1 :
学生さんは名前がない:
2 :
学生さんは名前がない:2009/12/10(木) 07:25:53 ID:Lpt3pLrkO
筑復
3 :
学生さんは名前がない:2009/12/10(木) 12:06:47 ID:N1oyxfmIO
4 :
学生さんは名前がない:2009/12/10(木) 13:40:06 ID:TqRZArO6O
わくわくo(^-^)o
5 :
学生さんは名前がない:2009/12/11(金) 00:10:29 ID:JjDSEBnn0
翌朝、今後のことを二人で話し合うことになった。
狐は現在、外で炊き出しを行っている。
俺「昨日は本当に済まなかった。取り乱していいのはお前だけなのに、俺が
将来に絶望する必要はないのにな」
妹「ううん、いいの。それだけお兄ちゃんが私のことを考えてくれてるってことだよね?
確かに私には原因不明の呪いがかけられているみたいだけど、とりあえずお兄ちゃんの
呪いだけでも解くことができれば何とかなる気がするわ」
見ると妹の目の下にはクマができていた。よく寝られなかったのだろうか?
妹「あんなこと言われたら、落ち込んでる暇なんてないじゃない……」
俺「ん?」
妹「……何でもない」
俺「ふむ」
ぼそぼそと声がしたが、それ以上聞くのは何故か躊躇われたので止めておいた。
半「おい、そろそろ炊きあがるぞ。あまり豪勢なものとは言えんが、食ってけ」
狐は外から声をかけると、社の引き戸を豪快に開け放った。
俺「かたじけない……」
妹「ありがとう」
半「遠慮はいらん、たんと食っていくのじゃ」
いつぶりの食事だろうか。三人とは言え、複数人と食事を供するのは。
ひどく遠い過去のことであるように、何かを懐かしむように椀に注がれた汁を
啜っていく。
俺「ずずずずずず……すぅ……ごっくん、ん〜うまい!」
妹「すぅーこくっこく……うん、美味しい」
半「はっはっは。そりゃそうじゃ。何せ供え物の油揚げが入っているからな!」
俺「それは使って大丈夫なのか?」
半「いいんじゃ。ワシのために供えてあったもんじゃからな」
妹「なるほど……さすが神様」
稲荷様とは大層なもんだが、こうして生活感溢れる体験をすると、俺たちと
そんなに遠い存在でもない気がする。
6 :
学生さんは名前がない:2009/12/11(金) 00:11:14 ID:JjDSEBnn0
俺「どうせならお賽銭で米を調達してくれば最高だったんだけどな〜」
半「あまり調子に乗るでないぞよ。お前たちは居候の身なんだからな。
それにまだ一宿一飯の恩義が済んでおらんのだし」
妹「ほえっ!? そんなものが必要なんですか?」
その言葉を聞き、友だちに話しかけるようだった妹が急によそよそしくなっていた。
半「ははは、冗談じゃ。それよりも先ほど変な奴が境内をうろうろしていたが、
知っている者か?」
俺「さあ? 俺たちは一応夜逃げ同然でここまでやってきたから、連絡をとれるような
知り合いはいないものと思っていたけど……」
妹「まさか……」
俺「ん? 妹よ。何か心当たりがあるのか? お前の非公式追っかけファンでもいるのか?」
妹「いやいや……そんなのはいないけど、ここまで追ってきそうな人が一人いるじゃない」
俺「はて……」
実は薄々そうじゃないかとは考えていた。だが、これ以上変なことに巻き込まれたく
なかったので、敢えて気付かないフリをする。
半「ふむ、まあどちらにせよ、害のある人間ではなさそうだから放置しておいたぞ。
ただの参拝客かもしれんしな」
俺「まだ6時とかなのに、そんな熱心な信仰者がいるとは思えないな……」
まあ神が無視していいっていうんなら、遠慮なく無視させてもらおう。
佐竹「おお〜いい匂いがすると思って、偶然通りかかったらわが友を
発見してしまったなぁ〜! いやぁ、奇遇き・ぐ・う!」
俺「お前の言動はいちいちわざとらしいんだよ! こんなところまでつけてきて、
何が目的なんだ? 金か?」
佐竹「おいおい、君たちから金を巻き上げようったって、このザマじゃあないか〜。
コスプレちびっこ少女と一緒に某村の炊き出しみたいに大根汁を食べている姿を
見て何か危害を加えようなんて、よっぽどの鬼畜者だよ!
