【物語が】■ファンタジーTRPGスレ■【始まる】

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1ウルリエ ◆mEVCDrT1Bo
さて、始めようか。
2ウルリエ ◆mEVCDrT1Bo :2006/04/20(木) 19:36:45
ここは皆で物語を作りあげていくスレだ。
とはいっても、名無しで質問しても特に構わんがな。

荒らしはお断りだ。
さて、まずは酒場あたりから始めるとしよう。
3名無しになりきれ:2006/04/20(木) 19:51:51
みなさんはじめまして! ってかお久しぶりです!!
去年の10月20日に初めて2ちゃんねるのなな板に
書き込みをしたら「半年ROMってろ!」とか「氏ねカス!」
とか罵倒されてしまいました。後者はとてもできないので
前者を泣く泣く遵守し、ついに今日という日を迎えることが
出来たわけです!!

みなさん、どうぞヨロシクね!!
4酒場のマスター:2006/04/20(木) 19:54:57
儲け話ならないよ。
まったく、近頃の冒険者は酒場に来れば
何か仕事があるかと思いやがって。
5 ◆ovQYUdl8/Q :2006/04/20(木) 19:57:17
もう、ふざけないでよ!
(酒場のマスターに食ってかかる女が一人)
6名無しになりきれ:2006/04/20(木) 21:56:06
版権キャラもええのかえ?
7商隊の主(商人):2006/04/20(木) 22:50:27
『求む冒険者!護衛の依頼です!』

内容
・このフラーリンの町からメロメーロの町まで
・途中で山賊の襲撃が予想されるので危険
・報酬は1人650Giko、危険手当は別途支給

よろしくお願い致します!
8冒険者?:2006/04/20(木) 23:09:57
頭になぜか触角をつけたエルフは言った。
「メロメーロの町はメロンの名産地なんだよなー。
 行こうかな〜」
9名無しになりきれ:2006/04/20(木) 23:20:58
>3 よろしく!
10名無しになりきれ:2006/04/22(土) 01:30:41
もっとおっぱいを
11酒場のウェイトレス:2006/04/22(土) 07:34:18
>7
私も行ってみようかな・・・。
酒場で働くのも飽きちゃったし
12名無しになりきれ:2006/04/22(土) 20:51:14
>6
いいよ
13名無しになりきれ:2006/04/23(日) 21:32:16
駄目なスレを見ると参加したくなるが、
長続きしないのでぐっと堪えて応援にとどめる。
14名無しになりきれ:2006/04/23(日) 22:30:08
ハイハイ>13テーブルおまたせ!
つ【チラシの裏】
15名無しになりきれ:2006/04/24(月) 22:40:46
今   物語   が   始まる〜♪
16冒険者?:2006/04/24(月) 22:43:59
「ちなみに誰の護衛だ?」
17冒険者D:2006/04/25(火) 01:08:43
「依頼主が商隊の主なんだから、商隊を護衛するをじゃないか?」
Dはエールのジョッキを一気に飲み干し、隣りの>>13に答えた。
Dは見た目は細く、武器も腰に差したククリが2本のみ。
鎧もなめし革の軽装鎧だ。
今は椅子の横に置いてある、革のザックにはいろいろな道具が入っている。
彼らは『エクスプローラー』と呼ばれる、遺跡探索のプロだ。
戦闘ではあまり活躍はしないが、彼らの真の力は探索において発揮される。
侵入者を防ぐ罠を解除し、俊敏な身のこなしは偵察や単独行動で、他の冒険者を凌駕する。
「どうだ、やってみな…!?」
突然Dは倒れた。
そのまま痙攣を起こして、息を引き取った。
急性アルコール中毒だった…
18酒場のウェイトレス:2006/04/25(火) 02:44:27
>17
もう!手間かけさせないでよ。店の評判に関わるんだから!
ぶつぶつ言いながら冒険者Dを教会に引きずっていく。
神父様に冒険者Dの財布から有り金全部渡す

ちゃーららららーーーらー
ピロツ

冒険者Dは蘇った。
19警察官:2006/04/25(火) 20:29:27
凶器準備集合罪の現行犯で全員検挙します
20名無しになりきれ:2006/04/25(火) 21:11:37
冒険者まだ?
21名無しになりきれ:2006/04/25(火) 22:12:13
>>20
君が冒険者さ!
22名無しになりきれ:2006/04/26(水) 00:25:13
正直>>1は何をしたかったんだ?
さて、始めようかって…
最低限のルールくらいは書いた方が良い気がするんだが…
23冒険者D:2006/04/26(水) 02:11:09
「ん…ここは何処だ?」
Dはベッドから降りて周囲を見回した。
ぐぅ〜…
突然、Dの腹が空腹を訴える。
「腹減ったな、しかしここは何処なんだ?」
ふと足下を見ると、斑模様の不気味なキノコが生えている。
「旨そうだな…しかしここは何処なんだ?」
Dはキノコをむしり取ると、そのまま食べた。
見た目は悪いが、旨い。
「…!?」
Dの体に異変が起きた。
瞬く間に顔は青ざめて、体が痙攣している。
食中毒だった…
24酒場のウェイトレス:2006/04/26(水) 06:36:30
「あっ気が付いたー?今ご飯持ってきたわよ・・・って!あんた何してるのよ!」
何と冒険者Dは、マスターが趣味ではやしていたきのこ盆栽を食べている!
「どりゃ!」
痙攣している冒険者Dのみぞおちに思いっきりパンチを叩き込む!
口から吐き出したキノコを植えなおしても、多分ごまかしは聞かないだろう。
「あんたカトリーヌちゃん(キノコの名前)を喰ったのね!
なんて事を。これがマスターにばれたら間違いなく殺されるわ。さっ!逃げるわよっ!」
ウェイトレスは冒険者Dを担ぎ上げ、すたこらさっさと店を飛び出した。
25冒険者D:2006/04/26(水) 08:34:22
「モ゛ォ゛ォ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛オ゛オ゛オ゛」
Dが不気味な唸り声をあげて、ウェイトレスから逃げようと暴れだした。
「ちょ!ちょっと!!暴れないでよ!」
ウェイトレスも荒くれ者達が集まる酒場で働いていたから、腕っ節には結構な自信があった。
しかし、Dの暴れる力はその細い体からは想像もつかない程強い。
「モ゛ォ゛ォ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛オ゛オ゛オ゛」
「うあぁッ!?」
ウェイトレスは大きくバランスを崩し、Dと一緒に転んでしまう。
「モ゛ォ゛ォ゛オ゛オ゛ォ゛ォ゛オ゛オ゛オ゛」
Dがウェイトレスに襲い掛かって来た。
Dの目は正気ではない、完全に狂っている。
「もう!あんまり手間かけさせないでよ!!」
ウェイトレスがDの腹に自慢の剛碗をメリ込ませる。
「オ゛ォ …」
Dの内臓は、ミチミチッとイヤな音をたてて破裂した。
即死だった…
268=16:2006/04/26(水) 09:19:08
>19 「ええー!?」
ちなみに背中にロングスピアーを背負っている。
すたこらと逃亡。
「面白そうだからついてってみよう」
Dをひっつかんだウェイトレスを追いかける

内臓破裂したDを見て
「しょうがないなあ」
頭に付けた触角が精霊の声を受信する。
この人は精霊と交信して魔法を使うことが出来るのだ。
「ヒーリング」
瀕死だったDはHPが全回復した。
「せっかく助かったんだから作戦を“命を大事に”にセットしとこう」

「さあ、商隊の護衛にれっつらごー!」
27D ◆9.MISTRAL. :2006/04/26(水) 10:53:57
名前:北風の『D』
職業:エクスプローラー
種族:ハーフエルフ
性別:男
年齢:119歳
身長:187cm
体重:61kg
容姿:細身のオッサン
特徴:頬の傷、無精髭
性格:クール?
特技:遺跡探索、軽業、暗視

装備・右手:ククリ
装備・左手:ククリ
装備・頭:革の帽子
装備・胴:革の鎧
装備・足:革の長靴
所持品:ランタン、ロープ、七つ道具、革のザック

コメント:どんな遺跡探索も俺に任せ…!?
(毒針の罠にかかった)
28D ◆9.MISTRAL. :2006/04/26(水) 10:55:24
キャラ紹介用テンプレ
名前:
職業:
種族:
性別:
年齢:
身長:
体重:
容姿:
特徴:
性格:
特技:

装備・右手:
装備・左手:
装備・頭:
装備・胴:
装備・足:
所持品:

コメント:


※世界観がまるで不明なので、無難にまとめました。
皆さん、あまり無茶な設定は控えましょう。
29D ◆9.MISTRAL. :2006/04/26(水) 10:58:36
まったく…俺は単なる荒らしだったのに…
てめぇら!俺をおとなしく死なせてくれないか!?
クソタレな>>1が何にも用意してねぇから、俺が用意したぜ!
……ちきしょう!!
30名無しになりきれ:2006/04/26(水) 11:14:18
スゲェwwww糞スレに希望の光がwwww
31D ◆9.MISTRAL. :2006/04/26(水) 11:45:16
ルールの説明忘れてたッ!!!
基本的に『拾えるモンは拾う』でいこう。
・荒らしはスルー
しかし面白いなら拾う!
・〆日は特になし
人数が増えるまでは適当なペースで大丈夫だろ。
・後手キャン有り
もう既に俺がやられてるなwww

とりあえず今日のところはこんなモンだ。
詳しくは後々みんなで相談して決めよう。
32キャメロン:2006/04/26(水) 13:53:23
「オウご苦労さん、あんた等募集を受けた護衛の人間だろ
 俺がキャメロン商隊の主オルニス=キャメロンだ」

がっしりとした戦士風の体つきをした、しかし商人がよく身を包む、ゆったりとした服装の男が
D達を認め声をかけてきた。

「条件は酒場で聞いたとおり、危険手当別で一人頭630giko、全額後払い、
 出発は明日。日の出と同時にだ。 今日は向こうの、あの黒いテントで泊まってくれ。
 他の護衛達が既に使っているからちょいと狭いが…」
お、そりゃ岩塩だろ?別の馬車だ、印がついているだろが、そっちにまとめとけ
数が合わない?馬鹿言うな、さっき確認して帳簿に全部…、ちょっと待ってろ!

 「で、だ、日程は6日間、道中の水と食料は安くわけてやるから、それほど持ち込まなくても構わんぜ。
 何か質問は?なけりゃ行っていいぞ。」
ギュネースッ、護衛3人追加だ、戦士っぽいの二人とメイジっぽいの、こいつらだ
33名無しになりきれ:2006/04/26(水) 14:54:05
>25、>26、>29
「あーれー!もう、ダメよお兄さんいくら私が可愛いからってこんなトコで!
道行く皆が見てるじゃないの〜!!えーい!」
どーんと突き飛ばしたけど・・・・・・あれ?何か嫌な音がしたような気がする。
冒険者Dは糸が切れたみたいにパタッと倒れた。
「あれ?あなた大丈夫??」
ガクガクと揺さぶってみるけど、反応なし。うーん。寝ちゃったのかしら。
>「しょうがないなあ」
通りがかった変な人が治療してくれた。冒険者Dは目を覚ました。
「あ、気がついた?あなた食中毒で死ぬところだったのよ。この触角つけた人にお礼を言わなきゃダメよ。
それから、いい齢して何でも口に入れたらダメじゃないの!今に痛い目に逢うわよ」
なんかどうして死なせてくれないのかとか何とか叫んでるけど、多分キノコの幻覚作用のせいね。うんうん。
>「さあ、商隊の護衛にれっつらごー!」
「おー!」
何か予定が大幅に狂っちゃったけど、ま、いいか。 どうせ冒険に出るつもりだったし〜
でも、私みたいに何のとりえも無い女の子を雇ってくれるのかなー?

何かぶつぶつ行ってる冒険者Dの腕を掴んで、触覚の人の後に続く。
「あ、それからねー、貴方も護衛の仕事引き受けた方がいいと思うわ。
だって急逝アルコール中毒の貴方を蘇生させるのに、有り金全部使っちゃったから。ウフフ」
何かわめいてるみたいだけどキニシナイー。
「何がともあれ生きてて良かったわね。ほら見て、月がとってもキレイよ〜!」

>32
さて、商隊のキャメロンさんは私たち3人を暖かく迎えてくれた。
>ギュネースッ、護衛3人追加だ、戦士っぽいの二人とメイジっぽいの、こいつらだ
戦士ぃ?この私が?
・・・・・・うん。どう見ても違うわね。私肉体労働ってタイプじゃないしぃー。
トレイより重いもの持った事無いんだもん〜。(※トレイが重過ぎる)
じゃあメイジなの?ウフフ、私そんな賢そうに見えるぅ?
いやーそんなぁ!照れちゃうわー。

「ギュネースさん?よろしくお願いします〜!」
ぺこりと頭を下げた拍子に、うさ耳が相手の頭を直撃する。
34酒場のウェイトレス:2006/04/26(水) 15:00:37
ゴメンね、>33はワ・タ・シ!
35酒場のウェイトレス:2006/04/26(水) 15:04:32
名前: ジーナ
職業: 元・酒場のウェイトレス
種族: たぶん人間
性別:女
年齢: 10代後半から20代前半の外見。命が惜しくない人だけ本人に聞くとヨロシ
身長:そこそこ高い
体重:わりと軽い
容姿: 黙ってれば美女
特徴: ナイスバディ、ドラクエのバニーちゃん風
性格:楽観的 、能天気
特技: 料理得意です〜!
装備・右手:素手
装備・左手:猫の手型ブローブ (戦闘時のみ)
装備・頭:うさ耳バンド
装備・胴:バニーガールの服 (+女王様のローブ)
装備・足:編みタイツ
所持品:銀のトレイ、薬草酒の瓶、つまみ少々、ナイフ、古めかしいペンダント 、100ギコ

コメント: 得意技は猫パンチとウサギ蹴り
      酒場では用心棒として雇われてたが、本人全く自覚なし
36キャメロン:2006/04/26(水) 19:35:55
――商隊テントの一つに、ひげ面の親父どもが3人。
出発の準備もほぼ整い、紅茶を飲みながら歓談をしている商隊隊長達。


――うん、旨い茶だ、もう一杯もらおうか、糖蜜も少し入れてな。
ん?どうみても戦士風じゃないって?
かーっ、わかってねぇ、わかってねぇよおめーはよー。もっと人を見る目を鍛えろって。
服装がどうとかじゃなくだな、あの娘の筋肉のつき方は戦士のもんさ。
んー、なんかの事情で変装しているか、さもなきゃ趣味だな。

昔、狂戦士の娘ってのを見た事があるが、ちょうどあんな感じの、おお、見た目細い感じでなー、
それでいざ戦闘となりゃ、いやー、敵も味方も見境無しに吹っ飛んだなー、おおよ。
いやー、女は見た目じゃわからんよ、実際。
37触覚の精霊使い:2006/04/26(水) 22:14:26
名前:パルス
職業:精霊使い
種族:エルフ
性別:多分男
年齢:何百歳か
身長:175ぐらい
体重:軽い
容姿:中性的美形
特徴:見た目は若い
性格:何も考えてなさそう
特技:精霊の声を受信 都合の悪いことを忘れる

装備・右手: ロングスピアー(見掛け倒し)
装備・左手: なし
装備・頭: 触覚
装備・胴: 変な派手な服
装備・足: エルフの森の消臭ブーツ
所持品: 風の精霊シルフを飼育しているビン

コメント: エルフの森のはみ出し者
38触覚の精霊使い:2006/04/26(水) 22:25:12
あと火の精霊を使うために松明も持ってます。

かくかくしかじかと自己紹介をした。
「皆さんよろしくー!」

何気なくトレイを持とうとして持ち上がらない事に気づくのだった。
(・・・。強い、この人間強い!)
39爆睡中の冒険者:2006/04/26(水) 23:54:56
荷物には、読みやすいけど下手な字で
“出発時間の5分前になったら起こしてください”
という張り紙がしてある。
40D ◆9.MISTRAL. :2006/04/26(水) 23:58:53
(まいったな…なんで俺がコイツラと…)
Dはブツブツと小さく呟きながら、ククリの刃を手入れしていた。
Dは今までずっと1人で冒険してきた。
誰かとパーティーを組んだ事がなかった。
だから他人と上手く付き合っていく自信が無いと思っていた。
目の前でのんきに食事をとる2人を見ながら、Dは溜め息をついた。
ジーナと名乗ったウェイトレスは、逆らうと怖い。拳の一振りでDを殺す事ができる。
パルスと名乗ったエルフの青年は、精霊の魔法を使いこなすようだ。
傷の手当てもできるし、優秀な奴だと思う。

(どうやら、面倒な事に巻き込まれちまった)
焚き火に木の枝を放り込んで、Dは立ち上がる。
「あれ、食べないの?コレ結構イケるよ?」
パルスが尋ねた。
「見張りだよ、襲って来るのは…道中だけとは限らねぇからな」
なるほどね、といった顔で納得するパルス。
「それに…内臓が軋む様に痛い」
少しからかう様な調子でジーナを見る。
「なッ!?何よ!私のせいって訳!?」
ジーナが激昂するが、Dはひらひらと手を振りながら歩いて行く。
Dの背後から、信じられない様な汚い罵声が聞こえた。

森の中でDは立ち止まると、ニヤリと笑って、
「そろそろ出てこいよ、クソタレ」
と誰もいない森に向かって声をかけた。
「中々やるじゃないか」
と、Dの背後から返事がした。
予想外の場所から現れた為に、Dは反応が遅れる。
ざくっ…
山賊のナイフが、Dの背中に突き刺さり、Dは静かに倒れた。
心臓を一突き、即死だった…
41名無しになりきれ:2006/04/27(木) 00:03:38
>40
だが、Dは死ななかった。

なんと、ひそかに背中に忍ばせておいたペンダントがナイフを弾いたのだ!
42名無しになりきれ:2006/04/27(木) 00:10:47
死なない男ならぬ死ねない男D
不死身の男カッキーぞ
43名無しになりきれ:2006/04/27(木) 00:16:00
なるほどwwwwこのスレのコンセプトは…
Dの死亡レスをみんなで後手キャンするのかwwwwwwww
44名無しになりきれ:2006/04/27(木) 00:20:12
Dは結構上手く死のうとするなwww
ペンダントとかは少し早いかもよ?
後の展開にとっといた方が良い気がする…
45D ◆9.MISTRAL. :2006/04/27(木) 00:39:42
「へっ、ちょろいな」
山賊がDの死体を茂みに隠そうとした瞬間…
電光石火!Dのククリが山賊の胸を貫いた!
「がぁッ!?馬鹿な…!!」
驚愕の表情でDを見上げる山賊。
「悪いな、どうやら俺は死神にフラれたらしい」
Dはククリの血を払い、鞘に収めながら山賊に答えた。
「やれやれだ…」
Dは小さく呟くと、山賊の死体を商隊のキャンプに引きずって行った。
46D ◆9.MISTRAL. :2006/04/27(木) 00:50:41
すいません、書き忘れた部分が…orz

驚愕の表情でDを見上げる山賊。
の後に

Dは確かに死んだ筈だ!
しかしそれは違った、Dの革鎧に縫い付けられた、銀のメダルが致命傷を避けたのだ!

がサッパリ抜けてました。
>>41さんのペンダントを少し変えて拾いました。
だって背中に突き刺さったんだもんなww
47名無しになりきれ:2006/04/27(木) 00:56:42
1人の死にたがりを皆で阻止するww
新しいといえば新しいなwww
このスレ結構いい感じで進むかもしれんね
48名無しになりきれ:2006/04/27(木) 02:11:18
鼻毛が伸びてきた
49邪神ヌ・ルポ:2006/04/27(木) 02:43:36
「は…鼻毛ガァアァァァ!!!!」
伸びた鼻毛が、世界を包み込んだ…
暗黒の時代が始まったのだ!!
50山賊のような男:2006/04/27(木) 02:50:48

…セッコが戻ってきません、ええ、はい。

おそらく…。


……わかっています、商隊の主が持っている「鍵」は必ず、ええ。
護衛が予想よりかなり多く揃ってますが、数だけでしょう。
明日中には全て死体に変えてみせますよ………。
51名無しになりきれ:2006/04/27(木) 03:04:31
「もうだめかもわからんね」
王様は鼻毛に覆われた空を見上げ、弱々しく微笑んだ…

「諦めたら、そこで試合終了ですよ」
安西先生が王様の隣りに立ち、ポンと肩を叩く。
王様は泣き崩れながら、絞り出すような声で、
「バスケが…したいです…」
と言った。
52名無しになりきれ:2006/04/27(木) 03:22:40
「バスケなんてやってねぇでこっち手伝ってくんな!」
植木屋の親方が大地を覆いつくす鼻毛を熊の形に刈り込んでいた
53名無しになりきれ:2006/04/27(木) 03:38:55
と、そこへ赤木が現れてビンタをした
54名無しになりきれ:2006/04/27(木) 03:43:50
それでも仙道なら…
仙道ならきっとなんとかしてくれる…
55名無しになりきれ:2006/04/27(木) 03:51:04
桜木のスラムダンクが決まる!!
56名無しになりきれ:2006/04/27(木) 03:51:05
これはひどい
57D ◆9.MISTRAL. :2006/04/27(木) 06:33:02
「もうだめかもわからんね」
商人の1人が、鼻毛に覆われた空を見上げてへたりこんだ。
「オイ!諦めたらそこで商い終了だぜ!」
キャメロンが商人の肩を掴んで引っ張り上げた。
「キャメロンさん…商売が…したいです…」
商人は泣きながら、絞り出すような声でキャメロンを見た。
「商談なんかしてねぇで、こっち手伝ってくれぇ!!」
戻って来たDが、迫り来る鼻毛を熊の形に切り揃えいた!
「馬鹿野郎!!」
突然ゴリラの様な商隊の1人が、Dにビンタを叩き込んだ。
首の骨がへし折れ、倒れたDは動かなくなった…
58名無しになりきれ:2006/04/27(木) 06:49:30
これはひどい
59名無しになりきれ:2006/04/27(木) 07:58:33
wwwwwwwwバロスwwwwwwwwwwwwwwwww
60名無しになりきれ:2006/04/27(木) 09:16:20
Dはまじめなのか荒らしてるのかどっちかにしたら?
61名無しになりきれ:2006/04/27(木) 09:46:58
もうだめかもわからんねwwwwwwww
62名無しになりきれ:2006/04/27(木) 10:51:13
>>60
真面目に参加してないか?
荒らしっぽいレス拾って、他の人が拾い易そうな山賊を残してるし
でもアンカーつけた方がいいとは思うな…
まぁ、島脱出スレの某駄コテに比べりゃDは神だろ
63名無しになりきれ:2006/04/27(木) 11:00:49
CGのことかーー!(AA略

避難所交渉はじめてるしな、真面目にやってるとは思う
だがもう死ねないネタは終わりにしていいと思うぞ
64商人アメイク:2006/04/27(木) 11:17:33
「オイ起きてくれ、昨日アンタが倒した男の話聞きたいって、オイ」
商隊の護衛部隊の泊まる簡易テントの中で、まだ眠りについているDを起こしに来た下っ端商人。
眉間に不快しわを寄せ「鼻毛が―」だの「うむ、見事な熊の形だ」だの、
まるで意味のわからない寝言を繰り返すDを見つけてゆすり起こすが、まるで目を覚まさない。

そこへ、
「あっ、おっはよーうございまっす!」
キャメロン曰く、ウェイトレスのコスプレをした女戦士、ジーナが通りかかり
底抜けに明るい朝の挨拶をしてきた。
挨拶を返し、事情を説明するアメイク。
「えー?まだ起きてないの?オーイ起きろー、ディー!
 起きなさいよ―、ねえ」バチコーンバチコーン
呼びかけは、やがて強烈極まるビンタへと変わり、
Dを起こそうとしているのか、あるいは、永遠に寝かし付けようとしているのか
その凄まじい勢いからはアメイクは判別がつかなかった。
65名無しになりきれ:2006/04/27(木) 11:23:52
>60
荒らしではなく、t単なるひやかしのつもりだったと思われ
Dは多分どこかで稼動中のコテだと思うお

まあこうなったのも何かの縁
運が悪かったと思ってwwwww
66D ◆9.MISTRAL. :2006/04/27(木) 11:58:52
>64
「このナイフ、連中はおそらく…蠍の爪だ」
まるでボールの様な顔になったDが、キャメロンとアメイクに告げた。
「なんてこった…」
2人は顔をしかめて舌打ちする。
「蠍の爪って?」
パルスがアメ玉を頬張りながら尋ねた。
「盗賊団だよ、かなりの規模のな。最近はこっちに来ていたのか…」
アメイクが頭を掻いて唸る。その表情から、どうやら危険な存在だと判った。
67D ◆9.MISTRAL. :2006/04/27(木) 11:59:57
>>62>>63>>65
はい…死亡レスはもうこれで最後にしますw
本当は複数のキャラを大量投入して、ガンガン死ぬ長文を連投するつもりでした。
でも速攻でウェイトレス(ジーナ)に阻止されて…今に至る訳です。
他スレでSS投下してるので、ペースは遅いですが頑張って行きたいと思ってます。
68触角の精霊使い:2006/04/27(木) 14:21:38
「盗賊団か。…ただの盗賊団じゃないような気がするな。
昨日の鼻毛は焼いても焼いても出てきた」

「あれは…おそらく鼻毛を自在に操る“鼻毛真拳”という秘術だよ。
1000年程前エルフの森は大量の鼻毛に覆われて滅亡しかけたらしい」

>>51が1000年前の状況。諦めたらだめと言われた長老(バスケが趣味)は
もう一度立ち上がり、襲い来る鼻毛に打ち勝ったのだ。

(まさか現代に鼻毛真拳が継承されていたとは…)
「このアメ玉おいしいなあ」
69酒場のウェイトレス:2006/04/27(木) 14:54:12
「パルスったら!ご飯前にお菓子食べちゃダ・メ!食べるならご飯の後でね!」
パルスの棒付きの飴玉を取り上げ、テーブルにぷっすり刺して直立させる。
「さ、皆朝ご飯できたよー!たっくさん食べてね〜!!」
これでも酒場の料理は私が作ってたんだから〜。結構評判良かったのよ、えっへん。
「――――あらD、貴方なんか顔がむくんでない?後でちゃんと顔洗いなさいよね」

「ところでDみたいな『エクスプローラー』と蠍の爪っていう『盗賊団』ってどう違うの〜?
それから鼻毛なんとかって秘術、怖いわねー。エルフの森はどうやってピンチを脱出したのかしら〜」
皿を並べながら誰に言うでもなく話す。

料理を盛り付けながら、ふと人数が足りない事に気付いた。
きっと「起こしてください」って書置きしてあった人ね。
「ちょっと私寝てる人起こしてくるねー。みんなは先に食べててー!」
そういい残し、テントを後にする。

「おっまたせー!連れてきたよーん!」
数分後。
D同様、顔を真っ赤に腫らした人物を担いで戻ってくるジーナの姿があった。
70酒場のウェイトレス:2006/04/27(木) 15:00:25
>66>68
ごめんなさい。貼り付けたときにアンカー消えちゃってた・・・・
でも今後もつけない場合もあると思う。勘弁してね。
71名無しになりきれ:2006/04/27(木) 16:57:44
【蠍の爪】
盗賊団としてはこの地域でかなりの勢力を誇り、神出鬼没で各地に出現する為、
自治警護隊、地方守備隊の対応は芳しくない結果に終っている。
組織は首領のゴート=ダカッツを中心に、その息子や娘がそれぞれ一部隊を率いており、
陽動や援護などの巧妙な連携で、目をつけた獲物を狩るという。

「見つけました」
「何処?」
尋ねられた男の指差す先に、キャメロン商隊が小さく見える。

「いいね、あれだけいればたっぷり殺せそう。
 どう?あんたも腕に覚えがあるんでしょ?殺った数の勝負でもしてみる?」
「私は役目が、殲滅はおまかせする」
にべも無く答える男
「はいはい、仕事熱心だコト」
この部隊の首領らしい女は、陰気な男の受け答えにうんざりした様子で、
会話をやめ、部下に指示を出す。

「あいつ等をぎりぎりの距離で追尾しろ、こちらの位置を決して気取られるな
 夜陰に乗じて襲撃する、ちょっとでも変化があればすぐに知らせな」
72D ◆9.MISTRAL. :2006/04/27(木) 18:03:02
>69
「俺と連中の違いか…」
ジーナの問い掛けにDは嫌そうな顔をした。
何やら《蠍の爪》と因縁がある、そうジーナの勘が告げた。
「俺は遺跡から宝を盗む。連中は人から命を盗む。それだけだ…」
Dはそう言うと、テントから出て行った。
(うわ、絶対に何か隠してるよ〜♪)
Dがジーナの働いていた酒場に来るようになったのは3年前だ。
ジーナは店の常連の事は大抵把握してたが、Dは違った。
ジーナが知ってる事は『腕の立つ探索者』、只それだけだった。
3年前より以前の彼が、どこで何をしていたかは…誰も知らなかった。
73冒険者ロシェ:2006/04/27(木) 19:23:56
>69
にぎやかな朝食もひと段落し、アメ玉の甘い香りが漂う頃。

「…蠍の爪…って聞こえるけど…さそり…何だっけ…」

不運にもジーナに叩き起こされた若き冒険者ロシェ。
鼻毛騒動にも動じず眠り続けていた彼だが、
今は無残に顔を腫らして椅子に凭れかかっている。
護衛として全く役に立っていなかったのだから、自業自得である。
彼は闇ルートで仕入れた首領ゴート=ダカッツの個人情報はもちろん、
豊富な蠍の爪の情報を持っていたのだが、
ジーナの鉄拳により記憶がきれいに吹っ飛んでしまっていた。

またしても役に立たないのであった。
74名無しになりきれ:2006/04/27(木) 19:27:19
テントから出て来たDの姿を、遠い木の上から見つめる影があった。
「やはり…セッコを殺ったのは『北風』だったか!」
影が憎しみをそのまま形にした様な呟きを漏らす。
「とってやる…とってやるぞォ…セッコォ…」
獣の如く唸り、影は木立の中に消えた…
75名無しになりきれ:2006/04/27(木) 19:34:51
「ククク…まさか、こんな所であの裏切り者を見つけるなんて!」
茂みに隠れている小男が、嬉しさのあまりガッツポーズした。
76名無しになりきれ:2006/04/27(木) 19:43:43
眉毛も伸びてきた☆たきてび伸も毛眉
77名無しになりきれ:2006/04/27(木) 19:50:41
ここの名無しは皆優しいなwwww

ジーナ…ジーナァ…(;´Д`)/|ァ/|ァ
ジーナの着替えシーンを田代するD(に変装した山賊d)
78商人アメイク:2006/04/27(木) 20:43:29
なんだか肌がピリピリしやがる、こんな時は決まって良くない事が起こるんだよなぁ…。
ばあちゃんが死んだ日も丁度こんな感じで、相場で大損こいた前日も、、、

……飲もう、飲んで寝よう、それがいい。
ナム酒ちゃん、俺の愛しいナム酒ちゃーん。

んー、確かここに、どこだ?
痛ッ!?!?イテテテテ、足に何か…、矢?
何で矢が生えて??うぉっ!足に、力、入らね、何?麻痺?毒?
誰か、そこに、、目が、、、

「襲撃だぁぁぁ――――」
そう叫ぼうとした
俺の、この世で最期の言葉は、毒に阻まれて、意味の無い、歯の間から、吐息に、、、、
79D ◆9.MISTRAL. :2006/04/27(木) 21:02:28
建てて来ました。

【物語が】TRPG避難所【始まる】
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1146138434/

このスレに対する、ご意見・ご要望等ありましたら、こちらへお願い致します。
流れ斬ってすみません。それでは再開!
80名無しになりきれ:2006/04/27(木) 21:09:19
―――襲撃―――

毒矢が、キャメロン商隊へと向けられ、放たれた。
避け様の無いその暗殺者を身に受けた幾人かの商人と幾人かの護衛が、
そのまま地に伏し、命を落とした。

それに続いて現われたのは、槍や斧、ショーテル等、まちまちの武装に身を固めた襲撃者達だった。
「いいねいいねぇ、死の臭いがぷんぷんするわー、たまんないね!」
先陣を切って駆ける首領に、手下達も奇声を上げながら続く。 
81触角の精霊使い:2006/04/27(木) 21:30:02
「!」
異変に気付き、アメ玉を取り落とす。
ぼーっとしている割に感覚は鋭いのだ。生命の精霊に語りかける。
「しっかりして!【レストア・ヘルス】!」
(効いてくれればいいんだけど…)
さらに次々と矢が飛んできた。
精霊を閉じ込めたビンの蓋を開ける。
「行くよ、シルフ。【シュート・アロー】!」
呪文を唱えると同時に地面に散らばっていた毒矢が敵に向かって発射された!
82D ◆9.MISTRAL. :2006/04/27(木) 21:33:53
「なんだッ!?」
突如として始まった殺戮の宴に、Dは言葉を失った。
「ひぃやっはああぁ!!!」
山賊の1人が襲ってきた!
2本のククリを鞘から抜いて、山賊のサーベルを受け止める。
「はあぁ…いい感じダァアァァァ…イクうウゥ!!」
涎を垂らして狂ったようにわめく山賊。
「あぁ、逝けよ…」
Dは体を沈めて、一気に山賊の側面に回り込む。
そのまま上半身をねじって、山賊の喉を綺麗に切り裂いた。
(クソタレが!商人達の安全を確保しねぇと!)
Dはキャメロン達がいたテントを目指して、駆け出した。
瞬く間に加速したDの姿は山賊達の間を駆け抜けて行く。
擦れ違う度に、血の華が咲き乱れ、
まさにDは風となった。
死を運ぶ、冷たい『北風』に…
83ソッコ@蠍の爪精霊使い:2006/04/27(木) 22:18:39
「ほっほー、精霊使いもいやがるぜ」
風が干渉を受けたのを感じ、即座に術を紡ぐ襲撃者の一人。
―――風よ盾となれ、空飛ぶものを打ち落とせ―――
【大風障壁】
触覚の精霊使いの使役した風の精霊に運ばれた毒の矢は、
同じく風の精霊によりベクトルを急激に変え、地面に突き刺さる。

男は、商隊の精霊使いの困惑を他所に、戦場に目を走らせた。

「ん?おっほーー、いたいた、ホントにいやがった、聞いてはいたけど…。
 おい、北風ちゃん、こんなとこで何してんだー?」
声をかける精霊使いに物言わず、尋常ならざる速度で迫る「風」
「返事くらいしろってんだよー、おめーよー」
慌て、予め用意してあった魔宝石を地に放つ。
(封石発動)【地変泥濘】
石は地に砕け散り、先ほどまでは無かった泥地を「北風」の足元に作り出した。
84酒場のウェイトレス:2006/04/27(木) 22:31:04
>77
着替えようとしたらどこからか視線が。
バッと天幕を捲ると、覗いている姿勢のままののぞき魔と目が合った。
「いやーんバカー見ないでー!!もうDさんったらエッチなんだからー!!」
えいっと近くにあった銀のトレイを投げつける。
トレイは鈍い音を立ててD(に扮した山賊d)の鳩尾にめり込んだ。
「悪いコはそこでしばらく反省してねー。でもそろそろ出発だから、遅れないようにねー」
泡を吹いている覗き魔の鳩尾からトレイを拾い上げる。
ジーナはバニー姿のまま、商隊の方へと移動した。
>78->82
直ぐ脇を矢が通り過ぎる。
「・・・・・何?何?矢文??」
違う。敵襲だ。
「キャー?キャー!!」
とりあえず飛び交う矢を避けて逃げまくる。
だが敵から逃げるには限度がある。
山賊の何人かがこちらに向かって剣を振り上げた。
「ちょ、危ないじゃない〜!!えーい!猫パーンチ!」
どこからとも無く取り出した猫の手グローブが一閃。敵を吹き飛ばす。
「キャー商人のおじさん助けてー!ジーナ怖〜ぁい!!」
山賊を蹴倒しなぎ倒しながら、とりあえず商人さん達と合流しようと混戦の中を走る。
85D ◆9.MISTRAL. :2006/04/27(木) 22:55:49
>83
風はやがて嵐に変わる。
Dは凄まじい勢いで山賊を切り倒し、仲間を探すが見当たらない。
「返事くらいしろってんだよォー?オメェよ…!?」
確かにDの足下の地面はぬかるみに変わった筈だった。
しかしDは何事もなかったかの様に、真っ直ぐソッコへと向かって来る。
「チィ…忘れてたゼェ!」
ソッコが軟化した地面から岩の壁を作り出す!
《岩壁招来》!!!
「オメェがバケモンだってよぉ!!」
さらに地面から無数の石礫が一斉に飛び出して来る。
《飛礫散華》!!!
「ヘヘッ…殺ったァアァ!?潰れちまったかァァ!?」
土煙に隠れて、Dの姿は見えない。
ソッコが岩壁からそっと顔を覗かせた。
死体が無い!?
「俺は忘れてなかったぜ?ソッコ」
突然ソッコの背後から、Dの声がした。
「ば、馬鹿な…!?なん…で?」
「下手な弩、数撃ちゃ当たる。そんな夢でも見たのかソッコ?」
「はぁひ…!あひきぃ…サッコのあひ…!?」
ソッコの首が、ぼとりと墜ちた。
「良かったな、ソッコ。墓石いらずじゃないか」
ソッコの体がゆっくりと地面に沈んでいく…
術者を失った精霊の魔力が消えたと同時に、岩壁が倒れた。
「あいつらは…無事か?」
Dは仲間を探す為に、再び走り出した。
86名無しになりきれ:2006/04/27(木) 23:15:43
ボージャックがエネルギー波をうってきた
87触角の精霊使い:2006/04/27(木) 23:27:45
「な、対抗魔法かっ!?」
(あれは…エルフ族に伝わる精霊語とは別の物だ…)
昼に優勢になる光の精霊に語りかける。
「【ウィル・オー・ウィスプ!】」
自然界に存在する精霊が具現化し、多数の光球(ウィスプ)が出現する。
敵にぶつけて炸裂させつつ走る!
>86「弾けろ!」
その声に応え空中で弾けたウィスプはエネルギー波の力を相殺した。
と、前方からジーナが来る。
「無事だったんだね!それにしても矢がすごいな」

「【ミサイル・プロテクション!】」
二人を中心に風のヴェールが形成された。
「これでほとんどの飛び道具の攻撃をはじき返せるはずだ、急ごう!」
(そういえば・・・ロシェ君は大丈夫なのかっ!?)
88名無しになりきれ:2006/04/27(木) 23:39:48
触覚って言ったら呂布だよね☆
89D ◆9.MISTRAL. :2006/04/28(金) 00:12:55
えーと、新ルールが出来たので避難所にて確認をよろしくお願いします。
90名無しになりきれ:2006/04/28(金) 01:49:12
ナッパがクンッてした

町が無くなった
91触角の精霊使い♯パルス:2006/04/28(金) 09:07:59
追加ルールをお届けします。

・キャラの操作権を表す☆マーク・レス
名前欄に☆を入れてるレスは、拾ってもらった時の自キャラ操作を他のPLに任せる事を表す。

例:本スレの>>24-25を参考にすると判り易いかと思います。
>>24ジーナのレスに☆が付いてると考えて読んでみて下さい。
>>25Dのレス内に於けるジーナのセリフとアクションは、DのPLによって描写されています。
☆マークの有効期限は1レスまでです。

・NPCレンタル★マーク
ストーリー中に登場したNPCを操作する為のルールです。
基本的にNPCはPLに操作されるキャラです。
しかし、参加したいけど長くは…ちょっと…
といった人もいると思うんです。
そこで★マークの出番です。
つまり、一時的にNPCを自分のキャラにして、短期参加する為のルールです。
・★マークの付いてるキャラはNPCではなく、PLキャラとして扱います。

例:本スレに登場したアメイクの全てのレスに★が付いてると考えて読んでみて下さい。

キャラを放棄したい場合は、自分で死亡レス
又は★を外す事で普通のNPCに戻す事ができます。
このルールの採用によって、NPCが簡単には死ななくなります。
また、キャラの定義が変更されます。
・トリップを付けたキャラ=PLキャラ
・トリップ無しのキャラ=NPCキャラ
・トリップ無しの★付きキャラ=PLキャラ

キャラに愛着が湧き、長期で参加したくなるかもしれません。
その場合は★を外してトリップを付けて下さい。
一見、複雑に思うかもしれないですが、早い話がNPCのレンタルシステムです。
92触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/04/28(金) 09:22:12
では続きいってみよーう!

>90
突然地面から菜っ葉がはえて襲い掛かってきた!
「うわっ、コントロールプラント!?」
松明に火をつけて炎の精霊に語りかける。
「サラマンダー、キミに決めたっ【ファイアボルト】!」
松明から炎が分離し、菜っ葉を焼き払う!

この菜っ葉が町を破壊する野望を抱いていたことは知る由も無かった。
93蠍の爪部隊長ソーニャ=ダカッツ:2006/04/28(金) 12:03:16
人間がどんどん死んで行く。
血の臭い…、断末魔の悲鳴…、苦悶の表情…、どれもこれも最高に気持ちがいい。
生はとても貴重で重要なものだと、親父は教えてくれた、
それを自由に奪い取り、踏みにじる、強者の楽しみを教えてくれたのも親父だった。
しかし…、

「なんか…、押され気味、のような・・・。」
顔に不満の色を浮かべながら、商隊護衛の胸を槍で貫き、
勢いで槍を振り回して抜きさるソーニャ。胸から血を派手に噴き出し倒れる護衛。
殺戮の狂乱から少し冷静になり、全体を見渡せば、
精霊魔法の加護で矢を防ぐ精霊使いが、護衛達を次々と復活させて行くではないか。
今しがた胸に大穴をこさえた護衛へも、柔らかな光が飛び、そして傷が塞がって行く。
「ぶっ、ごはっ、た、助かった?」
「いいや、助かっちゃいないよっ!」
私の槍は、地面に倒れたままの男の、腹、胸、首、そして額を同時に貫き、
二度と蘇らないように、念入りに掻き回す。

「んふふー、坊や、悪戯はダメよ。悪戯する子にはキッツイお仕置きが必要ね!」
槍を精霊使いの方に構え、地を滑るように突進するソーニャ。
94商隊長キャメロン:2006/04/28(金) 13:03:16
戦士のような体格の、商人の風貌の、
しか大ぶりなしこん棒を振り回して盗賊と渡り合うその男の働きは
護衛の男たちと比べても、なんら遜色の無いものであった。

「おらっ、ふんばれ!生きてメロメーロまで辿り着いた奴だけに
 麦酒をたらふく飲ませてやらぁ!」
「隊長ー、この地獄を抜けて麦酒ですか?もっと高い奴にして下さいよー」
「馬鹿野郎!おめーらにそんな事約束したら、収支が赤になっちまうぜ!」
どなり返した商隊長は、応戦しながら、頭の中で算盤を弾き襲撃に対するかなり具体的な数字を算出していた。
(くそ、余計なもん引き受けなきゃ良かったかなぁ、
 岩塩だの干し肉だの狙ってこんな物騒な奴等が襲ってくるとも思えねぇし、
 こんな小箱運ぶだけで、やけに払いが良いと思ったんだ。こんなことになるなら…。)

思考はそこで中断された、魔法医と商人を中心に円陣を組んでいたその背後から、
円の中心から、ひどく重い、陰気な声がボソリと
「欲しい物がある、金じゃない、命でもない、わかるな?」
キャメロンはほんの少し逡巡したが、背後の男が、とてつもなく危険な者であると、本能で直感し
「……わかった、くれてやる、その代わりこいつ等を退かせろ、そしたら・・・」
「私が欲しいのは「鍵」だ、そいつらが欲しいのは金と命だ、
 それを渡せば今この時点では、お前と後ろの奴等は命を落とさずに済む」

交渉は大得意だ、修羅場は幾つもくぐってきたし、命を賭して売値を吊り上げた事もある。
だが、こいつは、こいつには通用しない、利だの益だのあまり気にしないタイプだ。
だが同時に、多分こいつは余計な事不要な事はしないタイプでもある、
現状で一番得な行動は、渡しちまう事だ、コイツを。

右手で盗賊達にこん棒を向けながら、左手で懐中の小箱をつかみ出し後の男に放り渡す。
「これだろ、やるよ」
「賢明だ」
それだけ言い、背後の男は消失した。
95酒場のウェイトレス ◆QWE7YBXRW2 :2006/04/28(金) 14:02:57
パルス君の【ミサイル・プロテクション!】のお陰で、毒矢の心配が無くなった。
精霊使いって凄いね。
状況はちょっとだけこっちが有利っぽいね。
回復魔法を受けた味方は再び戦列に戻って敵を押してる。
「あっ!あそこにキャメロンさん達がいるわ〜!急ごっ!」
さらにペースを上げようとしたその時。
>「んふふー、坊や、悪戯はダメよ。悪戯する子にはキッツイお仕置きが必要ね!」
槍を持った女が、いきなりパルス君に突進してきた。
「悪戯はどっち〜!おばさん、そんなアプローチじゃ男の子に嫌われるよ〜!」
銀のトレイで槍の軌道をそらし、おばさんの懐に一気に飛び込む。
槍はリーチは長いけど、間合いに入られたらダメダメなのよねー。
「食らえ、猫パーンチ!」
カウンター気味のアッパーカットが綺麗に顎に入った。ふらついたところを回し蹴り。
「さっ、商人さん達の所へ行こー」
おとなしくなったおばさんはほっとこう。
邪魔する盗賊はなぎ倒し、キャメロンさん達のほうへ急ぐ。
なんかキャメロンさん、変な男と話してる・・・・って消えた?!
「キャメロンさん、あいつ誰?何の用だったの〜?なんか胡散臭そうな人だったよね」
おイタが過ぎる盗賊を殴り飛ばしながら質問する。
そういやDやロシェはどうしてるかな。無事だと良いけど・・・。
96冒険者ロシェ ◆iaK/KhTpsk :2006/04/28(金) 15:31:18
「見事な精霊魔法とトレイさばきですね」
場違いな程のんびりした声。
煙と砂埃で煙る中、ひょっこりとロシェが現れた。
右手には数枚の菜っ葉が握られている。
「これ、盗賊さんと戦っている時に地面から生えてきたんですが…。
肉厚で美味しそうですよね。お昼か夕餉のおかずにいかがですか?」
ジーナにポンと渡す。
「キャメロンさん、顔色が悪いですよ。
お疲れならこの手錬の勇者お二人に任せて休んでいてください」
にこやかに言い、
「Dさんも私達を探しているはずです。
この場所は商隊の基点ですから、動かず彼を待ってみましょう。
彼なら一人でも心配ありませんよ…多分」
97触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/04/28(金) 20:45:05
>「んふふー、坊や、悪戯はダメよ。悪戯する子にはキッツイお仕置きが必要ね!」
「うわー、バレたーー!」
本当はおばちゃんの5倍は生きてるんだけどねっ。ここはいったん避けてウィスプを召還…
するまでもなくジーナちゃんが華麗に一閃!
「どうもです!」

>煙と砂埃で煙る中、ひょっこりとロシェが現れた。
>「これ、盗賊さんと戦っている時に地面から生えてきたんですが…。
肉厚で美味しそうですよね。お昼か夕餉のおかずにいかがですか?」
「やっぱりそっちにも菜っ葉が?
 襲ってきたから焼いちゃったんだけど」
この乱戦の中夕飯のおかずのことまで考えるとは…只者じゃないかも!?
98商隊長キャメロン:2006/04/28(金) 21:24:44
俺の背後の特上の危険が去って、
俺達を包囲するかなりの危険は依然残ったまま。魔法医の魔力も枯渇しかけている。
何より、このデカイ戦棍を振るう体力が、もうもたねェ。
「隊長…、万策尽きましたね。」
「ぜへーひ、悲観的になるもんじゃねーよ、勝利の女神ってなぁ最後まで諦めない奴に微笑むもんさ
 ほ、ほれ見てみろ、おっかねぇ女神様が…』
山賊Fが飛ぶ、山賊Jが飛ぶ、破城槌がぶつかったかと見紛うほどの勢いで飛んで行く。
そこに現れたのは、バニースーツの怪力娘だった。
>>95
おう嬢ちゃん、美味しいところ持っていくねえ。
こっちはもう限界だ、はええとこコイツ等なんとかしてくれー。
>>96
バーロー、てめーこのクソ忙しい時に今までテントで何してやがった!
菜っ葉?(怒)報酬満額もらえると思うなよ!
>>97
おいっ、おまえ、まだ魔力余ってんな?こっちのヒーラーがギブアップしてんだ、
仲間の回復を急いでくれ!
99☆☆D:2006/04/28(金) 22:17:45
山賊の数もかなり減った。
しかし依然として商人達の劣勢は変わらない。

>「バーロー、てめーこのクソ忙しい時に今までテントで何してやがった!!」
突如、キャメロンの怒声が耳に飛び込んで来た。
(ふっ、生きてたな…)
Dはキャメロンの声がした方に向かった。
随分と酷いやられ方だ。
テントはボロ切れの様に垂れて、柱も折れている物が幾つか見えた。
「おい、キャメ…!?」
Dが声をかけようとしたその時、テントの影から山賊が飛び出してきた。
その刃は真っ直ぐにキャメロンを狙っている!
間に合わない!と普通の人は思うだろう。
しかしDはその「普通」ではなかったのだ。
「ぎゃぁあ!!」
超スピード。そんなものじゃない、既にそれは瞬間移動だった。
10m以上離れた場所から、一瞬にして間合いは無くなった。
腕を切り裂かれて山賊が悲鳴をあげる。
「な、なんだ!?」
キャメロン達は、何が起きたのかまるで気がつかなかった。
「よう、みんな無事か?」
Dはニヤリと笑って、残っている山賊に向き直る。
ここからが正念場だった。
100☆☆D:2006/04/28(金) 22:19:26
本物が帰って来るまで、俺がDを演るぜ。
よろしく頼むよ!
101蠍の爪部隊長ソーニャ=ダカッツ:2006/04/28(金) 22:34:59
視界が歪む、天地の方向がわからない。
槍と精霊使いを結ぶ線上に、妙な女が割り込んで来て、それで。どうなった?
空が見える…。ってことは仰向けに…。戦場で倒れる事は……、
死!?

手にした槍を支えに跳ね起きる。
どれほど意識を失っていたのかはわからない、数分か数秒か、とにかく
「…甘いねぇ」
(ばあちゃんから聞かされなかったのかしら、
倒した奴にはキッチリ止めを刺しておくことって。)

切れた口内から血を吐き出し、辺りを見渡すと、
いた、あの異常に重たい拳の持ち主の、バニーガール。
横槍とは言え、このあたしにブチかましてくれたのだ。相応の地獄を見せてやる…。
腰の薬壷の薬液に槍の穂先を浸し、ぬめり光る槍を構えたところで。

「退け、鍵は手に入れた」
眼前に〔死神〕が突如として現れた。
「邪魔するなら、あんたからぶっ殺すよ、どきな」
槍先を〔死神〕の目の前につき付けた、と思った瞬間。後から声がした。
「今回の仕事は私の命に従う契約だ。親父殿の前で約束したな。」
「…知ったことか、手間取っちゃいるがあいつら皆殺しにするのに半刻もかからん。
 予定を変える必要がどこにある」
「北風がいる、護衛の中にな。手勢では足るまい。半刻でこちらが駆逐されるやもだ。」
北風の名を聞いた時、ソーニャは意外そうな顔をして舌打ちを一つした。
「何でアイツが、よりによって…。」

〔死神〕を〔北風〕にぶつければ、負けはすまい。だがこの男がそんなことを了承するとは思えない。
戦況もすでに劣勢と言えるほどになっている。
鍵とやらのもたらす報酬を考えれば、商人たちをこれ以上襲っても儲けは薄いだろう。
(それに、親父を怒らせたら怖いしな…。)
娘は胸元から信号笛を引きずり出し、長く3回、短く3回、高い音を響かせる。
それと同時に、森の中から援護する者、敵と切り結んでいた者達が全員撤退しはじめた。

(くそ女、次会ったら死ぬほど後悔させてやる)
102酒場のウェイトレス ◆QWE7YBXRW2 :2006/04/28(金) 22:39:18
ロシェさんが料理に使ってとナッパをくれた。
この状況ですごい余裕ねー。
「盗賊が引いたら昼ごはんに使おうっかな。ありがとねー」
とりあえず積荷の上に置いておく。
ポケットや胸の谷間に押し込んでおいても良いんだけど、絶対潰れてひどい事になりそうだからね。

キャメロンさんはかなりバテ気味ね。とりあえず酷い怪我が無くて安心した〜。
五体満足な盗賊は随分減ったようだけど・・・ねえ、まだやるの?
「そろそろ看板の時間なのよねー。つまみ出されないうちに帰ってくれないかな〜?」

パルス君はヒーラーの助っ人に入ったみたい。
あっ!ロシェがキャメロンさんに叱られてる!
「ロシェ、ロシーェ!キャメロンさん本気みたいよー。
このままじゃ本当にお手当て削られちゃうわよ〜!カッコいいトコ見せるなら今よ〜!!」
とりあえず商隊に盗賊を寄せ付けないよう防戦しながら、ロシェにだけ聞こえるよう囁く。

おお!
凄いよロシェ!頑張れロシェ!バニーちゃんも応援してるよ!

盗賊たちは潮が引くように退却していった。
「終わり・・・かな?」
103☆D:2006/04/28(金) 22:52:35
戦闘は終わりつつあった。
笛の音が鳴り響き、山賊達が散り散りに撤退を始める。
勝った、とは言い難いが…
それでも、山賊を退ける事が出来たのだ。


ちなみに山賊の約8割は、まるでハンマーで撲殺された様に死んでいたのは内緒だよ?
104触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/04/28(金) 23:22:22
>98「ヒーリングお待たせっ」
生命の精霊を使役し始める。

>102 少し離れたところではなぜかロシェ君が応援されて頑張っている。
彼の周りの敵にこっそり魔法。
「【コンフュージョン】」
精神の精霊に働きかけることで混乱させるものだ。
ピヨピヨ状態の敵を次々倒していくロシェ君。
傍から見ると最強である。

すると笛の音のようなものが響き、盗賊たちが撤退していく。

>103「あ、Dさん!」
「ふぅ、なんとかなったね。敵もなかなか強かったよ。
途中で変なエネルギー波とか菜っ葉とか飛んできたし」
105冒険者ロシェ ◆iaK/KhTpsk :2006/04/29(土) 01:51:49
>>98
キャメロンの怒鳴り声は、ロシェの右耳から左へと流れていった。
彼はジーナの菜っ葉レシピもとい応援に元気付けられていた。
襲いくる屈強な(ピヨピヨ)盗賊を極あっさりのしていく。
「ジーナさんのお陰でほら、とても調子がいいですよー」

そして。
盗賊が引いていくと同時に、Dとも無事に再会することが出来た。
しかし、蠍の爪の引き際の良さが気に掛かる。
積荷は殆ど手付かずのままだ。
「盗る物盗らずにさようならとは、大盗賊団らしくないですね」
商人達の予想外の奮闘ぶりは、盗賊達を手こずらせていた。
Dを初めとする護衛達の働きも厄介だったに違いない。

さらに、気になることがひとつ。
盗賊達の動きが変わったのは…。
「キャメロンさんの様子が変わってから…?」
思わず声に出してしまった。ギロッとこちらを睨む血走った目。

キャメロンさん。
彼に話を聞いてみる必要がありそうだ。
しかし、今はやめておいた方がいいと本能が告げていた。
106酒場のウェイトレス ◆QWE7YBXRW2 :2006/04/29(土) 18:56:32
>103 >104 >105
ロシェがバッタバッタ倒してくれたおかげで、私は後ろで楽チンだったわ〜。
>「ジーナさんのお陰でほら、とても調子がいいですよー」
「そう〜?良かった〜」
ニコニコ手を振った後、チラッと影の立役者に視線を向ける。
パルス君はDとお話していた。
「ンもう!Dったらどこ行ってたのよ〜こっちは大変だったんだからー!」
どーんと背中を叩く。
何がともあれ、Dも無事で良かったわ〜。

他の護衛さんが生き残った盗賊を拘束している。
「ベイリーフと岩塩はあまってるかな〜」
私は荷台の上の菜っ葉を手にとり、昼ご飯の算段をしていた。

>「盗る物盗らずにさようならとは、大盗賊団らしくないですね」
ロシェがぼそりと言った。うん。そうよね〜。
>「キャメロンさんの様子が変わってから…?」
ロシェの声に反応して、キャメロンさんがこっちを見た。いやーんジーナこわーい。
でも、そんな事くらいでびくびくしてたら、酒場のウェイトレスなんて勤まらないわけよ〜。
「お昼は、『スタミナもりもりナッパスープ』にするね〜一応これ薬草だし。
ところでキャメロンさん、盗られたものは無い?荷物は全部無事かな〜?」
ナッパの束を振り振り、機嫌の悪そうなキャメロンさんの顔を覗き込む。
「そんな顔しないで〜。
だってほら〜運ぶ荷物が消えていたら、メロメーロまでの護衛はキャンセルになっちゃうかもしれないじゃない?」
107名無しになりきれ:2006/04/29(土) 21:06:37
そこは闇の中
暗く、冷たい死の領域

「よう、〔北風〕がいたんだってな」
赤い鎧を着た大男が、死神に声をかけた。
「アンタなら奴を始末できてた筈だ。なんで殺らなかった?」
「我々の目的は鍵の奪取、裏切り者の始末ではない」
死神が抑揚の無い声で答える。
「だがよ、奴はまだ持ってるんだぜ、アレをな。回収するべきじゃねぇのかよ」
「疾風のメダリオン…か」
「アレは組織のモンだろが、いつまでも奴に持たせる道理は無ぇよ」
「ならば…お前が行け〔紅蓮〕。私は鍵を親方様に届けねばならん」
死神がそう言い終わった時には、紅蓮と呼ばれた大男の姿はなかった。
「…困ったものだな」
その呟きは、まるで困った様には聞こえなかった。
108商隊長キャメロン:2006/04/29(土) 23:36:26
 『この世で、もっとも気が滅入るのは?』…
そう問われて龍人戦争の英雄、エピタフ・フェダイーンは、こう言ったそうだ
 それは、『たたかいの後始末』だと。

盗賊団が退いた後、治療と食事と睡眠を何とか取り
日が昇る前に目が覚めて、その言葉を思い出した。
・・・・・・・・・・・・
「隊長、片付けは大体終ったよ…、まだ使えるものは荷馬車に全部積み終わったし」
「遺体も残らず回収したな?忘れて居残り食わしたら化けて出るぞ」
「違えねぇ、得にアメイクは寂しがりだったしな」
皆は無理して乾いた笑い声をたてた。

略式で商いの神キヌドに死者の冥福への祈りをささげた後、その場を去ることにした。
「さあ、急ごう。メロメーロに着いたら、酒で奴等の魂を弔ってやろう」
109商隊長キャメロン:2006/04/29(土) 23:38:14
>>105、106
駄目だ、どう考えても大赤字だ…、壊れた備品の買い換えと、遺族への見舞い金と、
何より今回の交易で一番旨みのある「輸送」の仕事がポシャっちまって
その成功報酬を見込んで、こんだけ多くの護衛も雇う事にしたのに…。
ああ!?俺がなんだって?盗られた物?畜生、おめーらの知ったことか!

…、
………、一個だけな、盗られた物がある。
今回の襲撃は恐らく、それ一個だけの為に行われたもんだ。いや、盗れるモンは盗っちまえって奴等だから
俺達が無抵抗なら、金も命も洗いざらい、ケツの毛までむしって行っただろうがな。
…いや、本来契約でこの仕事は他言無用なんだけどな、もういいや、
どうせもう盗られて、契約どころじゃねーし。
いやな、フラーリンからメロまで、懐に入るくらいの小さな箱を運べって仕事があってよ。
どうせメロにゃ商いで行く予定だったし、何より報酬が高くてな、二つ返事で受けたんだ。
とにかく貴重な物だからってんで、もらった前金で護衛を揃えたんだが、逆に目立っちまったかなぁ…。

中身?おいおい、俺を誰だと…、信用を商う男キャメロン様だぜ?
卑しくも人様の荷物の中身を見たりはしねーよ、…ただ、箱を持った感じ…、
硬質な、石か、金属、そうだな例えば宝石とか鍵とか、その位のもんが灰っていたんじゃねーかな。

キャンセル?馬鹿言っちゃいけねーよ嬢ちゃん。
俺の国にな「クソを踏んだ後に、最も気を付けるべきはクソを踏む事である」って言葉がある
一度盗賊に教われた直後に、二度目がねーとは限らないのさ、わかったか?
わかったら護衛をしっかりしてくれや。
110名無しになりきれ:2006/04/30(日) 06:27:36
「ソーニャが出張った割には…随分と取りこぼしてやがるな」
[紅蓮]が商隊から少し離れた場所から、双眼鏡で様子を伺っていた。
「面倒ですねぇ…私まで動く必要が?」
[紅蓮]の隣りに佇む、青いローブの女が不満を顕に呟いた。
「そう言うなよ[水鏡]。奴を殺したいのはお前だって一緒だろ?」
「…別に」
[水鏡]と呼ばれた女がそっぽを向いた。
「たかが商隊1つ襲うのに、[五凶]の長が付くなんてなぁ、ありえねぇんだよ」
[紅蓮]が歯を噛み締める、その表情には怒りが吹荒れていた。
「[北風]がいたにも拘らず[死神]は奴を見逃した」
[水鏡]が続ける。
「確かに…納得がいきませんね」
「あの野郎、俺達に何か隠してるんだ、間違いねぇ」
「いつ仕掛けるの?移動を始めるまで待ちますか?」
「そうだな…まだ警戒してるだろうしな、メロメーロの手前で仕掛ける」
そう言うと、[紅蓮]と[水鏡]は森の中に消えた。
111設定:2006/04/30(日) 06:52:05
《蠍の爪》の中でも最凶最悪の殺戮集団。

[五凶]
長の[死神]を筆頭に、[北風][紅蓮][水鏡][魔弾]の5人で結成される。
それぞれが特殊なアイテム《メダリオン》を持ち、その名に由来した能力を使う。

[死神]:《黒影のメダリオン》
[北風]:《疾風のメダリオン》
[紅蓮]:《灼熱のメダリオン》
[水鏡]:《水流のメダリオン》
[魔弾]:《雷鳴のメダリオン》



メダリオンの能力はまだ決めてません。
これまでに描写された死神とDから考えて…
・黒影=影から影を自在に移動する
・疾風=超スピードで行動できる
だと予想しました。
残る3人の能力は…他の人に任せますww
112名無しになりきれ:2006/04/30(日) 07:33:03
ごめん>>111は避難所に書くつもりだった…
誤爆スマソ o  rz
113名無しになりきれ:2006/04/30(日) 08:36:30
メロメーロ市街地 ノンサンミシェル教会内

「…長、例の……。……は不明であります。」
「ふむ……。やっかいな事になったな…。…ブブ、商隊から直接確認を取れ。【奪還】と【絶対的正義】が任務だ。」
「…御意。ニ番隊朱雀の名に賭けて…。」
114名無しになりきれ:2006/04/30(日) 19:07:05
 《メロメーロの町》

メロンの名産地として有名な町で、周囲をメロン畑に囲まれている。
丘陵地帯の上にあるため、外敵からの侵入に弱い。
そのため、町をぐるりと囲む様に外壁が建てられ、敵の攻撃に備えている。
商人と農家が興した町で、大陸南部の交易の中継地として栄えている。
施設:各種店(武器道具、日用雑貨から食品までさまざま、規模も大小さまざま)
   酒場(高級店、大衆店、亜人種向け、ゴロツキの溜まり場等々)
   役所、メロン農家(メロン安売り)、ギルド(商人・傭兵・探せば盗賊用のも)
   競ミード場に、モド遺跡
etc...

着いた、やっと着いた…、フラーリンを出発したのが一月も前のような気がする。
商人達はそれぞれ役目を与えられ、町のあちこちへと向かった。
報酬の支払いは商品の取引が終わってから支払うので、夜まで待機との連絡を受ける。
じゃあ、まあ、ぼさっと待つのもナンだし。一本つけてますか。
115冒険者ロシェ ◆iaK/KhTpsk :2006/05/01(月) 00:24:00
舌の肥えた商人達をも唸らせた、『スタミナもりもりナッパスープ』。
(ジーナ曰く、店で食べれば300ギコはもらうわよ〜!とのこと)
胃袋だけではなく、疲れた身体もスープによって癒されていく。
昼食前の重い沈黙に代わり、鼻歌や冗談を言い合う声が飛び交う。

「蠍の爪が欲しがった『箱』、中身は何だったんでしょうね?
記憶が飛んでなければ、ヒントの欠片でも出たかもしれませんね…アハハ」
一緒に笑う怪力バニーガール。
突っ込む気もなくスープを啜るパルスとD。

「そういえば、あともう少しでメロメーロですよね。
メロンと言えばメロメーロ、メロンと言えばメロメーロ!」
それだけじゃないぜ、と一人の商人。
『スタミナもりもりナッパスープ』の薬草効果か、
(ジーナ曰く、体質によっては幻覚症状も出るかもね〜!とのこと)
夢見る目つきで語るには。
>メロンの名産地として有名な町で、周囲をメロン畑に囲まれている。
「うんうん」
>丘陵地帯の上にあるため、外敵からの侵入に弱い。
そのため、町をぐるりと囲む様に外壁が建てられ、敵の攻撃に備えている。
「ほうほう」
>商人と農家が興した町で、大陸南部の交易の中継地として栄えている。
施設:各種店(武器道具、日用雑貨から食品までさまざま、規模も大小さまざま)
   酒場(高級店、大衆店、亜人種向け、ゴ…
「スープおかわり!」
>着いた、やっと着いた…、フラーリンを出発したのが一月も前のような気がする。
「長かったですねー」
>じゃあ、まあ、ぼさっと待つのもナンだし。一本つけてますか。
「じゃあ、メロンジュースお願いしまーす!」

二人の幻覚症状は夕方まで続いた。
2度目の悪意が起こりつつあるとは知らずに…。
116襲撃:2006/05/01(月) 07:10:45
「ふぅ、もう少しでメロメーロだ。長かったぜ!」
商隊の1人ボブが大きく伸びをしながら、言った。
「そうだな。大変だったが、これで…アペ?」
返事をしたサムが突然がたがたと震えだした。
「あ…バババ…」
みるみる内にサムの体は膨脹して、爆ぜた。
「…え?なんだこりゃ!」
ボブは何が起きてるのかさっぱり分からない。
「ねぇ、お兄さん。[北風]がどこにいるか知ってる?」
ボブの隣に、いつの間にか青いローブの女が立っていた。
ボブは、女の問い掛けに答える事が出来なかった…
117新勢力:2006/05/01(月) 08:53:11
(チッ、間一髪で遅れたな…)
「乱舞紅葉」

(!!!???)
殺気を感じた青いローブの女は身を翻す。
女が居た辺りの地面には5つの手裏剣が深々と刺さっていた。

影はヒュンヒュンと回転しながらあっという間にキャメロンの背後につく。
「キャメロン殿。お初にお目にかかる。」
振り返るキャメロン。
「聖ルシフェル騎士団、ベルゼブブと申す。主なら俺の強さが分かる筈だ。何も言わずに箱を渡せ。」
ベルゼブブの目はギラついていた。
118触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/01(月) 09:57:21
「おいしい!これ最高だよ!」
ナッパには植物の精霊にして幻惑の力も持つドライアードが強く働いていた。
地面から急に生えるだけのことはある。でも人間にはちょっときつすぎるかな?
「ねーねー、みんな…ってあれ?」
>じゃあ、まあ、ぼさっと待つのもナンだし。一本つけてますか。
「じゃあ、メロンジュースお願いしまーす!」
時すでに遅し、ロシェ君や商人達の一部はすでにあっちの世界に行っていた。
「まあいっか」

 しかし幻覚は夕方になっても治らなかった。
「ナッパにメロメーロの町が破壊されたー!」
とかよく分からないことを言っている。
「Dさ〜ん、今襲撃されたらものすごくヤバイんじゃない?」
Dさんはハーフエルフであるためか幻覚を免れたみたいだ。
「縁起でも無い事言うんじゃないの!」
 と、ジーナちゃんのツッコミが入る。
 が、非常にもその縁起でも無い事が現実になってしまった。
>116
突然周囲が騒然とし始めた。
「ロシェ君、大変だ!」
ゆさゆさと肩を揺さぶる。
「知ってるよ!町が破壊されたんだから」
「【レストア・ヘルス】」
 ステータス変化回復の魔法をかけられ、ロシェ君は正気に戻った。
「いきなりだけどまた襲って来たみたいなんだ!」
119[水鏡]:2006/05/01(月) 10:58:01
>「乱舞紅葉!」
突如飛来した手裏剣を避けると、私は馬車の屋根に飛び乗った。
なるほど、彼らも《鍵》を狙っているみたいですね。
ふふふ、馬鹿な人…
《鍵》は既に我々の手の内にあるのに。

さて、どうしましょうか。
[北風]程ではないにしろ、かなりの戦闘力の持ち主でしょう。
[紅蓮]は反対側から襲撃することになっていますし、面倒です。
ほんとに、面倒…

どんな風に殺そうか、迷ってしまいます。
120商隊長キャメロン:2006/05/01(月) 12:47:21
「気ィ抜いてんじゃね―ゾ、町に着くまでが、ふっわああぁぁぁ、むっ。」
大あくびを一つ。
うー、なんとかメロまで着いたみてえだな、なんてぇ事を肩を揉みながら考えた矢先。
>「あ…バババ…」
>みるみる内にサムの体は膨脹して、爆ぜた。
サム?!!!!
>「ねぇ、お兄さん。[北風]がどこにいるか知ってる?」
だ、誰だこの女?北風って何だよ?…サムを殺ったのは、こいつ?
考えもまとまらない内に、突然女を鉄の飛道具が襲う。今度はなんだァ!?

そして、俺の後に回り込んだ男は、要するにこう言っているわけだ。
「箱を渡せ」と
箱、箱ねぇ、箱かぁ…・、お渡ししたいねぇ…、2つでも3つでもありったけ渡したいよ。
中に何が入っているかは知らねぇが、中身は不幸を呼ぶ類のロクでも無いものだけは確かだろうぜ。
だがな…、渡したくても持ってねーもんは、渡しようがねーだろうがよっ!!
内心で叫びながら俺はこう言った
「それは無理だな、箱はもう無い。なんなら後で検めてもらっても構わんぜ。
 ほれ、そこの女、蠍の爪に狙われてな、奪われちまった。」

女が何者かは知らないが、とりあえず蠍の爪の一員ってことにさせてもらうか。
121[水鏡]:2006/05/01(月) 13:39:35
>「ほれ、そこの女、蠍の爪に狙われてな、奪われちまった」
あら、お上手ですね。
生き残る為の交渉術ですか、賢い選択です。
どうやら、[北風]の事は知らないみたいですし、先にあの手裏剣の人から殺しましょう。
私は意識を研ぎ澄まして、《水流のメダリオン》の力を発動させた。
たちまち私の体は霧に変わり、商隊の周囲に拡散する。
これが《水流のメダリオン》の能力、ミスティ・ミストレス。
私にはあらゆる物理攻撃は意味を持たない。
そして、この霧を吸い込んだら最後。
私の欲望を満たしてくれるオモチャになる。
キレイに弾けて下さいね?じゃないと私は満たされませんから。
122[紅蓮]:2006/05/01(月) 18:45:04
「見つけたぜ![北風]!」
怒声と共に爆発が起こる。
「やれやれ、まさかお前が出てくるとはな…」
Dが爆煙の中からゆっくりと歩いてくる男に話しかけた。
「久しぶりだな、[紅蓮]…元気にしてたか?」
からかう様にDが笑う。
「あぁ、元気だよ…見ての通りなァ!!」
紅蓮がそう答えた瞬間、その体が炎に包まれた。
《灼熱のメダリオン》の能力、コロナ・カリギュラが発動したのだ。
「返して貰おうか、テメェのメダリオンをよぉ!」
今や紅蓮の姿は名前通り、炎の魔人と化している。

Dは表情こそ冷静だったが、実際には焦っていた。
Dの持つ《疾風のメダリオン》の能力、レクス・テンペストは保有者の肉体に凄まじい負担をかける。
時の法則を無視する程の高速行動は、1日に3回が限度なのだ。
そしてDは先の戦闘にて能力を使い切ってしまった。
これ以上の能力発動は、死を意味する。
普通の人間ではメダリオン保有者には勝てない。
唯一、精霊使いを除いて…
123名無しになりきれ:2006/05/01(月) 19:13:03
ベルゼブブは苛立つ。
「とぼけてるつもりか?賊が2度襲うって事は…」
「お、おいっ!女が消えたっ!」
振り返ると青い霧がゆっくりとこちらに流れてくる。
(…くっ、旋回眩跳)
フィギアスケータを遥かに凌ぐスピードで回転を始めるベルゼブブ。
巻き上がった風に青い霧が揺れて、わずかに弾ける。

そのままベルゼブブは跳んだ。
15M程離れた岩陰に転がり込む。
(こいつら一体…五凶がこれ程とは…)
124酒場:2006/05/01(月) 20:32:02
後で聞いた話だと、ロシェがくれたナッパは襲撃の際突如生えてきたものだったらしい。
もう、そんなの摘んでこないでよー。料理に使っちゃったじゃない!

