今日読んだ本を報告するスレッド 第2刷

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875夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/05/29(日) 13:06:22 ID:/Q6W+uDR
「現代史を支配する病人たち」 P.アコス & P.レンシュニク
須加葉子訳 ちくま文庫
ルーズベルト、ケネディ、チャーチル、レーニン等、27人の政治家が、
権力を手にしていた時の健康状態と政策決定について。何か知らないけど、
権力を握った時にはみんな病人です。ほとんどの人がアルヴァレス病
(動脈硬化に伴う微小脳梗塞の多発)で色々な判断を誤ることになって
いる。病状については資料に基づいているが、その病状と政策決定の
因果関係については、多少牽強付会な気がしないでもない。権力者になる
→老いても権力にしがみつく→政治家としてダメになる、という図式で
一貫して書かれているが、ド・ゴールについては妙に好意的で笑って
しまった。著者はフランス人。法王ピオ十二世や、モッタ(スイスの
政治家)が取り上げられている割には、欧米人以外ではナセル、毛沢東、
周恩来の三人しか出てこないところが、ヨーロッパ人の欧米中心史観を
表しているように見える。

原著初版は1976年(ブレジネフがまだ存命!)なので、ちょっと情報が
古いが、「政治家は健康診断を受けて、結果を公開すべき」という主張は
極めて真っ当である。洋の東西を問わず、権力者というのは自分の健康を
必要以上に誇示したがるものだ。一種のマッチョ信仰みたいなものが、
人間には残っているのだろうね。
876ギルー ◆hUJpn0lEjk :2005/05/30(月) 14:26:20 ID:mnbOVhLZ
>>875
そのアルヴァレス病の有無は立候補した時に公表すべきだよ!
大昔の学歴よりよっぽど重要じゃない?w
詐称したときの影響も大きいような気がするし、
それに罹っているかもしれないと考えると妙に納得できる人が多いw

週末に読み終わった本
伝記『イザベラ・バード旅の生涯』著者O.チェックランド
19世紀の女性探検家の物語、イザベラ・バード著『日本奥地紀行』を
読んだことがあって気に入っていたので興味深く読むことが出来た。
旅行作家なのでいくつも著書があって、彼女のプロフィールを知るには
参考になりました。
『ロッキー山脈紀行」と『朝鮮紀行』を確保してあるので
それを読むのが益々楽しみになりました。

入江敦彦『やっぱり京都人だけが知っている』
てさんに面白くないよと言ったけど、読み直したらそこそこ面白かった。
御免なさい。

特に最後の章、
京都の本屋について書いてあるところ、
『三月書房』の棚をまとめ買いしたいと云うフレーズがあって
私も同感。
三月書房は店ごと買いたい。
というか、自転車で行ける距離に住みたい。
京都がどんなに住み辛くてもあの本屋一軒だけで
京都に住む価値があると心から思っている。
877ギルー ◆GillufuAjc :2005/05/30(月) 17:17:48 ID:mnbOVhLZ
トリップ変更のお知らせです。
878夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/06/02(木) 12:55:44 ID:F5F5/l/4
「東京の下層社会」 紀田順一郎 ちくま学芸文庫
明治期の貧民(スラムの住人、売春婦、女工)の悲惨な生活と、行政の
無為を、当時の記録を元にして語っている。夏目漱石の小説など読んで
いると全然分からなかったが、当時の日本は紛れもなく発展途上国だっ
たと、今更ながら悟った。印象に残ったのは、食に関する記述である。
当時のスラムが軍施設の近くに成立したのは、大量の残飯が供給される
ことが理由だったこと、牛鍋屋のゴミ箱の中に住んでいた男、屑拾いを
生業とする者が、灰の山の中から出てくる燃え残りの果物が一番のご馳走
と話すことなど、もう勘弁して下さい、という感じである。

本文はトピックスの集成で、特に系統立てた考察は見られない。悲惨さと
救いの無さばかりが強調されているように見える。しかし、解説の「貧困
は差別の問題であり、他者への想像力の欠如の問題ではないだろうか」と
いう言葉は、示唆に富んでいると思う。私にとっては、食い物を想像する
ことで想像力をある程度働かせることができた。しかし、娼婦、女工など、
性的虐待を伴う場合には、私の共感能力は残念ながら及びがたいようだ。
まあ女性からもてない所以ですね。
879夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/06/02(木) 13:21:55 ID:F5F5/l/4
>>ギルー様
トリップとHN合わせたんだ。よいですね。

健康状態の判定というのは難しいね。水虫が職務に影響すると思う人は
居ないと思うけど、じゃあ脂肪肝はどうなのか、糖尿病はどうなのか、
動脈硬化はどうなのか・・・と具体例を考えていくと、どう判断すれば
いいのか分からない。人によって病状も体質も生活習慣も異なるからね。
同じ病名でも職務遂行能力に及ぼす影響は人によって異なるし、資産公開とは
比べものにならないぐらいのプライバシーの範疇に属することでもある。

まあ確実に言えることは、人は必ず老いるということだ。アメリカ大統領
の任期が二期までに制限されているのは、その点から見ても良いことだと
思います。ただ、このように憲法を修正したアイゼンハワーは、二期目の
終わりに「俺はまだまだやれるのに」と言って後悔したそうだ。バカモノ
だな。権力者になるには、一種の飛び抜けた個性が必要であって、言い
換えると、異常者しか権力者にはなれないというのは、民主主義の矛盾だ。

イザベラ・バード著『日本奥地紀行』はちょっと気になっていた本です。
講談社現代文庫のやつだな。

俺は三月書房という本屋は知らないけれど、確かに京都には個性的な本屋が
多い気がする。何でだろうね。大学町だからかな。一般書籍板に「京都の本屋・
古書店を語れ」みたいなスレがちょっと前まであったけど、今はどうかな。自信なし。
880夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/06/02(木) 14:37:58 ID:F5F5/l/4
しまった。「講談社学術文庫」だ。はずかしー。

ついでに一般書籍板の京都本屋スレはっときますね。
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/books/1102674691/l50
881て ◆TETEGcvoTg :2005/06/04(土) 21:25:00 ID:F5CaI2Wm
最近読んだ本

