【TRP】オリキャラ実験室【SS】

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756名無しになりきれ:2008/04/15(火) 01:08:56 O
職人キタ━━━(゜∀゜)━━━!
超GJ!!
757名無しになりきれ:2008/04/15(火) 10:53:01 O
>>753
もちつけw
名前wコピペ範囲にw
アルナワーズ編も期待してる
758名無しになりきれ:2008/04/15(火) 21:44:59 0
GJ!
アルナワーズ編wktk
759名無しになりきれ:2008/04/20(日) 04:54:28 0
リクエストにも答えずこれだもんなあ
760名無しになりきれ:2008/05/03(土) 01:01:42 O
補習
761名無しになりきれ:2008/05/11(日) 19:16:26 O
がんば
762名無しになりきれ:2008/05/19(月) 23:28:09 0
臨時ニュースを放送します。
斉藤五郎の処刑が法務大臣により発表されました。
罪状は強姦殺人。
見かけたものは速やかに特殊警察か警察に知らせてください。
電話番号110−2371。
繰り返します―

テレビで俺の名前が通知された。
心臓が早鐘を打ってる。
動向が開き、体中の筋肉がこわばるのが分かる。
怖い。すごく怖い。
殺される。あいつ等と同じように殺される。

目の前にテラードジャケットを人間が映し出された。
襟首には☆印が一つつけられている。
手には日本刀。マスクを身につけ、口元を覆い隠している。
特別高等警察のものだ
「ターゲット確認。これより、処刑を執行する」
くもぐった声が聞こえてくる。
仲間達が棒やらナイフやらをつかみ、走り出した。
目の前に立っている立っているものはみじろきひとつしない。
切っ先が首筋の方に向って走り出し、棒が頭部や腕に向かって振り下ろされた。
パン、パン。
銃声がした。
当たり所が悪かったのか、赤い液体のようなものが体から噴出した。
赤い斑点がマスクや制服にいくつか付いた。
目の前に立っている人間が動き出した。
手が左から右に動き、ぎゃあという声がした。
「た、頼む・・・助けてくれ」
「オマエは被害者に苦しみを味合わせた。助けを呼ぶ資格など無い」
制服を着た男が蹴りをいれた。
げほと空気が吐き出される音がした。
「苦しみながら死ぬといい」
ぷすと日本刀が刺さる音が聞こえてきた。

嫌だ。嫌だ。
ああはなりたくない。
布団をかぶった。
初めて涙が出てきた。
怖い。スゴク怖い。
ドアが開く音がした。
フトンがひきはがされ、空気が肌に触れた。
「特別高等警察。強盗殺人の罪により処刑する」
パンと乾いた音がした。
自分の体に向かって何かが打ち込まれるのが分かった。
暖かい何かが広がっていく。
同時に俺は意識を失った。
 【レイドには女難の相が見えるのだ】

リバースの中、学園長室で一人の女が紅茶を飲んでいた。
端整な顔立ちで、白い髪をポニーテールにしている。
しかしその美しい顔立ちとは対照的に禍々しい文様の入った黒い毛皮のローブを身に纏っている 。
さらに、その死んだ魚のような目が女の顔を「美しい」という形容詞から遠ざけていた。

女の目の前には水晶球が置かれており、その中には戦いの様子が映し出されている。
「いかがかな?エスト君。」
そっと声をかけるのは学園長。
学園長は女の事をよく知っていた。
エストは数年前まで学園の生徒であり、今は卒業生だ。
その目的を聞き、リバースの中へと招待したのだった。

声をかけられた女の眉はみるみるつりあがり、怒りに顔は赤く染まっていく。
水晶に映し出されるのはレイド。
ベアトリーチェを倒したあと、止めを刺さずに健闘を褒め、自分のペンダントを渡したところだったのだから。
「こんなの・・・私は認めません!」
飲み干したカップを叩きつけるようにテーブルに戻し、エストは立ち上がる。
学園長は肩を竦め、部屋から出て行くエストを見送るのみだった。

「全く、レイドめ。自分で撒いた種だ!」
エストが出て行ったあと、教頭が呆れたように呟く。
「まあ、若いときは何かとあるものじゃよ。」
小さく息を付きながら学園長が教頭の呟きに応えるのだった。

##########################################

「ねえ、あなた。ちょっといいかしら?」
夕暮れ時に突然声をかけられ、文字通り飛び上がるリリアーナ。
出会えば即戦闘が認められるこのイベントにあって、当然といえば当然だろう。
戦闘力皆無に等しいリリアーナが一人でいるところに声をかけられたのだから。
「ああ、安心して頂戴。ちょっと話が聞きたいだけだから。」
リリアーナの様子に困ったように笑みを浮かべながら表れたのはエストだった。
まるで夕闇の影からにじみ出るかのように。

「私はエスト。この学園の卒業生でね。ちょっと聞きたいことがあるの。」
「あ、ああ、そうでしたか。私はリリアーナといいます。」
敵意のない自己紹介にリリアーナも安心して自己紹介をし、話は進む。
エストの尋ねた事はレイドについて。
現在の一般性とがレイドにどのような印象を持っているか、を。
「え、レイド先生ですか?
・・・尊敬しています。
頼りになって、気配りができて、それに・・・とっても優しいんです。」
嬉しそうに応えるリリアーナにエストの表情が徐々に険しくなっていく。
ほのかに見える恋心にも似たリリアーナの表情が過去の自分に重なってしまったから。
「あ、あの・・・どうかしましたか?」
その表情の変化に気付いたリリアーナがおずおずと尋ねると、エストは自分の表情の変化にようやく気付いた。

慌てて咳払いをして表情を消し・・・いや、消せなかった。
まるで哀れみを含んだような目でリリアーナに諭すように応える。
「いいえ、レイド先生の事を何もわかっていないようだから・・・。」
エストの言葉が理解できないかのように首を傾げるリリアーナに更に畳み掛ける。
「レイド先生はね、女生徒を食い物にしてボロ雑巾のように捨てる裏の顔を持っているのよ?」
「・・・」
 【レイドには女難の相が見えるのだ】

リリアーナにはエストが何を言っているか理解できなかった。
が、その言葉を理解したとたん、リリアーナは真っ赤になって口を開く。
「レイド先生はそんな事しません!
私は何度も助けてもらったし、食い物なんかにされてませんもの!
あなたこそレイド先生のこと何もわかってないわ!」
「可哀想に・・・。」
力強く反論するリリアーナの姿もエストには哀れにしか映らない。
禍々しい文様の入った黒い毛皮のローブから五つの魔武具が出現する・・・
「教えてあげる・・・!レイド先生の本当の姿を!」

###########################################

「レイド先生、久しぶり。随分と早かったわね。」
校舎屋上にて、息を切らせて現われたレイドに吐き捨てるように声をかけた。
テレパシーでリリアーナを人質にした事を伝え、屋上に呼び出したのだ。
「エスト、久しぶりだといってやりたいが、何の冗談だ?リリアーナを離せ!」
エストの腕には気絶しているのか、ピクリとも動かないリリアーナが抱かれている。