まだナッパの効力が抜けていない商人さん達は、ちょっとフラフラしている感じね〜。
>「大丈夫だよジーナちゃん。このくらい、俺たち何ともないから」
「ホント?よかった〜!」
私は殿を歩いていた。ぺたりと垂れていた耳を直しつつホッとため息をつく。
このまま何事も無くメロメ−ロにたどり着ければ良いな〜
――なーんて思ったんだけど、世の中そんなに甘くないのよねー。

あとちょっとでメロメ−ロってところで、またまた盗賊団が現れた。
「ちょっと〜!女の子には優しくしろって親から教わらなかったの〜?」
繰り出される剣や槍を避けつつ文句をつける。
「お・ね・が・い。やめて〜ん」
うふーんとしなをつくってウィンクしてみたけど、あんまり効果は無かった。
「あーもう、あっち行ってよね〜!」
手近にあった小ぶりの枯木を引き抜いて、ぶんぶん振り回す。

あら。先頭のほうにも賊が来てるみたい。
なんかへんな術?を使う連中が来てるみたいね。しかも仲間割れ?いい感じ〜!

ま、あっちにはバルス君達がいるから大丈夫でしょ!
とりあえずこっちは、わらわら沸いてくる下っ端盗賊で精一杯よ〜
125酒場のウェイトレス ◆QWE7YBXRW2 :2006/05/01(月) 20:36:04
「やだー、名札が割れちゃった!」
ジーナは「のウェイトレス」のと書かれた部分のネームプレートを拾い上げ、再び胸につけなおした
126[紅蓮]:2006/05/01(月) 21:01:06
「3年前なら、逆立ちしてもテメェに勝てなかった…」
紅蓮の猛攻にDは防戦一方だった。
「でもな、今は違うんだよ!!」
炎の体はさらに温度を上げ、熱で巻き起こった乱気流が吹き荒れる。
「死ね!!」
地獄の業火の如く全てを焼き尽くす炎が、Dを飲み込んだ。

「…やべぇ!メダリオンごと焼いちまったじゃねぇか!!」
紅蓮が頭を抱えて、情けない悲鳴を上げた。

Dはまだ生きていた。
能力を発動させて間一髪、攻撃を避けたのだ。
しかし、その代償は大きく体はもう動かす事すらできない。
(なんとか…パルスの…所まで…)
馬車の方を見ると、青い霧が立ち込めている。
(…!水鏡も来ていたのか!?)
Dは軽い絶望感に目眩がした。
水鏡の能力は危険過ぎる、何も知らない他のみんなに教えなければ。
だがDの体は限界に達していた…
127[水鏡]:2006/05/01(月) 21:50:01
>そのままベルゼブブは跳んだ。 15M程離れた岩陰に転がり込む。

おやおや、いきなり私に攻撃してきたくせに、逃げるんですか?
気に食わないですね。
私は霧の範囲をさらに広げて男を追撃する。
私の攻撃を巧に回避するが、反撃して来ない。
はっきり言ってつまらない、もっと楽しませてくれると思っていたのに…

残念です。
男の着ている鎧に付いている紋章、あの騎士団に所属する者の証。
少しワクワクした私は馬鹿ですね。
近くで爆発音が聞こえる、紅蓮が北風を見つけた様です。
雑魚の相手は飽きましたから、北風を始末しましょう。
128朱雀隊員:2006/05/01(月) 22:23:22
水色の霧が、ベルゼブブ殿を執拗に追い掛け回し、やがて追い駆けっこに飽きたのか、
火柱の立った方へと向きを変え、進み始める。

折角準備が整ったのだ、もう少し遊んでいってもらおうか。
「縛鎖陣!」
潜んでいた他の仲間と同時に術を発動し、霧と化した女を陣の内部へ封じる。
「甘い!甘いぞ女ぁ!朱雀隊が長、ベルゼブブ殿が何もせずに逃げ回っていただけと思うたか!」
空間をすら固定する強力な術であるが故、発動には付近の地面に紋を書き入れる必要がある術【縛鎖陣】
霧の追撃をかわしながらこれをこなすとは、流石はベルゼブブ殿と言った所か。

ふと、思った、いつもならここからクナイをかわす隙無く投げつけてから術を解き
術が解けると同時にクナイが突き刺さり一巻の終りという流れなのだが…、霧だものな、どうしよう……。
129朱雀隊員:2006/05/01(月) 22:41:23
「しっ、しまったぁぁぁっっ」
「どうした?」
「陣の端に…。」

見てみると、陣の中に一緒に封じ込めてしまったベルゼブブ殿・・・。

「ど、どうする?」
「どうするってお前、一度発動したら5分は解除できんし・・・。」
「いつもより陣のサイズを大きくしてたから、見誤ったな。」
「今のうちに雷神の術の準備でもしておくか?」
「いやー、この距離だとカシラにも当たるな」
「火遁なら…。」
「あれ、カシラの得意技だし、俺達あの技苦手だったろ。」
「どうする」
「どうしよう…」

術の発動に参加した10人ほどが困り顔で相談するが、結論は出なかった。
130名無しになりきれ:2006/05/01(月) 22:50:03
(´・ω・`)ナニコレ…
131[水鏡]:2006/05/02(火) 00:30:13
「おい、どうしよう」
「俺に聞くなよ」
他の隊員達がうろたえる中、1人だけ落ち着いた隊員がいた。
「みんな落ち着いてくれ!俺に作戦があるんだピュぶれ!?」
突然、隊員の頭が破裂して飛び散った。
「!!?」
どさり、と倒れ込む隊員の後ろに青いローブの女が微笑みながら立っていた。

「私を捕えるなんて不可能ですよ?」
次々に隊員の体が破裂していく。
とうとう最後の1人が破裂して散った。
「アイディアは良かったんですけどねぇ」
私は結界に閉じ込められた男に向かって歩いていく。
ふふふ、その顔…いい表情ですよ?
でも私はまだまだ物足りないんです。
もっと、もっと楽しませて下さいね。
貴方みたいな人をめちゃくちゃにするのが、私の生き甲斐なんですから。

流石に空間を遮断されたら、文字通り手も足も出ませんねぇ…
彼が出て来るのを待ちましょうか。
132触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/02(火) 00:35:03
Dさんが戦うとき、風の精霊が覚醒していた。
一つ気がかりな事、それは人間にとってあまりにも強い精霊力は
負担が大きすぎるということだ。
それはそうと、火の精霊力の異常な高まりを感じる。
全てを焼き尽くしてしまいそうな…。とてつもなく悪い予感がする…。

強烈な火の精霊力の中心、そこには体を炎に包まれた男がいた。
くずれるように倒れるDさんを抱きとめる。
どうやら精霊力を限界を超えて使ってしまったようだ。
「大丈夫、ちょっと寝てるだけ。純粋な人間だったら危なかったけど
彼には僕と同じエルフの血が流れてるからね」
ナッパスープのおかげで少々過剰気味のドライアードの力を解放する。
「【チャーム】」
 幻惑と魅了の魔法。

「ナニコレ…」
しかしというより、もちろん効かなかった。
「………ふざけんなあああぁああっ!?」
そう叫んで男は腕を振り下ろし、灼熱の火炎で全てを焼き尽くそうとする。
ちょっとした冗談にそこまで怒らなくても…じゃなくて今がチャンス!
「【スピリットウォール・ウンディーネ】!!」
近くに池があるのが幸いだった。
空気中に存在する水の精霊が具現化し、
突如出現した分厚い水の壁が火だるま男を飲み込む!
「しばらくそこで頭冷やしたほうがいいよ!」
133[紅蓮]:2006/05/02(火) 01:07:04
「ぐああああああああ!!!!!??」
紅蓮がのたうちまわる。
超高温の体に水をかけられたのだ。
流石に精霊の力をもってしても、耐える事は出来なかった。
「ウウゥゥオオオオオアアアッ!!!!クソがァッ!!!!」
でたらめに拳を振るうが、それは虚しく空を切るばかりだ。
炎の精霊の力が弱まり、やがて紅蓮は力尽きて倒れた。
「そこで頭冷やした方がいいよ」
エッヘンとパルスが胸を張る。
「…ルス……女…水を」
Dが苦しげに呻く。
「え?水?」
パルスが聞き返したが、Dの意識はそこで途切れた。
134名無しになりきれ:2006/05/02(火) 03:37:37
規格外の大きさの魔方陣。
その為か効力は完全ではなかったようだ。
更に時間が経つにつれ効力は徐々に弱まった。
外にはまだ出れないがお互いに動ける。

(……。)
ベルゼブブは膝から胸へ、そして肩から肘へ、そして頭巾へとつながる
全身を覆っていた一枚の鎖帷子(一見鎧に見えそうだが)を脱ぎ全裸になった。
「…女、ヤレよ。」
ゆっくりと間合いを詰める。
2m…。
1m…。
「…ふふ、いい身体。だけど満足させてくれないのね…つまらない男…。」
『青い女』がフワリと形を変えたその時…。

ババッ!!
細い細い鋼線で編まれた楔帷子を風呂敷状に広げ、器用に『青い女』を包みこみ、照準を合わせる。
ブブブ〜ププウ〜ブブッピ!!
なんとベルゼブブは大放屁。
(…!!??なんたる無礼!)
そして口から何やら取り出して(歯?)呟く。
「女、終わりだ。炎宴消翔。」
歯をカチカチと打ち合わせると火花が散った。
135触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/02(火) 09:47:24
>133「うなされてる…」
ヒーリングをかけたい所だが
これ以上精霊力を干渉させるのは危険が伴う。
「神官がいればいいんだけど…」
136名無しになりきれ:2006/05/02(火) 10:20:42
「騎士団が動き出したか…」
黒衣の男が、遠い場所から戦いを眺めていた。


ベルゼブブが放った爆撃忍術が、水鏡の体の大半を結界ごと吹き飛ばした。
ミスティミストレスの能力は、確かに物理攻撃を無効化する。
しかし、それはあくまでも武器等によるものだ。
このように、大規模な爆発こそが水鏡の弱点だった。
(しまった!?)
結界に封じられなかった残りの体では、戦闘は続行できない。
そして、それはベルゼブブも同様であった。
あの術は本来なら閉鎖空間で使用するものではない。
炎の祝福を受けた体とはいえ、爆発が巻き起こす衝撃が彼に甚大なダメージを与えた。
「チッ、仕留め損ねた!?」
防具を失い、部下も失い、満身創痍…
戦いは完全に泥沼化している。
お互いにこれ以上戦闘を続けるだけの力は残っていなかった。

「戻れ、水鏡…紅蓮も倒れた、引き上げだ」
突如、水鏡の影から黒衣の男が現れた。
「死神!?」
黒衣の男の手には赤いメダルが握られている。
「待って!私はまだ…!?」
反論しようとした水鏡の体が、影に沈んでいく。
まるで影の部分が水であるかの様に。
「騎士殿、もう《鍵》は無い…残念だったな」
「なにっ!?待て!!」
ベルゼブブが黒衣の男に詰め寄るが、一足遅く影に消えた…
137商隊長キャメロン:2006/05/02(火) 11:46:31
……今の声、この間俺達を襲った陰気くせえ野郎か?
って事は何だ?今回も蠍の爪がホントに噛んでやがったってことかよ。
何が何だかさっぱりだが、とにかく、襲ってきた奴等は逃げたし、俺に接触してきた男は傷だらけ。
願ったり叶ったりの展開じゃねーか。

「おいアンタ、言った通り荷物は蠍の爪の手の内だ、俺達ぁもう持ってねーからな
 あんなモンもう知ったこっちゃねーんだ、勘弁してくれよ、いいな?」
怪我をした忍術使いを余所に、その場を逃げるように、メロメーロへと向かうよう隊に指示を出す。
138名無しになりきれ:2006/05/02(火) 14:48:09
ベルゼブブはキャメロンに近づき頭を下げた。
「キャメロン殿、すまなかった…しかし鍵が無いのに狙われ…」
キャメロンは「忙しいんだ、いいからいいから。」と言いたげに手をヒラヒラさせた。
そして荷車をゴソゴソとあさり、茶色のローブを放った。
ベルゼブブは聞きたい事は山ほどあったが、「恩に着る。」と一言だけ告げた。

(ハアハア、喋るのもつらいな…)
手を延ばし何やらサインらしきものを送る。
どこからか伝令係と思われる1人が走り寄り、ベルゼブブを抱え上げ、そして丘陵の向こうへと消えた。

―数時間後―
―メロメーロ市街地 ノンサンミシェル教会内―

「はあ!?霧の女に燃える男に動く影?負けたからって出鱈目言いやがって!」
「騒々しいぞホルス。黙ってろ。」
「…それだけではありません。水の壁…そして風…。」
「うむ…隊19名が全滅…このベルゼブブがあわやか…。………。
 こんな片田舎とたかを括っていた私の完全なミスだ。」
「…いえ、私の力不足が招いた失態。」
「面汚しだぜ!ったくよお!俺を行かせてりゃ鍵なんか簡単に…」
(ううむ…蠍の爪…五凶…こっちはラーとホルスか…)
139名無しになりきれ:2006/05/02(火) 15:08:12
               ./" ̄ ̄"''ヽ       _,, -‐- ,,_ 
        ./ ̄"ヽ    i        .|    ./ 
     / ̄'' b ,-、 d   ./¨ヽ {0}   .|   ./ 
     ,!-、b | `=' ',  i_,.ノ      |   /¨`ヽ  {0} 
    ヽニ,  ,'  /´ \ `‐-    _,,,,..|  i__,,.ノ 
     l´  >、_/    \__,>、,r'''"   |   `ー- 
    . l   l /      /〈 ー'      ヽ   | 
     l   ノ l .l    / /        l,r‐';"´〉  ,r'",r''" 
    l,--、l / l     ,l     /     / 〈 /'-'フ" < 
_,r=='  ノ`〉 l   / /    /      l   ヽl/"''''''''" 
_,r‐'"  / 〈  l''''''フ´ l    /      ノ   l/ / 
‐‐''''フ"  ,r''l_,.ノ/  .(    ./     /   / / 



                       / ̄ ̄ ヽ, 
     / ̄"ヽ             /        ', 
     b ,-、 d      ./" ̄"ヽ  {0} /¨`ヽ {0} 
 r-=、 |. `=' |_     .bi ,-、 id  |  ヽ._.ノ   | 
 `゙ゝヽ、|   ノ  `ヽ、  / `=' ノ゙`ー |  `ー' / ̄ ̄ ヽ, 
  にー `ヾヽ'"    .ィ"^゙i   _,,ノ ,  |    /        ', 
 ,.、 `~iヽ、. `~`''"´ ゙t (,, ̄, frノ   ゝ-‐ {0}  /¨`ヽ {0}, 
 ゝヽ、__l ヽ`iー- '''"´゙i, ヽ ヽ,/   /   l   ヽ._.ノ   ', 
 W..,,」  .,->ヽi''"´::::ノ-ゝ ヽ、_ノー‐テ-/ i  |   `ー'′   ', 
   ̄r==ミ__ィ'{-‐ニ二...,-ゝ、'″ /,/`ヽl : : ヽ        )'^`''ー- :、 
    lミ、  / f´  r''/'´ミ)ゝ^),ノ>''"  ,:イ`i / \      /     `゙ 
    ! ヾ .il  l  l;;;ト、つノ,ノ /   /:ト-"ノ  \   / 
.    l   ハ. l  l;;;;i _,,.:イ /   /  ,レ''"    ヽ_,,ノ 
   人 ヾニ゙i ヽ.l  yt,;ヽ  ゙v'′ ,:ィ"  /    r-'"´`i 
140商隊長キャメロン:2006/05/02(火) 17:27:11
急いでその場を離れようとする商隊長に
誤解を詫びる忍者騎士。
>「キャメロン殿、すまなかった…しかし鍵が無いのに狙われ…」

…鍵?鍵ね、あの小箱の中身の事か?
おっともう関係ねえぞ、あんなもんの中身なんざ知りたくもねぇ、あー知ってたまるかってんだ。
金輪際得体の知れない物は運ばねえぞ。商の神キヌドの算盤に誓ってな。
何で狙われたかなんてこっちが聞きてぇくらいだよ、ったく。

にしても、「何も言わずに箱よこせ」なんつって現れたわりにゃ、
取られたとわかると謝罪っつーのが、また…。騎士の作法ってなぁ、よくわからん。
まぁいいさ、もう手出しする様子も無いし、ここで優しくしてやりゃ二度と来やしねえだろ。

そんな考えから、俺はお古のローブを一枚、半裸の騎士に放り投げてやった。
141名無しになりきれ:2006/05/03(水) 01:36:38
「チェックだ」
「何?」
「詰みだよ、今日はお前の奢り決定だな」
「ちょっと待て、奇襲かよ汚ねえな」
「そろそろ日も暮れる、閉門の準備しようぜ」
「あー、わかったわかった…」

―――交易拠点メロメーロ自警団詰め所―――

盗賊や敵性亜人種からの侵入を防ぐため、町を囲む外壁の門は日の入りと共に閉じられる。
商用で町を出るものと入るものがあわただしく往き来して、そのピークも過ぎた日没近く、
商隊の一団が大門を通過して町へと入ってきた。

「こりゃあ…、酷いな」
「賊に教われたか」「だろうな」
商隊の馬車や隊員には無数の傷や焼け焦げがあり、なににせよ災難があったことは想像に難くない。
「キャメロン、無事か?」
詰め所から団長が出向き、商隊の長らしき人物に声をかけている。
「ああ、今生きているのが不思議なくらいの目にはあったがな」
「そうか、とにかく無事でなによりだ、後で時間が出来たら俺のところまで来てくれ。
 詳しい話を聞きたい。」
「わかった、後で」

そんなやり取りがあった後、彼等は宿場街や商工評議会事務所へと向かっていった。
142名無しになりきれ:2006/05/03(水) 12:42:57
「ふぅ〜、全く…最悪だぜ」
詰め所から出て来たキャメロンは愚痴をこぼした。


「それじゃあの箱の受け取り人は議長だったってのか!?」
キャメロンが議会査察官の襟首掴んで、責め立てる。
「ちょ!!キャメロンさん!?落ち着いて!」
「あの箱のせいで!アメイクは死んだんだぞ!!」
衛士がキャメロンを取り押さえるが、振り払う。
「アメイクだけじゃねぇ!!他にも大勢死んだんだ!!」
3人掛かりで抑えられ、査察官から引き剥がされる。
「それを何だ!報告書1枚で済まそうってか!?冗談じゃねえぞ!!」
怒りをあらわにまくし立てるが、査察官は襟元を直して去っていく。
「クソッタレが!!!」
キャメロンは吠えた。


「仕方ねぇ、ライラックの野郎に詫びに行くか」
そう呟き、キャメロンはトボトボと歩き始めた。


「そうでしたか、鍵は奴らの手に…」
メロメーロの商工評議会会長、コリン=ナソップは報告を受けて溜息をついた。
「仕方ありませんね、奪還は不可能でしょう。下がりなさい」
査察官が退室した後、薄暗い部屋の中でコリンは考えを廻らせた。
「《聖霊王の欠片》…これで連中は5つ目を手に入れた」
コリンはグラスに残るワインを飲み干し、
「あと3つ…何とかして手に入れなければ…」
小さく呟いた…
143名無しになりきれ:2006/05/03(水) 21:42:32
―緑の鯨亭―
各地で悪名を轟かせる”蠍の爪”の、2度の襲撃を撃退した男達の話を酒の肴に
その晩はいつもより盛り上がりを見せていた。

「そこで俺はこう言ってやった、”その薄汚い手をお嬢さんから放しな、屑野郎!”
 山賊は慌ててこちらを振り向いたが、時既に遅し。俺の放ったクォーレルがそいつの喉元に…、」
「デタラメ吹きやがって、お前はクロスボウ持ったまま震えてただけだったろうが」
「何をー!お前が見ていないところで活躍してたんだよ!そいでな、その嬢ちゃんの危地を救って…」
酒の勢いでまくし立てるあまり強そうに無い護衛の男の話を半分に聞く酒場の客達。

「バニーガールの姉ちゃんが?なんだそりゃ。」
「いや、俺も良くわからんが、隊長の話じゃバーサーカーの血族じゃないかみたいな話で…」
「違う違う!あの娘は古代巨人族の末裔なんだよ、聞いたもん、俺彼女から直接聞いたもん」
「無茶苦茶言うなって、彼女はおそらく南方の女戦士の一族さ。髪や目の色の特徴が当てはまるし」
「まぁ、なんだかわからんが、バーサーカーってなら大岩をブン投げたり、巨木を振りまわしたりってのも
 あり得る話なのかね?」
「おおよ!馬車の荷台を掴んで振りまわすなんて、そりゃ常人には出来ない話だろが!」

「ロシェとか言ったかなぁ、さえない男だと思ってたけどさ。
 そいつの目がビカビカッて光った途端、山賊がフラフラーってなってさ、
 その後はもうなすがままさ、片っ端からなぎ倒していって」
「俺知ってるぜ、そりゃ妖眼の使い手だ」
「妖眼?そいつは知らないが、とにかく目がこう、ビカビカ―ッってなぁ…』
144名無しになりきれ:2006/05/03(水) 21:43:55

「その火柱の怪物の前に、エルフの精霊使い、ほれ先の襲撃で回復に大活躍したって言った
 そいつが立ちはだかって、近くの池から水を根こそぎ操って、ド――ン!そいつにぶつけたね」
「おおーーっ!!」
「それでそれで?」
「その一撃でお終いさ、木っ端微塵。火が水に敵うわけが無い。
 風呂桶一杯の水をかけられた焚き火の様に、その男の命の灯火も露消えた。」
「へーっ、でも、池の水を丸々操るとはすごい話ね。」
「ん?いや、池って言うか湖に近いな、訂正するぜ、湖の水を丸ごと操った、だな。」
「おおおーーっ!?」

「双剣使い、ですか」
「おお、さっき話した奴等も相当な達人揃いだったが、こいつはまた別格だな。
 何て表現したらいいのかな、そうだな、風そのものってのがしっくり来るかな。」
「…風」
「魔導師の魔術の中には、風を操って敵を切り刻む技ってのがあるそうだが
 その風が意思を持って襲い掛かる、丁度そんな感じのね、それが…」
「その男、もしかしてハーフエルフでは無かったですか?」
「え、ハーフエルフ?ああ、そう言や耳が少しとんがってたかもな。何だ知り合いか?」
「その男、今何処にいるか教えてはいただけませんか?」
「いや、いいけどよ、知り合いかって聞いて…」
「知り合いです、お願いします。」
「……なんか2度目の襲撃でやられたみたいで、宿で休んでいるはずだぜ
 確か近くの石竜亭って宿に…、」
「ありがとう」
それだけ言い、席を立ち出口へ向かう男。

「何だアイツ?」
「いいから続きを聞かせろ!」
「お?おお、そいでその風がな…。」
145旅の楽士レーテ ◆K.km6SbAVw :2006/05/03(水) 22:24:51
「あのぅ…注文していた品物を受け取りに来たんですけど…」
ライラック商会のカウンターにやって来た女性が、蚊の鳴く様な声で尋ねる。
「えーと、お名前は?」
受付嬢のレベッカが台帳をめくりながら、営業スマイルで応対する。
「レ、レーテ…レーテ=シュタインベルグ、です…」
恥ずかしげにもじもじする、レーテと名乗る女性を見てレベッカは「あちゃー」と呻いた。
「もしかして、ミスリル絃のお客さんだよね?」
苦笑いを浮かべてレベッカが尋ねる。
「え?はい…そうです…けど」
「ハァ…まいったなぁ、もう。おいキャメロンさん!説明よろしく!」
レベッカがカウンターの奥に向かって、大声で呼び掛ける。
「あ、あの…」
「ごめんなさいね、今責任者が来るから」
「へ?責任者…ですか?」
レーテは何が起きてるのかさっぱり、といった様子だ。
「実は、あなたが注文したミスリル絃が山賊に…」
「いいさ、レベッカ。俺から説明する」
奥から現れた大男が、レベッカの言葉を遮った。
「初めまして、お嬢さん。俺はキャメロン、商隊の責任者だ」
キャメロンが握手を求めたが、レーテはぽかーんとして動かない。
「どうかしたかい、お嬢さん?」
「え!?あ、はい!何でしょう!?」
我に還り、レーテが慌ててキャメロンの手を握り返した。
「非常に申し訳ない、実はこの街に来る途中で山賊に襲われまして」
キャメロンは頭を掻きながら困り果てた顔になる。
「積み荷の一部を奪われたのです。本当に申し訳ない!」
深々と頭を下げて詫びる。
「そうだったんですか…大変ですね…」
「申し訳ない!!!」
さらに土下座して詫びるキャメロン。
「えぇっ!?そんな!こちらこそ、申し訳ありませんですっ!!」
何故か一緒に土下座するレーテ。
「申し訳ない!!」
「申し訳ありません!!」
「本ッ当に申し訳ない!!」
「本ッ当に申し訳ありません!!」
いつの間にか、奇妙な土下座決戦になっていた。
「………ナニコレ?」
レベッカが茫然と2人を眺めて、ポツリと呟いた。
146旅の楽士レーテ ◆K.km6SbAVw :2006/05/03(水) 22:29:51

「1番から7番絃までは無事だったが、8番と9番が盗まれてね」
結局、土下座決戦はレベッカによってドローとなり、2人は商談に移っていた。
「困りましたねぇ、8番はともかく9番は交換したかったです…」
しゅんとなるレーテ。
「しかし、ミスリル絃とは珍しい。俺も初めて見たよ」
「ミスリル絃は鉄絃に比べて、持ちがいいんですよ」
レーテは絃を取り上げ、説明を始めた。
「鉄絃は1年程で寿命が来ますが、ミスリル絃だと5年は持ちます」
「成る程ね」
「音色も段違いに良いですから多少値は張っても、ミスリル絃を使う人は多いですね」
楽器の話をする時のレーテは、先程までのおどおどした様子とは正反対だ。
生き生きとして、とても同じ人物とは思えない。
「9番絃は加工するのが難しいので、とても貴重品…なん…」
はっとして自分の状況を思い出したレーテは、まるで花が枯れる様にしょげ返る。
「本当にすまなかった!お嬢さん!!」
またキャメロンが頭を下げる。
そんなキャメロンを見て、レーテがさらに沈み込んだ。
「…あのぅ…私……男なんですけど…」
ガシャン!!
キャメロンは持っていたティーカップを落としてしまった。
カウンターにいたレベッカも椅子からずり落ちる。
哀愁と羞恥が絶妙にブレンドされた表情で、レーテは縮んでしまった。

「レベッカ、9番絃の在庫は?」
「うん、アタシも調べてたんだけどね〜」
レベッカが苦笑いする。
「無いのか…」
「生憎ね、リュート用の6番絃じゃ代用出来ないの?長さも同じ位だし」
奥から箱を取出して、レベッカがレーテに尋ねる。
「確かに長さは同じ位ですが…」
同じく苦笑いを浮かべてレーテは答えた。
「こうなったら、もう一度取り寄せるしかないわね。あ、もしかして急ぎ?」
「はい…3日後の収穫祭で式典の演奏を依頼されたんです…」
「むぅ…フラーリンまでは早くて2日、往復で4日か、無理だな」
場を気まずい沈黙が支配した…
147旅の楽士レーテ ◆K.km6SbAVw :2006/05/03(水) 22:40:49
その沈黙を破ったのはジーナだった。
「こんばんは〜♪…って暗ッ!?」
店に入って来るなり、叫ぶ。
「あれ?レーテじゃない、どうしたの?」
ジーナがレーテの姿を見つけて声をあげた。
「ん?何だ、知り合いか?」
キャメロンがジーナに尋ねる。
「えぇ、以前働いてた酒場で歌ってたからね。久しぶり、元気にしてた?」
テーブルに腰掛けて、ジーナは答える。
「はい…」
どんよりと、力無く返事するレーテ。
そんなレーテが気になったのか、ジーナは
「なんか困ってるなら言ってみて?私ってば今冒険者やってるの」
ばーんと胸を張り、得意げに語る。
「いや、ジーナ…流石にこれは…」
キャメロンが止めようとしたが遅かった。
「私に任せて♪」
あちゃー、とレベッカも頭を抱えた…
148触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/04(木) 17:31:17
店の窓の前を行ったりきたりする怪しい人物が一人…。
巨大なハープを持った美しい女性を観察している。
「なんて可憐な人間なんだろう…。はっ!?これは恋!?
どどどどうしよう、僕には気高き精神の精霊
戦乙女ヴァルキリー様という恋人がいるのに…」
ペットのシルフが応えた。
「知られざる生命の精霊の間違いでしょ。
言っとくけどキミ、ヴァルキリーには全然相手にされてないよ」
「うるさーい!とにかく、これより“パルス君のドキドキ恋愛大作戦”を開始する!」
「あれ? ヴァルキリー様は?」
「それはそれ、これはこれ!」
「まあいいか。じゃあシルフちゃんがとっておきのアドバイス!」
「何なに?」
「おでこにニコちゃんマークを書こう。
これで気になるあの子のハートはキミにく・ぎ・づ・け!」
と、精霊とコントを繰り広げるも、一人で喋っているようにしか見えないのであった。
精霊語なので一般人には内容が分からないのがせめてもの救いである。
149街の人々:2006/05/04(木) 20:00:40
A「あらやだ…あのエルフ何かぶつぶつ言ってる」
B「うわ…怖い…」
C「お祭りの前後は、あんなの多いよな〜」
150触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/05(金) 00:07:46
ニコちゃんマークを書こうとするも幸い書くものが無かったので断念。
「あれ? ジーナちゃんが入ってきた。友達かな?」
〔さあね。それより何か困ってるみたいだよ〕
「と…いうことは、チャンス!?」
〔行け!〕
「で、で、でも…ダメだ、戦闘のときより10倍緊張する…」
〔いい歳して気が小さいんだから〕

ジーナが気づいて手を振る。
「あ。パルス君じゃない、こんなとこにいるなんて意外ね〜。」
「通りすがりだよ、通りすがり」
〔嘘ばっかり〕
そんなこんなでやっと店に入る。
「僕は精霊使いのパルスっていいます。すごく綺麗………」
暫し沈黙。
「なハープだね!」
と言ってしまったので仕方なくハープを鑑賞。
「あれ?端っこの弦が傷んでる?」
何か変な人も乱入してきたーー!とレベッカがさらに頭を抱えた。
151旅の楽士レーテ ◆K.km6SbAVw :2006/05/05(金) 12:47:43
「ミスリル絃ねぇ…」
ジーナが腕組みして唸る。
そら見ろ、と言わんばかりにキャメロンが溜息をついた。
「取り返そう!」
ハープを眺めていたパルスが、突然大きな声で提案する。
「!?」
「レーテさん困ってるんでしょ?だったら、取り返そう!」
「いや、そりゃ無茶苦茶だろ…」
キャメロンが呆れ顔でパルスを見た。
「大丈夫!今の僕はサラマンダーより燃えてるよ!!」
ぐっと拳を握り締め、力説するパルス。
「そうね、やろう!」
ジーナも乗り気のようだ。
「おいおい、どうやって連中の居場所を突き止めるんだ?」
キャメロンが2人に尋ねる。
「あ…えと…ん〜?」
返事に困るパルスとジーナ。
当然である、蠍の爪は一定の場所に留まる事をしない。
過去に何度も討伐作戦が実施されたが、その成果は無惨なものだ。
「あのぅ…もういいです…」
「ダメッ!!」
パルスが怒涛の速さで却下する。
「そうよ、私もレーテの歌聴きたいし」
ジーナも優しく微笑むと、レーテの肩を叩く。
「み、皆さん…」
レーテが感動するあまり、涙を浮かべた。
「しかし、どうする?連中が何処にい…」
「奴らをおびき寄せる餌なら、ここにある」
キャメロンの言葉を遮ったのは、Dだった。
「D!?」
「ちょっと!安静にしてなくていいの!?」
パルスとジーナが同時に声をあげた。
「あぁ、平気だ」
Dはいつもの不敵な笑みを浮かべて、そう応えた。
152†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/05(金) 15:49:18
「連中をおびき寄せる餌ってのは何だ?」
キャメロンがDに尋ねた。
「それは、俺さ」
一同が驚きの表情でDを見た。
「ってことは、やはりお前さんが[北風]か…」
「そう、俺が[北風]だよ。奴らはまた俺を狙って来る」
「…あのメダルだね」
パルスが暗い顔になる。
「メダルが光ってから、精霊達がおかしくなってた…」
パルスにとって、精霊は友達だ。
だからこそ、その力を狂わせるメダリオンに畏怖していたのだ。
〔私は大丈夫、パルと一緒だもん〕
パルスの肩にちょこっと座る、シルフがパルスの長い耳を優しく撫でる。
「そのメダルは一体何なんだ?」
キャメロンがDを真っ直ぐに見据えて尋ねる。
「俺は…」
Dは静かに語り始めた。
自分が元蠍の爪の暗殺者だった事…
自分の持つメダルの秘密を…
全てを聞き終えた時、ジーナがDの頭をポンと叩き
「良く出来ました♪」
と、ウィンクする。
「仲間でもさ、隠し事くらいあるよね。でも、Dはちゃんと打ち明けてくれた」
その言葉にパルスも、うんうんと頷く。
「あ、あの…私は…これで…」
レーテが荷物を仕舞い、帰ろうとしている。
「ちょっと待ったァ!!」
ジーナがレーテの手を掴む。
「えぇっ!?」
「貴方のミスリル絃を取り戻すのに、帰ってどうするの」
「で、でも…あんまりお金…無いし…」
「大丈夫!キャメロンさんが払ってくれるから♪」
「なんでそーなる」
「商隊の荷物を取り戻すんだから商隊の人が報酬を払のは当然でしょ?」
「ぐおぅ…」
キャメロンの負けだった…


  【物語が】【始まる】
     第2章
 『鳴り響け、魂のメロディ』
楽士レーテの依頼を受け、荷物奪還
に燃える霊法師パルス!
しかし、期限はたったの3日
年に一度の収穫祭で、起こる大事件!!
メロメーロに伝わる歌姫の伝説
謎に包まれたジーナの過去とは!?
「私の未来は、私が決める!!」

新たな仲間を加えて、パルス、D、
ジーナの冒険は続く!!

※なお、内容は予告なく変更される
場合がありますので御了承くださいwww
153†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/06(土) 00:34:51
「500だ、こうなったらヤケだ!」
キャメロンが観念したようにテーブルをたたく。
「よし、成立だな」
俺は立ち上がると、出口に向かった。
「何処にいくの?」
パルスがトコトコとついて来た。
「準備だよ」
「準備?」
「あぁ、メダリオン保有者を倒すにはメダリオン保有者が適任だ」
「あのメラメラ男みたいに?」
「そうだ、[紅蓮]はお前が倒したが…保有者は他にもいる」
「でもDが狙われてるのに、動き回って平気なの?」
俺はパルスの頭をクシャッと撫でて、
「奴らも準備してるだろうさ、今はまだ大丈夫だ」
と言い残して店を出た。
キャメロンの話だと、[紅蓮]は死んだ。
[水鏡]も負傷している。
つまり、やって来るのは[死神]か[魔弾]のどちらかだ。
そして、俺にとって最も苦手な相手だ。

まったく、ツイてないな…
俺は街の中心にそびえ立つ時計塔を目指した。
154名無しになりきれ:2006/05/06(土) 13:53:23
Dの後についてくる者が一人。その存在に彼は気付いていた。
付かず離れず、だが特に気配を消すでも無し。
しばらく街中を移動し、そして細い路地へと灰って行くD、それに続く尾行者。

「で?俺に何か用か?物取りと暗殺者なら間に合っているぜ」
後も振り向かずに声をかけるD、その瞬間、足音と気配が消失した。
慌てて向きを変えるDのその背後から声がかけられる。
「お久しぶりです、貴方が組織を抜けてからだから、3年振りということになるでしょうか。」
「…東風か、久しいな。俺の命を取りに来たか?」
軽く笑いながら応えるD
「……逆です。私は貴方を護りに来た。」
「お?3年ってのはやはり長いもんだ、お前の口から冗談が聞けるとは、な」
と、また彼は笑った。
「貴方も変わりましたね。仲間がいて、行動を共にする。あの頃の貴方からは想像もつかない。」
「あいつ等は関係無い。たまたま行動を共にしているだけだ。
 だが、狙うというなら護ってやるだけの情は移っちまったがな。」
背後の男に対してジワリと殺気の波を寄せるD。
155東風エド ◆koVuVl1hKg :2006/05/06(土) 13:56:04
「!待ってください。先ほども言いました。私は貴方を護りに来た。
 3年前に、組織を抜けた貴方の排除を命じられ、私はその任を買って出た。
 貴方に救われた命を、貴方の為に使うためにね。
 信じられないと言うならそれも結構、この場で斬り殺されても恨み言は申しません。」
辺りを包む殺気の風が少し和らぎ、一つため息をつくD.。
「ならなんで、こんな紛らわしい真似するんだ?これじゃ誰が見たって…」
「組織の者が街に既に入りこんだ可能性は高いです。監視者がいるかも、というのが一つ。
 もう一つは、いつもの癖でつい。」
つい、ってねぇ…お前。
心の中で呟く彼の背後から声が遠ざかる。
「組織への表向き、私はまだ貴方の命を狙う暗殺者として彼等と繋がっている。
 組織の情報が欲しければ何でも聞いてください。そして、私は陰から貴方を守るでしょう。
 今日はそのことを伝える為に来ました。」

やがて、裏路地は完全な静寂に包まれ、表通りの喧騒だけた聞こえてくる。
156東風エド ◆koVuVl1hKg :2006/05/06(土) 14:03:55
軽く疲れを覚えたDが、やがて再び表通りへと向かおうとしたその時、遠くから小さな声で、
<<あ、そうそう、旅の途中で良いお茶が手に入りました。今度一緒に飲みましょう。>>
そんな言葉が彼の耳に届いた。
157[水鏡]:2006/05/06(土) 15:05:11
私は苛立っていた。
勝手に動いた揚句に[紅蓮]を死なせてしまった…
軽率だった。

「おやおやおやぁ〜?綺麗なお顔が台無しですよ〜[水鏡]さん」
飄々とした感じの青年が、に話し掛けてきた。
私の大嫌いな男だ。
「五月蝿いです。静かにしてください」
「うわぁ、怖いなぁ」
嫌味ったらしい笑顔で、大袈裟に肩を竦める。
「10秒待ちます。出て行きなさい、10…9…」
有無を言わさず、私は秒読みを始めた。
「ちょ!?ちょっと!召集だから呼びに来たんだってば!」
慌てて男は言った。
「《灼熱のメダリオン》の後継者が決まったんですよ〜」
「まさか!?こんなに早く!?」
私は驚いた、《メダリオン》に適合する者は少ない。
だからこそ、その言葉に驚きを隠せなかった。
「一体誰!?その後継者は!!」
へらへらと笑いながら、その男[魔弾]が答えた…
「ソーニャお嬢さんですよ」
158名無しになりきれ:2006/05/06(土) 15:08:59
そうきたかw
159紅蓮のソーニャ:2006/05/06(土) 18:11:32
「へえ?魔弾と水鏡がお揃いとは、珍しい取り合わせだねえ」
ソファに腰掛けながら、部屋に入ってきた二人に、からかう様に声をかけるソーニャ。
「ははは〜、僕が美しい女性と一緒にいること自体は不思議じゃないでしょ?」
答える魔弾に、小さく舌打ちをする水鏡
「召集がかかったので来たまでです。そんな事より…。」
「わかっている、見せるよ」
それだけ言い、ソファから立ち上がって間近の家具を遠くへ蹴り飛ばす。

私は手のうちにある緋色のメダルの力を引き出すべく、意識を集中させた。

同調と同化、メダリオンの力を我が物にするために、そのどちらもが非常に重要らしい。
同調が出来なければその力を引き出せず、同化を果たせなければその力に身を滅ぼされる。
以前の選定から洩れたとは言え、灼熱のメダリオンとの同調はある程度可能だった。
火球を飛ばす程度ならば、それほど難しい事ではない。
しかし、メダリオン真の力、コロナ・カリギュラを発動させ生き延びるには、同化しきる事が必要。

――炎がお前の身を焼くと思うな、自身が燃えるイメージで発動させてみろ
親父のそんな助言を頭に残し、メダルに内在する強大な炎の精霊力との同調を徐々に強めて行く。
メダルから流れ込む暴君の猛り狂う炎、破壊と消滅の意思、それを我が物として受け入れ、
力の圧が頂点に達した時、私の体を炎が包み込む。否。
私の体が灼熱の炎の塊へと変化したのだ。

火の魔人は口を開きこう言った。
「認めたかい?初めまして、私は〔紅蓮〕のソーニャ、今後ともよろしくね」
160触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/07(日) 00:47:18
「Dさん…もう無理しちゃダメだよ?」
(メダリオンの力は時に所有者を死に至らしめる危険なもの。
できるなら使わずにすんだほうがいい。僕が頑張らなきゃ)

「メロンジュースいかがですか〜?」
綺麗なお姉さんが声をかけてきた。
(いや、そんな場合じゃ…でも欲しい)
「…ちょっとだけ」
…そっちへ行ってしまった。

「あー、美味しかった」
「2000ギコになります♪」
「え――――ッ!?」
(これは俗に言うぼったくりというやつか。逃げよう、踏み倒そう!)
「…さようなら!」
そう言って脱兎のごとく駆け出す。
「待てええぇえええ!!」
「待つかああぁあああッ!?」
裏通りを爽やかに駆け抜けていく食い逃げとそれを追いかける人という
なんとも素朴な光景が展開される。
(…一気に撒くぞ!)
そう思って曲がり角を曲がったその時!
「うわあっ!?」
誰かに激突して自分がコケた。
「す…すいません!」
ぶつかられた学者風の男は言った。
「おや? 貴方は…」
「え?」
「貴方達は…あの方の最初の仲間。くれぐれもよろしくお願いしますよ」
「???」
服のホコリを払って立ち上がったとき、すでに男はどこへともなく姿を消していた。
161綺麗なお姉さん:2006/05/07(日) 01:11:13
畜生が!!あの糞エルフ!!
見つけたら殺してやる!!!
うおおおおおおうあああああーッ!!!!!
162街人:2006/05/07(日) 03:32:10
A「あ〜あ、また誰か引っ掛かったよ」
B「怖い…」
C「祭の前後になると多いんだよなぁ〜」
163†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/07(日) 04:13:08
 【物語スレ・ルール完全版】

基本的にsage進行でお願いします!
レスアンカーは付けなくても構いません
世界設定等は、まず避難所に!

基本的に拾えるモンは全て拾う
・荒らしはスルー
 『しかし面白いなら拾う!』
・レス回数制限なし
 『もちろんマッタリ進行もアリです』
・後手キャン有り
『最後の切り札ですwww』
『御利用は計画的に!!』

キャラクターの定義
・PC:トリップ装着キャラ
 『自ら死を選ばない限り死なない』
 『1人のプレイヤーが操作』
・NPC:トリップ非装着キャラ
 『複数のプレイヤーが操作』
 『死亡するかどうかは演出による』

名前に☆付けたレスは、自キャラ操作権を他のPLに譲渡する事を表す。
例:本スレの>>153-155を参考にすると判り易いかと思います。
>>153のDのレスに☆が付いていると考えて下さい。
>>154-155のレスにてエドはDのセリフと行動を自由に描写しています。
このように、☆マークを使うことで物語をより細かく演出する事が出来るのです。
尚、NPCのレスは全て☆付きと同様として扱います。

・☆マークの有効期限は?
 『☆付けたキャラの次のレスまで』
・複数キャラ登場レスに☆が付く場合は?
 『登場キャラ全員の操作権を得る』
 『操作対象から除外する事も可』
・操作除外対象を指定するには?
 『メ欄にPC名を入れる』
・譲渡するプレイヤーを指定するには?
 『メ欄にPC名を入れ、「」で閉じる』
・操作キャラの演出の有効範囲は?
 『基本的にセリフと行動のみ』
 『避難所にて相談を推奨します』
・死亡する様に演出するのはアリ?
 『大原則として絶対にナシです!!』
・NPCの演出の有効範囲は?
 『基本的に制限はありません』
 『避難所にて相談を推奨します』

このスレでは、他人のキャラをしっかり読む事が重要となります。
自分のキャラに他人の演出が乗る事で、以外な展開になる可能性も!?
164???:2006/05/07(日) 16:11:56
「あれが、《疾風のメダリオン》保有者か…」
「そうよ、間違いないわ」
「やはり《メダリオン》同士は惹かれ合う…か」
「仕掛ける?」
「いや、まだだ。《蠍の爪》もこの街に来る」
「…まとめて頂戴するって訳ね」
「そういう事だ」
165元酒場のウェイトレス ◆QWE7YBXRW2 :2006/05/07(日) 18:38:33
Dは部屋から出て行った。
「レーテちゃん、とりあえずジタバタしてても仕方ないから、バザールでも見てくるといいわ。
それともコンサートの練習かな〜?とりあえず夜にもう一度集合しましょ」
私もひらひら手をふり、部屋を出た。

>畜生が!!あの糞エルフ!!
見つけたら殺してやる!!!
うおおおおおおうあああああーッ!!!!!

バザールでは、メロンジュース片手に、バニー姿の女性が吼えていた。
何があったのかしら〜??
>「あ、メロンジュースいかがですかあ?」
(・・・・・・変わり身早っ!)
メロンジュース売りのお姉さんは満面の笑みでジュースを勧めてきた。

「そういやこの街には、競ミード場があるのよねー」
くふふ、と笑いながら、足取りも軽く 競ミード場へと向かった。

>「お嬢さん、この危ないビスチェ!そしてクールビューティローブ!
今ならネコミミバンドもつけてたったの7000ギコ!」
「え〜どうしようっかな〜。ウフフ。3000ギコなら考えるわ〜!」
その後一山当てたのか、バザールの店であれこれ買い捲るジーナの姿があった。

私は皆との待ち合わせ場所に急いだ。
うわー。私が一番最後?
「遅いぞジーナ」
「ごめーん、いろいろ目移りしちゃって〜。あっ!」
私はDの上に下着の包みを落としてしまった。
「D、ごめーん!悪気は無かったから許して〜
みてみてこのバック!魔法アイテムだから、信じられないくらい荷物が入るのよ〜!!」
私は山のように買い込んだ荷物を次々袋に詰めだす。
「で、皆、何か収穫はあったの〜?」
166†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/07(日) 19:17:54
>私はDの上に下着の包みを落としてしまった。

な、なんだ!?この紐みたいな物は!?
こ…こんなの……
俺は恐怖のあまり気が狂いそうになった。

>「で、皆、何か収穫はあったの〜?」
「ゲフン!…あぁ、いろいろとな」
気を取り直して、昼間の収穫を話し始める…

俺はエドと別れた後、時計塔に向かった。
次にやって来る刺客は…恐らく[魔弾]だ。
高い場所を抑えられたらまずい。
奴の能力、ライトニング・デュークは射撃武器を強化する。
あんな塔がある以上、楽観はできない。
下手をすれば街全体が奴の射程範囲になる。
それだけは避けたかった。
俺は時計塔周辺の地理を頭に叩き込み、その場を後にした。
俺を監視する2人分の視線を無視しながら…
167名無しになりきれ:2006/05/07(日) 21:10:19
〜荒くれとその仲間の会話〜

「くっそがっ、あの鉄板レースで番狂わせが起きるってどういうこったっ!!」
「結局あのレース当てたの一人だってよ、若いネーちゃん」
「あー?ふざけんじゃねーぞ、そりゃ何か?本来俺に渡されるべき賞金が
 そのネーちゃんに持ってかれたってか?」
「俺に怒るな」
「いーや、怒るね、善良な俺達から金を巻き上げておいて、怒らねえ方がどうかしてるぜ
 そりゃ取り戻すのが筋ってモンだ」
「……やめとけ、そのねーちゃんてのがな」
「何だよ?」
「ほら、噂の豪傑のパーティー、その中の”狂戦士のジーナ”お前も聞いただろ?」
「お?おお、束ねたトランプ引き千切るくれえ朝飯前の、ものっすげぇ…、え、まさか?」
「そういうこった、諦めな」
「じゃあ、今日の飲み代どうすんだよ、もうツケはきかねーぞ」

・・・・・・・・・
「よっ、兄ちゃん。あんた博愛主義者かい?
 貧しい人間が金を持ってりゃ、そりゃ誰も人が人を傷付けたりはしねーと思うんだよ。
 俺の言っている事わかるか?ん?荒んだこの世を少しでも平和にしようぜって話さ」
168旅の楽士レーテ ◆K.km6SbAVw :2006/05/07(日) 23:02:26
流石に商人の街だけあって、バザーはかなりの規模だった。
「もしかしてミスリル絃もあったりして…」
淡い期待を胸に、レーテはバザーを物色する。
楽器を扱う店の前を通り掛かると、突然呼び止められた。
「おい、アンタまさか…黄昏のレーテじゃないか!?」
思わずビクッと立ち止まると、声をかけてきた店主に向き直る。
「うおぉーッ!!やっぱりそうだった!!」
物凄い勢いで駆け寄って来る店主に、恐怖するレーテ。
「!!!??」
「ほ、本物だよ!!すげえっ!!」
段々と人だかりが出来上がる。
「収穫祭で演奏するんだろ?」
「是非1曲お願いします!」
「うわっ!美人〜、美貌の秘訣は!?」
「けけけけ結婚してくだらびぁい!!」
怒涛の人だかりに圧倒されて…
軽い対人恐怖症のレーテは、そのまま意識を失った。
レーテが持つハープ、《黄昏の瞳》は伝説の一品だ。
かつて大陸全土を巻き込んだ《龍人戦争》
その戦乱の英雄の一人、黄昏のアリアが所持していたのがこのハープである。
弾き手を選ぶと言われ、数多の楽士の手に受け継がれて、レーテが所持しているのだ。

「ん……ん〜」
レーテが目を醒ますと、そこはライラック商会だった。
「気がついた?もぅ、びっくりしたわよ〜突然倒れるんだもん」
レベッカが笑いながら絃を張り替えていた。
「みんな戻ってきてるよ?」
「あ…その絃は?」
起き上がると、レーテはよろけながらもレベッカの所に歩いていく。
「これ?あなたが倒れた時に切れちゃったのよ」
手際良く作業を続けて
「はい、出来上がり!とりあえず9番は鉄絃で我慢してね」
満面の笑顔でハープを渡す。
「しっかし驚いた〜、あなたが伝説の楽士だったなんて」
「で、伝説!?」
レーテが目を丸くした。
「だって、そのハープ、《黄昏の瞳》でしょ?」
「えぇ…まぁ…そうですけど…」
「弾き手選ぶ魔法の品、それを弾き熟すんだから伝説って訳」
そう言われてレーテは顔を真っ赤にして俯いた。
「台帳の名前見てピンときたんだけど…黄昏のレーテは男だって聞いてたし」
からからと笑うレベッカを、恨めしげに見つめて
「ぉ…男…です…けど…」
がっくりと肩を落とし、レーテは皆が集まる部屋へと向かった。
169触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/07(日) 23:11:22
恐怖のあまり気が狂いそうになっているDを見て不思議そうな顔をしながら
「どうしたの?そのひもみたいなのがそんなに怖いの?
10ギコショップでこんなの買って来たよ」
と、安物の矢やらスリングやらメロンアメやら役に立たなさそうなものがわらわら登場。
そして最後に鉄の針金製の触角数個を取り出し
「これを付ければ雷が右から左に抜けるよ!」
と力説したりする。

ぼったくりをなんとか撒いたパルスは特にどこへ行くでもなく歩いていた。

魔弾…それは僕にとっても最も厄介な相手かもしれない。
と、いうのも雷の魔法は繰術にはあるが霊法には存在しない。
雷の精霊は一瞬しか物質界に来ないためどうしても話す事ができないからだ。
雷鳴のメダリオンはそんな彼らを操作してしまうらしい。
歩きながら地面に聞いてみた。
「雷の精霊ってどんなのか知ってる?」
〔奴らはすごく素早いな。物質界には一瞬しか存在できないんじゃないかな〕
噴水に腰掛けて水に話しかけた。
「雷の精霊ってどんなやつ?」
〔普段はとても仲がいいです。でも真に純な私とは相容れません〕
寄り添うように飛んでいるシルフが言った。
〔アイツはいつも高いところから来るの。
あと普通の精霊が苦手な金属が大好きみたい〕
すごく素早い、高いところから来る…。普通の精霊が苦手な金属が大好き…。

そして鉄製の触角購入に至ったわけだ。
レーテが部屋に入ってきた。どこか落ち込んでいるようだ。
「レーテさん、これ(触角)付けて元気出してください!」
と、いきなりダメなアプローチ。
170貴族風の男☆ ◆aT3reGlGIE :2006/05/07(日) 23:30:32
>167
>「よっ、兄ちゃん。あんた博愛主義者かい?
>貧しい人間が金を持ってりゃ、そりゃ誰も人が人を傷付けたりはしねーと思うんだよ。
>俺の言っている事わかるか?ん?荒んだこの世を少しでも平和にしようぜって話さ」
「・・・・・ん?それもしかしてワタシのことデースか!?」

ちょっと出歩いてみたらこれだ、こんなナリをしてれば
チンピラに絡まれることもしょっちゅう、だけどこれにはこれで利点があるんだ。
金目当ての女や情報を高く売りつけようとする輩、けっこう役に立つんだぜ。
だが今回はちょっと嫌なの釣っちゃったみたいね、

「あぁ!?お前以外にだれがいるってんだよ、
  いいからさっさと金を渡せっつってんだよ!」
「ヒーッ、そんなに怒らないで!ヘイワテキ解決です!ヘイワ!」

僕は結構な量を札束を渡す、明らかにチンピラの脅し程度に渡す額じゃないが。
こっちも色々と思惑があってね。

「うお〜っ!!!す、すげぇ、こ、こんなに」
「これだけありゃあツケ返しても一週間は持つな!」
「こりゃいい相手見つけたぜ」

荒くれと仲間は札束を数えながら笑い合っている。
そこで僕は商談を持ちかけてみることにした。

「あの、少しいいですか?さっきのオハナシで聞いたんですが。
  えーっと、あ、そうそう!ジーナとか言う人のオハナシです。
  もしもう少し詳しく教えてくれるなら更に上乗せしちゃいマース。」

吹っかけてみたが荒くれと仲間はお互い目を合わせ笑い合い
僕の襟を掴み凄みながら言う。

荒くれ「俺等が教える必要はねぇな、だがお前が金を払う必要はある。
     ほら、全部出せよ!」
仲間「貴族ってのは馬鹿ばっかりで面白いぜ」
荒くれ「全くだ、黙ってこのまま帰ってリャもっと狙われることもなかったんだけどなぁ〜」

はぁ〜、あっぱりダメかぁ、なんでチンピラは馬鹿ばっかりなんだろうかね?
僕は襟をつかんでいるチンピラを殴り飛ばす、
「ぐわぁっ!」
「あぁっ、よくもやってくれやがったな」
チンピラの仲間が一瞬驚くが今度は全員でナイフを取り出し身構える。
やっぱりか、またこりゃ、本当に馬鹿ばっかしで。
「いいかいキミ達、この世の中はキミ達程度の雑魚で狩れる奴ばっかじゃないのよ。
  そんな簡単な脅迫やくだらない目的に左右されない危ない奴等もここらにゃ多い。
  分かるかな?分からない?とりあえずだ、どっかへ失せたほうがいいぜ?」
そう言って僕は呆気にとられているチンピラの横を悠々と通り抜けていく。
あと少し後ろを振り向き一言付け足しておいた。
「あと一つだけいいデースか?アナタタチの通っている酒場。
  あそこのマスターもけっこう危ないですから早めにツケ払ったほうがいいと思いマース!」
そして僕は夜の風俗街へと向かっていった。
171貴族風の男☆ ◆aT3reGlGIE :2006/05/07(日) 23:32:22
名前:ヒューア・フォン・ヒッター(偽名)
職業:ろくでなしの遊び人(表向き)メロメーロの統合ギルドマスター(裏の顔)
種族:人間
性別:男
年齢:20歳前半
身長:190cm
体重:80K
容姿:オールバック的な髪型で外見はカッコイイ。
特徴:〜デース、〜マースを使う(わざと)
性格:適当で自分勝手。
特技:逃げるのとお金で解決すること。

装備・右手:白い手袋。
装備・左手:同じく
装備・頭:シルクハットを被っていることが多い。
装備・胴:少しレースの入った白いシャツに黒いスーツ、蝶ネクタイ、これらの上に黒いコートを羽織っている。
装備・足:黒いスラックス、
所持品:仕込み杖、お金。
172旅の楽士レーテ ◆K.km6SbAVw :2006/05/08(月) 00:18:39
「レーテさん、これ付けて元気出してください!」
パルスに渡されたソレは、触角だった。
「わぁ…素敵な髪飾り…私に?」
しゅんと落ち込んでいたレーテの顔が、パァッと明るくなる。
早速頭に付けて、
「似合いますかね〜?」
と言って、くるりと回って見せた。
パルスは幸せの絶頂の表情だったが…
ジーナとDは、生暖かい眼差しで微笑んでいた。
173ラトル&エリサ:2006/05/08(月) 10:25:42
メロメーロ郊外、コリン=ナソップの屋敷。
2階のテラスにて、コリンは夜空を眺めていた。
すると、背後に1人の青年が現れる。
「《疾風のメダリオン》を発見しました」
青年の報告に、コリンがゆっくりと振り返る。
「ご苦労。奪取は可能かね?ラトル」
コリンの問い掛けに、ラトルと呼ばれた青年が答えた。
「もちろんです。私と妹にお任せ下さいませ」
「そうか、あれは我々にこそ必要な物だ」
コリンは手に持ったワイングラスを燻らせる。
「公国の好きにはさせん…このメロメーロは独立せねばならん!」
力説するコリンを、ラトルはじっと見つめている。
「既に5つの《メダリオン》が蠍に奪われた…」
コリンの言葉にラトルが歯を噛み締めた。
「本来ならば《光輝のメダリオン》はここに在る筈だった…」
「私の……ミスです…」
「責任を感じるならば、《疾風のメダリオン》を必ず手に入れろ」
「畏まりました…」
そう言うとラトルは石の壁に溶け込む様に消えた。
「疾風が手に入れば、残るは後2つ…」
コリンはワインを飲み干して、夜空を仰いだ。


「行くぞ、エリサ。仕掛ける」
「えぇ、待っていたわ…兄さん」
ラトルの妹、エリサが薄く笑って応える。
狩人の兄妹は屋敷を出発した。
《メダリオン》という獲物を狩る為に…



ライラック商会。
楽器を扱う店だが冒険者に宿も提供している。
正確には旅の吟遊詩人にだが…
ラトルとエリサは、店の裏手に回り込む。
「さて、始めるとしよう」
ラトルが《激震のメダリオン》を発動させた。
彼の体が、岩の鎧に覆われる。
「むぅんッ!!」
ラトルが両手を地面に突き立てた途端、地盤が軟化する。
ライラック商会の建物が、1m程沈み込んだ!!
「エリサ!」
「わかったわ、兄さん!」
エリサも《深緑のメダリオン》を発動する。
彼女が手を差し延べると、建物の木材部分がメキメキと音をたて変形を始める。
「押し潰されて…死ね」
ラトルが抑揚のない声で静かに呟く。
逃げ場は何処にもなかった…
174触角の精霊使い☆ ◆iK.u15.ezs :2006/05/08(月) 16:18:10
やった! レーテさんとペアルック〜♪
僕はこれ以上ないほど浮かれていた。
いきなり文字通り地面の下まで落とされるなんてどうして思うだろうか。

急速な落下感。壁は悲鳴をあげ、まるで意思を持ったかのように崩壊した。
「う…」
風も光も感じられない。気がつくとそんな場所にいた。
重圧と痛み。息苦しいほどの土の精霊力。
僕は木材の下敷きになっていて少しも動けなかった。
怖い、まだ五百年も生きてないのに死にたくない。しかも生き埋めなんて…。
その時誰かが僕の耳に息を…
「ひゃっ!?」
誰!? こんなときにお耳にふっなんてやるのは。
〈早くしないとレーテちゃん窒息死しちゃうよ〉
シルフ…!? そうだ、こうしちゃいられない!
僕はわずかに動く左手で精霊と交信するための動作をした。
「ノーム、力を貸して。【トンネル】」
土が自ら抜け道を作ってくれ、木材の下から抜け出すことが出来た。
「レーテさん、今行きます!」
僕は大地の精霊ノームの力を借りて土の中を掘り進み始めた。
175酒場のウェイトレス ◆QWE7YBXRW2 :2006/05/08(月) 16:41:36
私は青銅製のテーブルを使って、落ちてきた梁をギリギリで支えていた。
「みんな〜生きてる〜?レーテちゃん、リュートは壊れてない〜?」
まったく災難ってのは次から次へとやってくるのねー
盗賊の次は地震って訳?
っていうか、この梁まるで生きてるみたいに倒れてきたように見えたんだけど・・・。

突然足元の地面に穴が開いた。
敵だったら踏んづけてやろうと足を振り上げたけど、地中から現れたのは見慣れた触覚だった。
「パルス君!よかった〜無事で!」
私はホッと息をついた。

ちょっと!なんか梁から葉っぱが出てきたわよ!
「ちょ!やめてくすぐらないでよっきゃはははは!って危なっ!」
力が抜けかけて、危うく潰れそうになったじゃない!
「D!パルス君!レーテちゃん!何とかしてよ〜」
176☆旅の楽士レーテ ◆K.km6SbAVw :2006/05/08(月) 17:47:26
突然だった、足元が無くなったのは。
「え?」
何が起きたかも判らずに、レーテは間抜けな声をあげる。
地面が沈み、建物が歪み、レーテ達を押し潰そうと迫り来る。
咄嗟にカウンター席にしがみついたが、レーテには為す術もない。
梁が崩れて来た。
下敷きになる、と思ったが…
そうはならなかった。
ジーナが支えている!
足元にボコッと穴が開き、パルスが顔を覗かせる。
レーテは、感動のあまり泣きそうになった。
177†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/08(月) 18:12:08
パルスが嫌がる俺に無理矢理くれた、メロンアメは予想よりも旨かった。
パルス、ジーナ、レーテ…初めての…仲間。
昼間エドに言われた言葉が、脳裏を過ぎる。
(確かに、変わったな…俺は)
飴と一緒に渡された髪留め(触角)を、バレない様にそっと捨てる。
その時だった。
何かが、ドクンと脈打った。
(…!?)
次の瞬間、地面が無くなる感覚。
(しまった!?)
そう思った時には、既に遅く、建物は奇妙な悲鳴をあげて歪み始める!
俺は意識を研ぎ澄まし、《疾風のメダリオン》を発動させた。
レクス…テンペスト!!
統ての事象が動きを失い、極限にまで加速した俺の意識が仲間を捉らえる。
パルスは無事だ、地面に向かって何かしてる、多分土の霊法だ。
ジーナも落ちてきた梁を受け止めている、大丈夫だろう。
レーテは…カウンターにしがみついてる、無事だ。
あの位置ならパルスがなんとかする筈だ。

なら俺がやるべき事はたった1つ…
(敵を、倒す!!)
俺は風になった。
敵の場所は、メダルが教えてくれる!
崩れてくる建材を擦り抜けて、俺はさらに速度を上げた…
178名無しになりきれ:2006/05/08(月) 18:37:53
メロメーロの北東に位置する森の中。
一見すると商人のキャラバンに見えるが、《蠍の爪》がその身を隠す為の擬装である。
「きっと怒ってますよ〜[水鏡]さん」
「ふん、構わないさ。アタシにゃ関係ないね」
「アハハ、お嬢…じゃなかった、[紅蓮]さんらしいね〜」
「アタシはあの女ブチ殺すことができりゃ、他の事なんざ知らないよ!」
(あの痛み…忘れるもんか…)
[紅蓮]の周りの温度が上がり、陽炎が立つ。
「久しぶりだなぁ、[北風]と戦うなんて」
「戦ったことがあるのか!?あの男と!?」
「ありますよ〜、彼は強いです。もう6年も前ですが」
懐かしむ様に遠い目をして、[魔弾]は続けた…

当時まだ彼はメダリオンを持ってなかったんです。
僕は持ってましたけどねぇ、負けましたよ。
え?情けないって?
アハハ…これは厳しいなぁ…
ですがね、これは当然なんですよ。
彼が何故[北風]と名前がついたか、知ってます?
彼はね…風に愛されてるんですよ。
風の精霊の中でも、特に凶暴な《北風の王 ジン》にね。
だから彼は強い、いや強すぎた…
雷鳴のメダリオンを手に入れたばかりの僕では、とてもとても…
179名無しになりきれ:2006/05/08(月) 18:38:55
「でも、今は違う」
[魔弾]の体が淡く光り始める。
「メダリオンの真の姿を、早く彼に見せたいなぁ」
バチバチッと火花が散り、[魔弾]の姿が変わっていく。
「な…!?何だ!?」
[紅蓮]は、恐怖を抑える事が出来なかった。
彼女の目の前に立っていたのは、紫電を纏う巨体の獣だった。
『どうです?これが保有者の真の姿…』
獣が喋った、口元を歪めて笑う。
『《解放(ディスチャージ)》です』
「…解…放?」
『そう、メダリオンは《忘れ去られし精霊王》の欠片』
「精霊王…かつて世界を滅ぼしたっていうアレか?」
『正解です、意外に物知りですね』
「喧しい!大きなお世話だ!!でも、そんなのお伽話じゃないのか!?」
『残念ながら、事実なんですねぇ』
「……メダリオンの存在、か」
通常では不可能な程の精霊力を生み出すメダリオン…
それは精霊王が伝説の中だけの存在ではないという動かぬ証拠。
「……一つ聞きたい」
[紅蓮]は震える手をきつく握り締める。
「それはアタシにもできるのかい?」
『いずれはできるでしょうね』
その答えに、[紅蓮]は猛獣の様な笑みを浮かべた。
180☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/09(火) 00:28:14
「レーテさん、…良かった、埋もれてなくて!」
そう言った時だった、吹き抜ける一陣の風を感じた。
シルフのような優しいそよ風ではない、嵐のような風。
Dさんがレクス・テンペストを発動したんだ。
きっと敵を一人で迎え撃つつもりだ。早く追わないと!
ジーナちゃんがなんとか梁を支えている。
刹那。梁や壁の残骸から葉っぱやつるが生えてきて襲いかかってきた!
死んだ木を操る事なんてできるはずがないのに…一体どうやって!?
>「D!パルス君!レーテちゃん!何とかしてよ〜」
その言葉にはっと我に返り、呪文を唱えた。
「【ホールド】!」
地面から湧き出た土の精霊ノームが梁にからみつく。
本来は敵の動きを封じる魔法だけど今回は梁を支えてもらったというわけだ。
「今のうちにこっちに来て!」
ジーナちゃんにそう叫び、レーテさんの腕をつかんで穴の中に引っ張り込む!
「な…何ですか? いまのは」
しっかりとハープを持った彼女は囁くような声で尋ねる。
「霊法だよ。…そっか、普通見たことないよね。今からたっくさん見せてあげる!」
精一杯の笑顔を作り、答えた。
そしてジーナちゃんに、彼女にとっては羽のように軽いだろう
銀製のロングスピアーを渡す。
「これを! 僕が道を作るから…時間をかせいで!」
彼女なら安心して後ろを任せられる。魔法を使うのは二回。
一回目でできる限り長い抜け道を作って建物の地下からはずれ、二回目で地上に上がる!
その間だけ植物を払ってもらえればいい。
僕は精神を集中し、呪文の詠唱を始めた。
181東風エド ◆koVuVl1hKg :2006/05/09(火) 00:34:45
自らの意思で崩壊を始めるライラック商会店舗。
(この程度で死ぬような彼では無いが…)
五凶の魔弾と紅蓮が、疾風のメダリオンを奪還するべくこの近辺まで来ているという情報は掴んでいた。
Dを付け狙う男女は、おそらく蠍の爪の者だろうと考え泳がせてはいたが、
まさかメダリオンの保有者であったとは、流石に予想の範疇を超えている。
(何者かは知らないが、確かなのは敵であると言う事だな)

思案する間に、建物の壁を突き破り烈風が吹き抜ける。
―でしょうね、少しだけ心配しましたが。
「北風、店の裏に男女二人。両者共、おそらく我々の知らないメダル保有者です。
 逃げますか?それとも…。」
182†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/09(火) 01:32:55
「北風、店の裏に男女二人。両者共、おそらく我々の知らないメダル保有者です。逃げますか?それとも…。」
土煙を引き裂いて店の外に脱出すると、そこにはエドがいた。
「昼間、言い忘れていた事があったよ」
俺は両手にククリを構え、突風で土煙を吹き飛ばす。
「俺はもう…[北風]じゃない」
俺の意思に共鳴した風の精霊が、周りを駆け抜ける。
「流れ者の…D!」
レクス・テンペスト、2回目の発動で再び俺は風に変わる!

「成る程、風は流れる…ですか」
巻き起こる風に向かって、エドはやれやれと肩をすくめた。
183ラトル&エリサ:2006/05/09(火) 01:54:12
崩れ落ちる建物を満足気な表情で眺める2人。
その時、風が吹いた。
「痛ッ………!!!?」
エリサは突然『無くなった』腕を見て…悲鳴を上げた。
「いやあああああああぁっ!!!!!」
「な…!?何が起きた!?」
泣き叫ぶエリサにラトルが駆け寄る。
「あぁ…あ、手が!手がぁ!?」
「おい!しっかりしろエリサ!!」
エリサの肩を揺すって、ラトルは必死に落ち着かせようとする。
が、それは無駄に終わった。
「あ…ゥで?」
揺さ振られたエリサの首が、腕が、胴がバラけて地面に落ちた。
「!!!!?」
ラトルはまるで状況を掴めなかった。
妹の身に何が起きたのか、全く理解できない。
「遊びにしては、やり過ぎたな?」
ラトルの背後から、低い声がした。
振り返ると、そこにはDが立っていた。
顔は笑っていたが、その目は笑っていなかった…

エリサは死んだ。
「う…ぅあ…ああああアァッ!!?」
今までずっと兄妹2人で、支え合って生きて来た。
ラトルにとって、エリサは何よりも大切な存在だった。
だが…エリサは死んだ、殺された!!
ラトルは激情に飲み込まれ、メダリオンの制御を失った…

「…?」
Dはメダリオンが、何かを感じた事に気付いた。
「オォアア…ァガゥ…」
ラトルがもがき始める!
そして、その身体が異音をたてながら変化していく!
『オオオオオオオオオオォォォッ!!』
地鳴りに似た雄叫びが、夜の街に響き渡った。

精霊獣…
かつて、世界を滅ぼした精霊王の12眷属。
肉体の無い精霊と違い、精霊獣は完全に受肉して顕れる。
メダリオン…
精霊王の欠片に支配された生物の、成れの果て…
それが精霊獣の正体だったのだ。
精霊王は《金色の4英雄》に倒された。
しかしその12の欠片は世界中に散らばる。
人の歴史の中で欠片の存在は徹底的に抹消された。
その秘めたる力の、常軌を逸脱した強大さ故に!!

