1 :
名無し物書き@推敲中?:
お題は「ドライフラワー」「足首」「紙切れ」だそうな。
前スレから継続。
サチはごく一般的に言って少し変わっている。
鋏で細かく切り刻んだ紙切れを八百屋で貰ってきた段ボールに詰め込む
作業に没頭していたかと思うと突然立ち上がって近所の空き地に行き、
適当な雑草を手当たり次第に引き抜いては持ち帰って来て壁に吊るす。
「何故そんな事をする?」と訊ねても、サチは虫に刺された足首を掻くだけで
何も言わない。数日後、ドライフラワーのように乾いた雑草を小さな両の掌で
粉々に砕き、それを紙切れが満載した段ボールにふりかける。
いかがわしい宗教の儀式、と僕は思ったが口には出さなかった。
サチは段ボールの中を覗きこんで何度も頷き、そして笑みをこぼす。
彼女と同棲しだして一ヶ月経つが、そのようなことを何度も続けている。
押入れは紙切れと乾いた雑草の欠片が詰まった5つの段ボール箱に占拠されている。
「どうしてそんな事をする?」僕は何十回となく言ったであろう言葉を
サチに投げかけた。するとサチは眉間に皺を寄せつつ、「理由がないといけない?」と
怒鳴った後で台所に走り、マッチを手にして戻ってきた。
●「雷雨」「晴天」「公園」でお願いします●
4 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/20 21:00
「晴天です」と、テレビが言ったから。外に遊びに行った。
「雷雨に注意」と、テレビが言ったから。家でじっとしていた。
そんなとき、ふと気づいた。テレビを消した。
伸びをしてから、大きく息を吸う。
・・・走ってみようと思う・・・
こうやって、誰かがきめた日常にあてはめられて、
ひとに動かされてる自分が嫌だから。下に流れる砂粒になるのは嫌だから。
・・・行けるとこまででいい。走ってみようと思う・・・
・・・結局、この公園までしか走れなかった。走るのなんて久しぶりだったしね。
でも、いいんだ。公園で一人ニヤニヤしてる。
自分が少し、好きになる・・・
●「魚」「手紙」「セピア色」でお願いします●
もう何年実家に帰っていないだろうか。
仕送りもなくなり、生活も苦しくなってきていた。
「あしたは、とうとう食べるものがない・・・。」
そう思ったところに、チャイムの音。
「今ごろ、誰だろう?」
そうおもって、ドアを開けてみた。
すると、宅急便のお兄さんがにこやかな笑顔で立っていた。
「生物です。ハンコをお願いします。」
シャチハタをもってきて伝票に押す。
久しぶりだな、この行動も。
さて、箱を観察してみると、送り主は実家の父だった。
内容物は・・・「魚」!!
「うちの親らしい・・・」
開けてみれば、見事なカツオが入っていた。
カツオを取り出すと、白い封筒がビニール袋に包んであった。
それは、父からの手紙であった。
俺は、それを開ける前に、写真を持ってきた。
父と母の新婚旅行の写真を持っていたのだ。
思い出をセピア色で染めて、俺は封筒にはさみを入れた・・・。
●「学校」「池」「練習」でお願いします。●
6 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/20 22:27
「私たちはドライフラワーね」
結婚して5年目のある日、妻はそう私に言った。
日曜日の午後、話があるという妻の言葉にテーブルを挟んで向かい合って座った直後だった。
「上辺は綺麗な花だけど、乾ききってしまった……」
離婚して欲しい、そう言って差し出された用紙を見ても、私は自分でも意外など冷静だった。
いつか、この日がくる。私の中にその予感があったからだ。
妻と私の仲は冷え切っていた。妻に男がいるのは気づいていた。そして、妻も私が会社の女性の部下と関係を持っていることを知っている。
ただ、世間体ゆえの「夫婦ごっこ」。それが、ここ2年間の私たちの生活だった。
妻に言われるままに離婚届に記入し印を押した私は、まがりになりにも共に過ごした5年の行き着く先が、この紙切れ一枚、という事実に妙なおかしみを感じていた。
「もう一度、やり直せないかな」
「自分でも信じてないくせに」
離婚届を受け取り、居間を出ていく妻。その妻の白い足首が、視線を落とした私の目に入った。
あれから10年。不思議にその妻の足首が、今でも鮮やかに脳裏に浮かぶ。
次は「ペルシャネコ」「聖書」「ネックレス」でお願いします。
7 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/20 22:28
前スレに書き込めなくなったのを分からず、書いてしまいました。
ズレてしまって申し訳ない。
8 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/20 23:10
●「学校」「池」「練習」
「あたし、妊娠なんかしてないわよ!」
思わず息をのんだ。まぎれもなく恵子だ。しかも恵子がキッと睨み
つけているのは、数学の小野寺先生だ。
女子バスケ部のキャプテンに、恵子が一週間も練習に出てこない、
対抗戦も近いのにこれでは困る、今日連れてこないとレギュラー
外すからね!と宣言されて、困り果てて学校の裏にある池まで探しに
来たところだ。恵子がよく授業をさぼってぶらぶらしている場所だ。
ああ、しかし、何という修羅場(?)に遭遇してしまったのだろう。
「あら、実加。あんたそこにいたの」
気配を察したのか、ついに恵子がこっちを振り向いた。
ご自慢の茶色い髪の毛が、風に揺れている。いつも思うんだけど、
こんな田舎の高校では珍しいくらい綺麗な子だ。・・・しかし、ここだけ
の話だけど、惜しむらくは知性がない。
「じゃっ。僕はこれで」
小野寺先生は、そそくさとその場を立ち去った。
「ふん」恵子は鼻先でせせら笑うように後姿を見送った。
「ばかな男。万が一を考えて婦人科に行けってさ」
「恵子、あんた・・・」
「コーラでアソコ洗えば、だいじょうぶに決まってるじゃん!」
私はすってんころりんと池に落ちそうになった。
お題は「6」のお題で
「ペルシャネコ」「聖書」「ネックレス」
俺の隣りに住んでいるイラン人は日本語が上手い。しかし、話を
するとお国自慢に終始するのが難点だ。
「聖書はもともとイランの北の方で生まれますた。旧約聖書です」
「ん……ああ、そうなのかもな(まあ、よくわからんけど)」
「イランの男、皆あっちの方強いです。イランの有名なネックレス
あります。ツブツブの奴です。それを巻き付けると、女喜びます」
「そ、それは凄いね(男二人でそんなこと急に云われてもねぇ)」
「イランの猫、ペルシャネコです。見た目日本の三毛猫同じ、でも、
イランに住んでるからペルシャネコです」
「い、いやそれはさすがに違うんじゃ……」
「博多のラーメンは全部博多ラーメン。博多で博多ラーメン下さい
叫ぶのはアホ。教えてくれたの、あなたです」
「いや、だから、それとこれとは話が違うって」
もう、毎晩この調子。それが伝統で3年ぐらいはネタが切れ無い
らしい。で、こうやって自慢の絨毯で今夜も飛んでいると……
次のお題は「豚」「鯖」「丸」で。
10 :
「ペルシャ猫」「聖書」「ネックレス」:02/09/21 01:52
いつかはきっと戻って来てくれると信じていた。
戦争なんかに私たちの愛は消せないと思っていた。
「大丈夫、僕を信じて」
あなたは、最後に笑ってそう言ってくれたのに、
結局、私の元には返ってきてくれなかった。
昨日、あなたが付き合って3年目の日にプレゼントしてくれたペルシャ猫が、
死んでしまったわ。
あのペルシャ猫だけが私の唯一の救いだったのに。
もうあなたとの「糸」は全て途切れてしまった。
でも、なぜ私はまだあなたを信じているの?
十字架のネックレスを下げ、聖書を抱いて祈っているの?
でも1つだけ、私は知っているわ。
あなたが今日もあの女と笑っていると言うことを。
昔、私に向けていてくれたのと同じあの笑顔で…。
ねぇ、あなたは知ってる?
今日も私があなたの隣の部屋にいるということを。
いつもあなたのそばにいるということを…。
あなたはいつ、私に気づいてくれるのかしら。
ほんとにこんな女がいたら怖いですね(w
次のお題は「流鏑馬」「MDプレーヤー」「シャーペン」でお願いします。
かぶっちゃいましたね。
すみません。
次のお題は9さんの「豚」「鯖」「丸」です。
「豚」「鯖」「丸」〜あるいはメタミステリ〜
豚のようなクズがいた。私はためらいなくそいつを殺し、アリバイトリックのた
めに丸の内線に乗っていた。だが今、私の前に皇太郎と名乗る男がいる。
彼は淡々とトリックを暴き、私が犯人と結論づけた。……しょせん作者に与えら
れた力じゃないか。普通に考えれば私が捕まる事はない。自分でもよく分からない
考えが、なぜか浮かんでくる。……ふいに、そんな私を見た名探偵が語調を変えた。
「こんなトリックがばれないとでも思っていたのですか。私が作者に解決する力を
与えられてるなら、あなたは物語の終わりまで逃げる力を与えられている。本来
の警察の力なら必ず捕まる。この世界はパズルです。あなたの動機や存在など、
小説の中の無軌道に刃物を振り回す若者と変わりはしません」……
目がさめると、私は満員の電車の中にぽつんと立っていた。なんだか夢でも見て
いた気分だ。軽い空気音とともに列車が止まり、私は丸の内の構内に吐き出された。
駅をうごめく人の群れ。ふいに人垣が割れ、死んだ鯖のような目をした男が前に現
れた。その手は鱗のようにぎらぎらと光っている。その光が私の首に突き刺さる。
風景を染める赤。なるほど、世界は名探偵の言う通りにできていた。
さて、次なるは「島」「時計」「猫」
13 :
島・時計・猫:02/09/21 07:51
南洋に浮かぶ孤島は資本主義社会とは隔絶した存在だった。
拝金主義にまみれ下克上の精神が渦巻く世の中を倦み嫌ったある思想家が、
己の遺産や財を投げ売り、その島にユートピアを創造した。
島には貨幣が無かった。物欲を満たす為の手段としては物々交換が広められた。
俗世間を見限った者たちがこの島を訪れ、独自の共同社会を作りだしていった。
島で生活するには、交換するための「商品」が必須であったのだが、
しかし、その「商品」作りを怠るものが現れた。
その男はそれまで猟師として生計を立てていたのだが、ある日突然、なりわいを放棄した。
漠然とした倦怠感が男を襲った。
男は妻と一人娘の為に、ひとまずは手持ちの衣服やら時計やらを「商品」として用いたのだが、
そんなものは高が知れていた。すぐに「商品」は尽きた。
飼い猫を「商品」としてもみたのだが、米三十キロにしかならなかった。
いよいよ困った男は10代半ばの娘を「商品」とした。牛二頭分になった。
その蓄えが尽きると、男は愛妻を売りに出した。米一年分にしかならなかった。
時が流れると、妻のおかげで得た米も底が尽きた。
しばらくは飲まず食わずで過ごしたのだが、もう辛抱できなくなると、
男はその身を「商品」として用いた。
男の価値は――秋刀魚三匹だった。
次は「ダンボール」「お惣菜」「象徴」でおねがい。
14 :
ダンボール・お惣菜・象徴:02/09/21 08:49
コンビニエンスストアで立ち読みをしていた男がいた。
男は一見すると普通の青年ではあったが、常人とは言い難かった。
少なくともストアの店長はそう思っていた。何故なら男は
まる三日間じっとその場に立ちつくし、一心不乱に一冊の本を読んでいたからだ。
その間に男が食事をとることもなく、寝ることも当然なく、座り込むことすらなかった。
店長は雑誌コーナーから離れた位置でお惣菜を並べながら男の姿を絶えず観察していた。
時には不要になったダンボールを店の外に運びながら男の横顔をちらと盗み見たりもした。
新刊の週刊誌を並べる作業の合間には、男が読んでいる本の題名も確認した。
本の表紙には太い黒字のゴシックで「大金持ちになるには?」と書かれていた。
店長は週刊誌を並べ終わるとレジに戻り、金持ちになるには、か、と呟いた。
それは店長にとっても重要な命題であった。コンビニの店長とは不遇な貧乏人の
象徴のようなものなのだ。三人の息子と年老いた両親の顔を思い浮かべながら、店長は
溜め息混じりに首を振り、暫く考え、そして店内に響き渡る大声で男に向かってこう言った。
「お兄さん、大金持ちになるにはどうすればいいかわかったかい?」
すると男は首だけをこちらに向け、答えた。
「使わなければ減ることはない」
●「桜」「下り坂」「黄色」でお願いします。●
15 :
即アポコギャル:02/09/21 09:39
16 :
桜・下り坂・黄色:02/09/21 10:38
たとえば下り坂の途中で桜の木があったとしよう。
紅く染まる葉は風でそよぎ、ふいに音を鳴らす。
冷たい秋の朝の通勤途中で歩を緩めてすこし見あげては、また早足で抜けていく。
ただ自分の居場所としての憧れを昔から感じていた。
営業で、ある閑静な住宅街を歩く。
俺は腕時計で時間を確認しながら早足で駆けるように。
走らないと間にあわないかな。
緩やかな下り坂を急いで降りていると、視界に懐かしい光景が飛びこんできた。
デジャヴのような。
思わず立ちどまって見あげる。
我にかえった俺は坂下の交差点の信号機が黄色に変わったのに気づく。
時間を確認してからあわてて走る。
次は「紅茶」「左手」「還る」で。
17 :
「紅茶」「左手」「還る」:02/09/21 17:11
左手が痛い。昨夜の配達で、割れ瓶を始末したからだろうか。
牛乳配達をしてもう5年。もはや仕事は私の体の一部になったようだ。
夜明けの少し前に仕事を終え、夜が明けきるまでは車の中で呆けている。
カンに入った紅茶をちびちび飲みながら、
丘の上から夜明け前の町を眺めてみる。
ここは田舎だから夜空の空気は澄んでいて、
私の目の前はいつも神々しい風景に充ち満ちる。
星のきらめき、頬をなでる風、明けゆく夜空。
見ていて飽きない、、、
普通の配達人は、配達の最初から最後まで走って飛ばして
仕事を終えるとさっさと帰って寝てしまうそうである。
だが私の場合はそれをしない。
下手に早く還ると、他の人と鉢合わせる。
口下手な私は、常々それだけは息苦しいと思う。
こういうのを、偏屈と言うのだろうな。
良いではないか。
そのお陰で、こうした自然の芸術を解するようになったのだから。
会社勤めの頃の私は、そういった人並みの美意識を持つ気にもなれなかった。
これって、成長のひとつだろう?
一度しかない人生。
のろのろと歩くのも一興というものだよ。
花を愛で、蝶を微笑(わら)い、風に身をまかせ、月を愛す。
いつかは人も愛せるようになればいいがね、、、
-----------------------------------------
拙作失敬、、、
次は「曲」「風」「運命」でおながいしまふ。
18 :
1日1書 ◆QaWqYmNw :02/09/21 17:48
「曲」「風」「運命」
突然の風は僕にある種の運命的な決断をさせた。
その風はまるで、僕には心地よい曲のように響いた。
自然の力はすごいと言うが、風の音が心地よい曲に聞こえる事で、運命的な決断をしてしまう。
これは僕にとってはすごいことではあるが、自然のすごさなのか?
わからないな。けれど、たまには人生の大事な決断を、風の音に任せて見るのも良い気がした。
僕は「チョコナッツでお願いします」と運命的に決断したアイスの種類を告げた。
※なんていうか、ひどいな・・・・・・お題「バカ」「涙」「踏み切り」
19 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/21 19:08
私は、バカだ。死ななきゃなおらないほどのバカだ。
そんなことを考えながら歩いていると、差し掛かった踏切がちょうど、下りはじめていた。
赤い点滅信号が私を誘っている。ヘッドフォンから流れる「新世界」が、心地よかった。
私は、線路に横たわった。
地面から伝わる振動が大きくなる。
振動が最大になったとき、頬に涙の感触があった。
その涙が乾く前に、振動は消えていった。
「・・?」
回送電車は、踏切の半ばまできて逆進し、私の体は、あと10センチのところで、車輪に届かなかったのだ。
堅く縮こまった体をようやく起こし、ふいに、笑いが込みあがった。
本当にバカだ。死ぬに死ねない。人気がなく、誰にも見られなかったのが、幸いだ。
なぜか、天啓を受けたような不思議な感覚があった。
私は、生きるべきなのだ、生きることを神に許されたのだ。幸福感があった。
立ち上がろうとして、シャツの裾が線路と枕木の間に挟まっているのに気がついた。
「新世界」はクライマックスだ。
地面から伝わる振動がだんだんと大きくなり、まるでコンサート会場にいるような臨場感があった。
シャツはどんなにしても引き剥がすことができなかった。
お題「手紙」「恋人」「雨」
20 :
「手紙」「恋人」「雨」:02/09/21 21:49
占い師フランソワーズ井出の家は、横浜山手の奥まった場所にある。
時代に取り残されたような古い洋館をやっと探しあてたのは、
雨の降る午後だった。長い年月の風雨に耐えてきたと思われる
木製のドアを叩くと、占い師本人が迎えに出る。黒い服の老婆だ。
「はじめまして。四時に予約した森本と申します。こちらは
紹介状でございます」
フランソワーズは知る人ぞ知る占い師である。恐ろしいほど
よく当たるとの評判で、政治家や芸能人とのつながりも深い。
紹介がなければ面会さえできないクラスの占い師である。
むっつりとした表情で、受け取った手紙にちらりと目を走らせた
フランソワーズは、二階にある占い用の部屋に私を案内した。
部屋の照明は、一本のロウソクのみ。占い師はろくに話も聞かず
タロットカードを切り、皺だらけの手ですばやく並べていく。
絞首刑にされた男や、寄り添う恋人達、鎌を持った死神など、
私にはまったく意味不明な絵柄のカードばかりだ。
フランソワーズはおもむろに口を開いた。
「すぐにここを逃げなさい。あなたに大きな危機が迫っている」
「は。それはどんな危機ですか?」
思わず身を乗り出した瞬間、私が腰かけていたソファの下の床が
抜けた。
21 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/21 21:53
(;´Д`)んっ?次のお題は?
22 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/21 22:06
「兎」「髭」「尾」で。
23 :
「兎」「髭」「尾」:02/09/21 23:32
冷房でひんやりと冷やされた部屋に、俺は一日中缶詰だった。
短編小説を書くための真っ白な原稿を前に、俺はただひたすら苦悩していた。
…ネタがない。
意味もなくペンを転がしてみたり、窓の外をぼんやりと眺めていたその時、
『ピーンポーン』と鋭いチャイムが鳴った。
(ヤバイ、編集者か)と焦った俺の気持ちとは裏腹に「宅配便で〜す」
と妙に間延びした声。
俺は一息つきながら、三文判を取り出し、のろのろと玄関に出て行った。
受け取ったのはやたらと大きな荷物。
送り主は見なくてもわかる。…それは里の両親からだった。
中は案の定、親父とお袋の作った野菜だらけだ。
俺はその中のとうもろこしを手に取ると、昔のくだらない遊びを思い出していた。
そういえば、よくこのふさふさしたやつで、「髭」とか「仙人の眉毛」
とかやったけ。
俺の心はどんどん小学生の頃に帰っていった。
隣の家の悪友と雷親父の家の鶏を追いかけ、尾を引っこ抜いて、
こっぴどく怒られたこと。
学校の裏の池で、放課後によく魚を捕まえたこと。
好きだった女の子と兎小屋の兎を世話したこと。
帰りが遅くなると、「ご飯よ」とお袋が呼びに来たこと。
仕事が終わった親父と一緒に将棋を指したこと。
そういえば俺、ここ3年間、実家に帰ってなかったなぁ。
「セピア色の思い出」という名の箱に閉まっていた感情が、
一気に俺の中に溢れかえった。
…この原稿がすんだら一度帰ろう。
俺はゆっくり原稿用紙の一行目に題名を記す。
――トウモロコシオバケの髭
やたら長くてすみません。
次のお題は「流鏑馬」「レコード」「スイカ」でお願いします。
24 :
「兎」「髭」「尾」前編:02/09/21 23:40
一匹の兎が野に棲んでいました。
色は茶色い、どこにでも居る野兎でした。
鼻をヒクヒクさせながら、今日も餌を探しに野を駆け巡る。
だけど、仲間の兎たちはこの兎と一緒にいようとしません。
それでも兎は気にならなりませんでした。
だって、自由に野を駆けて餌を独り占めできるのだから。
そんないつもの日。
兎が菜っ葉を見つけます。大きな大きな菜っ葉です。
兎は喜び勇んで摘み取りに向かいました。
「おお、大きな菜っ葉だな。これでおいしいサラダが作れるぞ」
人間の声に兎は驚いてしまい、思わず泣き声を出してしまいました。
「ん? 兎の鳴き声がするな」
人間は、立ちすくんでしまっている兎にゆっくりと歩いて来ました。
「おお、可愛い野兎じゃないか。どおら」
兎は人間に抱きかかえられてしまいました。
兎は気が気じゃありません。食べられてしまっては、もう野を駆けることも、
おいしい野菜を食べる事も出来ないのです。
「よしよし。食べないからそんなに震えないでおくれ。
おや、まあるい尻尾はどうした?」
人間は兎に聞きました。
兎はなんのことだろうと、自分の尻尾を見ようと顔を向けます。
すると、なんということでしょう。
丸くて可愛い自慢の尻尾がお尻から取れているではありませんか。
兎はそれを知ってしまい、また鳴きだしてしまいました。
「おやおや、可哀想に。よし、こうしよう。
尻尾がまた生えてくるまで、私の家にいなさい」
兎はどうして人間がそんなに優しくするのか、分かりません。
でも分かっていることがあります。
それは、この人間にはたくさんの髭が生えているということです。
兎はそれが優しい髭に見えました。
25 :
「兎」「髭」「尾」中編:02/09/21 23:41
髭の人間と、尻尾のない兎の新しい生活が始まりました。
髭の人間は朝から家を出て、夕方帰ってくるとたくさんの野菜を抱えて帰ってきます。
その中には見たこともない、嗅いだこともない匂いのする食べ物もありました。
兎はその中から、野菜だけを分けてもらえました。
最初は、食べられるのかどうか不安でしたが、
しばらくたつと、すっかり信用し、たくさんの野菜を食べるようになりました。
でも、あの見た事ない食べ物だけは人間がおいしそうに食べていました。
人間の手当てのおかげで丸い尻尾が少しづつ、生えてきた頃。
一匹のまだら模様の兎が尋ねてきました。
よく、ここが分かったね。
うん、みんなに訊いたんだ。だけどみんな行くなって。
どうして? 髭の人間は僕に優しいよ。食べないよ。
でも、やっぱり人間は人間だよ。
じゃあ、助けに来たの?
それもやめろって言われたの。丸い尻尾がない奴なんかといたくないって・・・。
ふ〜ん。
ねえ、逃げようよ。食べられちゃうよ。
ぼく、ここにいる。
兎は尋ねてきた兎を返してしまいました。
そして、自分の尻尾が生えてきていることも言いませんでした
26 :
「兎」「髭」「尾」中編2:02/09/21 23:43
とうとう、尻尾が生え変わった日の事。
「もしもし。おお、久しぶりだね。・・・はっはっはっ、髭は健在だよ。
え? 兎の肉でシチュー?」
兎はビクッと鼻をひくつかせました。
耳を折って、何も聞こえないようにしました。
やっぱり食べられてしまうのかな。兎は涙があふれてあふれて止まりません。
それも気づかずに人間は兎を見て、にっこりと笑いました。
あの笑顔を、あの優しい髭を見ながら野菜を食べていた日の事が、
たくさん浮かんできました。
涙をぬぐおうと、耳から手を離しました。
「・・・肉ならここにあるから、それを食べよう。ああ、料理は任せてくれ」
あの、変な匂いのする食べ物は肉だったのです。
みんな、みんな、髭の人間に毎日毎日狩られて食べられていたんです。
み、みんな!
兎は一目散に開いている窓から飛び出しました。
いつもの野を駆け、みんなのいた巣に一生懸命向かいます。
みんな! みんな!
すると、まだら模様のあの兎が巣から出てきました。
27 :
「兎」「髭」「尾」後編:02/09/21 23:44
ねえねえ、みんなは?
逃げられたのね、よかった
みんなは!
わっ。どうしたの?
みんなはどこ?
みんな、あっちの広場で遊んでいるよ
え?
二匹の兎は、広場に向かいました。
すると、みんなは楽しそうに遊んでいるではありませんか。
てっきり、あの人間に食べられてしまったのかと思った兎は、
わんわん鳴きだしてしまいました。
みんなが理由を聞いても、兎は答えられず、ずうと、ずうと、鳴きつづけました。
「お〜い、お〜い」
「おじさん、どうしたの?」
「いやなに、びっくりさせてやろうと思ってな。実は、兎を飼っていたんだ」
「ええ! どこどこ?」
「それが逃げて行ってしまったらしい」
「なあんだ。つまんないの。おじさん、早くビーフシチュー作ってよ」
「ああ。上等の牛の肉だからな、うまいぞ〜」
一匹の兎がいました。茶色い兎です。
でも、もう丸い尻尾は生えています。野を駆ける仲間もいます。
そして、ときどき、兎は立ち止まります。
大きな大きな菜っ葉が生えていた場所に。
読み返すと誤字が・・・うぅ・・・。
次のお題
「星」「野原」「自転車」
30 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/21 23:56
お約束
1:前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。
2:小説・評論・雑文・通告・??系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
→3:文章は5行以上15行以下を目安に。←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←←
4:最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。
5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
6:感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。
31 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/22 00:08
かぶった場合、前のお題が優先なので、
次のお題は「流鏑馬」「レコード」「スイカ」で。
32 :
「流鏑馬」「レコード」「スイカ」:02/09/22 00:53
もう社会人三年目になる僕は、数年ぶりに学校の宿題なんてものを解いていた。
きっかけを提供してくれたのは、歳の離れた従姉妹。
久々に家を訪ねた僕を、彼女はとびっきりの笑顔で迎えてくれただけでなく、
もう9月も半ばだというのに季節外れのもの ── 夏休みの宿題 ── 付きで
歓迎してくれたからだ。
「ねぇ、『やぶさめ』ってどう書くの?」
目の前で『国語U』に取り掛かっている彼女が訊いてくる。
「こうだよ」
応えながら、解答欄の横に鉛筆の跡が付かないよう、筆圧を弱くして『流鏑馬』と書く。
彼女はそれを見て「ふ〜ん」と呟いた後に、シャーペンを走らせながら
「流鏑馬って何?」と訊いてきた。
「流鏑馬って言うのは、馬に乗りながら弓で的を射る一種の競技みたいなやつ。
僕もよく知らないけど、何人かがやって競い合うんだ」
「タイムを?」
「どうなんだろ。タイムかもしれないし、上手い下手を競うのかもしれない」
「じゃあ、レコードとかもあるのかな?」
もちろん円盤の方ではなく、記録の方である。
「夏にもやるの?」
「さぁ、どうかな」
僕は数学の問題を解きながら、適当に返事する。
「もし夏にやるならさあ、的もスイカとかだったら面白そうだよね」
今年の夏はスイカ割りでもしたのかもしれない。
もう夏じゃないのに“夏休みの宿題”をやってる彼女は、楽しそうにそう言った。
すみません、お題を書くのを忘れてました。
次の方は、「ぬいぐるみ」「テキスト」「ゴミ箱」でお願いします。
34 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/22 02:39
「お日様のにおいのするお布団が好き」
今年で7歳になる姪が初めて私の家に泊まりに来た。
今日から姪――綾乃と言う――の両親が揃って出張で家を空けるためである。
綾乃の祖父母の家はどちらも遠く、その結果、姉曰く、「まだ社会人に成り立てほやほやの頼りない」私にお守役が回ってきた。
私はひそかにため息をつく。実は子供嫌いなのだ。
そして、綾乃と接するのも苦手だ。
今、「綾乃との接し方」なるテキストがあるものならほしい。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんの布団、お日様のにおいがするー」
しかし、私の今の問題の種である綾乃自身はそんなことお構いなしだ。
初めての場所にお泊りするのがよっぽどうれしいらしく、お気に入りの熊のぬいぐるみを抱いてはしゃいでいた。
「あー」
綾乃が大声を上げたので、今度は何かと思ったら、はしゃぎついでにゴミ箱を倒してしまったらしい。
私は苛立ちながらごみを片付けていると、脇から小さな手が伸びてきて一緒にごみをひらい始めた。
「お姉ちゃん、ごめんね」
綾乃の顔は罪悪感がにじみ出ていて、今にも泣き出しそうだ。
「綾乃、悪い子だね。この間も先生に怒られちゃったし」
私は、綾乃のその横顔が、私の苦しいことがあるときの横顔そっくりなのに気づいた。
「そういえば、綾さぁ、今年で1年生になったんだっけ」
私はポツリとつぶやく。
「私もさ、今、1年生なんだよね」
綾乃はわけがわからないらしく、怪訝そうな顔で私を見つめる。
「会社でね、私、一杯失敗するし、上司にもよく怒られるけど、でも一生懸命やるのが大事なんだと思うよ。
失敗は悪いことなんかじゃない。
綾は今、一生懸命お姉ちゃんに謝ってくれてるでしょう?
その気持ちが大事なんじゃないのかな」
私は綾乃の顔が明るくなっていくのがわかった。
案外、この子を好きになるのは、造作ないことかもしれない。
途中で送られてしまいました(;A;)
先ほどのお題は「ぬいぐるみ」「テキスト」「ゴミ箱」です。
次のお題は「MDプレイヤー」「野球」「林檎」でお願いします。
37 :
最近改革路線:02/09/22 10:59
「MDプレイヤー」「野球」「林檎」
「6回の表ワンアウト2、3塁のチャンス。バッターボックスには今日当たっている3番吉田が入ります…」
掃除をしていて見つけた、ラベルのついていないそのMDには、
昔僕がまだアナウンサーを目指していた頃に録音した草野球の実況が入っていた。
どうせ一人だからとそのまま掃除を続けたが、MDプレイヤーから聞こえてくるつたない
自分の実況を聞いていると、懐かしさと恥ずかしさで自然と顔が緩んでしまう。
掃除も手につかないので、少し休もうとソファーに腰をかけると、突然MDプレイヤーから女の声がした。
「まだ練習してたんだ。ちょっと休んでさ、林檎食べようよ。」
それは2年前に交通事故で死んだ姉の声だった。姉は僕の夢を応援してくれていて、
頼みもしないのによく練習についてきていた。両親には反対されていたので、
そのころの僕にとって姉の存在が凄く助かっていた。
結局、僕はアナウンサーにはなれなかったが、姉はそれを知ることもなく死んでしまった。
それから最後までMDを聞いてみたが、姉の声はその部分だけだった。
「ちょっと休んでさ、林檎食べようよ。」
これが、写真以外に残った唯一の姉の記録だと思うと涙があふれた。僕はこみ上げてくる感情に逆らえずに
MDを取り出してゴミ箱に投げ捨てた。
そして少し考えて、MDを拾ってラベルを貼り、「りんご」と書いて机の上に置くと、声を殺して泣いた。
うーん、書いてる途中で全然違う話になってしまった…
次のお題は、「水車」「迷路」「人形」でお願いします。
38 :
水車・迷路・人形:02/09/22 11:33
気がつくと根津は茶色いオーバーコートを羽織り、これまで見たこともない地に伸びる
一本の道を無心で歩いていた。不思議と疑問に思うことなく、まるでそうすることが
当然であるかのようにして、根津は眼前を見据えながら歩を進めていた。
両端に立ちはだかる半透明の壁の向こうには、人形のような影がうっすらと見える。
時折辺りを見回しつつ歩き続けていた根津は、ある時巨大な水車に出くわした。自分の
背丈の3倍はありそうな円柱がこちらに向かって回転している。その下は、底が見えない
湖であった。対岸に渡るには水車を伝わなければいけない。覚悟を決め、根津は水車に
足をかけた。と同時に、まるで遊歩道を逆走するかのような負荷を体中に受けた。
少しでも力を緩めると、すぐさま湖に落ちそうである。コートが水飛沫によって色を
変えていく。だが根津はお構いなしに走り続けた。必死、という言葉以外に表現の
しようがないくらいに走った。しかし、まるで出口のない迷路を彷徨っているかのように、
いくら走ったところで根津が対岸に渡りきることはなかった。走りながら根津は思った。
私は自分の意志で走っているのだろうか? もしかして誰かに走らされているのでは
ないだろうか? と。その時、根津は声を聞いた。そして直観的に、それが神の声で
あることがわかった。私を走らせ、同時に私を救う神の声だと。
「お母さん、ハムハムが嬉しそうに水車を回してるよ」
●「屋根」「雪」「砂浜」でお願いします●
39 :
「屋根」「雪」「砂浜」:02/09/22 22:15
ライフセイバーとして一夏をS海岸で過ごすことが決まったとき、
俺は心が躍ったものだ。雪のように白い砂浜と透明度の高い海水。
日本であることがにわかに信じ難いほど美しい海水浴場だからだ。
毎日こんな場所で泳げて日給までもらえるとは、苦労して資格を
取った甲斐があるというものだ。
今日も暑い一日になりそうだ。俺は監視所からいつものように
海岸を見張る。異状なし。そのとき、けたたましい音を
立てて一台のゴルフカブリオレが堤防のそばに止まった。
カーオーディオからはヒップホップが大音響で鳴り響いている。
俺は何となくいやな予感がした。ライフセイバーの仕事は水難
救助だけでなく、酒に酔ったまま海に入ろうとする人を注意したり、
海辺の危険物、つまり空き缶などを取り除くことも含まれる。
休暇で都会からやってきた若者グループというのは、そういう
仕事を着実に増やしてくれるありがたい存在なのだ。
彼らはまるで騒々しくなければ生きている実感がしないかの
ように、熱いトタン屋根の上の猫みたいに、海辺で一日中
大騒ぎを繰り返すのだ。
次は「法則」「パーティ」「どん底」
40 :
「屋根」「雪」「砂浜」:02/09/22 22:48
「屋根」「雪」「砂浜」
同じ季節が25回巡ってきて初めて、美雪は父がなぜこの名前に固執したのか
を理解できたような気がする。四半世紀を沖縄で過ごした父も母も、美雪をこの
世に生む前は真っ白の雪に囲まれて冬を越すのが常だった。
屋根の上でシャベルを片手に微笑む父。
写真の中の父は重労働であったはずの雪降ろしも、我が子をあやすような幸せ
があったのだと語っている。今は亡き父母の子に対する深い愛情を「美雪」と言
う名に感じながら、美雪の心は砂漠のように荒涼としていた。
「絶対復讐してやる」
両親を死に追いやったあいつらを生かしてはおかないと、美雪は降り止まぬ雪
に熱く誓った。
次のお題は、「曲」「夕日」「合流」でお願いします
41 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/22 22:51
あ、ごめんなさい。ダブった。
次は上の方の「法則」「パーティ」「どん底」で
どうぞ。
42 :
「法則」「パーティ」「どん底」:02/09/22 23:44
『死の舞踏会』
生のどん底で繰り広げられる狂気の宴。
僕はこの絵の前で
「もしかしたら僕も、この絵の中でなら楽しく生きられるかもしれない」
そう感じている。もちろん・・・・・・
「ふ〜ん、こんな絵が好きなんだ」
不意に声を掛けられ、振向くと同級生の顔があった。
「まさかキミのようなタイプの人間が、律儀に学校のプリントで紹介された美術館に来るなんて。
う〜ん妙な法則があるのかも? ・・・・・・いや、まぁいいか。
ところでキミはこの絵に
『彼らの心にはいまだ卑しい希望の光が差し込んでいるのだろうか?』
とでも思っているのかい?」
「いっ・・・・・・、あ・・・・・。」
「おや失礼。驚いて失語症か。そんなタイプのキミなら・・・
『・・・・・・この絵の中なら僕も楽しく生きられるかもしれない』ぐらいの感想を抱いてそうだな。
ふふふ、試してみるといい。」
そう言うと同級生はピンク色のチケットを差し出した。
――もちろんパーティーなんて言うのは僕には関係ない話
そんな現実がこの瞬間もろくも崩れ去ったのだった。
次のお題「ゴミ箱」「オレンジ色」「料理」
【感想文スレの
>>761さんよりヒネリをキボンヌされましたので
続きを書きます。長くなってごめんなさい。】
俺は監視を続けながら、カブリオレのほうを横目で観察していた。
男女四人が嬌声を上げながら砂浜に駆け降りてきた。
その中の女の子の一人に見覚えがあった。黒い細身のノースリーブ
を着てシャネルのサングラスをカチューシャよろしく頭に掛けた、
モデルみたいに垢抜けた子だ。あいにくどこで会ったのかまるきり
思い出せない。あんな美人を忘れるとは不思議なことなのだが。
その子が気になってちらちらと盗み見していると、ふいに目が合った。
向こうもびっくりした様子でこちらに近づいてくる。俺の顔が
はっきり見える距離まで近づくと、いきなりモデルは素っ頓狂な
声を張り上げた。
「祐一!祐一じゃなかね。あんたそこで何ばしよっとね!」
「そ、そういうお前は・・・!」
幼なじみの・・・そう、いつも洟をたらしていたマサ子であった。
44 :
1日1書 ◆QaWqYmNw :02/09/23 00:49
「ゴミ箱」「オレンジ色」「料理」
「さてどうしたものか?」
僕は思わず、冷気を逃げることを気にせずに冷蔵庫の中を覗きながら呟いた。
何故僕がそう呟いたこと言えば、僕は料理を作るつもりで、冷蔵庫を開けたのだが、
妻の管理してたその冷蔵庫らしき物は、僕にはゴミ箱にしか見えなかった。
おそらく以前は綺麗なオレンジ色だった思われるゼリーには、
サンタクロースをなぜか思い出させるカビが生え、野菜室の下には、汚い水まであった。
妻が出て行って、まだ一週間ほどしかたっていないのだが、もうそんな状態である。
最も妻が出て行く以前から問題があったのかもしれない。
僕はとりあえず、大きなゴミ袋を用意して、妻への未練を断ち切るように、
次々と冷蔵庫の中のごみを掃除していくことにした。
※なんか、妻が出てくる作品よくかくな。お題「トイレ」「夏休み」「神社」で。
45 :
「ゴミ箱」「オレンジ色」「料理」:02/09/23 01:26
空がサーモンピンクに染まった夕暮れ、美雪はゆっくりとした足取りで家路についていた。
大嫌いな学校も終わり、このひと時が美雪は一日のうちで一番好きだった。
しかし、今日の美雪の心はこの鮮やかな夕焼けでも満たされなかった。
美雪は立ち止まって、オレンジ色に燃える太陽を見つめながら、
一つ小さなため息をつく。
「やっぱり、渡せなかったなぁ」
美雪は、勉強ができなかったし、美雪のクラスは落ちこぼれの集まりで、
教師達が影で『生徒のゴミ箱』と呼んでいるも知っていた。
しかし、美雪は唯一つ、料理だけには自信があり、
料理研究部の部長をしていた。
「部長、何してるんですか、杏ケーキの箱抱えて?」
突然、後ろから声を掛けられ、危うくケーキの箱を落としそうになりながら、
美雪は後ろを振り返る。
笑った時にできるクリームをちょっと凹ましたようなえくぼがチャームポイントで、
料理研の後輩の歩美だった。
「なんでもないの。…あの夕日のオレンジ色があんまりきれいだったから」
歩美は微笑みながら素敵なえくぼを浮かべた。
「ホントにきれいなオレンジ色。彼がオレンジ色って大好きなんです。
あの杏ケーキも渡したら、とっても喜んでくれました。好物だって。
部長の提案のおかげです」
歩美の屈託のない笑みに美雪も弱弱しく微笑む。
(私の大好きな彼と大好きな後輩の歩美は恋人同士だもの。
このケーキを私が渡せるはずないわ)
やがて美雪は歩美と連れ立って歩みだす。
もう日は完全に落ちて、辺りは薄暮色のカーテンに包まれていた。
次のお題は「アスファルト」「ボール」「けんだま」でおねがいします。
かぶり、すみません。
次のお題は44さんの「トイレ」「夏休み」「神社」で。
ーーヤバい漏れそうだ。
雅志は夕日に染まる住宅街で、急な尿意に襲われていた。
アルバイトのちらし配りで来た初めての街。
ポストからポストへ歩く距離は合計するとかなりの距離になるはずで
足の裏が酷く痛む。しかし今は痛み所ではない、21にもなってお漏らし
だけはしたくない。辺りを見渡すが店がある気配すらなく、あるのは
同じ形をした団地と道沿いに並ぶケヤキの木だけだった。
雅志はトイレを探す事を諦めて、立ちションができそう場所を探すが、
何も無い開けたこの道は立ちションには向いていない。
八月の湿気の中を雅志は小走りで先を急いだ。
雅志が、人に見られてもいいから立ちションをしようと決意した頃、
その神社はあった。雅志は石の階段を駆け上がり、鳥居の前で回れ右を
して、チャックを下ろして歩いてきた道に向かってペニスを放り出した。
鳥居の前にはチェーンがしてあってそこには「夏休みの為立ち入り禁止」
と書いてあったからだ。雅志は夏休みを過ごす神様を想像しながら、
黄金水を垂れ流した。
すいません次のお題書くの忘れてました。
「プリンター」「俳優」「缶」で。
49 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/23 14:09
博人は哀愁漂う9月の浜辺に座り込み、近くの自販機で買った缶ビールを飲んでいた。
夕暮れの橙が海面を照らしている。辺りには8月の海水浴客が残していったのであろう
薄汚れたビーチサンダルや浮き輪のものと思われる破片がそこらじゅうに点在していた。
波音が絶えず彼の鼓膜を震わせ、時折海岸沿いを疾走する車のエンジン音がそこに混じる。
博人は五年ぶりにこの砂浜を訪れていた。そして、ここは彼の故郷であった。遠くから
眺めると、まるで華やかな桃源郷のような大都市東京、多くの友人がまだ見ぬ成功を
胸に抱いてその地に向かったように、博人もまた、高校を卒業後、俳優になる為に
東京へ向かったのだった。だが当然のことながら現実は厳しく、結局博人は夢叶わず地元へ
舞い戻ってきたのだった。他の者も例外なくそうであった。ミュージシャンを目指して
いた幼なじみは現在隣町でパソコンの周辺機器、例えばプリンターやスキャナー等を
製造する工場で働いている。絵描きになると言っていた同級生のひとりは保険の外交員の
仕事に就いたらしいし、服飾デザイナー以外の仕事など考えられない、が口癖だった
昔の恋人は東京に住み始めた最初の年に結婚し、今は旦那の実家の酒屋を手伝っている。
各々の抱く夢が泡沫に変わったように、砂浜に佇む博人も現実を見る時期にきていた。
飲み干したビールの缶を力一杯海に投げ、彼は過去との決別を誓ったのだった。
●「羽」「蜘蛛」「踵」でお願いします●
50 :
コギャルとH:02/09/23 14:12
51 :
「羽」「蜘蛛」「踵」:02/09/23 16:50
ショーパプ「ドラゴンガールズ」は新宿高層ビルのレストランフロアにある。
同じ女装した男のいる店でも二丁目の隠微な雰囲気とは打って変わって
観光客でも楽しめる健全な雰囲気を売り物にしている。もっとも僕は、
二丁目の隠微なお店などまだ足を踏み入れたことはないのだが。
自己紹介しよう。僕は草野トオル18歳。子供の頃から歌や踊りが三度の
メシより好きで、それもなぜか女の格好をして演じるのが止められなく
なったバカである。4歳からバレエを習っていたのだが、初めての発表会の時
王子様の役を振られそうになって大泣きし、無理矢理白鳥のパドドゥに加えて
もらった過去を持つ。受験勉強にも身が入らず毎日ぶらぶら遊んでいた時、
この「ドラゴンガールズ」の求人広告を見て飛びついたのが運の尽き。
店のトップスターで超一流の踊り子マリリンさんにしごかれる毎日だ。
「トオル!それじゃもう一回、通し稽古いくわよ!」
来週の演目はマリリンさん主役の『蜘蛛女のキス』。僕はマリリンさんの
蜘蛛の糸に絡め取られる哀れな蝶々の役だ。今日は羽をふんだんに使った
衣装を着て練習しているのだが、この衣装が重くて思うようにアクションが
決まらない。マリリンさんのドスのきいた罵声が容赦なく飛ぶ。
「ストップ、ストップ、ストップ。トオル!何度いったらわかるの。そこは
もっと感情こめて頂戴。こうよ、こう」
マリリンさんは分厚い化粧の顔を苦悶と恍惚にゆがめて模範演技を見せた
あと、踵を返してCDラジカセのボタンを押しに行った。厳しい先輩だが
おかげで半人前の僕も何とかこの道で生きていく格好がついたのだから
絶対に逆らえない。次はもっとうまくやろうと悲壮な決心で出を待つ。
次「隠れ家」「犠牲」「荘厳」
52 :
隠れ家、犠牲、荘厳:02/09/23 18:48
俺は全てを失った。
出版会社をリストラされた後、全てを犠牲にして立ち上げたネットショップ
が失敗。大量の健康食品の在庫と、端末、ケーブルの中で、一畳程しか、
自由なスペースは無い。
しかも癌を宣告され、寝たきり状態だ。
俺の精神を支えていた物、それは、この小さな水槽だけだった。
紫色の妖気ただよう水槽の照明の中には、グッピーや、エンゼルフィッシュ
が、お気楽にただよっている。
俺はいろんな、ミニチュアを設置していた。かえるの置物、赤い小さな橋
陶器の民家など。。。
俺はその5センチ程の民家が今の俺の隠れ家だった。
見つめていると、まるでその中にいるかの様な錯覚に陥り、気が休まるのである。
そういえば子供の時、俺の家にも同じ様な水槽があった。
いじめられて帰った薄ぐらい夕闇の中、俺はこうして同じ様に、水槽を見つめて
いたっけ。
「なんにもかわっちゃあいないじゃないか?」
俺のほほを一筋の涙がながれた。
ふと、気付くと、赤い橋の上にちいさな人の様なもやが見えた。注意を
してみると。なんと子供時代の俺の姿だった。
そして一匹のグッピーの背に乗ると、ゆらゆらと水槽を漂いはじめた。
やがて、子供の俺を乗せたグッピーは岩場の穴に入って行く。
のぞきこむと、そこには荘厳な竜宮の様な町が光輝いていた。
俺は意識を集中して、遠い町の全貌を見ようとする。。。
すると、不思議なレンズの様にその町が広がってくる様な気がした.....
後日、借金の取り立てに来た男が荒れ果てた部屋にやって来た。
しかし、そこにあったのは、枯れてしまった水槽と熱帯魚の死体のみ。
肝心の男の姿は全くなかったのである。
次「山」「灯」「少女」です。
53 :
山、灯、少女:02/09/23 22:02
今も折に触れ思い出す、あの日のことを。
私は七歳だった。
郷里の村はあの頃すでに、過疎で消えかかっていた。
「山へ行こう」
村で過ごす最後の夏休み、暇を持て余した私は突然思い立った。
平生、臆病者で母の傍を離れるのを怖がり、小学校に通うことすら毎朝愚図った私。
なぜあの時、山へ行こうなどと思ったのか。
もしかしたら、呼ばれていたのやもしれぬ。
あの少女に。
手を繋ぎ、麓から登って来る山狩りの灯を二人で見つめながら、彼女は言った。
「大人に成ったら、また来るがよい」
あの手の温もりを今も思い出す。
次「食事」「異名」「開拓」でお願いします。
54 :
山・灯・少女:02/09/23 22:20
山麓の豪邸の部屋に少女がひとりで遊んでいた。
少女自ら布を裁ち、縫いあわせて服を作っていたのだ。
少女は常に裸だった。
また、さまざまな服を着こなしていた。
壁の大きな鏡の前で衣装を纏ってポーズをとっては、またすぐ脱ぎ棄てて服を裂く。
その繰りかえしで、色とりどりの布が華やかに床を彩っていた。
世界はその部屋がすべてであったし、実際流行のモードはすべてそこから発信されていた。
ある日いつものようにあるデザイナーがその部屋を訪れると、部屋の隅には灯がいくつも並んでいた。
部屋の真ん中で裸の少女が倒れていた。
すぐに火は部屋を包みすべてを燃やした。
すべては黒く焦がれて、すべてを失った。
翌年のパリコレでは並ぶ灯の間を映える紅の衣装を着たモデルが歩き、翌年のモードになった。
時代は移り、しだいに人はその部屋のことも事件も忘れた。
次は「ジャズ」「小雨」「蒼」で。
先を越されてた。
お題は53ので。
56 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/23 22:32
人
ノ⌒ 丿
_/ ::(
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( :::::::;;;;;;;)
\_―― ̄ ̄::::ヽ
ノ ̄ :::::::::::::: :::ヾ,
( ::::::::::::::;;;;
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人__......::::::::::::::::::::;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ノ_
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入 " __ :::: '"ゞ'-'_;;;ノ,,,,,
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57 :
1日1書 ◆QaWqYmNw :02/09/24 00:00
「食事」「異名」「開拓」
目の前で次々と食事をたいらげる後輩を見ながら、僕は財布の中を思わず覗きこんだ。
確かに、彼の就職が決まったら好きなだけ奢るといったのは僕だった。
けれど僕は失念していたんだ。彼の口癖が「俺の胃袋は宇宙さ」であり、
近くのお好み焼き屋のマスターのケンさんが「伊達に人間ブラックホールの異名を持ってないね」
と言いながら、通常では五人前に当たる「ヘビーネギ焼き」を彼の前に置いてる姿を見たのを。
でも僕は彼の姿を見ながら、もう気にするのをやめた。彼はこれから、社会に出て、
しかも新たな分野を開拓していく先駆者になるのだった。
僕の知ってる彼は、常に前向きであり、未来の不安なんか微塵もないタイプだった。
しかしその彼が就職活動をする中で悩み、そして一度は挫折して、最後に勝ち取ったのだ。
なんとなく彼の就職が自分のことのように嬉しく、財布の中身を気にするのがバカバカしくなった。
僕もその日は久しぶりに学生に戻った気分で、首元に巻かれる窮屈なネクタイを外し、
いつまでも彼と食って飲んで笑っていた。
※「鏡」「鮫」「始発列車」
「鏡」「鮫」「始発列車」〜あるいは消えた凶器〜
冬の始発列車は陽も昇らぬうちから車庫を出て、目的の駅まで向かう。各駅停車の
必要もないので自然と速度が出る。
運転席からは薄暗くて外の様子はほとんどつかめず、ただ線路だけがヘッドランプ
を鏡のように反射し輝いている。だが、その輝きは急に湧き出た朝霧にさえぎられて
いく。続いて警笛と金属の悲鳴が朝の静寂をかき乱した。
始発電車に轢かれた死体は右腕と両足を切断され、まるである映画で鮫に襲われた
人間のような姿だった。だが、死因は轢死ではない。所見では鈍器によって撲殺され、
線路に放置されたらしい。しかし死亡推定時刻と轢断の時間は極めて近接しており、
柵を越えて被害者を放置するような時間がどれだけあったかは疑問である。
死体の近くには運転手がいて、線路全体は後方から車掌が見張っていた。そのどち
らも不審な物を見ていないと証言した。
そこで警部補は被害者は自殺であり、轢かれた衝撃でどこかに頭をぶつけたのでは
と考えた。しかしそのような形跡は見つからない。苦しませないため、それとも補償
を怖れて、運転手がとどめをさしたとしても凶器はない。名探偵皇太郎の答は……
「答は目の前にあるでしょう。切断された足の片方です」
迷走。次なるは「墓地」「空気」「電波」
59 :
墓地・空気・電波:02/09/24 09:12
さて、いま君は薄ら寒い墓地を歩いているのだろうが、果たしてその場所が何処であるかを
理解しているのだろうか? きっと君は何処までも続く墓標の群に多少の嫌気を感じつつ、
終わる事のない道を彷徨い続けているのだろうが、どういった経緯でその場所を訪れ、
何を目的としていたのかを忘れているのではないだろうか? いや、別にしつこく
問い詰めている訳ではないよ。ただ、君の不安を汲み取る度に私も悲しくなるだけなのだよ。
確か今日で2年になるのかな? その間に君は胸のポケットに差し込んでいた携帯電話で
誰かとの連絡を試みたかもしれないが、あいにく電波の届きが悪くて遂には諦めて
しまったのであろう。私にはわかるよ。そこでは携帯電話という概念が通用しないのだからね。
全身を包み込む静寂の空気に疎ましさを感じてはいないだろうか? 私にはわかるんだよ。
そこはあまりにも静かすぎるからね。まあ、何れにせよ、想像してほしい。君が歩いている
墓地が、何を意味しているかを。先祖の墓を供養しにきたのではないことくらいは
わかるだろう? 竹の子採りに来ているのでもない。若い君のことだから、寝ている間に
姥捨て山に連れて来られたわけでもない。そうだろう? ……ところで私は今、強制的に
押し込められた薄暗い部屋でこの手紙を書いている。届かぬことは承知で、君への手紙を
書いている。寂しいだろうが、もう少し待っていてくれ。私もそろそろそちらへ向かうから。
●「ジャンク」「椅子」「マッチ箱」でお願いします●
「ジャンク」「椅子」「マッチ箱」
夜、ゴミ捨て場のような廃墟で、俺は椅子に座っていた。
「んでさぁ、リーダーはどう思うッスか?」
向かいの、ゴミ山に座っている茶髪が俺に話題を振ってくる。
他にいる十五人も、俺を見つめる。
こいつらは全員、俺の作ったジャンク・ショップというグループのメンバーだ。
星のマークの入ったマッチ箱がメンバーの証で、俺のは特別に紅い星が描かれている。
「ん? ああ、屋根を作るって話だったか? お前ガキっぽいから秘密基地みたいなの作る気だろ」
「そんな事無いッスよ!」
茶髪はそう言うが、そうでもないだろう。それに俺も秘密基地みたいなのにするのもいいと思ってる。
ビルの隙間にあるこのゴミ山は、この地方の気候もあってあまり雨に合わないが、雨にあうとあたりはぐちゃぐちゃに濡れる。
ビルとビルの間に板を張るだけでもいいのだが、どうせなら本格的にやろうという奴等がいる。
「そこらはお前達に任せるよ、俺は図工が苦手だからな。作るのはお前達だ」
投げやりな感じに言って、俺は夜空を見上げた。
疎らにいろんな星が浮かんでいたが、紅い星だけはそこに無かった。
「天井を作ると、星が見えなくなるんだよなぁ……」
誰にも聞こえないように呟いて、俺はしばらくぼんやりとしていた。
次は「若者」「老人」「早口言葉」で
「若者」「老人」「早口言葉」
「国の宝物殿に収めらる種類の回顧話をしたところで誰もが貴様の残り少ない人生を
哀れんで見逃す訳じゃねぇんだぞ?」と、若者は一息でそう言った。
「そんなに私の話は嫌いかね?」老人は眉間に皺を寄せて訊ねた。
「嫌いだ。苦し紛れに高層ビルの屋上から飛び降りた詐欺の常習犯が家を出る前に
書き残した遺書を実家宛てに投函する姿を想像して思わず眼に涙をためる振りをする
ワイドショーのインタビュアーが締めに『この国は病んでいる』云々と知ったげに
コメントする時に使う明らかに不自然な面持ちくらいに嫌いだ」早口言葉の達人なのか、
スラスラと若者はそう言った。
「君が私の話を不快に感じたのならば謝るよ」ポツリと老人はそう呟いた。
「いや、謝られたって問題は何も解決しない。いいかい? カビが生えたような話を
されても通らないものは通らない。戦後日本は食料難で配給物資が少なくて八人兄弟の
末っ子だった私は食べ物にありつけない日も珍しくなかったが東京オリンピックが
開催された頃から急速に国自体が豊かになって食べ物に困ることもなくなったのは
私のような団塊の世代が一生懸命働いたからだ、という話をされても、万引きは万引きだ。
もうすぐ警察が来るからそこでジッとしてろ」
次「奇妙」「純真」「怠惰」で。
62 :
「奇妙」「純真」「怠惰」:02/09/24 21:47
銀座のスナックに勤めてしばらくすると、私は実家に居づらくなり、
通勤の便を言い訳に、カオルさんのマンションに居候させてもらうこと
になりました。バツイチの中年女性と駆け出しホステスの奇妙な共同生活です。
一緒に生活してわかったのですが、カオルさんは本当にきっちりした人です。
「人間は怠惰になっちゃおしまいよ」が口癖で、炊事・洗濯・掃除、
ひとつも手を抜きません。料理の腕もたいしたもので、休みの日には
凝った料理を作って仲間を集め、ホームパーティを開いたりします。
カオルさんの仲間には、フリーター、トラック運転手、大学講師、デザイナー
などなど、実にさまざまな職業の男と女がいます。そんな席で、若い女と
見ればすぐちょっかいを出したがるセクハラ系の奴から、私をさり気なく
守ってくれるのも、カオルさんです。
「ちょっとちょっと。亜矢子はまだ純真なんだから、やめてよ」
「おや、カオルさん。最近あっちのほうがご無沙汰で、人の恋路が
恨めしいんじゃないのかい?」
「見損なってもらっちゃ困るわね。あたしは男に不自由してないの」
そんな軽口を叩くカオルさんに、私は女っぽさと男っぽさの両方を見て、
彼女が多くの人に慕われる理由が、何となく納得できるのです。
★次は「角度」「復活」「こじつけ」でお願いします。
63 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/24 23:48
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄」
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄」
―――――――――――――‐┬┘
|
____.____ |
| | | | 逆転サヨナラ負けするなら
| | ∧_∧ | | 投げ捨てろ!
| |( =゚ω゚ )つ ミ|
| | / ⊃ ノ | |
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セリーグ優勝
>>63 お題使って書いてくれるならもっとよかったのに(w
65 :
「角度」「復活」「こじつけ」:02/09/25 11:33
幼少時代に消え去った類い稀な純粋の復活には、相応の儀式が必要であった。
乳蛋白色に染まった汚れ多き現在の次郎にとって、その復活はもはや必然性を
伴っていた。途切れることなく次郎の頭内を席巻する「握り、反復運動せよ」という
言葉は彼の精神から平衡感覚を奪いとり、飯を口に放り込む作業にすら障害を来すまでに
なっていた。つまり、次郎は若輩者であるが故の悪しき観念に縛られていた。
そして、純真無垢の幼年期に有していた白紙の脳への回帰が成功すれば、そのような
悩みなど解決する筈だと思うに至ったのであった。だが回帰は困難を極めた。幼年時代の
遊びに没頭すればよいのではないか、とこじつけて閑散とした深夜の公園でブランコを
揺らしたりしたが、濁った目の公僕が黒い棒を片手に話し掛けてきただけだった。彼が
通っていた保育園に行ってもみたが、園の外周に屹立する分厚く高いレンガと門番の男に
よって、祈願の成就はならなかった。その間、言葉は容赦なく次郎の頭内を支配した。
遂には立つ事もままならなくなり四畳一間のアパートにうずくまった次郎は、清らかなる
過去へは一大決心的な仰々しい儀式によってのみ到達できるのであろうと解した。何かを
得る為に別の何かを惜しげもなく捨てるような儀式、先ず第一歩目は己の指を切り離す
行為から始まる。思うが早いか、台所から持ち出した錆びた包丁を畳上の右手指に
振り下ろした。次の瞬間、脅迫的な声は跡形もなく消え去った。同時に次郎は、その言葉が
他ならぬ自分自身のものであった事に気付いたのだった。後悔の念によって刃先を自らの
腹にあてがった次郎は、畳上に転がる芋虫のような指を眺めつつ、そっと力を入れた。
次「オレンジ」「風」「瞳」でお願いします。
66 :
「オレンジ」「風」「瞳」:02/09/25 12:39
昨日の朝と何も変わらない。
熱いコーヒー、バタートースト、それに果物が一人用の
白いテーブルに美しく並べられている。
窓からさす太陽の光の角度もいつも同じ。その中に浮かぶ
ほこりの数さえ、昨日と変わらないような気がする。
晃一はオレンジを手に取り、ナイフをスッと上下に走らせた。
硬い皮もこうやって亀裂を入れてから両側に力を込めると
難なく中身を取り出せる。
そのまま1房を口に入れ果汁を味わいながら、隣室の女に
思いをはせていた。
20代後半だろうか、晃一より少し若い女が一人で住んで
いるようだった。
昨晩友人と騒いでいたが、今朝はもう出かけたのか静まり
返っている。数日前、ドアを同時に開けたせいで、一瞬女
と目が合った。
白く透き通る肌と真っ黒のショートヘアがエキゾチックな
顔立ちによく映え、晃一は視線を離すことができなかったが、
女の瞳に晃一はまったく映っていなかった。
「あの女もこんな風にスーッと切ってみたらオレンジ色の
果汁が出るかもしれない」
異常に潔癖な晃一は、想像の中でさえ、女から出た果汁が
こぼれてもいいようにとタオルケットを床に敷きつめている。
ふと窓からいつもと違う風が流れてきた。蜜の香り。
「あの女が戻ってきた」
果物ナイフを握ったまま、晃一は無意識のまま立ち上がった。
67 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/25 12:42
お題を忘れていました。次は
「中国語」「雰囲気」「丸み」でお願いします。
中国黒社会の晩餐会は客の種類を選ばない。
有力者の利益を脅かす者や役に立たない者は、招待状を受け取れなくされるだけだ。
部下を恐れされる為に週一で処刑命令を出す老板、定年間近で地位を金に変えようという高官、
誰もかも相手が油断を見せれば、何もかも掠めとっていくような人間だ。
うちの組の様な厳粛さはないが、とても新顔の日本人にとって気軽に発言出来る雰囲気ではない。
花を咲かせる商談に聞き耳を立てながら食事をして過ごす。全く意中がつかめん連中だ。
今食ってる謎の肉と同じで、正体を多種多様なスパイスで隠してる。
晩餐も佳境に入り、客達が引きあげていく。俺もほどほどに帰らねば。
「老板、いつお帰りになられるのですか?」
こいつは朝方、館に少女を連れて来たから泊っていくつもりかもしれない。
少女の中国語は訛りが強く、まだ女性らしい丸みを帯びていない痩身。
まあ、貧しい地方から買われて来た、といったところだろう。
「酒は旨いしもう少し居たいね。君はこの肉はどう思う?」
「とても美味しいです。ところでお連れの方とお楽しみになられるのなら部屋を取りますが」
老板の目は急に鮮やかさを増し。
「その話しは置いておいて、前回の珍味はどうだった」
「はい、象の鼻や猿は個性的な味でした」
「ふむ、中国人は四本足の物は机以外は何でも食すのだよ。 ハハハ」
全く変なもの食わせやがって、おまえは2本足だって食うような性格だろうが。
それに比べれば、今食ってる正体不明の肉切れの誉め所を探すぐらいどうと言う事はない・・・、
俺は何時の間にか其の肉から視線を外せなくなっていた。
俺の頭に嫌な予感が生まれ膨らむ。口元に肉を運ぶのを止め、肉と意味ありげな
笑みを浮かべる老板の顔とを見比べた。
「少し脂身が足りないが、満足してもらえたかね?」
69 :
「中国語」「雰囲気」「丸み」:02/09/26 00:07
「みなさん!」
夏の教室。国語の先生は、生徒に向かっていいました。
「今日は国語の最後の授業です。明日は新しい中国語の先生が来るはずです」
みんな、一生懸命聞いてます。
睡眠装置と呼ばれた国語の授業が、こんな雰囲気で行われたのは初めてでした。
「みなさん。私は、私は…」
先生は黒板に大きく、日本特有の丸みを帯びた女子高文字でこう書きました。
「がんばれニッポン」
翌朝、新しく来た校長は、国語の先生にこう言いました。
「それでは、いつもの授業を初めて下さい」
「?」
「中国は世界の中心。日本は元から中国の一部です。日本語も中国の方言で…」
いかん、とても太刀打ちできなん。先生はくじけそうになりました。
とはいえ、考えてみれば下着も野菜もパソコンも既に全部中国製。トホホ…
校庭には、戦車が数台じっと待機しておりました。
※なんかよくわからない
次のお題は:「人魚」「木星」「空中飛行」でお願いします。
70 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/26 17:39
NASAの開発した有人木星探査船「人魚2号」の完成は世界中をあっと
驚かせるニュースであった。
最高マッハ8で大気中を空中飛行できるほか、宇宙空間では秒速100万q
での航行が可能という性能を持っていたが、常人ではあまりの加速Gにより、
耐えきれないのがネックだった。
そこで、宇宙飛行士として白羽の矢が立ったのが自前の緩衝材、すなわち
ぜい肉を豊富に持つ相撲取りである。
厳正なる審査の結果、モンゴル力士・朝青龍が選出され、半年間の訓練を経て、
朝青龍は木星へと飛び立っていった。
人類初の木星有人探査だけにトラブルが予想されたが、優秀なスタッフと
朝青龍の頑張りにより、致命的なトラブルに見舞われることもなく、朝青龍は
無事地球に帰還した。
彼の無事を祝う暇こそあれ、記者会見が開かれた。
「実にスムーズに計画が進みましたが、なぜだと思いますか?」
「ガスの星だけに、土が付きませんでした」
※我ながらつまらん
次のお題は「食欲」「日本一」「タオル」
71 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/26 21:36
外では右翼の街宣車が演説していた。
隣の病院が経営不振で閉鎖になったらしかった。
そんな話をしていたが間が持たなくなったのでテレビをつけた。
大食い日本一のコンテストをテレビでやっていた。
「すごい食欲だね。」
「そうだね。」
「訓練とかどうやってやるのかな。」
「さあね。生まれつきじゃないの。」
「興奮して汗かいてきちゃった。タオル取って」
「はい。」
「ありがとう。」
※次は「うずまき」「フランス人」「特許」でお願いします。
72 :
1日1書 ◆QaWqYmNw :02/09/26 22:52
「うずまき」「フランス人」「特許」
「しかし不思議なもんですね教授」
「なにいがだい?」
「いえ、このうずまき模様を起点に、180度回転させて、裏から見るだけで、全てが分かってしまうんですから」
「まぁな。しかしこの渦巻きを使った暗号見た文字は、彼らの専売特許みたいなもんじゃしな」
私はその教授の言葉を聞きながら、ブラシを使い、やさしく土器についた土を落していた。
「いえそうとはいえ、教授の発想力がなければ、あのフランス人のバカ学者に先を取られてましたよ」
「そういってやるな。彼は彼でがんばっとったじゃないか」
好々爺と言う感じで下品に笑いながら、心にもないことを教授は言った。
やはりこの男は、知性と想像力、そして発想力はあるが、この業界にはいらない。
僕は、装飾品であり、実用性が無いと判断した、宝石まみれの短剣を使い、彼を殺すことに決めた。
ただ殺すのではなく、彼の間違った判断で実用性が無いと言われた短剣で殺す事で、
彼の死を侮辱してやるつもりだった。
僕はクリーニングに勤しむ教授の後ろから静かに近づき、腕を振り上げた。
この腕を振り下ろせばさよならですね。さよなら、お父さん。
※しかし、知らない分野を書くと、いかに取材したり調査が大事かわかる。
お題は「夕日」「コーヒー」「夏休み」で。
73 :
「夕日」「コーヒー」「夏休み」:02/09/27 00:48
久しぶりに縁側の雨戸を開けてみた。
この雨戸を開けたのは一体何年ぶりなんだろうかとふと思う。
少なくとも、俺がこのばあちゃんの家に下宿するようになってからは、
一度も見たことがない。
俺は縁側に座って、ヒグラシが寂しそうに鳴くのをただぼんやり聞いていた。
俺の脇のアイスコーヒーの入ったグラスが、その暑さに耐えられないように汗ばみ、
中の氷がカランと小さく音をたてる。
俺が小学生だった頃は、まだばあちゃんも元気で、この縁側はいつ来ても窓が開け放たれ、
風鈴がチロチロと鳴っていた。
この縁側で、俺はシャボン玉を飛ばしたし、スイカの種飛ばしや花火なんかもよくやった。
夏休みにここに来るのが楽しみで仕方なかった。
いつから俺はこの縁側で遊ばなくなったのだろうか。
しばらくして、俺はゆっくりと立ち上がり、雨戸を閉めようとした。
しかし、そこで俺は背後の気配に気づいた。
「ひさしぶりだねぇ、ここを開けたのは。ほら、夕日がきれいなことだよ」
そこには普段寝たきりのばあちゃんが、ニコニコと微笑みながらた立っていた。
「…きれいだね」
俺は相槌を打ちながら、夕日が映るばあちゃんの横顔を見つめていた。
…もう少しだけ、もう少しだけここを開いておこう。
次のお題は「朝」「テニス」「箱」でお願いします。
74 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/27 02:11
あまり気乗りしないまま、友人に誘われた僕は、朝靄の中テニスコートへと車を走らせた。
彼らに言わせると、テニスをしている時の僕が一番輝いて見えるらしい。
しかし、それが一体何の意味を持つと言うのだろう?
