>>302 地面が…陥没する……
「………何が起こっているんだ……こんな……『魔法』みたいなこと――――……有り得ない…………」
…僕は………夢でも見ているのか……?
そう思わざるを得ない
そして、弾丸を全て抜き終え、次の弾丸をリロードする
本人は知る由もなかったが、それは知る人が見れば、明らかに今までの通常の鉛玉ではなく――――すなわち、『魔法処理が施された強力な弾丸』だった
先日のうちにキサラの弾層から摩り替えられていたのだ
もしこの弾丸に魔法……いや、魔力すら触れようものなら、その魔力、または魔法が術者に跳ね返るという、強力な反射魔法である
もしまた何者かが『さっきまでの鉛玉』と思い、魔法で打ち落とすならば、その魔法が直に返ってくるという強力なものだった
無論、彼はそのことを知るはずもない
いつもの通りに狙撃準備を開始―――そして、今度は足止めでなく、リリアーナ達自身を狙った狙撃に変わった
>302
マリアベル…彼女の人生はあなたのものじゃない。
彼女の人生は彼女のものよ。あなたに渡しはしないわ。
この命にかけても…!
メラルを眺めていたアンジェは意を決して、懐から注射を取り出した。
首にぶすりと乱暴に刺し、薬を注入する。
すると、アンジェは鳥のような姿から再び人間の姿に変わった。
口にするのも人間の言葉に変わる。
「私が死んでも…かわりは居るもの。」
アンジェはカドゥケウスを持った女の子を思いだした。
アンジェが注射した薬はスンムシゴブタマという魔法薬である。
この薬を注入すると、なんと魔力が無限になるのだ。
アンジェは早速左手の骨折を魔法で回復した。
そして、背中の翼を大きく伸ばすと、霧の中のメラルに向かって飛び立った。
魔力球にぶつかりながも、霧の中に突っ込んだアンジェリーナだったが…
>300
「余裕がないと視野狭窄に陥っちゃうわよ〜。」
アルは自分の悪戯を棚に上げて言いたい放題。そして・・・いつも痛いところばかりついてくる。
「『冷静さを失った奴は負ける』だったわよね・・・レイド先生・・・。」
リリアーナは唇をかみ締めた。そうだ、今から戦う相手は、マリアベルなのだ。
もっと冷静にならなくては。
アルは正しい。――――でもやっぱり、彼女は苦手だ。
さて、そのアルは今、ラルディの頭に座っていた。
彼の頭部に手を突っ込んでいるのは、おそらく今までの情報を直接脳に流し込んでいるのだろう。
幻術って便利だなと素直に感心していると、手を引き抜いたアルと目があった。
(な・・・なんか悪寒が・・・??)
リリアーナは鳥肌が立った二の腕を、寒そうに何度も擦った。
メラルの使い魔は、メラルから離れた方が彼女のためだと言った。
だが制御が甘くなるとマリアベルが知れば、暴走したメラルが水晶球を取り戻そうと動くかもしれない。
「わかった。急ぎましょう。ところで竜さんのことは何て呼べばいい?」
>301
何度か銃弾に足止めされる場面はあったものの、全員無事に目的地に到達できた。
「ここ・・・の筈なんだけど・・・魔法陣ってどこ?」
正直、道を間違えたのかと思った。
それほど、上空から確認した様子とは異なっていたのだ。
魔法陣があった場所には、尋常でない戦闘の爪痕が生々しく残されていた。
「やっぱりマリアベルは生きていたようね」
それはまだロックも死んではいないという証明でもある。
でも・・・どうやったらここまで破壊できるのだろう。
まるで伝説の巨人がこの場に来て、滅茶苦茶に暴れさせたような惨状だった。
>「変なのよね〜。この弾丸・・・何の魔法処理もされていないのよね〜。」
「ああ、そういえばそうね」
魔法処理がされていないのなら、それはそれで利点がある。
魔法力が働かないので、弾を撃っただけでは居場所を悟られる事は無い。
だがそれらの利点があっても、銃弾の破壊力が魔法障壁を破れなければお話にはならない。
もっと威力があって、至近距離から撃たないと、いくら半人前とはいえ魔法学園の生徒は倒せないだろう。
魔法使いであるマリアベルなら、そんなことは分かりきっている筈だ。
しばし考え込んでいたリリアーナは、ぽん、と手を叩いた。
「もしかして銃を撃った人は、この街の生き残りなのかも。
だっておかしいでしょ?半人前とはいえ、魔法使い相手にこんな小さな鉛玉を使うなんて・・・。
―― 少なくとも狙撃手は、魔法使いであるマリアベルの部下じゃないのは確かだと思うわ」
もし、こんな場所で毎日蟻や敵に怯えて暮らしているんだったらとても見過ごせない。
ここがどこなのかよく分からないが、学園に連れ帰ればきっと難民として処理してもらえるはずだ。
>「ねえ?魔法陣が見えてきたのはいいけど、随分大きなのが乗っているし。
>通常弾とはいえ、狙撃も放って置くのも厄介じゃない?
>場所の特定はしてあげるから、狙撃迎撃と重し排除の二手に分かれたら?
アルの手から銃弾が離れ、狙撃手の元へと飛び去っていった。
銃弾が止まった場所は、思った以上に離れていた。走って簡単に往復できる距離ではない。
…今のところ選択肢は三つだナ。狙撃を無視してさっさとこれを処分する、
狙撃手を全員で倒してからこれを処分する、分担。マ、決めるのはお前らの仕事サ。」
「二手に別れましょう。私は蟻を動かすのは無理だから、狙撃手さんのほうを何とかしてくる」
もっとも、メラルの攻撃に巻き込まれていなければの話だが。
「ねえラル君、空が飛べて足が速くて、背中に乗せてくれそうな精霊さんっていないかな?」
次にリリアーナはラルディの頭に視線を移すと、ニーッコリと微笑んだ。
「アル、出番よ〜。狙撃手さんを『説得』しなくっちゃ。
体が弱くても大丈夫!あなたの大 得 意な幻術の出番よ。――― もちろん来てくれるわよね?」
リリアーナはフリージアに向き直った。
「フリージアの氷で女王アリの身体を切断できない?
細かくすれば移動も楽よね。でも氷で切るのはちょっと硬すぎるかな?」
そういえばラルヴァはどんな魔法を使うのだろう?
彼は文字通り空気のような存在だった。だから彼についてリリアーナは何も知らない。
彼もロックのように物体操作が可能なら話が早いのだが。
>296
ねえフリージア、何とかならない?」
そう問われたフリージアは
「雪の結晶の盾で守るぐらいしか方法がありませんわ」
と申し訳なさそうに答えた
「アッチカライイニオイガスル」
頭の上のギズモが狙撃者がいる辺りを指差した
「いい匂い?」
フリージアは問う
「オイシソウナ機械ノ匂イ」
それにこう答えるギズモ
「どういうことかしら?」
グレムリンではないフリージアには機械の匂いなんてわからなかった
>293
突然現れた少年
リリアーナは誰だか思い出せないようだ
フリージアも正直に言えば誰だか思い出せなかった
>「まさか!あなたラル・・・君なの?」
フリージアはその名前を聞いてなぜだかゲリラ戦が得意な髭のおじ様を思い出しかけたが・・・
頭を振ると 「あらごきげんよう」と挨拶をした
どうやら思いがけない彼の言動に混乱しているようだ
>297-302
ラルと合流し一緒に魔方陣まで走ることとなった一行
それを守護するのは2匹の獣
そしてもう一匹メラルの竜が加わる
そんな中次々と飛んでくる銃弾
その弾丸に催眠術をかけるアルナワーズ
戻っていく銃弾
「・・・・・」
無機物に催眠術が利くというあまりの出来事に驚くフリージア
今の状況を説明するならこんなものだろう
そして魔方陣にたどり着いた一行が見たものとは
魔方陣を覆う巨大な女王蟻の死体であった
>306
>「フリージアの氷で女王アリの身体を切断できない?
>細かくすれば移動も楽よね。でも氷で切るのはちょっと硬すぎるかな?」
フリージアは
「皮膚は硬いから難しいかもしれませんけど・・・関節を狙って切れば何とかなりますわ」
と答え
「早速やってみますわね」
と女王蟻の残骸を解体し始めた
体液が酸性で雪の結晶が溶けるという事態も考えられたがそういうこともなく
スムーズに解体されていく女王蟻
やけに手馴れていて正直怖い
「ジルベリアの熊を調理したときよりは楽ですわね」
フリージアいわく熊殺しは乙女のたしなみだそうだ
クドリャフカあたりなら同意しそうだが・・・いま気絶中である
>300
>「ラル〜?こんな力を持っていただなんて。良くも今まで私の目をごまかせたわね〜。」
>ぐりぐりと突付いていたミニアルナワーズの小さな指先がそのままずぶずぶと頭に沈んでいく。
「まぁ、それはその内説明するよ。幻術使いは案外自分が幻術以外の手段でめくらましされてると気づかないからね。」
ははは、とちょっと困ったような笑みを浮かべて対応する。
「紛らわしいことしたものだからって、大変だよねぇ・・・」
頭の中に移った記憶、いや記録か?は大分刺激的なものだけれど。
ラルヴァはなんとか顔色一つ変えずに対応できていた。
アルナワーズはこういうのが大好きなのは学園中でも噂にはなっているから。
>305
>「二手に別れましょう。私は蟻を動かすのは無理だから、狙撃手さんのほうを何とかしてくる」
>「ねえラル君、空が飛べて足が速くて、背中に乗せてくれそうな精霊さんっていないかな?」
「狙撃してくるっていうのは相手が見えているからできる事だから、一応向こうはこっちが人間だって分かっているはずだよ。
なのに撃ってくるって言うことは・・・。気をつけてね。」
と、狙撃手に向かうリリアーナに声をかける。
「んー・・・。残念ながら、人を乗せて飛べるような物との契約は学園から許可が下りなくってね。
まぁその代わりと言ってはなんだけど・・・ルーナ、おいで。」
その声に反応するように暗灰色の狼がすっ・・・とリリアーナに体を寄せてくる。
その体躯は狼にしては随分大きい。人を乗せて走るのは容易だろうし、たくましい二本の後ろ脚で立てば、熊だと言っても通じる程に。
「この娘なら、一応人を乗せて早く走れるよ。それに人の言語も分かるから。ルーナ、彼女の意思に従ってあげてね。
建物の間を走り抜けて行くには地上からの方がいいからね、空だと撃たれる。それに彼女なら弾丸も一応回避できるからね?」
そう言い含めると狼は、わずかに頭を下げた。そして『おすわり』の姿勢をとるとリリアーナを見やる。
指示を待っているらしい。
>303
「さて、と・・・。シャニィ、お願いね。」
リリアーナを送り出すとラルヴァは大きな虎の方に語りかける。
こくりと虎は頷くと、その姿を変貌させてゆく。
地に伏せた四本の脚は後ろ二本のみを地に着け、全身の体毛が部分的に薄くなってゆく。
虎であった顔は少しずつ人のソレへと変化してゆく。人と違うのはその頭頂部にある猫科の耳だ。
これが半人化である。虎のシャニィが半人となると、グラマラスなボディの虎の獣人のようになるのだ。
「精霊が丈夫だからってあんまり放っておくとやられちゃうからね。シャニィ、弾丸を叩き落してね。」
[ダイジョウブ。]
少年と虎の獣人は短く言葉を交わす。アルナワーズの魔法で射手のいる方向は多少は分かっているのでシャニィはそちらに向く。
そして、少年やそのクラスメイトを庇うように立ちはだかると、その弾の一部を素手で叩き落し始める。
「さて・・・女王蟻さんの方もどうにかしないとね。」
(弾丸に何か仕掛けをされていると困るけど・・とりあえずこうするしかないか。)
>307
>頭を振ると 「あらごきげんよう」と挨拶をした
「あはは、気取った挨拶は変わらないねフリージア。」
そう簡単に挨拶すると、魔法陣へと向き直る。
「あぁ、そうだ。さっきアルが銃弾の来る方向を示してたからさ、その方向に対する遮蔽物に隠れない?
