この三語で書け! 即興文ものスレ 第十層

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401SHOT CALLER ◆wxZnFKjdnU
ここ三四年、毎年この時期になると一週間は風邪で寝込むが、
今年はそれ程寒くないように思え、まだその兆しすらない。
確かに肉付きは良くなったが、それも僅かなものである。
また、洋服は五年も買っていないので、厚着になった訳でもない。
と、ここで一本のマフラーを思い出した。
二月程前の粉雪の舞う朝、家内が新聞を取りに行こうと玄関の戸を開けると、
私の名が書かれた箱が置いてあり、その中にこのマフラーが入っていたという。
差出人も分からないので、家内は気味悪がって捨てようとしたが、
私は面白がって使わせてもらうことにした。
それからだ、私の体が丈夫にな---

止める家内、マフラー、笑う私、灰神楽、叫び声、人の顔、口の中


次のお題は『料理』『暖房』『消費者金融』でどうぞ!
「なんもねえ部屋だな」
 南郷は畳と布団しかない部屋の中心で、どっかとあぐらをかいていた。
「おう。裁判所に差し押さえられた。執行吏ってそこらの消費者金融と変わらんくらいえげつないぞ」
「銀行の借金無理矢理負けさせる方がえげつないわ」
「そうか?がはははっ」
「笑ってる場合かよ…」
 俺は室内を見渡した。
「お前、暖房器具も差し押さえられのか?冬死ぬぞ」
「ああ、そりゃ心配いらん」
 どっこいしょ、と腰を上げる南郷。
「ガスコンロはそのままだ。大家の持ち物だからな。料理するときついでにあったまれば問題なし」
 俺は頭を抱えた。
「お前、ガス料金も滞納してたろ。止まるぞ」
「あ…」

次のお題は「みかん」「ロケット」「七転八倒」でどうぞ。
403ルゥ ◆1twshhDf4c :02/12/26 01:08
「みかん」「ロケット」「七転八倒」

「――寒い」
私は一人で騒いでいる目覚まし時計を放置したまま、羽毛布団を頭まで被る。
柔らかい布団を頬擦りすると、ほんのり温くて気持ちがいい。
「春眠暁を覚えず」という孟浩然の漢詩のように、春は眠気に負けて布団から出られないことも多いが、冬は寒すぎて布団を出るのが苦痛だった。
特に夏が大好きで、人一倍寒がりの私にとっては。
しかし、時計は時を刻むのをやめない。
いったんは静かになった目覚まし君だったが、二度寝防止のベルが無常にも通学の時刻を告げた。
待ち合わせをしている彼の怒った顔が頭の中をよぎる。
観念した私は、発射したロケットのように一直線にこたつまでとんで行った。
こたつの上にはみかんジュース――決してオレンジではなく――と少しだけ食パンがぱさぱさしている卵サンドが乗っている。
こたつに潜り込んだまま台所を覗いてみたが、どうやら母親はもう仕事に出かけたらしい。
かぎっ子歴十六年、さすがに一人で朝食を食べるのは慣れてしまったが、もさもさしたサンドウィッチを飲み込みながら、少しだけ切なくなった。
朝食後、私はいつものようにリモコンでテレビをつけ、いつものように「めざましテレビ」を見る……はずだった。
ところが驚いたことに、「とくダネ!」をやっているではないか!
慌てて自室に飛んでいき、目覚まし時計を手に取ると短針は確かに八を指していた。
じっと時計盤を凝視すると、設定時間を間違っている……。
頭を抱え込みたい衝動に駆られたが、そんなことをしている暇は残されていない。
通学カバンを掴み、居間を出ようとした。
その時、鋭い痛みが足の指先から全身を駆け抜ける。
「――っ」
七転八倒という言葉が似合うだろうか。
私は右足の小指を握り、床を転げまわるのを必死でこらえながら、形容しがたい痛みを堪えていた。
「……遅刻する」
まだ目の端に少しだけ涙を浮かべたまま、何とか玄関にたどり着いた。
今日は最悪な朝だったなぁ……。

☆次は「急須」「五千円札」「蟹鍋」でお願いします。
 朝、急須のふたが落っこちて欠けた。漠然とした不安を感じたが、だからと言って外出を止める気はさらさらなかった。
 今日はツレ二人と蟹鍋を食いに行く約束になっているのだ。
 カニ!蟹ですよお客さん。占いで死ぬと言われても出かけたろう。それが漢の心意気というものだ。
 ツレ二人は十分も前から、待ち合わせ場所で寒風にさらされていた。二十四時間物食ってません、そんな顔をしていた。
 それは俺も同じだ。お一人様三千円で三十分間無制限の蟹鍋バイキング、存分に味わわなくては蟹に失礼。
 三人が揃った途端、俺たちは突撃を敢行した。武田の騎馬軍団もかくやという勢いで。
 そして、食って食って食いまくった。カニを食うときは無口になると言うが、今日はそれにもまして無口だった。言葉なんぞなしで、
テレパスのような阿吽の呼吸で、俺たちはカニをキチン質の外殻に変えていった。
 そして、悲劇は起こった。
「あ〜…お客さん、十二分の超過ですね。超過料金込みで、一万八千九百円頂きます」
 判決、死刑。そう言われたも同然だった。一人あたま六千円。貧乏学生にはかなり厳しい数字だった。
 ツレその一が財布をはたいた。五千円。ツレその二が財布をはたく。やはり五千円。
 すがるような視線二つと鋭く咎めるような視線一つを浴びつつ、俺はそっと財布を開けた。
 千円札、二枚。五千円札、一枚。そして、
「オウ、シット」
 それだけだった。
 俺たちは皿を洗った。

 次のお題は「卒塔婆」「梅酒」「人口密度」で。
405リバティ:02/12/27 23:10
「卒塔婆の消費量は、人口密度に比例する」
 水割りのグラスを片手に明弘は言った。
「何でだ」
「墓石の材料が不足して割高になるからさ。地価も上がるから、一家族の墓地の面積も少なくなる」
「それはそうかもしれないが、比例はしないだろう」
 おれはビスタチオの皮を剥いた。
「人口密度の単位は何だ。おれは、そういういい加減な経済論が嫌いでね」
「悪いな、葬儀屋も不景気でね。何かに責任転嫁したいのさ」
 明弘はマルボロに火をつけた。
「会社の経営なんてどうでもいい。お前が道楽を慎めばいいことだ。それより、奥さんのぐあいはどうだ」
「あいかわらずだ。狭心症の発作もだいたい二月ごと。死なない程度に酒におぼれてるよ」
「まるで死んだほうがいいみたいだな」
「そんなことはない。……いや、そうかもしれない」
 明弘はゆっくりと煙を吐いた。
「和美とはもう別れたのか」
「ああ、女房のことを話してから、一度もメールが来ない」
「いい女だったな」
「全く、おれなんかが付き合えたのが奇跡みたいなもんだ」
 おれが振り向くと、ボックスの若いカップルの女のほうが、いい具合に梅酒に酔っ払っていた。

 次は、「プルトップ」「老眼鏡」「キックボード」にしてください。
406うはう ◆8eErA24CiY :03/01/03 01:31
「プルトップ」「老眼鏡」「キックボード」

 「プルトップを採用すべきではなかった」老司令官は、思わず叫んだ。
 とはいえ、<水鳥を保護するためにプルトップを>などという悠長な
時代を知っているのは、部隊ではもはや彼だけだった。

 前方に、無数の武装水鳥が映し出される。
 大進化を遂げた水鳥に、絶滅寸前の人類…彼は老眼鏡を外し、涙を拭う。
 「世界的規格化」という本音を隠すため、「水鳥の保護」などという世論
をでっちあげ、強者生存という自然の掟を破った結果がこれだった。
 不純な動機のバランスを欠いた「保護」は、冷徹な結果を導き出した。

 「そうだ…」彼はぼんやり呟いた。
 「かつて超好景気に沸いた某国が<働くのは悪だ>と手を緩めた時があったっけ」

 彼は、その某国がその後どうなったかを思い出していた。
 経済拠点における足がかり、キックボードを失い、再建に苦しんだあの時代を。
 某国はなんとか立ち直った。しかし人類はどうだろうか。
 彼は自信がなかった。
 彼は水鳥が好きだった。

※キックボードが…くるしいよー(^^;
次のお題は:「リボン」「ジュース」「遅刻」でお願いします。
407「リボン」「ジュース」「遅刻」:03/01/03 02:14
デートの待ち合わせの時間に20分遅刻した場合、相手に対するお詫びは何が妥当であるか?
非常に難しい命題であるかとは思うが、僕の頭が出した結論は『ジュース一本で十分』であった。
「ケチな貴方らしい答えだわ」
遅刻した理由と、簡単なお詫びの言葉。
それと僕が差し出した缶ジュースを受け取った彼女は、淡々とそう言った。
「まるで『誠意が足りない』とでも言いたげだね」
「まさしくその通りよ」
これが、駅から待ち合わせ場所まで全力疾走した恋人に対して言う言葉であろうか。
「その缶ジュースにリボンでも付けてたら、満足してくれた?」
「絶対しない」
金属音と一緒にプルタブが起こされ、むくれっ放しの顔がジュースを飲み干していく。
「……ひょっとして、ただの缶ジュースじゃなくて、1.5リットルのペットボトルだったら許してくれた?」
「許すどころか、そのペットボトルで貴方を撲殺してやるわ」
── はやり、少なくとも缶ジュースを選んだ僕の判断は賢明だったようだ。


次は、「コピー用紙」・「ガム」・「空」でお願いします。
日記

午前。
6時半に起きた。7時5分に家を出た。駅まで歩いていったが、なんてことだ、いつも通る道が工事中だった。
道の真ん中にドデカイ穴が開いてやがった。もうね、阿呆かと、馬鹿かと(ry回り道をして、電車に乗り遅れ
た。一本どころか二本遅れた。電車を待ちながら、駅のホームから空を見上げた。冬晴れの空だ。俺は何を
やっているんだろうと、ふと思った。

午後(前半)。
遅刻した。今日は係長が欠勤してやがった。おかげで課長に怒られた。あのオッサンは実に実に几帳面な男だ。
怒り方まで几帳面である。きっちり、ばっちり、ねっちり怒る。課長の口からはミントの匂いがした。大変不愉快
であった。鬱。

4時ごろに見積もりが終わった。喫煙室で『晩年』を読む。『葉』は何回読んでもおもしろい。課長に
見つかって怒られる。やることを探す。女の子に「コーヒーをいれてくれますか」と頼まれ、請合う。
塩と砂糖をまちがえてみる。彼女はコーヒーをふきだした。机上のコピー用紙10枚が無駄になった。

午後(後半)
5時になったので帰る。駅のホームから空を見上げた。夕焼けが沈みかけていた。俺は何をやってい
るんだろうと、また思った。電車は満員だった。帰り際に尻を触られた。恥女かと思ったら、後ろか
らはミントの香りが漂ってきた。課長だった。「いや、私は何もやってないよ」と聞いてもいないの
に言われた。激しく狼狽していた。趣味なのだろう。
「そういう趣味なんですか?」と聞いた。
俺が下車するときに、課長は1万円を渡してきた。

明日まで生きていようと思った。


次は「男」「女」「賭博」で
409「男」「女」「賭博」:03/01/03 11:02
『賭博場で出会った男女の仲は長続きしない』
これが俺の長いヤクザ生活を経て得た教訓の一つだ。
しかし、男という奴は良い女を前にすれば、そんな教訓なんぞ何の意味も成さない。
今俺が付き合っている恵子もそうだ。どこからどう見てもカタギの女だが、
何故かヤクザ連中が集まる賭場で出会った。しかも、競馬やパチンコ好きとかならともかく、
丁半賭博が一番好きだと言うのだから、世の中よく分からない。
こっちには結婚する気なんぞ毛頭ないが、それでも甲斐甲斐しく毎日メシなんぞ作って、
俺の世話を焼いてくれる。
「ねぇダーリン、今日は右と左どっちが良い?」
ガスレンジの上には二つの鍋。
「……えっと、右」
「きゃっ、凄いダーリン! 正解よ!! 今日の夕食はポトフです」
── 右が『正解』と言うのなら、鍋蓋の隙間から白い煙が出ている左の鍋の中身は何だったのだろうか?
「ねぇ、ダーリン」
恵子の博打好きはベッドの上でも続く。
「今日はゴム無しでしても良いよ」
「そうか」
簡単にそう答えるが、やはり男はセックスにコンドームなんぞ使いたくない。
「さて、問題。今日の私は、危険日でしょうか? それとも大丈夫な日でしょうか?」
── どうも、賭博場で出会った男女の仲は長続きしないという俺の教訓は、やはり間違っていないようだ。