やめたくてもやめられない人の完全禁煙マニュアル

高橋裕子・三浦秀史

職場が提供してくれた禁煙プログラムにエントリーしたら、この本をもらいました。
書名の通り、禁煙のためのマニュアル本です。

従来、「根性でやめる」という感じが多かった「禁煙」ですが、
最近は、ニコチンパッチなども普及し、
「やめられない原因」をきちんと解明してそれを治すという、
比較的「化学的」な方法になっていることがわかりました。

ちゅうわけで、今日から禁煙を開始しています。
もちろん、ニコチンパッチもきちんと貼っております。
882ギルー ◆GillufuAjc :2005/06/06(月) 14:29:55 ID:AK9yXPg5
>>879
夜郎さん
イザベラ・バード是非読んでみてください。
三月書房のホームページはもう見つけたでしょうか?
京都にお住まいだったのに、もったいないw
けど、京都に住んでいる本好きの友人もここに入ったことが無い
と言っていました。

http://web.kyoto-inet.or.jp/people/sangatu/

>てさん
あらぁ禁煙ですか、
週三日喫煙、四日禁煙の繰り返しです。
無くてもすごせるけど食後やコーヒーとの一服はある意味至福です。
あ、ゴメンなさい。

禁煙のご成功を祈ります。

読み始めたばかりの本
『馬賊戦記』朽木寒三著
久々の大ヒット、夜中に読み始めて朝まで置く事ができませんでした。
大正時代に中国へ渡り、ひょうんなことから馬賊の大親分になった日本人の話。
実話じゃない可能性もあるけれど、そんなことどうでも良い
と思える大冒険物語。
読み終わるまで当分寝不足だな。

883夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/06/07(火) 14:17:22 ID:sAhdWf4q
「感染症の時代」 井上栄 講談社現代新書
歴史の中の伝染病(第一章)、伝染病研究史(第二章)、人の生活と病原菌
の進化(第三章)、色々な感染症(第四章)、ワクチンについて(第五章)、
疫学的行政の現況(第六章)、エイズと梅毒(第七章)、麻薬中毒(第八章)、
からなる、盛り沢山な本。広く浅くと言う感が否めないが、新書だからね。
巻末に参考文献を挙げてあるので、もっと詳しく知りたい人はそちらを参照
せよ、ということだろう。

歴史と伝染病との関連を論じた部分は面白いが、この分野ならジャレド・
ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」の方が上手に詳しく書かれてある。
人が感染症対策を意識することで、病原菌が弱毒化の方向に進化する、という
論理は正しく書かれているが、進化に馴染みのない読者はいつものごとく
誤解するかも知れない。第六章は、著者の経歴(国研勤務)からして、
旧厚生省の広報活動みたいである。麻薬中毒の広がりを、伝染病と同様の
観点から捉える試みは面白い。ドーキンスのミームが(文中には出てこないが)
想定されているのかな。

何の基礎知識もなくても、そこそこの知識を興味深く得ることが出来る本。

884夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/06/07(火) 14:17:44 ID:sAhdWf4q
>ギルー様
三月書房のホームページ見ました。うーん。濃いな。
商売になっているのだろうか。でも万引きとか一切無さそうで逆にいいかも。
今度京都に行ったら寄ってみる。ちなみに京都在住時代は、専ら大学生協の
世話になっていました。

>て様
禁煙頑張ってくだされ。
885ギルー ◆GillufuAjc :2005/06/08(水) 12:10:22 ID:9KP/aqAF
>>884
ね、ね、いいでしょ三月書房。
家族内経営、二世代でやっているけど、町の書店規模の店だと
大型書店に対抗するには良い方法だと思う。
棚割りも良くて、一冊興味を持って手に取るとその棚が全部関連していて
どんどん深めることが出来る。図書館より便利w
本好きの固定客でやっていけるはずよ。はずれのどうでもいい本が無いのが
すごい。
京都ならではの目利きで廃版になったものとか潰れた出版社の良いものとか
をしっかり在庫で確保している、それを古書価格ではなく
販売されていた時の価格で売っている。
安くないのは残念だけど、定価よりも高価にもなっていないのはうれしいw

絶賛しすぎだとは思うけどw
是非行って見てください。

ところで京都の大学生協って学生以外も気軽に使える雰囲気?
割引は無いとは思うけど。
東京では昔は明治大学(御茶ノ水)の生協が
割引価格で買えていました。今はどうだか。
あのあたりでは他はちょっと入るの躊躇われるかなぁ
886ギルー ◆GillufuAjc :2005/06/15(水) 21:28:39 ID:782tOGWX
昨日友人から梅が届いた。

確か梅干の漬け方って水上勉『土を喰う日々』にあったような・・・
読み始めるとはまってしまった。
全て精進料理関連のエッセー、ほうれん草の根のあたりの旨みとか
山芋の網焼きとか、粗末なものが実においしそうに書いてある。
精進すると言う言葉は工夫してよくなり続ける事の意味があるそうだが、
寺の畑で採れる季節の限られた食材を一つの季節に同じ料理の仕方をしない、
日々工夫して楽しむ、とある。

精進する、仕事に関しては精進しようとしている、たぶん。
日々の料理に精進しているとはいえない、空腹を満たすために料理している。
気に入ったものは何度でも作るけど、慣れるとちょいと乱暴に手抜きして
後悔する。飽きた食べなくなる。
大根の皮とかニンジンの葉、ほうれん草の根のあたりも捨ててるな、
そう云うものをおいしく食べる工夫は素敵に思える。
そんな風に日々過ごす事が良い物を仕上げる最後の一踏ん張りの粘り強さを
鍛えるように思えた。
887て ◆TETEGcvoTg :2005/06/15(水) 21:38:24 ID:U2Ag/j34
>>886  ギルーさん

『土を喰う日々』、面白いですよね。
私もはまってしまった覚えがあります。

でも、あれに書いてあるメニュー、
果たして全て自分自身の口に合うかどうかは不明。。。(w
888ギルー ◆GillufuAjc :2005/06/16(木) 08:54:19 ID:yO/4cAU+
>>887
最近は年を取ってきたためか、野菜がおいしい。
もちろん肉好きも変らないのですがw
子供の頃は、苦味のある山菜は全然ダメでしたが
タバコや酒をたしなむようになってからは苦味も旨み。