僕は善良な一般ピーポーだからね!」
妹「もしかしてストーカー?」
佐竹「こらこらぁ〜! そこぉ〜! いくら自分が可憐だからってそんなことを言うもん
じゃあないよぉ〜! 僕はどうしても君たちの力になってあげたいと思ってだねぇ」
マイユア……
8 :
学生さんは名前がない:2009/12/11(金) 00:21:03 ID:NLnFGvdNO
わくわくo(^-^)o
10 :
学生さんは名前がない:2009/12/11(金) 14:59:29 ID:NLnFGvdNO
わくわくo(^-^)o
クマクマ
12 :
学生さんは名前がない:2009/12/12(土) 13:03:22 ID:EZ3ipA8VO
みんな待ってるよ〜!
みんな?
14 :
学生さんは名前がない:2009/12/12(土) 21:55:11 ID:3HPkc00c0
半「コスプレちびっこ少女とはワシのことかの?」
辺りに異様な熱気が満ち始めていた。ゴゴゴと心なしか地響きも聞こえる。
俺「おい、佐竹。とりあえず何でもいいから謝っておけって!」
身の危険を感じた俺はすぐさま大木の後ろに回りながらそう提案した。
妹は鍋の蓋を前方に設置して、完全防備である。
佐竹「おや? 何だか今日は暖かいな。やはり僕の日ごろの行いを祝福して
お天道様が照らし出してくださっているのだろうね〜」
半「言いたいことはそれだけか?」
佐竹「おおファニーガール、そんなに俯いちゃってどうしたんだぁい?
耳まで赤くしちゃって、僕の顔をまじまじと見るのが恥ずかしくって仕方ないのかな?
あれ、きみ耳が面白い形をしているね? どれどれ……」
妹「……くる!」
半「起火大地大神与我自放大炎鎮魂! いざ解き放て、舞幻焔玉!」
佐竹「日本語でおk?」
と、冗談を言う間もなく、刹那のうちに佐竹の上半身は大火に包まれた。
佐竹「ひゃへゃ……あつつつっ! 誰か水をぉ……」
半「ふんっ! まだ口が利けるとはな! 悪運の強いやつめ!」
佐竹「ぎゃふんっ!? ごめんなさひぃっすみまぜん、もう何もしまぜんからゆるじで……」
半「わかれば良いのじゃ」
炎はまた一瞬にして消え去った。
佐竹「はぁ、はああ……ふぅ……ってあれ? 何ともないや……」
圧巻だった。まさかこの小さな狐女からこんな危なっかしいものが飛びだすとは思いも
寄らなかった。
ただ、佐竹が頑丈なのか、やけど一つ負っている様子がない。
半「あれは幻なのじゃ。ワシも長いこと生きておるから、徐々に妖力が衰え、
あれくらいしか使える術がないというわけじゃ」
頼んでもいないのに自分の弱点となるようなことを平然と言ってのけた。
15 :
学生さんは名前がない:2009/12/12(土) 21:56:15 ID:3HPkc00c0
妹「とにかく無事でよかったですね……」
と恐る恐る佐竹に近づきながら労いの言葉をかける妹。
佐竹「ははは……何が何やらさっぱりだよ……」
事情を知らない佐竹は巻き込むわけにはいかないと思っていたが、すでに
現象を知ってしまった彼を部外者ともはやこのまま追いやるのもまずい。
俺「しかし、あれを見たら現実に神を認識せざるを得なくなったな」
半「当然じゃろう。そのために見せてやったのじゃ。事態をもっと重く
受けとめてもらわないと困るからな」
俺「困るってあんたがか?」
半「そうじゃ。さっきも話した通り、ワシの妖力、要するに生命力と換言しても
良いのじゃが、それを保つには宿るための聖石が必要となるのじゃ」
俺「ふむふむ」
半「それに宿る時に大半の妖力を使ってしまうのじゃが、宿るうちに
元あった妖力まで戻すことができるのじゃ。反対に宿っていない場合は、」
俺「どんどん妖力がなくなっていくということか」
半「そうじゃ」
何とも複雑なことになってきた。自分たちの呪いを解くことが最優先だと
