
六巻の付録に一応タウン情報は載ってますが、蒲田とかを元に
テキトーにでっちあげるしかないのがツラスw
365マロン名無しさん:2007/01/19(金) 22:03:57 ID:???
おつおつ!
366マロン名無しさん:2007/01/20(土) 00:47:12 ID:???
>>363
お手数おかけしました。ありがとうございます。
367マロン名無しさん:2007/01/20(土) 01:25:51 ID:???
今日は大学初日の最初の授業。一人ずつ自己紹介を始めました。次の姫子の自己紹介を聞いて問いに答えなさい。

『訳』やあ! 私の名前は片桐姫子。高校は東京都大田区桃月生まれで私立桃月学園に行ってました。そして、この桃月大学に来たってワケ。
私の友達はちびっ子先生が1人に高校からが1人。大学で知り合ったのが4人。あとはくるみちゃんと大天使ミカエル。
まあ、ミカエルはは家族と同じだから私は友達だとは考えないけどね。あとくるみちゃんも見えないから違う。
あと趣味は、読書です! 最近読んだのは「北海道大学生日記」だよ。
あれ……?「茨城県の高校事典」だったような気もするな……
ゴメーン、最近何の本読んだか覚えてないやー。
最近悲しかったのはさっきも言った友達の都ちゃんが海外に行ったこと。でも、昨日ちびっ子先生のベッキーが連絡を取っていたよ。
あっ、ごめん。海外はくるみちゃんだったよ。ってのは冗談だよ。アハハ
あとさっき自己紹介したけど大学と高校の人数が逆でした。しかもさっき高校の人数を半分しかいってないや……
私の自己紹介はこんなものカナ。あっそうだ! 最近読んだ本は「僕は埼玉出身さ!」っていう本だ。思い出したよ〜。
じゃあ、これからよろしくね。

問一:姫子の出身地は次のうちどれか
@埼玉県
A東京都
B茨城県
C北海道
問二:現在日本にいる姫子の友達の人数は何人か
@6人
A7人
B8人
C9人
問三:最近姫子の周りで海外に行ったのはだれか
@都
Aくるみ
Bミカエル
Cちびっ子先生


このスレで何人受けるか解りませんがセンター試験頑張ってください
368マロン名無しさん:2007/01/20(土) 01:39:10 ID:???
このスレは過半数が成人してるとおも
369マロン名無しさん:2007/01/20(土) 01:40:08 ID:???
俺もそう思ったけどPatは外せないなぁ、と。
370マロン名無しさん:2007/01/20(土) 03:19:56 ID:???
まとめサイトに掲載されている小説が
最後の行が凄まじく横長になるんだけど
371マロン名無しさん:2007/01/20(土) 10:40:13 ID:???
444 名前:マロン名無しさん 投稿日:2006/12/05(火) 01:36:52 ID:???
まとめサイト一番下の行がやたら長いんだけど
環境がわるいのかな


445 名前:マロン名無しさん 投稿日:2006/12/05(火) 01:37:30 ID:???
何度か行ったり来たりすると直るよ
372マロン名無しさん:2007/01/21(日) 11:53:53 ID:???
独白の人です。
エロパロスレに犬南の続きをうpしましたので、興味のある方は
ご覧になってみてください。
…まだあまりエロくなくてほのらぶ段階ですがw
373マロン名無しさん:2007/01/22(月) 00:42:04 ID:???
現役生の俺が来ましたよ。
センター\(^o^)/オワタ
円部長と共に浪人します

とりあえず投下した>>367>>372の方も作業終えた>>363の方も乙です
374マロン名無しさん:2007/01/22(月) 00:45:54 ID:???
>>373訂正
×とりあえず投下……
○とりあえず、投下……
375マロン名無しさん:2007/01/22(月) 01:50:38 ID:???
受験生乙。
新聞見てセンターやってみたが、地理に俺の院時代の研究対象地域が
思い切り出てて笑ったわw

…ちょっと待てよ、今年の現役生って平成生まれ?
376マロン名無しさん:2007/01/22(月) 07:52:14 ID:???
>>375
自分は昭和生まれですが平成生まれもいますね
スレ違なんでこれ以上は自粛致します…
377マロン名無しさん:2007/01/22(月) 21:46:26 ID:???
独白の人こっちも忘れないで
378マロン名無しさん:2007/01/23(火) 00:08:18 ID:???
並行していくつも書ける程器用じゃないので、あっちの犬南が
一区切りしたら戻りますよ。

エロパロにも書くけれど、あくまでメインは学級崩壊スレです。
あっちの犬南の続きは、もしかしたらこっちになるかもですし。

さて、あっちはあっちで、犬神に避妊させようか迷い中。
流れを壊さない方を取るか、リアリズムを重視するか。
エモーショナルとリアリズムとエロの鼎立って、難しいなぁ…。
379マロン名無しさん:2007/01/23(火) 14:29:01 ID:???
あ、エロパロスレは21歳未満は見ちゃダメですよw

くるみと宮田にタバコ吸わせててアレですがw
380マロン名無しさん:2007/01/23(火) 21:22:20 ID:???
ハルカは吸ってそう。実際・・・
381マロン名無しさん:2007/01/23(火) 22:23:08 ID:???
高見沢ならソブラニーあたり?
ああいうタイプは普通のタバコは選ばなそう。

バイオレットとかアメリカンスピリットとか吸ってたらテラモエスw
382マロン名無しさん:2007/01/23(火) 22:41:51 ID:???
むしろ「タバコなんてJTの陰謀じゃない!」とか言って吸うのをとめてくれたら燃える
383マロン名無しさん:2007/01/23(火) 23:10:27 ID:???
吸わないに越したことはないよ、と喫煙者の俺が言ってみるw
384Pani Poni HAZARD:2007/01/24(水) 00:13:23 ID:???
タバコで盛り上がってるところ悪いですが次行きます

「柏葉、大丈夫か?」
「うん・・まだ痛いけど平気だよ、普通に歩ける」
店を出て他の生徒たちと合流するべく山の中を歩いていた三人は暗い山の中を
不安と戦いながら進んでいく。懐中電灯の光だけが漆黒の闇の中で三人の道を示していた。

先が見えない、このまま山を進んで何があるのか、この恐怖から逃げる術はあるのか。
不安はいつまでも三人に付きまとう。さっきまでの修の力強さはなりを潜めていた。
不安と闇に時折押しつぶされそうになりながらも三人はあてもなく山を歩いていった。

怪我をしている優麻を気にかけながらも修はあることを考えていた。
「(一体あいつらは何なんだ?)」
以前何があるかわからない油断してはいけない状況ということを頭に入れ修は考える。
一度に多くの事が起きたのでよく理解しきれていない頭を必死に整理していった。
まず五十嵐先生を殺した奴らについて考えてみた、あれはどこからどう見ても犬だった。
それは確かだ、多分・・犬種は警察犬とかでよく見る・・ドーベルマン、だったと思う、そいつらが
群がって五十嵐先生を食っていた。ドーベルマンは警察犬にもいるぐらいだから運動能力とか
その辺も高いのではないか、それにあの数に襲われたのだ。泥酔状態の先生に逃げ切ることは
出来なかっただろう。仮にシラフでも逃げ切れたか怪しい。
その次に店に入ってきたあの化け物のことについて考えてみる、あの化け物はどう考えても・・信じがたいことだが
人間だった。しかしやっていることは限りなく人間からかけ離れている、それに風貌も普通の人間とは違った、
なんというか・・オーラとでも言うのだろうか、明らかに生きている人間とは思えない、そう、まるで死体のよう。
385Pani Poni HAZARD:2007/01/24(水) 00:13:53 ID:???
死体が歩く
きっと普段こんな事を口走れば「兄貴・・熱でもあるの?」などと言われるだろう、だけど今は状況が違う。
あの化け物がまさしくそうだったからだ、実際に見てしまったのだから信じるほか無い。
「そんなのまるでゾンビじゃないか・・」
思わず修はぼそりと口に出してしまった。
「・・桃瀬君?」
すかさず優麻が反応を示す。
「あ、いや・・何でも無いよ、何でも」
「取り繕ってもわかるわよ・・さっきの奴の事でしょ?私も同じこと考えてたの」
「え・・?そうなのか?」
「うん・・だって、足に噛みつかれたとき・・あいつの目が見えたの」
「目?」
「そう、目よ、あの目・・絶対に生きてる人の目じゃない、だって、死んだ魚みたいに・・真っ白で・・濁った目をしてたんだもの」
・・修は何も言えなかった。ゾンビという空想の産物が自分たちに牙を剥いて襲い掛かってくる。まさに悪夢だった。
しかしその悪夢が現実になっている、現にゾンビは自分たちに襲い掛かり、犠牲者も出た。怪我もした。
自分たちはこれからどうなるのか、このまま山の中をさまよい続けるのか、それとも奴らに食われるのか。
考えれば考えるほど頭に絶望というものがこみ上げてくる、修は早くもくじけそうだった。
386Pani Poni HAZARD:2007/01/24(水) 00:14:53 ID:???

「あの・・桃瀬君」
優奈が恐る恐る修に話しかけた。
「・・・何?」
「あの・・顔色悪いけど大丈夫?疲れてない?」
優奈が心配そうな顔で修を気遣っていた。当の本人の方が顔色が悪い。
「・・俺より自分の心配したらどうだ?」
さっきまであんなことを考えていたからなのか少しきつい言い方になってしまった。
「そ、そうだよね、うん、ごめんね迷惑かけて・・」
少々ショックを受けたのか優奈はとても申し訳なさそうな顔で黙ってしまった。
「・・・・・あ、ごめん、なんか変なこと言っちゃったな」
「ううん、いいの、桃瀬君の言うとおりだし・・」
「ごめんな、頼りなくてさ、ホントに・・ごめん・・」
知らず知らずのうちに謝罪の言葉が口から滑り出て行く。
自分が情けなかった。もしかしたら自分のせいでこいつらを死なせてしまうかもしれない。
俺は無力だな。つくづくそう思った。さっきまでの決意は何処かへ行ってしまった。
「・・やめてよ、やめてよそんなこと言うの・・」
387Pani Poni HAZARD:2007/01/24(水) 00:16:38 ID:???
優奈は立ち止まると修に向かって震える声で言った。
「優奈ちゃん?どうしたの?」
「柏葉?」
「そんなこと言うのやめてよ・・私・・そんな桃瀬君嫌だよ・・」
「優奈ちゃん・・」
「私・・今もすごく怖いんだよ・・だけど・・桃瀬君がいてくれたから・・少し楽だったんだ、怖いけど、桃瀬君がいるから大丈夫だって・・
だから・・ワガママかもしれないし、桃瀬君だって怖いだろうけど・・そんなこと言わないで、お願い・・だから、あの、その・・」
ほとんど涙目になりながら言っている事がどんどんしどろもどろになっていく。しかしその言葉は確かに修に届いていた。
388Pani Poni HAZARD:2007/01/24(水) 00:17:41 ID:???

「ごめん、柏葉、俺・・諦めるとこだったよ、ありがとう。だから・・泣かないでくれよ?」
「うん・・ごめんなさい・・私・・」
「いいんだよ、ありがとう!さ、行こう!」
またも修にふつふつと勇気が沸いてきた。あの優奈が取り乱してまで自分を鼓舞してくれたのだ。諦めるわけにはいかない。
大丈夫、皆生きてる、優麻はここにいる、優奈はここにいる、そして俺もここで生きている。
優麻がやれやれと言った顔で見ている、こんなときも元気な奴だ、優奈も目を袖で擦って歩き始めた。
「頼りにしてるわよ?も も せ く ん?」
「任せとけよ、さあ、皆を探しに行こう!」
そしてまた三人は闇の中を進み始めた。先に何があるのか検討もつかない、しかし不安は余り無くなっていた。
気付いたら修は優奈の手を握って歩いていた。恥ずかしさと驚きで取り乱しそうになったがなんとか冷静を保つ。
まあ優奈もまんざらではなさそうで恥ずかしそうに修の手をしっかり握っている。
優麻がとても何か言いたそうだが見て見ぬふりをする。
・・・まあいいや、このまま行こう、待ってろよ、みんな
さっきまでのネガティブぶりがウソのようにイキイキとした感じで歩いていく。
そして忘れていた誓い、そう、こいつらは絶対俺が守る。それが修の中に蘇った。
暗い闇の中を進んでいく、それは絶望への道かもしれない、しかし今は進むしかない、
先に何があろうとも、今は進むしかないのだ。
389Pani Poni HAZARD:2007/01/24(水) 00:18:17 ID:???
・・・・ここはある施設の中である、そこで廊下を呻きながら歩いている一人、いや一体の死体がいた。
その死体は急激な新陳代謝による、強烈な飢餓感を解消するために「餌」を求めてさまよっていた。
その「餌」が人間なのはもはや言うまでも無い。
その死体を見つめる目、いや、見つめるというのは正確ではない。
なぜならそいつには視力が無い、すなわち眼球が存在しないのだから。「そいつ」は驚くことに廊下の天井に張り付きじっとしていた。
そして「そいつ」は死体が歩いたときに起きるわずかな音、それを聞くと、ゆっくりと天井から落ちて着地した。
そのまま死体は「そいつ」に向かって歩いてくる、「そいつ」にしてみればその死体はたっぷりと肉の詰まったご馳走。
まさにそれだった、死体の発する音が死体が「そいつ」の射程に完全に入ってきたことを伝えた。そしてそのまま、
「そいつ」は何も知らず歩いてきた死体に、耳をつんざくような奇声を上げて飛び掛っていった。

―――「そいつ」がご馳走にありついた場所・・そこは山の中にある少し広い診療所、もちろん医者などいない。
尋ねてくる患者もいない、しかし玄関の扉が音を立てて開いた。

進んだ道の先は、やはり絶望だったようだ。



ここまでです、何かあったらよろしく

390マロン名無しさん:2007/01/24(水) 00:18:46 ID:???
柏葉とか
391マロン名無しさん:2007/01/24(水) 00:21:22 ID:???
柏木じゃない?

それ以外はGJ!
392マロン名無しさん:2007/01/24(水) 00:22:09 ID:???
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
柏木姉妹(* ´Д`)ハァハァ
393Pani Poni HAZARD:2007/01/24(水) 00:27:46 ID:???
なんで柏葉になってんだぁぁぁぁ
脳内変換よろしく
394マロン名無しさん:2007/01/24(水) 00:36:15 ID:???
GREAT JOB!
GOOD JOBどころじゃないね!
柏葉なんて小さなミスなんか気にしない!
395マロン名無しさん:2007/01/24(水) 00:52:30 ID:???
トゥモエテラカワイス
396マロン名無しさん:2007/01/25(木) 01:43:24 ID:BwiDLI2Z
この板のルールはよくわからんが保守あげ
397マロン名無しさん:2007/01/25(木) 12:39:39 ID:???
板変わったの?
よく変わるなぁ
398マロン名無しさん:2007/01/25(木) 16:31:35 ID:???
dat落ちしたのかと焦った
399マロン名無しさん:2007/01/25(木) 17:53:38 ID:???
GJ!!今後も楽しませてもらいます!!!!
400マロン名無しさん:2007/01/25(木) 20:23:00 ID:???
ゾンビ物のお約束といえば…やっぱ優麻も…。
そうなんだよな…||(;-A-)|||
401マロン名無しさん:2007/01/25(木) 22:48:01 ID:???
焦ったぜ・・・

>>389
gj! 燃えた。
402今月のGFを読んで:2007/01/26(金) 22:22:49 ID:???
エロありグロあり人死にありです。

【お】 おまえ死ね
【ど】 毒飲んで死ね
【す】 すぐ死ね
【お】 恐れおののいて死ね

( ^ω^)おどすお!

「おい犬神、私も新制服着てぇなぁ」
「犬神パチンコ代くれよ」
「大丈夫ですよ、おじいさんと犬神さんは別の人間ですから。それにおじいさんも直接関係してたわけでもないですしね。
 雅ちゃん達がどう思うかは知りませんが。望はきっと軽蔑するでしょうね」
「なぁに南条に優しい言葉でもささやいておっぱいのひとつでも揉んでやれば10万や20万ちょろいだろ」
「ベホイミもバイトはじめたそうじゃない。抜いてきちゃいなよ」
「それともおじいさんの事を雅ちゃんにお教えしましょうか? 写真付きで」
403今月のGFを読んで:2007/01/26(金) 22:25:00 ID:???
【その1】

「麻里亜ちゃん遅いなー……」
 缶コーヒー片手に確認した携帯電話の時刻表示から顔を上げながら独りごち、周囲を見回した真尋の耳に通行人の声が飛び込んだ。
「電車が止まってしまって……タクシーで向かいます」
「事故……? 自殺……わかんないけど電車止まっちゃったんですよぅ」
 よくある事だがだからといって進んで聞きたい類の話ではない。身を固くした真尋だが、さらに決定的な言葉を聞いてしまう。
「あの制服は桃月学園だね。いやー可愛い制服なのに真っ赤っかだよ」
 真尋は取り落としそうになった携帯電話を抱えるように持ち直した。
 赤く染まった本来クリーム色の制服と、なぜかドクロがイメージされてちらつく。
 取り落とされたコーヒーの缶がわずかに残った中身を吐き出しながら転がっていくが、今は拾うよりも電話の方を優先したかった。
 震える指で短縮ダイヤルの1番をプッシュする。
(麻里亜ちゃん……)
404今月のGFを読んで:2007/01/26(金) 22:25:58 ID:???
 祈るような気持ちで聞く呼び出し音が永遠に続くかと思ったが、実際には十秒も経たないうちに人込みの中から真尋とお揃いの着信メロディが鳴り響き、「あ、えっと……」慌てて電話を取ろうとする声が続いた。「待ってまってくださいー! あ」
『もしもし姉さん? ごめんなさい少し遅れて今駅に着いたところで……』
「麻里亜ちゃん!」
 携帯電話越しと生の声が奇妙なハーモニーで聞こえる。
『あれ? 今姉さんの声が二カ所から聞こえたような気がするわ。姉さん? どこにいるの?』
 しかし真尋の答えはなく間もなくその代わりに麻里亜の携帯から姉のすすり泣く声が聞こえた。
「姉さん?」
 なんだかわからないが大変だ。
 麻里亜は携帯電話を耳に当てたまま走り回り、そして安心して泣き出してしまった姉を見つけた。
「姉さん……どうした……きゃっ」
 立ったまま泣いている姉に肉声で話しかけると、麻里亜に気付いた真尋は勢いよく抱きついた。
「麻里亜ちゃん……! よかっ……よかったわ……麻里亜ちゃんが無事でよかった……!」
 姉の柔らかな胸からは貸した制服を返してもらった時ほのかに香っていた香りがした。
 この胸にいつも抱かれている生徒のみんなは幸せ者だと、少し誇らしげに思ったりした。
 昔してもらったように、そしてたぶん今は生徒のみんながしてもらっているように、姉の頭を優しく撫でる。自分と同じウェーブのかかった長い髪が心地よく指の間を流れていった。
405今月のGFを読んで:2007/01/26(金) 22:27:13 ID:???
 その三十分ほど前、風に吹かれて線路に入った6号のリボンを取ろうとしたベホイミがリボンもろとも京浜東北線に撥ねられて死んでしまっていた。
 さすがに電車を受け止めて力ずくで止めようというプランは無理があったようである。
 そしてバラバラになってちぎれとんだ肉体のうち右腕はついに見つからなかった。
406今月のGFを読んで:2007/01/26(金) 22:30:04 ID:???
【その2】

 南条石油のセルフスタンドにミニバンを停め、レギュラー満タン現金を選択した。
 一万円札の持ち合わせがあるので先払いでも問題はないが、ここは後払いのようである。
 給油を終了し、ノズルを戻した都は蓋を取りながら何気ないしぐさで懐のスイッチを操作する。
 三カウントの後、中部座席に置いた爆弾が爆発した。
 車体は粉々になり、店員に都に、彼女に射殺されてこのクルマを奪われた見も知らぬ男の死体を巻き込みつつ周囲のクルマを吹き飛ばし、貯蔵庫を破壊してガソリンに引火させた。
 爆弾とガソリンの二つの爆発はラッシュで渋滞していた沿道のクルマを襲い、誘爆させて運転者や同乗者の命を奪って行った。また歩行者達をなぎ払い吹き飛ばしもした。

 都が修にレイプされたのは昨日の事である。
 一緒に仲良く帰っていたら、人通りのない河原の草むらの中、6号が五十嵐と待ち合わせをしていた場所の近くで急に押し倒されたのである。
 修は言っていた。
 最近くるみに欲情してしまう。服脱ぎ散らかしてソファで眠るだらしないくるみを見ると犯したくなって仕方ない。
 こんなんじゃ俺はもう駄目だ。だから上原さん。
 レイプされた事もさることながら、くるみの替わりに犯された事が都の自尊心を粉々にした。
 そこで都は校内に仕掛けられていたのをベホイミの見よう見まねで解除して、とりあえず保管しておいた爆弾を取り出してきてテロる事にした。
 余談ではあるがテロるというのはテロを起こす事を意味する日本語の動詞であるが、本来テロの正式名称はテロルというのだと都は習った。
 この爆発で修が死んでもいいし、死ななくてもいい。
 理想的なのはくるみが死に修が生き残り、一生十字架を背負って生きる事だが、結果はどうあれ想定した通りの爆発なら自分の怒りの狼煙には丁度良いのではないかと都は思った。
407今月のGFを読んで:2007/01/26(金) 22:35:03 ID:???
【その3】

 鈴音から送られてきたメールにはデータが添付されていた。
 パケット通信料が少し気になったが既に受信してしまったものは仕方がない。それに鈴音からの初めてのメールの内容も気になった。喜び半分で画像を開く。
 そこには姉の変わり果てた姿があった。
 切り取られた腕と脚が棒のように無造作に放置され、右腕の下に生首が吊るされている。
 よく見るとポニーテールに結んだ髪の先端を右手が掴んでいるのだ。
 もちろん死んだ手ではうまく握れないので、髪を指に絡ませて固定してある。
 また右腕も中に通した鉄の杭で地面に差し込んであるので不安定な姿勢でも倒れないのである。
 静止画写真なのでよくわからないが、乱暴に引きちぎられた首の切断面からは血液が滴り落ちて腕や脚から漏れ出たそれと混ざって紅い湖を作り上げている。
 勇気は震える手を掲げ、教師に言った。
「すいません、身内に不幸があったみたいで……」
408コンゲーッノ・G・エフォーヨンデ:2007/01/26(金) 22:50:50 ID:???
【そのn】

「千夏、あれどう思う?」
 準備運動のランニング中、最後尾でみんなを追いかけながら由香ちゃんが話しかけてきた。もう、走りながら喋っちゃいけないんだよ?
「体操服にあれってなんかすごいよね」
「南条さん?」
「うん」
 体操服にブルマ、たなびく金の縦ロールの上には天使のわっか、背中には翼。
「私は可愛いと思うけどな。悪の幹部みたいだし……片桐さんが好きそう」
「ああ、後者には同感だわ…… でも南条さんも真面目よね、五十嵐先生に何言われたか知らないけどちゃんと着けてるんだもん」
「うん、トイレでも着けてたよ。個室に入る時ぶつけてた」
「……風の抵抗がいいトレーニングになりそうよね!」
 飛ぶようにとはいかないけれど、翼を風にそよがせながら走る南条さんは綺麗だと思う。
「由香ちゃんも着けたいの?」
「私は……いいわ」
「私は少し興味あるかな」
「じゃあ私も着けてあげてもいいよ」
 話している間にも南条さんとの距離は伸びた。
 南条さんはもともとの身体能力は高い。
 技術や練習が必要なスポーツでは経験不足によるミスも多いけど、ただ走るだけという単純でこれまでの生活で経験する事も多いジャンルでは無類の強さを誇る。
 ぐんぐんスピードを伸ばしていき、私達との距離が離れていく。
「あ」
「はう」
 そして南条さんの翼が宮田さんを押し倒して、宮田さんは大地母神に熱い接吻を捧げた。
409今月のGFを読んで:2007/01/26(金) 22:57:04 ID:???
以上です。

CってCigaretteの頭文字から来た隠語かと。Cool mintなんですね。
コンビニで見つけて、これを宮田が吸ったのかとドキドキしてました(=´∇`=)
吸わないので知らなかったんですがいろんな種類があるんですね。
410マロン名無しさん:2007/01/26(金) 23:20:11 ID:???
乙。
今月氏は関東か…。
411マロン名無しさん:2007/01/27(土) 00:29:50 ID:???
乙です〜
なんか由香千夏に対するさりげない愛情が感じられますが気のせい…かな?>GF氏
412マロン名無しさん:2007/01/27(土) 02:38:53 ID:???
くるみ「みんな良いよなぁ・・・どうせ私なんか・・」
413マロン名無しさん:2007/01/27(土) 02:51:00 ID:???
このスレで出番が多い=殺すか殺されるってことだぞ
414マロン名無しさん:2007/01/27(土) 02:58:54 ID:???
くるみ愛されてるなあ
415マロン名無しさん:2007/01/27(土) 08:30:06 ID:???
>>409
冒頭の【おどすお】に吹いた。GJ
416マロン名無しさん:2007/01/27(土) 16:00:38 ID:???
独白の人です。
転勤が決まったりして慌しく、しばらくネットに上がれませんでしたが
久しぶりに投稿させていただきたいと思います。

さて、エロパロスレへの投稿へコメントを下さいました皆様、
本当にありがとうございます。
あちらでも申し上げたとおり、あくまで私にとってはこちらがメインですので
またこちらに復帰いたします。
どうぞこれからも宜しくお願いいたします。
417416:2007/01/27(土) 16:01:57 ID:???
<上原都の独白>

青空が広がっていた。
ホノルルの、早朝の抜けるような空が広がっていた。

プルメリアの甘い香りと埃の匂い、それにクルマの排気ガスの混ざった
この空港の独特の空気が、私の鼻腔を刺激した。
じっとりと湿気を含んだ暖かい空気に耐えかねた私は、思わず
Abercrombie & Fitchのトラックジャケットの前を開けた。

教授との待ち合わせまで、あと15分ほどあった。
私は喉の渇きを癒やすため、売店で買ったダイエットペプシを一口
流し込んだ。

こうして父の故郷に来ながら、私には、父の記憶がなかった。
わかっているのは、古い写真の中で残波岬をバックに母の肩を抱き、
満面の笑みを浮かべる父の顔と、Keith G. Inouyeという名前、
ハワイ生まれの日系三世で、湾岸戦争後の混乱の中で亡くなった、
ということくらいだった。

普天間基地勤務の軍人だった父と言語学専攻の大学生だった母が
恋に落ち、私が生まれたのは沖縄だった。
日系とはいえ、外国人との結婚に、祖父母は猛反対した。

でも、誰も二人を引き裂くことはできなかったらしい。
父は、母とそのお腹の中の私に、こう約束した。
418416:2007/01/27(土) 16:03:49 ID:???
「戦争から戻ったら、結婚しよう。
 必ず迎えに来る。
 だから、それまでここで、俺を待っていてほしい。」

けれど、その言葉が果たされることはなかった。
父はイラクで、イスラム過激派の銃弾を額に受けて亡くなった。
一週間後には、沖縄に戻る予定だった。

女手ひとつで私を育てることになった母は、二人の思い出が詰まった
沖縄を捨て、東京へと住処を移した。
仕事のない沖縄には居られなかった、と母は私に言っていたが、
実際は父を思い出して辛くなるからだったのではないかと、
私には思えた。
夜中に父のたった一枚の写真を手にすすり泣く母の姿は、私にそう
思わせるに十分なものだった。

父の故郷、ハワイに来るのは、私にとっては初めてのことだった。
世界各地からの移民の集まるハワイには、移民とともに伝承・怪談
の類も世界中から集まっており、土着文化とそれが混ざり合って、
民俗学のフィールドとしては非常に面白い、そう教授は言っていた。
それが、今回の旅の理由だった。私の父のことを知ってか知らずか、
教授から告げられた行き先はここハワイだった。

教授は、まだ来なかった。
教授が乗ってくると言っていた、黒いトレイルブレイザーは
まだ見えなかった。
私はまたダイエットペプシを口に含んだ。
強めの炭酸の弾ける刺激が、私の舌を撫でた。

あと数時間すればスモッグで白く濁るだろう青空は、まだ高く、
私の頭上に広がっていた。
ただただ青く澄み渡り、私を見下ろしていた。
419416:2007/01/27(土) 16:10:14 ID:???
以上です。
今回も、コメント等いただければ幸いです。

>381さん
禿同w

>Pani Poni HAZARDさん
ドキドキしました。
原作ゲームに沿った流れなんですね。
ゾンビ者として、今後の展開が非常に楽しみです。
優麻のかゆうまも…w

>今月さん
GJ!
今回も面白く読ませていただきました。
アルファベットシリーズは、他に"Regular"の"R"と"Heavy"の"H"があります。
私はその中では一番"C"が好きなのですが、あの吸いやすさは
高校生が吸い始めるにはピッタリかと思い、宮田には"C"を
吸わせたんですよ。
タバコはもちろん吸わない方がカラダには良いんですが、
精神の安定という観点からは、なかなかやめられないものなんですよねw
420Kongoehtzno George Evorjonde:2007/01/27(土) 21:48:00 ID:???
アルファベット表記これであってるかな…… そもそもちゃんと考えてからやれって感じですね。

おっしゃる通り千夏はかなり好きです。ぱにぽにから十人選べと言われたら入ります。
由香とのカップリングになるともっと好きで色々妄想は膨らみますが
由香と千夏の良さはある意味でのモブキャラっぽさにもあると思うので極力無色に書きたいと思っています。
好きだと色々書きたくなっちゃって難しいところですが……
さりげなく好きが見え隠れするように書けていましたら何よりです。
421マロン名無しさん:2007/01/28(日) 09:13:56 ID:???
まだ都やってなかったのか。以外だ。
422419:2007/01/28(日) 12:20:02 ID:???
実は都の独白は処女作として既に前スレに投稿させてもらったんですが、
稚拙な上にあまりに短すぎてアレなので、今回また書かせてもらいました。
稚拙は相変わらずですがw

「上原」姓は沖縄に多く、都が教授とも普通に会話を交わしていることから、
英語力が高くても自然で、かつ大田区の高校に通えるような設定を
考えているうちにこんなものができました。
また都の父親の故郷をハワイにしたのは、教授とのミステリーツアーで
行ってもおかしくない場所であり、何より私がハワイ依存症だから
といったところでありますw
423夢の終焉:2007/01/28(日) 19:56:34 ID:???

 “さて、天で戦いが起こった。ミカエルとその使いたちが、竜に戦いを挑んだのである”

  ――ヨハネの黙示録

 始まりは例によって姫子であった。異変――それが真っ当な意味での異変であるとするならば――の兆しは彼女の欠席から見え始める。
ご周知のことを敢えて反復する必要もなかろうが、あくまで彼女の存在価値とは学校という前提があってこそのものである。学校を休んだ時点で、彼女の存在意義は剥奪され、その影は回顧の対象のみとしてその名を留めるに過ぎない。
平たく言えば、学校にいなければ、彼女はこの世に存在していないも同然なのである。
 さてここでその前提を少し逸脱して、彼女の見舞いに担任のレベッカ宮本を片桐邸に送らしめてみよう。彼女が帰宅がてらここ数日休みがちの姫子を訪ね、その状況を探りに来た。
ここまでの著述が過去であり、ここから先が現実の時間軸に沿って進む。

――――――――

 姫子の居宅に馳せ参じたレベッカは有無を言わさずに彼女の部屋に通された。ちなみに、学校を出てから姫子の部屋に入るまでの場面は存在しない。
「姫子、入るぞ」
 レベッカは扉を開けて中に入る。既に日も暮れ落ち、空の様子も夜に色づけされるというのに部屋の明かりは消えたまま暗闇である。
「姫子?いるのか」
 途端、レベッカの背後で扉が閉まる。音も無く、兆候も無く、ただ光を遮る障害物としての扉がかくあるべくがごとくに動く。そして部屋は真っ暗闇になった。
「……ベッキー?ようやく来たね」
「姫子?」
 暗闇の中でマッチを擦る音。焦げ臭いにおいが微かに漂うも、屋内はほのかに明るくなった。闇の中を一筋の線を描く眩い光点が、やがて姫子の青白い指、そして頬を薄暗く浮かび上がらせる。
彼女はしばらく燃え続けるマッチの芯を低い位置で掲げた。その位置にきらりきらりと怪しく光る水玉が光を映し出す。
それは姫子の病的に虚ろな一対の瞳であったのだが、レベッカはその位置から姫子が床の上にほぼ寝転がった状態で首を項垂れていることがうかがえた。
 マッチの光は芯を掴む姫子の親指と人差し指の爪先の色が判別できるくらいのところまで降下してきたところで、徐ろに光軸が闇を裂いて移動した。じりじりと何かの焦がされる音がした気もするが、それは定かの話ではない。
424夢の終焉:2007/01/28(日) 19:58:34 ID:???
 とにかく、次の瞬間にはマッチの火は消え落ち、かわってその子孫火が一本の白い蝋燭の上で揺らめいていた。
部屋の中に硫黄じみたにおいが充満し、火の明かりに照らし出された黒煤が煙を伴って立ち上っているのが見えた。
 レベッカは首元に寒気を覚えてその場に座り込んだ。姫子は蝋燭を立てた燭台を手前に置き、レベッカの顔が見えるように彼女を自分の側に招き寄せた。
「ベッキー、私にはもうどうすることもできない」
 姫子が低いかすれ声で言う。病のためかその声に張りが無い。
「一体何の話だ」
「世界が壊れそう」
「熱があるようだな」
レベッカはため息をついて頭を振る。姫子は抑揚の無い声の語気を少し強めた。
「違うの。よく聞いて。私はもうまもなく世界の崩壊に立ち会わなくちゃいけないの」
「医者に行った方がいい」
「説明は難しい。とっても。私にはこれを自分の言葉で言い表せるほどの力が無い。たとえあったとしても、臨終に瀕したこの状況を、もうどうにもすることは出来ない」
「お前が訳のわからないことを言うのはいつも通りのことだ。ただちょっと身体の調子が悪いんだろう。心配せずによく養生することだ」
 レベッカは立ち上がった。彼女の振動が空気を伝い、蝋燭の上の火をちらつかせる。
幽玄に愁いを帯びた姫子の瞳は、まだその火をじっと見つめている。そこに映る明影が動くのは、彼女の潤んだ瞳の運動。
「信じてもらえないのも無理はないよ。でもね、いかなる人も世界の一部である以上、世界の崩壊を本気で信じることはないさ。
だってそれを信じるのなら世界はそもそも成り立たないし、信じないのなら崩壊の自覚はなく全てが跡形もなく消えうせちゃうのよ。だから、もともと世界は存在していなかったも同じになる」
「パラドキシカルな物の言い方だな。だが信じることは物質に先行するというのか?信じなければ世界は存在し得ないと?」
425夢の終焉:2007/01/28(日) 20:01:12 ID:???
「世界がうまく回るってのは、人間も、動物も、車も、タンスも、髪の毛も、道端の石ころ、砂場の砂粒、小さな分子、原子やその中身、あらゆるものすべてが"世界、かくあるべし"を信じて自分自身の身を振っているからさ。
そうさ、彼らは――もちろん私たちも含めてのことだよ、ベッキー――ある種の信頼関係を本質の中に含み、とても大きな一本の法則にしたがっている。
それは決して数値で検算できるような物理的法則とは違うものであるし、宗教的な言い回しになるけど、真理の大きな川に沿って進む水の流れのようなものであると言えるんだよ」
「梵我一如、というやつだな。世界が必ず調和されているという前提での話しだ」
「事実、調和はなかった。それが私さ。もし他の物質がその大河の流れに沿う水なのだとしたら、私の意識はそこから何者かに掬い上げられ、そして川の全景が見渡せる高台の上にまで連れ去られたようなものなのよ」
「若いうちは誰でも自分は特別だと思うものさ。じきにお前も……」
「たとえ私たちの目に見て矛盾だらけでも、世界は確実にある絶対の法則によって秩序付けられている。もちろん私にはそれが何なのかは見えないし、見えたとしても説明は出来ない。そんなものを理解しようという気もないしね。
だけど、それが壊れ始めている、それだけははっきりとわかるの。お告げのようなものを、私ははっきりとこの目で見たのさ」
「夢の話じゃないだろうな」
「見せよう。論より証拠、もっとも、論じゃ割り切れない事柄だし、目で見たことが証拠になり得るかどうかはわからない。だけど、何も出来ないなら出来ないなりにやるべきことを努力することは悪くないと思う」
 姫子はふっと蝋燭の火を吹き消して立ち上がった。そして、壁際まで歩き、扉を開ける。
仄かな光が差し込み、レベッカは目を細めた。姫子はコートを羽織りレベッカを手招いて玄関の方へ歩き出した。二人の少女はやがて外に出た。

――――――――

 レベッカは少し前を行く姫子の顔を横目で見遣った。
頬が削げ落ち、大きな目が落ち窪んで、その周りに真っ黒な隈が出来ている。反して顔色は蒼とも紫とも言えないひどく病的な有様で、心なしかふらふらと頼りない足の細さが、まるで骸骨に薄皮を張ったように思える。
レベッカは黙っていた。姫子は話し始めた。
426夢の終焉:2007/01/28(日) 20:03:03 ID:???
「ここはね、もうさっきの時間とは別の流れなんだよ」
「抽象的過ぎる。もっとわかり易く言ってくれ」
「時間の流れがね、ずれてきているんだ。きっと最後には全部の断片が切れ切れのまま、どことも繋がらなくなるんだろうけど」
「ほう、そうかい」
二人はしばらく黙って歩いていた。姫子の歩調はいつもよりも幾分速めだ。レベッカは暗闇の中を必死に追いかけた。
「この道はね、まだ大丈夫なんだ。通学路だから」
「何?」
姫子の呟くような声でレベッカは不意打ちを受ける。
「この世界の中心はね、わかり易く言っちゃえば学校なんだよ。それは私たちの学校でもあるし、ベッキーが通っていた小学校でもあるわけだけど。メダカの学校でもいい。
要するに、学校という形で、そこに二人以上の人物の群集ができれば、それが世界になるんだ」
「へぇ、そうなのか」
「それが崩壊を始めている。ベッキー、思い出してごらん、学校を出てから私の部屋に入るまでの自分の行動を」
「何だ、唐突に?」
「記憶がある?」
「当たり前だろ?私は学校から私の家に帰る途中で遠回りしてお前の家にわざわざ立ち寄ったんだ」
「よく思い出してごらん、本当にそんな道筋でやってきたのかって。ひょっとしたら、自分はそうしたと思い込んでいるだけで、実際は学校を出たところまでと私の部屋に入ったところまでの記憶しかないんじゃないカナ?」
「何を言っているんだ、お前は」
「記憶はすぐに余計なものが入り混じるから当てにならない。むしろ、自分の身体の感覚を信じるくらいが丁度いい。ベッキー、私のお母さんに会った?」
「呼び鈴を押して、玄関扉を開けてくれた……」
「それはベッキーの中の"かくあるべし"の幻が生んだ模造記憶だとは疑えないカナ?よぅく思い出してごらん、私のお母さんの顔はどんなだった?」
「それは……あまりよく見なかったから」
「ぼんやりしているでしょ?たとえよく、注意深く観察したとしても、ここにきたベッキーは私の母の顔をはっきりとは思い出せないはずさ。なぜなら、私の母の存在の限界がそこまでだからさ」
「よしてくれ、気持ち悪くなってきた」

