【二次創作】TRPG系萌えスレッド【好みキャラ】

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1名無しになりきれ
キャラは考え付いたけど、
  TRP系スレに参加するほど余裕はない。
  キャラに合う世界観のスレがない。
  このキャラを受け入れてくれるか怖い。
  自分で主催するのは無理。
  文章書く練習でもしたい。
  周りが引くのを気にせずに趣味全開なレスを投下したい。
  受けがよさそうなら本格参戦させたい。

それでもそんなキャラを活躍させたい。そんな世の中舐めた奴等の為のスレだ。

SS投下してすっきりしろ。
間違ってもTRP系スレに無理やり参加してFOしないように。
暇な奴が添削や改善点を指摘してくれるかもしれん。
叩かれても気にするな。誰にも迷惑はかけていない。
参考にしたいときだけ耳を傾ければOK。

前スレ
http://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1168613611/l50
2委員長 ◆Rule2B.pIY :2008/07/13(日) 02:49:47 O
うっさいわい
3名無しになりきれ:2008/07/13(日) 03:09:40 0
はさみじゃがー!パンダもろもろは死ねじゃがー!
4名無しになりきれ:2008/07/14(月) 02:20:28 O
5名無しになりきれ:2008/07/15(火) 18:54:24 0
                          ,r'"` - 、            _.._
                          /     ` ‐- .._    ./;::、`:;ァ       _,、-‐''"""''ー..、_
                        ,r'゙           ``ヽ-/::ゞ゙':/       ,r.'´ ...::::::::::::::::::::::::`ヽ、
                      _,.....ィ゙       .:..       >-、_:::l゙`` ‐、_,,_,/::::::::.:.:.......,. -‐ '::::::::::::::::::ヽ
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.              _,r'".:.:./ / /   :::  ..:/  __,.、-‐'"`:ー-、_∠_         レ'゙::::::::;:':;,∠;r‐三二ニ;=::::::/!
             ,r'":.:.:.:.:../   _/   .:::: :::/-‐ '".:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.::/   `ニ         /:::://r'ひハ   /:::...:/ィ::〉
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.         /.:.:.:.:|i:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:.:,'     ::::/.:.:.:.:._;.-、:::!    !:.:.:.`ー-、,,_____,..,.,ィく/.:: :::/  ゙::.. -=ニ二-‐‐'ニイ:::/;イー
     /.:.:.:.:.:l:.:.:|:.:,:.:.:.:.:.:.:.:.:.,'     .::/:.`ース   ヾ:、   ノ.:.:.:.:_;,;、_-‐ '"´./ {j .イ:::::../    ゙   ,rtラtゝ'";/::/!:', つ、次スレへ移動するわよ・・・。
   _,./;.:.:.:.:.:.:.:.:|:.:.l:.:.!:.:.:.:.:.:.:.,{,,__   .::,':.:.:.:.:.:.|     |;,`ニ='‐''"´: : : : ヽ  .l  /!::::;イ_  ヽ  _i'゙シ'ア´/:/:::l::!
. <゙.:.:.:.`:.:.:.:.:.',:.:.:l:.:.';:.:l:.:.:.i:.:./:.:.:.: ̄``〈:.;.:;/.:.:ヽ、...ィ{ : :l, : : : : : : : : : : ヽ ,!   |:::/|! `` ー‐---‐'"//;:イ:;: . :i!:|
.  /ヽ、;.:.:.:.:.:.:`',:.:.';.:.:゙、i!:.:::!:ム‐-、;;_:.:.:.:/:':.:;.:.:.:.:.:.:.:.:,/ヾ:、:l,: : : : : : : : : : : V   ∨      -=ニ彡'‐'"´ /イ::::.;!,リ
. ,'   ヽ、;.:.:.:.:ヾ:゙、:.:.:li!;/.:.:.:.:.:.:.:.`Y゙liiァ'゙.:/.:.:.:.:/  ヾ:、 l,: : : : : : : : : : /                 / /::::,'
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ニ‐'"               `` '' ‐-ァ゙.:.:.:._;.:-‐';:.:.:.|;,;,;,;,;,;,;,;,;,|  `イ,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;,;/´
                        /.:.;/゙ |;;;;;;;;;';:.:.:!,;,;,;,;;,;,;r┴─┴─'''''''''"""" ̄ ̄ ̄ ̄´´
フレイと共に苦難を乗り越えていくスレ511
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/shar/1208627184/
6名無しになりきれ:2008/07/16(水) 07:52:45 0
前スレ>>801-805
超GJ!面白かった!
7名無しになりきれ:2008/07/17(木) 23:10:41 0
次スレ無いかとオモテタ

前スレ>>802職人GJ!!
8リバース内、亜空間にて ◆lbUJfu0lHM :2008/07/22(火) 00:51:51 0
 意識が覚醒した瞬間に感じたのは「今寝ていた気がする」という妙な感覚だった。既眠感と言ってもいい。
 眠くもないし起きるか、と少年は体を起こして軽く伸びをする。
 ベッドから体を起こしてまず目に入るのは、保健室にあるような白布の仕切りだ。
 その間から顔を覗かせれば、滑車付きの椅子に座った黒服の少女が、パイプ椅子に座った男子と何か話している。
 視認できるのはそれなりに広い部屋。少し殺風景というか無機質で、急造された建物のような雰囲気だ。
 と、こちらに気付いた少女が微笑を浮かべ、
「きのうは、おたのしみでしたね」
「誤解狙う言い方しやがらないで下さいませ。外の様子は?」
「ベアッチェが育てた毒蛙とその他大勢が微グロ乱戦中。地下とか空でもなんか騒いでるけど」
「午前中から戦ってたのに皆盛ってるなぁ。今って夜中じゃなかったっけ?」
 少年は仕切りから身を出し、曇り硝子のような壁に立て掛けてあったパイプ椅子を指一本触れず展開。そのまま遠隔指運だけで引き寄せ、小さな軋みと共に座る。
 と、少年の視線からやや右、紙コップのコーヒーを啜る男子生徒が、
「現代っ子は夜行性なのさ。だから授業中居眠りするんだよ」
 お前もだろコノヤロウ、と少女が軽くツッコミを入れた。

 泥のように濃いコーヒーを飲みながら、少年は二人から現在の状況を聞く。
 左手に座るのは黒服の上に白衣を羽織った少女。背まで伸びた黒髪を適当にひっつめた格好だ。
 右手には亜麻髪に狐耳の男子生徒が座っている。黒い制服が少しくたびれているのは苦労の跡だろうか。
 先ほどから続いている話題は、次元の歪みで大人の階段を駆け上ろうとした者達の話で、
「で、結果だけ言うと依頼放棄しておめおめと帰ってきたわけさ」
「プラスとマイナスが互いの変化を相殺しあったから、自弦振動か何かが少しズレただけだろ。大した事象じゃない」
 なるほどね、と黒髪の少年は紙コップを軽く揺らした。重い中身が残っているため慣性が手に残る。
 考え込むような顔の横、右耳の後ろに、纏めたというよりはアクセントの目的で編んだ髪が一房下がっている。
「ってことはリリアーナ一行の皆は元に戻ったんだ。……ロリアーナ見てみたかったなぁ」
 少女が椅子の背を軋ませ、
「画像は確保してあるから後で出力してやんよ万歳技術革新」
「……肖像権というものを御存知で?」
「宇宙の果てを知らないようにそんなの知らんね」
 人生そんなものさ、と少女は軽く笑い、
「で、二人はこれからどうするのさ? あたしはここから出るつもり無いけど」
 空になった紙コップを軽く振って、男子生徒は一息。
「俺も出ないZE。高見の見物とか優越権だろ常識的に考えて」
「御嬢様はどうするのさ。政略結婚の危機であらせられるのに」
「その表現は合ってなくもないが、俺じゃ手が届かん」
 へえ、と少女は好奇と疑問の目を向け、
「それは物理的な意味と精神的な意味と、どっち?」
「両方。ある意味高嶺の花だね。摘める気がしない」
 ところでさ、と少年はコーヒーを煽り、
「なにゆえ彼女にこだわってるのか理解不能なんですけど。彼女とはどういう関係でいやがりますか?」
 む? と視線をこちらに寄越した男子生徒は、少し迷うように紙コップの端を咥え、
「惚れてたんじゃなかろうか。ネタじゃなく真面目に」
 は? と二人がフリーズし、数秒で再起動して、目を瞬かせた少年が、
「マジで?」
「マジで。今度けじめとして一発告白してみようかと思う。玉砕目的で」
 覚悟じゃなくてか、と少女は苦笑。
「ただでさえあの連中はデリケートなんだから何が起こるかわかんないってのに。責任取る気あるの?」
 わかってないな、と男子生徒は笑みを一つ。
「イベント上等。それを期待して行くんじゃあないか」
「最悪だアンタ」
9名無しになりきれ:2008/07/22(火) 09:06:50 0
GJGJ!
10名無しになりきれ:2008/07/22(火) 14:52:30 0
エピローグか
復帰待ってるぜ
11名無しになりきれ:2008/07/22(火) 22:09:28 O
GJGJ!
12名無しになりきれ:2008/07/22(火) 22:16:58 0
>8
いい仕事だった
次回作も期待してる
13名無しになりきれ:2008/07/22(火) 22:49:03 0
おもすれー、GJ!
本スレ投下でも良かったくらいだ
次回作と別キャラでの復帰を期待
14名無しになりきれ:2008/07/25(金) 12:38:43 O
とてもつまらなかったですジージェー
15名無しになりきれ:2008/07/25(金) 18:54:06 O
まあ人の感性など人それぞれ
16名無しになりきれ:2008/07/25(金) 19:02:06 0
ここ自演が酷いスレだな
17名無しになりきれ:2008/07/25(金) 19:45:46 0
ID出ないんだからすべて自演と思って読んでる
18名無しになりきれ:2008/07/27(日) 16:05:39 O
全ての人間の行動はすべからく大いなる統合意志の自作自演なのです
19名無しになりきれ:2008/07/28(月) 14:15:58 O
つまりここまで全部俺の自演
20名無しになりきれ:2008/07/28(月) 20:51:00 0
大いなる統合意志キタコレ
21名無しになりきれ:2008/07/28(月) 21:23:57 O
そしてここからも全部俺の自演
22名無しになりきれ:2008/07/31(木) 17:40:20 O
他の生徒の奴とか見たい
23名無しになりきれ:2008/07/31(木) 21:45:01 0
言い出しっぺの法則というものがあってだな 俺も今書いてるけど
24名無しになりきれ:2008/07/31(木) 22:17:05 0
>>23
ワクテカ
25>゜)++++<< ◆LEVIA36jlc :2008/08/04(月) 23:13:47 0
【死と毒と生】

儀式の最後の締めとしてベアトリーチェは嫦娥6号を喰っていた。
その巨体で最も毒の集まる場所、脳を。
その毒を、その命を、その魂を喰らっていく。
その中でベアトリーチェも溶け、嫦娥6号と一体となっていく。

・・・毒の娘よ・・・
・・・我らに親しき者よ・・・

意識さえ溶けたベアトリーチェに語りかける声がする。
誰の声かはわからない。
しかし初めて聞いた声ではない。
声は優しくベアトリーチェの意識をくるむようになおも続く。

・・・在るだけで我らを招く・・・
・・・全ての者を我らの眷属とする・・・

声に酔い、どこまでも包まれていく。
しかし、最後の一歩でベアトリーチェは留まった。
喩えようもないその嫌悪感の為に。

・・・どうした?なぜ躊躇う?・・・
・・・我らは最も近しき・・・・
『違う!私はあなたを拒絶する!』

声を掻き消すように叫ぶと、意識が急速に浮上してくる。
それと共に声の存在は・・・記憶は・・・ベアトリーチェの意識から掻き消えていく。

声を完全に駆逐し、ベアトリーチェの身体が再構成されていく。
嫦娥6号の・・・毒の中で・・・
三乗蠱毒、真毒棲ベアトリーチェとして・・・!
26>゜)++++<< ◆LEVIA36jlc :2008/08/04(月) 23:13:55 0
【死と毒と生】

フィジル島西海岸。
校舎エリアの激しい戦いもここまで及ばず、吹雪の中、一段が声をあげている。
「7457!」
「7458!」
「7459!」
レオ以下十数名の猛者たちが感謝の正拳突き10000回の真っ最中。
その中でレオが突如として動きを止める。
「皆!先生はやることが出来た!各自感謝の正拳突きを続けるように!」
突然宣言すると、レオはその場から消えていく。

レオは感じ取ったのだ。
あの忌まわしい存在がベアトリーチェに接触を図った事に。
加速剤を使ったベアトリーチェを凌ぐ速さでレオは駆けていく。


「・・・ち・・・まあいい。ここでやらなくとも・・・」
地下図書館下層、死王の領域。
そこでボロボロのマントを纏い、王冠を頂く骸骨が黒猫を抱きながら小さく舌打ちをしていた。
ベアトリーチェの意識に接触を図ったが、強い拒絶により弾かれたのだ。

「彼女には随分と前に袖に振られたはずだが・・・?
しつこい男は嫌われるぞ!?」
闇から現われたのは生気の漲るレオ。
死王の領域にあっては眩しすぎる存在だ。
「ああ、その通りだ。だからこそ、あの娘は蠱毒で死なずベアトリーチェと成った。
・・・またお前か、冒涜者よ。」
忌々しげに睨む死王だが、レオは全く身じろぎする事はない。

かつて、ベアトリーチェがベアトリスの蠱毒の儀式を達成した折にも死王は接触していた。
その毒性故に。
毒は限りなく死と近く、親しきものなのだから。

「ベアトリーチェはお前を受け入れない。
それに、俺が受け入れさせない。諦めろ!」
「言うねえ。その割にはあの娘の気持ちを交わし続けているようだが?
親の心境か?
いつか娘は嫁ぐ者だぜえ。」
強い口調で立つレオを嘲笑う死王。
二人の舌戦は周囲の空気を凍りつかせ、辺りのアンデッドも近寄れないでいる。

「どこまで抗うつもりだ?生死の理を冒涜する者よ!!」
「死よ!奢る無かれ!」
死と霊気の満ちる死王と生気に満ち溢れるレオの戦いが今ここに切って落とされた。
27名無しになりきれ:2008/08/05(火) 23:19:19 0
続くのかと思ったら終わってたか
もしもシリーズGJ
28名無しになりきれ:2008/08/05(火) 23:27:04 0
レオ!!ウルトラマン!!レオ!!君の番!!レオ!!闘え!!
29名無しになりきれ:2008/08/06(水) 20:13:12 0
つまらないですねwジージェー
30名無しになりきれ:2008/08/08(金) 16:40:03 0
人の価値観はそれぞれ
俺は面白かったぜGJ!
31名無しになりきれ:2008/08/08(金) 18:44:27 0
同じやりとりの無限ループwww
32名無しになりきれ:2008/08/08(金) 23:56:19 O
だって俺の自演だもの
33名無しになりきれ:2008/08/09(土) 00:17:41 0
ここほど糞なスレもない
だって自スレのキャラハンの自演じゃん
34名無しになりきれ:2008/08/10(日) 02:14:51 0
どこのスレのコテか知らんが、どうにかしてくれ頼む
35名無しになりきれ:2008/08/10(日) 20:15:09 0
魔法少女スレに決まってるだろドベが
つーかここ魔法少女スレの第二スレみたいなもんだよ
36名無しになりきれ:2008/08/10(日) 20:48:17 0
>>1を100回読めばいいのに
37名無しになりきれ:2008/08/10(日) 23:19:32 0
別に魔法少女だろうがどうでもいいけど、どうにかしてくれ頼む。
38名無しになりきれ:2008/08/10(日) 23:34:15 0
どうして欲しいんだ?
39名無しになりきれ:2008/08/11(月) 18:55:45 0
魔法少女のコテって、みんなうざいな
40名無しになりきれ:2008/08/11(月) 19:15:20 O
木皿乙
41名無しになりきれ:2008/08/11(月) 19:31:49 0
>>39
全員から傲慢さがにじみ出てるもんな
こういうスレは立てるし
42名無しになりきれ:2008/08/11(月) 19:37:14 O
嫌ならみなきゃいいのにマゾか?
43名無しになりきれ:2008/08/11(月) 19:39:01 0
>>1も読めない奴は単なる荒らし
放置汁
44名無しになりきれ:2008/08/11(月) 21:08:43 0
>暇な奴が添削や改善点を指摘してくれるかもしれん。
>叩かれても気にするな。誰にも迷惑はかけていない。
>参考にしたいときだけ耳を傾ければOK。

まったくだな、これだから魔法少女コテは
45名無しになりきれ:2008/08/11(月) 22:38:44 0
どうせ魔法少女の連中しか使わないのに
何で立てたの?
46名無しになりきれ:2008/08/11(月) 23:05:31 0
魔法少女の連中しか使わないのではなく、他のスレの連中が使っていないだけだろ
どこにでもある過疎スレと同じじゃん
47名無しになりきれ:2008/08/11(月) 23:36:45 0
>>44
それ前スレでの>>1で書いたことコピペしてるだけみたいだぞ
前は普通に魔法少女以外の人たちも来てた
今は実質魔法少女専門みたいなもんだけどな
48名無しになりきれ:2008/08/12(火) 11:13:08 O
書けばいいじゃん
49名無しになりきれ:2008/08/12(火) 12:28:42 0
>>46
だが魔法少女が栄えてきたから調子に乗って立てたんだろ?
50名無しになりきれ:2008/08/12(火) 12:41:44 O
>>49
このスレ自体魔法少女より歴史が古いのだが
何が気に入らないんだ?
51名無しになりきれ:2008/08/12(火) 13:16:54 O
ただのマッチポンプだろ
無視しる
52名無しになりきれ:2008/08/12(火) 15:18:03 0
>>50
再建したってことだよ
日本語の意味読み取れてる?
53名無しになりきれ:2008/08/12(火) 15:21:57 O
>>52
再建って単に継続してるだけな訳だが
それで何が気に入らないんだ?言ってみ
54名無しになりきれ:2008/08/12(火) 15:36:02 0
>>53
結局は魔法少女ばっかりでなんか気に入らない
でも自分では書けないからスレごと否定
その程度のことだろ
相手するな
55名無しになりきれ:2008/08/12(火) 17:35:57 0
ここでヘタに荒らしを抑えると本スレにも入ってくるから注意しろ
56名無しになりきれ:2008/08/12(火) 17:49:50 0
いい加減皆こっちに移動してくだちい

なな板TRPG系スレ雑談所
http://etc7.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1212679530/l50
57名無しになりきれ:2008/08/13(水) 07:27:56 0
魔法少女スレって凄いね(棒読み)
58名無しになりきれ:2008/08/14(木) 02:35:41 0
・批判の仕方が露骨過ぎる
・チラ裏・自慰用のスペースなのにわざわざ騒ぐ
・実害を考えず「魔法少女の人しか書いていない」ことに憤慨

夏だからって限度があるだろjk これもゆとりのサガか・・・
59名無しになりきれ:2008/08/14(木) 13:50:00 0
60名無しになりきれ:2008/08/15(金) 01:57:20 O
気に入らないなら自分で気に入る作品書け
61名無しになりきれ:2008/08/28(木) 22:57:42 0
【颶風来寇】壱:東方蠢動

フィジル島より遥か東方。
東方大陸の東端に魔海域があり、その海域のどこかにあるといわれる晃龍諸島。
その正確な位置は東方大陸諸王達すら知りえぬといわれている。
それは現世と幽界との間にあるからとも、魔海域を回遊する神獣の背にあるからともいわれている。
そこにはフィジル島魔法学園と同様に晃龍魔法学園があった。
中央の島を囲むように四つの島があり、更には小さな島々がそれを囲む。

中央桃源島が学園中枢であり、総合施設が集まっている。
それとは別に系統ごとに東部扶桑島、西部天竺島、南部崑崙島、北部蓬莱島と各独立した学園機能を持つ。
これは東部大陸の文化差異が大きい為であり、各術系統ごとに住み分けがなされているのだ。
四島の自治権は各島生徒会に委ねられ、治外法権を保障されている。

#####################################

麗らかな春の日の午後、東部扶桑島に島内放送が鳴り響く。
「東部扶桑島総代ヒミコ・ヤマタイノミコです。
パープル・シキブノジョウ。長谷川虎蔵。
以上二名は本日正午、中央桃源島理事長室に出頭してください。」
放送は流麗にして荘厳。
東部扶桑島を統括する生徒総代の言葉であった。

「流石はヒミコ殿。お嬢様を選ぶとは。」
「流石?為時、このような事は流石とは言わぬ。
顔に目がついており脳ミソがあれば当然の選択ぞ。
それより虎蔵なぞを選ぶ処は流石などとは到底いえぬわ。」
「御意に。」
放送を耳にし、言葉を交わす二人。
いや、正確には一人と一本。

一人は十二単を纏い亜麻色の髪をしなやかに伸ばす少女。
整った顔立ちにその瞳は青く、眼光は鋭い。
放送で呼ばれたパープル・シキブノジョウ、その人である。
それに対するは白髪を蓄えた老人であった。
髪は無く、刻まれた皺はその生きてきた年月を現している。
しかし最も特徴的なことは、その老人に身体が無い事であった。
身体の無い代わりのその首から一本の棒が映えている。
人頭杖為時。
パープルの使い魔である。

パープルは人頭杖為時を手に取ると、満開の藤棚から一歩出る。
その先に広がるのは広大な人口庭園。
植え込みが壁となり、迷路と化している。
ここはパープルのお気に入りの場所。
庭園迷路の所々で、鋏を持った者達が手入れをしている。
が、手入れをしている者達の中に命を持つものはいない。
皆カラクリと呼ばれる命なき人形達なのだ。

「ふふふ、鬼姫よ。お主が言うフィジルがどれほどのものか、いざ、参ろうぞ!」
パープルは誰にいうでもなく呟き、術式を軽やかに完成させる。
術式は展開し、現われた扉を潜り藤棚の庭園を後にした。

残されたカラクリたちは黙々と作業を続ける。
主が治療の為にフィジルに旅立ち数ヶ月。
変らずにただ与えられた使命を果たし続けるのであった。
62名無しになりきれ:2008/08/28(木) 22:57:49 0
パープルが藤棚で放送を聞いた同時刻、もう一人の呼ばれた男もその放送を聞いていた。
その場所は東部扶桑島武道場。
相手の男を倒し、一息つきながら天井を仰ぎ見る。
「うーん、お呼びがかかったか。まあ遠征ってのも悪かねえな。つう訳だ。勝ち逃げで悪いが行くぜ。」
倒した相手の肩をポンと叩き去っていく。
隻眼に長髪。黒いスーツを着た男。
パープルと共に呼ばれたもう一人、長谷川虎蔵その人であった。

######################################

東部扶桑島で放送があったように、同じく他三島でも同様の放送がなされていた。
「よろしいので?あの爛れた姉弟で?」
「よいよい。問題はあるがアレで中々いいからネ。」
南部崑崙島で放送を終えた崑崙島八葉が一人に数えられる生徒が笑顔で答える。
南部崑崙島は総代を置かず、通称【八葉】と呼ばれる八人の頂上生徒達の合議制で成り立っている。

#######################################

「我に天命下れり!」
「うむ。フィジルの同志達からの知らせも在る!」
西部天竺島では指名された二人が熱く手を握り合っていた。

#######################################

三島でそれぞれの思惑が入り混じり、それぞれに中央桃源島に向かっている頃。
ここ北部蓬莱島でも一人の少年が中央桃源島に向かって歩き出していた。
年の頃はまだ10歳ほどだろうか。
あどけない顔だが、表情は読み取れず、何の感慨も無く歩いていく。
ここ北部蓬莱島で選ばれたただ一人の少年が。

#######################################

その日の午後、各島で招集された七人は中央桃源島の理事長室にいた。
七人を前にするのはなんと一匹の亀であった。
鹿の角が生え、白い髭をたらしている以外は全くの亀である。
しかしこの亀こそが晃龍諸島魔法学園の理事長なのだ。
「さて、既に察しているだろうが、諸君らを呼んだのは他でもない。かねてよりの事案であったフィジル島魔法学園視察の為ぢゃ。」
そう言い放つと学園長は唐突と話し始める。

フィジル島魔法学園と晃龍諸島魔法学園は姉妹校ではあるが、その呪術体系の違いから実質的な交流は無いに等しい。
東方大陸からフィジル島魔法学園に進む者はいるが、一旦魔法学園に入学してしまえば他の魔法学園に生徒が移る事はないに等しいのだ。
しかし、東部扶桑島のキキが治療の為にフィジル島に赴いた。
その後、そのまま学園生活を送っているのだが、なかなかに適応できている。
それを受け、徐々に交流を深めていこうという提案がなされていた。
様々な調整を経て、今回晃龍諸島から七人の代表生徒を視察団として送り込む事になったのだ。

「予感はあったけどね。で、いつからいくんだい?」
長谷川虎蔵がにやりとしながら尋ねると、学園長はにこやかに応える。
「勿論、今からぢゃよ。」と。
突然の出発に驚く生徒達だが、学園長は全く意に介さない。
「常時即応。いついかなるときでも即対応。我が校の校訓の一つのはずだが?」
そう、準備など常に出来ている。
常に身を真剣勝負の場に置き続ける。
数多の魔法学園においても武闘派と言われる晃龍学園ならではの校訓だった。
そう言われてしまえば生徒達も二の句も告げず、諦めたようににやりと笑うしかない。
この短いやり取りで七人全員既に覚悟を完了させたのだ。
63名無しになりきれ:2008/08/28(木) 22:57:55 0
「では諸君、フィジルを見て、感じ、そして帰ってくるように!」
言い終わるや否や、学園長の輪郭がぶれ始める。
そしてついには形をなくし、再度輪郭が整ったとき、そこには亀はいなかった。
変りにいたのは長居しろ髭をたらした老魔術師。

「ようこそ晃龍の諸君。私がフィジル島魔法学園の理事長だ。」
亀の代わりに現われた老魔術師は堂々と宣言をした。
気がつけば調度品なども代わっている。
そう、既にここはフィジル島。そして理事長室。
二人の理事長の魔術により、七人は全く気付かぬうちに遥かなる距離を越えフィジル島に移動したのだった。

それから暫く・・・
「では諸君。君らのフィジル島での自由を保障しよう。
存分にフィジルの空気を吸い、感じてくれたまえ。」
短い話の後、学園長は言い放つ。
どこに案内するわけでもなく、何の注意を与えるわけでもない。
ただ自由にフィジル島を満喫せよ、と。
「理事長、いいのかい?
晃龍の流儀でやらせてもらうが、俺達の首に綱付けておかなくても。」
「ふぉっふぉっふぉ、構いはせんよ。そうではなくては君達が来た意味が無いからの。」
長谷川虎蔵の挑発的な言葉を軽く笑い飛ばし、学園長は七人を送り出す。

#########################################

「あの爺さん、伊達に学園長はやってねえな。気に入ったぜ。」
「ふん、口の減らぬ奴じゃ。同島として恥ずかしいわ。我は行く。着いてくるなよ?」
「我らも目的がある。」
「うむ、いこう。」
「ねえジューイン。折角だから散歩したいわ?」
「姉様がそういうのなら・・・。」
「・・・」
「どいつもこいつも協調性が無いねえ。まあ俺もだけど。
さて、フィジルがどれ程のものか、ふらついてみっか。」
校外に出た七人は短く言葉を交わし、それぞれ散っていった。
64名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:02:07 0
【颶風来寇】弐:朋友再会

校舎から出たパープルは紙を片手に歩いていた。
東方の衣装が珍しいのか、道行く生徒達の視線を一身に受けながら全く意に介す事無く。
自分がフィジル行きのメンバーに選ばれる事は当然のように思っていた。
そして、選ばれたその日に出発する事も。
だからこそ事前に連絡を取り、待ち合わせの場所を決めていたのだ。

程なくしてその目的地が見えてきた。
学園から少し離れた丘の上。
決して大きくは無いが、楓の樹が一本聳えるその場所へ。
紅葉が華美に舞う中、赤い敷物と番傘で野点の席が設けられていた。
そこに佇むのは先にフィジルに治療目的で着ていたパープルの友、キキであった。

「パープル・シキブノジョウ!久しいな。為時も壮健そうでなによりぢゃ。」
「お久しゅうございます、キキ殿。」
「キキ・キサラギ。胸の具合はよさそうじゃな。」
再会の歓びと共に挨拶を交わし、二人は野点の席へとついた。
キキが茶を点てる中、どちらからとも無く会話に花が咲く。
フィジルでの出来事、晃龍での出来事。
そして今回、派遣されたメンバーの話へと移っていく。

「全く、わらわ以外は不適格者ばかりぢゃ。まずは扶桑からは寅蔵が選ばれた。」
「長谷川寅蔵か!あちこちで刃傷沙汰を起こしてそうじゃのぅ。」
憤慨するパープルに対し、キキは苦笑を浮かべている。
長谷川寅蔵と聞き、その喧嘩っ早さを思い浮かべてだ。
以前のキキならばパープルと同じように憤慨し、頭を抱えていた事だろう。
しかし、今はフィジルの懐の深さを知っている。
騒動を起こしたといっても、それはフィジルの日常に溶け込む者なのだから。
そして何より、暫く離れた故郷と晃龍の、扶桑の、懐かしい名前を聞きつい笑みが浮かんでしまうのだ。

そんなキキを見るパープルは少しむっとしたがそれを口に出す事はなかった。
笑い事ではないぞ!と言いたかったが、これから先が本当に笑い事ではなくなるのだから。
「次は崑崙からぢゃが、フォン姉弟が来ておる・・・」
「・・・なんじゃと!?八葉は何を考えておるのじゃ!?余所の島とはいえ正気を疑うぞ!」
パープルの続く言葉を聞き、キキの苦笑も吹き飛んで叫び声をあげる。
「満場一致で決まったそうぢゃ。」
茶を差し出しながら唸るキキ。
パープルは静かに、そして重く頷きながら茶を手に取る。

「そして天竺からは南海の獣ラジャと葬炎のパシュゥ・アンダーテイカー。」
それを聞き、強張っていたキキの表情にどんよりと暗いものが加味された。
「天竺とはあまり親交は無いでおぢゃるが、それでも知っておるぞ。
南海の獣というより、南海のケダモノじゃろ?その相方の葬炎・・・。」
ぐったりと疲れたようなキキに更に畳み掛けるようにパープルが口を開く。
「最後に蓬莱からぢゃが・・・」
そう言おうとしたパープルに、キキが手を上げて制する。
「ああ、もうよいでおぢゃる。
蓬莱からはどんな化け物がきても変らぬわ。」
「まあ、それもそうぢゃの。」
言葉を途中で止められてもパープルは気にする事無く頷いた。

そしてゆっくりと茶に口をつけ、一息。
「のう、キキよ。風靡な場所。見事な楓・・・ぢゃが、これは幻であろ?」
「ほう、気付いておったか。」
茶器を置き、にやりと笑うパープルは風水の術を得意としている。
風水とは空間の繋がりや成り立ちを司る術である。
それゆえに、空間に実体を持ってあるものかどうかくらいはわかるというものだ。
キキのほうも先刻承知のようで、悪戯っぽく笑うと背後に合図を送る。
65名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:04:25 0
【颶風来寇】参:血風触発

「おいおい、フィジルってのはもやしっ子ばっかか?」
体育館裏で鼻で笑うのは長谷川寅蔵。
その足元には五人の男子生徒達がうめき倒れていた。
学園長室から出た長谷川虎蔵はガラの悪そうな生徒達に喧嘩を売って歩き、今に至る。
五人連続相手にしても息も切らさず、その手ごたえの無さに呆れるばかり。
「もうそろそろ見切りをつけようと思うんだが、お前は強いのか?」
にやりと笑いながら振り向くと、そこには一人の男子生徒が立っていた。

「五人を軽く倒すとは、お前は強いのだ!
俺はわくわくするぞ!」
長谷川虎蔵の後ろに立っていたのはロックだった。
お互いの笑みが交錯する。
それが戦闘開始の合図となった。

「わくわくか!言うねいっ!」
瞬動で五歩の間合いを一気に詰め正拳を繰り出す長谷川寅蔵。
回避不能のタイミングだが、ロックにはそれを防ぐ防御手段がある。
「はー!ハードニング!」
拳が当たる瞬間、身体硬化術を発動させるロック。
鉄の硬度を持ったロックは繰り出される拳をまともに受けた。
が、勿論ダメージを負ったのは生身の拳の方だ。
拳を受けきると同時に杖を振る。
そこから繰り出されるのは高熱蒸気。
まともに浴びれば重度の火傷必死の高熱蒸気だが、長谷川虎蔵は瞬動で距離を取り躱す。

「いちちち。あぶねえ。
フィジルのもやしっ子もやるねえ!ちったあこっちも本気を出すか!」
その言葉はハッタリではない。
ザワザワと擬音が聞こえてきそうなほど長谷川虎蔵の纏う妖気が膨れ上がってきているのだから。
背中が盛り上がり、漆黒の鴉の翼が広げられる。
そして眼帯を外すと、躊躇無くその眼窩に手を入れる。

「平群天神奇峰伊予が岳に棲まいし大天狗!太郎丸より継ぎし大団扇!
妖嵐暴風を巻き起こす!
央基五黄!一白太陰九紫に太陽!乾坤九星八卦よし!宗州草薙!!」
眼窩から取り出した大団扇はその妖力の強さで周囲に嵐を呼ぶ。
そして呪文が終わる頃にはその形を巨大な剣と成していた。

「むむ!凄いのだ!」
「ありがとよ!だが褒めても手加減はしてやらねえぞ?」
「当然なのだ!」
ロックと長谷川虎蔵の真なる戦いがここに始まる!
66名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:10:20 0
【颶風来寇】屍:爛潰姉弟

ここは中庭の隅。
リリアーナは見慣れない生徒を目の当たりにしていた。
見慣れない薄い布を幾重にも重ねた中華風なドレスは柔らかく光を反射している。
髪は吸い込まれるような黒さを持ち、鮮やかに背にかかっている。
額と左目には包帯が巻かれ、左腕はギブスをしている。
脚はドレスに隠れて見えないが、包帯が巻かれているのかもしれない。
なぜならば、少女は豪奢な車椅子に乗っているからだ。
美しいドレスと不似合いな車椅子と包帯。
しかし、木漏れ日の中、小鳥と戯れる少女の姿はその不似合いさも含めて一つの完成された美を体現していた。

