1 :
マロン名無しさん:
, イ , '´´'´ /
/ / / ' /
,' 〃´ /
, ─-、 ./ /, -=‐
, ' ! ! '´,∠´
/ , ‐'´二 ̄ ̄``丶. 丶、
/ , '" /,. - , - \ 丶
, ' , イ // / , ヽヽ、 ヽ
, ', '´ / // /、 ,/, -¬=! i ',丶ヽ
/" ,' // //、`く/ i | i \
´ ,' ,'イ,' ///__ヽ'" u ! |i !
' ,'〃 ./〃,ィ ,ニュ、 ,. -┤ i|l |
,' / !,イ レ' iト ヒ'::7 テ歹!,'! .l| i|
.'/ ′`|! | `´ ,. `' /'.| i ! !
i' | !ヽ i ̄`ア , ' ,リ
! , '´! |ヽ \ ' '_∠.__ <
>>1乙
,. ' i ! ヽ ,>=┐ i!
∠ ヘ ! ム.´ ', i ! ト
l 丶 ヾ | トヘ. ', | i ! ヽ
i \ ヽ !| i.ヘ ',│77、 i| ヽ
>1乙
で作者10氏に提案ですが、千雨の武器でブローニング重機関銃をイメージしていらしたのであれば、
イングラムみたいな軽快な豆鉄砲ではなく、それなりに貫通力のあるAK74がいいと思われます
横槍スマソ
>>1 乙
ちまちまと書いてるんだけど・・結構かぶってるところあるな・・
乙。
テンプレの2部と4部の分岐のことは外さない方がよかったと思う。
もしも戻ってきた時に、少しでも戻りやすいように。
同じくそう思う。期待してないみたいに見える
くまパン
初めて曲の題目と内容が一致したね………美砂かぁ
乙かれ
どうでもいいことだけど、レクイエム=鎮魂ミサ曲だってね
くーふぇげと
前スレまだだいぶ余裕あるから投下は前スレのほうがいいと思うえ〜
昨日の夜、早い目に寝てしまいました。
今日二話分投下します。すみません。
よし、ちゃんと謝るいい子だね
頑張ってね
そんな急がなくていいのでは?
予約で詰まってるわけじゃないし。
>>16 一日待った俺は、2話分投下してもらったほうがうれしいけどな
>13
二日分で計27レスになる予定なので新スレに投下させてください。
では昨日の分の投下を始めます。
#43 マドリガル(合唱曲の一種)
刹那と史伽はその後共に行動をとる事にし、刹那本来の目的であった木乃香を捜した。それは史伽からの申し出であり、刹那もそれを了承する。
しかし、彼女らの必死の探索も空しく、夕方になっても手掛かりひとつ見つける事が出来ない。
時計を見れば夕方の六時が迫り、辺りは暗くなっていた。成果を出せぬまま仕方なく刹那達は西の浜にある小屋で暖を取る。丁度、夕刻の放送が聞こえてきたのはそんな時だった。
刹那はその放送からまだ近衛木乃香の生存に安堵する。
だが、それも一瞬。タカミチの抑揚の無い声が長瀬楓の死亡を告げる。
「そんな……」
カラン―。
刹那は史伽の方を振り返る。史伽の手から落ちたペットボトルが床に転がって水を撒き散らしていた。
「史伽さん」
「ハ、ハイ…。あ、す…すみません」
水を落とした事を咎められたと思ったのか、慌てて史伽はぺットボトルを拾う。そんな史伽の姿を刹那は値踏みするかのようにじっと見つめていた。
その史伽の髪型は未だ風香の髪型に改められているままだ。従って、風香が死んだ事を知らぬ人間が彼女を見れば風香はまだ生きているのだと錯覚するに違いない。
事実、聡美の目にはそれが不可解な現象に映ったのだろう。愚かにも足を止めて刹那に隙を見せ、一方の刹那は命拾いした。
刹那はその後、史伽が風香の髪形をした理由を問いただした。
それは簡単。要するに自分が風香に成りすませば、自分の姿に亡き姉の面影を感じる事が出来るからだ。そして、風香ならきっとこんな状況でも臆病な史伽とは違いどんな時も強く居られるだろうと思っての事かもしれない。
「楓姉ぇ…」
けれど、そんな事で全てを乗り越える事が出来れば苦労はない。辛い事はどうしたって辛い。人間の根というものが変わらぬ限りそれはあくまで気休め程度の意味しか成さない。
刹那は楓の死に思いを馳せる。一体、楓ならこんな状況で何と言うだろうか。
……いや、それは考える事ではない。答えの無い問題を考えたところでどうにかなる訳でもない。
刹那は再び小屋の警備に神経を戻す事にした。どんな問題もいずれ時間が残酷に解決してくれる。そう信じ刹那は小屋の外の気配に気を張り巡らせるのだった。
【桜咲刹那(出席番号15番) 日本刀(菊一文字)所持 ☆よっつ】
【鳴滝史伽(出席番号23番) 拳銃(グロック17)所持 ☆よっつ】
#44 エレジー(哀歌)
「円、しっかりして!」
アキラの必死の呼びかけにも拘らず円は苦しそうに肩で息をする。
簡単な応急処置は済ませた。円の首輪に星も渡した。後は円の気力次第だ。もうアキラに出来る事は円を励まし、その様子を見守る事だけだった。
「美砂を、美砂を助けるんでしょ!!」
アキラは必死になり円に気を強く持つよう言う。だが、円は答えず、その目は宙を泳いだ。何か嫌な予感がアキラに走る。それは虫の知らせだった。
「あーあー、夕方六時の放送だ…」
丁度その時、タカミチの声がスピーカーを通じ島中に流れる。放送にアキラは顔を上げた。
もし神様がいるならお願いだ。どうか美砂の名前だけは放送しないで。
美砂は円の唯一の目的、一縷の希望なのだ。それを失えば円は望みと同時に気力をも喪失してしまうだろう。アキラは全力で祈った。だが時にして運命は非情。
「――今回の死亡者は柿崎美砂(出席番号7番)…」
その一番出て欲しくなかった名前が一番最初に残酷な程あっさりと流れる。
息が詰まる。もう残りのタカミチの声はアキラには届かなかった。
「あはは……」
その時、今まで殆ど言葉を発しなかった円が自虐的に笑う。
「結局、無駄だった。私がやったことは全部無駄だったんだ……。ホント、馬鹿みたい」
「――……」
首を絞められたように喉が細い。出るべき言葉が喉に引っかかり何も言えなかった。
「ゴメン、アキラ。かえって辛い思いさせちゃったね。私があそこで誘わなかったら……アキラもこんな思いしなくてすんだのに……」
「――そんな事…無いよ」
何とかそれだけ言ってアキラは泣いた。何も出来なかったのは自分ではないか。運動部の親友三人を助ける事も出来ず、そして今目の前にいる少女すら助ける事が出来ない。
「円の行動は決して無駄になんかさせない!私がさせない!」
「…………」
円はもう何も言わなかった。その前でアキラは自分の親友が死んだ時より大量の涙を溢れさせ、嗚咽を漏らし泣き続ける。
そうして二日目の明け方になろうという頃、釘宮円は眠るように静かに息を引き取った。
【釘宮円(出席番号11番)死亡 残り16人】
【大河内アキラ(出席番号6番) 星三点セット(武器を選んだ筈が中身は星がみっつ)、金属バット所持 ☆やっつ】
#45 トロイメライ(夢想曲)
しとしとと雨が降っている。薄暗い鉛色の低い空は今にも地面を押しつぶしてしまいそう。
その中を私は走る。後ろからは足音がぴちゃぴちゃと後を追う。怖いから私は振り返る。だけど、その先は真っ暗で誰もいない。だから、私はもう一度走り出す。するとまた足音が私の後ろからする。
嫌だ嫌だ嫌だ。もう一度後ろを振り返った。どうせ誰もいないと高をくくって軽く振り向いた。
そしたら今度は人がいる。胸から血を流して、その血溜まりの上をぴちゃぴちゃと歩いてくる。
私は酷く驚いて、空回る足を必死に動かして逃げる。だけど、今度はどれほどもがいても前に進まない。そうしている内にソイツは私のすぐ後ろまで来た。
私はもう一度振り返る。ムカツクから今度はソイツの顔をちゃんと見てやる事にした。でもだからってその顔だけは反則だ。
だって、ソイツは生きている筈の無い女。ソイツは…私が殺した。
ぐらんぐらんと揺れる世界の中、ソイツは私に最悪の恨み言を残し消え失せる。そして私は絶叫した。
「――クゥッ…」
呻きを上げてクーは軽く頭を上げた。木の上から見る地平線は微かに明かりを有しているが、空はまだ暗く、夜明けというにはまだ少し早い時間だった。
眠い目を二、三度擦りクーは自分が最悪最低の夢を見ていた事を知る。その夢の中の美砂の顔を思い出し首を振った。
(美砂はワタシを恨んでなんか無いアル…。そうあれは…只の夢……)
そう思いなおしてもいい気分はしない。クーは再び目を閉じると再び夢の世界に入ろうとした。
――ダダン
短い銃声。ドサリと木の上から何かが落ちる。クーの瞼が微かに上がる。頬が地面の土に擦れ冷たい。
(アレ?私は木の上で眠ってた筈…。まだ夢を見ているアルか…)
そして体が不自然に曲がったままのクーは眉を曲げたまま寝なおすように瞼を閉じた。
「――しとめたか」
長谷川千雨は草むらから出て来、クーの死の確認をする。
「よし、これでやっと食料にあり付けるってことだ」
声を出して小さなガッツポーズを繰り出す。一方、千雨の仲間のさよはさっきから星探知機を見つめながら右手を広げて何度も何度も指を折っていた。
「――ん、相坂どうかしたか?」
「……長谷川さん、おかしいんです。この星探知機に写る星の数が…」
そう言って星探知機を千雨に示す。その探知機にはさよと千雨の以外の星が幾つか写っていた。
「おかしいって何が?クーの奴の星が写ってるんだろ」
そう言って千雨は取り合おうとしない。荷物を漁る千雨はクーの体から拳銃を発見し、懐に仕舞う。その千雨の背中に慌ててさよは声を掛けた。
「違うんです。そうじゃなくて私と長谷川さんと古菲さんの星の他にもう一人分…」
さよがそこまで言った時、その先の草叢からもう一人、人が現れた。千雨はギョッとしてそちらを振り向く。
そこに片腕に傷を負ったザジが立っていた。
【古菲(出席番号12番)死亡 残り15人】
【相坂さよ(出席番号1番) 星探知機、藁人形所持 ☆むっつ】
【長谷川千雨(出席番号25番) マシンガン(ブローニング M2)、拳銃(ベレッタ M92)所持 ☆むっつ】
【ザジ・レニーデイ(出席番号31番) カッターナイフ所持 ☆むっつ】
#46 ユーモレスク(器楽曲の一種)
ザジはゆっくりと千雨とさよの方に足を進める。
だが、ザジが数歩歩いたところで千雨は自身のマシンガンをザジに向ける。
「そこで止まれ」
ザジは千雨の言葉に大人しく従った。そのザジの表情は変わらぬままだ。
「何のつもりだ、テメェ。余裕のつもりか。自分から姿を晒しやがって」
マシンガンの銃口を向けても尚、怯える様子の無いザジに千雨は内心少し焦る。しかし、しばらく睨み合いをする内に千雨は別にそれが余裕からではない事に気が付く。それは一種の絶望だ。
「その腕の傷どうした…。熊にでもやられたか?」
ハッと笑う千雨にザジはそっと口を開く。
「……千雨は、パソコン得意?」
「あ?どういう意味だ。そりゃ」
「――司令部のコンピュータから首輪解除とか出せるかなと思って…」
ザジの言葉に千雨は二の句が告げない。その言葉があまりにザジのイメージらしくなかったせいもある。けれど、本当はザジの考える事がよく分から無かったからだ。
――そうしたってどうなる。そんな事をしたって壊れた奴はもう壊れたままだ。もうそいつはどんな事があっても止まら無い。止めようが無い。
……なら、このゲームだけを止める行為に本質的な意味なんか何も無いじゃないか。
「――バカかお前。何で自分の為に行動しないんだ。お前なら星なんて簡単に集めれるだろ。誰かの為かなんて流行らない。私だったら例え解除出来たとしても絶対手伝わないぞ」
そう、とザジは呟き、俯いた。丁度夜明けの光が射し、その顔に影を作る。やがてザジは千雨に背を向ける。
「おい、何処に行く気だ!ちょっと待て!」
千雨は去ろうとするザジをつい呼び止めてしまった。
首を横に向け、ザジは気が変わったかと聞いてくる。それに千雨は気圧されながら言葉を吐いた。
「生憎だが正直、私じゃ無理だ。司令部まで行けても首輪を解除するのは出来ないだろう。IP抜くのとは訳が違うからな」
じゃあ仲間になってくれないか、とザジ。
「それも却下だ。私は今この足手まといの幽霊と組んでる」
どうも、と千雨の後ろでさよが頭を下げる。じゃあ何の用だとザジは目を据える。
「お前の目的を教えろ。私には今のお前が死に急いでるようにしか見えない」
ザジは僅かの間、黙り込んだ。その目に浮かんだ感情が何かは千雨は図りかねたが、その時、確かにザジの瞳には強い意志が宿っていた。
「――人を殺したいの。チャオを殺した相手を……」
「そいつは誰だよ」
「――知らない。髪が長くてネギ先生にそっくりな別人…。多分、今は首輪に星が九個埋まってると思う」
「……九個だな」
言って千雨はさよに視線を送る。それに気付いたさよは慌てながら星探知機に目を落とした。
「え、えっと…九個…九個…。あっ……現在星をここのつ所有してる人は二人いますね」
ザジは驚いたように鋭い瞳でさよを見る。
「あっ、私は星探知機を持っているので…。で、その二人ですけど、二人共島の西側。今のこの場所はどちらかと言うと東の方ですからちょうど反対側の方角に居ますね」
「だ…そうだ」
千雨はさよから視線を戻し、上げていたマシンガンを力なく降ろす。その口元はどこか緩んでいた。
「ありがとう…ちう」
ザジはそう言ってその場を飛んだ。その姿はすぐに森の奥に見えなくなる。その姿が見えなくなっても千雨はじっとザジの消えた先を見つめていた。
「らしくない事、しちまったなぁ…」
かー、と息を吐き、千雨は髪を掻き回す。一方の相方のさよは何が嬉しいのか、そんな千雨を見てニコニコと笑っていた。
【相坂さよ(出席番号1番) 星探知機、藁人形所持 ☆むっつ】
【長谷川千雨(出席番号25番) マシンガン(ブローニング M2)、拳銃(ベレッタ M92)所持 ☆むっつ】
【ザジ・レニーデイ(出席番号31番) カッターナイフ所持 ☆むっつ】
#47 アリア(独唱曲の一種)
あやかはじっと相手を睨み付けた。だが今更どうこう言った所でもう遅い。
出来れば先に相手に気付きたかった。そして相手より先に先制攻撃を仕掛けたかった。
先手必勝。先んずれば人を制す。それが雪広家の家訓。だが、相手の拳銃の照準が自分に合っている以上、迂闊な真似は出来まい。
「――勘違いしないで下さい。私に敵意などありませんわ」
言ってあやかは挙げかけた自分の銃を降ろしてみせる。今は相手に自分が敵意のない相手だとアピールせねばならない。しかし、対する相手は呆ける様にあやかを見ていた。こんな相手に隙を見せたかと思うと余計腹立たしい。
「いい加減銃を降ろしませんか?…ねぇ、アスナさん」
あやかの言葉は相手に紅潮を引かせ、銃を突きつけた明日菜の顔にも冷静の色が戻り始める。
無抵抗の相手に銃を向けるという行為がいかに自身の良心を痛める行為かというのは言うまでもない事だろう。
無論、あやかはそれを見越した上で拳銃を下げている。思い出したように明日菜はあやかに向けていた拳銃を慌てて下げた。
「ごめん、いいんちょう。私ったら、なんて…」
バカな事…、という言葉と共に明日菜は自身の顔を押さえる。血色の悪い明日菜の顔はいつもの本調子ではない様に思えた。恐らくこの島の出来事が相当堪えているのだろう。しかし、そんな事は今のあやかには関係ない。
「いいんちょう、アンタは無事だった?」
「ええ、おかげさまで。――それより辛そうですね、アスナさん…。顔色が悪いですよ」
いろいろあったからね、と言って明日菜はまき絵の死に思いを馳せる。
その様子を静かに見つめ、あやかは微笑しながらゆっくりと明日菜に近づく。あやかは明日菜を殺したかった。この島に来て、この殺し合いに乗って、それが自分の使命であり責務だと感じた。
明日菜はあやかを振り返らない。その姿は隙だらけ。
「――楽にしてあげましょうか、アスナさん」
あやかの右手に力が篭る。腹の底から殺意が沸いた。何故、自分がこんな女に対しそれほどまでに固執しているのか。それ程までに大切だったのかと思うと余計に殺意が沸いた。
「――貴女は、――私が殺してあげます」
「――え?」
愚鈍に顔を上げた明日菜の顔にあやかは催涙スプレーを吹きかける。
「あっ、くっぁっ!」
それで勝負は決した。明日菜が今更、銃を構えようとしたがそれをあやかは銃ごと蹴り落とす。
明日菜の顔に吹きつけた催涙スプレーは眼や鼻は勿論、喉の奥にすら激痛を及ぼす。当然、それ故に目を開ける事は許されず、明日菜の冷静な判断すら奪った。
「いいんちょ!…アンタぁ!」
明日菜は叫びその場に跪く。目から涙が止まらない。明日菜は蟻に襲われた飛蝗のように我武者羅に手を振るう。その無様な明日菜の姿を見て何故か異様にイラついた。
あやかはその明日菜の右手を踏みつける。
「キャァ!!」
悲鳴が上がる。それでも明日菜は必死に片目を開け手探りで自分の落とした銃を捜した。
【神楽坂明日菜(出席番号8番) 拳銃(IMI デザートイーグル.50AE)所持 ☆みっつ】
【雪広あやか(出席番号29番) 拳銃(ザウエル P230)、サバイバルナイフ、催涙スプレー所持 ☆やっつ】
#48 ラプソディー(狂想曲)
もう後は簡単だった。あやかの拳銃を明日菜の頭か胸に向け引き金に力を込めるだけでいい。
だけど、それまでが余りに呆気無さ過ぎた為、あやかの中でほんの僅かな躊躇いが生まれる。
「アスナさん。これで終わりなんですか…」
それは懇願するような声だ。何故自分がこんな声を出さねばならぬのか。
「何でなのよ!いいんちょ!何でアンタまでぇッ!」
明日菜がヒステリックにそう叫ぶ。
それが限界だった。あやかは何故だか分からないが昔からこの女だけには感情を抑えられない。
「く、くあはっは、あはははっはは。……アスナさん、変な事言うんですね。私が今更、貴女に殺意を抱いたと思ったんですか?」
「……何、…言ってんのよ!?」
「――私が心の底から貴女を殺したいと思ったことが一体今まで何度あったと思います?」
感情に身を任すのは好ましくない。興奮は思考を狂わせる。この考えは他人に知られてはいけない事だ。だけど、その饒舌な口は止まらない。
「実に七度です、貴女の事を真剣に殺そうと思ったのは。まあ、その都度社会のルールの奴隷になった私の理性がそれを抑え、思い止まりましたけどね。……けれど、その束縛ももう無い」
「いいんちょ、アンタ……」
あやかの言葉に揺らぎは無い。だが、その声は僅かに上ずり興奮している事を示す。
「――それでもアスナさん、貴女は私と同種の存在だと信じていました。認めていましたのよ、貴女の事」
明日菜はそこでようやく視界の端に自分の落とした拳銃を認める。右手はあやかに踏まれているので動かせるのは左手のみ。明日菜はあやかに気付かれない様に視線を元に戻す。
「――まったく、冗談じゃありませんわね。私と貴女、同種の存在であり得る筈が無いというのに……」
「ふざけないでよ、いいんちょ。私とアンタで違うって言うの!」
明日菜は感情を爆発させ、あやかを睨む。あやかはあらと明日菜を見つめ返した。
「違わない……人はそんな大層な違いなんて存在しないんだから!!」
雪広あやかは雪広家の次女として生を受けた。
長女はあやかと違い甘やかされて育った為か自由奔放な性格であった。
それが原因で雪広家は次女こそはと正に家をあげての英才教育をあやかに施さん事になる。それは茶道、華道、合気道、乗馬に始まり、果てはチェス、編み物、アイスホッケー、テーブルクロス引きにすら及んだ。
事実、小学校のクラスの中で勉強でもスポーツでもあやかに優る者は誰一人として存在しない。大人の熟練者ですら本気を出さねば手を焼く域に達するあやかが同じ世代の子供に負ける事など一度として在り得なかった。
そして当時小学生だったあやかが初めて同じ年の子供に負けた、その相手こそ明日菜だったのである。
あやかは焦った。だが、同時に不思議な安堵感を感じたのも確かであった。この少女は自分と同じ存在。誰とも同じ存在が無く、常に一人ぼっちの存在だと、そう考えた。
実際、小学生の頃の明日菜は孤独だった。真の親友を一人も作る事無く、笑顔を見せる事など無い。その様子は何か数千年を生き、生というものを達観した感すらあった。
やがてあやかは気付く事になる。明日菜の奥底にある何か重い過去。後にそれは明日菜の記憶からは徐々に失われていく物であるが、それこそあやかと明日菜の違いを決定付けているのだと。
明日菜にはそれがあって、あやかには無い。
あやかは子供心にすぐにその陰鬱な過去に憧れた。自分にはないその経験に。
そして、それを手に入れる為、あやかは妊娠していた母親の病室に忍び込んだ。あった本棚を母親の腹部に倒れるよう細工し、そして本棚は倒れ、あやかの産まれるべき弟は死んだ。
それで同じになれる筈だった。あやかは明日菜と真の親友になれる筈だった。だけど違った。
明日菜はそれすら届かぬ暗い過去を持っていた。あやかとは別位の存在。だから、あやかは暗闇の中、また一人に戻った。弟殺しという陰鬱な過去を背負って明日菜と巡り合う前の一人の孤高の存在に。
あやかの眉が痙攣するように動く。その隙を突き明日菜は自分の銃に手を伸ばした。
一発の銃声が響く。
「があっはあぁっ!ぅうあぁ!!」
それはあやかの拳銃から放たれた銃声。
明日菜の左手の甲をそれが貫通する。同時にあやかは地面にあった明日菜の拳銃を思いっきり蹴り飛ばす。
「口には気をつけてください。アスナさん、貴女が裏切ったんじゃないですか。私は貴女の事……」
「ア…アアァ……」
そうしてあやかは明日菜の髪を乱暴に引き掴み、銃口を明日菜の頭に押し付ける。
「――お別れですわ、アスナさん」
ゾッとするほど低く冷たい声。あやかはゆっくりと引き金に力を込めていった。
木々の静寂の中に銃声が木霊する。血が前に吹き出た。
「グゥッ…!!」
思わず肩を押さえる。あやかの肩に一発の銃弾が打ち込まれていた。思わず肩が浪打ち、呼吸が上がる。
「そこまでにしてください…」
突然、あやかの後方で怒気の篭る低い声が聞こえた。その人物が一体何時からそこにいるのか知らない。だけど居るからにはそこに居るのだろう。あやかは後ろを振り向いた。そこでギョッと目を剥く。
あやかの後ろにネギの風貌をした少女が独り、二人の少女の戦いをただじっと睨みつけていた。左手に持った硝煙を上げる拳銃の銃口はあやかを向く。
その少女の長い栗色の髪。風にたなびくその筋は細く、美しく、一瞬あやかは見惚れる。そして、呆けたように呟いた。
「ネギ先生…」
言ってあやかは理解した。この目の前にいる人物はネギでない。では誰か?ネギでなければこのネギの顔をもつ少女は一体誰なのか。どうしてネギのそっくりな人物がこんなところに銃を携えて存在するのか。
そんな事は分からない。ただ理解したのは自分はこの少女には勝てないという事だけ。
「――まだやるんですか。アヤカさん?」
あやかの背筋に衝撃が走る。そしてあやかは負けた走狗のようにその場を駆け出していた。
それはキネに脅されたのが恐ろしかったからではないし、ましてや肩に打ち込まれた銃弾のせいでもない。
そのキネの声が本当にネギの声そっくりだったから。あやかにはそれがとても気味が悪く、恐ろしく感じたのだった。
【神楽坂明日菜(出席番号8番) 拳銃(IMI デザートイーグル.50AE)所持 ☆みっつ】
【雪広あやか(出席番号29番) 拳銃(ザウエル P230)、サバイバルナイフ、催涙スプレー所持 ☆やっつ】
【キネ・スプリングフィールド 拳銃(トカレフTT-33)所持 ☆ここのつ】
昨日の投下分はここまで。
10分ほど休憩します。
それでは改めて今日の分の投下を始めます。
#49 ディベルティメント(嬉遊曲)
「ぅうう……」
「大丈夫ですか、アスナさん」
貫通した左手の甲を押さえながら明日菜は顔を上げる。そして、前にいるその人物を認め、眉を寄せた。明日菜の拳銃はあやかに足に弾き飛ばされ、明日菜の後方、今は視界の遥か外側にある。
「アンタは……」
「また、会いましたね」
キネは明日菜を見てニコリと笑う。だが、明日菜はそんな事でキネに対する警戒を解く気分に無い。
彼女は一度明日菜の命を狙おうとした。
「――助けてもらった事には感謝するわ。でも、アンタ……」
「――キネです。私の名前は」
少し驚いた顔をして明日菜はキネを見つめ返す。そのキネの顔には何が嬉しいのか喜色の色が浮かぶ。
「アンタ、何が目的なのよ。何でこのゲームに参加してるの!……いや、それよりもアンタ一体何者なのよ」
明日菜に問い詰められたキネは幾らか少し困った顔をしたが、やがてそれもすぐ打ち消す。
「私はタカミチに言われた事を実行してるだけですよ。まあ、アスナさんを助けたのは違いますけど……」
そう言ってキネは照れたようにポリポリと頬を掻く。だが、一瞬にしてその顔は別人のように冷たい真剣な表情に豹変した。
「それより私が何者かってどういう意味です?前にあなたの言ったネギという人物に関係あるんですか?」
「それは……」
明日菜はその時、何故かキネにネギの事を説明するのを躊躇った。その様子を見てキネは言葉を継ぐ。
「――ま、別にいいです。今の私には興味の無い事ですから」
そう言ってキネは自身の首輪の星に手をかける。ひとつ、ふたつ…キネは自分の首輪から星を外していく。
「何やってんの…。アンタ…」
明日菜は目を見張る。その行為の意味が理解出来ない。結局、キネはここのつの星が埋まった首輪から実にむっつの星を外していた。
「この星、アスナさんにあげます」
「はぁ!?」
驚くにしても、もう少しましな感嘆語は無かったのか。明日菜は間抜けな声を上げてしまう。その明日菜をキネはニヤニヤと笑って見つめた。
「勘違いしないで下さい。別にこれはタカミチが命令した事じゃありません。私自らの意志ですから」
そう言ってキネはその星を明日菜に手渡しせず、視界に入るすぐ手前の地面に置く。
「それって……」
「――私、アスナさんの事、好きです。だから生き残って欲しいんですよ、このゲームで」
最後まで言う前に少し照れたのかキネは明日菜に背を向ける。正直、明日菜はこの展開に戸惑っていた。
一体この少女に対し自分は如何すればいいのか。この目の前にいる少女は果たして敵なのか、それとも味方?
明日菜はキネの置いていった星をただじっと見つめていた。
「ああ、そうだ…」
キネは体を振り返らせず、思い出したように明日菜の方に顔を傾ける。
「タカミチから皆さんに伝言です。『司令部には決して乗り込むな。手加減は出来ないから』…だそうです。確かに伝えましたからね」
言うとキネはもう一度背を向け、先ほどあやかが駆けていった方向を見据えるとその場を駆け出して行った。
【神楽坂明日菜(出席番号8番) 拳銃(IMI デザートイーグル.50AE)所持 ☆ここのつ】
【キネ・スプリングフィールド 拳銃(トカレフTT-33)所持 ☆みっつ】
#50 レチタティーヴォ(叙唱曲)
「今頃、せっちゃん何やっとるんかなぁ」
そう呟き木乃香は洞窟の内から外の景色を眺める。その代わり映えのない風景の奥で殺し合いが行われているなど信じ難い事だった。
かび臭い湿った洞窟の空気が木乃香の鼻腔をくすぐる。その空気から逃れようと木乃香は洞窟の入り口付近まで這い出ていた。木乃香は昨日一日の出来事を思い返す。
ゲームが始まり偶然にしてすぐに隠れるべき洞窟を見つけた木乃香はそこを陣取り、隠れる事にした。
荷物選択で星ふたつと食料ひとつを選択した木乃香はちょうど誰かと戦う必要もなく一日目を過す事が出来たのだ。それには運良くその洞窟の近くで戦闘が起こらなかった事も幸いした。
タカミチの二度の放送に刹那と明日菜の名は出なかった。木乃香は洞窟に潜み、その放送の度に胸を撫で下ろす。だが、その木乃香もクラスメイト半数の死を聞き、更に二日目になった事で次第に不安になってき始めていた。
「今日の午後六時までに星六個かぁ…」
そう、自分の首輪の星は未だみっつ。二日目を生きて終えるにはまだ星三個が足りないのだ。だからと言って木乃香に今のこの安全地帯を自分から出て行く勇気はない。木乃香の前髪が顔に垂れる。
「ハァ……ハァ…!」
その時、誰かの息遣いが聞こえた。木乃香は慌ててそちらを振り返る。
金色の髪がさらりと流れ、肩から流す血が制服を濡らす。木乃香は目を見張った。
「いんちょやん!!」
そこでようやくあやかは木乃香に気付いたようで洞窟の中の木乃香に目を移す。そのあやかの顔は蒼ざめ、走ってきた肩を大きく揺らしていた。
「大丈夫か!いんちょ!」
木乃香は急いでその洞窟を飛び出す。
その時の木乃香にもう少しの注意力があればあやかの制服に掛かった血はあやかの肩からだけの物でないと気付いたのかもしれない。だが、木乃香は一日ぶりに会うクラスメイトの負傷に気が動転し、それどころではなかった。
あやかは半目を開けながらその場に座り込む。その乱れた息は未だ止まる事がない。木乃香はあやかの側に片膝を立てる。
「肩の怪我、誰にやられたん、いんちょ!?」
「…………」
あやかは木乃香の問いに答えない。少し虚ろな目をし、地面を見てただ息を整える事だけに努めている様である。それを見てあやかに対し木乃香は今は深く追求するのを諦める。
「とりあえずあの洞窟ん中に一緒に隠れよ。話は落ち着いてからでええから……」
そう言って木乃香は視線を外し、洞窟の入り口付近を見る。
ふと自分の足に激痛が走った。だけど、それがすぐに痛みだと認識出来ない。
呆け顔であやかを振り向いた木乃香はそこにある光景に目を疑う。自分の右の大腿、そこにサバイバルナイフの刀身の七割が隠れるまで深く、深く突き刺さっていた。
そのサバイバルナイフを握っているのは肩の怪我をしているあやかだ。
「あ…ああ……」
そこに至りても木乃香は今尚理解出来ない。だから悲鳴を上げる事さえ叶わぬ事。その姿は酷く滑稽だった。
だからと言ってあやかは容赦しない。今度は突き刺したサバイバルナイフを抉る様に左右に捻る。
「うひゃあああっっ!!」
再びの鋭痛に木乃香もようやく悲鳴を上げる。と同時に無意識に洞窟の方をめがけ駆け出そうとした。だが、サバイバルナイフが深く刺さった右足は思うように動かず、うつ伏せに木乃香は地面に転がる。
あやかは何も言わずゆっくりと木乃香の側に寄り、その手で木乃香の足からサバイバルナイフを抜いた。
ナイフを抜くとき多少痛みを感じた木乃香だったが、大腿の激痛が和らいだ事に息をつく。だが、その緩みも再びあやかを振り返り吹き飛んだ。
血に染まったサバイバルナイフを携えたあやかは嘲笑するわけでもなく、不快そうな顔をするわけでもなく、ただ憐憫の色を持った瞳で冷たく木乃香を見つめていた。
【近衛木乃香(出席番号13番) 武器未所持 ☆みっつ】
【雪広あやか(出席番号29番) 拳銃(ザウエル P230)、サバイバルナイフ、催涙スプレー所持 ☆やっつ】
#51 シンフォニー(交響曲)
「いいん…ちょ…」
木乃香はカタカタと歯をかち合わせる。
その目は死に瀕した小動物のよう。もういくらか脅かしてやれば恐怖の余りに失禁するかもしれないだろう。
あやかは抜いたナイフを右手に構える。今更怯える木乃香が酷く憐れだった。
明日菜と話し合っていた途中からもうずっと昂ぶる感情を抑えきれない。必死になって理性は抑え付けるが、あやかの中の狂気がそれを跳ね飛ばす。
この女も裕奈や桜子と同じだ。
友達、友達と、こいつらは言う。だけど、自分の弟が死んだ時、まるで腫れ物に触るような態度を取ったのは他でもないこいつら自身だ。
頑張って自分が学校に戻ってきた時、顔では笑っていたけどその内心ではどこか迷惑そうな顔をしてた。
そう、詰まる所こいつらは、――『自分が一番大事なんだ』。
「何か言い残すことはありませんか、木乃香さん」
どうせ命乞いが返ってくるに決まってる。こいつも同じ。誰だって自分が一番大事なのだ。
「ごめん、せっちゃん、アスナ…。ウチ、もうせっちゃん達に会えへん……」
だけど、木乃香はその自身の生死の間際、か細き声で命乞いなどではなく刹那の、そして明日菜の名を口にする。
スッと嫌な感じが抜ける気がした。あやかは大きく息を吸い、そして笑った。
ああ、可笑しい。なんだそれ。そんな簡単な事に今更気付いたのか。
『自分が一番大事』。それは誰だって同じだ。そう、――昔の自分もそれと一緒だった。
簡単すぎて涙が出そうだ。何故今まで気付かなかったのだろう。馬鹿らしい。
自分は友達が欲しかった。勉強やスポーツから得られる優越感などいらない。クラスメイトやルームメイトとの表面上の付き合いなんかいらない。結局、私は自分の事を自分以上に分かってくれる誰かが欲しかったんだ。
――そう、だから、真の親友って言うのは『一番大事な自分以上に大切な誰か』なのだと。
木乃香は完全に怯えきり、あやかと目線を合わそうともしない。だけど、顔を押さえ笑うあやかの瞳にもう木乃香は映っていなかった。
突然、あやかの左背に激痛が走る。今度はその背に鉛弾が食い込んでいた。
「――くぅ!」
呻きあやかは後ろを振り返る。と、同時に振るわれる剣閃をサバイバルナイフで受け止めた。
「お嬢様から…離れろ!」
ドスの利いた声。それは剣士刹那の剣筋であった。その後ろには史伽も居る。
無意識にあやかは頬を緩めた。余裕からではない。それは最後の意地。自分は弟の死の罪を背負っている。だから、こんな所で死ぬ訳にはいかない。
だが、刹那の一振りがあやかは呆気なくサバイバルナイフを落とす。
「あ……」
直後あやかの胸を刹那の日本刀は刺し貫く。血が口内に逆流する。返り血が刹那の頬に飛んだ。
あやかの背中からは刀の刃の先がニョッキリと突出している。異様な程昂ぶっていた感覚は氷棒を首筋に直接付けられた様に一気に冷める。途端にそれまで張っていた力が抜け、視界が白一色になった。
賢明な彼女はすぐにそれを死だと理解する。何故か不思議と嫌な気分はしなかった。そこでようやくあやかは最後に明日菜について考える。
(すみません…アスナさん。貴女は私の…)
自分の最初で最後の『親友』の事を。
【雪広あやか(出席番号29番)死亡 残り14人】
【近衛木乃香(出席番号13番) 武器未所持 ☆みっつ】
【桜咲刹那(出席番号15番) 日本刀(菊一文字)所持 ☆よっつ】
【鳴滝史伽(出席番号23番) 拳銃(グロック17)所持 ☆よっつ】
#52 レントラー(舞踏曲の一種)
「お嬢様!!」
あやかから刀を引き抜くと刹那は木乃香の元へ駆け寄る。
木乃香はいつの間にか気絶していた。刹那は夥しい血の溢れる木乃香の足の傷に表情を歪める。だが、木乃香は単に気絶しているだけで、それ以外に目立った外傷は見つからず命に別状はないと知るとその表情を緩めた。
「よかった…」
刹那は史伽を振り返る。史伽の顔色はあまり良いとは言えない。木乃香を助けるためとは言えクラスメイトに銃を向けた為だというのはすぐに分かった。事実、刹那も史伽に初めて刃を向けた時そうだったからだ。
「大丈夫ですか、史伽さん」
「――ええ…」
刹那の掛けた月並みな言葉に史伽は軽く頷いた。刹那は木乃香を洞窟に運ぼうと周りを見回す。と、史伽の後ろの木陰、そこに隠れるように新たな第三者が立っていた。
「――遅かったですか」
それはあやかを追って来たキネ。その口から放たれた言葉は刹那や史伽ではなく、絶命したあやかに対して発せられた言葉だった。
刹那はすぐに手元に置いてあった刀を構える。それはキネの手に拳銃が握っているのが見れたから。史伽はその両者に軽く混乱する。
「ネギ先生…どういう意味ですか、それは」
「キネです。私の名前は…キネ」
キネはすぐにその名を訂正する。その表情は冷たく、ネギとはやはり別人だと感じさせる所があった。
「――じゃあ、キネさん。私達に何か用ですか?」
刹那は厳しい表情を崩さない。こと、木乃香を危険に巻き込む障害に成り得る可能性がある物に対し刹那は警戒を怠ろうとはしなかった。
「――止めて下さい。そんな表情をされたらたとえ私が殺す予定でも殺せなくなっちゃいます」
キネはそう言って両手を横に上げる。
「私は…あなたにはタカミチの伝言を伝えようと思っただけです。いいですか。『司令部には決して乗り込むな。手加減は出来ないから』…。良ければあなたから他の人にも伝えて下さい」
言ってキネは刹那から視線を外し、史伽の顔を覗き込む。
「それで、こっちのあなたは……」
突然の事にピクリと史伽は怯える。それは、そのキネの瞳がまるで史伽の心の底まで見透かしたように感じたから。
「ん…まぁ、いいでしょう。フミカさんについては保留という事で…」
刹那達に意味不明の言葉を吐き、キネはようやくその洞窟の前を離れる。
そうして、キネが去り平和になったと知って刹那と史伽はようやく胸を撫で下ろす事が出来た。
【近衛木乃香(出席番号13番) 武器未所持 ☆ななつ】
【桜咲刹那(出席番号15番) 日本刀(菊一文字)、拳銃(ザウエル P230)所持 ☆むっつ】
【鳴滝史伽(出席番号23番) 拳銃(グロック17)、サバイバルナイフ、催涙スプレー所持 ☆むっつ】
【キネ・スプリングフィールド 拳銃(トカレフTT-33)所持 ☆みっつ】
#53 バガテル(小曲)
夕映の所有の日記帳。その中にはこの島の情報がびっしりと書き込まれていた。
それが誰の所有物だったかは分からない。かなり古いもので、かすれて一部の文字が読めなくなっていた。だが、内容を考えるとどうやら少なくとも五十年以上前の物のようだ。
夕映は読めない部分は前後の文脈から判断したが、一部人名などの固有名詞の表記は確かめる事が出来ない。
日記には他に島の様子や天候、その他諸々の細やかな注意書きが記され、それは夕映とのどかの行動に記述はしないが大きな利を生んでくれる事になった。
六月六日
今日、信じられない事が起こったので、色々と混乱している。この日記もどこから書けば良いのかよく分からないほどだ。だけど、このままではいけないのでとりあえず何か書き始める事から始めてみよう。
昨日、僕らのクラス2−A、は修学旅行から船で関東の麻帆良学園に帰る途中だったはずだ。それが、今日目が覚めた時、クラスメイトごとどこかの島に集められていた。そして国の兵隊に開口一番、殺し合いをするように言われた。
なんでも国のBR法というのが成立された記念すべき第一回目だとか…。
ふざけるなと言った隣の席の×藤(人名:かすれて読めない)は僕らの前で見せしめとして殺された。戦々恐々とした中、ゲームが開始されクラスメイトはその後バラバラにされた。
ルールによると武器が一人ひとつ支給されるらしい。因みに今の文章を書いてるこの日記は僕が渡された武器だ。ペンは剣より強しと言うけれどこれは正直あんまりだと思う。
僕がいつまで生き残れるかは分からないが、とりあえず渡された日記は付けてみよう。
後で何かの役に立つかもしれないし、遺書として家族に渡るかもしれない。または、まったく別の第三者に渡り処分されるかもしれないけれど…。
この日はその後、一日中、島を歩き回ったので、その先で発見した建物の正確な位置とそこで気付いた事を記す。
運良くかどうかは知らないが僕はこの日は他のクラスメイトと一度も会わなかった。だが、島に響く放送を聞く限りではすでに12人ものクラスメイトが死んでいる。
もし、明日クラスメイトと出会えば殺し合わなければならないのだろうか?そう思うと気が重い。
六月七日
今日は嫌な事と良い事がそれぞれひとつずつ起こった。
良い事から話すと、相×反さ×(人名:かすれて読めない)に会えた事だ。僕は実は前々から彼女に密かな好意を抱いていた。
今日の夕方、彼女が襲われている窮地に偶然駆けつけ、格好良くとは行かなかったけれど何とか助け出す事が出来た。
そして、それに繋がるふたつ目の嫌な事。僕が初めてクラスメイトを殺した事だ。彼女を襲っていた東××(人名:かすれて読めない)を仕方ないとはいえ殺した。
返り血を浴び、あとで血に汚れた手をちゃんと洗ったが、あの手に付いた嫌な粘着感は未だに消えていない。
僕は今、助けた彼女と一緒に行動している。彼女と一緒に居る事でますます彼女への思いは深くなる一方だ。
そして僕には新たな目的が出来た。――彼女を護るという目的が。
こんな事をいうと変に思われるかもしれないが、もう僕は命は惜しくない。自分の命などどうでも良くなってしまった。ただ、彼女を護れさえすればもうクラスメイトを殺す事さえ厭わない。
残りのクラスメイトは僕と彼女を含めて8人。明日が最終日だ。
六キ木臼
だ粉でゃくいヴァづシサ時でアポさィへ……
(以下同じ様に乱れた文字のため識別不能。丁寧に書かれた一日目、二日目の文章を書いた人物とはまるで別人のように書き殴ったように書かれており、夕映は途中で解読を諦めた。
ただ、文章の最後の方にある"死んだ"という単語だけが、夕映に読み取る事の出来た唯一の言葉だった)
【綾瀬夕映(出席番号4番) 拳銃(ピースメーカー)、誰かの日記帳持 ☆よっつ】
#54 インテルメッツオ(間奏曲)−3
「――あ、嘘。もうマイク入ってるの……。え、…あ、コホン、毎度お馴染み三回目の放送だ…。
現在の時刻は正午丁度。腕時計の時間がずれてる者がいたら今直すのがいいだろう。
さて、いよいよ二日目に入った訳だがどうだい。残ってる生徒もそれなりに強い人物ばかりだろう。
荷物選択で星ふたつ選び、一日目を平穏無事に過ごした生徒は焦ってるんじゃないかな〜。今日の夕方、あと六時間後に星がむっつ以下だと首輪が爆破されるから気を付けるように。
それでは、気を取り直して死亡者の発表だ。
今回の死亡者は釘宮円(出席番号11番)、古菲(出席番号12番)、雪広あやか(出席番号29番)の以上3名。
今後ともみんな死なないようせいぜい頑張って殺し合ってくれ。ん?矛盾してるかな。
それでは夕方の放送でまた会おう」
今日の投下分はこれで終了。
いいんちょの弟についてもオリジナル設定という事で。
後、残り投下回数は5回となっています。
>4
イングラムもAK74も知らないのでどちらもどれ程の威力でどれ程の重さかは、
正直よく分かりません。(実物も見た事ないし)
でも、別にブローニングを威力重視で選んだわけではないのでイングラムのままで行こうと思います。
>6-7
作者W ◆NVSerf1nB2氏、第二部作者 ◆bnonwp0Sh.氏へ
すみませんでした。
>23-25
言ってる側から千雨の武器直ってない…。orz
ブローニングじゃなくてMAC M11(イングラム)です。
前スレだいぶ余裕なんだけど、どうすんの?
ちゃんと責任もって埋めなよ
乙
埋めないとなぁ
ようやく埋まったみたいだな
それでは今日の分投下します。
#55 ポプリ(接続曲)
洞窟に木乃香を運び込み安静にさせた後、刹那と史伽は今後の事について話し合っていた。
幸いに木乃香の足のサバイバルナイフによって刺された傷は思いのほか浅かった。とりあえず制服の裾を破り止血の処置を施した今、これ以上酷くなる事は無い。
だが、そうは言ってもその足の怪我はこのゲームの開催期間中に治る事は在りえなく、少なくとも木乃香の自力では松葉杖でもない限り歩行不能な程だった。
「私が木乃香さんに肩を貸しましょうか?」
史伽の提案に刹那は首を振る。
もしそれを実行したとしても移動中、敵に襲われれば肩を貸す史伽も同時に無防備になる。流石に刹那も刀一本で無防備な木乃香と史伽を守りきれる自信が無かった。
それに、加えて言うなら史伽は木乃香よりかなり体が小さい。だから、体力的に見地からも余り長距離を移動する事は見込めなかった。
ならば刹那自身が木乃香に肩を貸せば良いではないかと思われるかもしれないが、刹那もどちらかと言えば小柄な方に入る。それでいて、それだと刹那に何かが起きた時に咄嗟の対応が無理だ。
「――少し、外の様子を見てこようと思うんです…」
史伽はそう言った刹那の顔を窺う。刹那は目を伏せ、木乃香の事を考えながら話す。
「一応、今日の規定数の星は足りてると言っても、このままここにいても星が増えるわけではありません。外に出れば誰かとの話し合いで星が貰えるかも知れませんから…。
ですが、お嬢様をこのままこの場所に置いていく訳にはいかない。だから、史伽さんにはここに、お嬢様の側に残って貰いたいんです」
それは史伽には自分が外に出て何かがあったら木乃香の事を任せると言っている様に聞こえた。
史伽は脇に寝ている木乃香を見つめる。洞窟の奥に寝かされた木乃香が丁度、うわ言で刹那の名を呼ぶ。史伽はしばらく考えた後、ぽつりと呟く。
「ちゃんと、帰ってきますよね…」
「……ハイ」
史伽の問いに若干の間をおいて刹那は答える。顔を曇らせた史伽は不安そうな表情を崩さない。
「――…一応、コレを持って行って下さい」
史伽は刹那にある荷物を手渡す。それは雪広あやかが所持していた拳銃。
刀を携帯している刹那には本来それは不用の物である筈だった。しかし、史伽はすでに銃を持っているし、木乃香は銃を構えられる状態に無い。
ならば、何かがあった時の為にも刹那が持っているのが良かった。
刹那は頷き史伽から拳銃を受取る。
「有難う御座います、史伽さん。必ず、夕方の放送までには帰ってきますので…」
そう言った刹那は木乃香と史伽がいる洞窟を後にする。それは丁度昼の放送が終わって、しばらくした後の事だった。
【近衛木乃香(出席番号13番) 武器未所持 ☆ななつ】
【桜咲刹那(出席番号15番) 日本刀(菊一文字)、拳銃(ザウエル P230)所持 ☆むっつ】
【鳴滝史伽(出席番号23番) 拳銃(グロック17)、サバイバルナイフ、催涙スプレー所持 ☆むっつ】
#56 マーチ(行進曲)
その後、エヴァは南に歩いて島の端、浜辺まで降りてきた。
「ん、ここは何処だ?」
と言ってもエヴァに別段考えがあった訳ではない。ただ、茶々丸の頭を持ち、取り合えず移動しようした末に辿りついたのがこの島の南西に位置する砂浜だった。
左を見ても右を見ても海、海、海。水着のひとつでもあればそのエメラルドグリーンの海に飛び込んでやりたい所だったが、生憎と今はそんな暇はない。
「マスター、あの…」
「う、うるさいっ!決して迷ってなんかないぞ、ないんだからな!」
「……迷っていらしたのですか」
「あ――うん」
茶々丸の言葉に気恥ずかしそうにエヴァは素直に頷く。実際、エヴァは一応島の中心を目指していた筈だ。それをどう間違えばこんな島の外側についてしまうのか。
きっとこの島には方向音痴になる結界も張ってるのだろうとエヴァは少し真面目に考えた。
「よろしければ、私がナビゲートしましょうか」
「――すまん…頼む」
そう謝るとエヴァは茶々丸に地図を見せる。
「――ええと、では取り合えず向こうに見える司令部のアンテナを目指しましょう」
茶々丸に言われた通り、エヴァは回れ右して歩き出す。
それから、その道を十五分程行った所だろうか。エヴァは向こうから人がゆっくりと歩いてくるのに気が付いた。
咄嗟に道の脇に隠れ姿を潜まし、エヴァはその人物の様子を窺った。
(アイツか……)
その人物がその道を通り過ぎるのを見ながらエヴァは考える。相手の人物がエヴァに気付いた様子は無い。
(ま、アイツならそんなに心配する事もないか)
エヴァはその人物の姿を見て声を掛けてみる事に決める。
もし、話し合いが上手くいけば相手との合意の下に茶々丸にその人物の首輪をハッキングさせよう。確率は二分の一だが、もしそれで運良く首輪が外れればその時に不用になった首輪の星を貰う事が出来るかもしれない。
エヴァは一人で頷き、不審げな顔をする茶々丸を遮りその人物に声を掛けた。
「おい、大河内…」
エヴァに声を掛けられた人物はゆっくりとエヴァを振り返る。その制服の背には円の血糊がこびり付ていた。
「いい話があるんだ、ちょっと聞かないか」
そう言ってエヴァはポニーテールのアキラに茶々丸のハッキングの事を話しながら近づいてゆく。エヴァは危険を承知でも近距離で話し合う事が信頼を得る第一条件だと心得ていた。
「――そう」
だが、話を半分ほど聞いた所でアキラは深く俯きエヴァから下に目を逸らす。エヴァはそのアキラの行動に少し違和感を感じた。
「話は途中だぞ。大河内アキラ」
「――あなたもチャオ達と同じなんだ…。――この人殺し」
「――な!?」
何を言っているのか分からないという顔をするエヴァにアキラは金属バットを振りかぶった。茶々丸の頭部を小脇に挟んだエヴァはその一撃を受ける事も避ける事も出来ない。
「かはっ!!」
軽いエヴァの体はその衝撃に吹き飛ばされる。体の上に着込んだ茶々丸アーマーは厚紙と接着剤の強度よろしくバラバラに弾け飛ぶ。脇にあった茶々丸の頭部は地面に投げ出された。
「…ぐぅ」
素早く起き上がったエヴァは顔を歪め、アキラを見上げる。そのエヴァを見つめるアキラの目は狂気を映さず、恐ろしい程澄み切っていた。
【大河内アキラ(出席番号6番) 星三点セット(武器を選んだ筈が中身は星がみっつ)、金属バット所持 ☆やっつ】
【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(出席番号26番) 茶々丸の頭、茶々丸アーマー(破損)、ハサミ所持 ☆みっつ】
#57 トリオ(三重奏曲)
「くそっ…、あのまま、通り過ぎとけば良かった…」
エヴァはもろに喰らった金属バットの一撃を受けた腹をさする。下手をすれば内臓出血、最悪それが元で死に至る可能性もある。だが、怪我の様子はエヴァの作成した茶々丸アーマーのお蔭で何とか打ち身程度で済んでいた。
地面に転がる茶々丸の頭部は別に金属バットが当たった訳ではないので、普通に未だ健在だ。
アキラまで狂っているとは流石のエヴァ様でも見抜く事が出来なかった。この島には何か人を狂わせる魔法でも掛けてあるのかとエヴァは軽く舌打つ。
「あなたも私を殺そうとするんだ!でも、私は死なない。円の為に、死ねない!」
訳の分からぬ事をほざくアキラを前にエヴァはこの場を引くべきか戦うべきか考える。ただ、この場を引く為には色々と難題があるのは確かだった。
ひとつ目は、地面に落とした茶々丸の頭を回収しなければならない事。その茶々丸の頭がアキラを挟んで丁度反対側に転がっていた。つまりそれを拾うには正面のアキラを突破せねばならない。
ふたつ目は、エヴァが少女並みの体力しか持たぬ事。いくら、合気柔術に通じているとはいえ逃走する速さは十歳児の子供のそれと同じだ。運動部員の一人であるアキラにはいずれ追い付かれてしまうだろう。
そして最後の理由だが、結局それが最も強かった。たとえ前ふたつの条件が無かったとしてもエヴァは逃げはしなかったろう。要するにエヴァの甚大なるプライドが逃げるという行為自体を許さなかったのだ。
エヴァはアキラを見据えて立ち上がる。エヴァの合気柔術に掛かればアキラなど敵ではない筈だ。
金属バットを構えるアキラに向けてエヴァは駆ける。そして、アキラの振り回す金属バットを軽く躱、
「!!」
せなかった。アキラの金属バットの先がエヴァの胸を掠める。
「ちょ、ちょっと待て…」
言ってエヴァは後ろに飛ぶ。だが、アキラの金属バットは止まらない。縦横無尽に振るわれるそれは、まるで昔の剣豪の太刀筋に等しい。
「おい、待てって言って…」
青眼の構えから出した突きが、今度はエヴァの首元を捉える。
「はぐぅ…」
それでエヴァは息も出来なくなる。しかも最悪な時に先程思いっきり打たれた脇腹への一撃の残痛がエヴァの足を絡ませた。マズイ、とエヴァが感じた時には時既に遅くエヴァは地面に両膝を付く。
「アハハハハ…」
アキラが嘲る様に笑う。流石にその時ばかりは真祖のエヴァンジェリンと言えど焦燥した。
マズイ、マズイ、マズイ。焦れば焦るほど立ち上がろうとするのに時間が掛かる。アキラの金属バットはそのエヴァに向け振り上げられた。
「円の行いは無駄にはしない。そうだ、無駄になんかさせないんだから!!」
振り下ろされるバットに半ば反射的に手をかざし目を瞑る。エヴァは腕の一本を覚悟した。
そこで何故か銃声が響く。何時までたっても振り下ろされないバットにエヴァはゆっくりと瞼を開ける。
「……あ」
エヴァはぽかんと口を開けた。
「――悪いな、大河内。結局、お前の今までの行為はこれで全部無駄になってしまったな」
後頭部に銃弾を受けたアキラはエヴァの側に倒れ息絶えていた。それは銃弾一発で精密に仕留められている。
そしてその先、茶々丸の頭を拾い上げた真名が、右手に撃ったばかりの銃を携えてすらりと立っていた。
【大河内アキラ(出席番号6番)死亡 残り13人】
【龍宮真名(出席番号18番) 拳銃(コルト ガバメント(M1911))所持 ☆ここのつ+やっつ】
【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(出席番号26番) 茶々丸の頭、ハサミ所持 ☆みっつ】
#58 カルテット(四重奏曲)
「危なかったな。エヴァンジェリン…」
「真名、貴様…」
一難去ってまた一難。新たな手練れの遭遇者をエヴァは睨みつける。だが、やがて予定調和のように口元を緩めた。
「フン、余計な事を…。貴様に手を出されなくてもこの程度、あの後自分で何とかしたさ」
「――なら、悪い事をしてしまったな」
エヴァのいつもの強がりを聞き流しながら真名はエヴァに近寄ってアキラの星を拾い上げる。茶々丸を機械質、もとい人質とされたエヴァは迂闊な行動を許されない。
(どうやら、私もここまでか…)
意外にも諦めの付いたようにエヴァは息を吐く。魔力を封じられたエヴァはアキラにも倒されそうになる程、弱体化していた。そんな自分が銃を持った真名に歯向かった所で100%返り討ちにされるのは目に見えている。
だが、そんなエヴァの胸に茶々丸の頭が投げ返された。
「――!!」
真名は銃を抜く。
そして、二発の銃声と共に人影がエヴァの後ろの草陰から躍り出た。投げられた茶々丸の頭はエヴァに上手く受け止められず再度地面に零れ落ちる。
「――エヴァンジェリン!」(真名)
「――刹那!」(エヴァンジェリン)
「――龍宮!」(刹那)
その場に居合わせた人物を認め、三者三様に叫び声を上げる。いや、地面に落とされた茶々丸は唯一無視されていたようだが。
突然出現した刹那はエヴァを庇うように立つと驚き見開いた顔で真名を見る。
「龍宮、どういうことだ!まさか、お前までがこんなゲームに乗っているのか…」
「――ああ、まあ…そういう事になるか……」
エヴァの前に飛び出た刹那がどうやらエヴァに敵意が無いと分かると真名は持っていた銃口を下げた。その挙動を刹那は厳しい目つきで観察する。
互いに相手を監視するみっつの視線が交錯する。しかし、真名はやれやれといった様子で息を吐いた。
「だが、勘違いするなよ、刹那。私にはもう戦闘を続行する理由は無い」
そう言って真名は自分の首を示した。死んだアキラの星を首輪に嵌め、十二個星の揃った真名の首輪はカチリと音を立て外れる。それを見せ、真名は残りの星を掌で弄ぶ。エヴァと刹那は思わず呆気に取られた。
「――どうだ?これで後は私が司令部を壊滅させればもうゲームエンドだ」
真名は不敵に笑い、不用になった首輪を地面に投げ捨てた。
【桜咲刹那(出席番号15番) 日本刀(菊一文字)、拳銃(ザウエル P230)所持 ☆むっつ】
【龍宮真名(出席番号18番) 拳銃(コルト ガバメント(M1911))所持 首輪解除 余り☆いつつ】
【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(出席番号26番) 茶々丸の頭、ハサミ所持 ☆みっつ】
#59 メドレー(混合曲)
「ねぇ、ゆえ。聞いてってば!」
のどかの言葉を無視して夕映は歩き続ける。時刻は既に午後五時を回っていた。
つまり、首輪の規定数が引き上げられる時間までもう一時間を切ったという事だ。無駄話をしている時間的余裕は無い。夕映達の首輪の星は未だによっつずつ。だからこそ、夕映達は必死になって歩き回っていた。
現在の時点で星が余っていて、自分達に一時的でも良いから貸してくれる友好的な人物に会えればベストだ。
いや、この際、逆に好戦的な相手でも良い。それなら何も考えることなく正当防衛という名の下に星を奪う事が出来る。夕映はそんな事を考える自分に心底失望する。
「――ねぇ、ゆえ。後、三十分経っても誰にも会わなかったら、私の星を…」
しかし、一方の夕映と一緒の行動しているのどかは実はもう誰かに遭遇するのを半分諦めているのか、後ろ向きな事しか言わない。
つまり、どちらかが死ななくてはならなくなった場合には、自分が死のうと。
夕映はその言葉を耳に入れない。だが、心の底で思う。
(――本当にどちらかが死ななければならないのですか……)
そう、二人共死ぬよりはどちらか一人が生き残る方が良いに決まっている。そんな事考えるまでも無い。
でも、それで死ぬのはどちらなのか。生き残った方はそれからどうなるのか。例えどちらになろうとも夕映はそんな事を考えたくも無かった。
そして、そう考えていた間、夕映は少しだけ周りへの警戒を怠ってしまう。
「――ゆえッ!!」
のどかが夕映に叫び、気付いた。その前、夕映に銃口が向けられている。その銃を向ける長髪の少女は夕映達を見つめ、髪をたなびかせていた。
気付かなかった不甲斐無さに奥歯を噛む。
「ネギ先生!?」
のどかが声を上げるが銃を向けたキネはのどかの方には殆ど意識を割かない。一瞬だけ目をのどかに移したが、すぐに夕映へとその視線を戻す。
「――残念ですが、どちらか一人死んでくださいね」
キネの口から語られた言葉にのどかは唖然とする。そして、逆に夕映はそれでこの目の前の人物がネギでない事を確信した。だが、銃を向けたキネには隙が無く、抵抗する事は能わず、睨みつけるのみである。
ただ、その鋭い夕映の目つきを見てキネは口端を上げる。銃を構えたままキネは夕映達に自分の名を明かした。
「――それで、どちらが死ぬんです。早く決めてくれないと両方殺してしまいますよ……」
突然現れた少女に自分達の内どちらかが死ななければならないと言われた。しかし、それを咄嗟の判断から決めろというのは無理な事だろう。……それを元から考えていない限りは。
「――私が死にます…」
「のどか!!」
キネの方に一歩踏み出したのどかを夕映は振り返る。嫌味っぽくキネは微笑んだ。
のどかは何も武器を持っていない。現にキネの元に向かおうとする今の姿だって、無防備な事極まりない。
「自分で首輪を外しますか?それとも私の銃で死にたいですか?」
「――自分で首輪を外します。それより、私が死んだら夕映には手を出さないって約束して下さい」
「ええ、約束しますよ…」
のどかはキネに星を手渡し出来るようにゆっくりと近づいてゆく。夕映はその挙動を、ただじっと見つめている事しか出来なかった。
枝葉が風に揺れる。それを合図に突然、歩いていたのどかはキネに向かって走り始めた。
夕映に銃を定めたキネは正直、のどかを侮っていた。この怯えるだけしか出来ない少女には人を殺す事も、攻撃する事さえ躊躇ってしまうと…。そう考えキネはのどかを歯牙にもかけなかった。だから、咄嗟には対応出来ない。
突進して来たのどかに体当たりを喰らわされ、小柄なキネの体は吹き飛ばされる。
「――!!」
そして短い絶句。キネの前、庇うように突き飛ばした宮崎のどかの胸に茂みから飛び出したザジのカッターナイフが突き刺さっていた。
【綾瀬夕映(出席番号4番) 拳銃(ピースメーカー)、誰かの日記帳所持 ☆よっつ】
【宮崎のどか(出席番号27番) 武器未所持 ☆よっつ】
【ザジ・レニーデイ(出席番号31番) カッターナイフ所持 ☆むっつ】
【キネ・スプリングフィールド 拳銃(トカレフTT-33)所持 ☆みっつ】
少し中途半端ですが今日の分はここまでです。
では。
乙です!!
こんないいところで切るなんて…
そしてアキラあっけなく…orz
乙!
