騎士よ、今こそ立ち上がれ!!〜重なる心と想い編〜

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276 ◆DEADLYZjrA :2006/05/11(木) 15:10:41
ついにその時は来た。
同盟軍各軍は一斉攻勢に出、魔王軍もそれに併せ軍を動かす。
総戦力的には有利な魔王軍が同盟軍を押すが、それは同盟軍の作戦の内であった。
押される同盟軍を追い魔王軍が勢いづいたときに法王庁の結界が発動。
魔都オーガスは僅かな防衛部隊だけを残し孤立する事になった。
そこに切り込む同盟軍急襲部隊。
だが、兵数は多いとはいえない。同盟軍も限界の兵員運用なのだ。
その急襲部隊のなかにオーガス騎士たちもいた。

魔都オーガスに充満する魔素に苦しみながらも急襲部隊はオーガス城へと切り込んでいく。
その途中、オーガス騎士達は気付いただろうか?
自分達に向かってくる防衛部隊が殆どいなかったことに。
だが、気付いたとしても今はただ突き進むしかないのだ。

城下で戦闘が続く中、オーガス騎士達と僅かな兵が城門まで辿り着いた。
城内に潜入した騎士達に感慨が訪れることはなかった。
かつてのオーガス城を知る者にとっては別の意味での感慨があったかもしれないが・・・
濃厚な魔素が充満し、城内の空間は歪み、かつての佇まいを完全に失っていた。
サタンの気配はするが余りにも強大な気配の為、城の最深部にいるのかすぐ隣にいるかも判らないのだ。
一同の頭にオルトロスの言葉が蘇る。
オーガス騎士達と急襲部隊は決意を新たに城内へと深く入っていく。
277FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2006/05/13(土) 00:34:21
>276
強襲部隊はこの戦いの始まりの地、オーガス国城門の前に立っていた。

思い返せば、こうなってしまったのは自分達の責任だ。


一年前のヴォルフ討伐の時、自分達は敗北してしまった。
ヴォルフを追い詰めたものの、奴の目的であるサタン復活を許してしまったのだ。
だが奴は最後の最後で自分自身を生贄にしてサタンを復活させたのだ。
その後は、覚えていない。
気が付けば自分は魔界にある自室で寝ていた。
その時に戦闘民族の力が全て封印されていたが、それどころではなかった。
地上がどうなったか気になり、急いで戻ってみると、オーガス皇国はサタンによって支配されていた。


城門にいてもサタンの魔の気が濃密に漂っている。
城内に入ると、思わず乾いた笑いを漏らしてしまった。
かつての城内の姿はなくなり、濃厚な魔素のせいで空間が歪んでいる。
サタンのでたらめな力のせいによるものなのだろう。
その強大な力のおかげで、気を読むことができない。
間近にいる者なら別だが、遠く離れてしまえば、このサタンの力に紛れてしまうだろう。
ホントによく自分達は三年前にサタンを封印できたと思い、昔の自分に思わず感心してしまった。


城内を進んで行くが、敵が見当たらない。
城に残った者が何人かはいるかと思ったのだが……
辺りを警戒しながら更に進むと、見覚えのある部屋が。
その昔、自分達の部隊が使っていた部屋だ。

「皆、悪いけど単独行動になっちまう。よって行きたい場所があるんだ」
部隊から一時外れて、懐かしの暗殺爆撃部隊宿舎の戸を開けて入っていく。
鬼が出るか、蛇が出るか……


278辻斬り ◆mN/RwaMSjw :2006/05/13(土) 00:58:33
>276
青色の松明が照らす廊下を練り歩く大きな影。
ガシャリ……ガシャリと鎧と足音のみが木霊する空間
すでに戦闘が始まっているのか喧騒騒がしき場外とは、まるで別世界のように静まり返った城内、
魔素が立ち込める空間には護衛の姿すら見られない。
いや……恐らくはいる筈なのである。
理由は簡単この城内が『広くなりすぎた』だけであろう。

ここはどこだ、ふとした事で自分の居場所を見失ってしまう。
廊下の無骨な造りを見ると地下牢獄近くの様だが……真意は不明である
本来ならば1階の城門前まで到達出来ているのだ。
それ程までに魔素が立ちこめた事により、空間が捩れ城全体が別空間のように捩れていると言うことか。
まさに迷宮と呼ぶに相応しい。

最早『感』などと言う曖昧な物は通じないだろう
例えるならば霧が立ち込める樹海。

しかし沈黙が支配する中でも鎧武者に宿る殺戮衝動は止まる事を知らない
疼きが止まらん……早くしなければ本当に奴が目覚めてしまうかも知れん
だが、戦闘やコロシをしていれば奴は満足して見ていてくれる。
少なくとも奴自体が邪魔立てをする要因にはならんのだ

―――――アア願ワクバ、満足ノ行ク相手ヲ殺シタイ――――――

そのとき眼前の景色が開く。
どうやら違う空間に出たいようだ、どうやら自分の潜ったのはゲートの様なものだった。
歯をカチカチと鳴らしながら周囲を見回す。
明りが消えて暗いがとても広い―――――ダンスホールか?いやここはもしや…
ふと心地よい臭いが鼻をくすぐる。
大分古いが血と屍の臭い………アアやっと理解が出来た。

刹那、空間から出現した蒼き人魂がその部屋を明るくした。
砂の敷き詰められた丸いドーム状の空間
所々に転がり放置された人間の死体や甲冑。そしてそれを囲う観客席。

ここは地下闘技場……前城主が作った当時はつまらん武道会でも開いていたそうだが
前城主が去ってサタンの親父様が、ここを正真正銘の『コロシアム』に変えてしまったのだ
飽きる事無く繰り広げられる『殺し合い』…鳴り止まぬ悲鳴と怒声。
思うだけでゾクゾクと体が震えた、

どうやらワシにとって御誂え向きのイクサバへ出たようだ。
あとは向かい側から獲物が出てくるのを待つのみ。
きっと……いや必ず来るワシの中の感がそう教えているのだ。
時節笑いを漏らしながら殺意が体を纏う……獲物の出現をまだかまだかと…
279セシリア ◆TI6/2FuWqw :2006/05/14(日) 00:05:33
>276
夜明けとともにオーガスへの攻撃が開始された。
当初劣勢に見えた同盟軍だったが、後退と攻撃を繰り返し巧みに魔王軍を誘い出し、
市街の防備が手薄になった段階で結界が発動される。
セシリアたちはその混乱に乗じて外壁を越え、市街へ乗り込んだ。
抵抗はほとんど無く、作戦の補佐のために選抜された一般兵数人とともに、
何一つ被害を受けずに城門までたどり着くことが出来た。
誘われている、とセシリアは考えた。予想されたことだ。
罠だとしても躊躇うだけの時は与えられていない。
しかし、オーガス市街はそれを差し引いても攻めるに易い造りになっていた。

城壁自体は堅固だが、一歩そこを抜ければ各方角の門から城までは一直線。
道の幅は広々として街の人たちの日常生活に高い利便性を発揮しているが、
それは同時に大軍を容易に動かせることにも繋がる。
セシリアが、騎士として叙勲を受けるため初めてこの街へ来たときから思っていたことだ。
おそらくこういう構造だからこそ、万軍を撃ち滅ぼす剣にして万民を守る盾であるオーガス騎士団が必要だったのだ。
だが――オーガス騎士団は神官討伐という剣としての役目も、皇都を守る盾としての役目も果たせなかった。
罵倒、愚弄、嘲笑に耐え再び踏むことが出来たこの地で掴んだ、矜持と名誉と守るべきものを取り戻すための、
これは最初にして最後の機会だ。

城内に踏み込む。
エントランスは変わりがないが、その先の階段や通廊は所々以前と別のところに繋がっているように見える。
魔力の影響で時空がゆがんでいるのだろう。
影響のなさそうな場所を選って少し進むと、急にFALCONが立ち止まった。
>「皆、悪いけど単独行動になっちまう。よって行きたい場所があるんだ」
そう言って、扉を押し開けその中へ入っていった。暗殺爆撃部隊の詰め所だ。
「……出来る限りお早く」
自分が指揮を取っていた部隊に関わりの深い場所だけに、思うところはあるはずだ。
今はどこへ繋がっているか知れたものではないが、止めても聞かないだろう。
本来感傷に浸っている時間などはないのだが、その感傷があるからこそ、ここまで来た。

FALCONと別れてまた少し。
少し開けた場所に出た。中庭だ。
やはりセシリアが初めて登城した際、叙勲式の準備が整うまではこの中庭で花を眺めて過ごしたものだった。
その後オーガス城を訪れるたびに必ず寄っていた場所だったが……今は見る影もない。
今の季節であれば薔薇が盛りであったはずだが、花も葉も落ち、ただ棘ばかりが立派な茎が枯れた色を晒している。
小さな噴水の水は止まり、にごった水面が揺らめいているだけだった。
それを見たセシリアは、知らず知らずのうちに中庭へ踏み込んでいた。
280FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2006/05/14(日) 02:06:42
>278

「何でだ?」

扉を開けるとそこは別世界でした。
サタンの魔力により空間が歪められていると聞いていたものの、
まさか自分達の部屋の扉が異空間に繋がっているとは夢にも思っていなかった。
繋がっていた場所は城内の地下闘技場の控室。
昔はここでよく武道会が開かれたものだ。

感傷に浸りながら廊下を歩いていると、救護室の扉が壊されているのを見付けた。
気になって中を覗いて見ると、死にかけた者の魂を現世に止まらす魔法陣は消されており、
傷付いた肉体を治癒する人が二人位入れるような大きな箱。通称リペアボックスも破壊されていた。

試合場に出ると唖然としてしまう様な惨状だった。
手厚く葬らなければいけないはずの勇者達の亡骸が、所々に放置されている。
天井を見上げれば、死した勇者達の魂が無念の思いを抱きながら、試合場を冷たく照らしている。

「…………ゆるせねぇ……俺の……いや……俺達の聖地を……汚しやがってぇ!!!」
咆吼。
そして、身体に漆黒のオーラが怒りと共に張り付く。

先程から鋭い殺意をこちらに放ってきてる者がいる。
その者に対抗するように殺意を放ちながら言った。

「お前達を……殺す……」

今は亡きコロシアムの仲間達の無念の思いを、自らの漆黒の翼に乗せて戦う。

今、魔に支配されたオーガス城内地下闘技場、その昔に国民達にオリキャラコロシアムと親しまれた場所での、
最後の試合が始まろうとしていた。


281誓音 ◆aGZ9OPSgQQ :2006/05/14(日) 11:46:17
>>276>>277>>279
ついに決戦の時…そこには戦友でもある同盟軍一同と共に包帯を解いた誓音がそこにいた
同盟軍を止めようとする魔王軍の兵を殴り殺しながら…周りで魔王軍があげる悲鳴、
そして同盟軍があげる悲鳴を自らの力にしていきながら、誓音は道を走っていき、ついに城門まで付く。

―巨大な悪意に囲まれた城門を見上げる誓音。
思いふける時間なんてなかった。
誓音の中にある気持ちはただ一つ。

「悪は殺す」

それだけだ。

そして城門はくぐられた。

思わず近くにいたファルコンが笑う。
しかし誓音は不快で無表情になる。
何故ならそこに広がるのは魔素で歪んだ空間が存在してたからだ。
誓音の中身が静かに動きミシッ…と音を鳴らす。
その音は不快と怒り、そしてどこかで共鳴している心地よい感触が滲み出ていた。
誓音の赤い眼が揺れる。
(壊シタイ…)
中身がザワワと揺れ誓音は小刻みに震えだした。
右腕を左手で押さえる誓音。

(まだです…まだ…傷つけたくない……)

静かに前を見据える。恐怖と怒りが混じり吐き気がするほどだ。
するとファルコンが動き出した。セシリアも動き出す。
誓音は若干震えつつ、セシリアの後をついて行く。
すると暫く行ったところに無惨な姿になった中庭に出た。
「…酷いですね。」
正気を保つために口を開く。
するとセシリアが進んで中へ入っていく。一瞬追いかけようか考えた…が。
ふと横を見る。
するとそこにはドアが一つ。しかも本当にわずかながら音がする。
282誓音 ◆aGZ9OPSgQQ :2006/05/14(日) 11:48:22

誓音は向きをかえ、そのドアに近づき開けた。
するとそこに広がるのは会議室。
大きな机を囲み、赤と金で作られた椅子が並べられている。
誓音はそこに踏み入れる。床がきしむ。
「…おかしいですね…さっき音がしたような…」
一歩二歩…花太郎を進ませる。そして3歩目を歩こうとした瞬間だ。

ミシッ!バギッ!

