1 :
名無し物書き@推敲中?:
・この小説の、この表現イイ!を書いてみてください。
・長文は、ナシ
・抜粋した作品名、作家名は記載してください。
・感想もOK
〜普段、読む事のなかった作家の表現も勉強したい。。。
そして良いと思ったら、その作家の小説も読んでみようかぁ〜
という趣旨です。
2get!
3 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/03(日) 22:39:58
黄色い月の面を、蜻蛉が一匹浮く様に飛んだ。
内田百閨u件(くだん)」
4 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/04(月) 03:44:37
小野不由美〈十二国記 月の影・影の海〉における女子高の描写。
教室では、少しでも目立つとイジメ(暴力的行為じゃなく精神的疎外)の対象になる。
主人公も、「優等生になりすぎないように」気をつけて生活している。
「出る釘は打たれる」日本社会の特性を更に濃縮したような矮小な世界だが、
こういう[♀の厭らしい部分]は、男にはなかなか書けないので、参考になる。
なお、「出る杭は打たれる──が正しい」という突っ込みは、
不揃いに出っ張った杭が打たれる場面を経験ないし目撃したことのある人だけどうぞ。
出っ張った釘が打たれ、定位置に叩き戻されるのなら、
自分でも何度も経験して容易にイメージできるし、他の人もそうだと思うが、
出る杭が叩き戻される状況は、普遍的イメージではなく比喩としては不適切だろう。
だから現代日本語としては、「出る釘は打たれる」の方が適切だと判断する。
顔も背格好もファッションも地味だし、異性に積極的ではない人間に特有の、不潔さがある。
たぶん仕送りが欲しかったのだと思う。
血は赤ではなく黒色に見えて、おれは刺身用の醤油にそっくりだと思った。
ベタですが村上龍から。矯正中、栄華小説集、味噌汁、です。
6 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/04(月) 09:49:50
>>4 杭。。。気づかなかった。見たことない、確かに。
7 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/04(月) 09:51:33
>>5 異性に積極的ではない人間に〜。。。ヾ(lll;´□)(□`;lll)ノ ガーン!!!
自分、不潔なのか。。。自己嫌悪。。。
立て看板設置。 スレを支える参加者、発言者、の参加を募ります。
坐禅と見性 第20章◎飯袋子の集い◎驢年横行◎
http://life7.2ch.net/test/read.cgi/psy/1119079479/ 現在、下記の公案に取り組んでいます。参禅をお待ちします。
三毒の人、貪瞋痴(とんじんち) 「貪(むさぼり)瞋(いかり)痴(おろかさ)」または、三毒の人をインテリバカセ、とも言うらしい。
『 眼が見えず、
耳が聞こえず、
口がきけず、
この三毒の人が、さくらを知るために、さくらの木に抱きついた。
さて この三毒の人に これがさくらだと悟らせるには、どうしたらいいのだろうか。五力(ごりき)によって解決せよ』
、と言う。この問いに答えるには、五力が、解を与えるそうだ。五力とは、
(1)信じること。
(2)勤めること。
(3)思慮深いこと。
(4)心を統一すること。
(5)明らかな智慧を持つこと。
9 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/04(月) 21:13:58
>>8 趣旨はどうあれ、それはそれで考え深い。。。
レス番若いうちにベタどころ。村上春樹。アフターダーク。
都市の発するうなりは、通奏低音としてそこにある。
おれはこの、通奏低音、ってのがイイ。都市って真夜中も常に上空にゴォーって低音が漂ってて、
どう表現しようか苦心したことがある。すげえ、ピンポイントだ、って思った。
11 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/04(月) 23:47:43
>>10 浅学非才のわたくしは、辞書を引きました。。。
知りませんでした、この言葉。
>>5>>10も前後の文脈ってあるから。長文にしないようにここだけ引用。
おれは(これらの作品の)ファンなので、読んで欲しいな、と。春樹って、
読者に辞書引かせるような作家じゃないでしょ?