毎回ザジの一挙一動にwktkしております
投下始めます。
#60 パーペッタム・モービル(常動曲)
日はもう島の西側に幾らか傾く。ザジは朝から島の西を飛び跳ね、既に何人かのクラスメイトに遭遇していた。
尤も遭遇と言ってもザジの方が気配を隠し、一方的に気付いただけである。その中にザジの目的である人物は含まれていない。ザジは未だにチャオを殺害したキネを見つけ出す事が出来ていなかった。
それも当然。この広大な島でたった一人の仇を探し出せる事など僥倖以外の何物でもない。
走りながら息が乱れる。負傷した片腕には既に感覚が無く、垂らした腕は他人の物のように重かった。
そうして時刻も午後五時を回った辺りだろうか、ザジはふと朝から休める事の無かった足を止める。
「――あぁ……」
緩く息が漏れた。そこに漂うキネの匂い。
ザジの瞳がその先を射抜く。200メートル進んだ木々の隙間、そこに別の方向を向き銃を持っているキネが立っていた。半ば諦めかけていた中での遭遇。それは正しく二度と起こりえない天佑だった。
身に宿る僅かな興奮を抑えザジは気配を消してキネに接近する。そして、身を隠す草陰を転々としながらとうとうキネのすぐ近くにまで近づいた。
そのザジの目には近くに居た夕映やのどかは映らない。キネの笑う横顔を見つめチキチキと取り出したカッターナイフの刃を伸ばす。そして、ザジはキネの隙を突き草陰の茂みから飛び出した。
「――う…ぁ…」
しかし、その一撃がキネに決まる事は無かった。
キネと話していた少女が彼女を突き飛ばし、変わりにその身を差し出したから。ザジのカッターナイフはのどかの胸に深々と突き射る。陸に上げた魚のようにのどかは口をパクパクと開閉した。
「のどかぁッ!!」
夕映の悲痛な叫び声を耳に入れながらザジはその顔を顰めた。仕留めたかった仇ではない。口内で軽く舌打つ。もう、ザジの目にはキネ以外のクラスメイトは単なる邪魔者にしか映らなかった。
ザジはのどかの胸を引き裂くようにカッターナイフを真横に引き抜く。鮮血が飛び、のどかはその場に崩れ落ちる。奇しくもそれはのどかの親友である早乙女ハルナを殺害した凶器であった。
「のどかァ、のどか!」
親友に対し絶叫する夕映を冷めた目で見つめる。単に五月蠅いとしか感じなかった。
どうしてこんな事になってしまったのだろうか。ザジはこんな結末など求めていなかった。クラスメイトが和気藹々とした、そんなクラスで一人で傍観者を気取るのが好きだった。その中の誰を殺したいなどと思った事は一度として無い。
けれど、一度人との関わり合いを持ってしまったザジはそれを守ろうと誰かを殺した。
――でも、殺したからって守れない物だってある。――殺したからってもう二度と取り戻せない物だってある。
それでも、不器用なザジに出来るのはひとつだけ…。人を殺す事だけだった。
「――私はチャオの仇を取る…。それに意味なんかいらない。それだけで満足だ!」
キネは地面に倒れ息を引き取ったのどかを見つめながらユラリ、立ち上がる。その身に篭るは強い感情。
「黙れ、道化。――貴女のステージはもうとっくに閉幕の時間です…」
二匹の人外は鋭い視線を交錯させ、両者の間で草木を燃やすような火花を散らせた。
【宮崎のどか(出席番号27番)死亡 残り12人】
【綾瀬夕映(出席番号4番) 拳銃(ピースメーカー)、誰かの日記帳所持 ☆よっつ】
【ザジ・レニーデイ(出席番号31番) カッターナイフ所持 ☆むっつ】
【キネ・スプリングフィールド 拳銃(トカレフTT-33)所持 ☆みっつ】
#61 ロンド(輪舞曲)
その身に振るわれるカッターナイフを颯爽と躱す。飛び回りキネは銃を撃つ。その数、三度。
だが、ザジもそれをギリギリのところで躱していく。
(…クゥッ!)
キネは苛立ちを覚えていた。けれど、それはすぐに死なないザジに対してでは無い。
原因がザジがのどかを殺した事に起因してるのは恐らく間違いはない。しかし、その苛立ちの対象はザジとのどかのどちらにも向かっていなかった。
自分の許可無く勝手に身代わりになり、無様におっちんだのどかに目を移す。無論、キネはのどかに感謝こそすれ、恨む道理は無い。だからこそなのだろうか。キネはえも言えぬ不愉快な感覚に包まれた。
それはキネがこの島に来て初めて感じる感情、感覚、心理状態。不条理に人が死ぬ事へのやるせなさであった。
(私は……)
半ば陶酔するような心でキネは銃を構え、舞い続ける。
キネと片腕になったザジとの交戦は五分だった。ザジの武器の刃先がキネの前髪を切り取ったと思えば、キネの銃弾がザジの髪を掠る。
命中必殺。一瞬でも気を抜けば二秒後には地に伏せさせられる。ザジとキネは同時に後ろに飛んだ。一度陥った膠着状態を打開するのは難しい。二人の鍔迫り合いは睨み合いへと変わる。
「――……!」
突然、ザジのカッターナイフを握る片腕が爆ぜた。ザジはのどかの側にいる夕映を振り返る。両目から落涙し、夕映はザジに向け銃を握っていた。
ザジは相変わらずの無表情でもう殆ど使用不能になってしまった片腕を動かしカッターナイフを口に咥える。
そして、夕映に向かって駆けた。口に咥えたナイフは今までの動きと遜色ない。寧ろ左右のバランスが取れた為、動きはかえって高速に成る程だった。
ザジは夕映を視界の中央に据えた。――キネは殺す。だが、それを邪魔をする奴も殺す。それに意味は無い。自分はもう何人も無意味に人を殺した。
夕映もザジに向け新たに銃弾を撃つが、その軌道はザジには当たらない。そうしている間にも距離は詰められる。そして、ザジの咥えたカッターナイフが夕映に振り下ろされた。
「――……!!」
「――キネさん!」
しかし、それを受けたのは夕映ではなかった。今までザジと対峙していたキネがザジに追いつきその片腕を盾にしてそれ受ける。その刃が埋まる腕からは血が滲み出た。
「――どうして……」
キネは夕映を助ける必要なんか無い。寧ろ、ザジを殺す好機だった筈だ。腕を失う覚悟までして守った真意を夕映は図りかねる。
「ノドカさんと約束しましたから……。ノドカさんが死んだら、ユエさんには手を出させないって…」
同時にキネは接近したザジの襟首を掴み、巴投げの要領でザジを投げ飛ばす。だが、曲芸師上がりのザジは空中でもその体勢を取り戻す。
ダン
「――…え…ぁ」
着地と同時にザジの体がぐらりと揺れた。その胸から鮮血が噴出す。ザジはその目を銃を構える夕映に向ける。
「――ああぁあぁぁああ!!」
絶叫する夕映はナミダを断ち切り手に持った銃の引き金を引く。その度に銃弾を受けたザジの体は撥ねる。
口に咥えたカッターナイフが落ちた。体に混じる異物が気持ち悪い。
ザジの眉間に衝撃が通る。それでスイッチの切ったブラウン管のようにザジの視界は一瞬で閉じられた。
【ザジ・レニーデイ(出席番号31番)死亡 残り11人】
【綾瀬夕映(出席番号4番) 拳銃(ピースメーカー)、誰かの日記帳所持 ☆やっつ】
【キネ・スプリングフィールド 拳銃(トカレフTT-33)所持 ☆ここのつ】
#62 クインテット(五重奏曲)
刹那とエヴァはしばらくの間、真名の言葉に呆気に取られていた。
だが、やがて刹那の中で真名の言葉はジワジワと説得力を持ち始める。やっと、このバトルロワイヤルの終焉の光筋が見えるのではないか。ちょうど刹那がそう考えた時、不躾でさしでがましく茶々丸が口を開いた。
「――いえ、残念ですがそれは不可能です…」
「何、だと…」
その地面に転がる茶々丸の頭を振り返り真名は眉を顰めた。その目には怒りの色さえ浮かんでいる。
しかし、同時に刹那は真名の言葉から僅かな狼狽を感じ取った。その真名の眼光に怯まず茶々丸は無機質に続ける。
「確かに真名さんなら司令部の兵士を全滅させる事ぐらい容易いでしょう…。しかし、問題はその後です」
「その後…、と言うと私が高畑先生に勝てないと言うのか。馬鹿を言うな。気も魔力も使えない先生などそこらの兵士と大して変わらないじゃないか。銃器に関しては私の方が圧倒的に分があるだろう」
「そうですね。高畑先生が気も魔力も使えない状態なら確かにそうでしょう…」
「――何っ…」
言って真名は自分の手から僅かに気が放出出来る事に気が付く。思い切って気を手に溜めてみると今まで溜めれなかった筈の気が使えるようになっていた。真名を手を震わしながらそれを見つめる。
「――そうか、成る程な。つまり、この島に張られていたのは気と魔力を抑える物では無く、魔力だけを抑える結界だったと言う事か……」
「ええ、残念ながら…」
タカミチは仮にも麻帆良一の使い手。たとえ魔力を封じられたところで気さえ使う事が出来るのなら、どうして真名に後れを取る事があろうか。たとえ魔力が使えなくともタカミチは装甲車並みの強さがあるのだ。
茶々丸の言葉に真名は悔しそうに顔を伏せる。
真名はこの島ではタカミチの気も魔力も使えない物とばかり考えていた。だからこそ、銃器の扱いに長ける自分の方が有利で簡単に倒せると考えたのだ。それなのに……。
「しかし、龍宮さん。高畑先生を倒す方法はまだ在ります」
茶々丸の頭は地面に落ちたままであったのでエヴァは気を利かせてそれを拾い上げる。
「――司令部にある結界制御室のコンピューターから魔力結界の解除命令を出すんです…。そうすればマスターは全盛の魔力状態になり、高畑先生をも倒せます」
「……解除命令の出し方なんて知らないぞ」
「私を結界制御室まで持っていって下さい。その場所で私の端末を繋げば後は私が引き受けます。――そして、出来れば桜咲さんの力も借りれれば心強いです」
突然の話題が自分に振られた事に刹那は少し戸惑う。刹那は何も言わず真名たちを見つめた。
だが、目の前でエヴァ達の話している言葉が本当ならとても喜ばしい事だ。もうクラスメイトを殺さなくとも良い。刹那は最悪木乃香の生死の為には自分の命を差し出さねばならないと考えていた。
――なのに、それなのに心の中のどこかで少し嫌な悪寒が走る。
それはきっと、先程遭遇したキネという少女の警告なのからだった。
その後、真名と刹那とエヴァは互いに情報交換をする。
真名からは楓の遺言を、刹那からはキネという少女の事を、そしてエヴァの所有する茶々丸の頭部からは首輪をハッキングした時に引き出した情報や茶々丸が個々の首輪をハッキングすれば半分の確率で外れるという事を伝えられる。
また、アキラを殺した真名の余ったいつつの星については今日の分の規定数はクリアしていると言う刹那を考慮に入れ、みっつをエヴァが、ふたつを刹那が受取った。
そして、刹那は挨拶をしてその場を去る。史伽との夕方の放送までに帰ってくるという約束があったからだ。
それに首輪の外れた真名ならともかく、未だ首輪を装着した刹那には茶々丸にハッキングしてもらうかどうかと言う決断を下さねばならなかった。だが、木乃香の事を考える余り刹那はその場で決断を下せない。
だから、一度木乃香の居る洞窟に戻り相談する事にし、翌朝その返事を返す事にした。真名は少し渋ったが、今の時間からだとエヴァの足では結局六時までに司令部に到着出来ぬ事が分かり突入を明日に繰り越す事に納得する。
その場を去る刹那の背中を真名はぼんやりと見送った。真名の側にエヴァは立つ。
「どうした、浮かない顔をして。刹那に渡した星がそのまま持ち逃げされるんじゃないかと思ってるのか?」
いや、と真名は答える。そんな事は不安ではない。
不安なのは刹那が首輪をハッキングするのに同意したとしても、首輪が上手く外れるかどうかだ。
確率は二分の一、決して高いとは言えない。そう、出来れば更に星を集めて刹那の首輪を外す方がどちらかと言うと真名には好ましく思えた。
刹那の現在の星はやっつ。他に木乃香が持っている余ったひとつの星を刹那に渡せば最大でここのつの星を所有しうる。つまり、後みっつの星を集めれば運に頼らずとも作戦を実行出来るのだ。
(星をたったみっつだけ、どうにか出来ないものか…)
腕を組みながら真名は唸る。
と、その時、真名とエヴァの後ろの草陰に一人の人影がじっと二人の様子を伺っていた。カサリと草が揺れる。
そうして、真名とエヴァは同時に後ろを振り返った。真名は銃を持って、エヴァは手に茶々丸を抱えて。
【桜咲刹那(出席番号15番) 日本刀(菊一文字)、拳銃(ザウエル P230)所持 ☆やっつ】
【龍宮真名(出席番号18番) 拳銃(コルト ガバメント(M1911))所持】
【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(出席番号26番) 茶々丸の頭、ハサミ所持 ☆むっつ】
#63 ゴスペル(福音歌)
「ん、……」
呻いた木乃香に、洞窟の入り口付近に立って見回りをしていた史伽は振り返る。
「目が覚めましたか、木乃香さん」
「ここは……。そう、確かウチ…足を刺されて……」
そうやって木乃香は僅かに体を起こす。だが、ぼんやりと史伽を見ていたその瞳は段々と驚きに開かれていく。そしてとうとう耐え切れなくなったように息を吐く。
「――あぁ、風香がここにおるって事はウチ、死んでしもたんか」
史伽は最初木乃香が何を言ってるのか理解出来なく、頭にハテナマークを浮かべていた。だが、すぐに今の自分が風香の髪形をしている事を思い出し、頭の髪を手で押さえる。そしてやや遅れて理解した。
そう、つまり木乃香はこの暗い洞窟の中を死後の世界と勘違いしてるのだ。
「え、いや、これは違います。私は…」
「ええんや、風香。慰めは。ウチもちょっとだけ覚悟しとった事やえ…」
そう言って絶望感に打ちひしがれた様に木乃香は顔を伏せる。
「だから…、私はお姉ちゃんじゃなくて史伽なんですって!」
「そうか…史伽も死んでしもたんか……」
「――そうじゃなくてー」
丁度その時、洞窟の入り口に誰かが立った。史伽は俊敏に後ろを振り返る。
――あぁ、何とタイミングの悪い事だろう。史伽は悲鳴のような息を漏らす。
「――お嬢様。今戻りました」
「!?」
ハッとして顔を上げた木乃香の顔に驚愕の色が浮かんだ。その目にどんどん涙が溜まっていく。
史伽は直感的にマズイと感じた。
「うわぁぁああん!!せっちゃん、せっちゃんまで死んでしもたー!せっちゃぁん!せっちゃああんん!!」
「えっ!?え、!?」
案の定、木乃香はその場に泣き伏してしまう。刹那はかなり困惑した顔でおろおろと戸惑うばかりである。神鳴流の剣士、桜咲刹那も泣く子と木乃香には勝てなかった。
「――なんや、史伽やったんかウチはてっきり…」
史伽の丹念な説明で誤解が解かれた木乃香は今更アハハと愛想笑いをする。それを見る刹那は少し呆れ顔。
だが、そんな刹那も内心自分が外に出てる間に何も無くて良かったとホッとしているのだ。
その後、刹那の口から木乃香と史伽に外に出て会った真名とエヴァの会話の内容が話される。
「そうなんですか…楓姉ぇがそんな事を……」
史伽はそう言って哀しげに俯いた。そんな史伽を静かに見つめた後、刹那は木乃香に向き直る。
「それで、お嬢様は如何したら良いと思いますか?」
「如何したらってどういう意味?」
「――エヴァンジェリンさんと龍宮の作戦に乗るべきかどうかという事です」
木乃香は少し躊躇うように黙り込む。そして上目遣いでチラリと刹那の顔を伺った。
「――でも、…ネギ君似のキネって子は司令部には乗り込むな、ゆうたんやろ?」
「……ハイ。しかし、作戦に乗って上手くいけば、もう誰も死なずにこのゲームは終わります」
木乃香は熟考する様に口に手を当てる。刹那は言葉を続ける。
「私はお嬢様の指示に従います。――このまま洞窟に残れと命令されればその通りにします」
「せっちゃん…ウチは……」
『あー、第四回目の放送だ…』
丁度その時、木乃香を声を遮るように夕方午後六時の放送がタカミチの無機質な声が島中に流れた。
【近衛木乃香(出席番号13番) 催涙スプレー所持 ☆ななつ】
【桜咲刹那(出席番号15番) 日本刀(菊一文字)、拳銃(ザウエル P230)所持 ☆むっつ】
【鳴滝史伽(出席番号23番) 拳銃(グロック17)、サバイバルナイフ所持 ☆むっつ】
#64 インテルメッツオ(間奏曲)−4
「あー、第四回目の放送だ…。この放送を以って首輪の星の規定数は六個に引き上げられる。とは言っても、実際は今回の引き上げによる死者はゼロだ。
一部の兵士からは不満が上がっているくらいだよ。本当、君達は優秀な事で…。
それでは、今回の死亡者の発表に移るとしようか。
今回の死亡者は大河内アキラ(出席番号6番)、宮崎のどか(出席番号27番)、ザジ・レニーデイ(出席番号31番)の以上3名。
これで現在生き残っているのは残り十人。次の放送は明日の正午だ。その頃になれば星を十二個集めて首輪を外している生徒も何人か居るだろう。早くしないと星が無くなってしまうかもね。
そうならないよう生き残りたければラスト一日、全力で殺し合いをする事だ。まあ、頑張ってくれたまえ」
#65 ノクターン(夜想曲)
半月が空に浮かんでいた。その月下、千雨は木を背にし横になる。さよはと言えばその傍らで神経質そうに星探知機を細かく見ていた。
さよと千雨の首輪にある星の数は現在むっつずつ。従って、二日目の規定数はすでにクリアしており、二日目の彼女らの行動は早朝のザジとの遭遇以降、凡その時間をその場での待機に割り当てた。
マシンガンという他人より強力な武器もあるし、星探知機によって相手の位置も把握出来る。ならば、千雨達にとって今すぐにでも星を集めなければならないという訳でもなかったからだ。
「おい、相坂。夜ぐらい星探知機をチェックしなくていいぞ。どうせ、こんな中で夜目が利く奴なんていないんだからな…」
そう言って千雨はさよをの目を朝から見ていた星探知機から離させる。
なるほど、確かに千雨の言う通りであった。月明かりこそあるが基本的に林は夜闇に包まれており、その中を愚かにも彷徨う人間は皆無である。
あの真祖のエヴァですらこの島ではその能力を封じられ、深夜の行進など馬鹿げた真似はしない。
頷いたさよは星探知機を下げると腰から自分のもうひとつの荷物を取り出し、考えるようにそれを睨み付ける。
「相坂。何、見てんだよ」
ふっと体を起こし千雨がさよの手元を覗き込む。その手元には和美の持ち物であった藁人形が握られていた。
「あー、その藁人形。お前、それまだ持ってたのか?」
「――ハイ。……って、長谷川さんが私に言ったんですよ。持っていろって!」
んー、と千雨は唸る。そう言えばそんな事も言ったっけ。千雨もその藁人形の説明書きを読んではいた。しかし、本当に恨みの相手を殺せるなどとは露も思う筈がない。
「――お前、親戚にオカルトグッズマニアとかいないか?」
「な、何、言うんですか!いませんよ、そんなの」
「――別に捨ててもいいぞ、それ…」
「いえ…、少し気になるので持っていますけど…」
なんだそれ、と言って千雨は木の幹に再び体を預ける。
この無人島の上空は空気が澄んでいて、それでいて街灯もない。それ故に乳色のミルキーウェイが千雨が子供の頃行ったプラネタリウムのように良く見えた。丁度、天上を一筋の流れ星が堕ちる。
そういえば褐色の少女、ザジの死を夕方の放送では伝えていたな、と千雨はふと思い返した。
「なぁ…、相坂…」
ポツリと千雨は呟く。
「何ですか?」
「…お前、この島で死んだんだよな」
寒い夜風が吹いた。さよはその言葉に静かに頷く。
「――ええ、この島でクラスメイトに刺し殺されました…」
「…で、麻帆良学園の自縛霊になった」
「――ええ」
さよはただ頷く。千雨はただ星空を見上げている。
「それで…一体、何がお前を麻帆良学園に縛り付けたんだ?」
「――…え、それは…」
さよは分からなかった。
自分の死因は思い出せた。だが、自縛霊となるからには何らかの未練が必要だ。しかし、その未練が一体何であったのかは思い出せない。自分は、死ぬ時にそれほどの未練を残していただろうか。
「…もしかするとお前が自縛霊の理由は、お前を殺したクラスメイトへの恨みからじゃないのか」
「…………!」
咄嗟に答えられなかった。自分が縛り付けられている理由が自分では思い出せない怨恨から来ているのではないかという事。だが、ふっと千雨は笑う。
「……なんてな。冗談だよ、冗談。本気にすんな。大体、未だにお前が麻帆良に留まってるっていうのは、お前を殺したクラスメイトがこの六十年間ずっと麻帆良学園に居るって事じゃないか。常識的に考えておかしいだろ、それって」
「――そう、ですよね…」
さよは顔を引きつらせながら、千雨につられて笑った。その心はどこか昔の黒い思い出を疑心しながら。
【相坂さよ(出席番号1番) 星探知機、藁人形所持 ☆むっつ】
【長谷川千雨(出席番号25番) マシンガン(MAC M11(イングラム))、拳銃(ベレッタ M92)所持 ☆むっつ】
#66 グリー(男声合唱曲)
皆が寝静まる無人島の二日目の夜。
その静寂の中で唯一、別世界のように静寂が破られる場所があった。
「ハハハ!乾ー杯!!」
「お勤め、ご苦労さん。今日は盛り上がるとしようか!」
それは島の中心に位置する司令部。兵舎の野外で兵士達による酒盛りが催されていた。
無論、司令部の警備により全体の何割かは抜ける事は出来ないが、それらのメンバーには後でそれなりの酒を別に残してやる事にし、残り十数人を集めこの宴会は始まった。
兵士達は各々、数日振りに酒をあおり、酒気を五臓六腑に染み渡らせる。そして宴もたけなわになってきた時、兵士のリーダー格らしき男が口を開く。
「あーあ、静粛に。本日も無事に一日を過ごす事が出来た。今日この日を与えてくれた神に感謝を…」
この隊にて隊長を勤める彼は厳格で敬虔なるクリスチャンであった。それを隊のムードメーカらしきサングラスの男が茶化す。
「神様も怒ってますよ。こんな、げひたゲームを見守ってるなんて趣味悪いってね」
それにつられその場にいた他の兵士も思い思いに笑う。リーダー格の兵士も気不味そうにそれに倣った。
「それにしても、この糞ゲームもあと少しで終了か。呆気ねぇもんだな」
「ん、つまんないッスよね。明日もどうせこの司令部に突入する輩なんていないのに…」
最初の言葉は首から提げたマシンガンを弄くるピアスの男。その言葉を受けオタク風の兵士が頷き返す
「おいおい、君たち言葉が過ぎる。明日もその調子では困るぞ」
髪を五分五分に分けた真面目そうな兵士がその二人を嗜める。ピアスの男はその男に対し判ってるよと言い返した。
「まあまあ、委員長も落ち着くッス。確かに前年度は反乱が起こって政府側にも五人も死者が出たぐらいだから言いたい事はわかるッス。何事も用心しろって事っしょ?」
「……うむ、まあそうだ」
「心配する事ないッスよ。その為の新ルールだし。ウチラ下っ端はドーンと構えてりゃいいんス」
「ま、そう言う事だ。あの先公、名はタカハタだったか。アイツ、生徒に突入しないように言ってあるし、そうさせないよう手も打ったって言っていただろう。それにいざとなれば奥の手も用意してるらしいじゃないか。
――んと、確か…イカサマだかイカスミとか言ったっけ?」
サングラスの男は安っぽいビール缶を傾け、タカミチの言葉を思い返す。
――その奥の手が何かまでは兵士たちは知らされてない。だが、その時のセリフを吐いたタカミチの自信を見て、少なくともこのサングラスの男はその手というのがハッタリではないと感じ取っていた。
一方、委員長と呼ばれた真面目そうな兵士はそれでもまだ何か納得がいってない様子だった。
「――おお、そうか!それはおめでとう!」
「…いえ、有難う御座います」
突然、クリスチャンの隊長が大きな声を張り上げる。そして、隊で一番気弱そうな兵士の男の背を思いっきり叩く。サングラスの男は自分の隊長の様子をチラリと見た。
(珍しいな…。隊長があんなに酔うなんてな…)
そもそもその隊の隊長という男は余り酒を嗜む方ではない。彼のあの酔い具合を見るのはかなり久しぶりだ。
「おーい、みんな聞いてやってくれ!彼、この仕事が終わった後、退役して結婚するそうだ」
そう言ってクリスチャンの隊長は背を叩いた兵士を酒盛りの宴の真ん中に突き出す。当然、その場は餌を入れた金魚鉢のように沸き返る。
「ホントッスか?それはおめでとうッス!!」
「――おめでとうさん」
「是非、結婚式には呼んでくれると嬉しいね」
「ええ、是非皆さん呼ばせて下さい。この仕事で特別給が付くそうなのでそれを区切りに実家の家業を継ごうと、そこで結婚も一緒に」
大人しそうな兵士はおずおずと語る。
「相手は誰なんです?」
「ええ、故郷に残した幼馴染で…。今までも手紙とかでずっと連絡は続けてたんです」
「くー、羨ましいな。おい、結婚式に酒持って乱入して、手前の恥ずかしい従軍履歴とか語ってやろうか?」
「や、止めてくださいよー!」
ピアスの男がけらけらと笑いながら大人しそうな後輩兵士をからかう。
それはいつもの隊の光景。どんな嫌な任務だろうがそれに違いは無い。その任務もあと一日。
(――気楽なもんだ)
サングラスの男は夜空を見上げる。その下の瞳に曇りは存在しない。
その島を包み込む夜の漆黒の闇は緩いアルコールの力で駆け上がるように加速して更けていった。
今日はここまで。
二日目も終了し、後は三日目を残すのみ。
話の展開もそろそろ終盤に移ることとなります。
乙!
やはりザジはおくたばりになりましたなorz
つか、兵士に死亡フラグが立ちすぎて逆に生き残りそうだww
さよと隊長がクラスメートだったというオチ。
この仕事が終わったら結婚するんだ・・
>>80 あやうく
いや、さよとたつみーは普通にクラスメートじゃんw
とつっこむところだった
>>82 やあ俺。お互い、向こうに毒されすぎだよな・・・
では、投下します。
今日を含め残り三回になっています。
#67 スイート(組曲)
「アスナさん?」
真名とエヴァとの待ち合わせ場所に来た刹那はその場に居合わせた意外な人物に素っ頓狂な声を上げる。
「何故、ここに?」
「う〜ん、どうやら昨日刹那さんがここを離れた後、入れ違いに二人に会ったみたいで……」
そう言って明日菜は後ろに居た樹に背を預けている真名とエヴァを指し、これまでの経緯を説明した。そう、真名たちの様子を窺っていたのは他でもない明日菜だったのだ。
真名達が茶々丸を交て今後の作戦について協議する声が刹那の耳に聞こえてくる。
「――にしても、ホント昨日は少しびっくりしたわよ…。龍宮さんにいきなり襲われそうになるし…」
明日菜は笑いながら刹那の耳元でそう囁く。声が小さいのは真名たちに対する多少の皮肉を込めているのだろう。
そこで刹那は布を巻いた明日菜の左手に気が付いた。
「まさか、――左手の傷も」
「え、ああコレ?ううん。これは別に刹那さんが心配するような事じゃなくて…」
明日菜は一旦言葉を切る。
「これね、いいんちょにやられた分…」
「――…え」
思わず刹那は息を止める。それはそう言った明日菜の顔が俄かに曇ったからだ。
「あのショタコン。私を殺すとか言いながら勝手に死んじゃって。……バカよね、文句のひとつも言い返してやりたかったのに。――あ、別にこんな事刹那さんに言ってもしょうがないか」
あははと笑う明日菜のその顔には明らかに普段の元気が無かった。
そのあやかを殺したのは刹那自身。今までの自分の行動に後悔は無い。刹那はその時もそう感じていた筈であった。
やがて、エヴァと真名の会話が終わったのか真名達は刹那の前に自ら歩いてくる。
「――さて、昨日の返事を聞かせてもらおうか…。刹那」
刹那を睨みつけるエヴァの瞳は返答次第では生かして返さんぞという位、厳しい。
「――ハイ、昨日お嬢様にこの作戦を話しました。私はお嬢様の判断に全て委ねるつもりだったんです…」
「成る程なぁ。……それで?」
「エエ、お嬢様は私の好きなようにすれば良いと言って下いました。だから…私は自分の意志で決めました。私は……」
刹那は軽く唾を飲む。
「――私は、高畑先生を止めます!」
にやりとエヴァは笑った。真名は軽く頷き、その刹那の首輪に手を伸ばす。途端カチリと音を立てて刹那の首輪は外れた。驚き刹那は首に手を触れる。
「――これは…」
「神楽坂が余分に星を持っていたんでな。その内のみっつを頼んで譲ってもらった」
刹那は明日菜の首輪を見る。その星はキネに貰ったここのつからむっつに減っていた。
それから真名、エヴァ、茶々丸、刹那、明日菜は一時間程行進を開始し、司令部の付近の場所まで移動する。
兵士の姿までは見えないが窓の無い司令部のサンンドベージュの外壁が隠れた刹那の角度からも見えた。
だが、そこに来て明日菜は体を小刻みに震わし始める。刹那が心配気に伸ばした手も明日菜は払い除ける。
「――ねえ、やっぱりこんな事止めない?大体、この作戦が必ず上手く良くっていう保障なんて無いんでしょう」
真名やエヴァはここまで来て何を言っているんだという不思議な顔をする。普通に考えれば単に怖気付いたと取れる言葉だったが、刹那だけは何となく明日菜の気持ちが分かった。
「――アスナさん…。高畑先生を殺さなければならないのが嫌だから言ってるんですか」
明日菜の気持ちを知りながらこんな事を言わなければならないのは気が引けた。明日菜は瞼を一度痙攣させるが、反論出来ないのかショボンと頭を下げてしまう。だが、やがて決断したかのような強い瞳を持って顔を上げた。
「――じゃあ、私にも司令部に突入させて!高畑先生と話がしたいの。首輪は…茶々丸さんにハッキングさせて良いから!」
「……しかし、高畑先生に説得が上手く通じるとは限りませんし、相手の兵士達はマシンガンで武装していて明日菜さんが付いて来た所で足手纏いになるだけです…」
宥める様に刹那は言うが、対する明日菜も一歩も引かない。
「刹那さん、お願い。足手纏いになるなら見捨てても良いから……」
無茶を言う。そもそも見捨てられないから難色を示しているというのに。刹那はどうしようかと後ろを振り返る。その刹那に対し真名は軽く首を振った。刹那は軽く頷く。
「――アスナさん、ちょっと」
「え、何?」
刹那は指で軽くこちらに来るよう手招きする。それに応じた明日菜の首筋に衝撃と鈍痛が走った。
「――え?」
首に刹那の手刀の一撃を入れられた明日菜は視界が二重に別れ、気が遠くなる。そして、そのまま明日菜は前のめりに倒れた。
「まったく、手間を掛けさせるな。神楽坂明日菜は…」
ぶっきら棒にエヴァは呟きその明日菜の肩を担ぐ。
元々、エヴァは真名と刹那と茶々丸に任せ、時が来るまでは司令部の外で明日菜と一緒に待機するつもりだった。だから今は当初の予定通り倒れた明日菜に肩を貸し、安全な場所まで少し移動させようとする。
その時、偶然にも明日菜の服から明日菜の所有している銃が落ちた。
「ん、ちょっと待て、真名。ついでだからこの明日菜の拳銃を持って行け。何かの役に立つだろう」
「…………」
エヴァは言って茶々丸の頭を抱える真名に拾った(奪った?)銃を投げ渡す。その銃が真名の愛銃デザートイーグルであったのも何かの因縁といえば因縁だったのだろう。
【神楽坂明日菜(出席番号8番) 武器未所持 ☆むっつ】
【桜咲刹那(出席番号15番) 日本刀(菊一文字)、拳銃(ザウエル P230)所持】
【龍宮真名(出席番号18番) 二丁拳銃(IMI デザートイーグル.50AE、コルト ガバメント(M1911))、茶々丸の頭所持】
【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(出席番号26番) ハサミ所持 ☆むっつ】
#68 アルマンド(古典組曲の一種)
「ふわぁ…」
なんとかその兵士は欠伸を噛み殺す。昨日の酒盛りに羽目を外し過ぎた為か、外回りの交代時間までがやけに長く感じられる。
だが、どうやらそれは自分だけらしく他の兵士は昨日の酒に参った様子は無い。昨晩とは違い無駄口を叩かず、ただロボットのようにマシンガンを構え、周りに目を光らせる。そういう意味ではやはり彼らはプロなのだろう。
「――ふわあぁ…」
二度目の大きな欠伸が出る。今度は無理に抑えるのを止めた。
欠伸は目を覚ます為のものだ。それなら、抑える道理は無い。そう考えた後、その巨大な大欠伸を兵士は瞼を閉じ、気持ち良く無事にし終わる。――ヒュン、と何かが風を切る音。欠伸をした兵士は静かに絶命した。
「――!!」
「何スか!」
その兵士の異変はすぐ周りの兵士達に伝播する。兵舎の入り口を警護して居た兵士八人。その全員が一瞬にして絶命したその兵士を振り向く。と、同時に更に二人の兵士が倒れた。
黒髪の少女の持つ長刀が次から次へと入り口の兵士を切り伏せていく。
「何だ!テメェ!!」
一番最初にこの状況を判断した兵士は躊躇いもなくマシンガンの引き金に手を掛けた。だが、それを有り得ない動き躱し、彼女は更に一人を切り伏せる。瞬動を使うその動きは一般の人智の及ぶ所でない。
不味い、と感じ少女から距離を取る。まだ、五対一。冷静にやれば負ける相手ではなかった。しかし、銃声と共にその少女から離れた場所にいた三人の兵士も続けざまに倒れていく。
「――おい、お前ら…」
振り返り、驚愕する。三人とも眉間に仏像の白毫のような穴が穿たれている。しかも、それを撃った銃を持った褐色肌の少女は遥かに離れた草陰に潜んでいたのだった。
「うわああぁぁあ!!」
最後に残った自分以外の兵士が恐怖の余り、背を向け逃げ出した。だが、強襲する黒髪の悪魔はそれを逃がさない。刀を持つ少女が追いつき、逃げたそいつを背後から新たに切り伏せる。
「――あぁ」
その兵士の顔を見て自分は思わず声を上げる。それは昨夜、今日が終わったら故郷に帰り結婚式を挙げると言っていた後輩兵士だった。
「――おい、刹那余り先走るな。焦る心はミスを生むぞ」
入り口付近を警護していた兵士らを片付けてから真名は姿を現し、兵士達の死体を見下ろした。その左手には茶々丸の頭を持つ。
「――とは言え、あまりのんびりはしていられる訳でもないか。いつ援軍が来るか分からないし、私たちが突入した事を高畑先生が知るのも時間の問題だろう。行くぞ、刹那」
「――……」
だが、刹那はすぐには動こうとしない。最後に殺した兵士の表情が頭に纏わり付く。刹那は今更になって嫌な気分になった。呆れる、憐れむなど偽善もいい所だ。刹那は萎えかけた自分の心を奮い立たせる。
――立ち止まるな、考える前に動け。行動は開始されてしまった。もう引き返す事は出来ない。
そう、後は突き進むのみ。
「桜咲さん……」
「大丈夫です。さあ、行きましょう!」
不安そうな声を掛けた茶々丸に刹那は力強く返事を返す。そして、真名達は今から突入する巨大な兵舎の入り口を見上げた。
#69 クーラント(古典組曲の一種)
「何だ!」
「うわぁああ!!」
廊下から飛び出る兵士たちを薙ぎ倒しながら真名達は司令部の中を進む。もうおそらく兵の三分の一は倒してしまったろう。だが、こんな雑魚をいくら倒した所で不安の量はいまだ変わらない。
肝心なのはタカミチなのだ。それと闘う事無く、エヴァに頼まれた魔力を封じる結界を消滅させねばならない。真名と刹那は茶々丸のナビゲートを借りて魔力を封じる結界を操作しているコンピューターの部屋に向かっていた。
タカミチの居るであろう中央制御室からその結界制御室は急いでも三分は掛かる。一方、真名達の突入した入り口から結界制御室まではほんの一、二分である。
兵士を倒しながらと言えども刹那達がタカミチより遅く結界制御室に着く事は在り得ない。
だが、ここで少し問題があった。事前の茶々丸の説明によれば、たとえそのコンピューター室に辿り着いたとしてもその結界を解除するには十分の時間が掛かるのである。無論、タカミチがそんな時間を待ってくれるとは思わない。
だから、真名達は事前にある作戦を立てていた。
「刹那、茶々丸を受取れ。ここで一旦別れるぞ!」
「――ハイ…」
つまり、その作戦の内容とはどちらかがその十分という時間の間、タカミチの足止めをするという事。足止めが目的だから不利になれば逃げればいいし、元より相手を倒そうなどと考えてはならない。
そして、まだ怪我の影響が響いている刹那を勘定に入れ真名がその足止め係を引き受けた。
真名は別れたT字路から直接、中央制御室に向かう。その道についてはもう頭に叩き込んでいる。真名はもぐら叩きのように出てくる兵士達を一撃の内に仕留めながら、中央制御室に向かう道をただ突っ走り続けた。
突然、真名の前に一人の兵士が現れ襲い掛かる。
その身の丈、六尺三寸。短い顎髭を生やしたその兵士の歳は五十を過ぎており、首には小さなロザリオを掛けていた。真名はそれまでの兵士と同じように男の眉間に銃を撃った。だが、その男は徒手によってその銃弾を跳ね返す。
(……成る程。まったくの素人集団と言うわけでもないようだ)
その兵士の手からは薄く気の様な物が立ち上っている。その体格、貫禄を考えればおそらく今、真名の目の前にいる兵士こそ、この部隊の隊長なのだろう。それが出てくるという事はこの先に中央制御室があるのは間違いないらしい。
そのロザリオを掛けたクリスチャンの隊長の豪腕が今度は真名に向かって伸びる。
「――だが、足りないな…」
細腕の真名がその拳を二つの銃で受け止める。ニヤリと真名は笑った。
「その程度では、私を止められない!!」
その途端、真名の二丁拳銃は神懸り的速さで四つに分裂し、隊長格の兵士の胸と頭に同時に二発ずつの銃弾が打ち込まれる。返り血が真名を染めた。それで、呆気なくケリは着く。
真名は通路の先にある扉に足を進めた。そこは真名が向かおうとしていた終点、中央制御室だった。
#70 サラバンド(古典組曲の一種)
真名は駆け足でタカミチが居るであろう中央制御室の中に飛び込んだ。
だが、真名の予想に反してその制御室を守る兵士は既に居なく、部屋は誰もいない空室のように静まり返っている。
その部屋の真ん中、司令官席に男が一人座していた。その顔は真名とは逆の中央制御室のモニターを眺めている。
「やはり来てしまったね…」
「高畑、先生……」
無機質なタカミチの声が部屋に響く。真名はその安穏とした声に一歩警戒するように下がる。
「――他にこの兵舎に突入したのは茶々丸君と刹那君だけかな?」
「…………」
刹那だけでなく茶々丸も侵入している事がタカミチに知られている。一瞬その事に焦りを感じたが、真名は表面上はそれをおくびも出さない。
たとえ刹那達が突入した事を知られていてもタカミチはこの場に居るのだ。
時間稼ぎという本来の目的は果たしている。いや、逆にタカミチの方から真名に話し掛けているのだから時間稼ぎという為には十分これ以上無く良いシュチュエーションだった。
「全く、君達には良く言ったつもりだったんだけどねぇ。やっぱり僕には信頼が無いのかな」
タカミチは振り返らずに黙ったままの真名に語りかける。
「そう言えば、キネ君には会ったかい?一応彼女にも司令部の突入を止めさせるよう伝えさせた筈なんだけど…」
刹那や明日菜の言っていた少女の事だなと真名は思い至る。尤も、真名は彼女を直に見たわけではないので会ったとは言えない訳だが。
「まぁ、それも無駄だって事か。――本当、残念だよ…」
タカミチの出した声は自分の立てた計画が上手くいかない子供のように沈み込んでいた。
そこで真名はこの場にある一種の違和感を感じる。
――何かがおかしい。それはタカミチの声から抜けている必死さや緊迫感だった。
仮にも司令部に攻め込まれて、自分のすぐ側まで迫っているというのにまるでそんな事は関係ないというように淡々と語る。このタカミチはどうしてこんなに平生でいられるのか。真名はその様子に何かえも言えぬ程の焦燥を覚えた。
タカミチの態度に苛立ちを感じた真名はたまらず両手に持った銃を席に座るタカミチに向け引き金を引く。
引き金をもう一度引いた。真名は引き金を更に引いて、引き続けた。
席を貫通する銃弾を受けたタカミチの体はその度にピクリと跳ねる。真名はもうタカミチの言葉など聞きたくは無い。聞けば聞くほど胸に何か言い知れぬ不安が込み上げた。
「――まさか上の方もこうなるとは思ってなかったろうね…。あんな馬鹿げた作戦が通るくらいだから」
だが、タカミチの失望したような言葉は止まらない。真名はハッとして銃を打つ手を休める。席に座っていた体が崩れ落ちた。
「――そんな…」
それはタカミチではなかった。タカミチの姿を模した人形。それが中央制御室の椅子に座らされていたのだ。
「おや、どうやらやっと気付いたのかな。――そうさ、僕は今この島には居ない。実際にはこの島の北にある本土から指示を出している…。
ところで言ってなかったが、この司令部には突入した君達のような相手向けに奥の手と言うかトラップが設置されているんだ。
その名はイカロスプログラムと言うんだけど…。おっと、センスが無いって言わないでくれよ。これは僕ではなく政府の方が勝手に決めた事なんだから」
そこまで聞いた真名はタカミチの声を流していたスピーカーを忌々しげに銃で破壊する。そして中央制御室を飛び出すと急いで刹那の居る結界制御室に向かった。
#71 ジーグ(古典組曲の一種)
「――ふぅ…」
息をついて刹那は結界制御室のモニターを見上げた。その足元にはこの部屋の警備をしていた二人の兵士の死体が転がり、流れた血が床に流れ小さな水溜りを作る。
茶々丸の頭部はすでにコンピューターの端末に繋いだ。刹那の視線の先にある液晶には結界解除指令の進行度が表されている。それももう九割近くまで進んでおり、残りに掛かる時間は一分程だった。
ここまでくればたとえタカミチが突然に現れて、手負いの刹那であっても、十分時間稼ぎ出る時間だ。そう、もし自分がタカミチと闘い死んだとしても、後はエヴァがタカミチを殺してくれる。それで木乃香と史伽は救われる。
少し刹那は気を緩めた。そう思えばこの場に満ちる血の臭いすら今の刹那にとっては心地良い。
その時、部屋の前を駆けてくる足音が聞こえた。刹那は一瞬身構えるがその気配の正体にすぐに気が付く。
「――龍宮!」
「龍宮さん…」
刹那の茶々丸は同時に真名の姿を捉える。だが、その真名の表情からその雰囲気が尋常でないのが窺えた。
「どうした、龍宮…。高畑先生は…」
真名はいきなり銃を構えた。それが茶々丸の方を向いていたのだから刹那は混乱する。
「今すぐ結界の解除を中断しろ!!」
「――え!?」
驚く刹那に対して真名は制御室のコンピューターに向け発砲する。突然の真名の行動を刹那は理解出来ない。真名は機器に向けて何度も引き金を引く。
「待て、落ち着け、龍宮!何があったんだ!」
「高畑先生は最初からここには居ない」
「……は…?」
「――…しかも、この司令部は奴らの仕掛けた罠だ」
「――そんな!」
刹那はモニターに写る進行具合を見る。その青色の棒グラフはもう95%を過ぎていた。
「――絡繰!何やってる、さっさと止めろ!それが100%になると何かヤバイ!!」
「……中止コード、エラー発生。――止まりません」
途端画面が赤く光り、モニターに新たな文字と進行度が付け加わる。
その文字は< Icarus Program >、日本語で「イカロスプログラム」と読めた。
赤色で伸びていく進行度は結界解除のそれよりずっと早い。あっという間にそれは50%を超える。
刹那は絶句する。舌打ちながら真名はひたすら拳銃を撃ち続ける。刹那は何も出来なかった。それを見ているだけしか出来なかった。それが一体何を意味するのか、それすらも理解出来なかった。
やがてその棒は画面の右の100%と書かれた端に達する。
そして、その場に白い光が射した。
#72 バラード(譚詩曲)
「イカロスですか?」
突然言われたキネの言葉に夕映はそう聞き返した。
夕映は二日目のあの後のどかを手厚く弔い、キネと行動を共にしている。キネはもう夕映を襲わない。理由を聞けばのどかと約束したからだとか。彼女なりにあののどかの行動に恩を感じているのかもしれない。
そのキネはええ、と夕映の言葉に背を向けながらどこか自虐的に答えた。その姿が何故か夕映の目に少し悲しげに映る。
「まさか、知りませんか?ギリシャ神話のイカロス」
「いえ、そんな事はありません。何分、唐突だったので」
キネの突然の質問に対し夕映は一旦言葉を切る。
夕映は実はギリシャ神話にはそれほど興味がある訳ではないし、有翼人の知り合いが居るわけでもない。とは言え夕映も人の子、まあ人並みくらいは知っていた。
「イカロスというのはダイダロスとナウクラテの息子の事ですね。
――この父ダイダロスというのがギリシャ神話の中でなかなか有能な工匠で斧、錘、水準器、神像などを発明したとされ、特に有名なのはミノス王に命じられて人身牛頭のミノタウロスを閉じ込めるために作った迷宮、ラビリュントスです」
スラスラと噛む事も無く夕映は語る。
「――その息子、イカロスは英雄テセウスが王女アリアドネの糸玉によってミノタウロスを殺害し逃れる事が無ければ、おそらく生涯平穏な人生を全うしたのでしょう。ですが、そうはならなかった。
王女アリアドネがテセウスと共に海外に逃亡した事でミノス王は激昂します。そして、その怒りの矛先はダイダロス、イカロス親子に向けられ、彼ら親子は塔の中に幽閉されてしまうんでしたか。
まあ、ダイダロスとイカロスは塔に落ちてきた鳥の羽を蝋で固め人工の羽を作り出して、その後、塔を脱出するんですが……」
そう上目遣いに夕映は頭にある知識を晒す。
「ハハ、凄いですよ、ユエさん。流石博識です。私なんかより良く知ってますね」
微笑みながらキネは夕映に顔を向ける。だけどその表情からは逆に今まで見せなかった悲しみが滲み出ている。
「いえ…そんな。それよりそのイカロスプログラムとはどういう意味なんですか」
「そこまで知ってるなら話は早いでしょう。要するに――そういう事ですよ」
キネがそう言ったその後ろ、突然天を砕くような轟音が地に轟く。キネは後ろをゆっくりと振り返った。そこにある筈は司令部の建物。
あぁ、とキネは赤く燃ゆる空を眺め、軽く息をついた。夕映は信じられないようなものを見る目でそれを見る。
「――イカロスがその後どうなったか、知ってますか?」
夕映からの返事は無かった。だけど、キネはそれを気にせずに言葉を続ける。
「父ダイダロスはイカロスに警告したんです、決して天高く飛ばないようにと。しかし、狭い塔の中から久々に、文字通り飛び出たイカロスはその言葉を忘れてしまった。
そして調子に乗って高く飛びすぎたイカロスの羽の蝋は太陽の熱によって溶け、――イカロスは地上に堕ちた」
だからイカロスか。その光景を眺めながら変に納得している自分が居る事に夕映は自分で驚いていた。
夕映の見つめる先、向かおうとしていた司令部からは巨大な火柱と相応の黒煙が立ち上っていた。
【絡繰茶々丸(出席番号10番)機能停止 残り10人】
【桜咲刹那(出席番号15番)死亡 残り9人】
【龍宮真名(出席番号18番)死亡 残り8人】
【綾瀬夕映(出席番号4番) 拳銃(ピースメーカー)、誰かの日記帳持所持 ☆やっつ】
【キネ・スプリングフィールド 拳銃(トカレフTT-33)所持 ☆ここのつ】
今日はここまで。
現在までの生き残りはさよ、夕映、明日菜、木乃香、史伽、千雨、エヴァ、キネの八人です。
乙
キネがラスボスだとばかり思ってたが、仲間になるとしたら千雨たんか……?
