1 :
CODE:マスター:
2 :
アムロ:2005/06/11(土) 00:38:51
うおおおおおおおおお!2だ!!
では改めて色々説明させていただきます。
特殊能力:ある日を境にある一定の条件を満たしている世界で少数の人間に力が備わった。
まだはっきりとした名前は無いが呼称は『特殊能力』と呼ばれている。
特殊能力は『一字の漢字』からなる言葉でその能力が理解できると言う。
時代背景と組織:普通の人間が能力者をいたぶる人種差別が起こった。
最初は些細なものであったが、やがてはとても酷いものとなり人を殺すほどになっていた。
しかし能力者も人を殺すまでになると遺憾し、その持ち前の能力でやり返すようになる。
普通の人間と能力者の亀裂が生じた瞬間だった。
そして一人の人間が能力者たちに呼びかけた、それが私『CODE:マスター』。呼びかけの内容は『自由の楽園』というもの。
能力者であるならば大人のみならず老人も子供も受け入れた。
能力者は団結し、一つの組織を作った。
そしてその組織の誕生と共に皆東京に集まり、東京を占拠…いや、制圧をした。
東京都永田町の『国会議事堂』を拠点とし、今も尚、活動している…。
ヒエラルキー:組織は頑丈な縦社会となっており、私CODE:マスターはその頂点(総統)に君臨しています。
そこで簡単な説明をグラフで説明いたしましょう。
/ \
/ \
/ \
/ 【上級第一位】\ ← 総統
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
/ 【上級第ニ位】 \ ← 幹部
/ 【上級第三位】 .\
/ . \
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ \
/ 【中級第一位】 \ ← 戦闘員
/ 【中級第ニ位】 \
/ 【下級第一位】 \
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ .\
/ \ ← 市民
/ \
/ \
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
【普通の人間】 【別勢力】 ← 敵
参加なさる方は長いですが注意事項を良く読んでからこちらに明記をお願いします。
注意事項
※私の名前は『CODE:マスター』と言わせて頂いておりますが、
参加者の方々には普通の名前をフルネームでお願いします。
※この中に『国籍』とあります。
あくまで『日本人』だということを確認するものですが、日本人ではなくても構いません。
※これは私的なものですが、一字の漢字を表記する際に『火』『水』『風』『土』『氷』『雷』『光』『闇』の四大元素他は
なるべく控えさせていただきたいと思っております。
しかし、今明記した八つの属性を『含んでいる』能力またはその八つの能力の一つであるが『漠然としていない』能力
というものであれば許可します 例:『雲』(水 雷を使っている) 『石』(土であるが漠然としていない、範囲を狭くしている)
ですが、『炎』『地』といった文字を変えただけで中身は変わらないというものはお控えさせていただきます。
ご不満がございましたら、私へどうぞお知らせください。
※次に強さについてのお願いですが、都市を大手一つで粉砕するような力は控えさせていただきたく思います。
あくまで『特殊能力』ですので特殊な技を駆使して特殊に破壊をなされればいいと思います。
※越境は許可、ただし他人に迷惑は掛けないように。
名前:
通り名:
特殊能力:『』 (※←には漢字一時を明記してください)
能力の説明:
能力の長所:
能力の短所(弱点):
階級:
年齢:
性別:
国籍:
身長:
体重:
性格:
容姿:
装備:
必殺技:
好きなもの:
嫌いなもの:
仲間に一言:
名無しに一言:
みんなに一言:
・「特殊能力者」の勢力はどのくらいに分かれているのか?
また、「能力者」グループ間の抗争はあるのか?
:能力者グループは大小さまざまに分かれています。
:思想も様々で、能力者グループ間の抗争もあります。
:東京を制圧したグループと敵対しているグループと一般人が手を取り合っているわけで
:はありません。
:一般人に迫害されながら制圧グループと戦うグループが殆どです。
:共存を望む一般人と共闘しているグループはごく一部です。
・東京を制圧した組織の規模は? 武装は? 人種・国籍の割合は?
:東京を制圧した組織の規模は1000人ほど。能力者グループとしては最大のものです。
:武装は近未来兵器を手に入れています。
:人種・国籍は95%が日本人です。
・東京に残っている普通の人間はいるのか?
:普通に残っています。
:制圧された事すら知りません。
:一般人の大部分は能力者を危険視・敵対視していますが、共存を望むグループもあります。
・東京制圧によって内閣や各省庁、自衛隊と警察機構の指揮系統はどう変化したか?
各国の対応は? 軍事介入はあるのか? 国連軍は?
:東京制圧と言っても、極中枢のことであり、
:国は制圧された事を機密事項とし、本拠を別に移し奪回の機会をうかがっています。
:国際情勢が不安定で、外国勢力の介入を避けるためです。
・戦況は? 補給線は存在するのか? 制圧時の戦闘で破壊された建物や交通網は?
防衛ラインはどこ? 両勢力、どのくらいの戦力を前線配備しているのか?
東京湾の防備は? 制空権は? 洋上からの攻撃や、空爆には対抗出来るか?
弾道ミサイルやBC兵器等の大量破壊兵器に対抗する策があるのか? 又は、使用出来ない事情があるのか?
:都市機能確保の為、大量破壊兵器や重火器の投入を見合わせています。
:基本的には都市型ゲリラ戦です。
・国内外で他にも「能力者」の武装蜂起は起こっているのか? また、それらとの合流の予定はあるのか?
:話が広がりすぎるので国外は考慮に入れないことで。
うぁ、馬鹿設定そのまま引継ぎやがった
避難所で少しは煮詰めてから次スレ立てろよ
もともと廃スレリサイクルなスレだってわかってる?
廃スレリサイクルはリサイクルだが設定は丸々受け継いでるぞ
前スレちゃんと嫁よ
世界観や状況かわってんじゃん
東京廃墟の戦闘区域だし
レジスタンスや政府の関係もあるし
組織の規模や目的変わってんじゃん
話の流れで変わってきてんだからそのままコピーしてもしゃあないだろ
脊髄反射でスレ立ててアホかっつうの
現在参加してるキャラハンの自己紹介テンプレも入れなあかんし、ちったあ考えろよ、ホント
前スレ嫁でリンクはりゃいいってもんじゃねえよ
このスレから参加する人のことも考えろ
つうか無理だろからせめて避難じょて話し合ってからにしろ
いまさら遅いけど
10 :
味噌魔人 ◆ZAgKuX9lgw :2005/06/11(土) 02:01:33
アンセムのために越境して来たよー。
選ばれし能力――――越境。
存分に発揮致します。
『越』
越える者です。
書き捨てなのでレスは不要でございます。
11 :
名無しになりきれ:2005/06/11(土) 03:27:04
>1は責任持って削除依頼
12 :
名無しになりきれ:2005/06/11(土) 04:27:46
はさみじゃがー良スレ?
とりあえずこちらに書き込んでおきます。
前スレ残り300終わらせるつもりで。
前スレ>701>702
矢坂と須田の話を聞き、短い間だか考える。
何を考えるのかいうと、“時間稼ぎ”のための理由付け。
「なら、俺も出向こう」
玖珂の発言に、場内が一気にざわついた。
須田が潜入すると言い出したのでさえ驚いているのに、玖珂まで向かうのか。
「ま、俺は潜入した須田から連絡を受け、突入する指揮とバックアップ担当ってトコか。
議事堂は井原、えこ、それに如月に任せる。蝶子ちゃん繭美ちゃんの卜部姉妹もいるからな」
玖珂は数度、周囲の反応を見る。
皆、驚いた表情こそしているが、玖珂の言い出した事については反論はないようだ。
玖珂は続ける。
「ここ数日の状況を見る限り、レジスタンスは日中動いているのは明らかだ。
聞いた情報だと、特殊な泡を出す少女、獣に変身する男、侍の格好をした男が動いてる。
日高美優も横浜のパレードを終えた直後にそのアジトに向かっていることから、
“日中は組織の人間はアジトに目を向けていない”と油断しているものと考えられる。
レジスタンスや組織の人間ではない者、日中に行動を起こしている。そこが狙い目だ。
アジトが手薄とは思えないが、貴重な戦力である能力者が何人もいなくなるのは必至。
そこに須田を潜入させて合図を待ち、合図があり次第、一気に突入。一網打尽てわけだ」
と、纏めていく。
計画立案者は矢坂、潜入は須田、突入後の指揮は玖珂と、顔ぶれに至っては申し分ない。
後は突入する人員だが・・・
「元々、組織の能力者は、非能力者の迫害や差別から守るため集めた、大半が“戦闘に能力を生かせない”奴等だ。
戦闘に使える能力は一握り程度。ここにいる重役各人も、主に事務仕事や指揮統率などに長けた能力であるだろう。
レジスタンスの能力者も、戦闘に出ているのが日中に動いてる奴等プラス数十人と見ていいだろう。それに向こうは非能力者もいる。
負け戦をする気はない。外部から戦力を集めたいのだが、生憎その系統のパイプは切っちまってるのが組織の現状。
日高美優のお陰で薄らいではいるが、日本は能力者の差別意識が強い国だ。外部に協力を求めることはできない。
能力者からの依頼を歓迎している傭兵を他国から呼ぶのは時間がかかりすぎる。そこで、だ」
矢坂に目を向ける。
「“貴方のトコロ”の部下をお借りしたい。貴方のトコロなら銃の扱いに困る方はいないだろうから安心できる。
それに加えて、引きつけ役になる囮もお願いしたいんだ。その時に限ってレジスタンスが出ててませんでした
・・・じゃ、話にならないからな。引きつけ役は能力者がいいな。例えば身体能力を上げて、簡単に逃げられる奴とか。
決行時間は明日、13時辺り。日が落ちるまでに決着がつけば上々。つかんでも、奴等を根こそぎ削っていければ良し」
玖珂は矢坂を見つめたまま、玖珂は返答を待った。
どう転がろうと、また別の策を考えればいい。
>700
泡に制止され、 ママチャリと止まる。
「ありがとさん」
苦笑し、虹羽は謝った。
そして、ママチャリを泡から出す。
「はよ乗って!これからアジトまですっ飛ばす」水菜を呼ぶようにママチャリの後ろをぽんぽんと叩いた。
「うちは政府から要請を受けて、国連NGOの能力者保護協会から派遣された保護官や。戦闘向けやない能力者と非戦闘員を保護と任されとる」
水菜も虹羽が能力者だとわかった時から、組織でもレジスタンスでもない単なる能力者とは思っていないだろう。
虹羽は明るく笑うと、カゴに入れておいたリュックから地図を取り出し、懐中電灯と共に水菜に渡す。
「睡眠が完璧やないから能力は使えないねん。マッハでこいでアジトまで行くつもりやから、ガイドよろしくな」
『水菜と二人乗りでアジトへ向かおうと提案』
>15
(…これでこの子が私の能力が何か完全に分かった…はず。)
そう心の中で呟くと、虹羽が提案を出してきた。
「そ、そうだったんだ…政府の…。アジト?うん、わかった。」
政府がレジスタンス保護…水菜はレジスタンスのリーダーは既に水無月と話をつけたと理解する。
そして恐らく返事は承諾。全面的に手を組んだのだろう。
そうと分かった水菜は急いで虹羽のママチャリに飛び乗る。そして地図と懐中電灯を渡された。
「うん、任せて。じゃあまずは…」
落とされないよう虹羽にしっかりと寄りかかり、前方に懐中電灯を当てつつ、
残光で地図を照らし凝らし見る。
前スレ>702
矢坂は須田の意見をあっさり承諾した。
「私は彼が裏切るとは思っていませんが、本人が居ないのなら仕方が無いですね。
須田君ならば能力も潜入に適したものですし、実績も申し分ない。
欲しい物があれば研究所の者に言ってください、大抵の物は揃えられると思うので」
>13>14
玖珂の突然の申し出に矢坂は驚きもせず、ただ目を細くするだけだった。
「ほぅ、玖珂さんも行ってくれるのですか、これは頼もしい。
貴方の意見にも反論はありません」
アジトに突入する人員を求められて、矢坂は内心ほくそ笑む。
なにしろ、この提案は組織内での発言力を増す絶好のチャンスなのだから。
「私の部下を、ですか。 …良いでしょう、地下に引き付け役を含め数人。
地上には50人程と言った所ですか、少ないようならば更に増やせますが…
まぁ、細かい話しは後でしましょうか、皆さんお疲れのようですし」
>13-14>17
先程少し喋りすぎたきらいもあるのでまたも黙っていた。矢坂と玖珂が中心となって会議を進めてゆくのを眺めながら。
(あらかた決まったか)
特に反論する理由はないし、意味もない。一息つくと周りを見渡す。疲れ切った表情の幹部もちらほら。
「とりあえず潜入は水道使ってでいいよな?場所はトイレの個室ぐらいが適当か。あとは連絡する方法とか諸々…」
確認するように声をあげる。決めなくてはいけないことは少なからずあるのだが。
「とまぁこれらを別に今決めてもいいんだが、もうこんな時間だろ?早めに寝て英気を養っておきたい。
とりあえず今日はここまでにして明日の朝にでも最終打ち合わせはどうだ?眠たそうな幹部殿もいらっしゃることだし」
さっきまで眠そうな顔をしていた幹部が面映ゆい表情を浮かべる。
「何より、俺が眠いんだ」
本心を隠そうともせずきっぱりと言い切った後、大きな欠伸をする。
>17>18
「じゃあ、そろそろお開きにするか。では明日の八時に最終会議、十時に出発、十三時決行だな」
玖珂の言葉を皮切りに、幹部達は会議室を出ていく。
玖珂も例外ではなく、立ち上がり会議室を出るつもりだ。
「あぁそうだ、矢坂」
矢坂の元に行き、玖珂は耳元で口を開く。
「現場の指揮は俺だが、全権はお前にある。動くならうまく動けよ」
そう囁き、玖珂は部屋を出た。
私室に戻るわけではなく、忘れてはならない後片付けをするために須田の私室に向かう。
用意周到に途中で大きめのビニール袋を手に入れ、瓶や缶を片付けていった。
「酒は美味かった。須田達と話せて・・・まぁ、良かったな」
片付けを終わらせ、玖珂は須田の私室を出、玖珂は境のいる地下室に来た。
「ほどほどにしといたよ」
「どうも。でも、相手方はたくさん飲んだみたいですね」
「まぁな。こんな形で会ってなきゃ、いい飲み仲間になってたさ」
「・・・寂しいですね」
二人揃って、少ししんみりとなってしまう。
酒蔵とワインセラーになっている地下室はひんやりと冷たく、静かな空間。
「明日、ちょっと出ることになった。境ちゃんにお願いなんだが、アルコール度数の高い酒、用意してくれるか」
「・・・えぇ」
「ありがとよ」
「いえ、一度でも戦いのお役に立てるなら」
俯いて礼を言う玖珂に、真剣な顔をして境は返した。
「じゃ、俺寝るわ」
玖珂は立ち上がり、階段を上がっていく。
「お別れですか?」
唐突に境が言った。
「予定通りに進めばな」
「じゃあ、もう会うこともなくなるんですね」
「そうなるな。境ちゃんの酒、美味かったよ。今まで飲んだどんな酒より」
「どこかでお店出します。そして有名になります。だから・・・」
境の言葉を、玖珂は遮るように話し出す。
「悪だぜ。俺達のしてるこたぁ。業を背負うのは、お前達を巻き込んだ俺達と、能力を私利私欲(たたかい)に利用する奴等だけでいい」
突きつけられるような言い方に、境はもうその話題には触れられなかった。
「・・・酒は地下室の扉の前に、置いておきます」「あぁ。じゃあな」
「さよならは、絶対に言いません」
「・・・」
境の言葉を背中に受け、玖珂は黙って地下室を出る。
玖珂はそのまま、自分の私室に帰った。
『就寝』
国会議事堂近くのマンション。その六階に弓を背負う流星が上がってきた。
「…ありがと」
寝ているものだと思っていた弓からの突然の声。弓は流星の背中から降りる。
「起きてたんですか」
「さっきからね。だけど楽だからこのままアッシーさせとけばいいかな、って」
「酔いは?」
「さめてる」
「じゃあいいですね。続きを話しましょうか」
「続き?」
「あの件について、です」
驚いた弓は周りを見渡す。誰もいないが。だが、こんな場所で話すものなのだろうか。
弓はポケットから鍵を取り出して目の前の部屋を開けた。
「入んなさいよ。お茶は出ないからね」
マンションの一室。綺麗に片づけられてはいるが、小物一つ一つに独特のセンスが感じられる。
「では、あの件について、です」
しばし落ち着く暇もなく流星は話を切り出す。
「実は須田さんは、政府側とコンタクトをとってるんです」
弓は一度疑問符が付いた顔を浮かべた後、合点したのか心底驚いたような顔をする。
「な、何のために?」
「組織、政府、最終的にどちらが勝利しても、高い地位を手に入れるためです」
「須田さんが?」
「須田さんが、です。あの人の功名心の凄さはよくご存知でしょう?」
弓はその通り、と言いたげな顔をした後小さくため息をつく。
「どちらに付くかは、組織と政府が直接ぶつかった時、優位な方を選ぶそうです。
組織を裏切って政府に付いても、組織を裏切ると思っている政府を更に裏切っても、
どちらにせよかなりの地位は約束されます。
いやぁ須田さんの出世欲は果てしないですよね。きっと世界征服でもしない限り満足しませんよ」
流星は笑いを浮かべながら答える。笑いごとではないのだが。
「…で、です。弓さんには進退を聞かなくてはなりません。僕らとともに歩むもよし、
袂を分かって組織の人間として生きるもよし、です。僕らと一緒の道が一番危険でしょうね」
一呼吸。
「僕にはもう須田さんしかいませんが、弓さんは他の道も十分選べます。どう決断しようと、僕らは何も言いませんし」
「あんたね、人を見くびるのも大概にしなさいよ」
弓の声には、どこか呆れも含まれている。
「一朝一夕のつき合いじゃあるまいし。あたしがあんたらを裏切るような真似すると思うの?」
「…ありがとう、ございます」
「礼なんか言われる筋合いはないわよ。あたしの意志だしね」
それどころか、弓は嬉しくもあった。やっと、仲間になれた気もした。
「じゃ、それだけです。今日はこの辺で」
「おやすみ」
「おやすみなさい。また明日にでも」
ドアから出てゆく流星を見送ってから鍵をかけ、ベッドに倒れ込むと同時に弓は眠りに落ちた。
>20
玖珂の手伝いもあって部屋の片づけはスムーズだった。玖珂が出ていった後、須田は布団を引っ張り出して横になる。
ついさっき、須田本人がアジトに潜入すると言ったのは別に気まぐれでも道楽でもない。
(表向きの政府の方とは話がかなり進んでんだが…)
『真の政府』というものがあるらしい。その名を知ったのもごくごく最近ではあるのだが。
その日本の裏の政界を牛耳っているらしい組織へのコンタクトがとれていないのだ。
だからこそ、アジト潜入は渡りに船だった。今、アジトにはアイドルの日高美優がいるらしい。
その日高美優が総理大臣とテレビに映っているところを須田は目撃していた。
表とはいえ総理大臣との繋がりを持っているのであれば、もしや、彼女は裏とも。
短絡的思考であることは分かっているがこの際気にしない。とりあえず手がかりが欲しいのだ。
(明日は…どうする…か…)
明日のシミュレーションを頭で考えながら須田はうとうととまどろんでいった。
>20
会議も終わり、矢坂は私室に戻っていた。
既に阿藤を含め、配下の者には次の指示を聞かせてある。
阿藤は色々不満そうだったが当日になったら確実な成果を残してくれるだろう。。
矢坂はデスクにある端末を操作しながら、先ほどの玖珂の言葉を反芻する。
>「現場の指揮は俺だが、全権はお前にある。動くならうまく動けよ」
…なら遠慮なく動かさせて貰いますよ、玖珂さん。
心底愉快げに顔を歪め、端末を見る。
『能力の発現とその制御』
主に非能力者に能力を付与させるための方法や、その他実験のプロセスなどが克明に記されている。
これが矢坂の研究の成果であり、いざと言う時の保険でもある。
組織については何の愛着もないが、これが完成するまでは存続して貰わない困る。
そう考え、時折送られてくるデータを見ながら端末の操作に没頭していった。
>16
後ろに乗せた水菜に方向を指示されながら、虹羽は全速力でママチャリをこいだ。
お互い能力者、ある程度は訓練している者同士、遠慮はない。
「なぁ、水菜!」
不意に虹羽が声を上げた。
走るママチャリの風を切る音に掻き消されないように、声を張り上げる。
「うちな、なんでこの仕事してるかっていうと、夢があんねん!」
前だけを見ている虹羽の顔は水菜には見えないが、声のトーンから笑っているようにも聞こえる。
「能力者がみんな、差別なんかされへんで笑ってられる世界をな、作りたいんや!」
虹羽の声は、、本当に実現させてしまいそうな力を持っていた。
無論、そのような世界にするためには、非能力者の理解や、互いの歩み寄りが重要になり、実現にはまだ何年もかかるだろう。
「だから今、うちらがしてる仕事は、能力者を受け入れてくれる国に保護をお願いしてる…その国なら、自分がしたい仕事もできるし、能力を役立てることに使えるんや!!」
思い切り叫んだ。
夜の、誰もいない静かな街に、虹羽の声が響く。
「うるさすぎたな…」
苦笑しつつ、また黙ってママチャリをこぎ続けた。
何十分経ったろうか、アジトの目印となるビルが見えた。
ママチャリはビル向かいの裏路地に止め、虹羽は水菜に向き合う。
「うちにはうちの、水菜には水菜のすることがある。うち、能力を戦うことに使う人嫌いやってん」
虹羽は続ける。
「けどな、結局は、戦いが起こってしまったから、能力を戦いに使わなアカンくなった。水菜もそうやろ?だから仕方ないねん」
悔しげな顔をしていた虹羽だったが、自分でそれをふりほどくように笑顔を見せる。
「戦いが終わったら、水菜も能力者保護協会に入り。うちと水菜で、みんなが笑っていられる世界を作ろうや」
満面の笑みと言っても過言ではない。邪気のない笑い。
「なんて無理に引き入れても意味ないな。でも、この戦い水菜達が罪を問われることはあらへんよ。能力を戦いに使ったから危険視はされるかもしれんけどな…」
自分が何を言いたいのかわからなくなって、虹羽は唸った。
「ともかく、アンタ達レジスタンスはうちら能力者保護協会がなんとかする!だからドンと胸張って戦ってき!!」
虹羽は盛大に笑って、水菜の背中を叩いた。
夜が明けましたよっと
水菜がまだですが。
というよりキャラハンに許可をとって時間は進めたほうがいいのでは。
レジスタンスのアジト。
奥臥鱒二は、寝室の自分のベッドから突然むくりと起き上がった。
「……むぅ」
枕元のデジタル時計を見る。AM5:58。だいたいいつも通りの時間だ。
「…ふぁ、あーあ。寝起きでおてんと様が拝めないのは辛れぇな。もう慣れたけどよ」
鱒二は大きく伸びをしながらぼやく。アジトは廃ビルの地下にあるため、当然毎朝日の光に起こしてもらうなどという贅沢は期待できない。
鱒二はおもむろに、上にうんと伸ばしていた手の片方をすぱんと叩きおろした。『ジリ…』といいかけていた目覚まし時計が瞬時にして黙る。叩かれた勢いにぐわんぐわんと揺れた。
AM6:00、ジャスト。
「うっし、今日も働きますか」
鱒二はベッドから飛び起き、身支度を始めた。着替え、歯磨き。そして食堂へ向かう。
名前: 奥臥 増次
通り名: オーガ(ファーストネームの音読みと、能力の『鬼』を引っ掛けて)
特殊能力:『鬼』 (※←には漢字一時を明記してください)
能力の説明: 鬼化する。具体的には、身長238cm体重186kgで角の生えた赤肌の超筋肉質の大男になる。
能力の長所: コンクリートの壁を叩き割り、電柱を引き抜いて振り回す剛力。本気で守れば普通の拳銃程度では致命傷を与えられない硬い肌と筋肉、並外れた生命力。
筋力が余程に強いため、体の大きさの割に意外と素早い。これらを加味した接近時の戦闘能力は凄まじいものがある。
能力の短所(弱点): 鬼化中は凶暴、常に興奮状態でいわゆる「単細胞」になる。敵か味方かを識別するのに毛が生えた程度の思考能力しか持たない。
単細胞のため精神に作用するタイプの能力には並みの人間以上に弱く、また肉体の強さで防げないものに対しての耐久度は普段と変わらない。
要はただのマッチョなので、戦闘の場面によってはほとんど意味を成さない。(ロングレンジでの銃撃戦とか)
階級: レジスタンス
年齢: 34歳
性別: 男
国籍: 日本
身長: 185cm(→238cm)
体重: 76kg(→186kg)
性格: 温厚で照れ屋。顔の割にかなり几帳面。
容姿: 岩を荒く削りだしたような男面。ごつい。不細工だが、愛嬌のある不細工。
常にカーテンを腕や体にくるくると巻きつけたような大外套を身に着けているが、これは普通の服を着ていても鬼化時の体積変化で破れてしまうためである。
外套は鬼化するとするすると解けて落ちように着ている。外套の下は縞柄のパンツ(口は特注ゴム)のみ。
装備: 拳銃、ひん曲がった鉄の棒
必殺技: 腕力に任せた攻撃全般。
好きなもの: 正確な時計
嫌いなもの: 豆
仲間に一言: まあ、よろしく頼むぜ!