そうすると銃弾の心配が減るんだけど・・・。」
と言いながら近くの廃墟に隠れる。もちろん魔法陣が見える位置で。
「とりあえず部位切断ができれば運ぶのはこっちでやるよ。
ラナル・エル・リアルクム、エル・サテル・メルアリスム。」
そう言って手をかざすと、みんなの周囲を囲む精霊の中からハリネズミのような姿をしたものが消えていく。
「大地の精霊ノームよ、我が意に従いて大地をその手足と為せ。」
大地の精霊の力を借りて地面を言うなればマドハンドみたいな腕にして、フリージアが切断する部位を魔方陣の外へ運び出す。
「これで何事もなければ楽なんだけどな・・・。」
今のところは何も起きていない、でも。ロックことマリアベルが何か仕掛けてくる事を心中で危惧している。
・・・なので、一つ仕掛けを施しておくことにした。
「戦列(フォーム)・・・・。」
>307
フリージアが女王蟻の解体を始めた。
「あなたの料理のレパートリーに、熊肉があるとは知らなかったわ・・・」
潰れた部分から順に女王蟻の体を切断しているようだが、恐ろしいほど手際がいい。
この分なら、思ったより早く終わりそうだ。
「フリージア、念のためこれをあなたに預けておくわ」
リリアーナは魔法薬が入ったケースを手渡した。
中にはロックが調合した呪い返しの薬、アベコベールが入っている。
>308-309
ラルヴァは心配しながらも、リリアーナの頼みを聞き入れ使い魔を手配してくれた。
随分大きい。少女くらいなら2人乗せてもびくともしないだろう。
ルーナという名の暗灰色の狼は、軽く頭を下げて指示を待っている。
「よろしくルーナ。悪いけど暫くあなたの背中に乗せてね」
リリアーナは狼と視線を合わせると、軽く会釈をした。
「じゃあちょっと行ってくるね〜。アル、あなたも早く乗って乗って!
ギズモとメラルの使い魔さん、もし来るのなら振り落とされないようにね!」
お願い、とルーナの首筋を叩いた途端、狼は疾風のように走り始めた。
リリアーナは振り落とされないよう、彼女の毛皮にしがみ付かなければならなかった。
「ルーナすごいわ。これならすぐに着きそうね!」
矢のように飛び去っていく風景に驚く。しかもルーナは足音が殆どしなかった。
フォルティシモとルーナ、2人が競争したら、果たしてどちらに軍配が上がるだろう?
リリアーナはふと思い立ち、皆のほうを振り向いた。
「ところで皆、カドゥケウスって名前に聞き覚えは無い?
見た目はただの赤い石なんだけど・・・。
ねえ、学校の噂話でも七不思議でも、魔界の伝説でも何でも構わないの。誰か何か心当たりは無いかな?」
>303
「あ、いたわ!」
リリアーナはとある建物の上を指差した。
石造りの建物は半分抉られたように消えていた。巨大な爪痕は多分メラルの魔法によるものだろう。
逆光でよく見えないが、その屋上では黒い影が身を伏せていた。
もう少し近づいてから・・・そう思った途端、影がこちらに気づいてしまった。
「やめて、私は敵じゃないわ!話を聞いて!」
だが影はこちらに銃を構えた。
やはりラルヴァの予想通りだった。
彼女の言葉が聞こえなかった筈は無いのに、相手は全く躊躇の色は無かった。
リリアーナは舌打ちした。・・・戦闘するしか手は無いようだ。
相手が撃った瞬間、リリアーナもまたロックバスターを発砲していた。
弾同士が接触した途端、リリアーナは声にならない悲鳴をあげた。
リリアーナの身体は空を飛び、ルーナの背から落下する。
「な・・・何・・・が・・・?」
リリアーナには何が起こったのかよく分からなかった。
まるで至近距離からロックバスターを喰らったような衝撃だった。
ルーナが追撃を避けようと、リリアーナの襟首を咥えて物陰に隠れようとしていた。
痛みとショックで目が霞んでよく見えない。
だが、影がまだこちらを狙っているのだけはわかる。
リリアーナは口に溜まった血を吐き捨てた。
(させないわ・・・)
影の足場を崩すべく、石造りの建物に向けてロックバスターを最大出力で連射した。
薄れゆく意識の中で、リリアーナは建物が崩れる音をどこか遠くに感じていた。
「アル・・・ごめ・・・。説得・・・任せた・・・」
―――― もっとも一番の問題は、残留思念であるアルの体がどこまでもってくれるか、なのだが。
>307>309
徐々に解体が進む女王蟻。
かつてはたくましく大地を踏みしめた美足も見る陰も無く。
今はただ切り取られるのを待つばかり。
そして、最後の足が取れた時、女王蟻の心が動き始めた。
『ナゼ私ヲ生ンダノだ?
恐レラレ 忌ミ嫌ワレ
殺シテ 殺シテ
殺サレルダケノ蟲ナラ
何故私ハ生マレタンだ?』
ダルマになった女王蟻の心臓に再び命の炎が宿る。
『本当か?…マダ生キテイイノか?』
女王蟻の目が青く光った、と同時にガコッと彼女の顎が左右に開く。
そして、その口から凄まじい叫びが…聞こえない。
女王蟻の口から発せられた声は人間の耳には聞こえない波長だった。
しかし、その声を聞けば直接脳にダメージを受けてしまう。
その場に居たフリージアとラルヴァはそれぞれの方法で脳へのダメージを免れた。
しかし、安心するにはまだ早い。
女王蟻の胸から黒いゲル状の物質が吹き出し、新たな足を成形し始めた。
足は無尽蔵に何本も成形され、今は蟻ではなくまるでクモみたいだ。
その足を巧みに動かしてフリージアやラルヴァの方へ顔を向ける。
その目が黄色に光り、そしてそこから強力なビームが放たれた。
>>310 「………!!くっ………!!」
足場を狙う相手を確認し、その距離を考え、スナイパーライフルを折り畳んでしまう
そして腰から次に抜いた銃は―――見た目はハンドガンと変わりない、だが中に装填されているのはショットガンの弾……といったものだった
そして、そのショットガンの弾もまた―――例の魔法処理が施された弾丸だった
そのショットガンを抜き、それと同時にリリアーナに向かって飛ぶように走る
とんでもない身体能力である
牽制する相手も銃使いとわかり、その距離をどんどん詰めていく
いつしか彼の思考は、『敵の足止め』から『敵の排除』に変わりつつあった…
「あらありがと。
そちらこそ、極限状態で何が必要か瞬時に判断してそれを躊躇なく実行できるだなんて。
あなたともあなたのお友達とも気が合いそうだわ〜。」
ころころと笑いながら水晶球に憑依したエミューに応えていると、リリアーナの顔がぐいっと迫る。
ミニアルナワーズにとっては頭部だけでその身の丈ほどになるので、質的圧迫感は大きい。
>「アル、出番よ〜。狙撃手さんを『説得』しなくっちゃ。
> 体が弱くても大丈夫!あなたの大 得 意な幻術の出番よ。――― もちろん来てくれるわよね?」
しかし、本当の圧迫感はその言葉に込められていた。
こういう時のリリアーナの押しの強さはアルナワーズも有無を言えない圧力がある。
#########################################
そうして、廃墟の中を大狼ルーナが疾走する。
「カドゥケウス?・・・古の生命を司る神の持っていた杖の名前ね。」
リリアーナの肩に腰掛けながら、少し考え込むような仕草の後呟いた。
更に思考を巡らせようとするが、時間は既になかった。
すぐにキサラの姿を捕らえる距離まで到達してしまったからだ。
リリアーナの説得も取り付くしまもなく、放たれる銃とロックバスター。
その衝撃でミニアルナワーズは吹き飛ばされてしまう。
体制を整えたとき、既にリリアーナは倒れ、ルーナに引き摺られていくところだった。
>「アル・・・ごめ・・・。説得・・・任せた・・・」
「もう・・・私に借りをつくろうなんて、命知らずねえ。」
一瞬険しい顔をするも、すぐにもとの柔和な笑みを称えた表情に戻り呟いた。
ふわふわと漂いながらキサラへと接近していくミニアルナワーズ。
飛ぶように距離を詰めてくるキサラと接触するには殆ど時間はかからなかった。
ばったりと鉢合わせになる二人。
直後、ミニアルナワーズの身体は四散する。
魔法を知らないキサラにとって、漂うように浮くミニアルナワーズの存在は驚異に他ならなかっただろう。
それでも反応し、ショットガンを命中させたのは驚異的な超反応のおかげといえる。
だが、キサラが驚愕するのはこれからだった。
「驚いたわ〜。魔法反応ないし、身体能力だけでこれだけのことをするだなんて。」
バラバラになったミニアルナワーズがまた一箇所に戻り、感心したように話しかける。
その姿は、当初より一回り小さくなっており、口からは血が流れている。
残留し念の法は死霊科にとっては初歩的な魔法だ。
故に使う魔力も少なく、反射魔法の弾で撃たれたといっても大ダメージを受けることはない。
とはいえ、無傷ですむはずもなく、アルナワーズ本体に遡りダメージを与え、それが思念体にも投影されたのが吐血な訳だ。
「でも、説得は簡単そうよねぇ。変わった体系の心理矯正術だけど、不安定で付け入りやすそうだわ。」
撃たれダメージを受けはしたが、それと同時に多くの情報を得ていた。
##サイコメトリー##
触れた物から、そのものに纏わる記憶や、感情を読み取る能力。
幻術・催眠術の応用の一つだ。
それをさらに発展させたものが、先ほどフリージアを驚かせた無機物への催眠術に繋がる。