官能系はダメですけど、この位なら良いですよね?(;´Д`)
次のお題は、「プロジェクト」・「用語」・「ドライヤー」でお願いします。
410「プロジェクト」・「用語」・「ドライヤー」:03/01/03 19:02
 プロジェクト自体、どこかおかしかった。あたしは回りをよおく、観察した。
 寝袋はザラだ。ドライヤーを持ち込んでいるものもいた。
 その横には洗面器と、それに掛けられているのはタオル。まだ湿っている。いわゆる、修羅場、という状態らしい。
「もう一週間帰ってないよ」
 そう言う不精髭の顔に、どこか自慢気な笑いがあった。
「お風呂に入ったらどうですか? 空気に味がしますよ?」
 それですら、彼にとっては得意なことらしい。
「そう? もうね、ツラくてさー」
 そう。このプロジェクトはどこか、おかしい。私には何がとどこおっているのか、それすらわからなかった。
「弓削さん、ちょっといい?」
 あたしはプロジェクトリーダーに呼ばれて、会議室に入った。
「内のプロジェクトに入って、どう? もう慣れた?」
 ニヤニヤと、プロジェクトリーダーは私に尋ねた。
「慣れたっていうか。説明書の用語集を作るだけのプロジェクトでしょ? 完璧主義なのはわかりますけど、でもあたし、何も進んでない気がするんですよ」
 プロジェクトリーダーは、まだにやにやしていた。
「リストラ組がさ、会社に復讐する方法って、どういうのか、わかる?」
 プロジェクトリーダーの目は完全に、仲間を見る目つきだった。

次は「路地」「カルシウム」「ローション」で。
411「路地」「カルシウム」「ローション」:03/01/03 22:18
 夜のことである。夜といってもまだ商店街は、照明がついていた。
彼はその商店街から、幾つも横に伸びている路地の中から、一番細く、
暗い道に入っていった。
 黒い帽子に、黒いコートの中には黒いスーツ、夜にも関わらずサングラスを
掛けている。
 電灯はない小路に入った彼は、唯一の灯りといえる自動販売機の前に立ち、
何やら腕を組んで考えているらしい。サングラスの奥には悩ましげな目がある。
自販機に照らされた彼の顔に浮かぶのは迷いであった。眉間に皺を寄せ、下唇を
忙しく噛んでいる。乾燥しているのだろうか。
 自動販売機に売っているものを知らせておこう。一つは、北海道直送の新鮮な牛乳で、
もう一つは、これまたほっかいどうの牛乳を原料にしたローションだった。
そのどちらにするのかで彼は悩んでいたのだ。
 寒風に吹かれながら悩み通した末、選んだのは牛乳だった。後で聞いてみると、
「俺、乾燥肌でローションも捨てがたかったんだけど、やっぱり骨粗鬆症が心配で、
カルシウムを取るために牛乳にしたんだ。しかし、あの寒い夜に、冷たい牛乳はきついね」
と何故か自慢げに、眉毛を動かしながら話していた。
「正月」「もち」「カルビ」
412うはう ◆8eErA24CiY :03/01/03 23:14
「正月」「もち」「カルビ」

 「フッフッフ、お目覚めかね?」
 怪しい声に目を醒ますと、そこは巨大な手術室だった。
 「気の毒だが、君ら兄妹がお屠蘇で眠っている間、改造手術を施させてもらった」
 「えっ!」と起き上がり、鏡を見て彼は初めて気がついた。
 背中に装備された「門松ランチャー」。紅白にペイントされた人工皮膚…

 「これで君は栄誉ある<正月連盟>の一員だ!」首領らしき老人が言った。
 「ひ…ひどいわっ!」
 「振袖型人造皮膚」を導入された妹が半泣きで叫んだが、後の祭りである。

 正月マンとしての生活は、実際苦しいものだった。
 2月になれば来年まで用無し…もちエネルギーの確保も、夏になると面倒だろう。
 そんな時だ、首領がカルビをたらふく食べているのを見つけたのは。

 「裏切り首領め。正月連盟は、一月以外は外出禁止と定められているはず!」
 しかし首領は不敵な笑顔を浮かべ、こう言った。
 「人違いではないかね?」彼は続けた。
 「ここは韓国料理店で今は2月…そう、我々は<旧正月連盟>だ!」

※正月にカルビを食べてる人はどうなる!?
次のお題は:「門松」「メイド」「フィラメント」でお願いします。
413名無し物書き@推敲中?:03/01/03 23:45
 俺様の脳内フィラメント線がブチギレしたときは、常にTをいじめる
ことにしている。正月だというのに受験を控えていて俺様もついにブチギレ。
早速Tの家に電話した
 「やい、T!」
 「は、はい。あけましておめでとうございますです」
 「お前、今から高円寺の駅へ来い!いじめてやるからよ。」
 「で、でも、今日は親戚の家へいくことになっています。」
 「バカ野郎!こないと殺してやるぞ!」
 
 Tは俺様のメイドのようなもの。チンポに精液がたまった時は
ケツの穴に俺のモノをぶち込む。俺様は玄関の門松を見ながら、今日は
Tのチンポを日であぶろうと考えた。
 お題は継承。

「正月連盟出動せよ…正月連盟、出動せよ…」
 なんだよ、三が日はもう過ぎたってのに。鏡開きまでまったりするつもりだった俺は、
早々にしまい込んだ紋付きアーマーを引っぱり出す羽目になった。隣の妹は衣紋掛け
に振り袖アーマーを掛けっぱなしにしていたので、俺ほどぶつぶつは言っていない。
 アーマーをまとい、正月兵器を装着する。俺は門松ランチャー、妹はヒート注連縄ロッド。
「正月マン、ここに見参…したのにキサマは何をやってる」
 首領はこたつに電気七輪を乗っけて、餅を焼いていた。
「うむ諸君、ご苦労。正月が開けたばかりだというのに、メイド連合の侵攻が開始された」
「…はあ」
「彼奴らはエプロンスカートで世界を洗脳し、美しき民族衣装を絶滅せんとする悪の集団だ。
来月韓国でチマチョゴリ相手の一大決戦を行うと聞くが、我々も和服の守護者。前哨戦と舐
められるつもりは毛頭ない。完膚無きまでに根絶せよ」
 アホか。
「ま、いっすよ、なんでも。ぶちのめしゃいいんでしょ」
「そのとおりだ。では正月連盟、出動…の前に」
「なんすか?」
「七輪のフィラメントが切れた。急いで替えを持ってきてくれ。速くしないと冷えて固まる」
「餅喉に詰めて死んでしまえ」

  次のお題は「ニッケル」「プロペラ」「ビニール袋」で。
一昔前、いやもう随分昔かもしれないが、風船に花の種と手紙を添えて
飛ばすというのが流行った時期があった。
割れた風船がもたらす害などが論じられやがてその流行は消えて
いったが、いま自分のいるこの部屋ではそんな害を無視して
その風船飛ばしの準備が着々と進められていた。
ただ、添えられているのは花の種などという洒落たものではない。
小さなビニール袋にはちきれんばかりに詰め込まれているのは、ニッケルのペレットである。
角が無いとはいえ金属であるから、破れないようにビニール袋は二重だ。
「仕事仲間」が箱一杯のプラスチックのプロペラを持ってきた。
幾らヘリウム風船に結わえ付けるといっても、機械の推進力抜きでは
この重さは飛ばせない。自分とそいつは小さなモーター付きのプロペラを
風船の結び目に取り付け始めた。
ちなみにこのニッケル、何のためにどこに送るかというと、
偽造硬貨の原料として某国に送るらしい。
馬鹿か。モーター付き風船が海なんか越えるかよ。
自分は心の中でいつもこう呟いていて、でも、結局次の日も仕事に来てしまうのだ。

次は「ゲーセン」「ココア」「仕事始め」でお願いします。
416名無し物書き@推敲中?:03/01/06 14:18
まあ正月も4日を過ぎたので仕事始めなわけだが、はっきり言ってだるい。
別にはっきり言わなくても俺の物腰からはダルサがにじみ出ていると思う。
出勤するとき銀行のエントランスのガラスに映った俺は今にも自殺しそうな中年に見えた。
とはいえ正月からそんなに仕事があるわけではないのが唯一の救い。
俺のような落ちこぼれは得意先への年始周りも連れて行ってもらえないしな。
なんか4時くらいに「おまえもう帰っていいよ」とか言われて帰った。
駅前のゲーセンで少し遊んだ後、その向いの喫茶店でコーヒーを飲んだ。
ビルの2階にある喫茶店で壁はガラス張り、道を見下ろせる席に座っていた。
後ろの席に座っている女に声をかけてみた。年上、30くらいで主婦らしい。
茶髪で化粧が濃かったが、ココアのカップを両手で飲んでいたのが可愛らしかった。
軽くしゃべって、お互いが退屈していること、性格がにていることがわかった。
彼女は、恋をしなければ退屈でやってられない、と言った。
俺は、まったくです、と言った。彼女は魅力的だった。
どうでもいい退屈とどうでもいい興奮の間をさまよえるくらいには。
興奮だけとか退屈だけとか、純粋なものの味を欲してもいいくらいには。
それで「これから暇ですか?」と聞いてみた。
すると彼女はクスクス笑いながら、「さあ」と首をかしげて、足を組みなおした。
少し背を伸ばし、胸を張った。私はきれいでしょう、と言わんばかりに。

尻切れトンボだけど。次は「雪」「植木鉢」「一番乗り」で。
 七十五階の窓枠に手を掛けたところで、俺はそれに気付いた。
「ち、雪か」
 つい毒づく。へたに降りだせば手が滑るどころではすまない。とっととこのクライムを終了させないと−
 ひゅんっ!
 俺の右肩からわずか十数センチのところを、何かが落下していった。
「植っ…!?」
 俺は肩越しに下界を見下ろした。確認は一瞬だが間違いない。あれは植木鉢だ。ゴムの木が植わった。
 なんで植木鉢が!?俺は天上界に目をやった。
 ここからおよそ十階ほど上にそいつがいた。
 そいつはベゴニアらしき鉢植えを両手で頭上に抱え上げ、哄笑していた。
『このビル、このビルだけは一番乗りを阻止してやるぜぇ!』
 聞こえた声にぴんとくるものがあった。
 アイツはこの間負かした、三流クライマー!
『ウンコの借りは返させて貰うぜぇ〜、モナム〜ゥ?』
 野郎、ナメやがって。A級クライマーの本領、見せてやろうじゃないか。
「てめえすぐぶん殴ってやるからそこで待ってろ!」
 吹雪き始めた天候も、もう俺を阻めない。俺は猛然とクライムを再開した。

  次のお題は「目薬」「カレンダー」「西遊記」で。
418山崎渉:03/01/06 15:58
(^^) 
419 ◆ra0S/YG2ds :03/01/07 05:37
「目薬」「カレンダー」「西遊記」

  去年のカレンダーを片付けようとして延ばした指が、
29日のところで止まった。なにか書いてある。親指の
隅から、「桜木町駅3時」と文字がのぞいている。

  ──いいんだ、もう。

  指の裏には彼女の名前が書いてある。その日3時
に来るはずだった、そのひとの名前が。ふと零れた涙
が悔しくて、(これは、目薬だ)と強がる。
「恋に疲れると、天使が差してくれます……なんてね」
  と独り言をいって、新しいカレンダーを手に取った。
日付欄を切り取れば、西遊記で三蔵を演じた女優のポスターにもなる。
新年明けて7日も経つというのに、僕の心は去年で止まったままだ。


なんにも考えずに軽く わたせ せいぞう っぽく書いてみますた。
次は「紫」「桐」「地平線」でお願いします。
420名無し物書き@推敲中?:03/01/07 18:12
あげ
421うはう ◆8eErA24CiY :03/01/07 22:44
「紫」「桐」「地平線」

 丁重に渡された桐箱には一本の書が入っていた。
 一行目に、摂政の達筆でこうあった。「官位十二階」
 「これは!?」読んで馬子は驚愕した。
 人が素性に拠らず実力で十二段階に評価され、冠の色に表される制度…
 それは当時の常識と比べ、余りにも大胆なものだった。

 「昨年から実施されている制度です、いかがでしょうか?」聖徳太子は訊いた。 
 「こ、これは…」馬子は言葉を飲み込んだ。「まことに素晴らしいこと」

 が、馬子はこの素晴らしい制度を、どうしても受け入れられない。 
 結局は、権力者が「能力の評価」を行うのではないか?
 地平線の向こうには、今と変わらぬ利権社会があるだけではないか?
 どす黒い疑惑ばかりが、頭の中をグルグル回っていた。

 「この世で最も賢明で、正しい者だけに」太子は続けた。
 「冠位十二階の頂点の、紫色の冠が許されます」
 そう言われても、どうしても楽観的になれない馬子だった。

 太子の頭には、紫色の冠が載っていた。
 
※昔読んだ学習マンガを連想してしまったー
次のお題は:「草原」「溶鉱炉」「ワンピース」でお願いします。
422「草原」「溶鉱炉」「ワンピース」:03/01/08 00:36
こんな夢を見た。
夕方の草原に少年が立っていた。
だが、夕方という言葉で連想される柔らかな情景ではなかった。
溶鉱炉で液体状になるまで熱せられた鉄が帯びるような、白みがかった赤色。そんな色の空の下、少年は背を伸ばして前を見つめていた。汚れた野球帽
赤と黒の縞模様の野球帽に、袖無しの白いシャツと半ズボンの小学3年生くらいの男の子。その子が待っているのは、白いワンピースを着た、同じ歳の女の子。
「あの子はこないんじゃないかな」
男の子の隣に立って、私は言った。
「かもしれない。でも、僕は待っていなくちゃいけないんだ」
「どうしてだい」
「だって、僕がいなかったら、あの子が悲しむから」
「こんなところで一人でいて、寂しくないかい?」
「寂しいよ。でも、僕がいなかったら、あの子はもっともっと寂しくなるから」
「じゃあ、私も一緒に待っていてあげるよ」
「だめだよ、おじさんは待っている人がいるんだから」
 少年は微笑んだ。その邪気のない表情につられ、私も笑みを浮かべた。
「君が待っている女の子、はやく来るといいね」
私はそう呟いて、少年から離れていった。
草原から岩場へと続く境目にたどり着き、少年が私の視界から外れる瞬間、少年の隣に髪の長い人影が見えた。
その瞬間に目が覚めた。