さよが人形使って高畑道連れでハッピーエンド
>>101 さらにキネをアスナとエヴァが
千雨を夕映とこのかが
高畑までの道のりで待ち受ける兵士を史枷が道連れにすれば初の全滅エンドだな
乙
こういう展開で普通にあっけなく
刹那たちが死ぬのもまた新鮮な感じだな
確かに
たいてい本部の敵と刺し違えたり等恵まれた死に方をするか、戦闘キャラ補正で生き残るかだもんなぁ
後半ちょっと死ぬスピード早すぎかなと思いながらも今日の分投下。
#73 ソナタ(奏鳴曲)
最初に射したのは閃光。遅れて耳を塞ぎたくなる爆音と爆風が伴う。
緋色の爆炎が立ち昇った。それはそこにあった司令部という建物を丸ごと飲み込む。
「何だ…これは」
顔に掛かる火の粉を払うのも忘れ、エヴァは息を呑む。
司令部は吹き飛んで無くなっていた。真名、刹那、茶々丸が建物の中に突入してまだ15分も経っていない。
その間、エヴァはアスナを引きずって少し離れた木陰の間に移動し、そこから兵舎の様子を伺っていたのだ。
「…茶々丸!」
はたと気が付く。いつの間にか今まで感じていた茶々丸との従者の魔力の繋がりが切れている。それは即ち茶々丸という従者自身の消滅を意味していた。
悪い夢でも見ているのか。エヴァはよろりと傍らに在った木に寄りかかる。
あの炎の中で生き残れる人間は居ない。しかも最悪な事に、この爆炎は建物の複数の場所で同時に上がっている。たとえ司令部のどの場所に居たとしても退路は断たれ、逃げ延びる事は適わない。
「――やられた…」
恐らくタカミチの仕業であろう。
自分達が首輪を外し司令部に突入する事は予め読まれていたのだ。だから、兵舎の至る所に大量の火薬が仕掛けられていた、司令部の侵入者を逃さないために。
そして、それは味方をも巻き添えにし、司令部に侵入した敵を一掃した。
思い出したようにエヴァは試しに指先に魔力を込めてみる。だが、その魔力が溜まる事はない。それは未だに島の結界が健在なのを示している。エヴァは木にその手を打ち付ける。
「くそっ!じゃあ真名達は一体何の為に…!」
「――何の為だと…」
ふと、エヴァの横で声が聞こえた。エヴァがハッと振り返るのと同時に脇腹に幾つか穴が開く。
「あ…ぐ……」
「それを言いたいのはこっちだ…」
「馬鹿な…」
それは爆発から唯一生き残った兵士のマシンガン。だがその兵士も真名と刹那との交戦によって全身血にまみれ、すでに瀕死に近い状況だ。ただ、取り付かれたような気迫によってかろうじて動いていた。
「それじゃあ俺達は…、何の為にこの三日間この建物を守ってきたんだ…」
サングラスをかけた兵士は呟き続ける。その言葉は誰に向けたものであろうか。
エヴァは逃げようと後退さる。だが、その先に明日菜が居るのを思い出し踏みとどまった。このまま逃げ、兵士が明日菜を見つければ躊躇いなく明日菜を殺す。という事はこのままこの方向に逃げるのは不味い。
それに真祖のエヴァの傷は一向に治る気配がない。島の結界が魔力を抑えているのと同様に真祖の回復力も抑えているのだろう。
痛みには馴れているのでこの程度なら意に介するほどではないが腹に受けた傷はすでに致命傷の域まで達していた。
「ハッ…大人しくなったな。観念したか…」
「馬鹿を言え…。私を誰だと思っている」
兵士の方を振り返ったエヴァの口元が僅かに歪む。それは魔女狩りの時代を生き延びた人でない者の生き残り。
奇怪なものを見るように眉を寄せた兵士に対し、倒れるように疾走する。兵士のマシンガンはそれを止めようと試み火を噴いた。
肩や胸や足や体のあらゆる場所から血が吹き出す。しかし、この程度の痛みではエヴァ体の活動の停止には足りない。全身を業火で焼かれた事すらある彼女にとってこの程度の部分的な出血など物の比ではなかった。
「――こいつバケモノか…」
サングラスをかけた兵士が呟く。もうこの少女の皮をかぶった怪物との距離はない。
伸ばされた腕が兵士の首に絡む。
「――『化け物』か。褒め言葉として受取っておくぞ、ひよっ子」
何かが砕け、折れる音。それとともに『闇の福音』と呼ばれた不滅の真祖を結果的に死に至らしめた兵士の頚椎は折られた。そして、その兵士はエヴァより一足先に絶命する。
#74 オラトリオ(聖譚曲)
明日菜は目が覚めた後、首を振った。彼女の意識はまだはっきりとしない。
(ええと…私、どうしたんだっけ)
ぼんやりと明日菜は反射的に前の明るい方に目をやる。そこに在るのは煉獄の紅の火柱。一瞬思考が飛ぶ。ソレには見覚えがある。勘違いだと思いたかった。ソレは刹那達が突入した司令部ではなかったか。
「嘘―…そんな…」
炎壁の熱により顔が熱くなり思わず地面に顔を背ける。
「あ…!」
声が漏れた。そこに血まみれのエヴァが横たわる。
「エヴァちゃん!」
立ち上がった明日菜は駆け寄り、エヴァを抱き上げる。だが、体中にある銃創はどう見ても致命傷だ。
「神楽坂明日菜か…」
ふとエヴァは閉じていた瞼を上げる。
「…待ってて、今助けを呼ぶから!」
「いい、私はもうすぐ死ぬ…。この島では真祖の回復力まで抑えられているからな…」
「そんな…しっかりしてエヴァちゃん!」
だが、必死に呼びかけてもエヴァの出血は止まらない。その血は明日菜の制服を鮮紅色に染める。
「みんなは!?結界は解除出来なかったの?」
普通なら司令部に突入した真名たちの運命は言葉通り火を見るより明らかだ。だが、明日菜はあの炎の中に居るなど考えたくなかった。
「結界は解除出来なかった…。そして…全員死んだ」
だが、エヴァの声はその最悪の答えを肯定する。明日菜は全身から力が抜けていくのを感じた。
「気にするな、神楽坂明日菜。どうせお前が居ても居なくてもこの結果は変わらなかったさ…」
――マタ、タスケルコトガデキナカッタ…。マキチャンモ、イインチョモ、ソウダッタ。
セツナサンモ、タツミヤサンモ、チャチャマルサンモ、…ソシテ、エヴァチャンモ…。
「だから、お前が、気に病む必要は、ない…」
ワタシノセイダ…。ワタシガ…。
「おい聞いてるのか、神楽坂明日菜。私が、死んだら、私の首輪の星を取れ…。それで、お前は、生き残れるはずだ……」
ワタシノセイダ…。ワタシノセイダ…。ワタシノセイダ…。
「学園生活というのも、意外に悪くなかったな…。楽しかったぞ、神楽坂明日菜。お前達と一緒になってからの三年間が、最もな…」
ワタシノセイダ…ワタシノ…ワタシノ、ワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノワタシノ…。
エヴァの手がするりと明日菜の手の中から落ちる。
その時、明日菜の暗い記憶の中で何かの撃鉄がカチリと落ちる音がした。エヴァを地面に置くとフラリと立ち上がる。そして、炎上中の司令部を離れ、何処へ行く当てもなく明日菜は歩き始めた。
その首には星がむっつ埋まったままで…。
【エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(出席番号26番)死亡 残り7人】
【神楽坂明日菜(出席番号8番) 武器未所持 ☆むっつ】
#75 ファンタジア(幻想曲)
刹那達は笑って司令部から木乃香達の元に戻ってきた。
もうこのゲームは終わったと刹那の口から伝えられる。それに木乃香は笑い返して頷く。
この島にて色々な物を失った。けれど、まだ大丈夫。一番大事な物は、まだ大丈夫。
アスナがおって、エヴァちゃんや龍宮さんや茶々丸さんも。一緒に戻れるんや。一度は絶望した日常に再び戻れる。
なぁ、せっちゃん…そうなんやろ。
――それは悲しき夢幻。虚ろにして儚い幻だった。
「…嘘やッ!!」
あらん限りの声で木乃香は叫んだ。その前、爆炎のある方向は刹那の向かった兵舎の位置だった。
「嘘や、…嘘や…。せっちゃんがウチ残して死ぬわけあらへん!」
「木乃香さん…」
木乃香は脇目も振らずまだ負傷したままの足で炎の巻き上がる兵舎に行こうと立ち上がる。だが、途中でバランスを崩しその体は史伽に支えられる。
「せっちゃん……、せっちゃん……」
声を上げただ泣きじゃくった。木乃香の中に耐えようのない感情が自分の中から湧き上がる。こんな事なら刹那を無理にでも止めておけば良かった。
――そう、むざむざと刹那を死地に赴かせたのは自分だ。そんな妄想に取り付かれそうになった時、体中の毛が逆立つような錯覚を覚える。ふと木乃香の頭を誰かが触れたような気がした。
「えっ…!」
驚いて木乃香は顔を上げる。眼前には誰も居ない。居ない筈なのだ。
しかし、木乃香は確かにその時、刹那の気配を感じた。そして、自分に詫び、そして大切な事を伝えようとする刹那の幻聴が聞こえたのだ。
(お嬢様。守れなくてすみません。そしてどうか私が死んだ事を悲しまないで下さい)
「せっちゃん。ウチはこれからどないしたらええ…。ウチはせっちゃんみたいに強くおれん…。――ウチにはもう生きる目的なんかあらへんねや!」
幻影の刹那は悲しそうに目を細める。
(それは違います…。お嬢様は強い御方です、それこそ私なんかよりずっと…。それを思い出し、どうか強い意思を持ち続けて下さい…)
「え、それって……」
「――乃香さん!しっかりして下さい、木乃香さん!」
史伽の呼びかけにはっと木乃香は我に返る。
「大丈夫ですか、木乃香さん…」
「ん…あ…史伽?」
気付けば木乃香の両肩を史伽が掴んでいた。
「お願いです。木乃香さんまでどうにかなってしまったら、私…」
「…そっか。ごめんな、取り乱してもうて…。もう、大丈夫や…」
震える声でなんとかそう返した木乃香を史伽はじっと見つめる。
実際、木乃香が取り乱すのも無理もない。史伽ですら体中から湧き上がる感情を抑えるので必死だった。
「取り合えずどうしましょう、木乃香さん」
努めて冷静に史伽は木乃香に意見を求める。それに木乃香は暫し熟考する。やがて気付いたように口を開いた。
「……この場所移動しよっか。なんか嫌な感じがするんや」
木乃香は先程からこの洞窟に昨日までとは全く逆の悪寒を感じていた。それは何故かは知らない。だが、兵舎の炎が見え始めたあたりから一層と強くなってくるのを感じていた。
木乃香達は史伽に肩を貸してもらい、洞窟を出てその場を移動しようとする。だが丁度洞窟を出ていくらかしたその場所にそれを見下ろすようにふたつの影が立ち塞がった。その相手を見て史伽は戦慄を覚える。
「……そんな」
木乃香は足に負傷を負っている。それ故にまず相手から逃げるのは無理。だから、移動中に敵に遭うのは相手との交戦を意味している。だから、この相手と戦わねばならないだと頭の中で一瞬で史伽は理解していた。
二人の前に立ち塞がった相手は品定めするように木乃香と史伽を観察する。
「――お前ら今、移動しようとしていたな。まさか、お前らも星探知機を持ってて私達の動きを知って……。って偶然に決まってるか」
「……そうですね」
千雨とさよのコンビは次なる標的を木乃香と史伽に定めようとしていた。
【相坂さよ(出席番号1番) 星探知機、藁人形所持 ☆むっつ】
【近衛木乃香(出席番号13番) 催涙スプレー所持 ☆むっつ】
【鳴滝史伽(出席番号23番) 拳銃(グロック17)、サバイバルナイフ所持 ☆むっつ】
【長谷川千雨(出席番号25番) マシンガン(MAC M11(イングラム))、拳銃(ベレッタ M92)所持 ☆むっつ】
#76 コラール(衆賛歌)
「――あれ、何でお前が生きてるんだ?」
そこでやっと千雨は史伽の髪型の異常を認める。普通、風香の髪形をした史伽がそこに居るのを見れば誰だって混乱する筈だ。尤も、最初風香が殺された時にその場に居なかったさよには何の事か分からない。
「――私、双子の区別付かないんだよな。てっきり死んだのは姉の方だと思ってたぜ…」
だが、あっさり千雨は単なる自分の記憶違いだという事にして納得する。実際に死んだのは妹の方だと。
それで史伽の存在は千雨の中から消え失せ、目の前に居るのは風香という事になった。
「ま、どちらにせよ同じ事だ…。死んだのが姉だろうが妹だろうが、どうせここで死ぬんだからな!」
わずかな間に史伽の口内から僅かな水気も引き、喉がからからに乾く。息が詰まるとはこういう場面に使うのだろう。圧迫する胸が唾を飲む事さえ許さない。
史伽は肩を貸す木乃香を見る。いや、見た所でどうなる訳でもない。今のこの状況は逃れられぬ絶望的状況なのだ。
その時、ふと史伽は木乃香と目が合う。そしてその耳元、千雨に聞こえないよう囁いた。史伽は思わず目を見張る。
(……ウチが合図したら、全力で逃げるんや)
そして木乃香は千雨を睨む。それが、癪に障ったのか千雨は木乃香の健在な方の足に向かってマシンガンを数発打ち込んだ。
「うああぁあ!!」
悲痛な悲鳴が響き、木乃香はその場に座り込む。千雨はそれでいいという風に史伽達を見下ろした。
「悪いが、今から――お前らを殺す。幽霊になるのは勝手だが私を恨むんじゃねーぞ。そりゃオカド違いってもんだ」
そうして、千雨はマシンガンを今度は史伽に向ける。
史伽はもう一度木乃香を見た。だが、その木乃香は口内でブツブツと何かを呟いてるだけだった。
「じゃあ、シネ」
もう駄目だと思った。走馬灯のようにこの島での出来事が史伽の頭を駆ける。史伽は強く目を瞑った。
その時、軽い史伽の体が突き飛ばされ、宙に浮き上がる。その後ろは急勾配の下り坂だった。その下り坂を史伽は転げ落ちる。ようやくその下まで落ちた時、史伽はすぐ元居た場所を見上げる。
「振り返らず逃げるんや!史伽!!」
木乃香が叫んだ。そして、その直後連続したマシンガン特有の銃声が響いた。
それまで大人しかった木乃香が突然、史伽を突き飛ばした。それは千雨やさよにとって意外な出来事だった。
だが、実際にはそれで如何こうなる訳でも無い。その下り坂の前に立ち史伽を狙おうと思えば狙えるのだ。そう、千雨にとってまだ史伽を取り逃がしたわけではない。
木乃香はキッと千雨を睨む。その瞳の意思は強く、千雨でさえ一瞬圧倒される。それを打ち消すように千雨は木乃香にマシンガンの銃口を向けた。
「振り返らず逃げるんや!史伽!!」
逃がさない。逃がしてなるものか。鳴滝は絶対に殺す。それにはそう、まずは手始めにお前から死ね。
銃口から火花が散る。その直前、何かが木乃香の手から投げられた。それが何であったかは分からない。何故なら千雨がそれを判別する前にマシンガンの弾が直撃し、それは爆発したからだ。
「――な……」
爆発とともに白煙がもうもうと立ち込める。それは木乃香の所有する催涙スプレーだった。そうと知らない千雨は煙を吸い込み、目と鼻は強烈な激痛に襲われる。さよが千雨を心配する声が聞こえるがそれが余計に千雨を苛立たせた。
「クソォオォ!!」
千雨はやたらめったらにマシンガンを撃ちまくる。それは今装填してるマシンガンの残弾が無くなるまで続いた。丁度、弾切れに近づく頃、催涙スプレーの霧が薄く晴れ渡る。千雨は痛みを残す片目を無理矢理こじ開け前を見た。
体中に銃弾を受け、全身から血を流す木乃香が満足そうにそこに座って息絶えていた。
【近衛木乃香(出席番号13番)死亡 残り6人】
【相坂さよ(出席番号1番) 星探知機、藁人形所持 ☆ここのつ】
【鳴滝史伽(出席番号23番) 拳銃(グロック17)、サバイバルナイフ所持 ☆むっつ】
【長谷川千雨(出席番号25番) マシンガン(MAC M11(イングラム))、拳銃(ベレッタ M92)所持 ☆ここのつ】
#77 カノン(追想曲)
「…木乃香さん!」
泣きながら史伽は走った。刹那に自分は木乃香を守って欲しいと言われたのではなかったのか。
それに応えたのではなかったのか。だが、自分の足は止まらなかった。
「あうぅ!!」
木の根に引っかかって史伽はその場に転ぶ。膝小僧を擦りむき血が滲んだ。痛みは感じない。木乃香の受けた痛みがに比べればこんなもの大した事ではない。その場に立ち上がり史伽は再び走り始める。
自分が千雨に立ち向かっても無駄だという事が分かっていた。それは史伽の僅かな経験と直感。千雨は自分達の居場所を知っていた。つまり、何か場所を特定する武器を持っている事を意味する。故に奇襲の無意味さは悟っていた。
そして、自分と千雨の武器の間には埋められないほどの性能の差がある。自分が一発銃を発射する間、相手はその数倍の銃弾を自分の胸に打ち込むだろう。
ぐっと史伽は目を瞑る。それは怯えからでは無かった。木乃香の敵が討てないその自分の無力さが悔しかったのだ。
「くそっ!鳴滝の奴、逃げ足だけは速い…。おい相坂まだか!」
「待ってください〜」
イライラしながら千雨はさよを振り返る。
千雨たちは逃げた史伽に追いつく事が出来ずに居た。その理由はさよの鈍足と意外な史伽の足の速さが原因だった。千雨は歯軋りをする。まだ星は六個足りないのだ。それなのに絶好の殺す相手をミスミス逃がしてしまった。悔やんでも悔やみきれない。
(近衛の奴…)
今思えば木乃香を殺すのに容赦をするのではなかったと思う。だが、こうなった今、何を言ってももう遅い。
「長谷川さん。鳴滝さんとの距離は50メートル伸びて、さらに前方300メートルです」
「…もういい」
千雨はそうポツリと呟いた。え、とさよは聞き返す。
「他の殺す奴を探す。星を持っている奴でこの近くにどこか居ないのか」
「ええと…」
慌ててさよは自分の星探知機に目を落とす。千雨は早くしろと言わんばかりに黙ってさよを見た。
「…そうですね。――だいたい1キロ離れた所に一人います。星の数はむっつ。ゆっくりとですが移動してます」
そうか、と千雨は笑う。運が良い。先程の兵舎の爆発で木乃香と史伽以外の星の所有者は全滅したのではないかと危惧した。
だが、どうやらそれは杞憂のようだ。まだ星を奪う相手が残っているならいくらでも手段は取れる。
「行くぞ!相坂!そいつを殺し、このゲームを終える!」
「はい!」
千雨とさよは頷き合い、その星探知機に写る星影に向かって再び走り始めた。
【相坂さよ(出席番号1番) 星探知機、藁人形所持 ☆ここのつ】
【鳴滝史伽(出席番号23番) 拳銃(グロック17)、サバイバルナイフ所持 ☆むっつ】
【長谷川千雨(出席番号25番) マシンガン(MAC M11(イングラム))、拳銃(ベレッタ M92)所持 ☆ここのつ】
#78 キリエ(ミサのひとつ:求憐誦)
――主よ、あわれみたまえ。
――キリストよ、あわれみたまえ。
――主よ、あわれみたまえ。
「そろそろです。長谷川さん…星影、2時の方向に距離50メートル…」
さよは千雨に声をかける。そのさよと千雨はすでに星探知機に写る星にかなり接近していた。
それに千雨は頷いて更に加速する。
林から飛び出て脇を振り返る。そこにはエヴァの血を浴びた制服を身を纏う明日菜が居た。
その距離およそ5メートル。千雨の武器ならば十分射程距離内。外す可能性は微塵も無い。
明日菜は下を向いてふらふらと今にも倒れそうに立っている。その手に武器は持たず、その瞳は暗く澱んでいる。
だが、それに欠片も容赦はしない。躊躇いは後悔を生むだけだから。
「…悪いな、神楽坂」
千雨は明日菜にマシンガンの銃口を合わせる。明日菜の目が僅かに千雨に向けられる。
「アスナさーん!!」
千雨の左手奥で明日菜を呼ぶ声が聞こえた。
千雨は目だけを声のした方向に向ける。視界の端に二人の少女、夕映とキネが千雨達の方に駆けて来ているのが写った。だが、まだ彼女らの位置はまだ遠く、拳銃は千雨を射程内に捉えられる距離にない。
(ケッ、何だよ。アイツらも私の邪魔をするのか…。――それならついでに殺すか?神楽坂を殺した後に…)
そう余裕をみせながら、千雨は明日菜に目を戻す。
一瞬、千雨は自分の目を疑った。そこに居たはずの明日菜が居ない。目を離した隙に逃げられたのだろうか。
いや、目を離したといってもせいぜい一秒ほどだ。その一秒の間に明日菜は千雨の視界から消えていた。
「一体…」
言って寒気がした。気配ではない。もっと恐ろしい剥き出しの殺意、それは言わば生物としての死の恐怖。それを自分の背後で感じたのだ。
咄嗟に千雨は背を振り返り、自分の武器であるマシンガンをそれに向ける。
瞬間、千雨の視界が反転する。胸の痛みが背中まで届き跳ね返った。マシンガンだったものはふたつの鉄塊となり、持っていた右腕は在り得ない方向に歪曲する。
同時にやっと千雨は自分が居た場所を吹き飛ばされ、離れた木に打ち付けられている事に気が付いた。同時に口から大量の血を吐く。
「――がは…」
千雨は焦点の定まらない目でやっと明日菜を捉える。神楽坂明日菜は人間の力ではおおよそ振り回せなさそうな大刀を持っていた。その眼には相変わらず光は無い。
「千雨さん!!」
追いついたさよが千雨に叫ぶ。千雨は息を吐く事さえ困難だ。指一本動かそうとしただけで体中が悲鳴を上げるし、息をしようとすれば激しい痛みがその身を襲う。だが、千雨は無理を押してその痛みを圧殺し叫んだ。
「バカ野郎!さっさと逃げ…」
丁度その時、千雨の視界が録画したビデオのスローモーションのようにゆっくりと流れた。
叫ぶさよの後ろに人影が居る。その人物は明日菜。手にはさっき千雨を吹き飛ばした大刀がある。それを振り上げ斜めに袈裟切りに振り下ろす。
さよはそれに気が付かない。時間の静止した意識の世界で千雨はさよに叫び続けた。
ザ―ン…
「あ、れ…?わた、し……」
信じられないといった様子でさよは自分の体を見る。足の無いさよの上半身がちょうど綺麗にふたつに分かれていた。その切断面から崩壊が始まる。その大刀、ハマノツルギで切られた彼女の体が再び再生する事はない。
「――はせ、が…、わ、さん…」
さよは明日菜のハマノツルギ一振りで消滅した。
その向こう、明日菜の瞳は狂気に歪み、快楽に揺らいでいた。
【相坂さよ(出席番号1番)消滅 残り5人】
【神楽坂明日菜(出席番号8番) ハマノツルギ所持 ☆むっつ】
【長谷川千雨(出席番号25番) 拳銃(ベレッタ M92)所持 ☆ここのつ】
というわけで今日はここまで。ラスボスのバーサク明日菜、登場です。
一応本編の方は後一回で終了予定。
乙
ちょwwwwラスボス明日菜とかwwww
どうでもいいがタカミチ過去最高のフリだったな
乙
ちょwwwマジすかwwwアスナがラスボスとか完璧想定外www
超乙
さよが藁人形使って活躍すると思ってたのに、予想のはるか上を行かれたよwww
本編最後の投下、行きます。
#79 グロリア(ミサのひとつ:栄光頌)
――天のいと高きところには神に栄光、地には善意の人に平和あれ。
――われら主をほめ、主をたたえ、主をおがみ、主をあがめ、主の大いなる栄光のゆえに感謝し奉る。
――主のみ聖なり、主のみ王なり、主のみいと高し、イエス・キリストよ。
――聖霊とともに、父なる神の栄光のうちに、アーメン。
首輪がぽとりと落ちた。それは果たして誰の首輪であったか。
星探知機と藁人形がぽとりと落ちた。それは果たして誰の持ち物であったか。
「あ…相坂……」
信じる事が出来ない。奴は笑って自分に言ったではないか、無敵なんだと。例え、銃で撃たれたとしても、毒を盛られたしても、「刃物」で切りつけられたとしても、相坂さよは絶対に死なないと。
じゃあ、やっぱりおかしい。さよは消える筈は無い。それなのに…一体さよは何処に行ってしまったのか。
「ああー―!!」
千雨は叫ぶ。おかしな方向に曲がった右手から感じるのは痛みだけ。ならまともに動かせる左手を動かせ。
腰に挿したクーから奪った拳銃を抜き、一呼吸も置かずに放つ。だが、それは明日菜の手に持ったハマノツルギを僅かにかざすだけで捌かれた。
千雨は続けて銃弾を連射する。だが、それらすらも明日菜のハマノツルギに軽く動かすだけ照準が壊れた銃のように明日菜の体を外れる。
「ハァッ…ハァ……」
銃を撃ちつくした後、千雨は乱れる息を抑えられない。今更になって体中の痛覚が疼きその場にうずくまってしまう。その千雨を興味を無くした玩具を見るかの様に明日菜は詰まらなそうに瞳孔の開いた目で見つめる。
「…アスナさん!!」
ゆっくりと明日菜は首だけを声の方に傾ける。居るのはやっとそこまで駆けて来た夕映とキネ。明日菜の口元が緩んだ。
「一体どうしたですか!アスナさん!相坂さんに、一体何をしたです!」
夕映は厳しい口調で明日菜を問い詰める。だが、明日菜は何も答えない。光の無い瞳を夕映たちに向けながら無感情に笑うだけである。
嫌な何かを感じ取った夕映はすぐさま自身の銃を用意した。だが、それをキネが右手で制す。
「アスナさん…。どうして…ですか。どうしてこんな……」
キネは残念そうに目を細める。だが、その言葉は本当の明日菜に届いているのだろうか。
「アスナさん…私は貴女を殺さなくてはなりません。――それがタカミチに与えられた私の役目ですから」
キネが銃を抜くより先に明日菜は足を夕映のほうに一歩踏み込む。
瞬間、夕映は目を疑った。それは明日菜が消えたように見えたからだ。
「夕映さん!!」
キネの叫び声。キネの手が夕映の小さな体を突き飛ばす。
その頭上、いままで夕映の首があった場所を明日菜のハマノツルギが通り過ぎる。キネが夕映を突き飛ばすのが少しでも遅れていれば、今頃夕映の生首が宙を舞っていただろう。
「くっ……」
反射的に夕映も銃で反撃する。だが、その至近距離で撃った銃弾の軌道すら、明日菜の大刀は阻む。
(これは一体…)
怒気が明日菜の体中から漏れる。まさしく今の明日菜は鬼神の如き強さであった。
【綾瀬夕映(出席番号4番) 拳銃(ピースメーカー)所持 ☆やっつ】
【神楽坂明日菜(出席番号8番) ハマノツルギ所持 ☆むっつ】
【長谷川千雨(出席番号25番) 拳銃(ベレッタ M92)所持 ☆むっつ】
【キネ・スプリングフィールド 拳銃(トカレフTT-33)所持 ☆ここのつ】
#80 クレド(ミサのひとつ:信経)
――わたしは信じます。唯一の神、全能の父、天と地、見えるもの、見えないものすべてのものの造り主を。
――わたしは信じます。唯一の主イエス・キリストを。
――わたしは信じます。
――わたしは信じます。……。
「――はぁ、はぁッ…」
全力で疾駆してる為だろか。息が切れる。だが、それでもまだ足りないぐらいだ。
心臓は破裂する寸前。酸素をこれでもかと言うくらい無理矢理かきこみ、夕映は何とか明日菜からの切り払いを躱し続けていた。無理をしているのが自分でもよく分かる。しかし、それでも尚、明日菜とは歴然の差があった。
(――何故…)
考えながら明日菜のハマノツルギによる攻撃を紙一重で躱す。いや、躱すと言う言葉は正確ではない。あれはどちらかと言うと向こうが寸止めしていると言った方が正しい。
その証拠に初撃以降の斬撃を見れば、後一歩と言うところでその度に明日菜は踏み込みを停止する。その明日菜の目はまるでもっと自分を楽しませてくれと言っているようだった。
ハマノツルギという大刀を振り回す明日菜の力は一体何処から来ているのだろうか。
キネの言に頼るならこの島には魔力を封じる為の結界が張られているという。ならば、余計説明が付かない。夕映は攻防を続けながらその小さな頭の中はぐちゃぐちゃに混乱していた。
尤も、この時の夕映は明日菜の魔法体質の事を知らずにいたのだから理解出来ないのも仕方ない。明日菜はマジックキャンセル能力を使い、この結界下の島で一人だけ結界の効果を無力化していたのだ。
(このままではジリ貧です…何とかしないと……)
いい加減埒かんと感じ取ったキネと夕映は一旦明日菜と距離を取り、銃の弾の補充を開始する。明日菜はその間ハマノのツルギを振り回す手を止め、じっと二人を見つめていた。
「凄い…」
思わず息を呑む。交差する剣戟。放たれる銃弾はことごとく大刀によって捌かれる。
草むらに隠れた史伽は先程のから夕映とキネの二人が明日菜相手に苦戦を強いられる様子を静観していた。
千雨に対する思いはどうしたのかと言えば、その時の史伽からはちょうど木が影になり千雨の姿が視界に入らなかった。
いや、たとえ視界に入っていたとしても夕映とキネの明日菜との激戦と比べれば、果たしてどれ程の興味を引くものだろうか。
千雨からの逃走の途中、銃撃と叫び声を森の奥で聞きつけた史伽は一体何事かと様子を見に来た。するとこのキネたちの戦いに遭遇したのだ。
―キン
夕映とキネは互いに明日菜を取り囲むように周りを移動する。
だが、その戦法も所詮子供騙し。二人共、明日菜のスピードにはとてもではないが付いて行けて無いのが史伽の目からも分かった。それに焦る夕映は明日菜に対し、強気に攻める。
今、明日菜のスピードは尋常ではない。だが、それでも明日菜は全力を出していない。でなければ、二人がかりと言えども夕映もキネも一瞬で距離を詰められ切り伏せられる筈である。
史伽は自分の持っている銃を力強く握り締める。
乾いた笑みを浮かべ、キネに斬り付けようとする明日菜の顔。それが何故か史伽の脳裏にちらつく。
何処かで見た事がある。そう、あれは殺人鬼に堕ちた葉加瀬聡美。その明日菜の表情の本質はそれを更に濃く抽出した何かに酷似していた。思い出し、足がすくむ。
史伽が銃を撃った回数は現在までにものの二度。
一度目は刹那に向けて撃った物。その弾は刹那に当てるつもりはなく、経験にも当たらない。二度目はあやかに向けて撃った物。その銃弾はあやかの左背に命中した。その時のあやかの悲鳴は今でも耳について離れない。
震える手を抑えながら史伽はそっと目を閉じる。あの時の自分も手の震えは止まらなかった。理性を喪失してしまう恐怖が自分を襲った。だが、今は迷ってなど居られない。楓は遺言で史伽に言った。後で後悔はするな、と。
史伽は瞼を開ける。いつの間にか手の震えは引いていた。
明日菜までの距離はおよそ20メートル。史伽は自身の指を銃の引き金にそっと掛けた。
【綾瀬夕映(出席番号4番) 拳銃(ピースメーカー)所持 ☆むっつ】
【鳴滝史伽(出席番号23番) 拳銃(グロック17)、サバイバルナイフ所持 ☆むっつ】
#81 サンクトゥス(ミサのひとつ:三聖頌)
――聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、
――万軍の神なる主。
――主の栄光は天地に満つ。
――天のいと高きところにホザンナ。
――ほむべきかな、主の名によりて来たるもの。
――天のいと高きところにホザンナ。
意外にもその夕映達の膠着状態を破ったのは明日菜の後ろにいた千雨の咆哮であった。その左手には弾倉を交換した拳銃が握られている。
同時に夕映は目でキネに合図を送る。それはこれで決めるという合図。キネはそれに渋々ながらもそれに頷くしかなかった。
その三人の様子を見渡すと明日菜はニヤリと笑い、腰を低くしてハマノツルギを横に構える。
―ダン
明日菜が踏み込む足に力を込める瞬間、明日菜の足から血が吹き出す。その場にいる誰もが突然何が起こったのか理解出来なかった。明日菜でさえ一瞬自身の足の痛みに顔を歪める。
その銃撃は草陰に隠れた史伽からの物。だが、時の当事者、夕映、キネ、千雨はそれを知る由もない。ただ、三人は同時にそれが絶好の好機と受取ったのは確かだった。
千雨、夕映、キネの三者から一斉同時に銃弾が放たれる。
千雨のベレッタ。夕映のピースメーカー。キネのトカレフ。その三つの銃から放たれた銃弾の目標点はひとつ。大刀の殺戮者、神楽坂明日菜だ。
「――ア、アハハハ…」
その直前、初めて明日菜は声を出して笑った。まるで、面白可笑しくて堪らないという様に。
銃弾は明日菜の周りから別々に発射された。そう、たとえ刹那ほどの熟練者であったとしても、移動を封じられた状態でその三つを同時に捌くのは容易ではない。
ザ―…ン…
――だけど、一太刀。
明日菜がハマノツルギを一振りしただけで、その三つの銃弾はその周りの空間と同時に消滅した。夕映は呆気に取られる。なんという悪夢。
一方の明日菜は自身の足の怪我を見やり、徐々に憤怒の形相が現れる。足元に在った石を拾い上げると、史伽が居るであろう草陰に神速の速さでそれを振りかぶって投げつける。
「――あ…」
その鋭い速さの投石は、躱す余裕すら与えない。その石は真っ直ぐ史伽の額に命中する。その衝撃に仰け反り、意識を失った史伽は仰向けに倒れた。その割れた額からは溢れる鮮血の量は夥しい。
「――手前ェ!」
千雨が明日菜に向かって猪突に猛進する。同時に夕映はもう一度明日菜に銃口を定めた。
だが、夕映が銃を撃つより早く千雨は明日菜に到達する。
距離を取っての銃撃は無意味。それならもう取れる戦法はひとつ、回避不可能なゼロ距離からの射撃。それならどんな神憑り的な体術でも。いや、神秘の魔法でさえ止めるのは不可能だ。
銃を握る千雨の左手が明日菜のハマノツルギのリーチの内側に侵入する。だが、千雨の攻撃もそれで終わり。
ザン
「うあ…あ……」
ハマノツルギの一閃。千雨は呻く。その左肘から下が千切れ飛んでいた。
ついでとばかりに明日菜は振り回した反動を利用してハマノツルギを夕映に投げつける。その大刀は夕映に向かって一直線に飛び、昆虫採集の標本のように夕映の脇腹に深く突き刺さった。
続けて再び明日菜は千雨を見る。必死の獣はそれでも今尚、明日菜に抵抗を試みようとする。クルリと髪が舞う。
「…があァ!」
明日菜の回し蹴りが千雨の胴に決まり、折角詰めた距離を千雨はまた離れた位置まで吹き飛ばされる。
そうして明日菜は、最後はお前だと言うように身動きひとつ出来なかったキネを光彩の欠いた目で見下ろした。
【神楽坂明日菜(出席番号8番) ハマノツルギ所持 ☆むっつ】
【キネ・スプリングフィールド 拳銃(トカレフTT-33)所持 ☆ここのつ】
#82 アニュス・デイ(ミサのひとつ:神羔頌)
――神の子羊、
――世の罪を除きたもう主よ、われらをあわれみたまえ。
――神の子羊、
――世の罪を除きたもう主よ、われらをあわれみたまえ。
――神の子羊、
――世の罪を除きたもう主よ、われらに平安をあたえたまえ。
キネは生まれてこの方これ程の恐怖を感じたのは初めてであった。
別に死ぬのが怖いわけではない。そっちの方面の感覚はもうとっくに擦り切れている。
だけど、自分の好きになった相手が全く自分の知らぬ人になってしまう。それに自分の死より強力な畏怖を感じるのは彼女らしいとはいえ、なんとも幼き精神だった。
明日菜はキネに対し笑いかける。だが、そんな笑顔は偽物だ。明日菜の笑みはそんな引きつった低俗な物ではない。彼女の極上の微笑みは太陽より輝き、虹よりも美しく、そして雲より柔らかい。
果たしてこの島に来た明日菜が心から笑った事はあったのか。それをキネを見る機会はあったのか。それはさておき、キネは明日菜の笑顔ひとつをとり、今の明日菜を真っ向から否定する。
「あなたはアスナさんじゃない!アスナさんの筈が無い!」
明日菜は逆に侮蔑するようにキネを見た。その鋭き眼光は声を出さなくとも意思を伝える。
何を言う。お前こそ偽物。騙られるだけでも反吐が出る。
お前は一体なんだ。お前は……違う。お前はこの世界に必要とされない。
明日菜はアデアットと叫び、ハマノツルギを再び手にし構える。そしてキネに突進した。
キネが反応出来たのは初撃のみ。残りは斬撃はいずれもキネの皮膚を掠め取る。それでも、明日菜は全力でない。
キネはある場所に向かい走る。そこにあるのは相坂さよの首輪。そこに嵌る星の数は実にここのつ。カチリ、と音を立ててキネの首輪が外れる。キネは走りながらさよの首輪から星をみっつ拾い上げたのだ。
だが、それで何も変わらない。キネは気を使える状態にはなったが、ただそれだけ。別にキネは今の明日菜に勝てるほどの気の使い手というわけではない。
それでも何とか瞬動ぐらいは使えるようになる。
今一度説明しよう。もう遠距離からこの明日菜を倒すのは不可能である。そもそも近距離から発射した銃弾すら捌くその身のこなしを考えても出鱈目に撃っても当たる筈が無い。明日菜に銃弾を当てる方法は次のふたつ。
ひとつは史伽のように完全な不意を付く場合。もうひとつは千雨が試みたようにゼロ距離からの攻撃に賭ける場合。このどちらかしか方法は無い。だけど、すでに敵として認識されている以上そのどちらも不可能だ。
キネは明日菜から再び距離を取り、身構える。賭けに出るしかもう道はない。それが成功するかはどうでもいい。
そこで明日菜は構えたハマノツルギを降ろす。それは余裕か、それとも降参か。
キネは舌で唇を湿らすと自分の銃を持つ手を右から左に持ち変えた。
同時に右手を振るい、腰に隠し持っていた武器を投擲する。それは宮崎のどかの命を奪ったカッターナイフ。そのナイフをあっさりと明日菜はふたつに切り裂いた。
そこで明日菜は僅かに驚く。キネは同時に瞬動を使い、明日菜への距離を詰めようとしていた。それでも、あと少し届かない。
キネの伸ばした左腕が明日菜の大刀の振り下ろしによって切断される。それで明日菜は自身の勝利を確信した。これで全て終わりだと。
そう、切り飛ばしたキネの左腕の先に「何も握られていない事」を確認するまでは…。
「――――!」
なんて事。左手は囮(フェイク)だ。キネにとっての本命は右手。だが、もう振り下ろしたハマノツルギを残った右腕に切りつけるなんて時間的余裕は無い。
キネの右腕が明日菜に伸びる。キネの明日菜に突きつけた右腕から無情にもカチリと音がした。
「――あぁッ!!」
無理やり明日菜はハマノツルギを真横に払おうとする。だが、そんな事は無駄なはずだった。何故なら明日菜はカチリという音がした時点で死んでいるのだ。死んだ人間の意識が物を動かせるはずが無い。
――だから、これは幻覚。でも、その幻はなかなか明日菜の前から消えてくれない。
ポトリと明日菜の首輪が地に落ちる。当然その首輪には星が十二個埋まってる。
「――なんでよ…アンタ…」
明日菜は呟く。それは自分の体に抱きつくように腕を絡めていたキネに対してだ。
そのキネの体はハマノツルギの一閃により腰から下が存在していなかった。
#83 ララバイ(子守唄)
「――どうして、なんで!私の首輪が外れるのよッ!」
明日菜は地に向かって叫ぶ。
彼女は自分で星を嵌める事などしなかった。嵌めようと思えばエヴァが死んだ時に星をその首輪から取ればよかった。だが明日菜はそれすらしていない。
故に明日菜の首輪を外したのは明日菜ではない。ならば首輪に星を埋めたのは一体誰か。それは簡単な引き算、2−1=1。だけど、明日菜はそれを認める訳にはいかない。
「――嘘よ…だってアンタも私を殺そうとしたじゃない…。それなのに、どうして私なんかの首輪を外すのよ」
そう明日菜の首輪に最後に触れる事が出来た人物は一人。それは左腕を囮にして明日菜の首輪に接触出来たキネ・スプリングフィールド。だが、そのキネの体はもう明日菜のハマノツルギにより真横にぶった切られていた。
今のキネは右手でその半分になった軽い体を明日菜にしがみつかしているに過ぎない。
「答えなさいよ!どうして私なんか助けたのよ!」
「良かった…。いつものアスナさんです…」
「ちょっと…しっかりしなさいよ!」
明日菜はキネの肩を掴み揺する。いつの間にか明日菜の狂気は抜けつつあった。その時、ハマノツルギで斬られたキネの体はさよと同じように消失しようとしていた。
その時、ピクリと彼女は頭を擡げた。その眼光は明日菜だけをただ睨み付ける。そこで自分の意識がしばらくの間飛んでいた事を知った。彼女の精神の底で負の感情が蠢く。クッ、と彼女は息を漏らした。
「だって…アスナさん、首輪外そうとしないですから。私が星を埋めなきゃ、きっと首輪が爆発しちゃいますよ…」
「私の事なんか関係ないでしょ!なんで、こんな私のために命捨てるのよ!アンタバカよ!大馬鹿だわ!」
「そうですね…馬鹿なんですよ、きっと…」
「――死なないで、キネ…。アンタが死んだら私は…」
アイツはまだ生きているのか…。いや、そんな事はどうでもいい。
今更になってアイツは何を言っている。左腕の肘から下を切り取られた。右腕は依然として動かない。それを成したアイツが何故後悔の言葉を吐いている。酷い侮辱だ。
――あんな奴にアイサカは殺されたのか?
「アハ…、私の事、初めてキネって呼んでくれましたね……」
「そ、そうだっけ?」
「酷いなぁ自覚ないんだ…アスナさん」
ゆっくりと憎悪の虜になった彼女はさよの消えた場所に向かってゆっくりと這う。
殺ス。アイツはアイサカを殺した。私の左腕を奪ッタ。憎い。憎い。憎い。憎イ。憎イ。憎イ。
アイツに生きる価値など無い。だから、……殺ス。
「アスナさん…。私、アスナさんに出会えて、幸せでした…」
「キネ。もうあまり喋っちゃ…」
「いいんです…。どうせ…、もう、長くな…ん…ですから…」
その先にあるのはさよの残した藁人形。その藁人形の首には赤い糸が巻かれている。迷信、世迷い言、そんな事知った事じゃない。今の彼女は悪魔と魂の取引でさえ笑わない。
彼女は動かぬ右腕を藁人形の上に重しとして乗せて固定させ、血に染まる歯でその糸を噛んだ。
「アスナさん、さよう、なら。――そして、ありがとう…」
「――キネ…!しっかりして!キネッ!キネー…!!」
彼女は残された全ての力を注ぎ込み、思いっきり頭を後ろに振りかぶる。それと同時に彼女は意識は途絶えた。後に残されるのは紐の解かれた藁人形。
キネは消えていた。それに寄り添うようにしていた明日菜も手品のように消え失せる。だけどそれは姿を隠す魔法だとか転移魔法とかでは絶対無い。
明日菜が何処に行ったか。それを知るのは今は糸を解いた彼女のみである。
【キネ・スプリングフィールド 消失 残り4人】
【神楽坂明日菜(出席番号8番)行方不明 残り3人】
#84 フィナーレ(終曲)
夕映は痙攣する瞼をそっと開ける。
明日菜は視界には居ない。それを見て夕映は僅かであるが安堵した。と同時に唸り、流血が溢れる脇腹に目を移す。既に夕映の傷からは致死量に近い血液が流れ出ていた。
自分ももうそんなに持たないのかもしれない。
そんな風に考えていたものだから、目を覚ました時からずっとぼんやりと耳に届いている音を夕映は聞き過ごしていた。
そして、その音が近づき音の正体を視界で捉え、それを認識するまでに随分と時間が掛かったとしても、それは仕方のない事である。
夕映の力なく開けた目は怪訝そうにその発音物体を見る。
その草の高い平原。いつの間にかそこにヘリコプターが着陸しようとしていた。
(ヘリ…。こんな時に一体誰が……)
その思考を飲み込むように脱力が襲い。そこで夕映は深い闇の中に落ちた。
「――生存者確認作業完了しました。出席番号4番、綾瀬夕映。出席番号23番、鳴滝史伽。出席番号25番、長谷川千雨。以上、三名です。
その内、綾瀬夕映に関しては出血量が多く生死の危険があります。また、長谷川千雨はおそらく戦闘により左腕の肘より下を切断。右腕も重度の複雑骨折です。鳴滝史伽についても現在意識の確認が取れていません」
「うん…御苦労。取り合えず応急処置と輸血をして病院に運んでくれ。彼女らの処遇は追って通達するから…」
言ってタカミチ煙草を燻らせる。タカミチに報告を終えた兵士は敬礼をし、その場を離れる。兵士の確認を取ると三人を収容したヘリは空に飛び立つ。
(結局残ったのは三人だけか)
フー、と口から煙を吹く。
(――いや、それでも生き残りの居なかった例年に比べればいくらかまし…)
タカミチの瞳には愁いを帯びていた。
覚悟はあった筈である。最悪、誰も生き残らない可能性さえあったのだ。それに比べればどうという事は無い。…どうという事は無いのだ。
(すまないな…、僕に出来るのはこんな事だけで…)
タカミチは吸いかけの煙草を落とし足で踏み消す。
このクラスがバトルロワイアルに選ばれたのは国に選ばれた決定事項だった。それを覆す事は出来ない。
運が悪かったのだ。勿論、選ばれた方からすればそんな言葉で納得出来ないのは知っている。だが、このゲームは下らないながらもこの国の歴史であり厳式な慣例なのだ。
例えばある国では窃盗の罪を犯したしただけで死刑だとする。又、ある国では姦淫の罪を犯しただけで死刑になるとしよう。
だけど、その国では誰であろうともそれを非道だとか非情と言って責める事は出来ない。逆らう事は出来ない。
だから、もしそれをおかしいと言う人がいるとすれば、それはその国の住人ではなくきっと関係ない別の国の住人なのだろう。
変える権利も義務も興味も持ち合わせていない別の国の…。
それと同じ事。この世界においてBR法に逆える者は誰だろうと存在しない。それが、麻帆良一の使い手であるタカミチだとしても。
それに、たとえ自分がこのゲームの司会を降りたとしても、殺し合いは続行される事になるだけだ。自分とは違う別の誰かの手によって。
――タカミチはバトルロワイアルの司会進行役を自分から志願した。それがどのような思いに拠るものなのか、その胸中についてここで語る事は何も無い。
ただ、それを決心したのは紛れも無くタカミチ本人。それだけが事実である。
タカミチは丁度明日菜の消えたあたりの位置に足を進める。その足元に二枚に切られた「形代」が落ちていた。「形代」とは要するに人型の紙札の事である。
(――彼女には…少し悪い事をしたかなぁ)
タカミチはその場に屈みその二枚になった形代を拾い上げる。
自律型人形(ヒトガタ)。使用者の魔力を用い名前を書いた分身を作る魔法。原理的に言えばちびせつなと同じような物だ。そして、その左腕の欠けた形代には「キネ・スプリングフィールド」という震えた片仮名が記されていた。
【BR開催責任者(キネ・スプリングフィールド)死亡による中止】
【生存者 綾瀬夕映(出席番号4番)】
【生存者 鳴滝史伽(出席番号23番)】
【生存者 長谷川千雨(出席番号25番)】以上三名。
ネギまロワイヤル第十部 <完>
本編はこれで終わりです。
一日早いですが、
<あとがき>
去年の年末から始め、都合により一時中断していましたが再び書き始めて前スレ565にてやっと書き上げるという遅筆ぶり。
一応のヒロインは明日菜のつもりですが、書いてて一番面白かったのはあやかでした。
さよ、ザジ、キネに関してはそれぞれもう少し掘り下げた描写を入れたかったです。
では、後は明日のエピローグで終了予定です。が、自分で言うのも何ですがエピローグは少し蛇足的になってます。
気に入らなければそれらのエピローグは胸の中で無かった事にしてもらえると嬉しいです。
↓以下ネタバレしまくり。全て読み終えてから視聴してください。
http://rakuasa.sakura.ne.jp/NBR_mad2.html
乙!
個人的に衝撃だったのは、千雨タンが生き残ったことだなぁ
まさか乗った奴が生き残るとは………
乙
本編・MAD共に完成度の高さに感動しました
個人的な意見だけど今までで一番面白かった。
作者10さん乙
今までで一番救われない終わり方をした感じはするな。
だがそれがいいというか、MADを見てて泣くまではいかなかったが涙目になったよ。
とにかくGJでした!
ネギが形代に名前を書いたってこと?
ならネギも共犯?
何にせよ乙でした。
まとめの人どうしたのかな…
なんで人形がうごけたの?魔法とかつかえないんだよね?
では最後のエピローグを投下します。
#85−1 ポストリュード(後奏曲) for タカミチ
「高畑先生、荷物ですよ」
ズン、と地味目の包装紙に包まれた60センチ程の包みが見た目より重そうな音をたて、タカミチの前に置かれた。
「――ん、どうも…」
タカミチは礼を言おうと顔を上げた。だが、その前には誰もいない。キョロキョロと見渡すと荷物を置いたであろう瀬流彦はさっさと背を向けて自分の机に向かおうとするところだった。
(やれやれ…随分と嫌われたものだなぁ……)
煙草を取り出し、タカミチは苦笑する。
あのゲームが終わって、もう五日が経過した。新聞やTVでは例年のように今年のBRの結果を取り上げている。特に今年は島にある兵士数十名が全滅した事から政府の対応の不備が問われているそうだ。
尤も、タカミチは新聞やTVで取り上げるような事柄などに今更興味はない。何より彼はそのゲームの内容を最も把握していた人物なのだから。
この季節になるとワイドショーや政治向け番組でもバトルロワイヤルを人道性、有益性の観点から賛否両論を議論し合っている。
だけど、それは社会現象としてのそれだ。つまり、それは反米とか嫌煙家程度の意味合いでに過ぎない。誰も彼もバトルロワイヤル自体を無くせない事は重々に承知している。
そして、そういう意味では教職員は総じて反ロワ派が多い。
それも当然。誰が好き好んで自らの生徒たちを殺し合わせるだろうか。従ってタカミチが職員室の中にあって冷遇されるのも無理のない話だった。
(ま、贖うべき当然の報いか…)
そうしてタカミチは吸いかけの味のしない煙草を無理やり消す。彼はその道を自ら選んだ。だからその先に何があろうと後悔は無かった。
「――おや、この荷物、史伽君からか?珍しいな…」
そこでタカミチは初めて机の上に置かれた荷物の宛名の札に目を移す。
その送り主の名前の欄には確かに鳴滝史伽の文字が見える。
彼女は三日前に意識を取り戻したと言う話を聞いた。未だ意識すら取り戻さない夕映や千雨に比べれば額の傷は浅く、もうとっくに退院していてもいい筈だ。
そこでチラリとタカミチはネギの席を窺う。
タカミチの隣、呆けたようにネギは窓の外の景色を見つめていた。
#85−2 ポストリュード(後奏曲) for 千雨
静かに千雨は瞳を開けた。視界には白しか写らない。二、三度瞬きをして千雨はそれが天井の色だと知る。
(ここは……)
体を動かそうとして痛みを感じ、千雨は顔を歪めた。その痛みでここは病院の中なのだと千雨は悟る。そう言えば病院特有の薬臭い匂いが辺りに漂う。だとすれば自分はあの後、どうにかして島から無事帰還したという事だ。
視線を下げ左右の腕を見た。両腕は据え木に固定され何重にも包帯にぐるぐる巻きにされていた。千雨は軽く指を動かそうとしてみたが神経が切れているのか何の感覚も、痛みすら返ってこなかった。
千雨はすぐに鎮痛剤により痛みを押さえられていると知る。視界は未だ霞みがかったまま頭は重く、思考が思うように回らない。
それは休日の日に丸一日眠った後の鈍い感覚に似ている。とすれば自分は一体何日意識が無かったのだろう?
白くぼやけた天井を見ながら千雨はそんな事を考えていた。
千雨は病室を見渡す。病室はこじんまりした個室で丁度左手に採光用の窓があった。
窓の外の景色までは見る事は今は出来ないが、ひっそりしている病室は少なくとも都会の喧騒とは無縁の場所のように思える。
そして丁度千雨が窓の方を見ていた時、丁度反対側にある病室の扉が叩かれる音がした。だが、千雨を初めとして今そのノックに応える人物はこの病室には居ない。
やがて、それが先方にも伝わったのか、扉が開き一人の人物が病室に千雨の病室に入って来た。視界はまだ霞んだままなのでそいつの顔までは分からない。だが、服の色からその人物が麻帆良学園の制服を纏っていたのは分かった。
(誰だ…一体……)
千雨はそれを見て怪訝な顔をする。見舞いになど来る友人がいないのは千雨自身が一番良く知っていた。その人物は千雨の傍らに立ち千雨を見下ろす。
病室に入って未だに一言も話さないその侵入者に千雨は不審を抱いた。
千雨はもう一度目を瞬きをしてみて、俄かに目の霞が取れた千雨は、そこでようやくその人物の顔を認める。同時にその人物の口の端が上がった。千雨は驚いたように目を見開いてゆく。
――ドス、と何か鈍い音がした。
口に血が溢れる。千雨は自分の胸にゆっくりと目を移した。そこにはナイフが刺さっている。
病室に入って来た人物は千雨の胸にそのナイフを残し、背を向けてそのまま病室を去っていく。
「バカな…」
千雨は呻く。――アイツはあの島で死んだ筈だ。何故アイツが生きている…。
一人病室に残された千雨は狂ったように息を荒げ、目は白い天井を見つめる。
枕元にあるナースコールを押そうと、もがいた。だが、肝心の両手がまともに動かない千雨がどれ程努力しようがナースコールを押せる筈が無い。そうしてる内にもベットのシーツに千雨の血が滲みゆく。
何でだ…。もう、あの馬鹿げたゲームは終わった。だから、殺し合う必要なんかもうない。
――狂ってる、狂ってやがる。もう殺し合いは終わったんだ!!
そしてやはり、今年の生き残りの一人である長谷川千雨の必死になって伸ばす手が何かを掴む事は無かった。
#85−3 ポストリュード(後奏曲) for 史伽
史伽は図書館の椅子に腰掛け、その日の朝刊と前日の夕刊をいくつか取り出し眺めていた。
病院を退院してまだ三日目ではあったが怪我はもうすっかり良くなっている。姉の事に関しても未だに立ち直れていない史伽の両親達よりも力強いくらいだ。
その史伽は朝から図書館に来、昨日からの新聞を広げていた。勿論、家でも良かったのだが、なるべく落ち着いた場所で史伽は朝刊に詳しく書かれた"それ"を読みたかった。
それらの新聞にはどの一面にも巨大な文字で昨日起こった惨事を伝える文字が走る。
「戦後最悪の爆破テロ惨事」
「私立学園、職員室狙われる!」
「死者二十二名、負傷者五十四名。反バトルロワイヤル派の犯行か!?」
頭に巻かれた包帯が白い。史伽はその中の一枚を選び読む。
『昨日、午前十二時。S県麻帆良市の私立麻帆良学園中等部の教職員室で何者かによって送られた爆発物が爆発。教員生徒合わせ死者二十二名、重軽傷者合わせて五十四名の負傷者を出す戦後史上最悪の惨事となった。
現在のところ犯人からの声明は無し。インターネット上で無記名の犯行予告があったと言われているが、真偽の程は定かではない。
当時、職員室の中は昼休み中であった事が死者の増加に拍車をかけたと見られている。
又、学園のあるクラスは今年のバトルロワイヤルに選ばれたクラスであり、その反バトルロワイヤル派が制裁の為にこの学園を狙ったという話もある。
いずれにせよ警察では5000人体制で捜査本部を設置して捜査に乗り出す方針だ。
死者、××××さん(35)…』
史伽は途中の記事を少し割愛し、あるところで目を止めた。
『――…ネギ・スプリングフィールドさん(10)、――…高畑・T・タカミチさん(3×)――』
その他多くの名が連ねられている場所から二人の名の記入を見つける。それは事件の死者の欄。
それを確認して史伽は笑う。
タカミチがバトルロワイヤルの司会をやらざるを得ない状況であったのは知っている。だから、その罪に関しては彼を許そう。
だけど、ひとつだけ。ひとつだけ史伽にはそう出来そうにない事柄がある。
タカミチのたったひとつの唯一の罪。――それは鳴滝、「風香」を殺した事。
そうして記事を見つめ微笑む史伽の微笑は凍りつくほど恐ろしい笑みだった。
#85−4 ポストリュード(後奏曲) for 夕映
『胡蝶の夢』という言葉がある。
中国の何とかという思想家が見た夢の話だ。何でも、蝶の夢を見た自分が目が覚めた時、果たして自分が蝶であったのか人であったのかすぐに判らず戸惑ってしまったと云うらしい。
私はこの話を最初に聞いた時に吹き出してしまった。そんな事がある筈無いだろう。夢は夢だ。夢は決して現実には成り得ないのだから。
――その時の私は現実の世界に住んでいた。
「ゆえ、ゆえ…」
私の名を呼ぶ声が聞こえる。だけど私はその言葉を聞こえない振りをし、窓の外を見つめ続けた。それは私の母の声だった。だけど、その声も今の私には煩わしい雑音にしか聞こえない。
私はまるで聾唖者のように両親との交流を絶っていた。それをどうやら母は『事故』で殆どのクラスメイトを亡くしたショックから私が気が変になったものだと思っているらしく、その態度が私の口数をますます減らした。
母は悲しげに私を見つめると思い出したように持って来た鞄の中を漁る。私は何かと目をそっと向けた。
「今日はゆえに言われた物を持ってきたのよ」
かいがいしく母はそう言って病室のベットに起きている私の膝元に本を置く。
それは一冊のS県のタウンガイドだった。
――ああ、それか。母に頼んでいた事を思い出した私はそれを手に取りゆっくりと表紙を開く。大抵のタウンガイドといえば何処かに何かしらの詳しい地図が載っている。
私はひとつ調べたい事があった。
生死の境を彷徨い病室のベットで目が覚めた時、私は現実世界ではない異世界に迷い込んでいた。
だが、その世界はあまりに私の居た世界とそっくりで最初はそれに気付く事は無かった。実際にその世界が異世界である事に気付いたのは目覚めてから一週間ほどした後の事だ。
最初の違和感は私のクラスメイト達が『事故』で死んだ事になっている事。あの凄惨なゲームの事を口にすれば変な顔をされる。それを問い詰め、私はこの世界と現実世界との剥離にようやく気が付いた。
成る程、その時の両親や主治医に対する抑えきれない言動は酷いものであったかもしれない。結果、私は同じ病棟の精神カウンセラーを付けられる事になったのだから。
私はタウンガイドのページを捲る。何度も何度も同じページを見つめる。だけど、そこには何も存在しない。
――麻帆良市も、麻帆良学園も、図書館島も、世界樹も。
それは両親や主治医が言った言葉通り。どうしてかこの世界には麻帆良市という学園都市など存在しなかった。
そして、それと同様にバトルロワイヤルと言う馬鹿げたゲームも。
「ハハハ、アハハハハ……」
狂気の笑いが止まらない。母は顔を蒼ざめさせ、私が一層気が狂ってしまったのかと言わんばかりに動揺する。
だが、そんな事は気にならない。気が狂ってしまえた方が楽だった。
白い病室、その中から私の高らかな笑い声が季節外れの蝉に負けず大きく響いていた。
夢なのだ。さっき私は夢は決して現実には成り得ないと一蹴した。
だけど、きっとこの現実は夢なのだ。あのゲームが終わり、生死の間を彷徨う私が見る長く悲しい夢。
ああ、そうだ、きっと、そうに、違いない。
ダ・カーポ(D.C.)『「頭から」の意』
完。
どう見てもBADENDです。本当にありがとうございました。
>141
自分の説明不足ですね。
読者様の方で補間していただけると幸いです。
>142
つヒント:茶々丸。
連載終了乙でした。GJ!
マトモな生存者無しとはものすごいバッドエンドでした
GJ!!!
マジですごかったと思う。面白かった。
ここまでBADだと逆にいいな
キネ関連だけがよくわからなかった。俺の読み方が悪かったのかもしれんが
直接参加するのがいやだったネギが間接的に参加するためにやったってこと?
乙でした!
俺もBAD ENDやろうかと思ってたけど、先にやられちまったなぁ……
でも夕映のBAD ENDはホント秀逸だと思う
GJ
今更ながら投下前のMADを見てみた。
・・・どのシーンがどのシーンかちゃんと想像できるようになってるのな。
最後の木乃香と刹那のシーンとかちょっと感動したよ。
GJでした!
今度ネカフェからMAD見るつもりなんだが、まとめの方にあげられてる?
まとめからリンク張られてる。
>>158 d
しかし平行世界もBAD ENDも出て、この先被らない展開やるの難しいぞぉ……
けっこういたもんな、予約してた香具師
作者10氏、本当にお疲れ様でした。
練成された予展開もさることながら、投下のミス(誤字等)の少なさに驚きました。
よく推敲されていた証拠ですね。
次回作ですが、まだ30%しかできてません。
挿絵はとりあえず入れようと思います。
今までのネギロワとは違う作品になると思います。
長文スマソ
作者10氏GJ!!
あなたの作品は私のお気に入りに追加されますた。
司書さん激しく期待してます。
作者10氏、乙でした!BADENDなのに読後感が悪くないのは
納得いかない部分が無かったからですな。GJ!
さて、次の作者は作者6氏なのか司書氏なのか、はたまた他の作者さんが現れるのか・・・wktk
今書き途中の人は何人いる?
ノ
ノ
被ったネタ修正したりでまだまだかかりそうだが
私は現在執筆中。
今のところ全体の45%って所です。
ノシ
俺は30%ってとこか
ついでに予約しとく
けっこういるね。俺も予約するわ
もしかしてあと推敲のみの香具師っていないのか
ノ(遅
俺は20%くらいしか出来てないが一応予約
この分だと俺に回ってくる頃には終わってる・・はず
予約するときは予約する時点でコテつけといた方があとでモメにくいぞ。
予約って名乗り出たときの優先順位にかわりつつあるな
予約した後に出てこなくなった人が多いからな・・・
タイミング逃して出てくるのが難しくなったのかな。
多分、昔の予約を元に出てきても誰も文句言わないと思うから気軽に出てきてほしいものだが。
このスレ、ハードル高けーよ
確かに作者1とかレベル高かったもんなぁ……
そろそろネタも出尽くしてきてるから余計投下し辛いのかもな。
作者のレベルの高さというより
読者の口の悪さだろ?
死ぬシーンや遭遇シーンはかぶりそうになるからね……
現に俺も被りまくったからorz
作者9氏の一件で気軽に投下しづらくなった気もする
あ、予約ついでに
>>169の言うように鳥つけとく
ま、9氏もあれだけ言われながら全部投下してある意味偉かったな
途中で投げ出すのが一番いけないと彼は教えてくれた
のか?
1部〜10部生存率ランキング 矢印の横の数字は前スレ533-536での順位。
※数字は終了したエンドのみで計算した生存率。 順位は未完のルートも含めた順位
※1部は1ルートにつき4分の1で計算 3部・8部は1ルートにつき2分の1で計算。 8部Exは独立した部として計算。
※8部亜子の超、8部Exの朝倉、超、千雨は生存判定、10部の千雨は死亡判定で計算しています。作者から何かあれば修正させていただきます。
1位 1→桜咲刹那 47.7% 刹那 2BAD 3改訂 4アキラ 7 9
2位 4↑龍宮真名 40.9% 2BAD 3改訂 5 亜子Ex
3位 2↓近衛木乃香 38.6% 刹那 2BAD 3改訂 5 6
5↑長谷川千雨 38.6% 千雨 2BAD 5 8亜子Ex
5位 3→明石裕奈 34.1% 1 古菲刹那 2BAD 3 7 亜子
6位 9↓朝倉和美 31.8% 2 3改訂 8 Ex
7位 6↓神楽坂明日菜 27.3% 2BAD 3改訂 9
11↑早乙女ハルナ 27.3% 3 4アキラ 8 Ex
11↑鳴滝史伽 27.3% 4アキラ 5 10
10位 14↑大河内アキラ .25.0% 刹那 2BAD アキラ 8 Ex
11位 7↓釘宮円 22.7% 3 7 9
12位 17↑和泉亜子 22.7% 2BAD 亜子Ex
13位 8↓那波千鶴 22.7% 2BAD 3 4アキラ
14位 10↑長瀬楓 20.5% 古菲 2BAD 3改訂
15位 20↓超鈴音 18.2% 3 亜子Ex
16位 21↑綾瀬夕映 18.2% 2BAD 10
17位 13↓古菲 18.2% 1 古菲 3 4
18位 14↓宮崎のどか 15.9% 1 2BAD 3 アキラ
19位 16↓雪広あやか 15.9% 刹那 7 亜子
20位 24↑村上夏美 13.6% 8 Ex
21位 18↓エヴァ 11.4% 刹那 BAD 3改訂
22位 19↓春日美空 *9.1% 3改訂 アキラ
23位 27↑葉加瀬聡美 *9.1% Ex
24位 21↓佐々木まき絵 *9.1% 4アキラ
21↓四葉五月 *9.1% 4アキラ
26位 24↓絡繰茶々丸 *4.5% BAD 3
27位 26↓柿崎美砂 *2.3% 1
28位 27↓鳴滝風香 *0.0%
27↓椎名桜子 *0.0%
27↓ザジ *0.0%
−位 相坂さよ --.-%
大分長くなってきたので、1部2部の部の文字を削除しました。
生存率0%から葉加瀬が抜けて残り3人。
双子の差が大分酷くなってきました。何が2人の生死をここまで分けるのか・・・
平均遭遇人数です。 死体発見の場合や、相手が誰かわかる前に攻撃して逃げた場合でもカウントしています。()の中身は生存率での順位です。
会ったと言えるかどうか微妙なところがかなりあるので、他の人が集計したら結果が違ってくると思います。
助けがきたりした場合等で集合した後の場合、死者のみノーカウント
8部Exはどれまでを遭遇ととるか難しかったのでノーカウント。
1位 ( 1) 桜咲刹那 10.83人 16位 (22) 春日美空 6.15人
2位 ( 2) 龍宮真名 9.98人 17位 ( 7) 早乙女ハルナ 6.00人
3位 ( 3) 長谷川千雨 9.40人 18位 (13) 那波千鶴 5.90人
4位 ( 5) 明石裕奈 9.83人 19位 (28) 椎名桜子 5.50人
5位 (10) 大河内アキラ 8.60人 20位 (16) 綾瀬夕映 5.30人
6位 (15) 超鈴音 8.40人 21位 (19) 雪広あやか 4.70人
7位 ( 7) 神楽坂明日菜 8.08人 22位 ( 7) 鳴滝史伽 4.60人
8位 (26) 絡繰茶々丸 7.65人 23位 (17) 古菲 4.35人
(18) 宮崎のどか 7.65人 24位 (23) 葉加瀬聡美 4.00人
10位( 3) 近衛木乃香 7.53人 (20) 村上夏美 4.00人
11位(12) 和泉亜子 7.45人 (28) ザジ 4.00人
12位(14) 長瀬楓 7.08人 27位 (24) 佐々木まき絵 3.90人
13位( 6) 朝倉和美 7.05人 (24) 四葉五月 3.90人
14位 (11) 釘宮円 6.60人 29位 (27) 柿崎美砂 3.45人
15位 (21) エヴァ 6.50人 30位 (―) 相坂さよ 3.40人
31位 (28) 鳴滝風香 2.80人
遭遇率の高い組み合わせ
90% 近衛木乃香-桜咲刹那
80%絡繰茶々丸-エヴァ/鳴滝風香-鳴滝史伽
75%明石裕奈-大河内アキラ/明石裕奈-釘宮円/神楽坂明日菜-絡繰茶々丸
それにしても何で裕奈-円の遭遇率は高いんでしょうか。
乙。
裕奈の方が千雨より遭遇人数多くなってるけど多分8.83人が正しいのかな。
あ、こちらのミスです。ご指摘の通り8.83人の方が正しいです。
定期age
乙!
裕奈-円は確かに不思議
別に某スレで流行ってるわけでもないし……
双子の差もだけど、個人的に運動部とまき絵も不思議
仮にもネギプリで好成績納めてて、原作で運動部の中じゃ一番出番もあるのに遭遇率やら生存率やたら低い気がw
やっぱおバカで発狂率がわりと高いからかな?
書き終わった作者が現れるまではネギロワの考察でもしてお茶を濁すか。
短編カモォン
双子の差って保護欲が他キャラがもてるかどうかだと思う。
のどか、史伽、木乃香は戦闘力がないけど生き残ったり、美味しいとこ持っていくのは。
姫属性なのかなと思う。
木乃香の場合は刹那という「騎士」がいるけど。
のどか、史伽は遭遇した相手を「騎士」にしてしまうのだよね。
しかもそんなに親しくないクラスメイトでも「騎士」になるのだから。
日頃の行いなのかな……。
>>188 たいてい風香は史伽を守るしな
まぁ、刹那と違って時間稼ぎか足止め程度のことしかできない騎士って感じだが
5 名前: 颯太 [sage] 投稿日: 2006/03/27(月) 15:38:32 ID:???
さっき放送が入った。
さっきの放送によると、今生き残っている人は、プログラムを潰そうと考えて集まっている人たちだけらしい。
お嬢様はいまだに誰ともあっていないが、お嬢様は人を殺さない知っている。
あんなにやさしいお嬢様だ。人を殺すわけが無い。
そして今、私は未だ誰とも会ってないお嬢様を探しているところだ。
プログラムを潰す時、みんなで一緒に居たほうが何かと作戦が打ちやすいし。
何より、自分が守りたいから…。
バラララララララララララララララララッ
草が飛び散り、周りの木々が揺れる。
すさまじい音とともにヘリコプターが目の前に下りてきた。
ヘリコプターから出て来たのはこのゲームの首謀者、新田だ。
「みんな固まってこの楽しいゲームを潰そうと企んでんだって?」
顔が引き締まる。そらそうだ。目の前に居るこいつこそが、クラスメイトが殺し合うように仕向けたんだから。
日本刀を握る手の力が強くなる。
「いやさぁ、いっその事ルール変えようかって事になった訳ね。だからちょっと来てほしいかなって」
新田は悪びれる様子もなくからかうように言う。
そうだ、こいつを殺せば戦いは終わるんだ。
こいつを殺せばみんなの仇、とれるんだ。
私は新田に斬りかかろうとした、が……
「あぁそうそう。このボタンを押せば、大事な大事な近衛の首輪が爆発するんだったんだなぁ」
手に握っている、小さなあのボタン。
あのボタンを押すのに新田は一秒もかからない。
そんな状態では私が新田を殺すことは無理だ。
「ほら、その日本刀をそこにおいて、早くこれに乗りなさい」
音も無く落ちる日本刀と、ヘリに乗る私。
6 名前: 颯太 [sage] 投稿日: 2006/03/27(月) 15:39:50 ID:???
目の前が潤んできた。そう、新田が殺せない自分に泣いたんだ。
守るって決めたんじゃなかったのか?
だから今まで、私のすべてをかけて剣を振っていたんじゃなかったのか?
自分に問いかける。
強く手を握って下を向く。血が出てきたのなんてかまやしない。
「さぁ着いた」
ヘリから外を見ると、そこにあったのは皆が集まっていた場所、病院だ。
そこの横にあるのは………檻だ。
さっきお嬢様を探しに行ったとき、見送ってくださった人たちが入っている檻だ。
「皆に何をした!」
「そう焦るな。君が私の言うとおりにすれば皆助かる」
「そおいう問題じゃ…!」
周りに居る兵に腕をつかまれた。
無理やりヘリから私を追い出す。
「いいから病院に入れ、お前を待ってるやつが居る」
兵の手を払うと、私は病院の中に入っていった。
新田のいうことを聴いてやろうじゃないか。それで皆が助かるなら。
この中に何が待ち構えていようとも。
7 名前: 颯太 [sage] 投稿日: 2006/03/27(月) 15:41:32 ID:???
「コロスコロスコロスコロスコロスコロス!」
あぁ、私が見間違える分けない。
でも、今日だけでも見間違えてほしい。
「おじょう……さま…?」
手に血のついたナイフを持っている私のとても大切な人。
あ、こっち向いた。
お嬢様、知ってらっしゃってますか?顔に血がいっぱい付いてるって事を……
お嬢様のきれいな顔が、汚れてしまっているんですよ?
「コロスコロスコロスコロス」
なんですか、その呪文は……
そんな呪文では誰も死にませんよ?
「お嬢様……」
私はお嬢様を抱きしめる。
グサッ
刺されるなんて思ってもみなかった、かも。
あぁ、何でこんなにも血って暖かいのかな。
「コロスコロスコロス」
あっやば、また刺すきだわ。
これはやばい。
「えー、マイクテスト、あーあーあー。ん、いけてるな」
何だこの放送。私は今結構取り込んでいるんだが。
「えーっと、言うの忘れてたがお前には近衛を殺してほしい」
え、何だって?
こっち取り込んでるんだけど、もしかしてそれ以上大変な事言わなかったか?
「お前が死ねば、このおりに居るやつが死ぬ。お前が勝てばこいつらと一緒に家に帰してやろう」
8 名前: 颯太 [sage] 投稿日: 2006/03/27(月) 15:42:55 ID:???
私がお嬢様を殺せって?
ふざけるな。冗談きついぞ。
どっちかって言うと、逆に私がお嬢様に殺されそうなんだが?
「ついでに言っとくと、近衛が狂ってるのは私の所為だ。目の前で学園長殺したり、いろんな事やっているとこうなった」
あぁ、お前らがやったのか。口から『コロス』しか言わないように。
あんなにキュートなお嬢様をこんなふうにしたのは……。
「お前が居るその広場に、お前の夕凪あるから。それで殺してやってくれ」
いや、まじでもうお嬢様に殺されちまおうか、皆が死のうが関係ない。
生きる気力もないし………
「刹那さん!私たち、刹那さんが木乃香の事殺せないって分かってる。刹那さんがやろうとしている事、私たち、何も言わないから!」
「明日菜…さん?」
やばいやばい。マジで今、私ヤバくなってなかったか?
私の手に何人もの命かかってるのに、何が死んでもいいだ。ふざけてる場合じゃなかった。
「コロスコロスコロスコロス」
くそ、お嬢様は未だに可笑しくなっている。
「お嬢様、きを持ってください。私と一緒に帰りましょう。学園長が居なくても、まだお嬢様には仲間が居ます。だから…」
バシュッ
うわ!頬かすった。お嬢様こんなにすばしっこかったか?
9 名前: 颯太 [sage] 投稿日: 2006/03/27(月) 15:44:13 ID:???
あ、あった夕凪。お嬢様の向こう岸におありになってる。
しかしあれをとって攻撃を流すでもしないと、私マジで死ぬ。
結構出血もしてるみたいだし…
「コロスコロスコロスコロスコロスコロス!」
お嬢様が大振りで斬りかかって来た。
今がチャンス!
私はお嬢様の脇を通り、すかさず夕凪をとる。
私はお嬢様を…
続かない。
個人的には茶々丸の生存率の低さも気になるな。
2部はBADが未完でまだ死んでいないが、狂い掛けた(プログラムがバグった)状態になってるから死ぬ可能性のが高いだろうし
3部も改訂版では死んでるから生存率0%にかなり近い状態だし。
>>195 茶々丸はプログラムいじって狂わせられるからかなぁ
龍宮・千雨と並ぶマーダーキャラな印象すらある
確かにプログラムいじられて狂うことが多いな。
後、首輪解除しようとして失敗して爆破のパターンもわりと多いか。
マーダー化含めて発狂してないキャラっていたっけ。
木乃香は9部、明日菜10部できちゃったからなぁ。
エヴァって元々の性格考えると発狂といえるのはなかったかな。
マーダー化してもそれでノーマルって感じだし。
マーダー化を発狂と含めると……誰だろ
史伽も10部でなったし……
さっちゃんも確か毒盛ったことがあった気がするし……
みんな一度は狂ったんじゃね?
エヴァと龍宮、あと千雨と超はマーダー化してもそこまで違和感はなかったなぁ
無論味方でも違和感無いが
連投ごめん
さっき書き込んでから気付いたけど、朝倉は狂ってなかったかと
優しさのせいで狂った奴にやられてるイメージがあるせいかもしれんが
ところで、今書いてる作者の完成度と投下可能時期が気になった。
なんかみんな同じ時期に完成する悪感
この前30%と言ったが、どうやら20%くらいのようだ
まだ4人しか居なくなってないし
ちなみに作業は遅いのでいつになるか分からん
俺もまだ6人しか消えてないうえに丸被りしたとこ変えなきゃならんからまだまだかかるわ
確か40%の香具師いたよな
……いっそ先短編つくって投下すっかなぁ
自分は今11人死んだから単純計算で後三分の二かな
しかし3ヶ月かかってこれだし、受験も迎えるので完成できるかわからない
よって予約はまだしません
理由違うけどいいんちょ狂うところとかもろ被りだし
全体の完成度もまだまだなんで最後だと思うが予約しとく
>>206 トリップは名前欄に
#(適当な文字)
でできるぞ。
>>206>>207 すっげ!四角の部分って白いトリもあるんだ!
そう思ったのは俺だけですかそうですかorz
>>208 トリップやおみくじなど名前欄で使える特殊なものは
表示された時、細字になるので覚えておくと良い
>>209 なるほど、d
覚えておこう………いつかPC買う日のために
馬鹿ばっかりだ
次の作者マダー?(・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
作者が書きあがるの、まだまだ先のような希ガス
推敲のみだと言った輩は今いずこ
死亡順位ランキング ()内の数字は生存率の順位。
死んだときは残り○○人の○○、生存は0で計算。
EX8は開始後(残り11名より後)の部分のみ集計。
どちらが先に死んだか判別できない時は間の値で計算。
さよは一応10部のみ集計対象ですが、1位になってしまうので参考記録扱い。
1位 ( 1) 桜咲刹那 4.275 16位( 7) 早乙女ハルナ 13.659
2位 ( 3) 長谷川千雨 5.477 17位(12) 和泉亜子 13.682
3位 ( 7) 神楽坂明日菜 6.125 18位( 7) 鳴滝史伽 14.350
4位 ( 3) 近衛木乃香 7.700 19位(23) 葉加瀬聡美 15.636
5位 ( 2) 龍宮真名 8.795 20位(13) 那波千鶴 15.750
6位 (10) 大河内アキラ 9.023 21位(17) 古菲 16.450
7位 ( 5) 明石裕奈 10.023 22位(19) 雪広あやか 16.795
8位 (18) 宮崎のどか 10.025 23位(28) ザジ 16.800
9位 (14) 長瀬楓 10.725 24位(16) 綾瀬夕映 17.000
10位(21) エヴァ 11.175 25位(20) 村上夏美 18.773
11位(15) 超鈴音 11.727
26位(24) 佐々木まき絵 18.775
12位(22) 春日美空 12.050 27位(24) 四葉五月 20.150
13位(11) 釘宮円 12.350 28位(28) 鳴滝風香 20.550
14位( 6) 朝倉和美 12.591 29位(27) 柿崎美砂 20.650
15位(26) 絡繰茶々丸 12.925 30位(28) 椎名桜子 21.150
−位(−) 相坂さよ 4.000
すみません、途中で改行が入ってしまいました。
保守age
ここでリレー小説を提案してみる。
今すぐ投下できる作者いないようだし。
リレーやって収集付くのか?
