1 :
名無し物書き@推敲中?:
オリジナルファンタジー「紋章騎士団」を書いてみようと思う。
感想、批評お願いします。
FEのキャラの名が出てたらスマソ。
剣と魔法でいってみたい。
いいのか2で。
ホントにいいのか?
ああ!懐かしいなーファイヤーエンブレム。
自分も書いたことあるけど、まだ中学生だったし、長編小説はつらくて
止めてしまったんだ。
メラミ!
6 :
名無し物書き@推敲中?:04/01/18 12:18
>>1 まあ気長にやっとくれよ
ついでに「ハードファンタジー」もよろしくな
『逃げなさい……早……く……』
もう20年も前の話だ。
俺の家の近くの家にさ、軍隊が来たんだよ。それはもう、緑の鎧をガチガチに着込んでさ。
で、その軍隊の連中はさ、剣やら槍やらでその家の扉を壊そうとしてんの。
え?止めろって?できるわけないだろ、ヘタすりゃ俺の首が飛んじまうからな。
で、連中はその家の中に入って中にいた子供と母親の殺しちまったんだよ。
遠目でもはっきり分かったさ。
でもな、そん時急に母親の体が光りだしたんだ。それは強い光だったな。
その光が収まるとさ、竜がいたんだよ、竜が。あの伝説の竜だぜ?
その竜はな、ついさっき自分を殺した軍隊の連中を片っ端から焼き殺しちまったんだ。
俺?俺は怖くて部屋の隅で震えてたんだよ。
しばらくすると竜はいなくなってて、また人の姿に戻って死んでたよ。
子供?さぁねぇ、そこまでは見てなかったな。
とにかく……
〜プロローグ 完〜
昼飯食っててスマソ。
今から書く。
クラスト新暦4204年。ここはクラスト大陸。
東には華やかな文化と軍事力を誇る大国「ヤーファ」王国。
それとは対照的に西には他国との関わりを持たない国「ダロス」帝国。
物語は東の「ヤーファ」から始まる……
10 :
名無し物書き@推敲中?:04/01/18 13:39
†テンプレート†
名前:
職業:
種族:
性別:
年齢:
背景:
武器:
防具:
身長:
体重:
瞳の色:
髪の毛の色、長さ:
その他特徴:
趣味:
特技:
好きなもの:
嫌いなもの:
将来の夢(目標):
仲間達へ一言:
名無し達へ一言:
中の人より一言:
あのさ、提案なんだけど、こんなテンプレがあった方がキャラ書きやすいと思うんだ。
だから、このテンプレに書き込んだキャラを話に登場させるのはどうかな?
提案だから、スルーしても構わないよ。
こんな感じで・・・(イタイキャラだけど)
名前: ミハル・ヤーファ
職業: プリンセス
種族: 人間
性別: 女
年齢: 19歳
背景: ヤーファ王国の第三王女。国同士の陰謀に巻き込まれる。
武器: なし
防具: なし
身長: 168a
体重: 48`
瞳の色: 紺色
髪の毛の色、長さ:桃色、肩まで伸ばしている。
その他特徴: 太ももにハート型のあざがある。
趣味: 愛犬パチとの散歩
特技: 手編みのセーター
好きなもの: 動物と植物、そして国民
嫌いなもの: 爬虫類
将来の夢(目標): ヤーファ王国の復興
仲間達へ一言: イタイけど勘弁ね(^^
名無し達へ一言: 見守ってくださいね(^^
中の人より一言: GIRLSブラボーから名前を拝借しました。
良かったら登場させてください。
ではでは早速。
名前:レバン=フェレシウス(主人公)
職業:魔道士
種族:(今は言えない……)
性別:男
年齢:23
背景:(秘密)
武器:魔法ならなんでも
防具:特になし(魔法の障壁でカキーンと)
身長:177cm
体重:61kg
瞳の色:青(沖縄の海みたいな色)
髪の毛の色、長さ:金茶色、ショート
その他特徴:寝ぼけ眼
趣味:マターリ
特技:魔法
好きなもの:マターリ
嫌いなもの:自分を尻に敷く人
将来の夢:いやもう大人だし
仲間達へ一言:マターリしようよ
名無し達へ一言:マターリしようよ
中の人より一言:マターリしよ(ry
こんな感じか?ちょっとふざけてしまったが。
>>10サンクス。
1の人ありがとう!
レバン=フェレシウスの活躍、見守らせてもらうYO!
漏れももし良かったら、話に参加していい?
これって、リレー小説なのかNA???
14 :
とりあえず本編を進めないと:04/01/18 14:12
「そなたらも知ってる通り、ダロスはその侵攻の手をビゼン、ヘイストスにまで進めている
そう、このクラスト大陸は今や戦乱の世と化してしまっているのだ」
そこは広い謁見場だった。ここはヤーファ王国の本城である。
一際高い所にある玉座。そこに座っている老人こそが、ヤーファ国王ダフネス=ブレナスク=ヤーファその人である。
そこから少し離れて、2人の男女が片膝をつき、俯いていた。
片方は恐らく女性。まぶしいほどの金髪をしており、大そうな美人に違いない。
もう片方は恐らく男。女性のそれには及ばないが、その髪の色は金に近い。
>>13 うーん。できたら
>>10、
>>11みたいなネタというか、工夫というか、「こんな話にして」
みたいな感じでお願いします。あと漏れがネットできない時に、代理で書いてくれればありがたいんで、その時はお願いします。
キャラの原案なんかは、大歓迎ですよ。
>>15 レスありがとう!!!
じゃあ、話愉しみにしています。
がんがってNE!!!
「このままではいずれ、我が国にも被害が及ぶだろう。だが、この国も新体制作りと
復興で忙しい。ミハルなども頑張ってくれているが……。もう我々にはそなたら傭
兵に頼るしかないのだ、わかってくれ……」
「了解しました」
それまで俯いていた女性が顔を上げた。それと共に、1つにまとめた髪がゆらりと
動く。
「私からも少しだが、兵を出させてもらおう。アレク、ゲルハルトという騎士だ。ま
だ若いが腕は立つはずだ、使ってくれ。……頼んだぞ」
まさか彼女が来るとは思わなかった。手紙を見た時は「まさか」と思っていたが、本当だった
とは。
いや別に、ただ闘技場で数回手合わせをしてみただけなのだが。
(1回も、勝てなかったんだよな……)
男はそんな事を考えながら、女性と肩を並べて歩いていた。向かう先では、少々困った事にな
ってしまっていた。
「失礼しまっ……!」
『いけません、姫!!我々と共になど……』
「そうか?俺は別にいいと思うけど?」
『あら、さすがゲルハルト。話が分かりますわね〜』
『ゲルハルト、お前どういう頭の構造してるんだ!?みすみす姫を戦場になんて……』
男と女が着いた先は、城の中の応接室……のはずだった。ここで軽い団結式や自己
紹介をやるといい、と言われきてみたのだが。
とりあえずこの論争、一体なんなのか。姫がどうとか言っていたようだったが。
……とりあえず、止めよう。
男は立ったまま叫び続ける3人の中心に入り、
「まあまあ3人、落ち着いて。そこのお嬢さんもだ」
20 :
戦うお姫様2:04/01/18 15:10
「ムッ!?だぁ・れぇ・が・お嬢さんですってぇ〜?この優男!!」
お嬢さん(笑)は少し背伸びして、男の額を
(キュウッ〜……!ギリギリギリ!!!!)
「*;R=¥qm・あhwRcgyT**#んれ%&0!!!???!?!?!?」
(パッ)
「ギャあああああぁああぁあああぁぁぁあああああぁあああっぁあああっぁ……」
と握り潰した。後にこの技は「アイアンクロー」、「シャイニングフィンガー」
と呼ばれるようになり、世界中を恐怖で震撼させる事となる。
15分後。
「なるほど。要するに、ついていきたいと。俺達に」
「そういうことですわ。こんな時に城でじっとなんかしてられます?」
(確かに、さっきのあれなら兜ごと頭を潰せるな)
「戦うお姫様2」の描写が凄いですね。
でも、ちょっとファンタジーの王道から外れている気が・・・。
早く、レバンを登場させてくださいね。
男は額を擦りながら思う。心なしか、その骨格は微妙に歪んでいた。
「私は別にいいと思うぞ?」
男と共にこの部屋に来た女は言う。
「確かに王女の命は心配だが、王女自ら戦場に出て行くその心構え、私は気に入った。私は今まで、王女というのは
城に引き篭って遊んでいるだけの連中だと思っていたが、できた性格の者もいるとい
うのは嬉しいな」
「……決定だな、アレク?」
片方の騎士が相棒の肩を軽く叩く。
「隊長には、さすがに逆らえません……。王女。……許可します。」
24 :
結構強いよ、俺ら。:04/01/18 15:59
話はまとまった。結局、王女は連れて行く。彼女の良い経験になる事だし。
「それじゃ、申し遅れて悪い。俺の名前はレバン=フェレシウス。軽くレバンって呼んでくれ。
魔道士だ。少しは噂になってるかもな」
「知っている」
先程の王女の件で猛反発していた騎士が口を開いた。
「今じゃ使える者が数えるほどしかいない魔道士の中でも、特に強い力を持つ魔道士。大陸でも
敵う奴はいないとか……」
「当たりだ。ま、詳しい事は追い追いって事で……」
レバンは椅子に座った。それと交代するように、金髪の女が腰を上げる。
「……剣士、エーヴェル=カシスタミア」
「!」
レバンとエーヴェルを除く3人の目が見開いた。
剣士エーヴェルと言えば百戦錬磨の凄腕剣士、目で追う事すら難しいと言われる剣の持ち主
ではないか。その剣は妖刀とも魔剣ともいわれ、怪物とも呼ばれた程である。
「安心しろ、仲間は斬らん。世間というのは、悪い噂ばかり立ってしまうからな」
後半は独り言かもしれないが、その目は自嘲の色をしていた。
エーヴェルは腰を降ろした。
名前:エーヴェル=カシスタミア(主人公2)
職業:剣士
種族:人間
性別:女
年齢:24
背景:けっこう重い
武器:長刀・レイピア
防具:なし(剣でガード)
身長:170cm
体重:55kg
瞳の色:青が混じった黒
髪の毛の色、長さ:美しすぎる金色、後ろでまとめているので長さは不明。
その他特徴:怖い
趣味:剣の修行
特技:居合い抜き
好きなもの:甘い食べ物
嫌いなもの:幽霊、その他オカルト系全般
将来の夢:剣士らしく死ぬ
仲間達へ一言:足は引っ張るな
名無し達へ一言:……斬るぞ?
中の人へ一言:特になし
追加。エーヴェルの名はトラキア776から頂きました。
27 :
こんなんで大丈夫かい:04/01/18 16:35
「国王様から話を聞いているから分かると思いますが、私がアレク=ミランダ。こっち
はゲルハルト=カナリスです。よろしく」
「私はミハル=ヤーファ。一応ヤーファ王国の第三王女ですわ。少しは癒しの術が使え
るのでお願いしますわ」
『いや、例の拳を使ってくれねぇかな……』
「誰か、何か言いましたかしら?」
ビックリしてレバンは顔を上げた。そこには満面の笑みで握り拳を作る王女の姿があっ
た。
「ヒ、ヒイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!」
「やれやれ……いつもこうなのか?」
エーヴェルがため息をつきながら言った。
「はい……。大体いつも」
本当に彼らは旅立ってしまうのか?大丈夫なのか?
……分かりません。
世界が解り辛いなぁ。
適当な人物が台詞だけで喋っているようにしか感じない。
もう少し地の文を細かく書いてみたら?
日本人名じゃなくて日本でもないんだから、
そういった部分を解りやすくしないと読者がついていかないと思われ。
名前:アレク=ミランダ
職業:騎士
種族:人間
性別:男
年齢:21
背景:ミハルの世話でお疲れ気味。
武器:騎士剣
防具:鎧
身長:178センチ
体重:67kg
瞳の色:エメラルドグリーン
髪の毛の色、長さ:濃い緑、オールバック
その他特徴:落ち着いた雰囲気
趣味:読書(その読書もミハルのおかげで邪魔されがち)
特技:暗算
好きなもの:本
嫌いなもの:何も考えてないパー
将来の夢:司令官クラスの騎士になること
仲間達へ一言:怪我には気をつけろ
名無し達へ一言:俺って脇役かも
中の人へ一言:がんばれ
>>28 なるほど。ナレーションメインでいってみる。
説明も増やすか……
31 :
姫騎士物語?:04/01/18 18:17
「姫、お急ぎ下さい!!!約束の時間はとっくに過ぎてしまっているのですよ!?」
「わ、分かったからアレク……待って……」
立ち止まるミハルの手を強引に引っ張り、アレクはなおも走る。
早くも出発の時刻を決めた彼らは、旅の前の準備やら何やらで、一旦散った。特に王族のミハルは
旅の事を父や姉に告げるべきかどうか迷い、結局この事は告げずに、こっそりと城から抜け出すと
言う事に落ち着いた。
ところが、どんな変装をしても行く先々で「ミハル様?」と呼ばれ、そのたびに彼女は城に連れ戻
されるハメになるのである。
「ああん、もう走りたくないよぉ……」
とうとうミハルはその場にへたり込んでしまった。約束の時間はすでに40分も回ってしまっている。
「ああ……仕方ありませんね……」
アレクはミハルの手をようやく離した。
そのかわり、両足の関節を右手で、左手を背中にまわした。俗に言う「お姫様だっこ」である。
「ア……アレク?」
アレクはそのまま走り出した。彼は俊足が自慢だった。
1へ。
う〜ん。期待していたんだけど…。
読み手としては、気持ち悪い雰囲気だよ。この作品。
ファンタジー物は難しいから中途半端な実力で書くのはやめたほうが良い
自分も昔ファンタジー物が好きで書いていたけど、世界観を上手く伝えら
れず断念した。
今思えば、小さい頃読んだ小説の作家たち…皆凄い実力だったんだなぁ。
思うに淡々と書き過ぎなんだ。
FE自体コマ=ユニットみたいな感覚があるから、
行動結果だけで進めているように見受けられるが、
小説と言う媒体においてそれではよろしくない。
もっと人物の内面を掘り下げる、人物がこんな感覚を持っているから
こんな行動を起こした、そういった部分があまり見当たらないんだな。読む限り。
本当にただのナレーションで終わっちゃうから、
とにかく繊細に、精細に伝えることを心がけたほうがいい。
>>32 >>33 すまない。
だが、やはり小説は書かなければ上手くはなれないと思う。
良かったらこれからもアドバイス、批評頼む。
35 :
落ち込んじゃいれないぞ俺:04/01/19 17:47
「アレク……といったな、騎士。どういうことだ、この遅刻っぷりは?」
ただひたすら頭を下げるアレクに、エーヴェルは言う。
結局、ミハルとアレクの2人は1時間の遅刻という形になってしまった。本来なら30分かかる道のりを
10分程度で走り抜けたそのスピードは流石というべきだが。ミハルという重りがあってなお、その俊足
は衰える事はなかった。
しかし、遅刻は遅刻。
「申し訳有りません、私がもっとしっかりしていれば……。ほら、姫も!」
しかし、そのミハルはぶすっと黙って謝ろうとしない。
やはり、末妹の性か。
「姫!確かに今回は私の不注意や油断もありましたが……!少なからず、貴女にも責任があるのですぞ!?」
「分かっています。すみませんでしたね、アレク」
ミハルがようやく口を開いた。その言葉に、アレクとその場にいたゲルハルトは仰天した。
彼女は3姉妹の1番下、末妹である。それ故、誰にもかわいがられ、本人もそれに甘えてきた。大人
に近づくにつれ、王の器量も少しは備わってきたようであるが、やはりまだ幼さが抜けきらないのか、
自分の罪をなかなか認めようとしない。
36 :
偉いぞ王女様:04/01/19 18:02
その彼女が、素直に謝った。少々ためらいはあったようだが、大きな進歩である。お目付け役兼教育係
のアレクとしては、感極まって涙まで流して喜びたいのだろう。まあ、実際には頭を下げたままの体勢
でじわりと涙を浮かべた程度だが。
「この度の長時間に及ぶ無断の遅刻……申し訳有りませんでした。……気をつけます」
ミハルも深く頭を下げた。偉いぞ、第三王女。
「……分かった、もういい。人生長いんだ、1時間くらいどうと言う事はない」
その言葉にミハルは頭を上げ、ぱっと顔を輝かせた。アレクも大きく息をついて、胸に手を当てた。
1よ。挫けるな。俺も書き始めの頃は酷いものだった。
ただ、一つ忠告させてもらうと。実力を挙げるには作品を一本書き終え
て、それを自分の実力でできる限り手直しすればよい。
これをすれば徐々に間違ったところ、悪いところがボンヤリとだけど
見えてくる。そこからさらに正しい日本語等勉強を怠らずにいけ。
>>37 ありがとう。励みになる。
ここでちょっとアンケートをとらせてくれ。
Q.「スナイパー」 漢字表記はどっちがいいと思う?
1.狙撃手 2.翔弓兵
見てる人いたら、解答頼む。
39 :
名無し物書き@推敲中?:04/01/19 20:02
40 :
名無し物書き@推敲中?:04/01/19 23:02
1だとベタだよな。
かといって2はわかりづらい。
狙撃手の方が妥当かと。
ただ、戦場で狙撃ってのは相当難しいべさ。こりゃテッポウでも一緒。
弓だと風力の影響がデカいから、もっと。
今のアーチェリーでも、グラム単位の弓と矢の調整があってやっと
「狙撃」になるくらいだから、昔の軍用弓「大弓」とか「ボウガン」じゃあもっと難しい。
やっぱり近〜現代の「小銃(当然ある程度の銃身長が無いと、弾が加速できない)」
「ボートテイル弾」とか「三脚架」が無いとダメだね、狙撃は。
ま、小説だからそのへん無視したって構わないんだけど、参考にでもしてくれ。
後、ファンタジーモノは「横文字の名を持つ人間が登場する演劇」
じゃなくて、相当に背景説明と人間挙動のバランスをとることが要求される。
>>1は会話で全部済まそうとしているように見えるから、
燃え盛る炎であるとか、貴方の世界観オリジナル物理法則などを
上手く混ぜていくと良いとおもわれ。
個人的にFE的なスナイパーは「弓騎士」
アーチャーは「弓兵」
ハンターは「狩人」
ホースメンは「馬上弓」?
まんまだが。
ホースメンなら「猟騎兵」でもいいんでないか?
と逝ってみる
考えてみれば戦場で狙撃をするのは無理か。
基本は「弓騎士」、通り名などの時には「スナイパー」でいってみる事にする。
45 :
山を抜けるの?:04/01/20 19:45
「とりあえずみんな、この地図を見てくれ現在地はここ、ハディ山のふもとだな」
レバンは服のポケットから手の平程の大きさの紙、小さくたたんだ地図を取り出し、小さなだ円が書き連ねてある
部分を指差した。
ハディ山とは、隣の地方、ソラディアとの境に位置する、大きくはないが、歩きにくい地面に季節を問わず湿り
続ける空気、独特の居心地の悪さから旅人から敬遠されている山である。一説には、隣の地方には四大精霊の1人
である大地の精霊の加護が行き届いておらず、そのため荒れた土地になってしまった、と言う説もある。それが国
境の山、ハディにも及んでいる、というのが今の所有力な説である。
「できたら山を抜けて行きたいんだが……みんなどうだろう?」
ハディ山が敬遠される理由は、もう1つある。このハディ山、迂回して回るとえらい時間がかかるのである。高く
はないが、縦、横に広いのだ。迂回して回るルートで隣のソラディアに着くまでの時間は、およそ4日。それに比
べて突っ切るルートはわずか半日である。急ぎの旅人はいやいや山を越えるハメになるわけである。
あまり悠長な時を過ごすわけにはいかない彼らの事情上、突っ切るしかないのである。レバンはそれを優先した。
「俺は別に山を抜けてもいいと思うよ。近道なんだろ?」
>>45 「全部読む」で見ないとズレます。ごめんなさい。
とりあえずゲルハルトは賛成した。
「異議はない」
エーヴェルも同意。
「急ぎの用です、抜けましょう」
アレクも賛成。
「覚悟はできています。どんな道だろうと、私が踏み固めてご覧にいれましょう」
意外にもミハルもすぐに賛成した。
どうやら全員一致で山抜けルートへ行くようだ。レバンはふっと口元を歪めた。
山の中は静かだった。ただ1つ、5人分の、泥を踏む足音を除いて。こっそりと心配していた
ミハルの動きも、4人に負けてはいなかった。
彼女は普段の王族用のドレスではなく(当然だが)、限りなく平民に近い、動きやすい短パンと
長袖の服の組み合わせでこの旅に臨んだ。その格好は結構似合っていた。その桃色の長髪も、
頭のバンダナの中にしまっている。
>>43 だな。このままじゃ武器の名前みたいだ。そっちのほうがしっくりくる。
>>44 弓騎士は某FE漫画の表記より。字面がイイと思う。読んでるから、頑張れ。
49 :
名無し物書き@推敲中?:04/01/21 14:56
1さん、
なかなかこういうスレの企画難しいと思うですが(今までの板の歴史で)、
ガバッテネ!
