♀百合制作文芸スレッド♀

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1百合の啓蒙普及運動
いろいろなジャンルメディアでどちらかと言えば不遇な
百合(女性同性愛)小説を語りたい人々よっといで
つくりましょーつくりましょー百合百合小説つくりましょ〜
2とおりすがり:02/08/31 03:34
今だ!2ゲットォォォォ!!
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄       (´´
     ∧∧   )      (´⌒(´
  ⊂(゚Д゚⊂⌒`つ≡≡≡(´⌒;;;≡≡≡
        ̄ ̄  (´⌒(´⌒;;
      ズザーーーーーッ
好きなんだけどさ、いまいちなんだよね。
半角二次元板のレズスレも落ちちゃったしw。
ボーイズラブものに比べて今一もりあがらないのは、
男も女もエロにまったり感じゃなくって
激しいのを求めてるからなのかなと思うんだけど。
で、ここはsage進行でいいの?
4百合の啓蒙普及運動:02/08/31 04:54
>>2
>>3
初めての人ですねようこそ
半角二次元板いまじゃ行くことは不可能なのですか?
一応sageと言うことでお願いしますね。
53:02/08/31 05:07
>>4
いや、「女の子同士がエッチしている画像」スレがdat落ちしたってだけ。
今は「女の子が乳首舐めてる画像」スレに百合難民は移行したみたい。(スレ名うろおぼえ)
半角二次元板は今でも健在だよ。さっきまでそこにいたし。
って、文芸板の話題じゃねーなw。

まあ、sage進行でw。
で、ここはエロもありなんですか?
オリジナルなり二次創作なりの小説書いてここにリンクを貼るって感じ?
6百合の啓蒙普及運動 :02/08/31 06:11
>>5
まだ健在しているスレもあるのですね
dat落ちの復活をしてみたいです。

成人向けのことはなんとも言えません
この板の趣旨に反していなければいいのではないでしょうか?

オリジナルなり二次創作なりの小説を書いて欲しいです。
もちろんいきなりでは無理でしょうから
発表した作品でも問題がなければ再利用もして頂きたいと思います。

7しっぽたん:02/08/31 08:10
>>1-6
うふぁ。朝っぱらから(w
百合小説スレはこの板でも珍しいね。
興味はないことはないけれど、
読んでいてちょっと退屈気味でもある。
この板では一つ、プロットに目を通したことがあるだけかな。
あと、モー娘。とかのネタ関係。

虎でもアップされたことはあったけど、やっぱり不人気でね。
私も今ひとつ眼を通そうという気にならなかったですが、
言われてみればボーイズラブに対してのこの不人気さは不思議。
ハァハァ
スレ違いかもしれんが、女も萌える女性キャラってどんな感じなの?
男が萌える男性キャラをそのまま性転換すれば良い。
と仮説を立ててみる。
そもそも男性キャラに萌えないので、断念。
127:02/08/31 20:10
ソース
http://book.2ch.net/test/read.cgi/bun/1010166284/202-221

このへんってどーよ。
133:02/09/01 02:36
結構面白かった。
ただ、最後に二人で暮すようになるっていうのは、
好き好きになるまでの過程を楽しみたい百合ファンとしては少々納得行かなかったり。
そんなあなたには、奥浩哉の短編集「赤」をオススメしまつ。
漫画だけど。
153:02/09/01 18:52
池袋のジュンク堂に探しに逝ったけど、「黒」しかなかった……。
163:02/09/01 22:49
取りあえず有名どこを。
http://www4.justnet.ne.jp/~hogehoge/urilink.html
あと百合の自作も書いてるけど、ここに出すのは恥かしいので、
書き直したら出すよ。
17しっぽ ◆cmOmcGj6 :02/09/03 22:06
んーと、板内のエッチ系スレをあちこち見て回ったけど、
これは、っていうネタはなかったですね。。。