思われていたが、別の事情が垣間見えた時、どちらが重要かは己の常識で
推し量るのも憚られるほど現実として現実離れしている問題だった。
妹「それで、その石っていうのはもしかして……」
半「この哀れな男と一緒にいた例の女がもっていったのじゃ」
どっちが哀れなんだよと嘆いている暇はなさそうだ。とにかく一刻も早く
石の手がかりを手に入れ、無事に石を取り戻すことが全ての解決に繋がる。
俺「よし、そうと決まれば花子の行方を追って、石のありかをつきとめる
しかないな!」
妹「そうね、佐竹さん、これからよろしくお願いしますね」
佐竹には足になってもらい、かつ情報収集を任せることにした。
16 :
学生さんは名前がない:2009/12/13(日) 02:39:08 ID:DTvjymscO
佐竹
さたけw
18 :
学生さんは名前がない:2009/12/13(日) 21:17:33 ID:DTvjymscO
花子
19 :
学生さんは名前がない:2009/12/14(月) 11:06:56 ID:eIzIqH4eO
花輪くん
20 :
学生さんは名前がない:2009/12/14(月) 22:11:31 ID:eIzIqH4eO
あげ
さげ
22 :
学生さんは名前がない:2009/12/16(水) 08:25:19 ID:JCt+eQcfO
筑復
23 :
学生さんは名前がない:2009/12/16(水) 14:20:56 ID:JINrfUIfO
あげ
さげ
さげ
まだかな
27 :
学生さんは名前がない:2009/12/18(金) 01:25:18 ID:H3Vwiq4n0
佐竹「まったく勝手なことばかり言ってくれるねぇ。まるで事情を把握して
いない僕に何の説明もなしに動いてくれってことなのかい?」
佐竹は正気を取り戻すと、これまでの俺たちの態度に怒りを示していた。
無理もない。俺が一方的に突き放しておいて、今更頼る由もないのに
もかかわらず、ここまで追ってきたというところにつけこんで良い様に
パシらせようとしているのだから。
それでもこうしてまだ俺たちを見捨てずに弁明の余地を与えてくれるこ
いつはやはり”出来た男”だと改めて思わされた。
俺「ああ。悪かった。まずはどこから話そうか……」
佐竹「早くそこの人類生存危機生命体について説明してもらおうか」
半「ほう……そんなにこんがりされたいのか?」
佐竹「ひぃいいいいいい……」
半「私は一千数百年前からここに住んでおる神様であられるぞ」
佐竹「ナニソノセッテイ」
半「ははは。どうやらおぬしにはセロトニンが足りていないようじゃな」
俺「おいおい、何でそんな化学用語が出てくるんだよ……」
半「だてに毎晩新聞に包まって寝ているわけではないということじゃ」
俺「まあ要するにだ……」
俺は現在置かれている状況を簡潔に説明した。兄妹で呪われていること、
その呪いを解くために石を探し出さなければならないこと、
そしてこれから旅に出ること。
それには情報収集力がどうしても必要で、佐竹の協力がネックとなる
ということ。
佐竹「ふむふむ……だいたいの事情は呑み込めたよ。
で、その石のありかっていうのはどうやって調べるつもりなんだい?」
俺&妹「あ……」
盲点だった。やはり第三者を挟んで状況を整理することはいつだって必要なのだ。
半「それはな。当人ならばその石に近づくことで『それ』だと感じる
ことができるのじゃよ。まあそこに辿り着くまでは手探りということになる
わけじゃ」
28 :
学生さんは名前がない:2009/12/18(金) 01:27:47 ID:H3Vwiq4n0
妹「思ったより大変だね……」
俺「ああ……」
行動すると決めても、それが想像以上の困難だったと分かったときのがっかり感は
異常。妹の睫毛の揺れる様が胸に痛い。
佐竹「なぁに、大丈夫だよ。この僕という強力なスポンサーがついている限り、
