1 :
名無し物書き@推敲中?:
すべては怪談の為に。
※『要綱』
・ここは怪談専門の三題噺スレッドです。
・一作品800文字まででお願いします。
現在までに出ているお題(作品は過去のお題からでも結構です)
「冥王星」「ようかい」「小説家」
「うろこ雲」「病院」「ワイン」
「うなぎ」「柳」「サナギ」
「てのひら」「雨だれ」「路地裏」
「茸」「塩」「廃屋」
「蝶」「傘立て」「大仏」
「鳥」「携帯」「古井戸」
「コンビニ」「見世物小屋」「薬物中毒」
「新学期」「頭」「自作自演」
「カブトムシ」「ブランコ」「ビデオテープ」
「ポプラ」「本」「犬」
「猫」「下駄」「レタス」
※『注意』
・批評や感想は真摯に受け止め、次回作に活かしましょう。
・他板の話題を持ちこむのは荒れる原因となりますので謹みましょう。
・低レベルな罵り合い(過剰反応、罵倒、レッテル貼りなど)はスレッドの品位を損ないます。
・東さん(
ttp://blog.bk1.co.jp/genyo/)の目にとまる可能性を考えて行動しましょう。
・分離元スレッドはこちら
http://book3.2ch.net/test/read.cgi/bun/1159950044/ ※『次スレを立てるのは950に書き込んだ人』
・990くらいになったら、書き込みは一次ストップ!
・次スレへの誘導をお忘れなく!
乙です!
ここは相互に怪談作品を発表・批評しあい、トレーニングする場です。
とか『注意』にあったほうがいいかもね。
本スレは流れが早すぎるし、こっちはゆっくり行きたいもんだ。
あと、お題にNO.を付けたほうが何かと便利かも。
今の「冥王星」「ようかい」「小説家」
はNO.12とか。
「ようかい」って何?
妖怪、溶解、酔うかい?用かい?
乙です。
じっくり熟考して出すも良し。スピードに賭けるも良しって事で。
>>5 どれでもOK。
ただ、あんまり苦しいダジャレは批判されることがあるかもしれないことを
覚悟して作品を投下するでFA?
8 :
まめ:2006/10/08(日) 22:18:59
怪談専門のスレまってました
どれくらい長くていいの?
50レスくらい使ったらさすがにマズイよね?
>>9 >一作品800文字まででお願いします。
1レス内で。
1スレ内に納まってれば800字に拘らなくても良いんじゃない?
親元スレで書いてた頃も大体そうだったし、
「出来れば掲載」と言ってる過去作品も現に800字超えてるのもある。
お題〈てのひら、雨だれ、路地裏〉
「托鉢僧」
深夜、受験勉強をしていた時のことだ。
時間は零時を過ぎ、辺りはひっそりとした静けさに包まれている。
昨夜から降り出した雨の音と、雨だれがベランダを叩くタンッ、タンッという単調な音だけが聞こえてくる。
(……一息いれるか)
一段落着いたので伸びをして机から離れる。
と、雨の音に混じって微かな声が聞こえてきた。
「〜もらもら〜もきゅもきゅ〜」
何だろう。奇妙なリズムを持った旋律に興味が湧き、ベランダに出て闇夜を透かしてみた。
すると、路地裏の入り口に誰か立っているのを見つけた。
法衣を纏い編み笠を被っている。
坊主、だろうか。編み笠に遮られて顔は見えない。
胸の前に両の手のひらでお椀の形を作っているところから、駅前でたまに見かける托鉢僧を連想した。
先ほどから聞こえるのはどうやらお経らしい。
(こんな時間にあんな場所で何をしてるんだろう……)
不思議に思ってしばらく見ていると、不意にすぐ後ろで鈴の音が聞こえた。
チリーン。チリーン。
驚いて振り返ると、机の上にひび割れた汚い小鉢が置いてある。
ついさっきまでこんな物は無かったはずだ。
(何だコレ?)
訝しんでいる内に路地裏にいた坊主もいつの間にかいなくなっていた。
翌朝、昨夜のことを家族に話して小鉢を見せると
「あのクソ坊主! まだ成仏してねぇのか!」
と、父がはき捨てるように言って小鉢をゴミ箱に投げ捨てた。
何か知っているのか、と聞いてみたが、不快な表情をするだけで父は何も答えてくれなかった。
よーし、お父さん1スレ全部使って怪談書いちゃうぞー、
16 :
14:2006/10/09(月) 01:06:20
ちょっと古いお題ですが書いてみました。
感想等あったらお願いします。
いいね、雰囲気がよく出てる。
>「〜もらもら〜もきゅもきゅ〜」
面白い表現だけど、話の中に「もきゅもきゅ」である必然性がないから
読後に違和感が残るかな。
>ついさっきまでこんな物は無かったはずだ。
>(何だコレ?)
>訝しんでいる内に〜
普通はもっと驚いたり怯えたりすると思う。
主人公のリアクションが薄いので、読み手も淡々と読み進めてしまうのかも。
全体としては面白かった、乙!
18 :
14:2006/10/09(月) 02:10:51
>>17 「〜もらもら〜もきゅもきゅ〜」は臨済宗のお経がこのように聞こえる、というのを ネットで見かけたので書きましたが、
仰るとおり、あまり意味の無い描写だったかも知れません。
>普通はもっと驚いたり怯えたりすると思う。
>主人公のリアクションが薄いので、読み手も淡々と読み進めてしまうのかも。
これもご指摘の通り、不自然でした。
コメントありがとうございました。勉強になりました。なんか自分の創作上の癖というか弱点が見えてきたような気がします。
スレも新しくなった事ですし、新しいお題に入りませんか?
いいね、じゃあ一番目は「避難」
二つ目のお題は「柿」
甘柿でも渋柿でも干し柿でも、柿渋でも。
3つ目「鶴」で
でわ、「非難」「柿」「鶴」ということで。
間違えた「避難」「柿」「鶴」ね。
作品が出てこないな。お題が難しすぎたのかね。
まったり進行という事で、焦らず行きましょう。
プロットは出来ても書く時間が取れないorz
出掛け先から今戻ってきた。今初めてお題知った。頑張ります。
俺も宿題(まだ書いてないお題)を書いてみます。
このスレは平和に、まったりと行きたいね。
同意
夢を見た。もう随分昔に亡くなった祖母の夢だ。場所はわたしが幼い頃ほんの一時期住
んだことのある祖父母の家だ。老朽化が激しいので近々に取り壊すと父が言っていた。
「鶴が来ん」
布団に横になったまま首だけテレビに向けてニュースを見ていた祖母がそう呟いた。
なるほど例年であれば冬の近付くこの季節になると鶴に限らず渡り鳥の第一陣が越冬に
渡って来たものだ。夢の中ではどうもそれが遅れているらしい。
「鶴が来ん年に柿を切っとは馬鹿スッタンのすっこっじゃ」
モゴモゴと歯のない口で祖母は言った。
「鶴が来ん年にはお山が火を噴っ。そん前にはふっとか地震も来っ。地震が来た時ぁ、あ
ん柿の木ん根元に避難せんといかん」
庭にそびえる柿の古木を見やりながら祖母はそう言った。
「じゃっで渋柿でん、あげんして切らずにおいてあっじゃっでね」
そこで目が覚めた。夢の内容が妙にリアルで、かつ理にかなっているのにちょっと驚い
た。
つまり火山が噴火する前兆として地震が来る。渡り鳥はそれを予兆して渡ってこない。
柿の木は深く広く根を張るというから地震の時など地割れが起きにくいと言う。
うん。本当に理にかなっている。
わたしはさっそく実家の父に電話した。
「うん、元気。でさ、昔の家の柿の木ってまだあった?」
「おう、もう虫が湧くばっかいじゃっで、今日にでも業者に連絡して切ってもらおかいっ
ち思ちょった」
「馬鹿スッタン」
思わず祖母の言葉が口をついて出た。
受話器の向こうで父は烈火のごとく怒っている。
さて、どう取り繕ったものか……。
作者の推理はこの際横に置いときましょ。
>>31 ゾッとする話ではないけどヤバイぐらい良作。すばらしい。
>31
夢に祖母が出てきて柿の木を切るなと言っていた
と言ったら、きっとパパも切るのを止めると思うよ。
ネタにマジレスしてみました。面白いなあ。
うわ、面白い……。
面白すぎて、創作意欲が……。
>>31 なかなか面白いね。方言がいい味を出してる。
ただ、夢の内容を検証する部分で、理にかなってるという記述は無かった方がよかったかも。
ちょっと説明がましく感じた。
それ以外は難しいお題を巧く纏めていると思う。
乙でした。
>>34-
>>37 皆さん、ありがとうございます。
何とかコワい話にしようと頑張ったのですが、なんかホノボノ系になっちゃって……。
37さんの仰るとおり確かにちょっと説明がましいですね。ご指摘ありがとうございました。
ラストワンをどの作品にするか、最後の最後まで悩んでいましたが、
本日午後ようやく全100篇を確定させて、リストをビーケーワンに送信しました。
現時点で、収録予定の作家数は68名、第1回〜第3回の応募作からの採用は15篇となっております。
だそうです。
さてここの住人から選ばれた人が出ると良いですね。
お陰さまで「てのひら怪談」の連絡が参りました。
実を言いますと、今や個人的にはbk1に投稿した作品よりも三題噺に出させていただいた作品の方が
思い入れがあったりするのは、ちと……。
しかし、いずれにしろありがたい事です。
>>41 おめでとう!
来年はさらにレベルが上がりそうだなぁ。俺ももっと頑張らねば……
ありがとうございます!
>41
ここでさらすのって諸刃の刃だ。
ほどほどにな。
それから、おめでとう。
すいません。
>>41 おめでとう。
とりあえず、三題噺は、練習になりそうだと言うことが判明したわけだ。
来年に向けて頑張ろう。
まあ、ネタを温存するのも、ここで書きまくって地力を上げるも、それぞれの戦略次第、ってことで。
>>47 実際、かなり上達してる人もおるようだしな。
子どもが、木から落ちた。
「あれは 柿の木なのだ。
とても折れやすく、登ってはいけないのに、なぜ 親が教えない。
親の不注意の事故だ。」
皆の前で、そのようなことを言った男と、子どもの父親とが 喧嘩になった。
避難所生活も 長くなり、皆すさんでいる。 人口密度は 高過ぎるし、
暖かい食べ物も口には 入らない。 いらつくのも 無理はない。
私も 疲れが溜まって、頭痛が とれなくなってきた。 少し仮眠をとったほうがいいのだろう。
今の 私の住居である体育館へ 向かう。
いったい いつまで この生活が続くのだろう。 湿った毛布の ひんやりとした肌触り。
目を瞑っていても 漏れてくる光。 こんなこと、知りたくはなかった。 どこかで鶴が鳴いている。
咽にくぐもって、ぎゃろろ、ぎゃろろと、ああ、冬になってしまっ…。
鶴が来るのは、私の故郷だ。 ここには来ない。 気がついて、毛布から覗くと、女が子どもの首を
絞めていた。 子どもは抵抗もせず なすがままで、鳴いていたのは女だ。
ぎゃろろ ぎゃろろと、口から空気を漏れさせている。 この女は 夜泣きがうるさいと 毎晩せめられ、
ある夜、とうとう自分の子どもに手をかけてしまったのだった。
可哀相に、自分が死んだことも わからないのだろう。 時々、このように人前に出てくるのだ。
明るい 陽射しのなかで、過去をくり返している親子に 同情の念はあるが、 だからといって、
何が出来るというものでも あるまい。
今度こそ眠ろうと 私は毛布をかけ直した。 次は何があっても、起きないつもりだ。
49乙。
避難所生活での実話風創作怪談。
着眼点は面白いのでもう少し捻りが欲しかった気がします。
柿の木が唐突な感じ。もう少し自然に取り込む工夫を。
子殺し女の死因が触れられていないが、先の柿の木で頤使したと書くだけでも
冒頭部分とつながり、唐突感が薄まったりする。
「なすがまま」だけど「なされるがまま」かな?
「なすがまま」の対語が「されるがまま」じゃないの。
>>49 スペースで空けたのは意識してのことだと思うが、地の文と独白部分の文が交錯してて、ちょっと分かりづらかったかな。
雰囲気はよく出てると思う。
乙でした。
お題〈うなぎ・柳・サナギ〉
タイトル「孵化」
出張から帰ると宅配便の荷物が来ていた。
差出人は柳とだけ書かれていて、思い当たる人物がいない。
取りあえず荷物を開けてみると、妙なものが入っていた。
昆虫を飼育するようなケースの中に木の枝が一本。枝に何かのサナギのようなものが張り付いている。
そして、いやに古びた紙が一枚同封されていた。
「コノサナギガカエルマエニ、ダレカニオクリナサイ。
サモナイト、クト×××××ノジャ×××ガヨミガエリ×××××ダロウ。H・P・ラブ××××」
所々、かすれていて読めないがこれがチェーンメール、いわゆる「不幸の手紙」に類似するものだと想像が付いた。
「くだらねぇな。誰の悪戯だ」
何人かの悪友の顔を思い浮べてみた。東の奴の仕業だろうか。あいつはこの手の話が好きだったな。
連絡を取ってみようかとも思ったが、出張から帰ってきたばかりで疲れてもいた。
それに今日はもう晩い。どうするかは明日考えることにして、寝ることにした。
ズルルッ、ズルルッ。
何かが這うような音で私は目を覚ました。
起きて見ると、例のケースの蓋が開いていた。
そして何か妙な粘液の跡が付いている。まるで巨大なナメクジが這ったような跡だ。
「……なんだこりゃあ」
粘液の跡を辿っていくと押入れに続いていた。
襖に手をかけて恐る恐る開けようとした瞬間。
ビュルルルルッーーー。
鋭い笛のような音と共に、ウナギのような黒くてぬめぬめした触手が何本も飛び出して、腕に絡みついてきた。
「うわわわぁっ!」
手紙の指示に従わなかったことを激しく後悔しながら、私は押入れの中に引きずり込まれていった。
>54
クトゥルーもので来たか。
受け取ってすぐに誰かに送っていたら……
郵便局やトラックの荷台で大変なことが起こっていたわけですね。
彼がカタカナとはいえ日本語をマスターしてるとは思わなかったよ。
58 :
54:2006/10/12(木) 22:00:47
すいません、こんなもんしか思いつきませんでしたわ。
クトゥルーはw ごめんなさい、もうしません(たぶん)
いやいや、クトゥルーものは好物です。
読んでいるうちに自分もクトゥルーで一本書きたくなりました。
>>59 おお、ぜひ書いてください。読んでみたいです。
倉の整理をするという父からの電話を受けてすぐさま有給休暇を申請して実家に戻った。
曽祖父はそこそこ商才があった人物らしく、養蚕業などで財を成し、またそれなりに道
楽者で、長崎にあった古い洋館など買い取ってこの南九州の町に建ててみたり、洋の東西
を問わず骨董なども蒐集していたという。しかしその息子の祖父は曽祖父の派手好きな面
しか受け継がなかったらしく、見事に財を食いつぶし、ついにはその洋館も手放してしま
った。お化け屋敷などと呼ばれたその洋館は現在町の有形文化財となっている。
祖父はわたしが幼い頃に亡くなったので余り記憶はないが、わたしが考古学や民俗学に
興味があるのは、この祖父の血のせいだと昔から父に言われたものだ。
それで唯一残ったのが親族の間で開かずの倉と呼ばれるこの海鼠壁の倉という訳だ。
「こんなの読むの得意だろう? だからお前は点検係りな」
父から祖父の書き残したという目録を渡された。掛け軸、壷、面、屏風、槍、刀など並
んでいるが、名の知れたお宝と呼べそうなものには全て墨で×印が付いている。大方売り
払ったという意味なのだろう。その辺りだけは祖父は目利きだったようだ。
そんな目録の中に妙な書付があった。
九頭龍蛇魂蛹。
さらにこれにだけ朱い墨で注意書きめいたものが書いてあった。
何人たりとも此れを起こすべからず。
箱根の九頭竜神社などで祀られている龍神に関係しているのだろうか? その後に続く
蛇魂というのもそれっぽい。その蛹というと龍に変化する前の状態? つまり龍神の卵?
「これ何処に置きますか?」
倉の中から運び出された品々を点検し、破れたラベルなど貼り直していると、一抱えも
ある柳行李が運び出されてきた。何事か書き付けた和紙で四方が封印されている。
これだ。これがあの九頭龍蛇魂蛹に違いない。何故か確信めいたものがあった。
不意にその行李が揺れ、何かぬめった、そう丁度鰻の群れが動き回るような音がした。
なるほど、さすがの祖父もこれだけは売り払えなかったらしい。
わたしは理由も付けずにその行李をすぐに元あった場所に戻させた。
思い出したのだ。九頭龍とはある神話の日本語表記。そして多分、蛇魂の蛇は「じゃ」
ではなく「だ」……。
62 :
61:2006/10/13(金) 13:22:55
60さん。お約束の作品、とりあえず「鰻」「柳」「蛹」で書いてみました。
,.-‐'''''''''''―---..,,__
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l'/:: ミ::::::::::::ヽ
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ノ:::lヾ、:::::::::: / /:::::::::::::::::::::
>>61乙!
次ぎの作品も期待しています。
短い時間でよくこれだけのものが書けるものだ。
>65
おれもそう思ったけど、作者は詮索しない方向でいきましょう。
AAも誰かわからん。
そうですね。純粋に作品を見ることにします。
>>61-62 ダゴンで来ましたかw
なんかラブクラフト全集を読み返したくなりましたよ。
クトゥルーと日本の旧家という組み合わせが意外性があって面白かったです。
乙でした。
>>68さん
「蛇魂」と書いて「だごん」。
このアイデアが浮かんだ時には正直嬉しくて嬉しくて、早く仕上げたくて仕方がありませんでした。
楽しんで頂けましたら何よりです。
あと
>>63さん
ラヴクラフトのAA、ありがとうございます。
あ、なるほどラブクラフトだったのか。
ラブクラフトの顔って、夢野久作と嶋田久作の顔に似てる
>>61 もっと長い物語にも出来そうな濃密な雰囲気。
上手いなぁ……。
よろしければそろそろ新しいお題などいただけませんでしょうか?
じゃ、一つ目は邪神
ふたつめ「月」
<(_ _)つ「工場」
月に地下工場を作るために地面を掘っていたら太古の邪神を
蘇らせてしまう話は無しでおながいしたい。
新しいお題は「邪神」「月」「工場」ですね。了解しました。
>>78 今までの三題噺見てて、そんな安直なものが出てくる訳がない事位判るよね。
SFも無しでおながいしたい。
リクエストなんかせずにそういう作品を自分で書けば良いんですよ。
ここはトレーニング場なんですから。
>>78 のような内容だって、書き様によっては安直にならないわけで。
85 :
名無し物書き@推敲中?:2006/10/16(月) 15:11:23
新しいお題は難しすぎたのでしょうか?
難しすぎるという程ではない。ただ、連続投下になるのでちょっと控えているだけ。
「金は だいじぞ。」 婆ちゃは いった。
しってらい。 んなの。
だから 俺は 工場でふつうだったら みんな
1交代しか しないところを 2交代しとる。
2交代は たいへんぞ。 としよりは 死ぬぞ。
だが 俺は だいじょうぶ。 神さんが ついとるもん。
婆ちゃと 俺だけの 神さんは すごいぞ。
雨だって ふらすぞ。 風だって おこせる。
婆ちゃだけが なだめること できる。
婆ちゃが いちばん。
近所のもんに ばれたときは たいへんだったな。
邪神 邪神 いうやつは ほおっておけ。
金がたまったら 婆ちゃ よんでやる。 いっしょに くらそう。
だから 婆ちゃ 月のもの だといって
俺をのけもんに するんは よしてくれ。
俺ぁ いっつも 婆ちゃの指 しゃぶっていたいのよ。
無理に方言使わなくても……
空白がねぇ……
>>87 ツキモノ筋に関連した話かな。
独特の文体が雰囲気を出してるね。
乙でした。
いつまでも起きて來ないと思ったら、薄く微笑んだやうな表情のまま妻は布團の上で冷
たくなっていた。生前から口數の少ない女だったが、最後までそれを貫き通したやうだ。
愼ましやかに葬儀を執り行ひ、その後獨り暮らしとなった譯だが、これがなかなかに面
倒だ。日常の細々とした事の煩雜さに戸惑ふ事しきりといったところだらうか。例へば炊
事など西洋科學の實驗のやうなものと思っていたが、だうしてだうして手順通りに行って
もなかなか再現性が得られない。そんな譯で氣がつくと妻が身罷ってから隨分家に閉じこ
もっていた。これでは軆にも心にもよろしくない。そこで馴染みの勸工場まで繰り出す事
にした。
陳列された雜多な品々を冷やかしながら見て囘る。
と、店の奧で退屈さうに座っていた骨董屋の店主が目聡く私に氣付き聲を掛けてきた。
「こりゃ先生、久し振りやないですか。商賣でっか、あきまへん。いや最近こないな勸工
場みたいな博品は流行りまへん。大通りの百貨店とやらに根こそぎお客持ってかれてま
うて、女房ともいつ夜逃げしよかってしょっちゅう謂ふてますわ。
そや、先生の好きな支那の古い銅器、入ってますよって見てやってもらえまへんか」
私が鼟餮文の銅器に目がない事を覺えていたやうだ。
店主は店の奧から一尺餘りもある壺を抱きかかへてやってきた。手にとって見る。確か
に古い時代の銅器のやうだ。鹿のやうな角の生えた動物が浮き彫りになってゐる。
「これ勿論鹿なんかとちゃいます。天禄獸ともちゃいまっせ。これ辟邪神獸でっせ」
辟邪。邪惡を避ける神獸として天禄と共に旗に描かれる事の多い鹿に似た傳説の奇獸。
しかしどんなに珍しくてもこの地に住む者で店の言ひ値で買ふ阿呆はいない。互いに手
を打てる額面に落ち着いたところで家に届けさせる手筈を整へた。
勸工場を出るとすっかり暗くなった空にぽっかりと三日月が浮かんでいた。それにやや受け口だった妻の横顔が重なる。
「相變はらずの骨董狂ひと笑っておくれ」
ぴうと吹く北風に埃が舞い上がり、ふふ、と妻の笑ひ聲が混じっていたやうな氣がした。
私はひとつ身震いしてから外套の襟を立て、帽子を目深に被り直すと家路を急いだ。
さうだ。明日は家中の銅器に積もった埃でも掃除するとしやう。
トウテツだ!!
すげー!
中国の一番好きな妖怪です。
これは怪談かなあ?
題材はいいけど、怪談っぽくないよな。
>91
雰囲気は良いけど、これはプロローグ? 続きがあるの?
何かありそうな感じで、余韻というか怪異の予感はばっちり。
>>91 近世文学(?)を学んだことがある人なのかな。
浅学の俺には真似できん文体ですわ。
いや、素晴しい。
乙でした。
関西弁?が不自然かも。
>>91 素晴らしい!!
来年のbk1大賞間違いなしですね。
>>91 長編も読んでみたいと思わせる内容です。
まさか鼟餮の青銅器を持ってくるとは思いませんでした。
お題も自然に消化されていてパーフェクト!!
次回も是非投稿してください。
>>91
うまい!
でも擬古文いがいの作品も読んでみたい。
>>98 やらせん!やらせんぞぉ!!とマシンガン乱射ww
もう擬古文と方言はいいよ。
>>91 中国志怪小説を書いて欲しい。
というか、書いていませんか?
>>92-103 ありがとうございます。
東京の根津美術館でトウテツ紋の青銅器を眺めるのが好きです。見ていると時間が経つのも忘れます。
関西弁は以前住んでいたのでそこそこ使えるつもりでしたが、文章にすると難しいですね。
実は擬古文以外でも出してまして、実は
>>61のお話なんかもそれなんですけど……。
中国志怪小説はいつかチャレンジしたい領域です。
あ、ちなみに大学院まで理系でして、物書きは完全に趣味でやってます。
まじかよ……
プロだと思ってた。
趣味でこれかよ。
お前凄すぎ!
ありがとうございます。
これもひとえにこの三題噺が存在してくれたお陰です。
本当に良いトレーニングになります。
やらせん!やらせんぞぉ!!とマシンガン乱射ww
在野にこんな才能があったんだな……。
なんか、自信なくなってきたよ……。
今までは、それなりに自分の作品に自信があったんだけど、
知識にまだ浅さがあることを自覚した。
もっといろんなジャンルの本を読んで出直すわ。
ここはトレーニングの場。知識の充実も大切だけどまずはジャンジャン書く事が大事でそ
土曜日に出されたお題でまだ2本。「邪神」「月」「工場」で書いてる人いますか?
それとも次のお題に移った方が良いですか?
それぞれ、ペースや都合があるだろうから、まだの人は出来次第出す、ってことで。
もう書いちゃった人のためにお題出しとくね。
じゃ1つめのお題は「心臓」で。
じゃ、ふたつめは「落葉」で。
レベルアップ目的なら、少し難しいのを出してもOKだよね?
みっつめは「カンブリア紀」
では新しい三題噺のお題「心臓」「落葉」「カンブリア紀」と言う事で。
お題〈うろこ雲、病院、ワイン〉
タイトル「うろこ雲」
酒をジュースの空きボトルに入れてカムフラージュ。
そして、人目の無い病院の屋上へ。
へへっ、ちょろいもんだぜ。
あのバカ看護婦どもめ!
肝硬変が怖くて酒が呑めるかっつーの!
んっんっんっ。
ぷはーっ、うめぇえ!
腸に染み渡るわい。
ん? おわっ!
何だよ、東さんじゃねーか。脅かすなよ。看護婦どもに見つかったかと思ったぜ。
ん? これかい? へへっ、看護婦どもには黙っててくれよ。
あ、あんたも飲むかい? 赤ワインもあるぜ。
えっ、いらない? あ、そう。
そういや、あんた、此間、治療室に運ばれてったばかりだもんな。
調子はどうだい? まだ、具合悪いのかい?
えっ、何だい? 雲がどうかしたのかい?
うろこ雲だろ、あれ。
違うって? よく見ろ?
うーん……
うわっ、うわわわわわっ!
か、顔っ! 小さい顔がいっぱい、雲に浮んでっ! あ、東さん?
あ、東さん! か、体が透けてっ!
あ、ああ……。
天に昇って、うろこ雲の一部になってしまった東さんを見て思った。
……酒、止めよう、と。
120 :
118:2006/10/21(土) 18:42:18
このお題で同じアイディアの作品って出てましたっけ?
周回遅れwで迷走していたため、スコーンと忘れてました。ごめんなさい。
酒を病院で隠れて飲んで、最後に怪異をみて禁酒しようと思う話は過去にあった。
ありがち過ぎるアイディアなのかもね。
看護婦の目を盗んで飲むという展開まで同じだったので、
てっきり以前出した作品の習作を投下されたのかな? と思いました。
文体も似すぎ。
以前読んだものを忘れて、ふと思い出した時に、
自分のアイデアと錯覚してしまうのか。
それとも偶然の産物?
と、槙原&松本のニュースを読んで考えていたところに、これだw
過去ログ保存してる人いる?
自分の作品しか残してないなぁ……。
前の作品は、Datオチしてると思う。
だけど似すぎだなこれ。
偶然なんてありえる?
どの程度似てるのか分からないから、知らない者からすれば偶然なんじゃないの?程度。
130 :
名無し物書き@推敲中?:2006/10/22(日) 11:33:49
過去掲載作のコピペか習作と思うくらいだから、ちょっと偶然とは思えない。
文体、オチ、流れ、全て同じだもんな。
まあまあ、面白かったから別にいいんじゃないの?
そんなにシビアにならなくても、次から気をつけてもらえれば。
いや似ているってレベルじゃないので。
同じ作者の人じゃないですよね?
前の作品と比べて見ないと何とも言えん。
似ているとされた作品は、おそらく私の作品だと 思いますが、
作品は残してありませんし、次回作に期待ということで。
まあ、こんなこともあるよ。 もし、落ち込んでたら、頑張って 次 出せ。
なんかここに自分の作品投下するのが怖くなった……。
三題噺の性質上、既出作品を読んでいないとカブる可能性は十分ある。
避難前のスレがDAT落ちしている以上、全ての作者が全ての作品を読んでいるとは限らない。
シチュエーションが似ると展開方法が似てもおかしくないし、
匿名での名誉にさほど意味がない以上、故意にパクる意味がない。
ストイックに修行するのもいいけど、「それ前あったよ」「うはマジでw」くらいの軽いノリで
次々書き綴ってもらう方が、読者としては気楽に楽しめる。
落ち込まずに、どうか頑張って下さい。
過去のお題ではなく、新しいお題にチャレンジすれば全く問題ない。
かぶると言う事は誰でも思いつくレベルと言う事。
トレーニングのためにも執筆陣には更なる奇想を期待する。
上昇志向もいいけど目標値が高すぎるとコケるよ。
気軽に書いてほしいな。
その前の作品ってヤツだけど、どのスレだったか、いつくらいの時期か
教えてくれれば過去ログ持っているから探すけど
何時だったかわからないが、本スレにあると思う。
12以降のスレをちょっと探してみてくれ。
143 :
118:2006/10/22(日) 17:20:35
お騒がせしちゃってすいません。
深夜、眠い目を擦りながら作品を書いたので、たぶん以前読んで記憶の底にあった135さんの作品のアイディアに影響を受けたんだと思います。
決してパクるとか、そういうつもりで書いたものではないんです。
135さんにはご迷惑をお掛けしました。ごめんなさい。
144 :
135:2006/10/22(日) 20:08:36
きにするな。 べつに 迷惑はかかってない。
それより こんなことで ここから足を洗おうとするなよ。
145 :
118:2006/10/22(日) 20:20:39
ありがとうございます。
135さんにそう言って頂けると助かります。
馴染みの西洋骨董屋に行くと、かの息子が歐州まで骨董の買ひ付けに行ったと言ふ。こ
れまでは必ず店主自ら足を運び己が目で確かめて購入していたらしいが、掛かり付けの醫
者より海外渡航を眞顔で禁じられたらしい。流石に強心臟で知られる店主も泣く泣く見送
ったといふ。
それまで店主はもっぱら佛蘭西の蚤の市で買ひ漁っておったらしいが、息子はついでに
海峡を超えて英國まで足を伸ばしたさうだ。
「英國の南西部にある半島の古物商でみつけた物らしいんですがね」
「寒武利亞だな。地質年代で有名なカンブリア紀はこの地の名に由來すると聞いた事があ
る。いまでは確か……ヱルヅであったか、ヱェルヅであったか……」
「倅もそんな事を申しておりました。なんでも曰く付きの品なんだとか……」
さう言ひながら店主が古びた木箱を取り出した。木箱の底以外の面全て似に細かな浮き
彫りが施されてゐる。落葉の上を吹き荒れる風を渦巻き紋樣で表したものらしい。
「これは自鳴琴ですな。この表面の浮き彫りはなかなかに見事。かの地のケルト人なる人々
に傳はる手法と思はれますな」
曲を聽きたかったが、殘念ながら發條は錆びてゐるのか囘らないやうだ。
「先生にはいつもお世話になっておりますから、こいつは先生に差し上げませう」
壞れてはゐるが浮き彫りが見事な事もあり、店主の好意に甘える事にした。
夜眠ってゐると、何時頃だらう、音は小さいが音樂が聞こえてきた。
途切れ途切れだが、澄んだ金屬音だ。音の出所は多分鄰の部屋。鄰の部屋にはあの自鳴
琴が置いてある。發條が何かの加減で囘り始めたか? 店主め悔しがることだらう。
そんな事を考へてゐると、やがて音は濶рムし、そして止まった。
ヂ……ヂヂヂヂ……ヂ……ヂヂヂヂ……ヂヂヂヂ。
地の底から聞こえてくるやうな小さな耳障りな音、そして再び曲が流れ始めた。
氣が付くと全身が硬直していた。金縛りといふ奴だ。腦は起きてゐるのに身體が眠って
ゐるといふ譯だ。何か視界の端で動いてゐる氣がするが、氣儘な獨り暮らしの身の上、當
然そんな譯はない。してみるとこの音樂も幻聽の可能性もある。
とりあへず明日あの自鳴琴は骨董屋に返すとして、さてこの金縛りはだうしたものか。
こんなお題でも擬古文で書き上げましたか!
しゅごすぎるー!
カンブリア紀がネックで書けずにいたが、なるほどこういう切り口があったか。
お見事!
父の掌に小さな石膏の塊。落葉か草鞋に見える。
「この三葉虫というのは、カンブリア紀に発生してなぁ」
父は微笑みながら、その石膏を私の掌に乗せてくれた。
掌の上の石膏は、やはり落葉か草鞋にしか見えない。
おとうちゃん、これ、さんようちゅう、てなんなの?という私の問いに、父は「おま
えにはまだ早すぎたな」といって微笑んだ。
これが、父との最後の思い出になった。
父は心臓を患っていたらしい。
私が中学に入学したときに、母がそう教えてくれた。
確かに、私の記憶にある父に「健康」というイメージがなかった。
「父は心臓が弱かった」と聞いたとき、すんなりと納得したものだ。
そんな父だからこそ、生物の営みに並々ならぬ興味を持っていたのだ、と母が言う。
生前のまま残してある父の部屋には化石や標本で埋め尽くされている点でも、それは間
違いない。
父の部屋に入る度に、あの人はまだ生きたかったのだろう、と思えてならなかった。
父の部屋の換気をしているとき、机の上にあの石膏の三葉虫があった。
(落葉みたいだって、思ったっけ)
父のあの笑顔を思い出して、そっと手に取った。
石膏独特のひんやりとした手触りに、何故か涙が溢れそうになる。
石膏を握り締め、祈るように胸にかき抱く。
手の中で、どぐっ、どぐっ、と石膏が脈動した。
まるで心臓の鼓動を感じさせるような。
驚いて取り落とした石膏。
かちん、と音を立てて机の上で裏返った。
三葉虫の裏側。平らな面に彫り込まれた言葉。
「おまえも すぐに」
>>150 ほろりと来る前半のほのぼのとした空気から突き落とす最後の一言が効いている。
そうか? オレにはパターン化したオチにしか映らなかった。
他の終わり方もあっただろうに、正直惜しい。
お題〈邪神、月、工場〉
タイトル「宗教勧誘」
東さんは最近、地方に転勤した。
「一応、栄転なんですがね……」
新しい工場の責任者となった東さんは、給料が僅かに上がったものの、責任は増え、勤務時間も倍近くになった。
「管理職なのでしょうがないんですが……」
仕事の大変さよりも困った事があるという。
東さんの工場は二四時間稼動するため、従業員は四交代で働いている。
真夜中の時間帯は働き手が少なく、工場の責任者である東さんが自然と真夜中の時間帯の現場リーダーを勤めることが多かった。
「最初はちょっと頭のおかしい人だと思ったんですよ」
月の出ない夜になると、決まって、変な女が工場の入り口に立つという。
何か事故があってはいけないと、東さんが注意しに行くと、女は
「貴方たちの神は邪神です! いますぐ悔い改めて改宗しなさい!」
と捲くし立てる。
何度、東さんが、ここは工場で宗教とは関係ないと、言っても聞き入れない。
そんな事が何回か繰り返された。
困り果てた東さんは、一度、警察を呼ぼうとしたことがある。
「取りあえず、事務所でお話しましょうと言って、ちょっと目を離したんですよ」
その僅かな時間で女は消えていた。
「逃げたのかなと、思ったんですが……」
物理的にありえなかった。
いくら真夜中とはいえ、照明灯は付いているし、周りにほんの数秒で隠れられるような場所はない。
「その時、初めてゾーッと、しちゃって……」
以来、女が入り口に現れても、無視することにしたという。
「工場が建つ前は、そこに何があったか調べてみればどうです?」
と私が聞くと、東さんは首を振って、
「いや、それを知ったらもう続けられなくなるから……」
と溜息をついた。
〈冥王星、ようかい、小説家〉
タイトル「居るモノ」
「狐狗狸さんをやったんだ」
何だよ、突然。
いい年こいて、そんな事やったのかよ、お前。
何? 東がやろうと、言い出したから?
成程な。それにつき合わされたのか。大変だったな。
「最初は、冥王星は惑星から外されるのかとか、俺は将来小説家になれるのかとか、そんな事を聞いてたんだ」
あ〜冥王星ね。
あれ、外されたらしいぞ。
さっき、ニュースでやってた。
これからは矮惑星と呼ばれるらしいな。
で、狐狗狸さんの予言が当たったとか、そういう話なのか?
「いや、そうじゃないんだ。色々質問した後、東が、妖怪に会いたいのですが何処に行けば会えますかって、狐狗狸さんに聞いたんだが……」
……相変わらずだな、あいつは。
未だに、妖怪がいるとか思ってんのか。
まあ、いいや。
それで、どうした?
「……に居るんだそうだ」
えっ? 何だって。
「お前の家に居ると、云うんだよ。妖怪が……」
はぁ? 俺の家に?
あほか、お前。
それで、わざわざ電話してきたのかよ。
付き合いきれねぇな。
もう、切るぞ。
乱暴に受話器を置く。
馬鹿馬鹿しい。俺の家に妖怪なんか居るわけねぇだろ。俺の家に居るのは……
――タタタタッ。
裸足で廊下を走り回る青白い子供を目で追いながら、俺は思わず溜息をついた。(終)
あっ、、「非難」「柿」「鶴」のお題を抜かしてた。
>>146 相変わらず擬古文が素晴しい。
この骨董屋シリーズは続けて欲しいな。
乙でした。
>>150 心臓と石膏というのが巧い取り合わせだと思う。
話の持って行き方もいい。
乙でした。
>>154-155 乙。
ストーリー上不要な表現が見受けられます。
そんな贅肉部分を削り取ればもっとシャープな印象になるかと思います。
辛うじてお題を取り込んでいる感じがしまうので、唐突感のないお題の出し方の方に
言葉を費やした方が良いかと思います。
>>150は擬古文ばかりの中で新鮮に感じるw
しっかり書ける人なんだとお見受けしたが。
あたらしいお題希望
>>146 オレも
>>157の人と同意見。
骨董屋が出ても出なくても良いから、この「先生」のシリーズが読みたい。
じゃ一つ目のお題は「人形」
二つ目は「強酸」
3つめは「おっぱい」でヨロ!
じゃあ、「しょっぱい」で。
では新しい三題噺のお題は「人形」「強酸」「しょっぱい」と言う事で。
あのさ……お題の更新早くない?
過去のが出せるっていっても、今のお題で出したいじゃない。
じゃぁ毎週1回だけお題を決めるとかにするか?