「随分とこの子にご執着のようね。この子が私の後釜というわけ!?」
エストの絶叫にも似た叫びと共に、レイドの周囲に五つの魔武具が現われ突き刺さる。
それぞれの武具は強力な魔力が付与されており、陣を組む事によって強力な結界を作り出す。
結界により動きを封じられたレイドを前に、エストがゆっくりと語りだす。
「卒業の日、あなたは言ったわ。だからこそ、諦めたのに!
用務員のアルテリオンと付き合ってるって本当?」
「う・・・本当だ・・・。」
エストは在学中、レイドに好意を寄せていた。
が、レイドはその想いを受け入れなかった。
生徒と教師ということもあり、まだ特定の女性と付き合うつもりなどなかったから。
泣きながらレイドの元を、そして魔法学園を卒業していったエストの顔がレイドの脳裏に浮かぶ。

「裏切りだわ!」
「・・・裏切りと取られても仕方がない。
復讐したければどれだけでもされてやる。だから、リリアーナを離せ。」
結界に動きを封じられながらもレイドは応える。
アルテリオンとの事は後悔もしていないし、それによって復讐されるのであれば甘受する。
だが、エストはそれでは収まらない。

女の情念は往々にして直接男には向かわず、その周囲へと向かう。

アルテリオンのいない今、向かう先は・・・
「この子、随分とレイド先生を慕っていたわよ?
まるで昔の私を見ているよう。
先生にとっても大切な子なのでしょう?
だから・・・レイド先生の目の前でこの子を壊してあげる!」
死んだ魚の目のようだった瞳が、レイドを前に狂気に染め上げられている。
リリアーナを抱く手に力が込められたその時・・・レイドから搾り出すように言葉が綴られる。

「やめろ。俺の生徒に手を出すのなら・・・エスト、お前でも許さんぞ!」
「許さない?それだけがっちり陣にはまっては内側からは崩せないわよ。どうやって私を止めると?」
エストの高笑いが響く。
その爪がリリアーナの細い首に食い込んだ瞬間、レイドの瞳が赫く光る。

「力づくでだ!!!!」

レイドの叫びと共に気が吹き荒れ、陣を作っていた五つの魔武具がマッチ棒のようにへし折られ砕けた!
吹き荒れる闇の瘴気と共に、レイドの周囲の空間が歪曲していた。
あまりにも禍々しく、そして昏いオーラはレイドの身体を数倍に見せる!
 【レイドには女難の相が見えるのだ】

#######################################

綺麗さっぱり屋上がなくなった校舎で、リリアーナはレイドの背負われていた。
既にエストの姿はどこにもない。
「レ、レイド先生・・・あの・・・ありがとうございました。」
レイドの広い背中に顔をうずめ、小さく礼を言うリリアーナ。
しかしそれ以上の言葉が出てこない。
動けなかったが意識はずっとあった。
レイドの卑怯な行動を見せようと眠らせたようにしていたのだ。
エストの思惑は外れたが、この一件はリリアーナに複雑な思いをもたらしたのだ。
エストの歪んだ恋心とレイドとアルテリオン。
その関係にどう言葉を綴ればいいのかわからなかったから。

「お、おろ?起きてたのか?まあ・・・今回は俺の私事に巻き込んで悪かったな。」
「いいえ、助けてくれて嬉しかったです。」
照れくさそうに言うレイドの背中に更に顔をうずめ、もう一度礼をう言うリリアーナ。
夕日は沈み、夜の帳が落ちようとしていた。

#######################################

「気がすんだかね?」
学園長室でエストの手当てをしながら学園長が声をかける。
だが、エストからの答えは返ってこない。
ただ目に涙を浮かべ、エストはリバースから去っていった。

「ふう。思春期の想いは純粋だがそれ故に歪み易いもの。
彼女の歪みもようやく正されたか。
レイド君を褒めてやらんとな。」
「何を甘い事を言っておるのですか!
結局は自分で撒いた種を刈っただけの話。
生徒の心のケアまで出来て一人前の教師です!」
「ほっほっほっほ。厳しいのう。」
水晶球に映るレイドとリリアーナを慈しむ様な目で見ながら学園長は安堵の息を付くのであった。
766名無しになりきれ:2008/06/04(水) 19:40:41 0
はいはい、すごい文章ですね
767名無しになりきれ:2008/06/04(水) 19:50:11 0
>763-765
GJ!面白かったよ〜!
768名無しになりきれ:2008/06/04(水) 20:13:38 0
これ(>>767)って、スプリクトか何かか?
毎回同じことしか言ってないし
769名無しになりきれ:2008/06/05(木) 09:03:59 O
ちょwwエストwwww
770名無しになりきれ:2008/06/05(木) 19:49:10 0
スクリプトでは無いと思うけど、たぶん毎回同じ人が同じ事言ってるんだと思われ
771名無しになりきれ:2008/06/06(金) 17:31:21 0
え〜と誰?
772名無しになりきれ:2008/06/06(金) 23:17:11 0
GJ。
レイドは封印を吹き飛ばしただけでバトルしなかったんだな
元教え子だもんな
773名無しになりきれ:2008/06/07(土) 01:40:50 0
このスレも寂れたな
元ネタが何かは知らんがSS書く奴+GJ言ってばっかりの自演マンぐらいしか人いないんじゃないか?
774名無しになりきれ:2008/06/07(土) 03:38:24 O
GJ!エストが誰か一瞬思い出せなかったので吊ってくる
775名無しになりきれ:2008/06/07(土) 08:29:57 0
GJ!今回はパラレルなんだな
本編で同じことがあったら、リリのレイドに対する尊敬の念も微妙に変化しそうだ
776名無しになりきれ:2008/06/10(火) 14:36:06 O
つうかテンプレ投下までしておいてなぜここでやる?
本スレでやれよ
777名無しになりきれ:2008/06/10(火) 18:31:53 0
>>776
職人はエストじゃ無いと思われ
>>776かわいいよ>>776

そして777
【クドリャフカ・マーチ】

フィジル島魔法学園地下図書館。
奈落の底まで通じているのではないかと噂されるその図書館は深く、広大である。
しかもDレベルと称される階層を越えると、様々な魔本が並んでおり、その危険度は並にダンジョンを軽く超える。
危険性から一般生徒の立ち入りは厳しく制限されている。

しかし、ここに一人の女子生徒が足を踏み入れていた。
既にDレベルの階層から更に下に潜り、辺りは本から漏れる魔力が渦巻いている。
筋骨粒々で全身にツギハギ状の傷跡。
長い三つ編みに無骨なガントレット。
その場に相応しい重装で望んでいはいるが、その表情に余裕などない。

この女子生徒の名はクドリャフカ。
その身に着けてしまった呪いのアイテム【サクリファイスジャンクション】の解呪方を求め、地下図書館を彷徨っているのだ。
サクリファイスジャンクションは透明の薄い手袋。
傷ついた対象に右手をかざせば、たとえ致命傷であっても跡形も無く消し去る事が出来る脅威のアイテム。
しかし、呪いのアイテムたる由縁はここから始まる。
対象の傷は消し去ったわけではなく、【吸い取った】のだ。
吸い取った傷は、左手をかざす事により、誰かに移すことが出来る。
誰かを救うために誰かの犠牲を要する。
そして移された傷は魔法で回復させる事は出来ず、移された者の自然治癒でしか回復する事はない。
もしも誰かの犠牲を用意しなかった場合・・・その傷は吸い取った本人、すなわちクドリャフカが負う事になる。
クドリャフカのツギハギ状の傷跡はそうして付いたものなのだ。