名無しに一言: 初参加なんで色々不都合があるかもしれねえけど、優しく指摘してくれよな。
みんなに一言:えーと、初書き込みです。戦々恐々と書き込んでます…。
なんとかお話を壊さないように頑張りたいので、何か不都合があったら何でも言ってくださいね。「辞めろ」とか…
>26
あ、リロードせずに書き込んだら…早速やってしまったか。
うーん、とりあえず他の皆さんの書き込みを待ちます。
>26
避難所に半日前に告知
反応ゼロでしたが何か?
>29
キャラハンが全員見てるとは限らないのでは?
てか、全員夜の行動終わってないし。
名無しが任意で行うことでもないと思いますが。
>30
ごめん、本スレに「そろそろ朝にしてもいいですか?」なんて書いたら萎えるかと思って。
一応誘導もあったしキャラハンは避難所を見ている前提で考えてたよ。悪かった。
てか、前スレから見てた人だよね? 名無しが時間を進めるのは前スレからやってたというのもある。
戦争スレは誰も時間進めないから病院でグダった。名無しが時間進めるのは効果あるなと思ってる。
俺>29じゃないけども。 そっちがここで指摘してきたんだから「本スレ汚すな」は無しな。
この流れに無関係な俺が一言
「本スレ汚すな」
戦争スレがグダったのは真面目に戦闘してる連中がゆっくり(というか慎重)
だったのに、病院とかで馴れ合ってる連中が何も考えずハイペースで飛ばしたから。
それが全部悪いとは言わんが病院側だけ話が速く進んでたし、それだけ見て
そろそろ朝にしろとかうるさかったけど、戦場の方はそれじゃ時間が足りなかった感がある。
結局、休憩になった途端にただの病院馴れ合いスレになっただろ?
ここはそこまでバランス悪くないしGMもいないんだから、避難所で同意がとれなかったなら
全員の行動終了を待つべきだと思うよ。
>24
疾走するママチャリ、水菜は虹羽に進行方向をそこへそこへと声が風に遮られぬ様大きな声で、
そして指差しながら指示していく。
「んん?どうしたのっ?」
突如虹羽が水菜を呼んだ、水菜も大声で返答する。
「夢ー?…私も同じだよっ、皆が皆争い無く仲良くなれるようにしたいっ!」
必死に声を張り上げる。また、虹羽も思いっきり叫び上げた。
「…。」
政府…やはり思い違いをしていたのかもしれない。
能力者の集まる組織と非能力者の集まる政府は両親を殺した。もう何も信用できないと思った。
しかし…今、虹羽の姿を見ていると…。
顔は見えないが虹羽が苦笑いする様子を見て水菜もクスッと笑い合う。
やがて、レジスタンスのアジトが見える。水菜と虹羽はすぐ近くにある裏路地へとママチャリを止め、
そこから降りる。そして虹羽は水菜に向き話す。
「…うん。」
虹羽の悔しそうな顔、やりきれない彼女の気持ちに水菜は心を打たれた。そして
「…そうだね、皆の為になるならそれも…いいかも。」
一番信用できるのはレジスタンス。だが、虹羽の純粋無垢な言葉に思わず一言出てしまった。
しかし、水菜は表情が暗くなる。政府とレジスタンス。繋がれてはいるが、今は見えない枠で分けられた一つ一つの組織なのだから。
「う、…うん。」
虹羽に背中を叩かれ、水菜はよろっとふらつく。
「虹羽ちゃん。」
水菜は虹羽に呼びかける。
「私…虹羽ちゃんにだったら………ううん、なんでもない。じゃ、行こっ。」
>34
水菜が言葉を途中で終わらせるのを、少しばかり虹羽は困惑した。
その先を、いったい何を言いたかったのか。
だが、わざわざ聞く気にもならない。
「じゃあ、行こか」
虹羽は、周り警戒しながらビルに入る。
例の通路を通り、ゲートに着いた。
「えっと、IDカードはどこやったかな」
リュックを漁って、カードを探した。
レジスタンスにいる、戦えない、戦わない者達を逃がすために、今回限り使用する仮のカード。
認証が終わり、ゲートは開く。
すると、中ではリーダー達が待っていた。
「能力者保護協会より派遣された保護官の卜部虹羽です。保護対象の能力者、並びに非戦闘員をお受け取りします」
礼儀正しく、標準語を使う。元々東京の人間だった虹羽は、流暢な標準語を話した。
「明朝八時より保護対象の方達をヘリにて東京外に運び始めます。この人数からいって十数回に渡ると思われますが、ヘリを守ってくださるようお願いします」
虹羽は計画の経緯を説明し、頭を下げた。
「上のビルのが屋上が、ヘリポートだったようなので、それを。…本当は私の能力を使用するつもりだったのですが、トラブルにより使用が制限されてしまっているのでお許しください」
頭を深く下げ、そして虹羽は顔を上げる。
銃弾を『移』したのと、水菜と共に屋敷に『移』った時、屋敷で睡眠をとり能力を使用できる完全な状態にできなかった。
不完全な状態で能力を使用すれば、疲労どころか命に関わる。
「では私は、ヘリの手配を済ませます。みなさんは、避難の内容をレジスタンスの方達にお知らせしてください」
虹羽はそう言って、リーダー達と別れた。
虹羽は連絡を完了させ、ヘリでの避難の内容がメンバー達に知らせた。
避難の最中は、組織やその他の敵対グループにヘリが狙われる可能性がある。
アジトに残る能力者には、それの防衛を任されることになるだろう。
…これで、夜間行動は終了させて大丈夫かな?
ビル街の路地裏…むこうからおかしな年寄りがぶつぶつ言いながら歩いて来る。
「はて…ここはどこかいのう…?」
『おかしな』というのは独り言の事ではない。
この老人の格好の事だ。長い白髪を頭の上でしばり、着物を着て袴を履き、裸足に草鞋を履いて腰には一振の刀をさしている。
老人は立ち止まった。
「ふう〜っ…年をとると腰が…」
腰をトントン叩きながら老人は老人はまた歩を進めた。
名前:國島 伊之助
通り名: 御隠居
特殊能力: 『閃』
能力の説明:一瞬だけなら体を光速で動かせる。
能力の長所:あまりに速いので肉眼では確認できない。反射神経をも凌駕する。
能力の短所:あくまで一瞬だけしか使用できない。また、移動に使用する場合は自分の歩幅が限界。
階級:戦闘員
年齢:74歳
性別:男
国籍:日本
身長:163cm
体重:48kg
性格:のん気。
容姿:上記の通り。
装備:銘刀「閃雀」
必殺技: 『閃』を使用しての初段
仲間に一言:まだまだ若いモンには…
名無しに一言:これからよろしくの…
みんなに一言:初めてカキコします。ご指摘等ありましたらよろしくお願いします。
『国会議事堂私室』
「ふ・・・あ・・・やっぱりベッドが良いと目覚めも良いねぇ・・」
夜が明けた頃、亜門は入念にストレッチをしていた。
「さて、今日のお仕事は・・・昨日の夜の会議、何があったのか知らんがとりあえずまだ仕事の時間には時間がある。
せっかく良い部屋に止まったこったし名残でも惜しんでおくか。」
ストレッチのあと、手持ちの武器の整備と充電をしながら呟いた。
『私室でまったり』
日高一澄自室。
時刻は七時。
ゆっくりとベッドから美優が出た。
その姿は下着から付けていなく、床に散らばった服を集めて、着替えだす。
「起きたのかい」
「まだ寝てていいよ」
上着を着て、スカートに足を入れる。
「そうもいかないんだ。美優が眠っている間に連絡があってね、八時からちょっと大事な用がある」
「そうなんだ。みゅうも今日は生2本に収録1本で、CM撮影もあるから、たぶん帰りは深夜になると思う」
着替えが終わり、美優は軽く化粧をすると、一澄の頬にキスをしドアに向かう。
「じゃあお兄ちゃんも頑張ってね。私は優しくて澄んだ世界を」
「僕は美しい一つの世界を」
二人は意味ありげな笑みを見せた。
美優は手を振って一澄の部屋を後にする。
部屋の前には、マネージャーとボディガードが待っていた。
「待たせてごめんね。じゃあ、行こっか」
営業スマイルと言わんばかりに満面の笑みを向けて、美優はゲート脇ね駐車場に向けて歩き出す。
七時を少し過ぎた頃……
玄関ロビーでいつも通り朝を迎えた二人の双子姉妹。
繭美の持っている携帯電話が鳴り、繭美は携帯電話を取り出した。
「あら」
「どうしました?」
「見ればわかるわよ」
繭美は携帯電話の画面を見せる。
「早いですわね〜」
思わずはしたない声を上げ、手で口を塞ぐ蝶子。
「姉さん…」
「で、でも仕方ないのでしょうね。こちらと違って向こうは過度な抑止力がかかりませんし」
「そうね。あたし達もそろそろ行動を起こす頃、ね」
二人同時に、揃って立ち上がり、歩きだした。
歩調も腕を振る仕草も全て一緒である。
そして、しばらく歩いた後、着いた場所は、玖珂の部屋。
何も言わず同時にノックすると、
「卜部です。玖珂さん起きていらっしゃるでしょうか?」
「少し話したいことがあるの。いいかしら?」
部屋の中にいるであろう玖珂に向け、蝶子と繭美は言った。
>38
蝶子と繭美が行動を起こしたのと同時刻。
虹羽は、八時からアジトの上に位置するビルの屋上ヘリポートで行う、避難対象者の避難の手順の打ち合わせをしていた。
アジトに残る能力者や他のメンバーには既に伝令してあり、ヘリが他の敵勢力に狙われないように警護も頼んでおいた。
「えぇ。ヘリはヘリポートに、さっきメールしましたよね。それです」
左手に電話、右手にパソコン。どちらもレジスタンスからの借り物。
虹羽の周りには、リーダー達が囲んでいる。
「え?連絡した?どうしてそんや余計なことしたんや!!…すみません。、定時連絡ですから仕方ありませんね」
周りのリーダー達に頭を下げると受話器を再び耳に傾ける。
「警護は頼みました。はい、わかりました。では、失礼します」
電話を切ると、長い溜息をつきパソコンも電源を落とす。
「じゃあ私は、屋上に行ってヘリを待ちますので、避難対象者の方達の誘導の方はお願いしますね」
そう言って、虹羽は部屋を出ていった。
歩きながら背伸びをし、肩を叩く。
「あぁ疲れるわ。これだから緊迫した空気ってのは嫌やねん」
元の口調に戻る虹羽は、屋上に向かう少しの間の解放を楽しんでいた。
歩いていると、向かい側から誰かが来るのに気付く。
「ん?あ!あれは!!」
思わず声を上げてしまった。
虹羽はすぐさま向かい側を歩く人物の元へ駆け寄った。
が、ボディガードに阻まれ、寸前で目的の人物との接触は断たれる。
「すんません!うち、日高美優、いいえみゅうちゃんのファンなんですぅ!」
ボディガードをかき分けようとするが無理で、タックルをかますが軽く受け止められる。
「レジスタンスの制服やないけど怪しいもんやありません!うち、卜部虹羽。同じ能力者で、社会に貢献してる人間ですねん!!」
ボディガードで見えない美優を拝もうと、虹羽は必死に飛び跳ねていた。
食堂。
鱒二は大きな体でボソボソと朝食を嚥下していた。
朝は食べ過ぎない程度に、しっかり食べる。ゆっくりよく噛んで食べる。アバウトでいかにも豪快そうな外見とは異なり、彼は几帳面な性質であった。
ふと、彼の正面の席にコトリとトレーが置かれた。
「鱒ちゃん、ここいいかい?」
「おう、おばちゃん」
食堂のおばちゃんは返事を待つ気もなかったように席に着いた。鱒二の食べっぷりを見て、顔を顰める。
「そんないい体して、それっぽちかい?男ならもっと豪快に食いなよ」
「いいじゃないかよ。……あ、おい」
おばちゃんが身を乗り出して自分の皿からおかずを彼の皿にさっさと移していくのを、鱒二には止める暇も手段もなかった。
移したいだけ移し終えたおばちゃんは、少し満足そうに椅子に座りなおす。
「しっかり食べなさい。今日で、あたしが御飯作ってあげるのも最後なんだからね」
「ああ、そういえば」
鱒二ははっと思い出した。
「おばちゃんも今日のヘリで移してもらうんだよな、東京の外に」
「ああ、あたしも保護対象だってさ。ありがたいこったよ」
おばちゃんは深く笑んだ。箸を口に運ぶ。
鱒二は少し考え込み、それから移された皿のおかずを一気にかきこんだ。『捌』の能力による見事な包丁捌きで拵えられたおばちゃんの御飯は、もう食べられないのだ。
その様子を見て、もう40〜50年若ければ、あたしもあんたと一緒に残って戦ったんだけどねぇ、この包丁捌きで。おばちゃんはそう言って笑った。鱒二も笑った。
「いいかい」
二人が食べ終わり、おばちゃんは真剣なまなざしで鱒二を見据えた。
「どんな理由があろうと、国をのっとって自分たちのいいようにしようなんて許されることじゃあない。私達みたいな虐げられてる能力者だってそんな事望んでないって、
あんたの戦いでしっかり分からせてやるんだ。死ぬ時は、一人でも多く道連れにする。しっかりお国の役に立つんだよ」
「分かったよ。分かってるよ」
鱒二は手を振って苦笑した。その手を、すかさずおばちゃんの手が捉える。
皺の刻まれた暖かい手に握られ、鱒二は少し動揺した。
「……でもね」
おばちゃんはその手にぎゅうっと力を込めた。
「……死ぬんじゃあないよ。絶対に。全部終わったら、また御飯を食べにおいで」
「おいおい。それじゃ分からないぜ、死ねばいいのか、死んだら駄目なのか」
鱒二は苦笑した。それは、苦笑に見せかけた照れ笑いでもあった。それを見据えるおばちゃんの表情は真剣だった。
「死ねばいいなんて誰が言ったの」
「分かったよ、じゃあ、死なない」
そして感謝と別れの挨拶を済ませ、鱒二は警備に向かった。
「あ〜…わからん!な〜んもわからん!」
相変わらずぼやきながら、御隠居は見通しのいいハズの大通りをウロウロ彷徨っている。
「第一、わしが何処へ行けばいいのかさ〜っぱりわからん!呼ばれたかどうかもわからんわい!!」 道に迷って、御隠居はヤケになっているようだ。
「こんな年寄り、何の役にも立たんじゃろうに…ぶつぶつ…ん…?」
ふと何かに気付き、御隠居は足を止めた。
「…避難…勧告…?」
御隠居は足元に落ちていた一枚の紙を拾いあげた。
「ふむ…なるほど…能力者をわしら以外は郊外へ避難させるのか…いよいよ全面戦争は近い…と言う事かの…なになに…避難対象者は……なぬっ!?あ、あの建物じゃと!?」
それはさっきから御隠居が5回は通り過ぎたビルだった。
「ど、どおりでさっきからヘリの羽音が…!!い、急ぐぞいっ!」
拾いあげた紙を投げ捨て、御隠居はアジトに向かって走り去って行った…。
>42
組織に対して隠密に動いてるレジスタンスなんだから紙なんか外に落とすわけない
避難が行われるのは八時なのに、まだ七時少し過ぎの時点でヘリが飛んでるわけがない
てか戦闘員て何?組織の?レジスタンスの?それともどこかの勢力の?
レスに無理があるぞコレ
キャラハン誰も何も言わないつもりなんか?