次のお題「保健医」「化学実験」「胡蝶」でお願いします。
 僕はよく、夢を見る。胡蝶になる夢、橋から吊されるところで縄が切れて必死の脱出行を試みる夢、
石造りの神殿からイカの触腕がのたくる夢なんかを昔から見てきた。
 今日も僕は夢を見る。今日の夢は変哲のない学生生活の夢だった。

「せんせー、おなかが痛いんです」
 枕詞を口にしながら、僕は保健室のドアを開けた。造りが古いせいか、がらがらと音がうるさい扉だ。
「せんせー?」
 僕は保健医を探した。いつも優しい、じいちゃん先生。今でこそよいよいの挙措が垣間見えるけど、
昔は小児科の名医だったというじいちゃん先生。
「はいよ。お、たあくんか」
 ベッドの陰から先生が顔を出した。
「今日はどうしたね?」
「おなかが痛いんです」
「お、そうかそうか。じゃ、この薬を飲んでみなさい。化学実験の手伝いをしたとき作ったスルファミルアミド
という薬なんだが、よく効くぞ」
 僕はパラフィン紙に包まれた頓服を、差し出されたコップの水で流し込んだ。
「……ほんとだ。治った」
 ものの十分もしないうちに、僕の腹痛は消え失せていた。
「ありがと、せんせー」
 先生はにっこり微笑んだ。
「はい。元気が一番だよ、たあくん。お大事に」

 僕は目を覚ました。朝日が窓から差し込んでいた。
 傍らに置かれた体温計を腋に挟み、一分。電子音と共に表示された値は、平熱を示していた。
「ありがと、せんせー」
 僕は呟く。病に伏せったとき、夢で僕を治してくれる、実在しない名医に。
 じいちゃん先生の笑顔は、昔に死んだじいちゃんに似ていた。

 次のお題は「そうめん」「蜘蛛の巣」「マイナスドライバー」で。
424「そうめん」「蜘蛛の巣」「マイナスドライバー」:03/01/08 22:36
「ねぇ」「ねぇ…」「ねぇってば!」
私は何度目か分からないかけ声を彼に掛けた。
その度に彼は「あー」とか「んー」とか、気のない返事を繰り返す。
「そうめん、伸びちゃうよ」
「悪ぃ、そこのマイナスドライバー取って」
私の話なんて全然聞いていない。やっと言葉らしい言葉を発したと思ったら、これ。
私は渋々と彼にドライバーを渡した。
「サンキュ……ってこれプラスじゃねぇか!」
「早く食べないと、蜘蛛の巣張っちゃうよ。ボウフラ湧いちゃうよ」
既に昼食のそうめんは茹で上がっており、あとは食べられるのを待つだけになっている。
彼が趣味の機械いじりを終わらせるのを待っているといつまで経っても食べられないだろう。
「分かったよ……食えばいいんだろ、食えば」
彼は漸く顔を上げて、機械いじりを一時中断した。

次のお題は「オルゴール」「親子丼」「ピアス」で。
425「オルゴール」「親子丼」「ピアス」:03/01/09 01:11
4年間住んだこの家とも今日でお別れ、来月からは会社の寮に入ることになっている。
電気もガスも既に止めているので、夕食は買ってきた親子丼で済ませる。
ふと横を見ると、ダンボール箱に半分埋まっていたオルゴールと目が合った。
大学に入り、上京するときに母がくれたものだ。懐かしくなって、蓋を開けてみた。
久し振りだったが、メロディはまだ覚えていた。
大学1年生のときは家が恋しくなることもしばしばあり、その度に私はオルゴールを
開いていた。休みの度に帰省していた。
いつからだろう、母の許に帰らなくなったのは。どれ位振りだろう、オルゴールを開いたのは。
去年の冬、耳にピアスを開けたことはまだ知らせていない。
・・・怒るだろうな。
今更ながら悪いことをしたと思った。自然と涙がこぼれ、空になった親子丼の
容器に吸い込まれていった。

オルゴールは止まっても、涙は、止まらなかった。

我ながら捻りが無いな・・・。
次は「テレビ」「宅急便」「コンタクトレンズ」
426「テレビ」「宅急便」「コンタクトレンズ」:03/01/09 01:52
 取り引き先からの書類はいつも宅急便で届くようになっていた。それを開けるのはいつも、事務のあたしだ。
 その日もあたしは書類の入った封筒を受け取って、差出人と担当者を確認した。
 うちのアドレス、うちの部署あて。つまり、いつもの決まりきった定期便。
 今はもう、振った時の音と判の大きさで中に何が入っているかわかる。
 あたしは耳を澄ませた。かさかさという紙の擦れあう音と一緒になにか、小さくて固いものが入っている音がした。
「ん?」
 あたしは気になって、注意深く中を開けた。
 中はいつもの納品書と、そして透明なコンタクトレンズが入っていた。
 ハードタイプのそれはあたしの指先を申し訳なさそうにちょん、と覆っていた。
「だれのだろ……」
 多分、向こうの担当の人のなんだと思う。何かがあって、紛れこんでしまったんだろう。
「よく壊れなかったね」
 そのコンタクトレンズは傷一つなく、透明さを維持していた。
 多分、レンズくん本人にとってはどうにかこうにか、一生懸命だったのかもしれない。
 がんばってがんばって、やっとあたしの元に辿りついた。
 そんな風に思うと、なんだかそのレンズくんが愛おしくなってくる。
「よく頑張ったね」
 でももう、帰る時間だよ。
 あたしは受話器を取って、先方に電話を入れた。いつもムスっとしたその人の声は話が進むにつれてだんだん柔らかくなっていった。
「……道理で無いと思いました」
 先方の間抜けな声に、あたしはなんとか笑いを噛み殺した。
「でも凄いですよね。レンズくん、全然無事なんですよ」
「レンズくん、って?」
 間抜け声はさらに間抜けさを増した。
「テレビの主人公に、そういうのがいるんですよ。知りませんでした?」
 あたしはすこし、いたずらっぽい気持ちだった。
「ええ。すいません。僕、そういうのに疎いんですよね」
 それはとても、可愛いらしい声だった。

お題は継続で。
 宅急便の兄ちゃんが持ってきたのはコンタクトレンズだった。発送先はいきつけの眼鏡屋。新製品の試供品らしかった。
 街の眼鏡屋、特に馴染みのちっちゃな店はこういう気の利いたことをしてくれるのでありがたい。
 兄ちゃんがエンジン音を響かせて去った頃、俺は座椅子にもたれ、包装をひっちゃぶいていた。
「特殊3D……?」
 何でもリアルに、とあるが意味を少々はかりかねた。コンタクトに、リアルも何もあるのか?視覚矯正具なんだからリアルは当然じゃないのか?
 ものは試しと俺はそれを装着し、テレビ鑑賞を再開した。CMの時間帯で、宅急便のCMが流れていた。

「わあっ!?」
 思わず俺は叫んでいた。2トン有蓋トラックが、俺の眼前でスピンターンしていた。後にはタイヤの焦げた臭いとガソリン臭があった。
 そんなばかな。リアルに見えるのはいいけど、なんで臭いまで?
 俺はチャンネルを変えた。
 ドラマをやっていた。別れのシーンらしく、仏頂面で立ち尽くす男の前で女が泣いていた。
『ばかぁー!』
 女が男に平手打ちをくれ、そのまま走り去った。
 俺は頬を抑えた。熱を持って、ひりひりしていた。

 俺はこのコンタクトにすっかりハマっていた。仕組みも何も分からないが、そんなものはどうでもよかった。
 人を殴ると、拳に衝撃が伝わった。
 料理番組を見るだけで、満腹になった。
 深夜になっても眠気は全く訪れなかった。それどころか、目は冴えていく一方だった。深夜ローカルのエロ番組。俺の期待ははち切れんばかりになっていた。
 番組が始まり、撫でさする感覚に陶然としている俺の手に、何かが触れた。
 テレビのリモコンだった。
 チャンネルが切り替わり、スーツ姿の男を映し出した。
 男は興奮を隠しきれない様子で、口早にまくしたてた。

「突然ですが臨時ニュースをお伝えいたします。米軍がイラク空爆に踏み切りました。最後通牒より4時間を…」

 俺は爆破された。

  次のお題は「鉄骨」「家族」「革ジャン」で。
428「鉄骨」「家族」「革ジャン」:03/01/09 15:18
鉄骨のようにピクリともしない無表情を貫く妻に、私は五臓が煮えたぎっていた。

家族や、妻に目を向けようとせず、行き付けのキャバレーで知り合った由梨と性愛を重ねた結果、彼女は身ごもってしまった。
「私と逃げてください」と円らな瞳で訴えかける由梨を愛している一方で、私は妻を忘れることが出来なかった。
ただ、若い由梨の体は、私の理性を踏みにじり、行動を強制してしまうのだ。

「離婚届けに判を押してくれ。」
と私が一言口を開いた途端、彼女は鉄仮面を被り、口を閉ざすようになった。
それからひと月が経とうとした今でも彼女は口を開かない。
私はついつい焦ってしまう。妻への執着心が、由梨の若さを破壊してしまう。

「いい加減に、納得してくれないか。私はもう、お前とは生活できない。」
「……。」
「一方的ですまないのは判っている。しかし、反論さえしないお前にはもう愛想尽きた。押せ!」

妻は私が焦っているのを悟ったのか、ゆっくりと体を動かして貴重品を入れてある箱をあけ、印鑑を手に取った。
「私はね、、、何もあなたを責めているわけではないのよ、、、。ただ、あなたの顔を、もう少しだけ、見ていたかっただけ、、、。」

私は居間にかけてある革ジャンを手にとって、彼女と家を出て、昔彼女と出合った縁の喫茶店に行った。

次のお題は「魚肉ソーセージ」「ヒーロー」「缶バッチ」でお願いします。
429機甲自転車wallet20:03/01/09 19:03
箱を開けると魚肉ソーセージの小箱が出てきた。
高級な緩衝材に浮かぶ安っぽいパッケージには子供向けのキャラクター
が描かれている。
これだ、子供頃スーパーに行くたびに買ってもらっていた物だよ。間違いない。
私の目当ては同封されていた環境戦隊エコレンジャーのカンバッジだった。
毎日学校に付けていって、渾名はバッジだったっけ。
エコレンジャーごっこもよくやったもんだ。
あれは・・・飽きる事無く歌った、あのテーマ曲はどんなだったっけ。
♪僕らの・・・地球を守る為〜・・・・・・・わるーい奴等をやっつけろ〜
環境戦隊エコレンジャー
懐かしいなぁ、今年が2060年だから今から50年・・・55年前になるのかぁ。
パッケージを開封して、赤いビニールで密封された小さめのソーセージと
もっと小さいカンバッチを取り出した。大きくなってから見たのは始めてなのでことさら小さく見える。まあソーセージに大きくしてもらったようなものだが。そしてカンバッジを手に取る。赤レンジャーが勇姿を誇示している、私は青レンジャー役が多かったな。
私は古き友と再開し追懐の念に胸を噛まれていた。
カンバッチを机に戻すと少し涙ぐみながらソーセージを開封して口に運んだ。
とても懐かしい味だ。このころ魚肉ソーセージは安くて庶民の味方のような
存在だったのだ。パッケージの材料表示には表示にははっきりとスケトウダ
ラやホッケの名がある。
この頃魚が牛肉より高くなるなんて言われても信じなかっただろう。魚を餌
にする歯鯨がここまで増えるとも思わなかった。まあ実際は当時から増えて
いたのだが例の環境保護団体は絶滅機具種だと言い張っていたし、譲る気も無かった。
だから当時鯨肉は庶民が口にできない高級品。何せ鯨を食べる事は殺人行為に等しいと主張する連中が捕鯨を妨害していたのだから。
430機甲自転車wallet20:03/01/09 19:07
>「魚肉ソーセージ」「ヒーロー」「カンバッジ」の続き
実は私もエコレンジャーの影響を受けて捕鯨反対派を気取っていたりしていた。
僕らのヒーローが呼びかける正義に共鳴したんだ。それは純粋で疑問すら抱か
なかった、エコレンジャーソーセージが無くなった時までは。ソーセージを製造
販売していた水産会社は鯨肉加工も手がけていた。そのためエコレンジャーの
スポンサーの環境保護団体から圧力がかかりこの商品は販売中止に追い込まる。
日本の世論は水産会社を擁護したが欧米はそうは思わなかった。私はTVや新聞で
取り上げられるのをみて正義という物が一様でない事を知ったのだ。僕らの正義、
彼らの正義、正義は人間の数だけあるんだなって。
近年危機的水準にたっした漁獲資源保護の為、歯クジラ類の捕鯨規制が大幅に
緩和され再び鯨肉が出回り始めた。あまり私は食べないが自然な事だと思う。
保護団体は資源問題を超越した精神的文化的な問題として相変わらず譲らない姿勢
をしている。これもある意味自然な姿なのかもしれない。
ある種の魚は絶滅され危ぶまれ、魚肉ソーセージをあの頃と同じ材料で作れば鯨肉
ソーセージの十倍という高級品になってしまう。
我が古き友にはあえて彼を復刻した水産会社からの強烈な皮肉が込められている。