あの本の中で食べたことの無いものも結構あるのですが
全部旨そうに感じてしまう。

あ、でも人が旨いと言うものは全部食べてみたくなる
どこの国へいってもどんな香料でもオッケーな食いしん坊なのですが・・・w
889て ◆TETEGcvoTg :2005/06/18(土) 22:20:34 ID:rzgqYVLk
最近読んだ本
「本当の戦争」クリス・ヘッジズ著

戦場特派員として活躍した著者が、戦争に関する具体的な(しかも日常的(?)な)事項について、Q&A方式でわかりやすくまとめた本です。
データを言葉に置き換えて淡々と記載してあるので、極めてわかりやすいものとなっています。(ただし記載してあるのは、アメリカ軍についてのこと)。
日本でも、自衛隊について、このような書籍があったら、いろいろな点で冷静で意味のある議論が出来るかも知れません。
890て ◆TETEGcvoTg :2005/06/18(土) 22:39:04 ID:rzgqYVLk
最近読んだ本
「動物民俗I」 長澤武

昔から日本国内の人の生活に深く関与してきた野生動物について、
言い伝え(神話・信仰)、利用方法、捕獲法などが書かれています。

言い伝えと、利用方法のうち「民間薬」が面白い。

ニッコウムササビ「脳を煎じて飲むと頭がよくなるといわれている。」
   ホンマかいな。。。という感じで。。。


ところでこの本は、法政大学出版局の「ものと人間の文化史」
というシリーズモノの1つで、他にどんなタイトルのモノがあるかと言いますと、、、

「船」とか「竹」とか「包み」とか「ものさし」とか「鮫」とか
「つぶて」とか「日和山」とか「つぶて」とか「さいころ」とか「蛸」とか、
いろいろと興味を引かれるタイトルが目白押しです。
891て ◆TETEGcvoTg :2005/06/18(土) 22:45:42 ID:rzgqYVLk
最近読んだ本
「榎本武揚」 安部公房

この本、初版が昭和40年です。
だいたい私と同年代です。どうでもいいことですが。
スジ紹介は省略します。

久しぶりにいわゆる「小説」といわれる文章を読みました。

「小説」は、「随筆」とか「解説本」とか「教科書」にはない、

「読んでいくうちにグイグイ引きずり込まれていくような感覚」

を楽しむことが出来て、気持ちいいです。
892ギルー ◆GillufuAjc :2005/06/19(日) 07:16:01 ID:EP9xn05P
ものと人間の文化史・・
ちょっと失敗した思い出が・・
福井貞子という染織の先生がいて『日本の絣文化史』という図版を入手し
更に検索していたらこのシリーズの『絣』に行き当たって
ネットで購入したら前者の復刻番でほとんど同じ、しかも図が少しだけ
少ない(泣
手にとって見られたら『染織』の方を購入していたのにと悔しかったw
893ギルー ◆GillufuAjc :2005/06/21(火) 11:52:49 ID:66eYQ1/i
もしよろしければご参加下さい
50代以上板

『この本を読まずに死ねない』
http://bubble3.2ch.net/test/read.cgi/cafe50/1119250924/l50
894ギルー ◆GillufuAjc :2005/06/23(木) 08:29:27 ID:5tOIsCWr
『馬賊戦記 小日向白郎と満州』朽木寒三著を終了。
時間がかかったけど、あ〜おもしろかった。
大正時代に単身満州へわたり中国大陸全土に散らばる馬賊(農村の自警団)の
総大将になった日本人の実録。
大陸的な性格とはどんなものかはっきり分からなかったけど
信義に厚く、豪胆であると言う事がこの本を読んで知ることができた。

ちょっと満州モノにはまってみたくなった。
895大人の名無しさん:2005/06/25(土) 09:57:19 ID:HaSMotP2
あげ
896ギルー ◆GillufuAjc :2005/06/29(水) 16:46:12 ID:FUSUVNP3
『オニババ化する女たち』三砂ちづる著 光文社新書
昭和30年代を境にお産が助産婦さんによる自宅出産から
管理された病院での出産に大幅に移行したことによって起こった変化に
注目しています。
女性の身体性が母から娘へと伝えらるべき知恵が
病院出産により心に届かない知識に変化し、それとともに
出産の恐怖・月経の憂鬱が前面に押し出され性と生殖への軽視が
はびこったというスタンスで話が進みます。

私自身が数回筋腫の手術をし、分娩が帝王切開、
女性性というのは子供を育てる体験以外は負担で憂鬱なモノという
イメージしかなくて、このまま子供に何を伝えたらよいのだろうと
途方にくれていた時期でもあります。

果たして知恵として子供に伝えられることを持ち合わせているのか、
母の世代からは伝えられてはいないので自分の経験で獲得したモノを
ポジティブな情報として子供に伝えられるかという大きな問題がありますが
同じ憂鬱を子供には繰り返して欲しく無いという思いを
踏み台にしたいと思います。

ただ、後半
早婚のすすめというあたりが、
生殖年齢をスポイルするのは弊害があるという理屈はわかりますが
早く子供を持つことの社会的マイナスを考えても、
そのマイナスを補うための祖母に当たる私の負担を考えると
具体化は躊躇われますw

このあたりを受け止められないこと自体が
私たちの世代の弊害ともいえるのかもしれません。
897て ◆TETEGcvoTg :2005/07/10(日) 21:09:58 ID:x1ZUwq6t
最近読んだ本
「摘録断腸亭日乗 上下」永井荷風

永井荷風の日記です。

文筆家の日記はいろいろと面白いのですが、
読んでいるうちに、「普通の会社勤めがアホらしくなってしまう」
という欠点があります。

永井荷風も、この日記で読む限り、
日々ふらふら浅草や銀座に出かけては、
観劇や飲食の毎日。

途中から「《この部分●文字削除》」などという部分が増加しますが、
あるポイントでそれがなくなります。
詳しくは、実際に読んでみて下さい。
898て ◆TETEGcvoTg :2005/07/10(日) 21:11:36 ID:x1ZUwq6t
最近読んだ本
「太宰治 滑稽小説集」木田元

太宰治は、(私には)晩年の「斜陽」「人間失格」などの作品の印象が強いためか、
(というか、それくらいしか読んだことがない)、
シリアスな小説しか書かない人だと思いこんでいました。