思わず見とれてしまった自分に気付き、一人咳払いをしてから少女に近づいていく。
「こんにちわ。私はリリアーナ。あなたは・・・。」
「あら、こんにちは。フィジルの方ね。」
リリアーナの挨拶にあくまで柔らかな声で答える少女。
初めて会う、しかも同性だというのにその声に思わず鼓動が早まりのを感じてしまう。
そんな様子に気付いたのか気付かないのか、少女はくすりと笑って言葉を続ける。
「私はフォン・イーリー。晃龍諸島魔法学園から来たの。
フィジルはいいところね。この子達とお友達になったところよ。」
そう言いながらイーリーは人差し指の止まる小鳥をそっと見せる。
「晃龍諸島・・・魔法学園?」
その言葉にリリアーナの脳裏に今朝の出来事が浮かび上がっていた。
今朝、アルナワーズが出がけに東方の魔法学園から生徒視察団がやってくる、と言われたのだ。
それを思い出し、リリアーナの顔がぱっと明るくなる。
「そうなんだ。ようこそ、フィジル島へ!
私も小鳥さんのようにあなたのお友達になりたいわ。」
満面の笑みで歓迎を伝えるリリアーナに対し、イーリーの笑みの何かが変った。
なにがと言われても困るだろうが、強いて言うならばその印象。
表情は変わらぬはずなのに、どこと無く冷たいものを感じたのだ。

「嬉しいわ。リリアーナ。お友達になってくれるだなんて・・・。」
柔らかな笑みと共に手を動かすと、小鳥が羽ばたき飛んでいく・・・筈だった。
だが、小鳥は羽ばたけども飛べずにそのまま地面に着地。
小鳥は不思議そうに羽ばたくが、一向に宙を舞う気配は無かった。
「?・・・この子どうしたのかしら?」
不思議そうに首をかしげ小鳥を見るリリアーナの前にイーリーがそっと差し出す。
その手には羽が二枚、摘まれていた。
「この子の風斬り羽根よ。
たった二枚羽を取るだけでもう飛べない・・・私のお友達になれたわ。」
「・・・な!!!」
あまりに当たり前のように言うイーリーに思わず絶句するリリアーナ。
一体何を言っているのか理解できなかったのだ。
数瞬後、それを理解し、堰を切ったように言葉が溢れる。

「なんて酷い事をするの!そんな友達のなり方なんて無いわ!
鳥さんがかわいそうじゃない!」
あまりのことで思わず大声を上げてしまい、はっと息を呑むが相手の反応は更に意外なものだった。
不思議そうにきょとんとして首を傾げているのだ。
67名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:10:29 0
そんな二人のやり取りに何も知らずにやってきた不幸な人物がいた。
日傘を差しのんびり散歩する男。
不幸の星の下に生まれた吸血鬼、ヴァンエレン。

「何を大声上げていると思えば、貧乳ではないか。何をして・・・?」
間の悪い事この上なし。
怒りのやり場に困っていたリリアーナが【貧乳】に反応し、きっと睨む。
その眼力に圧倒され思わず眼を逸らし、イーリーに眼を向けると、ヴァンエレンは気付いた。
それはヴァンエレンが不死者の貴族であるヴァンパイアであるが故に。
「な、何を怒っておるのだ?
それより、死霊課の新作か?よく出来たアンデッドだな。」
「ええ?この子、アンデッド??」
ヴァンエレンの思いがけない言葉に驚き、グリンと首を回しイーリーに目を向ける。
「うむ。香の香りにまぎれておるが、アンデッド特有の臭いがするぞ?」
事情がつかめずとりあえず感じたことそのままを語るヴァンエレン。
全く判別のつかないリリアーナは眼をぱちくりさせるのが精一杯だった。

「誰だ!姉様に何をしている!」
茂みから現われたのはイーリーそっくりの顔をした道服の男だった。
服装と髪の長さ、そして包帯などは違うが、全く同じ顔である。
男の眼は敵意をむき出しに二人を睨みつけている。
「あら、ジューイン。リリアーナ、私の双子の弟、フォン・ジューインよ。」
紹介されると、片膝をついて目線の高さを合わせるジューイン。。
イーリーに向けられる視線は先ほどの敵意は微塵も無く、柔らかな笑みと成っている。
「姉様、大丈夫?
やっぱり一人で散歩なんて危険だよ。」
「あら、そんな事無いわ。リリアーナは私の友達になってくれるって。
ねえ、あの子の瞳、とっても綺麗だわ・・・。」
心配するジューインを余所に、イーリーは柔らかく微笑む。
その言葉と共にジューインは立ち上がり、再度視線をリリアーナたちに向けるのだが、しっかりと敵意は篭っている。

「判ったよ。その前に・・・
フィジルの青っちろいキャリアが、姉様の事を汚らわしいアンデッドといったな!」
敵意などという生易しいものではない。
禍々しい気を発しながらヴァンエレンに視線を送り懐に手を入れる。
突然の事に訳もわからず思わず身構えるが、ジューインの方が早かった。
「墓守の灯篭!」
懐から取り出した小さな石灯篭が霊気の篭る青白い光を放つ。
するとその光に照らされている範囲の景色が一変した。
先ほどまでは気持ちの良い木漏れ日のさす中庭の隅であったのに、突然そこは薄暗く霧の立ち込める墓地と変ったのだ。
「な、な、な!!ひ〜!」
突然の変化にヴァンエレンの逃走本能に火がついた!
フィールドが墓地に変れば元気でそうなものだが、ヴァンエレンを舐めてはいけない。
いつもいる図書館地下、死王の領域での亡霊は平気でも、未知なる異国の霊気漂う墓地は十分恐怖の対象なのだ。

「無駄だ!鬼籍に降りた身で俺に抗う事など不可能!」
ジューインの残酷な宣言と共にそれは起こった。
**ビッタァーーーン**
脱兎の如く駆けはじめたヴァンエレンだが、ほんの数歩走る前に派手に倒れてしまう。
しかし転がる事はない。
かなりのスピードだったというのに!
なぜならば、地面から伸びた朽ちかけた手が、ヴァンエレンの足首をしっかりと握っていたのだから。
「ひいいい!!!ぎえええ!!」
恐怖の絶叫ととにがむしゃらに足首を掴む手を自由なほうの足で蹴るが、全くびくともしない。
ヘタレであっても吸血鬼。
その力は常人をはるかに凌駕するというのに、朽ちかけた手はしっかりと掴み放さない。
それどころか、ヴァンエレンを地中に引き摺りこんでいく!
「ぎゃあああ!お助けええ!!」
半泣きの叫びを残し、ヴァンエレンは地中に消えていった。
68名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:10:42 0
「・・・っはっ!ちょっと!いきなりなんて事を!やめてあげてよ!」
あまりの出来事に呆然としてしまったが、我に返り抗議の声を上げる。
が、抗議の声を向けたその先で更に驚くべき光景を目の当たりにするのであった。
イーリーが額の包帯を解き、立ち上がっているのだ。
包帯の取れた額と左目は朽ちており、眼窩は黒く、何も入っていない。
「確かに綺麗な瞳だね。姉様に似合うと思うよ。」
「やっぱりそう思う?
さあ、リリアーナ・・・お友達になりましょう?」
左手のギブスから突き出る鋭く長い爪。
その姿にヴァンエレンの言葉が正しかった事を思い知る。
しかし今はそれどころではない。
この双子が何をしようとしているか、理解できてしまっているから。

話し合いが通じる気配はない。
逃げなくてはならない。
だが、身体が上手く動かないのだ。
固まってしまったような脚を苦労して漸く一歩後ろにずらすことに成功した。
が、双子はゆっくりとだが、それでもリリアーナより十分に早く迫ってくる。

後数歩の間合いまで詰められたとき、突如としてリリアーナの足元の土が盛り上がった。
「だああああ!助けてくれええ!!」
その盛り上がりは弾け、ヴァンエレンが飛び出してきた。
しかもなぜか半裸で。
「ひいいい!老婆が!老婆が私を!!」
ガタガタと震えながらリリアーナに縋るヴァンエレン。
その様子を見ながらジューインがニヤリと笑う。
「ほう、奪衣婆から逃れるとは・・・俺が直接滅してやるか!」
袖からすらりと銭剣を抜くジューイン。
それを見たヴァンエレンはリリアーナを小脇に抱えジャンプ一番逃げ出した。
「逃げるぞ貧乳!あいつらはやば過ぎる!」
本能的にも体験的にも危険を実感したヴァンエレンは今度こそ全力で逃げ始めた。
その速度は速く、あっという間に墓守の灯篭の領域を抜ける。

「ジューイン、折角お友達になれると思ったのに・・・逃がすだなんて嫌だわ。」
「そうだね、姉様。」
ジューインは静かに頷くと、墓守の灯篭と車椅子を懐にしまう。
そして双子は足跡だけを残して消えた。
常人にはありえない速度で駆け、ヴァンエレンとリリアーナを追っていったのだった。
69名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:24:10 0
【颶風来寇】伍:巡礼邂逅

校舎から出て来た異様な二人。
二人ともマントを纏い、フードを目深に被っているのでその容姿をうかがい知る事はできない。
しかしそれでも、その異様さは隠せないでいた。
一人は見上げるような長身。
だが、その高さに対してあまりにも幅がなさ過ぎるのだ。
もう一人は対照的に、それ程高くは無い身長に対し、あまりにもその幅が広すぎる。
横にも奥にも。いわば球体といえようか?
巨漢なのだが、隣に細く高い人影があるために、それ程高さが目立たないでいる。
このように容姿が見えずともシルエットだけで十分に異様さを表している。

ゆっくりと男子寮のほうへと進むと、その進行方向を遮るように一団が現われた。
5人ほどの集団も二人と同じようにマントを纏い、フードを目深に被っている。
やがて二つの集団は一刀足の間合いを置き、対峙した。

「ナマステー。」
男子寮からやってきた一団がフードを取り、両手を合わせて二人に謎の言葉をかける。
それに応えるように二人もフードを取る。
「・・・コンニチワ。」
長身の男、ラジャが頭を下げ挨拶をする。
笑顔を浮かべているのだが、それはあまりにも不気味だった。

普通ならば引いてしまうような笑顔にも5人は誰一人引くことはない。
それどころか満面の笑みを浮かべ、両手を広げて二人を迎え入れるのだった。
「ようこそ!晃龍の同志達よ!」
「はじめましてネ。フィジルの同志達!色々話したい事はあるケド、まずはフィジルに女神が降臨された事を!」
「ええ、詳しく中へ。」
口数の少ないラジャに変り、巨躯の男、パシュゥが人懐っこそうな笑み浮かべて話す。
とはいえ、褐色の肌に白いボディペイントをしているのでこちらもかなり不気味だった。
だがパシュゥは全く自覚のないようで、早口に用件をせがむ。
5人は言わずともその気持ちはよくわかる!と、男子寮へとラジャとパシュゥを先導して行った。

#######################################

所は変わり、男子寮地下室。
一般生徒はその存在すら知らぬ場所。
薄暗い室内で幻灯機を囲いラジャとパシュゥを含む男子生徒達が顔を突き合わせていた。

実はここ、フィジル島で密かに信仰されているヒンヌー教徒の秘密本部。
ヒンヌー教とは貧乳が大好きな男達の集まりなのである。
当然のようにラジャとパシュゥもヒンヌー教徒であり、日頃から手紙での交流を持っていた。
数ヶ月前、フィジルのヒンヌー教機関紙が送られてきており、そこに女神降臨の知らせを受けていたのだ。

幻灯機から映し出されるのはリリアーナ。活発に動き、笑う姿が映し出されるのを見て・・・
「おお・・・まさに・・・!女神だ!」
寡黙にして知られるラジャの言葉。
それとは対照的に口数が多いパシュゥは言葉を発する事も出来ず立ちすくんでいた。
ただ、二人に共通して言える事は・・・
いや、この部屋にいる男達に共通して言える事は、皆涙し、跪いている事だった。
リリアーナに、いや、その胸に彼らは女神を見ているのだから。

「ぜ、是非とも実物を見たいのですが?」
「勿論!今日この日の為に情報屋と契約を結んでいます。現在地は直ぐ判るので行きましょう!」
パシュゥの願いを叶えるべく、一人が案内をする。
なぜ一人なのか?というパシュゥの問いに、男は応える。
女神リリアーナを取り囲み困惑させぬよう、協定を結び、無用の接近を硬く禁じているのだ、と。
もしこれが無ければ四六時中ストーカー・・・もとい、巡礼の的になってしまうのだから。
ラジャとパシュゥはフィジルのヒンヌー教徒の思慮の深さに感服しながら後についていくのであった。
70名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:24:21 0
校庭を駆け抜ける黒い影。
いわずと知れたリリアーナを小脇に抱えたヴァンエレンである。
その後ろから津波のような禍々しいオーラが迫ってきている。
振り向かずともそれをひしひしと感じ取るヴァンエレンがリリアーナに尋ねる。
「おい、貧乳!奴らは見えるか!?」
「ひ・・・うん・・・イーリーさん・・・こわっ!前習えの体勢でピョンピョン跳んで来てる!凄いスピード!」
有無を言わせず抱えられ、疾走状態。
その上貧乳といわれカチンと来るが、今はそれどころでないことは十分わかる。
怒りをぐっと抑え、流行く景色の向こうから追って来ている二人を確認。

リリアーナの言葉にヴァンエレンはイーリーの正体を正確に突き止めていた。
東方の吸血鬼、キョンシーである、と。
今ここに東西吸血鬼大戦勃発・・・しませんでした。
ヴァンエレンの逃走本能は全開です。

そんな四人の姿を見て驚いた三人の人影。
貧乳女神ことリリアーナ御拝謁に来たヒンヌー教徒の三人。
「な、なんだあれは?」
驚く生徒を余所に、ラジャとパシュゥはほぼ正確に事態の経緯を察していた。
「むう・・・タチの悪い奴に・・・」
「パシュゥ・・・我らはヒンヌーの教徒!」
その禍々しいオーラに追っているのがフォン姉弟と察知していた。
思わず二の足を踏んだパシュゥだったが、ラジャの言葉に目が見開かれる。
口数が少ないからこそ、ラジャの言葉には重みがあるのだ。

「うむ!フィジルの同志よ。アレは我らと同じ晃龍の者。
我らが女神を救おう!危険なのでここにいてくれ!」
パシュゥはそういうと、マントを剥ぎ取り宙をかける。
ラジャも同じく、パシュゥを追って宙を駆けるのであった。

######################################

「キャーー!来る!もう来る!」
「わかっとるわい!」
凄まじい速さで流れる景色と、どんどん大きくなってくるフォン姉弟の姿に悲鳴をあげるリリアーナ。
しかし、そんな事を言われずとも背中でひしひしと感じる禍々しいオーラを感じるヴァンエレンが半泣きの声で怒鳴り返す。
引き離すどころかどんどん間を詰められているのだ。
「リリアーナ、どうして逃げるの?お友達になりましょう?。」
【前習えの姿勢】のまま跳ねて追うイーリーの声は穏やかだが、そのオーラは全くそんな事を言っていない。
朽ちて黒い穴をさらす左の眼窩は雄弁に物語っている。
お友達になることには群を抜いて寛容なリリアーナでも、問答無用で目玉を抉り取られると判っていては話すことも出来ない。

追いかけっこの最中、ヴァンエレンの踏み込んだ足元がひび割れ、盛り上がる。
直後、地面から巨大な蛇が出現し、二人は宙を舞う事になる。
「カアアアアーーーー!!」
巨大な蛇は大きく口を上げ毒気を吐き出しながら追っ手であるフォン姉弟を威嚇する。
突然の巨大な蛇の出現に溜まらず足を止め構えるイーリーとジューイン。
一方、宙を舞ったヴァンエレンとリリアーナはそれぞれ力強く抱きとめられた。
71名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:24:26 0
「良くぞ女神を守った・・・。」
ヴァンエレンを救い上げたラジャが巨大蛇の頭に着地しながらポツリと漏らす。
突然の事に訳もわからず混乱するヴァンエレンだったが、事態は勝手に進んでいく。
「ラジャ。私は友達になりたいだけなの。邪魔しないで?」
イーリーが柔らかく言葉をかけるが、それに対するラジャの態度は決して柔らかくはない。
巨大な蛇と共に闘気を隠す事無くフォン姉弟へと向ける。
「・・・女神を傷つける事は許さん。
私とこの女神の使徒がお前達を止める。」
ボソボソとした呟きのような宣言だが、はっきりと言い切った。
そう、はっきりと。
「・・・え?使徒って?・・・もしかして私も数に入ってる?」
状況はつかめないが、嫌な予感で一杯なヴァンエレンが恐る恐る聞いてみると、ラジャは不気味な笑顔(本人にとっては満面の笑み)を以って応える。

「奴ら二人は強い。
しかし我ら二人が死力を持って当たれば死中に活あり。」
「・・・それって駄目元ってことじゃないか?」
「安心しろ。女神を守って死ぬは殉教。貧乳の野に召されるはヒンヌー教徒の至高なり。」
「なにそれぇ〜?」
とても説明や説得が聞きそうにないと判ってしまう程の信じ切ったラジャの目を見てないてしまうヴァンエレン。
二人のやり取りの仲、フォン姉弟は完全に戦闘体勢になっていた。
まるで禍々しいオーラの海原に取り残されたように感覚に陥る。
「貴様、姉様の友達作りを邪魔して・・・!蛇もその薄汚いキャリアも揃って冥府に叩き落してくれるわっ!!」
ジューインの怒声が合図となって、戦いは開始された。
ラジャにとっては愉快な殉教の旅出かもしれないが、ヴァンエレンにとっては災害以外何物でもない戦いが。

#######################################

一方、リリアーナは、パシュゥにお姫様抱っこをされて宙を舞っていた。
禍々しいオーラに追われている途中、突然宙に跳ね上げられた。
その上受け止めたのは見ず知らずのデブ。
「いっ?きゃああああ!!」
普段ならば大喜びでお礼を言っていたところであろうが、代わりに出たのは悲鳴だった。
ただでさえデブったパシュゥの顔には白く不気味なペインティングがけばけばしく施されていたので仕方もなかろう。

しかし、そんな悲鳴でさえパシュゥにとっては天使の響き。
「突然で失礼。緊急時により御無礼します。
タチの悪い者どもに追われておりますが我らが命を賭してお守りしますので御安心ください!」
女神と崇めるリリアーナを抱けて興奮のあまり声が上ずっているが、それても的確に説明をすることに成功した。
その言葉と共にふわりと着地。
一切の衝撃を感じさせぬパシュゥの配慮であった。

説明と行動に少し落ち着きを取り戻したリリアーナだが、まだ礼を言えるほど事態は落ち着いてはいない。
後ろでは巨大な蛇の咆哮やヴァンエレンの鳴き声が響いている。
激しい戦いが繰り広げられているのだから。
そのことはパシュゥも判っているようで、振り向きもせずに更に駆け出すのであった。
少しでもフォン姉弟から離れるために。
72名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:30:01 0
【颶風来寇】六:集結来訪者

校舎から少し離れた丘の上。
雅に野点を楽しむ二人。
楓の木に目をやるパープルにキキは肩を竦めながら応える。
「悪戯というほどでもないでおじゃる。演出というものぢゃ。」
その言葉に応えるように、楓の幹が膨らみ、その中から一人の女生徒が現われた。
アラビアンな民族衣装に身を包み、漆黒の髪をたなびかせる幻術の使い手、アルナワーズ。
このかえではアルナワーズの幻術によって作り出されたものだったのだ。
「はぁい。アルナワーズ・アル・アジフよぉん。
始めまして、ようこそフィジル島へ!」
挨拶をしながら歩み寄り、パープルに手を差し出す。
「ほう、そなたが・・・
晃龍からきた、パープル・シキブノジョウぢゃ。」
アルナワーズの名はキキからの手紙で何度か出てきていたので覚えていた。
パープルも立ち上がり、アルナワーズへと歩み寄る。
表情はにやりと笑っているが、とても友好的なものとは言い難い。
そう、パープルも晃龍の生徒。
その力が如何程のものか、話程のものか、確かめずにはいられないのだ。

「キキからお話は聞いているわぁん。
実際お会いして感心だわぁ〜。お友達が多そうで・・・。」
「友達?」
パープルの不敵な笑みをさらりと受け流し、一言発する。
が、その一言にパープルがピクリと反応した。
一瞬の反応を見逃さず、アルナワーズはニタリと笑みを浮かべる。
話に聞き、実際に会い、この一言を出せば反応する。
全て読みきっての言葉だったことをパープルは察した。

互いに握手の手を差し出しているが、その手を握り合う事はない。
隙間数センチに何か見えないものがあるかのようにお互いの手がそれ以上近づかないでいたのだ。
実際、凝縮された気がお互いの手の間でぶつかり合って鬩ぎあっているのだから。

「友達、とな?異な事を!
そなたが感じておるのは皆我が下僕ぢゃ。
フィジルも見たところ下僕以上になりそうなものはいなさそうぢゃの。」
パープルが見下したように吐き捨て、頬を歪ませる。
それとは対照的に、アルナワーズが震える。
歓喜に、愉悦に、身震いをしたのだ。

「あら豪胆だこと。頼もしいわぁ〜。
でも気をつけて。
フィジルという果物は焦って齧ればとても苦いの。
舐めてかかると毒に当たるわよ?
手間隙かけて皮を剥かないと甘い果肉は食べられないわぁん。
せめぎ合う気を押し潰すように手に力を入れるアルナワーズ。
だが、パープルの手は微動だに動かなかった。

「はっ!苦かろうが毒があろうが皿ごと喰ろうて下僕にするがシキブノジョウ家の家訓ぢゃ!」
パープルが目を見開き言い捨てると、こちらも更に手に力を入れる。
二人の掌の間でせめぎあっていた気が目に得る形でスパークする!
その瞬間、大轟音と振動が辺りを包み込む。
血まみれになった巨大な蛇が丘に降って来たのだ。
土ぼこりや飛礫が襲い掛かるが、三人は微動だにしない。
ただ、キキが物言わずとも出現した傀儡【千歳】が三人にぶつかる軌道の飛礫を尽く打ち落としていった。
73名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:30:07 0
「シャアアアアア!!!」
「びえええええ!!」
のたうつ血まみれの巨大な蛇の咆哮に紛れて小さくヴァンエレンの悲鳴もこだまする。
そして宙には四つの人影が舞っていた。
「ジューイン!いい加減似せぬと我が葬炎にてお前の姉を葬るぞ!」
「やれるモンならやってみろよクソが!!」
激昂したジューインの怒声が響く。
葬るなどできるはずがないのだ。
イーリーは反魂の術で蘇ったキョンシーであるが、ジューインの魂も分け与えているので純粋なアンデッドではない。
故に、通常の死霊退治の術は効かないのだ。
「酷いわ。お友達になりたいだけなのに邪魔するだなんて・・・。」
か弱そうな声でうなだれるイーリーだが、リリアーナはとても慰める気持ちにはならなかった。
今目の前で巨大な蛇を血だるまにするイーリーを見ているのだから。

「リリアーナ!また騒動を起こしているのか?」
「おうおう、俺も混ぜやがれ!」
そんな混乱する丘に現われたのはロックと長谷川寅蔵。
二人揃って顔がボコボコに晴上っている。

二人は暫く闘った後、腹が減ったと仲良く食堂に行っていたのだった。
そこで並々ならぬ妖気の波動を察知し、駆けつけたところだ。
「ち、ちがーう!もう何がなんだかわからないけど助けてよ!馬鹿ロック!」
騒動を起こしたと言われ、今まで言葉を失っていたリリアーナが再起動した。
この混乱の最中でも声が出せたのはやはりロックであるが故だろうか?
その言葉を聞き、ロックと長谷川寅蔵も戦いに参加すべく、跳んだ。

#############################################

丘から少し離れたところで一連の騒動を見ていたものがいた。
年の頃十歳ほどの少年。
小さく息を付き手に黒曜石のナイフを具現化させる。
「全く、フィジルについて一時間も経っていないのにもう・・・。」
呟きながらおもむろに黒曜石のナイフを自分の掌に付きたてた。
皮膚を引き裂き、ナイフを走らせる。
血が滴る中、掌に【定】の一文字を刻み込んだ。
「・・・生まれろ、僕の世界!」
その宣言と共に、丘の上は凍りついた。

のた打ち回る巨大な蛇も、その巨体に押し潰されて呻くヴァンエレンも。
宙に舞い、激突寸前の四人も。
鬩ぎあっていたパープルとアルナワーズ。
そしてキキとリリアーナ。
丘の上にいる全員がその場に固定されたかのようにピクリとも動けなくなっていた。

「ディ、ディエン・ビエン・フー・・・・!」
「なんじゃと!?まさか!蓬莱の者か!」
突然の変化に全員が固まる中、パープルが押し殺すように発する名前。
それに反応したのはキキだった。
驚きの声にただ一度、こくりと頷いて応える。

蓬莱から来ている六人とキキは今の状態の意味がわかったが、フィジルの三人はそうは行かない。
いきなり金縛りにあったことに・・・いや、金縛りではない。
本来飛行能力の無いロックも跳ねていた空中で固まって動けないでいるのだ。
まるで空間に固定されたかのように。
74名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:30:15 0
固まり動けずとも会話はでき、キキが晃龍について説明をする。
中央桃源島を中心に、四島を持って構成される晃龍諸島魔法学園。
東部扶桑島、西部天竺島、南部崑崙島はそれぞれ系統別に構成されている。
しかし、北部蓬莱島だけは違う。
全面的に個人的才能に依存する能力や、規格外の能力を持つ者。
一種の天才達の隔離島なのだ、と。
そして今、この状況を引き起こしているものが・・・

ディエン・ビエン・フー。
全員が固定したのを見て現われたのは、まだ10歳くらいの男の子だった。
「視察が目的だったのに、どうしてこんな騒ぎになってるの?」
呆れたように六人に尋ねるフー。
「クソ餓鬼が!邪魔してんじゃねえ!!」
「フー、私はただお友達になろうとしていただけよ?」
フォン姉弟が対照的な口調で話し、全身に力を入れる。
呪縛を振り払おうと抵抗しているのだ。

その抵抗は呪力の源であるフーの掌に現われる。
刻み込まれた「定」の字がミシミシと小さく音を立てながら歪むのだ。
が、それを一瞥しただけで、ぎゅっと掌を握る。
「無駄だよ。僕の世界には逆らえない。」
ギリギリのところで鬩ぎあっているのだが、一切そんな素振りは見せず余裕の態度を貫いてみせる。
そして更に続ける。
「止めずにそのまま消滅させても良かったんだよ?」
10歳の少年に出せる言葉ではなかった。
台詞としては誰でも口に出せるが、実力を伴ってわからせる言葉に出来るのはフーが天才たるゆえんだろう。

フォン姉弟が言葉に詰まると、小さな溜息と共に術を解く。
それと共にフーの掌は消えていく。
「皆、もう帰る時間だよ。一定レベルの騒動を超えたら自動的に帰還する事になっていたんだ。」
突然の期間の言葉にショックを受けるのはラジャとパシュゥだ。
女神リリアーナとのあまりに短い面会にショックは隠せない。
が、実際にここまで騒ぎを大きくしてしまったので強く反論も出来ない。

「興が冷めたわ。フィジルの者達よ。
これからフィジル、晃龍の交流は段階的に広げられていくじゃろう。
次はお前達が来い。晃龍は全島挙げて歓迎する所存故の。」
痺れる手を振りながらパープルが踵を返す。
短い時間ではあったが、それなりにフィジルの生徒達の実力を認めたのだ。

「リリアーナ、残念だわ。ぜひ晃龍に着てね。」
イーリーが名残惜しそうにリリアーナに告げる。
そこには何の悪意もない。
それが故にリリアーナは引きつった笑みを浮かべて見送るしかなかった。

晃龍から来た七人はやがて輪郭がぶれ、消えていく。
そして残された四人は大きく息をつくのであった。
「・・・まさに颶風来寇だったわねぇ。」

フィジルの生徒達が結局なんだったのか全貌を知るのは翌日のデイリーフィジルを待つことになるのだった。
75名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:32:56 0
名前・パープル・シキブノジョウ
種族・人間
性別・女
年齢・18
術・風水・召喚門・空間操作
容姿・容姿端麗・亜麻色ロングストレート・青瞳・切れ長の目・気の強そうな表情
服装・十二単
体格・標準体型
装備・簪・魔法媒体・人頭杖為時(使い魔)
所属・東部扶桑島
座右の銘・毒を喰らわば皿まで
尊敬する人・母
苦手なもの・祖母
備考・ シキブノジョウ家の長女。
   中央大陸出身の母と東方大陸の名家シキブノジョウ家の父の間に生まれたハーフ。
   閉鎖的な名家環境ゆえにハーフとして生まれ様々な苦労をしてきたが、それを実力でねじ伏せてきた。
   それゆえ少々傲慢気味。負けず嫌い。 
   キキとは親友。


名前・長谷川寅蔵
種族・鴉天狗
性別・男
年齢・17
術・古神道
容姿・黒髪ロング・隻眼眼帯・痩身長身
服装・黒スーツ・高下駄
体格・標準体型
装備・天狗の団扇・宗州草薙
所属・東部扶桑島
座右の銘・なんとかなるでしょ
尊敬する人・奥羽山の大天狗太郎丸
苦手なもの・気持ち悪い系の虫
備考・喧嘩っ早い鴉天狗。
   普段は人間形態をとっているが、戦闘体勢になると漆黒の羽が生える。
   戦いを楽しむタイプで遺恨を後に残さない。
76名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:33:55 0
名前・フォン・ジューイン
種族・人間
性別・男
年齢・18
術・幽玄導師
容姿・童顔・黒髪短髪
体格・標準体型
服装・道服
装備・符・銭剣・単鐘・墓守の灯篭
所属・南部崑崙島
座右の銘・死よ、驕る無かれ
尊敬する人・燃灯道人
苦手なもの・蛾
備考・幽玄導師。
フォン・イーリーの双子の弟。シスコン。
    イーリーが病死した為、反魂の術を使い無理やり生き返らせる。
    常識通りキョンシーとなったが、己の魂の一部を分け与える事により制御を可能にした。
    イーリーを完全に蘇らせる為、研鑽を続ける。
    *墓守の灯篭・小型の石灯篭。青白い光を放ち、光が照らす範囲をジューインのフィールドである墓地へと変える。
     有効範囲は直径50mほどで、開放型異空間。故に誰でも出入り自由。

名前・フォン・イーリー
種族・キョンシー
性別・女
年齢・享年15
術・道術
容姿・フォン・ジューインと同じ顔。髪は長く整っている。
服装・羽衣・中華的儀礼服・額、左目、他各所に包帯。左手、両足にギブス。
装備・車椅子
所属・南部崑崙島
座右の銘・なし
尊敬する人・太一真人
苦手なもの・強い光
備考・フォン・ジューインの双子の姉。
   3年前に病死しているが、ジューインの術により復活。
   キョンシーんに転生するが、ジューインの魂の一部を与えられているので自我を保っている。  
77名無しになりきれ:2008/08/28(木) 23:35:41 0
名前・ラジャ
種族・人間
性別・男
年齢・18
術・蛇使い・ヨガマスター
容姿・褐色・痩身・手足が長い・彫が濃い
服装・ターバン・マント
装備・ラーガ籠
所属・西部天竺島
座右の銘・手足なんて飾りです。偉い人にはそれがワカランのです!
尊敬する人・マハラジャ・ムハマンド
苦手なもの・巨乳
備考・蛇使いで、ラジャの持つラーガ籠には無数の蛇が蠢いているという。
   南海の獣と異名をとる。
   生粋にヒンヌー教徒であり、巨乳は苦手。
   口数は少なく造形的にも表情が不気味。
   その半面繊細な心を持っているのでビックリされるとちょっと凹む。


名前・パシュゥ・アンダーティーカー
種族・人間
性別・男
年齢・19
術・呪い・葬炎
容姿・彫が濃い・口ひげ・激ポチャ・ボディーペイントで全身白粉を塗っている
服装・ターバン・腹巻・ベスト・ズボン
装備・短剣・頭蓋骨・藁人形
所属・西部天竺島
座右の銘・因果応報
尊敬する人・世界に満ちる全ての精霊
苦手なもの・生魚
備考・ボディーペイントで不気味に仕上がっているが、中身は陽気なデブ。
   歌って踊れる呪術師。葬祭儀礼のエキスパート
   生粋のヒンヌー教徒であり、ヒンヌーの為には命を懸ける。


名前・ディエン・ビエン・フー
種族・人間
性別・男
年齢・10
術・世界法則支配「神の碑文」
容姿・大人しく朴訥としている・小柄
服装・簡素なシャツとズボン
装備・なし
所属・北部蓬莱島
座右の銘・生まれろ、僕の世界
尊敬する人・なし
苦手なもの・医者
備考・具現化した石で身体に刻んだことがそのまま顕在化させる能力を持つ。
   有効範囲は50m
   ある種の天才児で、飛び級で現在の課程にいる。
   ボーっとしていてあまり好奇心などがない。
78名無しになりきれ:2008/08/29(金) 00:46:30 0
目が滑らないよう頑張って読んだ
79名無しになりきれ:2008/08/29(金) 01:19:03 0
キョンシーこええ
ヒンヌー教徒バロス
80名無しになりきれ:2008/08/29(金) 12:54:12 O
ナマステ自重w
81名無しになりきれ:2008/08/29(金) 13:58:12 O
魔法少女に参加したいけど過去ログ多すぎて把握しきれないんだよな
東方編で新スレやってほしい
82名無しになりきれ:2008/08/30(土) 17:04:17 O
>>81
いいアイデアだと思うが、荒れるきっかけになりかねん
ここは待って、次の話で東方編が始まるのを祈るしかない
83名無しになりきれ:2008/08/30(土) 17:11:56 0
>>81-82
設定上学園から出られない人間が二人いるし、東方編は無理だろうな
あのスレの場合、テンプレさえ目を通せば過去ログ全部読まなくても参加できるぞ
こないだ新規のために状況まとめてあったから、一度目を通すか避難所で質問してみたらどうだ
84名無しになりきれ:2008/08/30(土) 17:13:37 O
>>83
ヴァンと誰だっけ?
85名無しになりきれ:2008/08/30(土) 17:21:34 0
>>84
リリアーナ
86名無しになりきれ:2008/08/30(土) 17:29:25 O
>>83
整合性とか厳しいからな
ベテランからすると簡単だし、親切だと思う
それでも初心者には辛いんだよ
スレの歴史って奴が
87名無しになりきれ:2008/08/30(土) 17:53:55 0
基本はキャラリセット。
フィジル編から引き継ぎたい時は留学か視察に来たという設定で。
これならスムーズに移行できないかな。
88名無しになりきれ:2008/08/30(土) 17:56:01 0
歴史が辛いなら他のスレもあるじゃん
ヘヴィ、ひっそり、機械、ライト、学園モノ、戦闘機、盗賊
どこも人手不足だし新規なら歓迎されるだろ

それと、そろそろスレチだし移動しようぜ
89名無しになりきれ:2008/08/30(土) 18:07:55 O
とりあえず、外伝的な内容でいいから作者には書ききってほしいななんて嫌らしいことを考える俺が居る
90名無しになりきれ:2008/08/30(土) 18:13:35 O
>>89
91名無しになりきれ:2008/08/30(土) 18:23:14 0
>>81
ライトはいつでも参加者募集しておるぞぉぉ!!
92名無しになりきれ:2008/08/30(土) 20:00:30 0
>>90
アナザーストーリーって言うより
エピソードの一部を切り取ってきたor序章に見えるってことだろ
少なくとも俺はそう見える
93AC The Origin:2008/08/30(土) 20:37:09 0
その時代、世界は混迷の極に達していた。