50 :
楽しい登山2:04/01/21 18:24
だがその可憐な姿もこの連中にとってみれば豚に真珠、宝の持ち腐れというものだろう。がちゃつく鎧の音も
あまりよろしくない。
人の気配はない。やはり静まり返っている。この分だと予定通り、半日ほどで山を抜けられそうだ。
ただ、所々に覚えがない足跡がついているのが気になる。1人のものではない。集団、10人ほどだろうか。ま
とまってその跡はついていた。
「なあ、これ……」
先頭を任されたゲルハルトが真後ろのレバンに訊ねた。
「誰か、ここ通ったのかな?そんな大人数、見かけなかったけど……」
「確かに、妙だな……。山賊でも、たむろってんのかね?」
それはなんとなくの勘だったが、まさにその通りだった。この山には、
「うわ!わわわっ!?」
「ぎゃあバカ、ゲル……」
「なっ……こちらに倒れてくるなっ!!」
「そういうあなたこそ、私に向かって……!」
「ひ、姫!?それでは私が……!?」
4人分の鈍い音がした。
51 :
名無し物書き@推敲中?:04/01/21 18:35
52 :
なんでお前だけ:04/01/21 18:45
「いやーひどいめにあったなー」
「ひどい目に」
「あったのは」
「俺たち」
「ですわ!」
「ぐっ……」
ハディ山を抜ける途中、彼らは盛大に転んだ。道が道だっただけに、被害も大きかった。
ゲルハルトの顔は見るに堪えない。今はその泥が彼の手によってある程度落ちてきているが、
転んだ直後は芸人真っ青の泥顔、というか泥の一部になっていた。
アレクは立派だった。自らの事を省みず、忠誠を尽くす主君をしっかりと受け止めたのだから。
その代償も大きかったが。そのおかげでミハルの損害は少なく、足の背中側半分が泥につかった
だけで済んだ。
53 :
不可抗力ってやつ?:04/01/21 19:52
しかし、問題はレバン&エーヴェルの2人だった。
レバンの後ろにはエーヴェル、エーヴェルの前にはレバンがいた。レバンは前で転んだゲルハルト
の足がふりかかって来るのを咄嗟に避けた。しかし、足場が悪く、足はギリギリでかわしたが、そ
のバランスまでは抑えきれず、後ろに倒れる形となった。レバンは何かを掴んで勢いを殺そうとし、
なんでもいいからあるものを掴もうとした。そしてその手は、後ろにいたエーヴェルの……その……
ああ、書けない。とにかく、まあ、その、触る、というか、掴む、というか、してしまったわけだ。
その、それを。1度胴を切り離され、そこから四肢をバラバラにされたぐらいで済んで彼は幸運だった。
もっとも、エーヴェルから凄まじい殺気がしばらくレバンに向けられたのは当然の報いか。
54 :
書いてて楽しい?:04/01/21 19:56
ああ、物語が破錠してしまう……
もっと真面目なのを……
レバン君がうらやましい……
もう、何とでも言ってやってください、ハイ。
なんだ、諦めたのか?
>>55 とりあえず完結させるまでは書いていきたい。途中で諦めないという
保障はどこにもないが。
「っああ〜やっと休めるぅ〜」
一行はやっとこさ山を越え、ソラディアの地に足を踏み入れた。
しかし、その格好では流石にマズイ。暗い色の雲がだんだんと空を侵食し始めたのもあって、
今日の所はここで宿をとる事になった。
宿の部屋は男組と女組に分かれ、それぞれ散った。
「アレク、先シャワー使っていい?」
「ご自由に。俺は宿共有の風呂を使う事にする。じゃぁな」
ゲルハルトは部屋に備え付けてあるシャワーを、アレクは宿の風呂に向かうべく、部屋を後
にした。
残されたレバンはゲルハルトの鼻歌をBGMに、のんびりと窓からの景色を眺めていた。
(マターリしようよ……。……なんてな)
58 :
名無し物書き@推敲中?:04/01/22 13:31
これは…酷いな…
プロット立ててるか?
話が思いつかないのなら、とりあえずそっちを頑張ったほうがいい。
雰囲気がFEだって言っているのに、乳もんだり下手なギャグかましたり、
挙句の果てに2ch語を使うなんてせっかくの小説がつまらなくなるよ。
……シリアスモードに転換します。
61 :
動き出す者たち:04/01/23 14:38
「しかし、良いのでしょうか、あんな者達に行かせてしまって……」
話しかけてきたのは隣に控えている重臣の1人だった。その問いに対し、ヤーファ国王
は沈黙を答えとして返した。
目の前には青髪の若い男が膝まづいていた。国王にとってみれば、こちらこそ本当の問
題だった。
「話を聞こうか……。シグルド=フランヴェルジェとやら」
62 :
動き出す者たち:04/01/23 14:52
彼女は大急ぎで旅支度をしていた。リュックの中に詰め込めるだけ詰め込み、それを背に担ぐ。
自分の部屋から一気に飛び出し、そのまま建物からドアを破る勢いで外に出た。
入り口のドアの札も裏返しておく。その札には「長期臨時休業」書いてある。
(この休みが、一生続かないといいんだけど……!)
彼女はすばやく身を翻して駆け出した。灼熱の太陽が照りつける中、1つの小さな光が飛び出
したのだった。
63 :
動き出す者たち:04/01/24 11:03
「依頼を受けたからには……始末する。どんな強敵だろうと、必ず……」
『それ』は闇から闇へと、消えるように移動していた。『光』をまるで避け、嫌うように。決して外に出ては
ならない、それが自分の宿命。
「標的の名は……レバン。レバン=フェレシウス……」
64 :
弓騎士バラッド:04/01/25 10:49
「ん……?雨……」
窓から覗くその額に、ポツリと小さな雨粒が落ちた。瞬く間にそれは大降りになり、レバンも
あわてて顔を引っ込める。
窓の外には、急な雨に急いで駆け出す者、その手に持っている物をとりあえず頭の上にかざす
者、いずれも早足で避難していく。
その景色もしばらくすると見飽き、彼は窓を背にして一息ついた。
その時、窓の外から叫び声が聞こえた。若い男の声だった。
『……前……い…げんに……』
激しい雨音で言っている言葉はよく聞こえなかった。しかし、なんとなく切羽詰った状況だと
いうことは分かった。
65 :
弓騎士バラッド:04/01/25 10:58
「……?」
外から聞こえる歓声に、彼はゆっくりと身を起こした。殺気も感じる。
外は激しい雨だった。そこには、剣を抜いて身構える16、7の若い男と、それと対峙するように
屈強な身なりの男が数人いた。
若い男には到底勝ち目はないだろう。どっちが悪人か知らないが、殺し合いが始まろうとしている
雰囲気だった。
「……フゥ」
男は立ち上がり、側に立てかけてあった弓をとった。
66 :
弓騎士バラッド:04/01/25 11:14
(おいおい、こりゃマズイんじゃねーの?)
レバンは急いで部屋から出て、戦闘の現場に向かった。
最初の内は健闘したが、やはり数の差は補いきれない。男はその襟首を掴まれ、集団に
ボコボコにされた。自分も回復の魔法は使えるのだ、急いで片付けて治療しなければ。
レバンはその大雨の中、大急ぎで現場に向かった。
若者は元々の赤い髪を血でさらに赤に染め、地に沈んでいた。
宿から出てきたレバンを、男達は訝しげな目で睨んだ。
「何者だぁ、お前はぁ?このガキのぉ、仲間ならぁ、とっとと消えろよぉ」
その集団のリーダーらしき男は割れ鐘のような声で叫んだ。
「消えろ?消えるのはお前らだ、痛い目に会いたくなかったらとっとと消えた方がいいよ」
67 :
弓騎士バラッド:04/01/25 11:27
「この……若僧がぁ!!!」
まんまと挑発に乗り、その男は手にした斧でレバンを襲った。その大振りの攻撃は隙だらけで、
避けるヒマはいくらでもあった。
縦に振り下ろした斧を横に一歩移動して避け、レバンは男の首を軽く掴む。神経をそこに集中
させ、一瞬でその集中を解き放つ。
「……爆発!!!」
そう叫ぶと、彼の手の平で炎が一気にドーム状に広がり、収縮して弾けた。
それを受けた男は力無く地面に崩れ落ち、動かなくなった。
その光景を見て男達は一瞬身を引いたが、意を決してレバンに向かった。
(3、4、5人。ちょい面倒かな……)
一日一書き込みか。
そろそろ諦めたかね。まぁよく頑張った
70 :
弓騎士バラッド:04/01/28 14:12
(やれやれ……。どいつもこいつも……)
その現場から数十メートルほど離れた場所では、1人の男が弓を引いていた。
(ま、接近戦は管轄外だからな……)
ギリギリと音を立てる弓が閃く。
その矢は誤たず1人の男の足を貫いた。
男はそれを確認せず、次の矢を弓につがえた。
71 :
弓騎士バラッド:04/01/29 12:49
(これは……矢?誰が……)
1人の男の脛のあたりに、矢が突き立っているのが見えた。騎士が使う矢だろう、一般的
な矢にはない装飾がしてある。誰かが援護してくれているのだろうか?
だが。
(悪いけど……お節介だよ)
レバンは服のポケットの中から一冊の本を取り出した。それにも美しい装飾が施してある。
その本を開くと、彼は目線をその手の本に向けた。それと同時に、彼の周りの地面に光り
輝く紋様が現れた。
5人の男達はこれを好機と見て一斉に彼に向かっていく。
(雷神の……怒りを……!)
72 :
弓騎士バラッド:04/01/31 15:33
その時、目が眩むほどの閃光が男達を襲った。
その光にあてられた瞬間、光はそこからさらに青白い稲光を出し、5人を縛りあげた。
一瞬の後、5人は消し炭となった。
「どうだ、立てるか?」
治療術の一通りを赤髪の男にかけてやり、レバンはその男の手を握り、立たせてやる。小さく呻きながらも、
その男はゆっくりと立ち上がった。
雨もいつの間にか上がっていた。どうやらにわか雨だったようだ。
レバンの隣には彼を援護していた弓使いもいた。
「どうやら、大丈夫みたいだな……」
「ええ、ありがとうございます……。あの」
「?」
「あ、いえ……。あの、ありがとうございました」
「……人と戦う時は、自分の技量、相手の技量、数を考えた方がいい。さっきのような戦い方
では、早死にするぞ。もし俺がいなかったら、お前は死んでいた」
赤髪の男は少し俯いてしまったが、弱い感情を振り払うように頭を振り、
「はい!ありがとうございます。では、自分はこれで……」
「ああ、気をつけてな」
彼の目は今までとは違う輝きをしていた。
ずっと旅をしていれば、その先でまた彼に出会う事もあるかも知れない。一回り成長した彼
に。
そんな事を思い浮かべながらも、レバンはそこにいるもう1人に向き直る。
「……で?あんたは一体?失礼だが、どこの誰だ?」
「誰……とはまたご挨拶だな……」
彼は面倒臭そうにその前髪をくしゃくしゃとかき乱した。不思議な事に、その茶髪は全く乱
れずに、元の位置に落ち着いた。
「バラッド=シェイル。見ての通り、弓使いやってる身さ」
「バラッド?弓使い……弓騎士……」
74 :
弓騎士バラッド:04/02/07 11:27
閃いた。
「バラッド……!あの『スナイパー・バラッド』!?」
「よせよ……。周りの連中が勝手につけた名だ、小っ恥ずかしいったらありゃしない」
という事は。
今自分の目の前にいる青年こそ、ヘイストス王国お抱えの百発百中の弓騎士、スナイパー・バラッドその人。
今は帝国の侵攻を食い止めるため、自らが仕えているはずの城にいるはずなのだが……。
「それよりも、連中をなんとかしろ。やったのはお前だろ?」
バラッドは面倒くさそうに親指を後ろに向けた。さっき自分の魔法『雷の宝剣』に焼かれた男達である。
「こいつら、どうやら山賊だ。ハディ山にでも巣食ってたんだろ」
「へぇ……」
そういえば、あの山には身に覚えがない無数の足跡があった。その足跡は、この男達が山から降りてきた証
拠だったのだ。
「で?こいつら、どうするつもりだ?」
「んー……あ、そうだ」
懐に手を伸ばし、一冊の本を取り出した。分厚く、ただの本にしては異常ともいえるほど
美しい装飾が施してある。
「この手の魔法は苦手なんだけど……仕方ない。とっておきのを出してやるさ!!」
レバンがその本を開くと、地面に突っ伏している男達の周りに、光を発する奇妙、かつ美
しい模様が浮き出てきた。それは除々にその光を強め、直視できないほどの光になった。
「……翔転移……空間…………狭間……」
レバンが魔法の呪文を唱え、言葉を発するごとに光はさらに強まっていく。
「瞬転・翔移・時蒼・空間!!時・空を掌握せし王よ!!!誰もいない場所ならどこでもいい、こ
いつらをどっか遠くへ!!!」
レバンは本ごとその右腕を地面にたたきつけた。それと同時に、男達の姿が周りの景色に溶ける
ようにして消えた。
「何……!?」
後には何も残ってはいなかった。
「……、これは……!おい、あいつらどこへ消えたんだ!?」
バラッドは訝しそうな顔をレバンに向けた。
「いや、俺が知るわけないじゃん。全ては……あー、そう、神様しだいだよ、神様」
「はぐらかすな!!」
「ま、まぁまぁ、ほら、立ち話もアレだし、とりあえず宿で、な?」
「魔道士?今時、魔法……」
「『今時』ってなんだよ、『今時』って」
2人は宿に引き上げ、食堂で珈琲を片手に話していた。
宿は1階に食堂、2階が客が泊まる部屋に設計されているのが基本であり、一般的
であり、王道となっている。この宿も例に漏れず、2人は1階の食堂で話をしてい
る。
「あんた、知らないのか?魔法ってのはなァ、人間は使えないんだぜ?」
「んな事知ってるさ。つーか、常識だろ。人間が魔法使えるんなら、剣なんているも
んか」
「じゃあなんであんたは使えるんだ、魔法を」
「……さぁ?」
バラッドは盛大なため息をつき、椅子の背もたれに深く身を預けた。
まだ夕方なので他の客の姿は少ないが、それでも気の早い客はすでに夕飯にありつ
いていた。
78 :
弓騎士バラッド:04/02/08 16:01
会話が他の客に聞こえないようにやや小声で話していたのだが、その気も見事に
削がれた。
「ま、そんな事気にしてても始まらないし。いいだろ」
「ふぅ。もう、いい。こっちだって人の過去を強引に掘り下げる趣味はない」
残りの珈琲を一気に飲み干し、バラッドは席を立った。
「……じゃぁな」
バラッドはそのまま2階へ続く階段へと消えてしまった。
考えてみれば、凄腕の弓騎士が何故こんな田舎にいるのだろう?彼はまったく話
さなかった。彼の故郷へイストスはダロスの侵攻を受けて大変なのに。
弓使いがいれば戦略の幅が大きく広がる。大軍を持たない自分達には1人でも大
くの戦力が必要だ。『スナイパー』の称号を持つ彼がいれば……。
「待てぇ、バラッドォ!!!」
「……とまぁ、そんな訳なんだ。頼むよ」
レバンは自室のドアノブに手をかけていたバラッドを強引に呼び止め、事情を簡
単かつ丁寧に説明した。
自分達はヤーファ王国がダロスに対抗するため組織された傭兵騎士(違うけどレ
バンがそう言った)だという事、仲間が少なくて困っている事など……。
79 :
弓騎士バラッド:04/02/08 16:32
(さて、どうする?信じるか、信じないか……)
「頼む、こっちは人材不足もいいとこなんだ、ホントに」
「……分かった」
「いいのか!?」
「いつまでもこのままここにいても仕方ないからな。自分から動く事にする」
「スパイ……だと?」
国王は青髪の青年を訝しげな目で睨んだ。
「はい。すでに彼らが裏で動いています。裏切らぬよう……監視するために」
「監視……?」
「はい。天馬騎士レアナ=ブリュンヒルドに、剣士シーザ=アレドヴァル……。彼ら
が、既に、動いています……」
名前:ゲルハルト=カナリス
職業:騎士
種族:人間
性別:男
年齢:21
背景:古くから宮廷に仕えてきた名門・カナリス家の次男。
武器:騎士剣
防具:鎧
身長:175cm
体重:67kg
瞳の色:赤
髪の毛の色、長さ:黒みを帯びた赤、オールバック
その他特徴:特になし。影が薄いのが特徴。
趣味:剣の素振り
特技:力任せに剣を振って大木を切り倒した事が数回
好きなもの:肉料理
嫌いなもの:頭を使うこと
将来の夢(目標):アレクを倒す!!(全戦全敗)
以下略……。
がんがれ
応援しているぞ(・∀・)ノ
名前:バラッド=シェイル
職業:アーチャー
種族:人間
性別:男
年齢:25
背景:故郷へイストスを滅ぼしたダロスに報復するため戦う弓騎士。
武器:弓
防具:篭手
身長:183cm
体重:64kg
瞳の色:青
髪の毛の色、長さ:茶色、束ねているので長さは不明、多分かなり長い
その他特徴:切り札の弓『エルフィンボウ』を背中に背負っている事が多い
趣味:1人で散歩
特技:弓の扱いは百発百中
好きなもの:特になし
嫌いなもの:ダロス帝国の連中
将来の夢:特になし
「エーヴェル様?少々お時間頂きますわよ?」
ミハルは風呂上がりでまだ湯気も漂うエーヴェルに声をかけた。エーヴェルは無言でミハル
を振り返る。
ミハルの手には、その可憐な姿にはおよそ不釣合いな剣が握られていた。見るからに古物で、
もはや骨董品ともいうべき代物である。
「……構いませんが」
「すみませんわね。ではお部屋に参りましょう。そこでお話しますわ……」
「それで、話とは?」
エーヴェルは向かって奥のベッドにどかっと腰を降ろした。
エーヴェルらが入った部屋はもちろん自分達の寝室である。この宿は1部屋に置くのは2つの
ベッドと決まっており、この部屋ももちろんそれに漏れない構造となっている。
ミハルももう1つのベッドに座った。その両手には、古びた剣が大事そうに抱えられている。
「……この剣」
「……?」
85 :
名無し物書き@推敲中?:04/02/18 20:40
最近書き込みないので、支援age。
「……いえ。……この話を知っていますか?世界を救った『円卓の騎士』の伝説……」
いきなりの突拍子もない質問に少し迷い、
「……騎士アーサーを筆頭とした13人の戦士。私はそれしか……」
エーヴェルは咄嗟にそう答えた。
ミハルはそうですかとその場に座り直し、言葉を続けた。
「……『円卓の騎士』は実在しました」
「……」
「……信じられませんか?」
その剣の柄を握り直して言った。この非力な娘の前では、どれほど優れた剣でもただ
の金属の塊だろう。当然、人なんて切れやしない。
ミハルはエーヴェルを真正面に見据えた。その美しい青の瞳は、全く揺らぐことはな
かった。
「ヤーファ王国初代国王の名は……知っていますね」
「……アーサー。しかし、それは偶然のはずです。確かに、『円卓の騎士』の筆頭、ア
ーサーをヤーファの初代国王と見る宗教や教会は存在しますが、それには何の根拠も
ありません。
わたしも『エーヴェル』という名の女を知っていますよ?」
それらの言葉を無視し、ミハルは淡々と言葉を続ける。
「……アーサーが使っていたといわれている剣の名は?」
「確か……エクスカリバー?」
やたらと…が多いね(・ω・)
>>87 この2人は「重い」から; すいませんね。
つか、見てくれた、ってだけで自分は嬉しいです。
「そう。『聖剣』、『竜殺の武』とも言われていますね。それがこの……
『エクスカリバー』です」
ミハルはそこで言葉を切った。
しばしの間、沈黙が訪れた。
「……ご冗談を」
その沈黙を破ったのはエーヴェルだった。瞳にわずかながら怒りの色が滲んでいる。
「その古びた剣がアーサー王の……?いまにも錆びて折れそうなただのナマクラが?」
「……信用しては、くれないのですね」
「はい。申し訳ありませんが……」
「そうですか……」
そう言うと、ミハルはその剣を抱えたまま立ち上がった。そのまま、ミハルは部屋のドアに
手をかけた。
ミハルの動きは一瞬だけ止まり、また何事もなかったかのように動き出した。
バタンという音と共に、また静寂が訪れた。
「聖剣……か……」
一部変更・更新
名前:レバン=フェレシウス
職業:魔道士
種族:たぶん人
性別:男
年齢:23
背景:不明
流派:フェレシウス・マジック
武器:魔法ならなんでも
防具:なし
身長:177cm
体重:61kg
瞳の色:青(沖縄の海みたいな色)
髪の毛の色、長さ:金茶色、ショート
その他特徴:寝ぼけ眼
趣味:魔法
特技:オムライスの味は一級
好きなもの:魔法
嫌いなもの:自分を尻に敷く人、酒
将来の夢:夢も希望もなし、適当でいいんじゃない?
異名、二つ名:戦場の鬼神
「……」
「…………」
「………………」
「……………………アレク?」
最初に口を開いたのはヤーファ王国第三王女のミハル=ヤーファだった。その美しい桃色
の髪をバンダナの中にしまい、素性を隠すため、一般的な運動用の服を着ている。その背
には、荷物入れ用のリュックサックを背負っている。
「……何でしょう、姫様?」
答えたのは、その後ろにぴったりとくっつくようにして歩く男だった。
体を鎧で固め、それを隠すようにしてマントを羽織っている。腰には騎士用の剛剣を携え、
いつでも抜けるようにと手をかけている。
「この、何とも言い難い重い沈黙は……?」
「それは、私の口からは……。申し訳ありません」
そう言いながら、アレクは横で歩く女性にチラリと目線をやった。
今朝方、彼らのムードメーカー的存在の魔道士、レバン=フェレシウスが弓使い、バラッ
ド=シェイルを自分達の集団に組み入れよう、と言った。
別に、それは良かった。バラッドの素性を知れば、全員一致で『賛成』と言っのだし、戦
力不足というのもあったからだ。
問題はその後の出来事だった。ちなみにその時、ミハルは朝の散歩に出かけていた。
彼らは経費の節約のため、宿では食事を取らなかった。金がない間は、手作りのおにぎり
で我慢しよう、そう言ったのは彼らのリーダー、剣士エーヴェル=カシスタミアだった。
ヤーファ王国は新体制作りのため、金がいる。騎士団の設立や前役人の解雇や、裁判。と
にかく全てに於いて金がいる。
ミハルやアレクにその事情を聞かされたエーヴェルは、それならそうかと節約に努める事
にした。
しかし。
剣士の腕は、料理にはいささか向いていなかった。
『これは……?』
『石……?だ、よな……?うん』
それを触った瞬間、米とは違う感触が手の上に乗った。
固かったのだ。それは米ではない、そう……石。
信じられないかも知れないが、本当にそうだった。試しにテーブルにそれを置いてみた。
<コツン>
固い音がした。
鋼鉄の料理人だったのだ、彼女――――エーヴェル=カシスタミアは。
「……」
「…………」
「………………」
「……………………あの。そろそろ昼飯の時間ですけど」
一行は広い草原のド真ん中にいた。目的地である都市はまだ見えていない。
太陽は彼らのちょうど真上にまで上り、それは時がちょうど半分、12時である事を示していた。
声の主はレバン=フェレシウス。この時代珍しい、魔道士である。彼はそこから少しばかり離れて
立っている木を指差し、
「ほら、ちょうど日よけになりそうな木も立ってる事だし。休憩しましょう、休憩」
一瞬の沈黙の後、
「……休みましょう」
バンダナの王女、ミハルが口を開いた。
「レバンの言う通りです、一旦休みましょう。気分も晴れますわ」
そう言うと、ミハルはレバンの手を引き、小走りにそちらに向かった。残りのメンバーも仕方無さ
そうにそれに続いた。
ミハルとレバンの2人が集団から少し離れると、ミハルはレバンの耳元に口を近づけた。なんだと
言うヒマもなく、ミハルはそっと囁いた。
「この空気……最悪ですわ」
なんかキャラの設定がゲームっぽいな;
漏れはそういうの好きだからいいけど
96 :
名無し物書き@推敲中?:04/03/02 05:34
いっそ台詞をカイジ風にしろage
97 :
名無し物書き@推敲中?:04/03/02 10:31
そもそもファイアーエムブレムそのものが厨作品だからな・・・
それを下敷きにまともなファンタジーを書こうとしても難しいんだろうな。
まあ、がんがれ1!