あと、いうまでもないが、この表現イイ!勉強、って、
「だから(創作文芸板の)住人のおれたちは、もう使えない、使ってはいけない」
ってことで良いですね? つまり、「すでに出たイイ表現」スレってことだ。
(略)川は雨水とそれに融かされた雪、決壊した貯水池からの水で
増大し、(略)犬や猫、鼠などの死骸をすばらしい早さで運び去って行った。
芽むしり仔撃ち、大江健三郎。
死骸を運び去って行った川の流れの早さが、すばらしい早さ、っつのがカコイイ。
町田康のなんかで、
弱く笑って、
とあって、笑った。笑う、は、普通強弱で表現しないな、と思った。
16 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 09:24:32
>>12 いえ、勉強になりました「通奏低音」という語彙を知らなかったから。
17 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 09:26:33
>>13 応用するのはいいと思われ。。。
表現方法をすべて新しくしていたら、それこそ意味不明な小説になりがちなので。
「おおこの語彙は、こんなふうに使うことができるんだ!発見」的な。
18 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 14:29:59
>>14 周作の「深い河」的な。。。でも深い河と違うのは、日本らしくていいところ。
19 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 14:31:53
>>15 力なく笑う。。。と意味は同じなのかな。
それを自分独自の表現にしてみたとか。
だけど「弱く笑う」って、誰か他の作家でも見た気がする。。。
詠美の書き出し、イイの多い。
食べることや眠ることは欲望のうちに入りませんでした、
みたいなのあったよね。
21 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 21:15:45
>>20 それ、エッセイ?小説?知らなくてごめん。
>>21 食べることや眠ることは、その頃、欲望のうちには入りませんでした。
桔梗、っていう短編。晩年の子供、に入ってる。
24 :
21:2005/07/06(水) 11:50:44
>>23 おお。文体がなんか、童話っぽいね。
きっと続きはもっと違うのかもしれないけど。
変った書き出しだ。。
25 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/06(水) 16:45:47
よしてくれ。よしてくれ。主よ、あなたは今こそ沈黙を破るべきだ。
もう黙っていてはいけぬ。
遠藤周作「沈黙」
26 :
名無し物書き@推敲中?:2005/07/09(土) 08:32:07
ダンセイニ《二瓶のソース》のトリック。
異常な場面で異常な行動をするが、実は動機は凡庸であることを明らかにし、
落差で妙な読後感を味あわせる──というフォーマット。
《二瓶のソース》では、
「異常な場面=殺人、異常な行動=木を伐採する、凡庸な動機=腹ごなし」
というパラメータになっているが、同じフォーマットで他のパラメータもありうるはず。
二瓶のソースは、もう使えないでしょう
人喰い野郎が、菜食主義、野菜だけには絶対に合わないソースと
伏線を貼りマクリ、最大の謎が「大量の木を切る」
これは、何だ?。薫製にでもしたかとワクワク。
それが最期に「腹ごなしの運動」だろ。
ガックシ、だけど、やれれた〜
この脱力系は、マネたらピンと来るよ。
マニア向けにパロディ化する手はあるだろうが
28 :
名無し物書き@推敲中?:2005/08/05(金) 22:53:02
二種類の生命時間の対比。
萩尾望都《ポーの一族》では、
生命時間の停滞した主人公たちと、一般人との対比。
キース《アルジャーノンに花束を》では、
生命時間の加速した圧縮的生涯を生きる主人公と、一般人との対比。
加速と減速の違いはあっても、対比の構図は似ている。
どちらもせつない。
29 :
名無し物書き@推敲中?:2005/08/06(土) 20:51:36
このスレ期待。age
30 :
名無し物書き@推敲中?:2005/08/16(火) 01:59:34
もっと書き込み無さ!