1年以上いるけど、百合物でやけに流行った単発スレって
記憶にないのよ。
今またり文庫に出したら、脚光浴びるかな?とか言ってみるテスト。
既存の恋愛小説と百合ではどんな違いがあるの?
BLもだけど、大体同じじゃねえ?
>>18
個人的には「葛藤」があるところだと思う。
真性の同性愛者同士の恋愛小説は、あまり楽しくなさそう。
私はある人間の女性を探しているの。本当に私のことが見えるのかどうか確かめるために・・・・
かなり前に私がいつものように泳いでいると人間の醜悪なハネ付きの乗り物がやってくる
過去に私達の仲間が何度も被害にあっていたので私は身構えた コ コワイ・・・
それには二人の女性が乗っていてとたんにスピードをあげそこまで迫ってきたんだ
「もう避けきれない」とにハネで傷ついた様を思い浮かべるが次の瞬間ボートは急に方向をかえ
乗り物は向こうに行ってしまった。乗り物を操っている女性がかわっていたような気がしたが
一瞬の事だったのではっきりとしたことはわからなかった何だっんだろ?
私の姿は人には見えないはず?今のは偶然だろうか?と考えているといつのまにかさっきの乗り物が
ジグザク方向を近づいて来て私の上を通過しようとしていた。だが先程ほどのように危機感は何故か
なくそのまま通り過ぎるのをじっと待つことにしたの。
乗り物は私がいる地点から数メートルほどで迂回し始めてギリギリのところで
私との接触を避けて遠方に去っていっちゃった。
明らかに彼女達のどちらかは私の姿が見えている。そう確信した私は今度は自分から一言
言うべく会いに行こうと決心した。そのためにはまずこの人には見えない体をなんとかしなければ
ならない。通常の人間には見えないため地上を出歩くのはあまりにも危険すぎるから
そこで不思議なアイテムをくれると評判の女性のすみかに行くことにしたんだ。
いかにも妖しい風貌の女性を想像してはいたがそうではなく気前が良さそうな女性で
なんの交換条件もなくあげようと言うので正直ホッとしたよ。
しばらく待っていると用法用量を書いたメモと薬を手渡し恐ろしげに感じるほどにこやかに
こう言った。「これ服用すれば確かに人は貴女を認識することができるけど
今の貴女の姿とは似ても似つかぬ姿になってしまって、おまけに自らの姿が見えなくなるの
からそれでもよかったらどうぞ」
「あっそれといつ薬が切れて元に戻るかはわからないからそれを意識しておいてね」
副作用はあるのかやはりそううまい話はないね
それでも・・・会いに行けるならそれでもいい 私は頷いて薬とメモを受けとった。
その場で薬を服用すると自分の体がかわっていくような気がする
自分の姿は見えないようになっているのでどのような姿になっているかは定かではないけど
不思議な女性は「えっこんな姿になるって私も想像もしなかったわ
私としては前の姿の方がよかったなぁ〜」なんて宣うものだから
先程の決意は少しグラつき容姿がどうなのか不安になりつつもお礼を言い
彼女達の乗り物から流れ出た水の匂いを頼りに陸地に向かって泳いでった。
陸地に近づけば近づくほど水は汚れ、息をするのも容易じゃない
しかしそのようなことは私にとって苦ではなく、むしろ人間の住む土地に到達しつつあると思うだけで
胸がいっぱいになってきた。もちろん息をしにくいからでもあろうが会えるかもしれない喜びで
苦しさも何とかカバーできてしまうわ。そうこうしてジタバタもがいて泳いでいるうちに
やがて人間の住んでいる辺りまで泳ぎ着いたようだ。巨大な岩のようなものが立ち並んでいる
中には氷山よりも大きいものまである川からそれらを眺めながら泳いでいると
そこで私を見た人間達は即ざわめき始める なんだろ?
そんなにこの容姿が変なの?前なら聞き取れたが今は聞き取ることができないイライラする
人間の言葉がわからないことは残念だけど私にはまだ見ることができる
人の群の中にあの二人はいないかな?淡い期待をしてみてもいっこうに現れる気配はない
長時間粘っていたら川の流れが早くなってきて一旦海に戻るとしようかな
溺れて流されてしまえばもともこもないもんね。
幾日かして川と海の境目の様子を確かめに行くと元に戻っていたようなので
また遡って行った。おかしい?川の氾濫にともないごく微かな
匂いがかき消えてしまい前とは違う川に来たようね 景色もどことなく前とは違うし
どうしよう 私は不安に駆られながらも更に上流へ向け遡り始めた。
ある程度まで来てから陸と陸の間の川をまたいでいる長い石の固まりの下の付け根で休むことにした
人が前と同じように集まり始めてきちゃった。こうなったのって
もしかして私の容姿が誘因しているのかな?だったら今度こそ会えるかもしれない
よぉーしだったら〜
私は岩に乗っかるとジェスチャーをするかのように様々なポーズをとってみた
あたかも誘うかのようにね。
でも そんなにうまくいくはずはなく私の様子を見ている人間たちを喜ばすだけだった。
やがて辺りが暗く静かになりここまできても会うことはできないのかなぁと考えていると
川上の方から懐かしい匂いと音と共に乗り物が ううん そんなのどうでもいいの
あの二人が探し求めていたあの女性達が私の元に来るそれだけで姿がかわっていたのも
忘れて感激にひたってしまった  ポーツ・・・・・・・・・・・〜〜〜〜−−−−−−
二人はそおっと岩に乗り移って来て「あなたを元にもどしてあげる」
驚くことに私の前の姿を知っているのかこのようなことを言われ更に放心してしまっている私を
彼女達は抱き上げて乗り物のなかにある水に運んでいった。
これからどうなるのかな二人に会えた喜びでいっぱいなっていたので先行きを考えずに
彼女等に身を委ねることに特に抵抗はなかった
そのうち彼女等の内のどちらかが私の姿を見ることが出来たかわかりそうだったからね
そうなればあの時私を避けることができたのはどうしてか聞きたい
私の姿を見ることができて避けてくれたのなら、なんて優しい人なのだろう
避けたことにより乗り物を操ることが出来なくなる場合だってあるはずなのに

もう一人の方は助けてくれてるからもう引きかけられたことはもういいや 水に流しちゃえ
とりあえず二人に今のことで感謝しておこう ありがと ここに来たかいがあったよ。



長文連続書き込みしてごめんなさい。ようやく書くことができたと思ったら
長文すぎますとのエラーとの戦いでした。
25名無し物書き@推敲中?:02/09/06 23:02
創作文芸板はあらゆるオンラインでの創作に反対します。
もちろんスレの中での作品発表などにも反対の立場を取っています。

どうしても作品を発表したい、この思いを読者に伝えたい、という方は
自分でサイトを作ってそこで発表してください。

ルールは守ろうぜ。
典型的な自己満足系電波小説だな。
生まれて初めてだったのですが辛い書き込みですね・・・・・・・・


>>25このようなことが他のものにはなかったので書いてしまいました。
>>26
これでも推敲しましたよ
つーかキャラの描写がないのはわざと?
もっとサービスしる!
>>27
あ、言い忘れたけど>>25は定番のネタだからね。
これで推敲したなんて美的感覚を疑うね。
>>27
ここは何書いても基本的に褒めずに叩く板だ。
気にしつつ、気にするな。
>20-23
読んだよ。確かにこれは小説じゃなくて、妄想日記だ。
書いた人が40過ぎの専業主婦だとしたら納得できる。
つか、これどこかのサイトからの晒しコピペのような気がするんだけど
気のせい?
うん、確かにコレは痛い。
もう少し勉強してきた方が良いよ。
・・・少しだけでいいのか?
>>34
狙いとしては、少し勉強して自分には才能ないって痛感させて二度と立てなくしてやる。
事が最終目標。OK?
>>35
そうやって無いものを求めて行き、延々堂々めぐりさせたあげく
「つまんね」
って放り出すんだな。
というより、ヤシはもう来ないのでは……
無駄にスレが伸びているが、ここらで一つ
「姉と妹の小説」の連載を始めてみようか。












うそですごめんなさい。
>35
少しの努力で理解できる脳味噌があれば、あんなくそを書き殴りはするまい・・・。
許さない。
始めなさい。
40名無し物書き@推敲中?:02/09/12 20:59
>>37
連載超キボンヌ
さらに希望を言えば「肉親であることにこだわり、なおかつ萌え属性」
だといいにゃあ。
単なる受け攻めしかないのは姉妹ものでなくてもたくさんあるし。
 カーテンを開けるとねずみ色に近い靄がかかっていた。
 早い朝とは言えない時間に起きてこうした外を見るのは、あまり気持ちの
いいものではなかった。私はベッドの方へ振り返ると、タミコの表情を真っ先
に見た。
 タミコは、昨日のことが嘘のようにぐっすりと眠っている。私は少し嫉妬を
覚えた。
「あんなに、私にさせたくせに……」
 ひとしきりバーで飲んだ後、タミコを自分の部屋に呼んだのは私。食事の後、
ベッドへ誘ったのも私。恥じらいながら感じていたのを見るのは楽しかった。
 でも、少しだけ痛む頭でタミコの柔らかな顔を見ていると、私にない純粋さ
を強く感じたのだ。それが、私には悔しかった。
 もう一回ベッドに戻り、何も着けていないタミコの、吸いつくような下肢に
手をそっと這わせてみる。ゆっくりと、なで回す。
「……ん」
 目を覚ました。私は急に彼女の部分に手を回した。
「……なっ、何……」
 驚いている。まるで、昨日の事は酔いの上での戯言とでも言わんばかりに。
「ねえ……」
 私はわざと媚びる表情を作りながら、半ば強引に動きを速めていった。
42名無し物書き@推敲中?:02/09/13 01:19
今日びタミコてw
「野菊の墓」でつか?
何がいい?
野菊の墓って、若い世代は勉強家でもないと知らないと思うけど、そうでも
ないかな。
知り合いにいるし。
ヲタっぽいのがいいかな。でも知らないし。
じゃ面白そうだから「優凛子」にする。百合スレだし、笑えるし。