地球温暖化による環境の激変、それに伴う食糧危機と疫病の蔓延、災害の頻発。
化石燃料の枯渇による世界的なエネルギー危機、そして世界的な治安情勢の不安定化。
世界中の国家政府は、ここに来て勃興したテロリズムや私的武力組織、
または敵対する国家との紛争に備えるべく軍事企業に多大な支援を行った。

それらの軍事企業は国家と同等なまでの規模に急速に成長し、様々な革新的兵器を生み出した。
「アーマードコア」と呼ばれる汎環境対応兵器――ヒューマノイド型の大型兵器であり、
多様なアセンブルによって比類の無い汎用性を持つ――もまた、その一つだった。
そのACを駆る、レイヴンと呼ばれる傭兵もまた、この混沌とした世界の中で勇躍していた。

そして世界中の企業は、争いの中で統治能力を衰退させた世界中の国家に見切りをつける。
「国家解体戦争」――パックス・エコノミカを標榜する六大企業による、世界規模のクーデター。
その企業が自らの切り札とする兵器。科学によって今の時代に蘇った、神々の力を持つ巨人。

それらは、「ネクスト」と呼称されていた。

  ※   ※   ※

 夜の闇に光が映える。熱砂の砂漠も今はひどく冷え込み、気温は十度前後ほどしかない。
 再び、砂漠の上で閃光が瞬いた。弾けては消える光の乱舞、続いて起こる爆発音。金属のひしゃげ、潰れる悲鳴。
 そこでは、企業と国家軍による大規模戦闘が行われていたのだ。

≪シエラ4、そちらでアレを確認しているか?≫
≪ネガティブ、見えない。動きが速すぎる。なんなんだあれは?≫
≪お噂の「新兵器」というやつだろう――気を抜くなよ≫
 一機の人型兵器――アーマードコアのコックピット内で、パイロットスーツ姿の男が計器をいじくりながら通信していた。
 男はヘルメットを被っており、顔をうかがい知ることは出来ない。
 目前のモニタには様々な情報が目まぐるしく表示されており、カーソルや姿勢計、TDボックスなどが飛び跳ねるように動き回っている。
≪「伝説」さまが随分と弱気な口を利くな、ええ? 臆病風にでも吹かれたか?≫
 男の通信相手が、からかうような口調で言った。
≪どんな相手か分からない、と言ってるんだ。「奴」が出現してからここ一週間で、世界中の国家や軍が壊滅状態に陥っている。
 情報もロクに入ってこない。警戒は怠るな≫
≪ああ、分かってるって、そんなこと言われんでも――≫
 そこで通信が途切れる。後に残るのはひどいノイズだけだった。
≪おい? ……ECM【電子妨害】か?≫
 訝しげなつぶやきを残し、男はフットペダルを強く押し込む。ACのアークプラズマジェットが咆哮し、機体を急加速させる。
 ときおり弾ける光、そして脇をかすめて飛んでゆく砲弾と、黒煙混じりの砂を吹き上げる地面。
 モニタに表示される光景は、凄惨な戦場のそれである。時々、足元の歩兵がミンチになって吹き飛び、または機動兵器によってひき潰されるのが映る。だが、
 男はそれを見ても眉一つ動かしはしない。
「……何か、おかしい。どうなっている?」
 男が呟く。と、進路上に逆間接型の脚部を持つMT(マッスルトレーサー、非人間型の機動兵器)が出現する。
 男は流れるような動作で操縦桿を操った。機体をジグザグに振って、相手のFCSの未来予測をかく乱する。
 飛来する砲弾が機の傍に着弾しても、男の操縦にはためらいなど無い。
 MTの目前で、男は機体を左に沈み込ませる。バランスをわざと崩すことで急旋回し、すり抜けざまに左腕のレーザーブレードを振った。
 橙色をした灼熱のプラズマ粒子が、MTの装甲を易々と焼き切った。
 赤熱する断面を残してMTは二つになり、爆発して金属片を撒き散らす。
「やはり、おかしい。さっきよりも戦闘が収束している。まだ開戦から数分も経っていないのにか?」
 男は機の進路を変えた。行く先は、モニタのレーダーマップに表示されている青い点、味方との会合地点である。
 男はACを走行させ続けた。そして数分後、目的の地点に到着する。
94AC The Origin:2008/08/30(土) 20:38:13 0
「なんだ――これは?」
 男が、呆然と呟く。
 眼前には、墓場が広がっていた。
 累々と横たわる兵器の残骸――ACも、MTも、装甲車両も、全てが破壊され、動くものなど何一つ無い。
 全て金属と樹脂の、燃えカスになってしまっていた。その合間に、人間の体の一部が混じる。
 その時、コックピットに警報ランプが点灯した。甲高い電子音が同時に鳴り響く。
「……NBC警報?」
 モニタの片隅には「Heavy Metals,Raidiation detect(重金属と放射線を検出)」と表示され、毒性と汚染レベルがグラフとなって出ていた。
 そして、男はモニタの向こうに見た。
 空を舞う、巨人の姿を。
 淡く光る粒子を身にまとい、縦横無尽に空を駆け回る、流線型の体躯を持つ人型。
 凄まじい機動だった。瞬間的に10Gを遥かに超えるであろう加速。モニタに焼きつくほどの噴射炎を肩から噴き出し、その巨人は上下左右に回避運動を展開する。
 その巨人の眼下では、生き残りのMTとACの部隊が応戦していた。空に向かって打ち上げられる多数の砲弾とミサイル。
 だが、そのいずれもことごとくが避けられていた。従来の常識を覆すような機動性能は、兵器の予想アルゴリズムを凌駕していたのだ。
 巨人から、眼下の敵に向けて光が放たれる。強烈なプラズマを浴びて、MTとAC部隊は次々と爆散してゆく。
 それは戦いですらない、一方的な虐殺だ。
 その巨人は部隊が全滅したのを見届けた後、男のACの方角に体を向ける。そして、推力にものを言わせて急降下してくる。
「不味いな」
 男は機を操り、砂丘の傍に隠れる。一瞬遅れで飛来したプラズマ弾が、猛烈な熱量を持って砂を蒸発、気化せしめる。
 轟音と爆風で、コックピットは揺れに揺れた。男はペダルを踏み込み、砂丘の陰から機を飛び出させる。
 例の巨人はすでに地面へと降下、砂を蹴立て、超低空を高速で飛行していた。その向かう先は、真っ直ぐに男のACだった。
 男はACの右腕にマウントされていた対ACライフルを連射する。徹甲弾が連続で発射され、巨人の体をかすめる。
 奇妙な現象が起こっていた。巨人の周囲を弾がかすめるたびに、淡い光の膜が現れるのだ。
 その膜は徹甲弾を受け止め、弾体を焼き切り、偏向させた。結果、全ての砲弾があらぬ方向に飛ぶか、破壊されてしまっている。
「新型の防御兵器……か?」
 男は巨人の恐るべき瞬発機動を先読みし、回避機動が終わる直前と、始まる瞬間に砲弾とミサイルを叩き込む。
 なす術も無く破壊されていった味方とは違い、男のACが放つ攻撃のいくつかが巨人を捉える。
 だが、いずれの砲弾も巨人に決定打を与えられない。あの発光する膜に遮られてしまっているのだ。
「なんて奴、だ」
 焦燥を声に滲ませる男。その間にも、巨人は急速に間合いを詰めていた。
 巨人は男の機の目前まで来ると、跳躍した。空中で左右のブースタに点火、急旋回ののち背後に下り立った。
「ち――」
 男も機を旋回させる。だが間に合わない。巨人の左手が強烈に発光し、プラズマを収束させた青白い刀身が現出する。
 青のレーザーブレードが振り被られ、男の機を薙いだ。
 斬り飛ばされたのはコア(胴体)――ではなかった。とっさに男が盾にした右腕が、ライフルごと地面に落ちる。
 巨人の第二撃。返す刀で、青い光の刃が迫る。
 男は自機を巨人に突っ込ませた。機体が光の膜を通り抜け、両者が激突する。そして、男は左腕のブレードを起動。
 橙色のブレードが巨人に直撃する。光の膜と何らかの干渉を起こしているのか、刃から激しい紫電が起こる。
 巨人の装甲をわずかに傷つけたところで、橙色の刀身は消え去る。巨人が男の機を突き放し、今度こそ避けようのない斬撃が、男の機を一閃した。
 衝撃と爆音、コックピットに火花が飛び散り、煙が充満する。警報の赤ランプが点灯し、モニターは機体各所の損傷と異常を報告するリポートで埋め尽くされていた。
「終わりか」
 さらに激しい振動。コックピットの照明がすべて落ち、闇に満たされた。

  ※   ※   ※

 朝焼けの砂漠の中を、一台の大型トレーラーが走っていた。
 車体はサンドイエローに塗装され、ある程度の装甲化と密閉がなされた特殊な車両である。
95AC The Origin:2008/08/30(土) 20:39:02 0
その車両の運転席で、一人の女性がディスプレイの中の人物と口論していた。
「――だから、大丈夫よエミール。戦闘はもう三日前には終わっているもの。UAV(偵察機)での予備探査でも反応はゼロ、少なくとも流れ弾に当たることはないわ」
 ディスプレイに向かって話しながらハンドルを操っているのは、薄いブロンドのショートカットの女性だった。
 ……いや、まだ成人しているかいないか、境目程度の年頃だろう。見た目によっては、十分少女といえた。
 白人特有の透けるような肌に、碧眼の瞳。卵形の輪郭の顎、ぱっちりとした目鼻立ちの、
 可愛らしい容姿の女性である。背丈も小柄で、百六十前半ほどしかない。そのため、見た目よりもずっと幼い印象を他人に与えている。
≪フィオナ、そこは重度のコジマ汚染区域だ。君の体にも危険が及ぶかもしれないんだぞ≫
 画面の中の、エミールと呼ばれた男は、苛立ちを隠そうともせずに口元をゆがめている。茶の髪を短く刈り上げた、
 いかにもインテリ風の容姿を持つ男性であった。人種的にはゲルマン系であり、話している英語にもきついドイツなまりがあった。
「だからこそ、私たちが調べる必要があるんでしょ? コジマ粒子が環境に及ぼす影響は、
まだ完全に解明されているとは言いがたいんだから……世界のどの企業も、アナトリアやアスピナだって知らない。
少なくともコジマ関連技術で糧を得ているのなら、私たちにはそれを調べる責務があると思う」
≪だが、何も君が行く必要は無いだろう。他の者を調査にやれば良かったはずだ≫
「どうして?」
≪どうしてって、それは……≫
 逆に問い返されたエミールは、いかにも答えに詰まったように顔を渋くする。
「私が父の――イェルネフェルト教授の娘だから?」
 フィオナの不機嫌そうな言葉に、エミールは図星だったのか口を閉ざす。
「父はもう死んだわ。AMS技術の世界的権威だった教授はもうどこにもいない。私も、もうそんな肩書きに縛られるのは嫌なの――それに」
≪それに?≫
 フィオナはそこで微笑んだ。
「私もアナトリアの一員ですもの。みんなのお荷物にはなりたくない。まだまだ駆け出しの技術者だけど、これぐらいの調査はさせて欲しいの。それだけ」
 エミールはしばらくフィオナの顔を凝視していたが、やがて肩をすくめた。
≪分かった、今回はそれで納得するとしよう。だが外に出るのは三時間程度に留めてくれ。なんといってもそこは≫
「ホットゾーン(重度汚染区域)でしょ、わかってる」
 通信が切れる。フィオナは「よし」とつぶやき、覚悟を決めた顔でトレーラーを走らせた。

  ※   ※   ※

 それから一時間ほど走った後、フィオナはトレーラーを停車させた。
 車内で白い防護服――冷暖房完備のハイテクNBC防護服である――に着替えたフィオナは、車体後部のコンテナ内部に設置されたエアロックに入る。
 大気が交換される音がした後、エアロックの扉が開かれた。各種計測器具が詰まったケースを手に、フィオナは砂漠の上に下り立つ。
「……ひどい」
 目の前の光景を見るなり、フィオナはつぶやいた。
 そこは、文字通りの共同墓地だった。鉄屑と腐った肉片が織り成す、地獄。
 ACやMT、戦車の残骸。焼け焦げ、高温でねじくれ曲がった金属の合間に、炭になった人間の遺体が挟まっている。
 砂地の上には人間の体の一部らしきものが散乱している場所もあり、その光景は酸鼻を極めた。
「――っうぷ」
 フィオナは防護服のフード越しに、口元を押さえた。だが、すんでのところという様子で、吐き気を押さえ込む。
96AC The Origin:2008/08/30(土) 20:40:18 0
「臭いがしないだけ、まだマシなのかな……」
 ケースを地面において開き、フィオナは中から携帯食と水入りのペットボトルを取り出した。
「……ごめんなさい。今の私には、これぐらいしかしてあげられないから」
 フィオナは死者の前に携帯食を供え、水を上からふりかける。水は乾いた砂漠の砂に吸い込まれ、消えていった。
 少女はしばらく屈み込んで黙祷していたが、しばらくして立ち上がり、周囲を計測器具を片手に歩き回り始めた。
「やっぱり、汚染がかなり進んでる。これだと、あと二百年は生き物が住めそうもないわね……元々不毛の地だけど」
 ジリジリと電子音を立てる、手持ちカメラ型の計測器具。その小型ディスプレイに表示されている数値は軒並み高い値を示しており、グラフもレッドゾーンに入っていた。
 残骸の間を歩き回り続け、やがて破壊されて横たわるACの傍に立ち、それを見上げる。
「これは、レーザーブレードで焼き切られた痕? 汚染指数がかなり高い」
 そのACは右腕部と肩が袈裟懸けに斬られており、滑らかで鋭い断面を日のもとにさらしていた。
 複合装甲が膨大な熱によって焼き切られたらしく、切り口の縁にはプラズマ焼損特有の気泡が見られた。
「ネクストと直接接触した……近接戦闘によるコジマ被曝、か」
 破壊されたACの装甲をなでながら、フィオナは電子タブレットにメモを書き記してゆく。
 やがてACの周囲を回るうちに、残骸の背後に立った。
「……? コックピットがパージされてる」
 背面ブースターのすぐ上、スライド式のコックピットハッチが、緊急用の爆砕ボルトで吹き飛ばされていた。
「中には誰もいない――よね」
 ハッチに近づき、背伸びして中を覗き込む。黒焦げになった計器やディスプレイが、無残な姿を晒している。シートに人の姿は無かった。
 フィオナがハッチから顔を背けたとき、その視線が地面のある一点で止まる。
 砂地に足跡があった。ハッチの下の砂地は踏み荒らされていたが、そこから十メートルほど離れた場所に、
 砂漠の丘陵の向こうへと続く跡が、点々と続いていたのだ。
 その足跡をたどりだすフィオナ。跡は砂丘を大きく迂回し、その陰に入っていた。
 そして足跡の終点で、フィオナは小さく息を呑む。
 砂丘の陰、ちょうど日陰になっているその場所に、一人の男が座り込んでいたからだ。
 パイロットスーツを着た黒髪の男は、首をうなだれたままぴくりとも動かなかった。傍には携帯食の包装が散乱し、空になった水筒が転がっていた。
 二十代後半――三十路にかかる程度、まだ比較的若い。こけた頬には無精ひげが生えている。
 切れ長の目は閉じられており、時折うなされているかのように痙攣している。
「あの――」
 フィオナが、その男の肩に手をかけた瞬間。
 男が即座に反応した。フィオナの細い手を掴み、流れるような動作で腰のホルスターから拳銃を抜き、少女の顔に突き付ける。
「ひっ」
 フィオナが小さく、恐怖の声を漏らす。
 男は焦点の合わない目で少女を眺めやると――おもむろに拳銃を下ろし、横に倒れこんだ。
 フィオナはしばしあっけに取られていた様子だったが、すぐさま男の顔を覗き見、腕の脈を取る。
「脱水症状がひどいわ。もしかしたらコジマ粒子によるものかも。早く医者に見せないと」
 立ち上がりかけた姿勢で、しかし何かを思い出したように、男の前髪に手を掛ける。
「……この人」
 男の顔が露わになる。その顔は――安らいで眠っているようにも、見えた。

97AC The Origin:2008/08/30(土) 20:41:23 0
  ※   ※   ※

 コロニー・アナトリア
 中東の旧トルコ領土内、アナトリア半島に位置する小規模コロニーである。
 元来このコロニーは、世界中の国家や政府から逃れてきた技術者・科学者が集って作り上げた、共同生活体であった。
 世界的な治安の悪化や、次々と起こる国家の崩壊、そして政府弾圧などから避難してきた者たちが、
 己の自由と生活を確立するために築き上げた場所。人口は数千と非常に小ぢんまりしたものではあるが、
 その優秀な頭脳と技術力を国家や企業に売ることで生計を立ててきた。そのため、世界的にも比較的裕福で治安の良いコロニーとして知られている。
 乾燥した気候であるとはいえ周囲の自然は豊かであり、いまだ手付かずの土地も多い。
 そんな緑の丘陵が連なる中に、数百棟の倉庫や建物が肩を寄せ合うようにして建てられている。

 そのアナトリアの、集落の中央にある総合病院。
 消毒液の臭いが満ちる隔離病棟の廊下で、二人の人物が口論をしていた。
「――一体何を考えているんだフィオナ。調査から帰ったかと思えば、得体の知れない男を連れ帰ってきて」
「あのまま放っておけなかった。ひどく衰弱してて、もう少し見つけるのが遅れてたら、確実に死んでた……」
 二人の人物は、フィオナとエミールだった。エミールが背の低いフィオナを見下ろす形で、二人は口々に言い合っている。
 エミールは腕を組み、苛立ったように指を上下させて、フィオナに詰め寄った。
「いいか、我々にだってそんなに余裕があるわけじゃないんだ。あんな余所者を受け入れる余地は、このコロニーには無い」
 フィオナは沈んだ表情で、エミールの説教を黙って聞いている。
「それに、あの男はただの兵士じゃない、レイヴンだぞ」
「え?」
 初耳だったのか、フィオナが顔を上げる。
「奴の着ていたパイロットスーツは、軍からの支給品じゃない。所々に改造が加えられたオーダーメイド……レイヴンがよく使っている、AC専用にしつらえられた代物だ」
 フィオナは無言だった。
「余所者というだけでも厄介だが、その上薄汚い傭兵――」
「エミール、お願い」
 フィオナは、エミールの顔を見つめた。
 困惑顔のエミール。「いや、しかし」と呟くが、しばらくしてフィオナの真摯な視線に負け、嘆息して頭をかく。
「オーケイ、分かったよ。君がそこまで言うなら仕方が無い。ただし、治療をしても助かる保証は無いからな」
「……そんなにひどいの?」
「三日間も重度に汚染された砂漠に居たんだ。脱水症状だけじゃない、コジマ粒子による多臓器不全が起こりかけている。
マイクロマシンでコジマ粒子を除去する手術を行わせてはみるがね……五分五分というところだろう。何より、助かってもなんらかの障害が残る可能性が高い」
 フィオナは悲しげに目を伏せるが、やがてゆっくりと頷いた。
「……お願い」
「ああ、医師に伝えてくるよ」
 エミールは少女の傍を離れ、通路の角の向こうに姿を消した。
 フィオナは病室の窓から、中の様子をうかがう。
 そこには、白いベッドの上に横たわる男の姿があった。口には酸素マスク、全身に包帯が巻かれ、ベッドの傍らの医療機器が心拍を計測し続けている。
「……あなたは一体、誰なの?」

▼続く▼
98名無しになりきれ:2008/08/30(土) 22:44:16 0
>89>92
東方系キャラが結構いるから、当方の魔法学園の話を書いてみたくなったのよ。
>エピソードの一部を切り取ってきたor序章
これはほぼ正解。
より正確に言うと、設定紹介文。
諸島にしたのは、日本系、中華系、インド・東南アジア系、特殊と区分けする為。
七人は各種のサンプルキャラクター。

基本が設定紹介だから、本編は元々考えていなかったりして。ごめん。
何かの拍子で思いついたら書くかもしれないけど、いってみれば魔法少女スレを一人で回す様なものなのでムリッポ。
99名無しになりきれ:2008/09/01(月) 08:50:12 O
>>93-97
乙。アーマードコアよく知らんが続き楽しみにしてる。
100AC The Origin2:2008/09/01(月) 22:47:02 0
世界は残酷だった。

 荒廃していく自然、枯れていく木々、広がってゆく砂漠、汚染された河川。
 街には金属も溶かす雨が降り注ぎ、酷い暑さで病気を媒介する昆虫や小動物が大発生する。

 土地は環境の激変でやせ細り、ろくな作物が育たない。そのため人々はいつも飢え、
 略奪や殺人などの犯罪は日常茶飯事だった。国からの食糧配給はいつも滞っており、誰もが互いに食い物と水を奪い合う日々が続いた。
 水素燃料は馬鹿みたいに値段が高騰していて、道路には動かない車が何台もうち捨てられていた。
 しかもその車も、あらかた使える部品は盗まれた後のドンガラばかり。原子力発電所からの電力も、
 政府や企業の施設に優先的にまわされ、街に明かりが灯らない日が何日も続いたこともあった。

 汚れた街の道端には死体がいくつも転がっており――そのいずれもが女子供、老人のもので、
 病気か飢えで死んだものばかりだった。それらの腐臭で、街を歩くたびに嫌な思いをしたものだ。
 まだ抵抗力のある若い男女の間にも、ひどい無気力が蔓延していた。若い女は体を売ればよかったが、
 年老いればどうしようもない。男たちは自分と家族を養うために日々仕事を探しており、はした金で兵士になり、または犯罪組織に入った。
 その男女の中でも極めつけに絶望したやつがテロリストに走って、多くの人間を無差別テロで殺した。

 だが、こんな救いようのない世界にもエリートと呼ばれる奴らはいる。それは何種類かいて、多くは政府の高官か、
 企業の重役、もしくはレイヴンと呼ばれる傭兵だった。政府の高官と企業の重役どもはぬくぬくとした暮らしをしており、
 いつも人々に妬まれ、憎悪の対象になっていた。それでいて誰もがエリートになりたがるのだから、世の中というのは皮肉なものだ。

 レイヴンの場合は、少し特殊だった。
 ACを駆る選り抜かれた傭兵たち。レイヴンの世界では日々生き抜くのが何にも増して過酷だったため、なりたがる奴は多くても、
 そのほとんどが生き残れなかった。新人(ルーキー)なら、最初の一週間でその後の人生が決まる。素質の無い奴は、さっさと死ぬからだ。
 だからレイヴンはこの腐った世界で、ほんの少しばかり特別な……そう、尊敬と畏怖をもった目で見られていたのだ。
 何者にも与せず、己の力のみで戦い抜く黒いカラスたち。
 死を運ぶ前触れ、それをシンボルとする傭兵。
 レイヴンは英雄だったのだ。この、絶望に満たされた世界にとっての。

 だがそれも、もう終わりだ。
 あの恐ろしい力を持った巨人が現れて――レイヴンの時代は終わった。

 ようやくこれで、俺も楽になれるのかもしれない。

 このどうしようもない世界には、もう生きている価値など無いのだから。

  ※   ※   ※

 見知らぬタイル張りの天井が見えた。蛍光灯が瞬いている。
 鼻につく消毒液の臭い、そして、清潔な白いシーツが目に飛び込んでくる。
 ……ここはどこだ?
 頭を巡らし、霞がかかった頭で状況を確認しようとする。だが、激しい痛みに思わずうめき声を漏らしてしまう。
 自分の体には、全身に包帯が巻かれていた。包帯は所々血で滲んでおり、隙間に露出した肌にはコード類が貼り付けられている。
 病院? だが、俺は戦場にいて――機体を破壊されて。
 そうだ、それで動かなくなったACから脱出したのだ。戦闘は終わったが、
 移動手段も何も無い自分は砂漠に取り残されて、携帯食も尽き、死を待つだけだったはず。
 ふと、記憶に蘇るものがあった。一瞬だけ、少女の顔が脳裏によぎる。
 助けられた、のか?
 脇を見ると、そこには医療用の介護ロボットが立っていた。タンク型のACに良く似たフォルムの、
 上半身が人で下半身がフロートというタイプだ。全身は有機的なフォルムの滑らかなプラスチックで覆われており、暖色系の明るい塗装が施されていた。
 そのロボットの、頭部カメラアイが自分を見た。
「ああ、意識が戻られましたか。今先生をお呼びしますから、少しお待ちくださいね」
 ロボットの腹部のスピーカーから、看護婦と思しき女性の声が流れ出た。
 声が切れる。体を横たえたまま、全身に走る痛みに耐えつつ、思う。
 ――どうして生き残ったのだろう?

101AC The Origin2:2008/09/01(月) 22:50:42 0
 しばらくして、男の病室に数人の男女が入った。医者と看護婦、それと見知らぬ男と女が一人ずつ。
 小柄でブロンドのショートカットの髪をした、可愛らしい少女に男は見覚えがあった。
 記憶の中に残る、あの少女だ。
 医者の一通りの診察が終わると、医者と看護婦は部屋を退出した。そして代わりに、男女が前に進み出る。
「名前は?」
 男が聞く、実にぶしつけな態度だった。顔に感情は無く、瞳も冷徹そのものである。
 自分には、この手の人物に見覚えがあった。政治家――実利のために情を切り捨てられるタイプの人間だ。
「エミール、いきなり失礼よ」
 傍らの少女が、男――エミールを肘でつつく。
「構わんさ、わざわざ高価なマイクロマシンを使って命を救ってやったんだ。それもこのご時勢に、薄汚いレイヴンの命をな……名前ぐらい聞いても罰は当たらん」
 もう、と少女は頬を膨らませ、うって変わったようにレイヴンに微笑を見せた。
「名前を教えてくれますか? もしよろしければ」
 花のような笑顔だった。自分は今まで生きてきて、こんな笑顔をする人間には出会ったことが無かった。
 無垢で純粋な、心からの笑い。何故かそれが、自分にはひどく暖かくて、貴重なものに思えた。
「アレン……アレン・クロフォード」
 その名を口にした瞬間、エミールの顔にはっきりと分かる驚きが浮かんだ。その後、無表情からうって変わって相好を崩す。
「ほお……名前は聞いたことがあるが、こうしてお目にかかれるとは。戦績ナンバー1、最強の傭兵、生きた伝説にこうして会えるとはね」
「エミール、知ってるの?」
「ああ、若くして最強の名を欲しいままにしてきた傭兵だ。最高クラスのランカーだよ」
 ランカーとは、この世界で非合法に行われてきたAC競技――アリーナでの称号のことだ。「順位付き(ランカー)」の名は、
 それだけでレイヴンの実力を推し量る指標となってきた。
「……その呼び名はやめてくれ。今はただの、負け犬の死にぞこないだ」
 口の中に広がる苦いものを感じながら、レイヴン――アレンは呟く。
「まあ、そうだろうな。今となっては伝説も過去の遺物、か」
「エミール!」
 少女がエミールに怒気を含んだ声を放つ。が、不思議とアレンの胸に、怒りは沸いてこなかった。
「いや、いい。そいつの言うとおりだ」
 アレンの覇気のない言葉に、困惑顔をする少女。エミールはその様子に鼻を鳴らす。
「無理もないか、『ネクスト』と交戦したのだから。命があっただけでも幸運というものだろう」
「――『ネクスト』?」
 アレンが聞き返す。
 それが、あの巨人の名前なのか。
「ああ、君の戦った相手だよ。企業の切り札、
 最先端技術を詰め込んだ次世代のアーマードコア、ゆえにあれは旧来のノーマルACと区別され、
 『ネクスト』と呼称されている」
「あんた、あの巨人のことを知っているのか?」
 わずか一機で、国家軍を圧倒していたあの巨人。
 その姿がアレンの脳裏から離れない。
 エミールはわずかに不敵な笑みを見せた。
「……まあ、話しても構わんか。いずれ企業から、全世界に向けて発表があるだろうし、な」
 エミールは傍の丸椅子を引き寄せ、その上に腰を下ろす。フィオナもそれにならった。
「ネクストは、企業が秘密裏に開発してきた奥の手だ。既存の概念を打ち破る機動力、火力、
 そしてプライマルアーマーによる防御力を併せ持つ、超兵器だよ。あれ一機で、
 国家軍のノーマルAC・MT部隊を数個師団相手に出来るだろう。ここまでくると、ほとんど戦略級の代物だな」
「プライマル……アーマー?」
「コジマ粒子を安定還流させた防御膜のことだ。一昔前のSFに出てくるシールドやバリアを想像すると分かりやすいかも知れん」
 ネクストと呼ばれる巨人の周囲には、たしかに淡い光の膜が存在していた。こちらの攻撃は、ほとんどあれによって防がれてしまっていたのだ。
102AC The Origin2:2008/09/01(月) 22:53:14 0
「コジマ粒子。七年前に発見された、特殊な重金属元素か」
 アレンは自らの記憶を探った。七年前、この地球の奥深く、コアに程近い部分から未知の超ウラン元素が発見された。
 それはいかなる既存の物質よりも比重が高かったために、地中の奥深くに沈み込んでいた。そのため、
 地中探査技術が飛躍的に発達した近年になるまで発見されなかったのだ。
 その物質は発見者の名を取ってコジマ粒子と呼ばれ――元素名は正式には決まっていない。
 発見者が急死したことと、国際的な元素名を規定する機関が近年の紛争で消滅して、
 国際的に名称を統一する枠組みが無くなってしまったからだ――そのエネルギー的な利用法が、ニュースを賑わせたものだった。
 だがそのコジマ粒子にそんな利用法が見出されていたとは、驚くべきことだった。
「やけにあんたは詳しいんだな、その『ネクスト』とやらについて」
 アレンは疑念をエミールに向けた。
「コロニー・アナトリアは企業とも繋がりが深い。そういった情報を得るのも難しくはないさ」
 何となくはぐらかされている、とアレンは感じる。
 このエミールという男はさらに何かを知っている、核心に近い何かを。
 だが、この手の人間はいつも腹に一物持っているものだ、とアレンは考え直した。そしてそのことについて、こいつが口を割ることは決してないだろう。
 なら、考えても仕方ないことだ。だから話題を変えることにした。先ほどのエミールの言葉に、気になる単語が混じっていたのだ。
「アナトリア――ここは、アナトリアなのか?」
「ああ、そうだ。コロニー・アナトリア。中東のごく小さな、技術者の街だよ」
 アレンは窓の外に目を向ける。背の低い家屋や倉庫の向こうに見える、牧歌的な風景。
「そうか、ここがアナトリア……」
 アレンはその単語を舌に乗せた。
 郷愁とも羨望ともつかない、不思議な感情がアレンの胸を満たしてゆく。
「俺は何日間ぐらい眠っていたんだ? それと、戦争はどうなった?」
 立て続けに、アレンは問うた。
「丸四日間だ、体組織の治療が終わっても中々目を覚まさなかったからな。それと戦争だが、企業側の圧倒的勝利で収束しつつある。
 国家側の軍はほぼ壊滅した――ネクストによって」
 やはり、か。
 アレンはその話を聞かされても、大して動揺はしなかった。予想は出来たことだ。あのネクストに、既存の兵器群が太刀打ちできるわけがない。
 全て終わったのだ。
 自分の戦いも、レイヴンと呼ばれる傭兵たちの地位も。
「さて……私はもうそろそろ行くとしよう。君の詳細な処遇については追って知らせる。何しろ君は客人というよりは厄介者だからな、このコロニーにとっての」
 エミールが椅子から立ち上がる。その失礼な物言いに、傍らの少女は不機嫌そうな様子だった。
「そうそう、自己紹介がまだだったな、私はエミール・グスタフ。このコロニーの技術者の一人だ。まあ、今はリーダーのような仕事もさせられてはいるがね」
 エミールは握手を求めてくるが、アレンはそれに応えない。エミールは苦笑し、背後のドアに足を向けた。
「それと、だ。フィオナに感謝しておきたまえ。君を救ったのはフィオナなのだからな」
 少女を見て、エミールは意地悪そうな笑みを浮かべた。それにフィオナは少し顔を赤くして、
 エミールを睨みつける。エミールはふざけたような笑いを顔に浮かべたまま、手を振って病室を出て行った。
「――ごめんなさい、エミールが色々と失礼を」
 少女――フィオナは顔を赤くしたままうつむく。その可愛らしい仕草に、アレンは微笑ましい気持ちになる。
 レイヴンになってからそんな心情を抱いたことなど一度もなかった。割れて乾いた大地に、恵みの水が染み込んでゆくような錯覚をアレンは覚える。
「いや、奴は正しい。よそ者相手の対応としてはむしろ上品なぐらいだ。特にこんなご時勢でこのコロニーの指導者をやっているなら、
 外の人間は警戒すべきだ。特に俺みたいなならず者はな」
 フィオナはアレンの言葉を聞き、可笑しそうに吹きだしていた。
「――どうした?」
「いえ、だって、自分のことをそんなに悪く言うなんて。普通は逆なのに」
「――ぐ」
 思わず呻いてしまう。確かにそうだ、何をやっているんだ、傭兵らしくもないことを。
 クスクスと笑っているフィオナの前で、アレンはきまりが悪そうに頭をかいた。
103AC The Origin2:2008/09/01(月) 22:54:44 0
「……あ、ごめんなさい。私はフィオナ、フィオナ・イェルネフェルトっていいます。よろしくお願いしますね、アレンさん」
「イェルネフェルト――」
 その名には覚えがあった。
「あんた、もしかしてイェルネフェルト教授の?」
 そこで、フィオナの表情が暗くなる。
「……はい、父です」
 イェルネフェルト教授、今世紀最大の偉人と称されている科学者。一言でいうなら、天才。
 数々の新理論を次々と提唱し、凡人の想像を超える新技術を開発、市場に投入し、コロニー・アナトリアを躍進させた。
 一方では知能の怪物とも称されていた人物だが、最近病死した、とニュースで報じられていた。
 お嬢様、というわけか。
 それでアレンにも、フィオナの持つ雰囲気や立ち居振る舞いが理解できた。恐らくは大切に育てられた、温室の花なのだろう。
 無垢で純粋だが、どこか儚い――無骨な鋼鉄と硝煙の世界で生きてきた自分には無縁のものだった。
「すまん、余計なことを聞いたな」
「いえ、いいんです。それに、実はそんなに悲しくもないんですよ? 父は仕事一筋の人で、家庭のことはあまり顧みてくれませんでしたから」
「そうか」
 家族、アレンはその言葉を聞くたびに、ひどい自責の念にとらわれる。
「多忙だった父の代わりに、父の部下だったエミールが面倒を見てくれました。エミールは私の兄代わりなんです。……口は悪いですけど、許してあげてください。根は悪い人じゃないんです」
「ああ」
 兄と妹。
 温かい家庭。
 自分が昔戦っていた理由。
 そしてそれは、今ではもう失われてしまったもの。
「……でも、すごく意外でした」
「何がだ?」
 フィオナがこちらを見つめているのに気付き、アレンは顔を上げる。
「私、レイヴンの人ってもっと怖い人かと思ってましたから。でも、アレンさんはちっともそんなことないです」
「いや――」
 それは違う、と言いかけてアレンは言葉を呑みこむ。
 世の中には、知らない方がいい事もある。
 自分がこれまでどれほどの人間を殺してきたかを知ったら、この少女はどんな顔をするだろう?
 ましてや、この世界がどれほど残酷かなどという事を言っても、何の益もない。
「そう……だとありがたいな」
 苦し紛れに言葉を紡ぎ出す。ひどく後味が悪かった。
 なぜこんな風に思うのだろう? 今までレイヴンとして生きてきたのなら、何も気に病むことなど無いはず。
「そうだ! アレンさん起きてから何も食べてませんよね。お食事、貰ってきます」
「いや、そこまでは」
「いいですから、寝ててください」
 パタパタと軽快な足取りで、フィオナが病室を出て行く。
 部屋に静寂が訪れた。
 ……何年ぶりだろうか、こんな穏やかな気分になったのは。
 アレンはベッドに横たわりながら、清潔なシーツの、優しい匂いを鼻に吸い込む。
 レイヴンとなってからは、己の糧を得るために他人を殺し続ける日々。
 心はささくれ立ち、カラカラに乾いて、
 いつしか誰かの命をこの手ですり潰しても、なんの感慨も抱かなくなっていた。
 そうしなければ生き残れなかった。
 だがそれは、本当に正しいことだったのだろうか?
 俺は――
「お待たせしました」
 フィオナがトレイを手に、部屋に戻ってくる。
「お医者様が、まだ固形物は食べられないだろうからって、こんなものしか出せないんですけど」
 そう言ってフィオナがベッドの簡易テーブルに乗せたのは、白い湯気を立ち上らせた温かいシチューだった。
「一人で食べられますか?」
「ああ」
 