握り締めた手はガントレットが無粋な音を鳴らす。
その音を聞き、クドリャフカは決意を新たにこの危険な地下図書館に幾度と無く潜るのだった。

そして今、冷たい靄の立ち込める区画に辿り着いていた。
ここの辺りは冥界が溢れている。
間違って冥界へ引き込まれることも危険だが、そこから溢れてくるモンスターも脅威であった。
クドリャフカの使う術は付与魔術と舞闘術。
密着格闘戦による打撃・関節技がメインなのだ。
ゾンビやスケルトンなど筋肉や腱に関係なく作動する身体を持つモンスターには相性が悪い。
なるべく早く通り過ぎたい区画ではあるが・・・

足を速めるクドリャフカの前に立ちふさがる影があった。
「あ、あんたぁ、あの時の・・・!」
黒いマントに身を包んだスケルトンが一体。
以前この区画で遭遇したモンスターだった。
「待ちかねたぞこの時を!この間のようには行かぬからな!」
何も入っていない真っ黒な眼窩の奥から赤い光でクドリャフカを睨みつける。
「いあ・・・あん時っちゅうて・・・」
対峙するガシャ髑髏とクドリャフカは、初めて出合った時の事を思い出していた。

############################################
【クドリャフカマーチ】

靄のかかる地下図書館のアンデッド区画(クドリャフカ命名)。
そこに足を踏み入れるのは初めてではなかったが、緊張感は初めてのときと変らない。
そんなクドリャフカの前に現われたのが一体のスケルトンだった。
「戦いのセオリーその13!間合いを得る者は勝利も得る!」
そう言うスケルトンの手には刀身が2mにもなろうかという日本刀が握られていた。

「ふふふ、ただのスケルトンだとは思うなよ?
この7尺刀で己も今宵から我らが眷属だ!」
「・・・。」
突きつけられた7尺刀をみて、クドリャフカは言葉が出なかった。
ただ目がゴマのようになっているのみ。
そして大きく溜息をつきながら構える。
「スケルトンちゅぅんは脳みそがないとおもうちょったけど、どうやら脳ミソが腐っとるんもおるようじゃね。」
その反応に今度はスケルトンが言葉に詰まった。
7尺刀を持っているのは、長い武器で相手をびびらせる事が第一の理由。
それで逃げてくれれば嬉しいのだ。
でも逃げてくれなくとも、長い武器なら相手を近寄らせずに戦えるという二段構えの理由だったのだ。

しかし目の前のクドリャフカは特に怯んでいる様子はない。
それどころか妙な威圧感がある。
そもそも巨躯でツギハギだらけの身体。
生者特有の生気が無ければもう「あんたもアンデッド?」ってご挨拶したくなるような状態である。

それが既に構えて、指先をくいくいと曲げて来い!と挑発している。
カッコいい台詞で出てきた以上、もう抜き差しできない。
「ち・・・ちきしょう!!」
もうどうにでもなれといわんばかりにガシャ髑髏は7尺刀を上段から振り下ろす!
刃が脳天を真っ二つに断ち割る直前、クドリャフカは身体を横にずらし躱す。
躱されたからといって刃が止まってくれるわけではない。
振り下ろしきったところでその切っ先をクドリャフカが踏みつける。
「こんだけ長いと刃の軌道も読みやすく躱し易いんじゃ。
しかもこうやって踏まれるともう動けんじゃろ?」
「チョ・・・待った!今のなし!ノーカン!もう一回!」
呆れたように解説するクドリャフカに慌てるスケルトン。
言われたとおり7尺刃は踏まれてびくとも動かないのだ。
焦って訳のわからないことを口走ってしまうのだが、意外にもクドリャフカは足をどけてくれた。

願いを聞き届けてくれた事に驚いたが、すぐに気を取り直して刀を構えなおす。
「げひゃひゃひゃ、馬鹿め!まぐれでも勝てる機会を捨てたことを後悔するがいい!」
そう言うや否や、今度は横薙ぎに7尺刀を振るう!
「我が肉体に付与する!鉄の硬度を!」
短く呪文を唱えるとクドリャフカは刃が迫るのを躱そうともせずに一気に間合いを詰めた。
2mの間合いはクドリャフカにとっては一足で詰められる間合い。
ではあるが、先に刀が振られている。
しかも短くとも呪文を唱えてからの行動。
これでは流石に刃が身体に到達するほうが先である。
【クドリャフカマーチ】

間合いを詰めたところで7尺刀がクドリャフカの脇腹に当たった。
双方共に動きを止めた一瞬。
スケルトンとクドリャフカの視線が絡みある。
「あんたさん武道をやったことありゃせんじゃろ?
刀の有効斬撃範囲なんぞ切っ先から三分の一がいいとこじゃきい。
こがぁに長い刀身じゃあ一歩前に出られたらろくすっぽ斬れやぁせんてえ。
迅き一閃に命を賭ける刀に長さを求めてどがあすんぢゃ。
長いのが好きなら剣にしんしゃい!」
そう、切っ先部分ならば遠心力も相まって切れ味も増すだろう。
しかし根元部分では切れ味は鈍ってしまう。
その上胴体に鉄の硬度を付与してあるので、たとえクドリャフカがその刃を受けたとしても傷つける事は出来なかったのだ。
これが剣ならばその重量を持って叩き切れたのであろうが・・・

諭すように呟くと、刀身を握り無骨なガントレットを叩き付けた。
まさにハンマーの一撃!
7尺刃は刀身の根元で叩き折られてしまう。
そうなるともはやスケルトンに残された道は一つ。

「た、戦いのセオリーその2!36計逃げるが勝ち!だから俺の勝ちだーい!」
そういい残すと刀を捨てて一目散に逃げ出すのであった。

###########################################

「あー・・・あんときの・・・もう長い刀はやめたようじゃね。感心感心。」
初遭遇の状況を思い出したクドリャフカは笑いをかみ殺しながら応えた。
一方のガシャ髑髏は正反対の雰囲気を醸しだす。
前回の屈辱に加え、完全に安心したようなクドリャフカの反応が気に入らないのだ。

完全に舐められている!と。

事実クドリャフカは安心していた。
死者の王の領域において、唯一といっていいような安全牌な敵なのだから。
「そうやって笑っていられるのも今のうちだぞ。
貴様!なぜ私以外のアンデッドが出ないか判っているのか?
前回の屈辱を晴らすために死者の王に手出ししないように嘆願したのだ!」
「そりゃ義理堅いことじゃね。」
ガシャ髑髏の復讐心を聞いて、クドリャフカの表情から笑みが消える。
舞闘家として、闘う者への礼儀は弁えている。
まるでダンスを誘うような構えを取ると、それだけで全身から隙が消えうせた。
もはや語る言葉はなく、武を以って語り合う。
眼光はそう告げている・・・のだが・・・