カーテンを開けるとねずみ色に近い靄がかかっていた。
 早い朝とは言えない時間に起きてこうした外を見るのは、あまり気持ちの
いいものではなかった。私はベッドの方へ振り返ると、優凛子の表情を真っ先
に見た。
 優凛子は、昨日のことが嘘のようにぐっすりと眠っている。私は少し嫉妬を
覚えた。
「あんなに、私にさせたくせに……」
 ひとしきりバーで飲んだ後、優凛子を自分の部屋に呼んだのは私。食事の後、
ベッドへ誘ったのも私。恥じらいながら感じていたのを見るのは楽しかった。
 でも、少しだけ痛む頭で優凛子の柔らかな顔を見ていると、私にない純粋さ
を強く感じたのだ。それが、私には悔しかった。
 もう一回ベッドに戻り、何も着けていない優凛子の、吸いつくような下肢に
手をそっと這わせてみる。ゆっくりと、なで回す。
「……ん」
 目を覚ました。私は急に彼女の部分に手を回した。
「……なっ、何……」
 驚いている。まるで、昨日の事は酔いの上での戯言とでも言わんばかりに。
「ねえ……」
 私はわざと媚びる表情を作りながら、半ば強引に動きを速めていった。

どう?
「あっ……イヤッ」
 昨日の行為でツボはわかっていた。最初、クリトリスの少し下を中心にして、指を滑
らせればよかった。のしかかって口づけ、舌を絡めた。
 彼女の体が強張りながら震え始めた。すぐに指を深めて、ゆっくりとさっきの場所も
擦りながら出し入れした。
「……んはぁっ! お、起きたばかりなのにぃ……」
 上に向かって顔を私からそむけ、うめく。かまわずに、蕩けだした部分を感触で確か
めると指を二本に増やし、広げながら愛した。また口づける。
「ま、待って……」
 段々とあえぎが掠れ、途切れ途切れになっていくと同時に、責めている音が激しい、
粘着質を帯びたものとなって彼女を苛んだ。
「イヤラしい音してきたよぉ……、グチョッ、ブチョッて……。優凛子ってほんと、
イヤラしい子……」
「イ、イヤァッ」
 辱めると、液がさらににじみ出て弾けるまでになった。音も自然と大きくなる。
指を三本にして、今度は熱くなった中のポイントを細かく攻め立てた。
 

すごく上手く見えるのはなぜだ?!
>>47
あるがとー
ギラギラする太陽は容赦なく。
エアコンもない部屋で二人で冷蔵庫の前にうずくまると、京子のしたたる汗が
目に飛び込んできた。京子がエビアンを口に含んだその刹那、私は太陽に後押し
されるかのように、ココロは激しく燃えあがっていた。
京子のクビに触れたい...そう思った時には私の唇は京子に届いていた。
『キレイ』わたしは恍惚に呟く。嫌われるであろう。完璧に。
葛藤し、混乱し、半泣きになった。と、次の瞬間、京子は口の両端を少し
もちあげて私にキスをした。

が、京子は鬼のようだった。京子は私の頭を両手で抱え込むと、口に
含んでたエビアンをゆっくりと私に流し込んでくるではないか。
からかわれた!と呆気にとられる私に京子はニヤニヤしながら告げた。
『ねぇ、一緒にお風呂はいろうか』

夏の太陽はまだまだ容赦なく。     おしまい
491です:02/09/13 19:31
>>20>>21>>22>>23>>24
文芸(時事ネタ年中行事)とかけてますねこれは今話題のあの子ですね。
励ましてくれる人もいるんだからガンガレ〜

>>37
>>39>>40もああいってるから書いて下さい

>>41>>43>>44>>45   初めての年齢制限作で大変いいですよ。
>>48
続きはまだですか見たい。





どうなるか、晒してみる。
百合というか、やってるだけ。
ttp://atonet.s1.x-beat.com/akino.html
>>49
1のコテハンでいて欲しいな。
続き書いていい?時間かかるけど。
>>50
可愛らしい。

で、こういうジャンル書いて、売れそうかな?やおいも薦められた事あるんだけど、
売れるんだったらちゃんと書いてもいいかな。
52生まれて初めて:02/09/14 05:26
>>27ネタですか強烈ですね
>>31気にしないようにします
>>32妄想じゃなくて今実際に起こりつつあることをヒントにしました。
>>30
>>33
>>34
>>35
初めてので緊張してしまって
>>36何とか来れました
>>49
そうですわかってもらえたようで嬉しいです。
5350:02/09/14 11:04
>>51
ありがとう。

好きなんだけど、売れるかどうかは正直言ってわからない。
でもやおいは売れるらしいですね。
>>52
少しは気にすれ。
5552:02/09/20 19:34
本当はあの子達の無事を願いながら
>>54
多少は気にしています。
56百合の啓蒙普及運動:02/09/20 22:17
>>51元に戻しました。
今よりもっともっと普及して欲しいですよね。
是非とも続き書いてください。それまでここ定期的に保守したいです。
売れるかもしれません
マリア様をはじめ有名どころが増えて来ている感じがします。
>>50
こういうのもイイですね。
5750:02/09/22 00:35
>>56
ども。
何時になることやらわかりませんが、なんか書いたらここに晒しますね。
5850:02/09/22 00:36
すいません、上げてしまいました。
59百合の啓蒙普及運動:02/09/27 15:01
>>57
よろしくお願いします。
>>58
保全上げできなかったのでかえってよかったですよ。
60百合の啓蒙普及運動:02/10/03 14:59
保全上げ
良スレage
62百合の啓蒙普及活動:02/10/06 16:44
>>61
多謝
>>56さんが書き上げてくれるまでエンリャコリャ保全上げ
すっかり忘れてた。返事なかったんだもん。
じゃ、今まで書いたのだけアップ。