「しょっぱい仕事だぜ……」
俺はラブホテルの入り口近くの電柱に案山子のように突っ立ったまま、ひとりごちた。
浮気調査、というやつだ。そう。俺は興信所職員なのである。
今日は「旦那の浮気を調査してくれ」というブルジョワジーなマダムの依頼でこんな
糞寒いラブホテル街に突っ立っているのだ。
ひとつ気になるのは、ホテル入り口をはさんで向こう側にある電柱にいる女。
黒く長い髪を下ろし、白っぽいコートの襟で顔を隠している。
入り口の一点を見つめる眼からして、どうも“ご同業”らしい。
お互い大変だよな、と語り掛けたいところであるが、流石にそれはできない。
(仕方ないわな)と俺は再び入り口に眼を移した。
小一時間ほど経っただろうか。
入り口に人影が現れた。男女。だが俺のターゲットではない。
ふん、と鼻を鳴らして、俺は懐のカメラから手を離した。
前の電柱を見ると、あの同業らしき女が動き出している。
(ああ、こいつらは奴さんのターゲットだったのだな)
俺がそう理解した瞬間の出来事だった。
同業らしき女は、その男女の前に立ちふさがった。
そのまま急にコートを広げるや否や彼らに飛びかかる。
コートが思ったよりも大きいのか、同業の女と男女全てを飲み込んだ。
もぞもぞとコートが蠢く。中で揉みあっているのだろうか。
「ぎゃあっっ!!」
ふいに、屠殺場の豚のような声が聴こえた。
聴こえてきた声は次第に小さくなったかと思うと、白いコートがしぼんでいく。
いや。そのまま消えてしまった。
残されたのは強酸をぶっかけられた様な状態の変死体二つ。
慌てて死体に駆け寄った。
(ん?)
足元に、白い紙片。見るとそれは人の形をしていた。
人形の紙片は風に飛ばされ、消えていった。
>>169 新しいお題は今までも大体毎週一本のペースですよ。
前回も先週の金曜日だし……。
週末にお題が出て、週明けに早ければ一本目が投下というパターンが多いかな?
>>170、めちゃくちゃ早いのにきっちりとまとまってますね、乙です。
>>170 「ぎゃあっっ!」はなくても良かったかな?
>>168 気持ちは解るが、そんなに気にしなくてもいいんじゃないかな。
ここは自主的なトレーニングの場なんだから、自分のペースで作品を投下すればいいと思うよ。
>>170 無駄のない文章で展開もスピーディ。
お題が出てから大して時間が経ってないのに、よくここまで…
いやはや、乙でした。
>>170 式神?
ホラーぽくもあり、怪談ぽくもあり。
短時間でここまで書けるとは、驚きです。
わたしは肌が、きたない。
アトピーだろうって。 強酸性水の浄水器 買わないと。
お母さんが「お金がかかって しょうもない」って。
「お勉強だってできないし、器量だって良くない、アトピーにもなっちゃって」
お母さん 困るって。
「なにもあんたには 期待しないから、めだたないようにしているのよ」
お母さん、わたし 学校で答えがわかっても 手は上げない。
もし、まちがっていたら、お母さんが 恥ずかしいめにあうんだものね。
金喰い虫の どうしようもない娘だけど、いいつけ 守る。
だけど、お母さん。 わたし 時々 どうしようもないときが あるの。
お母さんに言っても わかってもらえそうもないから、言わないけど、
そんなとき、まっ黒いクマの人形が 「行こうよ 行こうよ」って言うの。
わたし ちょっと、一緒に行ったら どうなるんだろうって 思って。
恐くて 行かないけど、それでも クマの人形は、わたしを誘って、
「こんなところ 捨てちゃって、別のところで やりなおそう」って。
クマの人形は お母さんより 優しいことばをかけてくれる。
でも、やっぱり お母さん好きだし、もう少しがんばってみたい。
涙は、ちょっと しょっぱいけど。
>176
うわ、なんだか切ないお話だ。
強酸性水が肌に良いかは知らないけど。
「クマの人形」って字面が不気味。ぬいぐるみとは違う感じで。
乙でした。
人形、という単語を無理矢理入れた感じがするね。
>>176 読んでいてずんっと重さがくる話ですね。
このルールを無視した文体がなければもっと良いと思う。
>>176 設定と心情描写がうまいと思います。
欲を言えばもう少しクマの存在感が欲しかったかな。
乙でした。
お題〈鶴、柿、避難〉
タイトル「童謡」
自衛隊員の東さんの話。
以前、A島沖で地震があったとき、救難活動のためA島に派遣されたことがあるという。
補給物資を届け、炊き出しをするのが任務の内容だった。
避難所に指定された公民館に到着すると、どこからか童謡が聞こえてきた。
つぅ〜ると、
かぁ〜めが、
すぅ〜べったぁ〜
うしろのしょぉ〜めんっ、
だぁ〜あれっ。
島の子供たちであろうか。
公民館の脇にある柿の木のそばで、四〜五人の子供たちが遊んでいた。
こんなことがあって落ち込んでいるのか、声に活気がなかった。
(カゴメ、カゴメか。島の子供は純朴なもんだな)
家でテレビゲームばかりしている自分の息子と比べて、東さんは感心した。
その後、白米や豚汁を炊き出して島民に配布していると、東さんは子供達の姿が見えなくなっているのに気がついた。
島民の一人にそのことを聞くと
「子供? 子供なんてこの島にはいねぇよ」
と、怪訝な顔で言われた。
そういえば、島は過疎化が進んで住んでいるのは年寄りばかりだと、事前のミーティングで聞いていたのを思い出した。
じゃあ、昼に見た子供たちは何だったのだろう。
腑に落ちないまま、翌日、島を離れることになった。
結局、全島に避難勧告が発令され、退去することになったのだ。
「何か、あの島の精霊のようなものだったんじゃないかと思ってるんですがね」
たまにテレビで島のニュースが放送されているのを見ると、あのときの子供たちの姿を東さんは思い出すという。
お題〈心臓、落葉、カンブリア紀〉
タイトル「復活」
――ドクッ、ドクッ。
心臓が脈打つ。
その脈動を見て、耐え難い恐怖を私は感じている。
落ち葉のようなかさかさとした体表に、次第に生気がみなぎってくる。
そして、ゆっくりと何かが動き出す。
ソレが何かを確認する前に、魂を引き千切るような絶叫が私の口から迸る。
そこで夢は終わる。
一週間程前からだ。
私はカンブリア紀の地層から化石を発掘する作業を開始した。
それと同時に毎晩、あの恐ろしい夢を見るようになった。
夢と発掘作業の繋がりは全く無いのに、なぜか私は両者を結び付けていた。
この発掘は中止したほうがいい。
でないと、取り返しがつかない恐ろしい事が起こる。
理性ではその根拠のない考えを拒絶しながら、本能では確信していた。
今日もジリジリと背筋を炙られるような焦燥感を覚えながら、半ば機械的にノミを地層に打ち付ける。
カチリ。
何かがノミの先に触れた。
「教授!」
すぐ傍で作業をしていた助手の東が歓声を挙げる。
ああ、駄目だ。
これを掘り出してはいけない。
こいつを復活させてはいけない。
こいつは……
しかし、私の右手は、まるで別の意思を持ったかのようにノミを振るい続ける。
止められない。
ノミの先端に振動を感じた。
――ドクッ、ドクッ。
復活が、始まる。
>183
子ども達は島民が帰ってくるのを待っているのだろうか。
(一緒に避難してたりして)
>>184 この時代の化石って結局生物痕跡化石であって生物そのものが石になっている訳ではないんですよねぇ……。
先日身罷った家内の妹から、今年十五になったばかりの姪の後見人になって欲しいと言
はれた。氣儘な獨り住まいの身の上、子供の扱いに慣れてゐないのが少々氣にはなるが引
き受ける事にした。
出迎へに行く段になって、姪の寫眞を失くしてゐる事に氣付いた。家内は神懸り的に得
意だったが私は失せ物探しが苦手だ。しかし寫眞などなくとも簡單に見付けられた。獨逸
人の父讓りの明るい栗色の髪、大きな目の瞳の色は紫水晶のやうな味を帶びてゐる。肌
は中國白磁の如き白さだ。和裝ではなくきちんと洋裝させれば佛蘭西のアンチック人形そ
のものだ。少し顎がしゃくれてゐるのが家内の血筋を窺わせる。
姪――名をカヲリと言ふ――と共に驛から自宅までの道を漫ろ歩く。
「さて、カヲリ君。こちらの感想は?」と問ふと彼女は地面を見詰めながらかう應えた。
「土が肥えちょっ。折角良か土やっとけ、こいを畑にせんとは如何にも惜しか」
かの地は例の活火山より噴出せし白砂臺地である。唐芋程度しか育たないと言ふ。
「大正大噴火からこっちはちっとは大人しかばって、灰は降つ。灰にゃ無水硫酸が入っち
ょっで、作物が枯るっ」
無水硫酸とはつまり水分を含んだらただの硫酸であり強酸である。作物どころか金屬も
腐食する。しかし西洋人のやうな人相風體と相容れない強烈な田舍訛りだ。だが言の葉の
端々から利發さが窺い知れる。これは當分退屈せずに濟みさうだ。
彼女には洋食屋が似合ひさうだと思ひ、馴染みの洋食屋を目指してゐるとその手前の蕎
麥屋の前で彼女が立ち止まった。尋ねるとあちらでは饂飩屋が多く蕎麥屋は珍しいらしい。
ならばと蕎麥屋に入った。私はトロロ蕎麥、カヲリは家内も好物だった鴨南蠻を食した。
「だう?」と尋ねると小さな聲で「しょっぱい」と呟いた。向かふは薄味なのださうだ。
自宅に向かひながら實は寫眞を失くしたのだと告げると、彼女は暫し目を閉じ、やがて
「中國の古い壺の横」と呟いた。なるほど歸宅して見て見ると將に饕餮紋の銅器の横に
それはあった。だうやら家内似の資質らしい……。これは當面退屈する事はなささうだ。
>187
最初、身罷ったのが家内なのか家内の妹なのか混乱したけれど、
死んだ人が娘の後見を頼むわけがないので得心した。
仏蘭西人形のような美貌の姪が、土地の感想を聞かれて田舎訛で
地味(ちみ)について語る意外性が良かった。
あと蕎麦屋でのやりとり。
カヲリ君の手で庭が畑になる日も近か。
>>187 乙です。ひょっとして今回はパスかと思っていました。
骨董屋シリーズの先生の姪っ子の登場ですね。千里眼のハーフの少女。
三題噺なのになんかシリーズ物っぽい様相を呈してきた感じです。
相変わらずお題も無理なく織り込まれていて見事です。
次回も期待しています。
>187
魅力的なキャラクターが出てきましたね。
今回もとても面白かったです。
この骨董屋シリーズは、ぜひ、続けていって欲しいですね。
乙でした。
>>188-190 どうもありがとうございました。
>>187です。
今回、このシリーズにカヲリを登場させたのは女性の視点を入れる事で
今後出てくるであろう様々なお題に対応しやすいのでは? と考えたからです。
識者の先生、西洋骨董屋(実は欧古堂という名前です)の店主と倅、
それに葉書を持ってくる郵便配達員(洋食グルメという設定になっています)、
それに今回のカヲリ。これだけキャラがいれば何とか対応してくれるでしょう。
場合によっては亡くなった奥さんも思い出話等で登場させれば一応……。
どうしてもこの登場人物で対応できない場合にはクトゥルー物という手もありますし……。
次回のお題がどうなるか判りませんが、次回も一生懸命考えさせて頂きたいと思います。
やっぱりちゃんと人物設定とか考えてやってるんですね。
これからも期待してます。頑張って下さい。
お題〈しょっぱい、強酸、人形〉
タイトル「涙」
雅夫の死に顔を見ても涙を流さなかった私。
普通なら、恋人の死に対して、涙のひとつでも零すものだろう。
愛しい人が死んだのだ。
女なら、いや、人間なら当然のすることだ。
でも、私の両目からは一粒たりとも涙は出てこなかった。
まるで砂漠のように乾いたままだった。
風が凪いだ湖のように静寂に包まれた心。
その水面には小さな波紋すら立たなかった。
やはり私は冷酷な人間なのだろうか。
心の作りが人とは違うのであろうか。
そもそも私は、心というものを持っていないのではないだろうか。
人の心を持たない人の形をしたもの……そう、私は機械人形なのだろう。
機械人形なら涙を流さないのも納得できる。
体の中を流れているのは温かい血ではなく、冷たい有毒な液体なのだろうから。
でも、しかし……
私は逡巡した。
機械人形だって涙を零すことがあるかもしれない。
冷たい有毒な液体が、涙となって流れ出る刻があるはずだ。
例えそれが、人を傷つける強酸のような涙だとしても……
そう思ってしまったのだ。
今となっては儚い夢。
……無駄になってごめんね。
横たわる雅夫の死体に謝りながら、
いつか私も温かくてしょっぱい涙を流してみたい
そう、願った。
>>193 心を持った機械人形の悲しみの物語として読んだけど
「無駄になってごめんね」は何を謝っているのかわからなかった。
その時、奇跡のような一滴が私の目からこぼれ落ち、
雅夫の頬に落ち……ジュウと雅夫の皮膚と肉を溶かした。
推敲をちょっと重ねれば自分で問題点に気付けた筈。
せっかくの展開を壊さないためにも是非!
藤田和日郎の「からくりサーカス」に出てくる自動人形の心情みたいだな。
>>193 素材と展開は面白い。
ほんの少し推敲をすれば、もっともっと良くなると思う。
前回から一週間、そろそろ新しいお題出してもらう?
もう1週間? 早い気がするけど、
せっかくのタイミングなので、出させてもらう。
「胡瓜」(キュウリ・きゅうり)
「傀儡」
じゃあ「砂漠」で
新しいお題は「胡瓜」「傀儡」「砂漠」です。
力作をお寄せ下さい。
三題出揃いました。
「胡瓜」「傀儡」「砂漠」
203 :
193:2006/11/04(土) 21:46:38
>>194-196 ご意見ありがとうございました。
夜中に書いてそのまま投下したんですが、今改めて読んでみると、みなさんの仰るように
推敲が足らなかったようです。
「夜書いたものは朝推敲しろ」という基本が出来てなかったようで、何ともお恥ずかしい限りです。orz
その三題だとお決まりのネタに誘導されてしまう、という意味で難しいですな。
大丈夫。204氏が考えている誘導先が全く見えないオレがここにいる。
でけた。けど推敲のため一晩寝かせます。お休み。
お題〈胡瓜、傀儡、砂漠〉
タイトル「流浪の民」
地球温暖化が叫ばれてからどのくらい経つだろう。
資本主義という名の悪魔はそれでも暴走を緩めず、その傀儡である人間は、狂ったように己のエゴを満たすことにのみ終始し続けている。
森林は伐採され、川や湖は干上がって砂漠化した。
生き物はその住処を失い、世界は鉄とコンクリートに覆われた。
自然の中に神を見出し畏れ慎んだ思想は、遥か歴史の彼方に押し遣られ、その痕跡すら消し去られて久しい。
そして順わぬ神は零落し、流浪の民と成り果てる。
濁った輝きを放つ月を見上げて歩きながら、そんなことをつらつらと考える。
……不毛だな。
結実しない思考に辟易し、道端に腰を下ろして先程畑から失敬してきた胡瓜を齧る。
不味い。
化学物質で汚染された土壌と酸性雨で育った胡瓜は、見た目とは裏腹に酷く空虚な味しかせず、まるでゴムを噛んでるようだった。
一口齧っただけで放り投げる。
瑞々しい胡瓜が好きなだけ喰えた昔が懐かしい。
そんなセンチメンタルな想いに囚われたことに苦笑しながら、肩をすくめる。
仕方がない、これが現実さ。
そう呟いて、立ち上がる。
どれ、人間でも襲って尻子玉でも喰うとするかな。
我は再び歩き出した。
(了)
>207
キュウリというお題をみたとき、誰か河童の話を書くような気がしていたが。
懐かしい感じのSF。
ゴムを噛むようなキュウリって、そうとう不味そう。
キュウリの旨さの一部は、あの歯触りだからな。
速攻投下、乙です。
皮肉でも何でもなく純粋に質問。
カッパって動物を川などに引きずり込んで生き血を啜るものだと思ってた。
抜いた尻小玉を食べるというは全く知らなかった。
なんかそんな(尻小玉食べる)という話ってありましたっけ?
感想ありがとうございました。
>>209さん
河童というのは言わずと知れた水の妖怪ですが、全国各地に様々な呼び名と特性で伝わっております。
209さんの仰る「動物を川などに引きずり込んで生き血を啜るもの」というのもその特性のひとつですが、主なものとして
1.胡瓜が好物 2.相撲を取るのが好き 3.尻子玉を抜く(喰う)
というのが共通したものです。
この尻子玉とは、溺死体の腹が膨れて肛門が開いている様子を昔の人が見て、河童の仕業=河童が尻子玉を抜いた(喰った)と考えたことからきているようです。
ちなみに胡瓜は水神信仰に欠かせない供物で、河童を水の神の零落した物とする説もあるそうです。
訂正
>ちなみに胡瓜は水神信仰に欠かせない供物で、河童が胡瓜を好物とするのは、河童が水の神の零落したものだと考える説によると思われます。
あるよー。
血を吸うというのも、和漢三才図絵だと「肛門から血を吸う」ですな。
まあ食べるかどうかは二義的なものと思われます。
要は水死体の肛門が開いている事実を元に、尻から何か抜く妖怪が想像されたので。
213 :
名無し物書き@推敲中?:2006/11/06(月) 10:18:45
尻小玉を抜くと言うのは有名だけど、
抜いた尻小玉をカッパが食すというのは聞いた事がないなぁ
河童というのは左甚五郎が作った藁の人形が変じたものだ、という話がある。
甚五郎の式神……「傀儡」であった藁の人形は、用が済むと川に流された。
川に流された藁の人形が河童に……という訳だ。
そんな河童どもの好物は尻子玉だとか、胡瓜であるとか諸説ある。
尻子玉好物説は、水死体の肛門が開ききっているのを見て「ああ、この人は河童に尻
子玉を抜かれたに違いない」という当時の想像から生まれたものらしい。
なら、何故胡瓜なのか。
胡瓜はインドが原産国だ。砂漠を渡り、中国を経由して日本に渡ってきたのだろうか。
もしかしたら河童伝来と関係しているのかもしれない。
左甚五郎が藁の人形を傀儡にしたように、私も傀儡を作りたい、と願っている。
どのような秘法があるのだろうか。
どのようにすれば傀儡を我がものにできるのだろうか。
私は、ある場所にやってきた。
熊本の球磨川である。
ここは河童伝来の地だ。河童がいるのならここか遠野だろう。ここが駄目なら、次は
遠野だ、と決めてある。
傀儡であったはずの河童を捕らえて研究すれば、私の研究も一段と進むだろう。
まずは河童を捕らえねば。
私は、真夜中に球磨川のほとりから大量の胡瓜を流した。撒き餌である。
ほどなくして、水面が白く泡立った。
おお、これは河童か。水面を凝視する。
泡立つ水面から現れたモノは。白い。違う。これ。ああ。
「ケツンス(尻の穴)が開いとるばい」
私の屍体を見た巡査が、顔を顰めた。
私は川面から彼らを見ている。
私は、今、傀儡として、ここ球磨川に。
>>214 >泡立つ水面から現れたモノは。白い。違う。これ。ああ。
ああ、一体何が現れたのか!(身悶え)
ところで、日本全国に河童のような妖怪は四百種ほどいるらしい。
違う名前で、それぞれの水辺に。
河童(カッパ)という名称が広がったので、
各地で、うちのあの妖怪も河童だな、ということになったようだ。
だから球磨川で成果が上がらなかったからと言って
一足飛びに遠野に行かなくてもよい。
九州と東北の間に、沢山の河童系妖怪がいる。
>>215 それはですね。
この主人公の浅はかさというか「研究といっているが、実は」ということなんです。
すなわち有名どころしか調べてない、浅学だと。
そんな人間が悪ふざけをして、という怪談の王道的展開になるようにしました。
だけど、ホラーに近いような気もしないでもないですw
>216
説明させてしまってすみません。
そんなヤツだからエライ目に遭うわけですな。
王道展開、良いですよ。乙でした。
>>214 河童人造人間説ですね。
ラストの捻りがなかなか良いです。
乙でした。
>>214 読みやすく、また二段オチが効いていて面白かった。
オーソドックスに見えて、ひねってあるのが巧みなところだと思います。
幽怪談文学賞の選考会が本日行われ、大賞は以下の作品に決定いたしました。
【長編部門】
大 賞 黒史郎 『夜は一緒に散歩しよ』
優秀賞 水沫流人 『七面坂心中』
【短編部門】
大 賞 宇佐美まこと 『るんびにの子供』
知ってます。
この手の情報をわざわざご記入頂かなくても元親スレなどで確認しています。
長宗我部元親?
黒タンがんば!
ここ最近矢鱈とカヲリが溜め息をついてゐる。田舍からこちらに出て來て里心でもつい
たのやも知れぬ。これでは義妹に申し譯ない。何か退屈凌ぎでもさせてやらねば……。
しかしとなると生半な物など見せる譯にはいかぬ。珍しい物を指す言葉に「石に花咲く」
と言ふ言葉ある。暫しの思案の末わたしは標本棚から秘藏の菊石を取り出した。菊の花瓣
のやうに見える事から菊石と言はれる物だ。わたしは早速カヲリを呼び付けた。
「こいは中生代の頃までおった鸚鵡貝の祖先で、たしかアンモン貝の化石……の模型」
流石に千里眼の持ち主、見事である。しかし模型とは……、さては歐古堂め謀ったな。
ならばと今度は半里ほど西にある神社に引き連れて行った。拜殿の前庭に鎭座まします
大岩がある。これに彫り込んである神紋が見やうによっては花に見えなくもない。
「こん神社は牛頭天王をば祭神にしちょっで、木瓜つまり胡瓜を象ったもんで……」
然り。カヲリは年に似合はずなかなかに知惠者のやうだ。かくなる上は……。
すぐさまカヲリの腕を取り、表通りからふた筋ほど奧まった處にある勸工場に向った。
案の定、西歐骨董屋の店主はいつものやうに暇さうにしていた。
「この閧ヘアンモン貝の化石の贋物を格安で分けてくれてすまなかったな」
店主は度肝を拔かれた樣子で、ギクシャクとさながら山猫廻しの傀儡の如き有樣だ。
すぐさま店主に命じてひと抱えもある蝦茶色の石の塊を持って來させた。
「砂漠の薔薇じゃったろかい。水に溶けた重晶石なんかの成分が結晶化したもんで、砂漠
に水があった證據ち言はれちょったかね。魃に魅入られた人たちの怨も沁み込んじょっ」
西洋ばかりか中國の山海經にまで及ぶカヲリの博學ぶりに舌を巻く他はなかった。
歸りの道すがら滿足させられなかった事を詫びると、カヲリは頭を振ってかう言った。
「今日は二日目でだるかったどん、先生のお陰で氣が紛れもした。有難ごわした」
なんだ。さうであったのか……。
>>224 思わず笑ってしまった。<さては歐古堂め謀ったな。
カヲリちゃんのマンスリーデイのお話でごわしたか。
>>224 カヲリ嬢の博覧強記ぶりとオチのギャップが面白かったです。
乙でした。
日向國志布志大慈寺は京の臨濟宗妙心寺の末寺とし、興國元年、南朝方武將楡井某によ
り玉山玄提を開山として建立され、その後光明天皇より広慧の宸筆を下賜されて後は龍興
山大慈広慧禪寺と稱し、文安元年に臨濟宗十刹と、日の本で十指に入る禪宗寺院に加ヘら
れたり。山號は龍受山。
開山玉山玄提和尚、禪の境地に達せんと欲し齡百三十四歳にして石室に籠もり、七日に
渡る斷食の後人寂。僧、民悉く此れを憂ひ、血の涙を流せしと傳へ聞くもの也。
貳代大慈寺剛中和尚、水斷ち五穀斷ちに臨みし初代大慈寺玄提和尚に尋ねて曰く。
「そは水斷ち五穀斷ちにて今更何をぞ得らん哉」
初代大慈寺、應えて曰く。
「人の欲の内、最も強き食ひ意地を抑え、身を乾かさん。
既に我、餘人の三代もの長きに渡り生き長らえたり。最早この世に未練なし。身の渇き
が心の渇きとなり、砂漠に水が沁み込む如く、七日の讀經三昧にて悟りが我が身に染み渡
らんや否やをこの身をもって確かめん」
貳代大慈寺剛中和尚、開山堂に初代大慈寺玄提和尚が亡骸を納めて曰く。
「見よ尸解仙を夢みし者の亡骸を。宛ら萎びた胡瓜の如し。
賢者は知るべきを知り、知るべからずを求めず。愚者往々にしてこれを辯えず、知の傀
儡に成り下がり身を滅ぼさん。
初代は身をもって其れを示さんと人寂された。他山において即身佛に金箔など施し佛と
して奉るもあるやに聞いてをるが、本山にてはこのまま晒し置く。
人は人としての本分を辯え、その命盡きるまで存分に生きるべし」
擬古文飽きた。。。
>>224 >>227 乙です。
胡瓜⇒河童が続いたのでどうなるかと思いましたら、ここでストップ。
擬古文の方が河童の話などテーマにしやすいのでは、と思いましたが意外でした。
相変わらずお題は無理なく織り込まれてます。さすがです。
同じ擬古文でも印象の違う書き方って出来るんですね、勉強になりました。
>>227 骨董屋シリーズと同じ人でしょうか?
1つのお題で2つも書くとは驚きました。
ただ、禪の境地を欲して「尸解仙」というのがよく分からないです。
「尸解仙」は左道のイメージがあったあので…
>>225-226 >>228-230 どうも、>224と>227を書いた者です。
今回のお題が出された時、お決まりのネタに誘導されてしまうとの発言が目に止まり、
河童以外のテーマで書き上げようと努力してみました。
立て続けに2本の投稿でこの文体が嫌いの方には大変申し訳ありませんでした。
骨董屋シリーズを投下した直後に、不意に尸解仙の話を思いつき、連続投下させていただきました。
>230の方、禅と尸解仙につきましては、禅寺として名高い達磨寺において、
『日本書紀』推古天皇21年に臨済宗南禅寺派の達磨寺が片岡尸解仙説話を創建由緒とする
とありますように、必ずしも仙道とばかりの関係では語れないものがあり、
そんなところから、このような事もあったのではないかと思い書いてみました。
とは言え、短い時間で書き上げましたので言葉足らずの箇所もあり、どなたかが仰って
おられたように、一晩推敲する時間を設けた方が良かったかも知れません。
擬古文飽きたって言っている人は、読んでそう発言したのかな。
読まずに言っているのかも。と、思った。
いる=ゐる(居る)、言う=いふ
とか、簡単なルールを知れば古文調もそんなに難しくない。
声に出して読んでみると意外と内容がわかる。
本当に飽きたというなら仕方ないけれど、
書いてあることが面白いので、読んでいないなら残念だと思ったので。
(読めない漢字があると飛ばすけどなー)
内容が面白いなら、擬古文以外の文体で書いても評価はされると思う。
擬古文が内容を引き立てる場合もあると思う。
語り方というか、パッケージの妙。
同じパッケージングばかりだと飽きてくるのは必然
擬古文に飽きた人はスルー推奨。
一週間経ったし、そろそろ次のお題に行きますか。
個人的には植物のお題が入るのが好き。花や野菜、木や草なんか。
じゃ、一つ目は鈴蘭。
二つ目は、蝿取り紙
どぶろく
では次回お題は「鈴蘭」「蝿取り紙」「どぶろく」という事で。
擬古文あきたっていってる人は、擬古文の人ばかり投稿しているから、
他の人も作品だせってこと?
擬古文の人は通常お題に対し擬古文スタイルが一本(今回だけ珍しく二本だけど)。
という訳で擬古文の人ばかりが投稿している訳じゃない。コンスタントに投下してるだけ。
もちろん他の人たちが投下してくれるのは大歓迎だけど。
>>231 なるほど。「日本書紀」にそんな話がありましたか。
「尸解仙」というと中国、道教というイメージしかなかったもので勉強になりました。
それにしても、よくこんなネタ見つけてきますね。
231さんの博識さには頭が下がります。
次回作も期待しておりますよ。
>>242 >他の人たちが投下してくれるのは大歓迎だけど
俺もそう思うが、強制はできないしねぇ。
まあ、コツコツ地道にやっていきましょう。
それなりに中国志怪関係の話については知っているつもりだったけど、
砂漠の薔薇に、魃に魅入られた人たちの怨が沁み込んでいるって話は初耳。
擬古文の人の博覧強記ぶりに関心。
>>244 >砂漠の薔薇に、魃に魅入られた人たちの怨が
擬古文タンの脚色かもね。
いずれにせよ、さもありなんって感じがするので成功。
黒史郎もここに参加してくんないかな?
実は擬古文タンが黒白。
……な、わけねーかw
「>247氏の質問だが、どうだね?」
「……んな訳なかろが」
「そうか。やはり、な。
カヲリ君によると黒氏ではないとのことだよ、>247氏」
作者の詮索はしないというのがここでのマナー
>249
絶対それはない、という確信の元の詮索なので勘弁ナー
>248
カヲリ君がさう言ふなら、さうだらう。
然り。
連日鹿屋基地より海軍の戰鬪機、編隊を組みて飛び立ち、志布志灣上空を時に高く時に
低く飛び交うなど、時局何やらきな臭くなりし夏の頃の事、香取と名乘りし者訪れ、本山
に傳はる「大慈寺文書」なうち「南洲本草綴」の閲覽を申し出たり。
近頃西洋醫學全盛の感は否めぬものの、玉石、木竹、禽獸、蟲魚、龜貝、果?など本草が
效用も是に劣るとも思へず、その證據を示さんと斯樣な全國行脚を行ってゐる由。本來で
あれば壇方筋のみ閲覽を認むるものなれど、斯樣な事情を慮り閲覽を許したり。
文倉より「南洲本草綴」を取り出し渡すと貪るが如く讀み耽け、語り掛けるもこちらの
聲など全く耳に入らぬ樣子。つひには其の侭本堂に泊り込みとなりにける。
朝ぼらけの頃本堂に赴くと、本堂前に生えし草の根を瑪瑙の鉢にて擂り潰し、それを鳥
黐に練り込んでをる。問ひ質すとこの鳥黐を紙に塗り付け下げておけば蝿取り紙になると
の事。淡々しき紫の花をつけるだけの草と思へしは蝿毒草と言ふとの事。禮を述べると逆
に恐縮し、更に懷より取り出したる粉末を白湯に溶かし込み薦められる。
「歐州獨逸國では天國への階段、いやこちらはお寺ですから極樂の方が良いですかな。さ
う呼ばれる花の根を煎じた藥湯です。本邦では北國か高地の山野に咲く君影草とか鈴蘭と
か呼ばれてゐる草の根を煎じたもの。加賀前田家傳來の藥湯にございます」
薦められるままに白く濁ったどぶろくの如きその藥湯を煽り、其の侭私は昏倒した。壇
方の者の手により町醫者に運び込まれ毒消しして貰ったと言ふ。勿論その閧フ記憶はない。
「南洲本草綴」を確かめると仙草泉の箇所のみ破り取られてゐた。仙草泉とは冬蟲夏草の
事である。琉球國に棲むと言ふ蜏蟲の仙草泉を用ゐれば反魂が叶ふと傳へ聞く。さてさて
あの香取と言ふ御仁、御佛の御加護を望めるものか……。
すいません。4行目の終わり近くにある「果?」は「果蓏(から)」。
木の実、草の実の事です。失礼しました。
>>252 西洋骨董屋シリーズではなく九州の話の方ですね。
お題も無理なく織り込まれているのは流石です。
乙です。
鈴蘭には毒があったんですね。
読んでいて疑問に思い、ググって知りました。
鈴蘭の君。
僕が心の中で君の事をさう呼んでゐる事など君は知るまい。君が女學生の頃から僕は君
をさう呼んでゐたのだよ。まさに君はこの呼び名に相應しい。楚々としたその佇まい、そ
の白く小さな顔、鈴蘭といふ花を直に見た事はないが鈴蘭といふ言葉は君にこそ相應しい。
君の事を考へてゐる時こそが僕の生きる時閨B現世など取るに足らない。
「ぼけぇっとしちょっでそげなモンに絡まるっとじゃ」
煩い、煩い、煩い。
煩いのは親父の聲か、執拗に髪にへばり付くこの蝿取り紙か……。
勇魚漁で片腕を失ひ、陸に上がってからはどぶろくばかり呷り始終呑んだくれてゐる親
父。この親父さへまともな仕事、例へば僕のやうな役場勤めとか、せめてヘ師でもしてく
れていたら、僕もこんな生活に甘んじる事もなく、君と付き合ふのに躊躇わなかっただら
う。君の父親はこの町で知らぬ者とてない大地主。町を見渡せる小高い丘の上に建つ瀟洒
な洋。それが彼女の家。一方僕ときたら海邊の蝿が飛び交う掘っ立て小屋。こんな僕で
は君に懸想する事は出來ても告白する事などままならない。
君が婚約したと聞いた時は正直、この世など壞れてしまへと思ったものだよ。
しかし役場で戸籍係をしていて良かったよ。僕が氣付かなければ君は戸籍を僞っていた
成り上りのあの男に騙されていたに違ひない。君のお父樣も僕に感謝してくれたのだよ。
でもこんな僕の氣持ちは君には傳はらなかったみたいだね。
まさか君がかうやって首を括ってしまふとはね。
しかしさうやっていても君は美しい。俯いた小さな白い顔などまさに鈴蘭そのものだよ。
うわっ、こんな話、好みです。
連投、乙です。
>>256 ラストでいきなり情景が飛び込んできました。
お見事!
>>252-256 2つともかなりのレベルですね。特に2番目のには唸らされました。
難しいお題を自然に消化して、こんな素晴しい話が書けるとは…
いやはや乙でした。
それに比べて俺はくだらん話しか思いつかん。
今回は難しいなぁ…
「鈴蘭」「蝿取り紙」「どぶろく」の三題は今のところ、擬古の人だけみたいだけど
どうする? 新しいお題に移りますか?
そっか、もう一週間経つのか……。
ま、出来上がったら投下してもらうって事で。
ほんじゃ、ひとつめは「記念写真」
ふたつ目「パイロット」
みっつめ「牧草」
では三題噺、新しいお題は「記念写真」「パイロット」「牧草」という事で。
一応書いたので投下しておきます。
お題〈鈴蘭・蝿取り紙・どぶろく〉
タイトル「蠅」
ここで暮らしてから、そろそろ一ヶ月になる。
辺鄙な処だが、ようやく此処での生活にも慣れてきた。
住めば都ということだろうか、最近では此処の良さも分かってきた。
静かで空気は澄んでいて、土地の物も美味い。
地元の日本酒やどぶろくなど、余所では手に入れ難い酒を飲めることも気に入っている。
当初、想像していたよりはずっと快適だ。
ただ一つだけ問題があった。
それは蝿が多いことだ。
……ブブ…ブブブ……ブ…ブブ……
と、神経に障る羽音を立てながら、毎日物凄い数の蝿が飛んでくる。
それも都会ではちょっと目にする事が無いような、大きくて醜悪な蠅だ。
家の中に何個も吊るしている蠅取り紙は、数日で覆いつくされて真っ黒になる。
おかげで窓も開けられず、一日中閉め切ったままだ。
(……まあ、腐る物が近くに有るのだからしょうがないな)
窓から裏庭の少し盛り上がった一角が見える。
あそこから蠅が湧くのだろう。
だが、それも時が経てば解決するはずだ。
カーテンを閉め、裏庭をどうするか考えてみる。
蠅が出なくなったら、あそこに何か植えてみるか。
いい養分があるからきっと見事な花が咲くはずだ。
そうだな、あいつの好きだった鈴蘭はどうだろう。
(……好きな花と一緒なら、あいつも喜ぶしな)
咲き誇る白い花を思い描いて、ほくそ笑む。
……ブ…ブブ……ブブブ……
そんな私の妄想を厭らしい羽音が破る。また、蠅だ。
……それにしても。
この閉め切った部屋に奴らはどうやって入ってくるのだろう……
>>267 オチが予想出来るのが駄目だけど、流れはいいね。
>267
蝿取り紙は何個もじゃなくて何本と表現した方が良いかな。
他にもところどころ無駄な表現があるのが気にかかる。
ありきたりな展開であっても表現次第では面白くなるので推敲を重ねて欲しい。
朝早くから牧草まみれになって働き、夕方厩舎に牛たちを戻すという代り映えしない毎
日。同級生たちは皆この町を離れ都会に出て行ってしまった。企業どころか高校すらない
この町には俺のように家業を継いだ者くらいしか残っていない。
そんな俺に同窓会の幹事という白羽の矢が立ったのは、単に地元に残っていたからに他
ならない。それでも引き受けたのはクラスがたったの七人だから。しかしたった六本電話
を入れれば終わる簡単な作業かと思ったが意外と手間取った。卒業アルバムの奥付にある
同級生リストをコピーし、それを元に全員に電話したのだが、皆転居していて大変だった。
もっとも卒業以来二十年振りだから仕方がない。それでも何とか直接本人と連絡がつき、
皆快く出席するとの返事をくれた。最後に当時の担任の先生に連絡を入れる。
「幹事ご苦労様でした。しかし久し振りですね、皆が揃うのは。卒業式以来ですか……。
いや、……たしか皆さんが中学生になってから一度揃った事がありましたね?」
「そうでしたっけ?」
そう言いながら俺は手元の卒業アルバムをパラパラとめくった。クラス全員で撮った卒
業記念写真。先生を中心に左右に三人ずつ。写真の下にそれぞれの将来の夢が書いてある。
――パイロット、歌手、初代女性総理、ロボット工学博士、プロ野球選手、宇宙飛行士。
パイロットと書いたのは俺だ。あの頃はあながち無謀な夢とは思わなかったが……。
「そうそう、思い出しました。ほら、井上さんのお葬式で……」
写真の右上の片隅に丸で縁取られたお下げ髪の女の子。彼女の夢は――中学生。
生まれつき病弱で休みがちだった井上。確かに白い棺に納まった井上の周りに花を……。
俺は慌ててリストを見直した。一番上にある彼女の名前の横には出席了解の印が……。
>>271 こないだうちにも同級会の案内が来ました。
欠席の返事を出したけど、亡くなった人も何人かいるんだよなあ……
なんてことを思い出しました。
中学生になりたかった井上さん……怖いというよりも切なかったです。
>271
お題消化もしっかり出来ている。
切なさと恐怖もしっかり存在していて、良作怪談だと思う。
乙!
>>272-275 ありがとうございました。
久し振りに普通の文体で書いてみました。
週末までに西洋骨董店ものでもう一本書いてみたいと思います。
>>276 ぐえッ!
おぬし、擬古文タンだったのか。ヤラレタ!