ガシャ髑髏には武術の心得などない!
故にクドリャフカから隙が消えた変化など気付かないし、その眼光が告げる意図も通じもしない。
だからこそガシャ髑髏は自分のペースを崩す事はないのだ。
「ふははは!見て驚け!!!」
クドリャフカにお構いなしに黒いマントを脱ぎ捨てると、そこには異形と化した体があった。
【クドリャフカマーチ】

肩から伸びるのは三対六本の腕。
それぞれの手には剣が握られている。
「前回のように長い刀ではなく、剣だ!しかも六本だ!!
お前がどう攻撃しようと六対二だ!どうだ驚いたか!!」
高笑いが響く中、クドリャフカの目はゴマとなっていた。
まじめに構えた自分がちょっと馬鹿っぽく思えて後悔したが、今更口に出そうとは思えない。
だから・・・そっとスカートの裾をつまんで上げて見せる。

スカートの中から落ちてきたのはトマホーク。
「汝が斧に付与する!回転する力を!」
クドリャフカの呪文によって回転力を付与されたトマホークは凄まじい勢いで回転を始める。
そして、はじかれたようにガシャ髑髏に向かって飛んでいく。
「我が肉体に付与する!鉄の硬度を!」
更にはクドリャフカも呪文を唱えながらバトルアクスを追うように間合いを詰める。

一方、ガシャ髑髏も迎撃体制は万全。
一歩も退かずに迎え撃つ!
「馬鹿め!俺には六本の剣があるのだ!」
その言葉通り、二本の剣を交差させ回転する斧を防ぐ。
が、斧の威力は凄まじく、防いだ剣も腕ごと弾かれた。
通常ならばこれでガシャ髑髏は無防備となり、斧の背後から間合いを詰めてきたクドリャフカに粉砕されるだろう。
しかし、今はまだ四本の剣が残っている。

弾かれた斧の直後、間合いに入ったクドリャフカに二本の剣が突き出される。
が、寸前のところでステップを入れ剣を回避。
ガシャ髑髏の左に回りこむ。
「無駄無駄無駄無駄ああ!!!」
クドリャフカの圧倒的な運動量も、ガシャ髑髏の圧倒的攻撃回数を上回る事は出来ない。
左に回りこんだクドリャフカを待ち構えていたのは最後のガシャ髑髏の剣だった。
完全なる待ち伏せ状態で剣は横薙ぎに振られ、クドリャフカの脇腹に命中した。

その瞬間はタペストリーに縫いこまれた神話の戦いのように。
ほんの一瞬の出来事だが、時間が停止したが如く二人は固まっていた。
最初に動いたのはガシャ髑髏。
「な、何で?」
動いたのは口のみ。
吐き出されるのは疑問の言葉。
「腕がいくつ増えようとも軸は一本じゃけえの。」
ガシャ髑髏に応えつつ、更に間合いを詰める。
そう、舞闘家の間合いに。
【クドリャフカマーチ】

パンチとはどういう動作によって成り立つかご存知だろうか?
ただ拳を前に出せばパンチになるわけではない。
足を大地に踏みしめ、力場を作る。
膝から腰、そして肩にいたる重心移動。
そこから繰り出される力を背中から拳の一点に集中させて繰り出される一撃なのだ。
腕だけの動作で繰り出されるパンチなど、手振りと言われ威力などないも同然。

ガシャ髑髏は斧と前面への攻撃のため体の軸が前方に傾いていた。
その状態で横へ薙ぎの一撃など力は伝わらず、腕の移動でしかない。
そのような一撃が硬度を付与されたクドリャフカの肉体を傷つける事が出来ようか?
いいやできるはずもない。

「ただでさえ軸の判りやすい体でボケた事するけえの!」
バラバラとなって吹き飛ぶガシャ髑髏にクドリャフカが勝ち誇って言い放つ。
「ち、ちきしょー!おぼえてろよー!」
流石はアンデッド。
バラバラになっても死ぬこともなく、吹き飛ばされた勢いを利用して捨て台詞と共に逃げていく。
「ああ、再戦をまっとるけぇの。」
わざわざ追う事はなしない。
スケルトンは復讐のために他のアンデッドが自分に手出ししないように根回しをしてくれているのだ。
ここで殺すより、組し易い敵を残しておくのもまた戦略なのだから。

クドリャフカの強行軍はまだまだ終わりが見えない。
その身に取り付いた呪われたアイテムを解除する方法を示した本を見つけ出すまで・・・。
その時まで、目先の勝ちに拘っていられないのだから・・・

スケルトンのお陰でクドリャフカは今回も無事死者の王の領域を抜ける事が出来るのだった。


一方、スケルトン・・・
「ち、ちきしょう!普通の武器じゃ勝てない!何か強力な武器を!」
バラバラになった体を組み立てながら呟くのだった。
それは妖刃むらましゃを手に入れる二日前の出来事だった。
783名無しになりきれ:2008/06/22(日) 16:26:35 O
ガシャ髑髏GJ
784名無しになりきれ:2008/06/23(月) 21:59:12 0
GJ!

クドリャフカがむらましゃで切られるのもちょっと見てみたかったかも
ドツボに嵌りそうだが
785名無しになりきれ:2008/06/24(火) 20:17:48 0
つまらんGJ
786名無しになりきれ:2008/06/25(水) 19:56:08 O
ツンデレGJ
【ぐーとぱー】

女子寮二階談話室の隣。角部屋。
そこにアルナワーズとリリアーナの部屋がある。
ドアの前でエルザは深呼吸をしていた。
これから行う事を前に、心落ち着けるために・・・

*コンコン*
「エルザだけど、いる?」
数回の深呼吸の後、ドアをノックする。
「はぁ〜い。どうぞ〜。鍵は開いてるわよぉん。」
中からの声はアルナワーズ。
その言葉に従い、ゆっくりとノブを掴み扉を開く。
入るとちょうどアルナワーズがお茶をテーブルにおいているところだった。
「あらあら、ごめんなさいねぇ。今リリィはお出かけ中なのぉ。」
知っていた。
わざわざリリアーナが出かけるのを確認してから来たのだから。
エルザの目的はアルナワーズにあるのだ。
「・・・そう。中で待たせてもらうわね。」
少し声が裏返ったか?と不安に思ったけれど、どうやら気づかれていないらしい。
アルナワーズは「どうぞ」と出迎えに近づいてきている。

その間合いが一刀足に入った瞬間。
「ありがとう!」
アルナワーズに向ける手向けの言葉。
そのままエルザは手に持っていた包丁を突き出し、アルナワーズの胸に突き刺した。
肉が凝縮して刃を押し出そうとするが、力を込めて押し込む。
確実に心臓まで達しただろう。
アルナワーズは不思議な顔をしたまま硬直している。
「ふふふふ・・・あははは!これはリリアーナのためなのよ!」
ゆっくりと包丁を抜くと、アルナワーズの胸から鮮血が迸りエルザの頬にかかった。
一言も発せずに倒れたアルナワーズを見下ろし、エルザの笑いは更に高まっていく。
「あははは!これでリリアーナは私のものよ!もう邪魔するものはいない!
あははははははは!」
「おほほほ〜」