「……はっ、は……。やんっ、なんでぇ……」
 今度は自分から、動こうとした。思わず指を、そこから抜いた。そして頬を軽く叩
いた。
「ダメ、よ。自分だけ、気持ちよくなろうとしちゃ……」
「だ、だって、そっちからしてきたんじゃない……、なによぉ……。ねえ、早くぅ……」
 強引に腕を引いて中に入れようとした。それを振りほどいて服を脱いだ。
「じゃあ、私のもしてよ」
 優凛子の顔を跨いで、中腰になった。ちょっとした恥ずかしさが、気持ちよかった。と
同時に、私もこんな事が平気で出来るようになったんだと思うと、余計に優凛子の純
粋さがいっそう憎らしく思えた。あなたも、私のように、快楽のために汚れた部分を
舐めまわすといい。そう思った。
「う、うん……、だから早く、してえ……」
 そう言うと、私をおそるおそる舐めはじめる。ぎこちない動きで、大して感じな
かった。でも、必死で舐める姿があさましく見えて、密かな優越感を覚えた。
「そう、いいわよ……、じゃあ一緒に、ね……」
 再び指を入れて、また責め立てる。柔らかな喘ぎ声のかわりに、舌が止まってしまう。
それをすぐに責める。
「ダメよ、休んじゃあ……」
 罰として、動きを止めて様子を伺った。
「はあぁ……っ、気持ちよくって、ダメぇ……」

ん、いまいちかな。
6450:02/10/11 01:47
おっ、続きが。

 優凛子のはあはあと熱い息が、私の森を押し分けて、中にひそむ甘く濡れた芽を刺激する。
「はやく……ほら」
 そうつぶやきながらも、私は優凛子の吐息に感じていた。
「はぁ……はぁ……うんっ」
 優凛子は深く潜るように私の中へと舌を入れる。
「そうよ……いい子」
 私は手のひらで優凛子全てを包みあげた。
 そしていい子いい子するように、じっくりと撫であげる。
 手のひらに優凛子の中から熱い液体が溢れてくるのを感じて、私は微笑んでしまった。

んな感じ?
百合ジャンルは萎えるべからず
 で、保守
66名無し物書き@推敲中?:02/10/23 21:42
ageてみよう。
書き手が来るまで保守る
68百合の啓蒙普及運動:02/10/26 18:19
>>63
うっ返事しそびれていたかな?すみませんです。
>>64 >>63と同一人物?ですか?リレー小説かなそれもイイ。

>>65>>66>>67
サンクス〜
6950:02/10/26 22:19
>>68
>>64は書きましたが違いまふ。勝手に続かせてみました。すいません。
あと百合もの書いてたら200枚超えたんで、NEXTかどっかに送ろかと思ってまふ。

70名無し物書き@推敲中?:02/10/26 22:24
百合ではなさそうだが?
露出狂の男か?
72名無し物書き@推敲中?:02/11/01 01:08
神の降臨を密かに期待しつつage
73名無し物書き@推敲中? :02/11/08 22:41
更にage
74age:02/11/14 11:17
age
7548-春巻 ◆HalmaktUZk :02/11/19 12:34
ミチルの肌は冬寂に唄うと氷のように凍みていて
風邪をこじらせ火照った私の肌を優しく冷ましてくれた。

「わざわざ寒い中を看病にきたのだから...」そう語尾を濁らせ
布団に潜り込んで来た。私はふらふらして抵抗できず
「ダメ、風邪がうつってしまうから、それにお風呂にもはいってないし!」
と、か細く呟くことしかできなかった。むしろミチルの肌から漂う
リンデンバウムの香りに充てられ、私はミチルと堕ちたくなった。
その夜、深く深く、私達は結ばれた。

外には暖かい雪が舞い、あたかもそれは堕ちた私達への祝福の様だった。
                 おしまい
76:02/11/19 14:16
エロ無しの、長いやつ、のせてもいいですか?
なれそめ?みたいな感じの。
77名無し物書き@推敲中?:02/11/19 16:20
百合作家さんて男の方が多いんですか?
50さんとか、男性なんですか?

>76
見たい!!
78名無し物書き@推敲中?:02/11/19 16:22
↑すみません、唐突な質問で。
79(小)百合 1/3:02/11/19 20:39
 また咲が別れたというので、私は仕方なく咲のアパートに行った。
 延々と泣き言を聞かされるのは分かっている。しかも、同情しても次の日にはケロッとしているから、振り回されているだけなのだろう。重いため息が自然と出た。
 彼女は深く考えるのが嫌いだ。男の誘いにも軽くついてゆく。扱いやすいと思うのだろうが、そこが間違いだ。彼女とつきあったら、振り回されてボロボロになるのはこっちだから。
 アパートの部屋は散らかりきっていて、まさに修羅場のあとだった。
「なにこれ。またなんか言ったの彼に?」
 いつも咲が彼氏に考え無しなことを言って、彼氏がブチ切れて別れる、というのがパターンだった。咲はソファにうずくまっている。
「……来ないでって、言った」
「なんでよ」
「なんか嫌。嫌なんだもんあの人。臭いし汚いし。もう嫌なんだもん」
 またこれか…

80(小)百合 2/3:02/11/19 20:41
「じゃぁなんで付き合うのよ。毎回いってるけどね、わかんないよ。あんたの行動」
 咲は下を向いて答えない。長い髪の毛で顔が見えなかった。
「…っとに、あんたと別れる男の気持ちがわかるな。なんでそんなに訳分からないことするのよ。付き合ってって言われて付き合ったんでしょ?」
 下を向いてる咲から嗚咽がこぼれてきた。肩が震える。泣いているのか。
「………なんでぇ…なんで分かんないの?あたし分かりやすいじゃない」
涙をぬぐうことなく、咲が私を悲しげに見つめる。
「もう嫌なんだもん。こんなの…全然、意味ない。あたしダメだ、もう!」
 いつもの愚痴と様子が違うように思った。私は咲のそばにいってしゃがみこみ、顔をのぞきこむ。咲は子供みたいに、泣くのを堪えてた。「…咲?」
「……あたし綾がいい。男とセックスするときも綾のこと考えてできないんだもん。馬鹿みたい、嫌だよ。こんなの。綾ごめん…ごめんね……」
 声は涙まじりだった。私はただもうびっくりして、咲のつむじを眺めていた。