あ、正体明かさない方が良かったですね。申し訳ありませんでした。
あっちの文体だけだと飽きたとか色々言われるものでつい……。
今後、あの文体以外の時は判らないように投下するようにします。
ありがちなネタだけど、切なくていいね。
擬古文よりこっちの方が好み。
これからもたくさん作品投下して下さい。
ありがちと言うのは簡単だけど、じゃあ誰でも思い付けるかと言うとそうでもない。
無理なくお題を消化しながら話を展開させ、切なさまで醸し出せるのはスゴイ。
擬古文の方も期待してます。乙でした!
やたら擬古文たんを持ち上げる人が多くて萎えるなあ…。
ちょっとくらい否定的な感想が出てもいいじゃないか。
全員が素晴らしいと思う作品なんて、誰にも書けないよ。
漏れも擬古文たんは凄いと思うけどね。
あんまりマンセ−意見ばかりだとちょっとなあ。
>>281タンの意見はもっとも。でもそれだったら作品が投下された時に言えばいいんじゃない?
という事で、今回の作品でもこのスレにある今までの作品でも良いから281タンのの否定的な感想は?
>>279の感想を
>>280がわざわざ否定したからでそ?
他人の感想を否定してまでもちあげなくてもいいじゃない?ってことでわ?
ここはまたりしてて良いスレだから、細かなことでいちいち目くじら立てたくないね。
自分もいっちょ創作してみるか。
まあぶっちゃけ作品投下しづらいわな俺は。
個人のファンが多いところに投下しても、見向きもされなそうでなぁ…
ヒント
つジサクジエン
ここは筆力をあげるためのトレーニングの場です。
投下された作品次第で評価は様々でしょうが、見向きもされないと言う事はないと思います。
大分前のお題で書いてもオケ?
もちろんOKです。288さんの作品楽しみにしています。
ありがとう!
頑張って考えてみる。
>>287 同意。285さんも評価を気にする前にひとつ創作してみてはどうかな?
いいトレーニングになると思いますよ。
>>290 俺も楽しみにしてます。
夏休み中のバイト先として、僕が紹介されのは牧場だった。
早朝に起きて牛舎の掃除、餌である牧草運び、牛にブラシをかけて、搾乳機で乳搾り。
高い時給に惹かれて来たものの、思ったよりも重労働で初日は全身が筋肉痛になった。
それでも一週間もすると体が慣れてくる
「ちょっとは様になってきたんじゃないか」
牛舎の床を洗っていると、主任さんがそう声をかけてきた。四十代後半の、都心から脱
サラしてこの牧場に来たっていう人だ。
写真が趣味とかで、牧場のホームページに牛や風景の写真を載せたり、職員さんたちの
記念写真を撮ったりもしてる。
初日から気さくに声をかけてくれた人だから話し易い。余所者同士という親近感もある
のかもしれない。
「いや、さすがに筋肉痛にはなんなくなりましたけどね」
まだまだっす、と僕が笑うと、そりゃそうだと主任さんも笑う。
「あと片付けておくからロール開けてこいよ」
「ういっす。行ってきます」
ロールというのは牧草を大きい塊にして、ラップっていうビニールで覆ってるやつのこと。
僕は主任さんの好意に甘えてロールの一つを開けにいきながら、そういえば、と不意に
思い出す。
主任さんは優しいけど、一度写真を見せてくれと言ったときはやんわりと断られた。
人に見せる写真は決めているそうで、それ以外のは映画で言うパイロット版にもならな
いようなのだとか。
昨日他の職員さんに聞いたら、エロい写真でも撮ってるんじゃないかと冗談半分で笑っ
ていた。
それならそれで見せてもらいたいと思いながらロールラップをとると、すっぱいような
匂いがむっと広がる。この匂いは牧草が発酵した匂いで、ラップで包んでいるのは発酵さ
せるためだ。
僕は牧草を固く縛っている紐を切って、固まった草をほぐしていく。
と、崩していた真ん中に太い枝のようなものが出てきた。
黒ずんで、茶色っぽくて、五本の細い枝がついた、太い、枝、枝なのか、これは。
「ああ、それは開けるなって言ったじゃないか」
後ろから主任さんの優しい声がした。
うまい。お題も無理なくこなされてる。
唯一の難は800字を超えちゃってる事くらいでしょうか。
でもまぁ、1レス内に納まってますからOKでしょう。
パイロットの使い方が憎いですね。
>>292 ロールなど細部が描かれているので、牧場の雰囲気がよく出てると思います。
流れもいいね。乙でした。
お題〈牧草、パイロット、記念写真〉
タイトル「写真」
東君が子供の頃、祖父母の家に遊びに行ったときのことだ。
酪農を営んでいる祖父母一家が牧場に出た後、一人になった東君は、よく庭にある倉に入って遊んでいた。
その日も倉の中にある様々な品を物色していると、古ぼけた一冊の手帳を見つけた。
手に取ってパラパラと捲ってみると、中にセピア色になった一枚の写真が挟まっていた。
何かの記念写真だろうか。
若い男の人を中心に大勢の人が並んで写っている。
周りの人達が笑顔を浮かべているのに対して、真ん中の青年だけは緊張した面持ちで直立していた。
その青年の顔をよく見ようとした瞬間、東君の頭に映像が飛び込んできた。
写真の青年が牧場で牛に牧草をやっている。
青年は黙々と作業をしながら
――もう、こいつらの世話も出来なくなるな。
と、長いため息を吐く。
青年の悲しみや諦めの感情が胸に流れ込んできて、気が付くと東君は泣いていたという。
その後、牧場から帰ってきた祖父母達に写真を見せると
「よくこんな物見つけたのぅ」
と驚かれた。
写真の人物は祖母の父(つまり東君の曽祖父に当たる)で、写真は戦争で徴兵される直前に撮った物だった。
曽祖父は入隊後、ゼロ戦のパイロットに志願して、敵艦に特攻して果てたそうだ。
「お国のためとは言いながら、本当は牧場を離れたくなかったんだろうのぅ」
東君から話を聞いた祖母は、そう言って涙を流した。
「そんなことがあって、牧場を継ごうって決心したんすよ」
東君は現在、農業大学に通っている。卒業したら祖父母の牧場で働くつもりだ。
>>293-294 ありがとうございます。
初投下で緊張してたんですが、感想いただけてすごい嬉しいです。
>800字オーバー
すいませんミスでした。気をつけます。
>>295 しみじみとする、いいお話ですね。記念写真は出征時のものでしょうか?
もしそうでしたら、もう少しその写真の描写があってもよかったかなと思いました。
>>296 字数は、一つの目安と言うことで。そんなにキニスンナ。
>初日は全身が筋肉痛になった
年をとると二日後くらいに筋肉痛になるので主人公の若さが眩しい。
ロールの中に埋まっている主任さんの秘密を発見した
主人公の驚き。
それを目撃する主任さんの優しい声(おそらく笑顔)が良い。
>>292 細部まできちんと書いていて好感が持てます。
最後の「優しい声」が無気味な印象で良いですね。
>>295 切ない良いお話です。
お二人とも、乙でした。
今「農業大学」って殆どないですから農業大学校とかの方が良かったかも知れません。
もしくは大学の農学部というような表現。あるいは「東京農業大学」などの具体名。
いつもの事ですが、主人公を「東」にするのはちょっと……。
どうしても電化を連想してしまうので今回のような大学生という設定だと違和感が……。
>>296-299 コメントありがとうございました。
>296さん。仰るとおり、もうちょっと突っ込んだ描写の方が伝わり易かったかも知れません。
>299さん。確かに農業大学というのは古臭いですね。農学部にしておけば良かったです。
>電化を連想してしまうので今回のような大学生という設定だと違和感が
すいません、大学生はキツかったですか…(笑)
主人公をいつも「東氏」にしているのは、星新一の真似で(ショートショートに出てくるN氏とかF氏とかの)
ここの方には「東氏」が親しみやすいかなと…
まあ、抽象概念的な固有名詞ということで読んでいただければ幸いです。
――記念寫眞承リマス。
カヲリ君と散歩中にそんな看板を掲げてゐる寫眞に出會した。
通りに面した窓硝子越しに瑞西製や獨逸製の寫眞機が整然と竝んでゐるのが見て取れる。
寫眞は下手に文言を書き連ねるよりも、時に確實な情報手段足り得る。折角だから寫し
て貰い、カヲリ君の兩親に送らうと思ひ立った。
何故か訝しがるカヲリ君の手を引いて薄暗い店内に入ると他に客はなかった。
來客の嬉しさを隱せない店主は撮影の準備を整へながら滔々と長広舌を繰り広げる。
「先日、そこの勸工場の西洋骨董屋で古い寫眞機と出逢いました。ボデイはまういけませ
んでしたがレンヅは天然水晶を磨き上げたなかなかに上質なもので、レンヅだけをこの寫
眞機に組み込みました。あ、お孃さん、まう少し笑って。お美しさが際立ちます」
見るとカヲリ君は怒ったやうな目付きで寫眞機を睨みつけ、氣持ち小刻みに震へてゐる。
「嫌だなぁ、魂なぞ拔けませんからご安心下さい」
そんな迷信を信じてゐる人もまだ居るのですと店主が笑ひながらシャッタァを切った。
寫眞が完成したら連絡を貰う事にして店を出やうとした時、カヲリ君は壁に飾ってある
額に入れられた寫眞を指差し、小聲で呟いた。
「……おかしかモンがずんばい映っちょっ。こいにも、こいにも」
カヲリ君が指差す寫眞――複葉機の前に立つパイロット、牧草を束ねたものが累々と轉
がる牧場――に、言はれてみれば人の顔と思しき物が映り込んでゐた。
「あん水晶は元々猶太の卜占に使はれたモンじゃろ」と微笑む。
歐古堂め、また怪しげな物を賣りつけたものだ。
さてさて出來上がる寫眞は如何なものか。
>>300
東氏でいいと思う。
他のお題の話しも、もっと読んでみたい。
>>301 相変わらず無理なくお題を消化し、かつキャラも生き生きとしています。
このシリーズは続けて欲しいです。
乙でした。
>>301 どんな写真が撮れるのでせうね。鶴亀鶴亀。
てのひらに載せる時のペンネーム、カヲリにしようかなあ、
というのは冗談ですが、てのひら収録作家に寄稿依頼があるようですね。
擬古文タン、その時が来ましたよ。
久しぶりに来てみたら、ずいぶんとお題が出てる見たいだね。
しかも、今までに投下された作品が、結構レベル高い。
よし、おいらも書いてみるぞー。
擬古文さんはてのひら掲載組なの?だったらチャンスだね!
他の掲載組のみんなもこのスレでトレーニングしようぜ!
ここの地道な活動が目に止まったのかも。なーんて(笑)
でも、ここで書いてる人が選ばれたら凄いよね。
掲載組は頑張ってください。
八畳の部屋に、着物の女が座っている。机の一点をじつと見つめている。
左手のすぐそばに、万年筆の余滴であろう、パイロットインクの小瓶があった。
飾り窓の障子が破れている。そこから、落日の西日が差し込んでいた。だが、部屋の中は、何故か薄暗く、淀んでいた。どこかしら、空虚さを感じさせる部屋であった。
着物の女は、万年筆を動かそうとしたが、懊悩に胃袋が締め付けられているのか、眉を顰めて筆を置いた。
彼女は、しばし悩んでいたが、意を決したように書いていた文字を途中で塗りつぶし、その横に「疎開先」「記念写真」という文字を添えた。
女が写真を裏返す。
そこには広がる牧草地の中に、もんぺ姿の女が映っている。写真の女のすぐ後ろに、軍服を着た男が立っている。男の顔は、何故か陰っていて、はっきりと見えなかった。だが、口元が笑っているのは見て取れた。
女は、もう一度写真を裏返すと「兄と」という一文を加えた。
そうして、女は、私から、戦友の骨の入った骨壺を受け取って、泣いた。
うわ、読みづらい……。
ところで、てのひらって何?
ぐぐって自己解決。
>>308 乙。でも、よくわからんのだが。
雰囲気は良い。
>>308 申し訳ないが読んでいて風景が全く浮かんでこない。
おまけに誰の視点なのかも判り辛い。
疎開先で彼女を写した写真に戦地の兄が映り込んだという話なのだろうが、
それがキチンと伝わるようにした方が良いでしょう。
>>311 >>312 コメントありがとうございます。
視点に関しては、最後の一文以外は、神の視点。
>>301 水晶に憑いた念のような物を見てしまったのでしょうか?
小刻みに震へてゐるカヲリ嬢が何だか可愛らしいですね。
今回も楽しませていただきました。
>>308 静寂を思わせるような雰囲気は出てると思います。
が、他の方も書いているように状況が分かり辛いかな。
この点を推敲しなおせば、物悲しい、しっとりとした怪談になると思う。
お二人とも、乙でした。
>>301です。
303さん、304さん、306さん、314さん、コメントありがとうございました。
何やらここにきて三題噺スレにも新たな書き手さん方が加わった様子(それも複数?)。
大変喜ばしいことです。皆でトレーニングに励みましょう。
それはわたくしの耳には鳥の鳴き声に聞こえるのです。
可笑しいでしょうか。可笑しいのでしょう。
でもそう聞こえてしまうのですから、仕方のないことなのです。
ずっとずっと、それは聞こえているのです。
私がこの古井戸の底に落ちてから。
水の冷たさも感じなくなってから。
気に入っておりました携帯傘も朽ち砕け、もう眼球さえもなくなってしまってもずっと、
それは聞こえているのです。
遠い遠い、遥か西の方で、私の知っている声が、悲鳴を上げているのが。
夜な夜な魘され、叫んでいるのが。
それは宵に鳴く濡れ烏のごとくに叫ぶのです。
そして時折それには、言葉が混じるのです。
許してくれ、と。
それはとても可笑しなことなのです。
あの方が許しを請うているのは明らかにわたくしなのです。
ですけれども、わたくしは一度としてあの方の元へ赴いたことはないのです。
ならばあの方は一体、何に怯え叫んでいるのでしょうか。
わたくしには判りません。
わたくしはこうして時折、通り掛るあなたのような方にお話を聞いて頂けるだけで満
足ですのに。ねえ。
>>316 良い雰囲気です。「鳥」「古井戸」「携帯」をお題としたお話ですね。
「携帯」だけがちょっと文体から浮いている感じですが、
それ以外は非常によくまとまっていると思います。
次回作も期待しています。
前のお題から一週間経ちましたので新しいお題を募りたいと思います。
と言う事で一つ目は「百舌(モズ)」
二つ目「ミルク」
怖いのが読みたい。
三つ目「夜」
では新しい三題噺は「百舌(モズ)」「ミルク」「夜」と言う事で。
困った……早贄ネタしか思いつかない……。
ある夜、男が自分の家族を皆殺しにした。
男はまず、長女を掃除機の胴体で殴り、長女は即死。
頭を狙ったので、粉々になったガラスのコップからミルクがこぼれるように
割れた頭蓋骨から脳髄が飛び散った。
次女は 母親のいる台所へ逃げようし、背中を襲われた。
椅子の足が肺に刺さり、1番長く生きていた。
母親は百舌の早贄のように 包丁で首と手を壁に押さえ付けられ、体は床から
少し浮いていた。
男は家族を殺すと リビングの窓の鍵にビニールの紐を引っ掛け、首を吊った。
首を吊るのに高さは いらぬのである。1メートルとちょっとでも死ねるのである。
男は死後、遺体解剖され、頭の中に腫瘍が見つかった。
近所の者も、知り合いの者も、皆、言った。優しい男であったと。
家族おもいで このようなことをしでかす者ではなかったと。
頭の中の腫瘍のせいであろうと。
しかし、そんなことは 本当は 誰にもわからない。
>>323 乙。
>>308の人かな?
うーん申し訳ないが、やっぱり情景を想像しにくい。
お題を「ある夜」「ミルクのように」「百舌の早贄のように」
とほとんど比喩表現として消化しようとしている上、
その比喩がわかりにくい。
内容的にも怪談というよりもホラーな感じ。
今後の精進に期待。
お二人とも乙です。
>>316さん。正統派怪談調でいい雰囲気ですね。ぜひ、他のお題でも書いてみてください。
>>323さん。脳腫瘍で人格が変貌するというのは医学的に根拠があることなので、もう少し怪談っぽい味付けが欲しいところです。
例えば、何らかの因縁や因果のエピソードを加えるとか、何かもう一捻りあると怪談らしくなると思います。
知り合いが スナックをしている。彼女は ちょっとばかり視える人で、客のそのような相談ごとにも
時おり、のってくれたりしている。私もおもうところがあり、先日 「スナック百舌」の戸を叩いた。
「あらあら、お久しぶりね。」
にこやかに迎えてくれたのはいいが、そのようなことは 今はもうやっていないという。
「だって、死んだ人を降ろしてくれっていうから、こっちも頑張るじゃない。
それで、『残された家族 みんなで仲良くっておっしゃってます』なんて言おうものなら、
『そんなの誰だって思い付くって』って、言うのよ。しょうがないじゃない。
本当にそう言ってんだもの。」
亡くなった人というのは わりとあたりまえのことしか 言わないらしい。
「このあいだなんか 夜中に呼び出されて、行ったら、かさこそ音がするって。
でもその家、ものすごいゴミ屋敷きでさ、ごきぶりなんじゃない。
霊現象だっていう前に 掃除したほうがいいと思う。」
どうも 私の相談にはのってもらえそうもない。紅茶を出されたが、いとまを告げると、
「牛乳。」
とあごで 冷蔵庫の方をしゃくった。
「どうせ なんか相談があるんでしょう? あたしミルクティーなのよ。
そのぐらいしなさい。視てあげるから。」
彼女 霊感で私の来訪をわかったわけではなさそうだ。そんなにしなびて 入って来たかなあ。
冷蔵庫のドアを開けながら ほっとした。
意識的にこのような句読点の使い方をしているのですか?
どうしてもそちらが気になってしまい、作品が素直に読めません。
>>323さん
>>325さんと同じような感想になるのですが、やはり題材は良いと思いますので、
もう一段捻ってあると読み応えが出てくると思います。
>>326さん
お話の内容や、「そんなにしなびて 入って来たかなあ。」という文章はとても好きです。
ですがやはり句読点と空白を併用されていると、読むテンポが崩れてしまうので勿体無いと思いました。
お二方とも乙でした。
>>317さん
>>325さん
316です。コメントありがとうございました。
>浮いている
読み返して自分でも思いました…推敲不足な箇所もありました。精進します。
>>324さん
>>325さん
>>327さん
>>328さん
323 326 です。
コメントをありがとうございます。
この狭いスペースで書き込んでいると、文章の後半が見えづらく、今まで文1つが終わると、
それ以上書かなかったのです。
ワードで書き込んで、張り付けようとしても、はじかれてしまいますし、
本番一発で、どきどきしながら書いておりました。
次からは頑張ってみます。
>>330 ちなみにわたしは一行40文字で20行という設定にしてWordで書いて
完成したら各行ごとに全て改行を入れてから貼り付けてます。
この方法ではじかれた経験はありません。
>>331 私も似たような感じですね。テキストエディタで一行40文字設定にして、
その折り返し線上に改行入れてから貼り付けてます。
>>330 弾かれる原因やエラーメッセージがわからないので何とも言えませんが、
どうしてもwordからのコピペが上手くいかないのでしたら、
windows付属のワードパットやメモ帳などへ一度貼り付けて、
そこかららコピペしてみてはいかがでしょうか。
少年は森で遊ぶのが好きだった。
森は季節によって、日によって、時刻によってその顔を変えた。
冬は白と黒の世界。春になるとそれが萌える新緑に変わる。時に濃密な、まるでミルクの様な霧が漂う。そして季節に関係なく日が暮れ夜になると必ず鼻を摘まれても判らないような闇が降りてくる。
少年はその日も一人森の中で遊んでいた。
オークやブナ、そしてそれを圧倒するモミの木。そんな木の根を跨ぎながら歩くうちに気が付いたら少年はいつしか森の奥深くに入り込んでしまっていた。
見上げても生い茂る樹木に隠されて空も見えない。
少年は途方に暮れた。帰り道がまるで判らない。
と、前方に松明を掲げて歩く人影が見えた。
少年はその人影を追った。木の根に足をとられながらも懸命に追った。
近付くとそれはこの辺りで古くから春に行われるゲルマン民族の祭、つまり愚者のパレードの扮装をした一人の老人だった。
何事か呟いている。近付くにつれてそれが聞こえてきた。
「……忘れはせん。ブロンベルグの血の日曜日の事だけは忘れはせん……」
少年は足を止めた。不意に母の顔が浮かんできた。暖かいシチューの匂い……。
「Kき森より飛び立ちたる無數の百舌の群れが贄を求め、この大空を覆い盡くすだらう」
老人は振り返り、少年を見据えた。松明に浮かび上がるその双眸……。
少年クルト・タンクはそのまま気を失った。
333です。
反則なのかも知れませんが、上記を読むにあたっての予備知識です。
「クルト・タンク」ドイツ ブロンベルグ生まれ。
戦闘機メッサーシュミットの操縦性の難しさによる着陸事故が多発していたドイツ空軍省はフォッケウルフ社にメッサーシュミットの
バックアップ用戦闘機の開発を打診してきた。第一次世界大戦で実戦の体験を持つ飛行機設計師兼テストパイロットという特異な経歴
を持つクルト・タンクの手によってフォッケウルフFw190、通称ヴュルガー(モズ)が完成した。
そしてこの機は第二次大戦中のドイツ空軍の主力戦闘機となりました。
>>331さん
>>332さん
ありがとうございます。
コメントをいただくのも嬉しいですが、このような言葉をかけていただくことも
とても嬉しいものですね。もう1度、頑張ってみます。
>>333さん
なるほどね。この手がありましたか。とてもおもしろく拝見致しました。
>>333 まさか三題噺でフォッケウルフなんて言葉が出てくるとは思わなかった。
ミリタリーマニアでドイツ空軍大好きっ子のオレ的には嬉しw
乙です!
>>333 幻想的なお話が、まさか飛行機設計師と戦闘機へ繋がるとは…面白いです。
個人的には、
>>334の内容が本文中に、
例えば段落開けてラスト二、三行などで盛り込まれていると尚良かったかと思いました。
乙でした。
お題〈百舌、ミルク、夜〉
タイトル「早贄」
東某が箱根山中で霧のため道に迷ったときの話。
いくら霧が出ているといっても通い慣れた道のこと、おかしな事だと訝しんでいると、ふと、木々の枝に多数の蛙が突き刺さっているのを見つけた。
百舌などの鳥が獲物を木の枝に刺す、早贄という習いがあるが、おそらくそれだろうと思ったが、妙な事に気付いた。
蛙の中には布切れを体に巻きつけている物がある。
目を凝らして見てみると、それは赤ん坊の干乾び萎びた成れの果てで、到底、人の仕業とは思えぬ。
さては、妖物の仕業かと思い、その場で火を起こし、木を背に座り、寝た振りをして待っていると、夜も更けた頃、牛の乳のように霧がひと際濃くなり、何者かがやってきた。
すぐに飛び上がって、抜き打ち様に切り付けると、それは一声呻いて倒れた。
火を翳して見ると、おそらく年を重ねて妖力を得たのだろう、雪のような白毛の大猿が横たわって死んでいた。
しばらくすると霧も晴れ、無事、山を越せたことから、道を迷わせたのも大猿の仕業だろうということだ。
葉書が届いた。差出は圓井寫眞。先日撮影した寫眞が出來上がったさうだ。
もとより今日は先だってカヲリ君の編入手續きを濟ませた女學校に要する品など買ひ求
めるべく街に繰り出す心算であった。そのついでに出向く事にしやう。
臙脂の袴や筆記用具そして通學用の自轉車などを注文し、寫眞を覗くと來客中の樣子。
それではと歐古堂を冷やかしに行くと珍しく早々に店を閉めていた。ならばと家内のお氣
に入りだった甘味處に入った。ひと口食べて「んまか」とカヲリ君も滿足した樣子だ。
夕刻再び寫眞に戻るとすぐさま硬い表情の主がとんで來た。完成した寫眞を見ると、
カヲリ君の背後に幾筋もの光がまるで蔓の樣に幾重にも絡まり合ひながら天に向かって伸
びてゐる。主も原因はさっぱり判らないと言ふ。しかし當のカヲリ君は氣味惡がるどころ
かいたく氣に入ってゐる樣子。兎に角代金を支拂ひ店を出やうとすると、主に引き止めら
れた。今囘の件について口外無用で願ひたいとの事。
「こん撮影ん時に大概の奴は拂た。あと、あんレンヅは使はんごっしやんせ」
やうやく表情の和らいだ主に見送られて表に出るとまうすっかり日が暮れていた。
と、向いの望春といふ華僑の經營するミルクホォルの觀音開きの門が開いた。ヂャヅの
生演奏と女給たちの嬌聲が表まで漏れ出し、赤ら顔の歐古堂の店主が轉び出てきた。
「や、これは先生。こんな夜分にお珍しい。お恥づかしい處を見られてしまひましたな。
しかし先生、この店はいけません。確かにここの女給は歌も上手く若く可憐かも知れま
せんが、ちょっと肩など組んで歌を歌っただけなのに放り出されてしまひました」
「望春っちゃ百舌ん事じゃ。百舌は字のごっ、聲眞似が上手か。じゃっどん百舌は猛禽じ
ゃっでね。贄にならんかっただけでも儲けもんじゃっど」
>339
カヲリ君、自転車買ってもらったのか、いいなあ。
臙脂の袴と矢絣の袖を翻して町を往く様が目に浮かぶようだ。
>>339 乙です。
短い文でも情景が用意に思い浮かべられるのが、いつもながら流石です。
写真に写ったのはなんだったのでしょうか…
それと甘味所で何を食べたのか、ちょっと気になります。
>>341 さうさう、甘味処!
おれは甘味処といふ文字を見ただけで
あんみつだらうと思ったので、指摘されるまで気付かなかった。
何を食べたんだい、カヲリくん。
體調が優れぬと言ふ歐古堂の店主の達てのョみを受け、先日編入した女學校の休みの日
だけ、それも夕刻までと言ふ條件でカヲリ君は暫くの陝^古堂を手傳ふ事に成った。
とは言へカヲリ君は義妹から預かってゐる大切な姪だ。何かあっては大變である。そん
な譯で、夕刻になってからわたしはこっそりとその仕事振りを覗きに行く事にした。
歐古堂に着いて驚いた。いつも閑古鳥が鳴いてゐる店内に少なくない客がゐる。
「こいは太陽王っち言はれちょったルヰ十四世の頃ん物で……」
カヲリ君は店内の西洋骨董の謂れなどを語ってゐるのだが、それを取り巻いてゐる人々
は骨董などそっちのけでカヲリ君に熱い視線を送ってゐる。しかしそれもやむを得まい。
Kを基調とした英國貴族の使用人の如き扮裝はまるでカヲリ君の爲に誂えたやうだ。
しかしこれは……。わたしは帳場にゐる店主に詰め寄った。
「エプロンドレスなどまるで英國のメイドの如き格好をさせるとは聞いておらんよ」
「とんでもない。あれはカヲリさんがご自分で選ばれたんです。賣り物ですのに……。
あ、先生。それよりも聞いて下さい、カヲリさん非道いんですよ。うちの大事な賣り物
に、これは何やらの靈が憑いてゐるだとか、とんでもない言ひ掛かりを付けて……」
その言葉が聞こえたのかカヲリ君が襞の多いスカァトを翻して振り返った。
「嘘は言ふちょらんど。そひよか、新しか物ば古か物のごと言ふて値を吊り上げちょっと
は店主どんじゃろ。今日も鹽梅が惡かっち言ふて人に店番させて、晝閧チから望春に行き
よるし、ほんなこつ嘘ばっかい言ふてから。店主どんにゃ二枚どころか百枚くらゐべろが
生えちょらんねよ。百舌、うん、店主どんは百舌じゃ」
千里眼が相手では誰も太刀打ち出來まい。哀れではあるが、ま、自業自得である。
乙です。
なのですが、「百舌(モズ)」「ミルク」「夜」のお題、ですよね?
違ってたらすいません。でももしそうだとしたら、夜とミルクは…と思ったものですから。
あ、すいません。
800字におさめる時に削ってしまったようです。大変失礼しました!
今回の343は無視して下さい。
ちなみに339で登場しました通り「望春」はミルクホールです。
このミルクホールという言葉を誤って削ってしまいました。
また最後、夜道をカヲリ君と先生が話しながら帰るシーンがあり、ここで
「夜」という表現を使っていたのですが、これも誤って削ってしまいました。
全く三題噺になっておりませんでした。申し訳ありませんでした。
以後注意いたします。
>>341、
>>342さんのご質問にあるカヲリが食べた甘味処のメニューですが
「芋羊羹」です。
>>326さん。幻想的な雰囲気の話ならよかったんですが、ごく日常的なトーンで語られる話なので
やはり普通の文体で書いた方がいいと思います。そんなにしなびて 入って来たかなあ、という表現は
328さんと同じく私も面白いと思います。
>>333さん。浅学のため「ブロンベルグの血の日曜日」やドイツ空軍のことは分からないのですが、
ゴシック・ホラーのプロローグを思わせるような感じの雰囲気は好きです。
>>339>>343さん。周りを固める人物も生き生きとしてきましたね。それにしてもカヲリ嬢のメイドさんルックですか…
も、萌える! なんつて(笑)
>>346さん、コメントありがとうございます。
333です。「ブロンベルグの血の日曜日」というのは第一次世界大戦時にポーランドが
西プロイセンのブロンベルグに侵入し、大量のドイツ人が虐殺された事件で、
第二次世界大戦の火種の一つとも言われているものです。
>>345 ことさら美味い芋羊羹なのであろう。
それにしても歐古堂、メイド服も売っているとは。
カヲリが着る位だから、妙な因縁のあるものではないようだが。
>348
カヲリ君の育った南九州では芋はそのまま食べていたらしく、
芋羊羹のように手の込んだ菓子は珍しかったと思われます。
甘藷は蒸かして塩をふってたべるのが、んまか。
新しいお題行きますか?
次の方からドウゾ。
んじゃ、ひとつめ「芋」で
じゃ、ふたつめ「蜘蛛」
ふたつめ、「エナメル」。七宝でもマニキュアでも皮でも。
では次の三題噺は「芋」「蜘蛛」「エナメル」って事で。
学校から帰ってくると、「台所手伝って」とお母さんに言われた。鞄を置き
行ってみると、じゃが芋を渡され、皮を剥くように言われる。いやだな。お母さん、
あたしに言いたいことあると、2人きりになりたがるから。今うちにはあたしとお母さんしかいない。
「この間の個人面談でね、お母さん、先生に言われたんだけど。」ほら来た。
「中学2年の2学期だっていうのに、少し勉強量が足りないんじゃないかって。」
お母さんの横で、あたしは黙ってじゃが芋を洗う。あれ?お母さん背伸びた?
肩の位置が少しおかしい。
「塾のこともあるし…、ちょっと聞いてる?」
しかたなくあたしはお母さんの顔を見る。吃驚した。お母さんの頬に蜘蛛がへばりついている。
足が細くて長くい10センチぐらいの、その、蜘蛛。お母さん、どうして気が付かないの?
「今、頑張らないでどうするの?」
お母さんが喋り出すと、蜘蛛はしゅるんと口の中へ引っ込んだ。テレビの女優って
なんでこうゆうとき、悲鳴が上げられるの?あたしできないよ。ものすごく涙が出てくる。
「高校、行く気あるの?」
下を見ると、お母さんはハイヒールを履いていた。お母さんお気に入りのエナメルのやつ。
ものすごく高いヒール。床が傷だらけになっている。
「一生のことなのよ。」
お母さんは言う。あたしはただ泣くしかない。
>>355 理由が判らない恐怖……を狙った作品でしょうか?
お題も無理なく(?)織り込まれています。
乙でした。
カッコで括られた台詞の最後に句点「。」を付けられていますが、
小説などを読まれれば判ると思いますがこの句点は不要です。
カッコ付きの文で最後に句点を付けるのは、引用文の場合。
引用文の場合は原文のままとし句点までつけます。
また「?」や「!」などが文中に出る時にはひと文字分空けるのがルールです。
せっかくトレーニングするのですから、この際このような執筆時のルールなどを
身につけておくのも損はないと思います。
355です。
そうそうのコメントをありがとうございます。
なんだか、小学生からやり直した方がいいのでは、と我が身を振り返りました。
恥ずかしいなあ。ここに書き込む前に習う事だなあ。
>>331さん
>>332さん
やはり駄目でした。 弾かれてしまいます。
エラー3151 と出ます。 これは私のパソコンの機種の問題のようです。
この場をかりてお礼を申し上げます。 ありがとうございました。
遅レスですが
>>347さん、説明ありがとうございました。
346です。
大戦時についてはあまり詳しくないもので勉強になりました。
>>355 「あたし」の視点だと、母親が壊れているようでもあるけれど、
あたしの方こそ危ういところにいるのかも知れない。
受験の頃って、大なり小なり本人も家族も追いつめられるよなあ。
ポプラビーチの「週刊てのひら怪談」
銀峰こと勝山海百合さんの「とりひき」を読んでいて、思わず今回のお題「芋」の三題噺かとw
しかし本当にお上手でした。わたし達も頑張りましょう。
>360
合っているのは「芋」だけではw
蜘蛛やエナメルも織り込めそうではありましたな。
擬古文の人が擬古文で(擬古文でなくても)
「週刊てのひら怪談」に採用されますように。
受賞者も再度応募可能みたいだから、採用は狭き門となりそうだ。
海外で開催された長期の学会出張から戻ると四歳になる一人娘の様子がおかしかった。
食欲もないし、食べながら頻りと頬を撫でたり、箸の先で口の中をせせろうとする。
職業柄すぐに気付いて見てみると、左右の下の奥歯のエナメル質が欠け、象牙質部分に
ポッカリと孔があき、中に食べ物の滓だろうか、なにか白いものが詰まっていた。
よりによって歯科医のわたしの娘が虫歯だなんて……。
「お母さんが出掛けてる間、甘いもの食べてたでしょ? 明日治療するからね」
出国した二週間前にこんな兆候はなかった。それは朝と就寝前のブラッシングをしてい
たわたしが一番よく知っている。しかしこんな短期間に一気に進行するものだろうか?
「お祖母ちゃんに……」
「お祖母ちゃんから何か貰ったの?」
娘の言葉を聞いてわたしは立ち上がった。
いつもいつも義母はいらない事をしてくれる。娘を甘やかすばかりで、こっちの思惑な
んぞ全く気にしない。夫は否定するがわたしは最近の言動や行動から認知症を疑っている。
わたしは娘をそこに置いてすぐに義母の部屋に向った。
たとえ認知症だとしても言うべき事はきちんと言わなければ……。
正直義母の部屋は苦手だ。へんな臭いがする。それが出国前よりも酷くなっていた。そ
んな中で義母は芋虫の様な指を座卓の上のカリントウに伸ばしているところだった。
「お義母さん、娘に何を与えたんですか?」
「何もしてませんよ。そうそう、公園に桑の実がなったのを教えてあげて、それと……」
その時、ダイニングの方から皿の割れる音と娘の悲鳴が聞こえてきた。
慌てて駆け戻ると娘が床の上を転げ回りながら吐いている。さっき食べた夕食と、濃い
青紫の小さなツブツブ、そして小さな蠢くものが吐瀉物の中に無数に混じっている。
「それと蜘蛛の味を教えて上げたんですよ。それが本当に葡萄みたいな味でね……」
ダイニングの入り口でカリントウを咥えたまま義母が笑っている。カリントウの端が口
元からこぼれ落ちた。断面で蠢く白い紐の様な……、あれはカリントウなんかじゃない!
わたしは悲鳴を上げながら、白目をむき泡を吹き始めた娘を抱き起こし口をこじ開けた。
……娘の口の中は数え切れない程の蜘蛛の子で溢れかえっていた。
>363
うげーっ!! となりました。
お題の折り込み方もお見事。
アメンボは甘いからアメンボだとは聞いたことがありますが……
乙でした。
生理的嫌悪感を刺激する強烈なボディブローの連続のような話でした。
正直食事時にはあまり読みたくない作品ですね。
映像がイメージしやすかったです。
乙です。
新しく銅器が入ったと言ふので歐古堂まで來てみると、相變はらず店の外はカヲリ君
目當ての輩で芋を洗ふが如き有樣。だが店内は少しは以前の落ち着きを取り戻していた。
「こいはエナメルっちゅうて七寶莊嚴の煙草盆。英國王室御用達の工房で……」
そんなカヲリ君の説明を受けてゐるのは、Kい外套のせいで熊とも見紛うばかりの巨漢。
その男は煙草盆に食ひ付かんばかりに顔を近付け、しきりと頷いてゐる。
「先生、その銅器如何ですか。ちゃんとカヲリさんに觀て貰いましたからおかしな物で
はないと思ひますよ。しかしカヲリさんは大したものです。元々博覽強記だと思っており
ましたが、最近ではそれに接客も慣れてこられたやうで、安心して店番を任せられる程で
す。正直、出來ましたら歐州への買ひ付けに目利き役で同行して欲しいくらゐでして……」
「良かろ。國の言葉ば喋る姉ちゃんに免じて買ふたろ」と言ふ大聲と共に見事な髯をたく
はへた先程の客が帳場にやって來た。そしてわたしの顔を見るなり「ん、こら西園司……
先生」と聲を掛けてきた。この髯面には見覺えがある。たしか九帝大の……。
「大角でごわす。今度こっちの大學に來もした。專門は歴史民族學。今は風土記とかで土
蜘蛛なんぞの研究をしちょります。ま、太古に思ひを馳せる浪漫派っち覺えっ下さい」
大角は決して安くない代金を即金で支拂ふと「ほいじゃ」と言ひ殘して店を出て行った。
同時にカヲリ君がしゃがみ込み、肩を震わせた。何事かと驅け付け聲を掛けやうとした
途端、カヲリ君は天を仰ぎ腹を押さへて大聲で笑ひ出した。目には涙まで滲んでゐる。
「熊んごたる人が浪漫げな」
くっくと笑ひながら小さくなった大角の背中を見やったカヲリ君の表情が不意に曇った。
「何じゃ……、あん人ずんばい蟲やら蛇やらうちょらよ……」
あっちのスレでも書かれてたけど、本当に幽怪談大賞短編部門に出せるかも?
お題もうまく織り込まれています。
乙でした。
短編に出したら受賞間違いなしだよ。
歐古堂いいね!
映像化できそう。
擬古文でなくても、擬古文タンが書いたのはわかる気がする。
だって、あれ
>366
熊みたいななりで浪漫派で悪いか。カヲリ君の意地悪。
……心は乙女な大角であった。
>370氏の「だって、あれ」の続きが気になる。。。。。
擬古文はプロレベルだな。
色んな文学賞の応募汁!