98 :
名無し物書き@推敲中?:04/03/02 10:42
>>87-
>>88 確かに小説書き初心者は「・・・」を多用する。
それによって微妙な間や雰囲気を表現したいのだろうが、
出来るところは描写やセリフでした方が良いんじゃないかな、と個人的に思います。
あ、カイジ系の独特の世界観を出したいための策だったら、上に書いた事は的はずれだけど。
>>96-
>>98 いいんす。リア厨で初心者だから。
アドバイス、参考にします。
と俺が言ってました;
ついでに100頂き。
「あちー……疲れた」
木陰にたどり着くや否や、ゲルハルトが間の抜けた声を上げる。彼はその
ままドサリと体を地面に預けた。
「ボヤくな、王女はまだ音を上げてないぞ」
「アレク……厳しすぎ」
「フン」
アレクはだらしなく横になるゲルハルトの側に腰を降ろした。身につけた鎧
ががちゃつき、少しうるさい。
「邪魔なようなら、脱いでもいいんだぞ?」
緑色の鎧の主が言った。
「ん〜。でも、騎士の誇りってのもあるしさぁ」
赤色の鎧が返す。
彼は寝返りを打ち、そのまま寝息を立て始めてしまった。
「先が思いやられるな……まったく」
101のタイトルは「やるきナイト」です。
「王女、隣いいですか?」
そちらを振り向いた。立っていたのは――――魔道士。手には
包みをぶら下げている。
返答を待たず、彼はそこに座った。
「1人っぽかったから。一緒に昼飯食べません?」
そして、何も言ってないのに膝の上にその包みを広げ始めた。
「結局、あのままじゃ昼飯にもありつけそうになかったから、作っ
ておいたんです。はい、どうぞ」
彼は自分の分もしっかり口に入れつつも、その内の1つを差し
出した。
「……これ、あなたが?」
「ああ、そうですけど?」
思わずまじまじと見てしまった。
驚きで目を大きくする自分に気付き、慌ててそれを受け取った。
そして、それを口に運ぶ。
驚きを通り越して、驚愕だった。
一級の……おにぎり。米のやわらかさ、塩加減、海苔の量、大き
さ、完璧だった。
信じられない。これが庶民の味!?
「おいしい……」
その言葉が漏れ出すように自然に出てきた。
「……上手いのですか?料理」
「え?ああ、そうですね……。確かに上手、って言われた事はあり
ますね」
「誰に?」
「え?えーっと。まあ、助手、ですかね?」
「それは……?」
「い、いや別に。それより、この話はもう止めにして」
結局、誰?助手って。
まあいいや。先は長くなりそうだし、旅を続けながら少しずつ聞き出していこう。
「それにしても」
一面の芝生に身を預けながら、レバンは言った。
「何か良いですねー。ミハル様って」
「え?」
少しの間その目は宙を舞っていたが、すぐに首を横に曲げ、
「だってホラ、何ていうか……女の子っぽいじゃないですか。可憐で、品があって
……これで王族じゃなかったらなぁ」
また目を空に向けた。その空の色は、彼の瞳の色とよく似ていた。
はぁ、と小さくため息をつき、重そうに上半身を持ち上げた。
「王族ではなかったら……どうするのですか?」
「うーん。そうだなぁ」
特徴的なその眠そうな目を全く動かさず、彼は言った。
「結婚する」
「……ッ!?」
「ははは。冗談ですよ。少し」
ヤター! まだミハルが登場している!
1さんありがとね。
106 :
名無し物書き@推敲中?:04/03/06 00:17
ここまでのあらすじ書いてくれないかね。
場合によっては、俺にもそれなりの覚悟がある。
>>105 ミハルさん、レギュラー確定です;
>>106 それじゃ簡単に。
このクラスト大陸は、なんだかんだ言って平和だった。昔大きな戦争があったらしいが、
昔すぎてもう伝説化しちまってる。
さて、今日も今日とて平和だったクラスト大陸だったが、いきなり西の大国「ダロス」が
戦争始めやがったじゃねえか!
ダロスは隣にある「ビゼン」、「へイストス」に侵攻、次々と拠点を落として行きやがる。
さて、東の大国「ヤーファ」はこの知らせを聞き、一刻も早く連中を止めなければと考え
た!しかしヤーファは国の新体制作りで兵も金もない!仕方なくヤーファ国王は大陸中に名
を馳せた傭兵を集め、ダロスに立ち向かわせた!
傭兵の1人は孤高の女剣士エーヴェル=カシスタミア。
もう1人は今失われつつある魔道の力の持ち主、レバン=フェレシウス。
彼らは宮廷騎士のアレクとゲルハルト、ヤーファ王国第三王女のミハルと共に、何となく
無謀な戦いに身を投じる。
しかし、彼らは監視させられていた。謎の青髪の男、シグルド=フランヴェルジェと、
剣士シーザ=アレドヴァル、騎士レアナ=ブリュンヒルドによって……
>>107 悪いがそれじゃあんまりわからん。
もう一回やりなおしてくれ。
>>108 うう、頭が痛い。あらすじなんて思い出せ……た。
ちょっと長くなりますが、ご了解を。
クラスト大陸。そこには天敵を持たぬ「人」が大陸中に広がり、独自の文化や生活観
を持ち、小さな争いこそあれ、平和な毎日を「人」は送っていた(伝説では、4000年前に
大陸中を巻き込む戦争が起こったらしいが、真偽は定かではない)。
しかし、クラスト新暦4204年。大陸西に国土を持つ武の大国、「ダロス帝国」は隣に位
置する王国「ヘイストス」、和の国「ビゼン」に侵攻し始めた。
突然の奇襲に「ビゼン」の要所は瞬く間に陥落。「ヘイストス」の要所も次々と破られて
いるらしい。
この知らせを聞いた西の大国「ヤーファ」は自国を守るため、兵を向けようとした。
しかし、ヤーファ王国は国の新体制作りに追われ、兵も資金もない。
仕方なく、ヤーファの国王はその名を使って傭兵を募った。もう頼めるのは傭兵しかい
ない。
ほとんどの傭兵はその要請を辞退したらしいが、2人だけ、それに応じた者がいた。
1人は大陸中にその名を馳せる、凄腕の女剣士、エーヴェル=カシスタミア。
もう1人は今では失われつつある魔道の力を持つ魔道士、レバン=フェレシウス。
彼らは宮廷騎士団の若き騎士、アレクとゲルハルト、ヤーファ王国の第三王女の
ミハルと共に、先が見えない戦いに身を投じる……。
その一方で、謎の青髪の男、シグルド=フランヴェルジェが動く。その配下には、剣士
シーザ=アレドヴァルと騎士レアナ=ブリュンヒルドがいた……。
あとは本編を読んでください。
乾いた笑い声を上げながら彼はまたごろりと寝転んだ。
どことなく面倒くさそうな動作だった。しかし、その姿を見ていると
何故か怒りがわいてこない。
「はははは。はぁ」
急に笑い声が止まり、いつも以上にだらしのないため息が追って
出てきた。
「……どうしました?」
ミハルが恐る恐る聞いた。というか、慎重に。
「……疲れたなぁ」
軽い昼食をとって、彼らはまた半日ほど歩いた。
彼らの次の行き先は、貿易によって栄える都市、ドーター。様々な品物、
情報が絶えず飛び交い、その賑わいは日が落ちようとも変わる事がない。
しかし、ソラディアからドーターまでの距離は、どんなに急いでも2日はか
かる。しかし、3日はかからない。
「大分日が落ちてきたなぁ……」
彼らの周りにはすでに漆黒の闇が漂い始めていた。ひらひらと舞う小さな
虫はすでに姿を消し、緑色の草原は暗いオレンジ色に染まっている。
「隊長、今日はこの辺で休みましょう。その内足元も見えなくなりますよ?」
そう提案したのは、魔道士であり、ヤーファ王国に雇わた傭兵レバン=フェ
レシウスである。術を使う者が着る一般的なローブとは異なり、その風采は
剣士に近い。動きやすいやや厚手の布製のズボン、刺のように尖った不思議
なマントなど、魔道士には見えない格好をしている。
もっとも、その不思議な格好もこの闇に包まれれば無きに等しい。ただの暗
い色の服である。
「……いや、ダメだ」
そう答えたのは、レバンから少し離れて佇む金色の剣士。
「徹夜で歩けば今日中にドーターには着く。ドーターにさえ着けば、
十分な食事、宿もとれるだろう。……こんな所でグズグズしてい
るヒマはない、そうだろう?」
「そりゃ、そうですけどねぇ……」
「なら良いだろう。徹夜で歩く」
金色の剣士はそう言って歩き始めた。
しっかりと耳に入っていたのか、他のメンバーもそれに続いて歩き
出した。
驚いて、レバンは剣士に駆け寄り、肩を掴んだ。
「ちょっと待って下さいよ。夜歩いてる途中に奇襲でもかけられたら
どうするつもりですか?」
それを強引に振り払うと、剣士はその瞳をレバンに突きつけて言っ
た。
「私達の事が知られているわけないだろう。私達は騎士団として戦場
に行ってはいない。こっちだって情報を流した覚えは無いし、そもそも
ロクな情報がないだろう、私達には!」
毅然とそう言い放ち、剣士は踵を返して歩き始めた。そして、他の者
もそれに続く。
しかし、1人だけ腕を組んだまま動かない者もいた。
バラッド=シェイル。百発百中の弓騎士だ。
彼は腕を組んだ姿勢のままレバンに歩み寄り、言った。
「……甘いな、あの剣士さんは」
「剣の腕はいいよ。だけど……腕がいいだけだ、軍団戦や各々の素性、
集団の難しさっていうのが……分かってない」
「だな。そもそも、お前が敵のスパイじゃない、なんて保証、どこにも無
いんだからな」
1つ言っておくぜ、1よ。
お前はこれから、もしかしたら、あるいはだが、この創作・文芸板の神になってしまうかも知れん。
文はまだ荒削りだが、俺は可能性、素質があると思う。なんとなくだが。
最近書き込みが少ないようだが、頑張れ。
俺は応援している。がんばれ1。
117 :
名無し物書き@推敲中?:04/03/24 00:51
ロードオブザリング見たほうがええでっせ
あと原作の指輪物語も読みましょう
1、最近来ないなあ。春休みが終わったのかな。
1は中学生なんだっけ? どうした? がんばれよ。書かなきゃうまくならんぞ。
「へぇ……言ってくれるね、スナイパー」
「それが現実だろ?」
冷ややかな声をまた一段と冷たくしてバラッドは言った。
レバンは返す言葉が見つからない。
「気をつけな。もしかしたら、俺達の見ていない所で何かが動いているかも知れん……」
橙色の陽を背に受け、バラッドはレバンの耳元で囁いた。
乾いた風が辺りを吹き抜ける。
空では、暗い影がその手を伸ばし、青の空を覆いつくさんとその手を伸ばし始めていた……。
121 :
名無し物書き@推敲中?:04/04/25 18:23
そしてその夜。
「このパンはダメだ」
「この茶の渋さがまたたまらん……」
「食わねぇならこれ全部食っちまうぞ」
「……どうぞ」
「……」
そこでは、焚き火を囲んでのちょっとした晩餐会が行われていた。
パンも細々としており、つけるものも何もなかったが、それでも少人数でのキャンプというのは
やはり何か面白味があった。
その中でも、どうしても感情の高揚を抑えられない者がいた。
ヤーファ王国第三王女、ミハル=ヤーファである。
彼女は今までの人生19年間を、ヤーファ王宮の中でずっと過ごしていた。
上2人の姉は国政、外交などで多岐にわたり活躍しているが、末妹のミハルはその若さから
未だ重用されるには至っていない。
その「穢れ」を許さない性格から父親ブレナスク王から反感を買った事もあり、その都度自室謹慎を
命じられていた。その時は侍従のメイドや近衛騎士のアレクなどがこっそりと部屋を訪問する事もあったが、
その度に彼らに不満を口にしていた。
それらが今の今まで積み重なり、彼女ミハル=ヤーファはほとんど「外」を知らない。
無断で王宮から出ようものなら近衛騎士が彼女を連れ戻しに来る。
流石にそれらが何度も続くと、警備も厳重になってくる。
酷い時には部屋の前に見張りの兵が立っている日もあり、事実上、ミハルは王宮に
『拘束』されていたわけだ。
「……どうしました?王女様?」
ふと上を見上げると、そこには魔道士がいた。
金髪、碧眼。
魔道士レバン=フェレシウスだった。
「……何か思う事でも?顔が暗くなってますよ」
どっこらせ、と魔道士はミハルの隣に腰を降ろした。
その頭には布が巻かれていた。頭でも洗ってきたのだろうか、布はうっすらと濡れていた。
「……私は、その……」
「こういう場は慣れませんか?」
「……!」
「ははは。図星、ですね?」
レバンが独特の乾いた声をあげて笑う。
「……ええ。私はずっと、王宮の中で操り人形のような生活をさせられ続けていましたから……」
「そうでしたか。なら、この旅は貴方様にとっては、貴重な経験になるでしょうね」
「え……」
レバンは鼻を鳴らすと、さらに続けた。いつもの彼とはなんとなく雰囲気が違う。
「蛹となった虫は、いずれその殻を破り、美しき蝶となって空を翔る……。最初から美しい虫は
1人では何もできない。しかし、蝶は自分のあるべき場所を求めて彷徨い、そしていずれはそこに
根を降ろし……死ぬ」
「……」
「はは。なんとなくガラじゃない事言っちまいましたね。すいません、忘れて下さい」
微妙に上手くなってる!?
「さて、この辺でお開きにしますか」
焚き木もひとしきり燃え、その火力も大分弱くなってきた頃だった。気付けば辺りは真っ暗、
一寸先は闇。
「……寝るか。念のため男組は私達から離れた場所で寝ろ」
「了〜解了解。んな心配する必要ないような気もしますけど」
レバンがわざと大きくしたような声で言う。後半は独り言なのかも知れないが。
「……聞こえているぞ」
踵を返しながらエーヴェルもわざと大きな声で言った。
――――やっぱ無理か。
「ミハル様、何かございましたら、とりあえず大声を出して下さい。近くにいるエーヴェル殿に助けを
求めるのも懸命です。誰かに襲われそうになったら、声を出すのですよ。貴方様の悲鳴さえこの耳
に入れば、このアレク、光をも越える速さでミハル様の元へ駆けつけ……」
「分かりました。アレクは心配なんだから。私は1人でも大丈夫よ」
「……では」
アレクには心配性のきらいでもあるのだろうか。
ミハルは早足でエーヴェルの後を追った。そして、彼女の耳元でそっと囁く。
「……いけませんよ」
エーヴェルはその言葉の意味が分からなかった。
「何の事です?」
「ま!しらばっくれても無駄ですわ!!……まあ、話したくないなら無理には聞きません事よ?」
「……???」
「ふふ……」
te
す、すんません、↑のミスりました……。
本編は↓こっちから……。
夜も更けた。
風の音がさらさらと草原に響く。
―――近くにいるな。
そう感じていた。隣のミハルを起こさないよう、音をたてずに剣をとる。
しかし、その手はただ草を掴み、剣の冷ややかな感触にはあたらない。
―――そうだ。……マズったな……。
剣はすでに腰に掛かっていた。どうやら、無意識のうちにつけていたのだろう。
辺りに気を集中させる。
そこは暗闇。5歩先の地形すらつかめない、身を隠すには絶好の場所―――環境だ。
相変わらず風が辺りを包む。時には激しくなり、また時には緩やかに、柔らかく草原を駆ける。
ザッ。
足音が聞こえた。来るか―――!?
(速い!)
ガキィン!
かん高い金属音が辺りに広まる。
―――立ち上がれない!
相手の獲物はおそらく長剣。刀身は細めで、1対1の斬り合いには向かない物だ。
剣にかかる圧力が強くなった。相手が剣にかける力を強くしたのだ。このままでは迎え撃った自分の剣で
喉を破られる……なんて事になりかねない。
(そんなのはゴメンだ……!)