どんなに周囲の人間にもてはやされたとしても、
それは所詮、テニスコートと呼ばれる箱の中だけのことだ。
日常生活がうまくいかず、最近の僕はそんなことばかり考えていた。
※駄文スマソ
次のお題は「催眠術師」「猿」「天井裏」でお願いします。
75 :
「催眠術師」「猿」「天井裏」:02/09/27 02:37
俺が天井裏で生活し始めて、1ヶ月が経った。
最初は、この奇妙な生活に友人たちもかなり驚いていたが、
最近は慣れてしまった様だ。
特にサルそっくりの顔をした友人の一人は、
面白がっていつもここに遊びに来た。
唯一俺がこの生活を始めて驚かなかったやつだ。
まぁ、こいつも相当変わったやつで「催眠術師」
なんていうのを職業にしている。
こいつの催眠術はおもしろくて、友人たちも気の毒に何人か犠牲になった。
どうやらこいつ、嫌いなやつほどひどい催眠術をかけているらしい。
そういえば俺も1ヶ月前「催眠術をかけてやる」と言われて、
目の前で振り子を振ってきたが影響はない。
あいつ、冗談ぽく笑いながらやってたから、何かの冗談だろうな。
ホント面白いやつだ。
あっ、ノックの音だ。
ほら、今日もあいつが来た……
次は「玉の輿」「月見」「タブレット」でお願いします。
うわ…、猿がカタカナになってる。
すみません。変換ミスです。
誤→「サル」
正→「猿」
77 :
最近改革路線:02/09/27 06:26
母は、どこから手に入れたのか、夜のうちに青酸カリのタブレットを飲んで死んだらしかった。
病院からそう連絡が入ったとき、私は思わず「嘘でしょう?」と言ってしまった。
確かに母の病気は治る可能性のほうが少なかった。でも自殺なんて逃げの選択肢を母が選ぶとは思えない。
病院に着くと母の担当だった医師から説明を受けたが、私は上の空だった。母はただ眠っているように見えた。
説明が終わると、私は母の私物の整理に病室へと向かった。
母の荷物は、パジャマなどが入った紙袋一つだけだった。その中に多賀子へと書かれた一通の手紙があった。
「多賀子、いろいろお世話になったね。私はもう十分生きたよ。
でも本当はね、一つ心残りがあったの。お父さんと私ね、結婚式挙げてないのよ。
綺麗なドレス着て、キャンドルサービスして。そういうのが、私の夢だった。
けどいいの。今日はすごく月が綺麗だから。月見してたらね、もうよくなっちゃったの。
私が今座っているのは、玉の輿でもなんでもない、ただのベッドだけれど、
今ね、こうやってお月様を見ているだけで、私は幸せだよ。ありがとうね、いままで。」
手紙はそこで終わっていた。
私は窓枠に切り取られた薄暗い空を見上げた。涙が溢れて頬を伝う。
昨夜から降り続く雨は、当分やみそうもなかった。
#SF(すこしふしぎ)っぽく。そうでもないかな…
次は自分棚上げ一行簡素氏から指摘のあった前スレ650さんの
「ソーセージ」「バッグ」「酒瓶」でお願いします。
78 :
玉の輿 月見 タブレット:02/09/27 06:32
明日が結婚式だった。
相手は金持ちのご令嬢。逆玉の輿というやうだろう、友人達は皆羨ましがった。知り合いも皆、祝福していた。
それが脅迫に満ちた婚姻だとしても。もちろん皆そんなことは知りはしない。親父の借金、その肩代わりの代償だった。
縛り付けることが出来れば、愛はいらない。
そう言い放った女の笑みが目に浮かぶ。
中空に浮かぶ真っ白な月、それを眺めながら俺は川沿いの道を歩いている。月見をしながら、だが、俺の精神は明るいほうへ向いてくれない。
少しだけ、いらつく。
ポケットを探り、タブレットの容器を取り出す。じゃらじゃらとビタミン剤の音が鳴る、掌に取り出し、口に放り込むと一気に噛み砕く。
ちょっとした憂さ晴らしだった。
79 :
「玉の輿」「月見」「タブレット」:02/09/27 06:33
「違う違う、そうじゃねえんだよ……いいか、通な月見そばの食い方ってのはな、まず
卵を潰す前に半分食ってだな、その後に卵を潰すんだ。そうすると、2種類の味が楽し
めるってワケだ。どうだ、勉強になっただろう」
「……わかんないよ、そういうの……ゴメンね、せっかく作ってくれたのに……」
「……いや、俺の方こそ悪かった……冷めないうちに食えよ。……食事とか、いつもは
どうしてるんだ?」
「……タブレットとかで栄養を補って……あとは、空腹が満たせれば何でもいいから、
インスタントものばっかり。……でもね、このおソバの方が、インスタントなんかよりも
ずっと美味しいよ……私にだって、それくらいはわかるよ……」
「……お前さ、小学校の時の国語の時間でさ……『将来の夢』っていう作文で、玉の輿に
乗りたいって書いたんだよな……あの時の先生の呆れ顔、今でも覚えてるよ」
「……」
「なあ……俺、まだ店も継いでない半人前だし、うちの店そんなに儲かってないから、
玉の輿だなんて言えやしないけど……その、お前さえ良かったら……」
「……無理だよ……味覚のない女が、蕎麦屋のお嫁さんになんて、なれないよ……」
遅かった、残念。お題は
>>77さんので。
80 :
「ソーセージ」「バッグ」「酒瓶」:02/09/27 09:35
ジュンは獰猛な肉食動物の如く、唾液を滴らせながら目の前のソーセージに
勢いよくフォークを突き刺して口に運ぶ。「カシュッ」という音と同時に
肉汁が一筋の線を描いてテーブルに掛けられた白いクロスに飛び散り染みを
つくる。何度か顎を上下させた後、喉仏を鳴らしながら飲み込むが早いか、
再びソーセージにフォークを勢いよく突き刺す。まるで親の敵のように
食べ続ける姿は、側を通り過ぎる若い女性店員を唖然とした表情にさせる。
私は膝の上に置いた黒のバッグから煙草を取り出して火をつけ、酒瓶を傾けて
白濁色の液体をコップに注ぎながらその光景をぼんやりと眺めている。
今に始まったことではないが、私はジュンがソーセージ以外の食べ物を
口にしているところを見たことがない。
何度目かの注文を経て100を越す本数のソーセージを平らげたジュンは、
申し訳なそうに私を見つめながらこう呟く。
「君の分まで食べてしまった。ゴメン」
私は微笑を浮かべながら「気にしないで」と言い、再びソーセージを注文する。
「星空」「笑顔」「文庫本」でお願いします
「星空」「笑顔」「文庫本」
「寒いねえ」
冬の挨拶であるこの言葉を今日何度目かに言うと、幹久は夜空を見上げた。厚い雲の隙間からところどころ星空が覗いている。きらめく星たちは綺麗だったが、幹久は少し残念に思えた。
「雪、降ればよかったのにね」
幹久の心の仲を読むかのように真帆が言った。幹久は静かに頷く。天気予報を見て、二人のホワイトクリスマスを初めて迎えられることを二人とも楽しみにしていたのだ。
「まあ仕方ないね。それに今日も悪い夜じゃないし」
幹久が言うと、真帆はそうだね、と笑顔を見せた。
二人はどちらからともなく公園のベンチに座った。幹久が真帆に口づけようとすると真帆は、ブレゼントが先よ、と身をくねらせて逃げた。
「わかったよ。はい」
幹久は真帆に手持ちの紙袋を渡し、真帆がハンドバッグから出した包みを受け取った。もうこうしたクリスマスも六回目で、したがって初々しさはないが、二人は初めてのクリスマスと同じくらい幸福だった。
真帆が開けた包みにはペンダントと、一冊の文庫本が入っていた。
「真帆はあまり本読まないだろ?それ短いし面白いしさ、試しに読んでみてよ」
真帆はうん、と頷き文庫本をハンドバッグに入れ、ペンダントを紙袋に戻した。幹久が真帆のプレゼントを開けると、手袋と図書カードが入っていた。
二人はそのあと手をとりあって、ホテルへと向かった。今年も幹久は、公園の茂みの中に落とされた文庫本が六冊に増えたのを見つけることはできなかった。
次、「魚」「卵」「養鶏場」でお願いします。。
82 :
コギャルとH:02/09/27 11:42
文谷くん、本文七行目の「二人」の重複は美しくない。
二人でホワイトクリスマスを迎えられることを幹久(東?)も真帆(野波?)
も楽しみにしていたのだとでもすべき。
あと最後の落ちもぜんぜん効いてない。ありきたり。手をとりあって
ホテルにむかうってのも変。30点。
80、食事の描写はよい。ただ獰猛な肉食動物の如くって書かないで
読者にそうイメージさせるように。
それに比べて後半の会話のクオリティの低さ。60点。食事だけで
あれば75点。
77と78と79は同じ主題だが、77は文体についてもっと意識的に。
話もありきたり。40点。
78は散文詩的な雰囲気がわりとよい。もう少しこれも文章を美しく。
通俗的。55点。
79は…がセリーヌ風。でも内容は町田康みたい。ちょっとおもしろい。
50点。
>>75は作文レベル。35点。
>>74は短いので有利だがよいでき。つづきが読みたい。でも題名は
テニスボーイの憂鬱じゃだめ。70点。最高得点。
>>73は意図はわかるが、それは小さな傷を大げさにわめいているような
感傷主義。60点。
>>72おもしろい。驚いた。ただ急に僕という視点が導入されるのはどうか。
それに文体からいうと「私」のほうが適切。というより文中私から僕に変わって
る。最後の落ちもややありきたりだが悪くない。80点をつけたい。好々爺って
ところも素晴らしい。
>>71これもウィットの利いた秀作。右翼の街宣車からテレビに? でももう少し
うまい比較もあるはず。70点。
>>70は書き慣れてる。でもへたな落語みたい。文体はまあまあ。60点。
ちなみに100点が新人賞クラスね。50点以下は前途多難。
まあ過去レス読むの面倒だから読んでほしかったら自己申告ね。
おれをうならせてくれよな。
「魚」「卵」「養鶏場」
僕は佐々木養鶏場のとれたて卵が好きだ。
近所のスーパーでたまたま佐々木養鶏場の卵を買って以来他の卵を食べる気がしなくなった。
佐々木養鶏場の卵はそれ程おいしい。
卵のパックに入っていた説明書によると鶏の餌に魚の粉を使っているらしい。魚はアミノ酸が豊富で卵の味を整えるのに役立つらしい。
その日もいつもの様に佐々木養鶏場の卵を買った。
僕はオムレツを作ろうと思いパックから卵を一つ取り出した。
何だか妙に重い気がしたが食欲に負け、卵を割る為にレンジの角に卵をこつんとぶつけた。
上手い具合にひびが入った。僕は卵の黄味をボールに入れようとひびが入った卵をぎゅっと握った。
何だか妙な抵抗感があった。いつもならきれいに二つに割れる筈の卵が歪な形になった。
僕は卵を握る手の平に少し力を込めた。卵はくしゃっと音をたてて中身を晒した。
ひよこの死骸だった。白身にまみれたひよこの死骸だった。
僕は思わず卵を床に落とした。ひよこの死骸はまるで自分が死んだ事を否定し、何とかこの世に生まれ出ようとするかの様に床に落ち割れた卵からはみ出していた。
僕はひよこの死骸を卵からそっと取り出すと裏庭に埋めた。
きっとひよこの死骸は地面の中で微生物に分解され、土の養分になってしまうだろう。でも、雨が降ればその養分は地下水に沁みだし海に流れ込むかも知れない。
そしてそれを体内に取り入れたプランクトンを魚が食べる。
いつの日かあのひよこは佐々木養鶏場に戻って来るかも知れない。
僕はそんな事を考えながらひよこを埋葬した。
すみませんお題を忘れました
「焼却炉」「ひまわり」「星空」でお願いします。
91 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/27 13:21
test
92 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/27 13:25
>「魚」「卵」「養鶏場」
私のバイオ研究室にて、遺伝子操作システムが実用の域に達した事を確認した私たちは、
工作キットを与えられた子供の様に胸躍らせた。
私の実家の養鶏場で飼っているレグホーンが野鶏から現在の姿になるまで3千年を要したが、
この装置は操作一つで鶏を恐竜に変える事だって出来る神様の杖だ。
学生時代にはクローン動物を誕生させるのがやっとだった事を想うと、感慨深いものがある。
皆、何を造り出そうか議論に花を咲かせていたが、私は既に決めていたのだった。
両親の為に素晴らしい卵鶏を作るるのだ。養鶏産業はかつてこそ需要に供給が追いつかず、
祖母に「魚のように何千と卵を産めは良いのに」と嘆かせたそうだが、私が物心着いた
頃にはビー玉といい勝負、最近では餌相場の変動に恐々とする日々が続いている。
ただ多く産ませるだけでは駄目だ、付加価値を追求しなければ。
私はまず体の大型化に着手した、そうすればいる様な色んな能力を持たせる為の土台が出来る。
牛の巨体が、食物繊維消化プラントを内臓する為に在るように。
これは後日雛が、見る見る内に仔牛程の筋骨逞しい姿に成長したのを見て少し後悔したが、
プロトタイプと言う物は多少頑丈に作る物なので善しとした。
続く
続き
その後、研究所と養鶏所は多くのヒット商品を含む様々な「成果」を卵の殻に包んで送り出した。
巨大卵、健康サプリメント卵、万能ワクチン卵、護身用炸裂卵、楽楽ワックスがけ卵・・・・
生物工学は世界を劇的に変えようとしていた。今や私はノーベル生物賞の有力初代受賞
候補者なのだ。問題と言えば増えた巨大鶏の餌確保ぐらいしかない。
私は今、遅くまで残って更なる構想を練っている。不意に携帯が鳴った。
「せっ先生、ノーベル賞が先生に授与される事が決定しました」
私は全身をあまねく使って喜びを表現した。今日死んでも後悔無い!
ああ、これもあいつらのお陰だな。急に鶏の顔を見たくなり、車を夜道に走らせた。
普段は腹を空かせてはゲージを破壊しかけるあいつらだが、我が子同然の存在だ。
養鶏場に着くとゲージを啄ばむ音が聞こえてきた。もっと食事を持ってくるのだったな。
おもむろに戸に手を掛け、足を踏み入れる。
「3歩歩けばみんな忘れるお前達だが、私がパパだぞ〜ヽ(´▽`)ノ」
後日、全国に出荷された新世代卵に行方不明の教授の手がかりを内包している
可能性があるとして回収された。
次の御題は継続で。
「魚」「卵」「養鶏場」SFバージョン
「さあこれから歴史の授業を始めるぞ、今日から現代史の予定だったな。現代史は3850年の世界大戦が起点になる」先生はプロジェクターを使い何やら画像を映そうとしていた。
「あの世界大戦で生き残った我々がこうして今歴史を紡いでいる訳だが」プロジェクターの具合が悪いらしく先生はボタンを何回も押した。
「世界大戦で使用されたエックスと呼ばれる兵器の影響で生き残った我々が次々と卵を生み子孫を繁栄させ新しい文明を築いた訳で」プロジェクターはウイーンと微かな音たてて始動した。
『養鶏場』大きな看板が映し出された。画像のピントが少しずれていた。
「はからずも3850年以前の我々の生活環境が我々をエックスの破壊力から守ってくれた訳だ。地球上の海が殆ど干上がってしまう程の破壊力から我々を守ってくれた訳だ。」
「生き残ったかつての地上の支配者達はエックスの影響で脳の機能を失ってしまった。」先生は画像のピントを直した。
「今では彼等は脳が殆ど無い鳥の化石にちなんで『鶏』と呼ばれている。」
「そう、3850年以前には『深海魚』と呼ばれていた我々が今では地上の支配者だ。」
プロジェクターは虚ろな目で黙々と餌を啄ばむ生き物の姿を映し出していた。
かつては人間と呼ばれた生き物の姿を。
>「焼却炉」「ひまわり」「星空」
焼却炉から少し離れ、煙が星空に溶け込むのを母と眺めた。
「母さん、僕はここに来て良かったと思ってるんだ」
「そうね、日本では出来なかったからと言っても、充実した毎日だったわ」
そうなのだ、日本の法律が細かく決まっていて無理だからフィリピンまできたのだ。
そして89年ぶりのX座流星群を、鮮明に目撃できる場所で過ごす為。
「父さんはここの空気は綺麗でよく星が見えるって、毎晩天体望遠鏡を覗いてばかり」
「そうそう、あなたが当てずっぽでで星座の名前を言ったら、日本とは緯度が違うから
ここからその星座は見えないんだよって」
にわかに夜空が光り出し、金色の雨が降り出した。地平線の端から端までを流れ星の眩むような足跡が
埋めていく。このプラネタリウムは芥子粒程の人間では無く山や野や河・・・地球に
向かって流星達が踊る舞台を用意しているのだろうと思うほど、圧倒的な大きさで演じられる彩劇。
いつよりも感傷的になっていた僕には、その一挙一動が心に痛く、悲しみの発作を押さえれなかった。
照らされる自分の顔が濡れすぎてるとかっこ悪いので服でぬぐっていると、
母さんが後ろから僕を抱きしめ、まだ背が追いついてない僕の頭の上から語り掛ける。
「あなたが好きだった人工衛星・・・ひまわりはもうすぐ役目を終えて、このお星様達
みたいにたいに燃えながら地球の塵に還かえってしまうでしょう。寿命がくればみんな同じ。
全ての事には必ず終わりがあるのよ。だから新しいものを産み創り続けないといけないの」
そうだよ、父さんに立派な技術者になって人工衛星を創るって指切りしたじゃないか、泣いてちゃ駄目だ。
僕が母さんを守っていく事を、この日世界中の誰よりも近くで星を観ていた父さんに約束をした。
*X座流星群は架空
くさい話をすいません。連続投稿については暫く来れないから安心してくだせえ。
お題「ライフル」「終劇」「守」ではだめでしょうか。
双子の兄と、私は驚くほど似ていない。
二卵性双生児ということもあるが、兄は不細工だ。目と目の幅が不自然な
くらいに開いているし、妙に耳も大きく横に張り出している。
一方の私は美形だ。つるりとした卵肌は女性にもひけをとらない。
そんな私を見て、ことあるごとに兄は私をなじる。
「卵から生まれたくせに」
事実だ。極々稀に胎児が卵状の皮膜に包まれた状態で生まれてくることが
あると言う。私がそうであったように。
ひどいのは父だ。兄と私が生まれた時、気味が悪いの一言で養鶏場の隅に
私入りの卵を捨ててしまったのだ。最初に群がったのが親鳥ではなくヒヨコ
だったおかげで、食われずに済んだ。つつかれて泣いたから見つかった。
もっともそこが人生の最底辺だったのか、私の生活は順調だ。恋人もでき
た。大学にも首席とはいかずとも、上位で卒業し、仕事も満足だ。出自で人
生など決まりはしないのだ
だから私は、いらぬ余裕まで込めて兄にこう返す。
「兄さんもでしょう?」
兄の顔は魚によく似ている。
>「魚」「卵」「養鶏場」
次は「バス停」「蛾」「ライター」でよろしいですか?
>「焼却炉」「ひまわり」「星空」でお願いします
ありゃあ、お題見落としてた。すまん。俺の題は無しということで……
ひまわりがその大輪を天に向けて咲いている。いつだったろうか、ひ
まわりは太陽の動きに合わせて動くと聞いたことがある。もし動けるな
ら、少し首を傾げて、僕に空を見せてはくれないだろうか? 夏の星空
を僕は見たことがない。
遠くから、おおぃ、おおぃと呼ぶ声が聞こえる。僕は慌ててそのへん
の背の低いひまわりを二三本毟って声の方へ走り出した。生のひまわり
は焼却炉に入れても熱効率は悪いが、夏の間は仕方がない。
ちょっと上を見上げれば、樹齢なん百年というひまわりがそびえてい
る。今、地球でひまわりのないところなんてない。巨大ひまわり無しじゃ
あ、誰も生きていけないんだ。
99 :
バス停 蛾 ライター:02/09/27 20:57
バス停で待っていると、右から蛾が飛んできて目の前を横切った。
瞬間、異様な感覚を覚えた。
蛾が左の空中で静止していた。
隣の男のライターから、火が出たまま少しも揺らめかずに硬化していた。
遠くのほうで縄跳びをしている女の子の縄が、弧を描いたまま動いていな
かった。そして、自分の体も全く動かなかった。何が起こったのか分かる
のに苦労した。
そのまま二、三時間経った気がした。時間が静止してしまったのだ、と
考えた。そして、徐々に理解した。自分の家系は、一定の年齢になると皆
気が狂う。それも、魂が抜けたように、脳症を伴わない植物人間になって
しまうのだ。
自分もこの年齢になり、いつかはそうなるのだろうと覚悟を決めてはいた。
父がある日突然、家の階段で植物人間になった時のことは忘れない。しかし、
こんな形でそれが来るとは。何という孤独だろう。なんというつらさだろう。
体の疲れはなかったが、時間が一分なのか一時間なのかもう認識できなかっ
た。何度も数を数えようとしたが、途中で分からなくなってしまった。
これは何かの罰なのだろうか、と思った。そして、この罰を与えたのがもし
神というような存在だとしたら、それは何と残酷な奴なんだろう、と考えた。
目は硬直し、涙は出ない。もし普通の状態ならば、どうしているだろう。左側
の蛾を見ながら考え続けた。
「ブルー」「預言者ムハンマド」「袴」
100 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/27 21:47
預言者ムハンマドってのは、固有名詞じゃないのか?
それと、明らかに次のお題が出てるのに、前の題で書いてるってのはどうだろ?
感想スレの影響だかなんだかわからないが、SFしたいならルール守ってしな。
それと、投稿前に一度リロードしな。
しな
102 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/27 21:54
まあ少し分かりにくかったけど。
次は「焼却炉」「ひまわり」「星空」だね。
ムハンマドは固有ですので。
>100
SFの話は結局取りやめになったような。スレ汚しsage
「焼却炉」「ひまわり」「星空」
俺は無感動な人間だ、とずっと思っていた。だから今まで、ずっと涙は流さなかった。
通夜の時あいつの死に顔を見た。その顔は、びっくりするくらい確実に死んで
いた。俺はその顔を見るまでは、あいつは寝ているだけだ、とどこかで思ってい
た。俺が声をかけてやれば息を吹き返すのだと。だが、その顔を見て俺ができ
たのは、他の人たちにならって手を合わせることだけだった。
それでも俺は少しも泣かなかった。見上げた星空は、少しもにじんでいなかっ
た。あいつは俺の親友で、いつも一緒に登校し、下校し、よく玉突きや、カラオケ
やボウリングに二人で行った。それなのに。やはり俺は無感動な人間だったの
だ、とそのとき俺は思った。
今日葬式が済んで、あいつは火葬場に運ばれ、俺もあいつの家族の人にそ
こまで連れて行ってもらった。そこの奴らはあいつを大きな焼却炉みたいな所に
入れて火で焼いた。真夏日だったし、傍にいる俺も熱くて汗がだらだら流れた。
けどあいつは、火に焼かれてもまったく熱くないんだ。俺は巨大な焼却炉に背を
向け、決して近いとは言えない距離を、夕方までかけて家まで歩いて帰ることにした。
しばらく歩くと、俺は民家の庭先に大きく咲いたひまわりが何本か生えているの
を見つけた。
(続く)
(続き)
「お前を花に例えると、ひまわりって感じがする」
頭の中で、あいつが俺に言っていた。確か中学生の時だ。学校からの帰り道
に突然そう言われたんだ。
「なんだよ急に」
「いや、何か急にそんな感じがしたんだ。お前はいっつも日の当たる所で堂々としてるイメージがあるからな」
俺は黙っていた。何て答えればいいか分からなかったからだ。あいつは続けた。
「俺はいっつもそんなお前の影に隠れてる。ひまわりの後ろには必ず真ん丸い
影ができてるからね。だから俺はお前がいないと駄目なんだ」
「そんなこといったら、俺だってお前がいないと駄目にきまってんじゃないか」
最後の言葉はそのとき言ったことなのか、俺が今呟いたことなのか、わからな
かった。だが、突然胸の奥が重たくなって歩けなくなった。涙が俺の制服のズボ
ンや、靴の上や、道路のアスファルトに落ちた。お前だって俺のひまわりだった
んじゃないか。
目の前のひまわりは、ただ静かに顔を太陽に向けながら耐えていた。
激しくオーバーすみません。かなり削ったんですけど……
次「髪の毛」「会話」「音」
106 :
1日1書 ◆QaWqYmNw :02/09/27 23:34
僕は、隣の部屋からぼそぼそ聞こえる会話のせいでうまく眠れなかった。
否、そのせいというわけでもないな。僕自身に気になることがあるのも事実だ。
ただ、この程度の悩みで寝られなくなる僕でもないし、この程度の肺病の犬の咳程度の会話の音で、
眠れなくなる僕でもない。会話と悩みの二つがあるという、暗示的な状況のせいで眠れないんだ。
僕はもう明らめて起きることにして、髪をくくり直した。
あの程度の問題と言えばあの程度なんだよな。ただ、果たして僕が身をひく事で解決するのか?
僕自身の知らないところで、僕はこの問題に関わりすぎていたらどうなるのか?
今日だって実際、部屋の外を見ると怪しげな男がいた。「神楽坂」の連中は、僕をマークし始めたのか?
そうなると僕のこの先の人生は・・・・・・けれど僕は思った。
そうなったらそうなったで、死ぬ覚悟で彼女を助けよう。せっかく出会ったあの子なんだから。
※さていい加減で、謎まみれな文章ですね。
お題は「電子レンジ」「リモコン」「ゴミ箱」
99
結構面白い。
全体の流れとしては、
冒頭の方で、「怖れていた瞬間がついに来てしまった」というニュアンスと、
後半部分、最後に見た光景が頭に焼き付いて離れないという部分、
さらに欲を言えば、延命を施される限りこの魂の牢獄から逃れることができない
ということを強調できれば話の面白さが増すと思う。
>考えた。そして、徐々に理解した。自分の家系は、一定の年齢になると皆
>気が狂う。それも、魂が抜けたように、脳症を伴わない植物人間になって
この部分、気が狂うのと植物状態の結びつきに若干の齟齬を感じる。
あと、脳症を伴わないとだけ書くより、読者の理解を助ける補足として、
ありとあらゆる感覚器への接続が遮断されたにも関わらず
閉ざされた系での精神活動だけが正常?に行われているとか補足すると良いかと思われる。
すまん、感想スレに引っ越しします。
109 :
かっぺ ◆6zsbiAV. :02/09/28 00:47
「電子レンジ」「リモコン」「ゴミ箱」
毎月21日、京都の宴楽寺でフリーマーケットが開催される。
五つもの寺院が入っている敷地を全て使うだけあって、僕の知ってる中で一番大きな
フリーマーケットだった。学生の頃から年に数回ガラクタを買いに来たこの祭りも、社会人
になってからはなかなか行く機会に恵まれないでいた。その理由は、毎月21日が運良く休日に
当たる確立は非常に低く、たとえその日が休日でも祭りの事を憶えているとは限らないからで
ある。そんな奇跡のマーケットに行く事が出来た今日、僕は見た事があるようなおじさんから、少し変わった買い物をした。
リモコン付き電子レンジを買ったのだ。価格も三千円と、電子レンジを持たない僕にとっては魅力的な値段だった。
その上リモコン付き。料理をしながらリモコンで扉を開閉し、テレビに夢中で
取りそこなったホットミルクもボタン一つで暖めなおせる。いらない機能かも
しれないが、あっても別に困らないし、なにより人が来た時に自慢できると思い
僕はそのリモコン付き電子レンジを買う事にした。他に買い物をしてもよかったけど、
両手が電子レンジで塞がってしまった為、僕は車に電子レンジを積んで家に帰った。
家に帰り早速セッティングして、開閉ボタンのスイッチを押す。確かにリモコン電子レンジ
の扉もあいたが、確か学生の頃に買ったリモコンゴミ箱の扉も連動して開いた。
次のお題は「切符」「境目」「夕食」
110 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/28 01:07
「切符」「境目」「夕食」
思うに、境目というものを越える為には
なにかしらの切符が必要なのだと思う。
例えば、誰にでも見える境目の一つとして
生と死の境目という非常にわかりやすいものがあるが
それを越えるには「決心」なり「諦め」なり「不幸」なりの切符がいるのだ。
誰もが成長という境目を
時間という切符が届いた瞬間に越えてゆく
誕生日の夕食にバースデーケーキという切符を贈られた瞬間年齢の境目を越える。
現実という切符を自分も持っていることに気付いた瞬間
また一つ境目を越える。
「存在」「有名」「ないがしろ」
111 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/28 01:21
本棚の奥で眠っている、島田雅彦の「預言者の名前」という文庫本を、
僕は買ったままで読んだことが無いのだが、このスレッドを進めるためには
「預言者ムハンマド」についての情報が必要で、僕は「やれやれ」と、
村上春樹ばりに、薄いブルーの背表紙に手を伸ばしてみる。
残念ながら最初のページに出てきたのは「使徒」ムハンマドで、預言者か
どうかを確かめるには読み進むしかないようで、そんなつもりは無いわけで、
僕は数十ページをまとめて読み飛ばすと、それでも聖地巡礼、とかいう単語に
目を惹かれていた。
「僕の聖地巡礼は」
妙な具合で記憶を辿っていると、思い出されるイメージは、正月の巫女さんの
白装束に赤い袴、まあ、それでも何とかなったわけで、僕は書きこみボタンを
クリックするのだ。
「鳥」「封筒」「雨」
ごめんなさい、なんか僕のPCおかしいです。無視してください。
っていうか、間違って1-100を見ていたようです。
重ね重ね申し訳無い。
次は、「存在」「有名」「ないがしろ」で進めてください。
「存在」「有名」「ないがしろ」
「真に存在するものとはなんだろう」男は悩み続けた。
皇帝にも好かれ、誰もがその名を知る有名な大学者だった。
しかし、だからこそ、彼は痛感していた。
人が「真実」と呼ぶものの脆さを…
ある日、疲れ果てた男の意識に一つの概念が浮かんだ。
「我想う、故に、我在り」
そうだ、存在を疑う自分の意思こそが、確実に存在するものだ。
男は感激に満ち溢れ、妻をたたき起こして自らの発見を告げた。
丸一年、ないがしろにされてきた妻を。
「起きろ、起きろ、真実だぞー!実はだな、あのな…」
「あ。はいはい」妻も楽ではない。
「辛かった。俺は実在か、もしや、何者かの気まぐれな創作なのではと日夜…」
「どちらでもいいじゃない、そんなこと」
妻の表情に、微かなうろたえの様なものが見えた。
※ハンドルだしたらなつかしい(^^;L
次のお題は:「雪」「セミ」「春雨」でお願いします。
「鳥」「封筒」「雨」
土の独特のにほひが空気を包み込む。
湿っぽいようなそれでいて妙にすがすがしいにほひ。…雨の降る前触れだ。
俺は手に持っていた双眼鏡をきつく握り締めた。
裏切られた気分が俺の胸を一杯にして、妙にやりきれない。
確かに天気予報図の上には、傘マークが小憎らしく踊っていたが、だからといって、俺が半年間待ち続けたイベントがこんな形でパァになるなんて…。
渡り鳥は俺をあざ笑うかのように低空飛行をし始める。
俺がこのイベントを知ったのは丁度半年前のこと。
一通の手紙が送られてきた。封筒の上の俺に似ても似つかない達筆な字。
それは両親が離婚して、アメリカに行ってしまった妹からの手紙だった。
「…いいな、お兄ちゃんはこのイベントが見れて。アメリカだったら時間が合わないのよ。私の分まで、お兄ちゃんは存分に楽しんでください。もしそのこと、手紙で記してくれたらうれしいな」
一年ぶりの手紙にはそのイベント内容ばかりが書かれていた。
一瞬、辺りに静けさに包まれた後、『サァー』という音と共に、雨が降り出した。
急に疲れが俺の体を襲う。…妹に手紙を書く口実がなくなったな。
俺は自嘲して、草むらの上に寝転がった。雨の濡れるのも気にせずに…。
どれくらい時間が経っただろうか。俺はゆっくりと目を開く。
最初は自分の目を疑った。しかし、俺の目に映ったものが紛れもない現実だとわかり、俺は思わずにやりとしてしまった。
それは雨の様に地上に降り注ぐ、無数の流れ星だった。
…少し長かったですね。
次のお題は「秋」「卵」「小豆」でお願いします。
…私、何を見てるんだ、ですね。
111さんみてそのまま書いていました…。
すみません。
次のお題は114さんの「雪」「セミ」「春雨」でお願いします。
117 :
雪 セミ 春雨:02/09/28 03:05
道を歩いていると、初雪が初めて散らついた。同じ町内の祖母の
家に向かう途中だった。祖母の家に着くと、祖母はテレビを見ていた。
「母さんに頼まれてリンゴ持ってきたよ。」
「うんわかったよお。机の上に置いておいて。いっひっひひひ・・・」
祖母の声色がおかしいのに一瞬たってから気づいた。驚いて祖母のほ
うを見ると、テレビを見ている後ろ姿が目に入ってきた。テレビでは、
見るもおぞましいホラー映画が映っていた。いまちょうど、女性が惨殺
されて小腸が引っ張り出されるところだった。 うわっと思わず後ろ
に引き下がった。とたん、祖母が後ろをぐるっと振り向いた。祖母の顔
は腐乱し、肉がボタボタとこぼれおちていた。そして口を開くと、ゲエー
と春雨のようなものを吐いた。床に落ちたそれは、セミの幼虫のような
うごめく塊となって、自分のほうにゾロゾロと這ってきた。
「机」「月」「虫」
118 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/28 03:18
もう夏も終わろうとしている。たいていの受験生はこの辺がそろそろ山場で、
不意にしてしまったこの一年間を来年取り戻すために躍起になっているころだろう。
しかし僕は、そんなことにはまったく身が入らない。高校生は最後の夏休みさえ
棒に振って、月明かりのこんな夜も机にかじりついて来年のこの時期を
夢見ることもなくただ、前に向かって突き進んでいるのだろう。
なんのために?と考えると受験など僕の前においては全く無意味に思えてならない。
こんな田舎で育ったにんげんは皆、都会に向けて勉強をしてるけど、そんな香具師らは虫けらだ。
「夏休み」「都会」「棒」
119 :
「机」「月」「虫」:02/09/28 03:42
長野の山奥の無人になってだいぶ経つ俺の実家に、明菜が突然住みたいと言い出した。
洋介は、また妻の気まぐれが始まったと思い、小さなため息をつく。
「確かに俺は一日中机に張り付いた窓際族で、会社を辞めたら喜ぶさ、上の連中は」
「だったらいっそ、会社をスパッと辞めて、畑でもやりましょうよ。自給自足って憧れるじゃない」
洋介は妻の輝いた表情に思わず閉口してしまった。
「じゃあ、決まりね。1年後には引越しできるようにしたいな」
洋介は身震いをする。小さい頃から虫が苦手だった洋介にとって故郷は悪夢のような場所だった。
忘れもしない月のきれいな夜…。
親とけんかをして山奥に隠れたはいいが、洋介が飛び込んだ雑木林はまさにスズメバチの住処だった。
洋介は今でも思う。命を落とさなかったことが不思議だと。
1年後、洋介と明菜は予定通り隠居生活を始めた。
あれほど洋介はこの引越しを嫌がっていたにもかかわらず、今はこの生活に満足していた。
だが、洋介はまだ知らない。その後、あの雑木林でスズメバチによって命を落とすことを…。
次は「風見鶏」「トリル」「ナッツ」で。
かぶり、すみません。
次は118の「夏休み」「都会」「棒」で。
ついでにもう一つ訂正を…。
1行目の俺って何でしょう…。
正しくは「洋介」です(w
すみません。
下げろよ
「夏休み」「都会」「棒」
ひさしぶりに虫取り網を握った。もうそれだけで、
満たされつつある夏休みの実感。正確には、都会
では味わえない、古きよき時代の夏休み、とでも
いおうか……。
長野から東京に出てきて7年が経つ。いまでこそ、
アノ県知事をネタにお国自慢を披露できるが、
上京した当時はナマリを隠すのに必死だった。
もっとも、ナマリを自分のキャラとして活かせる
ことを知るのに、そう時間はかからなかったが。
山のふもとを小一時間、散策した。こんな網を
持ってはいるが、虫など採れなくてもよかった。
そう、都会では、網の棒がコントローラーに変わるのに、
そう時間はかからない。
そんな、ぼくの夏休み。
次のお題は「蛍光」「ヒエラルキー」「片想い」で、おながいすます。
*長野には行ったことありません。ぼくの夏休みも、
PS2持ってないので、勝手なイメージです。(w;
驚いた。前スレで、こんなこと(下記)を言われてたとは……。
「夏休み」「都会」「棒」 を投稿するまで、全然見てなかった。
感想スレでなく、第八層で言われたので、失礼を承知で、
ここに書かせてもらうと、僕はこのスレでは「名無し」で
書き込んでいません。なので、上のトリップが付いてなければ、
僕の発言ではありません。でも、「ちゃんと推敲してから」との
ご指摘は、「ごめんなさい、そうします」と素直に受け取ります。
ほんと、ごまんなさいでした。
あ、コテハンは嫌いではないです。ただ、そこまでのキャラが僕には
ないので、トリップだけです。出張ってるつもりはありません。
たまにしか物語や創作の文を書かないので、浮いてしまっただけです。
ワナビーが空気読めてなくてイタイ、くらいに思って、放置して頂ければ、
幸いだす。
689 :≠686 :02/09/20 13:29
>>688 即興で書いたらミスもするわと言いたいのか?
それは当然だが
>>686はきっと訂正するまでもないことを訂正してんじゃねぇ
uzeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeといいたいのだと
それかコテハン嫌いか >>◆0S/YG2ds最近出張ってるし
>>◆0S/YG2ds
行った事ないって書いてあるからしょうがないけど、
長野ってほとんど訛りないよ。南部のほうはちょっと名古屋弁混じったりしてるけど。
絶対キャラには活かせない。
まぁ田舎=訛りっていうのは固定観念としてしかたないかも知れないけど、
いくら即興文だからといって、やっぱり文章書くとなったら
それくらいは調べてから書いてよ。
田舎者の主張でした。
「蛍光」「ヒエラルキー」「片想い」
宇宙人の介入により、核戦争の危機から逃れて15年。
人類は、いまだかつてない平和と繁栄を手に入れていた。
知識階級ともいうべきヒエラルキーを形成した宇宙人。決して驕らず
全てにおいて完璧な彼等にも、抑えきれない衝動が一つだけあった。
その日。別れの挨拶にやってきた彼女の姿を見て、僕は息を呑んだ。
全身がピンク系の蛍光色に染られ、背中に大きく「人類」と刺青されている。
それは、宇宙人の唯一の衝動「好奇心」を満たす、人類ショーの印だった。
「これからの私に「見世物」以外の価値ってないから…」と、彼女は俯いた。
それはそうだ。どう頑張っても、宇宙レベルで優れた能力を持つなんて無理だ。
ただ一点、人類独特の風習・特徴の観光的価値を除いては。
エリート教育を受けてきた彼女は、高1でそれに気付いてしまったのだろう。
しかし自分には、若干片想いながらも彼女は価値ある存在だった。
翌日、僕は全身を紫色の蛍光色に染められ、「人類2」の刺青を彫られていた。
彼女は泣いて喜んだ。「いいって、収入だって桁違いの高給だしさ」
ショーが始まる。人類独特の風習…宇宙人には思いもよらぬ夫婦生活の数々が。
それは昔の言葉で言えば、カップルの温泉芸者そのものだったが。
※休みなのに、なんか暗い
次のお題は:「秋」「卵」「小豆」でお願いしまふ。
「秋」「卵」「小豆」
年末、妻にお尻を叩かれて大掃除をしていたら、一枚の年賀葉書を見つけた。
中央アルプスは宝剣岳山麓の写真がプリントされている。秋に撮ったのだろう。
蒼い空が海なら紅葉はまるでサンゴのようだ。写真部の先輩らしく、構図には
コダワリが見られる。空が占める割合が、山に比べて7割なのだ。
私が部屋中の家具や柱を雑巾で拭いていると、キッチンでは妻が、
彼女の実家ではもはや伝統の小豆煮をつくっている。黒砂糖をまぶして
ゴトゴト、水を足してはゴトゴト、小一時間は煮る。
「どう、真面目にやってる?」
「やってます」
「静かだから、古い新聞紙なんか読んでるのかと思ったわ」
「いや、これを見つけてね」
私はその葉書を妻に見せた。そういえば、去年彼女は小豆を焦がしたっけ……。
妻と私はほぼ同時に「あっ!」と叫ぶと、キッチンへ走った。
今年の年賀状に書く文面は、もう決まっている。
「先輩、妻は今年も小豆に卵を入れて、ごまかしました!」
>>125 ごめんなさい。知りませんでした。長野の方の気分を害したり、
傷つけたりするつもりは全くありません。それだけ言いたくて、
上記の文章を書きました。私は知らないことが多いくせに、
新人賞や賞金が出る場合でもない限り、調べてまで書く気になれません。
なら書くなと言われると困るのですが、ヒッキーなので許してください。
ちなみに年賀葉書の件は事実です。秋ではなく冬の景色が写っている駒ケ岳、
龍年のお年賀でした。次は
「エプロン」「翻訳」「川」でお願いします。本当にすみませんでした。
もう彼女はいない。僕はやっとそれを理解した。
友人の一人に言わせると、僕はひどく長い間心神喪失していたという。迷惑
をかけたなぁ、と言うと、笑って翻訳用の辞書で頭をはたかれた。結構痛かっ
た。
家に戻った僕は、彼女の持ち物をまとめて段ボール箱に放り込んだ。洋服も、
いつも料理を作るたびに付けてくれていたエプロンも。量は少なかったけれど、
意外と重かった。
僕は段ボール箱を抱えて家を出て、近くの川に行った。橋の上ではパトカー
が止まって検問していた。もう少し早くやってくれれば彼女も、と思ったが、
それは独りよがりだと思い直した。
土手に降りて、箱をぽいと投げ捨てる。
派手な水音をたてて一旦沈んだ箱は、ぷかりと浮かんできて、ゆっくり流れ
ていった。
僕はそれを目で追おうとして、やめた。
明日の事を考えて、僕は歩き出した。
明朝になってようやく僕は自宅に帰ってこれた。警察のご厄介になっていた
からだ。
罪状? 不法投棄だって。
次は「オルゴール」「ちりとり」「百円」でお願いします
「エプロン」「翻訳」「川」
「朝ご飯ですよー」彼女は、エプロン姿で彼を起こしにきた。
「おはよー。さあおいでー」
「そんな…お食事がっ」という彼女の手を引く彼氏。
書くのも恥かしい手垢ベタベタの展開に、頬を染める彼女。
結局朝食は置き晒しとなり、天井を眺めながら彼女はぼんやりと呟いた。
「翻訳のお仕事、あるのに…」
仕事場では上役がカンカンだった。
「翻訳係は、まだこんのか!」
「受話器もはずしてある様ですね」
ううんと唸るしかない。
「全く、もう、ルビコン川を渡る様な大決心のこの時に…」
数時間後。
半泣きの彼女が宣戦布告文の翻訳を終えた時、真珠湾奇襲は既に始まっていた。
遅れた宣戦布告は、全世界の批判と不信を招いた。
一枚の純白のエプロンは、一国の運命を変えたのである。
※今回の北朝鮮関係といい、外務省の翻訳は異常に遅いなあ…
次のお題は:「血液」「バッテリー液」「無人駅」でお願いします。
あわわ、失礼しました、遅れました(^^;
次のお題は128さんの「オルゴール」「ちりとり」「百円」でお願いします。
「オルゴール」「ちりとり」「百円」
体育館のような広い売り場に、色とりどりの商品が列んでいる。
僕はウサギのガラス細工を手にとり、向こうに透けて見えるミカを見ていた。
「わぁ、オルゴールまであるよ」ミカは嬉しそうにネジを巻いた。
僕はウサギを持ったまま、鉄の音に耳をすます。「”エリーゼの為に”か
百均らしい選曲だな」「でもいい音」「どうせ百円だし買ちゃおうか」「そうね」
結局僕らは、オルゴールとウサギのガラス細工以外に何も買わずに、
商店街を通ってアパートに帰った。
「たかし、おかえ……」
鍵を開けると、早百合がいた。
しまった今日は水曜日だった、水曜日はミカではなく早百合の日だったのだ。
ガラスが割れる音がしたのと同時にミカはそこからいなくなった。
玄関にはガラスの破片が散らばっている。
僕が下を向いていると、一瞬世界がグラッと揺らいだ。
早百合が僕をビンタしたのだった。早百合もミカを追うように出て行き、
僕は一人ちりとりを持って、冷たいコンクリートの上を掃いた。
袋を隅にやると、まだ回りきっていなかったのか、”エリーゼの為に”が
悲しく秋の夜空に響いた。
次のおだいは「レコード」「出会い」「事故」でお願いします。
132 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/28 13:37
真夏の燦々と照りつける太陽は、地面という地面に熱を送り込む。
喧騒と雑踏がいついかなるときも俺を取り巻くあの街でしか
夏というものを経験したことがない。
列車を三本乗り継ぎ人目を避けるようにたどり着いたこの町で
これほど静かで穏やかな夏が存在することがまず、驚きだった。
この街は都会ではもう忘れられてしまった人々の生活模様が
いまだに影を残している。
玄関先ではゆったりとした服装の初老の婦人がバケツから
柄杓で水を汲みこの街には妙に違和感のあるアスファルトの路面を
黒く染めてゆく。またある別の家では夏休みの塵取りと箒を手に
都会ではめったにお目にかかれない広い玄関を子供が手馴れた手つきで
掃き掃除をしている。さらに少し行くとタバコ屋があるがその奥には
駄菓子やアイスキャンディが売られていた。お遣いでこさせられた子には
ただでやってしまうよ、店主のやさしそうなおばあちゃんはそういい、
百円だって子供には大金だろ? と。この町の人々のかかわりが手にとるように
見えてきて、自分の中で暖かさが生まれてくるのが解かった。
タバコといくつかの駄菓子を買い千円札を渡す。この店にはレジスターはない。
代わりに一つの古い木製のぜんまい式オルゴール。
おつりの為にその蓋を開けるとその狭い空間は五十年も時を遡った
かのような感覚に包まれた。
この町では時間がゆっくりと流れている気がした。いや、ゆっくりと
時間の流れを感じながら人々は生活しているのである。
このような町での生活が果たして自分に合っているのかはわからない。
しかしこのような町にしばらく身を置いてみるのもいい、そう思うと
自分の中でさっそく時がゆっくり流れ出した気がした。
次のお題は「地下鉄」「ゆかり」「J-POP」
失礼しま↓。
次のお題は
>>131さんの「レコード」「出会い」「事故」です。
では、はりきってどうぞ〜
「レコード」「出会い」「事故」
少年は、見知らぬ町で、母と待ち合わせをしていた。
「黄色い看板のレコード屋の前」と母は言った。
しかし、それはどうしても見つからなかった。
今日も、また日が暮れる。
母との出会いは、まだ先になりそうだ。
彼は灰色の信号を渡って、住み慣れた路地裏に向かった。
彼女は、いつもの様に兄の病室を訪ねる。
交差点での事故から20年、兄の意識は戻らない。
時折うわごとの様に「黄色い看板のレコード屋を…」と呟く。
兄は今でも夢の中でそれを探し続けているのだろうか。
「でも、夢に色なんてついてるのかしら」
彼女は、新聞折り込みの青いチラシを見ながら漠然とそう思った。
休業していた最後のレコード屋が、CD屋としてオープンしたのである。
※今でもあるけど>レコード屋
次のお題は:「カセット」「フロッピー」「ダンプ」でお願いします。
135 :
カセット フロッピー ダンプ:02/09/28 15:41
カセットが道に落ちていた。カセットの曲面記入欄には、「Aへ」
と書かれていた。なぜ俺の名前が?一瞬たってから猛烈な疑問が
沸き上がってきた。ひょっとすると、おとといの夢は、この来た
こともない村へと向かわせたあの得体の知れない夢は、俺とこの
カセットテープを出会わせるためのものだったのかもしれない。
カセットテープの中身は、驚愕すべき内容だった。二時間ほど
の長さの中に、自分の人生の全てが語られていたのだ。
そして自分は、もう運命の存在というものを確信でき、不動の
精神を得ることができた。六年後にダンプカーに牽かれて死ぬ
のも、何も恐くなかった。カセットの内容を文書化してフロッピ
ーにいれ、世界中の有識者に送った。そして私は、神になった。
「キリギリス」「山脈」「鼓動」
「キリギリス」「山脈」「鼓動」
その日、父は娘に「アリとキリギリス」の話をしていた。
山脈を臨む、都心から遠い30年ローンの安アパートでの夜だった。
遊び暮らしてきたキリギリスが見る影もなく落ちぶれ、堅実に
働いてきたアリに恵みを請う場面で、父の目には異様な光が宿った。
「ほーら、だから毎日ちゃんと勉強しないと、キリギリスさんの様に…」
娘の反応は意外なものだった。「キリギリスさん、かわいそう」
「お父さん、こわい」
父ははっと気付いた。
そう、自分はどす黒い喜びを感じていた。ローンを抱え、あくせく働く
自分が、せめて童話の中だけでも報いられる…それは陰湿な喜びだった。
娘は、そんな自分の感情を敏感に感じとったに違いない。
自分は、いつしか、そういう醜い感情を娘に教えてしまうのではないか。
素直に「キリギリスが可哀想」と思う感情を、一体どこに忘れてきたのか。
当然ながら勤勉は美徳だ。しかし、それに紛れて根をおろした何かが娘にも
宿り、鼓動を始める時が来るとすると…父は一瞬寒気を感じた。
※鼓動が強引だあー
次のお題は:「地下鉄」「ゆかり」「ポップコーン」でお願いします。
137 :
「地下鉄」「ゆかり」「ポップコーン」:02/09/29 01:58
学校に向かう地下鉄の中で、中村がそわそわした様子で俺に話しかけてきた。
「お前、今日の給食の献立表見てきたか?」
「ん?今日は豚のしょうが焼きにほうれん草の和え物・・・
それに、ゆかりごはんだったかな?」ゆかりごはんとは、紫蘇の葉を和えた白米のことだ。
そう言ったところで俺は気付いた。
・・そういえば中村の野郎はゆかりのことが好きだったんだな。
斎藤紫、俺や中村と同じクラスの女子だ。ゆかりごはんと同じように紫と書いてゆかりと読む。
傍から見れば、そんなどうでもいいことでも気になるらしい。
「でもな中村、例えばお前はポップコーンとか気にせずに食べるだろ、でもさ、
ポップコーン正一・正二のファンの女の子はドキドキしながらそれを食ってるとする。
そんなのなんか変だろ?」
「ポップコーン正一・正二って、お前はいつの時代の人間なんだよ!
いい加減お前もそんな渋い話ばかりしてるから女に興味が持てないんだよ!」
確かにそうかもしれない、俺はそんな些細な事にでも
”キュン”とできる中村のことが少しうらやましかった。
次は、「大丈夫」「柱時計」「半導体」でお願いします。
138 :
:「地下鉄」「ゆかり」「ポップコーン」 :02/09/29 02:27
電車は軽快なリズムで走り続け、トンネルを抜ける。
窓から紅色に染まった紅葉を見ながら、私はそっと窓に映る彼の横顔を眺めていた。
彼は買ったばかりの「前田家ゆかりの地 加賀」なる本に読みふけていたが、
暫くしてこくりこくりと舟を漕ぎ始めた。
私はマイペースな彼に微笑みながら、自分の意識の中に吸い込まれていった。
今日は彼との初めてのデートで今最も紅葉が美しい京都に行ったが、
私たちは雑踏を避け、ひたすら古本や巡りをしていた。
時々私は、彼はなぜ私に告白してきたのかがわからなくなる時がある。
彼は絶対「好きだ」とかそういう類の言葉は掛けてくれなかったし、
殊更私に優しいわけでもない。
しかし、どうやら彼とはシンクロするところがあり、
私は今までの恋と違って自分のペースで恋愛できた。
ポップコーンのようにはじけるような恋もいいけれど、
…私にはこんな恋愛の仕方の方があっているのかもしれない。
やがて窓からは街のせかせかした雑踏が映し出される。
私は今日買ったばかりの本を開いた。
…いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
私は彼に揺り起こされ、ゆっくりまぶたを開く。
「地下鉄に乗換えだよ」
そっと彼の横に並んで歩きながら、私は彼の話に心地よく耳を傾けていた。
次は「簪」「手帳」「定規」で。
かぶり、すみません。
次は137さんの「大丈夫」「柱時計」「半導体」でお願いします。
140 :
1日1書 ◆QaWqYmNw :02/09/29 19:08
「大丈夫」「柱時計」「半導体」
「あなたってまるで半導体みたいな人だったのよ」
別れ際に彼女が僕にそういい残してから、すでに三日が過ぎようとしてた。
僕は机の上に並んだ、アルコールの空き缶と空き瓶を眺めながら、
彼女のその言葉の意味を考えていた。半導体というからには、
半分しか導かない体なのだろう。僕は彼女の何を、半分だけ導いたのか?
もしかし僕は、彼女の人生に関わりすぎたのか?そのくせ、肝心なところで彼女を見捨ててのか?
だから彼女は僕にあんな言葉・・・・・・少しだけ考えて、いくつか思い当たることがあった。
突然、柱時計がなった。彼女がフリーマーケットで僕にねだって買ってあげたものだ。
僕はその音を聞きながら都合よく考えることにした。
僕が関わったぐらいで影響される彼女が悪いんだし、僕が冷たくするくらいで、
己が保てなくなり失敗する彼女が悪いんだ。大丈夫。僕なら一人でやってける。
彼女に会うまでも大丈夫だった。
僕は一先ず、机に並ぶ未来都市めいたアルコールの抜け殻を片すことから始めた。
141 :
1日1書 ◆QaWqYmNw :02/09/29 19:20
お題忘れた〜(・∀・)
お題は、「手術台」「家族」「子供の手」
で。すんません。
142 :
手術台 家族 子供の手:02/09/29 20:44
突然左から車が出てきて腰に激しく衝突した。ふわりと飛ばされた感覚を浮けた。
道に転がっているのに気づいた。ブロック塀に頭を打ちつけて頬が血だらけだった。
立とうとすると、足に激痛が襲った。
運転手が何か文句を言っているみたいだ。痛くて聞こえない。周りに人が集まっ
てきているようだ。誰も何も話しかけない。ただ林の木のように立って見ているだ
けだ。携帯電話のアンテナがねじれていた。かろうじて残った意識で119と押した。
コンビニの横とだけ言うと、もう痛くてなにも考えられなかった。相変わらず、周
りに人が集まって、揺らめく林のように何も言わないようだった。ビニールで遮断
されているようだった。
病院に着くと、長い廊下を押して行った。痛くてここはどこなのか分からなかった。
折れてるよー貫通骨折だすぐ手術だはっはっは、と医者が言ったのを聞いた気がした。
長い廊下を押されていった。右へ曲がると、がたんと担架ベッドが揺れた。そして奥の
ドアが開いて、左に曲がった。長い廊下を押されていった。痛くてたまらない。薄目を
開けた。長期治療室と書いたドアが半開きになっていて、中に飢餓のサルのような化け物
がいて、だらりと口を開けて目は向こうを向いていた。お化け子供の手は真っ青でだらん
と下がっていた。一瞬それを見た。
長い廊下を進んでいった。やや斜めの傾斜があって、手術室と書かれた部屋に入ってい
った。マスクをした人間が、揺らめく林のように周りを取り囲んだ。何も言わずにボンベ
からシューっと音がした。目を開けていられなくなり、音も聞こえず深い闇に降りていった。
「馬鹿」「重症筋無力症」「民事訴訟法」
143 :
馬鹿・重症筋無力症・民事訴訟法:02/09/29 22:34
健二は自らを誇大する癖があった。
「夕方になると眠くならない? 瞼を開けてられないんだよね」という
アルバイト先の同僚が発した言葉対し、「君、それは重症筋無力症の疑いが
あるよ。アセチルコリンの分泌異常が原因なんだけどね、多分働きすぎでは
ないのかな? 一度医者に行く事をお奨めするよ」と捲くし立てたり、意味も
なく六法全書や民事訴訟法に関する分厚い本を小脇に抱えて人通りの多い夜の
繁華街を練り歩いたり、運良く知り合った女性に「僕は大学という概念が嫌いな
んだよ。まず第一に、あそこではろくな事を教えない」と嘯いたりした。だが、
所詮は付け焼刃の知識である。例えば「あー、そういえば昨日のテレビでその
重症筋なんとかっていう病気の事をやってたね」などと言われると、とたんに
押し黙り、遂には意味もなく起こり散らかすのだった。
「…難しそうな本をたくさん持ち歩いてるけど、貴方は何処の大学?」
「いや、だからさっきも言ったと思うけど、僕は大学そのものが嫌いなんだ。
体制自体に不信感を抱いている、と言った方が正しいかな」
「…つまり、大学には行ってないの?」
「まあ受ければ合格していただろうね。大抵の大学には」
「…私も高卒だし、別に大学を出る出ないには拘らないわ。でもね、貴方
みたいな人って最低。馬鹿みたい」そう吐き捨てて女は何処かへ歩いていった。
健二は何度も似たような過ちを冒し、その度に友人を失っていた。
次「コインロッカー」「硬貨」「水色」でお願いします。
彼女が捨てられていたのは、東池袋駅の西側出口、改札手前から数えて三列二段目のコインロッカーの中でした。
何故そのロッカーの中を僕が開ける事になったのかと言うと、当時、僕は東京郊外にある塗料メーカーで営業として働いていて、
その夏の日に、営業活動の一環として都内に来た際に、相手先の会社を訪れる前に必要でない荷物を仕舞おうと、そのロッカーを使おうとしたからでした。
水色の瞳(!?)を僕に向ける彼女は、大昔に僕の夢に出て来ていた小動物(元ネタはジュール=ベルヌか何かのSF小説に出て来る架空の動物だったと思う)そっくりで、真っ白の体毛と、
(多分畸形なのだろう)背中の盛り上がりから天使を想像させました。
ここで、マンガとかならばこの小動物は喋り出したりして、僕も彼女を拾って冒険の旅(笑)とかに旅だったりするのだろうけれど、
その日は、前述した通り、得意先廻りで都内に来ていたので、そんな事をする余裕はなく、
僕は、ポケットに残っていた一枚の五百円硬貨と三枚の十円硬貨を使って近くのコンビニで唐揚げと牛乳を買って彼女に与えるとソソクサとその場を離れ、また日常に戻っていったのでした。
なんか、改行変ですね。三語忘れてました。
『虹』『デジタル』『心』
で、お願いします。
「虹」「デジタル」「心」
雨が静かな街を優しく包み込む。
私は新調した若草色の傘を差しながら、人の少ない公園を歩く。
この雨で、満開の桜はすっかりだめになってしまったが、
私は久しぶりに外に出れた清清しさを満喫していた。
…雨の日は好きだ。
向こうから相合傘のカップルが公園に向かってくるのが見えた。
私は、急いで公園を出て、人通りに少なそうな道を選ぶ。
昔から、私は人見知りが激しく、他人と話している時の私の心は、
鷲掴みにされているように苦しかった。
だんだん私は人と交わるのを避ける様になり、そしていつしか私は、
こうして人の少ない雨の日しか出歩けなくなった。
「デジタル社会」とか「IT社会」と呼ばれる様になった最近は、
出歩かなくとも、仕事が出来るのは便利になった。
しかし、どうしても外に出たい衝動に駆られた時は、
雨が降る日をじっと待った。
…しまった。
私は久々に外に出れたうれしさに浮かれて、すっかり周りを気にすることを忘れており、
大通りに出てしまっていた。
ひたすらあせる私に、さらに追い討ちを掛けるように急速に雨足が弱まり出す。
急いで家に向かって走っていると、一組の親子とすれ違った。
「ほら、虹が出てるよ」
その虹は、まるでシンデレラの12時に鳴り響く鐘の様に、
静かに私に「時」を告げていた。
…行わけしてたら長くなってしまった(;A;)
次は「簪」「グレープフルーツ」「ディスク」でお願いします。
…小さい(私としては大きい)ミスがあったので訂正します。
1行目の「雨」、実は「春雨」です…。
メモ帳からコピぺした時に、「春」が抜けていました。
すみません。
148 :
「簪」「グレープフルーツ」「ディスク」:02/09/30 01:42
女はグレープフルーツミントを握って死んでいた。ある殺人事件の現場でだ。
容疑者はすぐに浮かび上がった。彼女の交際相手だ。
しかし男は殺害日にはアリバイがあると主張していた。
ある日、私はヤツに呼ばれて家を訪ねた。アリバイの証拠が見つかったらしい。
「やっとデジカメでとった写真を保存してあるディスクが見つかったんですよ。
この前お話したとおり、その日京都に旅行してたんですよ。
ホラ、舞妓さんとの記念撮影です。後ろの日めくりは8月15日となってるでしょ?」
ヤツは勝ち誇った顔をしてパソコンのディスプレイを見るよう俺を促した。
俺はそれを見て、ゆっくりヤツにこう言った。
「お前は舞妓さんの簪が季節によって変わることを知らないんだろう、
この写真の簪は”ききょう”、9月の簪だ。少なくとも夏にする簪では無いな」
アリバイが崩れたヤツはペラペラと犯罪を自供した。
護送する途中。俺はヤツに訪ねてみた。
「なんで彼女はグレープフルーツミントを握っていたんだと思う?」
「さあ、まったく見当がつきませんね」
「お前は本当に考えないヤツだな。グレープフルーツミントの花言葉には
”あなたを信じます”という意味もあるらしいぜ」
次は、「アイヌ」「ラベンダー」「食べたいなあ」でお願いします
「アイヌ」「ラベンダー」「食べたいなあ」
もう半年もメールを交わしているというのに、初めて彼女と会ったとき、
うまく会話をつなげなかった。えてして、そういうものだろう。僕らは、
山形駅のプラットフォームにいた。彼女の乗るやまびこ・東京行きが出発
するまで、5分とすこし。
「チャットだと、けっこう盛り上がるのにね」
と、彼女はさびしそうに笑った。
「ラベンダーのポプリとか、ラベンダーアイス食べたい、とかね」
「私、お酒飲むと、地元ネタが多くなるんだ」
沈黙。
僕は迷っていた。チャットだからすぐ流れてしまったけれど、
《最近、悩んでるんだ》という文字を、確かに見た。それを訊こうか
どうか考えて、結局訊くことにした。そのために会いに来てもいた。
「民族的なこと」と彼女は答えた。「なんていうか、これ」
突然、彼女は自分のアゴの下で敬礼した。
「なに、それ?」僕は困惑した。「もしかして、アイ〜ン、とか?」
沈黙。
彼女はさびしそうに笑っていた。ギャグでの告白だっただけに、
余計切ない。東京で何かあったのだ、と、僕は受け取った。
発車を知らせるベルが鳴った。僕は「また会おう」というので精一杯。
やまびこは彼女が背負っているものの重さなど意に介さず、走り去った。
あえて、「アイヌ」は匂わせるだけにしました。
>>125 山形に住んでいたとき、湘南に用事ができて江ノ電に乗りました。
そこで、山形弁を出した僕は、中学生に「また田舎モンだよ」と人前で
いわれ、降りる予定の駅より前でいたたまれなくなって降車。そんな過去
があるので、
>>127で、過剰な反応をしてしまいました。
次の御題は、「ライブ」「ハプニング」「植物」でお願いします。
150 :
1日1書 ◆QaWqYmNw :02/09/30 02:33
「アイヌ」「ラベンダー」「食べたいなあ」
その年の夏休みは、僕にとって忘れられない夏休みなるはずだった。
いや、結果的には忘れられない夏休みはなっているのだが、僕が計画したそれとは大きく違った。
しかしそういう意味でも、やっぱり忘れられない夏休みなった。
僕はその当時大学生の3回生であり、すでに般教の単位は習得済み、必修単位もあり、
あまり学校に行く意味をもてない、どこにでもいる文系学生だった。
僕はそんな自分自身に憤りを感じていた。憤り?少し違うかな。まぁとにかく、
僕はある種の焦りのようなものを感じていた。そして一晩女に腕枕をしたまま、
次の日には左手がなくなったような感覚に襲われるんだな、と左脳で考えながら、
右脳で一つの決断をした。
今年の夏は、この腐った東京を抜け出し、北海道で遊びまわってやろうと。
決断した後の僕は早かった。ふた月あまり残る前期の間中、僕はあらゆるバイトをする事で、
有意義で裕福な夏休みの準備をした。冬に備えるアリのように。
さて軍資金は揃った。僕は夏休みになると早速出発した。と書いてみたが、
出発したと言い切れるほど出発してない。何故なら僕は、無謀にもヒッチハイクで行くことにした。
どっかのテレビ番組を思わせるスケッチブック。旅の全行程を記録しようと、
涙を流す後輩から奪ってきたビデオカメラ。もっとも電池が切れたり、残り少ないテープを気にするのが面倒になり、
途中で後輩の元に送り返すことになったのだが。もちろん着払いだよ。
続く
>>150 「続く」って・・・。
カブってるんだから続けるなよ。
北海道についてしばらくは楽しかった。
自分がアイヌの末裔だと自称する爺様にあって、インディアンごっこをしたり。
たまたま行った牧場では、一週間働かせてもらい、最終的にバイト台までもらってしまった。
けれど、あの女と会って、僕のたびの意味は少し変わってしまった。
旅を始めて三週間くらいたった頃かな。東京においてきた彼女のことが気になったが、
もともと飽きていただけに、新しい彼氏でもできてれば良いなと考えてた。けれど、
彼女のことを考えずにいられなかった。実は僕は、少しだけ寂しくなっていた。そんな時だ
「ラベンダーって、たべたいなあに、似てない?」
という会話が聞こえてきた。僕が振り向き声の方角を見ると、そこには二人の女性がいた。
そのうち片方の、どうみてもアホ面な子が発言をしたようだ。
僕の中にあるナンパ癖と、寂しさの両方がてづだい、僕は彼女たちに話しかけていた。
そして僕たち意気投合して、一緒に行動することになった。それがその日の夜のことだった。
気づけば残りの夏休みを彼女たち、正確には片方の女性、ラベンダーの件の発言をした子としか、
何故だか僕は話してないのだが。
僕らは旅の終わりに別れた。そしてその時の女の子ともそれっきりのつもりだったが、
今僕の隣で寝息を立てているのが、旅の間一言もしゃべらなったあの子だった。
僕は寝息を立てる妻を見ながら、この先も二人でしゃべらないけど、色々な場所に旅に行くつもりだ。
あの夏の旅行が、僕にとっての人生最後の一人旅立った。
>>151 すいません、続けましたが何か?
と言うべきでしょうか?素直に謝ったほうが良いのでしょうか?