>371
作者の詮索はしないのがルールなので自主規制しただけですが
構成、フォーマット、句読点の付け方などに現れる
擬古文タンの癖が、擬古文でない時にも現れると思った次第。
早朝から庭の方で何やら物音がするので書齋の窓を少しすかして見るとカヲリ君が何や
ら勇ましい事になっていた。手拭いを姉さん被りにし、襷掛けまでして庭の一角を一心に
掘り返してゐる。家内が生きていた頃は花壇だった筈の一角はカヲリ君の畑になってゐた。
カヲリ君はわたしの目線にすぐに氣付き、滿面の笑みを浮かべて腰を伸ばすと、手にし
た獲物を見せびらかすやうに捧げ上げた。足元には結構な量の芋が轉がってゐる。
「こないだ寄った甘味處の職人どんに、持ち込んだ芋で芋羊羹ば拵えてくれんねっちョん
だら、良かっち言ふてくれたでね。こいで芋羊羹ば作ったら、わっぜ旨かど」
子供の樣に無邪氣な笑顔でさうは言ふが、見た所普通の甘藷と變はりはない。
わたしの表情に氣付いたのかカヲリ君は手に持った甘藷を兩手で二つに折った。斷面が
鮮やかな赤紫色である。成る程、紅芋か紫芋であらうか。
勝ち誇ったやうな笑みを浮かべたカヲリ君だったが不意に表情が曇った。目線の先を見
やると一匹の盲蜘蛛がゆらゆらと立ってゐる。ふむ、所詮は年頃の娘……。
「大丈夫。それは咬まない。英名はダァディイ・ロング・レッグスと言って……」
カヲリ君は硬い表情のままそっと兩手で盲蜘蛛を包み込んだ。朝日の中、兩手を合はせ
てゐる樣は伊太利は厄西で觀た琺瑯畫法による宗ヘ畫「祈る乙女」を思ひ起こさせた。
見惚れてゐるとカヲリ君は何事か小さく呟き、柏手を打つ樣に兩掌をパンと合はせた。
豫想もしない行動に驚くわたしに、カヲリ君はその掌を開けて見せてくれた。白い手の
中に盲蜘蛛の姿はなく代はりに一枚の紙が挟まれてゐた。その紙がまるで生きてゐるかの
樣にカヲリ君の掌から舞い上がり、そのままひらりと生け垣を越えて行く。
「式神……。性質の惡か呪じゃなかったら良かどん……」
>>374 厄西はベニス、琺瑯畫法はエナメル画ですね。わからなくて調べたよ。
どんだけ芋が好きなんだ、カヲリ君は。
しかし誰がどんな目的で式神を放ったのか、気になる。
>>355さん。不条理感漂う怪談ですね。不気味な雰囲気が良いです。
>>363さん。素晴しいグロさです。描写が巧みでビジュアルがすんなりイメージできました。数え切れない程の蜘蛛の子ってのがかなり鳥肌モノです。
>>366>>374さん。もはや、うまくお題を消化しているとか言うレベルじゃないですね。小説として面白いです。
みなさん乙でした。
蟲やら蛇やらうちょらよ>巫蟲ですな。
あ、今日は土曜日か。新しいお題ですよね。
お題ひとつめ「箱」
ふたつめ。「湾」
じゃ、発売記念で「幽」
お題は「箱」「湾」「幽」で。
みなさん、鋭意執筆して下さい。
取材の為にある作家の物語の舞台である町を訪れる事になった。空港からJRで湾岸沿
いに南下し、かつて新婚旅行のメッカであった青島などを経由して辿り着いた終着駅。日
南海岸国定公園の西の端に位置するそこが彼の代表作「かがみじし」の舞台となった町だ。
早速市の観光事務局を訪ね、取材の旨を伝え、かの作家が見たであろう場所など尋ねる。
「人は減りましたが、猪は今もずんばいおります。猪を人口に加えたら町村合併なんぞせ
んでもとっくに市に昇格しちょったとですが……。じゃちぃっとばっかい案内しましょか」
思いがけず現地で調達出来た人懐っこいツアコンの運転する車で寺や城址など巡り、町
で一番古いという町を見下ろす丘の上にある神社まで来た。
不思議な神社だ。南、つまり海に向って立てられた鳥居をくぐるとその右手に本殿があ
る。鳥居とは神を迎え入れる門で、その先にある本殿はそれをもてなす場の筈。これでは
海から来た神は本殿に辿り着けない。寄り来る神に対してどうして……。
不思議がっていると「次行きましょ。白砂青松っちゃここん為にあるようなもんじゃっ
ど」と言われる。どうも彼は写真をとれば取材が終わると思っているらしい。苦笑。
防風林である黒松林の手前で車を下り、林を抜けると目の前に白い砂浜が広がっていた。
緩やかに弧を描く海岸線。沖合いに小さな無人島が浮かんでいる。なるほど美しい。
黒潮がぶつかる地である為、鎖国時代も南蛮貿易が密かに行われていたそうだ。しかし
意外と海流が荒く座礁する船も多かったと言う。数年前もメキシコの船が座礁したそうだ。
波打ち際に何かあった。近付くとボロボロに朽ちた木箱だ。箍の模様から見て相当古い。
「海神さんからの土産じゃ、拾ても誰も何も言わんど」と勧められたが遠慮する事にした。
何故か箱が幽かに震えた気がしたからだ。途端にツアコンの表情が初めて苦渋に歪んだ。
>382
舌打ちと共に「命拾いしたな」という声が聞こえそうです。
ほのぼのした旅行記のように始まったけれど
鳥居と本殿の位置がおかしいというあたりから不吉なものが兆してます。
(「かがみじし」という作品は存じません)
「カガミジジ」って椋鳩十の動物童話ですね。好きな童話でした。
良い雰囲気でした。
乙!
>384
「かがみじし」「鏡獅子」で検索しても
歌舞伎の演目くらいしか出てこなかったので
椋鳩十とは気付きませんでした。ありがトン。
>>382 魅入られた男、危機を逃れる。
乙でした。
寺の裏を回ると、崖の側面をくり抜いて格子戸をはめ込んだ洞窟があった。
「牢屋だったりして」僕が言うと彼女が「そうみたいよ」と壁にへばりついている説明版を眺めながら返事をした。
「昔の偉い人を幽閉していたって。ダンボール50箱分の空間があるそうよ」
名字の漢字は難しくて読めなかったんだな。見ると、洞窟は狭く、暗く、じめじめしていて、天井は湾曲している。
立つことは出来ないだろうなあと思ったけど、よく考えたら昔の人は背は低かったのだった。
いや、低くっても無理かな。
僕と彼女、二人して格子戸の隙間から奥の方を覗いていたら、隅っこにプリンの容器に白い物体、
おそらく塩が盛られているのが見える。「薄気味悪いね」とか「もう行きましょう」とか言いながら、
僕達は夕暮れの中、寺の出入り口まで戻った。
出入り口の料金所に着くと、さっき拝観料を払ったおばさんがまだいて、「あー、お客さん穴まで行ったのね」
と言いながら、彼女の背中をばんばんと軽く叩く。「気にしないでね。ただ叩いただけだから」とかも言う。
「ね。あの洞窟なんなの?」小さな声で彼女に聞かれた。
「わかんないよ。そんなこと聞かれても」
「だってあなた、幽霊なのにそういうこともわからないの?」
彼女は馬鹿にしたような表情で僕を見る。幽霊だからって何でもわかると思うなよ。まだ、僕は新米なんだ。
死んだのだって、たかだか数カ月前なんだぜ。
「今度、死んだじいちゃんにでも聞いといてやるよ」
溜息付きながら返事をする。なんだかんだいっても彼女のことを好きだし、
こんなふうに死者がいつまでも生者にくっ付いてちゃいけないよなあとも思う。
こんな時彼女の肩を抱きたいなあ。半透明になった手を夕日に透かしてみた。
>>386 可愛いお話でした。
彼女についていたのは何だったんでしょう?
>ダンボール50箱分の空間
観光地とかで、こんな説明文が掲示されていることって、ある。
>382
ラスト、あえて言葉を吐かせずに表情だけにしたのが良いですね。
お題は全て無理なく織り込まれています。
早いのに完成度の高い作品でした。乙です。
>386
後半の展開が面白かったです。
指摘のあった段ボール箱については主人公の女性に主観として言わせるなどの工夫をすれば
すんなりおさまったのではないでしょうか。
乙です。
人から人の手に渡り、彷徨いに彷徨った擧句にわたしが辿り着いたのは永らく監獄とし
て使はれた修道院。しかしそこでの生活も長くは續かなかった。わたしの友であった修道
女が老衰で身罷り、わたしはその西洋の驚異と稱される西海岸に位置する灣上に浮かぶ加
特力ヘ徒の巡禮地として名高い修道院を後にした。以來誰も引き取る者が現れぬままにわ
たしは幾日も晒され續けた。埃交じりの木枯らしや夏の陽射しに晒され續け、純白であっ
た絹のドレスもすっかり廣ばみ、美しかった髪も亂れたまま埃をかぶり……。
そんなわたしに目を掛けたのは剃刀の樣な目付きの一人の東洋人。彼はわたしを冷たい
目で値踏みした擧句、二束三文で買ひ取った。そのまま彼が逗留してゐる宿に連れていか
れ、わたしはすぐさま木箱に収められ、周りには丸めた古新聞などが詰め込まれた。友と
して遊んでもらふしか能がないのに一度として遊んでももらへぬ侭に……。
幽かに潮の香の混じった淀んだ空氣と射干玉の闇の中でわたしは永らく搖られ續けた。
蓋が不意に開いた。わたしを買取った東洋人と良く似た面差しの老人の顔、次いで肌理
の細かい白い肌に明るい栗色の髪、そして紫水晶のやうな味を帶びた瞳の少女が覗き込
んできた。その少女は古新聞を掻き分けてわたしを優しく抱きかかへ髪を撫でてくれた。
「なかなか状態の良いアンテイクドォルだ。問題は衣裝だな」と呟く老人には少女の聲
は聞こえなかっただらう。さう、小さい聲ではあったが少女は確かにかう呟いたのだ。
「おやっとさぁ、これからうちと一緒にこん店の店番ばすっど。うちらは友達じゃ」
以來わたしはこの陳列棚の上からカヲリを見續けてゐる。本當に友達なのかだうか……。
>389
シリーズ物なのに、これまでとは違った角度からの展開。
相変わらず上手くまとめられております。
乙です。
年末でお忙しいことと思われますが、新しいお題を集めたく。
「翡翠」宝石でも、カワセミでも、色の名前でもご随意に。
ふたつめ、「パソコン」
みっつめ「転落」
今週のお題は「翡翠」「パソコン」 「転落」です。
よろしくお願いします。
祖父が亡くなった。長男である父の勧めを「都会は性に合わん」と拒んで田舎暮らしを
続けていた祖父は、扁桃腺が腫れて声も出せない程であったというのに、川沿いの畑が心
配だと祖母に書き残して出掛け、結局そのまま帰らぬ人になった。
祖父との思い出はそんなに多くはない。覚えているのはこの夏、祖父と一緒に川沿いの
畑に行く道すがらの事だ。そう、今回祖父が転落した川の上流にあった小さな畑。
「ほれ、翡翠が魚採りバシチョル」
見ると鮮やかな色の鳥が川にダイブしていた。祖父の言葉は訛がきつくヒアリングが大
変だ。生き物図鑑などが大好きだったわたしはすぐさま「カワセミだね」と祖父に尋ねた。
「知らん。オイが知ッチョル名前は翡翠。オンチョが翡でメンチョが翠、あわせて翡翠」
そんな事で祖父はちょっと不機嫌になった。こんな時は話題を変えるに限る。
「……この川、魚たくさんいるの?」
「ズンバイオッド。魚も川海老もガラッパもおる」
河童は想像上の生き物だ。そう告げると祖父の表情が真剣なものに変わった。
「ウンニャ、ガラッパはオル。川ン底ン処に隠れチョッテ、川べりに来ット蜘蛛の糸ンゴ
タル網を投げて引き摺りこむ。牛デン、馬デン、人デン引き摺りこむ。
ジャッデ川のそばで遊んだらイカンド。ガラッパに引き込まれそうになった時ぁ、コゲ
ン言えば良カ。覚えチョケヨ。ガラッパソコンオレ。じゃ」
きっと祖父は声が出なかったのだろう。
>ガラッパソコンオレ
ちょっと待てwww
>>365 >ガラッパソコンオレ
「ガラッパ、そこに居れ」が呪文か、なるほど、ありそう。
そこにお題の「パソコン」も見事に織り込まれている。
ながれいしー(嘆)
>>395 397です。アンカーミスです。
「パソコン」をこんな風に使うとは。
これを思いついた時、してやったりと思ったに違いない。
コンチクショー!
|┃三 _________
|┃ /
|┃ ≡ _、_ < パソコンおれ!じゃ
____.|ミ\___( <_,` ) _ \_
|┃=___ \  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|┃ ≡ ) 人 \ ガラッ
訛がきついとする事で爺さんの台詞をカタカナ表示にし、
その上でパソコンをそこに織り込むとは、なかなかに曲者よのぉw
>>399 「ガラッ」を台詞の左上に持ってきてればもっと良かったかな?
――招運マガ玉。
パソコンでいつものようにあちこちネットサーフしている時、偶然あるネットショップ
で見かけたこの商品に何故か引き付けられた。
――太古よりマガ玉には不思議な力が宿ると言われています。有名な三種の神器も鏡、
剣そしてマガ玉の三種を身に付けることで悪運を退け、良運を引き込むとされていますね。
鏡はまだしも剣を所持する事は銃刀法に触れてしまいますのでとても出来ません。となる
と残るはそう、マガ玉しかありませんね。今回はそんなマガ玉をお手頃価格でご提供です。
一個一個念を込めて貴重な国産翡翠を磨き上げましたこの一品……。
「開けやがれ、こら! いるのは判ってんだぞ!」
こんなに四六時中入れ替わり立ち代り催促されたらもう外に出ることも出来ない。しか
し一体どうしてこんな借金まみれの転落人生を歩む事になってしまったのだろう。最初は
ほんのちょっとキャッシングしただけの筈だったのに、いつの間にかとんでもない額面に
膨れ上がって……。何が招運マガ玉だ。わたしは携帯ストラップのそれを引き千切った。
ご存知ない方が殆どだと思いますけど、マガ玉には二種類あるんですよ。それが「勾玉」
と「禍玉」。良運を呼び込む玉と悪気を呼び込む玉なんですけどね。元々玉は二個揃ってひ
と組なんですよ。ほら海彦山彦でも潮盈珠、潮乾珠とか出て来ましたでしょ。運不運もま
た一体なんですよ。誰かが幸福になればその分誰かが不幸になる。かと言ってこんなやり
方は酷いですね。え? えぇ、勿論意識的にやってますよ、これは。
森山東の呪扇みたいな話ですね。
>>402 なんかちょっと膨らませて一本短編ホラーが書けそうなアイデアですね。
お題のこなし方も無理がありませんでした。
乙です。
俺も呪扇を連想した。
>>402 最後の段落は「事情に詳しい関係者」が
テレビの取材に応えて(画像と音声を変えてます)
語っているんだなーと勝手に想像した。
>>403-404 ども402です。森山東さんの呪扇は未読なので今度読んでみようと思います。
コメントありがとうございました。
衣裝の解れを直すといふ約束でカヲリ君が歐古堂から預かってきた人形は、その髪の色
が明るい金髪である點を除けば、肌の白さと言ひ、小さめの口元と言ひ、意思の強さうな
やや吊り上った眦や味がかった翡翠色の瞳まで、さながら彼女を雛形にしたのではと思
へるほどカヲリ君とその造作が酷似していた。
「歐古堂の店主どんから、こん絲で繕はんといかんっち、金絲やら何やらずんばい渡され
っせ、縫ひ方まで言はれた。人形が直せっち言ふからしょんなかどん、こら大事じゃっど」
さも迷惑さうに語りながらもその表情はどこかしら嬉し氣だ。つまるところその實カヲ
リ君もまだ人形が戀しい年頃といふ事なのだらう。
「出來るだけ製作當時の素材を用ゐ當時の手法で修復しやうなど、なかなかあの店主も眞
面目な商いを心掛けてゐると言ふ事でせう」
一旦人形を部屋に置いて來させ二人で遲い晩餐になった。本日は伊太利亞風の魚介入り
麺料理だ。日頃葉書などを届けて呉れる郵便配達員の薀蓄によると髪の毛一本ほど芯を殘
すやうに茹でるのがコツとの事だったが、これがなかなか難しい。結局今囘も……。
と、どこかで何かさほど重くもない物が轉落する音がした。
カヲリ君が脱兎の如く驅け出し、そしてやがて件の人形を抱えて戻ってきた。しかしそ
の目は虚ろで焦點が定まってゐない。こんな形で千里眼が發動するのを見たのは初めてだ。
「暑か……、仙人掌が生えちょる沙漠……。空にふっとか鳥……禿鷹? ……赤か肌ん人
が何か言いよる。エ……エルパソ、……エルパソコンドル。魂ば刈り入れる鳥……」
それだけ言ふとカヲリ君はその場に崩れ落ちた。
>>409 エルパソコンドル!www
この人形はいったいどんな来歴をもっているのだ。
何を見てきたのだ。
800文字で三題噺という制約の中でどうやったらシリーズ物が続けられるのか……。
頭の中を覗いてみたくなります。
今回も面白かったです。
乙でした。
女史更衣室で着替えてたら、発見。これはいつもお局様の胸元に掛かっているペンダント。
翡翠じゃないかしら。安給料のくせに生意気だと思っていたのよね。地味で無口な暗い女。
小さなものだったので、ロッカーの隅に突っ込めた。ざまあみろ。絶対教えてやんない。
と、ここまでは良かったんだけど、お局様の奴、無くなったのに気が付くと、真直ぐあたしの机まで来て、
「あのペンダント返して」と言う。なんで迷わずあたしの所まで来るの?
「知りません」と突っ張ると「あれがないと困る」って。知ってるわよ。だから隠したんだもの。
「あなたの為に言うのよ」はぁ? 何言ってんの?
「以前にもあれをとった人がいて、その人崖から転落死したわ」大丈夫。此の辺、崖なんてないから。
結局知らんふりして、その日はそのまま帰宅した。あの女の正確な名前と住所と電話番号を会社で調べてきたので。
パソコンを立ち上げる。どこに書き込んでやろうかと思案していると、「馬鹿な女」とあたしの耳もとで誰かが囁く。
「あの石は私の増悪と力を封じ込めるものだったのに」今、この部屋にはあたし一人しかいない。
「私もあんたのこと、大嫌いだったのよね」誰?
「これで心置きなく、あんた殺せる」その声の持ち主は、嬉しそうにそう言った。
乙。
翡翠のペンダントの設定が中途半端な気がします。
もう少し推敲と校正をした方が良さそうですね。
>>412 もう少し推敲をという意見もあり、同意見なのですが
微妙に下手なところ(失礼)が、語り手の性格の悪さ、
嫌な感じ、壊れ具合を効果的に表現していると思いました。
語り手は「崖から転落」どころではない死に方をしたんでしょうなあ。
新しいお題に行きますか?
じゃ、件。
じゃ、布団。
クリスマス
:☆:
..::* ◎.。
..::彡彳*‡:*..
.:+彡*★:ミ:♪:ミ。:.,
.:彡'゚‡,※゚.◎::▲:ミ,::..
.,;彡*;▲彡゚*★::.ミ~:ミ+:..
..*彡゚◎.从♪.:ミ,☆,゚〓:ミ:,,
.:彡★*..☆,彡.:◆.ミ.+:◎,ミ。:..
.:゚:彡彡彡彡彡彡ミミミミミミミミ::.
.,,,;┃┃;,,,.
;■■■■; /;;ヽ
■■■ ○/;;;;;ヽ
..;■■■;... (,,・ェ・) Merry Christmas!
〜(,,_ノ
「件」「布団」「クリスマス」の三題を織り込んで
お話を作って下さい。一陽来復。
曰 / ̄ \
| |0⌒> ヽ
| | ⊂ニニニ⊃ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ノシヽ (〃´Д`)_ < なにがクリスマスだ畜生〜
||ャ ||/ .| ¢、 \__________
||ン || | .  ̄丶.)
||ペ||L二⊃ .(<コ:彡)\
||\||ン || \
|| \`~~´ \
|| \|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| .☆
|| || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|| ,个、
|| || ノ ♪ミ
|| || イ 彡※ヽ
||||
422 :
名無し物書き@推敲中?:2006/12/24(日) 20:18:22
クリスマスイヴにこんなお題出しても完成するのがいつになるか分かってんのか?
擬古の人ならやってくれる!
誰か!誰か作品を!
渾身の一作が終わったらじゃ。ちいと待っとれ。
と擬古文たんを装ってみました。
今更で悪いのだが、
>>418ってお題としての書き込みなのか?
サウイフコトニシテオイチクリ。スマスマ
6つになる息子を寝かしつけようとした時のことだ。
「パパ、明日の朝にはサンタさんがプレゼント届けてくれるんだよ」
「そうだよ。だからもう寝なさい」
ご無沙汰の女房とのクリスマスファックが待っていたので、私は慌て少々ぶっきら棒に言った。
息子は気に入らなかったらしい。布団の中で駄々を捏ね始めた。
「嘘だよそんなの。サンタなんかいないんだ」
お前な、と叱りかけて考えた。ここは尤もらしいことを言って丸く治めたほうが話が早い。
「サンタさんはいるよ。いや、正確には居たというのが正しい。
サンタさんは世界的なおもちゃメーカーの会長で、大富豪だった。
世界中の民間諜報機関を使って子供たちの趣味をサーベイしている。
Fedexの倉庫にプレゼントを集めておき、軍が極秘に開発したミニジェットで届ける。
これは機密と輸出規制の問題があって、ソリとトナカイに偽装しているがね」
息子は面食らったようだ。
「じゃ、じゃあほんとうに居るの?パパは見たことある?」
「あるよ。牛の頭をしていた」
すると息子は、"くだんねー"と言って私に背を向けた。
>>428 乙です。
サンタくだん説(勿論父親の法螺)、素晴らしい。
つい聞き入ってしまった。
今日は十二月二十五日。すでに十一時を回り、しん、と寒さが増したようだ。
遠くで流れるクリスマスソングが微かに聞こえてくる。
たぶん、今頃沢山の人がそれぞれのクリスマスを迎えているのだろう。
美味しい食事と、酒と、プレゼントと、人の温もり。
そんなものが満ちあふれているクリスマス。
そんな中、私はひとり部屋の中にいる。
そして、ひとり布団に入り、文庫本を読んでいる。
湿った布団はほんの少し重く、冷たい。
枕元に点けた読書灯の色は暖かかったが、やはり、実際には寒い。
はあ、と息を吐き出すと、部屋の中でも白くなる。
時折、窓ガラスがカタカタと音を立てる。その度に隙間風がカーテンを揺らす。
文庫本を持つ指がきしきしと音を立てて固まりそうだ。
あまりの寒さのせいか、頭が痛い。そして重い。熱があるのかもしれない。
ぐらんぐらんと視界が揺れてくる。寒い。歯の根が合わない。背中が痛い。
吐く息だけが、熱い。世界が極彩色に彩られていく。
不意に、こんな言葉が頭に浮かんだ。
『らいねんは、ひとが、たくさんしぬ』
私はそのまま極彩色の世界に落ちていった。
「……これは、ひどいな」と刑事が呻く。
異臭騒ぎのあったアパートの一室。
「元々住んでいたのは若い女ですね。山根明美。二十四才」もうひとりの刑事が言う。
部屋の中央に牛の首が放置してあった。それはすでに蕩けかかっている。
その蕩けかかった牛の首のそばに、首のない女の死体。これもぐずぐずになっていた。
女の死体の手に握られていた文庫本を、鑑識が――。
431 :
南国13号 ◆3vYzl1SmKU :2006/12/28(木) 08:30:31
「件」「布団」「クリスマス」
朝目がさめて窓を見ると雪が降っていた。今日はクリスマスで、外では恋人た
ちが楽しそうに歩いているのだろうと思うと少し憂鬱になる。
やることもないのでもう一眠りしようかと蒲団をかぶると、足元の方で何かの
気配を感じた。蒲団の中をのぞくと青白い女の顔が暗闇の中にぼんやりと浮か
んでいる。
人ではなかった。女の体は牛の姿をしている。件だなと思った。以前読んだ内
田百けんの小説が頭の中に浮かんだ。
件は私の体を這うようにして近づいてくる。ずっしりとした重みが体に伝わる。
女の香りと牛の体臭が奇妙に混ざって鼻腔を刺激した。
件の顔が目の前まで迫ってきた。鼻息が顔にかかった。件は私の眼をじっと見
つめた。目をそらすことができなかった。体がぴくりとも動かない。件が乗っ
ているせいだなと思った。寒気がした。
件が口をあけた。何かが腐ったような臭いがした。紫色の舌が目に映った。喉
の奥まではっきりと見えた。件が何かを叫ぶ。人の声ではない。耳をふさぎた
くなったが体はあいかわらず動かない。
件は叫び続ける。私は恐ろしくなって必死で逃げようとする。無駄だった。件
が叫んでいるのは私の未来だった。私の身にこれから訪れる何かを件は叫んで
いるのだ。
しばらくして私は目覚めた。件はすでにいなかった。冬だというのに私の体は
汗でびっしょりと濡れていた。件の言っていたことを思い出そうとした。しか
しどれだけ思い出そうとしても無理だった。ただ何か恐ろしいことが起きるの
だということだけははっきりとわかった。
雪はまだ降り続いている。これからどうなるのだろうと思うと少し憂鬱になる。
432 :
南国13号 ◆3vYzl1SmKU :2006/12/28(木) 08:32:45
はじめまして。面白そうなので参加してみました。よろしくお願いします。
433 :
南国13号 ◆3vYzl1SmKU :2006/12/28(木) 10:04:58
「翡翠」「パソコン」 「転落」
寝苦しい夜だった。時計を見るとすでに二時をまわっている。眠れそうにない
ので蒲団から出てパソコンを開いた。
いろいろな動画をのせているサイトがあり、そこに行く。事故現場の映像や
アニメなどがあったがあまり興味はひかれなかった。
しばらく見ていると翡翠というタイトルの動画を見つけた。少し興味がわいた
ので見てみる。
川が映っていた。静かなせせらぎが聞こえてくる。男が釣りをしている。四十
くらいのくたびれた感じの男だった。他には誰もいない。
しばらく男が釣りをしているところが延々と流れた。もう見るのをやめようか
と思いかけてきたところ一羽の鳥が飛んできた。カワセミだった。なるほどそ
れでタイトルが翡翠なのかと思った。
だがカワセミにしてはひどく大きかった。私が知っているカワセミの倍以上の
大きさがある。それに何だか様子がおかしい。目が真っ赤に血走っていて、嘴
から涎をだらだらと流し、狂ったようにぎゃあぎゃあと鳴いている。しわがれ
たお世辞にもきれいとは言えない鳴き声だった。
突然カワセミが男に襲いかかった。嘴で男の右目を突く。男が川の中に転落し
た。男は泣き叫び川の中を転がりまわる。カワセミは男の目玉を飲み込んだあ
と、きえええええっと奇声を発した。
空から何十匹ものカワセミが飛んできて男を襲った。内臓を食い破り、腸を引
きずり出し、カワセミ達の体は真っ赤に染まっていった。
男はとうに死んでいた。生気の通わなくなった虚ろな目をこちらに向けてい
たが、その目もカワセミに食われてしまった。
カワセミ達が一斉にこちらを向いた。目が不気味に輝いている。そしてぎええ
ええええっと鳴きながら一斉に飛んできた。
私はあわててパソコンを閉じた。どっと汗が吹き出た。しばらくしてそのサイ
トに行ったが動画は削除されていた。
南国13号 ◆3vYzl1SmKU
【年齢】20
【性別】中性
【住所】近畿圏
【職業】学生
>>430 続きは?と思わず読み終わったときに思ってしまいました。
本についての複線の回収が欲しかったです。
>>431,
>>433 他のお題にもチャレンジしてみてくださいね。
書くの早いですね。
>>435 いや、俺は
>>430はあれで完結していると思ったが。
文庫本の複線というのはあれだろ?
最初の登場人物と死体が同一人物である、ということで。
>>431>>433は文体がイマイチ。
もう少し練ってから投稿すべき。
学生で若いのに、お題でここまで書けるのは凄いぞ。
正統派っぽくて俺はいいと思う。
文章力もあるじゃん。
とりあえず ×複線 ○伏線
>>430 くだんの怪談のようでもあり、ミステリ風の解決もありそう。
文庫本、何を読んでいたのか気になります。
後段で出てこないなら気にならなかったのですが。
>>431,433
まとまっているのですが、ヒナ型にお題をあてはめたような印象も。
特に433は展開も含めて既視感がありまくりでした。
442 :
「鳥」「古井戸」「携帯」:2006/12/28(木) 23:02:08
あの古井戸には近づいたらあかんよ。なんでかいうとな、あれが出るんよ。幽
霊や、幽霊。笑ったらあかん、冗談でいうてるんと違うよ。あの井戸からは昔
女の死体が見つかったことがあるらしいてな。
うちは小さい頃女の子より男の子と遊ぶほうが多くてな、そいつらとある日肝
試しすることになってんよ。
井戸のそばに番号書いた石を置いてな、順番決めて夜に一人づつ取りに行くこ
とになってん。うちは三番やったな。みんなはじめはは平気やとかこんなんで
ビビるんは女だけやとか強気なこというてたけど、いざそのときになるととた
んに黙りこんでもうたわ。
そうこうしてるうちにうちの番がきてな、今さら逃げるわけにもいかんからさ
っさと取って帰ろう思うて早足でいったんよ。
だんだんみんなの声が小さなっていって、かわりにうちの足音がはっきりと聞
こえるようになるんよ、なんか背筋がぞっとしたな。
そいでしばらく歩いてようやく古井戸が見えてきたんよ、明かりを向けるとそ
ばに目的の石が見えてな、うち急いでポケットに入れて帰ろうとしたんよ。
そんときや。井戸の中からなんかが飛び出てきたんや。
はじめは鳥かと思うたんやけどな、どうも違うんよ。それがだんだん近づいて
きてな、うち思わず懐中電灯向けたんや。そしたら女の顔があったんや。女の
顔から羽が生えて、それがバサバサと飛んでるんよ。女は笑いながらうちに近
づいてきてな、でも体が震えていうこと聞かんくて、そしたら携帯が鳴ったん
よ。急に体が動いてな、うちその場から急いで逃げ出したんよ、その間も携帯
は鳴っててな、しばらく走った後でたんや。電話からは鳥の鳴き声が聞こえて
きてな、うちびっくりして電話落としてもうた。
あわてて拾おうとしたらいつのまにか目の前にあの女がおって、甲高い声でぎ
えええって叫んでな、うちそのまま気ィ失ってもうた。
それからも何度かあの女見かけたわ。ふっと空見上げたときとか、窓の外なが
めてるときとかあの女がバサバサと飛んでるんよ。うちどうやら好かれてもう
たらしいわ。うちみたいになりたなかったら、あの古井戸には行ったらあかん
よ。
>>442 引き込まれて読んで、後の方で携帯(電話)が登場して
ちょっと驚いた。
漠然と、何十年か前の話だと思っていたので。
主人公の子どもの頃ってだけで、そんなに昔ではないのですよね。
15才くらいの女の子が小学生とかに語っているのかな?
女の顔に翼の妖怪、名前が思い出せない……諸星漫画で見た記憶が。
ごちゃごちゃ書きましたが面白かったです。
おねえちゃんにこんな話しされたら、夜中にトイレいけない。
どんどん新しい噺が書き込まれてるね。
どれも面白いし、いいぞ、いいぞ!
「鳥」「古井戸」「携帯」
まず、死体は足と手を折り曲げ、頭もなるべく前に傾けるようにする。死後硬直で手足はかなり硬い。
力を必要とする。次に頭の髪は剃り上げ、故人の物であった装身具を付けるが、これは別になくとも良い。
穴はかなり深く掘らねばならぬ。なぜならハイエナに掘り起こされてしまうおそれがあるからである。
墓は古井戸の近くが良しとされるが、新しいものであってもかまわない。ただし、井戸の側でなくては絶対にいけない。
鳥、特に鴉が頭上を舞っている間は死体を埋葬できない。なお、鳶であるなら、その限りではない。
死体を遺族の男性達が穴に降ろしている間、女性達は後ろを向いてなくてはならない。
もし、その作業を少しでも見てしまった女性がいたとしたら、昔は故人と一緒に、そのまま埋められてしまったそうである。
さすがに今はそのような事はないそうであるが。
死体が穴の底に収まったら、女性達は穴に向かって正面を向き、各自で携帯してきたスコップを使い土をかける。
穴を埋めるのは女性の仕事である。
ここまでで涙を流した者がいたとしたら、その者は故人をこの世に縛り付けようとした愚か者であるとされ、
軽蔑の対象となる。故人はこれから、すばらしい世界へ旅立とうとしているのに、
涙でその道を汚してはならぬ。悲しみは葬儀が始まる前に済ましておくもの。
これは、世の常識である。
446 :
南国13号 ◆3vYzl1SmKU :2006/12/29(金) 01:36:06
>>445 ものすごく既視感がありまくるんだが、どっかに貼ったのの改稿?
448 :
445:2006/12/29(金) 11:51:45
>>447 いいえ。
アフリカのどっかの部族のお葬式の話を読んで、膨らませました。
ハイエナが掘ってしまうので、穴を深く掘るというくだりが面白いなあと思いまして。
書き込みしたのはここが初めてで、ここが最後になると思います。
>>448 面白かったです。
他の方も言っていましたが、書くのとても早いですね。
最初の話よりも文章が上手くなっているようなので、このペースでどんどん他のお題にも
チャレンジしてみてください。
450 :
名無し物書き@推敲中?:2006/12/31(日) 13:01:25
誰か書けよー
前夜遲くまで賀状書きなどしていたので、郵便配達の年が來た時にはまだ布團の中で
あった。見るとまう陽が高い。女學校が休暇に入り、カヲリ君は最近では終日歐古堂で働
いてゐる。今日も既に出掛けてゐるやうだ。眠い目を擦りながら郵便配達の年から葉書
を受け取るとその歐古堂の店主からであった。葉書など出さずにカヲリ君に言傳てくれれ
ば良いのにと思ったが、讀むと年明け早々のカヲリ君の誕生日用にョんでおいた品が入手
出來たとある。成る程こればかりはカヲリ君に傳言と言ふ譯にはいかない。
折角なので書き上げた賀状を郵便配達の年に手渡し街に繰り出した。
年のPも近い事もあり街中はなかなかに忙しないが、勸工場は表通りの百貨店に客を持
って行かれ、例によって閑散としてゐる。奧にある歐古堂の前だけカヲリ君目當てと思は
れる者たちがたむろしてゐるが、冷かしお斷りと貼り出してからは、店の外から覗き見る
のが關の山だ。正直歐古堂の品々は手輕に買へる程安くはない。
店内ではカヲリ君が大柄な客の對應に追はれていた。あの背中は……大角君だらう。
帳場から店主に手招きされ、こっそりと手渡された品は鼈甲細工の縁取りに貴婦人の横
顔を浮き彫りにした貝が嵌め込まれた首飾り、これは惡くはない物だ。
「おぉ、シェルカメオのブロォチ」と大角君が覗き込んできた。と言ふ事は……、案の定
カヲリ君まで覗き込んでゐる。これでは誕生日に驚かす事も出來ないではないか……。
と、カヲリ君がどこか遠くを眺めるやうに目を細めた。千里眼が發動したやうだ。
「……こん鼈甲も夜光貝も南洋に浮かぶ島のもんじゃらぁよ。
……こん島、こいから何度もふっとか火に包まれっせ、燒き盡くさるっど。島も海も何
もかんも何年も生き物も寄り付かん。……英國領のク、クリスマスっち名前の島じゃ」
彼女が先を見通した事が判ったのは昭和三十三年を過ぎてからであった。
まさに、依って件の如し、である。
>>451 クリスマスのシーズンが過ぎてどう仕上げられるのかと思いましたが、
成る程こういう方法がありましたか。
お題の織り込みも自然です。
乙!
>>451 クリスマスの使い方が捻ってて面白かった。
今年、こういう出会いがあって良かったです。
来年もよろしくです。
乙。
運試し。エイッ!
あけおめ!
>>452-453 451です。ありがとうございます。
今年もよろしくお願い致します。
ここで修行を存分に積みまして、來年bk-1怪談大賞で全員受賞出來るやう頑張りませう。
あ、カヲリ君に初春の挨拶をさせたいと思ひます。暫しお待ち下さい。
何でか、……うちはよかっち。
……しょんなか、ほいじゃDanke dieses Jahr.
君が何を言っているのか分からないよフロイライン!