そんなときこの「滑稽小説集」というタイトルを発見し、興味を持った訳です
>>871 の「猿飛佐助からハイデガーへ」で紹介されていました)。

読んでみると、面白い面白い。
「太宰治って、こんな小説も書いてたんや」てな具合です。

特に「男女同権」という作品は、
その構成も文体も、どこか筒井康隆に似たところがあって
(時代の順番からいうと逆ですが(w)、
プププ でした。
899ギルー ◆GillufuAjc :2005/07/11(月) 15:44:46 ID:3eNGLksS
「摘録断腸亭日乗」永井荷風
は、ウチの次に読む本コーナーに並んでいますw
実は下だけしかなくて上を探してからというのがちょいと悲しい・・
900て ◆TETEGcvoTg :2005/07/16(土) 01:00:16 ID:aiSTPlfg
最近読んだ本
「猫舌三昧」「言の葉三昧」 柳瀬尚紀

言葉についてのエッセーで、朝日新聞に連載されていたもの。
言葉遊びの様で雑学も混じっていて、軽快に読んでいける楽しい本でした。

2ちゃんねる的表現(「誤読をわざと用いる(例 ガイシュツ)」とか「縦読み」とか)にも通じる部分もあって、オススメ。

柳瀬さんの訳した「フィネガンス・ウェイク」を読んでみたい。
いつになるかわからないですが。。。(w
901ギルー ◆GillufuAjc :2005/07/28(木) 22:05:35 ID:FSjDXFtv
暑くて一ページ読んでは頭が朦朧w

売ろうと思って出した本を読みふける・・
『中国の村から』莫言短編集
状況表現が独特、官能的なのに、肝心の部分が書かれていなかったり、
悲しみも喜びも間接的な書き方がかえって新鮮に感じる。
902あのさ ◆ANorzQKBTk :2005/07/29(金) 04:52:12 ID:oCcuTPTr
どもです
EEシュミット「ノアの子」読みました

ナチとホロコーストものは重くなるのでなるべく
冒険小説とかしか読まないようにしてるんですが
友達が買ってくれたので読みました
アガサクリストフとボネガットが混ざった風な語り口
で、いい話なんだけど凄くコワい。子どものころ読んだ
「人類学者と少女」以来のおっかなさでした。
でも感動しますた
903みががまギルー ◆GillufuAjc :2005/08/03(水) 14:26:20 ID:UiFLMP9j
「ノアの子」読んでみたくなりました。
怖い(いろんな意味で)お話かなり好きです。

売ろうと思って出した本シリーズ(w

『莫言 赤い高粱』現代中国文学選集6 松井博光+野間宏(監修)井口晃(訳)
帯に「コーリャン畑ではじまった荒々しい愛は、銃弾が飛び交う同じ畑で、突然、
その幕を閉じた。胸を撃ち抜かれた若妻と、農民ゲリラの隊長と・・・。
抗日戦争期の中国農村を舞台としたこの小説は映画化され「赤い高粱」として
日本でごうごうの反響を呼んだ。」とある。

作者、莫言は私とほぼ同じ年代。驚くほど障害者に差別的な表現が多い
舞台が日中戦争の時代だから、祖父母の時代感覚を表現しているのか
とは思うが・・・
野卑で血なまぐさく、うんざりするほど死体だらけ、
本当に血糊の臭いがしてくるような気がしてうんざりする。
それなのに、場面、場面の終息にはそこはかとない気高さが漂う
不思議な力強さのある小説。

やっぱり売るのやめようかなぁ・・(w
904高校中退者:2005/08/12(金) 02:02:44 ID:BeIeshao
男おいどん。
905ギルー ◆GillufuAjc :2005/08/12(金) 10:01:36 ID:mwC+IDYy
>>904
いきなり数十年ぶりに「サルマタケ」を思い出しました(爆笑
906大人の名無しさん:2005/08/12(金) 18:52:25 ID:SOVmJMlJ
高橋和巳の『邪宗門』
まだ上巻だけ、、、、長い。
907大人の名無しさん:2005/08/19(金) 12:35:43 ID:pe/pfxPC
『マイティハート』マリアンヌ・パール
筆者の旦那さんはジャーナリストで、イラクでアルカイダに誘拐され、首を切られて殺害された。当時世界を騒然とさせた事件だった。
でも 強く強く生きる彼女の姿は、どんな暴力にも屈服させることのできない人間の気高い精神を感じさせた。
感動!という言葉だけではあらわせないよー(T_T)
908大人の名無しさん:2005/08/19(金) 12:46:40 ID:DEp1/On3
>>900
riverun で始まる原書、3行くらい読んだぞ。
909ギルー ◆GillufuAjc :2005/08/26(金) 07:46:13 ID:gDkqx4NR
『ハイスクール1968』四方田犬彦著
1968年に教育大学駒場で高校生活を始めた著者の回想録。
わずか5歳の違いだけれど、コルトレーンや演劇、現代詩、ロック、アンダーグラウンドな
ものに完全に遅れてしまった悔しさ、名前だけは知っていて、でも幼くて何かものすごく新鮮なものとしてしか
認識できなかった、実体験できなかった悔しさを痛感した。

高校紛争に関して
『1989年の高校生は世界に横たわる理不尽に抵抗を唱え、曲がりなりにも仲間を組織する事が出来たが、
現在の高校生はすべての不条理と抑圧を内面に抱え込んでしまい、自傷と不登校、そしていじめという落とし穴に陥っている。
でなければ高校への帰属意識を限りなく気迫にしたまま、セックスとアルバイトに向かう事になる。
やがてこのストレスはより深刻で悲惨な形をとって、より年少者へと受け継がれることだろう。
60年代後半に生じた高校生の造反の声に耳を貸さず、強引にそれを封じ込めてしまった事への高い代償を、
教育者である側の高校はこれからも払っていかなければならないだろう』
と書いていたのが印象的。

当時、高校生の造反が大学紛争のセクトの介入でいびつなものであったことを
作者も認識はしているが。
910夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:07:35 ID:OADnctXh
整理した本をまとめて投下。