2chという非日常における小さな葛藤。
もちろんお題は、「ライブ」「ハプニング」「植物」で。
>>153 誤字脱字が多く、おまけに文章をまとめる能力ゼロな奴に
「何か?」と言われてしまった・・・鬱だ。
バイト台・・・どんな台だ(w
155 :
「アイヌ」「ラベンダー」「食べたいなあ」:02/09/30 03:19
付き合っていた彼女から旅行に誘われ、僕は北海道へとやって来た。故郷を見せたいという
彼女の嬉々とした笑顔に、僕は心を奪われっぱなしだった。
彼女の案内で辿りついたのは、一面に広がる真っ赤なラベンダー畑。夏の涼やかな風に乗って
流れてくる花の香りは、彼女の花のような美しさをも引きたてているようだった。
「……あれ、でもラベンダーって紫色じゃなかったっけ?」
彼女は、普段と変わらない笑顔のまま、僕に説明してくれた。
「この土地は特別なんです。ここで育った草花は、みんな赤くなるんですよ。アイヌの呪いで」
はにかんだような彼女の顔は、あまりにも可愛らしかった。そんな彼女の口から出た最後の
言葉が禍々しいものであると気付くのに、たっぷり十数秒の時間がかかった。
「……ここにはね、その昔本土から渡ってきた人間に全てを奪われた、アイヌの怨念が渦巻いて
いるんです。私達から全てを奪った侵略者が憎い憎い、あいつらを生きたまま八つ裂きにして、
そのはらわたをむさぼり尽くせ。その血で大地を真っ赤に染めてやれ……って言ってるんですよ。」
既に僕は、彼女の言っている事が全く理解できなくなっていた。呪い?怨念?君はそんな
不吉な言葉を使っちゃだめだ。僕の好きな君は、笑顔がとっても素敵なんだ、だから、だから
「……だから、私も、食べたいなあ、って」
遅すぎですよね、スイマセン……お題はもちろん
>>149さんの指定したやつで。
151と153どっちが正しいか150の文を読んでみた。
長い割に内容のない文だった。
必要ないエピソードと表現ばかりだね。
ラベンダー、食べたいなぁの使い方も無理やりだし。
アイヌの末裔とインディアンごっこってどういうことよ。
文化的な相似があるのはわかるけど安易過ぎないかなぁ。
ということで151の勝ち(に一票)
長文読んでもらいたいなら他にスレがあったでしょ確か。
こんなお題の使い方しかできないなら自分でテーマ決めて書いたほうがまだまし。
現在のお題は「ライブ」「ハプニング」「植物」です。
「ライブ」「ハプニング」「植物」
薄汚れたビルの地下、割れた酒瓶や嘔吐物を避けながら階段を下りた先に
分厚い扉が立ちふさがる。その扉を肩で押すようにして中に入った瞬間、
それまで鼓膜を支配していた街の雑踏や車のクラクションといった音が
アンプから吐き出される悲鳴にも似たギターのフィードバックへと変貌する。
一曲目はスネアの連打にウッドベースを織り交ぜたリズムが頂点への序曲で
あるかのように始まり、アンプと向き合う形だったギタリストは頭を振りながら
ベーシストに目配せをした後で反転し、既に精神の臨界点に達した観客を
煽りながらマイクを掴んで叫ぶ。「ライプ!」
店の中央に置かれた観葉植物は気を違えたとしか思えないような者達によって
踏みにじられる。至る所で椅子が飛び交い、ガラスが割れる音がし、怒声や
銃声が肉を叩く鈍音に混じる。それらを掻き消しながら、ギタリストは曲の
合間に尚も叫ぶ。「ライブ!」
ハプニングの連続こそが正常であるかのような店内が落ち着きを取り戻すのには
相当の時間を要する。そして、煙草を一本吸い終わる頃には再び一曲目がスタートする。
「教会」「石畳」「四月」でおながいします。
159 :
「教会」「石畳」「四月」:02/09/30 09:42
檜山と添田の二人の刑事は、目的の小さい看板の前に車を止めた。
アスファルトが敷かれた道から少し奥、茂みの中へと足を進めると、
近所の住人が言ったように、教会への石畳が始まっているのが見えた。
「あんまり、手入れされてないみたいですね」
年若い添田が、年配の檜山の後をついていきながらつぶやいた。
「夏の間は、枝が伸びるのが早いからな」
「蚊に噛まれるって、鑑識サン嫌がりますよ」
「宗教使って、ヤクに殺し、ついでに誘拐の容疑だ、
仏さんくらい出るかも知れんぞ」
「桧山さんたら、またそんなことー」
茂みを抜けると、二人の前に小さい教会が見えた。
「添田、お前は裏に回れ」
檜山はそう言うと、思い出したように胸ポケットから、
一枚の写真を取り出し、添田に手渡した。
「例の行方不明者の娘だ、発見しても声はかけるな、
もし、気づかれたら適当にごまかせ」
「おおっ、可愛いな、あー、大学入学写真ですか?」
「今年の四月頃の写真だ、そう面変わりはしてないはずだ」
「神様なんかより、俺に相談してくれればいいのにー」
添田の軽口を聞き流して、檜山は軽く手を前に振った。
それを合図に檜山も真面目な顔になり、軽く敬礼をすると教会の裏へと歩き出した。
次のお題、「焼肉」「野菜」「車」で如何でしょ?
「教会」「石畳」「4月」
「オレは冤罪だ」手錠をかけた時からヤツは言い続けていた。
でも、ヤツは護送中の隙をついてまんまと逃げやがった。大人しく取り調べに応じていたらまだ状況は違ったかも知れない。
4月の後半にもなれば気温はぐんと上がる。SWATの隊員達は額に汗を浮かべ、だらだらと続く石畳の坂道を進んだ。
この坂道の頂上にある教会にヤツは立てこもった。ヤツは投降の呼びかけに応じない。SWATは教会を包囲した。
「突入」ウィルソン課長が無線で怒鳴った。
SWATに続いて教会に突入した。隊員がドアを蹴破るとヤツは怯えた表情で振り返った。
ヤツが右手をジャケットの内側に突っ込む様に見えた。パン、パン、パン。撃たれると思い咄嗟に引金を引いた。SWATも一斉に射撃した。
ヤツは銃弾の嵐の中を舞い、倒れた。「射撃止め」ヤツに駆け寄った。
「オレは冤罪だ」そう言うとヤツは瞳を閉じた。
「死んじまったら冤罪の証明なんて出来ないじゃないか」ヤツの死体に語りかけた。
その時、眩いばかりの光が教会の天井から降り注いだ。光はヤツの死体を包んだ。
目を疑った。SWATも呆然としていた。なんと天使の降臨だ。
ヤツは微笑みを浮かべ立ち上がった。それを見て確信した。
ヤツが冤罪だった事を。
お題がかぶってごめんなさい。
お題は159さんの「焼肉」「野菜」「車」で。
「焼肉」「野菜」「車」
一目惚れだった。彼女のその輝く肩までの黒髪や、大きな瞳は僕の理想その
物だった。彼女と初めて話しをしたのは、上司に頼まれた書類を彼女のいる総務
に届けたのがきっかけで、それ以来エレベーターやロビーで一言二言一方的に
僕が声をかける位だった。出会いから一ヶ月くらいたったある日、僕はロビーで
彼女を待ち伏せした。ガラスに写る自分の姿はストーカーのようだったが、彼女
を誘うにはこのやり方が一番自然な気がしたからだ。
「おっ今帰り? もし、時間があるなら食事一緒にどう? おいしい店知ってるんだ」
「いいわよ」彼女は小さく艶のある声で僕を舞い上がらした。
僕は会社の前に停めた車の助手席を彼女の為に開けて、あらかじめ入念に調査
した、麻布十番にある焼肉屋に向かって車を走らせた。車内音楽にはジャジーな
ソウルミュージックを選び、キディーランドで買った、惚れ易くなる芳香剤を灰皿に入れていた。
焼肉屋「鶴一」に着き、彼女より先に降りて、助手席を開ける。
彼女は初めての食事が焼肉で驚いたのか、すこし戸惑ったようすで車を降りた。
確かにいきなり焼肉よりは、雰囲気のあるレストランから始めても良かったかも
しれないが、僕はこの店の味に全てを托したのだった。着物を着たウエイトレスが僕等を畳みの席に案内し、
オーダーを取り、僕達はまた二人になった。僕は何か喋らないといけない事は
分っていたが、彼女に見とれるばかりで、ほとんど何もしゃべれなかった。
さっきとは違うウエイトレスが大皿にのった肉や野菜をテーブルに置き、
僕は充分に熱くなった網の上に肉や野菜をのせていった。
両面に焦げめが着いた位で、特製のたれに付けて大胆に口にほうり込む。
うん、旨い、肉の脂が一気に口中に広がる。間違い無いここの味は最高だ。
彼女の表情を見ようと彼女に目をやるとさっきから野菜しか食べていない。
どうかしたのかと思い訊ねてみると、「私、ベジタリアンなの」
僕はここから見える厨房に行って、細かく細かくさばかれたい気分になった。
次のお題は「イタリア人」「豆」「罵倒」でおねがいします。
「イタリア人」「豆」「罵倒」
アタシは植木鉢に向かって思い付く限りの罵倒の言葉を浴びせた。
普段のアタシなら決してそんな言葉遣いなんてしないけど、今日は少し飲み過ぎたみたい。
うん、そうだ、アタシがこんなに酔っ払っているのはアイツのせいだ。
大体ママのスパゲティとアタシを天秤にかけるなんてどう言うつもりよ。挙句の果てにママのスパゲティに負けたアタシって…マジ可哀相過ぎる。
やっぱりイタリア人の男に惚れたアタシが間違ってた。あー、何だか涙が出て来ちゃった。
ママのスパゲティをお腹一杯食べたら戻って来るよって成田では言ってたけど、そんなのわかんないよ。もうアイツの言うコトなんて当てにしない。
この植木鉢に植えた種だって一週間経つけど全然芽が出ないモン。イタリア人のオトコがロマンチストなのは十分分かったけど。
アタシはアイツがこの種と一緒にくれた手紙を読み返した。
「マミコ、これはジャックと豆の木の種です。2,3日で芽が出ます。
ジャックと豆の木はきっとどんどん大きくなってその枝は日本からイタリアまで届くと思います。
そうしたら僕達はジャックと豆の木を伝っていつでも会えますね。」
アタシは気付くとまた罵倒の言葉を植木鉢に浴びせていた。
次のお題は「毒」「時計」「助手席」でお願いします。
「イタリア人」「豆」「罵倒」
空港のロビーの大きな窓ガラスに雨粒が当たる。その小さな音を聞いていた私の耳にだんだんと大きくなる人の声が聞こえてきた。
見ると金髪と黒髪の外国人が言い争っている。いや、罵倒しているといった方が近いだろうか。大きな声と身ぶりで相手に詰め寄っている。
だが訛りのきつい英語に耳をすませると、どうやらコーヒー豆の種類について主張しているようだった。黒髪の彼女はイタリア人らしく、毋国の味を思慕して譲らない。
どこか微笑ましく眺めながら、母国から遠く離れた地にいたころの自分を、そして今日まで離れていた彼のことを思った。
この雨では飛行機も揺れて大変だろう。私が素直に泣かなかったせいかもしれないね、と故郷へ帰る機上の彼に詫びた。
窓ガラスは流れ落ちる雨で滑走路を滲ませていく。そこにはもう何もいない。
遅かった…。次は「毒」「時計」「助手席」でお願いします。
165 :
名無し物書き@推敲中?:02/09/30 21:23
「毒」「時計」「助手席」
僕と彼女はパーキングエリアで食事をして、暫くゆっくりとしてから、また車に乗り込んだ。
僕は腕時計を見た。12時32分だった。
「貴方さっきから時間を気にしてるわね。運転中なんだから注意してよね」
助手席に乗っている彼女がそういった。だが、僕は無視をした。
「・・・あなたって都合が悪くなるといつもそうなんだから。いやねぇ」
「君のその毒舌もね」
「もう」
彼女は少し拗ねた子供のようにぶつぶつと文句を言っていたが、すぐに静かになった。
煩いのは嫌いなんだよね。
車は高速道路を走っている。もうすぐかな?
今さっき彼女の食事に入れておいた薬の効果が出始めるのは。
まぁ、また煩くなるのはしょうがないけどね。
「あ、夕立…。」
大学時代の恩師である木曽友康が住む本都桜崎の街より江田へと帰る道すがら、
本岡和義と樋口巴は、渋滞の高速道路上で何年かぶりの夕立に出くわした。
最初に雨に気付いたのは和義の方で、巴は助手席で時間ばかり気にしていた。
「この時計、やはり八分ほど進んでいるね。」
自身の携帯の時計とカーステレオの液晶が示す時刻を見比べながら巴は、もう何度目なのだろうか
同じ曲ばかり流しているカセットテープをデッキより取り出すとラジオへと切り替えた。
『本日午後二時ごろ、凪郷州春埼にある先住民居留区で発砲事件がありました。犯人は同所に住む根元邦彦容疑者二十三歳で、容疑者は容疑者の祖父辰雄氏が所有する狩猟用の小型銃で容疑者の祖父母その他近隣に住む三十二人を殺害。
その後、自身も集落裏の山に自生する昆堵と言う名前の植物を多量に摂取、死亡致しました。この昆堵と言う植物には、イソポリキシオンという非常に毒性の高い物質が多量に含まれており…。』
「なんか、つまらないね。」
そう言うと巴はチャンネルを変えた。
『えーと、それでは、これは今、人気急上昇中のグループ“ロリサゴス”のデビューアルバムからのナンバーだね。
それでは、聞いてもらいましょう。“ロリサゴス”で“明日を信じて”…』
この後ラジオからはさっきまで彼らが聞いていたテープに入っていたのと同じ曲を鳴らし始めた。
「なんか、つまらないね。」
今度は和義がそう言うと、彼はラジオを切り、窓を開けて夕立で汗ばんでいる手を洗い始めた。
あちゃ、ダブった。
え、で、>165の人がお題出してないようなので、お題。
次は『友』と『コーヒー』と『嘘』でお願いします。
「友」「コーヒー」「嘘」
「海に行こう」と、藍子は突然言い出した。
「はあ? どうしたの急に。ほらほらコーヒーもこぼして……」
二人で朝食を取っていたので、食卓にはトーストやサラダが乗っている。藍子が立ち上がった拍子にコーヒーがこぼれ
パジャマの袖を汚してしまった。藍子は差し出した布巾も取らず、続けざまにまくし立てた。
「最後に海に行ったのはいつ? 誰といったの? ねえ、千葉? 神奈川?」
「……一昨年の夏、友達と……」
「――冬の海も、いいわよね?」
それだけ言うと、藍子はパジャマのまま玄関に向かった。
「おい、嘘だろうッ!?」
慌てて追いつき、藍子を羽交い絞めにしていると、開け放たれた玄関から、
全てが氷に閉ざされた東京湾が見えた。
「藍子……」
藍子は、訳の分からないことを喚いて、僕の腕の中でもがいていた。
はあ、無理があるね。
次回「投げ」「三人」「気取る」で。
「投げ」「三人」「気取る」
雨宿りの中華料理店でCMプランナーの男三人がヤカンCMについて議論していた。
「しかし、持ち上げるのは大昔にあったしね。」
「ああ、シュワちゃんね。じゃあ“遠くに放り投げる”とか…。」
「“こんなに飛びます。”…意味分かんねえよ。」
「じゃあ、スタイリッシュにバッグみたいに持たせる?」
「ああ、なるほど、“ヤカンだけに気取る(ケトル)”みたいな。」
うわああああああ!!!!!!!(←作者がヤカンを投げる声)
次は『ネコ』『三年目』『ロッド・スチュワート』でお願いします。
172 :
『ネコ』『三年目』『ロッド・スチュワート』:02/10/01 00:48
「スァンネンメノウワキグライ〜オオメニミテヨォ〜」
テレビでは変な外人がいかにもの英語訛りで「三年目の浮気」を歌っている。
「ちょっとこの人、ロッド・スチュワートじゃない?」
夕食の片付けが終わった彼女がテレビを見てこう言った。
「誰?それ?」
「ロック歌手よ、イギリスの有名な。でもなんで日本でこんなことやってんのかな?」
「海外のタレントは本国以外では結構下らない仕事でも引き受けるみたいだからね。
ブルース・ウィリスとかニコラス・ケイジとかさ。」
「ふーん、でもなんかわたしは嫌だな。スターはもっと仕事を選ぶ
べきだと思うな。ちょっと好きだったのにがっかり」
「がっかりする必要なかったね」数分後、僕は彼女にこう言った。
テレビの中では朴訥とした青年がネコの鳴きまねを器用にやっていた。
新聞のテレビ欄はこうなっていた。『素人ものまね・そっくりさんコンテスト』
どうやらロッド・スチュアートのそっくりさんは英語はてんでダメだったらしい。
次は「南洋」「紅葉」「動揺」でお願いします
173 :
最近改革路線:02/10/01 03:17
食堂に集まった船員達の顔には、昨日のマグロとの格闘の疲れが色濃く映し出されていた。
太田を含めた船員達は、黙って船長の発する労いの言葉に耳を傾けていたが、
話が事故のことに及んだとき、明らかに食堂内の雰囲気が変わった。
太田は視線こそ向けないが仲間達の意識が自分の方を向いているのを感じていた。
解散になったあと、太田は伊藤の部屋を訪れた。船長から伊藤の荷物の整理を命じられたからだった。
衣類、タオル、歯ブラシ、文庫本。太田はそれらを無感動にベッドの上に並べていった。
机の中身を全て並べたあと、太田はベッドの下を覗き込んだ。荷物を入れるスーツケースがあるはずだったが、
その横に南洋上の船室には似合わないものを見つけて、太田は動揺した。
そこには真っ赤色づいた紅葉の盆栽があった。太田は慎重にそれを引き出すと、ベッドの上に乗せた。
凄い、と太田は思った。鉢から飛び出るように伸びた幹、そしてそこから手を伸ばすような格好の枝には、
赤々として今にもはらりと落ちてきそうな葉。
太田は知らず知らずのうちに拳を握り締めていた。思い出していたのだ。
伊藤の重みが手から離れ、二人の間に決定的な距離が生まれたときに、
何かをつかもうとこちらに伸ばされた腕を。
翌朝、太田の姿はどこにもなかった。
ただ、一枚の紅葉が彼のベッドの上に置かれていただけだった。
#マグロ漁船に一人部屋なんて存在しないとは思いますが…。
次は、「漫才」「名画」「キス」でお願いします。
―――――――さて、皆さん。
本日、お忙しい皆様にこうしてお集まりいただき、恐悦至極に存じます。
皆様に再びこの場所へお集まりいただいたのは他でもありません。
本日の私の目的とは、一月前、完全な監視状況にあったはずの新根室美術館から
名画『火薬の庭』を盗み出し、副館長のルコック氏を無惨な方法で惨殺した犯人を告発することです。
―――もちろん、一介の探偵であり、運命の女神のいたずらのみに拠ってこの事件にかかわった
私などにこの凄惨な事件の解決を委ねることは不安でありましょう。
しかし、私はここに参じるにあたり一刻も早く捜査陣たちの滑稽な漫才を打ち切らせることを自らに課しました。
そして、私は確信するに至ったのです。この事件の真相は、
私にしか、否、事件の当事者である私たちにしかたどり着くことはできないという事に。
―――我々は気づくべきだったのです。あのとき、無惨にも刺殺された被害者を発見したとき、
はっきりと観察すべきだったのです! 蒼ざめた顔の上で叫ぶように開かれた口唇を!
そう、それは余りにも普通の状態だった・・・それを見つめる我々は、直前までおこなわれていた
晩餐のメニュウのおかげで誰一人として白い歯でいたものはいなかったというのに!
・・・気づかれた方もいらっしゃるようですね。そう、キスは一人でおこなうことは出来ません。
哀れな被害者に死の接吻を与えた人物、この事件の犯人は・・・・あなたです。
次の課題は「天使」「斧」「密室」で
175 :
[天使][斧][密室]:02/10/01 15:35
今年もたくさんの母子草が川沿いの土手に花を付けた。黄色い小さな花だ。
もう何年もこの土地の四季を感じて生活しているが、今年はその中でも
特別な夏だった。娘の深雪に男の子が生まれたのだ。初孫である。
この子が生まれたという一報を受け、大学病院への道すがら、初孫に
何と名付けようか迷ったものだった。しかし、その姿を目の当たりにした時、
後頭部を斧で打たれたかのような衝撃が走った。
少し大きな虫カゴとも思える、透明のプラスティックの密室に、たくさんの
管とともにおさめられていた。膝から崩れ落ちるのをやっとの思いで堪えた。
孫は、夏に生まれたにもかかわらず、肌の色にこと関しては真っ白で、冬に
生まれていれば「凛」とでも名付けただろうが、その時はそれどころでは
なかった。身を案じ、天に祈るほかなかった。
願いは届いた。4日後には、ほかの健康な赤子たちとともにガラスの向こうに
眠ることを許されていた。私は美しく白い肌の天使に「爽」と名付けた。
ついに私も「おじいちゃん」と呼ばれるようになるのだ。これからは
若者の親切な声に、素直に席お譲られることにしよう。
次は「法則」「J−POP」「霧雨」 おながいします。
176 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/01 20:31
僕はバイト仲間たちとカラオケにいた。
そして生ぬるいコーラを飲みながら自分の歌の順番がくるのを待っていた。
正直いって歌は上手い方ではなくいつもならば歌は聞くのが専門なのだが、
今日はなんといっても有紀さんがきているのだ。
有紀さんはバイト先の先輩で大学二年生だ。
その優しい性格と物腰で、みんなに好かれている。
僕は彼女を遠くから見ているだけで話したことはまだ無いが。
自分の存在をアピールしなければならない、と昨夜友人に借りたJ−POP集を聴きまくり
歌えそうなのを必死で探したのだ。
選んだのは尾崎豊の「I Love you」
好きなこの前でラブソングを歌うと恋が叶うという法則をなにかの雑誌で読んだことがあるので、この曲にした。
ぼくはそういった法則を読んで頭にインプットしてしまうのが得意なのだ。
昨日は夜遅くまでひたすらこの曲を聴いたのだ。
おかげで母親に怒られてしまった。上手く歌えるはず・・だ。
ついに曲が流れだした。あわててマイクを取ろうとしたところ、先輩が歌いだした。
あっけにとられた・・。
予約番号を見ると僕の番は次だった。つまり思いっきりかぶったわけで・・
霧雨の降る帰リ道、僕の頭の中に
「競争率の高い子の前でラブソングのヒット曲を歌おうとするとかぶる」という法則が新たに加わった。
次は「カレー」「日本」「海」で御願いします
177 :
「カレー」「日本」「海」:02/10/01 21:21
日本海の西に沈む夕日を眺めていた。
ポケットから赤ラークとライターを取り出す。
わずかに冷気を帯びた風が通り抜けていった。
水平線の彼方から茜色に輝く光の帯が足下まで伸びていた。
二ヶ月前、突き刺すような日差しが照りつけお祭りのような喧噪の中、
若い女の子が声をかけてきた。
失礼な話だが顔はもう忘れてしまった。
不思議と熱い空気と可愛らしい声だけは覚えていた。
彼女は、カレーを勧めていたっけ、浜茶屋でバイトしている娘だった。
例え客引きでも、何となく嬉しかった。結局、誘いには乗らなかったけども。
光の帯は太陽の更に西まで続くのだろうか? バカな考え方だと苦笑する。
感傷的だと思った。鳶が気流に乗って一気に舞い上がった。
タバコに火を点ける。吐きだした煙は初秋の潮風にかき消された。
カレー、食っても良かったな。ふと、そう思った。
次、「ネコ」「茶」「シンナー」
178 :
「ネコ」「茶」「シンナー」 :02/10/01 21:49
「先生、今、お茶を入れますので、どうぞ、ゆっくりしていってください」
疲れの見える顔を深く下げ、影のように母親は病室を出て行った。
桶田は、その背中を見送ると、その病室を占領する一人の若者に視線を戻した。
「アツシ、調子はどうだ?」
アツシはベッドの上で、座り込み、抱え込むように何かの絵を描いていた。
聞こえないようにため息をついて、桶田はゆっくりと歩いて近づいた。
母親が買い与えたのだろう、画用紙がベッドの上に散乱している。
「にゃーにゃー」
「ああ、ネコ書いてるのか」
桶田を見上げるでもなく、ひたすらにアツシはネコを描いていた。
よく見ると周りに散らばる紙の殆どはネコがかかれていた。
無言の桶田の背をそっと叩く者が居た。
振り返るとアツシの母親が、お茶を入れた湯飲みを差し出していた。
「この子、ずっとシンナー吸っていて、
警察は、事故の時、ネコでもよけたんだろうって」
本当は優しい子なんですよ、と繰り返し母親は桶田につぶやいた。
桶田は、その言葉にうなづいて答え、無言で茶を飲み干した。
退学処分の書類は桶田の鞄の中にしまわれたまま、その日は終わった。
次は「マグロ」「うに」「海苔」で如何でしょ?
179 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/02 00:08
私が小学生の頃、親父はよく寿司屋に連れて行ってくれた。
定番は握り一人前に、マグロとウニを追加で一皿ずつ。
カウンター席の左から2番目がいつもの席。一番左に私は座る。
ビールをついだコップ片手に、店主と笑いながら話す父。
それを見ながら、タコやイカ、卵焼きを食べる私。
私の方をふと見る父。
「こんな所に海苔がついてるぞ」
親父が笑って、頬についた海苔を取ってくれたことを覚えている。
あれから何年が過ぎただろう。
あの時と同じ寿司屋。かつての自分が座っていた席で河童巻きを口に運ぶ息子を見ながら、自分があの時の親父と同じ年になったという思いが浮かんだ。
「43にもなって、やっと親父の気持ちがわかるなんてな」
心の内でつぶやき、私は息子の頬についた海苔に指をやった。
次は「漢文」「ラブホテル」「三日月」で。
180 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/02 00:47
ラブホテルに入るのは初めてだった。
彼女がシャワーを浴びる。
その音は否応無しに僕の興奮を煽り、一方で冷静な心を引き寄せた。
そういえば、お互いに名前以外の事は何も知らないんだ。
ふと、無造作に投げ捨てられた彼女の鞄が目に入る。
無意識にそれを拾い上げ、ファスナーを開く。それは理性的で、当然の行動のように思われた。
中には化粧道具と飲みかけのペットボトル、そして漢文と英語のテキストが入っていた。
「女の子のカバン覗くなんて、最低ね」
そう言って彼女は微笑む。
ようやく自分が何をしていたのかに気付き、やり場のない気まずさが僕を包んだ。
「……家庭教師でもやってるのかい?」
ようやく、絞り出すように、声を出す。
「うーん、やっぱり老けて見えるのかな?」
そう言って彼女は、あはは、と笑った。
「これでもね、現役受験生。でももういいんだ」
三日月の陰になった彼女の顔に、光るしずくが流れた。
次は「腕時計」「封筒」「リンゴ」
「漢文」「ラブホテル」「三日月」
その日、彼女は憂鬱だった。原因は、教科書の某女性作家のエッセイだった。
その作家はこう書いていた「私って子宮で考えるのよね」云々と。
こっちは毎日学校で、難かしい漢文やら受験勉強で大変なのに。
子宮が忙しいのは、せいぜい出産時かラブホテルで位のはずなのに。
大河ドラマで、殿様に「よくやった」と誉められるのも、妊娠した子宮だ。
「脳の立場はどうなる!」彼女はそう思うのだ。
その夜、彼女はパジャマをまくり、自分の腹に愚痴をこぼしてみた。
「子宮はいいわよねえ、試験もなんにもないし」
さすがに可哀想に思ったのか、子宮は一念奮起した「しきゅ!」
何か書いて彼女に貢献しようというのだ。感心な子宮である。
原稿用紙の上を触手が動いた。「きゅっきゅっきゅっ、しきゅきゅのきゅ」
半月後、彼女はいまだ憂鬱な日々を過ごしていた。
夜空には三日月。憂鬱なのは、今月ブルーな日だからだけではない。
「無名女学生の子宮による処女作。<子Q正伝>!」
が、めでたくベストセラーとなったのだ。
※三日月で悩んだー
次のお題は:「優雅」「カレー」「ハチ」でお願いしまふ。
ごめんなさい、かぶってます。
次のお題は、180さんの「腕時計」「封筒」「リンゴ」お願いします。
183 :
リンゴ・腕時計・封筒:02/10/02 01:46
大丈夫ですか? おやまぁ、派手に転びましたね。あのバイク、もうダメですね。
このあたりは見通し悪くて、よく事故とか痴漢とかひったくりとかあるんですよ。
私もね、ここでひったくりにあったんですよ。
はやく誰か呼んでほしい? 本当にすみませんね、いきなり飛び出したりして。
そうそう、あれは今日みたいな小雨の日でした。
いきなり後ろから来たバイクの人に右手のバックをつかまれたんですよ。いきなりに。
驚いた私は、転倒してそこの花が置いてある電柱にぶつかったんです。痛かったですよ。
左手で抱えていた買い物袋が破れて、リンゴや梨がそこら中に転がって。
結婚記念日に夫から貰ったばかりの腕時計はどこかに飛んでいってしまうし。
何より、銀行から卸したばかりの封筒がバックに入っていたんですよ。
おや、顔が青いですよ。血はそんなに流れてないみたいですけど。
大丈夫、心配しないでください。
死ぬのは、普通におもってるほど苦しくないんですよ。
あらゆる重みが消えて、とっても軽く楽になるんです。
それを教えてくれたあなたにも、味わって欲しくて待ってたんですよ。
この通りで、ずうっとずうっと、ね……
184 :
ごめんなさい:02/10/02 01:53
「銀行で卸したばかりの封筒」(誤)
「銀行で卸したばかりの100万円が入った封筒」(正)
次のお題。
「警察官」「缶ジュース」「行きずりの男」
185 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/02 02:30
私は缶ジュース「Qoo」。
たった今さっき、歩道の路肩に投げ捨てられたばかりです。
公園の自動販売機で中学生に買われたのですが・・・聞いてください!
この少年、ベンチに寝てた行きずりの男、浮浪者だと思うのですが、
その男をいきなり引きずり下ろし、顔面や体の至る所をペンチで切り刻んだ!
しかも、駆けつけた警察官を路上の岩で殴り倒したのです。
少年は疾駆のごとく逃げました・・・。
警察官はおびただしい量の血しぶきを上げて倒れたので、
ひょっとしたら死んだのかもしれません。
ああ、私はもう、人間には拾われたくない・・・
この路肩でひっそりと生きていきます・・・。
次の方、「ひまわり」「スカート」「トイレ」でお願いします。
186 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/02 04:27
>>181 ここまで嫌悪感の沸き上がる文はじめて読んだ。キモ過ぎ
「ひまわり」「スカート」「トイレ」
少年は何キロでも走れると思った。
東急ハンズ、ダイエーと駆け抜けると、花屋が見えてくる。
のばした右手で数本のひまわりをつかみ、空へ投げ飛ばす。
通行人から歓声にも似た声が響いてくる。まっすぐ行けば、
横浜駅西口だ。VIVRE前の広場を通り過ぎたところに、短いが橋がある。
少年は走りながら、川にペンチを投げ捨てた。そのとき同時に、
しぶきが飛んだ。あの警察官の血が制服の袖に染み付いていたのだ。
警察官の執念だろう。犯人の足取りを残せと使命を受けたかのように、
血がなかなか固まらない。道にも垂れていったはずだ。少年は走るのをやめ、
全身に浴びた血液に気づく。目の前に立っている女子高生が悲鳴をあげた。
少年がひきつった笑顔で女子高生に抱きつくと、彼女は恐怖で座り込んだ。
手の血をスカートの裾で拭きつつ「いい声だね」と彼女にささやくと、少年は
ふたたび走り出した。西口、デパ地下のトイレに入る。誰も居ない。
少年は財布から錠剤を取り出し、口に入れ、噛み潰す。
「やっと教室についた」と少年はつぶやき、鏡を見た。そこには彼が殺した
浮浪者と警察官の姿が映っている。「あ、先生、遅れてゴメンナサイ。校庭、
30周? はい、いってきます」
少年は走り出した。
次は「陶芸」「放送作家」「印税」で、おながいします。薬物反対です。
「作家を伸ばすも殺すも俺しだい〜」
バイト先の出版社では彼の鼻歌が響かないことはまれだ。彼は大抵澄ました目付きとぞん
ざいな態度で存在を主張しているが、芝居臭さも鼻につく。
彼は入社数年の編集者らしいが、鳴かず飛ばず作家に売れる本を書かせる才能があるらし
く、やり手であると上役の評価は上々らしい。
私は彼がどんな魔法を駆使するのか興味を抱かずにいれなかった。作家の足りない部分の技術を与えられるのか、
話題性のあるテーマを見つける嗅覚に優れるのか。私は思いきって切り出してみた。
「先輩、今担当されている作家にどういったアドヴァイスをされるのですか」
使い捨てのバイトはライバルとみなしてないないのだろう。身構えず言い放つ
「駄目だね、この女はデビュー時こそ期待されたらしいが、後続作品は売れる代物じゃない。
才能無いね。社長が処女作を出版することを決めたのは奇麗な体でも
使われたのからじゃないのか?」さすがに言い過ぎではないのか、
彼女の作風は短期間に売り上げを伸ばすタイプではないはず。
だが彼のニヒリスト的バイアスのかかった目を通せばそう見えるらしい。
これで作家を伸ばせるのか。そう言えば作家は皆、彼が担当になることを恐れる。
彼が担当について売上が伸びれば印税が増えるはずなのに。
「いいか、売れる作家は放送作家のように一般大衆の受けをとらなきゃいけないんだよ。陶芸家よろしく自分の世界
に篭って売れない文章を書いていちゃ駄目だな」
私の嫌な予感は翌週の週刊誌に形になった。彼女の赤裸々な私生活の暴露記事が、容姿端麗さ故に注目を浴びていた。
ネットには盗撮と思しき裸体映像が流された。彼の方は増版が決まったほくほく顔だ。
「なあ、これで自殺でもすれば完璧だと思わないか?」
彼は例の鼻歌を口ずさみ始めた。
だめぽ・・・・ただの妄想だし
>>188のおだいは「陶芸」「放送作家」「印税」
次のおだい継続
190 :
ミセバ ◆xzHiHmr2 :02/10/02 22:01
「陶芸」「放送作家」「印税」
「金・・・金、金か・・」
楽して暮らしたい。働きたくない。
でも世の中で有名になりたい。でも働きたくない。
遊んで暮らせる金をつくる方法はないものか。
何かないか何かないかと悩んだ末に何の根拠もなくたどりついた答え。
「印税だ・・」
それがいいそれがいい。
何かを創って一発ドカンと世に出せばしばらく食っていけるだろう。
「作家の先生」って呼ばれたりして。ウヒヒ。
では小説を書こうか。賞でもとるか。
・・・ダメ。浮かばない。何枚も書けない。書くのがダルイ。
映画をつくろう。金入りそー。
・・・無理じゃん。どうやってつくるのよ。
音楽?なんか、カッコいい。
・・・楽器できないし。想像もつかない。
じゃあ、絵。アートだよ、アート。
・・・書いたことない。有名な画家も知らないぞ。
陶芸とか?映画「ゴースト」のシーンのように・・。
・・・わからん。習う?いやだよ。
いやいや俺にはもっとふさわしいものがあるはずだ。
詩人とか、デザイナーとか、放送作家とか、何か開発したりとか。
さてと、何をするにも道具を揃えなくてはな。
さあ、その金はどうやってつくろうか・・・。
次は、「ビデオ」「人形」「鏡」でお願いしますっ。
191 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/02 23:18
「ビデオ」「人形」「鏡」
鏡の前に立つ彼女の嬉しそうな姿は、そこにしかなかった。
何度となく繰り返したビデオテープはすっかり伸びきっている。
歪んでいく思い出は、歪んだ現実に心を引き戻す。
「想い出だって、現実だったんだよな」
男はマネキン人形の頭に手をおく。
慈しむような、柔らかい微笑みとともに。
かつて男の彼女であった、そのマネキン人形に。
ちと短めに。
次は「カーテン」「山道」「鉛筆」でヨロシク。
>>181 つーか明らかに全文読んでないだろそれ
そんなんで引用するなよ あまりの無知さに引いたよ
良い意味でも悪い意味でも有名な話なのに
193 :
「カーテン」「山道」「鉛筆」:02/10/03 00:50
ついに国境に鉄のカーテンが引かれた。
最近わが国ときな臭い雰囲気のあった、かの国との間でだ。
鉄と言っても本当に鉄壁が建っているわけではない。
大昔の政治家の発言を受けて、こう呼ばれてるわけだ。
しかし、本当に鉄ならまだ救われたのかもしれない。
なんせ、かの国ときたら国境の街道という街道に強力な電磁トラップ
を仕掛けたらしい。近づいただけで黒焦げというやっかいな代物だ。
やはりかの国は、やりかたがえげつない。
大陸の端に位置するわが国にとって、これはゆゆしき問題だ。
わが国の行商隊は、細い山道を長時間かけて交易に出向かなければ
ならなくなってしまった。既に一部の物資は国内に出回っていない。
もちろん、わが国も黙ってくすぶってような、やわな国じゃあない。
なーに、かの国と本格的に戦火を交えたりなんかはしないさ。
ここは「ペンは剣よりも強し」だ。
おっと、今回は「鉛筆はペンよりも弱し」だな。最近わかったらしいけど、
かの国の前線では作戦命令書は鉛筆で書かれてるらしいんだよ。
とぼけているとうか文化が未成熟というか、まあかの国らしいんだけどね。
そろそろわが国の諜報員が、かの国の命令書を書き換えてるんじゃないかな。
次は「魔法使い」「残念賞」「スニーカー」でお願いします。
194 :
魔法使い、残念賞、スニーカー:02/10/03 02:04
青年魔法使いラジックは今、輝くステージに立っていた。
そのステージの垂れ幕には、「第72回変身コンテスト」とあった。
輝くステージにはもう一人。黒尽くめの老魔法使い。
「では、Dブロック3回戦。お題です。」
青年と老人の目が、中年魔女レフリーに向けられる。
「はかれる物。より大きい方が勝ち!!カウント、3・2・・・」
『履かれる物!?一番大きな・・・そうか!厚底ブーツ!!』
青年は自分の足のサイズに合った厚底ブーツへと変身していた。
勝利を確信した青年に陰が覆いかぶさる。
「0!!・・・・勝者、鷲の目ゲイル〜〜!!」
青年の隣には、大会の会場に置いてある秤の限界、260kgギリ
ギリの重量の風船が浮いていた。
『履かれる』と『量れる』の違いだった。
奇しくも、残念賞の商品は赤いスニーカーだった。
次のお題
『飢え』『ルート』『掃除』
195 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/03 02:07
のけ利子のみ愚痴の乗りいみ゛くにら瀬けせらの市は腹席の解け知らせの基けりの都市は
けりれとけし理のも見込みも引けに空松とすねる肝ませ対馬瀬の区聞けれ乗りもしけと釣り
ママバ世知にいも寝るしみけりの雅は魔法使い綺羅にけしけり氏のは蒔き蹴るね地まずらに眞子比の
寝差見はのこ見チリイスのみ消せにら負け利の氏は公森のま゛巣にトラ真理の基地けす乗り
りりりりりりりりりリマ凝らせ2つ増し針耳も基地刑する飲みも゛コラ2基礎眞子の寝美沙は島
セラに来ても峰腹にま゛イスノリ流とセラハマの地家鳥の巻きハマもけりに間の箸瀬にら
基地間理の地まばら子に間理の致死輔らに聞け下はみのは幕らしくチリ類の住み゛らは待つ
このリ刷毛口瀬ラスクママは支笏群れともいに砒素要らせ向けイスもけ着せらにけす巻きケチりの
今水木に拉致マシはけ釣るのも平にけ古米のもの足り三井箱ラマこりるもちけりとしのは
まごらにまいのりかねいもすひにらみいにひこゆやあうおぬりみりのきこわよちみをょなはけりて
のみくぎちわよしまきたぬん口・上件瀬に眼を゜四つ増し透けん股警邏にまらに見入れけすリ
ノン見だう笑い幕けり地イスきりま゛地位にイラママすき蹴り2街軽トラ好きに間多稀有にスニーカー
今綺羅に地位まず件から理にまぢま義らに家マン理知家島はよき由布負け絵にラマ義地
箸七まくりにま゛イラにママ過ぎわ馬絵に気にラマ=へ湯ち弱いナス負け茎らに給い゛すら子
ママ゛地位由良マス聞けた瀬会うラマ尾へく際付与アナ絵すまモン気笑後ライト絵になん湯に
今にいの脇経理の絵馬がちワイ湯ハマ乗り越しもきらこにぢけ製すら真理とけし鳥は二期ま
セラケチに今マスクきり他の間もも会い゛らに雛幕ものしはもに来た迷い絵けりの基ま゛地和紙に
ハマ義理のも゛宛えら瀬に釜゛来期ま゛たらにて馬円゛らにま゛うえら二基まだら絵にいマン軍多に
裏絵馬゛クラにかましごりのま補遺湯よか巣栗の玉手弱い巣麻痺子られらに井熊のもらわいて
核に無碍ら木町へ呈すわ読み゛らけりの誌ハマ゛来湯わ負け理の上゛らコマ残念賞
196 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/03 02:09
香豚須磨ソ
197 :
「飢え」「ルート」「掃除」:02/10/03 02:48
きちんと掃除の行き届いたこの車内は、彼の几帳面さと見た目通りの清潔感が窺える。
彼の車があてもなく走り続けて4時間が過ぎようかとしていた。
一度こうなってしまうと私はもうお手上げである。決まったルートがあるわけでもなく、
走り続けるときはいつも、ほとんど何も言えずにあなたの悲しそうな横顔を見つめながら
目を覚ましていなければならない。
−−今日は一体何があなたを走らせるの?
この一言でいいから話しかけたい。でも、そうできない自分を必要としてくれる
あなたがいてる。自分の無力さに、悲しみで涙が溢れそうになる。
それでもあなたは「ありがとう」と言ってくれる。
ごめんなさい、誰かの言葉に飢えているのでしょう?
それでも私があなたに言えることは、ただひとつ。
「コノサキ ジュウタイデス」
198 :
「飢え」「ルート」「掃除」:02/10/03 02:51
お題は継続でお願いします。
199 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/03 02:59
「ルート配送」「清掃夫」「(就業中に感じる)飢え」
201 :
「ルート配送」「清掃夫」「(就業中に感じる)飢え」:02/10/03 04:36
「この荷物、本当にルート配送しちゃっていいわけですか?」
「あぁ、それは平気らしい。いつものところで頼む、ってボスから」
「…了解しました」
長い黒髪の女は小さな荷物を命令どおり運びながら、思わずため息を漏らす。
「何で私、こんなくだらない仕事してるんだろ…」
女はこの仕事に一種の飢えを感じていた。この仕事は自分の天命ではないと。
最初は憧れを持ってこの仕事に就いた。
しかし、この仕事は理想とは程遠く、新人には地味な仕事ばかり回ってくる。
「あーあ、私、もっと派手な仕事期待してたのに…」
女にはもう一つ、Zビルの掃除夫になる選択もあったが、
それこそ単調な仕事が安易に想像できるので、すぐに却下してしまった。
しかし、今更になって女は掃除夫になったほうがよかったのでは…と後悔するのであった。
女は目的の建物に入ると、やはりそこにはいつもの男がいた。
「すみません。この荷物いつものでお願いします」
「また作家先生のフロッピーかい?この先生の作品、一回目は絶対刎ねつけられるんだってね」
次は「枕詞」「リンゴマーク」「白い石楠花」でお願いします。
初めて観た舞台は、わずか20分ほどの作品だったが、いまでも忘れられない。
客とのコラボレーションが売りの前衛モノと、チケットには書いてある。
正直僕は乗り気でなかった。しかし上司の誘いとあっては断れない。
舞台を見るのは初体験ですと言うと、思ったより彼が喜んだので、
舞台には興味など全くなかったが、ボランティアのつもりでつきあったのだ。
モンゴルの遊牧民が住居としているようなテントに入ると、10人ほどの
先客がゴザに座っていた。上司と僕が空いている場所に座ったとき、
照明が落ちた。ふたたび点灯すると、舞台には一人の女が立っていた。
女は男物のスーツを着て、ステッキを手に持っている。
「来なさいっ!」と女は叫び、ステッキの先を客のひとりに向けた。
指名された客も叫んだ。「枕詞!」
「ピロートーク!」女が返す。そして次の客へステッキを向ける。
「リンゴマーク!」
「バーモントカレー!」
「白い石楠花!」
「白夜!」
僕の番が来た。「じ、人生!」
「辻!」
女は次に、上司を指名した。彼は、眠っていた。
「来なさいっ!」女は何事もなかったかのように、別の客へステッキを振った。
僕も眠った。
内容が無いYO。
次は「ピロートーク」「カレー」「白夜」でお願いします。
「ピロートーク」「カレー」「白夜」
僕はコッヘルにレトルトカレーのパックを入れた。ぐつぐつと沸騰していた。
三千メートルの頂きでは地上とは沸点が違うので沸騰と言っても正確には百度ではない。
だからパックに『五分間沸騰したお湯に入れて下さい』と書いてあってもそれを間に受けてはいけない。うっかりすると具にしっかりと芯が残っていたりする。
その夜は頂きのすぐ真上に満月が煌煌と輝いていた。まるで白夜の様だった。
僕はコッヘルの蓋を皿代わりにしてレトルトの白米とカレーをよそいテントにもぐり込んだ。
「凄い満月だぜ。」僕は寝袋の中で窮屈そうにしている健一にカレーライスを渡した。
「オレの事を歓迎しているのかもな」健一は寝袋から上半身を出しカレーを頬張った。
「やっぱりオマエのカレーは最高だよ」健一は満面の笑みを浮かべた。
「それってレトルトだぜ」僕は笑った。
「でもサ、もう一度オマエと山で会えるとは思わなかったよ」健一はほんの一瞬寂しそうな表情になった。
食事を終えると僕と健一は寝袋に潜りこみ夜通し他愛の無い話をした。こんなのもピロートークと言うのだろうか。僕はいつの間にか寝てしまった。
明け方ふと目が覚めると健一の姿は無かった。
僕はテントを出ると寒風が吹き荒ぶ中、頂きまで歩いた。ダウンジャケットのポケットからパックの日本酒を取り出し頂きに日本酒を振り撒いた。
「健一、来年もまた会いに来るよ」僕は背中を丸め頂きを後にした。
誤字ハケーン(203)
間に受け→真に受け(本文三行目)
ついでにお題は継続で
「ピロートーク」「カレー」「白夜」
昨日まで一人で使い余していた僕のセミダブルのベッドで
彼女はくつろいでいる。この光景は、周囲の世界を光の
満ち溢れるものに変えた。できる限りの自然を装って、
彼女の傍に身体を横たえる。それまでくつろいでいた彼女の
表情とは少し違った印象を僕に与えた。少し彼女を遠く感じた。
「好きな食べ物は?」僕の枕の横で唐突に彼女が聞く。僕が答えると
彼女はクスクスと笑い出し、「わりと子供じみたものが好きなのね」
彼女の笑顔が僕の頬の筋肉も緩めてゆく。彼女がすぐ傍にいる。
今日はきっと、このまま夜は訪れないだろう。
僕達はまだあまりもお互いを知らな過ぎる。二人がもっと近づくように、
このままずっと話していたい。
ゆるりとした時間の中で二人の距離は縮んでゆく。
次のお題は 「まつ毛」「ブルゾン」「潅木」で如何ですか?
メール欄
「まつ毛」「ブルゾン」「潅木」
いつもの帰り道。彼女は深緑のブルゾンにスカートだった。
彼はすぐ分かった、自分を気遣ってくれた彼女の心遣いを。
「こんばんあー!」と、いつもの様にスカートをめくる彼。
「2回、3回、4回、5回…」
「こんばんは。よく飽きないわねえ」
別にまつ毛をひそめる程の事ではない。彼はいつでもこうなのだ。
ただ、今日の彼女はちょっとだけ暗く、物思いにふけっている。
「あ、ごめん。もしかしてしわになっちゃった?」
「だ、だいじょうぶ…」
いつもの様に手をつないで、川沿いに家路を辿る。
大丈夫。彼は手を洗うし、生地も丈夫なのにしている。
ただ…彼女の物思いの種は、他にあった。
子供の頃、川岸に植えた木の苗が、今では潅木に育っている。
小2で出会って二十余年。
彼との間柄は、スカートめくりから一歩も進展していなかった。
※まつ毛って、「しかめる」ものだったかなあ。
次のお題は:「比重」「地球」「命」でお願いします。
>>207 自分の引用間違ってるよ。
ちなみにひそめるのは眉。
209 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/04 02:18
「比重」「地球」「命」
世界は、人が認識して初めて世界となる。
「……命は地球より重い、っていうけどさ」
「何よ突然」
「それは質量が大きいってことなのか、比重が大きいのか、って」
「んなコトどーでもいいでしょ。次の授業始まるよ?」
「いや良くない。仮に質量が大きいとすれば、だ。
まず俺が地球に立ってるんじゃなくて、地球が俺にくっついてることになる。
さらに重力は星の半径の二乗に反比例し質量に比例するから大きくなることは必至。
そもそもこの大きさの体では密度もとんでもないことになって
場合によっては重力崩壊を起こしてブラックホールにもなりかねんのだぞ?」
刹那。
彼も、私も、地球に存在する全ての生物が、ブラックホールと化した。
世界は、彼が認識して初めて世界となる。
次「鼻毛」「ピンセット」「激痛」で。ヒネってね(w
「比重」「地球」「命」
自動車部品工場での単純作業の合間に、彼が私に向かって呟く言葉は
まったくもって、わけがわからない。
吉江という彼の友人が引越しをするということや
木川という彼のカウンセラーの誕生日が近いということを聞かされても
私は返答に困るだけだ。
今日も、彼は私に向かって出し抜けに言う。
「電気代がまだ計算されてないんだよ。」
私は彼の言葉だけを聞いて返答する。
「それは大変だね。」
にやにやと笑っている彼に微笑み返しながら
私は胸のうちにくすぶる苛立ちをどうしようかと思案する。
いたわりの情と白痴の相手をせねばならない不満との比重を、一定に保ち続けるのは
困難なことだ。
「しかしだね、君の使った電気代が未だ計算されていないのは
それは由々しき問題だよ。
政府は常に測っている、地球における電気の使用量を、
いや一人一人の人間がどれだけの電気を使っているのか、測っているんだ」
早口でまくしたてる私の言葉に、彼は声をあげて笑った。
私は真面目な表情で続けた。
「なぜ国は地球において使われる電気の量を測っているのか、
それはね、一人の人間が一生の間に使うことができる電力が決められているからなんだ。
電気は貴重な資源、決して無駄にはできない。
政府は常に各個人の電気の使用量を正確に測っているんだ。
そして、電気を使いすぎている奴は、厳罰を受けることになるんだよ。
君、夏場にエアコンをつけっぱなしにしたりしていないよね?
テレビをつけっぱなしにして眠ってしまったりしていないよね?
僕が思うに、君の支払うべき電気代が明らかにされていないということは、
何がしか、不穏な出来事の前触れなのかもしれないな。」
私の講釈に、彼は口をとがらせ目をむいたように見えた。
その表情の変化はほんの一瞬だったので、私には彼が私の話をどう聞いたか
判断はつかない。
彼はいささか神妙な面持ちで作業に戻った。
私はストレスが少しばかり解消されたような気持ちでいたのだが、
その後、自分が話して聞かせたことを後悔した。
彼は社内の明かりを片端から消していった。
コンセントが目につけば、それを引き抜いた。
「命が危ない」
とブツブツつぶやきながら。
>>209 ごめんよ、カブッた。
次「鼻毛」「ピンセット」「激痛」で
「鼻毛」「ピンセット」「激痛」
それはプレゼン中に発覚した。
遥は、ヒザに置いたケータイの震えに気づき、ペンを持って
いないほうの手でメールを開いた。机のノートを見るフリをして、
ヒザ元へ視線を向ける。
「遥さん、鼻毛、出てます!」
送信主は正面に座る、部下の三好だった。コホン、と、
遥は軽い咳払いをしたまま、手を口元(正確には鼻元だが)から
離さない。三好以外には、考え事をしているように見えるだろう。
プレゼンはクライマックスにさしかかろうとしている。プロジェクト
リーダーである、上司の利根川が、取引先招待客を煽る。
「当社の新製品はまさに、次世代型と呼べるものに相応しく、正直、
他社のものなど鉄屑同然。ふふふ、では、不肖利根川、実際に使用して
お見せいたします」
遥が突然立ち上がった。
「お待ちください、部長! ぜひわたくしに、やらせてください!」
「しかし……」
利根川は躊躇したが、遥の勢いに負けた。新製品を遥に手渡し、うなずく。
遥はプレゼンボードの前に立ち、招待客に一礼すると、おもむろに
次世代型ピンセットを鼻に突っ込んだ。涙が出るほどの激痛を
客の拍手が消し去る。スタンディングオベーション。
「ムダ毛処理にも最適です!」
勝利のガッツポーズよろしく新製品もろとも拳を突き上げる遥を見て、
三好と利根川は瞳を潤ませた。
つぎは「後悔」「素敵」「夜間飛行」でお願いします。
「後悔」「素敵」「夜間飛行」
僕は夜の中央自動車道を運転しながら後悔していた。
トランクには彼女の死体が入っている。
痴話喧嘩の果ての殺人、よくある話だった。きっかけは本当に些細な事だった。
彼女が僕の女友達からのメールを浮気と勘違いした。それだけだった。
今は調布の辺り。そう言えば誰かが中央自動車道の事を「夜空に続く滑走路」と歌っていた。
彼女とこの道を使ってドライブに行く事があった。
渋滞の帰り道、彼女は「この道が夜空に続く滑走路なら私達は素敵な夜間飛行の最中ね」と言って微笑んだ。
僕は山梨県の山間部まで車を走らせた。林道の奥で車を停めた。彼女の死体を地面に横たえた。
何で彼女を殺してしまったのだろう。僕は彼女の死体を抱き締めた。愛してる。
その時、頬に冷たいものが当たり驚いて僕は空を見上げた。雪だった。
雪は彼女の上にも降った。その時彼女は微かに首を動かした。彼女は息を吹き返した。
僕は歓喜の余り彼女をきつく抱き締めた。
その時僕は今日がクリスマスだった事に気付いた。
サンタクロースが僕達に運んだプレゼントは「彼女の命」だった。
次のお題は「嘔吐」「化粧」「坂道」でお願いします。
214 :
「嘔吐」「化粧」「坂道」:02/10/04 14:31
友美が怒鳴ったのは居酒屋の女子トイレだった。
「なんであんたこんな大事な日に遅刻なんかするのよ」
友美は凄い剣幕でユカに詰め寄った。
ユカは下を向くばかりで、ただ頭を下げるしかなかった。
友美は数カ月前から仕組んだ医大生とのコンパを、ユカの遅刻によって乱された
事に腹を立てていた。
「私までいい加減な女だと思われるじゃないの。どうして遅刻したの?理由を
いいなさいよ」
ユカは頭をすっと上げて、真一文に閉ざしていた口を開いた。
「家の前の坂道で嘔吐したら、涙で化粧が落ちたからよ」
次のオ題は「白熱灯」「地下街」「リズム」
うわーん、授業を受けてる間に先を越された。
>「嘔吐」「化粧」「坂道」
サルトルの作品「嘔吐」の中で、主人公は木の瘤に吐き気を感じると訴えるのだ。
意味無く存在しているものへの言いようの無い嫌悪感。
私は化粧をするたびそれを思い出す。肌色の鱗粉を顔に塗し、を血色の顔料で唇を塗り
つぶす大人達は何故そんな事をするのだろうと子供心に思った事を。
私には母がいなく、化粧をしている女を身近に見て育たなかったせいだろうが何か酷く
非生産的で欺瞞的に思えたものだ。
もっとも意味無く存在しているなど押し付けがましい感情で、意味が無い物。色素沈殿
や粗細の傷の無い肌は若さの象徴であり、女性ホルモンは唇を厚くし異性に訴える。
木の瘤にしても木の成長過程を理解しようと努力したほうがよほどましな解決法だろう。
むしろ私が困惑したのは性への目覚め、自分の中では解決できない欲求の矛先が肉体の
持っている肉体に向けられている事。何者かが私を支配しようとしている感覚に襲われ
異性を恐怖さえした。
インドの神話によると男女は元々一つの生き物であったという。そして再び一つ欠ける
ものの無い存在に戻ろうとお互いを求め合うのだという。
私は身繕いをするあいだ坂道を登る感覚に浸る、坂の向こうに待つ物は見えないけれど、
きっと何かを得られる。その坂は高台へ続き明日の景色を一望出来るのではないか、あ
るいは昨日までの自分を。
今日私はいったん別の生き物に姿を変えると、その日のうちに有りの侭の自分に戻った。
化粧を落とした顔は慣れ親しんだ男の自分。
人々は顔も身体も性も変わる事の無い生活から抜け出す事も無く、むしろ逸脱者を自分
が安住する揺るぎ無き価値観を乱す異物とみなす。そして、意味を考えようともせず
拒否するから、生理的嫌悪と言い表し吐気を訴えるのだ。
私はしばしば異性への欲求を自身に向け満たそうとする事で本能への反抗を楽しむ。
定番の女装ものに挑戦。貴方の精神的健康を損なう恐れが在りますw
意味が無い物。→意味が無い物などそうそうあるものではない
肉体の持っている肉体→異性の持っている肉体
次の御題は継続で
リズムが聞こえる。
深夜、飲みすぎて、君の家へと向かう途中、リズムが聞こえた。
“タタタ、タタタ、タタ、タタ、タタ。”
舞台は深夜の地下街。誰もいないその通り。リズムが聞こえた。
“タタタ、タタタ、タタ、タタ、タタ。”
入口は既に閉ざされている。僕はただの傍観者。リズムが聞こえた。
“タタタ、タタタ、タタ、タタ、タタ。”
白熱灯に誘われる虫のように、高い高い壁にぶつかりながら生きるダンサー。
“タタタ、タタタ、タタ、タタッ、タタタ、タタタ、タタ、タタ、タタッ!!”
闇の奥から大歓声が聞こえる。彼女は一礼してから汗を振り払うと再び踊り始めた。
そのまま眠り込んでしまう僕。
そして、目が覚める。そこには、もう、いつもの日曜の朝が始まっていた。
まだ、リズムが聞こえる。
あああ、またお題忘れです。
お題『歌』『ファスナー』『心拍数』です。
219 :
◆L.dyD/snow :02/10/04 21:18
「原因と結果の逆転って知っているかい?」
たどたどしい英語で、彼が話しかけてきた。
「例えば、緊張すると心拍数が上がり、呼吸が早くなるだろ?」
私の反応を待たずに、彼は続けた。
「ってことは、だ。呼吸をゆっくりとすることによって心拍数を下げ、
緊張を緩和することもできる、ってわけだ」
私は思わず感心してしまった。が、それは話の内容にではない。
彼がそんなことを考えるような人間だったと、初めて知ったからだ。
「さて、ゆっくり深呼吸でもして行きますかね」
そう言うと彼は、ウィンドブレーカーのファスナーを下げ、
鼻歌まじりに彼の仕事場であるマウンドへと歩き出した。
彼が「大魔神」と呼ばれる、その場所へと……。
※サ○キさ〜ん、ってことで(w
次のお題は『みかん畑』『たき火』『街灯』でお願いします。
220 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/04 23:29
みかん畑は荒れ果てていた。
かくれんぼをして遊び、腹が減るたびに勝手に収穫して食べていた頃の面影は微塵も無い。
命を絶たれた小さな町は、その亡骸を全てを見透かしたような月光に晒していた。
ぼんやりと皮肉な月を眺めてみる、その光は自分の中にあるこの町の姿を蘇らせた。
仲間と家出をして、焚き火を囲み、同じマグカップで紅茶を回し飲みにしたものだ。
レモンティーを気取ってみかんの皮を浮かべてみたり、そしてみかんの根元に還してみたりした。
余り遅くまで火を燃やしていると気付かれてしまうから街灯の下へ移動しようと言い出したもの
がいて、ダンボールを寝袋代わりに一夜を過ごすことになった。
誰も街灯があるということは人通りがあるということに気が付かなかったが。
今にしてみればつまらない理由で私は家を飛び出した、10年して帰って来てみればこの有様だ。
思い出の中の街灯は身悶えしたように捻じ曲がって、その役目を放棄していた。
街灯の命はこの町もろとも、原子力発電所の爆発により蝋燭よろしく吹き消されたのだ。
私は立ち去ることにした、これ以上は危険だ。
バイクに跨り、逃げ出そうとした私の視界の隅で何かが光ったような気がした。きっと気のせいだろう。
私はスロットルを開いた、思い出を振り切るかのように。
次は『ホログラム』『鞄』『水』で
誰もいない夜の街。ふたりぼっちの僕ら。不意にいつもの遊びを始める。
「きたはらよしこ」
「こども」
「もりのこえ」
「えんとつ」
「つみき」
「きた」
「たきび」
「びすけっと」
「とびら」
「らくだ」
「だるま」
「まつり」
「りす」
「すみれ」
「れんが」
「がいとう」
「うた」
「たかいそら」
「らんどせる」
「るびい」
「いーすたーとう」
「うみ」
「みかんばたけ」
「けっこんしき」
「キス」
誰もいない夜の街。ふたりぼっちの僕ら。遊びが終わり、月の影へと隠れて行く。
ああ、被った!!!
って事でお次は『ホログラム』『鞄』『水』でお願いします。
恋愛、軽蔑、無関心
ほとんどアルベルト・モラビアからとったもの。
或る女がふらふら歩き回る、何故だろうと思ったら。なれない酒
を彼氏に飲まされたらしい。それからと言うもの、彼女は彼を
軽蔑し始め、最後にとうとう彼には全く無関心となったのだった。
224 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/05 00:44
20センチ四方、暑さ5ミリのプラスチック素材の板。
板の手元側にあるボタンを押すと、17,8歳の少女の姿が板の上に現れる。ホログラムだった。
学校の制服と手提げ鞄。肩のあたりまで髪を伸ばした、清潔な印象の少女が微笑みを浮かべている。
「お父さん、今日で文は高校2年生となりました」
快晴の日に吹く風のような、軽やかで心が浮き立つような声。ホログラム写真に録音されていたのだ。
ホログラム写真を持つ男の手に水が落ちた。
鉄格子の中で、囚人服の中年男性は差し入れのホログラム写真を見ながら泣いていた。
ホログラムが個人でも手軽使えるようになった2020年。だが人はあくまで人であり、技術は進歩しても人の心の悪と善は永遠の闘争を続けている。
225 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/05 00:48
次のお題
「名探偵」「教会」「鳩」
226 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/05 03:08
「名探偵」「教会」「鳩」
「名探偵殿、少しお話が」
神父が俺のところを訪ねてきたのは、夜も更けてきた頃だった。
奴の言うことには、いつも誰かに見られている気がするのだとか。
「鳩の視線でも感じてるんじゃないのか?」
「それは最初に思い付きましたので、教会の鳩はすべて駆除しました」
とても聖職者の言葉とは思えないが、あえて聞き流すことにした。
「恨みを買うようなこともなし。他に心当たりはないのな?」
「はぁ……あると言えばあるのですが」
「言え」
「悪霊です。悪霊。どうも悪霊に取り憑かれてるような気がするんですよ」
………笑顔でゴマスリをしているこのオヤジは、本当に神父なのだろうか。
次は「へそ」「テスト」「階段」の3語です。んがくく
227 :
◆ra0S/YG2ds :02/10/05 03:53
「へそ」「テスト」「階段」
女はラッキョウのようにTシャツを脱いでいった。そして
最後の一枚を胸元までまくり上げると、「へーそー」と言った。
うちの劇団が新人を募集をしてから3ヶ月、ロクなのが来ない。
テストをする時間がもったいないと僕は団長に言うのだけれど、
彼は天才を待っているとうそぶく。
「スターへの階段、昇りませんか?」
それが募集ポスターに印刷されたキャッチコピーだった。
団長補佐の僕が言うのもナンだけれど、その階段は地下へのびている
気がする。だいたい団長と僕しかいないのだから、サギに近い。
「あの」と女が言った。「私、合格ですか?」
僕は言葉につまった。合否を舞台上で訊いてきた志願者は初めてだ。
団長は、ボールペンの先で頭を掻いている。これは「駄目」の合図なのだ
が、僕がまさに不合格を言い渡そうとしたとき、彼女は勝負に出た。
ややTシャツをまくり上げて、もう一度、「合格ですか?」と言った。
団長が、監督でもないくせに監督イスと言ってはばからない折り畳みイス
から立ち上がった。「ニッポンのジョン・ウーと呼ばれる俺の目に狂いは
ない。だが、キミのヤル気をもうすこし見てみたい」
僕は、だからアンタは団長であって監督ではないだろうとは言わずに、
入団テストの続きを見守った。
つぎは「勝ち組」「負け組」「恋は数年休んでます」で、おながいします。
「勝ち組」「負け組」「恋は数年休んでます」
赤紙がきてから6年。テレビでは「勝ち組アワー」をやっている。
彼は3D眼鏡とヘッドホンをつけ、ぼんやりと待ち構えた。
今日の犠牲者…負け組を。
破壊され荒れ果てた敵地に、アナウンサーが現れる。
「我が軍が勝利した村。それでは私が、視聴者の皆様を代表して…」
敵兵がカメラの前に引きたてられる。憎らしく見えるメーキャップつきで。
「このー!」と、縛られた敵兵を殴り倒すアナウンサー。
次に、飢えて疲れ果てた敵の家族が紹介された。
「かわいそうに。さあ、パンをあげましょうね。それー!」
投げられたパンをとりにゆく子供と、親の複雑な表情が放送される。
この番組は、何千万の国民に「バーチャル戦勝体験」を毎日送信していた。
戦意高揚効果抜群。現実には、国は荒れ果て、麻薬と犯罪だらけだったが。
徹夜でテレビ。フラフラと外に出ると、学校に通う彼女と運良く出会った。
彼は心を鬼にしてこう言う「ごめん、恋は数年休んでます」。
先月のバーチャル戦闘で被弾した彼は、生死不明という設定になっていた。
※レジューム機能はあるのだろーか
次のお題は:「時計」「ラジウム」「夜」でお願いします。
「時計」「ラジウム」「夜」
「この星ができてから……何億年もかけて、生き物を進化させてきたのは放射線だ。進化と
いう時計の針を、自分の手で進めてみたい……俺が研究しているのは、そういう事だ」
大学の研究室にいた頃、「あの男」から聞いた話が頭をよぎった。……天才と呼ぶに
相応しい、才能溢れる男だったが……その才能を他人の為に使おうなどとは、おそらく
生まれてから一度も考えた事はないであろう、あまりにも利己的な男だった。
あの後、彼は昼も夜もなく研究室で実験を繰り返し……ある日突然、姿を消した。
彼は失踪する少し前、大量のラジウムを研究室に持ち込んでいた。放射線を使った実験を
行なっていたようだが、それ以外の事は何もわからなかった。研究に関する資料は、全て
彼自身の手で処分されていたからだ。
だが、私は今になって、あの事件の真相を知る事になった……彼は、研究に成功したのだ。
生物の進化を司る放射線の理を解き明かし、何らかの処置を自らに施したのだろう。そして、
研究資料を処分し、姿を消した。実験の成果を自分一人だけのものとするために。
その成果が今、私の目の前にある。いや、いる。失踪当時……50年前と全く変わらぬ
姿の……不老不死という、神の領域に足を踏み入れた男が。「懐かしいな」と笑っていた。
※HNつけてみました。
次は「謙遜」「廃村」「キーパーソン」でお願いします。
230 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/05 17:23
「謙遜」「廃村」「キーパーソン」
僕は次の試合のことを考ええると、そこがすでに廃村であることが分かっていても、
朝一の電車に乗り、僕の生まれた村を目指すにはいられなかった。
今までの人生において、切羽詰った状況にかれた時に僕は、生まれた村に帰り、
子供時代の遊び場として慣れ親しんだ裏山で、静かな時を過ごした。
そのおかげで、人生の節目につきものである、ある種のテストをなどを、
失敗することなくクリアーできた。もちろん僕自身がそれまで積み重ねた努力も必要であったが、
ふるさとの裏山で過ごしたことにより、肩の力が抜けて、持てる実力を出し切れたおかげだろう。
今回、僕の切羽を詰めている、ある種のテストというのが、会社の仲間とチームを作っている
フットサルのチームの大会だった。僕らのチームは発足されて三年の月日が流れていた。
サッカー好きが集まり、楽しく始めたチームであり、実力もそこそこのものを持っていた。
しかし勝ちにこだわった事はなく、楽しくやるのが合言葉だった。ただ今回の大会に関しては、
事情が少しだけ違った。発足当初から、チームの一員だった仲間の一人が、今回の大会を最後にチームを辞め、
田舎に帰ることになっていた。だから僕たちは、その友人のために優勝することを誓った。
そして僕らは仲間のために努力して、決勝まで勝ち残ることができた。
準決勝の勝利の後、その友人と二人で話す機会があった。そこで僕は何故だか、彼にお礼を言った。
理由はどうあれ、仲間が始めて一つになった瞬間を感じれたことについてだ。それを聞いた彼は、
「何、謙遜したこといってんだ。チーム、仲間のキーパーソンはお前なんだよ。俺こそ感謝したい。
お前がいなければ、俺はここまで楽しめなかった」そういって、僕の肩を叩いてくれた。その言葉が、
僕にある種の緊張を抱かせ、あの場所へ行くことを決断させたのだ。
電車の中で少しずつとはいえ、緊張がほぐれていくことを感じた。きっと今回も大丈夫だ。
だって、僕たちはみな努力したし。
※叩かれること覚悟で戻ってきてしまいました。書くことの楽しさ、見てもらう嬉しさが、
僕にとっては麻薬です。→「蜘蛛」「ライフル」「手品」
根本邦彦が彼の祖父が所有するライフルでその祖父母を撃ち殺したのは、
清和八年八月九日、午前八時三十九分の事だ。
「ぼ、僕にだって、こ、これ、これっくらいの、こ、こと、は、で、出来るんだ。」
その朝は、とても明るく、とても狂おしく、邦彦は正気だった。
邦彦はうだる太陽に背中を押されるがまま離れの便所の隅に巣を構える
あの憎たらしい蜘蛛を叩き潰すと、彼の祖父の眠る寝室へと歩いていった。
「おい、ちょっと待て、来年で僕はもう三十だぜ?」
根本邦彦は心優しい少年だったのかも知れない。
幼い頃から、父親を山で失った為に、“父無し子”とからかわれていたが、
(頭も良かったのだろうが)荒れること無く、年老いた祖父母と病気がちの
母親を支えながら、一家の為に我が身を削って来たのだった。
そんな彼が恋というマジックに罹ったのが事件より三年と二ヶ月前。
もちろん、マジックは外来語だから“恋のマジック”等と書くと素晴らしい
物のように思えたりするが、やはり、それは、単に手品であり、種もあれば
仕掛けもある。カラクリを知った人間を落ち込ませるところまでそっくりだ。
特に、期待が高ければ高いほど、その分の絶望も深い。
“なんだ?本気にしたのかい?”