自分の笑い声に重なるように響く笑い声に驚き、目が見開かれる。
笑い声の方向に振り向くと、そこにはアルナワーズがテーブルに座って笑っていた。
「まあまあ、エルザ。立ち話もなんだから座って。ちょうどお茶を入れたところなのよ〜。」
「・・・幻術・・・。」
エルザは理解した。
包丁で刺したのはアルナワーズの作った幻影だったのだと。
その証拠に、先程まで血を流して倒れていたアルナワーズは血痕すら残さずに消えているのだから。
【ぐーとぱー】

穏やかな笑みを湛えながら手招きをするアルナワーズを睨みつけ、術を発動する。
「う・・・うああああ!スーパーハードニング!!!」
エルザの全身が銀色に変っていく。
スーパーハードニングによってエルザは鋼鉄の身体となったのだ。
そして凄まじい勢いで間合いを詰め、テーブルをなぎ倒しアルナワーズに文字通りの鉄拳を繰り出した。

肉が潰れ、骨が砕ける感触が拳に伝わる。
バラバラになったテーブルの破片と共に、肉塊と化したアルナワーズが吹き飛んでいった。
「あっはっはっは!この部屋は敵性魔法を無効化する。それで油断したわね!
スーパーハードニングは肉体強化に属するから無効化されないもの!」
アルナワーズの強みは用意周到な仕掛けに起因する。
その最たる例がこの部屋だ。
アルナワーズの憑き物を封印する部屋はその副次作用として敵性魔法を無効化してしまう。
だが、実際にかけ引き抜きの戦闘となればその強さなど多寡が知れている。
事実こうして一撃で倒してしまったのだから。
相性的にエルザとアルナワーズは天敵関係にあるといえる。
喩えるのならば、じゃんけんのグーとパーのように。

あとはアルナワーズの死体を隠蔽し、失踪したようにすればいいだけだ。
と、一歩踏み出した瞬間、テーブルもアルナワーズの死体も消えてしまう。
「ま、また幻!?」
「違うわよ〜。ちゃんと手ごたえあったでしょう?」
応えたのはアルナワーズ。
しかし、一人ではない。
エルザを囲むように10人のアルナワーズがにこやかに笑っている。
しかも部屋の中のはずなのに、家具も壁も、天井も床すらもない。
真っ暗な広い空間にエルザは10人のアルナワーズに囲まれていた。

「まあまあ、落ち着いて〜。どうして私を襲うの〜?」
「決まっているわ!あなたがリリアーナの為にならないからよ!」
質問に答えながら質問したアルナワーズに殴りかかるが、間合いは全く近づかない。
まるで夜空の星に手を伸ばしているかのような感覚。
手を伸ばせば届くようなところにいるように見えるのに!
「それは違うわよぉん。」
別のアルナワーズが応え、更に別のアルナワーズが言葉を継いだ。
そして次々にアルナワーズ達が言葉を紡ぐ。
「エルザはリリアーナが好きなのでしょう?」
「でも、目利きはエルザだけじゃないのよぉん。」
「リリィって可愛いわよねえ。」
「芯は通っているけど押しに弱いところあるじゃない?」
「告白されたとき、土下座して頼み込まれたら押し切られて付き合っちゃう・・・事もありそうよねえ。」
「今までそうならなかったのは・・・どうしてかしらぁ?」
全方向から響き渡るアルナワーズの言葉。
その言葉にエルザは答えに辿り着いていた。
【ぐーとぱー】

今までリリアーナが男達に言い寄られてこなかったのは、アルナワーズという邪魔者がピッタリとくっついていたからだ、と。

リリアーナにお近づきになるという事は、当然トラブルメーカーたるアルナワーズともお近づきになることになる。
しかもただのお近づきではなく、玩具にされることは必至。

そう考えが至った瞬間、不意に視界が開けた。
場所は部屋に入ったところ。
足元には複雑な魔法陣。
目の前にはアルナワーズ。

エルザは部屋に入った瞬間、アルナワーズの催眠術に陥っていた事を理解した。
幻ではなく催眠術だからこそ、手応えもあったのだ。
「・・・」
部屋に入って一歩も動いていなかった事と、完全に手玉に取られていた事で言葉が出ないエルザ。
そんな様子にお構いなしにアルナワーズはそっと語りかける。
「エルザがリリィの事が好きなのは構わないのよぉん。
でも、それだけで決められることではないでしょう?
リリィ本人の気持ちが大切なのだから。
押し切るのではなく、自発的な気持ちが、ね。」

【害虫駆除のお勤めお疲れ様。
あとは私がリリアーナと一緒になって幸せになるから。】
そう言おうとしたが、エルザの口から発せられる事はなかった。
アルナワーズの言葉の最後に付け加えられた一言の為に。
「それは情なのかしら?愛なのかしら?迷わずいえる?リリィのキ・モ・チ。」
と・・・。
リリアーナは誰にでも優しい。
自分にも好意を持ってくれているけど、自分が一方的に押し付けていてそれに付き合っているだけなのかも。
そんな疑念が心に浮かんでしまったから。

「エルザ、焦る事はないのよ。
愛はいきなりできるものではなく、育んでいくものだもの。
私は協力もしないし、邪魔もしない。
でも歪んだ形にしようとするのはいただけないわぁ〜。お友達としてのチ・ュ・ウ・コ・ク。
二人の自然な合意があれば喜んで祝福するわよぉん。
はい、これ、お土産よ。」
「うぅ・・・」
にっこりと笑いながら差し出すのはリリアーナの水着姿の写真だった。

こうまで言われてしまってはエルザに返す言葉はない。
当初の目的ももはや果たせる気もしないのだから。
今、目の前にいるアルナワーズが本体なのか幻なのか、催眠術による脳内の姿なのかもわからない。
戦闘となれば相性的に絶対勝てると思っていたのだが、その実全く逆だった。
自分がグーで、アルナワーズがパーだったのだ。

後できることと言えば、差し出された写真を受け取って帰っていく事だけだった。
「今度はゆっくりお茶しましょうね〜。」
全く危機感のないアルナワーズの声を背に、エルザは今度は下着姿の写真があるか聞いてみようと思いつつ部屋へと急ぐのであった。
790名無しになりきれ:2008/06/26(木) 17:57:42 0
超GJ!!二人の会話が目に浮かぶようでした。

そのうちエルザが入り浸るか、なし崩し的に3人同室になりそうな気が・・・しないでもない。
そうなったら設定上、3人仲良く川の字になって寝そうですね。
791名無しになりきれ:2008/06/26(木) 22:22:52 0
GJ
写真ワロス
792名無しになりきれ:2008/06/27(金) 21:49:02 0
GJ
793名無しになりきれ:2008/06/29(日) 17:00:17 O
これはいい写真Gj
794名無しになりきれ:2008/07/02(水) 23:16:59 0
GOD
【ジレンマ】