81(小)百合 3/3:02/11/19 20:43
 咲が私をそう思っていてくれたことに私は気付かなかった。正直とまどってしまった。どうしたらいいのか分からなくて、言葉が見つからない。
 ああ、でも正直に嬉しいと思った。そういう思いが確かに胸のなかにあって、嫌悪感がない。それが不思議だ。思うままに咲を抱きしめると、体がビクンとこわばったのが分かった。
「…あったかいね」体温が伝わる。腕の中で咲が震えているのがわかる。「ずっと悩んでたんだ?…馬鹿」少しだけ泣き声が大きくなる。咲の腕がすがりついてくる。
 可愛いなぁ…私はこんな咲だからずっと離れられなかったんだ。
 きっとどんなメチャメチャなことする咲でも最後にはゆるしてしまう。
「キスしてもいい?」私からの言葉に咲のほうが驚いて顔をあげた。
 私は咲とおでこをくっつける。咲の返事を待たないで、その鼻にキスをする。そして唇に。咲の柔らかさ、熱、涙の味に、私は欲情する。なんだか予想外の事態になったなぁと思いながら、それでも嫌じゃない自分がおかしくて笑えてしまう。
 やがて咲の舌が私の舌にからみ、キスは熱を帯び始めた。


82:02/11/19 20:59
葛藤、が書ききれなかった…。
技術が情熱に追いつかないままですた。
83春巻 ◆HalmaktUZk :02/11/21 21:19
思うに、それはポストハーヴェストの問題ね。ミチルは微笑んだ。

ミチルは気が触れていた。
中学の頃からだろうか?彼女は天才児と呼ばれる少女だったが、それが災い
したのであろう、大人の女性になる頃には散文的な振る舞いをくり返し、
親戚を困らせては入退院をさせられていた。もちろん社会に飛び立つことも
なく、ただつまらい日常に投石をしているワケだ。彼女は私にしか心を
開かなかった。真顔でワケわからん事を言われるのには困惑するけど、私に
しか話をしないところを見るに、しおらしくて切なくて。やがて私はミチルに
愛を錯覚した。求められるがまま、全てを許してしまったのである。

今は回顧することしか許されない。
もし君がミチルに会うことがあったのならば、伝えてほしい。
今でも愛していると。
>82
短いながらも割と面白かった。
できれば、この2人のその後が読みたい、かな。
>>79-81はその前後(とくに前)を書き足すとかなり良くなりそうな予感。
86名無し物書き@推敲中?:02/11/28 18:19
>>77
漏れは女っすよ。
87お歳暮:02/11/30 01:49
私は公立では珍しいエスカレーター式の大学院に通っている
同じ学び舎にううん同じ敷地にずっと離れずそばにいてほしい心の友がいる
いくらそう思っていても恋人とはまだ言えない。
なにをためらっているのだろう?同じ女性だから?
そんなのはへっちゃら 好きになった人が女性だっただけ無問題無問題
 やっぱり年齢の差? 関係なくもないけどしいていえば職種の違いすぎるからだろうか
なにせ彼女は保育園児の年長さんで私は二十歳過ぎの大学院生・・・・・
だからその何て言おうか倫理感が私をためらわせているのかもしれない
この場を借りて誓います。来年の四月こそは彼女に私の気持ちをカムアウトするという事を
あと数ヶ月で彼女は飛び級する予定らしい
しかもたんなる飛び級ではなく小中高大を通り越して大学院に進学。
そうなれば晴れて同じ職業になれると言うわけ
もしかして超神童児な彼女のこと私の想いなんてとおに見透かされていて
そんな大英断してくれたのかな?4月までクリスマスお正月バレインタインデーの
数々のイベントに彼女の方から・・・なんてあったら即刻返事してここでの誓いを破っちゃいます。
>>87
ワラタ
89お歳暮:02/11/30 03:15
>>88
サンキュー。
90名無し物書き@推敲中?:02/11/30 16:16
>>87
いい。なんか設定には無理あるような気がするけど
面白かった。テンポ的にも。
ageてしまつた…スマソ
92 :02/11/30 18:27
◆◆◆2ちゃんねる住民調査実施中◆◆◆

・アンケートフォーム
http://cgi.din.or.jp/~norihide/cgi-bin/2ch2/2form.html

2ちゃんねるをテーマにした「論文」を書いています。
(先行研究→http://www5.airnet.ne.jp/umakoya/2chtext.html
その過程で「2ちゃんねら〜」の実態に興味が湧き、
アンケート調査を敢行することにいたしました。
個人情報が外部に漏れることはありません。
2ch利用者の方は一人一回のみ、全16問のアンケートにご協力ください。
データ収集期間は11月30日-12月1日の予定です。

なお2ch全体から、広く、偏りの無いデータを集めたいと考えています。
もしよろしければこのアンケートの存在を、
2chの各板・スレッドに宣伝して頂ければ幸いです。
みなさまのご協力よろしくお願いいたします。
保守。
94名無し物書き@推敲中?:02/12/12 17:23
保守age
9550:02/12/24 13:06
えーと、ご無沙汰ですが新しいの書きました。
それから、挿絵つきです。
http://atonet.s1.x-beat.com/noel.html
出来ればトップから見ていっていただきたいです。
http://atonet.s1.x-beat.com/main.html
後、出来ましたら、感想など(絵のほうの感想も)いただけると嬉しいです。
http://atonet.s1.x-beat.com/rubbs/Lily.html
漏れも百合小説書いてみようとしたんだが
BLでもただの恋愛小説の女を男に変えただけのようなやつばっかり
って言われるように、ただ性別変えただけの恋愛小説なんだよな。
同性を愛した葛藤なら受けのいい男同士にするし。
97名無し物書き@推敲中?:03/01/02 02:57
あけおめことよろ♪
98名無し物書き@推敲中?:03/01/02 03:13
25歳。
去年まで金無し君だったけど、オンラインカジノとパチンコで
二年で350万貯めた。一度やってみなよ。
初回のみだけど、1ドル以上のチップを買えば30ドル(4000円くらい)貰える。
もらうだけもらってプレイせずに換金することもできるし、ルーレットで赤か黒に
思い切って賭けてしまえば50パーセントで二倍になる。
金なきゃオフラインでゲームすればいいだけ。暇つぶしになる。
ビデオポーカーとかスロとか色々あるのでマジでお勧め。
http://www.imperialcasino.com/~1j4z/japanese/
99母娘相姦:03/01/05 12:23
100名無し物書き@推敲中?:03/01/05 14:33
101山崎渉:03/01/06 15:54
(^^) 
102名無し物書き@推敲中?:03/01/11 17:10
age
103保守:03/01/11 19:02
保守
104山崎渉:03/01/19 03:39
(^^)
105(小)百合:03/02/02 18:00
また作ってみますた。
ちょっと長いです。