>39
ノックと声に、玖珂はドアを開く。
「どうぞ」
突然の訪問だが、玖珂は気にしてはいない。
八時の会議のため六時に起床し、朝食は済ませてある。
それに、玖珂は玖珂で、この二人に訊きたいことがあった。
「俺からも話しておきたいことがあんだわ。盗聴されても構わんから、俺の時は能力は使わなくていいよ」
そう言い、二人を部屋に通すと、ドアの鍵をかける。
玖珂は座ると、口を開いた。
「あんた等、能力者保護協会から派遣された人間だな?」
最初から核心に迫る質問。
「昨日の食事で確信できたよ。蝶子ちゃん、繭美ちゃん、二人の話と行動でな・・・」
能力者の戦闘以外での活用方法や、厨房の能力者達との楽しげな会話。
単なる二人だけの会話には思えなかった玖珂は、二人が自分に対して何か示唆しているものと考えた。
「二人は議事堂を防衛してるんじゃない。議事堂にいる保護の対象にある能力者達を守ってたんだろ」
それなら昼夜問わず玄関ロビーに籠もるような生活を率先して起こっている理由にも説明がつく。
知らず知らず彼女達が命令でそうしているとばかり思っていたが、それは間違いだった。
「・・・それなら話が早いんだ。今、俺の仲間達が交渉に当たっている一番重要な相手が能力者保護協会だからな」
玖珂はそう言うと、組織にいる能力者を戦闘に使えない(もしくは使えない)能力者達をピックアップしたリストを二人の前に出した。
そのリストには“自由の楽園計画”と記されている。
「組織の人間が皆、その名称だけを知るこの計画。武力による東京の制圧を発端とし、ちまちまと少ない戦力で行ってきた戦闘・・・
組織の人間のほとんどが、その計画の全貌を組織に反発する者達への血の粛清とかそんな風に考えてんだろうがそれは違う。
自由の楽園計画は、戦えない、戦うことを好まないを能力者達を、この能力者迫害大国日本から脱出されるための計画だったのさ」
今でこそ日高美優のお陰で、能力者が被害者となる殺人や傷害などは減少傾向にあるが、根強く差別意識は残っている。
その日本が、能力者の発祥件数が群を抜いて高いとは皮肉な話だ。
「CODE:マスター様が組織を発足されると聞いて、訳を話して俺達はそれを利用させてもらったってわけさ。
自由の楽園・・・そう言えるようになるのはまだまた長い時間が必要だが、世界は能力者を受け入れつつある」
エンフィールドの母国であるアイスランドを含め、能力者を受け入れる国は増えている。
それは能力者の努力の賜物。そして非能力者が少しずつだか理解している証拠だろう。
「だが、俺達のしてることは“悪”だ。端から見りゃ俺達はテロリスト。決して良いことをしてるわけじゃねぇ。
だからリストの中にいる能力者は組織のメンバーではなく人質として、人質解放という形をとって能力者保護協会にお渡しする。
そしたら、四季の役目は終わり。後は、組織に従って戦い、そして死ぬか牢屋に入るか・・・流れに身を任せるのも一興ってわけさ」
死ぬことも、他にどんなことが待ち受けていても、玖珂は受け入れる覚悟がある。
玖珂の顔には、死ぬことすらちっぽけなことと、気にしない安らかな笑顔があった。
「でもよ、二人が能力者保護協会の人間じゃなかったら、とんだ無駄話だな・・・」
安らか笑顔が苦笑に変わり、卜部姉妹を見る。
『二人の反応を窺う。
※卜部姉妹が能力者保護協会の人間だというのはあくまで玖珂の推測です。
違いましたらすみません。どんな返しでも構いませんので。』
話には全然関係ありませんがエンフィールの母国(というか国籍)はアイルランドでした。
凡ミスです。申し訳ありません。
>>43 ご指摘ありがとう。
御隠居の階級「戦闘員」とはレジスタンスの戦闘員のつもりで書きました。ヘリに関しては、飛行の際の羽音ではなく、試運転、動作チェックの際の羽音です。
紙は…これは軽率でしたね。以後、気を付けます。
厨房から出てトレイを手に取り、料理をその上に取ってゆく。食堂の隅の席にトレイを置く。
そのままもそもそと朝食を食べる。ほかの人員はあらかた食事を終えており、食堂には数人が残るのみだ。
いつも「いい食べっぷりだ」とからかう清掃員のおじさんも、からかわれながらもしっかり食べる自分のことを
目を細めて眺めていた調理のおばさんももう居ない。すでにアジトからの避難の準備をしているのだろう。
その事実を改めて思い返すだけで陰鬱な気分になった。果たして今日別れる人に再び見えることはあるだろうか。
僅かな時間でトレイの上の料理はほとんど片付いていた。いつものような食欲は出ない。
トレイの脇に置いた湯飲みを手にする。
(……残ったからって、別に死ぬと決まったわけじゃなし)
湯飲みをじっと見る。ポットから注がれた時点ですでにお茶は冷めている。
が、握った手にほんの少し力を込めた次の瞬間には、うっすらと湯気が漂っていた。
熱くなったお茶を一口だけすすり、食器をすべて洗い場に持って行った。
更衣所のロッカーから自分の荷物を取り出し、代わりに白衣を丸めて突っ込んだ。
そのまま自分の持ち場であるアジト外部の警戒へ向かった。
「出来る者が、出来る事を、ね」
名前:氷山 小枝(ひやま さえ)
通り名:ヒヤちゃん、おヒヤさん等
特殊能力:『灼』
能力の説明:火炎、熱を体表および体表から5センチ程度の間に自由に発生させる。
また、一度触れたものに意識を集中させることで遠隔発火させることも可能。
能力の長所:溶接、溶断、発光など、火、熱に関する物理現象を操作できる
能力に耐えるため皮膚、頭髪などは高温、衝撃に非常に強い。
能力の短所:雨天時は威力が落ちる。
体表から離れたところに炎を発生させることは出来るが、
炎の『移動』は不可能。その場に与えたエネルギーが切れるまでそこで燃えるのみ。
触れたものを発火させる際も同じ。
一度触れたものであっても100m以上はなれると発火させることが出来ない。
銃撃、打撃を受けても皮膚はそうそう損傷しないが、その下の筋肉、骨は普通にダメージを受ける。
階級:レジスタンス調理助手
年齢:19
性別:女
国籍:日本国
身長:161cm
体重:73kg
性格:気分屋
容姿:うなじが隠れる程度の赤茶色の髪 肌つやつや血色良し
装備:耐火繊維服、UZIピストル(3点バースト射撃『のみ』へ改造)、リュック(高カロリー食品、袖無し外套)
必殺技:炎を組み合わせた格闘攻撃
好きなもの:辛いもの、夏、猫
嫌いなもの:餡子、冬
仲間に一言:……まだぎりぎり「ぽっちゃり」だもん。
名無しに一言:至らないところは多いかと思いますが、よろしくお願いします。
みんなに一言:能力に関してはまだ条件等がいくつかあるのですが、
長すぎるので次の機会に、と思っています。
玖珂の計画のショボさにワロス
それじゃ亜門が言ってたように無人島でも買えよ
武力蜂起して東京制圧する意味も必要性もない
自分から組織を動かす立場のキャラにしたのならネタ考えてからにしろよ
本人でもないのによくそんな口が叩けるな
そういうおまえの方がよっぽどショボイよ
成り行きを見守ることもできないクズがレスなんかする必要も無し
スレを見る必要も無し
板に来る必要も無し
2ちゃんに来る必要も無し
>51
それはちょっとカワイソス(´・ω・`)
どうせなら社会に迷惑かけないように練炭を渡そうよ
>50
つ【練炭】
でもがっかりしたのは正直な気持ちだな>計画の全貌
確かに成り行きを見守れないで意味のないツッコミを入れる奴はクズだ罠。
玖珂はただ組織の発足を利用して能力者達を匿っていただけ。
別に玖珂が指揮して武力蜂起して東京を制圧したとは一言もないわけで。
そういうことで>50の人間性がショボいのは確定。
ここでの正解は、「>50の人間性がショボすぎてワロス」。
みなさん次回のテストに出ますからちゃんとチェックしておいてくださいね〜。
>53
四季の計画を大それたものを考えてたおバカちゃんが多かった結果かね
それに玖珂だけに組織を背負わせるのいくないと思いまつよ
避難所で中の人が「四季なりの終わらせ方がある」って言ってたし
これが四季なりの終わらせ方なんでしょ
他の組織のメンバーがうまい具合に動けなかったの事実だろうけどさ、動きたきゃ動けたわけだし
四季の計画によって色々組織とレジスタンスの重荷みたいなものが消えるような気がする(あくまで漏れの主観だけど)
まぁ、守るものが消えると、戦意も消えちゃうかもだけど
ま、別に玖珂がコードマスターでもないし、コードマスターの名前を出してるだけでコードマスターを使ったことは一度もないじゃない
1であるコードマスターの中の人、今のメンバーのなかにいるのか?
『国会議事堂私室』
「さて、今日もお仕事に行くかねえ・・・なんかありゃメールにでも入ってくるだろ。」
誰とにでもなく呟くと、亜門は昨夜見つけておいた秘密の扉から地下へと下っていった。
その階段は国会議事堂地下シェルターに繋がっており、ゆっくりとその中を巡る。
シェルターには住居スペース・会議スペース・放送スペース・司令室・大金庫と、有事の際にはここから全ての国政機能を
果たせるようになっていた。
そして更に地下階、隔壁に閉ざされてはいるが、東京地下鉄網へと繋がっており、亜門はそこから東京へと出て行った。
暗闇の中、超音波式暗視ゴーグルをはめもう一度精神防壁を構築する。
「にへへへ、どこでどう騙されるかわからねえからなぁ・・・殺す殺されたとはまた別の楽しみだな、こりゃ。」
足取りも軽く下水道網や地下鉄網を行き来する中、亜門は思い起こしていた。
『井原の行動』
『エンフィールドの帰国』
『偶像の理念』
『玖珂の接触』
『玖珂の理念』
『四季の任命』
『楽園計画』
『卜部姉妹の能力』
「随分と色々あったねえ、一気に。これだけありゃあな・・・さて、お仕事お仕事・・・」
『地下迷宮網潜行中』
美優side
>40
騒がしい虹羽の声。
だが、美優が怒る理由がない。
「間を開けてください」
美優がそう言うと、ボディガード達が脇に移動する。
ニコッと優しい笑みをこぼし、美優は虹羽の手を握った。
「みゅうを応援してくれてありがとう。お互い、色々大変なことも多いけど、世間の荒波に負けないでいこうね!」
振るような握手を交わし、美優は手を離した。
「ごめんなさい。これからテレビ局とスタジオを往復しなきゃいけないの。じゃあまた、会えたら」
美優はまた歩き始めた。
ボディガードやマネージャーの集団も美優を囲み歩いてゆく。
角を曲がり、駐車場に入った。
リムジンに乗ると、マネージャーがエンジンをかけ、車は全車アジトより発車した。
美優は深く息を吐き、空を見た。
「朝までしちゃったもん…空が眩しいよ」
美優、東京外に一時離脱。
一澄side
着替えが終わり、一澄は部屋を出る。
手には『封』の文字が記された札のような紙を数十枚持っていた。
「備え有れば憂い無し。念には念を」
そう呟きながら、至る所の通風口や、未使用の部屋のドアに紙を貼っていく。
これは一澄の能力を応用したもので、貼られた紙が開封され破られたり剥がされたりするとそれを察知することができる。
だが、あくまで開封を察知することができるだけで、どの紙が開封されたかを知ることは不可能だ。
「備え有れば憂い無し。念には念を…っと。これが最後」
一澄は紙を貼り終えると、ゲートに向かって歩きだした。
ヘリによる避難で、アジトに残ることになる能力者は他のメンバーは避難者達の警護に回る。
一澄はそれとは別に、アジトのゲートを管理しなくてはならない。
「まぁ、上には通してありますし、通常の勤務ですからね」
一澄はゲート脇の管理小屋に入ると、いつもの仕事に入った。
「さーて、と」
鱒二は外に出ると、自身の身長ほどの鉄パイプを片手に携えて廃ビル周辺を歩き始めた。
アジトの場所が割れているかどうかは鱒二は知らなかった。ただ、少なくともヘリがビルの上を十数回も往復すればさすがに気づかれるはずだ。
ヘリの数にもよるが、それだけの往復には少なからず時間がかかる。その大移動の間に下手に敵に攻め込まれては非常に面倒な自体になりかねない。
鱒二は、外套から無線を抜き出した。
「あーあー、奥臥だ。異常はねえか?」
『南面、今のところ異常なしです』
アジト直上ビル屋上の真下の階の四方の窓から望遠レンズで敵を伺う一人が、鱒二の連絡に応えた。
そのまま彼は無線から顔を離し、大きな声(廃ビルでその階はほとんど遮蔽物がない)で西面、南面、東面の三人に異常のない事を確認し、それも伝える。
「サンキュ、ご苦労さん。敵が見つかったらすぐに連絡してくれ。撲滅すっから」
『了解』
鱒二は無線を切った。自身でも、鉄パイプをがらがらと引きずりながら怪しいものを捜す。
と、アジトの近くで人影を動いた。
「ん……?」
鱒二はゆっくりと様子を伺う……が、すぐに気づいて警戒を解いた。人影に歩み寄る。
「よう、こえだちゃん」
名前は本当に間違えているのかわざとなのか、鱒二は氷山小枝(サエ)に声をかけた。
>59
目を細めて空を仰ぐ。雲は多いがこれ以上増えそうな気配は無く、太陽は白々と輝いている。
リュックの口を半分あけたまま肩に引っ掛けビルの周辺をゆっくりと歩いた。幾人かの能力者が
同様に周辺を警戒している。いつもならこんな露骨な警戒活動はしないが今日は特別だ。
何せ屋上では輸送ヘリがレジスタンスここにあり、と大声を上げている。
組織がまったくあたりすら付けていない状態でも、容易にアジトの位置は割れてしまうだろう。
襲撃があるかどうかまでは解らない。警戒が厳重な中、わざわざ妨害に来るだけの理由が向こうにあるだろうか?
敵対している能力者といっても戦闘に耐えない人物が大半なのに。
小枝の思考はガラガラと何かを引きずるような音で中断される。反射的に振り返ると、
レジスタンスのメンバー中トップクラスの体格の持ち主、奥臥鱒二が歩み寄ってくるところだった。
『こえだ』と小枝の名を間違えて呼ぶ。毎度のことなのでもはや訂正はしない。
「…相変わらず気楽そうですねぇ」
それが彼のポーズであることは十分にわかっているのだが。
「異常はありませんでした?」
無線でのやり取りは小枝も聞いていたが、確認はしつこすぎるほどにやるべきだ。
今のところは、と答えが帰ってくる。二人の頭上にはヘリのローター音が降ってきていた。
まだ避難の開始には時間があるはずだが、点検だろうか。それとも前倒しか。
「……無事に済むといいですね」
見上げながら他人事のように言う。しかしそれは今ここに居る人間全ての、偽らざる気持ちだ。
布団の中、目が覚める。かなりおかしな体勢になっていたようだが、それに気づくのに数秒。
ちらりと時計に目をやると七時すぎ。布団を片づけて準備もそこそこに部屋を出る。
会議開始は八時なのでまだ時間はあるのだが、待つにしても特にやることなどはない。
まだ脳は半覚醒ではあるが、歩いているうちに眠気も完全に醒めるだろう。須田は会議室に向かって歩いていく。
頭がはっきりするにつれ、決行にあたって自分は果たしてどうすべきか考えている。
アジトへの侵入。かなりの危険が伴う。勢いで立候補したとはいえもう少し思慮すべきだったか。
「最低、組織としての任務を全うすることにとどめるか」
須田個人の考えは出来たら、でいい。潜入するのは矢坂が調べたアジトが本当にアジトなのか、を探るためだったか。
それぐらいならすぐに調べられるだろうし、あまり高望みはしないことにしよう。時間は、まだ、ある。
そこまで考えを纏めた時、須田はすでに会議室の前まで到着していた。
「…あれは!」
持参していた寝袋で軽い休息をとりながら夜を明かし、目が覚めると同時に再び行動しようとした矢先。
近くのビルの屋上に、少なくとも昨夜まではなかったはずのヘリコプターが現れていることを、
透の左右2,0以上の視力は鮮明に捉えていた。
いてもたってもいられずそのビルに向かう。こんな廃ビル街にヘリなど、そう来るものではない。
可能性があるとすれば、この辺りにアジトがあるというレジスタンスだけだ。
そのことを頭の中で結論付けながら透はそのビルに到着した。
「…やっぱり、入れないッスか」
当然といえば当然なのだが、入れる筈がない。せっかく手がかりを掴んだと思ったのだが。
「…仕方ないッスな」
自分が狙っているのはレジスタンス自体というわけではない。確かにレジスタンスではあるが、その中の二人である。
透がレジスタンスに多少なりとも意趣がないと言えば嘘になるが、今はさしたる問題ではない。
とりあえず、透は待つことにした。このビルがアジトだとするなら、近辺で張っていればせめてどちらかは現れるだろう。
無理に潜入などをして捕まっては元も子もない。あくまで慎重に、慎重に慎重に。
「でも須田さんには伝えておかないといけないッスね」
携帯電話を取り出し、電話帳から須田の電話番号を呼び出して発信する。
前スレが書けるようになってる件
>44-45
玖珂の語る話に、蝶子と繭美は顔を見合わせた。
気付かれていたことに対して警戒する必要はない。
玖珂の部屋を訪れたのには、自分達の正体を明かすのが目的だったからだ。
「黙っていてすみませんでした。けれど、隠し事は、お互い様でしょう?」
「今、交渉を行ってるのは知ってるわ。この組織の能力者、というより日本の能力者は、保護すべき対象であるわけだし」
これならスムーズに話が進むだろう。
二人は内心では安堵し、話し始める。
「玖珂さんの言ったことはほとんど正解よ。議事堂を防衛してたのは能力者を守るため」
「わたくし達は能力者保護のために寄越されたのですからね」
レジスタンスでは、妹である虹羽が動いている。
蝶子、繭美、虹羽、三人にとっては組織もレジスタンスも、あまり関係はなかった。
戦うのを好まない能力者、戦えない能力者。そんな能力者を保護するのか彼女達の役目。
戦いを選んだ者とは逆に、
「それで?そんな告白したってことは、組織の能力者達を、そろそろ渡してくれるってことなのかしら?」
「昨日の会議、どうやら組織が大きく動きそうな気配ですわね。今がチャンスというわけなんでしょうか?」
二人は玖珂に問う。
会議の内容は知るはずないが、上級地位のメンバーを呼び出した会議。
何かが起こるのを、感じずにはいられない。
>58
「あ、握手された」
美優に握られた手を見ながら、虹羽は呟く。
「握手されたぁぁぁぁ!!」
思わず歓喜の叫びを上げ、虹羽は体をくねらせその幸福に浸る。
ただより高いものはなし。憧れのアイドルの仕事ではないオフの時間での握手。
虹羽にとっては感動ものだった。
「幸せや〜……は!アカン、もう八時やんか」
自分のすべきことを思いだし、虹羽は駆け出す。
既に一回目に運ぶ避難者達の屋上への移動は始まっており、虹羽は自分を責めた。
(虹羽のアホ!うつつぬかしとんな!!)