31 :
名無し物書き@推敲中?:2005/08/16(火) 14:30:24
カミュ「異邦人」の冒頭。
昨日、ママンが死んだ。でも私には良く解らない。
ッてやつ。あの冒頭だけで、主人公のちょっと変わった性格というか、価値観が凄く伝わるから、その後スムーズに読むことが出来る。
村上龍の表現、前スレにあったけど、あたしもはっきり覚えてたw
それだけ印象的な表現だってことだと思う。
だいたい作者がどうしても書かざるを得なくなった訳でもない書物などに、なぜ我々がぐずぐずしていなくてはならぬのだ。
バタイユ『空の青み』 伊東守男 訳 「まえがき」の一節
この板に限らずネットでは適当に書いたものを平気で垂れ流し、感想を欲しがる人が多いけど、
書くほうも読むほうも、こういう認識はもっておくべき。自戒も込めて。
33 :
名無し物書き@推敲中?:2005/08/25(木) 23:22:19
>>31 前スレがわからないから、その村上の文章を教えてくださいな。
34 :
名無し物書き@推敲中?:2005/08/26(金) 01:29:00
──死者たちは、濃褐色の液に浸って、腕を絡みあい、頭を押しつけあって、
ぎっしり浮かび、また半ば沈みかかっている──
大江健三郎《死者の奢り》の冒頭の一文だ。
状況が判らなくて、とにかく先を読まないわけにいかない気分にさせられる。
これは大江のデビュー作、つまり無名の作家志望者が書いた文なわけで、
「ノーベル賞受賞した大作家の文章」という後知恵の予備知識を忘れ、
2chの書き込みか何かだと思って虚心坦懐に文だけ見るようにつとめたら、
同時代人の感想に近づけるだろう。
そういうものとして読めば、
「センスの良い釣り」というのが、この文の正統な評価だと思う。
この文の衝撃というのはグロ画像の衝撃に近くて、
文章としてはある意味卑怯なのだが、そういう卑怯さまで含めて、
この「無名の作家志望者」のセンスの良さに感心する。
35 :
名無し物書き@推敲中?:2005/08/30(火) 00:16:47
着たい上げ
川上弘美、溺レる、の書き出し。
少し前から、逃げている。
一人で逃げているのではない、二人して逃げているのである。
僕が絶妙だと思うのは、二行目の読点と、「二人して」というところ。
義務教育的国語なら、
一人で逃げているのではない。二人で逃げているのである。
と書く筈。ま、おれの周りでも、そこが嫌いっていうやついるが。
川上弘美連投ごめん。
それで、わたしはきわまってしまう。精をつけて、切磋琢磨して、きわまりに導きあ
おうと邁進して、結果、きわまる。
エッチして逝ったってことです。
しかしこの人理学部卒て。反動か?
スレ違いになるが、勉強ってことで。
《宇宙は、僕のところで完全にぼけてしまっている。宇宙というものは僕のところで終点。
揺り椅子にゆっくり揺れ、僕の躰は見えない宇宙服で包まれる》
(略)体言止めの多い文章は、思考の飛躍というよりも、思考の回避のようにみ
える。「映像的思考」などというより、認識的怠惰にすぎない。
これなどは(引用文のこと)、大げさで、その実何も語っていない文章の典型である。詩的にみえるが、詩
人の思考ではない。どの一行にも明確なものがなく、だらだらとつみ重ねていけばよかろう
といった安易さがある。
柄谷の批評。激しく同意。
>>24 いわんとすることはわかる。が、食欲と睡眠が、
(俗にいう三大)欲望のうちに入らなかった、
といっている文から、童話っぽい、っつう解釈は、
なんつーか、一周回って奇才の発想。おれこの詠美の短編
について考え込んじゃったよ。
童話。
解釈できなくもない。
40 :
名無し物書き@推敲中?:2005/09/03(土) 21:21:48
あっげるよお〜!
41 :
名無し物書き@推敲中?:2005/09/03(土) 21:45:14
〔『別の生活がある』と言う。しかし、そんなものが
果してありうるであろうか。限界がどこででもぼやけていて、
しかもそれがぼやけているということを四六時中
気にしているこの生活以外の、どこに『別の生活』がありうるか。〕
「広場の孤独」堀田義衛 新潮社
夢を持ってフリーターやっている人はこれ読んで考えなおしましょう。
42 :
名無し物書き@推敲中?:2005/09/03(土) 22:28:02
このスレいいな。
印象的な引用からあれこれ想像するのは読み手としてもグッとくる。
文章の味に恍惚とするのは他人が見ればマニアに他ならないんだけど、
私はそんな自分が大好きです。
43 :
名無し物書き@推敲中?:2005/09/09(金) 00:18:28
あげるんだお!