次のお題は「テロ」「親友」「家」もしくは継続で
431「テロ」「親友」「家」:03/01/09 19:42
アメリカはテロリストだ!と叫んでいた若き日の彼は、よく僕と同じ外国人学校のアメリカ人生徒を
酷く虐めていた。そんな彼が今では世界を股にかける映画監督として活躍しているもんだから、人間、
幼少期の性質で将来の判断なんて出来ない物だ。
彼の新作がフランスを中心にもっぱらの評判で、ゴダールに続く新世紀の天才、とのキャッチフレーズで
日本でも封切された。もともとフランス映画好きの僕は、我先ぞ、と早速劇場へと足を運んだ。
ストーリーは親友を裏切り上へ上へと上り詰めた男が、仕事のパートナーに裏切られて地位、名誉共に
底に落ちてしまい、今までの行いを反省する、というストーリーだ。暴虐無尽な主人公の暴力と、主人公を取り巻く
人間の心理が物凄く生々しく描かれていて、素晴らしい作品であった。
鑑賞後、ふっ、と僕の頭を過ぎった。この作品は彼の心理そのものではないのか、と。
以前電話した時は、相変わらずアメリカ嫌いで、スタッフにアメリカ人を入れない徹底振りであった。
何かの切欠で、彼に肝要と共存の意思が産まれてきたのかもしれない。
数ヵ月後、都合よく彼が撮影のために来日する、との連絡を受けたので、彼が和食で一番好きなてんぷらを用意する、と会う約束を
つけ、久しぶりの再開に僕達二人は、何の壁も気遣いも無く、握手を交わし、家に招き入れた。
妻が用意している美味しそうなてんぷらの香りに彼は我慢ならない、と言った目をしていて、それはアメリカンスクール時代の彼の目であった。
彼の目で思い出したかのように、私は例の作品から受けた印象を彼に話した。

「今でもアメ公は嫌いだね!映画は映画である、なんつってな」

彼のセリフはいかにもゴダールに続く、映画監督らしかった。

次のお題は「テレビ」「平和」「バファリン」で
432名無し物書き@推敲中?:03/01/09 21:26
テレビでジョンレノンの歌が流れていた
お馴染み、イマジン
あの九月十一日以来、平和の歌とされている
けれども、歌詞は結構、無茶苦茶だ
バファリンの半分は、優しさでできている
有名な文句だ。昔CMで見た
半分優しさで、後は何なんだろうか

次のお題は、「思い出」「ぽろぽろ」「インド人」
433ルゥ ◆1twshhDf4c :03/01/10 01:48
「思い出」「ぽろぽろ」「インド人」

桜がちかちかと点滅する街の街灯に照らされながら静かに、しかし絶え間なく舞い続けていた。
上弦の月は滑らかで美しい弧を描き、街灯の光よりもはやや弱かったが、銀色の光で桜の花びらを包み込んでいる。
「春は出会いと別れの季節……か」
俺はマンションのベランダで月夜の花見と洒落込んで、一人、ビールを飲んでいた。
『春は出会いと別れの季節』
そう口にしたものの、いつも自宅で黙々とパソコンに向かって仕事をしている俺には実感がわいてこない。
俺にとって、出会いと別れの思い出はいつでも夏だった。
親父の仕事の都合で夏休み中に転校なんていうのはざらだったし、大学もアメリカの大学を出た。
高校時代の親友は、初デートで海水浴に行ったとき、波にさらわれて仏になってしまったし、……そして、恋人が俺の部屋から永遠に去ったのも、蝉がようやく鳴き始めるさわやかな初夏の朝だった。
巷のうわさで、あいつは貿易商のインド人と結婚して、今は幸せにやっているらしい。
別れる直前、俺はあいつの切れ長の二重まぶたからぽろぽろと零れる雫の記憶しかないので、幸せになったのなら、別れて正解だったのだろう。
ハート型をした花びらが風向きによって、時々、ベランダに流れ込み、珍しく酔いが回り始めた俺の周りに小さな渦を作った。
「桜ってやつはどうして、人を感傷的にさせるんだろうな。……春は……関係ないのに」
少しだけ力を込めると、空になったビール缶はあっけなく潰れた。
俺はあいつと別れて以来、恋人と名のつくものは持たなかった。
単に仕事がらなのか、それとも未だあいつに未練があるのか。
今の俺にはわからない。
やがて音もなく街灯の光は力尽きたように輝くのをやめる。
半分だけの月が銀色に輝く、桜の舞う美しい夜だった。

☆冬休みの宿題から開放されて久々の書き込みです。
 次は「空」「ウーロン茶」「新聞」でお願いします。
434名無し物書き@推敲中?:03/01/10 10:34
機甲たん、復帰おめでとう!
「東京地方は晴れ、ところによりウーロン茶」
全ては深夜アニメの後のウェザーブレイクから始まった。
深夜アニメを見終わった社会の底辺共がいつも聞く、「うぇざーぶれいっ」の声。
その極めて機械的な発音は、彼らが週末必ず通い詰めているJR秋葉原駅のチャイム、
確実に車を買えるほどの金をつぎ込んでいる格闘ゲームの必殺技のSEのように、
まるで世の主婦達が眼の敵にしている「しつこい油汚れ」の如く彼らの発達した一次聴覚野にこびりついていたので、
日本全国のテレビの前に等しく居並んだ死んだ魚のような目は、その声を聞いても何の反応も示さなかったのだ。
その後に発表された、全くもって完全無欠に前代未聞の天気予報を彼らの脳がワンテンポ送れて認識するまでは。

「何よあれ?」「テレ東大丈夫か?」「lainの再放送だったん?」
まずは実況チャンネルが沸騰した。その空気は加熱され体積を増し、ピストンを押して系の外に影響を及ぼし始めた。
ニュー速に貼られ、24時間更新の大手ニュースサイトに掲載され、テンプレがニュートリノの速さで作られ、コピペ厨が跳梁跋扈した。
そもそも何故ウーロン茶なのか?化学板では酸性雨の諸成分がウーロン茶に化学変化する可能性が議論され、
気象板では中国福建省周辺の天候データを過去十年間に亘り調査するプロジェクトが推定数十人の名無しさんにより敢行された。
そして驚異のウェザーブレイクから約一時間後の事、各新聞社のサイトや大手ポータルの天気予報ページにも
全く同じ文面が掲載されているのが発見され、この大騒動はいよいよもって熱狂の様相を深めていった。
ウーロン茶!ウーロン茶!ウーロン茶!ウーロン茶!
かくしてその夜のネットは須らくウーロン茶により埋め尽くされ、ネットに住まう祭りを愛するものどもは全て夜を徹し、日が明るむのを待っていった。



そして、

夜が明け、

彼らが目にしたものは、
436「空」「ウーロン茶」「新聞」(2/3) :03/01/10 12:27
空から降ってくる、巨大なウーロン茶の缶型のUFOだった。

それは全く疑いようもなくUFOであった。
なにしろそれはどこからどう見ても完全無欠に、巨大なサントリーの鳥龍茶の缶以外の何物もでもなく、
当然推進装置にあたるようなものはどこにも見当たらなかったのだ。これがUFOでなくてなんであろう?

空に浮かぶ烏龍茶に、東京の人々は驚き呆れた。当然呆れる比重の方が高かった。
そもそもなんで宇宙人がサントリーの烏龍茶なのだという突っ込みすら入らなかった。
それがあまりにもストレート過ぎて、突っ込みを入れる隙が全くなかったからだ。


そして次の衝撃は、電波によりやってきた。東京中のすべてのテレビがジャックされたのだ。
お茶の間のテレビも、最早誰も見ていない笑っていいともを映していた新宿アルタの巨大モニターも、
我関せずといった風に人形のタップダンスを流していた秋葉原のサトームセンもだ。
そして、一つの映像が流された。

「チン ウェン、ニィ ヂーブヂィダォ、ジン スェ ディ チャー!
 チン ウェン、ニィ ヂーブヂィダォ、ホゥアン ジン グイ?
 メイ ウェィ ジン シャン、メイ ウェィ ジン シャン、
 メイ ウェィ ジン シャン、ウロンツァー!」
軽妙な中国語のラップと共に、チャイナ服と思しき布を体にくくり付けた、スライム状の物体が画面を乱舞していた。

これによって、人々は完全に言葉を失った。
437「空」「ウーロン茶」「新聞」(3/3):03/01/10 12:28
きっかり15秒間、この奇怪極まる映像が流された後、今度はスライムのアップが画面に映し出され、
流暢な日本語により語りかけられた。
「地球のみなさん、こんばんは。
 私どもは遠くメチャヌチャドゲング星の者です。
 先日予告させていただきました通り、我が星の特産品、ゥロゥゥンタィの営業にやってまいりました。
 しかし何分我が星は田舎も田舎でありまして当世の礼儀にとんと疎く、
 これまで五つの星にて営業をさせていただいておりますが、当方の不徳によりまして、
 全ての星においてにべもなく断られてしまいました。
 そこでこの度皆様方の地球にやって参るにおきまして、今までの轍を踏むを良しとせず、
 地球の文化を研究し、皆様方のご機嫌を損ねぬよう礼の限りを尽くさせていただきましたが、いかがでありましたでしょうか?
 さて我がメチャヌチャドゲング星のゥロゥゥンタィは、一口飲めば五体満足家内安全、天にも上る気持ちになれること請け合い、
 ちょいとそこの兄さん寄ってきな、一枚が二枚、二枚が四枚、こんな太い大根もスッパリと…

お題は継続
438葛の葉 ◆Leaf.p8Qac :03/01/10 12:40
>「空」「ウーロン茶」「新聞」

「お待たせしました」
頭上から降り落ちて来た涼しい声に、
N所長は、読みふけっていた新聞紙を
あやうく取り落としそうになってしまった。
「あ・ありがとう・・」
鼻までずり落ちていたメガネを 指先で引き上げてから、
所長は、心持ち背筋を伸ばした。
その様子に、ウエイトレスのS子は、柔らかい笑みを浮かべた。
「いつも、お茶を召し上がるんですね」
「ああ・・珈琲とかね、カフェインは医者に止められているんでね・・」
「そうなんですか。余計なこと聞いちゃったみたい」
「あ・いや、そんなことは・・ないから・・・」
「失礼しました。ごゆっくりどうぞ」
S子は再び微笑み、ゆっくりときびすを返した。
そのすらりとした後姿を眺めながら、
N所長は ウーロン茶がなみなみと注がれたグラスを、
不器用な手つきで引き寄せた。
ー今日こそ、誘ってみるかなあー
ぼんやりと思案しながら、大ぶりなパキラに遮られた
アーチ型の窓へと、視線を移動させる。
臨める空は、ヨーグルトのように濁っている。
ー午後から降りそうだしなあ。止めておくか・・−
肩を落としながら、所長はストローを唇へ当てた。

次のお題 「カフスボタン」「写真」「置き時計」で!
439葛の葉 ◆Leaf.p8Qac :03/01/10 12:46
>>437さん、かぶっちゃったね。
440名無し物書き@推敲中?:03/01/10 15:40
441435-437:03/01/10 18:29
>>439
俺は継続と提示したから無問題す、多分シンクロニシティが働いたんでしょうw
次の方は>>438のお題でどうぞ
 僕が妻を亡くして、三ヶ月が過ぎた。新婚生活、僅か半年。世界の認証を全て絶望に彩るには、十分すぎる衝撃だった。
 今でも僕の生活は、陰鬱と悲哀から始まっている。

 目覚まし時計がドヴォルザークを奏でると、僕は目を覚ます。目元が濡れていた。また、彼女を夢に見たようだ。
 夢に見なくとも、僕は涙にくれたことだろう。目覚ましに耐える僕を覚醒に導く、柔らかなキスの感触を求めて。
 ドヴォルザークは流れ続ける。顔を覆った指の間から、流れ落ちる雫のように。

 写真立てはあの日以来サイドボードに伏せてある。今なお生き生きとした写し身が、僕を涙の海で溺れさせてしまうだろうから。

 三月。
 あれから三月。
 彼女はいなくとも時間は流れ、僕は生き続ける。半ば抜け殻となっていても、僕はここに生きている。
 シャツを着、ネクタイを締め、タイピンで留め、カフスを合わせる。それは僕がこの世に生きていることを確認する儀式だ。
 カフスボタンとタイピンのセット。初めての、彼女からの贈り物だった品々。これらを目にするたび悲嘆に暮れた僕は、二ヶ月前に置いてきた。
 僕は上着を羽織り、鞄を持った。
 部屋を出るとき、伏せられたままの写真立てに目をやった。いつか、再び彼女の微笑みを受け止める日は来るのだろうか。

「いってきます」
 その日が来るまで、彼女は永遠に微笑んでいてくれるのだろう。

 次のお題は「凧糸」「ライター」「朱肉」で。
443葛の葉 ◆Leaf.p8Qac :03/01/10 21:51
>441 シンクロでしょうか(w
>442 お上手ですね。私は始めたばかりなので、下手で恥ずかしい。