104AC The Origin2:2008/09/01(月) 22:57:19 0
アレンはスプーンを受け取り、シチューをすくって口に入れる。
 暖かく、滋味のある芳香が口の中に広がる。
 こんなものを食べたのは、随分と久しぶりだ。
 食糧事情の劣悪なほかのコロニーや都市部では、こんな乳製品を使ったシチューなど、まずお目にかかれない。
 そうだ、こんな温かいものは、随分と――
 頬が熱い。
 涙が、アレンの頬を伝っていた。視界がぼやけて、シチューの皿がよく見えない。
 なぜ、涙が出るのだろう。
 酷薄な戦いの果てに、
 涙なぞとうに枯れてしまったと、思っていたのに。
 アレンは黙々と、シチューを口に運ぶ。

 その傍でフィオナは、アレンの顔を悲しげに見つめ続けていた。

  ※   ※   ※

「それで? あの男の検査結果で見せたいものがあると?」
 病院の診察室の一つで、エミールが壁に寄りかかりながら立っていた。エミールの横の椅子には、医者と思われる男が座っている。
「はい、これなのですが」
 医者が電子タブレットをエミールに手渡す。エミールはタブレットを指で操作した。
「……この結果に間違いはないんだな?」
「ええ、MRIやPET、それとマイクロマシンからのデータ転送で分かったデータです。十中八九、間違いありません」
 エミールはふむう、と顎をなでる。
「AMS適性を、あの男が持っている可能性が高い――か。実に興味深い、な」
「まだ確実な事はいえません。もっと詳しく知るには、患者をAMS適性測定の検査にかける必要があります」
 エミールはタブレットを医者に返すと、その肩を叩く。
「このことは私以外には他言無用だぞ。それと、そのデータを全て私の端末に転送しておいてくれ」
「わかりました」
 診察室を出、背後の自動ドアが閉まったところでエミールが一人ほくそ笑む。
「……なるほど、とんだ拾い物だったわけか。これは利用する価値があるかもしれん」
 エミールは、病院の出口の方向に歩を進めた。
「その時はせいぜい役立ってもらうとしようか、アナトリアのためにな」

  ※   ※   ※

 アレンがアナトリアで目を覚ましてから一週間後、六大企業によって全世界に対して発表が行われた。

 その発表の中で、国家の軍が全て、企業の部隊に敗北したことが大々的に報じられた。
 そして企業が既存の国家組織を解体し、その政治・司法・経済機能を受け継ぐこと――が宣言された。
 企業はパックス・エコノミカ体制を全世界に敷くことを決定。全ての経済活動は企業によって監視、統制されることになった。
 これによって一般人は経済活動に関与できなくなり、代わりに衣食住を企業から保障されることになった――企業の元で労働に従事している限り。
 これらの統制は全て、限りある資源を人民に効率よく再分配するため、というのが企業側の名目であった。

 こうして管理資本主義の時代が到来し、ほぼ全ての人々は企業の元で生きてゆくことを余儀なくされる。

 それは経済と資源、武力を盾にした――企業による静かな恐怖政治の、始まりだった。

▼続く▼
105名無しになりきれ:2008/09/01(月) 23:03:02 0
乙、だけど長文の上に改行が無くて非常に読みにくいお
目がすべるから、物語の雰囲気を損ねないなら所々に改行入れてくれると嬉しい
応援してるからがんばって
106AC The Origin:2008/09/01(月) 23:17:30 0
>>99
ありがとう。実は自分もゲーム自体はやったことないんだw

>>105
おk。もう少し読みやすいように気を配ってみる。
応援ありがとう!
107名無しになりきれ:2008/09/05(金) 11:14:13 O
萌え
108名無しになりきれ:2008/09/17(水) 07:23:01 O
あがれ
109名無しになりきれ:2008/09/20(土) 04:28:13 O
萌えろ
110名無しになりきれ:2008/09/21(日) 00:46:24 0
肥満の文章じゃん
相変わらず分かりやすい文体だな
111夜+鳥 ◆NUE/UO/DFI :2008/09/25(木) 21:41:26 0
【独白】

六年前、俺は既にチームを組んでゴルディアス探索を生業としていた。
今と変らぬキャットストリートのデザートオーシャン。
俺はカタログとにらめっこしながら酒を飲んでいた。
「なんだラティフ、ACを変えるのか?」
「ん〜ああー。」
声をかけてきたカネスに気のない返事で応える。
カネスとは傭兵時代からの付き合いだ。
右腕を失って傭兵家業から遺跡探索者になったカネスを頼って俺は月に来た。
信頼もしているし、尊敬もしている。
何よりも、頼りになる男だ。

「61式オクトバ。軍で強襲偵察用に使われてる奴だけど、な。」
機能的には満足のいくものだ。
乗ってみたい、が、現役の軍用機を買えるほどの金なんぞない。
溜息をつきながらグラスを傾ける俺にカネスは小さく笑い口を開く。
「いい事教えてやろうか。来月間で待て。
来月トライアンフの次世代機発表がある。そこにクラーケンがでるらしいからな。
それまでお前が生き残っていれば、何とかなるんじゃねえか?」
その言葉に俺がガバッと立ち上がる。
次世代機発表って事は、既に形になっているって事だ。
つまりオクトバは現役から旧型へと変る。
昨日は変らないが、当然のように値も下がるという事だ。

カネスの言葉に盛り上がる俺のところに仲間の一人が駆け込んできた。
「よう、聞いたか?ゲイザムチームが記録更新してレベル4に突入したってよ。」
「んだと?あの筋肉ハゲに先越されたのかよ!」
仲間の一人の知らせに俺は苛立ちと共に応える。
当時まだゲイザムとの面識はないが、それでもその名前は知っていた。
「狂獣」「解き放たれた悪魔」
闇闘技場で暴れまわるそいつが、ふらっとゴルディアスに潜り記録更新したんだ。
心中穏やかなわけがない。

「ラティフ、そう苛立つなよ。ゲイザムはいいAC乗りだ。」
カネスがやんわりとたしなめるが、俺が納まるわけがない。
オクトバが買えそうな気分になったところで出鼻をくじかれたのもある。
「んでもよ。畑違いのゲイザムに出し抜かれるとはよ!何しに闘技場からでてきたんだ?」
「奴最近結婚したって言うからな。それが関係あるんだろ。」
「ブーーーーー!!」
事も無げに理由を推理するカネスの言葉に俺は盛大に吹いた。
ゲイザムが記録更新下どころの衝撃じゃない。

「はぁ!?ゲイザムが?相手は熊か?ゴリラか?」
「・・・ラティフ・・・。」
思いっきり酒を吹きかけられたカネスがコメカミをひくひくさせながら立ち上がる。
そして俺の視界は暗転した。
「・・・人を見かけで判断すると早死にするぞ。
俺にだって妹がいてな・・・。
だから死ねない・・・。お前も何だっていい。・・・生き残れ。」
薄れ行く意識のなか、カネスの言葉がぼんやりと聞こえた。
112夜+鳥 ◆NUE/UO/DFI :2008/09/25(木) 21:41:36 0
#################

翌日、俺は左目にパンダのような痣をつけながらゴルディアスへと潜る。
古代守護ロボを撃ち落しながら、俺達もレベル4へと辿り着いた。
俺は躍起になっていたのかもしれない。
遺跡探索では、遺跡のデータや鉱物を持ち帰れば高く売れる。
それが未到達域のところなら尚更だ。
ゲイザムに負けたくない。
オクトバを買う為に金も要る。
そんな思いが、俺から慎重さを奪い取っていっていた。
それに気づいた時には、もう手遅れだったわけだ。

「糞、ミカエルだ!ミカエルが3機!」
「んだと!この糞忙しい時に!」
通信で怒号が飛び交う。
スフィンクスたちを相手に戦っている最中、光をまとって現われたのはミカエルだった。
既に斬段数も少なく、ACの破損部分も多い。
どう見積もっても勝てるわけがない。
「逃げるぞ!殿は任せろ!」
カネスの声に俺達は一斉に逃げ始める。
が、容赦ない追撃。
もう無我夢中だった。

気づいた時にはレベル2まで逃げてきていた。
周りには・・・誰もいない。
「・・・キール!・・・ツヴァイ!・・・カネス!!」
識別信号既に消えているが、それでも叫ばずにいられなかった。

撃墜されたところを見たわけじゃない。
だが、それでも俺にはわかっていた。
全員死んだんだ、と。
ああ、死んだんだ。
珍しい事じゃない。
今まで腐るほど仲間の死は見てきたし、一々感傷になんか浸るような趣味も持ち合わせていない。
ドラマチックな最後のシーンなんてあるわけもなく、ただ当たり前のように消えていく。
だが・・・それでも・・・

####################

翌年、俺は61式オクトバに乗り換え、その後ゲイザムとも組む事になる。
相変わらずゴルディアスへ潜り、多くの仲間の死を見てきた。
その中で一つだけ、俺の頭にこびりついて離れない言葉がある。
「生き残れ。」
カネスが何の為に死ねないのか。どうして俺に生き残れと言ったのかははっきり覚えていない。
今思えば、生きる目的もなく、死を恐れず突っ走っていた俺へのメッセージだったのかもしれない。

だから、俺は生き延びる。
糞みたいな理由をいくつも都合よく並び立てて、生き延びるんだ・・・!
113名無しになりきれ:2008/09/27(土) 00:22:12 O
>>111
乙乙。ロボ知識0でも読みやすかった。
114知られざる聖戦:2008/09/27(土) 00:27:56 0
太陽系第三惑星地球に存在する島国日本。
その国の首都、東京にアキハバラと呼ばれる場所がある。
世界中の夢見るものたちが訪れる聖地である……はずだった。
だが聖地は、原理主義団体【デオデオーン】に占拠されていた!
“アキハバラは昔ながらの電気街であるべきだ!”と主張する過激派だ。

すぐさま夢見る者たちによって解放軍が結成され4度に渡る解放戦争が行われた。
だがデオデオーンの強大なる軍事力の前に全て失敗に終わった。
しかし5回目は違っていた。解放軍は最強の切り札を手に入れた。
古代兵器ミノさんとそのパイロットのてっちゃん。
何を隠そう、“面白そうだから”という理由で解放軍に強力を申し出た通りすがりの人だ。
しかし二人は滅茶苦茶強かった。

襲い来るテレビ型ロボットや冷蔵庫型ロボットを真っ二つにしながらの快進撃。
ついに敵の本拠地である“デオデオーンアキハバラ店”にたどり着く。
5色の全身タイツや5色のセーラー服を着た解放軍たちが無駄に勇ましく店を取り囲む。
もちろん彼らは戦わずにミノさんを応援していただけだ。
「貴様らは完全に包囲されている!」「降参すれば命だけは助けてやろう!」
その時、デオデオーン本店の1回から10回までを占めるシャッターが開き
激震と共に巨大な電気掃除機が姿を現した!
電気掃除機にとりつけられたスピーカーから声が響き渡る。
『フハハハハハ! よくここまでたどり着いたな……。
私はデオデオーン総帥【ヤマダ】!
そして……これは吸引力の落ちないただ一つの掃除機型機動兵器“DAISON”!
早速だが行くぞ……DAISON最大出力!』
DAISONが周囲の全てを吸い込もうとする! 解放軍達はたまったものではない。
みんな電信柱などにしがみついて必死である。
「なんでデオデオーン総帥のくせにヤマダ!? まあどうでもいいや。
いくぞ、【ストームブリンガー】で応戦だ!」
ミノさんは持っている魔剣の中から嵐を呼ぶ剣、ストームブリンガーを抜き放った。
『そんなもので対抗できると思うなあ!
……あれ? 吸引力が落ちてるぅううううう!?』
解放軍の一人が勝手に解説する。
「解説しよう! DAISONと逆向きの風を起こすことによって風を相殺したのだ!」
「トドメだ!」
振り下ろされた剣によってDAISONは真っ二つになった。
『ぐはぁ!』
勝利の歓喜が辺りを包み込もうとした矢先。荘厳な声が響き渡る。
『ふんっ、少しは使えるかと思ったが……瞬殺ではないか!
仕方がない……人間どもよ、私自ら相手をしてやろう!!』
蝶が脱皮するように、デオデオーン本店が砕け散る!
その中から、神々しいとすら言える光と共に、想像を絶する破壊の使者が現れた……!!

111さんのと同じスレが元ネタだなんてイエナインダヨ! 次回に続く!
115名無しになりきれ:2008/09/27(土) 21:47:42 0
>114
最後の一行が無かったらわからなかったぞwww
続き期待してる
116名無しになりきれ:2008/09/28(日) 00:13:45 O
>>114
魔法機械かと思ったw
117名無しになりきれ:2008/09/28(日) 00:18:14 0
>>114
何と言う心ときめく展開www
参加してぇ
118知られざる聖戦:2008/10/01(水) 00:02:48 0
『我が名はKBYS―SACHIKO(コバヤシサチコ)……』
天使の姿が彫られた巨大な台座の上に、貝殻だろうか。
オーロラのごとき光を帯びる扇が輝いている。
その中心で、一人の女性が純白の翼を広げ立っている。
機体と搭乗者が完全に一体となり、一つの生命体を作り上げていた。
その姿はまさにラスボス。
グーグルでラスボスと検索すると最初に出てくるのは伊達ではないのだ。
解放軍達が勝手に様々な分析を繰り広げる。
「あの機体は……20世紀から21世紀に活躍した伝説の歌手……!?」
「それって超古代では無いような」「乗り手が古代兵器と人機融合を果たしたのか!?」
「よく見ろ! どう見ても17歳以下ではないぞ!」
「じゃあどう説明するんだ!? あれは17歳だ! 17歳とウン百ヶ月だ!」
『その通り……私は歳などとらぬ。なぜなら永遠のスターだから!』
SACHIKOは何を思ったか、マイクを取り出して歌い始めた。
「よく分からないけど行くぞー! 叩き潰すまでだ!!」
巨大なハルバードを振りかざしてSACHIKOに突進するミノさん。
が、古代ロボ【ハチドリ】の大群が空の彼方より飛来し、ミノさんを取り囲む。
「この曲は……“命知らずの渡り鳥”かっ!」
『正解……お主、若いのによく分かったな! いい事を教えてやろう……
私の歌には“力”が宿るのだよ!』
ミノさんが無数のハチドリに手間取っている間に早くもSACHIKOは曲を変えた。
踏み出そうとした時、ミノさんは足が動かないのに気付く。足元が凍り付いている。
しかも、凍結部分は少しずつ全身に侵食しつつあった。
「“流氷哀歌”ッ!? くそっ!」
『フフフ、貴様では伝説の歌手たる私には勝てない。なぜなら貴様は司会者だから!
そのまま冷凍ビーフになるがいい!』
「意味分からん!!」
ついさっきまで勝利を確信していた解放軍達も凍り始め、絶望の淵に立たされていた。
「ヴォク達の聖地はもうお仕舞いなのか……」
「何でもないのに毎日コスプレして撮影会やって……あの頃は楽しかったなあ……」
ミノさんはもはや戦闘不能と判断したSACHIKOは解放軍にむかって語り始める。
『おろかな人間どもよ、冥土の土産に教えてやろう……聖地の真実を!』
「冥土の土産……メイドカフェによく通ったなあ」
「時々メイドカフェ対抗歌合戦なんてやったりして……」
思わぬところから別の物を連想して盛り上がる解放軍たち。
『貴様ら、人の話を聞け! むなしいじゃないか!!』
妄想の世界に入った夢見る者たちはもはや誰も止められない。
「このまま全身凍って終わるのは嫌だ……ヴォク達はこんな歌に負けるのか!?」
「そうだ、歌おうよ。あの日みんなで歌った、私達の歌を!!」
解放軍達は心を一つにして思い出の歌を歌い始めた。
曲名は“メイドさんロックンロール”!
音程のはずれまくった魂の歌声が聖地に響き渡る!
『そのような下手糞な歌で私に対抗できると思ったか!?
もはや勝敗は決している! さあ終わりだ!』
SACHIKOが再びマイクを構えた時。近くの建物が閃光と共に砕け散る!
その場所に立っていたのは、一体の古代ロボだった。そしてメイドでもあった。
そう、20世紀のアキハバラに独自の文化が花開いて以来
数多の物語に登場しながら、決して実現することのなかった存在、メイドロボだった!
「あの建物は確か……東京都立古代文明博物館!」
「確かメイド人形なら展示されてたけど……執事人形と一緒に」
「そうか、メイド人形がヴォク達の歌で目覚めたんだ!
メイド人形は実はメイドロボだったんだよ!」

次回 SACHIKO VS メイドロボ !
注:この話は本編とは多分関係ありません。
119知られざる聖戦の人:2008/10/01(水) 00:04:05 0
>115-117
放置されるかと思いきやまさかこんなに反響が来るとはw
本編ではてっちゃんとミノさんはえらい事になってしまいました。
グーグルで検索したら幸子さんが最初に出てくるのは本当です。
ちなみに魔法機械はいつでも参加大歓迎です。
120名無しになりきれ:2008/10/01(水) 12:02:25 O
>>119
小林幸子吹いたwいいぞもっとやれ
121フラグ講座:2008/10/01(水) 23:18:59 0
(元ネタ魔法少女5避難所2 193.198)

ラルヴァ「ラルヴァと」
キサカ「キサカの」
二人「フラグ講座〜」
キ「というわけで現時刻を以って始まります「ラルヴァ&キサカのフラグ講座」」
ラ「司会はこの私、「本番数分前まで本気なのかドッキリなのかわからなかった」ラルヴァ・ケラスと」
キ「「報酬に釣られてスタッフにホイホイついてきた」キサカがお送りします。
  とはいえプロデューサーが拾ったネタ帳から始まったこの企画、
  まさか元ネタ主も実現するとは思っていなかったでしょうね」
ラ「ところでほとんどぶっつけ本番で始まったのでカンペ前提の番組ですが、
  その辺キサカさんどう思います?」
キ「「面白ければいいじゃない」の一言に尽きますね。グダグダ喋ってるとギャラに響き得ますので
  とりあえず始めたいと思います」
ラ「では早速行きましょうまずは一つ目」

【シーン1】
敵「ヒャッハーここは通さないぜェーッ!」

ラ「・・・これは死にますね」
キ「というよりもう死んでますね。たわらばー」
ラ「コーラを飲んだらゲップが出るくらい確実に死んでますね」
キ「では次のフラグ」

【シーン2】
女「私・・・この戦いが終わったら、あなたに伝えたいことがあるの。だから必ず帰ってきて」
男「女・・・」

キ「リア充とかマジ死ねよ」
ラ「いきなりそういうこと言わないで下さいスタッフ引いてます」
キ「口元を押さえて俯きながら震えてる奴がいるのは気のせいですかそうですか」
ラ「で、フラグとしてはどう思いますか?普通に男死亡フラグな気もしますが」
キ「これはむしろ男が負傷して帰ってきて
  「怪我するなんてあなたらしくないわね・・・でも・・・
   でも、帰ってきてくれて本当に良かった・・・!」
  みたいな流れになるんじゃないでしょうか」
ラ「変化球ですねぇ。ボク嫌いじゃありませんよそういう恋愛小説みたいな流れ」
キ「「もう全部終わったんだ。だからそんな顔するな」
  「・・・男、私ね・・・ずっと、あなたのことを・・・」」
ラ「ラブロマンス!」
キ「ラブロマンス!」
ラ「ジュッテーム!」
キ「オールヴォワール!」

【シーン3】
敵「そろそろとどめを刺してやろう・・・」

キ「刺せませんね」
ラ「むしろこいつが刺されます」
キ「「こんなところで死ねるかよ・・・!
   この程度死んだら、アイツに合わす顔がねぇんだよ!」」
ラ「これはいい熱血。ピンチで覚醒するのは主人公枠の特権です」
キ「そんなことはないです。断じて」
122名無しになりきれ:2008/10/01(水) 23:19:59 0
【シーン4】
馬鹿「殺人犯がいるかもしれない部屋で寝れるかよ!!俺は一人で寝るぜ!」

キ「一昔前のサスペンスのお約束乙」
ラ「実はこいつが犯人だったとかいう変化球は無いものでしょうか」
キ「また随分と斜め上ですね」

【シーン5】
(ベッドの上で目覚めて)
主人公「あれ・・・夢・・だったのか」

ラ「しかし枕元には彼女から貰った花が!」
キ「むしろ毛布の中にヒロインが寝ているのを希望します。半裸で」
ラ「エロ過ぎるのはよくないと思います」
キ「ハーレム野郎が何言ってんだ貴様」
スタッフカンペ(キサカ!口調!口調―!)

【シーン6】
敵「悪いが一瞬で終わらせてもらう」

ラ「折角決めたのに思わぬ反撃に苦戦した挙句逆転されるフラグですね」
キ「というか物理的に無理でしょう常考。喋ってる暇があったら攻撃しろと」
ラ「「ブッ殺す」と心の中で思った時!」
キ「既にその行動は終わっているんだッ!」

【シーン7】
女「あ〜!腹が立つ!アイツってほんと最低ね!」

キ「しかしそれは恋」
ラ「嫌よ嫌よも好きの内って言いますよね」
キ「「アイツと二人っきりってだけで・・・
   どうしてこんなにドキドキするんだろう・・・」
ラ「ラブロマンス!」
キ「ラブロマ(ry」



キ「さて、そろそろお時間のようです」
ラ「あっという間でしたね。実際大して時間も経ってないみたいですが」
キ「そもそもこの番組自体が一発ネタみたいなものですし」
ラ「給与明細見て涙腺が緩んでも知りませんよ」
キ「現物支給ですので問題ないと思います。今日はどうもありがとうございました」
ラ「皆さんも自分の言動には責任を持ちましょう。ではごきげんよう」


 この番組は
  ベアトリ薬局
  シュガーローン
  ハカタの死王
 の提供でお送りしました
123名無しになりきれ:2008/10/01(水) 23:20:50 0
【番組終了後 楽屋】

キ「ところでラルヴァ、ちょっと訪ねたいことがあるんだが」
ラ「何?」
キ「この雑誌の切り抜きなんだけどさ」

  『週刊女性フィジル』

本誌独占インタビューに成功!!
「僕はキョニュリストだから・・・勃つか心配です。」
メラルの炉乳をラルヴァが斬る!
赤裸々に語るラルヴァの巨乳への想い・・・

キ「なにこれ」
ラ「いや、なにと言われても・・・えーっと」
キ「何?信者に喧嘩売ってるの?死ぬの?」
ラ「いや、そういうわけじゃなくてさ、ただ単に好みの問題で」
キ「尚更だ馬鹿野郎いいかよく聞け。幼女は可愛い。可愛いは正義。
  よって幼女は正義という世界最強の三段活用があってだな・・・」
124121-123:2008/10/01(水) 23:21:44 0
聖戦の人のセンスにSHIT

また魔法少女かと言われようと
書きたいものを書くのが書き手のジャスティス
二人とも早く帰って来い
125名無しになりきれ:2008/10/01(水) 23:36:48 0
>>124
これは良いフラグ講座
腹がよじれるほどワロタお
>>123の後まだ続くかと思ったがここで終わりなのか、残念



本当に二人ともカムバック
126名無しになりきれ:2008/10/02(木) 00:25:35 O
>フラグ講座
コーヒー吹いたw
キャラ立ってていいと思うのだが
2人とも戻ってくればいいのにな

最近ここも活気が出てきたのは良い事だ
127やっつけ仕事:2008/10/02(木) 01:31:40 O
無限に広がる大宇宙。
使い古された表現ではあるが、事実を伝える歴史を超えた名言である。
そして、そんな大宇宙に輝く☆の周りを、宇宙遊泳で回っている金色の男が一人いた。
神魔小帝の仕掛けた【へ爆弾】で吹き飛ばされた怪人、スーパーアルミマンその人である。
ただし、スーパーアルミマンでは名前が長すぎるので、以後はアルミ怪人で統一する。
「はぁ‥‥オラはどうしたらいいだーよ‥‥」
思わず漏れた言葉からも分かるように、別にアルミ怪人は遊んでいるわけではない。
神魔大帝の技術は超技術であり、アルミ怪人も宇宙を泳いで☆に帰る程度は簡単にやってのける。
しかしである。アルミ怪人を正義に目覚めさせた男からの連絡がまだ無いのだ。
今その男はアルミ怪人と融合し、爆弾を解除するため奮闘している。
もしアルミ怪人が地上に帰っても、未処理の爆弾が爆発したら、他人に迷惑をかけてしまうのだ!

「待たせたなアルミ怪人!お前の体内にはもう爆弾は残っていないぜ!」
アルミ怪人が何度目のため息をついた時だろうか。
ついに正義の男、Mrアルティメイターの声が、アルミ怪人の頭脳チップに響いてきた。
「これでもう☆に帰っても大丈夫だ!さあ、速く帰って平和のために戦おう!」
「ついに‥‥ついにやってくれただか?!敵だったオラのためにこんなに時間をかけて‥‥」「気にするなアルミ怪人!オレたちはもう正義を愛する仲間じゃないか!
仲間のためならオレはどんな犠牲でも払ってやるぜ!」
感動的なシーンなので、アルティメイターが遅れたのは体内で道に迷っていただけであるのは忘れてほしい。
現にアルミ怪人もモーレツに感動し、正義のために侵略者と戦うことを再度心に誓っているのだから。
「わかっただよ!早速☆さ帰って神魔大帝と戦うだ!」
そう決めたアルミ怪人は平泳ぎで宇宙を☆目指して泳ぎ始めた。

悲劇が起こったのはその後、もうすぐ☆の大気圏に突入できる寸前の場所だった。
「どうした?!大丈夫かアルミ怪人?!」
アルミ怪人と融合していたアルティメイターは、アルミ怪人のパワーがどんどん減っていることに気づいた。
「だ‥‥大丈夫だよ‥‥。なんとしてもお前さんだけは☆に届けるだ‥‥」
返事をするアルミ怪人の声も、決意表明とは裏腹に弱々しいものだった。
長い宇宙漂流の間に、動力源であるアルミ分が尽きかけていたのだ。
このままでは大気圏に突入しても、アルミ怪人の体は衝撃に耐えきれず破壊されるだろう。

「無茶をするなアルミ怪人!今大気圏に突っ込んでも無駄死にするだけだ!
‥‥あ!あそこに何かあるぞ!もしかしたらアルミがあるかもしれない!」
アルミ怪人と融合しているアルティメイターは、宇宙空間にある不思議な物体に気づく。
2人が近づいてみると、それは自動販売機だった。
たぶん宇宙を旅する宇宙人達のために用意されたのだろう。
「やったぜアルミ怪人!缶ジュースを買えばアルミ缶が手に入る!」
「助かっただ!ちょうど小銭入りの財布も持ってるだよ!」
はやる気持ちを抑え、アルミ怪人は小銭を入れてボタンを押した。
ガタンと音がして、ゲルマニウムジュースの缶が転がり落ちてきた。
スチール缶だった。
「し、しまっただーよ!オラしてはいけないことをしてしまっただー!!」
「落ち着けアルミ怪人!残っている小銭で別のジュースを買うんだ!」
「それが残っているのは一円玉9枚だけなんだべ!もうおしまいだーよー!」
それを聞いたMrアルティメイターは叫んだ。
「それだ!!」

こうして、アルミ怪人とMrアルティメイターは無事に☆に帰ってきた。
一円玉はアルミでできていたのだ 。
だがゆっくりはしていられない。
神魔大帝の侵略の魔の手はすでに☆の各地に延びている。
戦えアルティメイター!
戦えアルミ怪人!
正義のために!!
128名無しになりきれ:2008/10/02(木) 01:50:44 O
改行ミス‥‥やはりやっつけ仕事はイクないな‥‥
129名無しになりきれ:2008/10/02(木) 19:46:51 0
>>121-123
これはいいGJ

>>127
GJ

機械が今どうなってるか全く把握できない
あれは特撮モノなのか?
つかリレー小説?
教えてえろい人
130機械の人:2008/10/02(木) 20:35:40 0
>>124
SHITだなんてありがとう! でもフラグ講座も負けてないよ!

>>127
アル×2!! そんな所にいたのかあ! 早く帰って来い!!

……つい取り乱してしまった。超GJです!

>>129
それは難しい質問だ……! 今のところギャグが9割シリアス1割
特撮風だけど流れによっては魔王を倒す冒険ファンタジー風になるかもしれない!
一応他人のキャラは動かさないけどNPC大量投入の結果
リレー小説に近い状態だから参加者ですら話がどんな方向に行くか予想不可能だ!
131名無しになりきれ:2008/10/03(金) 07:35:23 0
>>130
解説ありがとう
ギャグは好きなんだけど、リレー小説はどうにも不得手だからなあ
切れの良いところで参加するかどうか考えてみるよ
132名無しになりきれ:2008/10/03(金) 21:38:09 O
【亡霊、故郷へ帰る @】

エレクトラは焦っていた。残弾は尽き、既に味方は大半が死んでしまった。
これ以上戦闘の続行は不可能、隊員の誰もがそう思っている。
しかし遺跡災害救助部隊隊長のエレクトラは、ただ続行を指示した。
彼女には退けない理由が在った。

――1日前
「これで7件目だぞ!?エル!どうして俺達に出撃命令が出ないんだ!!」
ランディ=ノーマンは苛立ちを拳に込めて机を叩いた。
ここ数日の間、遺跡から現われた襲撃者に地方都市が連続して攻撃を受けている。
《眠らない者》と呼称されている、遺跡の生み出した亡霊だ。
遺跡内で撃墜された機体が、何らかの影響を受ける事によって亡霊は誕生する。
この遺跡災害救助部隊が設立に至った真の目的が、亡霊の発生阻止と討伐だった。
「仕方ないよ、上が命令しないんだもん。」
隊長のエレクトラ=キング中尉が、眠たげな目を擦りながら答えた。
どうやら昨夜は一睡もしていないらしく、朝から何度も欠伸を繰り返している。
そんなやる気の無い態度にランディの苛立ちが更に募っていく。

遺跡災害救助部隊の担当区域は、ネイアラ周辺と遺跡の周囲50km四方。
今回現われた亡霊は遺跡から真直ぐに北上し続け、途中に点在する都市を襲っていた。
当然ながら担当区域の外に部隊が出撃する事は出来ない。
遺跡内のトラブルにも対応しなければならない部隊が、遺跡から離れる訳にはいかない。
それが分かっていても、ランディには割り切れなかった。
「でもよ!最初に戦ったのは俺達だぞ!?」
「まんまと逃げられたのも、ね。」
あっさりと返され、ランディが言葉に詰まる。何か言いたげな顔だが、堪えた。
「とにかく、今のアタシ達に出撃命令は出ないよ。」

エレクトラの言葉にも、少々の苛立ちが混る。このやり取りは今朝から6回目。
流石にいい加減うんざりしても仕方ないだろう。
しかし、実際に今回の件に対して最も執着していたのは、他ならぬエレクトラだった。
今回の亡霊に付けられた名前は“一本腕(アインハンダー)”。
その名の通り、右腕が存在しない隻腕の機体だ。
彼女は丁度休暇中で、その場には居合わせなかったが、撮影された映像を見て驚愕した。

“一本腕”は、3年半前に死んだ兄…カネス=キングの機体だったからだ。

133名無しになりきれ:2008/10/03(金) 22:25:31 0
カオス=キングの間違いでしたすいません
134 ◆GtzExfc62I :2008/10/04(土) 18:00:19 O
【亡霊、故郷へ帰る A】

「エル、やっぱり一旦引き返して態勢を立て直すべきじゃないか!?」
「だったらアンタ達だけ帰れ!!アタシは戦うよ!!!」
通信を切ると再び“一本腕”に向かって白兵戦を仕掛けに飛び立つエレクトラ。
予想外の怒号にランディは呆然としたまま、彼女が駆るハーディYの背中を見送った。
もう市街地まで2kmを切った。月面で最大の人口を誇る、企業都市バエトゥサ。
“一本腕”は遺跡からまっすぐにこのバエトゥサを目指していたのだ。

――2時間前
軍司令部から出撃許可が下りたのは、“一本腕”がバエトゥサの南東に現われた時だった。
そこに至るまでに配備された部隊は全て壊滅し、緊急の増援要請が入ったのである。
「ジャン、バネッサ、ポールはフォワード。ミシェル、ネイは3人をカバーしな!!」
『『『『『了解(ヤー)!!』』』』』
ハンガーから輸送機にドッキングされる各機に、エレクトラの指示が飛ぶ。
「ナッシュ、ピート、アンタ達2人は“一本腕”を誘導。分かった!?」
『任せな、姐御。』『了解した。』
次々に機体が輸送機に吊り下げられていく。
「ランディ!状況に合わせて動きな!!」
『おう!任せとけ!』
遺跡災害救助部隊9名の機体全てが、大型輸送機TF-00X2“フロッグマン”に接続完了。
かくして、遺跡災害救助部隊の9人は悪夢の様な激戦の地へと向かって飛び立った。


レーザーソード同士の激突が、眩い光の大花を咲かせる。
残弾の無いハーディYに残された武装は、腕部内蔵型のレーザーソードのみ。
対して“一本腕”にはまだまだ火器が豊富だった。
亡霊は“弾切れ”しない。弾薬はその体の中で無尽蔵に生成されるのだ。
どのような原理で生成を行なっているのかは、未だに解析されていない。
亡霊は破壊されるとドロドロに溶けて消滅してしまう。
このせいで発生した事例の数の割に、亡霊の構造や生態メカニズムは未知のままなのだ。

エレクトラは焦っていた。明らかに分が悪過ぎる戦いだ。
ハーディYに乗換える前は高機動型のスティンガーが愛騎だった。
軍用機の中でも最高クラスの速度を持つスティンガーに比べてハーディYは砲戦機。
機体の俊敏性がまるで違う。対して“一本腕”の素体となったのはAM-Vas2“アスカロン”。
ボルティック社の高機動型AMで、兄カネスが最高の機体と称賛した格闘機。
亡霊化の際に他の残骸を取り込んだのだろう、本来存在しない多数の火器まで備わっている。
まともに戦ったところで勝機は無きに等しい。

今や戦いの流れは完全に“一本腕”が支配していた。
火力、装甲、機動性、全てが桁外れだった。このままでは全滅は間違いない。
135名無しになりきれ:2008/10/04(土) 21:35:52 0
エルは1日1レス投下なのか・・・まとめて一気に読みたかったな
136名無しになりきれ:2008/10/04(土) 22:32:16 0
気持ちはわかるが携帯でかいているのに纏めてを望むのは酷だろう。
137知られざる聖戦:2008/10/05(日) 00:48:39 0
現れた希望の星、メイドロボが歩き出す。次の瞬間、電線に躓いて転んだ。
解放軍たちの野次が飛ぶ。
「ウボァーーーーー!」「ダメじゃん!」
ミノさんの中のてっちゃんも頭を抱えていた。
「何やってんだよメイドロボ! 役立たずなら思わせぶりに出てくんなよ!」
その時、突然モニターに画面が移る。
執事服を着た少年が淡々とした口調で語る。
「接触が悪くてうまく動けない。対処方法を30文字以内で簡潔に述べよ」
「……誰!?」
「メイドロボに搭載された“超絶高度な”演算装置だ。
早く対処法を述べてほしい。この街を守りたいのだろう!」
頭が可哀想な人の対処に困るてっちゃんであった。思わず通信を送る。
『メイドロボに乗ってる変な人が接触が悪いって言ってます。どうすれバインダー!!』

一方、SACHIKOはメイドロボは戦力外と判断。放置して次の曲を歌い始める。
曲名は……“大江戸喧嘩華”! 空間に次元の歪みが生じ、空に穴が開く!
その中から、何かの大群が飛来する! 
両手には8トンと書いたハンマー。背中には「打ちこわし」という無駄に力強い筆文字。
そして何より、フンドシ一丁、筋肉隆々の漢達! 通称筋肉隊!
「皆の衆―! 大江戸打ちこわしだ!」
「「「ウェーーーイ!!」」」
筋肉隊が両手に持つ8トンハンマーで建造物を破壊していく。
ちなみに、今までの戦いでとっくに破壊されていたのではないかと言うツッコミは禁止だ。
「ああ、ヴォク達の街が!」「い……嫌ああああああああああっ!!」
その光景を見てSACHIKOが歓喜の声を上げる。
『もうすぐ、もうすぐここが美しい演歌の聖地として生まれ変わる!
お前たちは演歌の神たる私を永遠に崇め続けるのだ……!!』
そこで解放軍の一人があることに気付いた。
「なんで歌ってるはずなのに喋ってるの?」
『しまった! テープに録音していたのがバレてしまった! ……貴様らゆるさん!!』
筋肉隊の長らしき人物がバチで太鼓を打ち鳴らし始め、打ち壊しはさらに激化していく!