地価図書館レベルC階層の最奥。
直ぐ先には厳重に封印の施された扉がある。
そこから先は同じ図書館であっても別世界。
Dレベル階層の入り口。
その危険性ゆえ生徒の入室には多くの制限が伴う。
その扉の正面に一人の男が座っていた。
ボサボサの頭、ボロボロの制服。
かろうじて判別できる魔法学園の紋章がなければ浮浪者と見間違えそうないでたち。
名をコルッシ・オダーネンという。

コルッシオは祖父に無理やり魔法学園に叩き込まれたのだが、本人に魔法使いになる気はない。
とはいえ、卒業しなければ簡単に学園を出ることも出来ない。
だから、コルッシオは魔法学園を脱走する事に決めたのだ。

そのために必要な転移禁術。
あらゆる干渉を乗り越え空間を越える術が記された書物を探すために地下図書館に足しげく通っているのだ。
が、それほどの魔法書が一般図書にあるわけもない。
そうなると自ずと目的地はDレベル以下の階層となってくる。

生徒の立ち入り制限は伊達ではなく、自分の力ではそこまで辿り着く事は出来ないだろう。
判っている。
こうして扉の前にいるだけで、その中の危険度が肌で感じられるのだから。
かといって諦める事も出来ぬコルッシオは今日も待っていた。
自分と志を同じくする者が帰ってくるのを。

****ギィイイイイ****
扉が開き、待ち人は現われた。
こうして向かえるのは何度目だろうか?
久方ぶりに見る待ち人は今日も笑顔でDレベル以下の階層から生還したのだった。
「コルッシオさん。相変わらずの身なりじゃねえ。」
「ははっ。それはお互い様だろう?」
「そりゃいえちょうね。」
大きく見上げながら軽口を交わす相手はコルッシオより頭一つ大きな巨躯。
重装備であったが、コルッシオと同じような痛み具合は【中】で何があったかを雄弁に物語っていた。

全身ツギハギの傷に、ボロボロの重装備。
帰還したのはクドリャフカであった。

クドリャフカもコルッシオと同様に魔法学園においては特殊な存在だった。
魔法使いになることは目的ではなく、あくまで手段。
己の身に憑いた呪いのアイテムの解除法を探りに地下図書館に通っているのだ。
コルッシオと違う点は、武舞術という武術の達人であり、Dレベル以下でも闘える力を持っているという事。
だから・・・自分では取りにいけない転移禁術を【ついで】に取りに言ってもらっているのだ。
【ジレンマ】

「収穫はどうだった?」
一応聞いてみるが期待はしていない。
底の知れぬ広大な地下図書館でどこにあるかもわからぬ一冊の本を見つけるのは絶望的だ。
それでもクドリャフカに縋らねばならぬ。
いつも通り困った顔で首を横に振ると思っていたが、今回は違った。
「コルッシオさん、最近よくない噂ばかり聞いとります。
授業はちゃんと出たほうがいいですよ?」
意外な言葉にコルッシオの顔が自嘲的に歪む。
「俺は魔法使いになる気なんかないから。」

その言葉にクドリャフカの眉が下がり、鞄の中に手を突っ込む。
「ふ〜〜・・・仕方がないですのぉ。
目的物ではないですが、これ・・・。」
一瞬期待するも、クドリャフカから差し出された本は転移禁術ではなかった。
なぜこの本を?と首をかしげていると、クドリャフカが言葉を続ける。
「転移禁術ではありゃぁせんですが、同じ著者のもんです。
ちょっと読んでみてつかぁさい。」
クドリャフカの意図はわからなかったが、著者が同じとなると気が引かれるというものだ。
適当にページをめくってみるが、思わず硬直してしまう。
開かれたページに書かれているものが、文字なのか図形なのか、はたまた絵なのかすらも判別できなかったからだ。

「お互い古代文献に相当する本が目的じゃけえね。
本はあくまで知識を記したもの。
それを読み解き使えるかどうかは別問題じゃけえ・・・のぅ。」
困った顔したままのクドリャフカはそれだけ言うと歩み去っていった。

残されたコルッシオは解読できぬ本を手に、ただただ立ち尽くすばかり。
魔法使いにはなりたくない。
だが、魔法使いにならないため、自由を得るため、脱走するには魔法使いにならなければいけない。
このジレンマに身動きが出来ないでいたのだった。
797名無しになりきれ:2008/07/05(土) 00:30:30 0
うお、GJ!
クドもそろそろ戻ってこないかぬー。
798名無しになりきれ:2008/07/06(日) 12:38:17 0
GJ
799名無しになりきれ:2008/07/07(月) 03:17:56 O
こりはgjですたい
800名無しになりきれ:2008/07/08(火) 18:53:52 0
GJ!
【アルナワーズ・ラプソディー】

魔法学園では二等課程の授業の一環として課外授業がある。
机上では決して学べない実地の体験を学ぶために。
学園が斡旋した『外』の世界の依頼をこなすのだ。
依頼内容は千差万別。
魔物の封印から謎の解明まで。
適性に応じて3人ほどのチームを組み、引率に一人の教師が付く。

そしてこの日、島外に出るゲートの前に4人が集まっていた。
ミルク、メラル、リリアーナ。
そして引率のレイド。
見知った顔ばかりの三人で喜ぶリリアーナとミルクだが、メラルだけは一人考え込んでいた。
二等課程の生徒に限定してもかなりの人数になるはずだ。
それがこうも知り合いが集まり、更には引率がレイド。
何か意図的なものを感じ取っていたのだ。

「レイド先生、行き先と依頼内容、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか?」
ゲートを前にリリアーナがレイドに問いかける、
「ん、ああ・・・もう一人メンバーがいるから、揃ったら、な。」
が、レイドの反応はイマイチはっきりしなかった。
もう一人?
レイドの言葉に首を傾げるリリアーナの目に映ったものは・・・
ゆったりと歩いてくる褐色の肌、漆黒の髪、そして特徴的な民族衣装。
そう、最後のメンバーはアルナワーズなのだ。

その姿を見た時、リリアーナは何か猛烈に嫌な予感がした。
メラルは感じ取っていたものが確信に変った。
「よ、よし。揃ったところで出発だ!
行き先は南部大陸ペロシャ地方のアリーカリフだ。ちょっとした気象変化の調査、だよ。ハハハ。」
一堂がゲートに入り、光を放ち始めた頃、レイドが渇いた笑いと共に行き先と目的を告げる。
しかしそれを聞いたメンバーは首を傾げるばかり。
ペロシャ地方のアリーカリフなど聞いたことがなかったのだから。
いや・・・一人だけ知っている人間がいた。
「あらあら、ペロシャ地方のアリーカリフだなんて。驚いたわぁ〜。」
「え、アル!知ってるの?」
驚き聞くリリアーナに、アルナワーズはニタリとした恐い笑みを浮かべて応える。
「知っているも何も、私の故郷だものぉん。」 
「・・・・」
「・・・・」
「・・・(やはり・・・決まりね)」