邦彦が、一名を除いた、村民三十二名全員を殺し、自分もライフルにより
自殺したのは、同日午後二時三十一分の事だった。
『愛は君の生活を支える代わりに君の心をめちゃくちゃにしていった。』
・・・まただ。
お題『混沌』『幽霊』『冷やし中華はじめました』
寒風吹き荒ぶ真冬の真っ只中、浩志は急に冷やし中華が食べたくなった。
当てもなく通りをぶらぶらしていると、今にもつぶれそうな小さな料理屋の前に
『冷やし中華はじめました』の看板。浩志は迷うことなく店内へ入った。
店の中には色の白い、ひょろりとした中年が一人、ぼうっと突っ立っていた。
「なあ、あんた、表の看板だけど・・・」
「冷やし中華ですか?おととい始めたばかりなんですよ」
「おととい?何でこんな時期に」
「あんまりお客さんにこられると困るんでね、夏にはしないようにしてるんです」
「何か特別な材料でも使ってるのか?」
「とんでもない。ただの冷やし中華ですよ。食べるんですか?」
「頼む」
しばらくして浩志の前に1皿の冷やし中華が置かれた。
「はい、冷たいうちにどうぞ」
出された冷やし中華は確かに何の変哲もない代物のように見えた。
何の感慨もなく浩志はそれを口へ運んだ。そして驚いた。
その冷やし中華は驚くほど冷たかった。
決して凍っているわけではないのに、今まで口にしたどんなものよりも冷たいと思った。
そしてこの上なく美味かった。
浩志はもう、この冷やし中華以外何も考えることが出来なかった。夢中で麺をすすった。
「どうですか、この世のものとは思えない味でしょう」
「ああ、美味い、な、ほんとに。魂が抜け出そうだ」
混沌とした頭で浩志は冷やし中華を食べ続けた。
「・・・ところでお客さん、あなた、幽霊って信じてますか?」
初めて書いてみますた。長くなって申し訳ない。
次は『金縛り』『こんにゃく』『眼鏡』で。
234 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/06 00:13
「金縛り」「こんにゃく」「眼鏡」
「そんなこんなで、金縛りが毎日続くんだよ」
「そりゃ難儀だね」
さしみこんにゃくを口に放りながら、オヤジの愚痴を受け流す。
「しかも枕元にはグラマーなべっぴんさんが裸で座ってるときたもんだ。生殺しだよ」
コップに酒を注ぐ音が、二人っきりの店内に、寂しく響いた。
「……ったくよ、寝てるときくらい幸せになりたいもんだね」
「俺は起きてるときに幸せになりたいよ」
「はは、違えねえ」
眼鏡越しに見えるオヤジの目は、少し寂しく笑っていた。
そしていつものように、店はふいと消えて、俺は空き地に取り残される。
何の因果かあの店は、現世とあの世のはざまに立っているらしい。
オヤジは、永遠の眠りの中で、幸せを見つけたのだろうか。
即興文ネクスト:「聖書」「宇宙」「ステンレス」
235 :
「聖書」「宇宙」「ステンレス」:02/10/06 01:09
ステンレスの台所で母の手伝いをして食事を作っている時に、突然に頭に思い浮かんだ。
「宇宙とは何だろう?」
次の日、私は宇宙のついて書かれた科学書と聖書を買っていた。
宇宙を科学的に説明した本と、神によって全てが作られたとする宗教の教え。
当時、高校一年生。今考えると、これが私の未来を決定したのだ。
大学で天文学を専攻し、研究所に入った年に洗礼を受けた。
今、かつて学んだ大学の教壇に立ち、私は未来の天文学者の卵達に向けて講義を行っている。
次は「小さな村」「犬」「落日」
どんな小さな村でも、ガス欠の車にはオアシスに思える。
2月の終わりの温かい日で、溶け出した雪が道幅を広くしているうちに
目的の街へ向かいたかった。
すみません、どなたかガソリンを売ってくれませんか、と言うために
ある家のドアをノックすると、女が出てきて言った。
「ガソリンならありますが、ひとつお願いがあります」
僕は自分にできることならと答えて、中に入っていった。
女は一匹の犬を僕に見せて、
「この子の花嫁を買ってきてください」
「それは、かまいませんが、僕が選んでもいいのですか?」
「」
「小さな村」「犬」「落日」 送信失敗ゴメソ!
どんな小さな村でも、ガス欠の車にはオアシスに思える。
2月の終わりの温かい日で、溶け出した雪が道幅を広くしているうちに
目的の街へと発ちたかった。
すみません、どなたかガソリンを売ってくれませんか、と言うために
ある家のドアをノックすると、女が出てきて言った。
「ガソリンならありますが、ひとつお願いがあります」
僕は自分にできることならと答えて、中に入っていった。
女は一匹の犬を僕に見せて、
「この子の花嫁を買ってきてください。そうね子犬がいいわね」
「それは、かまいませんが、僕が選んでもいいのですか?」
女はうなずいて、僕は代金を受け取った。
街で自分の用事を済ませたあと、僕はペットショップへと寄った。
「お客さん、もしかしてアノ村へ行かれるので?」
犬の代金を払うときに、そう訊かれたので、僕はそうだと答えた。
「また繁殖に失敗したのか! いえね、あの村では犬を食うんです」
「……」
僕は郵送で、約束の品を送った。
あの日買ったその犬は、いま僕の家にいる。僕はその子をヒザに
乗せながら、あの女が箱を開けてアイボを見たときの顔を想像した。
次は「小指」「亀」「片想い」でお願いします。
238 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/06 08:06
「小指」「亀」「片想い」
その朝、僕が布団中で目覚めた時には、僕は亀になっていたんだ。
少しだけ、カフカの「変身」を思い出した。それは本当に少しだけだった。
多分、人間の頃に比べてみれば、亀になってしまった僕の脳みそは小指ほどの大きさもなく、
亀である僕にとっては、カフカの「変身」などは関係ないことであり、
もし考えるべきことがあるとすれば、生きることを考えるだけで精一杯だったんだと思う。
僕、否、亀は布団から長い時間をかけて布団から這い出た。そして、まるで誘蛾灯に誘われる虫のように、
吸い寄せられるように、少しだけ開いた扉を目指して一歩一歩歩みを進めた。
廊下に出た亀が何を考えたのかなんて、亀になった僕にすら分からない。つまり誰のもわからない。でも、
何かを考え、ある種のテーゼのようなものを得て、またどこかを目指して歩き出した気がする。
それからどのくらいの時間が過ぎ去ったのかも分からない。亀は万年などという言葉があるが、
亀にとっては、時間の概念などというものはないのかもしれない。気づけば、
庭にある、祖父がこしらえた池のほとりにいて、水に飛び込んだ気がした。その時、水が冷たかったのは覚えてる。
そこで目が覚めたと僕は片思いをしてる彼女に話した。
さんざんモーションをかけて、やっと部屋まで連れ込んで一晩をともにした女性へ、
オネショをしてしまった僕には、こんな実用的でない言い訳をするしかできなった。
※亀は果たして、何を考えてるんですかね?
「経済」「鮫の歯」「ガラス」でお願いします。
「経済」「鮫の歯」「ガラス」2ch自体に初カキコです。
夜の街で、男がホームレスを殴りつけていた。ホームレスがおとなしくなると、その歯茎に
懐から取り出した注射を打ち、そしてメスとペンチのようなものを取り出して、その歯を抜き始めた。
「怖がるなよ、殺しゃしねぇ。むしろこれは良いことなんだ。お前みたいな薄汚ぇやつの臭い歯を、俺が
日本経済に還元してやるんだからな。ま、気合がありゃ歯だって生えてくるかも知れねぇぜ。鮫の歯みたいによ」
男は出向いてきた『移植業者』に歯を卸した。神経付の歯はなかなかの値段だった。
移植技術だけが発達して人体部品生成技術が滞って、男はなんだか医療が原始的になっているような錯覚を覚えた。
業者が帰った後、玄関のガラスの向こうに、人が立っているのに気がついた。
ひとまず近づいてみると、それは見覚えのある人物だった。
「おや、あなたは確か歯を購入された――」
それは、以前差し歯用にと歯を購入して行った老婆だった。うつむいて何事かを呟いている。
男はその声を聞き取ろうと、耳を老婆の口に近づけた。すると老婆の言葉がはっきり聞こえた。
「よくも抜いてくれたな。噛んでやる」
首に激痛を覚えた。ぶぢん、という音がした気がして、次に立っていられなくなった。
冗談のようだが、首から吹き出る血の勢いで直立できないのだ。
男は、考えた。歯、歯、歯に記憶が宿るとでも? 歯が復讐に来たとでも? ありえない。ありえない。
老婆のもう一噛みで、男は否定することも出来なくなった。
「給食費」「ソフト」「包丁」でお願いします。
240 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/06 16:16
「経済」「鮫の歯」「ガラス」
食器洗い乾燥機は電気代を差し引いても手洗いよりはるかに経済的であるらしい。
水道水を出しっぱなしにして洗わないことと、手洗いでは不可能な熱湯に近い温度
でゆすぐことにより水量を節約できるからだ。8万円の出費は痛手だったが、じき
に元はとれるだろうと考え、私は大手メーカーの「一人ででき太」を買うことにした。
節約を大義名分にしてダンナの了解を得たものの、実は食器洗いが死ぬほど嫌いという
のがその理由である。今朝もガラスのコップを割ってしまった。嫌々洗っていたのが
食器にも伝わったのだろう。特に力を入れたわけでもないのに、スポンジをキュッと
まわしただけで簡単に壊れた。コップの上半分がギザギザに割れ、まるで鮫の歯のよう
に私を威嚇する。ああ、いやだ。食器を洗うのはもうごめんだ。
そんな私の胸のうちを見透かしたかのように電器店の広告は食器洗い機特集を
組んでいたのだった。狭いキッチンの貴重なスペースにでんと居座ることになった「一人で
でき太」はその名に反してつや消しのシルバーと紺のラインがとても
おしゃれだ。私はその滑らかなフォルムに見とれ、肝心の機能については
店員の説明をまったく聞いていなかった。
さっそく使ってみよう。
ダンナと子供たちの楽しそうな笑い声が居間から聞こえてくる。いつもの
私だったら、一人で食器洗いの義務を背負うことになっている女の不運を
呪いながら鬼のような顔でいらいらとシンクに向かっていたはずだが、
今日は違う。
鼻歌さえ口ずさみながら、「一人ででき太」の扉を開けた。その中を見て私は愕然とした。
庫内には、ピンクや水色のさまざまな形をした食器洗い用スポンジとタワシ、
用途に分かれた数個の液体洗剤、そして食器を拭くためのクロスがところ
狭しと並べられていた。
「一人ででき太」は食器を洗う機械ではなく、食器洗い道具セットなのであった。
241 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/06 16:16
あ、だぶっちゃった。
でもお題忘れたので
239さんのでお願いします。
「給食費」「ソフト」「包丁」
今時給食費を盗むような事件が起きるとは思わなかった。
「なぁ、もう少しソフトに当ててくれよ。まかり間違ったら僕の首と胴は泣き別れだ。そんなの、勘弁だよ」
「うるさいっ」
ヒスな叫びだ。耳に響く。僕は顔をしかめて嘆息した。
最近の小学生は金に困って給食費を盗み、それが知れたとなるや級友の喉に包丁突きつける奴ばかりなのか?
僕はやはり嘆息した。
家庭科室の入り口には校長や教師や警察が、窓の外には記者とカメラと野次馬が。まったく、どいつもこいつ
も僕の状況を考えろというのだ。
ああ、教師が何か叫んでいる。やめろって。耳に響くヒスな叫びを聴かされるうえに、喉元でぶるぶる包丁が
震えるから怖いったらありゃしないんだ。
「なぁ」
と僕は元級友現少年Aに34回目の説得を試みた。
「うるさいっ」
失敗した。ああ、もう。どいつもこいつも、人の話を聞けよ。
ああ、ほら、あそこで泣いているのは僕の母じゃないか。やめてくれ、人前で泣くのは。みっともない。なん
だ、父まで泣いてる。頑固親父だと思ったら、意外とウェットな人だ。
しかし、こうしてもう何時間だ?いい加減足も痺れてきた。やれやれ、状況は膠着、為す手は無し。後はどれ
だけ経ったらこの少年Aが僕の喉をかっさばくか、だ。
ふむ? ああ、そうか。そうすれば終わるな。僕がいるから面倒なのか。
「やれやれ」
嘆息しながら、僕は喉を包丁に食い込ませて、横に滑らせた。
ぱっと血が舞う。一瞬の静寂。そして、悲鳴のシュプレヒコール。
上に下にの大騒ぎの中、僕は意識を失った。
お題「飴」「雨」「瓶」
10日もネットに接続しないと、結構変わるもんですな。
244 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/06 22:17
いやね、実際 瓶の中っていうのはきついんですよ。
息がねえ、やっぱりやりづらいってのは、あるね。実際。
最近気付いたんだけどさ、瓶の口の方、つまりね、前、僕に対して前ね。
そっちに向かって息するでしょ。そしたら結構 楽な気がするね。うん、実際ね。
あ、瓶ね、これ、倒れてる形なんですよ。牛乳瓶みたいなのが。
だから、瓶の口は僕に対して前なわけね。
つまり毎日寝そべってるんだわ、実際。
最初は口は上にあったのよ。でもさ、雨。これね、本当辛いから。
我慢して濡れてたんだけど、なんかね、女の子が倒してくれたわけ。瓶をさ。
で、最初は嫌がらせか?この野郎 とか、まあ女なんで野郎じゃないんだけどね、実際。
まあ思ったんです。でもさ、入ってこないのよ。雨が。いいじゃない。
で、毎日寝そべって暮らしてるんです。
そういや今日ね、子供が飴を瓶の口の、ちょっと手前に置いて行ってね。
当然取れないですよ。外に置いたわけでしょ。むかつきますよ、実際。
え?出ればいいじゃないかって?出れるなら出てますよ、とっくに。
瓶の口まで手が届かないから・・・・・・・・・・あ、
瓶の口は、とっくに僕の上から手前に移動したんでした。
気付きませんでしたよ。よいしょ
おお、しゃばの空気は久しぶりだ、実際。
あ!なにするんだ!離せ!やめろ!!
くそっあれはエサだったのか
お題「網」「腕」「嘘」でお願いします。
245 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/06 23:11
比較的雨も弱まってきたが、依然この冬の雨は、僕の体温を奪っていく。
僕はこのままではいけないと感じ、レモン味の飴を頬張りつつも、
釣り竿から手は離さなかった。いいや、離せなかった。それは、つまり釣り竿が
現在僕の腕に与える感触は、大物、であることを僕に知らせていたからである。
こんな時期のこんな季節にしなくとも、と世間は僕を笑うかも知れない。
僕自身も、馬鹿なことをしている感じてしまう。
しかし僕は、どうしてもあれが必要なのだ。とにかくあれを手に入れなくては、
これから先生きていけそうもない。そう、僕は今日、大いなる勝負に来たのだ。
その目的を完遂し、胸を張って帰らなくては、僕は生涯負け犬の人生を歩まねばならない。
僕は!この僕には夢があるんだ!その夢を叶えるため、
僕はここで大海に勝ち、冬の雨に勝ち、自分の甘さに勝つ。勝つために、ここにいるんだ。
もう、嘘をついて逃げるのはゴメンだ。絶対に叶えて見せる。
「よし、よし、この調子だ。いいぞ。冷静になれ。冷静に
激しい波で荒れ狂う海面から、僕の目的のものがついに姿をあらわす。
黒く、独特の形をしたそう、長靴である。僕はここぞとばかりに網を取りだし、
嬉し涙を流しながら、その艶をその眼で、何度も何度も確かめ、この地球に向かって叫んだ。
「こ、これでピチピチチャプチャプランランランが出来るぞ!!」
僕は拳を握り締めて、自分自身を褒め称えた。
「さらば、弱き己よ!」
しかしこのとき、僕は気付いていなかった。長靴は二つでワンセットという現実に。
お題「グルメ」「たわし」「冒険」で
「網」「腕」「嘘」
いやぁしばらく来ないうちにずいぶんスレが進んじゃってるねー。
俺も若い頃にはよくお邪魔したもんだけど。
で、久しぶりに来たついでに感想なんか一言ね。
ほら、俺って嘘とか社交辞令なんてのが苦手でさ、正直言っちゃうけど
お前ら全然ダメ!
いや、どこがどーとかいう問題じゃなくてさ。
なんて言うか、昔に比べて腕が落ちたね、みんな。
つーかまともに書ける奴がどっかいなくなっちったのか、単に。
ま、みず知らずの相手にここまで言うのは失礼だって思うかも知んないけど、
ほんのご挨拶がわりにね。
とまあ、このくらいで釣られるような奴等を一網打尽にとっ捕まえて
ダストシュートに放り込むと世の中すっきりするかも知れないね。
お題は継続で
247 :
「グルメ」「たわし」「冒険」:02/10/07 00:50
軽く伸びをして、彼は身体の疲れを振り払うと最後の大鍋洗いに取り掛かる。
大鍋の底にたまった豚の油をたわしで擦り、鍋の労をねぎらうようにぬるま湯を流す。
彼の後ろではさっき仕込んだ豚骨や野菜がクラクラと大鍋の兄弟の中で煮えている。
このまま一晩煮出してやれば、店自慢のスープベースが出来る。コレにカツオだしスープと鶏がらスープを加えて、丸山さんとこのちじれ麺、チャーシューや具を乗せれば、グルメも唸るラーメンの完成だ。
冒険心で牛乳をスープに加えたモノを加えたのも評判になっているらしい。
もっとも、グルメ本には面倒だから載せないようにしているのは彼のポリシーだ。
洗い終わった大鍋を伏せて、本日の作業を完了した彼は、もう一度伸びをした。
また明日は戦争だ。
御題は「お茶」「悪魔」「約束」で
248 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/07 01:03
「お茶」「悪魔」「約束」
縁側で猫を撫でながらお茶をすする。
なんとも平和なひとときである。
「おい、約束は守ってもらうからな」
膝の上の猫が言う。
「わかってますよ」
米寿を控えたこの老婆には、さすがの猫もお手上げであった。
何の因果か契約をしてからはや70年。
体は健康そのもので、痴呆の徴候も見られない。
人の恨みを買うこともなく、慕われ、愛されるおばあちゃん。
そのうちポックリと天国に召されてしまわないか。
猫の姿をした悪魔には、それだけが心配であった。
勝利の鍵は「リモコン」「ちくわ」「葉脈」!
249 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/07 01:43
オナニーィィィィィ。スペースコロニーが発進した。ウィィィィオナニィーン。
宇宙の暗黒星雲を突き進むスペースコロニー。オナニィーィィィ。
リモコンで動いている。
果てしない大宇宙。葉脈のようなマゼラン星雲。
シコシコピュピュピューン。
「何ごとだ!」
「何者かにより攻撃されています」
シコシコピュピュピューン。
「うわぁ」
メッセージが送られてきた。
ワレワレハアナヲサガシテイル
「穴だ! 穴を!」
メッセージが送られてきた。
ワレワレハチクワノヨウナアナヲサガシテイル
「まんこでは?」
「まさか」
次のお題:「リモコン」「ちくわ」「葉脈」
253 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/07 14:35
僕は小学校の理科の宿題で、近くの公園の植え込みの葉脈を観察していた。
その公園は広く、大勢の人がいた。
手元の画用紙に、葉脈の絵を描いていると突然、女の人の大声が聞こえた。
「危ない! ボク!」
もしかして僕のこと、と振り返ると、目の前に小さな飛行機が飛んできた。
「うわっ!」
驚いて頭を抱えて座り込む僕。小さな飛行機は頭の上を通り過ぎ、植え込みに突っ込んだ。
「ごめんなさい! 怪我はない?」
駆け寄ってきたのは、短い髪のお姉さん。
お姉さんはリモコンの飛行機を飛ばしていて、操作を誤ってしまったとそうだ。
何度も謝ったお姉さんは、近くのセブンイレブンでおでんを買ってきて、ごちそうしてくれた。
「本当にごめんなさいね」
ちくわを口に運ぶ僕は、照れくさくなって下を向く。
お姉さんから漂ってくる良いニオイと、僕の方に身をかがめているために目に入ったお姉さんの胸元の白さに、喉がかわくような身体が熱くなるような、不思議な気分になったから。
それが僕の最初の異性に対する目覚めだったのかもしれない。
次のお題「確率」「豪華客船」「薔薇の花」
254 :
「確率」「豪華客船」「薔薇の花」:02/10/07 16:42
あれから僕の世界観が変わった。今まで普通に話していた女子とも、なんだか話し辛くなった。
なにより、あのお姉さんの優しさが忘れられなくて困っていた。いや、もう一度会いたくて
仕方がなかった。もう一度あの公園に行けばお姉さんに会えるのだろうか。ふと、僕は考えた。
あんな広い公園で、もう一度会える確率なんてほとんどないだろう。だけど、絶対に会えないという
わけではない。僕はそのわずかな希望に賭けて、公園に行くことにした。
公園には、いつものように大勢の人がいた。砂場で遊ぶ小さな子供や、談笑している高校生風の人達・・・
もしかしたらこの中にお姉さんがいるかもしれない。胸が高鳴る僕は、じっくりと公園を見回した。
しかし、お姉さんらしき人は見当たらなかった。飛行機も何も飛んでない。
僕は少し疲れたのでベンチに腰を下ろすことにした。だが、僕は下にあった雑誌を気付かずに敷いてしまった。
僕は腹立たしく思ったが、一度立ち上がってその雑誌に目を向けてみた。
その雑誌の表紙には「薔薇族」と大きく書いてあった。背景に、男の人の写真や薔薇の花が添えてあった。
そしてその雑誌をめくってみると、なんと中に男の人の裸や男同士で抱き合っている写真が!
「ボク・・・。この雑誌に興味があるのかな?」
突然後ろから誰かが話しかけてきた。話しかけてきたのは、角刈り頭のお兄さん。
「よかったら俺の部屋に来ない?カッコいい豪華客船の模型もあるよ。」
僕はなんだかドキドキしてきた。
お兄さんから漂ってくる男らしい匂いと、偶然目に入ったお兄さんの胸元の毛の黒さに、
毛が逆立つような下半身が熱くなるような、不思議な気分になったから。
それが僕の最初の同性に対する目覚めだったのかもしれない。
僕はお兄さんの部屋に入った。そしていきなりズボンを脱がされて・・・
後はもう言いたくない。これはお兄さんと僕の大事な秘密だから。
次は「焦燥」「廃人」「過去」で
こんなくだらない物に行を使いすぎた。逝ってくる
256 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/07 16:53
この村は、村なんて言葉、今の時代笑っちゃうかもしれないけど、
他にふさわしい言葉がないのだ、そうこの村は、死に絶えているのだ。
生まれる前から死んでいる村、しけた村だよ、電車はない、店もない、
人だってどんどんいなくなる。小学校?なんだそれ?
ここに残ってるのは廃人ばかりさ、ほらそこにも見えるだろう
畑仕事をしている、心は廃人だよ、彼らはもうだめだと知っている、
ここは日本から取り残されたんだと知っている、彼らには過去も未来も無い。
焦燥にかられるなら早く出たほうがいいぜ、あんたはまだ大丈夫なんだから、
ねずみたちがダンスを始める前に走ればいい。
わけわからん。次は「学校」「オレンジ」「大雨」で。
257 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/07 19:09
「大雨による地滑り。小学校半壊」
その見出しの横の写真に記憶を刺激され、私は記事を読み進めているうちに気づいた。
壊れた学校というのは、小さな頃に約2年間通っていた学校だと。
私は次の日から連休が入っていたこともあり、車で行くことを思い立った。
そこは記憶にあった時よりも寂れたな、と私は思った。
村の入り口近くにいた着古した作業着の中年男性に車を駐車できる場所を聞いた私は、車をそこに置くと、学校に向かった。
「すごいな……」
補修工事をしているのだろう。校庭には数台のトラックが入り、十数名ほどの作業員が動き回っている。
「……もしかして、健児クン?」
校門近くにいた私に、声がかけられた。振り向くと、髪に白いモノが混じっているが、白いブラウスと薄い青色のロングスカートの初老の女性がいた。
「児玉先生、ですか?」
品の良いその女性は、かつて自分の担任だった児玉先生だった。懐かしさがこみ上げ話をしているうちに、瞬く間に30分ほどがたつ。
「こんなところで長話もなんですね。うちに寄りませんか?」
喜んで招きを受けた。
冷やされたオレンジを切り、ガラスの食器に盛って出してくれた先生に礼を言った私は、半壊した学校のことを尋ねてみる。
「もう生徒も10人ほどだからね。壊れた部分は取り壊して、残りでやっていくことに落ち着くでしょうね」
そうですか、と相づちを打ちながら、私は過去の大切な思い出の場所が崩れていく寂しさを感じた。
「でも、あれからもう20年はたちますよね。よく私のことがわかりましたね」
「ふふふ、大切な子供の顔が分からなくなる親がいますか? それと同じことですよ」
柔らかな微笑みを浮かべる児玉先生の存在が、私にはとても眩しく見えた。
お次は「読書感想文」「土管」「百合の花」で。
258 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/07 19:11
推敲を手抜きしてしまいました。ごめん。
259 :
馬並 錠 ◆GsRiN2ka.U :02/10/07 22:47
二年三組二番 あかどう すずのすけ「ろくべいまってろよ」をよんで。
ぼくは、「ろくべいまってろよ」をよんで、少しうれしいきもちになりました。
(中略)やっぱりみんな友だちなんだと思いました。
三年五組一番 普通科 赤同 鈴乃助「海峡の光」読書感想文
『丘に上がった後も海のことがいつまでも忘れられない』
この作品に限らず、辻仁成は出だしの一文に並々ならぬ神経を注いでいるように
思われる。(中略)私はこの作品から、百合の花にも似た甘美な匂いを感じとった。
文学部第一文学科 A−2000102 赤同 鈴乃助「夜の三部作」評論文
福永武彦作品には、念頭に必ず『死』という命題がある。(中略)そして作者も、
私を始めとする多くの作家志望の者達も、この『死』という絶対的な権力者の
奴隷であり、それを敏感に感じえる者のみが成功を収めるのではないだろうか。
もし私が『人生』たる土管の中途で夢を諦め、冷ややかな土中に逃げ出したらば、
勇猛な土竜によって全身を切り刻まれるであろう。
毎朝新聞読者投稿欄 青磁 政宗(33会社員)
つい数週間前、密かに贔屓にしていた無名の作家が自殺した。(以下略)
次のお題「共鳴」「鈴」「十月」でどうぞ。
「共鳴」「鈴」「十月」
鈴なりに並んだ丸だか三角だかのつり革に捕まって電車に乗っている夜、
この世の中は本当に俺を中心にして動いているのでは、と思うことがある。
朝や、昼ではなく、いつも夜に限って思うのである。
暗幕を引いたような都会の黒い空は、本当に暗幕でできていて、そこに
浮かぶ満月は空に空いた覗き穴なのではないだろうか。そうすれば、
これら全てはツジツマが合う。前回の模試で勘が冴えわたって、いつも
「下の下」の成績の俺が4科目の総合が全国3位になり、職員室中が
大騒ぎになった。ある先生は泣きながら俺を褒め、ある先生はことさら
俺を疑った。突然彼女に浮気がばれて、フラレたのもそうだ。浮気相手は
親父と行った四つも向こうの県の名前も知らない風俗嬢であるし、もちろん
他言はしていない。背もあれから数センチだけ急激に伸び、理想の身長に
到達した。いいことも嫌なことも現実の物とは考えられないことが続いている。
あれから。そう10月の体育祭の前夜から寝る前に毎晩頭の中で響く、
あの金属同士の共鳴音のような頭痛を感じてから。
次のお題は「ティッシュ」「ゴルフ」「野良猫」で頂点へ。
261 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/08 01:38
「ティッシュ」「ゴルフ」「野良猫」
「さてと」僕は鼻息を荒くして、鼻水対策に詰めておいたティッシュを勢いよく飛ばして、
一気に反動をつけて布団を蹴り起き上がり、ベッドの上に立ち上がった。そのままの調子で気づけばポーズをとっており、
「ヒーロー見参」と、最近見た映画の主人公のような台詞を言いそうになった。
僕はこの日は朝から、どうしようもなく調子に乗っていた。
生まれて初めてゴルフというものに連れて行ってもらえるんだ。
以前の自分の生活を考えれば、僕が趣味で身体を動かすなんていう行為をするとは、夢にも思わなかった。
趣味で身体を動かさなくても、日常的に身体を動かしていたし、それはすなわち僕にとっては生きるということに直結していた。
僕が生まれたのは、あるおかしな施設だった。というか、僕がそこで生まれたどうかは、正直僕には分からない。
僕が物心付いた頃に、すでに僕はそこにいたし、そこでの生活では、そんな事を考える必要がなかった。
でも、便宜上というか、それを誰かに説明する機会があったら、もちろんそんな機会はないが、そこで生まれたと言っている。
そのおかしな施設で僕は、徹底的にスパイとして全ての技術を叩き込まれた。そして僕は、それをこなしていた。
僕は割りに優秀なスパイだったんだ。自慢ではあるが僕のおかげで地球が救われるようなことがあった。
そんな僕でも失敗を侵した。自分をスパイサイボーグだと信じてた僕にとっては、
白黒だったテレビがカラーになったくらいに衝撃的な理由でだ。女だ。その女は飛び切りいい女って分けじゃない。
野良猫のようにすねた目をして、浅黒い肌でボロをまとった女だった。僕はその女に惹かれた。
そして、皮肉にもスパイだった頃の技術で、一般社会に溶け込んだ。
全てがうまく行ったように思えた。その彼女も手に入れたし、社会的に目立たないが、
確実な地位も手に入れた。ただ、優秀であった僕自身を骨抜きにするために、敵国が雇ったスパイが彼女であり、
僕はそれを全て承知していたが、もちろんそのことに彼女は気づいていなく、
それどころか、僕を騙してる事で自分自身を攻めてすらいる。僕は彼女に騙されてるふりをする事で、
やさしくする、というどこかゆがんだ形でしか彼女を愛せない。それが今の僕の悩みではあるが、
幸せな悩みかもしれない。
262 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/08 01:40
すいませんお題を忘れました。
「戦闘」「尖塔」「銭湯」でお願いします。
263 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/08 01:56
「戦闘」「尖塔」「銭湯」
尖塔がひとつ、またひとつ、崩壊していく。
戦闘の終了を告げる通信が入り、部隊は安堵に包まれる。
先頭にいたはずのリーダーがいつの間にか着艦していた。
遷都疎ましき事哉と嘆く民衆を背に、俺達の艦は飛び立つ。
千頭にもなろうかという羊の群が、何事もなかったかのように草を食んでいる。
銭湯でひと風呂浴びた頃には、次の戦場に着いているだろう……。
次は「画面」「サソリ」「招き猫」でよろしく
「戦闘」「尖塔」「銭湯」
足元に何かが滑ってきた。それは発光すると同時に俺を吹き飛ばした。
吹き飛ぶ直前、通信兵の顔が見えたのは気のせいではなかった。彼が
光と俺のあいだに入らなかったら、俺はいまごろ彼にIDペンダントを
拾われていただろう。戦況を考えるとそのほうがよかったかも。 w
おっと、こんな時になぜ「w」なんて文字が頭に浮かぶ。精神が壊れ
かけているのか? 一刻も早く日本に帰りたい。2ちゃんねるを
していた頃が懐かしい。クソッタレ有事法制め。俺のヒッキーライフを
返せ。戦争(・A・)イクナイ。ボーイ・ジョージだってそう歌っている。
俺は通信兵のIDペンダントへ手をのばした。それは壊れたランドセル型
無線機の横にある。あと10センチで掴めるというのに、銃弾がペンダント
を弾いた。俺はのけぞり、近くの壁に隠れた。スナイパー……。尖塔から
の銃撃のようだ。一か八で飛び込めば、俺は丸見え、スナイプされる。
だがしかし、命の恩人に対して俺がいまできる全ては、国の身内にあの
ペンダントを届けることくらい──。
俺は大きく息を吸った。これが最後の呼吸になるかもしれない。俺は
短距離ランナーのスタート姿勢をとり、息を止めた。そして未知のリンクを
踏むような覚悟で、足を蹴り、顔をあげた。まるで脳漿(のうしょう)の
ように湯が飛び散り、俺は息を吐きながら、横に立っている通信兵と
おなじ顔の友人を見た。息止めゲームは俺の勝ち。銭湯代は彼の
おごりとなった。
次は「鉛筆」「同学年」「夏」で、お願いします。
カブってしまいますた。いちおうリアルタイムってことで。(w;
次は
>>263さんの「画面」「サソリ」「招き猫」で。
266 :
「画面」「サソリ」「招き猫」:02/10/08 02:28
「あの人はあたしのことを弄んだんだわ。あたしはあの人を信じてたのに」
「あたしの恐ろしさをあの人はぜんぜんわかってないわ。
あたしはサソリ座生まれなのよ。サソリの毒は後で効くのよ」
「きっと今ごろあの人は、あたしのメールを見て
画面の前で震えてるわ。きっとすぐにあたしの前で泣いて謝るわ」
ちょうどその頃、旅先から帰ってきた男はメールボックスをチェックした。
『これであなたも確実に儲かる、ネズミ講ではありません、あなただけにこっ・・』
『インターネット招き猫。このメールを他の事業主へと転送すれば次から次へ・・』
『これは不幸のメールです。今日中にこのメールをコピーして5人の方に転送・・』
『これは不幸のメールです。不幸になりたくなければあなたが捨てた女を優し・・』
『THE・鉄腕DASH!! メールはどこまで到達するか大実験!このメールは城島・・』
今日もチェーンメールで一杯のようだ。男は仕事に関係の無いメールを一斉に削除した。
「なんであの人はわたしのもとへ帰ってこないの?あたしの気持ちは
あの人に届かなかったの?」
せっかくなんで次は「鉛筆」「同学年」「夏」で、お願いします
267 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/08 03:09
>>◆ra0S/YG2ds
バーカ
うちの学校は1年から3年まで一括で修学旅行に行くから、結構な人数行くこ
とになる。ただし、その分時期が多少他の学校とはズレ気味で、9月の中旬だ。
北野天満宮で合格祈願の鉛筆買って、八坂さんも見て、三千院の不気味な仏に
驚いて、そして最後に訪れた清水寺。
僕は部活でつるむ連中や、同学年別クラスでつるむ連中をほっぽって坂を昇っ
た。うむ、相変わらずきつい坂だ。汗ばんできた。京都は暑いと聞くが、いくら
なんでも暑すぎる。
「やぁ」
と声をかけられ、見ると、髪の短い目の大きな少女が僕と並んで歩いていた。
「なんだ、暑いわけだよ、お前がまだいるんじゃ」
「なによ」
つい、と少女はそっぽ向いた。僕らは坂を登り切って、本堂にたどり着いた。
「ああ、相変わらず良い景色だ」
紅く染まり始めた山々が僕の目の前にあった。でも、やはり、足りない。いや、
余計なのだ。隣の少女に声をかける。
「お前、早く行けよ。もう、終わりだろ」
「そんな事おっしゃらないで」
僕はぎょっとして反対側を向いた。サラサラのストレートヘアの、儚げな女性
がほほえんでいた。
「あれ、もう来てたの? あれ?」
「その子、貴方が来るからって、無理して待ってたんですから」
「……そうか、ごめんな」
僕は、うつむく少女の頭に手を置いた。
「来年は、もっと早く来るよ」
「約束だよ」
「ああ」
くるり、と背を向けて少女は走り去った。
一陣の風が吹いた。最初熱かったそれは、やがて涼やかなものになって、僕に
一息つかせた。
夏が行って、秋が来たのだ。
お題忘れ。「梅」「星」「目薬」で
270 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/08 05:17
星の綺麗な夜だった。
あまりに陳腐な常套句だと自分でも分かっている。
帰省した田舎の夜を表すのに、俺の貧弱な語彙で表現できるのはこの程度だ。
完全に理系人間と自覚しているし、それを悔いてもいないが、少しは文学もかじった方が良かったかな、と思う時もある。
眠れずに寝間着のまま庭に出た私は、汚れた東京の空では決して見ることのできない星の瞬きを見上げていた。
庭に植えられている梅の清冽な香りが、私の心に張った油膜を洗い落としてくれたのもしれない。
目薬をつかって目の疲れをごまかしながらパソコンのディスプレイに向かう日々。
そんな日常に心が錆びついたような私にも、まだこんな部分が残っていたんだな、と嬉しさと悲しさを半々に感じた。
「もう少し、がんばってみるかな……」
俺はそう呟くと、母屋へと戻っていった。
次は「イブニングドレス」「黄金」「流星」で。
271 :
「イブニングドレス」「黄金」「流星」:02/10/08 07:59
昔々ある村に、仕立て屋の娘が居ました。
ある日、いつものように夜遅くまで仕事をしていると、家の戸を叩く者が居ました。
娘が、少しだけ戸を開けて外を覗いてみると、黄金のイブニングドレスを着た
それは美しい女性が立っていました。
ドレスはとても似合っていましたが、裾の方に少し破けているところがありました。
「ああ、それをお直しすればいいのですね」
娘の言葉に女性は頷くと、するりとドレスを脱いで娘に手渡しました。
「すぐにお直ししますね」
困った顔の女性ににっこりと微笑むと、いつものように針をとり、
ドレスの生地に似合うような糸を選び、あっというまに縫い上げました。
女性はとても喜んで、娘に代金は夜明けに持ってくると言い置いて、娘の家を出て行きました。
どこかのお屋敷でパーティでもあったろうかと、娘は不思議になりましたが、
少し眠ろうとベッドに入りました。
夜明け前、誰かが肩をゆする感触で目が覚めた娘は、約束を思い出し、
家の外へでてみました。
すると明けていく空を、沢山の流星が流れていくのがみえました。
ひときわ大きい流星のシッポがちかりと輝き、娘のもとに落ちてきました。
あの女性のドレスと、同じ色の黄金のコインが沢山入った袋でした。
娘はそのコインで、新しい布を買い、自分の好きなドレスをつくり、
それが大きな街で売れ、それはそれは繁盛したそうです。
次は「トンカチ」「金魚」「落ち葉」で如何でしょ?
「トンカチ」「金魚」「落ち葉」
僕は積もった落ち葉を丁寧にどかすと地面を掘り始めた。
今年の夏、僕は恋に落ちた。
その日、僕は中学対抗水泳大会で優勝を逃したくやしさで霞川を泳いだ。むきになって何時間も泳いだ。
泳ぎ疲れ岸に上がった時、土手で写生している女の子が目に入った。この辺りの子では無かった。恐らくお盆で帰省したのだろう。
遠目からでも白い肌とはっきりとした目鼻立ちが分かった。逞しく日焼したこの辺りの子とは違う都会の子だった。
僕は彼女が何を描いているのか気になり話しかけた。
「宿題?」
彼女はびっくりした様にスケッチブックから顔を上げると頬を膨らませ「ねえ、責任とってよ」と言った。
僕は彼女の言葉に戸惑った。「冗談。霞川を写生し様と思ったけどアナタの姿が気になって集中出来なかったの」彼女は笑顔になった。
僕達は暫くの間土手で話をした。ミユキと名乗った女の子は僕と同じ中2だった。
夜にミユキと待ち合わせをして盆踊りに出掛けた。金魚すくいをやった。僕は何度も失敗してようやく一匹捕まえた。
僕はミユキの笑顔の虜になった。
そして夏が終わった。僕に残されたのはミユキの笑顔の記憶と一匹の金魚だった。
そして冬の訪れとともに金魚は死んでしまった。
トンカチの様に固くなった死骸を丁寧に埋めながら、僕は二度とミユキと会えない気がして涙を流した。
次のお題は「高層ビル」「口紅」「野球場」でお願いします。
久々に、手紙と言う物を書きたくなって、筆を取っては見たのだけれど、自分の書く字
の拙さに、筆を投げたら、字が書けなくなった。
だから、この手紙は、デジタルの文字でしか存在しない事になるのかもしれない。
いや、それ以前に、この手紙は、きっと君の手元に届く事はないだろうし、そもそも出
すつもりもないのだから、はっきり言って、冒頭の三行は気に止めないでくれて構わない。
先日、恋人とキスをしようとした時、僕の恋人が口紅を付けた犬に見えて辟易したの
だけれど、彼女の唇にキスをする自分の姿を鏡で見て、“ああ、しょうがないな。”と
思ったよ。僕だってまるで年老いたイノシシみたいだったのだから。諦め切った顔を
するイノシシ。ああ、これはこれで面白いか。
そう言えば、ずっと昔に話は戻るのだけれど、夜中に隣町まで歩いていったのを憶え
ているかい?暗い夜空に野球場の光が映し出されて、そこに何か楽しい事があると思っ
て家を抜け出したのだったよね。結局、球場の中には入れなかったのだけれど。
この前、そんな気持ちを思い出す出来事に出会ったんだ。
僕の働くこの街の、高層ビルが立ち並ぶその隙間に、三色に輝く虹が現れたんだ。
僕は、その虹を手元のデジタルカメラに収めようとする前に走り出していたよ。
だって、虹の根元には、僕らが埋めた宝物が、まだ、きっと、あるはずだものね。
あはは、嘘だよ。嘘。もう、僕らも大人だもんね。
また、メールでもするよ。
お次は『さよなら』『パンを焼く』『満席』
「高層ビル」「口紅」「野球場」
ぼやけた視界の端に、水色の木綿のハンカチが差し出されるのが映った。
「よかったら使ってよ」
まっすぐに右手を伸ばしているのは、金髪の十歳ぐらいの女の子だった。
「ありがとう。でも自分のを使うよ。汚したら悪いから」
私はバッグの中からハンカチを探り当て、流れるままにしておいた涙を拭いた。
高層ビルの林の中に、そこだけぽっかりと開いた虚無への入口。野球場が
入りそうなくらい大きく深い傷跡。瓦礫を片付ける作業はまだ続いていて、
クレーン車が立てる騒音が、私の心の傷口をまた少しずつ引き裂いていく。
あの朝、彼女はどんな服を着て、どんな色の口紅で装い、アパートを出たのか。
ニューヨークで働くことが、聡明な彼女の夢のひとつだった。その夢を叶えて
たった三ヶ月のことだった。最期の瞬間、彼女の目に映った光景は
どんなものだったのか。私にはわからない。が、ただひとつ私にわかること。
こんな運命は、彼女には絶対にふさわしくはなかった、ということだ。
「あたしのパパは、消防士だったの」
はっと振り向くと、女の子はまだそこにいた。その目には涙はなかったが、
大切な人を失い、傷つき、泣いて、それでも生きていくことを
決意した人間の強さを秘めた目だった。私は無言で頷いていた。
お題は、継続で。
次のお題:『さよなら』『パンを焼く』『満席』
「さよなら」「パンを焼く」「満席」
パンを捏ねる。力を込めて、腰を入れて。汗を浮かべて、涙を込めて。
視界に過去の栄光がちらつく。
満席のホール。緊張しつつも得意げに演奏する自分。
あのコンサートから数日後、ピアノ奏者は自分の愛器を手放した。
パンを捏ねる手に、悔しさと、憤りが篭る。自分の手にのこる傷跡が熱を持った気がした。
交通事故で、手先が不自由になった自分。絶望から典型的な落ちぶれ方をした自分。
酒に浸り涙に暮れた生活は、記憶がほとんど残っていないのは、良いことか悪いことか。
よく捏ねたパンを型に嵌め、額の汗をぬぐう。後はこのパンを焼くだけだ。
荒れていた自分に差し出された一切れのパン。周りの者にも暴力を振るうようになっていた自分に
対して振舞われた厚意に、涙を流しつつ、パンを食べきった。
オーブンから漂う香りに、あの時のパンの味が蘇ってくる。
自分にパンを振舞った主人は、その後自分にパンを作らせた。無理だと言う自分に、
無理やり作らせてくれた。不自由な手で、最初はとてもパンなんて呼べる代物ではなかった。
今、目の前にあるパンのなんと整った形だろう。ここまで教え込んでくれた主人には、
どんなに感謝しても足りやしない。
焼きあがったパンを味見してみる。香ばしい香りが胸いっぱいに広がって、
僅かな甘みが生きる幸福を知らせてくれる。まぎれもなくあの日のパンの味だった。
かつて、もう奏でることの出来ないピアノを前にして言えなかった言葉が、数年遅れで口をつく。
さよなら。
次は「ハッピーエンド」「昼間」「自殺」でお願いします。
277 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/08 22:54
「ハッピーエンド」「昼間」「自殺」
「しかし、彼女が自殺するとはね」僕が初めに彼女について聞いたのが、
この一言だった。そしてその先何度も聞く一言だった。ある晴れた、
三月の日だった。その日は前の日まで降り続いた雪が十分すぎるくらい残っていた。
晴れた日の昼間の日差しが、ゆっくりとその雪を溶かしていた。そして溶けた雪の下から、
彼女の死体が見つかったんだ。その死体は、おそらく雪が降り始めた頃に生を失い、
ツインピークスを彷彿とさせる、日本一綺麗な死体となった。と言っていたのが、
終わらない昭和を語り続ける、遅れてきた評論家だった。僕はどういう経緯かは省かせてもらうが、
その日本一綺麗な死体となった彼女について、短いながらも自伝を書き記すように依頼された。
僕はその仕事をうけるかどうか悩んでいた。僕は一応とはいえ、物書きの端くれであり、
僕の書く文章は、ハッピーエンドを必ず迎えるというのが、僕が昔から心がけてる、
文章への礼儀であった。そして、どんな理由があったにしろ、自殺した女性の自伝を書き記そうとしたら、
ハッピーエンドに終わらせられる自信がもてなかった。でも結果的には、その仕事をうけてしまった。
日本一綺麗な死体の写真を、ある写真週刊誌で見てしまい、ぼくは不覚にもその女性に恋してしまった。
僕は死んでしまった彼女を、僕なりの方法で弔うべく、仕事を受けた。
もちろんその仕事をうけたことが、良かったのか悪かったのかわからない。ただ、
仕事を進めるうちに、僕の頭の中に、彼女が舞い降りて、僕は全てを失ったが幸せの中で暮らすことになった。
少なくとも僕にとっては、ハッピーエンドだとおもいませんか?
※ひどいですね(w 「誘拐」「ヒゲ」「唇」
「誘拐」「ヒゲ」「唇」間に一作しか置かないでの投稿ですけどアリですかね?
青ヒゲの濃い男が、ロープで拘束された男に言った。
「おい、自分がなぜ誘拐されたのかわかるか?」
「さては、私の研究の成果を奪いに来たな!」
「わかっているなら話は早い。お前の開発したという『濃いヒゲを目立たなくする薬』のありかを
教えてもらおうか!」
「く……研究室の、金庫の中だ。鍵は私のポケットにある」
「へっへ、素直でいいぜぇ」
青ヒゲの濃い男は、早速鍵を奪って研究室へ忍び込んだ。
「さて、これが『濃いヒゲを目立たなくする薬』か。ご丁寧に説明書まである。
なるほどこれは塗り薬なのか。これで俺もスベスベお肌のナイスガイだ」
青ヒゲの濃い男は勢い込んで自分のあごに薬を塗りたくった。
すると、青ヒゲの濃い男のヒゲはぼーぼーに伸び、唇を覆い隠すまでになってしまった。
仰天した男は説明書をよーく読んでみた。するとこう書いてある。
『この薬は、世の中の濃いヒゲなど霞んでしまうくらいのヒゲを生やすことの出来る
強力な増毛剤です』
次は「深爪」「逆転」「結婚」でお願いしまス。
「深爪」「逆転」「結婚」
0時になっても、娘は帰ってこない。深爪の痛みの様に、不安が心を蝕んでゆく。
その時、屋敷の受話器が鳴った。
「ふふふのふ。ご主人、僕がわかるかな?」
「き、君は!」屋敷の主人にはすぐに分かった。娘の家庭教師のあの若者だ。
「そう、君の強欲で親を失った男さ。
君の娘はここにいる。10億円出せば帰してやる。もっとも…」
若者は笑った。「明日の朝には、もう娘ではなくなっているがね」
「おお…」主人は一息ついてこう答えた。
「何だ君か、心配したぞ。20億もってゆけ、10億は結婚の持参金だ」
「お、おい!」
訳の分からぬまま逆転した立場。その時、若者の背後のドアが静かに開いた。
「先生、お布団の仕度ができました…」娘が、水差しを用意して待っていた。
「今夜はもう、どんどん復讐して下さいね」
「はっはっは。よろしく頼みます、先生」受話器の向こうで高笑いが聞こえた。
娘もまた物好きな…とはいえ、受験終わっても家庭教師をつけ続ておいて正解。
※こんなありきたりの展開で無意味に悩む自分が情けない
次のお題は:「時計」「体重計」「失敬」でお願いしまふ。
280 :
「時計」「体重計」「失敬」:02/10/09 01:23
人類にとって宇宙はいまだ未知の領域である。
宇宙の歴史を人の一生に例えると、
我々が想像できる時間の範囲は、小型の砂時計といったところだろうか。
あなたは『太陽系の体重計』をご存知だろうか?
冥王星の100光年ほど外側に位置する、不定形の小型ガス状星雲のことだ。
この星雲を天体望遠鏡で詳細に観察することで、星々の重さを知ることができる。
なぜそんなことが解るのだろう?あなたはそう思われるかもしれない。
全ての物体は質量波を発している。質量波とは物体の質量と同じ振動数を
有する電磁波のような物と考えてもらって差し支えない。
『太陽系の体重計』はこの質量波を受け取り、同じ質量波を反射する性質を持つ。
宇宙空間では次のような会話が交わされているかもしれない。
「木星さん、このごろちょっと太ったんじゃない?」
「失敬な火星さん。私は中身がすっきりしてるんで、体は大きくとも
あなたみたいに重くはないいんですよ」
突拍子もない空想ではない。『一個の星は一個の生物である』
そのような学説も存在するのだ。
その学説によれば、我々人類ははただの寄生虫に過ぎないらしいが。
次は、「コバルト」「ピグメント」「学園祭」でお願いします。
>>280 太陽系の体重計?
冥王星の100光年先?
なんじゃそりゃ。
282 :
「コバルト」「ピグメント」「学園祭」:02/10/09 06:05
「どう?上手くできそう?」
聞きなれた声と共に、目の前に缶ジュースが降りてきた。
「あ、ああ、大丈夫」
驚いて振り返ると、後ろから画面を覗き込むように、身を乗り出した
秋山の体にあたりそうになり、篠田はあわてて顔を元に戻した。
「学園祭、あと三日だもんね、がんばんなきゃ」
パソコンクラブとは名ばかりで、学園祭の展示するべきものは
篠田と秋山が思いついた、このプログラムくらいなものだった。
「少しできたけど、みる?」
篠田の言葉に、秋山がうれしそうに頷く。
出来上がっていた部分のプログラムを動かすと、
画面に一面のコバルト色の空が広がった。
数秒後、空には幾つもの雲がたなびき始めた。
「綺麗・・・どうやるの?」
「ピグメントの応用だよ」
学園祭まで後数日、篠田は秋山の笑顔をみながら、それが少し残念な気さえした。
次は、「北極」「音頭」「ペンギン」でいかがでしょ?
>>281 おまえって、つまらない人間だな。
簡素スレにさえ来るな!!!!!!!!
285 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/09 10:03
>>283 多分、本スレで余計なことを書かなければ
俺もお前も
>>281と同じにならなかったのにな。
本スレでバカな話しやめよ。煽らない。ってことで。
「北極」「音頭」「ペンギン」
「静粛に!」議長が声を荒げた。
「北極は人間がやらかした悪行のツケを払わされているのだ。オゾン層の破壊による温暖化で氷がどんどん溶けている。
この地の主な住人のアザラシや北極熊でさえ絶滅が危惧されている中で我々が生き残る道はあるのか?」
僕は溜息をついた。人間は北極には僕達が存在しないと思っているけど、実は太古からひっそりと極少数だけど生存しているんだ。
今日は四年に一回行われるくじ引きの日だ。僕達は繁殖力が旺盛で放っておくと数がどんどん増える。でも、この地の環境じゃ数の増加は種の絶滅に直接かかわる問題なんだ。
だからくじ引きで頭数を間引く。種を守る為に生贄を選ぶワケさ。
でも、今年はいつものくじ引きより一層シビアだ。何と言っても僕達だけじゃなく、この北極が滅びるかどうかの問題なんだ。
「と言う訳で今年は当たりくじを前年の三割増にした」議長は言った。議場は喧騒に包まれた。
そりゃそうだ、誰だって死にたくはない。南極はパラダイスなのにここじゃいつも三途の川だ。
そうか、南極だ、南極に移住すればいいんだ。ほら、人間だってそう言う過去があるじゃないか、あの合言葉があれば大丈夫さ。
よし、僕が音頭をとろう。何と言っても僕はこの地のペンギンの守備隊長なんだ。南極に行くぞ。
で、人間達の合言葉は何だっけ?「ハイルヒトラー?」「天皇陛下万歳?」
次のお題は「蛍」「シャワー」「鍵」でお願いします。
287 :
名無し物書き@修行中?:02/10/09 13:52
「蛍」「シャワー」「鍵」
どれ程歩いただろうか…陽は既に山間の中程に落ち、綺麗なグラデーションが西の空
一杯に拡がっている。
「…またやっちまったな」
都心から約一時間、行き詰ると必ず俺はこの山に独りで登る。そう、学生時代からここは
俺の癒しの場所。自然の恵み、森と太陽のシャワーを浴びて押し潰されそうになる自我を
ギリギリの所で護ってくれる。
思えばあいつと蛍を見に来たのは何年前になるだろうか、もうこの山に蛍を見つける事は
難しくなってしまった。時代の流れだろう…思えば俺の安っぽくもあり気恥ずかしい誇りも
あの蛍の光の様に儚く脆いものだった。
俺はいつものお気に入りの場所に着くと、長年の戦友であるZI○POライターに火を点けた。
ふと気が付くと膝が笑っている。俺は苦笑しながら腰を落ち着かす。俺も年を取ったな。
上司と揉めるのは日常茶飯事、しかし今回ばかりは俺もまずかった。
俺はしばしあの頃の甘ったれた自分を懐かしんだ。人は誰も過去には戻れない。
やってしまった事に悔いては前には進めない。そう、あの時の様に…
いくら刻が経っただろうか。気が付くと陽は完全に落ち、辺りは薄暗く月が顔を覗かせた。
俺は過去の思い出に心の鍵をして、夏を惜しむ蝉のようにこの場を後にした。
次のお題 「ラーメン」「紅葉」「PC」でお願いします。
「ラーメン」「紅葉」「PC」
無機質な銀色のビルの一室。
終電も過ぎたというのに、彼は一人で煮詰まっていた。
彼はビルの設計士。だが、殺風景なオフィスでのルーチンワークは
彼の仕事から生活の匂いの様なものを奪っていた。
机にうずくまり眠る彼は、小さな夢を見た。
一面の紅葉で、紅葉の精と出会う夢を。
紅葉の精はラーメンで彼をもてなす、少しだけ可笑しかった。
それもつかの間、突如現れた文明神が、紅葉の精を連れ去ってしまう…
彼の目前に、元は紅葉の谷であった造成地の写真があった。
彼は何かに憑かれた様に、PCをたたき始める。
今まで見た事もない様な設計が、液晶画面に現れる…
朝。仕事の仲間達は、奇跡の設計を見て感嘆の声を挙げた。
冷たいPCの画面の中で、紅葉の精は新たなる命を得たのである。
<古来より、自然は人間の最高の教師であった>
それはラーメン構造と呼ばれた。
※パクリだけど、元があんまりマイナーだから大丈夫(^^;
次のお題は:「キュー」「リバース」「リピート」でお願いします。
これでも俺は一応おまいらの評価能力を信頼している。
まあ信頼しているったってたいして重きを置いてるわけじゃないが。
そしてその信頼は往々にして裏切られ失望させられるのだが。
それでもだ。玉石混淆というか明らかに石っころの氾濫する3語スレ
の、食べたものもリバースしたくなるほどの駄文を含め片っ端から
読み進むという まず絶対に報われることなき労苦を考えれば、
せめて 最低限のフィルターを通ったもののみピックアップすることで
多少なりとも不毛な時間を短縮したくもなると言うものではないか。
※だからおまいら無駄な議論にレスを割かず、さっさと感想を書きやがれ。
でないとおまいらキューっとか言わすぞ!
※リピート
お題は「キュー」「リバース」「リピート」でした。
次は「はすむかい」「まずありえない」「みずしらず」
「はすむかい」「まずありえない」「みずしらず」
はす向かいに住むSさん家族は有名だ。
彼らを知らないなんて、日本人ならまずありえない。
見ず知らずの人にも気さくに接するSさん家族を視ることは、
僕のささやかな幸せのひとつだ。ただひとつ憂鬱なのは、
明日が月曜日だと思い出してしまうこと。
いまは解散しているバングルスが『Monic Monday』なんて曲をつくったのも、
Sさん家族を視たからかもしれない。
個人的な付き合いはないけれど、日曜日の午後6時半にテレビをつければ、
まるで昔からの知り合いのようだ。あ、そうそう、近所に住む者として、
最後のじゃんけんに負けたときの悔しさは、筆舌に尽くしがたい。
次は「中国」「鳥人」「監督」でお願いします。
「中国」「鳥人」「監督」
「うおーっ」絶叫が断崖に打ち寄せる波にかき消された。「だから絶対に無理だって言ったのに」オレは途方に暮れて崖から下を覗いた。
「オレも鳥人間やるぜ」突然健二は言い出した。オレ達はテレビの『鳥人間コンテスト』を観ながらビールを飲んでいた。
「でもよ、オレには琵琶湖なんて小さすぎだぜ。ガツーンと中国まで飛んでやるよ」健二は酔いで頬を紅潮させながら言った。
オレにはその自信の源をはかりかねたが、その時は酔っ払いの戯言で片付けた。
だが健二はコツコツと飛行機作りに勤しんでいたのだ。オレは文系の人間が誰の力も借りずに飛行機を飛ばすなんて無理だと言い続けた。
「任せとけって」健二はいつも笑って言った。
オレはいつの間にか健二のフライトを映像に記録する監督役にされていた。
「オレが真の鳥人だって事を証明してやる」健二はそう言うと飛行機に乗り込み海に向かって駆け出した。
オレは崖から何度も健二の名前を叫んだ。
その時、眩いばかりの光に包まれた健二が崖の下から突然ふわりと現れた。ご丁寧に真っ白い羽を背中に生やし、頭に光り輝く輪っかを載せていた。
「どうだ、オレは飛んでるぜ」健二は笑った。オレは苦笑いを浮かべると健二に言った。
「お前、それは鳥人じゃなくて天使だよ」
次のお題は「ロケット」「携帯電話」「朝靄」でお願いします。
「ロケット」「携帯電話」「朝靄」
繊細で美しく、どこか脆さと危うさをもった天女の柔らかな羽衣。
朝霞は山の木々の間から生まれ、まるであるべき場所へ帰って行くように、
ゆるりゆるりと天へと吸い込まれる。
それは人間のつくり出すロケットやスペースシャトルにはできない御業である
17時間も電車に揺られた甲斐ありようやく納得のいく景色に巡り合えた。
何といっても時間帯、それに季節も絶妙だったということもあるかもしれない。
僕の住む街ではまずお目にかかれない、見方によったらプラットホームよりも大きい
待ち合い室の横を通り抜け、改札を出た。改札はどの人懐かしい駅もがそうであるように
無人改札で、それは決して人を疑おうとしない、品の良かった祖母を思い起こさせた。
改札を抜けて眼前に広がった天女の羽衣に、涙が溢れそうになった。純度100%の感動。
ただ残念なことに携帯電話の電波は、見事に僕をキャッチし続けた。
相手は裕美子。仕方なく電話に出た。感動も萎えた。
「いまどこなの?すぐに戻ってきて。」電話の向こうでヒステリーに近い声を上げている。
「僕は当分そんなトコロに帰るつもりはない。」
そう。帰るつもりはまだない。そこが僕にとって本来あるべき場所なら
ゆるりゆるりとそこに辿り着くはずだ。
さ〜て、次のお題は「四捨五入」「保険」「たばこ」の3本です。ンガング。
293 :
「四捨五入」「保険」「タバコ:02/10/10 17:34
遠藤はタバコを取り出すと、黙って火をつけ、一声うなった。
ちらちらと時計を確認する。とうに恋人との待ち合わせの時間は過ぎていた。
過ぎていたが、一先ずこの場を切り上げなければどうしようもないのもまた事実だった。
目の前でたタバコをだふかしているだけの佐々木が、どうも腹立たしく感じられる。
(一つ、これはいっそ保険として取っておいてもいいか……?)
悶々と手元を微妙に動かす遠藤。ばれずにすめば、それに越した事はない。
しかし考えとは裏腹に最後の一歩が踏み出せないでいると
「ツモ」
佐々木が、一足早くツモってしまった。
「はは、悪いね。ああ分かってると思うけど、点数は四捨五入じゃなくて五捨六入だから」
これでハコテンである。
「手え広げすぎなんだよ、遠藤は……」
後ろで見ていた橋本が言った。
「また、借りなきゃなんないのか……」
ギリ損ねた上、彼女から借金は増えるばかり。
遠藤は聞き取れないほどの呟きを残し、酷く落胆して部屋を後にした。
よくわからんや。
次回、「撮る」「命名」「純白」
294 :
「四捨五入」「保険」「タバコ:02/10/10 17:36
四行目訂正
「たタバコをだふかしている」→「ただタバコをふかしている」
「撮る」「命名」「純白」
「やった、手術は成功だ」彼は、自らの行為に驚異した。
患者は30も年が離れた妻。極限の繊細さを要する脳手術だった。
純白の肌に、幾度もの自殺未遂の傷跡が残る…彼女は重度の鬱病だった。
これでいい、これで一年もたてば心も体も癒えるだろう。
突如、吐き気を訴え洗面所に駆け込む。「酸っぱいものが食べたい」
なんと、妻は妊娠していたのか。彼は焦った、嬉しくも焦った!
「よ、よし、大丈夫だ。出産なんて!」
いい名に命名して、三人で記念写真を撮ろう。妻も、いつかは元に戻れるさ。
私も、自分で再手術して元の体に…と、水槽で回復を待つ妻の脳を見る。
これしかなかった、自殺未遂で瀕死の妻の肉体を救うには、手近な脳…
自分の脳を、自分で遠隔操作移植するしか。
「おお、酸っぱいものが食べたい」と、妻の手を使ってオレンジをむく。
「カラーン!」ナイフが落ちた。彼は気付いた、手術は不可能だ。
妻は不器用だったのだ。
※最初は40行はあった…大手術^^;
次のお題は:「朝霧」「弾丸」「復活」でお願いします。
296 :
249かぶり:02/10/10 21:27
《俺が死んだらこの世界はなくなるのだ。これは俺の世界だからだ》とTはいった。
「いや……それは違うぞ」と僕はいった。
《おしっこがしたい》とTがいった。
「じゃあトイレに行こうか?」と声を発した。
《ああ行こう》とTはいった。
Tの先端から尿がでた。Tはいった。
《こんにちは。こんにちは黄色いおしっこ。こんにちは》
「はは」僕はいった。「もっと出ろ! もっと出ろ!」
Tはいった。《それは俺のセリフだ》
そのうちTが大きくなった。僕はTを純白のパンツの中に押しこんだ。
Tはいった。《何をするんだ! 約束が違うだろ!》
僕はいった。「お前を出したまま町を歩けるか」
Tはいった。《外出するのか》
「ああ。女の股の間の写真を撮りに行くぞ」僕はその日、Tを喋るチンポと命名した。
297 :
ロス・チャンドラー:02/10/10 22:47
「朝霧」「弾丸」「復活」
それは朝霧の中、まだ夜が明け切らぬ時の出来事だった。
購入して数ヶ月、まだ見慣れぬマンションの部屋を出た俺は、
「仕事」のために借りている荻窪のアパートへと向かっていた。
普通のサラリーマンとしての昼の仕事とは別に、
非合法の始末屋としての二重生活を始めて、もう何年になるだろう。
初めてこの手で人を殺めたのは何時だったろうか?