「やだよ」
声は涙を含んでわずかに震える。
その瞬間に目の前で唯の手が固まって、そしてゆっくりと離れていった。
スローモーションのように。

怖い、唯に、触れられるのが。
今唯の手が頬に触れてしまったら、頭の中が壊れてしまうような気がする。
そしたらどうなるのか分からなかった。
唯とどうなってしまうのか分からなかった。

「うん。ごめんね」
拍子抜けするくらいにあっさりと、唯がそういって肩をすくめて笑った。
困ったように笑いながら、私にティッシュケースを渡してくれた。
「泣かせるつもりなかったの」
それを見て、ようやく自分が泣いていることに気がついた。
目の奥がやけに熱かったのは、混乱してるからじゃなくて泣いていたからか。
子供みたいにただ泣く自分が情けなくて、でもどうしようもなくて、
受け取ったティッシュを何枚も何枚も目に当てていたけれど止まらなかった。
鼻水もでてきた。ひゃっくりも。
こんなのを好きだという唯に申し訳ないような気がしてきた。
そして唯のことを思ってまた泣けた。
106(小)百合:03/02/02 18:04

「ごめんね」
もう一度、ぽとりと落ちてきた唯の声に、唯の方をみた。
「ちゃんと鼻かみなさいってば」
笑いをこらえたような顔をして、私の涙を指の腹でふき取る。
「あーあ、失敗しちゃったなぁ」
クスクス笑って、反対側の目も拭いてくれる。
笑って、ない。
唯の目はずっと前から静か過ぎる。
「急に言ったから混乱させたよねー?ごめんごめん。忘れて」
「………」
「変だよね、あたし。今日なんかおかしいんだよ。いろいろあったからかな」
「…………」
「ねね、もうあんなこと言わないから、泉美」
「……いつから?」
 いきなりしゃべったからか、唯の瞳がわずかに戸惑いを含んで見開いた。
「いつからあんなこと思ってたの?」
「……………去年、の、夏、かな」
「ちょうどバイトで逢ったころじゃん」
「……うん」
隕石みたいな塊が振ってきて、胸に直撃した感じがした。
そしてそのまま胸にごろごろと隕石が残る。
時計の針のふれる音が、二人の沈黙に、かちかちと響く。
「……ぃ…ひどいよ……ゆい」
「………」
「親友だと思ってたの、あたしだけ?」
「泉美」
「なんで…キスしたいなんて言うの?変だよ」
「……」
「変だよ…」
107(小)百合:03/02/02 18:12

この言葉が、ナイフになって唯の心臓を一番ひどくえぐってしまうだろうと思った。
ひどいのは唯じゃなくて私の方だ。
唯はずっと優しく私のそばにいて、最高の親友であり続けた。
私は甘え続けた。
今も、唯の指が白くなって、震えないようにソファーをつかんでるのに、
泣かないようにしてるのを気づいているのに。
「……ごめんね」
やっぱり静かに、そういう言葉が返ってきた。
「親友だって、あたしも思ってるよ。騙そうとか、思ってないよ」
わかってる、わかってる、わかってるよ、唯。
でも体が動かなかった。強張ってしまって、情けないほど、硬直していた。
しばらく、唯は黙っていた。そして口を開いた。
「……やっぱり、バカなことしちゃったなぁ。帰った方がいい、よね」
胸の中の塊が、ビリビリ痺れる。
何か、言わないと帰ると理解してながら、何も言葉がでてこない。
目の前から、唯が立ち去ってしまう。
ソファーから唯が帰り支度をするために腰をあげたのが見えて、とっさに何を思ったのか、
実際無意識に、唯の白い巻きスカートの裾を、掴んだ。
「いっ一回だけなら、いい」
自分の口から出た言葉が一番自分でびっくりした。
思わず、口があけたままになっていた。
唯もあまりに突拍子もない言動に、固まっていた。
108(小)百合:03/02/02 18:36
「泉美?」
立ち上がったのを、もう一度私の前にしゃがみこんで、苦笑交じりに唯が私の目を見つめる。
「変な無理しないでいいってば」
「……これで決着、つけよ?唯も…」
唯の表情から、苦笑が一気にひいてゆく。私も、真面目に唯をみた、
そうだ、唯はずっと気持ちを殺して私のそばにいたんだから、私は、
少しだけでも唯の希望をかなえてあげよう。
そうすることしかできないなら。
「……本当に、するよ?」
「…うん」
さっきは拒んだ唯の手が近づいてくる。そして今度はちゃんと、私の頬に届いた。
少し冷たくて、そこから体に電気が走ったように、ビリビリと体の奥がしびれる。
思わず目をつぶった。
「泉美」
いつも呼ばれる名まえが、不思議なほど耳に響く。
レモンの匂いがするのは、いつも唯が使ってるリップクリームのせいかな。
そう思ってるうちに、唯の息がすぐ近くにあるのを感じた。
いつも傍にいたのに、キスするのは初めてなんだと思った。
そんなのは当たり前なんだけれど、なんでも分かってたつもりだった唯が
全然知らない人に思えて、少し怖い半面で、胸が熱くなるような気がして、唯の気持ちが少しだけ分かるように思った。
そう思っていたときに、重なっている唯の唇がゆっくりと開いて、舌が唇に触れた。
舌?!全然予想していなかった展開に混乱してしまい、半開きになってしまった唇から、
するりと簡単に唯の舌が侵入してくる。
109鬼百合:03/02/02 18:43
さいきんは下げ方も知らない娘がいるんだねえ。
どうしてほしいの?
みんなにみられたいの?
じゃあ、ずうっとあげつづけてやるよ。
開いてごらん。
そう。
そうじゃないよ。
もっと、こうやって、ひらくんだよう!
110(小)百合:03/02/02 18:54
「あ…わ、ゆいっ?」
声をあげると小さく笑ったように見えた。
唯の舌が、反論しようとする私の舌を絡めとってしまう。
ぬるぬるした舌が、私の口の中をかき回す。息ができなくて、苦しいのに、身体の奥が
どんどん熱くなって、熱が頭をめちゃめちゃにする。
「…ふぁ、……ャ…やぁ、あ……」
くちゅくちゅ、という音がぼんやりと届く。もう頭の奥がじりじり焦げるように熱くて、
舌を絡ませているのは唯なのか、自分なのか分からなくなってきた。
身体の力が全部なくなる。
ずっとこうしててもいいな、って思うくらい熱い体が気持ちいい。
どれくらいそうしてたのか分からない。身体の感覚が全部消えてたから。
そして、唯のくちびるが、糸をひいて私の唇から離れた。
唾液が唇からこぼれて、唯がもう一度唇でそれを啜ってくれる。
「はい、ありがとうね」
いたずらっぽく笑う唯の顔が、ぼんやり霞んで見える。
ずるい。私は笑う力ももうなくなっちゃってるのに。
「あ。もう帰る。そこのバスもうすぐ来る時間だわ」
「…………ばかぁ…」
「ん、何?泉美」
「………」
腰がたたなくなって、いつものように玄関まで見送れない。
そんな私を見通してふと、唯が子供にするみたいに私の髪をくしゃくしゃと撫でた。
「じゃぁね」
何を考えてるのか、大体わかる。唯の含み笑いがすこし憎い反面、憎めない自分がいる。
ぱたぱたと慌しい足音のあと、玄関が閉まる音がした。
一人きりになってしまって、部屋はさっきより静かになる。
うるさいのは心臓だけだ。
「……あー」
自己嫌悪が押し寄せてきて、ソファに顔をうずめる。じんじん熱い顔を。
問題は、多分、気持ちよかったことかもしれない。