>「凧糸」「ライター」「朱肉」
(2−1)

「うっあひゃあぁ」
たてつけの悪い納戸の扉を開けてから、M枝は素っ頓狂な悲鳴をあげた。
M枝の足元で、愛猫のリンが、虎縞の手足を凧糸で
ぐるぐる巻きにされ、仰向けに寝っ転がっていた。
思わず手にした掃除機を、ばたりとその場に取り落とす。
運悪くも、管の部分がM枝の脛を直撃し、更に悲鳴を上げさせた。
リンはそんな飼い主を見上ると、にゃおんと一声、弱々しく鳴いた。

T雄は、無理やりに正座させられた足をもぞもぞ動かしながら、
畳のへりを指先で弄んだ。
M枝は、そんな次男坊の手を、ぴしゃりと叩いて止めさせた。
「T、アンタはなんで、怒られるようなことばっかりするの!!」
先月9歳になったばかりの少年は、バツが悪そうに、上目使いで
母親の顔を盗み見た。しかし、唇は固く結ばれたままだ。
M枝は、怒りの余り、視界がぐらりと傾くのを感じた。
444葛の葉 ◆Leaf.p8Qac :03/01/10 21:53
>「凧糸」「ライター」「朱肉」
(2−2)

咄嗟に、畳の上へ放置されている、
灰皿の脇にあったライターを、利き手で掴み取った。
M枝はライターの火を点けると、左手を伸ばして、T雄の腕を掴んだ。
これには、強情な少年も、びっくりして泣き声を洩らした。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・」
「アンタは、何回ごめんなさいって言うの!!」
「もうしません!もうしません!もうしません!」
畳の上でばたばたともつれ合う親子の姿を、
リンだけが障子の影からみつめていた。

再び正座をさせられ、くすん、くすんと嗚咽を洩らしている息子の親指を、
M枝は朱肉に押し付けた。「次はないと思いなさい」
確認をするように低く囁き、「ママとのおやくそく」と、
クレヨンで書かれた紙片に、少年の小さな指紋で捺印がされた。
隣に「きょうのしょうにん」という文字。
その下には、同じく赤い猫の足型。

 次のお題は「包帯」「歩道橋」「鏡」で!
445名無し物書き@推敲中?:03/01/10 22:02
「凧糸とライターと朱肉」

「愛の表現は惜しみなく与えるだろう。しかし、愛の本体は惜しみなく奪うものだ」有島武郎

「好きな人ができたの」
 彼女はたった一言で説明を終わらせた。
 ガラステーブルの上には朱肉と印鑑が置いてある。妻が用意したものだ。
どうやら私はまたふられてしまったらしい。離婚届を見るのは初めてじゃない。
目の前に黙って座っている女とは一昨年再婚した。結局二年もたなかった。
彼女は静かに私が捺印するのを待っているが私は押したくなかった。
私は一体何を間違ったのだろう。この女の何を知っていたのだろう。
「少し待ってくれ」
 私は少しよろけながら立ち上がり、書斎へと向かった。引出しの中をかき回す。
無い。無い。あった。取り出したのは凧糸だった。それを持ってリヴィングへ戻った。
先ほどとまったく変わらない姿勢で彼女がいる。こちらに視線すら送らない。
「コーヒーを入れるよ」
 キッチンは彼女が背を向けている方向にある。私は彼女に気づかれないように凧糸を伸ばす
後ろから細い首に巻きつける。
 私はライターオイルを部屋に撒き終えると、既に物言わぬ女を抱きしめた。
それから私は火を点けたジッポライターを床に放った。

「レコード」「不倫」「鯖」
446445:03/01/10 22:10
かぶったので次のお題は>>444の「包帯」「歩道橋」「鏡」で
447傍観者:03/01/11 00:10
ライターを執筆者にすると思ってましたが……。
美奈さんお上手ですね。激しく関係ないのでsage
448442:03/01/11 00:19
>443 お褒めに与り恐悦至極。
 三度占って、三度同じ結果が出た。
 明日の夜十二時、梅田の立体歩道橋に立ち、合わせ鏡の無限連鎖からただ一つの回廊を探し出すこと。
 それさえできれば、愛しいあの人とこの世で再び暮らせるようになる。
 天のグランドクロスと地のグランドクロスの狭間で、私は今夜、死んでしまったあの人を甦らせる。
 そのためになら、世界を敵に回しても構わない。
 神に呪われても構わない。

 深夜とはいえ、梅田の中心街はいまだ人通りがある。私は腐臭を放ち始めたあの人の亡骸を欄干と花壇の間に落とし込んだ。
 包帯がほどけ、経帷子がまくれ上がった。その下から覗くのは、赤黒くうじゃじゃけた肉の裂け目。 醜くなんかない。だって、これは私をかばってあの人が負った傷だから。
 私が、私の力で清め、塞いで、癒してあげる。
 私は視界に残る最後の酔っぱらいが歩み去ったのを後ろ目に歩道橋のちょうど中心に立ち、二枚の鏡を完全平行に並べた。

 鏡が鏡を映す。
 鏡を映す鏡が鏡に映った鏡を映し、鏡の中で鏡を反射した。
 無限回廊は完成した。
 私は出来る限り目線を寄せた。無限回廊を見通すのは有限の視線でしかない。出来る限り多くの回廊を覗き込まなければならない。あの人の魂がさまよう回廊を見いださなければならない。

 回廊の奥で、あの人が包帯を引きずり、風に揺れる案山子のように佇んでいた。

 私は合わせ鏡に手を伸ばした。
 途端、突き飛ばされた。
 無限回廊に落ち込む寸前、私の手は相手の裾をしっかりと握りしめていた。
 経帷子は裂けることなく、私もろとも無限回廊へと転落した。

 鏡の悪魔は私を騙せたと思っているのだろう。
 私は、そうは思わない。
 ここには、あの人がいる。一言も喋ってはくれないけれど、微妙にこわばった腕で私を抱きしめてくれる。
 無限に陥落し続ける世界で、私は永遠の願いを手に入れた。
                       次のお題は「シナモン」「成仏」「電光石火」で。
449葛の葉 ◆Leaf.p8Qac :03/01/11 00:38
>>445さん、せっかくなので、
「レコード」「不倫」「鯖」を頂いて作ってみますた。
(2−1)

夏。 
義妹の娘の水着の蒼が、白い波しぶきの合間をぬっていく様を、
K人は、強い日差しに目を細めながら、見送っていた。
南国育ちの少女は、水棲の生き物の如く、器用に波をかきわけていく。
その姿は、水着の蒼い色のせいもあって、彼に、鯖のような
青い魚を連想させた。あの様子であれば心配はないと判断をした
K人は、可愛らしい栗鼠が笑っている柄のビニール・シートへ、腰を降ろした。
数メートル離れた売店に設置されたスピーカーから、K人が学生の頃に聴いた
覚えがある、ビーチボーイズのヒットナンバーが低く響いてくる。
あの当時はレコードだったんだよな、と、口の中で呟く。
(俺も歳を取ったわけだよ・・)まぶたを閉じると、
少し以前まで、ほんの子供だと思っていた姪っ子の
N実の、程よく陽に焼けた、しなやかな肢体が蘇ってきた。
450葛の葉 ◆Leaf.p8Qac :03/01/11 00:41
(2−2)

照りつける日差しの中で、うとうとしかけていた時、「疲れちゃったあ」
冷たい飛沫をはねかけながら、N実が、K人の左脇にどさっと身を投げた。
「ああ・・びっくりしたなぁ・・・。Nちゃん、よく泳いでいたね」
「うん。喉、渇いちゃったよ」K人は右手を伸ばし、指先で弾くようにして、
クーラーボックスの蓋を開けた。「コーラ買ってあるよ。飲むだろ?」「ありがと!」
N実は両腕を伸ばし、叔父の手から缶コーラを受け取った。
K人は、少女の濡れて頬に張り付いた髪と、細い喉の動きを、
動悸が高鳴るのを抑えるすべもなく、みつめていた。
不意に「叔父ちゃんも欲しい?」N実は愛らしい瞳を、叔父へと向けた。
「そうだね、少し貰おうかな」N実は缶を傾け、口にコーラを含むと、
両腕をK人の首へとからませた。K人の口の中に、甘く生暖かい液体が広がった。
声も出ない様子の叔父から、少女はゆっくりと唇を離すと、
「これって、不倫になっちゃうのかなあ?」
心持ち首を傾げ、薄茶色の瞳を細めて、妖艶な笑みを浮かべた。

>>448さん、勉強になります。
君ら、おもろい。
でもね、>>1なんか読んじゃったりすると、
15行程度って書いてあったりするのね、これがまた。
でもさ、今だ〜れも来ないから、しばらく遊んでってよ。
燃料としてガンガッテくれい。
たまに、こういう、変化も、いいよね。
まあ、そのうち、元のふうに戻るでしょう。
人が、いないよりは、じぇんじぇんマシだしね〜〜〜〜。
452名無し物書き@推敲中?:03/01/11 18:06
「シナモン」「成仏」「電光石火」
腹が減って仕方がなかった。仕方がなかったのだ
俺は一週間何も食べずに水だけで過ごしていた
そんな時に、偶然に通りかかった君が悪い
自業自得だ。電光石火に脳裏をよぎった
俺はそのまま道の端で餓死してしまうと考えていた
そのときシナモンの香りが鼻をかすめた
君の手にはミスタードーナツの袋があった
俺は人気のない夜の道を一人で歩く君の
不用心さにつけ込むことを思いついた
良心を決してなくした訳ではない。ただ自然なことだったのだ
今では悪いとは思っている
頼むから成仏してくれ

お題「燃料」「コーラ」「缶蹴り」
453葛の葉 ◆Leaf.p8Qac :03/01/11 19:42
>「燃料」「コーラ」「缶蹴り」

攻撃は、一週間前から継続していた。以来サイトは騒然とし、様々な憶測が飛び交っている。
アクセスを止めてしまった者も、少なからずいる。午後のけだるい雰囲気が漂うオフィスで、
L女史は、朝に作成した文書を本社へと送信しながら、チャットルームの小窓を開いた。
今日は上司は半日、ミーティングから戻らない。L女史は、隣席の若い男の様子に
チラと目線を送ってから、慎重に文字を打ち込んだ。・・・祭りを、継続するための燃料。
Lが大嫌いな、Jという固定ハンドルが勤務する企業名。半ば口紅が剥げ落ちたLの唇が、
満足そうな笑みで歪んだ。暫くして・・「Lだよ、犯人」チャットのピンク色の画面に、
信じがたい文字が打ち出された。「Lって誰よ?」「Bの実名。Dって会社の局。汚いハイミスさ」
途端に、Lは声にならない悲鳴をあげ、弾かれたように立ち上がった。
そして、隣席の同僚の机に乗っていた、コーラの缶を掴むと、中身をパソコンの画面へとぶちまけた。
驚いて立ち尽くす同僚達の視線を一身に浴びながら、L女史は、茶色い液体が、液晶の画面を
伝っていくのを眺めていた。彼女の脳裏に浮かんだのは、何故か、少女時代の缶けり鬼だった。
一瞬「Lちゃん、みぃつけたあ」幼馴染の少女の笑顔が視界をよぎり、消えた。

お題「日本刀」「鳥の羽根」「アスファルト」で!

454「日本刀」「鳥の羽根」「アスファルト」:03/01/11 22:14
私の師匠は、刀の命に拘りを持った職人で、切れ味さえも犠牲にした、芸術としての刀作りを
続けている。それは、必ずしも曲線が命を持つという訳では無く、だからといって西欧の刀のように、
シンメトリックで、殺傷を念頭に置いたような刀がそうだとも言えない。

名刀、雪篠は切れ味は勿論のことだが、沢山の戦を潜り抜けた故の誇りと、そして独特の煌きに満ちている。
しかし、姿形は凡庸で、古の刀であったとしても、命が込められきれていない、と師匠はこれを嫌う。
「師匠、失礼を承知でお聞きしますが、村雨や雪篠を超える刀を作ったことが在りますか?」
「一度だけ、、、作ったことがある」
「是非、見せては頂けないでしょうか?」
「君は、私の一番弟子だ。本来であれば、魅せたくはないのだが、、、まぁ、よい。ついてきなさい。」

師匠と私は刀蔵へと向かい、数ある刀棚の奥深くに眠る、師匠の名刀が入った箱を取り出した。
「これが私の、最高傑作、哀舞だ」
と見せてくれたのは、美しくスラっと伸びた、一本の日本刀がベースとなっている刀であった。
「この作品は、鳥の羽をイメージして作った物だ。ほれ、持って見なさい。途轍もなく軽い印象を受けるであろう」
と師匠は私に刀を手渡してくれた。刀を握った瞬間、私は私の概念思想、全てを破壊してくれた。
恐ろしいほど重い刀なのに、とても軽い。
まるで刀自らが飛んでいるかのような、反重力的な刀。怪しく煌く様は、まるで命を持っているかのようだ。

ふっ、と私の体が軽くなった気がした。
横を見てみると、私の体がある。

「また、起こってしまった、、、。この刀には、命を込めすぎた。刀の意思、それは切ること。
私はこの逆説に立ち向かえるだろうか、、、」と師匠の声がした。
アスファルトのように、柔らかく、硬い刀。アスファルトのようなのに、哀舞は人間の様であった。
次のお題は「携帯電話」「チベット」「太平洋」で
 携帯電話業界は、ついにIridiumの後継を業として成り立たせる地点に到達した。
 すなわち、世界共通規格としての完全衛星中継である。
 端末の強度、耐久性、電波到達性能を図る実験は、至る所で行われている。