さらに一方、壊れた掃除機からデオデオーン総帥ヤマダが這い出つつあった。
「ちくしょーSACHIKOめ……電気の街にするというから協力してやったのに
だましやがったな! しかし通信機から聞こえた接触が悪いと言う叫びは一体……ん?」
その時彼の目に映ったものは、一体のメイドロボであった。
「美しい……なんて美しいのだろう!」
彼の頬を一筋の涙が伝っていく。

思い出すのは、メイドロボに憧れ、自らの手で理想のメイドロボを作ろうと奮闘した日々。
でも彼にはどうしても作れなかった。手に入らないのならばいっそ忘れてしまいたい!
そう思ったときに現れたのが、SACHIKOだった……。

しかし今、夢にまで見た理想のメイドロボが目の前にあった。
「ああ、私は間違っていたのだな……やっぱりメイドは……最高だ!!」
ヤマダはメガホンを手に取り、力の限り叫んだ。
「頭を叩けええええ!! 古代のテレビは接触が悪いときは叩けば直ったそうだ!
だから古代ロボも叩けば直るはずだ!!」

……次回こそSAXHIKO VS メイドロボ!
138名無しになりきれ:2008/10/05(日) 11:59:16 O
>>133
gj

>>136
ヒント>>133

>>137
これはひどいgj
139 ◆GtzExfc62I :2008/10/05(日) 23:58:45 O
【亡霊、故郷へ帰る B】

最初に死んだのは、フォワードを務めたバネッサだった。
凄まじい速度で間合いを詰められた後、レーザーソードで串刺しにされた。
次に死んだのが同じくフォワードのポールだ。
バネッサ機の隣りにいたために、横薙ぎの一振りで機体を真っ二つにされた。
続けて後方にてカバーに回っていたミシェルが、ミサイルの雨に爆散した。

“一本腕”を補足してから僅か10秒足らずの間に3人が死んだ。

「クソッタレがあああ!!!」
仲間の死に激昂したナッシュがプラズマストロークを展開し、全速で“一本腕”に肉薄する。
完璧に捕捉していた筈だった。ナッシュ自身も当たると確信していた。
しかし当たらなかったのだ!!空を切る雷光が、都市の外壁を抉り取った。
「ば、バカなッ!!何で当たらな…」
それがナッシュの最後の言葉となる。コックピットを貫くのは禍々しい光の刃。

「みんな!散って!!」
エレクトラの指示で各機が同時に散開する。出鼻をへし折られたまま全滅は避けたい。
この判断は正しい。しかしそれは相手が“常識の範疇”だった場合に限る。
散開と同時に放たれたミサイルの嵐がフォーメーションを掻き乱す。
「くそ!マジで化物かよ!!」
ミサイルを振り切ったジャンが青褪めた顔で悪態をつく。
「隊長、今から仕掛けうああああ!!!!」
体勢を立て直した直後、ジャンの機体が縦に両断された。

一方的な殺戮だった。戦闘開始から52秒で9人いた部隊は4人になった。

各機が距離を取り、射撃戦主体に切り替える。接近戦は無謀と判断したのだ。
射撃による包囲戦術は確かに効果があった。
“一本腕”は射撃戦よりも接近戦の方が優れていたからだ。
誰かが距離を詰められたら、他のメンバーが背後に回って“一本腕”を攻撃する。
シンプルだが確実にダメージを与えられた。


弾薬が尽きるまでの間は…
140 ◆GtzExfc62I :2008/10/06(月) 22:05:43 O
【亡霊、故郷へ帰る C】

戦闘開始から30分が経過しても尚、“一本腕”とエレクトラの一騎打ちは終わらない。
ハーディYのエネルギー残量は既に20%を下回っている。
これ程の長時間戦闘はエレクトラにとって初めての経験だった。
機体各部が限界に達して悲鳴を上げ、モニタに映るダメージ警告表示は数知れず。
「アタシがやらなきゃダメなんだ…アタシでなきゃ…」
エレクトラは、まるでうなされているかのように繰り返し呟く。

父親代わりだった兄、たった1人の肉親だった兄、エレクトラを残して死んだ兄…
2年前に機体の残骸を見た時から、死んだと…もう帰って来ないと割り切った兄…
その兄が変わり果てた姿となって対峙している。
(兄さん…アタシはね、悔しいんだよ。)
頬を伝う涙が幾重にも重なって、パイロットスーツを濡らしていく。
(こんな形でしか会えなかった事が…戦う事でしか兄さんを楽にしてあげられないのが!!)

ギィイイイイイイインッ!!!

鋼の焼き切れる音が、月の夜空に響き渡った。
ハーディYの肩部装甲が斬り飛ばされ、数百m離れた地面で土煙を巻き上げる。
“一本腕”の上腕部がレーザーソードに貫かれ、小さな火花が乱れ散る。
互いに微動だにせず。
剣が交差した瞬間のまま、時が停まった様に。
やがて火花が消え、光剣の熱で溶けたことで僅かに繋がっていた腕が地面に落ちた。

「ねぇ兄さん、帰って来たんだよ。バエトゥサにさ…」
“一本腕”のモノアイが青白い輝きを失った。次々に機体各部の光が消えていく。
永劫に思えた31分間の終着だった。
1本しかない腕が切り落とされた今、“一本腕”は敗北を認めたのだ。
「変わってないでしょ?街の灯も、あの高い壁も…」
ハッチを開けてエレクトラが外に出る。月面の夜風は冷たかった。
「アタシはね…兄さんがあの壁の……向こう側に行く度に…辛かったよ?」
乾いた夜風が、掠れて震える声と、こぼれた涙を散らして行った。

「エルは何やってんだ!?奴の動力反応はまだ消えてないんだぞ!!」
ランディがエレクトラの奇妙な行動に眉をしかめた。
いくら主力武装を失ったとは言っても、まだ“一本腕”には多数の火器が残っている。
それなのにエレクトラはコックピットを出た。今襲われたら確実に助からない。
「ダメね、隊長ったら通信を遮断してるわ。…ってどうしたの!?ランディ!!」
ネイが声を掛けたが、それを無視してランディが急発進する。
「ちょっとランディ!何する気!?隊長は外に出てるのよ!?」


ランディには認める事が出来なかった。
仲間の死も、自分の弱さも、そして…この戦いの決着も。
141名無しになりきれ:2008/10/07(火) 20:50:51 0
ノインはどうしたんだ?
142 ◆GtzExfc62I :2008/10/07(火) 22:08:10 O
【亡霊、故郷へ帰る D】

“一本腕”の肩が轟音と共に消し飛んだ。ランディのバルカンが命中したからだ。
爆風に煽られてエレクトラはコックピットに転がり落ちる。
消えていた“一本腕”のモノアイに再び蒼い輝きが燈り、“敵”に向き直った。
突然の出来事にエレクトラは事態を把握するのが遅れてしまう。
この時間にして僅か1秒足らずの遅れですら、戦場で死ぬには充分過ぎる時間だ。
「な、何!?誰がやったの!?」
ハッチを閉じるとあちこち痛む身体を無視してエレクトラは機体を立て直す。
「俺だよバカ!!奴はまだ動けるんだぞ!?」
通信モニタに怒りで歪むランディの顔が映る。
「これでトドメだ!エルはそこをどいてろ!!仲間の死を無駄にできるか!!」
残るエネルギーを全て注ぎ込むプラズマストロークが、電光に包まれた。

約4000ギガワットの超電圧を掌から直接叩き込む、スティンガーの必殺兵器。
莫大なエネルギー消費のリスクを差し引いたとしてもその威力は魅力的だ。
たった1機のAMで戦艦を撃墜出来る程の破壊力なのだ。
如何に亡霊とはいえ、直撃すれば文字通り『消え去る』だろう。

(嘘…何やってんだろ、アタシ…)
まるで“一本腕”を庇う様に、電位熱で白く輝く手の前へ割り込むハーディY。
“死”が迫って来る。時間の流れが急激に停滞する感覚。
避けられない“死”を前に、エレクトラの全神経が極限まで研ぎ澄まされた。

その瞬間、様々な事が同時に起きる。

死に抗う本能が、その意思を振り切った。ハーディYのレーザーソードが閃く。
己を庇った妹を守るかのように、“一本腕”が加速する。
仲間の命を奪った仇敵に、裁きの雷が唸りを上げて突き進む。

レーザーソードがスティンガーのコックピットを貫き…
亡霊の右半身が雷光によって蒸発し…
突き飛ばされた衝撃に、ハーディYのレーザーソードがスティンガーから引き抜かれ…
反動で転倒した瞬間、その剣は…“一本腕”を横一文字に斬り裂いた。


――1日後
昨日の戦闘は軍上層部の会議によって、記録から抹消された。
それどころか、亡霊に関する全ての情報と資料、並びに戦闘記録も同じく抹消される。
エレクトラ=キング中尉は一週間の謹慎処分となり、同時に遺跡災害救助部隊は解体。
この日を境に軍内部での大規模な組織再編成が始まり、遺跡は更なる激戦の舞台となっていく…


――1ヶ月後、月面軍第六基地
「おい、次は本気出せよ?」
模擬戦が終わった後、基地の廊下を歩いてたら待構えてた男に声を掛けられた。
「本気だったよ、じゃあね。」
嘘だ。本当は手を抜いてた。接近戦に持ち込んだら勝ってたかもね。
コイツはアタシが一度も格闘レンジで競合わなかったのが不満なんだろう。
「アタシは射撃“にも”自信があったんだ。だからアンタはちゃんと勝ったよ。」

この男…ジェリド=ミラ=カクーラー大尉は本物の天才だ。
だってアタシが撃った弾薬全弾全種合計1488発、これを全部躱したんだからね。
コイツとはいつか本気で斬り合いたいと、ずっと前から思ってた…
でも、アタシは二度と接近戦はしない。したくても…多分出来ない。


…大切な仲間と、たった1人の兄貴を斬り殺したあの瞬間を思い出すだろうから。

             【亡霊、故郷へ帰る 完】
143名無しになりきれ:2008/10/07(火) 23:09:42 0
>>142
超絶乙!
なんか詰め込み駆け足な感じがしたけど面白かった!
本編も頑張れよ
144名無しになりきれ:2008/10/09(木) 22:21:08 0
57点
145名無しになりきれ:2008/10/09(木) 23:12:24 0
このスレの最高点とその作品についてkwsk
146名無しになりきれ:2008/10/09(木) 23:33:26 0
57点満点で57点だ
147名無しになりきれ:2008/10/10(金) 14:21:51 0
クロスエイジのSSをもっと読みたい
148名無しになりきれ:2008/10/10(金) 23:24:56 0
>>145が必死な件
149知られざる聖戦:2008/10/13(月) 00:32:05 0
「叩けばいいのか……」
叩けばいいと言ってもミノさんの怪力で叩くとぶっこわれる。
ハルバード使いのくせに、珍しい剣コレクターのミノさんは
剣の束の中からあれでもないこれでもないと探したあと一本の剣を取り出した。
魔剣エクスカリパー、相手に必ず1ダメージを与えるという恐ろしい剣である。
「うりゃあ!!」
気合一閃、魂の一撃が炸裂する! メイドロボに1のダメージ!
メイドロボはシャキーンと立ち上がった。
「人々の夢が集う神聖なる聖地を冒涜する不届き者め……覚悟!」
モップ型ロッドつきつけて戦線布告するメイドロボに
思わずツッコミを入れるSACHIKO。
『バカな……貴様は20世紀のテレビか!?』
メイドロボはロッドで空間に意味ありげな模様を描き始めた。
解放軍達は大興奮である。
「うおおおおおおお!!キタキタキターーーーーーー!!」
てっちゃんは未だに頭を抱えていた。
「こいつらに任せといていいのかな……でも足元凍ってて動けないし……」
そんな彼に、メイドロボの自称超絶高度な演算装置は
勝手に通信を入れて一方的に解説を始める。
「これより行使するはご当地限定の禁じられた召喚術! 異界への門を開き……」
「やめられないのか!? とてつもなく嫌な予感がする……!」
そんな事を言っている間に非情にも法陣は完成し、空間が歪む!
そこから現れたのは、世にも恐ろしい者達だった……!
メイド服を着たマッチョの大群! 通称チーム・マッチョメイド!
チームマッチョメイドの班長らしき人物がパチンと指を鳴らす。
「みんな、用意はいい? ミュージックスタート♪」
チームマッチョメイドは、美少女がやったら可愛いであろう踊りを踊り始めた。
しかしこいつらはマッチョ。この世の終わり、まさに冥土。
その名も、破滅の萌え萌えダンス!
『愚かな……フンドシこそが古来より日本の正装……!
筋肉隊よ、“炎の漢祭”で迎え撃て!! 汚らわしいメイドどもを焼き尽くすのだ……!』
炎の漢祭が発する凄まじい暑苦しさと
破滅の萌え萌えダンスの想像を絶するむさ苦しさが激突する!
それはまさに、いろんな意味で人知を超えた力のぶつかり合い!
無駄だと分かっていてもつい聞いてしまうてっちゃん。
「勝てるのか!?」
メイドロボのパイロットは無駄に自身に満ちた顔で答えた。
「マッチョという点では互角だ……。だったらメイド服がフンドシに負けるわけがない!」

その頃、日本中がこの未曾有の出来事に震撼していた。
『き、きききき緊急ニュースをお伝えします!
解放戦争中の東京秋葉原を異様な力場が覆っています!
中で何が起こっているのか全く見えません!
時折凄まじい謎のエネルギーが放出されています!』
150知られざる聖戦:2008/10/13(月) 00:32:53 0
長い長い戦いの末、決着の時は来た。
SACHIKOを取り囲むマッチョメイド達。おもむろにハサミを取り出す。
『寄るな……触るな……やめろおおおおおおおおお!!』
マッチョメイド達は、手に持ったハサミでSACHIKOの電気配線を切断した!
――――私は演歌の神だ……バカなあああああああああああああああ!!
断末魔の叫びと共に、SACHIKOは光の粒となって消えていく。
そこに残ったのは、一人の少女だった。
SACHIKOの呪縛から解き放たれ、随分若返っている。
「SACHIKO……!! ひどいよ……
契約したら……私を……歌手デビューさせてくれるって言ったじゃない……」
泣き出す彼女に、マッチョメイドの長が歩み寄る。
「あなたが歌いたい歌は演歌じゃないのでしょう? あなたが本当に歌いたいのは……」
マッチョメイドが指を振ると、少女の体を光が包みこむ。
次の瞬間、少女はメイド服を着ていた。
マッチョメイドの長は隊員たちへ声をかける。
「さあ、帰りましょう。アタシ達の在るべきところへ」
在るべきところへと消えていくマッチョメイド達。
彼らが消えた時、その場所に残っていたのは……30枚のメイド服だった。
解放軍たちがメイド服を着た少女を取り囲む。
「あの……私……私……!!」
微笑んで手を差し伸べる解放軍。
「いいんだ、何も言わなくていい……さあ、ヴォク達と一緒に歌おう!」
「え……!?」

その後、AKB31という歌手グループが一世を風靡することになる!

そして……聖地を救った英雄たちはというと……なし崩し的に一緒に旅をしていた。
「お前らの名前KEIとかMOEとかややこしーんだよ。
執事コンピューターの方は秋葉系、メイドロボは秋葉萌な!」
「うん、悪くないね」「可愛いお!気に入ったお!」
「いいだろ? ちなみに秋葉系ってこの間の解放軍みたいな奴のことだから!」
「なんだと……!? MOE……合体だー!!」

―――――――――――――――――――――

モエ「ふぅ……出来ますた」
ケイ「何書いたの?」
モエ「モエ達がこの時代に目覚めた時の話です」
(数秒後)
ケイ「…………有り得ないし! 最初から最後まで全部滅茶苦茶だし!
僕こんな変なセリフ言わないし!」
モエ「そんなことないです! 事実を忠実に再現しただけです!」

真相は藪の中……。 完!!
151名無しになりきれ:2008/10/13(月) 17:27:38 O
>>150
GJ面白かった!
ケイモエの意味がよく分かったよw
152名無しになりきれ:2008/10/14(火) 23:25:05 0
a
153夜+鳥 ◆NUE/UO/DFI :2008/10/17(金) 22:45:16 0
【5年後物語・プロローグ】

一通の手紙は、全てを越え
一通の手紙は、全てを見つけ
一通の手紙は、全てを伝え
魔の者どもを繋ぎ止める
友情と言う名の繋がりを以って
154夜+鳥 ◆NUE/UO/DFI :2008/10/17(金) 22:45:22 0
【5年後物語・中央大陸東部三諸国連合】

中央大陸東部。
周辺三ヶ国にまたがる森。
その森は大森林や樹海と言われるような大きな森ではない。
大人の足で三日もあれば縦断出来てしまう程度の森である。
しかしその森は最近二人の魔女が住み着き、変質してしまった。
普通に入っていけば何事もなく通り過ぎられる。
だが、邪な心積もりで入ると、森は牙を剥き翻弄された挙句森の外へと叩き出されてしまうという。
しかし、魔女に気に入られれば世界で類を見ないほどの薬と毒の庭園に辿り着く。
そして万病に効く薬や、調停ごとをスムーズにこなす助言をえられると言う。

噂を頼りに病人や薬問屋、闇のドラッグ組織などが森へと向かう。
だが、今ここにはそのような者達はいない。
代わりに、三ヶ国合同討伐軍が陣を敷いていた。

########################################

事の発端は嵐から始まった。
中央大陸東部に位置する三ヶ国をまたいで嵐は突然沸き起こり、猛威を振るい続けた。
一ヶ月にも及ぶ嵐が明け、人々が復興に取り掛かろうとしていたときに・・・

現われたのは一人の魔女。
言葉巧みに人心を操り、三ヶ国の王子達を誑かし、籠絡させる。
王子達を虜にした魔女は面白半分に国を混乱に陥れるのだった。
次世代をになう三ヶ国の王子達は堅い友情で結ばれていたが、一人の魔女を巡って対立し始める。
対立は次第に大きくなり、ついに三人の王子達は決闘に至るまでになった。

「私の為に殿方がいがみ合うのは耐えられないわぁん。
戦いを止めるのだけが私に出来る精一杯の手向けよ〜。
私がいては三人の仲も悪くなるからここから去りますわ。」
決闘の場で魔女は術をかけ、去っていった。
魔女の術により、三王子の決闘は回避された。
しかし、その回避方法が問題であった。
それぞれの王子は自分の事をそれぞれ蛇、蛙、蛞蝓と思い込み、一歩も動けなくなっていただけなのだから。
以来、三人の王子達は睨み合ったまま動けなくなってしまった。

王子達にかけられた呪いを解く為、王達は魔女の行方を追いついには突き止めた。
魔女一人捕らえるのにいかほどの兵力を要すると言うのであろうか?
だが、現実的には三ヶ国連合討伐軍を編成するに至ったのは訳がある。
森に住む二人の魔女が想像を絶する相手だったのだから。
天災指定B-15・【蠱毒の寵姫】ベアトリーチェ
天災指定A-22・【狂嵐二重奏】アルナワーズ
森に住む二人は共に天災指定を受けた魔女だったのだから。

天災指定とは、本人の望む望まざるに構わず周囲に甚大な被害をもたらす危険がある人物に指定される。
一個人に地震や火山など自然災害と同じ扱いを当てはめているのだ。
代表される例はドラゴンや上位巨人、邪神など。
各ランクとナンバーは、被害範囲、危険性、活発度などで算出される。
S・A・B・Cとクラス分けされ、更にそこからナンバーによって序列を与えられる。
国によっては討伐対象になっていたり、忌避対象となっている。
155夜+鳥 ◆NUE/UO/DFI :2008/10/17(金) 22:45:28 0
討伐軍の陣で、一人の女戦士が瞑想していた。
先鋒に名乗りを上げた巨躯の女戦士。
その後ろには、屈強な兵士達が女戦士の号令を待ち静かに闘志を燃やしている。

そんな女戦士の頭上に小さな光球が現れ、ぱっと散ると、そこから一枚の手紙が舞い降りてきた。
静かに二つの指で手紙を受け取り、文面を確認。
その文面に女戦士の目は見開かれ、立ち上がる。

女戦士は後ろに控える部下達に解散命令を出すと、陣中央へと歩いていく。
そこにいるのは三人の王達。
片膝をつき王に礼をとると、ここで漸く口を開いた。
「王様方。性悪女に灸を据えようとおもっとちゃが、もう森にはいないけぇの、無駄足じゃったわ。
今から行っても森にかけられた幻術で翻弄されるだけの骨折り損ぢゃ。
私と部下は抜けさせてもらうきぃ、王様方も帰りんさい。」
そう言うと、女戦士は立ち上がり、陣を後にする。
「大丈夫じゃて。
こうなったらからには王子様方にかけられた呪いももう解けとるはずぢゃけえの。」
後ろから引き止める王達の声を聞き、最後に言葉を残して。

女戦士の言葉通り、王子達の呪いは解けていた。
そして、女戦士の忠告を聞かずに森に進んだ王達が手痛く翻弄され森からたたき出されたのも後から女戦士クドリャフカの耳に入ってくることになる。

だが、もはやクドリャフカにはそれも関係ないこと。
今はたた手紙を持って仕立て屋に行く事が最重要なのだから。
今から仕立て始め、ドレスは間に合うだろうか?
それがクドリャフカの脳を占める疑問であった。
156夜+鳥 ◆NUE/UO/DFI :2008/10/17(金) 22:45:35 0
【5年後物語・中央大陸シルベリア永久氷原】

一年を通して吹雪が唸り、氷が覆いつくす大地。
中央大陸北部シルベリア地方。
永久氷原と言われるこの土地に、摩訶不思議な空間が広がっていた。

その場所だけは氷はなく、暖かな日差しと緑の芝生が広がっている。
広い敷地の中央に立つのはなぜか氷の館。
しかし、その氷は触れても冷たくなく、見事な色彩に彩られた館は俄かに氷とは信じがたい。
不思議な空間ではあるが、一番不思議なのは、その敷地に無数にいる猫・猫・猫・猫。

そう、ここは永久氷原の中ポツンと佇む猫屋敷なのである。

その日はシルベリアにあっても中々巡り合えない強い吹雪の日だった。
雪をはらんだ強い風が渦巻くように館の周囲を駆け巡る。
だが、その風が敷地内に入ってくることはない。
「今日はやけに吹雪が強いですわね。
いい加減にしなさい!猫ちゃんたちが寒がっていますじゃないの!!」
館の主人、フリージアが空に向かって怒鳴りつける。
すると、吹雪を起こしていた精霊氷狼が、空中で凍りつき砕けてしまう。
氷狼達が凍りつくなどと言うありえない現象をただの一喝で引き起こすフリージアは今や氷系術者としては押しも押されぬ第一人者となっていた。

「ふふふ。そんな理不尽な叱られ方したのでは氷狼達も涙目になるわよ。
久しぶりね、フリージア。」
「あら!メラルさんじゃありませんか!」
氷狼たちが退散し、静かになった館に美しく成長したメラルが笑いながら訪れた。
この吹雪の中平然と来訪するだけでも、メラルもまた氷系術者随一の使い手となっている事を現していた。
とにもかくにも数年ぶりの再会を喜び、フリージアはメラルを館に招き入れる。

「相変わらず凄まじいわね。この永久氷原でこんな空間を維持するだなんて。
フリージアの家は貴族だと聞いていたから、ここを作ったと聞いたときは驚いたわ。」
出されたお茶を飲みながらメラルはしみじみと言う。
フリージアの家は氷系術者の名門にして、シルベリアでも有数の貴族である。
能力はともかくとして、地位に興味も示さず猫屋敷を築いてしまう辺り実にフリージアらしいと思わないでもないのだが・・・
「あら、それでしたらメラルさんこそ。
当主になれたのに、研究施設だけもらって引いたのですから、私と変りませんわ。」
そう、メラルは卒業後、家に戻った。
家督争いなどが待ち受けていたが、メラルはそれに勝ち抜き、当主たる地位を手に入れられたのだ。
が、あえて身を引き、研究施設を手に入れている。
最も、その研究施設は国家規模の研究施設でも追いつかないほどのものなのだが・・・
フリージアの言葉にメラルは微笑むだけでその事は口には出さなかった。

「それで、今日はどうしましたの?」
フリージアがメラルの来訪予定を聞くと、メラルはそっと頭上を指差した。
「占いでね、出たの。」
その言葉を待っていたかのように、二人の頭上に光球が出現し、手紙を残して消えていった。
その手紙を見たフリージアの表情が崩れていく。
「あらあら、そうでしたの。
メラルさん、先を越されましたわね。
ラルヴァさんは・・・ぁっ・・」
フリージアの言葉は最後まで続きはしなかった。
流石にフリージアも空気を読めるようになってきたようだ。
言ってはいけない言葉を言ってしまった事に気付き、思わず口を噤むがもう遅い。
「ラルヴァ・・・ね。ええ、彼は・・・!」
言葉を穏やかだが、手にしたカップが凍りつき、コメカミに青筋が浮かび上がっているのを見逃しはしなかった。
157夜+鳥 ◆NUE/UO/DFI :2008/10/17(金) 22:45:44 0
【5年後物語り・西方大陸辺境『世界の果て』】

「ラルヴァ、封印が終わったなら行こうぜ?」
「・・・うーん・・・うん。」
中央大陸某所で、ラルヴァは霊穴の封印をし終えて物思いにふけっていた。
呼びかけるキサカは祝辞の清書をしながらラルヴァを待っている。

この二人、以前魔法放送局で行ったフラグ講座が受け、今や押しも押されぬパーソナリティーコンビとして有名になっている。
しかしパーソナリティーは仮の姿で、世界中に発生する危険な霊穴を塞いで回る封印業を主としている。
その仕事上、世界中を飛び回っているのだ。
それに伴う弊害は確実にラルヴァを蝕み、この腰の重さがその重篤度を物語っていた。

「なに?もしかして怯えてる?半年振りだっけ?」
面白そうにラルヴァを茶化すキサカは本当に楽しそうだった。
二人が手にした手紙は確実に二人を交わらせる。
そしてそこで巻き起こるであろう修羅場も。
それが楽しくて仕方がないのだ。

「・・・怒っているだろうな・・・。」
「女の悩みなんて贅沢な事言っている奴に同情なんてしねえ。行くぞ。」
キサカはラルヴァの首根っこを掴むと楽しそうに歩を進めるのであった。
158夜+鳥 ◆NUE/UO/DFI :2008/10/17(金) 22:45:50 0
【5年後物語・南部大陸密林】

360度を熱帯樹木に囲まれた密林でグレイブは途方にくれていた。
「お前ら、一応確認するぞ?」
【オーエー、どんと来い!】
【ああ、一応・・・ね。】
「俺達は中央大陸に向かう為に南部大陸最北端の港町にいたよな?」
【おーいたいた!あそこの刺身はサイコー!】
【う・・・うん、いたよね。】
「寝る前に言ったよな。明日朝一で船出だから大人しく寝てろって・・・。」
【え・・・?言ったっけ?そんな事?】
【いや、言ったよ。確かに。】
一人でぶつぶつと呟く姿は傍から見れば、密林の中一人きりで錯乱したかと思われるかもしれない。
しかし、グレイは一つの体に三つの魂を持つ人狼である。
今まさに三つの魂が会議を開いている最中なのだ。
表面に出ている蒼髪で切れ長の眼を持つグレイブの肩が怒りにプルプルと震えだす。
三人の中では最も冷静で頭の回転が早い。
持ち前の冷静さで勤めて状況整理に勤めていたのだが、暑さも相まって苛立ちが隠し切れなくなり、ついには爆発する!
「な・の・に!どうしてこんな密林にいるんだああ!!!」

密林にこだまするグレイブの叫びに魂の存在であるグレイルとグレイズが説明を始める。
グレイブが寝入った後、グレイルが人格交代して表層に出てきた。
暫く旅をした南部大陸も今宵が最後。
最後の記念に散歩をしようと言い出したのだ。
元々体力バ・・・もとい、体力の有り余って余り物事を考えないグレイル。
散歩を始めて気付けば見知らぬ場所へと言っている事も少なくない。
それを危惧したグレイズは強引に肉体の主権を奪った。
この判断は正しい。
これならばグレイルの暴走を止める事が出来るからだ。
それが夜で、しかも満月が空に輝いてさえいなければ、だ。

三人の中で人狼の血を一手に引き受けるグレイズは、夜に肉体に入ると人狼化し、朝まで変る事が出来なくなる。
南方大陸の熱気と満月が人狼と化したグレイズを駆り立てた。
何に駆り立てたかは全く以って不明だが、夜が明けたときには見知らぬ密林にポツリと佇む事になる。

事情を聞いてグレイブの怒りは静まるどころか、コメカミの血管が切れそうになったのは言うまでもない。
「どうするんだよ!日数もないのに!」
【まーどうになかるんじゃね?】
【R・・・もう頼むから黙っててくれ・・・】
怒りに任せて吼えるグレイブ。
マイペースにグレイブの怒りに油を注いでいる事にも気付かないグレイル。
そして、自分が原因な為、口を出すに出せないグレイズが脱力しながらグレイルをたしなめる。

グレイの手に握られた手紙に記された日付までに果たして辿り着けるのだろうか?
159夜+鳥 ◆NUE/UO/DFI :2008/10/17(金) 22:45:56 0
【5年後物語り・中央大陸メガロシティ】

中央大陸メガロシティ。
大陸でも有数の大都市であり、文化・芸術・軍事・そして金融のメッカである。
そんな大都市の一等地に白亜の宮殿とでも言える豪邸が建っていた。

この建物は大陸全土に支店を持つ『シュガーローン』の中央本社なのだ。
貸した金は例え邪神からでも取り立てる!と豪語する女社長が一大で築いた金融会社。
その勢いからも敵も多く、よくない噂も少なくない。
だが、その裏で孤児院に毎年匿名で莫大な寄付を行っている事はあまり知られていない。

そんなシュガーローン中央本社は今、人だかりが出来ていた。
そしてその中では・・・
「検察局特捜部一級検事、マオ・ミゼットである!
ふふふ、ミルク、とうとう年貢の納め時だな。
エリートの僕自らが幕を引いてやるのは旧友のよしみと言う奴だ。ありがたく思いたまえ!」
そう、人だかりの原因はこれである。
最年少で一級検事に上り詰めたマオ。
その能力は高く評価され、巨大汚職事件や重大事件を担当している。
まさに司法の剣と称されるマオが、とうとうシュガーローンに切り込むとあっては人だかりもできようと言うものだった。

「げっ!マオ!あんた・・・
い、いや、そんな事より!令状出してみなさいよ!令状!」
突然のマオの来訪に慌てて扉を閉めて言い返す。
その後ろでは秘書達が慌てて裏帳簿などを一箇所に集めていた。
勿論ミルクのメギドで一発焼却するためだ。
「ふっ、無駄な抵抗を・・・。ブランカート君!」
「マオマオ、久しぶりになったと言うのにあまり喧嘩腰にならなくてもいいのではないか?」
「ば、馬鹿者!プライベートの呼び名でよぶんじゃないっ!」
顔を真っ赤にしながらヴァンエレンの差し出す令状をひったくり、扉に叩きつけた。
その瞬間、中央本社全体を包むように魔法陣が浮かび上がる。