必死に走り、避難者達より先にヘリポートに着く。
虹羽の誘導を待たず、ヘリは止まっていた。
「すんません。あ、いや、すみません。卜部虹羽です」
能力者保護協会の許可証を見せると、ヘリの操縦士は敬礼するようなポーズを取った。
避難者達も到着し、虹羽は深呼吸し、話し始めた。
「それでは、これから避難を開始します。ヘリの向かう先は羽田空港。日本を出ますが、パスポート提示は特例により免除されます」
簡単な説明だが、これからの生活は一時的に海外で行うこと。
能力者保護協会からの生活保護がある代わりに、各々の希望を尊重し学業と仕事に専念することなどを説明していった。
「働かざる者食うべからずと言うように、我々は能力者を一般的な生活に順応させるサポートを行っています」
世界では能力者は非能力者と同じように仕事に就いている。
能力者許容国ではそれが普通のこと。能力者も非能力者も平等なのは当然のことなのだ。
「ここでの説明は、空港にて待っている協会のメンバーから渡されるパンフに詳しく記載されているので目を通してくださいね」
そう言うと、一回目の避難者達を乗せ、ヘリは飛び去った。
何機かのヘリが羽田とここを往復することになる。
「この説明、何回することになるんやろなぁ」
一回目なのに既に疲れ気味の虹羽。
だが、これが彼女の仕事。
戦いを選ばず、能力者も非能力者も分け隔てなくいられる未来を作るために選んだ、彼女の仕事なのだ。
>58
リムジンが駐車場を出ると、それを追いかける車があった。
時間が経つにつれその数は増えてくる。
しばらくして、人気の無い場所を通ろうとした時に車の一台がリムジンの進路を塞ぐ様に停車した。
他の車たちもリムジンの周りを囲むようにして停車する。
その中からぞろぞろとヤクザ達が出てくる、最期に他とは明らかに違う武装した男が降りてきた。
「え〜と、あんたらが日高美優とその護衛で良いんだよな?」
男はヘラヘラ笑いながら話しかける。
ヤクザ×12
武装:サブマシンガン
防弾チョッキ
名前:鈴木 隆一(すずき りゅういち)
特殊能力:『軽』
能力の説明:物を軽くする
能力の長所:自身の体の一部が触れているなら最高十分の一程度の重さに出来る。
能力の短所: 触れていないと効果を発揮できない。 生物には効果が無い。
階級:―
年齢:23歳
性別:男
国籍:日本
身長:172p
体重:67s
性格:軽薄
容姿:髪は長め、今風の若者
装備:重機関銃×2 防弾チョッキ
>65
アジトから飛び立つヘリに対して攻撃を加える者達がいた。
矢坂配下にあるヤクザの構成員達。
その内のオープンカーに乗っていた一人が対空ミサイルを放ち、ヘリは成す術もなく撃墜される。
明らかに過剰な攻撃、ここまで派手にやれば政府の機動部隊なりなんなりが鎮圧に乗り出すのが普通だ。
しかし機動隊どころか警察なども動き出す様子は無かった。
ヤクザ×6
武装:対空ミサイル砲
拳銃
防弾チョッキ
名無しヤクザ達の使用権は放棄するので、好き勝手に使って良いです。
>66
すみません、東京外に一時離脱と書いたのですが…。
説明が足りませんでしたね、美優は一時的に退場させたという意味です。
そうなると今まで美優を見張ってた意味が…
どうしても、と言うなら<66の上のは無かった事にしてください。
美優はあくまで日高◆BEKCmvI.lcのキャラなので、何か物語的な意味があって今東京から出なければならないならそっちが優先。
ただ意味なく東京から出しただけだったり、今すぐ出なくても問題ないのなら矢坂◆K7mNQD7rAAに付き合う。
って感じでいいじゃない?
避難所にコードマスター候補がいる件
>66
リムジンと警護車を取り囲まれ、運転していたマネージャーは冷や汗を垂らして美優を見た。
「能力使うけど、いい?」
申し訳なさそうに美優が問いかけると、マネージャーは笑っていた。
「こちらドライバー01、みゅう様が能力を使用される。ドライバー02〜09、合否を聞きたし」
「02了解、愚か者達に鉄槌を」
「03了解、みゅう様に仇なす者に罰を」
マネージャーが無線でリムジンを取り囲む8台の警護車運転手に連絡を取った。
8台共に、拒否はない。
全員が全員、美優を信じ、体を預けた。
「みんな、ありがとう」
美優は瞼を閉じ、能力を使用するためスタンバイ状態に入った。
美優の脳内には、マネージャーを含め9人の運転手の目から通した世界が映る。
リムジンの前の警護車2台がヤクザ達の乗っている車に勢いよく突っ込んだ。
かなりの衝撃だが、能力を使っている際は痛みや疲労を運転手達は感じることはない。
突っ込んだことにより、車と車との間にスペースが出来、リムジンが抜けていった。
続く警護車。
アクセルを踏み続け、ブレーキをかけることはない。
(警護車は散らばらせて、リムジンはそのまま直進…能力を切るわ。みんな、うまく逃げてね)
(了解です!)
(みゅう様も気をつけて!)
警護車8台は四方の路地に入り、リムジンのみ今まで走っていた道路に残った。
(マネージャー、あなたも能力を切る。次の道を曲がって。そしたらリムジンは破棄)
(了解!元レーサーの底力見せますよ!!)
美優な能力を切ると、マネージャーは目つきが鋭くなり深く笑みを見せた。
美優はその後ろで着替えを始める。
スカートからパンツに変え、帽子を深く被った。リムジンは角をノンブレーキで曲がると、路地に入った。
エンジンを入れたままで止まり、美優とマネージャーは降車する。
「私は人込みに紛れてしばらくしたら、タクシーつかまえて局行くから」
「じゃあ局に代理派遣しておきます。それじゃ、また後で」
美優とマネージャーは別々の路地に入っていった。
美優は路地を抜け、大通りに出る。
既に23区から出ており、美優は帽子を被り直し目元を隠すと通勤通学の人の海に美優は紛れていった。
23区外。それにこの人の数、美優が見つかることはないだろう。
エンジンのかけっぱなしのリムジンはというと、数分後爆発するように設定してある。
爆発を聞いてやってくる野次馬を呼び寄せて、美優達の追尾を攪乱させるためだ。
>71
「なっ!」
いきなり突っ込んできた警護車に面食らうしかない隆一。
間一髪のところで車を避ける、落ち着いた頃にはもう包囲を抜けられていた。
「糞っ!、何やってんだ、さっさと追うんだよ!」
部下のヤクザ達を怒鳴り散らし、自身は無事だった車に乗り込み追跡を開始する。
自身の能力で車体を軽くし、猛スピードで車達を追いかける。
途中、警護車が離脱していくのが見えたが、気にせず前方にリムジンに意識を集中させる。
しかしどう言う訳かリムジンが23区外に出たの見ると、急に追撃をやめてしまった。
隆一は舌打ちをすると、阿藤に連絡をとる。
「あ〜、すいません、失敗しちゃいました」
口調とは裏腹に、緊張しながら阿藤の返答を待つ。
僅かな沈黙の後に阿藤が言葉を継げる。
『…まぁいいだろう、日高美優の件は優先度が下がっている、お前は持ち場に戻れ』
「それだっけすっか?」
阿藤の意外な返事に、やや拍子抜けした様子で問い返す隆一。
『そうだ、これからやる戦争で汚名は雪げ』
それだけ、告げると阿藤は連絡を切った。
その阿藤の言葉に安堵した隆一はいつもの調子を取り戻す。
「しゃーねぇな、確かレジスタンスの連中には何したっていいんだよな?」
隆一は下品な笑みを浮かべながら持ち場に戻っていった。
>>66 「始まりましたね」
予定よりほんの数分だけ早く、最初の一機が離陸した。見上げる空を何かが煙を引いて横切る。
身を捩る様にして旋回を始めたヘリに接触した次の瞬間、
爆発音があたりに響いた。金属の破片がばらばらと降り注いできた。
「スティンガー!?あんな物まで持ち出して…!」
いくら寂れているとはいえ街中だ。使用されるのはせいぜい大口径ライフルくらいだと思っていたが、
まさか対空ミサイルを用意しているとは。警察などが介入してくるのを恐れていないのだろうか。
タイヤを軋ませながら二台の車が急停車した。それぞれ3人ずつの男が降りてくる。
手には拳銃、ミサイルは持っていない。あの一発で最後か、それとも車の中か。
「先行きますよ、奥臥さん!!」
リュックから外套を取り出した。厳重に縫い付けられたエポレットがいくつも付いている。
前合わせの無いそれを頭から被り、内側にもいくつか縫い付けられているエポレットに腕を通す。
UZIを外套の外に引っ掛け、能力を開放して高熱を発生させる。
外套がぶわっと膨らみ、やむをえない事情で体重が不自由な小枝を宙へと押し上げる。
そのまま上空で辺りを見渡す。今のところ他に襲撃者は居ないらしい。
正面やや左手に黒煙が見えた。乗っていた人間は恐らく無事ではないだろう。
ぎり、と言う音がした。自分が歯を噛み締めた音だと気づくのには少し時間がかかった。
>66
『東京廃ビル群の隅』
東京の一角、廃ビル群の隅のマンホールの蓋がひとりでに動き出す。
僅かな隙間から鏡が出てきて、ゆっくりと360度回る。
鏡が隙間から引っ込むとマンホールの蓋はさらに動き、完全に開ききる。
そこからでてきたのは亜門であった。
「ふぅ・・・溝鼠には朝日は眩しいねえ・・・」
マンホールから出てきた亜門は身体を伸ばしながら呟く。
その刹那、空中に轟音が響き渡る。
音源の方向を見ると小さく爆発が起こっているのが見える。どうやらヘリコプターが撃墜されたようだ。
「やれやれ、朝もはよから仕事熱心なこった。もうおっぱじめたか・・・
にしても・・・今日は派手だねえ・・・」
距離とすれば一区画や二区画以上離れているその爆発を一瞥すると、携帯を取り出しながらビルへと姿を隠す。
「おう、俺だ・・・ああ、生きてるよ。あたりめぇだろうがよ。・・・ま、そう言うこったな。・・・ま、手筈通り、仕事だ。」
にやけた顔のまま通話を終わらせ、ビル群の中を歩いていく。
『廃ビル群を彷徨』
>60
小枝に話しかける鱒二。
>「…相変わらず気楽そうですねぇ」
「気楽に見えるかい?今は結構必死なんだけどなぁ、俺ぁ」
鱒二は実に気楽そうに言った。そして、胸の内はその言葉の通りだった。
>「異常はありませんでした?」
「今んところは……な。だが、いつ何が起こってもおかしかねぇ」
若干真面目なトーンで答え、鱒二は懐から葉巻を取り出した。1本……2本……3本。纏めて咥え、火を点ける。
「上の監視からもそれなりに見渡せるが、細かいところに潜んでる輩は結局俺達で見つけるしかねえからな。油断せずにいこうぜ」
言ってしばらく煙を吸い、3本纏めて指で摘まんで盛大に煙を吐き出した。豪快な吸い方の割に、少しもうまそうな顔をしないのもいつも通りだった。
>「……無事に済むといいですね」
「ああ。ま、うまくいくに決まってんぜ。おてんと様は、いつだって正義と弱いモンの味方よ!」
鱒二はあからさまな明るい調子になり、がさつに笑いながら小枝の背中をバシバシ叩いた。
>66、74
「おっ、始まったな」
プロペラが風を叩く音に、鱒二も小枝とともに空を見上げた。一回目のヘリコプターがゆっくりと浮かび上がる。
重力の錘を振り切り、彼の言う「おてんと様」に向かい速度を上げ始めた時。
ドオ…… ……ォン。
「なんだ!?」
まさに飛び行こうとしていたヘリは嘘のようにあっさりと落下していく。黒煙を噴いて炎上するただの鉄の塊となって。
ビルの上では、人々の狼狽し慌てふためく様でパニックになっていることだろう。鱒二は天をねめつけ、舌打ちした。
「くそったれが!とにかく敵だ、見つけ次第…」
言いかけた鱒二の耳に、車体が急に停まる時の耳障りな劈きが入った。離れたところに停まった2台の車から、3人ずつの男が現れる。どうやら差し当たりの犯人らしい。
>「先行きますよ、奥臥さん!!」
小枝が能力を使い、空に舞い上がっていく。鱒二は叫んだ。
「おう、あいつらは俺が処理する!他にも入り込んだネズミがいるはずだ、そっちを探してきてくれ!」
俺の能力はそういうのには全く向いてねぇ、と今更には言わなかった。
こちらに気づいた男達に、鱒二は向き直る。そして、
「さぁて……、とりあえず、てめえらには地獄を見てもらうぜ……!!」
凶悪に笑んだ。
>66
…え?ヘリ撃墜…ですか?
これじゃあ防衛のしようがないですよ。決定リールまがい…ですよね。
やるなら「ミサイルがヘリに迫る」とかやりようがあった気がするんですが。
あぁ、凄い脱力感…。
こんなんなら労力とかのリスクなんか無視して避難者全員能力で移せばよかった。
すみません…ちょっと、私情入れちゃいけないんだろうけど、今はレスするの無理です。
ごめんなさい。落ち着くまでレス控えます。
二、三日ちょっと休みますね。
他の方進めちゃって全然構いませんので。
玖珂さんも、卜部姉妹ととりあえずスルーして会議に出てください。
「成す術もなく」なんて思いっきり決定リールなのに、なんで誰も指摘しないんだろ…………。
NPCに対する決定リールへの認識の違いか
いやいや、NPCだからってヘリは駄目だろ。
ストーリーの根幹を担ってた部分だし。
NPCを攻撃したというよりもストーリー自体を攻撃したというか。
つかヘリが2機か3機あることにすりゃすむんじゃねーの?
1機だけで全員運ぶのも手間がかかりすぎるだろうし。
他にヘリがあるとかの問題じゃないだろ
ここで脳内補完ですよ
ヘリは成す術もなく撃墜される(ならいいな)。
>82
ワラタ>ならいいな
弱気なトコが可愛いね
>80
ちゃんと虹羽の>65のレス読んだか?
ヘリは何機かで運ぶようた
それより虹羽が言いたいのは避難者の死なせた方なんじゃないか?
殺すなとは言わないが、ヘリ空中爆砕じゃあ、全員死亡だろうし
結論「なにに対しても決定リールは怖い」
バイオスレ辺りだとこれくらいの表現には強引にでも折り合いつけて押し切っていくんだがなぁ。
(たとえば今回なら「墜落した」とはあるが「爆発四散」とかは無いので、
胴体着陸で何とか被害を最小限に、とか)
ここだと参加者同士の話し合いがそれほど活発じゃないから厳密にやらざるをえんのか。
>>82 ヘリは成す術もなく撃墜される
→なんと言うことでしょう!匠の技により狭いヘリ内のスペースを
最大限活用したシェルターが、乗員の命を救ったのです
(ビフォーとアフターの映像を交えつつ)
ではだめだろうか。
ヘリは成す術もなく撃墜されると誰もが思った瞬間!
なんとヘリの運転手がとんでもない運転テクでミサイルを避けるではありませんか!
なんとこのヘリの運転手は米空軍のエースパイロットだったのです!
>85
何ていうことでしょう!
に笑った
座布団好きなだけもってけ
>66
爆散したヘリ。
だが、ヘリの操縦士や避難者、乗っていた全ての者が屋上にいた。
虹羽の顔は血の気が退き、蒼白となっていた。
大量の汗が流れる。
「避難者全員連れてきて」
虹羽に駆け寄ってきたレジスタンスのメンバーにそう言う。
だが、そのメンバーは虹羽の状態に困惑し、おろおろするばかりだかりだった。
「ええからさっさと連れてこんかいボケェ!!!!!!!」
怒声を張り上げ、虹羽はメンバーは言った。
メンバーは大急ぎで階下で待機していた残りの避難者を屋上に呼び出し、全員が揃う。
(たぶん死ぬやろな…うち)
微かに笑うと、虹羽は避難者を見た。
「みなさん、今から能力を使って全員を『移』ます…能力が使われる際、気分が悪くなる方もおりますから目をお瞑りください」
なんとか聞こえるであろう声を出すと、虹羽はゆっくりと能力を発動させる。
屋上にいる全員が、羽田空港に移動した。
空港は、避難のため一時的に全面不通にし、民間人が入れないようにしてある。
「がはッッッッ!!!」
多量の血が吐かれ、地面が鮮血で汚れた。
その血溜まりに、虹羽は倒れ込む。
リスクを無視した能力使用。ただではすまない。
羽田空港には、避難に関してのチェックのため昨日来たばかりだ。光景は覚えている。
だが、能力発動の条件である睡眠や、人数の上限、それに関しては完全に無視だ。
その反動。
荒い息を漏らし、虹羽は虚ろな瞳で虹羽を囲む避難者達や空港で待っていた能力者保護協会の仲間を見た。
「…うちには気にせんで…避難を優先してください…」
掠れた声で虹羽が言う。
能力者保護協会の仲間は、悔しそうに歯を食いしばると、避難を優先させた。
(蝶子お姉ちゃん…繭美お姉ちゃん…虹羽、これしか選べなかった…)
何かを喋っているのか震える口。
(…水菜…約束したのはこっちなのに…守れそうにないよ…一緒に、みんなが笑っていられる世界…作りたかった)
虚ろな瞳に瞼が下りた。
そして、流れた一筋の涙。
「…ごめ…ん……ね…」
誰にも聞こえない声が響いた。
それ以上、虹羽が動くことは二度となかった。
しばらくして、能力者保護協会の者達が来て、泣きながら彼女の遺体を処理すると、避難者達と乗せた飛行機は日本を飛び立った。
『卜部虹羽死亡』
私のせいで進行が止まっても困るのでレスしました。
これで満足してくれたら幸いです。
あといちいち名無しは騒ぎすぎ。
指摘レスならともかく今回のはスレ汚しの一言に尽きる。
>77が引き金になったとか言われたらそれは言いがかり。
するなら避難所でどうぞ、向こうも随分盛り上がってたから。
一言だけ言わせてもらうが、お前を思って発言してた奴もいたはずだし、
これだけ騒ぎになると近い内に決定リールの方が取り下げられる可能性も高かっただろうな
ま、俺は違うけど
面倒だからケツまくって逃げといて満足しろ、ねぇ。
このレスでむしろやりにくくなる人がいるかも、とか考えなかったの?