「ぅごぁ!」
奇声をあげる誓音。
するとあっという間に地面が割れ誓音は下へ落ちた。
かなりの高さから落ち、とっさに花太郎がクッションになる。
悲鳴を上げる花太郎。
「っいってぃ……ってあ!ゴメンなさ…!」
思わず謝ろうと起き上がったが言葉が途中で止まった。表情が凍る。

何故なら周りを見たらそこには無惨な姿になった死体が様々な拷問道具と一緒に無数に置かれていたからだ。

誓音が落ちた地下に存在したのは拷問部屋だった。
恐らく昔はもっと違う事で使われた部屋だったのだろう。
しかし最早そこは紛れもない拷問部屋でありそこには魔王軍の死体だけじゃなく、同盟軍の人間の死体まであった。
無惨な部屋の中心、誓音は暫く静かに見据えた後立ち上がる。
その背中には異様な殺気を漂わせる。
そして次の瞬間、近くにあった魔族の死骸の頭を踏み割るとばっと無表情に振り返った。
283アステラ ◆r7kOcOEpyM :2006/05/14(日) 12:10:10
>276
他の百鬼の面々が迎撃に向かう中、俺は謁見の間で待つ。
俺の得物・・・俺を歪ませる、奴の存在を感じ取る為に。
サタンの放つ魔素によって、殆どの気配はかき消されてしまうが・・・
ただ一つ、辿れる当てがある。それも、まだ持っていればの話だが。

>279
その時、辿っていた当てを感じた。
律儀にもまだ持ってたらしい・・・こんな事の為に渡したわけじゃないが、
使える物は使うべきだ。謁見の間を出て、気配を手繰って歪んだ空間を歩んでいく。

目に映るは中庭、痛々しい景観を晒しているそこは正に魔王の座する場所に
相応しいと言うべきだろう。そしてその景観を乱す、明らかに不釣合いな騎士。
かつてオーガスに仕え、この城とも縁深い女・・・セシリア・ミディアリオ。
魔王サタン討伐、そしてオーガス復興を掲げるクソ真面目な奴。俺の獲物だ。

「・・・わざわざこんな所に寄り道とは、随分と余裕があるようだな。」
いざ目の前にすると、乱れた心も不思議と凪いでいく。そうさせるだけの何かを、
持ち合わせているのだろう。相手の返事を待ってから言葉を続ける。
「これ以上の言葉は不要だな・・・かかってこい。」
手甲・具足から魔気を放って挑発する。らしくないが、騎士の流儀に合わせてやるよ。
284辻斬り ◆mN/RwaMSjw :2006/05/15(月) 01:16:32
>280
しばし座り込んでいると遠くより足音が聞えて来た、二人か……いや気配を見ると一人か。
それはとても嬉しい知らせ、誰にも邪魔をされる事は無い確約。
―――――――来タカ……
黒い影がゆっくりと立ち上がった。

蒼き灯火に照らされ、ゆっくりと姿をFALCONの前へ現す鎧武者。
途中FALCONの咆哮と殺意がコロシアムに響き渡る。―――ククッと笑いがこみ上げて来たが押さえはしない。
そして刀には手をやらず一歩一歩を踏みしめ、怒りに震える男の前へ立ちはだかる。
感じる……気合、怒り、魔力。少なくとも我が前に対峙してきた物の中で前例は無かった。

「ヨォ!!会いたカったデェ!正直待ちくたびレとッた所ヤなァ〜〜ゲヒャハ!」
発せられたのは実に嬉しそうな陽気な言葉。
そしてパキパキと拳を鳴らしながら、愛しそうに問いかける。

「お初にお目ニ掛かりマす。ワシャぁ魔王軍直属特攻隊隊長ヲ張らシてもろうてます
 『辻斬り』……イヤ『ザジン』言いまンねン。」
そんなに嬉しいのか骨をカチカチと鳴らし、笑う鎧武者。

「イヤァ、アンタぁニンゲンの分際デ『ゴッツイ魔力』ヲ纏ッとりまんなァ。
 イヤ、ココはキッパリ言わせて貰いまスわ。ゲヒヒヒ……」
しかしその骨の接触音も次の言葉で不意に止まる。

「オメェドノ面下げテ戻って来おッた?……FALCONチャンよォォォォ!!!」
怒声が鳴り響いた。
「噂はァよう聞イとるでェ?魔族の身でありなガらサタンの親父に楯突く『魔族の恥曝し』がよォ!
 同属の王である親父様に刃ァ向けルたァどないな了見ヤ?コラァ?」
忌々しげに吐き捨てるように怒鳴りつける。
まさしく怒りを露にすると言う表現が正しいか、いつでも切掛りかねない雰囲気。
しかしその怒りの口調もすぐにシャガレタ笑い声に切り替わった。

「でもナ……ワシャぁ嬉しュうて堪らンのや、オマエがどないな理由でニンゲンに肩入れするかは輪からヘン
 だガな、オマエの実力は魔界にも響きワタっとるンや。」
嘲るような言い草、
「嬉しイわァ……嬉しュウて震えが止まラへん。
 魔族の裏切りモン…それもオーガス騎士とサシの勝負ガ出来る……ゲヒャハ
 ホンマモンのタマを張ったコロシ合いが出来る。
 そンダケ出来れャァ――――ワシャぁ富も名声もナンもいらへン。」

そう告げると足元にあった英雄の亡骸を踏み潰した。
「ゲヒヒヒ命散らさン勝負ほど、ツマラんモンは無シ。
 オマエなら解るやロォ?FALCONチャンよォ?
 オマエならホンマモンの『勝負』ヲ知っトル筈や……阿鼻叫喚の地獄の様なイクサ。
 それこそワシと『奴』ガ望むモンなんや。」

そして刀を抜き取った。既に体からは紫色のオーラが全身から滲み出ていた。
「ゲヒャ!!ゲヒャハハハハ!!!サァ遠慮ハいらン始めようヤ!!ホンマモンのコロシをよォ!!?」
狂ったように笑いながら相手へ向き直る。
いや本当は既に狂っていたのかもしれない……
もっとも深い殺戮のコロシアムの上で出会った強者。
恐らくこのコロシアム最後の試合―――――――――最高の試合のゴングがなった。
285レナス ◆o2qKdFy2wA :2006/05/15(月) 02:12:44
 ついに、最後となり得るだろう戦いが始まってしまった。
 最初は”懐かしい”という思いだけで始まったこの戦いも、今や引き返すことのできないものとなった。
 ――魔城オーガス。
 もう、ここに彼はいない。
 そう思うだけで、どうしようもないほど、胸が苦しくなった。
 しかし、進まなければならない。
 ・・・ここで立ち止まっては、彼に笑われるだろう。

 『お前は弱いのぅ!がはははははは!』
 と。

 オーガス城の城門。
 他のメンバーからはだいぶ遅れてしまっていた。
 (急がなければ・・・)
 そう思った刹那・・・目の前の城門が真っ二つに切断され、崩れ落ちた。
 あわてて後ろを振り返ると、そこには3つの人影があった。
 マントを羽織ってはいるが、明らかに人ではない。
 そして、風下のせいか、なぜか匂ってくる生臭い香り。
 少しだけ・・・嫌な予感がした・・・・

 「何者だ!」
 「ふ・・・・。」
 真ん中の人影(?)が、何も言わずにマントを外した。
 その顔には、見覚えがあった。
 「やっぱり」と言うべきか、「意外」と言うべきか・・・そこに佇んでいたのは、先の魔方陣で出合った、あの半漁人であった。
 「貴様・・・あの時の・・・」
 「そうだ。あの時私は、凍りついていたところを、親切なおじさんに荷馬車に乗せてもらったのだ!」
 「それって、セリにかけられたんじゃないの?」
 ピクリと眉間が動いたが半漁人は話を続ける。
 「そこで私は仲間を見つけた!それがこの二人だ!」
 「魚の仲間って・・・やっぱり魚市場じゃん・・・」
 その言葉のせいか、半漁人の額に膨らみができる。
 ・・・あ、魚でも青筋って立つんだ。

 何事も無かったかのように、魚影その1が高らかに咆哮した!
 「驚愕せよ!我が名はコイ!」 (・・・あ、コイだったんだ)
 「恐怖せよ!我が名はウナギ!」 (ウナギってもっと細かったような・・・)
 「意外に美味だぞ!我が名はトビウオ!」 (食べて欲しいのかな・・・?)

 最後は三人ハモり、
 「「「我ら、お寿司屋さんで人気のない三人衆(当社比)!!」」」

 「わー、ぱちぱちぱちー。」
 「なんだその仕方ないから乗ってやるみたいなノリは!」
 「えー・・・。ちなみにその戦隊の名前って誰がつけたの?」
 「私だ。」
 名乗り出たのは(たぶん)トビウオ。
 ・・・この際、どーでもいいのだが。

 「さぁ!行くぞ!奥義・超スーパーストロングロイヤルスマッシュデラックスハイパー水鉄砲・零式!」
 先ほどの微妙な空気を打ち破り、噛みそうな発言をしたのはコイだった。
286レナス ◆o2qKdFy2wA :2006/05/15(月) 02:15:35
 コイが言い終わると、なにやら3つの魚影が一箇所に寄り添い、こちらを向いてる。
 (まさか!)
 ”水鉄砲”と聞いて、身構えた・・・が、その姿があまりにコミカルであり、笑いを堪えすぎて反応が遅れた。
 「しまった!かわせないっ!」

 そう思った一瞬後、
 ドム!バキガラガラグシャポヒ!

 恐る恐る音のした方向に目を向けると、城壁がごっそりと無くなっていた。
 やはり、恐るべき威力である。

 しかし、レナスは平然とある一言を魚影達に言い放った。

 「やっぱり、エラ呼吸?」

 その瞬間、明らかに半漁人達の顔色が変わった。
 まずはコイが口を開く。
 「し、しまったぁ!さっきのスーパーデラックスジャイアント水鉄砲のせいで、体の水分が!」
 「どうするんだトビウオ!」
 「た、退却ですよ!」

 「「「退却ぅぅぅぅぅ!!」」」

 口々に発言をし、何もしない間に魚影達は去っていった。
 「・・・さっきと技名違うよ、っと。」

 遅すぎるツッコミをして、レナスはその場を後にした。
 無駄に疲労感を覚えたが、今はそんな事を言っている場合ではないだろう。
287FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2006/05/15(月) 03:21:12
>284

いきなり陽気な声を浴びせられた。
声を掛けてきた相手は、先程からビシビシと放たれていた殺気の主。
見たところスケルトン種でありながら、尋常ではない闘気を内に秘めている。

とても嬉しそうな陽気な声で自己紹介をし、急に彼の怒声が響いた。
先程までの声が嘘のような変わりよう。
激しい怒りと憎しみが声に混じっており、今にも襲い掛らんといった雰囲気だ。
そんなに魔族である自分がサタンに歯向かったのが気にくわないのか……

その怒声もすぐにしゃがれた笑い声に変わる。
感情の移り変わりが激しいようだ。

ようするに相手は魔族の恥じ晒しである自分と命を掛けた戦いがしたいようだ。
相手が奴と言っていたのが気になるが、おそらく相手の仲間か何かなのだろう。
この場で感じられるのは相手の気だけ。
その奴と言うのは、他の場所にいるのだろう。


「……確かにただの魔族の分際で、魔王であるサタン様に歯向かうのは大罪だ。
 謝ってすむ問題ではない、罰を受けるべきだと俺は思う……
 ベルゼバブの奴に止められた時に、すぐに止めれば良かったと今でも思う……
 この罪は魔界に帰ったら償うよ……
 だけどな……
 大恩あるオーガスさんの玉座でふんぞり返ってるサタンの大馬鹿野郎を、
 ぶっっ潰して魔界に連れて返んなきゃ、こちらの気がすまねえんだよ!!!」

母譲りの銀髪を逆立て、黒き翼を羽ばたかせて。
コートを脱ぎ捨て、父譲りの逞しき肉体を露にして。
このオーガス城で培ってきた黒きオーラと武道家の誇りを、
父と母から譲り受けたものに纏わせて……

「さぁ……楽しい楽しい死合いを始めようか……
 見せてやるよ……
 父さんから貰った伝説の戦士の闘気と、母さんから貰った魔王の魔力。
 そして……このオーガス皇国で育まれてきた武道家としての俺の力を!!!」

最初に動いたのはFALCONだった。
目に見えぬ程の速度で相手の右側に回り込み、渾身の飛び蹴りを相手の頭部目掛けて放つ。
蹴りには魔力が込められており、当たった瞬間に軽い爆発が起こるだろう。


288冴波&「剣」 ◆QCuhq9l.Ig :2006/05/15(月) 09:02:17
>281-282
その視線の先には冴波がいた。
さして、死骸にも興味の無さそうな様子である。
背後の扉に背を預けるようにして様子を見ていた。

「なるほど、拷問部屋が近かったと言うのもあってあの部屋は・・・。」
聞こえるか聞こえないか程に呟き、目を誓音と合わせる。

「失礼。私のいる部屋から迎えに出向こうとしたのだが・・・もう来ていたようだな。
 そう、以前世話になったな。傷の手当て有難う。」
普段着となっているロングコートにデニム姿で殺気に満ちた誓音に物怖じもしない。
と、壁から背を離して誓音に背を向ける。
「戦うというならいい場所がある、着いてくるといい。安心しろ、今の私は丸腰だ。」
「ここは少しばかり狭いしな。」
そう、普段持ち歩いている大剣を帯びずに出迎えに来ていた・・・。