「フロイト先生のウソ」 R・デーゲン 赤根洋子訳 文春文庫
精神分析や行動療法をはじめとする心理療法、教育方針と子の性格の関係、
マスコミの影響力、無意識の役割、等々、巷に氾濫している心理学の常識
を悉く論破する本。フロイト心理学以外の心理学的常識も批判されている
点で、邦題にやや偽りあり。私はフロイト心理学は似非科学だと思ってい
るので、著者の主張に納得できる部分は多いのだが、ちょっと勢い余って
勇み足、という感が無いでも無い。心理学に興味のある人には面白いだろ
う。ただし、この本自体も批判的に読む方が良いと思う。
911夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:09:33 ID:OADnctXh
「人類はなぜUFOと遭遇するのか」 C・ピープルズ 皆神龍太郎訳
文春文庫
いわゆる「UFO」について、宇宙人の乗り物であるとか、人類を監視
しているとか、アメリカ政府は異星人と密約を結んでいるとか、色々な
とんでも話があるわけだが、本書はそのような「UFO神話」の歴史で
ある。UFO話は、その殆どが単純に説明がつくことで、残りの説明が
つかない話は、単に情報が断片的すぎて確認ができないだけ(だから未
確認飛行物体)、というのが事実なわけだが、それが人々の心にどのよ
うな受け止められ方をされてきたのか、社会情勢や人の心理的傾向と
絡めて論じられていて面白い。

意外だったのは、アメリカ軍や、CIAがUFOに関心を持っていた、
というのが事実だったこと。もちろんエイリアンの乗り物、という観点
からではなく、冷戦期を反映して・ソ連の秘密兵器の可能性、・いい加減
なUFO目撃情報があふれると、ソ連の攻撃を示す真に危険な情報を逃し
てしまう可能性、というような観点から、UFO情報を管理しようとし
たらしい。そんなところにアメリカ政府・UFO密約説のルーツがあった
とは知らなかったよ。似非科学と社会の関係について、いいケーススタディ
だと思う。
912夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:10:21 ID:OADnctXh
「暗号攻防史」 R・キッペンハーン 赤根洋子訳 文春文庫
暗号にまつわる歴史、色々な暗号の仕組み、オンライン通信の暗号化
技術まで、幅広く暗号の話題を紹介している。著者がドイツ人なので、
ドイツ軍暗号機「エニグマ」と、その解読に努力した連合軍とのせめぎ
合いに多くの紙数が割かれている。名前は聞いたことがあるが、中身は
知らなかった暗号の仕組みが分かって楽しい。暗号と言えば数学だが、
合同式が一部に出てくるだけで、わかりやすく解説されている。


「メールのなかの見えないあなた」 K・ターボックス 鴻巣友季子訳
文春文庫
インターネット犯罪に巻き込まれた13歳(当時)の少女の手記。出会い系
サイトで見つけたメル友にいたずら(淫猥な雰囲気の言葉ですね)をされ、
法廷闘争で決着が付くまでの過程を書く。著者は被害者なわけで、犯罪を
正当化はできないが、それにしても13歳の女の子アホすぎる。馬鹿丸出しの
チャットでぼーっとなっていきなり家の電話教えたりするな。中学生当時の
私は非常にもてない男子であったが、こんなアホからも相手にされていな
かったと思うと今更ながら情けなし。また、彼女が住んでいたのはコネチカット
のNew Canaanであるが、お上品でスノッブな町で、虫が好かないところだ。
以上、もてない僻みと貧乏妬みによって、私全く主人公に共感できませんでした。
女性ならもっと違った感想を持つのだろう。
913夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:11:02 ID:OADnctXh
「100万分の1!ー驚異の奇跡体験141」 P・ハフ 片岡みい子訳
文春文庫
川に落とした指輪が魚の腹から出てきた話、磁石人間の話、空からマメが
降ってきた話、同姓同名の人同士の偶然の一致、等々、不思議な実話(?)
が141本。よくよく考えてみると、それほど小さな確率ではない事象も
含まれているので、確率統計の頭の体操にいいかも。でもこの手の話は
「へー」と素直に驚くのが良いのでしょう。暇つぶしには使える本。


「世界ウソ読本」 M・H・ゴールドバーグ 岩瀬孝雄訳 文春文庫
「世界」と銘打っているが、著者はアメリカ人なのでアメリカのウソに
まつわる話が中心。まあ一言で言うとトリビア集です。個人的に「へー」
と思ったのは・アメリカ議会ではウソをついても処罰されることはない、
・ワシントンは「ウソ」が書けなかった(lieの綴りを常にlyeと書いている)、
・ハリウッド俳優は、本名がダサイ時にはかっこいい芸名をつける、等。
これも暇つぶし本ですね。


「5000年前の男」 K・シュピンドラー 畔上司訳 文春文庫
5000年前の男のミイラが91年にアルプスで発見された。その発見の
経緯と得られた所見をまとめた本。遺物、遺体から分かることが詳細に
述べられていて、それは本書の良いところではあるのだが、ちょっと退屈
であった。しかし、考古学の方法や考え方が分かって面白い。私が見ると、
何の変哲もないボロ屑のような物から、色々分析したり推論したりして、
様々な情報が引き出される様には感心する。
914夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:11:37 ID:OADnctXh
「ファウンデーション」
「ファウンデーション対帝国」
「第二ファウンデーション」
アイザック・アシモフ 岡部宏之訳 ハヤカワ文庫
人類が宇宙進出を果たしてから何万年も後、銀河帝国は栄華の絶頂を迎えて
いたが、ただ一人ハリ・セルダンだけは帝国の崩壊と、それに続く三万年の
暗黒時代を予測していた。その暗黒時代を千年に短縮するため、ハリ・セルダンは
ファウンデーションと呼ばれるコミュニティーを銀河の辺境に設立し、新時代の
核にしようとしたのだ・・・という感じで始まる銀河年代記。何でも原子力
というところが、作品の古さを感じさせます。「ファウンデーション対帝国」
までは、歴史を創造しようとしている所が魅力なのだが、「第二ファウン
デーション」では何か超能力者の戦いみたいになってしまって、ちょっと
興ざめ。予定調和的に「ファウンデーションはかくして銀河を統一しましたとさ。
めでたしめでたし」で終わってもいいので、千年間のダイナミックな歴史物語を
貫いて欲しかったと思う。
915夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:12:14 ID:OADnctXh
「ファウンデーションの彼方へ(上・下)」 アイザック・アシモフ
岡部宏之訳 ハヤカワ文庫
「第二ファウンデーション」から30年後に書かれた続編。科学文明の頂点
に立つ第一ファウンデーションと、ハリ・セルダンの計画に従って第一ファ
ウンデーションを裏からコントロールする第二ファウンデーションが、それ
ぞれ「セルダン・プランが上手くいきすぎている」ということに気がついた。
果たして事の真相や如何に・・・という感じ。ますます超能力戦争みたく
なってきて、あまり好みではない。また、何で主人公が最後にこんなに重要な
役割を持たされるのか、あまり納得できなかった。でも第一、第二ファウン
デーション内の政治闘争の描写は結構スリリングで良かったです。