44 :
名無し物書き@推敲中?:2005/09/09(金) 02:22:35
朝の寝床は
大理石の棺
開高 健 「夏の闇」
45 :
名無し物書き@推敲中?:2005/09/09(金) 03:18:46
〔『はるかな迷路のひだを通り抜けて、
とうとうおまえがやって来た。』〕
「他人の顔」 安陪公房
46 :
名無し物書き@推敲中?:2005/09/09(金) 03:43:10
〔『十二月晦日
屋上積雪四寸余、晴、時々また雪降る。寒風終日面を
裂くが如し。氷柱垂れ、堅氷鎖す。甚だ寒し。』〕
「鸚鵡籠中記」 朝日重章 元禄四年〜宝永五年
元禄の頃の下級武士の日記なのですが、これは面白いですよ。
小説じゃないんでアレですが、好きな本の一節なので。
タネ本は雄山閣の「元禄 下級武士の生活」です。
47 :
名無し物書き@推敲中?:2005/10/01(土) 00:54:15
age
48 :
名無し物書き@推敲中?:2005/10/01(土) 02:31:39
朝、目が覚めると泣いていた。
寂しさは鳴る。
50 :
名無し物書き@推敲中?:2005/10/01(土) 09:23:21
51 :
名無し物書き@推敲中?:2005/10/16(日) 23:37:32
あげ
俳句、短歌には濃い〜一言が多くて散文書きにも参考になる
咳をしても一人 尾崎放哉
のど赤きつばくらめ二つ梁にいてたらちねの母は死にたまうなり 斎藤茂吉
血が黒ずんで球形に盛り上がって来た。
それが頂点に達した時に球は崩れてスイと一ト筋に流れた。
(志賀直哉「剃刀」)
この観察眼はすごいと思う。私も見習いたいものです。
私は何ものかが私を殺してくれるのを待っていた。
ところがそれは、何ものかが私を生かしてくれるのを
待っているのと同じ事なのである。
三島由紀夫『仮面の告白』
ここだけ抜き出すと当たり前のことを書いているように見えるかもしれないが、
殺されるのを待つということが結局生かされてることに他ならないという
逆説を看破する明晰さが好き。
55 :
名無し物書き@推敲中?:2005/11/05(土) 19:14:35
期待あげ
「メタ化された友達」というのは、相手と自分の間でお互いにとっての「友達」というものの役割が同一のものとして共有されていること、
つまり、「友達とはこういうもので、こういう場合にはこうするもの」という共通理解がされてしまっているということだろう。
(中略)
「友達とはこうするもの」という意識は「こうしておけば友達として間違いない」という気分も作り、そうするとなにか相手に手を抜いてるような(抜かれてるような)気分になって、いかにもその「友達」や「友情」が偽物めいて感じられてしまうんだろう。
舞城王太郎
『好き好き大好き超愛してる。』
なるほど、と思った。この人ぶっとんだストーリーだけど意外とまともなことも言う。そのギャップがまた好き。
>>53 志賀ならもっと的確かつ簡潔な描写は他にも幾らでもあるだろうに…下らん
単にリスカ描写だから誉めてんだろ
黒い眸のなかに鮮やかに見えた自分の姿が、ぼうっと崩れてきた。静かな水が動いて映る影を乱したように、流れ出したと思ったら、女の眼がぱたりと閉じた。長い睫の間から涙が頬へ垂れた。
夏目漱石
夢十夜〜第一夜〜
60 :
53:2005/11/06(日) 00:34:41
>>58 志賀氏の適確かつ簡潔な描写は、あなたの言うとおり幾らでもある。
私は彼のそういった描写にこの上ない魅力を感じるし、
また彼に敬意を表するものである。
53はあくまでも一つの例である。
このスレの趣旨に合わせ、
まだ志賀氏の作品に親しんでいない人に彼の魅力を少しでも伝えたいと思い、
53の描写を選んだというわけである。
あなたの言う「リスカ描写」とはまったく何の関係もない。
そもそもリスカとは自分の手首を切ることではないのか。
53の描写は客の肌を誤って傷つけてしまったという場面であり、
決してリスカ(リストカット)ではない。
私は、「単にリスカ描写だから誉めて」いるのではない。
志賀氏の文章の根底に流れるリアリズムを称賛しているのだ。
58は剃刀読んでいないのに突っ込んだわけか
63 :
名無し物書き@推敲中?:2005/11/23(水) 19:12:50
もっと書き込みなさいよ!
64 :
1:2005/11/23(水) 20:55:37
スティーヴン・キング「ドロレス・クレイボーン」
なにいってんだい、アンディ・ビセット。いま説明した権利のこと、わかったか、だって?
