>>660 「森の端」と呼ばれる、売春宿を始めとしたイカガワシイ店が軒を連ねる、一種のスラムがある。
そこで娼婦として生活する「レイちゃん」こと一ノ瀬怜子の、父親不詳の息子が一ノ瀬海。
カイは「森の端」の子供として、イカガワシイ店の手伝いさせられたり、小学校でガキ大将からいじめられたりするけど、元気に強気に毎日を送っている。
そんなカイには「森のピアノ」があった。
辛いときでも、苦しいときでも、このピアノを弾いている時だけは「The Perfect World of KAI(カイの完璧なる世界)」なんだね。
ところがこの「森のピアノ」は曰く付き。日本が世界に誇った天才ピアニスト「阿字野壮介」のピアノだった。
交通事故で恋人とピアニスト生命を失った阿字野が二束三文で売り払ったピアノが、巡り巡って森の端に流れ「使わ(え)ない」と森に捨てられたのだった。
さてこのピアノ、元から鍵盤の重い特別製らしんだけど、今じゃ壊れて普通に弾いても音は出ない。強く弾いたら音が割れる。カイだけが弾ける特別なピアノだった。
阿字野は一度売り払ったものの、やはりピアノから離れられず、ピアノが捨てられている森のすぐ近く、つまりカイの通う小学校の音楽教師として赴任していた。
すぐ近くに有りながらも、すれ違うばかりの阿字野と森のピアノとカイを、東京からの転校してきた「雨宮修一」が結んでゆく。
雨宮修一は、日本で唯一コンサートホールを満員にできるピアニスト「雨宮洋一郎」の一人息子として、幼少よりピアノの英才教育を受けていた。
祖父母の病気の看病の都合で、一時的にカイの小学校に転校してきたんだ。
転校先に、雨宮洋一郎とライバル関係でもあった阿字野が居ると知った修一の母親は、来る全日本学生ピアノコンクール出場に向けてのレッスンを依頼するが、あっさり断られてしまう。
ピアノから離れられず、かといって向き合う事も出来ない阿字野だったが、カイの天性の才能に触れ、引き込まれてゆく。
カイにピアノを教えようとする阿字野に、「ピアノを教わる気はない」と雨宮への配慮もあり一度は断ったカイ。
けれど、「森のピアノ」では弾けない曲があった。それがショパンの「子犬のワルツ」。
阿字野から「ショパンは筋力だけでは弾けないんだノ」と言われた事がどうしても頭から離れないカイは、ついに阿字野にピアノを教えてくれと頼む。
その現場を(覗き)見てしまった雨宮。カイの才能は知りつつも、一番を目指す雨宮にとって、自分が断られた阿字野から教えを受けるカイに複雑な思いを抱く。
それはさておき、カイは阿字野から「タダでピアノを教わる気は無い」と、交換条件にこだわる。
子犬のワルツが弾けるようになったカイに阿字野が求めた条件が「全日本学生コンクールへの出場」だった。
雨宮とカイは、全日本学生コンクールで全力で戦う事を誓う。
コンクールに向けて、改めて阿字野に教えを乞うカイ。阿字野は現役だった頃に課題曲を弾いたテープをカイに聞かせ、「おまえはおまえのピアノを弾け」と伝える。
それでもカイの耳からは、若き日の阿字野が弾いたK280が離れない。何度弾いても「阿字野」のピアノしか弾けないノ。
カイは「自分のピアノ」を見つけられないまま雨宮との勝負の日を迎えてしまう。
一方、本来なら関東地区から出場する予定だった雨宮が中部南地区から出場すると知り心穏やかでない参加者が居た。
それが「丸山誉子」。「雨宮さえ居なければ自分が優勝するはずなのに」と強気に振る舞う彼女だが、それは極度の上がり症の裏返し。
階段でうずくまり、泣きじゃくる誉子を無視できず、なんとか説得しようとするカイ。
雨宮なんか大物の敵でもなんでもない。敵はそうやって集中出来ない自分ノカイが誉子に向けた言葉は、阿字野がカイに向けた言葉そのものだった。
(ちなみに、誉子にとって最も集中できる場所が便所だったから、以後誉子の渾名は「便所姫」になる)
そんな舞台裏を余所に、着々とコンクールは進んでゆく。