−例えば太平洋に浮かぶ、名もなき小島で。
「もしもし本社?食い物はいいです、しばらく。それより水!水下さい!」
−例えばチベット、神々の峰で。
「もしもし、GPSで座標を確認しました。あと500mほど西でビバークしてます。雪洞はちと電波が遠いようなので救助隊員には注意するようにと……マジ寒いっす……」
−例えばアマゾンのジャングルで。
「いだだだだだ!肉噛んでる肉噛んでるって!ペニシリンないと死ぬって!!」
−例えば紛争絶えぬ中東で。
「アッラーフ・アクバル!諸君らの協力のお陰で、米帝の動きが手に取るように分かるぞ!ムハンマドもお喜びであろう!」

 戦え電話業界、頑張れサラリーマン。世界を電波の網で覆い尽くす、その日まで。

 次のお題は「荷電粒子」「火打ち石」「アスピリン」で。
「敵影3つ!」
私はアスピリンを口に放り込み、音をたてて噛み砕いた。
最近特に頭痛がひどい。頭の中に響くあの人の声のせいか。
アスピリンを飲み込む間もなく味方機が爆散した。
「させるかっ!」
敵のザコには目もくれず、私は隊長機に照準を合わせた。
が、敵もさるもの、火線を巧みにかわし私の機体に体当たりする。
凄まじい衝撃。だが白いこの機体はたいした損傷を受けない。
私は即座に旋回し敵機に向けトリガーを絞った。
ところが
「カチッ」
乾いた音をたてるばかりで砲が作動しない。
しまった。さっきの衝撃で火打ち石が欠けたか。
火薬の爆発で荷電粒子を飛ばすのだ、点火できないのでは何の役にも立たない。
私は荷電粒子砲を投げ捨て肩のビームサーベルを引き抜いた。
再び迫り来るヤツの機体はいつもより更に赤く見えた。


次は「テロリスト」「クローン人間」「拉致問題」
458うはう ◆8eErA24CiY :03/01/12 15:56
「テロリスト」「クローン人間」「拉致問題」

 次々と発生する拉致問題。
 高校1年生の彼女は、今から頭を悩ましている。

 例えば、重要な政治家の拉致、という場合を考える。
 クローン人間のすり替えという事すらあり得る。
 様々な可能性を考慮し、対応を考える。

 凶悪な独裁体制は、相変わらず続いている。
 独裁者の気分一つで、人間が虫けらの様に扱われる社会だ。

 彼女は、大学受験を2年後に控えている。
 自分に、そして家族にも大切な、絶対クリアしなければならない関門だ。
 午前1時…彼女は夜を徹して受験に備える。
 
 彼女にとって、受験は「道徳性」「基本的人権」といった概念を超えていた。
 家族ぐるみの「優秀市民待遇」か「収容所生活」か…それが全てだった。

 今夜も彼女は、ぶ厚い「よくできる・チャート式拉致問題集」と格闘している。 
「国立テロリスト養成大学」受験まであと2年しかないのだ。

※う、暗い^^;
次のお題は:「はきだめ」「珊瑚礁」「青空」でお願いします。
「はきだめ」「珊瑚礁」「青空」
何がしたかったかと聞かれれば漠然としすぎていて、言葉が詰まる。
自分が動くわけでもなく、ただ愚痴ばかりを募らせる人々のはきだめから、逃げたかった。
財布の中に残された残金で沖縄行きのチケットを買い、二時間後には綺麗な青空の中を飛行機で進む。
窓から眺める雲海は綺麗で、心を洗う光景。でも、実際には暗鬱なままの胸。
それは現地空港について、ただぶらぶらと歩いた先で広がった美しい海を見ても変らなかった。
けれど耳を澄ますことだけは避けた。きっとアクセントの違う言葉で愚痴が聞けただろう。
金も無い、空いた腹を抱えて道を歩いた。歩道、その壁にはポスターが貼られていた。
「常夏の空、珊瑚礁に遭いに行こう」
何も現地にまで出張ってこなくても良いのに、航空会社のポスターは明るい沖縄を見せ付ける。
胸の雲は、その瞬間初めて消えた。

お邪魔しました。
次のお題は
「位牌」「ネックレス」「始発電車」でお願いします。
460「位牌」「ネックレス」「始発電車」:03/01/13 01:21
位牌を持つ手は冷たかった。私は始発電車を待っていた。
冬の夜の静かなホーム。雲に隠れて星は一つも見えない。
誰の位牌かはいえない。別に秘密というわけではない。
いっても意味がないからいわないのだ。ご了承願う。
そして、パールのネックレス。通販でありそうなものだった。
おそらくいイアリングもセットだろう。
寂しい奴だ。けちな装飾を身につけることはなかった。
自然なままで十分だった。
私はネックレスをポケットに入れていたのだが、
いつからかなくなっていた。
もっとも、もう無価値の代物だったが。
沈んだ空気を押し出す光が、重たい音ともにやってきた。
黒く見えた車体は、黒くはなかった。

お題は継続でお願いします。
461葛の葉 ◆Leaf.p8Qac :03/01/13 02:24
>「位牌」「ネックレス」「始発電車」

薄いもやに包まれた早朝の無人駅。少年は白く息を吐き出しながら、
緑色のナイキのスニーカーをせわしなく上下させて、始発電車を待ちわびていた。
かじかんだ手には、黄色いリボンのついた紙袋がひとつ。
別れ際に、恋人である少女から、押し付けられたものだ。
暫くして、オレンジ色の鈍行電車が、古びた車体の上部を照からせ、
のろのろとホームへ滑り込んで来た。ドアが開くのと同時に、少年は
車中へと駆け込み、紙袋を脇へ挟むと、両の掌に息を吐きかけた。
・・ふと、視線を感じて、少年は顔を上げた。
はす向かいの座席で、黒衣の中年女性が、薄い笑みを浮かべて、
彼を凝視していた。女の首が朝日を反射して、銀色の光を放っている。
少年は、後じさりをした。
女性の首には、太い鎖状のネックレスが、幾重にも巻き付いていたからだ。
彼女は上目使いで少年をみつめ、裂けたように大きな口で、
ニッと笑ってみせた。その時・・・・電車が急停車をした。
少年は、床に手をついて倒れ込んだ。紙袋は、前方にすっ飛んだ。
激しく息をついてから、少年が目を上げると、そこに女の姿はなかった。
代わりに、不吉に黒い位牌がひとつ。座席の上で倒れていた。
少年は、たった今、誰かが死んだという事を確信した。
その誰かが、首を無くしている事も。

ウッ(; ゚Д゚)4行オーバー。


お次「自動販売機」「松葉杖」「からす」で!
462ルゥ ◆1twshhDf4c :03/01/13 02:25
「位牌」「ネックレス」「始発電車」

位牌に名が刻まれている「涼」という女。
名前どおり、どんな時でもクールな顔をしている腹が立つ奴だった。
初めて夜をともにした時でさえ、涼の乱れた表情の中に潜むクールさは決して失われることがなかった。
しかし、そんな涼の表情はかえって俺の心を掴んで離さなかった。
今更になって思う、そうやって涼は俺を操っていたのだと。
別にネックレスやカバンのようなものを貢いだと言うわけではないが、
涼のクールな表情が俺のすべてを奪っていった。
愛情も過去も、そして未来さえも。
俺は涼からたくさんのものを得たが、肝心のものを得ることができなかった。
涼の愛情は、全て俺の親友の――そして涼の兄の「光」のもとにあった。
涼のクールな表情を作った元凶の光に。
何であんな女を愛して……結婚してしまったんだろう。
今更後悔してもどうしようもないが、それでも考えずにはいられない。
始発列車の前に飛び込んで自殺した兄妹の知らせを聞いたのは、俺が起きてまもなくのことだった。
それからの日常はまさに夢のようだ。
くだらない週刊誌の記事。冷たい近所の視線。高額の賠償金。
それなのに……愛する女の位牌を前に涙して思う。
最期くらい作られたクールな顔なんかではなく愛する男の前で素顔に戻れたのだろうか、と。

☆久々に人がいっぱいな日が続いてうれしかったり。
 あとは簡素人さんが戻ってくるor降臨して下さればもっとよいのですが。
 次は「梨」「カーテン」「豹柄」でお願いします。
463ルゥ ◆1twshhDf4c :03/01/13 02:27
久しぶりのかぶりだ……。
すみません。
次は葛の葉さんの「自動販売機」「松葉杖」「からす」でお願いします。
464葛の葉 ◆Leaf.p8Qac :03/01/13 02:30
>>463
いや、「梨」「カーテン」「豹柄」って面白そうですよ。
私は苦し紛れに考えただけなので・・・・ (;´Д`)
次の方は、お好きな方でやられたら
(* ̄▽ ̄)y-~~~~ 宜しいんじゃないでしょうか?
465ルゥ ◆1twshhDf4c :03/01/13 02:52
私も割と考えなしでお題出しましたよ(ぉ
葛の葉さんがそれでよいとおっしゃってくれるならば、
次は「自動販売機」「松葉杖」「からす」
もしくは「梨」「カーテン」「豹柄」のお好みのほうでどうぞ。
466 ◆ra0S/YG2ds :03/01/13 05:42
「自動販売機」「松葉杖」「からす」

  145円という半端な値段に惹かれた。
  缶のデザインだけでは、何のジュースであるか、わからない。というのも、
豹柄なのだ。文字はない。名前のない飲み物なんてぞっとしないが、かえって
買ってみたい衝動にかられたのだ。ガコンと音がした。屈んで、自動販売機の
取り出し口に手を突っ込むとき、まさか噛まれはしないだろうと思いながらも、
ローマの休日に出てきた「真実の口」を思い出した。
  プルリングに指をかけ、開ける。すぐには飲まず、匂いを嗅ぐ。梨を思わせる
香りがしたので、果汁モノだなと侮ったのがいけなかった。ひとくち、ふたくち、
咽喉に流し込んでいると、通りの向かいに立っている老人を見つけた。松葉杖をついて、
こちらを窺っている。よく見ると、唇の端を歪めてニヤついているのがわかる。さらには、
老人の向こうの家の窓に、子供の顔が見える。目が合うなり、カーテンを閉めやがるので、
嫌な予感がしたのだ。
  果たして俺は吐き気をもよおし、地面にヒザをついて、仰向けに転がった。背中が熱い。
体中の骨が変形していくのがわかる。気が遠くなるほどの激痛が神経を走る。あまりの頭痛に声が漏れた。
「カッ、カァァァァァ」
  すこし宙に浮いた。袖から出た指先は、両手とも黒い毛で覆われている。俺は……、俺はカラスになったようだ。


ワケ・ワカ・ラン♪
次は「部屋」「Yシャツ」「私」でお願いします。
467名無し物書き@推敲中?:03/01/13 07:34
部屋・Yシャツ・私

お題の3語を見て、妙に気になった。
なぜ、YシャツはYシャツと言うのだろう。
Tシャツなら分かる。広げると、T字形をしている。
部屋の中を漁り、Yシャツを出してきて広げてみたが、Y字形じゃない。
腕の部分をV字形にすればYの字に見えるが、これは反則だろう。
気になると、とことん調べなければ気がすまない性格のわたしは、インターネットで検索することにした。
結果、Yシャツの語源は「ホワイトシャツ」だと分かった。
「ホワイト」ならWシャツではないかと思うが、「ホ」の発音は弱く、「ワイ」と聞こえるのでYシャツになったらしい。
でも、なんか納得できない。というより、おもしろくない。
語源を調べて損をした気分だ。
誰か、おもしろい語源を考えて欲しい。

468  :03/01/13 10:07
窓の外は暑そうだ
部屋のYシャツを着て私は外に出た
469名無し物書き@推敲中?:03/01/13 10:21
私の部屋はYシャツだ。
by ぴょん吉

大阪訳
→「わいのシャツや!」
470部屋・ワイシャツ・私:03/01/13 13:28
国連人類歴史博物館収蔵物第1189427174442号。形態・文書、日記
「 日本人民共和国2003年1月1日.本日も晴天なり。
私の部屋は、殺風景なコンクリート作りの、20階建てのいわゆる「共和国スタンダード
マンション」の最上階にあります。窓から外をみれば、まったく同じ形をしたマンションが、地平線の
彼方まで続いています。いつもの見慣れた風景。しかし、今日はいつもと違うことがあります。
街のあちこちから、白い煙が上がっています。埃っぽい風が、火薬の匂いと銃声を運んで
きます。1945年、ソビエト軍に占領されて以来何も変わらなかったこの国で、何かが変わろうと
しているようです。このマンションも、もう下のほうが燃え始めています。
私は今年40歳になります。共和国工業施設管理事務官である私は、大学を卒業してから
20年、いつも同じスタイルで出勤してきました。無地のワイシャツ、紺のスーツ、
紺のネクタイに革の靴。遺伝子が優秀ではなかったので、配偶者は与えられませんでしたが、
自分の能力の範囲で、自らの務めを果してきました。この部屋はささやかではありますが、私の城です。
若い人たちは変化を望んでいますが、私には新しい時代に飛び込む気力がもはやありません。
この部屋と一緒に人生を終えるつもりです。さようなら」