『オオオオオオオオオオォォォンッ!!』
やがて変化が終わり、ラトルは大地の化神となった。
まるで亀を彷彿とさせる外見ではあるが
その体躯はゆうに5mを越え、その尾は周囲の建物を薙ぎ倒した。
「マジかよ…」
Dは絶対絶命の危機に陥った…
184精霊獣ラトル:2006/05/09(火) 16:27:21
『オオオオオオオオオオ』
精霊獣となったラトルは雄叫びをあげ、Dに向かって突進する。
「クソが!!」
巨体が民家を押し潰しながら迫り来る。
動きは鈍いので、攻撃を避けるのは簡単だ。
しかし街に被害を出す訳にはいかない。
Dは舌打ちしてククリを持ち直すと、ラトルの背に飛び乗った。
「うおりゃあっ!」
渾身の力を込めてククリを振り下ろす。
が、キィンッと鋼を打ち付ける様な音と共に弾かれた。
Dの持つククリは、名工の手による逸品である。
だがそれでもラトルの身体にかすり傷一つ負わせられない。
「やべえな…」
レクス・テンペストは後1回しか使えない。
しかも例え使ったとしても、武器が貧弱過ぎる為、話にならない。

『オオオオオッ』
背中の部分が膨脹を始める、バキバキと岩が盛り上がり…一斉に発射された。
「うおっ!?」
背中に乗っていたDは直撃を受けて吹き飛ぶ。
すぐさま尾の一撃が叩き込まれ、轟音と共にDの姿が瓦礫と土煙に消えた。
185☆旅の楽士レーテ ◆K.km6SbAVw :2006/05/09(火) 17:01:21
(これが、エルフ族に伝わる霊法…)
穴の中を進みながら、レーテは感動していた。

300年前の龍人戦争で、精霊王との戦いによりその数を激減させたエルフ。
金色の4英雄
若き人間の戦士で、後のクラーリア王国の建国王バルダ
龍人でありながら一族を裏切り、バルダの妻となった拳闘士オリビア
バルダを導き、自らの命と引き換えに精霊王を倒したエルフの長、モーラッド
3人を影から支え、見守り、その戦いの記録を後世に伝えた楽士にして司祭アリア

伝説の中でしか知らない、エルフの秘術を目の前にして、レーテは興奮する。
(もしかして…この人達…すごいサーガを紡ぐのかも)

レーテはまだ、知らなかった。
この出会いこそが、後に伝わる伝説になることを…
186東風エド ◆koVuVl1hKg :2006/05/09(火) 17:15:15
「北風!」
今のはかなりまともに入った。おそらく無事ではあるまい。
岩獣のなるべく岩の隙間を狙い、毒を塗り込んだナイフを投げつけるが
それはやはり金属音を鳴らせるだけの結果に終る。
構わず2投目3投目をソイツの顔付近へ投げつけた時点で、大亀はこちらの存在に気がついたようだ。
「化け物!こっちだ!」言葉に続けて4投目と5投目。

よし、気は引く事は出来たようだ。あとは少しづつこちらへ誘導しながら、なんとか隙を見て北風の所に。
怪物の尾の一振りを身を沈めて何とかかわし、続く踏みつけを余裕で避けながら怪物の様子を覗う。
(毒の効かないこの手の怪物は、本来逃げの一手なのだが。どうしたものかな…)

再び怪物が尾を振り回し、それを跳んでかわそうとしたその時、足元が泥沼化して
「しまっ…!?」
気がついた時には、私の体は怪物を挟んで北風と反対側に吹き飛ばされる。
187†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/09(火) 17:41:04
「しまっ!?」
吹き飛ぶエドの体が何者かに受け止められた。

「悪癖易くは抜けず、か?エド」
俺は口から血の塊をプッと吐き出し、エドに笑いかけた。
「さぁて、これで使い切っちまった…」
奴には斬撃は効かない。
かといって打撃もあまり期待出来そうにない…
パルス達が来れば、霊法で対抗できる。
あの程度で死ぬ奴じゃない、必ず生きてる。
「エド!久しぶりにアレ、やるぜッ!!!」
俺は岩獣に突撃した。
188東風エド ◆koVuVl1hKg :2006/05/09(火) 18:54:39
「やめましょう!!無理ですッ!!!」
私は叫ぶが既に先行する北風、仕方なく後を追う。
こういう人なのだ、人の制止などでは決して止まらない。

「くっ、仕方無い」
懐から小瓶を取り出し、中の赤い液体を一気に飲み干す。
全身の筋肉を活性化させごく短時間だけ超人的な力を生み出す《オーガの血液》と呼ばれる劇薬。
それはすぐに私の体内を駆け巡り、一時的に狂戦士の体へと作りかえる。

「ぐがっ、うぅぅ、北風!急いで!」
私は”射出”の準備を整え、Dを向かえる。
189†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/09(火) 20:01:59
「ぐがっ、うぅぅ、北風!急いで!」
エドが準備を終えたらしい。
「だから!俺は![北風]じゃねぇって言ってるだろが!!」
叫びながら俺はエドの居る場所に跳んだ。
レクス・テンペストはもう使えないが、風を操ることはできる!
ドンッ!!
大地を踏み締め、エドが構えた。
大型の魔獣や幻獣を狩る簡単な方法…
それは、内側からブチ破る!!
「「うおおおぉぉりゃあぁっ!!!」」
エドの拳が、俺の足の裏に叩き込まれた。
爆発的に加速した俺は、岩獣の口に目掛けて一直線に風を切り裂いた。
『オオオオオオオオオオッ』
岩獣が吠える、その瞬間奴の中に飛び込む!
体内に風は吹かない、当たり前だ。
だが、俺は違う。
風を引き連れて行くことができる!
「ブチ破れ!!!」
掛け声と同時に、風が刃となり荒れ狂った。

『オオオオオオオオオオッ』
岩獣の側面が爆ぜ割れて飛び散る。
倒れ込む岩獣だが、まだ生きていた。
『オオオオオオオオオオッ』
突如、地面が暴れだした。
地震だ、かなり大きい。
岩獣の体が地面に沈んでいく。
ラトルは最後の力で、大地震を引き起こそうとしていた…
190☆酒場のウェイトレス ◆QWE7YBXRW2 :2006/05/09(火) 20:55:57
「これを! 僕が道を作るから…時間をかせいで!」
「オッケー!任しといて!」
パルス君が魔法で梁を支えてくれてる。
私は机を脇におき、パルス君から銀のロングスピアーを受け取った。
「急いで!地面の下で地震が来たら全員生き埋めよ〜」
次々伸ばされる枝を切り落としながら叫ぶ。でも、心配はしてない。
パルス君が作った道なら信頼できるわ。きっとダイジョブ。
「キャメロンさんも早く!あ、これ持って。さっ!行くよっ!」
キャメロンさんとその助手?の女性の腕を掴み、後ろ手で机を穴に蓋するように倒す。
机をバキバキ破壊する音を聞きながら、私もレーテちゃんに続いた。

長いトンネルを潜り、ようやく外に出る。
「な、何なんだよチクショー!俺の店だけ壊されてるじゃねえか!!この損害は誰に請求したらいいんだ!」
うーん。キャメロンさんお気の毒。
「お気の毒〜でも私たちへのお手当てはキッチリ払ってね〜(はあと)
どうせキャメロンさんのことだから、ギルト保険にちゃんと加入してるんでしょ〜?」
「ジーナさん、あれ!」
レーテちゃんが囁くような声で言った。振り向いた私は目の前の光景に絶句する。

そこでは、巨大な亀が暴れていた。Dともう一人が戦っている。

「・・・・・・・・・・・『ウマウマガメ』?」
「ちがう、精霊獣だ!――――まずい!」
パルス君が駆け出した。私も慌てて後を追う。
「ねえ、セイレイジュウって何?」
私は傍らのパルス君に尋ねた。・・・・・・よくわかんないけど、かなーりマズイ事になってるみたいね。
191☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/09(火) 23:29:51
>「ねえ、セイレイジュウって何?」
「精霊獣は…“精霊王の欠片”に食い尽くされた生物なんだ!」

精霊王の欠片、人間の歴史からはすでに消えうせているだろう
強大な力を持つ遺物。それは持つ者に力を与え、そして蝕む。

押しつぶされそうな重圧感、この巨大な亀のような姿は…
「地の精霊獣…ガオヴルム!!」
地震を起こされたらこの町は壊滅状態になるだろう。
火の術も通用しそうに無い高い防御力を誇るガオヴルムに攻撃する方法なんて…。
>「「うおおおぉぉりゃあぁっ!!!」」
Dさん!? 風を操ってる…。風…攻撃する方法はある!
それは大地を削る風、全てを切裂く真空の刃。霊法にはそんな術がある!
力を借りるのは、風の上位精霊、ジン!! 
あまりにも精神への負担が大きいため禁忌とされる術の一つだ。
成功するだろうか…いや、必ず、成功させる!!

「―風よ、形あるもの全てを砕く突風よ―」
全神経を集中させ、精霊語で祈りを捧げる。
「―汝の偉大な力もて、大地の化身を砂と帰せ―」
渾身の力で最後の一言を唱えた!
「【ウィンド・ストーム】!!」
その時地面が暴れだした。地震!? 頼む…発動してくれ!

僕の願いは上位精霊に届いた。
逆巻く一筋の風。風は風を呼び、
それは一瞬にして荒れ狂う竜巻へと姿を変えた。
真空の刃に切り刻まれ、ガオヴルムの分厚い装甲が粉々に砕け散っていく!
「やったか!?」

そういえば…Dさんの姿が見えない。
ガオヴルムの中でもう一つ風の精霊力が働いてる!?
まさか…、中に飛び込んだのか!? 無茶すぎる!!
まずい・・・本当にまずい。
192†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/10(水) 00:50:31
〔…もっと…もっとだ……森の民よ…〕
ジンの声がパルスの意識に流れ込んでくる。
〔我に…与え…よ…汝の……声を!!〕


「な、何ィ!?」
やばい!閉じ込められた!
すぐ脱出するつもりだったが、岩獣の体は予想以上に頑丈だった。
風が外に閉め出されて、もう攻撃手段がない。
「やべえな……!?」
風が、吹いた?
俺の中を、懐かしい感覚が通り抜けた…
知ってる…俺は…この風を…知ってる!?
そうだ、コイツは…ジン!
〔何をしている、早く殺さんか!〕
うるさい奴だ、今から殺るさ…
「借りるぞ!パルスッ!!」
メダリオンがジンを飲み込み、俺の身体が霊力に満たされていく。
レクス・テンペスト!!
4度目の発動に体中が軋み、激痛が走る。
「ブチ破れッ!!」
俺は風に…いや、嵐になった。


「ジン!!僕に…僕に力を貸してーッ!!」
パルスは力の限り叫んだ。
その声は、確かにジンに届いた。
ガオヴルムの体が風船の様に膨れ上がる。
「Dさん!?」
その瞬間、ガオヴルムは内側から爆発四散した。
竜巻がうねり、やがて消える。
爆発の起きた場所にDが倒れていた。
193名無しになりきれ:2006/05/10(水) 20:29:35
「Dさんッ!?」
パルスがDのもとへ走る。
ジーナとレーテもそれに続く。
Dは倒れていた。
「生命の精霊が…」
パルスがヒーリングの霊法を使おうとしたが、やめた。
「どうしたの?パルス君」
心配そうにジーナが聞いた。
「生命の精霊が弱すぎる…このままじゃ…」パルスは唇を噛んだ。
「生命の精霊が弱いとどうなるの?」

「う〜ん、うまく説明できないけど…」
「もしかして、死んじゃったりするんですか!?」
レーテも不安げな表情になる。
「えっとね、僕たち全ての生き物には、生命の精霊が宿ってるの」
「生命力みたいな?」いまいちよく分からないといった顔のジーナ。
「そうだね、大体それであってるよ」
「じゃあ死にかけてるってこと?」
「違うんだ…今のDさんは風の精霊が強くなってるんだ」
(メダリオンの浸食が始まったんだ…)
精霊獣の力を目の当たりにしたパルスは、不安で泣きそうになった。
「とにかく、神殿に運びましょう!」
レーテの提案に、皆が頷いた。
>「とにかく、神殿に運びましょう!」
レーテちゃんの提案に頷く。
そういえばDはここ暫くで何度も死にかけてたわよね。
パルス君の説明は漠然としてよく分からなかったたけど、Dがかなりまずーい状況ってのは分かったわ。
麻袋のようにDを肩に担ぎ上げようとして、思いとどまる。
多分「こっち」の方が負担が少ないに違いない。
「それにしても、ホンットにDは大馬鹿なんだから!」
自分ばっかり矢面に立とうとするから、いつも貧乏くじばっかりじゃない!

Dを抱えたジーナは周囲を見渡した。昼間バザールを歩いたのは伊達ではない。ある程度街の地理は把握していた。
うん、ここからなら走った方が早いわね。
「皆、神殿まで近道するわよ、キリキリついて来てね〜!
ごめーん、バニーちゃんのお通りよ〜皆どいてどいてどいてどいて(ry――――!!」
騒ぎに集まった野次馬たちがギョッとして道を空ける。

俗に言う「お姫様抱っこ」でDを抱き上げたジーナは、神殿に向かって全力で街を駆け抜けた。
195貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/05/10(水) 22:12:07
「…夜中とはいえずいぶんと派手だねぇ、どうせなら収穫祭の「出し物」として客を稼ぎたかったがね。
  …キャメロンには悪いけど…ね、まあキャメロンには損失した品物ぐらいは保障するさ。
  場所は、まあしばらくは貸してあげるよ、キャメロンも散々だからネ。」
ライラック商会付近の建物の裏路地で壁に寄りかかり含み笑いをしながら独り言を呟く男が一人、
「二人組み」がライラック商会を地面へと沈み込ませ木材を操ったのもその中の一人が化け物になったのも、
もちろん先ほどの旅人達が見事それを倒したのもそして炸裂した化け物から「あのメダル」が出てくるのも、
全てをこの眼に収めていた、たまたまというわけではない、僕は以前からあの「二人組み」を監視してた、
いや、正確にはあの「二人組み」の上にいる奴を、
「さてと、これからどうしようかね、見たところ風の男はいま少し危険みたいだが、
  まだ「アレ」に取り込まれてるわけじゃない、今ならばまだ間に合う。
本当はぼくがいまここで風の浸食を抑えられることもできることはできるんだが。
ま、自分達で頑張ってもらうとしようか、そこまで酷い状態じゃない、
ここからじゃ聞こえないだろうが保障するよ。彼なら大丈夫さ、
それに…この程度で終わってしまうならば所詮はそこまで、時代に風を吹かすのは無理ってことだしね。」
おそらく旅人の一行が風の男を担ぐ、とりあえず生命の精霊が強くなる場所へと運ぶのだろう。
懐から煙草を取り出し一服する、騒ぎの付近にいつまでもいるのは本当は不味いが現在の僕は
サングラスをかけ服装もチンピラのものにして髪型を変えているので全くの別人だ、
もし見られても適当に誤魔化せる、それに元々この男は存在しないんだ、ゆっくり考えたって構わない。
「彼等が信用できるかどうかは分からないが、ぼくよりはマシかもね…それに、
  今回のことでぼくは目立たず楽して「ヤツ」の狙いも分かったし、
  怪我人は出たようだけど、これだけ暴れまわって不幸中の幸いにも死人は出なかった、今回の後始末ぐらいは引き受けるのが筋ってもんだ、
  「アレ」の力に取り込まれず、代式とはいい聖獣モドキを倒した勇気ある彼等にささやかな安息を与えてあげるかね…」
夜明けも近いせいかあたりは大分明るくなってきている。周りにも野次馬が集まってきた。
少し長居しすぎた、日が出てくればまた一日が始まる。この騒ぎを知った市民への収拾、ギルド内の混乱、
ヤツへの対処、やることは山積みだ。
「やれやれ、今日は長い一日になりそうだヨ。」
愚痴をたれ煙草を踏み消しぼくは裏路地を後にする。
196東風エド ◆koVuVl1hKg :2006/05/10(水) 23:00:21
劇薬の反動による激痛に耐えながら、瓦礫をひっくり返して探し物をするエド。
「あった、4本目…、もう1本見つかりますかね…。」
懐にナイフをしまいながら、探し物を続ける。
岩をどかして、木材を除け、隙間を覗く事を繰り返し、
しばらくして、目当ての物を見つける。五本目のナイフ、ではなく。
その手には血に塗れた、深い緑色をしたメダルが握られていた。
「深緑の方も無事発見、と」
服のすそでその血を拭い、腰のポケットに収める。
(北風の様子も気になりますし、この辺で切り上げますか。)

5本目のナイフの探索を打ち切りその場を離れ、彼は神殿の方へと足を向けた。
197☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/10(水) 23:49:08
前に見えるのはDさんを軽々と抱き上げて走るジーナちゃんの背中。
もう無理しちゃダメだって言ったのに…!
僕のせい…!? 風の霊法が浸食を助長してしまったのかもしれない。
「急いで!」
声が震えている。
「大丈夫。Dは不死身よ!」
少し後ろを振り向いてウィンクするジーナちゃん。
ありがとう。でも違うんだ、死ぬよりももっと恐ろしい事があるんだ…。
エルフは神を信仰しないんだけどまさにこれが困った時の神頼みなのだろう。
「貴方は…大丈夫?」
横を走っているレーテさんが心配して聞いてくれた。
でも僕は答えられなかった。
泣きそうな顔を見られないように俯くしかなかった。

僕らは神殿にかけこんだ。
「お願いします…! どうか…Dさんを…助けて!!」
198名無しになりきれ:2006/05/11(木) 00:21:51
「これは…イカンな、何があったかは知らんが…。とにかくそこへ寝かせなさい」

―商工神キヌド神殿治療院―
この街には、神殿が二つある、農耕神ボルニタと商工神キヌドをそれぞれ奉るものであり、
どちらにも診療施設が設けられている。
だが両神殿の信者の性質からか、農民や貧困層はボルニタ神殿、
裕福層はキヌドといった感じで棲み分けがなされている。
そういう理由で、ボルニタ神殿は慢性的に順番待ちの状態が続いており、
それを避けるためジーナとパルス、レーテはキヌド神殿の門戸を叩いた。

Dの様子をつぶさに調べ、精霊に語りかけ、棚から出した薬品をDの喉奥に流し込むエルフの医者。
「こんな症状の者は診た事がないが、薬物と魔法を併用して生命力を高める方向で治療を進めている。
 だが正直、どう転ぶかまるでわからんよ。ざっくり言って、助かる見込みは5分5分だな。」
パルスよりも遥かに老いた老エルフの見立ては厳しいものだった。

「ところで…、この治療を続けるならばだ、それなりに金がかかるのだが
 君達その辺大丈夫かね?」
199名無しになりきれ:2006/05/11(木) 00:38:13
「なんだと?!」
衛兵からの報告を受けたコリンは思わず叫んだ。
「馬鹿な…保有者2人を退けるとは…!」
ダンッ!とテーブルを叩く。
「メダリオンは!?持ってたメダリオンはどうした!?」
詰め寄るコリンに衛兵は圧倒されるが、何とか平静を保つ。
「は、現場を捜索させましたが…」
「奪われたのか!?」
「現時点では、何とも…」
「えぇい!役立たずがッ!!さっさと捜せ!!」
衛兵を突き飛ばし怒鳴りつけるコリンだが、
その表情は恐怖一色に染まっていた…
200名無しになりきれ:2006/05/11(木) 03:48:42
「お金…ですか?」
キョトンとした顔でレーテが答えた。
「そりゃあそうだ、神の奇跡が無償のものとでも?」
一同が互いに顔を見合わせ、一斉に暗くなる。
「いくらするの?」
「治療費その他全部込みで38万だな」
「さっ…さささんじゅうはちまんッ!?!?」
パルスが素っ頓狂な悲鳴をあげた。
この南方大陸ではGikoという貨幣が流通している。
一般的な家庭の1月の生活費が、約3000Gikoである。
「そんな大金払えないよ!!」
「そーよ!ぼったくりじゃないの!!」
パルスとジーナが激昂して司祭に食ってかかる。
「人の命はお金では買えません!」
大人しいレーテまで声を荒げてしまっている。
「じ…じゃあ…35万?」
引き攣った笑顔で、司祭が応えた。
201名無しになりきれ:2006/05/11(木) 11:28:24
>200
バーサーカーが突然現れて、神速の9連撃を破壊の鉄球を使って司祭にかました。

グチャグチャ………グチャ

頭、体、腕、腰、足、全てが潰れて見るも無惨な姿になってしまった。

バーサーカーはそのまま去っていった。
202名無しになりきれ:2006/05/11(木) 12:17:17
通りすがりの聖人が杖を一振り「リザレクション!」

粉々になった司祭を見事に復活させ、何事も無かったかのように立ち去った。
203名無しになりきれ:2006/05/11(木) 12:37:39
>202
ついでに、その聖人にDを治してもらった。
204名無しになりきれ:2006/05/11(木) 12:49:44
MPが足りない!
205名無しになりきれ:2006/05/11(木) 13:14:58
だが、エルフの飲み薬が有ったので聖人はMPを回復したのだった。
206名無しになりきれ:2006/05/11(木) 13:28:51
ふぉぉぉ、MPも回復した事じゃし……、
風に取り憑かれた哀れな男を癒してやると、するかのぅ、ごふぉっ
輝ける金色の…、いや違う、生ける屍を滑る数多の…、これはアニメイトデッドじゃったか…、
えーと、なんじゃったかのー、……そもそもここは何処じゃ??ばーさん、飯は、飯はまだかーっ!?
207名無しになりきれ:2006/05/11(木) 13:47:32
とにかくDは回復したのだった。
208名無しになりきれ:2006/05/11(木) 18:59:37
しかしDは後遺症で首から下が動かせなくなってしまった
209名無しになりきれ:2006/05/11(木) 20:01:41
Dは完全に復活するために、ナメック星に行ったのだった。
210名無しになりきれ:2006/05/11(木) 21:04:32


―――第1部・完―――
211設定投下:2006/05/11(木) 21:29:01
メロメーロ北東、ライン大河に五千の軍が陣を組んでいた。
南方大陸を二分する強国、ドラグノフ公国の軍である。
メロメーロはクラーリア王国とドラグノフ公国の国境に位置する自由都市だが、
ここ数年の間公国の領土拡大という問題に悩まされていた。
商工評議会が独立自治権を訴え、王国はその条件を認めたが公国はそうしなかったのだ。

「ロンデル司令、全部隊配置に着きました!」
テントの中に若い兵士が入って来て、報告する。
「ご苦労だ。評議会は何と応えたかね?」
公国南部方面軍第3師団長、ゲルタ・ロンデル大佐は落ち着き払った態度で兵士に尋ねた。
「ハッ!依然、沈黙を続けております!」
「そうか…コリンめ……下がって構わんよ、ご苦労だった」
「ハッ!失礼致します!」
兵士が出て行った後、ロンデルは深い溜め息をついた。
(…どうして分からんのだ!あのドアホウが!!)
ロンデルはかつての親友を罵った。
メロメーロ商工評議会会長コリン・ナソップを…


 【ドラグノフ公国】

統治者:公王ギュンター・ドラグノフ
人口:約570000人
首都:霊峰都市ガナン
軍事規模:約120000人
宗教:特に無し(公王を崇拝?)

元は南方大陸の小さな国だったが、瞬く間に強大な軍事国家になった。
公王ギュンターは龍人であり、300年前の龍人戦争の生き残りである。
古代魔法文明の遺産《ゴレム》を使い他国を侵略し続け、遂にクラーリア王国と大陸を二分するまでに至る。

《ゴレム》
古代魔法文明の遺産で、大型の馬車の様な外見の魔法装置。
人が乗り込み、操縦することで動く。
機動性、防御力、共に優れており、強力な武装を施された《ゴレム》は歩兵1個大隊に相当する戦力である。
212名無しになりきれ:2006/05/11(木) 22:01:14
フリーザ軍が現れた。
彼らの目的はこの星にあるという不老不死の秘宝をフリーザに献上するためである。

この軍のリーダーは、ギニュー特選隊と言われているエリート兵達の集まりの中で頂点に立つもの、ギニュー。

彼らは手始めにライン大河の北東に着陸。
近くに5000もの部隊が点在したために、肩慣らしとして彼の部隊を利用するつもりだ。

そして、戦いが始まった。
ギニューの命令の元に、次々と気功波を放つ惑星戦士達。

勝ったのはフリーザ軍だった
213名無しになりきれ:2006/05/11(木) 23:03:23
侵略戦争が始まって数年、国中の村々に不穏な空気がよぎっている。
臨時に雇われた傭兵の略奪行為や、民に課せられる重い税。
民衆の不満は募るばかり。

だが、民衆は虐げられるだけではなかった。
秘密裏にレジスタンスを造り、公国に革命を巻き起こそうとしているのである。

そして、レジスタンスを資金面で補助しているのはコリン会長という噂もある。
詳細はいかに……
214☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/11(木) 23:12:38
通りすがりのじーさん…ナメック星…ギニュー特戦隊…。
あまりの衝撃に一同の頭の中を変な妄想が駆け巡るのだった…。

そして長い沈黙の後。
「分かった、払うよ!!」
パルスは言い放った!
「ちょっと、払えるわけないでしょ!」
「えーと…私が二ヶ月歌えば…何とか…?」
驚くジーナとどこまでも健気なレーテ。

「昔々、デーモンスレイヤーの二つ名で呼ばれた操術師は言った。
“悪人に人権は無い”と!!
蠍のアジトにいってミスリル弦取り返すついでに金銀財宝全部奪い取るんだ!!」
一気にまくしたてる。司祭は呆れ顔で
「…えーと、君は本気でそんなことができると思っているのかね?」
「本気よ」
答えたのはジーナだった。
「いっつも冗談みたいな事を本気で言っちゃうんだから。
そうね、その手があったわね!」
215名無しになりきれ:2006/05/11(木) 23:13:43
また夢オチかよ
216名無しになりきれ:2006/05/12(金) 07:25:50
期待あげ
217☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/12(金) 10:09:48
「いやしかし…」
「いいでしょ!払うんなら!」
バキィ!
どんっと机を叩いた拍子に、古くなっていた机が真っ二つに壊れた!
「ひいぃ!」
司祭は恐怖に震えた…。
レーテはただひたすらおろおろしている。
「ちょっ、パルス君、ジーナさんを止め…あれ?」
ジーナが司祭を説得(?)している後ろで…
パルスはおもむろにDの革鎧に縫い付けられた、銀のメダルを引きちぎった!
そして、
「クッキー見っけ、いっただきまーす♪」
そう言って食べようと…
「な、なにしてるんですか――!? 
それクッキーじゃないですよ! ジーナさん、止めて!」
「こんなものがあるから…Dさんは……えいっ!」
一思いに食べてしまった。
「これでもう大丈…」
「とおっ!!!」
ジーナがパルスのみぞおちに思いっきりパンチを叩き込んだ!
「ぐぇっ!?」
メダルを吐き出して気絶する。
「もう!いい年して何でも口に入れたらダメじゃない!!
いくら銀は精霊に嫌われないって言ったって…おなか壊すわよ!
……でもメダリオンは没収しといたほうがいいわね。これ以上使わせるのは
危険だし…持っていたら敵に狙われるもの」
218『砕く拳』リッツ ◆dpB9krORU. :2006/05/12(金) 10:42:57
メロメーロから北に半日程の街道を、1人の青年が歩いていた。
雪の様な白い頭髪と健康的な小麦色に日焼けした肌が対照的な青年だった。
その首には大きなメダルを紐でぶら下げている。
恍かに光る乳白色のメダル…《躍動のメダリオン》を。

「あ〜あ、なんだか眠くなってきたな…」
俺は欠伸を噛み殺し、目を擦った。
昨日からずっと歩きっぱなしだ、いくら俺が『疲れない』体だとしても精神的にまいってくる。
それでも俺は休むことはできない、使命があるからだ。
公国軍がライン大河まで南下してきた事を、コリン議長に報告しなければ。
「大体…早過ぎなんだよなぁ〜、クソ公国の連中は!」
ここでぼやいたって仕方ないけど、思わず不満が口に出てしまう。
公国が他国を侵略し始めてから、もう5年になる…いや、
大陸制覇を目論む公王ギュンター・ドラグノフ率いる鋼の軍隊が、俺の故郷を瓦礫の荒野に変えてから5年だ。

故郷を失った俺は反乱組織《運命の牙》に入って、公国に復讐を誓った。
家族や、友達や、思い出を奪った公国を叩き潰す為なら、俺はどんな汚い事でも平気でやった。
メロメーロでコリン議長の側近になった、幼馴染みのラトルとエリサは元気だろうか。
あれからもう半年近く会ってないからな、会うのが楽しみだ。
219☆酒場のウェイトレス ◆QWE7YBXRW2 :2006/05/12(金) 11:50:22
メダルをパルスくんの服で拭いて、拾い上げる。
真っ青になっている司祭さんに振り返り、ジーナは満面の笑みを浮かべた。
「だけど変ねえ、前の町で治療した時はたったの3800ギコだったのにねえ〜?
これってどういう事なのかしらね〜。差額のお金は一体どこに行くのかしら〜ねえ司祭さん?」
後ずさりしていた司祭は壁際に追い詰められた。
キスできそうなくらいの距離で更に笑みを深くする。でも目は笑っていない。司祭は震え上がった。

「まあいいわ、とりあえずDは任せるから。もし何かあったら・・・分かってるわよね?」
司祭は壊れた人形のようにコクコク頷いた。
ジーナはパルスを肩に抱えて、すたすた歩き出す。
「あ、あの・・・Dさんの事、くれぐれもよろしくお願いします」
レーテは丁寧に頭を下げると、教会を後にした。

人目のつかない路地裏で、パルスの服の裏地にちくちくメダルを縫い付ける。
この中で一番メダルに詳しいパルス君に持ってもらうべきだとジーナは考えていた。
「それにしたって、どうしてクッキーと間違えるのかしらね〜?そんなにお腹すいてたのかしら」
レーテはふるふるとかぶりを振った。心配そうにパルスを見ている。
「あ、パルス君なら大丈夫よ〜手加減してるから〜!」
以前全く同じ状況で、ジーナがDを殺しかけた事をレーテが知る由も無い。
「う・・・・ううーん・・・・クッキー・・・!」
「あ、気が付いた?」
目を開けたパルスに微笑みかける。
「パルスさん!何でも口に入れたらダメじゃないですか!本当に本当に心配したんですよ」
レーテちゃんの言葉に。、パルス君は有頂天になっている。
ジーナは生暖かく二人を見守った。
私の存在を思い出してくれた頃、酒場に行こうと提案しよう。
情報収集と腹ごしらえは欠かせない。
220東風エド ◆koVuVl1hKg :2006/05/12(金) 12:37:58
○月×日晴れ
それで結局私はと言うと、Dを守るためにお留守番。
はは、こんな弱ったDなんて滅多な事じゃお目にかかれないし、守り甲斐があるってモンじゃないですか。
聞けば蠍の爪を襲いに行くとの話ですし、流石に現役の所属員が一緒になって襲うわけにもいかないわけで。
詰め碁でもしながらPTメンバーの皆さんを待つことに。

ああそういえば、ここ1週間ほど殺しをしていない。うずうずする。
近いうちに誰でも良いから誰か殺そう。
221旅の楽士レーテ ◆K.km6SbAVw :2006/05/12(金) 16:50:05
「問題はどうやって山賊のアジトを突き止めるか、ですね」
腕組みして、むぅ〜と唸るレーテにパルスが提案する。
「かなりの大人数だったからね、木に聞きながら足取りを追おう」
「そんな事できるの?霊法って便利ね〜」
「凄いですよ、パルス君」
ジーナとレーテ、2人の美女(1人は男だが)に褒められて得意満面である。

本来ならば、とてもこんな悠長なことをしている場合ではなかった。
しかし、先の襲撃の際に精霊獣が起こした地震により、中央広場の舞台が倒壊し収穫祭が10日延期されたのだ。
Dが戦列を離れたのは少し厳しい状況ではあるが、なんとかなるだろうと3人は考えていた。
222貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/05/12(金) 17:36:20
まずはギルドのみんなを呼び寄せないといけない。収穫祭も延期になったし、
今後の打ち合わせをしないといけないからな、
だがいま現在すべきは正確な情報の獲得、それまでは「オーダー」は使えない。
まだまだ時間ならある、なぜ例の「二人組み」が「あのメダル」を持っていたのか、
そして…、コリンがなぜ「あのメダル」を必要としていたのか、単純に力に魅入られるのもあるのかもしれない。
だが、もっと深いところになにかがあると長年の勘が言っている、

僕はまだ少し薄暗い町を闊歩して町の外れにある裏路地に小さく看板を構える酒場に入っていく、
普通に町の中で生活するだけならば十年かかろうと見つけられない場所にある酒場だ。
なんでそんな辺鄙なところに酒場があるというのかというと「普通の酒場」ではないからだ。
扉を開けると中は思ったより広く多くの人が集まっている。
ランプの薄明かりが灯っており部屋は蛍火のように儚く照らし出されている。
中々雰囲気のあるこの店は僕がよく来るところだ、居る客も見慣れたもの、
なぜなら「何時」も同じような顔ぶれだからだ。情報収集と簡単な指示を出すには
オーダーよりもナイトギルドのほうがずっと楽だ、ここにいるのは技官の中でも統率力を持っている
技官長が多くを占めるからだ。

「よぉヒッター、収穫祭が延期になったって本当か?」
「伝令が来たろ?本当さ、舞台が壊れちゃ仕方ないでしょ。
  まあ中止じゃないんだからさ、」
「地震ってのは怖いねぇ、」
「自然には逆らえないっていう良いお手本だねミューズ。
  分かったらキミもここの自然である仕事に逆らうなよ。」

「おいヒッター、なんか楽して儲かるいい仕事紹介してくんねぇかな?」
「ナマ言うんじゃないよパイソン、傭兵ギルドの仕事を請け負えって、
 働かざる食うべからずっていう諺もあるだろ?ほらほらっ、傭兵は傭兵らしくしろっての。」

「なあヒューア、ライラック商会潰れたらしいじゃねぇか
  あそこはキャメロンの場所じゃねぇか。なんかあったんだろ?
  あんたのことだ知ってんだろ?早く教えろよ。」
「ああ、そのことかい?地震だよ、地震、すぐ下だったみたいだね。
  本当にキャメロンはついてないヨ」

僕は適当に知り合いに軽い挨拶をしながらカウンターの方に向かっていく。
そしてこの店の「マスター」と一番話しやすい場所に座り笑いかける。
223貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/05/12(金) 17:38:39
「よ、レスター、元気してたか?」
「してなかったらここには居ませんぜ大将。
  あと毎回それですぜ、たまには違うこと言えないんですかい?」
「お前もいつもその台詞だな、本当に毎度毎度よく飽きないもんだ、」

僕はレスター(マスター)と毎度お馴染みの台詞を言い合いお互いに苦笑する。
レスターはなれた手つきで酒の入ったコップを滑らせる、僕はそれを受け取り少し口に運び喉を潤す、
毎度長い話しや大事な話しをするときはこれを頼む。喉が渇いてたら声がうまく出ないからな、
さて、なにから話そうか、そんなことを考えているとレスターが話しを切り出す。

「大将、ライラック商会が潰れたの、地震じゃないんでしょ?
   大将の勘通り前々からこの町らへんで怪しい動き見せてた二人組みでしたかい?」
「もちろん、ドンピシャだ、だがあの二人組みは所詮ただの駒
  (女の子の方はケッコー見所あったんだけどネ、尻とか。)
  あいつらコリンの屋敷に出入りしてたみたいだぜ。」
「コリンの旦那ですかい…、最近入ってくる情報は旦那ばっかりだ、
  公国に反旗を翻すとか、そのためにレジスタンスを結成しているとか…
  夜中に余所者の集団が旦那の屋敷に入っていったのを見た、なんてことも聞きますぜ。
  まぁ、どれもこれもキナ臭い情報ですがね。」
「!?……公国に反旗を翻す?…馬鹿な!
  確かにこの町はクラーリアとドラグノフの両国の間にあり最近は風当たりが厳しい。
  公国はどっちにつくのかしつこく催促をしてくる、
  だが…負けるのは目に見えている、どうやろうとも無理だ」
「でしょうね、あの旦那も馬鹿じゃない、だからガセじゃないかってもっぱらの噂でして。
   どうせ今回は最近失敗してばかりのキャメロンへの追い討ちじゃないんですかい?
   コリンの旦那、ギルドがこの町にだんだんと権力や影響力を持ってきてから
   目の仇にしてるみたいですぜ。」

レスターは客のグラスについた指紋拭き取りながら答える、ガセと思ってるらしいな。
だが、なんか引っ掛かる、もし、もしもだが喧嘩を売るとしたら…
無意識に金貨を右手で遊ばせながらぼくは真顔で酒の入ったコップを見つめる。
透明なコップにぼくのカッコイイ顔が映る、惚れ惚れしそうだね…おっと!
真面目に真面目に……考えているとふとコップに右手で遊ばせているコインが映る。
金貨…か…うん?金貨……金貨…コイン……そうか!分かったぞ。

「……メダル…」
ふと漏らした言葉にレスターが反応する。
「メダル?大将、メダルってのはなんのことですかい?」
「………………」
「まあ、大将、旦那がなにかやらかそうっていう噂流してるのは、
  どうせ最近あの旦那の反対派の連中でしょう。
  キャメロンの旦那の件はちと残念でなりやせんが、
  収穫祭の延期って問題があるんですし。そっちのほうに」
224貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/05/12(金) 17:40:41
全部言い切らないうちにレスターがぼくの表情になにか感じ取ったのか
話すのをやめぼくに問いただす。

「…………どうかしたんですかい?」
「収穫祭は中止になるかもしれないな、」
なんのなしのいきなりの言葉にレスターはおもわず反応する。
レスター「ヒッター!?なんでいきなりそんなことを!」
「なるかもしれない、っていっただけ、まだ決まってるわけじゃない。
  だが、俺の読みが正しければ、その公国に喧嘩を売るっていう情報は本当のはずだ。
  そして…………」
「そして、なんですかい?」
「分かるだろ、飛び切り良くないことが起きるんだ。
  とにかくだ、俺はいますぐにやらなくてはならないことができた。」
「……分かりました、それで俺はどうしたらいいんですかい?
  どうせまだ俺に用事があるんでしょ?」
「さっすが!この道10年だけあるぜ!いいかレスター?
  メロメーロの周辺になんか異変がないか見張りを出してくんないか?
  ギルドの内部でキミが信頼できる奴でいいからやっておいてくれ。」
ぼくは立ち上がりイスにかかっているコートを掴み、
勢いよく店の扉を開け外へと飛び出し走り出す。

「ふふ、大将、本当に忙しい人ですぜアンタは。」
ヒッターを見送ったあと楽しそうに独り言をつぶやくレスター。
「それじゃ、我らが当主である「ろくでなし」のために働くとしますかい」
グラスを拭き終わりレスターはその場にいる客達へと告げる。
「おい、ちょっと店仕舞いだ、お前ら朝まで飲んでっと罰当たるぜ。
  収穫祭の舞台の修理でもしな。」
その言葉を聞いた客達は文句を垂れながら店を出る。
レスターは扉に掛かっている札を「close」にし、静かになった店で少し酒を飲む。
「大将、アンタが動くと面白いことがおきる、俺はそれが好きでアンタについていってんでさぁ。
  今度はずいぶんと焦ってたみたいですが、どんなん見せてくれるんですかい?」

「さて、まずはコリンの屋敷に行かなくてはね、こういうときは本人の聞くのが一番だ。
  コリンの屋敷は、確かメロメーロの郊外だったな。」
ここから大体一時間ってとこか、全く面倒なとこに家建てちゃって。
「軽いジョギングじゃないかこれじゃ、もっと楽に移動できるもんが
  ないのかね?こう、飛んでいけるようなのがさ」
暇なので愚痴をいいながらコリンの屋敷方面へとぼくは歩いていった。
225[水鏡]:2006/05/13(土) 21:35:17
「どういう事!?私はもう戦えます!!」
[水鏡]が[死神]に抗議する。
謎の軽戦士との戦闘で負った傷は癒えた、既に力も取り戻している。
「今回の任務は[魔弾]と[紅蓮]に一任した。お前は無断行動した罰だ」
[死神]が突き放す様に、冷たい声で答えた。
「……ッ!」
正論の前に[水鏡]はそれ以上の言葉を続ける事はできなかった。

(くっ…!奴らを…殺すのは……私!!)
[水鏡]はテントから抜け出し、森へと向かう。
新たな[紅蓮]となったソーニャに、[北風]を殺させるのは[水鏡]のプライドが許さない。
(裏切り者、[北風]は私が殺す…)
[水鏡]はこの時はまだ気付いていなかった。
自分の意思がメダリオンに侵食され始めていたことに…
226☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/13(土) 21:42:01
酒場で僕は二人に話した。
メダリオンの正体は精霊王のカケラだったこと。
それは持つものを食らう禁断の遺物であること。
制御を失ったら最後、あの巨大なカメみたいになってしまうこと…。
「もう、そんな危ないもの食べるなんてー」
「そうですよー」
二人は呆れていた。とーぜんだ…、あの時一体何考えてたんだか。
「それから…いや、何でもない」
言いかけて…やめた。言ったら心配をかけるだけだ。
おっきいカメと戦ったときのウィンドストームはやっぱりキツかった。
反動でかなり霊力が落ちてる。

「胡散臭い盗賊団通らなかった?」
〔ちょっと見てませんね…〕
ジーナちゃんが買ってくれたクッキーをかじりながら木に聞き込み調査する。
「みんなもクッキー食べる?」
そう言って二人に笑いかけ、ふと不安が胸をよぎる。
今の状態でメダリオン適合者が出てきたら…僕は二人を護れるだろうか…。
227葉っぱのジョニー:2006/05/13(土) 22:49:20
ヤベェ!こいつはエマージェンシーだぜ!!
228葉っぱのジョニー:2006/05/14(日) 00:10:06
〔こいつはエマージェンシーだぜ!〕
樹の精霊が叫ぶ!
「えぇッ!?何があったの!?」
周囲の木々もざわざわと騒ぎ始めた。
〔ヤ…ェ…こ……エ……〕
不意に精霊達の声が途切れてしまう。
パルスは嫌な予感がした。
何とも言いようのない漠然とした不安。
精霊の力が消えていく、そんな気がする。
パルスは気付いていなかった。
いつも一緒にいたはずのシルフがいなくなっていたことに…
そして、服に縫い付けられたメダリオンが不気味な輝きを放っていることに…
229☆酒場のウェイトレス ◆QWE7YBXRW2 :2006/05/14(日) 07:47:45
パルス君が木に聞き込みをしながら先を歩く。
分けてもらったクッキーを齧りつつ後に続く。
あら、これ結構いけるじゃない。もっと買えばよかったわ。

「そういえば、メダルを持ってたら、誰でも能力を使えるようになるのかしらね?」
「さあ、どうなんでしょう」
レーテちゃんが首を傾げる。
「ああ、それは無理。ある程度適正が無いとね。・・・・・ホントどこに逃げたんだろうね」
言葉少なに答えたパルスの表情は硬い。
もしかしたら、木への聞き込みが上手くいっていないのかもしれない。
ジーナはにこっと笑ってパルスの肩に手を掛けた。
「だーいじょうぶよー。焦らずゆっくり行きましょ」
「パルスさんファイトです」
おお、レーテちゃんの応援は効くわね〜。パルス君は分かりやすいわ。

「盗賊の居場所が、ある程度絞れると良いんだけど」
クッキーと一緒に買った街周辺地図を開く。
「いくら何でも商隊を襲った辺りにはいないでしょ。もう片方の森かしらねー。
・・・・・・パルス君?どうかした?」
230旅の楽士レーテ ◆K.km6SbAVw :2006/05/14(日) 09:10:37
前を歩くパルスが突然立ち止まる。
「どうかしましたか?」
レーテの問い掛けにも応えず、何かに耳をすましている。
「パルスさん?」
「えぇッ!?何があったの!?」
慌てて周囲を見回してパルスが駆け出した。
「ちょ、ちょっと!?パルス君!?どこ行くの!!」
ジーナもパルスの異変に気付いて、レーテとともにすぐに追い掛けた。
「どこ?どこにいるの!?返事してよ!」
必死に叫びながら、何かを捜しているようだ。
明らかに様子がおかしい。
普段のマイペースなお調子者の姿ではなかった。
2人には精霊を見ることはできない、だからこそパルスが慌てる理由が判らなかった。

「……見つけた」
森の中を走る3人を、獲物を発見した獣の様な目で睨む[水鏡]が狂気の笑みを浮かべる。

「パルス君!!止まりなさい!!」
ジーナが声を荒くして呼び止めようとして、違和感を感じる。
「…?」
辺り一面の木々が枯れ果てていた。
まだ季節は『息吹の節』の筈だ、新緑の時期なのに木が枯れるのは変だ。
走っていたパルスが立ち止まった。
ジーナとレーテが追い付いて、気付く。
3人の前に、青いローブの女性が立っていた。
「ぅ…フ…フフ……見つけた…」
どう見ても正気ではないその表情に、3人は戦慄した。
231[水鏡]:2006/05/14(日) 21:52:03
「…ァ…ハ…ハハハ…殺…す…」
[水鏡]の体が輪郭を失い、霧に変わる!
《水流のメダリオン》の能力、ミスティ・ミストレスが発動したのだ。
「こいつ、2度目の襲撃の!?」
パルスが霊法で応戦しようと構える。
(霧の体を吹き飛ばすのは…風!)
「行くよ!シル………!!」
はっと気付く、霊法を使うにはその属性の精霊がいないと使えない。
「…き…た…か……ぜ………!?」
[水鏡]が突如苦しみ始めた。
「あ…ァあ…うアッーッ!!」
蒼い霧が一箇所に集まり、更なる変化が始まった。
「まさか!…精霊獣!?」
パルスの悲鳴じみた声に、ジーナとレーテが驚いた。
「でも!精霊獣ってウマウマガメみたいなヤツじゃなかったの!?」
「そんな訳ないでしょ!?あれは…水の精霊獣…」
ジーナのツッコミにマジレスするパルス達の前に、1匹の巨大な蛇が顕れた。
「水の精霊獣…スフィーニル!!」
232†黄昏のレーテ† ◆K.km6SbAVw :2006/05/14(日) 23:07:29
蒼い大蛇の眉間に輝くメダリオン、そしてパルスの持つメダリオンがさらに輝きを増していく。
(まるで…共鳴して…いる?)
レーテが背負ったハープを地面に突き立て、大きく息を吸い込んだ。
「2人共!!耳を塞いで下さい!!!」
聞いた事のないレーテの大声に、一瞬たじろぐが2人はすぐに耳を塞ぐ。

呪歌…力在る声と旋律に依って世界に干渉する、特殊な歌唱法である。
音を媒介とするが故に、聴くことが発動の絶対条件なのだ。
レーテが耳を塞ぐことを指示したのは、つまり聴いては危険な呪歌という訳だ。

〜♪〜
玖遠依りて 天統べりし 荒き御霊
永劫悠久の澱へ捕らへよ
朽ちるるを識らぬ 虚いの数多を
鬥は開き 鬥は迎え 鬥は綴じるる…
〜♪〜

凜とした唄声が、立ち枯れの森を包み込む。
「う…うあぁ…!?」
「なに…これ…」
パルスとジーナが苦悶の表情で膝を附く。
(体が無くなってくみたいだ…)
パルスが感じたことは、間違いではない。
レーテが今唄っているのは《環滅の哀歌》、それは精霊を滅ぼす禁断の唄…

『シャアアアアアアアアアアッ!!??』
スフィーニルがのたうちまわる。
呪歌の力は確実にその効果を発揮した、精霊獣は精霊そのものだ。
しかしながら倒すとまではいかなかったようだ。
この《環滅の哀歌》は唄い手の体に宿る生命の精霊をも消滅させるのだ。
つまり、最後まで唄い切るというのは、唄い手の死を意味する。
「ハァ…ハァ…皆さん、もう大丈夫です!」
〜♪〜
さあその手に剣をとり 戦場駆けよ
汝は孟き者 汝は剛き者 汝は勇む者
さあその脚で今を越え 未来を目指せ!
〜♪〜
レーテが次の唄に切り替える、不思議な旋律が、パルスとジーナに流れ込む!
力が、勇気が、消えかけた闘志が、パルスとジーナに甦る!!
「さあ…戦いはこれからです!!」
233†見た感じ軽兵士† ◆CYuXtvnAKk :2006/05/14(日) 23:50:30
「ど、どうしよう、迷っちゃったよ」
木々の陰で光が通らず不気味な雰囲気の森でビクビクしながら歩いている男が一人。
中性的で頼りない顔をしているから度胸に期待はできないかもしれないが
誰かが見ていたら明らかに「腰抜け」と笑われるだろう。
「な、なんでここに来ちゃったんだろう、町に行きたいのに」
いまにも泣きそうな声を発しながら男は行先が決まらないのかあたりをうろうろとしている、
薄い胴当てに籠手、帯刀という兵士らしき格好が滑稽さに拍車をはける。
「あ!あ、あれは道かな?だれかが通ったあとがある」
男は人に踏み倒され少し後が残っている道のようなものを見つけた。
「と、とにかく行ってみよう」
なんの考えもなしに男は歩きだす、男にとって、
いや普通の人にとって人が通った道を通るというのは
ごく自然なことなので仕方ないのかもしれない、
ここにいても迷うばかりだろうし望みをかけるしかなかった。
うっすらととしか見えない後を懸命に探しながら前を進む男。
葉の擦れ会う音に何度もビクつきながらも歩いていく。
すると先に木々のない見通しがいい円形上の平地があるのを発見する。
「…あ、抜けたわけじゃないけど、でもよかった、
  それに人もいる。た、助かった、町への道を…あわよくば町まで一緒に」
前で少し変わった組み合わせの三人にと一人が対峙している。こちらにはまだ気付いていないようだ。
この人為的な地形に両者の睨み合いから明らかに不自然で警戒するべきだが
男は森を抜けられるかもしれないという安堵感で一杯でそれどころではなかった。
「あ、あのぉ、もしそこの人達…え!?」
三人組みに向かって走り出そうとした時、
青いローブの女の輪郭がぼやけていき霧になっていく。
「え!?…えぇ!?」
男は自分の目を擦りなにが起こったのかを確認している。
だがどう見ても女は霧となり消えた。
状況を掴めずに唖然としている男にもう一発特大の事象が起こる。
霧が集まっていき蛇、いや、もはや竜といったほうがいいようなものになる。
「……あー、なるほどね、これは夢だ、夢なんだ」
男の頭は爆発寸前まで追い込まれていた、御伽噺。
男の子ならだれでも聞かせられるような英雄伝や冒険談、
そんな普通から逸脱した世界の怪物が目の前にいる。
しかも幻でもなんでもない、いつも感じていた現実というものが崩れ去っていく。
男がそんな状況に付いていけるはずもなかった。
恐怖かそれとも歓喜なのか分からない大笑いをしながらへたへたと座り込む男。
「ハハハッ、僕もう駄目だ、死んじゃうよこんなの、フフハハ。」
その時すっかり存在を忘れてしまっていた三人組のハープを背負った人が
なにかをやろうとしているのが目に映る、するとなにやら音が聞こえる。
詩を歌っているようだ。
「こ、こんなときになにをやろうって言うんだ!……うっ!ぐわぁぁあっ!」
楽士の放つ音が耳に入り男はあまりの苦しさに大声を上げのたうち回る。
全てが無くなっていくような音、どこまでも深い場所に堕ちていくような感覚。
必死に抗うが防ぎ方を知らない男はどんどん衰弱していく、耳を塞ぐ力すらももはやない。
「こ、これは……だ、駄目だ、限界……」
男の精紳は限界に達し意識の最下層まで足を踏み入れる、
もう終わりだと思いかけたがだんだんと音が無くなっていく。
最後の力を使い前を見ると確かにハープから音は消えた。
そして違う曲を弾き始めるがもうなにがなんだか分からない。
男の頭の中には音など入ってこなかった。
「音が……止ん…だ?……あの音は。
  …情けないや…折角消え…たのに…やんなっちゃうな……もう」
三人組がようやく男の方に気付き慌てているが男はもうなにも分からなくなっていた。
そして地面に全身を着け意識を失う。

234触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/15(月) 00:33:39
呪歌、それは精霊力に直接干渉する驚くべき力だった。
二曲目を歌うレーテさんの声はすごく綺麗で…それでいて力強くて。
きっと勝てる。
今度は収穫祭で彼女の歌を聞いて思いっきり拍手しよう。

「行くわよ!」
ジーナちゃんが槍を構えて走り出る!
水の流れそのもののようなスフィーニルは、彼女を締め上げようと身をくねらせる。
「ちょっと、やらしいわね!」
ジーナちゃんは器用に避けつつ、槍を振るっている。
スフィーニルは彼女を払い飛ばそうとその巨大な尾を振り上げた!
「!?」
「させるかっ!?【ストーン・ブラスト】!!」
重力に反するように地面から大量の礫が弾け跳び、スフィーニルの鱗に突き刺さる!!
その衝撃に尾は狙いを外し、地面に叩きつけられた!

木々は水を吸い尽くされて枯れ、空気は凍てついたように停滞している。
今使える精霊は大地と精神、そして光と闇ぐらいしかない。なら次は…

「【ウィル・オー・ウィスプ】!」
輝く光球をできる限り多く召還する。霊法師なら誰だって使える初級の魔法。
これを囮にしてジーナちゃんが致命打を叩き込むチャンスを作る!
銀、それは魔法的な性質を帯びている金属だ。精霊獣をしとめることもできるだろう。
「こっちだ、スフィーニル!」
そう言って光球の内の一つをスフィーニルにぶつけ、弾けさせた。
235[水鏡]:2006/05/15(月) 01:25:01
光球が炸裂して、大蛇の尾を吹き飛ばす。
『シャアアアアアアアアアアッ!!!!』
本来ならば、そのダメージは瞬時に復元される筈だったが…
呪歌によって精霊力が乱されたスフィーニルから、復元能力が欠落していたのだ。
「ロングスピアねこぱーんち!!」
その隙にジーナが渾身の力を込めて槍を突き刺す!
「えぇぇぇっ!?それパンチじゃないし!」
パルスが思わずツッコミを入れた。
「これからッ!!!」
ジーナが槍をさらに捩込み、大きく振りかぶる!
「でええぇぇやあぁぁぁあっ!!」
乾坤一擲の掛け声と共に、槍の尻に拳を叩き込んだ!!
「そ…そういう意味だったんですね…」
レーテが呆けた様に呟いた。
銀の長槍で串刺しにされ、スフィーニルは悶え苦しむ。
「トドメ!お願いよッパルス君!!」
ジーナがその場を飛びのき、後方のパルスに向かって叫んだ。
236☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/15(月) 10:06:08
ジーナちゃんの攻撃が見事に入った!
「任せて!」
残りの光球全てを上空に浮かび上がらせ
「消し飛べ――ッ!」
断末魔の苦しみに悶えているスフィーニルに一気にぶつける!
数多のの眩い光が弾け、膨大なエネルギーが炸裂した!!
ジーナちゃんはまぶしさに顔を伏せる。
彼女が顔を上げたとき
「―――――――!!」
スフィーニルは無言の悲鳴をあげ、大地に横たわり
氷が溶けるように消えた。

その場に残ったのは銀の槍と、それから…
持ち主を失い、光を発さなくなった水流のメダリオン。

「やりましたね!」
レーテさんの言葉にVサインをつくり
「へへっ、僕にかかればどうってことないよ!」
「すごいですパルスさん」
大嘘だ……内心ヒヤヒヤだった。
上位精霊の魔法なんて気安く使うもんじゃないと本気で思った。
あいつをやっつけたのは果敢に接近戦を挑んだジーナちゃん、そして
自分の生命力を削ってまで歌ってくれたレーテさんなんだよ。ありがとう。
フラフラしているレーテさんに肩を貸し
「レーテさんの歌、今度もっと聞きたいな」
「そうですねー、じゃあ《環滅の哀歌》を」
「それだけはやめてー」
そんな冗談を言い合っていると背中に生暖かい視線を感じた。

ジーナちゃんがこっちを見てニコニコしながら槍とメダリオンを拾っていた。
「さ、行くわよー……ん?」
ジーナちゃんが向いたほうを見ると…
「あわわわっ!? 行き倒れ!?」
「た、大変です…!《環滅の哀歌》に巻き込まれたのかも」
僕らは行き倒れっぽい人に駆け寄った。
往復ビンタで起こそうとするジーナちゃんをなんとか止めて【ヒーリング】をかける。
虚弱体質のためさっきの歌で死にましたなんてことは…ないよね?頼むから起きてね。
237†見た感じ軽兵士† ◆CYuXtvnAKk :2006/05/15(月) 19:34:12
暖かいものに包まれ男の意識はだんだんと覚醒に近づいている。
「う……うぅ……あれ?…僕は、僕はなにを………痛っ!」
上半身を起こすと頬に叩かれたような痛みが刺す。
頬は赤くなりむくんでいる。
「あ!起きた!良かったぁ〜」
少し目線を上へと上げると頭に変なものを付けた人が言う。
他にもよく分からない二人が男を見下ろしている。
「あ、貴方達は……?……ここはどこですか?」
男は周りを見回しなんとも不思議そうにしている。
自分がさっきまで歩いていた場所さえも不思議に映るらしい。
「ぼ、僕は……なんでこんなところに、
  確か僕は……僕は……僕はだれなんだろう。」
周りに衝撃が奔る、男は記憶を失っていたのだ、
おそらく先の呪歌が原因の一旦だろう。
その表情を見れば男が虚偽をしているようには映らない。
心の底から分からないのだ。男が状況をつかめずにその場でただ呆然とするしかなかった。
三人組はなにやら状況を把握して色々と言っている。
「これどうするの?」
「えっと、どうしましょう。」
「呪歌の影響なのかな?」
「えぇ!?僕のせいですか!?」
「私がひっぱたいたせいかも。」
あれこれ言っているが男は全く状況が掴めていない。
その内段々と見ているのに飽きてきたのか口を開く。
「あ、あの、皆さんは、僕のことを知っているのですか?
  そんな詳しくなくてもいいです、ただこのままじゃ
  全然分からないんですけど。」
三人は顔を合わせウェイトレス姿の女性が
代表者のほうな形で一歩前に出て男に早口で捲くし立てる。
「えっとねぇ、私達がとあるモノと戦ってたの。
  それで戦っている最中にこの吟遊詩人みたいな人がなんか効果がある歌をうたって。
  その歌がとってもヤバイものでそれでたまたまアナタが通りかかったらしくて、
  その歌を聞いちゃってズドンッ、それで記憶がパー」
「……はぁ、そ、そうなんですか……??」
男は説明をされてもさっぱり分からない風だったが、
とりあえず記憶を失ったことだけは理解したようだ。
男はなにやら少し俯き考えたかと思うと鞘に納まった剣を支えにして立ち上がる。
フラフラしてて見るからに危なっかしい。
「そ、それでは、色々とお世話になりました、」
そう言うと男は町とは全く逆方向に体を向かせ歩き出そうとする。
記憶を失っているいまここの地理や地形、
現在居る場所さえも分からないのだから当然といえる。
男の危なっかしさを見かねてか、もしくは、
自分の歌が原因でこうなってしまったという責任なのか吟遊詩人が男を引き止める。
「そっちは町の方じゃないですよ」
「町……町があるんですか?」
「よかったら一緒にどうでしょうか?
  丁度戻るところですし」
男の暗い顔に希望が差し込む、記憶のない今はとにかく町に行きたいのが普通だ。
「……あの、もし僕も行っていいのなら、お願いします。」
深々とお辞儀をする。


238☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/15(月) 22:21:47
前を歩くジーナちゃんがレーテさんをつんつんとつつく。
「レーテちゃん、ミスリル銀奪還は!?」
「だってこの人放っとくわけにいかないじゃないですか。
まだ収穫祭までは日にちがあるので大丈夫です」
軽兵士風のお兄ちゃんが僕に聞いてきた。
「あの…貴方達は旅芸人か何かですか?」
「旅芸人…!?」
…うさみみバンドと触角と歌い手では確かにそう見えるかもしれない。
「あはは、違うな〜、冒険者やってるの。うさ耳のジーナちゃんはすごく強い戦士。
ハープ背負ってるのがレーテさんで歌が上手いんだよ。
僕は霊法師のパルス。よろしくね」
軽兵士風のおにーちゃんは僕とジーナちゃんを代わる代わる見た。
まあ普通信じられないだろう。
「でね、レーテさんのミスリル弦が蠍の爪っていう盗賊団に奪われたから
アジト捜してたんだ。何か噂とか聞いたこと無い?」
「………えーと…」
「ごめんごめん、そっか、知ってたとしても忘れちゃったから分かんないよね」
239☆酒場のウェイトレス ◆QWE7YBXRW2 :2006/05/16(火) 01:42:47
ジーナは少し考えてから、町へ戻るというレーテの肩を叩いた。
「ねえレーテちゃん、町へ戻るなら、念のためミスリル銀の注文もしておいたら?
貴重なミスリル銀でも、盗賊たちに価値がわかるとは思えないもん。分かったとしても、万が一処分されてたら困るでしょ」
まあ注文しても予定通り入荷するかどうかは分からないし、Dの治療費を稼がなければならないので、
どのみち蠍の爪の元へは行かなければならないのだけど。
収穫祭には間があるし、選べる選択肢は多ければ多い方がいいと思うのよー。

パルスくんにさっきの事やメダルの事を詳しく聞きたいのだけど、第3者がいるので聞くに聞けない。
とりあえず棚上げして、メダルは荷物の中に押し込んだ。
「あの・・・」
レーテちゃんが遠慮がちに、記憶の無い青年に声をかける。
「荷物を確認するのはどうでしょうか・・・。何か記憶の手がかりになるものがあるかもしれませんよ」
「そうだね、それがいいよ。せめて名前くらいわからないと不便だしね」
パルスくんも頷く。
「そ、そうですよね!見てみます!」
青年は自分の荷物を解きはじめた。
荷物は小分けされていてとても見やすい。
もジーナのように、魔法のバックのように手当たり次第に放り込んだ訳では無さそうだ。
この人、割と几帳面だったのかもしれないわねとジーナは思った。


荷物の中には、丁寧にたたまれた地図らしきものがあった。
「ねえ、これは地図?見てもいい?」
パルスくんが指差した。
「は?はあ・・・構いませんが・・・」
広げるとそれはメロメーロ周辺の地図だった。森付近の上に赤い丸と、「現在地」とだけ書き込まれている。
「何だろこれ、もしかして宝の地図かな〜?」
「えー?宝の地図に現在地は無いでしょ〜」

もっとよく探せば、もしかしたら青年の身元の手がかりになる物が出てくるかもしれない。
240『砕く拳』リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/05/16(火) 05:13:39
一方その頃、メロメーロの街

夜明け前、皆が寝静まり街が静寂に沈む頃、俺はメロメーロの街に辿り着いた。
半年ぶりの街の景色が、随分と懐かしく感じる。
通りに人はいない、そりゃそうだ。時間が時間だけに、まだ起きてる者は少ないだろう。
俺はレジスタンス組織《運命の牙》から預かった伝書を届ける為、ここに来た。
しかし、その前に会っておきたい人がいる、俺はその人の家に向かった。


「リッツか?久しぶりだな!」
俺を出迎えたのは議長の補佐を務める、ギリアン・コンラッドだった。
俺にとっては父親のような人だ。
戦災孤児になった俺やラトル、エリサを引き取ってくれた恩人…
「お久しぶりです、コンラッドさん」
「疲れただろう?さぁ中へ…」
コンラッドさんがそう言って裏口の鍵を開けてくれた。
家の中に入ると、俺はすぐに用件を切り出した。
「議長に面会をお願いしたい。コンラッドさん、頼めるかな?」
「むぅ…、今はコリン様は多忙でな。まさか急な事か?」
渋い顔をするコンラッドさん、そういえば確かもうすぐ収穫祭だったっけ…
「牙から伝書を預かってる。かなり急ぐんだ、頼むよ」
俺の真剣な表情から、事態の深刻さを感じたんだろう、コンラッドさんも真剣な顔になる。
「公国軍が、ライン大河まで南下して来た」
「馬鹿な!?早過ぎる!」
「あぁ、早過ぎる。だから俺が戻ってきたんだ」
「軍の規模は!?…それよりベルカン様は何と言っている!?」
ベルカン・オーウェン伯爵、公国の貴族だがレジスタンスの後援者の1人だ。
「伯爵の答えが俺だよ、コンラッドさん。いざとなったらラトル達と合流して街の防衛に回る」
「…………………」
ラトルの名前を出した途端、コンラッドさんの顔が曇る。
「コンラッドさん?」
放心状態のコンラッドさんを見て、俺は何か…とてつもなく嫌な予感がした。
「リッツ…実はな……」
コンラッドさんが重い口を開き、俺に全てを打ち明けて…


地獄の悪鬼の如く怨嗟に満ちた雄叫びが、黎明の街を包む静寂を引き裂いた…
241†見た感じ軽兵士† ◆CYuXtvnAKk :2006/05/16(火) 23:50:18
荷物にあった地図、男は記憶を失っているからさっぱり分からなかったが。
なにか大事なものだったかもしれないという考えは持った。
皆が夢を膨らまし地図を見ている間に男は更に何かないかと自分の荷物らしいものを漁り続ける。
すると一枚の小さいプレートのようなものを発見する。
盾に槍が二本交差されている紋章が入っているが男にはさっぱり分からない。
「なん…だろう、これ……ハインツェル…?」
プレートの内側には人名と思われる名前が刻み込まれている。
「ねぇ、これって人名じゃない?」
「そうみたいですねぇ。」
「君のだよね…、ハインツェル、ハインツェルかぁ。宜しくねハインツェル」
三人組が何時の間にか男のプレートに刻まれた文字を覗き込んでいる。
「え、僕ですか?」
「他にだれがいるの?」
「……そ、そうですよね、えっと、宜しくお願いします」
ハインツェルらしき男はまだ慣れていないようだが応答する。
この先名前がなくてもなにかと困る、
本名でも偽名でもつけておいたほうがいいだろうと思ったのだろう。
それに対して三人は各自自己紹介を済ませ男と顔見知りというレベルになった。
「さて、これからどうしますか?名前ぐらいは分かりましたけど」
「というか僕らもやることがあるしね。」
二人が悩んでいるとウェイトレスの格好をした女性、ジーナが挙手してみんなに言う。
「ハイハーイみんなちゅうもーく!ちょっと提案があるんだけどいいかな?」
242☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/17(水) 09:38:27
ジーナちゃんが地図を広げて言った。4人で地図をのぞきこむ。
「今この辺ね。で、町がここ。印が書いてあるのがここ」
「そこの方が町より近いですね」
「そうなの。あなた、ここに行こうとしてたんじゃない?
町よりこっちに行ってみない?」
「そう…ですね。町に行ってもどうしていいか分からないし」

「じゃあ蠍の爪はひとまず置いといてーお宝探しに行こう!」
「置いてるうちに忘れないでくださいよー」
レーテさんがツッコミを入れると同時に
ハインツェルくんが意味ありげに呟いたのが聞こえた。
「蠍の…爪………」
243名無しになりきれ:2006/05/17(水) 11:08:54
此処は闇の中、光届かぬ深淵の底

「水鏡が堕ちた…」
黒装束の男が抑揚の無い冷たい声で呟いた。
「やはり、真なる《継承者(サクセサー)》でなければ…喰われますか」
派手な衣装の男が、ニヤニヤと笑いながら壁にもたれ掛かっている。
「どうします?そろそろ、蠍を切りますか?」
「…まだだ…まだ、利用価値はある」
その答えに、派手な衣装の男は溜め息をつき、肩を竦めた。
「利用価値、ねぇ…ですってよ?お嬢さん?」
派手な衣装の男が、あらぬ方へ声をかける。
「どういう事だか、説明してもらおうか?[死神]」
闇の奥から現れたのは、炎の如く赤い髪の美女だった。
蠍の爪の首領、ゴート・ダカッツの娘にして灼熱のメダリオンの保有者…ソーニャ・ダカッツである。
「彼女には知る権利があると思いますよ?ジュリアス様」
死神、そしてジュリアスと呼ばれた黒装束の男が、ゆっくりとソーニャに向かって歩いてくる。
「アンタらの目的は、一体何なんだい!?」
ソーニャの声に若干の脅えが混じる。目の前を歩いてくる男の強さを知っているからだ。
「フン…目的か、実に簡単な事だ」
突如ソーニャの背後からジュリアスが小さく囁く。
「全ての鍵を手に入れ、門を開く…」
汗が止まらない、喉が渇き、頭の中が真っ暗になる…想像を絶する恐怖。
ソーニャは堪らずへたり込んだ。と同時に闇が消え、自然の岩肌が見える。
「ジュリアス様も人が悪いなぁ、かわいそうに…こんなに怯えちゃって」
派手な衣装の男がソーニャに歩み寄る。
「教えてくれ[魔弾]…奴は、奴は何なんだ?」
震えるソーニャが精一杯の声を振り絞り、問い掛ける。
派手な衣装の男…[魔弾]が、にっこりと笑顔で首を横に振った。
244†黄昏のレーテ† ◆K.km6SbAVw :2006/05/17(水) 12:31:04
「でもさ〜すごいよね!呪歌って」
パルスがにこにこ顔でレーテに話し掛けた。
「そ、そうですか?」
少し照れているのだろう、ほんのりと赤くなるレーテ。
「そうよ、あの大きなヘビをフラフラにしちゃうんだもん」
枝を槍で掃いながらジーナも、うんうんと頷く。
「もっと知りたいな〜、ねぇねぇ」
「で…では、呪歌について説明しますね」
レーテが応えると、パルスの顔がぱぁっと輝いた。


呪歌は歌い手の、歌唱力・演奏力・意思力の3つの要素が重要になります。
力在る言葉で構成される歌詞からその力を引き出す為には、強靭な意思が必要です。
また歌唱力と演奏力は、そのまま呪歌の威力に直結しておりますので当然重要です。
まずは声です。歌うのに声の美しさは重要ですからね。
そして楽器。曲には楽器との相性がありますので、楽器次第では呪歌の効果に影響が出たりします。
なので同じ曲でも私と他の歌い手では、効果に差が出てきたりするんですよ。
それに楽器によっては歌うことができない物もあるんです。
そう、吹くタイプの楽器ですね、笛とか。
歌唱という要素が無いので、他の楽器より演奏できる呪歌の種類は少なくなります。
しかしそれは決して欠点ではありません。
笛の呪歌は歌唱が不要ですから、より強い意思を演奏に乗せることができるんです。
また効果発動範囲を自在に限定可能なのも、笛の呪歌の特徴なんです。
笛の呪歌士は少数派ですが、冒険者にはぴったりかもしれませんね。
だって、常に味方だけを選んで演奏できるんですから。


「便利なんですね、呪歌って。初めて聴いたけど確かに強烈でした」
ハインツェル、記憶を失った青年が笑った。
彼の記憶が失われた原因は、レーテが唄った禁断の呪歌だった為、レーテがしゅんと萎んでいく。
「あ、いやそうじゃなくてですね!」
慌てて訂正するハインツェル、そんな光景にパルスとジーナが笑い合う。

彼らは知らない、この後に待ち受ける悲劇を…
そして確実に忍び寄る、大陸全土を巻き込む戦乱の影を…
245☆酒場のウェイトレス ◆QWE7YBXRW2 :2006/05/17(水) 19:28:05
「新しいミスリル弦に変えた後の演奏はまた一味ちがうんでしょうね。楽しみね〜」
ジーナは行方を遮る下草や枝を払いつつ、うっとりとジーナは言った。
「ミスリル弦?」
「ああ、ミスリル弦っていうのはですね、…」
不思議そうなハインツェルに、レーテが手短に、ミスリル弦と盗賊団について話した。
そらからボッタクリの司祭の事も。
それにしても音楽に関する話題のレーテちゃんは、まるで別人みたいね。
知ってる話なのに、パルス君は目をきらきらさせて何度も頷いている。
ほほえましい風景に、ジーナは一人ニコニコした。

「そうだったんですか。それは大変でしたね。仲間の人、早くよくなると良いですね」
ざっと話を聞いたハインツェルは気の毒そうに相槌を打った。

「ところでパルス君。さっきなんか様子がおかしかったみたいだけど、どうしたの?
体の方は大丈夫なの?」
獣道に出たので、暫くは枝払いしなくても良くなった。
ジーナはこのときとばかりに、ひそひそパルスに耳打ちする。

――――パルスは、すぐに答えようとはしなかった。
「・・・・・うん。そうだね。話しておいたほうがいいのかもしれない」

珍しく真面目な顔で、パルス君が話し始めた。
246†チェカッサ† ◆7h50UVLF.w :2006/05/17(水) 23:19:36
お義父さん、お義母さん、お元気ですか。
私は元気です。
元気ですが今、ピエロをやってるです。
何故かって?私が聞きたいです。

街道。
夜とはいえ喧騒は未だ収まり切らぬ町のメイン・ストリートにて。
その路傍にて玉乗りをしながら数多の大道芸を披露する奇妙な道化師がいる。
ジャグリングや手品など、その芸の多種多様さはなかなかのものがあるようで、
一瞥して通り過ぎるだけだった通行人も立ち止まり、いつしか小さな人だかりとなっていた。

「はい、ハトが出るでーす」
ピエロというものは基本的に喋らないのが本格的であるとされるが、このピエロは喋る。
「はい、さらにハトが出るでーす」
顔はメイクというより落書きに近く、ピエロによくある白塗りはしていない。その分鼻につけた赤い玉が目立つ。
「はい、またしてもハトが出るでーす」
腰に不格好にぶら下げた刀がピエロの格好に驚くほどミスマッチだが、
何らかの手品に使われると思っているのだろう、観客は特に気にする様子はない。
「はい、こんなところからもハトが出るでーす」
一番前で見ていた観客の男の帽子を取り上げ、それにハンカチを被せてハトを出す。
「以上です。ご観覧ありがとうございましたです」
深く辞儀をしながらピエロは被っていた帽子を外し、ひっくり返して差し出す。
その中にコインや紙幣が投げ込まれていき、ショーの終了を如実に表す。
少し経てば先程までの人だかりも姿を消し、そこでピエロが後片付けをしていた。

私は刀を修行するために旅に出た筈なのに、なぜこんなことをしているのでしょう?
そんなことを考えながら、私は今日も元気です。
247☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/18(木) 00:58:03
そっか、ジーナちゃん達は精霊の声が聞こえないんだったよね。
精霊力が消えていくことの怖さは、それを感じられる者にしか分からない。
「あの時…急に精霊の声が聞こえなくなって…
いっつも連れてたシルフもいなくなって…木が全部枯れてたでしょ?
きっと暴走した流水のメダリオンが他の精霊力を打ち消してしまったんだ。
それってすごくいけないことなんだよ」
この世界は精霊力がバランスよく存在する事で成り立っている。
メダリオンはいとも容易くその均衡を崩す。使うものの精霊力までも。
人間は…支配されつくされるまで気が付かない。自分が崩れていく事を。
そして、気が付いた時にはもう手遅れなんだ。
あの青い女の人もまたメダリオンの餌食になったうちの一人なんだ…。
疾風のメダリオンを見つめる。勝手に持って来たから今頃起きて怒ってるかな。
でも…
「Dさん…こんなもの…返せって言わないでくれたらいいな…」
「パルス君…」
ジーナちゃんが心配してる。はっ!?いけないいけない。
僕が真面目な顔をするなんて今にも死にそうじゃないか!!
「ほら、だって持ってたら金メダルみたいで嬉しいじゃん!?ね?」
「パルス君、まだ何か隠してるでしょ」
「え?う…」
ぐあっ!? なんでバレたの!? 
「だっていつもみたいな余裕が無いもの」
鋭い…。
「上位の精霊にお願いするのはすごく疲れるんだよ。今ちょっと大技使えないから」
「もう、…そんなことじゃないかと思った。ちゃんと言わなきゃダメよー。
私がカバーするから心配しないで!」
ジーナちゃんはそう言って元気付けるように僕の肩を叩いてくれた。
248ミニャ ◆rW2veSR0iY :2006/05/18(木) 01:39:53
>>246
街を行くエルフの娘が一人。ただ普通に歩くその娘は少し、いや多分に、通行人の目を引いていた。
その美しい髪もさる事ながら、一般人の持つエルフの印象からかなりかけ離れた体型の持ち主であったためであろう。
しかし彼女は、人間にとってのエルフの容姿は美しいものとして見られ、憧れられている、という話を知っていたので
その視線を憧憬のまなざしであると解釈して、あまり気にしていなかった。

「うー、お腹すいたー…。腹ぺこ腹ぺこー。」
途中の露天で買った鳥の串焼きを口に運びながらそんな事を言い、道をのしのし歩いていると。
「ややー、何やら人だかり発見、何かしら?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「はい今日はいつもに増してハトが出まーす」
彼女の受けた衝撃は、その生きた200年の歳月の中でも最大級のものであった。
(…生命の創造!回復や蘇生ではなく、私達エルフでさえ未踏の業を!!)
その奇跡の業を妙な格好をした男が披露した後、それを見ていた人間達は紙幣や硬貨を帽子の中に入れ始める
(何?何が始まったの?えーと、おちつくのよミニャ。お金を出している人達はハトは手に入れていない。
 ということは、つまり、アレね!入札って奴。一番高くお金をいれた人が、おそらくあの業を?!)
お金をいれ終った人間が立ち去り始め、逆さの帽子を引っ込めようとした道化に、ミニャは声をかける。
「待って!えーと、私あまりお金持ってないの、…これ!私これを出すわ!」
首の肉に埋もれたペンダントを引きずり出し、道化の帽子に投げ入れる。

そして、道化とエルフの間に訪れた、奇妙な沈黙。
249†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/18(木) 13:37:24
メロメーロ市街、ジューシー通りをフラフラ歩くDの姿があった。
顔色は悪く、足取りもまるで死にかけた老人のようだった。


「パルスの奴…アレが…どんだけヤバイか…判ってねぇ…」
俺は焦っていた。
パルスが《疾風のメダリオン》を持ち出しやがった…
アレを持っている限り、敵に狙われる。メダリオン同士は…互いに『惹かれ合う』
つまり、敵に自分の位置を知らせて回るようなもんだ、危険過ぎる!
エドが食事の買い出しに出掛けた隙に神殿を抜け出したはいいが、パルス達が何処に向か
ったのか…全く見当も付かない。
「早く…見つけねぇと…」
身体が鉛の様に重く、自由が利かない。保有者にとって、メダリオンは命の一部だ。
このままだと…死んでしまう!?
それだけは御免だな、俺にはまだ…やるべき事があるんだ。
こんな所でくたばってたまるか!畜生め!!