427夢の終焉:2007/01/28(日) 20:06:43 ID:???
「私とベッキーは同じ、でも私と私の母は違う。私はお母さんを私と同等の人物格にあると規定することは出来る。でも、実際には母には私ほどの存在の可能性がない。
だから母には名前がないし、姿も見えない。彼女は片桐姫子の母という以上の存在上の働きは持ち得ない。少なくとも今のところは」
「お母さんをそんな風に言うべきものじゃないぞ」
そう言って、レベッカは自分の言葉がいかにも的外れであることに気がついた。ひとつにはもうこの病気じみた会話を打ち切りたかったこともあるだろうが、かといってこのまま姫子のペースに乗せられるのは嫌な気がした。
だからこんな風な言い方をしたものだが、実は彼女自身、少し肌寒いおぞましさを覚えていた。
「ベッキーのお姉ちゃんは元気?」
「え?あ、ああ、何だ藪から棒に?」
「ベッキーは彼女の顔をよく知っている。だけど今はそれをはっきりとは思い出せないはず。
ベッキーが家に帰ったと規定して、学校からその実存が失われた瞬間、ベッキーは彼女と一緒にいることができ、その同等の人物格になることができる。
しかし、今こうして私と二人で、学校の通学路を歩いている以上、ベッキーはしっかり存在できるけど、彼女はベッキーほどには強く存在できない。
それは私たちの主観の中だけでのことなら、それは当たり前すぎる話なんだろうけど、厄介なことにこの世界では本当に存在が希薄になり、消失にまで発展する」
「私のお姉ちゃんが存在しない人物だというのか」
「ベッキーが主張すればどうとでもなる。いなくてもいいし、逆に何人いても構わない。お兄ちゃんであってもいわけだ。
だけど、私たちがここでこうして話しているこの世界には、彼女は存在し得ない。観念としてではなく、実際に存在しないんだ。彼女の顔をよく思い出してごらん」
 レベッカは姉の姿を思い起こそうとし、そして愕然とした。彼女の顔にはまるで暗雲のような影が覆い被さり、ぼんやりと消え入り、うまく像を形成しない。
ただその薄い影が、確かに姉の姿であることは分かるのだが、彼女が自分の姉であるという言葉の強さに圧され、その姿が具体的な輪郭を帯びてくることは遂になかった。
何故彼女を思い出せない?
「もうそろそろだ」
姫子が言った。
「あっ」
428夢の終焉:2007/01/28(日) 20:08:52 ID:???
 彼女の見つめる先に人影が見えた。向き合って歩み寄るうちに徐々にその姿がはっきりとしてきた。
「くるみじゃないか」
レベッカがくるみのほうに手を振る。彼女はそれに気がついて駆け出してくる。レベッカは微笑を浮かべながら姫子のほうを見た。
彼女は恐ろしい顔つきをしたまま、微動だにしなかった。レベッカがその不審な表情に口元から笑みを消した次の瞬間のことだった。

ガシャン

 突然横路地から車が飛び出し、くるみの身体は軽々と吹っ飛ばされ、したたかに地面に打ち付けられる。
レベッカはその惨状に茫然自失し、しばらく言葉を失った。姫子はその後ろから、見渡すような遠い目つきでことを静観している。車は何事もなかったかのように走り去った。ひき逃げだ。
「くるみ!」
 我に返ったレベッカはすぐにくるみの元に駆け寄る。が、彼女の身体のところにまでは辿り着けなかった。
街灯の光を浴びて、一面に広がる赤い海。そこに足を踏み入れる勇気もなくただその場で佇立してしまう。
「きゅ、救急車を!」
振り返って姫子に訴えかける。姫子はコートのポケットに手を突っ込んだまま動こうともしない。
「姫子、はやく!」
「無駄だよ。くるみちゃんはもう死んでいる」
「バカを言え!死ぬわけが」
「ほら、よく見てごらんよ」
姫子が地面を指差す。レベッカは混乱した頭をそちらに向けた。恐ろしさに目を瞑りたくなるような惨状が――だが、そこには何もなかった。
くるみの体も、流れ出た血液も、車の破片も、何も無い。事故そのものが無かったかのように、ただ街灯の明かりが道を黒く照らし上げているばかりである。
「ど、どうなっているんだ?」
「言ったでしょ、世界は崩壊に向かっているって。これがその証拠さ」
「くるみはどうなったんだ?彼女は死んだのか?」
「うん、死んだんだよ。存在がね。この世界の中で、実体としての彼女を覚えているのは事故を目撃した私とベッキーの二人きりになったわけさ。
もっとも、それだってもう間もなく単なる記号的な記憶に変わってしまうんだろうけどね」
「わからない……何がどうなっているんだ?」
429夢の終焉:2007/01/28(日) 20:11:21 ID:???
「彼女の死によってその存在は限りなくゼロに近づいたの。もちろんみんなは"くるみちゃん"という言葉から"交通事故で不幸な目に遭った少女"というニュアンスを引き出すことは出来る。
ただ、実体としての彼女は永久にここから失われてしまった。当たり前よね、死人が学校に来られるはずも無いもの。そういった意味で、彼女の存在は忘却に付される。記憶の中の映像、ぼんやりとしたその姿……」
「私は決して忘れない!これでどうだ!死んだ人間のことを、ただ生きていないからだといって忘れることなんてできやしないぞ!むしろ、きっと他の誰よりも私はくるみのことをしっかりと覚えておくに違いが無い」
「死んだか死なないか、というのは大した問題じゃないんだよ。重要なのは、学校に来て、他の人間と交わることが出来るか、ということさ。
もし幽霊という選択肢がこの世界で認められているのなら、そして幽霊と交信が可能ならば、桃瀬くるみは決して死んではいないし、その存在が薄まることは無い。
彼女は地味だ何だって言うけれど、それも大した意味は持たない。この世界の人の認識の中での存在の濃淡と、世界の構成物としての存在の可能性とは次元のまったく違う話なんだよ。ここまでくれば天才のベッキーにはよくわかると思うけど」
 レベッカは押し黙ったまま俯いていた。姫子はまた歩き出した。レベッカもやむなくその後についていく。しばらく行ったあたりで、もう一度姫子に確かめてみる
「なぁ、くるみは本当に死んだのか?あれが幻だったとかではなく?」
「どちらにしろ深くは考えない方がいいよ。じきに他の皆も死んでいく。次に死ぬのはベッキーかもしれない」
「なっ……!」
「でも死んでしまえるのはある意味仕合せさ。誰の記憶の中でもそれ以上何もする必要はないのだし、この世界でも苦しむことはない。私は違う。本流からはみ出してしまったばかりに遂に世界の壊れてしまうまで、その終局の淵まで立ち会わなければならない。
目を閉じることも出来ないし、死んでしまうことも出来ない。そして最後の一人がこの世界から息絶え、最後の砂粒が消え去るまで、その人と物のそれぞれの記憶の中で、私は無数の苦しみに耐えねばならない。これは拷問だね」
「存在が消え去る瞬間って……どうなんだろうな?苦しいのか?」
430夢の終焉:2007/01/28(日) 20:13:10 ID:???
「さぁね。存在し続けている方がよっぽど苦しいだろうってのは簡単に想像がつくけどね」
「燃え尽きるみたいなものなのかな」
「個人の痛みや苦しみってのはある程度の存在の中で共有される。じきに限りなく無に等しくなるんだろうけど、それでも言葉が続く限り共有された痛みや苦しみはいつでも蘇る。
そう考えると、存在の消失はそういったものを伴わないのかもしれない。くるみちゃんの事故は痛ましいものだったように覚えているけど、ベッキー、彼女の身体から噴き出していた血の色をはっきりと覚えているカナ?」
「……覚えていない」
「それさ。抽象的な言葉とぼんやりしたイメージによって実体は薄っぺらな記憶に置き換わる。二次元の記憶は二度と三次元体構造に復元されることはない。それはこの世界そのものの理の端緒でもあるわけさ」
「と、いうと?」
「私たちは現実の世界から派生したように見えて、現実の実体に必要な要素をはじめから欠損したまま生まれてきた奇形児なのさ。それがまたこの世界、学校から切り離されることの無いぱにぽにの世界」
「ぱに……?」
「私たちには実体のあるこの世界も別のところにいる誰かの視点からすれば、限りなく二次元に近い世界なのさ。
仮にそれを三次元の世界だとしても、その世界だって3.5次元から平面的に覗かれているかもしれないし、その世界だって3.8次元の世界からは二次元的に見えるでしょう。
つまるところ私たちは常に高次の世界からの環視と干渉によってフィクション化されているわけさ」
「お前には、見えるのか?この世界のメタフィクション構造が?」
「うん。俗っぽい言い方をすればね、この世界はまやかしさ。誰が意図したわけでもない、必然的なまやかしを絶対の法則の中に含んでいる。
しかしそれをこの世界で証明することは出来ない。全ては戯言か詭弁に陥るしかないのだからね。だからどちらかを信じるしかない。
そのまやかしが破綻することなく世界は続くものか、いつかは秩序を乱し、崩壊へと導くか。つまり世界は存在しえるか、本質としては存在しないものなのか。私はその絶対少数の後者であるわけだけれども。
それこそが、信じることが物質と世界の存在に先行すると言った理由さ」
431夢の終焉:2007/01/28(日) 20:14:52 ID:???
 二人は黙って歩いた。レベッカはもう何も考えられなかった。忽然と消えてしまったくるみの身体。消えてしまったのではなく、はじめからそこには無かったのかもしれない。
思い出そうとすると、くるみの顔がまた薄ぼんやりとしてくる。そういえば、彼女の最近の髪型はどんなのだっただろうか。それすらもおぼろげで、何とも拠所がない。
姫子はくるみの存在が消え去ったと言う。だが、実はそうではないのかもしれない。或いはくるみという人間ははじめから存在していなかったのではないか、と考え及んだ瞬間、レベッカは激しい恐怖に襲われた。
それならば、彼女と同格の存在の可能性を持つレベッカ自身もまた――!
「さっき、高次の世界からこちらの世界を覗かれていると言ったよね」
「え?ああ……」
「私にはあちら側を見通すことが出来る。見つめ返すことが、つまりこの世界の私なら」
「どういうことなの?」
「私は多くの人間の頭の中の私になることが出来る。つまり、全ての人間の中に存在する片桐姫子は私の一部であり、私は片桐姫子の一部であり、そして片桐姫子そのものである、と」
「どの次元にも往来のできる意識を持っている、ということか」
「むずかしいことじゃないよ。じっくり自分を見つめ直せば誰にでもできる。やって得するものじゃないけどね」
「どんな具合だ?」
「たくさんの私を見てきたよ。ほとんどが単なる欲望のはけ口としての少女さ。そういう価値しか私たちにはありえないのかもしれない」
「私"たち"?」
「まぁ、もうじきにまたやってくるから、彼女に聞いたほうが話はわかりやすいかもね」
 姫子はなおも黙って歩き続ける。レベッカは憔悴しきった表情でその後についていくしかなかった。今度は誰だ?

――――――――

 やがて闇の奥から人の気配がした。目を凝らして見てみると、それは地面に蹲った裸の少女の華奢な肉体であった。
そしてその姿が次第にフェイド・インしてきて、それが芹沢茜であることがうかがえた。
「芹沢?お前、どうしたんだその格好は!」
432夢の終焉:2007/01/28(日) 20:16:49 ID:???
 芹沢はほとんど裸のままだらしなく地べたに横たわり、気怠そうな目つきで姫子とレベッカを見上げる。
顔にはいくらかのかすり傷、よく見ると寒さで白く輝く肌の上にも無数の打撲痕のような痣が見受けられる。
そして何より恐ろしげなのは、彼女の股を伝う幾筋もの血の跡であり――
「芹沢……お前、まさか!」
「あぁ?ベッキーか。大丈夫だよ。何かよくわからないけど」
虚ろな目つき、口元には薄ら笑い。放心と虚脱による、狂人のような、廃人のようなその表情には、もはや生気というものが感じられない。
彼女もまたその存在が死にかけているとでも言うのだろうか。
「お前、一体何があったんだ?」
レベッカは愕然とした表情のまま、すぐに自分のコートを脱ぎ、彼女の冷たい肩の上に置いた。
捨て猫のような惨めな様子で、既にその息も浅い。
「何だかね、色んなところに行って……私、疲れちゃったんだよね」
「一体どうしたんだよ」
 レベッカの問いに、芹沢は少し頭を上げた。
「いや、たくさんの人の中に、私はいるんだなぁ、てね。気がつかされたよ。色んな人が私を見て、彼らの中で新しい私が生まれる。
幸せな妄想もあったけど、ひどいところもあった。だけど、いずれはどの私も見ず知らずの男の人に犯されるってオチさ」
「レイプされたのか?」
「色んなところでね。ある時は顔の見えない男に無理矢理辱められたり、ある時は来栖ちゃんや南条の皮を被った男たちに虐げられた。
どいつもこいつも私の身体を汚していって、その度に新しい私が作り直された。そして時々殺されもした。私は100万回犯され、100万回生き返り、100万回の処女を蹂躙された。
それでも私は常に彼らの中に身体の一部を留めてきた。わかるか、この意味が?大部分の私は男たちの性欲の捌け口として存在していたんだ。
醜い文章で凌辱され、穢れた絵で強姦され、私の存在価値はただ単に性欲の対象とされ続けてきたんだ。
それはベッキー、姫子、お前たちだって変わりはない!」
「私が……何かされたのか?」
 青い瞳を目一杯開いて狼狽するレベッカの肩を見透かしながら、芹沢は答えた。
433夢の終焉:2007/01/28(日) 20:19:23 ID:???
「具体的なことは知らない方がいい。知ってもどうにもならない。ただね、私たちは常にそうなることを宿命付けられている、と言えばいいのかな。
つまり、私たちはどこまでがんばっても所詮は性の玩具から脱け出すことが出来ないんだ。いくら私たちが自分たちの人間的な存在をアピールしても、結局は潜在的なセックスのパターンに繋がるしかないんだ。
無力だよ。私たちは見ず知らずの男たちに犯される悪夢から、存在を続ける限り解放されることはない。私はもう疲れたよ。体中の穴という穴を犯されて、そこがなくなれば今度はドリルや錐で穴を開けられる。
或いは首を切り落とされて、剥きだしの気管が女性器がわりさ。溢れ出す血にエクスタシーを覚える変質者どもが、くたくたになった私の肉片を弄ぶのに飽いたら、また私は蘇り、再び処女膜を破られるところから始めなくちゃならない。
存在の続く限り、永遠にその繰り返しさ」
「逃げ出せないのか?」
「自分は逃げ出せたのかい?」
 芹沢は笑った、皮肉と冷笑の色をたっぷりとこめて。レベッカはぎょっとして思わず後ずさりした。
その瞬間、突風が吹いて、芹沢の肩を覆ったレベッカのコートが舞い上がり、レベッカの視界を塞いだ。慌ててそれを引き離し、芹沢の方を見ようとするが、既にそこには誰も居なかった。
確かに今までここに横になっていた芹沢の姿は、またしても消失してしまった。
「芹沢……?」
「私もね」
 後ろで声がした。驚いて振り返ると、コートに両手を突っ込んだままの姫子が無表情に立っていた。
「芹沢さんの同人誌持っているよ。もちろんベッキーのも、私のも。わかり易くいえば、結局そういう事なんじゃないのカナ?」
レベッカは黙ったまま何も言い返せなかった。もはや限界だった。それ以上の言葉はどうしても続けられなかった。
三度歩き出した姫子の背中を追いながら、レベッカは苦しみで胸が詰まる思いがしていた。
「だけどね」
姫子は振り返ることなく言うのだった。
「あの芹沢さんは、やっぱり処女だったんだよ」

――――――――

 やがて二人は桃月学園にやってきた。校門は夜間警報が作動するので、ウサギ小屋のある裏口にまわって校庭の中に入った。
二人はとぼとぼと歩き、校庭の真ん中を横切り、グラウンド際に植樹されたソメイヨシノの老木の列に沿って歩いていった。
434夢の終焉:2007/01/28(日) 20:21:20 ID:???
 暗闇の中で枝木ばかりの姿をさらけ出す桜のがしゃどくろに頭上を覆われて、レベッカは内心いい心地はしなかった。
夜の学校はそれだけでも気持ちのいいところではないというのに。
「何故だと思う?」
姫子が訊ねた。
「何が?」
「何故夜の学校は気色が悪いのか」
「お化けが」
「もう平気なんでしょ?」
「何でだろうな」
「誰もいないからだよ」
「そうかもな」
「誰もいない、ゆえにこの学校は既に世界の条件を満たしていない」
「世界って何なんだ?」
「一言で言えば」
「何だ?」
「私たちが行き着くことの出来る限界……カナ?」
「限界か」
「そうだね。世界の外から何かを持って来させることはできるけど、この世界からこの世界のものを外に持ち出すことは出来ない。私たちの身体、心を含めて。意味、分かるよね?」
「何となくはな」
 レベッカは大して何も考えないまま、ふと桜の影に目をやった。大きな幹から枝が伸び、まるで血管のように伸びる細い枝が、無数に夜空の皮膚に浮かび上がっている。
と、その中で何か、丸いものが木の枝に引っかかっている。よく目を凝らしてみると、それは意外に大きく、引っかかっているというよりは、吊り下がっていると言った方が妥当なくらいの重みを伴っているように思えた。
 レベッカは首を傾げてそれに近寄っていった。次第に大きくなるその影は、まるで果実のように枝にぶら下がり、ゆらゆらと振り子のように右へ左へ揺られている。
そしてレベッカはハッと気がつき、息を呑んで立ち止まった。
「6号……」
 揺れるその果実の正体は、頸に縄を括りつけ、既に意識を失った鈴木さやかの身体だった。首が引き千切られるほどに伸びきり、口から溢れ出した泡と舌が、その手足とともに地面にまっすぐ垂れ下がっている。
乾いた目を引ん剥き、顔中にチアノーゼの斑点を浮かべ、その表情は既に人のものではなかった。体中の鋭角から、ぽたぽたと何かの液が滴り落ち、つーんといやな臭いが立ち込める。
特徴的なツインのお下げ髪は、片方のリボンが解け切り、まるで本物の幽霊さながらに乱れ髪が顔の側面を覆っている。
435夢の終焉:2007/01/28(日) 20:24:12 ID:???
 レベッカは仰天したが、しかし目は離さなかった。
もしここで目を離せば、再び彼女は消え失せ、今度は二度とその姿を見ることは出来ない。思い出すことすらもままならないだろう。
姫子の言うことは確かだ。確かに、全てのものが崩壊に向かい、忘却の渦の中へと流れ込んでいる。
だが、レベッカは凝視を続けた。彼女の瞳が鈴木さやかの亡骸を睨み続ける限り、その存在は消え去らない。
 これはある種の賭けだ。ここから目を離さない。決して離すものかと踏ん張り、レベッカは物言わぬ果実の影をじっと見据えていた。
もはや後のことなど知ったことではない。世界が崩壊しようがどうなろうがどうとでもなれ。ただ彼女はそうしてこの視線さえ逸らさなければ、崩れゆく森羅万象の理に対するせめてもの抵抗になるとでも考えていたのである。
 レベッカは見る人になった。ひたすら見続け、見ることによって彼女の存在はそこに成り立った。
鈴木さやかの死体は、自重の偏りで、右へ左へなおも回転しながら揺れていた。

――――――――

 「ベッキー?」
 姫子は辺りを見回した。既に彼女の姿は見えなかった。完全に消え失せてしまっていたのだ。
姫子はため息をついた。こうして、ますます世界は崩れ落ちていく。遠くの方を見遣ると、既にビルの影の向こう側はのっぺりとした一面の灰色で、すぐそこにまで世界の終わりが差し迫っていることが実感された。
ああ、あの辺りが限界線なんだろうな、と姫子は呟いた。
 姫子はやがて目を瞑り、その場に崩れ落ちた。土の上に膝を突き、その時を待った。
徐々に肌を触る風が幾何学的な記号めいた、無味乾燥な具合になっていくのが感じられる。
 姫子は目を開けた。既に学校は消え失せていた。あるのはただ廃墟のような岩屑の山だった。
辺りは静寂に包まれ、既に動くものは何一つ見えなくなっていた。
 姫子はもう一度目を瞑った。

"私はアルパであり、オメガである。始まりであり、終わりである"


 そして誰もいなくなった。

436夢の終焉:2007/01/28(日) 20:25:15 ID:???
終わりです。
ある意味自戒の念を込めています。
437マロン名無しさん:2007/01/28(日) 21:12:32 ID:???
>463
GJ!
二次創作に関わる者として、特にエロパロも書いている者として、
胸を痛めつつ食い入るように読みました。
メタフィクション的な、トリッキーな文章構造も面白かったです。

でも私はこれを読んだ後も、このスレへの投稿は続けたいと思っています。
私の中に「ぱにぽに」がある限り。
私が、文章を書き続けられる限り。

異常、独白の人でした。
438437:2007/01/28(日) 21:13:16 ID:???
「異常」ってなんでしょうねw
「以上」の間違いでしたw
439マロン名無しさん:2007/01/28(日) 21:13:59 ID:???
自戒ならご自分の部屋でどうぞ。
キャラを通してスレの存在意義自体を否定するのは卑怯で不愉快だ。
440マロン名無しさん:2007/01/28(日) 21:25:24 ID:???
>439
まあまあ、読み物としては面白かったんだからいいじゃないですか。
「そんなのはチラシの裏に書け」なんて言い出したら、このスレの存在意義が
完全に否定されるわけですし。
441マロン名無しさん:2007/01/28(日) 22:00:42 ID:???
耳が痛い……GJ
442マロン名無しさん:2007/01/28(日) 23:27:30 ID:???
>醜い文章で凌辱され、穢れた絵で強姦され、私の存在価値はただ単に性欲の対象とされ続けてきたんだ。
ここは酷いと思った。他の職人さんに失礼だよ。馬鹿にしてる。
443マロン名無しさん:2007/01/28(日) 23:34:03 ID:???
>>436
エロパロでも書いたことある書き手です。
俺もこういうのが書けたらよかったなあ。GJ。

>>442
「馬鹿にしてる」だろと指摘する人こそが他者を馬鹿にしてるんです。そういう言い方は慎んだ方がいい。
444マロン名無しさん:2007/01/28(日) 23:40:59 ID:???
うんこぴろりんこっこ
445436:2007/01/28(日) 23:42:34 ID:???
あー…申し訳ない、色々と問題のある言い回しで…。
一度完結した作品に注釈をつけるのは無粋だとは思いますが、敢えて一言だけ言わせていただくと
「少なくとも書き手が他の職人さんを貶める意図は一切無い」
ということです。
これだけ細々長々と書いたりする以上、二次創作は完全に賛成派なので。
後はまあ、解釈の問題ですね。
失礼しました。
446マロン名無しさん:2007/01/29(月) 00:05:37 ID:???
>>445
GJです、面白かった。

読んでてなんか微妙に申し訳ない気持ちになった・・
まあ楽しいんで書くのは止めませんが。
ぱにぽにハザードの人でした。
447マロン名無しさん:2007/01/29(月) 00:13:08 ID:???
>>436
久々に食い入るように読ませて頂きました。マジGJです

>>439>>442
これが不愉快な書き手がいるのか?少なくとも俺は存分に楽しめたが。いたら本当にスマン。

キャラを殺すという否定行為をしてまでそのキャラに対する存在意義を引き出すのがこのスレなら、
このスレが否定される事で存在意義を再確認する事もありなのかなーなんて思ったり

448マロン名無しさん:2007/01/29(月) 00:25:04 ID:???
>>439のレスを見て
お買い物ならリップルタウンでどうぞ
って言葉が頭に浮かんだ

>>445
GJ!
なんか……考えさせられてしまったぜ…
449マロン名無しさん:2007/01/29(月) 00:37:52 ID:???
これだけスレを盛り上げた>436が素直に羨ましい。
直前に投下された作品、みんな霞んじゃったもんw
俺もそれだけ議論巻き起こせる作品書きたいわ。
>436、GJ!
450マロン名無しさん:2007/01/29(月) 01:05:56 ID:???
>直前に投下された作品、みんな霞んじゃったもんw
そう言う事はあまり言わない方が…。
451449:2007/01/29(月) 01:08:08 ID:???
失言だったかもしらん。
直前に投稿してた皆、ごめん。
452マロン名無しさん:2007/01/29(月) 08:47:30 ID:???
まあみんな仲良くね。
いつものこのスレ職人さんも読者さんも仲が良くて羨ましい。
453マロン名無しさん:2007/01/29(月) 14:05:37 ID:???
ようやくPCで読めた。GJ!


>>416
独白氏もGJ!都ぉ・・・
454マロン名無しさん:2007/01/29(月) 20:21:50 ID:???
>>436
GJ!
自分は中々楽しめたけどな。確かに最初は『ん?』って思ったけど、キャラの視点から見たらこんな風に感じるかもなとも思ったし、それにキャラの心情を表す一つ表現だし、とにかく色々と参考になった作品でした。なんか自分も書きたくなってきたな。でも所詮携帯厨だしな俺。
455マロン名無しさん:2007/01/29(月) 21:02:11 ID:???
姫子「ケータイからSS書き込んだってイイジャナイ!?」
456マロン名無しさん:2007/01/29(月) 22:08:15 ID:???
俺は携帯から書き込んだ経験あるよ〜
短編だが…
457マロン名無しさん:2007/01/29(月) 22:22:43 ID:???
私も携帯からたまに書き込んでますよ。
アクセス規制のときとか。
458マロン名無しさん:2007/01/29(月) 22:24:42 ID:???
どうしてもパソコンが使えないならケータイでもいいいんじゃない?
459マロン名無しさん:2007/01/29(月) 22:26:01 ID:???
>>455>>456
レスありがと。
ちょっと頑張ってみるよ。
460マロン名無しさん:2007/01/29(月) 22:29:03 ID:???
おっとっと、>>457 >>458の人もあんがと。
461マロン名無しさん:2007/01/30(火) 00:26:35 ID:???
保守age
462マロン名無しさん:2007/01/30(火) 00:28:16 ID:iXGGQBOC
ageるの忘れてたのでもう一度
463マロン名無しさん:2007/01/30(火) 21:04:49 ID:???
独白の人です。
都の独白の続きを書いてみました。
今回もダメ出し、宜しくお願いいたします。
464マロン名無しさん:2007/01/30(火) 21:06:46 ID:???
ぁぃ
465463:2007/01/30(火) 21:07:29 ID:???
<上原都の独白:2>

はるか果てまで黒い墓石の続く、パンチボウルの丘に、私はいた。
私の、シューレースだけラスタカラーのに替えた黒いK-Swissは、
この場に似合わないようで、案外似合っていたかもしれない。

よく手入れされた芝生を、踏みしめながら歩く。
"Keith G. Inouye"…目指す墓石は、まだ先のようだった。
雀たちが、熱くなり始めたアスファルトの道に戯れていた。

右手には、赤いハイビスカス。
一見華やかなこの花は、私の生まれた沖縄では死者に手向ける花だった。
沖縄の母を思いながら亡くなった父の墓前に供えるには、私には
これしか考えられなかった。

車の前で待つ教授に、私は手を振った。
USA Goldを吹かしながら、無言で頷く教授。
何も言わなかったけれど、その目は深い悲しみを湛えているように、
私には見えた。
大学時代の母の恩師だった教授―当時は助教授だったが―には、
私の姿を通して、若き日の母の姿が見えていたのかもしれない。

私はついに父の墓石を見つけると、花束を置き、胸に十字を切った。
一度も会ったことのない、写真でしか知らない、父の墓前で。
466463:2007/01/30(火) 21:08:34 ID:???
一息つくと、私は再び教授の待つ車に向けて歩き始めた。

"Sorry for having kept you waiting, Prof.
Now, let's go to Waikele Premium Outlets."
(待たせてごめんね、教授。
 じゃ、ワイケレのアウトレット行こ。)

"Good grief...
Miyako...don't you understand why we came here?"
(おいおい…。
 都君…何のために来たか、わかっとらんわけじゃないんじゃろな?)

そんな馬鹿な会話が、やたら嬉しかった。
こんな場所に来ていても、やはりいつもの二人はいつもの二人だった。

坂を降りるトレイルブレイザーの助手席からは、眼下にホノルルの
白い街並が一面に広がっているのが見えた。
町並みは、ただただ、一面に広がっていた。
467463:2007/01/30(火) 21:09:50 ID:???
以上です。
都と教授の会話、なんとなく英語にしてみましたが
雰囲気出てるでしょうかw
468マロン名無しさん:2007/01/30(火) 22:03:19 ID:???
GJ
俺は英語が分からんから科白の英語が正しいのかどうかも分からんが
469マロン名無しさん:2007/01/30(火) 22:18:53 ID:???
英検5級を持ってる俺様が来ましたよ
470マロン名無しさん:2007/01/30(火) 22:25:57 ID:???
今年のセンター英語が五割も取れた俺も来ましたよ
471マロン名無しさん:2007/01/30(火) 22:36:47 ID:???
I can not English.
Can not read English, can not speak English, and can not understand English.
I hate English.
472マロン名無しさん:2007/01/30(火) 22:42:06 ID:???
本文よりも英語ネタで盛り上がれるおまいらワロスw
473Pani Poni HAZARD:2007/01/30(火) 23:11:23 ID:???
次行きます

透き通るような青空、何処までも続いているかのような雄大な草原。
そこを取り巻く清清しい空気、最高の場所である。
人目に触れればたちまちその人を魅了してしまうような景色、まさに楽園と言うに相応しい場所だ。

その楽園を独り占めするかのようにぽつんと一人の人間が立ち尽くしていた。
片桐姫子である、彼女は困惑したように辺りを見回し始めた。
「(あれれ?ここは??いったいドコなのカナ???)」
姫子は混乱しそうになっていたがなんとか正常に頭を働かせて考えた。
「(確か私は・・・えっと・・アレ?マホホ?なんだっけ・・・??)」
姫子は思い出すことが出来なかった。いくらオメガバカの称号を思うままにし校内に知れ渡った
バカと言われた生きる伝説の姫子であろうともついさっきまでの自分の置かれていた状況を忘れるとは
考えづらい、となると考えられる線は 一つ。
「(もしかして私・・記 憶 喪 失 ! ?)」
ショッキングだった。バカの上記憶も無い、いくらなんでもこれはひどい。キャラでは済まされない、たまらず姫子は走り出した。
「うわあああああ〜ん!!ベッキィーーー!!玲ちゃぁぁぁぁん!!都ちゃぁぁぁぁん!!6号さぁぁぁん!一条さぁぁぁん!!
私記憶喪失になっちゃったよぉぉぉぉぉ!!!」

何か忘れている気がするが今の姫子にそんなことを考えている余裕は無い、涙目になりながら周辺を駆けずり回るうちに姫子は
あることに気付いた。
「マホ・・?今私みんなの名前を言ったよね・・?私の名前は片桐姫子・・うん、思い出せる、アレ?」
姫子の頭に今までの光景がフラッシュバックしていく。
「あれれ・・・?じゃあ何で私は・・ていうかここはどこなのカナ?」
474Pani Poni HAZARD:2007/01/30(火) 23:14:13 ID:???
天国だよ

「うーん・・ここはいったい・・」

ねえ、ちょっと、姫子ちゃんや。

「なんでさっきまでの事が・・」

え、ちょいまちこれ何?ハミ?ハブ?それともSIKATO?

「むむむ・・何がなにやら・・」

何がむむむだ。オイ、そろそろ俺も泣いちゃうよ?ねえ、泣き叫んじゃうよ?

「(チラッ)何なのカナ〜?」

オイ今こっち見ただろ、明らかに見たよ今、イヤ、マジで、神に誓ってもいい、ていうか姫子ちゃんやそろそろ構ってくれてもいいんじゃね?

「(ハァ・・)うわっ!いつの間に!」
「何かマジで納得できないけど久しぶり姫子ちゃん!貴方の守護神(真っ赤な嘘)ミカエル参上!!」
「・・・で、何か用?」
「(うわ何この嫌そうな顔・・・)そんなことより姫子ちゃん・・何か思い出したくても思い出せないこととかあったりするお年頃?」
「あっ・・うん!そうなんだよ!私いつの間にかここに・・っていうかここドコなの?」

「天国です」
475Pani Poni HAZARD:2007/01/30(火) 23:14:58 ID:???
「えええええええええ!!!!そんなあぁぁ!!私じゃあ死んじゃったの?デッド?デッドになったのカナ?」
「大丈夫だよ!夢だから!」
ミカエルは万遍の笑みで答えた。
「なんだ夢か・・良かったあ・・じゃあさ、私は今までドコにいたの?どうして私はここにいるの?」
既にミカエルは慣れっこになっているのか冷静に姫子は質問した。
「まあ簡単に言うと姫子ちゃんはマンホールから落ちて頭を打ちました。」
「えぇぇぇぇ???それって大丈夫なの!?死んでないよね?」
「・・・・・・・・・・・・」
「何で何も言わないの!!!生きてるんだよね?」
「俺の口からはとても言えない・・・」
「マホホホホ・・・だめだあ・・私死んじゃったんだあ・・・死ぬ前にもう一度カニが食べたかったなあ・・」
「タンコブ一つで済んだなんて・・俺の口からはとても言えない・・」
「・・・・・・(玄武に食べられてしまえ・・)」

「まあとにかく、姫子ちゃんまだ生きてるんで、ちゃっちゃと起きて玲ちゃんとこ行ってあげたら?」
「マホ!そうだ私玲ちゃんと一緒にいたんだ!そう、皆を探さなくちゃ!」
やっと姫子の頭に本来の目的が蘇った。
「でも・・なんでこんな大事なこと思い出せなかったのカナ?」
「だって姫子ちゃん バ カ だし」
「(この最低天使・・・)いくら私でもこんな大事なこと忘れないよ!!」
「でも実際忘れてたわけだし、俺正しいっしょ?ホラね?天使の言う事は信じといたほうがいいよ?」
「(誰が信じるもんか・・)だったらもういいでしょ?私行くよ」
「おいおい姫子ちゃん、もう行くのかい?俺には見えるぜ・・君たちの行く道にゴイスーなデンジャーがいくつも待ち構えているのが!」
見るだけで腹が立つ表情のミカエルの問いに姫子は間髪入れず答えた。
「そんなのどうだっていいの!早く皆を助けに行かなきゃいけないんだから!」
きっぱりと力強く答えたその言葉には決意があった。
「ナルホド・・姫子ちゃん、なかなかビッグなソウルを持ってるらしいな・・よし、ならコイツを持っていきな!」
「?これは・・・?」
476Pani Poni HAZARD:2007/01/30(火) 23:17:12 ID:???

(賞味期限ギリギリで少しヤバ目っていうかヤバイマンゴープリン(タッパー入り))

「なあに礼にはおよばねえ!変わりに玲ちゃんによろしくな!」
「(絶対捨ててやる・・)よし!待ってて玲ちゃん!!今行くよ!!」

「おい、姫子!返事しろ!姫子!クソッ、まいったな・・」
マンホールの中に吸い込まれていった姫子を追いかけて自分も飛び降りたはいいが肝心の姫子はまだ目を覚まさない、
あるのはただ巨大なタンコブのみ。
「まさか死んでやしないだろうな・・?」
玲はどんどん不安になっていた。
「う〜ん・・マンゴープリン・・・」
「!姫子!目が覚めたのか?私がわかるか?」
「・・・玲ちゃん!よかった!無事だったんだね!」
「へ?おい・・普通この状況だと逆じゃないか?まあいいや、その調子だと大丈夫そうだな・・」
「えへへへ・・ごめんごめん前見て歩くの忘れてて・・まさかマンホールの蓋が開いてるとは思わなくてネ・・」
「まあ無理も無いな・・歩けるか?」
「よいしょ!ホラこの通り!ピンピンしてますよ!」
「よし・・ならこれからどうするかだが・・このまま下水道を通っていこうと思うんだ」
「マホ?どうして?」
「上は化け物が我が物顔で歩いてるわけだし、多分これは私のカンなんだがこの下水道はかなり広い、この島のほかの施設と
繋がっていても不思議じゃないと思うんだ。」
さすがに玲の判断力はたいした物で確かにこの下水道は島全域に渡っていた。
「ナルホド・・簡単に言うと上より下!ってことだね?」
「うん・・まあそんなとこだ、よし!行くぞ!」
「アイアイサー!行きましょう隊長!!」

こうして二人は薄暗く湿った下水道を進んでいった。
あの時ミカエルが言ったゴイスーなデンジャーが早くも待ち構えているなどとは思わず。
477Pani Poni HAZARD:2007/01/30(火) 23:19:53 ID:???

