63 :
名無し物書き@推敲中?:2005/11/23(水) 19:12:50
もっと書き込みなさいよ!
64 :
1:2005/11/23(水) 20:55:37
スティーヴン・キング「ドロレス・クレイボーン」
なにいってんだい、アンディ・ビセット。いま説明した権利のこと、わかったか、だって?
ふん、なんとアホらしいことをいって。
そんなことは、どうだっていいじゃないのさ。そのしゃべくりをやめて、ちょっと聴きなさい。
・・・・・・
ここからえんえんと続く、夫を殺した女の独白。
最初から最後まで、独白で通すのは岩井志摩子の「ぼっけえ、きょうてえ」みたいですけど
読んでいるうちに独白文を読んでいるのではなく、ストーリーをちゃんと追っている、という感じで読めます。
面白かった。
出だしの軽妙さが、なかなか好きです。
65 :
名無し物書き@推敲中?:2005/11/28(月) 22:09:38
自分はバーに入って女の子を口説こうとした、すると。
「おい、てめぇの目は節穴か?この野郎が」
なんと男の人だったのかと驚いた、すると、その人はこういってきた。
「フフフ、小型のレコーダーを持ってるのよ、しつこい客がいたら追い払えるようにね」
今度は間違いなく女の人の声だ。
なんだ、そうだったのかと女の子にこう話しかけた。
「よかったらそのレコーダーを見せてくれないか?」
すると彼女はこういった。
「ゴメンね、今は持ってないの」
自分の中で一位、星新一「おみそれ社会」一部要約
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
夜の底が白くなった。
川端康成『雪国』
言わずと知れた冒頭。このたった一文で読者を世界に引き込むところが凄い。
67 :
名無し物書き@推敲中?:2005/12/02(金) 22:17:01
>>66 冬に関東から新潟に鉄道で行くと、
その表現が身も蓋も無く正確な単なる写実表現だと実感して感動するよ。
その日、ニューヨークはすばらしい天気だった。恋を知ったばかりの少年のように、
どこもかしこもぴかぴかにひかっていた。空は青く、風はやさしかった。気持ちだけは、まったくの四月だった。
ユニオン・スクウェアでは、早合点した小鳥たちが春を歌っていたが、誰一人それをとやかく言う者はなかった。
三月はまだ少し残っている。しかし、冬はもう戻ってこない。
矢作俊彦『LOVE LETTERS』
69 :
名無し物書き@推敲中?:2005/12/03(土) 00:58:17
>>67 高崎 〜 長いトンネル 〜 湯沢 あたりだなあ
70 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/03(火) 01:20:58
本土の船着場とダヴンホール島を行き来するあいだ、いつも一瞬だけ、
船着場も島も見えなくなる瞬間があった。その瞬間には、霧に包まれて
水上に浮かぶ彼の船以外、もはや何ひとつ存在しなかった。空から太陽
がなくなっても、国と名のるものがすべて消滅してしまっても、何も変
わりはしなかったことだろう。
スティーヴ・エリクソン『黒い時計の旅』。柴田元幸訳も秀逸。
71 :
70:2006/01/03(火) 01:25:42
安部公房の「他人の顔」の冒頭が暗記するほど好きだったんだが、すでに45であがっているね。こういうの、ちょっと嬉しいな。
72 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/03(火) 18:39:53
>>68 ほおおお。爽やか〜。外国の作家ものかと思いました・
73 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/03(火) 18:48:08
>>72 ウンウン。とくに、コソっと秘めたように好きなものを
他にも同じような感覚で好きという人がいると
ああ、この本のこの部分、おんなじふうに感じる人がいるんだなあ
と思えて、なんだか感慨深いネ。。。それも本の楽しみの一つ。。
74 :
73:2006/01/03(火) 18:48:42
75 :
?名無し物書き@推敲中?:2006/01/04(水) 04:02:03
*文芸坐 = 映画館
文芸坐のロビーは薄暗く、賢三はいつも「トンネルみたいだ」と感じていた。
実際にはそれ程に暗くはない。スクリーンの虚構世界にどっぷりとトリップした後では、
ロビーは、つまらない現実世界との連絡路のように思えて、それでトンネルじみて陰気な場所に
思えてしまうのだ。
トンネルには、いつも数人の男たちがたむろしていた。二本目の映画が始まるまでの時間つぶし
をしている彼らは、一様に地味な雰囲気を漂わせていた。椅子に座り、文芸坐の今後の上映予定を
知らせる小冊子をじとりと見つめながら、ボソボソと紙コップのコーヒーをすする大学生風、紙に