この令状は裁判所の許可書であると同時に、家宅捜索を滞りなく行う為に一帯の魔法を無効化させる効力があるのだ。

こうなってしまえば扉を押さえている意味も、施錠の呪文も、そして証拠隠滅のためのメギドすら無効となる。
諦めたミルクは大人しく扉を開け、入ってくるマオとヴァンエレンを迎え入れるしかなかった。
「ヘボ吸血鬼じゃないの。あんた学園に括られてたんじゃないの?」
「ミルク、言葉に気をつけるがいい。ブランカート君は今や検事補佐だ。
それに・・・ヴァンエレンへの侮辱は主人である僕への侮辱も同義だぞ?」
ヴァンエレンの存在に驚き、声をかけるが、それに応えたのはマオだった。
オロオロするヴァンエレンとは対照的に、きっとミルクを睨んで言い放つ。

ヴァンエレンはマオと主従契約を結ぶことにより、古き契約の括りを解かれ学園を出ることに成功したのだった。

室内に入ると中央のテーブルに積み上げられた裏帳簿の山。
それを見てマオはにやりと笑う。
「ほほう、自ら証拠を用意していてくれたとは、感心感心。」
ドカリとテーブル前のソファーに座り高笑いをあげるマオ。
その後ろに控えて立つヴァンエレン。
それとは対照的にうなだれて向かいに座るミルク。
160夜+鳥 ◆NUE/UO/DFI :2008/10/17(金) 22:46:06 0
そんな三人の頭上に突如光球が現われ、手紙が三通舞い降りてくる。
不思議に思い手紙を見た瞬間、三人の動きが止まる。
その中でいち早く動き出したのはミルクだった。
手紙を手に固まるマオとヴァンエレンの隙をつき、マッチをする裏帳簿の山に投げつけた。
元々証拠隠滅を前提に作られた裏帳簿は瞬く間に燃え上がる。
捜査令状は魔法を無効化するが、一般物理現象にその効果は及ばないのだ。

「ああ!な、なんて事を!」
慌てて消化呪文を唱えようとするマオだったが、捜査令状の魔法無効効果により呪文が紡げない。
そうしている間にもあっという間に暇裏帳簿の山を嘗め尽くし、灰の山とかしていた。
「まーまー。そんな事より、めでたい手紙が来たんじゃない?
仕事なんかやっている場合じゃないよ!
さーて、盛大な花火を上げにいかなくっちゃ!」
証拠隠滅に成功したミルクは言葉も軽く手紙を持って窓から飛び出していった。

「行くぞ!ヴァン!」
「え・・・?どこに?」
窓から飛び出るミルクの背を追い、マオが立ち上がる。
この流から言えば当然、ミルクを追うのだろうが、それでもヴァンエレンは聞かずにいられなかった。
なぜならば、追うぞ、ではなく、行くぞ、なのだから。

「そんなこと・・・!決まっているだろう!」
にやりと笑って応えるマオに目は輝いていた。
そしてそれに大きく首を縦に振り馬へと変身するヴァンエレンの目も。

ミルク、マオ、ヴァンエレンの目的地は一つ。
そしてそれが追う事にもなるのだから。
161夜+鳥 ◆NUE/UO/DFI :2008/10/17(金) 22:46:13 0
【5年後物語・フィジル島】

「レイド先生、どうもありがとうございます。」
「ん〜、ああ。構わんさ。めでたい事だしな。」
「アブブー。」
深々と頭を下げるリリアーナにレイドは頬をかきながら応える。
ここはフィジル島事務局。
卒業生達の名簿が並び、魔法儀式によって現在の居場所に手紙を届ける事が出来る。
同窓会やOB会などの招待状はここから出される事になる。

「おめでたいと言えば、レイド先生、二人目ですって?」
「ああ、アルテリオンは今実家に戻っていてな。予定日は五ヵ月後だ。
子供はいいぞー。もうパパメロメロでちゅー。」
「キャッキャッ!パパー!」
そういいながら背負った赤ん坊に舌を出して面白顔をつくりあやしているレイド。
既に1歳の誕生日を迎え、歩き出しそうなほどに育っているのだが、親馬鹿と化したレイドは背負って離そうとはしなかった。
そんなレイドの変りように苦笑しながらリリアーナは思う。

こんな幸せな家庭を自分達もこれから築いていくのだ、と

「リリアーナ、最後の便の陣を発動させるぞ。」
「ええ、あなた!」
手紙を転送させる陣を立ち上げながら呼びかけるその男へと駆け寄るリリアーナの顔は幸せで埋め尽くされていた。

こうして各地に散った二人の友人達に手紙は送られる。
幸せ一杯な結婚式の招待状が・・・

一通の手紙は、全てを越え
一通の手紙は、全てを見つけ
一通の手紙は、全てを伝え
魔の者どもを繋ぎ止める
友情と言う名の繋がりを以って
162名無しになりきれ:2008/10/17(金) 23:42:24 0
超GJ!
面白かったけど何かしんみりしたよ。
今後NPC化するキャラの活躍をまた萌えスレで見れたら嬉しい。
163名無しになりきれ:2008/10/18(土) 22:41:36 0
すげえな
GJ
164名無しになりきれ:2008/10/19(日) 00:21:18 O
超・G・J!
俺は多人数の出るSSは
書けないから凄いと思うわ
165名無しになりきれ:2008/10/19(日) 13:38:48 O
美しい
166名無しになりきれ:2008/10/21(火) 16:21:13 O
「まったくしつこい奴らだぜ!」
言葉と同時に放たれたロックの鉄拳を受け、黒装束の男は声も立てずに崩れ落ちた。
周囲には同じような服装の男たちが数人倒れていて、この戦いが以前から続いていた事を教えている。
その襲いかかってきた敵の最後の一人を、たった今ロックが打ち倒したのだ。
「それにしてもこいつらは一体なんなんだ?
 揃って同じような服装をしやがって‥‥」
ロックが襲撃を受けたのは、これが初めてではない。
このフィンカイラ島についてから、すでに何度か襲撃者を撃退している。
ただ、ロックには自分が狙われる理由がわからなかった。
敵のことで分かることといえば、誰も彼もが同じようなフードにマント姿だということだけなのだ。

とにかくポンデと合流しようと歩き出したロックの前に、新たな敵が立ちはだかる。
襲撃者達と同じ服装は、この男もロックに敵意を持っていることの証だ。
「我らの女神を奪っただけでは飽きたらず、別の女の所に走って女神を侮辱しおって‥‥!!
 生きながら地獄に叩き込んでその罪を償わせてやるぞ!ロック・ウィル!」
歯ぎしりの音と共に絞り出される言葉の中に、ロックにはよく分からない単語があった。
「女神だって?誰のことを言ってるんだ?」
「我らの女神と言えば、女神リリアーナに決まっているだろうが!
 どこまで女神を侮辱すれば気が済むのだ!」
激高する男だが、ロックはまるで意に介さない。
「リリアーナは女神なんかじゃないぜ!
 ただ、俺が世界中で一番愛してる女性だってだけだ!」
「おのれ二流が‥‥!」
怒りの余り言葉の続かない男だったが、すぐに両手を天に掲げる。
「我らヒンヌーの世を築くために!奥義!!」
男の回復魔法を受け、倒れていたヒンヌー教徒たちが次々に起きあがった。
多勢に無勢。
普通の人間なら怯むところだが、燃える男ロックは怯まない。
「来い!フォルティシモ!!」
ロックの呼びかけと同時に、男達の背後で混乱が起きた。
ロックの愛箒フォルティシモが男達を攻撃しているのだ。
「はああぁぁっ!ペリキュラム!」
その隙を逃さずロックは特大花火を集団に打ち込み、ヒンヌー教徒の群に突撃する。
「燃え上がれ俺の魔力!ホウヨクテンショウ!!」
夜空に、吹き飛ばされたヒンヌー教徒達の体が舞い上がった。


「ご主人様。どうやら一連の襲撃は過激派ヒンヌー教徒が起こしているようです」
翌日の朝、フィンカイラ島の宿屋の一室で、ロックはポンデが調べてきた事を聞いていた。
「そうだったのか。それでリリアーナの事を女神とか言っていたんだな」
ヒンヌー教の過激派集団は、フィジル島では女神リリアーナの手前、ロックへの攻撃を差し控えていた。
だがロックがフィジル島とリリアーナの側を離れた今、女神を取り戻すために執拗に攻撃してくるだろう。
「一度フィジル島にお戻りになりますか?」
「いや。俺は戻らない。
 アンジェリーナの課題も済ませずに戻ったら、リリアーナ達に何と言われるか分からないしな。
 それに、本当の漢っていうのは。
 どんな問題が立ちはだかっても、絶対に逃げたりしないんだぜ!」
新たな主人の言葉を聞いたポンデは、恭しく一礼して決定を受け入れる。
ロックのフィンカイラ島での冒険はまだ始まったばかりだ。
それでも燃える漢ロックは、不屈の闘志でどんな困難にも立ち向かい、打ち勝っていくだろう。
ロック・ウィルの新たな冒険に幸あれ!
167名無しになりきれ:2008/10/21(火) 18:54:48 0
GJ!!




でも節子、あれ女神ちゃう!ただの貧乳や!
168名無しになりきれ:2008/10/21(火) 20:12:00 0
>167の部屋に黒装束の集団が向かったようだが
169名無しになりきれ:2008/10/21(火) 22:42:30 0
GJ!
ヒンヌー教徒がえらい事になってるなw
170名無しになりきれ:2008/10/23(木) 23:32:59 O
【お題:呉越同舟】


「くそッ!あの若造が!毎回毎回人を馬鹿にしおって!!」
☆の名物料理『焼きコカトリス』屋の一室で、神魔小帝は酒を飲みながら怒りをぶちまけていた。
(小帝様どうしたッスか?随分荒れてるッスけど。)
(なんでもまた中帝様に手柄を取られたらしいッスよ。)
ひそひそ話し合う子分たちを前にして、神魔小帝の愚痴は続く。
「ちょっと自分がジャニーズ系のイケメンで、女の子に人気があるからとでしゃばりおって!
何が『あの件は僕が処理しておきましたから大丈夫ですよ』だ!!」

「あの件って何ッスか?」
「ほら。ウルトラフォースのユートって犬に怪人が負けて‥‥」
「あ〜。ムカついたからってアジトで暴れ出した怪人がいたッスね。」
「本当は小帝様が処理を任されてたッスけど、手に負えなかったので中帝様が助けてくれたッスよ。」
「じゃあ中帝様にお礼を言わなきゃ駄目じゃないッスか。」

「うるさいうるさいうるさいうるさーーいッ!!誰があんな奴に頭を下げるか!!
おーいオヤジーッ!!酒が切れたぞ!もっとどんどん酒もってこいッ!!」
「小帝様ちょっと飲み過ぎじゃないッスか?」
「いいッスいいッス。どうせ明日には謝るんだし、今日は酔わせてあげるッスよ。」
「じゃあこっちも沢山飲むッスかね。どうせ小帝様のおごりだし。」
「オヤジさーーん!このメニューに書いてあるのを全部持ってきて欲しいッス!!」


「隣は随分盛り上がっているようだな」
その時同じ『焼きコカトリス屋』の隣の部屋では、ユートピアがハクイ兄ちゃんと一杯飲んでいた。
「班長の活躍のおかげで、神魔大帝の驚異もこの辺りまでは来ていませんからね。
班長がいる限り人々の笑顔と平和は消えませんよ。」
のんきに酒を楽しんでいるように見える一人と一匹だが、だまされてはいけない。
飲んでいる酒は世界最強の酒と名高いスピリタス。
アルコール度数は実に96を誇り、飲んでいる時は火気厳禁となる最狂の酒である。
そんな酒を平然と飲んでいるのだから、やはりユートもハクイもただものではなかった。
「いや、まだまだ神魔大帝に立ち向かうためには、強力な人材が必要だワン。」
「その強力な人材に誰か心当たりがあるようなお顔ですね?」
ニヤリと不敵に笑いあうユートとハクイ兄ちゃんだったが、シリアスシーンはあまり長く続かなかった。
「おう!なんだなんだシケた面しやがって!藻前らもこっちに来て飲め飲め!」
すっかり酔っ払いと化した神魔小帝が、松明(注:洞窟などで使うあれ)片手に乱入してきたからだ。

後日、ユートピアの娘アルカディアがウルトラフォース入隊試験に無事合格する。
アルカディアは、神魔大帝との戦いで一騎当千の活躍を見せるのだが、その話はまた別のスレで。
余談だが、神魔大帝軍の放火と見られる火災で全焼した『焼きコカトリス屋』は無事再建された。
当時の状況が保存された『神魔大帝焼き討ちの間』は、新たな観光名所として人々の人気を集めているという。
171名無しになりきれ:2008/10/25(土) 22:46:47 0
>170
応援ありがとうGJ!
172名無しになりきれ:2008/11/04(火) 01:10:41 O
補修
173名無しになりきれ:2008/11/04(火) 20:27:13 0
ヘアッシュ
174アグリッパ ◆MOONGR/Cm2 :2008/11/04(火) 22:52:52 0
【深淵なる者0】

〇名前: アグリッパ
〇性別/年齢:♂/23歳
〇身長/体重:175cm/75kg
〇容姿特徴: 筋肉質
〇性格: 現実家
〇所属:バルロワファミリー
〇人物解説: バルロワファミリーの戦闘員。
      
〇機体名: C-ラ・カンス
〇分類:AM 
〇サイズ:全高30m/全長m
〇運動:A 装甲:A 移動:B
〇地形適応:宙D 空B 陸C 海S
〇武装名/威力/射程/タイプ/解説
〇メガ粒子砲/A/A/光/ 頭部に備え付けられた高出力レーザー。
〇ミサイル/B/B/実/各所内臓ポッドから射出されるミサイル。多弾頭タイプ、散弾タイプ、チャフなど種類がある。
〇爪/B/D/格/胴体に収納可能な腕に付けられた爪。指は無く、太い爪が三本付けられている。うち一本は鍵爪となっている。
〇磁場発生装置/A/B/特/ バリアとして、特殊磁場ネットとして使用可能。
〇機体解説:
旧フランスの造船技能集団ボナパルト社が密かに開発した重AM、C-ラ・カンス。
コンセプトは2ndに対抗できる機体。
性能的には不可能との結論が早々に出てしまい、海中に特化する事でその活路を見出している。
バルロアファミリーに提供する事で、その性能テストを兼ねている。
海中での運動性能は他の追随を許さない。
前後対象の機体であり、どちらも表面となる。
装甲には特殊コーティング(ヌルヌル)がなされており、海中での運動性を高めるだけでなく、対格闘や対レーザーに効果を発揮する。
最大の特徴は全十箇所にも及ぶ内蔵型磁場発生装置。
バリアとして、特殊ネットとして使用可能なほか、各所を稼動させ力場を発生させる事により慣性に捕らわれない動きを可能とする。
全ての武装を内臓式にしたため、大型化している。

ゴックを思い浮かべたあなたは微妙に気のせいだと思いましょう、いや、思ってください。
175アグリッパ ◆MOONGR/Cm2 :2008/11/04(火) 22:53:04 0
【深淵なる者1】

赤道直下の小さな島。
地図にも載らない孤島の砂浜に二人の男が立っていた。
「なあ、とっつぁんよ。蒸れねえか?」
「小僧!いつもドン・ランベルティーニと呼べっつってんだろ。
男の身だしなみだ。お前もちったあ気を使え。」

ここはバルロアファミリーの秘密アジトの一つ。
ナイフを弄びながらアグリッパは意図したことと違う返事に苦笑を浮かべていた。
いや、意図は伝わっているが、敢えてこの返事だったのだろう。

ドナルドはバルロアファミリーでも古参の部類だが、自身もかつては海賊の頭領だった。
嗜好はふた昔前のマフィア。
この暑い島で、半ズボンにタンクトップと言うアグリッパとは対照的にスーツを着こなしている。
そして最近薄くなってきた頭部を隠すように帽子をしっかりと被って。
「蒸れてかえって頭皮に悪いぜ?」という言葉を飲み込んで、本題に切り出す。

「明日の会合、上手くいくと思うか?」
地球連邦政府ユニオンの圧倒的な力に対抗する為、反対勢力が手を結ぼうと言うのだ。
モニカの発案によって開かれる会合が明日に迫っている。
「いくさ・・・。お頭が気合入れてんだからな。」
「おっかさんがやってるんだ。当たり前さ。
そんなのは判ってる。そうじゃなくてよ・・・。」
ドナルドが即答すると、アグリッパの顔が微かに険しくなる。
弄んでいたナイフを投げつけ、木に突き刺さるのを見つめながら言葉を続ける。

「他の三勢力!手を結んでも意味ねえよ。」
アグリッパは徹底した現実主義者なのだ。
確かにこのままでは各個撃破されるだけだ。
特にテラ・マトリックス社は無くてはならない存在となっている。
しかし、手を組んでもユニオンを倒す事は出来ないとアグリッパは判断しているのだ。
戦力的に優勢になれたとしても、だ。

いや、優勢になればなるほど敗北は色濃くなる。
兵器産業のテラ・マトリックス社。そして傭兵集団バトルハンマー。
この二つは戦いの場がなくなったからこそユニオンと敵対しているのだ。
もし戦況が覆り、ユニオンが倒されようとした時・・・
ユニオンが政策転換し、傭兵を雇用し、テラ・マトリックス者と提携を決断すれば連合は脆くも崩れ去る。
星霊教団に至っては、一部過激派が騒いでいるだけで、組織としての統一がされているとは言いがたい。
それより何より、あのノリがアグリッパには受け入れがたいのだ。

「それで、お前の答えが【アレ】か?」
ドナルドもアグリッパの言わんとしていることはよくわかっていた。
アグリッパは独力でユニオン、即ちUOの2ndを倒すつもりなのだ、と。
176アグリッパ ◆MOONGR/Cm2 :2008/11/04(火) 22:53:15 0
【深淵なる者2】

ドナルドの視線の先にはドッグに起立する重AMが整備中だった。
「ああ。俺の国の職人どもが作ったやつだ。」
アグリッパが独自ネットワークを使い手に入れたC−ラ・カンス。
今、最後の仕上げに、機体の隙間からとろりと半透明の粘液が漏れでて全体を覆おうとしている。
「茶色の卵に蛇腹の手と短い足が着いているとは・・随分不細工なAMだな。わっはっはっは!」
ドナルドの評した通りの機体だった。
既存のAMとはかけ離れたそのシルエットは、笑いを誘うに十分だった。

まさに卵形。首は着いていない。
代わりに、頭部辺りには逆T字のレールが着いており、そこにメガ粒子方の砲門が着いている。
レールは周囲360度と上部180度に及んでおり、そこを移動する事により砲門は全方向をカバーできるようになっている。
腕は蛇腹状に長く、肩部分に収納が出来る。
その先には太く鋭い爪が三本ついており、うち一本は返しがある。
また、脚は短く、陸上を何とか歩く程度のものだった。

「笑うなよ!機能美の塊なんだぞ!」
「あー悪かった悪かった。でもなあ。お、スゥ。どう思うよ、あれ?」
笑われて顔を真っ赤にして怒ったアグリッパだが、ドナルドは軽く受け流す。
丁度その時スゥが通りかかり、聞いてみると・・・
「・・・ヌルヌルでキモイ・・・」
「・・・」
「・・・」
新しく仲間になったスゥが容赦の無い感想を述べると、しばしの沈黙の後・・・

「ぶわっはっはっは!子供は正直だなあ!」
「ちきしょー!女子供にこいつの魅力がわかるかああ!!」
ドナルドの大爆笑を背にアグリッパは涙目で走り出す。

「見てろよ!キッチリ戦果あげてきてやっからな!!」
C−ラ・カンスに乗り込みながらアグリッパがドナルドとスゥに怒鳴りつける。

明日の会合を秘密裏に、そして安全に終わらす為に、各地で陽動作戦を平行して行っている。
アグリッパもその作戦の一部。
仲間と共にユニオンのサルベージ戦襲撃の予定なのだった。
177アグリッパ ◆MOONGR/Cm2 :2008/11/04(火) 22:53:23 0
【深淵なる者3】

翌日。
ユニオン所属のサルベージ船がマリアナ海溝へと作業艇を下ろしている姿をアグリッパチームが水中から見ていた。
「アグリッパ、どうする?」
「情報通り。護衛もついてねえ。」
今日の四勢力会合を秘密裏に終わらす為に、バルロアファミリーは各地で陽動襲撃を行っている。
アグリッパたちはマリアナ海溝へのサルベージがあるとの情報を手に入れ、襲撃に来ていたのだ。
チームの二人からの通信に少し考えた後、決断を下す。
「普段なら奴らがお宝掬ったところで掠め取るんだが、今日は陽動が主目的だしな。」
その言葉で即攻撃が決まった。

海中から二機のAMが浮上し、高速移動を。
そしてアグリッパは海中を進んでいく。

所詮相手はサルベージ戦。
アグリッパが作業艇を破壊し、浮上した時には二人のチームメイトが銃座を潰して船に取り付いていた。
「無駄な抵抗はやめろ。」
「何を掬おうとしていたんだぁー?」
サルベージ船の上に乗り、蹂躙する二機のAM。
艦橋を叩き潰そうとしたその時、甲板から光の剣が突き出て一機のAMを串刺しにする。
甲板を破りながら出現したのは鋼の死神。2nd!

漆黒の死神は串刺しにしたAMを海に投げ捨て、次なる獲物に眼光を向ける。
「ちぃぃいい!逃げろ!これでも喰らいやがれ!!!」
突然現われた2ndにアグリッパは舌打ちしながら逃げるように叫ぶ。
C−ラ・カンスが海中より飛び出て、メガ粒子砲を放つ。
2nd相手に牽制などしていられない。
常に一撃必殺の構えで行かねば確実に死の祝福が与えられるのだから。

不意打ちにて必殺の一撃だったのだが、2ndの反応速度は遥かに上回る。
メガ粒子砲は虚しく空を切り、牽制にすらならなかった。
宙に飛び全力で逃げるAMに楽々と追いつき、追い抜きざまに両断。
爆炎越しに最後の標的であるC−ラ・カンスへと向き直る。

「やろおおお!やってやる!やってやるぞ!!!」
僅か数秒で仲間を二機とも失い、アグリッパは覚悟を決めた。
出力を全開にして2ndへと飛んでいく。
その太い爪を大きく振りかぶりながら。
圧倒的な火力、機動力を持つ2ndだが、装甲は薄くバリアも持たない。
当たりさえすればC−ラ・カンスの爪は確実に叩き潰せるのだ!

迎え撃つ2ndはジュ・ガを放ちながらレーザーソードを振りかぶり高速で迫る。
ジュ・ガのレーザーバルカンは確実にC−ラ・カンスを捉えているのだが、卵上の形態と特殊コーティングの粘液が弾いていく。
「いける!いくぞおおお!!!」
通常のAMなら既に蜂の巣だろう。
だが、装甲は削られ、穴が開こうともそれ程のダメージとはなっていない。
レーザーバルカンを弾く事を確認しながら、アグリッパの叫びがコックピットに響く。

そして二つの機体が交わる刹那。
C−ラ・カンスはスピードも慣性も無視して突然直下に落ちた。
磁場発生装置による法則を超越した動きだった。
それでいて蛇腹を限界まで伸ばした爪だけはその軌道上に残し、2ndへと叩きつける!
178アグリッパ ◆MOONGR/Cm2 :2008/11/04(火) 22:53:31 0
【深淵なる者4】 

アグリッパは徹底した現実主義者である。
いくら仲間が撃墜されたからといって、自暴自棄に特攻などはしない。
あらゆる状況で足掻き、勝算を掴み取っていく。

****ギャン!!!****

会場に激突音が響き、C−ラ・カンスは海へと落ちていく。
その右腕は鮮やかなまでな切り口で叩き落されていた。

「ま・・・マジかよ・・!」
法則を超越した動きは出来ても、パイロットの肉体がそれについていけるかは別問題である。
鼻血を吹きながら、その瞬間、眼に焼きついた光景が信じられなかった。

激突する瞬間、突如法則を超越して落ちたC−ラ・カンスの動きに2ndは対応したのだ。
機体を捻り、爪を交わしながらもレーザーソードを振るい、その腕を切り落としたのだ。
が、アグリッパの戦略はそれだけではなかった。
その戦略が成功したことを示すように、2ndは体勢を崩し、海面へと落ちていく。

激突する瞬間、直角降下しながら磁場発生装置で数個の磁場を空中に作っておいたのだ。
いわば不可視の磁場機雷。
超スピードで爪を交わし、一撃を入れた2ndも磁場機雷までは躱せなかったのだ。
「へへへへ。肩こりがほぐれる程度じゃすまねえぞ!」
海中に沈みながらアグリッパが笑う。

磁場機雷に触れたからといって、爆発が起こるわけではない。
だが、強力な磁場に捕らわれた機械類は確実に狂いが生じる。
通常のAMなら機能停止。
2ndでも、なんらかの異常はあるだろう。
機能停止せずともそれで十分なのだ。

通常ありえないほどの高速で駆ける2ndにとって、僅かな狂いでも十分な致命傷になるのだから。
そう、その速度ゆえに海水はコンクリートの硬度を持って2ndを打ち砕く!
筈だった。
海中からアグリッパはまたしても信じられないものを見る。

海面にたたきつけられる寸前だった2ndが体勢を立て直したのだ!
そしてC−ラ・カンスの機影にレーザーバルカンを打ち込んでくる。
「あ、ありえねえ・・・。だが、まだこれからだ!」
2ndの恐ろしさを再確認しながらも、アグリッパは未だ勝利を諦めていなかった。

兵装の全てを光学兵器で統一している2ndは海中ではその威力が半減する。
事実、レーザーバルカンは海水で拡散し、海中のC−ラ・カンスまで届いていない。
そう、海はC−ラ・カンスにとって無限の盾なのだ。

頭頂部だけを海面に出しメガ粒子砲を放ち、海中へと逃げミサイルを打つ。
海中へと入ってこれば磁場で絡めとる。
相手の攻撃は海が防いでくれる。
これが造船職能集団ボナパルトが出した2ndへの対抗策だった。


だが、その目論見は脆くも崩れ去ることになる。
179アグリッパ ◆MOONGR/Cm2 :2008/11/04(火) 22:57:32 0
【深淵なる者5】

海中へ沈んだC−ラ・カンスを見て、2ndは背面に装備された光砲ゼ・グォルを放ったのだ!
「や、やべええええ!!」
それを見たアグリッパは急速潜行を開始するが、間に合いはしなかった。
ゼ・グォル自体は海水に遮られ、あたることはなかった。
だが、海水は沸騰し蒸発。
そして爆発!
衝撃波がC−ラ・カンスを押し潰す!

爆発大破こそ免れたものの、超水圧に晒されたC−ラ・カンスはボロボロになり機能を停止し、深海へと沈んでいった。

########################################

どのくらい時間がたっただろうか・・・
アグリッパは生きていた。
だが、生きていた、だけだった。
衝撃に体は耐え切れず重傷を追い、C−ラ・カンスは動く事はない。
ただ無常にも深度計が死へのカウントダウンを開始していた。

海中で身動きもとれず窒息・・・
だが、それよりも早く死は訪れるだろう。
ここはマリアナ海溝。
世界で最も深い海。
機体の損傷も考えれば、遠からず水圧により潰される運命なのだから。

「くそう・・・死にたくねええ!」
血と共に吐き出される生への渇望が届いたのだろうか?
アグリッパの脳裏にたおやかな声が響く。
『・・・力が欲しいか?・・・』
幻聴?
だが、確実なる死と直面するに至り、現実主義者のアグリッパはその殻を打ち破る。
「欲しい!死なねえのなら・・・何でもいい!力をくれ!」
『・・・なんでも・・・?良かろう!』
沈んでいくC−ラ・カンスは深海の更なる底からはいでた黒いものに包まれた。

####################################

海上では3機のAMを撃墜した2ndが旋回している。
当然と言えば当然の結果であるが、サルベージ船船長サイカチは険しい表情で通信を入れていた。
「こちら太平洋、マリアナ海溝上サルベージ船マンドコラ船長サイカチ。
所属不明のAM三機による襲撃を受け、2ndが撃退。
しかし79番に異常を確認。」
そう、C-ラ・カンスの磁場機雷は2ndの機体を狂わす事は殆ど出来なかったが、その強力な磁場がルーラーにフラッシュバックを引き起こしていたのだ。
『こちらユグドラシル第三階層オービタル・ユニオン。
79番の脳波異常を確認。
スカーフェイス化の可能性が高い。速やかに収納してください。』
この通信がマンドコラとの通信の最後となった。
直後、通信は途絶え、マンドコラと79番の識別信号が消える。

####################################
180アグリッパ ◆MOONGR/Cm2 :2008/11/04(火) 22:57:41 0
【深淵なる者6】

同時刻、突然通信の切れたサイカチが不審に思う中、信じられない光景を目にする事になる。

***磁界展開・蓬莱の竹林!***

幻聴だろうか?いや、そうではない。
マンドコラの全てのクルーが、そして79番が確かに聞いた。
そしてその直後、海面より突き出た無数の巨大の竹が辺りを埋め尽くすのを!

「な・・・なんだこれは!」
「わかりません!通信、センサー、あらゆる計器が使用不能となっています!」
戦闘海域を埋め尽くす巨大な竹。
太さは20m、高さ200mにも及ぼうかと言う竹が、周囲3キロを埋め尽くしているのだ。

2ndが竹に近寄った瞬間、それは突然破裂した。
***龍の爪!***
その中から現われたのはC-ラ・カンス・・・だったモノ。
それは突如竹の中から現われると、光輝く巨大な爪を振るう。
必殺のタイミングではあったが、それでも2ndは致命傷を避けた。

左腕を犠牲にしながら回避し、間合いを取りながらジュ・ガを放つ。
***火鼠の衣!***
C-ラ・カンスは半透明な炎のようなものを纏い、ジュ・ガに構わず2ndを追っていく。
レーザーバルカンがC-ラ・カンスに当たる瞬間、その軌道が歪み逸れていく。
海面に林立する竹林の中、間合いを取ろうとする2ndとそれを追うC-ラ・カンスの追撃戦が始まる。

「お・・・おお!すげええ!どうなってんだ!?」
C-ラ・カンスのコックピットの中、アグリッパが驚嘆の声を上げていた。
姿形は変らずとも完全に変質したC-ラ・カンスの操縦法は昔から知っているかのように・・・
否、自分の手足を動かすかのように操縦が出来るのだ。
2ndの火力をものともせず、完全にその動きを捉えている。
**この竹林は磁界で作り上げたもの。
つまり我らにとってはリニアモーターカーのレールも同然。
相手にとっては強力な磁界により通信も成り立たぬ障害物でしかないがな。
そして火鼠の衣は磁界を纏う事により空間歪曲を引き起こすのぢゃ**
アグリッパの疑問に答えるかのように脳裏に声が流れる。

その間にもC-ラ・カンスは爪を振るい、ギリギリのところで2ndが避ける。
「くそっ!捉えきれねえ!」
**もう十分じゃ。捉えた**
脳裏に声が流れると同時に、その意味を理解した。
磁力によるロックオン。

**月帝砲!!**
C-ラ・カンスの頭部部分に備え付けられたメガ粒子砲から青白い光が放たれる。
その光は、複雑な軌道を描いて竹林をすり抜ける2ndを追尾し、貫いた。
「・・・す・・・すげええ・・・・」
撃ち落された2ndがバラバラになりながらサルベージ船に降り注ぎ、マンドコラもマリアナ海溝へと飲み込まれていく。

##############################
181アグリッパ ◆MOONGR/Cm2 :2008/11/04(火) 22:57:47 0
【深淵なる者7】

「で、一体何なんだ?」
**安心せよ。死の間際の夢などではない。
わらわは迦具夜。
そなたらが月と呼ぶ箱舟ムーンと直結せし者**

海中を航行しながらアグリッパは状況整理に勤めていた。
そしてそれに謎の声は応える。

迦具夜は遥かなる太古の昔、月より降り立った超古代文明ロボの一つだと。
他の超古代文明ロボと一線を隔すところは、その役割にある。
人類に文明を与え、進化進歩を促す存在である一般の超古代文明ロボとは違い、箱舟と地球を繋ぐ役割を持っていた。
地球を守るのがゴルディカイザー。
裁定者たるスサノオとクシナダ。
彼らが正常に作動するかを監査する者。
故にどの超古代文明ロボよりも強く箱舟の加護を受けていた。
それが何故役目を全うせずにマリアナ海溝の最奥で眠っていたのか?
勿論ここにもツクヨミの暗躍があったのだが、迦具夜自身はわからない。

そして10年ほど前、箱舟ムーンはその機能を停止した。
他の何よりも強く箱舟の加護を受けるとは、依存しているとも言える。
力の供給源の無くなった迦具夜は休眠状態すら保てなくなっていた。
やがて形は崩れ、パラサイトとなり、そのまま消え行く運命だったのだ。

しかし、事態は急変する。
何らかの原因により、箱舟の加護が蘇ったのだ。
完全停止間際からの突然の回復。
その信号をユニオンが察知し、今回の調査サルベージ作業へと至る。

箱舟の加護が蘇ったとはいえ、完全停止寸前の状態だったのだ。
形は無く、消える寸前だったには変わりない。
そこで選んだ道は、大破、そして死亡寸前だったC−ラ・カンスとアグリッパとの融合。
本来ならばそこで得られるのは単なる融合体による蘇生だけだった。
しかし、ツクヨミにより作られた人間との融合は劇的な変化をもたらした。

ミノタウロスとテセウスのように、ナグル・ファルとコウキのように。

有り得ないほどの強力な神機への転生がここに顕在化したのだった。

「粗方だが判ったよ。
俺にとっては細かいことはいいさ。
死の淵から蘇って2ndを圧倒できる力を得た。
それだけで十分だ。」
喜ぶアグリッパだが、迦具夜はそうではないようだった。
物事がそれほど単純なものでは無いとわかっていたのだから。
**いや、そうとも言い切れぬじゃ。
マッチに火をつけた瞬間、大きく炎がはじける様なもの。
本来ならばあれほどの力はまだ出せぬ。
それに、【奴】のコアに異常があったのも助けになった。**

#######################################
182アグリッパ ◆MOONGR/Cm2 :2008/11/04(火) 22:57:54 0
【深淵なる者8】

「と、言うわけなんだよ。」
「プッ・・・プブフ・・・そ、そうか・・・」
南海の孤島で不機嫌そうなアグリッパが訳を話す。
それを聞いていたドナルドは笑いをかみ殺しながら何とか返事をすることが出来た。