決して成し遂げられないことはないのだよ!」
俺「なかなか頼もしいことを言ってくれるじゃないか」
佐竹「その分、きっちり見返りはもらうけどね」
俺「なに!?」
佐竹「はっはっは。冗談だよ。ただ、君たちがもし、その呪い解きとやらを
為し得た時、正式に僕のビジネスパートナーとして迎えたい気持ちだ」
妹「……それはありがたいお話ですね」
佐竹「そうだろうとも。君たちはひどく貧しいのだからね。あはははは」
俺「結局嫌みかよ」
佐竹「いやぁ、そんなつもりはないんだけどねぇ〜(以下略)」
何はともあれ、強力なバックアップが整ったわけだ。
何だか本当に呪われているのかと疑ってしまうほど順調にことが運んでいる。
とはいえ、すでに運命は動き出しているのだ。
戻ることはない。ならば、即刻止めることが求められる。
金はない。でも時間は作ることができる。
妹「そうと決まれば出発だね! いこっ!」
俺「うわっ!? ちょっと引っ張るなよ……」
妹「じゃあ引っ張ってくれる?」
俺「いやいや……そういうわけじゃなくて……」
何かいいな、こういうの。自然に妹と手を繋いで、確かに変な意識がないわけじゃ
ないけど、昔はこんな光景が普通だったのかもしれないな。
忘れてただけで。だから……
佐竹「ちょっとそこ! 勝手に盛り上がらないでよ! 僕もファミリーだよ!?」
半「ふははははは……達者でな」
右も左もわからない。それでも進む。笑顔の先へ。
睫毛ぴくぴく
ぴくぴく〜
31 :
学生さんは名前がない:2009/12/19(土) 16:59:59 ID:rtCws8SpO
ほ
し
33 :
学生さんは名前がない:2009/12/20(日) 14:36:10 ID:X9cL4yIO0
俺「それじゃあ世話になったな」
半「うむ。石を手に入れたら再び此の地を訪れるが良い」
俺「言われなくてもそうしないといけないだろ」
半「まあな」
妹「では行って参ります!」
半「いくがよい」
佐竹「僕も安っぽい大根汁食べたかったなぁ……」
半「流血入りでよければいくらでも作るぞ?」
佐竹「もう一生仲良くなれそうにないですね……」
半「さっさと失せることだな」
佐竹「うぅ……」
それぞれに想いを秘め、俺たちは旅立った。
34 :
学生さんは名前がない:2009/12/20(日) 14:37:49 ID:X9cL4yIO0
俺「とりあえず来た道を戻ろう。交通機関をつかまえないことには
どうにもならない」
妹「そうでもないんじゃない?」
佐竹「といいますと?」
妹「だって、この辺ってバスしか通ってないんでしょ?」
佐竹「そうですね……僕がここへ来るときには車を使ってきましたし」
俺「その車とやらはどうしたんだよ?」
佐竹「多人数でおしかけるのも悪いと思って、帰してしまったんだ。
すまない」
俺「ふぅ……」
妹「でね、せっかくだし、あそこの自転車やさんでレンタルしちゃおう
と思うんだけど、どうかな?」
俺「こんな辺鄙なとこにそんなもんが……あるもんだな」
100mと離れていないはずなのに、全く存在感のないぼろい民家に
「自転車貸します」の文字を発見した。
妹「じゃあ決まりね?」
妹は妹で何故かとてもはしゃいでいるように見えた。
佐竹「自転車とは……あの噂に聞くところの二輪車のことですか?」
俺「え? お前まさか……」
佐竹「乗ったことはもちろん、見たこともないね」
妹「えぇえええええ!? あんな快適な乗り物に乗ったことがない人類が
いるなんて……」
佐竹「まあいつも車で送迎させているから自分で何かを運転すること
がないのですよ」
俺「結局こういう皮肉になっちまうんだよな……」
また聞こえないように独りごちてしまう。
35 :
学生さんは名前がない:2009/12/20(日) 14:41:42 ID:X9cL4yIO0