「ファウンデーションと地球(上・下)」 アイザック・アシモフ
岡部宏之訳 ハヤカワ文庫
前作「ファウンデーションの彼方へ」で重要な役割を持たされた主人公が、
自分の決断の正しさを確信するために地球を探す、って、こんなあらすじじゃ
何が何だか分かりませんね。ネタバレすると、全銀河系の意識を統合して
一つの有機体「ガラクシア」にする、という決定が正しいのかどうか、自信が
持てない主人公が、何故か地球にその根拠がある、と考えて地球にたどり着き、
そこで出会った一体のロボットから真相を知る、というお話。何者かに仕組ま
れた運命、というのは物語の一つのパターンなわけだが、前作から通して
読んでいくと、仕組んでいる主体がハリ・セルダン→ガイア→地球のロボット、
とどんどん変わっていくので、どんでん返しにもほどがある、と言った感が
拭えない。「はいはい、そうですか」で流してしまいたくなりました。

ファウンデーションシリーズの最初は、古代→中世→近代の進歩史観に基づいて
話を作ろうとしているように見えたのだが、本作を書く頃にはアシモフの興味が
個人と社会とか、個と全体とか、そういう所に移っているように思える。
916夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:13:09 ID:OADnctXh
「華氏451度」 レイ・ブラッドベリ 宇野利泰訳 ハヤカワ文庫
本を読むことが禁止され、人々は効率と刹那的な娯楽だけを求めている世界。
焚書を仕事とする主人公は、偶然であった少女や仕事中の体験などに触発されて、
自分の仕事に疑問を持ち始める・・・・という感じの古典SF。
ブラッドベリは本当に科学技術と人間の本性に不信を感じていたのだなあ、と
ため息が出る。逆に、哲学、芸術、文学などの力を、過大に評価しているように
私には思える。また、メタファーに充ち満ちた文章はちょっと取っつきにくかっ
た。そこに味があるのだろうけど。


「レナードの朝」 オリヴァー・サックス 春日井晶子訳 ハヤカワ文庫
眠り病の後遺症からパーキンソン症候群を発症した患者達。彼らは、数十年もの
間、パーキンソン症に苦しめられながら、廃人同様の長期療養を余儀なくされて
いた。しかし、1969年に特効薬L・ドーパが用いられた瞬間、彼らの生活
は劇的な変化を示し始めた・・・・ということで、20人の患者にL・ドーパ
を用いた時の症例報告を中心にまとめられた本。眠り病やパーキンソン症候群
の解説や、患者の後日談、個々の症例からまとめられた考察なども含まれている。
なにせ、1973年に初版が出されたので、化学的な神経医学と形而上的な病気
の捉え方が並立していて、なかなかついていくのが困難であった。現代の医者
なら、もっと物質的基盤に重きを置いて記述するだろう。
眠り病と、その後遺症としてのパーキンソン症自体も奇妙な物で、驚きを感じる。
しかしそれ以上に、L・ドーパという物質によって患者の人生が激変すること、
また、同じ病因に対して同じ薬物を投与したにも関わらず、各患者の反応が
全く異なることは、不思議なことだ。
917夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:14:07 ID:OADnctXh
「火星の人類学者」 オリヴァー・サックス 吉田利子訳 ハヤカワ文庫
脳神経科医の著者と、大脳性色盲、健忘症、トゥレット症候群、自閉症
等、7人の脳神経疾患患者との診察、交流の記録。「レナードの朝」は学術
啓蒙的な雰囲気が強いが、この本はもっと読みやすくエッセイに近い。
脳神経系が正常に働いている健常者は、普段の生活で脳の存在自体を意識する
ことはほとんど無い。しかし、一旦脳に障害を持った患者の人生を垣間見る
と、我々の認識が全面的に脳に依存していることに気づかされる。つまり脳の
障害によって、全く異なる世界に紛れ込んでしまうわけで、それぞれの患者の
記録は短編小説のようだ。

「グイン・サーガ 90〜102」 栗本薫 ハヤカワ文庫
一巻から読んでいるのでずーっと読んでいるのだが、栗本薫にはいい加減に
して欲しいと思います。20年間にわたって作家が劣化していく過程を見て
いくのは、マゾヒズムの悦びに似ていますね。こんなのでも買ってしまうの
だから、惰性とは恐ろしい。

「戦争論」 多木浩二 岩波新書
戦争という暴力をどのように言葉で捉え直すのか、新たな思想的枠組みを
語る、という趣旨の本。戦略的、戦術的な話は殆ど出てこない。歴史的な
話は必要に応じて書かれている。政治、外交の話も少ない。確かに、趣旨
の通り、戦争という現象をどのように人は受け止め、対処するべきか、と
いうことが述べられている。
著者は、「平易な言葉で書こうと努めた」と後書きに書いているが、私に
とっては極めて難解であった。強いてまとめると「戦争は悪ですよ」とい
うことの根拠を延々と述べているだけのように見える。「政治の継続から
戦争が生じるのではなく、戦争を前提とした政治があるので戦争が生じる」
というのは、私には言葉遊びにしか見えない。こんなこと言っている
人が居るから、戦争がなくならないんじゃないのか。
918夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:14:45 ID:OADnctXh
「帝国を壊すためにー戦争と正義をめぐるエッセイ」
アルンダティ・ロイ 本橋哲也訳 岩波新書
インド人女性作家によるポリティカル・エッセイ。2001年の同時多発テロ
から、2003年のイラク戦争終了宣言までの国際情勢について、時事問題を
扱った8編のエッセイが収められている。大雑把に言ってアメリカの世界戦略
批判と、インドの政権批判の二系統に別れているが、両者に共通しているのは、
力を持つ物の偽善と専横に対する怒りである。私が思うに、弱者が大声で自分
の利益を主張する行為は全面的に正しい(ただし、主張の内容が正しいかどう
かは神のみぞ知るところだ)。その点において、本書は正しい行為の所産であ
ると言える。しかし、訳文のせいもあるだろうが、文体はやや感情的に過ぎる
ようである。「アメリカの大義」の偽善は明らかなので、本書はそれに対する
怒りを読者に共有させようという情熱を持ってまとめられたのだろう。しかし、
感情を持って行う批判は、盲目的な熱狂と紙一重であり、それは「アメリカの
大義」を支持するのと同じメカニズムによっているので、感情に訴えることが
あまり良い戦略であるとは思えない。