>あといちいち名無しは騒ぎすぎ。
>77が引き金になったに決まってるじゃん。普通そういう書き込みは避難所ですべきだろ
>92
避難所にて問題は解決済み
解決した問題をまた掘り起こすのは見苦しい
>93
キャラハンを出して自分の言ってることを正当化しようという魂胆が見え見え
そもそも名無しが口を挟むことでもない
>64
予想通り、彼女等は能力者保護協会の人間だった。
胸を撫で下ろし、安心して笑みがこぼれる。
玖珂「あぁ、午後1時、ある作戦を決行する。そこを狙うってわけだ」
そう言って、玖珂はリストを見た。
そのリストの中には、「井原 棘彦」「瑠璃近 えこ」の名前があった。と、懐に入れておいた携帯電話が震える。
滅多に使うことがない“身内専用”の携帯電話。
玖珂「もしもし、電話してきたってこたぁ、日本に着いたか?」
羽田空港――
数分前、レジスタンスの避難者達を乗せた飛行機が飛び立ったのと、入れ違いで降り立った飛行機に二人は乗っていた。
出雲「えぇ。ついさっきね」
ロビーにある長椅子に座り、彼女・・・出雲 栞は携帯電話を顔と肩で挟むように耳に当て、キーボードを打っていた。
その栞を背にして、沈黙を守り続ける男の名は榎本 千里。
二人は、かつて井原と瑠璃近の通り名を持っていた。
元『四季』である。
出雲「手配は完了したわ。飛行機は空港に待機するよう言ってある。予定の時間になり次第、輸送車でそっち向かうから」
四季とはCODE:マスターの側近である。
側近、即ちCODE:マスターの側で、護衛や補佐を務める。
能力者保護協会と交渉を行っていた出雲と、そのサポートを任された榎本。
側にいることができなくなった二人には、四季から離れることなる。
出雲「棘彦君とえこちゃんとお別れするのは寂しいけど、私達大人がそんなこと言っちゃ駄目よね」
少し寂しげな笑みをこぼすと、出雲もパソコンの画面に映ったものを見て、驚く。
出雲「そっちで何かあったの?今パソコンで日本の情勢チェックしてたんだけど・・・」
画面には“立ち入り危険区域内にてヘリ撃墜”とニュース速報に大々的に載っていた。
出雲「えっと・・・“数キロ離れた場所ではリムジンと思われる車が爆発炎上”“暴力団と思われる車も数台目撃”ですって」
ニュースの内容を、述べていく出雲の表情は、緊迫していた。
出雲「警察は動いてないらしいわ。ある程度、抑圧されちゃってるようね」
出雲はその暴力団が、誰の差し金で動いているのか察した。
暴力団。その言葉を聞いて、出雲と同様に玖珂もそれが誰かわかり、眉がピクリと動かす。
玖珂「・・・そうか。ありがとよ。流石マスコミ、早い情報で助かった」
ニヤリと笑い、玖珂は言う。
玖珂「じゃあ、時間が来たらこっちに来てくれ。俺はその時議事堂にはいないが、よろしくな」
電話を切ると、玖珂は立ち上がる。
玖珂「じゃあ、俺はちょっと用事があって、会議室に行ってくる。後、頼むよ」
蝶子と繭美、二人にそう告げると、玖珂は自室から出て、会議室に向かった。
『会議室へ』
今回の件は私が全面的に悪いです。
卜部の中の人にも、私のレスのせいで嫌な思いをさせてしまい本当に申し訳ありません。
今更・・・
何人のこるのかな
<96
昨日の会議の結果で、自分達が動く事は無いと感じたのか、
もう8時になると言うのに会議室に集まった人数は少なかった。
「全く、団結心ってものがありませんね、組織には」
矢坂は会議室に入ってきた玖珂にたいして、この現状を憂うかのごとく話しかけた。
会議が始まると、矢坂はいつもより仰々しい仕草で口上を切った。
「今回の作戦には関係ない皆様も集まってくださり、ありがとうございます。
お気付きの方もいらっしゃると思いますが、予定よりも早く戦闘が始まりました。
どうやら、事の発端はうちの若い衆みたいですね」
矢坂はこの事をまるで他人事のように話す。
「まぁ、良い事もありました。
若い衆が攻撃したヘリは、あのアジトの近くを飛んでいたようです。
この事で、あのアジトの信憑性が更に増した。
今、この状況で作戦決行13時は遅すぎるとは思いませんか?」
矢坂はそう、玖珂に問いかけた。
100 :
名無しになりきれ:2005/06/21(火) 23:36:00
>99
おまえの神経を憂うぞ
「……そうかい」
鱒二は静かに言い、無線を切った。
一部始終を聞き、鱒二は今回の任務の結末を知る。アジトビルの前に腰を下ろし、外套から葉巻を取り出して咥える。いつものように、3本。いつものように、不味そうに吸う。
「…くそったれ……」
鱒二は力なく呟いた。監視の甲斐なく、ヘリコプターはあっさり撃沈。その尻拭いに協会の少女を一人死なせてしまった。
……いったい何をしていたんだ、自分達は。
胸の内の空しさを、葉巻の煙が満たしていく。その煙を、鱒二は盛大に吐き出した。
「……」
鱒二は葉巻を捨て、立ち上がった。何を思ったのか、踵を返してアジト内に戻っていく。
鱒二の去った後。そこには少し変わった景色があった。
地面から、人間の手足が1セット生えている。逆さにしたテーブルの四つ足よろしく、きれいに真っ直ぐ空を向いて。
その真ん中には大きな足型のついた体が埋まっていた。踏みつけられたように見えるが、一体どんな力で踏みつけたら人間の体がここまでアスファルトに減り込むのだろうか。
防弾チョッキのお陰で体の原型は保っているが、首から上は潰れたトマトのような何だかよく分からないものになっていた。
その愉快なオブジェクトの傍には、破壊されたリムジンが停まっていた。ボンネットは2階から箪笥でも投げ落とされたような動的な凹み方をしている。助手席のドアはなく、そのフレームは異常に広げられている。
人間は乗っていないが、人間だったものなら助手席の椅子と車体の隙間に詰まっていた。今や赤黒い挽肉にしか見えないが、細部を余程注意して見れば身を守る格好に体を丸めた人間の形に見えなくもない。
ここにうずくまって隠れていたところを、隠れるべき何かに見つかってしまったのだろうか。
車から少し離れたところには、二人の人間が倒れていた。一人は仰向けで顔の下半分がべっこりと凹み、地面に血と肉片の混ざった液体で紅くねっとりとした水溜りをこさえている。
もう一人はうつ伏せで、首をどうにも変わった方向に捻じ曲げていた。頭は少し欠けており、もう一人よりは控えめな量の血とピンク色の柔らかそうなものを露出している。
その近くのビルは、2階の窓の一つが派手に割れていた。ガラス片はほとんど部屋の中に落ちている。窓から少し離れた部屋の中央、面白いポーズで人間が落ちていた。
右腕の間接は一つ多く、左肩が力なく妙に長い。左膝は普段と逆に曲がっている。顔中刺さったガラスと擦り傷だらけで、頭はあまりない。
5つの死体。リムジンで現れた男は6人だったはずだが、残りの一人はどこへ行ったのだろうか?
そこから何区画か離れた廃ビルの中、階段の影で、うずくまった何かが震えている。
それは、生きた人間だった。が、精神はとっくに崩壊していた。それはただ瞳孔を見開いて呟き続けるのみだった。
「…鬼が……た、助け……鬼……あ、あぁぁぁ、お、鬼が……」
>99
入ってきた玖珂に続き、他の幹部達が入って来る。
まばらだった会議室だが、大体の席は埋まった。
「すまんな。俺とちょっと話してて。ま、八時きっかりだし、問題はないだろ」
そう言うと、玖珂は昨夜自分が座っていた場所に腰を下ろした。
問いかけられ、玖珂は長い息を吹く。
溜息ともとれるが、話すために深呼吸でもしたのか。
「・・・先走りがすぎるな」
やはり溜息だったのか、玖珂は呆れた表情をしている。
「これじゃあ作戦の意味がない。団結心が無いのは、お前さん配下の奴等だろうが」
早まった戦闘。
「もうヘリ撃墜は報道されてる。侵入作戦なのに、先に戦闘なんか起こして意味があんのかい?
能力者達を外に誘き出すため、なんてのは言い訳だな。余計に警戒心を高めるだけだ」
氷のような冷たく鋭利な眼差しで、貫くように矢坂を見た。
「お前の立案だ。だが、この結果は少し短絡的すぎる。今ここで俺や須田が出向いたとしても、返り討ち、計画失敗。立案者及び実行者の降格は目に見えてる。
ここは一旦退かせて、向こうが落ち着いたところを突くしかないな。本来なら何日が置く必要があると思うが、そのせいでアジトを移されたら元も子もない」
そして最後に、
「計画は予定通りが一番だと思うがなァ。今回の独断専行・・・大口は叩けないぜ。
予定通りにできないならご勝手に。血祭りに上げられて、お前の駒が全滅しても、俺は知らん」
と言うと、玖珂は瞼を閉じ、腕を組んで黙り込んだ。
玖珂にはやはり発言力があるのか、幹部達は不信感が募った目を矢坂に向ける。
>88、>100
しばらくアジト周囲を見回るが、やはり他の襲撃者は見当たらない。
(あれで終わりとは……。陽動かしら?)
一度屋上へ戻ろう。恐らく人手が必要だ。そう考えて屋上へ飛んできたが
予想された喧騒は無く、代わりに少女が一人血溜まりに倒れていた。
確か卜部虹羽と言ったはずだ。能力は移転。と、なると…
(全員、飛ばしたのね。…そこまで無理をすることも無かったでしょうに)
それだけこの計画を無事に終わらせたいという気持ちが強かったのだろう。
血溜りから少女を抱き上げ、仰向けにして胸の上で手を組ませる。
顔に付着した血を拭き取った。それ以上のことは協会の方でやってくれるだろう。
最後に一度目礼をし、床を蹴って再び宙に舞う。墜落したヘリの検分へ向かった。
思ったとおり死体は一つも無い。黒煙を上げて燃えるヘリを眺めるうち、妙に腹が立ってきた。
襲撃に対し何も出来なかった自分たちに対して、襲撃者に対して、そして虹羽に対して。
墜落したヘリから避難者や乗員を助け出して、それで良しとすればよかったではないか。
改めてヘリでの移送も出来たろう。それほどこちらの警護が信用できなかったのか。
それほど自分一人で抱え込まねばならない訳でもあったのか。
(……実際にミサイル打ち込まれて『信用しろ』ってのは出来の悪いジョークかな)
自嘲的に笑ったが、それで怒りが収まったわけでもない。腹立ち紛れにそのまま飛び続けて、
数区画離れた廃ビル群に差し掛かったとき、怯えきった声が微かに聞こえた。
地面に降り立ち、声がしたビルへ踏み込む。薄暗い階段の陰で、男が頭を抱えて丸くなっていた。
ひどく震え、うわごとのように鬼が、鬼が、と繰り返している。
(奥臥さんか…、よく逃げて来られたわね)
何か聞きだせることは無いかと問いただしてみるが、まともな反応は返ってこず、
終いには足にすがり付いて助けを求めてきた。小枝の目がすっと細くなる。
「うるさい」
男の眉間にとん、と中指を当てた。すぐに指を離してビルを出て行く。
倒れこんだ男の眉間には黒く焦げた小さな穴が開いていた。
(八つ当たりなんかしても意味が無いってのは解ってるつもりなんだけど…)
ふっ、と一つ息を吐いて、無線を取り出しアジトと連絡を取る。
「氷山です。アジトから南3区画の所で襲撃者の残りを処分しました。引き続き周辺の警戒に当たります」
近辺で一番高いビルの屋上へと、ふよふよと上昇しながらふと考えた。
人の死を『処分』という言葉で片付けられるようになったのはいつからだったか、と。
>103
血を吐いたのは空港ですよ
屋上の時点ではまだ吐血はしてません
死亡したのも空港です
描写的にいって、虹羽は明らかに一緒に空港に移動していますから
よくレスを読みましょうね
106 :
名無しになりきれ:2005/06/22(水) 12:49:05
避難所みろよ
後ろを向けよ
>103
『廃ビル群』
氷山小枝がビルからビルから出て行くのを確認して、亜門が部屋に入ってきた。
「やれやれ、怖いねえ・・・指で触れたらあまたに焦げた穴、か。レーザー痕みたいだな・・・
炎熱系能力者か・・・でも飛んでいったしなあ・・・身体能力系でこっちの傷は何かの暗器と考えた方が自然、かな・・・」
死体を調べながら出て行った氷山小枝の能力を推測する。
ついでに服装もまさぐって財布を抜き取っておく事も忘れない。
「へへへ、死人にゃ使えねえからな。俺が有効利用してやろう。
さて、昨日の会議は気になるがメールも入ってきてねえし、下っ端戦闘員は変わらず周辺警戒とレジスタンス駆除って事ですか。
とはいえ今更あぶねえ橋渡るものもなぁ・・・まぁ、趣味の範囲で楽しませてもらうか。」
メールチェックをしながら呟いた。
亜門のような中級二位、下級一位のいわゆる一般戦闘員は基本的にメールで指令が来る。
東京中に散らばり、拠点らしい拠点もなく戦う戦闘員には最適な指令法だ。
特に指令メールが来ていないのなら基本行動が続くという事。
亜門は警戒しながらビル郡を隠れ、歩いていく。
『廃ビル郡を警戒移動中』
>95-96
玖珂のいなくなった部屋。
「後、頼むって…どういうことかしら?」
「諸々お願いされたんですよ。あの人、悪い人じゃありませんもの」
「悪に徹しようとしてるけどね。難儀なこと」
床に座り、俯き加減で呟く蝶子。
壁にもたれ、リストを見ながら呟く繭美。
しばらくの沈黙。
二人は何故か、憂いある表情。
沈黙を破るかのように、繭美の携帯電話が震えた。
「珍しい。電話だわ…もしもし?」
繭美は通話ボタンを押し、電話に出る。
向こうからの話に、相槌を打つ。
だが、その相槌の言葉に活気は消え、繭美の顔はみるみる青褪めていく。
電話を切ると、携帯電話を床に落とし、力なく崩れ落ちた。
「どうしたんですか……?」
「……虹羽が…死んだって…」
繭美の掠れた言葉を何とか聞き取る蝶子。
その瞳には涙が溜まり、蝶子は口を手で覆った。
「遺体は父さんと母さんが引き取りにくるよう連絡を入れたって……」
「嘘です…こんなの信じません…ッ!」
「あたしだって信じたくなんかないわよ!でも…事実よ。あの子は死を選んでまで、自分の道を進んだ」
「死んでしまったら…何もならないです……生きてるからこそ、進めるのに…」
悲しみに打ちひしがれ、止めどなく涙が溢れでる蝶子。
意気消沈し、どうしようもない悔しさに震える繭美。
「私怨は、タブーですよ」
「……姉さんこそ」
顔を合わせることなく、言葉を交わす。
それ以上、二人は喋らない。
再び訪れた、沈黙。
(異常なし……結局何がしたかったんだろ、あのヤクザたち)
一通り周辺の見回りを終えて、ビルの屋上の給水塔に腰掛けながら考える。
(…考えてもしょうがないか。帰ろう)
立ち上がってアジトの方へ顔を向けたところで、先ほどの男の死体をそのままにしてきたことに気が付いた。
放っておけば騒ぎになる可能性も大いにあり得る。怒りに任せて杜撰な仕事をしたものだ。
アジトへ報告すれば処理班が直ちに痕跡も残さず片付けてくれるだろうが、
死体を消すだけなら自分でも一応は出来る。手間を掛けさせることは無い。
そう考えた小枝は先ほどの廃ビルへ向かった。今度は歩きだ。空からでは死角になっていた部分も
ある程度は調べておく必要がある。しかし意に反して蟻の一匹すら視界にはおらず、
そうこうするうちに死体がある廃ビルへ着いた。階段の裏へ回り込む。
(…所持品を探られた形跡がある…誰が?)
服のポケットが一箇所裏返ったままになっている。さっきはきちんと収まっていたはずだ。
死体の上に屈み込み、調べてみる。どうやら財布が抜かれているようだ。
もっとも最初から身元の割れそうなものを持ち歩いていなかった可能性もあるが。
これ以上調べても無駄と判断し、処理にかかる。死体を広めの部屋まで引きずり、
その額に触れた。数十秒ほどそうしてから立ち上がり、何もせずに出口へ向かう。
ビルを出た所で能力を開放した。無線を取り出し、アジトへ連絡する。
「氷山です。周辺区域に異常は無し。これから戻ります」
少し『緩く』なっていたウェストの紐を締めなおした。しまっておいた外套を被り、空へ舞う。
男の死体があったはずの部屋には焼け焦げた跡と、小さな灰の山が残っているだけだった。
いやー、逆に政府がラスボスだとありがたいッスねー。あざーす!
タクシーにて、美優はテレビ局に着いた。
局前では、スーツを着たマネージャー代理が待っている。
美優が軽く会釈すると、代理と共に局に入った。
「大変だったそうですね」
「大したことありません…CODE:マスターと戦うよりは」
あそこで死ぬ気はないのだ。
戦うことを選ぶより、強行突破。
無駄な戦いは、意味がない。
「避難は終了したそうです」
「そう」
「ですが…」
「…?」
口篭もる代理に、美優は不思議そうな顔をした。「…避難を担当した保護協会の方が、無くなったそうです」
「!」
思わず手を見る。
つい数十分前、握手を交わしたその手を。
「そう、死んだの…彼女」
美優は呟くと、メイクやセットのため、控え室に入った。
>108&>110
日高美優の襲撃に失敗したヤクザが移送任務妨害の応援にやってきたようだ。
二手に別れ、氷山と(敵だと勘違いした)亜門に襲い掛かる。
↑空気の読めない奴が現れた!
>114
スレが停滞気味だからストーリーに関係ないミニイベント投下したのは評価
活動的な小枝と亜門に振った人選もよい
適当な戦闘SS書いてもらって間を持たせると同時にその後小枝と亜門の接触
があって話が進めば最良だろう
だがイベント投下側が手を抜きすぎ
これじゃキャラハン側も動けないだろう
練り直して出なおしてこい
そんなことより矢坂話を進めろ
>108
ビルの隙間を縫うように移動を続ける亜門の周りを、6人の男が半円形に取り囲んだ。
どうやらレジスタンスのアジトを襲撃したヤクザの仲間らしい。
亜門が口を開くより早く、男たちは引き金を引いた。
>110
上空を移動する小枝の耳に怒鳴り声が届いた。
下を見ると男がこちらを指差して何事か叫んでいる。
その声に呼応して路地から5人の男が走り出た。
銃口を向けたかと思うと間髪いれずに射撃を開始した。
>117
亜門が口を開くより早く=決定ロール
>117
『廃ビル群』
廃ビル群を進んでいると突然六人の男が現れた。
服装や雰囲気から行って、昨日玖珂の言っていた『やくざのお友達』だろう。
味方であるし、下手な動きを見せて誤解をさせてはいけないと囲まれるに任せていたが、やくざ達は突然手に持った
拳銃を亜門に向け発砲した。
おとつい如月に気付かないまま後ろを取られたのを悔い、常時能力開放し、やくざ達の遠近感を狂わせていたのだが、
それが禍した。
訓練された者ならば、遠近感が狂っていることに気付かず撃てば当然のようにまるで見当違いのところに飛んでいく。
だが、ロクに標準もあわせず撃った奴がいたらしい。
亜門の腹と左肩に当たり、その衝撃で吹き飛び、倒れた。
(糞・・・いてぇ・・・・腹は・・・まだ良い・・・肩はきつい・・・判った・・・判ったからもう・・・痛くない・・・痛くない!そして俺は強い・・・)
倒れたまま亜門は冷静に自分を分析し、暗示をかけていた。
一見半そでのシャツに腹巻、ニッカポッカのズボンという土方姿の亜門の服装。
だがケプラー繊維でできたその服は弾丸を通さない。とくに腹巻は分厚く防弾効果を表してくれる。
かといって弾丸がめり込まなかっただけで、当然のように衝撃は伝わるので亜門の悶絶も仕方がないことであった。
問題は肩だった。半そでではあるが、薄く衝撃も強く伝わる。痛みと共に痺れて動かない。
人間痛みというのは重要なシグナルである。そこを見ずにある程度、どれだけのダメージを受けているか知らせてくれるものだ。
だが、それさえわかれば動きや判断力を制限する邪魔者でしかない。暗示の力で痛みを無視することにした。
亜門が死んだと思ったのだろう。やくざ達は警戒も解き亜門に近づいてくる。
死を確認する位の事はしてくれるのが亜門にはありがたかった。
倒れたまま、やくざ達の死角でレーザーハンドガンを握っていた。
一人がしゃがみこんで亜門の顔を覗き込んだ瞬間、平衡感覚を狂わせる能力を発動しながらそのやくざにレーザーを照射しなが
ら一閃させる。
六人は一斉にバランスを崩しよろめき、その隙を付いて亜門は一気に立ち上がる。
覗き込んでいた男だった顔の上半分のない肉塊を突き飛ばし、手近な二人に覆い被せると、数歩後ろにいた二人人に向けレーザー
ハンドガンを横一閃させる。
こう言った時にレーザーはやりやすい。だが、バッテリーもここまでだ。
体勢を立て直してようやく事態を認識した一人に銃を投げつけ、怯んだ隙にバックを取る。片手では完全に動きを封じる事はできな
いが充分だった。
錯乱気味に死体を押しのけた二人が立ち上がろうとしながら銃を乱射してきたからだ。
「へたくそなのは判っているからな!」
遠近感、平衡感覚、共に狂わせているからといって、ろくに狙いもしないような銃撃だと当たらないとは言い切れない。
そして何より距離が近すぎるからだ。
後ろを取った男の背を蹴り飛ばし、二人のほうへ吹き飛ばした。
吹き飛ばされた男は至近距離から仲間の銃弾を数発受けながら、勢いのままに二人に当たる。
平衡感覚の狂っている二人は避けることも、耐えることもできず仲間の体当たりで、また転倒をしてしまった。
それを見ながら亜門は悠々とやくざの落とした銃を拾い、胴体あたりで両断されている二人のやくざの頭に一発ずつ撃っていく。
そしてその手に握られていた銃を奪う。
「無駄なことやるなよ。弾切れだろ?ちゃんと数えていたよ。」
仲間の死体に倒された二人が起き上がることもできずに、亜門の背に向けて引き金を引いていた。
薄ら笑いの表情のまま生き残っている二人のやくざに近づく亜門。
そしてそのまま二人の上に覆いかぶさっている一人の頭に一発。更に一人の眉間に一発。
こうしてこの場にいるのは起き上がれないやくざと、それを見下ろす亜門だけとなった。
「小心者なんでね。確実にとどめささねえと不安なの、俺。さて、二人っきりだな。お約束だが、誰の命令だ?」
やくざの四肢を打ち抜きながら問いかける。だが、やくざは錯乱して叫ぶだけで答えは返ってこない。
「わめくなよ、聞かれたことを馬鹿みたいに答えてりゃ良いんだ。」
そういいながらやくざの顔を蹴り飛ばす。だが、これが亜門の間違いだった。
やくざの顎が砕け、だらしなく垂れ下がるのを見て、薄ら笑いの表情のまま眉間に銃を放った。
「骨、弱いねえ。鉄板入りの安全靴だからって一撃で砕けなくても良いのに。」
やくざの財布を漁りながら呟く。
「さて・・・さっきの死体の仲間で財布抜いたのに怒ってにしては大げさなこったな・・・玖珂が裏切って刺客を向けたか・・?