しかし、この後やらなければならない「仕事」のことを考えて
道を歩いていた俺の耳に、突如飛び込んできたのは一発の銃声だった。
瞬間的に、体に衝撃があった。
一発の弾丸が俺の腹部を貫いていった。
・・・・これでもう「仕事」をしなくて済む。
薄れていく意識の中、俺は思う。
この後俺がどうなるかは分からないが、もし黄泉の世界があるのなら
また、人間として生きていくことができるかもしれない。
俺は復活できるかもしれない。
次のお題は:「島」「鬼」「戦争」でどうぞ。
「島」「鬼」「戦争」
明るい都会から隔絶された、離れ小島の様なボロ長屋から這い出て5年。
息子は、野球界に明るく輝こうとする星になっていた。
今やコーチとして息子と対峙する父の許に、娘がやってきた。
「さすがのお父様も驚くはずよ、ボールが消えるんですもの」
はっと彼女は口を覆った。なんていう事を…この野球の鬼に。
「なんだと?」「ナニッ!」父は外人選手と顔を見合わせた。
「ああ、なんていう事を。この、野球の鬼に…」
自分の倍はあろうかという外人選手に、両腕をつかまれる。
「それは一体どんな魔球なのだ?言うのだ。言わないと…」
と、父は懐から、何か紙の束を取りだした。
「お前の恥ずかしい写真をばらまくぞ!」
それは、娘が寝てるのをいいことに、酔った父が撮ったものだった。
「ああ、そんなものまで…鬼よ!お父様は野球の鬼だわ」
「これは戦争じゃ。父ライオンと若獅子の、命をかけた決闘じゃい。」
…それとこれとは話が別だが。
※そういえばあの長屋、一部屋だけだった…
次のお題は:「バネ」「肉」「はさむ」でお願いします。
299 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/11 03:10
「バネ」「肉」「はさむ」
「例えば、そうだね……ここにあるバネばかりと天秤みたいなもんだよ」
彼は唐突に言った。
「要は結果がどうあるか、ってことさ。
バネばかりが宇宙で使えないコトを心配する人はいない。
いま、この場所で、正しい数字を出せばそれで十分なんだ」
その言葉で、彼の言わんとすることは全て理解した。
口をはさむまでもない。
言いたいことを言わせておけば、そのうち静かになるだろう。
「……博士、おっしゃることはよくわかりました。でも一つだけ質問をしてよろしいですか?」
「ん。何だね?」
「ロボットに感情がないとするなら─
いま私の中にある、博士を殺したいという衝動は、何でしょうね」
さて、目の前に散らばる肉片は、私の質問を最後まで聞いていたのだろうか。
#自分でもよーわからん
次のお題は「パンダ」「警察」「悲鳴」ですの
「パンダ」「警察」「悲鳴」
クラブ・プッチンのDJは着ぐるみ・マニアで有名だ。
今日などはパンダ姿で、レコードを回している。
マイケル・ジャクソンの『Human Nature』と、『TAXI DRIVER』のサントラを使って、
心地良いフローでフロアを波打たせている。
と、突然、音が止まった。客をじらしているわけではなかった。
停電でもなかった。それは、警察が踏み込む合図だった。
薬の売人とその元締めが、この店のバーに来るとタレコミがあったのだ。
私服・制服入り混じった大勢いの警察官が、出入口を固める。興をそがれた
一部の客が、小競り合いを始める。女性の悲鳴が響き、どこかでグラスが割れる
音がする。派手な照明もいつの間にか、白一色になっている。
警察は、目当てのホシを取り押さえると、なぜかDJのパンダまで連行した。
パンダはしかし、護送車には入れられず、パトカーに乗り込んだ。
そう、覆面捜査官は面が割れてはならない。
次は「除湿」「ダッフルコート」「プレーオフ」で、お願いします。
「除湿」「ダッフルコート」「プレーオフ」
「なあ……普段から家を空けがちにしているのは、正直悪いと思っている。……だがな、
仮にも俺は野球選手だ。少しは、俺の健康に気を使ってくれてもいいんじゃないのか?」
「いいじゃない、プレーオフには出られなかったんだし。多少太っても、春までに戻せば
いいんだから」
「……今度の商品は何なんだ?」
「ダッフルコート」
「コートなんて何着も当てただろうがっ!! それに、俺だって年に何千万も稼いでるんだ、
コートくらいいくらでも買ってやるっ!!」
「だから、何度も言ってるでしょう? 何でもお金を払えばいいってもんじゃないのよ、
わかってないわねえ……懸賞の醍醐味ってのは、お金じゃ手に入らないところにあるの」
「……だからって、毎日こんな物を何十本も飲まされるのは……」
そこまで言いかけて、やめた。何を言っても、妻は考えを変えないだろう。
私は、部屋の隅にあった除湿機の所へ行き、そのふたを空けてみた。
フィルターがコーヒー色に染まっていた。
次は「雪だるま」「月面基地」「花言葉」でお願いします。
「花言葉って知ってます?」
それまで静かだった同僚がやっと喋る。
「しらん。」
鬱陶しくて同僚の言葉を跳ね返す。また部屋が静かになる。
外の様子は変わっていないのだろう。あるのは荒涼たる世界、何も無い、
誰も居ない世界、真空の世界、灰色と黒と白くらいしか色の無い世界。そう、ここは月である。
彼と同僚は1月前から月面基地での生活を続けているのだ。
完全自給自足の出来る実験ベースでは空気も水も精製でき、
野菜や食肉用の牛や鶏も生活している月面初の牧場ともいえる場所であった。
「前の定期便で恋人から手紙が来ていたんですよ。
その手紙と一緒にクロッカスの種があったんです。
そいつ、花言葉が好きでいつも、手紙に押し花や写真を送ってくるんですよ。」
にやけながら、同僚は紙切れを見せる。おそらくその手紙なのだろうか、
ボロボロになってしまったそれは読み返した回数を物語っていた。
また静かになる。何もしない。
出来ることを言えば、定期的に牧場の世話をして、
各計器をチェックするくらいだ。他は何もしない。
ただ、机でジッとしているだけだ。何も出来ない。
「俺の生まれた故郷は雪国でな。」
誰ともなく呟く。きっと同僚は聞いていないだろうが、彼は続ける。
「冬になると外に出てな、雪だるまや雪合戦をしたもんだ。
スキーなんて生活の一部だったから改めて遊ぼうなんて思わなかったよ。」
そういって、目を閉じ、あの真っ白い世界を思い出す。
ブザーが鳴り、計器チェックの時間を告げる。コレだけが生きている意味を表しているかのように。
ノロノロと2人が立ち上がり、同僚はチェックシートを持つ。ふと彼は思い立ち、外を見える窓を開けてみる。
黒っぽい赤色の惑星が見えた。10日前に地球で起こった核戦争は全てを焼き払い、
母なる地球は死の星のようになっていた。
地上との月との通信も途絶え、その後の状況もわからない。
ただ分かるのは、この月面には男が2人だけだということだけだ。
彼は目を月の表面にむける。それは雪国の白とは違う、完全な死の世界だった。
次は「水晶」「ハリネズミ」「ルアー」でお願いします
304 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/11 21:42
「雪だるま」「月面基地」「花言葉」
そして僕らは庭に出て、夕暮れ時まで雪だるまを作って遊んだ。
息をはずませながら大きな塊を転がすのに熱中しているエリカを見ていると、
横顔がずいぶん母親に似てきたなと思う。その母親は玄関の柱の陰で
腕を組んだままじっと僕らの様子を窺っている。
出来上がった雪だるまにバケツの帽子を被せると、僕は言った。
「もうこんな時間だ。そろそろ月面基地に帰らないといけないな」
「今度はいつ遊べる?パパ」
三歳のとき家を出て行ったろくでなしを、七歳の今でもパパと呼ぶのは
エリカにとって良いことなのか悪いことなのか、僕にはわからない。
そのパパが月面基地で働いてたまに休暇で帰ってくる宇宙飛行士では
ないことも、エリカはとっくに知っているだろう。母親の温情あるいは
教育的配慮で与えられる定期的な面会という習慣も、新しいパパが来れば
どうなるものなのか。もしエリカと会えなくなったとしても、
悲しいことだがそれもまた人生なのだ。
エリカは明るく言った。
「夏になったらこの庭にひまわりを咲かせるよ。お月さまから望遠鏡で
見えるかな」
何となく泣きたいような気持ちで黙っている僕に、エリカは続けて言った。
「ひまわりの花言葉を知ってる?『あなたは素晴らしい』。」
次「噂話」「風呂敷」「自惚れ」
「噂話」「風呂敷」「自惚れ」
横浜の下町に住むSが、近所の視線を感じはじめてから数週間が経つ。
思い切って、「なんでこっちを見るんですか?」と訊こうとしても、
目を合わせてくれない。まあヤブ蛇となって、余計な噂話(ネタ)を
増やすのもどうかと思い、無理に訊こうともしないのだが、しかしそれでも、
なにかヒントだけでも知ることができれば……。
ある日、制服姿の警察官が家を訪ねてきた。
Sは目を覚ましたばかりで、最初彼がなにをいっているのかわからなかったが、
どうやらピッキングの被害がこの地域で多発しているということだった。
ただそれだけをいうためだけに、わざわざ俺を起こしたのか、
そう思うと、Sはどきっとした。玄関の奥に、唐草模様の大風呂敷がある。
タペストリー代わりに飾ってあるのだ。
「あーっと、いや、あれはですね、違うんですよ」
Sはまだ寝ぼけていた。よせばいいのに風呂敷を指差してしまう。
警察官は笑った。「いまどきあんなので泥棒しないよ」
「ですよねー」Sも笑った。口の端がひきつっている。
「えっと、これ、犯人の似顔絵のコピーね」
紙を手渡しながら警察官はさりげなく、Sの顔と似顔絵とを見比べる。
Sは、近所の視線の意味がわかってきた。警察官が去ったあと、まじまじと
似顔絵を見つめたSは、「俺のほうがイケてんじゃん」と自惚れた。
Sは寝ぼけていた。
つぎは「空耳」「親孝行」「旅行」でお願いします。
306 :
「空耳」「親孝行」「旅行」:02/10/12 01:23
青年は一度として「空耳アワー」を見逃したことが無かった。
そう、タモリ倶楽部の「空耳アワー」をだ。
どんなに納期が迫っているときでも、
彼は「空耳」のために一時帰宅した。
社員旅行の時でさえも、旅行先がキャンプ場だと知ると、
参加を取りやめた。山の中ではテレビが見れないためだ。
職場の同僚は、彼がなぜ「空耳」に執着するのかを聞いてみたが、
彼はあいまいな笑顔を浮かべたまま、「なんとなくね」としか答えなかった。
今週も青年は「空耳アワー」を見ている。
しかし、彼は今週のネタで笑うことはほとんどない。
彼は、この番組に亡き母親の面影を見出しているのだ。
親孝行することもなく逝ってしまった、女手ひとつで育ててくれた母親のことを。
テレビには、青年の母親にそっくりな安斎肇が笑顔で佇んでいた。
次は「水晶」「ハリネズミ」「ルアー」でお願いします。
“親孝行、したい時には親はなし。”なんて申しまして。
自分が親になって初めて、親のアリガタミなんて物が分かる。
自分の子供を自分と重ねるんですな。
まあ、そこで、年老いた両親を伴って旅行にでも行こうと小金を貯めているうちに
親がポックリ違うトコロに旅行に出てしまう。しかも帰れない。よくある事です。
マサに“親孝行、したい時には親はなし”です。
「うう、オヤジ、なんでイッチまったんだ。」
『ああ、ごめんな。せめて温泉旅行まではもたせたかったんだが。』
「あれ?誰か何か言ったかい?」
『いや、俺だよ、俺。』
「お、オヤジ?」
『そう。今、天国から閻魔様にお願いして喋らせて貰っているんだ。』
「ほ、本当にオヤジかい?ま、まるで、幻聴のようだ。」
『そりゃ、お前、こっちは天国からだからな。』
「うん?」
『これが本当の“空耳”。』
すんません。被ったのでお題はケイゾクで。
偽物の餌はルアー。フェアーな釣りは残酷。口が割れ血が流れ弱ってしま
って死ぬのを待つ魚の群れ。本物の餌なんか二度と食べれやしない。
せめて食ってやれればいいのに。
ああ、そんな胃袋は持ち合わせちゃいないか。
『ああ、腹が減った。腹が減った。腹が減った。』
花言葉は幸福。水晶には白髪の老婆。パソコンモニターが語る夢や希望も
彼女は信じる。人も飲めないのに酒は飲む?酒を飲むのは自己との対話?
いつか砂にでも飲まれちまうんじゃないか?
『ああ、腹も減った。腹も減った。腹も減った。』
“ハリネズミのジレンマ”そんな言葉すら所詮アニメの受け売りだよ。
意味ありげな言葉を羅列するだけなら僕にも出来る。
東京特許許可局局長、長次郎の長助さんは、いつもパジャマは赤パジャマ、
赤パジャマ黄パジャマ茶パジャマ青パジャマ、孫にも衣装、
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、坊主が屏風に上手に坊主の絵を描くと言うのは
僕の言葉だっけ?ああ、もう、面倒臭い。所詮、僕も他人が苦手なだけだった。
『ああ、腹が減った。腹が減った。腹が減った。』
どうせ吐くならもっと吐けばいいのに。
何気に入った店のラーメンが美味しかったんだ。ビールも美味いし、餃子も美味しかった。
焼き豚もご飯も老酒も。ああ、美味かった。
愛している人に愛していると言うのに愛以外の言葉がないのなら、僕はなにも捻らずに
愛している人に愛してると言おう。
『ああ、腹が減った。腹が減った。腹が減った。』
次のお題は『思春期』『漁火』『NotFound』でおながいします。
311 :
『思春期』『漁火』『NotFound』:02/10/12 02:03
『Not Found』
あいかわらずコンソールの画面には、この文字列が表示されるのみだ。
カンター中尉はひとつため息をつくと、窓の外に眼をやった。
窓とはいっても、ガラス製の窓はこの宇宙空間では使えない。
外の様子を見るためのモニターのことを、通称『窓』と呼んでいるのだ。
『窓』の外には漆黒の宇宙が広がっているばかり。
じっと眼をこらしても『漁火』らしきものは見えない。
『漁火』というのは母艦への誘導灯のことだ。
『窓』『漁火』にはそれぞれ『エアスクリーン』『マーシャラーランプ』という
正式名称があるのだが、宇宙勤務が長くなると、地上生活への憧れのせいか、
なじみのある通称がよく用いられていた。
『Not Found』あいかわらず、対宙レーダーは母艦の存在を把握できていない。
(もしかして、合流地点はここではなかったのか・・・、とにかく母艦を探さないと)
カンター中尉は不安になった。このまま母艦と合流できないと、
燃料・酸素ともに補給が受けられず、彼の愛機はそのまま彼の墓となってしまう。
(いや、今は下手に動くのをやめよう)
中尉は考え直した。思春期の頃、恋人がなかなか現われないために、待ち合わせ場所
を間違えたと勘違いして彼女を探し回り、結局彼女と会えなかったことを思い出したのだ。
次は「アップルパイ」「罠」「男女比」でお願いします
「アップルパイ」「罠」「男女比」〜あるいは、林檎殺人事件〜
一人の女がアパートの自室で殺された。そして第一発見者である親友の女性と、その
少し前に会いに来ていた男に容疑がかけられた。
女がアップルパイ好きで、自らも調理していた事がただ一つの手がかりである。男に
会う直前、田舎から被害者へ林檎が送られてきていたのだ。そしてその林檎でパイを作っ
た痕跡や食べ残しがその部屋にあり、被害者の胃にもアップルパイが残っていた。
応対にアップルパイを出す相手は男女比では女に傾いているだろう。そうでなくとも、
林檎が送られた時刻と料理にかかる時間から見て、後に来た親友が犯人である可能性が
高いと警部補は判断した。しかし乗り込んできた名探偵皇太郎は……
警部補が止める間もなく、皇太郎は残されたパイのかけらを口に運ぶ。そしてすぐに
不味いとつぶやいた。さらに箱に残っていた林檎をかじり、やはり不味いと言った。
「このパイのかけらは、被害者がパイを作ったように見せかけた犯人のトリックです。
男が土産に持ってきたパイを被害者に食べさせ、パイは食べ残しに見せるかけらだけ
を作れば、短時間でこの状況ができあがります。しかし男の料理です。つい甘い林檎
を料理に使い、パイ用の酸っぱい林檎を箱に残してしまった。被害者が好きだったと
いう林檎が、犯人に仕掛けた罠かもしれません」
犯人はバレバレ。前スレの林檎殺人事件とは無関係。次なるは「加湿器」「声」「悪魔」
313 :
アップルパイ 罠 男女比:02/10/12 04:33
彼の座っている丘の上では風たちが絶えまなく草原を波うたせている
風景は昨日も今日も変化が無いように見える。
良い天気の日には、ここから街の姿をを望む事が出来る。
ニューイングランドの小さな街と彼との間は殆どが羊たちで埋め尽くされている。それはまるで黄色く汚れた絨毯の斜面の様に見える。
狼の罠の場所を熟知した老練な一匹の牧羊犬の管理に無数の羊達は従い、ただ単調に草を噛み続けている。
古くからの慣習の元、ボンベイの村人たちは彼に、最も豊かな生活を与えようと決めた。
丘を埋め尽くす羊たちと、熱意のあまり時折過剰な独裁者になりはてる牧羊犬の見張り役が、彼の為の最も恵まれた仕事という事である。
汚れた雲海の少し手前、彼の座っている丘の上では風たちが絶えまなく草原を波うたせている。
丘の右手、森の入り口にある川辺ではオルタヌフという塔の様な建造物が数本、水面から突き出ている。
オルタヌフの外面は一般の建物の内装の様に広がりを感じさせる様に装飾され、内面はそれとは逆にその象徴性を誇示するかの様な鋭角的な装飾が所々に施されていた。
あるものは傾き、あるものは足場の部分から倒壊し川の水に浸されている。
いつの時代に建てられたものであるのか、少なくとも彼は知らない。
はるか昔、今日までこの街の男女比を大きく歪ませる事となった大きな事件があったという。異様な外見をしたそれらの建造は、その事件に対しての何らかの対処を試みたものであったらしい。
彼は、姉が消えた17の夏の日々の大半をオルタヌフの見える丘で過ごした。
村の長老達が彼に与えた生活はドーナツ屋のアップルパイの様に甘く、とても退屈でありふれていた。
すいません15行全く越えました。
次回は「切実」「打ち捨てられた」「かえるくん」で如何でしょうか。
314 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/12 07:25
「切実」「打ち捨てられた」「かえるくん」
「かえるくん、ちょっと待ってよ」
イモリのへーちゃんが呼び止めるが、蛙のかえるくんは必死で坂道を下る。
坂道の先には彼が誕生した沼があるのだ。
彼にとって自分の出生を知ることは切実な問題だった。
自分の名前と思っていたかえるくんが、単に種族の名前+男の子の君と知ったからだ。
沼の手前、平らで巨大な岩の上に差し掛かった時、轟音と共に怪物が襲ってきた。
自動車に轢かれ潰れた蛙の死体など誰も気にしない。
イモリのへーちゃんもどうすることもできずに彼の遺体は打ち捨てられたまま放置された。
次は「奇妙」「愛」「逆立ち」
高津は頭を抱えていた。
とりあえずは殺人事件とされている。男は自宅のベッドの上で、胸を包丁で刺されて殺された。
通報者は友人。包丁からは男の妻の指紋。友人の話では、男と妻は愛情のあの字もないくらい仲が悪かったそうだ。
むしろ憎んでいると言ってもいい。近所の住人も異口同音であった。さて犯人は誰になるか。
妻……ということになるのが、普通だ。ところが妻は違うと主張している。そのうえ、部屋は内側から鍵がかかって
いた。つまり密室だ。
目下、警察は密室の謎に取りかかっている。
「やぁ、こいつは面白い」
手元の資料を読み終えて底抜けに気楽な声を出したのは、高津の相棒(上司の意向で勝手に組まされているだけだが)
である赤竹だ。高津は脳天気な一言に、いつものこととはいえうんざりした。
「面白いわけあるかぁ、アホ竹」
「なんだ、バカ津。犯人がわからないのか?」
「わかるか!」
刑事として最低の言葉じゃなかろうか、と高津は思った。だからといって、今は逆立ちしたってこれ以外の言葉は出てこない。
「最近の警察ってぇのは推理小説の読み過ぎなんじゃないか? 犯人は殺された男だよ」
「はぁ?」
「自殺だ自殺。名付けたら嫌がらせ自殺とでも言おうか? 男は命がけで妻を殺人犯に仕立て上げようとしたんだ。まち
がえて鍵なんかかけたから、話がややこしくなったんだ」
「そんなバカことがあるか!」
「あるよ。さっき鑑識から回ってきたけど、男は末期ガンだったんだよ。余命一月。旅は道連れ」
「アホ竹。それなら自分で包丁持って殺した方が早いだろ!」
「死ぬより生きてる方が苦しいんだよ、バカ津」
あうち! 修正してたら「奇妙」ってワードが抜けてる(馬鹿
最後の一文の前に、
そう言うと、赤竹は哀れんでいるような、笑っているような、奇妙な表情で高津を見た。
と入れるの忘れてた。お題まで忘れてるし……
とりあえずお題は「老後」「トゲ」「鳥」で
「加湿器」「声」「悪魔」「老後」「トゲ」「鳥」
加湿器のスイッチを入れる。歌手である私にとって、喉は生命線と言ってもいい。
一度、喉を壊した事のある私にとって、乾燥は怨敵と言ってもよかった。
そうでなくとも、このところ過密スケジュールが続いている。喉にはまだ、トゲが
刺さったような痛みが残っていた。短い睡眠時間の間に回復させなければならない。
しかし、今夜はまだ眠れない。これからスポンサーとの契約会議があるのだ。
仕事のし過ぎだ、と皆は言う。あなたは「今世紀を代表する歌姫」とまで呼ばれて
いる。老後の蓄えだってもう十分じゃないか。無理をするとまた喉を傷めるよ……と。
だが、私もそれほど多くを望んでいるわけではない。私の歌声は人を魅せる、酔わせる、
惑わせる……その事実があればいのだ。美しい歌声はカナリアの最大の特権であり、
そして唯一の存在意義である。私もそうだ。もし再び歌えなくなったとしたら、今度こそ
私の人生は終わる。1分1秒でも長く歌い続ける、そのためなら悪魔に魂を売ってもいい。
……生贄の鳥を捧げると、描かれた魔方陣からいつものように「彼」が現れる。山羊の
角と蝙蝠の翼を持った、私にとって最大のスポンサーだ。
「……契約は更新よ。私の寿命10年で、もうしばらくこの喉を貸して頂戴……」
>>312のお題も回収しときました。次は「吐血」「凍結」「実刑判決」でどうぞ。
318 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/13 00:00
娘は、17歳だった。歳のいった時にできた子供だったから、少し甘やかして育ててしまった。
わがままな娘と言われたこともあるが、私には最愛の娘だった。
その娘が殺された。犯人は大学生。娘の入っていた部活の先輩。
理由は手ひどく振られたからだ、と自供したと刑事さんに聞いた。
実刑判決は出た……だが死刑ではなかった。懲役だった。
私の時間は、娘が死んだ時から凍結していた。
胸の奥からこみ上げてくるものを感じ、私はハンカチを口に当てる。何度か咳き込む。
吐血によって赤い模様を付けたハンケチを、ポケットにねじ込んだ。
半年前、医師に胃癌を宣告された。もって半年から一年、と。
刑務所の扉が開き、奴が現れた。奴は模範囚として、軽が軽くなったのだ。
「感謝するよ……」
お前が頑張ったおかげで、死ぬ前に心残りを果たせるのだから。
私は懐の包丁を握りしめ、奴に近づいていった。
次は「帰国子女」「清水」「お守り」で。
319 :
"六段階評価です”:02/10/13 01:01
帰国子女のまんこがお守りで保護されているとはいえ
健二のチンポがそれを貫くのは容易なことだった
かつて清水のように溢れかえっていたまんこも今は
愛液は湧いていない。枯れている。
今では訪れる人の数も少なくなり、観光客相手の商売をしている
健二の生活も苦しくなるばかりだった。
もう一度かつての賑やかさを取り戻そうと三人の男たちが立ち上がった
健二、洋介、正夫の三人である。彼ら三人はかつての争いを水に流し
再び帰国子女のまんこを愛液まみれにするという難事業に取り組む決心をした。
帰国子女はそのたくらみを叔母から聞くと神社でお守りを買い
お守りを貼り付けておいた。藤壺が岩肌に付着するように
お守りはピタッとまんこに張り付いた。
いよいよ対決の日、帰国子女はお守りが破られるとは考えていなかった。
しかし、健二と洋介と正夫の三人は合体しレインボー・ペニスをドリルのように
320 :
"六段階評価です”:02/10/13 01:41
次「ニュートリノ」「質量分析」「三兄弟」。
健二、洋介、正夫の三兄弟はホテル・「ニュートリノ」で帰国子女の質量を
・・・・・・・・・・・・・・・・・・おい、チミ、読むのダ
お約束
2:小説・評論・雑文・通告・??系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
次のヤシは、選ぶのダ
「帰国子女」「清水」「お守り」or「ニュートリノ」「質量分析」「三兄弟」
「帰国子女」「清水」「お守り」
もうすぐセンター試験だ。
私立大志望でセンターは3教科しか受けない僕とは違って
国立大を目指す彼女は5教科フルに受けなければならない。
元旦には勉強会で行けなかった神社へ初詣に行こう、と彼女を誘った。
「ハツモウデってなに?」
帰国子女の彼女は絵馬もお守りも知らなかった。
清水で手と口をすすいでから、お賽銭を放り込みじゃらんじゃらんと鳴らして
2拍3拝、目を閉じて祈る彼女を横目で見つつ僕も祈った。
「どうか僕等が合格しますように・・・・・・」
それは彼女との別離の時。
学業成就のお守りを手渡すと無邪気に喜ぶ彼女。
僕の憂鬱な気分とはうらはらに見上げた空は青かった。
次は「まなざし」「遺跡」「未来」
「まなざし」「遺跡」「未来」
いつの頃からだったか。僕は父の影を追うことをやめていた。
こう僕が書き記したからには、僕は以前まで父の影を追っていた。
僕の父は、信念に生きる人だった。例えそれが間違った信念であったとしても、
一度自分で引き受けたことは最後までやり遂げ、全てを終えてから、
けじめをつける人だった。父らしい言えば父らしいのだが、あの人が最後に
つけたけじめは、自分自身を殺すことだった。あの頃の僕はそれが正しいように感じて、
ひたすら父の影を追っていた。しかし、自分の未来を捨ててしまうけじめのとり方、
それが正しいことでないと、僕はいつか思うようになった。それは僕が父と同じように、
家族を持つようになり、自分に子供が生まれたときだったのかもしれない。
僕は今、自分の信念の為に生きることより、家族のために生きることを選ぼうとしていた。
それが僕にとっての正しい生き方なのかもしれないと、遠くに見える遺跡を見ながら、
考えていた。ふと、隣で同じ遺跡を見る息子に目をやると、真剣なまなざしで、
古代の民が作った、僕らには決して意味があるとは思えない遺跡を見ていた。
その濁りのないまなざしを見ていたら、僕は少しだけ、
父の不器用な生き方が羨ましく感じた。
※先輩の結婚式の2次会明けです!ということで「結婚」「夏休み」「つまみ」
「結婚」「夏休み」「つまみ」
指輪の交換が終わると、先輩は花嫁のベールを上げた。
彼女は教会の監視カメラで、花嫁と先輩との接吻を見ていた。
10歳の頃から、想い続けていた先輩が…
引っ込み思案の彼女は、彼と交際はおろか、話をする勇気さえなかった。
その夜、彼女はホテルのトイレで、花嫁と会った。
「会えてよかったです、ご主人様。さあ、急いで交代しましょう」
花嫁は、ドレスのボタンを外しはじめる。
顔形から身長、声色まで自分そっくり。
夏休み、自分の人生をかけて作った、入魂のアンドロイド…ロボットだ。
交際から告白まで、全てを代わりにしてくれた究極の影武者!
彼女は、頭の中でこれから起るであろう事を考えた。
「だ、だめっ!とてもできない、そんなこと。」震えが止まらない。
「ご主人様。今になって何を?」
「だって私、先輩とは握手はもちろんお話さえ…それがいきなりっ」
「しっかりして下さい。私が、このままつまみ食いしてもいいんですか?」
それもいいかも?と一瞬考える。しかしそれでは自分の人生って…トホホ。
彼女は顔を真っ赤にしながら、服を着替えはじめた。
※ごめん、2行オーバー^^;
次のお題は:「ラジオ体操」「テレビ」「脳内」でお願いします。
「ラジオ体操」「テレビ」「脳内」
深夜ニ時。酒を飲んで帰った僕は一人テレビを観ていた。
画面では鼻の下に鬚をはやした白人男が、
嬉しそうにスチームで車を洗っている。
これで同じシーンが流れるのは何回目だろうか?
酒のせいか僕は飽きもせずにテレビの前に座り続ける。
白人男が金髪の女友達を呼んだ所で、予告無しに画面が切り替わった。
さっきまでの内容とは全く違う、
これからニュースでも読みそうな雰囲気だった。
「臨時ニュースです。今日未明、ラジオ体操第一から六番目の横曲げの
運動が廃止になりました。横曲げの運動が廃止になりました。日本ラジオ体操
協会によると、正しく横曲げ運動をしたほとんどの人から、高密度の脳内麻薬が検出され
た事によるとの事です。また中毒性も強く、毎朝ラジオ体操を続けてしまう原因は
ほとんどが横曲げの運動からきてるようです。以上臨時ニュースでした」
次の日の夕方、いつもコンビニの前にたまっていた不良グループが
輪になって、正確に横曲げの運動を始めていた。
次のオ題は「高速道路」「辞書」「はがき」でお願いします。
「高速道路」「辞書」「はがき」
司会者は時計を見た。前回チャンピオンはまだこないが仕方ない、始めるか。
「お待たせしました!はがきで応募された、50万人の中からいよいよ今夜…」
彼女は、道に迷っていた。
駐車違反で叱られ、会場に間に合わなくなり、近道したのが悪かった。
前から車がくる。あっ、ここは一方通行だった。
思わずUターン禁止の交差点を、赤信号で曲がる彼女。
「急がないと」と、追い越し禁止の道でパッシング。
頑張れ、みんなが待っている。前回チャンピオンの君を。
司会者は焦っていた、冷汗が首筋を伝って落ちる。
その時だ、彼女が車のまま会場に乗り上げて来たのは!
幾台ものパトカーも続いて入ってきた。一体どれだけの違反を?
「前回の王者が到着しました。さあ、今回の挑戦者とどちらが…しかし
ごらん下さい、この惨状!彼女の辞書には「ルール」の文字はあるのか。
もうお分かりでしょう?
第77回世界迷惑ドライバー大会チャンピオンの栄冠は、再び彼女に!」
※なんとなく「ブルースブラザース」を思い出して、しまった。
次のお題は:「四次元」「蕎麦屋」「時計」でお願いします。
↑ど こ に 「高速道路」 が あ る の で す か?↑
ど こ が「ブルースブラザーズ」 な ん で す か?
>328
あわわごめん。
「高速道路」は、7行の下にあったんです、消されたけど^^;
「ブルースブラザース」は…ビデヲで見てね(^^)
(それなりに面白いですよ)
330 :
名無し物書き@修行中:02/10/13 21:08
昼下がりの蕎麦屋。味はいいのだが地下街にあるためか客もまばらである。
「いつものね」
「はーい」
10月だというのにまだ日差しは暑い。出されたのは麦茶だった。店備え付けのマンガ
本を開きながら一口すする。夏の名残も悪くはないな、とぼんやりコマを眺める。
その漫画は、子供の頃ひと月500円の小遣いで買った記憶がある。
青色の未来から来たというロボットが登場するこの漫画が私は大好きだった。新しい机を
見ると必ずその引き出しが四次元空間につながってはいないものかと確かめたものだった。
結局そんなものは見つかるはずもなく、今私はこうして時計に追われる毎日を送っている。
「おまちどうさま」
運ばれた来たのは天ざるに小ライス。もう通い続けて10年以上になるがここの味と女将
さんの歳は変わらない様に見えた。案外ここが四次元空間なのかもしれないなと思いながら
やや小ぶりな海老天をさっとツユにくぐらせて小ライスの上におき、私はざる蕎麦の海苔が
かかっていないところをつまんでそのまま食べた。あぁ、これも夏の名残か。新そばには早
かったかと私は蕎麦をツユにたっぷりとくぐらせた。
久しぶりに書かせていただきました。無理やりの15行。
お題は継続でお願いいたします。
331 :
名無し物書き@修行中:02/10/13 21:36
ありゃ、お題コピペしそこねてました。330は
「四次元」「蕎麦屋」「時計」
の御題で書いたものです。そんで御題は継続でお願いしますね。
332 :
ミセバ ◆95xzHiHmr2 :02/10/14 01:25
「四次元」「蕎麦屋」「時計」
悪魔に魂を売り渡すつもりだ・・。今日がその契約の日。
願い事をかなえるかわりに魂を渡す。その願いと自分が死ぬ日を相談するのだ。
担当の悪魔は、四次元なんとかという場所の蕎麦屋に私を呼び出した。
蕎麦が大好きな悪魔らしい。蕎麦をほおばりながら悪魔は話を切り出す。
「でね、願い事はなんにします?あーおばちゃん、もっと甘めのつゆない?」
「あの・・・先に私がいつ死ぬのかを確認したいんですけど・・・」
「んーじゃこうしよう、俺今からここで蕎麦を500杯食べるつもりだから、
それを食べ終わると同時にアンタを殺す。人間の時間にしたら24時間くらい」
「え・・・それだけ?」
「24時間あれば大体のことできるでしょ?一生楽して暮らしたいとかそんな願いは無理なのよ」
で、食べ終わったと同時にアンタの人生終わり。悪魔嘘つかない。じゃあ願いごとをどうぞ」
「じゃあ・・・最高の美女100人と楽しい時間を過ごしたい・・」
「あーそんなんでいいの?ハイ了解。では最後の時間を楽しんでね。
おばちゃーん、甘めのつゆだって。やっぱり蕎麦つゆにワサビなんて邪道だよな、なあ?」
俺は帰り際、蕎麦屋のおばちゃんにこう注文して帰った。
「あそこの悪魔、今から500杯食べるから、最後の一杯にワサビ塗りたくって出して」
俺は時計を見た。あの蕎麦屋の契約からもう30時間はたっているだろう。
美女たちに囲まれ、俺はまだ生きている。
では次のお題は・・「音楽」「火」「ゲーム」でお願いしますっ
333 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/14 01:29
ミセバは閉め切りすれにいたな
ういす。
「音楽」「火」「ゲーム」でいってみます。
重なってたら申し訳ありません。無かった事に。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そんなこんなで自分の車に辿り着いた。
ジャガーXJーS、去年の夏に中古で購入した。
今は製造されてないので中古でしか入手できない。
もし製造されていたとしても高くて入手できない。
エンジンが始動する。
高速道路で北へ向かう。
カーステレオは壊れている。音楽は記憶の中でしか流せない。
単調な振動と騒音が俺の思考から整合性を剥ぎ取っていく。
あの女が現れる。
激しい女。
ロウソクの炎の様な暖かさは無かった。
ガスバーナーの炎の様に、彼女の言葉は俺を灼き尽くした。
会う度、彼女は使い道が無くなるまで俺をバラバラにした。
悲しい女。
乾いた才女を母親に持ち。
冷たい小男を父親に持ち。
彼女の両親は良識だけを彼女に語り続けた。
俺は彼女から何回もその話を聞かされた。
彼女はいつも涙を流し、激しく泣いた。
美しい女。
柔らかく白く長い脚はいつも黒いストッキングにくるまれていた。
色素の薄い瞳は泉の様に濡れて、内面の激しい火と傷跡をうまく覆い隠していた。
その瞳に覗き込まれる度に俺の深いところは根こそぎゆりうごかされ、溜め込まれていたたくさんの感情がちぎりとられた。
いつも彼女は俺にしがみついた。いつも彼女は俺を包み込む様にして愛したいと思っていた。
今、車は時速200キロで北へ向かう。
御存じの様に、中古のイギリス車というのは決して安全性の面に於いて優れているものではない。
一般論ではなにも救われないので言い方を変える。
この車で、この俺が、この山中の片側1車線の高速道路を、200キロの早さで、減速せずに走り続けるのは、俗に云う所の自殺行為だ。
週に一回行われるゲーム。
普段よりほんの少しだけ死に近付く。
この間だけ、俺は彼女に会える。
そのうちいつかパーキングに寄って、コーヒーを買い、ベンチに座る。
周りを見渡し、世界が変わらず動いている事を確かめる。
トラックの中では運ちゃんが休憩しているし、自販機コーナーでは貧乏そうなカップルが二人で笑いあっている、とても幸せそうに見えている、上出来のデモンストレーションだ。
空を見ると黒い紙に針で穴を空けた様に、無数の星が浮かんでいる。
「まあいいか、死んだ女の事だし。」
そう思えたとき、いつも唐突にゲームは終わる。
俺は制限速度を守り、妻と子のいる「暖かい我が家」へ車を走らせる。
そうだ、今度いっぺん恐山のイタコにお願いしてみよう。
こんな事してるよりも安全だし、安くつくかも。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
次回、「ジャガー」「小男」「整合性」で如何?
「ジャガー」「小男」「整合性」
暴漢による一発の手榴弾で、彼のパソコンは鉄屑同然となった。
世界最速、パソコン界のジャガーと言われる父の形見のパソコンが…
「こ、これでは明日の世界最速パソコン決定戦がっ、対抗陣営の仕業だな」
「お兄様、身体だけは無事でよかったじゃないの。パソコンなんてまた…」
「ばかっ!」彼は妹をひっぱたいた。一心に彼の事を想う妹を!
仕方なくパソコン権威と云われる博士の許へ、背虫で小男の妙な男だった。
「ひっひっひ。こりゃあ、CPUを入れ替えないとどうしようもないねぇ」
世界最速CPUに、スペアなんてある訳がない。仕方なく家に戻る彼だった。
ところがその夜、博士の研究所のドアをノックする者がいたのだ。
「博士、依頼人の妹です…内密にご相談したい事があって参りました」
翌朝、パソコンは見事に生き返った。妹を探す彼に、博士はこう告げた。
「君の妹はもういないよ。実は…君の父君はCPUのスペアを用意していた。
それはロボットとなり、妹としてずっと君の傍にいたのさ。そのパソコンだ」
「そ、そんなっ」この上ない献身としっぺ返し。彼は一人で家に帰るしかない。
泣き崩れる彼と別れ、博士はポリポリと白髪頭を掻いた。
「整合性さえとれてれば、何でも信じるんだなぁ、オタクって奴は。
おお!待ち合わせの時間だ、地下室に帰ろう。今夜は楽しいぞー」
※露骨にパクってるけど…あんまり古くて
次のお題は:「恨」「思慕」「ミキサー」でお願いします。
338 :
「恨」「思慕」「ミキサー」:02/10/14 07:49
恨んでいるわけじゃない。むしろ、恋しくて仕方がないくらいなんだ。
こんな思慕の気持ちも、言ったところで信じてくれないだろうね。
君を醜くさせているのは、この僕だ。すべては僕の都合なんだ、ああ悪いのは僕だ。
そのままの君を愛することは、けれどもやはりできない。
パセリとキャベツとメロンとレモン。
健康のためとは思いながらも、生のままではどうしても無理なのだ。特にパセリが。
野菜には本当に申し訳ない話である。心からお詫び申し上げる。そう断りを入れたあと、
僕は彼等をどろどろの青汁(もどき)にするべくミキサーにすべてぶちこんだ。
---------
まさに思いつきだけ。久しぶりに書いてみました。
次は「時報」「嘘つき」「キツツキ」でお願いします。
「時報」「嘘つき」「キツツキ」
何度目かの時報の鐘の音が、遠くから聞こえる。
大学の校舎の屋上、僕らは二人で、その鐘の音が止むのを待った。
「どうして別れるなんて言うの?」
何度目かの質問。彼女に別れ話を切り出して、からもう2時間以上になる。
「理由は言えない。でももう付き合うことはできない。」
「どうして?ずっと一緒にいようねって、そう約束したじゃない!」
「・・・・・・・・・・・。」僕は沈黙するしかできない。
「・・・・・・嘘つき!」
彼女は涙をこらえ、身を翻して走り去った。
しばらく一人で屋上に佇んだ後、僕は歩いて帰途に着く。
彼女の言ったことがいつまでも胸の中を反芻している。
大学の近くの森の中、大きな杉の木の前で、僕はふと足を止めた。
そこにはかつて幸せなとき、僕らが二人で彫った落書きが残っていた。
「・・・・ゴメン!」
僕はその木に向かって、自分の頭を何度もぶつけた。そう何度も。
やがて額から血が滲み出す。僕は気にしない。また何度も頭をぶつける。
まるでキツツキのように。
次は「ステーキ」「決戦」「仏教徒」でお願いします。
森の中でのキツツキの生態について書こう。読者も知っているだろうが
キツツキは巣を持っているのだ。キツツキは木の幹を嘴で穿ち
穴をあけることができる。いや私は嘘つきではない。
本当のことをいっているのだ。時報が正確に時を知らせるようにね。
さあ、見るがいい、わたしのペニスを。どうだい? 奥さん?
しゃぶってみたくないかい? さあ、しゃぶれ。おう素直だ。
おぅいいね、サイコだね。あぅう、いい、いいぞ、っぅ。ぅう。つっぅう。
何だ。夢か。道理でつじつまが合わないと思った。
二階堂信夫が起き上がろうとすると、妻がバキュームふぇらをしていた。
裏筋を舐めていた。
次は「ステーキ」「決戦」「仏教徒」でお願いします。
339の私と340は別人です。念のため。
「ステーキ」「決戦」「仏教徒」
「明日はついに決戦だね」そう言いながら、母が僕の前に、信じられないくらいに厚いステーキを
置いてくれたことを昨日のように思い出した。その母は、写真の中であの頃と変わらない笑顔で笑っている。
56歳。決して長生きとは言えない年齢で、母は旅立って行った。ひかれそうになった子猫を助けるつもりが、
自分が死んでしまったのだ。目撃してた人がいうには、反対車線から猫を助けようとして、
すごい形相で飛び出してくる母を見て、猫は逃げ出したらしい。母はそれをみて、
道路に飛び出したことも忘れて、せまり来る車を気にせずに「良かった」と呟いたらしい。
僕は、母のことを少し考えた後に、僧侶の唱える経の声をしばらく聞いていた。それは人の声ではなく、
ある種の楽器の音に聞こえた。母はこの葬式を喜んでいるのだろうか。仏教徒でもなく、他にこれと言って、
宗教的な物を信じていなかった母。何時だったか、自分の葬式はしないでくれなんて、
中学生のようなことを言っていた気がする。もし僕が母の元に行った時に、その事を咎められたりしたら、
ぼくは言ってやらないと。「勝手に死ぬのが悪いんだろ」って。僕は母の写真を眺めながら、
次に母と会うときまで、自分がどのくらい成長してるのかな、と考えてる自分に気付き、
いつまでも、例え死んでしまっても、あの人達が僕の親であることは変わらないんだ、と気付いた。
隣にいる息子が、僕と同じように考えてくれるか、まだ僕には自信が持てなかった。
※相変わらずまだるっこしい文です。「異空間」「笑顔」「野鳥」で。
いつも思うんですが、良い3語って思い付かないですね。
「異空間」「笑顔」「野鳥」
この異空間に放り込まれて、多分もう三週間が経ったのだろうが、
まだ腹が減らないので三時間ということにしておこう。
何も見えず、聞こえず、感じないこの空間で、俺はただ考え事をして過ごしていた。
『我思う。故に我あり』を身をもって実践しているわけだ。
しかしもう限界だ。いい加減、死んだって良いだろう? 夢も希望もありゃしない、ちゃんちゃん。
自暴自棄になって久しい俺は、ちゃんちゃんから連想される事柄を考えることにした。
もしこれに失敗したら、もう終わりだという期待があった。
しかし、その連想は思いのほかすんなりと浮かび上がってくる。
「ちゃんちゃん」
野鳥の観察中に突然そう言い出した彼女に、俺は顔の前から双眼鏡を退けて目を向けた。
……なんのオチがついたんだ?
「いやぁ、こう言ったら野鳥が寄ってくるかと思って」
……寄って来ないだろ、それじゃ。
「じゃあ失敗だ。ちゃんちゃん」
この異空間で、もう少し粘ってみよう。少なくとも、粘ることは出来る。
だって、何の感覚も通わない顔面に今笑顔が浮かんでいるのを、俺は感じたのだから。
次は、「父」「朝」「別れ」で。
その日は朝から雨が降っていて、僕の相棒はいつも通りの薬中だった。
注射針に犯され続けてボロボロのくるぶしを靴下で隠してやる。
『まるで、親子だな。』
初めて家を飛び出したのが初めて人を殺したのと同じ日で、その日も朝から
雨が降っていて、父親とはそれから何年も会っていない。
「で?」
『いつも通りだよ。僕が男。君が女。』
「あ、でも、今日は逆にしないか?」
『なんで?』
「いや、なんとなく。」
いつもの通り、いつもの仕事。言われた場所で、いつもの様に。
相棒が叫ぶ女の口を塞ぐ。僕は、背の低い、肥えたジジイの首筋に銃口を当てる。
後は引き金を引けば終了。いつも通りの簡単な仕事。
「あ、でも、今日は逆にしないか?」
『なんで?』
「やり難いだろう?」
“バアン!!”
次の日の朝、空は綺麗に晴れ渡っていて、僕の相棒はいつも通りの薬中だった。
脱ぎっぱなしの靴下を洗濯カゴに入れてやる。
『まるで、親子だな。』
その日別れて以来、父親とは会っていない。
お次は『カワセミ』『ピーナッツ』『老人にゆりかごを』でお願いします。
346 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/15 00:50
中学1年生の夏休み。父と山にキャンプに出かけた。
二人で渓流に沿った開けた場所にテントを張る。
父は買ったばかりの釣り竿で、流れに糸を垂れた。父の背中を眺めながら、僕はテントの近くでピーナッツを食べていた。キヨスクで買った189円の小さな袋のだ。
その時、何かの鳥の鳴き声が聞こえた。涼しげだが、もの悲しい感覚の響きに僕は頭を振って音の源を探した。
いた。
渓流の上に延びた細い木の枝の上に鳥がいた。
「あれはカワセミだな。ヤマセミだよ」
僕が鳥を見ているのに気づいたらしく、僕と父の距離では聞こえるか聞こえないかの小さな声で告げた。大きな声を出して、ヤマセミが逃げ出さないようにしたのだと思った。
父はアウトドア派で、バードウォッチングにも時折、僕を連れて行ってくれた。
その夜、一匹も獲物を釣れなくて、あらかじめ用意しておいたレトルトのカレーを苦笑いして食べる父と僕。
食事の合間に、父はヤマセミについて僕に教えてくれた。自然の渓流を好むため、最近はなかなか見かけなくなったこと。前にヤマセミを見たのは、大学のアウトドア同好会でキャンプに行った時ということ。その時の出来事を、面白おかしく話をしてくれた。
そんな父が痴呆になるとは、思ってもみなかった。過去の活動的だった父の姿を知るだけに、痴呆となった父の様子はより深い衝撃となって私襲った。
「老人にゆりかごを」 浅野圭吾 著
――痴呆になった父を見る息子の視点でつづられる小説の一節。
347 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/15 00:52
次は「マニュアル人間」「空手」「雪合戦」で。
>345「老人にゆりかごを」は固有名詞というか、題としてあまりふさわしくないのでは
『カワセミ』『ピーナッツ』『老人にゆりかごを』
「御主人様、役員の方々。そろそろ秘密をお伝えすべき時かと思われます」
執事は大袈裟ぶる。目の前には瀕死の老人…金の亡者と呼ばれる主人がいた。
「御主人様の母君は、実は双子でした。もうピーナッツの様に瓜二つの…」
彼は一瞬宙を見上げ、面影を追った。主人より10は年上の執事だった。
「大旦那様は、片方を妻とし、もう片方を妾としました。
やがて妻方に御主人様が産まれ、妾方にもう一人の御主人様が産まれ…」
皆は仰天した。
同じ遺伝子をもつであろうその兄弟は、幼児のまま冷凍保存されたというのだ。
「老人にゆりかごを。御主人様!貴方の脳は移植され、赤子として復活します」
主人は否応なく承知した。相続税逃れならと役員会も追認する。
誰も気付かない。一瞬、執事の顔に浮かんだ残酷な表情を。
役員たちは知らない、脳移植などポーズにすぎないという事を。
強欲主人の脳は、カワセミの様な電気メスに掠め取られ…廃棄処分だろう。
問題ない。記憶が全て消えていても、ほんの一筋の傷で皆納得するだろう。
あの大旦那様すら「妾と執事の密通」を知ることはできなかったのだから。
※あわわ…しどいはなし(^^;L
次のお題はぐっと明るく:「蛍光灯」「太陽」「事情」でお願いします。
あわわ、うっかり継続と思っちゃいました、ごめん!
次のお題は
>346さんの「マニュアル人間」「空手」「雪合戦」でお願いしまふ。
「蛍光灯」「太陽」「事情」「マニュアル人間」「空手」「雪合戦」
もう数日、太陽が出ていない。降り積もる雪は辺りを白く染め上げていた。
雪は昼夜問わず降り続き、僕達を照らす蛍光灯の明かりのような光が、
今が昼間であることを教えている。
「それじゃ始めるぜ!」
グラウンドの向こうから友達の叫び声が聞こえた。ゲームの開始だ。
僕は地面に座り込んで雪をかき集める。
その間にも、向こうからは幾つもの雪玉がこちらめがけて飛んでくる。
「急げよ!俺たち劣勢だぞ!」
ジャンケンで僕の仲間になった友達の一人が叫んでいる。
空手をやってるというそいつは、一つの雪玉で必ず一人の敵を叩いている。
抜群のコントロールだ。
どんな事情があるのかはしれないが、先月そいつの親父は、
会社をリストラされたんだと聞いた。
「親父はマニュアル人間なんだよ!」
いつかそいつは、悔しそうに僕にそう言っていた。
雪球は、本当は一番親父に投げたいのかもしれない。
雪玉を投げるそいつの姿を見て、ふと僕はそう思った。
とりあえず両方のお題を拾ってみました。
次のお題は:「日記」「探偵」「法律」でお願いします。
しまった!「雪合戦」自体はしてるけど、文章に入ってない!
ご容赦下さいませ。
354 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/15 02:36
「もう疲れたわ」彼女は疲れたようにそう呟いた。彼女との3度目の旅行から帰ってきたときのことだった。
「何がだよ?」冷蔵庫の中を見ながらそう聞いた。冷蔵庫の中には、冷たくなったグラタンが、
雪合戦の後のグランドのように入っていた。僕はそれを取り出し、レンジで温めた。
「あなたのその性格よ」彼女はそう叫んだ。僕は何を言ってるのか一瞬理解できなかった。もちろん彼女は、
疲れた理由を僕に教えてくれていたのだ。「どういうことだよ?」僕はレンジからグラタンを取り出し、
窓際にある机において、彼女の前に座った。「わからないの?あなたの性格ってね、無茶苦茶なのよ」
「そうか?」「そうよ。マニュアル人間みたいなところもあるかと思えば、ずぼらだし」「ずぼら?俺が?」
僕は靴下を脱ぎながら聞いた。「そうよ。ずぼらじゃない人が、旅行前に作った、一週間も前のグラタンを食べようとする?」
僕は靴下をまとめて、洗濯籠に入れながら、その言葉を無視した。もちろんそんなわけには行かない。
「まぁなんだ、物を大事にしようとする・・・・・・」僕の言い訳を彼女はさえぎった。「あなた旅行中に、
腐ってるかもしれないって理由で、前の日のお弁当を捨てさせたじゃない」彼女は少しだけ泣きそうだった。
「おまえ、あの弁当そんなに食いたかったのか?」的外れに聞こえる僕の言葉。普通の付き合いだと、火に油を注ぐ、
そんな結末を予想できる言葉だが、僕の言葉は図星だった。彼女の態度がそれを教えてくれた。
僕は彼女の後ろに行き、覆いかぶさるように抱きしめて、左の頬にキスをして、鍵を持って出かけた。
コンビニに行く道を歩きながら、まったくわがままな女だ。と考えていたが、そのわがままに答える僕も、
そのわがままに惚れてる僕、どちらも悪いことも理解してたから、鼻歌を歌った。そしてコンビニで彼女のために弁当を買い、
家に帰ることにした。しかし情けないものだ。彼女のわがままに答えることばかり考えてたせいで、僕のポケットの中には、
二ヶ月前からプロポーズのしるしに渡そうと思ってた指輪がある。空手でプロポーズをできないと考え買ったものだが、
僕はこれを渡すことができるのかな。僕は弁当を少しだけ見つめて、彼女のわがままが、僕への結婚を求める日まで、
それは僕のポケットの中にしまっておこうと考えた。
355 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/15 02:38
かぶった・・・・・・
すいません、直前にリロードして、コピペして、もう一度読んでたら、
かぶりました。もちろん、「日記」「探偵」「法律」で。
356 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/15 04:28
「日記」「探偵」「法律」
「俺が法律だ」
どこか空想上の探偵を物真似している私立探偵。
「それは私の日記よ! 返せ、泥棒!」
大体、一人暮らしの女性の部屋に土足で乗り込んできて、と続けようとするとへぼ探偵の姿はない。
「あのヴァカ、本当に逃げ足だけは早いんだから」
ほくそ笑みながら、生理が遅れていることを態と日記に書いておいた娘、彼女の企みはここから始まるのだ。
*あー、めちゃくちゃのような気も……。
次も継続、「日記」「探偵」「法律」
357 :
名無し0号:02/10/15 07:08
「日記」「探偵」「法律」
部屋に男が入ってきた。目つきは悪く、右頬に大きな傷がある。
ただし、彼は悪人でもないし、法律を犯すようなことはしていない。
彼の仕事は、探偵である。
彼がこの仕事を始めた理由はちょっと珍しい。
10年ほども前になるが、彼はある人物を個人的に調査していた。
情報を集め、ほとんどない手がかりからその先を捜す。
時には危ない橋を渡ることもあった。
そうこうしているうちに、その道のプロと言えるほどになり
こうして今は職業としているわけである。
だが、彼の最初の目的であった人物の調査はまだ終わっていない。
その人物に関する資料は、ただ一つだけ。
いつも彼の机に置いてある古ぼけた茶色い日記とそれに挟まった写真だ。
彼は日記を手にとり写真を眺めたが、今までと同じく何も思い出せなかった。
やがて諦め日記を閉じ、目つきの悪い右頬に大きな傷のある男の写真を
置いた。
<同じくめちゃくちゃのような気が…(>_<)
次は「宇宙」「妖精」「三国志」
でお願いします。
宇宙は広いな大きいな。
そんな童謡がこの星にあるかどうか僕は知らない。
ただ、『E.T.』や『MIB』といったパロディ映画があるくらいだから、
ひょっとして、と思ってしまう。
僕はいま、MDに入れる『お気に入りナンバー』を集めている。
古い歌を探す旅に出るという日本映画を観たときは、自分の境遇にあまりにも
近いと感じ、泣いてしまった。
『東風』という曲を聞くたびに、僕は当時付き合っていた中国人の女の子を
思い出す。彼女はよく、『三国志』という本を薦めてくれたっけ。長いから
いつか読むといったまま、書庫に置きっぱなしだ。そういえば本屋で、
『三国志』のマンガ版を探していたとき、僕らのこと妖精だと紹介してた本が
あったから、つい買っちゃったよ。ふるさとに持って帰ったら、
さぞウケるだろうな。
さてと、ラジオをつけて、次の星へ行こうっと。ん? 良いメロディだな。
ピンクレディの『UFO』……。うーん、もうすこしこの星に滞在するか。
お題は「継続」でお願いします。
「あはははは、健二さん」
「なんだい?陽子ちゃん、あはははは」
「ほら、妖精がいっぱいいるよ〜」
「馬鹿だなあ。あれは蝶々じゃないか、あはははは〜」
健二と陽子は宇宙を感じていた。そう、宇宙感覚。
三国志で張飛と馬超が一騎打ちをしても勝負がつかなかった。
健二と陽子の場合もそれと同じであった。
内心軽蔑しあっていた二人であったが、陽子から金を引き出そうとする健二と、
健二を利用して姉を破滅させようとする陽子の思惑が二人を結び付けていた。
日が暮れるまで健二と陽子はお花畑で踊り続けた。
「暗くなったからバタフライの色が見えなくなたよ、ぷー」
「うふふふふ、おうちに帰りましょうねー、健二っち」
「タクシーで帰るかい?テクシーで帰るかい?」
「もちろんテクシーで帰りましょう。お手てつないで」陽子がしかめっ面をしていった。
次は「宝島」「罪と罰」「復活」で書け
「宝島」「罪と罰」「復活」
オレがこの島に住みついて五年になる。こんな無人島でただ泥と汗に塗れるだけの年月を過ごして来た。
この島はオレにとっては宝島なんだ。オレはあの噂を聞かなきゃこの島には来なかった。
『あの島にはユダがキリストを売って手に入れた銀貨が埋まっている』ユダが手に入れたのはたかが三十枚の銀貨だ。機嫌良くなる程度の酒を飲めばすぐに消えちまう金額だ。
だが銀貨には伝説があった。罪と罰だ。銀貨を手に入れた者は人生で犯した罪に与えられるべき罰を赦されると言う伝説だ。
だからオレは必死になって銀貨を探している。
オレもたかだか僅かな金の為に大事な人間を殺しちまった。生活苦から逃れる為に親友を殺して金を奪った。あの日から後悔と罪悪感に苛まれている。
日頃見慣れたアイツの笑顔と首に乗せた両手に体重をかけた時のアイツの怯えた表情が頭から離れない。
後悔と罪悪感がオレに与えられた罰なのは分かっている。だから早いとこ銀貨を手に入れてアイツの復活を願いたいところだ。
だがいつになったら銀貨は見付かるんだ。ひょっしてオレが犯した罪に銀貨を探し続けると言う新たな罰が加わっただけじゃないのか?
オレは酒を買う為に島を離れ港町に出掛けた。そこで占い師に呼び止められた。
「ユダはキリストに対し悔い改める機会を与えられないまま自殺した事を知っているかね?」
次のお題は「贖罪」「電子レンジ」「蔵」でお願いします。
361 :
「贖罪」「電子レンジ」「蔵」:02/10/15 13:13
すえた臭いの立ち込める、埃まみれの蔵の中。
僕は今日も、薄汚れた電子レンジを磨いている。
ここがどこなのか、この作業が何を意味するのかも
分からないまま、僕は今日も、動くかどうかもわからない
ぼろぼろの電子レンジを、ただ、磨いているのだ。
こんな日々が、いつまで続くのだろう。
ほのかに光の差し込む蔵の格子から、わずかな食糧を受け取り、
その光が無くなるまで、電子レンジを磨き、疲れ果て、眠る。
来る日も来る日も、ただ、同じ毎日を繰り返し続ける。
最早絶望すら、忘れかけていた。
こう在ることが、当然のことのように思い始めていた。
今日もまた、同じ一日が終わる。
僕は作業の手を弛め、額の汗を拭いた。
格子から漏れ入る夕暮れの光が、磨き上げた電子レンジの
白く滑らかな表面を照らす。
橙色に光り輝くそのボディには、釘で引っ掻いた痕のような、
鮮やかな朱色の文字が、刻まれていた。
―――贖罪。
いつか、罪を贖える日は来るのだろうか。
冷たい土の壁に凭れかかったまま、朦朧とした意識の中で、僕は呟いた。
#次のお題は「IT革命」「クロッキー帳」「大自然」でお願いします。
「贖罪の日が迫っています。黙示録に書かれた日が、もう間近に迫っています」
……また始った、と私は思った。
カーテンを少し開いて外を覗くと、鰯雲が菫色の空に広がっている。
午前十時だった。
私が隠れ住んでいる土蔵の西側の通りを、近くにあるキリスト教会の街宣車が、
毎日のように通るのである。人に聞いた話では、この教会はカトリック教会が認めていない異端の教団らしい。
見かけは救世軍と右翼をまぜたような珍妙な団体だ。
…しかし、世界がどうなろうと、いまの私の知ったことではない。
私はバブル時代には、兜町界隈で「鯱」というニックネームをつけられるほどの仕手集団の頭目として
名を馳せた。これでも、六本木でクラブ(当時はディスコといった)や、洒落たチャイニーズレストランを経営していたのである。
ジャガーとベンツを乗り回し、一時はハワイにコンドミニアムを所有し、タイの離れ小島に日本の著名人を呼んで、
王侯もかくやと思うばかりの乱交パーティーを主催した。女は知り合いの芸能プロダクションから、タレント志望の若い女がいくらでも調達できた。
――それがいまでは、どうだ。
時代の変化とはいえ、街金をやっている友人の実家の蔵に閉じこもって、ハイエナのようなヤクザどもに脅える毎日だ。
ちなみにここは質屋である。蔵の一階には、黴臭い質草がぎっしりと積んであり、
とても往年のバブル紳士の住居とは思えない。
むろん、これでも生きているだけマシである。
昔の同志の何人かは、いまや東京湾や六甲の山中で、冷たくなって眠っている。
私は、それなりに快適に仕立て直した古い蔵の一角で、欠伸をしながらタバコに火をつけた。
毎日毎日、昔のジャズばかり聞いている。私はレンジで二枚目のパンを焼いた。
このままで,終わりたくはなかった。
――俺は、鯱なのだ。こんなとこでくすぶっている男ではない。
「イエス・キリストは、あなた方の罪を背負います。贖罪の日が迫っています。」
私はカーテンを開き、トーストを齧りながら、街宣車の狂人どもに向かって、思い切り唾を吐いた。
(ちと長かったわ。スマソ)
お次は「蟻 コンドーム 睡眠薬」
↑
タイムラグでした。無視してちょーらい。
364 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/15 16:00
ニ笑亭、上手いぞ。
365 :
元テクニカル名無し:02/10/15 18:35
「IT革命」「クロッキー帳」「大自然」
「これでも俺はちょっとは名の知れた画家だったんだぜ。」
「いや、信じてくれなくて結構、証拠なんて何もないしな。」
「今となっちゃあ、俺の絵どころかピカソやダヴィンチの絵だって
きれいさっぱり消し飛んだだろうな。」
「本当やってくれたよ。IT革命だのなんだの言ってたのが懐かしいよなぁ。
大都会の超高層ビルも、どこまでも広がる大自然もキレイさっぱり無くなっちまった。」「だけどな、俺にはあの馬鹿でかい光の玉が落ちてくる前と変わらず持ってる財産
がある。」
「何かって?いいか、笑うなよ?」
「ハートだよ。ハート!!絵を描きたいってハートだ。もう本能って言ってもいいかもな。」
彼は笑って、半分焼け焦げたクロッキー帳を開いた。
俺の目からは涙があふれた。何故かは分からないがぼろぼろと流れて止まらなかった。
食べるものも、飲み物も、住む家もない。この先どれくらい生きていることができるか
分からない。だが、俺は生きてて良かった…。そう、思った。
次は「秘密」「農村」「遺言」でお願いします〜
――今生の別れだ、もう二度と、会う事は無い。
村の秘密を知った者は、これまでと同じ生活を営む事は出来ない。誰もが哀れみを持って彼を見送った。
握った妻の手をはなし、皆に背を向けると、雪の降る中、彼は静かに山を下りていった。
冬の農村は何もすることが無い。無限に流れる時間をひたすら無為に過ごしているようだ。
半日をかけ雪を掻き出しても、また次の日、同じ分だけ雪が積もる。
ひたすら春に向け、農具の手入れをし、新たに草鞋を編む。全てが完結せずに、ただ準備で終わる。
彼はそんな生活から抜け出すため、誰もが知っている、遺言めいた禁忌に触れた。
彼は晴れ晴れとしていただろうか? それとも村を追われる悲しみを背負っていただろうか?
そんな彼の表情を、あいにく僕は確かめていない。
僕は、遠目で見ただけで、すぐに厩の馬に飼い葉を与えにいった。春が来るまでは、毎日欠かす事は出来ないから。
来るはずの無い春を待つ事は、彼にはできなかった事だけは確かだ。
しかし、彼がこの村を出たところで、どうしようも無い事もまた然りだった。
やめたい人はやめるがいいさ。僕は、春が来るまで我慢が出来る。
村を出ても、春が来るかは分からない。村にいさえすれば、春が来る事だけは確かに分かる。
少なくとも僕には分かる気がした。
雪の降る中、僕は明日の飼い葉を準備するため、厩を出た。
次回「対岸」「勉強」「繋がり」
367 :
「対岸」「勉強」「繋がり」:02/10/15 21:16
人は見かけによらぬもの、わかっていても火が燃え移るまでは対岸の火事なわけで。
占い師、占い通りに我が家火事、うれしくもあり悲しくもあり。
そんな、身を滅ぼすほどの才能とやらを一度は身につけてみたいもの、そう思ったまま気がつけばもう定年間近の冬枯れの我が身。
勉強しますよとは、一念発起といえば聞こえがいいが、要するに背水の陣で逃げ場なし、古女房のさや当て覚悟で、やってきたのがこの裏のつながりで知り合った相場師の男Sの闇事務所。
驚くなかれ、一度きりのつもりではじめたインサイダーの売り抜けがいまじゃあこれで口に糊する大黒柱の床柱。
あけてもくれても株、株、株と来た日には、蕪の煮物も冷めるばかりで。
それが、あだになって平成の疑獄となって身を滅ぼして、短い寿命をもっと縮めて、足りない運を早く使い切って、今は悲しい草葉の陰。
才能の発露ってえものの遠慮会釈のなさに、うれしくもあり悲しくもあり。
次回、「音楽」「金額」「侃々諤々」
368 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/15 22:23
「音楽」「金額」「侃々諤々」
「偶然の音楽」という小説がある。
ポール・オースターの”Music of channce”の訳なのだが、非
常に違和感のある題名だ。
音楽はそもそも定形のルーティンであり、偶然という要素はない。
インプロヴィゼーションがことさら強調されるのも、殆ど自由がな
い世界だからであり、即興とは言うもののその実お約束をお約束で
返すのがコール・アンド・レスポンスの正体だ。
小説はと言えば、とんでもない金額を突然相続した男が、ギャン
ブルに失敗し、全てを失うどころか完全に相手の支配下におかれて
しまう話で、少数の貴族階級に実はこの国は支配されているのだと
いう、アメリカ知識階層共通の妄想を形にしたものだ。解釈を読者
に丸投げしたようなラストは侃々諤々の議論になった。
偶然とはほど遠い音楽というジャンルと並び、むしろ偶然など本
当はないのだと言わんばかりの物語についたタイトル。誤訳でなけ
れば、実に皮肉な命名である。
#次は「アンチ」「狡知」「ダブルボランチ」で。
369 :
「アンチ」「狡知」「ダブルボランチ」:02/10/15 23:40
こいつを相棒と呼んでいいもんだか、俺にはいまだにわからない。
まあ、チームの中でも俺たちの立場は特別だ。
俺とやつとは工作車の中から活動工作員たちに無線指示を送ると同時に、狡知にたけたマフィアたちの逆襲に備えて常に守備にも気を配る要のポジション。
まあ、今風に言うならダブルボランチってやつだ。
おっと、誤解してもらっちゃあ困る。
俺たちはマフィアを取り締まる政府の特殊期間でもなければ、やつらと張り合うマフィアでもない。
そう、俺たちはマフィアスィーパー。
やつらが脅し取り、掠め取り、盗み取り、そうやってかき集めたお宝どもをそっくりいただいて貧困層に再分配し、その代わりマフィアどもに鉛の置き土産をくれてやる。
考えてみろよ。
正義と悪との二元論的対立、あるいは拮抗するライバル勢力の仁義なき戦い。
もうそんなんには飽きただろ?
無駄にわかりやすい対立軸に対するアンチ・テーゼとして俺たちは存在する。
強者を破壊することのみをレーゾン・デートルに掲げる、正義も利益も追求しないボランティアグループ。
「誰としゃべってんだよ、早く指示出せよ」
「テレビカメラさ」
相棒が呼んでるんで、ちょっくら失礼。大丈夫、一仕事終わらせたら、ゆっくり話するぜ。
お次の方「ダイヤル」「嬲る」「コントロール」でおねがいします
「アンチ」「狡知」「ダブルボランチ」
「俺たちはもっとコーチの意見に耳を傾けるべきかもしれない。」
ダブル・ボランチの右側の男が言った。
「いや、俺たちはもっと狡知と言うものを尊重すべきだと思う。」
ダブル・ボランチの左側の男が言った。
この試合を最後に右側の男はイタリアンチーム、左側の男はロシアンチームに移籍、それぞれ別の道を歩む事になる。
二人はそれから16年後に高知の街で再会する事になるのだが、この時の二人はまだそれを知らない。
しかしこれはまた別の物語。
次の機会にお話しするとしよう。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「高知」「16年」「物語」で如何でしょうか。
↑かぶりました。申し訳ないです。
無かった事で。
次は
「ダイヤル」「嬲る」「コントロール」です。
「ダイヤル」「嬲る」「コントロール」
・・・・もう何時間続いているのかすら分からない。
自分の身に降りかかった理不尽で容赦のない暴力は、
限度のない単純な痛みとなって、俺の中を占領しつつあった。
「いつまで・・・俺を・・・・嬲れば気が済むんだ?」俺は辛うじて声を絞り出す。
「飽きるまでさ。」床に這いつくばった俺の目の前に見える
白いエナメル靴の上の方から、嘲るような口調で奴の声が聞こえた。
「もう少し自分をコントロールするんだったな。」
広域指定暴力団「山田組」の若頭の女を寝取ったんだから、
これも当たり前の話か。頭の片隅で、別の俺がそう答える。
しかし、俺とあいつは本当に愛し合っていた。
そして運命から逃れようと試みた逃亡と失敗。最後に見た、あいつの泣き顔。
エナメル靴を履いた、奴がどこかへ携帯でダイヤルしている。
いよいよ俺を始末する気なのだろう。
・・・・だけどまだ、終わった訳じゃない。最後のときまで俺は諦めない。
もう一度あいつの笑い顔を見るまでは。
お題からは下ネタしか思い浮かばず大変でした。
次のお題は:「自衛隊」「漫画喫茶」「ハネムーン」でお願いします。
「エナメル靴を履いた」は余計でした。自己反省。
あなたの家へダイヤルする指がかじかんで、
数字に指を伸ばすうち肝心の番号すら忘れました。
こっちはもう雪が降り始めました。暖かい高知の冬が懐かしいです。
「たったの」と言うには少し遠い、16年前のあの冬の日が、
最近よく思い出されて困ります。だって、もうきちんとした記憶ではないのよ。
自分のいいように思い出をコントロールしてしまうのが嫌なの。
だって、それではただの物語だわ。現実感など無くしてしまうでしょう?