あけおめ。
不要かもしれんけど、お題一覧作ってみました。上が古いお題で下が最新。
検索かけて確認したけど、抜けてるのあったらゴメン。あと、
>>4で言われてたので番号も振ってみた。
ご参考になれば。
1:「猫」「下駄」「レタス」
2:「ポプラ」「本」「犬」
3:「カブトムシ」「ブランコ」「ビデオテープ」
4:「新学期」「頭」「自作自演」
5:「コンビニ」「見世物小屋」「薬物中毒」
6:「鳥」「携帯」「古井戸」
7:「蝶」「傘立て」「大仏」
8:「茸」「塩」「廃屋」
9:「てのひら」「雨だれ」「路地裏」
10:「うなぎ」「柳」「サナギ」
11:「うろこ雲」「病院」「ワイン」
12:「冥王星」「ようかい」「小説家」
13:「避難」「柿」「鶴」
14:「邪神」「月」「工場」
15:「心臓」「落葉」「カンブリア紀」
16:「人形」「強酸」「しょっぱい」
17:「胡瓜」「傀儡」「砂漠」
18:「鈴蘭」「蝿取り紙」「どぶろく」
19:「記念写真」「パイロット」「牧草」
20:「百舌(モズ)」「ミルク」「夜」
21:「芋」「蜘蛛」「エナメル」
22:「箱」「湾」「幽」
23:「翡翠」「パソコン」 「転落」
24:「件」「布団」「クリスマス」
459タン、乙です。
あと11と12の間に「怪談、幽霊、連休」というお題があったと思います。
>>460 ありがとうです。修正。
作品でもないのに行数食って申し訳ない。
1:「猫」「下駄」「レタス」
2:「ポプラ」「本」「犬」
3:「カブトムシ」「ブランコ」「ビデオテープ」
4:「新学期」「頭」「自作自演」
5:「コンビニ」「見世物小屋」「薬物中毒」
6:「鳥」「携帯」「古井戸」
7:「蝶」「傘立て」「大仏」
8:「茸」「塩」「廃屋」
9:「てのひら」「雨だれ」「路地裏」
10:「うなぎ」「柳」「サナギ」
11:「うろこ雲」「病院」「ワイン」
12:「怪談」「幽霊」「連休」
13:「冥王星」「ようかい」「小説家」
14:「避難」「柿」「鶴」
15:「邪神」「月」「工場」
16:「心臓」「落葉」「カンブリア紀」
17:「人形」「強酸」「しょっぱい」
18:「胡瓜」「傀儡」「砂漠」
19:「鈴蘭」「蝿取り紙」「どぶろく」
20:「記念写真」「パイロット」「牧草」
21:「百舌(モズ)」「ミルク」「夜」
22:「芋」「蜘蛛」「エナメル」
23:「箱」「湾」「幽」
24:「翡翠」「パソコン」 「転落」
25:「件」「布団」「クリスマス」
近所の一件の家に、救急車が止まっている。二三日もするとその家の門に「喪中」と書かれた紙が貼られた。
別の日にその家の前を通りかかると、表札の下に子どもが喜びそうなシールがぺたぺたと貼ってある。
近所なのでいつもこの道は通る。シールは日増しに増えていった。
シールがその家の窓を覆うようになったある日、その家の主人を見かけた。下着姿で庭の草花をガムテープで巻いている。
夏真っ盛りでとても暑い日だ。
シールとガムテープで武装したかのようなその家の前で、主人と中年の女性が言い争っているところに出くわした。
主人は静かに諭すように話していたが、女性は泣叫んでへたり込んでしまった。
それから時々、その女性をその家で見かけるようになった。女性はいつも下を向いて溜息を付いている。
クリスマスの夜、主人は家の前の道路で布団に包まっていたところを、車に引かれて亡くなった。
凍てつく寒さ、主人は布団の中でやはり下着であったという。
家はまだある。どうやら次の買い手も決まったようだ。先日、通ったらその家は改築中だった。
若い二人が嬉しそうに設計図らしきものを眺めている。ハーブなども植えようと話している。
>462
もっともっと推敲した方が良いですね。
頑張って下さい。
>>462 主人という人物が像を結ばなかったので、中年男性だとか、
性別年齢不詳だとか、ひとこと書いて欲しかったです。
その点以外は淡々としているのに不気味でよく書けていると思いました。
ラストが妙に明るい感じなのが、因縁がないようでもあり、
このあとの怪異を予感させなくもない……
乙でした。
> 近所の一件の家に、救急車が止まっている。二三日もするとその家の門に「喪中」と書かれた紙が貼られた。
最初が現在形で、二三日後が過去形。時系列がテレコになってしまってはマズイですね。
一行目からまともな文章ではないと、どうせまとまな文章ではあるまいと思われてしまいます。
463タンの指摘どおり、もう少し推敲した方が良いですね。
というか、何を怖がらせたい怪談なのか分かりません。
467 :
462:2007/01/05(金) 14:31:15
>>463 すみません。思い付いてすぐ書き込んでしまいました。
>>464 初老を想定しておりましたが、そうですよね。どこにも書いてませんでした。すみません。
>>465 すみません。昔読んだ本の中に、過去形と未来形が混じった文章があって、おもしろいなあと思ったもので。
以後、気を付けます。
>>466 これ、うちの近所の話なんです。
もちろん内容は全て変えてありますが、その家が、こう、ずぶずぶと沈んでいってるような、
爛れてゆくような、その家の前を通る度に不思議な感傷を味わいました。
>467
実話でも創作でも全然構わないけど、まず文章として成立している事が大切です。
実話なら何でも怖がる……というわけではありませんから、その点ご注意下さい。
469 :
「箱」「湾」「幽」:2007/01/06(土) 12:03:12
あんな、この前電車に乗ってたときのことなんやけど。
満員いうほどでもないけどけっこう人いっぱいでな、うち疲れてたから吊り
革につかまりながらぼんやりしててんよ。そしたらな、なんか隙間があるのに
気づいたんや。こう、なんか不自然なくらい人がよりつかへん空間みたいなの
があんねん。そこに人が立ってもなんか気に入らんのかすぐ移動してまんうよ。
うち、おかしいなあと思いながら見てたらな、そこに下から箱が浮かび上が
ってきてんよ。大体一辺が三十センチぐらいの大きさやったかな。そいでな、
その箱がゆっくりと開いて、中からなんか出てきたんよ。人に似てるんやけど
ちがうんよ。全身がなんか青白くて変な感じに折れ曲がっててな、頭もこう、
なんていうか湾曲してるんよ。そいつには眼がなくて、かわりに体中に目玉み
たいな模様があってそれがぐるぐる動いてな、うち怖なって叫びそうになった
わ。でも誰もそいつに気づかへんのよ。
そいつは乗客の体の上をずるずる這い回って、耳元でなんかつぶやいていく
んよ、なんかを確かめてるみたいやったな。それで何人かを回った後また箱の
ところに戻って自分の体を折りたたんで入ってな、そのまますうっと消えても
うたわ。
あとでそんときのこと友達に話したら、二週間ぐらい前にここで人身事故が
あったんやって。そんときはうちも、ああそのときに亡くなった人の幽霊やっ
たんやなって納得したけど。あれホンマに幽霊やったんかな。うちどうもちが
うと思うんよ。あれは幽霊やなくてなんか別なものやったと思うんや。一体な
んやったんやろうなあ。
>469
乙でした。
正直、関西弁に無理を感じてしまいますね。
方言は上手に使いこなすと雰囲気やリアリティを盛り上げるのに有効ですけど
使い方を間違えるとむしろ興醒めしてしまう諸刃の剣です。
関西弁の話し言葉口調の中で不意に登場する湾曲にも唐突感があります。
>>469 うーん。
文も話も悪か無いが、もう一息。頑張れ。
>470タン 文章上手ですね。批評や感想も勉強なんだな。
472 :
469:2007/01/06(土) 19:27:29
>>470 そうですね。関西弁にする意味がありませんでした。ただ単に関西弁で書くのが
好きだからってだけで書きました。以後気をつけます。
>>471 ありがとうございます。頑張ります。
居間に行くとお姉ちゃんがテーブルの上にたくさんのレタスを広げてもしゃも
しゃと食べていました。そばによってよく見るとレタスは猫の頭の形をしてい
ます。レタスの中に猫の頭があるんじゃなくてレタスが猫の頭の形をしている
のです。しかもときどきウニャアと鳴き声をあげます。
わたしはびっくりしてお姉ちゃんの顔を見ました。お姉ちゃんは目をギラギラ
させて夢中になって食べています。お姉ちゃんがレタス猫をかじるとパリッと
いうかわいた音と一緒に猫の苦しそうな鳴き声が聞こえてきます。
なかには逃げようとするのもいて、お姉ちゃんはそれを下駄で、カランコロン
カランカランコロンと歌いながらリズムよく叩き、ぐったりさせてから食べま
した。
あんまり夢中で食べているので、わたしはお姉ちゃんに「それっておいしいの
?」と聞くと「おいしいわけないでしょッ!」と怒られました。そしてわたし
に「でも食べなきゃなんないの。あんたも手伝いなさい」と言いました。
わたしは正直言って食べたくありませんでしたが、お姉ちゃんが恐い顔でにら
むのでがまんして食べることにしました。
レタス猫の頭に歯をたてるとニャアアという声が聞こえてきて少しかわいそう
になりましたがそのまま思いきってかじりました。あんまりおいしくありませ
んでした。しかたないのでソースで味を消して食べました。お姉ちゃんのほう
を見るとごまドレッシングをかけて食べていました。
一時間ほどかけてわたしたちはレタス猫をすっかり食べてしまいました。お姉
ちゃんはわたしに「おつかれさま」と言って笑い、そのまま自分の部屋にもど
りました。
結局あのレタス猫がなんだったのかわかりません。ただあれ以来おなかの中か
らときどきウニャアという鳴き声が聞こえてきます。
>>473 あれ? 全く同じ設定で書かれた話(猫の頭の形のレタス)を
この「猫、下駄。レタス」が出たばかりの頃に読んだ気がする。
リライト?
今年最初のお題に行きませんか?
お題その1「餅」
476 :
473:2007/01/06(土) 21:18:09
>>474 いえ、リライトじゃないです。最近きたばかりなのでわかりませんがかぶって
るんですか?
じゃお題その2「鏡」
じゃ最後「金字塔」
では2007年最初のお題は「餅、鏡、金字塔」と言う事で。
バスルームで顔を洗って鏡を見ると、わたしの後ろに男が見えた。振り返ると、鼻ピアスの青年が突っ立っている。
「誰?」と聞くと「自分、良い幽霊っすから」と直立不動で言う。「きゃあ」と叫ぶと、ぱっと消えた。
アパートを出つつ、家賃ここいら辺の相場だったし、赤黒い染みも無かったと、先日引越してきた時のことを思い返す。
会社で仕事の合間にちょっと愚痴ると「はあ、幽霊アパート。もう、住んじゃったものねぇ。お金払っちゃたものねぇ」
と同僚は憐れむ顔をする。「知り合いにそういう相談にのってくれる人がいるけど」
とりあえず、その人に連絡してもらうことを約束して、今日は早めに帰宅した。
ドアを開けると「お帰りなさい」と幽霊に最敬礼された。ぺたりと尻餅を付く。
「自分、人には危害加えないっすよ。幽霊の金字塔目指してますから」冷たい玄関をお尻に感じつつ、
なんでこんなめにと少し涙が出てしまった。
携帯が鳴ってる。「それ、取んないほうがいいっすねぇ」鼻ピーが言う。
「詐欺師っすよ。霊能者っていってかなり稼いでます」
「わかるの?」
「まあ、それぐらいは。あねさんのダチも騙されて金巻き上げられてます」
少し考える。「あなた、人の死期ってわかる?」「百発百中っすよ」
よし、これはわたしにも運が向いて来たということにしてやる。わたしの仕事は生命保険のセールス。
人の死期がわかれば恐いもん無しではないか。
「着替えている時は出て来ないでよ」鼻ピーに手を差し出す。二人で黄金の帝国を築こう。
「あねさん、俺幽霊っすから握手できないっすよ」同居人は困った顔でそう言った。
>480
面白かったです。これってシリーズ化出来そうな感じですね。
お題の織り込みも無理を感じさせません。
乙です。
玄関の鍵を内から掛けようとしたら、掛からない。
「あー、その鍵掛けるのコツがいるんすよ。ドアのノブを上にちょっと持ち上げながら掛けるとOKっす」
やっぱり生前、このアパートに住んでいたのよね。だからそんなことまで分かるんだ。
「なんで鏡に映れんの?」
「そんなこと俺に聞かれても」
「幽霊は鏡に映んないじゃない?」
「それは吸血鬼じゃないっすか」
あっ、そうか。さすがね。幽霊の金字塔目指してるだけあるわ。
「どうしてこの部屋にいるの? ここで自殺したとか?」
「死んだのは、正月に婆ちゃん家で餅喰って、のど詰まらせて窒息したからっす」
うわっ。どうフォローしたらいいのか、わからない死に方。んんん、あれ?
「このアパートで死んだんだじゃないの?!」
「俺が死んだのは婆ちゃん家っす」
「じゃ、なんでここにいるのよ」
「いやあ、俺、ロッカーなろうと上京して、このアパート借りたのに、鼻ピアス 開けただけで死んじゃって、心残りで。
俺のハートがまだこの地に彷徨ってんすよ」
はあぁ?
「イカ天出たかったな。相原勇可愛いっすよねぇ」
なんか、あんた、いつ頃死んだのかわかった。
483 :
482:2007/01/10(水) 09:52:50
>>481さん
誉めていただいて、ありがとうございます。
シリーズ化出来るかな、と思いやってみましたが、いやぁ、たいへん。
懐古のかたは天才と努力、双方御持ちなんですね。
私はこれでおしまいです。
同じお題で2話続けてって、かなり凄いな。しかも面白い。
私も続きが読みたいなあと思っていましたからなんか嬉しいです。
玄關から郵便配達の年の聲が聞こえ、暫くすると賀状の束を持ったカヲリ君が書齋に
やって來た。少し困惑氣味の表情でわたしの文机の前にペタンと座り込んだ。
「郵便どんから今年こそよろしゅう、っち言はれもした。うちが同じ務めばしちょっとや
ったら判っどん、手紙ば届けてくるっ人とどげんすればよろしゅう出來っとじゃろかい」
成る程、千里眼のカヲリ君も所詮は十六の娘。まだまだ人の心は見拔けぬらしい。
ここで郵便配達の年の氣持ちを代辯するのは容易いがそれは無粹と言ふものだ。しか
しあの年もまう少し氣の利いた臺詞を吐けば良いものを……。
わたしは敢へて素知らぬ顔をし、受け取った賀状を讀むべく文机の上の眼鏡に手を伸ば
した。近頃老視が進んだやうで細かい文字など眼鏡なしでは全くお手上げなのだ。
「……先生、、新しか炭ば持って來て良かろかい」
暖爐のある居閧ニ違ひこの書齋で暖と言へば火桶しかない。その火桶の炭がまう燃え盡
きやうとしていたやうだ。暫くして眞っ赤に燃えた炭を持ってきたカヲリ君は、それを火
箸で器用に火桶に移し、更に五徳の上に丸い金網を乘せ、その上に丸餅など竝べ始めた。
だうやらわたしが答へるまで長居を決め込んだものとみえる。さて、だうしたものか……。
ちらっと見るとカヲリ君は書棚から引き出した古代埃及關係書籍の象形文字の頁を眺め
てゐる。老視で手近はまるっきりだが少し離れると良く見えるのだ。
「それは金字塔の王の玄室の壁に刻まれていた聖刻文字と言ふもので……」
突然カヲリ君がころころと笑ひ始めた。
「可笑しか。大昔の人が、近頃の若いもんは、っち書いちょる」
それはわたしの臺詞である。しかし……、それが讀めるのか……。
486 :
485:2007/01/11(木) 14:02:02
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
>>480、
>>482と同じ題材を同じ設定で2作。しかも両方の作品とも無理なくお題が消化され、
かつ面白い。と新年早々素晴らしい才能のある方が登場され、大変刺激を受けております。
あまりにも魅力的な設定ですので、今後も可能なお題が有れば是非このシリーズを続けて欲しい
と思います。
松の内も過ぎた肌寒い一間のアパートで、彼女はトースターで焼いただけの餅を食べていた。
彼は図書館から帰ったばかりの冷たい足をこたつに入れ、
眼鏡のブリッジを中指で軽く押さえて借りてきた分厚い本を開いた。
「なぁに、その本」
彼女が聞くと、彼は顔も上げずに答えた。
「昔の‥呪いの本」
お金があったら自分で買うんだけどね‥と小さな声で彼は続けた。
「誰か呪いたい人でもいるわけ?」
冗談めかして軽く彼女は聞いたが、返事は返って来ず部屋はしんと静まり返ってしまった。
深夜に彼女はふと目が覚めた。
彼は布団に入ったまま、手元に灯りを置いてまだ本を読んでいた。
ろくに食事も取らず、真剣に呪いの本を読んでいる姿は、ただそれだけで不気味だ。
灯りに反射して本の箔押しが眩しい。表紙には金字塔が描かれている。日本語ではない文字が見えるが読めなかった。
暗い部屋の中で、真剣な顔をしている彼のことを、彼女は単純に怖く感じた。
「かがみ‥鏡、ないか?」
あれからまた眠っていた彼女は、彼に揺り起こされた。まだ窓の外は真っ暗だ。
「‥鏡なら私の‥鞄に入ってるよ‥」
彼女は寝言のように呟いて、また眠りについた。
朝遅い時間に起きた彼女は、目の前の光景がすぐには理解できなかった。
自分の布団の隣には彼の空っぽの布団があり、その上に、鏡と、あの本。
彼女はとりあえず鏡を仕舞おうと、手を伸ばした。
その鏡には映るはずの部屋の景色ではなく、紛れもない彼の顔が映り込んでいた。
>>480、
>>482 鼻ピのロッカーだけど、良いヤツですね。幽霊だけど。
生保のセールスが人の死期がわかるとなにか良いことあるの?
長生きな人にだけ保険を勧めるとか、そういうこと?
気が利かないのでそこのところがわからなかった。
保険に詳しい方、説明プリーズ。
どっちも面白かったです。今後の展開が楽しみです。
>>485 大昔の人も、今の人も、心はそう変わらない、
若い男はきれいな娘に目も心も奪われるものなのさ、カヲリ君。
>>487 トーストで焼いただけの餅……醤油も付けないで?
と思いましたが、そう問うても
「餅の味が楽しめるから、いいの」
と言われそうだと思いました。
鏡の中に入っちゃったのは、呪いが失敗して自分に返って来たのでしょうか。
2ちゃの存続も怪しげな状況ではありますが、新しいお題に入りましょうか?
お題その1「結晶」
その2「閉鎖」
3「桜湯」
新しいお題は「結晶」「閉鎖」「桜湯」です。
皆様健筆をふるって下さい。
この天鵞絨のやうな闇の中がわたくしの世界。
僅かに日に一度だけここに光が差し込み、そして音が訪れます。さう「お食事でござい
ます、お孃樣」の聲と共に仕えの者が差し入れる食事の時だけ。その時だけわたくしは己
が目がまだ光を見る事が出來、この耳が音を聞き分けられる事を知るのです。
格子の下から差し入れられる朱塗りの盆に載せられたお事の樣な小さな食器に盛られ
た一汁一菜の食事。魚や肉が竝ぶ事は必ずございません。
これを食する時だけわたくしの世界に色が着き、音が響きます。そして食事を終へあの
重く分厚い扉が閉鎖されると再び漆Kの闇がこの藏を支配するのです。
次の明かりと音が訪れるまでわたくしは何度も何度も先の食事を心の中で反芻致します。
艶々とした白米は噛むほどに甘味を揩オます。菜の花のお浸しの幽かな苦味が舌の兩端を
きゅっとさせます。櫻湯の鹽の結晶が光を受けて煌煌しく、そこにお湯を注ぐとふくよか
な香りが立ち昇ります。
ですからわたくしは日の殆どを寢て過ごします。寢てしまへば暗いのも音がないのも苦
になりません。夢の世界は明るく、そして音に溢れておりますから。
食事の時にその見た夢の内容をつぶさに思ひ描かねばなりません。口に出さなくとも良
いのです、ただ思ひ浮かべれば。例へそれがどのやうな夢であっても……。
大きな、とても大きな鳥が何羽も何羽も大空を覆いつくします。火の雨が降り注ぎ大地
が眞っ赤に燃え上がり、人々は兩手を擧げてその中で踊っています。お肉の、さう、お肉
の燒ける香ばしい良い匂いが……。
したためた賀状の返事など投函すべく夕刻前に家を出た。松の内も明けるとあれ程目に
した睛れ着姿もすっかり影を潛め、正月氣分も霧散霧消してしまふ。さうなると不思議な
もので寒々しさまで弥揩オたやうである。
兩手を袂に入れ、襟巻で顔の半分も覆い、背中を丸めて歩いてゐると不意に背後から聲
を掛けられた。振り向くといつもの郵便配達の年が白い息を彈ませながら驅けてくる。
年から「はい」と手渡された葉書は例によって歐古堂の店主からであった。秘藏の銅
器をお見せしたいとある。銅器と聞いてはじっとしていられない。投函する筈であった
賀状の束をこれ幸いと年に手渡し、早速歐古堂の入ってゐる勸工場に足を向けた。
火鉢に手をかざしていた歐古堂の店主がわたしの顔を見て早速銅器を取り出した。
成る程これは變はってゐる。人面の銅器なのだが、目玉のK目部分が大きく前に突き
出してゐる。宛ら太鼓の桴の如しである。周や秦の時代の洗練された樣式美とは異なる自
由奔放な表現樣式と言へる。殷の頃の物だらうか。カヲリ君の見解を聞きたい。カヲリ君
によると歳月を經た器物には魂の如きものが宿るさうだ。その幽き聲を聞くのだと言ふ。
矯めつ眇めつ眺めてゐると横から店主が湯飮みを差し出してきた。口元に運ぶと薫と香
り立った。見ると櫻湯である。口に含む。仄かな鹽氣に頭が冴え渡る氣がする。
「この勸工場も閉鎖です。勿論この店は長年の夢の結晶ですから續ける心算ですが……」
横で何事か店主が獨白を繰り返してゐるが、目の前の銅器の吟味の方が先だ。
「とは言へ、新しい店舗を構へやうにも先立つ物が……」
「そん縱眼の銅器ば賣れば良か。北京に對抗して臺灣に故宮博物院ば建てるっちゅうて
鴛iば掻き集めちょる。夏ん頃ん銅器やらなんぼでん出すじゃろ」
いつの閧ノやって來たのかカヲリ君が前掛けを着けながらさう言ひ放った。
>>495 いつもながらお見事ですが、台湾に故宮博物院が作られた時期と
ちょっとずれているような気がしました。
(カオリ君のいる時代は、何年頃でしたっけ?)
掻き集めなくとも紫禁城から避難させた宝物はあったし。
夏の青銅器なら収蔵品に加えたいに違いありませんが。
勘違いだったらごめんなさい。
台湾への退避は1948年ごろ。
國立故宮博物院の成立には文革に深いかかわりがある。
文革は1960年代後半から1970年代前半。
(この辺りは誰でも知っているだろうが)
ドアを叩く音がする。
「居たのね。電話つながらなかったから心配で」同僚だった。携帯は切ってしまっていた。後ろに男をつれている。
「紹介するって言ってた霊能者の人」ぺこんと男は頭を下げる。
「あんな話聞いたばかりだから来てみたのよ。あ、これ、桜の塩漬け。ほら、桜湯って何って貴女言ってたでしょう?」
じわっと来た。世間話にちょっと出ただけの話を彼女は覚えていてくれてたのだ。
「上がって。後ろの方も」とりあえず、中に入ってもらおうとすると男が言った。
「髪が肩ぐらいで、化粧の濃い女性って知り合いにいらっしゃいます?」
は?
「うーん。貴女より年上ですかね。怖い顔してキッチンに立ってます」
ものすごく思い当たる人間を知ってる。あたしの上司だ。これがもう、ほんっとに嫌な女で、法的伝染病にでもなって
閉鎖病棟に閉じ込められたりでもしたら、正月、盆一緒に来たみたい、ぐらいな感じ。
「あたしの上司だと思います」同僚が側で頷く。彼女も嫌ってる。
「最低な女で仕事は手抜くわ、人の男取るわ(同僚の男だ)、…」
霊能者の男は「うんうん」と絶妙な間の手を入れて話を聞いてくれた。
「時間も遅いし、僕達はこの辺で失礼します」2時間ノンストップであたしが喋リ終わると、男は腰を上げた。
同僚がそっと「3000円渡して」と言って来たので、喜んで男に包んだ。玄関まで送る。
ああ、こんなにすっきりした気分は久しぶり。
「詐欺師に払う金あったら、俺のCD買ってくれたらよかったのに。インディーズで出してるんすよ。
2000円ぽっきり。俺の血と汗と涙の結晶」鼻ピーが側に来て言う。
あんたのCD買うより、愚痴聞いて貰って心安らかの方がいいかな。3000円だし。
「あの二人出来てるっすねぇ」え?
「あねさんのダチに色々聞いてから来たんじゃないすか?」はぁぁぁあ?
「あねさん騙すために」なんですと?
499 :
498:2007/01/17(水) 01:41:47
2ch無くなるかもしれないので、頑張ってみました。
鼻ピーロッカーの続きです。
これで最後になるかもなんて、いやだなあ。
知ってるかお前ら、桜湯が閉鎖されるんだってよ。そう、銭湯の桜湯。
違う違う、店をたたむんじゃねぇ。たしかに客はあんましいなかったけど、営業困難で
たたむんじゃなくて閉鎖されるんだよ、閉鎖。保健所のお達しで営業停止。
俺が入学したばっかりの頃には近所にもう一軒あってさ。梅の湯に松の湯、そして桜湯。
三つ揃って梅松桜の表菅原って訳だ。は? 花札だよ、花札の役。お前らも日本人なら花
札くらい知っとけよな。
銭湯が三つもあったのに、まず梅の湯が営業不振で店じまい、で桜湯がこれだろ。
オルオラネだったかオラシラネだったか、何かあそこのジャグジーで菌が湧いたってん
でお取り潰しだってさ。ネジオネラ? そうそう、そんな名前だったかな。
たしかに滅多に入れ替えないからいつもヌルヌルしたお湯だったけどな。排水溝にゃ髪
の毛が詰まって変な臭い出してたし、お湯の出るライオンの口んとこにゃ何か訳の判んな
い結晶が出来てたもんな……。仕方ないんだろうな。
そうそうそう! 賞味期限切れたフルーツ牛乳あった! おばちゃんに言うと安く売っ
てくれるんだよね。衛生的じゃなかったかも知れないけど良心的だったんだよな。
で、残ったのは松の湯だけだろ? あそこホラ、深夜営業で便利なんだけど彫り物オー
ケーじゃん。どうかすると出入り帰りらしいその筋のお方たちと遭遇しちゃうんだよね。
血の付いた身体とかヤッパとか洗ってる人いるしさ、怖いんだよね。
……それと知ってた? 松の湯っていつ行っても誰か入ってるんだよ。それでこっちが
先に出るじゃん。ほんで脱衣所に行ってみると自分の分の服しかなかったりしてさ。オレ
に言わせりゃ松の湯の方、先に営業停止にしろってんだよ、本当のところ。
501 :
まめ:2007/01/17(水) 04:17:36
このスレの話し面白いね
一気に読んでしまった
>500
桜湯を銭湯にする人が一人くらいいるかと思ってました。
松の湯こわいよ。
>梅松桜の表菅原
花札の手だとはしりませんでした。
梅王丸、松王丸、桜丸は三つ子で歌舞伎「菅原伝授手習鑑」の登場人物です。
>>496 カヲリくんは先の先までお見通しなのじゃ。
>>494 蔵の中で紅蓮の炎に包まれる世界を幻視……おそろしか。
幻視はやがて現実になるのだろうか。
夢見る力で世界を滅ぼそうとする奴らは誰だ?!
……と理解しましたが、ちょっとわかりにくかったので
これでいいのか心配。
>>495 目が飛び出た人面の青銅器って、三星堆のですね。
故宮博物院設立準備会(デタラメ)はいくらで買ってくれるでしょうか。
>>498 壺とか多宝塔とかはこれから売りつけられると想像。
>「あねさんのダチに色々聞いてから来たんじゃないすか?」はぁぁぁあ?
>「あねさん騙すために」なんですと?
鼻ピロッカー初登場の時(
>>480)に既に電話をかけてきた相手が
インチキ霊能者(の仲間)だと明らかにされていたはず。
霊能者がインチキとわかっていて話していたんだと思ったので
ラストでちょっと違和感。
>>500 桜湯、排水口の掃除くらいマメにして欲しい。
ライオンの口についている謎の結晶……硫黄じゃないなら石灰か。
松ノ湯がなくなると困りそうですが、色んな意味で怖すぎる。
みなさん面白かったです。乙です。
最近のは上手いのが多いな。
だけどアクがないっていうかな。
コンビニの蛇女とか書いていた人はまだ書いているのかな?
女の背中はくねくね、よく動く。皮膚が薄赤く火照っているものだから、桜の刺青も負けず劣らず真っ赤になってきた。
ぺろんと舐めると、ぷるんと震える。偽物の桜でも、見ていると愛おしさが込み上げてくる。
「どうしたの? 手休めちゃって。もうやめる?」
「いや。後で桜湯飲みに行かないか?」
「お酒じゃなくて?」
「ああ。勤めていた工場が閉鎖になって、今無職なんだよ。今年は花見どころじゃないなと思ったらさ。
無理にとは言わないよ」
「風流だこと」
本当は桜湯も、花見もどうでもいい。私は死に場所を捜していた。職を無くしてからは転がって行くのは早かった。
妻は子を連れ離婚届を残し、友人達には借金しまくりで会わせる顔も無い。しかし今はもうどうでもいい。
思い出は煌めいて結晶となり、心を突き刺す。私は死ぬのだ。桜の木の下で首でも括ろうか。
「桜の木の下には本当に屍体が埋まっている」
女は柔らかい太股で私の胴を締め付ける。
「大昔のことだから屍体じゃないわね。きっともう骨よ」
女の舌がざらりと胸を舐め上げた。
「死もね、そう悪いもんじゃないわ」
そういえばこの女とは何処で出会ったのだろう。
「最後だものね。うんと良い気持ちにさせてあげる」
唇は私の耳朶をしゃぶっている。女の声はいよいよ甘く頭の中に響き、恍惚としてきた。
このまま私をくびり殺してはくれまいか?
>506
乙です。
ちょっと「桜湯」の出し方が無理があるかな?
それ以外は上手くまとめられていると思います。
>>506 桜の紋紋のある女は、年を経た狐か大蛇で
「私」を望み通り死に至らしめてくれよう、精気を奪って。
新しいお題いきます。
その1「春蘭」
その2「カナヘビ」
その3「加門七海」
511は却下
その3「海」
今度の御題は難しい。
>512たんの言うように今現在おられる人物を題材にするのは避けた方が良いですね。
と言う事で新しいお題は「春蘭」「カナヘビ」「海」。
頑張りましょう。
黒い夜の海が呼んでいる。波がレースのようにはためいて、男に襲いかかる。
「とても貴女のことが好きでした。
僕は死んでしまって、もう言えないので夢の中で言います」
男はとても綺麗な顔をしているが、暗くてよく見えない。
「貴女は春蘭に似ていて、あ、春蘭というのはゲームのキャラで、
正直言いますとエロゲーなんですが、ともかくとても愛してます」
愛って、春蘭を? ざぶーん。ざぶーん。
「はあぁ、よかった。これ言えて。次言いますね。
僕はカナヘビを飼っていたのですが、僕が居なくなっちゃうと、あと誰も世話できないと思うんですよ。
だから申し訳ないんですけど、僕の母にカナヘビ逃がすよう、言ってもらえませんか?」
言いたかったのは、そっちの方なんじゃない。ざぶん。
「一緒に海に行きたかったなあ。貴女と出会えて本当によかった。ありがとう」
夜中に目が覚めると恋人に電話した。恋人はちゃんと生きていて、
あたしに、こんな夜遅くに電話してくんな、とか、夢見たぐらいで、とか、
言ったので安心した。
朝、普通に起きて会社に行ったら、新入社員の男の子が交通事故で亡くなっていた。
でも、彼、綺麗な顔じゃない。あたしのこと、好きだったのかどうかもわからない。
あたしは彼のお宅に電話して、「カナヘビ飼ってませんか?」と聞かなきゃならないのだろうか?
「カナチョロ、カナチョロだらう」
香港島を東に臨む島の雜踏の中で不意に聞こえてきた故國の言葉はわたしにとって懷か
しさよりも疼く樣な痛みを伴ふものだった。
カナチョロとは金蛇或は蛇舅母とも書かれるカナヘビ科に屬する日本固有の蜥蜴である。
蜥蜴よりもやや細めで、かな色と呼ばれる褐色の體色をしてゐる事からさう呼ばれてゐる。
そんな事はだうでも良い。未だにわたしの事をさう呼ぶ輩を相手に舊交を温める心算な
どわたしにはない。例へ故國を遠く離れた地であっても、だ。
學生時代、皆よりも短躯で痩せぎすと言ふだけで苛められた。カナチョロ。カナヘビ。
足を持つ蛇。つまりは蛇足。餘計なもの。無駄なもの。消し去ってしまひたい過去、しか
し消し去れない思ひ出。
聞こえない振りをして雜踏の中に逃げ込まうとしたが、襟首を掴まれ引き摺り戻された。
「僕はこの春蘭頭に赴任して來たんだ……、お、判った、すぐ行く。すまん今度また會は
う。僕はここで働いてる。必ず連絡してくれよ、懷かしい昔話でもしやうじゃないか」
仕事仲閧轤オき連中に呼ばれ、お前は懷から取り出した名刺に何事か書き込むとそれを
わたしの手に握らせ喧騒の中に消えていった。誰でも知ってゐる一流商社。そして物々し
い肩書き。手書きされたわたしの住まう木賃宿と比べ物にならない高級店……。
お前は知るまい、今、お前がわたしの心の分厚い瘡蓋を無理矢理引き剥がした事を……。
そこから今、わたしの心が眞っ赤な血を吹き出してゐる事を……。
お前は知るまい、この魔都では金次第でどんな汚い仕事でも請け負ってくれる事を。銃
殺、藥殺、撲殺、呪殺……。わたしの少ない稼ぎでも支拂へるのは、さて、どれか……。
>>515 春蘭じゃなくて春麗では? と思いましたが
エロゲーだったら違いますね。
カナヘビ、部屋の壁に釘で打ち付けられているのかも。
>>516 呪殺は効果が不確かなので、銃殺が良いと思います。
速いですね、乙でした。
2chが閉鎖になるから?
>2chが閉鎖になるから?
まだそんなことを
>>515 最初の一行の表現をもっとキチンと考えて欲しい。
むしろまるまるこの一行をカットした方がスンナリかな?
乙でした。
>>516 相変わらず良く考えてあります。
カナヘビのあしらい方も春蘭のこなし方も工夫されてます。
乙でした。
すいませんが、
>>516の方のは「海」って入ってます?
私は見つけられなかったのですが。
>>520 たしかに、海がない。
> 香港島を東に臨む島
のフレーズで、海をイメージしたので気が付かなかった。
516の折り込み忘れでしょうね。
海という文字がなくとも想起させられればOKという考え方もある。
この三題噺の最初の最初の作品で「猫」「下駄」「レタス」で下駄と言う言葉を
使わずに音だけで書いた作品もあった。
まぁ、読んだ人皆が想起できるとも限らないから、織り込んでおくに越した事はないけどね。
>522
素人にはおすすめ出来ない、高度なテクニックだ。
イメージでも可の方が有り難い。
800字ぐらいで無理に言葉詰込むと、文章が不自然になることがある。
てめぇがへたくそなんじゃん、と、言われればそれだけのことなんだけど。
いいね。
「イメージの織り込み方自体が仕掛け」とか出てきそうだし。
すいません。516です。
「海」の入っている部分を削って投稿してしまったみたいです。
以後このような事がないように気をつけます。申し訳ありませんでした。
言葉を想起させられる表現であれば可というのは、……良いですねw
庭先で茂みを、なにやらおまえは指差している。
あ、蛇と思ったら違う。カナヘビ。
蜥蜴じゃないよ。カナヘビ。わかるさ。そのぐらい。
おまえ、可愛い、可愛い、って好きだったものね。
いつも言ってたから、区別ぐらい付くようになった。
カナヘビは気配を察して、逃げてゆく。
そっちは春蘭が植えてあるよう。小っちゃなお足で傷めやしないか。
丹誠込めた花、咲いたんだ。
でも、おまえには関係ないよね。
本当は水の底だもの。
おまえ、死んでいるのだもの。
いやだねぇ。
いくら昔自分の庭だったからって、死んだもんが出て来られちゃ、こっちも困るよ。
そりゃあ、人に頼んでおまえを海に沈めたのはあたしだけどさ。
あれから、もう40年は経っているんだよ。
あたしはしわくちゃ婆ぁだ。
おい、笑うなよ。いやぁな笑顔しやがって。
いいか、あたしが死んだなぁ、おまえの処に化けて出てやる。
>>527 不思議な韻だなぁ、なんか文章に惹きこまれる。
>527
乙です。
正直オレにはさっぱり判らん。
40年も前に殺した相手がカナヘビが好きで、死んだら化けて出てやる……。
やっぱり判らん。
そろそろ次の御題いくか?
一つ目のお題
「編集者」
「みかん」
三つ目「なまこ」
新しいお題は「編集者」「みかん」「なまこ」です。
皆さんよろしくお願いします。
休暇を利用して都会の喧騒から離れる事にした。朝早く家を出て電車とバスを乗り継ぎ、
携帯も見事に圏外になった頃辿り着いたそこは海から遠く離れた山間の寒村。ご他聞に漏
れず過疎の波に呑み込まれそうな村。さてどこで野宿しようと担いだテントと寝袋を揺す
って歩いていると村の外れに一軒の民宿を見つけた。これは助かる。
民宿の女将は飛び込みの俺を快く迎え入れてくれた。この女将が意外な事にこんな寒村
に似つかわしくないスラリとした体躯に知的な瞳のJAL顔の美人ときている。
「風呂、沸いてるど」
後ろから声を掛けられ振り返ると皺だらけの爺が立っていた。彼女の祖父だろうか?
さっそく風呂に入って汗を流して出てくると夕餉の用意が整っていた。山菜と何かの肉
の入った鍋だ。女将が勧める白濁した地酒も驚くほど旨い。それ程酒が強い方じゃないが
いくらでも飲める。その酒の力を借りて疑問に思っていた事を尋ねた。やはり彼女はつい
この間まで都会の出版社で編集者をやっていたと言う。それがどうしてこんな村に聞くと、
彼女は薄っすらと笑いながらこう言った。
「この地のこれを食べたらもうここを離れられません」
確かに美味だ。香り付けは陳皮だろう。しかしこの肉は……。
「春蘭も入れてます。それとお肉は金海鼠の乾物ですね、それにカナヘビ……」
不意に視界が歪み、意識が遠のいていく。地酒を飲みすぎたか……。
「こんな処だ。人をこの地に留めおく為には仕方ね。これは古くからこの地に伝わる……」
視界の隅に先程の爺が現れた。女将が頬を染めてその爺にしな垂れかかった。
なるほどそういう事か……。
うわっ、2回分のお題が盛り込んである。
それにこの元編集者のJAL顔の女将ってポ○ラ社のサイ○ウさん?
面白かったです、乙!
その爺は殿下なのか?
今回のお題は難しかったのでしょうか?
新しいお題に入りますか?
では、一つ目。「湯湯婆」
湯湯婆はゆたんぽとよみます。
↓残る二題は千と千尋関連禁止
二つ目「名無し」
「特殊浴場」で。
>544は「浴場」で良いんじゃないのか?