魔法を込められたものはより強くその身に周囲の感情などを纏う。
反射魔法で攻撃を受けたと同時に、アルナワーズも弾に込められた情報を読み取ったのだ。
そこから読み取れたのは、狙撃手の戸惑い・疑念・歪んだ矯正・遂行の意思。
###########
既に目の前にキサラはいない。
驚異的な身体能力で撃った直後、間合いをとっている。
未知なる存在に対する的確な判断だといえる。
そんな事お構いなしに、ミニアルナワーズの姿が崩れ、揺らめく炎へと変わっていく。
緩急自在、不規則な炎の揺れはまるで見る者を吸い込むような雰囲気を醸し出す。
キサラの身体能力、反射神経、動体視力、全て超人の域に達している。
それは先ほどの遭遇で十分に分かる。
だからこそ、キサラはアルナワーズから逃れられないという確信があった。
超反応能力ゆえに、常人では見過ごしてしまうような些細な事すら反応できてしまうからこそ・・・。
視覚だけでない。聴覚、触覚、嗅覚、全ての感覚から蝕んでいくのだ。
キサラの目に映る揺らめく炎は二つから四つへ、四つから八つへ、まるで自分を取り囲むように増えていくように感じられるだろう。
それと共に周囲が暗くなり、周りの障害物などが徐々にその存在を消していくように。
だが、それを自覚できる事もなく、徐々にその術中に陥っていく・・・
催眠術は思考のベクトルをずらして思い込ませる術だ。
その見地から言えば、不安定な心理状態や、強固な心理状態は御しやすい。
強固な心理状態は、見方を変えれば柔軟性のなさにも繋がり、一度ずらしてしまえばどこまでも深く催眠作用に陥る。
矯正された心理は歪みが生じ、強固な意思を持つようで実に危ういバランスに成り立っているのだ。
逆に柔軟で多角的な心理状態を保つものは、一つのベクトルを変えても、別視点からカバーが入るので催眠状態に入りにくい。
弾丸から読み取った今のキサラは催眠術にかかりやすい状態だといえる。
『ねえ?あなたは何のために戦うの?』
穏やかな、まるで子守唄のように囁く声がキサラの脳裏にこだまする。
それは問い掛けるというより、染み込むように。
『 本当にそれは正しい事なの?』
『あなたの立っている所は・・・どこ?』
『「なぜ争うの・・・?誰の為に・・・?』
あらゆる方向から囁かれる声は、直接脳裏にこだます為に耳を塞いでも聞こえてくる。
『あなたが撃ったのは・・・誰・・・?』
『敵・・・?誰が敵だと決めたの・・・?』
『あなた自身はの答え・・・?』
じわりじわりとキサラ自身が抱えていた葛藤や矛盾に染み込んでいく。
あくまでも優しく、葛藤で暴走できないいやらしさを持ったその声は、黒いシミの様にキサラの心を揺さぶった。
>>313>>314 こ…こいつ……っ……!!
マントやサングラスで表情は見えないが、彼は明らかに驚愕を隠せなかった
未知の存在から距離をとる―――それは必然
気付いたら意思とは別に離れる身体
そして―――脳裏に響く女性の声
迂濶だった―――自分の能力を逆手にとられるとは
―――だが、それに気付いた頃には既に遅かった
自身の極めた超スピード―――それゆえに、彼は行動を封じられるということに滅法弱い
『彼』の常識で計れば、それはロープやワイヤー、身体を直接拘束するものしかなかった
洗脳術ならまだしも、幻術なんてものは、彼の知識にはないものだ
そのうえ、これは生まれつきのものだが、彼は精神面を揺さぶられることがかなり効果的でもあった
思わず耳を押さえるが、声は脳裏を反射し、精神を揺さぶる
銃は地に落ち、フードを外す
現れた顔は明らかに苦悩の表情を浮かべ、必死に何かに耐えようとするようだった
『苦しむ必要はないのよ?』
『あなたは達成したのだから』
『ここは安息の地』
『敵はもういないわ・・・そう、終わったのよ』
苦悶するキサラとは対照的に、声はゆったりと続く。
まるで慈しむ様に。
『私はあなたと共にある・・・』
『もう誰も傷つける必要なんてないもの』
脳裏に響き渡っていた声はいつしかそよ風の様な柔らかさへと変わっている。
不思議と心が落ち着くような効果を伴って。
それはキサラの警戒心や不安を溶かしていく。
キサラを幻術で陥れている間、ミニアルナワーズはリリアーナの元へと移動していた。
暗示は思念体では完成しない。
最後は直接対話する必要があるのだ。
「リリィー、起きて!起きて!もー。」
ぺちぺち叩くが、所詮は思念体。物理的な効果は殆どない。
業を煮やしたアルナワーズは、リリアーナの額に腕を沈めていく。
ラルヴァに記録を刻みつけたように、リリアーナの脳裏に映像を流し込む。
服をはだけ・・・、それは全裸より『男』の艶を醸し出した姿でリリアーナを力強く抱き寄せロック。
『リリアーナ、起きるんだ。でないと・・・』
ぐぐぐっと迫るロックの唇。
一見いい夢見てさらに眠りを続けそうだが、アルナワーズの見立てでは心の準備が整っていない不意打ちは強い衝撃と化すと予測していた。
そして強い衝撃は、一時傷の痛みも忘れさせる。
「リリィ、心理ブロックは殆ど外れているから、後は刷り込みに直接の言葉が必要なのよ。
私ばかり働かせないで、リリィも働きなさい〜。
ほら、あの子の前に立って。傷ついた動物をあやす要領でね。」
一方、その頃キサラの脳裏では・・・
『大きく息をして』
『あなたの名前は?』
『もうあなたを縛るものなんて何もないのよ・・・』
『さあ、私の手をとって・・・』
キサラの目には、清らかな笑みを浮かべるリリアーナが映っているだろう。
優しげに手を差し伸べるその姿が。
そして、抗いがたい衝動に包まれる。
その手をとりたい、と。
キサラが心理矯正を受けていることは最初から分かっていた。
それを無理やり外すような真似はせず、新たな解釈を与えてやる事によって、固定された心理ベクトルをずらしているのだ。
そう、キサラに施された元の暗示の力すら利用するように。
『ゆっくりと・・・目を開けて・・・』
殆ど暗示を完了させ、キサラは力なく片膝を付いてしゃがみこんでいた。
>>316 …………………………
力なく膝をつくキサラ
心の奥底では、『敵を倒せ』と叫んでいるのに――――
ゆっくりと目を開ける少年
相変わらずその目は見えないが、先程までのスナイパーとは、まるで別人の目――――
純粋な、少年の目だった
ロックが外れることはなかったが、ほとんど外れかかっているのだ
ファイアーボールなんかでどうにかしようという俺の考えはマカロン並に甘かったみたいだ。
あの紫色の妙な霧に邪魔されちまってる。
なるべく怪我をさせずに気絶させるってのもなかなか難しいもんだ。
>「…黒天砲……アルナータ…」
次の手を考えていた途中でメラルが術を放った。
「うおっ!……って、あれ?」
俺に向けて放たれたと思った魔力球は別の方向へ向かって飛んで行った。
つーかあの威力は反則だろ。
地面が陥没してやがる。
あんなんマトモに受けたら即死だっつーの。
さて、話を戻そうか。
俺は一体、どうやって気絶させれば良いんだ?
怪我をさせずに気絶………
「アナザーゲート。…とりあえずコイツを使ってみるか。」
俺が取り出したのはボクシングで使われるグローブだ。
「このグローブにスタン効果を付与すれば結構いけるんじゃないか?」
そういや、リリアーナから渡された賢者ライールの杖があったな。
これを触媒にして魔法を使えば結構威力がありそうだ。
よし、んじゃこの杖でスタン効果を付与してみるか。
「さて、良い感じに仕上がったんじゃないか?」
賢者ライールの杖を触媒にスタン効果を付与したんだ。
効果は抜群…の筈。
俺は両手にスタン効果を付与したグローブ、略してスタングローブを装備してサウスポーに構えた。
「一瞬だから我慢してくれよっ!」
メラルに接近しボディに強烈な一撃を入れる。
……頼むから気絶してくれ。
>311
徐々に解体、移送作業が行われていく。
残るは胴体から頭部・・・。
「これなら結構早く終わ・・・?!」
>女王蟻の目が青く光った、と同時にガコッと彼女の顎が左右に開く。
なんだ?!と思う間も無く、傍らにいた風精(ジン)が震える。
それを見た瞬間に体は動いていた。
「ジン!」
パキィン、と指を弾くと風の精霊達の震えが増大。
女王蟻の口から放たれる音が脳を打ち砕く前にジンの振動が音対音で相殺する。
「くぅ・・・。実は生きてたのかな。フリージア、大丈夫?」
そう声をかけるが、フリージアの方を見やる余裕はない。
>女王蟻の胸から黒いゲル状の物質が吹き出し、新たな足を成形し始めた。
「うぇ・・・なんか変なのになったね。」
>その足を巧みに動かしてフリージアやラルヴァの方へ顔を向ける。
>その目が黄色に光り、そしてそこから強力なビームが放たれた。
「ヤ〜な、予感。地精(ノーム)よ、集え。万軍を迎え撃つ壁を為せ。グライ・グレム・グレグリア。」
『鉱土群壁』(グレイブ・ロウ)!
と叫ぶと、ラルヴァの眼前に魔力をまとった土や鉱石の壁が現れる。
「攻撃するなら、容赦しないよっ?!」
ビームを退ける土の壁に向かって手をかざす。
ハリネズミのような外見をした地精(ノーム)は、壁を超えて女王蟻の足元へ向かう。
『鉱土群壁』(グレイブ・ロウ)!