ふん、なんとアホらしいことをいって。
そんなことは、どうだっていいじゃないのさ。そのしゃべくりをやめて、ちょっと聴きなさい。
・・・・・・
ここからえんえんと続く、夫を殺した女の独白。
最初から最後まで、独白で通すのは岩井志摩子の「ぼっけえ、きょうてえ」みたいですけど
読んでいるうちに独白文を読んでいるのではなく、ストーリーをちゃんと追っている、という感じで読めます。
面白かった。
出だしの軽妙さが、なかなか好きです。
65 :
名無し物書き@推敲中?:2005/11/28(月) 22:09:38
自分はバーに入って女の子を口説こうとした、すると。
「おい、てめぇの目は節穴か?この野郎が」
なんと男の人だったのかと驚いた、すると、その人はこういってきた。
「フフフ、小型のレコーダーを持ってるのよ、しつこい客がいたら追い払えるようにね」
今度は間違いなく女の人の声だ。
なんだ、そうだったのかと女の子にこう話しかけた。
「よかったらそのレコーダーを見せてくれないか?」
すると彼女はこういった。
「ゴメンね、今は持ってないの」
自分の中で一位、星新一「おみそれ社会」一部要約
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
夜の底が白くなった。
川端康成『雪国』
言わずと知れた冒頭。このたった一文で読者を世界に引き込むところが凄い。
67 :
名無し物書き@推敲中?:2005/12/02(金) 22:17:01
>>66 冬に関東から新潟に鉄道で行くと、
その表現が身も蓋も無く正確な単なる写実表現だと実感して感動するよ。
その日、ニューヨークはすばらしい天気だった。恋を知ったばかりの少年のように、
どこもかしこもぴかぴかにひかっていた。空は青く、風はやさしかった。気持ちだけは、まったくの四月だった。
ユニオン・スクウェアでは、早合点した小鳥たちが春を歌っていたが、誰一人それをとやかく言う者はなかった。
三月はまだ少し残っている。しかし、冬はもう戻ってこない。
矢作俊彦『LOVE LETTERS』
69 :
名無し物書き@推敲中?:2005/12/03(土) 00:58:17
>>67 高崎 〜 長いトンネル 〜 湯沢 あたりだなあ
70 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/03(火) 01:20:58
本土の船着場とダヴンホール島を行き来するあいだ、いつも一瞬だけ、
船着場も島も見えなくなる瞬間があった。その瞬間には、霧に包まれて
水上に浮かぶ彼の船以外、もはや何ひとつ存在しなかった。空から太陽
がなくなっても、国と名のるものがすべて消滅してしまっても、何も変
わりはしなかったことだろう。
スティーヴ・エリクソン『黒い時計の旅』。柴田元幸訳も秀逸。
71 :
70:2006/01/03(火) 01:25:42
安部公房の「他人の顔」の冒頭が暗記するほど好きだったんだが、すでに45であがっているね。こういうの、ちょっと嬉しいな。
72 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/03(火) 18:39:53
>>68 ほおおお。爽やか〜。外国の作家ものかと思いました・
73 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/03(火) 18:48:08
>>72 ウンウン。とくに、コソっと秘めたように好きなものを
他にも同じような感覚で好きという人がいると
ああ、この本のこの部分、おんなじふうに感じる人がいるんだなあ
と思えて、なんだか感慨深いネ。。。それも本の楽しみの一つ。。
74 :
73:2006/01/03(火) 18:48:42
75 :
?名無し物書き@推敲中?:2006/01/04(水) 04:02:03
*文芸坐 = 映画館
文芸坐のロビーは薄暗く、賢三はいつも「トンネルみたいだ」と感じていた。
実際にはそれ程に暗くはない。スクリーンの虚構世界にどっぷりとトリップした後では、
ロビーは、つまらない現実世界との連絡路のように思えて、それでトンネルじみて陰気な場所に
思えてしまうのだ。
トンネルには、いつも数人の男たちがたむろしていた。二本目の映画が始まるまでの時間つぶし
をしている彼らは、一様に地味な雰囲気を漂わせていた。椅子に座り、文芸坐の今後の上映予定を
知らせる小冊子をじとりと見つめながら、ボソボソと紙コップのコーヒーをすする大学生風、紙に
貼られたジョン・カーペンターの『ニューヨーク1997』のポスターを無表情でながめている
サラリーマン。
スクリーンの虚構世界をあの世とし、映画館の外の現実をこの世とするなら、ロビーに集う彼ら