どさり、とうとうDは倒れ込む。
かつて最強と呼ばれた暗殺者の面影は、どこにもなかった。
今やDは死を待つばかりの、ただのハーフエルフに過ぎなかった…
250フェンリル ◆KK3LevWd/A :2006/05/18(木) 14:25:43
>249
「わふっ」
倒れたDに子犬が近寄り、Dの上に乗って頭をカリカリとひっかく。
これは犬の習性で、寝る時や興奮したりすると地面をひっかくのだ。
カリカリカリカリと夢中になってひっかきながら、
「わふっ(君、メダリオンの反応がするよ。聞こえてる?)」
Dにテレパシーで問掛けた。
251†チェカッサ† ◆7h50UVLF.w :2006/05/18(木) 14:28:14
人だかりも消えて帽子を仕舞おうとした矢先に、帽子の中に首飾りを投げこんだ人物がいた。
この道化師――チェカッサは、失礼であることは知りながらも、ついその人物を驚きの視線でまじまじと見つめてしまった。
長い間旅をしていると、エルフの姿も見ることはある。だからエルフが現れたことに驚いた訳ではなく。
しかし「横に広い」エルフを見たのは初めてだった。そこに一種のかるちゃーしょっく。
つい、じっと見てしまう。驚きの他にある種の感銘も含んで。

そして、道化とエルフの間に訪れた、奇妙な沈黙。

「…あの」
先に口を開いたのは、道化だった。
「どうもありがとうございますです。こんな良さげな首飾りを。
…ですが、今日の分の演目は終わりですので、また明日、どこかでやってるですので、見て下さいです」
見物料は払ったというのに一向に立ち去ろうとしないそのエルフに対し、チェカッサはありふれた台詞を吐く。
今日は朝からいろんな広場やら道やらで大道芸を演じてきたので、そろそろ疲れが溜まっている。
さっさと宿に帰って飯食って風呂入って歯磨いて眠りたい、というのが本音。
「それとも…私に何か御用です?」
と聞いたは聞いたがその瞬間、道端に倒れ込む人物の姿を見かけてしまい、その回答は聞けなかった。
否、聞く前に倒れた人物へと走り出していた。

倒れた男に近づき、抱き起こす。行き倒れか重病人か、などと考えるのは後でいい。
「…だ、大丈夫です?」
「…アレ…を…」
しかし倒れた人物は意識が混迷しているようで、うわごとのように何かを呟いている。
チェカッサには医療の心得など全くないが、この人物が危ない状態、というのはわかる。

(どうするです…病院…?どこにあるですか?)
ふと思い出したかのように振り返る。さっきの丸いエルフに向けて、だ。
「あ、あの、あなた回復魔法とか応急処置はできるですか?この人、かなり大変みたいなんです!」
エルフなら魔法が使えるかも、などという超狭い認識に基づいた考えから丸いエルフに懇願する。
見知らぬ人とはいえ手の届く範囲で助けられるなら助けたい。そう、思っている。
252†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/18(木) 17:26:40
何か声が聞こえる…誰だ?
「君……めだ……持っ…」
何を言ってるんだ?……い…犬!?
「俺…は…夢でも…見てるのか?」
253東風エド ◆koVuVl1hKg :2006/05/18(木) 20:06:22
いくらなんでも、あの体で治療院を抜け出すとは、無茶が過ぎる。
流石はDというか、一所に落ちついて居られない人なのですかね…。
などと感心している場合ではなく、手洗いに出かけた間に病室から姿を消したDを、
私は駆け足で探すものの、何しろこの街はなかなかに広い。

あの容態を圧して彼等の所へ向かったか、あるいは何か予期しない事態が…(例えば、さらわれたとか?)
さらわれた、あり得ない話だ。奴等なら神殿内だろうと彼を始末するだけの話だ、ではやはり…。
考えていても仕方無い、私は移動しながら大門通りの方へと捜索を進めた。
254東風エド ◆koVuVl1hKg :2006/05/18(木) 21:03:16
スミマセン、お手洗いじゃなくて買い出しの隙にでした
慎んで訂正を申し上げます。
255名無しになりきれ:2006/05/18(木) 21:57:23
「なんかさ…公国が攻めて来るらしいよ?」
「マジで!?今月のイベントにそんなのあったっけ?」
「さあ…でも《蠍の爪》の連中が言ってたし…」
「《蠍の爪》?あぁ、あのPKギルドだろ、どーせガセネタだよ」
「そうかなぁ…」
「それよりもさ、知ってるか?システムにないNPCの話」
「あれこそガセだよ、もしくはバグじゃない?」
「いや、どうもこのエリアにいるらしいんだよ、そのNPCが!」
256ミニャ ◆rW2veSR0iY :2006/05/18(木) 22:41:47
むへー、ちょっと待ってよー。入札はどうなったのー?
わた、私、霊法苦手ー…。どっちかって言うと壊す方が得意なんだけどなぁ。
しゃーないので一応やるだけやってみる。

精霊を見ることは、エルフならば生まれた時からごく普通に行なえる。
だけど、それを使役するとなるとまた話は別。特にそれの修行を怠っていた者、例えば私とかでは
人間に毛の生えた程度の干渉力しか持ち得ない。
だから、だからね!私が必死で生命の精霊にお願いしているのに、
ちぃーっとも聞いてくれないなんて事も起き得るわかなのよ!決してやる気がないわけじゃないのよ!!

仕方無いので、ポケットから薬草チョコレートを行き倒れの口の中にぐいぐい押し込んで見る。
257ミニャ ◆rW2veSR0iY :2006/05/18(木) 22:47:25
ぶひー、起き得る「ワケ」なのよぉぉ
薬草チョコレイトを「取り出して、」押し込んだのよぉぉぉ

間違えたら、お腹空いちゃった。もぐもぐもぐ。
258†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/18(木) 23:33:48
突然口に何かを押し込まれ、俺は軽いパニックになった!
なんだコイツは!?「むひー」とか言って…え…エルフ!?
ありえねぇ…こんなヒドイ事があって良い筈が無ぇよ!?
「む…ごぐげ…づで!」
助けを呼ぼうにも声が出ない。そりゃそうだ、口がチョコレートで埋め尽くされているんだからな!!
…殺される!俺は生まれて初めて、神に祈った。
(助けてくれーッ!!)
259†ミニャ† ◆rW2veSR0iY :2006/05/19(金) 00:25:21
ぐむー、腹痛とか胸焼けならこれで大抵直るんだけど…。モッタイナイ…。
仕方無いので口の中から薬草チョコを取り出して、洗って食べられないかな―なんて事を考えていると。
……んー?足元に居たので見えづらかったけど、なんだろこの犬。
飼い犬と飼主かしらん?
260名無しになりきれ:2006/05/19(金) 00:53:03
Dの身体が、突然熱くなってきた。
チョコレートには媚薬が含まれていたのだ!!!
目の前のエルフの女性(ミニャ)に対して、興奮が止まらない!!
もう理性が限界を突破して、Dは爆発する!!!!
261エンディング:2006/05/19(金) 03:07:48
それは、遥か昔の物語…
まだ精霊達が世界に溢れ、平和だった時代…
荒野を旅する4人の冒険者がいました。
森の民の少年で霊法師のパルム
兎耳族の美女で剛戦士のジニー
妖精族の少女で呪歌手のレーゼ
古き民の青年で双剣士のディーン
4人は荒野の果てにあるという、伝説の古代都市《チャッチャ》を目指す旅をしていたのです。

旅は険しいものでした。多くの仲間との出会いと別れがありました。
誠実な剣士ルシェ、寡黙な紳士エト、優雅なる博徒ヒューイ
熱血漢の拳闘士リッズ、記憶を無くした青年ハインツ
孤高の老賢者フェンリ、陽気な道化師チェカーサ、森の民の重戦士ミーニャ
幾多の出会いと別れが、4人の絆を強くしていきました。

そして遂に、4人は辿り着いたのです。
忘れ去られた伝説の都、《チャッチャ》に…

【物語が】ファンタジーTRPGスレ【始まる】
         〜 END〜
262GM:2006/05/19(金) 05:33:17
メダリオン、それは忘却の果てに消え去りし精霊王の欠片…
強大な力を秘めるが故に、人の歴史の闇に葬られた禁断の遺物…
………魅入られし者に訪れるのは…………栄光と破滅…………

この物語はメダリオンに運命を翻弄される者達による、語られぬ闘争の物語である…


     【TRPS】the MEDALLION【U】


ゼニス大陸全土を巻き込んだ精霊戦争から40年の月日が流れた。
戦乱の中心地で復興を遂げた、城塞新都市メロメーロ。
この都市で、再びメダリオンを巡る戦乱が始まる…
263†黄昏のレーテ† ◆K.km6SbAVw :2006/05/19(金) 18:28:01
蠍の爪、その言葉を聞いてからのハインツェルは何か様子がおかしかった。
前を行くジーナとパルスはなにやら小声で話をしている。
「蠍の…爪…」
ハインツェルは俯いたまま、何度もその名を繰り返し呟く。
そうすることで、無くした記憶を取り戻そうとしているかのように。
ハインツェルの荷物から出てきた地図、そこに何があるのかはまだ判らない。
だがレーテ達には選択の余地はなかった。収穫祭は延期されたとはいえ、時間は限られているからだ。
恐ろしい精霊獣との戦闘で、パルスも随分と消耗している。もちろん、レーテ自身もだ。
街に戻るという話もあったが、多少無理をしてでも時間を無駄にはできない。
以前ライラック商会で、Dが話してくれた蠍の爪の情報、恐るべき力を秘めるメダリオン。
これから向かう先に、そんな物が待ち受けているとすれば…勝てるだろうか?
レーテは思い悩む。
自分にジーナとパルスを支える事ができるのだろうかと、自分は足手まといにならないかと…
(私は…こんな時どうすれば…)
レーテの心に、黒い影が忍び寄る。
「どうかしたの?なんだか元気ないよ?」
パルスがレーテに話し掛け、ふと我に帰る。「え?あぁ…えと…なんでもないです…」
そう答えるが、明らか何かある顔だ。パルスが心配そうにレーテを見つめた。
「あんまり無理しちゃダメだよ?そろそろ休憩しない?僕もお腹ペッタンコだよ〜」
そう言うとパルスは大袈裟な仕草でぺたんと地面に座り込む。
「へぇ〜、ペッタンコだなんて羨ましい限りだわぁ〜」
ジーナが女神の如く微笑んで、パルスの長い耳を「ムギュ!」と抓りあげた。
「エェーッ!?そんな意味じゃないってば!いたたたたたいたいたいたい!!」
敏感な耳に予想外の衝撃を受けて悶絶するパルス。
微笑ましい光景に、レーテは思わず笑ってしまう。それこそ、心の底から笑った。
びっくりしたジーナ達が、キョトンとしてレーテを見ている。
(もう…迷わない。私は、この人達の仲間だもの!)

全く、困った奴だ。ようやく我が主として相応しい魂を見せてくれた。
む?我が何者か、だと?
ふむ…自己紹介がまだだったな、我が名は《黄昏の瞳》
レーテがその身に背負う竪琴、それが我だ。
264†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/19(金) 19:24:45
口からチョコを取り出され、やっと呼吸が楽になる。
久しぶりに死を間近に感じた、そういえば随分と長い間平和だったな。
「…あんたは…?」
まだ顎が伸びきって上手く喋ることができないが、何とか質問する。
突然現れた謎の仔犬、そして横長のエルフ…
何がなんだか訳が判らん。こんな時どうすればいいんだっけか…
「むふー、気がついたー?」
横長のエルフが、仔犬を指差して尋ねてくる。
「この仔犬、あなたの?よかったわねー、この子が吠えてたからはふぃー」
まだ季節は夏じゃないのに、このエルフはしきりに汗をハンカチで拭っている。
「…こいつが?」
俺は体を起こすと、ちょこんと座る仔犬を見てみる。
特に変わった様子もない、ただの仔犬だ。しかし目が合った途端に俺は気付く。
その仔犬の瞳に宿る知性の光に、そして

その仔犬の首輪にぶら下がる、深い蒼のメダルに…
265☆ジーナ ◆QWE7YBXRW2 :2006/05/19(金) 19:33:57
少し早い昼食を取りながら、他愛ない会話を交わす。
ジーナは道中思いついた歌の歌詞を披露していた。
だけどそれは思っていたのとは違う効果を生み出した。

「あはははは!即興歌を聴いてこんなに笑ったの初めてだよ!ジーナちゃんは天才だ!!」
パルスくんがゲラゲラ笑っている。気分が優れない筈のハインツェルまで笑っていた。
ジーナは膨れた口を尖らせた
「えーダメ?じゃあ『メダリオン』の歌は〜?」
「と・・・とっても良いと思うのですが・・・,収穫祭では歌えそうにないですね・・・・」
レーテは必死で笑いをかみ殺しているが、肩が小刻みに震えていた。
先の言葉が、ジーナを傷つけないレーテの配慮だというのは見え見えだった。
ジーナは膨れた。

「・・・・・・一番ジーナ!『ジャイアンノウタ』いきまーす!」
笑いをかみ殺していたレーテがギョッとした。
「ジ、ジーナさん止めて・・・それだけは・・・!」
レーテが血相を変えたところで、ジーナがぺろりと舌を出す
「なーんてね、うっそ。冗談よ〜。さっ!そろそろ行きましょうか!」
ジーナは膝についたパン屑を払って立ち上がった。

「レーテさん、ジャイアンノウタって一体何なんですか?」
ハインツェルがひそひそと尋ねる。レーテは弱々しく笑うと「知らぬが仏です・・・・・・」とだけ口にした。
何かよく分からないけれどヤバそうだとハインツェルとパルスは思った。


どのくらい歩いただろうか。
「そろそろ目的地の筈なんだけど・・・・・・」
パルスがキャンディを口に咥えながら、地図と周囲の風景を見比べた。
「あ!あそこ見てください!」
レーテが声を潜めて、少し先を指差した。
266☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/19(金) 23:56:27
レーテが指差した場所には、奇妙…というか悪趣味な像が二つあった。
よく見るとその下の地面にはほぼ正方形の方陣があるようだ。
こんな草木が生い茂る中で明らかにういている。
なんでレーテが声を潜めたかというとそこに見るからに
“怪しいものじゃありません”的な服装をしていて逆に怪しい4人組が来ていたからだ。
「はあ〜、またこの像を押さないといけないのか」
「なんでこんな仕掛け作ってるんだろうね〜」
「これのせいで入るのに一苦労だよ。上層部は何考えてるんだか」
「まあ俺たち下っ端にはどうしょうもないよ」
と、ぶつくさ言いながら二人一組で台座に載った二つの像を押し始める。

気付かれないようにそれを観察するジーナ達。
「何やってるんだろう」「なんでしょうねえ」「随分苦労してるみたいね」
どうやら像は相当重いらしい。
ハインツェルはというと相変わらずつぶやいていた。
「蠍の爪…」
パルスがぽんっと手を打つ。
「そーいえばあの像蠍っぽくない?」
レーテが腕組みして答える。
「そう言われてみれば…って」
『あ――っ!』
ハインツェル以外の三人は同時に顔を見合わせて小声で叫んだ。
267下っ端達:2006/05/20(土) 00:28:53
「ん?なんか言ったか?」
下っ端のジョンが、同じく下っ端のトムに尋ねた。
「へ?俺か?いや、何も言ってないよ」
「変だなぁ…」
「そんな事より早くしろよ、マジ…重い!」
トムが顔を真っ赤にして踏ん張る。ここは《蠍の爪》の宝物保管庫だ。
入口は2体の像を決められた方角に回して、所定の位置に移動させる事が必要なのである。
「ったくよォ…この仕掛け考えた奴は糞以下だな」
額の汗を袖で拭いながら、下っ端のスミスが呟く。
「しょうがないだろ、ホレさっさと片付けようぜ」
スミスの肩をポンと叩くと、下っ端のベンは荷物を馬車から降ろし始めた。
268†黄昏のレーテ† ◆K.km6SbAVw :2006/05/20(土) 01:17:07
〜♪〜
揺らぐ誘いに 凭れたまへ 床に伏するは
虚ろいの彼方 眠りの宮
微睡み堕ちよ 泡沫の淵へ たゆたうは夢
〜♪〜

「ん?歌?」
ベンが馬車から顔を出し、外を見回した。すると、どこからか歌声が聞こえてくる。
「おい!トム、スミス!何…だ!?」
ベンは言葉を失った。
馬車の外で荷物を運んでいた仲間達が、大きないびきをかいて眠っている。
「なんじゃこりゃあ!!」
ベンが叫ぶと、近くの茂みから次々と何者かが飛び出してきた。
パルス達である。
「やったね!みんな寝て…ないじゃん!?」
ベンとパルスの目と目が合った…
「小僧、テメェら一体何者だゴルァ!」
すかさず腰に提げたサーベルを抜き放ち、声高くベンが戦闘の始まりを告げた。
269☆東風エド ◆koVuVl1hKg :2006/05/20(土) 01:28:51
私は街中を急ぎ走った。
彼のいつもの移動速度なら街を出てしまっても不思議ではないのだが、
取りあえず大門の警備兵に、それらしき男は通っていないとの話を聞き、もと来た道を引き返す。
あんな半死人状態のDをもし仮に蠍に見つけられたら、一巻の終わり、気が気ではない。

と、そこに人の流れのよどみを見つける。もしやと思い、すぐそちらへと向かうと。
案の定、その中心には顔を真っ青にしたDがいた。
はぁ…、本当に、もう…、病人は病人らしくおとなしくしていて欲しい、そう思う。
一体彼は、自分が今どれだけ危険な立場なのかわかっているのだろうか?

疲れとあせりで少々怒っていた私は、抵抗されるのを見越して
少々スマートではない方法でDを捕まえようと考えた。
不満や苦情は後で聞こう、今は彼を治療院へ急いで連れ戻さなくては。
そう思い、私はDの死角の外からスルリと忍び寄り、口と鼻を薬品の浸した布で封じる。
私の得意技の一つが見事にDに炸裂し、手足をしばらくジタバタさせた後、彼は”落ちた”。

…良し、後は彼を担いで、よっこいしょと。
270チェカッサ ◆7h50UVLF.w :2006/05/20(土) 04:09:25
倒れた男に対し、一目には逆効果としか思えないあまりにも乱暴な丸いエルフの行動に、
一瞬チェカッサは思わず後ろから斬りかかってでも止めてやろうとも考えたが、
結局、倒れた男は再び意識を取り戻した、ようだ。少し離れたところで見ていたチェカッサは安堵する。
食べさせたものに何か薬効があったのだろうか。それは推し量ることはできないが、
ひとまずは安心なのではないだろうか。そうチェカッサは結論づけ、そして考える。
(病気か何かですか…?なら、ベッドか何かで安静にさせないとダメです…。
どちらにせよ、この辺りに病院…なんなら私が泊まってる宿にでも連れてくです)
多少お節介なほどに世話焼き。それは時として身を滅ぼす。

しばらく逡巡していると、男に迎えが現れた。それだけなら聞こえはいい。
母なる愛のような「お迎え」ならば、チェカッサは何も不審がることなく、男が助かったのを喜ぶだろう。
だが、現れた学者風の男は、先ほどの男に…何かを嗅がせ、動けなくさせたのだ。至極乱暴に。
そして担いで連れて行こうとする姿は、チェカッサの目には「誘拐」に見えた。
(あんなことしてまで連れて行こうとするなんて…あの人が危ういです!)
道化の「想像」は加速する。
(あの行き倒れの人は、きっとこの人から逃げてきたんじゃないですか?
きっと、人体実験とかしてるんです…きっと。そんな雰囲気してるです)
それは「想像」を越え、道化の中で「現実」と化す。それ以外ない、と結論づける。

そして直後、声を荒げる。
「ま、待つです!その人はその場で倒れたです、よくわからないけどかなり重体なのは間違いないです!
そんな人をそんなやり方で連れてこうとするなんて、その人に何をするですか!
その人を離すです!」
しかし男は完全に無視。担いだままスタスタと歩いていく。
「な、なら…実力行使です!」
(私、あまり強くないですけど…手傷ぐらいなら!)
右の腰に下げた刀、その柄を左手で掴み、走り出す。
担がれている男を斬らぬよう男の正面に回り込み、刀を鞘から抜きざまに、斬りつける。
――俗に言う、「居合い抜き」。

チェカッサは自分を弱いと思っている。それは、今まで戦って、一度も勝ったことがないからだ。
しかし、それは今まで刀の師匠でもある義父としか手合わせをしていないから。
その義父は、チェカッサは知らないが東方より伝わる「刀」を誰よりも極めた、と言われる有名な刀士であって。
そしてチェカッサが刀の修行のために旅立ってすぐ、不幸な出来事によりピエロになることを余儀なくされた。
それ以降、刀の練習は欠かしていないが、誰とも手合わせしていなかった。
だからチェカッサは、己が刀術のレベルを、知らない。自分は弱いと思っている。

「やれやれ…」
武器を構え突然現れた背の低い道化師にうんざりした表情の男が次に見たものは、
極めて素早く、鋭い、斬撃だった。
271†チェカッサ† ◆7h50UVLF.w :2006/05/20(土) 04:10:57
名前欄を訂正。
272下っ端達:2006/05/20(土) 04:17:59
何だ何だ何だ!?チクショウが!!
あいつらは一体何者だよ!?何でみんな寝てるんだよ!?
クソッ、くじ引きで負けて戦利品を保管しに来ただけなのに!!
天下の山賊団《蠍の爪》を舐めやがって!思い知らせてやる!
「レーテちゃん寝てないよ1人!」
「あれぇ〜おかしいですねぇ…普通はすぐに眠ってしまうんですが…」
頭からヘンテコなの生やしたエルフが、デカイ竪琴持った背の高い女と呑気に喋ってやがる!
「テメェら!俺を無視すんじゃねえぞゴルァ!!」
まずはエルフだ、エルフは厄介な魔法を使うからな。速攻でぶっ殺してやる!
「でええぇぇやああぁあっ!!!」
サーベルを振り上げて、俺はエルフ小僧に飛び掛かった…が!?
「おっと、そこ行くお兄さん(はぁと)」
いきなり耳元でエロい女の声がして、俺の身体は宙に浮いたまま止まってしまった!?
「え?」
バニーガールだった…………
うぉいッ!!何でこんな辺鄙な森の中にバニーガールがいるんだよ!?
いねぇよ普通!?いるとしたら、エロい酒場とかだろ!?
しかもそのバニーガールは…片手で俺を掴んでやがる!俺今浮いてんぞ!?
「ふぅ、びっくりした。ありがとジーナちゃん」
エルフがそう言うと、バニーガールがニッコリ笑って
「どういたしましてねこぱーんち!!」
信じられない程の力で、俺を投げ飛ばしやがった!!
「ちょ!それパンチじゃないって!」
エルフがすかさずツッコミを入れた、もちろん俺も同じこと思ったよ!!
馬車に叩き付けられて、俺は一瞬意識が飛びそうになった。
「そぉぉおりゃああぁっ!!!」
馬車からずり落ちる俺にバニーガールが突進してきやがった!
「ヒッ、ひいぃぁあペッ!?」
ズドォンッ!!
腹に鈍い衝撃が突き抜けて、今度こそ俺の意識は途切れちまった…
273貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/05/20(土) 06:31:49
<メロメーロ西部街路>

コリンの屋敷への通り道にある街路。
歩いていると目に映る風景、ぼくが一番大好きな風景。
行き交う人の楽しそうな会話、露店や店には賑わいがあり叩き売りをしているもの。
値下げ交渉で懸命に客と戦ってる商人、様々なところから運ばれてきた異国の品物。
このなんとないような風景がいつもぼくに潤いを与えてくれる。
だがぼくは今この平和な風景を見るとどうしようもなく哀しくなってくる。
「コリン……良い景色だと思わないか?昔と比べてみるとよく分かる。
  ……キミには分からないかもしれないけどね、300年以上の前の風景なんて。」
そうさ、荒れ果て朱色に染まっていた土地に疲れきった人々。
種ということでの虚しい対立、全てを奪っていく戦争、憎しみ会うことしか出来ない悲しみ。
「あの永遠に終わらないかと思えた日から300年、ここまできたんだ、ここまできたんだよ……」
忙しく動く人々の中でぼくはまるで時間を忘れたように立ち止まり懐古する。
「戦争は大切なものを奪っていく、平和は大切なものを忘れさせる……か」
空を見上げると抜けるがごとき蒼穹が、遥か彼方まで続いている。
まるで哀れな僕らをただただ、見下ろすように……
274☆東風エド ◆koVuVl1hKg :2006/05/20(土) 13:55:33
>>270
あまり人目につくのもまずいので(と言ってももう十分付いていますが)、そのまま治療院へ直行しようとした矢先

「ま、待つです!その人はその場で倒れたです、よくわからないけどかなり重体なのは間違いないです!
そんな人をそんなやり方で連れてこうとするなんて、その人に何をするですか!
その人を離すです!」

職業暗殺者などをやるものは、努めて明るく紳士的に振舞うに越した事は無い、
今回の対応にしたって、笑顔で、ご迷惑をおかけしました云々、貴方が介抱を?本当に云々、
それが正解だったのだろうが、、、その時は男のピエロの装束にすら苛立ちを感じた。

―――無視、それが私の取った選択だが、それに対する男の反応は、意外にも
「な、なら…実力行使です!」
ピエロの…、実力行使?ジャグリングでも見せてくれるのだろうか、振りかえってそんな事を考えたが、
見せてくれた物は、刀身の煌き。
反射的にDを放りだし、飛び退く。かわし…、きれないッッ!!
ピエロの刃が私の衣服の下の鎖帷子と擦れ、ギャリギャリと嫌な音をたてて鎖を断ち切ってゆく。
275☆東風エド ◆koVuVl1hKg :2006/05/20(土) 14:09:35
結局その斬撃は、私の鎖帷子を切り裂き、軽く傷を負わせただけに終り、
すぐさまその報復として、懐のダーツを4本同時に道化の両手両足へと投擲する、
これが決まれば、Dを担いで逃げてもまず追っては来れないだろう。
が、ピエロはダーツを、かわしもせず、刀で弾きもせず、何と手で全て受け止めてしまった。

更に悪い事には、ピエロと対峙する横から、空を切り裂く音ともに凄まじい勢いで鉄の塊が降って来くる。
身を捻ってそれをかわし、その鉄の塊、フレイルを叩きこんだ持ち主を見ると。
な、なんでしょう、オーク?街中にオーク?いや違う、オークは髪も耳も長くない、ってことは、とにかく
「ふがー、このー、よしなさいよこの不審者ー!!」
2度目3度目の容赦無いフレイルによる打撃を避けて、地面に倒れたDのそばに転がり、叫んだ

「待って下さい!誤解です。私は彼の友人なんです!D!起きて、僕達友達ですよね?ね?」
気付け薬を嗅がせて、Dを起こそうとする間も、じりじりと間合いを詰める、ピエロとデブエルフ
276☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/20(土) 16:17:24
「はい、一丁あがり! …?」
下っ端を殴り倒した時に何か小さいものが地面に転がり落ちたのに気付くジーナ。
拾い上げて見てみると金属性サソリのマスコットだった。
「なんだろう」
寝ている人を見ていたパルスが言った。
「こっちの寝てる人も腕にそんなの付けてるよ」
「こっちもです。蠍の爪の身分証明証みたいなものかもしれませんね。
持って入ったらうまく騙せるかも」

「あのー、僕はどうすれば…」
ハインツェルの遠慮がちな呟きに、三人は顔を見合わせて相談を始める。
「そうだった!どうしよう」
「ちょっとこの人連れて入るのは危ないわね」
「なんでこの場所を書いた地図持ってたんでしょう」
277☆見た感じ軽兵士 ◆CYuXtvnAKk :2006/05/21(日) 02:24:05
三人がハインツェルの方を見てどうするか迷っている。
当の本人であるハインツェルも実際状況がつかめておらず。
なぜ自分が蠍の爪らしき奴等がいる地図を持っていたのか、
なんでハインツェルの耳にこうまで蠍の爪は残響するのか。
記憶喪失の身では処理できないことが多く
頭の中はぐちゃぐちゃで収集がつかなくなっている。

「ぼくはどうすれば…」
―――<簡単だ、ついて行けばいい。>―――
ふと漏らしてしまった言葉に『何か』が反応する。
ハインツェルの奥底から発せられる声、
ハインツェルに声が似ている気もするが。
それは明らかに違う人物、似ているが異なる存在。
「だ、だれ!?」
ハインツェルはこの場にいないはずの声に驚き反射的に声の主へと聞いていた。
だが返答はない、ただハインツェルの問いかけは空しく自分の中で木霊する。
「いまのは……なんだったのかな…、行け……か。」

考え込んでいるとパルス達がハインツェルへと問いかける。
「それでどうする?ここからはかなり危ないと思うんだけど。」
「正直にいってしまうと、この先では庇ったり守れるかどうか分かりません。」
「余裕がないかもしれないから」
多分、三人はこんな頼りなさそうな男は連れてはいきたくないだろう。
ハインツェルも性格的に見ていくとは言わないだろう、だが彼の心はさっき決まっていた。
「行きます、なんだか分かりませんけど、行かなくては。
  ぼくのことは別になにもしなくても構いません、行かせてください。」
278暗躍する者:2006/05/21(日) 05:08:53
「どういう事だ!答えろ!!」
ソーニャお嬢さんはボクの肩を揺さぶり、叫ぶ。
全く困っちゃったなぁ、泣いてる女の子は苦手なんだけど…
「ジュリアス様のことは、ボクもあまりよく知らないんだ」
ボクはあからさまな嘘をついた。
愛想笑いを浮かべて、優しくお嬢さんの手を肩から離し、考える。
ジュリアス様は何故、お嬢さんに《メダリオン》の秘密を教えなかったのだろうかと。
既に《灼熱のメダリオン》に選ばれ、更に《継承者》でもあるお嬢さんは、知るべきだ。
世界の真実を…そして、《メダリオン》の在るべき姿を…


ボクが自分の力の意味を知ったのは、12歳の誕生日だった。
北方の小さな国で生まれ育ったボクには、街の城壁の中が世界の全てだった。
そんな世界が崩れ去った日、ボクは世界の真実を知ったんだ。
公国が最初に滅ぼした国…ルフォン。
そう、ボクの故郷だよ。
誰も何も出来なかった、公国は《ゴレム》の大部隊で攻めて来たからね。
抵抗なんて何の意味も成さない、一方的な虐殺だったさ。
大人も子供も、みんな死んだ。
そんな時だよ、ボクがジュリアス様と《雷鳴のメダリオン》に出会ったのは。
え?何故そんな所にジュリアス様がいたかって?簡単な事さ、ジュリアス様は公国の人間だからだよ。
大陸中に散った《メダリオン》と、その《継承者》を捜すのがジュリアス様の役目だったのさ。
そう、公国がルフォンを滅ぼした理由はボクを手に入れる為だったんだ。
《雷鳴のメダリオン》の《継承者》である、このボクをね。
たったそれだけの理由…酷い話だろう?
その後、ジュリアス様は《蠍の爪》を利用して、《メダリオン》を集めた。
この組織は《継承者》を選定する為の機関として、ずっと利用されていたんだよ。
驚いてるね、そりゃそうだ。お嬢さんは何も知らされてないんだもの、無理もないね。
だからボクが教えてあげたのさ、お嬢さんには知る権利がある。ボクと同じ《継承者》として、ね。
さてと…そろそろ行こうかな、メロメーロの街に。
《疾風のメダリオン》と、その《継承者》を迎えにね…
279暗躍する者:2006/05/21(日) 05:10:18
「あぁ、そうだ…その前にお嬢さん」
「?」
訝しい顔でお嬢さんがボクを見る。
「1度死んで下さい」
ボクはそう言うと、クロスボウを抜き撃ちで1発、お嬢さんの眉間に撃ち込む。
「な…!?」
どさり、そのまま倒れ込むお嬢さん。
「すいませんね、《契約》がまだでしたから。この際に済ませちゃいましょう」
倒れたお嬢さんの身体が、凄まじい勢いで燃え上がり始める、《契約》が始まったからだ。

《継承者》とはいえ、《契約》をしなければ普通の保有者と何も変わらない。
《メダリオン》は《継承者》の死を引き金に《契約》を交わす。
燃え上がる身体が変化を続け、やがてお嬢さんは精霊獣となる。この最初の強制的な《開放》こそが《契約》だ。

『ゴアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
炎の精霊獣マグナシア、その真紅の獅子は苦痛にもがき苦しみ雄叫びをあげる。
おっと、いけない。このままじゃボクが焼け死んでしまうな。
その場を離れようとした時、背後から声がした。
「リゼル…何故《契約》をさせた?」
ジュリアス様の声だ、ボクは冷や汗を拭い答える。
「必要と判断した為です。何も知らずに利用されるのはボクだけで充分でしょう?」
「…………………………」
ジュリアス様は何も言わない。その沈黙が恐ろしい、いっその事叱られた方がマシだと思った。
「…駄目でしたか?」
恐る恐る尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「…構わん、私は理由を問うただけだ」
その言葉に、ボクは安堵の溜息を漏らす。
「ソーニャの《契約》が終わり次第、出発しろ。軍はライン大河まで南下した」
「随分と早かったですね、ロンデル司令の指示でしょうか」
ジュリアス様の言葉が事実ならば、すぐに出発しなければ間に合わない。
しかし予定よりもかなり早い、一体何故だ?
ボクが考えを巡らせている間に、ジュリアス様の気配は消えていた。
『オイ…コレハドウヤッテモトニモドルンダ!?』
くぐもった獣の唸り声がした、どうやらお嬢さんの《契約》が終わったらしい。
(やれやれ…忙しくなりそうだねぇ…)
恥ずかしげにもじもじしている真紅の獅子を見て、そう思った。
280暗躍する者:2006/05/21(日) 05:11:28
〜メロメーロから南東に半日程の森の中

《蠍の爪》の宝物保管庫の前で、パルス達4人は作戦会議をしていた。
このまま保管庫に突入するかどうか、そして縛り上げた下っ端4人をどうするかを。
「やはり詰め所に連行するのが1番かと」
レーテが提案すると、下っ端達は必死に暴れる。
「うおおおっ!ちくしょーっ!!この縄解けよゴルァ!!」
「仲間が来たらテメーらなんざぶっ殺してやるァ!!」
口々に負け犬の遠吠えを合唱する下っ端達。
「やだよ〜♪ぷっぷくぷ〜♪」
「ッ!!!!」
パルスがからかって遊んでいると、ジーナがパルスの耳を「ビョーン」と引っ張る。
「こら、遊んじゃダメでしょ!」
「いたいたいたいたたた!!ジーナちゃん耳はヤメテーッ!!」
エルフ族にとって、耳は最も敏感な部位である。それを「ビョーン」て引っ張られたのだ、痛くない訳がない。
「とにかく、ハインツェル君もやる気みたいだし、行こう!お宝ごっそり大作戦!!」
ジーナが拳を天高く振り上げて宣言した。

一方その頃、パルス達がいる場所から少し離れた所に待機している《蠍の爪》の別動隊。
「ジョン達はいつまで時間かかってやがるんだ!?」
部隊の指揮をとっていたソーニャに代わって、新しい部隊長になったサッコ・マルダーは怒鳴った。
首領の命令で、このまま南へ抜けてフラーリン近郊にて本隊と合流する予定だった。
だがしかし、保管庫に向かった4人が戻って来ない。
気の短いサッコは、苛々していた。そしてその苛々は限界に達していた。
「糞が!!オイ!野郎ども、あの役立たずを迎えに行くぞ!!これ以上遅れる訳にゃいかねぇからな!!」
その一声に、部隊が移動を始める。パルス達のいる場所に…
281名無しになりきれ:2006/05/21(日) 15:47:59
「待って下さい!誤解です。私は彼の友人なんです!D!起きて、僕達友達ですよね?ね?」
「ん…ん〜、アンジェラ…飲み過ぎだゅ…」
「ちょ!!Dィィ!!!」
282†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/21(日) 18:01:51
「おめでとう、ドゥエル。今日から君が[風塵]だ」
黒衣の男[死神]がそう告げた。
選定の儀を終えると、俺は新たな[五凶]の1人[風塵]となる。
「頼みたい事がある。名前なんだが[北風]にしてくれ」
《メダリオン》の候補者として集められた4人、北風のドゥエルだった事を忘れない為に。
『俺は…このままでいい…』
最後の夜、俺は仲間にそう言った。変わらないままで、せめて名前だけでも…
「構わん…好きに名乗れ…」
[死神]はそう言うと俺に《疾風のメダリオン》を投げた。受け取った手に、死んでいった仲間の重みを感じた気がした…


「ちょ!!Dィィ!!!」
………んぁ?何だ?…エドか。寝かせてくれよ…寝みぃんだよ…
「D!起きて!!」
…チッ…うるせぇなぁ…何だよエド。なんでそんなに必死になってんだ?
まぁ…いいや、こんなに取り乱してるコイツを見るのは久しぶりだ。
どうせ身体も動かねぇし、寝たふりしてやれ…けけけっ
283フェンリル ◆KK3LevWd/A :2006/05/21(日) 22:18:22
事態は転々と変わっていく。
メダリオンを持った男が目覚めたと思ったら、薬品をかがされて連れ去られ。
心配して助けに来た者と、連れ去ろうとした者が戦いを起こす。

「わふっ」

とりあえず、今は普通の犬の振りをして、メダリオンを持った男の側にいることにした。

ホントに危険になったら、自分も参戦しよう。
284名無しになりきれ:2006/05/22(月) 17:52:11
「仕方ありませんね…むううぅんっ!」
エドはDの足をガシッと掴んで、ジャイアントスイングした。
「病人に何をするです!?」
突然の奇行にチェカッサは驚いた。
「ショック療法です。回転力と地面に激突する衝撃によって、身体を…!?」
鋭い斬撃がエドの言葉を遮る。
「な!今のは確かに手応えがあったはずです…」
チェカッサは更に攻撃を繰り出す。それにミニャも続いた。
「ふひー、なんで当たんないのよー!」
チェカッサとミニャ、二人の攻撃はことごとく回避される。
「先程は荷物を抱えていましたからね、そして今は…手ぶらですから」
エドは表情こそ穏やかだったが、その全身から噴き出す殺気は二人を戦慄させた。
285名無しになりきれ:2006/05/22(月) 17:55:16
日テレ炭谷アナが”ムラムラして”女子高生のパンツ盗撮で逮捕-ZAKZAK
http://www.zakzak.co.jp/gei/2006_05/g2006051716.html

【炭谷アナ盗撮隠蔽】 日本テレビ、事件に関し社員に緘口令…「情報漏らしません」と一筆書かせる?★8
http://news19.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1148192421/601-700#tag638 ニュー速+ 

【ムラムラ危険】炭谷宗佑 1【近寄るな】
http://tv8.2ch.net/test/read.cgi/ana/1147890372/

http://www.ntv.co.jp/announcer/old/birthday/images/0114_01.jpg
http://www.ntv.co.jp/announcer/new/sotsugyo/images/s_sumitani01.jpg
どっちの料理ショーなどでレポーターとして活動した炭谷アナ

裁判長「あなたは盗撮した画像を、逮捕されていなかったら、どうするつもりだったんですか?」
炭谷「興味本位だった。何も用途は考えてなかった」
ナルホド「異議あり!」
ナルホド「裁判長、今の発言は明らかに矛盾しています。炭谷は確かこう言ったはずです”ムラムラしていた”と」
ナルホド「ムラムラした男がエロ画像を保存した!何のためですか?」
裁判長「むぅ・・・オナニー・・・ですな」
炭谷「うわあああああああああああああああああああああああああ。シコシコシコシコシコシコシコシコシコ・・・・・・・・ドピュッ」
裁判長「被告!法廷内で射精しないように!」
286☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/22(月) 22:43:11
「像入れまーす。あんたたちそこで大人しくしとくのよー」
ジーナがまるで段ボール箱のようにさりげなく像を押し、色違いのマス目にはめる。
すると足元に下へ降りる道が開いた。
「帰りは馬車に積めばいいから楽チンだね〜」
とか何とかいいつつ中に入っていく4人。
「……あんな奴らに侵入されてしまった…」
「クビ斬られるかも…」
「バニーガールにやられましたって言っても信じてもらえねー…」
「いやそれ以前に役人に突き出されるんじゃ…」
と、騒ぎ疲れてすでに諦めモードの下っ端ーズであった。
287貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/05/22(月) 23:19:11
露店で賑わっている街路をぼくは歩き続ける、そして歩くうちに人影が少しずつなくなり
郊外にあるコリンの屋敷が見えてくる、古い建築様式の屋敷ではあるが
10年が経ったいまでもその美しい外見は形崩れてはいない。
久しぶりに見た屋敷に見とれる、その姿は昔と変わっていなかった。
「何時見ても素晴らしい屋敷だ………そりゃそうだ。
  なんせキミが設計したんだ、素晴らしい、
  まるで建ててすぐの建築物のようだ、流石だよコリン……」
ずいぶんと感傷的になっている自分をいけないとは思いつつもコリンとの思い出が馳せる。
このままではとてもじゃないけどコリンを直視できない、なんていえばいいのか分からない。
だがそんな状況でも僕の足は動き続け、僕はコリンの屋敷の前へとついてしまった。
288貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/05/22(月) 23:19:57
ここまできたら仕方がない、リラックスしていつもどおりにいけばいい。
変な緊張は相手にも伝わるし思わぬ失敗があるもんだ。少し浅く深呼吸をして心を落ち着かせる。

「さて、どうすっか、正面からいっても簡単には入れてはくれないっぽいし。」
正直に言うとこのまま帰りたいがそうも言ってられない。
「テラスにそのまま行っちゃおうっかな?その方が楽だし。」
幸いなことに現在回りに人は全くいない。
いまならばそんなに目立つこともなくテラスへと侵入できる。
どうどうと正面玄関の扉を叩きたいが面倒事はごめんだ。
「疲れるが、アレを使うか」

―――御名は風纏い踊る風神  眩きその所作その力 今わが前に顕あらわし示せ―――

大気が軽く唸り旋風が僕の体へと纏わりつく、そして地面を一蹴りすると数メートルも跳躍しテラスへと着地する。
僕はテラスを丁寧に見回す、奥行きがあり外装もなかなか洒落たいいテラスだ。
だが僕の格好とは不釣合い、なんせさっきの術で僕の服はあちこち切れてしまいボロ雑の様。
これじゃ台無しだ。元々自分の体型よりもゆったりめの服装が好きな僕は毎回これを使うとこうなる。
「だから使いたくなかったんだ、服が台無しだヨ。また買わなくちゃ。」
グチグチと文句を垂れながら僕はコリンの寝室に顔を覗かせる。
289貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/05/22(月) 23:21:28
僕は視線を泳がせるとなにやら一人で考え事をしている旧友の姿を発見する、こちらには全然気がついてない。
僕は数回窓を軽く叩く。すると旧友はこちらに気付き飛び上がる、その目はどことなしか畏れている、
だがすぐに鍵を開け僕を招き入れた。久しぶりに見たコリンはすっかりやつれてしまって痛々しい。

「やあ、いきなりですまないね、ただ、ちょっと聞きたいことがあってさ。」
「……なんだ?」
「コリン、最近あまりよくない噂を聞いてね、なんでも、
  キミが公国に反旗を翻そうとしているとか、してないとか。」

コリンには回りくどい言い方をするよりも単刀直入に聞いたほうがいい。
それに僕も正直世間話とかから始めるなんてうんざりだ。
そう思いいきなり確信をついてみたが、
コリンはまるで貝のように口を閉じている。困った。
とりあえず揺さぶりをかけることにする。

「コリン、沈黙を保っているということは、
  少なからず「噂が嘘」ではないんだな?」
「……ああ、嘘ではない、全て本当だ。」
「コリン、お前は本気で言っているのか!
  勝てない戦いをするっていうのか!」
旧友の言葉を聞き今までなんとか押さえつけていた怒りが爆発する。
だがコリンはさほど動じずに僕の目を見ている。
「勝てる、メダリオンさえあれば、勝てるのだ。」
「……やっぱりそうきたか、だが、
  あれは禁忌の力だ、使っちゃいけない。」
「ならば、ならばなぜ貴様は私にその存在を教えた?」
「…………」
「なぜ私にその力を教えた、貴様にも責任があるのではないか!?
  力は使ってこそだ、使わなければなんの意味も持たん!」
「あれは人間が持っていい力じゃない!それを教えるために言ったんだ!」
「ヒューア!力は使ってこそだ、使わなければなんの意味も持たん!」
「だがあれは手に余るんだよ。現に君の二人の部下。
  男のほうがメダルに飲み込まれた、どんなことが起こったと思う?」
「な!?なぜ貴様がラトルを知っている!?まさか!?貴様が!?」
「ぼくは見てただけさ、前々からつけていたからね。」
「嘘を吐くな!貴様が、ラトルを!
  そうだ!メダリオンは、メダリオンをどこへやった!」
「ぼくは殺していない、メダルも持ってないよ」
「黙れ、信用できるか!前々から私は貴様を信用できなかった!」
コリンは僕に怯えながら必死の形相を浮かべ叫んでいる。
その双眸は僕に畏怖を向けその姿はまるで僕の知っていた昔のコリンの面影すらなかった。
290☆貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/05/22(月) 23:22:33
その姿を見て僕はもう今のコリンが自分の知っている人物ではないことを悟った。
「そうか、コリンですらもこうなってしまうのか、」
「なにをわけの分からないことを、ラトルを殺したんだろう!?
  だったら持っているはずだ!」
その時コリンの部屋の扉がきしむ音がする。
すると男が入ってくる、その顔はなんとも言えない表情を浮かべてる。
悲しみと怒りが混同したみたいな、なんとも複雑な表情だ。
「リッツか!こ、この男がラトルを!」
そうコリンが言ったとたん、その男の顔は怒りで燃え上がった。
僕はその青年を冷めた瞳で見つめる。そして冷ややかに青年に言う。
「なるほど、つまりラトルとやらはキミの連れだったみたいだね。この度はお気の毒に。」
291名無しになりきれ:2006/05/23(火) 00:18:03
「た、助かった…って誰ですか貴様方ッ!」
中に居たのは下っ端のルドワイヤン。実はずっと出られずに閉じこめられていたのだ・・・
せっかく開いたと思ったら中に入ってきたのは見知らぬ四人組・・・
果たしてルドワイヤンの運命はッ!?






つづく
292☆ジーナ ◆QWE7YBXRW2 :2006/05/23(火) 00:44:37
>「た、助かった…って誰ですか貴様方ッ!」
扉を開けたら、突然盗賊らしき男が出てきた。

私に任せて!と皆に目配せをし、ジーナは男に向き直った。
にっこりと満面の笑みを浮かべ、男に必要以上に接近する。
「もしかして先輩ですかぁ?あたしぃ、新入りのジーナでえーす。よ・ろ・し・く・ですぅ〜☆
今はぁ、とある事情で変装してるんですけどぉ、これでもちゃ〜んと蠍の爪のメンバーですよぉ〜
ほらあ、これ見てください〜!」
ジーナは胸元に押し込んでいた蠍のマスコットをチラ見せする。
男性の鼻の下は伸びきっていた。
「キャッ!あんまり見ないでえ〜!ジーナ恥かしい〜」

見てるこっちが恥かしいと、他の3人は内心で突っ込んでいた。

「・・・で、あたしたちぃ、エライ人に頼まれて取りに来たものがぁあるんですう〜」
「そうかいそうかい、じゃあ案内するよ。こっちだ」
顔を赤くしたまま、ふらふら歩き出す男性。
(どう?ちょろいもんよ!)
ジーナは仲間に振り向きガッツポーズをした。
が、他の面々はジーナのキャピキャピ演技を見るはめになり、すっかり脱力していた。
293†チェカッサ† ◆7h50UVLF.w :2006/05/23(火) 00:53:10
(病人を投げつけるなんて…この人が悪人であることは間違いないです)
「誤解だ」と叫ばれて信じやすい気性のチェカッサは一瞬刃を止めてしまったが、
投げ飛ばすその光景を見てそれは嘘であると結ぶ。そして。
「悪人ならっ!」
殺すことも、厭わない。
悪はその滅をもって淘汰されるべきだ、という偏狭かつ変狂じみたその考えは…、
刃から、迷いを消し去る。

(それにしても、こう簡単に避けられてしまうですか…。こんなに強いなんて…)
自分より実力が著しく上(と思われる)敵と遭遇した時思ったのが、絶望でもなく、保身でもなく…、
「ワクワクするですっ!」
歓喜だったのが、やはり、道化たる所以か。

(その前に…)
ワンステップして刀を、あの太ったエルフに…その首筋に、突きつける。その隙間は寸にも及ばず。
「戦いなら、一対一であるべきだと私は思うです。私が挑んだのが発端です、私がきっちりと」
というのは建前で。本音は…間違えて斬ってしまわないとも、限らなかったから。

「では、行くです!」
男に近づいて、斬り下ろす。避けられる。また斬り下ろす。また避けられる。ただひたすらに。
「馬鹿の一つ覚え…いくらやっても当たりはしませんよ」
男はやれやれといった表情で、避けるとともに反撃を繰り出そうとするが…、
「!?」
男が反撃を繰り出すより早く、道化の二の太刀が男に迫りくる。

体を鎧に身を固め、大剣を用いて鎧ごと斬砕する剣士が求めるのは、力。
しかし衣服が軽装である刀士…いわゆる武士が必要とするのは、力よりも…迅さだ。
道化は一心不乱に刀を振り続ける。考えもなく、迷いもない。刃を遅らせる要素はどこにもない。
ただ斬って。また斬るだけ。気配がするところに。斬り返し、斬り抜いて。

道化の刃が鈍るのが先か、男の動きが鈍るのが先か。
どちらかに疲労が見えた時点で、勝負は決まる。
294☆『砕く拳』リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/05/23(火) 08:22:56
「リッツか!こ、この男がラトルを!」
コリン議長が必死の形相で叫ぶ。
そして、その男が冷たい口調で俺に言った。「成る程、つまりラトルとやらはキミの連れだったみたいだね。この度はお気の毒に」
何がどうなってるのか、さっぱりわからない。
ただ、よれよれの服を着た男の言葉が俺の中で響き渡る。
お気の毒だ?
冗談じゃない、嬉しいに決まってるだろ…わざわざ捜す手間が省けたんだからな!!
憎みが、怒りが、俺の頭の中で暴れ回る。
「インフィニティ…キング!!」
ゆったりとした俺の服が、膨れ上がる筋肉によって丁度ぴったりのサイズになる。
《躍動のメダリオン》の能力、それは保有者の肉体を強化する能力だ。
「待て、僕には君と戦うり…」
男は最後まで喋り終えることはできなかった、俺が殴り飛ばしたからだ。
一切の手加減無しの一撃は、その余波によって屋敷の寝室の床を半壊させた。
轟音と粉塵が渦巻く中、のんびりとした声が下から聞こえた。
「ふむ、《躍動のメダリオン》か…これは厄介だなぁ」
…!?嘘だろ!?
確かに手応えあった筈だ!最大の力ではなかったにしろ、生きてる訳が無い!
だが瓦礫の上に、男は立っていた。
全くの無傷だった…


…時間はほんの少し遡る。
俺はコリン議長の屋敷に向かった。明け方にコンラッドさんから、ラトル達の訃報を知らされ、
俺は気が狂いそうだった。
詳しい事情は判らず仕舞いで、結局は本来の任務に戻った。
公国の軍が既にライン大河まで迫ってる。この事実を議長に伝えて、街の守りを固めないと…
正直焦っていた、故郷が公国に滅ぼされた時の記憶が、鮮明に甦ってくる。
生き延びたのは、神殿の地下墓地を探険して遊んでた俺と幼馴染みのラトルとエリサだけだった。
ルフォン4万人の人口は、たったの数時間で俺達3人だけになってしまった…
父さんも、母さんも、そして弟のリゼルも…みんな死んでしまった!公国に殺されたんだ!!
もう二度と、あんな光景は見たくない、この街を滅ぼされてたまるか!!
俺は全力で走った。この身体は決して疲れることはない、《躍動のメダリオン》がある限り…
295☆『砕く拳』リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/05/23(火) 08:24:04
「なんだと!?」
コリン議長の屋敷に着いて、俺が伝書を渡すと議長が悲鳴をあげた。
「コリン議長、俺はこの街を守る為にこの任務を引き受けた」
俺の言葉がまるで聞こえていない様子だったが、俺はそのまま続ける。
「ラトルとエリサがいなくても、きっと何とかしてみせます。この街は…俺の、もう1つの故郷だから」
「リッツ、済まない。私が…」
「議長、いいんです。あの二人の分まで俺が戦えばいい。そうでしょう?」
「リッツ…」
「とにかく、近隣の街から冒険者や傭兵を集めて下さい。街の守りを固めるのが先決です」
力なく溜息を吐く議長を見て、チクリと胸が痛んだ。以前と比べて随分と痩せて小さく見えた。
心労が原因なんだろう、気の毒に…
俺は礼をして部屋を出た。バルコニーで少し休憩してから、街に戻ろう。
そう、ラトル達を殺した《疾風のメダリオン》の保有者を捜す為にだ。必ず見つけ出して…殺してやる!!
そんな事を考えていると、何者かが…男が、空を飛んで来た!?
俺は素早く身を隠すと、その男の様子を伺う。
テラスに降り立った男は、暫く辺りを見回し、議長の部屋に入って行く。
「風……まさか!?」
そうか、奴か!奴が《疾風のメダリオン》保有者か!!
俺は議長の寝室に向かい走った。


「うおおおおおおおっ!!!」
俺は階下に飛び降りて、すぐさま蹴りを放つ。男はまたしても直撃を受ける…がやはり無傷だった。
「テメェ!!」
一瞬にして間合いを詰めて、ひたすら連続攻撃を仕掛けるが、効いてない!?
(な…何者だよ…コイツは…)
冷や汗が頬を流れ落ちる。今までに戦ってきた相手とは、明らかに異質な男に俺は焦りを感じる。
「まいったなぁ、僕はき…」
「うるせぇ!!」
ドン!男の腹に拳をめり込ませて、無理矢理黙らせる。余裕ぶっこいてんじゃねぇ!!
絶対に何かカラクリがある筈だ、こんだけ攻撃をまともにくらって平気なんてありえない。
そのカラクリを解かなきゃ勝てない!
「仕方ないなぁ…あまり使いたくはないんだが、この際そうも言ってられないか…」
そう言うと、男はゆっくりと手を延ばして何かを呟いた…
296†黄昏のレーテ† ◆K.km6SbAVw :2006/05/23(火) 13:09:50
「あぁぁッ!!ありました!ミスリル絃です〜ッ!」
がさごそと辺りを探索していたレーテが、大きな声で麻袋を掲げた。
最近に運び込まれたのだろう、入口から少し離れた所に置かれた木箱にミスリル絃はあったようだ。
レーテは目に涙を浮かべながら、ミスリル絃の袋に頬擦りしている。
「やったね!レーテちゃん」
ジーナがよしよしとレーテの頭を撫でる。
「はいですぅ〜うぅ…」
大陸中にその名を轟かせる伝説の楽士が、何たる様だろうか…嘆かわしい。
まぁ、我にとってもミスリル絃は重要な問題だからな、今回は大目に見てやるとしよう。
「よ〜し、他のお宝もさっさと馬車に運んじゃおうよ!で、こんな所オサラバだ!」
パルスは近くの木箱を持ち上げて、外に向かう。皆もそれぞれ頷き、箱を持った。
「あのぅ、僕はどの荷物を持てばいいでしょうか…」
その時ルドワイヤンが申し訳なさ気に質問する。その場に流れる気まずい沈黙…
「え、え〜っとね……ねこぱーんち!!」
ドスッ!!
「はうあっ!?」
突然の重い一撃に、情けない悲鳴をあげて身体をくの字に曲げ、倒れ込むルドワイヤン。
「今度は普通にパンチだったね…てゆーかゴメンよ」
パルスが「てへへ」とごまかし笑いしながらジーナに謝る。
「いいのよ、外に出たら結局バレるんだし」
パチッとウインクして応えるジーナ。重そうな鉄の大きな箱を軽々と抱えている。
一行が外に出ると、ずらりと列んだ山賊達が出迎えてくれた。先程懲らしめた4人も、縄を解かれている。
「ヒャーッハハハハァーッ!!待ってたぜ!?ゴルァ!!」
下っ端のベンが勝ち誇り、残酷な笑みを浮かべてそう言った。
297名無しになりきれ:2006/05/23(火) 14:45:42
『エキセントリックです〜エキセントリックです〜』
ぱたぱた飛び回りながら、九官鳥が喚き立てる。
『アッー!アッー!アッー!』
九官鳥は山賊の隊長サッコの肩にとまった。
298†D† ◆9.MISTRAL. :2006/05/23(火) 14:54:30
「仕方ありませんね…むううぅんっ!」
エドは俺の足をガシッと掴んで、ジャイアントスイングしやがった!?
「病人に何をするです!?」
全くだぜ、何て事しやがるんだ、クソッ!
「ショック療法です。回転力と地面に激突する衝撃によって、身体を…!?」
涼しい顔でそんな事を宣うエドに怒りを覚えたが、どうやらそんな場合じゃないらしい。
あのピエロが持ってる武器、カタナだ。俺の前に《疾風のメダリオン》保有者だった[風塵]と同じ武器。
ヤバイ…あのピエロを止めねぇと……カタナじゃあエドには勝てねぇ。
次々と繰り出される鋭い斬撃を寸で避けるエド。やっぱり、仕掛けてやがる。
「はああっ!!」
ピエロがカタナを横薙ぎに払い、エドを切っ先に捉らえた瞬間、その軌道が大きく逸れた。
「な!?何故ですッ!?」
ピエロが驚きの声をあげる。当然だろう、まるで不可視の力に邪魔された様にしか見えないからだ。
そして、ピエロが気付いたようだ。自分の太刀筋を曲げた、不可視の力の正体に。
よく目を凝らさなければ見えない程、細い糸。
ムルル蛾という蛾がいる。その幼虫の吐く糸は、アルコールに浸けると鋼並に強度が増す。
暗殺用のギャロットによく使われる、細くしなやかで剛性に優れる糸だ。
ピエロの周りに縦横無尽に張り巡らされた糸の結界…エドはピエロの攻撃を避けながら、仕掛けていたのだ。
「檻の中へようこそ。楽しいサーカスの始まりです」
エドは眼鏡をクイッと直し、冷たい口調で処刑の始まりを告げた。
299名無しになりきれ:2006/05/23(火) 21:19:50
隕石が落ちてくる!
300☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/23(火) 22:19:38
「さっきやられたばっかりなのに大した度胸ねー」
ジーナちゃんが猫の手グローブを振り上げ山賊たちに突撃する!!
「ねこぱーんち!」
「ぎゃあ!」
下っ端らしき山賊が奇声を発しながら次々と吹っ飛んでいく。

「あいつの歌はヤバイぞ!速攻でつぶせ!」
さっき一人だけ眠らなかったやつの声が響く。
ジーナちゃんの射程範囲から逃れた奴らがこっちに向かってきた。
そうだ、ヤバイほどきれいだよ。
でも残念、キミ達に天使の歌声を聞く資格はなーいッ!!
なぜならレーテさんが歌う前にやられるから!
ちょっと“痛い目”見てもらうよ。
「【ストーン・ブラスト・エクステンション】!!」
広範囲の地面から弾けた砂や小石が視界を遮る!
「目がー目がーッ!!」
作戦成功!砂埃の中、小石が目に直撃した山賊たちが悲鳴を上げていた。
「そろそろ隊長のお出ましかな?」

>『エキセントリックです〜エキセントリックです〜』
ぱたぱた飛び回りながら、九官鳥が喚き立てる。
エキセントリック?僕のこと?
『アッー!アッー!アッー!』
九官鳥が隊長らしい男の肩に止まる。

「あとはあんただけのようね!」
猫の手グローブのみで戦っていたジーナちゃんが槍を構えた。
と、いう事はどうやら相手はそこそこ強いらしい。
「芸人集団なんて俺一人で充分だぁあ!」
さあ、ミスリル弦奪還作戦ラスボス戦の始まりだ!
301フェンリル ◆KK3LevWd/A :2006/05/24(水) 13:54:35
フェンリルはこの場が嫌だから、逃げていった。

「わふっ!!(付き合ってられるか!!)」

もう、フェンリルは戻ってこない。

一ヶ月後、フェンリルは南の島で、人間の姿に化けてバカンスをしていた。

おしまい
302☆貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/05/24(水) 22:35:33
なかなかの攻撃だ、間合いの詰め方、流れるように軽くそして重い攻撃。
そしてなによりも技の節々から見られる天位の才能。
並大抵の戦士じゃ勝てないだろう、だが並じゃ駄目なんだよ。
もっともっと強くなってくれなくちゃ、風の男とその仲間も、そしてこの青年も。
強くなるには知っておかなくちゃいけない、自分よりも強い存在を。
僕はそれを教えるために青年に手をかざす。

―――大樹の梢にて羽ばたくは 骸食う大鷲 その翼打ち振りて 烈風を顕せ―――

「まだキミじゃ避けることはできないと思うから、
  とりあえず生き残ってごらんよ、」
「ああ!?」
僕の言葉に青年はついていけてない、
「大丈夫、すぐに分かるさ」
よく分からずにいる青年の胸板に謎の捻れができメキメキと嫌な音がする。
「ぐっ!!……げほっ!!……」
青年は膝をつく、口からは吐血し胸板はそこに小さな竜巻でも食らったように捻り曲がってる。
きっと青年はわかってない、見えないような高速回転している空気の塊がぶち当たったなんて。
ただ僕が今までに戦ってきた相手とは全く異質なことは理解したみたいだ。
僕に対する目が恐怖で濁っているのがはっきりと見て取れる。
「そんな怖がるなよ、キミは強いんだからさぁ、
  ただちょっと僕が変なだけだよ。いや、結構変だったりしてね。」
「て、てめぇは……な、何モンだ。」
「僕かい?簡単な答えだよ、そう、僕はちょっと物好きなロクデナシさ。」
青年の言葉に僕はサングラスを外し我が子に話しかけるように穏やかなに微笑む。
303対決!山賊部隊!!:2006/05/24(水) 23:50:42
パルスの放った土の霊法は、山賊の一団を瞬時に叩き伏せた。
普通とは少し違う方法で、地霊ノームに干渉したその霊法は更なる追加効果を生む。
舞い上がる土煙による、視覚の遮断である。
「シルフ!お願い!【ウインドフォース】!」
味方の周囲に風の更衣が発生し、土煙の被害を打ち消す。
疲弊した精神力では、大掛かりな霊法は行使できない状態にあったが、場の状況に合わせて工夫することでそれを克服したのだ。
「いけるよ!みんな!」
そう言うと、がくりと膝をつく。精神力が限界を迎えた為だ。
「ふざけやがってよおぉぉおッ!!」
山賊の部隊長サッコは、柄から延びる鎖に鉄球が付いた武器「モーニングスター」を振りかぶる。
モーニングスターは鉄球に殺傷力を高める為に、無数の刺が生えておりその威力は凄まじい。
「ぶぅるるぁぁあ!!!」
地響きと共に地面が大きく陥没する。攻撃は正確そのものであった。咄嗟に身を翻し、何とか避ける。
「えぇーっ!何で効いてないの!?」
パルスが思わず悲鳴混じりの声をあげる。そして何故、効果が発揮されなかったかを知った。
ゴーグルである。サッコはゴーグルを身につけていたのである。目を保護されていれば土煙は意味が無い。
「死ねやゴルアァァ!!!」
再びモーニングスターがパルスを襲う。当のパルスは避けるのが少し遅れた。
当たる!そう覚悟を決めた時、横からジーナが飛び込んで来た。
「ねこあっぱーかっ!!」
上から振り下ろされる鉄球と、ジーナの拳が激突する。インパクトの瞬間、大気が震えて土煙を吹き飛ばす。
「いったたたーっ!尖ってるとこに当てちゃったわね〜」
不敵な笑みを浮かべて、ジーナが手をひらひらさせてぼやく。常人とは思えない行動に、その場の全員が呆けてしまった。
「あ…ありえねぇ………ありえねーッ!!!」
サッコは絶叫した。パルスは声すら出なかった。
304対決!山賊部隊!!:2006/05/24(水) 23:51:55
「しゃあコノヤロー!」
比較的軽傷だった山賊の下っ端、トムがレーテに飛び掛かった。
武器を持たないレーテは、無防備である。つまり、狙われ易いという訳だ。
「えい!」
思いきってパンチを繰り出すが、簡単に避けられて逆にレーテがバランスを崩して転倒した。
「覚悟しなお嬢ちゃん、たっぷり可愛がってやるからよォ」
レーテに馬乗りになるトム。すかさずレーテの服を乱暴に破いていく。
必死に抵抗するが、『男の腕力には敵わない』。
大きく胸元がはだけた時、トムの表情が凍り付いた。
「……あれ……おっぱいは?」
「ぁ…ありま…せんから…」
涙目で答えるレーテ。ササッと両手で胸元を隠そうとする、その行動は「女」だが、レーテの胸は平らだった。
「うおぉおおおおおっ!!詐欺じゃねぇか!!!」
力の限り吠え猛るトム、泣き崩れるレーテ。
次の瞬間、様々な事が同時に起きた。
「チクショーッ!男でもいいぃぃッ!!」
自棄になったトムがレーテに抱き着き、
「いやあぁぁああッ!!!」
お嫁に行けないといった感じでレーテが泣いて、
「でいっ!」
ハインツェルが、トムの背後から頭目掛けて女神の黄金像を振り下ろす。

結果、トムは倒れて動かなくなり、レーテの貞操(?)は無事に守られ、ハインツェルは「ふぅ」と溜息をついた。
305☆『砕く拳』リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/05/25(木) 01:26:51
突然俺の中身が捩れて砕けた。そして激痛が遅れてやって来る。
…何が起きたんだ?俺は一体何をされたんだ!?
肋骨は綺麗に全部へし折れ、肺も潰れてる…息が苦しい、早く…治さないと。
インフィニティ・キングが発動している間は、俺の身体はどんな傷をも再生させる!
「て、てめぇは……な、何モンだ。」
肺が片方再生したので、喋る事ができた。
「僕かい?簡単な答えだよ、そう、僕はちょっと物好きなロクデナシさ。」
俺の言葉に男はサングラスを外し余裕たっぷりに嘲笑う!糞が!!
上等だよ…絶対に…ブチ殺してやる!!
2段階目、コイツは厄介なアレだが…使うしかねぇ。マジで最悪だな、全く…
「ああああああああああああああああああ!!!」
俺の身体が、不気味に軋む音と共に変化を始める。
俺がこの力を使えるようになったのは、ほんの数ヶ月前だ。
自分でも解ってる、コイツを飼い馴らせるのは、簡単じゃない事だって。
でも、目の前の男を倒すには…これしか方法は無い!!
「《開放》したのか、何て馬鹿な真似を!君はそれが何を意味す…」
『ウルセェヨ…クソガ…』
男の顔に驚きの色が、僅かに見えた。知ってるって事か、今の俺が「何なのか」を。


ヒューアの前に立っているのは、白銀の毛皮に被われた1匹の大猿だった。
生命の精霊獣ルールーツ、それが今のリッツの姿だった。
(喋る事ができる!?まさかこの青年…《継承者》か!)
普通ならば、《開放》中に精霊獣が保有者の意識を保っている事はない。
しかし、リッツというこの青年は喋った。つまりそれは《継承者》であるという証だ。
ヒューアは一瞬だけ考える。《継承者》ならば、尚更確かめなければならないと。


『クタバレ!』
俺の拳が男を捉らえた、間違いなく当たってる。感覚があった!初めての手応えだ!!
「くっ…!」
男の顔が苦痛に歪む。やっぱり効いてる、これなら勝てる!
あの2人の…ラトルとエリサの仇が取れる!俺は歓喜のあまり涙が出そうになった。
「君は、自分が何をしているのか…解っているのか!?」
男からは完全に余裕は消えている。そりゃ仕方ないよな。
で、命乞いか?ふざけんじゃねぇぞ…2人の痛みを………教えてやるよ。


リッツは気付いていなかった、ヒューアからは《メダリオン》を感じなかった事に…
306名無しになりきれ:2006/05/25(木) 13:35:41
「ふう…突然殴られるなんて僕何かしましたっけ?」
宝物保管庫から腹をさすりながら出てきたのはルドワイヤン。体中から負け犬のオーラが。
…だが、出てきたルドワイヤンの姿を見つけたサッコの顔が青ざめる。
「や、やめろルドワイヤン!出てくるんじゃねぇ!」
「え?」
何を言われているか分からないとでも言いたげな表情で、ルドワイヤンは足を踏み出す。
月光の下へ――。

閉じこめられていたわけではなく、隔離されていたとしたら?

「ウ…ウオ」
ルドワイヤンの様子が変わっていく。体がひと回りふた回りと大きくなり、その体は剛毛で覆われる。
頼りない青年の面影は最早なく、裂けきった口元には犬歯が覗いていて…それは、まるで。
巨大な、狼のようで。
「ウオオオオオオオオオオオオン!!!!」

人狼。月明かりによってその体を二足歩行の巨大な狼へと変貌させる種族。
捨て子かつひきこもりだったルドワイヤンは、自分がそうであることを知らなかった。

長い間閉じこめられていたから、それはそれは、腹が減っている。
さぁ、餓えた獣の晩餐会だ。メインディッシュはどいつだ?
307☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/26(金) 00:29:33
「大人しく降伏するなら命だけは助けてあげるわよ!」
ジーナが勝ち誇った笑みを浮かべてガタブル震えているサッコに勝利宣言!

