『ネカネ・ラスボス説(仮称)』 ここまでのあらすじ
↓扉絵
@
http://picnic.to/~ami/cgi-bin/oekaki2/data/IMG_000028.jpg エヴァですら圧倒される程の絶大な魔力の持ち主だったネカネ。
その有り余るパワーと天賦の才能をもって、邪な意志を以って現れた『異界』の魔物共を
次々と葬り去っていく。魔法界に関わる者全てが、その力に脅威した。
だが彼女の「力」は、それに留まる処では無かった。
地上に『魔法至上世界』を構築し、自身と弟ネギを天主に据える、という野望を抱いたネカネは、
世界中に散らばる魔法界の拠点を次々と撃破、いよいよ日本の砦の一つ、麻帆良に標的を据えた。
事態を事前に察知したアーニャはネギと共に逃亡、学園都市にはネカネを迎え撃つべく
世界中から多数の能力者達が集結、来るべき決戦に向けて着々と準備は進められた。
しかし、その努力は全て無に帰した。
学園都市全体を覆う幾重にも渡る各種障壁、関東上空域に張り巡らせた魔力哨戒網、
最新の魔法物理学に基づくトラップ、デコイ、センサー類・・・
それらの干渉を全く無視して、何の前触れも無く前線に飛び込んで来た美しい金髪の女。
木乃香は、かくも巨大な邪気に戦慄した。
いきなり間近に現れた悪意の塊が、かつてネギが姉と慕っていた白人の女だと気付いた時には
既に能力者達の九割方は戦闘不能状態に陥っていた。
( その多くは身体を八つ裂きにされるか、魂まで炭化する程の劫火に焼かれて死に、
他は恐怖の余り発狂したのだが )
突然木乃香は、自分が仲間等を先導すべき立場に置かれた事に思い当たった。
学園都市の防衛網は崩壊した。だがここは生き延びねばならない。
麻帆良は棄てる。生き残った者は各自速やかに戦場を離脱、樺太の魔法都市へ向かえ!
ネカネは微かに微笑み、あらゆるブラフを貫通する千里眼で木乃香を見据えた。
瞬間、その背後に自身を転移させる。護衛らしき三人を先に潰す・・・!
2/6
更にネカネは少女の首根っこを片手で掴み、もう片方の手で鎖骨から枝分かれした手羽先を
背中の皮ごと引き剥がした。
”解体”済の不要な肉片は、目配せしただけでポンと弾け、僅かな煙を上げ、消えていく。
D
http://picnic.to/~ami/cgi-bin/oekaki2/data/IMG_000032.jpg 巨大な剣を携えた少女は、自分の体から血の気が引き、力が抜けていくのを感じた。
こんなのありえない、ありえない、ありえない。
既に3-A生徒の2/3が灰塵と化し、残りも半死半生。明日菜は湖の縁に広がる砂浜を見下ろした。
血みどろの引き裂かれた大量の肉塊が波に洗われているのが目に映る。その中には
学園の魔法界関係者のみならず、おおよそ世界中から支援に駆けつけた能力者達もいる筈だ。
それらの中に頭髪や衣類を認められなければ、元が人間だった事すら判断がつかないだろう。
───エヴァちゃん、ワタシもうダメだよ。誰も救えない───
”不死”にして「最強無敵の悪の魔法使い」エヴァンジェリンは、地上に砂粒ほどの欠片も、魂魄すら残さず
”消滅”させられた。ネカネの片手の一閃が「闇の福音」と恐れられた吸血鬼の力を上回ったのだ。
実質的な司令塔にして最強の攻撃ユニットを失い、さしもの楓や龍宮も動揺。
止む無くクラスメイトを盾に一時退避した直後に、守護隊ごと木乃香も消された。もう頼れる味方は無い。
愕然と頭(こうべ)を垂れる明日菜、煌めくドレスを棚引かせ、金髪の女がゆっくりと近づいてくる。
───ネギ、短い間だけど、アンタと暮らせて良かった さよなら───
3/6
「お姉様・・・」
その声が、心に直接話し掛けられているのに気付いたのは、二度目の呼びかけからだった。
「アスナお姉様、聞こえて?まだ終わりじゃ無い、私がいます。あきらめないで」
明日菜はハッと顔を上げ、周囲を見回した。
「だれ?何処にいるの!?アナタは一体・・・」
「誰とお話してるのかしら?まだ念話が出来る程の能力者が残っていたなんて」
ネカネに気付かれた!明日菜は身を固めるが、声の主は動揺も見せずに続けた。
「奴の動きを封じます。お姉様はトドメを」
「待って、ワタシがおねえさまって!?それにアイツを封じるって、どうやって」
「耳障りね、さっさと顔をお出しなさい、ねぇ?」
金髪の女は、大気を地上に向け軽く圧迫した。生存者達はたちまち耳鳴りと頭痛でうめき声を上げる。
「フッ・・・まあそう急くなバケモノ、下を見ろ、私はここだ・・・」
ネカネは湖の岸辺を見渡し、やがて”気”の渦が一人の黒い肌の娘に収束しているのを感じ取った。
E