負けじと、こちらも押し返す。しかし、こちらは寝たままの体勢、それに比べて相手はそれにのしかかるような
体勢で剣を向けている。とても反撃に出られない。
じりじりと、相手の剣の切っ先が自分の喉に迫って来る。
冷や汗が額を伝い、たらりと服に落ちる。
もう剣先は喉と目と鼻の先だ。その距離、実に小指一本分。
その時、相手の体ががくんと崩れた。
エーヴェルが剣にかける力を一瞬緩めたためだ。剣はその軌道を反らし、何もない地面にグサリと刺さる。
攻守が逆転した瞬間だった。
エーヴェルは剣を強く握りなおし、片手をついて立ち上がる。
相手は剣を地面から抜き、こちらに向き直ろうとしている所だった。その無防備な姿に、エーヴェルは容赦なく
剣を閃かせる。一撃、二撃、三撃……。
しかし、相手も中々の使い手である。そのエーヴェルの連撃を剣で間一髪で全て反らし、自身は無傷でいた。
―――直線の攻撃では捉えられないか。
エーヴェルはその連撃の嵐をぴたりと止めた。相手はそれにつられ、一瞬身を固くする。
―――さらば。
閃光が相手の右脇腹に喰いつく。
エーヴェルの剣は正確に相手の脇腹を切り裂いた。剣の向きを横に変え、さらに横に引き裂く。
暗いので血は見えないが、手応えはあった。少なくとも、相手はもう動けないだろう。
剣についているだろう血を振るい落とし、さらに構える。
しかし、相手は自分に向かっては来なかった。
相手は自分の長剣を腰の鞘に収め、くるりと踵を返した。
そして、跳躍するように地から地へと飛び、あっと言う間に姿を消してしまったのである。
エーヴェルはそれを追う気にはならなかった。
―――深手は負わせた。……しばらくは来なくなるだろう。
そう思い、エーヴェルは元のミハルの側に腰を降ろし、また目を閉じた。服に返り血がついていないか心配だったが、
今はどうでもいい。……久々に手応えのある奴と戦えたのだから。
___∧∧ えー、なかなか辛口な批評が来ないんで、今回から反省でもつけていこうかと思います。
/\ (*゚∀゚)\ 一区切り毎に。
\/| ̄∪∪ ̄|\ 今回は謎の暗殺者とエーヴェル隊長の密かな交戦シーンでした。読み返してみて、
\|
>>1 | 『うわ、俺って小説ヘタ』と思わずにはいられない出来ですね;
 ̄ ̄ ̄ ̄ でも、
>>130は自分でも上出来だと思うんですが……どうでしょうか。
辛口批評、お待ちしてます……。でもあまり激辛だとヘコむんで、その時は暖かく見守って
やってください;
AAは適当なのを改造して作りました。
夜が明け、また彼らは半日ほど歩いた。
そして見えてきた。
「着いた、着いたぞォ!!!!!」
大陸一の貿易都市であり、大陸の商業の中心地―――貿易都市、ドーターだ。
一行はソラディアとドーターの国境の門をくぐり、ドーターに入った。
ドーターは各国に高い税金を支払う事によって自治を保っており、それを管理している者はこの都市の傭兵だ。
彼ら傭兵はそのほとんどがドーターで生まれ、街にある闘技場で腕を鍛え、一人前と認められて初めて自治にあたる
事ができる。彼らの腕は確かで、昔ドーターに攻め入った軍勢約2000をたった700で返り討ちにし、その軍勢を本国に
あっというまに返してしまったという話まである。
しかし、彼らは絶対にドーターから離れない。例え一生遊んで暮らせる大金を見せられようとも、ドーターを裏切る事は
ない。
「……よって、この街で新たに兵を雇う事はできない。彼らは死んでもこの街から離れようとはしないさ」
「はいはい、浅はかな期待でしたよ」
ドーターの中心に向かって伸びる大通りを、一組の男女が歩く。
2人とも中々の長身で、使い込まれたマントやブーツから見るに、どうやら旅人のようでもあった。
片方の女性は、それは美しい金髪をしている。その髪はかなり長く、腰の所まで伸びているのを1つにまとめている。
もう片方の男性は、少々薄汚れているようだったが、中々綺麗な金茶色の髪をしている。髪は長くなく、さっぱりとしている。
「しっかし、今になって金稼ぎなんて……。おまけに闘技場で」
男の方が少し肩を竦ませながら言う。女はその男の頭を平手で軽く殴り、
「嫌なら野宿してろ」
と冷たく突き放す。
男はハイハイと言わんばかりに懐から財布を取り出し、
「えっと……あんま余裕ないですね。1回ぐらいしか賭けられそうにないです」
「何を言っている?」
「は?」
「戦うのさ……私達が、な」
女は口元でふっと笑った。
「ここだ」
「へぇ、けっこう賑わってそうですね」
2人が歩いた先は……闘技場。
闘技場は一般的に”ランク”別に戦い、賭ける。
”ランク”はその者の希望を優先するが、勝ち目のないランクでの戦闘は禁止される。最低金額の400Gから始まり、
頂点は1000となる。特に賭け金1000クラスの戦いともなると凄まじく、歴戦の剣士や勇者など、各々が自慢の腕を
振るい、戦っている。
闘技場では、勝った場合は賭け金(出場金額)の2倍が当てた者に贈られ、負けた場合はそれがそのまま没収になる。
さらに出場者の場合は、500、1000、2000……と勝つ度に倍になって増えていくため、連勝した分賞金も弾む。ただし、
負けた場合は賞金0となる。
そして、2人が選んだクラスは……
「1000Gランク。……名は、エーヴェル=カシスタミア」
「1000に。名前、レバン=フェレシウスでよろしく」
「ここだ」
「へぇ、けっこう賑わってそうですね」
2人が歩いた先は……闘技場。
闘技場は一般的に”ランク”別に戦い、賭ける。
”ランク”はその者の希望を優先するが、勝ち目のないランクでの戦闘は禁止される。最低金額の400Gから始まり、
頂点は1000となる。特に賭け金1000クラスの戦いともなると凄まじく、歴戦の剣士や勇者など、各々が自慢の腕を
振るい、戦っている。
闘技場では、勝った場合は賭け金(出場金額)の2倍が当てた者に贈られ、負けた場合はそれがそのまま没収になる。
さらに出場者の場合は、500、1000、2000……と勝つ度に倍になって増えていくため、連勝した分賞金も弾む。ただし、
負けた場合は賞金0となる。
そして、2人が選んだクラスは……
「1000Gランク。……名は、エーヴェル=カシスタミア」
「1000に。名前、レバン=フェレシウスでよろしく」
「ここだ」
「へぇ、けっこう賑わってそうですね」
2人が歩いた先は……闘技場。
闘技場は一般的に”ランク”別に戦い、賭ける。
”ランク”はその者の希望を優先するが、勝ち目のないランクでの戦闘は禁止される。最低金額の400Gから始まり、
頂点は1000となる。特に賭け金1000クラスの戦いともなると凄まじく、歴戦の剣士や勇者など、各々が自慢の腕を
振るい、戦っている。
闘技場では、勝った場合は賭け金(出場金額)の2倍が当てた者に贈られ、負けた場合はそれがそのまま没収になる。
さらに出場者の場合は、500、1000、2000……と勝つ度に倍になって増えていくため、連勝した分賞金も弾む。ただし、
負けた場合は賞金0となる。
そして、2人が選んだクラスは……
「1000Gランク。……名は、エーヴェル=カシスタミア」
「1000に。名前、レバン=フェレシウスでよろしく」
「へぇ、すげぇなぁ……」
その頃、闘技場の中、観戦客用のスタンド部分に腰を降ろした者がいた。
1人は緑色の髪。薄汚れてはいるが立派な白銀のマントの下には厚手の鎧が見え隠れしている。
もう1人はやや黒みがかった赤色の髪。美しいとは言えぬ色ではあるが、彼もまたマントの下に鎧を隠している。
最後の1人は……一転して、小柄な少女のようだった。明らかに長そうな髪を何故かバンダナで隠し、2人の男に
挟まれる形で座っている。
「それより大丈夫なのか?……お前の読みは全くアテにならんと誰でも知っていただろう。確か、10回賭けて勝ち数
が多い方がミハル様に何かおごる……だったか。確実にお前が損するぞ、いいのか?」
緑髪の男が赤髪の男に言った。その手には、今後の試合の対戦表が書いてある紙が握られている。
「何をぉぅ!?舐めるなよ、俺は賭け事は好きだが得意じゃないんだ!!!!」
「……ダメですわ」
すかさず少女が突っ込む。
緑髪の男はフ、と小さく鼻を鳴らし、手にある紙に目を通す。
「しかし珍しいな。トーナメント形式か」
「そうだなぁ。普通の闘技場じゃ気まぐれに対戦相手が出たり入ったりしてさ。トーナメントなんてできやしないよな」
「流石、貿易都市って事か。それだけ人も集まるのだろうな」
緑髪の男はフム、と口の中で呟き、再び手元の紙に目を落とした。
「ん?まさかこれ、」
その疑問の声に、隣の少女も手元の紙を見た。
「あら―――あらあらまあまあまあ。これってまさか……」
「へぇ、すげぇなぁ……」
その頃、闘技場の中、観戦客用のスタンド部分に腰を降ろした者がいた。
1人は緑色の髪。薄汚れてはいるが立派な白銀のマントの下には厚手の鎧が見え隠れしている。
もう1人はやや黒みがかった赤色の髪。美しいとは言えぬ色ではあるが、彼もまたマントの下に鎧を隠している。
最後の1人は……一転して、小柄な少女のようだった。明らかに長そうな髪を何故かバンダナで隠し、2人の男に
挟まれる形で座っている。
「それより大丈夫なのか?……お前の読みは全くアテにならんと誰でも知っていただろう。確か、10回賭けて勝ち数
が多い方がミハル様に何かおごる……だったか。確実にお前が損するぞ、いいのか?」
緑髪の男が赤髪の男に言った。その手には、今後の試合の対戦表が書いてある紙が握られている。
「何をぉぅ!?舐めるなよ、俺は賭け事は好きだが得意じゃないんだ!!!!」
「……ダメですわ」
すかさず少女が突っ込む。
緑髪の男はフ、と小さく鼻を鳴らし、手にある紙に目を通す。
「しかし珍しいな。トーナメント形式か」
「そうだなぁ。普通の闘技場じゃ気まぐれに対戦相手が出たり入ったりしてさ。トーナメントなんてできやしないよな」
「流石、貿易都市って事か。それだけ人も集まるのだろうな」
緑髪の男はフム、と口の中で呟き、再び手元の紙に目を落とした。
「ん?まさかこれ、」
その疑問の声に、隣の少女も手元の紙を見た。
「あら―――あらあらまあまあまあ。これってまさか……」
___∧∧ なんか調子悪いようです;
/\ (;゚∀゚)\
>>135>>137は脳内あぼーんで。
\/| ̄∪∪ ̄|\ 削除依頼出して来るっす。。。
\|
>>1 |
 ̄ ̄ ̄ ̄
140 :
名無し物書き@推敲中?:04/05/29 12:37
うへっほ
「隊長〜、試合の対戦表、貰ってきましたよ〜」
場所は闘技場地下、対戦者の控え室。そこには、出場を間近にした豪傑達が腕を振るいながら自分の出番を
今か今かと待ち続けている。皆自分の得意とする獲物を手に持ち、静かに待つ者、今からすでに試合に向けて
素振りを始めている者、プレッシャーをかけるために近くの者にわざと声をかける者―――様々だ。
対して、この金髪の剣士、エーヴェル=カシスタミアはいたって泰然としていた。
ただ剣を脇に挟むようにし、手頃な椅子に座って待っているだけであった。
しかし、突然の大声にもエーヴェルは至って冷静に
「静かにしろ」
と一蹴した。
エーヴェルに声をかけた男―――レバン=フェレシウスは少しだけ肩を竦めると顔を上げてエーヴェルの元に
駆け寄る。
「ほら、これです」
「見せてみろ」
エーヴェルは閉じた目を片方だけ開き、レバンの差し出した紙を受け取る。
そして、全く瞳も動かさずに紙を見る。
「……人が多いな」
それだけ言ってエーヴェルは受け取った紙をレバンに差し出す。
レバンは"えっ"と小さく驚きの声を漏らしたがすぐに差し出された紙を受け取った。
無論、自分が見るためである。実は彼はこの対戦表に全く目を通していなかった。
「えっと……俺と隊長は……あ、順調に勝ち進めば準々決勝で当たりますね」
「らしいな」
「えっと、俺の一回戦の対戦相手は……」
レバンがその者の名前を読み上げようとした時だ。
「オレだ」
全く別の者の声。第三者の声だった。
レバンは一転して目を鋭くさせ、その声の主に目を向けた。
そこに立っていたのは……おそらく27、8程の男。片手には男の身長を越えるほどの高さを持つ槍が握られて
おり、手にも頑丈な篭手が装備されている。
││
││ ←中央の街道(北)
││
防具屋→◎ ││ ☆←武器屋
││ ↓中央の街道(東)
★===============
↑闘技場
││ □■ □ ■■
││
││ ←中央の街道(南)
││
││
││ ■ □ ■ □■
「あんたは?」
男は口の端でふっと笑い、
「俺の名を知らねぇのか?」
と自慢げに言った。
「知らないな」
「ゲラン。通称『疾風の槍』。数々の賞金首をたった1人で捕らえる事で名を知られる賞金稼ぎ兼傭兵」
エーヴェルがすかさず口を挟む。
その事務的な内容でも満足したのか、
「そう。巨漢の斧戦士も剣術自慢の剣士もみんな俺の前に倒れてきた」
またも自慢するような口ぶりでゲランは言う。
それに呆れたのか、レバンは急かすような口ぶりで、
「分かったから。結局何だ?」
と言う。
それがやや癪に障ったのだろうか。ゲランの口ぶりを荒くなる。
「忘れたのか!?半年前、お前と俺は戦った。獲物の取り合いだ。あの時お前は全力で戦ってはいなかった。
だが!それでもどうだ?この傷を見ろ!!!!」
ゲランは左手にはめられた篭手を外し、その手をレバンの目の前に突きつけた。
「お前の魔法を受けてできた傷だ!!!!もう一生消える事はない。
誤算だったよ、この時代に傭兵の魔道士なんてのがいたとはな……」
ゲランの左手は薄紫色に変色していた。血管が浮き出、脈打つ様子が克明に分かる。いたる所に皺が寄り、指先も
細く、まるで老人のような手となってしまっている。
「この一撃は賞金稼ぎにとって致命的だ。仕事ができなくなる事はおろか、日常生活にさえ支障が出る程だ」
「で?」
レバンはもうどうでもいいような声で言った。もう彼はそんな事は覚えてはいなかった。
そのレバンの態度に、ゲランは顔中に怒りの色をあらわにした。彼は血走った目でレバンを一瞥すると、
その左手に篭手をはめ直した。
彼は兜についているアイ・シールドを降ろし、その表情を隠して言った。
「……この借りは必ず返すぜ」
それだけ言ってその場を去った。
兜の後ろからは彼の長い茶髪が尾を引いていた。
彼が去った後、エーヴェルは言った。
「……人気者だな」
それと時を同じくして。
「で?初戦はどっちに賭ける?」
緑色の髪の男が反対側の赤髪の男に言う。
赤髪の男は手元の紙を凝視したまま動かない。
「どうした?俺が先に決めちまうぜ」
緑色の髪の男がそう言った数瞬後、
「赤!傭兵クリス!!!」
と赤髪の男が叫んだ。
緑髪の男は余裕綽々の表情で、
「なら俺は白か。槍使いライナ」
心なしかその口元には笑みすら浮かんでいた。緑色の髪の男は馬鹿にしたような目で赤髪の男を横目で見、
また手元の髪に目を落とした。
中央の少女は……話には参加せず、落ち着かない様子で辺りをキョロキョロと見回している。
言うまでもなく、緑色の髪の男は騎士アレク=ミランダ、赤髪の男は同じく騎士ゲルハルト=カナリス。そして、
中央の少女は……ヤーファ王国第三王女、ミハル=ヤーファである。
ミハルは未だ見ぬ初めての場にその胸の高鳴りを抑えずにはいられなかった。
>145の「手元の髪に目を〜」は「手元の紙に目を〜」でした。すいません。
『赤!!!あーか!!!!』
『白白ぉー!!!!』
闘技場の中はミハルがこれまで体験した事のない熱気で溢れ返っていた。
参加者以外の者は皆その手に配当の書かれた紙を力いっぱい握り、自分の賭けた剣闘士に対して
熱い声援を送っている。
白、槍使いライナは槍の長さを生かした中距離攻撃を軸に攻め、赤、傭兵クリスはリーチで劣り、迂闊
に近づけない。試合はだんだんと小競り合いになり、持久戦になるかと誰もが感じた。
その瞬間、クリスが動いた。
射程外からの攻撃についに業を煮やし、剣を構えてライナに向かって一気に飛び掛ったのだ。
スピードは十分。そのまま斬る事ができれば間違いなく首が飛ぶ。
しかし剣を構えた時にガラ空きになったクリスの胴をライナは見逃さなかった。
槍の先端の刃が十分に突き刺さるその間合いになった刹那―――無数の突きがクリスを襲った。
その突きは胴だけに留まらず、クリスの全身を襲った。彼は空中でその勢いを殺され、剣を落とす
のと同時にその場に崩れ落ちた。
闘技場内に歓声と「あぁ……」という溜息が流れた。
ライナはその観客に向けて右手で槍を高々と掲げ、自分の勝利を大きくアピールし、退場して行った。
ミハルはチラリと左を見た。ゲルハルトが両手で頭を抱えている。
今度を右を見た。得意そうに「フン」とアレクが鼻を鳴らした。
「さて……次はどっちに賭ける?」
その試合が行われてからさらに2試合が進み―――もっとも、ミハルにとっては単なる前座でしかなかった
が―――レバンの試合が回ってきた。
「よし、行くか!」
レバンは両手を膝の上に乗せて立ち上がり、ステージへと向かった。
隙間なく敷き詰められた石畳の上を早足で進み、木製の扉を開ける。
さらに続く石畳の上を走り、狭い通路を駆ける。
ステージへの入り口の鉄格子は既に開いている。その横には槍を垂直に立てた兵士がいる。
その兵士の横を慌ただしく走り抜ける。
走る彼の横でその兵士がゆっくりと口を開いた。
「ご武運を―――」
歓声の中、まず第一歩を踏み出した。
見えるのは土を固めて作られた四角いリング。広さはそれだけで家一軒はありそうだ。リングの部分だけ一段上がった
作りになっており、そのリングから出ると失格になってしまう。
向かいの鉄格子から全身を鎧で固めた戦士が自分と同じようにゆっくりとリングへと向かうのが見えた。
『続きましてはァー、今回注目の一戦!』
何やら近くで大声が聞こえた。いつの間にか、リングから一段下がった所にさっきはいなかった司会らしき人物が小さな
筒のような物を掴んで声を張り上げている。その声は空気を震わせながらめざとく耳の中に入る。
『赤! 大陸中にその名を轟かす伝説の魔道ゥゥゥ士ぃ!!!!
レェバァァァァン!!!! フェレシィィィィウゥス!!!!』
その司会の声と共に場内の観客が奮う。
『対するはぁ! 白! 歴戦の疾風の槍使い!
ゲラぁぁぁン!!!! マキィィィィス!!!!』
再び場内が奮い、揺れる。
結構根気あるな。がんばれ。読んでるぞ。
「ほう……こいつは中々好カードだな」
アレクはふーむと唸り、腕を組んでリング上の2人を見る。
まだ司会―――いつ登場したのか分からないが―――の試合開始の合図はない。両者、睨み合って動かない。
「で、どっちに賭ける?」
横目でゲルハルトを見る。
「そりゃあ決まってんだろ」
顎を片手で支え、リング上に向ける目線を変えずに答えた。
「副隊長だよ―――」
「フン……賭けにならんな」
アレクはより一層目を細めて目の端で2人を交互に見た。
長い突起物。槍だ。通常の槍とはリーチが違う、剣程度では到底届かない。
しかし我らが副隊長、レバン=フェレシウスは素手。魔法の詠唱中にでもグサリとやられてしまうのではないだろうか?
あの細い腕で武器を持てるとは思えない。
「さて……どう戦う?レバン殿……」
『両者、間合いをとって……』
その一言で闘技場はしん、と静まり返る。
ゲランが槍を構えた。
対して、レバンは腰に手を当て、空いた手を自分の胸の中に入れて握り拳を作る。
「何を……」
『レディ……』
司会が大きく手を伸ばす。
その手が急に折れ曲がり、交差する。
『ファイッ!!!』
「しているぅっ!!!」
一つの叫び声と共にゲランは地面を蹴り、レバンに向かう。
両手に構えた槍はレバンの首に向かって過たず伸びる!
「汝、雷の槌!」
いつになく澄み切ったその声の直後、レバンの手から青白い雷が発せられる!
その雷はバチバチと音を立て、花のような形相となってレバンの手に張り付いている!
「彼の者に鉄槌を!!!」
手の平を立て、ゲランに向ける!
その手から青白い波動のようなものが放出される。そして、波動はゲランを直線で捉えていた!
ゲランは間も無く自分を消し炭に変えるであろう波動を見て槍を立てた。
そして、地面を蹴った勢いを槍に乗せ、その槍をまた全力で蹴った。
槍は弧を描いて大きくしなり、その反動で大きく揺れる。
その槍は一瞬で消し飛んだ。青い波動に飲み込まれたのだ。
青い波動は数秒その勢いを失わず輝き続け、少しずつ輝きを弱め、消えた。
「……なるほど、流石"疾風"のゲラン。いい動きだ」
レバンは瞳を動かさず、呟いた。
ゲランの手元には、戦うための武器はない。
場内、観客、客席が、静まり返る。
物音一つしない。……時が止まったかのように、静けさが場内を包み込む。
その静寂を破ったのは、司会者の恐る恐る出した声。
『たっ―――』
リング上の二人も微動だにしない。
レバンは口の端に笑みを浮かべて。ゲランは兜の奥から強い眼差しでレバンを睨んで。
『対戦者による武器の破壊が原因の戦闘不能で―――』
レバンの笑みが強くなる。
『勝者……レバぁぁぁン!!!!フェレシぃぃぃぃウス!!!!』
司会者が右手を大きく掲げる。
それと同時に観客が一斉に歓声を上げ、闘技場全体が揺れる。
賭けの勝利、敗北以前の問題だ。……皆、酔っていた。全く傷をつけずに、そして完璧なまでにゲランを打ち負かした、
レバンの技量を。槍のみを破壊し、武器と精神をへし折る。通常の戦いとは違った趣き。それらを楽しんだ。だからこその
この歓声。
レバンは客席に向き直ると、先程まで立てていた方の手を真上に掲げる。
するとそこからは手の平程度の火の玉が上がった。
火の玉は客席より少し高い位置まで上がると、弾けて七色の光を出した。
光は小さな粒となって散り、急速にその輝きを失い、消えた。
その粒が完全に消えると、レバンは今度は両手を掲げて叫んだ。
「まだまだ!イケる!!!!」
期待sage
「ふざけるなよ……」
ボソリと、誰かが呟いた。
歓声に飲み込まれ、その声が届いた者はレバン一人だったが。
「こんな……」
レバンが面倒臭そうに振り返る。
まるで、汚いものでも見るような目で。
「負け方があるかァッ!!!」
ゲランがレバンに飛び掛った。
しかし、襲われかけているはずのレバンは微動だにしない。
ゲランの手がレバンの喉に触れようかとしたその瞬間―――
「……!」
ゲランの体を灼熱が襲った。彼の進路を阻むようにして炎の壁があがる。
その壁は暫くの間あがり続け、甲冑の色が完全に変わった頃、ようやく火の粉となって消えた。
「……若いな」
レバンは肩を竦め、また入り口に向き直り、歩き始めた。
観客の歓声は、既に途絶えていた。
3行かよ!