扉の向こうは、霧と魔素に満ちた長い廊下。その中を早足に歩いていく。
ギィィィィィ・・・バタン。
霧の向こうに冴波の姿は消え、扉の閉じる音が聞こえる。

・・・その扉の向こうにあるのは、紅の海。
陰鬱とした薄桃色の雲、物言わぬ石の林、朽ち果てた骨の砂浜。
そして、2mにも達する無数の紅い氷柱であった。
氷柱の中には人間が入れられている。ある者は騎士であり、ある者は村人でもある。
老若男女を問わず、様々な人が氷柱に封じられていた。そう、中には魔族さえも・・・・・・
氷柱の中には真紅に染まり、中身の見えないものもある。

その氷柱群の中で、扉から一直線上にある位置に冴波はいた。
傍らには鈍く光る大剣が柄を天に向けて、砂浜に突き刺さっている。
「戦う前に一つ問いたいことがある。」
この場に不似合いな飄々とした声。

「これは私が戦う相手に常に問い続けていた質問だ、答えない・答えられないという答えでも構わない。」
「『生命は何の為に生まれ、生きている?』。そう、この答えを私は知りたい。
 歴戦の勇士たる人々は命の限界の境地に立つ。そういった人々なら何か分からないかと思ってな。」
誓音の方を見つめ、一度も瞬きをせずに問いかける。
海風にロングコートが音を立ててはためいた。
289カイザー ◆OrJKdYNK3U :2006/05/15(月) 20:51:30
>276>277
今日という日、それは大きな一つの区切りであろう。
だが、それがどの様な形になるかは明日を生きる者のみが知っている。
今はただ、戦士は戦うだけ…明日の安らぎを勝ち取るために。

カイザー達はオーガス城内に入り込んでいた。
>「皆、悪いけど単独行動になっちまう。よって行きたい場所があるんだ」
FALCONはそう言い残し、部隊から去って行ってしまう。
「……」
カイザーは何も言わず、その後姿を見送った。
…いや、何も言わなかったのでは無い。『言えなかった』のだ。
オーガス城には濃い魔素が漂い、普通の者ならば呼吸が困難になる程だ。
カイザーは呼吸困難に陥ってる訳でも、ましてや臆病風に吹かれている訳でも無い。
言葉を発する事も忘れた、ただ純粋な一つの感情…サタンに対する怒りのみが身体中に充満しているのだ。
昔、自分を快く向かい入れてくれた暖かい城は、今はもうサタンの手によって過去の形状のみを残した悪意の無機物だったのだから。
カイザーは両手を硬く握り締め、通路を歩んでゆく。

ふと気付くとカイザーは仲間達と逸れ、一階の稽古場の扉を開いていた。
その中に2,3匹の翼を生やした悪魔が存在していた。
だが、悪魔は襲い掛かろうという意思を持つ前に壁に叩き付けられて気を失った。勿論、それはカイザーがやった事だ。
(…懐かしいな)
カイザーは昔の事を思い出していた。
ここで自分を高め、友と語り合ったこの場所…短い間であったが良き思い出である。
(…だが俺がここに来た理由は、昔を振り返るためじゃない)

カイザーは一際目立つ大きな掛け軸の前に移動した。
掛け軸は『目指せオーガス』とオーガスの字で書かれていた。
その掛け軸の端を掴み、そのまま腕を振り上げた。その影響で掛け軸は壁から引き剥がされて宙を舞い、やがて地面に落ちる。
カイザーは掛け軸が掛けてあった壁を見遣る。…見た所、何の変哲も無い壁であるが、この壁には秘密がある。
「…『皇帝万歳』」
アホか、と思いながらそう呟く。…すると
――――ゴ、ゴゴゴゴゴ
重厚な音を鳴らしながら、掛け軸の裏にあった部分の壁だけが床に沈んでゆく。
そして、そこには新たな通路…そう、隠し通路が現れたのだ。
この隠し通路はオーガス城の一大事の時の為にオーガスが一部の重臣にだけ伝えていたものである。
それは皇帝補佐の立場であったカイザーにも伝えられた。…この道は、玉座の間に続いているという事を。

カイザーは足を進め、隠し通路へと入った。
隠し通路の幅は数メートルあるが、天井が低い為、やや窮屈な感じである。
この道は一部の人間しか知らないとは言え、ここは今はサタンの城だ。
稽古場以外にも隠し通路へ入る事のできる場所は幾つかある。
警戒を怠る事無く、慎重に一歩ずつ足を進めて行く。

通路はやがて階段に差し掛かった。―――この先に、サタンは待っているのであろう。
290エヴァンス ◆SgWfYeW0n6 :2006/05/15(月) 23:26:57
>289
オーガス城内を満たす、濃密な魔素を含んだ重い空気の中でさえ
エヴァンスの魔力感応が、通路の先に強い輝きを見出した。
単なる魔力ではない、「聖闘気」。夕闇の中火影を揺らす灯火のように、それは近付いて来る。
オーガス城に所縁深い者のみが知り得る、玉座の間へと通じる隠し通路。
レナス、FALCON、カイザー、三人の内の誰か、或いは二人以上を当て込んで仕掛けた罠だ。
階段の中程に滞る平板な闇から突如ライラック色のコートが姿を現し、聖騎士へ立ちはだかった。

「貴様といい、レナスといい……一年前は何処で燻っていた? 遅過ぎる出陣だ。
私が分かるか? 私の顔を覚えていなくとも無理は無いが、いずれ嫌でも思い出す。
『オートマチック・ジャック』、ジャック・エヴァンス『大佐』だよ。ついぞ忌み名に徹するばかりではあったがね」

銀の十字架と巨大な銃、一台のコンテナを手に、コートの魔導式熱光学迷彩を解除したエヴァンスはカイザーを見下ろす。
黒髪の少年、紫色の軍用コートに、左腕は人骨のように細く白い義手が微かなモーター音を響かせる。
能面じみた無表情に、口端だけを歪めたアルカイック・スマイル。
「オーガスは存命か? 私には最早関係の無い事だが……少しくらいは昔話に浸っても構わんだろう」
ゆっくりと一段踏み降りて、右手をカイザーへかざした。
右手の指に嵌められた紫水晶の指輪が、一筋の光線で彼の足下、石畳の床を薙ぐ。
すると石畳の継ぎ目を紫の光が走り、通路の中途だけ、音を立てて床が崩落する。

通路に空いた穴の先は、外。朝の日差しを遮る、灰褐色の分厚い雲で覆われた空が覗けた。
吹き込む風が薄暗い隠し通路に城外の空気を送り出し、曇天に舞う鳥のか細い鳴き声を運ぶ。
「しかし此処は狭いし、空気が悪過ぎる。一旦外へ出ようか。
どうせ隠し通路など、行き先不明のゲート魔法で埋まった今のオーガス城では役に立たんしな」
エヴァンスが義手の指をパチンと鳴らすと、石畳は通路から階段先まで崩れ落ちた。
同じ曇り空の風景だ。エヴァンスはコンテナを床の裂け目に投げ込むと、自らも武器を手に飛び降りた。

予め用意されていたゲート魔法のマスターコードは、現設定の座標を変更し位相空間の出口をオーガス城屋上へと移した。
ゲートは空間を上下反転させ、裂け目へ降りれば屋上の床から外へ抜け出す事になる。

カイザーがエヴァンスの誘いに乗ったとして、裂け目の先には一機の機械兵士が待ち構えている。
城門からやはりゲート魔法で移動させた、R-352-YZだ。
元は攻城用兵器のR-352-YZ、十メートル近い巨躯を持ち、装甲板は毒々しい赤色で塗装されている。
胸部に刻まれた、菊の花弁に似た造形のモニュメントが対物理魔法障壁を展開させた。
虹色の皮膜となって機械兵士の前方に展開された障壁は、物理攻撃に対してのみ強力無比の防御力を誇り、
無防備に飛び出した者はシールドの余波で弾き飛ばされてしまうだろう。

「失礼ながら試させて貰おう。その腕、鈍っていないかどうか。
前回の戦闘では御一緒出来なかったようなのでね、早速だがブレンテル流とやらを見せてくれ……久し振りに」



※機械兵士はザコ敵NPCです、決定リール使用でサクッと狩って下さい
291辻斬り ◆mN/RwaMSjw :2006/05/16(火) 01:23:46
>287
相手は我が身と対峙すると自身の身の上事情を話始める。
それに大人しく耳を傾けるとコイツがニンゲンに肩入れする理由がわかった。
それは恩義によるモノであったようだ。

首の骨をならしながら相手に問掛ける
「オマエも難儀なヤッチャのォ・・・・まァワシも人の事言えヘンけどな」
苦笑じみた笑い声
「ワシャァな親父様に恩義ガあるンや。だからオマエとは正反対ヤのォ」
そして相手は服を脱ぎ去り髪を逆立てて
魔力を体に満ちさせていく――――準備完了か
「サスガFALCONチャンや!ワシャァ死合いう方が好きやデェ!
ワシ等ノ語りにャ言葉なぞ不要!力でワシを満足させてみぃ!」

そして相手は我が身に突進して消えた。
――――――って消えた?馬鹿な!?
どこだ?目で相手の姿を探したが見付からない・・・消えたのか?

いや・・・・・・見えなかっただけだった
相手は持ち前のスピードで巧く死角に回り込んだのだ。
相手が放った跳び蹴りそれは鎧武者の顎を的確に貫いた。
「ガハッッッ!?」
悲痛な叫び声と共に相手の蹴っ先が爆発する。
蹴りのみならば体勢を崩しただけだろう、
しかし小爆発によって引き起こされた不意なイレギュラーに体が吹き飛ばされ
近くにあった防壁に体を打ち付けた。
しかし顎を摩りながらだが何でもないように立ち上がる。
多少焦げたが良かったヒビは入って無いようだ。
「奇襲とはヤりオルなァ・・・ちとビックリしたデェ?ゲヒャ!」
口から溢れた陽気な言葉。
しかし次の瞬間防壁を裏拳で殴りつけ悪態をついた。
衝撃音と共に防壁に大きなヒビが入る。
「ゲヘへ・・・挨拶変わりヤさかい、マァ遠慮せンと」
刀を片手で弓を引くように構えると刀の切っ先を相手へ向ける。
前大戦でも繰り出した片手平突き。威力ならば申し分は無いだろう
「喰ラエヤ!!!!」
体勢を低くし地を這うが如く相手へ突進を仕掛けた
勢いにより地面の砂塵が舞い上げなが相手へ突き進み
リーチのある長い手の間合いに入ると強烈な突きを放つ。
292誓音 ◆aGZ9OPSgQQ :2006/05/16(火) 01:40:56
>288
振り返るとそこに黒髪を束ねた女がいた。
その姿を見たとたん思い出す。
「貴方は…!?」
思わず声が震える。
それもそのはずだ、そこにいたのは少し前森で誓音が手当をした女だったのだ。
>「なるほど、拷問部屋が近かったと言うのもあってあの部屋は・・・。」
女が呟く。
>「失礼。私のいる部屋から迎えに出向こうとしたのだが・・・もう来ていたようだな。
> そう、以前世話になったな。傷の手当て有難う。」
動揺と不快感を通り越した何かが弾けそうな気分になる。
>「戦うというならいい場所がある、着いてくるといい。安心しろ、今の私は丸腰だ。」
「……。」
冴波を暫く見ると誓音は近くにある死体一体を蹴り上げ持つとひきずりながら言われたとおりついていくことにした。

扉が開く。

誓音は開いた扉の一歩前で止まる。
扉の向こうは霧と魔素に溢れた廊下だ。
少し顔をしかめそうになりつつ花太郎を忘れずにひっぱりながらついていく。
>ギィィィィィ・・・バタン。
霧の向こう、冴波が再度扉を閉める音が響く。
誓音もその扉を開けて入っていく。

すると目の前に紅の海が広がった。
薄桃色の雲、石の林、朽ち果てた骨の砂浜、まさに不快。
しかもそれにトドメを指すかのように2mもある無数の紅い氷柱。しかも死体入り。
誓音を挑発するのには充分であった。
刀に手を置く。頭に浮かぶのはこの女をどう殺すかだけだ。

>「戦う前に一つ問いたいことがある。」
思考が止まる。刀から手を離す。
「…問いたいこと?」
>「これは私が戦う相手に常に問い続けていた質問だ、答えない・答えられないという答えでも構わない。」
冴波の声が誓音の耳に届く。
>「『生命は何の為に生まれ、生きている?』。そう、この答えを私は知りたい。
> 歴戦の勇士たる人々は命の限界の境地に立つ。そういった人々なら何か分からないかと思ってな。」