http://picnic.to/~ami/cgi-bin/oekaki2/data/IMG_000033.jpg
4/6
世界樹の丘に散乱する黒焦げの亡骸達を背景に、ふわりと浮き上がる褐色の肌の少女。
「まさか・・・あなたが呼んだの!?」
「元の身体を復元するのに時間を取られました。もう平気、お姉様も間も無く」
”妹”は左手の指先を正面に突き出し、空に印を描いた。全身に刻んだ入れ墨の紋様が青白く発光する。
途端、周囲に閃光が走り、明日菜の身体目掛けて収束する。「うわあぁぁぁぁぁ!!」
「!」
幾千もの光の針が全身を貫き、熱砂の旋風と極寒の吹雪が同時に体内を駆け巡る。
全ての血管が破裂し、内骨格は砕け散り、筋繊維は裁断され、明日菜の身体は粉微塵となった。
だが、雷鳴が収まり、絡みついた稲妻が消えても、依然として人影が残っている。
・・・いや、それは既に明日菜では無かった。彼女の全身を被っていた明日菜の殻は剥がれ落ち、
表れたのは、赤い目と、褐色の肌と、白い髪を持った少女。
F
http://picnic.to/~ami/cgi-bin/oekaki2/data/IMG_000034.jpg 青白い光を放つ球体が彼女を包み、見る間に膨れ上がる。
「コイツ、魔力が回復している・・・バカな!お前達、一体何者だ?」
「ああ、ザジィ!私は今まで何を・・・」
「やっと私の事を思い出していただけましたね、アスナお姉様」
5/6
”妹”は左手を上げ、遥か上空、煌びやかにドレスを棚引かす金髪の女に差し向けた。
「目覚めよ、そして我に従え」
突如、頭上に轟音が響き渡り、僅かに生き残った生徒達が悲鳴を上げ頭を抱えうずくまる。
乾いた樹皮や、枯れて久しい枝葉をふるい落とし、世界樹が鳴動している。
深海に巣食う軟体動物が触手を波にうねらせるが如く、ゆらゆらと蠢き始める数百本の梢達。
「握り潰せ!」
グオォッ、と咆哮を上げ号令に応えた大樹は、金髪の女に向けて一斉にその枝葉を伸ばし始めた。
G
http://picnic.to/~ami/cgi-bin/oekaki2/data/IMG_000035.jpg ネカネは右手を前に差し出し、ヒュンッ、と身体を回転させた。
瞬間、杖も箒も無しに数百本の炎の矢が放たれ、全方位に展開していた枝葉に火の手が沸き立つ。
苦痛の叫びを上げ、腕で火の粉を振り払うかのようにその身を揺さ振る大樹。
生木のいぶされる煙が噴き上がり、辺りを包む。
だが、炎に焦がされるよりも、世界樹の驚異的な成長スピードの方が勝っていた。
煙を掻き分け突進してくる青葉の梢に、ネカネは舌打ちした。埒があかぬ。
ここは地上に降りて、あの黒い娘を潰すが吉か。
上方に用意していた空間転移扉(ゲート)に触れ、一気に娘の背後へ飛ぶ!
「!?」
扉が開かぬ。いや、それどころか、周辺空域に幾重にも張り巡らしていた各種障壁も
いつの間にか全て無効化されている上、周囲の魔力濃度も極端に減少している。
このままでは浮遊術も持続出来ない。あの黒い娘の仕業なのか!?
6/6
「ばっ・・馬鹿な、私に敵う者など、まさか!」
躊躇する間にも枝葉は彼女を取り囲み、その衣装を突き破り、その髪を巻き上げる。
枝が手足を絡め捕り、葉が目鼻や喉を塞ぐ。身動きがとれぬ状態のまま、ゆっくりと胴体に枝が廻る。
「ぐわああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
H
http://picnic.to/~ami/cgi-bin/oekaki2/data/IMG_000036.jpg 締め上げられた身体がバキバキと音を立て、背骨、肋骨問わずあらゆる内骨格が砕け散り、
圧迫された血管は破裂し、全身の毛穴から血が吹き出す。
獲物を狙う鷲の如く外に伸ばされた手も、更に覆い被さる枝葉に埋もれていき、潰されていく。
いまやその様子は、大きな球体型の鳥の巣のようだ。
やがて球体の枝の隙間から青い体液がしたたり落ち、内蔵とおぼしき血袋がはみ出し、腐臭を散らす。
ネカネの肉体は原型を留めず破壊された。戦いは終わったのだ。数千人の命を犠牲にして。
だが、アスナは自身の身体が、未だ強い邪気に晒されているのを感じた。
無意識のうちに防御結界を張り直し、大剣を両手で構える。
”妹”もそれに応え、地上に広域結界を巡らせ生き残った者達を包み込む。
周辺空域の気の流れが乱れたままだ。まだ何か仕掛けがあるのか?
「!」 針で刺されたような視線が突き貫ける。アスナは反射的に剣を球体に差し向ける。
I
http://picnic.to/~ami/cgi-bin/oekaki2/data/IMG_000037.jpg 「ネカネ・ラスボス説(仮称)」 終