___∧∧ おう!……ゴメンなさい。
/\ ( ゚∀゚)\ いやでも、こんなスレでも見てくださってる>157さんに感謝。
\/| ̄∪∪ ̄|\ 見てくれてる人は見てくれてるんだ、と思いつつこれからも頑張ります。
\|
>>1 | 今読み返してみると文に色々不自然な部分が……。一回送信する毎に推敲しているのですが
 ̄ ̄ ̄ ̄ やはり今見ると……。推敲は二回すべき、ですね。
鼻歌交じりでレバンが控え室に戻って来た時には既に試合の様子は控え室の剣闘士達にも伝わっていた。
何食わぬ顔でエーヴェルの座っている椅子の隣に座る。
ある者は恐怖の目で、ある者はとって喰おうかともいう目で彼を見ていた。
控え室の中は湿った空気で満たされつつあった。
誰もが口を閉ざす中で急にその沈黙は破られた。
「ロット=ウォーレン!ステージへ!」
時間通りに来ないのに痺れを切らしたのか、運営の者らしき男が姿を現した。
名前を呼ばれた男は気が進まないような表情でゆっくりと立ち上がり、ステージへの通路へ姿を消していった。
それを気に一気に控え室の緊張は解け、元の雰囲気に戻った。
もっとも、一部にはレバンの一挙一動を観察するように見、何か動作をする度に落ち着かない様子で足を組んだり
また戻したりといった事を繰り返している者もいるが。
160 :
名無し物書き@推敲中?:04/08/18 17:20
___∧∧ 自分が言っちゃ駄目なんだろうけど
>>10,11,105さんの降臨を希望してます。
/\ (;゚∀゚)\ ……良キャラが浮かばないのです……。
\/| ̄∪∪ ̄|\
>>10,11,105さんの降臨祈願のためageておきます。……ホント、来てほしい……。
\|
>>1 |
 ̄ ̄ ̄ ̄
「あーあ、何か盛り上がりに欠けるなぁ……」
ゲルハルトが後頭部で手を組み、
「もっとアレだ、こう……」
背もたれにどさっと寄りかかる。
「指示語を使うなよ。……まぁ、確かに面白味はないな」
腰にささったままの剣の柄をコツコツと指で叩きながらアレクは言った。
現在の試合は斧使いロットと槍使いビュー。
お互いに攻撃を外し合い、未だ双方ダメージがない。それを見る観客もややだらけ気味である。
「さっきの戦闘を見せ付けられちゃな……」
次の彼の試合まではかなりの時間がある。それまでは場内はこの雰囲気で突っ走る事になってしまうのだろう。
また斧使いが力任せに一撃を繰り出す。
それを槍で払い、反撃に出るが背後に跳んでかわされ、当たらない。
「いつ終わるのやら……まったく」
「しかし、少々おふざけが過ぎるんじゃないか」
唐突にエーヴェルが口を開いた。
ボーっと虚空を眺めていたレバンはそれに気付かない。
「……おい」
エーヴェルが剣の柄でレバンの腰を軽く叩いた。レバンの体に電流が走り、ビクリと反れる。
「な、何ですかぁ?」
ひとしきり悶えた後にレバンは聞いた。それほど強く叩いたわけではない筈だが、どこか急所にでも当たってしまったのだろうか。
その考えを少しずつ頭から消しながらエーヴェルは再度聞いた。
「だから、ふざけ過ぎだと言った」
「ああ、さっきの試合ですか?」
レバンの顔が歪む。彼の普段の顔とはあまり釣り合わない不敵な笑みだ。
一瞬で先程の事と確信した洞察力。彼にそんな力があるとは思えない。"自覚がある"という事だ。
彼の声が幾分小さくなった。
「―――手ェ抜いてました」
囁くようにして言った。
エーヴェルはさして驚いた表情も見せずに
「何故」
と聞いた。
「さて何ででしょう?そこは……ご想像にお任せします」
「……もったいぶるな」
語気を強めて彼女は言った。彼女の冷たく、暗い視線がレバンに刺さる。
「……言え」
とどめの一言。
だがレバンは全く怯まず、
「……隊長はその喧嘩腰な態度を直したほうがいいなぁ」
頬を歪め、泰然自若として言った。
彼女は右腕を閃かせ、レバンの首を掴んだ。
「……もう一回、言ってみろ」
不気味なくらい落ち着いた声で彼女は言った。
彼女を知らない人間ならまだしも、彼女を知る人間にとってはこれほど恐ろしい事はない筈である。しかし、彼はいつになく平然そのままで
「隊長、短気だから」
とぬけぬけと言ったのだ。
その瞬間もう片方の腕が彼の頬に飛んだ。
骨の軋む小さな音と共に彼の体は背後の石造りの壁に叩きつけられた。
彼はしばらく壁にめり込んだ後、急に体を起こした。
彼は真っ直ぐにエーヴェルを見つめる。その頭、額からは赤々とした血液がどくどくと流れ出している。
「……清らかなる生命の風よ、我の失われし力とならん……ここに舞い降りたまえ」
彼は人差し指を立ててそっと呟いた。
人差し指に青い空気が集中し、それは次第に美しい光となって彼の体を包み込む。
すると彼の赤い血は青白い光と同化し、淡い光を発して消えた。
エーヴェルはそれを見ると、
「……やり放題……か……」
静かにそう呟いた。
彼の目は虚ろに虚空を彷徨っている。彼の体は一体どこまでその仕打ちに耐えられる事だろう……。
「さて、行くか」
エーヴェルと対峙するは者は細身の、槍使い。
エーヴェルの得物は当然剣である。対する相手は、槍。
剣で槍を相手にする場合は自分は相手の三倍の技量が要る。これはエーヴェルにとって大きなハンデだった。
試合開始の鐘が鳴る。場内の雰囲気が一気に高揚した。
激しい金属音が場内に轟き、こだました。
客席の高さまでそれは上がり、音を立てて地に落ちた。
エーヴェルが剣を納めた。彼らの位置は試合開始前とちょうど逆に入れ替わっていた。
槍使いの手から鮮血が吹き上がる。
「……フ」
『しょ、勝者……白!エーヴェル=カシスタミアぁ!!!!』
「あぁ〜稼いだ稼いだ」
レバンは巾着袋の紐を軽く指にかけて回す。
その隣を歩くのは長い茶髪を後頭部で一つに纏めた長身の男。
「これでしばらくの活動資金になる〜ってもんよ。いや〜笑いが止まんねぇ」
彼らが歩くのは貿易都市ドーターの中央通り。無数の露店が軒を連ね、またそれを上回る数の人があちこちを行き来する
ドーターの商店街だ。
日はもう落ち、空は満天の星空である。
道には豪快に札束をバラ撒きながら高笑いする大男、手の平の小銭を心配そうに数える小さな子供、まるで年に一度しか
ない祭の日のような賑わいである。
「そ〜だ、どうせ金は腐るほどあるんだ、今晩は俺が一杯オゴってやるよ」
「付き合おう」
レバンの隣を歩いている男、バラッド=シェイルは言った。
「そうこなっくっちゃ。……そうだな、あそこでいいだろ」
レバンは少し離れた場所に止まっている小さな屋台を指差した。
異国風の『のれん』に古風の木製の大きな車輪、ほとんど骨組みしか組まれていないこげ茶色の小さな屋台。
「異議はない」
「よっしゃ」
指を弾いて小走りに屋台に向かうレバン。そして、それを苦笑混じりで追うバラッド。
のれんをくぐって長椅子に座る。絶えず立ち上る湯気が二人の視界を心地よく邪魔する。
「"おでん"か……悪くない」
酒を一杯くれ、とバラッドが近くのコップに視線を移す。
「親父、酒をくれ」
この屋台の主だろうか、カウンターの向こうに座る初老の男は短い返事とともに酒の入った瓶とコップをバラッドに差し出した。
「お前、酒はイケるのか?」
「こりゃどうも失敬。飲めね」
苦笑を浮かべながらレバンは軽く肩を竦める。バラッドはコップを片手でいじりながらそれを見る。
バラッドの視線に気付いたレバンが顔を上げる。
「…俺の顔に、何かついてる?」
「別に」
バラッドは軽く鼻を鳴らすと酒をコップに汲み、それを口に当てて一気に飲み干す。
「こんにゃくとはんぺんが食いたい」
「親父、こっちに蒟蒻とはんぺん、俺も同じのをくれ」
「へい」
つくづく無駄のない動作でてきぱきと注文通りの品を皿に乗せていく店主。歳相応の経験というやつだろうか。その動きは素早く、
そして正確である。
「熱いよ、気をつけな」
そう言って、彼は簡素な器に盛られた具の数々を皿ごと二人の前に置いた。
温かい湯気が二人の鼻孔をくすぐる。数秒でも嗅いでいればそれだけで涎が出てしまいそうなまでの魅力的な香りである。
物と人が溢れるこの貿易都市に一日たっぷりと揉まれた彼らにとっては、その香りですら癒しの風に思えた。
「早速食うか。今日は食い放題だからな」
皿と共に出された木製の箸を割りながらバラッドは横目で話す。
「ああ、どんどん食ってくれや。金は使うためにあるんだからな」
「違いない」
含み笑いを噛み殺して目の前の食べ物に喰らいつく二人。
「……美味いぞ、おっちゃん」
「ありがてぇ」
店主の怒りっぽく固まった顔が解けた。人懐っこそうでどこか子供っぽいその笑顔は見ているだけでこちらの表情も緩んで
しまいそうだ。この貿易都市のような街では彼のような者が珍しく見える。
「……おっちゃんよ、今まで色んなトコ旅してたんか?」
「ええ。色んな所に行きましたよ。ヤーファの王都とか、ヘイストスの城下町、名もないような辺境の村……色々な世界を見て
きたもんです。……これでもこの屋台を引いてもう30年近くになりますよ」
レバンがふと店主の指に目をやった。目が若干多きく見開かれたが、すぐにそれは元に戻った。
「……奥方は?」
「……5年前、逝っちまいました」
「……そっか。
……おっちゃん、一杯オゴろうか?」
レバンが指を丸めてくい、とそれを傾ける。
「かたじけねぇ。一杯頂きやす」
店主は後頭部を大雑把に掻きながら近くの小さな杯に手をかけた。
「うんうん。何となく気持ち分かるぜェ〜おっちゃんよぅ」
いつになく朗らかな顔で酒瓶に手を添えるレバンの表情―――動作―――が、硬直する。
「……おい。どうかしたか?」
見かねてバラッドが怪訝そうな表情で彼の肩を叩いた。
レバンは何の反応も示さない。
試しに目の前で軽く腕を振ってみた。
反応なし。
「……おい?」
バラッドが彼の顔を覗き込むようにして見る。
彼の顔には……大粒の、恐らく、冷や汗が滝となって流れ出ていた。
その表情は……普段無表情の男が急に「笑え」と言われて無理矢理笑ったかのようなぎこちなさが固まって残っていた。
「……オジさん、席空いてるぅ?」
唐突に若い娘の声が響いた。それを追うように暖簾をくぐって返答如何も聞かず長椅子に座るのは……10代後半ほどの少女であった。
その少女が着る装束は、目も当てられないくらい露出が強かった。腕に本来あるべき袖はなく、胸元と腰を強調するかのような踊り子の着るそれに
酷似したそれはなんとまあ、二十歳にもならない娘さんにはとても不釣合いな代物ではあった。
だがその少女を見る限り、娼婦のような一種の「媚び」は全く見受けられない。
見るからに活発そうな少女である。馬の尾のように長い髪を後頭部で逆立てるように縛り、額には緑色の宝石がはめ込まれた鉢巻きと、行動的な印
象を際立たせる装飾品が多い。
172 :
名無し物書き@推敲中?:05/03/15 10:17:40
楽しく読ませていただきました。
ただ、気になる点が。
エーヴェル隊一行は具体的に何を目的にしてダロスへ?
仮に暗殺や破壊工作だとすると闘技場なんかで目立ってしまっては不味いのでは?
花火なんかもあげてしまったり。
…なんかケチつけるような形になってしまって申し訳ない。
自分も最近FEにハマって個人的に旬なネタなので頑張って欲しいです。
書き続けてくれることを期待します。
このスレまだあったのか
逃走せずに書き続けてる1は偉いな
季刊になってるがね
175 :
名無し物書き@推敲中?:05/03/16 09:15:49
このスレはリレー禁止かな?
もし良かったら駄文ながら支援させて頂きたいんだけど。
その前に登場人物を整理してくれないか?
どうせ書くなら投稿サイトに書いたらどうだ? 或いはキチンと作品に仕上げて、どこかに投稿するとか。
178 :
名無し物書き@推敲中?:05/03/17 19:43:25
レバン 主人公。人間には使えないはずの魔法を使う。
ミハル ヤーファ国のお姫さま。伝説の紋章の剣を持つ?
エーヴェル 百戦錬磨の女剣士。隊長。短気。怪力。
アレク ミハルの教育係的近衛騎士。俊足。
ゲルハルト アレクのライバル的近衛騎士。筋肉。
バラッド ヘイストス国の弓騎士。疑り深いが本人も結構怪しい。
シグルド レバンを監視しているらしい謎の青年。
シーザ シグルドの部下
レアナ 同上
あとリュック娘と影の暗殺者ってところかな?
見落とし、間違いがあったら失礼。
少女は頬杖をついて、その端正な顔をレバンに向けて、言った。
「おひさしぶり。レバン。」
「あ、ああ、ひさっしぶり、パルシュ」
噴き出し続ける汗を拭いながら、レバンは震える声で必死に答える。
顔色は蒼白で、今にも卒倒してしまいそうな程である。
しかし、そんなレバンの様子を全く気にする事もなく、
いつもの事、といった様子でパルシュと呼ばれた少女はレバンに語りかけた。
「ドーターに来てたんだ。
私もパパの仕事でたまたまこの町に来てたんだけど、
びっくりしちゃった。
通りでお買い物してたら、いきなり闘技場から虹の炎があがるんだもん。
それでね、あたしピンときたの。
だってあんな事できるの、レバンだけだもんね。」
「ま、まぁ、ね……」
明るく可愛らしいパルシュの声に対し、
あまりに必死な、消え入りそうな相槌である。
流れる汗は止まらない。
「それで、この辺で飲んでるんじゃないかと思って。
だってあなた飲めないくせにこういう屋台好きだし。」
饒舌なパルシュと急に寡黙になったレバン横目で見ながら、
旧縁か、とバラッドは少し意外に思った。
当然誰にだって旧知の仲の人間が一人や二人くらいはいるだろう。
しかし妙な違和感を感じるのは、この少女の風体のせいだろうか。
いや、違う。
やはり原因は男の方にある。
この男には、どれだけ親しくしようとも他人とは決して相容れないような、
そんな、そんな事を感じさせるような、何かがある。
そう感じる。
一体何がそう感じさせるのか。
魔法か。
それとも時折見せる無慈悲な瞳か。
無論、違和感なんてものは初めから存在せず、
自分が勝手に思い込んでいるだけなのかも知れないが。
バラッドがそんな事を考えていると、唐突にパルシュが身を乗り出した。
そして、レバンの耳に口を近付けて囁いた。
「ねぇ、これって結構運命じゃない?」
レバンの体が痙攣した。
その顔色は蒼白を通り越して土気色に変じかけている。
少女が苦手であるとか、緊張しているのだとしても、これはあまりに異常である。
レバンは正面を向いたまま、咽から搾り出すようにか細い声を出した。
「ご、ごめん、ほんとうに、わるいんだけど、
きみが、ちかづくと、おれ、なんか、ちょっと」
「それは恋よ。」
レバンの言葉を両断する一言。
どうやらそれが彼女にとっての真実らしい。
パルシュはレバンに体を寄せ、肩に手を廻そうと――
留め金が外れたように、レバンの体が動いた。
巾着袋から金貨を掴み出し、カウンターに叩きつけるように置いた。
そして
「お、おっちゃ、ごちそさま」
と言い残すと、椅子から飛び上がるようにして屋台から逃げ出した。
瞬きする間にその姿は夜の闇に消え去った。
屋台には二人の男と一人の女、そして一掴みの金貨が残された。
三人の男女の中で、一番狼狽していたのはおそらく店主であった。
「き、金貨、あたしゃいくらなんでも、こ、こんなに」
「いいのいいの。これくらい。
あの人今日闘技場で大もうけしたんだから。」
でも私の分くらいは込みでもいいわよね、と言いながら
眼を丸くしている店主をよそに、パルシュは鍋から勝手におでんをつつき始めた。
そして、咄嗟に動けないでいるバラッドの顔を見ずに、言った。
「お仲間さんでしょ?
追いかけてあげなくていいの?」
立場が逆である。
男に逃げられた女が一番落ち着いている。
そんなバラッドの心を見透かしたように、パルシュは続けた。
「いつもの事だから良いの。あたしは。
別にこのくらいじゃ運命の糸は千切れないわ。」
そして初めてバラッドの方に向き直る。
「それにね、あの人、私と話すと本当に体調崩すの。
この辺も夜はちょっと危ないし。
今あの人ちょっとした有名人でしょ?
だから、お願い、行ってあげて。」
「……ああ、わかった。」
バラッドは立ち上がり店主に軽く礼を言うと、レバンが消えた方向へ走り出した。
彼女にレバンの話を聞いてみたい、という思いは強くあったのだが。
「おう、兄ちゃん、どうしたよ?潰れちまったかい?」
町の広場の中心にある銅像の台座にもたれ掛かって座り込んでいるレバンを
一目でゴロツキとわかる連中が酒臭い息を吐きながら取り囲んでいた。
当然、その関心はレバンに向けてのものではなく、
その左手に握られた巾着袋に向けられたものである。
ひときわ体の大きい、どうやらリーダー格らしい男がレバンの前に屈みこんだ。
「体悪ィのかい?ん?なぁるほど。その袋ん中に薬が入ってるってわけだな?
俺様が親切に飲ませてやるからちょっと貸してみろよ。オイ。」
「消えろ。」
袋に伸ばした男の手がピタリと止まった。
その赤い顔に更に赤みが増してゆく。
「テメェ?今何て言――」
「汝、雷の槌…」
レバンの右手が男に向けられる。
「彼の者に…鉄槌を!」
沈黙が流れた。
雷の槌はその姿を顕さなかった。
レバンは小さく舌を打った。
「ふっ、ざけんなッテメェ!」
男の拳がレバンの頬に叩き込まれる。
そのまま横に倒れこむ。
レバンの口の中に血の味が広がった。
「ブッ殺してやるッ!」
男の太い腕がレバンの胸倉を掴んで引き起こし、再び殴り倒した。
ゴロツキ達がいやらしい歓声と笑い声を上げる。
(触るな……吐き気がする……)
倒れたレバンの腹に男のつま先が打ち込まれる。
(この……ブタが……)
男は狂ったように喚き散らしながら、レバンの体を蹴り続ける。
(殺してやるよ……)
レバンの心をドス黒い憎悪が覆い始める。
まるで、全身の細胞が沸き立つような、そんな――
不意に男の蹴りが止んだ。
そして、捩じれる様な悲鳴が響き渡った。
「い、ぎゃああああああああぁぁぁぁぁ」
霞む眼で、今まで自分を痛めつけていた男を見る。
右腕を押さえ、絶叫し、身悶えている。
そう太い右腕からは、赤黒い血が一筋流れ出ている。
「おい、レバン、無事か。」
聞き覚えのある声。
「あまり無事ではないようだな。」
ああ、ついさっきまで一緒におでん食ってたな。
「仕方ない。俺に任せて、お前は寝てろ。」
お言葉に甘えさせてもらおっかな……
不思議に怒りは冷めていた。
ふぅ、と軽く息をつく。
レバンの意識はそこで途切れた。
186 :
◆5GHcZDkbag :05/03/19 16:11:35
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\|絶対落ちた|
 ̄ ̄ ̄ ̄
実は受験生でした。。。
昨日受験も終わって気分サッパリです。ほとんど放置進行で申し訳ありません……が、見てくれてる人もそういないんで、いいですよね。
>>175氏が頑張ってくれていらっしゃるようで感謝感激。
ヲレはこのまま短編でも書いてよっと。
>>171より。
「ん〜いいにおい。やっぱ島原の食べ物は風変わりだけどいい味出してるねぇ」
娘は背負っていた手荷物を足元に降ろして足を組む。
レバンの隣、息遣いすら聞こえそうなほど接近した距離だ。そこまで近付かれてなおレバンの硬直は解けない。
娘はカウンターの上で肘をついて指を組むと、面白そうに鍋の中を覗き込む。
「おっちゃん。オススメちょうだい」
その問いに店主は歯を出し、
「困ったねぇ。うちのはどれもオススメだよ」
顎をしゃくって微笑みかけた。
娘は手の平で額を軽く叩く。
「あは。それはどーも失敬」
「ははは。まぁ強いて挙げるなら大根かな。この時期のは特に活きがいいんだよ」
「そーお? じゃあそれお願い」
「毎度」
店主が屋台の奥へ仕込みに向かった。
と、そこでようやくレバンの瞳の焦点が合ってきた。それに伴い冷や汗もみるみるうちに引いていく。
「バラッド」
「うん?」
「悪いけど俺、先行くわ。アレク達が宿とか見つけてるかも知れない、探してくる」
そうは言うが、広いぞ――そう言おうとしたが、バラッドはあえてその考えを棄てた。
ここはこっそり後をつけて詳細をこの目で見ておこう――レバンの不自然な挙動に起因するものが何かあるかも知れない。
と、不意に金属が何かを打ち付ける音が耳を劈く。
「金はこんだけあれば足りるだろ。じゃな」
彼はそこそこ高価な硬貨を置いてさっさと立ち上がり、のれんを潜って外に出て行ってしまった。
と、その時。
娘の目が横を向いて異様に薄く細められた。
それは一瞬のことで、注意していてもほとんど分からないほどの変化だったが――。
バラッドは見逃さなかった。弓使いの性か、その獲物を狩るような鋭い眼差しを。
「……おっちゃーん、ちょっと用あるからサ、外出てくる。すぐ戻ってくるよー」
娘は屋台の奥に向かってそう叫ぶと、レバンの後を追うように屋台を出て行った。
と、そこでバラッドは気付いた。
娘はここを出る際、手荷物であるリュックサックを長椅子の下に置き去りにしていった。
彼女の言葉が本当なら戻ってくる。それはそれで何ら問題はないのだが――
これはいい口実ができた。そう思ってバラッドは腰を曲げてリュックの紐に手をかける。
「親父、世話になった。金は足りる分だけ置いておく。釣りは気にするな」
バラッドは娘と同様に叫びかけると、リュックと大弓を背負って二人を追うべく夜の街へ繰り出した。
辺りの景色が流れるように変わっていく。
もうどれだけ走っただろうか? そもそもこれだけ長い距離を全力疾走したことも何ヶ月ぶりだろう。
後ろに迫り来る足音を感じてさらに走行のスピードを上げる。縁の下の力持ちに頼って何とか動きはわずかながら加速した。
建物と建物の間の人が一人なんとか通れるほどの細い隙間を抜け、人の多い大通りに出る。
「我は使役するもの、風よ雷よ地よ光、汝らを統べるべく舞い降りよ鉤爪、我は汝を身に宿し――」
通行人の人目すら気にせず、空中に魔方陣を描く。
刹那、レバンの動きが加速する。疾風すら遅れをとるほどの高速。
「我、契約文を捧げ、大気に眠る悪意の霊獣を宿す!」
同様の魔法の詠唱が後方から聞こえる。目には目を、歯には歯を、ということか。
目にも停まらぬ速さで街の大通りを疾走する。背後からの追撃はまだない。
再び目を前方に戻す。突然の疾風に驚いた通行人数人が腰を抜かし、風に煽られて吹き飛んだ。
他の建物よりも一回り大きい円形の建造物が目に飛び込んでくる。
昼間戦った闘技場だ。
入り口が複数ある上にその中の構造は入り組んでいて複雑だ。迷路のように通路と通路が繋がっているような場所もある。
追っ手を撒くなら絶好の場所といえるだろう。
(よし……やってみるか)
レバンは軽く地面を蹴って跳躍し、近くの建物の屋根の上に着地し、また走った。
少し後ろでは、雷撃の魔法を詠唱する若い娘の声が聞こえる。
闘技場に進入するのは意外に容易だった。
入り口に立っていた警備兵に適当に当て身を入れて昏倒させるだけで内部へ入れてしまうのだから少々驚きだ。
中を巡回する兵も見当たらず、意外な警備の薄さにレバンは今ばかりは感激する。
闘技場内は無知な者が驚くほどに通路が入り組んでいる。
入ってすぐの受付から右の通路に曲がるとそこは観客席に繋がっており、左に曲がると選手控え室やステージへと続く通路となっている。
当然だがレバンは左の剣闘士が使用する通路の方を選んだ。
その道は剣闘試合をする者の控え室や医務室、武器庫、関係者用会議室など様々な部屋が用意されており、枝分かれした通路も多い。
対して、観客席に繋がる通路はわずかばかりの分かれ道を除いてほぼ一本道だ。逃げる側が逃走劇に有利な方向はどちらか、いうまで
もない。
「炎、炎花、業火――」
呪われた呪句が追っ手の口より紡ぎ出される。これが若い娘の声でなければ少しはサマになったであろうに。
鬼火のような火球が爆発的な勢いで背中に迫ってくる。
走るスピードをさらに上げ、直線の続く通路を駆ける。火球はその動きを捕捉しきれず、レバンの少し後ろの地面と衝突して消える。
この直線は勝負だ。自分の背中を追っ手に真っ向から晒すことになる。追っ手が背後から追撃を入れるなら今が絶好の機会だろう。
ここさえ無事に駆け抜けることができれば後は曲がり角の多い迷路のような一帯に入る。そこに飛び込めれば今のこの状況よりは有利な
状態が作り上げられる。
「吹き飛べ、雷花の如く!」
聞き慣れた詠唱文が聞こえる。
刹那、雷撃の矢がレバンの髪をかすめ、すぐ側の石造りの壁に激突し、壁を抉って消滅した。
走る彼の体と目と鼻の先である。この雷に直撃したと思うと……。彼は強制的にその考えを頭から消した。
191 :
名無し物書き@推敲中?:2005/03/22(火) 16:03:51
>>1は受験だったのか。
自由になったって事で、これからはモリモリ書くが良いぞー。
さて、時間は僅かに遡る。
バラッド=シェイルは楽しく焦っていた。
レバンと彼を追う謎の少女は目にも留まらぬ速さで建物の屋上を転々と駆けていった。
地平線に置いた弓の的の中心を口笛交じりで射抜くバラッドの目でもってすら、追えなかったのだ。
これほど燃える場景が今までで彼の人生に存在しただろうか? 高揚感が彼の身体を駆け巡る。
これを見逃してはいけない。だが自分にはレバン達ほどの速度で走る運動神経は生憎と持ち合わせていない。屋根に飛び移ることはおろか、
長時間建物と建物の間を全力で跳躍する体力もバラッドにはない。なくて当然だ。
ではどうする? 彼は点在する屋台の支柱に目をつけた。
屋根を支えるだけの代物にしてはその造りは太く、頑丈だ。その隣の屋台にも、偶然に同じような無骨な造りの柱が同様に見受けられる。
「……曲芸師みたいなマネはしたくないが」
そう呟きつつも彼は一直線にその屋台に向かい、柱と柱を予備として常に携帯している弓の弦で結ぶ。
辺りを歩く者は訝しそうに、或いはなにか騒ぎの前兆かと面白そうにその様子を覗く者と様々だったが、それに構っている時間はない。
バラッドはピンと張った弓の弦に軽く片足を乗せると、その足に全力を込めて一気に踏みつけた。
弦はその力を受け止めるように大きく下に仰け反り……その勢いを倍にして、反発する。
彼の身体が大きく宙を舞う。片足で跳んだせいか、体勢が安定していない。
だが彼は空中で器用に体を捻ると、近くの民家の屋上に着地した。足をつけた際の衝撃が襲ったのか、彼の顔には僅かだが苦痛の色が浮かんでいる。
「さ……追うか」
193 :
名無し物書き@推敲中?:2005/04/05(火) 22:16:12
くーるふぃーとの抗争はどうなった?