「…命が何の為に産まれ、生きるか…ですか。」
ふと誓音の表情が沈む。
脳裏にぱっとフラッシュバックされる過去の記憶。

―巨大な門の下、沢山の人間の死体の山の上に立つ誓音のあの姿。

―赤い月の下、たった一つの死体の近くに立つ誓音の姿。

そして誓音は静かに口を開いた。

「…死ぬ為に産まれ生きるのです。」
293誓音 ◆aGZ9OPSgQQ :2006/05/16(火) 01:42:55

冷たいような、暖かいような笑みを浮かべる誓音。
言葉を続けた。
「はっきり言って…私は人が産まれることに意味なんて元々無いと思ってる。
どんな事をやったとしてもどんな事を求めても…結局行き着いた先は死のみなんですし。」
ふと誓音は思い出す。それはある魔族の一族の拷問部屋。
魔族に逆らった女の腹の中。醜い姿で産まれた一人の赤ん坊。
何度自分がここで、このような姿で産まれてきた事を呪ったことか。
それでも門の下、少女は一人で門を守り続けた。
握った拳に力が入る。
「…それならば…行き着く先が死しかないのなら…
人は唯一与えられた死の一瞬に悔いを残らせないように生き続けるしかないじゃありませんか。
ひたすら生きて生きて生きて…自分が生きてた証を沢山積んでいくしかない。
歴代の戦士達が闘うのも同じ、自分がここに居た証となる戦歴や…自分の証となる物を守る為ずっと闘ってきたんだと思います。」
ふと誓音は三度思い出す。
今は亡き村の桜という東洋の木の下、いつも仲好い可愛らしい少女と少年がボロボロになりながら手を繋ぎ死んでた事を。
人が消え、荒れ狂った廃墟の中、奴らからどんな攻撃を仕掛けられたのだろうか。
きっともっと生きたかったのだろう。
少年と少女の顔は銃弾や刀の切り傷で面影さえ残ってなかった。
悲しみに満ちた少女と少年の亡くなった面影を鮮明に思い出し目をぐっとつむった。
そして次の瞬間まっすぐに冴波を見て言った。

「それなのに…お前等魔王軍は人間が積んできたもの…歴代の戦士が守ってきた証さえ踏みにじっていく。」

寂しそうに悲しそうに声を絞り出す。
黒き刀を抜いた。ボロボロな銀の刃を冴波に向ける。

「…私の望む死はね、過去幾千幾万人人間を殺してきた罪、そして…ある大切な人を殺した罪をできる限り償い抜いて死ぬ事。
その罪を償う方法は唯一つ。より多くの人間の死を安らかに…悔いなく迎えさせる為その邪魔をする者を殺すこと。
最も、唯殺すだけじゃなく、今までお前等が殺してきた人間の悲鳴で苦しめて…苦しめ抜いて殺す。
それが私の償いであり復讐でもあり私が生きていた証でもある。
…生き延びたことを後悔させてあげる前に貴方にこちらからも聞きたいことがある。お前は生きる意味を私に聞いた。
ならば貴方にとって『死ぬこと』とは一体どういう事です?」
静かに響く淡々とした少し荒々しい冷たい声。
294FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2006/05/16(火) 11:39:00
>291
飛び蹴りは綺麗に武者の顎に入り、武者は叫び声と共に吹き飛んで、壁に激突した。
だが、今の一撃が入ったというのに、武者は何事もなかったように立ち上がる。

>「奇襲とはヤりオルなァ・・・ちとビックリしたデェ?ゲヒャ!」
武者は陽気な言葉を使いながら、壁に裏拳を叩き付けて闘志を露にする。
「あんたが俺のスピードを捉えきれなかっただけだろが……」
それにしても相手は異常なタフさを持っている。
並の敵なら先の蹴りで頭を吹き飛ばされているはずなのだが……
余程戦い続けて闘気を研き続けてきたのだろう。

今度はあちらの武者の番だ。
刀を弓を引くように構えて体勢を低くし、砂塵を巻き上げながら地を這うように突進。
こちらも迎撃する為に、両拳に気を密集させる。

相手が自身の間合いまでこちらに近付いて来て、突きを放ってきた。
非常に洗練された突き。
何度も何度も突きを放ち、極限まで洗練されたもの。

「うおぉぉ!!」
体を反らして、紙一重のところで相手の突きを避けた。
避けたはずだったのに、脇腹に熱い痛みが……

この武者の間合いで戦うのは非常に不味いと思ったFALCONは、後ろに大きく跳んで距離を取る。

「ど、どどん!!!」
相手が洗練された突きを放つなら、こちらも洗練された突きを。
ただし、こちらは光線の突きなのだが……

両手から放たれた二つの細長い光線の突きは、武者の戦力を削ぐべく、武者の両肩目掛けて突き進んだ。


295名無しになりきれ:2006/05/16(火) 12:39:31
アーミッシュ
296冴波&「剣」 ◆QCuhq9l.Ig :2006/05/16(火) 16:26:51
>292-293
>「…死ぬ為に産まれ生きるのです。」
返ってきた答え。また一つ、自身の中に刻まれた答え。
>「はっきり言って…私は人が産まれることに意味なんて元々無いと思ってる。
>どんな事をやったとしてもどんな事を求めても…結局行き着いた先は死のみなんですし。」

>「…それならば…行き着く先が死しかないのなら…
>人は唯一与えられた死の一瞬に悔いを残らせないように生き続けるしかないじゃありませんか。
>ひたすら生きて生きて生きて…自分が生きてた証を沢山積んでいくしかない。
>歴代の戦士達が闘うのも同じ、自分がここに居た証となる戦歴や…自分の証となる物を守る為ずっと闘ってきたんだと思います。」

>「それなのに…お前等魔王軍は人間が積んできたもの…歴代の戦士が守ってきた証さえ踏みにじっていく。」
敵意が向けられた。それに対して同情するでもなく、ただ静謐な目で見返す。
「この世界の空は青いな・・・。私という存在が生まれてより数年、私が見上げた空はいつも暗黒だった。
 そうか、つまりここはそういう世界か。敵は人間ではなく異種族にあるのか。」
そう、呟く。

>「…私の望む死はね、過去幾千幾万人人間を殺してきた罪、そして…ある大切な人を殺した罪をできる限り償い抜いて死ぬ事。
>その罪を償う方法は唯一つ。より多くの人間の死を安らかに…悔いなく迎えさせる為その邪魔をする者を殺すこと。
(中略)
>…生き延びたことを後悔させてあげる前に貴方にこちらからも聞きたいことがある。お前は生きる意味を私に聞いた。
>ならば貴方にとって『死ぬこと』とは一体どういう事です?」
静謐な目を逸らしもせず、やはり瞬きさえしない。額から微かな水滴が零れ、砂浜に落ちた。
「私にとっての『死ぬこと』・・・か。『何でもない』な。そう、何でもない。
 私はいわば造られた命というやつだ。過去に存在していた奇跡を起こした者達のデータをかき集めて作られた人形。
 私に求められたのは二つ。『癒すこと』、『抹殺すること』。その意義も私のいた世界が失われたことでもう意味を成さない。
 私にあるのはただ無限の問いかけだけだ。死は怖くないよ。死は安息であり消滅だから。」
最早、自分の過去さえもどうでもいいと言いたげな程に。その苦悩はもう刻み付けられている。

「ならば私にとって『死なせること』とは何か。私が何故こうも死を与え続けるのか・・・。
 それは、苦悩と後悔に安息を与える為でもある。
 生きる意味を失っているのなら、生きる必要もそこにはあるまい。
 私の与える死は忘却させる。苦悩も、心の傷も忘れて消える。
 そして、肉体の痛みさえも与えない。あるのはただ消えたという事実のみ。」
私の振るった手から飛んだ液体が氷柱の一つに降りかかる。それは、ほぼ一瞬で溶けて消えた。傍らの大剣が少し震えた気がした。

「一体何が『悪』になるというんだ。人間も、魔族も、動物も植物も何かを犠牲にしなければ生きられない。
 誰も彼もが自分以外を生贄にしてゆく。自分が痛まなければどうなったっていいという。
 人間は時代を迎える為に英雄を生贄にした。祭り上げるという形で。
 一国の女王は信頼していた男に裏切られ全てを失い、復讐の鬼となった。
 愛し合っていた筈の男女はやがて、互いを疑い真紅に染まった。
 青空を求めた人々は同類の筈の人間を造り、その脳さえ弄繰り回し己の為に利用した。
 彼らはその少女の全てを犠牲にし、人類の消滅という結果を生み出した。」
淡々と語られる史実。忘れ去られた童話。かつての『わたし』・・・
297冴波&「剣」 ◆QCuhq9l.Ig :2006/05/16(火) 16:27:52
>292-293
「私が生まれた世界に青空は無かった、だから彼らは青空を求めた。
 その為に命を造り上げ、使役した。これは悪なのか?
 悪は人間にさえある。例えばそこの氷柱を見るがいい。私の部下だ。」

誓音の傍には一本の氷柱。そこには獣の耳が生えた獣人が、いる。その顔は眠っているように安らかだ。
「彼女の里は既に滅びた。ああいった者達は常に迫害される使命を負うんだ。
 人間と少しだけかけ離れたその姿は忌み嫌われ、あるいは道具にされる。
 奴隷商によって売りさばかれそうな所だったらしい。その奴隷商は魔族か?いや、人間だったよ。
 同じなんだ。何もかも。魔族も、人間も。」
かつて自分の心を蝕んだ絶望。枯れた砂漠に降る水のように、私を満たしてゆく。

「悪意は永遠に巡る。それが悪意で無かったとしても、一つの死が無限の死を生んでゆく。
 この赤い海には全てがいる。全ての生命が還元される。これが私だ。私という・・・存在なんだ。
 許しは請わない。恨まれようと構わない。ただ・・・・・・」
そこで、誓音からやや後方にある氷柱から声が響く。

『万物に安らかなる消滅を』
『万物に安らかなる消滅を』

その声と共に誓音の背後の氷柱の一本が砕け散る。

背後の氷柱から現れるのはロングコートにデニム姿、腰にまで届く長い髪を振り乱した冴波。
「気づかなかったか?私はずっとここにいた。よく出来た人形だろう?瞬きも出来ないほどではあるが、急造にしてはなかなかだ。
 少々卑怯かもしれないが、打てる手は全て打たせてもらう。」
ダラリと下げた手を頭上に突き上げる。その動作に呼応するように、砂浜が鳴動する。
その砂の下から紅に染まった無数の氷の刃が噴きあがり、誓音を襲う。

その隙に地を離れた大剣が高速で冴波の元へ飛び、それを冴波は受け止め、構える。
戦いの・・・・・・始まりだ。
298誓音 ◆aGZ9OPSgQQ :2006/05/16(火) 18:57:04
>296-297
冴波は静かに淡々と答えた。
>「私にとっての『死ぬこと』・・・か。『何でもない』な。そう、何でもない。
> (略)
> 私にあるのはただ無限の問いかけだけだ。死は怖くないよ。死は安息であり消滅だから。」

>「ならば私にとって『死なせること』とは何か。私が何故こうも死を与え続けるのか・・・。
>(略)
> そして、肉体の痛みさえも与えない。あるのはただ消えたという事実のみ。」
静かに語る冴波をじっと見つめる誓音。
その表情は何故か一瞬安堵したように見えたのは気のせいだろうか…?
冴波は手を振る。何かが光り飛ぶ。

>「一体何が『悪』になるというんだ。人間も、魔族も、動物も植物も何かを犠牲にしなければ生きられない。
(略)
> 彼らはその少女の全てを犠牲にし、人類の消滅という結果を生み出した。」

>「私が生まれた世界に青空は無かった、だから彼らは青空を求めた。
> その為に命を造り上げ、使役した。これは悪なのか?
> 悪は人間にさえある。例えばそこの氷柱を見るがいい。私の部下だ。」
ふと横を見るとそこには氷柱の中に獣人が一人。
近づき触れる。誓音の赤い眼が一瞬揺れる。
>「彼女の里は既に滅びた。ああいった者達は常に迫害される使命を負うんだ。
> 人間と少しだけかけ離れたその姿は忌み嫌われ、あるいは道具にされる。
> 奴隷商によって売りさばかれそうな所だったらしい。その奴隷商は魔族か?いや、人間だったよ。
> 同じなんだ。何もかも。魔族も、人間も。」
「…そんなの知っている。」
ふと寂しげに反論する誓音。
「でも…それでもあの人は人間を愛してた。」
誓音はあの人が言った言葉を思い浮かんだ。
『人間は救われる。』
誓音は拳を強く握る。
>「悪意は永遠に巡る。それが悪意で無かったとしても、一つの死が無限の死を生んでゆく。
> この赤い海には全てがいる。全ての生命が還元される。これが私だ。私という・・・存在なんだ。
> 許しは請わない。恨まれようと構わない。ただ・・・・・・」
誓音ははっとする。

自分の目の前にいる人間に心臓の鼓動が聞こえてない事を。

そしてそれと同時に背後から響く声。

>『万物に安らかなる消滅を』
>『万物に安らかなる消滅を』

ミシミシッ・・・パリン!

ばっと背後を振り返る。
299誓音 ◆aGZ9OPSgQQ :2006/05/16(火) 18:58:24
するとそこに見えるのは破壊された氷柱・・・そして冴波!
>「気づかなかったか?私はずっとここにいた。よく出来た人形だろう?瞬きも出来ないほどではあるが、急造にしてはなかなかだ。
> 少々卑怯かもしれないが、打てる手は全て打たせてもらう。」
一瞬誓音の表情がガラリと変わる。
手を頭上に上げる冴波。浜辺の音の変化を一瞬に察知する誓音。
そして紅き氷の刃が無数に襲ってきた。

ぐしゃ!ぐしゃ!