「レーテちゃん、大丈夫!?」
パルスはよく分からないがなんかヤバい事をされかけたのは確かだと思った。
男でもいいっとかいう叫びが微妙に気になったがまさかそんな事思わない。
「うう…怖かったです」
レーテの近くによって一瞬愕然とした表情に……
がすぐに何も見てない振りを装い、何も言わずに自分の上着をかけてあげる。
「ごめんね、もう怖い目にあわせないからね!」
レーテをよしよししながら空を眺める。
「見て、初めて僕ら3人でパーティー組んだ日もこんな月が出てたんだ」
「とっても綺麗な日に出会ったんですね」
「行こう、Dさんが待ってる!」
ジーナにそう声をかけたその時…

いつのまにか出てきていたルドワイヤンが…
>「ウオオオオオオオオオオオオン!!!!」
と吼えながら巨大な狼に姿を変えた。
それがいかにも獲物を狙うような目つきで襲い掛かってくる!
「………ええええぇええええっ!? マジですか!?」
パルスはもう立っているのもやっとでとても霊法を使えるとは思えない。
こいつから霊法取ったらはっきり言って一般人より弱い。絶体絶命だ!!
(あれは…人狼!?)
狼と化したそれは全てを貫く牙と人間では足元も及ばないほどの怪力を持つ…。
「ジーナちゃん、無茶だっ!」
と、叫んだ時にはもう遅い! ジーナはすでに間合いに走りこんでいた!
「とりゃあああっ!!」
下から振り上げた猫の手グローブと人狼の前足がぶつかりあう!!
力は拮抗し、数秒ほど動きが止まる。
「…っ!」
後ろに吹き飛ばされるジーナ。

パルスはその間何をしていたかというと…
すでにぶっ壊れて果物ナイフとお鍋のフタを装備していた…。
「かかってこいやあああっ!!」
「やっ、やめてえ―――――ッ!!」
悲鳴を上げるレーテ。
そんなある意味地獄絵図の中、ハインツェルが一筋の希望を見出した。
「…あっ、流れ星!!」

流れ星は、星界から降ってくる贈り物。3回願いを唱えれば叶うとか何とか。

レーテはダメ元でそれを実行した!!
「あの狼どうにかしてください、死にたくないです、お願いしますっ!!」
そんな事をしている間に人狼が走ってきて…
「これは古来より伝わる伝説の盾だーっ!!」
と言いながらお鍋のフタを颯爽と構える壊れた人。
すわ大惨事と思われたその時っ!!

「流れ星がどんどん大きく!?」
「いや、近づいてきてます!」
>隕 石 が 落 ち て く る !
なんか霊媒体質のためか星の世界の声を受信しているらしいパルスが言った。
「汝ノ願イ、叶エテヤル!!」
308名無しになりきれ:2006/05/26(金) 07:16:04
むかしむかし、わるいおうさまがいました。
わるいおうさまは、せかいでいちばんたかいところまで、じぶんのものにしようとしました。
まほうつかいたちに、そらをとぶばしゃをつくらせて、おうさまはそらへいきました。
けれども、そらにはおそろしいかいぶつがいたのです。
ふたごぼしのドラゴンです。
あかいほしのドラゴンと、あおいほしのドラゴンに、おうさまはおこられました。
「ここはにんげんのいていいところではない、かえりなさい」
あおいほしのドラゴンは、やさしくいいました。
「わがはいは、そらもほしい。せかいのおうだからだ」
しかし、おうさまはいうことをききません。
「ならば、1つだけねがいごとをかなえてやる。そしたらかえれ」
あかいほしのドラゴンが、おこっていいました。
「そんなものはない、わがはいはほしいものはなんでももっているからだ」
おうさまはわらいながらこたえました。
するとふたごのドラゴンは、こういったのです。
「ならばおまえがもってないものを、おしえてやろう。そうれ!」
あっというまにおうさまは、ばしゃをこわされてしまいました。
「たすけてください!」
おうさまはドラゴンにおねがいしましたが、ドラゴンたちはむししました。
とべないおうさまは、そのままおちてしんでしまいました。
309†黄昏のレーテ† ◆K.km6SbAVw :2006/05/26(金) 10:52:48
流れ星には、祈ってはいけない色がある。
それは『赤』だ。
流れ星とは、そもそも星界の龍達の飛んでいる姿である。神々に地上を追放された古き支配者達。
(紅星龍が……来る!)
人は、赤い流れ星には祈らない、それは破滅を呼ぶ行為だからである。
(まさか祈りが届くなんて…)
レーテは激しく後悔した。赤い流れ星は災いの前触れ、紅星龍イルヴァン。
ハインツェルが「あ、流れ星」と言った時、レーテは咄嗟に祈っていた。
流れ星の色をちゃんと確認していなかったのである。
「な…何?この声…」
パルスが空を見上げた瞬間、『それ』は顕れた…
凄まじい爆発が巻き起こり、その場の全てを薙ぎ払っていく。
爆炎と粉塵の向こうに、ゆらりと揺れ動く巨大な影が見えた。災いの紅き龍、紅星龍イルヴァン!
『我輩に祈ったのは…誰か?』
地の底から響くような悍ましい声で、紅き龍はそう言った…

レーテは辺りを見回した。皆、爆発の衝撃波をうけて倒れ伏していた。
武器も持たず、子供に喧嘩で負けるようなレーテに伝説の魔龍を倒せる筈がない。
しかし、レーテは立ち上がり答えた。
「わ……私…です…」
蚊の鳴くような小さな声。これが、今のレーテの勇気全てを振り絞った声。
『ん?よく聞こえん。もう一度言え』
レーテに気付いたイルヴァンが、容赦なく言った。
「わ、私…です」
『聞こえん、ハイもう一度』
「私です」
『いや、だから聞こえん!ホレもう一度!』
顔を近づけるイルヴァンを、レーテはキッと睨む。そして、すぅーっと息を大きく吸い込み、腹の底から叫んだ。
「わ−−−た−−−−し−−−−−−ッ!!!!!!」
楽士の声量を侮ってはならない。レーテは普段こそ声は小さいが、その声は全力時だと立派な凶器となる。
ビリビリと空気が震え、イルヴァンは驚きのあまり、ギョッとした。
『ゥン!…願いを1つ叶えよう。言ってみろ』
先程までの威厳に満ちた雰囲気は消え、すっかり気圧されているが、咳ばらいの後に気を取り直して言った。


「レーテちゃん!大丈…うえぇぇえ!?」
駆け寄って来たジーナが、レーテの方を見て素っ頓狂な声を上げる。
「はい、大丈夫です。素敵なお友達ができました〜♪」
満面の笑顔でVサインをするレーテの隣には、少しはにかんだ表情で佇む伝説の赤い龍がいた。
310(^ω^ )@NPC ◆vsANtLH2P2 :2006/05/26(金) 14:12:31
「友達!?コレが!?」
ジーナはイルヴァンをまじまじと見つめて、率直な感想を述べた。
『おい小娘、我輩に向かってコレとはなんだコレとは!』
イルヴァンは首を振って威嚇する。
「あ、そういえばパルス君とハインツェル君は?」
イルヴァンを完全に無視して、ジーナはレーテに尋ねる。
「向こうに倒れてます、助けに行きましょう」
ジーナとレーテは頷き合い、倒れている2人の方へ駆け出した。

「いてて・・・何がどうなったんだ?」
サッコが頭を摩りながら起き上がる。特に負傷してはいないようだ。
少し離れた所に、銀狼となったルドワイヤンが倒れていた。
「おい!起きろ!!奴らをブッ殺すんだ!!」
揺さ振り起こすと、ルドワイヤンはしばらく寝ぼけ顔だったが、次第に目が覚めたようだ。

『レーテ、あやつらも仲間か?』
イルヴァンにそう言われて、振り返るレーテとジーナ。
その方向からは、サッコとルドワイヤンが猛ダッシュで向かって来る!
「違います!イルヴァンさん、やっつけてください!」
『うむ、承知した。くらえ!メガ・・・?』
イルヴァンの体が突然眩しい光を放ち、「ポンッ!」と可愛い音をたてて小さくなった。『ふぁいやー?』
ちょこんっと小さい火の玉を吐いて、首を傾げるイルヴァン。
「「ええぇぇえ!?」」
期待の戦力が活躍する間もなく戦力外になって、ジーナとレーテは思わず叫んだ。
311フェンリル ◆KK3LevWd/A :2006/05/26(金) 16:06:19
何となくフェンリルは復活した。
ヤム飯として。
312ヤム飯 ◆aFNWH1Hq1w :2006/05/26(金) 16:08:09
「ヤム飯参上!!!」
ヤムチャと天津飯がフュージョンして現れた戦士。
その力は究極にして絶大。
いかにメダリオンを保持しているからといって、ヤム飯には勝てないだろう。
313名無しになりきれ:2006/05/26(金) 16:11:10
東の大陸にある、呉燕ゼノギメト帝国。
優秀な人材を抱えるこの国が、最近になって不穏な空気が現れていると言う。
近々、漁夫の利を狙って攻めてくるという噂だ。
314☆ジーナ ◆QWE7YBXRW2 :2006/05/26(金) 16:28:12
「ちょっと紅星龍!可愛くなるなら時と場所を選びなさいよこの役立たず!!」
ジーナは思わず叫んだ。
弱ってるパルス君をこれ以上酷使するわけには行かない。
ここは私達でなんとかしなくちゃ!

サッコと人狼はこちらに狙いを定めている。なんで言う事聞いてるのよバカ狼
どうせならサッコ食っちゃえばよかったのに!
ジーナは物騒な目で紅星龍を見下ろした。
「あら・・・紅星龍って結構頑丈そうじゃなーい?」
レーテは不思議そうな顔でこっちを見ている。だけど、説明してる暇なんか無かった。
「レーテちゃんはパルス君を、ハインツェルはサッコをお願い!」

ジーナは紅星龍の首根っこを引っつかみ、人狼の前に立ちふさがった。
伝説の龍だろうがなんだろうが、ジーナにしてみればただの紅トカゲくらいの認識しか無かった。
「こら離さんか!小娘、我を誰だと心得ておるのだ!」
「ジ、ジーナさん一体何を・・・!」

抗議の声は右から左へ。
・・・・・・人狼は力で叶う相手じゃない。でも、手が無いわけじゃない。

ジーナは伝説の英雄ホシヒュウマのように大きく振りかぶった。
そのままの勢いで紅星龍をブン投げる。
「見事散ってきなさい!行けえ!めがふぁいあー!」
「こ、こんの無礼者がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
紅星龍は一筋の赤い光となって、人狼の顔面を直撃した。
めり込んでいた紅星龍がぽろりと落ちる寸前、ジーナは人狼の懐に飛び込んでいた。
「ウサギ・・・・蹴りぃぃぃ!」
ジーナの渾身の回し蹴りが人狼の急所を直撃した。

手ごたえはあったけれど、人狼相手では効いてるのかどうか分からない。
これでダメなら、後は尻尾を巻いて逃げるしかなさそうねー。
315名無しになりきれ:2006/05/26(金) 17:14:03
顔を蹴られた地球が怒って〜
316名無しになりきれ:2006/05/26(金) 17:22:48
>>315
火山を爆発させる〜













何で中途半端なとこから始まるんだよ
317名無しになりきれ:2006/05/26(金) 17:25:32
と〜けたこおりのな〜かに〜
318名無しになりきれ:2006/05/26(金) 17:28:43
ヤム飯がいたら〜
319名無しになりきれ:2006/05/26(金) 17:29:57
>>318
空気嫁
320栽培マンコ:2006/05/26(金) 17:34:52
ヤム飯程度に負けるはずがない
321名無しになりきれ:2006/05/26(金) 17:45:39
ヤム飯は無敵さ!きっと来てくれる!!
だって、ヤム飯だもん!!!
322名無しになりきれ:2006/05/26(金) 17:46:38
しょせんはクリリンには勝てねえんだよ、おまえらは
323名無しになりきれ:2006/05/26(金) 17:46:56
ヤム飯はもう死んだよ?来るわけねーだろ!
324名無しになりきれ:2006/05/26(金) 17:54:32
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
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325名無しになりきれ:2006/05/26(金) 17:56:07
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ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム館!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!ヤ〜ム飯!
326名無しになりきれ:2006/05/26(金) 20:31:41
その時、呉燕ゼノギメト帝国では女王植松が動きだそうとしていた。
327生徒会長:2006/05/26(金) 20:36:15
なりきりネタをやらずに何をやっているのだ!!ここのコテ達は!!
いい加減に言葉遊びなんかをやめて隕石でも破壊しにいってこい
大体お前らがなな板にいるだけで、ここがゴミキャラ板と呼ばれるのだ
328図書委員長:2006/05/26(金) 21:14:44
了解しました!隕石を破壊します!!

さあ!ボクに元気をわけてください!!
329名無しになりきれ:2006/05/26(金) 21:19:56
>>325のヤ〜ム飯!の中に1こだけ、ヤ〜ム館!が混じってるぞ
330名無しになりきれ:2006/05/26(金) 23:04:32
というか、久しぶりに生徒会長の名前を見た
331フェンリル ◆EBKk3uiflU :2006/05/26(金) 23:06:21
「わん」
僕の幻術どうだった?
と、Dにテレパシーで見せていた。
彼も存外に暇なようだ。
332名無しになりきれ:2006/05/26(金) 23:21:42
>>329
SUGEEEEEEEE!!!!!!ほんとにあったwwwwwwwww
333フェンリル ◆f53n2IhgtI :2006/05/26(金) 23:25:55
天狼〇刀牙!!
Dは9999のダメージ!
Dは死んだ
334フェンリル ◆EBKk3uiflU :2006/05/26(金) 23:30:11
>333も幻覚だった。
335名無しになりきれ:2006/05/26(金) 23:37:38
様々なイメージがDの頭の中に流れ込んだ!
336貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/05/28(日) 17:32:42
「ぐっ…!」
ただの一発の殴打でこの威力…少し効いたかな、
しかし、やっぱりメダリオンを所持していたのか。
しかも喋れることからすると継承者だったなんてね、
代用的だが解放もできるようだし……だが今はまずい、
このままでは彼が危ない、彼はまだよくは知らないかもしれないが。
「君は、自分が何をしているのか解っているのか!?」
だが僕の言葉に彼は反応しない、ただ僕に向けて殺意を放ってくるばかりだ。
今更だが誤解も受けているしやっぱり善意としては見てくれないよねぇ。
逆の立場だったらやっぱり僕もキレてるさ。

「やれやれ、困っちゃ……」
『シニサラセ……。』
どうやら彼はこっちの小言すら聞く気がないみたいだ。
証拠に彼はその巨体に似合わないような素早さで僕を殴りつける。
凄い衝撃だ、あまりの激しさに僕の体が宙へと飛び跳ねるぐらい。
「ぐはっ!!……はぁはぁ……。」

しかもデカイ図体してるくせに凄いスピードだ。
こりゃ本格的にヤバいかもしれない、あちこち打撲するなんて何年ぶりだろうか。
僕は全く彼の力と速さになす術がない、
なんとか頭や重要な場所を防御するのが精一杯だ。
「くっ!……落ち着きなさいっての!」
一瞬の隙を見て僕はなんとか彼へと一発打ち込むのに成功する。
だが全くダメージがない、メダリオンの効果か……。

『ドウシタ?ザコガ!』
聖獣である青年の攻撃は更に激しさを増す、
僕も攻撃を叩き落しながら僅かな隙を見て
簡単な応戦するがメダリオンの力で全て無へ帰してしまう。
こんなに苦しい状況なのに笑いが込み上げてくる。
この懐かしさ、かつて「同じように」戦かった記憶。
僕は知らず知らずのうちに彼に向かって叫んでいた
「全く…昔と同じで手に負えないな…強くて残忍で、
  聖獣とは名ばかしで、慈悲もないしなにもないもの、
  けど……やっぱり楽しいし美しいネ、聖獣ってのはさ!」
337☆『砕く拳』リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/05/28(日) 19:22:14
「全く…昔と同じで手に負えないな…強くて残忍で、聖獣とは名ばかしで、慈悲もないし
なにもないもの、けど……やっぱり楽しいし美しいネ、聖獣ってのはさ!」
コイツ…笑ってやがる!?
何なんだよ!何でコイツはこんなに余裕あんだよ!?
間違いなく俺が圧してる筈なのに…何なんだ、このモヤモヤした感じは!?
『オオオオオォォォ!!!』
漠然とした不安のようなモノを振り払う様に、渾身の力を込めた一撃を打ち込む。
『ナッ!?』
信じられなかった…奴が、片手で俺の拳を受け止めていた!そんな馬鹿な!?
「ふぅ…久々に楽しかったよ。でも、流石にこれ以上はちょっと辛いね」
ミシミシと音をたてて、俺の腕が押し戻されていく。
「君がアレを何処まで抑える事ができるか、試させてもらったよ。うん、合格かな」
試させてもらっただ!?ふざけんじゃねぇ!!!あいつらの仇を、取るんだよ!!!
『ウアアアアアアアアアアアアアア!!!』
全ての力を使い果たしてもいい!俺は…絶対に!!
「それ以上は止めた方がいい。君はここで死ぬべきじゃないからね」
そう言って男は小声で何かを唱えた。
ヤバイ!直感がそう告げる。この敵は何をしてくるか、全然予想できない。1度距離を空けて……
ドクンッ…
俺の中で《メダリオン》が蠢いた。力が急速に消えていく、変だ!まだ時間切れじゃないのに!?
俺の身体は元の姿に戻った、しかも《メダリオン》がまるで反応しない。
「ふぅ、成功成功っと」
「テメェ!一体何をしたんだ!?」
体から力が抜ける。インフィニティ・キングの発動後は、いつもこうなる。
「う〜ん、何て言ったらいいのかな…そうだな、君の《メダリオン》を停止させたってとこかな?」
「……停止?」
何を言ってるんだ?《メダリオン》を…外から止めた?
「少しは頭も冷えたかい?さて、それじゃ説明しようか。まず僕は《メダリオン》を持っていない」
え?………そういえば、俺の《メダリオン》も反応してなかったような…
「そして君の敵でもない。味方って訳でもないけどね。まぁ謎の男って事で」
じゃあ、《疾風のメダリオン》の保有者は…
「あ!そういえば自己紹介がまだだったね。僕はヒューア・フォン・ヒッター、謎多き遊び人さ」
そう言って、ヒッターと名乗った男は俺に手を差し延べた。
338黒騎士 ◆KopEZimtGs :2006/05/28(日) 20:49:06
ドラグノフ公国首都、霊峰都市ガナン
龍人達が暮らす、古き都。
大陸北部を斜めに横断する、グラド山脈の中腹にその都は存在している。
厳しい自然という壁に護られた都は他国の侵入を強固に阻み、そこに住まう龍人達の平和を見守っている。

「お帰りなさいませ、ディオール様」
一礼して私を出迎えたのは、執事のボイドだ。この初老の執事はいつも笑顔を絶やさない。
「ああ、ただいまボイド。留守番ご苦労様」
私がそう言って、兜を脱いで渡すと彼は早速手入れを始める。
ボイドはこの都では珍しい『人間』だ。
奴隷として私の家にやって来たのが、今から40年程前のことだ。
ガナンの都において、人間の立場はほとんどが奴隷階級だ。異種族であるという理由だけで、迫害される。
私はそんな事は嫌いだ。この大地に等しく生を受けた、人として私は彼に接している。
種族の優劣に何の意味があろうか、全く馬鹿げた話だ。
我々龍人は人間に比べて寿命が長い。私とボイドが出会った頃、ボイドはまだ少年だった。
今やボイドは年を取り、すっかり老いてしまったが私は彼と出会った頃のままなのだ。
(時の流れは無情とはよく言ったものだな)
溜め息を一つ、ソファに腰掛けるとボイドが手紙の束を持って来た。
「留守の間に届いた物でございます」
どれどれ、…随分とたくさんあるな。差出人の名前を確認しながら、封筒を物色していると1枚の紙切れを見つけた。
その紙切れには、こう書かれていた。
『紗霧の月25の日、ライン大河にて陣を敷く。至急連絡されたし』
冗談もほどほどにしてほしい。軍はあの商業都市を攻めるつもりか?
メロメーロは交易の重要な中継地だ。もちろん我が国にもかなりの影響が出る筈だ。
それなのに何故…
私はボイドに紙切れを預けると、出かける準備をした。
「ボイド、出掛ける。その間にライン大河の陣を指揮する者を調べてくれ」
「かしこまりました」
2ヵ月ぶりの我が家…ソファに1度腰掛けただけ、全くツイてないな。
だが私はあの紙切れを無視する事はできない、何故ならあれは私の親友からのメッセージだからだ。
339☆見た感じ軽兵士 ◆CYuXtvnAKk :2006/05/29(月) 00:13:50
>「レーテちゃんはパルス君を、ハインツェルはサッコをお願い!」
「え!?え!?…ぼ、僕がぁ!?」
記憶を失って間もないハインツェルは剣を振るえるのかすら危ういが
サッコはすでのハインツェルに標準を合わせている。
震える手つきで剣を抜くハインツェル、
どうみても戦力として期待できるような素振りは見られない。
それを見たサッコはハインツェルに戦いの経験がないのを確信する。

「はははっ!こいつ、なっちゃいないぜ!」
「く、くそ、僕だって!」
サッコはハインツェルに向かい横になぎ払う。
「う、うわぁぁ!」

ハインツェルの胴体は真っ二つにになったかと思われた、
だが胴体は真っ二つにはなっていなかった。
ハインツェルは尻餅を着き剣の狙いが逸れたのだ。

「あ、あれ?」
「チッ!運のいい奴め!今度こそ!」
サッコはそのまま剣を振り上げハインツェルへと振り下ろす!
体勢はまだ立て直せそうもなく剣の技量もないハインツェルにこの攻撃を避けるということは
考えられなかった。
「あ…ああ…」
振り下ろされる剣をただ呆然と見ているハインツェル。
そしてなにかを切り落としたような鈍い音があたりに響き渡った。


340☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/29(月) 10:28:23
「…何が起こったの?」
レーテに揺り起こされる。
「空から龍が来てくれました」

>「ウサギ・・・・蹴りぃぃぃ!」
ジーナの渾身の回し蹴りを受けて人狼は断末魔の叫びをあげる!!
「○×△□!!」
「ああ〜、あれは痛いですねー」
と、妙に納得しているレーテにパルスは乾いた笑いで返すしかなかった。
「…ははは」(レ、レーテさーん…それは無いよお…)

一方。サッコはハインツェルに殴りかかろうと駆け出し、ふと足を止める。
「!? 何を!?」
「お前にはこっちの方が早いな。形・態・変・化ッ!!」
モーニングスターが眩い光に包まれる。
次の瞬間、サッコの手には一振りの剣が握られていた!!
「見ましたか!? 今変わりましたよ!」
「あれは…最先端技術を駆使して作られた魔法武器だ!!」
驚いたレーテとパルスは驚きのあまりすっかり実況と解説モードに入った。
「ゴーグルだけでは無くあのような物も持っているとは…」
「ハインツェル君はこの強敵にどう立ち向かうのか!?」
何呑気に解説してるんだと突っ込まれそうだがMP切れの魔法使いはこんなもんだ、うん。

>「はははっ!こいつ、なっちゃいないぜ!」
「く、くそ、僕だって!」
サッコはハインツェルに向かい横になぎ払う。
「う、うわぁぁ!」

「おおっ、ハインツェル君避けましたよ!」
「敵の意表をつくあの動き…素晴らしい!」

>「チッ!運のいい奴め!今度こそ!」
サッコはそのまま剣を振り上げハインツェルへと振り下ろす!
「あれは…避けられない!!」
パルスはいきなり解説モードを終了した!!
「【スネア】!!」
>なにかを切り落としたような鈍い音があたりに響き渡った。
「え?え?いやあああああっ!!」
レーテが顔を覆って叫ぶ―。

「レーテさん、大丈夫ですか?」
レーテが顔を上げてみると、なんとそこには
ハインツェルが何事も無かったように立っている。
「サッコは勝手にすっころんで自滅してくれました。僕ってラッキーですね」
サッコは転んだ拍子に自分の頭を切ってしまったらしく
額から血をダラダラ流して倒れていた。

(良かった〜間に合ったか)
それを見届けて、パルスは地面にへたりこむ。
実はあの瞬間、地面を隆起させて敵をすっころばせるというセコい霊法を使ったのだ。
エルフなら誰でも使える子どもの悪戯レベルの術である。
(昔はよくこれで遊んだっけ、こんなに役に立つとはね〜
眠い…まあいいか、つれて帰ってくれるよね。
いや、でもここで寝たらお姫様抱っこ…それは…ちょっと………)
そんな事を考えながら、どこかやりとげたような顔で寝息をたて始めた。
341☆紅星龍イルヴァン ◆K.km6SbAVw :2006/05/29(月) 12:38:10
『いてて…何するのだ!?』
我輩は全力で兎娘に抗議する。当然だ、かつてこの地上を支配した、我ら古龍を投げるなどと…
「ん〜?だって、投げやすそうだったから?」
『どんな理屈だーッ!!』
ポリポリと頭を掻きながら答えた兎娘に、我輩は飛び掛かる。
どうにも我慢ならぬ!我輩の恐ろしさ、とくと味わうがいい!!うおおおお!!!
「ちょっと!何すんのねこふっく!」
『はうあッ!?』
強烈な横殴りの一撃を受け、我輩の意識は問答無用で途絶えた…


「もし、レーテちゃんの言う通りソイツが空から来たなら古龍だね」
「古龍?」
「そう、かつて神様よりも前に世界を支配してた、伝説の存在だよ」
「でもさ、どうしてそんなのがココにいるのよ、しかも小さいし」
「龍は新しき神々、つまり今の神様に地上を追放されたんだ。だから地上では力を発揮できないとか」
「へぇ…パルス君は物知りなんですねぇ」
「いやぁそれほどでも〜」


『ん…んん、此処は…何処だ?我輩は一体何を……』
我輩が眼を醒ますとガタガタ揺れる小屋の中だった。
「あ、起きたみたいだよ。ヤッホー♪」
エルフェンの若造が、我輩に気安く声をかけるな!我輩はじたばた暴れて、レーテの背後に隠れた。
「あれ?もしかして、嫌われちゃった?」
『エルフェンは好かぬ!失せろ!!』
へらへらとだらし無く笑うエルフェンの若造に牙を剥き出しにして威嚇する。
「エルフェン?」
「エルフの古い呼び方だよ、どうやら本当に本物らしいね」
そう言うと何か丸い物を口に頬張り、若造は再び横になった。疲れが少し伺える。
「こら。ちゃんと謝りなさい」
『断る!いくらレーテの頼みとはいえ、我輩にも龍の誇りがあるのだ!』
「どうして仲良くしないんですか…喧嘩とか……そんなの…嫌いです」
チッ、なんということだ!我輩は清き乙女の涙には敵わぬ…仕方あるまい。
『……その、なんだ…別に貴様と仲良くするつもりなど無いからな!』
「めっ!」
レーテが我輩のたてがみを引っ張る。うぬぬ…
『……むぅ、な、仲良くしてやる…光栄に思え』
新しき神々の呪いさえ無ければ、食い殺してやるものを!!
「仲良しが1番です♪」
笑顔で我輩の頭を撫でるレーテ。
……まぁ、こんなのも…悪くは無いか。
342☆ジーナ(出先):2006/05/29(月) 16:39:37
ハインツェルは今日何度目かのため息をついた。
馬車のたずなを握っているのだが、隣のジーナが手にもっていたモノでハインツェルの肩をを叩いてくるのだ。
「じ、ジーナさん、止めてください・・・・」
ジーナが手にしているものは、さっきまでサッコが持っていた魔法武器だった。
今は鉄製の棍棒になっている。肩叩きに丁度いいとジーナは言うが、ハインツェルにはとてもそうは思えなかった。
「えー?でも面白いわよこれ〜。行くわよっ!形・態・変・・・・・」
「お願いですから寸止めしないで下さい〜」
「化!あらっすごい!鞭にもなるのね〜。賢いわ〜!これもしかしたら、武器以外の形にもなるのかしら?」
「人の話を聞いて下さい・・・」
「おたまとか鍋に変化したら便利よね〜」
「人を切ったかもしれない武器で、ご飯作ったりおかずを盛り付けられるのはごめんです!
それはそうと、手は大丈夫なんですか?さっきモーニングスターを弾いた時、突起部分が刺さってたでしょう?」
「ああ、あれ?大丈夫よあんなの。なめときゃ治るわ」
「治るって・・・」
ハインツェルは絶句した。そしてまじまじとジーナを眺めた。貴女本当に人間ですか?と質問してみたかった。
だが。ちょうどその時、背後の小屋状の荷台から仲間たちの声がした。
「あ、皆気が付いたみたいね!私ちょっと見てくるわ!」
そういい残し、ジーナは御者席から器用に小屋状の荷台へと移動していった。

「パルスくん大丈夫〜?あら、チビ龍も起きたのね。良かったわ〜」
『だ、誰がチビ龍だ!』
「打ち所が悪くてまた記憶喪失になったらどうしようって、ちょっとだけ心配してたのよ〜
そうそう、蠍の爪の宝箱を開けてみようと思ってたのよ〜。Dの治療費も払わないといけないしね。」
『こら兔娘!人の話を聞かんか!』
イルヴァンの抗議もどこ吹く風。ジーナは宝箱をひょいと持ち上げ、荷台の中央に置いた。
「トラップや魔物はどうなんでしょう・・・パルスさん、これ、開けても大丈夫なんでしょうか?」
レーテが心配そうにパルスを見つめた。
「呪いはかかってないみたいだから、普通に開けても大丈夫」
パルスは笑ってそう請け負った。
ジーナは宝箱の鍵穴にヘアピンを差し込んでいるが、なかなか上手くいかない。
「こんな時Dがいてくれたらねえ・・・ホント、早く元気になって欲しいわ・・・」

悪戦苦闘の末、パチン、と何かが外れるような音がした。
343名無しになりきれ:2006/05/29(月) 16:49:43
やっと開いた宝箱の中に入っていたのは

またも箱でした
344名無しになりきれ:2006/05/29(月) 17:47:02
そして、その箱の中から出てきたのは・・・

やはり小さな箱だった
345名無しになりきれ:2006/05/29(月) 18:04:33
それを繰り返すこと十数回。とても小さい箱の中から紙切れが一枚。

そこに書かれていたのは「ばーか」の三文字
346名無しになりきれ:2006/05/29(月) 18:31:21
ジーナは魔獣の如く雄叫びをあげた
347黒騎士 ◆KopEZimtGs :2006/05/29(月) 23:37:15
屋敷を後にして、私が向かったのは騎士団の本部だった。
私を呼び出した張本人、騎士団長カルナートに文句を言いに行く為だ。
夕暮れの街並を見渡しながら、私はゆっくりと歩く。道行く人々が様々な目を私に向ける。
羨望の眼差し、畏怖の眼差し、嫌悪の眼差し、こんなのはとうに慣れたが、やはり気分の良いものではない。

程なくして、私は城に併設された騎士団本部に到着する。思っていた以上に早く着いてしまった。
この扉を開けるのだけは、いつになっても苦手だ。扉の向こう側にいる連中の事を思うと、軽い頭痛がする。
「テメェ!!よくもやりやがったな!!表出ろや!!!」
怒声と共に勢いよく扉が開いた、サラマンダーの如く顔を真っ赤にした男が出てくる。
「……またか、バルダン。いい加減にしろよ?」
この男はバルダン、騎士団で最もキレやすい男である。そして今現在進行形でキレている。
「うぉわっ!?先輩ッ!?」
ギョッとして立ち止まるバルダンが、突然前のめりに倒れ込む。
「ホレ、さっさと出なよ!このグズ!!」
どうやら後ろから蹴り飛ばされたらしい。この女性はディアドラ、騎士団の紅一点だ。
…が、見ての通り女らしさは微塵も無い。
「あら?帰ってたんだ、ディオ」
私の姿に気付いたのか、いきなり般若の顔からとびきりの笑顔に早変わり。
私は苦笑いで応えると、建物の中に入った。
「今回のメロメーロ制圧作戦について聞きたいね。あの街は攻撃対象外だった筈だ」
「そう、確かにメロメーロは攻撃対象外だった。しかし、これまでの調停申し入れを拒否してきた」
私の問いに騎士団長カルナートは難しい顔で答えた。
「加えてあの街の評議会議長に反乱組織との密約が確認されている。我々としては見過ごす訳にはいかんよ」
「だが商業都市に南部方面軍の1個師団を投入するのは変じゃないか!」
私は思わず声を荒げた、確かに降伏を勧告する上での威圧という意味合いでなら納得できるが…
「メダリオンだよ、ディオール。反乱組織にメダリオンが集まっているとしたら、どうする?」
そうか!メダリオンを評議会が保有していたら街の独立の後ろ盾になる!
だから評議会は調停を拒絶したのか、それなら納得がいく。
メダリオンの力を持ってすれば、五千の兵でも足りないだろうな…
私は今日二度目の溜息をついた。
348名無しになりきれ:2006/05/29(月) 23:48:34


肥満くせー
349☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/05/30(火) 00:07:15
(やっぱりねー、エルファンは好かぬ…かあ)
が、さすがの古龍もレーテにはにはかなわないらしい。
(……まさか男だなんてね)

「仲良くしてくれるの?はい、指握手」『気安くさわるで無い!』
「可愛いな〜♪」(なでなで)『馬鹿にするなああっ!!』
龍と(で?)遊んでいるパルスを見てレーテはうんうんと満足げに頷いていた。

ジーナが箱を開けるのに苦戦している。箱の中から次から次へと箱が出てきた…。
「きょええええっ!!」
「どうしたの?」
叫び声にさすがに起きだして箱の最深部にあった小さな箱の中を見ると
「ばーか」と書かれた紙が入っていた。
紙切れを取り出して眺める。裏には説明らしきものが書いてある。
「なになに? “バカの箱”。この紙が入っている部分に大事なものを入れよう。
そしたら一個ずつフタを閉めていこう。
全部閉め終わったら表に書いてある合言葉を唱えると一気に鍵が掛かるよ」
まだ使用前の厳重な宝箱だったようだ。もしくはこの箱自体が高価なものなんだろうか。
「同じタイプの他の箱も開けてみよう。いいものが入ってるかもしれない」
350黒騎士 ◆KopEZimtGs :2006/06/01(木) 17:13:44
「メダリオンの危険性はお前が一番よく知ってる筈だ、違うか?ディオール」
カルナートの言葉に、私は思い出す。2ヵ月前、オーウェン伯爵領で出会った青年の事を…

「畜生!奴だ!黒騎士が来た!!」
反乱組織《運命の牙》の若者が、私の姿を見て仲間に叫び報せる。
ここは《運命の牙》の拠点の1つ、私はそれを殲滅させるのが任務だった。
逃げ惑う反乱組織の人間を次々に斬り倒しながら、組織の主要人物であるベルカン・オーウェン伯爵を捜す。
小国の貴族でありながら、我が国に最後まで抵抗を続ける男だ。祖国を失って尚、戦いを続ける理由…
全く理解できない訳ではないが、やはり無謀というものだ。
「ブッ飛びな!!」
突如として私を襲う衝撃に、その言葉通り私は吹き飛び壁に叩きつけられた。
何が起きたのか、一瞬の判断が遅れた。体は壁にめり込み、甲冑が衝撃で変形した為に身動きがとれない。
「仲間の仇だ。痛みを…教えてやるよ!!」
そう叫ぶ青年の首に提げられたメダルが、強い光を放つ。
あれは、メダリオン!?
まさか反乱組織にメダリオンの保有者がいたとは、まるで予想外だった。
雄叫びをあげて突進してくる青年の攻撃を、無理矢理に体を捩って避ける。
変形した甲冑では、思うように戦う事ができないだろう。完全にしてやられた。
「ここでテメェを倒せば、仲間の士気も上がる、俺も仇が討てる。良い事尽くしだよ」
「君はメダリオンを何処で手に入れた?」
「あぁ?テメェに関係あるかよ」
鋭い蹴りが私の横腹をえぐる、甲冑の留め具ごと『持って行かれた』!?まるで怪物だな、人間の力じゃない。
「動き難いんだろ?じゃあ、動き易くしてやるよ!」
凄まじい連続攻撃に、私は為す術も無く打ちのめされる。黒騎士の証たる黒い甲冑が、次々に砕かれていく…
骨が砕かれ、肉は裂かれ、まともに動くことすらできない。これ以上の戦闘続行は不可能だ。
これが、精霊王の欠片…メダリオンの力なのか!?
「闇よ…我を包め……」
私は《ブレス》を起動する。黒星龍の祝福を受けし力、空間転移の《ブレス》を。
「青年よ…名を聞いておく…」
「待てテメェ!逃げるってのか!!」
青年の叫びに、私の誇りが揺らぐが…私はここで死ぬ訳にはいかない。
「リッツだ…覚えておけ!!」
闇の向こう側から、青年の声が届いた。
351黒騎士 ◆KopEZimtGs :2006/06/01(木) 17:45:58
「おい、聞いてるのか?ディオール」
カルナートの言葉に、私は我に帰る。あのリッツと名乗った青年、今は何処にいるのだろうか。
「すまないな、少し考え事をしていたよ」
私が答えるとカルナートは呆れ顔で、葉巻に火を付けた。
「とにかく、今度のメロメーロ進攻は既に決定事項だ。メダリオン保有者には、お前の黒剣をぶつける」
「成る程…つまり保険をかけた、と?」
私の問いに、カルナートはニヤリと笑った。

メダリオン、そして反乱組織…悩み事の種は尽きない。
更に私を悩ますのは、軍部の動きだ。マイラ遺跡から発掘された新種のゴレム。
その起動実験も既に始まっていると聞く。
……この国は、一体何処に向かうのだろうか。ふと、そんな事を考えてしまう。
自宅に帰る途中で、私は自身に対する不安と苛立ちにすっかり鬱になってしまった。

「お帰りなさいませ、ディオール様」
自宅に着くと、ボイドがいつもの笑顔で出迎えてくれた。
「例の件ですが、ロンデル大佐率いる第三師団のようでございます」
ロンデル大佐?『鋼鉄の虎』の異名を持つ、あの男か…
「しかしロンデル大佐はよく承諾したな。確か彼の出身はメロメーロではなかったか?」
「左様でございます。何でも、自ら志願したとか…」
成る程、彼らしいな。例え故郷であっても容赦しないという事か。
「やはりディオール様も、戦列に加わるおつもりで?」
心配そうに私を見つめるボイドの肩を軽く叩き、私は笑う。全く、心配症な男だ。
「忘れたか?私は『剣』を持っている。そう簡単には死なんよ」
笑いながらそうは言ったものの、実際は違った。あの青年が…もしメロメーロにあの青年がいたら…
私は勝てるだろうか?あの時は不意を打たれたが、はたして正面から打ち合っても、私は勝てるのだろうか?
メダリオン、あれは危険だ。陛下はあれを集めているが、どうにも解せない。
先の大戦で龍人の王アーダが解き放った、古の精霊王。
伝え聞く限りでは、そのような危険な存在を再び解放するなどと…絶対にありえない。

真意を問わねばならんか…私は思考を廻らせる為、静かに目を閉じた。
352†黄昏のレーテ† ◆K.km6SbAVw :2006/06/01(木) 18:03:43
山賊から奪い取った宝は様々な物があった。
そんな中でレーテが気に入ったのは、ネジを回すと音楽が流れる小箱だった。
それだけなら単なるオルゴールだが、小箱は魔法により小人達の立体映像が陽気にダンスしていた。
どうやら相当気に入ったらしい。
何度もネジを回しては、小人のダンスに魅入っている。

「こっ、これはーッ!!!」
幸福気分で小箱を眺めていたら、突然パルスが大声を出した。なにやら興奮しているようだ。
「ここか・・・・・」

私は約束の場所へとたどり着いた。といってもただ物を受け取るだけ、
それだけのためにいちいち私に回す仕事ではあるまいに。

「サッコ、いるのならば返事をしろ・・・・・」
「・・・・・うぅ・・・」

すると近場からうめき声が聞こえる。
私はあたりを見回す、するとそこには無様な姿で倒れている男がいる。
額から血が流れているのを見る限りなんらかしらのイレギュラーがあったのだろう。
私は男に近づき腹に足を入れ無理矢理仰向けに起こす、

「サッコ、なにがあったんだ?」
「アンタか・・・・へ、へんな奴等に、やられちまった」

なんという無様な姿だろうか。雑兵といえども蠍の爪がこの程度とは。
雑兵がこの程度ではかつての力を持っているは思えない。
やはり今はメダリオンに戦闘経験を積ませるだけのものに成り下がったようだな。
そんなことを考えながらも私はサッコに手を差し伸べる。

「す、すまねぇ・・・・・」
「いやなに、要らないものは処分しなくては」
「なにを言ってんだ・・・・?」

私は手を掴み引っ張り上げるとローブから中剣を取り出す。
サッコの顔には恐怖が伝染していきその表情は命乞いをするソレに近かった。
だが私は無慈悲に、そして缶切りで缶詰めを開けるように、
至極『当たり前のよう』に男の喉下を掻っ切る。

「な!?」

そして男はその短い生涯を閉じた。いや、私がこの男を生涯を奪った。
おそらく強い者に尻尾を振り、階級というものに惑わされ、弱いものを虐げる、
そして哲学のなんたるかも知らぬような下らない人生だったろうがな。

「こっ、これはーッ!!!」

布で覆われた荷台から声がする、間抜けでなんともいえないような声だ。
こんな奴にやられたというのか。下らない。
そんなことを思いながら私は荷台の方へと歩いていく。

「さて、さっさと終わらせてもらうとするぞ」
354☆貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/06/01(木) 23:59:08
僕は青年に手を差し伸べる、まだ警戒はしているみたいだが。
とりあえずはこっちに敵意がないことを察したのか僕の手をつかむ。
僕は彼を立ち上がらせる。
「怪我はないみたいだね、流石はメダリオンの恩恵を受けているだけあるか。」
「アンタは……なんなんだ」
青年は僕を変な物でも見るような目で見ている。
まあ、仕方ないけどね、みんながみんなこういう反応だからね。
「……女垂らしのロクデナシじゃご不満なのかい?」
ニッコリと茶化すように青年へと言う。
かれももうどうでもよくなってきたのか本題へと移る。
「アンタのその異常な力は確かに気になる、
  けど俺はそれよりも聞きたいことがあるんだ」
「疾風のメダリオンを持つ男かい?」
「知っているのか!?」
青年はまたその顔を燃え滾らせる、まるで炎そのものだ。
だけど、だからこそこの青年は危うい、
「知ってるけど教えないよ。」
「なんだと!アンタだって知ってるだろ!ラトル達は俺の、俺の!」
「知っているよ、でもねぇ、僕にとっては、『だからなんだ?』だよ♪」
「ふざけん……」

青年が拳を僕にまた向けてきた、だがその前に僕は彼の頭を掴み壁に叩き付ける。
青年の後頭部からは血が滴る、僕は声を低くし青年を睨む。
「ふざけているのだどっちなんだ?それだけ大切ならば、
  なぜお前は彼等を戦いに参加させた?戦いと言ったからか?
  そんなのは理由にならない、お前は止める事が出来たはずだ。」
僕の言葉に青年はなにも言えずにいる。僕は頭を掴んでいる手を離し、
青年の目をしっかりと見つめる。
「そう、お前は彼等を止めなかった、それは、つまりだ。
  お前はこういうことを覚悟したんじゃなかったのか?
  それとも死なないと高をくくっていたのか?」
「…………くっ」
悔しそうに歯を食いしばっている、だが僕は彼に対し続ける。
「餓鬼が、そんな甘いもんじゃない、戦争っていうのはそういうことなんだ。
  そしてそれを起こそうとしているのもお前らだということを忘れるなよ。
  犠牲が無い戦争なんて有り得ない、覚悟を決めろ、幾人もの敵の屍を踏み倒し、
  仲間の死肉を己の血肉にする覚悟っていうもんをな。」
青年はただ俯くばかり、だがこの近い未来に起こりうる戦争に対する覚悟がなければ、
この先きっと彼は戦争というものに押し潰され壊れる。しばしの沈黙の後、青年は僕へと言う。
「俺は、どうしたらいい……。」
  
355☆貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/06/02(金) 00:00:56
その声は震えている、本当にどうしたらいいのか分からないんだろう。
きっと、彼はその思いをどうすればいいのか分からないんだ。
だから復讐という道しかとれなかった、だがその道を壊された今。
彼はまさに木偶の如くただ立っているだけ、しばしの沈黙が続く。
沈黙を破ったのは僕だった。
「会ってみるかい?ラトル君達を殺した男に」
「え!?……」
「なんでいきなりって顔をしているね、けど君は今は復讐なんて考えてないだろ?
  だからこそ今の君には知る権利がある、あの二人を殺した男を。」
「……けど、俺は、会って殺意が芽生えない自信がない。」
青年はまた俯く。
「大丈夫、君には復讐は似合わない、
  人ってのはそれぞれ似合う格好っていうもんがあるのさ。」
よほど僕の言ってることがわけわかんなかったのかいきなり噴いて青年は笑い始める。
「……プッ…ハハハハハハ、んだよそのわけのわかんない理論」
「……ようやく笑ったね、リラックスしたろ?
  それじゃあ今度は自分で自分を捻じ曲げずに見てごらんよ。」
「そう……だな、アンタ、不思議なヤツだな。」
「よく言われるヨ、それはもうすっかり褒め言葉さ。
  さて、それじゃまず腹ごしらえと行こうか。」
「え?」
「だってねぇ、戦いで疲れちゃったよ、君だって腹減ったろ?
  君のメダリオンは特にカロリーの消費が激しいんだからさ」
僕は青年の肩に手を置く、すると青年のお腹が鳴る。それに対し青年は爆笑する。
「マジだな、ハハハハハハッ!」
そして僕らは屋敷をあとにする。
356☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/03(土) 00:37:00
「キケンな霊薬詰め合わせだ!」
一部の人が秘密裏に製造しているらしい一般には流通していないものである。
裏ルートで取引されるためかなりの高値が付く事は間違いない。
「なるほど、エターナルチャイルドにムーンライトドローン…」
さらには青汁のような色をした液体。
「エルフの飲み薬!? これが人間界に流出してるとは……
これだけは絶対飲みたくないな」
「何ですかそれ?」
「元々は霊法師用の超強力霊力回復薬だよ。
でもね、この世のものとは思えないほど苦い!!」

「ちょ、ちょっと、誰ですか!?」
突然ハインツェルの悲鳴じみた声が響く。
>「さて、さっさと終わらせてもらうとするぞ」
待ち伏せをしていたのか、漆黒のローブを着た何者かが斜め前方から歩み寄ってくる。
「変なのが来たわね〜、ハインツェルくん変わって、ちょっと飛ばすわよ! はいどーっ!!」

「パルスさん、敵が来たみたいです、それ飲んでください!」
「い、嫌だっ」
『全く…この非常事態に何を言っているのだ、仕方が無いレーテ、力ずくだ』
「飲まなきゃ元気になれませんよ! はい、口あけて」
力は無いはずだがただ飲ませるという行為だけで十分だった……。
(レーテさんが飲ませてくれるんならいーか)
レーテがビンを口元まで持っていくとあっさりと流し込まれた。
嬉しいのか苦しいのかよくわからない悲鳴をあげつつ…。
「うあああああああ〜!!」
それは気が遠くなるような味、だけどそれだけの効き目はあった。
「すぐ片付けてくるから待っててね!」
妙に自信満々の顔で荷台の上に上り、漆黒のローブを纏し者を見下ろす。
「草木よ、からまれ【バインディング】」
周囲から伸びた無数の蔓が鞭のようにしなり、黒い人影をしばりあげる!!
「じゃあね〜」
そう言って手を振った時、背後にほんの微かな着地音を聞いた。
(幻の操術!?)
「【エアリアル・スラッシュ】!!」
振り向きざまに風の刃を放つ!
「ほう、術を見抜いたか。少しはやるようだな。」
“漆黒のローブ”が跳び退り、剣を抜くのが見えた。
「そっちこそ、今のをよけるなんてね、でも次で終わり!」
それと同時にパルスは少し複雑な印を結び始める。
357☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/03(土) 00:38:07
この至近距離で剣が届くのが先か、術が完成するのが先か
といったら普通言うまでもないだろう。
だが普通では無い! 剣が振り下ろされるより一瞬前、霊法発動の呪文が響く!
「【スピリット・ウォール・シルフ】!」
逆巻く暴風の壁が1メートルも離れていない二人の間にそびえる!
「吹っ飛べーっ!」
一瞬後、敵は突如として現れた不可視の障壁に飛び込み、反対方向に吹っ飛んでいく…
はずだった。しかしそうはならなかった!
「風の壁か…」
“漆黒のローブ”はまだそこにいた。確かに風の壁に触れながら…。
「……君は何者?」
「グノーシスと呼ばれている」
(飛ばないか〜、どうしよっかな)
そう思っていると“漆黒のローブ”…グノーシスは風の壁の中へと歩みを進める。
「悪いけど無理!絶対飛ばされるよ」
それはハッタリではなかった。本当にそう思っていた。

しかし、グノーシスは障壁を抜けた。
「ウソだ…」
さらに悪いことに荷台の端で後ろに下がれない。
(しまった! 追い詰められ…)
「終わりだ」
抑揚の無い声が呼び起こすは底知れぬ恐怖。
音も無く喉元に突きつけられたのは不気味な輝きを放つ剣の切っ先。
「しかし…それ程の腕前を持っていても戦いはさっぱりだなんて珍しいやつだ」
「そうだよ、この力は……本当は戦うためのものじゃないっ!」
グノーシスは剣を突きつけたまま続ける。
「面白い事をいう。せっかくだからもう一つ聞いておこう」
「……何?」
「なぜサッコに止めをささなかった?」
「サッコ…あの隊長みたいな人のこと?
襲ってきたから戦っただけ。なんで殺さなきゃいけないの?」
「ふふ……そうか……あまりにも面白すぎて笑えるな。
本当はもっと話していたいところだがそうもいかないのでな。
残念だが死んでもらう」
358暗躍するNPC ◆4pblhRgruY :2006/06/03(土) 11:24:03
――ドラグノフ公国領南限、ライン大河
公国南部方面軍第三師団駐留陣地、司令テントにて。

「ロンデル司令、やはり議会は沈黙を続けております。こちらの指定した期日まで、3日を切りました」
兵士の報告に、ロンデルはしかめっ面で応えた。
「そうか…わかった。各部隊に通達、明朝出撃する。準備を済ませろ」
「司令!?まさか期日を無視するおつもりですか!?」
慌てる兵士にロンデルは言い放つ。
「忘れたか?これは子供の戦争ゴッコじゃない、『奴は選んだ』んだよ」
359ジーナ ◆QWE7YBXRW2 :2006/06/03(土) 19:07:40
連続での霊法をものともせず、男はゆっくりパルス君に接近した。
「なんなのあの男!パルス君の霊法が効かないわ!」
「噂に聞いた事があります・・・世の中には詠唱破棄の躁術を操れる人間が存在するとか・・・」
レーテの答えにハインツェルは仰天した。
「じゃあ相性最悪じゃないか!」
全くそのとおり。たずなを握りながらジーナは歯噛みした。

荒れ狂う風の障壁を抜けて、死神の化身のような男はパルス君に剣を突きつける。
―――チェックメイト。
「ちょっ!パルス君に何するのよ〜!!形・態・変・化!」
手にもっていた鞭を如意棒のように伸ばして黒いローブの男にぶつけようとする。
だがそれは、男の剣を僅かに引かせる程度の効果しか無かった。
『兔娘!前だ、前!』
「きょええええっ?!」
あ、危なっ!よそ見していたから危うく木に激突するところだったわ。
体制を崩しながらも二人ともまだ荷台の上に残っている。
剣がパルスくんの首元から離れてて良かった。
危うく私が大事な仲間の息の根を止めるところだったわ。

ハインツェルは無言で荷台の上へと登っていく。
悲壮な横顔が痛々しい。彼は知り合ったばかりの私たちのために戦ってくれるのだ。
「ハインツェル、本調子じゃないのにごめん!」
「・・・パルスさんを・・・お願いします」

ハインツェルはちょっとだけ振り向き、青い顔で微笑み親指を立ててみせた。
360☆見た感じ軽兵士 ◆CYuXtvnAKk :2006/06/03(土) 20:32:23
「分かりました、やってみます。」
青白い顔をし、体は震えているが強がって笑いを見せ荷台へと上がる。
だがその余裕のない顔が逆に頼りない。
「待て、僕が相手になる、」
ハインツェルは剣を抜き黒ローブを見据える。
だが黒ローブはハインツェルの顔を見るなり抑揚の無い声で言う。
「また……死にたがりか、少しでも生き延びたくば黙って見ているがいい。」
顔の見えない相手の不気味さにただでさえ萎縮しているハインツェルにとって、
この言葉は喉へ剣を突き立てられているのも同じ。
戦うはずがいつのまにか抜き、構えた剣を下ろして顔を下へと向けて俯いていた。
その様子を見て黒ローブは自分の読み通りなのかハインツェルに語りかける。
「そうだ、それでいい、一目見て分かった、お前は他人のために、
  命を張れるような度胸は持ち合わせていないと。」
「……そ、そんなことは、」
「どうした……後ろ髪を引かれる気分か?安心しろ、臆病者は長生きでき、
  英雄は真先に死ぬ、古人曰くな。」
「僕は……僕は、また『何にも出来ずに』……」
361☆見た感じ軽兵士 ◆CYuXtvnAKk :2006/06/03(土) 20:33:44
その時ハインツェルは思わず口から出た言葉に耳を疑った。
記憶を失っているはずハインツェルの口から『また』という言葉が出るはずがない。
そしてハインツェルはブツブツと何かを呟いている、失った過去を追憶するように。
「あの人達も、同じように、嫌だ、もう……。だから誓ったんだ、誓った!」
――<罪無き人々を踏みにじった奴等に復讐を>――
前の声がハインツェルの頭に響く、思わず肩膝を着き頭を抱えるようにして押える。
ただ事ではない様子に荷台を見ている二人もパルスの危ないという状況を忘れて呼びかける。
「ど、どうかしたの?」
「・・・・大丈夫ですか?」
だがその気遣う声に反応を示さず、
ただハインツェルは段々と大きく頭に響く声を聞いていた。
━━━<俺等だけがのうのうと生き残った意味を考えろ>━━━
「意味……。」
━━━<そうだ、考えろ、なぜ俺等は存在しているのか、>━━━
「な、何の話だか……僕には」
━━━<今は……生きろ、そのための力をやる、いや、力を思い出させてやる……>━━━
頭の声は鳴り止み、ハインツェルはゆっくりと立ち上がる。
体の震えは止まり鼓動も驚くほど静かだ、そして顔を上げ黒ローブに剣を向ける。
「そうか、死にたいらしいな、いいだろう。
  死なせてやろう……」
黒ローブは声とともに剣を打ち込んでくる。
その速さは鍛え抜かれた剣士そのものだった。
だが、信じられないことにハインツェルはその攻撃を打ち落とし、
一瞬で後ろの廻り込み胴体を使い回転を掛けた水平切りを放つ。
黒ローブも瞬時にその動きに合わせ膝の鉄鋼で防御し反撃に移る、
だがハインツェルはいち早く踏み込み左手で黒ローブの剣を掴み、
右手に持っている剣の柄を使い溝へと打撃を喰らわせる。少しよろめく黒ローブ。
いま展開されている戦いは信じられないようだが、
正に達人同士による綱渡りのような読み合い、
黒ローブもこの事態を予想していなかったのか思わずうなる。
「……まさかな、これほどの力とはな、侮っていた。
  いや、全くの予想外と言った方がいいかもしれん。」
「……えっと、どうも(戦える!頭で考えるよりも体が『もう知っている』みたいに軽快に!)」
剣を降ろしハインツェルはパルスに片手で合図を出す、
次の打ち込みに行く時に荷台から離れるようにといった内容のものだ。
パルスは軽く頷く、どうやらハインツェルの言いたいことは分かったようだ。
そしてハインツェルは構えを取り、地面を蹴り黒ローブへと踏み込み叫ぶ。
「今だ!今の内に逃げて!」
362†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/04(日) 17:40:12
「くっ…!?」
思う様に剣を振るう事ができず、ピエロの表情に焦りが見え始めた。
カタナという武器の特性上、極端に入り組んだ地形では充分な威力を発揮できない。
エドの奴、マジで殺る気だ!
アイツは昔っから快楽殺人症の気があった。それは相手が強ければ強い程、治まりが利かない。
「楽しく踊って下さいねぇ、ハハハ…憐れな道化が踊る死の舞踏を!」
狂気に彩られた瞳でピエロを見下ろし、袖から予備のダーツを取り出す。
「何ッ!?」
俺は思わず叫ぶ。信じられない!ピエロがカタナを鞘に納めただと!?
「………何のつもりですかね、『降参する』だなんてみと…」
エドは最後まで言葉を続ける事ができなかった。
鞘に納めた瞬間、ピエロの眼が鋭く光り、寒気立つ程の鬼気が迸る!
見てしまった。レクス・テンペストによる超加速に慣れたが故に、見えてしまった…
抜刀の一振りにて、糸の結界を全て断ち切り、また鞘へとカタナを戻す。
この一連の動作に要した時間は、秒よりも短い刹那の領域だ。
俺がメダリオンを発動させてようやく辿り着ける領域に…生身で踏み込んで来た!?
「避けられた…!」
ピエロの口から驚嘆の呟きが漏れる。
そう、エドも普通じゃない。アイツは瞬間的に反応して、あの斬撃を見切っていた。
アイツがよく使う薬、《アクウィラの翼》
服用した者の反応速度を爆発的に高める劇薬だ。やっぱり、飲んでいたのか!
「やはり貴方は面白い。この感覚は…久しぶりだ!」
そう言って笑うエドの頬に朱線が走る。
つぅ…と流れ落ちる血が、顎を伝い…地面に向けて落下する。
血の滴が地に触れた『それ』を境に、2人が同時に動きだす。
世界を支配する時の流れが、その支配の手を緩め、疾さに執り憑かれた者達の刃と刃が交錯する!!
363☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/05(月) 00:29:05
パルスは目を疑った。
あれ程弱そうだったハインツェルが
目にも留まらぬ速さと達人級の技を持つ剣の使い手だったとは…。
>「今だ!今の内に逃げて!」
鋭い金属音が辺りを切り裂く瞬間、二人の横を走りぬける!
御者席に飛び降りると、レーテが何か歌っていた。

〜♪〜
水面に広がる波紋 木葉を揺らす風
ざわめきよ 掻き乱すは心
〜♪〜

レーテの歌に耳を傾ける。(掻き乱すは…心)
『若造、聞き惚れてないでちょっとは手伝わんか!』
「分かってるよ」
互いに一歩も譲らない斬り合いを続けている二人の方に向き直る。
「【デストラクション】!」
精神集中を妨げるという同じ効果の二つの魔法が同時に影響を及ぼす!

「二人がかりとは小賢しい」
魔法の相乗効果が鉄壁の魔法耐性を上回ったようだ。
その瞬間、グノーシスの動きが少し、ほんの少しだけ鈍くなった。
が、今のハインツェルがそれを見逃すはずは無い!
「そりゃああああ!!」
裂帛の気合と共に剣を一閃する!
「え?」 
しかしその剣は虚空をきった。
ハインツェルは辺りを見回すが、どこにもグノーシスの姿は無い。
−少々甘く見すぎていたようだな。その命、次に会うときまで預けておく−
ただ声だけが、森の静寂の中に不気味に響いた。
364†チェカッサ† ◆7h50UVLF.w :2006/06/05(月) 05:15:12
                           <キィン>
一度、金属がぶつかり合う音がして。

それは速さを越えた疾さの世界。
片や、高速の抜刀術を持つ道化。
とはいえど納刀の時間を惜しんだのか、刀での連撃を。打ち、払い、断ち、薙ぐ。
片や、神経伝達速度が特化した男。
迫るその常人では軌跡すら見えるか危ぶまれる連撃を。凌ぎ、躱し、捌き、流す。
そして手数で勝る男が道化の死角を突き、刀を受けるのに使ったスローイングナイフを投擲。
しかし道化はそれに即座に反応し、体を捻りつつ刀を振り払いたたき落とす。
一瞬の膠着、硬直。すぐに道化がその刃を男に振りかざし、男はそれを新しく取り出した投擲ナイフで受け、払う。
拮抗している、ように思われた。だが、終演は訪れた。割と、早くに。
結果だけ言うならば、道化の手から刀が弾け飛び、クルクルと回りながら弧を描いて…落ちた。

チェカッサは、義父以外との実戦は初めてだった。場慣れしていなかった、と言える。
心中では平静を装おうとも躰はそうはいかず、手には汗を掻いていた。男はそれを見抜いたのか。
一瞬の隙を突き、男はチェカッサの左手にある刀、その柄頭を蹴り上げた。
汗で滑りやすくなっていた刀を弾き飛ばすには充分だったことだろう。
得物がない自分の無力さをチェカッサは重々承知している。放心したように膝をつく。これが結び。
敗北を悟ったチェカッサを嘲るように見下ろし、男は口を開く。
「久しぶりですよ、ここまで私を楽しませてくれたのはね。
そのお礼と言っては何ですが…せめて楽に、殺して差し上げましょう」
そして男は投擲ナイフを振り上げ…チェカッサの胸元めがけて一突きに――。

『パァン!!!!!』
破裂音。それもとんでもなく盛大で、誰もが耳を押さえてしまうほどで。
一番近くで聞いた男も例外ではなく、一瞬身を怯ませる。その一瞬でも充分だった。チェカッサは立ち上がり、刀を拾い…、
その場には、使用済みのクラッカーが転がっていた。舞台の上などで使う、かなり大きな音が出るタイプの。
手品にクラッカーはよく使われる。手軽に客の注意をひけるからだ。まさかこんな所で使うとは思っていなかったが。
この時ほど自分が道化師であることに感謝したことはない、とチェカッサは後に述懐している。
「ちっ、油断したかっ!」
刀を拾い上げたチェカッサに男は再び警戒を。だが、チェカッサは男の予想外の行動をとる。
男に背を向け…さっき男が投げ捨てた半死人に近寄る。そしてその半死人を担ぎ上げると。
「三十六計逃ぐるに如かず、ですー!」
逃げた。

そもそもチェカッサがあの学者風の男と戦ったのはこの病人が連れ去られそうだった、から。
悪人を殺すことができなかったのはとても残念だが、己の命には代えられない。とりあえず当初の目的を。
だから、逃げた。その足の向かう先は、チェカッサが泊まっている宿である。
365†黄昏のレーテ† ◆K.km6SbAVw :2006/06/05(月) 21:44:51
漆黒のローブの襲撃者が去って、馬車に再び平穏が戻ってきた。
「ハインツェルさん!すごいじゃないですか!?」
レーテが感嘆の言葉で、屋根から降りてくるハインツェルを迎えた。
「そ、そうですかね…実は無我夢中だったから…よくわからないです」
少し照れながらハインツェルが頭を掻いた。
「あれれ?僕は?」
パルスも御者台に戻ると、期待に目を輝かせている。
「パルス君がすごいのは、もう知ってますよ?」
不思議そうに首を傾げるレーテ。
「……………(そうだった、この人…天然でした)」
厳しい現実を突き付けられて、すっかり消沈すると荷台にトボトボと入っていく。

「この調子なら夜明けには街に着くわね〜、うんバッチリよ☆」
手綱を持つジーナが嬉しそうに言った。
今は御者台には、レーテとジーナしかいない。
パルスとハインツェルは、戦闘で疲れただろうと荷台で休ませているのだ。
「何だか、パルス君が元気ないですね…やっぱり疲れてるんでしょうか?」
「ん〜ふふふ、なんでだろうね〜♪」
にやけるジーナとは対照的に、心配そうな顔のレーテ。
「???」
「世の中って〜♪上手く行かないけ〜れど〜♪」
突然ジーナが歌い始める。少し前に流行った、『小さな恋のメロディ』
若い娘達の間で、よく歌われていた曲だ。
「それ〜でも〜♪きっと伝えて〜み〜せる〜♪」
「おっ?ノッてきたわね…い〜つか〜♪」
「「絶対〜チャンスは来〜るから♪諦めないで〜♪」」
2人の楽しそうな歌声が、夜の森に響く。メロメーロの街はもうすぐだった。
366†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/05(月) 22:58:00
凄まじい攻防が繰り広げられていた。
俺は冷や汗が止まらなかった。2人の闘いを目で追うのが精一杯だ。
あのピエロ、やべぇ…まともなレベルじゃねぇぞ!?本気出したエドと互角に殺り合ってる…
しかも、エドの奴3年前よりも腕を上げてる。どっちが勝つのか、まるで予想できねぇ…
実力が完全に拮抗した場合、勝敗を別けるのは得物と、ソイツを使った経験の差だ。
そして、その差が顕れた。
ピエロのカタナが宙を舞い、澄んだ音を立てて地面に転がる。

(まずい!エドを止めねぇとピエロが死ぬ!!)
この位置からなら、ギリギリで間に合うかもしれん。俺は必死で立ち上がろうとした時
『パァーン!!!!!』
一瞬、目の前が真っ白になる程の破裂音に、虚を突かれた。
(何だ今の音は!?)
キィィンと耳鳴りがするのを振り切り、前を見る。
するとピエロがカタナを素早く拾い、こっちに向かって走って来た。
「さあ!早く逃げるですー!!」
そう言うなり俺の服を引っ掴むと、あっという間に担ぎ上げ、全速力で駆け出した。
「ちょ!!何をす…うぉ!!?」
細い路地に入る際に、ケツを曲がり角にぶつけて意識が飛びそうになる。
ピエロは見掛けに反して、結構な体力の持ち主のようだ。俺や荷物を担いでるのに速度が落ちない。
「悪の学者から貴方を守るですよ」
ハァ!?何を言ってるんだこのピエロは!?
「いや、俺は…でっ!!!」
また曲がり角で今度は向こう脛を強打して、洒落にならない痛みに軽く悶絶する。
コイツもしかしてワザとやってるんじゃねぇだろうな!!
「だからオづッ!!」
ピエロが段差をひとっ飛びに駆け抜ける。着地の衝撃に、舌を噛みそうになり俺はキレた。
「と――ま――れ――!!!!」
俺が力の限りに叫んだ途端、ピタッ!
っと急停止するピエロ、そしてそのままの勢いで放り出されて宙を舞う俺…
「着いたです。ここまで来れば、まず安全です」
ふぅと深呼吸して荷物を降ろすと、ピエロがニコッと笑って言った。
「そ…そうか?」
宿屋の店先にある植え込みに、頭から突っ込んだ状態を、少なくとも俺は安全じゃないなと思った…
367☆見た感じ軽兵士 ◆CQon4GsdZw :2006/06/05(月) 23:25:00
「無我夢中……か。」
荷台の一角に座りハインツェルは一人ボソボソと呟く。
無我夢中だからあれほどまでに戦えたのかもしれない、
だがそのようなものではないとハインツェルは思っていた。
「あの声、二回目か…一体だれなんだ?」
みんなには聞こえない声、復讐や色々なことを一方的に言ってきただけの声、
どうにも胡散臭くてどう対応していいか分からない声、
声の主について考えているとハインツェルは自分の剣を見つめていた、
鋼で鈍い光を放ち、その刃には自分の顔が映っている。
だがその顔はハインツェルの記憶に無く、他人とも言っていい顔。
「君は…だれなんだろう?」
気がつくと漏らしていた言葉、だが仕方の無いことだ。
ハインツェルは自分のことすら満足に知らないのだから。
ましてやあの声がだれかなんて分かるはずもない。
「……今日は疲れた、」
そういうとハインツェルはまどろみ、少しばかり眠りに入る。
どうしようもない不安をかき消すには眠る以外なかった。
368シルフのぼやき ◆iK.u15.ezs :2006/06/06(火) 10:42:07
「ねえ、強さって何だろう?」
〈さあね〜〉

シルフです。
いつもうちの子がご迷惑をかけております。本当に昔からこんなんで困るとです。
アタシを召還したときはまだ10代で
すごく目を輝かせながら「やったあ! 霊法師になれたんだ!」って。
それから一騒動あって森から逃げ出して…いくつものパーティーを経験して
強くなったと思うよ。でもなんで性格がそのまんまなわけ!?
お陰でアタシは苦労し通しよ。いや、そこがいいんだけどね。
シルフです、シルフです、シルフです…。
369グノーシス ◆UrNtOK3.dQ :2006/06/06(火) 19:27:20
公国に数箇所ある内の一つの請け合い所に私はいた、
辺りでは物騒な奴等が受付に列を成している。
だが最近は傭兵も重鎮は少ない、仕事にあぶれて仕方なくやってるものもいる。
もちろん手柄を上げたい田舎者も少なくない、まるで光を求めて群がる蛾のようだ。
だがそんな中で私は異質らしく、私の受付にはだれも近寄らない。
まあその方が面倒ではないから良いのだがな。

「よぉ、待ってたぜ、早速仕事の報告をしてもらうか、
といっても失敗なんてするわけないけどな、簡単な仕事だし、
あんたが失敗なんて有り得ない、ほら、チャッチャと物渡してお終いにしようや」
「残念だが…仕事は失敗だ、」

私の言葉に受付の男は私に冗談が言えたのかと笑っている。

「事実だ、失敗、金は要らん、」
「どうしたっていうんだ?」
「少し想定の予想外のことが起こり続けた…そのため仕事は放棄させてもらった。」
「幻影のグノーシスとあろうものがねぇ…どっか体調でも悪いんじゃないのか?
もしそうなら休んだ方がいいぜ、あんたが休んでるとこなんて見たことない、」

私は今までほど10割の確率で仕事を成功させている。
それをたかが荷物運び如きで失敗するなど信じたくないのかもしれない。
確かにあの連中を倒そうと思えば倒せた、
だがあの時私の頭には倒すという選択肢はなかった。
あの連中はいつか私とまた戦う、そんな気がしたからだ、
そして、その時おそらく私の目的を達してくれるだろう。
俗世的に言えば“運命”を感じた、といったほうが分かりやすいかもしれない。

「いや、休みは必要はない。」
「そうか、なら緊急でちょっとあんたにしか頼めない、
つーかあんた指名の仕事があんだ、」
「…名前と内容を教えてくれ。それからだ。」
「いや、それが、詳しい内容は無いんだ、名前もない。
ただ明晩公国の中央広場にある四英雄の霊牌の前で待つ≠チて書いてあるんだが。」
「…どういうことだ?請負の記入方法が違う場合、
仕事に取り扱われないはずだが…」
「い、いや、それが、物凄い量の前金を貰ってんだ、
いきなり今日来てな、仮面付けた変なヤツだった。
もしかしたらなんかの極秘的な扱いをしてもらいたいのかもしれねぇし、
行ってくんねぇかな?」

極秘か、知られたくないのならば、
このようなところに依頼しに来る事事態が間違いだとは思う。
だが別に断る必要もない、おびき寄せるためならばこのような怪しい方法を取る方がおかしい。
それに請け合い所が仕事として認定するのならば断る理由もない。

「分かった…」
「そんじゃ頼んだぜ!」

ローブを靡かせ私は明るさが灯り、暖かいその場所を出る。
私には元々居心地が悪い、私は光を求めてばたつく蛾ではない。
五月蝿くお互いの羽を鳴らしあっているのが見える。

「…あちらの側に居た事もあるのだな……」

そして私はまた自分の居るべき暗闇へと姿を消していく。
370グノーシス ◆UrNtOK3.dQ :2006/06/06(火) 21:42:45
>369のレスについて訂正があります。
×明晩四英雄の霊牌の前で待つ
○メロメーロの街の中央広場の時計塔

ごめんなさい、お手数かけさせます。
371リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/06/07(水) 01:32:49
「さあさあ食べてくれよ、ここの《いっぽんパスタ》は最高に美味いんだ」
店員が運んできた大きな皿を、キラキラした目で見ながらヒューアさんが言った。
「いただきま〜す♪」
さも美味そうにパスタを平らげ始める。だけど、俺は何故か食欲が湧かなくなった。
「ん?どうした、食べないのか?美味いぞ〜、この麺は全部繋がっててね端から…」
「ヒューアさん、教えてほしいんだ。メダリオンの事を」
俺がそう言うと、ヒューアさんは溜息をつき、フォークを置いた。
「ん〜、君の気持ちは分かる。だがしかし、長話になるからな。先ずは食べよう、麺に失礼だからね」
そう言って、にっこり笑って再びパスタを食べ始める。ほんとに変わってる人だな…

暫くして俺達は食事を終え、メロンティーを飲みながら本題に入った。
「そうだなぁ…何から順に話そうか。リッツ君、君はそのメダリオンを何処で手に入れたんだい?」
「え?何処で…って、公国の輸送部隊を襲撃した時に、積み荷の中にあったんだ」
そうだ、忘れもしない。あの任務は俺が《運命の牙》に入って最初の任務で…

――3年前、ラバナ渓谷

「コラ!新入り!ボサッとしてねぇで手伝え!」
《運命の牙》のメンバーで輸送部隊襲撃チームのリーダー、マイケルさんが俺の頭を叩く。
「あ、すいません…」
もうすぐこの渓谷を公国の輸送部隊が通る。
俺達はそれを襲って武器や物資を調達するって訳だ。でも初めての任務がいきなりこんなのとは…
正直言って緊張していた。公国兵とは何度も戦った事はある。
でもそれはあくまで少数の部隊だ。今回襲撃する輸送部隊は、かなりの規模らしい。
(うまくやれるだろうか…)
不安と緊張の波状攻撃に、戦う前からどっと疲れていた。
後少しで日が暮れる。渓谷の対岸からチカチカと何かが光った。
向こう側に潜伏している仲間の合図だ!!
「よし、来るぞ!リッツ、速攻で仕掛けるからな!!」
「はいッ!!」
遠くから地響きが聞こえてきた。輸送部隊の規模は、俺の想像よりもずっと大きなものだった。
「見えた!行きます!!」
ロープをしっかり掴み、崖を一気に飛び降りる。
(怖くなんかない怖くなんかない怖くなんか…ないッ!!)
転がるように着地した俺が、隊列の先頭に見たのは、公国が誇る死の象徴《ゴレム》だった。
372リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/06/07(水) 01:34:19
《ゴレム》それは死を運ぶ鋼の馬車。公国が他国を容易に攻め落とした背景には、常にそれが在った。
馬よりも速く、鎧よりも硬く、大型のバリスタを多数装備した《ゴレム》は公国の主力兵器だ。
たったの1騎で歩兵1個大隊に匹敵する戦力の《ゴレム》は、俺達にとって恐るべき脅威。