「特殊な浴場」であれば判る。わざわざ「特殊浴場」にする理由が判らん。
新しいお題は「湯湯婆」「名無し」「浴場」です。
千と千尋の二次創作以外でよろしくお願いします。
私が子供の頃のこと。
母方の実家に遊びに行ったときに初めてユタンポなる物の存在を知った。
祖父の家は田園広がるかなりの田舎にあり、建物も古く暖房といえるものはこのユタンポくらいしかなかったように思う。子供の手で一抱えある陶の入れ物にお湯を入れ、それを包んだ布越しに湯の熱で暖をとるのだ。
私はそれが気に入り、寝るときは言うに及ばず四六時中母親にねだっては中の湯が冷たくなるまでユタンポを抱きしめては遊んでいた。
ある日、祖父と一緒に風呂に入っていたときのこと、
「さんじゅー、さんじゅいーち、さんじゅにー・・・」
湯船につかりながら数を数えている自分の声に混じり祖父ではない別の声が耳に入った気がした。
数えるのを止めて耳を澄ますと下のほうから、
・・・ぅううううぅぁ・・・わたしの・・・わたしの・・・
という呻き声のようなものが聞こえてきたのだ。
見ると湯船に浸かっている私の体の足元に、白髪の長い髪が絡みつき、浴槽の床から皺々老婆の顔がこちらを睨んでいるのが見えた。
不思議と恐怖というものを感じなかったが、そのことを祖父に伝えると妙に考え込んだ顔をしてからすぐに私は温まることなく風呂を出された。
その夜、いつものように浴槽の残り湯をいれて温められたユタンポと一緒に布団に入って寝た。
元々私は寝つきが良く夜中に目覚めるという事はないのだが、妙に寝苦しさを感じ暗い寝室に目を開けてしまった。
ぽちゃん・・ぽちゃん・・と、水が跳ねる音がユタンポから聞こえた。
つづく
と思ったけど、つづかない。
落ちは、なんやかやあって元受がななしのゆたんぽが送られてきた。という感じ。
父ちゃん俺には文才なんてないぜ。
湯たんぽ、浴場が登場しました。名無しは続きで?
もう少し言葉を刈り込んだ方が良いように感じました。
続き、お待ちしてます。押忍。
>>548 あんまりだ!
諦めるのは早いぞ。押忍。
トレーニングの場ですので、まず制限内で書き上げる事を目指して下さい。
トレーニングの場なので、
「ここまで出来ましたがどうしましょう?」でもいいんじゃないかな。
目指すことが重要なのであって、力つきてもかまわないと思うが。
>>551は、ここを守って行こうとしていることを、ひしひしと感じるけど
皆上手になろうとして、ここに書き込む訳だから、
途中の姿を見せてもかまわないのでは。
ここでトレーニングしてれば、そのうち御題もおさまってくるようになるよ。
>>547 独自のあじわいがあっておもしろかったです。
後編を望む。
>>547のつづき
一緒の部屋に寝ていた母を見るとやはり熟睡しており、規則的な寝息を立てている。
寝起きで朦朧としていたが聴こえる水音が気になり、すでに冷えている布で包まれた陶の物体に耳を重ねた。
・・シク・・・・・・シクシク・・・・・・
微かに・・・ほんの小さな声であったが、女性のすすり泣く声か聴こえていた。
今から考えてもおかしいのだが、その時突如私の心が乱されるように不安定な悲しみに襲われ、涙があふれ続け体の水分がなくなってしまうのではないだろうかとぼんやり思いながら気を失ったようだ。
恥ずかしい話、ここから後のことはあまり思い出せないのです。
断片的にですが、ふり起された感触の後に祖父と母の心配そうな顔が並んでいたのをうっすら覚えているくらいでした。
その数年後くらいに祖父も他界し、その家も人手に渡りました。
後の私は何事もなく今日までいるのですが。
そしてつい先日、私宛にこんな物が送られてきたのです。
差出人不明、なにも書いてありませんでした。
この名無しさんから届いた、あの時のユタンポ。
私はこれをどうすればいいのでしょうか・・・。
まともに推敲してないのでかなり文字数オーバー。
しかも
>>547まで書き終わって気づいたのですが、これって怪談じゃないですよね。
怪談とホラーの違いがいまいちわかりませぬ。
>>549 レスありがとうございました。
800字の文にしてはやっぱり無駄が多すぎますよね。
>>551 すみません、あの時ここを見つけて寝るまでに書き上げようと思ってて、睡魔か勝ち挫折しました。
うpするときからつづきは書かないだろうと思っていたので中途半端でしたが、せっかく書いたのだからと無理やりうpしてしまいました。
>>552 レスありがとうございます。
望むかたがおられましたので後編書かせていただきました。
別のことで煮詰まり、これに現実逃避してたという噂もありますが・・。
次ぎ書くことがありましたら、まともに書いてからにします。
「坊樣、聞いてくれぬか。母者は獨り、魑魅魍魎が跋扈すると里の衆に恐れられる、鳥も
通はぬ奧深い山中に入り、打ち捨てられた炭燒き小屋で某をひり出した。母者はそこで某
を獨り育み、ある冬、某が寢てゐる隙に姿をくらました。目覺めた某は母者を求めて雪に
覆われた山の中を彷徨い、己が何處に居るのかも判らなくなった頃、山の民と出逢うた。
籠編みや鎌研ぎなどしながら流れ歩く山の民、山窩衆と呼ばれる人々の獨りだな。その男
はまるで一端の大人に對するやうに幼い某に、はぐれたのであれば共に來ぬかと言ふてく
れた。山犬の巣の樣な處であった故、あのままであったら腹をすかせた彼奴らにすぐに骨
にされておったらう。母者も彼奴らに屠られたのやも知れぬ。今となっても判らぬがな。
名を尋ねられたよ。じゃが母者は某を坊としか呼んでおらなんだ。さう告げると名をく
れたよ。眞っKじゃよって、ヤニ、とな。
山窩の里に辿り着くと、幾人もの山窩衆がおった。
川のせせらぎを堰き止めたそこへ燒けた石を投げ込んで拵えた露天の浴場にすぐさま放
り込まれたよ。某の身體を洗って皆驚いておった。某の肌の色がK檀の如くであったせい
であらう。風呂上がり寒さに震へてをると今度は燒けた石を襤褸布でくるんだ物を抱かさ
れた。それは母の懷の樣に温かったよ。つまりは湯湯婆代はりだ。山で生きていく山窩の
智惠よ。かうして某は山窩衆となった。なった心算じゃった。しかし異形の者は所詮受け
入れてくれなんだ。……坊樣、某はそも何故にこの世に生まれ落ちたのかヘへて下さらぬ
か。判らぬのか、……斯樣な事も判らぬそんな頭は要らぬはなぁ」
里里の童歌にも謳われる程に恐れらるる闇鍾馗は白い齒を剥き出して笑ふと獨鈷の樣な
形のウメガイを取り出し、怯え震へる雲水の首にあてがうと、横に拂った。
>>553 完結させてありがとう。きれいに終わってます。
もう少し推敲すると、ぐっと良くなりそうです。
ユタンポ……使うのは止めた方が良いと思う。
押入にしまっておくと、夜な夜なすすり泣きが……
>>555 皆に恐れられる闇鍾馗だが、異形であるが故に肉親との縁の薄い、
哀れな坊でもある。(某・坊・坊、ぼうの頻出が面白かった)
悲しさと恐ろしさのせめぎ合いが上手いと思いました。乙です。
>555
いつもながらお見事。
闇鍾馗の独り語りだからこの場合の「某」は「それがし」と読むのだろう。
新しいお題にいきますか。
1つ目。「文鳥」
「乱暴」
では最後、やはり時期的にも「チョコレート」
新しいお題は「文鳥、乱暴、チョコレート」です。
レッツ執筆。
バレンタインデー
チチチチチチチ・・・。
朝6時。
最近引っ越してきて文鳥を飼うようになった。朝はこいつが目覚まし代わりになってくれる。
私は真っ暗にしないと眠れない体質なため、この文鳥にも太陽の光が届かない暗闇でよく朝だと分るものだといつも感心する。
今日はバレンタインディであり、女子社員からのお義理のチョコをパクつきながら仕事に精を出していた。
昼休みの社食から戻る途中で声をかけられた。
「あの・・」
と、消え入るような声の先にはとてもかわいいイッツマイどんぴしゃって感じの女の子が立っていた。
彼女は恥ずかしいのかぎこちない動作で手に持っていたチョコを私に差し出すと、そそくさと足早に去っていった。
彼女に見覚えがなかったので、同僚に容姿や髪型を手がかりに聞いてみても皆そんな人は知らないという。
不審に思いながらも有頂天で家に帰り机の上に置いたそのチョコをみてはニヤニヤしていた。
灯りを消し床についていると、チチチチチチチと鳥の鳴き声に起された。
朝かと思い起き上がろうとするが、体が動かない。金縛りだ、と恐怖を感じたその瞬間、文鳥がまるで狂ったかのように鳥籠の網に乱暴に体当たりをしては鳴き続けている。
首も動けず何も考えられずに天井を見つめていたが、かさこそと机の方から物音がしはじめ、人がいるような気配がある。その気配が窓に移動し、ドンとガラスにぶつかる音と共に「痛っ!」という聴いたことがあるような女性の声がした。
文鳥が鳴きやみ、気配が消えたと思ったときには体が動くようになっていた。
恐る恐る起き上がり灯りをつけた。
カーテンの外を見ると案の定まだ暗い。
それから机を見るとチョコが消えており、代わりに一枚の紙が置いてあった。見ると「すみません間違えました」と書かれていた。
チチチ・・と鳥はちいさく泣いた。
その日、私は会社を休んだ。
>>563 人間て、悲しいな。
チョコレート一つで一喜一憂してさ。すみませんじゃねーよ。
……文鳥、おまえも一緒に泣いてくれるのかい。
ありがてえ、おまえだけだよ。
乙でした。
あれ、雨でもないのに顔が濡れてよ、ママン。
乙。
毒男の悲哀、ですか?
笑えましたw
先だっての縱目の銅器が臺灣の故宮博物院に思ひのほか高く買ひ取られたさうで歐古
堂は良い地所を手に入れたらしい。近々に新裝開店する豫定との事で、暇な折にでも訪ね
て欲しいと言ってゐると昨晩カヲリ君が言っていた。
如月も半ば、常であれば一年で最も寒さ嚴しい時期だが、些か氣候が亂れてゐる樣で卯
月の頃の樣な陽氣だ。ならばと外套を羽織り早速冷やかしに行ってみる事にした。
カヲリ君が亂暴に書き付けた地圖をョりに向うがなかなかこれが難しい。大きなKい犬
が鎭座してゐる(らしき)神社の前を過ぎ、赤い半纏を着た女兒が佇む(との)天麩羅屋
や猫又が玄關に居座る(との)鰻屋、笑ひ續けるお齒K女が手招きする(らしき)西洋料
理店などが軒を竝べる賑やか(?)な通りを過ぎて新裝開店闍゚の歐古堂に辿り着いた。
ちょうど骨董を陳列していた店主が目聡くわたしに氣付き近寄って來た。
「元は江戸の頃から續く老舗の造り酒屋だったさうです。骨董を陳列するには充分過ぎる
程です。あ、暖かいものでも如何ですか。カヲリ君、先生がお見え」
導かれた中庭には瀟洒な洋卓があった。そこへエプロンドレスに身を包んだカヲリ君が
ボォンチャイナの茶器に茶色い飮料を滿たしたものを盆に載せてやって來た。屋根の上で
遊んでいた鳥がカヲリ君の肩に舞い降りる。文鳥だ。迷ったのだらうか。
「どっから來たとか知らんどん、うちはこん子に氣に入られたごたる。さっきから離れん。
あ、温めたチョコレェトじゃっどん、先生飮んでみらんね、美味かど」
その時カヲリ君の肩の上の文鳥が飛び立ち、同時にカヲリ君の手にした茶器が割れた。
「まぁだ、女ば穢れっち嫌ふオオミワ樣が居座っちょ」
カヲリ君はさう呟くと零れたチョコレェトを指先に付け、ふっと微笑み、ひと舐めした。
>>566 どんだけ良い値で買ってくれたんじゃろか。<故宮
後半の畳みかけるような展開が良かった。
女嫌いの蛇がまだいるようだが、カヲリ君が店番をしている限り
居なくなるのも時間の問題であろう。
文鳥を肩にとめたカヲリたんギザカワユス。
新しいお題いきますか。
一つ目。「一つ目」妖怪でもファーストでも。
「快闊」
\ヽ /: : : : : V: : : : : :ヽ,. /l
ヽ l:i, l: : : : : : : : : : : : : : :V: : l ヽ丶
l: :ヽ,l: : : :ハ: ::/`'-、: : : : : : l \ヽ / ̄ヽ,
. + l : : : :/V Y ヽ/l: : : : l __|__ / あ │
l:: : :i',-‐ヘ '二 ̄ l: : : : l │ │ l. │
i:: : l 三/  ̄ .l: : : :レ'l │ |. │
,__i;: ::l , , ,ヽ ' ' ' レ`i: : :l <. |. |
\\. ヽ; : : :l 、--‐r ソl: :/ l, l
\ヽ 丶、l, `' ‐'゛ ,i-'/ ヽ,_/
ヽ丶 ヽ, _, -ヲ|:_:フ
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ヽ |ヽ _______|、
チ楽生│ ┼ ,-┴‐`'二;;:::::::::::::`l _ ,,,.--‐- 、
ク.し.き. |\ ,l:::;;;:::::::::::::_;; --‐' ゛ ̄
シい.る ゝ ヽ , -'` ‐-‐ '  ̄, -‐ : :..
ョ.な の | 丶,-‐' ., N /l
.l. あ ./ ,-' ./i ,-, .::l .,- ,i _Y /--、
、 ./ l .,-┤レ /ァ .:::i >-(___)_‐<:. ,-‐
.`‐-‐ヘ | .>-(゛`i 二>  ̄/λヽ; ̄:. .::,-'ヽ、
ヽ │ !イ`l'"ト-' .:: :.... . . .レ'.:: ヽl. ...;-' :. :::.l:ヽ
┼ | ..:l,λ/ .: ::l
| :::| : :: l
l ::::l ..:: :..: l
じゃ、三つ目「短歌」
新しいお題は「一つ目、快闊、短歌」です。
(快闊は快活でも良いみたいですね)
白豆腐 山嵐と化す 針供養 一つ目小僧も 是にて快濶
字餘り
座蒲団一枚!
土曜の夕刻、ちゃうど出掛けやうとしていたところにいつもの郵便配達の年がやって
來て封書を渡された。差出人はカヲリ君の母親、つまり亡き妻の妹からである。
既に宴が始まってゐる時刻だ。今夜は歐古堂の新裝開店祝賀會に招かれてゐる。急がな
ければと、手渡された封書を袂に入れた時、壁に掛かった電話が鳴り始めた。
宴は既に始まっていた。ミルクホォル望春の女給達が嬌聲を上げてゐる。その中心で歐
古堂の店主が赤ら顔で快濶に呵呵大笑してゐる。その横で獨逸民謠を原語で朗々と謳い上
げてゐる巨漢は大角君だ。圓井寫眞の主がそんな被寫體を片端からキャメラに収めてゐ
る。そんな人混みの中にカヲリ君を探すが何處にも見當たらない。
不意に肩に何かがとまった。文鳥だ。指を伸ばさうとすると飛び立った。文鳥の後を追
ふ樣に中庭に出るとそこにカヲリ君がいた。中庭に置かれた瀟洒な椅子に腰掛けてゐる。
「……カヲリ君、君に傳へねばならない事がある。先程、本邦の獨逸國の領事から……」
「一つ目は手紙じゃろ」とわたしの言葉を遮りカヲリ君が手を差し出してきた。
言はれて思ひ出した。郵便配達の年から出掛けに封書を受取り袂に入れていたのだ。
便箋を讀んでいたカヲリ君が顔を上げた。目に溢れんばかりの涙を湛えて……。
「先生、知っちょる。天眼通があってん、どんこんしょんなか事も……あっとよ」
便箋には先程國際電話で知らされた出來事の原因が記されていた。元畫家志望の獨逸人
を失墜させる事に失敗した、と。そして偈頌であらうか短歌が一首添へられていた。
――行く末に 横たふ闇を 拂ふなら この身滅すも 後悔はせず――
「ほんのこつ正義感ばっかい強して……。先は見えちょった筈やっとけ……」
>>576 乙でした。
賑やかな宴会の様子は、こののちの暗い時代を歴史として
知っている者には胸がふたぐ光景であります。
先が見通せても、なんともしがたいことがあるカヲリ君の悲しみを
少しは理解出来るような気がしました。
そろそろ次のお題よろしいでしょうか?
お題その1「風」
「菩薩」
「西」
出揃ったようですね。
では次回お題は「風、菩薩、西」です。
怪作、奇作、待ってます。
余命半年が一年経っても、まだ生きてるってぇ?
奇跡ぃ?
いやぁ、新興宗教はちょっと。
風が吹いても痛みがあったのに、もうなくなった、
と言われても、おれ痛み、とくにないから。
高血圧なんて墓場まで、持ってくつもりよ。
もちろん糖尿病だって、今や女房の代わりだ。
お天道様が西から出たって、あ、そうか、
もともと太陽は西から出るな。
ともかく宗教はやらない。
うちには菩薩さんがいらっしゃるから。
そりゃもう霊験新た。
おれも菩薩さんのおかげで、ここまで来れたのよ。
おまえの神さんより上等だぜ。
なんなら比べっこしようか?
582さん、乙です。
一応ここ怪談創作板ですので、それらしい話にして欲しかったですね。
「霊験新た」は「霊験あらたか」
もう少し推敲しても良かったかも知れません。
とは言え、お題が出されて一時間。すごく早かったですね。
>>582 菩薩信仰をしているのに、宗教はやらないと言い張る
わけのわからなさ。いるいる、こういうおっさん。
>もともと太陽は西から出るな。
どこか別の惑星の話? もしやSF? と思いました。一瞬。
乙でした。
最近、難しいお題が多くてなかなか投下がなかったけど
今回はたくさん投下されると良いな。
586 :
582:2007/02/28(水) 19:25:14
すみません。
太陽西から出ませんよね。間違いです。
恥ずかしい。こんなまちがい。
お天道様が東から出て西に沈んだってやらない、って、
あ、あってるか。
に訂正させて下さい。
587 :
名無し物書き@推敲中?:2007/03/04(日) 23:36:59
菩薩のような女。
派遣でうちの部署にきている久美子さんはよくそう言われる。菩薩様といっても、久美子さんの場合、皮肉の意味が強い。とにかく、馬鹿がつくほどのお人好しなのだ。
社員からのいやがらせかというくらいの大量のコピーのお願いをそれは仏様みたいににっこりと笑って、わかりましたってこなしてしまう。お茶がまずいと言われたら文句一つも言わずに、はい、いれなおしますね、とあのすべてを許すようなにっこり笑顔でいれなおしてくれる。
そんな久美子さんと、食堂でいっしょになった。
私は久美子さんが嫌いではない。というより、お人好しという他に印象がない。
久美子さんが笑顔で私の分のお茶もいれてきてくれた。笑うと垂れた目尻に三本線がはいる。それが彼女のおっとりした空気を作り出していた。
私たちはしばらく世間話をした。二人とも家が新宿より西だから同じ方向だとか、今日は風が強かったとか。他愛のない話の後
「仕事、大変じゃないですか」
私は少し意地悪な気持ちで久美子さんに尋ねた。
「ええ、朝が早いし、子供もいるし」
笑顔のまま久美子さんが答えた。可哀想に。菩薩のような女。この人は本当に何もわかっていないのだ。
「困ったことがあったら、何でも私にいってくださいね。力になりますから」
私は哀れみからそういった。少しなれなれしかったのは、わかっている。
久美子さんの菩薩のような顔が、私と同じ、30女の顔に変わっていた。
「あなたみたいな人、よくいるのよね」
そういうと、久美子さんは席をたった。
食堂を出て行く久美子さんを見ている。後ろ姿なのでよくわからないが、きっとまた菩薩様の顔に戻っているに違いないという確信がある。
私は慌ててお茶を流し込んだ。いつもより、苦かった。
読み直したら全然怖くなかったorzすんません。
589 :
名無し物書き@推敲中?:2007/03/05(月) 00:11:52
よく考えると怖い。
久美子さんみたいな人は、本当にいるから怖い。
591 :
名無し物書き@推敲中?:2007/03/05(月) 03:32:47
gj
お人好しの仮面は久美子さんの処世術。
その久美子さんが仮面の下の顔を見せてくれるなんて
よほど見くびった態度をとったのでしょう。反省汁。
乙でした。
雨がふってきましたね……風もつようございます……ほら……
火がゆれていますでしょ……こんな破屋ではどこからか風がはいってきますものね……
どうぞ……もっとお近くに……そう……ふふ……
そとの雨音がうるそうございますね……なにか…いえ……夜もふけました……。
――こうして一心に火のゆれを見ていますとなにかこころがずーとひろがっていくような
気がしますねぇ……ふしぎなこころもちがいたします……
ずーとはてしもなくひろがっていきます……そしてすーとこころがしずまっていくような気がします……。
――いまなにかきこえませんでしたか……いえ……そうですか……はい……
やさしそうな顔です……まるで……菩薩様のような……きれいな顔です……。
――やはりなにかきこえますね……ええ……
雨の音ですか…そうですか……人の声ではないのですか……そうですか……。
火がゆらゆらとゆれていますね……寝ないのですか……そうですか……
火のゆれであなたのおかおがまるで……ふふ……あ……
雨がしげくなってきましたね……西の山は大丈夫でしょうか……
あそこが通れなくなると……ええ……こまります……。
――いえ……もうなにもきこえませんよ……雨と風の音だけです……どうしましたか……
こんなにさぶいのに……ひたいに汗が……なにかきこえますか……そうですか……。
――火の加減でしょうか……あなたのおかおが……なんていいましょうか……
あまりに青く見えるのですが……
いつもの郵便配達の年の聲に表に出ると強い風が吹いていた。風は強いが冷たくはな
い。さういへばこの冬は雪のひとひらも舞わなかった。氣の早い木蓮など早くも白い蕾を
ふっくらと膨らませてゐる始末だ。このまま春になってしまふのだらうか。冬が來ないと
いふのも少々物足りない氣もするが、寒いのが苦手なわたしにとっては願ってもない。重
い外套を羽織らなくて濟むだけでも有難い事だ。これでカヲリ君が……。
あの宴の夜からカヲリ君は西歐骨董商「歐古堂」の店番を休んでゐる。店主には體調を
崩したと傳へてあるが、新裝開店直前といふ事もあり一刻も早いカヲリ君の復歸を望んで
ゐると葉書にはしたためてあった。
實は、あの夜からカヲリ君はすっかり塞ぎ込んでしまひ、自室に閉じ篭ってしまった。
以來食事も滿足に攝ってゐない。一應部屋の前に盆に乘せて食事を置いておくのだが、結
局せいぜいひと箸かふた箸付けただけ。わずか薄い障子一枚であるが、入って欲しくない
といふカヲリ君の強い思念が傳はってきてとても開けられなかった。
しかしいくら何でもこれ以上はさすがに身に障る。カヲリ君は大切なわたしの身内だ。
わたしは意を決してカヲリ君の部屋に向った。
障子の棧に手を掛け開けやうと手を伸ばした瞬閨Aその障子がサッと開き、中からげっ
そりと頬のこけたカヲリ君が現れた。痩せこけたせいで元々小さくはなかった目が更に大
きく見える。いや目の下の濃い隈のせいか。……多分その兩方のせいであらう。
「……先生。母ちゃんは生きちょった。やっとかっと見えもした……」
さう呟くとカヲリ君は微笑みを浮かべた侭ゆっくりと目を閉じた。その菩薩の如き神々
しき微笑に、わたしは暫し我を忘れて見惚れてしまったのであった。
>>593 雨に降り籠められた旅人、なりゆきで夜伽(遺体に付き添うこと)に
つきあうことに、って感じですか。
どんどん怖くなっていきます。
>>594 カヲリ母は、スパイじゃったのか?!
生きて日本の土を踏まれることを祈る。
帰路シンガポールあたりから電報が届くに違いない。
新しいお題。その1。
「金箔」
その2「足」
その3「壷」
その4「オメコ」
出揃いましたね。
三題噺ですから4つめのお題は残念ながら見送らせて頂きますw
そんな訳で次回お題は「金箔」「足」「壺」。
これはクトゥルー物も期待できそうですね。
皆さまの力作、お待ちしています!
>三題噺ですから4つめのお題は残念ながら見送らせて頂きますw
_.-~~/
/ /
/ ∩∧ ∧ バーカバーカこんな事で泣くかよ!!!!!!!!!!!
/ .|( ・ω・)_
// | ヽ/
" ̄ ̄ ̄"∪
____
/ / パタン
 ̄ ̄ ̄ ̄
____
/ / ウワァァン!!
 ̄ ̄ ̄ ̄
602 :
名無し物書き@推敲中?:2007/03/12(月) 11:17:47
保守
窓を開け放ち、書齋に風を引き込む。殆どカヲリ君の畑と化した庭の片隅に殘された木
蓮の大振りな蕾が綻び始めてゐた。この目にも鮮やかな眞白き花を家内は殊の外愛でてい
た。毎年この季節になると家内はこの花を見上げては少女のやうに燥いでいたものだ。そ
の家内もまういない。早いもので家内が身罷って既に半年經たうとしてゐる。
玄關の方からいつもの郵便配達の年の聲が聞こえてきた。葉書は例によって歐古堂の
店主からである。巴里に滯在する彼の息子から新しい品が届いたが、中に銅器が含まれ
てゐるとある。店頭に竝べる前に見に來ないかとある。これは足を伸ばさざるを得まい。
矢も立ても堪らず表に飛び出した。客で賑わう百貨店のある表通りを經て、ふた筋ほど
奧まった勸工場に向かふ。例によってひと氣のない閑散とした勸工場の奧に辿り着いた。
おかしい。何故か照明が落とされてゐる。店主の姿もない。しかし陳列してある品々に
わたしは釘付けになった。わたし好み、つまり古代中國の銅器の類ばかりだ。
開けやうとしたが戸は閉まっていた。わたしは窓越しに整然と竝ぶ銅器の壷などを食
ひ入るやうに眺めた。金箔を施された饕餮紋の目玉と目があった。觀てゐるだけで何やら
引き込まれさうだ。視界がその金の目玉を中心に囘り始め、足元が不確かになり何處か地
中の奧深くに落ちていく樣だ。何處か遠くで幾人もの野太い笑ひ聲が響き始める。
と、その時不意に柔らかい香りがした。同時に外套の袖を強く引かれた。
「良かった。閧ノあふた……。こん頃に吹く、性質ん惡か風に誑かされたごたるね」
アンテイクドォルを抱えたカヲリ君がわたしの袖を摘んで肩で息をしながら立っていた。
思ひ出した。歐古堂はここから移轉したのだ。成る程窓の向かふには何も乘せてゐない
棚だけ。そしてまう一つ思い出した。あの柔らかい香りは家内の好きだった木蓮の……。
>>603 うちのあたりも木蓮が咲き始め日当たりの良い枝は満開ですが、
そういえば、木蓮がどんな香りなのか知りません。
時候の挨拶はこの辺で、そろそろカヲリ君の母上が登場する頃ではないかと
思っています。亡き妻の妹……期待してます。
というか、この一連の三題噺は、特殊な才能を持つ血筋の女達を
語っているように思えます。
乙でした。
しかしどんなお題でもカヲリ君の話を紡ぎ出しますね。
次回も楽しみにしています。
乙でした。
新しいお題その1
「鎧(よろい)」
その2「電気」
その3「按摩」
新しいお題は「鎧(よろい)、電気、按摩」です。
皆様、よろしくお願いします。
609 :
名無し物書き@推敲中?:2007/03/13(火) 17:30:17
とうに電気の途絶えた廃屋に迷い込んだ哀れな按摩が、額に汗して空の鎧を揉んでいる。
>>609 おやゆび怪談でふね。
よく出来てまふ。
平家物語っぽいね。
>>612 平家物語を語る「耳無芳一の話」を思い出した。
その人は、半年くらい前から私の勤めている美容院に来るようになった客だ。
たまたま初めての時に担当して以来、私を指名してくれるようになったのだが。赤い唇、
つやつやと白い肌、ものすごい美人ではないが、女の目から見てもぞくぞくするような色
気がある。
そんな彼女が母より年上らしいと知った時には驚いた。
「うふふ。若さの秘密ね。知りたい?」
その言葉に、思わず私は頷いていた。
彼女は私を自宅に招待してくれた。店のある駅から15分ほど歩いたところにある、一軒
家だ。一人で暮らしているらしい。
半地下に下りると、一面が鏡張りになったトレーニングルームになっていた。
隅の方にはエアロバイクやダンベルなどが置いてあり、コンポとCDラックもある。
その横に鎧があった。
全身を覆う西洋式の鎧だ。
思わず上げた不審の声に、主はふふっと小さく笑う。
「電気按摩機」
冗談だと思った。だが、彼女は背を向けて鎧の前に立ち、鈍い音をさせる。中央に切り込
みがあって、胴体と面の前部が観音開きにひらくようになっているのだ。中には深紅の厚
手の布が敷き込まれている。
よく見れば、端からは電気コードがでて、コンセントに差し込まれていた。
「昔プロイセンで使われていた本物を加工したの。試してみて」
彼女は私の背を押す。
あまりのばかばかしさに、好奇心が抑えられなくなった。
わたしの体がすっぽり収まると、彼女がスイッチを押す。
微妙な振動が始まった。効いているのかいないか。だが、しだいに体の奥の方が振動に
共鳴し始める。
ふと生臭い匂いがした。ぞくり。と腰からなにかが沸き上がってくる。
嫌な感じだ。
出ようとする私を無視し、彼女は蓋を閉めにかかる。そして、閉じていく扉の隙間から
微笑んだ。
「どうせ抱かれるのなら、鋼鉄の処女よりも、たくましい騎士のほうがいいでしょう」
>>614 好奇心に引っ張られて、自ら危険に近付く女を笑えない。
まさに”好奇心は猫をも殺す”
やはり若さの秘密は若い女の生き血かー。
(処女の生き血に限定しないのが現代?)
乙でした。
>>614 乙でした。
800字オーバーなのが気になりましたが、内容的には悪くないと思います。
最後の台詞をもう少し捻って欲しかったかな?
ものすごくいっぱい書いてる人が、肩の力を抜いて書いた感じ。
後半もう少しひねった方が、話としてはおもしろかった。
読みやすかったです。
カヲリ君に肩を貸して貰いながら勸工場を出ると外はすっかり暗くなっていた。
「人は自分の欲しかモンば目の前にすっと心ば奪わるっ。そげん時が一番とり憑かれ易か」
成る程確かにあの時わたしは窓の向かふに竝ぶ銅器に心まで奪われていた。
「好きじゃっち思た時ゃ、心に鎧を纏いやんせ。さっきは伯母さんが守ってくれちょった
で閧ノあふたどん、心ば持っていかれたらいくらうちでん、どんこんしょんなか……」
矢張り先程感じた家内の氣配は氣の迷ひなどではなかったやうだ。
しかし勸工場を出てだいぶ經つと言ふのに背中に氷柱を差し込まれたかの如き寒氣が拔
けない。そのせいもあって身體が小刻みに震へてしまふ。
「先生、氣を緩めたらいかんど。しつこか奴じゃ、まぁだ諦めちゃおらんごたる」
そのやうに言はれても如何樣に振る舞えば良いのか見當が付かない。
途方に暮れてゐると唐突にカヲリ君がわたしに向き直り抱きしめてきた。衣服越しでは
あるがカヲリ君の體温と柔らかい感觸が傳はってくる。わたしの背中を赤子をあやす樣に
ポンポンと叩いた。するとそこの強張りが解ける。背中だけではない肩や首の付け根、こ
めかみなどに直接手を當て輕く觸れてゐるだけのやうだが、觸れた瞬闔繧「電氣が流れる
かのやうな衝撃があり、次の瞬閧ノは柔らかく解れていく。宛ら腕の良い按摩に揉まれて
ゐるかのやうだ。それに連れて身體がホカホカと温まってくる。
しかしこんな所を他人に見られてはと思ひ、思はず通りを見渡したが不思議な事に誰も
いない。いや人はいないが、代はりに何匹もの猫がわたし達を取り巻いてゐる。
「……あとは、こん子らにョもかいね」
さう言ってカヲリ君が指を鳴らすと猫達がわたしに向って躍り懸かって來た。
>618
三題噺のネタが、話を制限してるんじゃなくて、
広げたり深めたりしているんですよね。
連作ものでこんなことができるなんて……
>615〜617
初投下でドキドキしていたので、感想やアドヴァイス頂けてものすごく嬉しいです。
次に生かせるように頑張ります。
それと字数の数え方、間違えていたようです。
指摘して頂いてありがとうございました。
「按摩の親父」
湯治場でのことだ。
近隣を廻って歩いてるという按摩が来たので、ひとつ揉んで貰うことにした。
「それでは、失礼しやす」
朴訥な感じのする按摩の親父は、ぺこりとお辞儀をすると私の体を揉み始めた。
体を揉まれながら他にする事も無いので、私は親父と取り留めのない世間話に興じた。
親父は愛想よく応じていたが、話が最近の景気に及ぶと、
「……今はめっきり仕事が減りましてねぇ。ええ、何ですか、電気マッサージ機とかいうんですかい? あれにお客さんをみんな持ってかれましてねぇ。こうして山奥の湯治場を廻ってどうにかこうにか食い繋いでおりやす」
そう言って寂しそうに笑った。
その様子に少なからず同情した私は、励ますつもりで言ってやった。
「そりゃあ、大変だね。でも、親父さんくらいの腕前なら機械なんかに負けないと思うがなぁ」
「いえいえ、わっしなんかもう、ただの年寄りで」
「いや、本当だよ。俺なら毎日親父さんにやって貰いたいくらいだ」
「ありがとうございやす」
嬉しかったのだろうか、ツボを押す指の力が強くなった。
小一時間ほど経っただろうか。
全身隈なく揉み解され、体中がポカポカとして心地よい。
「いや、とてもいい気持ちだった。また頼むよ」
私が代金を渡そうとするのを、親父は手で制して、
「今日はありがとうございやした。わっしゃ、久しぶりに腕を振るえやした」
そう言ってぺこりとお辞儀をすると、驚く私を尻目にスーッと消えてしまった。
次の日の朝。
「ウグ、グググ……」
寝床から起きようとすると、まるで鎧を着たように体が重い。
筋肉を強く押し過ぎたことによる凝り返しのようだった。
――すいやせん。嬉しかったもんで、つい力が入っちまいやした。
背後で、照れたような親父の声が聞こえた。
>>618 ぬこよ、先生をどうするつもりじゃ。
カヲリくんがカヲリくんじゃなかったらどうしよう。
カヨリくんとか。
>>620 揉み返しが来るほど揉むとは、まだまだ修行が足りぬ按摩だ。
按摩の金字塔を目指せ。
人の良い幽霊というと、鼻にピアスのロッカー幽霊を思い出す。
>>618 このラストは「週刊てのひら」のあのエピソードにつながるのかな?
しかし今回は前回の「金箔、足、壷」の続きでしたね。
乙でした。
>>620 巧くまとまっているのですが、20字40行を大幅に超えてしまっていますね。
表現を変えたり、無駄な言葉を省くなど更にひと工夫欲しいところです。
とはいえ、面白かったです。乙でした。
>>621-622さん
620です。感想ありがとうございました。
>20字40行を大幅に超えてしまっていますね。
800字以内ならOKと勘違いしていました。申し訳ありません。以後、気をつけます。
>>623 わしもだいたい八〇〇字以内だと思っていた。
いつの間に20字40行の決まりになったんだろう?
擬古の人は40字で折り返していて読みやすい。
新しいお題いきますか。
その一「硯」
その2「蜆」
その3「親」
殿下の800字クトゥルーの規定によると
「上限は800字(=1行20字×40行)以内。
改行などの余白も字数に含まれます。
必ず1行20字×40行のフォーマットに合わせて御執筆ください」
とあるから、まぁそれでいいんじゃない?
もちろんここに投下する際に読みやすさの点から一行四十字にするのは投下者の自由って事で。
今回のお題は「硯(すずり)、蜆(しじみ)、親」の漢字のつくりが「見」の漢字つながり。
こういうのも面白そうですね。
机に現れた腐った蜆を定規でこじ開け視ると、硯で殴り殺したはずの母親が覗き返していた。
>>628 早速乙です。
つくりが「見」の漢字が並んで不気味なイメージが立ち上がる。
凶器は硯、被害者は母親。意味不明なことを呟く息子。
覗き返す母親の目は蜆のようなぬばたま。
「見」を続けたい気持ちは判るが「定規で」はない方がキレが良かったかな?
