湾岸ミッドナイトの島達也が質問に答えるスレ3徳利

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960名無しさん@そうだドライブへ行こう
>>959
朝日新聞 2009/02/01 p.14 [ササキバラ・ゴウ コミックガイド]

 見かけの印象と、実際の読後感が、これほど異なる作品も少ないのではないだろうか。
 チューンアップした車を首都高速道で走らせ、競いあう若者たちを描く本作は、約16年に
わたってヤング誌で連載され、42巻で物語にひとまずの区切りがつけられた。
 改造車でスピードを競う娯楽作品、というと、どこか軽めの内容に聞こえるだろうし、
実際そんなムードで物語は始まる。しかし話が進むにつれ、その印象は大きく変わる。登場
人物の言動は徐々に求道的な色合いが濃くなり、バトルが激しくなればなるほど、内省的で
静かな言葉が増していく。なぜ走るのか。何を求めているのか。優れた剣豪小説を読むかの
ような重厚さと風格がにじみ出て、不思議な感銘に包まれる。
 主人公たちのしていることは公道でバトルするという酔狂なことにすぎない。法律を超え、
生死の境も超えかねない、非常識な行いだ。だがその非日常性が、人を思慮深くさせる。
なぜわざわざこんなことをするのか。何に価値を感じて、今を生きているのか。作品を貫く
問いの数々は、押しつけがましさを感じさせることなく、しかし時代の空気に対して確固たる
姿勢を示しながら、読む者の中にも響いてくる。
 声高に称賛すると、この作品に漂う静謐な何かを損ねてしまいそうで、思わず論評の言葉に
詰まる。そんな絶妙なたたずまいを見せる、印象深い作品だ。

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