かなり衝撃的な事実にも拘らず、笑いが噛み殺せぬそのわけは・・・
帰島したC−ラ・カンスの頭部にはなぜか兎の耳が生えていた。
それだけならばまだしも、筋肉質なアグリッパがバニーガール姿で目の前に立っている衝撃が強すぎたのだ。

「・・・変態・・・」
ドナルドの後ろに隠れていたスゥがポツリと一言だけ言い残し、走り去っていく。
その姿を見てついに笑いをかみ殺しきれなくなったドナルドが転げまわる。
「がっはっはっは!なんだそりゃ!
おま・・・変態って・・・・わはははは!
うん、星霊教団がスカウトに来るぞ!!」
「ち・・・ちきしょー!
何でこんな格好に!これ脱げねえし、耳取れねえし!!」
羞恥に真っ赤になりながら頭についたウサ耳を引っ張るが、痛いだけで取れることはない。
それもそのはず、着けているのではなく、生えているのだから。

**そなたとそなたの機体はわらわと融合したのじゃ。諦めよ。**
「がああああ!!俺は死にたくないが為に悪魔に魂を売ったってことかああああ!」
アグリッパの絶叫と共に、ドナルドの大爆笑は続くのであった。

「ま、まあよ。本調子ではないにしろ、2ndに対抗できる力を得たのはでかいじゃないか。
ププッ・・・安心しろ・・・多少その・・・変態に・・・プハハハ!なってもファミリーだ!」
笑いながらドナルドが慰め(?)るが、そうはならなかった。
**残念だがそうはならない。
本来アグリッパは既に死んでいるのだ。
それを死ぬ間際のわらわが無理やり引き戻し融合した。
わらわ達は結局のところ死に体である事は変りない。
これから暫く休眠に入る必要がある。**
「はぁあああ??」
**このまま休眠に入らねば数夜を置かずして死出の旅へ出ることになろうぞ。
安心せい。ほんの数百年じゃ**
「ふざけんなあ!お前、迦具夜じゃなくて乙姫だろ!!!」
アグリッパの絶叫を聞きながら迦具夜は考えていた。
通常ならば確かに数百年の年月が必要だろう。
しかし、自分が目覚めた理由を想像するならば、そうはかからない、と。

アグリッパの記憶を読み知っていた。
箱舟ムーンが機能を停止した事を。
ならば考えられる事は一つ。
母船、もしくは別の箱舟からの加護が届いたのだ、と。
接近すればするほど加護は強くなる・・・

だが、それは敢えてアグリッパには伝えなかった。
それが正しければ、否が応でも目覚める事になるのだから・・・

こうしてアグリッパと共に、ラ・迦具夜は海中へと消えていく。
回復させる為に、深き眠りへと・・・
183アグリッパ ◆MOONGR/Cm2 :2008/11/04(火) 22:58:02 0
【深淵なる者00】

〇名前: アグリッパ
〇性別/年齢:♂/23歳
〇身長/体重:175cm/75kg
〇容姿特徴: 筋肉質・ウサ耳・バニーガール姿
〇性格: 現実家・ネガティブ
〇所属:バルロワファミリー
〇人物解説: バルロワファミリーの戦闘員。
      超古代文明ロボ迦具夜と融合している。
      
〇機体名: ラ・迦具夜
〇分類:AMと超古代文明ロボの融合体 
〇サイズ:全高30m/全長m
〇運動:A 装甲:A 移動:B
〇地形適応:宙A 空A 陸B 海S
〇武装名/威力/射程/タイプ/解説
〇月帝砲/S/S/光/ 頭部に備え付けられた高出力レーザー。磁力によるロックオン機能付き
〇竜の爪/B/D/格/光輝くレーザー爪。太く、伸縮が可能。
〇磁界発生装置/S/A/特/地磁気を利用して磁界を発生させる。その用途は移動からバリア、フィールド形成など多様。
〇火鼠の衣/A/D/特/磁界発生装置によるバリア。空間歪曲を起こし、逸らすことも可能。
〇蓬莱の竹林/B/B/特/ 磁界発生装置によるフィールド形成。巨大な竹林が形成される。
           フィールド内は磁界により通信機能やレーダーなのが使用不能に。
           竹は障害物としてだけでなく、ラ・迦具夜にとってはリニアレールの役割も果たす。

〇機体解説:
重AM、C-ラ・カンスと超古代文明ロボ迦具夜の融合した機体。
地磁気を利用した磁界発生装置が主能力となる。
機動も磁場を利用し、飛行、航行をしている。
迦具夜と融合した為、C−ラ・カンスの機体にウサ耳がついた状態となる。
また、搭乗者であるアグリッパも問答無用でバニーガール姿に固定される。
ちなみに、機内BGMが伝説のバンドかぐや姫の
【神田川】【けれど生きている】【僕は何をやっても駄目な男です】
などが流れるのが最大の謎だったりする。
184名無しになりきれ:2008/11/04(火) 23:06:13 0
乙乙、楽しませていただいたぜぃ?(笑いをこらえつつ)


だが、前後対称と言う部分でゴッグじゃなくてゾックを思い浮かべたわけだが
つまりこいつはゴッグとゾックの合いの子、だからゴッ『ク』なんだなと納得したぜぃ。
185名無しになりきれ:2008/11/04(火) 23:13:28 0
ご明察
最初あの部分はゾックだったんだよ
でも蛇腹アームとゾックのマイナーさをかんがみてゾの部分だけ最後にゴに変更したと言う秘話があったんだが
すっかり見破られてしまった。

ビーム兵器しか搭載していない水陸両々MSってアレだしねい。
太い腕があっても格闘も出来そうにないし、砲台としてしか存在価値の無い(略
186名無しになりきれ:2008/11/04(火) 23:26:40 0
いやいや、考えが逆じゃんよw
俺はゴッ『ク』、お前さんは『ゴ』ックなんだから


それでも海ステージじゃあ随分とゾックには世話になったんだが、
よく考えてみると確かにビーム兵器しかない水泳部ってのはおかしいな
つかゾックがマイナーとか、マさんにケンカ売ってるだろ?
あれでアムロを一時圧倒してただろぉ
187名無しになりきれ:2008/11/04(火) 23:37:00 0
ゾックのあれはビームじゃない 水中用の対艦兵装だ

フォノンメーザー (Phonon M.A.S.E.R)
一般的には「音波砲」または「超音波砲」。Giga Hertz 帯というきわめて短い波長の音波を発振することで、
対象の分子を振動させる、つまり加熱する装置、またはその技術のこと。

水中においてレーザーや粒子ビームの減衰率は高いし、火砲やロケット砲では射程距離がメートル単位になってしまう
結果、有効な兵装は水を後方に噴射することで推力を得る魚雷になるのだが、
射程距離が稼げるとは言えいかにも遅い
(近年では、海水を蒸発させてその気泡の中を超高速で推進するロケット魚雷
「スーパーキャビテーション魚雷」という物があり、弾頭の選択制などを考えても
フォノンメーザーの兵器化は遠のいたと言える)
フォノンメーザーであれば「水中の音速は大気中の約五倍程度」になるので、
通常の魚雷に比べれば高い命中率の兵装となりうる。
ただし命中率が高いとは言え、元々が融解する物なので効果を得るためには「しばらく照射する必要」があり、
このあたりは使い勝手のよくないところだ。
188名無しになりきれ:2008/11/05(水) 00:01:13 0
ちょwwwまさかこんなところでファーストガンダムの水産MSについて語られるとはw
嬉しくて涙でそうw
映画のガンダムくらいしか見たことないから、ゾックはアムロに一撃で沈められた印象しかないw
後はORIGINだといつの間にかすスレッガーに沈められているしw

しかもフォノンメーザーなんて初めて知った!
奥が深いなあ。

ご免よ。本当は俺、ゾックが大好きなんだYO!
改めて好きになったw
189名無しになりきれ:2008/11/05(水) 21:13:49 0
あれおかしいな
日本語なのに話が理解不能だおw
190名無しになりきれ:2008/11/16(日) 02:02:04 O
保守しなさい
191名無しになりきれ:2008/11/16(日) 11:14:18 0
保守代わり。【アパートタカマガハラ】

ここはアマテラスが管理するアパート“タカマガハラ”。
クロスエイジスレの死亡者達が集う場所である。

トム「なあ、小遣いくれよ! 生前もらってなかったんだよ!」
ツクヨミ「新入り、少し静かにしたまえ!
お前に小遣いやってもアイスキャンディーに消えるだけだろう!」
カネス「はっはっは! ここも賑やかになってきたなあ」
(ガラッ)
ツクヨミ「げ!? 姉貴……!?」
アマテラス「アニキ部屋のみなさん、もう一人新入りが来るそうです。
仲良くしてあげてくださいね。
それからツクヨミ、トム君にお小遣いぐらいあげなさい♪」
(入居者データを渡す)
トム「ブランドン・タイラー……
UO創設以来数多の反抗勢力を葬ってきた最恐のルーラー……!?」
カネス「はっはっは! トムとは相性が悪そうだなあ!」
ツクヨミ「何、少しは静かになっていい」

そして新入りはやってきた。バナナが一杯のリヤカーを引いて。
タイラー「ちわーっ、ブランドン・タイラーでーっす!
おっさん達、バナナダイエットしようぜ〜!」
全員「「「…………」」」
暫しの沈黙後。
トム「俺はおっさんじゃねーーーーー!」
カネス「はっはっは! 意外とフレンドリーだったんだなあ」
ツクヨミ「……またうるさいのが増えてしまった」

この後、アニキだらけのバナナ祭が始まろうとはまだ誰も知る由もなかった。
192名無しになりきれ:2008/11/21(金) 21:29:13 0
>>191
亀だけどGJ!
何となくアマテラスがめぞん一刻の管理人さんで再生された
そしてバナナ祭りに期待
193名無しになりきれ:2008/11/22(土) 23:52:46 0
ラルヴァ「ラルヴァと」
キサカ「キサカの」
二人「フラグ講座〜」
キ「というわけで現時刻を以ってまたまた始まりました「ラルヴァ&キサカのフラグ講座2」」
ラ「司会はこの私、「マジで二回目やるのか?アホかとバナナかと思った」ラルヴァ・ケラスと」
キ「「定期化して副収入にならないか狙っている」キサカがお送りします。
  というわけではい二回目。まあ正直ベタなのは出しつくしちゃったんですけどね」
ラ「ぶっつけ本番の前回とはちがって微妙にスタンバってきたのが悲しいですねはい。」
キ「例によって前回かなりダラダラ気味でしたからねぇ。そしてそれを解消するべく!今回はなんとゲストが登場します!
  正直なところギャラに少しでも響くからゲストなんざ要らないんですけどね」
ラ「まあそこらへんの生々しい話は置いておいて……今回のゲストは巷で噂の副会長!バン・クローd」
副「人をいつまで待たせるつもりだぁぁぁぁぁぁぁああああっ!!!」
キ「えー、というわけで熱いというよりも暑苦しい男の副会ちょ」
副「この番組温すぎるぞぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!」
ラ「ちょうどいい感じで会場が温まってきたので早速行きたいと思います」
副「うぉぉぉぉおおおおおおおっ!!どぁぁぁぁぁぁああああっ!!」


【シーン1】

親父「帰ったら、みんなで一緒にうまい酒でも飲もうや」

副「おやじぃぃぃいいいいいいいいっ!!!」
ラ「あーこれはもうダメですね手遅れですね」
キ「最後死ぬときに取っておいたうまい酒飲むタイプですね」
副「おやじぃぃぃいいいいいいいいっ!!!」
ラ「なんか激しいのが一人いますが先行きましょう」

【シーン2】

勇者達は逃げ出した!

しかしまわり込まれてしまった!

ラ「あ、これ死んだ」
キ「あるあるwそもそも逃げるコマンド自体が一種のフリですからね」
副「ああ、俺も何度逃げ切れずに全滅したことか・・・」
ラ「あれ、なんかずいぶんと冷静に」
キ「てかドラ○エは副会長さんもやるんですね」
副「俺はいつだってちゃぁぁんと冷静に物事を判断しているっ!!
  ふっ・・・それに自慢じゃあないが俺は一応のことドラ○エは
  あの苦行とも言えるエデンの戦士を職業無しでクリアしたほどやりこんでいるぅっ!」
ラ「それはもうマゾといっていいプレイじゃないんでしょうか?」
副「いや実を言うとダー●神殿で一回騙されてから疑心暗鬼になっていた時代があってな!
  もしかしたらまた騙されるのかもしれない、いやこれこそが罠!?
  などと勘ぐっているうちにどんどん深みに嵌っていったんだ!!
  それに俺は思うのだがエデンの戦士は正直最初のカラクリ兵の・・・」
キ&ラ「長くなりそうなんで次行きます」

【シーン3】
男「ねんがんのアイスソードを手に入r」

副「殺してでも奪いとる!!」
キ「殺してでも奪い取る!!」
ラ「え、なにこれ。どうしたんですか二人とも」
副「殺してでも奪い取る!!」
キ「殺してでも奪い取る!!」
ラ「呪いでもかかってんのかアンタ等はぁぁ!!」

194名無しになりきれ:2008/11/22(土) 23:53:44 0
【シーン4】
女「男くん・・・あたしのピアニカに、何の、用?」
男「・・・・・・・・・・・・・」

キ「これ完全にアレですよね」
ラ「はい、ぺろぺろしてたんですね」
副「これは男に全ての否が内包されているな!」
ラ「しかしここから始まるラブロマンス!!」
キ「ラブロマ!!・・・ねーよwwwww」
副「ラブロマンスどころか男が女にフルボッコにされるバイオレンスしか見えんっ!!」

キ「さて、そろそろお時間のようですね」
ラ「あっという間でしたね、まあ前回と同じように大して時間も経ってないみたいですが」
副「よぉぉし!!告知タイムだぁぁぁぁああああああ!!」
キ「そういうシステムうちおいてないから」
副「これを見ている諸君!!生徒会はフィジル校舎の三階!!階段を上がって左の隅に設置されている!!」
ラ「ちょ、人の話し聞いてる?」
副「明るい職場に楽しい役員!!ウノや人生ゲームも完備!!
  優しい先輩のおかげで後輩のケアもばっちし!!」
キ「職場って職じゃねーだろ!!」
副「興味のある方はぜひ!生徒会はいつでも君たちを歓迎する!!
  やっていく自信がなくても大丈夫!! 俺についてこい!!
  一緒に沈む夕日までブーストファイヤーだぁぁぁぁ!!」
ラ「スタッフ〜!!スタッフ〜!!鎮静剤持ってきて〜!!」
キ「いやもう麻酔でいいからこの人どうにかして!!」
副「どおりゃあああああああ!!!だっしゃあああああ!!!」

    
     し ば ら く お 待 ち く だ さ い

ラ「オホンッ・・・ということで気を取りなして」
キ「皆さまごきげんよう〜」
副「・・・ああ、星が見える!!・・・僕にはまだ帰るところがあるんだ!!
  大丈夫、リリィにはいつでも会えるから・・・うふ、うふふふふふうふふふ」


   この番組は
    ベアトリ薬局
    シュガーローン
    ハカタの死王
    魅!漢団!!
   の提供でお送りしました
195名無しになりきれ:2008/11/23(日) 22:04:51 0
>>193-194
ちょwwGJ!ww
196名無しになりきれ:2008/11/24(月) 00:35:10 O
>>193-194
GJ!
俺はメルビンだけは転職しな(ry
197名無しになりきれ:2008/11/29(土) 15:44:57 0
おっぱい
198名無しになりきれ:2008/12/08(月) 00:26:29 O
スパロボ復活かな?
199名無しになりきれ:2008/12/22(月) 02:08:12 O
保守いっとく?
200名無しになりきれ:2008/12/23(火) 17:28:33 0
>>193-194
むしろ1が一発ネタだったというのに
まさか続きが生まれるとは思わなんだ GJ
201 ◆gCP4pMI0TA :2008/12/26(金) 03:11:34 O
【赤と黒】
死霊皇帝の根城付近の森、その森の奥にその村はあった。
その村は戦う力の無い者の為に作られた村ではあるが、それは建て前で
実のところはゴミ捨て場となんら変わらない
本来ならば、死体の山が出来ていても不思議ではないが、ある男の気紛れのお陰で村人は生活することが出来ていた

朝焼けと共に男は村にやってくると、護衛として置いた番と村人らに笑顔で挨拶し、日課を始めた。

だが、丸一日かけて行う日課はその日に限って、たった二時間を終わることになった。
来客である。身なりは紳士ではあるが、その眼孔は血に飢えた獣を連想させるほど殺気に溢れている
彼の名は獄炎のバルトール、六武神の内の1人だ。

村から少し離れた所にある湖の畔にて、バルトールと男は腰を下ろし、葉巻をふかしている
「よく続くな」
初めに口を開いたのはバルトールからだった。
「初めは貴様が、また似合わないことをやり始めたと思ってたが」
「まぁな…」
男は静かにそう答えるとそのまま、続けた
「嬉しくってな…」
「嬉しい…?」
疑問に眉を歪ませるバルトールを尻目に男は続ける
「死に物狂いで戦ってきて勝ち取れなかったものを手にしたよ」
「…?」
「信頼……」

[続く]
202 ◆gCP4pMI0TA :2008/12/26(金) 03:12:17 O
男は静かにバルトールに話す。
「何気ないことに力を貸す俺を、あいつらはただ信じてくれる…
 感じるんだ…老い傷ついた手から俺への全幅の信頼…その手応え…」
「……」
「力では手に入れられない…どういうわけか力じゃ手にできなかったな」
「…なるほど………下らんな」
煙を吐き出しながら、バルトールは男の言う「信頼」を軽く否定した
確かに、魔族としては当然の解答に違いない。それほど、男は変わり者であるのが再認識できた。
「ところで疾風の…あの女に連絡はつくか…?」
その時、男の表情は一変した。
「え……みつかったのか?」
「無論だ…まず『器』がぴったり、境遇も好都合…人間にしておくには惜しい資質もありそうだ
 ほとんど、あの女の意向にぴったりさ」
「……ふーん…
 信頼するにたる男ってわけだ…」
「……そうとも言えんがな。利を与えている限りは充分使える」
「ためしていいかい…?」
「何を…?」
「あの女に会わせる前に、俺も確認しておきたいんだ
 そいつが本当に信頼できるかどうか…?」

[続くッ…!]
203 ◆gCP4pMI0TA :2008/12/26(金) 03:15:06 O
徐々に悪人顔が露わになる『疾風』の名を持つ男は続ける
「これはなにも、その男が裏切るとか…そんなことをいっているんじゃない…!
 さっきの怪我人達を霊に出すとわかりがいいさ…
 あいつらは間違いなく俺を信頼してくれているんだが…
 その信頼の根っこを支えているのは、俺の心とか善意とかじゃなく『力』…自分らを十分に守れるってことだろ…
 つまりは、能力だ…!
 どんな奴が手助けしても、どうしようもない屑ならば彼らにとってこんなに心細いことはない
 俺はその男の能力を計りたいんだ
 わかるだろ?獄炎の…!」
「フンッ能力か…」
「今、ちょうどうってつけの『仕事』があるんだ
 その人間の腹ん中、器量、全部計れる最高の『仕事』俺が口をききゃあ仕事には加われる
 頼むよ獄炎の…!
 その男

 計 ら せ て く れ ……!」
204名無しになりきれ:2008/12/26(金) 14:42:10 0
205名無しになりきれ:2008/12/27(土) 02:36:00 O
GJあげ
206名無しになりきれ:2008/12/29(月) 01:03:02 O
続きに期待GJ!

>>204
GJだがなぜにヒューマノイド・タイフーンw
207 ◆gCP4pMI0TA :2008/12/29(月) 06:08:38 O
どうも、作者です。
この度は、あまり此方のスレで日の目を見ないライトのSSを 書かせてもらいました。
勘の良い方なら、内容と>>204を見てもらうと分かりますが
このSSは漫画「銀と金」のあるシーンをセリフ改変+加筆したものです。
ちなみに、続きは書くつもりはないというか
ぶっちゃけると本スレで拾われればいいなとあざとく狙いながら書きました
べ、別に拾わなくたっていいんだからね
それに、漫画を文章に変換するのって結構難しいというか
後半を見てもらうと分かりやすいのですが、会話文が主になってしまいがち(自分だけかもしれないが
なので、後は原作を見るなり、本スレを見るなりして妄想しちゃって下さいな
>>204
節子それBGMちゃうOPや
とにかく、ありがとうございます
>>205
アザーッす
でも、上げるのは許さん
>>206
どもです。
とりあえず、曲抜きで考えるとわかりがいい
208名無しになりきれ:2009/01/17(土) 03:41:21 O
「追いしんぼ」

火々「…いただきます」
導果「どうです?この店の料理は」
火々「………」
導果「!?」
火々は立ち上がり鬼の形相のまま厨房へ怒鳴り込む
火々「この料理を作ったのは誰だぁぁぁぁぁぁ」
突如、厨房へ訪れた怒号と静寂
その中でおずおずと手を挙げる男が1人
エキストラ宝貝「わ、私です」
火々「貴様は首だぁぁ!この都から出て行けぇ!」













火々「っていう夢を見たんですが」
流木「アホくせぇ」
猛斧「下らん」
209名無しになりきれ:2009/01/17(土) 16:20:40 O
>>208ちょっとワラタ
210名無しになりきれ:2009/01/19(月) 21:45:48 0
だが糞
211名無しになりきれ:2009/01/21(水) 01:33:35 O
>>210
言わなくてもわかることを言って楽しい?
212名無しになりきれ:2009/01/22(木) 19:04:01 0
言わなくて分かるの?
213名無しになりきれ:2009/01/22(木) 20:42:01 O
短文だし、どうみても脊髄反射で書いたんだろ

たまたま、それがツボに入った奴が居たわけで
それが気にくわないから、糞呼ばわりする奴がいただけの話

この話はこれで終わり
214名無しになりきれ:2009/01/23(金) 21:49:24 0
なに一人でまとめたつもりになってんの?
215名無しになりきれ:2009/01/31(土) 12:54:03 0
いみふ
216名無しになりきれ:2009/02/11(水) 14:19:51 O
過疎
217名無しになりきれ:2009/02/21(土) 10:28:32 0
宇宙人魔法少女リトルグレイちゃん

魔法の国からやってきた猫だか栗鼠だか解らない淫獣が地球で出会ったのは
小学生3年生の女の子・・・・ではなく偶々地球に寄ったリトルグレイ型宇宙人♀だったのです
ここに異星の科学と魔法の力を持った史上最強の魔法少女が誕生する
その名も宇宙人魔法少女リトルグレイちゃん
(ふりふりの70年代魔法少女の格好をしたリトルグレイが登場)
「魔法の力でキャトルミューテーションしちゃうぞv」

注:これはリレー小説です
http://camels-web.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/ahhbbs/mibbs.cgi?mo=p&fo=relay&tn=0758
218名無しになりきれ:2009/03/08(日) 21:54:22 0
淫獣ってなにさ
219名無しになりきれ:2009/03/09(月) 00:50:36 O
>>218
プリキュアの妖精とかのマスコットキャラ
二匹いてたいていオスメスでラブラブしてるから
ついたと思われる
220名無しになりきれ:2009/03/10(火) 02:00:59 O
>>219
魔法少女リリカルなのは より マスコットのユーノ君が有名
お供という立場を悪用する淫の権化。主に形状が。
221名無しになりきれ:2009/03/14(土) 12:32:04 0
ひわい
222名無しになりきれ:2009/03/26(木) 22:37:32 O
にひ
223センバツP ◆dItGlIsd2k :2009/04/04(土) 14:46:53 O
「魔法少女らが甲子園優勝を目指すそうです〜その1〜」

ある夏の日、それは前々からそこにあったかのように佇んでいた。
昨日まで何もなかったグラウンド狭しと現れたそれは、一見すると闘技場にも似た外見をし、誘うかのように門を開き、中へいざなう。
その門の上に、ソレの名が東方の言葉で「甲子園球場」と記されていた。

この日から、魔法少女達の熱い夏が始まることをまだ誰も知らない。
224センバツP ◆dItGlIsd2k :2009/04/04(土) 14:49:16 O
魔法少女野球ルール
1.基本的なルールは野球と同じものとする
2.選手は学生であれば、男女は問わないものとする
3.魔法の使用は許可するが、以下の行動は禁止とする
 選手への攻撃等の直接的な妨害
 空を飛ぶ行為
 故意にボール、バットを破壊する行為
 審判の判定、勝敗を覆す行為
 ボールを増やす、バットを巨大させたりなどの行為
 使い魔、召還獣の使用
 球場の破壊、縮小、巨大化等の球場に影響を及ぼす行為
以上の行為を行った選手は即刻退場処分とする
加えて、試合中魔法を使えるのは、プレー中の選手のみとするが、治癒魔法は例外とする
4.バットの素材については不問とするが、形、大きさの上限は野球と同じものとする。
5.選手は生物であるのが好ましいが、人形、その他でもよいものとする。
その場合、操縦者もしくはそれに準ずるものは、専用の選手枠を用意するので、選手登録をするものとする。
その場合は、操縦関係以外の魔法の使用を禁じる
225センバツP ◆dItGlIsd2k :2009/04/04(土) 14:55:39 O
センバツを見ながら、幻想野球見てた結果がこれだよ!
かなり短いプロローグなのは、出すキャラクターを選んでいないから
今居るメンバーと過去のメンバーから、個人的に面白そうなのを選びたいと思います。
ルールに対しての質問、意見は常時募集してますので、遠慮なくお願いします。
226名無しになりきれ:2009/04/04(土) 21:04:07 0
逆に魔法学園なら、魔法要素を多分に含んだ野球もどきの方が面白いかも
最初はまともな野球だったのに、だんだんエキサイティングして魔法が飛び交ったりとか
227名無しになりきれ:2009/04/05(日) 20:35:11 0
ウィズボールは止めろ!
敵を皆殺しにしたら勝ちな野球もどきは危険すぎる
228センバツP ◆dItGlIsd2k :2009/04/06(月) 14:15:40 O
>>226-227
意見ありがとうございます。

初めは、魔法には制限をかけるつもりはありませんでしたが、仮にそうやった場合、野球にならないと思うんですよね。
例えば、空間を歪ませて、たった四歩でランニングホームラン出来るような状態になったり
末期のテニプリのように再起不能にして勝つという状態になってしまうのは避けたかったので、制限を設けさせていただきました。
雰囲気的にはドラベース(わかる人いるかな?)に近い雰囲気でやっていくつもりです。

明日中には、フィジルのメンバー及び、第二話が出せるよう頑張ります。
229名無しになりきれ:2009/04/06(月) 23:57:50 O
DDDよりシンカーが魔法的な何かで蘇り参戦するようです
230センバツP ◆dItGlIsd2k :2009/04/07(火) 02:16:31 0
予定変更、休みが明日に伸びてしまったので、第二話は今日中にはムリっぽいです。
が、一応メンバー揃えてみました!!!

アイシャ(控え投手) セット クリス(控えキャッチャー)
タイプ:軟投派 トリックプレー主義
フリージア(ライト)
スクナ(ショート)
マオ(ファースト)
バン(投手 四番、キャプテン) セット クロウ(キャッチャー)
タイプ:力投派 真っ向勝負主義
ユリ(センター)
リリアーナ(マネージャー兼控え投手) セット アルナワーズ(控えキャッチャー)
タイプ:特殊 
キサカ(セカンド)
キサラ(レフト)
ケオス(サード)

外野は足の速そうな三人で固め、投手陣は少々心持たないけど二人でどうにか
リリアルコンビは、特殊な場面用ってことで
内野は…適当です。ごめんなさい。

とりあえず、生徒会メンバーはバンが無理やり誘った感じ、あとはまぁ口車にのせられたり
興味があったりと、それそれ違ってたり…

>>229
ルール上、三振後のアレはご法度ですが、確かに使える感が出てますね。
とりあえず、対戦相手は、甲子園球場の意思通称「甲子園の魔物」が用意した
歴代優勝校の幻影とやっていただくことになります。
歴代優勝校といっても、現実ではなくあくまでも「魔法野球」での優勝校ですので
スポコン物のパロディチームでいくことになると思います。

また、試合に関しては、決勝以外はダイジェストになりますが、名勝負のシーンは描写するつもりです。
231センバツP ◆dItGlIsd2k :2009/04/08(水) 22:44:17 0
「魔法少女らが甲子園優勝をめざすそうです〜二回表〜」

『甲子園球場』が現れたその日、教師たちによる調査が行われた。
その間、生徒達は自習ということで全員教室で待機することになったのだが、
教室の中は、『甲子園』の話題で持ちきり…ではなく、先日行われたWMBC
(ワールドマジックベースボールチャンピオンシップ)の話題と共に盛り上がっていた。
各々の教室にて、東方出身の生徒が『甲子園』とは何かと質問攻めを受けるなか
その日は何もなく終わった。

翌日、その日の朝の朝会は何故か、その『甲子園』内で行われた。
いつものように、あいさつから始まり、教頭が諸連絡やらなにやらと話す。
「…以上で今日の話を終るが、その前に1つ…この球場についてだ
 昨日我々がここを調査したところ…」
「ちょっと待った!そこんところはワイが話すさかい。おっちゃんはだまっといてぇな」
教頭が話をしてる中、ソイツは颯爽と教頭の隣に現れた。
縦じまの衣装を身にまとい、黒い帽子とバット型メガホンを手に持った。
いかにも野球好きな身なりをしている。
「さっきからダラダラまたしよってからに、お堅い挨拶なんかいらんちゅーってんねん
 おっと、ワイとしたことが…え〜みなさんこんにちわ、甲子園の魔物です」

 シ ー ン

「カーッ!アカン!アカンな!見事にスベッてもうた…お前のせいじゃこのハゲ」
生徒の大半が現状を把握できず、静止している最中、魔物はメガホンで教頭の頭をポコポコ叩いている。
が、教頭は反撃せずにただ小刻みに震えながら話を進めた。
「あ〜、我々が調査した結果、この球場は誰かが勝手に建てたものではなく、球場の幽霊が実体化したもので
 本来ならば、昨日のうちに消去する予定であったが…いい加減にせんかぁ!!!」
教頭の怒りが頂点に達し、怒りの拳骨が飛び出るが、魔物はそれをひらりとかわして、教頭の代わりに話を続ける。
「ワイのしぶとさは天下一品やからな、おたくらの力じゃそう簡単にゃ成仏せぇへんちゅーわけでな
 んで、ワイが学園長と勝負せぇへんか、ちゅーたらのってきてたわけや
 勝負の内容は簡単や、ワイが容易する相手に野球で勝ったらええねんて、それに全部勝ったらワイは大人しく成仏するし
 負けたら、ここに居座らせてもらう…そんだけの話や、どや簡単やろ?」
それから、驚きを隠せない生徒たちを置いて、魔物は話を進める。
試合のスケジュールやそれ以外の日には練習場として使用していいこと、細かいルールの説明、それからここに来た経緯の説明
を分かりやすく、出来るだけ笑いを狙いながら(全部スベったが)話した。
「とまぁ、こんな感じでええやろ?ほんじゃまぁ、二週間後にな」
そういいながら、魔物は甲子園に消えていった。
232センバツP ◆dItGlIsd2k :2009/04/08(水) 22:45:30 0
「二回裏」
名前・甲子園の魔物
性別・男
年齢・不明
髪型・金髪
瞳色・茶色、猫っぽい感じ
容姿・縦じまのユニフォーム(上)、下は黒ズボン、黒い帽子
備考・バット型メガホン
得意技・ツッコミ
好きな食べ物・たこ焼き、お好み焼き
好きな偉人・エイジ・バンドウ(未だに最高奪三振記録を破られていないので)
好きな生物・虎
嫌いな食べ物・もんじゃ焼き
嫌いな生物・兎

【備考】
甲子園球場に集まった残留思念がまとまり意思をもった姿
甲子園が取り壊される前は、姿は無く、逆転劇を演出する程度の悪戯をしていたが
甲子園ごと幽霊になり、フィジル特有の風土のお陰で実体化出来た。

【成仏しない理由】
老朽化により、今年の夏の大会で最後のはずだったのだが、WBCPのせいで大会は延期
結局最後の大会を迎えることなく、取り壊されることになった。
「どうせ、あっちにいくなら最後にもいっちょ熱いモンがみたいねん」
と本人曰くそういうことらしい
【能力】
「固有空間 熱闘空間」
範囲:甲子園球場内全体
球場内、もしくは、球場に対して発動された魔法を察知、無効にする。
本人は発動している自覚はない。
「記憶実体再生」
過去の優勝校と戦わせるために使用
選手の身体能力、チームの特徴は再現できるが、個々の意志までは再現できないので
自分で動かさないといけない
233名無しになりきれ:2009/04/13(月) 12:13:13 0
ここではグレゴリ萌えはやらんのか?
234名無しになりきれ:2009/04/13(月) 19:37:09 0
住人が少ないから揉めなかったが、他スレならフルボッコ間違い無しの幕引き
厨度では肥満もコウガもぶっちぎりのトップ
むしろあの自己陶酔型(文字通りの)オナニー変態男にどうやったら萌えれるのか聞きたい

>>233のグレゴリ萌え語りに超期待
235名無しになりきれ:2009/04/13(月) 20:01:13 0
あれはどう見てもスレタイをエロファンタジーTRPGスレってするべきだっただろw
エロとかグロやっとけば重厚感が出るってわけじゃない。
236名無しになりきれ:2009/04/13(月) 20:16:14 0
むしろファンタジー世界で女を陵辱しようぜだろ
ヘヴィとは名ばかりで内容はPINKのなんでもありかエロ会話向け
237名無しになりきれ:2009/04/13(月) 21:49:08 0
甲子園の魔物待ち
238ニーラ・サワー:2009/04/13(月) 23:42:00 0
日の光を浴びて銀色に輝くザハル湖の畔に探検家の一団がやって来た。
ザハル地方に伝わる黄金伝説の謎を解き明かすためである。
この地方最大の広大な湖は、昔から不思議な現象が起こる事で知られていた。
昼の間は眩いばかりの銀色の水面は、夕方の短い間だけ黄金の光を放つのだ!
黄金の話に惹かれて何人もの冒険者が湖底に潜って真相を確かめようとしたが、
湖の底は広くて深く黄金に辿り着いた者は誰一人としていなかった…。

黒髪で中年の男が探検隊の一人に指示を出して木箱から道具を取り出す。
どうやら彼が探検隊の隊長のようだ。
彼の名はニーラ・サワー。変わり者として知られる街の神秘研究家である。

「今回の黄金伝説の解明に当たっては、万全の用意をしてきました。」
そう語るとニーラは細長いチューブの付いたマスクの説明を始める。
「このマスクを被れば、チューブから送られてくる空気で水中でも息ができるんです!しかし私は泳ぎが大の苦手…。
そこで君の出番です、マイケル君!君はペキオンの競技大会で優勝したと聞いていますよ。」

※【競技大会について】
この大陸では古代から神への奉納行事として競技大会が開かれている。
種目は槍投げに拳闘、戦車レースに競走、水泳と多岐に渡り、参加者同士が競う。
前回ペキオンで行われた競技大会の水泳部門で優勝したのが若干15歳の彼、マイケル・フェルグスであった。


「はーい、分かりました隊長! 僕の水泳術でザハルの湖底に眠る黄金を見つけて見せます!」
そう答えるとマイケルは意気揚々とマスクを身に着け湖に身を躍らせた。

10m…20m…30m…チューブに記された目盛りが水中の深度を知らせる。
深度が50mに達したところで伝声管を兼ねたチューブで声を掛ける
「マイケル君、湖の様子はどうですか…マイケル君!」

「隊長、何も見えませーん!真っ暗です!」

「ああ、しまった!明かりが無いと何も見えないとは!マイケル君、一旦上がってきてください。
…これは大変困りましたねぇ…新たな問題が発生しました。
水の中には松明を持っていけませんから、完全防水のランタンを用意するしかありません…今回は帰還しましょう。」

こうして、思いもかけないトラブルの発生でザハル湖底の探索は終わりを告げたのであった…。

またいつか、同じ場所同じメンバーでこの時間にお会いしましょう。皆様さようなら!