と、もう一度詠唱すると。女王蟻の足元から石や土の壁が地面から噴き出す。
ただし、その先端は槍のように鋭い。
>316
気絶したリリアーナを起すべく、アルは彼女の意識に直接映像を流し込んだ。
真っ暗だった視界が急に開けた。
リリアーナは首を傾げた。・・・なんとなく世界がピンク色に見えるのは気のせいだろうか?
だがそんな疑念も、佇む人影を見た途端吹き飛んでしまった。
「ロック!ロックなのね?―――― 良かった、元に戻れたのね!」
だがロックが振り向いた途端、彼女の足は止まってしまった。
「ちょっと、なんでちゃんとボタン嵌めないのよょ」
赤くなったリリアーナを、ロックが力強く抱き寄せる。ハッと我に返った彼女はじたばた暴れ始めた。
「わかった、あなたマリアベルね!酷い、またロックに成りすますなんて!一体何が目的なの?!」
暴れるリリアーナを軽くいなしつつ、ロックは雰囲気たっぷりに眼鏡を外した。
>『リリアーナ、起きるんだ。でないと・・・』
リリアーナの顔に影が落ちた。
「ぅわ―――― っ!!!」
真っ赤になったリリアーナは飛び起きた。
ぜいぜいと息を切らしたリリアーナの前には、一回り小さくなったアルの姿が。
>「リリィ、心理ブロックは殆ど外れているから、後は刷り込みに直接の言葉が必要なのよ。
>ほら、あの子の前に立って。傷ついた動物をあやす要領でね。」
リリアーナはアルの口元の血に目を止めた。
「さすがはアル、恩に着るわ。・・・一番危ない部分を押し付けてごめん」
>317
アルとルーナが隠れるのを見届けた後、リリアーナはふらつく足で狙撃手へと歩み寄った。
フードが外れた狙撃手の顔ははっきりとは見えない。だが、かなりの美少女なのはわかった。
敵意が無い事を示すため、リリアーナ自身も武装解除した。
「ねえ、マリアベルかギルハートって名前に心当たりは?」
彼女は首を横に振った。リリアーナはホッと安堵の息をついた。
とりあえずこれで、狙撃手がマリアベルの関係者という可能性は消えた。
リリアーナはさらに続けた。
「あなたはこの街の生き残りなの?他の人たちはどうなったの」
いらえは無い。
リリアーナはそれを肯定と受け止めたようだ。
「変な事を聞いてごめんね。でも、どうか嫌わないで。私はあなたの敵じゃないわ」
ふっと今にも遠ざかりそうな意識をつなぎとめようと、リリアーナは歯を食いしばった。
ここで気絶しては、アルの努力は水の泡だ。
「・・・私はあなたを迎えに来たの。こんな危険で寂しい場所に、あなたを一人置いていけないわ」
この辺は完全にリリアーナの勘違いなのだが、少女の力になりたいという気持ちは本物だった。
「私はリリアーナよ。あなたと友達になりたいの。私を信じて・・・私の手を取って・・・」
リリアーナは血で汚れていない方の手を差し出した。
「――――ねえ、あなたのお名前は?」
>>321 そっとさしのべられた手を、無意識のうちにとるキサラ
性別を勘違いされていることには、今は気付いていない…のだろうか
「…………キサラ………………キサラ…トールフェルド…………」
そこまで言ったところで彼の意識が覚醒する
彼の心理
>>321 そっとさしのべられた手を、無意識のうちにとるキサラ
性別を勘違いされていることには、今は気付いていない…のだろうか
「…………キサラ………………キサラ…トールフェルド…………」
そこまで言ったところで彼の意識が覚醒する
彼の心理矯正が外される―――それがどんなカタチであれ、それに伴い多少の精神崩壊が何処かしら起きる
目の前の人間が敵である、ないに関わらず、パニック状態から地面の銃を拾い上げ、リリアーナに向けて構え――――発砲する
>>320 女王蟻の目が今度は赤く光る。
それと同時に女王蟻を取り囲むように魔法障壁が展開された。
地面から吹き出した鋭い壁は女王蟻に到達する前に砕け、地に帰る。
女王蟻はその魔法障壁を展開したまま、
その見た目から想像できない敏捷さで二人に突進を仕掛けてきた。
とりあえず、女王蟻が移動したおかげでワープ魔法陣は利用できるようになった。
しかし、女王蟻はそうかそうかと道をゆずるほど甘くはない。
女王蟻の目が緑色に光った。
彼女のお腹についた沢山の小さな扉が開く。
そこから爆薬の入った三角錐が飛び出し、辺り一面にばらまかれた。
物陰に隠れ、キサラとリリアーナのやり取りを覗くアルナワーズ。
暗示の二重かけ状態になっているので、多少の不安があった。
今キサラの心理状態は空白に近い。
そこに漬け込めば刷り込み完了な訳だが、下手をすればパニックを起こしかねないから・・・
だからこそ、『傷ついた動物』をあやす要領で、と忠告しておいたのだが・・・。
だが、賭けは失敗に終わってしまった。
パニックを起こしたキサラは銃を拾い・・・撃った・・・・!
狙いもまともに定まっていない発砲だが、余りにも距離が近すぎる。
物陰に隠れ、思念体であるアルナワーズにはどうする事もできない。
・・・幻術で絡めとった時点でルーナに噛み殺してもらえば・・・
当然の選択肢だった。
しかし、撃たれ気絶しながらも説得を託したリリアーナの意思を尊重した自分の迂闊さを呪うしか出来ない。
それでも目をそむける事をしなかったミニアルナワーズの目には確かに映った。
如何にに超反応を誇るキサラといえども、パニックを起こしているキサラには気付けもしなかっただろう。
ほんの一瞬、リリアーナに重なる影の姿が。
その影は、リリアーナの腹部を突き破るはずの弾丸の勢いを殺し切るのを。
近距離過ぎて、散弾が広がらなかったのも幸いした。
弾はリリアーナの服にめり込み、強い衝撃を与えるだけに終わり、その身を傷つけることはなかったようだ。
「あの影は・・・学園長・・・!
・・・さすが、としか言いようがないわねぇ・・・。」
ミニアルナワーズは確かに見極めていた。あの影が学園長の残留思念の法だと。
弾を止め、逆にリリアーナを回復させるまでしたのだ。
そしてリリアーナは聞いただろうか?
『彼をよろしく頼むよ・・・』との学園長の声を・・・。
『リリィ?ナウシカになりきって!もう一押しよ〜。』
物陰からテレパシーで声援を送るミニアルナワーズには、もはや不安も、後悔もなかった。
既に成功を確信していたのだから。
>325
効果時間がすぎて一瞬で大地の壁は崩れて元に戻ってゆく。そこに見えたのは
>地面から吹き出した鋭い壁は女王蟻に到達する前に砕け、地に帰る。
「ふぅ・・・ん。障壁か。」
などと考えている場合ではない!
>その見た目から想像できない敏捷さで二人に突進を仕掛けてきた。
「つっ・・・!」
右手に持った杖の先端の先端の先端、ほんのごく一部を迫り来る女王の脚に向ける。
そして、衝突の付加がかかる一瞬で大地に魔力を送り、横っ飛びに避ける!
しかし、あまりに急に吹っ飛んだ為に壁にぶつかる事を計算に入れていなかった。
[――衝突]
「ごふっ・・かはっ・・・あ痛たた。」
軽く自分の背中をさすりながら起き上がる。そして今しがた通り過ぎた女王蟻の方を向くと
>彼女のお腹についた沢山の小さな扉が開く。
>そこから爆薬の入った三角錐が飛び出し、辺り一面にばらまかれた。
「それは、ちょっと甘いんじゃないか、な?![戦列:突撃(フォーム:アサルト)]」
戦闘態勢に入っていた為に半ば放っておかれていた大地の腕。
大地に手をかざしてそれらを再び作り出し、操作する!
大地に生えた手は手近な三角錐を拾い上げ、次々と女王蟻自身やその頭上に放り上げる。
そして、それに女王蟻が気をとられる一瞬。女王蟻の傍らには、火球に目玉をつけたような外見の
火精霊達が・・・!
「火精(アグニ)!・・・爆裂。」
女王蟻の周囲の三角錐に火精達は魔力の炎弾を打ち出し、そして自らも三角錐へと突撃する。
そして・・・爆発!爆発!爆発爆発爆発爆発!!
「まだ・・・!大地よ、その内に在りし峻厳なる父、不破なる地龍の英霊に申し上げる・・・」
爆発だけでトドメをさせるとは思わない。決定的な一撃を放つ為にラルヴァは精神を集中させて詠唱を始めた。
地精達がゆっくりとラルヴァの周囲に集まってゆく。
フリージアは驚いた
死んでいるはずの女王蟻がびくりと動いたのだ
そしてなにやら目を光らせ口をあけた
蟻酸攻撃かなにかだろうか?