誰も声の出せぬ衝撃事実。
数秒間の沈黙の後・・・
「ヤ、ヤダーーー!レイド先生!私!お腹痛くなったので帰ります!」
「ちょ、リリアーナ!もう転送始まってる!時空の狭間に落ちたいの?」
半泣きで帰ろうとするリリアーナをミルクが慌てて止める。
そんな二人を余所にメラルはこのまま行くか、時空の狭間に落ちるかどちらがマシか真剣に検討していた。
「まあまあ、言ってみれば里帰りなわけだし。地元民がいると楽かもしれないじゃない。」
ミルクが慰めるが、メラルはそうは思わなかった。
むしろ真逆の事を考えていた。
そしてそれが正しいという事はあえて何も口にしないレイドだけが知っていたのだった。
いきなり波乱含みでリリアーナたちはゲートから転送魔法で消えていった。
【アルナワーズ・ラプソディー】

##############################################

「なぜ生徒を行かしたのですか?危険すぎます!」
学園長室にて、エースが抗議の声を上げていた。
その言葉を受けるのは学園長。
「百歩譲って生徒を行かせるにしても、引率は僕の方が相性的にも!」
珍しく興奮するエースを見ながら学園長の表情は笑顔だった。
「確かにエース先生のいう事は正しい、が・・・」
学園長に代わって応えたのは教頭。
苦々しげな表情を浮かべながら学園長を横目で見る。
「ほっほっほ、先方には連絡済みだし、あの子達なら大丈夫ぢゃろう。
レイド先生もたまには苦労せんとの。」
「・・・そういう事だ。」
まだ納得していないエースに教頭も気持ちは同じだといわん顔をしながらも学園長の言葉を以って応えにかえた。

##############################################

見渡す限りの砂・砂・砂・砂・・・
照りつけるは炎天の太陽。
ここは南方大陸ペロシャ地方、ネフド砂漠。
あまりの暑さに大気は歪み陽炎を立ち昇らせる中、一列になって進む人影がある。
アルナワーズの故郷アリーカリフには転送陣がないため、近くの町にテレポートアウト。
そこからは歩きなのだが、その行程は過酷を極める。
「アルナワーズ・・・一体いつになったら付くのよー!」
「そんなに慌てないで〜。半日も歩けば見えてくるからぁん。」
ミルクの血の叫びにあっさりと絶望的な答えを返すアルナワーズ。
既に歩き始めて2時間。
砂はさらさらと流れ、脚から力を奪っていく。
太陽は中天に位置し、気温は50度に達しようとしていた。

ミルクの絶望感も深いものだが、それ以上に深刻な状態に陥っている者がいた。
「メラルさん・・・大丈夫?」
「・・・ありがとう・・・でも、動けそうにない・・・わ・・・」
途切れ途切れ応えるメラルは横たわったまま起き上がることも出来なかった。
暑さに弱いメラルは着いた早々倒れ、今はアルナワーズの魔法の絨毯【ムガル】に横たわり運ばれていた。
「ミルクさんも、無理せず乗ってね。私は・・・暑いのには強いから・・・。」
一歩一歩砂を踏みしめるリリアーナだが、当然そんな余裕は全くない。
それでも他人への気遣いを優先させるのはサガとしか言いようがないだろう。
そんな様子を見ながらムガルの上で胡坐をかくアルナワーズが微笑んでいた。

夕日が照りつける中、砂漠は終わりを告げ荒野に踏み入れていた。
やがて蜃気楼のように浮かび上がる広大な遺跡。
それこそがアルナワーズの故郷、アリーカリフである。

漸くアリーカリフに辿り着いた時には既に太陽は地平に半身を沈めていた。
暑さも和らいできて、町に入るとまばらながらに人影が。
その中の一人が一向に気付く。
「ア、アルナワーズか?」
「あらぁんロレンのおじ様、おひさしぶりぃ。」
驚きと共に尋ねる男にアルナワーズはにこやかに手を振る。
その言葉に男の顔はみていて判るほどに蒼くなっていく。
しばしの沈黙の後、男は震えながら漸く声を振り絞った!
【アルナワーズ・ラプソディー】

「ア、ア・・・アルナワーズだあぁぁ!アルナワーズが帰ってきたぞおお!!」
町中に響くような声でアルナワーズの帰還を知らせる。
が、その言葉に歓迎の感情は感じられなかった。
むしろモンスターの襲撃を伝えるかの如き切羽詰った感情が込められている。
事実、その言葉に反応する町は蜂の巣をつついたような状態になった。
「何だって!?本当か!」
「馬鹿な!今年の節はもうだってのか!?」
「急げええ!皆!高台に逃げるんだ!!」
「荷物は諦めろ!」
怒号の飛び交う中、取り残される一行。

「アルナワーズ、あんた故郷で何したのよ・・・」
「やだわぁん、ただ二回ほど嵐を引き起こして洪水になって人口を4割程度減らしただけよぉん。」
目を点にしながら尋ねるミルクに事も無げに応えるアルナワーズ。
柔らかな言葉だが、その語る意味はミルクとリリアーナに声にならない叫びを上げさせるのに十分だった。
そしてメラルがそんな二人に止めを刺すような解説を呟く。
「軍隊が壊滅って言うのは部隊の三割が戦闘不能になった状態なのよね・・・」
アルナワーズは壊滅以上の被害を故郷に与えていたというのだ。
そう考えれば町の人々の反応もごく自然のモノと言わざるえないだろう。

大混乱の町とは対照的に静寂な存在が一行に近づいてきた。
フェイスベールにローブ、深く被ったフードの四人が担ぐ輿に乗った老婆。
静かにレイドの前に降り立つと、深々と頭を下げる。
「レイド先生、お久しぶりですぢゃ。今年はエース先生は・・・?」
挨拶をしながらリリアーナ、ミルク、メラルを順に目をやる。
「どうもお久しぶりです。今年はこの面子でという事で。
いやなに、可愛い顔して私より優秀なくらいですから安心してください。」
笑いながら応えるレイドの言葉を聞き、老婆は顔をしわくちゃにして三人に深々と頭を下げる。
そしてアルナワーズに向きかえり、それまでとは違った厳かな声を発する。
「アルナワーズ、我が孫娘。少しは成長したかえ?」
その言葉、そしてかもし出す雰囲気。
今までの空気が一変し、緊張した空間が老婆を中心に広がるのがわかるだろう。
が、アルナワーズはそれがわかっていないのか、いつもと代わらぬ穏やかな口調で応えるのだった。
「あるがままよぉん、お婆様。」
そんな態度に緊張した空間が瞬く間に消えうせる。
「うむ。では皆さんを部屋に案内するぢゃ。」
そういうと老婆はまた輿に乗り、去っていく。

「じゃあ皆〜、案内するわよぉん。」
老婆が立ち去ると、アルナワーズが先導し、遺跡の中へと入っていった。

##########################################

「ねえ、ここって・・・。」
「部屋というより祭壇ね・・・。」
アルナワーズが案内したのは遺跡の最上階。
そこには篝火が炊かれ、部屋というにはあまりにも様相がおかしい。
天井もとって付けられたような天幕である。
食べ物飲み物がふんだんに用意してあった。
とうに夜の帳は落ち、夜中にさしかかろうとしている。
当然のようにアルナワーズは部屋の真ん中で眠りに落ちている中、残った四人は輪になって話しこんでいた。
【アルナワーズ・ラプソディー】