とりあえずここまでです、ミカエルの口調とかいろいろ突っ込みどころが多い気がしますが
勘弁してください。
何かあったらどうぞ

>>463
GJです、今後も楽しみにしてます。
478マロン名無しさん:2007/01/30(火) 23:20:30 ID:???
GJ!
夢シーンで、ほっと一息ですね。
続きも楽しみにしてますよ!
479マロン名無しさん:2007/01/31(水) 00:03:28 ID:???
>独白さん
>Paniさん
二方ともGJです!
480Pani Poni HAZARD:2007/02/02(金) 00:09:31 ID:???
次行きます

下水道、普段生徒たちが暮らしているところにももちろんあるものだ。
しかし下水道というものはいくら近いところにあるとはいえ、わざわざ入る
などということは決してないところだった。なぜなら生活排水や汚水などが流れ込む
場所に、仕事でもないのに進んで入ろうなどという物好きはいないだろう。
こんな理由から下水道に入るなどというのはそうそう有るものではないということがわかる。

そんな場所を一人で進んでいる物好きな人物がいた。
1年B組綿貫響である、彼女は若干疲れた顔をしてゆっくりと湿気で一杯の下水道を歩いていた。
彼女もまた島を我が物顔で歩く化け物たちから逃げてきた身である、しかしむやみに逃げるわけでもなく
なるべく身を隠せそうな場所を探して逃げてきた。そのうち身を隠すよりここから遠くに離れた方が得策だと考え
この下水道に目をつけた。さすがに諜報部は伊達ではなかったようで目の付け所は間違っていなかった。
現にここに化け物の姿は見えない。
・・・乙女と鈴音は大丈夫だろうか、うまく逃げられているだろうか。こんな事態なのだから
自分の心配をするべきなのだろうがそうはいかない、大切な友達なのだ。
481Pani Poni HAZARD:2007/02/02(金) 00:12:11 ID:???
―――しかし心配ばかりするわけにも行かない、――少し疲れたので立ち止まると、友の生存を信じつつ頭を切り替え考え始めた。
今重要なのは安全の確保、それはもっともだがそれよりこの事態の原因が気になる。
今起こっているのは余りに現実離れした事態だ、それゆえこの件についての疑問は膨らむ、
そうこう考えるうちにあることを思い出した。それはまだ夏休みに入る前、いきなり部室に部長が現れ
D組の南条のことを聞いてきたことだ。
いきなり聞かれたので少し言葉に詰まったが普通に南条についての説明をした。部長は黙って聞いていた。

482Pani Poni HAZARD:2007/02/02(金) 00:12:59 ID:???
「―――わかった、いいか、よく聞け、その南条の家がやってる南条グループがだ、なにかやばいことをやっているらしい」
「やばいこと?それってどういうことです?」
「情報があまりに不確定でまだ詳しくはわからんが・・南条グループ総出で何かの製造を行っているらしい」
「何か?何かってなんです?―――まさか戦闘機とか戦車とか?」
「たわけ・・どうしたらそんな発想の飛躍ができるんだ・・違う、情報によれば、何かの遺伝子をいじるようなもの、つまり
バイオテクノロジーの産物だ、それも、おおっぴらには言えない様な物を・・だ」
「バイオテクノロジーって・・そんなもの作ってどうするんでしょう?」
「わからん・・まあそうと決まったわけではないが、南条グループが何らかの怪しい動きを見せているのは事実だ・・用心しろよ」
「あっ部長・・行っちゃった・・それにしても南条グループ・・何するつもりなんだろう・・?」

これだ、響の頭の中が透き通ったようになっていく、部長の言っていたことは本当だった、やはり南条グループはおおっぴらに
公表できないことを影で行っていたのだろう、とすればこの惨劇はそのバイオテクノロジーの類から生み出されたものということになる。
あの腐った奴らもだ。
なぜ?なんのために?
この説が正しければなぜ南条グループはそんなものを作って何をするつもりだったのか?いや、その前に作られたものが何なのかという
疑問を先に解消しなくてはならない、――人間を腐った化け物にするもの?そんなはずが無い、しかし現に腐った奴がふらついている。
もしそうだとするならそんなことをして何のメリットがある?南条グループ総出でそんなもの作るだろうか?
わからない、考えても考えても答えは出てこない、余りにも予測に頼らなければならない部分が多すぎる。
しかし何かしらの答えを出さなければ納得できない、考えるうちに響はじょじょに、じょじょに真実への鍵へと辿り着こうとしていた。
響は気付かなかった。真実の証人がすぐ近くにいることに、その証人の目が、響をじっと見つめていることに。
483Pani Poni HAZARD:2007/02/02(金) 00:15:04 ID:???

この世界には色々な生物がいる、分類分けしても数え切れないほどの数がだ、それにまだ未確認の生物や
つい最近発見されたという生き物もいる、そんな生息地も習性も違う生き物たちにも共通点がある、それは
狩る側か、狩られる側か、ということだ、弱肉強食、こんな言葉がある、呼んで字のごとく弱いものは死に
強いものの糧となる、すなわち弱いものは死に強いものだけが生き残る、そう言う意味の言葉である。
今のこの島にはその言葉が似合う、なぜなら弱肉強食の世界がありのままに再現されているからだ。
弱い人間は強い化け物の餌になる、まさにそのとおりである。
―――そして考え込む響を見ているものは・・間違いなく「狩る側」であった。

「狩る側」の生き物は下水道の天井に張り付いたまま静かに移動を始めた。音も立てずにゆっくりとだ。
その姿はほとんどの人間が嫌悪するであろう姿だった。
そして響の真上までその足を進めると空中で回転しつつ、ゆっくりと落ちていった。響が異常に気付き上を見上げた時、狩りは完了していた。
「なっ!?・・いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
叫ぶ響の声などまったく意に介さず「狩るもの」は次の段階に以降した。この世界に生きる生物が狩りの後にすること、すなわちそれは狩りの目的
捕食である。
ゆっくりと響の体に何かが突き刺さっていく、牙である、彼はこれから響に毒液を注入し動きを奪う、そして次に消化液を注入し、ドロドロに溶かし、捕食する。
「いやぁっ・・いやっ・・・ゲホッ・・・うあああああ・・・・」
もうすでに響は絶命しかけていた。いたいけな女子高生を化け物が食っている。人間からしてみれば大変なことである。
しかし、自然という広い分野から見れば、これはごくありふれた光景である、なぜなら響は「狩られる側」すなわち「捕食される側」であり
今ゆっくりと響に消化液を注入している「彼」は「狩る側」であり「捕食する側」なのだから、ここには人間の常識など存在しないのだから。

もう息をしていない響の顔、「狩る側」 であり 「捕食する側」 でもある 「化け物」 の八つある眼には、それが映っていた。

484Pani Poni HAZARD:2007/02/02(金) 00:16:50 ID:???

ここまでです、珍しくネタがすぐに浮かんだので投下させていただきました。
最近なんか次回に続くみたいな終わり方ばっかだったんでたまには一回で完結する感じにしようかなと・・
呼んだ人はコメントくれるとありがたいです

485マロン名無しさん:2007/02/02(金) 00:19:00 ID:???
視点が多すぎてストーリーが進まない気が……
486Pani Poni HAZARD:2007/02/02(金) 00:57:52 ID:???
>>458
言われて気付いたので感謝します

次からは極力絞っていきます
いつ終わるか見当も付きませんがよければ読んでやってください・・
487Pani Poni HAZARD:2007/02/02(金) 00:58:39 ID:???
>>485
あてで、寝ぼけてるようなので寝ます
488マロン名無しさん:2007/02/02(金) 00:59:30 ID:???
GJ!
しかし、ここで食われ、エロパロスレではレイプされ、
ホントろくな目に合わないな綿貫w
489マロン名無しさん:2007/02/02(金) 10:21:42 ID:???
GJです〜
それにしても「南条財閥」って汎用性あるよな…

>>488
俺がそんな悪いイメージなぎ払ってやる…全て!!
と言ってみた
490マロン名無しさん:2007/02/02(金) 12:39:42 ID:???
じゃ綿貫の純愛モノかカッコよく活躍する話よろしこ。

って、純愛だと学級崩壊スレじゃなくなってしまうなw
491マロン名無しさん:2007/02/02(金) 13:44:41 ID:???
実際はリクに答えられる程の技能は持ち合わせていないんだぜ!
自由に作るとしたら前投下したヤツ関連になるが
492マロン名無しさん:2007/02/02(金) 19:19:46 ID:???
文章で自分を表現するのがこのスレだから、自分が書きたいもの、
書けるものを書けばいいんダヨ。
オメガWKTKカモ〜。
493マロン名無しさん:2007/02/03(土) 00:54:41 ID:???
ネタはあるけどオチがない
494マロン名無しさん:2007/02/03(土) 09:46:32 ID:???
早乙女先生が
495マロン名無しさん:2007/02/03(土) 11:11:13 ID:???
綿貫と
496マロン名無しさん:2007/02/03(土) 12:12:57 ID:???
ミラーワールドで
497マロン名無しさん:2007/02/03(土) 12:17:02 ID:???
二人きり
則ち…
498マロン名無しさん:2007/02/03(土) 23:05:06 ID:???
乙女「はっ! ドリームか!?」
499マロン名無しさん:2007/02/04(日) 00:09:42 ID:???
オチなんかなくたっていいジャナイ!
500マロン名無しさん:2007/02/04(日) 20:50:30 ID:???
500
501マロン名無しさん:2007/02/06(火) 00:00:31 ID:???
保守
502マロン名無しさん:2007/02/06(火) 02:05:46 ID:???
こんばんは、独白の人です。
明日も仕事ですが、鬱屈した感情にまかせて投稿します。
503502:2007/02/06(火) 02:06:41 ID:???
〈高見沢ハルカの独白〉

液晶画面に映し出される文字列が、紙に印刷された漢字と仮名の群れが、
この私の全てだった。
このちっぽけな私が、無力な私が、本当に自由になれる瞬間は
フィクションの世界にしか存在しなかった。

本当の私。
偽らざる私の姿。
高見沢ハルカという人間の、目指していた生き方。
それを曲げて生きることは、辛く、痛く、苦しかった。
でも、そうするしかなかった。
不器用な私には、そうするしかできなかった。

ひとつ1〜2バイトの文字で描かれた私の分身たちは、キャラクターたちは、
苦しみ、悲しみ、傷つき、笑い、怒っていた。
私の作る小さな世界で、喜怒哀楽の感情豊かに、巧みに人生の課題へと
立ち向かっていた。

それを見て、ある者は涙し、ある者は笑みを浮かべ、またある者は
憤ってくれた。
私には、それがたまらなく嬉しかった。
特に、大好きな祖父が、私のつたない文章を読んで感想を伝えてくれる、
その瞬間が一番嬉しかった。
504502:2007/02/06(火) 02:07:40 ID:???
でも、物語の中の彼等は、現実の私じゃなくて。
自分の運命さえ自分で決められない、無力な私ではなくて。
流されて生きている、このちっぽけな私ではなくて。

それが同時に、私の心をちくちくと刺した。
私の無力さを、密やかに刺した。

私は、吸いかけのソブラニーを、深く吸い込んだ。
机の上に立ち上る紫煙が一瞬途切れ、ロシア葉の煙が肺に染み込んだ。

どうしようもなく、無力だった。
現実という壁が、社会という壁が、私の前に立ちふさがっていた。
それを思うと、さっきから止まっている原稿の文字を増やすことは、
とてもできなかった。

私は、くしゃくしゃになった髪を再びかきむしった。
開けて冬の夜の空に叫びたい、そんな衝動にかられた。

夜は、今日も長かった。
どうしようもなく、長かった。
ちっぽけな私を際立てて、その場に重く横たわっていた。
505502:2007/02/06(火) 02:09:39 ID:???
以上です。
すいません、今かなり精神的にヤバいです。
芹沢ネタをエロパロスレにも投げてますんで、良かったらそちらも
ご覧くださいませ。
506マロン名無しさん:2007/02/06(火) 08:27:18 ID:???
独白さんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
しかもハルカ姉さんだ(* ´Д`)ハァハァ
507マロン名無しさん:2007/02/06(火) 08:32:31 ID:???
あと誰がのこってるんだ?
しかしまたタバコか。
この際だから残り全員に似合う煙草を吸わせて見るのも面白そうだな。
508505:2007/02/06(火) 10:34:58 ID:???
外回り中にケータイから書き込んでますw

皆さん、コメントありがとうございました。
毎度、厚く御礼申し上げます。

あとこっちのスレで書いてないのは、一年キャラだと芹沢、優奈、
ヒカル、ユカ、チカ、伴、磯部、伊藤さん、ズーラくらいですかね。
先輩キャラは麻里亜とハルカ以外が未執筆、小学生キャラと動物キャラは
まだ誰も手をつけてません。
あ、あとおじいちゃん先生とミカエル、セガール、エイリアンたちも
やってませんねw

さて、私の書くSSの登場人物たちは皆、ぱにぽにキャラなのと同時に、
ハルカの独白同様、私の分身たちでもあります。
そのため、SSになるのはどうしても私が描きやすいキャラにちょっと
偏ってしまいますが、書ける範囲でなるべく多くのキャラを拾って
いきたいと思ってます。

でも、描きやすい同じキャラで、何度も文章を書いてしまうことも
あるかもしれません。
また、私の分身だけに、キャラクターがワンパターンな行動・思考に
なりがちかもしれませんが(喫煙とかは完全にそうですねw)、
何卒暖かく見守って頂ければ幸いです。
509マロン名無しさん:2007/02/07(水) 13:45:16 ID:???
>>508
今後も書きたい事を書いてください。
楽しみにしてます。
510マロン名無しさん:2007/02/08(木) 15:23:35 ID:???
保守
511マロン名無しさん:2007/02/09(金) 15:24:24 ID:???
保守
512マロン名無しさん:2007/02/09(金) 23:32:36 ID:???
宮田スレが面白いことになってるね
513マロン名無しさん:2007/02/10(土) 00:06:14 ID:???
どうなってるの?
514512:2007/02/10(土) 00:30:54 ID:???
このスレ的にウケそうなSS書いてる職人さんがいるんだ。
嫌がらせされまくって精神を病んだ宮田が首吊る話。
515マロン名無しさん:2007/02/10(土) 02:29:12 ID:???
それは…ここに綴るべき話ジャマイカ?
516マロン名無しさん:2007/02/11(日) 05:46:51 ID:ApsSbfCs
保守AGE
517マロン名無しさん:2007/02/12(月) 04:55:28 ID:???
保守
518マロン名無しさん:2007/02/12(月) 16:15:57 ID:???
そろそろ新作が投下されてもいい頃だが、全く動きがないな…
みんな忙しい?
519マロン名無しさん:2007/02/12(月) 16:16:44 ID:???
規制とか?
520マロン名無しさん:2007/02/12(月) 21:48:42 ID:???
呼ばれても無いのに俺、参上!
最近過疎ってますねえ・・
投下したいのは山々なんですがネタがまとまらないもんで・・
今週中には投下できるかなと、よければ読んでください
ぱにぽにハザードの者でした
521マロン名無しさん:2007/02/12(月) 22:20:20 ID:???
独白の人です。
引越しでへとへとになったところに、風邪引いて死んでましたorz
体調が悪いと鬱な思考がどんどん出てくるんで、ネタはできやすいのですが…。
ともあれ、なるべく早急に復帰しますので、今しばらくお待ちくださいませ。
522マロン名無しさん:2007/02/12(月) 22:43:27 ID:???
まあ気長に待ってます
523マロン名無しさん:2007/02/13(火) 01:08:09 ID:???
2週間後に投稿できるようにがんばります……
524マロン名無しさん:2007/02/13(火) 04:08:59 ID:???
受験シーズンネタを考えようとしたけど、こいつら進学とかすんのかww
525マロン名無しさん:2007/02/13(火) 21:56:28 ID:???
せめてハルカ姉さんだけでも大学進学させてあげて下さい
526マロン名無しさん:2007/02/13(火) 22:05:09 ID:???
未来の話書いてる人もいたし進学させたければさせればいいとおも
527マロン名無しさん:2007/02/13(火) 22:05:54 ID:???
女子なら都と南条とハルカと麻里亜は確実に大学行くだろな。
短大かもしらんけど。
玲は金なくて大学にいけず就職or奨学金もらって…ってパターンと予想。
姫子は代アニw

男子なら犬神は大学行くだろ。
修は…わからんw
528マロン名無しさん:2007/02/14(水) 02:04:33 ID:???
修やくるみもなんだかんだいって犬神や都と同じ大学に行きそう。
ていうか都合よく私立桃月大学がありそうだ。
529マロン名無しさん:2007/02/14(水) 07:41:39 ID:???
都は何度も浪人して姫子は一流の芸大にストレートで行きそう。
530マロン名無しさん:2007/02/14(水) 20:29:30 ID:???
磯辺はベホイミに執拗にせがみ
神原は追ってくる綿貫から逃走を図り
犬神は「妹の物だけで充分」と貰うのを断固拒否し
桃瀬は最早最大級のシスコンぶりを発揮し、何者をも近寄らせない。

早乙女の周りは宮本・秋山・五十嵐の三つ巴となり
ジジイはつまみ食いにより腹を壊して病院送りに。

高瀬は貰うどころか奪われ
篠原はちょっと臆病なくらいが丁度良く
北川と大滝は別に期待などしていない。


岡本はロボ子とドジラから板チョコを貰った。
お詫びとは分かっていたが、少し嬉しかった。
531Cynical Letter:2007/02/14(水) 23:56:36 ID:???
エロなしグロなし人死になしです。
バレンタインネタを思いついたので勢いだけで書いてしまいました。
532Cynical Letter:2007/02/14(水) 23:57:48 ID:???
「芹沢さん、今帰りなんですか?」
「あ、来栖ちゃん」
 偶然を装って声をかけたけれど、本当はずっと前から待っていたのだ。
 待っているのを誰にも知られたくなくて、こっそり移動したり隠れたりしながら、芹沢が来るのを待っていた。
「あの、芹沢さん」
 来栖はかばんを指でなぞってそこにあるものを確認する。奮発した高級なチョコレートの詰め合わせは風に解けて消えたりはせず、ちゃんとそこにいた。
 少しずつ節約して貯めたおこづかいで買ったもので、小さな箱なのにすごい値段がする。
 大きな買い物だったけれど、芹沢への自分の想いを仮に値段で表すとしたらこれでもとても足りないくらいだ。
「今日は」
 バレンタインですよねこれよかったら食べてください。
 それだけの事を言う間もなく、芹沢はいつもの来栖の大好きな笑顔で手に持った包みを掲げて言った。
「あっ来栖ちゃん、これさっきもらった義理チョコなんだけどさ、一緒に食べない?
 南条の奴がさー、犬神にだけ渡すのは恥ずかしいからってんで女子も含めて全員に配ってやんの。
 学級委員使って前からさープリント配るみたいにして」
 芹沢は豪快に包装紙を引きやぶって中身を取り出した。
「で事故に見せかけて犬神の分を踏んづけて、替わりにって本命を渡したんだけどあからさまに見た目が違うのな」
 芹沢がケラケラと笑いながら取り出したその中身を見て来栖は凍りついた。
 自分のよりずっと高級そうな包装紙に包まれたそれは、自分が用意したものと同じチョコレートだった。
「へ……え……そう……なんですか」
 同じものがたくさん並んでいた以上、大田区、桃月、ひょっとしたらこの校内でも同じチョコレートをもらう人間がいてもおかしくはないし、
来栖も同じチョコレートを買って行った少し年上の女の子が誰にあげるのだろうかと考えたりもした。
 しかし、まさか同じ相手に送られるとは思ってもいなかった。
 しかも……
「おー、旨そうじゃん」
 本命を隠す為にクラス中にばらまいた義理チョコで。
「来栖ちゃんから先選んでいいよ。ほらほらこれなんか美味しそうだよ?」
「あっ、ありがとうございます」
 来栖は涙をこらえて笑顔を作って見せたが、きつく閉じたまぶたの間から涙が流れ落ちて行った。
533Cynical Letter:2007/02/14(水) 23:58:45 ID:???
「来栖ちゃん?」
「ごめんなさい私ちょっと……用事あったのでっ!」
 芹沢の怪訝そうな声に弾かれるようにして来栖は走り去った。その場にいたくなかったのだ。
「ちょうわいてっ! せ、先生だぞ!」
 途中で何人かにぶつかった。申し訳ないとは思ったけれど立ち止まる気持ちにはならなかった。

 いつか芹沢が南条をぎゅっとしていたトイレまで来て、来栖はふらふらと一番奥の個室に入った。
 芹沢の前ではあれほど堪えようとした涙が今はまるで出てこない。
 薄い壁にもたれて、かばんの中から自分のチョコレートを出して眺めてみる。
 自分のありったけの思いを込めたはずのそれは小さくて頼りなかった。
 いっそトイレにぶちまけてやろうかとも思ったが、値段を考えるとそれも出来ず、またそっとかばんにしまいこんだ。
534Cynical Letter:2007/02/14(水) 23:59:59 ID:???
以上です。
タイトルはその場で思いついたんですが話が浮かんだのはついさっきです……
なんとか当日中に投稿できたかな……
535マロン名無しさん:2007/02/15(木) 00:01:46 ID:???
本当にギリギリだったな
536マロン名無しさん:2007/02/15(木) 02:20:59 ID:???
GJ。
オチがこのスレらしくていいw

来栖かわいいよ来栖。
なんかすごく気持ちわかるなぁ。
そして俺らも南条のように知らず知らずのうちに他人を傷つけてるのかなぁと
ちょっと思った。
537マロン名無しさん:2007/02/15(木) 15:06:55 ID:???
GJ。

そこで終わるのがこのスレらしいな。
普通のSSだったら芹沢が追いかけてくるか泣いてるところを他の誰かに見つかって…
やべぇ妄想が止まらねえwww
538マロン名無しさん:2007/02/15(木) 19:50:39 ID:???
それで来栖が泣き付くワケだな?
539マロン名無しさん:2007/02/16(金) 18:47:48 ID:???
独白の人です。
風邪で死んでたときに思いついたネタです。
540539:2007/02/16(金) 18:49:25 ID:???
〈ベホイミの独白〉

窓の外は、冬の曇り空。
どんよりと低い、ミルク色の空。こんなはっきりしない天気でも、外に出たかった。
みんなと、会いたかった。

日当たりの悪い部屋、煎餅布団の中で、ビープ音をたてる体温計を
脇から取り出す。
表示は、38.5℃。
少し熱は下がったが、全身を襲う倦怠感と関節痛、喉の痛みはまだ
ちっとも治まらなかった。

私以外誰もいない、一人だけの部屋。
枕元には、読み終えた漫画の山と、テレビのリモコン。
ただ、心細かった。
一人の部屋が、窓の外から聞こえる街の喧騒が、私の心の隙間を
ただ広げていた。

カラダを起こし、咳き込みながら、メディアが昨日置いていってくれた
枕元のミカンをかじる。
甘酸っぱい、でも風邪のせいかいつもよりぼやけた味が、口に広がった。
541539:2007/02/16(金) 18:53:27 ID:???
「咳をしても独り…っスね…。」

本当に、独りだった。
いつものD組の喧騒が、恋しかった。
今なら、あの磯辺にも優しくしてやれる気がした。

「今、D組のみんなは何してるんスかねぇ…。」

芹沢さんは、今日も着ぐるみで騒いでいるのだろうか。
南条さんは、また犬神くんとベタなラブコメを演じているのだろうか。
宮田さんは、いつものようにドジをやらかしてるんだろうか。
そしてメディアはそれを、ジイさんと二人、困ったようなあの笑顔で
見ているんだろうか。

「私の魔法が本物なら、今すぐこんな風邪、治しちゃうんスけど…。」

そう、私は偽物だった。
偽物の魔法。
偽物の身分証。
偽物の経歴。
偽物の連帯保証人。
全て、偽物だった。
本物の私は、とっくに死んだことになっていた。
わかってはいたけど、どこか寂しかった。

レースのカーテン越しに見える本物の空は、相変わらず低かった。
木枯らしが、並木を撫でていた。
私の心にも波風をたてながら、静かに撫でていた。
542539:2007/02/16(金) 18:58:01 ID:???
以上です。
以前のベホイミネタとは、かなり毛色が違ってしまいましたねw

今日3日ぶりに仕事に出たんですが、病み上がりのせいかホント
ヘトヘトになりました。
早く完全復活したいですw
543マロン名無しさん:2007/02/17(土) 02:40:14 ID:???
ちょっとほろりときちゃった・・・
544Pani Poni HAZARD:2007/02/19(月) 01:10:27 ID:???
久しぶりに次行きます

「すいませーん!誰かいませんか?」
修が玄関からすぐ入ったところにあるロビーで受付の中を覗きながら言った。
「お医者さん、いないのかな・・?診療所って書いてあったのに・・」
優奈が心配そうに言う、確かにここは山の中にある診療所である、普段なら医者や看護婦がいるのが
ごく当たり前だった。
「みんな逃げちゃったんじゃないの?仕方ないわよ、こんな状況なんだから」
優麻の意見は的を得ていた。こんな非常事態に病院でレントゲンを取る医者がいるはずがない。
現にここには人の気配がしなかった。
「確かに柏木の言う通りみんな逃げちゃったのかもな・・・多分誰もいないぞここ」
受付を除くのをやめた修が姉妹に顔を向けて言った。
三人は意図的に「逃げた」「いなくなった」という言葉を多用した。
「死んだ」「食われた」という限りなく正解に近い答えを、意図的に遠ざけていた。

優麻も優奈もロビーにあるソファに腰掛けていた、さっきまで山道を歩いていたのだから疲れてもいるだろう
足を怪我している優麻はなおさらだ。
「とにかく医者はいないけど・・しばらくここにいたほうがいいかもな、やみくもに山道歩いても意味無いだろうし
みんなを探すって言っても当ても何も無いわけだし・・」
ここは姉妹の為にも少し休憩を取っておくべきだと考えた。それに外の闇は深まる一方であり、時々遠吠えのようなものが
聞こえてきていた。外にはあの獣たちがどこかを我が物顔で徘徊している、もちろん獲物を探して、だ
嫌が応にも信じなければならない。
「だったらちょっと・・休ませてもらおうかな、少し疲れちゃった・・」
優麻はそう言うとソファに深く腰掛けリラックスし始めた。この状況で完全にリラックスできるはずも無いが
山道を歩くよりよっぽどマシである。
545Pani Poni HAZARD:2007/02/19(月) 01:11:16 ID:???

改めて優麻の傷を見る、血は止まりかけているが傷口はまだ新しい。
―――修は少し考えると口を開いた。
「柏木、ちょっと二人で待っててくれるか?」
「「へ?どうかしたの?」」
二人同時に同じ言葉を綺麗に発した、さすがは双子である。
「ああ、その傷、応急処置も何もしてないだろ?だから何か探してこようかと思ってさ
あんなのに噛まれたんだから・・消毒ぐらいはしておきたいだろ?」
「ま、まあそうだけど・・桃瀬君・・大丈夫なの?」
「大丈夫だよ、ちょっと探してくるだけだからさ、すぐに戻ってくる」
「桃瀬君・・・・」
「優奈が心配そうな顔で見つめてきていた。この顔を見るのは何度目だろうか。
「・・大丈夫だよ、絶対帰ってくるから」
「・・うん、わかった」
「じゃ、行ってくる!」
546Pani Poni HAZARD:2007/02/19(月) 01:12:04 ID:???

ロビーに二人を残して修は診療所の中を探索し始めた。
まずロビーからの扉を開けると廊下だった。壁にはなにやらよくわからない絵が掛けられている。
カツカツと静かな室内に修の足音が響いている、電気は供給はされているようだがやけに照明が暗い
なので薄暗い中進んでいかなければならず、それが修の恐怖心を煽る、それを飲み込み歩いていく。
(ここは・・病室か)
001と書かれた扉を開け中に入ってみる、簡素な造りのごく普通の空間だった。少し調べて回ってみるがめぼしい物は
何も無い、部屋を出ようとしたとき扉のすぐ横にある洗面台のところに何かを見つけた。
(ジッポライターか)
手にとってそのライターを吟味してみる、いい品なのか違うのかさっぱりわからない、その上火がつかないことが判明した。
オイルが無いのだ。
(まあ・・一応持っとくかな)
ライターをポケットに入れると病室を出てまた廊下を歩き出す、その後002、003、004号室と探してみるが収穫はゼロだった。
しかしあくまでついでであり期待はしていなかったので気にせずに廊下の突き当たりの扉を開けてみた。
(また廊下か・・)
しかし今度の廊下は病室が並んでいるのではなく階段やエレベーターなどがあるところだった。
ここは以外と広いのだろう、少し周りを見回すと診療室と思わしき扉があるのに気付いた。
(ここなら・・)
547Pani Poni HAZARD:2007/02/19(月) 01:13:54 ID:???
扉を開け診療室の中に入ってみる、良くある造りの様で椅子が二つ並んでいた、普段はここに腰掛けていたのだろう。
棚などを引っ掻き回し本来の目的である消毒液や包帯を探してみた。しかし、無い。
(あれ・・?おかしいな・・)
注意深く見てみるがやはり無い、修はまだ探していないところが無いかと思いまわりを見回してみる、ふと気付くと上の棚にまだ
調べていないところがあることに気付いた。あそこだ、修は椅子を棚の前に持ってくるとその上で背伸びした。そのまま棚を開けて
中を探してみる、やはり無い。
(まいったな・・ここじゃないなら他には・・)
その刹那、修の腕が一つの瓶に当り、そのまま瓶は真っ逆さまに落ちていった。
「あっ!」
おもわず声を出したがもう遅い、瓶は無残に床に叩きつけられた。
ガシャンと音が鳴ったかと思うと瓶の中のものが床にぶちまけられ、鼻を突く臭いが部屋に広がった。
(なっ・・何だこれ?)
瓶の中に入っていた薬品はプツプツと音を立てている。
(・・酸か?)
中身は硫酸だとか塩酸だとかで有名な酸であった。
(危なかったな・・しかしなんだよここは・・包帯が無くてこんなもんがたくさんあるなんて)
修が調べた棚はほとんどが濃度の高い硫酸系統のもので埋め尽くされていた。
そこに手を突っ込んで探していたとなるとあまり気分のいいものではない。
(仕方ない、他の部屋に行くか・・)
少し落ち込みつつ修は部屋を後にした。
548Pani Poni HAZARD:2007/02/19(月) 01:15:04 ID:???
「優麻ちゃん?・・寝ちゃったの?」
修が優麻のためにロビーを後にしてから少し経った、優麻はリラックスしている途中で寝てしまったらしい。
優奈はこんな時によく眠れるものだと少し感心した。疲れているのだろう、そっとしておいてあげることにする。
一方で優奈は少し不安になった。修はいないし優麻は寝ている、ここには優奈一人しかいない、また遠吠えが聞こえた。
扉を開けて外に出ればあの遠吠えの主が襲ってくるかもしれない、そう考えるだけでますます不安になった。
―――いけない、また私ダメになっちゃう・・大丈夫、すぐに桃瀬君は戻ってきてくれる、うん、大丈夫
自分で自分を落ち着かせると受付に向かってみた、受付の横には扉があり受付にそこから入れるようになっている。
じっとしていると不安に負けそうになる、なので気を紛らわすために動いてみることにした。ドアノブを回すと扉は簡単に開いた。
(あれ、鍵とかかかってないんだ)
そのまま受付の中に入ってみる、周りをみると何かおかしいことに気付いた。お医者さんなのだから忙しいだろう、しかしそれにしては
あまりにも乱雑にされていた、こんな小さな受付に膨大な量の書類が山積みにされていたのだ。
その書類の山の隣にはノートパソコンが置いてある、優奈はそのうちの一枚を手にとって見てみた。

昆虫類への投与結果について

投与の結果飛躍的な巨大化と凶暴化が見られた、元々この種が兼ね備えている
外殻などの強固さや、体内にある毒素などのデータも巨大化に伴い飛躍的に上昇した。
しかし本来が昆虫というまだまだ謎が多い種でもあり、知能のデータもほとんど取れていないため
兵器としての運用はほぼ不可能であり断念、実験体の固体は廃棄処分にした。

ケルベロスについて
最近犬舎のケルベロスのゾンビ化が進み、それに伴い凶暴化が急速に進行中であり
担当員が檻に引きずり込まれ死亡した。一刻も早い早期決断と対処を求める方針である
以下は昆虫類への「T」の投与の推移である

549Pani Poni HAZARD:2007/02/19(月) 01:15:53 ID:???

書類にはそう書かれていた。後はなにやらよくわからない文字や数字ばかりで読めない。
(これって・・いったい・・?)
そのときとなりのパソコンに目が向いた。画面にはメールの画面が出ており、優奈はそれに気付くと
書類を置き、パソコンに向かった。メールにはこう書かれていた。
550Pani Poni HAZARD:2007/02/19(月) 01:17:14 ID:???
最近データに無い生物に研究員が殺される事件が発生している、本日も一人の研究員が死亡していた。
我々はサンプルの入手に踏み出そうとしたが他の問題が先決なため断念した。しかし襲われた研究員の一人が
必死の抵抗で撃退に成功、そこに残された組織から解析を進めた結果、この生物は我々の研究によって生まれた副産物
の様なものであることが判明した。この生物は簡単に言うとゾンビが変異したものである、充分に栄養分を摂取できたごく
一握りのゾンビが体に変異を起こしこの姿になるものと考えられる。特徴としてはこの生物には視力が無い、そのため音で狩りをするのではないか
という仮説が立っている。そして天井や壁に貼り付けるほどの能力とムチのようにしなるその長い舌が特徴である。
舌を使って攻撃するらしく死亡した研究員はほとんどが体を貫かれて死亡している、この事から相当な強度を誇る物だと思われる。
以上を踏まえ、この生物の名前を特徴の舌から取り、「リッカー」と名づけることにする、リッカーとは「舐めずる者」の意
今後このリッカーも視野に入れ研究を進めていく。

島のゾンビの数が少し許容数を超えてきているため、排除作戦を準備中

「えっ・・どういうこと・・?なんなの・・?」
おもわず声に出して困惑する、その時自分たちが改めて狂った島にいるということを思い知った。
あのゾンビは呪術などで蘇ったものでは決して無いということが、優奈の頭の中で理解されつつあった。
551Pani Poni HAZARD:2007/02/19(月) 01:19:01 ID:???
(ここなら・・多分あるだろ)
修は地下に向かっていた。地下に医療品の倉庫があると案内板に書いてあったのだ。
地下には修を待つものがいた、正確に言えば修を待つのではなく次の獲物を待っていた。
いつかまた現れる「獲物」「ご馳走」
「舐めずる者」は、ただじっと、待っていた。



ここまでです、長くなったな・・
一体いつ終わるんだろう・・
何かあったらどうぞ

>>独白氏
相変わらず面白いです、全俺が泣いた。
552マロン名無しさん:2007/02/19(月) 08:10:49 ID:???
GJ!
死亡フラグきたかこりゃ?
553マロン名無しさん:2007/02/19(月) 22:11:38 ID:???
GJ。
ライターの伏線がどう働くのか気になる気になる
554マロン名無しさん:2007/02/23(金) 00:11:38 ID:9tUg13fv
あげ
555マロン名無しさん:2007/02/24(土) 04:14:12 ID:???
まとめサイトの更新止まってるな
556今月のGFを読んで:2007/02/24(土) 23:08:45 ID:???
エロありグロあり人死にありです。

【に】逃げろ逃げろ! 捕まるノロマは死刑だヒャハハ
【ま】丸焼きか刺身か素揚げか選べ
【お】男も女も皆殺し
【ド】ドロドロに溶けて死ね
557今月のGFを読んで:2007/02/24(土) 23:11:07 ID:???
【その1】

 ドクロ仮面を見つけた小早川林檎の喜びようといったらなかった。
 ドクロ仮面の変な悪趣味な不気味なベルトやら透明な容器の中に彼女が必要とする何もかも全てが詰まっているとでもいうのか、夢に対してそうするかのように強く握りしめた。
 余りに強く握ったので手袋を通してもなお圧力でベホイミの指が軋むほどだった。
「それじゃさっそく打ち合わせしましょう! そこのファミレスで」
「まだやるともやらないとも言ってないっス! あ、ここ突っ切ると早いッスよ」
 ベホイミは南条クラッシュビルズが解体中の、先日の戦闘で破壊されたビルの中に入った。林檎も恐る恐るそれに続く。
 そこにコンクリート塊がぐらりと落ちてきた。
「危ない!」
 ベホイミは林檎を突き飛ばしたが、その先にあったのは少し前までは存在していなかった解体用の足場だった。
 林檎は頭部を強く打ちつけてずるりと力なく崩れ落ちた。
「あ、すまないっス」
 あわてて助け起こすと意識はなく、耳から血が流れ出ていたものの何とか生きてはいた。とりあえず安全な場所まで連れて行く事にする。
 そこにもともと破壊されて解体中だったところにさっきまた派手に戦闘されてすっかりボロボロになってしまったビルが倒壊してふたりの上に降り注ぎ、林檎とベホイミは死んだ。
 死体は骨が粉々に砕けていた。骨だけに。
558今月のGFを読んで:2007/02/24(土) 23:14:08 ID:???
【その2】

 アイドルを幻想だと切り捨てられた近藤はとてもショックだった。
 おこづかいを貯めてやっとグッズを買い、中には買ってもらったものもあったが、その為に勉強したりお手伝いしたりしたのだ。桃組っ!はそれを知ってから今に至るまでの彼の人生の結晶だといってもよかった。
 それを否定されて彼の世界は崩れていくようだった。
 DVDのシーンやCDのフレーズがリフレインされながら、彼の心が、三人の笑顔が、送った葉書が色褪せて崩壊していく。
「それでも僕は好きなんだー!」
 近藤は衝動的に拳を突き出した。突き出した拳はドクロ仮面に突き刺さる。
 夢に満ちあふれた近藤の拳は夢を持たないドクロ仮面に対し絶大な威力を発揮した。
 宇宙開闢の十の六百五十三億兆那由多万乗のエネルギーがドクロ仮面に炸裂する。
「トゥマンボォ!」
 断末魔の声を力一杯叫びドクロ仮面ことベホイミは構成していた原子の一個すら残さず、過去から未来までの全ての時間、全ての空間から消滅した。
(例え幻想だとしても……僕は桃組っ!が好きなんだ!)
 そして近藤は桃組っ!に対する愛情をレベルアップさせ、さらなるファン道を歩んでいく事を夕陽に誓ったのだった。
559今月のGFを読んで:2007/02/24(土) 23:17:51 ID:???
【その3】