そう認識すると同時にフリージアは防御の為、雪の結晶のドームを展開した
その一連の魔法発動のプロセスは約0.05秒間
ちょうど宇宙のどこかで悪人を取り締まる正義の公務員が鎧を着るのと同じぐらいの時間だ
ただ・・・短時間で色々と省略したのでドームが覆ったのはフリージアの頭部のみであったため
まるではちかぶり姫のような妙な姿になってしまった
頭の上に座っていたギズモが立ち上がれはもうちょっとましな姿になるかもしてない
それでもなんとか蟻の女王の叫び声からは免れることが出来たようだ
>「くぅ・・・。実は生きてたのかな。フリージア、大丈夫?」
すべての音がシャットダウンされてしまったためラルが何を言っているのか聞こえない
どうやら気遣ってくれているのだと思うのだが・・・・
このままでは何も聞こえないでとりあえず蟻から充分に離れてから
その小さなヘルメットぐらいの雪の結晶のドームを分解し雪の結晶に戻した
その時である蟻のプライドを捨て蜘蛛のような姿になった女王がビームを放ったのは
ラルヴァが土の壁で防御したのと同時にフリージアはさっき分解した雪の結晶で防御した
具体的には氷の特性で屈折させて自分に届かないようにしたのである
もっと簡単に言うとクリスタルボーイにはビームが効かないということである
ビーム攻撃をかわしたフリージア
「反撃させてもらいますわ」
と今まで使う機会を逃していた魔法を使おうとする
だが先に攻撃したラルヴァの魔法を無効化して突進してきた
それを紙一重で避けるフリージア
さらに爆弾を撒き散らし始める女王
「こういうのは出した本人にはじき返すのがお約束ですわ」
某亀の魔王もこの方法によって倒されているということから
この戦法は有効であることが証明されている
フリージアは氷結棍を作り出すとゴルフの要領ではじき返した
次々と爆発する爆弾三角錐
止めを刺そうとするラルヴァ
もしものときに供えるフリージア
これで倒せなかったら自分の出番である
そう思い白鳥の様に舞い始めるのだった
そう見開き一ページ分のダメージを与える例の最強奥義を放つ前段階の舞を・・・・
少女はリリアーナの手を取った。
>「…………キサラ………………キサラ…トールフェルド…………」
ホッと安堵した刹那、リリアーナは拒絶された。
「待っ・・・」
パニックを起こし。手を振り払われる。
ただの女の子には、キサラを止めることは出来なかった。
キサラは流れるような動きで銃を手に取り、リリアーナへと銃口を向けた。
そこからはまるでスローモーションのように感じられた。
死ぬのは知っていた。昨夜の占いにそう出ていたからだ。
だけど自分を殺すのは、少女ではなく少年だった筈なのに。
(ま、メラルさんだって外すことくらいあるわよね)
土壇場になって妙に冷静な自分がおかしかった。今までの人生を思い出すようなことも無い。
ただ、心残りだった。
(ロック・・・ごめんね)
キサラは引き金を引いた。
鳩尾に殴られたような衝撃を感じ、リリアーナは思わずよろめいた。
だが、それだけだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?」
死んでないし。
それどころか、さっき被った傷も回復している???
わけがわからず困惑しているリリアーナの頭を、大きな手が撫でた。
>『彼をよろしく頼むよ・・・』
リリアーナははっとした。それは紛れも無く、学園長の声だった。
昨日、最後に学園長に会ったときのことが鮮明に脳裏に浮かんだ。
あれからずっと守られていたのだと今更ながらに気づく。
「待って・・・待って下さい!」
だが一陣の風が吹きぬけると、かすかに漂っていた学園長の気配も消えた。
>『リリィ?ナウシカになりきって!もう一押しよ〜。』
アルの声援を受け、リリアーナは我に返った。
そうだ、呆けている場合では無かった。
今はまず、かわいそうなくらい混乱しているキサラを落ち着かせないと。
それにしても・・・説得してと頼んだのは自分だが・・・何をどうしたらこうなるのだろう。
「アル、あなた一体彼女に何をしたの?」
キサラの特殊事情を知らないリリアーナは思わず呟いた。
はっと顔を上げた彼女に優しく微笑みかける。
「怖がらないで、何にもしないから」
アルの幻灯機のことが頭を掠めたものの、リリアーナは気にも止めなかった。
ただ、何とかしてあげたいと思った。
リリアーナは手を伸ばし、銃を持つキサラの手に自分のそれを重ねる。
「大丈夫よ、怖くないわ」
リリアーナは優しく囁くと、そっとキサラを抱きしめた。
「ほら、怖くないでしょ?」
小さな子供をあやすように、ゆっくりゆっくり体を揺らす。
リリアーナはポンポンと彼女の背を叩いた。
小さい頃はよくこうやって祖母に慰められたものだ。
幼少のうちに学園に来たリリアーナにとっては、数少ない肉親との思い出でもある。
アルならもっと上手く出来るのだろうが、所詮リリアーナはリリアーナだった。
「キサラが落ち着くまでこうしてるからね」
リリアーナはキサラの頭を撫でた。
「だから、もう泣かないで・・・」
>>328 キサラの動きは止まった
……手に持った銃を放すことはなかったが、虚ろだった目は涙目に変わり、その瞳からは自然と涙が溢れていた
殺人兵器となった彼にとって、有り得ない感情が生まれたのは、きっとアルナワーズが心理矯正を優しく外したこと、そして何より、リリアーナの優しさだろう
そして更に――――彼は自分でも信じられない行動と発言をするのである
「…………行って ………あの蟻は…………僕が対処する」
驚きを隠せないリリアーナを傍らに、更に続けるキサラ
「…………あそこにいるのは………貴方の友達………というモノでしょう?………………早く…………行ってあげてください」
そう言い、ハンドガンを再びしまい、先程まで使用していたスナイパーライフルの組み立てにかかるキサラ
その作業中、アルナワーズ達の方にも顔を向ける
「…………残念ながら、心理矯正を外しても………僕は貴方達の……敵です …………でも……………これは命令じゃない………僕の意思で…………貴方達を助けます …………でも…おそらく、次に会ったときも助けるとは…限りませんから」
キサラ・トールフェルドが、初めて自分の意思で行動した瞬間だった
>326>327
爆発が収まり、女王蟻の姿が現れる。
先程まであった無数の黒い足は燃え尽き、再びダルマになっているが、
鋼の装甲に守られた部分は無事なようだ。
女王蟻の目が赤くなり、またもや魔法障壁を展開、
胸からずぶずぶと黒いゲルを吹き出し足を再生させる。
どうやらこの鋼の蟻を殲滅するには、この強固な魔法障壁を無理矢理突き破るか、
女王蟻の攻撃中に攻撃を加えなければならないようだ。
女王蟻は魔法障壁に守られながら足をつくり終えると、
体勢を立て直し、目を白く光らせた。
今度は触覚から電気がほとばしる。
女王蟻の周りに雷撃の嵐が吹き荒れた。
>>330 >女王蟻の目が赤くなり〜
キサラは、先程までの弾丸は、自分が普段使っているものではないとわかると、普段から緊急用に携帯している、『使い慣れた通常弾』をライフルに素早く装填、そして―――撃った
しかし弾丸は『壁のようなもの』に弾かれ、地面に落ちる
それでも構わず、一定の間隔をあけながら、同じ箇所にピンポイントで撃ち続ける
>目を白く光らせた〜
キサラは同じ箇所に弾丸を撃ち続ける
すると、女王蟻が攻撃するその瞬間だけ、弾丸が鋼の殻に弾かれた
「…………なるほど」
タネがわかればあとは簡単だ
キサラが特別に作成した、スナイパーライフル用の『炸裂弾』
対象に触れると、弾が炸裂し、堅い殻も砕くというものだ
更にキサラはそれに改良を加え、火薬の料をギリギリまで増やした
反動がとてつもなく大きくなるため、連射が効かないのが難点だが、その威力は絶大、鋼だろうとミスリルだろうと、オリハルコンだろうと(オリハルコンは自称だが)撃ち貫く威力を誇ることは、既に実証済みだ
鋼程度の硬度なら、1発で頭部は砕け散る
3発も撃てば、跡形もなくなるだろう
「………悪いね …………僕は虫が嫌いなんだ…………!!」
的確に狙いを定め、女王蟻が攻撃を仕掛けるその瞬間を逃さず―――急所を狙い、撃った
>327>330
「その冷厳なる独角を顕現せしめん・・・」
詠唱を続けながらフリージアをちらっと見やると、変なヘルメットをしていた。
思わず精神集中が途切れそうになるけれど、落ち着いて意識を集中する。
爆発を受けた女王蟻は障壁を作って修復を始める。
そして、その修復が終わった段階で反撃を始めるはず。
ならば、その瞬間。障壁が解除されて目の色が変わる一瞬が勝負!
>女王蟻は魔法障壁に守られながら足をつくり終えると、
>体勢を立て直し、目を白く光らせた。
ここだ!あまりに一つの呪文に対して集中してしまっている為に精霊達が精霊界へと帰ってゆく
しかし、それにまで気を回している余裕も無い。周囲から魔力を取り込み、体内のそれと練り合わせ
体内を通じて外部へ!
「磔刑に処す!礫峰槍把(ドラシュ・ガン)!!」
防衛目的の壁ではなく、攻撃を目的とする岩や宝石の槍が地面から突き出す。
それらは女王蟻の体に突き立ち、槍自体は回転しながらその傷を抉り広げてゆく。
計26本の槍が地面から女王蟻を貫く。
>今度は触覚から電気がほとばしる。
>女王蟻の周りに雷撃の嵐が吹き荒れた。
「!!地(ノー)・・・・!」
慌てて地精を呼び出そうとするが、それよりも一瞬早く
カウンター気味の雷撃によって吹き飛ばされた。
「げほっ、かほっ・・・」
視界が真っ赤に染まる。頭から打ち付けてしまったらしい
朦朧とする意識を無理やり繋ぎとめて、先ほどの女王の方を見やるとそこには・・・
「それは母性なのか愛なのか!?新たに現れた謎の美少年に揺れるリリアーナの胸・・・
リリアーナ、愛の劇場第五弾、請うご期待!」
リリアーナがキサラを抱きしめていたとき、ミニアルナワーズは幻灯機に向かってアフレコしていた。
それはもう楽しそうに。
既に『心配』とか『応援』という方向の感情はないようだ。
ハミングしながら幻灯機をいじくっていると、突如として爆音。
慌てて振り返ると、そこには黒煙。
方向は・・・魔方陣だ。
巨大な女王蟻の撤去にしては不自然だ。
下手に爆発などさせれば魔方陣を破壊しかねないのだから。
何 か が 起 こ っ て い る
>「…………行って ………あの蟻は…………僕が対処する」
キサラの言葉で魔方陣に何が起こったのか見当が付いた。
おそらく死んだと思っていた女王蟻が生きていたか、死体を守る蟻が沸いたか・・・
どちらにしてもフリージアとラルヴァが戦いを始めているということだった。
「リリィ〜。行きましょ。ご好意に甘えておくのも大切よ。」
ルーナの頭の上に乗って手招きをする。
人の心は様々なものに支えられて立っている。
家族・友人・経験・崇拝・憎しみ・・・・
支えているものをまず破壊し、新たな壁を作ってやる。
支えを失った心は安定を図る為に壁にもたれかかるわけだ。
大まかな流れではあるが、心理矯正の手順だ。
アルナワーズが行ったのは、キサラの心が寄り添っている壁の向きを変え、つんのめった所にリリアーナという新たな壁を用意してやったというわけだ。
キサラの心はリリアーナという壁にもたれかかっている。
だが、元々の壁がなくなったわけではない。角度を少しだけ変え、確かに存在しているのだ。
分かりやすく言うと、今キサラの心は部屋の角にいるようなものだ。
右肩はリリアーナという壁、左肩は以前の壁に接してもたれている。
急ごしらえとはいえ、「…………行って ………あの蟻は…………僕が対処する」 この台詞を引き出せたのなら上出来だ。
今はこれ以上手を加えるのは逆効果。
したいようにさせておく方がいい。そう判断して、リリアーナに魔法陣に戻るように声をかけたのだった。
「ふ〜説得は成功したけど、もう一歩だったわねえ。」
アルナワーズ自身、あれで十分すぎる効果があったと思っている。
だが、失踪するルーナの上で口に出たのは全く逆の言葉だった。
「最後抱きしめたとき、あの子の顔がうずもれたら完璧だったのに、あそこで柔らかさじゃなくて頑なさを印象付けちゃったのね〜。
あっ!そうだったわ、『揺れる胸』って、揺れるほどないのに・・・後で修正しておかなきゃ。」
ズケズケとリリアーナの胸をえぐるようなことをいいながら、自分の科白にはっとしてうんうんと自己完結をするミニアルナワーズ。
誠に自分勝手だが、こういう性格なので仕方がない。
ころころと笑っていると、銃声と共に風を切る音が流れていく。
どうやらキサラが狙撃を再開したらしい。
それを合図に、ミニアルナワーズの表情が一転。
切れ長の目で流し見るようにリリアーナを見据えた。
「リリィ?さっき撃たれた時、死ぬつもりだったんじゃない?