鈍った肉を貫く音が響く。
恐らく一瞬誓音が刺されたと思うだろう。
しかしそこにあったのは誓音が拷問部屋からもって来ていた死体であった。

「んじゃ。こちらも…打てる手は全て打ちますよ。」

天空から聞こえる誓音の声。
空を見上げてみればそこには・・・
悲鳴の球体三個に囲まれたにっこりと笑った誓音。その上冴波に罅の入った左の掌を向けている。

――音銃連弾!!!!――

マシンガンのように細かい悲鳴の粒子が冴波に向かって凄いスピードで落ちていく。
悲鳴と爆発音と共に砂埃がでる。視界が狭まる。
誓音は地面に着地すると同時に悲鳴の球体を散らした。
足首の防具がみしっと鳴り割れる。
(っ・・・!…やはりあの不意打ち全て避けきるのには無理があったな…。)
そう思いつつ右手で持ってた刀を構える。隙を見せれば殺される。
>285>286
「プックックッく・・・アッハッハッハ。いやいや楽しんでもらえたかえ?
魔王軍で今、売り出し中の若手芸人トリオさね。」
オーガス城城門にてえも言えぬ疲労感に包まれるレナスに声がかかる。
声の元は城門の上。
羽衣を広げながらふわりふわりと舞い降りてくるシズネからだった。

「それとなく気配がしたのでねい。やってきたのだけれど入れ違ったようだ。」
レナスの腰の神剣グランス・リヴァイバーに目線をやりながらため息をつく。
緊張感もなく、値踏みするように頭の先から爪先まで見た後、ため息をついていた表情
が妖艶な笑みに変わった。

「なかなかいい女だねい。慟哭、悲哀に満ちてるじゃないかえ。
しかもそれがこの戦いではなく、たった一人の男に依るところが気に入った!
そんなあんたにはいい男を紹介してあげるよぅ?」
そっと膝をつき、地面に手を当てる。
「さあ、いでませ。あんたに相応しい相手はここにいますえ?」
勢い良く手を上げると、地面が大きな音を立てうねり始める。
その揺れに跳ね上げられるように宙に舞い上がるシズネ。

「ほほほほ・・・仲良くやっておくれよう。ここは若い者に任せてあたしは退席させてもらう
からねい。」
笑い声と共にシズネは舞い上がり、そして影に溶けるようにして姿を消していった。
301カイザー ◆OrJKdYNK3U :2006/05/16(火) 20:26:22
>290
暗い階段を昇り続けていた途中、
突如何者かが現れ、進むべき道を阻む。
敵は挨拶代わりなのか、1年前の戦いに参加していなかった理由を問い掛け、『ジャック・エヴァンス』と、自分の名を明かした。

「……敵である以上、貴様が誰であろうと関係ない」
特に感情の篭っていない表情で言葉を発するが、敵の名前を聞いた瞬間には眉をピクリと動かしていた。
エヴァンス大佐、直接会った事は無いがカイザーもその噂は聞いた事がある。…ただし負の話題であったが。
とは言っても、眉を動かした理由は名前を聞いたからではない。噂に聞いた『大佐』の外見がこんな少年だったとは思っていなかったからだ。
>「オーガスは存命か? 私には最早関係の無い事だが……少しくらいは昔話に浸っても構わんだろう」
「俺が知るか。…まあ、あのじいさんは殺しても死なないがな」


数分後
カイザーはエヴァンスの誘いに乗り、外へ飛び降りた。
激しい風が横殴りに流れ、鳥の鳴き声は城の外壁と外壁で何重にも反射していた。
そこで待っていたのはエヴァンスでは無く機械兵士だった。それも普通の機械兵士では無い。
禍々しい紅色の装甲を持つ、聳え立つという表現が合う巨大な兵器であった。
>「失礼ながら試させて貰おう。その腕、鈍っていないかどうか。
>前回の戦闘では御一緒出来なかったようなのでね、早速だがブレンテル流とやらを見せてくれ……久し振りに」

まさに神速だった。
カイザーは機械兵士との距離を瞬時にゼロにすると、足元の間接部へ向けて剣を突き立てた。
―――だが1秒後、壁に叩き付けられたのはカイザーであった。
壁に叩きつけられた一瞬、我を失ったカイザーの隙を付く様に、機械兵士の身体から凄まじい轟音が鳴り響く。
「……ッ!?」
カイザーが轟音の正体に気付いた…が、それは少し遅かった。
機械兵士の背部から打ち出されたミサイルは、カイザーの背後の壁に直撃し、大爆発を起こしていたのだから。

カイザーの背後に存在していた壁は跡形も無く吹き飛び、
その周辺には黒い煙が立ち込め、キナ臭い匂いを周囲に放っていた。

「こんなものか…時間の無駄だ、一気にカタを付ける」
声と共に風はピタリと止んだ。
立ち込めていた黒い煙は浄化されたかの様に消え去り、無傷のカイザーの姿が現れる。
異変に気付いた鳥達は誰に言われるでも無く、城の付近から姿を消す。

先程、風が止んだと表現したが、それは間違いであった。
何故なら、全ての風は音も立てずに渦を巻き、カイザーを中心に集まっているのだから。
地面に落ちていた枯葉は宙に浮き、風の渦に巻き込まれカイザーの身体に触れる。すると、枯葉は一瞬にして木っ端微塵に砕け散る。
そして、完全に風が止んだ。
次の瞬間、神々しい白銀の光を身に纏うカイザーがその場に立っていた。

「物理防御結界か…
 ブレンテル流の技を見たいとか言ってたな。特別サービスだ、見せてやるよ…『見えれば』の話だがな」
そう言うとカイザーは鞘から剣を抜き、その剣を両手で掴むと前に突き出すように構える。
「ハアアアッ!!」
全身を纏っていた聖闘気はカイザーの叫び声に呼応して更に肥大化し、聖剣をも包み込む。
その聖闘気に反応したのであろう。その聖闘気を上回る光が剣先から放たれたのだ。
「さあ、行くぜ…ブレンテル流、突撃の剣!絶命突破聖剣!!」

―――光が弾け飛んだ。
辺りはカイザーの聖闘気に照らされ、目に映る全てが白銀の世界だった…のは時間にして1秒も過ぎない間であった。
「…終わりだ」
辺りを包んできた光は消え去り、機械兵士の背後に立っていたカイザーが剣を鞘に戻す。
次の瞬間、機械兵士は地面に伏せるように倒れた。…腹部に何かが貫通したのであろう直系1メートル強の傷跡を残して。

「ガラクタの相手をしてる暇は無いんだ。エヴァンス、さっさと貴様が掛かって来い。
 怖気付いたのなら逃がしてやる。ガキの人形遊びだったら他所でやれ、俺はこれ以上付き合う気は無い。」
両手に聖闘気を集め、怒気の入った声でそう言い放った。
302名無しになりきれ:2006/05/16(火) 20:31:04
>300
地面を大きく揺らしながら現れたのは、とてつもなく大きい大蛇の一部。
フェンリルの兄弟にして世界を覆う蛇。ヨルムンガンド。

「プルプルッ。僕、悪い蛇じゃないよ」
そう言いながらも、レナスに毒の息を吐きかける。
これはヨルムンガンドの愛情表現だ。

303冴波&「剣」 ◆QCuhq9l.Ig :2006/05/16(火) 20:57:10
>298-299
仕留めた、とまではいかずとも足を奪うつもりだったのだが・・・
やはり、歴戦の兵は一味違う。
「!?・・・ふ、そうこなくては・・・な。」

>――音銃連弾!!!!――
>マシンガンのように細かい悲鳴の粒子が冴波に向かって凄いスピードで落ちていく。
>悲鳴と爆発音と共に砂埃がでる。視界が狭まる。
「――――!!」

盛大な砂埃が巻き起こる。
その向こうにうっすらと見える影は、ゆっくりと倒れこみ・・・
そのままの勢いで誓音へと突っ込んでくる!
「フ・・・っ!!」
力任せとも言える勢いで横薙ぎに大剣の鋸刃を向けるように誓音へと振るう。
その全身の表面では氷の薄片が零れ落ちていた。
もっとも、冴波の体を流れ落ちる赤は血とも赤い海の水ともつかないが。
「並の氷ならば砕けていたが・・・この水なら、ある程度は相殺できるのさ。
 万物の死・・・甘く見ないほうがいい。しかし、面白い力だな。」

その横薙ぎの斬撃の軌道上に浮かぶダイアモンドダスト。
「<未生天:氷針生成/射出>」
そこから無数の氷の針が真正面の誓音へと飛ぶ。

「――おまけだ!」
更に一歩進み、肩に担いだ大剣を誓音へと振り下ろす。
常人なら3度死んでいる連撃だ。
304辻斬り ◆mN/RwaMSjw :2006/05/16(火) 22:34:07
>294
>「あんたが俺のスピードを捉えきれなかっただけだろが……」
「クククッ……ワシが態々褒めタんや、ソコぁ素直に喜んドくモンやろォ?」
しかし何ともすばしっこい奴だが
得意分野である白兵戦に持ち込めば自分の方が優位に立てるだろう。
例え格闘術を極めた相手だとしてもそれでも勝率は五分を下回ることは無いはずだ。

【でも彼のスピードを捉えられなかったのは事実でしょう?】
<まあ奴ならば確実に避けれたか、爆発の衝撃にも無反応だろうな?>
『確実に弱くなってるねキミ……』
頭の中で刀の怨霊達が好き勝手言ってるが、あえて黙殺する。
いや黙殺せねば自我が保てなくなる。

そして相手は放った突きを体を捩らせ紙一重で回避した。
しかし手に残る微かな手応え、――――脇を掠めたか?
グゥッと刀に力を込めて突き進む刀を下に振り下ろす。俗に言う追撃と言う奴だが
先程言った通り相手の方がスピードが速いのだ、すぐに距離を開けられる。
「ゲヒヒ……何ヤァ距離開けたらツマラんやなイか、FALCONチャン?。」
刀に付いた血を拭いながら、一人呟く。
なるほど相手も馬鹿ではない様だ、しかし距離を取られるのは面白くない事である。

すぐに離れた相手に目を戻す、さあ次の手は何だ?殴りか?蹴りか?早く来い!
しかしその期待は奇しくも裏切られた。
>「ど、どどん!!!」
相手が掛け声と共に両手から放ったモノ……それは光線だったのだ。
なるほど、どうやら勘違いをしていた様だ
噂で聞いたこと、それはFALCONが上級魔族の武道家である事だが。
まさか気孔も使えるとは思いもよらなかったのだ。

しかしどうしてであろう、この胸の高鳴りは。
やはり本命は違う、やはりオーガス騎士の味は格別だ!
だが一つの疑問、相手が距離を離すのであれば如何に攻め落としてみるか。
一瞬の考察と結果
答えは簡単―――――つめるのみだ
光線を避けようとはしない、逆に刀を両手に持ち直し光線にぶつかりに行った!
「ゲヒャハ♪アマアマやァ!!!特攻こそイクサの華ァ!!」
体制を低くしたまま突撃を仕掛ける鎧武者、そして光線との距離がゼロ距離になった時

「ヌゥぅガァっ!!」
妖刀に怨霊の力を更に宿し、そして右の光線の軌道を思い切り弾き飛ばす。
だが手の回らなかった左の光線は左肩を貫いた。
今度は肩当を粉砕し、下にあった骨に大きなヒビを入れる。それでも歩は止まらない。
「ヒヒヒッャッハァ!!!」
嬉しそうな笑い声と共に相手との距離がある程度詰まる。しかしまだ射程内ではない
それでも刀を上に掲げ力を込め振り下ろす!、
―――――シロクの丁!
コロシアムの下は砂地だ、衝撃により相手と自分の間に巨大な砂飛沫が舞い上がった。
それが狙いだ、こちらが本命!
続いて用意した技、腰を限界まで横に捻りながら刀を脇に構える
そして砂飛沫の中に入り込み、腰の力を開放する。
「余所見しトるんや無いデェ!?ヒャハッ!ジゾロのォォォォォ半ッッ!!」
砂飛沫ごと叩き切る回転斬りが放たれた。
305FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2006/05/16(火) 23:40:07
>304
FALCONは驚いた。
相手が二つのどどん波に構わずにこちらに詰め寄ってきたことに。
武者は体勢を低くして、右肩を狙ったどどん波を、何らかの力が宿った刀で弾き飛ばした。
左肩を狙ったどどん波は、相手は対処することができず、そのまま直撃した。

「手応えなしかよ……」
どどん波が当たったにも関わらず、骸骨武者は勢いを増してこちらに迫ってくる。
不気味な笑い声を上げながら。

「お次はこいつで行くか!!」
全身の気を練って、両拳に溜めていく。
両拳に気が溜りに溜り、拳が光輝きスパークする。

気を溜めている間にも骸骨武者とFALCONの距離は近づいて、骸骨武者は刀を振るった。
地面に向けて。
刀による衝撃で砂飛沫が巻き起こり、骸骨武者の体を隠す。

「俺にそんな小細工が通じると思ってんのかぁっ?!!」
目隠しは通じない。
骸骨武者の凄まじき妖気が、嫌でもこちらに居場所を伝えてくる。
気の充填は完了した。
後は、相手が来るのを待つだけ。
喜ばしいことに、待つ暇もなく相手は現れた。
砂飛沫を切り裂く程の回転斬り。