 レベッカがきつねうどんを食べていると姫子が楽しそうにやってきて、もむようにレベッカの肩に手を置いて言った。
「ベッキー私と一緒に浅草観光してから水上バスで東京湾をクルージングして芝離宮に行こう!」
「何言ってるの姫子、ベッキーは私と公開講座を聴講しに行くのよ!」
「おっとアホ毛にでこ、日曜日は私の料理を胃袋が破裂するまで楽しんでもらうと決まっているのさ!」
「ベッキー私と一緒に<<宇宙と一体(じみ)>>化しよう! 私は地味を究極(きわ)めた者…… さあラ・ラ・ルー! ラ・ラ・ルー!」
「宮本先生、望が一緒に遊びたがっています。私も一緒に遊びたいので日曜日にお邪魔します。
プレーステーション3とひぐらしの鳴くころにを買っておいてください。
おやつは誘惑のマロンのモンブランでいいですよ。夕食はステーキで我慢してあげます」
「先生、日曜日には私達と一緒にいちご狩りに行きましょう。空気も微温くなってきていい季節ですよ」
「南条の家からかっぱらってきた豚を生きたまま丸焼きにするんだ! 特製タレを付けて食ってくれ! うまいぞ! さあ来るんだッ!」
 玲が強引にレベッカの右腕を掴んだのをきっかけに、都が左腕を、くるみが右脚を、一条が左脚、
6号が右顎、姫子が仙骨を掴んで引っ張り出した。
「ベッキーは私と行くの! こまきいくのー!」
「ラ・ラ・ル・ラ・ラ・ルー! ラララ・ルー!」
「望の友達だと思っていましたが、友達甲斐の無い子ですね」
「や、やめろもげる!」
「皆さん離してください! 宮本先生が穴アキになっちゃいますぅ!」
「あなたが離しなさいよね!」
 レベッカの叫びにも彼女達はやめるどころか却って力をさらに加えた。
 不気味な音がしてレベッカの首が外れ、姫子は脊柱を引きずった骨盤を腕に抱いてしりもちを付く。
 その衝撃で両腕がもげ、最後に百八十度に開脚した脚がくるみと一条によってそれぞれ引きちぎられた。
 こうしてレベッカの肉体はバラバラになり、彼女達はレベッカの一部だけと共に休日を楽しむ事にした。
 後には首と両手足と腰と脊柱を失ったレベッカの胸と腹が残されたのみである。
560今月のGFを読んで:2007/02/24(土) 23:19:39 ID:???
 レベッカは他人事のようにそれを見ていた。見ていたというのは半分正しくなく、見るのをやめようとしても
目を逸らす事や閉じる事は出来ず見続ける事しか出来なかったのだが、やがてこういった時には叫び声を上げるのが嗜みなのだと思い出し、大声で悲鳴を上げた。
「うっぎゃあああああああああああああああああ!」


 レベッカは自らの叫び声で目覚めた。
(……いやな夢を見た……)
 からだ中に汗をかいていた。布団はびっしょりと濡れている。
 そして下着もびっしょりと濡れている。
「……尿と汗は成分同じなんだぞ! 先生……なんだぞ」
 うめくように言ったが、だからといっておねしょの事実が変化するわけではなかった。
561今月のGFを読んで:2007/02/24(土) 23:22:40 ID:???
以上です。
なんだかんだで一年間欠かさず書いてしまいました……
よろしければ今後もおつきあい頂きたく存じます。

1>>3
ただし6=6の時3>>1
562マロン名無しさん:2007/02/24(土) 23:24:35 ID:???
GJ。
おもらしベッキーにワロタ。
563マロン名無しさん:2007/02/25(日) 07:53:57 ID:???
「お客さん、こないねー」
「うん、昼下がりなのにねー」
 相変わらず喫茶店エトワールには人気がなかった。
「今日も誰も店に来ない」とイタリアの悪徳医師に耳元でささやかれそうなほど。
「宣伝とか、してるー?」
「ポスターは商店街のあちこちに貼ってあるし、HPも最近開設した。
でも、ちょっと困ったことになっちゃってね」
「もしかしてー、私の画像を無断で使っちゃってて……画像目当てのアクセスが急増とか?」
「それはないし、前々からPC自体ネットにつながらなくなっちゃってねえ。
業者呼ぶとお金を取られるし。更新はしなくちゃいけないんだけどね」
「うーん、電化製品に強い友達呼ぼうか?」
実際に呼んでみた。
「なんで私がインターネットの在宅ケアしなくちゃいけないのよ!?」
 スーツケースいっぱいに電気電子系の機器を持ち寄って憤慨する都。
「言う割りに無茶苦茶手際いいじゃん」
「あ、電動ねじ回しでもう電話線の元、四角いのまで外してるね」
 感心する2人。
「ガス会社のノーリンキングはなし、と。ん? ちょっと、何よこれはー!」
「どうしたの?」
 くるみが聞く。さっきまで作業に熱中していたはずの都が急に怒り始めたので。
「見てよ、これ」
「えーと、それは、電話線?」
 都が取り出したモジュラー配線は、途中で線が切れていて、そこを黒テープで巻いて止めてあった。
「て、手抜き工事じゃないですか!?」
 ちょうど保健所や中華料理屋のドSの魔の手から逃れてきたバカ猫が言った。
564マロン名無しさん:2007/02/25(日) 07:56:19 ID:???
「よーし、よしよし、これでOK。回線が生きてるところまで切ってつなぎなおしたから、
今後は間違いなくつながるはずよ。……つい最近までつながっていられたのが不思議なくらいだけど」
 都は作業を終えて一息ついていた。エトワールの商品で。
「前は1.5Mbpsしか出なかったのに今は6M出てる! これはすごい!」
 店長が回線速度を測って結果に興奮した。
「これってADSLよね? 何Mのプランで契約してるの?」
「……50M」
「別のプロバイダに乗り換えたら?」
「解約手続きとか新規工事とか、たとえ無料だとしても面倒くさい」
「困った大人ね」
 都は呆れた。

「で、店長、今後のHPの更新はどうするの?」
「前は一ヶ月に一回だったけど、半月に一回は更新する」
「スレへの投下は?」
「3ヶ月ほど忙しかったから控えていたけど、そろそろ書き始めます」
「自作絵は?」
「もう少し練習したら更新する、今の下書き以下の絵は恥ずかしいんで」

「店長、なんか別の人になってないかニャ?」
「いーのよ、それにしてもくるみ、あんたクッキー焼くのうまくなったわねー」
「それホットケーキ」
              −完−


 しばらくまとめサイトの更新が出来なかった理由とその顛末をエトワールに直して書いてみました。
あ、うちには都は来てませんよ? ちゃんと、一般の業者の人を呼びました。
565マロン名無しさん:2007/02/25(日) 11:43:07 ID:???
お二方超GJ!
にやにやしっぱなしで読ませてもらいましたww
566:2007/02/25(日) 17:07:39 ID:???
桃月学園の頃は担任のちびっ子教師をバカにしてたっけ・・・。
背がちっちゃくてわがままで、 何かあればすぐにカーテンに隠れて
手に書いた目玉でおどかしただけで先生だぞ先生だぞってべそかいてたね。
将来自分は絶対に出世するんだって何の根拠もなく思ってたね。
小さい頃からの日々の積み重ねが大人になるまで続いてくなんて
夢に も思わなかったよ。
ベッキーが言ってたな。
「私は10歳でMITを出た天才だからからお前らとは違うんだ、この下等動物が!」
クラスのみんなでいじめてたっけ。あの内何人が大学に行けたというのだろうね。
毎日学校に通って夜遅くまで働いてるベッキーがいかに大変で偉大かってやっと分かりました。
転職を繰り返して人に馬鹿にされて初めて分かりました。
生きるって本当に大変。
何をやっても後悔が待ってるもんね。特別じゃない。
自分は特別な人間でも何でもないんだって、20代後半になってやっと分かりました。
あの頃、白い眼で見てしまったベッキー、ごめんね。
あなたの家の見える河原で今ホームレスをやっています。
でも、時間が必要だったことだけは分かって欲しいんだ、ベッキー。
567マロン名無しさん:2007/02/26(月) 00:27:38 ID:???
イタリアの悪徳医師ってだれだ
568マロン名無しさん:2007/02/26(月) 01:53:23 ID:???
玲「すまん、金を貸してくれ」
南条「あら、なんですのその態度は。明日からホームレスになるあなたが言う言葉遣いですの?」
玲「お願いだ、金を、頼む貸してくれ…」
くるみ「いつもいつもいつも地味だ地味だとかいって、何よ、貸さないわよ。このメガネ乞食」
玲「頼む、この通りだ、命に関わるんだ、飢えてしまう…っ!金を…っ!」
姫子「玲ちゃん敬語使いなヨ〜」
玲「この通り、お願い…します…っ!お金を、お金を、貸してください…っ!」
ベッキー「お前に貸す金なんかねーよ、学費も払ってないんだから学校から出て行け、退学だ!私の視界から消えろ」
玲「お願いします、どうかお金を、貸してください、どうか、どうかお願いします…っ!」
都「土下座でもすれば?」
玲「土下座をしました、お願いします、どうか…なんでもします、ほんの少しだけでも、お金を…貸して…ください…うう…っ!」
メソウサ「いつもいつも僕をいじめて、玲さんは特にひどかったですね。はっきりいって両手足切り落としても足りませんよ」
玲「お願いします…ウウ、どうか…」玲は地面に顔をつけ、はいつくばったまま砂が涙で黒く染まる。
6号「玲さんは威張りすぎたのです、私もみんなも自業自得だと思っています」
玲「うあああ、あああああ…ううう、おかねを、おかねを、かしてくだらい、お願いします、わたし、死んじゃう」
芹沢「ああん?聞こえねーよメガネ乞食」
玲「おねがひ、どうか、どうか、ほんの、すこしでも、いいから、わやし、死んじゃう、オネガイシマス、おねがいします」
ベホイミ「玲、死んだほうがいいっすよ」
玲「いやだああ、おかね貸して、かしれ、かしれ…おねがい、おねがい、あああああ」
玲は五体を大地に投げ打って這いつくばったまま、けいれんするように狂ったようにわめく
メディア「そんな風にしたって、もうお・そ・い・で・す・わ♪」メディアは玲の身体を一蹴りする。玲は壁まで吹っ飛ぶ。
玲「あああああ、アアああああああああああ、おかれ、おかねええ、かひて、かしてくらさい」
一条「どこかから動物の声がします、南条さん」
南条「こんなペットは要らないわ」
569マロン名無しさん:2007/02/26(月) 14:14:04 ID:???
御三方GJ!
今月のGF氏>>相変わらずカオスってますなぁ〜
最後がほのぼの(?)なのは固定?
管理人さん>>そんな理由が…
とりあえず業者に…
玲の人>>なんか久々に学級崩壊の初期の方のSSが現れたような感じですね…思えば
570マロン名無しさん:2007/02/26(月) 18:04:09 ID:???
玲哀れw
571マロン名無しさん:2007/02/26(月) 21:25:55 ID:???
今月さんGJ!
6号さんGJJJwwなるほどイチゴ狩りかwww
572マロン名無しさん:2007/02/27(火) 14:44:54 ID:???
俺の中学時代はローテーションで女子のいじめ体制があった
昨日まで仲良かった同士が急に険悪になったり、それがまた急に仲良しになったり、
女の世界は男には理解不能だ
優麻とかハルカみたいな女子の中で主導権握れるタイプの女は
たぶん週間単位でいじめを繰り返してると思う
姫子、6号、一条、鈴音、乙女あたりの女子内人気が低そうな子はターゲットになりやすい
芹沢、来栖は部内の立ち位置を失敗したら軽く制裁食らいそう
573マロン名無しさん:2007/02/27(火) 20:14:24 ID:???
絶望した!
リアル女子に絶望した!!

…いや、知ってたよ、そういうのはw
でも改めて文章で目にすると本当に嫌になる。
結婚しない30代が増えてるのには、そういう女の嫌なところ目にして
幻滅してる男が現れ始めてるのにも理由があるのかも。
574マロン名無しさん:2007/02/27(火) 20:45:55 ID:???
男「誰でも良いからヤりてーなー」
575マロン名無しさん:2007/02/27(火) 23:27:30 ID:???
いつからここは小説公開板になったんだろうなww
悪い流れじゃないからいいけど
576マロン名無しさん:2007/02/27(火) 23:40:20 ID:???
最初から小説公開の流れじゃなかったっけ
577マロン名無しさん:2007/02/27(火) 23:44:52 ID:???
>>573
>絶望した!

これ久しぶりに…
まだ連載してるんだっけね
578マロン名無しさん:2007/02/28(水) 22:08:38 ID:???
>>575
言っている意味が良くわかってないのは俺だけでいい
579マロン名無しさん:2007/02/28(水) 22:32:54 ID:???
安心しろ俺もわからん
580マロン名無しさん:2007/03/01(木) 00:43:47 ID:???
絶望した!
初代スレから小説スレだったのを忘れてるヤシがいることに絶望した!
581マロン名無しさん:2007/03/01(木) 05:26:52 ID:???
姫子の中の人折笠冨美子さんが事務所を移籍したようだ
俳協→アトミックモンキー
風の噂では声優業から舞台俳優にシフトしてゆくつもりらしい
これで姫子の声優が変わったら一筆書けそうだな
582マロン名無しさん:2007/03/01(木) 08:30:51 ID:???
>アトミックモンキー

そこはかとなくプロ市民のかほりが。。。(^ω^;)
583マロン名無しさん:2007/03/01(木) 21:09:59 ID:???
神原と同じ事務所になるんだな
584マロン名無しさん:2007/03/02(金) 23:34:26 ID:qcHO1r7H
過疎化したスレの救世主になりたいんだがネタが思いつかん
585マロン名無しさん:2007/03/03(土) 00:04:45 ID:???
バイオハザードや独白はどうした
586マロン名無しさん:2007/03/03(土) 00:09:45 ID:???
バイオは連続物だし期待したい
587マロン名無しさん:2007/03/03(土) 00:40:39 ID:???
台詞だけでも書いてみる

わいわい、がやがや
玲「今日は姫子のヤツ遅いな…」
くるみ「どうせ寝坊でもしてるんじゃない」
玲「確かに姫子の奴ならありそうだけど…いくらなんでも遅いんじゃないのか?」
くるみ「確かに…あっ、ベッキーだ」

席に着く一同
ベッキー「ええっと、みんなに伝えることがある」
玲「なんだ、また小学校に逆戻りなの?」
ベッキー「違う」
くるみ「今度は別の学校に行くとか?」
ベッキー「そうじゃない」
都「じゃあ、改造手術を受けに行くとか…」
ベッキー「私のことじゃない、姫子のことだ」
玲「なんだ、姫子の事か…」
くるみ「病気になって休んだとか?」
都「または遅刻欠席、成績不良により退学とか?」
ベッキー「退学、って言うのは正しいな」
くるみ「マジか?」
玲「本当なの?」
一条「なにが原因なんですか」
ベッキー「こういうことだ」
ベッキーはそう言って姫子の机に花瓶を置いた
588マロン名無しさん:2007/03/03(土) 00:43:25 ID:???
玲「ベッキー、いくら姫子でもやって良いことと悪いことがあるわ」
くるみ「そうだよ、姫子のヤツが来たら驚くんじゃないの?
あれ、あたしの机に花瓶が乗っかってる、酷いよベッキーって…ベッキー?」
ベッキー「………」
くるみ「や、やだな…冗談はやめてよ」
ベッキー「冗談だったらどんなに良かったことか…」
一条「……事実、なんですね」
都「アハハ…ふざけないでよ、ベッキー」
ベッキー「ふざけてなんかいない…本当なんだ」
玲「嘘だ!あの馬鹿が死ぬなんて嘘だ!」
ベッキー「本当なんだ!姫子は死んだんだ!!」
くるみ「アハハハハ…あの姫子が?一番長生きしそうな姫子が…死んだ?」
一条「くるみさん、しっかりしてください」
都「…死んだ原因は?」
ベッキー「出血多量で死んだ…
しかも逃げられない様に手足を?がれた上
レイプまでされた…とどめに身体中に切り傷がいくつもあった…
ご丁寧になかなか死ねないように浅く…
最後まで地獄だったんだろうな、姫子…」
一条「犯人は?」
ベッキー「まだ捕まってない…手がかりも見つかってない…みんなも気をつけろよ」
玲「………」
ベッキー「玲、お前の気持ちはよく分かる…でも一人で何とかしようと思うなよ」
玲「分かっているわ……」
589マロン名無しさん:2007/03/03(土) 00:50:34 ID:???
>手足を?がれた上
訂正:もがれた
590マロン名無しさん:2007/03/03(土) 01:08:10 ID:???
すいません、あまり期待されてないと思いますが、独白の人です。
この前エロパロで書いた後、鬱で死んでました。
書けるようになったら書きますので、もうすこし待ってくださいm(_ _)m

>587
GJ。
いい感じに死にたくなりました。
591マロン名無しさん:2007/03/03(土) 01:35:21 ID:???
独白さん、待ってますから。待ってますからあああああ!
592マロン名無しさん:2007/03/03(土) 13:02:11 ID:???
>591
ありがとうございます。
体調も悪いし、本当に鬱な時は鬱な文章が書けないんですよ。
治りかけか気分が落ち始めてるときは、嫌になるくらいアイディアが
出てくるんですが。
好転してきたら必ず書きますので、よろしければ読んでやってください。
593マロン名無しさん:2007/03/04(日) 00:35:20 ID:???
コピペスレが落ちちゃった
594マロン名無しさん:2007/03/04(日) 12:41:43 ID:???
独白の人です。
少し精神的に持ち直してきたので、一ついって見たいと思います。
エロパロに投稿することも考えましたが、具体的描写はなるべく
避けるようにしますのでご容赦下さい。
595594:2007/03/04(日) 12:42:35 ID:???
<神原宙の独白:1>

それは、いつもの通学路。
今日も、何の変哲もない一日、のはずだった。

前の方を歩くヒビキさんの姿を見かけた私は、声をかけようと、
近くに走り寄ろうとした。
でも、ヒビキさんの周りを、うちの制服を着た見慣れぬ男たちが
取り囲んでいて。
男たちに話かけられても何も答えず、無表情でされるがままの
ヒビキさんの様子は、どこか不自然で。
そこにただならぬものを感じた私は、とりあえず物陰からこっそり
様子を見ることにした。

「オハヨー豚貫、今日も寒いな。」

…無言。

「なあ、少し温めてくれよ。」

男の一人が、ヒビキさんの胸に手を突っ込む。

「うひょ、あったけぇ!」

…でもヒビキさんは、相変わらず表情を変えず、無言で。
間髪を入れず、別の男がヒビキさんの尻に手をやる。

「おいおい、また太ったんじゃないのか?
 ダイエットに協力してやるぜ。」

「じゃ俺も!」
596594:2007/03/04(日) 12:43:45 ID:???
「おい、お前ら出席日数大丈夫だよな?
 俺はヤバいから学校行くけど、お前らも適当にしとけよ。」

「わかってるって!
 マジメ君はさっさと行った行った!
 俺らは楽しんでくるからよ!」

その言葉を聞き終えた男の一人が、方向を変え、学校の方へ歩き出す。

…これが、「イジメ」って奴か?
この土地に関する文献は既にある程度読んではいたが、実際にそれを
目にするのは初めてだった私には、その光景は衝撃的だった。

男の一人に手を引かれるまま、公園に入っていくヒビキさん。
その後を付いていく、残りの二人。

私は迷っていた。
調査対象群への非干渉の原則を守るべきか、然るべき対策を取るか。
それに、もしかしたらこれは、ヒビキさんの消極的同意に基づいた
「そういうプレイ」なのかもしれない。

結局私は、彼らの後を追うことにした。
もし、この土地の刑法に触れる「イジメ」や「レイプ」に属する事態なら、
私には然るべき 解決の手段を取る必要がある。
ヒビキさんは、あまり頼りないとはいえここでの主要な情報源の
一人であり、その安全を確保することは情報の安全性の確保にも
繋がるわけだ。

私は注意深く、彼らの後をつけた。
彼らは、周りから目に付かない公衆便所の陰のベンチに腰を下ろした。
597594:2007/03/04(日) 12:45:12 ID:???
今回は以上ですが、続きます。
ちょっと今までと毛色が違いますが、よろしければお付き合い下さい。
598マロン名無しさん:2007/03/04(日) 13:22:57 ID:???
>公衆便所の陰のベンチに腰を下ろした。
ウホッ
599マロン名無しさん:2007/03/04(日) 14:52:05 ID:???
そこは犬神や桃瀬兄も入らないとw
600マロン名無しさん:2007/03/04(日) 22:06:57 ID:???
独白の人です。
続きです。
601マロン名無しさん:2007/03/04(日) 22:08:13 ID:???
<神原宙の独白:2>

彼らの一人は、周囲に人影がないのを確認すると、ヒビキさんに
顎で何かを促した。
ヒビキさんは、ほとんど表情を変えないまま、跪いたような格好で
ベンチに腰掛けたリーダー格らしい男のズボンのジッパーを下ろす。

「エクササイズ前の塩分とプロテインは大事なんだ、しっかり味わえよ!」

男たちの、下卑た笑い。
ぴちゃぴちゃという淫靡な水音と、生臭い匂い。
ヒビキさんの目の、絶望と反抗心の入り混じったような光。

私は、目を逸らさないでいることに必死だった。
ここの人類の生殖行為の中に、こうしたプロセスがあることは
知識としては勿論知っていた。
しかし、目の前の光景は私の知っていたそれとは大きく異なり、
私には刺激の強すぎるものだった。

一人目の男がXY染色体を含んだ粘液を局部からヒビキさんの摂食口に
放出すると、次は別の男がヒビキさんの制服を脱がしにかかる。
そしてもう一人は、ヒビキさんのカバンにいつも入っているDVカムで
その光景を撮影している様子だった。
602マロン名無しさん:2007/03/04(日) 22:18:21 ID:???
「…もう、やめて!」

既に上半身は下着一枚にされたヒビキさんが、初めて声をあげた。

「約束通り何でもするから、もう写すのはやめて!
 一週間言うこと聞いたら、テープ返すって言ったじゃない!」

「ああ、こないだのは勿論返してやるさ。
 でも、こないだのはこないだ、今度のは今度だ。
 お前だってバカじゃないんだから、俺の言ってることわかるだろ?」

「そんな…!」

「ああ、大声出したきゃ出してくれても全然かまわんぜ!
 誰かが来て、お前のその姿もこのビデオも、人目に触れるのは
 まず間違いないけどな。
 みんなお前がこう言ってると思うぜ。
 私はオトコ大好きなメス豚です、ってな、豚貫ちゃん。」

その瞬間、ヒビキさんの目が再び絶望で曇りゆくのが私にはわかった。
いつもの凛としたヒビキさんは、もうどこにもいなかった。

私も、流石に忍耐力の限界を迎えようとしていた。
しかし、現地の治安機構に身柄を確保されたときの用心に、武装は
全て母船に置いてきてあるし、マーシャルアーツにも決して
自信がある訳でもない。
現地の治安機構に通報したところで、ヒビキさんが傷つくのは
目に見えている。

私は一か八か、賭に出ることにした。
それは危険な、でも失敗できない賭だった。
603マロン名無しさん:2007/03/04(日) 22:19:28 ID:???
今回は以上です。
また続きますので宜しくお願いします。
604マロン名無しさん:2007/03/04(日) 22:24:16 ID:???
だから全部書いてから投下しろって
605マロン名無しさん:2007/03/05(月) 16:30:16 ID:???
折角のwktkを味あわなくてどうするよ
取り合えず続きに期待
606マロン名無しさん:2007/03/05(月) 17:44:50 ID:???
wktkもいいんだけどさ
大して長くないんだからまとめてほしいよ
607マロン名無しさん:2007/03/05(月) 22:16:55 ID:???
>>593
そうだ……
アレは……
消えるのがDestiny……
……決められた筋書きだ
608マロン名無しさん:2007/03/05(月) 22:19:39 ID:???
>>607
それもコピペ?
609マロン名無しさん:2007/03/05(月) 22:27:34 ID:???
っていうか無駄にかっこいい口調だなw
610マロン名無しさん:2007/03/06(火) 01:35:19 ID:???
お待たせしました、独白の人です。
コマギレが不評のようなので、次からはなるべく一話完結で行けるよう
努力いたします。
611610:2007/03/06(火) 01:37:02 ID:???
〈神原宙の独白:3〉

私は、注意深くチャンスを伺った。
彼らの注意がそれやすくなる、集中力が切れる瞬間、それをひたすら待った。

今だ!
今しかない!
私はサングラスに偽装した視界保護ゴーグルの位置を直すと、
腕時計にカムフラージュしたマルチユニットのボタンを押した。

薄曇りの一面真っ白な空に、一瞬、垂直方向の光が一筋走る。
一瞬遅れて、目もくらむ眩い光に包まれる公園。
突然の閃光に視界を潰され、慌てふためく男たち。

ヒビキさんの体から、彼らの手が離れた!
その瞬間を見計らい、私は植え込みの陰から飛び出すと、ヒビキさんの
腕をつかんで走り出す。
DVカムやカバンは、後でどうとでもなる。
今は、とにかくヒビキさんをこの場から遠ざけることが最優先事項だった。

ひた走り、どうにか近くの安全そうな宗教施設(「神社」というらしい)の
敷地に逃げ込む。
612610:2007/03/06(火) 01:38:34 ID:???
「…新入り?」

そろそろ目が慣れてきたらしいヒビキさんが、私の顔をしげしげと見て、
不思議そうに呟いた。

「ヒビキさん、それじゃ寒いでしょう。
 この上着、着て下さい。」

「…あんた、助けてくれたんだ?」

「ヒビキさん、何があったのか知りませんけれど、ああいう連中と
 関わるとロクなことになりませんよ。」

「あ、あんなハズじゃなかったの!
 あいつらうまく手玉に取って、学内の不穏な動きについての情報を
 仕入れるハズだったんだから…!
 …私が、ヘマするわけなんかなかったの!」

うっすらと涙を浮かべたヒビキさんの顔は、耳まで真っ赤だった。
それは、失敗を格下と思っていた新入りにフォローされたからか、
不本意なものとはいえ口腔による性行為を目撃されたからか、
あるいはその両方のせいかは、私にはわからなかった。
613610:2007/03/06(火) 01:41:20 ID:???
私は無言で、着ていたブレザーを脱ぎ、ヒビキさんの肩にかけた。
標準よりはややふくよかな体型とはいえ、やはり私のブレザーは
ヒビキさんには少し大きすぎたようだ。
だぶだぶ気味のブレザーを着たヒビキさんは、ちょっと戸惑ったような、
はにかんだような、複雑な表情を浮かべていた。

「今日は、念のため学校休んで下さい。
 先生にはうまく話しておきますから。
 カバンとDVカム、あと上着も、後で取り戻しておきます。」

そう言った私に、ヒビキさんは無言で返した。
その裏の気持ちは、私にはわからなかったけれど、安堵で全身の力が
抜けたような、そんな表情をしていたように、私には思えた。
614610:2007/03/06(火) 01:43:49 ID:???
本当は早く学校に行こうと思っていたのだが、奴らに見つかったときの
用心にと、結局私はヒビキさんのマンションの入り口まで一緒に来てしまった。

「じゃ、今日はゆっくり休んでください。」

無言でこくん、と頷いたヒビキさんは、オートロックを開けると
ガラスの内側へと入る。
でもヒビキさんは、そのまま奥へと進まず、こっちに向きなおった。
「…ありがと、神原クン。
 私、今日のこと忘れないからね。」

顔を赤くしたヒビキさんは、それだけ言うと、奥の階段を一気に
駆け上がって行ってしまった。

私はただ一人、ヒビキさんの言葉を反芻していた。
ずっと、ずっと反芻していた。

この気持ちの正体は、私にはわからなかった。
でもいつか、わかるようになる日が来るのだろうか。
それは、私が心の底からこの星の人類と同化できたときなのかもしれない。
615610:2007/03/06(火) 01:50:54 ID:???
以上です。
神原に失敗させて二人ボコボコになるという、ある意味このスレらしい
鬱な展開も考えはしたのですが、やはり王道パターンにしてしまいましたw

神原の気持ちの正体、微妙にツンデレな綿貫の態度の答えは、皆さん
大体わかりますよねw

躁転のせいか慣れないものを書いたので、かなりお見苦しくなって
しまったかと思います。
とりあえず次回からはまた一話完結型に戻りますので、皆々様
どうぞ宜しくお願い申し上げます。
616マロン名無しさん:2007/03/06(火) 02:14:40 ID:???
>>615
乙。GJ。
そこでボコボコにしないところが初代スレから変わったところかもなー
なんて思ってみたり。
617マロン名無しさん:2007/03/06(火) 20:50:13 ID:???
俺としてはボコボコにされて2人とも死亡して欲しかったけどこの天海もいいな。

>>616
だな。そんな今のスレが嫌いじゃない。
618マロン名無しさん:2007/03/06(火) 23:52:42 ID:???
>>615
GJ
俺はボコボコになった二人が…

響「…見事にヤラれたはね私達…」
神原「…そうですね」
響「…悔しいわね」
神原「…そうですね」
響「…今度は…あいつ等をケチョンケチョンにしてやりたいわ…」
神原「…ええ、そうですね。頑張りましょう…」
響「…行くわよ新入り!」
神原「はい!響さん!」

…なんてオチがあったら良いなぁ…なんて期待してたり…

PS
>>607それなんてレーシングラグーン?
619マロン名無しさん:2007/03/06(火) 23:58:32 ID:???
>響「…見事にヤラれたはね私達…」

なぜ旧仮名遣いw
ヤラれたって二人ともレイプされたのかよw
620マロン名無しさん:2007/03/07(水) 01:13:10 ID:???
>>619
別に意図は無い
ただの変換ミスだ…多分な
621マロン名無しさん:2007/03/07(水) 08:14:39 ID:???
このスレ的にベッキー毒ヨーグルト事件はどうよ?
622マロン名無しさん:2007/03/07(水) 16:04:08 ID:???
なんということはない
623マロン名無しさん:2007/03/07(水) 16:17:42 ID:???
タレントのベッキーもいるし、別にどうってことはないんじゃない?
そんなこと言ったら綿貫や麻生の立場はw
624マロン名無しさん:2007/03/07(水) 16:22:33 ID:???
↑結構マジレスでワロタ
625マロン名無しさん:2007/03/07(水) 18:13:49 ID:???
>>621
やっぱν速とかでネタになってんの?
626マロン名無しさん:2007/03/07(水) 21:31:13 ID:???
割とネタにされてた希ガス
627マロン名無しさん:2007/03/08(木) 17:54:43 ID:???
ベッキーにヨーグルトのおもてなしを受けるC組一同。
だが、それはベッキーの巧妙な罠だった。
628587:2007/03/08(木) 23:09:34 ID:???
また台詞だけの書いても良い?
629マロン名無しさん:2007/03/08(木) 23:18:42 ID:???
どおぞ。
630マロン名無しさん:2007/03/08(木) 23:50:03 ID:???
>628
WKTK
631マロン名無しさん:2007/03/09(金) 07:57:38 ID:???
流れをぶった切って申し訳ありませんが、独白の人です。
出勤前にひとつ投稿しておきます。
632631:2007/03/09(金) 07:59:49 ID:???
<新・柏木優麻の独白>

夕方の雑踏の中、私は立ち尽くしていた。
桃月駅前、スクランブル交差点。
歩行者信号の人型のサインは、何度も点滅すると、すっと消えた。
周りは通勤の人波で一杯なのに、今の私は一人だった。
たった一人だった。

信号の反対側、ピーチメルバの入り口前。
茶髪をアシンメトリーにゆるデコスタイルで固め、イタリアンカラーの
ペールブルーのシャツにネイビーのカーデ、チャコールのスリムカーゴ、
胸元には黒い革紐でブルガリのキーリングをぶら下げたその人は、
桃瀬くんに間違いなかった。
でも、その桃瀬くんに肩を抱かれる女の子に、私は見覚えがなかった。

肩の下までの、しっとり艶のある蒼い黒髪。
白いフレームに何本も縦に入る、黒くて細いラインが特徴的な、
スリムでスクエアなセルフレームのメガネ。
モノクロの太めなボーダーのロンTに、まっ赤なEMILYのTシャツ
("I WANT YOU TO LEAVE ME ALONE"ってヤツ)をレイヤードして、
フリフリな黒いミニスカにこれまたモノクロボーダーのタイツの下は
リングブーツという、竹下通系をゴス風味に味付けしたって
カンジのファッション。

うちの生徒に、こんな子がいた記憶はなかった。
でも、口元に手をやりながら目を細めて笑う仕草には、なぜか
どこか見覚えがあった。
633631:2007/03/09(金) 08:01:00 ID:???
桃瀬くんは、いかにも自然に、雑踏の中でその子とキスを交わした。
そして一瞬、二人、笑いあった。
長年付き沿っているかのように、お互いの弱さも、何もかも全て、
二人、知り尽くしているように。

一体、あの子は誰なんだろうか?
私がずっと手に入れられなかった桃瀬くんの愛を一心に集めている、
桃瀬くんと生まれてからずっと一緒にいたくるみだって、悲しげに
「兄貴は義理と同情でしか自分を抱いてくれない」と言っていた
あの桃瀬くんが、あんなに愛情を注ぐあの子は誰なんだろうか?

そして、何故私はあの子の位置じゃなくて、それを交差点の反対側から
眺めているのだろうか?
私には、何が足りなかったんだろうか?
私の行動の、何がいけなかったんだろうか?
桃瀬くんとずっと近くにいたのに、何故私はあの子の存在を今まで
知らなかったんだろうか?

私の目には、いつしか熱い滴が溢れていた。
信号は変わったけれど、何だか、歩き出す気持ちになれなかった。

このまま雨でも降って、この私の無様な姿を、綺麗さっぱり
洗い流してほしかった。
マスカラも流れ、崩れかけたメイクには、もう何の意味も私には
感じられなかった。

でも、春らしい抜けた夕方の空には、雨の気配はまるでなかった。
人波は、立ち止まる私なんて気にせず流れていた。
無情なくらい抜けかえった空の下、ただただ流れていた。
634631:2007/03/09(金) 08:03:45 ID:???
以上です。
この黒髪の女の子の正体は、別スレを含めて私がこれまで
投稿してきたモノと、コミックス9巻別冊付録『スクールメガネ』を
お読みいただければ大体わかりますよね?

それではまた。
635マロン名無しさん:2007/03/09(金) 13:45:39 ID:???
わがんね
636マロン名無しさん:2007/03/09(金) 17:42:11 ID:???
6号の真の姿
637マロン名無しさん:2007/03/09(金) 21:18:00 ID:???
綿貫だろ
638マロン名無しさん:2007/03/09(金) 21:29:28 ID:???
次は、南条だろって言うんだろ?
スクールメガネに出てた隠れメガネっ娘を、順番に挙げてるだけじゃねーかw
639マロン名無しさん:2007/03/10(土) 00:51:47 ID:???
独白の人です。
すいません、暴走してましたね。

多分、いろんな背景を知ってないと面白くないだろうなぁ、と、
一日たってから思いました。
私の駄文なんか全部読んでくださってる方なんて、ほとんどいないでしょうし。
いつもながら、駄作を投稿して申し訳ございません。

お察しの通り、黒髪の女の子の正体は6号です。
『スクールメガネ』で6号が、「髪型を変えたときに一緒にコンタクトにした」と
発言していたのを使わせてもらいました。
設定的には、こちらで晒させていただいた修・くるみの独白と、
エロパロスレで晒させていただいたアレの続きのつもりです。
もっと、自然に入っていけるモノを書けるよう精進いたしますので、
また読んでいただければ幸いです。

以上、チラシの裏でした。
640マロン名無しさん:2007/03/10(土) 01:03:50 ID:???
エロパロは見てないな
641マロン名無しさん:2007/03/10(土) 01:14:10 ID:???
>>639
今読ませてもらった。GJ。
スクールメガネ持ってるけど、あまり見てなかったなあ…
642マロン名無しさん:2007/03/10(土) 01:15:49 ID:???
6号の髪は青だしな
643マロン名無しさん:2007/03/10(土) 01:30:05 ID:???
>642
「蒼い黒髪」でピンときた俺はどう見てもマイノリティです。
ありがとうございました。
644マロン名無しさん:2007/03/10(土) 01:57:35 ID:???
蒼い黒髪だと柏木姉妹のイメージだ。
645マロン名無しさん:2007/03/10(土) 10:37:56 ID:???
>644
柏木姉妹だって紫じゃん?
646マロン名無しさん:2007/03/10(土) 14:45:16 ID:???
ぱにスレにも関わらず蒼い黒髪+メガネでひだまりの沙英が思い浮かんだのは俺だけでいい。
647マロン名無しさん :2007/03/10(土) 16:24:32 ID:UJnt2Dha
>645
だっしゅはそうだが、原作は違うぞ。
648マロン名無しさん:2007/03/10(土) 16:33:21 ID:???
ageるなバカモノ。
649マロン名無しさん:2007/03/10(土) 20:15:22 ID:???
バカとか言うなよ
650マロン名無しさん:2007/03/10(土) 21:09:34 ID:???
ageるなBAKAモノ
651マロン名無しさん:2007/03/10(土) 21:23:15 ID:???
ローマ字でもダメ
652マロン名無しさん:2007/03/10(土) 23:33:14 ID:???
で、>628はどうなったんだろう?
WKTKしっぱなしなんだが。
653マロン名無しさん:2007/03/10(土) 23:59:10 ID:???
ハザードや誰かもな
654マロン名無しさん:2007/03/11(日) 00:01:15 ID:???
おっぱいネタ思いついたがこれはエロパロ板のほうがいいか?
655マロン名無しさん:2007/03/11(日) 00:01:17 ID:???
ハザードは長くなりそうだからガンガン投下して欲しい
656マロン名無しさん:2007/03/11(日) 01:43:52 ID:???
未刊の作品も多いよな
657マロン名無しさん:2007/03/11(日) 01:46:40 ID:???
>>654
あっち21禁か18禁だろ? 確か…


ぱにぽにのssスレって他にあったっけ。
658マロン名無しさん:2007/03/11(日) 01:49:05 ID:???
ssばっかしてるスレなら
659マロン名無しさん:2007/03/11(日) 02:00:03 ID:???
それサイドストーリー違う阻止
660マロン名無しさん:2007/03/11(日) 02:15:13 ID:???
スネークスレ面白かったよ?
661マロン名無しさん:2007/03/11(日) 04:36:47 ID:???
 以前より行っていた、桃月学園関係者特定人物に対する調査が終了いたしました
内容は、「女性陣のバストサイズの序列」に関するもので、早見表は下記のとおりです。

爆乳 朝比奈 麻生姉 白鳥 橘
巨乳 綿貫 五十嵐 メディア 麻生妹 宮田 高見沢 大森
普通 瀬奈 桃瀬妹 柏木姉 ベホイミ 柏木妹 二階堂
貧乳 鈴木 一条 片桐 上原 芹沢 南条 秋山 藤宮 宮本
    大←                            →小

 なお、正確な数値は別の報告書にて報告いたします

 この案件を取り扱っていた諜報部員は、上記の極秘調査報告書を提出後、
何の前触れも無く姿をくらました。その後、安否は確認されたが、なぜか
この調査、行方不明になる前後等の記憶が欠落しており、事件の真相
を探ることも、生徒会の命令により制止された。
 以下は私の推測であるが、この極秘調査の存在を知り、それを快く思
わない一部の勢力による介入があったものと思う。そしてその者は、学園
内に大きな情報網を持ち、生徒会、委員長委員会各位に広く影響力
を持つものだということも。
                     諜報部部長 今年度第28号報告より抜粋
662マロン名無しさん:2007/03/11(日) 11:31:04 ID:???
>>661
そんな不純な事を諜報するなよ部長w
しかしくるみはここでも地味な位置に止まる…
663マロン名無しさん:2007/03/11(日) 12:41:52 ID:???
>>660
落ちちゃった?
664マロン名無しさん:2007/03/11(日) 14:07:42 ID:???
>>661
朝比奈>麻生姉なんだ? へー…意外っつーか逆かと思ってた
665マロン名無しさん:2007/03/11(日) 14:10:34 ID:???
>>661
来栖やユカチカがいない……
このことが指し示す事実はひとつっ……!
666マロン名無しさん:2007/03/11(日) 14:51:19 ID:???
胸の大きさなんて作者の解釈によっていくらでも変わるがな
667マロン名無しさん:2007/03/11(日) 15:06:31 ID:???
読者の解釈はときに作者の解釈を超える
668マロン名無しさん:2007/03/11(日) 15:25:20 ID:???
作者もまた読者だしな
669マロン名無しさん:2007/03/11(日) 15:56:05 ID:???
このスレ↓の150あたりを見てみるといいと思うよ。

【ぱにぽにだっしゅ!】綿貫響スレ 5【オチ要員】
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1171776087/
670マロン名無しさん:2007/03/11(日) 23:39:18 ID:???
自殺した高校生の仏前にハルヒの色紙が供えられてたらしいな。
自分の仏前にぱにぽにの色紙が供えられたらと思うと…。
671マロン名無しさん:2007/03/11(日) 23:42:33 ID:???
見たよ。遺影写真、高校生が着てたのはハルヒTシャツだった。
672マロン名無しさん:2007/03/12(月) 00:16:03 ID:???
ものすごく久々に次行きます

(暗いな・・前が見えない)
地下を目指すことにしたはいいが修は困っていた。
地下に行くための階段、そこの照明がつかなくなっていたのだ。
ただでさえ薄暗かった院内であったのにもっと暗くなってしまい視界がほとんど利かなくなっていた。
このまま進むという手もあるが足を踏み外して階段から落ちてしまっては元も子もない、
(まいったな・・懐中電灯はロビーに置いてきちゃったし)
修はしばらく考え込むと踵を返し再び院内の案内板を見始めた。
(事務所か、ここなら・・)
673マロン名無しさん:2007/03/12(月) 00:18:17 ID:???
久々はいいけどあんた誰
674Pani Poni HAZARD :2007/03/12(月) 00:18:21 ID:???
優奈が書類とメールを見てから少し経ち、優奈は事の大きさを実感していた。
「研究」「投与」「実験体」「ゾンビ」「ケルベロス」「リッカー」
そして「T」
この並べられた単語が頭の中でぐるぐると回っている。
考えられることはひとつ、あのゾンビたちは決して呪術で蘇り墓から這い出て来た物では無い、
人工的に作られたもの、もしくは「研究」の仮定で偶然生まれてしまったもの、そうに違いない。
なら何の研究をしていたのか?「投与」というのならばやはり思いつくのは薬品やまたは細菌・・そう、ウイルス
などである、その薬品か何かを投与し「兵器」、そう「生物兵器」を作ろうとしていた。
あまりに現実離れした考えである、しかしこれは恐らく事実なのだろう、なぜならここにある膨大な書類がそれを証明している。
そしてその研究結果たちは今この島を我が物顔で歩いている、何が起こったのかはわからない、たった一つわかるのは
ここの人間が作り出した兵器は、人間に扱えるような兵器ではなかったということだ。
―――とんでもないことが起きてしまった。
優奈に再び不安がのしかかる、こんな事を知ってしまった。ゾンビたちは島中にいるのだろう、だったら他のみんなも当然襲われている
あんな恐ろしい奴らに・・優奈は不安に押しつぶされかけていた、そして声を殺して泣いていた。
675Pani Poni HAZARD :2007/03/12(月) 00:19:52 ID:???