砂漠の夜は昼とは対照的に氷点下まで下がり、お陰でメラルも復活していた。
「レイド先生、もう話してもいいんじゃないですか?」
「ん〜〜・・・ああ・・・」
メラルが口火を切るが、レイドの口は重い。
勿論ここに来た目的についてだが・・・
三人に見つめられ、レイドは漸く口を開く。
「いやー、気象変化の調査は間違いはないんだが・・・原因はわかってる。
今回の目的・・・というか敵は・・・アルナワーズなんだ。」
レイドが漸く応えるが、それを聞いた三人は意図が掴めない。
「どういうこと・・・ですか?」
しばしの沈黙の後リリアーナが漸く口を開く。
たった一言だが、ミルクとメラルの代弁に足る言葉を。
そしてその答えをレイドは用意していた。
「うん、アルナワーズはな、正確にいうと人間じゃないんだ。
いつも着ているあいつの民族衣装は【幽玄の衣】っていう強力な幻術がかかっている服で、その姿を人間に保っているだけで。
年に一回、制御が外れてその正体が露になるのよ。
毎年俺とエース先生が相手してたんだけど、今年は友情を深めてもらおうってことで。」
応えるには応えているが、結局肝心なところは何も答えていない。
結局はアルナワーズとの闘いだけとしか。

「まあいいんじゃない?
アルナワーズは面倒な相手だけど、正面切手の戦いなら何とかなるよ。
交渉ごととかじゃ勝ち目ないけど、火力なら負けないからね。」
ミルクにすればそれで十分だったのだろう。
図式が単純であれば曖昧でも十分だ。
やることは結局一つなのだから。
しかし、そう考えられないのがメラルだった。
「・・・レイド先生。正確に言ってください。
町の人の反応。アルナワーズの憑きもの。教師二人掛りでの戦い。そしてこの祭壇。
これだけでも単純にアルナワーズと闘うでは済まされないと推測できます。
もしかして、私たちは自然災害二つ相手にするのと同義なのでは?」
じっと見つめるメラルに思わず目をそらすレイド。

しばしの逡巡の後、引きつった笑みを浮かべた。
「いや、大丈夫。ちゃんと戦力バランスとってあるから。
火力のミルクに頭脳のメラル。学園でも屈指の組み合わせだぞ?」
レイドの応えに更なる疑惑を募らせるメラル。
確かにミルク、メラル、レイドの組み合わせは戦力的にもバランス的にも屈指といえるだろう。
逆に言えばそれほどの戦力が必要となる、という事なのだ。

しかしそれ以上に引きつった顔をするのはリリアーナだった。
「あ、あの、私はなぜ選ばれたんですか???」
そう、既に涙目になっているリリアーナ。
この中で戦力的に桁はずれて落ちているのはわかっている。
そう問われてギクリとした顔を一瞬浮かべるレイドの反応だけで十分だった。
「い、いや、ほら。リリアーナはアルナワーズのお気に入りのオモ・・・」
「え・・・先生、それって囮って・・・こと?」
「ち、違うぞ!回復薬が必要だからであって・・・」
「いやー!私、帰ります!無理ですー!」
引きつるレイド、半泣きで帰ろうとするリリアーナ。
それを止めようとするミルク。
三人のどたばた劇の中、メラルが冷静にただ一言発する。
「・・・もう無理みたいよ。」

メラルの背後、祭壇の中央。
アルナワーズの気が急速に膨れ上がっていくのが肌で感じられたから。
【アルナワーズ・ラプソディー】

時はキッチリ0時を指し示していた。
【それ】は始まった。

「いざや聴け 喚起されしモノ うぬが見立て 七とせの 鼓を打つ響きの間を以って 五芒の戒め六芒の枷、呪詛の楔を樽緩めん!」
「聖地バラナシより轟け 地霊を目覚まし 負界の底より 鳴動せよ 我が啓示となりて 汝が名はタイフーンアイ!」
「爆風よ デカンの怨嗟よ ポタラの果て 銀影の彼方 全ての軸を歪ませ吹き荒れよ 汝が名はクラウドオブダウンバースト!」

眠っているアルナワーズががくがくと痙攣し始め、確かな声で歌うように唱え始める。
その言葉と共に天幕は吹き飛び、アルナワーズの姿が消える。
変わって上空には分厚い暗雲が渦巻き、中央には巨大な目玉現われる。
轟く雷鳴、降り始める豪雨、吹きすさぶ豪雨。
うねる雲は一瞬アルナワーズの顔を形作り、直ぐにまた形を変えていく。

「これが・・・アルナワーズの正体!
アルナワーズの頭脳を持ち合わせる二つの自然災害が私たちの相手なんですね・・・!」
「・・・すまん。中々上手くいえなくって。」
「レイド先生のアホー!こんなんどうしろっていうのよ!」
「いやー、私帰るー!」
「はっはっは!大丈夫、倒す必要ないから。力を削げばいいから死なない程度に頑張ろう!」

これが儀式の始まり、そして天災との戦いの始まりであった。

#####################################################

「この地方は厳しい環境に生きていくために、【節の日】に嵐を呼ぶんだ。
嵐の恵みで土は潤い、畑を耕すに足る土地となる。
ただ、何年か前にちょっとした手違いで嵐を身に宿しちゃったお転婆な巫女がいてな。
しかも一つで十分なのに二つも。
それからは嵐を呼ぶと自動的に二つの嵐が来ちゃって滅茶苦茶になるわけよ。
だから、毎年俺とエース先生が抑えていたわけだけど、今年は生徒にも体験させてみようって学園長が・・・ハハハ。」

一晩中かかった戦いは終わり、ぐったりとしながらレイドがそう告げる。
だがそれが耳に入った者がいたかどうかは疑問である。
アリーカリフに【適度】な嵐の恵みが訪れた。
しかしその代償は・・・

####################################################

「ねぇ〜。ちょっと変じゃなぁい〜?」
刺す様な日差しの砂漠を行く一行に声がかけられる。
「あーもう、うっさい!これでいいのよ!」
切って捨てるようなミルクの返事。

今一行はアルナワーズの故郷の帰り道。
行きと違うのは、魔法の絨毯に倒れるように寝ているのがメラルだけでなく、ミルクとリリアーナが加わっている事。
そしてアルナワーズが歩いている事だった。
「意地悪だわぁん。でも、なんだかぐっすり寝たようで体が軽いし〜。私くじけずに頑張る!」
にこやかに笑いながら砂漠を歩くアルナワーズ。
しかし、そんな言葉は三人の神経を逆撫でするのであった。

「アルのこと・・・嵐のような人だと思ってたけど、認識が甘かったわ。」
「・・・そうね。嵐のような。ではなく、人の形をした嵐だわ。」
「うん、しかも×2」
ぐったりとして呟くリリアーナに応えるメラルとミルク。
「えー皆ひそひそ話してなんだかイジワル〜。」
一人元気なアルナワーズとぐったりとした四人の帰り道はまだまだ先は長いのであった。