「うおらぁぁ!!!!」
対抗するは、光輝く魔王(予定)の拳。
回転斬りと裏拳が激突し、闘技場は闘気の光に包まれた。

回転斬りの方が威力が高く、FALCONの拳は弾かれて深い斬り傷を負ったが、おかげで溜めが作れた。
弾かれた反動を利用し、体を極限まで捻る。

「どおりゃあぁぁっっ!!!」
極限まで捻られた体から放たれる、魔王を名乗ってもおかしくない程の気が込められた拳が、
骸骨武者の胸があるだろう部分に突き進む。


306エヴァンス ◆SgWfYeW0n6 :2006/05/16(火) 23:45:33
>301
機械兵士は倒された。カイザーは対物理魔法障壁を素早く見抜き、剣技の威力もまるで衰えてはいない。
FALCONに並び、申し分の無い火力を見せ付ける。
しかしエヴァンスは屋上の一角に立ち、悠然とカイザーを見下ろしたまま構える様子もない。

>「ガラクタの相手をしてる暇は無いんだ。エヴァンス、さっさと貴様が掛かって来い。
  怖気付いたのなら逃がしてやる。ガキの人形遊びだったら他所でやれ、俺はこれ以上付き合う気は無い。」

エヴァンスの口元の歪みがアルカイック・スマイルを崩して、冷たい微笑へと変わった。
「では、お望み通りに」
コンテナと「Burning Chrome」を軽々と担ぐと、天高くまで投げ上げる。
銃は雲間の暁光に紛れてすぐに見えなくなるが、一方のコンテナは空中分解し、二枚の盾を射出した。
その間にエヴァンスは十字架を両手で掲げ、変形機構の制御術式を解放するべく呪文詠唱を始める。
低く小さな声で囁かれる呪文に、軍用コートと義手が紫の燐光を帯び、銀の十字架に彫刻されたルーンが浮かび上がる。

<銃を手に入れた、実は二丁。いいんだ、俺は神さまを愛してる>

刹那、十字架が激しく放電する。陣風が巻き起こり、二枚の盾が稲妻に引き寄せられてエヴァンスの元へ舞い戻った。
同時にコートも錫色の金属体に融け、形態を変化させ始める。
それは鎧。恐竜の骨格標本を不完全な縫合で継ぎ接ぎしたかの様な造形に、各所が脆そうなまでに緩急の差を持つ装甲厚。

延びた襟で造られるヘルメットはエヴァンスの頭部を完全に覆い、鋭く迫り出した鼻先と
耳元から後ろに向けて伸びた、下向きに放物線を描く長い角が正に竜の頭蓋骨を思わせる。
肩甲骨に当たる部分から骨組みだけの翼を繋いで、裾は三枚の装甲板へ分化しスカート状に大きく広がる。
やがて足先までも鎧に覆われ、義手を含む全身が装甲服で包まれた。
十字架は光となって鎧に吸い込まれ、最早エヴァンスの手中に無い。

<二重思考、馬鹿は強み。生きてるやつは撃たない>

エヴァンスを挟んだ中空に漂う盾が、それぞれ鎧の肩板に収まる。
雷撃が止み、錫色を解いた竜骸の鎧は、艶の無い灰色へと変わった。


「「ガラクタも聖闘気も、同じくヒトの力には違いない。どちらが神を喰らう剣として相応しいか、貴様で試してみよう」」
翼部骨格は撃ち広げられると、巨大な光の翼をまとった。魔法動力のフライトユニット主翼だ。
スカート裏に内蔵された姿勢制御用のブースターが同じく白色光の尾を垂らし、エヴァンスの身体を空中へ押し上げる。
離陸直後、自在な角度調整が可能な翼の推進力を巧みに使いこなし、エヴァンスはカイザーの頭上を数度飛び交うと、
屋上から十メートルばかり空中で静止した。そして、ゆっくりと腕をもたげると、器用にも右手の指を弾いて音を鳴らした。
間接部は装甲板が蛇腹状になり、腰回りと首を除いて他は然程可動域を制限しない。発動呪文を呟く。

「「『Full Break Action』」」

突如無数のゲート魔法が発動し、オーガス城屋上を取り囲む様にして出現した。
異空間の黒い窓が、カイザーに向けて口を開ける。
「「まずは遊びだ、気負うな」」
エヴァンスの手元に開いた窓から、上空へ消えた筈の銃がグリップを覗かせる。それを掴み、引き金を引いた。
カイザーを囲む全ての窓が閃光を放ち、ゲート魔法から数十発の光弾が聖騎士へ襲い掛かる。
307セシリア ◆TI6/2FuWqw :2006/05/17(水) 14:58:44
>283
中庭の奥、本来なら反対側の通廊へ抜けるアーチから誰かが歩み出てきた。
>「・・・わざわざこんな所に寄り道とは、随分と余裕があるようだな。」
「わざわざ出向いてきてくれるからな。歩き回ることも無い」
セシリアは声の主、アステラのほうを振り返りながら槍をすい、と持ち上げる。
「次は止めぬと言ったはずだな?」
>「これ以上の言葉は不要だな・・・かかってこい。」
アステラは身に着けている手甲、具足から気を放ち、自らの言葉に偽りのないことを示す。
セシリアは槍を振ってそれを払う。
元は共に歩み、共に肩を並べた者同士、極々短いやり取りを経て戦端が開かれた。

この後のことを考えれば周囲への損害や自身の消耗は極力避けるべきだろう。
効果範囲の広い攻撃で相手を囲い込むようなことはそうそうできない。
ならば複数の精霊を全く同時に使役し、一点集中の攻撃を多重に繰り出すことで押し切る。
セシリアはそう考えた。だが今までは最大でも2〜3体までしか同時に使役することは出来なかった。
それ以上は必要なかったから試してもいないが、果たして可能かどうか。
一瞬にも満たない躊躇の後、自らの言葉を拠り所に即決する。やるしかないのだ。
勝てぬと思って挑んで、勝てる戦などありはしない。

まず槍を手から離した。風の精霊『翔ける者』。槍は弧を描いてアステラの側面を狙う。
しかしいつものように竜巻を引きずってではなく、風を裂く音のみを響かせて飛んでいく。
左手薬指と小指の指輪が光る。小指は土の精霊『岩食み』。アステラの背後から細い土の槍が数本飛び出した。
薬指は樹木の精霊『緑炎』。枯れたイバラが蔦を伸ばし、鎌首をもたげた蛇のように襲い掛かる。
同時に剣を抜いた。炎の精霊『吼ゆる者』。刃が赤熱し炎が小さく踊る。
踏み込みながら逆袈裟に切り上げた。
精妙な連携には程遠いものの、とりあえず4体までは同時に使役できた。数だけならまだ増やせそうだ。
あとはこの戦闘の最中により遅滞なく複数の精霊を使役し、その上で自らも相手に打ち込ようになれば良い。
不可能なら……城を巻き込むような技を繰り出さねばならなくなる。
308カイザー ◆OrJKdYNK3U :2006/05/17(水) 20:40:22
>306
>「「ガラクタも聖闘気も、同じくヒトの力には違いない。どちらが神を喰らう剣として相応しいか、貴様で試してみよう」」
エヴァンスは装備の力を借り、大空へと舞い上がった。
カイザーはその状況を眺めている、エヴァンスの出方を窺っているのだ。

>「「まずは遊びだ、気負うな」」
>カイザーを囲む全ての窓が閃光を放ち、ゲート魔法から数十発の光弾が聖騎士へ襲い掛かる。
窓が開かれた瞬間、カイザーは上空のエヴァンスの行動ばかりに注目していた。
予想外だった。
エヴァンスに気を取られていた隙を突かれた結果となった。
上空にばかり気を取られ、足元の状況を全く見えていなかったのだ。

カイザーは、窓から放たれた光弾の全てをその身に受けた。
そして光弾が止んだと同時、カイザーはその場に倒れた。

「ふざけた真似を…単なる仕置きで済むと思うな」
何事も無かったかの様にカイザーは白銀のオーラを身から発しながら立ち上がる。
だが、鎧の右肩部に到っては完全に吹き飛んでおり、胴体の部分は細かいヒビが無数に作られている。
カイザー本人は口から血を流し、見るからに身体にダメージを受けていた。

カイザーは両拳を握り締め、上空のエヴァンスに向ける。
「目には目を、光弾には光弾だ…倍返しだ!」
両手の聖闘気の輝きが更に増した。
「ブレンテル流、弾丸の技!聖闘気圧縮弾!!」
カイザーの両手から光弾が次々に放たれ、それらは全てがエヴァンスに向けて一直線に飛ぶ。
風を切る音を撒き散らしながら光の弾丸は空中を貫きながら進む。
カイザーが放った光弾の総数は、先程その身に受けた光弾の数のちょうど2倍であった。

光弾が止んだ瞬間、カイザーが身に纏っていた闘気が燃え盛る炎の様に強く大きく輝く。
「まだ終わりじゃない!!」
剣を鞘から抜刀する、剣は瞬時に聖闘気に包まれた。
脚部の聖闘気が目も眩むような激しい光を放ち、カイザーは上空のエヴァンスへ向けて跳び上がった。
「…ブレンテル流、闘気の剣!」
カイザーが振り翳した剣の輝きは直視できない程に強くなる。――そして、
「―――オーラ・スマッシャー!!」

剣はエヴァンスに向けて振り下ろされた。
309誓音 ◆aGZ9OPSgQQ :2006/05/17(水) 22:31:50
>303
さっきばらまいた3つの球体から超音波を出す。

(―…来る!)

素早く刀で冴波の剣を受け止める。
見れば冴波は紅い液体が流れ落ちていた。
(反応が早いですね…。)
改めて敵の力に感心する。
>「並の氷ならば砕けていたが・・・この水なら、ある程度は相殺できるのさ。
> 万物の死・・・甘く見ないほうがいい。しかし、面白い力だな。」
笑い返すと「貴方もね♪」 と言う。
すると目の前に散らばる氷り粒が針状になって襲ってきた。
>「<未生天:氷針生成/射出>」
「ちっ…!」
避けきれず反射的に右腕で防御する。
腕に刺さる針、痛みと何かが吸われる感覚が襲う。
(!…血を吸うのか!…だが…。)
ふと怯まず前を向く。
(この殻には生憎血がないもんでね。)
くいっと人差し指を軽く動かす。黒い球体が動き出す。
>「――おまけだ!」
>更に一歩進み、肩に担いだ大剣を誓音へと振り下れる。
すると高速で黒い球体が振られた大剣を受け止めた。
悲鳴の音と共に奏でられる鉄の刃がすれる音。
「…中々丈夫な剣ですねぇ…普通なら粉砕して跡形もなくなるのに…」
にやっと笑う誓音。
「今度は私の番…。」
そう言うと足を折り曲げ一歩進み刀を冴波の右腹めかげてに振る。
そして振った後数秒もかからないうちに左肩から悲鳴の手を出した。
「殴り殺せ。」
静かに命令する誓音。
すると恐ろしいスピードで悲鳴の手が拳を冴波に向かって殴りかかってくる。
それとほぼ同時に誓音は最初に出した二個目の悲鳴の球体を上空に置いた。
静かに大きくなってく悲鳴の球体…。

目の前にいる敵を殺すために…。
310辻斬り ◆mN/RwaMSjw :2006/05/18(木) 01:08:28
>305
砂塵を切り裂く同時に向こうの景色が開けた、そう標的の姿もその中に。
勝利を確信した。次に踊るのは砂飛沫ではなく血飛沫だろうと。
しかし鎧武者は気付かない、FALCONは砂柱の向こうで準備を進めていた事に。

「なヌ!?」
今度はこちらが驚く番である。
なんと砂塵の向こうの相手は我が刃に恐れる事無く、光り輝く鉄拳を繰り出してきたのだ。
しかし、その拳は妖刀と衝突すると勢いに負け弾かれたが
こちらの回転斬りの勢いが削がれてしまった。
コイツの拳は力を使えば、全てを断つ事が出来る妖刀『陣場交』と互角だと言うのか?
だが例え勢いが削がれたとしても、この距離、この勢いのならば相手を仕留めるのは容易。
「ヒャッハ!糞ガァこの勝負ワシの勝ちジャァァァ!!」
狂笑をしながらやや速度が落ちた斬激を放った。

しかもイレギュラーはそれだけではなかった。
腐り落ちた眼が映し出した光景、体を捻りながらも
相手は何と衝突により生じた衝撃を利用して溜めを作っていたのである。
それに気付いた時にはもう遅い。
―――――ヤバイ、初めて本能が警告する。

>「どおりゃあぁぁっっ!!!」
次の瞬間見えたモノ、光る拳、砕け散る鎧と骨。聞えた音、鈍い衝撃音。
時間がゆっくり流れる……そして急に時間の流れが戻る。
刹那である
「ガァッゥゥゥゥ!!?」
ドガッっと悲鳴と衝撃音を立て相手の拳が右胸に深くめり込んだ。
その一撃は胴当ての胸元の部分を軽く粉砕し、
その下にあった肋骨すらも砕く程の威力だったのだ。
「……ンな…阿呆ゥなッ!?…」
素っ頓狂に言葉が口から零れた、それは驚きと焦りを含んだ言葉だった。
311辻斬り ◆mN/RwaMSjw :2006/05/18(木) 01:13:14
そのまま勢いに負け、両足を地に付けながらも後方へ弾き飛ばされる。
引き摺られた為、抉れた地面が相手と自分の間にレールの様に2本の線を描いていた。
……右半身の鎧及び右肋骨5本を持ってかれたか……
改めて傷口を見やる、右胸にポッカリと開いた大きな空洞、