「日本列島の誕生」 平朝彦 岩波新書
タイトルを見て、そう言えば日本列島の地質史のことは全然知らねえ、と思っ
て買ってみました。簡単に言うと、日本列島はプレートテクトニクスによって
海底を運ばれてきた岩石が、プレートが海溝に沈み込む際にどんどん積み重なっ
て出来た陸地である、という事らしいです。岩石の組成や出来た年代、化石等
の証拠を積み重ねて、結論を出していく過程は非常に面白い。海底ボーリング
や、音波探査によって、何が分かるのかということも分かって楽しい。地学用語
に馴染むまで少し時間がかかるが、ゆっくり読めばかなり平易に書かれている。
知らなかったことを知るのは楽しくて良いですね。
919夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:15:24 ID:OADnctXh
「疲労とつきあう」 飯島裕一 岩波新書
信濃毎日新聞の連載記事を56回分まとめた本。身体的、精神的な疲労の回復方、
疲労によってどのように健康が損なわれるか、等について。メンタルな部分の
記事の方が分量が多いのは、読者の関心が多かったせいなのか。内容的には、
高校生物の知識にも及ばない。テレビの健康バラエティーと同レベル。何でこれを
新書で出版し直したのか、理解に苦しむ。駄本。

「ピープス氏の秘められた日記」 臼田昭 岩波新書
17世紀のイギリス海軍大臣であるサミュエル・ピープスの日記の紹介。ピープス
は仕立屋の息子から成り上がった人物。成り上がっていく過程の十年間日記をつけ
ている。原本は岩波文庫にあったような気がする。ピープス氏のあまりの俗物さに
笑ってしまう。出世のために働きゴマをすり、賄賂を貰って金が貯まると喜び、
芝居や贅沢を楽しみ、女に言い寄り、嫁さんの機嫌を取る。こうもあっけらかんと
俗物ぶりを発揮されると、ピープス氏を憎めません。多分日記の原本はもっと退屈
なのではないかと思うが、著者はピープス氏の俗物的魅力を巧みにすくい取り、
面白い読み物に仕立てている。

「摩擦の世界」 角田和雄 岩波新書
何らかの物体が動く時、摩擦が生じざることは無し、ということで、タイトル通り
摩擦の話。人はいかにして摩擦と付き合ってきたか(石を運ぶとか、乗り物を動か
すとか)、生活の中でよく出会う現象と摩擦との関係について(雷とか関節の動き
とか)、について書いてある前半が面白い。後半は工学色が強く、摩擦の仕組み
とか、摩擦を克服するためのベアリングについてとか、そう言うことが書いてある
が、物理、工学用語に慣れるまでちょっと時間がかかった。私はこういう技術関係
の本を読むと、ベアリング一つ取っても、普段何気なく使っている機械に、大変な
試行錯誤や思考の集積が詰まっている、という事実にいつも感嘆する。しかし、
全編これ摩擦の本だが、新書にして誰が買うのだろうか(私は買ったが)、と
思っていると、裏表紙の既刊紹介に「摩擦の話」という別著者の本が紹介されて
いた。摩擦市場は私が思っているよりも深いようだ。
920夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:16:13 ID:OADnctXh
「アメリカ外交」 村田晃嗣 講談社現代新書
アメリカ外交を、4つの潮流(ハミルトニアン、ジェファソニアン、
ウィルソニアン、ジャクソニアン)の混合とみなす。そして、各潮流がどのような
場合に発現するのか、という問題は、国際的なパワーバランス、国内情勢、
大統領個人の資質によって規定される、というモデルに基づき、アメリカの
外交史を解釈していく、という趣旨の本。私が思うには、著者の提唱する
モデルは変数が多すぎて、現実を簡便に把握できるほど抽象化がされていない。
政治学のモデルというのはこういうものなのかね。しかし、アメリカ外交史と
しては良く書けていると思う。


「情報と国家」 江畑謙介 講談社現代新書
戦争が始まるとテレビに出てくる、特徴的な髪型のおじさんの本である。
彼は他にも講談社現代新書から軍事関係の本を何冊か出しているが、いずれも
イデオロギーを全く感じさせず、淡々と軍事の説明をしている点が非常に
よろしい。兵器や作戦行動に対する純粋な愛が感じられます。オタクもここまで
いけば一家言持てるという見本のような人ですね。本書では、公刊情報の重要性
(必要とする情報の95%ぐらいは、誰にでも閲覧できる情報から得られる
らしい)、衛星画像の落とし穴(写真があれば何となく信頼性が増すように
感じる)、自分に都合の良い情報しか信じない傾向、等について、具体例を
挙げつつ述べられている。でもやっぱり兵器のスペックの話などになると、
語り口が生き生きしているように見えるのは気のせいですかね。まあ普通に
面白い本。どうでもいいことだが、彼の著書には必ず奥さんへの謝辞が
書かれていて、人柄の良さを感じさせます。
921夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:17:43 ID:OADnctXh
「アメリカのグローバル化戦略」 福島清彦 講談社現代新書
「グローバル化」というのは、経済に関して使われることの多い言葉だが、
本書では、「アメリカが安全に繁栄を教授できるように、アメリカの立場
で考えられた国際政策」とでも言うようなことを指す。つまり、経済に留まらず、
軍事、外交、文化政策なども含む。同時多発テロによって、アメリカの思わぬ
脆弱性が明らかになったわけだが、それに対するに軍事力をもって行いたがる
傾向、テロの震源地であるアラブ世界に対する民主化政策、グローバル化戦略
の主な対象となっているイスラム世界の現状、今後の世界情勢、等が分析されて
いる。著者は、ブッシュ政権の政策については、悲観的見通しを立てているが、
テロについては「イスラム原理主義の敗北の証」と楽観的である。全体的に
穏当な主張で、まあ納得。