貼られたジョン・カーペンターの『ニューヨーク1997』のポスターを無表情でながめている
サラリーマン。
スクリーンの虚構世界をあの世とし、映画館の外の現実をこの世とするなら、ロビーに集う彼ら
はその間でどちらも行けない亡者のようなものだ、と賢三は考えていた。
「こいつらは現実に立ち向かう勇気もなく、映画館の闇の中へ逃避して、そのくせ虚構世界の中へ
飛び込むことが不可能なことも知っているから、こうしてロビーで途方にくれているのだ。
そしてこのオレもその一員なのだ。みんなみんなダメ人間だ。死ね死ね死んでしまえダメ人間
どもめ!!」
___ただ映画館のロビーでコヒーを飲んだりポスターを見ているだけなのに、ダメ人間とまで
断言されてしまう彼らも災難な人々である。
(大槻ケンヂ / グミ・チョコレート・パイン グミ編)
76 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/04(水) 14:39:24
>>75 スゴくいい表現とは思わないけど
最後のほうで思わず「ふふん」とほくそ笑むことが出来るような感じがした。。。
切り出しナイフが、鳩尾のところに深く突き刺さったが、少しも痛くない。
その刃は真下に引き下げられてゆき、厚いボール紙を切り裂いてゆくのに似た鈍い音がした。
夢の話である。
裸の死体が、地面に倒れている。
その死体は、私の姿をしている。
周囲は暗く、倒れているものの形だけが鮮明に浮かび上がってみえている。
内臓をそっくり持ち去られたらしく、薄べったい形になっている。
手足の長さは変わらないが、ひどく細く見えた。
吉行淳之介「鞄の中身」冒頭
78 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/05(木) 15:30:32
勉強になりそうなので、期待age
79 :
70:2006/01/06(金) 00:13:56
>>73 まったく同感だね。電車で隣に座った人が読書に熱中してて、
それが自分の好きな本だったりすると、思わずマジマジ顔を
見ちゃうな。むろん、しょっちゅうあるわけじゃないんだが。
「人殺しの時代だった。永い洪水のように戦争が集団的な
狂気を、人間の情念の襞ひだ、躰のあらゆる隅ずみ、森、
街路、空に氾濫させていた。僕らの収容されていた古め
かしい煉瓦造りの建物、その中庭をさえ、突然空から降
りてきた兵隊、飛行機の半透明な胴体のなかで猥雑な形
に尻をつき出した若い金髪の兵隊があわてふためいた機
銃掃射をしたり、朝早く作業のために整列して門を出よ
うとすると、悪意にみちた有刺鉄線のからむ門の外側に
餓死したばかりの女がよりかかっていて、たちまち引率
の教官の鼻先へ倒れてきたりした。」
長かった。すまん。大江健三郎『芽むしり仔撃ち』。
最初に読んだときは打ちのめされた。
こうしてみるたび、プロの表現力はすごいと思ってしまうな。
81 :
73:2006/01/06(金) 11:09:29
>>79,70
こういうものは、書けないな。。。
どう頑張ったって、その時代に生きていないものは、
「戦争」については書けない。(時代ものは別)
一度、色々調べて書こうと試みたけど、
あまりにもウソくささがバレバレで(自分にとっても)サブいし
やめた。
その時代をくぐり抜けた人に任せた方がいい場合ってあるよね。。
野坂さんとかね。
そういや、電車で遠藤周作の「私にとって神とは」を
読んでいた時、隣に座っていた人から「その本、なんていう本ですか」
って聞かれたことがある。そんな時は、嬉しかったりする。
老人はライオンの夢を見ていた。
ヘミングウエイ「老人と海」のラスト。
全てのエピソードはこの一文の素晴らしさを味わうたうためにあったような気がする。
83 :
70:2006/01/06(金) 23:49:55
>>82 そう!最後の一文が素晴らしいと、何と言うか、作品全体がその一点に
向かってなだれこんでくるような眩暈を感じる。冒頭のツカミもむろん
大事なんだけれど、読書の時はいつも最後の一文を愉しみにしてしまう。
最後の一文の素晴らしさ、ということでいつも思い出すのは、池澤夏樹
も同じようなことを書いていたけれど、ピンチョンの『競売ナンバー49
の叫び』。末尾だけ抜き出してもピンとこないかもしれないけれど・・・
パサリンは腕をひろげた。どこか遠方の文化圏の聖職者の
ジェスチャーのようだ。地下に降下する天使のジェスチャ
ーかもしれない。競売人は咳ばらいをした。エディパは椅
子に深く坐りなおして、競売ナンバー49の叫びを待った。
この後、「叫び」があがるのかどうかは明かされない。大きく吸い込ん
だ息をふっと止めて、緊張して、そしてそのまま切って捨てたように小
説は終わる。
こういう「開かれた終わり方」には共感するよ。
日本で、最後の一文に心を砕いている作家としてすぐ思い浮かぶのは、
開高健。
森は静かだった。 (開高健『輝ける闇』)
明日の朝、十時だ。 (同『夏の闇』)