はその間でどちらも行けない亡者のようなものだ、と賢三は考えていた。
「こいつらは現実に立ち向かう勇気もなく、映画館の闇の中へ逃避して、そのくせ虚構世界の中へ
飛び込むことが不可能なことも知っているから、こうしてロビーで途方にくれているのだ。
そしてこのオレもその一員なのだ。みんなみんなダメ人間だ。死ね死ね死んでしまえダメ人間
どもめ!!」
___ただ映画館のロビーでコヒーを飲んだりポスターを見ているだけなのに、ダメ人間とまで
断言されてしまう彼らも災難な人々である。
(大槻ケンヂ / グミ・チョコレート・パイン グミ編)
76 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/04(水) 14:39:24
>>75 スゴくいい表現とは思わないけど
最後のほうで思わず「ふふん」とほくそ笑むことが出来るような感じがした。。。
切り出しナイフが、鳩尾のところに深く突き刺さったが、少しも痛くない。
その刃は真下に引き下げられてゆき、厚いボール紙を切り裂いてゆくのに似た鈍い音がした。
夢の話である。
裸の死体が、地面に倒れている。
その死体は、私の姿をしている。
周囲は暗く、倒れているものの形だけが鮮明に浮かび上がってみえている。
内臓をそっくり持ち去られたらしく、薄べったい形になっている。
手足の長さは変わらないが、ひどく細く見えた。
吉行淳之介「鞄の中身」冒頭
78 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/05(木) 15:30:32
勉強になりそうなので、期待age
79 :
70:2006/01/06(金) 00:13:56
>>73 まったく同感だね。電車で隣に座った人が読書に熱中してて、
それが自分の好きな本だったりすると、思わずマジマジ顔を
見ちゃうな。むろん、しょっちゅうあるわけじゃないんだが。
「人殺しの時代だった。永い洪水のように戦争が集団的な
狂気を、人間の情念の襞ひだ、躰のあらゆる隅ずみ、森、
街路、空に氾濫させていた。僕らの収容されていた古め
かしい煉瓦造りの建物、その中庭をさえ、突然空から降
りてきた兵隊、飛行機の半透明な胴体のなかで猥雑な形
に尻をつき出した若い金髪の兵隊があわてふためいた機
銃掃射をしたり、朝早く作業のために整列して門を出よ
うとすると、悪意にみちた有刺鉄線のからむ門の外側に
餓死したばかりの女がよりかかっていて、たちまち引率
の教官の鼻先へ倒れてきたりした。」
長かった。すまん。大江健三郎『芽むしり仔撃ち』。
最初に読んだときは打ちのめされた。
こうしてみるたび、プロの表現力はすごいと思ってしまうな。
81 :
73:2006/01/06(金) 11:09:29
>>79,70
こういうものは、書けないな。。。
どう頑張ったって、その時代に生きていないものは、
「戦争」については書けない。(時代ものは別)
一度、色々調べて書こうと試みたけど、
あまりにもウソくささがバレバレで(自分にとっても)サブいし
やめた。
その時代をくぐり抜けた人に任せた方がいい場合ってあるよね。。
野坂さんとかね。
そういや、電車で遠藤周作の「私にとって神とは」を
読んでいた時、隣に座っていた人から「その本、なんていう本ですか」
って聞かれたことがある。そんな時は、嬉しかったりする。
老人はライオンの夢を見ていた。
ヘミングウエイ「老人と海」のラスト。
全てのエピソードはこの一文の素晴らしさを味わうたうためにあったような気がする。
83 :
70:2006/01/06(金) 23:49:55
>>82 そう!最後の一文が素晴らしいと、何と言うか、作品全体がその一点に
向かってなだれこんでくるような眩暈を感じる。冒頭のツカミもむろん
大事なんだけれど、読書の時はいつも最後の一文を愉しみにしてしまう。
最後の一文の素晴らしさ、ということでいつも思い出すのは、池澤夏樹
も同じようなことを書いていたけれど、ピンチョンの『競売ナンバー49
の叫び』。末尾だけ抜き出してもピンとこないかもしれないけれど・・・
パサリンは腕をひろげた。どこか遠方の文化圏の聖職者の
ジェスチャーのようだ。地下に降下する天使のジェスチャ
ーかもしれない。競売人は咳ばらいをした。エディパは椅
子に深く坐りなおして、競売ナンバー49の叫びを待った。
この後、「叫び」があがるのかどうかは明かされない。大きく吸い込ん
だ息をふっと止めて、緊張して、そしてそのまま切って捨てたように小
説は終わる。
こういう「開かれた終わり方」には共感するよ。
日本で、最後の一文に心を砕いている作家としてすぐ思い浮かぶのは、
開高健。
森は静かだった。 (開高健『輝ける闇』)
明日の朝、十時だ。 (同『夏の闇』)
作家としてデビューする前はコピーライターでもあった氏の面目躍如、