即死するならまあいいけど、死に損なった時、あなたの場合悲惨な目に会うわよ〜。
自分が死ぬより辛い事がある人間は大変だから、気をつけないと。」
そういうミニアルナワーズの両手がゴントレットに変わっていた。
これで何を言わんとしているかは分かっただろう。
即死しなければ、その傷を代わりに引き受けて死ぬ人間がリリアーナの身近にいる、という事を。
「ほら、冷徹に見えて情に厚いところがあるから困り者なのよね。
っと、これ以上近づくのも危なそうだけど・・・どうするぅ?」
話しているうちに魔方陣のかなり近くまでこれた。
廃墟のせいでフリージアやラルヴァの姿は見えないが、これ以上進むと雷撃の嵐に巻き込まれてしまいそうだ。
>330
「こ、これはまさか電撃ですの?」
以前アンジェリーナの電撃魔法で気絶する羽目になったフリージアはあわてた
氷の魔法属性を持つフリージアは極端に電撃に弱いのだ
「えいやぁ!!」
フリージアはとっさに氷結根を使い棒高跳びの要領で空に逃れた
そして次の瞬間さっきまでフリージアのいたところをはとばしる電撃
もしその攻撃が当たっていたなら命が危なかったかもしれない
「あ、危なかったですわ」
電撃が届かない所、空中で自らが作り出した雪の結晶の上に着地したフリージアはそうつぶやいた
>331
そしてどこからか判らないが蟻の女王を狙い銃弾が放たれた
「え?どういうことですの?」
さっきまでリリアーナを狙っていた銃弾が蟻の女王に放たれたのだ
驚かないはずがない
だがなんであれそれで蟻の女王が死んだならそれはそれでいいだろう
もし生き残っていたら・・・・
「私の出番ですわね」
電撃によって中断させられた舞の残りを踊りきれば
フリージアは最大の攻撃魔法を放つことが出来る
その魔法の名はフリージング・ディストラクションといい
敵を凍らしてから砕いてしまうという大変破壊力のある魔法なのだ
命中率の低いこの魔法だがあれだけ的が大きければ外れはしないはずだ
そう思いフリージアは再び白鳥をイメージさせる舞を踊りはじめた
女王蟻が死んでいなかったらすぐにでも放つつもりなのだ
>331>332
女王蟻は大地から延びた槍に全身を貫かれ、
同時に飛んで来た弾丸が頭部に着弾、炸裂した。
堅牢な頭部は跡形もなく砕け散ると、カッターの刃のような破片となり辺りに散乱する。
この女王蟻は最期の最期まで人間を殺傷できるように設計されているのだ。
頭部を失った事により足が痙攣を起こすが…それでも…まだ止まらない。
首から青い体液を巻き散らしながら足を無茶苦茶に振り回し始めたのだ。
体をラルヴァの出した槍で貫かれているので、
移動こそできないが危険であることに違いはない。
>335
フリージアによってとどめの一撃が放たれる。
アンジェリーナが注射をしてからメラルに向けて突進して来る。
「…スペルブラスター。」
対して、メラルはそこに紫色に輝く中型光線を放ち、命中させる。
アンジェリーナの体から魔力がかなり流出させるが、今は無限とも言える
魔力を持っている以上ほぼ影響はない。霧に突入し、霧によって
吸収される魔力についても同様である。そうこうしている内に
アンジェリーナに至近距離まで接近されてしまう。
「ピンポイント。」
メラルは手から、自らに向けて斥力球を撃って自分を横に吹き飛ばし、
無理矢理距離をとった。が…その先には接近してきていたレイドの姿が。
回避する余裕もなく、ボディに強烈な一撃をもらい、大きく吹き飛ばされる。
アンジェリーナへの対応を見る限りでは普段のメラルと違い、明らかに
接近戦を避けようとしているし、メラルの肉体強化の術も甘くなっているようだ。
最も、霧に魔力を奪われる為、霧の中ではメラル自身にしろ、
他の2人にしろ、術の威力は低下するのだが…。
吹き飛ばされ、地面に落ちたメラルは…すぐさま立ち上がり、霧を展開し始める。
表情には出さないが、動きを見る限りではダメージはかなりの物のようだ。
だが…安心は出来ない。メラルは新たに術を放ってきた。
「ダークダガー…ピンポイント。」
まさに闇の如く黒い短剣を大量に生じさせ、二人目掛けて発射して弾幕を形成した。
更に、メラルはそれと同時に、周囲に展開している霧をより濃密な物へと変じさせていた。
(…干渉が…消えた…? …でも…何よ、これ…)
メラルの精神に対して干渉していた、メラルの体内に残っていたマリアベルの魔力が…
ついに吸収され尽くし、正常な意識を取り戻す。しかし…"その"メラルには、一瞬状況が掴めなかった。
"見た事もないような"闇の術や藍色の霧を自らが展開し、レイド先生やアンジェリーナと相対していたのだ。
しかも、自らの意に反し自分は攻撃を続けているのだから。
>「わかった。急ぎましょう。ところで竜さんのことは何て呼べばいい?」
「…エミュー。あの小娘はそう呼んでるゼ?」
>「二手に別れましょう。私は蟻を動かすのは無理だから、狙撃手さんのほうを何とかしてくる」
「その理屈だと俺もそっちみたいだナ」
>「あらありがと。 そちらこそ、極限状態で何が必要か瞬時に判断して
それを躊躇なく実行できるだなんて。 あなたともあなたのお友達とも気が合いそうだわ〜。」
「本当に躊躇なく実行出来てたら…良かったんだろうナ。」
エミューは愛想とは無縁の口調で返答し続けるが…途中、妙に重い口調になった。
最も、直ぐに今までどおりの雰囲気を漂わせ、周りの皆の様子を見始めたが。
少しして、また声をかけられると…今までよりは多少マシな応対をした。
>「じゃあちょっと行ってくるね〜。アル、あなたも早く乗って乗って!
ギズモとメラルの使い魔さん、もし来るのなら振り落とされないようにね!」
「…乗る必要はねぇゾ。…暫く喋り難くなるけどヨ。」
エミューが自らの周囲に展開した氷を崩壊させて、憑いている水晶球のみの状態になり、
そのままの状態で、リリアーナの後を飛んでいった。
エミューはキサラの近くに来てからはずっとルーナの影に隠れるような位置に浮いていた。
単にキサラに対して安易に情報を与えずに奇襲を出来るように、のつもりだったのだが…
逆にそれが原因で銃弾に対応できなかったのだ。最も…エミューはその点について
何とかなったからいいや、と自己解決しているのだが。
そして…アルの横に行き、移動し始めて暫くしてから姿を元に戻し、
一応リリアーナに聞こえないように配慮してアルに突っ込みを入れた。
まずはアルのリリアーナへの注意に対し。そして、行動全体に対して。
「…何かえらく自分の事しか考えてない人間がしそうな注意の仕方に聞こえるのは気のせいカ?
それに、そもそも…この状況を楽しんでないカ?」
そして一拍入れてから言った。少々真面目気味に。
「最も…あの小娘が暴走してなかったら俺も楽しむんだろうけどナ。
暴走に加えて、さっきの女…か?まぁ、奴に相応の報いを
受けさせられなかったのもあってナ。楽しめるって気分でも状況でもねーからナ。」
>336>337
白鳥を連想させるような舞を踊り終えたフリージア
背中にはオーロラのような魔力のオーラが立ち上る
「この氷結のフリージアの最大奥義受けて御覧なさい!
フリィィィジングデイストラクショォォォン!!」
拳からはとばしる魔力の光!その光は確実に女王を捕らえた
たちまち凍りつく蟻の女王
「粉雪に・・・おなりなさい!」
フリージアが氷像になってしまった蟻の女王に背を向け指をパチンと鳴らすと
蟻の女王の氷像はまるで粉雪のように砕け散った
「これで一安心・・・じゃないですわ!!メラルさんは?レイド先生は?」
蟻を何とかしたといってもまだ問題は山積みであった
>329 >333-334 >337
遠くから聞こえる爆音に、リリアーナは顔を上げた。
フリージア達がいる方向からは黒煙が上がっている。きっと皆の身に何かあったのだ。
>「…………行って ………あの蟻は…………僕が対処する」
「でも・・・」
>「リリィ〜。行きましょ。ご好意に甘えておくのも大切よ。」
アルは既にルーナの背にのり、こちらを手招きしていた。
キサラはキサラで、変わった形の銃(なのかな?)の組み立てを始めている。
リリアーナはしぶしぶ頷いた。
にキサラは、自分は敵だといい、次に会ったときも助けるとは限らないと語った。
だがリリアーナはこの言葉にむしろ喜んだ。
「良かった〜、この街を出る決心がついたのね!うんうん、私もそれがいいと思うわ!」
微妙な表情のキサラに気づかず、リリアーナはさらに言い募った。
「あのね、今この場所と私達の居るフィジルって場所は、ある闇の魔法使いの魔力で繋がってるの。
今すぐなら、この街にある魔法陣を使えばフィジルへ行けると思うわ。
ただ問題は、魔法陣がいつまで残っているかは私にもわからないの。だから街を出るなら急いでね。
・・・・・・・・・・・・・・・あっ、そうだわ!これ貸してあげる!」
リリアーナは三等過程合格者の証であるリングを外し、キサラに手渡した。
リングの表面には『魔力を燃やせ!!フィフスエレメントに目覚めよ』という文字が光っている。
彼女はキサラに渡した後も、リングの文字が消えないことに気づいたようだ。だが、それについてはあえて触れなかった。
「お守りよ。これをもって塔の外に出て、タロウ先生って人に渡して。確実に保護してもらえるわ。
それから万が一魔法陣が消えちゃったときには・・・どうすればいいかは指輪に聞いてみてね」
持ち主が使えば、「ゲート」という転移装置への道を示すはずだった。
だが持ち主以外が使った場合、指輪が誰を指すかなど、持ち主である彼女が知る由もない。
リリアーナは一息に言い終えると、ルーナの背に飛び乗り浮いている水晶球に声をかけた。
「エミュー、行きましょう。じゃあキサラ、またね!」
帰りの道中、アルは突然爆弾発言を落とした。
>「最後抱きしめたとき、あの子の顔がうずもれたら完璧だったのに、あそこで柔らかさじゃなくて頑なさを印象付けちゃったのね〜。
>あっ!そうだったわ、『揺れる胸』って、揺れるほどないのに・・・後で修正しておかなきゃ。」
アルはリリアーナの小さな胸をえぐるような言葉を雑ぜつつ、自分の科白に一人納得している。
リリアーナの硬く握り締められた拳がぶるぶる震えている。
アルは本当にデリカシーが無い!と感じるのはこんな時だ。
遠くから再び銃声がした。キサラが狙撃を再開したようだ。
振り返り目を凝らしていると、急にアルが真面目な声で話し掛けてきた。
>「リリィ?さっき撃たれた時、死ぬつもりだったんじゃない?