まあ、裏切るも何もあったもんじゃねえがな。もう少し組織で楽しむつもりだったが、どうであれここまでだ、な。
情報統制取れてねえわ、井原みてえな狂犬を幹部に据えて命令権与えている。助っ人外国人怒らせて戦力削っておいて処分無し。
そして契約違反の東京外接触に、詫びて招いたくせに密会すらさせない卜部姉妹。
こいつらが玖珂の手じゃなくてももう充分すぎる理由は揃った。
玖珂よ、あんたも偶像と同じさ。ありもしない綺麗な世界なんぞを夢見やがって。楽園なんぞ口走って良いのは小便臭い小娘かキ
チガイだけなんだよ。根拠もなく信じるのは盲信であり、それを押し付けるのは傲慢でしかねえんだぜ?
まあ、能力者を戦力として考えるなとかほざいていた割りには俺の戦力を目当てに四季に引き入れた時点で笑っちまうがな。
綺麗な世界に行きたけりゃ勝手に行きやがれ。俺は薄汚え世界で薄汚く生きていくさ。」
左腕に感覚が徐々に戻ってくるのを感じながら、銃声の鳴る方へと近寄っていく。
>118
それは聊か過敏ではないでしょうか?
あまりきつく制限すると表現に制限ができ過ぎて書き込みにくくなってしまうし、ある程度は構わないと思いますよ。
今回のも問題のあるレベルではまったくないと思います。
>121
俺は118ではないが亜門が戦闘より交渉とかをして有利な立場に立ってから動く
ようなキャラクターだから決定ロール味が増しての指摘なんじゃないか?
このくらいしないと戦闘SSにならなさそうだったけどな
亜門がレスしているからキャラハンも容認ととっていいと思う
>117
アジトを目指して飛翔している最中、下から声が聞こえた。速度を緩めずそちらを向くと
こちらを指差して叫んでいる男と、そのあとに続く男たちが見えた。一斉に銃口をこちらに向けたかと思うと
次の瞬間にはこれまた一斉に引き金を引いていた。数発の弾丸が外套の中で跳ね返り体に当たる。
痛みはあるがダメージと呼ぶほどのものは無い。が、万一外套が破損すると厄介だ。
耐火繊維を密に織り込んだ代物で、ある程度の防弾性能も有しているが、何よりも機動力の確保という面で
欠かすことのできない装備である。一応補修用の布はいくつか持っているが、あて布をしたところの耐久力は
著しく落ちてしまう。あくまでも応急処置なのだ。
(ノーブランドだけど高級品なんだから、破られちゃたまらないわ!)
小枝は近くのビルの窓へ飛び込み、いったん姿を隠す。いくつか離れた窓まで実を低くして走り、
顔だけ出して下を覗いた。どうやら2人が外に残っているようだ。部屋を出て階段へ走る。
段に触れ、力を流し込んだ。靴とリュックを脇に置いたところで下からの足音が響いてきた。
やはり4人だ。全員が階段に差し掛かったタイミングで、ヤクザの前に姿を見せる。
ヤクザたちは足を止め、銃を構えようとした。その瞬間に能力を開放する。
階段から炎が噴き出し、小枝も含んだ全員を包んだ。次の瞬間、炎の中のシルエットが一斉に崩れ落ちる。
炎が収まった後に立っていたのは小枝だけだった。別人のように痩せているが、疲労や憔悴の色はまったく無い。
「…すこし手を抜きすぎたかな」
ウェストの紐を締めなおし、荷物を回収しながら呟いた。死体と自分の体を交互に見る。
死体は4体とも首を跳ね飛ばされており、傷口は炭化している。
「もう少し燃費考えてやらないとなぁ…」
なお呟きながら死体を引っ張り、一箇所に集めた。外から見えないように窓ガラスに近づき、手を当てる。
極力足音を立てないように階段を下り、外で待っている連中に気づかれないギリギリの場所で足を止める。
そこで窓ガラスに意識を合わせる。ぼぅ、と炎が上がる音がした。走る。
いきなり燃え出した窓を見上げていたヤクザがこちらに気が付いたが、そのときには小枝の拳が
喉に叩き込まれていた。そのままそいつを突き飛ばし、最後の一人にぶつける。
ヤクザが持っていた銃を二丁とも焼き斬った。手の平に炎をまとわり付かせながら、
仲間の下敷きになった男に話しかける。
「お友達のようになりたくないのでしたら、こちらの言うことに従ってくださいね」
下敷きになった男は、そこで初めて、自分の上にのしかかっている男の首に開いた穴に気が付いたようだ。
「とりあえずお友達を連れてビルへ入ってください。逃げたら後ろから撃っちゃいますよ」
死体を担いだ男を先に歩かせる。後についてビルに入りながら上で倒した男達の死体を発火させた。
いくつか部屋を見ていくと、デスクや椅子などが数点残された部屋があった。
その部屋に入り、男を椅子に座らせ、自分も向かいに座り、話しかける。
「えーと…面倒なので本題に入っちゃいますが、誰の差し金ですか?
正直に話していただけるとお互い少し幸せになれるんじゃないかと思いますけど…」
手の平の炎をガスバーナー状に収束させながら続けて言った。
「もっとも、その股の間にぶら下がってる粗末なエノキタケを、
こんがりソテーにしてもらいたい、とおっしゃるのなら話は別ですが」
男は迸る様に喋りだしたが、内容は大体予想通りのもので、つまるところなんら有益な情報ではなかった。
「………わかりました。もう結構です」
言いながら立ち上がって男の額に手を当てた。男が何かをいう暇も無く炎を発生させる。
2つに増えた死体を焼却し、リュックからエネルギーゼリーを取り出して立て続けに4つ飲み干した。
体重:73s→62s
急激なダイエットは危険だぞ>自称ぽっちゃり系!
こんなトコで力使いすぎてこの後本編で戦えるのか?
>123
『廃ビル群の一角』
銃声の聞こえた方に移動する。
先ほどの襲撃者の仲間であろうが、何とか一人捕まえて情報を得る必要があったからだ。亜門はまだ東京を離れる訳にはいかなかった。
だが、銃声はすぐやんでしまい、方向を失いかけるが、代わりとなる道標をすぐに発見できた。
臭いだ。
そう、人を焼く臭い。
臭いを辿り、小枝のいるビルの前にたどり着くが人影はない。
「さて、参ったね・・・問答無用で撃ってくる阿呆どもが火炎放射器まで持ち出したとなると・・・どうしたもんかねえ・・・」
ビルを覗き込みながら顎の無精ひげに指を当てる。
臭いは確実にビルから流れ出てきており、その強さからかなりの量を焼いたと思われる。
点の攻撃である銃弾くらいは亜門の能力ではずす事はできるが、線の攻撃であるマシンガンや、面の攻撃である火炎放射器では効果は薄い。
勿論、特殊能力効果範囲外からの狙撃だとなす術もないのだが。
考えていると、自分の左手にぬめる感触があるのに気付く。
暗示の力で痛覚を無視していたので気付かなかったが、左肩から出血をしていた。弾自体は防げたが、肩の肉が少々えぐれたらしい。
左腕を動かすのに支障はないが、血は流れている。
「・・・自分を的に、ってのは趣味じゃねえんだけどなぁ。情報もなしにまたどこかで鉢合わせ、ってのも避けたい・・・
さっきの奴らの訓練度からみても狙撃はないと思って良いだろ。だとしたら・・・いける・・・か?」
頭に巻いたタオルを左肩に巻きながらマンホールの位置を確認する。
状況を確認したあとは自分の確認だ。バッテリー切れ同然のレーザーハンドガン一丁に、やくざから奪った拳銃が二丁。それぞれ背中とズボンの中に隠しておく。そしてスタンナックルは右手にはめる。超音波式暗視ゴーグルはそのまま腹巻の中に入れておく。
そして腹巻から一枚の紙を取り出し、物陰から姿を表した。
「うつな〜〜。俺は都知事に依頼されて東京を視察に来た土建会社のものだー!本当だ!ここに都知事からの東京再生計画依頼書がある。
誰と間違えているかは知らんが人違いだ!助けてくれー!もう左腕がうごかねえんだ。たのむよぉー!」
通りの真ん中で、左腕をたれ下げたまま右手を上げ、情けない声で降伏の意をビルに向かって伝える。
亜門の右手に握られている『東京再生計画依頼書』は勿論偽造したものだ。が、精巧にできているため、よほどの事がないとばれないだろう。
『手負いを装いビル内に降伏を伝える』
>125
全て始末をつけて改めてアジトへ帰還しようとした矢先、ひどく情けない声が耳に届いた。
様子を伺っていると物陰から作業着姿の男がよろよろと歩み出てくる所だった。
手にはなにやら書類のようなものを掲げている。左腕からは出血があり、タオルで巻いて止血をしている。
小枝は男がいるほうとは逆、ビルの裏手の窓から身を乗り出し、屋上まで飛ぶ。
そのまま男から身を隠しながら周囲を飛び回り、状況を確認する。伏兵は無いようだ。
男は小枝が周辺を調べている間も、自分は無関係だという主張と懇願を繰り返していた。
(さて、どこまで本当かしらね。…『一から十まで』が一番人気かな)
元いたビルに戻り、銃を取り出し外套をリュックにしまう。ジッパーをしっかりと閉めて、玄関から歩み出た。
だいぶサイズが合わなくなった服がばたばたとまとわり付いてきて鬱陶しい事この上ない。
近寄りながら男に言った。
「その依頼書を足元において、10歩下がって地面にうつ伏せになってください。
目はつぶって、手は頭の後ろ。言うとおりにしなければ撃ちますよ」
男はその通り行動した。小枝は地面に置かれた依頼書を拾い上げ、目を通す。
(本物っぽくはあるけど…こういったものに詳しくないからなぁ)
一通り読み終わったあと、うつ伏せで震えている男に声を掛けた。
「…もう立ってもかまいませんよ。書類はお返ししますね」
小さくたたんだ書類を男の前に放り投げる。引き金に指を掛けたままで男の行動を見守った。
>125
『廃ビル群の一角』
廃ビルから出てきた人物を見て驚き、亜門は多くを悟った。そしてその情報は亜門にとって嬉しいものではなかった。
>「その依頼書を足元において、10歩下がって地面にうつ伏せになってください。
>目はつぶって、手は頭の後ろ。言うとおりにしなければ撃ちますよ」
立ち位置がマンホールから離れるのは痛かったが、指示通りに動きうつ伏せになりながら考えを纏める。
随分と痩せてはいるが、間違いなく先ほど廃人同然のやくざに止めを刺した少女だ。
この痩せ方でその少女の能力を知った。
身体能力強化系や飛翔系の能力者ならこうまで痩せる事はない。これは間違いなく炎熱系能力者。
痩せたのは文字通りカロリー(熱量)消費したということだろう。
痩せたと言ってもまた標準よりはふっくらしているところを見ると、まだ余力はあるようだ。
一人で出てきたこと、他に人の気配がしないこと、そして人間の焼けた臭いが亜門の考えを確かなものにしていた。
身体強化系の能力者なら平衡感覚を奪い不意を突いて急所に一撃、電撃を共に流せば昏倒させるくらいはできるだろう。
だが、炎熱系能力者が相手だとそうはいかない。
近づいただけで火達磨にされかねないからだ。
小型マシンガンを持っているのは能力範囲が近距離に限られているからだろう。すなわち、接近戦には相当慣れているともいえる。
また、容赦なく止めを刺したことから戦い慣れや交渉に応じるその性格も推測する。
亜門は分析を終え、行動選択をする。
現実主義者である亜門は自分を信じて戦う、などという事はしない。
戦いは常に力学。自分の力量と迫る現実の単純なシーソーでしかないのだ。勘違いで勝てるわけはない、と考えている。
レーザーハンドガンがバッテリー切れ同然でなければ対処のしようもあったが、今の手持ちの戦闘力で戦う事はできなかった。
今すぐ逃げるという選択肢もある。小型マシンガンの弾は9パラと呼ばれ、小さなものだ。
防弾能力のある服と筋力硬化すれば急所に当たらなければ大ダメージになる事はない。
武器の性質上まともに狙って打てるのは初弾のみ。だが、これから大仕事が控えている身の上でこれ以上の負傷も避けたかった。
そこで亜門のとった行動選択は・・
>「…もう立ってもかまいませんよ。書類はお返ししますね」
その言葉に従い、安堵の表情を浮かべて立ち上がる。勿論左腕が動かない振りも忘れずに。
(うへへ、この訓練された動きに放り投げて距離を詰めない対処、穏やかな口調の割りにはトリガーから指を離さない警戒心。
俺と同じ臭いがするねえ。如月じゃねえけど惚れちゃいそうだな・・・)
小枝の動きに敬意を表するが、一切表情には表さない。あくまで今の亜門は怯える一般市民。
無意識の内に暗示の力も自分に影響させていた。
「いやー助かったよ。それにしても驚いたな。俺は黒服の筋者に襲われていたんだが、こんな若くて可愛い子がでてくるとはね。
君はそんな感じじゃないよね。ま、とりあえずそいつらが来るといけないからあっちのビルの中で話さないか?
東京がどうなっているか知りたいし、俺の事も教えたいんだ。それにここは・・・なんていうか・・ひどい臭いが・・・」
情けない笑顔と共に顔をしかめさせて見せる。
少し離れたビルに向かって歩き出しながら、亜門は小枝に話しかける。
「昨日発表があったけど、本とは結構前から水面下で話は進んでいたようなんだよ。ほら、日高美優のあれ。
それで強硬派だった都知事も掌かえしてね。能力者たちとの共存。そして廃墟と化した東京の復興に着手したわけなんだ。
その第一歩として東京がどうなっているか調べに着たんだけどね。まさかいきなり撃たれるとは思わなかったよ。
俺も腕っ節には多少自信があったんだし、色々準備してきたのだけど全然駄目だったね、情けないけど。
君は特殊能力者なのかい?この東京で普通に歩いているけどやっぱり強いの?
あ、なんかゴメンな。不安で口数多くなっちゃってさ。
とりあえず東京がどうなっているのかとか知りたいんだけど、教えてくれるかな?」
震える声に周りをきょろきょろとする動作。無駄に多い口数。微にいり細にいり不安に怯える土木作業員を演じながら声だから情報を
引き出すよう誘導会話を進めていく。
ここで小枝が会話に応え、共に別の廃ビルに移動するようなら情報の引き出しが期待できるだろう。
『小枝に話を聞く為に別の廃ビルに移動開始』
>127
目の前の男は心底安堵した様子でしゃべり倒している。こちらが口を挟む隙もない。
だが、疑問を差し挟む余地はあった。
(いきなり撃たれた人間がまた銃を突きつけられて、出てきた台詞が『俺のことも教えたい』ね…)
十中八九、敵だ。命より好奇心の充足を望む人間がたまたま目の前にいるという可能性は少ない。
(組織の人間と考えるのが妥当なんだろうけど…撃たれてるしなぁ)
銃創は間違いなく本物だ。相手が幻覚を見せる能力でも持っていない限り断言できる。
手の込んだ演技の一環か、それとも別の勢力の人間なのか…。
今なら先手を取れる。小枝の能力であれば、ほぼ一撃で戦闘を終わりに出来る。
だが相手の能力は不明、迂闊に仕掛けるわけにはいかない。それに、こちらも情報が欲しかった。
「お上手ですね」
小さく笑って言う。普通ならば男の発した『若くて可愛い子』にかかる言葉だが、別の意味が篭っている事は
恐らく男にも伝わっただろう。いまだ口が止まらない男の後について、廃ビルへと向かった。
>128
『廃ビル』
安心してどっと口数の多くなる小心者を演じながら声だの反応を窺うと、一言だけ返ってきた。
>「お上手ですね」
小さな笑いと共に放たれた何気ない一言。
その言葉に含まれたとげを逃すほど亜門は鈍くない。小さな棘は亜門の胸に刺さり、大きくなり一本の槍となってその胸を貫く。
(あいたたた・・・バレてやがる・・・どこで引っかかったのか・・・くそぉ・・・
俺と同じようなタイプだから手に取るようによく判る・・・
この手のタイプに一度疑念をもたれたら、もう挽回は不可能。そして言葉にして出したという事はほぼ確信しているという事!
にっこり微笑みながら頭の中では対処法をもういくつか考え出しているだろう。
だが、話をあわせてついてくるのは俺の能力が不明なのと、俺から情報を引き出したいからだろう・・・
必要な情報さえ揃ったらすぐにでも頭の中に用意してある対処を実行するはず・・・)
口を止める事無く話しながら適当なビルに入る。
相手の油断は期待できない。お互い探り合っている一触即発の状態にいる中で、急に話を止めると一気に事態が動き出しかねないからだ。
入ったビルは廃墟と化したビル群の中ではまだましなほうで、入った部屋はちょっとした会議室になっていた。
先に入り、窓側の席に着くと、オロオロしていた表情を一変させ、いつもの薄ら笑いの張り付いたような表情になる。
そして背中に隠していた拳銃を取り出し机の上に置く。
「いやー、完全に騙しきれると思ったけど、下手な嘘や演技は誤解を生んで逆効果っぽいからもう辞めとくわ。
武器は拳銃が一丁とこの手に嵌っているスタンナックル。左腕が動かないからこれは外せとは言わないどくれよ。
まあ、落ち着いて話そうや。余分な事話してないだけで嘘ついて騙そうとしてたわけじゃねえんだし。
あんたが何者かわからない以上、当然の用心だろう?どうも感づかれてたっぽいからぶっちゃけるけどさ。
とりあえずあんたの敵じゃないのは確かだから。レジスタンスなんだろ?
俺は戦いは好きじゃないんでね、できれば無用な戦いは御免こうむりたい。あんたもそうだろ?
わざわざ戦わなくても話し合えるはずさ。
お互い望むものはお互いの命じゃなくて情報だろうし、な。
どうだい、俺と取引しねえか?俺のカードは・・・
・組織の動向・組織との関係・今の所属・自分の目的・地下迷宮網の情報。大サービスで俺の能力までつけてやろう。
六枚カードあるわけだが、あんたは何枚出せる?件数等価交換だ。内容等価で行きたいが、価値基準がないんでな。それで納得してくれ。
お互い誇りにかけて嘘はなし、だぜ?」
自分の提供できうる情報の項目を並べ、小枝にもそれを求める。
『小枝に情報交換の取引を持ちかける』
>129
前を歩く男の口はいまだに回り続けている。よほど高品質のグリスでも塗りつけてあるのか。
実際に多少なり不安を感じているのかも知れない。企みに気づいている人間に背を見せているのだから。
ビルの一室に入るまでそれは変わらなかった。しかし、日の差し込む窓際に座を占めた瞬間、様子が激変する。
酷薄な笑いを浮かべ、目の前のデスクに銃を放り出す。そして、これだけは先ほどと変わりない口数の多さで、
一気にまくし立てた。小枝はあまりの勢いに脳が揺れているような気がした。それでも、男の言葉の意味を考える。
「こちらが出せるカード…ねぇ。わたし下っ端だからなぁ」
手札と言えるのは現在のアジトの位置、人員数、警備体制、他のアジト候補地に関して、くらいだろうか。
最も、今の所教えるつもりはないが。後は自分に関しての情報だ。向こうはカードを盤の上に出して見せたが、
こちらは伏せておくことにする。そもそも『カード6枚』と言う自己申告からして嘘だという可能性もあるのだ。
手の内は出来る限り明かしたくない。
(まず知っておきたいのは…能力、かな。その前に…)
「えー…私の名前はヒヤマと言います。はい、これで一枚ですね。で、何を教えていただけますか?」
男が気弱な一般人の仮面をあっさりとかなぐり捨てたことで、ほんの少し予定が狂った。
矛盾を攻め立てて動揺を誘うつもりだったのだが、鮮やかに退かれてしまい、
優位に立つチャンスを逸したのだ。その代わりと言っては何だがまずははぐらかすことにしよう。
小枝はそう考えた。
>130
『廃ビルの一室』
>「えー…私の名前はヒヤマと言います。はい、これで一枚ですね。で、何を教えていただけますか?」
氷山が取引に応じてきた事に亜門は心の中で細く笑む。
どこで気づいたかわからないが、亜門の演技を見破り優位に立っていたはず。その優位性をあっさりと放棄され戸惑って
いるのが手に取るようにわかる。
前線に出て戦闘を行っていることから『下っ端』というのは本当だろう。そしておそらく『名前』も。
持ち札を伏せ、大したことのないカードを出して様子を窺うところは訓練され、優秀だとは思うが、取引のテーブルについて
しまう事自体がまだまだ若い、という事だ。
これは取引ではない。精神的な戦いであり、奪い合いである。
取引のつもりが既に自分が二枚のカードを切っていることにも気付けていないだろう。
しかも自分から情報を提供し始めた、と言うこともだ。
亜門は力がない故にこういった戦いに引き込むことで生き抜いてきた。
一度自分の土俵に上げた小枝を逃がす気はない。
「おっと、『名前』と来たか。そうだな。それが最初にこねえと呼びにくいもんな、ヒヤマさん。
じゃあ、俺も名を明かそうか。サモトってんだ。
まあ、これで一枚、ってことにしたいが申告してなかったし、ヒヤマさん可愛いからこれはサービスにしとくよ。
で、こちらからも正式に一枚。だそうか。
『組織との関係』だ。一番最初にこれを話とかないとな。敵じゃないって事をはっきりさせとく為にもこのカードは最初にきろう
と思っていたんだ。・・・と、まってくれよ。」
薄ら笑いを一瞬ゆがめ、肩に巻いたタオルに手をやる。血は既に止まっているが細かい演技も忘れない。
「悪いね。応急処置はしたんだが、痛みに弱くてねえ。
さて、話が途切れたが続けようか。俺は元組織の人間でね。おっと、怖い顔するなよ。元だよ元。
差別を逃れて組織に身を寄せてたんだが、結構無能でね。戦闘には役にたたねえからって助っ人外国人の世話を任され
てたのよ。
それでちこっと失敗してその助っ人外国人怒って帰っちまってねえ。
で、その制裁で処刑指令が下って逃げたってわけ。俺を襲った筋者はそれで俺を襲ってきたんだな。
あれ・・・俺今『組織との関係』だけ話すつもりが『俺の能力』まで少し口走っちまったか?