乙でした。
>>630 三角定規ならどうだ?(うまいことを言ったつもり)
子どもは野原でうとうとしてしまったらしい。何か奇妙な夢を見たようで、ひどく疲れ
ていたが、日が暮れる前に帰らなければ怒られる。慌てて駆けだした。
家の裏手に回り、勝手口から台所の土間に入り込んだ。母親の姿は見えなかったが、飯
の炊けるいい匂いが漂ってくる。腹が鳴った。
流しに伏せてある桶の中を覗くと、浅く水を張った皿の上に蜆がひしめき合っている。
口元が綻ぶ、貝の味噌汁は彼の好物だった。
「ただいま。お腹空いた」
しばらく口をきいていなかったせいか、声がしわがれて低い。
返事はなかった。土間に続く板の間にも、寝間にも、両親と妹の姿が見あたらない。
ふとみると、文机の上に硯が無かった。墨がすられることはめったになくても、常に机
の上にあって、この家の主の権威を主張し続けている父のお気に入りの硯がだ。
急に不安になった。
狭い家だ、姿を隠す場所など無い。家族は彼を一人置いて、どこかに行ってしまってい
るのだろうか。
泣き出しそうになったとき、玄関が開いた。入ってきたのは母だ。しかし、彼女は立ち
止まると、怯えた表情で彼を見つめた。子どももまた、違和感に立ちすくむ。
突然、母が悲鳴のような声をあげて抱きついてきた。その背は彼よりも小さく、黒々と
していた髪には白い物が混じっている。
その時、十三、四の娘が入ってきた。誰かに似ている。と子どもは思う。
「兄ちゃん……なの」
娘はうめいた。
どこかで巨大な鳥が飛び立つ音が聞こえた。少年、いや若者の記憶の奥でなにかが蠢く。
だが、それは夢の中に封じ込まれ、もう形をなすことはない。
>>632 家や暮らしぶりが丹念に描かれることで、
子どもの不在・空白の時間が際だつ。
シジミや立派な硯の折り込み方も巧い。
題をつけるなら「兄帰る」
乙でした。
全ての客が歸り、やうやく獨りでぼんやりしてゐると結構な雨足で雨が降ってきた。
まとまった雨が降ると居ても立ってもいられなくなる。別に幼な兒の樣に雨の中を走り
囘りたい譯でも水溜りを踏みつけて囘りたい譯でもない。單に發掘に行きたくなるのだ。
雨でどこかで土砂が崩れ、新たな山肌が剥き出しになってゐると思ふだけで心が騒ぐ。氣
が遠くなる程の闢yに埋もれていた石斧などの石の器物。それがわたしを呼ぶのだ。
個人が趣味で石器蒐集するとなると全て自力で掘るしかない。これがなかなかに重勞働
で、故に山肌を削り、固い土をやはらげてくれる雨は、そんな輩にとってはまさに天の惠
みと言へる。勿論そんな地盤が緩んだ山に入るのだから危險は伴ふ。さう、わたしの父は
わたしが幼い頃、水を含んで脆くなったシラス臺地の土流に呑まれたと聞かされた。
「嬉しさうに雨空を見上げて……、お前もあの人と同じ。石にとり憑かれた石狂ひ……」
何度も何度も聞かされた母の呟き。
母は家事以外の時、いつだって決まって硯に眞っ直ぐに墨を立て靜かに磨っていた。元々
は瓦であった物に牡丹や龍の浮き彫りが施された中國の古い時代のそこそこの逸品。「文房
第一の具にして四友の一なり」と稱される硯。父亡き後、書家として――その實、子供相
手の書道の先生だが――家計を擔ってきた母に殘された數少ない父が出土した想ひ出の硯。
母がその硯で墨を磨れば磨るほどその髪は白く、そのうなじは細く、その背中は小さく
なっていった。しかしそんな母を止める事などわたしには出來なかった。きっと母はあの
硯を介して父と語らっていたのだから……。そして墨が磨り減る樣に母は……。
雨が上がった。濕った空氣の中をちらちらと蜆蝶が飛んでゐる。時はすっかり春である。
家を出、背負袋をひと搖すりすると、母と父の位牌とぶつかる乾いた音がした。
「入って良いかね」
返事を待ってカヲリ君の部屋の障子を開けると小さな白い物がいきなり飛んできた。新
しい歐古堂で迷ひ込んできた文鳥だ。文鳥はわたしの脇をすり拔けて開け放った渡り廊下
の窓から笑靨花、つまり蜆花の白い花の上を越えて空高く飛び出していった。
「心配せんでん、いっき戻っ來っ……」
カヲリ君は硯に向って墨を磨ってゐる最中であった。眞っ直ぐに背筋を伸ばし一心に墨
を磨ってゐる。文机の上には七夕で用ゐる短册のやうな紙片が置かれていた。
「お母樣に手紙かね」
カヲリ君によると、カヲリ君の母親、つまりわたしの義妹は獨逸國の將來の指導者に逆
らって現在流浪の身にあるらしい。
「手紙じゃなか、こいは護符。先生用のお守いじゃ」
カヲリ君は手馴れた樣子でその短册にたっぷりと墨を含ませた筆で見慣れぬ文字やら記
號の如き物を描き連ねてゐる。
「昨日の晩はたまたまおった猫どん達に先生に纏わりついちょった奴らを喰らうて貰たば
って、いつでん出來るもんじゃなかで、普段から寄って來んごと、な」
さう、昨晩カヲリ君に抱きしめられて身動きとれぬ状況で幾匹もの猫達に飛び掛れたの
だ。とは言へ、わたしやカヲリ君には毛先ひとつ觸れはしなかったが……。
「あひは魂狩り。うちの田舎でびっくいしたっち意味やっどん、惡か靈とかを拂ふ意味も
あっ。昔乍らの遣い方でな。こいをされた人が驚くもんじゃっでそげん言ふげな」
さう言って護符をわたしに差し出すと、カヲリ君は菩薩の如き笑みを浮かべた。
>>634 もしかして欧古堂店主の独白? と思って読みました。
そのあたりは曖昧ながら、石に憑かれた男達の業が
恐ろしくも哀れでありました。
位牌を持って歩く時はサラシにでも包んだほうが良いと思います。
乙でした。
>>635 前回の解説にもなっていてお見事。
猫はそんなものも喰うのか。
カヲリ母、先生の義妹さんが無事でありますように。
乙でした。
新しいお題。
その1。「千代紙」
今回は4作品。それぞれ個性的で面白かったです。
投下された皆さん、乙でした。
ではお題その2「カミソリ」。
その3「皿」
では次回の三題噺、お題は「千代紙」「カミソリ」「皿」と言う事で……。
我が舌を剃刀で削ぎ、怨敵を「もてなす」料理として盛る皿は、首吊りの古木で漉いた千代紙でなければならぬ。
千代紙で皿を折るこども。
何を入れると問うと、剃刀片手にわたしの小指を握る。
いやいや、剃刀では無理というもの。
せめて包丁ぐらいは用意してもらわねば。
>>641 >>642 短い字数でも、風景が見えてきます。
空気感に共通した物があるのは、剃刀の使われ方が似ているせいでしょうか。
外で、ガシャリと低い音がした。最近この辺りを縄張りにしている猫が、なにかをこわ
したのかもしれない。表を伺った床屋の店主は、扉の向こうに珍しい客を見つけた。
「どうしたんです、今日は」
「ちょっとこっちにこられたんで、久しぶりに、親父さんにやってもらおうと思ってね」
長年のお得意だったが、数年前に九州に引っ越した男だ。
ちょうど他に客はいない。さっそく椅子に座らせ、少し白髪の増えた髪を刈り始めた。
「ああ、あれ、まだ使ってくれてるんだ」
男の視線の先に、千代紙を張り込んだ小物入れがある。
「ええ、家のやつが気にいってますからね。大事にしてますよ」
「あいつに言ったら喜ぶな」
以前、彼の妻が大量に作って近所に配り回った物だ。
「向こうはいかがですが」
「悪かないよ。ただ、親父さんほど気持ちよく髭をあたってくれる床屋だけはみつからな
くてね」
「そりゃあまあ」
店主は、まんざらでもなさそうな笑顔で剃刀を動かす。
たしかに男の髭は硬くて癖が強く、綺麗に剃るのはなかなか難しい代物なのだ。
仕上がると男は満足げに顎をさすった。
「ああ、さっぱりした。これで気持ちよくいける。猫のおかげだな。お代は、すまないが
香典替わりということで許してくれないか」
箒をとろうとしていた店主が振り向くと、そこには誰もいなかった。あわてて外の通り
を確かめに行ったが、そこにもいない。ふと見ると、玄関先で、盛り塩の皿がひっくり返
っていた。
数日後、くだんの男と親しかった客から、彼が長患いの末に亡くなったと聞いた。
これは、私がまだ幼い頃の話だ。
祖母が縁側で何事か呟いていた。
「千代紙貼リマゼ、キレイナ小箱。千代紙貼リマゼ、キレイナ小箱……」
「ばあちゃん、何しちょーだ?」尋ねると祖母は、
「○○ちゃんは、まだ小さいけん、知らんでもいいことだがね」
言いながら、祖母は、手に持っていた何かを身体の陰に隠した。
私はそれを見とがめて「ばあちゃん、それなんだぁ?」と祖母に迫った。
祖母は困った顔をした。幼い私はお構いなしだった。祖母の腕を取って、
隠したモノが何なのかを見ようとした。
祖母は、あきらめたように、隠したものを私に見せてくれた。小さな箱だ
った。うす茶色の障子の紙のようなものでくるまれていた。
「オトムライをしちょーだがぁ」祖母が答えた。
「オトムライ?」
「年に一回、こうやってオトムライをせんといけんだがね。大事なことだけん、
○○ちゃん、絶対、邪魔せんでごしなさいよ」
ばあちゃんはそういって、真面目な顔をした。
祖母の雰囲気が少し怖かったので、私は「ふうん」と答えて、邪魔にならな
いように、祖母のすることをずっと見ていた。祖母は、しばらくすると、指
に剃刀を当てた。出てくる血を小皿に塗り、さらにその血を糊にして、箱に千
代紙を貼っていった。ずっと、「千代紙貼リマゼ」と呟きながら貼っていた。
祖母が血を出したときは驚いたが、その後はさして面白くなかったので、私
はすぐに飽きてその場を離れた。
それから、三年後に祖母が入院した。その年、私の家を含む数件が、出火原
因のわからない火事で燃えた。母と姉はそのとき亡くなった。隣のおばさんも
亡くなった。向かいのおばあさんも亡くなった。我が家の周囲で、ことごとく
女性が亡くなった。
私は成長してから「オトムライのせいか?」と尋ねたが、祖母は、違うとし
か言わない。
だが、祖母が、毎日、母と姉の位牌に手を合わせながら、謝っているのを私
は知っている。
>>644 死者の訪問という定石にお題を上手にからめて
手堅くまとまっています。
理容師の腕に覚え有りな所が良いです。
町の床屋を長年やっている感じ。
「お代は、すまないが香典替わりということで」
の一言が引っかかった(自分で死者だとばらす?)のだけど
畳みかけるような表現の一つとしてありかとも思った。
乙でした。
>>645 オトムライはコトリバコみたいなものかと思いました。
箱の中のものを、箱に千代紙を貼ることで慰めているのかとか
色々なことを考えてしまった。
不条理で伝奇めいたいやな感じ。
乙でした。
>>644 きれいにまとまっているのはいい感じ。
猫が盛り塩をひっくり返したから、霊が入って来れたってのに二読目で気付いた。
オチをもっとすっきりはっきりした方がいいかも。
あと、ガシャリって音は低くはないんじゃない? ってのと、
長患いでなくなったんなら、医療機関がエンバーミングを施すはずだから、
そこで髭をそられるんじゃ? とか思った。
エンバーミングじゃ嫌だから、馴染みの床屋に……ってことだったのかもしれないけども。
とりあえず乙。
>>645 生理的に嫌な読後感だ。じわじわと怖いとも気持ち悪いともとれる気持ちになった。
最後の段落が効いてるな。現在の主人公が祖母をどのように見ているのかとか、
そういう所まで気になった。
ただ、喋っているセリフが島根の方言だったり、女性だけが皆亡くなったりと、
丸パクリとはいわんが、ことりばこを意識しまくりなのは、ちょっとな。
あとは、もう少し推敲した方がいいとおもた。
とりあえず乙。
>>647 >医療機関がエンバーミングを施すはずだから、
はずはありません。
ご遺体を清拭し、肛門や鼻腔に脱脂綿を詰めたりしますが。
ひげ剃りやお化粧は、身内がやったり、葬儀業者に頼んで
専門の人にやってもらったりします。
>>648 そうなの? エンバーミングって、遺族が遺体に触っても大丈夫なように処置を施すことだと認識してるから、
血液感染の可能性とか考えると、髭剃りも医療機関がやりそうな気がしてた。
家内の遺品など整理していたところ、家内にとってもわたしにとってもほろ苦い想ひ出
の品が出てきた。小さな桐の小箱。それが幾枚もの千代紙の隙閧ノ隱れるやうに……。
子寶に惠まれる事のなかったわたし達夫婦であるが、實は糠喜びした時があった。しか
しそれはすぐに落膽に變はった。さう、それは人の子ではなかった。俗に言ふところの葡
萄っ子、つまり鬼胎である。醫學的には胞状奇胎と言ひ、胎盤絨毛膜の異常攝Bに過ぎな
い。家内の胎の中には長い體毛とイクラの如き小嚢胞の塊が育っていたのだ。
結局人の子として生まれる事のなかったその子の一部をこの桐の小箱に納めたのだった。
そしてその子に付ける筈であった家内の考へた名前は家内の妹の産んだ女兒に讓られた。
鬼胎の末、二度と子寶の授からない身體になった事を醫師から言ひ渡された後に……。
そんな事を思ひ出し乍ら千代紙の中に伸ばした指先に鋭い痛みが走った。見ると剃刀で
切ったかの樣に人差し指の腹が切れてゐる。たたっと血が千代紙の上に、そして桐の小箱
の上に滴った。その桐の小箱の上に落ちた血がすっと小箱に沁み込んでいく。同時に桐の
小箱が幽かに震へたかのやうに見えた。
「……そひはまう、燒いた方が良か」
いつの閧ノここにやって來たのか、カヲリ君はわたしを押し退けて血の付いた千代紙と
桐の小箱を掴むと、それを白磁の大皿の上に盛り、庭先でそれに火をつけた。
煙が廣砂で朧な春の空に向ってゆっくりと昇っていく。
「おはんが名も、おはんが想いも、おはんが業も、うちがねっかい繼がせてもろで……」
不思議な事に白磁の上には僅かな殘り滓も殘らなかった。殘ったものと言へば、さう、
わたしの指先の鈍い痛み位であらうか。
>>650 幼い子だと、善悪の区別もついていなかったりするから
つい悪戯をしてしまったのでしょう。
荼毘に付してあげて良かったと思います。
カヲリ君は長生きしますように。
乙でした。
>>641:こんな呪法もあるやも知れぬと思わせるパワーが短い文章内に漲ってます。
>>642:皿に小指を盛ろうと思いたつ幼な心にヒヤリとしました。個人的には剃刀で切られる方が怖い。
>>644:昭和の風景。現在の美容院や1000円理髪店ではこんなエピソードは生まれ得ないでしょうね。
>>645:大事なオトムライがたった独りの老婆に託されているという危うさが良いですね。
>>650:どんなお題でもシリーズとして物語が進んでいくその力量には舌を巻きます。
と個性的な5作品でした。投稿者の皆さまご苦労様でした。
新しいお題よろしいでしょう?
お題その1「開幕」
その2「袋」
浮気
お母さんが浮気をしたので、お父さんはかんかんです。
あ、夫婦喧嘩の開幕。
お父さん、ぐーで殴った。
お母さん、爪で引っ掻く。
畳み込むように、お母さん、お父さんのお腹蹴る。
お父さん、ピンチ。
もう勝敗決まったかと思ったら、
お父さんゴミ袋を引っ付かみ、お母さんの頭にかぶした。
お母さん、息出来ない。
頑張れ、お母さん。
そのうちお母さんぐったりしてきて、動かなくなっちゃった。
足がぴくぴくしている。
あれ、死んじゃったかな。
>>652 理容師免許をもつ美容師もいるので絶対にないとは言いませんが
美容院ではひげ剃りはしませんので
現代でも昭和でも美容院では生まれないエピソードでしょう。
(ひげ剃りは理容師免許をもつ人だけができる)
>>655 もう少し怖さなり、悲哀なり込めて欲しいですね。
ま、早いから……、でもやっぱりもう少し練って欲しい。
658 :
名無し物書き@推敲中?:2007/04/10(火) 00:12:58
今、私の手には古い守り袋がある。十五年前、家を出た母が、唯一残してくれた物だ。
母はわたしを台所の隅に呼び寄せると、小さかった手にお守りを握らせ
「いい。これはいずれあなたにとってとても大事な物になるの。誰にも。お父様にも見つ
からないように隠して持っていらっしゃい」
お父様にも……。その言葉の理由が分かったのは、翌日のことだった。母が突然に姿を
消したのだ。父は必死になって母を捜し、やがて見つからないとなると怒り狂い、家に残
っていた母の物は全て捨て去った。言いつけ通り隠していなければ、この守り袋も焼き捨
てられていたことだろう。
二回りも年が違ううえ、体を壊し寝込みがちだった夫をいとった母が、若い男と逃げた
のだろうと世間は言い。おそらくは、父もそう考えたのだ。男に頼ることなく女一人が姿
を消すことが、まだとても難しい時代であったし。何より、あまりに母は美しかったから。
そう、父がやつれればやつれるほど母は美しくなっていったのだ。娘の私でさえ胸が痛
くなるほどに、白く冷たく夜の闇のように生き生きとして。だからこそ人は卑しい噂をた
てたのだろう。
しかし、母と引き替えのように、父は健康を取り戻し、七十を越した今も元気でいる。
その父が、最近私を見るとき、ひどく辛そうな表情を見せるようになった。父にそっく
りだと言われていたわたしが、次第に母に似てきたからだ。
見合いで結ばれた夫を、本心から愛しいと思うようになった。その時から……。
今、私は起きあがることのできなくなった夫の枕元で、母の残した守り袋を握りしめて
いる。この袋を開けるべきなのか。それとも、たとえ新たな悲しみの開幕を誘うことにな
ろうと、娘の手に委ねて母と同じ道を選ぶべきなのか。決めかねたまま。
すみません。上げてしまったうえに、
浮気の文字を字数あわせの時に削ってしまいました。
9行目「若い男と浮気をして逃げた」ということで、お願いします。
執筆に詰まると外に出てあてもなく歩き囘る癖がわたしにはある。不思議なものでそん
な氣紛れな筈の散歩も、いつしかいつも同じ筋を歩き、決まった角を曲がってゐる事に氣
付いた。これでは新たな發想も出來ないに違ひないと、川沿ひの土手に向かったのはちょ
っとした浮氣心と謂ふかほんの氣紛れに過ぎない。
土手の手前にはどこまでも續くかの如き白き花瓣舞い散る櫻竝木の隧道が月明かりに照
らされていた。流石にこのやうな時刻ともなるとひと氣はない。これだけの景色を獨り占
めにする贅澤にひとり悦にいってゐると何處からともなく微かに幽かに哀愁を帶びた「美
しき天然」の調べが聞こえてきた。
ハテ、何處から聞こえてくるのであらうと首をめぐらしてゐると、櫻の隧道の彼方より
近寄る者が目に留まった。月明かり、櫻吹雪の舞い散る中、白塗りの道化師がクラリオネ
ットを片手で吹き鳴らしつつ、さらに首から下げた袋からチラシなど放りながらこちらに
向かってやって來る。
このやうにひと氣がない時分にあのやうな事を行っても無駄であらうに……。
「坊ちゃん、孃ちゃん、寄っといで。ご當地初お目見えは歐州仕込の本格派。まもなく開
幕の運びと相成りまする……」
道化師は踊るかのやうに足など踏み出し、わたしの眞ん前まで來た。一瞬目が合ったと
思ったが道化師はわたしを全く無視して突き進んでくる。わたしは慌てて道を讓った。
わたしの前を道化師が通り過ぎる。
道化師の後ろには幾人もの子供たちが長い長い列を作っていた。
クラリオネットの奏でる「美しき天然」の音色が高く低く夜空に吸ひ込まれていった。
>>655:もう少しひねりが欲しかったですね。
>>658:なぜか「エマノン」シリーズを思い出しました。その能力は血筋によるのかお守りなのか? 気になるところです。
>>660:夜の桜並木。最後の部分でもう一捻りが欲しかった気がします。
投下者のみなさん、ご苦労様でした。
そろそろ新しいお題いきましょうか?
お題その1「日記」
お久しぶりですね。
その2「赤」
その3「五月雨」
では今回の三題噺、お題は「日記」「赤」「五月雨」という事で。
その4「手遅れ」
667 :
名無し物書き@推敲中?:2007/05/02(水) 14:21:07
保守
日付も変わろうかという時刻、もはや日記代わりになったブログの更新をしながら、ふ
と窓の外を眺めると、朝から途切れる事なく降り続いていた五月雨が上がっていた。
この雨のせいで一日家に篭っていた。考えたら一歩も外に出ていなかった。
タバコ吸いたい、……そう思った。
コンビニでタバコを買って店を出ると、見上げた夜空にクッキリと月が浮かんでいた。
真っ直ぐ帰らずにちょっと遠回りしたくなった。それほどまでに綺麗な月だった。
月を見上げながら歩いた。半日以上タバコを吸わなかったせいで嗅覚が敏感になってい
た。湿った夜気に季節の花の香が混じっているのも、それと、それほど海に近い訳でもな
いのに僅かながら潮の香も混じっているのも判る気がした。
そんな匂いに誘われるように歩くうちに地面がアスファルトから水溜りだらけの舗装さ
れていない土に変わった。公園だ。ポツリポツリと明かりの灯る夜の公園。秋になるとド
ングリ拾いの子供連れで賑わうだけあって、カシやクヌギが例の塩素系漂白剤のような臭
いを撒き散らしていた。少し早い気もしたが……。それと、海辺の町で生まれ育った自分
には馴染み深い、大量の魚のハラワタがあるかのような強い淀んだ……。
臭いを紛らわせる為に買ったばかりのタバコに火をつけ煙を深く肺の奥まで送り込んだ。
一気に吸ったせいか全身が重く、けだるくなった。そこで早々に部屋に帰って、寝た。
翌日起き出してテレビをつけた。真夜中にパトカーがうるさくて寝不足だった。ニュー
スが昨夜すぐそこの公園で通り魔による婦女暴行殺人事件があった事を伝えていた。
灰皿にはわたしのものではない赤い口紅の付いた吸い差しが一本、置かれてあった。
無理なくお題も消化され、情景が目に浮かびます(ついでに匂いも)。
乙でした。
新しいお題「五月晴れ」
「ラーメン」
エロ本
折角の五月晴れだというのに部屋にこもり、やる事と言えば2ちゃに書き込むか、
エロ本を眺めつつカップラーメンを啜るだけ……。
こんな奴にとり憑くんじゃなかった……。
おひさ♪
なんだ、外は雨降ってんの?
でも明日は真夏日かも知れないってさ。ま、オレには関係ないけどね。
あ、そうだ。五月晴れってさ、元々は梅雨の最中の晴れ間の事だったらしいよ。
ほら陰暦って言うんだっけ? 昔の暦の五月って今の六月じゃん。
だからさ五月雨の合間の五月晴れって訳さ。
え、何? お前、まぁだ変な話とか集めてんの?
変わった事って言われてもさ……。
そうそう、最近、視線っつうの? なんか気配を感じるんだよね?
パソやってても、ラーメン啜ってもさ、なんかどっかから見られてる様な、さ。
エロ本とか見てると絶対オレの後ろから覗き込んでる気がするんだよね。
霊とかお化けとかもそんな事に興味あんのかね?
同じ出来事を視点を変えてみたんですね。
怪談を語る時、このような視点を変えて書いてみるのは良いトレーニングです。
乙でした。
677 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/11(月) 18:23:48
保守
678 :
名無し物書き@推敲中?:2007/06/22(金) 13:18:59
そろそろ新しいお題にするか?
ではw
お題その1「坊主」
その2 「靴下」
その3「停電」
「猫の足先がすべて白いのは、四つ足袋といって、縁起が悪い」
お婆ちゃんはそういったけど、お母さんは猫が大好きだった。
「白い靴下を履いているのよね」お母さんはいう。うふふと笑って、うちの『靴下』と捨て子の猫に名をつけた。
お婆ちゃんは「きっと不吉なことが起きる」と予言した。「だってこの子、目も四つ目だ」
お婆ちゃんのいうとおり、靴下の目の上に、平安時代の人の眉毛みたいな白い点が二つある。
そしてそれは、うちの植木が丸坊主にされた時の証拠とされた。
「だからいったんだ。この猫飼ってからろくなことがない」
うちが留守の時、植木屋さんがお隣と間違えて、とお母さんは弁明したけど、お婆ちゃんは聞きゃしない。
「そういうことを凶事というんだ」
お母さんはしゅんとなった。
「このあいだ玄関に蛇がいたことだって、停電になってビデオがとれなかったことだって」
いやあ、お婆ちゃん。停電になってビデオがとれなかったのは凶事じゃないんじゃない。蛇は僕だけどね。
「タマがいた頃はこんなことなかった。あんないい猫が死んでしまって。
他の猫はもう飼いたくないよ。う、う、…」
お婆ちゃんは涙ぐんだ。お母さんも溜息をついている。
僕も泣こうとしたけど、死んでいるので涙は出なかった。
タマとは僕の名まえだ。
死んでからもこの家を去りがたくて、ここにいる。靴下が悪い奴じゃないということはわかるけど、
それでもあいつ気に入らない。
絶対この家追い出してやる。
アパートの廊下へ出ると、突き当たりに見慣れぬダンボールが落ちていた。
「坊主が入っています」という張り紙がしてある。
高さは俺の膝くらいしかないし、幅も20cmくらいなので坊主が入っているとは思えない。
上部が少し開いていたので、覗いてみた。
中には黒い紳士用の靴下を結んだものが入っていた。それがもぞもぞと動いている。ハムスターでも入っているのだろうか。
まさか、ここに小さな坊主が入っている……と想像すると、ゾッとした。
突然あかりが落ちた。停電か。
辺りは闇に包まれた。
箱の中で縛られた人間が暴れる気配がする。
今年は空梅雨のやうで、元々渇水に強いといふカヲリ君の植ゑた芋だけは々としてゐ
るが、其れ以外の中庭の草花や木々はすっかり萎れてしまってゐる。況や農家など大變で
あらう。一刻も早くまとまった雨が欲しいものだ。
と、例によって例の如く玄關の方で郵便配達の年の聲がした。カヲリ君はまだ女學校
にゐる時刻である。だうせいつもの歐古堂からの葉書であらうと出てみると豈圖らんや大
角君であった。開けてみると和綴じの草紙と便箋が入っていた。代々祈祷師の家柄の舊家
から讓り受けたさうで、その言之葉の有り樣から後世に編纂し直されたものであらうが、
闊痰ミなく珍本であるとの事。是非カヲリ君に讀ませてみて欲しいと結んである。
と、がさりと植ゑ込みを掻き分け何者かがこの書齋に面した中庭に囘りこんで來た。カ
ヲリ君かと思ひ見やると、薄墨の袈裟を纏った見慣れぬ雲水が獨りぽつねんと立っていた。
雲水は口の中で何事か呟くと手にした錫杖を振り上げ、地に突き立てた。
途端に坊主の羽織る袈裟と同じやうにKい雲が何處からかいくつも寄り來たりて瞬く
に空を覆い盡した。呆氣にとられてゐると重い雲の狭閧ゥら地を震わすやうな雷鳴と共に
光が煌き、凄まじい衝撃にわたしは家ごと搖さぶられた。
氣が付くと庭先に面した縁側でカヲリ君がぐずぐずに濡れた靴下を脱いでゐるところで
あった。邊りは暗く、叩き付ける樣な大粒の雨が降り續いてゐる。坊主の姿はまうない。
足を拭き終へたカヲリ君は縁側からわたしの書齋に上がると髪から雨水を滴らせながら
照明のスヰッチを入れた。が、點かない。だうやら停電してゐるやうだ。
先程の顛末を話すと「そげなもんがあれば雨入道も呼ばるっ」と床の草紙を指差した。
成る程此れは珍本である。
一週間経ったし、次のお題行く?
お題その1「夕立」
686 :
名無し物書き@推敲中?:2007/07/04(水) 04:26:25
「壺」
お題その3「踏み切り」
次回お題は「夕立」「壺」「踏み切り」ですね。
了解!
690 :
名無し物書き@推敲中?:2007/07/27(金) 19:25:02
保守
保守
涼を求めんと窓を開け放った途端、文字通り油の煮滾る音そのままの蝉の鳴き聲が降り
注いできた。窓の向かふに覗く中庭ではカヲリ君の丹燕桙゚た薩摩芋の葉がこの日差しに
もめげずに々と繁ってゐる。庇に下げた風鈴はチンとも鳴りはしない。
と、「先生、お葉書です」と玄關の方からいつもの郵便配達の年の聲がした。流石の彼
をしてもこの暑さは堪へるらしく、聲色に元氣がない。ならばと玄關に坐らせ、冷やした
麥茶など振る舞うと大仰に喜び、喉を鳴らして一息に呑み干す。
渡された葉書は例によって例の如く歐古堂の店主からである。女學校が夏休みになった
際には是非ともカヲリ君に店の手傳ひをお願ひしたいとある。ついでに中國の古い時代の
銅の壺が手に入ったともある。ふむん、しかしついで呼ばわりとは失禮ではないかな。
「夕立でもくれば涼しくなるのでせうが、この天ではそれも期待出來ません。全く配達
にはつらい季節です」と言ひながら年が腰を上げた時「もいっき、雨が降っど」と、カ
ヲリ君が歸ってきた。
「そこん、踏切ん處で雨小僧が遊びよったで、うちが家に戻るまで待つごとョんだで、も
いっき降り出すど」
カヲリ君の言葉が終はらぬうちにあれ程騒がしかった油蝉の鳴き聲がぴたりと途絶え、
一氣に空が暗くなり、大粒の雨がひとつ、ふたつと落ちたかと思ふと、やがて桶をひっく
り返したかのやうな雨が降り始めた。おまけに雷まで鳴り出す始末である。
「暑さはこれで和らぐでせうが、せめて僕の配達が終はるまで待って欲しかったな……」
恨めしさうに空を見上げる年に「降り出したもんはどんこんしょんなか」とカヲリ君
は言ひ放ち、無邪氣に手を振ってみせた。これには年も苦笑ひするしかあるまい。
かんかん、と踏み切りの警報が鳴る中、僕は列車が通り過ぎるのを待っていた。田園の
中、真直ぐに続く田舎道には陽炎が揺らぎ、肌を焦がす太陽と相まって、今が夏の直中で
あるというのを再認識させてくれた。こんな日には、祖母が用意する壺漬けの梅干しと白
米が恋しい。
ごとんごとん、と低く唸るような音を立てながら、目の前を貨物列車が通り過ぎていく
。乱暴な風が髪を揺らすのと同時に、汚物のような臭いが、ぷん、としてきた。反射的に
臭いの元を探って辺りを見回す。
何時の間にか、隣に泥で出来た人形が居た。背丈は僕と同じ程度か。
余りの事に、僕はそれを凝視する事しか出来なかった。泥人形は、此方を見るかのよう
に、頭らしき部位をぐいと捻った。捻れた場所から、ぼたぼたと濡れた泥が落ちていく。
それは僅か数秒だったのだろうが、僕には何分にも感じられた時間だった。
唐突に、びちゃり、と盛大に飛沫をあげて、泥人形はその場に崩れた。微熱く、不快な
泥が頬に撥ねた。
むわり、と湿度が高くなっていく。辺りに土埃に匂いが立ちこめていた。近くで雷が鳴
っている。夕立が近い。
帰ったら、祖母に話してみよう。ぼうっとした頭で僕はそう考えていた。
訂正
土埃に→土埃の
>>692 郵便配達、とことん報われんキャラだなw
そろそろ新しいお題行く?
お題その1「ひぐらし」
ここまで過疎ってるとお題を出すのも申し訳ない気がするんだが喃
この程度のペースのスレなんて山ほどあるだろw
お題その2「ゆれ」
うみねこをお題にされる前にその3「絶壁」
では今回のお題は「ひぐらし」「ゆれ」「絶壁」ということで。
何やら演歌の世界っぽいお題が集まりましたねw
氣象臺の豫想など稚兒の下駄占いと大差はない。今朝の新聞に掲載されていた豫報では
午後から曇り若しくは雨になるとの事だったが、何の何の見事なまでの天である。全く、
國際協同極地觀測の爲と稱しながらもその實、殆ど野中某氏個人の盡力にて富士の頂きに
通年觀測所など設置されて久しいが、一向に豫報の的中率が上がった氣配などない。氣候
を讀むなど小賢しい人の驕りに他ならぬ。平安の頃、呪術師や陰陽師が占っておった頃と
如何程の變はりがあらう。
いっかな涼しくならぬ空を恨めしげに見上げ、噴き出す汗を手拭いで拭う。先程汲み入
れたばかりの足元の盥の水も早生温くなってしまった。
これは興津の水口屋にでも出掛け避暑と洒落込むか。さしもの猛暑と謂へども、彼の地
であれば既に蜩など鳴き始めてゐる事であらう。すぐさま電話で宿の空き具合を確かめて
みると滿室だと謂ふ。何とかならぬかとョみ込むと普段は使ってゐない離れならばと謂ふ。
それで構はぬと傳へて電話を切り、切符の手配をすべくすぐさま麻のシャツにパナマ帽と
いふ出で立ちに着替へて陽炎搖れ立つ街中に躍り出た。噎せ返る樣な暑さの中、目指す驛
舍に向い歩くうちに、餘りの暑さに意識が飛びさうになる。平地を歩いてゐる筈なのに急
勾配の山坂を歩いてゐる樣だ。閧烽ネく驛舍だ。ここを踏み出して……、と不意に腕を取
られた。振り返るとカヲリ君がわたしの腕を攫み、首を左右に振ってゐる。何事かと見渡
すとわたしはいつの閧ノやら百貨店の屋上に立っていた。あと數歩先は絶壁である。
「ヒダルガミじゃろかい、じゃっどんこん雨で涼しゅうなれば、まう良かろ」
成る程パナマ帽にぽつりぽつりと雨垂れが落ちてきた。しかしわたしはまう充分に涼し
い。その證據に、ほれ、此の樣に震へが止まらぬ。
この横綱の何もかもがキライだった。
あんこ型の体型のゆらゆらと揺れてしまりのない下っ腹も、
一時間も掛けて結い上げた髷があっというまにずり落ちていく絶壁頭もキライだった。
なにより自分は幕下とはいえ相撲取りであるのに、付き人のようにこき使うのが腹に据えかねた。
すり鉢に鶏の挽肉と味噌、ニンニクと生姜をいれて混ぜ合わせるのが部屋の鳥つみれの作り方で
今回特別に庭の楡の木にとまっていた蝉をいれてみた。
横綱はひと味違うと喜んで、次の日もつみれを私に作るように命令した。
私はまた楡の木から蝉を捕まえ、さらに台所の粘着テープに捕まってる甲虫も足すことにした。
深い甘みがあって昨日より美味しいといわれた。
それから一月後、私には二つの悩みがあった。
うちの部屋の秘蔵のちゃんこ鍋のレシピ
−鳥1キロ・クマゼミ5・ひぐらし3・ゴキブリ8・ニンニク3かけ・味噌大さじ3−
これを台所の料理ノートに書き残すかどうかと、秋になって蝉が手に入らないことだ。
次のお題行きますか?
お題その1「氷」
では、その2「眼」
ほいじゃその3「屋台」
706 :
名無し物書き@推敲中?:2007/09/03(月) 17:35:41
保守
「いらっしゃい!」
暖簾をくぐると、店のオッサンが威勢よく迎えてくれた。最寄り駅近くのガード下。いつも素通りしている屋台のラーメン屋に、なんとなく今日は入ってみようかなという気になった。漂ってくるあまりに旨そうな匂いの誘惑に負けたのだ。
「ラーメンに煮タマゴ」「あいよ!」
オッサンがグラグラと煮えたぎる鍋の中に麺を放り込むと、端っこの席で黙々とラーメンを啜っていた客が金を置いて、黙って出て行った。「毎度ありぃ!」と、それでも威勢よくオッサンはその背中に声をかける。
「無愛想な客だな」「へい。なんかウチの常連には多いんですよ、あんな方」
オッサンは茹で上がった麺の湯を切って手際よくスープの入った丼に放り込み、チャーシューに葱、それに煮タマゴの乗ったラーメンを「お待ち!」と私の前に置いた。スープを一口啜ってみる。旨い、実に旨い。こんなに旨いスープは初めてだ。
「それはね、ダシに秘密があるんですよ。ウチのは特別なんでね」「特別?」「えぇ、実はね、大きな声じゃ言えませんが人間、それも小さい子供からからダシを取ってるんですわ。大人はねぇ、油っこいのが多くていけないんで」
真面目くさって話すオッサンに思わず吹き出した。たしかに都市伝説でよく聞く話ではあるが、今どきそんな使い古されたネタでは子供だって怯えはしまい。
「あぁ、やっぱり古かったですかね?」
頭を掻きながらオッサンが水の入ったグラスを私の前に置いた。その中から、氷に閉じ込められた眼球がじっと私を見つめていた。
うひぃ
朝から何やら街自體が賑やかだと思へば、今宵は祭だと謂ふ。ここから左程離れてゐな
い神社で催されてゐると、先程葉書を届けに來た郵便配達の年がヘへてくれた。神社と
は以前カヲリくんと石花を探しに出掛けた、牛頭天王を祭神にしてゐるあの神社である。
夏も終はりである。折角の機會なので冷かしがてら出掛けてみる事にした。
薄い麻の着流しでつらつらと行くと、成る程既に神社に續く道沿ひに綿菓子、氷菓子を
始め樣々な屋臺が軒を竝べ、客引きの聲が囂しい。ひと際人だかりしてゐる一角を覗きこ
むと驚いた事にカヲリ君が眼鏡を掛けた袴姿の女性に何やら言ひ咎められてゐる。この女
性がなかなかに凄まじい劍幕で、成る程これでは物見高い人々が集まってしまふのも仕方
がない。
何故斯樣な處で伝統ある我が校の生徒が香具師紛いの事を行ってゐるのかと詰問してお
るところから、この袴姿の女性はカヲリ君の通う女学校の教諭と思われる。カヲリ君はカ
ヲリ君で懸命に辯明してゐるのだが、如何せん訛りがきつくて傳はらない樣子だ。
「失禮。わたし、カヲリ君の後見人をしております元東京帝國大學ヘ授の西園司と申しま
すが、カヲリ君が何か。先刻からわたしの古くからの友人であるこの店の主に言傳に來て、
店主が小用に立ってゐる閧セけ店番を仰せ付かっただけとの事だが」
餘り好きではない言ひ囘しであるが、この手の人種には權威を示すのが效果的である。
案の定、件の女性は米搗き飛蝗の如く頭を下げ、その場より立ち去った。
「魂で語いがなっで、勿怪ん方がなんぼもマシじゃっど」と、頬を脹らませるカヲリ君が
手を何度も何もない空間に滑らせてゐる。
だうやら例のこの神社に住まう大きなK犬がそこに居るらしい。観たいものである。
ウンコの味についてですが、正直苦いです。でも、そんな行為に耽っている時は
その苦さにすら興奮してしまいます。だって、デブがでっかいケツからブリブリひりだした
ウンコをもぐもぐたべるなんて、変態じゃないですか!もうそんな事をしている自分に
うっとりしてしまうんです。豚になりきってしまえるんです。
バケツや洗面器にぶちまけた汚物の臭いをかぎ、こんなくさいものが自分のケツから
出てくるなんて…と、想像して勃起。山盛りの糞を手ですくいあげ、感触やあたたかさを
楽しんだらそれを自分のオッパイにべちょっ!っと塗り付ける。
ぶよぶよのおっぱいが自分の糞でほんわかと暖かくなり、そして強烈な臭いが自分の
上半身から立ち上ってくる…つい両手で自分の乳首をグリグリといじくってしまいます。
すると我慢出来なくなり、その糞まみれのオッパイをもみしだき腹にも糞を塗りたくり
びんびんのオチンポを糞だらけの手でぐちゅぐちゅしごくと最後の理性が吹っ飛んで
『ブヒ〜ブヒ〜、ウンコ、ウンコ、豚のくっせぇウンコ〜!』と悶えながら指にべっとり
ついているウンコをちゅっちゅっ、べろべろ、もぐもぐとしてしまうのです。
そして自分の肛門に指をグリグリといれて糞をかきだし、それを口にいれたり顔に塗り付け
そんな自分の姿を鏡でみると糞まみれの豚チンポからどくどくとザーメンが出てしまいます。
昔スカトロに自分自身が興味を持っていなかった頃、ウンコをいかにしてたべられるように
するか?なる話を聞きました。それによるとアイスクリームに少しずつまぜて食べると言う
ものでした。最初はほんの少量だけ。徐々にウンコの配分を増やしていきやがてウンコ100percent
が口にできるようになると言う事です。僕自身はいきなりセックスフレンドのおじさんの
餌食になってしまったためそんな過程を踏む事無く『食べれる』ようになりました。
もしこのスレッドを読んでみて『スカトロ』に興味が出て来たけど実際にやるのは恐いなんて
思った人がいたら是非ウンチをまぜたアイスクリームで試してみて下さい
次のお題行きましょうか?