だと思う。ここでビシッと決まる。
ただ、最後の一文を紹介してしまうのって、推理小説の犯人を明かして
しまうような後ろめたさを感じなくもない。
最後に付け加えると、さっき出した安部公房『他人の顔』は、末尾の一
文も(「開かれた終わり方」の好例として)素晴らしいと思うよ。
84 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/30(月) 13:15:01
素晴らしいと思うよ
85 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/01(水) 23:29:11
age
86 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/02(木) 00:11:56
>>83 最後の一文で一番好きなのは龍の限りなく〜かな
鳥が舞い降りてきて、暖かい光がここまで届けば、長く伸びた僕の影が
灰色の鳥とパイナップルを包むだろう。
深い海の底から伸びる映写機の光を辿って海面まで上っていく感じの小説だった。
なんかそれまで無機質で冷めてた感じだったけど
最後の最後で暖かく包まれるような印象持った
この一文のおかげだと思う
87 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/02(木) 10:36:45
ガイシュツだったらスマン。それに村上龍連続だけど・・・
限りなく透明に近いブルーだ。
やはりこの一文に限る。初めて読んだとき、ラスト前のこの一文を読んで衝撃
だった。鳥肌が立った。マジレスで。
88 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/02(木) 10:46:15
ベタかもしれないけど・・・
外には、ただ、黒洞洞たる夜があるばかりである。
芥川龍之介「羅生門」のラスト。この後に「下人のゆくえは、誰も知らない」
という一文が続く。この最後の一文についてはいらないとか批判が多いけど、
俺はアリだと思う。鳥肌ものの怖さがある。
寂寞を敵とし友とし
雪の中に
長い一生を送る人もあり
石川啄木
90 :
名無し物書き@推敲中?:2006/02/11(土) 23:29:39
あgへ
91 :
名無し物書き@推敲中?:2006/03/08(水) 12:04:04
文章は読めん
92 :
名無し物書き@推敲中?:2006/03/22(水) 06:29:55
期待age
>>88 個人的に下人はあの後「偸盗」に出演し「藪の中」で捕まった多襄丸なんじゃねーかとか妄想している
…スレ違いスマソ。
青らむ雪のうつろのなかへ
という感じの(細部ちがうかも)表現を
ミュージシャンの姫神と作家の篠田節子が使っていて、
パクったのはどっちじゃーと思っていたら、
元ネタが宮澤賢治だった。
賢治先生ならリスペクトだな、しょーがねーやと思った。
95 :
名無し物書き@推敲中?:2006/04/10(月) 12:57:23
ダブルミーニング
96 :
名無し物書き@推敲中?:2006/04/13(木) 06:45:09
酒見賢一「後宮小説」
腹上死であった、と記載されている。
この出だし最強でしょ。
98 :
名無し物書き@推敲中?:2006/04/22(土) 07:21:20
ぜんぜん
好きよりもっと愛してる
100 :
名無し物書き@推敲中?:2006/05/01(月) 17:25:49
101 :
名無し物書き@推敲中?:2006/05/31(水) 12:17:22
おもしろそう
102 :
名無し物書き@推敲中?:2006/05/31(水) 12:30:09
辻仁成「ニュートンの林檎」 騎乗位でオルガズムの絶頂を迎える前の主人公の台詞。
「駄目だ。こぼれてしまうよ」
思わず吹き出してしまいました。
107 :
名無し物書き@推敲中?::2006/07/06(木) 12:14:59
想ってた
108 :
名無し物書き@推敲中?:2006/07/06(木) 12:41:37
しかし、それでもやはり何かを書く段になると、いつも絶望的な気分に襲われることになった。
僕の書くことのできる領域はあまりにも限られたものだったからだ。
例えば象について何かが書けたとしても、象使いについては何も書けないかもしれない。そういうことだ。
村上春樹「風の歌を聴け」
誰が何と言おうと俺はここの部分が好き
109 :
名無し物書き@推敲中?:2006/08/20(日) 21:14:44
ドグラ・マグラ
タイトルだけで超えられない何かを感じる
「そうだよ」
君は言った
「一緒に行こう?」
少女は私の手を握った。
鼻血出そうになった
112 :
名無し物書き@推敲中:
セン好き