口数多くて交渉取引が苦手なのにこんなことするからなぁ・・・まったく、仕方がねえ、得したな、ヒヤマさん。
まあ、そんなわけで組織から追われる身になっているのよ。
だからあんたらレジスタンスとは敵対関係じゃねえ、ってのを理解してくれれば良い。
さて、俺からは以上だが、次はそっちの番だな。
追われている身としては全体の状況が知りたいんでね。さっきの爆発やレジスタンスと組織の戦況なんかあるとありがたいね。
それ話してくれたらヒヤマさんもリクエストして良いぜ?
『組織の動向』なんてお買い得だと思うがね。」
まくし立て流れるように話す亜門。
次々と流される情報の多さは一つずつの情報の確認・判断を鈍らせる。
武器の放棄、立ち居地の明確化。まずは敵対する者でないということを印象付け、更に情報の引き出しを試みた。
>131
小枝の言葉に対し、男も名乗る。恐らく嘘だ。小枝はこの手の人物の『誇り』など信じるほどお人よしではない。
もっとも認識するための記号が必要なだけで、本名かどうかはあまり関係ないのだが。
サモトと名乗った男は肩を縛ったタオルを直す。やはり銃創は本物のように見える。血は止まっているようだ。
肩から手を離し、先ほどと同じように一気にまくし立てる。考える隙を与えないつもりか。
(参ったな、見事に引き込まれた)
この場合の引き込む、とは格闘技術のことだ。相手を引っ張って後ろに倒れこみ、
わざと上を取らせる。傍目には上に居る方が有利に見えるが、主導権は下の人物が握っている。
(柔術やらせたら強いんじゃないかしら、この人。んー、見事に虚実ごちゃ混ぜにしてるなぁ…)
100%が嘘というわけではない。混ぜ物のない嘘は耳障りが良過ぎるものだ。
組織を首になったと言うのは恐らく本当。もっとも『解雇』ではなく『辞職』かも知れないのだが。
レジスタンスと敵対していない、と言うのも本当だろう。『今は』と言う条件付だが。
逆にはっきりと嘘だと言えることが有る。自らを無能と評したことだ。
「あの爆発に関してはまだ調査中なんですよね…代わりに私のスリーサイズとかじゃだめですか?」
そんな匙加減一つで爆発的に変動する数字に意味を見出すものは居るはずがないのだが。
「……冗談ですよぅ。とりあえず能力者の攻撃らしいんですけどね。詳しいことは不明、
偵察に借り出されて今こうなってる、と言うわけです」
元組織の人間なら、今回のアジト襲撃に関しても知っている可能性は高い。
そこをあえて嘘を並べ立てて見せる。
「こんなもんで宜しいんでしたら、そうですね…あなたのことを教えてもらえますか?」
さりげなくリュックを開けてがさごそと引っ掻き回し、中からゼリー飲料を取り出して飲み干す。
(うまく行くといいんだけど)
小枝は無線と外套と食料で膨らんでいるリュックを横目に見ながら考えた。
嘘であれ本当であれ、喋れるだけ喋って貰おう。取捨選択は後でも出来る。
だが、退く場所は見極めなければならない。
>131
(うへへへ、良い感じだ。だが、スリーサイズならベッドの上で直接測りたいもんだがねえ・・・)
口調がだいぶくつろいだものに変化し、冗談を入れる小枝に亜門は手ごたえを感じていた。
訓練されているとは言っても所詮は小娘。口八丁で生き抜いてきた自分の土俵に上げた以上、どうとでもなる。
一瞬勝利を確信したが、小枝の話を整理検証すると一瞬で確信が崩れ去った。
『爆発に関しては調査中』『能力者の攻撃』『詳しい事は不明』
この三つのキーワードは嘘だろう。すなわち、話全体が嘘と言う事だ。
廃ビル内でやくざに止めを刺した小枝は
>『襲撃者の残りを処分しました』
と言っていた。時間的に考えても爆発とやくざが関係ないとは考えにくい。爆発を起こした者が襲撃者であり、その残り、と言う事は
大部分はその場で倒したと言う事だ。
爆発の原因も詳しいことも既に判っている。
こちらのペースに乗せられて対等な取引気分でペラペラ話してくれると思ったが大きな間違いだった。この目の前にいるのは小娘で
はなく、自分の演技をあっさりと見破った女なのだ。と認識を改める。
「いやー女のスリーサイズはトップシークレットだから一枚としてでも知りたいトコロだったねぇ。なははは。
それはそうと、たいそうな爆発だったが調査中か。まぁ能力者の攻撃らしいってだけでも十分な情報だよ。
・・・攻撃・・・俺の聞いた話は別作戦って事か・・・?・・・おっと、何でもねえ、気にしないでくれ。」
明るく笑いながら、最簿にぼそっと呟いておく。だが、それを掻き消すように話題を変える。
「まあヒヤマさんが話が判る人でよかったよ。こうやってお互い話せれば有益な情報交換になるからねえ。順調な取引ってのは安心
できるもんだ。ちょっと楽な姿勢をとらせてもらうよ。」
相手の嘘を見破ってもそれを追及するほど不用心ではない。
リュックをごそごそと引っ掻き回している小枝に断わりを入れ、椅子に深く腰掛けなおす。
その時の動作にまぎれ、ズボンに隠していた拳銃をズボン内で落とす。
亜門の穿くニッカポッカのズボンは土木業者の穿くズボンで、足の部分が非情にゆったりとスペースをとって足首の部分がしまっている。
これは作業中汗で足にズボンの布がくっついたり、動きに布地が足りなくなり引っかかることを防ぐ為だが、このような場合にも役に立つ。
ズボン内を滑り落ちな拳銃は裾から落ちる事無く、足首の搾りに引っかかり止る。
テーブルで死角になっているのでその動きが見られることもない。
更に動かないと演じ続け、脱力して垂れ下げている左手でその位置を確認した。ふくらはぎのスリットのボタンを外せばすぐにでも取り出
せるように、だ。
リュックから出したゼリー飲料を飲む小枝を見て、何時戦闘を開始されてもおかしくないと確信したのだ。
一気に痩せた小枝がエネルギー補給をしているのは既に戦闘準備を整えていると考えて良い。
組織の動向より、亜門の事を知りたがるのは能力の確認をして確実に倒そうという目論見だろう。
無能で戦闘には役に立たない。で見くびってはくれなかったと、心の中で舌打ちをした。
なかなか手ごわい相手だ。
戦闘能力では言うまでもないが、交渉でも一歩間違えば負ける。
言葉は慎重に選ぶが、口調は変化させずに口を開く。
「俺の事かい?プライベートな女として俺という男の事を知りたい、ってのなら嬉しかったんだけどねえ。抽象的な聞き方で『今の所属』『俺
の目的』『俺の能力』三枚引き出そうってのなら商売上手が過ぎるぜ?」
楽しそうに笑いながら言葉を続ける。
「流石に三枚一遍には明かせねえけどなあ、リクエストには応えたい。ってことで、適当に話すから好きに掬い取ってくれ。
俺がまだ若い頃、ヒヤマさん位の頃だな。能力に目覚めちまって他の奴らと同様えっらい差別受けて苦労したよ。
それでそんな能力者を保護してくれる組織に入ったんだ。
今でこそ東京制圧なんてやっちまってるが、最初は差別を避ける能力者の駆け込み寺みたいなもんだったんだぜ?
それが何がどうしたのか見ての通りな状況で、組織も様変わりしてすっかり戦争状態さ。
さっきも口滑らしちまったが、無能で能力も戦闘に使えねえ俺の様な能力者はすっかりお荷物扱いでね。ちょっとミスしたら即処刑命令・・・
どうよ、これ?
上の奴らが勝手に方向転換して戦争はじめちまったもんで、差別から逃げてきた俺みたいな奴らは今更組織から逃げても『戦闘集団の一員』
と見られるけら抜けられねえし。俺だって処刑命令出されなかったら泣き寝入りしていたろうもんな。
何とか逃げ出したら、外では派手なパレードで日高美優が『優しい世界』とか標語立てて共存運動して、政府も動いたろ?
それで俺は元組織にいて、地理にも詳しいからって都知事から東京再生計画の為の視察の仕事を請けたんだ。
組織にはまだ俺みたいな奴は他にもいて、仲の良い奴もいる。そいつらも助けてやりたかったってのもあって議事堂までいったんだけどね。
組織の幹部会やっていたから盗み聞きしたんだが、見つかってこの通りの有様さ・・・
おっと暗くなっちまったな。すまねえ、やっぱ忘れてくれ、俺の身の上なんて・・・」
悲しげな顔をしながら弱々しく首を振り、話を締めくくる。
肝心の能力の内容は具体的には話さず、更に最後に重要な情報を掴んでいるような臭いをさせる。
「なんかうまい具合に喋らされているような気がするが、まあ良いか。さて、じゃあ次はヒヤマさんの番だが・・・どんなカードをだしてくれる?」
カードが出るのか攻撃が出るのか・・・状況は切迫し始めているが、『別作戦』『幹部会を盗み聞き』ポツリポツリと置いたキーワードを逃すような
相手ではないのは判っている。
問題はそれに食いつくか、だ。
訂正
>133
一行目アンカー
>131×
>132○
>134
名前入れ忘れ
>133-134
サモトの口はさらに滑らかに回る。こちらが一を言えば十や二十は返してくる。そのうち真実はどれほどだろうか。
(気付いてはいないみたいだけど…)
小枝は先ほどリュックに手を突っ込んだ際に、こっそりと無線のスイッチを固定していた。
これから先の会話はアジトへ筒抜けというわけだ。リュックの中から鮮明な声を拾うことが出来、
この廃ビル内からアジトまで電波が届くのであれば、という条件付でだが。
とはいえ、このまま化かしあいの末に戦闘になるよりはいくらか建設的だろう、と思い直す。
(さて、出来るものが出来ることを、と)
サモトは椅子の上で体をずらした。撃たれたダメージはそれなりに有るということだろうか。
その姿勢で自分のことを話し始める。やはり言葉数は多い。
(流石にここまで喋るとボロも出るわね)
気になるフレーズはいくつかあった。その中でもっとも聞き捨てならないところは「幹部会を盗み聞き」だ。
そんな事をさせるほどぬるい組織ではないはず。本当に盗み聞きしたのだったらやはり目の前の男は
無能という言葉からは縁遠い。追っ手の襲撃を退けたという所からも鑑みて、サモトの能力に当たりを付けてみる。
(潜入、穏身に特化した能力…?いや、それならまずアジトへの侵入を試みるはず。
私から情報を得なくても自分で警備状況なんかは調べられる)
次に考えたのは、そんな能力などなくとも幹部会の内容を知っている可能性。つまりその会の出席者。
幹部が離反したとなれば確かに追撃も厳しいものだろう。最後に、まったくのでまかせという可能性が有るが、
何一つ根拠のないところから嘘を作り出すのは詐欺師でも難しい。真実を下敷きにするからこそ
嘘というのは説得力を増すものだ。「幹部会」が嘘にしても、幹部しか知らない情報は持っているはず。
(どうやったら吐かせられるかなぁ…拷問でもしてみようか)
もっとも拷問の知識などまったく持ち合わせてはいないのだが。
「…そうですね。ではカードとして有効かはわかりませんが、わたしの身の上話などを」
目の前の机にとん、とん、と指を打ちつけながら話し始める。
「3年前ですかね、家族が殺されまして。両親と妹、弟と。それで、まぁ復讐の為にレジスタンスに」
ふっと一つ息を吐いた。目をつぶる。家族の死に顔は浮かんでこなかった。
「能力が戦闘に特化したものなのでそれ以来ずっと前線で戦ってきました。
家族を殺した能力者も戦闘向きみたいだから都合は良かったんですけど」
机を叩くリズムを変えた。
「未だにそいつには遇えてないわけですが。……あなたでは、ないですね?」
指を静かに置く。首をわずかに傾げてサモトを見た。
>136
小枝の話を聞きながら亜門は考えていた。
とんとんと指で机を叩くリズムが交渉の終焉の足音に聞こえる。
レジスタンスのメンバーは夢想家か復讐者だが、小枝は間違いなく後者。
日高美優のように理想を持っている者ではない。
ただ私的な恨みを、敵を討つために動いている。そしてそれが強くストレートに出ている。
組織の動向に興味を示さず、ただこちらの個人情報を得ようとしていたのが何よりの証拠だ。
そうなると『取引』に出したカードの選択を間違えたことになる。
>「未だにそいつには遇えてないわけですが。……あなたでは、ないですね?」
首を僅かに傾げてみるその眼に、驚いたように椅子からずり落ちかけて見せる。
「おいおい、おっそろしい事言うなよ。敵は戦闘向きの特殊能力者なんだろう?だったら俺なんか真っ先に除外されるさね。」
完全にずり落ちないように机の端に手をかけ、体制を戻す。
勿論実際にはまったく別の目的の為の一連の行動だ。
死角になった左手には拳銃が握られ、机の端を掴む右手は身体を支える為ではなく、何時襲われても机をひっくり返し盾兼
めくらましにする為だ。
だが、こちらからは動かない。目的の為にもギリギリまで交渉は続けておきたい。
「さて、じゃあこちらから一枚と、今の話に絡んだ提案を一つしようか。
若くて綺麗なおねえちゃんとこうやって話しているのも楽しいんだが、流石に肩が辛くなってきたんでね。これが最後のカード
だと思ってくれ。
さっき幹部会を盗み聞きしたって言ったよな。
まあ、弱いがゆえにって奴だが、多少は情報収集が得意だったりする。
そこで得たのが『組織の動向』のカードだ。
組織は今日、日高美優の暗殺に動く。アレだけ派手にやって国とか煽っているんだからな。標的になるのは当然と言えば当
然だろ。
勿論、日高美優の警備が厳重なのは判っている。だから結構な人数が動くんだ。
そこで、だ。あんたらレジスタンスはこの機に国会議事堂を落とさないか?
日高美優が重要人物である事はわかるが、それを囮にすることで組織の本丸落とせるなら安くないかね?
俺の目的はさっき言ったとおり、国会議事堂にいる非戦闘特殊能力者の救出、さ。
俺自身はできなくても、レジスタンスがついでにでもやってくれればそれで良い。
日高美優は厳重な警備と多数の信者に囲まれているんだから、そう簡単には暗殺が成功するとは思えないしな。
レジスタンスは手薄な国会議事堂を落とせる。
ヒヤマさんは議事堂さえ落とせば組織の能力者名簿も手に入る。つまり、仇も見つけられるってことさ。
勿論手薄って言っても無人なわけでもないから、敵と直接対面できるかもしれねえけどな。
そして俺は仲間を助けられる、万事パッピーって寸法よ。どうよ?」
勿論亜門には助けるような仲間などいない。
今となってはレジスタンスも組織もどうなっても構わないのだ。
ただせいぜい大騒ぎをして、自分が地下の大金庫から違約金と退職金を引き取りやすくしてくれれば良いのだ。
引き取るまでの算段は既につけてある。後はいつ引き取るかだけなのだから。
薄ら笑いの張り付いた表情ではあるが、じんわりと亜門の額に汗が浮かぶ。
交渉の冷や汗と言うわけではない。あくまで肩を撃たれて傷を負った男。これも傷が悪化すれば脂汗もわくという一種のアピール
なのだ。
>137
こちらの問いにサモトは大げさに驚いて見せた。椅子から大きくずり落ち、机に手をかけて何とか踏みとどまる。
その反応からは真実の匂いはしない。恐らく、逃げるための段取りの一環として、あの動きが必要だったのだろう。
話している最中、何度か隙はあったはずだ。それを突いてこないという事は…
(少なくとも、直接的な攻撃力を持った能力じゃないわね…でもヤクザは撃退した。
となると神経操作あたりかしら…。まぁ、『違う』のは最初からわかっていたけど…)
そう、サモトが家族を殺した相手ではないと言うのはわかっていたことだ。
家族は小枝の目の前で殺されたのだから。当然、犯人も見ている。背格好は似ているが顔はまったく違う。
それでも整形などの可能性も無い訳ではなかった。優曇華の華が咲く程度の確率ではあるけれど。
続いてサモトは自称「最後のカード」を切った。組織の動向に関して、
これまでと何一つ変わることのない饒舌さで言葉を紡ぐ。
(日高美優の暗殺…あの子、今は確か23区外のテレビ局で収録のはず…。
ヤクザと遊んでたときに何の連絡もないって事は、行くまでは無事だったって事だろうけど、
まさか局まで襲撃するつもり?いくら組織でも無謀…でも切羽詰まればそれ位のことは…?)
考えている間にもサモトの口は回り続ける。『提案』に話が至った所で男の目的がはっきりした。
それは大方予想通りで、つまりは漁夫の利を得ようと画策していたと言うことだ。
(仲間、ってのもどこまで本当か怪しいものね…。いたとしても助けようと思うタイプじゃなさそうだし…)
サモトの話はある程度まで真実だろう。美優の暗殺が計画されているなら
確かにそれなりの人数をかけなければ成功はない。しかし、それが誘いの手だとしたらどうか。
拠点を手薄と見せかけ、戦力を集中してきた敵を叩く。陳腐なほどにありがちだが、
それだけに成功すれば効果も大きい。また首尾よく占拠出来たとして、名簿なるものが存在するかどうか。
あったとして、それがこちらの期待する情報をもたらしてくれるのか。
だが…少なくとも小枝個人にとっては食いつく意味はあるように思えた。
「なるほど…。まぁ私の一存では決められることではないですが、やる価値はありそうですね」
サモトの死角になる机の下で、わずかに踵を浮かせる。気づかれない程度に重心を変えた。
「ところで…そちらはこれからどうするつもりですか?」
「何時の世も戦か」
廃屋と化した高層ビル。
その高層の激しく窓が割れた部屋から、戦区となった23区を、蒼山は静かに見据えていた。
蒼山の血に流れ、脈々と受け継がれる力。
それに加え、特殊能力と呼ばれる謎の力。
蒼山の力も、特殊能力も、戦いに用いられている。
能力者保護協会が動こうと、結局は能力者自身の意思次第で、悪人にも善人にもなる。
平和利用する力、戦いに用いられる力。
その差は、遠いようで短い。
古、都の長を護るべく力を使った蒼山一族。
だがその力は、平和利用だったのか戦いへの利用だったのか。
今の自分は、戦っている。
「終わりにしよう」
>138
伝えるべき事は伝えた。
全て丸々信じるような相手ではないとは判っているが、全てを嘘だとも思われていないだろう。
本当ならもう一押し、レジスタンスが国会議事堂に行くように仕向けたいのだがこれ以上付け加えるのはただ疑念を増すだけだ。
小枝が復讐鬼のレベルまで行っているのであればもう一言出しただろう。そうすればレジスタンスが動かずとも小枝が単独で動くこともあ
りうるからだ。
しかし、そこまでの状態でもなさそうなので止めておく。
有益な情報が得られなかったが、こちらの情報を渡せたことの方が重要なのだ。
それにしても・・・亜門は小枝を見ながら思う。この年で復讐にかけるとは随分と勿体無いことだ、と。
小枝とのやり取りをするうち、図らずも亜門は小枝を気に入っていた。その能力・判断力・行動力・度胸。
取引でなく、話が通じる相手なら仲間にしたいほどに。
>「ところで…そちらはこれからどうするつもりですか?」
会談の終わりを意味する言葉。ここからがもう一つの山場だ。
このまま無事何事もなく別れなければいけないからだ。でなければせっかく渡した情報の価値は無に帰すだろう。
「これから、かい?