半年振りの投稿だにゃ。次の御代は、アーメン・ソーメン・イケメンで。
471 ◆0GKoHE9SBM :03/01/13 16:51
>>466
なるほど、中々考えましたね。
中々流れが良い。短い文章の中からでも大きく世界が広がっている。
>>470
面白く読めました。造語が多いのが少し気に掛かりますが、それもまた魅力の一つとなりえますね。
これなら長編のプロローグ・エピローグどちらにでも持っていけそうです。
472名無し物書き@推敲中?:03/01/13 17:16
感想は嬉しいですが、感想スレがありますよ。

ttp://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1037206703/l50 ここ。
473 ◆0GKoHE9SBM :03/01/13 17:17
>>472
すみません、次からこっちでやりますね。
474名無し物書き@推敲中?:03/01/13 23:59
公衆電話の受話器ごしに伝わる無機質なベルの音を聞きながら、
俺は今すぐ床に跪いてアーメンをしたい気分になった。
繋がれ。繋がれ。繋がれ。心の中で必死に祈る。
今この瞬間だけ俺はどんなクリスチャンよりも強い信仰心を持てたと思う。
「はい、もしもし。こちら○○ですが…」
繋がった! 俺は心の中でイエスキリストに感謝の言葉を捧げると、彼女に言った。
「もしもし、△△だけど…、君に言いたいことがあるんだ」
さっきから俺の心臓は悲鳴を上げてる。冷や汗で湿った手を握り締める。
言うんだ。ここで言わなきゃいつ言うんだ。言うんだ!
「君のことが…その…好きだ…。 今から、会えるかな…?」
……。 一度言うと一気に気が楽になったけど、まだ返事が来ない。
ここでOKが貰えるなら、この真冬の寒空の下ソーメンを食べることだって厭わないのに…!
「ごめんなさい…」
ガチャ、ツー、ツー、ツー。彼女の声は無機質な電子音に変わった。
俺は力無く受話器を落とす。元の位置に戻す気力も無かった。
俺がトム・クルーズ並のイケメンだったら彼女の反応は変わっただろうか。
街を歩く幸せそうなカップルを見ると、自然に涙が溢れてきた。
イエスキリストの馬鹿野郎。クリスマスなんて糞食らえだ。

ちょっとソーメンが強引かも。次のお題は「メトロノーム」「CD」「家」でお願いします。
475名無し物書き@推敲中?:03/01/14 00:05
しまった。ラーメンが入っていなかった。
回線切って首吊ってきます。
上の書き込みはスルーしといてください。
476エヴァっ子:03/01/14 04:09
アーメン、ソーメンと絶叫してハルヒコは死んだ。
悪い奴ではなかった。死の一週間前に発狂した後でも、俺の事を覚えていてくれた。
世界中はタルノン星人に侵略されても、お前は俺の味方だよな、とハルヒコは言って、カラカラに干からびた指で俺に掴まった。
俺はどうしていいか分からず、ハルヒコを曖昧に布団に寝かせ、飯を食わせ、風呂に入れ、トイレに連れて行った。
タルノン星人がやってくる、タルノン星人がやってくる、神様助けて、アーメン、ソーメン、と叫ばなければまともな人間にも見えた。
ハルヒコは、死ぬ寸前まで怯え、俺を頼ったのだろう。
それでも俺は何もしてやれなかった。逃げていた。
だが、もう逃げはしない。怖くなんか無い。あるのは、ハルヒコの信頼に対する無念だけだ。

――待ってろよ、ハルヒコ。タルノン星人の空飛ぶ円盤がよく見えるこの丘の墓から、見守ってくれ。

次は「天才」「濃霧」「田中」
「天才」「濃霧」「田中」で書きます
======

手を伸ばすと肘から先が見えなくなるような濃霧の中に僕はいる。
足を踏み出して歩かくっちゃならない。
だけど足を出すとその先は底なしの崖かもしれない。
踏み出した先に土の感触はなく、僕は土の抵抗を感じなかったその足と共に、谷底に落ちていくのかも知れない。
足をズリズリと動かしてみる。腿から下がスウスウして薄気味悪い。
その時、僕の頭にふっと田中のことが浮かんだ。あいつは天才だ。
どう天才なのかって、大学で授業が気に食わなかったからって教授を殴るほどの天才ぶりだ。
僕は別に冗談で言ってるんじゃない。
思ったことをそのまま行動に出せる田中は、僕にとっては天才だ。
僕は、いつも思っていることを行動にするのを躊躇ってしまう。そして大抵、頭で考えただけで終わってしまう。
僕は今、どうすればいいのか考えた。
……あいつならどうするだろう。
「走れ!」
僕は田中の声が聞こえたような気がして後ろを振り返った。
「走れ! 走れ! 息苦しくなるくらい走れ! こんな状況俺は嫌いだ!!」
僕は周りの霧を見まわした。霧は白く濃く、僕にまとわりつくようにそこにあった。
霧は動かない。水の粒子が、だんだんと僕に重くのしかかって来るようだ。僕には、霧の小さい粒子の一粒一粒に悪意が宿っているように思えた。
僕は田中の言葉の魅力に取りつかれ、たまらなくなって、ついに自分の思いのままに、走った。

======
次は「熱い」「おくさん」「電車」
478名無し物書き@推敲中?:03/01/14 23:12
↑「おくさん」は、漢字に直してもらってもいいです。
479葛の葉 ◆Leaf.p8Qac :03/01/15 00:29
>「熱い」「おくさん」「電車」

レコードの針を落とすと、緩やかなピアノ曲が流れ出し、孝之は、安堵の吐息を洩らした。
夕暮れの陽光のなかで、きらきらと輝いてみえる埃の向こう側に、蘭の笑顔がある。
曲は、ショパンのノクターン。 二人が初めて出会った早朝の電車のなかで、音大生の蘭が
足元へ落としてしまった楽譜が、この曲だった。ほぼ満員状態の車内で、通勤途中
の人達の迷惑そうな視線を浴び、汗をかきながら「すいません」と小さく呟き、
一枚一枚拾い集め立ち上がった孝之に、蘭はぎこちない笑顔で、ハンカチを差し出し
たのだった。「ウエディングドレスは無いけれど・・」そう呟いた蘭に、孝之は笑いかけ、
ワイシャツの首元へ人差し指をつっ込んだ。・・・熱い。額から頬へと、ひっきりなしに
汗が伝う。緩くウエーブがかかった髪の毛は、ビッショリと濡れて、頭皮へ貼り付いている。
しかし・・「綺麗だよ。素敵な花嫁だ」孝之は、囁き返した。鈴蘭が散っている、
白い木綿のワンピースを着た欄は、花嫁というよりは年若い奥さんという風情だったけれど、
心から満足をしているように見えた。荒し尽くされた無人の商店のショーケースの奥から、
孝之が、どれだけ苦心をしてこれを探し出して来たのかを、よく理解しているのだろう。
孝之は、無言で白い手袋をはめた右手を差し出した。蘭のきゃしゃな右手が、その上に
重ねられる。窓の外では、まもなく地球を呑み込もうとする凶悪な太陽が、容赦のない
熱気を放っていたけれど ・・・ふたつの生命は、このうえなく幸福だった。

一行(;´Д`)オーバー


お次「オイルランプ」「街路樹」「スケッチブック」
480「熱い」「おくさん」「電車」:03/01/15 00:38
「奥さん、時々思うのですが、何故そんなに濃い化粧をするんですか?
熱い時に、そんな厚い化粧しちゃって。ますます熱くなってしまいますよ。」
「まぁ、失礼ね。美人がさらに美しくなるんだから、別にいいじゃない。」
「確かに、奥さんはとても美人でいらっしゃいます。しかしですね、厚化粧は
あなたの皮膚にとっても毒ですよ。皮膚を老化させる原因にもなるんです。」
「え、そうなの?でもねぇ、薄い化粧だと、どうも映えないでしょ?」
「そんなあなたに、この化粧があります

道を歩けば、いつもこのような売り文句に出会う。
或る者はキャッチセールスの常套句で客を丸めこむ。或る者は自らの悪職に異論を唱えながらも、
自らの明確な道を見出せず、表情暗く、俯いている。
魑魅魍魎としたこの世界では、日常茶飯、当たり前のように横行している。

もし、こう問うたら、彼らはどう答えるだろうか。
「君があと半年後に死ぬのであれば、どう生きるのか?」

きっと、何も答えることはないであろう。そして、私も何も答えられない。
そして俯きながら、今日も電車に乗って、カオスの世界へと繰り出していくのだ。
481480:03/01/15 00:39
お題を忘れ、更には被りましたので、479さんのお題でお願いします。
同じ題なのに、ここまで話が変わるとはw
482名無し物書き@推敲中?:03/01/15 02:27
1行オーバーって・・・。
プラス4行マイナス3行くらいならセーフじゃない?内容よければ行数アバウトでも大目に見るよ。
ぶつかっていこうよ!きっと結果でるにょ!
483名無し物書き@推敲中?:03/01/15 03:15
今日も街中で僕はスケッチブックを開く。変な奴と思われたって構うもんか。
街中に落ちる色んな光を捕らえないのは勿体なさすぎる。
デカいビルにぶち当たって影となって死んでいくのや、
街路樹の枝と葉の隙間を縫って美しい色を見せるのや、
道行く人の人生を照らすのや……そんな光は待ってはくれない、
いつもそこにあるわけじゃない。太陽の光はいつだって違う顔を見せる、
チャンスは一瞬しかない、僕はそいつを捕まえるんだ、今ならきっとできる。

破り捨てられたスケッチブックの1枚が暗い部屋の中でゆっくりと燃える。
オイルランプの火ですら紙を燃やすには十分すぎる。そして彼は気付いていないのだ、
街中を彩っていたあの時の光が今この燃え逝く紙となっていることを、
彼が捕らえようとする物全ては捕らえる仕度の出来ていない時に今まで幾度と無く訪れてきていたことを。

彼が眠りに落ちてしばらく経った後に、オイルランプの火も落ちた。残ったのは燃え殻だけ。


次のお題は「一戸建て」「傑作」「シェルター」
「一戸建て」「傑作」「シェルター」


 郊外に一戸建てを買った。親の遺産で、共に住む者などいやしないのに。
 けれど独り身はむしろ望むところだ。金に目が眩んだような連中の顔を見るのはもう飽きた。
 携えるのは傑作の本、幾冊か手元にあれば、しばらくは退屈もせずに済むだろう。
 最後のダンボールに封をして、引っ越し準備もこれで全て。
 さて明日からは、専用シェルターで、新生活の始まりだ。


ログもよく読まずに発作的飛び入り参加……。
次のお題「秒針」「乾燥」「酸っぱい」
その瞬間はすべてが止まったようだった。
いや、マンガなら時計の秒針が「カッ、カッ、カッ」と鳴る効果音で演出するところか。
実際俺も全身が脈打って、まるで心臓になった気分だった。
これは大事な地区大会。俺が目の前の奴から一本取れば、後輩達の士気も格段に上がるだろう。
間合いを取りながら奴の隙を第六感で伺う。空気がすごく重く感じられた。
乾燥しきった空気を随分吸い込んだらしく、喉がへばりついて気持ち悪い。
まだ取っ組み合ってもいないのに奴の顔にも、俺の顔にも汗がにじんでいた。
テレビ中継で見ればほんの一瞬の出来事だろう。
しかし俺には気が遠くなるほどの時間だ。おそらく奴にとっても。
柔道はただの肉体のぶつけあいだけじゃない。武道一般はおそらくみなそうだが、
相手の気迫というものは目に見えないが一種殴られるよりもたまらない。
あっ、と思った次の瞬間、俺の身体は宙を舞っていた。
「一本!」
やられた。ほんの一瞬だった。俺は軽いショック状態で呆然としながら立ち上がった。
乾いた口中をなめようとしたら、叩きつけられたショックで酸っぱいものがこみあがっていた。

初めて書いてみますた・・。
次のお題「砂上の楼閣」「電球」「廊下」
486うり:03/01/15 12:37
「砂上の楼閣」「電球」「廊下」
「ケンジ、バリケード作れ」ヒロシは学習机を指差す。
オレは机を引き摺ると、外からドアが開かない様にバリケードの代わりにした。
「君達は完全に包囲されている。武器を捨てて大人しく投降しなさい」窓の外で警察の拡声器がわめいている。
オレ達は完全に袋のネズミだった。銀行を襲って金を奪ったまではよかったが、
カーチェイスの挙句、取り壊し寸前のぼろアパートに追い込まれた。
ヒロシは篭城を決め込んで、要塞さながらバリケード作りに励んでいる。
「そんなコトしても砂上の楼閣を作るだけじゃねえか」窓から外をうかがいながら言う。
「縁起でもねえ。何とか逃げる方法を考えようぜ」ヒロシの額から汗が垂れる。
夜になり、部屋は闇に包まれた。
「あの電球つかねえかな」ヒロシは天井からぶら下がる裸電球を指差した。
夕方、すでにオレは電球のスイッチを捻って確認済みだった。明かりは点らない。
そりゃそうだ、こんな取り壊し寸前のアパートだ、ライフラインは止まっているに違いない。
「廊下の奥にブレーカーあったろ。あれ、上げて来いよ」オレがバイトの後輩だからか、人づかいが荒い。
バリケード代わりの机をどけると、そっとドアを開け、廊下をうかがう。人気は無い。足音を忍ばせて暗い廊下を手探りで進む。
あった、ブレーカーだ。手を伸ばす。一瞬火花が散る。
耳を聾する大音響とともにオレの意識が途絶えた。
すっかりライフラインは止まっているかと思ったぜ。しかもガス漏れのオマケつきかよ。
オレはあの世への階段を昇りながら、鼻炎を治しておくべきだったと後悔した。
487葛の葉 ◆Leaf.p8Qac :03/01/15 13:01
>>482 (´∀`)ノオ言葉ニ甘エテ。