ボロい自転車やで自転車を三台借り、それに跨って地面を蹴った。
緩やかな下り坂が続く山道。気持ちが弾まないわけがなかった。
妹「わあああああああああ! キモチイねー」
俺「そうだな……」
ふと昔のことを思い出してしまう。両親が存命していたころはよく
家族でサイクリングを楽しんだものだ。
佐竹「おい! ちょっと待ってくれよ!」
俺「なんだよ」
と不機嫌に応えるが、佐竹は自転車初乗りだったのを考慮していなかった。
それがまずかった。
佐竹「うわっ! 悪いがそこをどいてくれないか!?」
と悲鳴にも似た叫び声とともに、先ほどまでかなり距離のあった彼は
一気に先頭に踊り出た。
佐竹「おっおいっこれどうやって止まるんだいっ!」
どうやらブレーキのかけ方も知らないらしい。
俺「ハンドルの下にバーがついてるだろ? それをハンドルと一緒に
強く握りこむんだよ」
と距離が離れてしまっていたので少し大き目な声で教えてやる。
佐竹「こここっここかなっかなっ!?」
だいぶ錯乱状態のようだが、何とかスピードを緩めることに成功した
らしい。
妹「あっ佐竹さん、危ないです!」
佐竹「え? あふんっ! あふんっ! あふんっ!」
もともとサイクリングコースとしては適していなかったのだろう。
ごつごつした石の段差が数百メートル離れたところからも確認できた。
俺「早速役に立ってくれたな、あいつ」
妹「そういう言い方はよくないよ……うん」
あふんwwwwww
ho
shi
39 :
学生さんは名前がない:2009/12/23(水) 00:01:44 ID:HTdXocjKO
まさかのアク禁;;
巻き添えかw
ほ
り
え
も
45 :
学生さんは名前がない:2009/12/25(金) 17:08:07 ID:sWmmf7wWO
待機
解散
待ちの姿勢で
48 :
学生さんは名前がない:2009/12/27(日) 05:57:33 ID:AW3IoBo0O
紛らわしい
どちらも愛せばよい
妹好きには変わらない
age
sage
まだかな
54 :
TaichiYagami ◆26cmi0lg5o :2010/01/01(金) 11:26:22 ID:yDqSsg2q0
ぞくぞくするねぇ
わくわくです
どきどきです
てかてかです
!?
うーん……
mada-?
61 :
学生さんは名前がない:2010/01/05(火) 22:37:51 ID:dqFpv0UxO
しばらく自転車を漕いでいると、目の前に湖畔が広がった。
妹「うわぁ……綺麗だねぇ……」
俺「たしかにな……」
圧倒されるほどの雄大美。これを絶景と呼ばないほどの愚か者はいない
だろう。
佐竹「はぁ、はぁああ……ちょ、ちょっとまってぇ……」
その後ろで、はあはあと息を切らせながら佐竹がフラフラついてきていた。
彼は普段あまり身体を動かすことがないのだろうか。
もしそうなら海外で会合というものがあるときには、相当の体力を
消耗し、疲弊していることだろう。
俺たちにとって役立ちそうなのは金銭面・情報面においてのみという感じだ。
妹「ん〜空気が澄んでて、ホントにきてよかった〜」
お嬢さん、現実逃避も良いですが、ちゃんと目的を果たすように
働きかけていきましょうね。
佐竹「そろそろ休憩にしないかい?」
俺「そうだなぁ。じゃああのカーブを抜けた先で休憩するか」
妹「うん、そうね。私も何だか喉が乾いちゃった」
適度な運動の際には適度な水分補給が必要だ。
満場一致でひとまず休むことになった。
次のカーブを過ぎたところで、自転車を止めた。
俺「悪いが佐竹、俺たち金がないから貸しておいてくれ」
佐竹「返すアテはあるのかい?」
俺「ないな」
佐竹「だろうね……」
佐竹は今にも溜息をついてきそうな表情を見せ、革製のポーチから
カードを取り出してみせた。
62 :