もしも収拾つかなくなっても、次の作者までの繋ぎだからいつ終わってもいい程度でもいいんじゃないかと個人的に思う。
うまく盛り上がったらそのまま完結まで繋げればいいし。
同意。試験的に適当やればいいんじゃね?な感じ。
ただ荒れないか不安ではあるが。
次の作者が投下するまでの繋ぎにと
0部みたいなノリの教師版バトロワ書いてたんだが
長文駄文で収集つかなくなったので破棄した…orz
リレーには賛成派かな
リレーなんかやったら最後につれて
ますます荒れそうな悪寒。
「○○のせいでつまらなくなった」とか。
ここのギャラリー、ザジちう以下だしなあ、、、、、、。
万が一荒れても、次の作者が投下する頃にはあまり荒れなくなってると思うが・・・
9部作者の時も批判意見が多くて大分荒れてるように見えた時期もあったが
その次の部になったらすぐに収まったし。
あと、他のスレと比べるのもどうかと思う。こっちのスレにも比較対象にもいい影響与えないんじゃないかな。
どんなものでも上には上が、下には下がいるんだし
まぁ、完成した作者がいればそっち優先した方がいいことに異論はないけどな。
んじゃやってみようぜ。
リレーってことはまず書き手を決めなくてはならぬ
・ルールは基本ルール(最後の一人)
・黒幕はタカミチ
・書き手はトリを必ずつけること
ぐらいか?開始前に決めることは
あまりリレー小説系のロワスレに参加したことがないんで、さっぱり
慣れてる人がいたらできれば指揮をとってもらいたいな
>>230 たいていマップ決めにアホみたいに時間取られる
流れをぶった切りスマン。
短編書き逃げ。
幾度と無く、繰り返される惨劇。
しかし、いまは束の間の休息期間、また暫くすれば新しいゲームが始まる。
でもその事実を知る者はいない…、ただ一人を除いては…。
首がない無惨な死体、その死体の指が動いた。
その死体はまるで何事も無かったように立ち上がる。
そして映像の逆再生のように傷がふさがり失った体の部分が再生されていく。
完全に再生され五体満足の人間になった元死体は笑みを浮かべて呟く。
「あーあ、今回も思うとおりに行かなかったネ」
その元死体は出席番号19番 超鈴音。究極超人、最強頭脳と言われた少女だった。
「また一からやり直しネ、次こそは終われるといいネ。」
笑みを浮かべつつも残念そうな表情を浮かべる。
「次の世界はどんな世界になるか楽しみネ」
「ああ、次の世界はもっともっと素晴らしい世界になるネ。」
「ああ、次の次の世界はもっともっともっと素晴らしい世界になるネ。」
「ああ、次の次の次の世界はもっともっともっともっと素晴らしい世界になるネ。」
狂っているのか願望なのか分からない超の言葉が続く。
「……。」
「!!」
超はなにか声が聞こえ、語るのをやめる。そして耳を澄ます。
声は複数あり複数の人間が言っているようだ。
「次こそは」
「次は必ず、私は」
「生き残る…」
超は声の主達が誰であるか分かった。
「『次こそは』か」
「フフっ、面白いネ。貴方達の命、取り返してみるネ。」
超はその言葉を聞くと再び時が動き出すのを知った。ゲーム開始の予兆である。
「さて、私も参加しつつ物語を見させてもらうヨ。」
そういうと超の体を黒い霧が包み込み、見えなくなっていった。
そしてまた始まる暗黒な惨劇。
<終>
マップは普通に住人追い出したどっかの孤島でいいんじゃね
特に決める必要ないと思うが
繋ぎなんだし適当にさ
殺人鬼スネ夫みたいなノリでいいのか?
グダグダになるだけだからやめときなよ
まぁ、別にリレーにせんでも短編投下すりゃいい話だからな
リレーだといろいろ縛りが出るからなぁ
俺みたいに文章力に自身の無い香具師が練習がてら気軽に短編投下するのも有り、作者がボツにした話を投下するのも有りといった自由な方向性のがいいかもね
お題:刹那発狂
で誰か書いてみ
>>232 GJ
なんかもう超は悪役のイメージがこびりついてるなwww
>>239 それ次からテンプレに入れた方が良さそうだね
保守
短編でも本編でも誰か投下してくれないかね。
リレーも話が止まってるし。
>>242 文章能力無いくせに即興で書いてみた
何かアドバイスか批判くれたら嬉しい
いちお
>>238のお題にそったつもり
百合色強いから苦手な人は注意
244 :
1/3:2006/05/12(金) 00:20:13 ID:???
お嬢様、私は貴女のためなら何でもいたします。
貴女は私の全てです。
あぁ、そんな脅えた顔をしないで。
貴女にそんな顔は似合いませんよ。
━━━たいして親しくもない者しか殺してないじゃないですか。
貴女は知らないかもしれませんが昨日夕映さんを見逃してあげましたし、今殺した椎名さんだって別段親しいわけでもないでしょうに。
なのに何故そんな目を向けるのですか?
なのに何故そんな顔をなさるのですか?
ほら、立って下さい。
「……なんでや」
あぁ、暖かいなぁお嬢様の手は。
傷付いた私を癒してくれる。
「………なんで……なんで殺したん!?」
それは、万が一を防ぐために……
「桜子は味方やった!脅えるだけの私に声をかけてくれた!自分かて怖いはずなのに、銃は私に預けてくれた!なのに!」
ですから、それは………
「なのに何でや!いきなり襲ってきて……せっちゃんこのゲームに乗ってしもたん!?桜子は話し合おうとしたのに、容赦なく斬って……せっちゃん最低や!」
……………
「最低や、ほんまに最低や!絶対助けに来てくれるって信じとった……桜子もや!絶対にせっちゃんが助けてくれて、明日菜やエヴァちゃんと協力してこのゲームを終わらせてくれるって、信じ
「うるさいよ、お前」
245 :
2/3:2006/05/12(金) 00:27:50 ID:???
「………ッあ゙ぁああ゙ぁぁあぁぁぁ!!」
あぁ、私としたことが。最愛の人の腕を切り落としてしまうなんて。
でも、お嬢様だって悪いんですからね?
話を聞かないお嬢様がお仕置きされるのは仕方のないことなんですよ?
でも、お嬢様の綺麗な肌を傷付けたくなんかないので、おとなしくしてくださいね?
「ひぁぁ……た、助け………」
あぁ、泣かないでくださいよ、もう。
あまり騒ぐと人が来てしまいますよ?
まぁ、お嬢様の細く美しい腕とはいえ、人間の腕を容易く切り落とせるコイツがあれば誰が来ようと負けませんけどね。
「明日菜……明日菜ァァァァッ!」
「…………ッ」
「い゙あぁぁあぁあぁぁ」
いけない、またやってしまった。
この状況のせいで少し短気になったのかな?
まぁでも、私という騎士がいるのに明日菜さんを呼んだお嬢様にだって責任はあるんですよ?
私には貴女しかいないように、貴女には私しかダメなのです。
あぁ、腕が無いのに無理して走るから転ぶんですよ。
ほら、汚い地面を這ってないで、素直に私に助けを求めて下さいよ。
私を必要として下さいよ。
「誰か……誰かぁぁぁぁッ」
あぁ、もう。だから静かにして下さいって言ってるでしょう。
「あ……かはッ………」
このご無礼の分の“お仕置き”は後でたっぷりして下さい。
今は黙っていただくことが優先ですから。
246 :
3/3+1:2006/05/12(金) 00:37:37 ID:???
「せ……ちゃ………」
あぁ、私の大事なお嬢様。
首からも貴女の温もりを感じとれます。
なんて優しく、暖かい温もりなんだろう。
「く…………るしッ…………」
あぁ、もう離さない。離してなるものか。
大事な大事なお嬢様を失うなんて絶対に御免だ。
「……………………」
聞き取ることはできなかったが、お嬢様の口が確かに動いていた。
あの動きは………「ごめんね」……か?
ううん、ええんよ。私もちょっとムキになりすぎてたし。
………あぁ、なんたること。
まさかお嬢様がし、失禁されるとは………
あ、ご安心下さい。そのくらいで嫌いにはなりませんので。
とりあえず椎名さんの制服を拝借してくるので静かに待ってて下さいね、お嬢様。
247 :
4/4:2006/05/12(金) 00:40:51 ID:???
「………刹那さん!」
あぁ、神楽坂さん。ご無事で何より。
お嬢様がお喜びになりますよ。
「さっき木乃香の声が聞こえたけど、いった
「お嬢様は今は落ち着いてお休みになっております」
「刹那さん、木乃香と一緒だったんだ……よかった……」
………いけない、お嬢様の下半身は今グッショリと湿ってるんだった。
………お嬢様の名誉のためです。神楽坂さんを殺しても許してくれますよね。
「神楽坂さん」
「ん?何?」
「ごめんなさい」
あぁ、愛しいお嬢様。
ご安心下さい。貴女の不利益となるものは全て私が潰しますから。
大事な大事なお嬢様。
周り全てがどうなっても、私だけは最後まで側にいますから。
だから、もう離れないで下さいね?
愛しい愛しいお嬢様。
もう離さない。
私だけのお嬢様。
>>247 乙。面白いとオモ。
これくらい刹那が壊れることって珍しいよな
短編を書いてみました。
崖の中腹で佐々木まき絵は一歩も動けず途方に暮れていた。
空は昼なのに真っ暗で大雨。
まるでこんなに哀れに堕ちるまで堕ちた自分に対して空が泣いてくれるように…
まき絵は思い返す、どうしてこうなったのか。
初めに出会った美空はゲームに乗ってしまっていた。誰も殺しなんかしたくない、みんなそう思ってる。
こんなゲームを何とかして助けてくれると思っていた、だが無常にも美空は自分に襲い掛かった。
結果、油断していたまき絵はフォークだけの相手にかなりの手負いを負わされた。
意を決し鞄から包丁を取り出して美空に向けた、美空は
「やれるものならやってみろ!」
と挑発してきた。
まき絵はただおどしのつもりだった。これで逃げてくれれば少なくとも人は殺さなくて済むと思ったから。
だが美空はそんなまき絵を罵倒し、フォークを首に突き立てた。
まき絵の頭は真っ白になる。殺されると思ったから。
死にたくない、死にたくない、死にたくない、生き残りたい、生き残りたい、生き残りたい。
次の瞬間、美空の腹に鋭利な刃先が恐ろしいほどあっさりと沈んだ。
美空は少しの間うめき声を上げたがやがてその反応もなくなった。
「う、うわああああああああぁぁぁぁぁ…」
恐怖から声を出して走った。
殺す気なんてなかった。本当になかった。
―ただ死にたくなかった。それだけだった。
すると近くにいたのどかと夕映がその瞬間を見ていた。
「まき絵さん…あなた、何ということを」
「違う!私は…」
「のどか離れるです!この人はもうゲームに乗ってるです!!」
違う、乗ってなんかいない。死にたくないから…殺されると思ったから…だから…
銃を取り出した夕映はまき絵を牽制する。
どうしてこうなるの…私は死にたくないだけなのに…
「うわあああああああああああああ!!」
大声を出して夕映に突進して銃を奪ってその小さな体の中心に口径をめり込ませ引き金を引いた。
「ゆ、夕映ー!」
「はー…はー……」
ゆっくりとのどかを見る。
「ひぃ」
怯えたのどかをいとも簡単に殺した。なぁんだ、結構簡単なんだ…
…今、自分は何を考えた。夕映をのどかを何故殺した、夕映は説明がつく。
だがのどかはどうだ、彼女は怯えて動けなかったのに何故殺した。
何故?答えは簡単、まき絵は狂ってしまったから。
「のどか!夕映!」
するとハルナがこちらを睨んでいた。
また見られた。死にたくない、死にたくない。
「うわあああああああああ!!!」
今度はハルナに襲い掛かった。だが今度ばかりはそううまくいかなかった。
焦って無駄弾を撃って弾切れになり、弾の交換中を狙われてバットで殴られた。
そのまま背中を向けて逃げ出したが下り坂で足を滑らせ崖下に落下してしまった。
「…痛ぁい」
足が折れたみたいで右足の自由が利かない。体中痛くて動きたくない。
そんなときに放送があった。
綾瀬夕映、春日美空、宮崎のどか、すべて私が手を下した相手だ。
そして禁止エリアの発表で驚愕した、あと少しで自分の居るここが次の禁止エリアになるのだ。
痛む体を引きずって崖を上る。下は流れの急な川、この足では間違いなく溺れ死んでしまう。
上の森に行くしか道はなかった。
「うぅぅ…」
必死に崖を登るまき絵。両手と左足で必死に上った。
残り時間はあとわずか。
「死にたくないよぉ…死にたくないよぉ…」
途中から泣きながら上った。雨のせいで何度も滑り落ちそうになるが必死に耐えた。
爪が割れ、泥まみれになりながらも上るが途中で動かなくなった。
体力の限界だった。
上を見上げる、誰か居た。助かると思った。
だがそれは先ほど追いかけてきたハルナである。ハルナは傷だらけのまき絵をただ見下ろしているだけだった。
「…てぇ…助けてぇ!お願いだから助けて!」
声を出して叫んだ。
だがハルナは何も答えない、親友の仇など助ける気にもならなかった。
ピッピッピ
「!!」
首輪が鳴り出す。もうすぐ爆発する。
「い、嫌ぁ!助けてよ!助けてぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
どんなに泣き叫んでも、どんなに命乞いをしても…ハルナはその場から動かず、睨んだままだった。
何とか手を伸ばそうとして手を離した時にぬかるんだ地面で滑り、また落下する。
一瞬の無重力体験。
徐々にハルナの姿が見えなくなっていく。
「何で…な゛んでごうなるの゛ぉ……」
涙声のまき絵は誰かにいうわけでもなく呟いた。
「わ゛たし゛はただ……しにたくないだけなのに……」
川に落下した瞬間に大爆発が起こる。
生きたいと願っていたまき絵にとって、それはあまりにも悲しい結末であった。
終
>>243 GJ
刹那、どこかで一歩狂えば確かにそんな思考になりそうだ・・・
グロい部分の表現の押さえ方もいいと思う
ただ、苦手な人はとことん苦手だろうな。俺は平気だが
>>249 こっちもGJ
しかし、短編でまでまき絵は狂うんだな。まき絵らしいといえばらしいが
どっちもなかなかレベル高いし、また短編なり、長編なりかいてみてほしいと思った。
読むだけの立場からの無責任な意見だけどな
>>248 レスd
絶望方面で狂うことはあっても、なかなか破壊衝動は生まれないよねせっちゃんって
何か木乃香のためにあえて殺人に手を染めるイメージが精一杯だ
それを極端にしすぎてみたけど、許容範囲みたいでよかったよ
>>249 GJ!
まき絵はやっぱそういうイメージだよなぁ
過剰防衛→目撃した者が誤解→怖いから殺害→復讐される
このゲームの恐ろしさが濃縮されてて面白かった
しかしまぁ、命乞いするも崖から禁止エリアに落とされるってネタ見事にかぶっちまったよ(´・ω・`)また本編考え直さなきゃ
>>252 でもその一歩の狂いははなかなか怒らない。それがせっちゃんクオリティw
グロい部分はどれくらいから警告付けた方がいいのかね?
俺はそういう描写力がないし、『腕切った』みたいなダイレクトシンプル表現の方がグロくないと思って極力自然に表現削ってみたんだが……
ラノベの“キノの旅”描写ぐらいが境界?それとも原作のバトロワ程度?
まぁ、あまりにグロダメな人はバトロワスレ見ないだろうけど……
とりあえず失せろコールが無くてホッとしたw
なんていうか、全体的にネタ被りを気にしすぎじゃないか?
一つや二つネタが被っていても、長編なんだから全体が被ってなればいいんじゃないか?
短編投下します。
1部のアンソロジーになっていますが。
あの惨劇から8年の歳月が流れた。
ネギ君とのどかちゃんは結婚、柿崎も同じく彼氏と結婚。
くーふぇはいまではなんとか立ち直り麻帆良学園の出店で調理師として働いている。
左足を失ったくーふぇも生きる道を見つけた。
で私、明石裕奈はなにをしているかというと
「えー、ここどうなるか分かる奴!!」
麻帆良学園中等部で臨時教員していたりする。
あの後、私はお父さんより魔法世界のことを知り、魔法、体術、神鳴流を学んだ。
長い学生休みはそれらの特訓に明け暮れ、高校に入ってからは勉学主体の生活に切り替えた。
大学は表向きは体育学部に進んだ、だか本当は魔術と人間の体について学んでいた。
その後大学院に通う予定だったが、学園長より見聞を広めることということで2年間臨時教員として麻帆良学園中等部に戻ってきた。
お父さん、詠春さん、刀子さんの強いすすめもあったからだ。終われば大学院に戻ることにしている。
しかしこうして教師になってみると先生もいろいろ考えていて大変だったなと思う。
あの事件が起こる前の私は迷惑ばかりかけていた問題児だったなと少し自責の念にとらわれる。
また彼女達を見ているとあの事件が起きなければどうなっていたかを考えることがある、無駄だと分かっていても。
ピーーっ。「はい、今日の練習はここまで」
私はバスケ部の顧問もしている、練習が終わった彼女達は明日の麻帆良学園祭の話題で持ちきりだ。
「裕奈先生、さよならー!!」
「またあしたー!!」
彼女達もそれぞれ寮に帰っていく。
「さあて、私も帰るか」
私は教職員用のロッカーに向かう、話には関係ないがバイク通勤だ。歩いていると私のクラスの委員長雪ちゃんに会った。
「雪ちゃん、まだ残っていたの?」
「はい、図書館探検部の部活があったのとクラスの出し物の最終チェックがありましたので」
「そうかーー、あんまり無理しないようにね。辛かったら私に言ってね。」
「はい、でも大丈夫です。けどその時はよろしくお願いします。」
クラス担任も大変だが雪ちゃん委員長のおかげでずいぶん助けられている、生徒の中で一番親しい存在といえる。
「あいかわらずモテモテね、明石先生」
そこに現れたのはいまは同じ職場の先輩となった二ノ宮先生だった。
「もう!!、二ノ宮先生からかわないでください。」
「アハハ、ごめんごめん、つい。」
二ノ宮先生はあの事件の後、私を自分の担当クラスに編入させていろいろ面倒を見てくれた、
教員となったいまは仕事の愚痴とかを飲みに行ったときいろいろ聞いてくれたりする。
「明石先生は中学の頃も女の子にモテモテだったからね、面倒見も良かったしね。」
「二ノ宮先生!!」
「ゆーな…。」
呼ばれて声の方を振り向くと古菲が立っていた、不安でいっぱいのような顔で。
「二ノ宮先生、雪ちゃん。ごめん、私はこれで、雪ちゃんは終わったら早く帰るようにね。」
「わかりました、明石先生。」
「じゃあ私も職員室に戻るね。」
二人と別れ古菲と共に第2宿直室へ向かう、古菲がこの表情になったときは情緒不安定になっている証拠だ、
私はしっかり話を聞いてあげるために宿直室に向かう。
「でどうしたの? くーふぇ」
「夢をみたアル、ゆーなが再びバトルロワイヤルに巻き込まれている夢…」
以外だった、いままで古菲がバトルロワイヤルに巻き込まれる夢はみてもそれはあくまで古菲だけがでていたからである。
「安心してよ、もう修学旅行も終わったし、臨海学校はまだ先だよ、それに前の修学旅行は私を含め神鳴流の使い手で固めた京都旅行だったし、臨海学校もその予定だよ」
安心させるように私は優しく語る。
「ちがうアル…、すぐ近いうちに起こるアル!!、ゆーなが巻き込まれるアル。」
くーふぇは必死に訴えるが私は彼女を安心させるように言葉を続ける。
「もし私が仮に参加してもそれに対する対策はちゃんとあるし、私はあの時とは比べ者にならない位強くなったしね、
いまの私はくーふぇを含めたかっての武道四天王より実力は上だし、
神鳴流も桜咲さんまでのレベルにはいっていないけど使えるし、この麻帆良学園でも最強の魔法使いの一人だよ。」
「でも、でも」
「私に何かあってもネギ君、のどかちゃん、柿崎、そしていまでも古部長としたってくれるみんなが守ってくれるから大丈夫よ」
「そうだけど、私にとってはゆーなが一番アルよ」
かっての古菲からは考えられない言葉の数々、立ち直ったもののかっての天真爛漫さは完全に消え失せていた。
「それにくーふぇの作る料理まだまだ食べたいもん。」
「ゆーなぁぁ!!」
裕奈に抱きつく古菲、何度も繰り返されたシーンである。
「くーふぇ、いまから何か作って欲しいな」
その2人を見る一つの黒い影があった。
「フフっ、これから面白いテストケースを始めるネ、さあてどういう展開になるか楽しみネ」
学祭の初日が終わりクラス全員そろっての打ち上げが始まった。
「明石先生、お疲れさまです。」
「雪ちゃん委員長もお疲れさま、頑張ったね。」
裕奈は雪と話しつつクラスのはしゃぎぷりに目をやる。
思えば自分が音頭をとっていたなと思い出した。
裕奈は一人の生徒に目を留めた。
趙錫祢
一部では、かの超鈴音の再来と言われる少女である。
それゆえクローン説や妹説などさまざまなうわさが立っている少女である。
けど決定的に違うところは語尾に「ネ」を使わないところと魔法先生の間では問題児ではないところである。
だか以前から裕奈はなにか危険なものを感じていた。
そして小一時間がすぎる頃、それは起こった。
突然空間が割れ、まるでブラックホールのようにクラスの物が吸い込まれ始めた。
クラスは大パニック、次々と吸い込まれていく生徒。
裕奈は雪を庇いながら、吸い込まれないようにしていた。
だかこのままでは犠牲者がどんどん増えてしまう、なんとか止めないとと思っていると突然何者かの攻撃を受けた、
大した攻撃ではなかったが不意をつかれたのとブラックホールの風と雪を気にしていたためブラックホールの吸引力に捕まった。必死にこらえるが雪を助けようとして動いたのと謎の攻撃を受けブラックホールの吸引力に捕まってしまった。
「しっ、しまった」
気づいたときにはもう遅くブラックホールの吸引力になすがままだった。
「うわああぁぁ」
「明石先生ーーー!!」
裕奈も雪もブラックホールに吸い込まれてしまった。
「う、うっ、ここは」
ハっと目が覚めた裕奈は周りを見渡す、ここは教室!?
いや違うここは確かに教室だが麻帆良学園の教室の風景ではない。生徒達は無事のようだ。
「明石先生…」
「雪ちゃん、無事ねっ……、そ、それは!!」
裕奈は雪の首をみて驚いた、雪の首についていたものは忘れもしない、あの忌まわしいゲームの証拠。首輪である。
他の生徒達にも同じく首輪がはめられていた。
『なんてことだ、私がついていながら……』
裕奈は情けなかった、自分が居る限りは自分のクラスは絶対にこのゲームには参加できない、
参加する前にゲームを潰すことができると思っていたのである。だか無情にも結果は自分と同じ目にあわしてしまったのである。
「明石先生には首輪が…」
雪の言葉に我に返り、自分の首を確かめる。なぜか裕奈の首には首輪がはめられていなかった。
それから体のどこを見てもなにも付けられてはいない。
『なぜだ……』
もしここにいる人間でバトルロワイヤルする場合、自分が一番弓を引く危険人物で尚かつそれだけの実力も持っている。なのになぜ首輪がはめられていないのだ。
裕奈が疑問に思っていると、天井から巨大なスクリーンがおりてきた。
そしてスクリーンに映った人物。
趙錫祢
彼女こそこのゲームの主催者である。
「皆さんにはバトルロワイヤルをしてもらいます。
知っている人も多いので基本ルールは省略します、知りたい人は荷物と共に渡されるしおりを見て下さい。
なお趙錫祢主催のバトルロワイヤル特別ルールを発表します。
普通は無人島を使うのですが趙錫祢のバトルロワイヤルは趙錫祢が作ったこの特殊空間で戦ってもらいます、
分かりやすく言いますとマクー空間みたいなものです、あと私はこの空間で3倍の力を発揮できるわけではございませんのでご安心を。
そして次に、そこにいる明石先生、実は明石先生もバトルロワイヤルに参加したことがあるのですよ」
それを聞いて生徒達は驚いた、あの明石先生がこのゲームに参加してたことである、そして生きていることは……。
「で明石先生にはどうしてもらうかここで選択してもらいます、私と共に主催者としてゲームを管理するか、みなさんと一緒にゲームに参加するかです。
明石先生が参加した場合ですが、特別ルールといたしまして明石先生を殺した人はその時点でゲーム終了となり、
勝ち抜けることができます。けど気を付けて下さい、あくまで一人だけですからだから皆さんで協力して殺すのは無効になります。」
究極の選択肢である、どちらにしても生徒に刃を向けることになってしまうのである。
「で先生、どうするのですか? 生徒達とは違って恵まれている立場なのですから早く決めて下さいね。」
教壇の台が割れ、下から首輪が出てきた。
「参加するのでしたらその首輪を自分で付けて下さい、参加しないのでしたらその首輪を破壊して下さい。」
裕奈は一瞬迷った、管理者として潜り込み隙を見て倒すこともできるからだ。
だが自分は教師、かって偽ネギが出てきた時の状況を知っている裕奈の答えは決まっていた、
いかなる理由でも生徒達に裏切ったとは思わせたくない、たとえ上手くいっても生徒は傷つくのだから。
裕奈は首輪をとり自分で首輪をはめる。
カチッ 首輪がロックされる音が鳴った。
「ではゲームを始めます。」
趙錫祢がゲーム開始を宣言した。裕奈にとって始まる2度目の悪夢。
「面白いネ、長谷川サンの時とは違い。歳月が過ぎ、教師となった裕奈サンの人生2度目のバトルロワイヤル。ああ、楽しみだネ。楽しみだネ。」
<終劇>
あのね・・・
趙錫祢が読めないの(´・ω・`)
同じく…
ちょうなんとか
趙錫祢
ここをつっこまれましたか。(大汗)
ただワープロで作っていくうちに無人島以外の新しい舞台設定のため
超鈴音のようなキャラが欲しいと思ってワープロ変換で超鈴音を別の字を当てはめて深く考えずに作った物です。
ちなみに「ちょう」「すず」「ね」で変換して何気なく当てはめた。
即興で作った乱文駄文なのでお目汚しでした。
>>254 よくよく考えればその通りだね
あんま気にするのは止めるよ
>>264 GJ
短編で後日談的ネタってのもありだなぁ
そしてもう悪のイメージしかない超w
そういや2/3書き終わった作者さんはいるのかね?
自分40パー
>>264 GJ!これ続けたら、新しい感じのネギロアになりそうだww
>265,267
ありがとうございます。
作中の黒い影の台詞の通り、テストケースとして書いた物でした。
のちに本当に作る気になれば、考えていたアイデアを幾つか入れてみた物です。
>これ続けたら、新しい感じのネギロア
けどこの展開ではバトルロワイヤル参加ネギまキャラは裕奈と雪ちゃんだけですので。
まったくの別物になってしまいます。
二ノ宮先生と雪ちゃんはこのスレでは今回が初めての登場になりましたね。
失礼いたしました。
雪ちゃんってだれ?
>>269 学園祭で出てきた小学生(?)の女の子。
ベストカップルコンテスト(だったかな)ではるきくんと優勝した。
……あってる?
他に出れそうなのはココネ、すらむぃ、あめ子、プリン、チャチャゼロ、ちびせつな、さよくらいか
流石にロワにするには無理あるな
俺が考えてたのは3−A以外、人外、人語を扱える奴でロワ。
ゴーレム、こたろ、ちびせつ、ぬぎホギ他、ルビカンテ、オヤビン、烏族、狐女、茶久ゼロ、すらプリあめ、ヘルマン等
とりあえず完成の目途が立ったので正式に予約入れさせてもらいます。
完成度は45%くらい、カラー絵に苦戦中。
他にラフを四枚挟む予定。
マターリ制作中なので完成予定日は未定(できれば七月までに……)
ようやく30%終わった……
携帯だから指が痛ェorz
メールボックスのコピペだから少し時間かかるけど、「携帯ユーザーは帰れ!」ってルールあったりする?
>>273 wktkしながら待ってます
>>273,274
お二人ともガンバレ。超ガンバレ
作者さんが書き終えるまでの良い時間潰しの方法がないものだろうか?
バトロワに巻き込まれた生徒になりきって暇つぶししなさい
時間つぶしに向いてるは考察・短編・リレーあたりじゃないか
リレーはなんかグダグダ感あふれてるし、考察か短編?
それがいいと思うよ
短編って意外にムズいよね(´・ω・`)
意味わかんないのになったり、無駄に説明多くなったりでgdgdに…
そこで今までの作品の利用ですよ。
よほどのことしない限り作者が気を悪くすることは無いと思う。
「ん…、ここは?あれ?私銃で撃たれて死んだような…、」
春日美空は辺りを見た。どこかのマンションらしき部屋だった。
窓の外を見るとどこかの街らしい。勿論ゲーム会場じゃない事はすぐにわかった。
(天国じゃなさそうね。いったいここは…)
そこで美空の思考は中断した。人の気配がしたからだ。
「誰!?」
美空はその人物を見て驚愕した。目の前で死んだはずの宮崎のどかが怯えるように立っていた。
よく見ると他にも生徒がいたがどれも放送で呼ばれた生徒だった。
(なんで死んだ生徒が!?)
すると突然部屋に歌が流れた。
『あ〜た〜らしい♪あさ(ry』
音のするほうをみると黒い球体があった…。
つづかない。
>>282 ちょwww
つまりエヴァは酷い噛ませになるわけですね?
ガ○ツかな?
>>282 あえてこれに題名をつけるなら…
いいのが思いつかん
ネギまバトルロワイヤル短編8-282部
>>285 ネギま!らしく
PANTZ
とかどうよ
最初のターゲットは火星人か?
普通にネギ星人だろ
どう考えてもネギ星人です
俺も書いてみてるが、なかなか文章がうまくまとまらないものだな。
どうしてもテンポが悪くなったり、説明不足だったりしてしまう。
今更ながら過去の作者を尊敬するよ。
普通のパロロワと違ってなまじキャラ説明がいらない分、説明がなおざりか過剰になってテンポを損なう点は同意
どれみとかみたいに登場ズガン(どうでもよさげな人が死体で初出)とか
定期age
>>291 説明文過多になったりするよね(´・ω・`)
マジでムズいよ……
変なとここだわるとかなり長くなるし(´・ω・`)
>>292 突然死んでたり狂ってたりだと物足りないし、過程が長いとダレるよね……
どのくらいが丁度いいんだろ……
頭の中で状況の絵までは浮かぶんだが、それを文章に直すと・・・
気絶と、気絶から目を覚ますところの模写がどうしてもおかしく感じてしまう。
〜〜〜〜〜
ネギのいきなり体がぐらりとゆれ、その場で崩れるように倒れてしまった
「ネ……… ネギく…」
目を開けると、心配そうにこちらを見ている木乃香さんの顔が見えた。
〜〜〜〜〜
どっちもなぜか違和感を感じてしまうんだよな。
それとも、俺が神経質すぎるだけなんだろうか。
296 :
彗星:2006/05/24(水) 00:45:44 ID:zzSzqCXM
おい〜っす
おまえら、元気でやってるか?
彗星様が応援にやってきたぞよ
ageといてやる
感謝しろよ
>>295 さしでがましいようだけど、
>ネギのいきなり体がぐらりと揺れ
よりも
>ネギの体が突然ぐらりと揺れ
のがテンポがいい気がする
>>296 ノシ
本編くるまで短編投下してアドバイスもらうのってあり?
ああ、確かに、そっちの方がテンポいいな。
そもそも、俺の書いた文章が日本語としておかしいなorz
短編投下してアドバイスもらうってのは有りだと思う。
本編を誰かが投下した後だったらダメだと思うが。
皆文化祭前と後どっちの設定にしてる?かなり悩むんだよなぁ
極端な話三日目の途中から火星編スタートとか超一味全員死亡とかなったら今書いてるの全部おじゃんになるってので恐いんです
最初に、
『文化祭の途中で作ったので本編と多少設定が異なりますが御了承ください。』
とか入れればいいんじゃね?
俺もそれでいいと思う。
ただ、修学旅行1日目で判明したことを知らなくて、
2日目のことをしってるような設定とかになってしまっていたらダメだと思うけどな。
>>299 >>300でいいと思うよ
ちなみに俺は千雨に魔法バレしてないから文化祭前設定
ザジが人外じゃないってネタも注意書きしたら使用可?
何が批判されて何が問題ないとされるかは人によって違うだろうが
俺個人で言えば問題ない。
原作で最近は仲間とかトモダチとかが明らかに人外だしな。
ただ、作者自身が出したいと思えば何出してもいいんじゃないか?
それ相応の批判は覚悟しておくべきだが。
お久しぶりであります。
SS投下の規模を少なくながら、向こうのスレや他のSSスレを(仕事で忙しいくせに)転々をしてましたが
図々しいながらもまたこのスレに戻ってきました。
11部がまだ完成していないようですので、この場の繋ぎとして短編を近いうちに投下しようと思います。
あと9部作者の方、9部本編のストーリーの一部をお借りします。チャオの最後のシーンのアレンジを作ってみました。
それではまた後日。
ちなみにこちらは8と29の組み合わせが好きであります。
うはっお久しぶりw
wktkしながら待ってます
29と見て「肉?さっちゃんか」と連想してしまった
吊ってくる
てかザジが人外ってのはほぼ確定?魔物使いとかの可能性ってないのかな?
爪の件があるからねぇ……
あと、ロワん中じゃ魔物使いより魔物そのものの方が動かしやすいw
ザジの正体によってはロワで活躍しそうなんだが、いかんせん正体不明だからなあ
ザジが人外って設定モロに使ってひどい目にあった作者9を忘れてるな
いくら最初に注意書きしても説得力に欠けると同じような目にあうぞw
まぁ、当時に比べれば情報ももう少し出てきてるのと(最近のトモダチとか)
あと、9部は人外設定である必要性があまりなかった上に、人外だからと無茶させすぎたと思う。
超が未来人の宇宙人。ザジは異世界人の超能力者。と踏んだ
9部のチャオのラストシーンのアレンジを短編として投下します。
初めに断りますが、これは9部の作品のオマージュです。
9部の作者さん。勝手に使って申し訳なく思います。
出席番号21番那波千鶴は森の中にいた。
「とりあえず荷物を確認しましょうかしら?」
静まり返った闇の中にバックのファスナーの開く音が響く。
「あらあら、どうやら当たりのようね。」
那波の武器、それは他の生徒にしてみれば間違いなくハズレであろう。しかし那波にとってはそこらの銃火器なんかより遥かに殺傷力は高い。
その武器とは…
長ネギ
<< 77 天才 ―作者1アレンジ―>>
「……どうやら、終ったようネ。」
手から吹き矢が転げ落ちた。
何と超は施設にいた男達を、全員たった一人でしかもたった一本の吹き矢で倒していた。
たった一日のうちに、吹き矢の使い方を完全にマスターし、実戦で使えるレベルまで到達していたのだ。
これぞ“天才少女の成せる業”と言った所である。
だが吹き矢だけですべてを完璧に出来るというのであれば話は違った。
超の体は銃弾を食らい傷だらけになっていた。超はもう立つ力すら残っていなかった。
傍の壁にもたれかかると壁には大量の血痕。
「…もう、限界のようネ」
けほっと口から小さく血を吐いた。
ふと血だらけの手を見る。その手は薄く透けてきた。
手だけではない、体全体が薄くなっており今にも消えかかっていた。
超には、その意味が良く分かっていた…
超のいた未来。そこでは、木乃香とネギのクーデターが成功し、二人は魔法による独裁政治を行っていた。
そんな中、二人は結婚し子供をもうけていた。
その子供のさらに遠い子孫が超鈴音だったのだ。
超は、将来の後継者として周りのみんなから多くの期待を受けていた。
しかし、超自身は少数の魔法使いだけが独裁を行う、というやり方に疑問を感じていた。
そんなある日、超は好奇心から入室を固く禁じられている資料室に侵入した。
そこで超が見つけた物は、どれも超の想像を絶する物ばかりだった。
それは100年前に行われた、バトルロワイアルの鮮明な記録だった。
その記録を見て、超は自分の家計がどのようにして現在の地位を得たのかを幼心ながら理解した。
遠い先祖のネギと木乃香がすべてを狂わせた、自分は独裁など望んではいない。
そして、その次の日から超は来る日も来る日もタイムマシンの製作に明け暮れたのだった……
この忌わしい過去を変える為に…
そのために超は代々受け継いだスプリングフィールドの名を捨てた。顔を変え、超鈴音と名乗り
自分の地位もすべてを捨てた。
カシオペアを完成させ2001年にタイムスリップし、麻帆良学園の生徒として潜り込むことに成功した。
入学式に自分の先祖の一人である近衛木乃香に出会う。
木乃香は初めて会った自分に占いをしてくれた。
言いたかった。あなたがいたから世界は狂ってしまったのだと。
しかしそれを言った所で何になる、ただでさえ独裁政治を行ったことだけでもすごいことだが
魔法によってそれが成功したと言われれば皆はなんと思うだろう。
おそらく頭のおかしな奴がいると思われる。
今の自分はあまりにも無力、力や権力を持っても理解できないものは出来ない。
ならばすべてを理解させるためにも、まず魔法という存在を世間に認めさせなくてはならない。
だから自分の研究を認めてくれる同士が欲しかった。
そこで超は同じクラスの葉加瀬聡美に声をかけた。
彼女は好奇心旺盛で何より科学にとてつもない作成意欲を見せていた。
そのために近づき、信じられないほどの早さで意気投合。
茶々丸という存在もまたプラス要因となった。
ただ自分の計画を成功させるためだけに近づいていたのだが、いつしか本当の親友として笑える仲となっていた。
そして1年を過ごして2年生の三学期、ついに出会うことが出来た。
自分の先祖たるネギ・スプリングフィールドに。
「…(この無邪気な少年が私の…)」
超はこの間ずっと悶々とした日々を過ごした。
今、自分が何をしようとしているのか。それは先祖殺し。
たった一人で過去の世界、自分で決めたことなのに決意を決めたと同時に手が動かなくなる。
殺せるチャンスならいくらでもあった、なのにどうしても出来ない。
悔しくて机を殴る。
「何が天才カ…所詮天才なんて…こんなものなのカ…」
誰にも打ち明けられず孤独な日々を過ごし、頭を抱えて悩むこともあった。
だがこれを悟られるわけにはならない。超は無理をしてでも笑顔で押し通すことにした。
カシオペアの改良も進められた。いくつもの試行錯誤を重ねて改良したカシオペア。
「結局…使うことは出来なかったネ」
カシオペアは使うことが出来なかったが、自分のするべきことは成し遂げた。
今、超の先祖たるネギと木乃香はどちらもこの世にいない。
これから代々受け継ぐはずの子を産む前に死んでしまった以上、超はこの世界に存在することができなくなってしまったのだ。
「…私は…最悪の親不孝ものネ」
当然だ、タイムマシンで先祖を殺す発想など前例すらない。
体がもう霧に近い状態になる、超は最後の力で誰に言うでもなく呟いた。
「…せつなサン。これからの世界を支えていくのは、君達…ネ…
…だから、これからの未来を…任せた…ヨ………」
そう言って、超はこの世界から姿を消した。
超のいた場所、そこには裏蓋に×××・SPRINGFIELDと書かれたカシオペアが転がっていた。
名前の部分に金属で削り取った跡がある、それが超の本当の名前。
本当の名前を捨てた超は“超鈴音”として生きて消えたのである。
【出席番号19番 超鈴音 消滅 残り3人】
―というのがこちらのアレンジとなります。
重ね重ね言いますが作者9さん。勝手に使ってホントにすみません。
要望があればリクエスト短編を作ってみたいと思いますが?
>317
作者1様、お疲れさまです。
実は私も1部の正規エンド後日談をつかって「裕奈臨時教員編」を書きました。
作者1様が力強く歩くように描いた裕奈にもう一度バトルロワイヤルに参加させてしまいました。
しかもゲーム開始したところで終劇にしてしまう残酷さ。
黒い影も邪神という神にしてしまいました。
この機会なので私もまたできたらこそっと短編を落とします。
>>317 GJ!
他作者の作品のオマージュ、面白いな
短編浮かばない際は使えるかもね
>>313 ナイスタイミングすぎて吹いたww
>>313です。
作者1さん、自分の駄文で割り込みすいません。
GJでした。また短篇orサイドストーリー投下待ってます。
書き途中の作品を見たら3Aの生徒が一人足りなかった。
美空・・・なんてオイシイ子!
>>321 あるあるw
団体シーンで存在を忘れたりもしちゃうよね
さて作者予備軍の同朋よ、完成率はいかほどかな?
僕50%
僕ほとんど進んでない(´・ω・`)
うん、仕方ないよ、刹那の短編書いてたんだもん、うん
………俺より早く完成する作者イパーイいそうだなぁ
あはは、この前申請してから全く進んでないw
よって20%www
サボってスマソ(´・ω・`)
新しい専ブラ導入時にトリップごと削除してしまいましたorz
コテも一新
カラー表紙がやっと完成しました(ラフの10倍くらいの時間を浪費)。
でも、本文はまだまだ……。
はい、努力します。
こないだコテミスった馬鹿です・・・
30%弱・・・orz
まだ思いっきりミスってるぞ。
半角#の後な。あと、#の後にいれる文字は別に全角の日本語でもかまわない。
#作者11
とかでも適当に変換されてなる。ここまでストレートだと偽者出る可能性あるからひねった方がいいが。
>>331 気持ちはわかるよ
俺もよくわからなくて友達に聞いたもん
半角って名前、なんかインパクトもあるしいいなw
スマソorz
土下座でもなんでもしよう
・・・・・吊ってくる
なんか空気がものすごく和んだ気がする。
ドジっ子ハァハァ
素ボケだったんかww
天然テラモエス
また短編を投下します。
―短編と言えるかどうかと思えるほど長くなってますが。
設定は8部通常エンドの後日ということになってます。
最後に自分の意識があったのは亜子が海に消えた瞬間だった。
その瞬間に、大河内アキラとしての人格は消え去った。
龍宮真名を殺したのも理由は単純、強いからだ。
彼女を殺せば、自分はそれ以上になれる。そして人である感情も全て捨て去れると思ったから。
あまりにも悲惨な姿となった真名を見て、アキラはそっと人である最後の感情を出してこう言った。
「ごめんなさい」
手始めにゲーム主犯の超を殺した。刹那の忘れ形見の夕凪で真っ二つに切り裂いた。
超の顔、体から縦にずれ大量の血飛沫となってアキラを赤く染めた。
「ふふふふはははははははははははははははははは!!」
今あるのは…大河内アキラの姿をした復讐鬼でしかない。
「…5年ぶり…なんだね」
「あぁ」
5年ぶりにやってきた慰霊碑。
5年前にバトルロワイアルの犠牲となった麻帆良学園3−Aの生き残りである朝倉和美と長谷川千雨はそこにいた。
ここで死んでいった生徒のことは忘れもしない。
表向きは事故に遭って遭難したことになっている、真相は当事者以外誰も知らない。
後ろからやってきたのは早乙女ハルナと村上夏美。彼女らも時間を作り和美らと再会する。
「みなさん、お久しぶりですね」
元担任教師のネギが成長した姿で出迎えてくれた。横には高畑先生に犬上小太郎の姿もある。
「お久し、先生」
ハルナが手を振って喜んでいた。
振っている手は大きな傷と火傷の跡が今も痛々しく残っている。
親友を助けようと瓦礫の山に乗り込み、素手で高熱の瓦礫をどかした結果である。
「ネギ君、男前になっちゃってー」
和美がネギを抱き寄せるしぐさで喜んだ。
右腕の指は2本に減ってしまったが明るさは変わらなかった。
人間、心の持ち方でいくらでも立ち直るチャンスはある。
千雨は和む皆を遠巻きに見ている、その姿はどこか安心しているようにも見えた。
シュポッ
ライターの火を煙草に近づけて吸う。
「長谷川さん、煙草なんか吸うのですか?」
「悪りぃか、これでも20歳だぞ」
悪びれる様子もなく言い放つ千雨であった。
慰霊碑の前でじっと見つめる生き残りの生徒たちと先生ら。
この中で死んでいった生徒に何も出来なかったことが何よりも悔しい、そして悲しい。
このバトルロワイアルで分かったことは、誰かが意図的何かが存在すること。
ネギらはその真相を今も追っていた。
「朝倉さん、あれから何か情報は?」
「全然、むしろ出てくるのはどうでもいい情報ばかり。でもそれがすべて同じってのも気になるのよね」
「同じ?」
ネギが不思議そうに尋ねた。
「…私の独自の情報網や一般の情報すべてのコネで探しても、参加名簿やそれに関係することの情報が
全部同じなの」
「つまり、裏で何かが情報操作があるってことだろ」
千雨がそういった。
「なかなか鋭いね千雨。今はその情報操作をしている人間を洗いざらい探してるんだけど…」
「どうした?」
「いないの」
「いない?」
「その情報操作に関わった人間関係に引っかかるすべての人が…ここ何日にすべて殺されているの」
その言葉に誰もが黙った。
「あいつか…」
「うん…」
「ねぇ、小太郎君。ちづ姉は今も私たちを見守っているよね」
「もちろんや。ちづ姉は俺たちにとって大事な存在やからな」
夏美と小太郎は和美らの会話には参加せずに、皆の遺骨が埋葬されている墓に向かった。
墓の場所は慰霊碑から少し離れた丘の上。そこに全員の遺骨が埋葬された大きな墓がある。
二人はそこに向かう。
「小太郎君」
「なんや?」
夏美が小太郎の手を掴む。
「な、夏美!?」
突然のことに少し顔が赤くなる。
「小太郎君はいなくならないよね」
「…夏美」
「ちづ姉みたいに…突然私の前からいなくならないよね!」
下を向いて悲痛な思いで絞れるだけの声でそう言った。
「……当たり前やろ。夏美は俺が守ったるから…何も言わずにおらんようにはならん」
そっと微笑む小太郎。
夏美にとってあの出来事は悲劇でしかない。もう思い出すのも悪夢といえるほどだ。
そんな夏美を守れるのはもう自分しかいない。ちづ姉に代わって俺が助ける、そう誓った。
「…ありがと」
目から涙が流れる。その涙をそっと小太郎は拭った。
「ほら、ちづ姉に会うのにそんな顔やったらあかんやろ」
「うん」
笑ってちづ姉を安心させよう。いつでも天国で安心できるように、そう思っていた…
墓地に着くまでは…
「…」
「…あいつ」
墓地には先客がいた。
真名を思わせる黒い戦闘服、サングラスをしているがどこか要旨があの人物に似ていた。
「…」
その人物がこちらを向く。
5年前、バトルロワイアルに巻き込まれ、最後に行方不明となっていた人物…
「アキラ…さん?」
その人物、大河内アキラは曇り空の生暖かい風に髪を揺らしながらそっと立ち去ろうとした。
「待てよ、水臭いやないか。何で今まで生きてたこと黙ってたんや」
小太郎が声をかける。
「…」
だがアキラは一言も発しない。むしろこの場を早く去ろうとしている。
小太郎は不審に思い、自慢の運動能力でアキラに近づいた。
「お前どうし…!?」
小太郎の視界が一瞬で真っ暗になったのはすぐだった。
アキラは小太郎のその顔を右手一本で押さえつけたのだ。
「ぐ…ぎ…がぁあぁぁぁ!!」
あまりの痛みに声を上げる小太郎。並みの人間の握力ではない。
どんな鍛えたかをすればこんな力が出せるのか。
「止めてー!アキラさん」
夏美の言葉に反応すると小太郎を片手で投げ飛ばし、腰にかけてあった夕凪を取り出す。
そして目にも留まらぬ速さで夏美の首に夕凪を向けた。
「ひ……ぃ」
あまりの出来事に声が出せず、涙目になり、膝はがくがくと震えだす。
「喋るな、喋るとその喉を掻っ切る」
「夏美ぃー!」
小太郎が体勢を整えて飛び上がり、アキラに蹴りをお見舞いしようとする。
ズドォォォォン
仕留めたはずだった、だがアキラは少し場所をずらすだけで簡単にかわしてしまった。
「なっ…」
「強いとはいえ動きにムラがある、確実に相手の急所を狙わないといけない」
ドガドガドガ
アキラは小太郎の急所を3箇所狙って殴り飛ばす。
「ぐあ……」
一瞬で全身に痛みが走って体の自由を奪われる。
「ぎ…ぐ…(くそ…関節をやられた…)」
アキラにとって小太郎は敵ではない。毎日が殺し合い、そして心休まる日は一日とてなかった。
寝てるとき、食事をするときも彼女にとっては緊張感との戦いだった。
いつ、自分の首を狙って襲ってくるかもしれない。
命を落としかけたのも1度や2度ではない。
そんな生活を5年も続けていれば、無意識に相手も動きを見極められる技術を身につけていた。
殺せるときに殺さないといけない、この手でバトルロワイアルを仕組んだ人間を叩き潰すために。
そのために人である感情を捨て、復讐の鬼と化したアキラ。
丁度日本にもう一つ組織が存在したことをキャッチしたため日本に帰ってきたところだった。
行く途中に見かけた慰霊碑、それが5年前のあのクラスであることに気づくのに時間はかからなかった。
もう一度だけ、この5年間一度たりとも忘れたことのないクラスメイトの顔をあと一回だけ見たかった。
たぶん二度とこんな醜い自分はこの場所に来ることはないから…3−Aへの事実上の別れを告げに…
なのに運悪く二人に見つかった、このまま見なかったことにしてくれれば何もしないのに。
一般人を手にかけるのは気が引けたが、自分の情報が少しでも外部に漏れることは絶対厳禁。
自分の復讐の場所を見たものは誰であっても消さなくてはならなかった。
「こ、小太郎君!」
夏美が小太郎に近づく。小太郎は体の痛みで動けない。
「来るなぁ…夏美ぃ…」
「…」
アキラは銃を取り出す。
「嫌あ!アキラさんやめてぇ!」
「待てぇ…俺はどうなってもいい、こいつには…手を出すな…」
小太郎は身を挺して夏美を守ろうとした。
「…」
だがアキラはそんなことも聞かずに引き金を…
バシュゥン
宙に舞ったのはアキラの銃。
その視線の先にはネギが一発の魔法の矢を放ったのだ。
「大河内…貴様…」
「アキラ…」
さらに後ろで千雨と和美も立っている。
「アキラさん、あなたに何があったかは知りません…ですが、僕の元生徒を殺すなんて間違ってます!」
「…」
そっとアキラに近づく。
「アキラさん、もうやめてください…復讐なんて…」
涙ながらに語るネギ、アキラの消えてしまった心に訴える。
「これ以上…人を殺すことを止めないのなら…僕は…!」
そっと杖を構えるネギ、その顔は本気だ。
「……」
するとアキラは自分の武器をしまいだす。
戦う意志はないと判断したネギは即座にアキラに近づいた。
「アキラさん!」
その手を
「…先生」
そっと口を開いて微笑んだその瞬間だった。
ドスッ
腹に硬い抵抗感。仕込みナイフがネギの腹に深く刺さっていた。
自分の銃を弾き飛ばした、気配を悟られずに。
それも一発で、脅威になるのは必然で消すなら今しかないと判断したからだ。
「…先生、先生のその優しさは…時に甘さになることを教えてあげますよ」
「あ…きら…さ……」
口から血を吐き、その場に崩れるように倒れた。
「いやあああああああああああああああああ!!」
夏美の悲鳴がその場に響いた。
「ネギ君!!」
「き、貴様ぁ!!」
二人は急いでネギの元に駆け寄った。
そんな二人を見たアキラはそっと振り向き立ち去る。
「待てぇ!貴様何処に行く!!」
千雨の怒鳴り声がアキラに降りかかる。
「…私の邪魔はしない方がいいよ…今は見逃すけど……次からはたとえ君たちが相手でも…」
そっと振り向く。
そして何の抵抗もなく憎悪に満ちた鋭い目つきで睨みこう言った。
「殺すからね」
そう言ってその場から消えた。
千雨たちは一言も発することが出来なかった。あの目はもう人ではない。
5年前のあのときのままだった、人の光を失った目。
そこにあるのはドス黒い歪んだ感情。人殺しの目、憎悪に満ちた目。
正しいかどうかなどは関係ない。アキラはただ自分の選んだ血塗れた道を突き進むしかなかった。
たとえクラスメイトでも先生が相手でも…それが法の裁きや正義が相手でも…
アキラは復讐を成し遂げるためならば、それらをすべて蹴散らすことしか頭にない。
つづく
長文失礼しました。
あと最後に『つづく』と書いてますが単にネタ切れでここで強制終了させただけですorz
ダカラ3ツモカケモチシテンジャネ(Byチャチャゼロ)
もしネタが思いつき書くことが出来たら描こうと思っています。それでは…
うは、テラGJwww
そしてあんたが某スレの誰かなんとなくわかったような気がした
そして某スレ住人の俺は千雨の煙草で吹いたwww
アキラのアン・チェインっぷりがたまんねえ!
GJ!
1人死ぬのに20レスくらい要するのは長すぎでしょうか?
一人「目」が死ぬならそれぐらいでもいいんじゃないか?
一人「ごと」ならかなり長そうだが
まぁ、どうするかは作者自身だと思うよ。
長くても、物語の進行に必要な長さなら批判もあまりないだろうし
>>348 俺、下手したらもっと長くなりそう……
団体バトルがメインになりそうだから戦闘開始後はジャンジャカ死なす予定だけど、序盤全然死なねぇ……orz
そうすることで面白くなるならそれでいいと思う
死ななくても、きちんと自体が進展いていれば問題ないと思う。
死ぬことだけが話を進める要素じゃないんだし。
千雨の煙草・・・
某スレの住人なら誰でも吹くだろw
死に際が難しい。
どっか切断されたとかピストルで腹撃たれて出欠多量で死ぬまでの猶予時間とか見当つきません。
誰か知識を分け与えて下さい。
>>354 俺もそれはよくわかんない……
銃の反動とかもサッパリわかんないけど、原作のバトロワでも女子中学生が一発で相手の顔面撃ち抜いたりしたし、そこまで深く考慮しなくてもいいよね?
明日投下したらタイムリーだったのに・・・
しかし、お前がGJな事に変わりはない!!!よくやった!!!!!
かっけぇぇぇ!
こういうイラスト大好きだ
燃え!
マジ燃え!
356GJ!
一応保守。
361 :
保守:2006/06/02(金) 22:28:30 ID:???
血が欲しい…。新鮮な紅い血が欲しい。さっきのは美味しかった。次はどんな美味しい血が待っているのだろう?
血が欲しい!血血血血血血血血血血血血血血血血血血血血
血血血血血血血血血血血血血血
血血血ch…パンッ!!
千雨「もう蚊の季節か…。嫌だな…。」
血とちうをかけてるんですか?
定期age
みなさんお久しぶりです。てかこのスレ何ヶ月ぶりだろう…。
さてさて、なんか作者1さんが短編を投下しているみたいなんですがそれみて私も短編を書きたくなりました。というか書いちゃいました。
投下してもよろしいでしょうか?
おkじゃね?
俺は超歓迎
早く投下してくだちぃ
生きるという事。
それは他のクラスメイトを殺し自分一人になるまで殺し合うという事。
そんな地獄のような状況に今私は置かれている。
昨日まで仲良くしていたクラスメイトも殺さないといけない。
もうこんな世の中狂ってる。もうだめだ、私までおかしくなりそうだ。
私の親はいった。
『今の若者達は狂ってる。平気で物を壊す。落書きはする………。
私達の時代は違った。ものを大事にし………。』
確かにあなた達の時代はそうだったかも知れない。
だが今はあなた達の育った時代じゃない。
何でもある。少し街に出れば何でも揃う。
不便があまりない社会。
だから物は平気で壊すし落書きもする。すぐ直るのを知っているから。
だけど、そんな人間が育つような社会にしたのは誰だ?
あんたたち大人だ!! この考えは間違っていない。的を射ている。
この状況だってそうだ。あんたたち大人が仕組んだ事なんだ。
私達は何も悪くない。それを知らすためには直接口で言ってもだめだ。
そう、行動にうつすしかない。ならば悪い事もやろう。私は悪くない。
悪いのは社会なんだから………。
おっ、あそこにいるのはいいんちょか。
なるほど、最初の相手にはちょうどいいな。
なんたってあいつは先生の前でいい子ぶっている。
きっとこんな世の中にしたのもあんな奴らなんだろう。
ならばやっつけてこの世から消そう。そうすれば将来も少しは変わるだろう。
私は時代を変える。みんなの為に………。
パンッ
あははは、簡単だ。なんて脆いんだ。
ただ私がこの引き金を引いた。ただそれだけで壊れた。
この分なら簡単に社会も壊せるかもしれない。
『朝倉っ!何やってんのよあんた!』
明日菜だ。なんだいいんちょと一緒に居たんだ。
かわいそうに。きっとうまい口車に乗せられたんだろう。
利用されるだけ利用されて最後には殺されていたんだ。
私は人の役に立ったんだ。そうだ、明日菜なら私の考えもわかってくれるはずだ。
『ねえ明日菜、今の社会おかしいと思わない? 私と一緒に壊そうよ。』
『何いってんの!? あんたはおかしい!狂ってる!!』
何言ってるの?明日菜。狂ってるのは社会なのに。
私はいたって普通。
『私はあんたを許さない!』
何?その銃。何で私のほうに向けるの?ねえ、明日菜。
パンッ
何で、明日菜。私は間違っていないのに。おかしいよこんなの。
絶対に………。
以上です。
なんかよくわからない方もいるかと思いますがご了承ください。
うはw
朝倉が狂うのってなんか新鮮
GJ!
保守。
って大体1日前後で誰か書き込むけど、それだけ気にしてる人が多いのかな。このスレ。
俺はとりあえず一日四回くらい覗いてる
携帯にBookmark登録して30分ごと見てる
作者3さん、お久しぶりです。
朝倉が狂う展開は想定してませんでした。お見事です。
前回の続編が完成間近なので近いうちに投下します。
みんな短編投下でも鳥つけてるけど、予約しただけの奴も短編投下時は鳥つけた方がいいのか?
どっちでもいいと思うぞ。
ついてたらついてたで誰かわかるし、ついてなくても基本的に誰かは気にしないと思う。
>>376 d
行方不明じゃないってことをアピるためにも鳥つけることにするよ
明るさと温かみを齎す太陽も山の向かいへと沈み込み、
その後を追うかのように冷たい闇が上空を侵食中である初秋の宵。
孤島の北側に群生する雑木林を重い足取りでさ迷い歩く少女、佐々木まき絵は
数メートル先も定かに見えない暗黒と昆虫の一匹も羽音を立てない静寂にかつて無い不安を感じつつ、
さらに不覚にも陥ってしまったこの迷子状態が一層の不安を煽りつつ、
まあそんな感じでびくびく怯えていたものだから、
真っ赤に染まったシャツを体に貼り付けて無残に転がっている鳴滝風香が視界に入った瞬間にはもう
どっか近くの外国からでも聞こえるんじゃないかと思えるくらいの声量で悲鳴を響かせていた。
まき絵は甲高い叫び声を上げながら尻餅をついてしまう。
クラスメイトの死体に出くわしても平常心を保てるほどの肝は持ち合わせておらず、
それに加え腰まで抜かしてしまった結果なのだったが、
それはつまり立ち上がれない動けない逃げられないということであり、
一刻も早くこの恐ろしい場から離れたいのにそれができないという恨めしい状況は
軽い拷問に匹敵するんじゃないかと思えたくらいだった。
しかし実際にそれは拷問、いや、それすらも通り越した処刑であるのだと身をもって体験することになる。
「なんだ怖くて動けなくなっちゃっとか? それじゃつまんないじゃん」
声がした。
そいつはクヒヒと子悪魔のような笑みをまき絵に投げかけている。
「……ぇ?」
残念ながらまき絵の頭ではこの状況を理解するに至らなかったのだが、
まき絵に限らず誰しもがこの不思議に困惑すること必死であろう。
何しろ死んでいるはずの、死んでいると思っていた風香こそがその声の主であったのだ。
当のまき絵は数秒間の絶句と混乱と放心の後、なんとか風香が生きているという所までは理解し終えたのだが、
それでも全てを理解するには情報と脳の容量が足り無すぎた。
そして腰は抜けたまま。
もう1つおまけにまき絵の支給武器は手動の鉛筆削りのみなので丸腰同然である。
なんかヤバい、って気はした。
パン
言ってるそばから。
しかしこれも理解し難い銃声と負傷であった。
なぜなら?
見たところ風香は拳銃など所持しておらず引き金を引くモーションだって微塵も見えなかった、
ただ乾いた落ち葉を下にして寝転がっているだけに徹していたからだ。
ではなぜまき絵の太ももにぽっかり穴が開いているのか。
その答えは出来たてほやほやの銃創からどろりと溢れ出る流血とともに現れた。
「やった、当たったですぅー」
そんなことを言いながら嬉々として頭上の広葉樹を降りてきたのは、ああ、なるほど。
鳴滝史伽のお出まし。
流石のバカピンクでもここまでくれば察しの着くものであり、大体を想像することができた。
「何言ってんだよ外れだよ外れ。
頭に一発で仕留める予定だったのに、まき絵じゃなきゃ今頃逃げられてるぞ」
「うぅ〜、だってこれ難しいもん……
だから私は死体役やりたいって言ったのに、おねえちゃんが無理にさせるからいけないんですッ」
まき絵そっちのけで談笑する発育不良の双子達、その一方は片手に黒い拳銃を提げ、
もう一方はたった今起き上がってポケットから銀色の拳銃を抜き出している最中である。
「だって死体役は危ないんだよ?
史伽はお世辞にも演技が上手いとはいえないし、万が一バレた時のことも考慮したボクの優しさだと思って欲しいね。」
「うッ、そ それは…そうですけど……むむむぅ」
さて、この和やかな雰囲気はなんだろうか。
行動とのギャップが凄まじい、銃口を突きつけながらするような会話の調子ではないだろう。
そうこうしている内に風香は安全装置を外し終え、二人揃って仲良く動けないまき絵の許へと歩み寄っていた。
2人は不気味にも歩幅も歩調もぴったりでおまけに背格好も酷似しているものだから
クローン人間の来襲なんかを想像させるが、如何せん迫力に欠けていた。
手にする拳銃は紛れも無い本物だあるのだが悪戯っ子の2人が持つとどうも玩具のように思えてしまい、
それが本当に人を殺す能力を有する物だと実感した時にはもう遅すぎた。
「いくよ?」
「「せーのッ」」
以上
>>378-380 テラGJ!
拳銃持って同じ歩調で歩く双子を想像しちまったよ
どんなに愛らしくても不気味だわなw
そいや死体のなりすましって結構基本の騙しうちのわりにあんまり使われないよね
GJ!
確かに死んだフリは古典技なのに何故か新鮮だった
つか、双子こわいよ双子。こいつら頭はいい方なんだよね
しかしまあ、その・・・、なんだ、そろそろまき絵が可哀想になってきたw
なんていうかもうまき絵好きな人はこのスレに居ないんじゃないか?w
俺は桜子なら大好きなんだけどなぁ
なんていうか、まき絵はパニックになる姿が似合いすぎるのがいけないww
運動部の4人で比較すると、まき絵だけ圧倒的だよな・・・
逆にチアで見ると、くぎみーが強かったり
四天王で見ると、くーふぇだけ妙に弱かったり
やっぱり、原作でのキャラとかも影響してるんだろうな。
バカほど早く死ぬってことか
ゆえとあやかどちらがバカと言える?