空気が凍りだして、ずいぶん空が綺麗になりました。
あなたに会わないでいれば、私とあなたの関係なんて、思い起こさなくてもすむものね。
そうね、本当はあなたの電話番号なんて知らない。
少し、想像してみたかっただけなの。思い出を嬲るだけなら私の自由なんだもの。
「あの日に殺してうずめたあなたは、今ごろはどんな姿になってるかしら…」
------------
次のお題は「恋しさ」「望郷」「時効」でお願いします。
らら、かぶりました。
お題は当然「自衛隊」「漫画喫茶」「ハネムーン」でまわしていってください。
376 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/16 01:05
「自衛隊」「漫画喫茶」「ハネムーン」
漫画喫茶で時間を潰す休日。
苦痛以外の何物でないのかもしれない。
自衛隊に入隊して三年になるが、僕の休日はいつもあまり変わらない。
僕の同期で入ったやつらは、彼女を作って休日のたびに遊びに行ったり、
中には結婚を機会に自衛隊を辞め、外で新しい仕事をしてる奴までいる。
そいつから来た手紙には、先延ばしになっていたハネムーンに行ったときの写真がプリントされていた。
僕にとって唯一の救いは、奥さんが、お世辞にも羨ましいといえない体型だったことだ。
僕は何本目になるか分からない煙草を吸いながら、破天荒な警察官を面白おかしく書いた、
長寿漫画を読んでいた。僕はしばらく漫画に集中していたが、突然携帯の音が鳴り響いた。
もちろん僕の携帯の音じゃない。僕は自分の集中が切らされたことに腹を立て、
携帯の音がした方向をにらみつけた。そして僕は見たことを後悔した。
僕の目線の先には、自衛隊に入るのを機会に別れた彼女の姿があった。
横には新しい彼氏と思われる男が座っていた。僕はいたたまれない気分になり、
逃げるように漫画喫茶を出た。
※すげぇーつまらねぇ〜「お弁当」「カメラ」「ジグソーパズル」
377 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/16 01:07
「自衛隊」「漫画喫茶」「ハネムーン」
自衛隊を辞めてからもう一年。雄太はずっと無職でブラブラしていた。
雄太という男は、無気力で、何をやっても続かず中途半端な人間だった。
他人から見てもそうだし、自分でもそう思っている。
今日も特にやることがない彼の足は漫画喫茶へと向かう。
「あれ……ねえなぁ。」昨日、途中まで読んだ漫画が無い。
仕方なく他の本を物色していると、彼のポケットの携帯電話が震えた。
雄太は店の外にでて、通話ボタンを押した。その途端、母親が叫ぶようにまくし立てる。「ゆ……雄太!?大変、大変なのよ!」
「何が大変なんだよ。こっちも大変なんだよ。」彼は面倒くさそうに答える。
が、彼が冷静で居られるのもそれまでだった。
「良一が……良一の乗った飛行機が落ちたのよ!」
雄太は、頭にガツンと鈍器で殴られたような衝撃を受けた。
彼の兄、良一は新婚ほやほやで昨日ハネムーンへと出発したばかりだった。
「マジかよ!?ちょっと待ってろ!」
雄太は電話を切り、漫画喫茶で会計を済ませ家へ向かって走り出した。
その時ふと、電器屋のテレビが目に入る。その画面には上空から撮っているであろう
バラバラになった飛行機が映っている。
彼は、呆然と立ちすくんだ。耳には乗客の生存は絶望というレポーターの金切り声が
入ってくる。その時、彼は初めて自分の中に強い感情というものを感じた。
だが、できればそれはこんな形であって欲しくなかったと心から思った。
ああ〜…駄作だなぁ…。次回も同じく
「自衛隊」「漫画喫茶」「ハネムーン」でドゾ
あ、すいません
お題は376さんの「お弁当」「カメラ」「ジグソーパズル」
でお願いします。
まるでこの瞬間、世界で一番美しい場面を見つけだした、そんな感覚だった。
ファインダーから覗くその光景はどの瞬間をとってみても最も美しいものだったであろう。
ただ、1ピース足りないジグソーパズルのようでもあった。
孫娘が草花の名前を聞き、娘が優しく教えてやる。妻が生きていれば、さらにその
草花にの知識、育ち方や見頃や生き方を丹念に享受したかもしれない。妻は植物を愛していた。
教師を30年以上にわたって学級担任として勤めた。今年3月、あと数日で桜も咲こう
かという頃に他界した。
まだ57だった。まだ、57だったのだ。
娘が作ったお弁当の味は、はっきりと妻譲りである。
一口、また一口と箸を進めるにつれて、一筋、また一筋と頬を伝うものを感じた。
「おじいちゃん、泣いてるの?」孫娘はフォークを弁当箱のふたの上に置き立ち上がって
私の頭を小さな体で包んでくれた。
孫娘を膝の上に乗せ「あはは」と声に出して笑った。私は年をとったのだ。
娘は私と孫娘に微笑みの表情を浮かべ「よかったね」といった。
その微笑みは若い頃の妻のそれに本当によく似ていた。私は年をとっていけるのだ。
娘の「よかったね」私に向けたものでもなく、孫娘にでもなく、
妻に対してのものだったのかもしれない。
次の方は「恋しさ」「望郷」「じこう」でおながいします。
「恋しさ」「望郷」「じこう」
あれからどれだけの年月が経ったのか。
この町に流れ着いたのは、今日のように驟雨がけむる、肌寒い日だった。
列車の車窓から見た鄙びた田舎町は、私の故郷に似ていた。
それが私をこの町に根付かせた。
母にはもう何年も会っていない。妻にも、娘にも。
望郷の念と共に、家族への恋しさが募る。
「お父さん。これここに置くよ」
娘は知らない。自分に姉妹がいることを。
いつかは話さなければならないだろう。
それとも墓場まで持っていくか。
時効まであと一ヶ月をきった。最近相手の顔を夢で見なくなった。
次は「はし」「あめ」「拉致」で。
「はし」「あめ」「拉致」
激しい雨が降りつづいて数日たつ。河川が増水し、いくつもの池をこしらえ、
道を消す。峠の終点がわりの橋も流されて、ただの岸辺へと姿を変えた。
いずれにしても今日のうちに町へ着くのは無理であるので、私はさして苦にも
思わず迂回の道を探った。
さて、ニ里ほどあるくと雨に煙る、大きな黒い門が見えてきた。
全身これ濡れ雑巾の体(てい)でいまさら雨宿りでもなし、と呟いたものの、
ここらで一休みしろとの天の告げと皮肉り、門へと歩をすすめた。
門は一対の大木に支えられており、そのあいだには文字のかすれて見えぬ
門札あとが残っている。おおかた門札は強風に飛ばされたのであろう。
右の柱には流れてきたのであろう納屋が、いまも波に揺られている。門札と
いれかわったのだと思うと妙なおかしさがこみ上げてきて、藁しべ長者であるまいし
と水たまりを蹴る。私はどなたかおりませんかと尋ね、返事がないのを待ってから、
ささくれだった木の戸をあけた。
女が横になっていた。髪は乱れていたが着物はきれいなまま、濡れてはいるが
安らかな顔をしている。頬に触れると躯が冷え切っているのがわかった。道中、
まだ幼い子供を拉致されて気のふれた女の噂を聞いたが、この女がそうであるのか
否かは知る由もない。
私は合掌して外で出で、納屋を川へと押し出した。供養のかわりにもならぬが、
そうせずにはいられぬ怒りが私の腹にこみ上げてきていた。納屋はしばらく漂うと、
意を決したかのように波にのった。このまま川づてに国境を越えたとしても
子供に会えるとは考えられぬ。私は門の柱を蹴りつけ、雨風に負けじと旅をすすめた。
次は「パースペクティブ(または遠近法)」「ナイス」「エイジ」でお願いします。
「はし」「あめ」「拉致」
こんな気分は、記憶の端っこにかすかに残る中学生時分以来だ。
レインボーブリッヂを横目に窓を開け放ち、車を走らせる。爽快だ。
もう何年も恋なんてしていなかった。
恋なんて忘れてのいたかもしれない。高校に上がって適当に女との付き合いを重ね、
適当に鞍替えし、適当に寝た。それによって、何人もいない友達(そう呼べるほど
の付き合いでもなかったが)の内の何人かを失った。大学時代もそれは酷いものだ
った。相変わらずガキ臭さの抜けない、当時チーマーと呼ばれる連中と殆ど拉致に
近い形で姦したこともあった、それも複数人を一遍に。チーマー、懐かしい響きだ。
あの頃とは比べものにならないほど、今は大人だ。社会的責任も得ている。
埃っぽい匂いと共に都会のそれらしい雨が降り出してきた。
しかし雨など今はどうでもいい。分厚い雲が空を覆い隠し、冷たい雨に打たれても
俺の心は晴れ晴れとし、火照りも冷めることはない。普段なら鬱陶しい雨さえも今
は、色とりどりの飴を砕いて、光の中に振り撒いたかのように見える。
俺の21世紀の初恋だ。
================
眠れなかったので暇つぶしに。
お題は面白いのに、駄文なので
継続進行で煎ってください。
包茎った!!&スレ汚しメッチャスイマセソ
現在、お題は「パースペクティブ(または遠近法)」「ナイス」「エイジ」
となっております。皆々様リロードお忘れなく。
385 :
2チャンネルで超有名:02/10/16 05:33
「遠近法」「ナイス」「エイジ」
ナイスな天気だった。
「ねえ、初めてこの高原に来た時の事覚えてる?」彼女はイーゼルを用意しながら微笑んだ。
僕と彼女は高校の美術部で出会った。初めてのデートでこの高原に絵を描きに来た。
僕達は社会に出て数年が経っていた。高校時代は既に遥か昔だ。
抜ける様な青空の下、遠くに北アルプスの山々が連なっていた。
「空気遠近法ってあるでしょ」彼女は僕を見詰めた。
「遠くにある物ほど色が薄く見えるってやつだろ」僕は彼女の肩に手を置いた。
「あの時二人で将来の夢について語り合ったよね」彼女は遠いものを見る眼差しになった。
彼女も僕と同じ様に日常に追われ夢を忘れた日々を過ごしているのだろうか。
急に霧が広がった。
「僕達って社会に出て現実に直面して夢を失ってしまうエイジなのかな」僕は呟いた。
遠くに見えていた山々は霧で見えなくなっていた。
辺り一面真っ白で何も見えなくなっていた。
次のお題は「マリオネット」「餃子」「氷点下」でお願いします。
387 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/16 12:59
マリオネットを拾ったのは偶然だった。
その日は冬でも特に寒くて、コートの下に何枚も服を着込まねばならないほどだった。
職安に向かうために車に乗り込む途中の道に落ちていたのだ。
初めはあまりの汚さにそのままにしておこうとしたが、つい拾ってしまった。
何故拾ったか?
それはこの氷点下の寒さの中で朽ちたように路上に捨てられているマリオネットにある種の共感を抱いたからに違いない。
まるで僕みたいだ。自嘲的に呟いて笑う。
マリオネットを車の助手席に放り投げ、キーをひねる。
僕に一定の振動が伝わってきて少し気を引き締める。
餃子屋やめなきゃよかったな。
ふとそんなことを考えながら勢いよくアクセルを踏み込む。
糸の切れたマリオネットが助手席から転げ落ちた。
次は「くだらない」「総理大臣」「医者」で御願いします
388 :
「マリオネット」「餃子」「氷点下」:02/10/16 13:37
遠く、北の大地。辺りは一面の雪景色。景色なんて言葉を使うの
も、おこがましいってくらいの雪だ。
俺はこの冬、そんな所に飛ばされて来た、いわゆる、ポリ公って
奴だ。必死にすがった出世コースからも外れちまったし、こうなりゃ
とことん羽を伸ばしてやろうと思っていた。
ところがそれが、甘かったらしい。二週間ほど前から、マリオネッ
トと名乗る人物からの怪文書が、日に二、三度、周辺の家に放り込
まれる。単なる愉快犯だと高をくくっていたものの、ついに今日は
焼身自殺予告なんぞが出ちまった。怯える住民からの電話で昼食を
止め、急いで外へ出て、十分。
氷点下三十度で、誰が焼身自殺なんぞするもんか、馬鹿野郎。
頬張っていた餃子を飲み込んで、雪を踏み分けて三十分。わずか
に出来た窪地で、おかしな奴が、灯油缶を抱えていた。
「馬鹿、何やってんだ!」
思わず怒鳴ると、ピエロの面をかぶったそいつは、よたよたと灯
油缶を抱え、頭からガソリンをかぶる。止める間もなく、ピエロは
胸元のポケットから出したライターに、火を点けた。
「あっ!」
小さく上がった声は、あまりにか細いボーイソプラノ。
「こんなところで引火する訳なかろうが!
免許も持たねぇ甘ちゃんが、ガソリン使おうなんて考えるんじゃねぇや」
俺はゆっくりと腕を組み、がっくりとうな垂れるピエロに向かっ
て、言った。
#次のお題は「愛」「ストッパー」「松茸」でお願いします。
申し訳ない、かぶりました。
お題は387さんのものでよろしくお願いします。
働く、ということはくだらないことだと、高津は考える。
人間生きるためには金が必要だという事は十分よくわかる。現に今、自分は金がないせいで医者にもかかれず、薬も買
えずで学校を休んで布団の中でぶるぶるやっているのだ。
けれども、自分は生きている。金は家賃と学費に消え、三日三晩高熱にうなされたが生きている。
金などなくても、人間どうにかなるものだ。そんな考えがよぎってから、彼はよけいにそう思う。
働いて、どうするのだ。金を得て、どうするのだ。
「高津! やい馬鹿津!」
では、自分は何を生き甲斐に生きているのだろう。金ではない何か。
愛? 果てしなく馬鹿馬鹿しい。彼女もいない一人身が何を言うか。
夢? ああ、そういや総理大臣になるとかいうマニュアルどうりな答えを小学校の時、作文にしたな。ああ恥ずかしい。
じゃあ、何だ。
そこまで考えた時、耳をつんざく奇声が部屋に飛び込んできた。
「やいやいやい、バカ津! 貴様、生きているか! 生きているなら返事くらいしろ」
「……赤竹……」
妙に芝居がかった口調でそうまくしたて、あまつさえ病人を足蹴にする旧友を高津は恨めしげに見上げた。こいつの声は
頭に響くのだ。赤竹は手に持ったビニール袋を高津の顔の真横に置いた。
「さぁバカ津、これ食って栄養でも付けろ! 中国産の松茸だ! ナリは松茸でも香りはシイタケだ!」
「……それは普通にシイタケじゃないか?」
傍若無人を全身で表す男は高津の言葉などに聞く耳も持たず、台所に消えた。妙にうきうきした友人の足取りをながめつ
つ、なんとなく、友情ってのもありなのかなぁ、と高津はぼんやり考えた。
結局、詰まった鼻では松茸もシイタケも関係なかった。後から考えると、それでもずいぶん美味かったように思う。
次のお題は「ビデオ」「野菜ジュース」「刀」で
392 :
元テクニカル名無し:02/10/16 18:27
「ビデオ」「野菜ジュース」「刀」
「ここ…だな。」
男は確認するように言い、錆びついたノブを回す。
ギィイ…と嫌な音を立てて扉が開くと、ビデオで見たものと
同じ景色がそこにあった。
人が来なくなってもう何年経つだろうか。そこらじゅうに動かなくなった
機械や部品が埃まみれで佇んでいる。
男が足元に散らばる野菜ジュースのものらしい空き瓶を蹴り飛ばすと、
それが壁だか機械だかに当たり、乾いた音が廃工場に響き渡った。
「隠れてないで、出て来い!」
男は言うと右手に持った刀を振り回した。
「隠れてないよ。」
突然、耳元で声がする。男が慌てて振り向くと、奴はそこに居た。
黒のジャケットにTシャツ、ズボンも靴も黒、男と全く同じ服装である。
いや、服だけではない、顔まで瓜二つなのだ。
違うのは刀を持つ手が左だということだけである。
「何回見ても嫌なもんだな、自分のクローンてのは。」
刀を振り回した方の男が言う。
「奇遇だね、俺もだよ。」
もう一方の男が不敵な笑みを浮かばせながら言った。
「はじめるか。」
「そうだね。」
二人はそれぞれの手で刀を構える。自分が二人生まれた時からこうなることは
避けられない運命だったのだ。生き残った方だけが存在を許される。
彼らのどちらが勝ったのか、それは彼らにしか分からない。
*ちょっと長いですかね(汗)
「迷路」「コンビニ」「かつら」でお願いします。
ここはどこだ。
どこにも辿りつけない。夜は深く、闇色は濃く、私は迷っている。
途方に暮れそうな塗りつぶされた世界で、私は焦り歩き続ける。
もうどうしてこんな目に遭っているのかすらわからない。
幽かに滲む道は迷路であり、その上をなぞる私は蛆だ。
……ああ!
光だ。人工物の気配。私は気力を振り絞り、この閉じた世界から抜け出すべく走った。
それはありふれたコンビニだった。コンビニがこんなにありがたく見えたことはない。
飛び込んだ私はその光景に打ちのめされた。
かつらである。商品棚に、クーラーに、アイスボックスにきっちりと陳列されたかつら。
呆然とたたずむ私に親切そうな店員が笑いかけた。
「いやなありろゆるすじぇいでゅぐりゃすておいれふるぐかつぅぅら?」
そうしてうやうやしくとり上げたかつらを私にかぶせてくれた。
難しいよう(泣
次は「色」「さつまいも」「雑誌」で。
えっと、できれば感想下さい…スマソ
感想スレハケーン。
逝ってきます。
「色」「さつまいも」「雑誌」
あんた、こんな綺麗な人がこの老いぼれに何の用だい?
ほう、雑誌記者の人かい。それはまた物好きな。
わしの起こした事件はそんなに面白いもんじゃないと思うがね。
なぜあんな事件を起こしたのかって?
決まっているじゃないか、旨いものが喰いたかったからさ。
わしが餓鬼の頃といえば、食い物と言えばさつまいもぐらいしかなかったものさ。
戦争中始めてあの肉を喰った時には、この世のものとは思えんかったよ。
今思い出しても涎が出るよ。あの赤い肉。肉。
ところであんた、ここからどうやって帰るんだい?こんな山の中から。
一晩泊まっていったらどうだね。旨い肉を喰わせてやるよ?
そりゃもう真っ赤な色をした肉を。
本当に旨いんだから。
次のお題は「4WD」「ニューヨーク」「浴衣」でお願いします。
「色」「さつまいも」「雑誌」
茜色に染まった空を、赤とんぼが悠々と舞っている。
落ちてゆく夕陽は、地平線を半ば跨ぎ終えたところで、躊躇するかのように留まっていた。
その色は、私の閉ざされた箱庭に、限りない装飾を与えていた。
そして、私の足元から立ち上る煙からは唯一の色を奪い、
クリスタル硝子の如く透明さを与えていた。
焼けゆく雑誌を見ながら、そばに座り込んでいた家人がポツリと呟いた。「また駄目だったね」
気を使ってか、視線は炎を凝視したままだ。
長さ一尺程度の木の棒で、灰が飛ばないようにまとめていた。
煙から透明度が失われ、本来の色を取り戻してつつあった。
炎が小さくなっていく。私の手元にある原稿を見つめながら、家人は更に呟いた。
「別に焼かなくてもいいのに…」
「いいんだ。最初からそうしようと思っていたし」
一枚一枚片手できつく丸めながら、雑作もないように火に投じた。
その度に、炎はいったん弱まると、しばらくしてからまた勢いを取り戻した。
最後の一枚が目標をはずれ、焚き木の脇に転がった。
家人は木の棒を置き、手を伸ばしてその紙の球体を更に固く握った。
「そうね。そうすれば…」彼女はそれをそっと炎の中に置くと、初めて私の目を見ていった。
「そうすれば、おいしい焼芋も食べられるしね」
黒く焦げたアルミホイルの中で、サツマイモがジリジリと焼ける音が聞こえる。
そのそばで、家人が握った原稿用紙のなれの果ては、頑なに燃えることを拒み、
さいごまで残っていた。
次は「野球」「坊主」「川」で。
カブッタ。
次題は「4WD」「ニューヨーク」「浴衣」で。
「4WD」「ニューヨーク」「浴衣」
休暇に一人で訪れた温泉街。せっかくなので、浴衣なぞを着込んで通りにくりだしてみた。
意外なことにTシャツの若者が多く、いい年して浴衣を着ている自分が恥ずかしいような気もしたが、
日本の諺で『旅の恥はかき捨て』と言う。たまにはこんなのもいいだろう。
温泉卵と一緒にコケシのついた耳掻きを買い、さて同僚たちへの土産はどうしようかと思ってぶらついていると、
奇妙な看板を発見してしまった。大きな木の板に力強い毛筆で『ニューヨーク堂』と書かれている。
その看板に引かれるように、私はその蔵のような建物へと踏み入ってしまった。
中には人のよさそうな背の低い老人が一人。この店にいるのは彼だけのようだ。
「お、兄ちゃんよく来たねぇ〜。ニューヨークの話は聞きたくないかい?」
別に聞きたくはない。けれどこの老人の話が聞いてみたくて、私は笑顔でうなずいた。
「そうかいそうかい。いいかい、まずな、ニューヨークの車は全て4WDなんだぞ」
「へえ、そうですか。私はホンダの車に乗ってますけど」
「うんうん。それで人間は皆金髪で碧の目をしてて、身長は最低でも二メートルは超えてる」
「なるほど。私なんか遠く及びませんね」
笑顔でうなずく私に気を良くしたのか、老人は楽しそうに身振り手振り交えて
ニューヨークを語ってくれた。曰く建物は全てビルで百階以上ある。UFOが飛び交っている。などなど。
ひとしきり話し終えて、老人は私に訊いた。
「そういや、兄ちゃんどっから来たんだい?」
「ええ、ニューヨークから。私、日系三世のアメリカ人なんです」
次は「2ちゃんねる」「創作文芸板」「この三語で書け!」で。
『ニューヨークへ行こう!!あの、素晴らしい、花の都、ニューヨーク!!!』
都会の、真四角の空を見上げながら谷村隆志がそう叫んだ。
友人の塩野崇雄は冷たくそれに答える。
「花の都はパリだよ。若しくはベローネ。」
信号が青に変わる。横断歩道を渡ろうとする二人の目の前を真っ青な4WDが
すっ飛んで行く。二人は平然とそれを避けると、いつも通りのジェスチャーを
ドライバーに向け、また歩き始める。
信号無視の車なんか珍しくも、恐ろしくもないのがこの街だ。
『ベ、ベローネって、ど、どこ?』
「イタリアだよ。」
『じゃ、じゃあ、そ、そこに行こうよ。で、浴衣の下に水着を着ただけの、
お、女、女の子と、こ、恋に落ちるんだ。』
谷村のこういう言動は、どこまでが冗談でどこまでが本気なのか良く分からない。
が、まだ、『生き別れた妹を探しにロンドンに行こうよ。』と言い出さないだけマシだ。
「あのな、隆志。ベローネってのは架空の街だし、ニューヨークも君が思っている
ほど素晴らしい場所じゃない。それに、僕らはこの街で生きるだけで手一杯で、何処
にも逃げ場所はないんだ。」
少し語気を荒げ塩野崇雄がそう告げる。谷村隆志はしばし呆然とした後、こう答える。
『じゃあ、ニューヨークへ行こう!!あの、素晴らしい、花の都、ニューヨーク!!!』
・・・被った。
お題はケイゾクの「2ちゃんねる」「創作文芸板」「この三語で書け!」でお願いします。
「2ちゃんねる」「創作文芸板」「この三語で書け!」
花の御江戸で足掛け百年。この寿司屋にも、新しい板前がやってきた。
「関西から来ました」
「よくきてくれたな!けど、関西という割には…なんだね、言葉が硬いねぇ」
「毎日、2ちゃんねるばかり見て参りましたので」
寿司屋はギクリとした、これは断った方がいいかもしれねぇな。
「ま、まずは一月握ってみろぃ。が、その背広はいけねぇ、寿司屋だろ?」
腕前は確かだが、異様に生真面目だった。尊敬するのはハイネとゲーテ。
さながら創作文芸板前の登場に、店の雰囲気は急速に変化しつつあった。
「御客様、よくぞいらっしゃいました。どのようなものを握らせて…」
「おいおい、辛気臭くっていけねえよ。もっと気楽にできねぇのか?
らっしゃい、何握りやしょ、へいっ、この三語で…書け!なんていってねえ」
寿司屋の言葉を一生懸命ノートに書く新入り。こいつは一体!?
新入りのルーツを探るべく、彼は大阪に出かけた。
ホテルのテレビをつけると、2チャンネルで「日曜美術館」をやっている。
そうか。関西では、2チャンネルはNHKだったんだ。
※東京では1チャンネルがNHKだったんだ(^^;
次のお題は:「実存」「幸福」「クリームソーダー」でお願いします。
403 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/16 23:58
>>402 はぁ〜ナルホド〜うまく料理してますよね!
スゴイっす。
「実存」「幸福」「クリームソーダー」
幸福はどこ?
突如頭に響いた問いかけが、私の心を激しく揺さぶった。
幸福?そんなもの今の私にあるのだろうか?
日々の生活に生きる実感すら感じることができないのに。
私は閉じていた目を開くことができなかった。
もし目を開けて、眼前に何もなかったら?
幸福どころか私自身さえ実は存在しないかも知れない。
私は意を決して恐る恐る目を開いた。
・・・・・・あった!
駅前の喫茶店の昼下がり。
私にとって、実存とはテーブルの上のクリームソーダ―だ。
次は「いま」「ここにある」「危機」
405 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/17 00:28
「いま」「ここにある」「危機」
「スイッチを入れてから3分20秒で爆発します」
と、人をおちょくるかのように注意書きが貼ってある。
ここにあるのは、紛れも無く爆弾。頭のおかしいバカがこのビルに仕掛けたものだ。
そして俺の仕事はこの爆弾を不発にすること、一応プロだ。
俺は爆弾を裏返し、赤や黄色やらの配線を慎重に調べながら取り外していく。
チラと時計に目をやると、いまから1分半は時間がある。
この感じだと10秒くらいは余るはず…余裕だ。気を使いつつ作業を進める。
「あと、30秒…。」心の中でカウントダウンしつつ、最後の仕上げに掛かる。
「12、11、10…よし!!」最後は声に出し、俺は仕事が成功したことに安堵した。
10秒あれば、まあ御の字だ。他の人間から見れば、まさに危機一髪って感じだろうが。
だが、俺はその時コチコチという音がまだ止んでいない事に気づいた。
「馬鹿な!?」間違いなく、この爆弾の時限装置は外れている。
いや、この爆弾じゃない……。
「まさか……まだ……」俺が立ち上がったのと同時に、ものすごい爆発音がした。
上から何かが落ち、床も崩れ、俺は周りにある何かと一緒に吹き飛んだ。
*…オチになってないですなぁ…。
次は「鋏」「女心」「うたた寝」でお願いいたします。
406 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/17 02:36
「鋏」「女心」「うたた寝」
女心と秋の空とはよく言ったもの。
うたた寝を抜けて窓を見る。雲ひとつない青い空。
湿った土の色だけが、雨の記憶を留めていた。
枝切り鋏の音が響き、頭のもやが抜けていく。
さっきはごめんと電話が言った。
電話の向こうで彼女が言った。
笑った声で、彼女が言った。
笑った声で、泣いていた。
駅に時間を戻しにいこう。
彼女の靴の音が響き、互いにちらりと目を交わす。
僕の心は湿っているのに、彼女の心は晴れやかで。
まったく、女心と秋の空とはよく言ったものよ。
次回は「妖精」「満月」「銀」でいこう!
407 :
最近改革路線:02/10/17 05:44
「妖精」「満月」「銀」
「俺、調子のいいときには妖精が見えるんだ」
男はそう言うと、煙草に火をつけた。
「そうなんですか。よくそういう例えをする人はいますね」
ネコが鳴いた。男が一瞬ネコのほうに鋭い視線を向ける。
「例えじゃないんだよ、これが。本当に小さなやつがちょろちょろしてるんだ」
そんなこと、あるわけないじゃないか。
俺は心の中で悪態をつきながら、適当に相槌を打った。
しばらく沈黙が場を支配して、男がふうっと煙をはいて名残惜しそうに煙草をもみ消した。
そろそろいいだろう。
「そういえば、今日は満月が綺麗でしたね」
俺がそういうと同時にネコが鳴いた。
「そうだったかな。よく覚えてないが……」
「ところで今日は妖精が見えてるんですか?」
見えていたなら、やっぱりそれは幻視だよ。
俺は男の目を見つめながら、手牌を開いた。ネコとのコンビはまだいけそうだ。
「ツモ。8000、4000。まくりですね」
俺は男の銀のジッポを手にとって、今日初めての煙草に火をつけた。
麻雀しない人には分からないかも。
次は「ジッポ」「髭」「倫理」でお願いします。
>「ジッポ」「髭」「倫理」
受験でとらない倫理の時間で睡眠を取りたい。
それが今時の中学生というものらしい。むろんこちらも内申点で尻を叩いて
黒板をぎっしり埋める宗教だの哲学だのの虚言を写させる。
そうだよ虚言だよ、大学で哲学を学んだ私がそう思う。
それでも権威という奴が生き続けていることは確かだ、私が哲学を教えている
と言えば学歴コンプレックスもしくは権威に弱い文系の連中なら一目置いてく
れる。対して理系の人間なかなかそうはいかないが、上役はたいてい権威主義者
だから上手くやれる。だから突然、鈴木に「この論理は科学的に否定されていま
すよ」等と言い始めたとき少し困った。生徒と言うものは教師の権威が傷つけら
れる事態を見たがる、自分の未熟な価値観を背理法的に証明してくれそうに錯覚
するからだ。しかもやり込める相手が知識人然と口髭を生やしジッポで葉巻に火
を点けてみせる倫理教師、大人達のいけ好かない権威を形にしたような奴なら鈴
木を応援したくもなるだろう。今だって私の部屋に入って行った鈴木が髭野郎を
議論でやり込んだ武勇伝を後で聞きたがっているに違いない。
鈴木がドアを閉め音が漏れないのを確認してから「議論」移った。
つづき
「次の授業は何でディベートしてみせましょうか?」
「次はイスラムの経典コーランだから、前の新約聖書と同じよう
に科学的矛盾点をついてくれれば良いんじゃないか?」
「そして僕は“頭の良さ”という権威を植え付け」
「私は鮮やかな切り返しをしてみせ権威を誇示する。
現実の世界で信者と付きあう時必要な知識とでもまとめれば。
お互いの権威は守られる。」
そういって不敵な笑みを見せ合った。狡猾な人間同士、相手を
信頼する事はなくても利害の一致には敏感な物だ。
世の中権威を操るものが金と地位を手に入れられる。
あの優等生の田中だってあの時理系を選んだばかり
に下働きの毎日じゃないか、俺の方が賢い人間さ。
その夜田中がTVを投して私に権威とは程遠い成功の形を見せ付けた。
あらたな発見によって世に名を知らしめた。私は考えさせられた。
自分が“あの時”学歴という権威にとらわれず深く哲学あるいは科学を
理解しようと努力する道を選んだらどうなっていたのだろう。
いやいや、これはレアケースさ、といつものように感傷をペニシズム
で打ち消そうとする、無駄な努力だったが。
ああ、鈴木はどちらの道を選ぶのだろうか。
ここまで長いと別のところに出すべきかもしれない
次のお題は継続で
秋が深くなってきたというのに、親父は未だに居間で寝ている。
お袋が死んで二年になった。
看護婦をしていたお袋は、帰ってくるといつもそのまま、自分のざぶとんを枕に居眠りをしていた。
居間の床にはカーペットが敷いてあるけれど、直に寝てれば体が冷える。
親父はいつもお袋を怒鳴りつけていた。でかい図体さらして、邪魔なんだよそんなとこ寝てられると。部屋帰れ。
二階にいた自分にも聞こえるほどの大声で、ときどきは物を叩くような音も混じっていた。
伯父さんの工場で働らかせてもらっている親父は、自分より収入の高いお袋に引け目を感じていたのだと思う。
それがどうして、暴力や罵声につながっていくのかはどうしてもわからなかった。
倫理がどうとか、道徳がどうとか、学校で習うようなことでは解決できなかった。
髭むした親父の肩をゆすって、できるだけ優しい声を作って起こす。
「疲れてるのはわかるけど、それじゃ休まるものも休まらねえ」
どんな風に言ってやればよかったのか、言ってやりたかったのか、考えても詮無いことだ。
使い古しのジッポがつなぎのポケットから転がった。
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次のお題は「両親」「良心」「かわのぼり」でお願いします。
「両親」「良心」「かわのぼり」
秋の透明な風にふんわりと運ばれる金木犀の香りが、私の胸一杯に満たしていく。
私はゆっくり、しかし確実にチロチロと細く水が流れている地面を踏みしめた。
背後では、小さな水の音が一定のリズムを刻み続けている。
その水の音とともに、私の良心も小さな悲鳴を上げていた。
そっと後ろを振り返ると、娘が無言で私の後ろを歩いている。
こうして娘と二人っきりで出かけたのはいつ以来なんだろうか。
いや、それ以前に娘と普通に会話が出来なくなったのはいつだろうか。
…そんなことは明白だった。
娘はあの人のことを決して「父」とは呼ばないし、「両親」という言葉が出ることも皆無だ。
「その人と再婚しなよ」
その時向けられたぎこちない笑顔が、私が見た娘の最後の笑顔だった。
私は、再婚を決して後悔していない。
しかし、娘のことを思うと心が痛まずにはいられなかった。
…しまった。私はそこで思考から帰ったが、すでに遅く、
岩に足をとられて見事に転んでしまった。
不意にクスクスと忍び笑いが漏れ、にこりと微笑む娘の顔がそこにあった。
「ママ、これじゃあ山登りじゃなくて、かわのぼりだよ。…でもまぁ、良いかぁ」
金木犀の香りを乗せた風が優しく私達を愛撫していった。
久々に書きました。
…いや、書けましたかな。
次のお題は「日本史」「リンゴ」「ワンピース」でお願いします。
「日本史」「りんご」「ワンピース」
故郷を離れてから十年が経っていた。
日本史の教科書にでてきそうな萱葺き屋根の佇まいは何一つ変わっていなかった。
あの日も庭に実ったリンゴは鮮やかな程赤かった。
「こんな田舎はもう嫌、東京でデザイナーになる!」高校の卒業を待てずに家を飛び出した。
被服科に入学してすぐにこんな田舎じゃセンスが磨かれないと思った。
東京に行くために何度か両親の説得を試みた。でも毎回「高校を卒業したら」で終わった。
意を決して荷物を鞄に詰め玄関を出た。
振り返ると母はアタシが夏休みの課題に作ったワンピースを抱き締めていた。
「がんばって」母は目に涙を浮かべそう言った。
数年後、アタシは庭のリンゴの赤色をモチーフにした服で大成功を収めた。
「お母さんただいま」帰郷したアタシを母は驚いた様に見詰めた。
そして何か思い出した様に廊下の奥に走って行った。
母は照れ臭そうな笑顔を浮かべ戻って来た。
母はアタシが贈ったリンゴの赤をモチーフにした服を着ていた。
アタシの目から涙が溢れた。
次のお題は「醤油」「大吉」「10円玉」でお願い致します。
大吉は、10円玉の禿があって、その所為でいつもいじめられていた。
ある日、大吉は学校を休もうと醤油をがぶ飲みした。醤油を飲むと熱
がでると聞いたからだ。
そして、大吉の10円禿はピカピカになった。
白いギターが貰えた。
次は「逮捕」「レッグウォーマー」「ヴァン・アレン帯」
「逮捕」「レッグウォーマー」「ヴァン・アレン帯」
街の中には冬の気配が訪れ始めていた。ジャケットを羽織ったり、レッグウォー
マーで足を包んだり、中にはマフラーを巻いている人もいる。
そういう俺も秋から冬の訪れに併せて薄手のブルゾンを身に纏っている。
「何もしていないならば、何故逃げるんだ?」
さっき親父から掛かってきた電話を途中で切り、そのまま電源も切った。
知るもんか。逃げられれば追い掛けるし、追い掛けられれば逃げる。そういうものだ。
そう言ってやりたかったがそんな悠長な時間はない。俺は逮捕されるんだぞ。
なぜ? 何故逮捕されなければならないのだろう? 俺が何をした? 関係ない。
追われれば逃げるのだ。だからこんな人込みの中に逃げ込んだのではないか。逃げるんだ。
こうして人込みに混じっていると、ヴァン・アレン帯の中に飛び込んだ気分だ。
ナイロン地のブルゾンは宇宙服か。安全なのか危険なのか分からないが、何か
良い案が生まれるまで動くべきでない。俺の勘がそう訴える。
悪いことをしてるわけでもないのに悪者扱い。ひょっとしたら「鬼ごっこ」みたいな
遊びが、「いじめ」を生むのかもしれない、などと思いながら、今も俺は逃げ続ける。
お次は「中学生」「バーボン」「茶封筒」でよろしく。
「中学生」「バーボン」「茶封筒」
熱っぽい吐息を漏らしながら迫る熟女ににじり寄られ、彼は壁際まで追い詰められていた。
「い、いやぁ、やっぱり、こういうのはちょっ……とまずいんじゃないですかねぇ」
「大丈夫、誰にも言わないから……」
「ま、まずいですよ。ぼ、僕、中学生ですから。児童猥褻になっちゃう」
確かに童顔ではあるがいくらなんでも中学生には見えない彼の言い訳に、
熟女はうろたえることもなく、ゆっくりと彼の首に細腕をまわしながら囁いた。
「だいじょぶよ」
ねっとりと纏わり付くような熟女の声とは対照的に、上ずった震える声で、彼は続けた。
「し、信じてませんね? いやー、本当なのにな。いつも持ち歩いてるバーボンのミニボトルだって
中身は烏龍茶ですしい、今日持ってきた茶封筒だって中身は塾の宿題なんですからァ」
「大丈夫」「いや、これがホント本当なんですって。ほら、学生証!」
なんと驚いたことに、彼は正真正銘中学校の学生証を取り出して見せた。そこに張られた写真は
確かに彼のもである。彼は本当に中学生だったのだ。だが、熟女はそれでも尚うろたえはしなかった。
「だいじょうぶ」
「いや、ちょっと、だって――」「だって」
何か言おうとする彼の言葉を同じ言葉で遮り、熟女は続けた。
「だって……私も中学生だもん」
そう言った一瞬、熟女の……熟女のような彼女の表情は、確かに、幼かった。
次は「エレベータ」「強盗」「そして伝説へ」でお願い申し上げます。
誰もいない空間で、男はにやりと顔を緩めた。
ポケット内の数枚の一万円札とブランド者の時計を握り締め、一人悦に入った。
これまで幾度と無く盗みに入り、その都度一切の手抜かりなくことを運んだ。
住人が泥棒に入られたことに気付かぬよう、必要以上のものは盗らない。
カードなど、脚がつくものには手をつけない。
留守宅を狙う。強盗などもってのほかだ。すぐに捕まる。
この世界で一目置かれ、そして伝説への道を突き進む――そのつもりだった。
が、今回は甘かった。
あるマンションに住む女のスケジュールを一ヶ月かけて調べ上げ、
乾坤一擲、女が決して部屋にいない時間を見計らい物色をした。
男が引き上げようとしたとき、突然、女は帰宅した。
顔を引きつらせる女に体当たりをし、男はそのまま遁走した。
男はくしゃくしゃになった煙草をくわえ、ゆるりと白煙をくゆらせた。
頭上のランプは「5」を点したままだった。
――どうしてこんな時、エレベーターに……。
停止した箱の中で、男は自嘲するように鼻で笑った。
パトカーのサイレン音が煙の充満したエレベータに届いた。
次は「手帳」「会長」「盲腸」でおねがい。
「エレベータ」「強盗」「そして伝説へ」
男が都内某所の35階建超高層マンション前に現れたのは平日の真昼であった。
実はこの男、空き巣狙いでなんと34階までは全戸制覇していた。
偉業達成まで残すは最上階のみ、エレベーターのボタンを押す手におのずと気合が入る。
仕事は順調に進みとうとう最後の1軒、という時に事件は起こった。
たまたま忘れ物をとりに帰宅した家人と鉢合わせしてしまったのだ。
男はあせって怒鳴った。そこをどけ!
ところが家人、そのまま家を飛び出し、強盗だぁー! と叫んで逃げてしまった。
ちょ、ちょっと待て、空き巣と強盗じゃ刑の重さが違う、間違えてもらっちゃ困る、と男も追いかける。
が、あいにくエレベーターがすぐに来ない。非常階段は・・・ブルル!
吹きさらしの階段はまずい。男は高所恐怖症だった。
しかし背に腹は替えられない、男は恐る恐る階段を降り始めた。
駆けつけた警察は上を見上げて、フン、と鼻で笑い34階へ。
そして伝説へなり損ねた空き巣は、階の中ほどで腰を抜かしているところをあえなく御用となった。
ありゃりゃ、さすがにちょっと遅かったか。
お題は
>>417で。
エレベーター → エレベータ
俺としたことがやっちまった。反省。
>>418 ん? エレベーターって普通に言ってるけど???
次は「手帳」「会長」「盲腸」でおねがい。
この医師が犯人だ。高津は一目でそう結論を下した。
病院で起きた某グループ会長刺殺事件。凶器はメス。目の前の医師だけが、死亡推定時刻内に犠牲者の元唯一を訪れている。
アリバイはない。だが、高津が犯人と見抜いたのは、勘だった。
机の向こうの、いけすかないすました表情が、何かを隠していると、刑事の勘が告げていた。しかし証拠がない。
「被害者の体の中からはメスの破片が出てきた。お前、そのメスがどこにあるか知ってるか?」
「知らないな」
何度目だ、と医師はつぶやいた。高津もよく覚えていない。凶器であるメスは今も捜索中だが、未だに見つかっていない。
死体発見から通報までの間、医師は病院の外に出ていないから、おそらくはまだ病院の中にあるはずなのだ。
「高津さん」
取調室のドアが開いて、同僚が顔を出した。交代の時間だ。狭苦しい部屋から解放された高津は大きく伸びをして、もっと
大きくため息をついた。
「そういえば、赤竹さんはどうしたんですか?」
同僚が尋ねた。赤竹は高津の迷惑な相棒だ。
「あの阿呆は盲腸とやらで一昨日病院にかつぎ込まれて、手術したそうだ」
仰天したように同僚は目をむいた。赤竹は殺しても死にそうにないから、もっともな反応だと高津は思った。鬱屈した気分
を吹き散らすのに、見舞いに行くのもいいかもしれない。
そう考えて、ふと思い至った。
「おい! あの医者の当日の行動解るか」
「え? ええ」
もたもたと取り出した手帳をひったくって、目を通す。高津は手帳を持ったまま取調室に戻った。
派手な音と共に扉を開けると、医師とさっき交代した刑事が二人、吃驚してこちらを凝視していた。
「医者! てめえ、あの日の手術は一人でやったな?」
びくり、と医師の体が強張った。高津は確信した。追いついてきた同僚に叫ぶ。
「メスは患者の腹ん中だ! こいつが担当の患者、全員調べろ!」
見舞いの品はメロンにしてやろうと、高津は思った。
次は「毛抜き」「野菜」「ニッパー」で
423 :
「毛抜き」「野菜」「ニッパー」:02/10/20 00:59
「おい、俺はニッパーを持って来いといったはずだぞ。
それが、なんだこれは毛抜きのお化けみたいなの持ってきやがって。
どうやってこんなの使うんだよ。
見習の身分だからって、何も知りませんで通用すると思うな。
道具の名前と使い方も知らないでやっていけるほど、この業界甘くないぞ。
いいか、覚えとけよ。ニッパーってのはなペンチに形が似ててただな。
先のはさむところが刃物みたいになってるやつだ。
今度は間違えずに持って来いよ。」
見習からニッパーを受け取った料理長は、キョトンとした見習の目の前で、
ニッパーを使って野菜の皮むきを始めた。
次は「ニュートリノ」「質量分析」「アポトーシス」でお願いします。
「ニュートリノ」「質量分析」「アポトーシス」
この前カノジョとホテル逝ったんだ。「ホテル ニュートリノ」ってとこ。
そしたらさ、部屋に置いてある体重計がすっげーの。
なんかいっぱいスイッチとか目盛りとかついちゃってさ、超精密測定できますって。
ありゃもう計量じゃないね、質量分析だ。
で、カノジョが早速はかってみたわけよ。しかもすっぽんぽんで。
おまえ、大事なとこぐらいちょっとは隠せよって。
ところがさ、台の上でカノジョ、きゃっ、5キロも増えてるわ、なんて言ってんの。
そーいや最近肉付きが良くなったんじゃねぇ?って思いつつぼーっと見てたらさ、
カノジョなんか部屋の真ん中に座り込んで瞑想とか始めちゃって。
ナニやってんの?って訊いたら、アポトーシス、だって。
そのまま10分ほどしてもっかい量ったら、おどろいたね、ほんとに5キロ痩せてんじゃん。
オレっちのカノジョって超クールじゃねぇ?
次は「お前はそれで」「いいのか?」「ほんとに」で
425 :
元テクニカル名無し:02/10/20 03:43
「お前はそれで」「いいのか?」「ほんとに」
いやね、生きてるってほんとに大変ですよね。嫌なことがあれば、良いこともある。
気苦労が絶えませんよ、ホント。え?お前はそれで何が言いたいのかって?
すいませんどうもあっしは話が長くていけねえ、本題いきましょか。
あっしがまだ若い頃の話なんですけどね。家の門の前にでっかい鞄が落ちてたんですよ。で、開けたら中にはぎっしり札束が……。一瞬迷いましたよ。魔が差すっていうかね。
隠しておいたら誰も分からないんじゃないか、ちょっとなら使ってもいいのかもしれない、とか。ま、当時は食うのにも困るほど貧乏でして……それに、馬鹿でしたからね。
ところが、すぐに持ち主が現れましてね。そこで立ちションしてただけだったんですよ。で、本人は落としたわけではないので、お礼なんてくれなくていいんですが
1枚だけくれたんでさ。で、あっしはその金を元手にしてあの鞄の中身を手に入れるための作戦を考えましたがあるわけないですよね。結局、寿司食って、おしまい。
でもね、その時の寿司がホントにうまくてねぇ〜。
そうなんですよ、それであっし、今の仕事に就いたんですよ。
金は手に入りませんでしたが、結局あの鞄拾わなきゃ今のあっしも無かったですからね。本当人生って奴は、どこで何がどうなるか分かりませんぜ旦那。
●次のお題は「九十九番目」「レベル」「クラス委員」でお願いします。
あれ、コピペしたらずれちゃいました…。
読みにくくてすみません(>_<)
427 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/20 09:04
クラス委員になってオル愚活動に励んでる極左が居たが、
釣られるのは出自に問題がありそうなコンプレックス丸出しのお仲間
ばかりのようで笑えた。類は友を呼ぶ。無知なのに背伸びした学術用語
を多用してレベルの高さを演出したがるので、そういうヤツだとモロわ
かりだ。そういうヤツを九十九番目の朝日信者という。
クラス委員のウンコを数人の女子が検査していた。
女子たちによりうんこのレベルは3と測定され、ビーカーに詰められた。
なぜ女子たちがこのようなことをしたかというと、最近、うんこの価値が
見直されていた。ましてやそれがクラス委員のうんこともなれば億単位で
取引されるのは子供にでもわかる理屈だ。いまや日本は空前のうんこブームであった。
「おいお前ら何をしてるんだ」
「何だっていいでしょ」
「よくねえよ。お前ら委員長のうんこビーカーに詰めてただろ」
「私たちの勝手でしょ」
「勝手なことあるか、お前らだけづるいぞ、みんなだって欲しいんだ」
「みんなってうんこは一つしかないのよ」
「ちぎればいいだろ」
うんこはちぎられたが、どうちぎっても九十九個にしかならなかった。
全生徒502人が見守る中、九十九番目のうんこは校長がもらうことになった。
次、「まんじゅう」「まんこ」「まん毛」
429 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/20 09:50
さっそく
>>428みたいのが現れた。
やっぱり極左釣るのは簡単だ。
731部隊の毒まんじゅうヨタ話とかうんこの検査から連想する
のだろうな。わかりやすいヤツだ。「まんこ」「まん毛」だ?
下品な文を書いて他人の文章に見せ掛けるとは左翼の常套手段で
はあるがマンネリだな(わら
おまえら左翼の提案する三語は潜在意識をあらわしてるんだよ。
ねぇ、自演って楽しいの?
431 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/20 11:01
>>428 428は出てこんなあ。まあ430だろうけど(藁
俺が手本を見せてやるよ。
お題は、「まんじゅう」「まんこ」「まん毛」だ。
まんじゅうを食っていたらまんこを舐めたくなる。いつものことだ。
だが、やっかいなことに俺はまん毛が嫌いなのだ。
毛虫のようで気持ちが悪い。俺はパイパンを探しに小学校へ赴いた。
「おや、おじょうちゃんまんじゅう食べないかい?
ほらおじちゃんの股に二つあるよ。いやかい? じゃあいいよ」
無理は禁物だ。だんだん慣れさせてから、ペロペロだ。俺は病気かもしれない。
これは創作ではない。これが俺だ。
次は、「影」「芸術」「帰郷」でお願いします。
432 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/20 11:12
>>428=
>>430=
>>431なのは誰でも判るが。
>>428の性質としては、
金正日の影として活躍して、「芸術」としてネットに書き込みを楽しむ。
帰郷問題など触れたく無い問題にわざわざ触れて反対の立場
を擬装する涙ぐましい努力がいじましい。
433 :
「影」「芸術」「帰郷」 ◆IFYi3cXdd. :02/10/20 11:23
夕暮れの町を歩いていた。
人通りのほとんど無い、閑散とした町は夕日に照らされ赤く、不気味に輝いて見えた。
少し歩くと、早くも限界が来た。
私は片膝をつき、続いて両手を地面につけた。身体に力が入らなかった。
たまらず、うつ伏せに倒れこむが、内臓に言いようの無い痛みが走る。痛みに呻き、仰向けに転がった。
ふと、そこから見えた、ビルや家屋にはさまれた赤い空は、これまで見たどんな芸術作品より美しく見えた。
町から生物の影が消えてだいぶ経つのだろう、朽ちた建物が乱立している。
徐々に迫ってくる夕闇の中、もう、目を開けているのさえ困難だった。
やがて、痛みが感じられなくなってくる事、私は空を横切る鳥を見た。
その時私は思った「ああ、あれが私の魂なんだ」と。
去りゆく魂は、私に代わり帰郷のとにつくのだろう。私はここで、朽ち果てるのだろう。
それで私は満足だった。
赤い空の下、立ち込める闇の中で、私はゆっくり目を閉じた。
434 :
「影」「芸術」「帰郷」 ◆IFYi3cXdd. :02/10/20 11:27
私がお題提示してかまわないでしょうか?
次回「恋人」「境」「変わ」
435 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/20 11:44
変わった思想が跳梁跋扈しているようだ。朝日思想である。
「橋の無い川」とかを連想させたいのか。「みんなびんぼが
わるいんや」とかに話を持って行きたいの?
>>434 それにしても「変わ」とは一体なんなのか?
迂闊な書き込みをすれば糾弾せん!との罠?
「恋人」「境」「変わ」「影」「芸術」「帰郷」
生まれ帰郷に出来た女子芸術大。仕事始めの教授は、校門の前で深呼吸した。
いつもと変わらぬ…が、中央での勤務を境に、久しく訪れていない故郷だ。
「自分は再び故郷に溶け込めるだろうか?」教授は少し不安だった。
校門には、何人かの娘達がティッシュを配っている。何かの広告らしい。
「よろしくおねがいしまーす」
しかし、教授にはティッシュは配られない。すっと手を戻す娘達…
何か気になる。教授は校門前を一回りし、もう一度彼女達の前を通る。
…やはり、ティッシュは配られない。彼だけに!
ティッシュが欲しい訳ではない。ただ、田舎特有の「余所者扱い」が怖かった。
三度、四度回っても結果は同じ。「私は…私はもう余所者なのだろうか?」
「これではいけない。」ティッシュ配布娘の影に忍び寄り、機会を伺う教授。
「あっ!」と叫ぶ娘。間隙を突いて、教授がティッシュを2つ奪取したのだ。
「思い知ったか、人を貶めて楽しむ卑しき娘よ。わっはっは!」
満面の笑いを浮かべ、勝利のティッシュの裏を見る教授の表情が蒼ざめた。
「貴女の黒髪に恋人は夢中!直毛パーマ、大チャンペーン中<5千円>」
※これって、安いのか?
次のお題は:「驟雨」「沐浴」「白馬」でお願いします。
かぶったからムリヤリ新しい題を追加して6題…ああしんど^^;
438 :
◆IFYi3cXdd. :02/10/20 12:18
>>435の書き込みがなにを言いたいのか分からない。
真面目に書いたんだから、真面目にやれよ。無駄レスは減らしましょうや。
439 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/20 19:23
「驟雨」「沐浴」「白馬」
北欧の陰鬱な日差しの中に浮かび上がる女の白い肌。
どうやらデューラーの「沐浴するスザンナ」らしい。
ただし真っ赤な贋物だが。油彩の新しさ具合からして戦前の
画学生が渡欧して描いた出来のいい模写といったところか。
そしてこちらは驟雨にたたずむ白馬。本物の東山魁夷なら
こんな雑な筆使いなどまずあり得ない。
「どうです、たいしたもんでっしゃろ。最近はこういう立派な
美術品を受け継いできた名家でもわてらのカネに手を出す
ご時世でんな。おかげでコレクションが増えてかなわんわ」
ひひひ・・・とほくそえむ黒木は、闇金融の社長としては叩き上げ
かもしれないが、芸術の鑑賞眼は小学生以下であるらしい。
私はせいぜい皮肉を言ってみるだけだ。
「まあ、ルーブルでも贋作が飾られているのは美術界の公然の
秘密ですからね」
耳が遠いのか聞こえないふりをしているのか、黒木は
いそいそと棚から汚い包みを取り出している。
「そうそう、稲垣はん。もうカネないゆうて、こんなガラクタを
出すじいさんがいたんや。わても年寄り相手に難癖つけたら
寝覚めが悪いさかい、黙って受け取ってきたんやが・・・」
驚いた。李朝初期の白磁壷だ。
これはほぼ間違いなく本歌と思われる。動揺を悟られないよう
私は吐き捨てるように言った。
「ああ。これはひどい。香港のみやげもの屋でこの手のものを
よく見ますよ。黒木さんもお人が良い。お人が良いついでに、
ぜひ私に・・・」「あきまへん」黒木はぴしゃりと言った。
次は「焼身自殺」「あひる」「ロマン」でお願いしまつ。
440 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/20 20:18
ある男がビル最上階から身を投げた。
当然物理法則に従い地上へ落下、結果は即死だ。
しかしここで議論が起こった。
男の死体は焼け焦げていたのだ。
これは焼身自殺か、はたまた投身自殺か。
飛び降りるのならば身を焼く必要はないだろうし逆もまた然り。
「空を飛ぶのは我らのロマンだ」
「なぜ料理のような死に方を」
「グゥァーグァー」「グゥァーグァー」
あるアヒルの国のお話である。
441 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/20 20:56
次のお題は?
「牛」「カスタード」「熊本」
443 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/21 03:12
昔はこのあたり、クマモトとか言いましたっけ。
そうそう、動物のクマに本で、熊本。よくご存知で。
ああ、昔からこのあたりにお住まいでしたか。そりゃ失敬。
立ち話もなんですし、ティータイムとしゃれ込みませんか。
どうですカスタードプリン。甘いものも珍しいでしょう。
いらない。また奇特な方だ。じゃあ勝手に食べさせてもらいますよ。
で、なんでしたっけ。そうそう熊本。
てっきりクマだらけの土地かと思ってたんですが、
なに、ご多分に漏れず人間ばっかりだったみたいですね。
え、その昔はクマが多かったんじゃないかと。なるほど。
それじゃ今は人本とでも呼びますかね。ヒトモト。
でもそれだと世界中がヒトモトになってしまいますか。はは。
そのうち牛本とか呼ばれたりね。ウシモト。
ん、牛が核戦争で滅びるわけがない?
いやあなた、なかなかの皮肉屋ですね。そういう牛、嫌いじゃないですよ。
お題忘れた。
「林檎」「鉛筆削り」「ライフル」でファイナルアンサー
445 :
「牛」「カスタード」「熊本」:02/10/21 03:24
部屋のカーテンをずっと締め切ったまま過ごす引き篭もりの私が此処にいる、
かれこれ3年近くになるだろう。食って寝、食っては寝る牛のような日々を
送っているのだが何も考えてないわけでもない、この生活にも後ろめたさを
感じ脱出方法を自問自答していたりもする。が、答えは未だ見つかってない。
両親も年を取りこの生活もいつか破綻するだろう、この先どうするべきか。
其の時ドアを叩く音が聞こえるそして母親の声
「たかひとちゃん、おやつ・・・シュークリーム持ってきたわよ。ドアの前に置いとくから・・・」
「うるせーよババァ早くあっち行けよ」
「ゴメンね、ゴメンね・・・」
また母親を怒鳴りつけてしまった全くもって内弁慶である、わかっているが怒鳴りつけてしまう。
重い腰を上げおやつを取りにいきそれを一口食らう。
甘い、限りなく甘い、このカスタードは私其の物のように甘い。
私はやるせない気分を紛らわす様に一気にシュークリームを食べ尽くし
近くに有る鏡でゆっくりと顔を覗き込み、自分に向って話し掛けた。
「おい、たかひと・・・熊本たかひと。御前この先どうするんだ・・・このままだと
御前体が腐っちまうぜ。良く考えろよ、これは一種のゲームの分岐みたいな物だ
御前このてのゲーム得意だろ、之からで一番重要な分岐だ俺から眼を逸らさずに
しっかりと考えろよ・・・」
翌週私はこの家をそして町を出て行った、甘たるいカスタードから抜け出すために。
次の御題は「目薬」「娘」「日傘」でお願いします。
「林檎」「鉛筆削り」「ライフル」
真っ赤なS字の皮がテーブルに落ちた。
「また駄目」
彼女は足元の段ボールから五個目の林檎を取り出した。僕は皮の残った四個目をかじる。
車のフトントガラスを覆ってゆく雪を見ながら、僕はライフルの音に耳をすませた。
「熊が出たのね」林檎を見ながら彼女がいう。
「威嚇だけにしてほしいよね」
「あら、熊鍋っておいしいのよ」
五個目の皮がヘタを始点に、螺旋状に剥かれていく。ナイフが、オーストラリアあたりに
さしかかったとき、皮が落ちた。
「まあ、鉛筆削りとはわけが違うから」
僕は五個目を手にとって、かじる。「これで最後ね。もうお腹いっぱい」
「お願い、もう一個だけ」
「無理」
彼女は皮を拾って、流しの内側にあるゴミ袋へと放った。しかし外れて、ステンレスの壁に
くっついた。それを見て彼女が、「ほら、アレ、なんだっけ?」といった。
「アレだけじゃ、なにがなんだか」
僕は一個目から五個目の芯を両手にはさんでゴミ袋に落とし、ついでにその皮をはがそうとした。
「待って、取らないで! ほら、熱い日に地面から出てくる、アレみたい。もわっと──」
「陽炎のこと?」
「そう、カゲロウ。その皮、熱さで赤道が歪んだように見えない?」
「赤道は目に見えないし、形もないけど」──その感性、嫌いじゃないよ。
「けどなに?」
「ううん、なんでもない。じゃ、もう一個だけ、やってみる? 今度は南極までさ」
>>1にある、「お題が複数でた場合は先の投稿を優先」ということで、443氏のお題を使いました。
というか、うはう氏のように6題消化を試したのだけれど、駄目だったので……。(w;
次は「落馬」「紙くず」「帰りの電車」でお願いします。
最近お題に林檎が多いね。
448 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/21 09:34
「落馬」「紙くず」「帰りの電車」
一番人気の騎手がスタート直後に落馬した。
騎手は手綱を放さず足をばたつかせてもう一度
乗ろうと無駄な努力を試みた。馬は一瞬だけ
後ろを振り返り「行っちゃうよ。いいの?」
というように騎手を見た。
背中の人間を失った競走馬ほど悲しいものはない。
戸惑うようにラチ沿いを走りながら、馬は
「ぼく悪くないよね?」と観客に問い掛けている。
そうさ。お前は悪くないさ。
この手の中の馬券はもはや紙くずだ。
これまで何万枚も買った紙くずの中の一枚だ。
帰りの電車の中でつぶやいた。
「それでも競馬やめられへん。アホや」
そして天皇賞での逆襲を誓うのであった。
次「正座」「メランコリー」「いわし」
「正座」「メランコリー」「いわし」
正座してたら疲れたのでいわしを食べることにした。
誰もいない夕日の差し込む部屋で一人いわしを食べる美少女。
ああ、なんてメランコリーな風景なのかしら。
※感想はいりません。
次は「胸」「キュンキュン」「でもとっても気持ちがいい」です。
450 :
czar ◆H6MPnX7dHA :02/10/21 20:31
胸をたたかれむせる僕に、やくざがどなる。
「ここで貴様を殺したろうかぁ。警察も刑務所も慣れっこなんだぞ俺らは」
かなたからキュンキュンとサイレン音。誰かが警察に通報してくれたんだ。
一瞬とはいえそう思った僕は、やはり世間に甘すぎる。キュンキュン音は背中のはるか向こうを通り過ぎ消えた。
やくざがいやらしくにやける。暗闇ゆえはっきりとわかるはずもないが、間違いはない。やくざは勝利者だ。
殴る。殴る。蹴る。殴る。立ち上がったところを殴る。倒れ臥してる間に蹴る。
僕を殴り続けた数が幾十回となったとき、ようやく彼の兄貴分が止めに入った。
「疲れました。でもとっても気持ちがいい」
僕を殴ったやくざが兄貴分に伝えた感想は、小学生が先生に話すそれのようだった。
次「三角形」「紋章」「うずら」
451 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/21 22:23
「三角形」「紋章」「うずら」
「君と僕と妻。これは聖なる三角形だ。明確に神によって
意図された計画にも似た、あらがう術などなく抽象としての
一般性に収斂することも不可能な、日常性に還元することも
もはやペシミスティックな忍耐を伴う、ユダヤの星にも似た
宿命の紋章を胸に今はひた走るべきなのではないだろうか」
「ようするにあたしとつきあうと楽しいかもってことですね。
わざわざ難しい言葉使うのって薄らバカより始末悪いですね」
「うすら・・・」
「あ、このうずらのプロヴァンス風ソテーおいしいですよ」
回りくどい話を要約するのにいくぶん疲れてきたので、私は
シャトーラヴィーユオーブリオン1995をがぶ飲みした。
さて、さっさと飲んで食って帰ろう。
次「百花繚乱」「雲散霧消」「大穴」
江戸から漂流し、流れに流れ、イタリアというお国に辿りついて半年。
「仕事を世話してやろう。貴様は運がいい、大穴だぞ。」太守は言った。
金で法王になった父を後ろ盾に、毒薬と陰謀でイタリアを牛耳る野心家。
家柄が全ての御時世、国中から田舎貴族と蔑まれつつも怖れられる男だ。
「お前に頼みたいのはな…王女を身篭らせるという仕事だ」
彼はずっこけそうになった、これは幻聴か妄想か。(←正解。妄想です)
「貴様は、国で一番の劣等人種だ。ガニマタでつり目の黄色い猿だ」
なんという事を、という声を辛うじて抑える彼を無視して太守は続けた。
「私を馬鹿にしてきた「名家」の血統を、貴様の血で濁し尽くして欲しい。
断種した王と王子の後継者に、黄色い猿との混血を産ませてやるのだ。」
何て奴だ、何が未来のイタリア王だ。家柄コンプレックスの権化じゃないか。
太守の権威も雲散霧消だ。ホントもったいないけど、猿とまでいわれては…
「太守様!」と席を立つ自分に気付かず、征服した王家の姫を呼ぶ太守。
まさに百花繚乱。非道な太守に征服された国々の、神々しき王女達が次々と。
彼は…彼は思わずこう言った(以下略)
※ひどいはなしパート2…疲れてるのかなあ、ゴメン(^^;L
次のお題は:「クイーン」「ジャック」「エース」で御願いします。
今日も仕事が終わって
家に帰り食事を済ませた後に煙草を一服していると
ふと一枚のジャックのカードに目が向いた
いつかトランプをしたときにしまい忘れてしまったのだろうか。
でもここ最近トランプで遊んだ記憶がない。
そんなことを考えながらしばらくそのカードを眺めていると
何かとても物悲しそうな目をしていることに気がついた
その目は日々の生活に疲れもう生きる気力すら持たない目…
そんな風にしばらく彼の目を眺めていると自分もジャックの一人なのではないか?
とそんなことを考えはじめていた
社長というキングにこき使われ、妻と言うクイーンに毎日のようにお相手する。
そんなくだらないことだと考えながら
「昔はこんな人間になる気なんてなかったのにな…」と一人つぶやいて見る
「でも実際のところエースにはなれなかった。」今度は物悲しそうな彼に向かって喋りかける
ジャックはただ物悲しそうな目をしているだけであった。
今読み返して見てすごい何というか意味不明&破綻しているものを作ったなぁと(汗
次のお題は:「煙草」「星のない夜空」「蛍光灯」で
454 :
「煙草」「星のない夜空」「蛍光灯」:02/10/22 00:48
この世の中で一番恐いこと、それは星のない夜空。
蛍光灯のように冷たく光る、ネオンサインが明るすぎるわけでもない。
煙草の煙りのように厚くて大きな、雲に隠れているわけでもない。
それなのに、星が見えない。
それはこの地球が宇宙でひとりぼっち。他の星は誰もいない。
そしてあなたも一人ぼっち。誰も助けてくれない。
次は「失われた」「爆笑」「リセット」でお願いします。
失われた時間というものを考えてみる。
悔しかったとき悲しいとき爆笑されてしまったとき…
もちろん嬉しかったときなどもある
しかしいつも思い返すのは消極的な考えばかりが浮かんでしまう。
思い返せばよかったことなんて数えるほどのごく僅かしかない。
だけどどんなことがあってもリセットしたいとかなんて考えたことなんか一度もない
どんなに苦しいことでもそれが私を作ってくれたものだと信じているからだ
次は「最終電車」「非常口」「エアキャップ」でお願いいたします。
456 :
「最終電車」「非常口」「エアキャップ」:02/10/22 01:59
最終電車に乗る僕を、彼女は見送りに来てくれた。
本当に電車ならいいのに・・・、彼女は少し泣きながら呟いた。
実際に僕が乗っているのは、軍部が最後の賭けとして送り出した艦隊。
もう戻ってくることは無いだろう。そう思われているから、最終電車と呼ばれている。
噂では、兵士達に逃げる気を無くさせるよう、非常口は全て溶接されているらしい。
ひどい話だ。
でも、僕達はそんな批判を口に出すことはできるはずも無く、命令に従うのみだった。
彼女は僕にお守りとしてエアキャップを手渡した。
「もし、敵の攻撃を受けたらこれに包まって衝撃を防いでね。
もし、息が苦しくなったらこの中の空気を吸ってね」
こんなものが役に立つとは思っていないが、彼女の心遣いはありがたかった。
「ありがとう、僕は戻ってくるつもりだよ。この電車が最終かもしれないけど、
回送電車は動いてるはずさ!」
僕が元気良くそう言うと、彼女は少し微笑んだ。
次は、「アポなし」「ミサイル」「対抗リレー」でお願いします
457 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/22 05:19
コニチワー、あたーしNIPO〜N大好きね〜。
あたーしの国、ミサイルばっかしやね〜ん、ホンマ怖いね〜。
だかーら、またニポ〜ンやってきたね〜。モネールじゃないねんよ、人違いダメダメよ〜。
夢はニポーンで女優サンになることよ〜。
でも、BUT、そのまえにね〜、思い出のDINNER食べたいね〜、
カレーだからニポン料理ちゃうねんけどね〜。
そんでや、あたーしね〜、その対抗リレー食べたいねん。
たしかアノPREFECTUREにあったね、そーそーアポなし県だたーよ。
ほんでな、タクシー代ごっつ高いやんか〜? アンタ乗せてーな。ええやろ?
え? あたーしのニポン語おかしー? 気にせんといて!