>即死するならまあいいけど、死に損なった時、あなたの場合悲惨な目に会うわよ〜。
>自分が死ぬより辛い事がある人間は大変だから、気をつけないと。」
誰を指しているかはすぐにわかった。
>「ほら、冷徹に見えて情に厚いところがあるから困り者なのよね。
「・・・肝に銘じておくわ。ありがとアル」
クドリャフカを生贄にして自分が生き延びるのはとても耐えられない。
「全く!クドリャフカさんももう少し自分を大事にしてくれないとね〜
でないと心配するこっちの身が持たないわ」
リリアーナはうんうんと一人納得して頷いている。
なんともいえない表情をしているアルには全く気づいていないようだ。
「ま、私は運が良いから平気。だからアル、心配しないで。
でも・・・そうね・・・不幸にもそんな時が来たら、アルはどんな手を使ってでも止めてね」
リリアーナは畳み掛けるように続けた。
「アルだけじゃ不安だからエミューやルーナにもお願いしておこうかな〜」
リリアーナは冗談めかしてウィンクした。だが、目は全く笑っていなかった。
>332 >338
>っと、これ以上近づくのも危なそうだけど・・・どうするぅ?」
「いえ、このまま進みましょう。勝負は既についているわ」
リリアーナは上空を指差した。
ちょうど優美な舞いを終えたフリージアが、彼女最大の奥義『フリージング・ディストラクション』を放とうとしていた。
「やったわねフリージア!」
リリアーナはぐっとフリージアに向けて親指を立てて見せた。
「狙撃手さんの方もちゃんとわかってくれたわ。今のうちにマリアベルを追いましょ!
・・・あれ?ところでラル君は?姿が見えないんだけど・・・――――ラル君?!」
倒れているラルヴァに気づき、リリアーナは悲鳴をあげた。
ルーナから飛び降り、倒れているラルヴァに駆け寄る。
「ラル君しっかりして!大丈夫?」
頭でも打ったのだろうか。かなり痛そうだ。
だが魔法を使えない今のリリアーナには、どうすることも出来ない。
回復魔法が得意だっただけに、今の自分の不甲斐なさがいっそう堪えた。
「ごめんね・・・魔法が使えたら、あなたの傷を癒すことだって出来たのに・・・・・・!」
言い終えた途端、リリアーナは耳元でシャボン玉が弾けるような奇妙な感覚を感じた。
ラルヴァの痛みが突然消えてしまった。
彼の傷は今や完全に消滅している。
「・・・ラル君?―――― あれ?体の具合は何ともないの?
・・・もしかして返り血・・・だったとか?」
リリアーナは不思議そうな顔でラルヴァを見つめた。
>>339 「……………???」
自分は敵だ…と言ったつもりなのに、少女は何か勘違いした様子でその場を後にして行った
魔法使いがどうとか、魔法陣がどうとか、とにかく魔法という単語がやたらと出てくる
狙撃しながら色々考えてはみたものの、やはり考えはまとまらなかった
>>336 女王蟻は自分の撃った弾丸によって頭部を粉砕―――ここまで綺麗にきまると、さすがに気持いい
もっとも、今のところ彼にそんな感情はないのだが
「仕留め損なった―――!」
続けて狙いを定める―――が、何となくそれは必要なさそうだった
一人の少女が、残った部分を氷結させ、そのまま跡形もなく砕いてしまったからである
「………やるね」
やっぱり何故凍ったのか、などは納得いってない様子だが、その一連の流れに正直な感想を漏らした
再び銃の解体を始め、特別性の弾丸を抜く
万が一にもこんなものが暴発しようものなら、取り返しがつかない
銃の解体はスムーズに行われ、再びそれをしまう
ハンドショットガン―――スナイパーライフル―――
全てを綺麗にしまい終わったキサラは、先程まで自分の傍にいた少女――――リリアーナの位置をスコープで確認する
何やらよくわからない生物に乗っているようだが、あのスピードなら、ついて行けないことはなさそうだ
少なくとも、見失うことはないだろう
飛ぶように走るキサラ
リリアーナは魔法陣に向かえと言ったが、彼はそんなつもりはなかった
失敗に終わったものの、自分は彼女を殺そうとしていたのだ
そのことに対する償いぐらいは、しなくてはならない
……参ったなぁ、どうしてこういう細かい感情が残ってるんだろう
次に会うときは、敵であるつもりだ
………だが、今は味方だ
僕の意思で、彼女を助けたい――――この感情が続く間は、その感情に従ってみよう
その途中、先程の少女に渡されたリングを思い出し、少し観察してみる
そのリングの表面には、『魔力を燃やせ!!フィフスエレメントに目覚めよ』
……と書いてある
「…………………何なんだろう………これ………」
当然彼には魔力がどうとかはまったくわからない
彼女は一体何を考えて、このリングを僕に渡したのだろうか
もう色々考えるのがさすがに面倒になってきたようで、魔力や魔法云々に関しては、とりあえず置いておくことにしたらしい
そして更に、ふと(彼にとっては)大変なことを思い出してしまった
先程の一連の会話の流れだけでわかったが、彼女は何か、そしてかなり大きく根本的な勘違いをしている
それは明白だ
問題はここからだ
『僕は、彼女に、何をされたか?』
このことを冷静になって思い出してしまったのだ
―――――間。―――――
「な……ななななな…………!」
誰もいないのに声を出すキサラ
なぜなら彼は、女性が苦手なのだから
普段なら触れるだけでも顔が真っ赤、下手すれば気絶する程女性が苦手な彼が、その苦手な女性に抱きしめられていたのだ
…しかも、わりと長く
更に、重大なことに気付く
彼女は、自分のことをどうも女だと勘違いしている節がある
……ということは?
――――――――キサラの思考、一時停止
いや、フリーズという方が正しいか
普段なら確実に気絶するところだが、全速力で人を追いながら気絶することは流石になく、器用にも走る方を優先させたのだ
そして、気絶の代わりといってはなんだが、辺りに響くキサラの声―――いや、悲鳴
その声はリリアーナ達にも届き、目が良い人なら、顔が真っ赤なのは見えなくても、少年が飛ぶように向かって来るのが見えるだろう
>337
>「ダークダガー…ピンポイント。」
>まさに闇の如く黒い短剣を大量に生じさせ、二人目掛けて発射して弾幕を形成した。
アンジェはそれに構わず再びメラルに飛びかかっていく。
「急所にさえあたらなければ、どうということはないわ。」
アンジェは必要最低限のガードをしながら進んだ。
アンジェの体中にぶすぶすと短剣が刺さるがアンジェにはそれが些細な事に感じれた。
自分の死が近い事がわかっているからである。
>更に、メラルはそれと同時に、周囲に展開している霧をより濃密な物へと変じさせていた。
アンジェは霧に突っ込んで後悔した。
濃い霧のせいでメラルを見失ってしまったからである。
「時間が無いのに…」
アンジェは悔しそうに手に持った槍で周りを探った。
アンジェがリリアーナを襲うのに使ったこの槍、実は忘却魔法が込められているのだ。
忘却魔法とは、要するに記憶を消す魔法である。
もともとマリアベルの人格をロックから抹消するために用意したが…もうその必要はない。
周りを探る槍の刃先に手応えはない。
(風の魔法で吹き飛ばせないかしら?)
アンジェは試しにつむじ風の呪文を唱えてみた。
アンジェの周りに風が吹く。
アンジェ
↓
アンジェ(活動限界まで残り3分)
>336>338>340
頭がグラグラする。目の前が真っ赤だ。
でも、その中でなんとか
>「この氷結のフリージアの最大奥義受けて御覧なさい!
>フリィィィジングデイストラクショォォォン!!」
フリージアの声は、聞こえた。
そして、視界の暗転。いや、ただ境界が曖昧なだけ。
真っ赤な視界で、僕が最初に見たのは赤い世界。
だからこの世界は最初から赤だけが支配している。
真っ赤な世界で見上げるものは。
お母様、僕は・・・・・・
『ソレヲ、思イ出スノハ、マダ、ハヤイ』
>「ラル君しっかりして!大丈夫?」
>「・・・ラル君?―――― あれ?体の具合は何ともないの?
>・・・もしかして返り血・・・だったとか?」
そんな声で意識が引き戻された。ぼやけた視界に必死な表情が見える。
「うん・・・?あぁ、もう大丈夫。治してくれたんだね。・・・って、覚えがない?