ゆえ
一作品に五回は「お嬢様」と口にするお嬢様馬鹿・桜咲刹那が最強
その満面の笑顔はいいんですが、右手にあるものは何ですか。
ヒント:百合
普通に可愛かった件
謙遜する香具師はホントに絵がヘタクソな俺みたいな奴に酷いことした(ようなものだ)よね(´・ω・`)bGJ
>>398 ちょwww怖すぎwwwwwシャレになってねえwwwwwwwwwwww
似たような結末の小説があったからそれの作者ではないだろうか
ちょwwwww下wwwwww
アキラのイメージが変わってしまいそうです。
今週の本編でも少し変わったけど
凶悪アキラの武器が決まって刀なのは仕様ですか?ww
GJ
作品二桁記念にNBR人気投票でもできたらいいな
>>407 こんな感じ?
・好きな作品
・好きな話
・好きな短篇
・好きなセリフ
・一番印象に残った散り方
・一番印象に残った闘い
荒れそうだから集計はしないで
>>408をそれぞれ好き勝手に叫べばいいんじゃね?
つか印象に残った戦いとかバラバラだろたぶんw
・好きな作品
第8部(真・エンドがすごすぎる)
・好きな話
第6部 海が見える丘で
・好きな短篇
まとめの短編2にあるあやかのやつ
・好きなセリフ
第1部 あやか「ネギ先生を頼みましたわよ、私の一番の友人として信頼してますから。」
・一番印象に残った散り方
第1部 エヴァ
・一番印象に残った闘い
第1部このせつエンド 刹那vs龍宮
・好きなキャラ
アキラ
・好きな作品
第6部
全体的にまとまってるし、原作の良さが活かされてると思うから
・好きな話
第6部 わかんねぇよ
・好きな短編
>>411と同じくあやかのやつ
・好きなセリフ
第6部 千雨「そんで、結局私も誰かのために命張って死ぬんだなァ……まぁ、それも……案外、悪くない……な……」
実際はバラけてるけど、三つで一つみたいなものだから………ダメ?
ちなみに地の文が有りなら第8部 「ペンネームは親友の名前を忘れないようにするためにつけた。 『魔法先生』 著者、綾瀬のどか」
・一番印象に残った散り方
第6部 長谷川千雨
・一番印象に残った闘い
第8部 真・エンド ラストバトルの総力戦
・好きなキャラ
長谷川千雨にしとく
同じくくらい好きなザジと桜子は………orz
流れぶったぎって短編いいっすか?
「ね、ゆえ…ちょっと目閉じて?」
「……なんです?」
脈絡も無く唐突に言われた要望に多少の疑問を抱きながらも、
夕映は素直に両目の瞼を下ろした。
閉じられた瞼に僅かな太陽光が透かされてオレンジ色に染まる。
そのオレンジの世界が急に黒く陰ったかと思うや否や、ぽふんと頭に柔らかな感触を受けた。
「の……のどか?」
その手のひらが夕映の頭を流れるように滑り出し、短い前髪まで達した所で離される。
そして次の瞬間にはまた頭頂部に軽い圧力を受け、また摩られる。
「な なぜ頭を撫でるですかっ?」
頬を赤らめた夕映は律儀にも目を閉じたまま、その手を押さえようとする。
「や…やめるです……恥ずかしいですよ…」
わたわたとした手つきでのどかの手首を掴む。
のどかの手は何の抵抗を示す事無く静止した。
「ふふ…かわいいなぁゆえ」
「何アホな事を言ってるですか、もう目を開けるですよ?」
「あ、もうちょっとそうしてて」
一体何をするつもりなのか全く見当もつかない夕映だったが、
頭に乗に乗せられた手のひらと間近で耳に届くのどかの優しげな声が心地よく、
もう少しだけならこうしているのも悪くない、と思わず小さな笑みがこぼれる。
「あのね、ゆえ」
のどかはゴソゴソ音を出して動きながら話す。
目を閉じた夕映には何をしているのか分からなかったが、それほど気にしなかった。
「今でもネギせんせーのこと、好き?」
「な……ッ」
思っても見なかった言葉に夕映は明らかな同様を示す。
そんな夕映を見たのどかははにかんで、
「私ね、ちょっと後悔してるんだ」
「のどか……?」
のどかは後に続けてこう語った。
「今まではネギせんせーに私の好きって気持ちを知って貰えるだけで満足だった。
だからちゃんとした返事はいらないって言ったんだけどね。
でも、それは逃げてただけなの。
ネギせんせーに嫌いって言われるのが怖かったから、もしそうなったらどんなに辛いのか分からないから、
だったら今のままの関係が続いた方が安心って言うか、それで幸せだったの」
「…………」
珍しく自分の気持ちを長々と話すのどかに、夕映は黙って耳を傾けていた。
聞きながら、どこか胸の奥にズキンとくる物を感じていた。
それは、夕映がのどかに共感を覚えていたから。
同じ人を好きになり、それを知ってからも同じように接し続けてきた。
だからのどかの想う気持ちは正に自分のソレと一致していたのだ。
夕映は俯きながら聞き入る。
「でもまさかこんなコトになるなんて思わなかったから、凄く後悔してる。
結果がどうなってても私は答えを訊きたかった。
それよりも、ネギせんせーの気持ちを受け取らないまま死んじゃう方がもっとイヤ。
そう、気づいたの」
いつの間にかのどかのゴソゴソ音は止んでいた。
相変わらず夕映は目を閉じたままで、その頭に優しい温もりを感じる。
しかし、ここで思いがけない事態が起こる。
突然その手が夕映の髪の毛を掴みあげたのだ。
「えっ」
「だからね」
夕映は咄嗟に瞼を開き、両目が映し出したその光景に理解不能、そして驚愕。
顎の下に固く冷たいモノが添えられた。
「絶対生き残るの。そして麻帆良に帰って、もう一回告白するんだ」
「ひ………ッ」
「大好きなネギせんせーに」
http://p.pita.st/?m=hb8jgmno
お粗末でした。
ああスキャナ欲しい
>>416 GJです!!絵も凄く良かった。のどか怖えーwwww
あえて批判メインで言わせてもらうなら、のどかの力じゃ100%実行不可能だな。
ただ、文章のまとまりとかはわりといい感じ。
もしも長編書く気があるなら書いてもらいたいです。
前回投下した短編の続きを投下します。
月曜に近いうちといいましたがあの後HDがクラッシュしてすべてのデータが飛びましたorz。
ようやく2日前に修理が完了して起動したばかりですが必死に書き上げました。
前回長すぎると思い、一部を省略しつつ書き上げました。
一人の少女が街を彷徨っていた。
制服は襤褸切れ状態になり全身傷だらけ。
目は虚ろで隈が出来ていた、ろくに食事を与えられなかったのか頬は痩せこけている。
両手首には手錠の跡があり真っ赤に腫れていた、そして右腕は力なくだらんとしており手袋をしているかのように
腫れ上がり全体が紫に変色、左腕は指の一本一本が折れ曲がっていた。
裏路地に入るとその場で蹲る。もう立てない、もうこれ以上歩けない。
「…」
水が欲しい、誰でもいいから水を…
そんな思いで這い上がろうとした。だが少女の願いは意外な形でもたらされた。
ザァァァァァァァ
突然の雨、天からの恵み物を全身に浴びて少しだけ楽になった。
だがそれも最初まで、しばらくして体が冷えてきた。
早く雨宿りをする場所を探さないと、そう思って立ち上がろうとして…力尽きた。
―同時刻、病院
「…」
病院の応接室には高畑、千雨、和美、小太郎、夏美、ハルナが暗い空気の中でいた。
「ネギ君の手術は成功した。あとは回復を待つのみだけど…」
高畑がネギの無事を伝える報告も、どことなく余所余所しい。
当然だ、ネギが重症を負わせた相手が5年前に共に戦い生き延びたクラスメイトだったなんて…
「今日はもう帰るんだ。そして今日起きたことは何も知らない、見なかったことにしてほしい」
「何でや!」
高畑の提案に小太郎が食って掛かる。
「何もしないわけではない。僕らも全力を出して彼女を探し出す。
ただもう普通の学生なり社会人でもある君たちをまたあんなことに巻き込むわけにはいかないんだ」
高畑の言い分はもっともだ、もうあんな人殺しの世界に彼女たちを巻き込んではいけない。
「せやかて…」
「先生の気持ちも考えてやれよ」
千雨が煙草を吹かしながら立ち上がる。
「…先生、私はこれで。―これでいいんだろ」
「…そうだね」
そのまま立ち去ろうとする千雨を小太郎は止めた。
「待てよ!何でや、何でそうも簡単に帰ることが出来るんや!」
「…帰れって言ったんだろ。その通りにしてやっただけだ」
千雨の発言に小太郎は食って掛かる。
「何も思わんのか!ネギがあんな目に遭っといてそっちは何もせんと帰るんか!」
「じゃあお前何か出来んのか?」
一同に沈黙が流れた。
「このまま何かしようとして、またあいつの返り討ちに遭うのがオチだぞ」
「…せやけど」
「それに私たちはもう普通の一般人だ。なぜまたあんなところに巻き込まれなきゃならねぇ、私は御免だ」
気に入らないような発言で千雨は背を向けた。
「せやけど…こんなん納得できへん」
その瞬間、千雨は小太郎に近づき胸倉を掴んだ。
「納得いかないとかの問題じゃねぇんだよ!今の私らは何も出来ないんだ!」
突然怒鳴り込む千雨。普段では見せない顔だった。
「みんなを助ける正義の味方気取りか!?そんなのは馬鹿が考えるヒーロー願望だ。誰も傷つけずに助けられる
ものならやってみろ。綺麗事だけでやっていけねぇんだよ!」
誰も助けてくれない。頼る人など誰もいない。そんな世界を味わった千雨はすべてを小太郎にぶつけるように叫んだ。
同時にその場にいた人らも重い空気が流れる。
「…」
言葉を失い何も反論できない小太郎を突き飛ばすと千雨は病院を後にする。
カチッ カスカス
煙草に火を点けようとするがガス切れらしく何の反応も返ってこない。
「チッ」
ライターを投げ捨て雨の街を歩く千雨。目的もなくただ普通に生きるだけ。
あの頃と比べると寂れてしまったような気がする。まだ5年前のあの頃の方が生き生きしていた。
「…」
半分に切れてしまった写真を見る。
合同合宿と称して行われた殺人ゲーム、その前日に和美が撮った写真。
クラスの大半が写っていた、今となってはそこに写っている千雨とハルナだけになってしまったが。
やるせない怒りと悔しさから千雨は一言呟いた。
「…畜生」
両腕の傷を見ながらハルナは病院を後にして千雨同様、街を歩いていた。
やっとあの悪夢を振り切れたかと思っていたのにまた蘇る。
夕映が目の前で爆風に巻き込まれたあの一瞬を。
「夕映…」
瓦礫の山から夕映を助けようとした、指を切って火傷を負いながらも必死に助けようとした、だがそこから出てきたのは
夕映の焼け爛れた腕だった。その先に瓦礫をあと少し退かせば夕映の体が見えるが、それ以上先に進められなかった。
その腕がすべてを物語っていた、だらんと垂れ下がりぴくりともしない腕。
ハルナはその場で泣き崩れた。
「…くっ」
涙ぐみ裏路地に隠れるハルナ、大勢の人前で涙を流すのはまずいと思った。
声が出ない、とても辛い、けど誰も助けてなどくれない。
こんな思いはもう5年前のあの時だけでいいと思っていた。
「……?」
ふと何か音がしたことに気づいた。薄暗い裏路地、身の危険を考えるとそこに行くべきではない。だがハルナは進んだ。
何か懐かしいそんな思いがして。
「…うそ」
ハルナは言葉を失う。
そこにはもう死んだはずの人物が倒れていた。
5年前のバトルロワイアルの主犯、超鈴音が変わり果てた姿で横たわっていた。
以上です。
続きは現在、全力を持って復刻中であります。
>>423 作者1さんGJです!
続きがすごく楽しみですよ。
>>423 GJです。てか千雨の煙草はイイ。もっとやってほしいですぉ
作者1様GJ
私も考えていた短編を落とします。
こんな事ならもっと早く投下すべきだった。
またしても第1部のアンソロジーになっていますが。
全てを覆い尽くす混沌、その中から一つの人影が浮かび上がる。
「やあ、『外の世界』の皆さんお暇そうですネ。いや『創造主の世界の皆さん』といったほうがいいカナ!?」
その人影はまるでここにいない者達に語りかけていく。
「私も暇なのネ、皆さんのために面白くお話を持って行く為に動くことができなくて。けど世界が作られないと私も動くことができないからネ」
「ねえ、『外の世界』の皆さん。このゲームに生き残った人には『ご褒美』が必要だと思うヨ、あれだけの目にあったのだからネ」
「まあ、私も一人生き残った回の長谷川サンにご褒美をあげたからネ。けどゲームに2回参加するのがご褒美かと言えば疑問だかネ!?」
「結果的にはご褒美になりましたからよしとしましょうか。」
「では次はこのようなご褒美はいかがカナ!?」
>255-260より少し時間を巻き戻すヨ。
イギリス、ウェールズ某所にある教会、ここで2組の結婚式が行われようとしていた。
新婦の名は柿崎美砂と宮崎のどか、あのバトルロワイヤルの生き残りの生徒である。彼女達はずっと思い続けていた恋人とついに挙式をあげることになった。
トントン!! 美砂の控え室のドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ!!」
ガチャリ。
「美砂さん」
現れたのはウエディングドレスに身を包んだのどかだった。
「のどか!! 綺麗!!」
「美砂さんもですよ!」
美砂とのどかはお互いを誉めあう、決してお世辞ではない。
「父さん、母さん。のどかと二人っきりで話がしたいの外に出てくれる!?」
美砂は両親に頼み控え室の外に出てもらうようにいった、両親達も言われて外に出た。
「本当、夢じゃないね。こんな日が来ることができるなんて」
「ええ、本当です。現実なんです。」
二人の中に去来するあの惨劇。お互い本当に運がよかったとしか言いようがなかった。
何度絶望しただろう、何度あきらめただろう。
だが今は幸せの絶頂と言っても過言ではないだろう。
「一緒に結婚式をあげましょう」
こうのどかが言ったのはネギと正式に恋人同士になってからだった。
のどかと美砂はあの惨劇の中一緒に行動したため、強い絆を持つようになった。これは裕奈と古にもいえることでもある。
確かに4人ともネギを含めたら5人だが絆を深めあったが、やはり行動をともにしていた者同士の絆は深いものがあった。
のどかも美砂に恋人がいたのをしっていたので晴れてネギと恋人同士になったとき提案した。美砂も快く応じてくれた。
「しかし裕奈も大変ね、私の両親だけでなくのどかの両親、フィアンセの両親をつれて日本から来るなんて」
「確かに裕奈さんには苦労をかけてしまいましたね、みんな海外旅行の経験がないのですから」
「けど裕奈だからこちらは安心だけどね、何かあっても大丈夫だし。裕奈の強さは桁外れだから。
私なんか初歩の基礎魔法をほんの少し使えるだけだから。のどかも魔法に関してはかなりの実力者だね。」
「よして下さいよ美砂さん、私はただネギせんせーのお役に立ちたいためにに覚えたんですよ。」
「ハハハ、そうだったね。」
あの惨劇の後、美砂も魔法世界のことを知った。魔法を少し覚えたのはのどかの勧めだった、護身用にというために。
「で美砂さん、例の件を…。」
のどかが真剣な表情に変わり美砂に言う。
「そうね、チャンスは一回しかないからね、失敗しないようにしないと」
そして二人で打ち合わせを始めた。
「疲れたけど、ここまで来ると疲れなんか吹き飛ぶね。」
裕奈は自分の席に座り周りを見渡す。
もう式は始まる寸前だった。
新郎新婦の両親を日本から連れてきた疲れだった。一人で面倒を見たわけではなく父親の明石教授も一緒に面倒を見ていた。
「裕奈はいつになるのかな?」
「うーん、お父さん暫くないと思うよ、だって今私フリーだから。」
「ハハハ、そうか。」
父子で何気なく話をする。
新郎新婦の両親以外での参列者はネカネ(ネギの両親の代わり)、明石父子、古、アーニャだった。あとはビデオ担当とかが何人かいた。
この日を記録に残すためとこれなかった人たちの為への処置である。
『刀子さん、二ノ宮先生、雪ちゃん楽しみにしているだろうな』
これなかった人間達を思い出してみる。
あの事件の後、面倒をよく見てくれた刀子さんと二ノ宮先生、そしてのどかちゃんの図書館探検部でのどかちゃんを慕っていた雪ちゃん。
彼女のことはのどかちゃんに紹介されて知っていた。
縁とは不思議な物で私はもうすぐ麻帆良学園中等部で臨時教員をやることになり、担任するクラスの中に雪ちゃんの名前があった。
『少し安心かな』
一人でも知っている人間がいると心強く感じる物である。
「新郎新婦の入場です!!」
入場してくる二組の新郎新婦。裕奈はのどかと美砂を見つつ隣の古を見る。
『あとはくーふぇが挙げてくれれば安心なんだけどね』
あの惨劇の後、古の天真爛漫さは消えて、かってののどかに近いような性格になっていた。古を知る人はあれが本当に古なのかと信じられないほどだった。
『くーふぇの周りにもいい男がいっぱいいるんだけどな』
いまでも『古部長』と慕う人間は多い、裕奈はその中の何人かは古を任せても安心できると思っている。
『あとはくーふぇ次第なのかな、この結婚式がきっかけになってくれればいいんだけどな』
そして式は進んでいき。
「宮崎のどか」
「はい」
「貴方は、ネギ・スプリングフィールドを夫とし、健やかなる時も病める時も、共に生き、共に歩み、未来永劫に愛し続ける事を誓いますか?」
「誓います」
その言葉を聞いた裕奈は願う。
『いいんちょ、まき絵。天国からのどかちゃんを祝福してあげてね』
裕奈はのどか以外にクラス誰もが知っていたネギの事が好きだったあやかとまき絵を思う。本当はこの二人だってネギと挙式をあげたかっただろうに。
そして式も終わりに近づき。最後のイベントブーケトスを残すのみとなった。
教会の外、ギャラリー達は見守る。
『のどか』
『うん』
美砂とのどかはアイコンタクトを取る。
そしてブーケが投げられた。
その刹那。
ピュゥゥーー!!
突然突風が吹いた。
『!!』
裕奈は頭上を見上げる。
邪悪な気配を感じたのである。
気配がしたのは教会の屋根裏にある窓のあたりからだった。
がいまはまったく気配を感じない。
「あっ!!」
二つのうち一つのブーケは古の手元に落ちた。
もう一つは
「ヘヘヘ、ナイスキャッチ。ネギ今度は私の番だからね。」
掴んだのはアーニャだった。
『美砂さん……。』
のどかは自分を責めた。二人で決めた作戦、それはお互いのブーケを古と裕奈に投げること。古担当が美砂、裕奈担当がのどかだった。
美砂はのどかに近づき小声で声をかける。
「仕方ないよあの突風じゃ、裕奈なら大丈夫。ブーケのおまじないに頼らなくともいい人見つけるよ、それに古の方が心配だったから古の手元に言っただけでよしとしようよ。」
美砂はのどかを元気づける。美砂ものどかも古の方が心配だった。最悪の場合は古の方にお互い投げようと決めていたからである。
「裕奈さん、ありがとうございました。日本から家族の皆さんを連れてきてもらって」
ネギが裕奈に語りかける。
『ネギ君、気づかなかったの!?』
裕奈は驚く、先ほどの気配は気のせいだったのだろうか。
「裕奈さん、ごめんなさい。私、裕奈さんにブーケ取って欲しかったんですが。」
「気にしない、気にしない。私はそんなおまじないには必要ないよ、大丈夫だから、そんな顔しないで、旦那様も悲しむよ。ねっお父さん」
「ああ、うちの娘は大丈夫だから。それよりおめでとうネギ君、のどかさん幸せになるんだよ」
裕奈はネギ、のどか、明石教授の言葉を聞き、さっきの気配について考える。
『のどかちゃんもお父さんも気づかなかったの!? やはり私の気のせいかな!? そうね気にするのはもうやめよう、仮にきても私が返り討ちにしてやるから!!』
裕奈は考えるのをやめ、のどか、美砂を改めて祝福した。
「おめでとうのどかちゃん、美砂。最高によかったよ!!」
その裕奈が気配を感じた教会の屋根裏部屋には黒い影の姿があった。
「フゥーー、あぶない、あぶない。この世界の裕奈さんは凄いネ。ほんの微弱な気配でも感知できるのだからネ」
「この物語はゲームを勝ち残った美砂サンとのどかサンに私とある『外の世界』の人からのプレゼントネ、古もこれからこの世界で幸せになって欲しいネ。」
「季節柄よいタイミングで話ができたネ、ジューンブライドヨ」
黒い影は三人を祝福し、そして。
「けどネ、裕奈さん。貴方にはもう一度悪い夢を見てもらうネ。そうバトルロワイヤルという夢をネ」
「アハハハハ、ファハハハハ、ハハハハハハハ!!」
「では『外の世界』の皆さんまたお会いしましょう!!」
黒い影は嘲笑しながら、黒い霧に体を包みながら、暗闇の混沌の中に消えていった。
終劇
こっちでもリアルタイムktkr!
>>423 テラGJ
千雨かっこいいよ千雨
>>425 バロスwwwウィダーイン吹いた
>>434 GJ!
最初美砂とのどかが結婚したのかと勘違いしたのは秘密だ!
>>434 GJ!にしても教授が裕奈の父親という説は最早確定なのか。
ちなみに
好きな作品
第1部(初代はやっぱり偉大)
好きな話
第6部 海が見える丘で(刹那カコイイ!)
好きな短篇
まとめの短編7の夏美のやつ(千鶴の台詞が好きです)
好きなセリフ
1部 エヴァ「……生き残ってやるさ……フ…」
一番印象に残った散り方
第1部 エヴァ(↑の台詞とあいまって印象的)
一番印象に残った闘い
6部 千雨VS龍宮 (千雨の散り方が……)
好きなキャラ
ハルナ(次点で釘宮、楓も好き)
>>436 訂正。好きな短篇のところ、「千鶴の台詞→夏美の台詞」でした。失礼。
>>434 GJ!!ゆーなも幸せになって欲しかった( ´・ω・`)
ちなみに
・好きな作品 第1部
・好きな話 第6部「海の見える丘で」
・好きな短篇 暁の死闘桜子の夢オチ
・好きなセリフ 第5部 いいんちょ
・一番印象に残った散り方 第6部 ザジ
・一番印象に残った闘い 第7部 刹那×ヘルマン
・好きなキャラ 長瀬楓
残りの消えた部分を投下します。
内容の都合で一部を大幅にカットしています。
「…」
ふと目覚めるとそこはどこかの部屋だった。
「―それでは料金は後日支払いします。それと彼女のことは内密に…」
「わかりました」
誰かが話している。
ぼんやりと白い天井を見つめつつ、ゆっくりと頭の中を整理し始める。
まず暗闇の中で逃げ出した、そして麻帆良の裏路地で倒れたところまでは覚えていた。
ならここはどこだ?そして誰がここまで運んだのか?
「…気がついた?3日も寝てたんだからね」
声がした、相手の方を見るがまだ意識が朦朧としているのか視界が若干ぼやける。
「痛っ…」
ふと痛みで意識が覚醒する。顔の右半分は包帯で覆われている。当然だあんな仕打ちをされては…
「ほら、下手に動いたら傷口に響くよ」
「…」
そっと見つめる先にその相手は、早乙女ハルナいた。
片づけを済ませるとその相手は奥の部屋に消えていった。
「…」
超は礼をいうでもなくそっとベッドに身を預けた。
暖かい、こんなのは久しぶりだ。
だがすぐに腹が減ってしまう。何か食べたい、だけどこんな体では動けない。
どうしようかと悩んでいるとハルナが何かを持ってきた。
「お腹空いてるでしょ。はい、おかゆ」
「…」
おかゆをお椀につぐとスプーンで超の顔に持ってきた。
その手には痛々しい傷痕、しばらくしてその相手がハルナであることがわかった。
「―大丈夫ヨ…そのまま置いておいていくネ…」
「だーめ、その両手でどうやって食べるの?」
ふと両腕を見る、包帯ぐるぐる巻きになっている。
よく考えてみるがあの仕打ちだ、無事に完治するのも難しい。
「…どうして」
「?」
「どうしてそこまで…してくれるヨ。私は……あの時…」
「今は…何も聞かないであげる」
そう言うとおかゆを口に押し込んだ。
一体どのくらい食べてなかったか久しぶりに食べる米の感触。そっと口の中で転がして味わった。
「…塩味きついヨ」
「そ、そう。ごめんねちょっと薄めてくるね」
ハルナは立ち上がりキッチンに向かった。
「…」
なぜ助けてくれる?私はバトルロワイアルを仕組みあんたたちのクラスメイトを何人も葬った。
私はそこまでしてくれる…どうして…
そんな思いをしていると強烈な睡魔に襲われた。
「…なん…で……」
体を動かして何とか眠るのを防ごうとした。だが痛みで動かせない。
段々と意識が飛ぶ、あれだけいやというほど寝たのに…
「水飲む?……あ、寝ちゃってる…」
超は静かに寝息を立てていた。
腕の傷を診てもらった専属の医者に口止めもしておいた。外部には漏れないだろう。
どうしてこんなことをしたのか、初め見たときは助ける気なんてなかった。
こんな奴、夕映やのどかの命を奪った超を許すことなんて出来ない。
いっそのこと、この手でとどめを刺してやろうかと思った。
だがそれはいけなかった。このまま命を奪ったら、アキラみたいに命を奪う復讐鬼になってしまう。
それに見捨てたら、夕映みたいに後悔するから。
あんな悲劇も悔しさももう味わいたくない、そんな思いはもうごめんだ。
だから、これからのことは…後で考えよう。ハルナは思った。
つづく
ここまでです。
前日投下した所と本日投下した部分の間に超の仕打ちについてエピソードがありましたが
その内容は『いじめスレにでも張れ!』とでも言われそうなほどの展開であり、カットすることになりました。
>>442 GJ!また気になるところで切りますねw
俺的にはいじめ部分も後でうpしてほしかったりする・・
こんな!こんなトコで止めるやなんて!アンタは鬼や!生殺しやあああっ!!!
超GJ!!!
好きな作品 第零部
好きな話 第零部 毒入りシチューの話
好きなセリフ 第零部 ザジ「私、ネタないし自殺でもしとくか」
一番印象に残った散り方 第零部 アキラ
一番印象に残った闘い 第零部 エウァンジェリンvsアスナ
好きなキャラ エウァンジェリン
>>445 >好きなセリフ 第零部 ザジ「私、ネタないし自殺でもしとくか」
俺もこれには吹いた
>>442 ずっと長編を待ってたから、待つことには慣れたぜ!続きを気長に待ってます!
GJ!
・好きな作品 第6部 。一番wktkしてました。あの感動は忘れない・・・!
・好きな話 第8部《44.命の温度》。理由は・・・聞くなw
・好きな短篇 美砂と円のやつ。正直、長編入れてもこれより泣いた話は無い
・好きなセリフ 第7部 桜子の「みんなー、ごめんね!私、帰れそうもないや」。この瞬間に桜子に惚れたw
・一番印象に残った散り方 第6部 千雨。思わずモニターの前で敬礼しますた
・一番印象に残った闘い 第1部 刹那×千雨。一番ぞくりとしたのはコレ。
・好きなキャラ 明石裕奈・和泉亜子。次点がくぎみー
好きな作品 第9部
好きな話 第9部 補食者
好きなセリフ 第9部 楓「ケケ…ゲームニ乗ッチマエ」
一番印象に残った散り方 第9部 長瀬楓
一番印象に残った闘い 第9部 龍宮vs鳴滝
好きなキャラ 高畑
レスありがとうございます。
超のエピソードをこちらにうpさせておきました。
ttp://2-10.jp/up/upload.cgi?mode=dl&file=17175 注意事項
この作品はチャオが傷つく過程(前編)が収められています。
・チャオが好きな方
・拷問ネタが苦手な方
・好きなキャラ以前にネギまキャラが傷つくのが見てられない方
・興味本位だけで見る方
は絶対見ないでください。
超のエピソードは超の性格上、どうすれば崩れるかを考えましたが
なかなかうまくいかず、とにかくとことんやってしまえとして作ったある意味、暴走作品です。
なお後編はHDがクラッシュした際、尊い犠牲になり現在復刻中。
短編(もう長編かも…)の続きは現在意欲製作中であります。
少し時間がかかるので気長にお待ちください。
復刻がんばって下さい
passって既出でしか?
仲間の報復のための拷問にしてはちまちましてますね
強姦したり凍えさせたり濃硫酸かけたりなどはそういう性癖を持つ方のための娯楽であり、
本当に憎らしい仇なら全力をもって殴る蹴るを死ぬまで繰り返すというのが妥当ではないかと。
と、そこに疑問を持ってしまったせいでなかなかストーリーを受け入れられませんでした。
強姦はあれだ
読者サービスというか、お約束というか……
459 :
456:2006/06/13(火) 09:16:16 ID:???
>>455 たぶんそういう性癖を持つ方が多かったのだろう。
保守
保守。
それにしても最近は短編に絵に盛り上がってるな
俺も何か書いてみるか…
これはひどい
( ´・ω・`)……。
そうだな…、最高級のステーキに鳥の糞を入れられた気分だ…。
下手すぎ。折角の第1部が汚れる。
お前ら酷いなwww
>>464 ステーキに糞とは言わんが、松茸ご飯にふりかけかけたようなものかな
まぁ、叩かれても泣き出さずこれを糧に頑張れ
>>464 最高級の大トロにタルタルソ(ry
酷評なんざスルーされるのと比べれば全然ましだと思う、凹まず頑張って
とある民家の物置の中で明石裕奈は休んでいた。いくらバスケ部と言えどさすがに体力と精神力に限界が来ている。
もう無理だ。 自殺しようか。 自分は生き残れない。そんな事を考えてしまう。
しかし、あの人、彼の一言を思い出すとまた頑張れる。
『諦めたらそこで試合終了だよ』
まだまだやれる。絶対に諦めない。必ず生き残る。
「先生、(帰って)バスケがしたいです…」
裕奈は勢いよく扉を開け生き残るために死合い会場へと走っていった…。
おわれ
煙草吸いながら読んでたから、鼻から煙出たじゃねーかwwwwwwwwwwww
水泳部?剣道部の間違えでは?
こんな人知らないよwww
クオリティたけえwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
こんな時間帯ですが投下します。
あと超エピソード後編はそれに対する意見があったこと、やはり展開を重視しすぎて受け入れられない人も
いると分かり、それに関するシーンを破棄し簡潔にまとめ直すことにしました。
「ばかぁ…小太郎君のばかぁ…」
夏美は小太郎の胸を叩きながら泣いていた。
「すまねぇ…俺、夏美を守るっていいながらやられてもうた…」
「もう…私を一人にしないで…絶対に!」
悲しみが交錯し涙が止まらない。
「…」
それに応えるように小太郎は夏美を強く抱きしめた。
ぼんやりと外の世界を見る千雨、もう何度見慣れたものか…
「千雨、元気ないよね」
和美が後ろからやってくる。
変わらない部屋。5年前と何ら変わっていない。ネットアイドルの衣装も存在していた、それも5年前のまま。
現在のネットアイドルランキングにちうの名前はなかった。
「やめてたんだ」
「…勝手に入んな」
「ドア開きっぱなしだったよ」
「…けっ」
気に入らない仕草をとりながらも千雨は和美を部屋に入れる。
あの惨劇以来、千雨はネットアイドルとしての活動を自粛していた。
殺された生徒やその後の後始末、その他の出来事は千雨を含め生存者4人(正式には5人)に大きな傷痕を残した。
初めはネットアイドルとしての活動をする暇がなかった。
だがやっと普通の生活に戻れるようになったが千雨はあの衣装を着ることをしなくなった。
あれだけ自分が一番、慕ってくれるネット仲間が存在する居場所にいられなくなった。
その反応を見てバカみたいに笑っている自分がとことんバカらしく思えてきたから。
あんな世界を体験してあのころに安々戻れない。
千雨の求める普通の生活。何もなく平凡な日々。それを望んでいた。だからこれでいいと思った。
「…」
ポケットから煙草を取り出すがふとライターがないことに気づく。
当然だ、自分の持っていたライターはガス切れでそのまま投げ捨てたのだから。
「チッ」
煙草を折ろうとしたとき『シュポッ』っと音がした。
後ろの和美がライターを取り出して火を見せたのだ。そして箱から右手の薬指と小指で起用に一本引っこ抜く。
5年前に失われた右手の指は手袋で隠している、今は左手で生活をしていた。
「…珍しいな」
「いいじゃん。少しくらい」
和美のライターで互いに火を点ける。
互いに向かい合ったまま会話をしない。煙草の煙だけがその場に匂いだす。
「みんなに連絡入れたし…何かあったらすぐ電話が入るよ」
均衡を破った和美は事前にキャッチした情報を千雨に話す。
謎の闇組織の生き残りがついに壊滅したそうだ。それも公式の政府の人間ではなく一個人の手によって。
大体の予想は付いた、そんなことを平然とやってのけるのはたった一人。
「大河内は…どうなんだ」
「アキラは分からない。姿を消したままどこかに行っちゃったの」
あいつはもう人間ではない、人の姿をした鬼だ。復讐のためなら平気で人を殺せる。
「それと、これはまだ確信が取れてないんだけど…」
「?」
「超鈴音が生きてるって情報が入ってきたの」
「…」
ソファーでぼんやりと眠っている超を見つめるハルナ。
痩せこけた頬、尋常ではない傷つき方をしている両腕、治療しているときに見た超の傷だらけの体、顔の右半分の大火傷。
一体どんな扱いをすればこんなになるのか、自分だったら耐え切れず自殺しているほどだった。
そんな彼女をなぜ助けた、ずっと頭の中でその葛藤だけが続いていた。
5年前のバトルロワイアルを仕組んだのは他でもなく超なのだ。
その超が5年前の姿のまま傷だらけで倒れているのを発見し、保護した。
もしかしたらまた魔法がらみの出来事か?
またあんな思いをするとなると先が思いやられる。むしろ嫌だ。
だが死に掛けている超を放っても置けない、医者からはあと1時間その場にいたら命も危うかったと言っていた。
天才とも言われた超もまだ15の女。
目を覆うような拷問をされ、何十人もの兵士たちに汚され、そして最後は何も見えない暗い部屋に何日も放置された。
超の神経は時間を追うごとに削られていき、心に大きなヒビが入っていった。
それでも自分の自我を守りきった。それは尊敬に値する。
「…?」
ふと見ると超が目を覚ましていた。
「超…」
「なぜ…助けたヨ……」
「…」
ハルナは応えない、ただ俯いたまま言葉を発しない。
しかしハルナはその心境をついに語る。
「そりゃ私だって…あんたなんか見捨てればよかったかもしれなかった…あんたの罪は…許されないから…
でも、このまま助けなかったら…助かるかもしれない命を見捨てたら…私一生後悔するかもしれない…
ここで殺したら、私アキラみたいになっちゃうから…」
傷痕の残る腕を見てハルナは涙を流した。
「…」
超はそんなハルナをじっと見つめた。
「私が…みんなを殺した相手なのニ?」
「…え」
写真立てに飾ってある図書館探検部の写真を見た。
そこには仲良く笑っているハルナ、のどか、夕映、木乃香の姿。
「…3人とも、私が殺したようなものネ」
「…!」
ハルナの顔が俄かに変わりだす。
図書館探検部の中で唯一の生き残り、のどかと木乃香を見つけられずに放送で死をはじめて知り
夕映は狂わされた茶々丸によって殺されかけ、道連れで自爆した。
「茶々丸を狂わせるようにしたのは私ヨ、それに木乃香サンは刹那サンを騙して殺させたネ。
刹那サンは強いから、支えを自分の手で壊せば自分から壊れると思ったヨ」
突然5年前に起きたことを語りだす超。それを聞いてハルナは愕然とする。
超の犠牲者はこれだけではなかった、刹那まで。しかも木乃香を殺させるように騙したと…
両手の握りこぶしが強くなった。
「のどかサンは…構わず撃ち殺したヨ」
ガシャン
食器が当たりに散らばった。
痛々しい傷痕を残したハルナの両手は、傷つき抵抗出来ない超の首を締め上げていた。
つづく
短編なのに長くて申し訳ないですが、まだ続きます。
こんな夜更けにGJだこのやろう
GJだが、その表現は何かと間違ってるぞwww
表記ワロスwGJwww
作者1さん、GJ!
ttp://www.imgup.org/iup222680.jpg 私の方は…振り向ないで…
うん、ごめんね
私もだよ美砂、ありがとう。
二人とも、逃げるんだ!!
ゆーなは悪くないよ……
……桜子さんにはいつも笑顔でいてほしい
あははははははははははははははははははははは!!!!!
分かりました
――この人殺し
殺すからね
というわけでアキラ。
桜子とカモが死んだ時ガチ泣きしてしまった
>486
ついに桜子にも生き残りのチェッカーが振られると思ったらのリタイヤだから。
それ以外もいいとこなくすべてリタイヤ。
「なんてことだ!! 桜子が致命傷を受けている!!
これで桜子、またリタイヤ!!
解説の超さん、いいとこまでいったのですが……。」
「うーむ、個人的にはチェッカーを振られるまで残って欲しかったがネ
けど充分見せ場はあったと思うヨ」
いつかきっと、桜子でも生き残れる日が来るよ。
逆に生き残らないキャラでいて欲しい良い意味で。本格的に殺人鬼になるのも良いかも・・・
お久しぶりです。以前のカキコから1ヶ月ちょいですか。
で、何事かというと、実はそろそろ作品が書き上がりそうな勢い。あと残り数話といったところです。
なので、まぁ投下予約というか、他の作者さんがよろしいようでしたら、
作者1氏の短編投下が終わった後にでも第12部として私の作品を投下しようかなとか思ったりしてます。
〆切でも設けた方が執筆もはかどりそうなので。
というわけで作者6の投下宣言でした。でわ。
ktkrwktk
というか、一応第11部じゃないか?多分。
とりあえずワクテカして待ってますね。
>>490 お待ちしてました。
仕事の都合でなかなかこちらにお邪魔できませんが約2ヶ月ぶりの投下にwktkしております。
短編ですがそもそも投下する作者がくるまでの繋ぎ程度でやってましたので
実をいうとあの続きが未だに書き上がっていないのです、それに投下を3つくらいに分けないと長くなりそうですし。
もし投下をするのであれば短編は一旦打ち切りになりますけど…どうですか?
>>488 桜子生き残りEDを考えると、『なんにもしてないのに生き残っちゃったよ』の空気EDしか思い浮かばない(´・ω・`)
まぁ、ほら、散り際=見せ場だと思えば………
>>490 ktkr!
第六部好きなんで期待してます!
桜子の幸運の女神属性を有効活用してくれれば生き残りそうなんだがなあ…
>幸運の女神属性
ド素人の放った弾が眉間を綺麗に突き抜けていくという珍しいことをやってのけます
そこでロシアンルーレッツでふよ
一発だけ弾を抜けよ?
一発だけ込めたら当たり引いちまうから
>>492 11部だよ……orz
失礼しました。
>>493 なるほど……というか速レス感謝です。
ただですね、私としてもまだ書きあがったわけじゃない(まだあと数話残ってます)ので、
作者1氏が投下し終わるころがいいかなーと思ってたのです。
というわけで……それでは今週の土曜日までちょっとお待ちください。
それまでには書き上げようと思いますので。土曜日から投下しようと思います。
以上、作者6の投下宣言でした(またかい)。でわ。
ちょっと土曜の予定キャンセルしてくる
ちょっとちゃおりんからタイムマシン借りてくる
んじゃ俺はちゃおりん借りてくる
ちょっと待て、ちゃおりんを借りてどういうつもりだ。
保守
カシオペアもちゃおりん自身も貸してもらえなかったうえ思いっきり殴られたよ(´・ω・`)
行き場を失った衝動に身を任せ今更短編を投下してみる
作者6氏の再臨にwktkして勢いに任せて書いた
朝倉と千雨には暴走記者と無理矢理付き合わされるアシスタント(主にPC使う作業担当なのに連れ回されたり)みたいな友情があるのかなぁという妄想が先行している気もするが、反省はしていない
だが「前座だし、本編じゃできないような妄想先行ネタやってもいいかな」と思ってしまったことには素直に反省している
保守も兼ねて投下
「う……あッ………」
いてぇ。身もだえずにはいられないほど痛ェ。
いっそ感覚がなくなっちまった方が幾分マシだ。
制服の三分の二を赤黒く染めるほど出血してるっていうのに痛みが引かねぇのは人殺しへの天罰ってか?
だとしたら私に鉛玉を贈りつけてきた桜咲刹那(出席番号15番)に私の弾が一発も当たらねぇってのは些か不平等じゃねぇか。
クソが、容赦なく反撃してきやがって!
見ろよ朝倉、やっぱりどいつもこいつもやる気なんじゃねぇか━━━
傷を負った右の脇腹を左手で押さえながら、長谷川千雨(出席番号25番)は右手の拳銃へ視線を移す。
『ちうちゃん!………よかった、無事だったんだ』
その拳銃は、お人好しの朝倉和美(出席番号3番)が愚かにも千雨に渡した物だ。
『あ、この銃、ちうちゃんに預けとくね』
『はぁ?』
『こうでもしなくちゃ私のこと信用してくれないでしょ?』
その銃で撃ち殺されるなんて思いもせず、笑いながら銃を渡すなんて、馬鹿としか言いようがない。
『こんな馬鹿げたゲームに乗るような奴、いるはずないよ。明日菜達探して一緒になんとか脱出しよ?』
━━━ハッ。どうせお前も口ではそう言ってても腹の底じゃ私を利用して優勝しようって思ってたんだろ?
『……ちうちゃん……』
━━━そんな目で私を見るな!脅えろよ!泣けよ!憐れまれんのは私じゃなく、お前の方だろうが!
『はは……悲しいな……ちうちゃんのこと、けっこう好きだったんだけどなぁ』
「………るっせぇよ………」
頭の中で何度も再生される朝倉の映像にイラつき、傷口をえぐるように押さえ付ける。
武器を捨てておとなしく出て来い云々と叫ぶ桜咲も耳障りだ。
私は間違っていない。
みんなやる気なんだ。だから全員ぶっ殺す。殺られる前に殺る。
私は、何ひとつ、
「間違っちゃいねぇんだぁぁッ!」
誰にともなく叫びながら廊下へ飛び出し、玄関口に立つ桜咲に銃を向けた。
一瞬だけ朝倉と同様に桜咲が顔を歪めたのが見え、全身に衝撃が走るのと同時に天井しか見えなくなった。
もう痛みは感じない。
マシンガン相手に勝てるとも思わない。
それでも、踏ん張りのきかない足で千雨は立った。
日頃から孤立していたため周りを信用できず、一人生き残ると決めたこの島で最初のマーダー。
誰も信じない冷徹な殺人者と化した彼女は、戻れないところまで墜ちたことを認めたくなかった。
だからこそ、勝ち目はなくとも発砲する。
自分を否定できるほど、彼女のココロは強くないから。
自分は正しいと思ったまま死ねるよう、震える指で引き金を引いた。
「……ぁがッ!」
穴ぼこだらけの体にはいささか反動が強かったらしい。
明後日の方向に弾丸を飛ばし、無様にも四分の一ターンを決め背中から壁に激突した。
足から力が抜け、壁にもたれかかるようにずり落ちる。
「せっちゃん!な、何やっとん!?」
「お嬢様……」
玄関の方から何か話し声が聞こえる。
新たな声の主は近衛木乃香(出席番号13番)のようだ。
「お嬢様……彼女が…長谷川さんが突然発砲してきたんです……」
「せやかて、発砲なんかしたらあかんやん!長谷川さん、怖かっただけかも知れんやん!不安だっただけかも知れん!」
「お嬢様………ですが、こちらが攻撃を止め呼び掛けた際にも彼女は攻撃を止めませんでした」
「でも……」
「……申し訳ありません。お嬢様を危険な目に合わせたくないという気持ちでいっぱいで……」
うざってぇ。こちとら人生の閉幕ベルを鳴らそうとしてんだ、レズビアンごっこはよそでやれ。
━━近衛、やっぱりお前は大嫌いだ。
偽善ぶって私を撃った桜咲を咎め、なんだかんだで桜咲にだけ手を汚させて生き残るんだろう?
まったく、反吐が出るぜ。
「……もう、誰も私の目の前で死んでほしくない……私はみんなと手を取りたいんよ!」
━━━ハッ!馬鹿じゃねぇの?
みんな一緒に生き残れるなんて本気で思ってんのか?おめでたい馬鹿だな!
「夏美ちゃんと那波さんが心中するんも止めれんかった!目の前におったのに、私はなんにもやれんかったんや!もうあんな思いはしたない!」
ふうん、あの二人は自殺だったのか。だから何だって話だが。
「あーあー、第三回放送を始めるぞー」
朝倉は私が殺した。この手で、奴の腹に何発も鉛の弾を送り込んだ。
あの時もくそムカつく放送があったんだよ。銃を突きつけられた朝倉の偽善的なセリフを聞かされて、禁止エリアをひとつ聞き漏らしちまったんだ。それでCだかEだかと言ってたなんていう曖昧な記憶を頼りにここ、D−4に引き込もってたんだよ。
二人も死んで、殺し合いが始まってるんだと実感し少し冷静さを欠いてたとはいえ、放送の最中に朝倉と口論の末いきなり射殺したのは我ながら不味かったと思う。
おかげで、声を聞き付けショットガン持参でやってきた委員長をやりすごすのに苦労するはめになった。
「今回は死亡者無しだー、もっと頑張らないと首輪爆破だぞー。次、禁止エリアなー」
はは……んだよ、誰も死んでないのかよ。
銃声が聞こえないと思ったら、どいつもこいつも逃げ回ってんのか。
このまま全員首輪爆破で心中するつもりか?
まったく、馬鹿ばっかりだぜ。
『はは、はっきり言うねー……確かにちうちゃんに銃を渡すのは馬鹿なことかも知れないけどさ、賢いってのがこの場でちうちゃんに銃を向けるってことなら、私は馬鹿の方がいいよ』
ホントに、どいつもこいつも
『みんなだってそう。うちのクラスはさ、自分のことより他人のことを考えちゃうような馬鹿の集まりなんだよ』
馬鹿、ばっかり………
『だから、そんなマイナスに考えないでさ、諦めないで一緒に……』
「長谷川さん!」
「いけませんお嬢様!」
桜咲の静止を振り切り、近衛の馬鹿が私に駆け寄るのが視界の端に映る。
「死なんといて、お願いやから!一緒に……一緒に脱出の方法考えよ?一緒に生きて帰ろ!みんな、一緒に……」
━━うるせぇんだよ。
「何で……どうしてなん?」
拳銃を向けられ悲しそうに顔を歪める近衛の手を取り、この場を離れるよう桜咲が促す。
「長谷川さん……」
「…………」
「………行きましょう、お嬢様」
チラリとこちらを見、それから近衛を無理矢理連れていく。
視界から、ようやく二人の姿が消えた。
あれぇ、終わり?
━━桜咲の奴、全てを悟ったような面して行きやがった。
一人で静かに死なせてくれるのはありがてぇが、あの面は少しムカついた。
いきなり襲った私にまで気を使ったって感じなのが妙に腹立たしくて
『みんな一緒に生き残れるなんて本気で思ってんのか?おめでたい馬鹿だな!』
自分が殺されるかもしれないのに。
『んだよ、誰も死んでないのかよ』
このまま誰も死ななきゃ全員死ぬってぇのに、まだ三人しか死んでないんだぞ……
『ふうん、あの二人は自殺だったのか』
━━結局私しか殺してねぇんじゃねぇか。
『こんな馬鹿げたゲームに乗るような奴、いるはずないよ』
やる気あんのかよ、クソ………
「ホント、馬鹿ばっかりだな……」
なんとか顔を動かし、再び朝倉から奪った銃へと視線を向ける。
ぼやけた視界に、朝倉の顔が映ったような気がした。
━━私は、何にも間違ってない……殺されそうだから、殺したんだ……
『んー、頑固だねぇ、ちうちゃんは』
━━あぁ?
『あぁ、それよりさ、頼みたいことがあるんだけど』
『却下。帰れ』
これが、走馬灯ってやつなのか………?
『そんなこと言っていいのかな〜?』
『ぐッ……テンメェ……』
そういやアイツ、よくちうの写真を餌に私を利用してやがったな……。
『まぁまぁ、お昼御飯くらいなら奢るからさ』
そのくせ、変なところで私に自由を与えたり。
『わざわざトイレの個室にこもってまで修学旅行先でサイト更新するなんて変わってるね〜。たまにはそういうの抜きで楽しもうとは思わないの?』
『教師の唇奪わせるなんてバカみたいなゲームをわざわざ開催したお前には言われたくない』
………何でだよ。
『えーっ、でもなんだかんだで楽しかったでしょ?』
『んなわけねーだろ眠いわ足痛いわで最悪だったっての』
何で、コイツのことばかり思い出すんだよ………
『ちうちゃんのこと、けっこう好きだったんだけどなぁ』
「あ……さくらァ………」
結局、勝手に周りを疑って、自分一人だけが殺人鬼になってしまった。
認めたくなかった現実が、虫の息の千雨に重くのしかかる。
「お前の……言う通りだ……」
どいつもこいつも、クラスメートを殺して一人だけ生き残ろうなんて考えてなかった。
他人のために自分を犠牲にする本物の馬鹿の集まりなんだ、このクラスは。
━━━━━いや、違うな。そうじゃないよな。アイツらは何も間違っちゃいないんだよな。
「私が……馬鹿だったんだな………」
どんなに辛く理不尽な目にあっても、初めての人殺しに全身震えるほどの想いをしても、この島に来てから一度も━━━いや、それよりもずっとずっと前から流すことのなかった涙が、静かに千雨の頬を伝う。
その滴が首筋まで流れたときには、もう千雨の意識はなくなっていた。
最期に己の過ちに気付いてしまい、後悔と自責の中死んでいったのだ。
それと引き替えに、自分に友情を向けてくれた者がいたんだと知った彼女の最期は、はたして幸せなものだったのだろうか。
それとも、さらに苦しむこととなり冷たく重い自業自得の辛い最期だったのだろうか。
それは、もう誰にもわからない……
>>510 今終わりました
あのタイムラグは、改行規制に引っ掛かってちとその場で構成を変えたからです(´・ω・`)
お目汚しスマソ
何度も目にしてきた締めくくりだ
文体はよかったですよー。個人的には、ラストはお約束で自らのこめかみに引き金引いて欲しかったかも
GJでした!
>>513 しっかりまとまった文章でしたね。GJです。
>土曜に投下される作者6氏へ
あなたのその文章力で1部や8部を超える作品であることを期待してこの場を去りたいと思います。
短編(の割りに長いですが…)はこのまま打ち切りになりますのが、またいつか書ける日を待っています。
それでは。
短編は出来れば、また長い間作者が現れなかったときにでも続きを書いてほしい。
というか、あの状態のまま終わらせるのはこっちとしてもあまりスッキリしないので。
もしも余裕が出来たら、また続きの投下お願いします。
短編は完結したらうpろだにあげればいいんじゃね?
さあ、土曜日の夜ですよ wktk
ついにこのときが来た……二作目の構想を練り上げたのが2月の初めごろだから、
作り上げるのに4ヶ月か……長かった。
もう後戻りは出来ませぬ!
というわけで、今流行の作者注。
この作品は「ネギま!」キャラを使ったバトルロワイアルです。
なので作品中で好きなキャラが悲遇の死を遂げたとしても、投げやりにならずに温かい目で見守ってください。
そしてこの作品について。
出来るだけ努力はしましたが、これだけ多くの作品が出てきたため、どうしても他作品と表現が似通った場面があるかもしれません。
指摘、批判については出来る限り受け入れようと思いますのでそれはドウゾヨロシク。
では、ネギまバトルロワイヤル、第11部をどうぞお楽しみください。
リアル遭遇
1 opening
朝日が高く昇り、景色に色をつけていく。
それに照らされ、1つの大きな建設物が現れる。
ここは魔帆良学園。
生徒の数とその敷地の広さを除けばごく普通の私立中学である。
普通というにはあまりに巨大すぎる大木があったり、
普通というにはあまりに危険すぎる図書館があったりするが、
とりあえず誰も特に気にはかけていないので普通ということにしておこう。
当人たちが普通と思えばそれは普通なのだ。
そしてその最奥にある女子高エリア。
その中の学園に続く大通りを、二人の生徒が走っていた。
もはや誰もいない大通りをすごいスピードで走り抜けていく。
「このか!始業まで後何分?」
走っていた女子生徒、神楽坂明日菜(番号8番)が、隣でローラーブレードで走る女子生徒、近衛木乃香(番号13番)に話しかける。
木乃香は腕時計を一度のぞく。
「えっと……もう鳴ってまうなぁ。」
困ったように言っているがその顔は笑っている。
その口調にはなぜか余裕さえもみえる。間に合うと思っているのではなく、しょうがないと開き直ってるようだった。
しかし隣にいる友人はそうも思っていない。
急ぐよ!と一言言うと、明日菜はそのスピードをさらに上げた。
あわてて木乃香もついていく。
キーンコーンカーンコーン
そしてその瞬間、チャイムがなった。
「あ……」
「あー……」
二人の声だけが、むなしく大通りに響いた。
「そもそも今日に限ってネギ坊主がいないのが悪いのよ!」
学校の校舎内を、明日菜が愚痴を言いながら歩いていく。
その隣で明日菜をなだめながら木乃香が続く。
「それにしてもネギくん、今日はどないしたんやろ?」
「さぁね!朝聞いたときは緊急の職員会議だの何だの言ってたけど!」
明日菜はすこぶるご機嫌ナナメに、しかし木乃香の質問には律儀に答えながら階段を上っていく。
ほどなくして自分たちの教室が見えた。
時間からしてちょうど朝のHRが終わったころ。
「ほら、気を取り直してこ。な?」
「はぁ。」
明日菜はため息を1つ吐くと、ドアに手をかけた。
勢いよくあける。
「みんなおはよー。」
明日菜がうつむきながら力なく挨拶をし、二人で教室に入っていく。
返事は、なかった。
「あれ?」
明日菜が驚いて顔を上げ、周りを見る。
道理で返事がないはずである。その教室には、誰一人としていなかった。
「あれ?誰もいーひん。」
遅れて入ってきた木乃香が、明日菜に続いて驚く。
二人はいったん教室を出て表札を見た。
そこにはきちんと「3−A」と書いてある。
「もしかして学校休み?」
「今日は平日え。」
「教室移動とかあった?」
「ウチ何も聞いてへんよ?」
あらゆる可能性を挙げていくが、やはりどれでもない。
二人は教室に入ると、周りを改めて見回す。
みると、それぞれの机にはきちんと鞄がかけられていた。
「ほら、やっぱりみんな学校に来てるよ!」
明日菜が少しうれしそうに木乃香に言った。
「でも、ほんなら何でみんなおらへんの?」
「だよねぇ……。」
木乃香の質問に明日菜も黙ってしまう。
それからしばらく、両者とも何も発しない時間が続いた。
いい案が浮かばず木乃香が首をひねっていると、不意に明日菜が声を上げた。
「それじゃあ職員室に行ってみよう?先生なら何か知ってると思うし。」
「そうやな。そうしよか。」
ここにいても最早何もわかりはしないと、明日菜は職員室へ行くことを決めた。
よくよく考えてみれば当然といえば当然の考えなのだが、二人はそれを名案だとはやし立てる。
何の反対もなく意見を一致させると、職員室に向けて教室を出ようと歩き出した。
「え……?」
そこで異変が起きた。
「ん?……どうしたの?このか!?」
突然明日菜の背後で、木乃香がひざを突いて座り込んだ。
あわてて明日菜が駆け寄る。
「どないしたんやろ……急に体が……」
木乃香自身、わけがわからないといったようにその場にしゃがみこんでつぶやいた。
木乃香の耳に明日菜の心配そうな声が聞こる。
顔を上げ、自分を心配そうに見る明日菜を見上げると、まるでカメラのピンボケのようにぼやけてしまって良く見えない。
そしてそこで視界が暗転した。
「このか!?……っ!」
突然倒れた木乃香の名前を強く呼んだ瞬間、明日菜の視界もゆがんだ。
次に、体の自由が利かなくなる。
バランスが取れなくなり、木乃香と同様にその場にうつぶせに倒れた。
腕に力が入らない。まるで自分の体ではないようだった。
そしてそのまま意識が遠くなっていく。
(何よ……これ……)
薄れ行く意識の中、最後に明日菜が見たのは教室に入ってくる数人の人影だけだった。
2 開幕
それは今朝のことだった。
その日も坂明日菜は、ほぼ日課となりつつある新聞配達のバイトにいくために日も昇りきらないうちに目を覚ました。
簡単な着替えを終わらせ、ジャージを羽織るとそのまま部屋を出た。
暖かくなってきていると天気予報ではいってるが、それは日中の話。
早朝の空気はやはり肌寒く、吐く息は白い。
だが別段明日菜は寒さに弱いわけではないし、走っていれば身体も温まってくるので大した問題ではなかった。
明日菜は見知ったコースを走りながら次々と新聞を放り投げていく。
それらはすべて正確に民家の郵便受けに突き刺さった。
その日の分の配達を終わらせ、明日菜は学生寮に戻ってきた。
時間を見るとまだ五時を少し回った程度。
もう少し寝ることができるかな、とそんなことを考えながら寮の扉を開け、自室へと入っていく。
まだこの時間では同居人の二人は寝ていると思い、忍び足で部屋の奥へ。
玄関を上がってすぐそこは、自分たちが寝ている二段ベッドのある部屋だった。
そっと顔を覗かせると、二段ベッドの下ではやはり木乃香が安らかに寝息を立てていた。
起こさないようにそっと明日菜が近づき、ベッドのはしごに手をかけた時。
不意に気配を感じ、視線をそちらへと向けた。
そこはもう一人の同居人、ネギ・スプリングフィールドが寝床にしているロフトだった。
みると何かごそごそと動いているのがわかる。
「……ネギ?」
ためしに名前を呼んでみる。寝ている木乃香を起こさないように、あくまで小さな声で。
動いていた影が、こちらを向いた。やはりその影の正体はネギだった。
「あ、明日菜さん帰ってたんですか?おはようございます。」
「あんたこんな朝早くに何してるのよ?」
律儀な英国紳士の挨拶を軽く無視し、思っていることを問いかける。
教師にしてもまだ出勤するには早すぎる時間帯だった。
ネギはこれまた律儀に返事を返す。
「えっとですね、今日は早めに学校に行かないとだめらしくって。緊急の職員会議らしいです。」
「緊急の職員会議ぃ?」
明日菜はネギの言ったことをそのまま返した。ネギがうなずいて肯定する。
「何でまた今日?何かあるわけ?」
「さぁ……僕も詳しいことは聞いてないんです。」
ネギがロフトから降りてきながら返す。
そして床に下りると腕時計を見る。
「あ、もう時間ですから行きますね。」
そういうとネギは玄関に向けて歩き出した。
普段ならそれをただ見送って終わりのはずだった。
そこに不審な動きはどこにもないし、ネギが何かを隠しているようにも見えなかった。
明日菜にとっても、特別気にかけることは何もない。
ただ見送って、自分はまたベッドにもぐりこんでもう少し眠るはずだった。
だがこのとき、明日菜は何か言いようのない不安感を感じていた。
「ネギ!」
思わず声が出た。ネギが振り向く。
「はい?」
いつもの顔で返事を返してくる。そこには何の変化もない。
「えっと……」
呼び止めたは良いものの、その後が続かなかった。
そもそも自分もなんでとめたのかもいまいちわかっていない。
「……なんでもない。」
結局、見送ることしかできなかった。
「…?、それじゃ、行ってきます。」
ネギは一瞬不思議そうな表情を浮かべるが、すぐに部屋を出て行った。
そして、部屋には静寂が訪れる。
明日菜は一度自分の胸を押さえ、そしてすぐに自分のベッドへと向かい、布団をかぶった。
あの変な気持ちを忘れようと、必死に目を瞑って眠りについた。
それは、今朝のことだった。
「ん?」
そしてそこで明日菜は目を覚ます。
「……夢?」
ゆっくりと体を起こし、自分の周りの状況を確認する。
何が起こったかを思い出す。
確か自分は木乃香とともに学校へ急いでいた。
そしてチャイムがなった後に校舎につき、教室へと入ると誰もいなくて、
職員室に行こうとしたら木乃香が倒れ、そしてそのまま自分も意識を失って……
「そうだ、このか!?」
あわてて周りを見渡した。
木乃香は自分のすぐ隣で眠っていた。
「ねぇこのか、このか!」
「ん……あれ、アスナ?」
完全には開ききっていない目をこすりながら、木乃香が目を覚ました。
「このか、大丈夫?気分は?」
「え……大丈夫やけど?」
「そう……」
確かに見たところ特に木乃香に異常は見当たらない。とりあえずは大丈夫のようだ。
次に明日菜は周りをじっくりと見渡す。
すると、そこにはクラスのみんなが全員いることがわかった。
みんなが仲のいい人たち同士で集まってなにやら話しているのが見える。
表情からして、やはりこの状況に混乱していることが見て取れた。
そのときやっと明日菜は自分の周りの、この部屋について注目し始める。
そしてその異変にやっと気づいた。
「ここ、どこ?」
そこは普段見慣れた麻帆良学園の教室とは似ても似つかない場所だった。
周りは無機質な鉄筋コンクリートで、広さだけなら普段の教室とほとんど同じだが、それ以外はまったく異質の空間だった。
自分たちが座っている椅子もいつもの学校のものではなく、パイプ椅子だった。
机も学校の一人1つずつの机ではなく、隣と一緒になっている長机だった。
部屋の一番前には場所に似合わない教卓がおいてあり、壁にはホワイトボードがかけてある。
その見たこともないような場所に、自分たちはいた。
「あれ?」
不意に隣にいた木乃香が声を上げる。
振り向くと、なにやら明日菜に注目しているらしいことがわかった。
「どうしたの、このか?」
「明日菜、それ……」
そういって木乃香は明日菜の首の辺りを指差した。
明日菜は指差されたところに手を持ってくる。するとひんやりとした感触が手先に伝わった。
それを伝っていくと、首の周りを一周し、元の位置へ戻った。
「首輪?」
それは首に巻きついている、首輪らしかった。
明日菜は怪訝そうな顔をしてそれを触り続けた。
いつこんなものをつけたのだろう?まったく身に覚えのないものだった。
「て、このかも……」
よく見ると、木乃香の首にも同じようなものが巻きついていることに気づいた。
そういわれて木乃香も自分の首に手を回す。そして明日菜と同じように、冷たい感触を味わった。
「何、これ……。」
「みんなついてるよ、それ。」
突然、別の方向から声が聞こえる。
驚いて振り向いてみると、柿崎美砂(番号7番)がこちらを向いていた。
奥には釘宮円(番号11番)や椎名桜子(番号17番)の姿も見える。
そしてその3人にも、首輪がされていた。
「ねぇ柿崎、ここはどこなの?何で私たちこんなところに?」
「そんなの私が聞きたいわよ、朝のHRが始まる時間になって、突然眠くなっちゃって……気がついたらここにいた。」
そういうと力なく柿崎は椅子にもたれかかる。
やはり誰もこの状況についてはわかっていないらしかった。
ほとんどの生徒が目を覚まし、あたりのどよめきがだんだんと大きくなり始めたころ。
見計らったように、部屋の扉が開いた。
全員の視線がそちらへ向く。自然と会話もやんだ。
乾いた靴音とともに、数人の男性が入ってくる。
一人を除いて全員が、緑色の迷彩服を着込んだ屈強そうな男たちだった。
その全員が肩に銃を持っている。まさに軍隊といったいでたちである。
そんな見知らぬ人たちの中で、一人だけ見知った人間がいた。
それは緑色の迷彩服の中ではかえって目立つ、スーツを着込んだ男性。
「瀬留彦先生?」
誰かが言った。そしてそのとおりだった。
瀬留彦は迷彩服の男たちに囲まれたまま、部屋にある教卓の前に立つ。
そして部屋の中でわけもわからず座っている生徒たちをしげしげと眺めると、一人で納得したようにうなずいた。
「全員いるみたいだね。」
ゆっくりと口を開いた。
「君たちが考えていることは大体想像がつく。ここがどこで、なぜ自分たちはここにいるのか、そんなところだろ?」
おそらく全員が考えているだろうことを瀬留彦が言った。
やっとこのわけのわからない状況の説明がされる。全員が瀬留彦の次の言葉を待った。
「まずここがどこかという説明は後でしよう。なぜ君たちがここにつれてこられたかの説明からする。」
そこでまた区切った。
もったいぶるだけもったいぶって瀬留彦は教卓に両手をつくと、やっと次の言葉を発した。
「君たちには殺し合いをやってもらう。」
全員が、その言葉に驚き固まる。
誰もが状況を理解できない中、それでも誰もが確信したことがあった。
自分たちの日常が、今確実に崩れたということ。
3 ゲーム開始
皆が固まり、言葉を失っている中で、瀬留彦は兵士に支持して大きな紙を目の前のホワイトボードに張り出した。
紙一面に描かれたそれは、大きな地図だった。
「これが今君たちがいる場所。大陸から大きく離れた場所にある小島です。
本来ここには多くの住民が住んでおりましたが、今回このプログラムを行うにあたって避難してもらいました。」
地図をたたきながら説明をしていく。
首輪、爆破装置、禁止エリアに支給武器。
そのどれもが、自分たちに殺し合いを強要する要素となっている。
特に首輪の存在は決定的だった。これにより実質、自分たちの命は政府側の手に握られることになる。
「無理やり引きちぎったりはしないほうが懸命だ。そうすると同時にコンピューターが感知して、爆破信号を送るようになってるからな。」
その説明を聞いて、首に手を回していた何人かの生徒の顔がひきつった。
首輪を触っていた手を慌てて膝の上に置いた。
それからも多くの説明事項を饒舌に語る瀬留彦を前に、誰も口を挟むことはしなかった。
この状況に絶望しているのか、あるいは他の何かか。
明日菜は隣でおびえている木乃香をなだめながら、瀬留彦に気づかれないように回りを見渡す。
隣では図書館探検部の3人が固まって座っていた。
木乃香と同じようにおびえている宮崎のどか(番号27番)を、明日菜と同じように早乙女ハルナ(番号14番)がなだめていた。
後ろを向くと、心配そうに木乃香のことを見ていた桜咲刹那(番号15番)と目が合った。
木乃香の身を案じている刹那に、明日菜は目配せで安心するように言った。
刹那にもそれが伝わったらしく、少し落ち着いて、今度は前で説明をする瀬留彦をにらみつける。
それを見て明日菜も前を向き直った。
「それと、質問される前に1つ言っておこうと思う。多分みんな考えてるんだと思うんでね。」
そう前置きして、瀬留彦は続けた。
「担任のネギ先生のこと、だ。彼もこの島に来ている。」
一瞬だけ、部屋がざわめいた。
そして再び静寂。
「この島のどこかに彼はいるよ。君たちと同じように、首輪をして、参加者としてね。」
再び、部屋がざわめく。今度は少し長かった。
「これ以上のことは言うことはできない。あとは君たちが各自で先生と会って話してください。」
そこで話は終わった。誰も、そのことについて問い詰める人はいなかった。
「説明については以上で終わりです。質問のある生徒はどうぞ質問してください。」
瀬留彦がそういってクラスメイト全員に振り返る。
しばらく、誰もしゃべらない時間が続いた。
だが、ついに一人が手を上げた。
「ん?」
瀬留彦がそれを見つける。
「明石さんですね、どうぞ。」
そういうと、前の席のほうで手を上げた明石裕奈(番号2番)に発言を促した。
周りでは、和泉亜子(番号5番)等が心配そうに裕奈を見ている。
裕奈の表情は暗い。少しうつむき加減でいるため、前髪が影を作り表情がよく見えなくなっている。
全員が見守る中、裕奈は立ち上がり、
「どうしてこんなことするんですか?」
そう、切り出した。
少し間が空いて、答えが返ってきた。
「ふむ……すまないね、それについても伝えることができないんだ。悪いがその質問に答えることはできない。」
瀬留彦は申し訳なさそうに答えた。だが悪びれている様子はない。
「ふざけないで……」
震えた声で裕奈はそう返した。教卓でこちらを見ている瀬留彦へと向き直る。
「勝手にこんなところにつれてこられて、いきなり理由もわからず殺し合いをしてもらう?