お題その1「落ち葉」
\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/
こ こ か ら 超 濃 厚 な ホ モ ス レ に な り ま す。
ご 期 待 く だ さ い ! !
/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\/\
お題その3「葱」
3つのお題を取り入れて800字以内で怪談仕様に出来るのであれば何でも構わないけどね。
お題その2が抜けてるようなので、お題その2「堤防」
715 :
名無し物書き@推敲中?:2007/10/06(土) 20:16:28
「落ち葉」「超濃厚」「葱」
もしくは
「落ち葉」「堤防」「葱」
の三題話でよろしゅうございますか?
保守
子供の頃に過ごした町を訪ねてみた。仕事でこの地方に来たついでに貴重な有給休暇を
取得したのは、勿論気紛れ以外の何者でもない。もう誰もわたしの事など覚えていない町
を独りうろつくのも悪くないと思い、支線を乗り継いでその町に降り立った。
暗い海が荒れる海岸沿いの堤防を歩く。防風林である黒松林の一角に小さな赤い実がた
わわに実っているのが目に留まった。グミだ。学校帰りに回り道して良く食べたものだ。
ここを教えてくれたのは……、近所でかつ級友でもあったあいつだ。名は……忘れた。
もう良い年齢なのでさすがにもうグミなど食べはしない。そのまま黒松林の中に入ると
松の落ち葉が分厚く積っていた。この分厚い松葉の層の下に、この季節であれば国産のマ
ッシュルームである松露が生えている筈だ。それを教えてくれたのも、あいつだった。昔
を思い出し、ちょっと掘り返してみたが指先に刺さる松葉に辟易しすぐに諦めた。
防風林を抜けると海に流れ込む小川の畔に出た。畑が並んでいる。収穫は既に終わった
のか殆ど丸裸だが、農道の脇にはまだ葱などがある。そういえばあいつと一緒に葱坊主を
片端から傘で刎ね回り、農家の人にさんざん怒られた。田舎を舐めてはいけない。何でも
すぐに知れ渡る。少ない人口にも関わらず何処に目があるのか必ずばれるのだ。
しかし世の中、例外は必ずある。現に海に流れ込むこの川に、ふざけてあいつを突き落
した事は今もってばれてはいない。当時、人攫いや神隠しなどと町中で噂になったものだ。
視線を感じて振り返ると、ずぶぬれの子供が恨みがましい目でこちらを睨んでいた。
なんだ、お前、まだそこにいたのか。気持ちは判るが子供のやった事だ、許せ。
と言ってもいまだに子供のままのお前には判らない、か。
判った。付き合ってやる。ん、わたしの首を刎ねるか。葱の時の様に巧く刎ねろよ。
堤防の落ち葉に埋まる聖観音葱が香れば人喰う噂
そろそろ次のお題かね?
お題その1「時雨」
僕が子供の頃のこと
毎朝通る堤防上の通学路
川沿いのベンチで寝ている彼を見下ろすのが僕の日課で
ボロ布で包まれた荷物を積んだ手押し車の
取っ手にぶら下げられたビニール袋。
中には、まだ根のついた葱束。
彼はいつもそこにいた。
ある秋の日
そこに彼の姿はなく
ただ落ち葉が吹き溜まっていて。
ベンチの足元から
積もる落ち葉を押し分けて
青い葱がびっしりと。
それが丁度人の大きさであるように思えて
だから僕は葱を食べることが出来ない。
保守
保守
1/1
息子が死んだ
団地の屋上から誤って落ちてしまったと警察の人は説明してくれた、
事故から大分たって買い物から帰って来た私は息子の悲しい姿をみなくてすんだ
ちょうど息子が気化した場所のすぐそばに、誰かが趣味でやっている菜園があった
育った葱がそのままで、彼は息子の最後を緑の顔で眺めていたかもしれないと思った
私は何をしていたのだろう
買い物に出かけるまえまでは息子と一緒にいたようなきもする
主人が生きていたら怒っただろうか?遺影を横目で捉えながらふと思う
剥がれ落ちた意識が落ち葉のようにひらひら舞って 降り積もり再びかすかに意識を取り戻すそんな数日が過ぎた
私は何をしていたのだろう
「お母さん」
息子の声で目を覚ました、時計は午前三時を示していた
反射的に飛び出していた、急いで屋上に向かう
抑えていたものが堤防を越えてすでに胸まで迫っていた
「ごめんね、ごめんね…」
無意識に繰り返していた
2/2
屋上のドアを開ける
責めさいなむような冷たい空気と静寂が体を硬直させた
「た、た…」
息子の名前を言おうとしたが声が出ない
息子は暗闇のなか朧気でもなく眩しくもなく、ただはっきりと現れていた
「ご… めんね」
やっと絞り出した声にもならない呻き、体中全ての穴から水を垂れ流し、がくがく震えた、立っているのかも分からなかった何度も意識が遠のきそうになった
その時だった、息子が微笑んだのだ
救われたいという気持ちが見せた幻影ではない、すでに救われたいという気持ちは全く無かったし、むしろ罰を受けたいと思っていたしかし息子は今現に微笑んでいるのだ、全てを許すような、全てを理解しているような全てを優しく抱擁するような…
「ゆる して…くれる…の」
息子はかわらず微笑んでいる、そして両手を広げている
「ごめんね、ごめんねもう…」
ごめんね明日からまたやり直そう、明日の朝はたかゆきがだいすきなフレンチトーストを作ろうね、昼は公園で散歩して、夕方には一緒に歌をうたって…そしてまた二人でがんばろうね
次第にはっきりとしていく意識で駆け寄り力強く抱き締めた、
トン
その瞬間彼女は中に舞った
>>723 >>724投稿したものです。
すいません
>>723は2/1です。
あと初めて書いたのでめちゃくちゃ長くなって削ることも出来なくて2つに分けて投稿してしまいました。
すいません。
保守
お題が
>>719で止まってるので書きづらいのかな?
ただたんに人がいないのか
ってことでお題その2「鳥居」
ああ、途中に入っている「保守」は、お題じゃなかったんですね。
時雨、鳥居と雰囲気が出すぎているので三題目はぶち壊しっぽいお題を望みたいところw
730 :
名無し物書き@推敲中?:2008/02/03(日) 13:32:18
お題3
「蛙」
保守w
保守
ほす
今年の梅雨明けは遅いなと窓越しに空を見上げている所へ、鳥居町の本家からじいさんの訃報が届いた。寝床で寝たまま逝ってたらしい。
蝉時雨ならぬ蛙時雨のなか慌ただしく車の支度を済まし、家族で本家に向かう。その間に本家では医師による死亡確認を済ませていた。
到着と同時に我が家も通夜の準備に加わる。じいさん死んじゃったのか・・・とか思いながら忙しく台所で母を手伝ってたら後ろからじいさんが「お、Kちゃん(俺)来たんか。久しぶりやんけ」と俺に声をかけてきた。マジで時が止まったね。そして数秒後とどろく悲鳴w
本家にいた親族全員が台所に集まって来ては叫びを上げていた。
んでまぁ何がなんだかよくわからんけど死んだはずなのに復活したんでめでたいって事でタイの尾頭付き食って、通夜に参列するつもりの他の親族も続々と集まって来ちゃったんでそのまま宴会開始。じいさんも酒飲んで大ハッスルですよ。
そして翌朝じいさん再び逝った。宴会しに生き返っただけみたいだった。
不覚にもワロタ
737 :
名無し物書き@推敲中?:2008/05/09(金) 12:29:15
過疎ってますが‥次のお題その1「サボテン」
738 :
名無し物書き@推敲中?:2008/05/09(金) 15:10:53
おだいその二、「扇風機」
書かないし書かれてもレスもしないけどお題だけは出すのかよお前らw
ではお題その三のご提案は5/16(金)までお預けと言う事で。
それまでは今まで通り作品のご投稿、又は過疎化の後に投稿された各作品へのご意見をお願い致します。
…と、通りすがりの私が勝手に仕切ってみる。
そんなら、通りすがりの私が勝手にお題を考えてみる。
その3「鉛筆」
742 :
名無し物書き@推敲中?:2008/05/16(金) 00:12:32
いつの間にか三つ目のお題が…(笑)。
と言う訳で「サボテン」「扇風機」「鉛筆」と出揃いました。奮ってご投稿下さい!
743 :
サボテン・扇風機・鉛筆:2008/05/17(土) 23:30:59
「かうして空氣を動かすと病蟲害の予防となるのですよ」
温室内のあちこちに立てられた扇風機を見上げ乍らR氏は云つた。その實から醫藥品を製すとかで、團扇サボテンを大掛りに栽培してゐるのである。
「フィクス・インヂカ、つまり『印度の無花果』と云ふ意味の種名の通り、果實は甘くて中々旨い物です。今は未だ一寸青いかな。
…さうさう、團扇サボテンに『仙人掌』と云ふ字を當てたのは支那人ですが、面白い傳説がありましてね。
何でも旱魃に苦しむ或る村にやつて來た不思議な老人が、自らの手を切落として地面に插した。やがてその手は根付いて莖から實まで全部食べられる作物となつた。それがこの植物の始まりだと云ふのです。
まあ歐洲人が將來した物にまでコンナ話を拵へるのが彼の國の人らしい。否、元はメキシコ邊の云傳へかも知れませんが」
實が熟した頃の再會を約して辭した後一月も經たない内に、温室が燒夷彈にやられたとの端書が屆いた。恐らく硝子の反射が爆撃の的となつたのだらう。
見舞ひに參上したが意外な事にR氏は然程消沈してゐる樣には見えなかつた。
「まあ御覽下さい」
かつて温室だつた處へ案内される。
温室はその枠組丈を辛うじて殘してゐた。土の上の溶けた硝子の塊が焔の凄まじさを物語つてゐる。
流石にサボテンなぞ影も形もない。
「おや?」何かに氣付いて私は屈込んだ。積つた灰に半ば隱れてはゐるが、鉛筆程の太さの物が束になつて邊り一面に落ちてゐる。
同じくR氏も屈むと、足元の一束を崩さぬ樣に灰ごとそつと兩手で掬上げた。
件の傳説は本當の事だつたのかも知れませんね」
さう云つて優しく息を吹掛けると、灰の中から手首の白骨が現はれた。
744 :
743:2008/05/17(土) 23:38:49
あれ?最後の台詞の鍵括弧が落ちてる!正しくは
「件の傳説は本當の事だつたのかも知れませんね」
です…orz
保守
保守〜w
お題はそのまま?それとも新しいの出したほうがいいの?
保守
保守〜〜〜
保守!
ではその2「ハサミ」
ごめん、何だか知らんがリロードミスったので
>>751はスルーで
753 :
名無し物書き@推敲中?:2008/09/17(水) 16:25:14
保守
お題其の壱 「鏡」
お題其の弐「剣」
756 :
名無し物書き@推敲中?:2008/10/05(日) 18:11:48
お題其の參「蚕」
では「鏡」「剣」「蚕」ということで、よろしくお願いしますw
保守
759 :
名無し物書き@推敲中?:2008/12/03(水) 14:50:15
保守あげ
760 :
名無し物書き@推敲中?:2009/01/02(金) 22:07:36
あげ
保守
762 :
名無し物書き@推敲中?:2009/02/12(木) 21:27:51
半年以上誰も書いてないのか…
763 :
名無し物書き@推敲中?:2009/03/02(月) 21:52:42
ほ
「すまない……」
橙に染まる部屋。染まる繭。染まる男と女。二人の間には冷たい刃。女を貫く剣を伝って垂れる黄緑の滴。
「やはりこれ以外なかった」
男は剣を抜き、直ぐに彼女を抱きしめた。
「また、逢えるのでしょう?」
女は微笑みながらいった。男は答えなかった。その代わり女の鼓動が感じられなくなるまで強く抱きしめた。女の息が無くなると、男は女の絹のように美しい黒髪を撫でた。そしてもう一度強く抱きしめ、それから同じ剣で女の後を追った。
「社長」
顔を上げると秘書が不安そうな視線を向けていた。どうやらまたあの夢を見ていたようだ。最近よく見るあの不思議な夢。卓上の小さい鏡には自分の青白い顔が映っている。
「今日移動してきた社員が挨拶に来ていますが……御気分が優れないようでしたら明日にしますか?」
「いや、構わん。通せ」
ゆっくりとドアが開く。どこか見覚えのある顔……動悸が激しくなる。視界に橙が染み込んでくる。蚕のかじる音……あの繭の乾いた匂い……絹のように美しい長い髪……そうか……あの夢の………
動けない私にその女は夢と同じ微笑で言った。
「また……逢えましたね……」
765 :
名無し物書き@推敲中?:2009/04/09(木) 23:39:55
保守
「鏡」「剣」「蚕」1/3
わけありの品を持ち込んだのは、旧知の友人だった。
友人というより腐れ縁に近いその男は、古物商の傍ら、曰くありげな品を引き受けては
私の元へ持ち込んでくるのだ。
今回は一振りの刀だった。
見るまでもない、無造作に束ねられた刀剣の中から、私はおぞましい気配の元を引き出した。
「打刀だな。――あまりいいものではない。これをどこで?」
「近郊の山間だ。旧家の取り壊しの折りに土蔵で見つかったらしい」
彼の話によれば、蔵の奥で木箱を見つけた解体業者が処分を任されたものの、
困り果てて店を訪れたのだという。
「おそらく中身を確認するために札を剥がした為に、封印が解けたのだろう。
いろいろと怪異があったとかで、まとめて二束三文で引き取ったら随分と喜ばれたよ」
残りの刀剣をまとめて仕舞いながら、友はにこにこと笑った。
「じゃあ、これでよろしく」
滅多に手に入らないという銘酒を置きみやげに彼が立ち去ると、あとには私と刀が残った。
「鏡」「剣」「蚕」2/3
「ふむ」
鞘からするりと抜き出した。いわゆる普通の日本刀である。
柄の部分が黒く染まっているのは多くの人の血を吸ったせいか。
刀身を眺めれば、長く放置されていたにもかかわらず錆の色もない。
刃の鏡面に、女が映った。うつむいた女の口の端から、つつっと赤い血が流れた。
青白い肌にぎらぎらと目ばかりが大きい女は顔を上げ、何かを探すように視線を泳がせた。そして。
――目があった。
この世とあの世とが繋がった。ふっと辺りの空気が冷え、一切の音が消える。
ざわざわと、刀の表面から長い髪が生え出て指を捕らえ、手首に絡みつく。
細い髪がびっしりと右腕を這い上がるのを眺めながら、私は息をついた。
「まったく厄介なことだ」
――カエセ
女が叫ぶ。悲痛な声が頭のなかを響き渡った。
――カエセ、カエセ、カエセ
腕がぐいと引っ張られた。刀身が首に向かって近づいてくる。
絡みつく髪が刀を持つ手を操って、自刃を狙う。
自由な左手で鞘を掴み、壁にたたきつけた。
「お前が探しているものはこれだろう、ほら、持って行け」
――アアアアア
悲鳴とも歓喜ともつかない声があがり、黒髪が一瞬にして刀身の中へと戻っていった。
自由になった右腕をみれば、赤く鬱血した手のあとがあった。
「成仏したか」
真っ二つに割れた鞘の中からは、一筋の黒髪がこぼれ落ちていた。
「鏡」「剣」「蚕」3/3
「……ということで、もう居なくなったから」
数日後、私は訪ねてきた友人に例の刀を手渡した。
「鞘はなくなったが、刀は供養済みだ。もう何も問題はない」
「結局、何があったんだ」
持ち込んでおいてこの言いぐさだ。私はため息をついた。
「生糸工場の女工の話を知っているだろう。食事も休憩もなく、体をこわしても朝から晩まで死ぬまで働かされた」
「野麦峠の女工哀史だな」
「ああ、全国どこでも普通にあった話だがね。そういう時代だったんだ」
私は右腕を見た。もうほとんど痕は残っていないが、絡みついた髪の感触はまだ覚えている。
「中には、死にかけた女工の髪を剥いで売り飛ばしていた者もいたのだよ。――髪を返して欲しかったそうだ」
刀身に映った女の頭には、一筋の髪もなかった。はぎ取られた頭皮が赤黒く固まっていた。
「働きに来たときに死ぬ覚悟は出来ていても、髪を盗まれたことは許せなかったんだろう」
女の命って言うしな、と友人が呟いた。けろりとした彼の横顔を見ながら、私はため息をついた。
霊感がないというのはうらやましい……。
「鏡」「剣」「蚕」
繭の中で私は考える。
羽化したあとは、私は元の私ではない。鏡を見るたびに泣きたくなる、デブで醜い芋虫のような私はいなくなる。
テレビで見た蚕のように、白い糸を吐き、美しく生まれ変わる。ここから出るまでもう少し、もう少し……。
出ておいで、と優しい声がする。
だめだめ、あれは魔物。出て行ったら取り殺される。まだ準備が整わないうちに、私を繭から引き出そうとする悪魔の声。
前にも、同じことがあった。呼ばれて出て行くと、とても嫌なことがおこるのだ。
――嫌なこと。
思い出せないけど、とても嫌なことがあったっけ。
――ああ、静かになった。
私は繭を開け、外に出た。しんと静まった部屋の中、ベッドの上の白いシーツ。
私はくるまった繭のからを脱ぎ捨て、散らかった菓子箱や、ジュースの空き瓶、空のコップ、
カップ麺の入った袋を足で避けながら、ゆっくりと歩いた。
鏡の前に立つと、生まれ変わった自分の姿を確かめた。
――チガウ!
私は悲鳴を上げた。
等身大の鏡には、皮のたるんだ醜い骸骨の姿があった。
黒ずんだ皮膚の色、骨ばった体。
これは私じゃない!
よろけた拍子に、短剣が手に触れた。普段はレターオープナーとして使っている、装飾過多の洒落た品だった。
――そうだ、これを使えばいいんだ。
私は気づいた。繭の中から出ただけで、まだ蛹の殻を脱ぎ捨てていないのだと。
私は剣を両手で持ち、思い切り体に突き立てた。
悲鳴を聞いて駆けつけた両親が見たものは、一面血の海の子供部屋だった。
「いったいどうして」
鏡の前には脱ぎ捨てられたように床に貼り付いた人の皮と、その横にぺたりと座り込んだ形の人骨があった。
「まだちょっと早すぎたみたい」
骸骨がぽろりと赤い涙を流した。
770 :
名無し物書き@推敲中?:2009/05/12(火) 20:53:44
>>766-768 三分割でのご投稿ですが、もちろん規定の800字を大きく超えています。
表現を整理して800文字に収める工夫をしましょう。
雰囲気は大変結構だと思いました。
771 :
名無し物書き@推敲中?:2009/05/12(火) 21:02:00
>>769 前半の一人称での語りと、後半部分とがほとんど地続きになっているので一瞬戸惑います。
表現を上手く工夫してみて下さい。
最後の場面は目に浮かぶようです。
772 :
名無し物書き@推敲中?:2009/05/12(火) 22:16:53
>>766-768 あと、さっきは気付かなかったのですが、「蚕」を入れ忘れてますね。
まぁ、生糸工場の事が出てきてますから、恐らく推敲の段階でうっかり削ってしまわれたのでしょうが。
いよいよ盛り上がってまいった。
774 :
774物書き@推敲中?:2009/06/10(水) 13:42:47
そろそろ次のお題でも募りますか?
775 :
名無し物書き@推敲中?:2009/06/10(水) 13:54:53
三題噺のコツみたいのってありますか?
776 :
名無し物書き@推敲中?:2009/06/14(日) 04:53:56
>>775 三題噺に限った事ではありませんが、常日頃から引き出しを沢山用意して置く事だと思います。
三つのお題からどれだけ物語を広げられるか。それも読者に強引な印象を与えずに…。
その為には想像力の土台が必要です。土台とは何か。それは毎日の読書や見聞の蓄積です。
どんなにユニークな発想でも、記憶と言う蓄積以外からは生まれないのです。
777 :
名無し物書き@推敲中?:2009/06/15(月) 00:04:56
よし!じゃあ、次のお題↓
お題その1『軍服』
いきなりベタなのを挙げちゃったので、次は軽めのをヨロ↓
お題その2『スニーカー』
次ヨロ↓
お題その3『南京玉スダレ』
↓
では「軍服」「スニーカー」「南京玉スダレ」ということで。
……難しくね?
783 :
名無し物書き@推敲中?:2009/07/14(火) 23:37:30
稀に見る難度www
お前らさ、人の死体見たことある? いや、葬式とかじゃなくて。
赤の他人の死体を見ることなんて普通まずないよな。
俺はあるよ。
まだ小学生だったころ、首吊り自殺の死体を見たことが。
すげぇ怖かったよ…。野次馬根性丸出しで見に行ったのを心底後悔したね。
もういきなり半端ないインパクト。
首がさ、南京玉スダレみたいにビョ〜ンて伸びちゃってんのよ、ビョ〜ンてwww
そいつ軍服みたいな色の半袖シャツ着てたんだけど、腕も顔もシャツとおんなじような色になってるし。
ちょwwマジで人の色じゃありませんからwwwww
で、浮いてる足見たら、ちゃんとスニーカー履いてやんの。
…まぁ当たり前っちゃ当たり前なんですけど。
でも空中にぶら下がってんのに靴履いてんのが何だか不思議な感じがしてさ…。
意味なくね?とか思いながらしばらくそれ見てる内にいきなりハッと我に返っちゃった。
そいつが単なる「グロ物体」なんかじゃなくて、「少し前まではちゃんと生きてた人間」なんだって、やっと本当に理解したんだろうな。
泣きながら家に飛んで帰ると爺ちゃんに抱きついたね。
そしたら爺ちゃん、ポンと俺の頭のうえに手を置いて撫でてくれた 。
爺ちゃんの手はゴツゴツしてて撫で方も荒っぽかったけど、温かかった。
それから飴を一粒くれた。うまかった。
――その味は甘くてクリーミーで、こんな素晴らしいキャンディーをもらえる私は、きっと特別な存在なのだと感じました。
今では私がおじいちゃん。孫にあげるのはもちろんヴェルタース・オリジナル。
なぜなら彼もまた特別な存在だからです。
塀の向こうの屋敷から陽気な歌声が聴こえた。
屋敷の前をうろついていた男はにやりと笑い、身軽にその塀を越えて屋敷へ
忍び込んだ。男は言うまでもなく強盗である。
近所でも噂のこの屋敷は、初老の男性が一人しか住んでいない。
大層な金持ちだが、頭がおかしいため身内の者も寄りつかず、朝晩と
ヘルパーの世話になっているそうだ。
男が歌声のする縁側へ向かうと、初老の主は噂にたがわぬ変わり者ぶりで、
昔自分が着ていたものであろう薄汚れた軍服に麦藁帽子、片足にサンダルといった
いでたちで、南京玉スダレを歌いながら踊っていた。庭先には一列に並べられた
将棋の駒、茶碗や鍋、バケツにスコップ、金槌やらモップやら様々に置かれている。
それらを客と思っているのか、雑多に並べられた物に向かって
歌い踊り、笑っている。
男が近寄ると、初老の主は「おお今日は千客万来だ!」と言って
まるで男を怪しむ様子もない。男が「こんな奴が来て千客万来か」と
鼻で笑うと、初老の主はいよいよ調子を良くした。
「はい、そこの青いスニーカーのお嬢さん、それから長い黒髪の素敵なあなたも
老夫婦さんも新婚さんも、ああ白衣のあなたはお医者様ですね。皆さん
どうぞ楽しんで行って下さい!」
男はぎょっとした。初老の主が次々口に出す人間は皆、男の被害者と重なるではないか。
「お客様、たくさんの友人に囲まれて幸せでしょうね」
その言葉に恐ろしくなった男は後ろ手に隠していたナイフも投げ捨てて逃げようとした。
陽気に歌い始めた初老の主は、男が背を向けたとたん、庭先の金槌を握りしめ男を殴り
つけた。「お客様困ります、講演料払っていただかないと」ぐったりした男の衣服から
財布を抜き取ると、初老の主は狂ったように笑った。
786 :
名無し物書き@推敲中?:2009/12/06(日) 02:21:04
不定期age
もう、随分昔の話だ。
私は、大陸で sneaker (軍偵)として勤務していた。
黄燐県から雪花蠣に至る途中に小さな村があった。私と、同僚のTは、情報収集に、
移動していた。
村に着くと、集会所を尋ねた。何やら人だかりがしており、私達は確認の為、中に
入った。
一種の祭りのようで、しかし、それは異様な状況だった。白木の、簡素な棺桶の
ような大きさの箱が板の間に置かれ、その周囲を、赤や黄の生地に、刺繍を施した
祭り装束を着た男達が、覆面を被って同じ節で歌を唱和していた。声は高く低く、
単調な旋律でくり返される。
彼らの手には、枝垂れ柳状の簾が持たれており、正しくそれは、「南京玉スダレ」の
日本で観る姿と大きくは変わらない。
問題なのは、その彼らの中央に置かれた棺桶状の箱で、中に人が入っているらしく
時折、「どんどん、どんどん」と中から蓋を叩く音がする。ひとりの、それは普通の
村人の恰好の中年男が板の間に上がって箱の片側、中に入っている人物の口元
と思しき辺りを軽く指で叩く。
呼吸を引くような声がした。子供?若い女?
「……神降り様、神降り様。来年の作柄はいかがでしょうか?」
男は続けて聞く。「……米は……」中から声がする。叫び続けて嗄れた声、女だ。
「米は凶」集会所の入り口から覗き込んだ人々は、これといって反応を示さず聞き
入っている。「麦は?」「キビは?」その都度、予言の作柄を巫術師が答える。
「キビはよろしい……」
「……ありゃ、閉所恐怖とあの単調なリズムで、一時的に過酷な精神状態にして
いるんですな」心理学専攻のTはそう言い、その場を後にしようとした。
「日本人は出て行く!日本には赤い火柱が降る!」
装束を着た男達と、入り口から走りこんだ男達が箱の蓋を外す。
箱の中からは白装束の十六、七の顔立ちが整った女が汗みずくで足腰も立たない。
白目を剥き、箱の中に排尿していた。口をふさぐ、途端にぐったりした少女は気を
失った。
「旦那様方、……これは座興でございます。どうか御気にお留めなさいませんよう」
軍服の懐中に黄金製の首輪を無理に入れてきた。
座興か――戦雲は傾きつつある。そう思った。
そもそも戦雲は傾かないんでねえの?
あと日本人を蔑称である鬼子(グイツ)などとすれば
よりリアリティがでるとおもた。
まあ、いろいろ要推敲。
>>788 ありがとうございます。
「戦雲が傾く」はおかしいです。「戦局が傾く」「戦況が傾く」の
方がいいかと思います。
ご指摘にあった「鬼子」(ri ben gui ziは自分も表現として考えて
いたのですが、
今日、娯楽的な読み物としては、政治的もしくは思想的なはばかり
があるよう判断したので、あえて外しました。
作物の植生はおおまかにしたので、大陸のどの部分か、不明確
だと思います。
地名に関しては、架空の物です。
当時の日本の将校が、二人で大陸を移動できたかという点は、
安全性に疑問はある部分ですが、少人数でのやりとりにしたい
意向がありましたので、史実とは別にしました。
他にも色々稚拙な部分も有りますでしょうから、ご指導を賜れば
幸いです。
790 :
名無し物書き@推敲中?:2009/12/20(日) 07:47:42
過疎ってるけど、新しいお題出してきませんか?
出すだけなら……
「ドリル」
「裏庭」
うんこ
「ドリル」「裏庭」「うんこ」
「ごめん、うんこしたい、トイレ貸して」譲連に言うと、下駄をつっかけて、庫裏裏
の小屋に向かった。その裏庭は、苔むして滑る。何かにつまずいた。
少し盛り上がった裏庭の一部には苔は生えてない。俺は、下駄に当ったドリル
の歯を見つけた。「なんやこら……」古刹には似つかわしく無い埋蔵物である。
心なしか、そのドリルの埋まった地面の下は他のふかふかした地面の感触と違い
何か堅いものが埋まっている感じがする。俺は、浴衣の裾を捲り上げて這いつくばっ
た。膝にも何か金属の小片の感触がする。
「ああ、それは鬼や、鬼が埋まっとるよ」振り向くと譲連が立って居た。
「鬼……なんやそれ」譲連は、水銀灯の灯りを眼鏡に反射させ、「まあ、観たかったら
来いや」と庫裏横の宝物殿に誘った。
「なんや……」御簾を上げたケース内に、巨大な頭部のミイラが安置されていた。
人体と言うには抵抗がある。眼窩の周囲が化石人類のように、出ていた。
「……つい十八年前の物や」「近所に、鬼児が生まれた。怖い顔で、髪が生えて、
歯が牙のようだった、恐ろしくでかい子供や」「乱暴、極まりなく。女は襲う、子供
は半殺し、物は盗む、……このミイラになった段階で幾つや思う?」俺は黙っていた。
「これで八つや。信じられへんやろ?」「うちで暫く預かったが、粗暴は収まらず、
どうしようかという話になった。……うちは、魔滅砕の寺や。親父も爺ちゃんも
可哀想とは思ったやろが、隣町でこいつが、人を殺した」「うちの親父が、帰り道に、
ドリルの歯を何本も打った。こいつは、バイクが好きやった。パンクしてこけた。
額にある穴も電動ドリルや」頭骨の至る所に穴がある。「頚椎を切断しても、動い
とった。やけ、頭と身体を引き離し、身体は重石して裏庭に埋めた」
「バイクに、ドリルの歯で打ち付けてな」「なんで、ドリルかて?」譲連は微笑んだ。
「般若心経には、螺旋が内包されてるんて。オカルトやなあ」
>>794お疲れ様。
どうしても非常に心配なことが一つ。
トイレに行く途中なので、「俺」の便意は大丈夫だったのだろうかと。漏らさなかったろうかと。
という冗談は別にして、最後の方はもう少し整理された方がよいかと。
会話文ためか個別の一文の唐突感の方が大きく感じます。
>>795 「ごめん、うんこしたい、トイレ貸して」譲連に言って、庫裏裏の小屋で
用を足し、手水を使った。裏庭は、苔むして滑る。何かにつまずいた。
こうすりゃよかったですかな……
ゆうちゃんは交差点で、ひらべったくなっていた。
ランドセルからは算数のドリルと、折れたリコーダーがとび出て
いた。ゆうちゃんの頭はトマトを地面に投げつけたように、赤い
液体の中に、融かしたチーズのようなものを混ぜて、広がって
いた。ゆうちゃんの半ズボンの尻から、うんこが、はみ出て、湯気を
寒風に、たてていた。
運転手は、おおきなタイヤの前で、腰をおろして、病人のように、
ふるえた。サラリーマンが、ネクタイをゆらして、集団下校の子供達
を歩道の奥においはらった。
おかあさんは、裏庭で、灯油をファン・ヒーターのタンクに詰めていた。
首筋が、なにか、むずがゆくなった。地面に、たてたタンクを押さえながら、
手のひらで異物をさぐった。それは、てかてかして、つまんだ指から、
ころげおちそうになった。
黒いてんとう虫だ。ふたつ赤い星が背中に付いていた。星はひとみの
ように観えた。冬のてんとう虫に、おかあさんは、すこしびっくりした。
「越冬してたのかな?こごえちゃうぞ」
そして、おかあさんは、ゆうちゃんを投げた。
「おかあさん、バイバイ、バイバイ」
黒いてんとう虫は、太陽に向かって、永遠に飛んでいった。
お題はアイテムとか伏線に使えよ
単語が出たからオッケーなんてのは、相当面白い作品にしか許されないと知れ!
「さて、そろそろ時間か」
私はそう呟き、宿直室ドアを開け製鉄工場へ出かけた。
宿直室からの工場までは100m程の距離がある。
ふと見上げると、薄闇のカーテンにぽっかり穴が開いたように満月が鈍く光りを放っていた。
月を見る度、思い出す。大好きだった母が狂った日のことを。
私が七つの時、父と兄が交通事故で死んだと母から聞いた。
その後、母は新興宗教に傾倒していった。
邪神教という名で、死んだものを生き返らせる事ができると信者に触れ回っていた。
年に一度、4月の終わりにどこかで本格的なミサが行われているらしいが
家からは遠いため、母は家で儀式を行うことを習慣としていた。
その儀式が始まる前には決まって
「良い、覗いてはダメよ?あなたは大切なのだから……」
と私に言うのだった。
しかし、私は好奇心からそのドアを握りしめた。
いつもと違うヌルリとしたドアノブの感覚に私は飛び上がった。
そこには油がたっぷりと塗られてあったのだ。
後で調べたところによると、それは貴重な油だったらしい。
中を覗いた私の目に飛び込んできたもの、それは
薄闇の中で部屋の絨毯に描かれた六芒星の中に置かれた白骨、
やせ細った兄、そして母の視線だった。
私は生まれて初めて悲鳴を上げた。
それと同時に母は右手に私に走り寄り私を押し倒した。
そして私に馬乗りになり、包丁を振りかざしこう言った。
「ごめんなさいね、たかしちゃん。こうしないとダメなの」
そういった母の目に罪悪感はなかった。
私は見知った母の明確な殺意に驚き、咄嗟に近くに合った燭台を母に突き刺し難を逃れた。
致命傷だった。
それから私はずっと施設で育ってきたのだ。
兄があの後どうなったのか私には教えてもらえなかった。
ふと気づくと目の前に、薄茶けたドアがあった。
20年物の製鉄工場のドアである。
私はそっとドアノブに手をかけた。
ドアノブには油が塗られていた。あの時の感触が蘇る。
さぁ母を生き返らせよう。
「ドリル」「裏庭」「うんこ」
―こいつらは気が狂っている.頭がおかしいとしか思えない.
猛烈な便意に襲われながら,男は糞まみれの中央通りを
早足で自宅へと向かっていた.
その街は糞にまみれていた.
数年前,突如巻き起こったルネサンス回帰運動がねじれにねじれた結果,
人々は街に汚物を垂れ流す暮らしを選択したのだった.
男がそこらに目をやれば,糞を垂れ流しながら談笑している学生たちや,
糞を投げ合って笑っている子どもたちをいくらでも見つけることができた.
歩道にうず高く積み重なったうんこの前には,ハイヒールなど何の意味も無いように思えた.
―こいつらは気が狂っている.
男はなるべくどこにも視点を合わせないようにしながら,
自分の家の便所を目指して歩を進めた.
男の便意は限界に達していたが,奴らの仲間入りをすることは
意地でも避けねばならないと思った.
我が家だ.
男は大急ぎでパンツを脱ぎ散らかし,
"彼の便所"へと飛び込んだ.
「あいつらは気が狂っている.」
男は,うっとりとした顔で自慢の裏庭を眺めながら呟いた.
裏庭は,ドリルのような形をした,立派な巻き糞で埋め尽くされていた.
「こんな素敵なものを独占しないなんて――頭がおかしいとしか思えない.」
802 :
名無し物書き@推敲中?:2010/02/07(日) 17:36:45
うんこメインとは
『たんけん くその町』 作詞 糞詩人
知らない糞が おいでおいでしてる
出かけよう 尻笛吹いてさ
脱糞しようよ ぶりりのり!
調べてなっとく うん、こーか!
スカトロ地図を広げよう
脱糞 排便 糞の町
804 :
名無し物書き@推敲中?:2010/05/05(水) 05:02:25
不定期age
未発表のオリジナル怪談作品(本文800字以内)
メールの内容に、上記の5点を必ずお書き添えください。
ニックネームはお一人につき一つのみとさせていただきます。
また今回は、お一人につき3作品までご投稿いただけます。
複数のニックネームやメールアドレスを用い、4作品以上ご投稿された場合、
発覚した時点で失格とさせていただきますのでご注意ください。
応募締切:7月21日(水)午前10時30分まで
結果発表:8月20日(木)予定
806 :
名無し物書き@推敲中?:2010/06/12(土) 08:58:20
このスレ見てる人いる?
新しいお題出していきませんか?
ほいじゃ
「泥団子」
「修正液」
「地下鉄」
俺はその日も残業で帰りが遅くなり、最終電車に間に合おうと走っていた。
あるだけの体力を使い切り、どうにか電車に乗ることができた俺は、ヘタヘタとシートに座りこんだ。
安堵したと同時に、家に帰ってからしなければならない家事のことを思い出し、ため息をつく。
その時、俺にあてられた視線に気づいた。
右を向くと、シルバーシートのところにドロドロの何かが座っている。
黒いヘドロのようなものがびっしりついていて、目が、眼だけが光っている。
その何かに恐怖を感じ、呼吸を一瞬忘れてしまうほどだった。
どれだけ時間が経ったのかわからない。
いや、本当は数秒だったのかもしれないが、俺はドロドロの何かから目が離せなかった。
ハッと我に返った時、ドロドロの何かは立ち上がり、ゆっくりと動き出し俺に近づいてきた。
立ち上がった姿から、そいつは人間の形をしていることに気づいた。
そいつが動くたび、ヘドロがボトボトと落ちる。
そして先ほどから眼は俺を捉えて離さなかった。
怖い。恐怖だ。俺は逃げ出したかった。
でもあいつの眼が俺を逃がそうとしない。
俺へだんだん近づき、俺の足がヘドロで埋もれるまで近寄った時、そいつは腰をかがめて俺の顔の前にドロドロの手を持ってきた。
ずっとそいつの眼だけを見ていた俺の目は、ここで初めて違うものへ視線を移すことができた。
視線の先にはドロドロの丸い物体があった。だが、それはそいつとは違い、真っ白のドロドロだった。
直感的に俺へ食べろと差し出しているような気がして、おれはその白い物体を手に取り、口に入れた。
今思えば、その時俺は恐怖で頭がやられていたのかもしれない。
口に入れた瞬間、目の前にいた黒いドロドロの何かはいなくなっており、そいつが床や俺の足にこぼしていたヘドロも、きれいになくなっていた。
ただ、口の中にある、ドロドロの食感と奇妙な味だけが残っていた。
それがちょうど3カ月前に実際に起こった出来事だ。
あの黒いドロドロのことは何だったのかいまだに謎のままだ。
だがそいつからもらった白いドロドロの物体。俺はその味が忘れられなかった。
どうにかしてその味を再現しようと思考錯誤し、ようやく近づけたのがこの泥団子に修正液をかけたものだ。
これは今の俺の主食になっている。
器用に納めすぎてるかな。という印象も最初はありましたが、
ジャンプさせにくいこのお題を考えると、うまくまとめたな。という感じです。
山の中の柿の精に柿の実を食べさせられる話をちょいと思い出しました。
812 :
名無し物書き@推敲中?:
歐古堂のひとはもういなくなってしまったんですか?