雨宮は、一つのミスもない完璧な演奏をしてのける。演奏を終えたとき、雨宮は勝利を確信していた。
誉子は、自分のピアノを弾き切る。自分の一番のピアノを、初めて人前でちゃんと弾けた誉子。
カイの演奏順が回って来る。カイはまだ、自分のピアノを見つけられない。
吹っ切ったつもりでも、指が奏でるのは「阿字野」のピアノ。それでも一つのミスも無く、卓越した演奏に場内はどよめく。
突然の中断。失敗した、これは自分のピアノじゃないノ。タイを解き、靴を脱ぎ捨て、カイは自分のピアノを弾きはじめる。
そこはカイの「The Perfect World of KAI」。カイのピアノが、コンサートホールがピアノの森へと変えてゆく。
カンペキを超えたカイに、負けを悟った雨宮。
しかし、審査結果は当事者達の予想を裏切った。雨宮:予選通過、誉子:予選通過、カイ:予選落ちノ
(この時のボンクラ審査員に、佐賀と司馬は名を連ねていた)
カイにはまた普段の生活が始まり、雨宮は東京へ戻る事に。しかし、予選を通過した雨宮と誉子はもう一度本選で相見える。
雨宮は、より磨きのかかったカンペキな演奏をする。目指すは、全国大会優勝。
それでも雨宮の頭から、カンペキを超えたカイの演奏は離れないノ
一方の誉子。カイの予選落ちに納得出来ない誉子は、コンクールにケンカを売りに来ていた。
完成されたピアノを崩し、ありったけの気持ちを込めて、自分の一番のピアノを貫く。
審査結果は、雨宮が満点で優勝。しかし、世の中にはくつがえせるものとくつがえせないものがある。
佐賀の計らいで、誉子には審査員特別奨励賞が贈られた。
以後誉子は、コンクール荒らしとして名を(ちょっぴり?)馳せる事になる。
一方、予選落ちしたカイ。いくら「森のピアノさえ弾ければゴキゲン」と言っても、肝心の森のピアノの音が出なくなる。
野ざらし、雨ざらしの森のピアノは、いまその寿命を終えようとしていた。
ピアノの森に雷が落ちる。炎をあげる森のピアノ。一番の宝物を失ったカイ。
森の端の一員として生きてゆかなくてはいけないと解っていても、やはりカイはピアノから離れられない。
ピアノを弾きたくても弾けないカイの苦悩をよそに、雨宮が出場する全国大会の日が訪れた。
その日、カイは楽器店のデモンストレーションの為に用意されたガラスのピアノ(アクリル製)と出会う。
ピアノを大勢の前で弾ける喜び。カイはレイちゃんと森の端全てを背負って、お金が貰える本気のピアノを目指す事になる。
そして、雨宮は全国大会で優勝を飾った。雨宮は優勝後、留学の道へ進む。それは父、雨宮洋一郎の計らいでもあった。
父の思惑とは裏腹に、留学先で阿字野の演奏をビデオで見て、またしても「自分のピアノ」「カンペキを超える何か」という壁にぶつかり、何年もスランプに苦しむ事になる雨宮。
自分のピアノと向き合うため、帰国してカイに逢おうと決断した雨宮。しかしカイの行方は容易に解らなかった。
森の端の住人は、カイの名前を出しただけで、一方的に脅し返して来る。そんな中、なんとか顔見知りと出会い「カイに逢わせてやる」とP☆クラにつれてゆかれ、カイそっくりのピアノを弾くマリアと出会う。
ご存知のように、マリア=カイ。カイは、阿字野を保証人に森の端出身であることを広く悟られないようにしながら、一流進学校へ進み、学校では禁止されてるバイト(P☆クラ等)とピアノのレッスン、一流校の猛勉強とを両立させる日々を送っていたんだ。
カイのピアノを聞く事で、自分と向き合った雨宮は、自分のルーツが父親に有る事を見いだし、また留学先へと戻って行った。
で、カイはP☆クラに通う彫師の冴ちゃんとアフターかまして、酔った勢いで冴ちゃんの部屋にあがる。
そこで冴ちゃんがマリア(=カイ)のピアノを聞いてイメージで描き上げた「森の中でピアノを弾くマリア」の絵をみて、結ばれちゃう訳さ。
まあ、モーニングのあらすじに納得いかなかったから、自分で書いてみたんだけど、本編の百分の一も面白さが伝わらんわな。
良いから、買って読め。