「リッツ!避けろよ!!」
マイケルさんが崖の上から叫ぶ。そして、やや長めの杖を振りかざして『力在る言葉』を唱え始める。
「地の理を以て飛礫の槍と為す!放て!〔石槍発波 爆雨〕!!」
マイケルさんの発動させた操術は広範囲に攻撃する術だ。うかうかしてたら巻き込まれる!
渓谷に響き渡る『力在る言葉』が、世界に干渉を始めた。
轟音とともに崖の両壁面から、鋭く尖った岩が盛り上がり一斉に発射される。
雨のように降り注ぐ岩の槍をかい潜り、俺は真っ直ぐに《ゴレム》を目指し走った。
確かに《ゴレム》は脅威的な存在だけど、中に人が乗り込み操縦しなければならないという欠点がある。
つまり操縦者さえ倒せば、《ゴレム》を簡単に無力化できるって訳だ。
(もう少しッ!)
目の前に突き刺さる岩の槍を、ぎりぎりで避けて更に走る。心臓が破裂しそうだ。
「うおおおおおおぉぉぉ!!!」
力いっぱいに地面を蹴りつけて跳ぶ!
その瞬間《ゴレム》の側面に取り付けられたバリスタが俺に向けられる。
やばい!避けられない!!
死が現実的な形になって迫ってくる、俺は死を覚悟した。
すると、時間がまるで止まってるかの様に、ゆっくりと感じる。不思議な感覚だ。
死に際の走馬灯って、こんなのかな。今までの思い出が次々と脳裏に浮かぶ。
(死んでたまるか!やり残した事が山ほどあるんだ!!)
バリスタが発射される。ゆっくりと近付く死を、俺は…否定した。
「リッツ!!!」
《ゴレム》の向こう側から、幼馴染みのラトルの声が聞こえてきた。
その瞬間、右肩に激痛が走る!バリスタの矢が突き刺さってる、時間の流れる速さが元に戻っていた。
「ド畜生がッ!!!」
バランスを失って着地に失敗するが、すぐに立ち上がって走る。奴はもう目の前だ!
「リッツ!大丈夫か!?」
「あぁ、平気だ!張り付いたら攻撃はされない、どっから開けるんだ!?」
「確か…ここだ!」
ラトルが小さな入口を見つける。中の兵士を叩き出せば、カタが付く。
373☆リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/06/07(水) 01:37:01
作戦は大成功に終わった。こちらの被害は仲間が1人死に、俺が負傷した程度だった。
更に、《ゴレム》を無傷で手に入れることができたのは大きい。戦力不足を補うのに役立つ。
「よし!撤収するぞ!!」
マイケルさんの声に、皆が歓声で応えた。

「なぁ、これ何だ?開かないんだけど」
そう言うとラトルが木製の小箱を俺に見せた。振ってみるとチャリチャリと硬貨の様な音がする。
「壊して開けよう。なんだかスゲーお宝の予感がする!」
興奮するラトルを諌めて、俺はハンマーで木箱を叩き割った。
中から出てきたのは、古ぼけた3枚のメダルだけ。
「なんだこりゃ?ラトル、何がスゲーお宝だよ…汚いメダルじゃんか!」
「馬鹿だなリッツ、こういうのは結構な価値があったりす…何だ!?」
突然光始める3枚のメダルに、俺とラトルは驚いてその場を飛び上がった。
「おい、マイケルさん呼んでこい!コレはやばいかもしれんて!」
俺の提案に即頷くと、ラトルは部屋から飛び出して行った。メダルの光は徐々に弱まる。
だが、1枚だけは依然強い光を放ったままだ。俺はそっと手を延ばす。
メダリオンが、そして俺が、引き返す事の出来ない運命に巻き込まれた瞬間だった…


「成る程ねぇ、やはり公国もメダリオンを集めていたか…」
ヒューアさんの表情が険しくなる。この人は一体どこまで知ってるんだろうか…
「で、メダリオンについて詳しく知ったのは?」
「ベルカン・オーウェン伯爵をご存知ですか?あの人は考古学者なんすよ」
「そして君達のパトロンでもある、と」
(…もしかして何でも知ってるんじゃないだろうな)
目の前で優雅に茶を愉しむヒューアさんを見て、俺は本気でそう思った。
「その通りッス。伯爵は俺達に基本的な事を教えてくれたよ、力の使い方とか」
「だが、肝心な部分が抜けてたようだね。メダリオンはそんな便利な道具なんかじゃない」
ヒューアさんの言葉が突き刺さる。
そう、メダリオンは道具じゃない。コイツは魔物だ、いずれは世界を滅ぼす魔物になる…
「君はまだマシな方だ、話が通じるからな。だけど力に憑かれた者には何を言っても無駄だ」
「コリン議長のことッスか」
ヒューアさんは議長の名前を聞いた途端、悲しげな顔で語り始めた。
メダリオンの秘密を、そしてヒューアさんと議長の過去を…
374†チェカッサ† ◆7h50UVLF.w :2006/06/07(水) 09:02:49
「ところで…」
道化は男に声をかける。
「どうしてそんな格好をしてるですか?」
まるで前衛的かつ抽象的なオブジェのように植え込みに突き立っている男にチェカッサは目を丸くする。
まさか自分が原因であるとは夢にも思ってはおらず、心配の声に嘘偽りはない。
「こ、これはお前が…」
「ですが病人ともあろう者がそんなポーズをするべきではないです」
非難の声を遮ってチェカッサは男を植え込みから強引に引き抜く。聞こえなかったのか聞こうとしていないのか。
「おや、あなたよく見れば傷や打ち身だらけではないですか!
さっき見た時はこれほど満身創痍ではなかったのに、おかしなこともあるものです」
もちろんこの外傷も、特に新しい傷の殆どはチェカッサが付けたものではあるのだが、勿論本人が気づいている筈もなく。
「だから、これはお前のせいで…」
「こうしてはいられないです!すぐに手当、かつ安静にさせるべきです!」
またも言葉を遮り、チェカッサは男を自分の部屋へと連れて行く。
その足を肩に担ぎ上げ――引きずって。
特に階段を登るときに男がいちいち悲鳴やうめき声をあげていたが、
(高所恐怖症なのですか…)
などというとんちんかんな思考をしていたためチェカッサがその声の本意に気づくことはついになかった。

それなりに稼いでいるチェカッサが泊まっているのは、それなりの宿の、それなりの部屋。料理もできるし、風呂もある。
高級宿に泊まることも無理ではないが、これぐらいで充分だろう、という思考の上。
それでもそれなりの部屋、しかももとは五人部屋なので人一人を匿うスペースは十二分に確保できている。
「今度は後頭部にこんなにコブが…何か変な病気にでもかかっているですか?」
男をベッドに寝かせ、その頭の形が先ほどとは歪に変わっていることにそんな疑問を呈する。
勿論その理由が自分であることは知らず、純粋に。だからこそ、質が悪い。
「…おま」
「それにしても驚いたですよ、あなたが突然倒れたときには。今は少しばかり元気そうですが」
「それよりこのコブやこの傷やこの打撲はお前が」
「やっぱりあのエルフさんのチョコレートが効いたですかね?」
「…人の話を聞けよ!」
「それにしてもあの悪の学者…一体裏でどんなことをしているですかね」
「お前の顔の両横にあるはずの知覚器官はその役割を果たしているのか!?」
「でも次はやっつけるです」
「頼むから俺と会話してくれ!」
そんなやりとりがしばしの間続き、男は半ば閉口。沈黙を見計らってか、チェカッサは台所へと。

少しの時間の経過。何かが入った皿を持って戻ってくるチェカッサ。そして口を開く。
「自己紹介を忘れていたですね、私はチェカッサというです。見たままの職種です」
ぺこりと軽く会釈する。
「こういうのも何かの縁ですしね、私ができることなら、何でも力になるですよ。
とりあえず、これ、お粥作ったです。病人にはこれが一番だって聞くです。あ、お米って知ってるですか?」
悪に狙われてる人を守れば、悪を滅すチャンスも増えるから…という本音は、言わない。
言いながらいそいそと粥の入った皿を男に差し出す。見た目は、普通の粥なのだが…
375黒騎士 ◆KopEZimtGs :2006/06/07(水) 20:01:34
「ゲルタ・ロンデル大佐、元エリオノール王国の将軍か…」
「オーウェン伯爵領も旧王国の領内ですな」
私は今回のメロメーロ進攻について、下調べを開始した。
どうにも腑に落ちない点があったからだ。
「レジスタンスの後援者は旧王国の貴族が絡むか、しかしロンデルは我が軍でも優秀な戦績を残しているぞ?」
資料をめくりながら、紅茶を飲む。ボイドは私が出掛けた間に、多くの資料を集めていた。
「ですがディオール様、望郷の念に心鈍る可能性もございます」
それも一理ある。だがしかし、私の知る限りロンデルは公国の理念に共鳴する優秀な軍人だ。
「それはないよボイド。ノスタルジィに巻かれて猫になる程、弱い虎じゃないさ」
そうだ、大佐は『鋼鉄の虎』の異名を持つ男だ。
実際に会ったのは一度だけだが、彼の眼は人間にしておくには勿体ないと思う程に『軍人』だった。
「どちらにしても、今回の件は納得がいかんよ。不明瞭な事が多すぎる」
「と、言いますと?」
「レジスタンスだよ、ボイド。彼らは何故メロメーロを選んだと思う?」
問いを問いで返されて、ボイドが困った顔になる。
「私の推測ではあるが…レジスタンスの本拠地は、おそらくメロメーロだ」
376☆ジーナ ◆QWE7YBXRW2 :2006/06/08(木) 18:10:02
「そういえば、盗賊団の宝物庫にあったのだから全部盗品なんですよね・・・Dさんの治療代に充てられるのでしょうか」
「大丈夫じゃないかな?」
レーテの心配そうな声に、ジーナはお気楽に答える。
荒くれ者が集まる酒場勤めだったジーナにとって、盗品関係の処理情報などお手の物だった。
「もちろん換金は出来ないけど、盗品によっては懸賞金がかかっているのね。
幾つか該当するものがあったから、お宝を役所に届ければDの治療費くらいは出るでしょ。
・・・ま、要は欲しいものがあったら今のうちにキープって事よ」
ジーナが自分の「役得」である武器をふりふり、パチンとウィンクする。
レーテは暫くあっけに取られていたが、やがて頷き荷台のほうへと移っていった。

ま、命がけで闘ったんですもの、少しくらいは役得よね〜。
ジーナは悪びれる事無くひとりごちた。
377†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/09(金) 12:29:37
チェカッサと名乗ったピエロは、食事を用意してくれた…んだが……
差し出されたスープ皿に盛り付けられたモノを見て、俺は沈黙した。
何だろうコレ…リゾットにしても焼きが甘いし、スープなのか?
「なぁ…質問していいか?」
「ん?なんです〜?」
「コレってさ、食いもんだよな?」
「はい、食べ物ですよ。お粥といいます。幼い頃、風邪をこじらせ…」
「やっぱ食いもんだったんだ…」
臭いは別に悪くないな。だがしかし見た目がなぁ…
「栄養満点です。食べないと体が良くならないです!」
しょうがない、食おう。毒とかは入ってなさそうだしな。それに実は旨いのかもしれん。
「あ!なるほど、わかりましたです!1人では食べ難いんですね!」
「…へ!?」
チェカッサの目が、キュピーンと妖しく光る。
「食べさせてあげるです!!」
「んご〜ッ!!」

結局、俺は無理矢理食べさせられたんだが、それでよかったのかもしれない。
美味しかった。ぱっと見はゲロなんだが…薬草も入ってたらしく、体も少し楽になった。
(にしても、コイツは何者なんだ?)
エドと互角に渡り合う実力、勝敗の差は実戦経験の少なさだろう。
逆にいえば、天性の才能だけであの強さって事でもある。
冒険者やってると、そこそこの腕の奴に出会う事もあった。だがそれはあくまでも『そこそこ』の腕だ。
チェカッサの剣技はそんな『そこそこ』を遥かに上回っている。
「なぁ、何で助けてくれたんだ?」
「人を助けて己を磨く、これも剣の修行です」
何気なく聞いてみたら、やはりへんてこな答えが返ってきた。
「修行ねぇ…」
そう呟くと、俺はベットに寝転がる。

少し楽になったとはいえ、体は相変わらず最悪の状態だった。
パルス達が出発してから、もう5日だ。これ以上離れると接続が切れてしまう。
そうなったら、俺は死ぬ。
メダリオンと保有者は運命共同体だ。
保有者はメダリオンから精霊力を受けて命に変える。
メダリオンは保有者がいなければ、精霊を吸収できない。
互いが離れてしまうと、保有者との繋がりが弱くなり、やがて途切れて消える。
メダリオンは次の保有者を待てばいいが、失った保有者は、精霊力の暴走によって死に至る。
これは保有者になった瞬間から、絶対不可避の運命だ…助かる方法なんか無い。
378†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/09(金) 12:30:57
「くぅッ……」
鳴り止まない耳鳴りに、うんざりしながらもエドは立ち上がった。
《アクウィラの翼》で強化されるのは、神経の反応速度だけではない。
神経強化に伴い、視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚の五感も強化されるのだ。
それ故に、チェカッサのクラッカーが破裂した音は、エドに大ダメージを与えていた。
「困りましたね…まだ、追えるでしょうか」
足下に落ちていたハンカチを拾い上げる。チェカッサが手品に使っていた品だ。
薬の効果時間は残り僅か、エドは溜息をついて、追跡を開始する。
と、その時。
「ムッフー!!」
エドの頬を『何か』が掠めた。そう、ミニャのフレイルである。
「ちょっとー!何無視してんのよー!!」
「ええぇぇえッ!?」
そうだった、すっかり忘れていた。この太ったエルフの女性の存在を。
「お、落ち着いて下さい!!別にむ…うぉわ!?」


「そっかぁ…大変なんだな」
「大変なのです」
「大変ついでに、頼まれ事をしてくれないか。結構ヤバイんだ、正直切羽詰まってる」
「はぁ…私にできる事だったら」
「アンタにとっても、絶対いい修行になるよ」
俺の真剣な表情に、チェカッサも真剣な面持ちで答えた。
コイツなら、きっと連中とも戦える。
今の俺では体一つ動かすことも出来ない。こんなんじゃ死にに行くようなもんだ。
五凶と鉢合わせした場合に備え、優秀なボディガードが必要だった。
「実はな…」


―――メロメーロ中央広場
そびえ立つ時計塔の展望台に1組の男女がいた。
派手な衣装の白髪の男と、炎の如く赤い髪の美女。
「ふぁわ〜っ…眠い。どうしてボク達がこんな所に…ぁふ」
「仕方ないだろうさ、ヤツの命令だろ?」
「お嬢さん、グノーシスって人は本当に来るんですかぁ?マジ眠いんですけど〜」
「アタシだって眠いんだよ!アホ!!…ったく」
赤毛の美女が苛々して蹴りを見舞う。
「とっととコレを渡して、街ブッ壊すんだ…あのウサギ女も殺す!!」
獣の様に凄む美女、その手に握られているのは…白銀に光る《メダリオン》だった。
379†黄昏のレーテ† ◆K.km6SbAVw :2006/06/11(日) 06:42:38
「ええーっ!?Dさんがさらわれたーッ!?」
パルスの悲鳴混じりの叫び声が、明け方の静まりかえった療養所に響き渡る。

話はほんの1時間程遡る。
パルス達はメロメーロの街に無事帰還した。真っ先に役所へと向かい、山賊の事を説明する。
「これでオッケーね。お金は夕方に受け取りだって」
ジーナが親指を立てて、皆に合図する。
「さあ、Dさんの所に行こうね。きっと心配してるよ」
パルスも街に着いたからか、随分とリラックスしているようだ。
無理もない。山賊との戦いは熾烈を極め、全員が疲労していたのだ。

神殿の療養所に着くと、そこにはDの姿はなかった。学者風の男が、Dの寝ていたベットに腰掛けていた。
見ると、男はかなり負傷している。大きな怪我ではないが、全身至る所に包帯を巻いている。
「えーと…確かエドワードさん、でしたよね?」
「………………………」
レーテが声をかけた。しかし男は俯いたまま返事をしない。ただ、じっとしたままだ。
その場に嫌な沈黙が漂った。
「あ、あのぅ…Dさんは一体何処に?」
「………………………」
「ちょ、ちょっと!返事くら…」
「……さらわれました」
パルスが詰め寄ると、エドワードは小さな声で答えた。そして冒頭に繋がる。

エドワードの話によると、Dを誘拐したのは道化師の恰好をした男らしい。
そしてその道化師を追おうとした矢先に、謎のエルフに襲われたと言う。
「申し訳ありません…私が傍に居ながら…」
沈痛な面持ちで、拳を握り締めるエドワード。その拳が血で滲んでいた。
「もしかして蠍の爪かな」
震える声でパルスが呟く様に言った。
「ほら、Dさん言ってたよね?メダリオンを狙って来るって、それでさら…」
「捜しましょうよ!!」
泣きそうなパルスの言葉を、突然ジーナが大声で遮った。その瞳には、強い意志の光が灯っていた。

朝である。街には人が溢れ、通りは活気で賑わっている。
あれから一行は、各自3時間の仮眠をとり、Dの捜索について、テーブルを囲んで予定を話し合う。
「固まって捜すのは効率が悪いわ、手分けして捜すのよ。みんな、いい?」
ジーナの言葉に、パルス、レーテ、エドワード、ハインツェルが一斉に頷いた。
「それじゃあ、行くわよ!」

こうして、『D捜索作戦』が始まった。
380☆グノーシス ◆UrNtOK3.dQ :2006/06/11(日) 08:53:12
―――メロメーロ中央広場―――
メロメーロ、もうすぐ戦場になるはずの町は明るさに満ちている、
おそらく町の者は戦争など知らないのだろう、
ましてや公国がすぐそこまで来てることなど、考えもつかないはずだ。
真実を知っているものからすれば、この風景はまるで死に際の賑わいのように見える。
さて、そろそろ雇い主も来てる頃だ、私は時計搭へと足を踏み入れ展望台へと通じる
螺旋階段を上っていく、

「遅い!なにやってんだ!」
「やっぱ来ないんじゃないですかぁ〜?」

登りきるとまず目に入ったのが男と女、なにやら話している、
派手な衣装を纏った男に赤毛の女。よく分からない組み合わせではある、
他の者はいない、つまり奴等が私の雇い主ということか。
こちらに気付く、舌打ちをされたが何食わぬ顔で二人の前に歩み出る。

「……遅くなったな」
「あなたがグノーシスですか?」
「確かに、私は…グノーシスと呼ばれている……」

お決まり、といってはどうかとは思うが、いつもと同じ言葉を言う。
「何が呼ばれているだ…カッコ付けやがって。」
「お嬢さん落ち着いて、別にいいじゃないですかぁ」

男が先ほどから不満たらたらそうにしている女をなだめている。
この女は私がここに来た時から鋭い殺気を向けてきている、
だが故人曰く、弱い犬ほどよく吠える、殺気を消せない者に強者がいるとは思えない。
気にせずに私は淡々と二人になぜ私を呼んだかを問う。

「それで…仕事があるから私を呼んだ、それで間違いはないな?」
「まあ、ちょっと色々とありまして」
「おい、本当にこんな野郎で大丈夫なんだろうな!」
「……女、もし不安があるのならば、
別に今すぐに依頼を放棄してもいいが?」
「ちょっと待ってください、お嬢さん、あんまり言ってると
怒っちゃって帰っちゃいますよぉ?
そうなればジュリアス様になんて報告したらいいんですか!?」
「わ、分かった。」
381☆グノーシス ◆UrNtOK3.dQ :2006/06/11(日) 08:54:04
ジュリアス、その名前が出たとたん女がおとなしくなる。
部下、ということか、組織に属するものは柵が多い。
まあ私に関係はないこと、私は仕事内容を聞きそれを遂行するまでだ。

「……放棄はしないのだな?では話しを聞かせてもらおう」
「あ、はいはい、メダリオンを知ってますか?」
「……」
「知らないはずはないですよねぇ、
ジュリアス様があなたを雇った理由の一つですし。
一人でメダリオンと戦って勝った唯一の人間
もし本当なら凄いことですけど、本当ですか?」
「本当だ……嘘をつくほど俗ぼけなどしていない」
「嘘だ!んなわけねぇだろうが!」
「……嘘と思うならば心の中で思えばいいことだ、
わざわざ大声で言う事のほどでもない、
信じられぬならば私を殺し、弱いと罵ればいいだけの話し…」

赤毛の女が食ってかかる、メダリオン、それほど強いものなのか。
あの時は余り感じなかった、使い手が弱かったというせいもあるもかもしれぬ。

「……それで、今回はメダリオンをどうすればいい?」
「ええ、実はいまこの町にメダリオンが集中してましてね。
それで、あなたには風のメダリオンを、まあ願わくば全部欲しいんですけど」
「つまり、出来る限り殺して奪えということか……」
「話しが早くて助かりますねぇ〜、あともう一つ、
私達からの餞別があります。いくらメダリオンと戦闘経験があっても、
場所が分からなくちゃキツイでしょ?共鳴反応がなくちゃね、
はいはいお嬢さん、彼にメダリオン渡してください」
「ケッ!」

赤毛の女がぶっきらぼうに差し出したのは、白銀に光り輝く小さなモノ。
これが強大な力を秘めているとは思いもしまい、
私はメダリオンを受け取り早速仕事に取り掛かろうとする。
すると女は私に向かって叫ぶ、なにやら様子が変だ。

「おい!いいのかそんなに簡単に受け取ってよぉ!
それを持ったら、もう後戻りできないところまで行っちまうんだぞ!」

私に向けているというよりはまるで自分に向けているといった感じだ。
もちろんメダリオンは人の魂を侵食するということは聞いたことがある。
だが、私には関係ないことだ。私は淡々と女に聞き返す、

「…任務をもう一度確認したい、メダリオンを奪ってくるのだな?」
「……だからなんなんだよ!」
「いやなに、この仕事にはメダリオンが必要なのだろう?
私はただ与えられた仕事をやるまでだ、
メダリオンが必要ならば使うまで……ただそれだけだ、」
「てめぇ……それでいいのかよ!」
「…………」

女の叫びを無視し私は時計搭を降りる、
メダリオンか、確か共鳴が起こるといっていたな。
まずはあたりの探索といくか……
382名無しになりきれ:2006/06/11(日) 20:36:36
良スレ期待age
383☆ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/06/11(日) 21:36:33
メロメーロ広場の噴水前に人だかりが出来ている。
人だかりの中心で二人の男が喧嘩をしていた。
いや、一人の男はただ攻撃を避けているだけだ。
「へへっ、兄ちゃん、ただ避けて逃げてるだけか?」
一方的に殴りかかっている男が声を荒げながら言う。
「意味の無い争いなど…時間と体力の無駄だ…。」
茶髪の青年は言いながらもローブを翻し男のパンチを避ける。
「いい加減に…諦めてくれよ…」
茶髪の青年はぼやいていた。

名前:ヒロキ・ロインド・オクト
職業:銃剣士
種族:人間
性別:男
年齢:21
身長:167cm
体重:56kg
容姿:髪は茶髪で短髪、痩せ型で筋肉質。
普段はだて眼鏡をかけている
特徴:言葉に間が入る事が多い
性格:優しいが熱くなると周りが見えない
特技:ナイフと銃術、聞き上手
装備・右手:赤いグラベル、戦闘時…ナイフ
装備・左手:赤いグラベル、戦闘時…H&K USP(ハンドガン)
装備・頭:だて眼鏡、戦闘時…無し
装備・胴:鎖帷子、その上に黒いシャツ、
腰にハンドガンとナイフ用の装備ベルト、全身の隠れる黒いローブ
装備・足:レガース、その上からズボン
所持品:弾薬、マガジン等色々入った布カバン
コメント:よろしくお願い致します。
384ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/06/11(日) 23:02:53
>>383
装備・左手の銃はH&K〜…のそれっぽい物って事で…orz
まだまだ不慣れで申し訳ありません。
385☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/12(月) 00:14:43
市街地を駆けていく二人。
パルスと、その半歩後ろに続くハインツェルだ。
「とりあえずジューシー通りに行ってみよう」
「パルスさん、さっき言ってたメダリオンって何ですか?」
「これだよ」
パルスはハインツェルに疾風のメダリオンを見せた。
「本当はDさんのものなんだ。これを持ってたら敵に狙われるから
取ってきたのにどうして…」
パルスが俯いてしまったので、ハインツェルが慌てて話題を変える。
「あの、じゃあさっきしまってた盗品のくず宝石みたいなのは何ですか?」
「魔晶石。一言で言うと魔力の固まりかな」
「魔力の…固まり?」
魔法を使わないハインツェルはその意味がよく分からず首をかしげる。
「えっと、何ていえばいいかな」
解説しながらメロメーロ広場を走り抜けようとした時。
>「へへっ、兄ちゃん、ただ避けて逃げてるだけか?」
よくある喧嘩に遭遇した。ただ普通と違うのは、一人の男が一方的に攻撃している。
こういう時はほとんどの場合攻撃している方が悪いと相場が決まっている。
パルスは魔晶石の中でも小さい一つを取り出して左手に乗せ、右手で霊法を紡いだ。
「要するにこういう事、【コンフュージョン】」
霊法が発動すると同時に、不思議な光を放つ魔晶石が粉々に砕け散った。
解説のダシに使われた暴力を振るっていた男は混乱し
「あらえっさっさ〜」などと言いながらタコ踊りを始めた。
「こういう風に自分の精神力を使わずに魔法がつかえるんだよ」
「なるほどー」
「で、蓄えられている魔力を使い切ると砕け散るってわけ、さあ、急がなきゃ!」
と、何事もなかったかのように広場を走り抜けていく。
「ちょっと待って下さい、どうして助けてくれたんですか?」
後ろからかけられた声にも振り返らない。
「えー? 僕は知らないよ」
しかしパルスの嘘は致命的に下手だった。
その言葉は自分がやりましたと言っているに等しかった。
386☆ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/06/12(月) 00:27:38
>>385
一方的に殴りかかられてはいるが、
一撃も当たるつもりは無かった。
『どぅにか…出来ないもんかな…?』
避けながら心で呟く。
ふと相手の男の攻撃がやんだ。
すると急に不可解な踊りを始めている。
「これは…魔法かな…?でもどこから?」
人込みをかき分け辺りを見回すと走り去る人影があった。
無意識に追いかけ声をかける。
「どぅして…助けてくれたんですか?」
「えー?僕は知らないよ?」
明らかに怪しい言動に逆に戸惑ってしまう。
「…まぁありがとうございました。
おかげで…無駄な血が流れず済みました。」
初対面の相手になるべく怪しまれない様に言葉を選ぶ俺。
「でも君の方がやられてるみたいだったから見てられなくて」
「いや…まぁそぅなんですが…。」
説明して正体を明かしていい相手かを迷いながら、
必死に言葉を繋げる。
387†チェカッサ† ◆7h50UVLF.w :2006/06/12(月) 01:45:26
朝の市場は、賑わう。
夜を徹して運ばれてきた商品が並べられ、我先にと買い漁る主婦層を中心とした一般市民。
それはまさに、戦場。少しでも安く、良いものを買うために、手段は選ばぬ者達の。
その中に混じって、一人の道化。両手の籠には大量の食材や日用雑貨。買い物はもう終わったらしい。
背中に、男を一人、背負って。

「あのさ…そろそろ降ろしてくれないか?」
「一人では満足に歩けないのに、何を言うですか!これが安全です」
「じゃあ別に宿に寝かせといてくれてもよかったんだが…」
「いやいや、昨晩聞いた話からすると、デーさんは命を狙われているのでしょう?一人にさせるのは危険ですから」
「…羞恥心って、知ってるか?」
確かに、この姿は目立つ。だがチェカッサがそんなことを気にする人間なら、日常生活から道化の格好をするはずもなく。

「さて、メダリオンを一刻も早く見つけなくてはならないですね。
デーさん、昨日よりも更に体調が悪くなっているようですし」
「ああ…そうだな」
「そのメダリオンを持っているデーさんのお仲間はデーさんが診療所にいると思っているのでしょう?
なら、その診療所に行ってみるです。戻っているかも知れないですし、言伝があるかもです」
「待て…買ったもの持ったまま行く気か?」
「でも宿は逆方向ですし。早く行けるに越したことはないでしょう?」
「それはそうだが…」
「なら即断即決即行です!走るですよ!しっかりつかまってて下さいです!」
背中からの悲鳴は果たして聞こえているのかいないのか。人ごみをかき分け、障害物に(Dが)ぶつかりながら、走る。

「…ん?」
ブレーキをかけたように足を止める。ここはジューシー通り。昨日Dとチェカッサが出会い、
そしてチェカッサとエドワードが手合わせをした場所だ。その痕跡は、今や残ってはいないが。
足を止めたのは、道に落ちている何かを見つけたから。いつもなら気にせず通り過ぎるのだが。何か気になってしまった。
「これは…昨日、ここにいた犬が付けていた首輪です…か?」
そう、確かにこの首輪には見覚えがある。昨日、確かにここには犬がいた。その犬が、首に付けていたのが、これ。
しかしチェカッサが気になったのは首輪ではない。その首輪にぶら下がったままの…蒼いメダル。
「…そ、それは!」
「どうしたですか?」
驚きの声をあげるDに、びっくりしたように目を見開いてチェカッサは振り返る。
「…メダリオンそのものがないってのにどうやって研究しろってんだよォ」
「黙ってろ。古い文献を紐解いてくだけでもたまに知られざる秘密が発見されたりするもんだ」
「それは単に兄貴が本読みたいだけなんじゃないのォ?俺は兄貴と違って理系なんだからさァ」
「いいから黙れ。そんなに実験したいなら色々混ぜ合わせてメダリオンでも作ろうとしてんだな」
「素直に『本読みたいから静かにしろ』って言えばいいじゃんかよォ」

「なぁ兄貴ィ」
「…何だ」
「この本読んでて思ったんだけどさァ、メダリオンの色ってある程度そのメダリオンの能力と一致してるよねェ?」
「あぁ、そうだな」
「《光輝》は白っぽい色だしィ、《黒影》は黒ォ。《灼熱》は赤に近い色でェ《雷鳴》は黄色くってェ…
 《激震》は茶っぽくてェ《深緑》はそのまんまァ、《水流》は水色でェ《蒼氷》は深い青でしょォ?
 《躍動》が乳白色なのは何だか『生命!』って感じがするしィ、《夢幻》が紫なのもイメージ通りィ。
 《心魂》がピンクっぽいのはハートをイメージしてるとしてェ…」
「…何なんだ?」
「《疾風》が銀色!ってのがどうしてもいまいち解らないんだよねェ。風なら黄緑だったりするんじゃないかなァ?」
「言われてみれば、そうだな」
「もしかしたらァ、《疾風》にはもっと別の『チカラ』が隠されてるんじゃないかなァ、そう思うんだよォ」
「……」
「どうかなどうかなァ?」
「……バカバカしい。偶然だ偶然。そんなこと、あるわけないだろう」
「兄貴もつまんない人だなァ。もっと色んな考えを持ってみようぜェ」
「黙れ」
「へーへー。あーメダリオン欲しいなァ。色々実験したいよォ。研究者としては最高の研究素材なのになァ…」
389黒騎士 ◆KopEZimtGs :2006/06/12(月) 14:55:34
―――ライン大河、公国軍野営地
「予定していたよりもゴレムの数が少ないな。近くにレジスタンスでも現れたか?」
「ああ、連中は意地でも街には入れないつもりらしい」
私の問い掛けに、うんざりした顔でロンデル大佐が答えた。どうやら私の推測は正しかったようだ。


「メロメーロですと!?」
ボイドが驚きのあまり目を見開く。
「そうだ、どの国にも干渉を受けない自由都市だからな。奴らにとっても都合が良い」
「しかし…それでは…」
「分かってるさ、叩くのはレジスタンスだけだ。勿論、多少の被害は仕方ないが」
私の言葉にボイドは黙り込む。私の秘めた決意には、何を言ったところで無駄と知ってるからだ。
「これからすぐに出発する。もたもたしてはいられんよ、支度を手伝ってくれ」
私は立ち上がり、書類を袋に綴じた。


「議会には降伏勧告を出したが…返答は得られなかった。あくまで抵抗するつもりでしょうな」
ロンデルは苦虫を噛むような顔で地図を広げる。メロメーロ周辺の詳細地図だ。
「我々の現在地がここです。そして、攻撃は3方向からの包囲陣形を展開します」
「ふむ…大佐、ここは?」
私が指した地点には、不可解な空白があったのだ。
「そこは…確か今建設中の、メロン集荷場ですな。それが何か?」
「これはいつの地図だ?」
「2年前ですが………まさか!?いや、そんな筈はない!」
「いいや大佐、貴方の想像した通りだよ。『奴ら』はここにいる」
大佐は地図の一点をじっと睨んでいた。


―――中央広場、時計塔展望台
リゼルは待っていた。ソーニャは既に下へ降りて市街地に向かった後だ。
(もうすぐ…もうすぐだ…)
大時計が正午の鐘を鳴らす。真上の時計の針を見上げて、リゼルは微笑む。
彼が望む殺戮の宴が始まるまで、残り5時間を切った…
390☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/12(月) 22:50:43
>「…まぁありがとうございました。
おかげで…無駄な血が流れず済みました。」
その言葉に、お礼がしたいので喫茶店までとか言われたら困るな〜と思いつつ
振り返る。何の変哲も無い人間の青年だ。
……って、腰に付いてる変わった形のものは…もしかして銃!?
驚いた。何十年ぶりに見ただろうか。

確か魔力を凝縮して打ち出すものだったと思う。
魔法のような効果と接近戦に耐えうる連射速度を併せ持つ脅威の武器。
ただ制御がとっても難しいので扱える人はほとんどいない。

ってことは…このおにーちゃん只者じゃない!
珍しいので銃をよく見せてもらいたいところだけどそんな場合ではない。
とりあえず情報を聞いてみよう。
「実は今Dさんっていうハーフエルフの人を探してるんです。
見かけたりしませんでしたか?」
「ハーフエルフですか…。ほかに特徴はありますか?」
「えーと、探索者で双剣使いで背が高くてかっこよくてクールで
すっごく強くて……ちょっとかわいい……ところも……」
うわーっ、何言ってるんだ! こんなこと言うから…
「あ、雨が降ってきた!」大げさな動作で空を仰ぐ!
「よく晴れてますけど…」
銃のおにいちゃんは不思議そうに僕のほうを見る。
「その人は精霊の友達だそうで見えないものが見えて
聞こえないものが聞こえるから時々一人で喋ってたりするけどいい人ですよ」
ハインくんがフォローに入ってくれた。
でもそれじゃあ聞きようによっては本当に異常者みたいだよお〜〜!
「うう……降水量二倍」

どーしよーもなくなった僕に代わってハイン君が話し始める。
「すみませんが雨が降ってる事にしてください…。
Dさんはピエロの格好をした人にさらわれたそうで…」
391☆ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/06/12(月) 23:09:37
話ながら相手の目線が腰に移るのが見えた。

――しまった…。走ったらマ
ントがはだけてる…。
相手の素姓が分からないのに銃を見せれば今までの人なら不思議な目で見てくる。
だがそれは『今まで』だった。
「実は今、Dさんって言うハーフエルフの人を探してるんです。」

――なっ…普通に話を続けてる…!?

少し困惑気味に…だがとても有り難い思いで話を聞いていた。
「あ、雨が降ってきた」
「よく晴れてますけど…」
急に不思議な事を言いだす辺りが常人離れした肝の持ち主なのだろぅ。
「ピエロの格好をした人にさらわれたそうで…」
そぅいいながら、すごく悲しそうな…そんな目をしていた。
「で…そのDって人を探してたのか…。
よし、決めた。…そのDって人を探すの、手伝わせてくれ。」
「えぇ!?いいですよ!悪いですから」
少し困っているみたいだったが、
「さっきの恩はきっちり返す。だから頼むよ。
そぅそぅ…俺の名前はヒロキだ、よろしくな?」
無理に懇願し、自己紹介までしてしまう。
多少強引だが、恩を返したかった。
392☆ジーナ ◆QWE7YBXRW2 :2006/06/13(火) 05:40:22
「レーテちゃんは神殿周りをお願いね。私は裏路地を回るから!
メロメーロはわりと治安がいい街だけど、レーテちゃんみたいな美人さんが歩くような場所じゃないわ。じゃ、また後で!」
駆け出しかけたジーナをレーテが引き止める。
「え・・・・でもそれじゃジーナさんだって危ないじゃないですか。私も行きます」
ジーナは気持ちは嬉しいけど、と前置き、断固としてかぶりを振った。
山賊戦で怖い思いをしたレーテを、また危ない目に会うかもしれない場所に連れて行ける訳がなかった。
「レーテちゃんにとっては表通りを探す方が大変よ〜?人で一杯だし。
あとフードは被っていった方が良いと思うわ。黄昏の瞳にも布か何かかぶせたら?
人に囲まれる事が減るかもしれないわ。
ねえチビ龍、あんたは幻惑の術で竪琴を別のものに変えたり出来ないの?たとえばぬいぐるみとか」
『気安く話し掛けるでない!それに心配は無用だ、レーテには我輩がついておるのだ!』
「あーはいはい。じゃあレーテちゃんの事はくれぐれも頼んだからね。
もし何かあったら紅トカゲの丸焼きにしちゃうからそのつもりでね〜!」
ジーナは手を振り、雑踏の中に消えた。

『なんと失礼な娘だ!』
怒るイルヴァンをレーテが宥めた。
「ところさっきの話ですが・・・イルヴァンさんは変化の術も使えるのでしょうか?」
イルヴァンはレーテを見上げた。レーテは目をきらきらさせている。

『・・・兔娘め、余計な事を!』
イルヴァンは心の中でジーナを思いきり罵っていた。
393†黄昏のレーテ† ◆K.km6SbAVw :2006/06/14(水) 00:21:56
キラキラキラキラキラキラ……
期待に満ちた眼差しが我輩に注がれる。
うぬぅ…あの兎娘め…余計なコト言いおってからに!!
我輩は確かに幻術を行使できる。しかし、あまり得意ではないというのに…
更に、新しき神の呪いにより龍の力を封じられているというのに!!
「イルヴァンさん、幻術ってどんなのでしょうか?私、すごく興味があり…」
『い、今はまだその時ではない…のだ』
グォアッ!?苦しい!苦し過ぎる!!なんと間抜けな言い訳だ!!こんなの信じる馬鹿はおらぬ!!
「そうですか…じゃあ、その時を楽しみにしてますね♪」
『…………へ?』
どうやらレーテは我輩の想像を遥かに超えた、馬鹿だったようだ。
なんというか、非常に複雑な気持ちである。我輩は安堵の溜息をつこうとして、思い止まった。

人間…我々の元を離れ、新しき神の加護を受けた者達。
いや、違うな…我々が彼らの元を去ったのだ…支配者の座を追われ、我々が龍の民を見捨てたのだ。

「どうかしましたか?私達も頑張って捜しましょうね」
レーテの声に、我輩は我に還る。
『うむ、任せるがよい。我輩に不可能など無いのだからな!』
認めたくなかったのは、龍としての誇り故か?
それとも……
(フン、くだらぬ。我輩はあくまでもレーテの願いを叶えてやっただけだ)
あの時のレーテの願い『お友達になって下さい』という言葉が、脳裏に甦ってくる。
(本当に大馬鹿者だな、全く…)
レーテに抱き抱えられて、我輩は少し恥ずかしかったが…まぁ、これも悪くはないかと思った。
394†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/14(水) 06:59:45
恥ずかしい…もう死んでしまいそうだ…穴があったら飛び込んで引き篭りになってやる!!
そんな気分だった。
あれからチェカッサは俺の申し出を承けてくれた。
パルス達と一刻も早く合流する為、ボディガードを引き受けてくれたのだ。
…しかし、今は少し後悔している。この男は…なんというか、人目を気にしなさ過ぎだと思う。
いくらなんでも、この状態は目立つ。いや、目立ち過ぎる!
道行く人々の視線が痛い…

「…ん?」
チェカッサが何かを見つけて立ち止まる。その視線の先にあったモノは小さな犬の首輪。
「これは…昨日、ここにいた犬が付けていた首輪です…か?」
あの首輪には俺も見覚えがあった。
なにやら奇妙な犬だったが、アレは朦朧としていた時に見た幻かと思っていたが…
「…そ、それは!」
思わず叫んでしまった。その首輪には、ありえないモノがくっついていたからだ。
「どうしたですか?」
驚きの声をあげた俺に、びっくりしたように目を見開いてチェカッサは振り返る。
「……メダリオン!?」
「えぇ〜、あれがメダリオンなんですか〜?」
チェカッサが、なんだか期待外れといった顔になる。コイツは一体どんなの想像してたんだ?
「でも、これでデーさんも元気になるですね。めでたしめでたしです」
「あ〜…違うんだチェカッサ、あのメダリオンでは駄目なんだよ」
「へ?なんでです?」
キョトンとして、チェカッサが尋ねる。
「ほら昨晩説明してやったろ?メダリオンは全部で12種類あるって。アレは俺のメダリオンじゃない」
「あぁ…そういえば、なんかそんな話を聞いた気がするです」
…オイ、『聞いた気がする』じゃなくて、お前さんは『聞いた』んだよ…頼むよ…
だが何故こんな所にメダリオンが?あの犬は一体何者なんだ?
チェカッサも見たと言ってる以上、あの犬は幻覚とかじゃなさそうだし…
「とにかく、拾うですよ。他の人に拾われてはダメです」
そう言ってチェカッサは俺を降ろすと、メダリオン拾おうとしゃがみ込んだ。

ドクンッ!!

突然何か強烈な衝撃が、俺の身体の中を走り抜け、たまらず膝を付く。
「うわッ!なんですーッ!?」
チェカッサが慌てふためく。まさかと思って見た時には…
チェカッサが手にしたメダリオンが、深い蒼の力強い輝きを放っていた…
395☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/14(水) 09:40:47
優しい風が顔をなでていく。
〈なんですぐ泣くかなー。アタシはハンカチ代わりじゃないっつーの〉
(ふぅ、うまく誤魔化せた)
〈いやいやいや! 晴天の下でやってもイタいだけだから!〉
(甘い!これは屋内でやった時にこそ真価を発揮…)
〈せんわーっ!!〉

一般人だったら危なすぎるので断るところだけど
銃を持っている程だから大丈夫だろう、という訳で手伝ってもらうことにした。
「ありがとう。僕はパルス。見ての通り人間じゃないけどねー。はいこれ」
そう言って棒付きアメ(メロン味)を二本取り出し片方をヒロキに渡す。
「ちなみにこっちは…」
アメの包み紙をあけながら振り返ってみると…
ハインツェルがいつの間にかいなくなっていた。人混みの中ではぐれたらしい。
「まあいっか。誘拐現場にれっつらごー!」
396☆魔弾の射手 ◆4pblhRgruY :2006/06/14(水) 11:17:56
グノーシス…流石はジュリアス様が見込んだだけの事はある、いい仕事をしてくれそうだぁ。
メダリオンを手にすることに何の恐れも躊躇いも無いなんてねぇ。
「で、アタシ達はどうすんのさ。まだ“仕事”までは時間があるけど!?」
ん〜?なにやら機嫌が悪いですねぇ…
「どうしたんです?そんなにカリカリしちゃって。あ!なるほど、月の…痛ッ!?」
「殺すよ?」
あちゃー、目がマジですねぇ。怒らせちゃいましたかぁ…
お嬢さんは相変わらず怒りんぼさんですねぇ、そんなんじゃあ彼氏とかできないですよ。
「ボクはココで待ちますよぉ。お楽しみは我慢した分だけ、素晴らしいモノになりますから〜」
「あっそ、んじゃアタシは街の見物にでも行こうかね。退屈なんざまっぴらだ」
「えぇ、いってらっしゃ〜い。5時ですからね〜“お仕事”♪」
ボクがそう言ってヒラヒラ手を振ると、お嬢さんは舌打ちして階段の向こうに消えた。
展望台からの眺めは、とても素晴らしかった。街を行き交う人々が、ムシケラのように見えてくる…
ごくり、と喉が鳴る。
真下を蠢く蟻の群れは、今日の5時には血と肉の“モノ”に変わる。
フフ…とても楽しみだ、とても、とても、とても、とても、とても………
397街の風景 ◆9.MISTRAL. :2006/06/14(水) 12:40:30
「オラァーッ!!根性入れて引っ張りやがれ!!!収穫祭まで後2日しかねーぞ!!?」
現場監督のマッチョ男が、作業員に激を飛ばす。
『せぇーのっ!!せぇーのっ!!』
中央広場の舞台が、地震によって倒壊したために、メロメーロの収穫祭は延期となった。
それで今、こうして復旧作業が行われているのだ。
「ほれーッ!!そこ違うだろうが!!もうちょい右だ!右ーッ!!」
監督の怒鳴り声が、広場に響く。
街は平和そのものだった。

だが、彼らは知らない。この街が、この平和が、残り数時間で崩れ去ることを……
398☆ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/06/14(水) 18:37:30
「ありがとう。僕はパルス。見ての通り人じゃ無いけどねー。はいこれ」
パルスと名乗ったエルフは棒付きアメをくれる。
「ありがとう。パルス。…うまい…。」
今までに食べた事の無い独特のメロン味だった。
「ちなみにこっちは…あれ?」
どぅやらツレがいたらしいが…はぐれた様だ。
「まあいっか。誘拐現場にれっつらごー!」
やたらと笑顔で元気に歩いて行く。
「で…そのDってのの風貌は?」
走っている間にずれたマントと眼鏡を直し、パルスの後ろをついていく。
399☆胡蝶の夢 ◆nni/uw1/jU :2006/06/14(水) 23:21:10
自由都市メロメーロの、フローラ通り商店街を歩く少女がいた。
夕方市でごった返す通りを、まるで人々がその少女の為に道を開ける様に避けていく。
理由は、その少女がとんでもなく奇抜な外見だったからだ。
まずは背負っているリュートケースだ。至る所に鎖が絡み付いていて不気味である。
見るからに危険な雰囲気を醸し出す、髑髏の銀細工が散りばめられた革のジャケット。
歩く度にカチャカチャと鳴る、これまた鋭角的なデザインの細工が施されたブーツ。
トドメは少女の美貌だった。雪の様に白く滑らかな肌、美の女神に愛されたとしか思えぬ顔立ち。
それら全てが合わさって、異様なまでの存在感を作り上げているのだ。

少女は歩き続ける。何やら機嫌が良いらしく、軽く鼻唄を歌っているようだ。
そんな時、少女の行く手を阻む者が現れた。
他の街人達と違って、避けようとしない。このままだと確実にぶつかってしまう。
少女の前方に現れたゴロツキ風の男は、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべていた。
わざとぶつかり、難癖付けて絡んでくる。典型的な社会の屑だ。
少女が避けようとしない限り、間違いなくゴロツキと衝突するコースである。
そして周囲の人々の予想通り、少女とゴロツキは真っ正面からぶつかってしまった。
「オイコラ嬢ちゃん!どこに目ェ付けてんだコラァ!?」
ゴロツキが少女に因縁を吹っ掛ける。
しかし少女は全く動じる事なく、美しい双眸をゴロツキに向けた。
「ツイてるよ、ちゃぁんとね♪」
「アァ!?今何つったんじゃコラァ!?」
「ツイてるよ♪」
ゴロツキの表情がみるみる内に険悪なものに変わっていく。周囲の人々が少し距離を空けた。
「オマエこそ、ちゃぁんとツイてるの?♪」
周囲の人々はようやく異変に気付いた。少女は怯えるどころか、笑っていたのだ。
「テメェ!!ガキだからって手加減しねぇぞ!!」
ゴロツキが折りたたみ式のナイフを、懐から取出して刃を展開させた。
「あれれ?オマエ、ツイて“無い”よ?」
少女がそう言った途端、ゴロツキの表情が一変した。怒りから恐怖へと。
「うんうん、やっぱり…ツイて“無い”」
「ッ…!?…ヒッ……ァ!」
ゴロツキは震える手でナイフを、“自分の右目に突き立てる”。
「は〜い、クリッとね〜♪」
少女は笑っていた。薄く、笑っていた…
400☆胡蝶の夢 ◆nni/uw1/jU :2006/06/14(水) 23:22:13
「ア゙ア゙…あ゙あ゙ア゙…い゙ア゙…」
ミチャリと肉がゆっくり裂ける音が聞こえ、少女は恍惚の表情を浮かべてその音に酔いしれる。
ペシャッ、とうとうゴロツキの右目が刳り出されて地に落ちた。
「はいよくできました〜♪次はひだり〜♪」
「ッ!!!!!??」
ゴロツキは悲鳴をあげようとしたが、声が出ない。かすれた吐息だけがゴロツキの口からこぼれていく。
「は〜や〜くぅ〜♪」
何故ゴロツキはこんな事をしているのか、辺りの人々には知る由も無い。
震えるナイフの切っ先が、左目に潜り込む。少女の期待に満ちた眼差しが、ゴロツキに突き刺さる。
「カ…ッ゙……あ……かひッ…かひッ………ッ」
遂に左目も地面に落ちて、ゴロツキは空洞になった眼窩から、夥しい量の血を流す。
「ほぅら♪やっぱり、ツイて“無かった”でしょお?アハッアハハハハハッ♪」
寒気立つ程の狂喜の笑みを浮かべたまま、少女がゴロツキの眼窩にくちづけした。
まるで愛しい恋人の様に、優しく背中に手を回し、そおっと抱き寄せる。

「ぶつかってゴメンなさい…どこかイタイのぉ?」
囁きながら血の滴る眼窩に、舌を差し込み掻き回す。ゴロツキの体がビクッビクッと揺れた。
「そおぉ…おなかがイタイのぉ〜♪じゃあナデナデしてア〜ゲル♪」
ゴロツキの手からナイフを剥がして、それをゴロツキの腹に突き刺した。
「イタイのイタイのぉ〜とんでいけぇ〜♪アハハッハハハアハハッ♪♪♪」
狂った様に笑い、ナイフをぐりぐりと捏ねくり回し、やがて飽きたのかナイフを捨てる。

すると次は腹に直接手を捩込み、内臓を掻き回す度に血と肉が傷口からボトボトと垂れ下がる。
「ナ〜デナ〜デ♪ナ〜デナ〜デ♪キャハ♪アハハハハハ♪」
ゴロツキは暫くの間、痙攣していたが…それも止まってしまった。ゴロツキは死んだ。
「も〜イタくな〜い♪イタイのといっしょに〜♪とんでイッちゃった〜♪アハッ♪アハハハハ♪」

周囲の人々は既に言葉を失っていた。彫刻の様に、茫然と立ち尽くす事しか出来なかった。
やはり少女の行く道からはまるで人々がその少女の為に道を開ける様に逃げていく。

最初の悲鳴があがったのは、何事もなかったかの如く少女がフラフラと歩き去った後だった…
401†チェカッサ† ◆7h50UVLF.w :2006/06/15(木) 04:11:31
「そのメダリオンの輝き…まさかチェカッサ、お前保有者に?」
チェカッサが手にした瞬間輝いたメダリオン。その状態ではDがそう思うのも無理はない。
だが、チェカッサはそのメダリオンをしばし眺めた後、淡々と言葉を紡ぐ。
「…いや、どうやら違うようです」
そのメダリオンを手に持ったままDに近づけるチェカッサ。すると、その輝きは益々増して…。
「これに選ばれたのは、どうやら貴方のようですよ、デーさん」

しばしの静寂の後、我に返ったようにDが口を開く。
「…待てよ。俺は既に《疾風のメダリオン》の保有者だぜ?同時に二つのメダリオンを保有するなんて、そんなことは…」
「その論拠は?」
先ほどとは違う、語気の強いチェカッサの物言いにさすがのDも少したじろぐ。
「…そんな話、聞いたことがない」
「そんな伝聞はいらないです。今までで、『複数のメダリオンを保有することはできなかった』という確固たる歴史が、
…あったのですか?」
Dは言葉を返さない。返せないのか。突拍子もなさすぎて、誰も考えつきすらしなかったことだ。
「…それに」
チェカッサは言いながら再びメダリオンをDに近づける。そして再び、そのメダリオンは輝きを増す。
「このメダリオンの輝きが、貴方がこれに選ばれたことの…一つの、証拠です」

「…俺は《疾風のメダリオン》の保有者だ。今は手元にないが、その影響はまだこの体に残っている。
それに反応してメダリオンが共鳴を起こしているのだとすれば、それは考えられないことじゃない」
「…なるほど、そういう考え方もあるですか」
そう、納得したような言葉を口にしながら、チェカッサは強引にメダリオンをDに持たせる。
「ですが…試してみる価値はあるですよ?今はデーさんの体が危なそうですから、
《疾風のメダリオン》とやらを取り戻した後にでも」
そう言って子供のような笑みを浮かべると、再びDを背負おうとする。
「さぁ、再び診療所へGO!です。なにを恥ずかしがってるですか?ほら早くするです!」
そして嫌がるDを半ば強制的に背負う。二度だけ屈伸運動をして、走り出す。
「さっきまでは穴があったら入りたいと思ってたんだけどな…気が変わった。
穴があったら…お前を埋めたい」

「そういえば、そのメダリオンは何ていうメダリオンです?」
「おそらく、《蒼氷》だろう」
「おお、氷ですか!デーさんのは風ですよね?なら二つ併せれば吹雪です!」
「…ハハ、勘弁してくれよ…」
走る、走る、右へ。
走る、走る、左へ。
走る、走る、真っ直ぐ。
402☆貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/06/15(木) 13:17:14
「……もしかしたら彼がこうなることはすべて運命によって、
  あの日から仕組まれたことだったのかもしれない。
  村でもことも、すべては逆らえないことだったのかもしれない。」
カップをおいて少し俯き加減に顔を傾ける。
「村?」
「あれ?知らなかったっけ?彼は公国と君の故郷であったルフォン、
  その街道沿いの小さな村に住んでたんだよ。」
「村なんてあったんだ…本人に聞いたんスか?その話し。」
「いや、僕は彼がまだ母親の胎内にいる頃から知ってるよ」
そう言うとリッツ君は疑いの目を向ける。
まあそりゃそうだろうね、だって明らかにおかしいからさ。
なにがって?だって常識的に考えればコリンと僕の年齢が合わないからね、僕のほうが若く見えるだろうし。
「あの、真面目に話してほしんスけど」
「僕に真面目を期待してんのかい?」
茶目っ気たっぷりに含み笑いを浮かべる、だがリッツの顔がかなり険しくなっている。
こりゃまたメダリオン使いかねないと思い慌てて付け足す。
「いやいやいや、本当の話しさ、リッツ君も僕が変なのは知ってるだろ?
  多少の年代矛盾はスルーしてくれなきゃ、
  僕の存在が否定されちゃうじゃないのよ。」
「……は、はぁ……」
リッツ君は今まで人生でこんな変な動物は見たことないっていう表情で僕を見ている。
だって仕方ないじゃないか、ホントなんだから。
さて、そんなことはさておき、コリンとのエピソードを話すとしようか。
「そう、あれは大体、30年、いや、もう35年ぐらい昔の雪が舞うある日。」
403☆貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/06/15(木) 13:18:50
―――<35年前、初雪の振る寒い日>―――
「えっと、どこだっけか?10年ぶりだから分からないなぁ。 
  確かここらへんにあったはずなんだけど。」
僕は街道を歩きながらとある村を探していた、口からは白い息が出て回りの風景も寂しげだ。
僕の探している村は公国とルフォンを繋ぐ街道沿いにある小さな村、
「えっと、ああ、あったあった、あそこだ、いやぁ、懐かしいなぁ、10年ぶりか。」
僕は村の方へと駆け出しいく。その村はずっと昔、
龍人戦争が起こる前からある由緒正しき小綺麗な酒場が売り物なんだ。
僕は五年に一度だけ、その酒場を訪ねては独特の良い香りのするウィスキーを味わうのを楽しみの一つにしているんだ。
え?なんで五年に一度かって?そりゃあ、常連客がずっと歳を取らないまま酒場に居座ってたら、客が怖がっちゃうだろ?
そうなっちゃうと僕も楽しくない、僕は酒は楽しくパーッといく性質なんでね。
そして僕は久々に酒場のドアを開ける、すると10年前にも会った顔が迎えてくれた。
月日は人を変える、もちろん表情や顔も変わる、彼もおそらく変わっていたんだろう。
けど僕の目には10年前のままの姿で映る、それがとても懐かしくて、僕は毎回10年に一度の訪問を楽しみにしている。
「おや、いらっしゃい、お客さん初めてかい?」
「いや…10年ぶりさ、ブレス
  コリン君は大きくなったかい?僕だよ、ヒッターさ」
「あぁー!!これは失礼しました、そうかぁ、
  もう10年になるんですねぇ、いやぁ変わらないなぁ…変わらない…
  時間が止まってるみたいだ、おーいコリン!こっちにきてご挨拶しなさい!」
「こ、今晩は…」
ブレスによばれて奥から出てきた男の子、
それが今のしかめっ面のコリンだとは思いもしないだろうね。
まだ6〜8歳ぐらいで、世界を知らない、田舎で育ってる人特有の純粋な瞳を僕に向ける、
「大きくなったねぇ、まあ憶えてないと思うけど、
  僕はね、君が生まれて間もない頃に、この店に来たことが何回もあってね。」
「じゃあ、お母さんの事も知ってるの?」
「うん、憶えているよ、とっても綺麗な人だった。」
「本当!?それならお店のお手伝いが終わったらお母さんの話、してくれるかなぁ?」
「いいよ、色んなことを話してあげようかな。」
「本当?ありがとうおじさん!」
「お、おじさんってねぇ……カッコイイお兄さんの間違いじゃないの?」
「はは、どうもすみません」
「いや構わないよ…そうか、奥さんは亡くなられたのか…」
「あれが一つになる前に熱病にやられて…いけません、
  折角来て頂いたのに湿っぽくなっちゃあ…飲み物、何になさいます?」
「うん、君の手作りウィスキーがあっただろう、あれを出してくれないか?」
「いいんですか、あれは濁酒みたいなもんですよ?」
「僕と同じで濁ってるだろ?それに、あの芳醇な香りは、
  ここでしか味わえないものだよ。とりあえずダブルで、
  氷は無し。その上でチェイサーでね、ミネラルウォーターをお願いするよ」
「濁ってるね、私からすればあなたは少年のようですよ。
  ダブルで氷なしですね?はい、かしこまりました」
ブレスは手馴れた手つきでウィスキーを作る。
僕はふと彼の首に目をやると黒曜石でできたメダルが見えた
以前に来た時はおそらく持ってなかったそのメダル。
「それどうしたんだい?」
「ああ、これは拾ったんですよ、なんだか珍しいもんだったんでついつい。」
「へぇ〜、確かにこれは珍しいね、黒曜石で出来てるなんて、」
懐かしい顔に会えて僕は気が緩んでいたのかもしれない、今も後悔してる。
その黒曜石で出来たメダルが黒影のメダリオンと気付いていればってね……。
404☆貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/06/15(木) 13:19:55
「あそこの酒場のウィスキーは旨かった、また飲みたいね。」
リッツ君はちょっと驚いた顔をしている。
「へぇー、議長は酒場の息子だったんスか。」
「驚いたかい?まあそんなもんだよ人間、なんで変わるか、
   どんなことから人生が一変するか分からない、
   それが人間の面白いところでもあるのさ。
   もちろん、そこが人間の儚さでもあるし、欠点でもある。」
「欠点……それで、黒影のメダリオンがあったんですよね?
  どうなったんスかその後、」
「うん、これからが本番だよ、ちょっと時間が飛ぶけどね。
  そうだなぁ、きっと君が赤ん坊ぐらいの頃のことだ……」
405☆貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/06/15(木) 13:22:28
―――<20年後>―――
メダリオンに気付くチャンスはあったんだ、だが僕は気付かぬまま20年を過ごしていた。
そして丁度この頃だ、小さいフィルデア国がドラグノフ公国になったのは。
ギュンター・ドラグノフ、彼が王になったことなんてだれも知らなかった、
いや、知る術もなかった、この時期は現在の公国とは比べ物にならないほど小さい規模だったからね。
もっとも、ドラグノフの望みはこの頃から既に野望と呼べるものにほど膨れ上がってた。
もちろん……彼が王になったことの危険性を僕はもちろん、他の者たちも知らなかった。

そして寒い初雪の日、僕はやはり酒場に足を踏み入れた、変わらないものというのは良いものだ。
どんな人間でも物でも不変っていうのは有り得ない、
けどこの酒場だけは変わらない、変わらない何かがあると思っていた。
「いらっしゃい、あぁ、ヒューアさんじゃないですか、10年ぶりですか?
  本当に何年経っても変わらないんですねぇ、」
「いやぁブラス久しぶり、君の方は大分歳を取ったみたいだネ。」
「ははは、もう私なんて本当に御爺さんですよ、歳は取りたくないですね。」
簡単な世間話でもしていると中々逞しい感じの青年がこっちにやってくる。
「何言ってんだよ親父、まだまだ働けるじゃないか、
  老人ってのは働けないもんなんだよ。」
「あれ?君は……だれだっけ?」
「忘れちゃったなんて酷いですよ、俺ですよ俺……」
「……えっと、あぁ!コリンか!いやぁ、
  なんだか10年で見違えたねぇ、」
「そうでしょう、そりゃあしごきましたからねぇ。
  そういやこいつもそろそろ所帯持たせてやってもいいって思ってるんですよ」
「おい、身の上話ばっかしてっとヒューアさんに呆れられちまうぞ。」
「いやいや、そんなことないよ、人の話しを聞くのは好きだからね。
  ところでブレス、あの黒曜石のメダルどうしたんだい?」
「ああ、あれなら息子にくれてやりましたよ、」
コリンの首には紐で繋がれたメダルがあった。
「似合うじゃないか、家宝にでもしたらどうだい?」
「そりゃいいかもしれませんね、」

僕たちはそれから適当に他愛無い話しをして時間を貪ったのさ。
「それじゃあ、僕はもう行くとするかな。」
「ええ、もし会えたらまたお会いしましょう。」
「おいおい、「また」なんて言わないくれよ、
  君はまだまだ長生きするさ、」
「そうだぜ、親父が簡単にくたばるような男かよ。」
「ほら、ご子息も言ってるじゃないの、
  まあ、今度来たときはコリン君に美しい奥方だできてるのを期待しているよ。」
僕は彼等と抱擁を交わし、しばしの別れを告げ、
また10年後を楽しみにしながら帰路へ……着くはずだった。
そう、あれは大体ルフォンへと続く街道の中腹ぐらいのところだったか。
ふと苦々しい硝煙の臭いが鼻を抜けた、そう、それは村の方角だった。
火の手が上がり黒々しい煙が空を舞っていたんだ、僕は走ったさ。
だが村に着いたころには酷い有様だった、家は燃え上がり、
村の人間は見るも無残に惨殺されていた、頭を過ぎる友とその息子の顔。
奇跡でもない限り無事じゃないだろう、
406☆貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/06/15(木) 13:24:05
「……間に…合わなかったか……。」
やはりといっていいものか、酒場は倒壊しており、
僕が唯一不変だと信じていたものはたったの数時間で無に帰してしまった。
「うぅ……」
倒壊した酒場から声がする、ブラスの声だった。
「ブラス!大丈夫か!何が起こったんだ!」
「……ヒュ、ヒューアさんですか…な、なんか変な奴等が……。
  メダルがどうとか……」

そう、僕はここにきてやっとあの黒曜石のメダルが
メダリオンだってことに気付いたんだよ、けどこの時はまだメダリオンを知るものは少なかった。
僕はメダリオンを狙う者がいるなんて信じられなかった。
「メダリオン……!まさか…有り得ない、あの存在を知るものは四英雄、
  そして四英雄と共に戦った者達しか知らないはずだ!」
「ヒューアさん?……ぐぅっ!…」
「とにかく今は君を助ける!」
「……息子を、息子を頼みます…、近くに…居る……はず…。」
そしてブレスは事切れた、そしてすぐさま僕は思い出す。
黒影のメダリオンはコリンが持っていたことを。
「くそっ!無事でいてくれ!」
407☆貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/06/15(木) 13:25:12
―――原初に刻まれた生命の音よ 今それを我の元へと差し出し示せ―――

「どこだ、どこにいるコリン、」
今僕の頭の中にはこの辺りの数々の風景が映りこむ。
ちょっと慣れてないと風景がこんがらがって何がなんだか分からなくなってしまう術だ。
そして一瞬だが確かにコリンの姿が映る、死んではいないようだが倒れている。
「見つけた!【星雲観瞳】解除!」
すぐさま術を解き新しい詠唱を開始する。

―――来たれ旅人の裔よ 天空を越え 海原を越え その身で我等を望みし地に至らしめよ―――

僕の体を闇が包んでいく、この闇はさっき見た場所へと連れて行ってくれる。
まぁ、結構荒っぽい感じなんだけどね、重力を感じ放り出される感覚。
やっぱり好きになれない、そうも言ってられない状況だから使うが。
放り出され僕は受け身を取りすぐさま体勢を正す、見回すと二人いた、
出血し倒れているコリン、そして、仮面をつけた黒装束の男
僕はコリンの元へと向かい仰向けに起こし呼びかける、
反応がないことから気絶している、首のメダリオンはやはり無くなっていた。
「……大丈夫、まだ助かる。」
僕は出血している部分を両手で押さえ込む。

―――其は血を阻み 穢れを拒むもの 我が要請に従い 今ここに死を拒む旋律を詠え―――

コリンの傷か見る見るうちにふさがっていき、外傷は全て消えていく。
「これで安心だ、さて、一安心したら一仕事ってね、君は何者かな?」
408☆貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/06/15(木) 13:29:04
「これで安心だ、さて、一安心したら一仕事ってね、君は何者かな?」
僕は男に笑いかける、もちろん目は笑ってなんていない。
今すぐにでもくびり殺したいところだが自分を押さえつけている。
「フッ……言う必要はない」
「生憎今は腹が立ってんだなぁボクは、ふざけたまねしてると殺すぞ?」
「やってみせろ……」
仕込みの剣を抜き抜刀する、常人どころか達人にだって見えないような抜刀を。
男は真っ二つになるはずだった、だが男は僕の前にすらいない。

「……これは凄まじい」
そう、男は僕の背後にいた、超スピードとかそんなもんじゃない。
もっと凄まじいものの片鱗を感じた。男は冷たい口調で続ける
「だが……黒影のメダリオンの前には無力。」
「さぁ、どうかな?本気でやってやろうか?」

僕は振り向きもう一度男に向かって抜刀する。
だがやはり男はすでに違う場所に移動していた。
影を伝って、これが黒影の能力、だが知ってもどうしようもない。
知られてもデメリットにならない能力は単純に強い。
「フッ……どこを見ている」
「君こそ、やられたことに気付かないなんてとんだ鈍重さだね」
「なに!?」
409☆貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/06/15(木) 13:30:54
僕の言葉とともに男の両腕、両足から血渋きが上がる、
「ぐうっ!!」
男はよろけ地へと膝を付く、僕はまだまだ余裕だ。
「さてと、君は一体だれの回し者なのか。
  なにが目的なのか聞こうか。」
「フッ……なるほど、この腕前、龍纏し剣聖か。
  まさかこんなところで会うとはな」
「……おい貴様、その銘をどこで聞いた?」
「……龍纏し験聖が嫌なら運命の調律者とでも呼べばいいのか?
  それとも…黄昏の覇…」
「貴様……なんで俺の銘を知ってやがる、何者だ!」
「フッ……猫かぶりが剥がれているぞ、」
「貴様!…質問してるのは俺だ!メダリオンを……鍵を手に入れてどうするつもりだ!」
僕はすっかり平常心を失っていた、いや、本当の地はこれなんだけどね。
「龍纏し剣聖よ…じきに分かる……扉が開かれる時がきたのだ」
そう言い放ち男は影へと沈んでいく、そして目の前の闇と、
燃えていく村の光景に覆われて僕はただ立ち尽くすしかなかった。


「そしてその後、僕は気絶しているコリンを連れてルフォンへと行き、村でのことを説明した。
  一応盗賊ということにしておいたけど、最初はコリンも廃人のようだったよ、
  村のことを説明するなり全てを投げ出した。けど立ち直りも早かった、
  そして中立地であるメロメーロに彼を置けば安全だと考え僕達はメロメーロの町へと移住した。」
僕はリッツ君に今までの経緯を説明した、もちろん事情によって
扉云々や僕の銘とかは伏させてもらったけどね、

「……その黒装束はだれなんスか?」
「……黒装束がだれかか、悪いけどこればっかしは分からない。」
「そうっスか、けどその男はなんでそんなにメダリオンが欲しいんスかね?」
「多分、僕の予想じゃあいつは公国側の人間だよ。
  あの件から公国は力を付け始めて数年後にはルフォンを潰したんだ。」
「……ルフォン。」
リッツ君の顔が曇る、そりゃあ潰された故郷なんて思い出したくもないだろうさ。
「すまなかったリッツ君、いやなことを思い出させたね。」
「い、いえ……別にこれぐら…!!こ、これは!」

その時リッツ君のメダリオンが光った、発動してないはずなのに。
考えられることは一つ、共鳴だ、しかも相当大きい。
「リッツ君、悪いけどメダリオンの秘密や
  メロメーロで生活し始めてからのコリンについてはまた今度だ。」
「分かってるっスよ、いきましょう!」
「ああ!だがちょっとまってくれ、まだ紅茶が残っているんだ!
  ゆっくりと急いで飲むから待ってて!」
僕の言葉にリッツ君は椅子から転げ落ちた。
410†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/15(木) 19:56:00
「吹雪ねぇ…ったく、冗談じゃねぇ…」
「そういえばデーさん、どうして2つのメダリオンを使えないんです?」
俺を背負って走るチェカッサが尋ねた。
「あー…そういや説明してなかったな。知らなくても平気だろうと思ってだが…」

「いいか、精霊力を玉葱と思ってくれ。で、人間の体は玉葱が10個入る袋だと思ってくれ」
「玉葱、ですか?」
「袋には、生命の玉葱と精神の玉葱が5個ずつ入ってるんだ」
「ふむふむ、なるほど」
「だがメダリオンの保有者になると、そのメダリオンの属性の玉葱が“割り込んで”くる」
「割り込むんですか?じゃあ他の玉葱は?」
「あぁそうだ、袋はどう頑張っても10個しか入らないからな」
「そしたら入りきらないじゃないですか」
「そう、最初から入ってた玉葱は追い出されちまうんだよ」
「むぅ…」

「…そうだな、じゃあチェカッサが保有者になったとしよう」
「ええぇぇぇええーッ」
「…そんなに嫌そうな顔すんなよ、例えばの話なんだから」
「例えばでも、嫌なものは嫌です」
「お前の中には、生命の玉葱3個、精神の玉葱3個、でメダルの玉葱4個って具合になる」
「ちょ!聞いてないですか!?」
「フハハハ、それだよ。その顔が見たかった!」
「…………………むぅ」
「でだ。保有者になったら普通の奴よりも、生命と精神の玉葱は少なくなる訳だ」
「それじゃデーさんが薬で良くならないのって、玉葱が足りないからですか?」
「ビンゴ、つまりはそういうコトだ」
「そうだったんですか…」
「だから複数のメダリオンを持つのは、自分の首を絞めるのと同じってことさ」
「更に玉葱が減るんですね。なるほどです……?デーさん?」
「え、あぁ…いや、何でもない」
「少し速度を緩めるですよ。他にもいろいろ聞きたいですね」
「そうだな、よし…語るとするか」
411†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/15(木) 19:57:25
メダリオンと保有者は、魂の繋がりみたいなモンで1つになる。この繋がりは絶対に切れねぇ。
追い出された生命の玉葱の代わりに、メダリオンが保有者に命を与えるんだよ。
でもそれは本当の命じゃない。つーか保有者はメダリオンを得た時点で、普通の生き物じゃなくなる。
精霊を喰らうんだよ、《疾風》なら風を、《蒼氷》なら氷を、《灼熱》なら炎を。
そうやって辺りの精霊を食い散らしながら、メダリオンはどんどん成長していく。
…つまり俺はメダリオンがないと、生きられない生き物って訳だ。


「じゃあ早く仲間の人を捜さないと大変じゃないですか!」
「わかってるさ。だからこそ、お前さんに頼んだんだからな」
「協力するですよ。話を聞く限りでは、手強い敵もいるみたいですし、良い修練です」
「まさか俺をおんぶして街中走り回るのも、修行とか言うんじゃねえだろうな」
「もちろん、修行ですよ?剣を振るうには、強靭な足腰が必要不可欠です」
「……そうか」


メダリオンの保有者になったら、体の精霊力のバランスが崩れるのは、今説明した通りだ。
だが、それはあくまでも人間の話なんだよ。
そうだな…種族ってのは、玉葱を入れる袋の種類だと考えたら、判りやすいかもな。

新しき民人間は10個で、生命と精神を5個ずつ持ってる。
森の民エルフは14個で、生命を4個、精神を6個、風と樹を2個ずつ持ってる。
地の民ドワーフは12個で、生命を6個、精神を3個、大地を2個、炎を1個持ってる。
草原の民ホビットは12個で、生命と精神を4個ずつ、風と大地を2個ずつ持ってる。
花の民フェアリーは15個で、生命を3個、精神を5個、樹を4個、光を3個持ってる。
古き民・龍人については…よく知らん。