「なんで懐中電灯ぐらい無いんだよクソッ・・」
修は病院の事務所内をあさりまわっていた、しかし無い。
「あーもう・・」
そのまま床に座り込んでしまった。
(包帯も消毒液も無けりゃ懐中電灯も無いのかよ・・どうなってんだここ)
修も疲れている、なので若干ナーバスになるのも仕方ない、壁にもたれたまま事務所内を見回しながらふと気付いた。
(喫煙室・・)
思わず飛び起きるとおもむろに扉を開け中を調べてみる
「あった・・!!」
今度こそ思惑通りだった。ライターオイルを手に入れたのだ。
そこで登場するのがさっき拾ったジッポライターである、修は慣れない手つきでオイルをライターに補充した。
普段タバコを吸わない修にとってはジッポなど気にも留めないものだったがなかなかどうして地味に灯りとして使えるものである。
地味・・そういえばくるみは無事だろうか、いつものように地味に生きてくれていればそれでいいのだが・・とそんなことを考えている暇は無かった。
修は火がつくことを確認すると事務所を後にし、再び階段に向かった。そしてジッポの灯りを頼りに慎重に階段を下りていった。
676Pani Poni HAZARD :2007/03/12(月) 00:21:21 ID:???
(しかし広いなここ・・何なんだよ)
静かな地下をわずかな灯りで進んでいく、かなり心細いが仕方が無い。
しかし進むにつれわずかに何かの音が聞こえてきた。
(なんだこの音?)
修は音の主を突き止めるために音のするほうに進んでいった。
すると何やら閃光の様なものが見える、よく見るとそれは火花だった。
もっとよく目を凝らしてみて見ると大きな機械が目に入った。
(何だこりゃ・・発電機か?)
恐らくこれは地下の電気を供給するための装置だろう、しかしレバーが降りてなおかつ火花を噴いている。
(・・・仕方ない・・)
修はおそるおそる近づくと思い切りレバーを上げた、すると暗かった空間が瞬く間に明るくなった。
「お、やった」
明るさに目がくらみながらも、おもわず喜びの声を口に出していた。そしてジッポをしまうとそのまま進み続け、ついに倉庫と思われる場所にやって来た。
(ここか・・ここに無かったらどうしようもないからな・・頼むぜ・・)
ドアノブを握りゆっくりと開ける、そして中に入り扉を閉める。
ここが修にとっては地獄の様な部屋、舐めずる者にとってはご馳走を食べる部屋になった。
(なんだよこれ・・)
中には膨大な量のでかい荷物が詰まれておりそれが通り道のようになっていた。
こんな荷物をどうやって運んだのか疑問だが、それより修にとってはこんな中をまた探さねばならないかと辟易した。
(まあ、仕方ないか・・)
とりあえず一通り倉庫を見て回ってみようと歩き始めた。それと同時に、狩りが始まった。
677Pani Poni HAZARD :2007/03/12(月) 00:22:31 ID:???

思えば修はうかつだったのかもしれない、何がいるかわからない場所なのだ、もっと警戒するべきだった。
歩いていた歩を止めた、修の視界にあるものが入った、何かが垂れている、天井から、雨漏り?違う、これは違う。
またあの感覚が戻ってきた。始めて化け物を見たときのあの感覚、自分はここにいてはいけない、そう頭が訴えかけてくる。
しかし足が動かなかった、ゆっくりと、ゆっくりと目を上に向けてやる。
そこには見たことも無い生き物がいた、説明しろといわれてもとうてい説明は出来ない、それほど奇怪だった。
天井に張り付いている生物はゆっくりと口を開け獣の様な声を上げた、異様に長い舌が見える。
そのまま天井から床へと向きを変えながら着地した。
(やばい・・このままじゃやばい、逃げないと、逃げないと!!)
頭の中の考えがまとまると修は後ろを向き、一気に走ろうと足に力を込め一歩踏み出した。
しかし生存の為の最善と思われた行動は、攻撃のスイッチにしかならなかった。
逃げようとする修目掛けて、「リッカー」は爪を振り上げ飛び掛っていった。
678Pani Poni HAZARD :2007/03/12(月) 00:24:34 ID:???

とりあえずここまで
ほんと話が進むのが遅いな・・反省します
前回からかなり間が開いてしまったので今後はこういうことが無いようにします。
俺が死んだらパソの中身だけは始末してもらわないとなあ・・




679マロン名無しさん:2007/03/12(月) 00:25:24 ID:???
GJJ!待ってましたぁ!!
修…
680マロン名無しさん:2007/03/12(月) 00:49:45 ID:???
UNIX系OSで厳重にパス管理しておけば万が一のことがあっても中身見られないだろ
681マロン名無しさん:2007/03/12(月) 00:51:19 ID:???
死んだらとか不吉な事言うなよ
682マロン名無しさん:2007/03/12(月) 00:59:27 ID:???
死んだ後も存在するのが嫌なんだろ
683マロン名無しさん:2007/03/12(月) 01:05:44 ID:???
久々に乙でした!
GJの一言です!

私もパソコンと二次エロ関係はなんとかしなきゃなぁ…。
ここ用の原稿は見られてもいいけど、エロパロの方はちょっと
恥ずかしいですしw
ま、鬱で死にたくなってるときは、そんなことに気なんか全然
使ってられないんですけどw

続き楽しみにしてますね。
684マロン名無しさん:2007/03/12(月) 19:57:30 ID:???
鬱屈と死にたい気持ちを文章に押し込めて、ニコニコし続けるのにもう疲れた。
外ヅラばかりよくしてたって、やることが自分に回ってきてますます
苦しくなるだけなのに。
胃の痛みが、ますます酷くなるだけなのに。

ついに色々耐えられなくなって、今日は休んでしまった。
ベッドから、出られなかった。

ベッドの中で、死ぬことばかり考えてた。
マンションの窓から飛び降りれば死ねるかな、とか、お風呂のドアノブに
タオルかけて首吊れば、とか、国道を走るトラックに轢かれれば、とか。

もう、限界なのかな。
ダメなのかな。
無力な私は、生きることも、死ぬこともできない私は。

                  …高見沢ハルカの日記より
685マロン名無しさん:2007/03/12(月) 21:33:07 ID:???
独白さんまた鬱期か
686マロン名無しさん:2007/03/13(火) 20:33:33 ID:???
つまり独白さん=ハルカ姉さんだったのかー!!!!!!!
687マロン名無しさん:2007/03/13(火) 22:12:20 ID:???
それだッ!
688マロン名無しさん:2007/03/13(火) 22:27:03 ID:???
独白さん文章が精神状態に影響されるからなー
689マロン名無しさん:2007/03/13(火) 22:42:05 ID:???
独白さん綿貫好きだからなー
690マロン名無しさん:2007/03/13(火) 22:44:28 ID:???
わたぬきひびきって言いにくいな
691マロン名無しさん:2007/03/13(火) 23:20:16 ID:???
そのうち独白さんを主人公にしたメタSSが書かれそうな勢いだなw
692マロン名無しさん:2007/03/14(水) 21:10:14 ID:???
独白さんが一番好きなのはスタバ
693マロン名無しさん:2007/03/14(水) 22:10:34 ID:???
独白さんのSSは独白さん自身の体験を反映しているって言ってたし。
鬱期の今は、このスレ的にSS書いてくれるんじゃない?
694マロン名無しさん:2007/03/14(水) 22:31:34 ID:???
今はただ、芹のスパッツを嗅いで待てばええ
695マロン名無しさん:2007/03/14(水) 22:32:51 ID:???
独白さんは鬱期には書けない
696マロン名無しさん:2007/03/14(水) 22:36:44 ID:???
>>695
な、なんだってー!
697マロン名無しさん:2007/03/15(木) 01:51:15 ID:???
つ パキシル1500r
698マロン名無しさん:2007/03/15(木) 05:58:04 ID:???
パキシルなんか飲んだら感情がフラットになって、SS書きにくくなるぞw
太るがドグマチールのがいい。
俺のオススメ。
699マロン名無しさん:2007/03/15(木) 13:16:09 ID:???
いろいろ意見はあるだろうけど薬変える時にはちゃんと医師か薬剤師に相談してね
700マロン名無しさん:2007/03/15(木) 16:24:33 ID:???
いつからここは抗鬱薬スレになったんだw

マジレスすると、パキシルはすごく効く。
人によっては性欲すらなくなるくらい感情が波風立たなくなる。
鬱や不安神経症には、最大級の特効薬だ。

だが、症状が落ち着いた後の断薬時にはかなり酷い頭痛と目眩が起きるし、
服用すると感情が安定する代わりに鬱な文章は書けなくなるなw

でも、生死が関わってくる問題だし、医者が飲めというなら素直に
黙って飲んだほうがいいな。
701マロン名無しさん:2007/03/15(木) 21:22:36 ID:???
         /|
        _/..|__∧∧_
       /::|_v ・ ー〉
   __/::/。_)~~~´   <バキシムです
   \::::::::/。 __)_∧∧_
   <ヽ〈ノ。\_|__|_|_)
   〈《 〈ノ。____)
   《</。____)
__〈/。__∧_)
\  ‖。__)__)
   ̄(≪<_)(___)
702マロン名無しさん:2007/03/15(木) 21:26:46 ID:???
俺の場合鬱が酷い方がネタがよく浮かぶw
703マロン名無しさん:2007/03/15(木) 21:29:17 ID:???
>697
ていうか俺の一日に飲む量の75倍なんだがw
そんなに飲んだら死ぬんじゃないか?
704マロン名無しさん:2007/03/15(木) 21:40:45 ID:???
二重の意味で死ぬな
705マロン名無しさん:2007/03/15(木) 22:46:32 ID:???
だからいつからここはSSRIスレになったんだってw

ていうか独白さん生きてるのか?
706マロン名無しさん:2007/03/15(木) 22:57:35 ID:???
もうすぐ今月さんが来るし管理人さんも書くらしいし
707マロン名無しさん:2007/03/15(木) 23:18:49 ID:???
独白さん転勤で忙しいんじゃね?
708マロン名無しさん:2007/03/15(木) 23:27:31 ID:???
来ないといえば誰か氏もだな。
楽しみにしてるんだが。
709マロン名無しさん:2007/03/15(木) 23:35:52 ID:???
楽しみにしてる内は来ないかもな
忘れた頃にやってくる
710マロン名無しさん:2007/03/16(金) 02:30:42 ID:???
ベッキー死んでくれねえかなあ。
711マロン名無しさん:2007/03/16(金) 13:42:23 ID:???
独白さんや今月さんは単発だけど誰かさんは連載だから続きが気になるな
712マロン名無しさん:2007/03/16(金) 21:52:45 ID:???
>>710見てベッキーの自殺書こうとしたけど、駄目だ。かわいそうで、ベッキーは殺せない。
代わりに姫子殺すことにした。
713マロン名無しさん:2007/03/16(金) 21:57:36 ID:???
マホー!
714マロン名無しさん:2007/03/16(金) 22:02:01 ID:???
自殺なら別にいいんじゃないかとおもうが
715マロン名無しさん:2007/03/16(金) 23:04:46 ID:???
以下甜菜



俺たち二人は、甘美な死の誘惑に魅入られていた。
全てを捨て、無に帰ることだけに心を奪われていた。

二人を引き離すもののない世界。
それは、既に彼岸しかなかった。
煩わしいあれやこれから逃れるには、それしかなかった。

七輪の上には、ホームセンターで買った練炭。
響と二人、締め切った部屋の中で、俺はその優しい光を眺めていた。

隣の響は、今までで一番穏やかな目をしていた。
凛とした輝きは鈍っていたけれど、その危うさが妙に綺麗だった。
この瞳を見ながら死ねるなんて、俺は幸せだった。

俺たちは、そっと口づけを交わした。
最後のキスだった。
そして、最高のキスだった。
段々、意識が遠のいてきた…。



これ独白さんじゃね?
716マロン名無しさん:2007/03/16(金) 23:05:47 ID:???
響って誰? 綿貫?
717マロン名無しさん:2007/03/16(金) 23:39:41 ID:???
すまん、>715はここからの転載だって書くの忘れてたw

【ぱにぽにだっしゅ!】綿貫響スレ 5【オチ要員】
ttp://anime2.2ch.net/test/read.cgi/anichara2/1171776087/
718マロン名無しさん:2007/03/17(土) 00:47:26 ID:???
独白さんキャラスレだと暴走傾向があるからな
719マロン名無しさん:2007/03/17(土) 01:00:14 ID:???
キャラスレにも投下してたのか・・・知らなかった

つーかキャラスレまで見てないよ
ぱにぽに関連スレ多すぎなんだよな・・・
720マロン名無しさん:2007/03/17(土) 03:14:24 ID:???
アニメ放送時はもっとスレ立ってた気がする

本スレも最近伸びないし
721マロン名無しさん:2007/03/17(土) 10:40:09 ID:???
ぱにぽに熱が冷めてしまったんです
722マロン名無しさん:2007/03/17(土) 14:39:40 ID:???
独白の人です。
とりあえず生きてますw

ご心配おかけしたみたいで申し訳ないです。
ここのところあまりカラダの調子がよくなく、気分も落ちがちなんですが、
なんとかまたネタを考えて投稿するつもりなので宜しくお願いします。

本当は全部のコメントにレス付けたいのですが、その元気がないので一部だけ。
ご指摘の通り、>684も>715も私です。
あと、綿貫が一番好きなわけじゃありません。
本当に一番好きなキャラは、ご想像にお任せしますw
723マロン名無しさん:2007/03/18(日) 16:47:58 ID:???
>>721
焼け棒杭をエクスプロージョン
724マロン名無しさん:2007/03/18(日) 21:38:22 ID:???
綿貫じゃ無いのか。じゃあ誰だろう。
職人が好きなキャラをどう扱うのか興味がある。
725マロン名無しさん:2007/03/19(月) 03:43:41 ID:???
今月氏はさりげなくちょこんと出すタイプかな?
726マロン名無しさん:2007/03/20(火) 04:11:35 ID:j3oVTMYH
久々にSSを書くとなかなか進まないね
今のところ、ここともエロパロともつかない中途半端な内容なのでもう少し修正しないといけないアル
727マロン名無しさん:2007/03/20(火) 18:29:08 ID:???
宮田のSS書いてる職人さん…
帰ってきてください…
728マロン名無しさん:2007/03/20(火) 21:22:25 ID:???
インプラ?
729マロン名無しさん:2007/03/20(火) 22:13:29 ID:???
某アニメの純愛ssを書いたらこのスレ向きのssが書けなくなったorz
最近GFも買ってないし、ぱにぽに語れないし
730マロン名無しさん:2007/03/20(火) 22:43:07 ID:???
>729

純愛と鬱なら両立できるよ?
このスレは、学級崩壊ネタのみならずハード系SSなら何でも大歓迎だとオモ。
731マロン名無しさん:2007/03/20(火) 23:26:58 ID:???
ゆっくりマイペースでいいんじゃよ
732マロン名無しさん:2007/03/20(火) 23:35:40 ID:???
独白の人です。
余計な説明はなしで一本行きます。
733732:2007/03/20(火) 23:38:00 ID:???

<高見沢ハルカの独白:2>
私は、夜が好きだった。
街が、人々が眠りに就く頃の、重く静かな夜が好きだった。
何もかもが昼間とは別世界になる、そんな夜の入口が好きだった。

今日も、また夜はやってきた。
日が昇り、沈み、そんなリズムは、日に日に長くなり短くなる以外、
何も変わりなかった。
私は、こんなに変わってしまったのに。
私は、もう昔の私じゃなくなってしまったのに。

本気で死にたいと思ったあの晩から、もう何度目の夜が来ただろう。
無理矢理母親に連れて行かれた心療内科でもらったあの薬の山を、
私は何度口にしただろう。
パキシル、ドグマチール、トレドミン、レキソタン。
そんな名前の黄色や白の錠剤を、私は何度飲んだのだろう。

絶え間なく襲ってくる、絶望と虚脱感。
治まることのない、頭痛と目眩。
そんな日々の果てに私を待っていたのが、こんな現実だったなんて。
何もない、ロボットのような、抜け殻のような、私だったなんて。
734732:2007/03/20(火) 23:40:16 ID:???
フラットになった感情は、私から全てを奪い去った。
今の私は、感情の真似事を演じるだけの、ただのロボットだった。

夕食後、いつものようにパソコンに向かう習慣だけは残っていても、
その中身は空っぽで。
いつものようにキーボードにかけた指は、ちっとも動かなく
なってしまっていて。
いつもこんこんと水をたたえていたアイディアの泉は、すっかり
枯れ果ててしまっていて。
そして、それを言える相手も、誰もいなくなってしまっていて。

私が生と引き換えに得たものは、何だったのだろうか。
私が代償として失ったもののリストは、何行になるのだろうか。
今の私が私たるための条件は、何なのだろうか。

夜の入口で、私は迷い続けている。
シェークスピアじゃないけれど、"To be, or not to be?"と。
涙を流すこともなく、顔を歪めることもなく。
ただ、生き続けながら。
735732:2007/03/20(火) 23:41:58 ID:???
以上です。
それでは皆さんおやすみなさい。
736マロン名無しさん:2007/03/20(火) 23:42:48 ID:???
はい、おやすみ
737マロン名無しさん:2007/03/21(水) 00:14:16 ID:???
自殺念慮がある高校生に塩酸パロキセチン出すとは勇者だな
738マロン名無しさん:2007/03/21(水) 11:18:37 ID:???
タミフルの10代患者への投与禁止が出た
739マロン名無しさん:2007/03/21(水) 11:47:36 ID:???
>>728
そう。
まとめ見たら続きが狂おしいほど見たくなった。
740マロン名無しさん:2007/03/21(水) 13:52:45 ID:???
中断した話もずいぶんあるよね。
もう続きは読めないのかな。
741マロン名無しさん:2007/03/21(水) 16:22:13 ID:???
>>735
独白氏キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !! つーか生きてたー!!
742マロン名無しさん:2007/03/21(水) 18:52:28 ID:???
ハルカさんひどい医者にかかってるな
パキシルは投薬初期に自殺願望が出る可能性があるから自殺を考えてるから心療内科にかかるような人間には厳禁なのに
743マロン名無しさん:2007/03/21(水) 22:22:13 ID:???
ちょwwww俺wwwww希死念慮出てるのにパキシル処方されてるwwww
つかこのスレ、メンヘル多いのなwwww
744マロン名無しさん:2007/03/21(水) 23:58:22 ID:???
メンヘルさんが多いというか、声がでかいだけかもなw
745マロン名無しさん:2007/03/22(木) 01:17:21 ID:???
独白さんはハルカに感情移入してる希ガス
746マロン名無しさん:2007/03/22(木) 10:43:54 ID:???
いや6号か都だろ
747マロン名無しさん:2007/03/23(金) 00:04:11 ID:???
感情移入は、誰が書いた文章でも描かれてる全員に対してあるだろよw
その強弱とか、キャラのどの部分に感情移入してるかとか細かいとこは
キャラや書き手によって違ってるだろうけど。

独白さんの場合、「自分の文章では、全てのキャラクターが自分の分身」
みたいなことを言ってるし、原作でのキャラの行動パターンや
属性に基づいて、独白さん個人の体験や感情を切り貼りすることで、
一つ一つのSSを書いてるんじゃないかと思う。

だからこそ、独白さんのSSの中で語り手になるキャラの行動や性格は
似たり寄ったりになってしまうんだろう。
抑鬱的で無力感に襲われやすく、世間体や相手の感情を過度に
重視する一方で、服やクルマ、グルメといったライフスタイル的な
要素への関心が強い、ってね。
逆に言うと、それが独白さんの性格ってことになるかな。

もちろん、綿貫と神原のネタみたいに、例外はあると思うけど。
初期も今と違う感じだけど、あれだけは最近のでは異質だ。
748マロン名無しさん:2007/03/23(金) 21:23:10 ID:???
1.修をめぐる女子たちの抗争
2.修・鈴音遭難時の周囲の動向
3.6号が実は学園の裏の支配者で玲を制裁
4.宮田が実は猫かぶりで南条、乙女を制裁

この辺りをネタとして思いついて春休みを利用して書いているんだけど一向に進まない
書いても書いても納得が行かないので書き直しまくり
749一条妹の憂鬱:2007/03/23(金) 22:15:27 ID:???

小ネタを投下します。
750一条妹の憂鬱:2007/03/23(金) 22:18:53 ID:???

犬神つるぎさんが結婚してしまった。
いや、もう犬神さんではない。南条つるぎさんだ。
新婦の操さんとは高校時代からの仲ということで、こうなることを予想していた人は多かったらしい。
私はそれでも、こうならないことを願っていた。
だけど私の思いは、彼に届くことはなかった。

私の一番古い記憶は、どこまでも続くような細長い廊下をつるぎさんに抱かれながら歩いているというものだ。
後から聞いた所によると、幼稚園児だった当時の私はなぜか一人だけで姉の高校に迷い込んだのだという。
そしてそれが、私の運命の人が通う高校でもあった。
つるぎさんの腕の中は、広くて、安心できて、暖かかった。
見上げると、つるぎさんがむすっとしながらも私のことを大切にしてくれていることが、良くわかった。
私は自分の最初の思い出がつるぎさんの優しい顔であることを、嬉しく思う。
だってそれが、私の初恋だったのだから。

私の記憶は、初めから今までずっと、犬神つるぎさんと共にあった。
つるぎさんに恋をすると同時に私は生まれたのだ。
あの人の凛とした佇まい。
あの人の頼りになる胸板。
あの人の清しい銀髪。
あの人の力強い眼。
その全てが、私の心を捉えて離さなかった。
751一条妹の憂鬱:2007/03/23(金) 22:20:33 ID:???

そんなつるぎさんが、他の女のものになってしまう。
悲しい。そして悔しい。
南条操さんは、素敵な方だ。
美人で家庭的。しかもお金持ちのお嬢様。
私なんかよりも遥かにつるぎさんにお似合いだということは、残念ながら認めなくてはいけない。
だからこそ、私は嫌になってくる。
私は操さんのような女らしい魅力も持っていない上に、つるぎさんまで奪われてしまう。
どうして人は、ここまで差が付いて生まれてきてしまうのだろう。
どうして自分の思ったことが実現する人としない人がいるのだろう。
もしも神様がいるのなら、胸倉を掴んで問い詰めてやりたい。
一体何が、私には残されているのかと。

私の姉も、つるぎさんのことが好きだったようだ。
悪戯を装って彼に抱きついてみたり、雅さんと遊んでる望姉さんに会う振りをして彼の家に行ったり。
姉の涙ぐましい努力は、傍で見ている私の嫉妬心をかきたてたものだ。
だがそんな努力も、報われることはなかった。
つるぎさんは、操さんと結婚してしまう。
752一条妹の憂鬱:2007/03/23(金) 22:21:43 ID:???

それでも姉は、心からつるぎさんと操さんの結婚を祝福しているようだ。
なんでそんなに無垢でいられるのか、私には理解できない。
好きな男の人を取られて平気でいるなんておかしい。
私は操さんを殺したい。つるぎさんを拘束したい。我が物にしてしまいたい。
もちろん実際には、そんなことをする勇気はない。
所詮、私は負け犬なのだ。
操さんに勝てる可能性なんて、はなからゼロだった。
本当は、自分に勝機があるなんて信じてはいなかったのかもしれない。


私には耐えられない。
私の15年ほどの人生が、全くの無駄であったことに。
つるぎさんと一緒にあったこの心が、闇に葬られることに。
生まれてから今この瞬間まで、私はつるぎさんを好きであり続けた。
だけどこの恋とともに誕生した私は、この恋が終わったことで死を迎える。
今までの私は、今日で終わる。
その向こうに何があるのか、あるいは虚無しかないのか。
ぐちゃぐちゃになった頭では、未来のことは何も考えられない。


私にできることは、時が過ぎるのを見送ることだけだ。
そうすれば、きっと新しい日がやってくる。私にも、きっと。きっと。
自室のベッドの上で、私は枕に顔を押し付け、涙を拭った。


さよなら、私の、犬神つるぎさん。

753一条妹の憂鬱:2007/03/23(金) 22:23:15 ID:???

以上です。知らない間に規制が40秒になっててびっくり。
754マロン名無しさん:2007/03/23(金) 22:25:59 ID:???
GJ!
一条妹の一人称でくるとは新しい!!
そしてセツナス…。
755マロン名無しさん:2007/03/23(金) 22:44:49 ID:???
いいよーいいよー思わず抜いたよー
756今月のGFを読んで:2007/03/24(土) 00:16:23 ID:???
エロなしグロあり人死にありです。

【も】 桃月学園皆殺し
【す】 全て殺せ
【け】 蹴り殺す必殺のキック
【て】 天誅殺

 また円が変な気を起こさないように公演で使ったいらないものは燃しちゃえ! 全部燃す!
 といろいろ燃やしたら火傷したハルカさん。
 おじいちゃんにはみっともないくらい慌てふためいて心配されちゃうし、恥ずかしいったらありゃしない。
 それにしても……と思う。
(……なんでニュースは火傷でも怪我っていうんだろう……)
 そして。
 あの日夢見た願いがこの胸に蘇る。
 子供染みた感傷かもしれない。それとも意地? それも、かなりくだらない。
 でも、それでも。
『円を殺す時は、誰がどう見ても絶対に誤認しない言い訳出来ない間違えない紛う方なき『バール』で撲殺する』
 それが私の、言葉に対する責任だと信じて。
757今月のGFを読んで:2007/03/24(土) 00:19:03 ID:???
【その1】

 同じ『みやちゃん』なのになぜこうも知性に開きがあるのだろうか?
 都は思い詰めるうちにレベッカの知性を奪い取る妄想にとりつかれるようになった。
 都はレベッカをでこで殴って昏倒させ、服を脱がせ鉄棒に逆さ吊りにしてから玲に教えてもらった作法に則り殺害した。
 血抜きを終えてから持ち前の器用さで頭蓋骨を切り開いて脳をすすった。
 たいして旨くはなく、むしろ気持ち悪かったがこうする事でレベッカの知性が自分のものと化するのだと思うと耐えられた。そもそも良薬は口に苦いものなのだ。

 都は明くる朝、レベッカの屍肉を貪り食っているところを、チアリーディング部の朝練に参加する為いつもより早く登校した6号によって発見された。
 都がレベッカの知性を得られたのかどうかは定かではないが、得難い体験をしたのは確かなようである。
758今月のGFを読んで:2007/03/24(土) 00:21:30 ID:???
【その2】

 いきなり現れた、もちろん初対面のジュゴンに妊婦呼ばわりされて激怒した綿貫響は、そこら辺から棒を拾って全力でジュゴンに殴り掛かった。
 しかしジュゴンがかわしたので勢い余って川に転落してしまった。
「……ムカつく……桃瀬くん犬神くん手伝って! とっちめてやるわ!」
 諜報部備品の高級カメラを水没させられた綿貫は怒りの形相で二人を睨んだ。
「おいおい……」
「知られたらうるさいのが一人いるんだが」
「いいから協力しなさい! ほら棒」
 ぶつくさ言いながらもつきあいのよい二人は立ち上がり、綿貫と一緒に形だけジュゴンを追い回す。
 ジュゴンはしばらく逃げ回っていたのだが、それも面倒くさくなったのか威嚇の意味で水面を三人の方に勢い良く飛び跳ねたが、勢い余って三人の上に乗っかってしまった。
 ジュゴンの巨体に押しつぶされて綿貫と犬神と桃瀬兄は身動きがとれなくなった。
 一方ジュゴンの方も完全に陸に上がってしまいもがく事しか出来なくなった。
 そして通りすがりの人間がジュゴンを見つけるや動物園に連絡したりしてジュゴン救出作業が開始されたが、その下に高校生が三人いるなどと誰一人知る由は無かった。
 ましてやその三人が、自分達がジュゴンの救出にあたっている間じわじわと真綿で首を絞めるように圧死あるいは窒息死していった事など知らなかった。
 そしてジュゴンは四日後、懸命の治療も甲斐なく水族館で衰弱して死亡した。
759今月のGFを読んで:2007/03/24(土) 00:25:58 ID:???
【そのπ】

「前世がもしイギリスの貴族でさ、前世の記憶があったら英語は勉強しなくても済むのにね」
 サラダを食べ終わったところで何気なく切り出すと、千夏は水を一口飲んで答えた。
「アメリカでもいいんじゃない? 由香ちゃん女保安官とか似合いそう。ばーん」
 ばーんって、その割り箸が拳銃のつもり? っていうか割り箸向けないで。
「この間南条さんの馬に乗った時ポニーテールが揺れて可愛かったよ。きっと似合うって」
「そう?」
 私はそれどころじゃなかったんだけど。振り落とされないようにつかまるのが精一杯だった。
「うん、でも惜しむらくは制服じゃなかった事かなー。ジャージなんて魅力半減だよ」
「体育がなかったら乗ろうなんて言わなかったわよ。
 自転車じゃないんだからスカートで乗れるわけないじゃない…… 南条さんはまあ別として」
 階段を上らせたりハードルを越えさせたり、ズーラさんと競争してみたり。それだけやってもスカートが乱れないのは流石お嬢様というべきか。
 しかし五回やったうちの一回とはいえサラブレッドに勝っちゃうズーラさんも何者なのよ。
 それはともかく。
「でもそんな話をするって事は……」
「うん……」肯定してから彼女の名前を呼ぶ時は、長過ぎるかなと思うくらい長く間を置かなくちゃいけない。
「……千夏ぁ……どうしよう」
「折角だし、やってみなよ。わかんないところは宮本先生に聞いてさ」
「原稿も書けないけど、大人数の前で朗読するのよ?」
 イギリスでもアメリカでもなく、イタリアでもない和風スパゲティをフォークでかき回しながらため息ひとつ。
「がんばって」
 キャベツなんか食べながら気軽に言ってくれて無責任な。
760今月のGFを読んで:2007/03/24(土) 00:27:13 ID:???
 高校生英語スピーチコンテスト。
 去年は朝比奈先輩が出たっていうし、みんなに乗せられて参加を決めちゃったけど、思ったよりも時間は長くて内容も難しくて……今から気が重い。
「はぁ……憂鬱だなぁ……」
「Me too……あ」
 千夏がまるで太陽のようにぱっと顔を輝かせた。
「憂鬱とYou tooって似てるよね? Alsoがあるぞー」
「……あんたは気楽でいいわよね……」
「元気出して由香ちゃん。これあげるから」
「……ありがとう、一応もらっとくわ」
 千夏が取り出したのは南条製菓のフルーツゼリー。カップ容器が二つ連結していてアルミの蓋が接着されている。
 味は他にオレンジ、ぶどう、桃……あとマンゴーもあったと思うけど、千夏が持ってきたのはアップル味だった。
 そういえば、アップルがりんごだって事は子供の頃から知ってたっけ。もしかしたらりんごって言葉を覚える前からかも。
 あの頃は、高校生なんてすごいお姉さんで、もちろん英語もペラペラって思っていたけどさにあらず。
 私は、しょせん……
「って、箸で食べるな」
「えー? だってスプーン使うのもったいないし。エコロジーだよ!」
「そうかなぁ……」
「そうだよちいさないっぽからコツコツとやらなきゃ」
 高校生英語スピーチ大会、今回のテーマは地球環境について。
 朝比奈先輩の話だと毎回テーマは漠然としていて、そこから話す内容を考えるのが重要なんだって事だけど。
 一瞬使えるかもって思っちゃったけど、そんな訳ないよね馬鹿みたい。
761今月のGFを読んで:2007/03/24(土) 00:30:26 ID:???
 以上です。
 力を注ぐところが間違っている気がします。

 フラペチーノを飲むにはまだ少し早かったようです。ストローに氷が詰まりました。ホイップクリームと氷だけ残って哀しかったです。
 やっぱりフラペチーノは夏でしょうか……シェイクンもバナナモカもマンゴーも大好きです。

 悪の組織ですと南条さんが真の首領だけどメソウサを傀儡に立ててて七大幹部に収まっており雑魚怪人は
メソウサ(本当は南条)細胞を植えつけて獣人化とか七大幹部はD組女子七人で遊星天と七つの大罪を司り
映画版の敵は恒星天のアザゼルとか妄想してました。チアリーダー6号さんは可愛い。
そしてハルカの臆病なライオンも可愛い。南条さんのペットに推したい。
762マロン名無しさん:2007/03/24(土) 16:27:07 ID:???
お二方ともGJ!