「サスガやな、コレほど出来るたァ正直予想外中の予想外ヤ。」
空洞を隠すように手の平で覆うと相手に向かい問いかけた。
実にらしくない行動であるが、イクサの中でこれ程までに相手に惹かれてしまうのも無理は無い。
―――終わらせない、この時が永遠に続けばいい。

「こレ程のプレッシャー……イクサバで感じるルのは何年振りカ……10年?100年?
 イヤ……少なくと、こないな事ァ親父様意外は無かったデ……これ程の強敵ハなァ。」

嬉しそうに話しかけた時、一抹の不安が頭を過ぎった。
ここまでの強敵を相手にしては『奴』も覚醒する可能性である…。
まだ閉じ込めておかなければ……相手に注意を払いながらもサイコロを出す為、懐に手を入れた。

―――――――――――それが絶望への引き金だった。

アレ――――無い? 懐には何も入っていなかった。
おかしい、おかしい?……どうして?アレ?
何で?さっきまで確かにここに?
「無い?……嘘や…どこや……どこや!?」
完全に慌てふためいた言葉、敵前にも関わらず懐や鎧の中を探り始める。
必死にサイコロを探す、落とした筈は無いココに来る途中にはあったのだ。

「あっああ……ワシの……ワシのサイコロは……どこや?ドコに行きおッた!?」
既に泣きそうな声になっていた、どこにもない。どこだどこだと何回も同じところ探している。

<無様だなザジン…>『ああ無様だね』【サイコロ二つで大層な騒ぎではないか】
怨霊達が見下したように何かを言うがそれどころではないのだ。

しかし鎧武者は気付かない、求めていた2個のサイコロは先程の衝撃により
鎧に開いた穴から吹き飛ばされていた事を、
そしてそれはFALCONの足元に転がっていたことも……。
312FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2006/05/18(木) 02:08:53
>310>311
鈍い衝撃音と共に、骸骨武者の胸が陥没して、骨が砕ける。
魔王(予定)の拳が骸骨武者の胸にクリーンヒット。
相手は吹き飛び、多大なダメージを受けたことだろう。
代償として、こちらも左拳と右の脇腹に切傷を負ったが、相手のダメージの方が大きいはず。

>「サスガやな、コレほど出来るたァ正直予想外中の予想外ヤ。」
>「こレ程のプレッシャー……イクサバで感じるルのは何年振りカ……10年?100年?
> イヤ……少なくと、こないな事ァ親父様意外は無かったデ……これ程の強敵ハなァ。」
相手の誉め言葉に思わず笑みを浮かべる。
強者に自分の力が認められるのは悪い気がしない。

「あんたこそすげえよ。
 ずっと魔界や地上で戦ってきたけど、あんた程に強い武者は見たことがねぇ……
 正直に言うと、あんたは敵ながらにして尊敬に値する戦士だ。
 敵陣でこんなに気持いい戦いができるとは思わなかった……ありがとな……」
右胸に空いた穴を手の平で隠す骸骨武者に、こちらも称賛の言葉と礼を言う。
だが、突然様子が変わった。

>「無い?……嘘や…どこや……どこや!?」
>「あっああ……ワシの……ワシのサイコロは……どこや?ドコに行きおッた!?」
急に慌てた声を出したと思ったら、何かを探し始め、見付からないからか、泣きそうな声も出している。
サイコロを無くしたらしい。
そのサイコロは余程大切なものなのだろう。
彼程の武者が取り乱すのだから。
FALCONは話すに話掛けれず、このまま無防備な武者に攻撃を加えることも、自身の誇りに賭けて出来ない。
どうすることも出来ないFALCONが、それとなく下を向くと、二つのサイコロが足下に落ちていた。
腰を屈めてそのサイコロを拾う。
おそらく、武者が無くしたサイコロはこれのことなのだろう。
戦っている最中に落ちたのだろうか?

「おい、ザジン!!お前が落としたのはこのサイコロか?」
サイコロを探し続けているザジンに呼び掛けて、ひょいっと軽く投げる。

「今度からは気を付けろよ。そんなに大切なものならな」

313冴波&「剣」 ◆QCuhq9l.Ig :2006/05/18(木) 08:59:36
>309
>ふと怯まず前を向く。
>(この殻には生憎血がないもんでね。)
必殺!のタイミングで放った針は相手の腕に刺さった。
これで腕から血が抜けて力が入らなくなると思ったが・・・

>すると高速で黒い球体が振られた大剣を受け止めた。
>悲鳴の音と共に奏でられる鉄の刃がすれる音。
「並の剣とは違うのでな、こんな芸当も出来る!」
「<未生天:接続・情報解体>」
剣が一瞬鈍い光を放つ。と、同時に黒い球体が剣に触れている部分から一部崩壊する。
悲鳴は悲鳴というカタチを剣との接触部から一部解かれ、崩壊しているのだ。
もっとも、触れている間にしか効果がないが。

「(それにしても氷針から血が噴出してこないのか・・・?)」
その思考の一瞬の隙を突かれた。
>「今度は私の番…。」
>そう言うと足を折り曲げ一歩進み刀を冴波の右腹めかげてに振る。
「つっ!」
剣が腹部にもろにめり込む。その一瞬で脳は最適な答えをはじき出す。
キッ!と誓音を睨み付ける。気後れをした方が負ける、と経験が言っている。
「<未生天:身体強化起動。倍率指定・・・1.2>」
ギチっと音がするように腹部の筋肉が誓音の刀を咥え込む。
だが、そこから反撃するよりもさらに早く追撃がきた。

>「殴り殺せ。」
>すると恐ろしいスピードで悲鳴の手が拳を冴波に向かって殴りかかってくる。
「そのぐらいで!」
自身の強化を信じ、頭部で悲鳴の拳を迎え撃つ。
至近距離で回避は不能と判断したために、額が悲鳴と直に衝突する。
衝撃が皮膚を伝わり、脳を揺らす。冴波の瞳から赤い雫が零れ落ちた。

「至近なら・・・そう、苦手でもない。」
大剣から左手を離し、誓音の刀を握っている手に向ける。
「切り刻まれるがいい。」
<未生天:結界術・簡略化。『氷嵐の乙女』(アイシクル・メイデン)>
手の平に集まった直径50cm程の赤い水の球が内側に鋭い氷の刃の嵐を抱いて飛ぶ。
恐らく何も対応出来なければ球体に包まれた手はすぐにズタボロになるだろう。
最悪・・・肩まで登っていく。

「腹部の一撃と引き換えに腕一本。と、いくか?」
いつしか、赤い海はゆっくりとその海岸線を引き戻していた。
「(世界を飲み込んだあの力、今こそ再現してみせよう・・・・・・。)」
314名無しになりきれ:2006/05/18(木) 21:05:21
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杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー杏マナー
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315名無しになりきれ:2006/05/18(木) 21:33:14
でも次元の圧力に押しつぶされて冴波&「剣」 は死んだ
316誓音 ◆aGZ9OPSgQQ :2006/05/18(木) 22:46:54
>313
腹部に振った刀は命中した。
>「つっ!」
冴波の表情が一瞬崩れたかと思ったらにらみ返してきた。
微笑み返す。敵ながら中々の闘心だ。
>「<未生天:身体強化起動。倍率指定・・・1.2>」
ギチッと刀が鳴る。上手く刀が動かず思わず顔をしかめると悲鳴の手を出し反撃。
「殴り殺せ。」
悲鳴の手が振られる。
>「そのぐらいで!」
冴波が叫ぶ。そして冴波に拳は直撃した。
流石にこれは効いたはずだと思い冴波を見る。
しかし冴波は意外なぐらいに丈夫だった。
>「至近なら・・・そう、苦手でもない。」
冴波の声が聞こえ誓音は一瞬驚く。
>「切り刻まれるがいい。」
><未生天:結界術・簡略化。『氷嵐の乙女』(アイシクル・メイデン)>
(やばい…!)
敵の想像以上に早い反撃が来たので一瞬思考が巡る。
さっきの悲鳴の球体で防御するにも遅い上大剣の先ほどの技によって脆くなってしまった悲鳴の弾がこの技を防御しきれる保証はない。
冴波の手の平に集まる紅い水の球…

(できれば…サタン戦まで壊したくなかった…)

誓音の表情が一瞬曇る。
そして腕に球体は放たれた。腕を包み肩まで上っていく球体。
それと同時に殻が割れる様な鋭い音と何か糸みたいな物が切れるブチブチッという鈍い音が鳴り響き
黒い砂埃みたいな物がぶわっと出て視界を埋めていく。
殻が割れた事により激痛が走り誓音は悲鳴を上げた。
「きゃぁああぁあああああああぁあああああああ!」
>「腹部の一撃と引き換えに腕一本。と、いくか?」
冴波の冷めた声が黒い視界の中聞こえる。そしてその後かけらが落ちる音がする。

そしてそれは姿を現した。
317誓音 ◆aGZ9OPSgQQ :2006/05/18(木) 22:48:06
黒い砂埃が晴れていく。
視界がじわじわと開いていきそこに現れたのは片膝を付いてる右手が醜い直径6mほどの巨大な怪物の手と化していた誓音だった。
誓音の右のほっぺに罅が入る。
「…結構効きましたね。さっきのは…。」
意外なほどに冷静に冴波に寂しそうに微笑むと誓音は静かに立ち上がった。
上を見る、するとそこにはさっき置いておいた悲鳴の球体が一つ…。
(後もう少しって所ですか…)
「…いきますよ…。」
冴波の方を再度向く。そして誓音は怪物の手を冴波を掴み潰すため伸ばした。
さっきの悲鳴の手とは訳が違う。掴まれれば大怪我物、並の人間なら骨が全身砕けるどころではない。
318エヴァンス ◆SgWfYeW0n6 :2006/05/19(金) 00:29:34
>308
魔法銃の弾丸を全弾命中させるも、カイザーは再び立ち上がった。
当然だ、この程度で死なれてはまだ早い。ゲート魔法の黒い窓が消え、銃を取り戻したエヴァンスはカイザーの反撃を待つ。

>「目には目を、光弾には光弾だ…倍返しだ!」
>「ブレンテル流、弾丸の技!聖闘気圧縮弾!!」

『Full Break Action』の弾数を優に越す聖闘気の弾幕が、カイザーの両手から放たれた。
だがエヴァンスはかわそうともしない。対魔法反射装甲の出番。
鎧の両肩部に嵌められた盾が輝き、虹色の巨大な魔方陣をエヴァンスの前方へ展開する。
「「若いな。力の使い所を、未だ見定められていない」」
光弾は魔方陣に阻まれ、次々と弾道を逸れて散っていく。
流れ弾の一部が城壁を食み、砕け散った石材の粉塵が屋上にたち込めた。
「「正義の味方も楽じゃなさそうだ、疲れる。そうだろ、カイザー? で、もう――終わりか?」」

>「まだ終わりじゃない!!」

弾幕の後は聖闘気によって強化された脚力で、跳躍と同時の剣撃。
以前使われたのと同じ手に、悠長に引っ掛かってやる程の余裕は無い。
頭蓋の眼窩に納まったアメジストの複眼は、膨大な魔力の放出にも眼力を損なわれず、敵の魔力を感知出来る。
ソナーの焼け付きも感度補正で防ぎ、エヴァンスの視覚は眼前で剣を振りかざすカイザーのシルエットを捉えた。
実体を伴う攻撃では、魔法反射装甲の効力は期待出来ず
格闘戦向きの兵装でない以上、近接時の運動性や回避能力は充分とは行かないが、接近戦用の防御機構も皆無ではない。
「「全くもって元気なこったが、馬鹿正直だな貴様は。
生身で頑張る、誠に結構。しかし残念だが、その、あれだな、そう。これが『進化』ってヤツさ、ベイビー」」


胸部装甲の肋骨の隙間に横並びで空いた複数個の孔、ソニックブラスターが煌いた。
強圧により排撃された空気の層が、陽炎の様に周囲の空間を歪め、球状の真空地帯がエヴァンスを包み込む。
戦場の一切が静止したかの様な、無音の一瞬。


風船の膨らみは弾けた。
ほんの刹那の無音を経て、耳をつんざく爆音が、城壁を打ち震わす。
解き放たれた衝撃の波はオーガス城上空一帯を奔走し、その様はさながら竜巻、
渦巻く颶風の刃の輪を一枚取り出し、城に冠したよう。
魔素を孕んだ暴風は圧倒的な破壊力で城外を席巻すると、本棟を囲む見張り台、尖塔の類から尽く屋根を奪った。
近くを飛ぶ鳥は皆全身の骨を撃ち砕かれ、ぼろ雑巾みたく羽根を散らして彼方に消える。
転がる石も塵芥も陣中から叩き出され、エヴァンスは瞬間の嵐の中を、光の翼で舞って更に上空へ離脱する。
彼の胸には縦一文字に切り裂かれた傷があったが、辛うじて鎧の下の肉には達していない。
やはり腰回りの動きの悪さが、格闘戦向けではない。