「赤ん坊から見た世界」 無籐隆 講談社現代新書
端的に言うと、「一歳半ぐらいまでの赤ちゃんは何が分かっているか」という、
発達心理学の本。発達段階ごとに追って行っているので、育児書の「○ヶ月目
にはこれができるようになります」という類のことが、もっと学術的に書かれて
いると考えて差し支えない。赤ん坊は生得的に人の顔を他の図形とは区別できる
とか、基本的な物理的法則(例えば、二つの物体が同時に一つの位置を占める
ことはできない)とかいうことを知っている、という研究結果は興味深い。
しかし、結果もさることながら、面白いのは紹介されている研究事例の方法
である。赤ん坊は自分の意志を大人のように表明することはできないので、
どのようにして、赤ん坊が何かを認識している、ということを知るのか、研究者
の工夫は尽きない。また、きちんとコントロールと比較して結果を述べている
所も好感が持てる。一般向けの啓蒙書では、得てして論理性を犠牲にしすぎて
研究の方法など書いてないことが多いからね。しかし、あまり方法などを詳しく
書くと、頭を結構使わないと理解できないので、一般読者は離れてしまうだろう。
そこら辺のかねあいは、啓蒙書を書く時のジレンマだな。
922夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:18:15 ID:OADnctXh
「満州事変」 臼井勝美 中公新書
延々続く日中戦争、太平洋戦争の発端となった、満州事変と上海事変について
の解説。日本軍と中国軍の軍事行動、日本政府の対応、諸外国の反応など丁寧
に書かれている。関東軍参謀の策略と独走、それを追認する中央政府というのは、
何度見ても情けない。国際連盟で、日本は「中国は現在無秩序状態にあり、
近代国家の体を成していない」と主張するのに対し、中国に「日本こそ軍を政府が
統制できていないとは、国家としていかがなものか」と返されるが、そりゃ
そーだよな。でもこんな事書くとまた自虐史観とか叩かれるんだろうねえ。
本書はかなり中立的な立場から(もとより完全な中立はあり得ないが)書かれて
いると個人的には思う。列強諸国は、満州事変には割と寛容だったのが意外。
満州はそれほど他の列強諸国の利権が絡んでなかったんですね。


「時刻表2万キロ」 宮脇俊三 角川文庫
鉄道紀行文作家として有名な宮脇俊三氏の処女作・・・かな?ちょっと自信ない。
元来鉄道好きだった著者が、ふと気づいてみると国鉄のほとんど全線に乗ってい
ることに気づき、よしそれならば全国に残った未乗区間も制覇してやろう、
と思い立ったところから始まり、全線完乗するまでの記録。2万キロというのは
当時の国鉄線の全線長だが、そういうわけで実際の乗車記録は2000キロぐら
い。ちょっとタイトルに偽りありだな。
昭和50年から52年までの国鉄事情が活写されていて懐かしい。この本で著者が
乗った線区は、ほとんど赤字ローカル線なので現在は廃止されてしまっている
ものが多い。また、急行はほとんど無くなってしまったし、夜行列車も大幅に減っ
てしまった。もったいないねえ、と鉄道好きの私は思うが、かと言って私が旧国鉄
の赤字を背負うわけにもいかなかったしな。まあしょうがない。
923夜郎 ◆GNYjzf1L3A :2005/08/29(月) 12:19:00 ID:OADnctXh
「新幹線がなかったら」 山之内秀一郎 朝日文庫
確かに新幹線について多く触れられているが、むしろJR東日本元会長の回想録、
という趣が強い。戦後の鉄道史が、技術者、経営者としての著者の観点から
書かれていることが面白い点。私なんぞは「日本のーーー新幹線はーーーー
せーかいーいちぃーーーーー」等と単純に思っていたが、実は東海道新幹線では
特別新しい技術を使ってはおらず、既存の技術を組み合わせて世界最速の営業路線
を作ったのだそうだ。東大卒の著者は国鉄入社後は幹部候補生で、労使問題が
ややこしい時に吊し上げられて、苦労が忍ばれる。しかし、国鉄民営化を手放しで
評価していることには、ちと納得しかねる。身内に旧国鉄関係者がいて、民営化
の時に首を切られたのでね。でもその点を引いても面白いです。


「渡邉恒夫 メディアと権力」 魚住昭 講談社文庫
著者が、ナベツネ本人も含め、多くの人にインタビューを行ってまとめた
ナベツネ研究。生い立ちから、共産主義運動の挫折、読売新聞入社後の政治家
との癒着、韓国国交正常化交渉での役割、社長に上り詰めるまでの飽くなき
権力欲。サスペンスを読むように面白く読める。まあ政治家同士の裏取引とか、
そんな話を面白く読むのも有権者としてどうかと思うが。こんな話に慣れちゃう
のはよろしくないですね。
私は生きていくのに必要な金があれば、飼い猫のように怠惰に過ごしたい方な
ので、彼の強烈な上昇志向は感覚として理解できない。偉くなるためには色々
努力が必要だし、偉くなったらなったで面倒な仕事も多いし。そんなに他人を
操るのは楽しいのかねえ。
924みががまギルー ◆GillufuAjc
すごい!まとめ書き(爆笑

アシモフは私も読んでいて、面白さと煮え切らなさが共通なのがおかしかった。
満州事変は、馬賊の本をここのところ読んでいて、当時に中国は支配者が入れかわり
立ち代り交代しているけれど、その状態が長いので自治というか
集団ごとの役割分担は優れていたとうことが伺われます。
国家という形態無かっただけなのかと思います。

江畑さんのオタクっぷりはなかなか天晴れだと感じていました。今度読んでみよう。

レイ・ブラッドベリは20代の頃好きだったけれど確かに語り口には
癖がありましたね、最近読んでいないけど、独特な世界だった、
あれ、まだ気に入るかどうか自信がない。

「メールの中の見えないあなた」
>中学生当時の
私は非常にもてない男子であったが、こんなアホからも相手にされていな
かったと思うと今更ながら情けなし。
う〜ん、、アホな中学生には夜朗さんの良さは分からないよ、
で、フォローになっているだろうか(w