ふざけないでよ!そんなことできるわけないじゃない!」
裕奈はそう言うと瀬留彦を睨み付ける。
周りにいた迷彩服の男たちがいっせいに裕奈のほうを向いた。
しかし裕奈は視線をそらすことはしなかった。
瀬留彦は自分を睨み付ける裕奈をしばらく黙ってみていたが、じきに口をひらいた。
「君が望む望まざるにかかわらず、これはすでに決定事項なんだ。拒否権はないよ。」
厳しくそう言い放つ。
「さっきも説明したとおり、この首輪は3日たてば自動的に爆発する。つまりそれまでに君達は残り一人になるまで殺しあわなくちゃいけないんだよ。」
瀬留彦はずっと裕奈に向けていた視線をすこしずらし、その隣で座っている3人に目を向けた。
それに気づいた3人が、一瞬体をびくつかせた。
「下らない友情ごっこを演じていないで、今からでも友達を出し抜く作戦でも考えたらどうだい?」
「っ!!」
その心無い言葉が最後の引き金となった。
裕奈は握りこぶしを作ると、そのまま瀬留彦のもとへ駆け出す。
「ゆーな、だめ!」
大河内アキラ(番号6番)があわててとめようとしたが、もはや遅かった。
裕奈は瀬留彦に詰め寄ると、その顔面めがけて殴りかかった。
そしてそれは、瀬留彦の顔一歩手前でとまった。
彼女の拳は別の男の手によってとめられた。手首を握られ、そこで手が止まっていた。
男は裕奈の手をそのまま振り払うと、驚愕しているその顔面向けて思いっきり殴りつける。
裕奈はその衝撃で自分がもと来た道へと吹き飛ばされた。
「ぐっ……」
床に倒れた裕奈はうめきながら体を起こす。
すると目の前にさっきの男が立っていた。
「教師に手を上げるつもりだったのかい?」
男の後ろに立つ瀬留彦が言った。裕奈は答えず、じっと瀬留彦を睨む。
自分を睨み付ける裕奈を見て、わざとらしく大げさにため息をつく。
「困ったなぁ、君がここまで頑なだとは。でも早いうちに考えを改めたほうがいい。」
瀬留彦がそういったと同時に、前にいた男が腰のホルスターから黒光りする銃を取り出した。
銃口が裕奈に向けられる。
「プログラムを円滑に進めるためならば多少クラスメイトを殺してもかまわない。そう言われているんだよ?僕等は。」
銃の標準は裕奈の頭に向けられている。あとは軽く引き金を引くだけで銃弾が裕奈を襲い、命を奪う。
裕奈の顔から血の気が引く。目の前に突きつけられたリアリティのある“死”に、初めて襲われる感覚に、恐怖を感じている。
「わかったらきちんと僕等に謝って、席に座りなおしなさい。わかったね?」
裕奈はずっと下を向いて、何かをつぶやいていた。
「返事は?」
瀬留彦がせかす。裕奈はゆっくりと顔を上げた。
返事は相変わらず返ってこなかったが、その目はじっと瀬留彦をにらみつけていた。裕奈の、最後の抵抗だった。
「ふーん……」
その表情をみた瀬留彦は一人納得する。
「残念だよ。」
「ゆーなぁっ!」
その言葉を合図に、男は銃のハンマーを起こした。
クラスのいたるところから声が聞こえた直後、乾いた破裂音が響いた。
しばらくの間、時間が止まったかのように誰もが動くのをやめ、声も上げなかった。
「……え?」
そしてその後に最初に聞こえた声は、死んだと思われた裕奈の声だった。
その目は大きく見開いている。
状況がまったく理解できない中、裕奈の隣に立っていた亜子が声を上げた。
「あ……アキラ…。」
見ると、倒れている裕奈をかばうため、覆いかぶさるようにアキラが倒れていた。
その両手は裕奈を抱きしめている。
「アキ……ラ?」
裕奈が再び声を上げた。自分に覆いかぶさっている親友の名を呼ぶ。
そのとき裕奈はアキラの背中を見て、再び目を見開いた。
それは本来、裕奈に撃ち込まれるはずだった弾丸が、アキラの背中に深くめり込んでいた。
そこから赤黒い血がにじみ出てきて、制服にしみ込んでいた。
「アキラ!アキラァ!」
再び裕奈はアキラの名を呼んだ。叫んだ、といったほうが正しいか。
「ゆーな……ダメだよ……」
返事は返ってきた。とても小さい声だった。
「今は逆らっちゃダメ……耐えるの。きっと何とかなるから……だから……今は耐えて。」
そう言うとアキラは体を起こし、目の前で倒れている裕奈の顔を見て、いつもの微笑みを見せた。
しかし、口元からは赤い血が滴り落ちていた。
「大丈夫……きっと何とかなる。そしたら……みんなで……帰ろ……。」
そう言うとアキラは、再び裕奈の体に倒れた。
「アキ……ラ……」
裕奈はアキラの体を自分の隣に横たえると、もう一度だけ、アキラの名を呼んだ。
返事は、返ってこなかった。
「そんな……」
亜子、そして佐々木まき絵(番号16番)が口を手で押さえて泣いていた。
他のクラスメイトは、その様子を呆然と見詰めている。
目の前で起きている事態を、ただ黙って見ているしかなかった。
裕奈はアキラの死体を前に、力なく座っていた。じっと親友の亡骸を見つめている。
そこに、再び男が銃を突きつけた。
「友達かばって死んじまうとはご苦労なことだぜ。」
はき捨てるようにそういった。
裕奈はゆっくりと男のほうを振り向く。その顔は無表情だったが、目には殺意がこもっていた。
「ゆーなぁ!!」
勢いよく立ち上がろうとした裕奈に向けて、亜子が声を荒げる。
その声を聞いて裕奈は動きを止めた。
そして、ゆっくりと立ち上がった。
「……ごめんなさい。」
裕奈が、すごく小さな声で言った。
「ん?」
男が聞き返す。
「すみませんでした……許してください……」
今度はさっきよりも少し大きめに言った。それでもかなり小さかったが。
男はその言葉を聞き、一度瀬留彦の方を向いた。
瀬留彦が一度だけうなずくと、男は裕奈に向けていた銃を自分のホルスターにしまった。
そして瀬留彦の元へと戻っていく。
裕奈も席に着いた。
「う……ぐ……ヒック……」
握り拳を震わせながら、裕奈は泣いていた。
「他に質問は?」
ないとはわかっていながら、瀬留彦は事務的に聞いてみた。無論手を上げるものはいない。
「それではこれからくじで出た番号の人から出て行ってもらう。これは待ち伏せなどに関する出席番号のハンデをなくすためです。では……」
瀬留彦が少し大きめの箱に手を入れ、そこからピン球くらいの大きさのボールを取り出し、書いてある数字を確認する。
「ん?2番……か。結局一番最初は君らしい。」
にやりと笑いながら、瀬留彦は席でうつむいている裕奈に言った。
裕奈はゆっくりと椅子から立ち上がると、出口に向かって歩いていく。
出るときに軍服の男から乱暴に緑色のデイパックを受け渡される。少しよろめいたがきちんと受け止めた。
そしてそのまま一言も発することなく教室を出て行った。
瀬留彦はそれをまじまじと見送った後、小さくつぶやいた。
「ゲーム開始だ。」
大河内アキラ、死亡 残り29人
今日は11時ごろにも投下予定です。
指摘、批判どうぞよろしく。
それではまた。
ひゃほーう!
GJです
続きにwktkしながら久しぶりに六部読み直そっかなぁ
やべ、まだ一発目の投下なのに鳥肌が……!
アキラアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!
GJすぎてwktkが止まりません!
長編きたあああああ!!!
久々に、ゲーム開始のシーンって重要だよなと思った
だぁぁぁぁ!!寝過ごした!orz orz
申し訳ない!とりあえず残り投下です!
4 もう一人の参加者
「う……ぅん」
小さく声を上げて、少年は目を覚ました。
ゆっくりと体を起こし、軽く伸びをする。
その後、まだ完全には開ききっていない目で周りを見渡した。
向かいの壁に、畑を耕すときに使うような鍬や、草を刈り取る鎌などが見える。
自分の隣には土などを運ぶ一輪車があった。
どうやらここは農具などを保管しておく倉庫らしかった。
中は薄暗く、粗末なつくりの倉庫の隙間から入ってくる日の光だけが部屋を照らしていた。
その様子を見て、少年は一言。
「ここ……どこだろう?」
少年、ネギ・スプリングフィールドは、自分に何が起こったのかを整理することにした。
確か今朝(とはいえ、今が何日なのかはわからないが)は朝早くに学校に行った。
緊急の職員会議らしかった。昨日の夜突然教えられた。その内容は、「数日前に起こった盗難事件についての会議」らしい。
数日前、ここ麻帆良学園のデータバンクが何者かのハッキングを受け、情報を引き出された形跡があったのだ。
盗まれたものは麻帆良学園の設計図データ。誰が、一体何の目的でそんなものを盗んだのかは不明だが、学園は全力を挙げて犯人の逮捕に乗り出している。
そのことについて教師たちに知っておいてほしいことがあるらしく、そのために今回の緊急の早朝会議になった、ということだ。
ネギは特に疑問を持つことなく、言われたとおりの時間につくよう、朝早くに起き、学校へ行く支度をしていた。
寮を出るときに神楽坂明日菜(番号8番)に挨拶をしたこともよく覚えている。
早朝の学校は人もまばらで、とても静まり返っていた。
普段ならにぎやかだが、今は誰もいない廊下を歩いていき、職員室へとたどり着く。
扉を開けて、失礼します、と一言言ってから入る。教師だからその必要はないのだが。
そして周りを見ると、誰もいなかった。
言われた時間きっかりに来たというのに、誰もいない。ネギは不思議そうな顔をしながら職員室の中を散策した。
ひとしきり職員室内をまわりきるが、やはり誰もいないし、誰かが来ることもなかった。
「時間、間違えたかな?」
そういいながら時計に目をやったとき。
ネギの耳に、何かが聞こえた。
とても小さな音だったため、危うく聞き落とすところだった。
音のしたほうを向くと、そこは職員室内でコピー機などを置いてある部屋。
どうやら物音はここからしているらしかった。
ネギはゆっくりとその部屋へと近づき、扉についている窓から中をうかがう。
そこには、幾つか並ぶコピー機とともに、瀬留彦の姿があった。
「瀬留彦先生?」
みると瀬留彦は携帯電話で誰かと話をしているらしかった。
しばらく見ていると、瀬留彦は携帯のスイッチを切り、ポケットにしまう。
ネギはそれを確認すると扉をあけ、部屋へと入っていく。
「瀬留彦先生!」
ネギが声をかけると、瀬留彦は驚いてこちらを振り向く。その表情は声をかけられて驚いただけとは思えない形相だった。
瀬留彦は声の主がネギだとわかると、ほっと胸をなでおろした。
「ネギ先生……」
「あの、おはようございます、瀬留彦先生。今日は緊急の職員会議って言ってましたよね?」
ネギに今日、早朝に職員会議があるということを告げたのはほかならぬ瀬留彦だった。
瀬留彦は数回うなずいて返事を返す。
「そうだよ。とても重要な会議だ。僕と、君のね。」
「え?」
瀬留彦の言ってることがよくわからずに、ネギが怪訝な表情をする。
「今日の会議は、盗難事件についての話し合いじゃ……」
そう聞いてくるネギを瀬留彦は無視して、口を開いた。
「ネギくん、バトルロワイヤル、というものを知っているかい?」
「え?バトル……ロワイヤル、ですか?」
聞いたこともない名前だった。
「いえ、よくわかりません……。」
申し訳なさそうに、正直に返した。
瀬留彦はまた数回うなずいて、そうだよね、と小さくつぶやいた。
「簡単に言うとね、中学3年生のクラスを一クラス使って行うゲームみたいなものさ。」
「ゲーム、ですか?」
ネギは半分混乱しかけていた。
そんなゲームを自分はまったく聞いたこともないし、瀬留彦がこのタイミングでこの話をしてくる意味もわからなかった。
「そのゲームのルールってのがね、クラスのみんな一人一人に武器を配って、殺し合わせる、というものなんだ。」
「え?」
ネギが驚愕の表情を見せて固まった。
瀬留彦はかまわず続ける。
「殺し合いの際の反則はなし。とにかくどんなことをしても良いから自分以外のクラスメイト全員を殺す。舞台は、大陸から遠く離れた孤島を使う。」
「な、なにを――」
「クラスの生徒にはみんなに首輪がつけられて、強制的に殺し合いを要求される。三日以内に勝負がつかなければ首輪を全部爆発させるとか言ってね。」
ネギの言葉をさえぎりながら、説明を続けていく。
「死んだ生徒は定時にされる放送で告げられ、そのときに禁止エリアも作られる。少なくなってきた生徒を効率よく接触させるために。」
「……」
「そして最後の一人になれば晴れてその生徒は優勝。家に帰ることができるって寸法さ。」
そこで説明が終わった。
「どうだい?」
瀬留彦はネギを見て言った。
「そんなひどい話を僕にして、どうするつもりなんですか?」
ネギはすこぶる気分を害していた。その様子を楽しそうに瀬留彦は眺めている。
「ネギ先生はこのゲームを好きにはなれないみたいだね。」
「当たり前じゃないですか!殺し合いなんてばかげてますよ!」
思わず声を荒げて反論する。それでも瀬留彦はいたって冷静だった。
「だとしたら辛いことになる……」
「え?」
「実はね、このゲームを、この学園のクラスで実施することにしたんだよ。開始日時は今日だ。」
その言葉を聴いて、ネギの頭の中である可能性が浮かんだ。
もしそうだとするなら、このタイミングで瀬留彦が自分にこんなことを話したことにも、合点がいってしまう。
ネギの表情が凍りついた。
「まさか……」
「実施クラスは3−A。君のクラスだ、ネギ先生。」
「今日……ですって?」
驚いて聞くネギに、瀬留彦は黙って肯定した。
ネギはすぐに瀬留彦に詰め寄った。
「そんな!そんなのふざけてますよ!今すぐ中止してください!」
「悪いね、ネギ先生。もう決定してしまったことなんだ……」
瀬留彦の服をつかんで取り乱すネギと、あくまで冷静な瀬留彦。対照的な光景だった。
「どうしても認めてくれないかい?」
「当たり前ですよ!!」
再び声を荒げて返す。その様子を見て瀬留彦の口が笑みを作る。
そして次の瞬間、ネギの後頭部に冷たい感触が伝わった。
ネギがゆっくりと首だけ回して後ろを向く。
そこには、いつの間に入ってきたのか、迷彩服を着込んだ男が一人立っていた。
そして小さな拳銃のようなものをこちらに向けている。
パスッ!
小さな音が聞こえたと思うと、ネギの体を急激な睡魔が襲った。
「ならば止めてみたらいい。君自身が参加者となって、クラスのみんなと力をあわせてね。」
自分を見下ろしながら笑みを浮かべている瀬留彦に、ネギはそれでも何かを言おうと睨み付ける。
「最後だからこのことも教えておこうか。君の言う、この学園の設計図データが盗まれる事件の犯人は僕だ。
外部の人間にデータを渡すように手引きしたんだよ。どうだい?驚いただろ。」
楽しそうに笑う瀬留彦を前に、ネギの意識はとうとう途絶えた。
「そうだった……バトルロワイヤル……。」
すべて思い出した。ネギの顔を冷たい汗がつたう。
ネギは倉庫の扉を勢いよく開けた。
突然降り注いでくる大量の光に一瞬目を細めるが、それもすぐになれた。
周りを見る。見渡す限り、木々が生い茂る森の中だった。
東の空に太陽が見える。どうやら時刻はいまだ午前中。
ネギはもう一度倉庫の方を向いた。
そこには緑色をした大き目のカバンがおいてある。
ネギはそれを乱暴に掴み取ると、肩にかけた。
まっすぐと前を見据える。
瀬留彦は言った。自分に、参加者となってみんなとともに止めてみろ、と。
つまり今この島に、自分のクラスの生徒みんながいるということだ。
そして、理不尽な殺し合いを強要されているのだろうということだ。
「止めないと……こんなことは止めさせないと!」
まずはみんなと会わないと。そして殺し合いを止めさせる。その後、何とかしてこのプログラムを止めさせる。
方法はまだ思い浮かばないけど、きっといい考えがある。
とにかく、殺し合いをさせることだけは止めさせないといけない。
そう思い、ネギが一歩を踏み出そうとしたとき、遠くで銃声が鳴った。
ネギの足が止まる。
銃声はその一発だけだった。もう何も聞こえない。
だがそれだけでも十分。
殺し合いが行われていることを実感するには、十分だった。
ネギの体が震える。足が動かなくなる。
「(怖がるな、怯えるなっ……)」
ネギは下唇を強くかみ締め、自分の肩を自分で抱える。無理やり震えを押さえた。
「僕が守るんだ……クラスメイトを、みんなを!」
その言葉とともに、足を一歩、前へと踏み出す。
右足は問題なく前へと進み、地面の土を踏みしめる。
つづいて左足も。
もと足を置いていた地面をけり、右足より少し前の地面を踏みしめる。
「大丈夫、大丈夫だ。」
ネギはそのまままっすぐ歩いていき、そして走り出した。
小さなその体は、森の中へと入っていく。
そしてすぐに見えなくなった。
しょっぱなから投下時間ミスするとは本当申し訳ない。
やはり時間がないからといって二回に分けるのは良くないです……。
これからはきっちり一日分は一度に投下するよう努めます。
それではまた、今日の夕方ごろに。
うん
549 :
マロン名無しさん:2006/06/25(日) 01:14:40 ID:enpcG/ED
激しくGJでした
期待してるんで頑張って下さい!それでは乙です
550 :
マロン名無しさん:2006/06/25(日) 02:38:04 ID:naEg9Qda
オープニングを読んでおもわず全身に震えが来てしまいました。
ノーベル文学賞取れるんじゃないんでしょうか?(マジで)
貴方の才能に嫉妬しながらも超GJと言わせてもらう
感想ありがとうございます。
とりあえず今日の分投下です。
5 "のった"人
四葉五月(番号30番)は森の中を一人歩いていた。
特に周りを警戒することもなく、まるで散歩でもしているかのように。
時折木が風で揺れたりすると、足を止めて音のしたほうを向いたりはしているが、基本的には無防備なまま歩き回っていた。
森の中はそれこそ木が揺れる音以外何もしない、静かな空間だった。
五月はデイパックから水の入ったペットボトルを取り出す。ふたを開けて、一口だけ飲んだ。
そしてそれをまたデイパックへと戻す。
ガサッ……
木々のこすれる音が聞こえた。
五月はすぐにそちらのほうを向く。
また風の音かとも思ったが、今度は違ったようだった。
茂みの中から人が歩いてくる。影のせいで誰のなのかいまいちわからない。
五月の顔に少しだけ緊張の色が見えた。
その人影はお構いなしに近づいてきて、やがて日の光を浴びてその姿を見せた。
それを見て、緊張していた五月の顔が、普段のそれに戻る。
現れた人影は超鈴音(番号19番)だった。
超は目の前にいる五月を一度見て、軽く驚いた様子だった。
「そこにいるのはサツキ?」
「超さん……」
二人はお互いを認識すると、お互いに歩み寄った。
「無事だったんですね、超さん……」
「見たところサツキもケガはないみたいネ」
お互いの無事を確認する。実際二人とも傷一つ負っていなかった。
それからもしばらく二人は会話を続けた。学園でもよく見ている、仲のいい二人のなんでもない会話。
「サツキは、私が怖くないネ?」
「はい?」
不意に超が五月に問いかけた。
「もしかしたら私は、ゲームに乗った人なのかもしれないヨ?それでも怖くない?」
「大丈夫ですよ、超さん。」
五月は即答した。
「だって……」
五月の左手が後ろに回った。
「私、ゲームに乗ることにしましたから。」
言ったと同時に、左手が超にむけて突き出される。
その手には包丁が握られていた。
ドスッ!
鈍い音とともに、左手に確かな手ごたえ。
完全にしとめた。包丁は確実に超の体に突き刺さった。
そう思ったとき。
目の前に、銃口が現れた。
「だったら話は早いネ。」
超の声が聞こえる。自分は確かに超の心臓めがけて包丁を突き刺したはず。
五月は自分の左手を見た。
「……!」
左手に握られていた包丁は、超が自分の正面に持ってきていたデイパックに深々と突き刺さっていた。
突き刺さっているデイパックからは水がにじみ出て水滴がたれている。
おそらく中に入っている水のペットボトルを貫いたのだろう。
無論、そんなことは何の意味もないということを五月はわかっている。
次に五月は超の顔を見る。
その顔はいつもの笑みだった。学園にいたとき、普段から見慣れている超の笑顔だった。
だがそのときの五月にはそれが何よりも恐ろしいもののように映った。
「……何で、会ったときに撃たなかったんですか?」
震える声で、五月は超に聞いた。その目はじっと銃に向けられている。
「ん?別に、大したことじゃ無いネ。」
超はそう言うと、いきなり引き金を引いた。
発砲音が響き、木々が揺れる。
五月は眉間に赤い穴を開け、仰向けに倒れた。
五月の右手にはボールペンが握られていた。
「近づいたほうが確実に当てれるからネ。」
そう言うと超は五月のデイパックを取り上げた。
自分のデイパックから無事なペットボトルとパン、そして弾薬を取り出し、五月のデイパックに一緒につめる。水にぬれて湿ったパンは捨てた。
そしてそれを自分の肩にかけると、その場を後にした。
四葉五月、死亡 残り28人
6 すべきこと
銃声が森の中を響きわたったとき。
神楽坂明日菜(番号8番)もまた、森の中を歩いている人物の一人だった。
「銃声!?」
明日菜は驚いて周りを見渡す。
木々に反響しているため、その銃声がどこから聞こえたかいまいち判別ができない。
じっくりと周りを見渡していく。
どこを見ても、同じような木々が短い間隔で生い茂る密林だった。
人の気配も、今のところはない。
「大丈夫、かな。」
独り言のようにつぶやくと、明日菜は再び歩き出した。
(これから……どうしようかな?)
何もしゃべらず、黙って歩いていると随分と手持ち無沙汰になってしまう。
ついつい、余計なことを考えてしまう。
(って!違う違う、どうするかなんて決まってる!プログラムを止めるの!絶対に!……でも、どうやって?)
一度よぎった後ろ向きな考えを首を振って否定し、何とか前向きなことを考えようとしても、結局行き詰ってしまう。
自分に何ができるのかわからなくなってくる。
明日菜は一度自分の腰の辺りを見る。
制服のスカートにあるポケットから何かが覗いていた。
それを手に取り、ポケットから取り出す。
ポケットに収まっていた部分もすべてあらわになったそれは、空からの光で鈍く黒光りしていた。
手にずしりとくる重みと、ちょうど握り手の人差し指のところにある引き金、その独特のシルエットは、間違いなく拳銃だった。
弾丸もきちんと入っている。説明書どおり安全装置もかけてある。
明日菜は一度だけそれを見てポケットにしまいなおし、再び視線を前に戻した。
それからもしばらく森を歩いた。
歩いている間中、ずっと、
(何をすればいいんだろう……そもそも、私に何ができるんだろう……)
そんなことばかりを考えていた。
いくら考えても、答えがなかなか見つからない。
堂々巡りを繰り返すばかりだった。
そしてそれは突然の出来事だった。
ガサッ!
すぐ近くで、茂みが音を立てた。
明日菜がうつむいていた顔を上げる。
そこに、見知ったクラスメイトがたっていた。
完全に不意をつかれた形になり、とっさの行動ができない。
「パル……」
「アスナ?」
明日菜が相手の名前を口に出すと、相手も明日菜の名を呼んだ。
目の前の早乙女ハルナ(番号14番)も、明日菜との突然の遭遇に固まってしまっていた。
明日菜はハルナのポケットから出ている物を見る。
それは、自分と同じような銃のグリップだった。一瞬だけ、表情がこわばった。
ふとハルナの顔を見ると、ハルナも自分の右ポケットに視線を向けていることに気づいた。そこにはハルナと同じような銃がしまってある。
明日菜と同じように、ハルナの表情が一瞬こわばって、そして視線をあげる。それが明日菜の目線と一致した。
なんとなく、相手の考えていることがわかった。だとしたら完全に誤解されている可能性が高い。
「違うの!私は殺しあうつもりなんてない!」「ちょっとまって!私はやる気にはなってないから!」
お互いがほぼ同時に声を上げた。
「「え?」」
そして、お互いがほぼ同時に怪訝そうな顔を浮かべた。
「まったく、脅かさないでよねぇ!」
「それはこっちのセリフよ!本当、心臓止まるかと思った……」
二人は現在、近くにあった大きな木の陰で座って休んでいる。
さきほど初めて遭遇したときのような警戒はもはや皆無で、完全にリラックスした様子で会話している。
「まぁ、どっちにしろよかったわ。アスナなら信用できるし。」
そう言うとハルナは木にもたれかかって上を見上げる。
沢山の枝から緑の葉が生い茂り、その隙間から日が差し込んでくる。
ハルナはその光に少し目を細めた。
「パルは……こんなところで何してたの?」
「ん?」
視線を上にしたまま返事をするハルナ。
その後、ゆっくりともたれかかっていた体を起こし、明日菜の方を向いた。
「決まってるじゃない、のどかと夕映を探してたの。」
「探し出して、どうするの?」
続けて明日菜は質問した。
何をすれば良いのか、何ができるのか。
ハルナは腕を組み首をかしげ、少し考えるようにうなって、
「さぁねぇ。」
言った。
「へ?」
明日菜は思わず間の抜けた返事を返した。
「まぁそれは二人を見つけてから考えることにする。まずは会わないと何にもなんないわ。」
あっけらかんと言ってのけた。ハルナはまた木にもたれかかって続ける。
「一人で考えてたっていい答えなんて浮かばないんだもん。それはあの子達と会ってから考えるわ。」
無計画といえなくもない考えではあった。いや、むしろ無計画だ。とてもハルナらしいような、適当な考え。
ただ、その言葉に明日菜が揺り動かされたのも事実だった。
「そう、だよね。」
一度そうつぶやくと、明日菜は立ち上がり、隣で座っているハルナを見下ろす。
「まずはみんなを探さないとね!」
力強くそう言う明日菜。ハルナはというと、いきなりやたらと元気になりだした明日菜を、驚いたように見上げていた。
「行くよパル!早くみんなを探さなきゃ!」
「え、ちょっと、アスナ?」
突然明日菜が歩き出した。ハルナはあわててデイパックを持って立ち上がると、明日菜へと続く。
まずはみんなを探すこと。それが今のすべきことだった。
7 歪んだ愛情
潮風が吹く海岸に、二つの影。
遠目から見るとまったく同じに見える。髪形が一緒だったらもはや見分けはつかないだろう。
正面から見ても、顔立ちにも微妙な相異しか見当たらない。
その二人が、じっと海を眺めていた。
揺り返す波を、じっと眺めていた。
「お姉ちゃん。」
「何?」
最初に口を開いたのは、妹の鳴滝史伽(番号23番)だった。
姉の鳴滝風香(番号22番)が返事を返す。
「そろそろ行こう。」
「……うん。」
双子は一緒に立ち上がり、島の中へと歩いていった。
藪の多い山道。傾斜はそこまできつくない。
そこを二人は歩いている。
特に目的はなかった。しいて言うなら、建物を見つけてそこにひとまず収まろうというところか。
住宅街なんかも考えたが、そういうところは人が集まりやすい。
もしかしたらこのゲームに乗った人が現れるかもしれない危険性があった。
これを提案したのは姉の風香だった。
もちろん自分のこともあるが、それ以上に妹の史伽の身を案じてのことだった。
姉としての使命感というのか、とにかく妹を守らなければという考えが働いていた。
(ボクが史伽を守るんだ!)
その考えが、今の二人の行動を決めた。
「痛つ……」
「史伽、大丈夫?」
とはいえ、山道を軽装で歩くのは色々と面倒なのも確か。
とくに長ズボンといったものを持っていなかった二人に、緑の生い茂る山道を歩くのは結構な苦労だった。
風香はその場に座り込み、目の前で足を放り出して座っている史伽へ心配そうに話しかけた。
史伽の放り出された右足は、足首から膝にかけての切り傷ができていた。
おそらくは藪の中を通ったときに先の尖った枝か何かで切ったのだろう。
重症というわけではないが、ほうっておける傷でもなかった。
風香はデイパックから地図を取り出す。そして自分たちの居場所を確認すると、この近くに建物はないか調べた。
そして、ここからそう遠くない場所に建物があることがわかる。
「近くに建物があるみたい。そこまで行くよ、立てる?」
「大丈夫です。」
そう言うと史伽は血の滴る足を引きずりながら、何とか立ち上がる。
風香が史伽に肩を貸した。軽く微笑んで、二人は歩き出した。
程なくして建物は見えてくる。それはどうも一軒家のようだった。
風香は家の近くにある大きめの木の元へ史伽を座らせる。
「中をちょっと見てくる。ここで待ってて。」
そう言うと風香は一人で建物へと入っていった。
「お姉ちゃん……」
それを史伽は心配しながら見送った。
ガサッ!
「……っ、だ、誰です!?」
すぐ近くの藪から、古菲(番号12番)が姿を現したのは、そのすぐ後だった。
家の中を風香はデイパックから取り出したナイフを構えながら歩いていく。
一階は和室が一室にリビング、そしてバスルームがあるだけ。そのどこにも人影はなかった。
二階にあがる。部屋数は多かった。おそらくは家族一人一人の部屋であろう。ここにも人影はゼロ。
「安心みたいだね。早く史伽のもとに帰らないと!」
風香は走って階段を駆け降りた。
「じゃあ、二人とも一緒だったアルか?」
「そうです。それで私が足をケガしちゃって……」
そういって史伽は古菲に自分の足の怪我を見せた。
「あー、結構ひどいアルね……」
すこし顔をしかめて言った。
「とりあえず傷口を洗うくらいはしたほうが良いヨ。」
そう言うと古菲は自分のデイパックから水の入ったペットボトルを取り出し、ふたをあけた。
「少し染みる思うアルが……」
「っつ……」
古菲が傷口に水を流す。
史伽が痛みに顔を歪ませた。
それとほぼ同時に、一軒家の玄関から風香が飛び出してきた。
史伽がいるであろう木へと目をやり、そしてその光景を見た。
それは風香の目にはどう映っただろう?
入るときには確かにいなかった古菲が、史伽に向かい合って座っている。
その背中の向こう側に見える史伽の表情は苦しみ歪んでいるように見える。
ただでさえ殺し合いを強要されているこの状況とあいまって、それは風香が誤解するのに十分な光景だった。
「わあああああああああああああ!!!」
叫び声とともに風香は走り出した。見る間にその距離が詰まる。
史伽と古菲が同時に振り向いた。
そこには、ナイフを握った右手を高々と振り上げた風香がたっている。その目はじっと古菲を見ていた。
「わっ!」
古菲はとっさに左に飛んだ。
同時に風香のナイフが振り下ろされる。
水の入ったペットボトルが、ナイフにはじかれて地面にたたきつけられた。
「いきなり何を――」
体勢を立て直した古菲が何か言おうとして、すぐにそれを中断した。
すぐそこで風香がナイフをもって突進してきている。
「ああああ!!」
風香がナイフを水平にふる。古菲が身をかがめてそれをやり過ごした。
しかしその手は止まることを知らない。
とにかく風香はでたらめにナイフを振り回す。古菲はそれをすべてすんででよける。
たまによけきることができず、頬や肩を刃が掠めた。
決められた剣筋と違うため、なかなか捉えきることができない。
「お姉ちゃんやめて!」
遠くで座っている史伽が声を上げるが、当の本人の耳には届いていなかった。
とうとう古菲は壁際に追い詰められる。
後ろに飛びのいたときに壁に背中をぶつけた。
「死ねえええ!」
それを狙っていたのかはわからないが、最後に風香はナイフを一度自分のほうに引くと、
一気に古菲のほうをめがけて突きを放った。
「だめえええ!」
目に涙を浮かべて、史伽が叫んだ。
バシッ!
風香のナイフは、古菲の心臓より手前数ミリのところでとまっていた。
古菲は向かってきたナイフの柄の部分を、握っている風香の右手ごとつかんで止めた。
そしてそこでようやく風香の動きが止まる。
古菲は一度かるく深呼吸をして気を静める。
「頼むから落ち着い――」
古菲がやっと発言しようとしたとき。
――カチッ……
何かのスイッチが入る音。
その後
――パン!
火薬の爆ぜる音が聞こえた。
そして、古菲がその場に崩れ落ちた。
風香が右手で構えるナイフのグリップから、白く細い煙が立ち昇っている。
倒れている古菲は、ちょうど心臓のところに小さな穴を開け、そこから血が流れ出て地面の芝生を赤く染めあげていた。
遠めで見ていた史伽は、その光景に言葉を失った。
少しの間その体勢で固まっていた風香が、ナイフを握る右手を力なく下ろした。
「史伽……」
突然、風香が名前を呼ぶ。史伽は返事を返せなかった。
「ボク……何があっても絶対お前を守るよ……絶対。」
史伽に背を向けたまま風香がいう。そのときどんな顔をしていたかは史伽にはわからない。
しかし、その後ゆっくりと振り向いた風香の顔は笑っていた。
とてもうつろな目をして、笑っていた。
古菲、死亡 残り27人
8 at the top of mountain
「はぁ……はぁ……」
少女が、山道を歩いていた。
島の中でも一番高い山だ。
今現在少女はその山の7割ほどを上りきっている。
長い黒髪をなびかせながら、息を切らせながら、それでも少女は歩みを止めない。
一歩ずつ、確実に上っていく。
一応、人が歩くように手が入れられた道があるのだが、それでも女性が歩き続けるにはつらい。
その中を、デイパックを肩に下げて少女はずっと歩き続けていた。
額から流れ出る汗を、山の頂から吹き降ろされる風がなでるのが妙に心地いい。
それと同時に周りの木々が揺れて、ザワザワと音が鳴る。
他には何も聴こえず、何も見えない。
少女はただ山の頂上を見て歩き続けた。
途中、周りに何か動物なんかはいないか探してみたりしたが、やっぱりいなかった。
木でできた、最後の階段を上りきると、そこが頂上。
そこがこの島では一番高い場所になる。
少女はそこからまた少し歩き、島が一望できる場所へ行った。
少し風が強いその場所に立つと、そこには島の全景が広がっている。
正面は緑の山がいくつも連なっていき、海が見えない。
左側は逆に砂浜が広がっていて、水平線を確認することができる。
右側はそれに加えて森が広がっていた。
さらに下を眺めれば、住宅街、中学校や小学校、そして図書館といった建物がみえる。
まるで町のミニチュアを見ている気分だ。
少女はそれを見て一度微笑んだ後、今度は一転視線を空に向けた。
ちょうど太陽は真上に差し掛かっている。
それをさえぎる雲はなく、陽射しが容赦なく地面を照りつけている。
しかし暑すぎるということはなく、とても気持ちのいい日和だ。
少女は眼を閉じると、ゆっくりと鼻で深呼吸をする。
山の匂いをいっぱいに吸い込むと、それを一気に吐き出して、目をひらいた。
とても満足そうな顔をしていた。
そのあと、チャイムのような電子音がどこからともなく響き渡った。
「えー、それでは第一回目の定時放送を始めようと思います。死亡生徒と禁止エリアを言っていきますんで、メモの用意をしてください。」
スピーカーを通して、瀬留彦の声が聞こえてきた。
少女はだまってそれに耳を傾ける。
「まずは死亡生徒の発表です。出席番号6番、大河内アキラさん、出席番号12番、古菲さん、出席番号30番、四葉五月さん。以上三名。
次に禁止エリア……」
淡々と、おそらくは書類にでも書かれているのだろうことを読み上げていく瀬留彦。
そしてその放送を聴いて、少女の顔に影が落ちた。
顔をうつむき加減にして、静かに目を閉じ、死んでいった人たちに黙祷をささげた。
しばらくはそのままだったが、じきにゆっくりと眼をあけると、再び目の前の景色を見る。
そして、おもむろに口を開いた。
「ここにおったら、会えるような気がしたんよ。」
まるで誰かに語りかけるようにしゃべり始めた。
「なんでやろな。普通やったらこんなとこ誰も居ーひんのに。」
そう言って少し笑った。
「でも、気づいたらここに来てもうとった。そんで……」
待ちわびたかのように、少女は後ろへと振り向いた。
振り向いた先に、誰かが立っているのが見える。
「会うことができた。」
その姿を確認した瞬間、少女はその人物に向かって走りだした。
「せっちゃん!」
桜咲刹那(番号15番)は、自分のもとへ飛び込んできた近衛木乃香(番号13番)を優しく抱きとめた。
というわけで、今回の投下でした。
それではまた明日。
リアル遭遇ktkr
GJとしか言いようがない
明日が楽しみだ
569 :
マロン名無しさん:2006/06/25(日) 18:40:54 ID:xNK6VBIG
GJ!!
その才能に憧れるわ
ゲームに乗ったさっちゃん初めて見た・・・・
GJしか言えない自分が憎い
572 :
マロン名無しさん:2006/06/25(日) 22:15:46 ID:enpcG/ED
遭遇し損ねた…とりあえずGJ
やっとここも活性化の兆しがみえてきたか
何はともあれGJです。
GJ
序盤からハイペースで死にますな
思ってたより住人いるのね
GJ
こんにちは。作者6です。
投下直前に原稿を見直してみると結構直すところがあったりしてビックリしてます。
それでは今日の分どうぞ。
9 賭け
第一回の定時放送が流れる中、明石裕奈(番号2番)は舗装された道路を歩いていた。
山の側面を這うようにして作られた道路だった。
裕奈の右側には高く上がった断崖絶壁。落石対策に金網が敷かれていた。
大して左側は木々が生い茂る斜面。
その傾きはなだらかではあるが、下まではかなりある。
先がよく見えないカーブを曲がりきったところで、一軒の建物が現れた。
民家にしては大きすぎる。大きな窓ガラスから見える中の様子からすると、どうやらレストランのようだ。
裕奈は特別警戒することなく、レストランの扉に手をかけた。
カランカラン
扉が開くと同時に音がなる。しかし出迎えてくれる店員も、食事を楽しんでいる客の声も何もない。
裕奈は軽く店内を見回した。窓際には大きな机と椅子が。
厨房側にはカウンターがあり、そこにも椅子が並んでいる。
さらに奥に進んでみようと歩を進めたとき、
「それ以上動くな。」
店の奥から声が聞こえた。
裕奈が足を止めて声のしたほうを向く。そこにはこちらに銃を構えた長谷川千雨(番号25番)がいた。
千雨はカウンターの向こう側からじっとこちらを睨みつけている。
「長谷川……」
「デイパックを捨てろ。」
抑揚のない声で千雨が言った。
「私は殺しあう気なんてないよ。安心して。」
「デイパックを捨てろ。」
裕奈は千雨に自分の意思を伝えるが、千雨は顔色一つ変えず同じことを言った。
裕奈はとりあえず素直にデイパックを横に放り投げる。
「両手を挙げてその場でゆっくり回れ。」
これにも裕奈は素直に従った。
そして千雨の前で一回転したところで、
「オーケー。もういい。」
千雨が銃をおろした。裕奈も両手を下ろす。
「何でこんなところにいる?」
続けて千雨が質問してきた。裕奈は答える。
「特に理由はないけど……しいて言うなら食料調達かな?」
すこし冗談めいてそういった。だが千雨は少しも面白くなさそうにしている。
「なら残念だったな。ここには何もないぜ。」
そっけなく返事を返した。
そして、沈黙。しばらくその時間が続いた。
「……ねぇ!」
「あー?」
裕奈が思い切って千雨に声をかける。
千雨は間の抜けた返事をした。
「私に協力してくれない!?」
「……あ?」
千雨がさっきとは違った調子で返事をする。
「私、どうしてもこの殺し合いをやめさせたいの。何とかしてみんなで脱出したい。そのために協力して!」
裕奈の呼びかけに、千雨は少し考えてから質問した。
「……どうするんだよ?」
「まずはみんなを集めるの。クラスメイトをみんな集める。そうしたらきっと何かいいアイデアが浮かぶよ、だから!」
「……」
千雨はまた少し考えて、そして返答する。
「……私は行かない。」
「え?」
思いもよらぬ返事に、裕奈は思わず食い下がる。
「な、何で?」
「私はな、私だって殺し合いなんてするつもりさらさらないよ。そんな胸くそ悪くなるようなことやってられるか。
けどだからってわざわざ自殺する気にもならない。そんな簡単に死んでたまるか。そういうわけだから、私は決めたんだ。
このプログラムが終わるまで、ずっとここにいるって決めたんだ。いつ殺されるかわからないから誰かと一緒にいるつもりもない。ずっと一人でいるんだ。
運がよければ、もしかしたら知らないうちにみんな死んで優勝するかも、てのもあるかもしれないしな。」
裕奈は千雨の話をずっと黙って聞いていた。
「そういうわけだから私はあんたとはいけない。一人でいたいからここにいさせるわけにもいかない。わかったらとっとと出てってくれ。」
そう言って千雨は話を締めくくった。
裕奈がすかさず返事を返す。
「みんなを見殺しにするの?」
「……」
二人がお互いをにらみつけた。どちらも譲らない。
「あんただって聞いただろ?」
にらみながら千雨が言った。
「島に響いた銃声、定時放送でながれた死亡した生徒!この島じゃ、本当にクラスメイト同士で殺しあってる!
そんな中でみんなを集めるってことがどういうことかわかってるのか?」
裕奈も負けじと対抗する。
「わかってるよ!それがどれだけ危険なことか!でも、みんなだって本当は殺し合いなんてしたくないんだよ?
それを見殺しになんて絶対にできない!何とか助けたい!」
「そんなやつが本当にいるのかね?」
千雨がはき捨てるように言った。
「確かに誰も人殺しなんてしたくないだろうよ。でもな、いざとなりゃそんな考えすらなくなるもんだ。だから死んだ生徒がいる。殺すクラスメイトがいる。」
裕奈を脅かすように言う。
「誰だって最後には自分の命が惜しいんだから。」
千雨は不機嫌そうに裕奈から視線をはずし、近くにあった椅子に座り込んだ。
頬杖をかいて窓の外の景色を見た。
「……私は、約束したんだ……。」
裕奈がそう言った。千雨は視線だけ裕奈に向ける。
「アキラと、約束したんだ。みんなで一緒に帰るって。だから……」
「その大河内だって、もう居ない。」
千雨は冷たく言い放った。裕奈が明らかに狼狽する。そしてそれ以上何も言い返すことができなくなった。
「別にあんたを責めてるわけじゃない。大河内は自分から望んであんたを守ったんだろ。」
「でも、私があんなことしなきゃ、アキラが死ぬこともなかった……。」
あのときの光景を思い出して、裕奈は涙をこらえながら言った。
「……。」
「だから、私はアキラとの約束、果たさないといけない。絶対に、皆で一緒に帰るの!」
先ほどとは一転して、意思のある、力のこもった声で裕奈が言った。
「そのために、長谷川の力も必要なの。だから一緒に来て!」
「いやだ。」
「どうして!?」
「さっきも言っただろ。」
「何もしないまま死ぬ気!?」
その後もずっと食い下がるが、千雨もかたくなにここを出ようとはしなかった。
しばらくの言い争いの後、最後に裕奈は意を決したように切り出した。
「じゃあ、賭けをしよう。」
「賭け?」
「そう、賭け。長谷川はずっとここにいるんでしょ?」
裕奈が確認するように聞いてくる。千雨が肯定する。
「私は、今から長谷川以外の、殺しあうつもりのない仲間を探してくる。
もしその仲間を見つけてここにつれてくることができたら、長谷川も私と一緒に来てちょうだい。どう?」
まっすぐ千雨を見つめて言った。
「私がそいつを信用するとは限らないぞ?」
千雨も、まっすぐに裕奈を見つめて言った。
いくら信用できそうな相手をつれてきても、千雨がノーと言えばその時点で賭けは裕奈の負けになる。
それを確認するように裕奈に突きつけた。
「もちろん。それも賭けのうち。」
しかしそれでも裕奈はうなずいて見せた。
「ふん……」
しばらく裕奈を眺める。その眼は真剣そのものだった。
冗談で言ってるわけではないらしい。
千雨は椅子を回転させて裕奈に背を向けた。
一度だけ、ため息をついて、
「……わかったよ。その賭け、のってやる。」
その返事を聞いて裕奈の顔が明るくなる。
「乗ってやるからとっとと出てってくれ。」
「約束したからね!絶対だよ!」
そう言うと裕奈はデイパックを拾い上げて勢いよく店を出て行った。
扉の上についているベルがやかましく鳴り響いた。
「……」
店内に一人残った千雨は窓のほうを見る。
店の外を、裕奈が元気よく走り抜けて行った。
10 さよなら
普段は人がにぎわうのであろう住宅街も、今は人気のほとんどしない閑散とした空間となっている。
椎名桜子(番号17番)は住宅街の通りを一人歩いていた。
普段は明るいその表情が恐怖にひきつり、身を縮めて周りの建造物を見て回る。
「誰か……誰かぁ……柿崎ぃ……円ぁ……」
親友の名を呼ぶも、返ってはこない。
今にもなきそうな表情で桜子は住宅街を歩いていく。
道なりに進んでいき、曲がり角を曲がったところで人影を見かけた。
一度驚いて身を隠し、物陰からその人物を見る。
遠目からなのでしっかりと見ることはできないが、淡いピンクのロングヘアーの女子生徒。
それは、自分のよく見慣れた人物であると思われた。
「柿崎!?」
それは彼女にとって一番会いたかった人物の一人だった。
恐怖におびえていた表情が笑顔に変わる。
桜子は喜んで建物の影から飛び出し、人影へ駆け出していった。
近づくにつれて像がはっきりする。それは確かに柿崎美砂(番号7番)だった。
「柿崎ー!」
いったん立ち止まって、手を振りながら柿崎の名を呼ぶ。そして柿崎がこちらに気づいた。
二人の距離がずいぶんと近づいていき、桜子がもう一度柿崎の名前を呼ぼうとすると、
「とまって。」
柿崎が桜子に銃を向けた。
「え……?」
思わず、言われたとおりにとまってしまう。
「えっと……柿崎?」
「桜子……」
桜子は不思議そうに、柿崎は悲しそうにお互いの名を呼んだ。
「ねぇ、ちょっと、どうしたのよ?」
「見てわからない?……私はゲームに乗った。」
そう言って桜子をにらみつけ、銃のハンマーを起こした。
静かな住宅街に、その小さな金属音がやけに大きく響いた。
「え……今なんて?」
桜子が聞き返す。
言っていたことがわからないというより、”そんなのうそでしょ?”という意味合いが大きい。
「私は、殺し合いをする。」
そしてその願いを打ち破るように、柿崎はさらにわかりやすい表現で返す。
まるで宣誓でもするかのようにはっきりといった。
その銃口は、依然桜子にむいている。
桜子は動くことも、声を出すこともできなかった。
「私は……死にたくないの、どうしても。だからゲームに乗ることにした。生き残ろうと思ったの。
みんなを殺して、生き残ろうって決めたのっ!」
柿崎は、まるで自分に言い聞かせるように言い放つ。
最後のほうは、口調を強めていった。声が震えているのをばらさないために。
「そん……な……」
やっと桜子が口に出した言葉。絶望に彩られ、蚊の鳴くような声で発せられた。
いまだに信じられない、信じたくないといった様子だ。
柿崎は少しだけ口調を落ち着かせて続ける。
「だけど……あんたや円は別。できれば私の手で殺したくない。親友だもの。
……だからお願い、今すぐ私の前から消えて。」
目の前でただ呆然と立ち尽くす桜子をじっとにらみつける。
昔の仲のよかった3人の像が、音を立てて崩れたような気がした。
(やだよ……こんなのやだ……)
桜子は柿崎をじっと見つめる。
「柿崎……」
そして柿崎の名前を呼んだ。柿崎の体がビクリと動く。
「ねぇ……やめよう?嫌だよ、こんなの……」
そう言って柿崎の、親友の下へと、ゆっくりと歩み寄っていく。
パン!
銃声が響いた。銃弾は柿崎と桜子の間の道路。
舗装されたアスファルトに小さな穴を開けた。
それで桜子の歩みが止まる。
柿崎は下に向けた銃口を再度上に持ち上げ、桜子をとらえる。
「もう一度だけ言うわ。お願いだから私の前から消えて。」
桜子の目に、涙が浮かんだ。
目の端からそれがあふれ、頬を伝う。まるで何かを懇願するように、柿崎を見つめる。
「……っ」
柿崎の表情がゆがむ。銃を持つ手が震えた。
何かを言おうとして口が開き、思いとどまってまた閉じられる。
そして、
「行きなさいって言ってんのよぉ!!」
震える手のまま銃を構え、柿崎が桜子を怒鳴りつけた。
桜子は一歩、後ろに退いた。柿崎は銃を下ろさない。
そんな柿崎に向けて、こちらも何かを言おうとして、言えなかった。
声を出して泣き出しそうな顔を浮かべた後、きびすを返して走り出した。
その姿はすぐに小さくなり、曲がり角を曲がったところで見えなくなった。
柿崎は桜子が視界から消えるのを待って、そして銃をおろした。
震える体を抱きしめ、下唇をかんだ。
「これでいいんだ……これで……」
かすれるような小さな声で、最後につぶやいた。
11 道化師
森の中は静かだった。
その静かさが、今は特に不気味だった。
「ずいぶんと雰囲気のある……」
周りを見渡しながら、朝倉和美(番号3番)はつぶやいた。
このあたりの森は島の中でもかなりうっそうとしている位置だった。
和美の頭上にまで伸びた木の枝から葉が生い茂り、ほとんど陽射しを隠してしまっている。
そのため、まわりにはほとんど日の光が入ってこない。
まだ昼を回ったところだというのに、森の中はかなり暗い。
とにかく出口を探して歩き回るが、一向に森は途切れず、もう一時間以上森の中を迷い続けていた。
「参ったなぁ……」
方位磁石と地図を持って、和美は頭をかいた。島の全体図を描いた地図では現在地が把握できない。
どちらに行けばいいのかが全くわからなかった。
「ま、同じ方角に歩いてりゃいつかは途切れるでしょ。」
和美は地図をしまうと、コンパス片手に道なき道を突き進んでいった。
突然、森の中を突風が吹きぬけた。周りの木々が揺れる。
和美は風に背を向けるようにたった。巻き上げられた砂などが目に入ったりしないように。
すぐに突風はやんだ。再び森は静寂に包まれる。
突然のことですこし驚いたが、何のコトはないただの風である。
和美は気を取り直して歩き出す。
ガサッ……
物音が聞こえた。和美が足を止める。
音は上の方から聞こえた。
ゆっくりと顔を上げ、自分の頭の上を見る。
しかしそこには異常は何もなかった。
相変わらず長い枝と大きな葉が日の光を遮断している。
胸をなでおろした和美が再び視線を前に戻したとき。
――ドサッ!
「っ!」
突然、背後から何かが落ちる音が聞こえた。
思わず和美は身をすくめてしまう。
音のしたほうへと振り向く。
自分が歩いてきた道の上に、何かが落ちている。
光があまり届いてないためそれが何かよくわからない。
「な……何?」
すぐさまそれを確認しに行く。
すぐ目の前にまで近づいて、それが何かわかった。
「これって……」
大きなカバン。緑色をしていて、ファスナーがついている。
それは和美はもちろん、この島にいるクラスメイト全員がおそらく持っているであろうデイパック。
そんなものがなぜこんなところに?
和美はさらに近づいて中を確認しようとファスナーに手を伸ばす。
――チャキ……
金属音とともに、後頭部に冷たい感触が伝わる。
「……しまった。」
バババッ!
連続した音が聞こえると、和美はその場に倒れた。
そして二度と起き上がってこなかった。
和美の死体を無表情で見下ろしているのはザジ・レイニーデイ(番号31番)だった。
手にはサブマシンガンを持っている。銃口からはまだわずかに煙が立ち込める。
ザジは和美のデイパックをあさり、食料と水を奪うと、道端に倒れている自分のデイパックにそれを詰め込む。
一度だけ和美の死体を見るが、特に何をするでもなく、ザジはその場をあとにした。
朝倉和美、死亡 残り26人
12 それでは……
この島で一番高い山の頂上。
この島で一番高いところで。
近衛木乃香(番号13番)と桜咲刹那(番号15番)は二人で島の景色を眺めていた。
木乃香は純粋に景色を眺め、時折隣に座る刹那に景色のことで話しかけたりした。
刹那はそんな木乃香の話をちゃんと聞きながら、それでも回りに誰かいないか警戒もしている。
デイパックに入っている支給武器だった刀をいつでも取り出せるようにしている。
「はい、せっちゃん。」
ちょうど後ろを向いていた刹那に、木乃香が何かを差し出した。
あわてて刹那はそれを受け取る。木乃香に軽く礼を言った。
それは支給されたデイパックに入っていたパンを等間隔に切ってジャムを塗ったものだった。
刹那が少し不思議そうにそれを見ていると、山に登る前に見つけた民家にあったものを拝借したと、木乃香が言った。
「せっちゃん、お昼まだやったやろ?一緒に食べよ。」
そう言って木乃香の笑顔がすぐ近くにくる。刹那は自分の顔が赤くなっていくのがわかり、あわてて木乃香から目をそむけた。
そんな刹那の意図とは反して、木乃香は刹那の顔を見ようと身を乗り出してくる。むげに振り払うことも出来ない刹那は、首を限界までまわしてそれを回避するしかなかった。
「あん、せっちゃんなんでそっぽむくん?」
「あ……あのっ、い、いただきます!」
さすがにこれ以上首を回すことが出来ないというところまでくると、刹那は一転して顔を戻し、ごまかすようにもらったパンを口に運ぶ。イチゴのいい匂いが口に広がった。
あわてて食べる刹那を木乃香はしばらくきょとんとした様子で眺めた後、すぐに笑顔になって自分も手元からパンを取り出して口に運んだ。
二人が遅めの昼食を終わらせると、再び景色を見る時間となった。
どちらも何も言わず、ただ静かな時間が過ぎていく。
太陽はゆっくりと、西に傾いていく。
「……ここにきたら、せっちゃんに会えるような気がした。」
どれだけ時間がたったか、不意に木乃香が口を開いた。
刹那が木乃香の方を向く。
「なんでかよーわからんけど……そんな気がしたんよ。予感っちゅーか虫の知らせっちゅーか……」
独り言のように、木乃香が淡々と言っていく。
「そんで、ほんまに会えてもーた。せっちゃんもここに来てくれた。」
木乃香は刹那の方を向いて笑った。
その顔を見て、また自分の顔が熱くなる感覚があったが、こんどは目をそらすことはなかった。
「せっちゃんは、何でここに来たん?」
「……」
刹那は視線を木乃香から目の前の景色に移した。
「……私も、お嬢様と同じです。自分でもよくわかりませんが、ここに来ればお嬢様に会えるような気がして……
気がついたら登っていました。そして、会うことができました。」
「……ほっか。」
木乃香が目を細めて笑い、刹那の横顔を眺めた後、同じように顔を景色のほうへ向けた。
「これからどないしょっか?」
木乃香が視線を前にしたまま刹那に聞いた。
「そうですね……やることは沢山あります。でもとりあえず……」
「とりあえず?」
すぐに視線を刹那に戻し、次の言葉を促す。
返事を待ちきれないといったような表情で刹那を見つめた。
刹那も視線を景色から木乃香へと戻す。そしてはっきりといった。
「山を降りましょう。」
「……」
木乃香は最初呆気にとられたような表情で刹那を見ていたが、
「あはっ!」
それもすぐに笑顔に変わった。
「そやな。そろそろ降りよか。」
木乃香が勢いよく立ち上がり、体についた芝生を払う。
刹那も続いて立ち上がった。
デイパックを抱えると、一度二人は顔を見合わせる。
「ほな行こか。せっちゃん。」
「はい。」
そして二人は歩き出した。
その顔に、不安の陰はない。
投下した直後になんですが、なぜか自分、地の文で朝倉のこと「和美」って書いてますね。
朝倉でいいだろ俺……
もう一つお知らせ。
明日はちょっと個人的用事のために投下は夜になる予定です。
何時になるかは分かりません。恐らく10時かそこらになると思います。
以上、作者6の報告でした。
リアルktkr
桜子死亡フラグorz、けどGJ
GJヽ(`・ω・´)ノです!
ザジが怖いw
===========================
ちょっと質問。
ここに投下するSSを書き始めたんだけど、何かスレ特有のルールってありますか?
私、新参なもので(´・ω・`)
半年ROMればだいたいのことわかると思うよ
たたかれても泣かない
投下を途中で長期中断しない
あたりじゃないかな。
他の細かい部分はやっぱりわかるまでROMれ。
596 :
マロン名無しさん:2006/06/26(月) 18:39:04 ID:DAPWu4QY
朝倉の方がわかりやすいかもしれませんね
ともあれGJです
597 :
593:2006/06/26(月) 23:29:39 ID:???
>>597 まとめサイトのログ読んだらどうでしょうか?