迷宮なのかとも思える入り組んだ回廊を抜けた。
一段上に造られた正方形のリング、それを高みから見下ろすようにそびえる客席。
昼間来たときとは打って変わり、そこは気味の悪い静寂に包まれていた。
「……ッ!」
辺りに素早く視線を巡らせるが、人影は見えない。
見上げれば空には輝かんばかりの満天の星空が広がっていた。放射状に造られたこの闘技場には天蓋がない。
レバンは自分を追ってくる足音が聞こえないのを確認し、その場に崩れるようにして倒れ込んだ。
「うぁ……」
小さく呻く。土を固めて作られた闘技場の床は冷たくて気持ちいい。
思えばこれほど全力で走ったことが自分の今までの生涯の中で果たして存在したかどうか。
頭の中から過去の記憶を一生懸命引っ張り出して……その結果、
「……ない……」
ということに確信した。
そこで、今まで半ば忘れかけていた事実を思い出す。正直思い出したくはなかったが勝手に頭に浮かんできたのだから仕方がない。
あの信じられないスピードで描かれていく肉体強化の魔方陣。年頃の娘の甲高い声。
それよりなにより忘れる筈もない、できないあの顔。茶髪。異常に露出の多い魔道士用の装束――。
どれをとってみても行き着く先は同じだ。……違う解答など、有り得ない。
だとしたら――まずい。彼女はここにいてはいけない。
とりあえず人気のない場所に誘導することには成功した。後はさっさと追い返すなり和解するなりして――
「……はぁ。ま、いくか」
よっこらせ、と立ち上がる。
身を起こして、足を完璧に伸ばして。……いや?
「動くな」
ヒヤリと冷たい金属の感触。これが刃物の刀身だということに気付くまでにレバンは一瞬を要した。
首筋に当てられたそれは間違うことなく頚動脈を狙っているようだった。あと数ミリでも首に食い込めばあの世行きという距離である。
逆に言えば、それだけの距離、刃を動かせば相手は自分を殺せる。それが相手の力量を如実に示しているとも言える。
月光と星光に射され、刃物特有の危険な光はより一層その強みを増す。
(コイツは……ヤバい)
これまで自分に気配を悟られることなく闇夜に身を隠し、息を潜めてこの瞬間を誤ることなく狙ってきたのだ。
このリングに入ってきたときこそ一応の警戒はしていたものの、人影が見えないとなるとそれも止めてしまった。これは自分の落ち度だ。
「動けば首と胴体が死別だな」
前言撤回。頚動脈を破るなどとんでもない。奴は首と胴体を切り離すつもりらしい。
___∧∧
/\ (;゚∀゚)\
\/| ̄∪∪ ̄|\ 名前ミス。。。
\|生きのこる|
>>195は自分です。
 ̄ ̄ ̄ ̄
中腰になって歪に浮いた体勢ではどうすることもできない。いや……奴はこの瞬間を狙っていた。
こちらは丸腰で武器一本、寸鉄すら帯びていない。対する敵はご覧の通り、首に突きつけられた長剣がある。暗闇のおかげでその詳細な
姿を把握することはできないが、奴が持つ凶器となり得る武器はまさかこれだけでもあるまい。
冷や汗がどっと噴き出してくる。
「……何故」
掠れ声。よくよく聞いてみれば病人のような声だ。……いや、老人?
落ち着いており、、且つ成人男性の持つ低い声……男には間違いなさそうではある。
「理由を……お前が、始ま――」
く――と、彼は何故か、苦しそうに呻いた。
その僅かに生まれた隙を突き、鈍い銀光から遠ざかろうと反射的に身体が引く。が、その動作は男の構え直された剣に抑えられ、あっけなく
鎮められる。
冷や汗の大ブーイング。
「……指令を。お前の任務と後始末は――知っていると思うが、」
彼は時々苦悶に邪魔されつつも、続ける。
「女……女を、殺し、次に……王女……ッ」
男はそこまで言うと、突如として身を翻した。剣の切っ先が離れたのをいいことに、さっさと立ち上がって彼と距離を取る。
金属音。鋼と鋼がぶつかり合う音だ。
「チ、お客さんだぜ」
男は一回舌打ちした後、跳躍した。殺気と気配がみるみる遠ざかっていく。
まだ目が暗闇に慣れていないのか、辺りは漆黒そのものの闇だ。
適当に辺りの闇を見回してみるが、明かりは見えない。ここに来るときに通った通路には申し訳程度に松明と火が壁際に添えられて
いたものだが。確かに昼間来たときにはあったような気がする。火をつける必要がないので明かりは灯っていなかったが。
そういえば闘技場のリングには明かりはなかった。昼間しか運営しない施設であればそれが普通か。
「眉間に一当て一撃死。一矢一殺といえば……」
さっきとは別の男の声。掠れ声ではなかった。
「どうした魔道士。逃避行の果てに賞金首にでも?」
「……スナイパー」
よっと、と男は軽く地面を蹴った。
ようやく闇にも目が慣れ始めたようで、辺りのおおよその地形は把握できるようにはなったが、まだ詳細を掴むには至ってないらしい。
黒が僅かに揺らめく。
「……凄いな。こんな夜でも弓が引けるのか」
「まぁな。夜目が利くんだ……フクロウ並みにな」
未だ彼の姿を細かく捉えることはできないが、彼なら今、おそらく肩を竦めていることだろう。
「辺りが暗い、ってだけで攻撃できなくなるような兵士じゃ使いモノにはならないからな」
「それもそうだけどな」
大したもんだ、とレバンは素直に思う。
弓とか剣とかいう武具の類に関しては全くの素人であるレバンだが、この暗闇の中で明かりもなしに弓を引き、当てられるということは
並み程度の技量では到底不可能な技術である。結果的には外しこそしたものの、掠れ声の男が避けさえしなければ矢は確実に彼の眉
間を一発で貫いていたことだろう。この男、今のところは敵じゃないのが嬉しいところだ。敵に回れば厄介な男である。
「それより、悪いな。折角の晩メシ台無しにしちまって」
「気にするな。ツケにしておいてやるさ」
「あらら……意外と義理堅い、というかなんというか」
バラッドはどこか楽しそうに鼻を鳴らした。
ようやく目も慣れてきたようで、今では大弓を背に担ぐ弓使いの男がはっきりと見える。茶髪の長身と飄々とした眼差し。身体の線こそ
細めであるが不思議と華奢といった印象は受けない。今は青と黒を貴重にした軽めの戦闘服に身を落ち着けている。
身長は常人より頭一つ出た程度であるが、見た目にも体力的にも華奢で頼りない自分とはちょっと――かなり、違う。
と、そこでレバンはバラッドが背負うもう一つのものにようやく目が留まった。微妙に見覚えのある小さなリュックサックである。
「バラッド、その物入れ……どこで見つけてきたんだ?」
バラッドは怪訝そうな表情を作り、
「? そりゃあ、屋台にずかずか入り込んできた女の――あ、そういえばその女のことなんだがな、」
彼がそこまで言い、一瞬言葉を切った瞬間。
聞くからに場違いな活気に満ちた娘の声が、二人の耳に飛び込んできた。
「――お」
音もなく背後から腰に回されてくる細い腕。
もうそれが一体誰の腕なのかはおおかた察しがついているが――
ああもう――。
レバンは、自分が意識してもいないのに肩からがっくりと力が抜けていくのを感じた。意図的にしたことではない。
まるで吸い取られるかのごとく、全身の力が抜けていく。
「つッかまッえた♪」
今度は、視界がだんだん白く染まってきて――。
その異変に気付いたバラッドが慌てて声をかけるが、既に遅い。一瞬を重ねるごとに意識は急速にまどろんでいって――。
彼は何か声をかけたようだが、残念ながらそれを聞くことはできなかった。
「ッ……卿も人が悪い……。くそっ……」
彼は、立っていた。
小さな教会であるが、外装は入念なまでに飾り付けられており、他国の一流貴族の邸宅と比べてもその華美さにおいては全く引けは
とっていない。外壁は無骨な灰と空色の塗装であるがよく見るとそこにも細かい彫刻が施されており、一種のこだわりすらそこからは感
じられる。
もっとも、暗い闇が辺りを覆う今となっては内装の華美さはおろか、外壁の丹念な彫刻すら見て取ることはできない。この細かな装飾
を楽しむためには、満月の月明かりだけでは心許ない。
彼が立っているのは、その教会の屋根の一角だった。
「魔女が……気配だけで俺を殺せるのか」
彼は、つい先刻レバンとバラッドに自慢の島原地方名物の食物を振る舞った、屋台の店主だった。
つるりと禿げ上がった頭髪に、細かくねじった鉢巻き。笑顔が印象的な老練の商人である。だが、その口調は先ほどの彼の操るそれ
とは全く違っていた。
月明かりがわずかに弱くなる。
彼は唐突に自らの顎に手をかけた。そして、まるで引き裂くように自分の顔を“破ろうとした”。
彼の顔がぐにゃりと歪み、波打つ。
「厳しい戦いになるな……」
仮面の下から出てきた顔は、線のように細い糸目と金髪の男。
シーザ=アレドヴァルだった。
ルパンかよ
___∧∧
/\ (;゚∀゚)\
\/| ̄∪∪ ̄|\
\| |
 ̄ ̄ ̄ ̄
>>202氏
おおっ、自分の稚拙な文で通じたようで良かったです。
それ以前に、こんなスレを一応でも見てくれていたようで感謝感激。
これから先、書く量を次第に上げていく予定なので少しの間見放さないでおいて下さいね。
___∧∧
/\ (;゚∀゚)\ 以前の書き込みにもございました通り、現在の状態ではストーリー、特に序章に当たる部分がヤバいです。
\/| ̄∪∪ ̄|\ さすがにこのまま突っ走るワケにも行かないので、いっそのことリメイクしてみようかなと。
\| | もちろん大まかなストーリーは同じですが、細かい部分で話が変わったり、キャラの性格まで微妙に
 ̄ ̄ ̄ ̄ 変わったりなんかもしてしまうかも知れませんが、ご容赦のほどを……。
>>203のAA、ズレまくりっす。
ヤーファ王国。
大陸の東に位置し、広大な領地を持つ大国。豪勢に造られた城と神殿が辺りを支配する貴族と金の国である。
ヤーファの首都カルレネスは山脈地帯の麓の高原地帯にあるため、適度に雨も雪も降り、国のどこよりも豊かな土地だ。
その上宮殿ともなれば、王の権威の象徴だ。ことさら多くの緑におおわれている。
深く井戸を掘り、山脈からの雪どけのふんだんな地下水を汲み上げ、噴水や池をいくつも造り、広大な王宮中に緑と花と夏の涼を
与えていた。庭園には色とりどりの小鳥たちが放し飼いにされ、木陰のあちこちに餌の台までが用意されている。また建物の壁には
蔦が生い茂り、夏の陽射しから室内を守り、また目に優しい風景を届ける。
大陸の最東端という人によっては過酷なまでに遠く感じる者にとっても、王宮を目にした者は誰もがその美しさに目を見張り、賛美
する。
その美しさをこれでもかとばかりにまくし立てる旅人たちに、カルレネスの人々は胸を張ってこうつけ加える。
何も美しいのは、王宮だけじゃない。あの中にこそ本物の花がある。
あそこには、三名花がいらっしゃられるんだ、と。
「お姉様、ご気分はどう?」
部屋の中に明るい声が響いた。
ベッドの中で半身を起こし、手元の本を眺めていた部屋の主は穏やかな笑顔を浮かべた。
「あら……よく来たわね、ミハル」
視線の先には、ヤーファ王国第三王女ミハルがいた。
カルレネスの住人が名花と例えるのも頷ける、眩しいほどに溌剌とした華やかな少女だった。
「よかった、今日は少し顔色がいいみたい。昨日、すごく咳き込んでたみたいだから……」
「昨日は雷の後に雨も降ったから。いつものことよ、心配するほどじゃないから」
「いつものことでも、心配はする」
真顔で言われ、部屋の主は苦笑した。
「ふふ……ごめんなさい。心配をかけたみたいだけど、もう大丈夫よ。少なくとも身体を起こして本を読んでいられるくらいだから」
ミハルに謝る彼女は、なにを隠そうこのヤーファ王国の第一王位継承者、エステル王女であった。今年で二十七になるが、幼い頃
から病弱でほとんど寝たきりの生活をしているためか、色白で線も細く、二十歳前後の娘、ミハルと歳はそうそう変わらないように見
える。
対するミハルはこの冬で十七を迎える。少々年齢は離れているが、同じ母を持つ姉妹で、さらにエステルとミハルの間にはもう一人、
ラクシスという名の姉妹がいる。彼女はこの夏で二十一になった。
ヤーファの現国王であるダフネスには息子がいない。今のところは病弱で伏せがちなエステルに王位継承権が与えられているが、
実は心身共に健康そのものであるラクシスやミハルを次期国王、女王にと推す声は多い。
ダフネス王が年齢を重ね、来年で六十を迎えるにあたり、ラクシス、ミハルを女王にという声ははばかることなく大きくなっている。
無論やはり正当な世継ぎ、正当な後継者(ヤーファ王国は一番最初に生まれた子供が家督を継ぐという暗黙の了解がある)がヤー
ファを治めるべきとする保守派の方が数は多いが、こちらはエステルを一度王として迎え、生まれた男子を次の国王に、とする一派
と普通にエステルを王とすべき、という一派と二つに分かれてしまっている。
しかし周りの思惑がどうであれ、エステルとミハルには互いが王座を巡ってのライバルと憎む気持ちはない。むしろそんな周りが
いるからこそ、より姉妹の絆は深っていくのだった。
今日は気分がいいので中庭を見下ろせる隣でお茶を飲もうと言われて、ミハルは姉の寝室を出て隣室の応接室で待った。
本当は姉に同伴したかったところだが、本人の「いつまでも他の人に頼ってばかりじゃだめだから」との言葉にミハルは素直に引き下がった。
風通しを良くするために侍女たちが開けていった窓辺にたたずみ、ミハルは中庭をゆっくりと見回した。
広葉樹の葉はほとんどが紅く染まり、葉も多くが落ちていたが、それすらも計算された設計の庭園は、噴水から流れる長方形の池の中に
青空と木々の緑や紅葉を映しこみ、時が流れるのを忘れさせる美しさであった。
ミハルは幼い頃からこの部屋から見る庭の風景が好きだった。病弱でほとんど部屋の中からしか外の世界を見ることのできないエステル
のために、王が下の庭を設計させたのだ。子供が喜ぶように果実のなる樹も植えられており、よく、その実を従者や侍女にとらせてお見舞い
と称して姉の部屋に来たものだった。
「あら……?」
昔を思い出しながら庭を見ていたミハルの顔に、新たな色が浮かぶ。
窓から見える庭園の一つ向こうに、複数の人間が規則的な速度で一列に並んで走っているのが見える。その内の誰もが例外なくヤーファ
王国騎士の制式装備品である鎧を纏い、帯剣している。
この数十年は大きな戦争に巻き込まれていないヤーファ王国である。老練の騎士や魔道士は次々と引退していき、今となっては国の宰相
や大臣といった重役にぽつぽつと名を連ねている程度で、国の主要戦力である騎士団は軒並み戦力の低下が著しかった。隠居した彼らの
元へ弟子入りを志願する若い騎士もいるようであるが、彼らがその厳しい修練を終えて一人前と認められるまでに何年かかることか。
おまけに平和な世の中が続いているのをいいことに、貴族の若い子爵とか子息といった剣を持つ手もおぼつかない、いわゆる「お坊ちゃま」
が遊び半分で「騎士」を名乗る例も日増しに増えている。嘆かわしい限りだ。
しかし、そんなナメた態度で騎士叙勲を受けた彼らのうち、三人に一人は地獄の責め苦を味わうことになる。
ミハルは、そんな地獄を現在進行形で新兵に浴びせている張本人を遠目で見つめた。
一列になって庭の端を走り続ける一団の先頭。誰もが豪華な装飾の施された鎧を着用する中、彼女だけが右手に盾、左手に槍、頭には兜を
装着した重装備――もちろん鎧もしっかり着込んで――列の殿を務める姉の姿を、だ。
ヤーファ王女三姉妹の次姉ラクシスである。
彼女は病弱なエステルとは裏と表のような関係である。伏せがちな弱い体と、限りなく完璧に健康体。やはり性格も姉には似ず、政治とか歴
史といった勉学を好むエステルと比べ、ラクシスは武術や運動競技などといった体を動かす分野でその才能を発揮した。その能力は極めて非
凡で、王族であるにも関わらず、今やヤーファの主要騎士団の軍事顧問を一人で務めているほどだ。無論実績もあり、国で年に一度行われる
貴族お抱えの剣闘士による闘技大会で、彼女は名を変えて顔を隠し、出場した。
中には彼女の二周りほどの体格もある大男とも戦ったが、彼女は器用な剣捌きで男の剣を根元から折り、強制降参を強いたこともある。
大胆な攻勢とは裏腹に自分の攻撃が通用しなかった場合の機転が見事で、全身に板金鎧を着込んだ重騎士と戦った時などは相手が攻撃を
空振った隙に後ろに回りこんで体当たりし、転倒。相手は重装備が災いして立ち上がれない。その無防備となった体目がけて、敵の目の前に
愛用の細身剣を突き立て、敵は戦意喪失。その試合を見た者全員を唸らせる戦いぶりであった。
しかし、この見事な才能は生まれ持ったものであるか、と問われれば本人は分からないが、少なくともミハルは首を横に振る。
今もラクシスは基礎体力作りと称して、城中を走り回っている。別にこれは、今に始まったことではなかった。
元々頑丈な体にできていた彼女は、幼い頃から運動が好きで、城仕えの騎士や侍女たちと共に、よく遊んだ。城の中にあるちょっとした出っ張
りに手をひっかけてはぶら下がって遊び、外に出れば木に登って侍女をヒヤリとさせていた。
その卓越した運動神経は、確かに生まれついたときからのものであろうが……その力を武術の方面へ持っていき、見事に発展させたという事実は彼女
の才能によるものではない。
ラクシスが十を数えるころになって、彼女は初めて剣を持った。王族とはいえど、最低限程度の武術や剣術を学ぶのは常識である。『そのくらいのこと
ができないようでは嫁に行けない』という周りの目もあるうえ、ここヤーファ王国では初代国王の時代から続く伝統だ。そう簡単にないがしろにできるもの
ではない。
もっとも、父王もそれほど突っ込んだ修練を望んでいたわけでもないだろう。本当に、最低限程度の剣が扱えればそれで良いと思っていたはずである。
剣というのは元来殺人の道具であり、凶器だ。そんなものを自分の可愛い愛娘に進んで持たせようとする父親などいるだろうか。王族でなくてもそんなこ
とはまずやらせない。
が、思いの外ラクシスはいたく剣を気に入ってしまった。無論彼女が持った剣は真剣ではなく、先が潰してある訓練用のものや刃のない作り物であった
が……彼女は、自ら好んで剣を握った。数ヵ月後には自身の寝室にまで愛用の長剣を持ち込むぐらいにまでのめり込んでいってしまったほどである。
彼女は頻繁に騎士の訓練に顔を出すようになっていった。最初は週に一度程度だったものが、月日を重ねるたびに週に二度、三度、としだいに増えて
いき、最終的には今――毎日の訓練を率先して自分から行う、団の軍事顧問である。
父王ダフネスはそれに関しては意外にもなにも言わなかった。ただ、訓練に出かけるときにラクシスの背に向かって「気をつけてな」と声をかける程度
であり、彼女が剣を振るうことに関してはまるで不可侵であった。
理由は――何となく想像できるが。
と、ドアの外で足音が聞こえた。姉のものである。
微妙に後ろ暗い話はどうでもいい……それよりも、姉が心配するような顔をしていてはいけない。ミハルは満面の作り笑顔を浮かべ、ドアを引いて部屋
に入ってくるであろうエステルへの歓迎の準備を怠りなく始めた。
「姉上、ミハル、入ります」
ラクシスが数回のノックと共に部屋に入ってきたのはミハルがエステルと話し込んで半時ほど経った頃であった。
訓練の余韻はまだ冷め切ってはいないらしく、全身にうっすらと汗を帯びた姿での登場だった。
「……ミハル」
ラクシスは部屋の窓際で談笑する二人の姿を捉えると、困ったように腰に手を当てて渋面を作った。
「自重しなさいと言っているでしょう。ただでさえ姉様はヘイストスへの表敬訪問が来週に控えているのです。体に負担のかかるようなことをさせては
いけないと言ったばかりでしょう? つい一昨日釘を刺したばかりなのに」
凛とよく通る声が曇る。
「姉上、あまり無理はなされぬよう……何かあったら私でもアレクでもいい、どこか手近の者を頼ってください。とにかく、体に負担のかかるようなこと
はお控えください」
ラクシスはエステルに歩み寄り、その胸に軽く手を添える。
ラクシスの言葉の中にミハルの名が出てこなかったのは故意か過失か。
「ふふ……大丈夫。私も時と場所を選ばずに倒れていられるほどの重症ではないから」
エステルは妹の目を微笑みを含んだ顔で見つめる。
その表情は――まさに深窓の王女、姫君の名がよく似合う――病的なまでに美しかった。その顔で直視されたら誰も逆らえない、逆らうことのでき
ない強制力を伴った、ある意味では悪魔の微笑である。
「それに、部屋に篭もってばかりでは気分も滅入るし……ラクシスは“病は気から”という言葉を知らないかしら?」
ラクシスは首を横に振る。運動競技や武術に熱中するあまり、ラクシスは学問にめっきり弱くなっていた。
沈黙するヤーファ王国第二王女に代わって口を開いたのは第三王女のミハルであった。
「病は気の持ちようによって起こる、という意味でしょう?」
「そう、正解。よく解かったわね、ミハル」
エステルは窓の枠に手をかけ、外を覗くように軽く身を乗り出した。
長く険しい冬の到来を感じさせる冷たい空気が室内に吹き抜ける。冬の足音はもうすぐそこまで迫っているという事実は……あまり直視したくはない。
しかし、エステルはまるでそれを感じていないかのような明るい声で二人に言ってみせた。