>「砂上の楼閣」「電球」「廊下」

男は、いかにも健康そうな白い歯で、3ツ目のそれを噛み砕いた。パリン、と、
小気味よい音を放ち、それは砕けた。生温かさと薄い塩味が、口の中へと広がった。
深夜の社屋。ひっそりと静まり返った廊下で。しゃらしゃらと、衣擦れの音。
それは、社長室の革張りの椅子に、机上へ足を投げ出して腰掛けている男の耳にも、
はっきりと聞こえてくる。男は、ウオッカの瓶を唇に押し当てた。・・・真帆子。
長い長い廊下を、真帆子が赤ワインの色のドレスの裾を引き摺り、ゆっくりと近づいて来る。
胸元に百合のコサージュがついた、シルクサテンのドレス。4年目の結婚記念日に、特注をしたドレス。
あの頃はまだ、俺があいつと結婚した真意を、真帆子は見抜けないでいたよなあ。
そう男は呟き、卑屈な笑みで顔を歪ませた。ヒヒヒヒヒヒ。
・・生前、真帆子が、最も気に入っていたドレス。 
化けて出るにも、装おうとするのが女というものらしい。ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ。
男は、酒で濡れた手を震わせながら、三段目の引き出しを開けた。
明日、二度目の不渡りが出る。世間知らずな老嬢をたぶらかして、
積年の夢を果たし、興した会社は、砂上の楼閣に過ぎなかったというわけだ。
震える手が、黒光りする拳銃を掴む。冷たい金属の感触。
一度こめかみに当ててから・・・男は、だらりと腕を降ろした。
夜明けまで、時間はある。この社屋の地中深くに埋められている、妻の言い分を、
聞いてやるだけの時間は。男は、4ツ目の電球を口に含み、噛み砕き始めた・・・・。

 お次「氷」「新月」「信号の黄色」で!
488名無し物書き@推敲中?:03/01/15 15:16
「お前、また太ったんじゃないのか?」という眞二の一言で、吉子はたちまち不機嫌になった。
これが久しぶりに会う恋人への言葉か?それもこんな場所で。
吉子はこの日のために、お呼ばれドレスを新調した。化粧もいろいろ研究した。
おいしいものでも食べよう、とディナークルーズを予約したのは眞二の方なのに。
ちょっと小綺麗にして褒めてもらおうと思っていた吉子の努力は台なしになりそうだ。
さらに眞二は「よし、お前今日からダイエットしろ!」などど言い出した。
「えー!?なんで!?」と、吉子はありったけの不機嫌さを乗せて返した。
確かにそうだ。自分の体重は明らかに黄信号。もうすぐ赤に変わる信号の黄色だ。
でも、会っていきなり言うことはないじゃない!?と吉子の不機嫌さは怒りに変わろうとしていた。
「新月は新しく何かを始めるのには絶好の日らしいぞ。ダイエットもモチロン」
眞二は吉子の態度など気にも止めず、らしくない雑学を披露して夜空を見上げた。今日は新月。星も都市
の照明でくすみがちだ。一息吸うと、彼は飾りとして机に置かいてある、小さな花氷を指さした。
吉子が怪訝そうに中をのぞき込むと、花の中に混じって指輪が凍っていた。
「痩せなきゃサイズ、合わないんだよ。俺も今日からもっと頑張って、幸せにするからさ、結婚してくれ」
吉子のゆがんだ顔がみるみるうちに明るくなった。

ちゃんと文字列範囲内におさまっているのか・・((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
書いてたらいろいろ広がりすぎて収まりつかなくなった・・・。

次は「永遠」「太陽」「林檎」でおながいします。
 林檎という果物は、良きにつけ悪しきにつけ、神話の舞台に上り続けてきた。
 曰く、アダムの林檎。曰く、ヘスペリデスの黄金の林檎。北欧の神々に永遠をもたらした、生命の林檎。
 今日、ついに我々は生命の林檎を自ら作り出した。
 永遠の命の源を手に入れたのだ。

 我々の人工太陽が変調をきたしたのは、数日前のことだった。燃料のヘリウムに不純物が混入したのか、正体不明の光波が放射されるようになったのだ。
 耐熱耐波動耐放射能の完全防護服に身を固めた技師が二人、人工太陽に接近して調査に当たった。
 しかしその光波−我々はそれを<デファレータ光線>と名付けた−は、防護服を貫通し、技師の全身を洗った。現場指揮官はそれを知るや直ちに技師を呼び戻し、精密検査にかけた。
 結果は驚くべきものだった。光波の影響により、遺伝子構造が完全に変化していた。最も我々を驚かせたのはそうであるにもかかわらず、変化した組織が変化前の組織と親和性をもち、肉体を再構成していることだった。
 技師たちの姿は見る見るうちに変化していった。角質が変化し、赤と銀に輝く皮膚へと変容を遂げた。まぶたがなくなり、淡い光芒を放つようになった。
 すっかり変貌を遂げた技師はなんらの問題もないかのように立ち上がり、高らかに叫んだ。
「デュワッ!!」

 以上ウルトラネタでした。次のお題は「神戸」「コート」「実印」で。
490一文字:03/01/15 23:42
お題「神戸」「コート」「実印」

バッグから実印を取り出す嫁に溜息。かれこれ十年は見た事もない、嫁の恋する娘のような顔に溜息。
自分の懐にスーツの上から手を置いて溜息。コートにぶら下がった値札に溜息。
 今日は妻の誕生日だった。四十を過ぎてもこういうものに胸をときめかす性質は変わらないらしい。
変わった事と言えば分割払いを覚えた事くらいだろう。化粧の腕前も、服の趣味さえ変わっていない。
金遣いの荒さは言わずもがな。それでいて彼が使う分については吝嗇の極みなのだからやっていられない。
 ボーナスの四割はローンで飛んだ。さらに四割はどこに流用されるかも知れたものではない貯金。そして
残りの二割のうち一割が、こうして妻のおおっぴらな浪費に回される。最後の一割については「みんなで
分けて使いましょうね」という妻の一言で空に消え散った。社会人ラグビーの神戸製鋼戦を見に行こうと
思って少しだけ袖に忍ばせてみたのだが、ものの五秒で見破られた。冗談じゃないぞ。この女の目には何か
自分には見えないものが見えるのではないか。そう思うし思い知らされた事も一度や二度ではない。息子に
威厳のある父親の姿を一度でも見せたいと思った昔が懐かしくすらある。やめろ、ズボンで洟をかまないで
くれ。
「あらあらあら! これも素敵だったかしらね!」
 買ったコートを袋に詰めるなり新しい獲物に飛びつく。妻の病気を疑いつつもこれが人生と悟りつつある
自分にねじれた満足感を抱きながら、彼は昼食を理由に妻を止めに入った。

 書いてて切なくなりました。次のお題は「マント」「飛び入り」「はにかみ笑い」でどうぞ。
491葛の葉 ◆Leaf.p8Qac :03/01/16 02:17
>「マント」「飛び入り」「はにかみ笑い」

「フレデゴンドとブリュヌオー」。世界史通の部長、綾音が持ち込んだ、学園祭のための
とんでもない演目に、演劇部の部員全員が、困惑の色を隠せなかった。
「王女様と愛妾が、王様を取り合う話でしょ?王様は、誰がやるの?男子、全然いないのに・・」
2年生の美也子がぼそりと呟くと、一同の視線は、一週間前に転校して来たばかりの1年生、
水内へと向けられた。彼は、そんな女子部員たちには目もくれずに、文庫本を読みふけっている。
野のものとも山のものとも知れぬ1年坊が、この演劇部唯一の男子部員なのだった。綾音は、
彼には目もくれず、「あたしがやるわ。それで良い?」きっぱりと言い放った。そして、いきなり
窓枠へ片足を掛けたかと思うと、その上で立ち上がり、うっすらと黄ばんだカーテンを、レールから
器用に取り外した。カーテンをマントの様に纏い、得意のアルトを振るって、「我が名はクロテール二世!
戦より戻ったぞ!」勇ましい立ち振る舞いで、王様を演じ始めた。女子部員たちは、一斉に立ち上り、
歓声を上げた。水内は、そんな女子たちを、暫く面倒臭そうに眺めていたが「・・・飛び入り参加は
オッケーかい?」ぼそりと呟くと、立ち上がった。「お戻りですの?我が君」しなやかな美声に、
皆は驚いて振り、彼をみつめた。妖艶な愛妾・フレデゴンドに扮した水内は、艶っぽい仕草と、
銀鈴の美声で演技を始め、「ああ、血の匂いが致します。わたくしが拭いて差し上げましょう」
綾音へと、寄り添った。「戦いを止めてはなりません。我が君」水内の指先が、綾音の頬へ触れる。
「ゴートの勇はどちらであるのか、決さなくてはなりません」綾音は、呆然と水内を見つめ返した。
「クロテール。あなたであるのか、弟君であるのかを・・」そして、水内の両腕が綾音の肩へかかり、
抱きすくめるのと同時に、二人の唇が触れ合った。次の瞬間、軽い悲鳴をあげて水内を突き飛ばした
綾音は、頭上に両腕を掲げ、彼に殴りかかった。水内はそれを易々と交わすと、夕闇の迫る廊下へ
逃げ出して行った。わっと泣き伏した綾音へ、女子部員はおろおろと慰めの言葉をかける。
綾音は、なかなか顔を上げることが出来なかった。
偽りの涙の下で、こみ上げてくるはにかみ笑いを、噛み殺すことが出来そうにはなかったから。
492葛の葉 ◆Leaf.p8Qac :03/01/16 02:20
 
・・・完全に文字数オーバーでした。。

 次のお題「金星」「針」「長靴」で!
493名無し物書き@推敲中?:03/01/16 02:40
↑かぎかっこが繋がってて読みにくい
金星の地表はとても熱い。まるでそれは真夏のフロリダの砂浜の上のようだ。
だが、この星にはビーチパラソルの下に寝そべる水着の美女など居ない。人々は厚い厚い底の長靴を履いて、
真っ黒に炭化した道路の上を歩く。
僕は乞食だ。
僕はいつものように黒い地面に硫化ダンボールを敷いて、靴のせいで背の高い人々を見上げながら物乞いを
していた。
真っ白に輝く太陽をバイザー越しに眺めていると、僕は突然、何かの声を聞いた気がした。それは、とても高貴で、
とても上の方から聞こえてきたような気がした。
そして、その声はとても小さかった。
僕は躊躇なくヘルメットを取り、気が付くと十万本の針が刺すような痛みに耐えながらひたすら上を見上げていた。
周りの人々の叫び声が小さく聞こえた。
脳細胞を完全に放射線に焼き切られるまで、僕は上から聞こえる声に耳を澄ませていた。
よくわからないけど、その声を聞いていると、とても安心したから。

次は「コカコーラ」「マフラー」「山形県」で。
495ひとことといわずものもうす。:03/01/16 03:01

>>494は477?
496「コカコーラ」「マフラー」「山形県」:03/01/16 03:04
英語では、マフラーのことをスカーフと呼ぶ。
彼の誕生日に、学校が冬休みの間中かかって、手編みのマフラーを仕上げた。
私にとっては、手編みのマフラーはマフラーであって、スカーフと呼ぶのは
ピンとこない。マフラーで通した。彼も,マイマフラーと呼ぶようになった。
ある寒い日、私たちは川に面した公園のベンチでソーダの缶を手に座ってた。
喧嘩した後の気まずい雰囲気で、どちらも無言だった。私はコカコーラ。
彼はチェリーコークの缶を持て余してた。チェリーといえば、山形県産の
可憐なやつが私は好きだ。チェリーコークは好きじゃない。
彼はついに立ち上がった。私を振り返らずに。マフラーが肩から滑り落ちた。
「あんたのマフラー!」私は後ろから呼びかけた。向こうからやってきた
犬を連れたおばさんが「スカーフが落ちたわよ」と大声で言った。
彼は初めてそれで初めて気が付いた。
数カ月後、私たちは別れた。原因は、カルチャーギャップと言うやつだと思う。
497496:03/01/16 03:07
お題忘れました。すいません。
「ひなぎく」「王室」「ガラス玉」
でお願いします。
498名無し物書き@推敲中?:03/01/16 12:31
ココって感想とかレビューとか書かないの?
それとも専用ウォッチすれがある?
499名無し物書き@推敲中?:03/01/16 12:39
>498さん
感想専用スレです。暇な時にでも書き込んでみて下さい。
ttp://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1037206703/l50 
500名無し物書き@推敲中?:03/01/16 12:43
>>499
良く探せばわかる事だった・・・。ありがとう。