それでだいたいわかるはず
GJ!相変わらずすばらしいですね。
ただ気になったのは桜子は柿崎のことを美砂と呼ぶとおもうのですがどうでしょう。
600 :
マロン名無しさん:2006/06/27(火) 19:04:29 ID:rdRfQgRV
600ゲットーーーー
作者6さんサイコーです♪
私用がすんだので投下します皆さんこんばんわ。
>>599 ネギま研究所さんでも桜子の柿崎への呼称はないのではっきりとは解りませんが、
確かにそんな感じはしますね。今後の投下では修正しようかと思います。
13 黒幕
「ここまでは首尾どおりです。」
瀬留彦の緊張した声が聞こえる。
1度クラスメイト全員が捕らえられていた施設、
この島の中学校は、3−Aのクラスメイトたちを見送った後はプログラムの運営本部になっている。
3−Aを集めていた教室とは別の教室で、多くのコンピューターが並び、多くの兵士がせわしく動いていた。
ある人物は椅子に座りコンピューターの端末を操作し、あるものは手に銃を持ち施設周辺の見回りへと赴いていった。
その中で、部屋の端、窓際のあたりだけは他とは違う空気が流れていた。
簡単な机と椅子ばかりが並ぶ教室の中で、そこだけはプラスチックの机と、それをはさむようにソファが置いてある。
その一方に、瀬留彦は座っていた。
額に汗を流しながら、机をはさんだ反対側のソファに座る人物に話しかける。
「非常にゆっくりではあるが生徒たちもやる気になっている。
このままいけばプログラムは滞りなく終わると思います。」
瀬留彦の報告を聞いて、目の前の人物は口元に笑みを浮かべた。
「もう一度確認したいが、このプログラムが終われば……」
「しつこい人ですなぁ。ちゃあんと覚えとります。」
瀬留彦の発言をさえぎるように人影が言った。
妙齢の女性の声。思わず瀬留彦は黙ってしまう。
「政界関係者に話は通っとる。亡命関係もバッチリや、何を心配することがありますの?」
なにやら追い詰められたような表情の瀬留彦とは違い、対面する女性は余裕だった。
「ただこちらからも確認させてもらいますえ?このプログラムについての情報工作についてはあんたに任せたんやから。」
「それについては大丈夫です。3−Aは緊急で決まった課外授業で学校を出るということになっている。
そもそもこの島自体が国の管轄から離れた所にあるんだ。感づかれはしないはずだよ。」
そういう瀬留彦の表情はさえなかった。
その様子を見た女性が瀬留彦に向けて言う。
「何や浮かない顔してますなぁ。いまさら良心の呵責にでも襲われたんですか?それとも怖気づいとるんですかな?」
「何を!」
「これももう一度言っときます。ウチらはもう引き返すことはできん。間違っても変な考えを起こすことだけはないようにしてもらいます。」
身を乗り出した瀬留彦を、女性が凄みで押し切った。
席を立ちかけていた瀬留彦が再度ソファに座った。
「……この計画に失敗は許されない。」
額を押さえながら瀬留彦が言った。
「そう言うことです。わかったら瀬留彦はんも自分の仕事をしてくださいな。」
目の前の女性、天ヶ崎千草はそう言うとソファをたち、部屋を出て行った。
瀬留彦は一人ソファにすわり、しばらくはそのままだった。
千草は一人中学校の廊下を歩く。
「予定通りや。すべて予定通り。」
妖しい笑みを浮かべ、千草がつぶやく。
やがて千草は廊下の一角に電話を見つけた。
受話器を手に取ると、番号を打ち込んでいく。
時期に受話器から男の声が聞こえた。
「千草くんか?」
「毎度おおきになぁ、外交官はん。」
千草が言った。
「役職名はここでは言うな。誰が聴いているかわからないんだぞ。」
「こちら側には誰もおりません。そんなに怯えるくらいなら最初からこんなことしなければよかったものを。」
「……で、どうなんだ?」
電話の先の男が聞いた。
「こちらはすべて順調、予定通りや。あんたらお偉いさん方にもそろそろデータが手に入るやろ。
ゆっくりと殺し合いの様子を見学することができますえ?」
「口を慎めよ、これは崇高な実験なんだ。決して殺し合いを推奨するものじゃない。」
――よく言う
千草は声には出さなかったが心の中ではき捨てた。
「なんでもよろしいわ。三日後にはきちんとヘリを用意してもらいますえ。」
「もちろんだ。亡命についても先方からは話がついている。それについては安心してもらっていい。」
「それならウチはこれで。」
そう言うと千草は一方的に受話器を切った。
その目はずいぶんと冷めていた。受話器の向こうにいる政府役人への眼差しだろう。
「実験ね……優勝者についてトトカルチョをしはるんもあんさん方の中では実験なんでしょうなぁ」
独り言のように、皮肉を吐いた。
「まぁ、ウチとしては復讐が果たせれば何でもええんですけど。」
千草はそうつぶやくと、再び教室へと戻り始めた。
14 守る
「参ったでござるなぁ……」
夕日に照らされる森の中で長瀬楓(番号20番)がつぶやいた。
楓はプログラムが始まってから今まで、ずっと島の中を走り回っていた。
もちろん、他のクラスメイトを探すためだった。
だが、楓の努力むなしく結局誰にあうこともなく日が暮れていってしまった。
「まったく運がいいのか悪いのか……」
楓は自分のデイパックからスローイングナイフを一本取り出した。
ちなみにデイパックの中には同じものがあと4本ある。
適当に手の中を転がし、眺めた。夕日の光を反射し、鈍く光った。
森の中を一筋の風が走りぬけたとき。
突然、楓は立ち上がり、手にあるナイフをしっかりと握った。
そして周りの森の中のある一点を凝視する。
「そこにいるのは誰でござるか?」
いつでもナイフを投げれる体勢で、その空間に話しかけた。
程なくして、木の影からその人物は出てきた。
相手は二人組みだった。とても似通った姿をした二人だった。
二人組が楓の存在に気づいた。
「かえで姉……」
二人組の片方、双子の妹である鳴滝史伽(番号23番)が楓を見ていった。
もう一人の鳴滝風香(番号22番)はうつむいたまま何もしゃべらない。
「無事だったでござるか!」
楓はあわてて双子のほうへと歩み寄る。
怪我をしてないか調べる。史伽の右足に包帯が巻かれているのを見つけた。
「これは……大丈夫でござるか?」
「あ、うん、大丈夫です。大したことないよ。」
そこで楓はこの二人に違和感を覚えた。
普段あれだけにぎやかな風香がさっきから何もしゃべらない。うつむいているため顔色をうかがうこともできない。
そして史伽も、自分としゃべってはくれるのだが、どこかぎこちない。
表情も、喜びの笑顔の中にどこかおびえている様子がうかがえる。
いや、おびえているというよりむしろ、恐れている、というほうが正しいか?
楓が二人を怪訝そうに見つめていると、それまでずっとうつむいていた風香が、その顔を上げた。
そのときやっと初めて風香は楓と目を合わせた。
風香は笑っていた。
「ねぇ、かえで姉。」
笑顔のまま、楓に話しかける。楓は返事をしようとして、
隣の史伽の顔が凍りついたのを見た。
「っ!」
何かを引き抜く音が聞こえた。風香の右手が動く。
楓はとっさに身を引いた。
その瞬間、風香が右手を思い切り振りぬく。
ちょうど楓の体があったところを、風香の右手が通り抜けた。
後ろに飛びのいた楓が風香を見ると、その右手に銀色に光るナイフが握られているのを確認した。
「風……香?」
「お姉ちゃん!かえで姉だよ!?やめて!!」
楓の驚く声が聞こえた後、史伽が叫ぶ。
その声も、今の風香には届かなかった。
「守るんだ……妹を……相手が誰でも…っ!」
風香は楓に向かって走り出し、ナイフを振り下ろす。
再び楓は身を引いてかわす。風香は吹きぬけたナイフを再び楓へと振り上げる。
それも楓はかわした。しかしそれでも風香は止まらない。
以前、古菲(番号12番)を前にした時と全く同じ展開になった。
風香は完全に楓を殺そうと襲い掛かってくる。楓はなんとか風香を取り押さえられないか考えるが、なかなかいい方法が思い浮かばない。
どうやっても相手が、あるいは自分がそれなりの傷を負うしかない。
楓は一度風香から大きく距離をとる。風香もそこから距離を詰めようと走ってはこなかった。
(やむを得んか……)
楓は自分でとった風香との距離を、一気に詰めようと走り出した。
多少の傷は覚悟で風香を取り押さえることにしたのだった。
見る間に二人の距離は縮んでいく。
その時になって、風香がナイフを持つ右手を持ち上げた。
ナイフの射程距離からは明らかに外にいる楓へ、切っ先を向けた。
「?」
そのとき、風香の行動を理解できたのは、風香を除けば史伽だけだった。
その一瞬遅れで、楓も風香の狙いを感づいた。
(もしやあれはっ……)
そう思った時には、風香の指がトリガーにかかっていた。
(まずい!)
楓が急いで立ち止まり、横へと避けようとした瞬間、風香のナイフから銃弾が放たれた。
パンッ!
銃声とともに撃ちだされた弾丸はまっすぐに飛んでいき、
楓と風香の間に割って入った史伽の体に命中した。
「……えっ?」
その声を上げたのは風香だった。
まだ煙のでるナイフを構えたまま、自分の目の前にいる史伽を見た。
史伽は胸の辺りから血を流しながら立ち尽くしていたが、すぐに足から力が抜けてその場に倒れた。
「史伽!」
楓が急いで史伽のもとへと駆け寄り、抱き起こす。
「しっかりするでござるよ、史伽!!」
「あ……かえで姉ぇ…」
史伽は自分を抱き起こしている楓の顔を見た。
「かえで姉ぇ……お姉ちゃんを…許してほしいです……
お姉ちゃんは…私を守って……くれてた……だけ……」
「もういい、黙ってるでござる!」
楓は自分の制服のシャツの袖を引きちぎると、それを史伽の傷口へとまきつける。
しかしそれも気休め程度にしかならなかった。
血はとめどなく流れ、すぐに白いシャツが赤く染まり、血が滴り落ちる。
それでも楓は必死に止血作業を行うが、どれも効果は薄く、史伽の顔からは血の気がなくなっていった。
史伽は最後、風香の方を向いて何かをつぶやいたようだったが、声が小さすぎて聞こえなかった。
「くそっ!血が止まらんでござる……史伽、史伽!!」
もはや楓が名前を呼んでも史伽は返事をしなくなった。
そして、史伽の体が冷たくなっていくのを感じた。
「史伽!史伽ぁあ!!」
そこには、史伽の死体を抱いて叫ぶ楓と、ただそれを黙って見下ろしている風香だけが残った。
「なぜ……こんなことに……」
楓が体を震わせながらつぶやく。
そしてゆっくりと、史伽の体を横たわらせた。
史伽の両手を胸のところに合わせる。
傷口がその手に隠れて見えなくなり、それはまるで眠っているようにしか見えなかった。
「ボクは……ボクは……」
風香が震えた声で言う。
その目は大きく見開かれ、口もがたがたと、まるで凍えているかのように震えていた。
「ただ、守りたくて……なのに、何で……」
ゆっくりと、楓が顔を上げる。そして風香の顔を見た。
その瞬間、風香は体を一度大きく震わせると、
「うわ、うわあああ!!!」
きびすを返してナイフを放り投げ、逃げるように走り出した。
「風香!」
あわてて楓は立ち上がる。追いかけようとして、一度だけ立ち止まる。
自分の後ろで眠っている史伽を見た。
そして再び視線を風香の走っていった方向に向けると、楓は走り出した。
鳴滝史伽、死亡 残り25人
15 断罪
(殺した!殺した!私が、妹を殺した!)
風香は森の中を走り続けた。
木々が次々と現れ、そして自分の後ろへと流れていく。
(守るって、絶対守るって言ったのに……)
視界がぼやけて前がよく見えない。
(誰が相手でも、絶対に守るって……)
知らないうちに目から涙がこぼれているのがわかった。
(絶対に死なせないって、そういったのに!)
乱暴に涙を手でぬぐって、ひたすら走り続けた。
(私が、殺した!!)
………
……
…
どこをどう走ったか、いつの間にか風香は島の端にまで来ていた。
目の前は崖になっていて、打ち寄せてくる海の波が岩肌を削っている。
風香の顔に、覇気はない。
気づけば涙も乾いていた。
ただじっと、はるか下にある海の荒波をただ眺めていた。
「どうしよう……」
風香がつぶやいた。大切な妹はもう居ない。
自分が、殺した。
もうその瞬間から、何もかもがどうでもよくなりかけていた。
「このまま飛び降りちゃおっか……」
手っ取り早く妹に会える方法を思いついた。風香は一歩、崖に近づいた。
もう一歩、踏み出そうとして、
「ふーちゃん……」
横から声をかけられた。
首から上だけそちらへ向ける。
そこには佐々木まき絵(番号16番)がたっていた。
「まき絵……」
もはや生気のない目でまき絵を見つめ、その名を呼んだ。
まき絵は返事をしない。その代わり、眉を吊り上げて風香をにらみつけた。
そしてデイパックから包丁を取り出す。
まっすぐに、切っ先を風香へと向ける。
「あなた、くーふぇを殺したでしょ?私、見たんだから!」
まき絵が風香をにらみつけたままそう言った。
風香はその言葉の意味を汲み取るのに少しだけ時間を要した。
「くーふぇ……あぁ、そっか。」
確かに今日の昼間、史伽を守るために古 菲を殺した。ナイフを向け、銃弾を撃ち込んだ。
「絶対に……許さないっ!クラスメイトを……殺すなんて……」
震える手で包丁を構えたまま、じりじりと近づいてくる。
風香はただ黙ってそれを見つめる。逃げることも、許しを請うこともしない。
「私が……仇をとってあげる…」
まき絵はじりじりと近づいてくる。あと2、3歩進むだけで包丁の殺傷圏内というところまで迫った。
(あれで殺してくれるんだったら、それもいいかな。)
まき絵の手で光る包丁を見つめながら、そんなことを思った。
風香にとっては、崖に落ちて死ぬか、心臓に包丁が刺さって死ぬかの違いしかなかった。
ただ、苦しむのはいやなのでうまく心臓を一突きしてくれるかなとか、そんなことだけを考えていた。
そして、とうとうまき絵が風香に飛び掛る。
そのとき、風香の頭の中で色々な光景がフラッシュバックした。
(あぁ、これが走馬灯ってやつかぁ……)
……妹とよくいたずらをした。いつも二人だった。
離れている時間なんてほとんどなかった。
これからも、ずっと。そう思っていた。
記憶が、だんだんと最近のものになっていく、そしてその最後。
史伽の死んだときの光景が浮かんだ。
最後に、史伽が風香にむけていった言葉。
聞こえはしなかったけど。確かにそういった。
「がんばって……」
次の瞬間、風香は仰向けに倒れ、まき絵がその上に乗っかる形になった。
そしてまき絵の包丁は、風香の顔の手前で、止まっていた。
いつの間にか風香が手を出し、まき絵の手を支えて包丁を止めていた。
「…っ!」
まき絵は一瞬驚いて動きが止まるが、すぐに腕に体重をかけていく。
このまま風香を押し切って包丁をつきたてようと、必死に手に力を入れていく。
風香も負けじと包丁を押しかえす。だが、上から体重をかけて押されては力負けは必至。
すこしずつ、包丁が風香の顔へと近づいてくる。少しでも力を抜けば、その瞬間包丁は風香の顔に突き刺さる。
「い……や……だ……」
包丁を押さえながら、風香が言った。
「死に……たくない……」
まだ、何もできていない。
このまま死んだら、それこそ史伽の死が無駄になってしまう。
史伽が最後に言った言葉。
真意はわからないけど、頑張れって、そう言われたから。
頑張らないで死ぬのだけは、いやだと思った。
再び目に涙を浮かべて、風香は叫ぶ。
「死にたくないよぉっ!!」
風香がそう叫ぶと同時に、腕にかかっていた力が突然抜けた。
いったい何があったのか、風香は自分の上にいるまき絵を見た。
まき絵は自分に包丁を突き立てる、その体勢で固まっていた。
ただ、そのこめかみにはさっきまでなかったものが生えている。
それをよく見ると、それは生えているのではなく、こめかみに突き刺さっているのだということがわかった。
そのとき、まき絵が体勢を崩し、横に倒れる。
もはや指先一つ動いていなかった。
風香は仰向けの体勢から身体を起こし、立ち上がる。
そして森のほうを向いた。
そこには、ナイフを投げた体勢で固まっている楓がいた。
肩は少し上下し、息を切らせているのがわかる。
楓は振り上げていた右手をゆっくりと下ろすと、少しうつむき気味になってつぶやいた。
「これで、拙者も人殺しでござるな……。」
風香の体が少し震えた。
楓は顔を上げ、風香を見た。
「さぁ、帰ろう……妹の、史伽のいるところに。」
そのとき見せた笑顔は、いつも楓が自分たちに見せてくれた笑顔だった。
風香の目から自然と涙があふれた。
「ごめん……なさい。」
そうつぶやいて、そして。
「かえで姉ぇ!」
楓のもとへ、走り出した。
連続する銃声とともに、風香が奇妙に踊ったのはその直後だった。
銃声をBGMに、風香は踊り、そして体を紅く染め上げる。
音がやめば、それと同時に踊りも止まり、風香はその場へ崩れ落ちた。
楓はその様子を、ただ立ち尽くして見ていることしかできなかった。
全く反応ができず、ただ目の前の光景が流れていくのみ。
銃声が鳴って、風香が倒れるまでがスローモーションのように楓の目には映った。
そしてそれが終わったところで、楓はやっと我に返った。
「風香ぁ!!」
楓はすぐに風香のもとへと走り出した。
そして風香の体を抱き起こす。
「風香、風香?!」
彼女の妹にそうしたように、楓は風香の名前を呼んで応急処置をする。
しかし、それもまた彼女の妹と同じように、無駄に終わるだろうということは容易に想像できた。
「かえで姉ぇ……」
焦点の定まらない目で楓を見た。
「生きたいって……せっかく思ったのに……死にたくないって……思えたのに……」
風香はそれ以上はしゃべることができず、ゆっくりと目をつぶった。
「……っ!」
楓はもはや声を出すこともできなかった。
ただ風香の死体をぎゅっと強く抱きしめることしかできなかった。
「アイヤー、これ連射もできるみたいネ?とても便利ヨ。」
楓の背後から声が聞こえた。
そして近くの草むらから、銃を持った超鈴音(番号19番)が楓のもとへと歩いてきた。
新しいマガジンを銃に叩き込むと、スライドを一度引いて楓へとむけた。
「しかも楓サンまで一緒だったとは。これでずいぶんと楽になるヨ。」
狂気に満ちた笑顔で、超は言った。
「なぜ殺した?」
楓が、超のほうは振り向かず、風香の死体を見ながら言った。
答えはすぐ返ってきた。
「こうしないと生き残れないからネ。しょうがなかたヨ。」
「しょうがなかった……」
超の最後の言葉だけ繰り返した。そして楓は超の方を振り向く。
「……っ!!?」
絶句したのは超。
振り向き、自分の方を向いた楓の目は、とてつもない殺気を込めていた。
「あ……な……」
楓は風香を地面に寝かせると、ゆっくりと立ち上がった。
右手にはスローイングナイフが握られている。
「う……」
楓の殺気が一段と強くなる。足が震える。もはやここにいるだけでも困難な状態だった。
「っ!!」
超は銃の引き金を引いた。フルオートで弾丸が撃ちだされる。
普通ならかわせる距離ではないし、はずせる距離でもない。
なのに、弾丸は楓にかすりもしなかった。
楓は弾丸が発射されると同時に飛び上がり、上空からナイフを超めがけて投げた。
超は後ろに下がってナイフをかわすと、そのまま楓に背を向けて走り出した。
地面に着地した楓が再びナイフを投げようとするが、そのときには超はすでに森の中へと撤退した後だった。
先ほどまでの喧騒がうそだったかのように、丘では波が島にぶつかる音だけが響いていた。
楓は地面に刺さったナイフを抜き取り、軽く土を払ってから懐にしまった。
そして背後で倒れている風香のもとへと歩み寄る。
一度しゃがんで、風香を抱き上げた。
「帰ろう……妹のところへ……」
そう言うと、楓も森の中へ消えた。
佐々木まき絵、鳴滝風香、死亡。 残り23人
16.違う
周りから鳴り響く銃声。
定時放送で告げられる死亡生徒の数。
それらすべてが、釘宮円(番号11番)の気持ちをあせらせた。
定時放送で流れた死亡生徒の数は3人。
本当に人が死んでる。
本当に、クラスメイトが殺されている。
ぼやぼやなんてしていられなかった。
急がなければ、大変なことになる。
取り返しのつかないことになってしまう。
釘宮は親友である二人を探すために、必死に歩き回っていた。
しかしいくら歩いたところで親友を見つけることはできなかった。
それどころか誰一人として自分の前に姿を現してはくれない。
運がいいととることもできるかもしれないが、今の自分にしてみれば不都合でしかない。
もうそろそろ夜の定時放送がなるころである。
また瀬留彦が死亡生徒を発表していくだろう。
それを聞くのが釘宮は恐ろしくてたまらなかった。
大切な人の名前が読み上げられるのではないか。柿崎美砂(番号7番)や、椎名桜子(番号17番)の名前が呼ばれるのではないか。
際限なく頭に流れてくるいやな予感を振り払うように、釘宮は歩き続けた。
それからもしばらく歩いたが、やはり誰とも会うことはなかった。
日も大分落ちている。夜の真っ暗な森を歩き回るのは危険極まりなかった。
「今日はここで野宿か……。」
一人つぶやくと、最寄の一番大きな木にもたれかかって、座り込んだ。
一度だけ大きなため息をついた後は、森の中から聞こえる虫の鳴き声以外は聞こえなくなった。
何をするでもなく、ただ視界の先にある森の闇を眺めていると、釘宮の耳が先ほどから流れている森の音とは異質な音を聞き取った。
釘宮は思わず立ち上がると、デイパックに入れてあった拳銃に手をかけた。
音のした方向をじっと見つめる。
草木を掻き分ける音が再び響いた。
釘宮はその表情をさらに強ばらせ、デイパックから銃を取り出した。
音は確実に近づいてきている。このままここにいればおそらくは出くわすだろう。
逃げることもできるが、相手が何をしてくるかわからない以上、背を向けて走り出すのは危険。
そして何より、相手が誰なのかを確認したかった。
そうしている間も、音は着実に近づいてくる。もはやすぐそこまで来ている。
手に持った銃を握りなおし、感触を確かめる。釘宮の目の前の茂みが揺れた。
そこから誰かが出てくるのを見るや否や、釘宮は銃をその人物に向けた。
「動かないで!……っ!?」
円は驚いて目を見開いた。
自分の警告によってこちらを振り向いたその人物は、まさに自分が今会いたいと思っていた人間だったからだ。
「桜子……?」
思わず名前を呼んでしまう。その段階になって、まだ自分が桜子に向けて銃を向けていることに気づいた。
すぐに銃をおろし、デイパックにしまった。
「あ、これは違うの!ほら、誰だかわからなかったから、ちょっと警戒してて……」
あわてて桜子に弁明をし、自分に戦う意志がないことを告げる。
いらない誤解を与えてはならないと、必死になって謝罪と弁解の言葉を考えた。
だが、すぐにそういったことは頭から離れていく。
桜子の様子が、普段と違うことに気づいた。
「ちょっと、桜子?」
釘宮が再び桜子を呼ぶ。そこではじめて気づいたが、桜子の格好はぼろぼろだった。
足はところどころに擦り傷があり、スカートにはそこらへんに藪の葉がついている。
上も、シャツが一部破けているところがある。おそらくは木の枝にでも引っ掛けたんだろう。
そうやって視線を上げていくと、最後に桜子の顔に行き着いた。
桜子の顔は、涙でボロボロだった。
身体の様子から見ても、おそらくずっと泣きながら歩いていたのだろう。
「桜子、大丈夫!?」
いったい何があったのか。釘宮はすぐに桜子へ駆け寄った。
「いったいどうしたの?何があったの!?」
桜子はその質問には答えず、ただ釘宮の顔を見て、言った。
「円は……違うよね?」
「え?」
釘宮が怪訝そうな顔で桜子を見る。
「円は……ゲームに乗るなんて……言わないよね?殺しあったり……しないよね?」
「……」
釘宮には、桜子が何を言っているのかわからなかった。
ただ、力なく倒れてくる桜子を、黙って抱きとめることしかできなかった。
なんか今回は特に賛否両論ありそうな話がありますね(汗)
言わずもがな真の黒幕さんの存在w
ちなみに桜子は最新呼称では釘宮のことを「くぎみん」と呼んでたりしますが、
これは明らかにおふざけで言ってると思いますので「円」にしました。
呼称のことで色々指摘をもらったのであらかじめ説明しておきます。
他に指摘、批判などがありましたらどうぞよろしく。それでは。
乙です!
双子残念…
621 :
マロン名無しさん:2006/06/27(火) 22:21:12 ID:cafQLvKy
GJ!
桜子については日常から「くぎみん」と呼んでいるのでは?円と呼ぶのはチアリーダー以外ではないかと
乙であります!!
楓姉かっこいいです
真の黒幕関連は気にならないというか
俺が書いていたのと思いっきり被ってるorz
ただ、俺が書いてたのより明らかに文章力は上です。GJ
624 :
マロン名無しさん:2006/06/27(火) 22:32:14 ID:rdRfQgRV
楓の「ござる」が少ないような気がします
生意気言ってすみません・・・
俺も千草かぶった。でもいいや。
あ、唯一のボクっ子忘れないであげてください。
まぁ、黒幕で考えられるのはタカミチ、セルピコ、新田以外は
ヘルマンか千草ぐらいしかいないからなぁ。
あ、ガンドルあたりもいけるか?
超って読み手の抱くイメージと登場人物達の(超への)イメージのズレが面白いよな
出てきただけで「そいつ何か企んでるから逃げてー!!」って思うもん
あるあ……ねー……あるあるあるwwww
>>624 いえいえ生意気なんてとんでもない。これからもよろしくお願いします。
黒幕千草案は結構良好らしいですね。安心しました。
使えるのはまぁ
>>624のほかに……学園長とか?(ねーよ)
とりあえず今日の分投下です。
17.渚の吸血鬼
「第2回の定時放送を始めます。死亡生徒の発表から。出席番号3番、朝倉和美さん、16番、佐々木まき絵さん、22番、鳴滝風香さん、23番、鳴滝史伽さん、
以上の4名。次に禁止エリア……」
「……ふん。」
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル(番号30番)は、島に流れる定時放送を、至極冷めた様子で聞いていた。
死亡した生徒を読み上げられているときも、エヴァは眉一つ動かさずにただじっとその放送を聴いているだけだった。
彼女にとっては、ここで誰が死のうと関係ないということなのかもしれない。
エヴァは今、海岸沿い近くにある民家にいた。
それなりに広い家で、現在エヴァがいる和室のほかにリビングや客室があり、さらに2階にも部屋がいくつかある。
縁側から流れてくる風が、時折エヴァの長い髪をたなびかせた。
エヴァはデイパックから自分に支給された武器である果実ナイフを取り出した。
それを自分の目の高さのところまで持ち上げ、しげしげと眺める。
しばらくそうやってナイフを眺めた後、突然。
エヴァはそのナイフで、自分の手を傷つけた。
手のひらにまっすぐ、一筋の線が出来上がり、そこから血が滴り落ちる。
血は手を伝っていき、畳に落ちてしみを作った。
その血は止まることを知らないように流れ続ける。
その様子をずっとエヴァは眉をしかめて眺めていた。
(やはり再生も利かないか……。)
この島が学園の敷地外だとするなら、結界の効果がなくなったかもしれないとエヴァは思っていた。
ならばと魔力を込めてみると、結果は期待していたものと反して存外にうまくいかない。
それどころが学園のころより制約が強力になっている。それこそ少しの魔力も放出することができなくなった。
そして今試したとおり、身体の自己再生能力も完全になくなっている。
つまり、今のエヴァは学園にいたころよりもさらに人間に近くなっていた。
縁側で、草木の揺れる音が響いた。
「っ!?」
畳に座り込んでいたエヴァはとっさに立ち上がると、縁側から見える庭をにらみつけた。
辺りに緊張した空気が張り詰める。
しばらくの膠着の後、茂みから子猫が飛び出してきた。
猫は一度、こちらを向いているエヴァの方を向く。
その恐ろしい形相を見て、猫は踵を返して逃げ出した。
そして再び庭は静かになる。
エヴァは拍子抜けしたかのように再び畳に座り込んだ。
天井で光る電球を見上げる。電気はまだ通っている。
「無様なものだ……。」
自嘲気味に、そうつぶやいた。
不死の吸血鬼であるはずの自分が、世界でも最強クラスの魔力を持つ魔法使いである自分が、
今では10歳の少女並みの体力しかなく、こうしてどこぞの民家に忍びこんで、猫の物音一つに神経を張り詰めている。
迫りくる死の恐怖におびえている。
先ほど傷つけた手のひらが痛みを訴えてくる。
血はいまだに止まっていない。
と、その時、家のふすまが開いた。エヴァがすかさず視線を移す。
「マスター、ただいま戻りました。」
「茶々丸……」
部屋に入ってきた者が従者である絡繰茶々丸(番号10番)だとわかると、すぐにエヴァは警戒を解いた。
茶々丸はエヴァの正面に座った。
エヴァと茶々丸はゲームが始まって比較的早く合流することができた。
それからはずっとこの家に立てこもり、たまに茶々丸が見回りに行くというのを繰り返していた。
今もそれが終わって戻ってきたところである。
「この家を中心とした半径50メートル四方に人影はありませんでした。
今のところは安心です。」
「わかった。」
茶々丸の報告を聞いて、短い返事を返す。
そこで茶々丸はエヴァの手から血が流れていることに気づいた。
「マスター、その傷は……」
「あぁ、自分でやった。ちょっとした確認のためだ。」
「手当てします。」
茶々丸はエヴァの手をとると、家においてあった救急箱を使って応急処置を行う。
傷口を軽く消毒して、包帯を巻いた。
「マスター、これからどうしましょう?」
手当ての最中、茶々丸がエヴァに聞いた。
エヴァが少し顔をうつむかせて考える。
「そうだな……クラスのやつら全員を殺せば帰れるというのなら、ゲームに乗るのも悪くないかもな。」
そう言って獰猛な笑みを作る。
それを見た茶々丸が、少し悲しそうな顔をする。
「心配するな。冗談だ。」
すぐにエヴァはそう言った。
「殺すことにいまさら躊躇なんてないが……それでは瀬留彦のやつの思うとおりに動くことになる。
そんなことは私のプライドが許さない。」
「マスター……。」
茶々丸の顔に笑顔が戻る。
「ありがとうございます。」
「馬鹿、礼を言うことじゃないだろ。」
あきれてるのか照れてるのか、エヴァは茶々丸から顔を背けて言った。
茶々丸はそれでもエヴァに微笑みかけている。
「まぁ、なんにせよ今は何もできないことに変わりはない。私はもう寝る事にする。」
「了解しました。マスター。」
エヴァは立ち上がり、二階にある寝室へと向かった。
茶々丸は一人そこに残り、それからもしばらく外に注意を向けていた。
月は出ていない。そこには完全な闇が広がっている。
「ネギ先生……」
風にまぎれるほど小さな声で、そんな呟きが聞こえた。
18.襲撃
日が落ちればそこは暗闇。
身を投じればすべて飲み込まれてしまいそうなほど、深い闇だった。
長谷川千雨(番号25番)はレストランのカウンターにある椅子に腰掛けたまま、ただそうやって窓から見える外の闇を眺めているだけだった。
カウンターには支給されている銃がおいてある。
それ以外は何もない。
じっと、窓の外を見つめている。
「……あっ、」
千雨は、そこでやっと自分がずっと窓の外を見ていることに気づいた。
「チッ……」
そして気づくと同時に、舌打ちをした。
その顔が露骨に渋い顔を作る。
千雨は、昼ごろからずっと同じことを繰り返していた。
ただ何も考えずにレストランで過していくはずが、気づけば窓の外をじっと見つめている。
まるで何かが来るのを待つかのように。
それが千雨が渋い顔を作る原因だった。
「何を期待してるんだ、私は……。」
片手で頭を抱えながら、千雨はつぶやいた。
何を期待している。
何を、はわかっていた。だからこそ千雨は不愉快だった。
『じゃあ、賭けをしよう。』
今日の昼におこったやりとりを思い出した。
明石裕奈(番号2番)との会話。
彼女は千雨に賭けを持ち込んだ。
決してここを離れないといった千雨に、あえて自分に不利な賭けを提案したのだ。
自分が、信頼できる仲間を連れてくるから、そしたら千雨にも協力してもらうと。
ゲームから脱出するために、力を貸してもらうと。
『私がそいつを信用するかわからねぇぞ?』
千雨はそういった。それでも裕奈は自信たっぷりに言ってのけた。
そして約束をとりつけてここを出て行った。
「馬鹿じゃねえのか、あいつ……」
今ではどこにいるかわからない裕奈に向けて、千雨はつぶやいた。
『誰だって、最後には自分の命が惜しいんだ』
それも千雨が言った言葉だった。
誰だって、追い詰められたら自分が一番可愛いんだ。
他人のために命を張れる人間なんていやしない。
千雨はそう思っていた。少なくとも自分はそうであると。
肉親はおろか、突き詰めていけば赤の他人でしかない誰かのために一つしかない命を懸けるなんてばかげている、と。
明らかに割が合わない。だから千雨は何もしないと決めた。
もしも裕奈が運良く誰かをここに連れてきたとしても、自分はついては行かないだろう。
誰が来ようと、何を言おうと、自分はここにとどまる。そう決めていた。
「じゃあ……」
千雨は虚空を眺めてつぶやく。
「じゃあ、何で私はあんな賭けを受けたんだろう……」
その疑問に答えてくれる人は居ない。
それからしばらくたつと、千雨はまた窓の外を眺めていた。
そして何度目かと同じように、そのことに気づく。
「くそ、また……」
舌打ちをして、視線を店内に戻そうとしたとき。
「?」
窓の外に、人影を見た。
千雨は視線を再び窓の外へと向ける。
しかしそこにはもう誰もいなかった。
気のせいかとも思ったが、確かに千雨は何かを確認していた。
さらによく見ようと目を凝らしていくと、突然店のドアについたベルが鳴り響く。
「うわっ……!」
驚いた千雨が思わず声を上げ、あわてて銃を取った。
「誰だ!」
銃を入り口に向けて、入ってくる人間に対して言った。
しかしその人物はその質問には答えず、堂々と店の中へと進入した。
「お前は……」
店の中の明かりで照らされたその人物は、ザジ・レイニーデイ(番号31番)だった。
ザジは無表情でカウンターに座る千雨を見る。
千雨は少しの間、ただザジを眺めていたが、すぐに視線を鋭くしてザジを睨み付けた。
そして昼間に裕奈にやったことと同じように、警告を発した。
「銃を捨て……」
しかしその警告は、途中で中断せざるを得なくなった。
ザジが右手に握った銃を千雨に向けたのだ。
千雨はとっさにカウンターを乗り越え、そこに身を隠す。
それとほぼ同時に、連続した銃声がレストランに響き渡った。
すさまじい轟音とともに、さきほどまで千雨が座っていた椅子は足の部分から吹き飛び、カウンターに沢山の穴を作る。
上に乗っていた調味料やメニューの紙は粉々になって地面に落ちた。
千雨はカウンターの向こう側で頭を抱えて縮こまり、銃撃をやり過ごす。
じきに銃声がやんだ。
「あの野郎……」
小さな声でそう呟くと、カウンターから少しだけ顔をのぞかせ、ザジの様子を伺う。
ザジは手に持ったマシンガンに新しいマガジンを叩き込んでいるところだった。
マガジンを装てんし終え、バシャ、という音とともにスライドが前後する。そしてこちらを向いたザジと再び目が合う。
急いで千雨が顔を引っ込めると、また大量の弾丸が千雨の頭上を通過していった。
厨房においてある皿や調理器具がはじけて割れた。
ザジはいったん引き金から指を離すと、ゆっくりとレストランの入り口から店内へと歩を進めていった。
さきほど千雨がいたカウンターの辺りに銃を向けたまま、慎重に奥へと入っていく。
と、突然カウンターの裏にいた千雨が走り出した。
すかさずマシンガンを放つ。
弾丸が千雨のもとへと飛んでいくが、身をかがめられているためどれも命中することはなく、先ほどと同じようにただ厨房を散らかすのみに終わった。
ザジは千雨の走っていった先を確認し、再び奥へと進入していった。
「ふざけんなよ畜生が……」
千雨は厨房の奥で身をかがめて毒づいた。
フロアの方から足音が聞こえる。おそらくザジがこちらへと進入してきているのだろう。
(どうする?)
千雨はすぐに打開策を練る。月並みな表現だが、このままなにもしなければ自分は蜂の巣だ。
銃声からして相手の武器はマシンガンであると予測できる。ワントリガーで大量の弾をばら撒くかなり強力な武器だ。
それに対して自分は小さな拳銃一丁。武器の優劣は圧倒的だった。
対抗しようにもこれだけではまともにやりあったところで勝ち目は薄い。千雨は、周りに何か利用できるものはないか探した。
厨房にあるものといえば調理器具。千雨の近くにあるのは脇に落ちてる包丁、頭上の棚に入っているまな板、皿。
どれもマシンガン相手に使える道具ではない。
「弾丸を打ち落とせでもできりゃ話は別かも知れねぇけどな……」
千雨がそう呟くと同時に、再びあの連続した銃声が響いた。
首をすくめてそれをやり過ごす。
「くっそ、本格的にやばい……」
必死になって周りを見渡す。そこでふと目に映ったのは、小さなアルミの扉。
「裏口……」
そういえばそんなものがあったと千雨は思い出した。
一度、あの扉から逃げるという選択肢が頭をよぎり、すぐに考え直す。
今日このレストランにきた時のことを思い出した。
山の中にこのレストランを発見したとき、千雨は店内を念入りに見て回った。
裏口もそのときにみつけていた。
あの扉を開けた先も確認した。
扉の先は、急な山の下り坂が延びていた。
それは坂というには急すぎる斜面。
いったいこのレストランのオーナーは何を考えてこんなところに店を建てたのかを疑いたくなるほどに。
少なくとも人間が駆け下りることのできるような斜面ではない。崖に近い場所だった。
なので、あの裏口は逃げ道としては使えないとそのときに決めたのだった。
だから千雨は一度思いとどまったのだが、
(どうせここにいたって死んじまう!)
意を決してあの裏口から逃げることを決心した。
すると千雨は、近くにある厨房のコンロのガスを空けた。
隣に並ぶすべてのコンロを、同じようにしてつまみをひねっていく。
そうしている間に、足音はすぐ近くまで来ていた。
千雨は全部のコンロのガスをあけ終わると、一直線に裏口へ向かう。
おそらくはザジに見つかるだろうが、もうそんなことを気にしていられない。
振り向くこともなく裏口の扉へと駆け抜け、蹴破るようにして外へと飛び出る。
そして千雨の姿を確認したザジは、そこにマシンガンを向けて引き金を引く。
「だああああああああああ!!!」
千雨の叫び声とともに、厨房に巻き上がったガスにマシンガンの火が引火した。
ボゴォォオ!!
千雨が飛び出した裏口から炎が噴出し、千雨を吹き飛ばした。
千雨はなすすべもなく飛ばされ、山の急な斜面を転がり落ちていく。
そして坂の途中にある木に勢いよくぶつかって、ようやく止まった。
「うぐぅっ……!」
木に衝突した左腕に鈍い音が響き、激痛が走る。
しばらく激痛にもだえた後、ゆっくりと身体を起こした。
左腕をすこし動かそうとしてみると、再び激痛が走る。みると、ぶつかったところで腕が曲がっている。
完全に折れていた。
「くそっ。やつは……」
千雨は自分が転がってきた坂を見上げた。
結構な距離を転がり落ちていたが、それでもレストランは確認できた。
そのレストランは、紅く爛々と燃え上がっていた。
今にも倒壊するだろうと思われる。
ザジの姿は確認できない。あの爆発で生きているとも思えないが。
千雨は次に反対側、斜面のくだりの方を見た。
すると千雨のいるすぐ下に、舗装された道路が見えた。
「やれやれだ、くそ……」
千雨は一人呟くと、道路へと降りていった。
爛々と燃え上がるレストラン。
その出入り口の扉が、今開かれた。
中からデイパックを握ったザジが歩いて出てきた。
顔の半分が火傷で皮膚がただれ落ちている。
制服もぼろぼろになっていた。しかしそれもザジにとってはどこ吹く風とばかりに、涼しい顔で歩いている。
「……」
ザジは自分の背後で燃え上がるレストランを見た。
ところどころから鈍い音が響き、店内は火の海だった。
ザジはデイパックを肩にかけると、特に何もなかったかのように舗装された山道を歩いていき、その姿は闇に消えた。
19.ゆがんだ決意
夜の森では、カエルが喉を響かせ、時にはふくろうが鳴き声をあげる。
さらに夜が更けていけば、それすらもなくなる。
そこにあるのは、闇と静寂のみとなる。
しかし、今日は違った。
森の中のとある一角は、まるでその暗闇を拒否するかのように光り輝いている。
その光の中心は赤い火が燃え盛っていた。
とても静かなその森の中では、その光はいっそうに目立つものだった。
焚き火に照らされて映るのは、傍らの木にもたれかかって座る長瀬楓(番号20番)と、
楓と焚き火をはさんで向かい側にある、三つの石だけ。
楓は木にもたれかかって座ったまま、その三つの石をただじっと見つめていた。
みるとその石の下の土はわずかに盛り上がっている。
ちょうど小さな子供が入れるほどの大きさの盛り上がりが二つと、それより少し大きい盛り上がりが一つ。
楓の手を見てみると、指先は茶色くなり、ところどころで指の皮が破れて血がにじんでいる。
爪の間には土が詰まっていた。
そう、この三つの石は墓石。
楓の目の前で死んでいった、楓の大切な友の墓が二つ。
そのうちの一人を助けるために、自らが手をかけた友の墓が一つ。
三つの墓石を、楓はじっと見つめていた。
「……くだらないコトだとは解ってるでござる。」
不意に楓が口を開いた。
視線はずっと墓石に向いている。
この言葉は、墓の下に眠る人たちへ発せられていた。
「それが何も生まないということも、承知してるでござる。」
「それでも、拙者は……」
そこで言葉を区切ると、楓はゆっくりと立ち上がった。
仲良く並んだ三つの墓を、穏やかな眼差しで眺める。
そして目の前で燃え盛る焚き火へ砂をかけた。
すぐに焚き火は消えた。それと同時に楓の姿も、その場から消えた。
森の中は、闇と静寂のみとなった。
20.夜中の定時放送
「……」
何もやることがない。
やりたいことはあるけど今はできない。
早乙女ハルナ(番号14番)は自分が見張りをしていることも忘れて夜空を見上げていた。
とはいえ、月も出ていない上に雲も多い夜空では星も満足に見ることはできなかった。
結局、この退屈をしのいでくれるものはどこにもないのが現状だった。
「暇だなー……」
呟いてみても何も変わらない。
結局、ただ黙々と見張りをするしかなかった。
ハルナはゲームが始まってすぐ、神楽坂明日菜(番号8番)と遭遇した。
お互いに殺しあうつもりはなかったため、すぐに和解してそれから行動をともにした。
親友である綾瀬夕映(番号4番)や宮崎のどか(番号27番)を探すため。
だが結局見つけることはできずに日が暮れてしまい、夜に慣れない島の中を歩き回るのはまずいということで住宅街の民家に泊まることにしたのだ。
ハルナは手に持っている自分の拳銃を眺めた。
今は部屋の中は明かりもつけてないため暗いが、それでも銀色の銃身は確認できる。
ハルナは銃に詳しいわけではない。だからこれがいったいどんな銃で、どんな特徴があるかなんかはよくわからない。
ただ見覚えだけはあった。映画だったか、漫画だったか、あるいはその両方かで、見た覚えがある。
くるくると回るシリンダーに6発の弾丸が入っているリボルバー拳銃。
ハルナはそれをなんとはなしに構えてみる。
何を狙うわけでもない。ただのポーズだ。
「バン。」
口で言って、それにあわせて手首を曲げて反動を演出する。
銃をおろして、天井を見上げて、ため息を一つ。
やっぱり暇はつぶれない。
「第3回の定時放送をはじめます。生徒名簿と地図を用意してください!」
島に響き渡るほど大音量で、放送が流れる。
ハルナの顔が露骨にいやな顔を作る。
「夜中だってのに……」
小さく愚痴を呟きながら、ハルナはデイパックから生徒名簿と地図を取り出す。
ボールペンをにぎる。手近に机がなかったので、床が机代わりだ。
「それでは死亡生徒を発表する、……といいたいところだが、今回死亡生徒は一人もいなかった。
いったい何をやっている?殺さなくては生きて帰ることはできないんだ!くだらない情は捨てなさい!」
明らかに気分を害している様子で放送をする瀬留彦とは対照的に、
ハルナの顔は笑顔になっていた。
「ふん、ざまぁみなさいっての。」
再び小さく、瀬留彦に向けて嫌みを言う。
誰も死んでいない。夕映ものどかもまだ生きている。それだけでうれしかった。
だが、その笑顔も長くは続かない。
ハルナはわかっていた。
このゲームは確実に行われていること。
そして、クラスメイトを殺そうとしている人間が確かにいること。
今は確かに無事かもしれない。
でも、いつまでも無事でいられる保障はどこにもない。
もしかしたら、次の放送では名前を呼ばれてしまうかも。
その可能性が、決して小さいわけではないということ。
それが恐ろしかった。
「お願いだから無事でいなさいよ、二人とも……」
ハルナは外を眺めながら呟いた。
突然、背後から物音が聞こえた。
驚いて振り向くと、部屋の隅で何かが動いている。
一瞬それが何かわからず警戒したが、すぐに正体がわかって気を抜いた。
そこでは家においてあった毛布をかぶって寝ていた明日菜が目を覚ましていた。
上半身を起こして、毛布を取り払う。
窓際にいるハルナのもとへと近寄っていく。
「おきたんだ、アスナ……って、まぁしょうがないか。」
先ほどの定時放送を聴けば無理のないことだと思う。
明日菜は最初はぼーっとしながら眠い目をこすっていたが、じきに目つきがしっかりしてきた。
今ではハルナと一緒に外を見張っている。
「二人で見張ってたら意味ないと思うんだけど。」
ハルナの主張に、
「目が覚めちゃったんだもん。寝てても良いよ?」
明日菜が即答した。ハルナはその申し出を断り、結局二人で見張りをすることになった。
まだ特に眠いわけではない。
というより、眠ることができそうにない。
とにかく何かをしてなければ、二人のことを考えてしまう。
いやな考えが頭に浮かんでしまう。
(早く、二人を見つけたい……)
会いたかった。
早く会って、安心したかった。
そのために何をすればいいかを必死に考えていた。
結論は、意外に早く導き出された。
ハルナは一度だけ明日菜の方を向く。
そして、一度だけ、うなずいた。
決心を固めるように。
それは一種の賭けにも近い。
それでも、やらずにはいられなかった。
「ねぇ、アスナ、話があるんだけど……」
意を決して、ハルナは口を開いた。
今日は以上です。
>>621 桜子の呼称は本当にややっこしい……(というかいろんな説があるなぁ)
とりあえず柿崎を「美砂」と呼ばせることにした以上、釘宮も「円」で行こうかなと。
こればっかりはご勘弁を。柿崎も「円」って呼びますし、ね?……ダメか。
646 :
621:2006/06/28(水) 18:57:08 ID:Gc8eUVYl
乙、そしてGJ!
まぁ作者がそう言うならそれでいいんでねーかと。なんだかんだで期待してるんで
GJ!ですがエヴァの番号が30番になってますよ。
あやかがまだ一言もしゃべっとらんなんて
>>648 何やってんだ俺……orz
今後の分はきっちり修正させてもらいます。それでは今日の分どうぞ。
21.朝焼け
真っ暗な洞窟の中で、一人の少女が寝ていた。
「んっ……」
わずかに身体を動かして、少女の瞳が開いた。
まだ覚醒しきっていない脳を無理やり働かせ、身体に指令を送る。
ゆっくりと、上半身を起こした。
すこし頭がくらくらしたが、すぐに慣れた。
周りを見回すと、真っ暗なその空間の中で、ある一点だけが光っているのが見えた。
少女は光のもとへ行こうと立ち上がろうとして、
「いたっ」
天井に頭をぶつけた。
完全に自分の居場所がどんなところか忘れていたようだ。
涙目になりながら前傾姿勢になり、頭をさすりながら、光の見える方へと歩いていった。
「わぁ……」
洞窟から出た森の中は早朝を迎えていた。
鳥のさえずりが所々から聞こえてきて、木々の間から朝日の光が照りつけてくる。
少女、宮崎のどか(番号27番)はその場で軽く伸びをした。
狭い洞窟なんかで夜を明かしたため、ずいぶんと身体がこっている。
伸びをしただけで体中がコキコキと音を鳴らした。
気持ちのいい朝に、自然と表情もゆるむ。
だが、その笑顔には少し影があった。
「今日こそは……二人に会えるよね。」
自分に言い聞かせるようにそう言うと、うん、と言って気合を入れる。
もうここにとどまる理由はない。
のどかはすぐにでも出発しようと、洞窟の中においてきたデイパックを取りに戻る。
洞窟の中からデイパックを持って再び外に出ると、目の前に先ほどまではいなかった人物がたっていた。
「えっ……?」
突然の遭遇に、思わず声が出てしまった。そしてその後、
「っ!!」
のどかは絶句した。
目の前でたっているその人物の姿を見て、声を出せなくなった。
服はところどころ黒くなっていてボロボロ。
髪もぼさぼさだった。
手や足もところどころから血がにじんでいる。いったい何があったというのか。
そして何よりも驚いたのは、その顔。
その顔の半分近くが、炎にでも巻かれたのか火傷で皮膚がただれていた。
思わずのどかは口を押さえて目をそむけてしまう。
対してのどかと対峙する女子生徒、ザジ・レイニーデイ(番号31番)は涼しい顔でのどかを見ている。
「うぅ……」
のどかはこみ上げてくるものを何とかこらえることに成功すると、恐る恐るザジに向き直る。
やはりその傷はかなり痛々しかった。
なぜあんな何食わぬ顔で立っていられるのかがのどかにはわからない。
「えっと……」
「……」
とにかくこのままいても埒が明かない。
のどかはザジに話しかけてみることにした。
ためしに挨拶をしてみるが、ある程度予想したとおりザジは無言だった。
傷のことを聞いても何も返してくれない。
それでものどかはめげずに何かを話そうと必死に口を動かす。
「えっと、えっと……、?」
意外なことに、次に動作を起こしたのはザジだった。
垂れ下がっていた右手が持ち上がってくる。
そしてそれはのどかの目の前でとまる。
そこに握られていたマシンガンの銃口が、のどかを捉えた。
「えっ……?」
出会ったときと同じ台詞をはいて、のどかが固まった。
ザジの表情は相変わらずで、顔色一つ変えることはない。
のどかは足を一歩、後ろへと下げる。
ザジが一歩、間合いを詰める。
再びのどかが一歩、後ろへ下がる。
ザジが追いかける。
その間銃口はのどかの前から少しも動いては居ない。
のどかはその時にやっと察した。信じたくないことだったが、ザジは自分を殺す気だ。
(死んじゃう……このままじゃ……。)
もしザジが銃の引き金を引けば、その瞬間自分の頭は半分吹き飛ぶだろうことは容易に想像できる。
(いや……いや……)
必死に、今動かすことができる足を動かすが、それでもザジとの距離は全く変わらない。
(もう、だめ……)
のどかの目に涙が浮かんだ。その時、ザジが引き金に力を込めた。
「キャッ……」
のどかは足元に落ちていた石につまずいて倒れた。
連続した銃声が響き、弾丸がのどかの頭の上を通過していった。
ザジの目は、しりもちをついて倒れているのどかに向いた。
銃弾は、のどかの背後にあった洞窟の岩肌を少し削っただけだった。
さらに、このタイミングでザジのマシンガンは弾切れを起こしていた。
のどかは今のうちに逃げようと思うが、やはり身体が思うように動いてくれない。
ザジはすぐにマグチェンジをはじめる。
あらかじめポケットに入れておいたマガジンを取り出すと、それをマシンガンに叩き込む。
あっという間に新しい弾丸がマシンガンに詰められる。
その銃口が再びのどかを捕らえた。
「あ……あっ……」
何かを言おうとしても、もはや口もうまく回らない。
もはや逃げることもかなわない。ザジは再び引き金に力を入れた。
パンパンパン!
聞こえたのは連続した銃声ではなく、一定のリズムで打ち出される単発の銃声。
見えたのはザジの銃から弾丸が撃ち出されるところではなく、すぐに後ろへ飛びのくザジの姿。
再び、単発の銃声が響くとともに、ザジは近くの木の陰に隠れた。
そして、のどかの背後の草むらが揺れるとともに、そこから一人のクラスメイトが現れた。
その生徒はのどかのとなりまで歩いてくると、ザジのいる木に銃を向ける。
のどかを軽く超える長身で、褐色の肌に長い黒髪が映える。
龍宮真名(番号18番)はじっと銃口の先を睨み付けていた。
「ザジ・レイニーデイ……か。」
龍宮がそう呟いた瞬間、ザジが木の陰からマシンガンの銃口をのぞかせた。
マシンガンを乱射して二人とも片付けるつもりだった。
撃たせる前に撃つ。ザジのマシンガンは火を噴くことなく、龍宮の放った銃弾ではじきとんだ。
ザジはすぐに手を引っ込めた。
「そこでじっとしていろ。そうすれば命はとらん。」
ザジに聞こえるだけの声で警告すると、龍宮は銃を構えたままゆっくりとザジのもとへと歩いていく。
正確には、ザジの向こう側に転がるマシンガンを拾いに。
その距離が少しずつ近づいていく。
そしてザジの隠れている木にすぐそこというところまで近づいた。
「ん……?」
龍宮の視線が少し下に下がる。
不審な音を聞いた。
何か、小さな機械が作動しているような音。かなり小さい音だった。
龍宮はザジのいる場所への警戒は怠らないまま、音の発信源の方へ視線を移した。
その瞬間。
バシャ、という音とともに、強烈な光が真名の視界を覆った。
「なにっ!?」
思わず真名は目をつむり、大きく狼狽した。
ザジが狙ったかのように木から飛び出す。
そして真名には目もくれず、背後に落ちているマシンガンへと走った。
「チッ!」
真名は無理やり目を開けると、憶測で狙いをつけて銃の引き金を引いた。
多くの弾丸が発射されたが、そのすべてがザジの周りの木や土をはじくだけで終わった。
ザジはマシンガンを拾い上げると、振り向くこともなくそのまま森の奥へと消えていく。
龍宮はやっともどった視界で自分の足元を見る。
そこにはカメラが落ちていた。ちょうどレンズがこちらを向いている。
おそらくはセルフタイマーにして龍宮の足元に配置したのだろう。ザジも抜け目がなかった。
(追うか!?)