いい加減この肩が辛いんでね。一旦23区外に出ることにするよ。
もしレジスタンスが国会議事堂急襲して成功したら、非戦闘特殊能力者は助けてやってくれ。
その中に亜門って奴がいるはずだ。そいつに会えれば、だが、サモトが『外』で待ってるって伝えてくれれば良いさ。」
にっこり笑って見せて、次の言葉を考える。
この場から無事分かれなければいけないのだ。仲間を呼ばれたようなそぶりはないが、これ以上長引かせたくはない。
「さて、そろそろお別れの時間だな。
お互い・・まあ、少なくとも俺は色々話して打ち解けたとはいえ、二人で手を繋いでこの部屋から出るってわけにはいかないんだろう?
と、すると両方が安全に納得できる部屋の出方は、だな・・・
まずはヒヤマさんから部屋を出てくれ。出入り口はあんたのすぐ後ろだ。
まあ安心しなよ。見ての通り左腕はうごかねえ、銃は目の前に置いてあるが右手にはこんなモンはめちゃっているから握るぐらいはできても
トリガーは引けねえ。」
そういいながら右手にはめられたスタンナックルを見せ、言葉を続ける。
「こんな状態の男の前から注意深くドアから出て行くくらい簡単だろう?俺はヒヤマさんが出て行くまでここに座っているさ。
で、出て行ったら俺はそっと消えるよ。
この際だから言ってしまうが、俺の能力は脱出経路感知だ。この部屋からでは無理だが、このビルから人目に付かず逃げるルートを察知す
る事が出来る。
この能力のお陰で国会議事堂からも、襲ってきた筋者達からも逃げられたってことさ。
あくまで脱出経路を知るだけで脱出できるかは別問題だから撃たれちまったんだけどな。」
左腕が動かない振りを通してはいるが、既に死角となっている左手には銃が握られている。こちらから動くわけには行かない。
ついでとばかりに渡した情報の信憑性を高める為の情報もトッピングしておいた。
後はこのまま別れられれば問題はないのだが・・・
「なあ、もしこの戦争が終わってお互い生きてたらヒヤマさん俺のところにこねえか?
この仕事の報酬で俺は建設会社を興すつもりなんだ。さっき名前の出た亜門って奴とな。
この戦争の後、東京再生の大建築ラッシュが起きる。それに乗れば大儲け間違いねえ。
復讐と戦争だけで人生終わらすのは勿体ねえぜ?ヒヤマさんなら歓迎するよ。」
何故こんな言葉が出たのかは自分でもわからない。情報的にまったく何の作用もしない言葉を吐くとは・・・自分で自分に驚いてしまった。
薄ら笑いの張り付いた亜門の表情が戸惑ったような苦笑いになってしまっていた。
>140
こちらからは最後となる問いにサモトは詰まることなく答えた。最初から用意されていた答え、と言うことだろうか?
浮かせていた踵を少し戻す。サモトは続いて小枝に先に部屋を出ろといった。
(左腕が動かないってのもどこまで本当かしらね…火、点けてみようかな)
目の前の机には先ほど触っている。念じれば燃え上がるだろう。そのときの反応を見れば嘘かどうかわかる。
炙っても動かないようなら嘘。熱に対する反応は不随意だ。もちろん動きすぎても嘘をついていたことになるが。
もっともそんな事をしても意味は無い。サモトはたとえこちらが背中を見せても撃つことはないだろう。
漁夫の利を狙っているのであれば、小枝に打ち明けた情報を、『上』に持って帰って貰わなければならないのだ。
しかし、能力に関しては最後まで明かすつもりはないらしい。当然と言えば当然だが。
(「脱出経路感知」で襲撃者を倒せるとは思えないんだよなぁ…)
恐らくサモトと小枝が襲われていたのは同じタイミングだったはずだ。違うのであれば
サモトが襲われた際の銃声が聞こえただろう。つまり撃退もほぼ同時であったと言える。
撃退せずに逃げてきていたのであれば、このビルに入る前に上空から周囲を見た際、
サモト以外誰一人いなかったのは不自然だ。やはり全員殺したと見るべきだろう。
(実はこのよく回る口が能力なのかなぁ。…口説かれてるわけじゃないよね?)
能力について語ったあとのサモトの言葉に、そんな考えを抱く。
対峙して以来交わした言葉の中でもっとも意外で、そしてもっとも誠実な言葉だ。
サモトの表情が変わる。いたずらを見つかった子供のよう、と言うと少し可愛すぎるだろうか?
それに対し小枝も小さく笑った。
「そうですね。終わって、生きてれば」
体重をいったん前にかけ、リュックを掴みながら反動をつけて後ろに戻す。
椅子の背もたれの上でくるりと回転して背後の床にとん、と降り立った。
「そのときはレジスタンスも首になるでしょうし、お願いしますね…亜門さん」
最後に一つカマをかけて、振り向いた。リュックを背負い、出口に向かって歩き出す。
撃たれるかもしれない、とは思わなかった。
>141
無事会談が終了し、小枝が出て行こうとする。
小さく笑みを浮かべ、リュックを掴む小枝をみてほっと息をついた。
だが、その間際・・・
>「そのときはレジスタンスも首になるでしょうし、お願いしますね…亜門さん」
その言葉に亜門はにんまりと笑みをたたえて応えた。
「おいおい、初めて名前を呼んでくれたと思ったら間違えてるぜ?亜門じゃなくてサモトだよ。発音が似ているからって
ちょっとショックだねぇ。」
用意しておいた台詞を返すが、危なかった・・・。
会談の終了後、別れる間際。一番気の緩む時に何気ないカマかけをするのは常套手段だ。
単純だからこそ使い時を選べば絶大な効果を挙げる。が、亜門も十分それは承知しており、だからこそそれが使われ
るタイミングはわかっていた。
しかし、思いがけず予定外な言葉を小枝にかけてしまった直後であり、危うく言葉を返すタイミングを外すところであった。
心の中で冷や汗をかきながら、こういった小技も忘れずにできる小枝の評価を更に一段階上げていた。
「次ぎ会う時はもう少し色気のあるところでと願いたいものだねぇ。」
出口に向かって歩き出す小枝の背中に声をかけ、その姿を座ったまま見送った。
>142
サモト…いや、亜門に背中越しに手を振り、部屋を後にした。向こうは否定したが、
小枝には確信があった。もっとも根拠はないのだが。
(色気のあるところねぇ…。回るベッドの上とかならお気に召すのかな?)
ビルの外に出た。外套を取り出し、被る。内側に熱を発生させ、真直ぐに上昇した。
『燃料』は減ったものの、体重が軽くなった分、移動に要する熱量も同様に減っている。
ビルの隙間を縫いながらアジトまで飛んだ。何事もなくアジトの入り口をくぐり、
得た情報を報告した。すぐに自室に戻る。昨日までは相部屋だったが、今日からは一人だ。
粗末なベッドに腰掛け、目をつぶる。あの情報だけでは恐らくすぐに部隊を動かすことはないだろう。
偽の情報を掴まされた可能性を真っ先に考えるはずだ。裏が取れたときには機を逸している可能性が高い。
ならば・・・
一時間と少し後。弾薬の管理をしていたメンバーが何者かに昏倒させられているのが見つかり、
アジト内が騒がしくなった。9×19mm弾数百発、サブマシンガン2丁が持ち去られている。
小枝の姿はアジト内の何処にも無かった。
>143
手を振りながら部屋を出て行く小枝を見送った後、即座にビル内部を調べ包囲されている様子のないことを確認する。
その後ようやく緊張を解いて大きくいきをついて座り込んだ。
タバコを一本ゆっくりと時間をかけて吸いながらこれからの事を考える。
既に準備は整っている。
やくざに襲われたのは計算外だったが、レジスタンスと接触。情報提供できたのは大きい。
昨夜の『組織の今後に関わる会議』で何が話し合われたかは知る由もないが、わざわざ夜中に招集かけるのだから近日中、
いや、今日中に何か大きな動きがあるとは踏んでいる。
動きのドサクサに紛れ騒動を起こすつもりではあったが、レジスタンスと言う大きな騒動がやってきてくれるのなら尚やりやすい。
勿論、レジスタンスが動かない可能性もある。
それはそれで、計画通りに勧めるだけで問題はないが、あげられる可能性をあげておくに越した事はない。
「さて・・・と・・・」
タバコを吸い終わった亜門はビルの合間を這うように進み、崩れかかった地下鉄の駅へと降りていった。
真っ暗な地下鉄構内で、亜門は超音波式暗視ゴーグルをかけると、視界が白と黒の濃淡のみの水墨画の世界のようになる。
そして所々画像が乱れたノイズが現れる。
所々下水道網・地下鉄網とも繋がり広大なダンジョンと化した東京地下通路網。
完全な暗闇と静寂に包まれその広大さと複雑さゆえに、東京で活動する能力者達でさえ殆ど利用しない。いや、利用できない。
そんな東京地下通路網を亜門が利用できるわけは超音波式暗視ゴーグルにあった。
要所要所に人間の可聴域をはるかに外れる音源を置いておき、超音波ゴーグルのノイズとしてそれを捉え、正確に道をたどって
いける。
亜門はノイズを辿り、一期は特徴的なノイズへと進んでいく。
たどり着いた先には大きなバッグがポツリとおいてあった。
それを手に取り、亜門はにやりと笑う。既に昨日からの予定通り。朝確認の電話も入れてあるので間違いがない。
念のためバッグの上から手触りで確認してみるが、注文通りの機材や発破が入っている事はすぐにわかった。
亜門は左手でバッグを担ぎ、ノイズを辿って国会議事堂へと戻っていった。
議事堂前。
小枝はポケットからタバコを取り出し、周辺を歩きながら吸った。むせる。肺に入れるつもりはなかったのだが。
(よくまぁこんな不味いもの吸うわねぇ。まぁ美味そうに吸ってはいなかったけど…)
奥臥のことを思い出す。別にとりわけ親交があったわけではないが、いつもやたらと不味そうに葉巻をくゆらせていた事は
はっきりと覚えている。あんな表情をするならなぜ吸うのだろうか。恐らくそれを問う機会はもうないだろう。
吐き出した煙は風に乗って議事堂の中へ運ばれていく。立て続けに一箱吸い、十分な煙が中へ流れ込んだ所で
意識を集中する。煙の粒子一粒一粒が炎を上げた。
(あー、やっぱここまで派手にやるとなぁ…)
一気に体がしぼむ。アジトを出る際に着替えてきた服でもサイズが合わなくなったので脱ぎ捨てた。
下にはタイトフィットのシャツとスパッツ。伸縮性のある編み方の耐火繊維製で、体型が激変しても着ることが出来る。
その上から外套を羽織った。弾倉とバラ弾の詰まったリュックを外套に引っ掛け、銃をしっかりと両手に握る。
長く細く、息を吐いた。亜門の言葉を思い出す。『復讐と戦争だけで人生終わらすのは勿体ねえぜ』彼はそういった。
言われてみれば『終わったあと』のことなど考えたことはない。あの時は儀礼的に言葉を返しただけだったが、
まじめに考えてみても良いのかもしれない。
終わって、生きていれば。
小枝は大きく息を吸い、炎で彩られた議事堂の門をくぐった。
髪が熱に煽られてふわりと広がる。次の瞬間にはそれを水平になびかせて走り出していた
議事堂の私室に戻ると早速作業に取り掛かる。
レジスタンスが動こうが動かまいが、予定は予定だ。後は機を何時掴むか・・・
何時でもこちらの計画を発動できるように準備だけはしておかねばならない。
だが、亜門はまだ知らなかった。
水面下で玖珂を筆頭にした真の四季が画策していた非戦闘特殊能力者の海外集団亡命計画が実行されつつある事。
午後からはレジスタンスのアジトへの潜入及び一斉攻撃が始まる事。
矢坂や須田の思惑も絡まり、状勢は激流のように動いていた。
準備も終わり、窓から中庭を眺めていると、小さくため息が出た。
亜門の長くも短かった東京での戦いも終焉を迎えようとしているのだ。
ガラにもなく感傷に浸ってしまった事に自嘲していると、突然の閃光に視力が奪われた。
議事堂前が爆炎に包まれたのだ。まるでナパーム弾でも落とされたかのように。
視界が徐々に戻ると炎の中に人影が見える。
「・・・・早いねえ。しかも派手な登場だ・・・って、ん?」
よくよく見てみると人影が一つしかない・・・
レジスタンスの攻勢かと思ったが、どうやら違うらしい。だが、思い当たる節はある。
完全な亜門の読み違いであった。たった一人で来るほどとは思っていなかったのだ。
「っち・・・あの・・・がっ!
いくら力があってもこれだけ派手にやればすぐにガス欠だろうに、一人じゃあっという間に殺されるぞ・・・」
殆ど崩す事のない薄ら笑いを貼り付けた顔が苦々しげな顔になり吐き捨てるように口ずさんだあと、亜門は走っていた。
卜部姉妹の防衛力と多数の戦闘特殊能力者の前では一人ではいくらも持たない。だが・・・仕方があるまい。
予想より大幅に早かったが、この機を逃すわけには行かなかった。
地下シェルターまでたどり着くと、バックからスイッチが並んだ基盤を取り出す。
「さてさて、ヒヤマさんはまだ頑張っているのかねえ。生きているのならもう少し頑張ってくれよ?
そんじゃま、卜部姉妹さんよ。密談覗かれた恨みもあるしな・・・!外からの攻撃には絶対的な防御を誇っていても、
中からではどうかな?」
順にスイッチを入れていく。
まずは亜門の私室とあてがわれた部屋にセットされたダイナマイトが爆発する。
順に各所にセットされたダイナマイトが爆発し、国会議事堂周辺のマンホールからも爆炎が上がった。
「よぉし、派手に爆発ショーをおっぱじめたところで、俺も仕事にかかるか!
退職金と違約金、高くつくぜぇ?ついでにエンフィールドの分も貰っておいてやるからな!」
地上の混乱と爆発が手に取るようにわかる。心地よい震動を感じながら大金庫へと入っていった。
一年後・・・
「おら、おめえら!俺たちゃ地図に乗る仕事してんだからな!気合入れていけぇ!!」
工事現場に亜門の怒声が響き渡る。
東京再生計画が始まり、亜門は『東京土木・亜門組』を立ち上げその一端に食い込んでいた。
爆発の混乱に乗じて地下の大金庫にある現金・金塊などごっそり盗む予定だった。
だが、あの時・・・爆発炎上し、混乱する国会議事堂に少し遅れてやってきたレジスタンス本隊。
その戦いのどさくさにまぎれ、全てが順調に行くはずだった。
だが、ほんのちょっとした寄り道したため、現金の大半が焼け、金塊も解けた。そしてそれだけでなく、亜門の身体の
一部まで焼かれていた。
持ち出せた額は予定していたものより大幅に少なかったが、それでも東京再建計画に食い込める程度の会社を立ち
上げる為には十分な額を持ち出せたのだ。
戦いの結末は亜門は知らない。
だが、その結果は日本人全てが知っている。
様々な推測が流れたが、戦いの最深部から生還したという者による証言が有力視されている。
コードマスターは特殊能力者を生み出す能力の持ち主で、政府によって機械的に特殊能力者を生み出し、制御する為の
装置と半ば融合していたらしい。
マスターは特殊能力者の軍事利用と意図的生産を憂い、自殺もできぬ機械と融合した身体で東京を制圧しその計画を
中断させていたと言うのだ。
そして非戦闘能力者の海外亡命を目論み、戦闘特殊能力者を選別し、戦場に散らせようとしていたことも。
政府は秘密裏に東京を、いや、特殊能力者製造装置と融合したコードマスターを奪還しようとしていた。
様々な思惑はあったであろう。
様々な戦いがあったであろう。
だが、結果は一つだ。
コードマスターは死に、その間際、暴走した装置は日本中の人間に特殊能力を与えた。
皮肉な話だ。特殊能力を恐れ迫害していた構図は全ての人間が特殊能力者になる事で解消されたのだ。
この影響で混乱し様々な争いが起きているが、それでも人々は生活している。
「玖珂よ、日高美優よ・・どんな世界を思い描いていたかはしらねえが、俺は相変わらず薄汚たねえ世界で薄汚く生きて
いるぜ?」
共に方法も思想も違うが、優しい世界を目指した二人を思い浮かべながら呟く。
そして走馬灯のように東京で戦い、傷つき、生き延び、あるいは死んでいったものたちの顔を思い浮かべる。
過去の残滓をゆっくりと振り払い、目の前で行われている再生への歩みである工事に目をやる。
頬と右肩、右腕に残る大きな火傷の跡をゆっくりと撫でながら作業に奔走する従業員達を見ている。
治癒の能力者が傷跡を消すことを提案したこともあったが、亜門は消そうとはしなかった。そしてその心中を語ることも・・・
148 :
名無しになりきれ:2005/07/12(火) 15:52:31
完走記念
hosyu
150 :
第二部開始:2005/07/25(月) 17:39:58
朝。スズメの囀りとカーテンを通した淡い黄色の光で目を覚ます。
上半身を起こし、今は腰まで伸びた髪を束ねてベッドの上からするりと抜け出した。
隣で体の左側を下にして寝息を立てている男の人を見る。引き攣れた頬、ただれた首筋。寝具の下に隠れて見えないけど、
同じような痕は腕全体にも広がっている。一年前、わたしのせいで負った火傷の跡だ。消そうと思えばいつでも消せる。
しかしこの人はそれをしない。
部屋を出てキッチンへ向かった。コーヒーメーカーのスイッチを入れ、沸くまでの間に顔を洗う。
のちに彼は「あの時お前がなんであんな真似をしたのかわからない」と言った。
わたしに言わせれば、自分のこともわかっていない人に他人のことがわかるわけが無い。
彼はたぶん自分のことを狡猾で抜け目が無いとでも思っているのだろう。間違ってはいない。
でもそれはあくまでも「一面」だ。わたしから見れば姑息でスケベで寂しがり屋で、優しい。
「死なせるのがもったいないと思った」なんていう程度の理由で、命がけで人を助けにくる大馬鹿だ。
もっとも余計な回り道をしながらも会社を興す資金は確保しているのだから、やはり抜け目無いのは間違いない。
コーヒーメーカーからこぽこぽという音がし始め、芳しい香りが部屋を満たす。それを嗅いでようやく目も冴えてきた。
カップにコーヒーを注いだ。ポーションとシロップをスプーンと一緒にソーサーに置く。トレイに乗せて、寝室へ持って行った。
別にやれと言われているわけではない。毎朝好きでやっていることだ。ついでにいえば飯は上手く作れとか
いつも綺麗でいろとも言われていない。むしろ出勤時にはごみを持って行かせている。
部屋の中はさっきよりも黄色くなっていた。サイドテーブルにトレイを置き、ベッドに腰掛ける。
未だ目を覚ます気配の無い彼の顔を覗き込んだ。引き攣れた頬、ただれた首筋。
消せばわたしとの繋がりがなくなると思っているのだろうか?やはり姑息だ。
こんなものが無くてもわたしは……
彼が寝返りを打った。顔が真直ぐ上を向く。わたしは体をかがめて、右の頬にキスをした。
ざらっとした感触が唇に伝わる。
顔を少しだけ離して、揺すりながら声をかけた。
「朝だよ」
もう一度。
「起きて」
彼がまるでスイッチが入ったみたいに目を覚ます。覗き込んでいるわたしと視線が合った。
「おはよう」
上半身を起こした彼の頬にあらためて口付けをした。彼はとても怪訝そうな顔でわたしを見ている。
わたしはその顔を見て小さく笑った。
また一日が始まる。
平穏で、変化も無く、退屈で、逃げ回ることも、騙し合うことも、命を削ることも無い一日が。
152 :
名無しになりきれ:2005/07/26(火) 08:55:48
やりたけりゃやれ
支配するのが大変だって気づくのですか?
154 :
名無しになりきれ:
よくわかんない