今月さん、相変わらずさすがです。
このカオスっぷりと、ユカチカの部分の妙なリアルさが面白い。
来月も楽しみに待ってますね。

アパートから一番近いスタバまで200km近くもある今は、スタバ関係の言葉
全てが懐かしいですw
仕方ないので、自宅のソロフィルターでハウスブレンド入れてますw

一条妹の憂鬱さん、同じ一人称文ですが、差を見せ付けられました。
一条妹を語り手に据えるのも斬新ですし、読んでて本当に切なくなりました。
次の作品も、楽しみにしてますね。

>747さん
けっこう当たってて怖いですw
こうやって文章になってるの見ると、自分が病んでるのがよくわかりますねw
ただ私の文章には、私の体験や感情だけでなく、見聞きしたものの影響や
単なる想像なんてものも入ってますので、その辺はあまり幻想を持たないでくださいw

>742さん、>737さん
単純に私が初めて心療内科で処方されたものをそのまま書いただけなんですが、
当時と今ではちょっと状況が違うみたいですね。
私も当時既に20代でしたから、10代への対応とは違っててもおかしくないですし。
考証が甘くてすみません。
763Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:07:41 ID:???
次行きます
今回で修サイドいったん終わりになります
長くて読む気がしない人は心で感じ取ってください

思えば今まで15年間生きてきて生命の危険を感じたことなどそうそう無かった。
もちろんそれは喜ばしいことであるし、これからの人生もそうであってほしいと修は望んでいた。
しかし人生一寸先は闇とはよく言ったものである、そんな願いなど無残に打ち砕かれてしまった。

慌てていたのが良かったのか・・怪我の功名と言うやつだろう、修は無傷だった。
確かにあの化け物――リッカーは修を完全に捉えていた、しかしリッカーの自慢の爪は獲物を切り裂くのではなく空を切っていた。
(た、助かったのか・・?)
修が取った行動を美化して言った場合「リッカーの攻撃を避けた」となる。
ありのままに言った場合「リッカーから逃げようとして足をもつれさせて転んだ」となる。
現に修はうつぶせの状態で顔だけを上げていた。
しかし結果的には転んだおかげでリッカーの爪の餌食にならなくて済んだのである
もしそのまま逃げていれば修の背中は真っ赤に染まっていたことだろう。
(ヤバイ・・どうする?どうすれば・・)
いくらテストで学年5位の秀才であってもこんな状況で答えがすんなり出るはずが無い、当然だろう、これは数学でもなく古文でもない
「捕食者」の仕掛けてきた「狩り」なのだから。

一方で獲物を仕留め切れていないことを悟ったリッカーはゆっくりと体を修の方に向け始めた。
(とにかくっ・・体を起こさないと・・)
修はゆっくりと、確実に体を起こし始めた。もう少しで中腰になる、その刹那だった。
「キィェェェェェェェェェェェェェ!!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
耳がおかしくなるような奇声を上げながら再びリッカーが飛び掛ってきた。
思わず修も悲鳴を上げる、そしてそのまま押し倒されてしまった。
「ハァァァァァァァァァァ・・・・・」
恐怖で口が聞けない、とは正にこのことだろう、眼球の無い顔、口から伸びた異様な舌、脳の露出した頭
それが目と鼻の先にある、怖い、だが声が出ない、一度体験したことなのにまったく対応できなかった。
764Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:09:56 ID:???
・・そうだ、あの時も・・何も出来なかった。頭の中にこの言葉が響いた。
そして傷みで辛そうな優麻の顔が浮かんだ、泣きそうな優奈の顔が浮かんだ。
―――修は瞬時に理解した。今すべきことはこのまま寝ていることでは無い。
リッカーがこの自分の下にいる獲物をどう仕留めるか行動に起こす前に修は行動を起こしていた。
ポケットの中―――あの時バーで手に入れたあれ、武器と言うのには限りなく頼りないもの、しかしこんな状況ならば別だった。
すかさず右手でポケットをまさぐり武器を出した、あのちっぽけな果物ナイフを、リッカーは修のことをただの弱弱しい餌としか認知していなかった。
しかしそれが間違いだったことを身を持って知ることになる。
765Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:12:28 ID:???
「つっあああああああ!!!!」
ぐさり、という嫌な音がした、修の顔に血が滴る。
リッカーの顔には小さな果物ナイフが突き立っていた。
部屋に嫌な叫びがこだまする、そんなことに構っている暇は無い。
暴れるリッカーの体に素早く足を滑り込ませ思い切り力を込める、そしてそのまま勢いよく蹴り飛ばした。
リッカーの体が少し中に浮きそのまま吹っ飛んでいく、その衝撃のおかげで唾液が顔にかかったがそんなことはどうでもいい
そしてそのまま勢いよく立ち上がりすかさず距離を取った。
そのまま回りを見渡す、―――見つけた!
何の変哲も無いスコップ、違うところといえば大きい穴を掘るときの為の物であると言う事だ。
それを手に取ると修は身構えた。リッカーは早くも体勢を立て直し始めていた。
こいつは顔にナイフを刺された程度では死なないのだ、体勢を立て直すとまた襲ってくるだろう。
傷を負わせることは出来たがこれからどうするのか、修はまったく考えていない、とにかくあの状況から脱出するのが先決だった。
人間の慣れとは恐ろしい物である、修はもう恐怖をあまり感じなくなっていた、正確に言えば恐怖を気合で押し殺していると言った感じだ。
なので油断すればすぐにでも恐怖に飲まれてしまう、スコップを握る手の力がよりいっそう強くなる、大丈夫、大丈夫だ・・
必死の思いで自分に言い聞かせる、リッカーはすでに体勢を立て直し修のいる方向を向き掛けていた。
死ぬかもしれない、でも、やるしかない、徐々に心の隙間からにじみ出る恐怖に必死に抗う。
しかしその目には間違いなく、必ず生き延びるという意思があった。
766Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:13:43 ID:???
「優奈ちゃん・・・・?」
優奈の耳に眠そうな姉、優麻の声が届いた。
「優麻ちゃん・・?」
さっきまで流していた大粒の涙の後を袖でぬぐうと、受付から出て姉の元に向かった。
「あ!もう・・いきなりいなくならないでよ優奈ちゃん・・怖かったじゃない」
「う、うん、ごめん・・」
「それにしても・・あそこで何やってたの?何かあったの?」
「え・・?」
優奈の思考が停止した。
姉にあのことを教えるべきだろうか?
この島で恐ろしい実験が行われていたこと、そのせいで今自分たちは命の危険にさらされているということ。
はっきり言って優奈は怖かった、自分ひとりがこんなとんでもないことを知ってしまった。
これから自分たちはどうなるのだろうという恐怖が優奈にはあった。それを誰かと共有すれば
少しは楽になるかもしれない、それにこんな重大な事を黙っていていいはずが無い、すぐにでもみんなに伝えなくてはならない。
そうだ、だからまず姉に、もちろん桃瀬君にも教えておこう、そういう結論に達した。
「あのね、優麻ちゃ・・」
ここまで口を開いてあることに気付いた。
767Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:14:45 ID:???
「投与」
この言葉で連想するもの、薬物やウイルス・・となると次に出てくる単語がある。
「感染」
これである、投与されたものがなんらかの理由によってばら撒かれれば当然それは伝染していく。
そしてあらたな感染者を生みそれがまたさらに・・とキリがなくなってくる。
ここである仮説が生まれた、それは絶対に信じたくない仮説だった。
あのゾンビたちは「投与」の結果生まれてきたものだ、それが人為的なものなのか偶然なのかは分からない。
何を投与されたのか?「T」という単語があった、あれが恐らく名前なのだろう。
そう、そしてそれを人間以外に投与した場合は、あの書類にあったような結果になる。
なら、人間に投与したらどうなるのか?
答えは明白だ、腐った死人となる、そう、人を食べる悪魔に。
現にそれを見てきている、そしてそいつらは自分たちに襲い掛かってきた、その結果姉は傷を負った。

そうだ、姉はあのゾンビに噛み付かれた、「T」によって生まれた化け物に。
するとどうなるか?・・・想像したくも無かった。
あんな病原菌の塊に噛み付かれ傷を負う、それはすなわち、新たな感染者が生まれたということを意味していた。
つまり・・・今自分の前で不思議そうな顔をしている姉・・・優麻は・・・ゾンビに・・・なる。
「優奈ちゃん?・・・どうしたの?何かあったの?ねえ?優奈ちゃんってば! ・・・??」
優奈は何も答えなかった、もう涙も出なかった。
768Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:15:56 ID:???
(落ち着け・・よく見ろ・・)
修は破裂しそうな胸をおさえつつしっかりと敵を見つめていた。
奴には目が無い―――ならどうやって自分のいる場所を把握しているのか?
答えは簡単、音だ、最初はいきなり遭遇して思わず逃げてしまった、その時の足音を察知されたのだろう。
もちろん奴と出会う前の足音も聞きつけていたはずだ、改めて恐ろしい奴である。
ならその場から動かず音も立てなければこいつをやり過ごせるのではないか?そう考えた。
じっと息を殺して音を立てないように身構えたまま動きを止める、しかしこの策は空振りに終わった。
リッカーと修の距離はそこそこの開きがあった、なので修はリッカーは攻撃の時にはまた飛び掛ってくるであろうと予想していた。
しかし当ては完全にていたのだ、口をもごもごさせたかと思うとリッカーの口からムチのようなあの長い舌が槍のように修のすぐ横の荷物に突き立てられた。
今の修の感覚は普段とは比べ物にならないほど研ぎ澄まされていた、しかしその攻撃を見切ることはできなかった。
769Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:17:17 ID:???
―――やばい!ここにいるのはまずい!
リッカーは修の位置を完全に把握しているわけではない、しかしナイフで刺されてもがいているときもしっかりと修の足音を聞き記憶していた。
その記憶を元に大まかな位置を察知し、攻撃したのだろう、ということは遅かれ早かれ修にあの舌が突き刺さるのも時間の問題だ。
一目散に修は走り始めた、すかさずリッカーが足音を察知し舌を振り回す、それをすんでのところでかわす、今度は本当に避けた。
またも舌が迫ってくる、今度は手に持ったスコップで受け止めた、手に振動が直に伝わってくる、食らったらヤバイな・・そんなことを考えつつ態勢を立て直す。
なおもリッカーは舌をチラつかせながらゆっくり迫ってくる、その威圧感に気圧されそうになるが必死で恐怖を振り払おうとした。
(これからどうする・・?逃げるか?でも入り口から遠ざかってるし・・)
頭の中で自問自答を繰り返す、身の安全を考えればここは一刻も早く逃げるべきだろう、だが正直言ってまったく自身は無い・・
この状況で逃げるという選択肢を潰すということは当然やることは一つ、コイツを、殺すこと。
思えばこの15年間さしたる大問題も無く平和に暮らしてきた、けど今はまったく違う状況だ、人間覚悟を決めなければならない時がある。
(父さん母さんくるみ・・・それから学園のみんな・・・先立つ不幸をお許しください・・・)
と縁起でもないことを言ってみる、だが先立つつもりなど無い、こんなところで死ぬ気などさらさら無いのだ、コイツの攻撃スイッチは分かった、だったらやりようはある。
また辺りを見回す、すぐ手が届こうかと言うところに見たことがあるものがあるのに気が付いた、そして自分の後ろの置いてある物にも気付いた。
頭の中で一つ一つが積み重なっていく、ほとんどそれは賭けだった、しかしやるしかないのだ、もうあいつらのあんな顔は・・・見たくない、心からそう思っていた。
770Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:18:37 ID:???
そんなことはお構いなしになおもリッカーはじりじりと距離を詰めてくる、しかし修はそれを黙って見ているわけではなかった。
ゆっくりとすぐ近く―――少し動けば手が届く場所にある物に手を掛けた、ここに来る前に包帯や消毒薬を探して探し回ったこと・・・
それは決して無駄では無かったのだ、そのままそれをしっかりと掴むと腕に力を入れた。
しっかりと狙いをつける、リッカーは虎視眈々と攻撃のタイミングを計っていた、そのタイミングが今まさに来ようとし、リッカーが攻撃を再開しようとした刹那
思い切り腕を振り上げ――あの瓶、他の部屋で見つけた、酸が入ったあの薬瓶をリッカーに思い切り投げつけた、瓶が勢いよく割れ、ぶちまけられたものが
リッカーの体に降りかかり、それと同時に捕食者の奇声が轟いた。
(これでっ・・!!)
それと同時に修は駆け出し始めた、駆け出すというより後ろに下がったといっていいかもしれない、ただそれは撤退ではなく限りなく勝利に向けての行動だった。
のたうち回るリッカーを尻目に修はある物を背にして立った、そしてそのまま待ったのだ、リッカーの攻撃を、やがてリッカーはのたうち回るのをやめ修の方に居直った。
予想通り奴は薬品を被り激痛にのたうち回るうちにも修の足音を逃してはいなかった、それでいい、さあ来い!そう心の中で一括した。
もはやその顔は大火傷で原型を留めていなかった、しかし自慢の武器は健在らしい、勢いよくその舌が槍のように放たれた。
しかしその舌は修ではなく、修の後ろにそびえるものに深々と突き刺さった、刺さった場所からチョロチョロと液体が漏れてくる、そう、大きいカンごと
積んである灯油が、だ、さぞかしおかしな味がしただろう、だがそんな心配も無用だった、これも修の思惑通りだ、刺さった舌を掴み、思い切り引き抜く、勢いよく
灯油がこぼれ始める。
その舌を力いっぱい足で踏みつけ、その大きな尖ったスコップを突きたてた、耳には3回目の奇声が聞こえていた。
771Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:20:03 ID:???
またもリッカーは苦しみ始める、しかし狩りはまだ終わっていない、自分にはまだ武器がある、そう考えていたことだろう。
修にとっては、それもまた狙っていたことだった、しかし次はどうなるか分からない、失敗すれば大怪我につながる、だが、やるしかなかった。
そして修は叫んだ、奴に正確な自分の位置を教えるために、正確な攻撃をさせるために
「さあ、来いよ!ベロ野郎!!」
その声を逃すはずが無かった。
自慢の舌を突かれたリッカーはもう一つの武器――自慢の爪を振り上げ、獲物に飛びかかって行った、彼にとってはこれは取るに足らぬ狩りだった。
自分は絶対的な強者だ、その自負があったのかもしれない、ただ他と違っていたのが、獲物が黙って食われるような奴ではなかったということだろう。
リッカーが飛び掛ってきた時、修はそこに留まるのでもなく、逃げるのでもなく、敵に向かって行っていた。
振り上げた爪を凝視し、それを前のめりに転びながら避けた、今度は足を引っ掛けてなどいない、自分の意思で攻撃を避けた。
当然自慢の爪は何も捕らえられずそのままリッカーは修がいた位置に突っ込んでいくことになる、カンにぶつかりなにやら鈍い音をさせて、灯油の水溜りの様なところに
落下した、そう、彼は自分の食欲を満たすための獲物を狩るつもりで攻撃をしたのだが、それが仇になるとは思いもしなかったことだろう。
772Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:24:09 ID:???
音が無い、リッカーは修の位置が分からなかった、その時音がした、それは彼が今からされる行為を物語った音だった。
リッカーが音の主を探し出そうと向きを変えたとき、すでに修の作戦は完了していた。
もし仮に彼に物を見る目があったのならば自分が何をされるのか理解できただろう、しかし彼にそれを確かめる手段は無かった。
そして修の投げたジッポライターの火は、灯油の水溜りを燃え上がらせた。
リッカーの周りが勢いよく真紅の色に染まっていく、それを眺めながら修はゆっくりと身構えた、すると今まで無い苦しみから逃れようとしたリッカーは暴れまわり始めた。
そして少し動きが止まったかと思うと、最後の力を振り絞り音のした位置へ攻撃を加えるべく、炎を掻い潜り修へとその自慢の爪を振りかざし再び飛びかかった
だがそれは無駄な抵抗だった。
「だあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
狙い済ました修の一撃が、リッカーの頭を捕らえ、ぐしゃりと嫌な音がした。そして彼はそのままスコップに跳ね飛ばされると
最後の小さな断末魔を上げ・・・ぐったりと動かなくなった。
「ハァッ・・ハァ・・・やっ・・たぁ・・・」
勝利の宣言をすると、そのまま壁に体を預けてもたれかかった、やった、やってやった、勝利の喜びが修の中を駆け巡っていく。
「さて・・・と」
本来の目的を忘れるところだった、本当ならとっととこんな部屋出て行きたいのだがあいつらのためだ。
普通なら死ぬところだった、だが修は生きている。
「待ってろよ・・柏木」
そういうと修は本来の目的の入手の為、また再び歩き出した。
773Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:24:57 ID:???
「ちょっと優奈ちゃん?大丈夫?変よ、優奈ちゃん・・」
「―――でもないよ」
「え?」
「―――なんでもないよ、ごめんね、なんか心配かけちゃって・・」
「・・・そう?ならいいけど・・・まあこんな時だから仕方ないけどね・・・」
言えない
言える訳が無い
あんなことを今の姉に教えれば、絶対に自分と同じ考えに行き着くだろう、それを知ればどうなる?―――嫌だ、そんな姉を見るのは絶対に嫌だ。
ならどうする?このまま誰にも喋らずに黙っているのか?
分からない、どうすればいいのか全然分からない、イヤだ、もう・・嫌だ。
「優奈ちゃん?」
「えっ・・・な、何?優麻ちゃん?」
「・・・心配なの?桃瀬君の事」
「え・・・あ、うん・・・それは、まあ・・・」
「心配性ねえ優奈ちゃんは・・・大丈夫よ大丈夫!桃瀬君のことだからもうじき帰ってくるわよ」
「そう・・だね」
「元気ないわねえ・・・ホラもっと元気出して!!笑顔笑顔!!笑って!!」
「え・・笑うの・・・」ニヘラァ〜〜
「なんかカタイわねぇ・・・まあいいわ、とにかく元気出しましょうよ!こんな事態何ならなおさらよ!!」
「元気・・・出すの?」
「そうよ!!寝たらスッキリしたわ、くどいようだけどもっと元気出していきましょうよ優奈ちゃん!運命は変えられるのよ!?」
「フフ・・・優麻ちゃんそれ・・・また趣味丸出し」
優麻はいつになくハイテンションだった、とてもゾンビになってしまうような人間には見えない。
だんだん楽になってきた、そうだ、考えすぎだったかもしれない、なんでも思いつめるのは良くないことだ。
774Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:26:35 ID:???
突然その時バタンと音がした。
「柏木!大丈夫か?」
「桃瀬君!!」
思わず大声を上げてしまった
「よかった・・・無事だったんだ・・・ほんとに良かった・・・」
「柏木・・・心配無いって言ったろ?」
「・・・」
「うん・・・でも・・・桃瀬君に何かあったら私・・・」
「ありがとうな、心配してくれて」
「え・・・あ、うん・・・私のほうこそ・・・」
「えーーゴホンゴホン、ちょっと誰か忘れてない?」
「ああ、悪いな、ホラ、足見せて、しみるけど我慢しろよ」
「痛ッ・・・」
痛がる優麻をよそに修はてきぱきと包帯を巻いていった。
「これでよし・・・と、歩けるか?」
「うん、大丈夫・・・ありがとね、桃瀬君、ホントに・・・」
「よせよ、当然だろ?」
「ねえ、桃瀬君、これからどうするの?」
優奈が疑問をぶつける。
「とにかくここからは出た方がいいな・・・ここは危ない」
「危ないって・・・何かいたの?」
「ああ、バケモノが一匹な・・・」
775Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:28:47 ID:???
優奈の頭にまた書類が記憶から蘇った。
そうだ、あのことを桃瀬君に話すべきだろうか?
正直言うとこれは自分ひとりで背負うには荷が重過ぎる、必ず誰かに伝えなくてはならないことだった。
「バケモノって・・・」
「さあ、行こう、あんまりゆっくりもしてられないしな」
―――桃瀬君に伝えるにせよ、今は無理だ、絶対に姉の耳に入ってしまう、自分があんな化け物になってしまうことを
知った人間がどうなるか?想像もしたくない。
このことはまだ自分の胸にしまっておこう・・・そう考えた。
「柏木?どうしたんだよ、行くぞ?」
「ぼーっとしてるとおいてっちゃうわよ?優なちゃん?」
「あっ!う、うん」

そうして静かに扉を開けると、漆黒の闇が相変わらず広がっていた。
3人はその闇に吸い込まれるように進んで行き・・・やがて見えなくなった。
776Pani Poni HAZARD :2007/03/24(土) 22:30:50 ID:???
まあこんなとこです、長いっつうの
一体どんな倉庫やねんとか言うツッコミは勘弁してください
修強すぎだろ・・・常識的に考えて・・・(AA略
このツッコミも勘弁してください
次は玲ちゃんサイドでも書くつもりです
多分・・・全部年内には終わる・・・かもしれない
なんかあったらよろしく

独白さん
相変わらず良かったです、こっちまで鬱になりました。
これからも頑張ってください。

今月さん
このカオスすぎる世界は癖になりますね
来月も期待してます。

一条妹さん
普通に面白かったです、次があればぜひよろしく
777マロン名無しさん:2007/03/24(土) 22:39:41 ID:???
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
(*^ー゚)b グッジョブ!! 燃えたぁ

>なんかあったらよろしく
しぼうふらぐktkr
778マロン名無しさん:2007/03/24(土) 23:22:33 ID:???
GGGGGGJJJJJJ!
よかったぁ、修生きてた!!

優麻がかゆうまになるのは決定か。
あーあ。
779マロン名無しさん:2007/03/24(土) 23:42:18 ID:???
コードギアスの大虐殺でこのスレ思い出した
780マロン名無しさん:2007/03/24(土) 23:52:12 ID:???
>>778
誰が上手い事(ry
781マロン名無しさん:2007/03/25(日) 23:44:20 ID:???
こんばんは、明日からまた仕事だと思うとひどく憂鬱な独白の人ですw
書き忘れてましたが、>762は私でした。

Pani Poni HAZARDさん、今回も楽しませていただきました。
GJ!の一言で済ますのは勿体無さすぎます。
修が生き残れるか、本当にドキドキでした。
Pani Poni HAZARDさんのアクティブな文は、読んでていつもワクワクしますね。
優麻の行く末を知った優奈の心境も、本当に引き込まれました。
玲サイドも楽しみにしていますね。

私は、頑張れるかなぁ…w
782マロン名無しさん:2007/03/25(日) 23:48:38 ID:???
いや見ればわかるから
783マロン名無しさん:2007/03/26(月) 23:29:42 ID:???
>>782
温かい目の練習でもしとけ
784マロン名無しさん:2007/03/27(火) 01:15:11 ID:???
修が生き残ったのはギアスのおかげだろ?
785マロン名無しさん:2007/03/27(火) 01:16:57 ID:???
全力で(ry
786桃月渇命道:2007/03/27(火) 06:30:14 ID:???
姫子とレベッカは海に来ていた。海の家が一軒も無いだだっ広い砂浜。遠くまで透き通った海。高い雲が光る空。一泳ぎ終えた二人は浜へ上がって昼食をとっていた。
「のど渇くねー」
茹だっていた姫子は目の前のレベッカへ眼をやった。レベッカはペットボトルを掴み喉を鳴らす。
自分も持ってきた水筒を開けて蓋に麦茶を取った。魔法瓶の中で冷えていた麦茶が姫子の体を冷やす。
「よく飲むねー」
姫子はもういっぱい麦茶を飲もうと水筒へ手を伸ばした。レベッカがペットボトルを投げ捨てる。
「あ、環境に悪いよー」
姫子は手を止めた。それを掠って水筒を掴むレベッカ。
蓋、使う? その一言が出るより早くレベッカは水筒のスイッチを入れて直接麦茶を飲み始めた。
そんなにのど渇いてたの? その一言がかけられない。レベッカの目が見開かれている。何かに焦っているように。ひどく集中しているように。
水筒の麦茶が切れるとそれを浜辺へ放り駆け出すレベッカ。その先には自動販売機がある。
「まってよー」
レベッカに駆け寄ると彼女はすでにコーラを買って飲んでいた。飲み終わると缶を放してまたコーラを買う。
「どうしたの?」
レベッカはまたコーラを買う。3回、4回。どうもコーラが欲しいわけではなく一番押しやすい位置にコーラのボタンがあるだけのようだ。おつりも全く取らない。小銭も使わない。何よりも早く飲み物が飲みたいらしい。
お札が切れると乱暴に小銭を取ろうとして財布を落とす。拾おうともせずコーラのボタンを連打し、やがて奇声を発しながら自販機を蹴り始めた。
「ちょっと!」
止めた姫子をレベッカは振り払う。そのしぐさは11歳の少女教師が教え子にするものとは思えないほどに乱暴で力強かった。しりもちをついた姫子を尻目にレベッカは海へ駆け出す。
「べ、ベッキー!」
姫子が追いかけているとレベッカは海に入り海水に口をつけた。波を顔いっぱいに受けながらも何度も喉を鳴らす。
「汚いよ!」
海には砂が混じっているし海草も多少浮いている。泳ぐための海としては綺麗だったが飲み水としてはかなり汚れていた。
しかしレベッカは必死だ。そんなに求めるほどの水なのだろうか。姫子はそれがやけに必要なものに見えてきた。海水に足を入れて腰を曲げる。やがて姫子の目も見開かれていった。そして二人の喉の鳴る音がかすかに響き続けた。
787桃月渇命道:2007/03/27(火) 06:34:07 ID:???
果てしなく意味の無い作品になってしまいました。解釈は皆さんにお任せします。
一応元ネタがあるのですがタイトルも内容も変わっているので気付きにくいと思います。私がこの作品とタイトルを見ただけではたぶん元ネタに気付きません。
788マロン名無しさん:2007/03/27(火) 18:35:23 ID:???
GJ!
元ネタわからんがw
789マロン名無しさん:2007/03/27(火) 20:22:17 ID:???
怖さが足りない!
しかし展開は迫真
渇命ってどういう意味?
790マロン名無しさん:2007/03/27(火) 20:52:06 ID:???
元ネタあるならメール欄に書いてくれ
791マロン名無しさん:2007/03/27(火) 23:02:22 ID:???
こんばんは、独白の人です。
明日から出張でまた投稿しにくくなるので、一本いっときます。
792791:2007/03/27(火) 23:03:57 ID:???
<高見沢ハルカの独白:3>

春の朝の、やわらかい日差しの中に、私はいた。
いつもの通学路が、今日はやけに明るかった。

いや、今朝目覚めたときから、もう今日は何か違うって
はっきりと私にはわかっていた。
いつもと違って、胸のつかえが、すっかりなくなっていた。
洗面所の鏡の中の私は、目つきすら昨日の私とは別人だった。
目の下のクマも、今日は目立たなかった。
自分でも訳がわからなかったけれど、前の私に戻れたような
そんな気がした。

半ば驚きながらも笑顔の両親に送り出され、私は家を出た。
いつもは足を引きずりながら、背中を曲げながら通うこの道を、
こんな軽い足取りで歩くのはいつぶりだろうか。
雀の声も、街行く人々も、どこか楽しげで。
昨日までの、人生に何一つ喜びなんかない、って気持ちが
すっかり吹き飛んでいた。

光と喜びに溢れた今日と、悲しみと倦怠感にあふれた昨日。
何が私を変えたのか、それはわからなかった。
いつまた元の状態に戻るのか、そんな怖さもあったけれど、
でも、今はこの状態を、精一杯楽しみたかった。
それだけが、今を生きる私にできる唯一つのことなのだから。
他に、できることはないのだから。
793791:2007/03/27(火) 23:07:15 ID:???
以上です。
短くてすみません。

>786さん
GJ!
私も元ネタがよくわからないのですが、鬼気迫るものを感じました。
もうちょっと怖さが出ていれば、もっと読後に嫌な感じが残ってよかったと思いますw
是非またお願いしますね。
794マロン名無しさん:2007/03/28(水) 03:32:55 ID:???
意味不明すぎて十分オソロシス
795マロン名無しさん:2007/03/28(水) 15:49:17 ID:???
>>786
手塚治虫の作品に、知能を異常発達させるが副作用で異常にエネルギーを消費するので結果として
食べ物、水を飲み続けなければならない体になってしまう薬があって、それを溶け込ませた水と食料だけを残されて
無人島に主人公が放置され云々ってのがあったのを思い出した。

まあ、違うか。
796マロン名無しさん:2007/03/28(水) 19:19:50 ID:???
>795
あったあった、そんなの。
新薬の秘密を守るために製薬会社が…とかそんなイキサツで。
元ネタはそれか!?
797マロン名無しさん:2007/03/29(木) 02:00:20 ID:???
で786の元ネタは
798マロン名無しさん:2007/03/31(土) 01:04:31 ID:???
遅くなってしまいましたが786の元ねたは「怪獣餓鬼道」というウルトラファイトの話です。
怪獣がひたすらにりんごを食べるという作品だったのですがそのシュールな絵が脳に焼き付いてこんなのを描いてしまいました。

勢いで書くのはいけませんね。
799マロン名無しさん:2007/03/31(土) 01:31:33 ID:???
ウルトラマンもグロいの多かったよなw
800秋山乙女の憂鬱:2007/03/31(土) 04:48:28 ID:???
鈴音が行方不明になってから数日がたった。
町内マラソン大会の日を最後に見かけていない。
まあ、あいつの事だから何か変なことでもやって学校をサボってるんだろう。
あいつがいなくてB組が静かになったかと思えばそうでもない。
「もー、いろいろと凄い目にあってるのよ……」
 響はよくわからないが大変で、
「シクシクシク……」
 ズーラは無遅刻無欠席の夢破れ、
「私がいなければ危ういところであったな」
 ヤンキーはアンパンを喉に詰まらせて死んだかと思ったら謎パワーで蘇生していた。
今はいないけど早乙女は酒樽がどうとかで参ってるらしく、珍しく元気がなかった。
私はといえば、この一連の不調現象の影響は受けていないが、
鈴音に過去受けたゲリツボマッサージの効果がリバイバルしたらしく、トイレに通いつめている。
「……ここ、また誰かが入ってるのか?」
 私以外にも腹の調子が悪い奴がいるらしい。
ずっと、このドアは閉まりっぱなしだ。
そういえば、ここに来るまでの途中、C組に寄ったら、一条が、
「玲さんと宮本先生は着替え後にサボリ、姫子さんは電波状況が不調気味、
かくいう私も消しゴムの滑りがやや不調、都さんは定常通りの運行で、
くるみさんはトイレにこもりきりです」
と言っていた。
「くるみ、かぁ……」
私は昔を思い出していた。
昔といっても中学時代。バスケ部で部活に打ち込んでいた頃の事だ。
私は3年でようやくレギュラーになり、都大会に出て、負けた。
完敗だった。くるみのチームは強かった。
くるみ自身、その年のMVPなんだから仕方ないっちゃあ仕方ないんだが。
それ以来、私はくるみに対する劣等感を持っている。
入学式で一緒の学校になったんだと知った時は、せめて同じクラスにだけはなりたくないと願った。
801秋山乙女の憂鬱:2007/03/31(土) 04:51:19 ID:???
あの頃の事は、今も時折夢に思い出す。
背が伸びることを期待して始めたバスケだけど、レギュラーになったときにはすっかり好きになっていた。
身長とかはどうでもいい。ただ、勝ちたかった。
このチーム、このチームメイトと一緒に、行けるところまで行く。
でも、私の期待したことは全てあいつに掻っ攫われた。
完敗だった。私の持っていた自信や自惚れを根こそぎ潰してしまうほど、あいつは強かった。
負けが決まった時、頭こそぼーっとしていたけれど、チームメイトのように泣くような事はしなかった。
私たちを負かした奴がどこまで勝ち進むのか見てやろうと思い、
その日の終わりまで見届け、次の日からも通った。
ベスト8が出揃った頃、珍しい奴に出会った。
私や弟と同じ剣道道場に通っている奴――犬神つるぎだ。
物静かで、人の多いところは好きじゃないはずなのに、なぜか来ている。
私から話しかけ、私の負けた経緯を話すと、犬神は、
「そうか、あいつに当たったか。それは災難だったな」
と言った。
犬神とは犬神が声変わりをする前からのつきあいだ。
練習試合で一本とってやった事もある。それが出来たのは体格に差がつくまで、だが。
でも、その後の、桃瀬くるみの話を軽くしただけの犬神の顔――
あんな顔は今までに見たことがなかった。
私の手前、くるみをほめるのは申し訳なさそうな、それでも隠し切れない親愛の情、
言葉の節々、同じ学校にいるというだけでこうも違うものなのか?
あの時の犬神は、明らかに私が負けたことよりもくるみが勝った事の方に重きを置いていた。
私は試合でくるみに負けた。チームとしても、選手としても。
ガキの頃から習い事ばかりやらされて、その中では好きだった剣道。
そこでの仲間さえ、私よりもくるみを選ぶのか!
その日はもうそれで帰った。途中だけど帰った。全身の力が抜けた。
犬神が私の背中を見て何か言っていたようだったが、もうどうでもよかった。
家へ帰って自分の部屋へついて、それから泣いた。
泣いていると、ふと鏡が目に入った。
802秋山乙女の憂鬱:2007/03/31(土) 04:53:27 ID:???
自分の泣き顔をじっと見る。ある事実に気づく。
どうして私はあの時、チームメイトと一緒に泣かなかった?
泣いていたじゃないか。みんな、外面も気にせずに。
私は何をしていた? みんな、因幡中まで帰るって言ったのに、
私はそのまま残った。何のために? 桃瀬くるみのためだ。
彼女のドリブル、シュートする姿勢、ガッツポーズ、みんな記憶に印象深い。
自分の負け試合のプレー、チームメイトの挙動、何一つあやふやなのに、だ。
犬神に裏切られたと思った私自身、みんなを裏切っていたじゃないか!
私のこの3年はなんだった? ニセモノだ。涙がない。心がない。
私は何かに憑かれたように髪にハサミを入れた。ざんばらに切ってやった。
伸びた髪の毛を切り落とせば、過去が消せて、不愉快な気持ちが消えると思ったのだろうか?
それともただの馬鹿なチビ女のヒステリーだったのだろうか?
吐き気に似た気持ち悪さが急に襲ってきて、そのまま意識が消えた。
しばらく学校を休んだ。習い事も。ただ部屋に引きこもっていた。
さすがに親には呼ばれた。家族会議ってやつだ。
親と真剣に話し合い、子供の頃からの習い事だとか、家庭の事情に関するわだかまりは消えた。
後は私の問題だった。
父さんは、私のために、私立桃月学園の推薦枠を取ってきてくれた。
自由な校風で、幅広い層の学生を募集しているらしく、学力よりも人間重視なので、
推薦で入りさえすれば、後は気を張らずに学園生活を送れるそうだ。
断る理由はない。今の精神状態では、他の選択肢は選べないだろう。
私は生来、頭の良い方でもないし。
ゆっくり、自分と向き合っていこう。そう考えた。
桃月学園の入学式までには、元チームメイトとも、犬神ともいつも通りに話せるようになった。
そして、桃月学園の入学式――
犬神だけでなく、桃瀬くるみもこの学園に入学している事を知った。
さすがにもう動揺はしなかった。ちょっと驚いた程度で済んだ。
でも、今もくるみとは親しく話せていない。
いつか、鈴音や響、片桐に芹沢、ベキ子に晶のように親友になれるだろうか?
803秋山乙女の憂鬱:2007/03/31(土) 04:57:45 ID:???
乙女とくるみは中学時代バスケ部で、
乙女は3年間やって身長が伸びなかったけど、
くるみは都大会MVPを取るくらい活躍しています
そして乙女は桃月学園入学までに長かった髪を切っていて、
犬神が2人の共通の知人である事からこの話を思いつきました
書けたら桃月体育大会でのバスケ対決までのエピソードも書きたいと思います
804マロン名無しさん:2007/03/31(土) 10:19:35 ID:???
>>800
ガバレ
805マロン名無しさん:2007/03/31(土) 20:01:06 ID:???
>803
GJ!
是非またおながいしまつ。
806マロン名無しさん:2007/04/01(日) 21:16:35 ID:???
こんばんは、独白の人です。
出張から帰りました。

また一本投稿させていただきます。
宜しくお願いします。
807マロン名無しさん:2007/04/01(日) 21:18:57 ID:???
<高見沢ハルカの独白:4>

涙が、止まらなかった。
私のハンカチをこんなに濡らしても、まだ、止まらなかった。
心の中の何かを洗い出すように、涙はどこまでも溢れ続けた。

治った、と思ったあの日。
全てが輝いて見えた、あの日。
それは、ほんの1日だけだった。
ハイな気持ちは、その日の夕方にはすっかり萎縮してしまっていた。
激しい倦怠感と悲しみの波が、再び私を襲い始めるまでの猶予は、
本当に、本当に短いものだった。
私の世界は、一瞬色を取り戻し、再び、失ったのだ。

「長期休学も、視野に入れた方がいいんじゃないですか?」

Tommyのサックスのポロシャツと、サンドイエローのチノパンの上に
白衣を着込んだ医師は、あくまで静かな口調だった。
眉一つ動かさずそう告げた医師と、目を伏せる私に、無表情で
立ち続ける看護婦。
それは、映画の一場面のようだったかもしれない。
医師の頭越しに見える、「17:32」というデジタル時計の表示だけが、
私の目に焼きついていた。
808マロン名無しさん:2007/04/01(日) 21:22:34 ID:???
母に、父に、祖父に、何と言えばいいのだろうか。
ここまで大事に育ててくれたのに、一人娘が、孫がこんなことに
なってしまったと知って、両親は、祖父は、どんな顔をするのだろうか。
40代になってやっと授かった一粒種が、マトモな人生のレールから
外れてしまったなんて、両親にどんな顔で伝えればいいのだろうか。
いい学校に行き、いい会社に入り、いい結婚をするという、そんな
波風のない人生は、私にはもう縁のないものとなってしまったのだ。
もう、まともな生き方に戻ることなんて、もうできそうもなかった。

会計を済ませ、また一種類増えた薬をいつものMUJIのリュックにしまうと、
私は病院の外へ出た。

春の空は、この時間でもまだ明るかった。
でも、低い、赤い太陽と白い月は、いつもとそう変わらなかった。
変わってしまった私への皮肉のように、いつもと同じように輝いていた。
紫色の空に、コントラストを描きながら、ただ、輝いていた。
809マロン名無しさん:2007/04/01(日) 21:23:26 ID:???
以上です。
なんかいろいろ考えるのが嫌なのでもう寝ます。
おやすみなさい。
810マロン名無しさん:2007/04/02(月) 11:01:59 ID:???
独白さん…大丈夫かな…
811マロン名無しさん:2007/04/02(月) 19:51:24 ID:???
独白さん、そんなに無理して書かなくてもいいと思う。
812マロン名無しさん:2007/04/02(月) 20:11:37 ID:???
ねえ、これフィクションだよね?
独白さんの状態がどうだろうと関係なく、これはこういうお話なんだよね?
813マロン名無しさん:2007/04/03(火) 01:22:42 ID:???
一回病院行けば解決。
814マロン名無しさん:2007/04/03(火) 08:13:52 ID:???
815マロン名無しさん:2007/04/03(火) 08:57:06 ID:???
病院はもう行ってるだろ
816マロン名無しさん:2007/04/03(火) 13:06:58 ID:???
いつも投げっぱなしですいません、独白の人です。
辛くて辛くて、今日は昼で早退してしまいました。

病院は、もちろん行ってます。
医師によると、私の今の状態は「適応障害」だそうです。
しばらく休職することになるかも。

躁鬱とかじゃなくてよかった思う反面、何でもないのに涙が出たり
胸が苦しくなったりするこの状態をなんとかしたくて、でも空回りばかりで
悶々とする日々を過ごしています。
ハルカじゃないですが、死にたくて仕方なくなる日もあります。

このスレに来ること、自分の鬱屈を吐き出すことがが気晴らしになっているとは
思うのですが、私の文章のせいで不愉快な思いをしていらっしゃる方も
いるようですし、しばらくROM専に戻ろうかどうか迷っています。

独白シリーズを最終的に一つの終りの形に収束させたいという思いは
強いのですが、そこまで書き続けられるかは今はお約束できません。

何だかわけがわからない文章になってしまいましたが、これが今の私です。
何か書けそうだったら、ご迷惑でなければ書きますので、宜しくお願いします。
817マロン名無しさん:2007/04/03(火) 20:57:05 ID:???
書きたければ書けば
818マロン名無しさん:2007/04/04(水) 22:08:27 ID:???
書いてくれよ
おれは待っているぞ
819マロン名無しさん:2007/04/04(水) 23:02:10 ID:???
おまいら独白さんに優しいな
820マロン名無しさん:2007/04/04(水) 23:04:24 ID:???
メンヘラーだからね。死なれても後味が悪い
821マロン名無しさん:2007/04/04(水) 23:58:48 ID:???
独白の人です。
何度もすみません。

私がメンヘラーだからとか、死なれたらアレだからとかとは関係なく、
私の書いたものが面白くない、このスレの空気とは合わないから
もう来なくていいとお思いの方がいらっしゃったら、いくらでも遠慮なく
おっしゃってくださいね。

迷惑だと思われながら、ウザイと思われながら書き続けるのは、
決して私の本意ではありませんので。

いくら私でも、それで死ぬ程、他に何もない人間ではありませんよ。
何も気なんか遣わなくていいですから、皆さんの正直な気持ちを
お書きくだされば幸いです。

もちろん、それほどの価値もない、ということならそれはそれで結構です。
822マロン名無しさん:2007/04/05(木) 00:01:46 ID:???
ネガティブな書き込みだから否定しづらいふいんき(ry になってんだよ
まあ俺はこれからも書いて欲しいと思うがな。
823マロン名無しさん:2007/04/05(木) 00:02:21 ID:???
俺は独白さんすきだー
824マロン名無しさん:2007/04/05(木) 02:21:59 ID:???
メンヘラーだとか休職だとか書かなくて良い事ばっか書くんだもん
825マロン名無しさん:2007/04/05(木) 10:04:26 ID:???
まず書いてくれる人自体が貴重だと思うが

そいえばまとめサイトが一月も止まってるがこれは如何に
826マロン名無しさん:2007/04/05(木) 13:41:24 ID:???
独白さん死なないでええええ!!!!
827マロン名無しさん:2007/04/05(木) 14:33:13 ID:???
来なくていいとまでは言わないけど服とかの描写が痛かった
828マロン名無しさん:2007/04/06(金) 02:39:47 ID:???
メンヘラーなんだからもっと優しく接しろよ!
829821:2007/04/06(金) 12:10:06 ID:???
しばらく書き込まないつもりでしたが、ちょっとだけ言わせてください。

特別扱いはしないでください。
メンヘラーだから、とか、そういうのやめてください。
単なる一人の職人として、扱ってください。

ヘンに腫れ物に触るように扱われると、かえって辛いです。
ホンネで接してください。
お願いします。
830マロン名無しさん:2007/04/06(金) 16:23:14 ID:???
本物のメンへラーなのか、ネタなのかマジでわからなくなってきたw
831マロン名無しさん:2007/04/06(金) 22:10:13 ID:???
言いたくないがこの世界自称メンヘラ多いしな
832マロン名無しさん:2007/04/06(金) 22:41:28 ID:???
こっちも特別扱いしないから、あんたもこっちの発言をいちいち気にすんなって
833マロン名無しさん:2007/04/08(日) 05:49:03 ID:???
独白さんの小説書き終えた後、うだうだ余計な事書いてるのが嫌い。
それを控えてくれたら嬉しい。
834マロン名無しさん:2007/04/08(日) 05:49:59 ID:???
独白サン、生きてええええええええええええ!!!!!
835マロン名無しさん:2007/04/08(日) 13:23:36 ID:???
ぱにキャラが精神的肉体的に痛めつけられてる文章を読んで胸の奥が締め付けられそうになる感覚は好きだけど
ナマモノの人間がそういうのにあってる文章を読んでも正直胃の底が気持悪くなるだけ。


アニ2のスレに投下されてたやつみたいに、さっぱりで鬱な作品がイイネ
836マロン名無しさん:2007/04/08(日) 14:07:31 ID:???
フィクションだって100%想像だけでできているわけではないよ?
書いている人間がどうだとか、そういう裏の部分も含めて作品なんじゃないか?