学生さんは名前がない:2010/01/05(火) 22:39:45 ID:dqFpv0UxO
俺「おい、まさかそれを使うつもりじゃないだろうな?」
佐竹「え? なに? ダメ?」
俺「ダメに決まってるだろう……こんな田舎の自販機でカードが使えるはずがない」
佐竹「えぇ〜ケチィ……僕現金は持ち歩かない主義だからさぁ〜」
久しぶりに殺意を覚えた気がした。
俺は全神経を右こぶしに集中させ、左足を前方にすばやく踏み込んだ。
俺「なめとんのかコラァっ!!」
佐竹「あ、何か落ちてる」
俺「よっとぉぉ!?」
俺は空を切った拳の勢いでよろけそうになるところを何とか持ちこたえ、
下を見た。
妹「あ、100円ですよそれ!」
佐竹「え? 本当かい? やったぁ〜!!」
何という強運。しかしこのご時世では自販機だとジュース一本120円が
相場だ。一本すら手に入らない可能性が高い。
妹「これじゃあ自販機のジュースは買えないみたいですね……」
隙を見て、妹は最低価格を調べに行っていたらしい。
俺「ちゃっかりしてるなぁ……」
妹「えへへ……」
褒めてるわけではないが、つい関心してしまったのだ。
ただそれだけのことだが、絶望という二文字を想起させるには十分な
情報だった。
佐竹「やや!? あんなところに商店がありますよ!!」
どんな状況でも希望を見出せるやつがいる。
63 :
学生さんは名前がない:2010/01/05(火) 22:42:49 ID:dqFpv0UxO
ボロい民家だった。人気のないトタン屋根の建物にはシダがびっしり
生い茂り、すっかり動物のすみかとして順応していた。
しかし、自販機が設置してあるところからすると、誰かが住んで
いてもおかしくはない。
妹「どうする? 入るの?」
恐る恐る妹が尋ねた。確かに何か危険な臭いがしないでもない。
覗きこんだ瞬間に「商店とはいってもね、主に殺戮兵器を扱う店
でして、一般人に売るようなモノはございません、ひっひっひ」
などと気味の悪い薄笑いをされたあげく、
「現場を見られたからにはタダで帰すわけにはいきませんねぇ、くくく」と目の奥で
怪しい光を発しながら猟銃を向けられたとしたら、呪いどころの
話ではなくなる。
佐竹「もしかしたら何か食糧もあるかもしれないし、この辺の
情報があるならもちろん仕入れておきたいところだよね?」
俺「ま、まあな……」
佐竹「それじゃあ僕が先に行って様子を見てこよう」
佐竹は胸を張りながら不気味な商店へ近づき、ガラス戸から
店内を覗き見た。
俺「どうだ?」
佐竹「いや、誰もいないようだ……」
俺「だろうな……」
いない方が良い。いた場合は厄介なことに巻き込まれかねない。
佐竹「一応中を確かめてみないかい?」
嫌な予感はあった。それでもこの時は初夏特有の暑さに頭がやられて
いたのかもしれず、すんなりとその意見に賛同してしまった。
64 :
学生さんは名前がない:2010/01/05(火) 22:45:07 ID:dqFpv0UxO
すいばりが飛びだしているガラス戸をゆっくりと開ける。
中は意外にも埃やクモの巣がかかっておらず、いつでも開店できるようには
なっていた。
並ぶ品々はどれも見覚えのある、懐かしい駄菓子群であったが、パックから
取り出されず、30個入りや60個入りなどのまとめ売りといった具合で
置かれていた。
妹「これって賞味期限とか大丈夫なのかな?」
俺「おいおい、懐かしいからってそう迂闊に手を出すもんじゃないぞ?」
佐竹「いいんだよ、後でまとめて払えば。カードだってあるんだから」
どこぞの豚になった親子が吐いた台詞と同じようなことを抜かしながら
佐竹はきなこ棒のボトルの蓋を取り外し、一本口に入れた。
妹「あ……」
佐竹「いいんだよ。こんなところで埃被ってるよりはこの僕に食べられた方が
お菓子たちにとって幸せなことなんだからさ!」