「「悪くない勘だが、如何せんやり口が不器用だったな、聖騎士。
さあ、私はもう一手だけ待ってやる。掛かって来い――生きているならば」」
319辻斬り ◆mN/RwaMSjw :2006/05/19(金) 01:04:26
>312
いくら探せど目当てのものは見つからず、両膝を付き絶望に打ちひしがれた。
相手の声ももう聞こえない……このまま行けばワシャァ終わりだ。
意識が闇の中に沈む錯覚すら覚える、このまま終わるのか……それはイヤだ。
どうすればいい?、ひたすらに考える。しかし答えは見つからない。

その時眼の前から声が聞えた。
>「おい、ザジン!!お前が落としたのはこのサイコロか?」
バッと顔を上げた、暗闇の中から意識が甦る。
そして軽く投げられた二つのサイコロに我武者羅に飛びついた
「アッ……アアアアァ……!!!」
サイコロを必死に握ると強く強く抱き締めた。
喜びを含んだ呻き声、いや泣き声か……。
そうだワシは『ザジン』確かにココにいる存在、その事実で我が心を保てるのだ。

どれ位たったか、ザジンはサイコロを大事そうに懐にしまうとゆっくり立ち上がった。
「チッ…恥かシい所見られテしもうタな……。」
頭をポリポリと掻きながら舌打ちと共に悪態が出た、しかしどちらかと言うと照れ隠しなのだろう。
「せヤが礼言わナあかんなァ、……オオキニな。」
相手は隙だらけだった自分に攻撃もしなかった、その気になれば葬れた筈なのに。
更には自分が探していたサイコロもこちらに譲ってくれた
コイツは阿呆か……イクサバでかける情けなどあって堪るか。

「それニしてもオマエ……阿呆ヤなァイクサバで敵に情けヲ掛けるたァ『愚の骨頂』ヤで」
笑いながらそのままの感情を相手にぶつけた。
狂笑ではなく心からニンゲン染みた笑い声。
「せヤが、……オマエみたいなどうしョも無い阿呆ハ嫌いヤないで?『宿敵』よォ」
刀を地に差し、腕を広げながら愉快そうに話し始めた。

「ククッ……オマエ、エエ奴ヤなァココまでコロスんヲ惜しくなったンは始めテや。
 実力的にも性格的にもナ。」
もし自分が生きたまま同盟軍にいれば、或いはコイツが魔王軍内にいれば
酒でも飲み交わせる仲にでもなれただろう。
しかし今は違う、互いの立場から退く事は出来ぬ。それにワシにャ奴がいるのだ。
相手はこれ以上に無い程の美味い獲物、ワシが食らわんでも奴が食らってしまう。

だがそれでも
「……どヤ?ワシ等の方へ下らンか?宿敵ヨ」
かつての我が身からは考えられもしない言葉。ゆっくりと話を続ける

「オマエはワシヲ『ザジン』としテ見てクれた、ザジンとして『強者』と言ッてくれた。
 『奴』ヤない『奴』の強さでジャ無く『ワシ』の強さヲ認めてくれタ
 それがワシャァ嬉しゅうテ堪らンのや、その礼ヤ。安心せェ地位は保証しタる。」

一回言葉を切ったが小声で小さく付け足す
「まア……こないナ事言うテも、オマエの答えハ予測はできトるがな……。」

そうなのであるココまで言ったが相手の返答は大体予測できる。
互いに戦いに身を置く者同士通じるものがあるのだ、刀を握り手に力を入れた。
怨霊が刀を体を侵食し、紫色の闘気が湯気の様に立ち上った。
320FALCON ◆uKCFwmtCP6 :2006/05/19(金) 02:19:09
>319
サイコロを投げると、ザジンは飛びつくように受け取って、安堵の声を漏らす。
しばらくサイコロを握っていると、ザジンは恥ずかしさを隠すように礼を言ってきた。

>「それニしてもオマエ……阿呆ヤなァイクサバで敵に情けヲ掛けるたァ『愚の骨頂』ヤで」
>「せヤが、……オマエみたいなどうしョも無い阿呆ハ嫌いヤないで?『宿敵』よォ」
先程までの作ったような笑い声とは違い、自然な笑い声で語り掛けてくる。
ザジンは自分を主君の敵ではなく、宿敵と認めたからなのだろうか?

「俺は武道家としての誇りに基づいて行動しただけだ。礼を言われる筋合いはねえよ。
 だが、宿敵と言ってくれたのは嬉しかったぜ。ザジン」


>「ククッ……オマエ、エエ奴ヤなァココまでコロスんヲ惜しくなったンは始めテや。
> 実力的にも性格的にもナ。」
>「……どヤ?ワシ等の方へ下らンか?宿敵ヨ」
>「オマエはワシヲ『ザジン』としテ見てクれた、ザジンとして『強者』と言ッてくれた。
> 『奴』ヤない『奴』の強さでジャ無く『ワシ』の強さヲ認めてくれタ
> それがワシャァ嬉しゅうテ堪らンのや、その礼ヤ。安心せェ地位は保証しタる。」
ザジンは刀を地面に突き刺して、こちらを勧誘してくる。
魔王軍に入れと。
だが、FALCONの答えはもう決まっている。

「悪いが……俺はサタン様の軍門には下れない……
 実は俺……オーガス皇国の武道家なんだけど、サタン様以外の魔王様の軍に入ってんだ……」
そう、FALCONは自分の親の軍に掛け持ちで入ってるのだ。

「お前も魔族なら聞いたことがあるはずだと思うが……
 化け物みたいな……そう、魔王様達に匹敵する位の力を持った人間の男と婚姻を結んだ女性の魔王の話……
 ……実はその二人は俺の親だ……」
遠い目をしながら、FALCONは語る。

「俺は母さんの軍の特別戦闘部隊に入ってる。次代の魔王になるためにな……
 だから、サタン様の軍に入ると、俺は皆を裏切ってしまう……
 敬愛する、俺が魔界に行くきっかけを作ってくれたオーガスさん。
 俺を心配して見守っててくれる父さんと母さん。
 そして……俺を信頼して、魔界で俺の帰りを待っててくれる妻を……俺は裏切るわけにはいかない!!」

体全体に漆黒の気を更に激しく輝かせ……
決意を新たに……
自己を信頼してくれる者達の顔を心に浮かべ……

「第2ラウンド始めようぜ!!ザジン!!」

321アステラ ◆r7kOcOEpyM :2006/05/19(金) 15:46:00
>307
>「わざわざ出向いてきてくれるからな。歩き回ることも無い」
「なるほどな、確かにそうだ。」

>槍は弧を描いてアステラの側面を狙う。
>アステラの背後から細い土の槍が数本飛び出した。
>枯れたイバラが蔦を伸ばし、鎌首をもたげた蛇のように襲い掛かる。
>刃が赤熱し炎が小さく踊る。踏み込みながら逆袈裟に切り上げた。
セシリアは精霊を操る・・・今までは2、3体まで同時に操ったところを見たが、
今回は4体同時に仕掛けてきた。離れている間に成長したのか、元々なのか。
どちらにせよ、精霊による攻撃は独特の波動の予兆がある為いなす事自体は難しくない。
槍を裏拳で弾き、土の槍を身をよじって交わし踵落しで叩き折り、それをイバラに向かって蹴り飛ばす。
そして最後の逆袈裟の炎の斬撃を紙一重で交わした・・・が、炎のリーチを失念して衣服が燃える。
炎は肉を焼くが、お構い無しに後ろ回し蹴りで腹を狙い、同時に右手で魔弾を放つ準備をする。
完全に悪魔と化した今なら、チャージに殆ど時間はかからない。勿論、時間をかければ威力も上がる。
322冴波&「剣」 ◆QCuhq9l.Ig :2006/05/19(金) 18:17:17
>316-317
至近距離で放った紅い水の球は見事に命中した。
といっても、至近距離で放てば避けるのは容易な事ではないだろうが。
しかし、これがまずかったようだ。

>それと同時に殻が割れる様な鋭い音と何か糸みたいな物が切れるブチブチッという鈍い音が鳴り響き
>黒い砂埃みたいな物がぶわっと出て視界を埋めていく。
>「きゃぁああぁあああああああぁあああああああ!」
「なに!?」
悲鳴に驚いて剣を引いて後ろに飛び退る。
・・・そしてそれは姿を現した。

>黒い砂埃が晴れていく。
>視界がじわじわと開いていきそこに現れたのは片膝を付いてる
>右手が醜い直径6mほどの巨大な怪物の手と化していた誓音だった。
「その人間の姿は偽り・・・ということか?」
背中を冷や汗が流れ落ちていく。どうやら、とんでもないものを起こしてしまったらしい。

>「…いきますよ…。」
>冴波の方を再度向く。そして誓音は怪物の手を冴波を掴み潰すため伸ばした。
>?さっきの悲鳴の手とは訳が違う。掴まれれば大怪我物、並の人間なら骨が全身砕けるどころではない。
「くっ・・・!?」
伸びてくる腕を避ける為に、更に後退しようとしたところで眩暈を起こして足が崩れた。
どうやら、先ほどからのダメージが<痛み>という形で認識はしてなかったが・・・。
実際はかなりキていたらしい。足を音の銃弾が貫き、振動が脳を揺さぶっていた・・・。

右足が異形と貸した誓音の腕に掴まれる。
「捕まるわけにはいかない!」
「<未生天:生成・氷槍>」
足元から吹き上がった冷気が幾本もの氷槍を作り、自分の足ごと貫く!
もっとも、急ぐ余りに狙いはままならない。とりあえず脱出できればそれでいい。
痛みがエラーという形で脳内に走るが、それを無視しよう。
とりあえず、即席の氷を足に繋げて代わりとする。

「その姿、守る筈の人間にいつか背かれるだろうな。『バケモノ』だと。」
気づけば、大剣には相当量の赤い水が集まってきていた。軽い『地響き』が砂浜を揺らす。
それは、第二の刀身を形作ってゆく。その長さは数メートルから10メートルに到達しようとしている。
「<未生天:強化・生成⇒空断ちの水剣>」
「・・・砕き、溶かして消し去ってやろう。その姿も!」
巨大な赤い剣が、その膨大な質量を以って誓音へと振り下ろされる!
323カイザー ◆OrJKdYNK3U :2006/05/19(金) 21:14:03
>風船の膨らみは弾けた。
>ほんの刹那の無音を経て、耳をつんざく爆音が、城壁を打ち震わす。

カイザーが剣を振り終えたか終えていないかは曖昧であった。
しかし、エヴァンスの身体…いや、正確には装備の威力であろう。
至近距離で衝撃波をその身に受けたカイザーはいとも簡単に吹き飛ばされた。
尤も、瓦礫や砂埃が舞い上がった影響で何処へ吹き飛ばされたのかは分からなかった。

>「「悪くない勘だが、如何せんやり口が不器用だったな、聖騎士。
>さあ、私はもう一手だけ待ってやる。掛かって来い――生きているならば」」
上空ではエヴァンスの声が響く。カイザーを挑発しているようだ


「やれやれ、ガキは調子に乗ると始末に終えないな。」
空を飛んでいるエヴァンスよりも遥か上空、そんな場所からカイザーの声は響いた。
そして、太陽と同調するかの様に輝く聖闘気をその身に纏うカイザーの姿も上空にあった。
「城を壊したからには、説教とお尻ペンペンぐらいじゃ許してやらんぞ。
 サタンを倒した後に、わざわざ城を建て直す手間が増えたのだからな。」

衝撃波の直撃を受けた瞬間、
このままでは地面に叩き付けられる事を悟り、己の聖闘気を下方向へ爆発させ、上空へと吹き飛んだのだ。
その咄嗟の判断が功を奏したのか、カイザーの傷はほんの軽傷で済んだ。

勿論、飛んでいる訳では無いので後は落ちるだけだ。
「俺は落ちるだけ…だが、貴様ぐらいなら地獄へ道連れに出来る」
カイザーは眼下のエヴァンスに狙いを定めた。
「ブレンテル流、飛翔の技!ジェットストーム!!」
カイザーの周りの聖闘気が光の奔流を生み、聖闘気は一瞬の発光と共に急激な速さで一直線に押し飛ばした。
光の闘気を身に纏って敵へ向かい飛ぶそれは、銃口から撃ち出される弾丸程度では比べ物にならない程に途轍もなく速い。
両手に構えられた剣は、突きの体制でエヴァンスを斬り裂かんとしていた。
324名無しになりきれ:2006/05/21(日) 18:54:20
ついに、同盟軍と魔王軍の最終決戦が始まった。
お互いが鎬を削り合い、相手を討ち滅ぼすべく戦う。
果たしてこの戦いの勝者は……


おっす、オラ悟空。
とうとう戦争が始まっちまったなぁ。
みんな、ものスゲエ気を持ってんから、オラワクワクしちまったぞ。
こりゃ、どっちが勝ってもおかしくねえから、オラも戦いに行ってみるぞ。

次回、騎士よ、今こそ立ち上がれ!!
行くぜ!!大決戦!!

オラはサタンってヤツと一番戦ってみてえなぁ
325名無しになりきれ
お父さん、次スレ忘れてますよ

騎士よ、今こそ立ち上がれ!!〜行くぜ大決戦!編〜
http://etc3.2ch.net/test/read.cgi/charaneta2/1148035082/l50