太宰だってヘッセだって久米田wだって、自分のツライ体験がないとああいう作品は
書けなかったんじゃないかと思うが。
鬱っぽくなければ書けない部分というのも、あるはずだしな。

ともあれ、独白さんはしばらく何も書かないで静養した方がいいと思う。
ここに何か書くことで負の感情が増幅されたりもするだろうし。
837マロン名無しさん:2007/04/08(日) 23:15:00 ID:???
>>836
自分の表現がSSなんじゃ…
あとがきにしては長すぎるぜ?
838マロン名無しさん:2007/04/08(日) 23:21:52 ID:???
あとがきってたいてい長いもんだけどな
839マロン名無しさん:2007/04/08(日) 23:26:32 ID:???
ココ最近の流れで、メンヘルが冗談なのかどうかわからなくなってきた
840マロン名無しさん:2007/04/09(月) 00:35:28 ID:???
独白さんの場合は冗談や伊達じゃないっぽいな。
あまりに真に迫りすぎてる。
ハルカ先輩の状態と独白さんの状態がリンクしてるみたいだし。
でなきゃ過去の体験をハルカ先輩に投影してるのかも。

でももし全てが独白さんの創作なら、俺たちは完全に独白さんに
釣られてるってことだなw
841マロン名無しさん:2007/04/09(月) 00:52:22 ID:???
な、なんだっ(ry
842マロン名無しさん:2007/04/09(月) 02:07:20 ID:???
>>836
>>840
独白さんの自演に見えなくもない
843マロン名無しさん:2007/04/09(月) 02:34:28 ID:???
>>842
そこまで痛い人じゃないだろ


…と思いたい
844マロン名無しさん:2007/04/09(月) 13:09:46 ID:???
おいおい、自分の考えと合わない書き込みは自演扱いかい?
勘違いかもしらんが俺なりの解釈と意見を言っただけなんだが。
今まで気づかなかったけど痛い奴ばっかりなんだなこのスレw
845マロン名無しさん:2007/04/09(月) 13:25:26 ID:???
煽り合い杉ワロタ
誰か流れを変える芹沢(ryもってこーい
846マロン名無しさん:2007/04/09(月) 21:46:55 ID:???
>>844
口調が独白さんに似てるから
847マロン名無しさん:2007/04/09(月) 22:08:19 ID:???
せりさわあかねじゃなくて、せりざわあかねだったのね
848秋山乙女の憂鬱:2007/04/10(火) 06:25:41 ID:???
気がつくと、お腹の痛みは消えていた。
昔のことを思い出したから、気が紛れたのだろうか。
まあ、これで気が楽になった。
せっかくだから、くるみに声をかけて帰ろう。
授業以外で直接話しかけるのは初めてだ。
大丈夫、もう大丈夫なはずなんだ、私は。
顔が赤くなり、息が荒くなり、心拍数が上がるのを感じながら、私は声をあげた。
「くる……くるみ! お前も腹の調子が悪いのか?! 正露丸いるか?」
 変に緊張して声のトーンがおかしかったが、たぶん通じただろう。
しーん、静か、静か、沈黙だ。もう30秒待ってみるか。
それでも返事がない。無視か? 無視なのか?
私なんか、小うるさいチビとしか思ってなくて、話すだけ時間の無駄だってことか?
ちょっとだけ胸が痛み、喉の辺りがぐぅっと息苦しくなった。
いやそんなはずはない、とすぐに立ち直った。
どう考えても私よりかは片桐の方がうざいはずだ。
あの片桐と仲良くやってるのを見る限りでは、私をうざがる要素が見当たらない。
口が悪いから嫌い? それもない。
口の悪さでは、くるみだって大概だし、橘、凸メガネ、ベキ子、こいつの周囲は口の悪いやつばかりだ。
ここはもう一度声をかけてみよう。
ちょっと腹立ったから、今度はすんなり声が出せた。
「おい! くるみ?! くるみだろ! 人の話し聞けよ、こら!」
ついでにガンガン戸を蹴り飛ばしてやった。
ドアの向こうで鍵を外す音が聞こえ、そしてドアが開いた。
「うるせえなクソチビ! TPOわきまえて行動しろや!」
「なんだと?!」
頭に血がのぼって、つかみ合いのケンカを始めそうになったが、踏みとどまった。
ふとドアの中に目がいった。無臭だ。くるみは明らかに用を足していないし重い日でもない。
サボリだったってことか。
そういえば、響によれば、町内マラソン大会以来、
鈴音だけじゃなく、こいつの兄貴も学校休んでるんだっけ。
「兄妹仲良くサボりですか? 兄貴のほうは出席も取らずにサボりだからスケールでかいなぁ」
やっぱ悪口には悪口だ。少しは賢くならないと半永久的に鈴音のオモチャにされる。
849秋山乙女の憂鬱:2007/04/10(火) 06:29:48 ID:???
「パシン!」
あれ? なにこれ? 急に視界が変わった? いや、顔が右に動いた。
顔を元の位置に戻す。左のほっぺたが痛む、痛いというより熱い。熱もってる。
「……お前さぁ、言っていいことと悪いことがあるんだぞ?」
そう言ってくるみが私の目を見据えて睨みつけてくる。真っ赤な目だった。
どう見ても怒ってる。だから私を殴ったのか。でもなんで? なにかおかしなこと言ったかな?
こいつの兄貴の茶髪は成績優秀だけど気分しだいで早退したりする奴なのは周知の事実、
今さらサボりに関して私が冷やかしたくらいで怒るなんておかしい。
それよりそれどころじゃない。問題は私だ。急に殴られたから涙が出てきた。
目の前にはくるみがいる。こいつに泣き顔を見せるのは嫌だ。
「ふ、ふん、今日はこのくらいにしといてやるよ!」
トイレを走り出て、B組への帰り道の途中、私はあることに気がついた。
「あいつ、目が赤かった……? 泣いてたのか? なんで?」
あいつでも泣くことがあるのか……。私から見ると、恵まれているように見えるくるみにも、
つらいこと悲しいことがあるのかな?
「秋山さん」
「うわぁっぁぁぁあああああああ?!」
驚いた。物事を考えた矢先に一条が現れた。
「び、びっくりしたじゃん! 急に何さ?!」
目の前がぐちゃぐちゃだ。どうやら驚いたショックで涙腺が一気に決壊したみたいだ。
「ハンカチをどうぞ」
「ああ〜、サンキュ……、で、何の用さ?」
「くるみさんを助けていただきたいのです」
「はあ?」
意味がわからない。
「くるみさんがトイレで泣いている姿を、ご覧になったでしょう?」
「ああ、それはそのとおりだけど……」
たぶん、目が赤かったところからして、あいつは泣いていた。
でも、一条の言ってることはちょっとおかしい。
「私に助けろって、意味がわかんないよ」
850秋山乙女の憂鬱:2007/04/10(火) 06:56:43 ID:???
「……? そのままの意味ですが」
一条は不思議そうな顔をしている。ここは説明してやらないと。
「私とくるみは、そんなに仲良くないぞ?」
「そうなのですか? おかしいですね……」
一条は首をひねって何やら考えている様子だった。
「じゃ、私は行くから、そういう話、凸メガネか茶髪にしたほうがいいんじゃね?」
「私はあなたにお願いしたくてここまで来ました。それにくるみさんのお兄さんは行方不明ですし」
「無理無理、私にはできないって」
さっきケンカしたばかりだし……って?! 今、なんて?
「行方不明……? 桃瀬兄が?」
「はい、白鳥さんもそうです」
「……はい?」
「桃瀬修さん、白鳥鈴音さんの両名は、あのマラソン大会の日を最後に、
行方不明になっています。綿貫響さんの自転車を乗り逃げして走り出した、
というのが最後の目撃証言です」

私は屋上まで駆け出した。吐き気が、気持ち悪さが押し寄せて、一人になりたかった。
一条は、私に近すぎない距離で、私の落ち着くのを待ってくれていた。
「……響は、知っていて、黙っていたのか?」
「いえ、話す権限がないからです。諜報部員の彼女には。話したくても、話せなかった。
学園側としては、大事にしたくないので、行方不明の2人を早急に見つけ出し、
秘密裏に処理するつもりのようです」
「……見つからなかったら?」
「見つけ出します。必ず」
「くるみの元気のなかったのは、このせいなんだな? 答えなくてもいいよ。
これくらいはわかる。私もどうにかなっちゃいそうだ」
鈴音が行方不明だと知ったとたん、私は言いようのない不安感に襲われた。
友達が心配なだけでもこれだけ苦しいんだ。双子の兄貴がいなくなったくるみはもっと辛いはずだ。
「……くそ、どうすりゃいいんだよ」
無力感が私の体を重くする。
響や諜報部が手を尽くして探しているんだ。私が手を貸したくらいじゃ猫の手にもならないだろう。
じゃあ、私には何ができるんだ?
851マロン名無しさん:2007/04/10(火) 06:57:37 ID:???
続きはまたこんど
なかなか筆が進みません
852マロン名無しさん:2007/04/10(火) 08:55:52 ID:???
GJ
乙女かわいいな
853マロン名無しさん:2007/04/10(火) 15:15:09 ID:???
乙女きたあああああ!!!!!

ぱにぽにで二番目に好きなキャラだお
854マロン名無しさん:2007/04/10(火) 16:16:51 ID:???
GJ!!

泣きそうになる乙女を抱きしめてあげたいヤツ挙手
855マロン名無しさん:2007/04/10(火) 17:14:32 ID:???
GJ!

俺はくるみの方かなw
856マロン名無しさん:2007/04/10(火) 20:40:38 ID:???
姫子の言われようがひでえw
857マロン名無しさん:2007/04/11(水) 22:53:02 ID:???
ここまで続きが気になる作品があっただろうか
いやない
858マロン名無しさん:2007/04/11(水) 22:54:16 ID:rxWLU0yu
>正露丸いるか?

なぜか吹いてしまったwww
gj
859マロン名無しさん:2007/04/11(水) 23:43:58 ID:???
jane使いやすいな
860桃月コンフィデンシャル:2007/04/12(木) 19:32:43 ID:???
長めの試作。
とりあえず落としてみます
861桃月コンフィデンシャル:2007/04/12(木) 19:35:18 ID:???
<1>

 街が腐っているのははじめからだった。人も、社会も、遥か彼方、目にも届かぬところまで、一面が死臭にまみれ腐敗していた。
誰もが忌み嫌い、その腐ったものに蓋をかけようとするのだが、その風潮こそが腐敗の馬の脇腹に拍車をかける。
やがて蓋は腐り落ち、強烈な臭いを発しながら辺りに広がっていく。誰のせいでもない、誰が始めたわけでもない腐敗は、やがて学校の中の子供たちにまでその姿を現し始めた。
 学校?そうだ、学校だ。学校も腐っている。この場合は特に酷かった。何といっても蓋そのものがはじめから腐っていたからだ。
教師たちがその手を汚し始め、子供たちを食い物にしていった。
 もちろんそんなことになろうというのは誰でもわかっていた。権力というのは泥だまりのようなところだ。放って置いてもあらゆる悪徳が流れ込んできて、なおいっそう腐ったへどろを繁殖させる。
教師が子供たちを縛る権力を持っていたのだとすれば、腐り出すのは当たり前すぎる話だった。
 だが、いくら腐るといっても限度というものもある。そいつを超過してもなお悪徳を重ねようというハラならばそれには相応の調節機構が働くようになっている。
腐りすぎて“ドボン”といく前に、他を巻き込まないようにするために特に悪いところだけをバッサリ切り落とすのだ。
たとえば去年は三人の教師が“行き過ぎた”悪徳のために更迭された。
やり方はいたってシンプルだ。あることないことを喚き立ててラジカルな良識人連中を煽り立てればいい。嘘が99あっても真実が1あればそれで十分なのだ。
脛に傷を持った奴ならきっと何かが当たる。後は声の大きな人間の後ろに隠れて事が始まるのを待てばいい。
こいつが昔から決まったやり口の“民主主義的な暗殺”のやり方なのだ。

 なるほど、確かに密告や誹謗などというものは誉れ高いやり方とは言えない。
だが世の中ははじめから腐っていると言ったはずだ。
どんなものでも、一度落ちたらもう元の形には戻らないものなのだ。
そこを忘れてはいけない。
862桃月コンフィデンシャル:2007/04/12(木) 19:37:40 ID:???

 その日の夕刻はやけに日の暮れるのが早く感じられた。
ひんやりと涼しい風が一直線に廊下を吹き抜け、少女の薄い胡桃色の前髪をかき上げた。
少女は左腕の腕章を持ち上げ、口笛を吹きながら廊下を歩いていく。
上機嫌ではあったが、その表情は極めて冷たい。
腕章には「風紀委員」の文字が見え、夕日の残光を浴びてビニール地が安っぽくテカテカと光る。
「お先に失礼します、くるみさん」
 少女の脇から腰を低く屈めた別の少女が駆けていく。
「ああ、また明日ね」
表情を変えずに答える。湿り気を帯びた艶の麗しい口先だけが静かに動く。

 くるみにとってこれはいつものことだった。いつもの通り、何の変化もない、自分の勤めを果たす。
学校の風紀委員としての彼女の仕事はただ彼女の持ち場であるこの三階の見回りに尽きている。
三階にある教室の戸締りを確認し、残っている生徒に下校を促し、そしてチェックボックスに線を引くような要領で簡単な日誌をつける。
それでおしまい。難しくもなければ、張り合いもない。
無意味とは言わないが、いたって無益な労働である。別に何かが得られるわけではないが、それを別段望んでいるわけでもない。
ただこうした事務的な、終わりのないルーティンワークに身を埋没させ、日常という基板にきちんと嵌った歯車の滑らかに動くことを安堵の糧にしているのだ。

 風紀委員。しかし何を思って彼女は自分から最もかけ離れた仕事に従事するに至ったのか。
もちろんすべてはあの事件以降の出来事だった。あれ以来、全てが変わってしまった。
変わらないこともあるが、それは実にくだらない、時には腹立たしくなるようなことばかりだった。
それゆえなのかもしれない。くるみは過去の彩りある思い出にしがみつくことをとうに投げ出して、率先して自分から変わっていくことを選んだのかもしれない。
過去の自分を全て脱ぎ去って、新しい世界で再出発を図ろうとした結果がこれなのだろう。
変わらないことを目指して自分の身体と心がボロボロになってしまうよりは、変節を受け入れて、自ずからかつての殻を突き破る意気地が必要だったのだ。
そして彼女は、二年生への進級と同時に、あの事件や少なからぬ元友人たちに全ての見切りをつけ、その生き方を新たにしたのだ。
863桃月コンフィデンシャル:2007/04/12(木) 19:40:12 ID:???
 くるみは階段の踊り場にやってきた。上を見上げれば階段は続き、下を見下ろしても階段が続く。
そこはそれぞれの生徒の生き様の交差点である。
ある者は三階で階段を離れ、ある者は最上階まで一気に駆け上る。あるいはただ外を目指して転がるように下っていく者もある。
くるみは静かな空気の中で一息ついた。分岐した洞窟のような階段のチューブは闇に向かって延々と続くような気配さえ見せる。
息遣いが奥の方までこだまして、音叉の震えるような鈍い響きを生み出す。
 いっそこの闇の中に身を投げ出すことが出来るものなら――くるみは背筋に冷ややかなものが流れるのを感じた。
しかし、それと同時に目の奥で何かが燃え滾るような、そんな激しい発熱を覚え、思わず身震いする。
 「あら、風紀委員さんじゃないの」
 突然の呼びかけにくるみは息を呑んだ。振り向くと、背後で犬の人形が嬉しそうに身体を振っている。
「綿貫、まだいたの?早く帰れよ」
 くるみは気怠げに欠伸を押し殺し、真ん丸な瞳で笑いかける諜報部の部長に相対した。
目から涙を流す犬の人形を手に嵌めた綿貫は、それとは対照的な、満面の笑みだった。
病的に引きつるところもなく、影が長い尾を引くような物憂げな気配も感じられない。
それは今のくるみにはもう真似することの出来ない爽やかな笑顔だった。
 くるみは綿貫のその裏のない明るさに、羨望と嫉みの入り混じった複雑な表情をして見せた。
綿貫は人形をしばらく弄んで無邪気に笑い声を漏らすと、気持ち前屈みだった姿勢をすっと正した。
「くるみちゃん、今日も見回りのお仕事お疲れ様だワン」
綿貫の戯れの声色に合わせて人形が動く。
「めんどくせぇ奴だな。早く帰れって」
「そうぷりぷりしなさんなよ。こっちも色々やることがあってね」
「何よ、またつまらないトラブルに首を突っ込んでいるの」
「トラブルって、そんなご大層なものじゃないよ。ちょっとした調べ物よ。いつも通りのね」
「いつも通りってのが厄介なのよ。私の当直のフロアで揉め事を起こさないでよね」
 くるみは身体を斜めに傾けた。綿貫は眩しい笑顔を保ったまま回り込んでくる。
くるみは少しの苛立ちを覚えつつ、不自然にならないように顔を背けた。
「あら、私がいつ揉め事なんて?」
864桃月コンフィデンシャル:2007/04/12(木) 19:42:04 ID:???
「スパイの真似事なんてやっている奴はいつか面倒を起こすに決まっているさ。委員会の日誌に長い報告書を書かなくちゃいけなくなるような事はしないで欲しいね」
「諜報部と風紀委員はうまく連携とってかなきゃ。学校の風紀を守るには学校で何が起こっているかを知らなくちゃいけないよ。私だって学校のために時には危ない橋を渡っているんだから」
「生徒会の飼われ犬ごときが何かできるのかい。学校の風紀は私たちがこうして守っているんだ、特例だか何だか知らないが、そんなのでうろちょろされるってのはどうにも縄張り荒らしにしか思えんね」
「あんたのその口調ってまるで警官みたいね。縄張りだとかそんな捻くれた意識があるから他の委員会とも折り合いが悪いのよ」
「うるせえな。私が警官ならあんたはクソッタレのFBIってところだね。他所の持ち場を土足で踏み荒らすスパイの豚は手前の足の裏が汚れていることに気がついていないようだな」
 綿貫の表情が堅くなった。目の色が濁り、顎の奥のほうで筋肉が引き締まるのが見えた。くるみはそれを見てようやく気分がよくなってきた。
「豚は酷いよ、桃瀬さん。私もちょっと言い過ぎたのは謝るよ、でも豚はないんじゃない?」
「何で豚って言葉にそんなに過剰反応するのさ。何か訳でもあるの?」
 くるみはそう言いながら視線を綿貫の腰の辺りに下した。
一年前は丸かったその腰の輪郭は、今では肉が落ち、綺麗なラインを描いている。
これも時とともに変わったものだ。
今では別に皮肉にもならないだろうが、当時の体型に関する劣等コンプレックスは、なおもこの“スリムな”綿貫の心に深い影を下している。
そこをちくちくと刺していくのがくるみには楽しかった。
あの腹立たしい笑顔が、彼女の心の闇に翳っていく様を見るのが。
「ゴメン……謝るからもうそういうことは言わないで……。わかってるでしょ」
「部長さんよ、もう一度だけ言うけどね。くれぐれも私の持ち場で厄介ごとは止しといてよ。じゃなきゃ前みたいに泣きを見るのがオチだぜ」
 言い終わるか否かの前に、綿貫の目にはもう涙が浮かんでいた。
しまった。相手を泣かせるには状況が面白くない。
くるみはまたしても気まずい不快感を覚えた。
どこかで調子が狂ってしまった。何かを間違え、そこからどんどんとドツボに嵌っていく感じだ。
865桃月コンフィデンシャル:2007/04/12(木) 19:43:25 ID:???
「帰りな。今日は機嫌が悪いんだ」
くるみは顔を背けて言い捨てた。声に力が入っていないのが自分でも分かる。いかにも滑稽で、哀れな声色だ。
「わかったわよ。もう帰るから。あとちょっとしたらね」
 綿貫はすぐに笑顔に戻っていたずらな表情をして見せた。
くるみの寸詰まりの台詞を聞いて安心したのか、それともただ単に立ち直りが早いのか、既に瞳の湿り気は途絶え、調子のいい、乾いた声でさよならを言った。
「じゃあね、犬のおまわりさん」
 立ち去り際に犬の人形を高く掲げる。
 あれだけの会話の中で、くるみは結局自分があのスパイにも劣ることを知ったに過ぎなかった。
何かにふて腐れていつも仏頂面をするようになってしまった自分、誰かを傷つけたがるかわりに自分も誰かに傷つけられたがる歪んだ欲望。
それなのに綿貫のあのいやらしいほどに快活な素振りは一体何なのだろうか。

 何にせよくるみは不愉快だった。
どんなに強面に出ても、いつもどおりの空回りで終わってしまう。
自分自身へのやるかたない憤りに、くるみは素直に苛立った。

 ――犬の警官か。笑わせやがる。
866桃月コンフィデンシャル:2007/04/12(木) 19:45:43 ID:???

 くるみは日誌を書き終え(“本日、特に何も無し”)、鞄に荷物を放り込み、帰る支度を整えた。
日誌を書いて「風紀委員」の腕章を外せばもう後は彼女の与り知らぬところだった。
縄張りも、諜報部も、跳ね返りの生徒が放課後の校舎で何をしようとも――。

 やがて廊下の向こう側から誰かが歩いてくるのが気配で感じられた。
くるみは訝しげな表情を湛え、その気配のする方へ目を向けた。
そしてそこに彼女の姿を認めるや否や、目にも明らかな落胆の色を見せ、自らの間の悪さを呪詛し、大きな舌打ちを放った。
 目の前からやってきた少女は、確かにくるみのほうに気がついているが、それでも知らん顔をして通り過ぎようとしていた。
ツンと済ました様子で、呼吸も歩幅も全く乱れることはない。
まるでくるみという存在を空気か何かのように思っているような素振りだ。
こういう真似をされると厭でも相手をしてやらなければならないというのがくるみにとってのセオリーだった。
少女の前に立ち入り、その通路を妨害した。
「よぉ、都じゃねぇか」
「何よ?何か用なの」
 都は首だけを動かしてくるみの方を睨みつけた。
その目も、口調も、全くの無表情で、何の関心の色も見えなかった。
「何よじゃねぇよ。こんな時間まで何やってたのさ」
「あんたには関係ないじゃない。そこどいて。もう帰るんだから」
 都も変わった。みんなが変わったように、くるみが変わったように。
だがくるみには都の変貌にはそれ以上の意味があることをとうの昔から知っていた。
そうしてその意味というのが、やっぱり気に食わない。
「随分な言い方だな。勉強のし過ぎで口の聞き方も忘れたのか」
「あんたなんかに口の聞き方に関して説教を受ける筋合いなんかないわよ。図書室で勉強してきただけよ、これで満足かしら?」
「いいや、満足できないね。ガリ勉がさも当たり前のように偉そうにしているってのはまったく気分がむかつくんでね」
「あんたの気分なんか知ったことじゃないわ。いいからそこどいて。これから予備校に行かなくちゃいけないのよ」
 都が脇を通り抜けようとするのを、くるみは両手を広げて阻んだ。
都は激しい憎悪の目つきでくるみを睨みつけた。
そうだ、それでいい。くるみは気分が大分勝れてきた。
867桃月コンフィデンシャル:2007/04/12(木) 19:48:17 ID:???
「ねぇ、随分冷たいじゃない。エリートの上原先生は私みたいな落ちこぼれとは話もしたくないってことかい」
「何言ってんの?バカじゃない。あんたこそ口の聞き方に気をつけた方がいいわよ。それじゃまるでヤクザじゃない」
「何分育ちが悪いんでね。エリート先生はこういうのはお気に召さないか」
「昔のあんたはそうじゃなかったわ。犬みたいな生活をしているからそんな風になっちゃたのよ。もう私に構わないで」
「ハハハ!犬って言われたのは今日二回目だ。泥だらけの犬ころはお呼びでないというわけね」
 都は意地悪く笑うくるみの肩にぶつかって歩き去ろうとした。
くるみは遠ざかる気配を見せる都に、背を向けたまま大声で問いかけた。
「兄貴のことをまだ引き摺ってんのかい?」
 都の足が止まった。その気配が背後で確かにした。
「何のことよ」
都が冷たい声で返した。声は喉の奥で震え、明らかに動揺の色が滲み始めている。
「修のことだよ。私が何も知らないとでも思っていたの」
「もう私には関係ないわ」
「よく言うぜ。あの事件の後、優麻と一緒に逃げたんだぜ、あの時はお前と付き合っていたにもかかわらず」
「知らないわ。あの時彼が考えていたことになんか興味が無い。それにもうそんな昔の話は忘れたわ」
「フン、男に捨てられてガリ勉か。つくづく哀れな生き方ね」
「何とでも言えばいいじゃない……私はもう帰るわ」
 都は歩き去った。背後で響く足音は幾分急き足だった。

「……バカな女」
 くるみは一人毒づいた。
「……ホントにバカな女だよ」
 やがてくるみも歩き出した。
夜の帳が校舎全体を暗闇に覆い、ひんやりと空気が凍てつき始める。
そして、闇の中で何かが蠢く音がした。
868桃月コンフィデンシャル:2007/04/12(木) 19:50:05 ID:???
ここまで。

ひょっとしたら続くかもしれません。
869マロン名無しさん:2007/04/12(木) 21:17:41 ID:???
GGJJJ
綿貫に萌えてしまった・・・つーか惚れたかもしれん
続きあるなら頼む
870マロン名無しさん:2007/04/12(木) 23:05:14 ID:???
続きが激しく気になるな。
名作の予感。
GJ!
871マロン名無しさん:2007/04/13(金) 01:39:13 ID:???
独白さん、書いてくれよ
872マロン名無しさん:2007/04/13(金) 01:42:32 ID:???
>>868
続きあるよね?読みたいお


「コンフィデンシャル」を思わず辞書で調べちまったよ
873秋山乙女の憂鬱:2007/04/15(日) 05:14:10 ID:???
「ごめん、今は話したくない。後で、明日、にでも」
私はそれだけ言うと屋上を出て行った。いや、逃げたんだ、一条から。
「わかりました……ぉ」
一条が何か言いかけたようだったが、私は聞き取らずに去った。
鈴音が行方不明――それがショックだった。3日もだ。
諜報部が探していながら、響が、寝癖や肌の荒れを放置するほどに頑張っていながら。
そして、茶髪――桃瀬修、くるみの兄貴も、だ。
「乙女?」
「あっ、ごめんね」
ぼうっと歩いていたからか、危うく誰かとぶつかるところだった。
相手は私よりも背の小さい数少ない存在の1人――
「ベキ子? 制服着てるからわからなかったよ。なんで?」
「制服か? これはな、話したくないくらい嫌な目にあって、着るハメになった」
ベキ子は不機嫌そうだ。髪の毛から洗髪剤、香水に紛れてとんでもない臭いがする。
説明不可、落ち込んだ気分がいっそうひどくなりそうだよ。
「じゃ、私は行くからな」
「あ……」
ベキ子はどこか不機嫌だった。
私が哀れむような目で見たのが悪かったのかもしれない。
元気なときの私なら「災難だったな」と笑い飛ばしてやれるのだろうけど、
そんな元気もない。ただベキ子を見つめるしかできなかった。
見下された、とベキ子が受け取っても無理はない。
元来、ベキ子は気難しいからな。その上に敏感で、傷つきやすい。
「傷つきやすい……かぁ」
私自身、そうなんじゃないか。ふとそう思った。
いや、私は心が弱虫なだけか。
傷つきやすさと苦しさを乗り越えて立ち直れないのは別だ。
私は、ふだん鈍感な分、一回ダメージを食うと沈みっぱなしになっちゃうんだろう。
きっと、そうだ。そうじゃないと、困る。きっと、困る。
くるみは、どっちなんだろう?
くるみは、傷つきやすい? 傷つきやすくない? 立ち直り早い? 遅い?
わからない。同じスポーツに打ち込んで、短いながらも同じ学園に通いつつも、私ら2人の距離は遠い。
874秋山乙女の憂鬱:2007/04/15(日) 05:15:38 ID:???
教室に戻る気になれないので、校庭へ出た。
途中で思い直す。今は人ごみを避けたい。人気のない方へ行こう。
ウサギ小屋……? そこで見知った顔に会った。
「晶、何してるの?」
「あ、乙女さんじゃないですかー。私? メソちゃん、探してるんです」
「メソ? ああ……」
お前がウサギになったような奴か、と言おうとして止めた。
なんというか、やっぱりそういう気分じゃ、人に軽口を叩く気になれないんだ。
「メソちゃん、家出なんかするような子じゃないのに……」
晶の、本当に心配そうな、顔。
この子は誰にでも優しい。
「メソちゃ〜ん? はう?!」
軒下を覗き込んで、頭を上げるタイミングを間違って頭を打っていた。
そして涙ぐんでしばらく沈黙、後、すぐに活動再開。
晶はドジで何をやっても失敗続きだけれど、ちょっと泣いたらすぐに立ち直る。
実はダメな子じゃなくって、力が空回りしているだけなんじゃないかと最近思う。
鈴音の逆? でもないか。
「メソちゃん、ここ3日、見つからないんです……。
あ、最初に気づいたのは一条さんなんですけどね。
私はまずこの子にご飯をあげにくるから、一条さんに先を越されちゃいました〜」
「勝ったケロ」
オオサンショウウオが唐突に言った。どーでもいーけど。
ここであることに気づいた。
「ベキ子が元気ないの、気づいてた?」
「そーなんですか? 今日はまだ会ってないからわかりませんけど」
「メソウサ、いちおうベキ子が連れて来た奴だからなぁ。
……いないと、さみしいのかも」
さっきなんだか冷たかったのは、メソウサのことが心配だったからなのかもしれない。
ベキ子はああ見えて泣き虫なところがあるし。
泣き虫というか、激情家ってやつ? 私もそうだからな。
すぐカッとなって、それで失敗する。
875秋山乙女の憂鬱:2007/04/15(日) 05:18:56 ID:???
「ん?」
ふと、ウサギ小屋の陰、じめっとしたところに目をやると、誰かがいた。
「ああ、ベホちゃんですよ。今、ちょっと落ち込んでるみたいなんです」
D組の元コスプレ女だ。転校当初はかわいい服装とメイクだったのに、
急にイメチェンを連続したかと思えば、地味なメガネっ子になっていた、
と片桐は言っていた。
何かブツブツ言っている。
ま、私は気にしないけどね。憂さ晴らしに暴れられるよりは百倍いいや。
私はウサギ小屋の近くに転がってたリヤカーの荷台に腰掛けた。
「あれは、A組の赤青双子か」
柏木優麻と柏木優奈、名前はもう知ってるけど、親しくなる前はそう呼んでいた。
2人は双子で、姉の優麻が青、妹の優奈が赤の髪留めをつけていて、
親しくない奴にはそれで区別をつけてもらってるらしい。
あんなもんなくたってわかりそうなもんだけどな。
その2人がキョロキョロと周りを伺いながら、こっちに向かってくる。
「優奈ちゃんに優麻さん、どうしたんですかー?」
晶が声をかける。私は目礼した。
「桃瀬くんが行方不明らしいのよ。だから、宇宙人さんに見つけてもらおうと思ってね」
「優麻ちゃん! 言っちゃっていいの?!」
「なーに、どうせ信じやしないわよ。
こういうのは下手にごまかした方が怪しまれちゃう。だから、いいの。
2人とも、生徒会でも風紀委員でもないし、ね」
宇宙人? 暇なときの響なら食いつきそうな話題だな。
どうせ、おまじないか、こっくりさんの一種だろう。
「そーか、見つかるといいな。くるみも元気出してくれるだろうぜ」
ちょっとだけ嫌味な声のトーンで言ってやった。
私はこういうときの冗談やおふざけが嫌いなのだ。
やるなとは言わないけど、くるみが直で聞いてたら、どう思うだろう。
「くるみさん、まだ元気がなかったっスか?!」
後ろから、素っ頓狂な声を上げる奴がいた。
「なんだよいきなり大声出して、ウサギ小屋の近くだぞ? お静かに、だろ」
「だって、くるみさんがショックを受けて落ち込みだしたのは、私のせいなんっスから!」
876秋山乙女の憂鬱:2007/04/15(日) 05:49:03 ID:???
「話はおとといにさかのぼるっス。
くるみさんが聞きに気たんスよ。D組まで」
「何を?」
優麻が真剣な顔で聞く。晶は、ちょっと緊張した顔で黙っている。
「ヤクザに脅迫されたらしいんスよ」
「……どういうこと?」
優奈もかなり本気の顔になった。たぶん、私も眉間にシワくらいは寄ってる。
「『いつぞやはお世話になったな。札束と拳銃の件だ。思い出せ。
お前が未だに例のブツを隠し持ってることはもう知ってる。
早いところ返してくれないとこっちは大弱りだ。
1週間以内に桃月駅の891番ロッカーに入れておけ。
これに応じない場合は、落とし前をつけてもらうぜ』
そういう主旨の手紙だったそうっス」
「落とし前……? まさか?!」
優麻の顔が青くなった。
「そう、手紙は修さんが帰ってこなかったマラソン大会の次の日に届いていたそうっス。
それで、これはどう考えたらいいのか、犬神くん、都さんと相談していたっス。
その後、犬神くんに私が呼ばれて意見を言うことになったんス。
あくまで可能性としてですが、お兄さんがさらわれていることもありうると」
「でも、誘拐してるんなら、そう明言したほうが脅しになるんじゃないの?」
優麻が言った。顔面はすでに蒼白だ。
「日本人の学生なら、高値で東南アジアから中東までの人身売買ネットワークに流せるっス。
違法操業の漁船、貨物船から運び出されていればまず見つからないっス……。
誘拐を明言していなければしらばっくれられるし、落とし前も立派につけられて一石二鳥っス」
「ちょ……っと、待ってくれよ。人身売買だ?!」
私も話しに加わることにした。
「茶髪とは鈴音も一緒に行動してたんだぞ? それじゃ、鈴音は……?」
私にだって想像がつく、桃瀬兄をさらいに行った連中が、人を売り飛ばすような人間なら、
鈴音を見逃しておくはずなどないのだ。スタイルはいいし、黙っていれば美人なんだ。
ダメだ……。こうも怖い話を続けられると、うまく言えないけど、ダメだ……。
私はその場にへたり込んでしまった。腰が抜けた。体に力が入らない。
877秋山乙女の憂鬱:2007/04/15(日) 05:51:17 ID:???
今日はここまで
ベホイミの思い過ごしで、原作どおり2人とメソウサは遭難しているのでご安心を
次回以降、勘違いした面々が大いに空回りします
878マロン名無しさん:2007/04/15(日) 12:48:15 ID:???
GJ!
今後にも期待っス!
879桃月コンフィデンシャル:2007/04/16(月) 00:31:19 ID:???
<2>