佐竹はもはやスイーツの住人になっていた。
その流れで冷蔵庫の中にあったラムネまで手にし、この不自然さに気づいて
いないようだ。
俺「やっぱりここには誰か住んでいるようだな」
???「うぅぅうううううううううううう……」
妹「!??」
???「うごおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
佐竹「ん? 何だか騒々しいねぇ……」
騒々しいなんてものじゃなかった。そのけたたましい唸り声がはたして人なる
者の声なのかどうか判然としない。
けれど薄暗い空間が妖しく光り、こちらに徐々に近づいているのは確かだ。
大量にktkr
さたけ……
しのぶ……
おりかさ……
hosyu
70 :
学生さんは名前がない:2010/01/08(金) 22:20:48 ID:CmU8qJCy0
俺「こんにちは……」
???「どけ……」
俺「はい?」
???「そこをどくんだ……」
俺「は、はあ……」
得体の知れないモノの言うことを素直に受け入れ、数歩横にずれた。
???「しゃあああああああああああ!」
佐竹「ひぃいいいいいいいいいっ!?」
事態をようやく飲みこんだ佐竹が驚きのあまり、声にならない悲鳴をあげた。
と同時に、その「何か」が冷蔵庫に向かって突進した。
???「ひっひっふぅ……ひっひっふぅ……」
後ろ姿からすると三、四十代の男だろうか。男は肩をぷるぷるさせながら
冷蔵庫からラムネを取り出した。
???「んごっくごくっごくごくっごくん……はぁあああああああああ!
んめぇえええええええええええ!」
その異様な姿に俺たちは黙って立ちすくむことしかできなかった。
???「ああ、そこのひょろいの、きなこ棒頼む」
佐竹「ひょろいのって僕のことですか? あなたいきなり失礼じゃないですか!?」
???「勝手に店の中のもん食べといてその台詞はねぇだろ、兄ちゃん」
確かに。
71 :
学生さんは名前がない:2010/01/08(金) 22:28:31 ID:CmU8qJCy0
主人「それで、お前たちは客なのか?」
ラムネと駄菓子を口にして落ち着いたのか、彼は冷静な口ぶりをみせ始めた。
俺「いや、ただ、こんな辺鄙なところにボロ……看板が見えたので、
営業しているのか気になって入ってみただけなんですよね」
妹「ほーへふ、ほーへふ」
妹はけんこうするめをしゃぶりながら何かもごもごと言っている。
主人「するってっと何か? 無銭飲食ってやつか?」
佐竹「大丈夫です! ただ、支払いがカードになってしまいますけどね」
主人「別に構わないよ。うちはSuicaにも対応しているからな」
妹「この地域でSuicaが使えるんですか?」
主人「いいや、たぶんうち以外じゃ使えないだろうね」
店の主人は得意げに言い切った。
改めて風貌を確認すると彼は四、五十代くらいの中肉中背だった。
彼の説明によれば、ここは商店といっても、主に無線機器を
取り扱う、マニア御用達の店らしい。
駄菓子類は間違って店に入ってきた観光客を驚かせないように
カモフラージュとして置いているにすぎないようだ。
といっても、ほとんどが未開封の状態で残っているところから
察するに、迷いこむ人間はそういないようにも思われた。
佐竹「ああ! ここだと圏内だ!」
俺「ん? どうかしたか?」
佐竹「君は貧乏人だから携帯をもっていないかもしれないが、
さっきまでこの地域はずっと圏外なんだと思っていたんだよ。
それがここにきてみればほら、三本も立ってるよ!」
主人「そりゃそうさ。通産省に内緒でアンテナを立ててるからな」
この男、只者ではなさそうだ。
お疲れさんです
73 :
学生さんは名前がない:2010/01/09(土) 19:01:02 ID:cYrzicFk0
明日の朝落ちちゃうね
74 :
学生さんは名前がない:
あげ