111:03/02/02 18:57
>>109
失礼した。
age続けるべきでなかったようですね。
新作できたから浮かれてたようです(鬱
もうageません。
つーかもう来ません、さいなら。
お目汚しすまぬ皆様。
112:03/02/02 18:59
ってさっそくageてるしーーー!!!!
馬鹿か自分!!


鬱悪化。回線切って首(略
>蛸さん
行かないで〜(滝汗焦
もう何か、劇中キャラと心境的にリンクしまくった発言ですが
スカートの裾引っ掴ませて頂きますっ(がしっ)

もーこーゆーの弱いんすよ〜、勘弁して下さいぃ〜(骨抜き状態ですわ)
人並みに「同性愛」に抵抗ある娘が、告られた事をきっかけに
自分自身の秘めた想いに気付いて思いっきり戸惑い、状況に
流されてしまうシチュ(‥で、いいんです、よね?)
リリカルな言葉使いと相まって‥


魂抜けますなぁ
小説の一番美味しい部分だけ読んでるみたいで
何か凄く勿体無い感じの読後感なんですけど、
続きが気になる〜‥続編切に規模‥ぷりぃず〜‥
114名無し物書き@推敲中?:03/03/03 10:25
保守age
俺はMIKUMIでこの世界にはまったな。
ttp://sx.sakura.ne.jp/~mosir/hure/TeaPot/org/mikumi/mikumi_01.html
ここなんかモー娘。レズものばっかで月に50本近くあるぞ。百合が需要ないなんて
とても思えない。
http://m-seek.on.arena.ne.jp/cgi-bin/headline2.cgi
117名無し物書き@推敲中?:03/03/16 16:43
春一番保守
118(^^):03/04/08 03:12
(^^)
119山崎渉:03/04/20 02:09
   ∧_∧
  (  ^^ )< ぬるぽ(^^)
百合専門誌創刊!? 以下、コピペ。

マガジン・マガジンさん発行の女性向けゲーム専門誌である「ゲームピアス」のVOL.7誌上に掲載された同社の広告によりますと、
2003年の夏に同社の方から「百合姉妹」というガールズラブ専門誌が創刊されるようです。
詳しくはその「ゲームピアス」のVOL.7誌上に掲載された同社の「百合姉妹」の広告(146ページ)をご覧下さい。
121名無し物書き@推敲中?:03/05/07 13:15
つくりましょ
122山崎渉:03/05/22 02:57
━―━―━―━―━―━―━―━―━[JR山崎駅(^^)]━―━―━―━―━―━―━―━―━―
123名無し物書き@推敲中?:03/05/25 02:16
楽しみですね。
「百合姉妹」
124山崎渉:03/05/28 10:28
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎――◎                      山崎渉
125名無し物書き@推敲中?:03/06/05 21:53
        ∧_∧
      ヽ(・ω・)丿 
    .  へ/  /
       ●ゝッパ
    ∧_∧ ッパシャ ッパシャ
   (   )】 
.   /  /┘
  ノ ̄ゝ
126タトゥって百合っしょ?:03/06/06 13:40
127名無し物書き@推敲中?:03/06/06 14:04
おおおおおお!ナイス!!!!!!
128名無し物書き@推敲中?:03/06/07 00:10
神降臨アゲ
129名無し物書き@推敲中?:03/06/09 04:29
この二人のレズシーン。。。。
http://comic3.2ch.net/test/read.cgi/x3/1053821955/

シャア専用classic掲示板のスレッドですが、いっぱいいっぱいです。
もしガンダムに興味があって神になりたいけど・・・っていう百合職人さんがいたら是非降臨して下さい。
130名無し物書き@推敲中?:03/06/10 08:40
百合百合〜
131名無し物書き@推敲中?:03/06/17 20:43
官能小説の新刊情報を中心に配信しているメールマガジンです。
WEB系、出版系なんでもあり。
出版社発では流れないような情報もお手元に! 隔日で配信中

http://amds.jp/magazine/722.html

携帯電話では

http://amds.jp/magazine/1225.html
132110:03/06/17 21:36
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133スマイルα:03/06/17 21:52
134名無し物書き@推敲中?:03/06/21 21:39
終わりまちた。
NHKのスーフリ関係者から不謹慎な書き込み
問い合わせのメールにご協力を

402 :番組の途中ですが名無しです :03/06/21 20:03 ID:9getTmfX
「NHKへのご意見・お問い合わせ」
https://www.nhk.or.jp/plaza/mail/index.html
に、通報しといた。内容は次の通り。
件名:御社DNS経由での悪質な書き込み

ご担当者様
突然のメール、大変失礼致します。
さて、標題の通り、下記掲示板において御社DNS経由での悪質な
書き込みがありました。
http://ibbs.cybercity.ne.jp/ibbs.pl?user=superfre
の409番で、本日17:27に書き込まれたものです。
IPアドレスが「133.127.68.68」となっておりますが、
これの意味するところは
1.貴協会のパソコンから、何者かが書き込んだ
2.悪意ある何者かが貴協会のサーバーに不正アクセスし、書き込んだ
のいずれかだと思います。
書き込みの内容が「死ねよ」という悪質なものであり、過去に同様の
行為をした人間が脅迫罪の実刑判決を受けたという前例もあります。
早急に原因を調査し、対応頂ければ幸いです。