「風よ。私は風になりたい。誰にも左右されずに、唐突にやってきては駆け足でまたどこかへ吹いていってしまう……風に」
「……姉上」
「もちろん、そんなの無理……。王女としての立場と周りが、それを許してくれない。
子供っぽくて、なんだか他人が聞けば声を上げて笑われてしまいそうな小さな夢ですけど……私の大切な、夢」
身体を戻すと、エステルは意地らしく笑って唇に人差し指をあてた。
「お父さまには内緒にね? 私がこんなこと言ってると知られては、卒倒して一週間くらい寝込んでしまわれるから」
その夜、ヤーファ国王ダフネスは珍しく夜の晩餐会に出席した。
健康体ではないが病弱でもないダフネスであるが寄る年波には勝てず、最近はエステルほどではないが自室に引き篭もりがちの毎日であった
ために、エステルほか重臣達は軽く瞠目した。
若い頃は武術、勉学共に嗜む賢王であったが、彼は一国を治める王としてはやや凡庸であったと言われている。槍の腕前は相当のもので、頭
を使えば学者の仕事を失わせるほどの才能の持ち主ではあったが、残念ながらどれも「王」として当然の成績に終わっていた。
当然ながら王がその背に負う責任というのは、並の平民が思ってる以上に大きい。王というのはある意味「神」と同義語である。王が優れていれ
ば優れているほど民衆からの王への期待は大きくなり、王は膨れ上がる期待に応えようと奮起する。……一度も失敗すれば、愚鈍で無能な王と
世間は彼を揶揄することだろう。王への信頼は地に落ち、威光や権威なんてへったくれもない。
ヤーファ国民が王へ抱いている感情はこうだ。
『王さまというのは神なんだ、あの人はなんでもできる。あの人が間違いなんて起こすわけがない、あの人に頼めばなんでも絶対成功する』
故に、王の失敗は許されない。
王はすごいのだ。すごくなければならない。
それこそ、人智を超えたほどに。王は『神』なのだ。人間の持つ定規でその力を測ることはできない。
しかし、ダフネスの持っていた力は人間の持つそれとして認められるだけのものであった。
民衆は表立って不満を口に出してはいないものの、代わりに彼を褒め称えるような賞賛の言葉を浴びせもしない。
そういったところから生まれる精神的疲労が、ダフネスの最近の体調不良に繋がっているということは想像するに難しくない。
「エステル……ときに、来週に控えたヘイストスへの表敬訪問のことを、一度話しておこうと思ってな」
平民の視点から見れば目玉が飛び出て戻ってこないほどの金額の料理を給仕の者が下げ始めたころ、ダフネスはそう切り出した。
無数の蝋燭とランプが輝く大食堂の景色は褐色で薄暗い。大陸の最先端を行く文化を持つヤーファ王国、その王城にしてはやや質
素な灯火であった。
「今夜お父さまが出席されたのもそのためですか」
「うむ……」
エステルの体調は良好で、食事の際にも何度か冗談を言ってラクシスやミハルを笑わせた。顔色にも病人に見える青はなく、いたって
健康な桃色が彼女の水のような美貌を際立たせている。
しかし、それに反するようにダフネスの体は重そうだった。時折咳き込み、あわやテーブルに突っ伏しかけることもしばしばだった。彼
が無理をしているのは目に見えて分かっていたが、エステルたちはあえて声をかけず、父に部屋に戻るようにとは言わなかった。
「私もかわいい娘達が心配でな」
そう前置きをつけ、ダフネスは話し始めた。
「――今回のへイストスへの訪問の目的は、何だった? ……ミハル、答えてみなさい」
いきなり自分の名を出された第三王女は少しの間きょとんと動きを止める。
今回の訪問の際、使節団の構成員の中にミハルの名は入っていなかった。万が一のことを考えて、王の直系の子供が一人でも残る
ようにとの臣下の配慮である。要するに、ミハルの仕事はお留守番であった。
そういう事情のおかげで、ミハルは今回の他国への訪問を個人的にあまり重要視していなかった。この計画の詳細は彼女には伝えら
れず、侍女の一人が『ちょっとした旅行のようなものですよ』と気の利いた冗談を言ってくれたおかげで『姉様たちばかりみんなに内緒で
ズルい!』と彼女は腹を立てるハメになった。
彼女は一瞬思案すると、
「……お互いの親交を深めるための……交流……」
それにダフネスは大きく頷き、
「そうだ。それに、ヤーファ王国とへイストス王国との長年続く同盟関係の再確認、といった意味もこれには含まれておる。
これまでも代々続く重臣や大臣達が訪問に向かっていたが、今年はラクシスが二十歳を迎えた故に、今回は王女自らが出向くことに
なった」
ラクシスはこの夏で二十一であるが、季節と時期の関係もあって二十歳の年に訪問を行うことはできなかった。そこで一年遅れにはな
るが、二十歳を迎えた祝儀を他国に行って執り行う。ラクシスが訪問に向かうにはそういう意味合いがあった。
「さて、ラクシス。前回へイストスへ表敬訪問に向かった人物は誰だったかな?」
「シグルド=フランヴェルジェ卿ですね」
ラクシスは即答だった。
「正解だ。ちなみに今回、おまえたちを護衛する役も彼が自ら買って出てくれた。明日、明後日にも王宮に顔を出せるそうだ」
「まあ!」
声を張り上げたのはミハルだった。思わず身を乗り出した彼女は勢い余って椅子を転がし、白いテーブルクロスを大きくずらして顔を輝かせた。
「卿が来るですって!? それなら私、さっそく彼を歓迎する準備しなくちゃ! お父さま、お姉さまも、お休みなさい!」
彼女はそう叫ぶと、自らの寝室がある棟へ向かってドレスを引きずって走り出した。ラクシスが止める間もなく、ミハルの姿は薄暗い回廊の中
へ消えていった。ミハルが勢い良く開け放した食堂と通路を繋ぐドアは蝶番が外れかけている。
それを見たダフネスは首を振って苦笑する。
「……すみません、父上。……どうも、舞い上がっているようです。それも、一瞬のうちに有頂天にまで」
「よい。……ふ、あれにも困ったものよの」
シグルド=フランヴェルジェ卿は現国王であるダフネスの祖父の祖父の、そのまた父の代より王家に仕える名門貴族の子爵であった。
といっても、いまヤーファの貴族のうちで社会現象にもなっている「お遊戯剣法」の使い手ではない。剣、槍、弓など各種に渡る武具を使いこな
し、その上扱い方は超一流。なにを隠そう、身分を偽って剣闘大会に出場したラクシスの大会優勝をいとも簡単に阻止してみせたのがこのシグ
ルドなのであった。力は弱いが手数と機転で戦うラクシスの剣。それを彼は一撃で跳ね飛ばした。ラクシスが彼の剣の間合いに入り込んだ瞬間。
どんな手品を使ったのか、次の瞬間にはラクシスは甲高い金属音と共に虚空を舞っていた。
ここ何年も大規模な実戦がないので彼の力を正確に推し量ることができないのをダフネスは武人として残念に思っていた。
「まあ仕方ないことだ。あれの懐きようは相当のものだからな……」
シグルドは聡明であり、また端正な容姿の持ち主でもあった。吟遊詩人の歌う物語に出てくる王子や貴公子を実在するなら、おそらく彼のような
容姿を持っているのだろう。
ダフネスはシグルドの怜悧に過ぎた要望を頭に思い起こす。まるで発光しているかのような緑髪にすらりと伸びた長身痩躯に、善人と策謀家
の二面性をうまく使い分ける髪の色と同じ聡明な瞳。
「後でアレクとミストに言って番をさせておきます、話の続きを」
「うむ……」
ヤーファ王国第二王女に促され、国王は思考を書き換えた。強制的な上書きを行ったためか、頭が本題のほうになかなか完璧に移ってくれ
ないのに苦労させられる。
「どこまで話したかな?」
「我々の護衛にフランヴェルジェ卿が同伴していただけるところまでです、父上」
「……そうだったな」
ダフネスは一つ大きく息を吸った。
「しかし、この訪問が両国の友好を築くための行事である以上、護衛とはいえ膨大な量の兵士を連れていくわけにはいかない。分かるな?」
下手に王宮の精鋭たちを一個大隊分も連れていこうものなら相手国――へイストス王国の民が騒ぎ出す。“大国ヤーファが兵を連れて戦争
に来たぞ”と。これは明らかにヘイストスへの高圧的な宣戦布告にほかならない。片腕で剣を振り回しながら空いた片手で握手を求めようとも、
それに応じる者は皆無であろう。まず最初にすべきは剣を下ろし、対等な目線と条件を以って会話することである。
「同盟国である以上領地に入り次第襲撃に遭うなどといった事態は有り得ない。……が、道中盗賊が出るかも知れぬでな。
そういった点を考慮して、連れていく兵力は卿が選りすぐった精鋭の騎士数名と、傭兵の一個小隊のみと決まった」
「!? 傭兵!?」
今度はラクシスが椅子を蹴って立ち上がる番だった。しかしそこはやはり次姉の貫禄、自らの行いを省みるかのように俯くと、一言侘びを入れ
て席に座り直した。姉であるエステルはそれをぼんやり見つめながらなんとなく微笑している。
「それで……傭兵とは一体何故です? どうして国の正規兵を連れて行かれないのか?」
気を取り直して頭を上げたラクシス。
「その理由はラクシス、お前が一番よく知っている筈だ」
「は……?」
「ラクシス……」
そこで口を開いたのはエステルであった。
「昼間あなたが訓練させていたあの若い騎士たちに、こんな大役が任せられると思う?」
ラクシスはびくっとなった。確かに、ここ数年のヤーファの騎士の弱体化――腐敗は懸念されているところであった。しかし、その問題がまさかこ
の場で問題になるとは彼女にとっては思いもしないことであった。ヤーファの主要な騎士団の軍事顧問を一手に引き受ける彼女としては自分にそ
の責任の一端があるように思えていささか肩身の狭い思いである。
「そこで、こちら側で練度の高く、信用も置ける傭兵を数人選出しておいた。それに、こちらにはこんな強い傭兵が何人もお抱えでいるのだぞ、と
他国へ暗に示唆することもできる」
「……なるほど。確かに、道中通行することになる土地や国に対しては効果が期待できるかも知れませんね」
「そういうことだ。一応素性や経歴も一通りは調べがついている、明日にでもそのリストを渡そう」
「お願いします」
かしこまって頭を下げるラクシス。
一方、エステルは今までの話をきちんと聞いていたのかどうかすら怪しく思えるような手つきで残りの料理を捌いていく。おそろしくのんびりとした
手つきで、見ている方の手まで何となく遅くなってしまいそうな雰囲気であった。
ヘイストスへの表敬訪問の日まで、残すところ一週間である。
期待さげ。
FE関連スレまとめ所にこのスレ載ってたよ。
220 :
名無し物書き@推敲中?:2005/08/07(日) 22:28:55
すたこ〜ら逃げろ〜(逃げろ〜)
(((((((っ・ω・)っ
___/\___
>>219 なんと……! そのようなことが。
いつの間にそんな処置が……いやはや。
>>220 でも最近、それも聞かなくなりましたね。
イチバン新しいモノでも2001年の「封印の剣」のCMが最新だったハズ……。
それも「暗黒竜」の使い回しだって話ですし。新収録しないのかなぁ。
>>1はもう夏休みに入ってるんだろ?
ならば書くのだ。
続きを書くのだ。
元ネタ系譜なら、ラケシスだろ?
わざと?、間違い?
翌日。
「陛下! フランジェルジェ卿がご到着されました!」
「通してくれ」
謁見場は簡素な造りだが広く、厳かな雰囲気の漂う一室だった。一段高い場所には国王の座る王座が置かれ、そのうしろにはヤーファ
国旗が威風堂々と自身を示すかのように置かれている。天井は高く、開けた印象を受ける。
コツ、コツと、靴が石の床を叩く音が断続的に響く。
「ダフネス国王陛下。シグルド=セイダム=フランヴェルジェ、陛下より賜ったルオフォンデス地方の領地視察の任を終え、ただいま帰還
いたしました」
落ち着いた、よく通る声だった。彼の年齢は二十六歳であるが、その声からは彼の実年齢以上の落ち着きと荘厳な印象を受ける。
彼は王の玉座の前まで歩くと、片膝をつき、国王を見上げた。
優しい若草色の髪と、怜悧な顔立ちを持つ青年である。線は細く、体格そのものはひょろりとして頼りなさそうであるが、剣術舞踏会の
優勝者である。もしかしたらその豪奢な衣服で力強い筋肉を隠そうとしているのかもしれない。
「卿!」
「うわっ」
ダフネスの後ろで控えていたミハルが飛び出し、シグルドに飛びつく。彼は立ち上がりながらミハルを受け止めたためか、体勢が安定しない。
「け・いっ! やくそくの時間に二時間も遅れていますっ! ヤーファ騎士の、いえ男のなさることではありませんわ!」
ミハルは背伸びしてシグルドの頬を両手で力いっぱいつねる。彼の顔の輪郭が力いっぱい歪む。
「いっ、痛い痛い。ひどいことをなさるお方だ」
「時間に・鈍い・殿方には! 縁談なんて一生舞い込んできません!」
「うっ……確かに私は独身ですが……! しっ、しないだけです! できるけどしないんですよ!」
「嘘ね! ホラ、わたしの目を見てお話なさい!」
「痛たたたたたた……」
___∧∧ リロードし忘れてました。
/\ (;゚∀゚)\
\/| ̄∪∪ ̄|\
>>222 \|
>>1 .| 文化系であるにも関わらず実は自分、運動部なんですよ。そんなの言い訳になんかできませんけどね。
 ̄ ̄ ̄ ̄ お盆あたりにラッシュかけようと思ってます。
>>223 系譜やったことないです。そんなの言い訳に(後略
名前だけは知ってるんですけど。「フィンラケ」とか。どういった意味なんでしょう。
どんな性格なんだろうね、と楽しくいろいろ思案しております。
>>224 仕様です。
シグルドの目尻から水が湧いて出てくる。ミハルはそれには全く構わず、彼の頬をあれこれと操作する。
「貴婦人に! 優しくというのは世界の常識ですッ!」
「ほ、本当の貴婦人というかたは、そう無闇やたらと男のほっぺたを引っ張るかたではないと存じ上げておりますが……」
「自分のことは棚に上げてなんですかその態度はっ!?」
「そ、それはお互い様と……い、痛い痛たた……」
「こらこらミハル。卿は長旅でお疲れなのだから、卿をあまりからかってはいけないよ」
玉座の上から諭すような声が投げかけられる。
ヤーファ国王ダフネスが自身の娘を、特に末っ子である三女、ミハルを溺愛しているという話は有名であった。歳を重ねてから授かった
子供だったのでその喜びと愛情は一層強く、彼女に対してはダフネスも甘い。国を継ぐ者として厳格に育てられたラクシスに言わせれば、
“父上はミハルに会ってはいけない”。“ミハルばっかり、ずるいわねぇ”とはエステルの弁。
「うぅ……家へ戻ったらすぐに冷やしておかねば……」
「自業自得です!」
ふん、と鼻を鳴らすとミハルは大股でダフネスの後ろへ下がった。激痛に目を潤ませるシグルドには一瞥もくれない。その動作がシグル
ドの心にまた一つ大きな傷をつけるのだった。
「……失礼しました、本題に戻りましょう。痛たた。
領地視察の件は追って報告書を作成し提出する用意ですが、口頭でも簡単にお話させていただきます。
まずかねてより懸念されていた治水の件です。これは我々が考えていた以上に深刻な問題となっております」
「というと?」
「はい。もともとルオフォンデスの地の土は水の吸収が良くなく、作物を作るに適した土地とは言えません。これは以前お話しましたね……。
しかし今年の夏に入ってからというもの、ルオフォンデス地方の降水量は例年の半分以下と落ち込んでいるようです。
川の水位もそうとう下がってきており、干ばつ状態に陥るのも時間の問題でしょう」
「……ふむ」
「一応、信頼のおける魔道士を一人雇って雨を誘発する魔法と土を健康にする魔法をかけさせましたが、ただの問題の先送りにしかなら
ないでしょう。早急に根本的な治水対策を敢行する必要があるかと」
この辺で軽く現在時までの登場キャラのまとめを。
>>205〜からの登場人物です。
■エステル=ヤーファ=レスティン(エステル)
→ヤーファ王国の第一王女。病弱。ヘイストス王国への表敬訪問に向かう構成員の形式上のトップ。
■ラクシス=ヤーファ=ラウナ(ラクシス)
→ヤーファ王国の第二王女。騎士団の軍事顧問を一手に担う剣の達人。ヘイストス王国への表敬訪問に同行。
■ミハル=ヤーファ=レティーナ(ミハル)
→ヤーファ王国の第三王女。奔放な性格の明るい娘。
■シグルド=セイダム=フランヴェルジェ(シグルド)
→代々王家に仕える名家の当主。智勇の武人で王家からの信頼も厚い。
■ダフネス=ヤーファ=ブレナスク(ダフネス)
→ヤーファ王国現国王。老齢で近年は体調を崩しぎみ。
以下、名前だけ出てきたキャラです。
■ミスト=ラーヴァブルー(ミスト)
>>217 →ミハルに仕える世話好きな侍女。
■アレク=ミランダ(アレク)
>>211 →エステル、ラクシス、ミハルに仕える近衛騎士。
シグルドは予算の収支を確認する会計報告などの事務処理も行うが、最もな得意分野は室外に出ての領地の視察だった。
もともと彼は勉学は得意だが好きではない。むしろ乗馬や運動競技をたしなむほうが気分がいいと彼は言っている。
「こちらで腕の良い測量士と労働者を選出しておきますので、彼らの履歴書も併せて提出しましょう。
それらに目を通された上で、土地の改善に向かわせる人材を選出していただければ」
「承知した。下がってよいぞ」
「は。……じゃぁミハルさま。約束の時間には遅れましたが、行きましょうか」
彼は王女に向かってひらひらと手を振ると、踵を返して歩き出した。
それが合図となったかのようにミハルは跳ねるように駆け出し、シグルドに飛びついた。
『うわっ』
『二時間遅れの罪滅ぼし、なんにしましょうか?』
『……できれば、そう値の張るものでないことを祈っております。それさえわかって下されば、もうご自由に』
『はーい』
そして、ヘイストス王国への表敬訪問、出発の日。
私は馬車の中で暖かい紅茶をすすっていた。
この車は不思議と、まったく揺れていなかった。居住空間の広さと揺れが反比例するものが馬車であると話には聞いていたが、
これは意外な感触である。
もともと私は馬車には乗らない。遠出するときはいつも馬に乗って出かけていたし、徒歩というときもあった。
何かにつけて体を動かしておかないと、次の日に体の反応が鈍くなるからだ。室内での行事や祭典が立て続けに行われる年末
年始などは特にたまったものではない。毎年その時期になると脱走したくてしかたがなくなるのだ。
不快だった。退屈だ。つまらない。その思いをまさかいま、ここで味わうことになろうとは思いもしていなかった。
「……では、次は傭兵です……」
この旅の指揮を執るシグルド=フランヴェルジェ卿の言葉も右から入って左から抜けていくかのようだ。
「そちら側の窓から見えるのが、先頭からルヴェル=ミリア。ジョス=グレバン、レイニ=バドラックです」
馬車の中身の構造はいわゆる“対面式”だそうだ。読んで文字の如く、確かにシグルド卿は私と姉上に向かい合うように座っている。
横に長い長方形のテーブルを挟むように長椅子が置かれる配置だった。テーブルにはレースが敷かれ、私たちが座っている
長椅子には凝った装飾の施された絨毯が広げられている。
「逆側にはラク=ウクラ、イーサー=ダン、ゼノンが控えます。
しんがりはアルファルト=カナリス卿が。補佐にはアレク=ミランダが就いています」
透き通るようなガラスがはめ込まれた窓から目だけ動かして外を覗くと、三人の男女が一列になって歩いているのが見えた。
先頭を歩くのは、思わず目を見張るほど美しい金髪を蓄えた長身の女性だった。波のかかった髪をうなじの辺りで一本に
まとめている。飾り気のない茶色の衣装はところどころ汚れて破け、一種の清楚さ、といったものを殺しているようにみえる。
その後ろ、列の真ん中を行くのは、肩からつま先にまで届くかといった外套を羽織る、くすんだ金髪の男だった。
彼は窓から覗く私の視線に気付いたのか、体を少しこちらに向けて片手をひらひらとこちらに振ってみせた。それを見咎めた
うしろの男が彼を小突く。くすんだ金髪の男――ジョス=グレバンはやれやれといった感じで肩を竦めると、また体を元に戻して
歩いた。
最後尾についているのは、30代後半程度の、いかつい顔をした大男だった。目尻を斬るようにつけられた刀傷が特徴的だ。
ちくちくと生やしたあご髭と、皺の寄ったバンダナのせいかも知れないが、常人では近寄りがたい雰囲気を持つ男である。
それこそ暗い夜道で出会ったら、たぶん私は悲鳴……をあげるかどうかはわからないが、とりあえず一歩後ずさる。
「後方には軍医のジョネス女医らが控える馬車もおります。有事の際は彼女らに連絡を」
「承知した」
目を返して、私は正面のフランヴェルジェ卿に視線を戻した。
「……ひとつ、お尋ねしたいことがあるのですが……?」
おずおずと小さく肘を曲げて挙手したのは、私の隣でぼーっとしていた姉上だった。
「姉上。あまり喋られてはお体が」
「外でわたしたちを守ってくださってる傭兵のかたがたには……馬は支給されないのですか?」
私の心配の言葉はやんわりと流された。
232 :
名無し物書き@推敲中?:2005/10/15(土) 18:15:00
続きマダー? チンチン
233 :
名無し物書き@推敲中?:2005/11/02(水) 18:27:16
>>◆5GHcZDkbag
この流れって
>>61と矛盾してないか?