 くるみが外に出ると、夜が強烈に肩に圧し掛かってきた。
さっきからいやな予感がしている。そのせいでこんなに調子が悪いのだろうか。それとも今日という日がそもそもブルー・デイなのだろうか。
どっちにしろ具合がよくない。酷く不愉快だ。別に誰かのせいでもない、強いてあげるのなら、自分に腹を立てたがっている自分が癪にさわるのだった。
 昇降口から校舎を出て、正門に向かって歩いていく。
運動場で運動部が活動しているのを除き、既に他の生徒の姿は見当たらず、教職員用の駐車場にも車は少ない。
がらんとした校内を、くるみはたった一人で抜けていく。制服の裾と肩ほどの長さの髪の毛の端が、風に煽られて静かに揺れる。
頭の中に篭っていた熱が、ゆっくりと引いていく。

 駐車場に一台の目につく車が止まっていた。
鈍い臙脂色のメルセデス・ベンツSLK、間延びした面構えに、恥ずかしげもなく正面に埋め込まれた巨大なスリーポインテッド・スターのエンブレム。バリオルーフは慎み深く閉じている。
中途半端で、センスの欠片もないライトウェイト・クーペだ。そしてその持ち主は、これもまた取るに足らない人物、軽薄なライトウェイトの男なのである。
 くるみは何の気もなしに車に近づいていった。曲線の車体に反射する光が、生き物が這うように動いて見える。
 ベンツのクーペの隣に立ち、中を覗き込む。これの持ち主はある教員だが、教員風情がスモークガラスを入れた車で通勤とは恐れ入る。
灰色のガラスは真っ黒の板張りのようになっていて、中の様子が見えない。くるみはガラスになるたけ顔を近づけて、それでもじっと睨みつける。
見えるのはガラスに反射した自分の仏頂面ばかりだが、これは中にいる人間にも同じ映像が見えているはずである。
 くるみにはわかっていた。助手席に誰かが乗っている。もちろんこれの持ち主であるはずがない。では誰か。誰がそこに座っているのか。
 くるみはなおも睨み続けた。こちらからそいつの顔を窺うことは出来ないが、そいつは確かにくるみの凝視に曝されている。
根競べとなれば、実は極まりが悪いのは車内にいる人間の方だ。こうやって睨み続けていれば、じきに我慢できなくなってこんばんは、というあんばいだ。

 窓がゆっくりと開く。
 ほら、思ったとおりだ。
「何か御用ですか」
880桃月コンフィデンシャル:2007/04/16(月) 00:33:55 ID:???
 ウィンドゥ・オープンの擦れるような音に被さって、中から少女の小さな声が聞こえてきた。
「おやおや、誰かと思ったら来栖じゃない」
「くるみさん……用がないなら向こうへ行っててくださいよ」
 来栖は物憂げな表情で、くるみの顔を真っ直ぐ見つめる。頭の上のリボンが解けて、細い頸に巻かれている。
シートに姿勢よく腰掛け、膝の上に皮の鞄を乗せ、その上に綺麗な指の生え揃った白い掌が置かれている。
くるみはドアに腕をかけ、屈み込むようにして首を車内に入れた。煙草の脂の臭いがかすれがちに漂い、その上から強烈な芳香剤の匂いが重ねられている。
もう一つのシートは、この車の持ち主である運転手が戻ってくるのを待っているかのような寂しげな様子だ。
だが、その隣の来栖の表情には、戸惑いと焦燥の色ばかりが窺えた。
「こいつはいったいどういうことなのさ?」
「どうもこうもありません。早くそこをどいてください」
「質問に答えろ。何でお前が生活指導のオヤジの車に乗っているんだ」
「何の理由があってそんな高圧的なものの言い方をするんですか。あなたには関係のないことですよ」
 またこれだ。お前には関係がない。誰も彼も自分の問題は自分だけの問題にしようとする。誰にも関係を持たせたくない、非常に排他的な態度だ。素直じゃない。
くるみはこういう人間こそ穿り返すに相応しい、腐ったもので塗り固められた綻びを持っているものだということを知っていた。
そしてそれは風紀委員という名の警官である彼女の職業的な鼻が感知するものであった。
言い方が高圧的なのはそのおまけのようなものだ。
「今は関係ないが、無理に関係を持ってやってもいいんだぜ。学校の中で問題のある行動をされるのは不愉快だ。だがそれ以上に目に見えないところでコソコソされるのが嫌いなんだよ」
「何も疚しい事なんかありませんよ。それとも学校の風紀委員には人のプライベートにまでちょっかいをかける権限があるとでも仰るんですか」
「諜報部ならそれもやるかもしれんね。だが今重要なのは権限だとかそういう問題じゃない。何故お前がこの車に乗っているのか、ということだ。事と次第によっちゃ学園の新しい噂話のタネになりかねんからね」
881桃月コンフィデンシャル:2007/04/16(月) 00:36:14 ID:???
「何をそんなにビビってんだい?別に私はあんたが何をしようとそれ自体を咎めるつもりはないんだ。
ただね、表でやろうと裏でやろうと、結果として学校の中で物議を醸すようなことだけは控えてもらいたいんだよ。ただそれだけの話さ」
「結構な愛校心ですね。私のことは心配要りません。あなたたちにも迷惑はおかけしません。ですからもう放っておいてください」
「わからねぇ奴だな。こんな時間にお前が先公の車に乗っているってのはもうそれ自体が問題あるんだよ。
私ならいいが他の奴に見られたら――諜報部や新聞部に見られてみろ、またしてもいいスキャンダルだ」
「じゃあこういうのはどうでしょう。私はもうこれっきりで窓を閉めます。くるみさんは何事もなかったように校門に向かう。
もちろんあなたは何も見なかったし、誰にも会わなかった。あなたが黙ってさえいればあなたの望むとおりの結果になりますよ」
「いつまでも車の中に閉じこもっているつもりかい?あんなオヤジに義理立てして隠し事しても自分の首が絞まるだけだぜ」
「あなたが何をしたいのか私にはわかりません。言い掛かりをつけて私をいびりたいだけなのならば別の機会にしてください」
「芹沢なら何て言うかな」
 世界の時がほんの僅かの間止まった。来栖は引きつった表情を窓の外に突き出し、鋭い眼差しでくるみの方を睨みつけた。
くるみは相変わらず飄々としていて、人の神経を逆撫でするための爪を研ぐことに余念がない。
「……あの女の話はしないでください」
「あの女ときたか。いいかい、来栖。私はもうあんな事件が起こって欲しくないんだよ。
あんたが今ここでこうしていることは私にとってすごくいやな事の前触れにしか思えない。
生活指導のオヤジがどんな奴だかあんただってよく知っているだろう?」
「……大丈夫です。南原先生はそんな悪い人じゃありません。そろそろ先生がやってきますよ。
もしあなたと話をしているのが彼に知られたら、それこそあなたにとって決して望まない事態になるでしょう。これだけははっきり言えます」
「警告とやらならもうさっき頂いたぜ。それともこれは脅迫というやつかな」
「ごきげんよう、くるみさん。その好奇心と横柄さのせいで足元をすくわれないようお気をつけて」
882桃月コンフィデンシャル:2007/04/16(月) 00:38:30 ID:???

 生活指導の南原は一度セクハラと部費の使い込みが露呈して教委の査問委員会にかけられた。今から一年ほど前のことだ。
その経緯などは風化した記憶に閉じ込められて二度と取り出せるような代物ではないが、結果ばかりは今でもはっきりと覚えている。懲戒免職。
あの男は行き過ぎた不正のためにバッサリと切り落とされたのだ。
 少なくとも、その当時はそのはずだった。
だがどういう理由からなのか、彼はいつの間にか復職し、再び元のポストに居直ったのである。たった一年ですらも待たずして。
その上今度はベンツときたものだ。彼の復職後の羽振りのよさは怪しむべきほどに目に余る。どんな政治的なお遊びがあったのかは知らないが、いい加減に人を馬鹿にしている。
 くるみには、あの事件の後のどさくさに紛れて何食わぬ顔をして戻ってきたこの狸オヤジがたまらなく癪にさわった。
加えて生活指導というからには、いちいち風紀委員のやることに上から指図してくるその官僚的な態度にも腹立ちを覚えていた。
そして今夜、彼の車の中で来栖を見た。変わらない悪徳の様を見てしまったのだ。これ以上彼の心証を悪くするために何を持ってくることが出来るだろうか。

 くるみは車の傍を離れて歩き始めた。
今日の成果は空振り三振スリーアウト、ひとつの安打も無し。最悪だ。
蓋を開けてみて残ったのは言いようのない気まずさと不機嫌な真実ばかり。
そして攻守のチェンジに怯える夜が待っているだけだ。
883桃月コンフィデンシャル:2007/04/16(月) 00:40:59 ID:???
ここまで
調子がよかったら続きます
884桃月コンフィデンシャル:2007/04/16(月) 00:52:35 ID:???
あーコピペミス

880と881の間に以下の来栖の台詞が抜けています
もうしわけない

「警告してもよろしいですか、くるみさん。あまり自分を強いと過信しない方がいいですよ。
世の中には触れるべきでない腫れ物というのがいたるところにあるものです。あなたは今とても危険な行為に及ぼうとしているのに自分で気がついていないんですよ」
885マロン名無しさん:2007/04/16(月) 03:06:35 ID:???
憂鬱さんコンフさん乙
少しだけだが活気付いてきたな
1000行く前に次スレ移行かな?
886マロン名無しさん:2007/04/16(月) 12:42:47 ID:???
お二方乙ッス

乙女の心境ってあんまし考えた事なかったから新鮮だなーと今頃になって…
コンフィさんのは…
なんかくるみに共感できるような感覚…
なんか現実に存在する鬱要素が…
887マロン名無しさん:2007/04/16(月) 13:19:29 ID:???
乙、GJ。
もしかしてコンフィデンシャルの人ってカポデコwの人と同じ人?
888マロン名無しさん:2007/04/17(火) 21:41:48 ID:???
いつ頃次スレが立つのかな
889マロン名無しさん:2007/04/17(火) 21:59:46 ID:???
470越えたらと思ってた。
890マロン名無しさん:2007/04/19(木) 14:19:20 ID:???
こんにちは、独白の人です。
マッキーの『遠く遠く』を聞いていて思いついたネタです。
891890:2007/04/19(木) 14:20:32 ID:???
<早乙女の独白:2>

桜が、舞っていた。
窓の外に見える桃月中央公園の並木から、静かに舞っていた。
ピンクのベールが街にかかったように、静かに舞い続けていた。

毎年、この頃になると、発車する新幹線の窓から最後に見た
ふるさとの桜のことを思い出す。
まるで七五三の子供みたいな、ぎこちないスーツ姿で
故郷を去ったあの日を思い出す。

今はスーツなんかほとんど着る機会もなくて、毎日ジャージ姿で
職場に通っているけれど、あの頃の自分は今の自分を見たらどう思うんだろうか。

地元の大学を出て、一度は何も考えずに就職したけれど、やっぱり
教師になりたくて、氷河期だったけどせっかく入れた会社を辞めて。
でもなかなか教師にはなれなくて、またいろいろなバイトを転々として。
あの頃の話を宮本先生にしたら「チンピラ」って言われたけど、
世間から見たらそんな感じだったのかもしれない。

こないだ来た高校の同窓会の案内状には、「欠席」に○をつけた。
みんなには会いたいけれど、俺を心配してくれているみたいだけれど、
今の自分を見せるのが、なぜだか怖くて。
やりたかった仕事をしてるはずの自分なのに、なぜか怖くて。

今でも、これでよかったのか、って思うことがある。
それなりに楽しいけれど、充実もしているけれど、それでもやっぱり、
一度逃げたっていう事実は変わらなくて。
それを皆にどう見られているのかって考えると、その思いは止まらなくて。

窓の外の桜は相変わらず、静かに散り続けている。
あの頃と変わらず、今年もまた、散り続けている。
892890:2007/04/19(木) 14:21:38 ID:???
以上です。
それでは。
893マロン名無しさん:2007/04/20(金) 03:27:14 ID:???
>890
面白くないからもう来なくていいよ
ていうかおまいの文は秋田
894マロン名無しさん:2007/04/20(金) 10:17:58 ID:???
>>893
貴様が来なくていいよ。
飽きたならスルーしてろ。
>>890
気にしないで。
895マロン名無しさん:2007/04/20(金) 12:23:09 ID:???
>>893
うっせー泥水でも飲んでろ

>>892
乙です
気にせず気にせず

なんでぱにぽにと鬱要素はこんなにも合うのだろうか…
896マロン名無しさん:2007/04/20(金) 18:28:06 ID:???
独白先生へのレスは何番につければいいんだろうか
897マロン名無しさん:2007/04/20(金) 20:35:05 ID:???
>>独白たん


ってレスすればいいじゃない
898マロン名無しさん:2007/04/20(金) 21:39:49 ID:???
>890からのレスが全部独白氏の自作自演だったらテラワロス
899マロン名無しさん:2007/04/20(金) 22:08:36 ID:???
>>独白さん
乙です
俺も何となく気持ち分かります
900マロン名無しさん:2007/04/20(金) 22:33:19 ID:???
900
目指せ10000
901マロン名無しさん:2007/04/21(土) 03:15:07 ID:???
投下し始めて切れるよりは新スレ立つの待った方がいいかな
久しぶりに1000までいけるかな
902マロン名無しさん:2007/04/21(土) 10:07:28 ID:???
このスレ1000行ったことないよ
903マロン名無しさん:2007/04/21(土) 11:37:32 ID:???
おっとそうだったか。記憶違いか
じゃあ初1000の快挙になるかな
904マロン名無しさん:2007/04/21(土) 11:41:33 ID:???
残り容量を考えると難しいかも
905桃月コンフィデンシャル:2007/04/21(土) 21:19:58 ID:???
<3>

 綿貫はコンピュータ室の中央ワークステーション席に陣取って資料の打ち出しをしていた。
それは次回の委員長委員会に提出されるはずであろう瑣末な報告書の束であり、退屈な事務仕事の連続に他ならなかった。
だが退屈な事務仕事というのは同時に安寧の時を過ごすやり方として最も適したものであり、誰もいない室内で、のんびりと寛ぎながら手をかけることの出来る残業はしばしの幸福感にすらつながるのだった。
 綿貫は資料を打ち出す手を止めて、大きく伸びをした。あまり座り心地がいいとは言えない人工皮張りのオフィスチェアの背もたれに身体を預け、背中を後ろに反り返す。
ギシギシと金属の軋む音がして、突然綿貫はハッと気がついたように身体を立て直す。
俊敏な動作は、まるで体の中にばねでも仕組まれているかのような様子である。
また太ったかしら。

 去年の後半から春にかけて一時的な心労と拒食のために彼女の皮下脂肪は不健康に削げ落ち、精神状態が立ち直っていくらかの健康を取り戻した今に至っても入学当初のようなふくよかさを取り戻すことはなかった。
体重は10キロ単位で見る見るうちに減り、体調も慢性的な不良状態に陥った。はじめのうちは周りの友達から羨望の言葉をかけられることもあったが、健康が失われた状態ではいくら痩せていてもそれは単なる窶れに過ぎない。
今となっては丁度いい具合に体力や食欲も回復し、体型もリバウンドすることなく、喜ばしい状態を維持できている。
ただ、気をつけなければすぐにまた太り始めるおそれがある。怪我の功名とは言わないが、折角僥倖で手に入った今のスタイルを、旧来の不摂生とちょっとした油断とでまた失うことになるのは何とも惜しい話だ。
彼女はダイエットに成功してもなお、むしろ成功したがためによりいっそう自分の体型に関しては神経質になっていた。
 身体を前後ろに揺すってみる。椅子の軋む音が断続的に聞こえてくるが、それはやがて心地よいほどの軽快なリズムに聞こえ始め、綿貫は面白がってしばらくそれを続けていた。
煌々と照明の灯るコンピュータ室の中で、コンピュータの唸り声に混じって椅子のささやかなる悲鳴が響く。
906桃月コンフィデンシャル:2007/04/21(土) 21:22:00 ID:???
 廊下の方から足音が聞こえてきた。こちらに近づいてくる音だ。
夢中になって身体を揺すっていた綿貫は我に返って頭を上げた。そして慌てて自分の作業に戻る。
別に忙しさを誰かに対して装う必要などなかったのだが、彼女のもとから持っている生真面目さが、他人に何もしていない自分の姿を曝け出すことをよしとしなかったのである。
それに加えて、自分が密かな楽しみ(それは何とも愚につかないものであるが)に心を奪われているところを誰かに見られることの極まりの悪さと恥じらいの心もあった。
つまり結局は彼女も人並みの小心さを持っていたのである。
 足音は暗闇の廊下の中をさらに向かってくる。やがてそれはコンピュータ室の前で止まり、一瞬の沈黙の後に部屋の扉が開かれる。
綿貫は手を止めたまま、足音とその主の一部始終の動態を窺うようにじっと廊下の方を見つめていた。
やがて一人の少女が訝しげな表情を湛えたままの顔を中に突き入れた。上原都だった。
「綿貫さん?こんな遅くまで何してんのよ」
綿貫はいささか緊張を緩めて、ため息交じりに返答した。
「ちょっと事務仕事が残っていてね……」
都の方は不審な目つきを眼鏡の奥に宿したまま綿貫の顔を見つめていた。
綿貫もいくらかきまりが悪くてそこから目を背けることが出来なかった。
 よく考えると、彼女と顔を突き合わせるのは何ヶ月ぶりかというほどに久しいことではなかったか。
色々とあった去年の出来事に揉みくちゃにされて、付き合いのあった人と顔を合わせることも億劫なことになっていた時期があった。
当時都はC組で、綿貫はB組だった。今、都はB組で、綿貫はD組である。
すれ違う関係で、確かにそれほど長い面識を持つには至らなかった二人である。
都はずっと海外に留学していたと聞くし、その間に起こった数々の出来事で、綿貫を始め多くの物事が変化した。
すっかり浦島太郎になってしまった都が、"故郷"の変貌に愕然失望し、自らの居場所を新たに求めるべく、他の誰よりも著しい変化を遂げてしまうのに、それほど多くの時間がかかることは無かった。
907桃月コンフィデンシャル:2007/04/21(土) 21:24:34 ID:???
 久しぶりに顔を合わせてみて、綿貫は都の眼鏡が変わったことに気がついた。
以前彼女は赤いセルロイド風のお洒落な色縁眼鏡をかけていたが、今では金属フレームが冷たく光る、無味乾燥とした実用スタイルである。
都はもともと勉強の虫だったが、装いを飾ることを放棄するほどのひたむきさではなかった。
彼女は容姿もいいし、それを磨き上げるためのお洒落も怠ることは無かった。学問の徒である前に、年頃の、若い娘であったのだ。
 だが、今の彼女は少し違う。確かに容姿は端麗で、一本の服の皺すらも見逃さないほどの入念さでその身なりは固められている。
しかし、今の都は徹底的にクールだ。非情なほどに冷たい。そこには少女の艶やかさというよりも、機械のような、ひどく居心地の悪い金属光が鈍くあるだけなのである。
肩にかかるまで長めに伸ばされた赤い髪の毛は、端の方が跳ねるように癖がついているのを適度に梳いてあるが、去年のように可愛らしい髪留めの出番は無く、眼鏡のフレームと同じような無垢の金属製のヘアピンによって窮屈に束ねられている。
額が広いのをからかわれるのにもう頓着しなくなったのか、それとも彼女の厳しい雰囲気が他の者にそういった嘲笑を投げかけるのを許さなくなったためか、かき上げられた頭髪の下で肌色の広場がよりいっそう心地いい光を照り返している。
 綿貫は都の風貌が堅実的な、そして限りなく色気の無いものに変化していたことに驚愕すると同時に、それまで彼女の外見上の、そしてその人格上の変化に気がつかなかった自分に対してもどこか居た堪れない気持ちを覚えた。
諜報部の看板を背負うに至っておきながら、周りの知己の変化にすら疎くなっている自らの視野の狭さに失望を禁じえなかった。
「事務仕事?あんた、諜報部の部長ともあろう人がそんな雑用を残業しなくちゃならないの?」
 そうだ、そして私は諜報部の部長になったんだ。綿貫は自分の身に起こった変化ですらも他人の言葉によってでしか認識することが出来なくなっていた。
感覚が徐々に鈍くなっている。全てのあらゆることに対して、自分の感覚がそれほど敏い反応を示し得なくなってきているのだ。
そして、既にどこにも切り込んでいくことの出来ないほどのなまくらになってしまっている。
「雑用はうちの部の伝統的な十八番なのよ。部員も人手不足だし、私がやらなくちゃ他にやり手が無いんでね」
908桃月コンフィデンシャル:2007/04/21(土) 21:26:25 ID:???
「へぇ、そうなの?夜遅くまで大変ね」
 都の口調は抑揚がなく、その内容も単なる口上の社交辞令に他ならない。
綿貫は意味もなく張り詰めた空気に少しでも緩みを持たせるように、何の価値も無い笑顔をして見せた。しかし都はクスリとも反応しなかった。
「上原さんは何を?」
「勉強よ。今度の模試でそれなりの結果を出さなくちゃまずいのよ。そういえば、綿貫さんは特進クラスに上がるつもりなんでしょ?」
「え?ああ、一応大学受験のことも考えてはいるけど」
「そうなの。私も何とか特進クラスに入りたいのよね。だからこうやって夜遅くまで勉強の毎日」
 都は自嘲的にため息をこぼした。そして綿貫の方をその冷たい眼差しで見据える。
綿貫は彼女の瞳の中に綿貫への皮肉がましい非難の色を読み取った――私はこんなに勉強しているのに、遊んでいるあんたの方が成績がいいというのは納得が出来ないわ――、綿貫は彼女の無言の非難を無視するように受け流した。
普段遊んでいるように見える人間ほど、実は密度の高い仕事量をこなしているものなのである。
努力と成果が釣り合わないのは、見かけ上の相関関係に惑わされているに過ぎないのである。
少なくとも、そんな単純な事実にも気がつかずに、なおも効率の悪い機関をまわし続ける限り、都のこの状況が改善されることなどありうべくもない。
「それはそうと」
綿貫は気まずい空気を追い払うための換気を始めた。都は勉強の話題から離れようとする綿貫の努力を前に、既に興味の色を失って気が散り始めている。
「ねぇ、最近変な噂を聞かない?」
「変な噂?」
「そう。学校の中で悪いことをやっている奴らがいるって」
「悪いことって何なのよ」
「それがどうもウリらしいのよ」
都の顔に僅かに表情が浮かんだ。綿貫は一瞬だけそれを確かめ、何とか相手がまだ冷血の鉄仮面になりきってはいないことを知ることが出来た。
「売春?犯罪じゃない。そんなことしている奴らがいるって言うの?」
「噂ではね。その見返りに何を受け取っているかは曖昧なんだけどね」
「どういうことよ」
「つまり、性の代償は必ずしも金ではないってね」
「回りくどい言い方はよして。気が滅入るだけだわ――それで、噂ではどういう話が?」
「単位と推薦状の按排だってさ」
「それって……まさか」
909桃月コンフィデンシャル:2007/04/21(土) 21:28:56 ID:???
 都の顔色は見る見るうちに蒼冷めていき、明らかにうろたえているような様子を見せた。
「はっきり言っちゃえばね、教師に媚びを売ってる女子生徒がいるって話だよ。並々ならぬ媚びをね。
で、その見返りに教師は彼女のために特別な手心を加えてあげるって仕組み。
どんなものかは知らないけど、自分の身体をダンピングしてまでも手に入れる価値のあるお手当てなんだろうね」
「……何故私にそんな話を?」
 都の耳は赤かった。明らかに怒りが顔中に溢れ出している。綿貫は慎重に、言葉を選びながら答えた。
「何故って、私はただ聞いた話を……」
「何か私に言い当てたいことでもあるんじゃないの?率直に、私がそうなんじゃないかって」
 綿貫は驚いた顔をして見せた。
「別にそんな含みは無いわ。その女子生徒が上原さんだなんてことは私は一言も言ってはいないし、そんな風に思ってもいない。
事実あなたはずっと勉強詰めなんでしょ?そんな不正をするとは思えないわ」
「どうかしらね。あんたが私を疑っているのはわかるわ。成績やら内申やらのためなら教師とだって寝る女だと思っているんでしょう。
だけど見くびらないで欲しいわね。私はそこまで落ちぶれちゃいないし、そんな未来の見えない取引にわざわざ高いリスクを犯してまで手を染めようという気はないわ!」
「それならそれで結構な話よ。あなたは悪事には手を出しちゃいない、意見が一致したのに何をそんなにムキになっているのよ?
ただ、私としてはそういう噂を聞いたということを何の狙うところも無く話しただけだし、あるいはひょっとしたらあなたからその手の情報に関して新しいことが聞けるかもしれないと少しばかり思っていただけよ。
変に誤解を招いて私の言葉が糾弾に聞こえたのなら、それは謝るわ。決して他意はないのよ」
 綿貫は立ち上がって都の方に歩み寄った。都は一度歯を引き締めたが、やがて落ち着きを取り戻し、呼吸を整えて下に俯いた。
「ちょっと疲れているのよ……そういう話って、やっぱり昔のことを思い出すから」

910桃月コンフィデンシャル:2007/04/21(土) 21:31:00 ID:???
「過去のことはもうお互い忘れましょう。それよりも今はそういう不正がまた学校の中で起こっているかもしれないっていう噂があることを何とかしなくちゃいけないの。
もうこれ以上誰かが苦しむのはたくさんなのよ。お節介のお人好しなのかもしれないけど、私、そういうのを見過ごせないから……」

 綿貫が震える都の肩に手を伸ばそうとした瞬間、すぐその向こうから声がした。
「おい、お前たちこんな時間まで何をしているんだ?」
驚いて廊下の方に目を向けると、紺色のブレザーを律儀に着こなした小さな女教師が腰に手を当ててこちらを見つめていた。
その表情は半ば呆れているかのようであり、もう一つには疲れを帯びた怒りの色にも見えた。
青い瞳はコンピュータ室から漏れる蛍光灯の光を浴びてビー球のように輝き、白い肌と金色の髪とが暗闇の中で異様にまぶしかった。
「あ、宮本先生。ちょっと委員会の会議資料の打ち出しを……」
 綿貫は表情を崩して微笑んだ。やはり微笑んだのは彼女だけだった。レベッカも都も校舎の中の闇よりもいっそう深い色にその表情が落ち沈んでいた。
「早く下校してくれよ。今日は私が戸締りを確認しなくちゃいけないんだ」
「風紀委員はどうしたんですか」
「くるみのアホめ、あいつはとっくに帰ったよ」
 レベッカは頬を膨らませて憤慨している仕草をして見せた。綿貫は苦笑した。都は黙ったまま顔を俯けていた。
「とにかく、早く帰ってくれよ。私だって帰りたいんだからな」
レベッカはそう言い捨てると踵を返してもと来た闇の回廊を戻っていった。豊かな金色の毛髪が、ふんわりと弧を描いて宙を舞い、やがて暗闇の色に染めつくされた。
足音が徐々に遠ざかり、間もなく静謐に消え入った。

 しばらく沈黙が続き、二人は押し黙ったままそこに立ち尽くしていた。互いに相手の顔から目を背けたままだた。
やがて都の方が気がついたように、呟くような小さな声で言った。
「例のこと、何か聞いたら私も教えるわ。悪いけどこれから塾に行かなくちゃいけないの。お仕事頑張ってね」
「ええ。それじゃあまた今度」
911桃月コンフィデンシャル:2007/04/21(土) 21:32:30 ID:???
 都が部屋を出て行ったとき、彼女の表情はまた無骨なものに戻っていた。
しかし綿貫にはそんなことはどうでもよかった。彼女は既に先刻の自分の言動について後悔し始めていた。
確かに自分の言い草は都を端から疑っているようで、いやらしく探りを入れているように聞こえなくも無かった。
スパイの豚か。確かにそうかもしれない。いつの間にか自分も人を疑うことを前提としてでしか会話が出来なくなっているのかもしれない。
そしてなお嫌なことは、それに対して何の不快感も覚えなくなっていることだった。
不信と不義に対する不感症。どんどん鈍くなっていく自分の精神。
綿貫はいつか、自分が悪徳と背信の泥にまみれて、失われた自分自身の純粋さを嘆き求めて鳴く家畜場の豚になってしまうのではないかという惧れを覚えた。
身体がどんなにスリムになっても、心が汚いもので覆われてしまったのでは、結局豚だと罵られても返す言葉が無い。

 綿貫は力なく椅子に腰を下した。このままでは自分はどんどんダメになっていく。
何とかしなければならないという焦りが、ついにその晩は彼女にそれ以上の事務仕事をこなすことを許さなかった。
912桃月コンフィデンシャル:2007/04/21(土) 21:33:46 ID:???
ここまでです
913マロン名無しさん:2007/04/21(土) 21:39:32 ID:???
乙。
ってことは来栖は…OTL
914マロン名無しさん:2007/04/21(土) 22:05:00 ID:???
次スレ立てました。

(o^v^o) ぱにぽに de 学級崩壊 (*゚∀゚*)8日目
http://anime2.2ch.net/test/read.cgi/csaloon/1177160400/
915マロン名無しさん:2007/04/21(土) 22:57:02 ID:???
コンフィさんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!

>>914
乙!
916マロン名無しさん:2007/04/22(日) 15:31:12 ID:???
1000狙ってみる?
917マロン名無しさん:2007/04/22(日) 15:31:25 ID:???
917
918マロン名無しさん:2007/04/22(日) 15:36:20 ID:???
918
919マロン名無しさん:2007/04/22(日) 15:57:54 ID:???
919
920マロン名無しさん:2007/04/22(日) 20:43:18 ID:???
.
921マロン名無しさん:2007/04/22(日) 20:45:10 ID:???
.
922マロン名無しさん:2007/04/22(日) 20:47:52 ID:???
923マロン名無しさん:2007/04/22(日) 20:48:05 ID:???
 
924マロン名無しさん:2007/04/22(日) 21:07:52 ID:???
925マロン名無しさん:2007/04/22(日) 21:09:38 ID:???
926マロン名無しさん:2007/04/22(日) 21:16:19 ID:???
927マロン名無しさん:2007/04/22(日) 21:18:21 ID:???
928マロン名無しさん:2007/04/22(日) 22:40:55 ID:???
oioi
929マロン名無しさん:2007/04/23(月) 03:18:03 ID:tnG8+qvt
コードギアス〜反逆のメソウサ
930マロン名無しさん:2007/04/23(月) 18:46:14 ID:???
魔法先生メソウサ
931マロン名無しさん:2007/04/23(月) 20:19:48 ID:???
メソえもん

「助けてよメソえも〜ん…」

「ウサギなのでわかりません……」
932マロン名無しさん:2007/04/23(月) 20:20:34 ID:???
めそ☆うさ
933マロン名無しさん:2007/04/23(月) 22:27:53 ID:???
このまま埋めるのか?
934マロン名無しさん:2007/04/23(月) 22:30:03 ID:???
いけるとこまで。


今、476kbくらいか
935マロン名無しさん:2007/04/23(月) 23:26:09 ID:???
935
936マロン名無しさん:2007/04/23(月) 23:48:54 ID:???
936
937マロン名無しさん:2007/04/23(月) 23:50:21 ID:???
でも現世だと、敵が全力で戦ったら街、吹っ飛んじゃうよ
938マロン名無しさん:2007/04/24(火) 00:22:15 ID:???
>937
何の誤爆?
939マロン名無しさん:2007/04/24(火) 01:41:25 ID:???
すまない、次元を間違えたようだ
940マロン名無しさん:2007/04/24(火) 18:22:12 ID:???
ブリーチカナ?
姫子とか玲も出てるな
最近鬼太郎もぱにぽに声優よく見掛けるけど
941マロン名無しさん:2007/04/24(火) 19:52:22 ID:???
そういやこないだの幼女も玲ちゃんだったしな。
942マロン名無しさん:2007/04/24(火) 21:49:23 ID:???
>>937
「現世」で、幽白思い出した
943マロン名無しさん:2007/04/24(火) 22:28:42 ID:???
943
944マロン名無しさん:2007/04/24(火) 22:29:59 ID:???
944
945マロン名無しさん:2007/04/24(火) 22:45:15 ID:???
( ゚д゚) ポカーン

(つд⊂) ゴシゴシ

(;゚д゚)

(つд⊂) ゴシゴシ
  _, ._
(;゚ Д゚)・・・?!
946マロン名無しさん:2007/04/24(火) 23:18:31 ID:???
どうした?
947945:2007/04/25(水) 00:54:40 ID:???
すまん。

ここに誤爆したことに今気づいたw
該当スレに書き込んだ気になってたww
948ぱにぽに学級妖怪:2007/04/25(水) 22:30:01 ID:???
「ねぇ……妖怪っていると思う?」
 みのりは本を借りに来た都に訊ねた。
949ぱにぽに学級妖怪:2007/04/25(水) 22:31:00 ID:???
「妖怪ですか?」
「ええ、昨日桃月駅前で見たの。動物が無秩序に融合したような名状し難い恐ろしい姿だったわ……」
950ぱにぽに学級妖怪:2007/04/25(水) 22:32:01 ID:???
 都は答える。
「それ一年D組の南条操さんとそのペットの散歩です」
951ぱにぽに学級妖怪:2007/04/25(水) 22:33:00 ID:???
おしまい
ししまい
952マロン名無しさん:2007/04/26(木) 01:59:49 ID:???
952
953マロン名無しさん:2007/04/26(木) 12:39:34 ID:???
953
954マロン名無しさん:2007/04/26(木) 18:51:59 ID:???
954
955マロン名無しさん:2007/04/26(木) 23:04:02 ID:???
955
956マロン名無しさん:2007/04/27(金) 08:18:20 ID:???
まとめサイトの更新が完全に止まっている件について
957マロン名無しさん:2007/04/27(金) 08:52:27 ID:???
最近良く止まるよな
958マロン名無しさん:2007/04/27(金) 18:03:07 ID:???
って、まだこのスレ機能してたんか…てっきり落ちたのかと…次スレ立ったし…
959マロン名無しさん:2007/04/27(金) 21:30:01 ID:???
とっとと埋めようか
960マロン名無しさん:2007/04/27(金) 22:57:28 ID:???
960
961マロン名無しさん:2007/04/27(金) 23:05:20 ID:???
ぱ〜に〜ぽ〜に〜…
962マロン名無しさん:2007/04/27(金) 23:09:57 ID:???
↓963
963マロン名無しさん:2007/04/27(金) 23:23:50 ID:???
964
964マロン名無しさん:2007/04/27(金) 23:51:12 ID:???
964
965マロン名無しさん:2007/04/28(土) 00:11:39 ID:zDq9YY+O
965
966マロン名無しさん:2007/04/28(土) 00:12:56 ID:???
966
967マロン名無しさん:2007/04/28(土) 10:01:26 ID:???
968マロン名無しさん:2007/04/28(土) 18:41:18 ID:???
969マロン名無しさん:2007/04/29(日) 01:14:38 ID:???
1000いっちまいますか
970マロン名無しさん:2007/04/29(日) 02:16:47 ID:???
行っちまおう
971マロン名無しさん:2007/04/29(日) 03:28:09 ID:???
971
972マロン名無しさん:2007/04/29(日) 14:01:11 ID:???
まとめ復活してるな
973諸葛亮孔明:2007/04/29(日) 23:29:30 ID:V3wYWB+v
イカン、これは私の罠だ
974マロン名無しさん:2007/04/29(日) 23:57:18 ID:???
974


もしかして千いけるかも
975マロン名無しさん:2007/04/30(月) 00:34:46 ID:???
976マロン名無しさん:2007/04/30(月) 00:36:05 ID:pwW6xe5x
щ(゚Д゚щ)カモーン!!
977マロン名無しさん:2007/04/30(月) 01:01:51 ID:???
埋めも空気読んだしな
978マロン名無しさん:2007/04/30(月) 03:20:52 ID:???
978人でベッキーをいじめる
979マロン名無しさん:2007/04/30(月) 04:39:14 ID:???
>1000 ikisou dana!
Hawaii nimo jyuuninn ga iru nowo wasure naide ne!
980マロン名無しさん:2007/04/30(月) 08:48:05 ID:???
980

残り20
981マロン名無しさん:2007/04/30(月) 10:04:51 ID:???
981人分の不幸をくるみさんに@妙子
982マロン名無しさん:2007/04/30(月) 14:00:40 ID:???
982
983マロン名無しさん:2007/04/30(月) 14:23:24 ID:???
983
984マロン名無しさん:2007/04/30(月) 14:32:43 ID:???
子供扱いが984いベッキー
985マロン名無しさん:2007/04/30(月) 15:56:20 ID:???
985は都+600
986マロン名無しさん:2007/04/30(月) 18:51:43 ID:???
ベッキーの自殺を986姫子
987マロン名無しさん:2007/04/30(月) 21:44:09 ID:???
ベッキーが自殺するなんて
まった987話だ
988マロン名無しさん:2007/05/01(火) 00:39:26 ID:???
桃瀬963 25歳
989マロン名無しさん:2007/05/01(火) 21:18:04 ID:???
綿貫体重989トン
990マロン名無しさん:2007/05/01(火) 22:33:43 ID:???
南条さんのペット990匹
991マロン名無しさん:2007/05/02(水) 15:42:35 ID:???
くるみ「1000取ったら目立てるかな…?」
992マロン名無しさん:2007/05/02(水) 21:46:48 ID:???
都「1000だったら私はベッキー以上の天才」
993マロン名無しさん:2007/05/03(木) 00:20:39 ID:???
1000だったら都は俺の嫁
994マロン名無しさん:2007/05/03(木) 00:23:21 ID:???
994
995マロン名無しさん:2007/05/03(木) 10:31:48 ID:???
由香は楽し995班
996マロン名無しさん:2007/05/03(木) 23:58:46 ID:???
学級委員長>>3>>10>>1000
997マロン名無しさん:2007/05/04(金) 18:35:56 ID:???
玲「1000だったら親が定職につく」
998マロン名無しさん
>997
玲…