人間以外の種族はそれぞれが生活する場所に近い精霊力を最初から持っているんだよ。
だからメダリオン保有者になれるのは、精霊の干渉がない、人間だけだ。
え?俺はハーフエルフだから人間じゃないって?
さっき話した種族の中にハーフエルフは出て来なかったよな?
それにはちゃんと理由がある。
実は、ハーフエルフは特殊な存在なんだ。メダリオンにとっては…
412†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/15(木) 19:58:22
袋には種類があって、入ってる玉葱の数や種類も様々ってのは判ったよな?
でもな、1つだけ例外な袋が存在する。混沌の民…そう、ハーフエルフの事だ。
ハーフエルフはな、袋の容量も入ってる玉葱の数も種類も、全くのバラバラなのさ。
だから『混沌の民』とも呼ばれたりする。
そもそも、人間が別の種族とヤッて出来た子供は、基本的に全部『混沌の民』って呼ばれるがな。

そして、どの種族よりも精霊の力を引き出す事ができる。それは人間の比じゃねえ。
一体何故人間との混血が、精霊力を増幅させるのかは分からねえが。これだけは確かだ。
メダリオンはより強い力を求めて、混沌の民を選ぶって事だ。
ん、まるでメダリオンに意思があるみたいだって?あぁそうだよ、奴らには意思がある。
人間がメダリオンを利用してるんじゃねぇ、メダリオンが人間を利用してるんだよ。
自分達が、完全に復活する為に…精霊王として、再び世界を滅ぼす為にな…
そのちっぽけなメダルが、世界を何度もブッ壊してきたなんて信じらんねぇだろ?
だが残念なことに、事実なんだよ。

ただでさえ、弱り切ってる今の俺が《蒼氷のメダリオン》を取り込んだりしたら…
間違いなくアウトだ。あっという間に侵食が始まって、すぐに《開放》が起こる。
正真正銘の『化け物』になっちまうんだ。例えとかじゃねぇ、文字通りの化け物にな。
そうなっちまったら最後、殺す以外に止める手段はねぇんだよ。
殺す以外には…
3年前にな、2つのメダリオンに飲み込まれた奴がそうだった。
ソイツは俺が殺したよ、さっき「そんな話は聞いたことがない」って言ったのは嘘なんだ。
自分可愛さに他人を殺した屑なんだよ俺は。
俺はメダリオンがどんだけヤバイ物かを知ってる、知ってて俺は逃げ出したんだよ。
自分もいつかは化け物になるって判っちまったからな。
そして今の俺はその報いを受けてるのさ。当然の結末だ…


「あ、ここですね。デーさん着いたですよ」
診療所の正門に到着して、俺はチェカッサから降りる。
「…なぁ俺の話、信じるか?」
「ウソをつくなら、もっとマシなウソをつくですよ。だから、信じるです」
「……………」
「それに、人を殺して何も思わない者こそ、本当の屑です」
そう言うとチェカッサは、器用に買い物袋を抱え直して、親指を立てた。
413☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/16(金) 00:23:00
>「で…そのDってのの風貌は?」
ヒロキさんがメロンアメを気に入ってくれたみたいでよかったよかった。
「Dさんは、長身細身でハーフエルフの割にある程度落ち着いた年に見えるよ。
耳以外は人間みたいかも。ひげ生えてるしね〜」
「要するに…ハーフエルフなのに見た感じオッサン?」
「う、うーん」
さすがに僕がオッサンって言うのは気が引けるなー。
それにしても人間はハーフエルフと聞いたら若い美形を思い浮かべるらしい。
まあエルフの血が濃いとそうなるんだけど。

誘拐現場に着いた。人通りで賑わっていて、子供が遊んでいる。
「さっきすごい事見たんだぜ?聞きたい?」
「いい。どーせまたネタでしょ」
「いや、今回だけは本当に本当!!」
その子の全身から話したくて仕方が無いオーラがあふれ出ている。
すごい事。なんだろう…聞きたい、聞きたい聞きたい聞きたーーいっ!
そうだ、僕が聞いてあげればいいんだ!
「その話聞かせて!」
二人の子供は呆然とした。
「なんだお前…?」
「行くよ、知らない人に話しかけられたら逃げなさいっていわれてるでしょ!」
一人はすたこらとどっかに行った。
「お前マヌケそうだし話してやるよ。
さっきさ、買い物袋大量に持って刀さげて背中に変なオッサン背負ったピエロが来たんだ」
うん。背中に変なオッサンとはなかなかいいセンスしてる。最新の流行だろうか。
「そのピエロが落し物を拾って超スピードで走り去っていった」
落し物を役所にでも届けにいったのかな?
ふと気付くとヒロキさんがすごく何か言いたそうな顔をしていた。
「何?」
「パルス…それって…誘拐犯じゃ…」
…変なオッサン……Dさん!?
大量の買い物袋を持って刀さげたピエロなんてまともな人間ではない!!
「たっ、大変だ――ッ!!」

何ともマヌケな絶叫が通りに響いた。ああ、すれ違う恋人…もとい、変人達。
414☆ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/06/16(金) 00:53:16
「大変だ――ッ!」
パルスが子供の話を聞いて慌てながら叫び出す。
「で、そのおっさん担いだピエロ…どっちの方向に行ったかな?」
叫びながら辺りを走り回るパルスを尻目に、
子供に話を催促する。
「んっと…あっちの診療所の方だよ。
んじゃ、俺あいつ追いかけなきゃ…ばいばい!」
子供は路地を右に指差した後、先に走り去った子供の後を追いかけていった。
「とりあえず…目的地は決まったなよ?パルス…」
「なら早く行かなきゃ!担がれてるって…
状況的に変じゃないか―!」
また叫び気味に興奮しながらパルスは診療所の方へ走りだす。
「マイペースすぎるだろぉ…」
悪態をつきながら走りパルス追いかけた。
415☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/16(金) 10:37:45
>「マイペース過ぎるだろぉ…」
ヒロキさんの悪態ももっとも。
「ゴメンよー、エルフってこうなんだー」
「嘘だ、絶対嘘だ」
納得できないようだ。それもそのはず。人間のエルフに対する一般的なイメージとは!
高い知性と精神性、器用さと機敏さを併せ持つ高貴なる森の民。
が、実際にはとんでもないマイペースさんも結構いる。長い寿命のなせる業だろう。

走りながら、こんなことを思う。
人間は新しい神々の祝福を受けた種族。新しい時代の中心となるべく選ばれた者達。
なのにどうして他のどの種族よりも劣っているのだろう。
なぜ数十年の寿命しか与えられなかったのだろう…。

僕の勘が正しければもう少しで診療所につくはず。あと少しで…
着くはずなんだけど…おかしい。どうも見慣れない場所に来てしまった。
「……………」
「どうした?」
仕方ないから笑ってごまかそう。
「迷っちゃった、てへっ」
「てへって……勘弁してくれ……」
416ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/06/16(金) 11:46:21
「迷っちゃった、てへっ」
「てへって…勘弁してくれ…」
なぜだ?確かにあの路地を右に曲がり進んだはずだぞ?
「どうするんだ…?」
「大丈夫!なんとかなるよ―!」
やたらにヘラヘラと笑うパルスを見ながら、
エルフのイメージを少し改善しようと思う。
「にしても…走るの早いんだな…、
暑い…」
ずれる眼鏡を直しながらマントの襟首をあおぐ。
「そんなマントしてたら暑いでしょ?」
「これは脱げないんだ…」
マントの事を言われて即座に否定する。

…このマントは銃を隠す為に着ている。
普通の人は…銃を見れば畏怖する。
そして「人殺し」のレッテルを張り見るだろう。

だが目の前にいる触角エルフさん…パルスは違った。
おそらく銃に気付いたが慄事無く、普通に話をしてくれた。
故に…触角が目立っていても気にしない様にした。
「ふ―ん…まぁいいや!
さっ進もう!」
「急にかよ…」
417魔弾の射手 ◆4pblhRgruY :2006/06/17(土) 06:10:42
「だ〜れだ?」
天使のような子悪魔の声と同時に、背後から突然首を絞められた。
こんなオチャメな悪戯をやるのは、ボクの知り合いには1人しかいない。
「どうじで…あ゙な゙だがごごに゙…?」
「えぇ〜、連れないな〜♪リゼルゥ〜♪」
まずい…がっちりと絞められてる。これを抜けるのは…すこ…し………
「…………………」
「……アレレ?死んぢゃった〜?」
手を離してくれるのが、後少し遅かったら…ボクは死んでいたかもしれない。
「ケホッ…ケホケホッ……少しは、手加減して…ほしいですねぇ…」
「あ〜生きてた〜♪」
能天気な笑顔で、へらへらしながらボクの同僚のファムが隣に座り込む。
少し変わった服装を除けば、とてつもない美少女なのだけれど…現実って残酷だと思う。
「で、どうして貴女が此処に?確か蠍の本隊の護衛だった筈では?」
そうだ、彼女はジュリアス様の命令で蠍の爪の本隊と行動を共にしているべきなのに。
「うん、もういらないんだって♪だから…み〜んな殺しちゃったぁ♪」
そう言って微笑む顔は、本当に愛くるしい天使のようだった。
しかし、桜色の綺麗な唇から紡がれる言葉が、それらを台無しにしている。勿体ない!
「本当にジュリアス様がそう言ってたのですか?」

ボクは少し彼女を疑った。仕方無いのだ、彼女は気まぐれで簡単に人を殺すから。
ボクも殺しを愉しむけれど、彼女は違う。理由が全く存在しないのだ。
ボクは強い敵を嬲り殺すのに情熱を燃やすが、彼女は“そこにいたから”とか理由無き理由にて殺す。
ある意味最凶の行動理念を搭載しているから、危険極まりない存在。
それが、ファムという美少女なのである。

「あーッ、疑ってるでしょ〜?」
ボクは一瞬、心臓が止まるかと思った!!
背中にじわりと汗が広がる。全身全霊の演技で、動揺を隠そうと努めるが冷や汗は止まらない!
ジュリアス様も怒ると怖いが、まだ会話が可能なだけマシだ。でも彼女には会話なんて何の意味も無い。
「じゃあさぁ〜♪チュ〜してぇ♪」
「へ?」
「チュ〜してくれたらぁ〜♪許してア・ゲ・ル♪」
そう言うなりボクを押し倒して無理矢理キスをしてくる。
彼女の持つ《夢幻のメダリオン》の能力に、抗う術など無い。
ボクの口の中に、ぬるりと滑り込んだ彼女の舌は、何故かほんのりと血の味がした…
418魔弾の射手 ◆4pblhRgruY :2006/06/17(土) 06:12:01
ボクは待っていた、ボクを満たしてくれる存在が現れるのを。
ボクは待っていた、ボクを壊してくれる存在が現れるのを。
ボクは待っていた…いつかこの世界が崩れ去るのを……


ぼくはお兄ちゃんが大好きだった。
お兄ちゃんと一緒に、冒険者ゴッコをするのが毎日の楽しみだった。
隣のお家に住んでるラトル兄ちゃんとエリサちゃんも、いつも一緒だった。
ぼくが司祭様、お兄ちゃんが探索者、ラトル兄ちゃんが戦士、エリサちゃんは魔法使い。
4人でパーティーを組んで、いろんな所を探険して、毎日が幸せだった。

その日、ぼくは風邪を引いて寝込んでた。
お兄ちゃん達は神殿の地下墓地にアンデット退治に出掛けてた。
ぼくはお家に1人でお留守番。
退屈で、お兄ちゃん達が早く帰って来ないかなって、そわそわしてた。

そんな時、呼び鈴が鳴った。
お兄ちゃん達が帰って来た!ぼくは少しふらふらしてたけど、玄関まで出迎えに行った。
ドアを開けると、お兄ちゃん達はいなかった。
その代わりに、知らない兵隊さんがいて、街が燃えてた…

…街が……壊れてた………


「……ッ!?」
ボクは跳び起きる。……夢?まただ…またあの夢だ…
無意識のうちに、腰に挿した古い玩具のナイフを握り締めていた。
ボクの宝物だ、ずっと前に誰かがボクにくれた物。誰?誰がくれたんだろう…
古ぼけたナイフを鞘から抜き、刃を見つめる。
玩具だから、切れたりはしない。曇った刀身は昔ピカピカだったような気がする。
幼いボクはそこに映る自分を眺めてた。
…幼いボク!?
誰だ…それは…ボクはボクじゃないか!昔なんて、“そんなもの”なかった!!

不意に景色が変わる。
焼け落ちた家屋、血の河と化した道、辺り一面に漂う人間の焦げた臭い…
変だ、ボクはメロメーロの街にいた筈だ!こんな…こんな街なんか知らないんだ!!
『ううん…しってるよ…』
突如現れた子供、誰だこの子供…?
『ぼくだよ』
あ…ぁ…嘘だ…そんな……違う!!ボクじゃない!ボクは知らない!!
『いや、知っているさ。思い出してよ』
子供の姿が瞬く間にボクの姿へと変わる。もう1人のボクは…まるでボクを嘲笑うかのように消えて…

その瞬間、周りの景色がガラガラと崩れて、ボクは暗闇へと堕ちて行った………
419☆魔弾の射手 ◆4pblhRgruY :2006/06/17(土) 06:13:31
気がつくと展望台のベンチで横になっていた。……これも夢なのか!?
「やっとおきた〜、でもぉ寝顔超かわい〜から、おっけ〜♪」
ファム?そうだ、ボクは彼女の“夢”に引きずり込まれたのか…

―――3年前

暗い闇の中にボクは話し掛ける。その闇の中にボクの仕える主がいるから。
「ジュリアス様、北風の抜けた穴はどうしますか?」
返事は無い、困りましたねぇ…組織の再編にてんてこ舞いなのに。
五凶の1人でありながらボク達を裏切った北風、彼が裏切った際に組織へ与えた被害は甚大だった。
たったの1人で《蠍の爪》を壊滅寸前まで追い詰めた最強のアサシン、北風のドゥエル…
彼だけは、ボクが必ず殺してみせる。
ボクの楽しみを奪い、ボクの居場所を壊した罪を…償わせてやる。
「新しい駒はもう既に用意してある……お前はお前の仕事に専念しろ、リゼル」
闇の中から抑揚の無い、しゃがれ声が聞こえて来た。
「かしこまりました、ジュリアス様」
一礼して、闇を後にする。新しい駒…か、どんな奴だろうか?フフ…楽しくなってきた。
そのすぐ後だ、ボクが最狂の歌姫に出会ったのは……
420†黄昏のレーテ† ◆K.km6SbAVw :2006/06/17(土) 09:42:28
――市街地 14:30
レーテは倒壊したライラック商会跡地に来ていた。
「ふぅ…ここにもいませんね」
落胆の溜め息をつく、その表情に陰が射す。
「あら、レーテさんじゃない。どうしたの?こんな所で」
いきなり後ろから声をかけられ、「ヒッ」と軽い悲鳴を上げそうになる。
「レベッカさん…もぅ、驚きましたよ…」
振り返ると、そこにいたのは明朗快活な少女だった。
「ごめんごめん。それより、こんな所で何してるの?」
「え?………え〜と、Dさんを捜してるんですよ。誘拐されちゃったらしくて…」


「へええ、大変だったんだね。でもあの人が簡単に誘拐されるようには見えないけど…」
レーテはこれまでの出来事を、順を追ってレベッカに説明した。
「だってさ、あの怪物をやっつけるような人だよ?きっと大丈夫だって!」
精霊獣を倒す程の男が、誘拐か…確かに有り得ないな。
「だと良いんですけど…」
「じゃあさ、アタシも手伝おうか?店の品物も運び出したから、暇だし」
「えぇ!?そんな、危ないかもしれないですよ!」
レベッカの申し出に、慌てて制止しようと試みるが、押しの弱いレーテには無理がある。
「平気よ。このレベッカ・ライラック様に任せなさーい♪」
艶やかな亜麻色の髪を揺らし、大きく被りを振ってVサインを決める。

ふむ…レーテの周りには、なんか変な奴が多いのだな。
421☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/17(土) 10:08:58
〈うふふっ、お兄さん触角の素晴らしさが分かるの?
でもこの服を着こなせる人はなかなかいないよー。
可愛らしさの中に覘く妖しい色気、その姿はまさに妖精!〉
シルフが滅茶苦茶言ってるけど聞こえるはずはない。とゆーか聞こえたら困る。
「ふ―ん…まぁいいや! さっ進もう!」
「急にかよ…」
銃を見せたくないのかもしれないと思ってそれ以上追求しなかった。
でも霊法だってその気になれば人を殺せる凶器。
ただ見えないだけマシ…本当は見えない方が余計性質が悪いんだけどね。
独り言のように呟く。
「何を持ってるかなんて関係ないよ」
「…気付いてたのか」
「……」
僕は急に立ち止まる。重大なことを告げなければいけない。
暫しの沈黙の後、口を開く。
「……お腹すいた〜!」
「おいっ!」
そう、お昼ご飯をまだ食べていなかったんだ!
422ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/06/17(土) 12:09:40
「何を持っているかなんて関係無いよ」
「…気付いてたのか」
やはり…と言うべきだろう。
あの時の目の移り方は銃を見ていた。
だが…パルスは俺と普通にいてくれる。
信頼出来る男…だろう。

ふと急にパルスが立ち止まる。
「お腹すいた〜!」
「おいっ!」
真剣な顔をしていた為か、内心冷や冷やしていたが…。
「何か食べに行くか…?」
「なら商店街に行こう!」
診療所を探していたはずが…やたらに遠くなって行く気がする…。
「まぁ…いいか。この男は…面白い」
「何か言った?」
「いや…」
呟いた言葉は風の音に消えた。
423†黒騎士† ◆KopEZimtGs :2006/06/17(土) 20:25:30
――メロメーロ近郊、メロン集荷場――

後半刻もすれば、この街も瓦礫の山に変わるのだろうか。
もう既に部隊は大河を出発している筈だ。
ロンデル率いる第三師団は、公国軍でも最も危険な任務に就く歴戦の猛者達の集まりだ。
この程度の商業都市は2時間もあれば、確実に墜ちる。
だからこそ私は、今回の采配に納得がいかなかったのだ。
しかし疑問に思っていた事が解明された今、私がやるべき事はただ一つ。

「忘れたか?これは子供の戦争ゴッコじゃない、奴は選んだんだよ」

ロンデルの苦悩を、私は直視出来なかった。生まれ育った故郷を破壊するなど…
彼の決意は確かに揺らぐ事はないだろう、だがしかしそれは修羅の道へと続くものだ。
「反乱軍を押さえれば、議会も折れる筈だ。抵抗する力も無く、戦いを挑む程愚かではないと信じよう」
私は黒剣を抜き放ち、建物に向かった。


建物に入った途端、濃厚な血臭にムッとする。
建物の中に散らばる死体、死体、死体…
「な…何だこれは!?一体何があった!?」
私は奥へと進む。断末魔の叫びが聞こえたからだ。何者かが反乱軍を襲撃している?
(どういう事だ?仲間割れでもしたのか)
黒剣を構え、いつ敵が現れても対処できるよう、辺りに気を張りながら慎重に進む。

まただ、また断末魔の悲鳴だ。今度はかなり近い。
思い切って扉を蹴破り、突入する。
部屋の中には闇が広がっていた。いや、部屋が闇に覆われていた、という方が正しい。
「遅かったな、黒騎士」
しゃがれた老人のような、不気味な声が闇の中から響いてきた。この声は!まさか!?
「ジュリアス……何故貴様がここにいる!」
部屋中の闇が一カ所に集まり、人の形になる。明るくなった室内に複数の死体が転がっていた。
「お前の仕事を減らしてやったまでだ。感謝はされても、怒鳴られる謂れは無いが?」
黒衣の仮面の男、ジュリアス。陛下の側近にして、公国軍元帥。
(奴は一体何を企んでいるのだ!?)
ばさりとローブを翻し、私の方に歩いて来る。仮面のせいで、その表情は読めない。
「怯えるか、黒騎士の称号が泣くぞ?」
「怯えるだと?馬鹿を言うな。私の問いに答えてないぞ?ジュリアス」

私は黒剣をジュリアスに向ける。奴の仮面の額に埋め込まれた黒いメダルを見据えた。
424†黒騎士† ◆KopEZimtGs :2006/06/17(土) 20:26:53
公国軍元帥ジュリアス・クライン、奴が現れたのはおよそ30年前だった。
フィルディア国王に仕える騎士だった現在のギュンター陛下が、ジュリアスと共に謀叛を企てドラグノフ公国を興した。
あの男が現れてから、国は変わってしまった。
北方の隔離された地で静かに暮らしていた龍人達は、再び大陸に戦争を仕掛けた。
古代の遺産を呼び覚まし、他国を侵略するのを私は止められなかった。

「私に剣を向けるとは…黒騎士、お前はもう少し賢い男だと思っていたが…」
ジュリアスの体が大きく膨れ上がり、闇が辺りを飲み込んでいく。メダリオンの力を使ったのか!?
『どうやら、私の思い違いだったようだ』
変わり果てた姿になったジュリアスが、低く唸るような声で喋った。
黒い魔獣…まるで蜘蛛の様な姿だが、大きさが違い過ぎる!!
「その姿は…まさか精霊獣か!?」
『だとしたら、どうするのだ?』
「貴様の真意を問いたい。無論、返答によっては…斬る。貴様も知っていよう、この剣が何を斬るかを」
『…真意、か。簡単な事だ、私はこの世界を消し去る…それだけだ』
「どういう意味だ!?」
『意味?…フ…フフフフ…ハハハアーッハハハハハハハハハハハハハハハ』
狂ったように笑うジュリアス。その体が元の姿に戻っていく。
「久しぶりだ、こんなに笑ったのは。フフフ、黒騎士よお前を選んだのは…やはり正解だったな」
「何!?」
「いいだろう、教えてやる。お前にも知る権利はあるからな」


黒騎士よ、これは復讐なのだよ。
我等を死の運命へと追いやった者達への…復讐なのだ。
生まれながらにして、呪われた我等の…生きる事すら赦されなかった我等の復讐なのだよ、黒騎士。
お前には解るまい、ただそこに存在するというだけで、迫害される痛みを!
お前には解るまい、どれほど生を望もうとも、それを砕かれる悲しみを!!!
奴らに何の権利があるというのだ!
だから私は誓ったのだ。
新たなる世界を創造すると!!!!
全ての生命に、私は復讐すると!!!!!
425†黒騎士† ◆KopEZimtGs :2006/06/17(土) 20:27:58
「な…何を言っているんだ?」
あまりの事に、私は茫然となっていた。
「世界そのものに復讐する!?ジュリアス、貴様は一体何なんだ!?」
「なあ黒騎士よ、お前は己の生き方に疑問は無いか?お前は何の為に剣を振るうのだ?」
ジュリアスが笑いながら私に問い掛ける。
「私は国の為に剣を振るう!それ以外に剣を振るう理由があるわけが無い!!」
「果たして、本当にそうかな?」
ジュリアスが再び仮面を身につけて、言葉を続ける。
「私の駒になっても、そのような迷い言を…言えるのかな」

ジュリアスが私に向けて手を延ばした途端に、闇が私の体に纏わり付く。
「ジュリアス!?貴様ッ!」
振り払おうとするが、まるで無駄だった。黒剣が効かないだと!?
闇の精霊シェイドならば、黒剣で簡単に切り倒せる筈なのに…どうなっているのだ!?
「ぐぁあ…ジ、ジュリ…アス…がああぁ!!」
凄まじい力で絞めつけられ、意識が遠退いて行く。
「剣があれば倒せると思ったか黒騎士よ。私の従属精霊はシェイドではないのだよ」
闇が…そして影が…まるで自らの意思を持っているかのように、私の下へ集まって来た。
そして、その闇が巨大な人の形に変わった。無数の顔が体中をびっしりと犇めく闇の巨人…
「低俗な下級精霊と同じにされても困る。………そうだろう?《ゼーブルファー》」
甘かった、まさか…上位精霊を使役していたとは…
「さて黒騎士よ、お前にも働いて貰うぞ?」
そう言うとジュリアスは仮面を外した。
仮面の下から現れた顔には、醜い火傷のような大きな傷痕があった。
そして、少し尖った長い耳…
(そうか…奴の正体は…ハーフエルフだったのか!?)
私は大変な勘違いをしていた事に、ようやく気付いた。奴の目的が…まさかアレを…


「気分はどうだ、黒騎士?」
「はい…ジュリアス様、何も問題ごさいません。至って万全の状態であります」
ジュリアスに傅き、礼をする黒騎士。
「それでいい。もうすぐだ…全てのメダリオンが集う!この街を贄に、アレは甦る!…フフ…フハハハハ」
狂気に満ちたジュリアスの笑い声が、血に染まる廃墟に谺した。
風が止み、日の光が陰り、水は澱み、大地が震え、影が拡がる…世界の終わりが、ゆっくりと近付いていた………
426☆リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/06/18(日) 12:59:55
発動もしてないのに、突然俺のメダリオンが輝き始めた!?
やばい!これは共鳴だ。ラトルやエリサと一緒にいた頃も共鳴はあった。
だけど…これは今までとは違う、ケタ違いだ!!
「リッツ君、悪いけどメダリオンの秘密や、メロメーロで生活し始めてからのコリンについてはまた今度だ」
俺とヒューアさんは立ち上がると、カフェテラスを飛び出す。
「分かってるっスよ、いきましょう!」
「ああ!だがちょっとまってくれ、まだ紅茶が残ってるんだ!ゆっくり急いで飲むから待ってて!」
がたーん!!……ちょっと!?ヒューアさん!?こんな非常事態に何やってるんスか!!
「いやぁすまないね、出された物は残さず食す。これは大切な事だよ」
「………(やっぱり変な人だ)」


俺とヒューアさんは街中を駆け抜ける。反応がどんどん強くなって来た。
「まさか…嘘だろ!?」
この方向、《運命の牙》のアジトがある方角じゃないか!!
「どうかしたかい?」
「やばいッスよ!牙のアジトに『何かいる』!!牙にはもう俺以外に保有者はいない筈ッス!!」
走りながら叫ぶ。メダリオンのおかげで俺は疲れることはない。
「そうか、やはりこの街にあったのか!議会の隠蔽工作に上手く巻かれたって訳だ」
俺と同じ速さで全力疾走してるにも拘わらず、ヒューアさんは息一つ切らしていない。
「リッツ君!もう少し、急いでみよう!」
そう言って更に速度を増していく。マジであの人は何者なんだよ!?
「ちょっ…待って!」
視界の隅に時計塔が映る。時刻は午後4時30分を回ったところだった…


《運命の牙》のアジト、建設中のメロン集荷場に到着した瞬間、建物が爆発する!
「何だって!?」
木っ端微塵に吹き飛び、建材の雨が降る中に見覚えのある黒い甲冑の姿が在った。
そして、その隣に立っているのは、同じく黒いローブに身を包む人物。
「リッツ君、君は運命を信じるかい?」
「え?」
「僕はね、信じなかったんだ。今こうして…再び奴に巡り逢えるまではね!!」
ヒューアさんの雰囲気が変わった。凄まじい気迫だ!まともに見ることすらできない!!
そうか!あれがさっきの話に出た黒衣の男か!?
「じゃあヒューアさん、甲冑の相手は俺に任せるッスよ!!」

深呼吸をひとつ、俺は《躍動のメダリオン》を発動させた!!
427一行ネタ:2006/06/18(日) 21:12:45
なんとハインツェルはぼったくりメロンジュース売りに捕まっていた!
428☆見た感じ軽兵士 ◆CQon4GsdZw :2006/06/19(月) 00:25:17
「え、いや、遠慮しておきます。」
「いやいや、すんごく安くて美味しいからさ、」
「いや、だから僕さっきから急いでるって……」
ハインツェルはメロメーロの特産品であるメロンジュースを買うように
執拗に迫ってくる男と攻防をしてすでに30分が経過していた。

(あー、なんでこんなにしつこいのこの人……)
しかも急に呼び止められたためにパルス達の姿もとっくのとうに分からなくなってしまっている。
迷惑以外の何者でもない男に少し怒り気味のハインツェル。
「あ、あのですね、さっきから言ってますけど、僕は人探しに忙しいんです……
 冒険者風で二刀を持った人を探してるんです」
「うーん、さっきからその話しを聞いてるけど、なんだかそんな人を見たような記憶が」
「え!?本当ですか!?」
押し売りの言葉に大きく反応するハインツェル、
だがこういう人の出入りの激しい街で冒険者風という特徴はなんの意味をなさないことを
よく分かっていないようだった、その隙を見たのか押し売りは文字通り何かにこじつけて押し売ってくる。

「ああ、多分アイツだねぇ、知ってる知ってる、そうだなぁ、メロンジュース買ってくれれば言ってもいいよ、」
これはもう仕方ないと思いハインツェルは渋々値段を聞く。
だがとても高額で明らかに足元を見ているといった値段だった。
「そ、そんな、普通じゃないですよ……その値段。」
「あれ?探してる人の情報は要らないの?」
押し売りの言葉に顔を困らせるハインツェル、これを払ったら自分の持っている資金は殆ど消えてしまう。
しかもガセを掴まされるということも十分に考えられる、だがこれに賭けるしかないと思い財布を取り出す、
だがその時、無関心の集まりのような周りから一本の手が伸びて押し売りの手を掴む、
「おい、ガセ掴ませる気だろうが、そうやって何も知らない奴ハメんのがお前らの礼儀なのかよ。」
「な!?なに言ってんだよ、俺がなにをしてようが勝手だ。」
「ならアタシがこうすんのも勝手だろうが。」
あれほど執拗にハインツェルに押し売りをしていた男はこの言葉に反論が出来ず、
舌打ちをしながら去っていく。押し売りから解放してくれた腕を辿ってみる、
するとそこには全身真紅の服装の美少女が居た、言葉使いは一見すると男のようだが……

「助かったよ、ありがとう……」
「別に、ただアイツがムカついたからやっただけだ、
 ま、お前もアタシからすりゃムカつくけどな。ウジウジしてる奴見てると反吐が出る。
 その腰についてるもんは飾りかっての……」
少女はハインツェルにも厳しい言葉を言い放ち街路を歩いていく、
ハインツェルも何故だか分からないがその後に続く。
しばらく歩いていると少女は振り向き握りこぶしをハインツェルに向けて言う。
「おい、なんで付いてくんだよ!キモイんだよ!」
「い、いや、お礼を……」
「要らねぇからさっさと人探しとやらに戻れよ!」
うざったそうに少女は手で追い払う動作をする。
「い、いや、でも本人すら見てないから、正直どうしたらいいか。」
「はぁ?意味分かんねぇよ、探すこと自体無理じゃねぇか、
 もしかしてあれ逃げるためのうそかよ!?」
「ち、違うよ、ただ知り合った人が仲間を探してて、
 僕も探すことになっちゃって、しかもその人たちからはぐれちゃって……」
「…めんどくせぇ状況だなおい、ったくなんなんだよテメェは、
 そんなん知り合ったぐらいの奴等ならほっといて自分のしたいことすりゃいいじゃねぇか。」
「……で、でも僕記憶喪失みたいで、知り合いも彼等しかいないし。
 なにをしたいのかも分からないし……」
「…こんな奴助けんじゃなかったぜ、ナヨナヨしててムカつくし、」
辛辣な言葉にハインツェルは俯きおしのように黙ってしまう。
少女はその様子を呆れたように見ていたが、放っておけないように感じたのか言う。
「……まあ、アタシも暇だし買い物ぐらい付き合えや、
 その先で聞き込みすりゃいいだろ、あと一つ言うが、荷物持ちは決定事項だからな!」
そして振り向きもせずにまた歩き始める少女、
ハインツェルは少し安堵感を感じ少女の後をついていった。
429名無しになりきれ:2006/06/20(火) 08:05:07
そして誰もいなくなった
430☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/20(火) 22:57:36
メロメーロ商店街。
最近パスタ屋をはじめとする専門店街に押され気味で
苦肉の策で作ったらしいメロメロンちゃんという
微妙なイメージキャラクターがいたるところに見られる。

「よく食うなー」
「甘いものは別腹って名言があるじゃん」
外の席でメロンパフェを頬張っているとウェイトレスのお姉さんが来た。
「ランチのおまけ持ってきました〜」
「おまけついてたの? ラッキー♪」 
一方、ヒロキさんは頭を抱えていた。
「やられた……恐怖のおまけつきランチだったのか」
そんな心の叫びもどこ吹く風、平然と笑顔で続けるお姉さん。
「エルフさんはメロメロンちゃん小物入れ
そっちのマントのお兄さんはメロメロンちゃんマスコットでーす」
「・・・・・・・・・」

数分後。
「なあ……よければこれもらってくれないか?」
横を歩くヒロキさんがマスコットをおずおずと差し出す。
「ん?くれるの?じゃあ代わりに小物入れあげるね」
「いや、そうじゃなくて……、何入れてるんだ?」
ポケットから魔晶石を少し取り出してメロメロンちゃん小物入れの中に入れる。
銃使いも使えるのかはよく知らないけど。
「はい、きっと役に立つよ」
431†チェカッサ† ◆7h50UVLF.w :2006/06/21(水) 00:00:07
キヌド神殿内、診療施設。にて。
「たのもー!」
これでもかと言うほど声を張り上げられれば、そこにいる人物は動きを止め、声のした方を見るものだ。
周囲の人物に注視されても、相も変わらずチェカッサは顔色一つ変えない。
恥ずかしさを感じていたら道化などつとまらないです、などとチェカッサ本人は宣っているが。
羞恥心が欠片すら備わっていないのは、それはそれで人として大事な何かが欠落している。
「こちらの、デーさんのお仲間、もしくはそのお仲間に伝言を受けた方はいらっしゃらないですか!!!!!!!!」
さっきよりも更に大音量で木霊するチェカッサの声。診療所内どころか神殿全てに聞こえてるのではないか、と言うほど。
心臓の患いで通院していたアダムス氏(82歳)がこの声によるショックで危篤状態に陥ったのは別の話だ。
一番近くにいたDが当然ながら一番その声の影響を受けたことは想像に難くない。

閑話休題。
当然ながら診療所から追い出されようとしていた二人を、呼び止める声。
「待ちなさい!」
その声をあげたのは、見覚えのある、学者風の男。顔には怒りに近い表情がありありと見える。
「あ、あなたは悪の学者!…じゃなくってえっと昨日教えて貰ったですが…」
「エド!」
「そうそうエドさんです!」
「よくものこのこと来ましたね…Dを使って何を企んでいるんですか?
早くDを放しなさい!さもないと…。もう、逃がしはしません」
迫りくるエドワード。
「え、ちょ、待っ」


〜しばらくお待ちください〜


「という訳で、こいつにも協力してもらうことになったんだ」
「…むぅ、そういうことなら仕方ありませんね。確かに私も誤解されかねない行動でしたし。一時休戦としましょうか」
「です!」
チェカッサが事情を話そうとしても意味が分からなくなってしまうのでDが事情を説明し。
それによってようやくエドワードも納得したらしい。

「…で、どうするですか?デーさん。どうやら貴方を探し回ってるみたいですが」
「そうだな…。どこで探してるのかが分かれば…」
「どうするもこうするも、Dはここで安静にしてもらいます。
頭はまだ回るようですが、かなり体が衰弱してるようですから」
そう言うエドワードは「有無を言わせぬ」といったような口調だ。
ここでチェカッサが無理矢理にDを連れまわそうものなら再び血で血を洗う殺し合いが始まってもおかしくないような。
「…それもいいかもしれないです。無闇に探し回ったって見つかる可能性は低いですし、
ここで待っていればいつかは戻ってくるだろうですし」
その空気を感じ取ったのかは定かではないが、チェカッサも珍しく少し消極的な発言をする。
「…どうするです?」
もう一度、ゆっくりと問う。「Dの決定に従う」というニュアンスを込めつつ。
432ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/06/21(水) 07:23:47
「はい、きっと役に立つよ」
微妙な小物入れから魔晶石を取り出し、
腰の袋に入れる。
「ありがとうな。役に立たせるさ。
で…小物入れなんだが…」
「うん!僕はマスコットでいいからさ」
「有無を言わさず持たせる気かよ…」
あぁ…少し頭が痛む気がする。
歩きながら頭を軽く押さえる。
「頭痛いの?体調管理ちゃんとしなきゃぁ」
「誰のせいだ…!」
力無く答えながらも笑顔を見せる。

――人前でこんなに笑ったのは…
もぅ何年も無かった気がした。

「じゃっ!ご飯も食べたし…何するんだっけ?」
お約束のボケをカマすパルスにすかさず突っ込みを入れる。
「Dを探すんだろう!」
こんな関係は…恐らく友情って物を感じたのは初めてだった。
433†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/22(木) 21:04:40
ヤレヤレだ…また殺し合いを始めるかと、ひやりとしたぜ。
エドの「1時休戦」というフレーズに引っ掛かるモノがあったが、敢えて聞かなかった事にしよう。
「…で、どうするです?」
チェカッサが俺を見て、これからの行動指針を求めてきた。エドも同じ様に俺を見ている。
「エド、予定ではどうなってるんだ?定時連絡とか、打ち合わせは?」
「いえ、各自夕方まで市街探索の後、此処へ帰還するという以外には何も」
……随分とテキトーな作戦だなオイ。
「じゃあ貴方は何故、ここにいたんです?」
チェカッサが率直な疑問を口にした。確かにまだ昼前だ、場合によってはサボりに見える。
「忘れ物を取りに戻ってきたところに、丁度よく出くわしたのですよ」
「忘れ物?」
「えぇ、コレです。流石にほったらかしは危険かと思いましてね」
そう言ってエドが取り出したのは、《激震》と《深緑》、2枚のメダリオンだった。

「やっぱり共鳴してるな…しかしこの街にメダリオンが集まり過ぎじゃねぇか?」
「そう…ですね。何か意図的に集められたような気がしますよ」
俺の言葉に、腕組みしたエドが唸る。
《疾風》《激震》《深緑》《蒼氷》《水流》…12枚の内5枚が揃ってる。
蠍の刺客も多分五凶の連中だ。そうなれば最低でも8枚…1箇所に集まるにしちゃ多すぎだな。
“意図的に集められた”…か。こうなってくると確かにそうかもしれねぇ。

「メダリオンが集まると、何があるんです?」
不思議そうな顔をするチェカッサ、そういえば…そこら辺の説明がまだだったな。
「メダリオンが世界をブッ壊したのは話したよな?“忘れ去られし精霊王”その真の名は…」
「D!?言ってしまってもよいのですか!?」
エドが驚きのあまり珍しく声を荒げた。無理もない、俺が話そうとしてるのは禁忌に触れる内容だからだ。
「エド…俺ァもう腹括ったぜ?それにコイツにも知る権利ってモンがあるだろうよ」
「しかし…」
「後戻りは出来ねぇんだ、エド。これから先何が起こるか、お前にだって予想はつくだろ」
「そうですね、わかりました。関わってしまった以上は知らない訳にはいきません…」
エドが頷くと、俺は静かに語り始めた。
歴史の闇に葬り去られたメダリオンの真実を、そしてその闇の中で繰り広げられてきた戦いの顛末を……
434真実の歴史 ◆9.MISTRAL. :2006/06/22(木) 21:06:01
この世界には最初から精霊なんてのはいなかった。
精霊が世界に現れる前は、龍がいたんだ。
風も土も火も水も全部、龍の祝福を受けて世界は成り立っていたんだよ。
星の龍と呼ばれる6匹の龍は、龍人と竜を創った。自分達が楽をするためにな。
龍人は龍から学んだ智恵を使って、世界を管理した。そう、古代の魔法文明の始まりだ。
世界は繁栄を極め、平和は永遠に続くと誰もがそう思ってたんだろうな。

だが終わりは突然やってきた、聖獣の誕生だ。
龍人達は世界を更に良くしようと、龍の叡知を結集して1体の獣を造ったんだ。
その獣は世界の全ての事象を管理して、龍人達に更なる繁栄を齎す筈だった。
だがな、それはとんでもない大失敗だったのさ。
聖獣は龍人の手を離れ、世界を作り替えた。龍の祝福は消え去り、世界に精霊が生まれたんだ。
あらゆる事象が意志を持ち、龍人達に牙を剥いて襲いかかった。
龍と龍人達は、聖獣と精霊を滅ぼすために戦いを始め、栄華を極めた世界は荒廃したのさ。

聖獣が滅ぶ時、世界に大きな穴が開いた。
その穴の向こう側から現れたのが、新しき神々だ。
壊れた世界を元に戻すために、多くの龍人達が新しき神の下へ去った。
神の祝福を受けた龍人は人間になり、世界の復興を始めたが、それを龍と龍人は認めなかった。

結果、今度は龍と神々の戦争が始まった。
でも聖獣との戦いで疲弊した龍は神々に敗れ、地上を追放されて天に昇った。
地上に残された龍人と竜は、辺境に追いやられて人間の時代が始まる…
筈だったんだが問題が残ってた、精霊だ。
神々は精霊を封じる役目を持った人間に、永い命と力を与えた。
精霊の意志を操り、制御する力を持った守護者……つまり、エルフの誕生だな。

エルフだけが精霊を使役できるのは、このせいなんだよ。
それから世界はゆっくりと復興に向かってはいたが、ある日再び聖獣が復活した。
そりゃそうさ、完全に滅ぼされてなかったからな。
聖獣の躱は12の破片になって世界中に散らばり、眠ってただけ。破片がそれぞれ力を取り戻して蘇った。
たったそれだけの事だった。

エルフを先頭に、人間は12匹に分裂した聖獣と戦ったが、結局勝てなかった。
12匹の聖獣はやがて1匹に戻り、また世界を滅ぼしたのさ。
435真実の歴史 ◆9.MISTRAL. :2006/06/22(木) 21:07:02
またまた神々の介入で聖獣を倒す事はできたが、やっぱり完全に滅ぼすのは無理だった。
そこでエルフの長はこう言ったんだ。
『じゃあもういいよ、1個ずつ完璧に封印しようぜ!!』
結果としてこの作戦は見事大当り、再び世界に平和が戻ってきたって訳だ。


「デーさん、ちょっといいですか?」
「ん?何だ?」
「そのエルフの長、絶対そんな喋り方してないと思うです」
「…………………………」


……でな、平和になったはいいんだが、やっぱり問題ってのは尽きないもんだ。
神々も力を使い果たしちまったんだよ、無理ないよな働き詰めだったからな。
そこから2000年程の間は何事も無く、世界は順調だったそうだ。
そして昔の事なんか忘れちまったのさ、人間は長くて80年も生きりゃ死ぬからな。
昔を覚えてるのはエルフだけになった。エルフ達も無理に思い出させるのはアレだから、黙っておいた。
それが大間違いだとも知らずに。

龍人戦争は知ってるよな?今から311年前に起きた戦争だ。
その戦争で聖獣が復活するまで、人間はその存在を忘れてたんだよ。
アホくさい話だろ?慌てて戦いの準備をしたところで、もう手遅れだったのさ。
その時代の人間が皆してアホばっかりだったのも原因の1つだが、忘れられてた聖獣の
 存在を覚えてた奴がいたってのがマズかった。龍人の王アーダ、コイツだ。
龍人戦争で復活した聖獣の名は、人間の記憶に無かったから“忘れ去られし精霊王”って呼ばれた。
黄昏の4英雄に倒された聖獣は、またまた12の欠片になった。
しかし最初っから数えて何度もボコられたからな、随分とまぁ小さくなったもんだよ、ホレ。
そうだよ、コレが噂の精霊王様って奴だ。


「うわぁ…私はそんなの触っちゃったですか……」
心底嫌そうな顔をして、どんよりと鬱になるチェカッサ。
気持ちは分かるがそこまで嫌か?
「大丈夫だよ、そんな顔すんなって。メダリオンは適合しない奴には無害だからな」
「むぅ…それにしても長い話だったです」
「おいおい、“だった”って何だ?まだ半分だぞ?」
「えぇぇ…本気で言ってるですかァ?」
「当たり前だろ、なぁエド………ってコイツ目ェ開けたまま寝てやがる!?」
436真実の歴史 ◆9.MISTRAL. :2006/06/22(木) 21:09:02
「罰として落書きするです。髭と眉毛を合体させるですよ」
悪魔の様に笑いながら、筆を用意し始めたチェカッサを慌てて制止する。
「おいチェカッサ!だめだろそんな…………モミアゲも繋げようぜ!」

落書きしてたっぷり遊んだ俺達は、飽きたので再び話に戻った。
エドの顔は肌が見えないほど毛を描き込まれて、真っ黒になってたのは言うまでもない。


龍人戦争が終わって、聖獣はまた12個に散らばった。
神様がガチでやらなきゃ勝てなかった聖獣も、人間達が束になりゃ勝てるようになったんだ。
油断したんだろうな、エルフ達は欠片を封印しなかったんだよ。
エルフ達が指導者のモーラッドを失い、余裕が無かったってのも理由だがな。
で、余裕の無いエルフ達はとんでもないことを思いついた訳だ。
『封印したってどうせ解けるんだから、もうさ…放置でよくね?』
ってな具合にな。自分達の不始末を棚上げした揚句にこの結論だよ。
確かに12個バラけた状態なら、腕利きを数十人集めりゃ倒せるからな、理論上は。
人間の歴史でも、聖獣らしき存在の記録は抹消されてるか改変されてるかのどっちかだ。
なんで抹消されてるかって?
簡単な事さ、そんな物騒なモン持ち歩いてる奴が目の前にいたらお前はどう思うよ?
混乱しきった世の中をまとめ直すのに、メダリオンは邪魔だったのさ。
だから龍人戦争の時に4英雄が倒したのは、アーダが異界から召喚した魔神ってコトになってる。
つまり“無かった”ことにされたんだよ。
遥か昔っから続く忌ま忌ましい記憶を、一部の連中の勝手な都合で握り潰したんだ。
その結果がコレだ。現にメダリオンはこうして5枚も集まってる。まだ増えるかもしれない。

来る途中で、メダリオンは精霊を喰って成長するって言ったよな?
じゃあ成長した後はどうなると思う?精霊獣になるんだよ。
精霊獣になったらその場で倒さなけりゃ大変な事になる。他の精霊獣を求めて移動を始めるからな。
精霊獣同士が合体したら、もうこの時点で普通の人間には太刀打ち出来なくなる。
こうなったらアウトだ、12匹全部が揃っちまったら…300年前の繰り返しって訳だ。

気付いたか?今この街の状況は、崖っぷちの一歩手前なんだよ。冗談抜きでな。
バンザイしながら飛び降りるのはゴメンだ。だから真相を突き止めに行く。
437†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/22(木) 21:10:19
チェカッサは呆然としていたが、やがて力無く口を開いた。
「知らなかったです…平和な時代とばかり…」
「平和か、そんなモン何時だって品切れ中だよ。これが現実で、真実なのさ」
「酷い話です……」
「これよりヒドイ話なんざ、ザラに転がってる。少なくともエルフの嘘は世界を立て直したからな」
「デーさんは…何故詳しいんです?普通ならば知らない事を何処で知ったんです?」
あぁ…やっぱそうだよな、そう思うよな。
「それに、真相を突き止めるって、何か心当たりがあるですか!?」
「ヤレヤレ…ま〜たクソ長い話になるぞ?」
「構わないです」


俺が生まれたのは、クラーリア王国の南部に広がる『迷宮の森』って所だ。
4英雄の1人モーラッドの住んでた森でな、王国のエルフのほとんどがその森に暮らしてた。
俺の親父はエルフで、お袋は人間だった。
その当時、森はゴタゴタがあって皆ピリピリしてたんだ。
戦争の後片付けも終わろうとしてた矢先に、森で管理してた3枚のメダリオンが奪われたのさ。
エルフってのは寿命が長いだけに、気持ちの切替も時間が掛かる連中でな。
メダリオンを奪ったのは、欲に溺れた人間だと決め付けたのよ、何の根拠も無しにだ。
当然の如く、親父とお袋にも風当たりが冷たくなった。もともと反対されてた結婚らしくてな。
そりゃ随分と酷いもんだったさ。ハーフエルフは混沌の民って話をしたろ?
エルフはハーフエルフの事を良く思わないんだ。精霊を狂わせる者として、嫌ってる。
俺には兄貴がいてな、森の連中とは仲が良くなかったが兄貴がいてくれればそれで充分だった。
親父とお袋は虐められる俺達を見てられなくなったんだろ、結局は家族4人で森を出る事になった。
エルフの連中も、俺達家族を黙って見送りゃ済んだ話だったんだ。だが連中はそうしなかった。

『裏切り者を許すな』『やはりメダリオンを盗み出したのはあの一家だ』『処刑しろ!』
『呪われた子を殺せ!』『森の秩序を乱した罪を償え!』『殺せ!』『絶対に逃がすな』

俺達家族は必死で逃げた、捕まったら殺される。死ぬ程怖かったさ、ガキだったしな。
でも奴らから逃げ切る事は出来なかった。
出来なかったんだよ……
438†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/22(木) 21:11:32
霊法師の放った【ファイアストーム】に巻き込まれて、兄貴とお袋は見えなくなった。
【クラック】の地割れに飲まれた俺と親父は、押し潰されて死ぬのを待つだけだった。
親父の使った【トンネル】で俺は崖から落ちて、川に流されて…
前の日に雨が降ってたせいで流れは強かった。
あっという間に溺れて、次に目を覚ました時には知らない土地だったんだ。
たった10歳そこらのガキに1人で生きていく方法なんてのは無かったよ。
泥を啜り、草を噛り、その瞬間を生き抜くので精一杯だったな。
俺は憎かった、家族を奪ったエルフ達が憎かった。気が狂いそうになるくらい憎かった。
今でも忘れちゃいない、あの目を。
モーラッドの後継者で森の民の長パルメリス…
顔はあまりよく覚えてないが、あの時俺を見ていた冷たい目は絶対に忘れられない。
地霊ベヒモスに命令して、地割れを閉じようとした時の……あの冷たい目だけは!

それから俺は生きる為には何でもやった。盗み、殺し、奪う…およそ考えられる悪あがきは一通りやった。
ドブみてぇな場所で、他人に牙剥きながら生きていくしか“なかった”んだよ。
俺が可哀相か?そりゃ違うな、むしろ運が良かったんだよ俺は。
世の中の“仕組み”を、鼻垂れなガキの時分に知る事が出来たんだ、こりゃ幸運だろ?

まぁ人生論は一旦置いておこうか。
それから50年が過ぎ、俺は森に戻った。もちろん復讐する為にさ。
何の罪もない俺達家族を殺そうとしたエルフに、俺が味わった苦しみと絶望を教えてやる為に。
だが復讐は出来なかった。森のエルフ達は何者かによって、1人残らず皆殺しにされていたからな。
丁度入れ違いになったんだろう、死体は新しかったし血も渇ききってなかった。
生きてる奴を捜したが、無駄だったよ。集落の中を歩き回って見つけたのは死体だけ。
そんな時、広場に描かれた血文字を読んで俺はすぐに判ったんだ、誰がこれをやったのかを。

《亡き父と母と弟の憎しみを刃とし、私は全ての生命に復讐する》

死んだとばかり思ってた兄貴が生きていた。
俺と同じように、変わり果てていた。
この時ようやく自分が何をしようとしていたのかを、思い知らされたんだ…
439†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/22(木) 21:12:24
俺の中の復讐の火は、とっくに消えてなくなってた。
エルフ達の死体を全部埋葬して、俺は泣いた。なぜだかわからんが涙が止まらなかった。
その後、集落から使える物をいろいろ持ち出してる時に古ぼけた本を見つけたんだ。
それは日記だった。
モーラッドの日記だったんだよ、そこにはエルフ達の歴史が全て記されていた。
龍、聖獣の真実も全てだ。読み終えた時、正直言って俺は吐きそうになったよ。
そして日記の最後のページが破り取られていて、その破り目は真新しかった。
兄貴はこの日記を読んだ、メダリオンを使って世界を滅ぼすつもりだと、俺の直感が教えてくれた。
ならメダリオンを追えば、それが兄貴への近道だと確信したのさ。
どんな手段を使っても必ず捜し出して、絶対に復讐を止めさせてみせる。
そう俺は誓った、親父とお袋とあの夜死んだ俺自身に…

更に50年が過ぎ、俺はひたすら兄貴の手掛かりを追い続けた。
そんなある日、噂を耳にしたんだ。
蠍の爪っていう山賊団の幹部は、“不思議な力”のメダルを持っているってな。
50年捜し続けて、ようやく手掛かりが見つかったと俺は手を叩いて喜んだよ。
暫くの間は蠍の爪をマークして入団のチャンスを待った。拠点を持たない蠍の爪を捕まえるのは苦労したさ。
そしてとうとうチャンスが来た。
商隊の護衛をしていた時に、蠍の爪の襲撃があった。俺は商隊を裏切り、蠍の一員になったんだ。

しょうがないだろ、俺は“どんな手段を使っても”って言ったじゃねぇか。
とまぁこんな訳で、蠍の爪に入団してエドに出会ったんだよ。昔のエドはマジで狂犬みたいでな。
おっと、話がそれたな。そして俺は幹部にまで昇り詰めたんだが…
とある事件がきっかけでな、ほれ来る時に話したろ、3年前に逃げ出したってヤツ。
まぁ…その、うんアレなんだよ。それで蠍の爪をブッ潰して今に至るという訳だ。


暫くの間、その場に沈黙が流れる。その沈黙を破ったのはエドだった。
「……んん…もう終わりましたか?ふぁ…喉が渇きましたね、水を貰って来ますよ」
そう言うとエドは部屋を出て行った。
数十秒後、療養所のオバちゃんの悲鳴が響き渡る。そういえば…落書きしたまんまだったっけ……
440†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/22(木) 21:50:56
あーあ、エドの奴怒るだろうな。
「デーさん、もしメダリオンが暴走とかしたらどうするんです?」
「確かに、メダリオンが戻ってきたとしても、すぐには動けないからな。ま、今日はのんびり待つさ」
「そうですね。夕方にはみんな戻るなら、心配ないです」
軽く笑って応えると、少し安心したのかチェカッサも表情が緩くなる。
その時、俺は突き刺さるような殺意を感じた。
「なぁチェカッサ、もう少し修業する気はないかな〜?」
「そうですね〜、猛烈に走りたい気分になったです」
俺は立ち上がると、チェカッサの肩をポンと叩く。チェカッサも俺の言葉の意味を理解したようだ。

凄まじい殺気が近付いて来る!!
「デイイイィィイイイイッ!!!!!!」
体の芯から凍えるような、怨嗟の声が廊下の奥から響いてきた。
軽くヤバイ、こりゃ見つかったら普通に殺られる!!!
「チェカッサ!急ごう!ヤバイヤバイ!!」
「わ、分かってるですよ!さぁ乗って!」
急いでチェカッサにおんぶしてもらった瞬間、ドアが切り刻まれてバラバラに散らばった!
ゆっくりとエドの姿によく似た(エドだが)顔面毛むくじゃらの魔神が部屋に入って来る。
「「こ…怖ぇーッ!!」」
「ヴウゥルアアアアアアアアアアッ!!!!」
「「ひいいぃっ!?」」
エドによく似た魔神が、この世界に生きる全ての生命の呪い尽くす程の雄叫びを上げる。
「急げチェカッサ!捕まったら殺される!俺ら絶対殺される!!!」
「言われなくても急ぐですーッ!!!」
「マアァデェエエゴラァアアッ!!!!」


確かにこの時、俺は1人なんかじゃなかった。
頼りになる仲間と、一緒にいたんだ。
バカみたいに騒いで、ふざけ合って、この瞬間だけは忘れる事ができた…

俺の…未来と運命を…
441☆貴族風の男 ◆aT3reGlGIE :2006/06/22(木) 22:18:40
「じゃあヒューアさん、甲冑の相手は俺に任せるッスよ!!」
「頼んだ、それと無理はするな、厳しかったら僕に任せてくれ。」
「いえ、悪いっスけどそれはできないっス、アイツだけは俺が…」
「…ならば言うことは一つだ、『生き延びろ』!」

そして僕は仮面の男に焦点を合わせる。
どうやら見た感じだけど仮面の男は30年前から変わってない、
多分エルフか龍人に俗しているってわけだ。
そしてこの独特の怨念、まるで昔の自分を見ているみたいだよ。
「久しぶりだね、まさかまた会うとは思っても見なかったよ。」
「フフフ……ハッハッハッハッハ!!
 私はまた会うと思っていたぞ龍纏し剣聖よ!
 なぜならば運命が我等を手繰り寄せた!」
「君と運命で繋がっているなんて考えただけでも気色悪い。
 と言いたいところだけど、どうやら運命ってのは残酷だね。」
「ククク、そう言うな、運命のおかげで私達は出会えた。
 剣聖……私とともに来い。」
予想外の言葉に一瞬戸惑ってしまった、一緒に行く?
おいおい、なにを言っているんだこの男は。
「さあ、今こそ共に世界に復讐をしよう!この腐りきった世界に!」
「……おいおい、なんで僕が…」
僕の疑問に対し男は仮面を外す、そこにはただれた傷と耳、
エルフと似てはいるが同じではない、なるほどね混沌の民か。
男は仮面を付け直すと僕に対し高揚した口調で語り始める。

   共に来い龍纏し剣聖、私と貴様は同じはずだ。
   お前こそが私の苦しみを理解できる。それは他の誰でも叶わない。
   私こそがお前の苦しみを理解できる。それは他の誰でも叶わない。
   思い出せ、生きることすら許されない呪われた生を。
   思い出せ、世界というものから拒絶されたこの身を。
   
「……生憎僕は君みたいに根暗じゃないんでね。
 もっと楽しく過ごすことに時間は使うよ。」
「猫を被る必要はない、お前は私よりも恨みがあるはずだ。
 世界をもっとも恨んでいるのはお前のはず!
 世界から孤立したお前だからこそ!この世界を滅ぼすに相応しい!」
「……なんでそうまでして世界を恨むんだ?」
「私の家族は全て殺された……この下らない世界によって!」
なかなかヘヴィな話題だねぇ、僕の取り扱ってあげられるものの基準をギリギリオーバーだよ。
まあ確かに君の言っていることはよく分かってあげられるけど。
けど、家族を殺されて世界を恨むか……ずいぶんとよく出来た人間だよホントに。
「うーん、そうか、でもだったら僕の気持ちは一生分からないんじゃないかな。」
「なぜ……私達は同じく世界をうらんで仕方が無い存在のはずだ。」
「もう一回言おうか、家族を持っている君に僕は分からないよ。
 同時の僕には君が分からない、君と僕とを同じにしないでいただこうか。
 そしてなにより……僕はこの世界って奴に大切なものが出来すぎた……」
剣を抜き仮面の男を睨みつける、語りまで変わっちゃうからね。
まあどっちも僕なんだけど。
「もう分かったな?君と俺の道は違っている、
 お話はこれにて仕舞い、今こそ30年前の決着付けさせてもらう。」
「いいだろう、私は力でお前を服従させてやる!」
「……笑わせてくれる、言っておくが俺に勝てるなんて思うなよ。
 お前程度の奴に俺の全力は見せられない。」
「……私を30年前の私と思うな……」
「面白い、なら遠慮なくいかせてもらおうか!」
442†チェカッサ† ◆7h50UVLF.w :2006/06/23(金) 07:48:21
「はぁ、はぁ…ここまで…逃げれば…はぁはぁ、大丈…夫…はぁ、です」
ここは裏路地。チェカッサもそうこの街の地理に明るいわけではないが、大体の現在地の検討はつく。
「とりあえず夕方まで暇を潰すか。エドもみんなの前で暴れたりするような真似はしないだろう」
「それならいいですが…」
その時に遠くから聞こえる唸り声。と、離れていても感じる殺気。
「…フシュー…ゴロス…ゴロス…」
人のものとは到底思えないそのオーラは、十分逃げたつもりだがすぐに襲われてしまっても決しておかしくないほどで。
「本当に大丈夫です?」
「…多分…たぶんな」
「さっき狂犬だとか言ってたですが…それも分かる気がするです」
すぐに息を整えたチェカッサは裏路地をそのまま進む。道なりに行けば大通りに出るはずだ。

「…そういえば」
「なんです?」
「昨日から俺ばかり生い立ちや過去を明かしてるけどよ、俺チェカッサの昔の話何も聞いてないぞ?」
「え?あ、その、別に大したことないです。普通の一般小市民です」
「一般市民がピエロの格好してカタナ振り回す訳ないだろ?暇つぶしにでも聞かせてくれよ」
「で、ですが…」
チェカッサの脳裏に思い浮かぶのは義父と…父のこと、そして故郷のこと。だが。

〜〜〜
同日午後。クラーリア王国、王都クラーリア。城内、謁見の間。
「えぇい!ライランスはまだ見つからぬのか!」
玉座に座する男が声を荒げる。煌びやかな冠に豪華な衣服。その姿すべてが王であることを如実に表している。
「残念ながら、王子の足取りは何も…」
かれこれ十数度目の悪い報告。予想していたとはいえ、王は地団太を踏んで悔しがる。
「落ち着けって、ラウンド。あいつには俺の刀術を叩き込んである、そう簡単に死にゃしねーよ」
その苛立ちを宥めようとするのは玉座の隣に立つ奇妙な出で立ちの男。王の御前でも、腰に刀を差している。
「ゴンゾウよ!わしがライランスをお主に預けたのは奴の気弱な精神をお主に叩き直して貰う為じゃ!
確かに奴は気弱でなくなった。それには感謝しよう。じゃがな!ここまでしてくれと頼んではおらんぞ!」
ゴンゾウと呼ばれた男は、王からの叱責にやれやれといった表情を浮かべる。
「修行に出る、って言い出したのはあいつ本人だぜ?次期国王なんだから多少なりとも外の世界を知っとくのもいいしな。
四十も半ばを過ぎてからやっとできた跡継ぎにはさすがのラウンドも溺愛しちまうのか?」
「ドラグノフの動向も気になる昨今、世継ぎが行方知れずというのは国が傾く恐れになるとは思わぬのか!?
儂もどれだけ生きておれるか分からぬ、奴には一刻も早く帝王学や政治学を学んで貰わねばならん!」
443†チェカッサ† ◆7h50UVLF.w :2006/06/23(金) 07:49:01
ゴンゾウは小さくため息をつく。
「王が兵を率いる時代はもう終わった、てか。四英雄たる御先祖様が泣くぜ?」
「…それが儂のやり方じゃ。儂の代になってからは領土を拡大せず、国の発展を目指してきた。
無駄な領土欲は身を滅ぼす。ただ国を、民を富ますのが永劫なる平和へと道筋じゃと思わぬか?」
「相変わらずの甘ちゃんだな、ラウンドはよ。それが自分の首を絞めることにならんようにな」
「…せめて公の場ぐらいは陛下と呼べ。他の者に示しがつかん。得物も持ち込むなと毎回言っとるじゃろうが」
そして王は立ち上がり、命令する。声高に、よく通る声で。
「王子捜索隊の人員を増やせ!報奨金も与える、草の根分けてでも探し出せ!」
隣でそれを聞いているゴンゾウは目を細くしながら口を開く。
「諦めの悪い陛下サマにヒントをやるよ。ライランスってのが気に入らなかった俺が、あいつに付けた名前があってな。
おそらくあいつは便宜上その名を使って行動してるだろう。――チェカッサ、とな」
〜〜〜

舞台は戻る。
「…刀の修行をするはずが、気がつけばピエロのようなことをしている…だけです」
「それだけか?」
「です」
Dには自分の素性を明かすわけには行かない。置かれた環境があまりに違いすぎて。
幸福の絶頂に生まれてきた己と。
不幸の運命に苛まれてきたDと。
その差は歴然としすぎていて。明かすことを、憚られる。
――何故、幸せというものはこうも不平等なものなのだろうか?
答えられる者など誰もいない。
思考停止した愚か者は言う、全ては運命だと。決まっていることだと。そこには諦念もある。
完成し終えた作品には、道具も何ももう訪れてはくれないのか。

「…そろそろお昼です。お腹空いてないですか?」
しばしの無言の後チェカッサが切り出す。すでに裏路地は抜け、人通りは多い。
「お金はあるですし、適当に何か食べるです」
Dの返事も聞かず、近くの店に入ってみる。
444☆ ◆QWE7YBXRW2 :2006/06/23(金) 08:21:44
「ではDさんは、無事に神殿へ戻られたのですね?」
「ええ、今はお連れさんと出かけているようですが・・・」
紅を差した口元が花のようにほころぶ。
それを聞いた娘は、心底ほっとした様子を見せた。
品の良い彼女が、何故一介の冒険者を気にかけるのか司祭には理解できなかった。

「そう遠くは言っていないと思いますが・・・お帰りを待たないんで?」
「ええ。急な用事で故郷に帰らねばなりません。残念ですが・・・」
「わかりました。ではこれをDさんか、そのお連れさんに渡せばよろしいんですね?」
「ええ、どうかよろしくお願いします」
珍しいデザインのローブを纏った娘は、古びた鞄と心づけを司祭に預け、丁寧に頭を下げた。
結い上げた髪に挿した金の髪飾りが涼やかな音を立てる。

何人かの連れのものと共に、娘は馬車に乗り込み走り去った。

「・・・あの娘、Dさんとやらを担ぎ込んだバニーガールと似てませんでしたか?」
司祭見習いの一人が、荷物を渡された司祭に問うた。
司祭は顔を顰めて見習いをたしなめた。
「滅多な事を言うもんじゃありません。あの衣装を纏えるのは誰でしたか?」
「たしか・・・古き民の高位巫女かと」
「わかっているならよろしい。
ではDさんが戻ってきたら、あなたが責任を持って渡すのですよ」
司祭は司祭見習いに預かった荷物を手渡した。
「めんどくさいなあ・・・」
見習いはそうぼやくと、仕事をこなすため神殿の中へと姿を消した。

預けられた荷物の中に、世界を破壊へと導くメダルが入っていることなど・・・・見習いは知る由も無かった。
445☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/23(金) 10:33:00
マスコットの紐に指を通してくるくる回す。けっこー可愛いじゃん。
「その微妙なものしまってくれ…。まさかとは思うけどさ…」
「え?何?」
「パルスって俺より年上ってことは……」
「そうだよ。少なくとも50歳はこえてる」
「はうあっ!?」
あっさりと答えたら驚かれた。どう見てもヒロキさんの方が年上ではないもんね。
「きっともうボケがきてるんだよ〜、あはは。半世紀より前なんて
記憶が抜けまくってて〜」
どっちかと言えば抜けまくっているというよりもほとんど覚えていないに近い。
何か大変なことを忘れているような、でも思い出してはいけないような。
「じゃあ天然じゃなくて……老人性だったのかっ!?」
「んー、両方?」
「勘弁してくれー」
ヒロキさんが飲食店のガラス張りの前で急に立ち止まる。
「お昼ご飯ならさっき食べたじゃん!やだなー、若いのにボケちゃったの?」
「じゃなくて…あれ!」

そこではピエロとDさんが仲良くお子様ランチを食べていた!!
「うわー、なぜにお子様ランチ!?」
「安いからだろ。って、突っ込むところそこじゃなくて……
きっと脅されて連れまわされてるんだ」
「そうか!あのピエロお子様ランチを一人で食べる勇気がないばっかりにDさんを…
うう……友達がいなかったんだね。ちょっと可哀想かも…」
「それはどうでもいいから…」

〜数分間の作戦会議後〜(三流芸人のコントの練習に見えたことは秘密)

「じゃあいくよ!【インビジリティ】!」
精神の精霊の働きで、自分の姿を通常の視覚では見えなくする霊法だ。
「うわ、本当に消えた…」
「Dさんを頼むよっ」

ヒロキさんが普通の客の振りをしてDさんの後ろにスタンバイしたのを確認し
姿を消した僕は、ピエロの背後にに暗殺者のように忍び寄る。
Dさんを誑かした悪いやつはわき腹こちょこちょの餌食になるがいいー!!
446☆ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/06/23(金) 11:42:55
「ぎゃははははは!!」
急に飲食店内に笑い声が響き渡る。
ピエロの格好をした男が急に爆笑していた。
「おいっ!どうしたんだ!」
俺の目の前にいる顔に傷のある青年…Dという名の男が
ピエロを不思議そうに伺う。
「あんたが…Dだよな?悪いが黙って外に来てくれ。
パルスからの伝言だ。」
急に話しかけ訝しげな顔をしたDだが、パルスの名を出すと少し落ち着く。
「じゃぁ、今ピエロを笑わせているのは…」
「パルスだ…。目的は俺に聞くなよ!?あいつは理解に苦しむんだ…」
少し頭を抱えながら恐らくパルスがいるであろう方向を見る。
「ぎゃははははは!死ぬ!これ以上は…ひぃぃ!」
相変わらずピエロは笑い続けていた…。
447†チェカッサ† ◆7h50UVLF.w :2006/06/24(土) 14:14:04
「何でお子様ランチなんだ?」
「一度食べてみたかったです」
「何で俺もお子様ランチなんだ?」
「一蓮托生です」
Dと二人で和気藹々とした食事。
…の、はずだった。

ふとチェカッサは背後に気配を感じる。本能的に刀の柄に手をかけようとしたが…一足遅く。
お昼時のピークを迎えた店内に、チェカッサの笑い声が絶えず響いていた。
(し…死ぬ…)
少し経てばもう呼吸困難だ。笑い死になど一番悔しい死に方と言っても遜色はないだろう。
振り向けど誰もいない。しかし間違いなく感じる気配とこのわき腹を弄くる何者かの指先。
笑いすぎて涙すら零れてきた。頼みのDは誰かと話していて、助けてくれそうにない。
必死の思いで左手を動かす。自衛のために、右腰に差さっているだろう、刀を求めて。
そして、チェカッサの手が刀の柄にかかり、チェカッサの顔から笑みが消え、笑い声が消えた。

即座に振り向き、姿は見えないが…気配に向けて。
居合いのち一閃。垂直に、刃を振り下ろした。
448†D† ◆9.MISTRAL. :2006/06/24(土) 16:42:32
テーブルに運ばれて来た料理を見て、俺は意識が飛びそうになった。
「一蓮托生です」
マジかよ…俺の外見と実年齢知ってるだろ?
俺さ、初めてだよ『お子様ランチ』なんて食うの。いやホントに。
(……この旗は取っていいのか?)
チェカッサを見ると、器用に周りから食べていて、旗はピラフの山頂に健在だった。
(なるほど、そうやって食うのか…旗を倒したら負けなんだな、よし!)
俺もチェカッサに負けじと、スプーンに手を延ばした時、背後に気配を感じた。

「ぎゃははははは!!」
突如として飲食店内に笑い声が響き渡る。チェカッサが急に爆笑し始めたからだ。
「おいっ!どうしたんだ!?」
「あんたが…Dだよな?悪いが黙って外に来てくれ。パルスからの伝言だ。」
「じゃぁ、今チェカッサを笑わせているのは…」
「パルスだ…目的は俺に聞くなよ?あいつは理解に苦しむんだ…」
そうか、アレはパルスの仕業か…全く何やってんだアイツは!
「ぎゃはははは!死ぬ!これ以上は…ひぃぃッ!!!」
相変わらずチェカッサは笑い続けていた…が、その笑い声がフッと止んだ。
ヤバイ、コイツもある意味問題児だ、早いとこ止めないと可哀相なエルフの死体が出来上がる。

「おいチェカッ…サーッ!?」
遅かった!神速の一閃が、霊法で透明になっているパルスへと向けて放たれる。
その瞬間、信じられない出来事が起きた。
俺の頬を掠めるようにして風切り音が通り抜け、チェカッサの刀が弾いたのだ。
「抜くのが“早い”なピエロ。でも…俺はもっと“速い”ぜ?」
そう言って銃を構えるのは、背後の奴だった。

銃、古代魔法文明の遺産。使い手の精神力を矢のように発射する射撃武器。
実物を見るのは初めてではなかったが、そうそう見掛けるシロモノじゃあない。
パルスの奴、ま〜た問題児を増やしやがったな……ちくしょう!!


「脇腹コチョコチョは反則なのです」
憮然とした顔で、デザートのメロンシャーベットをぱくつくチェカッサ。
「全くだ、今回のはお前が悪いぞパルス」
「だって……その…えと……」
俺が叱るとパルスはショボンとうなだれた。
あれからメダリオンを取り戻した俺が死ぬ気で止めたからよかったものの、下手すりゃ大惨事だった。
だが、これでようやく準備が整った。後は、力が戻るのを待つだけだ。
449☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/25(日) 21:53:39
へへっ、笑いこけてやんの! 僕は勝利を確信した。
そろそろやめてあげようかなっと思ったその時!
目の前で銀光が閃き、頭上を衝撃波が通り抜ける!
次の瞬間、ピエロが驚いた表情で刀を見つめる。
「…だれです!?」
もしかして真っ二つにされるとこだった!?刀が抜かれた事さえ気が付かなかった。
銃を構えるヒロキさんは、ツッコミ役に終始していた時とは大違いで。
>「抜くのが“早い”なピエロ。でも…俺はもっと“速い”ぜ?」
そして眼鏡を外し、不敵な笑みを浮かべる。
「ならどっちが速いか勝負するです!」
チェカッサというらしいピエロがどこか楽しそうに斬りかかる!
かくして、飲食店内はコロシアムとなった。
せっかく痛くない方法で片付けようと思ったのに…。
「やーめーろー!!」
Dさんが叫びまくっているが聞こえていない。
僕は急いで二人から離れたよ、もちろん。だってあんなとこに入ったら一瞬で死ぬもん。

あっという間に二人の周りには人だかりができ、
「兄ちゃんかっくいー!」
「ピエロもがんばれ!」
などと言っている。新種の客引きだとでも思っているらしい。

「パルスっ、なんとかしてくれ!」
「えーと、【シュートアロー】!」
とりあえず早く終わらせようと思い机の横に置いてあるフォークやナイフを
ピエロに向かって打つ!
「煽ってどーする!?言っとくけどあいつ誘拐犯じゃないぞ!」
「それを早く言ってよ!じゃあ…【バインディング】!」
とりあえず二人とも蔓で絡めちゃえー!
窓の横に置いてある観葉植物から蔓がうにょうにょ
伸びるのはかなり異様だけど気にしない!
しかし二人が静かになる様子も無く…。それどころかさらに激化したかも。
「もういいから大人しくしといてくれ」
そう言ってDさんは激戦の中に飛び込んでいった。
そして気付く。メダリオンを取り返されたことに。
そーか、霊法を発動する一瞬の隙に掠め取ったんだな!さっすが本職エクスプローラー!
450☆ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/06/26(月) 01:43:00
パルスに笑わされていたピエロ…Dが呼ぶにはチェカッサは、
身をくねらせながら右腰の得物に手を伸ばし、
姿の見え無いパルスへと切りかかるのが見えた。
それは一つの直感。銃士の弾道を追う目による『観の目』…
客観、外観など全体を見る動態視力の発達によるものだ。

――パルスが…危ない!