ドーターを旅立った一行は、ヤーファの隣国ヘイストスへの入国を果たした。
しかし、そこに待ち構えていたのはダロス王の放った刺客、油気三兄弟であった!
三兄弟の卑劣な罠に嵌り、逸れ逸れになってしまった仲間達。
それは戦力を分散させようとする三兄弟の策略なのだ。
恐るべし油気三兄弟!
果たしてレバン達はミハルを守りきる事が出来るのか!?
ミハル達の運命やいかに!!!
___∧∧ 先に謝っておきます。
/\ (;゚∀゚)\ …まさか3人姉妹の間で百合の花が咲くとは思ってなかったんです。ごめんなさい。
\/| ̄∪∪ ̄|\
>>232 \|
>>1 .| もっと褒めてください。なんて……。
 ̄ ̄ ̄ ̄ でも褒められるとやる気は出るんでもっと褒めてください。
>>233 ああっ、作中の伏線を明かさないで。
ええそうです。全部フランヴェルジェ卿のせいですよ。ええもう。
彼の行動一つ一つとジョス(レバン)の動きに注目です。このプロローグは。
>>234 ……どう料理しましょうか。
――ここヤーファ王国は他国と比べると教育制度が徹底しているほうではあるが、それでも地方の
住民の中には成人でも言葉の読み書きができない人間が少なくない。
いまでこそこの教育制度が整えられていられるからよいというものの、以前のヤーファは言語の
発音の訛りのおかげで東と西ではそもそも会話が成立していなかったともいわれている。大陸の
文化の最先端を行く文化国、とはいっても末端にまでその通称が浸透しているわけではないのだ。
まして、乗馬のような貴族のたしなみ、“高級な遊び”が民間に普及しているだろうか?
「傭兵とはいえ彼らも元を辿れば民間人です。
戦闘でも通用する正当な乗馬技術はおろか、馬の背に腰を落ち着けることすら難しいでしょう。
農民が家畜として馬を飼育するのは珍しくないことですが、多くもありません。
馬を飼っているからといって乗れるとは限らないのですしね……」
と、フランヴェルジェ卿は説明した。
姉上は途中で話の要所が理解できたらしく、眠ってしまった。
卿はそんな姉上を横目で捉えると、一瞬だけ目元を緩めてみせた。
昼飯時になると馬車が止まり、一時間の休憩が取られた。
場所はまだまだヤーファ領内である。日程は姉上の体調を慮って余裕をもって編成されているので
急ぐ道中でもないのだが、長く待たされるということ。それが私にとっては少しわずらわしくもあった。
少し出てくるから姉上を見ていてくれ、とフランヴェルジェ卿に告げ、私は愛用の長剣を腰に吊るして
外に出た。
辺りは一面の草原地帯で、舗装された街道が筋のように走る以外はまさに緑一色だった。
天気は絶好の快晴。9月も半ばを過ぎ、年内ではもっとも過ごしやすい時期にすでに入っている。
馬車は街道から少し外れた脇に列にして停められていた。荷を引く馬も今ばかりはくつろいだ様子で、
だらしなく足元の雑草を食んでいる。
少し離れた広葉樹の木の根元では護衛の傭兵が好きに雑談に華を咲かせていた。
……平和だった。
「今が……」
誰にも聞こえないようにして私はそっと呟く。
「ずっと続けばいいのにな」
もちろん、退屈なのは嫌だ。身体は動かしたい。剣の訓練もそうだが、乗馬や運動競技など……。
そうやって、自身の力量の多寡に一喜一憂して、これといった争いもなく日々を過ごす。
なかなか魅力的なプランに思えた。そしていつかは、……死ぬ。
あれ、トリップ一緒だ
___∧∧
/\ (;゚∀゚)\
\/| ̄∪∪ ̄|\
>>238 \|
>>1 .| はっ!? トリップが安直すぎたのでしょうか、それともとりっぱーを回されましたかッ!?ここここ、っと。
 ̄ ̄ ̄ ̄
>>239 それは即ち、「続き書いて」→「続き読んでみたい」と拡大解釈してよろしいのでしょうか。
……よろしいんですねッ!?
>>237・続き
だが、それこそ自然の摂理である。本来あるべき人間の正しい姿なのではないだろうかと私は思う。
私は姉上ほど頭が回るわけではないのでそう難しいことはわからないのだが……そうやって生きている
自分をなんとなく頭に思い浮かべただけで、なんとなく良い気分になれる。これが幸せ、というやつか。
ちょうど日陰になっている場所に隠れるようにして馬車の裏手に回る。過ごしやすい時期となってきた、
といっても今日は陽射しが強く、少々暑い。上空でかすかに流れていくそよ風と小鳥の鳴き声が紡ぎだす
楽曲はその暑さをちょうど打ち消してくれる清涼剤となってくれている。
「ラクシス様?」
突如として私を呼ぶ声にすこしだけはっとした。
「ご休憩中ですか? もしお望みになられるなら、飲み物でもお持ちいたしますが……?」
私とつかず離れずの場所で腰を折っている中背の青年の名を私は知っている。
「いや、いい。気持ちだけありがたく受け取っておこう。顔を上げてくれ」
短い返事と共に背筋を伸ばした青年の表情は、多感な青年期に位置している年齢にはあまりふさわしくない
抑揚に欠けた平板な無表情だった。
姓をミランダ、名をアレク。私の妹、ミハルの身辺の世話役を務めてくれている若い騎士だ。
彼は生粋のヤーファ騎士ではない。彼は最近――といっても80年ほど前のことだが――ヤーファ王国から
独立した都市ソラディアの出身である。外様の正騎士だ。
ソラディア地方はかの昔はヤーファ王国の植民地であったという歴史がある。
それが……まぁ色々あってヤーファに併合され、独立した。
まぁ、そのくだりの歴史はいまはどうでもいい。
「ミハルのほうは、どうだ? また君にあらぬ八つ当たりをかけてはいないだろうか」
気になるのは、こっちだ。
ミハルの身辺の世話は彼と侍女であるミスト=ラーヴァブルーの二人がそのほとんどを交代で
受け持っている。が、生憎とミハルの“勢い”は彼ら二人がどう健闘したところで止められるものではない。
時にひとたび機嫌を悪くするとひどい。想像するだけで頭の奥のほうが痛くなってくるほどだ。
考えても頭痛がひどくなるだけなのでこれ以上は言わないが……機嫌を損ねたときのミハルを見た者は、
その外見だけの容姿とのあまりの差異に、落胆の色を隠せないという。
「今回は、なんとか。フランジェルジェ様が巧みにミハル様の機嫌をとって下さいましたので」
口調こそ丁寧そのものであるが、彼の表情にはうっすらではあるがミハルの暴挙から一時であるが解放
された心理的な開放感……すなわち、“あーやれやれ”が浮かんでいるのが見てとれる。
「ははは、その様子だとだいぶ苦労しているようだな」
「かなり」
少しおどけた表情になって肩をすくめる彼の様子がおかしくてつい声を上げてしまう。
というかトリップって#の後の8文字で決まるんですね
僕知らなくて10文字入れてて最後の2文字をやや複雑にしてたつもりだから、
トリップでググって見たらなんかたくさんヒットしたんで不思議に思ったんです。
んでちょっと、ここに書き込んでみたわけです。
続・
>>242 士官アカデミーでの養成を経て正騎士となり、王宮に勤めるようになった彼は外様で
あることを理由に貴族の子弟や直属の騎士などにはあまり受け入れられなかった。
士官学校にいた頃はそうとう陰湿な嫌がらせなどを受けていたそうだが。
反面、その深い見識と幅広い視野、細かい面に目が行き届くマメな性格は老練の重臣や騎士団長
などに高い評価を得ていたそうだ。剣の腕も確かで、一定の調子を崩さずに堅実に攻める
その戦い方は足を止めての斬り合いではアカデミーではほぼ負けなかったそうだ。
そして王宮に勤めるようになり、あるできごとをきっかけに私の妹、ミハルの周辺を守る
近衛騎士に任命され、以来、ミハルが起こすあんなことやこんなことの後始末に追われている。
彼がミハルの近衛騎士に任命されたのはおよそ一年前と、そう昔のことではない。むしろつい
最近の話である。
だが、彼の平板な無表情の裏にある苦悩と苦悩と苦悩の色はその“一年”という言葉一つでは
語りつくせないほどの……思い出があると、物語っているように見えなくもない。
245 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/06(金) 08:08:49
age
___∧∧
/\ (;゚∀゚)\
\/| ̄∪∪ ̄|\ 自分以外の書き込みがあるとやる気が上昇してスレが伸びます。「age」でも。です、うふふ。
\|
>>1 .|
 ̄ ̄ ̄ ̄
>>246 太陽板のカチュアスレは数度見たことがあるのですが、果たして自分は何をすればいいやら。
右も左もわからぬおっぺけぺーがすぐに参加しても悪いのでしばらくの間見学させていただきましょうか。
そちらのスレにこのトリップを持つ人間が現れたら、そのときはよろしくお願いします。
続・
>>244 一国に仕える騎士であるという立場上、彼自身も戦闘訓練や王宮の警護などの雑務が山のように
その両肩にのしかかっているハズなのだが。この雑務に加えてあの奔放な妹の付き添いまで務める
となると、常人なら一ヶ月ほどで音をあげてしまうことだろう。事実、そうして肉体的、精神的苦痛に
参って倒れていった騎士は数え上げていくとキリがない。
この状況を改善しようにも父上は誰よりもミハルを愛して止まらず、叱りつけることをしない。
まして他人の言うことをまるで聞かないミハル本人の悪性もあって、もうすぐ成人を迎えるというのに
彼女はまるで10とちょっとの少女のような気質である。そろそろ私の周りの人間もこの事態を重く見始めて
いるようだが、父上の溺愛のしようがあまりにも激しくて表立って事を表面化することができない。
「あのお方を更正させることのできる人間が現れたら、私は無条件でその人間を尊敬いたしますよ」
私も同じ気持ちである。
「まぁ、せめてこの旅の間だけは羽を伸ばすといい。休暇の旅行と思ってくつろいでくれていいぞ」
「ありがたきお言葉」
丁寧に一礼すると、アレクは自らの仕事場に戻っていった。近衛騎士といえども下士官には違いない
彼には、馬の世話や付近の哨戒などの仕事が山のようにあるのだろう。
――今度、姉上にもう一度頼んでおかねばな。まったく、出来の悪い妹で申し訳ない。
今回の目的地、ヘイストス王国へは約三週間の道のりだった。
旅は順調で、10日目には全行程の半分を踏破することができた。
入り口の税関を恙無く通り抜けた先は、大陸の中央部に位置する世界最大の貿易都市であり無統治国家。
自由都市ドーターであった。
「ちょっとマズいことになりましてね」
そういって円卓に地図を広げたのは傭兵であり、腕利きの魔道士のジョス=グレバンだった。
少しくすんだ金髪と碧眼を持つ整った顔立ちの青年である。魔法使い特有の陰気臭さは彼にはなく、
どこか人好きのする雰囲気を持つ男だ。それと同時に、当たり障りのなさそうないい加減な感じも存在している。
「フランヴェルジェ卿の指示によりちょっと先を見てきたんですけどね。
ドーターとヘイストス王国の国境となっている川が……そう、ここです。ここが連日、ヘイストス地方で
降り続いている雨により決壊してしまったらしく。現在、ドーターの自警団により一帯が封鎖されてしまっている
らしく、一切の通行は許されない……と」
ドーターに入ってすぐに位置していた宿の最上階の一室である。私たちが宿泊する施設は別の場所にある
のだが、何かあったときのためにと作戦本部として借りている部屋だ。
「川の水が市内に入ってくることは有り得ないとのことですが、氾濫が止まるのに数日かかるとのことで……。
現在、当局が総力を上げて被害の防止に努めているそうです。しばらくの足止め、ですね」
250 :
名無し物書き@推敲中?:2006/01/15(日) 19:15:49
余計な混乱を招くことのないよう、この旅に随伴する者たちはそれぞれで別の宿を取ることになっている。
いきなりヤーファ王国の王女が大所帯でおしかけたとあっては大きな騒ぎとなる。まずないとは思うが、
その混乱に乗じてヤーファをよく思わない人間が刺し違える覚悟で向かってこないとも限らない、のだそうだ。
特にここは王国制度を取っているわけでもなく、自警団はあっても自治体はない無統治国家である。
さまざまな思想を、それぞれの価値観を持って是とする人間の集まる自由都市である。
そういった彼らを刺激しないようにとの措置であった。私とアレク、それに傭兵のゼノンがドーター中央部の
商店街の一角にある宿。エステルとフランヴェルジェ卿、傭兵のジョス=グレバンが閑静な住宅街の外れにある
小さな民宿。あとはてんでばらばらといった感じだ。王族には最低限の護衛をつけるらしい。当然か。
私たちがいるこの部屋は、何かあったときのためにとフランヴェルジェ卿が借りた高級宿の最上階の一室だ。
なにか急を要するような事態が起きた際などに、と彼は言っていたが……。なるほど、役に立ってくれた。
滞在2日目にして早くもここの世話になるとは思っていなかったが。
「まぁ、天災に遭ったと思ってあきらめたほうがいいんじゃないでしょうかねぇ。事実、天災に遭ったわけですし」
傭兵のレイニ=バドラックはやれやれと肩をすくめて入り口のドアのノブに手をかけた。
「消耗品の補給などが必要なら、ちゃっちゃと済ませておくことをおすすめしますよ」
「バドラック。まだ会議は終わってないんだけど?」
「いらねェ」
ジョスの引き止めの言葉を軽く一蹴すると、彼はそのまま出て行ってしまった。
過去編長過ぎ。
ちゃんとこのスレ内で完結するの?
___∧∧
/\ (;゚∀゚)\ 後先考えられない人間って、自滅しますよね。そう、このスレの
>>1とか……。
\/| ̄∪∪ ̄|\
\|
>>1 .|
>>252  ̄ ̄ ̄ ̄ 過去編というか、完全にこっちがメインになってしまってますね。申し訳ないです。
まぁ、当時の何も考えてなかったおっぺけぺーなプータローの頃、ちゃんと覚えて反省してますよと。
世界観とか、時代背景とか、そういったものをきっちりと確立するためのプロローグということで。
要するに、本編でそれらを語りきることのできないダメ物書きの逃げ口上という……以下略。
スレ内完結は…… 無理かと。
続・
>>251 「ちょっ、バド!? お話はまだ終わってませんよ!」
「うるせェ、お前は俺のおふくろか!」
「……あら、つれないお言葉」
さすがに扉の向こうのバドラックには呟くようにして言ったその台詞は聞こえなかったようだ。あるいは、
ジョスの軽口にある程度本気で腹を立てたか。恵まれすぎと言っても過言ではない彼の体格と悪人面は
まったく、私の予想を裏切らなかった。
そしてその予想が確信へと変わったとき、彼に対する明確な嫌悪感があらわになるのを感じる。
……短気な人間は、嫌いなのだ。
「まぁ別に、大したことではないのですがね。
どうせこの街にある程度の期間滞在するのですから、要りようになる消耗品などは買い込んでおかないと。
あとは、精神的疲労に負けないだけの鋭気を養っていただいて。改めて申し上げるまでもないことかと存じますが」
「質問いいかな? 魔道士ジョス=グレバンくん」
ジョスの説明割って入ってきたのはフランヴェルジェ卿だ。
目の前に私がいるからだろうか、彼はずっと椅子に腰を下ろしもせず、直立不動の体勢を始終保っていた。
そんな彼をなんとなしに視界の端で捉えた、その瞬間。私の背中を、ぞくりとなにかが駆け抜けた。
彼の、ジョスを見る目が。
目。目が、瞳だけが。
違うのだ。
どこがどう違うのかはわからない。私以外の第三者からすれば、私のほうがおかしいのかも知れない。
足が萎えてくるのを心の中で叱咤激励してなんとか踏みとどまる。
射抜かれるような視線、というわけではない。冷え切った一瞥などでもない。殺気なども微塵も感じられない。
しかし、何か……。身体の内側から揺さぶられているかのような、この感覚はなんだ?
これまで何回も剣による試合を重ねてきた。時には、命に関わるくらいの致命的なケガをした時もあった。
その時、自分はこんなに震えていたか?
自分の何倍もあろうかという戦士と対峙したことだってある。
その時、自分はここまで怯えていただろうか?
彼の、シグルド=フランヴェルジェの、瞳。髪と同じ緑色。冬に打ち勝つ、春の色。
見る者に安らぎさえ感じさせるその色……。今は、とてもそうは思えない。
見たくない。でもなぜか、身体が動かない。何か見えない布で全身を巻かれているかのように、足の指先
から首関節までが、まるで反応してくれないのだ。まるで自分が、別の生物になってしまったような。
なのに、膝が笑い出す。なにかがカチカチと鳴っているのが聞こえる。その音が自身の歯が噛みあう音で
あると悟るのに一秒もの時間を要した。
「……うぁ」
ふっと、全身から力が抜けた。視界が白く染まる。一瞬の刹那に現実とそうでない場所との境界が
曖昧になって。しかし同時に、心地良くもあった。
そんな中で、このまま倒れたら、床に頭を打ち付けることになる、と考えた。痛そうだ。
打ち所しだいでは記憶の一つや二つは飛ぶかも知れない。
そんなことを考えながら、せめてその衝撃に備えようと意識だけは五感すべてを総動員して。
しかし、その衝突は――来なかった。
>>◆KKI0EmBLeM
そもそも完結までの大筋は把握してる?
257 :
名無し物書き@推敲中?:2006/04/13(木) 12:54:43
ほう
flkd;gf
twtle:
ert;:ert;wert;
]ter;lwe:trlwe:
wetelt:45456
259 :
◆Iib/K.IbhY :2006/07/09(日) 20:47:43
a
260 :
名無し物書き@推敲中?:2006/09/08(金) 19:26:49
残飯
261 :
名無し物書き@推敲中?:2006/09/25(月) 08:44:49
アスペルガー残飯、諦めて働け。おまえに小説は無理だって。
262 :
名無し物書き@推敲中?:2006/11/15(水) 07:08:08
このスレ乗っ取っても良い?
>262
プレゼンしてみれ
264 :
名無し物書き@推敲中?:2006/11/20(月) 04:06:14
265 :
名無し物書き@推敲中?:2006/12/08(金) 14:26:25
オレルアンの弓騎士ザガロ様が265ゲットだ!!
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄.| ラ
>>1アン トロトロ歩いてんじゃねーよ(w
| | ̄| |
>>2−ナ ユニットでもねぇくせに出しゃばんな(w
| | ̄ ̄ ̄ ̄ | |
>>3シェイル 盾が無かったら一撃でお陀仏だな(w
| | お | |
>>4−ダ ヘタレ王子と一生いちゃついてろよ(ゲラ
| | 好 | ┥
>>5−ドン 弟と一緒に最後衛でくたばってな(w
| | み | | カシ
>>6 母が病気? 病気なのはテメェだろ(プ
| | 醤 | |
>>7バール ロンゲうざい、切れ
| | 油 | | ミネル
>>8 飛行ユニットは全部俺の経験値だな(ワラ
| | | | ビラ
>>9 一緒にがんばろうぜ
| |_____| |
>>10−マス ぶっちゃけお前俺のパクりだろ(w
|_______.|
じゃあこれから俺がつくった直木賞受賞作を発表していくことにする場にしようかと思う。
>>266 紋章騎士団を日本文学の最前線にデビューさせるんだね。すごいっ!!