この番組はhttp://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1234786723/l50の提供でお送りしました


【次回予告】
ザハルの黄金伝説を解明する為にあの男たちが立ち上がった!
幻の原住民の長老が語る湖の知られざる真実とは?
湖の底には水没した古代文明の遺跡が?
ついに古代水竜ザッシ―を目撃か? 探検隊に襲いかかる謎の怪物の正体は果たして!?

ニーラ・サワー探検隊 2時間スペシャル 今夏放送予定!(…は一切ありません)
239名無しになりきれ:2009/04/15(水) 23:46:08 0
「魔法少女らが甲子園優勝をめざすそうです〜勝手に応援篇〜」

魔法学園に突如出現した野球場。
それは甲子園の魔物という幽体であった。
正攻法で排除するにはあまりにも難しく、野球で対戦することで成仏させる事になったのだ。
魔法学園から選ばれた精鋭が甲子園にて熱戦を繰り広げようとしているその時、一つの影が駆けてゆく。
「ああ〜!フリージア女王様の勇姿をこの目に焼き付けねば〜!」
影の正体は一匹の黒猫。
しかしてその実体はフリージアに倒錯した愛を寄せる白百合騎士団の一人ルズ!
メンバーに選ばれなかったが、ならばせめて応援する事でこのイベントに参加することにしたのだ。

ルズが甲子園の入り口に入った瞬間、異変に気がついた。
辺りに漂うただならぬ冷気。
それは決して自然発生したものではなく、人為的に生まれたものだ。
その証拠に冷気はルズに纏わり就くように集まり、辺りには敵意が充満する。
「ふ・・ふぎゃああ!なんですの〜!」
突然の異変に飛び上がったが、冷気から逃れる事はできなかった。

冷気は一気に加速し、六角形の氷柱となってルズを飲み込んでしまったのだ。

「ほほほほ!如何に二等課のルズ様といえども私たちにかかればこの通りですわね。」
「うふふ、氷結迷彩のおかげで全く気付かれなかったわ。」
「全く間抜け面して。このまま暫く閉じ込めて置きましょ。」
氷漬けになったルズの周囲を取り囲む空間がパズルをはがすように崩れ、真っ白なドレスを纏った三人の女性とが現われた。
一人が言っていたように、氷の結晶を身に纏い光の屈折率を変えて姿を消し、ルズを待ち伏せていたのだ。

一人の女性とが得意気に氷柱を突付いた時、*ピシ*と小さな音が響く。
小さな音であってもそれを聞き逃す三人ではない。
想定外のことであったが、即座に距離を取り構える。
その次の瞬間、音は大きくなり、それとともに標柱には亀裂が走る。
「フギャアアア!!あなたたち!フリージア女王様のお側に仕える私を甘く見るのではなくてよ!
この程度の氷、フリージア上王様に比べれば温泉も同様ですわ!」
氷柱を砕きながらルズ復活!
まさか氷漬けにしたにも拘らず力ずくで破るとは思っていなかった三人は戸惑いを隠せないでいた。

そんな様子にルズは更に畳み掛ける。
「白百合騎士団第一小隊サイン!白百合騎士団第四小隊コサイン!白百合騎士団本隊付きタンジェント!
三等課程生徒の分際でこの私に喧嘩を売るだなんていい度胸をしていますわね!」
そう、この三人は白百合騎士団の団員であり、ルズとは顔見知りである。
所属タイが違う三人が何故組んでいるかは疑問に思ったが、今はそれはどうでもいい。
毛を逆立て威嚇するルズに三人は気おされるが、三人とてここで引くわけには行かなかった。

「ルズ様!少々あざといのではなくて?フリージア女王様が猫好きだからって猫に変化して近づくだなんて!」
「その横暴に対抗すべく私たち、隊を越えて超党派で団結しましたの!」
「我らブリザードメイデン!フリージア女王様親衛隊(非公認)がフリージア女王様に就く悪い虫は排除します!」
サイン、コサイン、タンジェントがそれぞれ啖呵を切り気を集中させる。
それを受け、ルズの目がギラリと光る。
「小娘どもにはきついお灸が必要なようですわね!
いいですわ!フリージア女王様の親衛隊(非公認)をかけて!この決闘受けてたちますわ!」

熱戦が繰り広げられる甲子園の外でもう一つの熱い戦いが繰り広げられようとしていた。
どちらも結局非公認でフリージア本人には全く相手にされていない親衛隊の座を駆けるという不毛極まりない戦いではあるが・・・
本人達は全くそのことに気付いていないが、幸せなのは確かであった。
240名無しになりきれ:2009/04/18(土) 08:48:39 0
ageageage
241センバツP ◆dItGlIsd2k :2009/04/24(金) 01:10:02 O
スマン!!あと一週間待って下さい。
242アノマリー ◆DENPAGG8UY :2009/04/25(土) 23:34:49 0
【白羽の矢・プロローグ】

「固まるな、大魔法の狙い撃ちだぞ!」
「あそこだ!二時の方角の丘の上に魔法使いが!次の詠唱が終わるまでに殺せ!」
「左翼、弾幕薄いよ!なにやってんの!!」
「邪魔だ難民ども!」
「中にゲリラが紛れている模様!」
「かまわん!弓兵部隊!斉射!」
「突貫!」
雷鳴が轟き、火球は爆炎をあげる。
戦場を覆いつくす怒号と悲鳴。血と鉄、そして泥の臭い。
世界に起こる無数の戦火の一つ。
戦いは激しさを増していくが、この阿鼻と叫喚の宴は後数分の後に唐突に消え去る事になる。
一つの意思に統合されて・・・
243アノマリー ◆DENPAGG8UY :2009/04/25(土) 23:35:00 0
【白羽の矢・1】

フィジル島魔法学園大会議室。
重厚なテーブルに主だった教師たちが硬い表情で座り、上座には学園長と教頭が苦しげな表情で正面を見ていた。
その視線の先、二人の対角線上には一人の生徒が座っていた。
リリアーナ・W・モントローズ。
成績は中の上。
それなりに特別な存在ではあるが、学園の一生徒でしかない。
本来この場にいられるはずもないのだが、唐突に呼び出されその表情には戸惑いが隠せないでいた。

「突然呼び出してすまなかったね。」
荘厳に響き渡る学園長の声に笑みをもって応えるが、誰が見ても引きつっているのは判るだろう。
会議室の雰囲気は彼女の笑みを引きつらせるのに充分なのだから。
しかしそれを気遣うものは誰もいない。
正確に言えば、気遣う余裕がないのだ。
静寂の空気が支配する中、学園長が言葉を続ける。

「とあるところで、一人の天才が生まれてしまった。
そう、生まれてしまったのだ・・・。」
その言葉にリリアーナは首を傾げる。
天才が【生まれてしまった。】
まるで不幸な事であるかのように。
「あの・・・」
「時として過ぎたる力は不幸を生み出す。君にはよくわかるだろう?
生まれてしまった天才は力の制御ができず、暴走しているのだよ。」
リリアーナの質問が口に出る前に学園長が説明をする。
そう、リリアーナ自身もカドゥケウスという神器を身に封印している。
カドゥケウスの力は人間の域を超えており、身をもって知ったリリアーナには学園長の言葉の意味がよくわかった。

しかしそれが自分にどう関係しているのか。
疑問が心に浮かんだ瞬間、まるでそれがわかっているかのように説明がなされる。

天才が生まれたのは数日前。強力なテレパシストである。
暗示やマインドコントロール、シンクロなどと言うレベルではない。
強制的な感情や意思の矯正。操心術とでもいおうか・・・。
しかも対象者にその自覚は皆無。
効果範囲は20kmにも及び、範囲内のものは天才の感情に同化矯正されてしまう。
これは遠見の水晶を介してもその範囲に入れば影響は免れない。
あまりに強力な為、精神構造の違う精霊達すらも影響を受けている。と。
【意思の在るもの】には逃れる術はない。
「暴走するテレパスの範囲内で活動できるのはテレパシーを受信できないリリアーナ君だけなのだよ。」
説明はそう締めくくられた。

「判りました!暴走する天才さんを宥め、連れてこればいいのですね?」
そこまで聞いたリリアーナは力強く立ち上がる。
しかし、その言葉に対し、反応するものはいなかった。
いや、会議室の空気はますます冷たくなっていく。
244アノマリー ◆DENPAGG8UY :2009/04/25(土) 23:35:10 0
【白羽の矢・2】

「リリアーナだけだ。といったはずだが?」
教頭がぱちんと指を鳴らすと、リリアーナの姿は煙に包まれ、その正体が露になる。
褐色の肌、黒髪、そして民族衣装。
アルナワーズ・アル・アジフがそこに立っていた。
「あらぁん、バレてましたぁん?」
「学園教師陣を舐めるなよ?また機密書類を盗み見しおったな。
まったく。お前では無理なんじゃ。
説明はした。おとなしく引き渡してくれるな?」
おどけて見せるアルナワーズだが、ペースを乱す者はいない。
教頭の重々しい叱責が響くのみ。
その言葉を受け、アルナワーズの表情にも変化がおきる。
すっと目が細められ笑みが消えていく。
自分では無理な事はわかっていた。
いくら幻術科に席を置き、精神魔法に秀でていたとしても所詮は生徒の身。
アルナワーズが策を弄してできるくらいならば教師たちが処理しているだろう。
居並ぶ教師陣があえて生徒であるリリアーナを頼るのは・・・

「天才暴走テレパス。放っておけば数日中に衰弱して死ぬのでしょう?
だったら放っておけばよろしいのではぁん?」
「だからこそだ。保護し、制御法を教える必要があるのだ。
それができるのはリリアーナだけだとわからんか?」
「ベアトリーチェのように?」
「・・・!」
学ぶ意思のある者に広く門戸を開く魔法学園。
それと同時に、制御できぬ巨大な力の持ち主を保護し、教育する側面もある。
が、アルナワーズの矢のような一言で教頭は言葉に詰まる。

教師陣もリバース内でベアトリーチェとリリアーナの邂逅があったことは把握している。
そしてアルナワーズが何故ベアトリーチェの名前を出したのかも。
ベアトリーチェ同様、下手に死なせても周囲一帯に影響が残る。
ベアトリーチェの場合は強力な毒だが、この場合は残留思念が・・・。
だがそれは学園側の、そして世界的な懸念であり、アルナワーズの懸念ではない。
言葉に詰まる教頭に畳み掛けるようにアルナワーズは続ける。

「リリィはテレパシー受信ができない。故に暴走するテレパスに対する最も有効な手段でしょうねぇん。
でぇも〜・・・受信できないだけでリリィの感受性は人一倍強くてよ?
機密書類によると件の場所は戦場だった。しかも今はテレパスの影響で戦場は同士討ちまたは自決により生きているものはいない。
挙句の果て、自然すらも捻じ曲がっている。
そんなところへリリィをやることはできませんわぁん。
代わりに私が行くか・・・超超遠距離魔法や巨大封殺陣・・・いいえ、ゴーレムを一体差し向けるだけでもいい。
いくらでも方法があるでしょう?」
勿論これは【天災たる天才】の殺害を前提とする提案である。
学園側としてはあくまで最後の手段。今のところは選択肢にはない。
教頭がそれを口に出す前に言葉は発せられる。

「ほっほっほ、美しき友情ぢゃの。
しかし、アルナワーズ。君はリリアーナ君を見くびっていまいかな?
先ほどでたベアトリーチェとの邂逅。
彼女はやってのけた。その強さを・・・。
彼女の慈母の力。それが今必要とされているのだよ?」
要求を突きつけるアルナワーズに応えたのは学園長だった。
説得材料として使ったベアトリーチェの件を逆利用されては出る言葉もない。
が、それでも引く事はできなかった。
245アノマリー ◆DENPAGG8UY :2009/04/25(土) 23:35:21 0
【白羽の矢・3】

「どのように言われてもリリィは渡しませんわ。」
「ふぅむ。ならば仕方がないな。君を暫く拘束させてもらおう。
理由は機密書類の操作、重要会議への潜入・・その他望のモノを付け加えるぞ?
それとも、逃げる算段はついておるのかな?」
学園長の言葉とともに、アルナワーズの両脇に二人の教師が現われる。
その手には青白い炎が握られている。
が、アルナワーズは抵抗する素振りもなく、静かに笑みを浮かべる。

この炎は【セントエルモの火】というマジックアイテムであり、その効果はあらゆる嵐を鎮める。
本性が嵐の具現であるアルナワーズも例外なくこの火から逃れられる術はない。

しかしアルナワーズは己を知っている。
自分の真なる力は幻術でもなく、現象の具現でもなく、その弁舌であるという事を。
「うふふ、そんなものを出さなくとも、ここに来て逃げられるとは思っていませんわ。
でも、私がいなくても志を同じくする友人達がいますもの・・・!
ここに学園憲章第13条第四項の適用を要請します。」
毅然と言い切るアルナワーズに学園長の顔がほころぶ。
そして、確認するように連れて行かれるアルナワーズの背に問いかけるのであった。
「・・・ならば仕方があるまい。
しかし、君がこのような行動にでるとは意外だったよ。
あるがままなり、ではなかったのかな?」
「うふふ・・・確かに・・・
私もこの学園に来て変りましたの。それもまたあるがままなり、ですわぁん。」
振り向きもせず答え、そのままアルナワーズは連れて行かれた。


この言葉が魔法学園で生徒と教師の対決の開始を意味する宣戦布告となる。
学園憲章第13条第四項。
学園に定められた様々な決まりの中でも、生徒と教師の対立についての項目である。
力押しで行けば教師側はいくらでも生徒達を押さえつけられる。
が、それを是としない学風がこの項目を作り出したのだ。
特定条件を定め、教師と生徒の代表者たちが競い合う。
後にリリアーナ攻防戦と言われる長い24時間の始まりであった。

教師たちと生徒達に緊張が走る中、当のリリアーナはまだ何も知らない・・・
知ればあらゆる危機を理解した上でも行くであろう。
だから知られないように情報操作し、場合によっては氷漬けにしてでもとフリージアには言い含めてあるのだった。
246アノマリー ◆DENPAGG8UY :2009/04/25(土) 23:35:34 0
【白羽の矢・4】

リリアーナが赴いて数日後。
彼女が見たものは・・・一つの感情に引きずられ捻じ曲がる大地。
そしてその中心に倒れる・・・頭を貫かれ衰弱しきった一人の少女だった。
傷と飢え、そして何より、能力の及ぶ広大な範囲内の全ての生き物の心の隅々を強制的に全て認識してしまったが故に。
戦場というフィールドの心の奥底の闇を、膨大な数の殺戮と憎しみ、悲哀・・・。
目を閉じようがどうしようが見続けなければならぬその能力ゆえに・・・!

そしてその瞬間、リリアーナは理解した。
何故自分が選ばれたのか、を。
テレパシーの非受信体質などほんの些細な事でしかない。
神器の共鳴・・・
その意味を!そしてこれから起こる事を!

#############################################

リリアーナがそこで何を感じ、どうしたのかは記録には残っていない。
唯一つ。
彼女は無事生還し、一人の少女を保護したのであった。
彼女は精神感応によって膨大な知識を吸収しており、保護期間を経て飛び級で二等課程幻術課に編入される事となる。
無分別な精神波動を抑え、それを思念の具現化というベクトルに変更して・・・


リリアーナ帰還の翌日。フィジル島魔法学園博物館の某所にて・・・
数人の人影が一般には知られていない展示室にて集っていた。
学園長、教頭、シヴァ、レオ・・・
学園の重鎮ともいえる数人が生徒には決して見せぬ表情で
「神杖カドゥケウスと神矢シラハが接触したか・・・。」
「もうそろそろ限界ですな。」
「博物館とフィジル島の結界を三重にしましたが・・・無理でしょうな。」
「然り、流石に神器がこれほどの数一箇所に集まれば、もはや協会も騙しきれますまい。」
「協会だけではない・・・奴らも・・・。」
「星辰は正しき位置に戻りつつある。ここで神矢シラハが手に入ることは僥倖ぢゃったな。」
「うむ・・・良くぞ間に合った。諸君、感謝するぞ。
これからの世界、人間と呼べるのは不屈なる精神を持って戦う者。じゃからの・・・」
「神々と戦いうる種族・・・か。」
語られる言葉と表情はこれから起きる未曾有宇の出来事への畏怖とそれを乗り越えるであろう確信に満ちながら・・
247アノマリー ◆DENPAGG8UY :2009/04/25(土) 23:35:44 0
【白羽の矢・資料】

名前・ アノマリー
性別・女
年齢・9
髪型・ 金髪ロング
瞳色・ 金
容姿・ キトン着用 側頭部を矢が貫いている マーチの手からシーツを剥ぎ取った者は更におぞましきものを見ることになるであろう。
備考・ 頭を貫通した矢が原因で突発性睡眠症候群になり、一日の殆どを寝てすごしている。
   また、その影響で強力なテレパシストになった。
   が、その強力すぎる能力ゆえに人の心に関わる事を極端に恐れている。
   眠りながら1秒先の予知夢を見ており、眠っていても日常生活に不自由がない。
   普段は夢が具現化した思念獣マーチ(茨+ゴスロリ服を着た巨大ぬいぐるみウサギ(雄)2m)に小型ベッドごと抱えられて活動している。
   アノマリーに突き刺さっている矢は神器シラハの矢。
   これによって傷つけられると極僅かな確率で特殊能力を身につけられるとか付けられないとか・・・    
(以下は任意解答欄)
得意技・ 精神感応
好きな食べ物・ 腐っていない肉
好きな偉人・ なし
好きな生物・ ウサギ
嫌いな食べ物・ 腐っている肉
嫌いな金属・ 鉄
今一番欲しい生物の毛・なし
保険に入りますか?・ いいえ


<基本能力>                
STR : 1
VIT : 5
AGI : 2
DEX : 2
INT : 25
MAG : 5
MEN : 50
LUK : 60

<職業Lv>
精神感応 9
生への渇望 7
すれている心 5
ガラスの心 5
思念の具現化 8
寝起き(悪) 6
 
キャラクターイメージ
http://verger.sakura.ne.jp/top/z/01.jpg
248名無しになりきれ:2009/04/26(日) 19:20:50 0
GJ!
001ktkt
249名無しになりきれ:2009/05/03(日) 17:59:41 O
投下GJ
次キャラ?
250アノマリー ◆DENPAGG8UY :2009/05/03(日) 23:16:21 0
アリガト
でも次キャラにするには色んな意味で扱いが難しすぎるかな、と
251名無しになりきれ:2009/05/05(火) 01:01:50 O
レストンクスそーなのかー
ボスキャラかと思ってたw
252名無しになりきれ:2009/05/05(火) 14:16:46 O
魔法少女のボスキャラはロックのなかの人と決定しているからなw
いい加減飽き飽きした
253名無しになりきれ:2009/05/05(火) 18:02:45 0
GW厨乙
254名無しになりきれ:2009/05/06(水) 07:55:44 0
GJなのよv
そして保守なのよv
255名無しになりきれ:2009/05/10(日) 21:38:49 0
俺を惚れさせられる
僕の考えた最強キャラはいないのか?
256名無しになりきれ:2009/05/17(日) 04:13:12 0
新章突入
257名無しになりきれ:2009/05/31(日) 17:11:34 O
スレッド・ホッシュ
ジップ・デークレ
258名無しになりきれ:2009/06/11(木) 22:55:56 0
昔の萌えスレから発掘

(A)
ネーミングセンス/キャラ設定個性/キャラ人格個性/アイテム個性/スキル個性/行動・情景描写/心理描写/セリフ回し

全8項目、キャラクターの中の人のセンスや技量を対象とした評価テンプレ。
各項目の数値が高いほど個性的で印象の強いキャラ、となる。

ネーミングセンス:キャラの名前や武器、必殺技の名前のセンスを評価。
キャラ設定個性:キャラの経歴、バックグラウンド的設定を評価。
キャラ人格個性:キャラの性格や主義・主張、嗜好を評価。
アイテム個性:キャラの持ち物や登場させる小道具を評価。
スキル個性:必殺技や特殊能力の内容を評価。
行動・情景描写:キャラの行動や情景描写に関する文章力を評価。
心理描写:キャラの心理描写における文章力を評価。
セリフ回し:セリフ回しの格好良さや印象の強さを評価。

(B)
・熱血度/クール度/ケレン味/色気/主人公っぽさ/悪役っぽさ/シリアス度/厨度

全8項目、キャラクターの全体的イメージについて評価するテンプレ。
こちらは別に数値が高ければ良い訳ではない、あくまでそのキャラのポジションを問う(最後の項目は低い方が良いけれど……)。

熱血度:ピンチの際や戦闘時等に熱い展開・熱いアクションを起こせているか評価。
クール度:ピンチの際や戦闘時等にカッコイイ展開・カッコイイアクションを起こせているか評価。
ケレン味:ハッタリを利かせたり、如何にもな展開で如何にもな事をやるのが得意かどうか評価。
色気:キャラの色気や可愛げを評価。所謂「萌え」?
主人公っぽさ:ストーリーの中心に近いポジションにいるかどうか評価。低ければ低いほど脇役っぽくなる。
悪役っぽさ:悪役臭さ。高ければ悪党、低ければ善人。
シリアス度:キャラの性格や行動のシリアスさ。低いほどギャグキャラに。
厨度:厨っぽさ。最強厨や設定厨ほど数値が高くなる。

表記方法の例:
「ネーミングセンスは某有名RPGの丸パクリ、キャラの設定や性格は王道。
武器や技の名前は厨臭く、文章は結構上手い。熱血系で、スレの主人公的ポジション」
というキャラクターがいたとすると、評価は下記のようになる。

○○(キャラ名) (A)1/3/3/2/2/4/4/3
           (B)4/1/3/2/5/1/3/3
259名無しになりきれ:2009/06/12(金) 08:16:26 0
>>258
好きじゃなく評価の時点でドン引き
とんでもなく上から目線のテンプレだな
本当に使用されたことあるのか?
260名無しになりきれ:2009/06/12(金) 11:58:30 0
コテが名無しに化けて自己満足で使用した事ならあったな
261名無しになりきれ:2009/06/12(金) 19:11:18 0
どうでもいいからSS書けよ!
俺は長い文章苦手だから無理だがな!

鬼道戦士コウガ!最終回!父よあなたは父・・・でいいのか?
性別無いって微妙だねの巻
262名無しになりきれ:2009/06/13(土) 19:53:23 0
微妙かあ…(´・ω・`)
263名無しになりきれ:2009/06/16(火) 05:50:49 0
保守弁ト

264名無しになりきれ:2009/06/26(金) 01:35:20 0
ほす
265名無しになりきれ:2009/07/11(土) 12:02:12 0
――チャロゼキャラ人気投票――

ひこにゃんに一票!
266名無しになりきれ:2009/07/11(土) 12:43:19 0
>>265
好きなの選べ
チャッチャ避難所
http://changi.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1242214815/

投票所@2ch掲示板
http://changi.2ch.net/vote/

つか>>1くらい嫁
267名無しになりきれ:2009/07/11(土) 12:54:48 0
すまんかった。
昔は愚痴は雑談所で萌え雑談は萌えスレと住み分けてたんだが
今はSSしかいけないんだな。
268名無しになりきれ:2009/07/16(木) 18:54:31 0
SSなんてかけまへん
269ゆめおり村・仮想GM ◆QE.MYCSSeE :2009/07/24(金) 20:37:22 0
かつてあったほしふり村のような趣のスレ、良いなと思ったけどスレを立ててスレ主になる気はない。
話作り、ルール作り、参加者へのフォロー…グラスハートの私にはなんとも重責。
FOしてしまうかもしれない…だからこのスレを少しだけ借りることにしたよ。
270ゆめおり村・仮想GM ◆QE.MYCSSeE :2009/07/24(金) 20:38:25 0
ここは、にじおり村。
虹織り平原に造られた小さな村です。
一年前、虹織り平原に巣くっていた悪いドラゴンが退治されました。
すると平和になった虹織り平原には、西の猫の丘や東の犬の森からたくさんの開拓者たちがやってきました。
開拓が始まると人間の商人やエルフの狩人、冒険心に富んだコボルト…村には様々な人や動物が訪れ始めます。

村の皆は力を合わせて家や橋を造ったり畑を耕したりしていますが、まだまだ小さな村に過ぎません。
ほとんどの村人は村を大きくするより、おいしい料理やお菓子を食べたり、
虹織り平原の未知の森や湖や原っぱを探検したりする方が楽しかったからでした。
今日も村人は遠くからの旅人をもてなしたり、今年のミス・にじおりが誰かを噂したりと大忙しのようです。

さあ…貴方もこの虹織り平原地方に入植して、にじおり村の住人になってみませんか?
開拓者のみなさんで、にじおり村の物語を紡いでゆきましょう。
271ゆめおり村・仮想GM ◆QE.MYCSSeE :2009/07/24(金) 20:39:09 0
名前: ポワン
種族: ラウルフ族
性別: 男
職業: 村長
外見: 老犬の顔をした人型種族、毛皮は白くてもふもふ、目は眉毛で隠れて見えない
身長: 146cm
体重: 45kg
好きなもの: ソーセージ
嫌いなもの: 厄介事
キャラ解説: 犬の森から息子夫婦と一緒に開拓にやって来たラウルフ族の老人。
うっかり寝坊して第一回にじおり選挙に欠席してしまったら、推薦でにじおり村の村長に就任していた。


名前: リリー・ライン
種族: フェルプール族
性別: 女
職業: 獣の川の渡し守
外見: 猫耳の人型種族、黒い目に肩までの茶色の髪
身長: 150cm
体重: 38kg
好きなもの: 甘いもの
嫌いなもの: 雨
キャラ解説: きままに猫の丘からやってきたフェルプール族の少女。
獣の川に橋が無いのを不便に思い、なんとなく渡し守になってみた。


名前: プープルフィ
種族: 妖精
性別: 性別を表す特徴は無い
職業: なんでも屋
外見: 羽をはやした人型種族、短めの金髪に青い目
身長: 35cm
体重: 2kg
好きなもの: 楽しい事
嫌いなもの: 重い物
キャラ解説: にじおり村の外れに立つ、約束の大樹のうろに住んでいる妖精。
272ポワン村長 ◆QE.MYCSSeE :2009/07/24(金) 20:40:07 0
午後の昼下がり、遅く目を覚ました村長は欠伸をすると昨日からテーブルに残っているソーセージを一齧りします。
すると、ドンドンと扉をノックする音が聞こえてきました。

『村長さ〜ん!一大事です〜!』

この緊張感の無い声はフェルプール族の渡し守、リリー・ラインに間違いありません。
フェルプール族とは、主に猫の丘を縄張りにしている猫耳の人たちの事です。
見た目は人間に猫耳が付いただけの人間に近い者もいれば、直立した猫そのものという人たちもいます。
リリー・ラインは殆ど人間に近いタイプで、たまに彼女を口説こうという人間もいました。

対して村長は、犬そのものの顔です。
もちろんラウルフ族も同じように見た目は様々で、人間に近い顔の者もいます。
にじおり村を挟んで猫の丘の反対側に在る犬の森が、ラウルフ族が主な住みかでした。
こう聞くと大抵の人はなぜか両種族の仲が悪いと想像しますがそんな事はありません。

村長と渡し守のリリー・ラインも喧嘩になることはあっても、翌日には仲直り。
なぜなら、フェルプール族は一般的に気まぐれで気分が変わりやすく、リリー・ラインも例外ではありません。
村長は村長で年のせいか、昨日の事はあまり覚えていないからでした。

…え?
今のは個人的な例でフェルプールとラウルフ、種族全体の仲とは関係無い?
―――にじおり村でそんな細かいことを気にしてはいけません。

「なんじゃな?リリー・ライン。また厄介事では無かろうな?」

村長は、ドアを開けるとリリー・ラインを迎え入れました。
部屋に上がったリリー・ラインが外套のフードを下ろして、ぶるぶる頭を震わせると水飛沫が飛び散ります。
村長が首を傾けて扉の外を見ると、ザーッという音を立てて強い雨が降っていました。

『獣の川が茶色に濁り始めたんです〜。洪水の気配がひしひしとするので早く避難の号令を出して〜。』

「それは大変じゃ…しかし、今日は城から役人が来るので、わしが接待をせねばならん。
わしが避難命令を出しに獣の川まで向かえば、誰が役人を接待するのか?
役人の気に入る皿の位置やソーセージの味付けは半年かかって、わしが体得したものじゃ。
おいそれと他の者に務まるというものではないが…。」
273リリー・ライン ◆QE.MYCSSeE :2009/07/24(金) 20:41:03 0
村長はぶつぶつ呟くと、なにやら深く考え込み始めました。
しかし、リリー・ラインは長考に入った村長をこっちの世界に戻す術を心得ています。

「村長さん…私、昨日と〜ってもおいしいソーセージを手に入れました〜。
あおぞら牧場の元気な牛たちのお肉と魂の結晶のソーセージですよ〜!
川沿いの人たちを避難させた後に差し上げますから、早く半鐘台を鳴らして〜!」

『半鐘台!おお、わしも今まさにそうせねばならんと思っていたところじゃ。』

慌てて雨用の帽子と外套を身に付けた村長さん。
リリー・ラインは村長を連れて半鐘台に向かいました。
半鐘台は、にじおり村のちょうど真ん中ぐらいの広場に設置されています。
鐘の音はとっても大きいので、にじおり村の中ならどこにいても聞こました。
上流にも下流にも、川沿い人たち全員に聞こえることでしょう。

「ぜぇ…はぁ…わしはもう駄目じゃ…リリー・ラインよ、代わりに鐘を鳴らしてくれい…。
急いで逃げろの合図を出せば、川沿いの者達もここに避難してこよう…。
避難しろの合図は、鐘をゴーン!家に入ったまま動くなは、グォーン!じゃぞ。
良いか…くれぐれも、間違えんようにな。」

村長は、ゼェゼェと息を切らしていました。
広場まではたいした距離ではなかったのですが、寄る年波には勝てません。
この分では、梯子を登るのも難しいでしょう。
リリー・ラインは村長の言葉に頷くと猫の様な身のこなしで梯子を上り、木槌で叩いて鐘を鳴らしました。

『グォーン!』

「あれ…グォーン?なら〜も〜ういっか〜い!」

『グォーン!』

鐘は何度叩いても家から出るなの合図を響かせてしまいます。
叩く位置を変えたり、強く叩いたりしても音は変わったように聞こえません。
間違った合図に村長は気もそぞろのようで、しきりに手で顔を覆っています。

「村長さ〜ん!どうすればいいの〜!」

『うむ…決めたぞ。あおぞら牧場ソーセージの付け合わせはカブのスープとしよう。』

耳が遠いのか村長は、全く合図を聞き分けられていないようでした。
274プープルフィ ◆QE.MYCSSeE :2009/07/24(金) 20:41:58 0
獣の川の上流では、降り続く雨の中で小さな影が飛び回っています。
小さな影は上下が一続きになっており、袖のついている緑のワンピースを着ていました。
片手に雨除けの大きな葉っぱを持っており、反対の手には布の小袋。
飛び回る影の正体は小妖精のプープルフィでした。
いわゆるフェアリーと呼ばれる妖精の一族です。
退屈が嫌いなプープルフィは、代り映えしない故郷の森に飽き飽きして虹織り平原にやってきたのです。

そのプープルフィは、なにやら忙しそうに獣の川と森とを往復していました。
森から飛んできて、川に着くと小袋をポイッと捨てて、また森に戻って行きます。
川に捨てられた小袋の数は何十個にもなり、川底で小さな山になっているのが見えます。
小袋が捨てられた所の水は、そこから茶色に濁っていきました。

「ふぅ、これで最後だね。ボクに任せれば、こんなのあっという間だよ!
川が真っ茶色になっちゃったけど…まあ、そんなのどうでもいいよね。」

プープルフィは友人の妖精ティー・パックに失敗作の紅茶を捨てるように頼まれていました。
報酬にたっぷりの蜂蜜を約束されると、プープルフィは一も二も無く引き受けてしまいます。
本当はゴミを捨てる場所は別に決められているのですが、遠くまで重い荷物を持ってくのはとっても面倒…。
そこで、この少し思慮の足りない妖精はゴミを近くの川に流してしまったのでした。
そう…獣の川が濁ったのは雨の影響ではなく、妖精の不法投棄が原因だったのです。

『グォーン!』

「あれ?広場で鐘が鳴ってる。なんだろな?行ってみよっと!」

プープルフィは楽しいことや変わったことが大好き。
普段は鳴らない鐘が鳴ったということは、何か村で事件が起こったに違いありません。
プープルフィはゆめおり村の広場に向かって飛んで行きました。
物見高くて好奇心の強いゆめおり村の住人たちも、家から出るなの合図に何事かと広場にたくさん集まってきています。
広場に着いたプープルフィは、あーでもないこーでもない、それならこーしたらと思案している
村人たちに出くわしてさんざん怒られるのですが、それはまた別の話…。

しばらくすると、雨は次第に小降りになってきました。
夕方になると雲の切れ目から太陽の光が差しこんできます。
空には虹織り平原の端から端までを繋ぐ、大きな虹の懸け橋。
こんなにきれいな虹は、にじおり村でしか見られないだろうな…。
七色の絵具で描いたような鮮やかな虹を見て、村人たちはそう思うのでした。

夕日がにじおり村を真っ赤に染めると、夕日色の家々からは炊飯の煙が立ち上ってきました。
広場まで漂ってくる良い匂いにお腹のすいた村人たちが、一人また一人と我が家に帰って行きます。
きっと晩御飯では今日の騒動を話のタネに楽しいおしゃべりが始まる事でしょう。

(おしまい)
275名無しになりきれ:2009/07/24(金) 21:10:24 0
GJ。ほしふり村ナツカシス
つかあの手のスレなら最初に場さえ作れば後は各自自由にどうぞでいけるんじゃないかね
276名無しになりきれ
カワイソス