作家としてデビューする前はコピーライターでもあった氏の面目躍如、
だと思う。ここでビシッと決まる。
ただ、最後の一文を紹介してしまうのって、推理小説の犯人を明かして
しまうような後ろめたさを感じなくもない。
最後に付け加えると、さっき出した安部公房『他人の顔』は、末尾の一
文も(「開かれた終わり方」の好例として)素晴らしいと思うよ。
84 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/30(月) 13:15:01
素晴らしいと思うよ
85 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/01(水) 23:29:11
age
86 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/02(木) 00:11:56
>>83 最後の一文で一番好きなのは龍の限りなく〜かな
鳥が舞い降りてきて、暖かい光がここまで届けば、長く伸びた僕の影が
灰色の鳥とパイナップルを包むだろう。
深い海の底から伸びる映写機の光を辿って海面まで上っていく感じの小説だった。
なんかそれまで無機質で冷めてた感じだったけど
最後の最後で暖かく包まれるような印象持った
この一文のおかげだと思う
87 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/02(木) 10:36:45
ガイシュツだったらスマン。それに村上龍連続だけど・・・
限りなく透明に近いブルーだ。
やはりこの一文に限る。初めて読んだとき、ラスト前のこの一文を読んで衝撃
だった。鳥肌が立った。マジレスで。
88 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/02(木) 10:46:15
ベタかもしれないけど・・・
外には、ただ、黒洞洞たる夜があるばかりである。
芥川龍之介「羅生門」のラスト。この後に「下人のゆくえは、誰も知らない」
という一文が続く。この最後の一文についてはいらないとか批判が多いけど、
俺はアリだと思う。鳥肌ものの怖さがある。
寂寞を敵とし友とし
雪の中に
長い一生を送る人もあり
石川啄木
90 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/11(土) 23:29:39
あgへ
91 :
名無し物書き@推敲中?:2006/03/08(水) 12:04:04
文章は読めん
92 :
名無し物書き@推敲中?:2006/03/22(水) 06:29:55
期待age
>>88 個人的に下人はあの後「偸盗」に出演し「藪の中」で捕まった多襄丸なんじゃねーかとか妄想している
…スレ違いスマソ。
青らむ雪のうつろのなかへ
という感じの(細部ちがうかも)表現を
ミュージシャンの姫神と作家の篠田節子が使っていて、
パクったのはどっちじゃーと思っていたら、
元ネタが宮澤賢治だった。
賢治先生ならリスペクトだな、しょーがねーやと思った。
95 :
名無し物書き@推敲中?:2006/04/10(月) 12:57:23
ダブルミーニング
96 :
名無し物書き@推敲中?:2006/04/13(木) 06:45:09
酒見賢一「後宮小説」
腹上死であった、と記載されている。
この出だし最強でしょ。
98 :
名無し物書き@推敲中?:2006/04/22(土) 07:21:20
ぜんぜん
好きよりもっと愛してる
100 :
名無し物書き@推敲中?:2006/05/01(月) 17:25:49
101 :
名無し物書き@推敲中?:2006/05/31(水) 12:17:22
おもしろそう
102 :
名無し物書き@推敲中?:2006/05/31(水) 12:30:09
辻仁成「ニュートンの林檎」 騎乗位でオルガズムの絶頂を迎える前の主人公の台詞。
「駄目だ。こぼれてしまうよ」
思わず吹き出してしまいました。
107 :
名無し物書き@推敲中?::2006/07/06(木) 12:14:59
想ってた
108 :
名無し物書き@推敲中?:2006/07/06(木) 12:41:37
しかし、それでもやはり何かを書く段になると、いつも絶望的な気分に襲われることになった。
僕の書くことのできる領域はあまりにも限られたものだったからだ。
例えば象について何かが書けたとしても、象使いについては何も書けないかもしれない。そういうことだ。
村上春樹「風の歌を聴け」
誰が何と言おうと俺はここの部分が好き
109 :
名無し物書き@推敲中?:2006/08/20(日) 21:14:44
ドグラ・マグラ
タイトルだけで超えられない何かを感じる
「そうだよ」
君は言った
「一緒に行こう?」
少女は私の手を握った。
鼻血出そうになった
112 :
名無し物書き@推敲中:
セン好き