咄嗟に左手に銃を構え、チェカッサの刀の軌道上へと弾を撃つ。
銃弾の当たった刀はパルスから逸れたはずだ。
「だれです!?」
軌道の逸らされた刀を見ながらチェカッサが問う。
「抜くのが“早い”なピエロ。でも…俺はもっと“速い”ぜ?」
眼鏡を外しながらチェカッサに銃を向け直す。
チェカッサは驚きながら刀を見、視線をゆっくりと俺の方へ移し
「ならどっちが早いか勝負するです!」
楽しそうに言いながらチェカッサは刀を構え襲いかかって来た。
451☆ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/06/26(月) 01:53:10
飲食店内には他の客も多数いて、下手に銃を撃てば跳弾が当たりかねない。
だがチェカッサは刀を普通に振り抜く。
「ちっ!」
右腰の短刀で刀を止めようとする…が、
居合いというスピード+威力に、体ごと横に飛ぶ。
「やーめーろー!」
Dが叫んだ気がした。だが気にしている余裕が無い。
いつの間にか、チェカッサと俺の周りには人だかりが出来ている。

――余計に銃が撃ちにくいわー!!

声にならない悲鳴をあげながらも右手の短刀で切りかかる。
「【シュートアロー】」
パルスの声と共にナイフやフォークがチェカッサへ飛んでいく。
だが、俺の攻撃もパルスの攻撃も全てはじき返す。

――やっぱ…銃撃てなきゃダメだ…。撃つしか無い…!!
452☆ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/06/26(月) 02:11:54
左手の銃に精神力を集めながら、チェカッサの斬撃を短刀で止める。
「本当の“速さ”を…しっかりその体で…感じな!!」
とチェカッサの左腕に向け銃の引き金を引いた…はずだった。
だが「【バインディング】」という声と共にうようよと蔓が大量に延びて来る。
巻き付かれない様にチェカッサを狙っていた銃の照準を蔓へと変え、撃つ。
チェカッサはいつの間にか短刀から刀を外し、向かって来る蔓を切り倒す。
周りにいた客は散り散りに逃げ出したり隠れたりしていた。
「ほらっ!こっちです!」…声と同時に刃が俺の目前をかする。
蔓を切る勢いそのままに、俺に攻撃を放つチェカッサ…
「ちっ…これなら…!」
チェカッサへ銃を撃つが蔓が邪魔をして当たらない。

「お前等…いい加減にしやがれ!」
ゴンッという衝撃と共に銃と短刀が手から離れる。チェカッサの手からは刀が。
「いたた…」
「痛いです…!」
後頭部を擦る俺とチェカッサ。するといつの間にか俺とチェカッサの武器を持ったDが目の前に座っていた。
453店長&店員 ◆iK.u15.ezs :2006/06/27(火) 22:13:44
「店長、怪しい4人組が暴れたお陰で店内めちゃめちゃです!
その上他の客がどさくさにまぎれて金払わずに帰ってしまいました!」
「暴れようと何しようとお客様は神様です!
メロンシャーベットにワサビたっぷり入れてサービスで4つ持っていって差し上げなさい!」
「了解!」
454☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/30(金) 09:27:42
眼前で常人には付いていけない世界が展開される!
風切り音が2・3回鳴り響いたかと思うと、二人の危ない玩具を取り上げたDさんが座っていた。
「お前らいい加減にしろ!今日は記念すべき初お子様ランチなんだからな」
縦に真っ二つに切られたフォークが床に散らばる中、奇跡的に無事だったお子様ランチを食べ始める。

店員がメロンシャーベットを持ってきて嫌味たっぷりな笑顔を浮かべる。
「元気のいい息子さんたちですね♪」
「違うわーーっ!!」

ご愁傷様です…。お子様ランチに刺さっている旗をとってみる。
クラーリア王国の国旗だ。今王子が行方不明とウワサが流れているが。
「あーっ、何取ってんだ!?」
なぜかDさんがただ事では無い表情でこっちを見る。
「旗だけど…どうしたの?」
「旗とったらいけないんだ!!」
「そうです!その素晴らしい旗はとったらいけないのです!」
なぜかチェカッサ君まで一緒になって。
「脇腹コチョコチョは反則なのです」
「全くだ、今回のはお前が悪いぞパルス」
ええ〜っ!? 意味わかんないよ!!

メロンシャーベット食べようそうしよう。
「―――――――ッ!!」
付き刺すような刺激が鼻の奥を直撃する!!
「このシャーベットスースーして美味しいです。…あれ?どうしたです?
叱られたから泣いてるです?」
「いや、…この香りは…ワサビ入りだな」

その時!通りの向こうのほうから悲鳴が響いてきた!
「何だ…?」
続いて、人間の物とは思えない唸り声が…。
「……ヤバイ、お前らっ、逃げるぞ!!」

ガッシャーン!!
ガラス張りが粉々に砕け散り、真っ黒い顔をした生物が乱入してきた!
その両手には無数のダーツ、いや、よく見るとダーツではない!
「ついに見つけましたよ、安心してください、殺しはしません!
ただこのカラーペンで落書きをしてあげるだけです!」
それは色とりどりのカラーペン。怖いよ〜!!意味わかんないけど怖いよ〜!!
「「「「ひえええええっ!?」」」」
一目散に逃げ出したことは言うまでもない。

「店長―っ!大変です!」「落ち着きなさい、お客様は神……」
固まる店長。
「逃げましょう!今すぐ!!」「はいっ!!」
>そして誰もいなくなった。
455☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/06/30(金) 10:28:31
神殿の庭に佇む娘が一人。
「はあ〜」
見習い神官はうんざりしていた。金欲にまみれ腐りきった神殿。
裏では賄賂が飛び交い、日夜権力争いが繰り広げられる白い巨塔。
「アリア様がこのザマを見たら泣くだろうな……、もうこんなとこ辞めてやろうか。
それにしてもDさんとやらはどこいったかな〜」
変わったローブを着た娘から預かったものをDに渡すことを頼まれたのだ。
嫌な上司の命令だが仕方が無い。
「む!?」
ふと、何かを察知する。通りの向こうから響いてくる地響き。そして禍々しいオーラ。
「神の助けを必要としている者がいる!」

「「「「うわああああああっ!!」」」」
もうダメだ。諦めて落書きされようか。そもそも何でこんなことになったの!?
ずべしゃあっ!!石に躓いて見事に転ぶ。
「みんな……行って!落書きされるから!」
「バカなことをいうな!!」
「そうです!ただでさえ面白いのに…笑い死にさせる気ですか!?」
真っ黒な顔の何かが近づいてくる!!
「ついに覚悟を決めましたか……」
もういいよ、どうにでもなれ!!
「お待ちなさい!」
他の3人の誰でもない、凛とした声が響く!それも上から。
白いローブの裾をはためかせた人物が、
身長よりも高い神殿の塀をひらりと飛び越えた勢いそのままに
澄んだ音を響かせて美しい装飾のついた長い杖を振り下ろすのが見えた!
「はっ!!」
「邪魔ですね…。あなたから落書きしてあげましょう!」
そう言いながら杖を両手で受け止める真っ黒な生物。

「信じられねえ…エドと互角にやりあってるぞ…」
あの真っ黒なのエドさんだったの!?うっそお。

「神よ、この者の心に安らぎを!!」
不思議な響きの呪文が紡がれる。神官が使う魔法〈奇跡〉だ。
〈奇跡〉をかけられた真っ黒なエドさんは、さっきとは打って変わって大人しくなった。
「ん…D? 私は何を…?」
「あなたは顔を洗ってくるといいですよ。それからDさん、貴方たちに渡すものがあります」
そう言って彼女が取り出したのは、ジーナちゃんの鞄だった…。
456名無しになりきれ:2006/06/30(金) 21:24:34
良スレ復興期待age
457名無しになりきれ:2006/06/30(金) 21:53:27
>>456
ギガワロスwww
458☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/07/02(日) 00:25:32
「………ぷっ」
鞄を渡そうとした見習い神官が僕の方をまじまじと見て
笑いが堪えきれないという感じで吹き出す。
「何その触角ギガワロスwww 」
ぎがわろす?ぎがわろすってなんだろう。
「失礼しました。……超イケてるという意味です。つい方言が出てしまいました」
「本当!?イケてる?これ一昔前にエルフ霊法師の間で大ブレイクしたんだよ。
精霊の声がよく聞こえるようになるって」

後ろでDさんとチェカッサ君がなんか話している。
「…本当ですか?デーさん」「いや…そんなワケない」
そりゃDさんがエルフ界の実情を知ってるわけ無いもんね。
ハーフエルフは人間世界にしかいないはずだ。多分。

見習い神官は大ウケしてのってきた。
「へえ、エルフ社会って面白いですね。もっと聞かせてください」
「そうだなー、確か1000年ぐらい前の長老の趣味がバスケだったんだけどー…
鼻毛に覆われて滅びかけてバレーボールの時代が始まったの」

「…あれは本当ですか?デーさん」「いや…そんなワケない」

「それから排球の森って呼ばれるようになったんだ」
「なるほど」
「その後最強のバレーボールチームとして何度も世界の頂点に立った。
その時の3つのサイン付きバレーボールを祭ってたんだけど
悪質なファンに盗まれちゃったってわけ」

「もはや意味不明だ…」「相当ボケてるな……」「ですねー」

ツボにはまったらしく大爆笑した見習い神官は自分の故郷のことを話し始めた。
「私の故郷では一人称が“もれ”と言いましてー、“黄鯛揚げ”という特産物が…」
数分後。
「…いけませんね。こんな無駄話をせずにこれを渡さなければ」
今度こそ、見習い神官はジーナちゃんの鞄を差し出した。
突然だけどここはメロメーロ操術学院。
世界が崖っぷちなことなど知ったこっちゃ無く、普通に授業をやっている。

キーンコーンカーンコーン。
「はい、授業始めますよー、教科書110ページ開いて。今日は311年前の龍人戦争についてですー」

「龍人戦争はー、異界から召喚された魔神との戦いですねー。
アーダって人が召喚したんですね、こーだじゃないです、アーダです」
「・・・・・・・・・」
教室は寒い空気に包まれた。
「ははっ、滑ってしまいました。いけませんねー。気を取り直して…
それを倒したのが4英雄です」
「まずバルダとオリビア。この二人が後のクラーリア王国を建国しました。
オリビアは龍人でありながらバルダの妻になったんです。
それはそれは鬼嫁でバルダは苦労したそうですが……」
生徒の“それはお前だろ”的な視線が教師にそそがれる。
「なんですか? 先生の妻は鬼嫁じゃないですよ。お小遣い無いですけど」
気まずい沈黙が流れる。
「次行きましょう。エルフの長、モーラッドです。自らに魔神封印して自殺というロマン戦法で有名です。
ちなみにそれから後エルフ界はグダグダだそうです。いけませんねー、後先考えずにロマン戦法すると」
一同大爆笑。
「ロマン戦法マジウケるし!」
「あ、そこは笑うとこじゃないですよ。笑うところは次です。司祭にして楽士アリア。
超美女だったそうですね。彼女が持っていた魔法のハープは
代々超美女を轢き手として選んでいるそうです。スケベですね♪」
生徒の“それはお前だろ”的な視線が教師にそそがれる。
「なんですか!? その目は! そりゃ美女は好きですけど!」

衝撃!一般に知られている歴史はこんなのだった!
メロメーロ操術学院教養課程3年B組歴史の時間をお送りしました。
460買い物風景 ◆iK.u15.ezs :2006/07/02(日) 23:21:23
「ほら、さっさと歩きな」
「お、重い…」
真紅の服をきた娘が大量の荷物を抱えたハインツェルを引き連れて歩いていた。
道行く命知らずが娘に声をかける。
「よお、姉ちゃん、俺とお茶しない?」
バキィッ!
次の瞬間、強烈な肘鉄を喰らい、哀れなナンパ師は倒れ伏していた。
「これで5人目ですね…」
「けっ、軽々しく声かけるのが悪いんだっての!鬱陶しいったらありゃしない!」
声を荒げて捨て台詞を投げる。
「ま、まあ仕方ないですよ。
だって最初見たときは綺麗だからモデルかなにかかと…!?」
「なんか言った!?」
娘はハインツェルの顔面にパンチを繰り出した!
「いや、その…」
しかしその拳は寸止めされていた。満更でもない様子だ。
「殴りゃあしないよ。…そういうのも悪くないかな」
「え?」
娘は寂しげな笑みを浮かべる。真紅の髪が風に揺れる。
「でも…戻れない。アタシはもう普通の人間じゃないんだ」
「…?」
不思議な人…、どういう事だろう…、ハインツェルにはその真意が分かるはずも無く。

「……おっと、今聞いたことは忘れないと…殺すぞ?」
「は、はいっ!」
さっきまでの表情はすっかり消えている。
「はい、荷物追加。キリキリ歩けよ!」

「見た目は綺麗なのに……はあ」
ハインツェルはこっそり呟いた。
461☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/07/03(月) 09:49:25
「古き民の高位巫女のローブを着た娘から、Dさんに渡すようにということです。
故郷に帰らなければいけなくなったようで連れのものを引き連れて去っていきました」
見習い神官は衝撃的なことを告げた。
「え――――――ッ!? どういうこと!?」
「何だって!? それだったらバニーガールの格好して酒場で働くか!?
…それにエルフと龍人は犬猿の仲だぞ!?」
「でも……勝手に人間だと思ってたけど人間だとも言わなかったよね」
「冷静に考えたらあの怪力は人間じゃないよな」
「それに見た目たったの20歳ぐらいなのに有り得ないほど度胸が据わってたし……」
「「・・・・・・・・・」」
462名無しになりきれ:2006/07/03(月) 14:22:41
「そういえばジーナちゃんのカバンって、下着が一杯詰まってたんだよね」
ちなみに、カバンを受け取る人間は全員男だ。
皆の視線を浴びて、Dはじりじりと後ずさりする。
「お、おれは絶対にごめんだからな!パルス、お前が開けてくれ!」
「えー!!」
463ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/07/03(月) 21:32:13
「ところで…話の腰を折って悪いが…ジーナって誰なんだ?」
「あぁ〜、ヒロキさんはジーナちゃんを知らないんだね〜
ジーナちゃんは、力自慢のバニーガールなんだよ。」
…どんなバニーガールなんだ?頭の中で筋肉マッチョな男がバニーガールの服装を着た姿を考える。
「うわぁ…こわっ…」
「怖くないよ?とっても優しい人なんだから〜!」

「優しいマッチョなバニーガール…
ぎゃははは…!」
頭の中の想像が限界を越えた。面白すぎる!会ってみたい!だが…手遅れな事を気付くのに時間はかからなかった。「故郷…か。惜しいな…会いたかった。」
「残念だったな。多分お前となら気もあっただろうに…

Dは俺に呟きながら鞄を受け取った。
「ジーナちゃんの鞄って下着がいっぱい詰まってたんだよね」
パルスが突拍子も無くそんな事を言い出す。
「パルス…任せた…」
「パルス、お前が開けてくれ!」
Dと同じ様に後退りをする。
「なぁんて、さすがに人に預けるのにジーナちゃんが下着を入れっ放しな訳無いよ〜」
冗談っぽく舌を出し笑うパルス。
「なんだ…良かった…」
マッチョなバニーガールの下着は見たくなかった俺は、本気で安堵し胸を撫で下ろした。
464☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/07/04(火) 00:18:15
鞄の中には一切れの紙と小さい包みと水流のメダリオンが入っていた。

――短い間だったけどみんなと旅が出来て楽しかったよ。
パルス君、お腹がすいたからってなんでも食べちゃダメよ。
レーテちゃん、美人さんなんだからくれぐれも気をつけてね。
それからD!あんまり一人で抱え込むんじゃないのよ。
いい物入れといたから元気出してねv――

“Dへ”と書かれた小さい包みを渡す。
「これDさんにプレゼントみたいだよ」
「何だ?」
それから水流のメダリオンを取り出すと、チェカッサ君が後ずさりする。
「うわぁ、また別のメダリオンですか……よく触る気になるですね」
「メダリオン!? なんでそんな物が入ってるんだ?」
「ちょっと前にジーナちゃんとレーテさんと僕で精霊獣倒したの。
ジーナちゃんね、すごく強いんだよ。いつも明るくてさ、
弱音吐いたことないしどんな相手にも一歩も引かずに立ち向かうんだ」
ヒロキさんがDさんの方を心配そうに見る。
「パルス……それはいいんだが…Dが……」
きづくとDさんは紐のようなもの片手にガクブル震えていた。
「…粋な計らいしてくれる、…全く!」
465楽士ユニット ◆iK.u15.ezs :2006/07/04(火) 09:33:43
「はい、でーきたっ。これで完璧よ」
レベッカは工具のようなものをくるりと回して鞄に収めた。
「ありがとうございます」
「なに言ってんの。これを調律するなんてこれ以上名誉なことは無いんだから」
「そ、そうですか?」
「そうだよ〜。『アーシェラの瞳』一番目の作品にして4英雄の一人
アリア様が持っていた伝説のハープ。天性の才能を持つ超美女だけが
弾くことを許される……」
「あの……私、男ですけど」
レベッカは悪戯っぽく笑って続ける。
「黄昏・常闇・暁……。他の二つを持ってるのはどんな人なんだろう。
文献によると常闇はダブルホールリュートなんだって。
しーかーもー呪いのリュート。あーあ、一回でいいから見てみたいな。
きっと弾き手はレーテさん並みの美人なんだろうなー」
レーテは顔を赤らめて黄昏の瞳を背負い直した。
「Dさん探しましょう」
「はーいっ♪」
見習い神官は辞表を書いていた。決め手は変なエルフの
「君って大人しく組織に収まってるようなタイプじゃないよねー」
という一言。
―じひょう。ぼうけんしゃになろうとおもうのでやめます―
「これでおk!まってろ神官長、今渡しにいくぞー」

意気揚々と階段を下りようとして、異変に気付く。
泣き叫ぶ女性の声が階下から響いてくる。
「倅を……倅をっ!!ううっうあああ!!」
駆けつけてみると、言い表せないほど酷い重傷人が運び込まれていた。
いや、重傷……というよりすでに死んでいる。
それに対し、神官長は淡々と事務的に対応する。
「これだと蘇生の儀式になりますので100万Gikoになりますが…」
「はい、助けてくれるのならどんな事をしてでも払います!」
一般庶民に到底払えるようには額ではないのだが。
見習い神官は女性の前に進み出ていった。
「わたくしにやらせてください」
神官長は案の定、彼女を嗜めた。
「あなたは見習いでしょう、勝手な事をするんじゃ…はがっ!」
その言葉の終わらないうちに、見習い神官の超速の杖攻撃が神官長に炸裂する!
予想外の出来事に呆然としている女性を尻目に、神に〈奇跡〉を乞う。

「これで大丈夫です。一週間ほど安静にさせといてください。10ギコになります」
ちゃっかりお金を請求してるところがさすがキヌド神官。
「ああ……たったのそれだけでいいんですか?ありがとうございます……」
女性は何度も頭を下げ息子を引きずって帰っていった。

神官長が起き上がって叫ぶ。
「なんて事をしてくれるのですか!? タダ同然で帰すなんて。
がっぽり金を巻き上げろと上からお達しが…」
見習い神官は足をばんっと机の上に乗せて言い返す!
「黙れ、腐れボーズ! 売買は繋がりなんだよ、ぼったくりには天罰が下るんだ、
忘れたのか!?」
「……上司に向かってなんて口をきくのですか!? クビ! 今すぐクビ!」
「望むところだ!調度辞めようと思ってたんだよ!」
辞表を取り出して叩きつけ、颯爽と振り向いて扉から出て行った。

この後の彼女はまた別のお話かもしれないし再登場するかもしれない。
467名無しになりきれ:2006/07/04(火) 22:48:38
あげ
468名無しになりきれ:2006/07/05(水) 15:42:46
この神官は後にネコミミを装着して、世界を救う英雄の1人となる。

そう、伝説のネコミミ神官リオンの旅立ちである。
469☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/07/05(水) 23:13:54
Dさんは刺激的過ぎるプレゼントのせいで気絶してしまった。
「デーさん、今度はどうしたですか?」
チェッカッサ君がDさんの耳を引っ張ろうとする。
「あ、耳はやめて!痛いから」
「じゃあ貴方で試してみるです。えいっ」
と、唐突に耳を引っ張ってきた!
「ぎゃー!」
今痛いからって言ったでしょー!? 聞こえてないの!?
「…本物だったですか。てっきりつけ耳かと思ったです」
「えー!? なんで!?」
「だってエルフにしては昔のことを知らなすぎるです。デーさんからいろいろ聞いたですよ。
本当の歴史も……メダリオンの真実も……信じたくないような話でしたけど」
「ああ、あれね、メダリオンって108個あって全部集めると
世界のどこかにあるメダリオン協会から記念品がもらえるという伝説が
……どうしたの?」
チェカッサ君は腕組みをして考え込んでいた。
「むぅ……よく考えるとデーさんが言ってたのも信じられないような話でしたし…
案外こっちが本当ってことも……というかできればこっちの方がいいですねー…」
「Dからどんな話を聞いたんだ?」
ヒロキさんがチェカッサ君に尋ねた。
「…………」
意味ありげな沈黙の後。
「強烈だった事は確かなのですが…なにぶん長い話だったので忘れてしまったです」
「「忘れたんかい!」」
ヒロキさんと僕のダブルツッコミが炸裂した!
470異世界から来た魔王の娘:2006/07/06(木) 11:42:11
エクスプロージョン・ミサイル56発誤射しちゃいました!!
冒険者の皆さん気をつけてください〜♪死んじゃったら魂取っちゃいまーす♪

471名無しになりきれ:2006/07/06(木) 11:51:46
だが、魔王の娘は死んでしまった。
472異世界から来た魔王の娘:2006/07/06(木) 15:21:57
むぅ・・・失敗ロール・・・もう一回!!魂を一個消費して
爆炎の紅龍弾頭プロミネンス・レッドドラゴンミサイル459召喚!!!
逃げないとこの地域は、火の海になって魂だけになりますよ〜
473異世界から来た勇者の娘:2006/07/06(木) 15:37:06
そんなことさせるか!!!!!!!!!!!!!!!
魂を2個消費して水の龍姫クリスタル・プリンセス召喚!!
そしてパワーアップカード発動!!【神姫龍覚醒】1400以下の攻撃力の龍姫族は、
ハイパー進化し神聖雹晶龍クリスタル・ドラゴンプリンセスになり攻撃力は4500から34000へ
ビルドアップ!!いけーーーーーーーーーーー!!

【鋭雹オーロラ・フリーズ!!】

何もなイ上空から幾千もの巨大な雹が勢い良く落ちて赤き弾頭龍に絶大なダメージ!!!!!


474ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/07/06(木) 17:14:06
『オーロラ・フリーズ!!!』
俺は心の中でチェカッサに激しい突っ込みを食らわせる。

「そのぐらいしっかり…ブツブツ…」
「ヒロキさん?どうしたの?なんか目付きが怖いよ〜」
いきなり意識を現実に引き戻された。妄想の中でのど突き漫才がうやむやになった。
「…いや、ただどんな事を言っていたのか…俺なりに考えていただけさ。」
「そう…?ならいいんだけどね♪」
「なんか独り言を言ってて怖かった…ひぃ!!ごめんです!!」
チェカッサが余計な事を言いかけたのをこの世の物とは思えない程の睨みで止める。
「分かればいいんだ…分かればな。
で…Dの話が気になる。メダリオンの事なら尚更な。水流のメダリオンの事もだ。」
今もまだニヤけ顔で気絶したままのDの方をみやる。
「…幸せそうだぜ。全く…。」
475☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/07/07(金) 00:36:53
気絶したDさんはすごく幸せそうな顔をしていて。
「あははっ、本当。…今は寝かせといてあげよう。
目が覚めたらまた闘いの中に飛び込んでいくだろうから」
頬の傷を見ているとなぜか胸が痛む。彼が背負う物の刻印のような気がして。
Dさんにそうっとシーツをかけた。ヒロキさんが訝しげに尋ねる。
「……どういう意味だ?」
「Dさんはすごく重いものを背負ってる、そんな気がするんだ。
能天気な僕には分からないものを」

「不思議です……。どうして普通ののん気な冒険者がDさんみたいな
只事ではない人とパーティー組んでるですか?」
「んー? 成り行き?」
そう。全ては成り行きだった。偶然フラーリンの酒場にいて
大した意味も無くDさんをひっつかんだジーナちゃんを追いかけて
なんとなく商隊の護衛を引き受けた。それだけの事。
「成り行き……また随分テキトーですね……」
「それじゃあこう言おうかな。銀の輪の女王アリアンロッドの導き」
「なんですか?それ」
それは時に優しく微笑む女神。そして時にどこまでも残酷な魔女…。
「伝説の中にだけ存在する運命の精霊の名前だよ」
476せふぃろO:2006/07/07(金) 18:20:57
メテオ
477ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/07/07(金) 21:01:38
「伝説や運命か…俺は信じない。」
パルスの言葉を聞き静かにそう答える。
「どうしてです?素晴らしいお話なのに」
「俺は自分で生きて自分の目で見る『物』を信じる…。
だからメダリオンを探してる…。自分の運命を変える為にな…」
「これまた大きく出ましたね…。なんか重いです」
「重いか…?
たった21年しか生きていない俺の人生に重いも何もあったもんじゃ無いんだがな」
自嘲気味に笑いながら天を仰ぐ。
「どんな過去があったですか?」
チェカッサがわくわく顔で俺を見つめる。何か面白い物を聞けそうな…そんな期待の目だ。
「はは…。今はまだ話す時じゃ無いんだと思う。
期待を裏切って悪いんだがな…そんなおいしい過去でも無いからな」
「ちぇっ…つまんないです」
「まぁまぁ、ヒロキさんがそぅ言うなら仕方ないじゃ無い」
ブーたれるチェカッサをパルスがなだめてくれる。まだまだ過去を話すには出会ってからの時間が浅い…そんな気がした。

「さて…これからどうしたものかな…。」
478☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/07/08(土) 23:53:28
>「さて…これからどうしたものかな…。」
唐突に。
窓がガラガラっと開いて兵士みたいな格好をした人たちがずかずかと入りこんできた!
開口一番。
「やっと見つけましたよ、王子様!」
その言葉に……どうして窓から入ってきたのかはどうでもよくなった。
ヒロキさんと顔を見合わせて同時に叫ぶ。
「ヒロキさんって王子様だったの!?」「パルスが王子!?」
そしてこれも同時。
「「んなワケあるかーッ!?」」
二人同時にボケてツッコむ上級技である。
それはおいといて、ヒロキさんじゃないってことは……。
「いやですー!離すですー!」
「いくらライランス様の命令だろうとそうはいきません。
国王陛下がたいそう心配していらっしゃいますよ」
チェカッサ君が大勢で縄でぐるぐる巻きにされ強引に連れ去られようとしていた。
これはひどい!
「王子だか何だか知らないけど嫌がってるじゃん! 離してあげなよ!」
霊法を紡ぐべく手を掲げる。
「何だ!? 無礼な奴だな」
ヒロキさんがナイフに手を掛ける。
「無礼なのはどっちだ?」
ちょっと驚かせてやろう、そうヒロキさんに目配せし、掲げた手を躍らせる。
「【コンフュー…
が、その呪文は大音量に遮られた!
「二 人 と も、や め る で す!!」
そりゃもう神殿中に響き渡ったんじゃないかと思うほど。
ヒロキさんは縄を切ろうとする寸前で固まっていた。
「「・・・・・・」」
「諦めて帰るです。あんまり騒ぎを起こすのはまずいです…」
すでに騒ぎになってる気がするのは気のせい?
「でも嬉しかったです。会ったばっかりなのにそこまでしてくれて。
デーさんによろしくです」
そして、捨て台詞を吐く兵士達に連れられて…窓から出ていく。
「本来なら牢屋にぶち込むところだがライランス様に免じて見逃してやる!」

ぱたんっと閉じた窓を見つめつつ、呆然と立ちすくむ。
Dさんは騒ぎをものともせず寝ていた。
「今のをどうDさんに説明しよう……」
「ああ……困ったな」
途方にくれる僕たちであった。
479☆ファム&ソーニャ ◆iK.u15.ezs :2006/07/09(日) 23:58:22
赤い髪の娘の前方から、毒々しい服装の美少女が歩いてきた。
ハインツェルがぎょっとして立ち止まった。
「ソーニャじゃーん、かわいい男の子連れちゃって〜♪」
ソーニャは聞こえよがしに舌打ちをし、ハインツェルの方に顔を向けて言う。
「行きな!」
「え……?」
「さっさと行きな!」
「はいっ!」
あまりの剣幕にハインツェルは一目散に走り去った。

「何の用だい?〔胡蝶〕」
小柄な少女、ファムを見下ろして睨み付ける。
「あのねー、ソーニャが狙ってたバニーちゃん〜、変装して逃げちゃったみたいだよ?」
ファムは無邪気な顔で笑いながら告げる。ソーニャは顔色を変えてファムに詰め寄った。
「何!? からかってるんじゃないだろうね!?」
「ううん? ホントだよお〜♪ 見たもんね」
「くそっ、あの兎女……。逃げやがるとは!」
「だから〜、サボっちゃいなよ」
「そうはいかないね。親父怒らせると怖いからな」
「それなら〜心配ないよお? だってえ、ソーニャのお父さんもう死んだもん」
ソーニャの表情が凍りつく。
「……今、なんと?」
「ソーニャのお父さんは死んだ。ファムが殺したの♪ 
蠍の爪はもういらないって言われたからあ」
「……貴様っ!」
目の前の少女につかみ掛かる。周囲の温度が上がり、陽炎が揺らめく。
「殺してやる……!」
ファムは相変わらず天使のように笑っていた。
「あーあ、泣いちゃったあ、よしよし♪」
背伸びしてソーニャに抱きつき、耳元でささやく。
「そんなことより〜最狂に楽しいパーティーの始まりだよ♪
ウフフっ、アハハハっ♪」
鳴り響く時計塔の鐘の音が5時を告げた。
480☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/07/10(月) 09:52:35
窓から西日が差し始めたころ。Dさんが目を覚ました。
「ん……? ここは何処だ?」
ちなみに禁断の紐は回収済みだ。誰が回収したかは気にしてはいけない。
「やーっとお目覚めか。幸せそうだったな。
ところで……メダリオンの事を聞きたいんだが」
ヒロキさんがシーツを引っぺがす。
「もう一度話すのは面倒だからチェカッサに聞いてくれ」
「それが……脱走した王子だったらしくて迎えがきて帰った」
Dさんはそれを聞いて頭を抱えた。
「聞き逃げかよ! しゃあねえ、長くなるけど寝るんじゃないぞ?
特にパルス! ……どうした?」

それどころではなかった。精霊が尋常ではなくざわめいている。
「気をつけて、何かが来る……!」
街には鐘の音が響き渡っていた……。
481鋼の雨:2006/07/11(火) 17:46:02
「さてと、時間ですねぇ…それじゃあ始めるとしますか」
そう言うとリゼルは壁に立て掛けていた大きな箱を開けた。中には奇妙な形の弩弓が収められている。
リゼルの背丈とほぼ同じ長さのそれは、明らかに異質な雰囲気を持ってそこに存在していた。
「遺産の力とやらを見せて貰いましょうかね、フフフ…楽しみですねぇ」
喜びに満ち足りた表情で、準備に取り掛かる。
「たくさん死ぬんだろうなぁ…あぁワクワクしてきた…この引き金を引けば、死ぬんだ」

程なくして準備が終わり、リゼルは弩弓を構える。
「さあ運べ、ライトニングデューク…1人でも多くの人に」
リゼルの周囲に紫電が駆ける。雷の精霊が我先にと集まって来て…それは放たれた。

弩弓から撃ち出されたのは、細長い箱のような物だった。
時計塔の頂上から発射され、空高くに駆け登る。そして、箱が爆音と共に弾けた。
数千万にも及ぶ鋼の雫が、死の雨となってメロメーロ市街に降り注いだ。

街は、一瞬にして地獄と化した。
482☆リッツ ◆F/GsQfjb4. :2006/07/11(火) 18:23:21
「うおおおおりゃあああぁぁっ!!!」
体中に力が漲ってくる、インフィニティ・キングの発動が完了して俺は一気に黒騎士に突撃した。
「今度は逃げンなよ!?もちろん、逃がさねぇけどなッ!!!」
「逃げる?私がか?理解できんな」
「あぁ!?テメェ忘れたってのかコラァ!!だったら思い出させてやるよ!!」
俺の拳が漆黒の甲冑にめり込み、鈍い金属音を響かせた。
「俺はリッツ、『砕く拳』のリッツだ!!!!」
「か…はッ…!?」
「テメェも!公国もッ!!俺の拳が砕いてやるッ!!!」
両手を大きく振りかぶり、俺は構える。
視界の隅に、ヒューアさんの姿が見えた。奴と何か話をしてるのか?まだ戦闘体勢に入っていない。
「考え事とは随分と余裕だな、“青年”」
「…ッ!?」
影から剣が飛び出して来た!?何だこりゃ!聞いてねぇぞ!!
咄嗟にかわしたが、アーマーの止め具を持って行かれた。あの攻撃に気付けなかったら…
多分、俺の首が飛んだだろうな。クソッ厄介な技使いやがって!!


あの青年は…何だ?私はあんな青年とは面識は無かった筈だ……?
いや…本当に……そうだっただろうか…
私は………何か大事な事を忘れてはいないだろうか…
解らない………何故だ…何故あの青年を見ると……


「要は影にさえ気をつけてりゃ問題ねぇよな!ハッ、だったら…コイツでどうだ!!」
両腕のガントレットが淡い輝きを放ち始める。
このガントレット、『ジェミニヴァイン』の真の姿を見せてやる!!
「吠えろ!アンヴィエント!!嘶け!スペキュラール!!」
起動の言葉と同時に、俺の両腕は光に変わった。光は更に輝きを増して周囲を照らす!
「影ができる方向が判れば、テメェの手品も通用しないぜ!黒騎士!!」
「成る程、考えたな青年。だが…これならどうかな?」
奴が剣を自分の影に突き立てた瞬間、影が形を変えて俺に向かって来る!
「『紅と蒼の双子』か…龍人の遺産を何処で手に入れたかは知らんが、無駄だ」
「うるせぇ!!月までブッ飛べ!!」

俺が叫んだ瞬間、爆発が起きた。
爆風に俺と黒騎士は吹き飛ばされて、アジトは半壊している。
砲撃!?まさか…公国軍が!?最悪だ…クソッタレ!!!
その時だった、街の時計塔が5時の鐘を鳴らしたのは………
483☆ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/07/11(火) 20:20:57
5時を示す…いつもより不気味な鐘の音を聞き嫌悪感を覚える。
「何かって…なん…!?」

――ガガガガガガガガッ…!!!!
『きゃぁぁぁぁ!!!』『たっ…助けてく…』『誰か…だっ…』
俺の言葉を遮ったのは屋根に当たる雨では無い…異質な音と悲鳴悲鳴悲鳴…
室内にいても分かる異様な街の空気。Dがメダリオンを持ち、叫ぶ。
「共鳴だ!しかも…異常な程強く禍々しい力による共鳴だ…。
パルス、ヒロキ!メダリオン保有者を探すぞ!止めなければ…この街は、この世界が終わる!」
「分かった!」「あぁ…分かった。」
Dの言葉が終わった瞬間二人の返事が同時に交錯する。
そして俺達三人は建物の出口へと走った…
484☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/07/12(水) 00:38:00
「精霊が……狂ってる」
気のせいであってほしい。でもその予感は当たってしまった。
>「何かって…なん…!?」
雷を宿した鋼の雨が降り注ぐ音、逃げ惑う人々の声、響き渡る断末魔の悲鳴。
手に持った水流のメダリオンが不気味に光っていた。
世界が終わるなんて……そんなの嫌だ!
僕たちは揺れる廊下を駆けた。上から降ってきた屋根の欠片が頬をかする。
「まずい!崩れるぞ!」
手を空間に躍らせ霊法陣を描く!
「シルフ、頼むよッ!【フライト】!!」
僕の声に応え周囲で風が渦を巻き始める。Dさんとヒロキさんを左右に掴み、
建物が崩れ去る瞬間、風に乗って飛ぶ!

背後で轟音が響く中、着地した場所は……
すでにほんの少し前までの街の風景は見る影もなくなっていた。
「ひどい……!」
「これは〔雷鳴〕のメダリオンの力だ。いつ次が来るか分かったもんじゃない…」
「雷鳴のメダリオンだって!?」
Dさんが説明するとヒロキさんの表情が変わった。
雷鳴のメダリオンがどうかしたんだろうか?
……その時。
美しい、それでいて不気味な歌がどこからとも無く聞こえてきた。
心が喰らわれていくような、生命が刈り取られるような歌。
「今度は何だ!?」
「呪歌……!? でもどこから…!?」
周りを見渡してみると生き残っていた人々が苦しみ始めていた。
歌い手の姿は見えない。
「まさか…〔夢幻〕のメダリオンまで……! こいつは思った以上にヤバイぞ!」
そう言うDさんの声には今まで聞いたことの無い焦りが滲み出ていた……。
485灼熱の獅子、吠える:2006/07/12(水) 04:37:26
――ファムは歌うのが大好きなのねぇ、ママはファムの歌が大好きよ
『ホントに?』
――えぇ本当よ、ママはいつもファムの歌から元気を貰ってるもの
『じゃあじゃあ、たっくさんうたったらぁ、ママもっともっとげんきになるぅ?』
――もちろんよ。さぁ、もっと聞かせて


「やな夢見ちゃった〜」
ファムはぐったりした体を起こして、周りを見る。
サントーレに向かう定期馬車の座席は、寝心地もそれなりで不満は無かったがファムの機嫌は最悪だった。
「おじさ〜ん♪まだ着かないの〜?」
「あぁお嬢ちゃん、もう少しかかるかなぁ」
「早く早く〜ぅ♪急がなきゃ殺しちゃうぞッ♪」
「うほっ、そりゃ怖い。それじゃあ飛ばすよぉ」
その1時間後、御者のおじさんは42歳の人生に幕を下ろし、ファムは御者台に座っていた。
「あ〜あ…遅れちゃうじゃん、もう!」
頬を桜色に染め、怒りをあらわにするが先程よりは随分ましになったようだ。

サントーレの街が見えてきた頃、街道を外れて森の中に入ると比較的大きな商隊がキャンプしていた。
ファムの目的地はこのキャンプだったのだ。
蠍の爪の本隊、この商人のキャンプこそがゼアド大陸南部に悪名を轟かせる山賊の隠れ蓑だった。
ファムがここに来た理由は、蠍の爪を『処理』する為。そして、彼女自身が欲望を満たす為に…
その時、虐殺が始まった。


――メロメーロ市街地
満面の笑みを浮かべている絶世の美少女と、その美少女を睨みつける深紅の髪の美女。
両者の間に殺気がぶつかり合い、その激しさ故に周囲の人々は戦慄する。

「あ〜あ♪ソーニャちゃん怒っちゃった〜♪アハハ♪」
「テメエは……殺すだけじゃ足りないね。あぁそうさ、全然足りない」
紅い髪の美女がそう言った途端、彼女の身体が業火に包まれた。
灼熱のメダリオン、コロナ・カリギュラが発動したのである。焔の魔人と化した美女は、その美貌を怒りに歪めた。
486悪夢の旋律 ◆iK.u15.ezs :2006/07/13(木) 00:44:48
はるか上空から落ちてくる無数の鋼の雷が街を廃墟へと変えてゆく。
「始まったあ♪」
絶世の美少女は、逃げ惑い死んでいく人々を見て心から楽しげな笑みを浮かべていた。
「ああ、アンタもああしてあげるよ!」
灼熱の美女の意思に呼応し、炎が地を走る!
「骨まで燃え尽きろ!」
少女の姿が、燃え盛る劫火の中に消えた!
その炎は、意味も無く父親を奪われた娘の怒りそのものだった。
どのぐらいの間そうしていたのだろう。
炎が消えた時、その場所には、何も残っていなかった。
「……ふん、あっさり死にやがって」
立ち去ろうとする美女に、背後から声をかける者がいた。
「ここにいるよ♪」
彼女が振り返ると、そこには何食わぬ顔で忌まわしい美少女が立っていた。
「!?」
右からも声がする。「こっちだよ?」そこにあるのも全く同じ姿。
左からも。「こっちこっち♪」
無数の同じ人物が現れては消える。
「驚いた?」「これが…」「夢幻のメダリオンだよお♪」

夢幻のメダリオンを使えば自らの幻影を作り出すなどたやすい事だ。
ファムは混乱するソーニャを観察しつつリュートを抱えた。
呪いのリュート、“常闇の瞳”を。
「夢のコンサートの始まりだよ♪」
ファムは、美しい狂気の旋律を奏で始めた。
その歌声は、悪夢の精霊によって街中に運ばれた…。
487名無しになりきれ:2006/07/13(木) 10:04:39
「きゃあああああ!」
まちのあちこちから今までとは違う種類の悲鳴が上がり始めた。
488ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/07/13(木) 18:30:07
「〔雷鳴〕のメダリオンの力だ。」
「雷鳴のメダリオンだって!?」
雷鳴のメダリオン…その言葉を聞いた瞬間、俺の胸がざわめき出す。
俺が追い求めていた…『力』が…自分のすぐ傍にある…。
だが、そんな事を考えている余裕は…すぐに無くなっていった。

『そんな…私…嫌…いやぁぁぁぁぁ…!!!』『違う…俺じゃ…な、い…ぎゃぁぁぁぁ!!』
美しい旋律、悲しい曲の流れ、そして…死を覚悟する程の苦しさの押し寄せる歌が聞こえる。
「呪歌……!?でもどこから…!?」
「まさか…〔夢幻〕のメダリオンまで…。こいつは思った以上にやばいぞ!」
明らかに顔に焦りの色が見えるD。
「おい…メダリオンが使われている場所を知る方法は無いのか…!?」
空には雷鳴が轟き、地には呪歌の地獄が踊る…こんな状況、メダリオンを詳しく知らない俺にでも危険だと容易に分かる。
「それを知ってどうする気だ?まさかお前…。」
「雷鳴のメダリオンを持ってる奴は…俺が止める。別に一人で行く気は無い…。
が、分散した方がいいのなら、俺は真っ先にそれを狙うだけだ。」
そぅ…雷鳴のメダリオンは…俺が求めた力だから。
489☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/07/14(金) 00:41:21
「雷鳴のメダリオンを持ってる奴は…俺が止める。別に一人で行く気は無い…。
が、分散した方がいいのなら、俺は真っ先にそれを狙うだけだ。」
その言葉に、只ならぬ決意を感じた。
――だからメダリオンを探してる…。自分の運命を変える為にな――
そうか、ヒロキさんが探してるのは雷鳴のメダリオンだったんだ。
メダリオンを持つものに、平穏は許されない。
保有者はメダリオンに支配されていく、ヒロキさんにはそうなってほしくない。
でも彼が適合者なんてことはまずないだろう。だから……
「あそこだよ、雷の精霊が集まってる!」
空高く聳え立つ時計塔を指差した。
「やめろといっても聞かないよな。しゃあねえ、お守りしてやるよ!」
駆け出す二人の背に向かって叫ぶ。
「また後でね、絶対だよ!」
絶対、生き残って! それは、自分に言い聞かせる言葉でもあった。
一刻も早くこの歌を止めなければいけない。
歌い手さえ見つかれば、霊法で声を封じる事ができるのだ。
まだ続いている【フライト】の効力で宙に浮かび、地面を滑空する。
僕は、再び風に乗った。向かう先は、忌まわしい悪夢の元凶!
490光の饗宴 ◆iK.u15.ezs :2006/07/14(金) 01:27:31
何も無い空間から、光が閃く!
Dは自分を狙ってきたかのような光線を間一髪で跳び退って避けた!
「なんだ!?」
辺りに神経を張り巡らす。
「お前の命を貰いに来た」
やはり何も無い空間から性別すらも特定できない、抑揚の無い声が聞こえる。
「ちくしょう! ヒロキのやつ、一人で行きやがったじゃねえか!」
「人の心配をしてる場合か?」
その言葉と同時に、無数の光線が閃く!
光線がDを追うように次々と地面を打ち、派手な音を立てて石畳が砕け散る!
「確かに、軽くヤバイな……!」
そう言いながらも、余裕の笑みを浮かべる。
「でもそんな手品は俺には通用しないぜ?」
Dがそう言うと同時に、地面から突風が巻き上がる!
辺りは砂埃に包まれた。

光輝のメダリオンの力の一つ。
光の進路を曲げることによって自らの姿を消していたのだ。
そこに無数の小さな粒子を巻き上げたらどうなるか。
光が乱反射を起こし、本来あるべきものが姿を現す。

「何をやっている?」
「気付いてないのか? 丸見えだ」
Dは風の刃を放った!
その先に立っているのは、漆黒のローブを着た人物だった。
「面白い……。貴様は殺しがいがありそうだ」
491†D† ◆9.MISTRAL. :2006/07/14(金) 08:58:58
「そりゃどうも、こっちもリハビリついでに軽く運動させて貰うか…」
身体中に力が溢れて来る。パルスが風を集めたって訳か…ありがとうよ!!
「そんじゃ、いくぜ!」
レクス・テンペストを発動させて、黒衣の男に突撃する。
周囲の風景が途端に速度を失い、時間が緩やかな流れに変わっていく。この領域で動けるのは、俺だけだ。

「…ん?何だこりゃ………って!?」
奴の周りに何かがチカチカ光っている。“それ”が何なのか、触れるまで分からなかった。
俺は弾き飛ばされ、近くの露店に突っ込む。と同時に、レクステンペストの持続時間が切れた。
「お前のメダリオンがどういう物かは知っている……お前は私に勝てない」
「あぁそうかい、ご丁寧なこった」
奴が身の回りに散布したのは、圧縮した光そのものだろうな…熱を伴う衝撃反応、ウィスプの原理か…
「パルス!ここは俺1人で十分だ、歌を止めに行け!」
「えぇっ!?そんな無茶だよ!Dさんの身体はまだ万全じゃな…」
「うるせー!コイツは俺を指名したんだ、俺だけで倒す。だからお前は急いで歌を止めに行くんだ!」
パルスはまだ迷ってやがる。心配してくれるのは有り難いんだがな…この状況はマズイ。
少しでも早く歌を止めねぇと、街の人間が皆発狂するぞ…
「Dさん、絶対に無理しちゃダメだからね!」
無理…か、ったくお前はどこまでお人よしなんだか。
「頼んだぞ…パルス」
駆けていくパルスの背中に向けて、小さく呟く。

さてと、ここからが本番だ。
どうやら奴は簡単には殺られてくれそうにないからな、“切り札”を切らせて貰うぜ?
492消えゆく黄昏 ◆K.km6SbAVw :2006/07/14(金) 10:58:43
「何!?何なのよーッ!?」
突如として降り注いだ死の雨に、為す術なく倒れ伏す民衆を見てレベッカが悲鳴を上げた。
成る程、《嘆きの雨》か…まさかアレがこの時代に遺されていたとはな。
我輩は気を取り直し、ボロボロに半壊した喫茶店の中を見渡してレーテの姿を捜した。
『レーテ!おい!しっかりするのだ馬鹿者が!!』
レーテの姿を発見したはいいが、酷い傷だ。
このままでは助からん…我輩が龍の力を使えれば、このような傷など瞬く間に癒すというのに!

「ねぇ…レーテさん…起きてよ…死んじゃダメだからね!ダメなんだから……」
血まみれのレーテを抱き抱え、泣き崩れるレベッカに我輩は声をかけてやれなかった。
どんな風に言ったら良いのか、解らないのだ。

忌ま忌ましい神々よ…貴様達の残した呪いで我輩は無力だ…
人間1人を救う事すら叶わぬ程に…
だが忌ま忌ましき神々よ、我輩は貴様らの力なぞに屈しはせんぞ!

『おい娘。“謌”は咏えるか?』
「……え?」
『お主も謌咏いならば、謌が何を意味するか知っていよう』
「謌…呪歌は本来、龍人達が空の龍に自らの願いを請う儀式…ですよね?」
『いかにも、その通りだ。なら話は早い!咏え娘よ!我輩に願え!!』
レベッカは我輩の言葉に、しばし茫然としていたが…やがて意志の強い瞳で頷いた。
493†D† ◆9.MISTRAL. :2006/07/14(金) 17:06:51
「切り札、だと?」
「あぁそうだ、最後の切り札だよ」
ヒロキも既に時計塔に向かって行った。つまり、今から俺が“やる事”を見るのは奴だけだ。
本当に最悪だ、まさかこんな時に使う事になるなんてな…
ユリウス兄さんを止める時まで取っておきたかったが、そんなに悠長な事を考えてる場合じゃなさそうだ。

《疾風のメダリオン》が鼓動する。俺が何をしようとしてるのかを感じたんだろう。
判ってるさフィーヴルム、テメェにくれてやるのはもうすぐだ。
そうがっつくなよ、ちっとは我慢しやがれ!

「では見せて貰おうか、その切り札とやらをな」
「もう“切った”んだが…見えないか?」
「……?」
「じゃあ少しだけ“見えるようにして”やるよ」
俺は風を起こし、砂埃を巻き上げた。
「…な!?何ッ!!」
奴にも見えたようだな、この辺一帯全てを覆い尽くす程の無数の真空の刃が。
絶対に逃げる事は不可能、それが…《北風の闘技場(アレナ・ミストラル)》

さぁ始めようぜ?テメェも好きなんだろ?
愉しい殺し合いってヤツがよ。残念だが、俺も大好きなんだ。
俺は鮫の様に薄く笑うと、腰に挿した2本のククリを抜き放ち、“楽しい処刑ゴッコ”を始めた。
494ヒロキ ◆EbUq/MrK8k :2006/07/14(金) 17:57:49
「あそこだよ、雷の精霊が集まってる。」
パルスの声を聞いた刹那、俺の体は時計塔へと走り出していた。
「しゃあねぇ、お守りしてやるよ」
Dが着いてきた。有りがたい。メダリオン相手に一人よりは幾分楽になる。
だが、その安堵は俺の右頬近くを抜けた光に遮られた。
Dが横へ飛び退き着いて来なくなった。
「ふっ…結局は一人か…。運命を信じない俺も…まだ運命に左右され続けているのか」
呟き時計塔へと急ぐ。時計塔に近付くにつれ空を轟かす雷鳴は一層激しさを増していった。
辺りにはおそらく街の人々の亡骸であろう物がごろごろとしている。まさに地獄絵図だ。
「〔雷鳴〕のメダリオン…今度こそ…俺の力としてみせる!」

ようやく時計塔の下へとたどり着いた。ローブから銃とナイフを取り出す。
「ふー…。よし…行くぜ」
一呼吸、銃へと気の流れを送り身構え、塔の中へ走り出した。
495胡蝶、舞う ◆iK.u15.ezs :2006/07/15(土) 01:01:26
「どれが本物か分からないなら……全て焼き尽くすまで!」
ソーニャの持つ灼熱のメダリオンが血のように赤い輝きを放ち、
彼女は真紅の獅子へと変化を遂げていく!

真紅の髪の美女は、燃え盛る炎の精霊獣、マグナシアに姿を変えた。
『ハイニナレ!!』
空気まで焼き焦がすような炎の息を吐く!
瓦礫に火が燃え移り、周囲があとかたもなく灰と化していく中…。

紫色の光がファムを包み込む。
宙に一羽の胡蝶が舞った。誰もが見とれるであろう美しい蝶。
その名は、夢の精霊獣、ムルフール。
巨大な4枚の羽を優雅にはためかせて滞空する。
『あっつーい♪ ちょっと焦げちゃったじゃ〜ん♪』
呪いの歌に乗せて、さっきまでリュートをかき鳴らしていた美少女と
寸分違わぬ美しい声が響く。
そう、精霊獣に姿を変えてなお歌い続けているのだ。
ファムはさらに上空に舞い上がり、羽をはためかせた。
金色に輝く粉が地上に舞い落ちる。
「!?」
真紅の獅子は、目の前に何かを見た。
精霊獣の姿から、赤い髪の美女へと本来の姿に戻る。
「親父…?」

「アハハ♪ ひっかかった〜♪」
ファムも人間の姿に戻り、相変わらず歌いながら地上にふわりと降り立つ。
ソーニャは完全に彼女が見せる幻に囚われたのだ。
あとはじっくりいたぶって楽しんでから……殺すだけ。
ファムはうわ言をつぶやき続けるソーニャにゆっくりと歩み寄っていった。
496幻影:2006/07/15(土) 20:27:21
「・・・フッ・・・フフフ・・・・・・ハハハハハハ!」
グノーシスは突然大きな声で笑いだした。
「何が可笑しいんだ!」
Dがそう言うと、真空刃を数本グノーシスに向けて飛ばす。
しかしグノーシスは避けようとすらしなかった。刃はグノーシスを切り裂いたかに見えたが・・・
まるでそこに実体が存在しないかの如く、全て擦り抜けてしまう。
「しまった!?幻か!!」
「1つ尋ねるが、お前は先程から誰と会話しているのだ?」
Dの背後から声がした。声の主はグノーシスだった。
497☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/07/16(日) 01:09:43
砂煙の中に姿を現した人物は…前に一度戦って敵わなかった黒衣の襲撃者、グノーシスだった。
その上あの時は無かったはずの[光輝]のメダリオンを操っている!
もう一つの視覚を持つ僕なら光が作り出す幻影を見抜くことが出来る。
でもDさんは……精霊を見る力に目覚めていない。
「うるせー!コイツは俺を指名したんだ、俺だけで倒す。だからお前は急いで歌を止めに行くんだ!」
このまま行っていいのだろうか。本当に一人で大丈夫なのだろうか…。
迷う僕に決意させたのは、人々の苦しむ声だった。
「いや……助け……て!」「違…う!やめ…ろ……」
これ以上犠牲者を出すわけにはいかない。救わなきゃ、心が壊れる前に!
「Dさん、絶対に無理しちゃダメだからね!」
そういい残し、駆け出す。Dさんならきっと大丈夫。
だから僕は僕の出来る事をやる!この忌まわしい歌を止めてみせる!
風を纏い、悪夢の精霊が集まっている場所に向かって駆けた。
「シルフ…お願い、もっと、速く…!」

どのぐらいかかっただろうか。数分だったかもしれない、数十分たったかもしれない。
ついに歌い手の場所までたどり着いた。
どうしてか一帯で火が燃えていて……そんな中で絶世の美少女が、歌っていた。
歌いながら、地面に膝を突きぐったりと地面に倒れている赤い髪の女の子を抱き起こしている。
何をしてるのだろう、そう思った矢先。美少女が杭を打ち込む時のように何かを持った手を振り上げる!これは……まずい!
「【エアリアル・スラッシュ】!」
僕は反射的に精霊に命じていた。風の刃が少女の手に握られていたものを弾き飛ばし、
黒光りするナイフが乾いた音を立てて地面に落ちた。
「もう〜、邪魔しないでよ〜♪いいとこだったのに〜♪」
ゆっくりと立ち上がり、こっちに向かって歩いてきた少女は、
天使のような顔で旋律に乗せてそんなことを言う。その有り得ない態度に、思わず叫ぶ。
「何が…いいとこだよ!? あんなことしたら…死んじゃうんだよ!?」
「知ってるよ♪ じゃあ教えて♪ 殺して何が悪いの?」
予想外の質問に虚をつかれる。
「そ、それは……」
「ほおらね、答えられない♪ この世界なんて全てつまらない夢♪
だから殺しちゃえばいいの〜♪」
僕はすごく哀しくなった。この少女の心が引き裂かれている事に気付いたから。
精神の精霊が……狂っている。
「……君の歌、封じさせてもらうよ」
魔晶石を握り締め、空間に【ミュート】の紋章を描いていく。
普通のものではない、精霊の力を増幅するための特殊な動作。
「いいよ♪でもできるかな〜♪」
僕の霊力が上か彼女の抵抗力が上か。一回勝負、極限の精神戦が始まった。
498†D† ◆9.MISTRAL. :2006/07/16(日) 11:02:04
「光とは便利なものだな、少し…ほんの少し弄るだけで虚像を作る事ができる」
奴が手を翳すとあらゆる角度から光の矢が俺目掛けて襲い掛かる。
「…がぁッ!」
「確かに面白い見世物だった。だが言った筈だ、お前は私に勝てない」
奴の分身が俺を取り囲み、奴は冷たい声でそう言った。

「それだよ…それを待ってたんだ…」
体中を撃ち抜かれ、大量の血を流しながら俺は“奴”に向かって言った。
「!?……な………ぜ…」
奴の胸元から血飛沫があがる。幻は決して“血を流さない”つまり奴が本物だ。

「馬…鹿な……」
「馬鹿はテメェだよ、考え無しに分身作るのを待ってたんだ。《北風の闘技場》はその布石さ」
口から血の塊を吐き捨て、俺は続ける。
「逃げ場を塞げはテメェは必ず俺を撹乱するために分身を作る」
もう1本、刃を奴の足に突き立てる。
「確かにテメェの幻は良く出来てる。普通なら絶対に見破れねぇだろうよ」
更に刃を奴の腹に突き立てる。
「だがな、良く出来過ぎてるってのも考えもんだぜ?特に、影の向きとかはなぁ」
「……!!!」
「今が夕方でよかったよ、西日で服の皺影の向きがハッキリ判るからな」
トドメの1本を突き立てて
「要するにテメェは最初っから俺に踊らされてたって訳だ。ご苦労さん、もう逝っていいぜ」
奴に背を向け、俺は時計塔へと歩きだす。
ひらひらと手を振り、奴に“別れ”を告げた。
だが《北風の闘技場》を使ったのは計算外だった…これ以上の大技は即アウトだ。ヤレヤレだ、ったく………
499精霊獣ヴィルナス:2006/07/16(日) 11:40:01
ドクンッ!Dの持つメダリオンが激しく反応する。
そして、後方より伝わって来る凄まじい殺気にDは思わず振り返った。

『コォォオオオオオ・・・・・・コォォオオオオオ・・・・・・』
先程までグノーシスが居た場所、そこに居たのは・・・
奇妙な音を響かせる巨大な象に似た怪物・・・光の精霊獣ヴィルナス!!
「マジかよ・・・・・・洒落になってねえぞ!?」
Dは必死で逃げだした。
既に精霊力を使い果たしたDに、精霊獣と化したグノーシスと戦う力は残されてはいない・・・
500☆触角の精霊使い ◆iK.u15.ezs :2006/07/17(月) 00:08:07
少女は相変わらず無邪気に笑いながら歌っていた。
こんな歌に……惑わされない! 
「―大気に舞う優しき乙女よ―」
空間に紋章を描く事により、シルフに抵抗を打ち破る力を与える。
「―我、汝に乞う。かの者の言の葉、その手に抱け―」
呪文は完成した。自分でも驚くほど静かな声で精霊に合図する言霊を紡ぐ。
「【ミュート】」
手に握った一掴みの魔晶石が全て砕け散った。それもそのはず。
霊力の強化と同時に、持続時間も長くなるように通常の何倍も力を与えたのだ。
一瞬、僅かな風が吹き、少女の髪が微かに揺れると同時に……
呪いの歌が掻き消える。
「!?」
少女は何が起こったのか分からないという顔をしていた。
彼女の周りの空気が凍てついているのが、僕にははっきりと見える。
歌えない呪歌士なんて恐れるに足りない。
「君の切り札、封じたよ」
封じたはいいけどどうしよう、縄でしばって遠くに連れて行こうか。
「バカ……そいつの怖さは……そんなもんじゃ……」
そのうめくような声は、地面に倒れている赤い髪の女の子のものだった。
どういうことだろう、この少女、とても歌以外に戦闘能力がありそうには見えない。
少女が、再び笑う。そして異常なほど接近してきた。
「ええっ、何!?」
彼女の唇が、静かに動く。
――ファムの歌を止めるなんてキミが初めて♪ 
ご褒美にたくさん遊んでア・ゲ・ル♪――
「うわあっ!」
少女がいきなり背伸びして抱きついてくる。
それと同時に、全身の力が抜けていくのを感じた…。
そのまま少女のなすがままに地面に押し倒される。
「や…め…てよ!」
叫んだつもりだったけどかすれるような声しか出ない。
嫌だ、やめろ、やめろっ――!! 抗う事も許されず
天使のような少女の笑顔が髪の毛一本ほどの距離まで迫った時……
僕の意識は、悪夢へと堕ちて行った……。
501†熱き魂のレベッカ† ◆K.km6SbAVw :2006/07/17(月) 10:09:16
消し去った筈の過去…
『やはりザナックが…裏切り者だったようだね。メダリオンを世に出してはいけない。
 あの家族を抹殺しろ、森の秩序を乱した大罪人だ。一切の情けはかけるな!』
逃げ出した筈の過去…
『しかし、パルメリス様…それは…』
『人間の女にまんまと騙された愚か者だ。他にも森の秘密を外に出すかもしれん』
『パルメリス様!ザナックが逃亡しました!』
『成る程、先手を打ったか…直ちに追撃部隊を編成しろ!ザナックは優秀な霊法師だ、僕自ら出る』
しかし、過去は変えられない…逃げる事もできない……
「嘘だ…違う……僕じゃない…」
パルスの心は、砕かれた。


〜♪〜
見えない不安がすぐそこに在るけど
逃げたり諦める事に慣れたくはない
いつしか描いた夢 真っ直ぐ見つめるのに
今は勇気が必要

太陽の光を掴め! 弱い自分振り切って 絶望の壁を砕け!
その先に待つ明日へ 走り出す為にBreak through!
どんな夢だってきっと叶う そう強く信じて
my BRAVE HEART!
〜♪〜

消えかけた意志に、再び火が灯る。体の底から、力が沸き上がって来る。
パルスは、いきなり聞こえてきたもう1つの呪歌によって完全に自身を取り戻した。
「ちょっと〜…今日ってば邪魔され過ぎ〜♪マジでムカつくんだけどぉ〜?」
パルスに覆いかぶさるファムが、背筋が凍るような眼差しを歌の主に向けた。
「やっほ♪パルス君だったっけ?奇遇だね、こんな所で会うなんてさ」
民家の屋根に立つ、3人の人影の内1人は…レベッカだった。その手にリュートを持っている。
「えぇーッ!?何でレベッカさんがここにいるの!?てかさっきの歌は?」
パルスが驚くのも無理はない。パルスの知っているレベッカは唯の受付嬢だったから。
「何でって?簡単よ、この世に最高のリュート弾きは2人も要らないでしょ?で、さっきの歌はもちろんアタシ」
レベッカは不敵な笑みを浮かべると、その手に持ったリュートを構え直した。
「さあいくわよ!ワッツ、キャリー、今からアタシ達《FRAME HEARTS》のデビューライブだよ!!」
レベッカの声に、隣に立つ2人の男女が頷き、それぞれの楽器を構えた。
502†黄昏のレーテ† ◆K.km6SbAVw :2006/07/17(月) 10:10:18
「……んん…」
『フン、気が付いたか?レーテ』
うっすらと目を開け、我輩を見るレーテ。もう心配はいらんだろう。
傷は完全に治癒したからな、後は少ししたら普段通りに動けるようになる筈だ。
「ここは…一体……それにイルヴァン、貴方の体……」
そう、今の我輩は本来の姿を取り戻している。古の龍としての姿を。
『フッ…良い謌だった。その熱い魂が我輩を、再び龍として甦らせたのだよ』
「謌…ってまさか…レベッカさんが?」
レーテが驚きに目を見開く。
『そのまさかだ。我輩の時代とはまるで違う謌ではあったが、そこに宿る魂は紛れも無い謌であった』
「そうだったんですか…レベッカさんが…」『うむ、あの娘は今歌っておる。心を壊す悪意の歌と戦う為に』
遠くから僅かに聞こえる魂の謌声に、レーテも耳を澄ます。
「……!この歌は!?」
『行け、あの娘はお前を待っているぞ?レーテ』
「……イルヴァン?貴方……まさか!?」

フン…どうやら気付いたらしいな、我輩の体が消え始めている事に…
仕方ないのだ、レーテを蘇生するのに我輩に残された龍の力を全て使い果たした…
我輩はもうこの世界に存在する事は叶わぬ、しかしレーテ…我輩はお前の中に居る。

〔と…友達になってくれま…せんか…?〕

お前が我輩にそう願った時、我輩は嬉しかった、孤独な幾千の月日をお前が癒してくれた。
確かに我輩はもう少しで消えて無くなる。だから、レーテ…我輩は…
お前と共に生きようぞ!
『さあ行くがよいレーテ!お前の…お前だけの謌を咏え!!』
503もう一人の疾風:2006/07/18(火) 18:31:01
『コオオオオオオオオオ・・・コオオオオオオオオオ・・・』
ヴィルナスの周囲に光が収束し、輝きの槍となってD目掛けて降り注ぐ!
(チッ…避け切れねぇ!!)
既にレクス・テンペストは使えない。使うのに必要な精霊力が足りないのだ。

「がぁ…ッ!」
先程の戦闘で撃ち抜かれた傷も、手当てすらされていないDの体は、まるで思うように動かなかった。
『これでおわりだ・・・もらうぞ、きさまのめだりおんを・・・』

(もう・・・流石に無理か・・・・・・兄さん、俺は止められ・・・なかったよ・・・畜生!)

Dが諦めかけたその時!
「ふむ・・・そのような顔は“らしく”ないですね、そうでしょう?D」
地に倒れ伏して動けないDと、そして精霊獣ヴィルナスの間に割り込んで来た男・・・

その男の名は・・・東風のエドワード!!
504†D† ◆9.MISTRAL. :2006/07/19(水) 16:47:12
『なんだきさまは…じゃまをするなら、きえてもらうが』
ヴィルナスが光の槍を周囲に展開させる。しかしエドは微塵も驚く様子もなく、笑っていた。
「フフ…成る程、光を操作する…ですか。しかし私には通用しませんね」
『なに?』
「通用しませんと言ったのですよ。その大きな耳は飾りですか?」
眼鏡をくいと直し、グノーシスを見据えたエドは不適に笑う。
エドの癖だ。あの眼鏡を直す仕種、あれをやるって事は何か勝算があるのだろう。
俺は痛みを堪えて膝立ちになると、その場を離れた。
流れ弾に当たって死ぬなんてアホみたいなのはゴメンだしな。
505名無しになりきれ:2006/07/19(水) 22:26:20
-
506エド代理:2006/07/20(木) 19:03:15
エドは懐からダーツを取出し、ヴィルナスに向けて投げる。
当然の如く、ヴィルナスは避けようともせずに、真っ直ぐエド目掛けて突進して来た。
「フフ・・・いいですね、その調子その調子」
からかう様にエドが囃し立て、ヴィルナスが吠えた。
『きさま・・・ちょこまかと!!ならばこれならどうだ!!』
無数の光の矢が出現してエドに襲い掛かる。が、エドは次々にヒラリと避けていく。
その間にも、ダーツを投げてはヴィルナスを牽制し続けた。

「そろそろ頃合いでしょうかね。充分に下準備も出来ましたし・・・」
『ふん・・・したじゅんびだと?』
「はい、貴方を葬り去る為の下準備ですよ」
眼鏡の奥の瞳が、まるで鋭い刃の様に光る。

『こ・・・これは!?まさか!!』
Dはようやく理解した。エドが行った“下準備”が何なのかを。
路上に撒き散らされたガラスの破片、5時の鐘と同時に降り注いだ鋼の雨によって砕かれた・・・
周辺一帯の建物の窓ガラスの破片・・・それが絨毯の様に地面に敷き詰められている。
日が沈み、光源はヴィルナスの身体そのものである今、ガラスの絨毯はその光を捕らえて逃がさない!

『こんな・・・ばかな!?ありえない!!』
「いいえ、有り得るんですよ。細かく砕かれたガラスの破片は貴方の光を閉じ込めてしまう」
エドが悠然と歩きながら、狼狽するヴィルナスに説明を始めた。
「貴方を走らせたのは、地面に撒かれた大きな破片を踏み潰して戴く為、そして私は貴方
 を狙うと見せ掛けて、無事な窓ガラスをダーツで割っていた。つまり貴方は頑張って自
 分の処刑台を組み立てていた・・・という訳ですよ。ご苦労様ですね、ハハハ」
『ならば・・・ガラスを!!』
ヴィルナスは地面に向けてレーザーを立て続けに発射する。

「いやぁ・・・ここまで素直とは、堪りませんねぇ。大切なメダルが、がら空きですよ?」
エドはヴィルナスの頭上に駆け上がり、ヴィルナスの額に輝くメダリオンをナイフでえぐり出した。
『あああああああああああああ!!!!』
ヴィルナスの姿がぼやけて、人間に戻る。エドは《光輝のメダリオン》を拾い上げると、ダーツを放った。

「石を置くだけでも碁は打てますが、それだけでは勝てない。結局はやはりここですよ」
そう言ってエドは頭を指差し、笑った。
507エド代理:2006/07/20(木) 19:19:51
「さてと、これでメダリオンは5枚ですか・・・流石に、これだけ並ぶと壮観ですねぇ」
エドは革袋から他のメダリオンを取出して、地面に並べてみせた。
「確かにな、やっぱり仕組まれてる・・・か」
Dも眉間にシワを寄せて唸る。
「でしょうね。偶然にしては出来過ぎの感があります。それに、奴は明らかに貴方を狙って来た」
「あぁ・・・俺が保有者だと知ってたって事は・・・」
「それを教えた人物が居る、という事ですね」
Dとエドは暫くの間考え込んでいたが、立ち上がると
「行こうぜエド、クロマクを突き止めるんだ」
「えぇ、お供しますよD。今の貴方には私が必要でしょうからね」
互いに頷き合い、その場を後にした。

To be continued!!
508名無しになりきれ:2006/07/20(木) 19:52:31
現在のメダリオン所有状況

《黒影》:ジュリアス
《灼熱》:ソーニャ
《疾風》:D
《雷鳴》:リゼル
《躍動》:リッツ

《光輝》《水流》《激震》
《深緑》《蒼氷》:エドが管理

《夢幻》:ファム(死亡?)
《心魂》:所在不明

509名無しになりきれ:2006/07/20(木) 20:00:05
CAST

触角の精霊使い パルス
酒場のウェイトレス ジーナ
流れ者のD
冒険者 ロシェ
黄昏の楽士 レーテ
東風のエドワード
貴族風の男 ヒューア
砕く拳のリッツ
道化師 チェカッサ
重戦士 ミニャ
フェンリル
見た感じ軽兵士 ハインツェル
黒騎士 ディオール
漆黒のローブを纏いしグノーシス
ヒロキ
魔弾の射手 リゼル
胡蝶の夢 ファム

商隊の責任者 キャメロン
聖ルシフェル氣志團の皆さん
水鏡のアンジェリカ
紅蓮のドノヴァン
熱い魂の楽士 レベッカ
灼熱の獅子 ソーニャ
商工評議会議長コリン
メロンジュースのお姉さん
街の人々ABC
剛岩のラトル
艶樹のエリサ
葉っぱのジョニー
蠍の爪部隊長 サッコ
狂える銀狼 ルドワイヤン
議長補佐官 コンラッド
南部方面軍司令官 ロンデル大佐
執事のボイド
オーウェン伯爵
公王ギュンター・ドラグノフ
復讐の死神 ジュリアス
510名無しになりきれ
役に立たない用語集?

【エリサ】瞬殺の代名詞
【キャメロン】多分このスレで1番まともだった人と思われる
【ギルド】結局…使われなかったなぁ…
【クラーリア王国】チェカッサは実は王子様だった
【公国軍】待ち続けた人々
【金色の4英雄】かつて精霊王を倒した人々
【蠍の爪】ご冥福をお祈りしております
【呪歌】結構アバウトな規準みたいです
【触角】パルスからコレを取り外したら、世界が滅びる………かもしれない
【聖ルシフェル騎士団】この人達、今頃何してるんだろう…
【ドラグノフ公国】悪の国…だがしかし本編では影が薄い
【メダリオン】不幸の詰まった存在。全部集めると世界を滅ぼす?
【メロメーロの街】メロンジュース売りのお姉さんが怖い街
【モーラッド】ロマン戦法最強説を築き上げた男…もとい漢
【ユリウス兄さん】ジュリアスの本名?まさかここまで来て別人とかだったら………
【ルドワイヤン】地味にお気に入りでした。再登場キボン
【レクス・テンペスト】クロックアップ!!
【ロシェ】実はラスボス……だったら神展開