おまえ、親切! はじめーてよ〜、ニポンでヒッチハイク成功したの
#御題は継続やで〜。
458 :
元テクニカル名無し:02/10/22 17:15
「アポなし」「ミサイル」「対抗リレー」
S田が家で昼寝をしていると、突然誰かに揺り起こされた。
「ん?誰だ…?」仕方なく起き上がると目の前に男が居た。
「お昼寝のところ申し訳ございません。私とある陸上競技連盟の
スカウトをやっているものです」
妙に黒い服で固めており、スカウトという感じではないが本人が言うのだから
そうなのだろう。ははーん、読めたぞとS田はほくそ笑んだ。
これでもS田は元短距離走の選手で、何度かオリンピックにも出たことがある。
「俺にもう一度走れってわけだな」と言うと、案の定男は頷いた。
しめしめと思いながらも、S田はあえてもったいぶって言った。
「この俺様の黄金の足を借りたいって割には、随分態度がでかいよな。
大体アポなしで突然やってくるしよ。それで報酬は?」
「我が団体の特殊治療でS田様の身体を全盛時の状態に戻して差し上げます。
他にも、食べ物や女性にお金を払う必要の無い暮らしをお約束します」
なんと美味しい話だろうか。一も二も無くS田が承諾すると、男は微笑んで言った。
「良かった。これで対抗リレーの選手を確保できそうだ。なかなかあの世まで
行きたがる人が居なくて困ってたんですよ」
その時S田の家の上空を戦闘機が飛んでいた。
戦闘機のミサイルが外れ、一直線にS田の家に向けて落ちていく……。
この事故の真相を知るものは、居ない。
◆お次は「面接」「剃刀」「あかずの間」
459 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/22 18:12
まるであかずの間のように、目の前のドアは開かない。
永遠とも思える時間を待つ。待つ。待つ。
ドアノブ1点を注視する。瞬き一つしない。
不意に、込められた念が叶えられたかのように、ドアノブが回った。
前の受験者がお尻から出てくる。
面接官の声が続いた。
「次の人」
あの人の声だ。
私はハンドバッグから剃刀を取り出し、固く握りしめた。
----------
●お初です。宜しく。m(_ _)m
次は「電灯」「象」「カウンター」と言うことで。
460 :
簡単に書きました:02/10/22 19:05
その日は快晴だってので久しぶりに動物園にでも行こうと思った。
動物園なんて何年ぶりだろう。
ここ久しく行っていない。
受付カウンターで大人一人分の入場料を払った後、私は真っ先に象のいる場所に向かった。
動物園に行こうと決心したのは、実は象が見たかったからなのだ。
子供のころから象は好きだった
病弱で体が小さかった私の目にはある種、畏敬の存在に見えた。
薄暗がりの電灯の下、夢中になって見た象の絵本の影響もあったかもしれない。
私は昔の事を思い出しながら象のもとへ向かった。
そして瞳に象のをとらえた瞬間、子供のころの思いが一気にフィードバックした。
そうだ。今の俺はこの気持ちが原点なんだ。
しばらく象を眺めた後、私は一目散に帰途へついた。
よし!明日からもがんばろう。
お次は「雷」「操作」「抑揚」でお願いします
「雷」「操作」「抑揚」
「……あなたは、『作り手』の気持ちというものを考えたことがありますか……?」
その顔色の悪い男は、抑揚のない声でぽつりぽつりと話し始めた。
「画家、音楽家、小説家……大工や漫画家もそうでしょうね。いくつもの作品を生み出して
ゆくうちに……ああ、これは私が今まで作ってきたものの中でも、最高の出来だ……会新作
とでも言った方がいいんでしょうか、いつかはそんな逸品を作り上げる事ができるんですよ」
まるで恋人を思い浮かべるように遠い目をしながら、男はふう、と溜め息をついた。
「私もそうでした……あれは、本当に良い出来でした……物の価値もわからない、下衆な
連中のために……私の最高傑作を使うなど、とてもとても考えられない、そのくらいにね」
男と向かい合って座り……取調べをしていた刑事は、突然雷にでも打たれたかのように
立ちあがった。
「おわかりですね……私の、最高傑作は……肌身離さず……持ち物検査でも引っかからず、
かつ操作しやすい場所……私の……体内です」
この日、数千人もの命を奪ってきた犯罪史上最悪の爆弾魔は、自らの手でこの世を去った。
一つの警察署と、そこにいた数百人の命を道連れに。
次は、「おざなり」「なおざり」「首飾り」でお願いします。
462 :
「おざなり」「なおざり」「首飾り」:02/10/23 00:00
戦いに明け暮れる人々の前で、若者は自分の腕をめくった。
おぞましくも醜い死の痣があらわになった。
「皆よく聞け。この病はわが殺生のアザなり。
罪が累々とかさなり、命をなおざりにしてきた業のわざなり。」
が、こんなおざなりのお説教を聞き入れる輩ではなかった。
若者は、村を追われる時に少女がくれた大事な首飾りを見せた。
「わかった、いいなりになれとはいわないなり。これは匠のわざなり…」
群集から、ふと、ざわめきが消えた。
怖れの表情が現れ、あとずさりをはじめる。
彼等は見たのだ、おそろしき、殺生の業を。
「なお、わざなりなおざりとおざならくびざりなりの…」
死の痣は、若者の言語中枢を侵し始めていた。
※元ネタ忘れたー
次のお題は:「青山」「青年」「青痣」で御願いします。
3語スレ投稿文・「雷」「操作」「抑揚」
雨が降り注ぐ最中、ついに天才との呼び声高き博士の奇跡の発明が完成した。
さっそくジャーナリスト代表である私が運転する車に博士と助手の青年を乗せて、
『自ら実験台となって不老不死の体を手に入れた天才博士の発明成功記者会見』を
執り行うべく、すでに準備されていた会場に向かうこととなった。
久しぶりに博士の姿を見た私は、正直言って面食らっていた。
博士の体はどこもかしこも機械化されていて、もはや以前の面影はどこにもなかった。
完全に、ロボットに成り果てているようにしか見えなかった。
しばらくどうでもいい雑談をしているうちに、会場にたどり着いた。
会場から少し離れた場所にある駐車場に車を泊め、三人で傘を差して会場に向かった。
「しかしそれにしても……」
私は、それまでいいよどんでいたものの、とうとうここに来て疑問に思っていた事
について、、いぶかしげに聴かざるを得なくなってしまった。
「失礼な言い方かもしれませんが、素人目から見て、どうしても確認したいことが
あるのです。……いまの先生のお姿は、果たして人間と呼べるものなのでしょうか?」
すると天才博士は抑揚のない声でこともなげに答えた。
「ニンゲンノ体ハ、ショセン電気信号ニ操作サレテイルニ過ギナイモノナノダヨ」
「だからといって機械になってしまってはもはや人間とは言えないのではありませんか?」
「ソレハ凡人ノ安易ナ考エダ。ソモソモ君ニハ人類ノ定義ナドデキルノカネ?」
「……そう言われてしまうと、返す言葉が見つかりません。先生にはその答えが
わかるとでもいうのですか?」
「フム、ソレハダナ……」
その瞬間、凄まじい轟音とともに、私たちのいる場所を雷が直撃した。
あろうことか博士が差していた傘に向かって、雷が落ちてきたのだ。
まばゆい電気の矢は、瞬く間に博士の金属製の体を貫いていた。
そしてそのショックで博士は倒れ、動かなくなった。
「博士! 起きてください、博士!」
私は博士のずっしりとした鋼の体を揺り動かしながら、大声で呼びかけた。
しかしもはや、博士の体に着いている生命状態表示ランプは、完全に消灯してしまっていた。
<つづく>
困ったことになったと思い、同乗していた博士の助手の若者に聞いてみた。
「……これって、どうすれば元に戻せるんでしょうか?」
すると助手の若者は唖然としながら答えた。
「いえ、それがですね……その方法は、博士しか知らないことなんです」
「書類くらい、とってあるんじゃないのか?」
「博士は書類は面倒だからと後回しにしていましたもので……。大体、もう博士が
死ぬなんてこともないと思ってましたし」
私はがっくりと肩を落とした。
「……こうなってしまってはもう、急遽予定を変更して、『天才博士死去の記者会
見』にするしかないわけだな。いやしかし、それにしても……天才も天災には勝て
なかったというわけか。まったく、洒落にもならん馬鹿げた結末だ」
遅かったですね。お題は継続でお願いします。
465 :
=「おざなり」「なおざり」「首飾り」= :02/10/23 00:37
「で?」
「で?」
「…だからそれで?」
「いや、それでと言われても…。それだけ。」
「そんなおざなりな言い訳されても納得なんてできないわよ。見た人が
いるんですからね!」
「そんななおざりな情報信じられても説得なんてできないんだよ。似た人も
いるんだからねぇ!」
「…あなた、私をバカにしてるわね………。」
「いや、だからホントなんだって!ホントに先輩と飲んだ後、すぐ帰ったん
だってば!女となんて会ってないって!大体そんな金無ぇだろうが!」
「じゃあ、このネックレスは何よ!誰の為に買ったって言うのよ!」
「だから知らないって!知らないうちに鞄に入ってたんだよ!」
「そんな訳ないでしょ!誰がこんな高そうな物くれるって言うのよ!」
そのとき、不意に二人の目の前に少女が現れた。空中から現れ、軽やかに
床に降り立つ。
「…ごめんなさい、首飾りを渡す相手、間違っちゃったみたい。」
少女はぺろっと舌を出し、ネックレスをひったくると、また不意に消えた。
「…な、なんだ、今の…?」
「…あなた!」
「な、なんだ?」
「今の女、誰?」
「は?」
「やっぱり女がいたんじゃない!…私、実家に帰らせていただきます………。」
「…お、おい。ちょっと待てよ!突っ込む所はそこじゃないだろ!おい、
待てって!おい!………」
----------
●すんません、先越されたんですが、せっかく書いたんでUPします。
なおざりとおざなり、難しかったです。
御題は継続と言うことで
「おざなり」「なおざり」「首飾り」
満月が薄赤色に妖しく輝く空を、少年はベランダから静かに見上げている。
「今日は…、半影月食か…」
微笑を浮かべている少年を月光が涼やかに照らし、胸元の銀色の首飾りが銅色に鈍く輝いた。
「今の僕にはなおざりな答えも、おざなりないい訳も通じない。
今日こそ、あの人も正しい答えを出すかな。
だって満月は真実を導くから…」
剣の形の首飾りを握り締めながら、少年は月にそっと囁いた。
「ルナ…、いるんだろう?そこに」
突然、ベランダの下から月夜の静寂を破るテノールが響く。
「僕はここにいるよ」
少年の瞳は狂気の光を放っていた。
満月のように紅く、妖しく。
満月は薄赤色の光を放ち、微笑みながら囁いた。
「ルナスティックの夜がはじまったよ…」
次は「薄墨」「祝詞」「霰」でお願いします。
…さらにかぶってるや…。
考えてるの長かったし。
すみません。
もちろんお題は「青山」「青年」「青痣」です。
468 :
忍者鳥取君 ◆66EajH6bGY :02/10/23 01:27
新潟から上京し、ちょうど10年。
僕は電話工事の仕事をして生計を立てている。もちろんそれなりに夢があって上京した
わけで、その夢とは笑われるかもしれないが、金をためて実家の近くでペンションを経営する事だった。
だがそんな夢は一年もしない内にどこかへ行き、今では貯金すら止めて、ただただ退屈な毎日を送っていた。
制服を長袖に衣変えした10月、青山にあるデザイナー事務所から僕が働く支局に依頼があった。
なにやらビジネスホンが故障したらしい。上司は僕を指名し、僕は車で青山に向かった。そこは個人で
やっている事務所らしく、社長兼デザイナーである40前半の女性が一人と、助手の青年が一人居た。
ビジネスホンといっても端末が5台だけで、工事自体は難しい物ではなかった。
それよりも、後ろから僕の仕事振りを見張る女社長の視線が気になった。
--きっと彼女は電話工事に詳しくて、僕の仕事にいちゃもんを付ける気だな。
それでも僕は目をチカチカさせる、水玉模様の床を這い回り、工事を終えて、事業主であるその女社長にサインをもらう。
女社長は無関心を装いサインをしている。何事もなく帰ろうとした時、女社長は
僕の目の奥をのぞき込みこう言った。「今月でうちの高山が助手を止めるの、
貴方変わりに私の助手になってみない?さっきから貴方の仕事振りを見てたけど
貴方ならきっとこなせるわ。もちろんお給料ははずむわよ、今の2倍いや3倍だすわ」
もちろん僕はデザインの勉強なんてやった事はなかった、が、お金は欲しかった。
今の3倍の給料を貰えれば、諦めていたペンションも買えるかもしれない。
「それで助手の仕事は何をするんですか?」彼女は後ろの青年の方を向き、
「高山、上着をお脱ぎ」青年は着ていたセーターを静かに脱いだ。
青年の若い裸体には、数えきれない程の鞭の痕や、青痣が、この床の水玉模様のように、
上半身にちりばめられていた。
469 :
忍者鳥取君 ◆66EajH6bGY :02/10/23 01:29
次のお題は
「ステッカー」「仮面」「日本刀」
でお願いします。
470 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/23 01:58
「ステッカー」「仮面」「日本刀」
「やれやれ」
まるで村上春樹の小説の主人公のようにそう呟いた。
僕は目の前にいる仮面男の顔と、その男が持つ日本刀を交互に見ていた。
確か、朝のマラソンをしていたはずだった。歩道の無い道を走ってる時に、
後ろからダンプ特有の大きなクラクションが聞こえてきたところまでは覚えている。
その時に見た、「熊出没注意」というステッカーもよく覚えている。
問題はその後だ。音に驚いて、少しだけ右側によろけた気がしたと思ったら、
件の仮面の男にぶつかっていた。そして今に至るというわけだ。
タイムスリップ?そんな馬鹿げているが、どこか現実的に感じる言葉が頭に浮かんだ。
男は一言だけ僕に言った。
「抜け」
その言葉が最後の台詞になった。もちろん僕がこの世で聞いた最後の台詞ではなく、
男がこの世に残した最後の台詞になったという意味である。
僕が抜いたものは銃であり、日本刀などという、旧時代的なものを持つ彼など相手にならなかった。
死んでいる男をしばらく眺めてから、今の僕の状況を理解できる答えを探して、
なんだか視線の感じる方向に進んでみることにした。
※ふ〜風邪が回復しました。次のお題は「カレー」「ピクルス」「卵」
471 :
簡単に書きました:02/10/23 05:03
キン肉スタジアムの最前列に陣取った俺と女房は
カレークックに声援を送った。俺とカレークックは幼い時からの親友だった。
キン肉マン優勢の試合展開の中、俺はキン肉アタルの後頭部へ卵を投げつけた。
「なにをするのだ!」
その隙だった。カレークックがキン肉アタルの両目にスパイスを振りかけたのだ。
勝負は決まったかに思えた。しかし火事場の糞力を出したキン肉マンの前にカレークックは
何もすることができなかった。
キン肉バスターが炸裂した瞬間、カレークックの口からピクルスがこぼれ落ちた。
俺はリングに駆け上がった。カレークックはぐったりしていた。
「俺はもうだめだ」
「何を言っているんだ。お前らしくもない」
カレークックは俺の手を握り締め、雲ひとつない青空を見つめながら言った。
「いままでありがとう。俺はお前と出会えて少しだけ人間の気持ちがわかることができた」
カレークックは頭の上に載せていたカレーの入った皿を取った。
「何をしているんだ! 気でも狂ったのか!」俺の目から涙がとめどなくあふれた。
「俺にはもうこの皿はいらないのだ。俺の形見として受け取ってくれ」
「死ぬなぁ〜、しぬなぁカレークック〜あぁぁぁ」
472 :
簡単に書きました:02/10/23 05:08
次は、「摂理」「遮断」「地平線」で御願いします。
「摂理」「遮断」「地平線」
摂理というほど大袈裟ではないけれど、運命とはいえるかもしれない。
その夜S子をコンビニで見かけなければ、彼女の部屋に寄ることもなかったわけで、
さらには彼女が僕をG田と間違えることもなかったのだ。
「わたし、ずっとG田君を見てた。だから目が合ったときすぐわかったよ」
「そう、それは知らなかった」
僕らは遮断機を横切り、ゆるい坂になっている舗装されていない道にはいった。
そして、僕はG田の友人のKなんですけどといえないまま、二階建てのアパートまで来た。
「コーヒーでも飲んでく?」
嘘がバレるまえに別れようと僕は断った。甲高い金属音を立てながら彼女が
階段をのぼっていく。もう会うこともないだろうと振り返ると、彼女が手招きしていた。
僕は階段をのぼり、踊り場で彼女と並んだ。
「ここから地平線見てると、なんでも話せそうな気にならない?」
「どうかな──」どうやら、気づいたようだ。
背後で猫の鳴き声が響いた。彼女の背広と僕のジャージが猫の眼に映っていることだろう。
僕らの眼には、星のように瞬く街のあかりが映っている。歴史は夜につくられるという。
ならば摂理、いや運命と諦めて、白状するのも悪くない。
「やっぱり、コーヒーいただきます」
「うん、飲んでって。最初に私が間違えたんだし」
彼女は学生時代に戻った気がしたのか、一瞬さびしげな微笑を見せた。僕は
コンビニへなにを買いに行ったのか思い出せなかった。それは大学を出てからずっと
探し求めているなにかかもしれなかった。
(この手のはとてもじゃないけど群像には送れない(w;)
次は「追憶」「眺め」「いい部屋」でお願いします。
「追憶」「眺め」「いい部屋」
12時半過ぎに彼女は帰宅した。恐らく飲んでいたのだろう、心なしか頬が赤い。
彼女は僕に背中を向けると白いワンピースを脱ぎ始めた。
ファスナーが下ろされ露になった背中に薄いブルーのブラが見えた。
それだけで僕の分身は怒張した。僕はおもむろにズボンから分身を引き出した。
彼女は僕の気配に気付いたのかこちらを振り向き微笑んだ。
今や彼女が身に付けているのは薄いブルーのブラとパンティだけだった。
「あなたって、本当に薄いブルーの下着が大好きね。」彼女は微笑んだ。
こんなに眺めのいい部屋は初めてだった。彼女がこんなに側に見える。
彼女が僕の部屋を出て行ってから数ヶ月。僕はようやく彼女の居所を突き止め向かいのアパートを借りた。
目の前にいる彼女と追憶の中の彼女が頭の中で混ざる。
今、僕に話しかけているのは追憶の中の彼女なのか現実の彼女なのか。
僕はナイフを研いだ。彼女をもう一度僕のものにする為に。
次のお題は「初雪」「味噌汁」「水泳」でお願い致します。
「初雪」「味噌汁」「水泳」
厚く万年雪に覆われた国、日本。ここで暮らすことに不満はない。
しかし、ふと窓の外に覗く雪景色が目に入ると、私のように季節のある日本を知る者は、
特別な感傷を抱かずにはいられない。
流行の地下住宅に移ろうか。どうせ私の職場も、子供の通う学校も地下にあるのだし。
そんなことを考えながら、空の見えるプールを知らない私の子供を見る。十歳……そう、
私がその年齢だった時に、日本から季節がなくなったのだ。
真夏日になるはずのその日、子供たちは喜び勇んで水泳の授業に望んだ。だが、妙だった。
授業はまだ十五分と経っていないのに、プールの中に入る者はいない。皆、プールサイドで
タオルを羽織り、体を摩りながら、不安げに教師の指示を待っていた。
「おい、とりあえず教室に戻れ! あと、給食の味噌汁、もう食って良いから給食当番は丸缶運べ!」
教師の指示を聞いた子供たちは、いつにない静かさで歩き出した。と、そのうちの一人が気付いた。
「雪……?」関東南部で、冬にも雪は降らないような場所だった。七月の初雪。
皆がどよめく中、一人の男子は空を見上げ、涙を流していた。
あの時私は、どうして泣いていたのだろうか。怖かったのだろうか。それとも、雪が綺麗で
感動したのだろうか。……なにかが、悲しかったのだろうか。今、私は雪を見ても涙は流さない。
……地下住宅へ移るのはよそう。もうしばらく雪の傍にいたい。そうすれば、子供の頃に涙を流して以来、
私の心に降り積もる感情の正体が分かるような気がしたからだ。
次は「愛」「正義」「勇気」でお願いします。
477 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/23 14:48
「愛」「正義」「勇気」
卓球少女、愛ちゃんに勝負に勝つ為に必要なものはなんですか? と訊いてみた。
「ミスを恐れずにショットを打つ勇気と、正義の心です」
漫画の読みすぎだ、と思った。
次は「ドーナツ」「夕日」「カエル」でおながいしまーすー。
478 :
「ドーナツ」「夕日」「カエル」:02/10/23 15:35
『今日、同窓会だから。夕飯どこかで食べて』
急に、今朝妻が言った言葉が思い出された。
と、タイミングよく夕日に反射するドーナツ屋の看板が目に入った。
新発売のドーナツを二つとアイスコーヒーをトレイに載せ、空席を探す。
『あっ!』
妻が楽しそうに男と喋っているのが見えた。
男は後頭部しか見えないが、妻の満面の笑みが二人の仲を表している。
私はトレイを投げ捨て、男の胸倉を掴んだ。
『オイ!お前、人の女房に・・・』
胸倉の上には怯えたカエルの顔があった。
お次は『一つ目』『遠野』『子犬』でどうぞ。
479 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/23 15:41
『一つ目』『遠野』『子犬』
上遠野浩平最新作『ブギーポップ VS 一つ目の子犬』は11月23日発売です。
次は「正中線」「格闘家」「そんなことできません」です。
480 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/23 16:04
「正中線」「格闘家」「そんなことできません」
「ねぇ、これなんて読むの?どういう意味?」
本を読んでいる、息子が私に聞いてきた。
彼は今年で10歳になる。
好奇心というものがとても強い年頃らしく、最近はこの手の質問をよくしてくるのだ。
しかし困った。息子の本に書いてある「正中線」という言葉。
私にも、意味はよくわからない。
しばらく考えた後、苦し紛れにこう答えてやった。
「ほら、あれよ。ワンピースとかで敵の悪者がエイヤッて手からビーム見たいの出すでしょ?
あの技の一つ。現実の格闘家の人たちが、みんな習得を目指してるのよ」
冷めたい視線を投げかけながら、息子は私に言った。
「そんなことできません」
息子は今年10歳になる。
次は「ゴール」「飴」「郵便局」で!
481 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/23 17:21
「ゴール」「飴」「郵便局」
「ねぇ、なんであそこの郵便局のポストの色、赤じゃないか知ってる?」
少女のような口の利き方で、母は僕に話しかけてきた。僕はコーヒーを飲んでいたので、
口では何も言わず、首を横に振る事で分からないことをしめした。
「昔の話なの」そう言って僕の目を覗き込んだ。父と母が別れたのが十五年前。以来、
女手一つってやつで育ててくれた。「この町の生活には、占いというものが大きく関わってる
というのは、あなたも気づいてるわよね」
僕がうなづくと、静かに頭をなでてくれた。「十年くらい前かしら。神隠しにあった子がいたの」
上目遣いで遠くを見る母。神隠しというのが、よほど彼女にとってもショックな事件だったのだろう。
「子供のお母さんは、気が狂わんばかりに探し回ったの。もちろん、占い師にも相談した」
思えば僕には、その神隠し事件の記憶が無い。小さな村だから、聞こえてこないはずは無い思うんだが。
「占い師は言ったらしいわ。赤いポストが良くない。ポストの色を青くしろ、ってね」そこで、
缶から一つの飴を取り出して僕にくれた。「ゴールデンアップル」という、一癖ある飴だった。
「それで?」僕は先を促した。「不思議なもので青いポストにした次の日に、あなたは帰ってきたのよ」
もう一度頭をなでながらそう言った。
僕は口の中に広がる飴の味を感じながら、幸運のお守りが青いポストだとわめいていた、父の姿を思い出した。
※ 次の御題は、「庭園」「地下鉄」「悪魔」
「ゴール!! ゴール!! ゴルゴルゴルゴル……」
ほとんど殴りつけるようにして高津はラジオの電源を切った。サッカー自体はどうでもいいが、実況の狂いっぷりだけはどう
しても我慢できないタチなのだ。出かけた赤竹の机からちょろまかしてきた飴も無くなったので、取りに行く。
赤竹のデスクでは新人がうなっていた。隣のデスクに腰を下ろした赤竹本人が、底意地の悪い笑みを浮かべてそれを見ている。
「何だ、そんなのもわからんのか!」
「すいません、わかりません」
「何をしている、アホ竹。お前郵便局に行ったんじゃなかったのか?」
呼びかけに応じて赤竹は顔を上げた。かと思うと、いきなり高津に指を突きつけて、早口に、
「病院で男が殺され、犯人は走って逃げた。容疑者は五人、こいつらのどれかだ。さぁどれが犯人だ」
と告げて指を下に向けた。デスクの上にメモが5枚あり、それぞれ足にギプスをはめている人物の絵が書いてあった。どうやら
新人はこの問題に頭を悩ませているようだ。
「こいつ」
高津は一瞥しただけで一枚のメモを指した。新人が意外そうな顔で彼を見上げた。
「ギプスの中にパジャマの裾が入ってる。こいつのギプスは脱げるんだろう。だから走って逃げたんだ」
「さすがバカ津、正解だ! ほら褒美だ」
赤竹は机の上から飴を数個取り、高津に差し出した。とりあえず目的は達成したわけだ。
次の問題を用意する赤竹を後目に、自分の席に戻る途中、彼はポツリと呟いた。
「お前が書いた絵を見分けることなんて、俺以外できねぇよ」
次のお題は「トイレ」「消しゴム」「しおり」で
ぐげ、被った。スマソ。
お題は一日一書氏の方でおねがいします。
484 :
「庭園」「地下鉄」「悪魔」:02/10/23 21:33
花瓶が飛んできた。いつものことだ。私はソファに座ったままひょいとかわしたが、花瓶は背後のカベで弾け、背広の背中を濡らした。
「出ていけ!守銭奴どもめ!! 私の家はお前等には絶対渡さんぞ!」
ジジイが立ち上がり、真っ赤な顔をして怒鳴った。私は深く煙草を吸い込み、溜め息と共にゆっくりと吐いた。
「お父さん…。いい加減に聞き分けて下さいよ。ここには地下鉄の駅が出来るんです。貴方の意志は関係ないんですよ。公共の福祉というモノは個人の希望より優先されるんです。」
ジジイは上目がちにじろりと睨むと、ペッと唾を吐いた。
「で、お前等はその何割を貰うんだ?」
私はまた煙草を吸い、ジジイに向かって吐き出した。ジジイがごほごほと噎せる。
「私は公務員ですよ。一円たりとも貰えません。しょうがないなぁ。おい、アレを出せ。」
横に立っていた秘書に手を差し出すと、秘書はブリーフケースから一枚の書類を出した。
「あんまりこんな方法は使いたくないんですけどねぇ…。これを見て下さい。」
「なんじゃ、これは…?」
ジジイの顔色が見る見る青くなっていく。それはジジイの息子が作った莫大な借金の借用書だった。
「お、お前等…、まさか、そのために息子の事業を…。」
「何をおっしゃいます!公務員である私どもがそんな汚い真似をする訳はないでしょう?只の偶然ですよ。」
私は煙草を灰皿ではなく、テーブルでもみ消した。吸い殻をぴんとジジイに向かって弾く。
「でも、お父さん…。あなたには今、お金がいるんじゃないんですか?」
ニヤっと笑ってやると、ジジイの呼吸が止まった。
「あ、悪魔!お前等は悪魔だ!!」
「どうとでも呼んで下さい。さ、サインをするんですか?しないんですか?」
契約書を前にして、ジジイが震えながらペンを取った。私はまた煙草に火を付けた。
ジジイの家を出て、振り返る。やっと此処が地下鉄の駅になる。
そうだ、駅の名前は回遊庭園駅にしよう。あのジジイに奪われた20年前の我が家、あの懐かしい庭園を再現するんだ。
485 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/23 21:34
●しまった、改行失敗した…。
次は「トイレ」「消しゴム」「しおり」にしましょう。
486 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/23 21:51
トイレの壁に詩織の絵を書いたら、消しゴムで消された。
「これはいけない」と思い、ボールペンで書き直した。
先生方ががんばったらしく、次の日にはやはり消されていた。
ぼくは諦めた。
「さよなら、詩織」
最後にこう壁に書き付けた。
次の日、やはり壁の文字は消されていた。
お題を書き忘れました。
「時間」「未知」「手」
「前回の時のように、おかしな物は持ち込まないで下さいね?」
ゲートをくぐるさい、苦虫を噛みつぶしたような声で『監視員』が言った。
「分かってるよ。 腹壊して大変だったんだろ?」
ギョロリと大きなレンズが、俺を睨み付ける。
彼女が怯えないよう200年も前にとっくに滅んでしまった不合理極まりない
「ヒト」の姿へと体のパーツを交換して、俺は通称「地下鉄」と呼ばれる地上から
約三百メートル程下にある道を走る鉄の箱に乗り込み彼女が暮らす庭園へと
呆れる程たくさんの種類の消毒液を浴びながら移動する。
何百年も昔、加速度的に変化する地球の環境に「人間」は体を適応させる事が出来ず
爆発的に滅びの道を辿り始めたそうだ。
人は生にしがみつくあまり人工的に無理矢理進化し、体を頑丈な機械の体へと変えて
生き残り、そして今や人は俺のように脳と心臓だけを残してほとんど鉄とアルミの体
へと変化し、ほんの少しの血液と多大な電気が体の中を循環している。
「地下鉄 」から降りると、機械の無骨な体でも脳味噌がフルに回り始めるのが
分かる程の清涼な空気に満ちた庭園が広がっていた。
この地球最後の、何処一つとして体のパーツを機械と交換せず、全身を血液が循環して
いる完全なる人間が此処にいる。
いつから彼女だけがこのように軍の研究施設にて「保存」されているのかなんて、俺
には分からない。
彼女を「女神」と崇める奴も、「悪魔」と恐れる奴も同僚にはいる。
だが俺はただ、唯一彼女と直に接触できる「飼育員」として彼女を守る。
それが、俺に残された最後の人間らしさを守る術だと信じて職務を全うするだけだ。
ほら…。
彼女が、向こうから走ってくる。
さぁ、ゴムのマスクの下にある機械の筋肉を持ち上げて笑わなければ…。
そうだ、笑わねば……彼女のように人間らしく。
次回
「リモコン」「昆布」「サバイバル」
ぎえー! リロードし忘れた!
スルーして下さい…。
490 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/23 23:03
未知の物体がお茶の間の幸福な時間を破壊する。
なぜ、そんなものを見せつけるのか。
手が無い足がない。
急いでチャンネルを変える。
テレビは見せ物小屋ではない。
「リモコン」「昆布」「サバイバル」
スタンドからの卵色の光が、目の前のノートにゆらりと揺れた。
私は我に返り、シャープペンシルをきつく握り直す。
「眠っちゃだめだ、今が正念場なんだから」
そう何度もつぶやきながら、数学の参考書に噛り付く。
しかし、必死に数式を解こうとしても、ちっとも公式が浮かんでこない。
私はこれ以上勉強に集中できないことに気づき、ベッドに身を投げた。
「変な夢だったなぁ…」
私の頭の中についさっきの夢がフラッシュバックする。
深い森の中にポツンと一人立っていた。
なぜか私は、すぐにそこが無人島だとわかった。
しばらく探検していると、突然、一匹の狸が私の前に現れた。
そして嫌な笑いを浮かべながら、私にこう諭すのだ。
「お前は、人生のリモコンを押し間違ったのさ。サバイバルには生き残れねえよ、お嬢ちゃん」
この島での生活のことかと一瞬思ったが、すぐにそれが何を意味しているのかが分かった。
「受験…」
そう口にしたところで目が覚めた。
狸のあの嫌な――そして私の担任そっくりの笑い顔が、頭にこびりついて離れない。
私が医学部に行きたいと言ったときの担任のあの嫌な笑いが。
枕に顔をうずめると涙が出てきた。
「受かるもん、受かるもん」
私は自分に何度も何度もそう諭した。
半時ほど経っただろうか。
微かに除夜の鐘が耳に響いている。
「お母さんの昆布まき食べたいなぁ」
泣いて、少し元気を取り戻した私はふらふらと机に向かって、参考書を開く。
受験生には縁のない200X年の正月がすぐそこまで迫っていた。
次は「画用紙」「投光」「欺瞞」でお願いします。
492 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/24 01:32
コニチハー、またまた来たーよ、今日はネ、自己紹介ヨー♥
ワターシ、名前考えたヨー! ニポーンの名前、「未知」にしたヨ-!
ミッチーって呼んでくださーい、ゴメンくさーい。
ヨロシコー!! はい、手出して! ハンドシェイク、悪手しまひょ!
アレレレレ、握手だたーき? ま、いっかー。ワターシまだニポーン語勉強中ヨ。
おまえらニポーン語うまい、ワタシよりもじぇんじぇんウマイ。
そんでな、御題な、「ラーメン」「ホームシック」「いちごジャム」な、書け。
書いて申しあぎます候ヨ!
OH! カブレラ!
カブッテシマタよー。ゴメーンネ! ひら謝りよ、ワタス。
御題、コレよ。コレカラ気ィツケマース! 「画用紙」「投光」「欺瞞」
「画用紙」「投光」「欺瞞」て、むずいな。
「ラーメン」「ホームシック」「いちごジャム」に逃げそうになったよw
そゆことで、負けを認めて書くのやめました。
「画用紙」「投光」「欺瞞」「ラーメン」「ホームシック」「いちごジャム」
1枚の白い画用紙があったとする。
そこに、近代文明と美しい自然が見事に融合した、夢と希望に溢れる都市を描いてみよう。
そして最後に、真っ黒い絵の具をその絵にブチまける。ちょうどそんな感じだ、東京という街は。
最初に見た時は、何て凄い所なんだと思ったよ。天を貫くような高層ビルに、何千・何万と
行き交う人々。日本はこの街を中心にして動いていたんだなあ、って本気で考えたさ。
でも、違った。あれは、日本の全ての……欺瞞を象徴するものでしかなかったんだ。
投光機に集まる虫みたいに、何も知らずに寄ってきた俺は、たちまち食い物にされてしまった。
面白いモンでな、いちごジャムにでもなった気分なんだ。わぁーっとアリどもにたかられて、
ちょっとづつ、ちょっとづつ体を削られていくんだ。気が付いた時には、何も無くなってたよ。
俺も奪う側に回ろうかとも思ったが……疲れるんだ、そういう生活も。だから、田舎に帰って
潰れかけたラーメン屋を継ぐ事にしたわけよ。まあ、貧乏はその時から変わっちゃいないが、
俺は後悔してないよ。今の生活も……あの街から逃げ出した事も、な。
……だからさ優子、東京で暮らすだなんて言わないでくれよ。父さん心配して言ってるんだ〜。
絶対、ホームシックとかになって帰ってくるのがオチだって、なあ、考え直しておくれよ〜。
次は、「柄杓」「公爵」「電磁石」でお願いします。
豹柄●公爵●電磁石
「公爵」とあだ名される彼を、私はみっともないと思う。
彼の携帯電話には、電磁波防止シールが張ってある。一体なにを恐れているのか。彼の畏怖する
その対象の矮小さに、私は頬の肉が緩んでしまう。私は彼を侮蔑する。ばっかじゃない、といつも思う。
世が世なら・・・というのが彼の口癖で、なるほど、確かに彼の血統は歴史の教科書に出てくる位
正統な代物なのだろう。でも、だから?それは貴方の先祖の話で、貴方がそれを自身の尊厳に
利用するのはかまわないけど、それを周囲に強制するのはみっともないことこの上ないでしょう?
でも、彼にはそれがわからない。
彼は、プラスティックに電磁石を仕込んだ玩具で、今日も痛めつけられることを望む。
手元のスィッチで軽い電流の流れるそれは、彼のここ最近のお気に入りだ。彼の希望で
豹柄のタイツを履き、八センチのピンヒールをはいた私は、彼が死ねばいいと思う。私は彼の葬式で、
貞淑な未亡人を装う自分を想起し、興奮する。そんな甘美な想像に、私の血液はゆっくり立ち上がる。
そして私のスィッチが入る。
「さぁ、公爵。今日はどんな風にお仕置きされたいの?」
次のお題 金魚●雪●CD-ROM
497 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/24 13:16
>>496 「豹柄」(ひょうがら)じゃなくて「柄杓」(ひしゃく)だろ?
498 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/24 14:11
うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
恥ずかしい
すんません。間違えました。
次の人、「柄杓」「公爵」「電磁石」でお願いします。
500 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/24 16:33
公爵は、電磁石の付いた柄杓を買った。
その柄杓で水を飲むときだけ健康になったが、
後に感電死した。
次は、金魚●雪●CD-ROM ということで。
501 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/24 16:55
あら500ゲト。
502 :
元テクニカル名無し:02/10/24 22:11
「金魚」「雪」「CD−ROM]
「ねえねえ見てよこの子達、可愛いでしょう?」
彼女は、水の中を悠々と泳ぐ金魚達から目を離さずに言った。
水槽の中はまるで雪でも降っているように、白い粒がキラキラと
舞っている。
「確かにキレイだな」
俺はマウスに手を伸ばし、ウィンドウの右上にある×のボタンを
クリックした。途端に、金魚は水槽ごと姿を消す。
「だが、つまらない」
彼女は不満そうに俺に視線を投げかける。彼女なりに気を使って
くれたのだろうが、こんなものでは俺の心は癒されなかった。
「俺は…もう飽き飽きだ…。本物の自然に触れ、本物の動物に触れ、
本物の…人間に会いたい…」
「無理を言わないで、そんなものもう何一つ残ってないんだから」
それだけ言うと、アンドロイドである彼女は部屋を出て行った。
いつまでこんな暮らしが続くのか…。
核の冬はまだまだ終わりそうにない……。
●お次は「ギャル」「亡霊」「株式会社」
でお願いしま〜す。
503 :
元テクニカル名無し:02/10/24 22:22
ああ!!CD−ROMを入れた部分に修正し忘れて
貼っちゃいました…。(泣)
本来は8行目の後に
俺はファンシーな金魚の絵が描いてあるCDーROMを
パソコンから取り出し、彼女に返した。
と入るはずでした…。すみません。
評価外だと思うので感想から外してくださって構いません…。
ハァ〜…
504 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/25 01:04
「ギャル」「亡霊」「株式会社」
「世のおっさんも大変だよねー。リストラに怯えながら、毎晩要領のいい同僚の尻拭いでサービス残業?
悲惨〜、すっげ悲惨。あたしなら絶対耐えらんない。でも悲惨っちゃあ、あたしも悲惨なんですけど。
だって珍しく終電で家帰ったと思ったら、いきなり親父に包丁でブスリ、だよ?
んでいきなり幽霊なんですけど。ヤバくない?すっげヤバくない?」
「……はぁ。……でもあれなんですね。ギャルの方って、死んでもギャルなんですね。
その、睫毛とか、目の上の青いアイシャドーとか」
「つーか、このアイライン油性マジックで書いたしね。水洗いじゃ落ちねーっつーの。
……つーか、蘇りてぇ〜。マックの芋食いてぇ〜」
「……あ、未練あるんですか」
「当たり前だっつーの。じゃなきゃ、こんなとこで亡霊してないっつーの。
成仏するっつーの」
「でも、なんでこの会社に?」
「だってここ、株式会社2chanっしょ?あたしここに思い入れあんだよね。
つーか、ここの社員に思い入れあるんだよね〜。そいつ道連れ作戦っつーの?呪い系、貞子派?」
「……怖いですね。社員なら、ぼくの同僚ってことですよね?」
「つーか、お前じゃん。クソ親父。人の顔が半分腐ってるからって、忘れるんじゃーねーよ、死ねや」
次のお題は 「減員」「著名」「泣きべそ」でよろすく。
「減員」「著名」「泣きべそ」
「折からの不況で、この工場にもついにリストラのメスを当てられることになった」
工場長兼経営者である末次さんは、職人のそれらしい分厚くて、慢性的に黒ずんだ
手の甲の方で、深い皺がたくさん集まった目尻を拭っている。「みんな、すまん」
彼の泣きべそを見るのは初めてではないが、今日のそれは重く輝いているよに見える。
しかし、「すまん」とは言うもののこんな小さな町工場だ。これまでよく耐えてきた方だろう。
みんなそれなりに覚悟はしていたし、今さら驚きもしない。ベルトコンベアの上で流れる
部品の選り分けられる順番が来て、そしてこれから選り分けられる。ただそれだけだ。
工員の減員が、とりわけ珍しいものではない世の中なのだ。
テレビの中で、不況を打開できない日本経済について語る、多くの無力な著名人たちは、
我々に慣れと覚悟を与えてくれた。
そういう意味で、彼らは非常に役に立っている人物なのかもしれない。
今の僕に今後の先行きなどは見えない。同じように先行きを見通せない人間が
工業用油の匂いが飽和した、蒸し暑く重苦しいこの空間の中に大勢いる。
この工場を出た先には一体どれくらいの人々が路頭に迷っているのだろう?
くすんだ窓から差し込む低く傾いた入り日が眩しくて、僕は目を伏せてしまった。
おだい忘れ
次は「ビタミン」「ミネラル」「コンドーム」で。
507 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/25 02:50
「減員」「著名」「泣きべそ」
その手紙を見つけたのは、スパゲティーをゆでる時間を利用して、
階下のポストまで郵便物を見に行った時だった。
手紙の裏面には、結婚式のもようを写した写真がプリントされていた。
先日、招待されたが欠席した結婚式の写真である。その写真に写る男のほうが、僕にとって懐かしい人物だった。
大学から友人である、「かかし」というあだ名の男だった。何がどうして「かかし」になったのかは忘れたが、
彼を知ってる人物にしたら、そのあだ名はうなずけるものだった。もう五年近く会っていないはずだ。
確か大学を卒業すると同時に、著名なカメラマンに弟子入りしたはずだった。
その後風の噂で就職した事を聞いたが、この不景気の世の中で珍しくない、減員、いわゆるリストラで無職になった。
というのも、どこから聞こえてきたのか忘れてしまったが、風の噂というやつで聞いた。
その先、かかしのヤツがどうしてたかは聞かなかった。
というか、僕自身が聞けない常態にいたのだった。かかしのリストラと時期は同じ頃だった思う。
僕の父の会社が潰れたのだ。ただ潰れたのではない。宝くじを二、三回当てなければ返せないほどの借金を抱えて潰れたのだ。
当然僕自身にもその借金は降りかかってくることになり、今では名前を変えて暮らしている。
そんな僕の所在を知っているのは、限られた人物だけだった。その1人に、かかしは入っていた。
慣れたとはいえ、そんな自分自身を悲観していた時に来た、かかしからの手紙。
泣きべそになりそうだった自分を奮い立たせ、もう少しがんばってみようと思った。
※自分なりに、長いけど良いものを書こうとして見ました。
お題は「静かな海」「排水口」「写真」です。
508 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/25 02:52
すいません被りました・・・・・直前にリロードし忘れました。
お題は、「ビタミン」「ミネラル」「コンドーム」でどうぞ。
509 :
「ビタミン」「ミネラル」「コンドーム」:02/10/25 04:01
彼女は某大企業の社長夫人で、誰もが彼女を羨んでる。
今日は、自分がオーナーである高級ホテルでエステだ。
「この泥パックはですねぇ、お肌に大切なミネラルを…」
虚しい、もう寝よう。部屋に「お肌に大切なビタミン」の錠剤が待っている。
が、スイートに続くロビーで、若い娘を連れた男を見て彼女は驚いた。
昔、学生時代の自分が、手酷く振ったあの男ではないか。
「こ、この人は…」という彼女の質問を先取りして、男は答えた。
「人じゃないよ、ロボットだよ。私の最高傑作のアンドロイドさ」
「はい、私はロボットです」と呟くロボットは、どこか寂しそうだった。
不意に男はその場を離れ、ホテルの薬局で、わざと大声でこう言った。
「コンドームをね、20個ね!」(←ああ、書いてる方が恥かしい!)
「そんな、御主人様。20個だなんて…」と頬を赤らめるロボット。
「あはは…」と顔を伏せながら、男のコートの端をつまんで去ってゆく。
ロボットも幸せを感じるのだろうか?少なくとも彼女にはそう見えた。
彼女は某大企業の社長夫人で、誰もが彼女を羨んでる。
しかしその夜、彼女は二人の隣の部屋で、意地汚く盗み聞きをしていた。
あのロボット…「彼女」を見て、誰も気付かない。
「彼女」は、昔の自分と瓜二つだったのに。
※恥ずかしい思いをして書いた割には、あまりにもよくあるパターン。
次のお題は:「静かな海」「排水口」「写真」でお願いしまふ。
「静かな海」「排水口」「写真」
パパから誕生日のプレゼントにクジラの写真集をもらった。
物音一つ聞こえない様な静かな海を漂うクジラ達。アタシは頁をめくっていった。
潮を吹くクジラの写真に目が釘付けになった。
その写真を見るまではミミーちゃんの事をすっかり忘れていたから。
あの日、台風一過の青空が嬉しくてアタシはミミーちゃんを持って遊びに出掛けた。
濡れた道路で滑って転んだ拍子にミミーちゃんはどぶ川に落ちた。台風で水嵩が増したどぶ川はあっと言う間にミミーちゃんを飲み込んだ。アタシは濁流が流れ込む排水口を呆然と見詰めた。
ミミーちゃんがいなくなって3年位経つだろうか。
アタシはその写真を見て思わず微笑んだ。
だってクジラが吹いた噴水の様な潮の上でウサギのぬいぐるみが踊っていたから。
ミミーちゃんが元気に踊っていたから。
次のお題は「インコ」「台風」「化石」でお願い致します。
511 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/25 15:18
黄色い羽根が、ぽとりと止まり木から落ちた。死んでいた。
必然。そう感じた。確信があった。
男はインコのピィの亡骸を鳥篭から出すと、ちいさな箱に入れて部屋を出た。車に
乗り、秋奈山を目指す。
夜の2時。外は暴風雨。台風は3時頃上陸するらしい。荒れ狂う風が、屋根を叩く
雨音が、今の私たちを慰めるように叫ぶ。
秋奈山には一時間ほどで着いた。有料道路を少しはずれ、細い県道に入る。
しばらく走り、直線の途中で車を端に寄せて止める。ここなら墜落現場が一目で
見渡せた。
ピィの入った箱を膝の上に乗せ、曇るウインドウから外を見る。機体の残骸がまだ
山の中腹に白い腹を晒していた。
家族の遺体は一週間経っても発見されなかった。父も、母も、妻も、子供達も、
あそこで眠ることを選んだ。そう感じた。私を置いて。
確かに不仲だった。夫婦仲も親子関係も上手くいってなかった。息子がお膳立て
してくれた、父の還暦祝いの旅行にも、仕事を優先して行かなかった。
私は、置いて行かれることを選んだのだ。自分で。
ハンドルに突っ伏し、右足に力を込めた。路面の水を掻き上げながら車が急発進する。
強烈な加速感を感じながら、少しだけ顔を上げた。ヘッドライトの光の中にガードレール
が浮かんでいた。
思わず、ブレーキを床まで踏んだ。車は濡れた路面をスキール音を響かせながら滑り、
ガードレールにぶつかって横向きになって止まった。
男は泣いた。咽ぶように泣いた。
泣き疲れて眠りそうになったとき、箱の中から「ピィ」と声がした。
驚いて顔を上げると、道路が崩れた。
箱からピィが飛び出し、羽根を開いたように見えた。
このまま化石になれればいいな、と思った。
----------
●次の御題は、「タッパー」「瓦」「時刻表」ということで。
「タッパー」「瓦」「時刻表」
今は時刻表がただの数字の羅列となっている。
人身事故で内回り電車が止まり、既に40分も足止めを食った。通勤ラッシュ時であったために
車内は、苛立ちを隠せないサラリーマンのストレスが、次第に増殖し、やがて飽和した。
少なくない数の乗客が、一時ホームに出てたばこを吸ったりストレッチをして、銘々の時間
をしばし過ごした。小さなタッパーから簡単な漬け物を取り出し食べているおばちゃんもいる。
車内では特にすることのない人々が、見るともなく何かを見ていた。
長い時間をかけて化粧を直す少しケバいOL。それを訝しげに見つめる中年男。その中年男の
薄くなり始めた頭頂を観察する、まだスーツの似合わない若い男。その若い男の未来への不安を
察知したのか、うっすらと笑みを浮かべ、眺める足の綺麗な女。僕はその細い綺麗な足をしばらく鑑賞する。
さぁ、僕を見ているのは誰だ。僕は誰かの視線を探そうとふっと顔を上げる。目が合う。
細い足の女だ。僕は慌てて目を反らした。しかし自分の顔がみるみる赤くなっていくのを感じる。
しかし感じるのは、恥ずかしさばかりではない。物理的にさえ感じ取れそうな冷たい視線を肌に味わう。
もう顔を上げられない。周囲の人間がみんな僕を見ているかもしれない。そう思うとさらに体が強ばる。
瓦を割るような反響音がスピーカから聞こえ、車掌がしゃべり始めた。
「えぇ、ただいま・・・」
−−発車を知らせるアナウンスか。助かった。
「一番の注目の的は、うつむいて顔を赤くしている彼です」
やっぱりみんなが僕を見ていた。
次のお題は 「ジャンプ」「マガジン」「サンデー」。
513 :
「ジャンプ」「マガジン」「サンデー」:02/10/26 03:06
どうやら弾切れのようだ。あたしはいつものように
マガジンラックから弾倉を取り出すと慣れた手つきで交換した。
(いつのまにか、考えなくてもできちゃうようになるんだな・・・)
半年ほど前までは、あたしがこんなことをやっているなんて想像もつかなかった。
それが今は、あの頃シャープペンの芯を交換するのと同じ感覚で、
ライフルに弾薬を補充している。
なんで?あたしはこんな事をやっている?それはあたしにもよくわからない。
とにかく敵がやってきた。そしてあたしの生活を奪っていった。
あたしがチョコレートサンデーをよく食べていたあの店も、
いつのまにか瓦礫の中に埋づもれていた。
あたしが少し昔のことを思い出していた、ほんの僅かの間に、
敵はもう間近に迫っていた。
(危ない!!)
あたしは勢いよく前へジャンプした。辛うじて死ななくても済んだようだ。
(あのぐらい跳べてたら、あたしの体育の成績も1じゃ無かっただろうな・・)
あたしはまた、少し昔のことを思い出した。
次は「鬘」「小枝」「パラダイス」でお願いします
514 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/26 03:38
俺は家への帰り道を歩いていた。両脇には夕方の赤みがかった色に染まったコンクリートの壁。
この細い道を通るとき、いつも心が圧迫される。まるで監獄にいるように。今日はなおさらだ。彼女から別れてほしいと告げられたから。
下を向いていた顔を上げると、向こうから恰幅の良い初老の男性が歩いてくる。壁を越えて道にまで届いている庭木の小枝の下を通ったとき、枝に引っ掛かって鬘が取れた。
思わず吹き出したくなるのを、必死にこらえた。鬘の男性は何も気づかず、鼻歌まじりに歩いてくる。俺は彼とすれ違うと、口元を手で押さえながら走り出した。
男性が見えなくなったところで、俺は必死にこらえていた笑いを、遠慮無く放った。
この道を通るごとに、俺は今の情景を思い出すだろう。
そう、人間なんて、気の持ちようで、どんな場所でもどんな状態でもパラダイスとなるのだ。
次は「暗黒」「黄金」「鐘の音」
「暗黒」「黄金」「鐘の音」
月のない漆黒の闇の夜だった。
花穂は一人、その暗黒の中を歩いていた。
普段なら、犬の遠吠えが木霊しているが、今日は花穂のハイヒールと小さな雑音だけが異様に響いている。
「もう少しだけ…一緒にいたかったな…」
花穂の頬がほんのりピンクに染まっている。
しかし、どうやら飲んできたせいだけではないらしい。
花穂の黄金の瞳――彼女は日本人とフランス人のハーフだった――からは、ポタポタと光るしずくが零れていた。
絶えられなくなってその場に座り込んでしまうのに、数分とかからなかった。
貴臣との最後の食事は静かなフランス料理店だった。
ワインが飲み終わって、別れ話が成立したときに初めて、花穂は貴臣を必要としていることに気づいたが、時はすでに遅く、残っていたのは貴臣が出て行ったドアの鐘の音だけだった。
「貴臣…」
花穂はひたすらその言葉だけを呟いていた。
そして最後にポツリとその言葉を漏らした。
「もう…死にたい…」
私は、花穂という名の女が可哀想になってしまった。
普段なら、そんなに簡単に心を動かされることがないのに…。
彼女の涙が本物だからだろうか。
ほんの少し寄り道をするつもりが、大変な場面に遭遇してしまった。
しかし、意を決して静かに目をつぶる。
「花穂さん、最後の望みを叶えてあげますよ」
私はゆっくりと死の鎌を振り下ろした。
次は「菜の花」「進駐」「星」でお願いします。
『君も分からん男だな。上のお目当ては共和国のトルダ駐屯軍だ。』
「“トルダ進駐軍”………ですね。」
私の生い立ちも少なからず関係するのだろうか、少し語気を荒げて上官に皮肉を言う。
私の祖父は、共和国の自衛軍とやらに目の前で肉親を殺されている。彼らは、私達先
住民居留区に乗り込んだ折、罪もない(とされる)人々を千人単位で殺して廻った。
男は皮を剥がされ、女性は犯された後に腹を裂かれ殺された。腹の中に金を隠してないか確認する為だったそうだ。祖父の、まだほんの赤子だった妹は、靴の踵で頭を潰され死んだ。理由は、「泣き声がうるさいんだよ、このサグロが。」だったそうだ。
『あえて彼らの目と鼻の先のココに研究施設を作ったのもその為だ。』
「しかし、我々の研究が完成した事はまだ他国に知られていないのではないですか?」
『上層部が故意に情報を漏らしている。明日にでも軍隊がココに来るだろう。いつでも
逃げれるように必要なデータはまとめておけ。』
私が“星からの贈り物”の研究に夢中になったのは、この“ギフト”の正体が解れば、
少なくとも人種による差別・戦争がなくなると思ったからだった。我々は単一の種族で
あるかも知れないのだから。しかし、この世界はこの先もずっとこのままなのだろうし、
今回の侵攻も単なる外交のカードの一つとして使われるのだろう。僕の研究はまたフリ
ダシに戻る。
[連邦軍のブルド・リアです。皆様を迎えに参りました。]
翌日、逃げる研究所の庭先から遠くの山に黄色の帯を見つけた。もう秋なのだろう。
一面に広がる菜の花畑を想い、私は少し涙を流した。
・・・・・お次は『東風』『青いネコ』『猿』
517 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/26 16:42
『東風』『青いネコ』『猿』
「ねぇ、これなんて読むの?」
「どれ?」
僕は読んでいた本から目をあげて、彼女のほうを向きながら聞いた。
「この東(ひがし)って言う字に、風(かぜ)って書いたの」
さっき小さな喧嘩をしてしまい、すねてしまった彼女を放っておき本を読んでたのだが、
どうやら夏休みの宿題をやっているようだ。
「また微妙な質問だね」
「え?微妙なの?」
彼女はテキストを見ながら聞いた。まだ怒ってるのか、僕を見てくれない。
「まぁね。いくつか読み方があるんだ」
「どんなの?」
彼女は僕の目を覗きながら聞いた。まるでネコのような、髪の色が青いことを加味すれば、
青いネコのようだった。
「まずは、あゆ。こち。こちかぜ。とうふう。最後に、ひがしかぜ」
「意味は違うの?」
「いや、全部東からの風って意味だよ」
彼女はしばらく僕の言葉を考えてから、
「それは猿(さる)って言う漢字が、ましら、って読んだりするのと一緒?」
と言った。もう怒ってないのかもしれない。
「まぁ何が一緒かは分からないけど、一緒だね」
「日本語って難しいんだね」
そう言ってテキストを横に寄せて、僕の横に彼女は座った。
僕に言わせれば、君みたいな女の子の方が難しい気がしたが、そんな事を言わないで、
彼女の頭をなでてやった。
※次のお題は「チェス」「鬼」「蜘蛛」で。
東風戦を幾度と無く打ちつづけた明け方。
ほの白んだ景色がカーテンの隙間から確かめられるころ、下家の鈴木がドラ牌を切りながら唐突に口を開いた。
「実はさ、僕猿なんだよね」
そう云うなり鈴木は背中に手を回し何やらもぞもぞすると、
着ぐるみを脱ぐように着衣――それにぺりっと云う不快な音と共に己の皮膚までも脱ぎ捨てた。
さっきまで鈴木が、人間の鈴木が座っていた場所には手牌を見つめる大柄な猿が一匹出現した。
至極狼狽した私をよそに、他の二人は何やら苦笑いを浮かべていた。
「やっぱり…」と呟いた佐藤と、寡黙な近藤も背中に手を回し、
ファスナーを開けるような動作をすると――己の皮を脱ぎ出した。
佐藤は青いネコとなり、近藤は排煙が凝縮されたような煙の塊になった。
雀卓を囲んだいつもの四人は一人と二匹とどのように数えていいかわからないものになった。
「同属は不思議と引かれ合うと云うしね…」
鈴木の発した言葉につられ、彼等はにやりとした。
「おまえもそうなんだろう?」佐藤が私に尋ねた。
気まずさに絶えられず、彼等から目を逸らしたが、
三人の鋭利な視線が私を突き刺しているのがわかった。
背中に手を当てたものの、すべすべした触りなれた皮膚しかそこにはなかった。
対面のネコが何事もなかったように牌を積もった。
次は「郵便」「融解」「コチュジャン」で。
すまん。
※次のお題は「チェス」「鬼」「蜘蛛」で。
520 :
「チェス」「鬼」「蜘蛛」:02/10/26 19:16
囲碁漫画ブームの2匹目の泥鰌を狙った
将棋漫画で思い切りコケた漫画家が
性懲りも無く世に放つチェス漫画!
なんと本作の主人公は桃太郎!!
桃太郎が鬼ヶ島の鬼達をチェスで懲らしめる痛快絵巻!!!
どうゆう会議でこんな企画が通ったかはわからないが、
作者は自信満々、鼻息まじりに我々に豊富を語ってくれた。
「日本昔話と西洋チェスの融合。まさに和洋折衷!
また読者の多様なニーズに答えるために、最新の話題や
ためになる話も取り入れています」
そういって作者が見せてくれたネームをみて、我々は度肝を抜かれた。
『鬼の一手によって窮地に追い込まれた桃太郎。そのとき桃太郎の脳に、
蜘蛛の巣のようにはりめぐされたニューロンの末端からは、アドレナリ
ンが一気に放たれた。さて、アドレナリンと言えば今年のノーベル賞は・・・』
ともかく、快作『桃太郎のポーン』は読者諸兄の話題となるのは間違いない。
次は 「郵便」「融解」「コチュジャン」でお願いします。
521 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/26 20:41
ごめん、「こちゅじゃん」て何?
522 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/26 20:50
>>521 よくわからんが、犬肉を食べるときに使う調味料では?
523 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/26 21:37
>>522 そんな端的に言わんでも……
半島産の調味料だっけ。
524 :
幽玄たりし詐欺師:02/10/26 21:39
>>521
辛い、調味料で、中国?韓国だったかな、
の地方の特産物だよ。
525 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/26 21:50
「郵便」「融解」「コチュジャン」
常にはチラシか請求書しか入っていない郵便受けに、珍しく、厚みのある封筒がほおりこまれていた。
表書きは、間違いなく僕の名前だ。これも昨今には珍しく手書きだった。
なんだろう、と思いながら無造作に封筒の上を手でむしりとると、カラフルなパンフレットと一緒に、
一枚の白い紙が入っていた。
拡げてみて、目を瞠った。
「おめでとうございます!あなたは弊社主催の韓国旅行の当選者です!」
その瞬間、僕の頭の中で焼き肉が踊った。焼き肉だけじゃない。カルビ、クッパ、
コチュジャン、ビビンバ、サムゲタン!
貧乏学生の僕には夢のような話だ。
しかし、宛名に書かれた旅行会社を見て首をかしげた。この会社のプレゼント企画に
応募した覚えがあったろうか?
さらに文面を目が追った。そして、僕の疑念は見事に溶かされたのだ。
「今なら2万円でご優待!」
どこにでもあるダイレクトメールの決まり文句だ、畜生!
僕はいきり立って封筒ごと紙を丸め、ゴミ箱に投げ捨てた。
…だが、ちょっとだけ韓国に行きたくなっていた。そのためにバイトを増やすのも
いいかもしれない。脳裏を巡った魅力的な韓国料理がすっかり融解して脳裏に刷り
込まれてしまっていた。
なるほど、ダイレクトメールのやり口に、僕はまんまとひっかかってしまったのだ。
そうだ、卒業旅行に韓国に行こうか。僕は早速、携帯で彼女の電話番号を検索した。
クシャクシャになったパンフレットをもう一度手にとって。
…次は『唇』『技術』『デビュー』でお願いします。
デビューしたてのコメディアンがテレビで笑っている。
この世界に喜劇しかなくなったら、それはもう悲劇でしかない。
『他人を笑わせる技術がないから、自分が笑う事でごまかすのよね。』
その、まだ少年臭さの抜けないコメディアンを液晶越しに見ながら彼女が苦笑いをする。
この春から一緒に暮らす事になったこの女性は、年を三つごまかした、顔は中の上ぐ
らいの、苦笑いが癖の極度のヘビースモーカーで、毎晩、僕に性交を求めるのが常だった。
ヤニ臭い息を振りまいて僕に迫る彼女の唇におざなりなキスを与える。
「自分を愛した事がないから、他人を愛する事が出来ないのよね。」
『だから、自分を愛しているフリをしてごまかすんだね。』
キスをする恋人の、タバコ臭い吐息と、先刻飲んだコーヒーの香りが混ざるのを楽しみ
ながら、僕は、テレビの中のコメディアンに少なからず同情し、共感していた。
・・・・お次は『ユキ』と『ゴミ』と『ハナ』でお願いします。
彼女がひどい熱のために、布団に入りきりになって、もう一週間だ。その間にも、
青葉は紅葉になり、羽織もいるくらいの涼しさになった。
「雪が見たい」
「いや、今は雪の季節じゃないよ。ごめん」
と、彼は申し訳なさそうな顔をした。
「いやだ。雪が見たい」
と、彼女は顔をゆがませ、目に涙をためた。
「じゃあ菊の花はどうだい」
と、彼は彼女の顔をのぞいた。
彼女は寝返って、彼とは反対の方を向いて縮こまった。
「私はゴミみたいなものね」
彼はうつむいて黙っていた。
「家」「深海魚」「焼き肉」で
529 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/26 22:57
「あら、ユキが降ってるわ・・私達が初めてデートした夜みたいね」
「う〜ん、やっぱチュッパチャップスはプリン味が一番だなぁ」
「・・・もう忘れちゃったかしら?このマフラー、あなたからの唯一の贈り物よ。
そして、私の唯一の宝物・・」
「あ、今日の徹子の部屋ビデオ撮り忘れちゃった!!ゲスト阿藤海だったのに〜」
「ふふふ。ほんっと相変わらずなのね。あなたっていっつもそう。私のことなんて必要ないのよ。
私一人ムキになっちゃって。ほんと馬鹿みたいよ。もうね、いい加減疲れたの。終わらせたいのよ、こういうの。」
「ぼくおなか減ったな〜」
「ねぇ、ちょっとくらいあたしの話し聞いてよ!!あたし本気よ!!とめないでいいの!?」
「そんなにおこんなよ〜・・・・・あっ」
「・・・何よ?」
「・・・・ブッ!!・・・デターーーー!!放屁、放屁!!」
「ばっかじゃないの!?もう知らないわよ、好きにすればいいじゃない、このゴミ虫野郎!!」
「ナハナハ」
次は「木綿」「ゴリラ」「代表」でお願いします・・
すいません。かぶりました。
切腹します。
もちろん次のお題は、「家」「深海魚」「焼き肉」です。
531 :
「家」「深海魚」「焼き肉」:02/10/26 23:45
夜はほとんど来てしまっていると言っていい。
駅前の灯がなければ、この道は暗くて歩きにくいだろう。
家までまだ半分くらいのところだ。
駅の反対側に行けば、飲食店や居酒屋などですこしは賑やかだが、
裏通りであるこの道は、ほとんどなにもない。
居酒屋と焼き肉屋が1件ずつ。それ以外は民家で、賑やか、という
ことからはかけ離れている。
本当は裏通りを通るのは、遠回りになる。
表通りを通れば、明るい上に、時間もかなり短縮される。
だけれど、ぼくはほとんど毎日裏通りを通るのだ。
暗く、静か。深海魚的な通り。
寡黙に何かを彼らは待っているのかもしれない、とぼくは思う。
だけれどそれはとても空しい空想かもしれない。
とても久しぶりに書いてみた。
やっぱり3語はむずかしい……
次は「木綿」「ゴリラ」「代表」で
どうだ、イケてるだろ。
手紙に入っていた写真の中で彼は、今にもそんな事を喋りだしそうだった。
髪を長く伸ばし軽薄な服に身を包んで、まるで流行に踊らされる
現代の若者代表みたいな顔で笑ってる。
バイト帰りにうちに立ち寄ったアツシはこの写真を見て、
馬っ鹿じゃねえのと吐き捨てるように言った。
「なあミユキ、お前いつまでもあんな奴のこと待ってるなよ。
あんなゴリラ顔よりもっといい男、お前ならたくさんいるよ」
ありがとう、アツシ。だけどね、私にはあの人しかいないの。
「私も、東京に行くことにしたんだ。来年になると思うけど」
そう伝えた時の、アツシの裏切られたような、傷付いた顔を思い出して
私はほんの少し胸が痛んだ。
だけど私は昔流行ったあの歌みたいに、この田舎に留まったまま
涙を拭く木綿のハンカチーフをせがむような、そんな女になるのは嫌なのだ。
次のお題は「風邪」「ギター」「携帯電話」です。
533 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/27 11:24
「風」「ギター」「携帯電話」
俺がそのギターとであったのはつい最近のことであった。
その日はもう10月が近いのに、夏の真っ只中とも思える暑さ。
携帯の着信音ひとつでも、煩く思える。
時折拭く風がとても涼しく感じられた。だが、そう簡単に風が吹くものではない。
俺は暑さをしのぐためにあの店に入ったのだ。
思っていたとおり、クーラーが効いていて涼しかった。
「いらっしゃいませ」
と、商品が置いてある棚を整理している1人の年老いた男がそういった。雰囲気からしてこの店のオーナーだろう。
ときおりごほごほっと咳き込んでいる。風邪を引いてるのだろうか。
何も買うつもりはなかったが、一応店内を見回す。古いつぼや、何に使うかわからないようなものがあった。
どれもあまりぱっとしない。どおりで人がいないはずだ。そういえば店員もいない。
と、俺がふと目をやると真っ赤なギターがおいてあった。
俺は心を奪われたように値段もみずにそのギターを手に取り、レジらしき所まで持っていった。
「本当に買うのですか?」とあの老人が言う。
「ええ。なぜか無性に気に入ってしまったのです」
「そうですか。では、お会計のほうを」
老人はふっと不敵な笑みをもらしたかと思うと、頭がふらついてきた・・。
「ふふふ。またひっかかりおった。困ったものじゃのう」
独り言のようにその老人はつぶやくと、どこかに電話をし始めた。
「もしもし。ああ、またひとりとっつかまえました。はい、いえいえ、これが
私のお仕事でして。まったく、死神というのは嫌なしごとですねぇ」
嘘だ。こんなのは夢なのだ。非現実的・・・。
そこで俺の意識は永遠に失われたのだ
お題は続行。
馬鹿は風邪を引かないという言葉がある。
ならばこれで俺はまさしく馬鹿では無いことが証明されたわけだ。
熱に浮かされた頭でそんな事を考えながら、万年床の布団から手を伸ばし
充電器にささったままの携帯電話をとる。
フリーターをしながらプロを目指している俺たちにとってスタジオ練習は貴重だったが
正直、この風邪のおかげで練習に行かずに済むと思うと気が楽だった。
昨日俺は、些細な事からバンドのメンバーと喧嘩をした。
今さらながら自分の短気さへの自己嫌悪と後悔が、
まるで俺の下手くそなギターみたいに頭の中で不協和音を奏でている。
練習を休む旨を書いたメールをリーダーに送信し、再び布団にもぐりこんだ。
と、珍しくすぐにメール着信音が鳴る。俺がこよなく愛するラモーンズのメロディ。
短気の上に練習をドタキャンまでした俺に、さぞや愛想を尽かしているだろうと覚悟して手に取ると、
『馬鹿が風邪引いてますます馬鹿になったらどうすんだ。
襲撃決定。今から行くから何か欲しいもんあったら言っとけ』
・・・こんなことくらいで思わず熱い涙を流してしまった俺は、
短気だけど、馬鹿だけど、ロックンロールには相応しいだろ。
次もお題続行してみたりなんかして。
535 :
「風」「ギター」「携帯電話」:02/10/27 13:04
男がいた。
男は何も持っていなかった。
携帯電話と小さめのリュック、それとギター以外は。
何処かへ行く宛てがある訳でもなかった。
人もまばらな公園で、只遠くを見つめ続けていた。
携帯電話はしきりに鳴き続け、震えていた。
取ろうか迷ったが、先の見える事の冷めた気持ちがそうする事を躊躇えた。
風が吹いた。強風でもない。暴風でもない。
すべてを0にしてしまう様な、狂気めいた風である。
風はすべて吹き飛ばそうとした。男の持っていたものもすべて。
男は只必死にギターを守り続けた。
風はリュックと携帯電話を連れ去っていった。
風は収まった。遠くで、なにかが潰される音が聞こえた。
ギターだけが男の手元に残った。
男は微笑んだ。
なにか弾いてみようと弦に手をかけてみた。
しかし、男はギターを弾く事ができなかった。
男は泣いて、ギターを地面に叩きつけて壊した。
次のお題は「犬」「ライオン」「細い杖」でお願いします
536 :
「犬」「ライオン」「細い杖」:02/10/27 13:55
リカオンは前足のないライオンに会った。
ライオンは灌木の中に身を潜めている。小さく小さく身を伏している。
跳ぶことはできない。駆けることはできない。歩くことすらままならない。
かつて草原を支配していた王の姿はそこには無かった。
リカオンはかつての王に杖を奉じた。細く、弱弱しい杖だった。
ライオンは細い杖を失った足の間に挟むと雄雄しく立ち上がった。
そのままサバンナを馳せてゆく。
リカオンは王を見送ると、ライオンの居た場所に突っ伏した。
倒れたのだ。前足からは血が流れている、膝から先は消失していた。
地は血で染まった。
リカオンは王とは違い二度と立ち上がることはない。
価値のない者が生き残る必要はないのだ。
咆哮が聞えた。
犬の足を接木した王の声である。
例え、死のうともリカオンは王と共に生きるであろう。
お題は継続で
「犬」「ライオン」「細い杖」
あるサーカスに、六十センチほどの細い杖を飲み込むという男がいた。
その男は今日、クビになった。理由は、杖を飲み込むしか芸がなかったからだった。
男は今日で別れを告げるテントを見上げて、大きくため息を吐いた。
明日からどうしようか。なんの目処も立っていない。給料は、自分でしたわけではない借金の返済に充てて、
手元に残っているのはポケットの中の小銭だけ。自分もそろそろ若くはない。
この有り金で食事をしようか、電車に乗ろうか、それとも宝くじに夢でもみるか、と思い悩む男の目に、
みすぼらしい子犬が映った。子犬のほうも、つぶらな瞳で男を見上げてくる。
「お前、サーカスの犬じゃないよなぁ。どうした、こんなとこで。ライオンに食われっちまうぞ」
なんとなく、孤独な者同士ということで話しかけてみると、子犬はキューンと鳴いて答えた。
「んん、お前、腹減ってるのか?」キューン……。「……しょうがないな。よし、待ってな」キューン。
男は踵を返すと、今しがた出立したばかりのテントへとと戻って行った。子犬は、その場に座って待っている。
数分後、男は手にジャーキーを持って現れた。
「ほら、飼育係から有り金はたいて譲ってもらってきたぞ」誇らしげに、手にした質素なジャーキーを差し出す。
子犬はきゅーんと鳴いて、尻尾をぱたぱたと振りながら男の手に飛びついた。質素なジャーキーは、
すぐに跡形もなくなってしまった。
「さて……」男が立ち上がり、その場を去ろうとすると、犬が後についてくる。きゅーん。
男は振り向くと、「しょうがないな」と小さく笑い、歩き出した。子犬が嬉しそうに尻尾を振りながらついていく。
無一文になって少しだけ軽くなった身体は、数分前よりいくらか晴れやかな気分に満ちていた。
次は「リング」「七日」「のろい」で。
「リング」「七日」「のろい」
リング際の解説席に座った山本小鉄の音声が
TVのスピーカから聞こえる
「来ますよ来ますよ! 七日殺し!」
言い終えるとほぼ同時であろうか、マットの上で野獣の雄たけびが上がる
その怪異な技を掛けられた不運なレスラーは
ロープまでよろよろと逃げ出す。「のろい、のろすぎます」
なるほど、簡単につかまったヒール役のレスラーは
2秒後あえなく沈んだ、その後彼の姿を見たことは無い
おそらく、本当に7日後に死んだのだろう
で次は、「顔面」「サランラップ」「旅順」でよろしく
>>539 そのつもりなんだけど、ちとふざけ過ぎたかな
旅順はムズいね…。
ふざけすぎたので、御題変更!