龍宮の足が一歩、大きく前に出る。
ザジはやる気だ。ここで止めを刺しておいた方がいい。
が、そこで龍宮は歩みを止めた。
もうザジの姿はずっと先。ほとんど見えなくなっている。
時期に気配をたどることもできなくなるだろう。
それでも龍宮はザジを追うことをやめた。
龍宮はゆっくりと後ろを振り向く。
「腰が抜けてるんだったら手を貸してやろうか?」
すぐそこでしりもちをついたまま固まっていたのどかは、恥ずかしそうにうつむいて手を差し出した。
22.行動開始
「朝だ……」
釘宮円(番号11番)が呟いた。
釘宮は視界の先にある朝日を、目を細めて眺める。
オレンジ色の光はやさしくあたりを彩った。
木々の隙間を縫うようにして、その光は釘宮の表情をも照らす。
この殺伐とした島の中で、それは一種異様な光景とも取れるほどに美しかった。
後ろから物音がして振り返ると、先ほどまでずっと寝ていた椎名桜子(番号17番)が目を覚ました。
焦点の定まらない目で周りを見回す。
「桜子、起きた?」
「円……。」
桜子は声のした方を向き、釘宮の姿を確認する。
立ち上がって、釘宮の隣に座った。
「もう、大丈夫?落ち着いた?」
釘宮が桜子に聞くと、桜子は笑ってうなずいて見せた。
だが、まだ無理をしているのはよくわかった。
「じゃあ、昨日何があったのか、話してくれない?」
「……うん。」
桜子は一瞬いうかどうか迷ったが、じきに口を開いた。
そして、昨日自分に起こったすべてを、一つ残らず釘宮に打ち解けた。
「美砂が……」
釘宮は呟いた。
そこに驚きや悲しみといった感情は読み取れない。
というのも、釘宮にもある程度合点がいっていた。
昨日の桜子の荒れよう。普段あれだけ明るかった少女が、あそこまで心身ともにぼろぼろになったのだ。
それ相応の何かがあったと思うのは当然。
その中の可能性の一つとして、信じたくはなかったが“そういうこと”も考えていた。
だから、桜子の話を聞いたときは驚きや悲しみというより、悪い予感が当たってしまったという落胆に近い感情があった。
桜子は話している最中にそのときのことを思い出したせいか、再び目に涙をためていた。
釘宮は、再び桜子が泣き止むまでじっと待った。
それから少しして桜子が落ち着いた後、釘宮は口を開いた。
「それで、あんたはどうしたいの?」
桜子の肩がビクッ、と動いた。
顔をうつむかせて、目を泳がせて、何か言いよどんでいる様子だった。
一度釘宮の方をちらりを見た後、再びうつむいて悩んだ。
「どうなの?」
「えっと……」
釘宮の追求にも、桜子ははっきりした返事を返すことができなかった。
ずっと言いよどんでいた桜子を見て、釘宮はため息をはく。
「少しは信用してもらいたいんだけどね。あたしがあんたの言うこと、断ると思う?」
そして桜子に向けて言った。
「え……?」
「あんたの言いたいことはなんとなくわかってる。私もそうしようと思ってる。あとはあんたの口からそれを聞きたいってだけなの。」
桜子は釘宮の顔を見た。
釘宮は笑っていた。
「もう一度聞くわよ?あんたは、どうしたいの?」
桜子は大きく息を吸って、
「……美砂を、止めたい。会って、もう一度説得したい。」
そう言った。
とても力強い声だった。
釘宮は何も言わず、デイパックを持って立ち上がった。
桜子も続いて立ち上がる。
「行くよ。」
釘宮が言った。
「うん!」
桜子が返した。
そして二人は、一緒に歩き出した。
23.再会を信じて。
口のあいたデイパックがある。
そこに一つずつ荷物を入れていく。
綺麗に収まるように、順番に、きっちり隙間に入れていく。
必要なものを全部入れ終わると、ファスナーを引いて口を閉じる。
「これでよし、と。」
早乙女ハルナ(番号14番)は今さっき荷物を積み終えた自分のデイパックを軽く両手で押した。
そしてそれを肩にかけて立ち上がった。
「ハルナ……」
後ろから名前を呼ばれて振り返ると、神楽坂明日菜(番号8番)がたっていた。
その目は心配そうにハルナを見ている。
「本当に、いいの?」
確認するかのように、明日菜はハルナに聞いた。
ハルナは黙ってうなずいた。
「ねぇ、アスナ、話があるんだけど……」
「ん、何?」
窓の外を見張っていた明日菜が返事とともにハルナの方を向いた。
「えっと……明日のことなんだけど……」
意気込んだはいいが、いざ言おうとなるとやはり少し迷った。
それは、自分を今よりも危険な場所へ送る選択肢だったから。
言いよどむのも無理はなかった。
だがそれでもハルナは無理やり声に出して、明日菜に言った。
「明日、あたしはアスナと別れようと思う。」
「え?」
案の定、明日菜は驚きの表情を見せた。
「ちょ、ちょっと待ってよ、何で、どうして?」
「夕映やのどかを早く見つけたいの。いやな話だけど、もたもたしてたら取り返しのつかないことになるかも……。」
「だから、私と一緒に探せば良いじゃん!」
明日菜の申し出に、ハルナは首を振った。
「アスナはアスナで探してる人がいるんでしょ?」
「え……」
明日菜が再び驚きの声を上げた。
「このパル様を甘く見てもらっては困るよ?」
ハルナはおどけて言って見せた。
そして再び明日菜に向き直り、優しい笑みを見せる。
「だからさ、アスナも自分の探したい人を探してあげて。私も自分が探したい、夕映とのどかを探すからさ。」
「……」
明日菜はもう何も言うことができなかった。
「それにさ、固まって探すよりは分かれて探した方が効率良いじゃない?」
最後にそう付け足したハルナを見て、明日菜はうなずいた。
「……わかった。」
「悪いね。」
ハルナはいつもの調子で言った。
「そんじゃ、行きますか。」
明日菜とハルナは家の外へと出た。
道が左右に伸びている。
「それじゃ、昨日言ったとおり、アスナがこっち、で私があっちね。」
ハルナは自分の進む方向を指差した。
「一つだけ。」
そそくさと歩き出そうとしていたハルナを、明日菜が呼び止めた。
「一つだけ、約束して。絶対に死なないって。また会えるって、約束して。」
「アスナ……」
ハルナが顔だけ明日菜の方を向く。
明日菜の顔は真剣だった。じっとハルナを見ている。
「その台詞、聞く人が聞いたら変な想像しそうだね」
「いいから約束すんの!」
茶化したハルナに明日菜がムキになって反論した。
そんなことは気にしてない様子で、ハルナは昨夜と同じ優しい笑みを明日菜に向けた。
「心配しなくてもわかってるって。私だってまだ死ぬ気なんてさらさら無いに決まってるじゃない。それじゃアスナ、またね。」
そういうとハルナは前を向き、手を振りながら歩き出した。
明日菜はもう何も言わず、ただ小さくなっていくハルナをじっと見ていた。
ハルナがいなくなるのを確認してすぐ、明日菜は自分の後ろ、ハルナの向かった道と反対方向を見た。
そちらの道が、明日菜の進む道。
明日菜はその道をしばらく睨み付けるように見ていた。
そして突然デイパックを持ち上げ肩にかけると、前に体重をかける。
足を思いっきり振り上げ、明日菜は走り出した。
その姿は、ハルナのときのそれよりも早く小さくなっていき、
すぐに見えなくなってしまった。
24.計画
「計画は現在も予定通り順調に進んでいます。」
「ほうか……」
書類を片手に自分の目の前に来た兵士の報告に、
天ヶ崎千草は特に興味もなさそうに生返事を返した。
兵士は少し不満そうな顔をしたが、特に何も言わずにその場を去っていった。
部屋にいるのは千草一人になった。
「ふぅ……」
ため息を一つついてソファに腰掛ける。
千草は今本部のある中学校の校長室にいた。
3階建ての学校の2階に位置するその部屋で、千草は時折兵士からの報告を聞くのみになっていた。
事務関係も軍の連中がやっているし、定時放送も瀬留彦の仕事だ。
今の段階で自分に特にやることはない。
「……」
千草は首を回して窓の外を見る。
そこには森が広がっていた。
今現在も、3−Aの生徒たちが殺し合いをしている場所である。
自分が生き残るため、大切だったクラスメイトも大好きだった友達も、
今ではお互いがお互いの命を奪い合っている。
そこには、千草のよく知っている人間も混じっている。
千草の復讐心は、修学旅行のあのときから全く変わってはいなかった。
スクナを再封印され、関西呪術協会で罰をうけ謹慎していた間も、千草は復讐のための計画を練り続けた。
その過程で、政府の一部勢力が秘密裏にあるプロジェクトを実施しようとしているという情報が手に入った。
調べてみるとその勢力はずいぶんと過激な派閥組織らしく、時には違法行為も辞さない集団らしい。
これはけしかければ利用できると千草は踏んだ。
そのプロジェクトこそが、「バトルロワイアル・プロジェクト」。
千草がその組織に加わり、そのプロジェクトの内容を聞いたとき、なんともいえぬ不快感と、
これを使えば復讐を果たすことができるという野心が同時に生まれた。
千草はすぐにでもこのプロジェクトに実行委員として加わった。
次に千草が行ったことは、魔帆良学園への秘密裏のコンタクト。
プロジェクトをするには中学3年生のクラスが必要。
でないと組織の人間たちも協力はしてくれない。
そしてそのクラスというのが、千草の復讐の対象が全員加わっている3−Aでなくてはいけない。
一度修学旅行で3−Aと激突しただけに、自分が直接動くわけには行かない。
どうしても内通者が必要になる。
そこで選ばれたのが瀬留彦だった。
修学旅行で一度見たことはある。弱くはあったが確かに魔力を持っている。
魔法の存在を知っているのはこちらとしても都合がよかった。
千草は瀬留彦を仲間に加えることを決心した。
あの手の人間を落とすのはそう難しいことではない。
瀬留彦へはプロジェクト終了後に外国への亡命の約束、そしてその先での生活の保障をした。
一教師にはとてもじゃないが拝めないほどの報酬も用意した。
学園でも一般の教師にうだつが上がらず、魔法使いとしても大した力を持たない人間。
懐柔するのにそう時間はかからなかった。
それでも迷っているところを見ると、そして今も浮かない顔をして頭を抱えているところを見ても、
やはりあの男にも少しは良心が残っているらしい。
しかしそれも計画のうちだった。
誰かの足音が廊下から聞こえる。
それはだんだん大きくなってきて、ちょうど部屋の前でとまった。
校長室の扉がノックされる。
「誰や?」
「失礼します。」
その声とともに扉を開けて、再び一人の兵士が入ってきた。
「定時報告なら今さっき受けたところや。」
千草はその兵士をすぐにでも部屋から追い出そうという態度をとった。
兵士は顔色一つ変えずに千草に言う。
「朝の定時放送が始まろうとしています。計画は順調、このまま第二段階へ移行します。」
さきほどまでほとんど無関心に聞いていた千草の表情が変わった。
「ほうか……」
千草の口元が笑みを作った。千草はソファから立ち上がると、兵士の下へ歩き出す。
「ほな、行きましょうか。」
千草がそう言って部屋を出る。
兵士は部屋の扉を占めると、千草に続いた。
今日の投下は以上です。
GJ!ザジのこれからの動向が気になります
ロワイヤルなのかロワイアルなのか
ここはあえて”ロワイヤル”だよなって話が前に出たことあるような
逆に考えるんだ
ロワイヤル=スレ名で、ロワイアル=殺し合い実験と分かりやすく使い分けているのだと
ごめんなさい、「ロワイアル」→「ロワイヤル」にしておいて下さい。
完全な誤植です。お騒がせしてすみません。
>>669氏の言うとおり、「ロワイヤル」こそがネギロワクオリティ。
実際瀬留彦にはそう言わせてたはずなのに……申し訳ない。
とりあえず今日の分投下です。
25.死にたくない
「先生、時間です。」
「わかった……」
瀬留彦は兵士に呼ばれて、仮眠室から出た。
時計を見れば、そろそろ6時になるといったところ。
定時放送の時間だった。
瀬留彦の、この島での唯一の仕事だった。
事務関係も何もかも、運営に直接かかわることはすべて軍の人間がしてしまう。
自分はただ決まった時間にマイクを持って、書類にかかれたことをしゃべっていればそれでいいのだ。
まぁそれでも、本当の意味で何もしていない天ヶ崎千草よりはましか、と瀬留彦は思った。
放送用のマイクがおいてあるのは司令室と呼ばれている教室。
そこに瀬留彦は到着した。
瀬留彦は扉を開けて中に入る。
「ん?」
と同時に、瀬留彦が声を上げた。
司令室にいる人間全員が瀬留彦の方を向く。
そこにいた、千草も同じく振り向いた。
「珍しいな、あんたがここにいるなんて。」
瀬留彦が言った。
普段この女はずっと校長室にいて、ほとんど姿を見せないのに。
する仕事も何も無いので、司令室にも滅多に来ない。
その千草が、なぜか今に至っては司令室のソファに座っていた。
「おはようございますな。瀬留彦はん。」
「定時放送だ。」
瀬留彦はつっけんどんな返事を返すと、マイクの方へと向かっていく。
「そうそう、瀬留彦はん。今のうちに言っておきたいことがありますんや。」
「この期に及んで一体なんだ?」
「まぁまぁ、大事な話や、目と目を合わせて話をせんとな。」
千草がそう言うと、瀬留彦はすこしイラつきながら千草の方へと向きなおる。
「一体何……」
瀬留彦の表情が固まった。
千草はじっと瀬留彦を見ている。
そしてその千草の周りで、兵士たちが銃を構えていた。
その銃口はすべて瀬留彦に向けられている。
「な……にを……」
驚きに目を見開かせた瀬留彦が言った。
千草がその様子を見て答える。
「瀬留彦はん、プロジェクトは予定通り進んでいます。誰にも知られること無く3−Aをこの島に連れてきて、
少しペースは遅いながらも確実に殺し合いが行われてる。」
説明するように千草が言った。
「これがどういうことかわかります?」
「……?」
瀬留彦は意味がわからないといった表情をしている。
千草は一度、馬鹿にしたようにため息をつき、
「つまりですね、あんたの役目は終わったちゅうことです。」
瀬留彦の顔から血の気が引いた。その時やっとすべてを理解した。
「ふざけるな!話が違うぞ!」
大声を出して反抗するが、声は震えていた。
それがわかっているから、千草も余裕で返す。
「話?」
「プログラムに協力すれば俺を亡命させてくれると!」
「ウチがあんたに言うたんは『プログラムが始まって三日すれば亡命先の国からヘリが来るから亡命したければ乗れ』です。
あんたの命の保障をした覚えはないし、なんも嘘はありませんえ?」
瀬留彦は歯噛みして千草を睨み付ける。
しかし多くの銃口が自分に向いている今の状況ではどうしようもなかった。
「それに……」
千草が再び口を開く。
「ウチこそ最初に言うたはずです。『ウチは西洋魔術師全員に復讐をする』と。」
「……」
「自分だけは助かるなんて、本気で思うとったんですか?」
千草の目は、この上なく冷たく瀬留彦を睨み付ける。
一人の兵士が、瀬留彦のもとへと歩み寄ってくる。
その手には、あの首輪が握られていた。
「何を……」
「動かない方がええですよ?少しでもおかしなマネをすれば穴だらけにします。」
千草の脅しで動けない瀬留彦の首に、兵士は首輪を取り付けた。
瀬留彦は首に手を回し、首輪の存在を確認するようになでた。
「似合とりますな。ええ感じや。」
千草が笑って言った。
「これであんたも魔法は全く使えない、ただの人になったわけや。ちょうどこの外におる中学生どもと同じように。」
窓の外を見ながら続ける。
「このまま殺してもうてもいいんですが……いいことを考えましたわ。
あんたにもゲームに参加してもらいます。生徒と同じようにね。」
瀬留彦は学校の校庭に放り出された。
バランスを崩し、その場に倒れる。
「これがあんたの武器や。」
倒れている瀬留彦に、デイパックが渡された。
「サービスや、武器は結構強力なんを入れておいた。生き残ることができたら、その時は本当に亡命させてやります。約束したるわ。
せいぜい頑張ってくださいな、瀬留彦先生。」
それだけ言うと千草は笑いながら校舎へと戻っていった。
瀬留彦は脇に落ちてる自分のデイパックを拾い上げると、すぐさま校舎から離れていった。
さっきまで千草を睨み付けていた気力は、もはや彼にはなかった。
「はぁ……はぁ……」
あらかた校舎から離れた瀬留彦は、ひとまずその場に座り込んだ。
荒い呼吸を無理やり落ち着かせようとする。
近くの茂みが揺れた。瀬留彦は驚いてそちらを見る。
草陰から、ウサギが出てきたのを見てほっと胸をなでおろした。
「殺される……」
そして呟いた。
「殺される……絶対に……」
うわごとのように、何度も。
まさかこんなことになるとは思っていなかった。
あと1日まてば、自分は安泰な生活を送れるはずだと思っていたのに。
今では一秒先の自分の命すら危うい状況に陥った。
「いやだ……死にたくない……」
瀬留彦は脇においてある自分のデイパックをあさった。
食料や地図の後ろに埋もれて、大きなアタッシュケースが出てきた。
無理やりそれを引っ張り出すと、自分の前においた。
両脇のロックをはずし、ゆっくりと開けた。
ケースの中いっぱいを使って、綿にくるまれた細長い筒が入れられていた。
取り出し、それを良く見てみると、それにはスコープが取り付けられていて、グリップも、トリガーもついていた。
それは木製のスナイパーライフルだった。弾丸も一緒に保管されている。
「やるしかない……殺すんだ……」
瀬留彦はそれを構えながら言った。
生き残れば、今度こそ自分は安心した生活を送れる。
そうだ、殺せばいいんだ。他の連中を全員。
そうすればいい。そうすれば帰れる。
殺せ、殺せ、殺せ、殺せ。
26.エンカウント
森の中を、二人分の人影が動いていた。
一人は銃を構え、絶えず回りに気を配り続けている。
むやみに足音を立てず、一部の隙も見せないその姿は随分と戦いなれている様子だった。
その後ろを歩くもう一人の人影は、それとは対照的におどおどしながら前の人物についていっていた。
慣れない荒れ道をよたよたと歩いていくところは、前を行く人物とは全くもって対照的だ。
「キャッ……」
土に埋まっていた木の根が、後ろを歩く少女の脚を引っ掛けた。
少女の身体が前に倒れていき、地面にぶつかった。
前を歩いていた人影が驚いて振り向く。
「大丈夫か?」
「ふぇ……ハイ。」
龍宮真名(番号18番)は自分の後ろで倒れている宮崎のどか(番号27番)に手を差し出した。
のどかも素直にそれを受け取り、立ち上がった。
「足元には気をつけろよ。ここは結構足場も悪い。」
「ハイ……すいません。」
申し訳なさそうにうつむくのどかに、気にするな、と一度だけ言って再び意識を前に集中させた。
「行くぞ。」
二人は歩き出した。
「腰が抜けてるんなら手を貸してやろうか?」
そう言って差し出された手を、のどかは顔を赤らめて取ると、何とか立ち上がることができた。
「ケガは?」
続けてそう聞かれて、のどかは大丈夫です、と返した。
龍宮はその後、あたりを軽く見回した。人影はまだない。
「早いうちにここを出発した方が良いな。騒ぎすぎたから誰かが来るかも知れん。」
そう言うと龍宮は一度来た道を戻り、そこにおいてあった自分のデイパックを肩にかけて歩き出した。
「あの……」
のどかが龍宮に話しかけた。龍宮が振り向く。
「どうした?」
不思議そうな顔をしてのどかを見た。
「いえ、その……」
「?」
のどかは恐る恐る切り出した。
「あの……龍宮さんは、その、やる気には……なってないんですか?」
「やる気?」
龍宮はしばし考えた後、あぁ、と小さく呟く。
そして軽く苦笑いをして、
「そういう風に見えるか?」
「あ、いえ、その、そういう意味じゃなくて……」
のどかがあわてて弁解しようとするが、何と言えばいいのかわからず言いよどんでしまう。
そのままうつむいてしまった。
龍宮は再び苦笑した。
「大丈夫だよ、私が本当に殺しあう気ならお前をザジから守ったりしない。」
「あ、はい……。」
「少なくとも今は、な……」
「え?」
不意に、龍宮の目つきが鋭くなった。先ほどのどこか穏やかさの残っていた目と違い、
その瞳からはすさまじい威圧感のみが感じられた。
のどかは身体を硬直させ、生唾を飲み込んだ。自然と、冷たい汗が頬を伝った。
だがその緊張も少しの間だけ。すぐに龍宮の目はもとの穏やかなそれに戻った。
「冗談だ。」
龍宮は三度、笑った。
そしてのどかに背を向けた。
「それじゃあな。」
「あ、待って…」
歩き出そうとした龍宮を、再びのどかが止めた。
「あの……い、一緒に行っていいですか?」
意外な言葉が飛び出した。
龍宮は思わず目を丸くする。
のどかはじっと龍宮を見ている。
口を真一文字に結んで、龍宮の次の言葉を待っているようだった。
龍宮はしばらくそんなのどかを見つめ、
じきにのどかに背を向けた。
「私には特にあてがあるわけじゃない。行き先はお前が決めてくれ。」
のどかの表情が明るくなる。
「じゃあ……」
のどかが続きを言おうとしたとき、龍宮が歩き出した。
のどかは慌ててデイパックを肩にかけると、龍宮の後に続いた。
しばらく森の中を歩いていると、突然龍宮が立ち止まった。
龍宮に言われて足元ばかり見ていたのどかはそのまま直進して龍宮の背中にぶつかる。
「あ、すみませ……」
「静かに。」
のどかの言葉を途中でさえぎると、じっと前をにらみつけた。
その視線はゆっくりと動いていく。そして自分たちの真横まで行って、とまった。
龍宮はのどかの手を取ると近くの茂みに隠れた。
「しばらくここでじっとしてろ。音を立てるなよ。」
龍宮がのどかに言った。
のどかは何が起こっているのか理解できてないが、龍宮の表情や行動からどういう状況かは理解できていた。
龍宮のあんな余裕のない表情を見たのは初めてだった。
(敵は一人……いや、二人か?)
茂みから顔を少しだけ出して森林の先を見つめる。
龍宮はそこに、微弱ではあるが確かに人の気配を感じた。
龍宮がそれに気づくや否や、“そいつ”は気配を完全に消した。
こちらの存在に向こうも気付いたのだろう。とんでもない勘の鋭さと対応の早さである。
(随分と手練れのようだ……どうする?)
普段なら気を使うことができるため、相手がどれだけ気配を消そうと位置を探ることぐらいはできた。
だが今は完全に力を封じ込められてるためか全く相手の位置がつかめない。
相手も下手に仕掛けてこないところから、自分たちの居場所がまだ相手にばれてはいないということだけはわかる。
だとすれば、何としてもこちらが先に相手の位置を知る必要があった。
その逆が起こった場合、最悪、死が訪れることになる。
その時、微弱な気配を感じ、龍宮は身をかがめた。
その小さな気配は今度は消えることなく、まっすぐに自分のもとへと近づいてくる。
どうやら向こうはやる気らしい。龍宮は静かに息を吐くと、精神を集中させる。
(勝負は一瞬……)
目を瞑り、余計なことを身体の外へと追い払う。身体の五感全てを、今目の前に来る相手を倒すことに集中させた。
(まだだ……まだ……)
気配がゆっくりと、確実に近づいてくる。
ぎりぎりまで引き付け、必殺の一撃を入れる。
失敗は許されない。
そして、そのときがきた。
龍宮は草むらから飛び出すと、その相手へと突進する。相手も龍宮の存在を確認した。
そして二人の影は交差した。
相手の刀が龍宮の首に。
龍宮の銃が相手の額に。
それぞれ突きつけられ、そしてお互いに動きを止めた。
のどかは茂みから顔を少し上げて、龍宮の表情を伺う。
龍宮は、驚いた表情のまま固まっていた。
「たつ……みや?」
「刹那……」
刀を携えた相手、桜咲刹那(番号15番)が呟いた。
龍宮もまた、刹那の名を呼んだ。
しばらく、沈黙の時間が流れた。
「あ、そこにおるん、のどか?おーい。」
その沈黙を破ったのは、刹那の後ろから出てきた近衛木乃香(番号13番)の、なんとも緊張感のない声だった。
27.合流
「……ということだ。」
そう、刹那が言い、
「なるほど。」
龍宮が返した。
時間は、もうそろそろ朝の定時放送がされるであろうという時間帯。
二人は森でかなり心臓に悪い再会をした。
あと少し反応が遅ければお互い本気で殺していたかもしれなかった。
だが今ではそんなことは忘れたかのように話し合っている。
お互いに、これまでに起こったことを話し合っていた。
すぐ近くでは木乃香とのどかが一緒になにやらくちゃべっている。
その内容は全くわからないが、少なくとも刹那や龍宮がしているような会話とは全く違うものであろう。
「つまり、お互い脱出の手がかりは何一つなし、ということか。」
しばし考えた後、龍宮が言った。
「そういうことになる。」
少し沈んだ口調で、刹那が答えた。
ここで二人が出会うまで、両方とも脱出の手がかりはおろか他の生徒にも出会っていない。
唯一龍宮とのどかがザジ・レイニーデイ(番号31番)と遭遇したが、
残念なことにザジは完全にクラスメイトを殺す気でいる。
結局、脱出に関して有益な情報は何一つなかった。
それでも龍宮は肩を落とした様子はなく、言った。
「まぁ、かまわないさ。こうしてお前に会えたんだからそれだけでも収穫だ。」
「龍宮……」
「二人のところへ行くぞ。これからのことを考える。」
そう言うと龍宮は木乃香とのどかのいる場所へと歩いていく。
刹那も続いた。
四人は向かい合うようにして座った。
刹那と木乃香が隣同士。その向かいに龍宮とのどかという形だ。
「さて、これからのことですが……」
「話し合わなくてもわかると思うけどな…」
代表して口を開いた刹那に、龍宮は言った。
全員の視線が龍宮へ行く。
「今の私たちには情報が少なすぎる。まずはそれを集めるべきだ。
当面の目標としては、やはりお互いがやってきたように仲間を集めるってところか。」
龍宮はそこまで一気にまくし立てる。
そして誰もその案に異論を唱えるものはいなかった。
「だとすると、問題は誰を集めるか、ですね。龍宮の話だと、残念ながらやる気になっている生徒も何人かいるみたいですし……。」
「アスナ!アスナは大丈夫や!アスナは絶対殺し合いなんてしたりせん!」
木乃香が刹那に言った。刹那もうなずく。
「あの……夕映と、ハルナも大丈夫です……。」
控えめに意見を言ったのどかに、木乃香がうん、と同意する。
「楓も仲間にできると良いが。戦力として申し分ない。」
追従するように龍宮も言った。
四人の表情に活気が生まれ、自然と笑顔になっていく。
「それでは、そろそろ行きましょう。」
再び刹那が代表してそう言うと、四人はデイパックを持って立ち上がる。
すると、突然森がざわめいた。
刹那と龍宮の表情が変わる。
すぐにあたりを警戒するが、人の気配は全くない。
程なくして、放送が流れた。
「定時放送を始める。メモの準備をしなさい。」
二人の表情が一瞬緩み、そしてすぐにまた表情が変わる。
先ほどの警戒しているような表情とは違う、今度は怪訝な表情。
放送でしゃべってる人の声が、瀬留彦と違う。
「今回も死亡生徒はいなかったから、禁止エリアのみ伝えるぞ。まず……」
二人のそんな疑問などお構いなしに放送は流れていく。
仕方なく四人は地図を開き、放送で呼ばれた箇所に斜線を入れていく。
「1時間後にC-6、D-2だ。以上。」
聞いたこともない男の声がそういった後、
「それと、最後にいっておくことがある。」
さらに付け加えた。
「おそらく君たちも疑問に思っているだろう、瀬留彦先生のことを伝えておこう。
実は瀬留彦先生は今君たちがいるこの島の敷地内にいる。君たちと同じように首輪をはめてね。」
刹那の表情が驚愕の色を見せる。
すぐに近くにいる龍宮の方を向くと、龍宮は驚くそぶりも見せずただじっと放送を聴いていた。
「だから最早瀬留彦先生も君たちと同じゲームの参加者となった。無論彼にも武器は渡してある。
君たちは彼を殺すこともできるし、彼も君たちを殺しに来るだろう。頑張って殺しあってくれたまえ。」
そこで放送は途切れた。
森は、静かになった。
刹那はじっと龍宮を見ている。
龍宮はデイパックに地図をしまうと、それを肩にかける。
「行くぞ。」
「龍宮?」
刹那が何か言いたそうに声をかけた。
「言っただろ?今の私たちには情報がなさ過ぎる。
何が起こったのかなんてわかりはしない以上、何もできない。」
龍宮が刹那の思っていることを見越して返事をした。
刹那もそれに従い、それ以上は何も言わなかった。
そして四人は今度こそ、仲間集めのために歩き始めた。
28.I miss you
定時放送が流れている。
瀬留彦先生の声じゃない。しらないおじさんの声。
死んだ人はいないらしい。よかった。
和泉亜子(番号5番)は森の中にあった切り株に腰掛けて、じっと定時放送を聴いていた。
ひざを机代わりにし、地図に禁止エリアを書き込んでいく。
その後に知らないおじさんが何かを言っていたような気もしたが、よく覚えていない。
定時放送が終わり、禁止エリアの書き込みも終わると、亜子は顔を上げて空を見た。
太陽は着実に真上へと昇ろうとしている。陽射しが顔に当たってまぶしかった。
「ゆーな。」
もう、残り一人しか居ない自分の親友の名を呼んだ。
大河内アキラ(番号6番)も佐々木まき絵(番号16番)ももうこの世には居ない。
もはや自分に残ってる親友は、さきほど名前を呼んだ明石裕奈(番号2番)ただ一人になったのだ。
「ゆーな……」
もう一度、親友の名を呼ぶ。確かめるように、呟く。
それが確かなことだと信じるために。そう、裕奈は、親友。
しかし、亜子はなぜか裕奈に会いたいと思うことが、できずにいた。
一人なのがいやなのは確かだった。今でも怖くて泣き出しそうである。
誰かに頼りたい。だとしたら、それが親友であるならそれ以上はない。
はずなのに、どうしても「会いたい」という一言が出てこなかった。
それを言おうとすると、どうしてもあの風景が目に浮かんでしまう。
昨日の、中学校での出来事。
このばかげたゲームが許せなくて、裕奈は瀬留彦に殴りかかった。
おそらくは誰もが思っていたことを、裕奈は内に秘めずに吐き出したのだ。
無論、それは簡単に止められた。
本物の軍人が近くにいたのだ。こうなることは容易に想像できた。
裕奈に銃が向けられ、引き金が引かれる。
そして、アキラが死んだ。
裕奈をかばうため、アキラが死んだ。
そのあとの裕奈はまるで抜け殻のようだった。
ただじっと下を向いて、動かなかった。
隣にいたのに、表情も読み取れず、声をかけることもできなかった。
そのまま、声をかけることも、かけられることもなく裕奈は学校を出て行った。
その光景が頭に残り、裕奈に会いたいという気持ちを渋らせていた。
変わってしまったのではないか。
この島で殺し合いをしているクラスメイトと同じように。
裕奈も狂ってしまっているのではないか。
それが恐ろしくて、素直に会いたいと望むことができない。
亜子は切り株から立ち上がると、移動を始めた。
なんにせよ、じっとしていても何もないことも確かなのだ。ならば歩くしかない。
こういうときはとにかく行動した方がいいのだ。
ただ、この日だけはその自分の選択を少し呪った。
「え?」
「あ……」
少し歩いたところで、木の陰から誰かが飛び出てきた。
無論、近くにいた亜子と鉢会った。
二人はしばらくお互いを凝視し、
「ゆーな?」
「亜子……」
お互いの名前を呼んだ。
しばらく二人は動くことができず、声を出すこともできなかった。
そして亜子は、
「……っ!」
突然踵を返して走り出した。
「っ!?亜子!!」
ワンテンポ遅れて、裕奈が叫んだ。
自分に背を向けて走り去っていく親友に向けて、手を伸ばした。
しかしそれはむなしく空を切り、亜子はどんどん離れていく。
仕方なく裕奈は亜子を追って走り出した。
(あかん……やっぱり無理や……)
走りながら亜子は思った。
すぐ後ろを裕奈が追いかけてきている。
(どうしても……ゆーなの顔を見てられん……)
さらに亜子は速度を上げた。
(どうしても……怯えてまうっ!!)
涙が出てきて、一度目をつぶった。
その瞬間、身体が浮いた。
「え?」
眼をあけると、すぐそこに地面があった。
顔を下に向けて、自分の背後を見ると、太い木の根が飛び出ているのが見えた。
走っているときにつまずいたらしい。
完全に、顔面から地面に突っ込む形になっていた。
亜子は再び目を硬く瞑った。
「亜子!」
裕奈の声が聞こえた。
顔面に痛みはなく、ぶつけた感触もなかった。
柔らかくて、暖かいものが顔に当たっているのがわかった。
「……?」
ゆっくりと眼をあける。
近すぎるせいで逆に何も見えない。
手を地面について、身体を起こした。
目の前に、裕奈の顔があった。
「いったー……」
裕奈はそう言って眉をひそめながら、眼をあけた。
亜子と目が合う。
裕奈は笑った。
「亜子、大丈夫?」
いつもの裕奈の声だった。
いつもの裕奈の顔だった。
裕奈は変わってなかった。
何一つ、変わってなかった。
怖く、なかった。
「ゆーな……」
安心したとたん、目から涙がこぼれた。
我慢することができず、声を出して泣いた。
「……亜子。」
裕奈はそんな亜子に微笑みかける。
笑顔で自分の頭をなでてくれる裕奈に、亜子は言った。
「会いたかった……!」
今日の投下は以上です。やはり思った以上に誤植が多い……
次からはもっと原稿の確認を厳しく行こうと思います。
飛び道具持ってるのにわざわざ0距離まで詰める龍宮モエスGJ
GJ
亜子の滞空時間が長いのか裕奈が俊足なのか…どうでもいいが気になる
>>688 GJ!そしてありがとう!!
深くは語れないが、今日の投下分で俺は癒された。バトロワ序盤なのに涙が出た。
もう一度言う、ありがとう・・・!!!
>>690 考えるな、感じるんだ!
>>689 まぁ、龍宮の銃アクションのモデルとなった映画の主人公も至近距離で銃の撃ち合いしてるからおあいこということで……
>>690 これも無茶があるとは思いますが、実際かなりのスピードで走っててつまずくと本気で一瞬宙に浮きます。(実体験済み)
なのでまぁできないこともないかなーとか……無茶かな、やっぱり…
29.戻れない道
柿崎美砂(番号6番)は未だ住宅街にいた。
家の中に入って、じっと外を眺めていた。
「なーにやってんだろ、私……」
力なく呟いた。
昨日、親友である椎名桜子(番号17番)に銃を向けて、「私はゲームに乗る」などと言っておきながら、
結局動くこともできずただ住宅街に立てこもってばかりいた。
一応、窓から外を見て前を通った人間を狙撃する、という名目はあった。
それを理由にして、島の中を歩き回ることを拒んだ。
だが、今ではそれすら理由として成り立っていない。
というのも、今朝に起こったことが理由だった。
朝日が差し込んできたばかりというところの早朝。
柿崎は窓から差し込む光で目を覚ました。
ずっと見張りをしていたはずだったが、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
まだ完全に開ききってない目で柿崎は再び見張りを始める。
「っ!」
窓の外から見える風景に、柿崎の眠気が吹き飛んだ。
自分の家の向かい、ちょうどそこから見下ろせるところに、二人の女子生徒が立っていた。
「アスナ……と、ハルナ?」
そこにいたのは、神楽坂明日菜(番号8番)と早乙女ハルナ(番号14番)。
二人はなにやら話している様子だった。
とっさに柿崎は身を低くする。そして少しだけ顔をのぞかせて、再び外を見る。
二人とも自分の存在には気づいていない。ここからなら狙える。
柿崎は手に持った自分の銃を顔のところまで持ち上げてくる。
フロントサイトとリアサイトが重なるところに、まずハルナを捕らえた。
引き金を引けば、ハルナを殺すことができる。
柿崎は引き金にかけている指に力を入れていく。
連動してハンマーが起き上がっていき、それが途中で止まる。
「……くっ」
指が震えた。
これ以上、引き金を引くことができない。
そのうち腕も震えて、狙いがつけられなくなる。
(何やってんのよ……早く引き金を引くのっ!)
必死に自分に言い聞かせるが、それでも指は固まったまま。
まるで自分のものではないかのように動かせない。
そうこうしてるうちに、ハルナが歩き出した。
「あっ……」
慌てて銃口を合わせるが、移動している的にはなかなか標準が合わない。
そのうち、窓から見える範囲からハルナがいなくなった。
柿崎は次に明日菜に向けるが、それもうまくいかず、結局明日菜も走り出してしまう。
「もうっ!」
柿崎は銃を床にたたきつけて悪態をついた。
「なーにやってるんだろ……」
再び呟いた。
すると柿崎は窓を離れ、部屋の隅にあるデイパックをつかむ。
部屋の扉を開ける。すぐ近くに階段があった。
一階に降り、玄関の扉から外に出た。
涼しい風が流れてくる。
乱れる髪を押さえながら、柿崎は周りを見渡した。
左右にある道。そのうちの一本を柿崎は選び、歩き出した。
それから間もなくして、突然悲鳴が聞こえた。
よく、とは言わないまでも、知っている声だった。
その悲鳴はちょうど前から聞こえてくる。
だんだんと大きくなってきて、それが姿を現した。
曲がり角から、村上夏美(番号28番)が飛び出してきた。
夏美は道端に落ちていた石ころにつまずき、その場に転ぶ。
そこから見える横顔は、完全に恐怖にゆがんでいた。
夏美は身体を仰向けにすると、自分のもと来た道を見ながら、倒れたまま後ずさる。
程なくして、曲がり角からもう一人、姿を現した。
その手に包丁を握った葉加瀬聡美(番号24番)が夏美へとにじり寄って行く。
こちらの顔は、狂気にゆがんでいた。
状況は一瞬で理解できた。このまま行けば、夏美が殺される。
柿崎は手に握った銃を構えた。
狙いを葉加瀬に向ける。
そして、
(撃つな……)
引き金を引かなかった。
とっさに、頭の中で声が聞こえた。
助けなきゃ……
(ゲームに乗るんだろ?)
夏美が殺される
(ならば見捨てろ)
早くしないと……
(どうせ殺さなきゃ生き残れない。)
私……
夏美がこちらに気づいた。
「助けて!」
必死に助けを求めてきた。
それでも、柿崎は、銃を撃たなかった。
「いやあああああ!!!」
その後の光景は、陰惨なものだった。
葉加瀬が夏美のすぐ目の前まで迫ってきて、包丁を振り下ろした。
包丁は夏美の腹に深々と突き刺さり、夏美が激痛に悲鳴を上げた。
葉加瀬は包丁を引き抜き、再び振り下ろす。別のところに、もう一つ穴が開いた。
何回も葉加瀬はそれを続けた。そのたびに、夏美が悲鳴を上げる。
そして何回も悲鳴を上げていくうち、だんだんと声は弱弱しくなり、じきに聞こえなくなった。
動かなくなった夏美を見下ろしていた葉加瀬が、柿崎の方を向いた。
返り血を浴びた葉加瀬の顔は、笑っていた。
「あははははははは!!」
笑いながら、柿崎に向かって走り出した。
その距離が詰まる。
葉加瀬が柿崎の目の前まで近づき、包丁を振り上げたとき、
柿崎は引き金を引いた。
その間、自分の心臓の鼓動が、やけに大きく聞こえた。
「はぁ……はぁ……」
銃を構えた体勢のまま、柿崎は固まっていた。
すぐ目の前には、うつぶせに倒れている葉加瀬が。
心臓の辺りを中心に、血だまりができようとしていた。
そこから少しはなれたところに、血まみれで倒れている夏美。
その目はむなしく空を見上げていた。
「うっ……」
柿崎が突然口を押さえてうずくまる。
胃の中の物を、その場に吐き出した。
「げぇ……えっ…」
しばらくその場にうずくまったまま動かなかった。
「これ……で……いいんだ……」
かすれるほど小さな声で、柿崎は呟いた。
己の行動を、人殺しを正当化するために。
柿崎がふらつきながら立ち上がった。
うつろな目を空に向け、降ろしていって夏美を見て、さらにおろして葉加瀬を見る。
そしてその二つの亡骸から背を向け、柿崎は歩き出す。
その足取りはおぼつかなかった。
葉加瀬聡美、村上夏美 死亡。 残り21人
30.夕映の憂鬱
島の中心部に位置する所にある商店街を、綾瀬夕映(番号4番)は歩いていた。
長いアーケードを一人歩く。商店街は静まり返っていた。
タイルを踏み締める自分の足音がヤケに大きく響く。
道の両脇に並ぶ店には、当然と言えば当然だが人気が全くしない。
夕映は恐らく無人であろう商店街を歩き続けた。
そう時間は経たずに、商店街は終わり、路地へと抜けた。
屋根のかかった道は途切れ、日差しが直接降り注ぐ。太陽もだいぶ高い位置にあった。
「ここにもいませんでしたね……」
落胆した夕映が言った。
探し人が見つからなかったことに、大きく肩を落とす。
自然と溜め息も漏れる。
夕映は周りに何かないか、見渡して探した。
良く整備された石畳の道がそこにあった。
道は出てすぐに左に行く道と、まっすぐに伸びる道の二つ。
左に行く道は途中から下り階段になっている。道の脇には藪が敷き詰められている。
右には道路にそって同じ高さの店が立ち並んでいた。
そしてその立ち並んだ店の表に、自販機があるのを見つけた。
夕映が自販機へと近づいていく。
どこにでも良くあるような、紙パックのジュースが売られている自販機だった。
見るとコードもつながっているし、ディスプレイにも文字が映っている。使えそうだった。
夕映はポケットに手を突っ込むと、そこから財布を取り出した。
ここに運び込まれたときに私物は全部持ち出されたと思っていたのだが、どうやら身を改められることはなかったらしい。
財布から小銭を取り出し、いくつか自販機に入れると、展示されているジュースの模型から適当な物を選び、その下にあるボタンを押す。
ガコン、という乱暴な音とともに目当ての品が落ちてきた。
夕映はそれを取り出し、隣にあったベンチに座った。
パックについているストローを取り外し、袋から出してそれを突き刺す。
そうやってジュースを飲めるようにした後、夕映はストローに口をつけた。
別段のどが渇いていたわけではない。しいて言うなら気休めにでもなればいいか、というぐらいのものだった。
それでも効果は十分だった。気落ちしていた気分が回復していくような感覚がある。
夕映は一度ストローから口を離すと、空へと視線を向けた。
「のどかもハルナも、一体どこにいるのですか……」
空から降り注ぐ日の光に、夕映は目を細めた。
ジュースを飲み終えると、夕映はゴミ箱がないか周りを探す。
だが不思議なことにその類のものが見つからない。
仕方なく座っていたベンチに空のパックを置いた。
夕映はベンチから立ち上がると、数歩歩いて道の真ん中まで進む。
その時、風が吹いた。
周りの建物の隙間を通って、勢いよく夕映に吹き付けられる。
夕映は髪が乱れるのを押さえ、風をやり過ごした。
再び回りが静かになる。
夕映は一度、風が吹いてきた方を向き、次に風が去っていった方を向いた。
石畳の階段を下りた道の先。
そこにある、とある建造物を夕映は見た。
なかなか大きな建物のようだった。
他の建造物と比べて頭一つ抜けている。
てっぺんにつけられた時計の針が時間を刻むのがよく見えた。
夕映は、その建物へと近づいていった。
「やっぱり……」
思ったとおりだ。
建物の目の前まで来て、夕映はそう思った。
入り口を見る。
両開きの扉があって、その隣に「中央図書館」と書かれた看板があった。
反対側の隣には休館時の図書返却用の投書口があった。
夕映はデイパックからおもむろに地図を取り出す。
地図の上に指を這わせていき、まず商店街を見つけた。
商店街を模した赤いアーチの絵が描かれている。
そしてそこから位置関係を考え、指を動かし、それが図書館のあるであろう場所でとまった。
その位置には、何も描かれていなかった。
「この地図……欠陥品です。」
夕映は真顔で言った。
夕映は図書館の入り口に立ち、両手で扉を開けた。
金具のきしむ音とともに、中の光景が目に飛び込んでくる。
正面にまっすぐ行ったところに受付のカウンターがある以外、左右に広がる空間には大量の本棚が規則正しく並べられている。
その一つ一つに、これまたきちんと整理された本が並べられていた。
麻帆良の図書館島ほどじゃないにしろ、結構な蔵書数だった。
館内の端には、座って読むための机や椅子も用意されている。
夕映は図書館内を散策しはじめた。
もちろん、ここに探している二人がいるかどうかを確かめるため。
結果は、二人はおろか他の誰にも遭遇することはなかった。
夕映は本棚においてある本を一冊、手に取った。
図鑑くらいの厚さがある、ハードカバーの本。
それをひとしきり眺めた後、読書用の机へと持っていく。
静かに椅子に腰掛けると、本の最初のページを開いた。
夕映は、その本を読み始めた。
31.まっすぐな決意
「そんな……」
「……」
記憶を頼りに山道を歩いて来た明石裕奈(番号2番)は、そこに広がる光景に驚愕と絶望の声を上げた。
その後ろで、和泉亜子(番号4番)が心配そうに裕奈を見ている。
ちょうど昨日の今ごろ、裕奈は山の中のレストランで長谷川千雨(番号25番)と約束を交わした。
もし自分が信頼出来るクラスメイトを連れて来ることが出来たら、千雨にも協力してもらう。
そう言ってレストランを飛び出したのがちょうど一日前の今ごろだった。
そして裕奈は約束どおりに親友である亜子を見つけ出し、この場所に連れて来たのだ。
なのに、
「なによ……これ」
その場所に、レストランは無かった。
あるのは真っ黒に燃え尽きた瓦礫の山。
もはや煙一つ上がっていない。
建物は全壊だった。
これでは、中にいた人物も……
「長谷川……」
裕奈はその場に崩れ落ち、地面の土を握り締めた。
「ゆーな……?」
後ろで立ち尽くしていた亜子が心配そうに声を掛ける。
裕奈は返事は返さなかった。
代わりに、膝間付いていた体を起こし、ゆっくりと立ち上がった。
「ゆーな?」
「まだ……。」
「え?」
亜子が怪訝そうに裕奈を見た。
「まだ大丈夫。長谷川が死んだわけじゃない。」
裕奈は勢いよく亜子に向き直る。
「亜子!地図!」
「あ、は、はい!」
亜子はわけもわからず、とりあえず元気良く返事だけは返して、慌ててデイパックから地図を取り出した。
裕奈がそれを広げる。
「この近くだと、ふもとの工業地帯かな……長谷川は誰ともかかわらずに過ごしたいって言ってたし。」
「うん……」
「よし!」
裕奈は地図を乱暴に折りたたむと、亜子に返した。
「行くよ!」
そう言って元気良く歩き出した。そしてすぐ立ち止まる。
「あー……それで、いいですかね?」
頭をかきながら、今更ながら亜子に同意を求めた。
よく考えたらさっきから自分の思うように動き回って亜子の考えを全く聞いていなかった。
ばつが悪そうな笑みを浮かべて亜子の方を見た。
亜子は少し笑って、
「ええよ、それで。」
「ほんとに?」
念を押すように裕奈が詰め寄る。それでも亜子は迷った様子もなく。
「うん。ホンマに。」
はっきりと、言ってのけた。
裕奈は少しの間その顔をじっと見ていた。
それでも亜子の表情が変わらないことを確認して、目を細めて笑った。
「そっか。よし!」
再び裕奈が前を向く。
「そんじゃ今度こそ、行くよ!」
「うん。」
裕奈が張り切って歩き出し、亜子がその後ろをついていく。
『ええよ、それで』
亜子は決めていた。
これから先、何があろうとも裕奈についていこうと。
たとえそれで命が危険にさらされようとかまわない。
裕奈と一緒に、歩いていこうと。
この島で再会したときは信じることができなかったから。
せめてこれからは、裕奈を信じてついて行こうと。
自分がそうしたいと思っているから。
そう、思っていられるから。
亜子はついていく。
大好きな、大好きな親友の後へ。
今日はここまでです。いつもより若干投下量少なくて申し訳ないです。
区切れのいいところで終わらせようと思ったのでご容赦を。
それでは。
夏美・・・
GJ!
ですがまた出席番号が・・・
和泉亜子は5番ですよ。
さて、まとめサイトがキリ番一万越えしたわけだが
まとめ氏降臨しないかな
更新はしたみたいだけど昔みたく出てこなくなったな。
どうしたのかな?
>>707 美砂が7番だってことにも気づいてあげてください
あ、今気づいたがもう473KBなんだな
次スレ立ててくる
この場合私は今回の投下分は次スレに投下するほうがよろしいのでしょうか?
了解です。
このスレで書いたことないけど……現在、構想中。
ヨソで連載持ってるから、やるとしてもそれが終わってから、あと1〜2ヶ月後になると思うけど。
6さんが終わってからくらいになるのかな。
しりとりやろうぜネギま語で
魔法 の う
719 :
マロン名無しさん:2006/07/06(木) 14:33:33 ID:m/+lEvG7
う ぜ え よ お ま え
え?まだ埋まってなかったの?
さっさと埋めちまうか流しちまおうぜ
γ´ ̄ソζ⌒ヽ ..'´ ヽ
l ノリ√ヽヾ)リ| |_llノリリ」〉
(d| ゚ -゚ノl ノノノ |ノ||. ゚ーノ| ノノノ
/ つ∪___ ザックザック ノ/ つ∪___ ザックザック
し'⌒∪  ̄M ザックザック し'⌒∪  ̄M ザックザック
'""''"~~ '""'''"~~
_
'´ ヽ.
⌒●__●⌒ ,' ノノノ)))〉
( ・∀・) ノノノ くノ(!|‐ヮ‐ノゝ ノノノ
/ つ∪___ ザックザック / つ∪___ ザックザック
し'⌒∪  ̄M ザックザック し'⌒∪  ̄M ザックザック
,___ _
_」:::i::::::::::::::::::`丶、
,.::´::|.:.:l.:..:.:.:..:.:.:.:.::.:.:.:.ヽ
/:/:,':iト.:.:、ゝ:.:.丶::.:.ヽ:.:.::::ヽ
/∨:'::::|::!~ヘ:.ヽ\::::.ヽ_ヽ::::i:ト、
/.;イ:::!::|:::::!:| ,.ム:ヾ、<丶ヽ::ヘ::l:!ト!
. /.〃::::|:::!::::レ!´ _ヾ ,>-、ヽ'::ト!
. ,'//.:.::::1 ハ:::l:l ,r'⌒ ぃリ
. ,″i.:::::;ハ| ,:|:ト ' ` , _ i,イ
|:::/ '! ヾ ゝ f´ } /!::、ヽ <試しにさ、このナイフで亜子のこと刺してもいい?
|:;' 冫r、_ `i 、 ゝ- ' , イ !::::!`ヽ いいよね!
|! / 〃!ゝ.\ ,':,ヘ 7ハ´/\ヾ!
i {l ‖!\゙\冫!.ムrく. ,'丶、
l ` ' ` i \゙\/ トヾ:、 ,' >、
ヽ、 !´| .\゙\ハ ヾ / /ヽ
/ 1 | ト.\フ´ ̄丶、/ / i
/ ∧/ │i i /7 / ,ハ / |
. / ,' ./ ! l ` ヽ {. f ,ハ/ .!
. / / / ! ! ` ゝ!,/ ! |
予告編
「……ウチ、間違っとったわ。みんながまほー使えるようになれば、面白いと思ったんやけどなー」
集められしは、3−Aの31人、プラスα。首に光るは、束縛の証。
「第一回麻帆良バトルロワイヤル――それが諸君にしてもらう、殺し合いのゲームの名だ」
浅黒い肌の教師が、日常の終わりを告げる。押し殺した感情、冷たい視線。
「なら――私の靴を、舐めなさい」
殺し合いの場で、結ばれる関係。歪んだ繋がり。たとえその全てが、偽りだったとしても。
「未来人と言ってもネ――それだけでは、実は私の天才ぶり・多才ぶりは、全然説明できないネ」
天才が笑う。狂人が笑う。歪む常識、逆転する価値観。何が正しく、何が間違っているのか。
「……食べちゃっていいよ。……あ、持ち物には、手、つけないでね……」
蠢く影。消えていく命。最後の1人が選ばれるまで続く、血の宴。
「なあ本屋――いや、宮崎。お前『バトルロワイ《ア》ル』って小説、知ってるか?」
気づく者たち。見えてくる全貌。いやしかし、その気づきは間に合うのか。
「……お願いします。僕の命で、みんなが助かる可能性があるのなら……!」
そして少年は魂を賭ける。理不尽な運命に逆らうために。大切な生徒たちを、守るために。
B A D E N D
学園祭超鈴音編
バトロワエンドNo.12
その後、3−Aのメンバーは「バトルロワイヤル」に強制参加。
二度と平和な学園生活が戻ることはなかった……
攻略のヒント:どこで選択を間違えたのかよく考えてみよう。
魔法先生たちに素直に従って良かったのか?
諦めて抵抗を止めてしまって良かったのか?
やり直す
終る
番外編シナリオに進む <
注意!!:この番外編には、暴力的なシーンが含まれています。
流血や痛いシーンが苦手な人は、注意して下さい。
「……っていう私の漫画のオチだったら、良かったんだけどねー」
「……はれ? もうあの『簡易ゴーレム』とか言うの、出さないのかなー?」
「走り描きじゃ、これが限界。さっき出した子たちが全滅した時点で、私の負け。
あーあ、こんなことなら鳥でも描いて、さっさと飛んで逃げとくんだったかなー」
「ほいじゃ『ポッキ』ちゃん、ヤッちゃって〜♪」
そして、血が飛び散る。命がまた1つ、失われる。
ネギま!バトルロワイヤル、第十二部?(仮)、鋭意企画中。
なおこの予告編の内容は予告なく変更される場合があります。ご了承下さい。
ということは、私が書いてるのは13番目になりそうかな(´・ω・´)
先に書き始めた方が12番目。716は別連載終わってからって言うし。
どっちも期待してるよん
>>725 あ、いや、確定できなかったので12?(仮)としておきました。こちらが13番目で全然構いませんよ。
書く意志を表明してる人が居たのは知ってましたが、そちらの進行状況が分からなかったので。
既に本文を書き始めているというなら、そちらが先になりそうですね。こちらは今色々と整理して設計図を詰めてる段階です。別スレでの連載もありますし。
一読者として、期待してます。
自分今6割完成してるけど、受験のこと考えるとそろそろ辛い。
いっそ諦めて、話ごとに短編に区切って小出ししようかな、とか考えたり。
とりあえず今進行中の話だけは仕上げる。
>>729 ナカーマ
俺も受験生できびしい中暇を見て書いてる
短編個出しはやってみたが意外とムズかった
731 :
725:2006/07/08(土) 06:34:06 ID:???
>>727 2週間くらい前から書き始めて、まだ2話(2日分)しか書けてないので完成はまだまだ先っぽいです。
とりあえずは連載がんばってください(`・ω・´)
このスレの職人って、全部完全に書き上げてから投下してんの?
できた分からとかじゃなくて?
一時期作者希望者が異常に膨れ上がったせいで、
完成した希望者から投下ということになった。
なる。最近読み始めたからその辺の空気はわからんかった
まとめの方で作品は読んだが、過去ログ全部読んではいられんからなぁ
職人に厳しいルールだが、まあ仕方ないのか。
埋めがてら没ネタ張る
「銃声………それも近いッ」
これまで何度か耳にしたことのある乾いた音、しかし今度のは大分近くで聞こえた。
お嬢様を探し出すという本来の目的もあるのだが、それとは別に近くで誰かが襲われているとあれば見過ごせるはずがない。
一メートルもある野太刀を肩に乗せ、刹那は音の聞こえた方へと走り出した。
それが2、3分前。
そしてこれはほんの数十秒前、私と宮崎さんはこうして視線を交わしていたのだが、明らかに様子が変であった。
後ろでヘルマンがおびただしい血に濡れて横たえているのも一層緊張感を醸し出す。
程なくして私はようやくその理由を悟ったのだった。
つまりこうだ、宮崎さんは今までヘルマンと行動を共にしてきたのだが、この辺りで誰かの襲撃に遭い、
どういう経緯かは解らないがヘルマンだけが殺され、当の宮崎さんはこうして1人取り残されたのだ。
刹那がそう考えたのも全く不自然ではないだろう、むしろ普通であるといえる。
ではこんな時はどんな言葉をかければいいのだろうか、となるべく急いでその答えを導き出そうとしている最中に、
『皆、また新しい死亡者が出たようじゃ。ヘルマン、と言ったかの…』
「あ……」
これでヘルマンの死は正式に決定された。
刹那の悲しみが一層深いものとなる。
どうしようもなく、ただ涙の感触を頬に受けるだけ。
刹那は顔を上げてのどかの方を見た、その時は私と同様に悲しみの極みで動けなくなっていると思っていたのだが。
驚くべきことに刹那に向け発砲の体制をとっていたものだから、さすがに事態を飲み込めなかった。
そんなこんなで今、この刀でのどかの握る拳銃から弾き出された銃弾をなんとか逸らすことに成功した、というわけだ。
「な……ッ!!」
まさか、へたりと座り込んでいる宮崎さんがいきなり銃を撃つとは、皆を信用しすぎた私の警戒が甘かったのか。
とにかく予想だにしていなかったので完全に虚を突かれてしまったことは反省すべきであり今後の課題でもあるだろう。
そんなことを考えながらとりあえず身を隠すため近くの太めな木の陰に隠れる。
特別話すことも無いのだろう、学園長の放送は何時の間にやら聞こえなくなっていた。
「 」
のどかが何かを呟いたようだが上手く聞き取れない。
その声を聞き取ろうと耳を澄ます間もなく、銃声のおかわりが届いた。
弾は刹那が隠れている木の中心に黒い穴を作り上げ、剥がれた皮がばらばらと散り落ちる。
さてどうしたものか。
なぜ宮崎さんと命がけの戦いをする羽目になったのか、今はどうでもいい。
選択肢として逃げるか応戦するかの二つしか上げられず、できれば後者は選びたくなかったのだが、
このまま逃げ切ったとして、その場に残ったのどかがまた誰かと遭遇したとき、
やはり誰彼構わず発砲するのではないかと思うと、
結局放っとくわけにはいかず最終的に応戦することを決断せざるを得なかったのは、
誰かにそれは大義名分だと追求されれば口ごもってしまうだろう…。
しかし、今はそうするしかないのだ。
「ふ……ッ!!」
猛然と飛び出した刹那に向けてのどかが両手に備える拳銃を乱射する、が、そこは流石の神鳴流剣士。
のどかの左右の腕から次々と生み出される銃弾の数々は横を通り過ぎ、
後ろの木に突き刺さる音が風を切る刹那の耳にもしっかりと届いてきた。
確かに気も魔法も使えないのだが、元々の身体能力においても一般人のそれを凌駕していると刹那は自負している。
さらに違うだろうは経験の差。
のどかがこれまでまともな学生生活を行ってきたならば銃を握ることはこれが初めてなのだろうが、
そのまるで狙いのついていない適当な乱射でも数撃てば何発かは命中するモノだ。
けれど銃口の向く角度を見定めれば銃弾の軌道は大方予想がつくので、
避けれずとも刀をその線上に持っておいとけば後は自然と弾き逸らしてくれる。
ギィィィン
この通り。
とまあ難なくのどかの背後に回れた理由としてはこのくらいだろう。
「どっか行けよ」
右手を振り上げるのと同時に手刀の形に固め、それをのどかの延髄目掛け打ち下ろす間際に、
虫の鳴く音にさえ掻き消されそうな程細く掠れた囁き声だったが、
刹那の判断が正しいのならそう聞こえたはずだ。
どっ、と鈍い音と振動の後に、のどかの体は重力に身を委ねするすると地に陥落していった。
「……………」
暫くの間、まさしく字の如く大の字に寝そべっていたのどかの様を真上から見下ろして観察していたが、
当然ながら気絶して意識の無いのどかが動くことは無く、これからも数時間は動かない見込みなので、
これで一先ずは安心だろうと胸を撫で下ろし、片膝を着いてのどかの体を抱き起こす。
そのままずるずると引っ張り近くの木の根元に持たれ掛けさせようと思ったのだが、
これではのどかの無防備な姿をおめおめと晒して格好の餌食とさせてしまうのではと思い直し、
脇にある草の塊の裏に引きずってとりあえず身を隠す形にしておいた。
「………のどかさん」
それから視線をヘルマンへと移す。
体中に銃で撃たれた形跡があり、それら穴からなみなみと溢れ出た血液に浸った有様は、
さっき見たエヴァンジェリンと比べても一段と酷く惨たらしい光景。
「…………」
出る言葉が無いのは刹那でなくても当然のことだろう。
正直、気持ち悪い。
幾らこれまで数多の死闘に陥りその難を乗り越えてきた私でも、
これ程までにグロテスクな殺され方は初めてお目にかかったというものだ。
暫く経って、ヘルマンにエヴァンジェリン同様でき得る限りのしかるべき処置を施してから、
やはりエヴァンジェリン同様に、両手を合わせ合掌。
それにしてもなぜこう死体ばかりと遭遇するのだろう。
もう、見たくないです。
…当たり前だ。
消沈の勢力がますます軍旗を掲げ回っていたが、こうしていてもコトは進展しない。
細い指で涙を拭い、刹那は1つの気掛かりを残したままその場を後にした。
「(ヘルマンさんは……のどかさんに………?)」
これまで幾度と無く死亡報告を耳にして、ああ、誰かが友達を殺しているんだ、
と嫌々ながらも信じざるを得なかったのだが、実際のところ、
ああして死体とその傍らで銃を握るのどかを見ても、彼女がヘルマンを殺したとは思えなかった。
と言うより、考えも及ばなかった。
こんな状況でもまだ皆のことを信じて止まない刹那の過ちはのどかを自由にしておいたこと、
そしてデイバッグや拳銃共々その場に放置してきたことである。
それにしても味気ない
この際ジュースとは言わないが、せめて味のある飲み物が欲しいものだ
まあこの状況でそんな贅沢言っていられない、水があるだけでも感謝すべきなのか
あの坂道で美空を惨殺した後、
新たなターゲットを求め歩いていく内に島を縦に横断する結果となってしまい、
さらにその間誰一人として見かけること無かったのでいささか気落ちしていた所に、
割と近くで数回続いた銃声と、その後直ぐに島内に響いたヘルマンの死亡報告が聞こえてきたのは正直救われた。
つまり辺りでヘルマンが殺され、と言う事は、殺した人間も近くにいるわけで。
やっと二人目、会える
殺せる
しかしそう期待して銃声の聞こえた方角に体育の持久走さながら駆けて行くも、
頼りがこの辺に響いた銃声のみであっては容易にその場所を突き止められるわけもなく、
半ば諦めながらようやくヘルマンの死体を発見したのはそれから30分後のことだった。
「ふーん………」
無残な死骸を目に私は溜息ともとれる頷き声を漏らす。
「流石に遅すぎましたね」
その言葉を最後にヘルマンからの関心を綺麗さっぱり投げ捨てた夕映は、
今は見ぬ殺した者の行方を気にするばかりだ。
しかし地面を見る限りそれらしい足跡は無数にあり、どれを辿っていけばいいのか皆目検討つかないので、
非常に残念だがここは諦めてそこに転がっている銃を手に入れるだけで納まるとする。
「まあこれはこれで思わぬ収穫ですが」
二丁の拳銃を拾い上げる夕映。
当然補充用の弾もあるはずなのでヘルマンのデイバッグに目をやろうとしたとき、こう思った。
おかしい、と。
「……なぜこの銃を置いていったですか」
そう、ヘルマンを殺した生徒のことだ。
なぜ武器を拾っていかなかったのだろう。
しかも2丁あると言う事は、そいつは自分の武器すらも放っぽり出して逃げたのか。
そこまで緊急な事態が起こったのだろうか、それとも何か複雑な事情が…
とりあえずヘルマンのデイバッグから予備のマガジン等を拝借した夕映は、
そこでもう1つデイバッグが残されていることに気づく。
「一体誰が…………!?」
そして、
ついに発見してしまった。
もう1つのデイバッグから伸びる不自然な跡。
それは土を盛り返して奥へと続いており、何かを引きずった跡だということは一目瞭然であった。
「なーにがあるですか…」
サブマシンガンを手に構えた夕映はじわりじわりとその跡を辿る。
それは数メートルも行かない所で消えていた。
変わりにあるのはぼこぼこ幹の大木と、それを取り巻く背の低い草木と、ちらりと覗くチェックのスカート…
タララララララ
撃った。
その柄が目に入るや否や、何を思うでもなく、真っ先に発砲した。
まぁそれが誰であろうと殺す予定であった夕映ならば当然の行動といえばそれきりだが。
無数に弾き出された弾丸は草の塊を貫通して行き、結果は目で見て取れないが、
しかし確かに感じた手ごたえに夕映は満足げな表情を浮かべる。
よし、しとめた
そう確信しても尚、さながらシューティングゲームのような感覚で撃ち込んでいく。
案外簡単な作業だった。
やがて弾が尽きたところでようやく銃を下げた夕映は、
たった今自分に殺された生徒の正体を確認するためぽつぽつ赤く染まった草の中へと歩を進める。
「……なんだ、のどかですか」
夕映が見た死体の顔面は、弾のせいで片側砕けた頭から飛び出した脳みそっぽい物と、
だくだく流れ出る濃い鮮血のおかげで誰と判別することもできなかったのだが、
髪の色、髪型、そのへんから推測すればその残骸が宮崎のどかであると大方見当はつく。
「こんなトコで何してたですか…?」
さて、二人目を殺すことに成功したわけですが。
のどかでした。
原稿用紙の半分はおろか一行にも満たない程の短い感想だが、それ以上の言葉は何も浮かばない。
「順調ですね」
あっちに転がっているヘルマンとその死に様を同じくするのどかを一瞥した後、
夕映は身を翻して数歩来た道を戻り再び支給品調達に取り掛かり始めた。
「次はどうするですか……」
死んだ人間に興味の無い夕映にとってのどかの存在はもはや頭の中から消えつつあり、
当然今まで過ごした3年間で見てきたのどかの奇行の数々も記憶から排除される予定なのだが、
それによって夕映に支障が来るわけでも損害が生まれるわけでもなく、
むしろあんなヘタレのことなど覚えていても脳の容量が勿体無いくらいなので、
さっさと脳内ゴミ掃除を始めて欲しい物だった
「あと何人ですか……全く面倒です」
気絶したまま知らずの内に殺されてしまったのどかを背に、夕映はマガジンに弾を込め始める。
他にも書き直さなきゃいけない箇所が山ほどあるな
まあこんな駄文流してくれ
739 名前: ◆PXPnBj6tAM [sage] 投稿日: 2006/07/01(土) 00:44:58 ID:BTwG2jKb0
>>736 文章力に関しては同感だけど、あんま言い過ぎるな。
書いたこと自体に意味がある。 よくがんばったよ。
等とえらそうなことを言う俺の文章が一番駄目だったりするw
それと、フリーザと両津が出会ったのは、偽最終回での話。
こち亀の偽最終回で両津が部長にこの漫画にはいらんとか言われてDB世界に飛ばされる。
そこにはフリーザとザーボンがいた。 確か60巻台だったと思うが……
744 :
727:2006/07/12(水) 09:51:14 ID:???
最後までプロットは完成して、既に書き始めてるー。今ようやく3人死んだとこ。まだ先は長い。
でもお話って生き物だから、最後まで書き上げるまでどうなるか分からんよねホント。
あと、各エピソードをどういう順番で読者に提示するかでまだ悩んでたり。ほぼ同時進行であちこちで起こる事件を。
まだ書けるかな?
新スレで文句言ってる連中は何がしたいんだろう。
職人追い出し? 単なる嫌がらせ? 自分が書けないから嫉妬?
このスレの形態上、忠告ってこたぁありえん。今さら直せないんだから
(あるいはそのルール変更を狙った奴らの仕業……ってのは深読みが過ぎるか)
スルーするしかないでしょ
大方あんな上手い作品を自分が書けないから嫉妬してんじゃない?
あれで文句つけられるなら、SS書ける職人はもうこの板に残らんわな
荒らしには、職人さんに文句言う前に自分で書いてみろ
って言いたいね。
書かざるもの文句言うべからず、とまでは言わないが……
書けない人も批判する権利は普通にあるのは、確かなんだが……
にしても、あの言い方はないと思うんだよな。色んな意味で。
言い方がキツイね。
もう少し優しく言えばいいのに
スレ埋め立ての救世主が!!
⌒●__●⌒
ヽ|・∀・|ノ クーフェイマン!
|__|
| |
⌒●_●⌒
フ |・∀・|ノ よい
./|__┐
/ 銚子
""""""""""""""
⌒●__●⌒
((ヽ|・∀・|ノ しょっと
|__| ))
| |
銚子
"""""""""""""""""
. _._ __ _
'/`´ ,、 `ヽ v '´へ`ヽv
//,/((ノ ))))〉 ハミ((ノハ))ハ
|,ハリ(l ゚ ヮ゚ノl ノノノ 从i| ゚ ヮ゚ノjj ノノノ
/ つ∪___ ザックザック / つ∪___ ザックザック
し'⌒∪  ̄M ザックザック し'⌒∪  ̄M ザックザック
'""''"~~ '""'''"~~
, ─ 、 _
! '´ ̄ヽ , '´ `ヽ
! l〈ノノリノハ l((リハ从ハ)
! l(l! ゚ヮ゚ノヾ ノノノ 从(l ゚ ヮ゚从 ノノノ
ノ/ つ∪___ ザックザック / つ∪___ ザックザック
`し'⌒∪  ̄M ザックザック し'⌒∪  ̄M ザックザック
さてそろそろ連載が終わりまた暫く寂しくなるわけですが。
ほとんど人が居なくなったころに書こうかと思う俺へたれ
やべぇ今書きかけてるの、根本から見直さなきゃダメだ。
ある程度は流用利きそうだけど、2/3はゼロから書き直し……頭イテェ
. _._ __ _
'/`´ ,、 `ヽ v '´へ`ヽv
//,/((ノ ))))〉 ハミ((ノハ))ハ
|,ハリ(l ゚ ヮ゚ノl ノノノ 从i| ゚ ヮ゚ノjj ノノノ
/ つ∪___ ザックザック / つ∪___ ザックザック
し'⌒∪  ̄M ザックザック し'⌒∪  ̄M ザックザック
'""''"~~ '""'''"~~
, ─ 、 _
! '´ ̄ヽ , '´ `ヽ
! l〈ノノリノハ l((リハ从ハ)
! l(l! ゚ヮ゚ノヾ ノノノ 从(l ゚ ヮ゚从 ノノノ
ノ/ つ∪___ ザックザック / つ∪___ ザックザック
`し'⌒∪  ̄M ザックザック し'⌒∪  ̄M ザックザック
梅梅
. _._ __ _
'/`´ ,、 `ヽ v '´へ`ヽv
//,/((ノ ))))〉 ハミ((ノハ))ハ
|,ハリ(l ゚ ヮ゚ノl ノノノ 从i| ゚ ヮ゚ノjj ノノノ
/ つ∪___ ザックザック / つ∪___ ザックザック
し'⌒∪  ̄M ザックザック し'⌒∪  ̄M ザックザック
'""''"~~ '""'''"~~
, ─ 、 _
! '´ ̄ヽ , '´ `ヽ
! l〈ノノリノハ l((リハ从ハ)
! l(l! ゚ヮ゚ノヾ ノノノ 从(l ゚ ヮ゚从 ノノノ
ノ/ つ∪___ ザックザック / つ∪___ ザックザック
`し'⌒∪  ̄M ザックザック し'⌒∪  ̄M ザックザック
. _._ __ _
'/`´ ,、 `ヽ v '´へ`ヽv
//,/((ノ ))))〉 ハミ((ノハ))ハ
|,ハリ(l ゚ ヮ゚ノl ノノノ 从i| ゚ ヮ゚ノjj ノノノ
/ つ∪___ ザックザック / つ∪___ ザックザック
し'⌒∪  ̄M ザックザック し'⌒∪  ̄M ザックザック
'""''"~~ '""'''"~~
, ─ 、 _
! '´ ̄ヽ , '´ `ヽ
! l〈ノノリノハ l((リハ从ハ)
! l(l! ゚ヮ゚ノヾ ノノノ 从(l ゚ ヮ゚从 ノノノ
ノ/ つ∪___ ザックザック / つ∪___ ザックザック
`し'⌒∪  ̄M ザックザック し'⌒∪  ̄M ザックザック
. _._ __ _
'/`´ ,、 `ヽ v '´へ`ヽv
//,/((ノ ))))〉 ハミ((ノハ))ハ
|,ハリ(l ゚ ヮ゚ノl ノノノ 从i| ゚ ヮ゚ノjj ノノノ
/ つ∪___ ザックザック / つ∪___ ザックザック
し'⌒∪  ̄M ザックザック し'⌒∪  ̄M ザックザック
'""''"~~ '""'''"~~
, ─ 、 _
! '´ ̄ヽ , '´ `ヽ
! l〈ノノリノハ l((リハ从ハ)
! l(l! ゚ヮ゚ノヾ ノノノ 从(l ゚ ヮ゚从 ノノノ
ノ/ つ∪___ ザックザック / つ∪___ ザックザック
`し'⌒∪  ̄M ザックザック し'⌒∪  ̄M ザックザック