僕の血はあんなに青くてドロドロはしてないけどな。」
気づけば痛みも傷の後も何にもない。吹き飛ばされたときに汚れた衣服を叩きながら立ち上がり
軽く顔に付いた血を袖で拭う。
「うん、もう大丈夫みたいだ。それにしても、やっぱり体が柔だと困るねぇ。」
曖昧な微笑はいつも通り、元に戻ったようだ。
気づけば黒銀の狼と白銀の虎が心配げにこちらを見つめていた。
「ん、ルーナもシャニィもご苦労様。こっちも片付いたし、とりあえず先生たちの所に戻らないとね。」
後半はリリアーナ達に向けた言葉だ。
ちょっとふらつきながらもシャニィに跨って乗せてもらう。
その状態でみんなを振り返る。
「じゃ、行こうか?」
>「…何かえらく自分の事しか考えてない人間がしそうな注意の仕方に聞こえるのは気のせいカ?
> それに、そもそも…この状況を楽しんでないカ?」
「やーねー、そんなに褒めてくれても何もでないわよ〜。」
顔を崩しながら応えるミニアルナワーズだが、エミュとの会話は成り立っているのだないないのだか余人には良く分からないだろう。
もっとも、誰が聞いているわけではないのだが・・・
> でも・・・そうね・・・不幸にもそんな時が来たら、アルはどんな手を使ってでも止めてね」
そんな中、リリアーナから返ってきた言葉に、さすがのミニアルナワーズの表情も引きつらずにいられない。
冗談めかしたようでいて、目が笑っていないのだから。
「ちょっとエミュの奥様聞きました?自分の事しか考えていない人間チャンピオンがすぐ横にいたザマスわよ!」
井戸端会議をするおばさんのような身振りで驚いてみせる。
仕草はコミカルだが、内心はその言葉の重さに溜息をついていた。
自分が死に損なわないように、身代わりになろうとするものを止めろ、と。
どんな手段でも・・・つまりは、トドメを刺せ、と言っているに他ならないのだから。
リリアーナは自分が安らかに死ぬ為に、他の人間をを制しトドメを刺した十字架を背負って行けと言っているに他ならない。
それをアルナワーズは実行できると分かった上で、怖ろしい本心を軽く言い切ったことに、ミニアルナワーズは溜息をついたのだ。
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魔方陣付近では、冷気が渦巻きダイヤモンドダストが宙を舞っている。
「・・・綺麗ねえ・・・。」
ダイヤモンド出すとの元が何かはあえて詮索はしない。
廃墟の中で発生した神秘の風景をただ楽しむように、気持ちよさそうに宙を見上げる。
そんな気分のいいひと時を、絹を裂くような悲鳴、と形容するのがいいのだろうか?
悲鳴によって引き裂かれてしまう。
遠見の術で声の方向を見れば、走ってくるキサラの姿が・・・。
「・・・フラッシュバックで錯乱・・・?っていうか、やっぱりあの感じだったし・・・。」
キサラの今の状態について、いくつかの心当たりはあった。
その中で一番確率の高そうな状態を想像し・・・ミニアルナワーズはニタリと厭らしそうな表情を浮かべる。
それもほんの一瞬の事。
振り返ったときには元の穏やかに微笑を湛える表情へと戻っていた。
「さ、魔法陣も開いた事だし、先を急ぎましょう。
出でよ櫓、その高きを以って聳えたて!」
呪文と共に、その場に恐ろしく高い櫓が出現した。
その櫓にはこれでもかと言わんばかりのデコレーションに色とりどりのネオン。大きな文字で「ウエルカム!魔法陣はここ↓」と書いてある。
数キロ先からでも見えるであろう高さをもつ広告塔は、一目でアルナワーズの合図だと分かるだろう。
学園広しと家でも、このような馬鹿馬鹿しい事をするのはアルナワーズくらいしかいないのだから。
一方、突然現れた巨大櫓の足元のフリージアたちは奇妙な事に気付いただろう。
巨大建造物特有の存在感、言い換えれば、圧迫感がまるでないということに。
そう、大げさな呪文を唱えたが、召喚術でもなんでもなく、単なる幻影でしかないのだ。
「さあ、これでレイド先生も迷うことなく追いついてこれるわね〜。
ラル、今なすべき事は、先にいかせてくれたレイド先生のところに戻る事ではなく、先に進むことよ〜。」
自慢げに笑うミニアルナワーズは、所々ノイズが入りその姿がぶれ始めている。
「見物するつもりだけだったのに、リリィに頼み込まれて思念体で無理したから、私はここまでみたいなの。
もうすぐ可愛い顔した子がここに来るわ。キサラって言う子よ。
不安定な子だけど仲良くしてあげてね・・・。
さあ、振り返らずに行くのよ・・・・学園を・・・守って・・・。
忘れな・・・で・・・わた・・・は、・・・つでも、一緒に・・・る・・・か・・ら・・・。」
力尽きるくらいなら、無意味に派手な櫓作るな!という突っ込みはしてはいけない。
ノイズが徐々に大きくなり、姿が消え、ついには声も風に吹かれて消えてしまった。
>338
>「うん・・・?あぁ、もう大丈夫。治してくれたんだね。・・・って、覚えがない?
> 僕の血はあんなに青くてドロドロはしてないけどな。」
リリアーナは地面に視線を落とした。正真正銘の『高貴なる血』が、染み込まずそのまま青黒い染みを作っていた。
考えても答えは出ない。リリアーナ少し疲れた顔で、小さく頷いた。
「そう。なんにせよ痛くないのなら良かったわ。そういえばお礼も言ってなかったわね。ルーナ、乗せてくれてありがとう」
リリアーナは今ひとつ腑に落ちない顔をしたものの、にこりとラルヴァ達に微笑んだ。
>「これで一安心・・・じゃないですわ!!メラルさんは?レイド先生は?」
リリアーナはきっぱりと首を横に振った。
>「心配いらないわ。だってメラルさんにはレイド先生達がついてるんだから。
あとは先生達に任せて、私達はマリアベルを追うわよ」
リリアーナはさらりと、だが毅然として言い切った。
この件に関しては、誰が何を言おうと譲る気は無かった。
「――――それに・・・なんだか嫌な予感がするの・・・」
>343 >347
どこからか悲鳴が聞こえた気がする。
「あの声・・・まさかキサラ?!」
リリアーナは立ち上がって周りを見渡した。
だが結局、リリアーナはキサラの姿を見つけることは出来ずじまいだった。
なぜなら彼女をすっぽりと飲み込むようにして、巨大な柱が出現したからだ。
リリアーナは大口をあけて呆けていた。
派手にデコレーションし、キラキラ悪趣味に輝くやぐらには「ウエルカム!魔法陣はここ↓」と書かれている。
「さあ、これでレイド先生も迷うことなく追いついてこれるわね〜。
ラル、今なすべき事は、先にいかせてくれたレイド先生のところに戻る事ではなく、先に進むことよ〜。」
自慢げに笑うアルの体は、所々ノイズが入り輪郭がぶれ始めている。
>「見物するつもりだけだったのに、リリィに頼み込まれて思念体で無理したから、私はここまでみたいなの。
リリアーナはここに来てようやく我に返った。
「わ・・・私のせいじゃなくてこんなの作ったからでしょー!!
無駄に魔力消費しといて、何が『リリィに頼み込まれて無理したから、私はここまでみたいなの』よ!」
リリアーナはアルの口真似をすると、つかつかとフリージアに歩み寄った。
「クドリャフカさんも聞こえたでしょ?あなたからも何とか言ってやってよ!!」
リリアーナはフリージアの胸元あたりに向かって叫んだ。
(別に胸に文句があるわけではなく、単に彼女がクドリャフカを収納したカプセルを持っているからだ。)
アルはキサラがここに来ると言い残し、姿を消した。
リリアーナは、皆にキサラについて話し始めた。
「そうなの。キサラって子、すっごい綺麗だったのよ。
タイプは全然違うけど、フリージアに勝るとも劣らない美少女でね、もうびっくりよ〜。
あんな細腕でこーんな大きな武器を軽々と扱うし」
リリアーナは何事か叫んでいる(ように聞こえた)キサラに手をふり、大声で呼びかけた。
「キサラ〜、こっちの魔法陣はダメよ、悪い魔法使いか出てくるから危ないのよー!
だから来ちゃだめ、塔の外に出るならあっちよあっち!」
キサラの気も知らず、リリアーナはもう一方の魔法陣のほうを能天気に指差した。
どうやらまだ何か重大な勘違いをしているようだ。
キサラは気づいただろうか?指輪から針のように細い光が伸びている事を。
5センチほどのそれは、まるで方位磁石のように持ち主の方角を真っ直ぐ指していた。
「道は拓けたわ。フリージア、急ぎましょう。ラル君、いろいろ協力してくれてありがと。
私達もレイド先生達の事は心配だけど、今は事件の首謀者であるマリアベルを追うつもり。
だからもしラル君がここに残りたいのなら、転移に巻き込まれないよう魔法陣から離れてね」
リリアーナは不意に声を潜めた。
「メラルさんって影があってなんかミステリアスよね〜。
気になってしょうがないラル君の気持ち、ちょっとだけ分かるな〜」
シャニィに跨ったラルヴァの背を軽く叩き、リリアーナは意味ありげに微笑んだ。
――――どうもリリアーナの『女の勘』は、あまり当てにならないようだ。
リリアーナは迷いの無い足取りで魔法陣の中心に立った。
刹那、魔法陣はまばゆい光を放つ。
残されたキサラは我が目を疑った。
光が収まった時には、魔法陣の中の人影は煙のように消え失せていた。
350 :
名無しになりきれ:2007/06/05(火) 21:25:13 0
梅干の謎とは?
>337メラルってなかなかタフな娘だったんだね。
先生ビックリしちゃったよ。
あれを受けて気絶をしないとは……想定外だぞ。
>「ダークダガー…ピンポイント。」
ちっ、困ったもんだ。
まだまだ余裕なのか?
それともただのポーカーフェイスか?
どちらにしろ大したもんだぜ。
「危ねっ……バリア。
当たり場所によっちゃ致命傷だっつーの…ってオイ!」
すぐ横を見ると短剣を体に受けながらもメラルに突っ込んで行くアンジェの姿があった。
無理し過ぎだろうよ、あれは。
アンジェは更に濃くなった霧の中へ姿を消した。
あの霧の中でメラルの姿を発見するのは難しいだろう。
しかも多分あの霧には何らかの秘密がある。
俺のファイアーボールはあの霧に吸収されている様に見えた。
無闇に霧の中に突っ込むのは得策じゃないな。
とりあえずもう一度説得してみるか。
「お〜い、メラルちゃ〜ん!!
俺だよ、俺!愛しのレイド先生!
頼むから俺の為に暴走を止めてくれ〜!」