「円盤」「ビーカー」「海底」でよろ!
543 :
「顔面」「サランラップ」「旅順」:02/10/27 18:14
「どうしてですか!なぜ今頃撮影にストップが掛かるんです!!」
広瀬は部長に詰め寄った。企画は半年も前に通っており、クランクインはもう
20日後に迫っている。本来ならもうストップは掛けられない筈だ。
「社の決定だ。私にはどうにもならん。」
部長は茶を啜った。広瀬は震える手で台本を握りつぶしている。
「"20世紀の狂った歯車"シリーズの3本の特番、その最初の1本じゃないですか…。
自沈〜旅順港閉塞作戦〜は、日露戦争を見直す格好の題材です!撮影許可をください!
お願いします!」
床に擦り付けんばかりに頭を下げる広瀬の肩を、部長はぽん、と叩いていった。
「広瀬君、君が番組に入れ込む気持ちは分かる。君のお爺さんが体験した戦争なんだ
からな。しかし、もう決まったのだ。無理なんだよ。…我社は、来月1日付けで解散
するんだ。」
広瀬は、ゆっくりと頭を上げた。顔面が能面の如く硬直していた。
「…解散………?」
「まだ一般社員には知らせていないがな。そう言うわけだ。諦めろ。」
部長がまた肩をぽん、と叩いて、部屋を出ていった。
残された広瀬は、手の中で潰れた台本を見つめていた。
次の日。広瀬は会社へは出なかった。
何も考えられず、ベッドでごろごろしていると、外をちり紙交換車が通った。
広瀬はベッドから起きると、ちり紙交換を呼び止め、新聞と共に手元に有った
数冊の台本を出した。
返ってきたのはサランラップ1本だけだった。
544 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/27 18:15
●うーん、良く御題忘れるな。ごめ。
ま、「円盤」「ビーカー」「海底」でいきませう。
545 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/27 18:21
534
無駄な言葉が無く、最高に近い出来だと思う。
改行の法則はネット流か?
546 :
「円盤」「ビーカー」「海底」:02/10/27 20:18
ビーカーにコーヒーを注ぎ、研究室の窓から夜空の闇を仰ぎ見る。これが私の夜の日課だった。
長年の相棒、天球技を手で弄びながら考える。
この世の最後の秘境はバリ島でもアマゾンでも海底でもないのだ。宇宙こそが、最大最後の秘境なのだ。
わたしは、詰まるところ宇宙を研究し探求するものであり、すなわち探求者、冒険家であるのだ。
未知の道を切り開く勇者だ。何も見えないあの闇に、何かを見つけ出す目を持つ者なのだ。
あの日わたしは、いつものように研究室の窓から夜空の闇を仰ぎ見た。そして闇の中に光を見つけた。
その光は加速度的に大きくなり、明らかにわたしの方へと迫ってきていた。わたしの興奮と好奇心と
探究心と恐怖心が同時に大きく膨れ上がる。これこそがわたしの長年求め続けていた物だ。
ついに、ついにわたしの望みは叶うのだ。別の星の、別の文明、別の生物達をこの目で見ることが。
その神々しい輝きを放つ円盤は、わたしの意志が通じるかのように、研究所の上空までやって来て
音も無く停止した。不意にわたしの体が赤い光に包まれたかと思うと、次の瞬間には円盤の内部らしき
幻想的で機械的な空間へと移動していた。幾つもの光る銀色の球が浮いている。
そうしてわたしの、闘いと逃亡、復讐の日々が始まった。
いくつの未開の星を股にかけ、何体の異形の怪物と闘ったろう?
さて、しかしそんな日々ももうそろそろお終いだ。
これから最後の闘いが始まる。憎むべき敵、わたしの日常と平穏を奪った
あの恐ろしい異星人たちとの最後の戦争が始まるのだ。
わたしの探検と冒険と研究は、もうすぐ終わるのだろう。
探検・研究・冒険
548 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/27 21:00
いい加減お題を出し忘れる奴が多すぎると思う。
お題が無い場合は前の題を継続って事にして良いんじゃないか?
549 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/27 21:01
550 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/27 21:16
科学部の活動と言えばただ実験を地味に行っていた。ビーカーの中でナトリウムと水を反応させて、光を発生させたりした。そういう実験は教科書に載っていたので、結果は分かりきっていた。私はそんな科学部に物足りなさを感じていた。
ある日、理科の天文の授業で先生が、
「今度の日曜、流星群が見られるらしいから、見ておいた方が良いかもな。次はないだろう」
私は何か、胸を躍らす物を感じた。きっと見に行ってやると思った。
「今度の日曜の夜、みんなで流星群見に行こうや」
私は科学部の部員に話した。
部員は中学生らしい好奇心からか、皆目を輝かせてその計画を立てた。
私たちは学校の校庭で、観察することにしていた。未だ流星は見えないようだった。
「全然見えへんな」
「何時ぐらいゆうてた」
「さあ、よう聞いてないわ」
「多分、十一時ぐらいやったと思う」
私たちは、校庭に並んで寝そべって、夜空を眺めていた。静かな、水面から遠く離れた、光の届かない海底のような空に、星がちりばめられている。じっと見ていると、吸い込まれそうな気がした。
「あれなんや」
一人の部員が、体を起こして指を差した。その先には円盤が、ふらふらとこちらに向かってきた。だんだん大きく見えてくるとそれが何であるかははっきりとした。
「なんだ、UFOかよ。最近、多いんだよな」
「ほんまや。はよ流星群こいっちゅうねん」
「なんやあれ、故障しとんちゃうか。煙ふいとるわ」
UFOはついに、校庭に墜落した。しばらくすると中から、宇宙人が降りてきた。
「私たちは、火星人です。船が故障したので、この星に緊急着陸しました。殆ど墜落しましたが。この辺りでもこの星が、発達していたもので」
火星人は、どうにか船を直して欲しいと言うのだ。私たちは、困っていたが、その船の構造を見て、また好奇心が沸いてきた。その構造は中学生にも理解出来て、修理も出来そうなものだった。
「科学部の活動としてはいいんちゃうか」
「やったろうや」
私は家に帰り、親たちにその話をした。
「何だって。また冗談じゃないやろな」
「ほんまやって」
その数日後、火星人達は、政府により捕らえられた。どうやら、最近のテロはあの火星人によるものだったらしい。
「ほんま誰が悪い事してるか分からんなあ」
御題はそのまま?
>>548,549
御題が無い訳じゃなくて、書き忘れだからカンベンして…
1本作るとそれで頭の中が全部になっちゃうんだよ〜。(T^T)
そう言う問題じゃない。
ただ不注意なだけだろ。ボケ。
555 :
探検・研究・冒険:02/10/28 22:14
昔クラスに色白でちびの男の子がいた。外見的な特徴を挙げろといわれてもそ
れ以上は特に浮かばないが、内面的な特徴を挙げるとすれば、彼はゲイだった。
だからなのかどうかは定かではないが、彼の醸しだす雰囲気の肌触りがなにかど
ことなく周りと異なっていた。そこだけ風の向きが変わるような。でもだれもあ
えてそこには触れなかったし、気にしない素振りさえ窺われた。気を遣っている
わけでもなく、嫌われているわけでもない。ただ息をしているにも密やかで、彼
のささやかな存在感は混濁したクラスの空気に知らぬ間に飲まれてしまっていた
のだ。僕はそんな彼の存在がやけに気になって、あえて進んで話しかけてしまっ
ていた。元来無口なのか、返す言葉は二言三言だけだったが、滲むわずかな親近
感は会話の端から感じられた。そして幸か不幸か、彼は僕に愛情を抱いている感
も窺われたが、僕は気づかない素振りを突き通した。
研究班が一緒になったころから会話をする機会も増え、僕と彼は友達になり、
そしてお互い恋人を作った。すなわち僕は女の子と、彼は男の子と付き合うよう
になったのだ。彼にセックスの単純な疑問をぶつけたこともあった。どのように
して行われるのかというような。
「女の子とやるときと同じだよ」と彼は平然と答えた。
「でもさ、その」僕は少し言い淀んでから鼻を掻いて質問を続けた。
「痛いでしょ」
「まあ、最初はねやっぱり」彼は少し考えてから言葉をつなげた。
「でもちょっとした冒険心と素直さがあれば、ある程度のことなら何でもできる
よ」
僕はその答えを聴いたとき、やけに感心したことを憶えている。
そして彼は後に探険家になった。真夜中の本屋で僕は彼のインタビュー記事を
立ち読みしている。今彼と同じクラスだったことを憶えている人はどのくらいい
るのだろうかと、僕はふと気になった。
長くなってしまった。お題は「小説」「めざまし時計」「鍵」で。
では、お次のお題は継続の『探検』『研究』『冒険』でお願いします。
すいません。被りました。
お次は『小説』『めざまし時計』『鍵』でお願いします。
「小説」「めざまし時計」「鍵」
駅のホームに、異常なまでの音量で、ベルの音が鳴り響く。
電車が出るのだろう。それにしても、この音はうるさすぎる。耳がいかれてしましそうだ。
なぜこのホームにいる連中は、平気な顔をしていられるのだろう。
最初は周りに合わせて平気な顔をしていたが、やがてベルの音量は耐えられないものとなった。
私は辺りに駅員の姿を求めたが、それらしい人影はない。なぜか耳を押さえることも思いつかずに、
私は傍の階段を駆け上ると、改札脇にある詰め所へと走り寄った。
ホームから大分離れたというのに、ベルの音は更に更にけたたましく耳の奥に反響した。
詰め所のドアには鍵が掛かっていたが、私はドアを破壊して中に飛び込んだ。
激しいベルの音に苛まれ、辺りの様子などまるで目に入らないのに、一つのボタンだけが目に留まった。
あれでベルが止まる。私の直感がそう告げた。
バタン
私は枕元にあった『プラットホームの孤独』というタイトルの小説で、めざまし時計を打ち据えた。
ベルの音が止んだ。
次は「プラットホーム」「孤独」「ベル」でお願いします。
遅筆(入力がヘタレ)のため、出遅れ。
死の探求に望む者は、常にそれと隣り合わせにある。
何のために、そして誰のためにその研究を続けるのか。
ある者はこう言う。
「私は神に遣わされ、人を導くために。」
ある者はこう言う。
「私は霊界からの言葉を伝えるだけ。」
だが、その言葉が真実だといえる者はおらず、また嘘だと断ずることも出来ない。
我らは死を知っているからだ。
誰もが必ず体験するものでありながら、死は常に日常ではない。
それは、数多の冒険家が目指した秘境への挑戦であり、人類が続けていかねばならない山頂へのアタックだ。
やがて誰もが辿り着くが、誰も還ることはない。
私も、頂の見えない山に、そして前人未到の秘境へと出かける。
語られるのはごく一部、しかし我らは進んでいかなければならない。
先の見えない冒険の旅路を。
感想ください。
お題は「夜」「雪」「静けさ」
560 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/28 22:56
>>559 「探検」が入ってないよ。
お題は先のを優先ってことで「プラットホーム」「孤独」「ベル」
>>560 スイマセン。
最後のところ、「冒険の旅路」ではなく、「探検の道行き」を。
に、変更ってところで勘弁してください。
562 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/28 23:04
雪の降るか降らないかという、寒い夜であった。人一倍寒がりの私は、
コートの中にも厚着をしていた。その日もいつも通る道を歩いていた。
私は何人かの人とすれ違ったが、その度毎に或違和感を感じていた。
その道は何時も以上の静けさで、少し薄暗かった。私の目には下着姿の
人間ばかりが見える。自分の目を疑ったが、自分はしっかりとコートを
着込んでいる。顔に当たる風は刺さるように冷たい。しかし、彼等は
殆ど裸の姿で平然と、むしろ傲然としている。彼等はちらちらと彼を
軽蔑するように見ていた。
「ああ、しまった今日は半裸デイだった」
彼は急いで家に帰り、全裸で家を出ていった。
僕の住む六畳一間のアパートのタンスのすぐ横には真っ青な扉があって、その扉の
向こうには真夏の海水浴場が広がっているのだけれど、まだその扉を開いた事がない
僕は、向こうで待っている彼女に会えず終いでいる。
『遠き島より流れ来る、椰子の実一つ…』
僕が初めてこの部屋訪れたのは二年前の真夏で、大家さんにアパートの鍵と共に渡
されたこの扉の鍵は大家さんの汗で少しべた付いていた。
『故郷を離れて…なんだっけ?』
冬も近付いているのにストーブ一つ買えない僕の職業は、“小説家を目指してはいる
もののそれだけでは食っていけないので、編集者まがいの仕事を無難にこなして小銭
を稼いでいるプータロー“で、要はまだ何者にもなれていない半端者で、書きかけの
小説も二月前から書きかけのままで一向に進んでいない。
『僕のじいさんが拾った椰子の実には商社のロゴマークが付いていたんだそうだ』
急に寒さが増したある秋の朝、めざまし時計より早く目の覚めた僕には、それが何だ
かよく分からなかった。
『遠き島より流れ来る椰子の実一つ…』
部屋の真ん中に流れ着いた椰子の実を持ち上げ、部屋の外に捨ててやる。秋の空は高く
て、書きかけの小説はまだ書きかけのままだった。
・・・・・お題を決めてる場合じゃないね、遅筆ですいません。
ッテ事でお題は継続の「プラットホーム」「孤独」「ベル」 で。
薄く青みがかかった暗い屋根裏部屋で
一人の青年が様々な空想を練り続けている。彼は小説家志望である。
「何か面白い話でも浮かんでこないものかなあ」
凄い話を書き上げてやる!世に語り継がれる名小説を!
第二のハリーポッターを書いたあの人になるぞ!(青年は筆者の名前を知らない)
青年は、すでに未来の賞美を浴びている自分に酔いしれつつある。
実のところ、青年は二十三時間前に小説家になろうと決めたばかりだった。
その前は、世界で指折りの料理人になろうとしていたらしい。
しかし、なかなか世に語り継がれる名小説たるネタが浮かばないようだ。
(当然といえば当然である、彼は二十三時間前に小説家になろうと決めたばかりだから)
だが、青年の脳裏に一つの閃光が走った。
青年にとって言葉で表現する事ができない、素晴らしいアイデアが浮かんだのだ。
青年が、震えを抑えてペンを走らそうとしたその時。
ジリリリリリリリ!!
突然、めざまし時計が鳴り響く。
同時に、青年の今まで浮かんでいた想像は無に消えた。まるで夢から覚めたように。
青年は、今までの事をすっかり忘れてしまった。
「あれ?僕は今まで何をしていたんだろ」
「あっ、そうだ。小説を書くのは僕には無理だって思っていたところだったんだ」
青年はまだ白紙の状態の原稿を手にとって、部屋の隅にある古い鍵付きの箱を取り出した。
箱の中には新品の調理器具、綺麗な画材用具、色々なものが入っていた。
もう、これはいらないよね。と、箱へ入れ、
また鍵をかけて丁寧にその箱を部屋の隅へしまった。
「本当は、プロの美容師になってみたかったんだ」
青年はそう言って部屋から出て行った。
古い鍵付きの箱には、青年のかつての夢が今も眠り続けている。
●お題は続行●
ごめんなさい。557のお題を見て書きました。遅筆ですね。
次のお題は「プラットホーム」「孤独」「ベル」です。
人称間違えた。
「彼」という表記は「私」とします。
失礼。
567 :
「プラットホーム」「孤独」「ベル」:02/10/29 00:56
暗闇の中で、起床の合図を告げるベルが鳴る。
しかし、俺はなかなか起き上がる気にはなれなかった。
どうせ今日起きなくても何も変わりはしないさ。
いつものように退屈な日常、つまらない仕事。もう飽き飽きだ。
それでも長い間の習性というか教育のせいで、
俺は起き上がると、食事をとり、仕事の準備をした。
起きるのが辛いのは、満員電車に揺られて出勤しないといけないからでもない。
まあ俺はいわゆる在宅勤務みたいなものだしな。
だが、在宅勤務との大きな違いは、俺は本当に孤独ということだ。
コンビニに気軽に買い物にも出かけられない。
衛星軌道上の観測プラットホームから地球を見下ろし、俺はため息をついた。
次は「カメレオン」「ポプラ」「バスケットボール」でお願いします。
568 :
「カメレオン」「ポプラ」「バスケットボール」:02/10/29 01:23
一月前に喧嘩別れした彼から電話があった。
「会いたいんだけど」
何事もなかったかのように、彼は唐突に切り出した。
私と彼は中学時代の同級生だった。バスケ部のエースだった彼はひょろりと
背が高く、笑うと右頬にえくぼが出来る。愛嬌のある顔立ちとひょうきんな
性格で誰にでも満遍なく好かれていた。
一目惚れしたのは私のほうだった。惚れた弱みを完全に握られた私はバスケットボール
のように彼の手の中で自在に転がされた。優しくされては突き放され、追えば逃げて、
逃げれば追う。
「おまえってカメレオンみたいでおもしれぇ」
感情がつい顔に出てしまう私を見て彼はからかうように言った。
私は多分疲れていた。付き合い始めて2年にもなるのに、彼が直球の愛情をくれない
ことに苛立っていた。
別れを宣言したのは私のほうだった。彼は何も言わなかった。
走り出した私を追いかけもせず連絡もくれないまま一月が過ぎた。
「何よ今更」強がりを言いながらも私の心臓は高鳴っていた。
「中学の前で待ってるから」
家を飛び出した私の頭の奥で耳慣れた彼の声がじんじん響く。
校門へと続くポプラ並木の曲がり角で、私は立ち止まり呼吸を整える。
この角を曲がれば彼に会える。
秋晴れの空の下、私は胸いっぱいに息を吸った。
次は「ゴリラ」「ワンピース」「羽毛布団」でお願いします。
「カメレオン」「ポプラ」「バスケットボール」
バスケットボールが転がっている中庭を見ながら、しばらくの間空想をしていた。
そのバスケットボールを片付ける人影。
僕はそれを合図のように立ち上がり家に帰ることにした。
ポプラ並木というには寂しすぎるが、ポプラの木が何本か並んでいる道を歩きながら、
さっきの空想の続きを始めた。空想の中の僕は、
まだ部活を続けている時の僕だった。中学からを入れると約六年間バスケットボールをやっていた。
それが、高校の夏の大会を最後に、やめてしまった。おそらくこの先、バスケをする事は無いだろう。
いや、この先どのようなスポーツもできないだろう。あの最後の試合で、僕の左足は、
激しい運動には耐えられない足になってしまった。
スリーポイントラインの手前で、僕はパスを受け取った。ゴール下で、二人の選手に囲まれていたセンターが、
若干苦し紛れに出したパスだった。僕はパスを受け取りながら、前にいた選手に、シュート体勢をとってワンフェイクいれた。
その日の僕はさえており、すでにスリーポイントだけで12得点を挙げており、途中からマンマークをつけられていた。
僕はそのマンマークを苦にせずに、一瞬だけ彼の視線から外れてパスを受け取り、センターにボールを集めていた。
途中で相手の選手が「こいつカメレオンかよ」と呟くのが聞こえた。その彼が、今度は僕のフェイントに見事に引っかり、
シュートコースを防ぐように、大きくジャンプした。僕はそれをしっかりと確認するまでも無く、左手でドリブルをして、
さっきまでゴール下で、センターを囲んでいた選手の片方を抜くことを考えていた。左足に大きく体重をかけて、
身体の後ろにボールを通して、右にいる選手にパスを入れるつもりだった。何度と無くやっているプレイの一つだった。
失敗するはずが無い。しかし現実は違った。左足に体重をかけた瞬間、僕の足からは「ブチッ」と嫌な音が聞こえた。
そのまま僕は立ち上がる事は無かった。何度空想を繰り返しても同じ結果だった。僕のパスは、決して放たれなかった。
僕は今新しいことに立ち向かっている。相手は「女」というなんとも厄介な物だ。
今度は、バスケと同じように失敗をしないように、そっちのイメージトレーニングを始めた。
※お題は、継続で。
570 :
「ゴリラ」「ワンピース」「羽毛布団」:02/10/29 01:58
なんと家にゴリラがやってきた。それも、羽毛布団の訪問販売としてだ。
いつもなら、そんないかがわしいセールスマンなんか
「いりません」の一言で冷たく追い払っている。
それでも今日はゴリラがやってきたので、わたしは思わず彼?を玄関に入れてしまった。
「こんにちは〜、あ、もしかして奥様ですか?あまりにもワンピースが
似合ってるんで思わず『お嬢ちゃん、お母さんいますか?』って
聞くところでしたよ」
やだ、このゴリラさんったらお世辞も上手。
わたしはすっかり彼のペースに乗せられ、
必要の無い羽毛布団を買うはめになってしまった。
でも、そのせいで旦那にひどく怒られた。
「なんでゴリラが布団を売りに来るんだよ!もっとましな嘘をつけよ!
その販売員とってもいい男だったんだろ!」
旦那はゴリラのセールスマンのことをちっとも信じてくれない。それもそうだ。
でも、彼は今もどこかでセールスに励んでいるに違いない。
ゴリラとは思えない程の、いっぱいの笑顔を見せながら。
次は「文通」「トリック」「ブックメーカー」でお願いします。
お題「文通」「トリック」「ブックメーカー」
ブックメーカー [bookmaker]
(1)安易に多くの本を出す人。
(2)競馬の私設馬券屋。のみ屋。イギリスなどでは公認の馬券取扱業者をいう。
私の古くからの文通友達は売れっ子のミステリー作家である。
昔から文章はうまいと思っていたが、まさかプロになるとは思いもよらなかった。
そんな彼の作品はデビュー当時は本当に贔屓目無しで傑作だと思った。
しかし、最近の作品はどう見ても質が落ちている。
今の彼はただのブックメーカーと成り果てたのだろうか。
手紙でもいつも「良いトリックが思いつかない。」と、こぼしている。
年間10冊以上も出版してたらネタが尽きて当然だ・・・
「オマエならだいじょうぶ!」そう送るこちらもネタ切れだ。
ある日、新聞に彼のアシスタントが殺されたというニュースを発見した。
・・・犯人はその彼だった。
動機はアシスタントの才能に恐怖を感じ、そして彼が持っている世間には未公表のいくつかの作品を奪おうとしたのだそうだ。
警察によると彼は自主したそうだが、現場は偽装工作の後のような妙な状態だったようだ。
・・・何もトリックが浮かばなかったのだろう。
デビュー当時の彼なら奇想天外なトリックで完全犯罪を成し遂げただろうに・・・とも思ったが、
奇想天外なトリックを思いつけるころの彼なら、そもそも人を殺す必要などなかったのだ。
初めてで「ブックメーカー」はむずかったです。
お次は「香水」「夜更かし」「下克上」でどうぞ!
572 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/29 03:48
初めて香水を買った。
凄く有名な香水…ウルトラマリン、だっけ。捻りが無いね私も。
どうせなら他の皆が知らない、もっとマイナーな香水買えば良かった。
部活の先輩を尻目に一年の後輩をこの香水をつけて従えちゃうとか。
これって下克上って言うんだっけ……ちょっと快感。
じっ、と香水の瓶を見つめているとお姉ちゃんが私の部屋に入って来た。
「こーら…いつまで起きてんの、この夜更かし娘め」
後ろめたくなって、急いで香水を布団の中に隠した。何も後ろめたく無いのに。
私より二つ年上のお姉ちゃん、たった二年なのに、凄く大人っぽい私のお姉ちゃん。
私の、お姉ちゃん、何だよね。
「あ、お、お姉ちゃんも……早く寝なよ」
「私は朝起きれるから良いの、学校あんだから早く寝なさいよ」
やっぱり私に部活の先輩は超えられないみたいだ、お姉ちゃんがいる限り。
何だこれ、お姉ちゃんがお題みたいになっちゃったよ(;´д`)
お題は「浮島」「お姉ちゃん」「ラジオ」
>>545 勿体無いお言葉ありがとうございます!
お題に恵まれました。
改行は、なるべく15行をたくさん超えないようにと思い、
一行にした方がいい文はなるべく一つにまとめてました。
574 :
「浮島」「お姉ちゃん」「ラジオ」:02/10/29 06:13
夢の浮島と呼ばれる利尻島。
私は今、そこへと向かうため、フェリーに乗っている。失恋旅行だ。
デッキから、濃い群青色の波を見下ろして私はため息をついた。
「はいはーい、優子、こっち向いてー」
振り返ると姉がカメラを構えて笑っている。今年で36になるとは
思えない子供のような無邪気な笑顔。
「やめてよ、お姉ちゃん。私今ちゃんと化粧してないのよ」
私が慌てて顔の前に手をかざすのと同時にフラッシュが光った。
えへへ、と悪戯っ子のような得意げな顔を見て、私も苦笑する。
「ラジオで言ってたけど明日晴れだって。初めてだし、色んなとこ周ろうね」
姉は大袈裟に腕を振りまわして、おどけてみせる。
本当ならば姉は二年前、姉の恋人と二人でそこに行っていたはずだった。
突然の失恋にぼろぼろになっていた私を、黙ってここに誘ってくれたお姉ちゃん。
私は海の向こうに視線を移す。
水平線のかなたに、夢の浮島が見えてきていた。
575 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/29 06:15
次のお題は「雨」「セロリ」「蜘蛛の巣」でお願いします。
576 :
Vu ◆sAO62Cbyi. :02/10/29 19:59
「雨」「セロリ」「蜘蛛の糸」
「なんで雨の日なんかに事件を起こす! おかげで濡れてしまった! これだから雨とセロリは嫌いなんだ!」
ぎゃあぎゃあ騒ぎながら赤竹が現れた時、その場にいた全員が、おや、と眉をひそめた。「暴れ馬の手綱」、「最後に残った良
心」こと高津の姿がなかったからだ。一人の刑事がおそるおそると言ったていで話しかけた。
「赤竹さん、高津さんは?」
「バカ津なら今日は休みだ! バカは風邪をひくものだと証明できた! で、何があった」
刑事の話はこうだった。男が自宅の書斎で背後から殴られ、意識不明の重体に。物音を聞きつけた家政婦がかけつけた時には犯
人の姿はなかったという。凶器は部屋にあった置き時計。
「凶器にもドアノブにも指紋はありませんでした。強盗の可能性もあります」
そう言って、ビニール袋に入った凶器の時計を見せた。血の跡も生々しいそれを、赤竹はしげしげと眺め、ひくひくと鼻を動か
した。そのまま興味をなくしたように刑事に突き返す。
「ふうん。で、容疑者はあいつらか」
赤竹の視線の先には、被害者の家族がいた。妻と、息子と、家政婦。大股で歩み寄ると、赤竹はじろりと3人をねめつけた。そ
のまま黙っていると、急に被害者の息子の胸ぐらを掴んだ。
誰もがあっけに取られているうちに、赤竹は手を離した。そして、
「犯人は君か」
また周囲の度肝をぬいた。
「シンナーの臭いがする。時計からもした。指紋は先に接着剤を指に塗って埋めておいたんだろう」
そう言うとさっさときびすを返してその場を去ってしまった。慌てて刑事が後を追いかけ、抗議した。
「赤竹さん、状況証拠でしかないのに断定していいんですか!? その、動機とか」
「僕は鑑識が何日も調べて、ようやく答えを出すようなやり方は嫌いだ。だから捜査の方向を決めてやっただけだ。高津と僕の仕
事は蜘蛛の糸をほどくことじゃない、蜘蛛を刺し殺すことだ!」
まったく、といらだたしげに呟いて赤竹は去って行った。その途中、思い出したように彼は足を止めて振り返った。
「一つ言っておく。口喧嘩でも人は人を殺すよ。それが動機だ」
次のお題は「PC」「井戸」「湿布」で
577 :
「PC」「井戸」「湿布」:02/10/29 22:48
妻が日曜日のママさんバレーの大会で、足を捻挫して立てなくなったので
僕は湿布を買いに出かけた。
おしゃべり好きな妻も、これでしばらくは井戸端会議も出来ないだろう。
そんな事を思いながら、薬局で湿布を購入して帰宅する。
家に帰った僕は、自分が女のおしゃべりに対する情熱を甘く見ていたことを知った。
妻は、寝そべったままノートPCを覗き込み、
チャットで楽しそうに井戸端会議に興じていた。
次のお題は「熱帯魚」「水槽」「心中」でお願いします。
578 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/29 23:50
水槽の中で熱帯魚が二匹、泳ぐと言うよりポンプの波に揺らされながら浮いて
いた。二匹はしっかりとくっついていて、ずっと一緒に水槽を漂っている。
「すんません。この魚死んでるんじゃないですか」
ペットショップの店主に尋ねた。
「ああ、それね。よく心中する種らしいんですよ。不自由だと思ったら、
カップルになって、簡単に死んでしまう。お互いのえらを塞ぐらしいのです」
その親父はへらへらとしていた。
「そんな魚が在る分けないだろ」
私は大人気なく、親父に向かって怒鳴った。
「また、つまらん寄り道をしてしまった」
私はその店を出ると冷たい風の中、家路を歩いた。
579 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/29 23:57
死にたい。と恭子は思った。唐突に涙が溢れた。
恭子には鬱の持病があった。
夫の浮気がきっかけで発病して2年。泥仕合の末に離婚した今も恭子
は鬱から抜け出せない。一昨日もパート先のスーパーでレジ打ちの途中で
パニック発作に見舞われた。心臓が高鳴り呼吸が出来なくなる。
助けてとかぼそい悲鳴を上げて客の前で倒れこんだ恭子は救急車で病院に
運ばれた。二度目の発作だった。店長は、
「しばらくゆっくりしなさい」気の毒そうに私に言った。
君はいてもいなくてもいい存在だと宣告されてしまったようで恭子は絶望に
打ちひしがれた。また居場所を失くしてしまった。
恭子は茶箪笥の引き出しの奥から小さな小壜を取り出した。ネットで買った
青酸カリだった。
水槽の中にぽとりと一滴垂らす。夫が気まぐれに買ってきた色とりどりの
熱帯魚たち。夫は一度も世話をしなかった。
「私には心中してくれる相手もいない」
1人呟きながら、水槽を眺める。時間だけが刻々と過ぎていく。しかし、
水槽の中を泳ぐ熱帯魚には少しの変化も見られない。おかしい。恭子は
壜の中の液体を手に取り舌で舐め取った。無味無臭。
がくりと床に崩れ落ちて、力なく笑った。
あの世にも私の居場所はないらしい。
かぶってしまいました。すいません。
最後の方の「手」としたところは、掌の誤りです。
ギャ━━━━━━(;;゚口゚;;)━━━━━━!!
しかも、途中で人称間違えてるし・・・
逝きます
582 :
「熱帯魚」「水槽」「心中」:02/10/30 01:09
「お代はどうしましょうか?」
「継続でお願いします」
院長は、こともなげにこう言って、毎月お金を払う。
熱帯魚レンタル料(1ケ月)五百万円也。
この街で最大のこの病院は、うちの最高の顧客だ。
私は、病室の全ての水槽をチェックし、水を入れ替え、魚の手当てを
するとエレベーターで地下に向かった。
私は院長と、大水槽に泳ぐ熱帯魚をじっと見ている。
院長は、私の心中を察した様に
「心配はいりません。貴方は熱帯魚レンタル屋。それだけの事なのですから」
「はい…」
そうさ、心配ない。
熱帯魚が何を食べようが関係ない。それが手術ミスの死体であろうとも。
ピラニアだって立派な熱帯魚さ。
※熱帯魚はしんどい
次のお題は:「米」「和服」「マジックハンド」でお願いしまふ。
「マスコミの野郎どもが政府叩きに夢中になればなるほど一層景気が悪くなってやがるんだ。」
真っ昼間だというのに今日も契約がとれなかった。ワイドショーをみながら親父は愚痴をこぼしながら飲んだくれている。
「なあ勇一」といいながら、親父はゆっくりと起き上がってこっちに振り返った。どこか寂しそうに笑いながら
「父さんはよ、本当はこんな塗装工の仕事、さっさと切り上げて熱帯魚でもうけようと思ってたよ。若いころはさ」
弱音をもらす親父を見るのは何年ぶりだったのだろう。あの日の親父の歯をくいしばって寂しそうに笑う横顔を
今もはっきりと思い出す。
親父はその後しばらく、職を転々としていた。親戚や近所に取り立てで迷惑がかかってるからと、
内緒で一家心中を相談し合っていたこともあったのだ母はいった。
「なんでこんなに頑張ってるのに」親父の口ぐせだった言葉をおれは思い出す。
そして今おれはここにいる。銀行マンなんてきざったらしい仕事は似合わないと母がいった。だけど今、
俺がなにもしないわけにはいかないんだ。そう自分に言い聞かせておれはこの試験会場へと足を踏み出した。
私は熱帯魚だ。隣の水槽では観賞用の花形ともいえる
エンゼルフィシュが群れを成して優雅に泳いでいたりする。
たぶん三日前ぐらいのことだと思ったけれど、私の上をいつも
徘徊しているグッピーたちの中で、ちょっとした騒ぎが持ち上がったので
今日はその話しをしようと思う。
彼ら、つまりはグッピーの習性について私などより多くの知識を有している人が
ここには沢山居るかもしれないけれど、あえて同じ同属として私なりの視線で簡単に
説明させて貰うのなら、彼らというのは、いつも寝食共にするほど一塊になって
泳がなければいられないような習慣を持っているらしく、彼らの小さな身体の中には
強固な仲間意識みたいのが根強く芽生えている。
続く
それが災いとなってその日のいざこざが起きた。
一匹だけ網にすくわれて買われていったのが、彼らの気に触ったらしい。
もう、その一匹がいなくなってから凄い騒ぎだった。ホント馬鹿みたいに。
やれ、店主に対しての腹癒せに客が来たら全員で弱ってるふりをしてやるだとか
いっそのこと飛び跳ねて心中するだとか
全員で、俺はなんで買ってもらえないんだろうと、砂に頭を擦りつけて傷をつけたりとかして……。
まあ、私としても自分に被害が及ぶわけじゃないので無視してやることも出来なくはないんだけど、
これも同じ水槽のよしみだからと思って、ちょっと声を掛けに重い身体をわさわさと震わせて
上に泳いでいったのね。私はいつも彼らのことを見上げて観察してるから、そういったヒステリーが起きる、
根源的な原因というか――まあ仏教でいえば業みたいなものが、彼らの習性に
あるっていうのがわかってるから。
そしたら彼らは、この黒なまず野朗!うるさい。とか言って、揚句の果てに、
そんなふうに底の方でひとりで観察してるからいつまでたっても売れねえんだよ!
みたいなこというのよ。私としても、もう頭にきちゃって、水槽の苔を食べてほっとくことにしようと
思ったんだけど、なんだかそういうのも寂しくて……。
でも一介のサカサナマズの私には声を掛けるぐらいしかできないから、と思って悩んでいる内に……
やっぱりグッピーはグッピーだった。なんのことはなくて、餌が水面に落ちた途端に、もう彼らは忘れてた。
おい! たまには餌でも食えよ。なんていって、私の前に餌を落としていったりして。
なんだかねえ……ほんとに。まあ、それはそれでいいんだけどね。
今日も彼らは元気に泳ぎ回っているし、私はそれを見上げてなんとなく楽しんでいるから。
また、なんか事件が起きたら、ちょっと大変かもしれないけど、まあそれはそれでいいと思ってしまう、
今日この頃。
……でも、私の前に網が現れるっていうのも、ちょっと魅力的。
ごめん長いうえにかぶった
586 :
1日1書 ◆SiQaWqYmNw :02/10/30 01:42
「米」「和服」「マジックハンド」←お題が謎なので、これで。
マジックハンドを操作するリモコンを持つ手が、気づくと汗に濡れていた。
僕はあわててリモコンの「固定ボタン」を押してから、リモコンから手を離した。
和服の袂から手ぬぐいを出して、手の汗を、文字通りぬぐった。
そして小さく息をついて、またマジックハンドの先の、米粒ほどの大きさの爆弾に目を向けた。
袂に手ぬぐいをしまいながら、後ろを振り返ってみた。
そこには見慣れた顔があった。僕が日本人だと言う事で、和服を着ることを強制したボス。
日本に興味があるんだと言いながら、初めて会ったときに僕にした質問が「歌舞伎町」についてだった、
ライリー。二人の顔が心配そうに見ていた。僕はその顔に微笑んでから、またリモコンを手に取った。
「世界中で日本人ほど、手先な器用なサルはいないだろ」そういわれて、爆弾処理のマジックハンド係にされて、
実際にこんなものを使って爆弾処理をする日が来るとは、夢にも思わなかった。
静かで濃厚な時間が過ぎた。おそらく、この二つの線が最後のトラップだろう。
赤の電線。青の電線。僕は相談するような顔つきで、後ろの二人を振り返った。
迷わずライリーが「赤だ」と言った。どこか緊張感のない雰囲気があったのだが、
僕はその言葉にしたがった。「パチッ」マジックハンドは赤の線を切った。
・・・・・・・・・・・・・・・爆弾は動かない。どうやら僕たちは助かったようだ。
僕はマジックハンドを片付けながら、ライリーに話しかけた。なんで赤だって分かったのかって。
「何を言ってるんだよ。おまえの国ではそうなんだろ?」僕が理解できない顔で彼を見つめてると、
「赤は止まれだ」そう言って、右手を開き高く上げ、僕にハイタッチを要求した。
僕の腰は抜けてしまい、それどころではなかった。
※お題は、「爆弾」「汗」「赤」
修一がつれてきた老人は、なかなかにけったいな風采の男だった。
第一に、その腕はマジックハンドみたいな形の義手になっているらしい。
第二に、初老にもかかわらず白髪頭をモヒカンのようにしてピンピンと立てている。
「なんだそいつは。おれはお前がこんな危険人物とかかわり合う野郎だと知っていたら...」
「うるせえ黙ってはなしをきけ」
修一は俺の言葉を遮るように言った後、おれの小耳にささやくようにして言った。
「...こいつは米軍に追われるスパイの一人だ。こいつをかくまえるような家屋と職を紹介してくれと頼まれて
300万を現ナマでつかまされた。どうかこいつの面倒をみてくれねえか。謝礼はこいつだ。
まあ俺の報酬の一部なんだが...」そういって修一は封筒をとりだすと俺の目をジッと見据えた。
血走った目だった。彼が一体どこのだれからこんなヤバい仕事を請け負っているのか知りたかったが、
そんなことを聞いてもますますばかげた信じられない話になりそうだ。
「やれやれ」おれはうんざりしながら初老の男を見た。良く見ると日本人の顔つきじゃない。
浅黒い、頬骨のある、ベトナム関係のオッサンかなと思いながら俺はふと思いついた。
「なあこいつは...」修一は即座に答えた「いいやこいつは何もおまえに危害を加えないと思うよ」
「いやそうじゃなくて、こいつは何人なんだよ」
修一は笑った。なんだそんなことかよとつぶやいていて、オッサンと一緒におくの部屋にはいっていった。
俺はタバコをすって、テレビのチャンネルをいれた。修一の野郎とつきあってると、こんなことばっかりだ。
しばらくすると向こうの部屋から、和服に着替えたオッサンが無言で現れた。
「修一...」俺はタバコをうっかり畳におとしてしまった。
輝男はやっかいな奴だとウワサだった。
なんでおれたちはそんな野郎をグループにくわえたんだったか、俺にはわからない。
哲男の野郎がやたら熱心に輝男をかまってたせいで、いつのまにか輪の一員になってしまっていた、
ということだったろうか?そんなことは大したことではないだろう。
何しろ輝男は、筋がね入りの右翼マニアだ。ちょっとでもリベラルな口を聞いたら最後、
赤呼ばわりされお前の家のトイレを爆弾で吹き飛ばしてつかえないようにしてやると言って
起こり出すのだった。そんなわけだから、グループの中ではなかなか自由に口をひらきづらい
雰囲気ができあがっていた。
そうこうするうちに、輝男はオウムや赤軍の思想的な救済効果とかいうことを熱弁をふるいはじめるようになっていた。
以前はあんなにおとなしくて、哲男が声をかけるまでは誰にも相手にされてなかっただけに、
この変化はさすがに度が過ぎてる。
クラスの連中のなかで「最近調子にのってきたやつがいるよなぁ、おい」なんてウワサされるのもしょうがないかもしれない。
結局輝男は、その後たびたび
「ロッカーの中に墨汁をぶちまけられた」とか「家の郵便物が盗まれている」
とかわけのわからないことを言うようになった。
本当のはなしかどうかは、輝男が普段孤独なやつで、ひとりで帰ることがおおいし
そんなにつきあいの深い奴がいるわけでもないということで誰もしらない。
そもそも知りたがらない。いずれにしても、公然と繰り返される陰口のせいで、輝男が神経質に
なりすぎてるのは確かだった。
そうこうしてるうちに輝男がいつも使ってるというネット上の掲示板に、
赤の教育機関に堕ちた東大を爆破するという匿名の書き込みがついていた。
輝男を中傷するために輝男に疑いを着せようとしてる何者かの仕業なのか、それとも本当に
輝男の仕業なのか俺には分からない。
だがいずれにせよ、このことは皆には黙っておこうと決めた。
輝男イジメに荷担するのは大人げないが、この書き込みを誰かに言えばそいつは
輝男に嫌悪感を持つことになるのではないかと思った。やっかいなことではあるが、
輝男を信じて待つことを選ばなければと自分に言い聞かせた。
あるいはそんなものは、なにもしないでいるための自分に対する言い訳なのかもしれない。
次の日の朝、輝男とおれたちはなにもかわることのないいつものように、くだらない雑誌記事の話題なんかで
雑談していた。なぜか自分だけが、輝男に距離をおいているのを自分でもはっきりとわかった。
なにをしているんだろうと思う。俺は輝男を裏切ったろうか?裏切ってなどいない。むしろ守ったはずだった。
それなのになぜか俺は罪悪感を感じている。輝男を疑ったから?「なに暗いかおしてんだよ嘉男、女にふられたのかよこの野郎」
今日はなんだか皆と同じテンションでいられそうにない。「悪い、おれちょっとパンかってくら」
教室を出ておれは屋上に向かった。なんでそんなことをしているのか、自分が一番わからなかった。
590 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/30 02:25
長。
591 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/30 02:33
お題継続・・?「爆弾」「汗」「赤」
我輩はジゲンバクダンである。名前はまだない。
我輩の体には今は動いていない時計のようなものや赤やら青やらのコードがたくさんついている。
生まれてから我輩はずっと数人のむさくるしい男たちに監視されている。
ある日、初めて我輩は外に出た。
どこにでもいそうな格好をした男と一緒に紙袋の中に入ってのお出かけである。
どこに行くのだろうと思ったのもつかの間、我輩は置いてけぼりを食らった。
そして突然我輩の腹についている時計のようなものが動き出したのである!
遠くではたくさんの人の声が聞こえる。
時々近づいてくる何人かの女の会話では「トウキョウタワー」という言葉をよく耳にする。
それにしてもココは臭い。
しばらくするとあたりが突然騒がしくなり始めた。
「時限爆弾だー!」と我輩を呼ぶ声が聞こえる。
そして我輩は爆弾処理班というらしい男の手によって分解され始めた。
顔中に冷や汗を浮かべたその男は「この赤か青のどちらかを切れば・・・」などとつぶやいた。
そしてその男は赤を切る事にしたらしい。なんでも今日のラッキーカラーだそうだ。
プチッという音とともに我輩の体の赤いコードが切られた。
それと同時に我輩の体は激しく爆発した。その男とともに。
>588-589で完結ならお題継続でOKっすね?
まだ続くんならごめんなさい。次のお題は「受験生」「初恋」「爆発」で。
千秋は良い女だ。なにがどういいのかって言われると、説明に苦しむ。
すべてが終った今、卒業写真をひろげてみても、千秋がそんなにいい女だったのかどうか
わからないくらいだ。千秋の良さは顔にはでてないんだ、と俺は思う。
その独特の声。あの聞いてるとぼんやりと催眠術にかかってしまうような、とぼけた声に
魅力があったのかもしれない。あるいは全然べつのことなのだろうか。
あれは俺達が受験生だったころのことだ。
俺達の高校は県内有数のダメ私立高校で、先生もよくこの学校のことを「動物園のような」と言った。
生徒たちはなにかにつけて感情を爆発させてあばれまわり、
大勢で万引きツアーと称して出かけて言ったり、市内の夜間高校の連中と喧嘩をしては、武勇伝を自慢しあっていた。
俺はといえば、中学のころに陸上部だったおかげで体力はあるが、球技などはいまだにコンプレックスになるほど
へたくそで、運動神経はたいしたもんじゃない。万引きはやったことがあるが
そのときは一人でデカイ哲学書をかくしもせずに本屋からかかえて出てきた。
余談だがつかまらなかったのは挙動不信な振舞がなかったからだろう。なにしろ隠しもしないで堂々と運び出したのだ。
まるで店のアルバイトのような顔をして。
さて、千秋のことについて語ろうと思う。
つーか中止
「殺虫剤」「省エネ」「製紙工場」ヨロ
>>592 「初恋」がねーぞ。
途中でやめるなら御題は継続の方がいいんじゃないか?
ならそういう方向でどうぞ
巷が受験ムードにわきかえると、大学に近いこのあたりもまた
受験シーズン独特の雰囲気にみたされる。
そんなときはいつも、ふとあのころのことを思い出すのだ。
連中はいったい今どこでどうしてるんだろう。俺は同窓会にも顔をだしていない。連中のことは気になっても、
あのころにくらべてすっかり落ちぶれてしまった今の自分を、彼らにはみせられない。
テーブルの引きだしから取り出した卒業アルバムのページをめくっていくと、懐かしい顔ぶれが並んでいる。
そのなかには、初恋の相手だった香織の表情もあった。
初恋といっても、それは片想いにすぎなかった。俺は友人たちと会話してる香織の笑顔をたまたま見て以来、
そんな香織の笑顔をうらやましいと思うようになった。いつしか俺は思い詰めた挙げ句に彼女のロッカーに手紙を潜めた。
「香織から爆弾発言〜!!」クラスの女子が教卓にあがってニヤニヤしてみせたのはその翌日のことだった。
「あの松岡が香織にこんな手紙を書きました。マジキモいよねムカツク〜!!」ゲラゲラと笑われ
俺はみじめな気持と屈辱で一杯になった目で香織を見たが、香織はしらん顔で向こうを向いていた。
俺はこんな奴のことを好きになっちゃいない。あれはウソだ。俺が書いたんじゃない。俺はそう自分に向かって怒鳴り続けていた。
香織とでくわしても無視し、香織の方にはどんな用事があろうと目をむけないと決めた。
そんなこんなで、いつしか3年の月日がながれた。あのとき香織がどういうつもりだったのか俺は今も迷う。
本当に彼女がそんなに残忍だったのだろうか。それとも彼女が手紙のことを相談した相手がたまたま歪んだ嫉妬深い女
だったのだろうか。そんなことを考えながら、香織を疑えないでいる今の自分の盲信と、そうせずにはいられない心の空白、
かなわぬまでも恋心を絶やしたくないという寂しさについて、思わずにはいられなかった
597 :
YAHOOO情報:02/10/30 05:33
「よしこタン…ハアハア」
あきおは顔面に滝のような汗をたらし、息を上げて興奮している。
K女子大では、入学試験の真っ最中であたりは静寂に包まれていた。
あきおはその廊下のロッカーの中に隠れている。
今、試験を受けいてるある一人の女性に、あきおは想いを馳せていた。
初恋だった。あきおはその感情をどう対処したらいいのかわからなかった。
シャツには二次元キャラのロゴが入り、手入れした形跡がない髪型、やや肥満した体系。
そんな負い目を差し引いたとしても、彼はもとより自分は恋愛には興味がないと思っていた。
だが、今は胸が苦しい程、彼女が愛しかった。自分の気持ちを伝えたかった。
「よしこぉぉぉー!」
彼は手製のTNT爆弾を爆発させた。爆音が鳴り、ロッカーはあきおと共に木っ端微塵に砕けた。
校舎内は一時騒然となり、試験は中断された。廊下は肉片で赤く染まり無残な光景と化していた。
後に、この事は受験で頭がおかしくなった生徒の爆破事件として報道され、
あきおは、世間の人々からキモイ人として世に知らしめた。
彼の恋は不発に終わった。
あかん、受験生ってキーワードが未消化になってしまいました。
次は「殺虫剤」「省エネ」「製紙工場」です。
「殺虫剤」「省エネ」「製紙工場」
オレはトラックドライバー。製紙工場から平版の紙を満載してきた。
こいつを印刷屋に納品すれば今日の仕事は終わりだ。
日が落ちると田舎道は虫が凄い。
車のライトを目標に飛んで来るのはいいが、窓にびしびしぶつかって潰れるのは具合が悪い。
頻繁にワイパーを動かさないと潰れた虫が邪魔で前が見えなくなる。
ウィンドウオシャー液みたいにぴゅっと殺虫剤が出る装置でもあれば煩わしい思いをしなくても済むかも知れない。
そうか、ライトか。ライトを消して走ればいいのか。丁度今夜は満月で月明かりがすごい。
ライトを消して走れば多少はバッテリーにとっても省エネだ。
おっ、携帯電話が鳴っている。オレは着信音がする方を見た。
突然景色が一回転してオレの意識は途絶えた。
トラックは横転していた。オレは運転席から何とか這い出した。どうやら側溝に脱輪して横転したらしい。
ガソリンの臭いに気付きトラックから離れた。
その瞬間トラックは炎に包まれた。辺りは昼間の様に明るくなった。
「これじゃライトを消した意味が無いな」オレは炎を見ながら呟いた。
次のお題は「満潮」「空位」「あまがえる」でお願いします。
教授は立ち上がって手をふりかざし
「本論文は,未だ解決されていない三つの空位を持つN×M(≧)平面自動倉庫において任意の位置にある荷台を自
動倉庫の出口まで移動するのに要する最小歩数関数を決定する.」
と言った。
ピーターは煙草をふかしながらどっかりと椅子にもたれてデスクの上に足を組んでいた。
「それでは話がちがうな、おれたちの要求はこれだ」
ピーターはゴミいれのなかに潜んでいたアマガエルにむかってパン屑を投げた。
後ろの席にならんでいる新聞記者どもがどよめいた。
「なああんた、なにをいってるのか!そんなことをすればおまえはどうなるか...」
記者の一人が問いかけた。
「...あぁ!?」ピーターは凄んだ。
「明日の満潮までに片付けておけ...それ以上は...お前たちの努力しだいだ」
ピーターは立ち上がると、わざとらしくゆっくりとした足取りで部屋を出て言った。
「セクシー」「密林」「はにわ」でよろしく
603 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/30 17:27
「セクシー」「密林」「はにわ」
今私の目の前には一体のはにわがある。
顔や色は普通のはにわとなんら変わりは無い。
しかし、唯一つ他と違う点があるのは、そのはにわはやけにセクシーなのだ。
こいつは私が南アメリカを旅した時に、密林の奥で見つけたものだ。
「なぜ、南アメリカにはにわが?」
そんな存在そのものが謎であることよりも、私はこいつのプロポーションのすばらしさにほれてしまった。
ミロのヴィーナスにも劣らぬ完璧な肉体、しかし、顔は目と口の部分に3つの穴があいただけ。
炭素測定によるとこいつは3000年ほど前のものらしい。
いわゆるOパーツである。
しかし、そんなことよりも私は、これを作った人物はどうして肝心な顔の部分をこんな手抜きにしたのだろうかということの方が重大な問題だった。
ある時、私は気晴らしに娘とテーマパークへ行った。
「ねぇ、お父さん。アレで写真とってー」と娘が指差したその先には、顔の部分に穴があいていて、そこから顔を出して記念写真をとるためのハリボテがあった。
私は手に持ったカメラを落とし、大声で叫んだ。「これだ!!」
顔の好みは体のそれよりも個人差が激しい。だから作者はあえて顔だけは創造と妄想で補完できるようにしたんだ!
謎が解けたのもつかの間、こんどはコイツの存在そのものの謎を解くために私は一生を費やす事になろうとはこの時は思いもしなかった。
次のお題は「映画」「学者」「必殺技」でよろしゅー。
山崎教授は今日も講義にあらわれなかった。
連日連日ワイドショーに出演するための準備にあけくれて、どうやら大学の職務は
ほったらかしなのだろうか。まあ、しょうがねえかもしれねえやと思う。
彼はああみえても気真面目で、わざと授業をすっぽかすような人ではないだろう。
達男はそう思った。
達男は講堂をでて自動販売機でコーヒーを買って、飲んだ。
「よおお前、いい映画の企画はいってるよ。来ないか?」
谷口だった。彼はほとんど授業にも顔をださず、映画会社でバイトをしながらコネをつくって
将来の野望を広げてる毎日だと達男は聞いていた。
「なんだそりゃあ、...悪い、おれは遠慮する」達男は言った。
「そりゃねえよ、だっていま人でが足りなくてよ...ちょっとコスプレしてポーズとるだけさ、なあ頼むよ」
谷口は申し訳なさそうに手を合わせた。
「コスプレだって?...冗談きつすぎだろうそりゃねえよ」達男は眉をしかめ、頭をかきむしって、なにが考え込んだ。
そういえば最近、いい車でたらしいという吉田の話を思い出す。GTR-R38か...
「...まあ、ちょっとだけならいいや。いくらなんだ?」達男は思い切って言った。
「タイトルは必殺団地妻ハンター。これは出演料さ」そういって谷口は500円だまを達男に握らせた。
達男は呆然と立ち尽くした。谷口はいつのまにか消え去っていた。
「泥水」「ソーセージ」「はちきれそうな隆起」
606 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/30 17:49
ちょい待て、>604は映画しか入ってないだろ??
おや、イメージが先行して
学者が教授、必殺技が必殺団地妻になってますた
ヨネモト教授は政治学者だ。
珍奇な映画を見て、
生徒たちのまえで「必殺殺し屋マンモス!」といって感動的なポーズを決める。
おれたちはヨネモト教授を信用してるし、女学生からも人気が高かった。
そのヨネモト教授がこんどはあたらしいことをやらかすそうだと聞いて、
おれたちは急いで実験準備室にかけこんだ。
すると教授は竹薮のなかでオナニーしてくれるやつはいないのか、と言った。
教授の社会の窓からピロピロと、オレンジ色のあざやかな玩具のヘビが顔を出して挨拶をした。
訂正
創造 X
想像 ○
610 :
「泥水」「ソーセージ」「はちきれそうな隆起」:02/10/30 21:36
前の夜はずっと雨の音がしていたが、朝になってみると薄暗く曇っているだけで、
雨は降っていなかった。その日はスーパーの広告が入っていて、或商品がかなり
安かった。私はそれを買うためスーパーへ歩いていた。しばらくすると、向こうから
そのスーパーから帰るらしい親子が歩いて来た。母親は両手にはちきれそうな隆起を
したビニール袋を下げて、三歳位の男児を連れていた。その男児は、しきりと母親に
何かを言っていた。
「僕のターボレンジャーウインナー頂戴。ウインナー」
男児は母親の服を引っ張り、今にも啼きそうな顔である。
「うるさいなー。この袋重たいねんから。服引っ張りなさんな」
母親は眉間にしわを寄せている。
「ウインナー。ウインナー。ウインナー。頂戴」
男児はまだまだ叫んでいた。
私も母親がここで静かにさせることを願った。それ程までに、男児の声はうるさかった。
いよいよ私の横を通り過ぎようとするとき、ふいに母親は男児を右手に持った袋で
ぶん殴った。男児は何の抵抗も出来ず、彼の前にあった泥水のたまった所に
真っ直ぐと転んだ。彼はきょとんとしたが、水たまりにすっかり身を浸すと
急に声を上げて泣き始めた。しかし、母親は、
「あんたが、しつこいから、あかんのでしょ。そんなにウインナー欲しいんなら、
これもってずっとそこ居りなさい」
と、ウインナーの袋を男児の方へ投げつけて、じっと睨んでいた。
私はその様子を呆然として見ていた。しかし、私には関係ないと自分に言い聞かせて
スーパーへと急いだ。私の後ろでは、まだ、男児の鳴き声が聞こえる。私は足を速めた。
すんません。初心者に近い者で、忘れていました。
どうか、次の方はこのお題でお願いします。
「犬」「映画」「織田信長」
よく見たら「ウインナー」ではないし、「織田信長」は固有名詞だし、
やっぱり阿呆だ。
逃げます。
「よう山田、こっちむけよオラ」
どこからともなく山本の声が聞こえてハッとした。
おれはネットにかじりついてエロエロ夫人楽園を覗いていたところだった。
はちきれそうな股間の隆起を山本にみつかったかもしれない。
きょろきょろとあたりをみまわして山本の気配を探ったが、
やつはこの部屋に侵入してきた形跡はない...
不安にかられたおれがなにげなく窓をみると、窓の外にとびはねている山本がいた。
山本はニッと笑ってこっちをみながら、窓の外を元気よく飛び跳ねているらしかった。
「頭は大丈夫か、脳味噌の手術でもうけたか」窓超しに俺は彼に問いかけた。
だが彼には聞こえていないように見えた。
「洗濯してくれ、泥だらけだ!ウオー!」山本はドンドンと窓を叩いた。
「やめろ山本...おまえは」言うが早いか、山本は窓をブチ破ってそこからのそのそと部屋のなかに
はいりこんできた。
「これは土産!」山本は笑みをうかべた。これはもしやバイブか!?とおもったらソーセージだった。
泥水が泥だらけになってるので継続ということで
616 :
名無し物書き@推敲中?:02/10/30 23:59
次のお題「犬」「映画」「織田信長」 でいいのね?
ではどうぞ。
固有名詞はダメ
会社から帰った俺は、ソファにもたれてからずっと部長の言葉を思い出していた。
「そうだ、おれなんて、...どうせ用済みの足でまといに違いねえや...」
頭をかきむしり、俺はコーヒーのパックをゴミバコに投げた。パックはゴミ箱の横の壁にあたって床に転がった。
俺はうつむいてしばらくくだらないことを考えていた。それは昔愛した恋人のことだ。
だが今はいない。なぜいないかなんて、そんなことどうでもいい。ただ無性にいまは誰かにあまえたい気持だった。
「やれやれ...」俺はなにを考えてるんだろうと思った。こんなことぐらいでへこたれてちゃいけねえ。
テレビのリモコンを拾い上げて、チャンネルを変えていると、織田信長の映画がはいっていた。
信長のようになりたいな、とぼんやりと思った。会社の犬なんかに終りたくない。むかしはおれだって、もっと
野望にあふれた男だった...。気がつくと信長に自分をかさねあわせていた。
おれだってやれないことはない。ようは制限をはねのける度胸だけだ。おれと信長の間にある違いはそれだけだ。
テレビを切った俺は、飛び上がるようにしてキッチンにむかって、包丁を握って部屋をでた。
これからは俺の時代だ...
「温泉」「かき氷」「しおせんべえ」
何度みんなお題をちゃんといれないの?
犬も映画も信長もいれましたが何か
じゃなくて次のお題、継続なら継続でいれるべきでは?
って書いたら入ってたスマソ
失礼シマスタ
「かき氷が食いてえよ」
弟は会社の健康診断で急にひっかかり、都内の大学病院で診断を受けた結果、肝臓癌だと診断された。
今弟はこの大学病院の病室に入院している。弟に真実を診察結果をつたえるべきか悩んだすえ、
弟はもう大人なんだからと、診断結果を彼に言った。その語彼はショックで寝たきり状態がつづいていた。
そんな彼がふと言い出した一言におれは胸を打たれた。そして同時に悲しみで一杯になった。
「一杯のかき氷だけなんて、切ないこというな、もっと色々...そうだ温泉にいこう、お前の好きだったしおせんべいだって
いくらでも買って来てやるよ」
弟は小さくうなずいていた。よこたえたままの体は、たくましかった以前よりずっと、弱々しくほそぼそとなっている。
「俺が守ってやるよ、勇二、勇次...」
小さいころ、よく喧嘩をして取っ組み合ってたあの勇二が、いまこうしてここで、力尽きたように衰弱しなければならない。
一体、なんのせいなんだろう。
いい年になって、こんなことを考えて涙をこぼしている自分がいた。
勇二は目を閉じたままで、泣き崩れた私の手をとって握りしめた。
こんな時でも、窓の外は雲ひとつない。窓からは退院していく家族を見送るにこやかな歓声がちいさく聞こえていた。
「密漁」「ベビ」「ジャングル」
露天風呂に入って体を休めていると、いつの間にか、みぞれは雪に変わっていた。
「景色がきれいなのは良いけど、こう寒くっちゃ酒もさめるよ」
私は、湯船に浮いたお盆の上に、お猪口を置いて身震いした。
「もう下げますか? 」
旅館の女中がそう言ってお盆を片付けようと手を伸ばす。
私は慌てて彼女の手を遮ると、「もうちょっと待ってください」と答えた。
女中はニッコリ笑うと、再び湯船を櫂でかき混ぜだした。
真っ白の雲の中にうっすらと輝く太陽を見つけると、
「明日は晴れるかな? 」と私は呟いた。
明日は十三年ぶりに娘と会う。
妻と離婚したのは、娘がまだ七つの時だ。あの日も雪が降っていて、娘はうつむいたまま私の袖を引っ張って離さなかったな。
そんな娘と、今日久しぶりに会える。
私は武者震いをした。
「もう下げますか? 」
女中は髪を書き上げて再び訊いてきた。
「いえ、まだいいです。まだ残っていますので」
私が憮然としながらそう答えると、
女中は「駄目です。もう片付けます」と言って、
さっさとお盆を湯船から上げてしまった。
「何するんですか? まだ飲んでるでしょう? 」
「駄目です。これ以上飲んだら、体に毒ですよ」
「あなたにそんな心配される覚えはない」
下半身をタオルで隠しながら、私は彼女からお盆をひったくった。女中は哀しそうな顔で私を見ると、「お酒は毒です」と呟いた。
何故この女は、こうまで私の世話を焼こうとするのだろうか?
そう言えば、彼女は別れた娘に年恰好が良く似ている。
「まさか、あなたは……」
私は声を詰まらせながら、彼女の手をとった。
「そう、私は……」
女中はゆっくりと立つと、ポケットから袋を出した。
「お酒より、しおせんべいのほうが、お体に良いですよ。こっちのほうを買っていただくと、私にキックバックが
入るんです」
彼女の渡してくれた塩せんべいの味は、人生と同じようにしょっぱかった
>>半角スペース
自分の御題に自分で書き込むのはヤメロ。
15行以内に納めろ。
御題は本文の中に入れろ。
荒らし確定すんぞ。
>>629 荒らし確定。1さん、頼む。コイツアク禁にしてやってくれ…
ホントに作る気が失せる…
暫く離れます。半角スペースがいなくなったらまた…
おれは15行以内におさまってないか?
もしかしてウィンドウズでは改行されまくってるんかね。
おれのリナックスのネスケでは14行
露天風呂に入って体を休めていると、いつの間にか、みぞれは雪に変わっていた。
「温泉があって、景色がきれいなのは良いけど、こう寒くっちゃ酒もさめるよ」
私は、湯船に浮いたお盆の上に、お猪口を置いて身震いした。お猪口に積もった雪は、
まるでかき氷のようである。
「もう下げますか? 」
旅館の女中がそう言ってお盆を片付けようと手を伸ばす。私は慌てて彼女の手を遮ると、「もうちょっと待ってください」と答えた。
女中はニッコリ笑うと、再び湯船を櫂でかき混ぜだした。
真っ白の雲の中にうっすらと輝く太陽を見つけると、
「明日は晴れるかな? 」と私は呟いた。
明日は十三年ぶりに娘と会う。
妻と離婚したのは、娘がまだ七つの時だ。あの日も雪が降っていて、娘はうつむいたまま私の袖を引っ張って離さなかったな。
そんな娘と、今日久しぶりに会える。
私は武者震いをした。
「もう下げますか? 」
女中は髪を書き上げて再び訊いてきた。
「いえ、まだいいです。まだ残っていますので」
私が憮然としながらそう答えると、
女中は「駄目です。もう片付けます」と言って、さっさとお盆を湯船から上げてしまった。
「何するんですか? まだ飲んでるでしょう? 」
「駄目です。これ以上飲んだら、体に毒ですよ」
「あなたにそんな心配される覚えはない」
下半身をタオルで隠しながら、私は彼女からお盆をひったくった。女中は哀しそうな顔で私を見ると、「お酒は毒です」と呟いた。
何故この女は、こうまで私の世話を焼こうとするのだろうか?
そう言えば、彼女は別れた娘に年恰好が良く似ている。
「まさか、あなたは……」
私は声を詰まらせながら、彼女の手をとった。
「そう、私は……」
女中はゆっくりと立つと、ポケットから袋を出した。
「お酒より、しおせんべいのほうが、お体に良いですよ。こっちのほうを買っていただくと、私にキックバックが
入るんです」
彼女の渡してくれた塩せんべいの味は、人生と同じようにしょっぱかった
628はおれではない。
そんなことをいうのは彼に失礼っつーか2分でそんな長文かけねえよ。
勘違いしてるのはお前ひとりだがな
他人の投稿をなんでもかんでも朝日に結びつけて批評し、
お題も入っていない長編の断片を垂れ流すヤシがいるのはこのスレですか?
>>632 え? 俺か?
俺は(628 629 634)は荒らしじゃないぞ
おれは朝日に結び付けて批評されてる方だしな。
なにも読んでない馬鹿がひとりで何役もこなしてひがんでんじゃねえよ。
ほかのやつらは普通にかきこんでるのに空気よめないやつだ