136名無し物書き@推敲中?:03/07/04 08:17

137名無し物書き@推敲中?:03/07/05 21:00
無名だけどいい小説サイトスレにでてた
ttp://www.denpan.org/
の小説のとこに百合あった
138名無し物書き@推敲中?:03/07/10 20:48
保守
139_:03/07/10 20:52
140山崎 渉:03/07/12 11:01

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
141山崎 渉:03/07/15 12:03

 __∧_∧_
 |(  ^^ )| <寝るぽ(^^)
 |\⌒⌒⌒\
 \ |⌒⌒⌒~|         山崎渉
   ~ ̄ ̄ ̄ ̄
遅レスながらも。
>>95 萌えと言っておきますか。ポ
折角だからこっちにも貼ってみる

http://www2.bbspink.com/test/read.cgi/erog/983906331/467-
>143
まだ.docにコピペ作業途中だが、
2chに張るにしてはすげぇ大作だなぁ。
ほしゅ
146山崎 渉:03/08/02 01:20
(^^)
保守
148山崎 渉:03/08/15 13:12
    (⌒V⌒)
   │ ^ ^ │<これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  ⊂|    |つ
   (_)(_)                      山崎パン
149名無し物書き@推敲中?:03/08/19 08:59
あげ
保守
151名無し物書き@推敲中?:03/09/05 18:29
age
152名無し物書き@推敲中?:03/09/05 22:46
百合ってさー
行為ばっかしで
頭悪そーなのなー。
くちゃくちゃ、くにゅくにゅ。
おまいら、そればっかしじゃん。
要するに、
想像力がないのな。ゲイのくせに。
153名無し物書き@推敲中?:03/09/06 23:34
くちゅ区チュ
想像力とゲイは何か関係あるというのかい?
君、それは違うだろう。
人の感情と能力とは、何も繋がりはないのではないか。

>>154
ゲイならもっと想像力あるだろうと言いたいんでない?
ノンケが僻んでんだよ。
ノンケとも限らない。
あるいは自虐か。それはわからない。
わかるのは彼が、おそらく何か別のものを見ているのだろう、ということ。
とはいえ、我々が彼に関わるのはあまりよろしくないと思う。
それはいたづらに彼を貶めてしまうことにもなるから。

ところでいわゆるライトの話と、暗い、シリアスな話。
君たちはどちらを読みたい? 
いや、必ずしも期待に添えるわけではないが努力をしてみようと思う。
その方向性について助力を求めているのだ。
>>156
悩むね。
リアルな方向だと気持ち悪いって言われるし、
ライトにしちゃうとファンタジーになっちゃうし。
まあ、個人的にはクイアーな恋愛というのが好きだから、
リアルでシリアスな話かな?

でも読み手は綺麗な可愛い百合を求めてる気がする。
保守します
159名無し物書き@推敲中?:03/09/21 03:44
<ホモは女脳、レズは男脳らしい>

最新の研究では、レズの脳は異性の男性のような思考をし、ホモは異性の女性のような
思考をするようです。実験は、様々なタスクを被験者に行なってもらう形式で行われ、
結果、異性の男性が上手くできる事をホモは結果が悪く、異性の女性が上手くできる
事が、レズの女性には上手く出来なかったとしています。26 March, 2003

Gay men's brains work like women's, study says(英語)
http://uk.gay.com/headlines/4032
モーニング娘。のファンフィクなんてほぼ百合じゃん?

でも、娘。以外の題材書かないよなー、あいつら。

まぁ、人物説明とか特にしなくても名前だせばオッケーだし
ファンフィクは楽だからなー。
しょうがないか。

日本のテレビドラマもアメリカみたいに長いのやってくんねーかな。
バフィーみたいなやつ。
↑このひとの文章はすぐわかる(たぶん)。エロ表現がもんのすごく上手だ。
でも残念だけど、自分にはこれだけだとキャラに感情移入ができない。
わかりますか。アソコの写真だけ見せられているようなものです。
ふだんはこんな女の子なんだけど、それがどんなふうに乱れていくのか。
あるいは、「わたし」はなぜ優凛子を好きになったのか。
優凛子の魅力はただ美人なだけではつまらない。
その辺も読んでみたい。
でもエロ描写は、オヤジ小説のようにいやらしく濃厚に。
だけど全体が読み物として完成されているものが読みたい(書いてみたい)。
片方が実は男でしたってのは百合にはならないんだよね。
シチュエーションとしては「男でした」ってのがマイナスになることはあるよ。そりゃもちろん。
読み手のこだわり、ポリシーとかいったものもあるし。百合好きには「男など認めん!」という人もいるから。

個人的には「男でした」は、男のイメージに持っていきたいときに使われるからあまり好きじゃない。
それまで女だった人が、女要素を捨て去って男に変わる、というのが大半だから。
その逆だと面白いものが書けそうだね( ̄ー ̄)ニヤリ
すまない。
その逆と聞いて、「一見硬派な男が実はオカマさん」というのが頭に浮かんでしまった。
げろ。いや、そんなオカマは綺麗じゃないとかそういうわけじゃないが・・・。
ただ最初が男しすぎたら、女要素の意味が薄れるなあ、という戯言。

ところで、恋愛感情のないものは百合と呼ばないのかな。
恋愛感情っていっても一言じゃいえないけど、たとえお互いに恋人がいても、
触れ合えば自然と接吻し、抱き合える仲って感じかな。好き、愛しているという言葉を躊躇いなく
言えるような。
恋愛感情がなければポルノになる。
さぶ小説は、女の子が書いても小ジュネには
決して採用されない。
でも最後の一文はどう考えても恋愛感情ありだけどね。
セックスと裸がなければポルノでないと思うけど・・・。チガウカモ(・Ф・)
好きとか愛しているとかは、まあ仲のいいもの同士でもいうから。
家族とか親友とか先生とか。
こんな話はどうかな。

レズの女殺し屋が、護送中、若い女刑事と手錠でつながったまま逃走する話。
途中、殺し屋は何者かに命を狙われる。
なんとか逃げ延びるふたり。
拳銃の弾は使い切ってしまい、手錠は外れない。
その後もつけ狙われるのだが、協力して戦ううちに
しだいに打ち解けあうふたり。
やがて女殺し屋は、刑事にレズを挑む。
女殺し屋は、実は左利きをよそおったで右利きで
利き手が不自由な刑事の方が圧倒的不利。当然、イカされまくる。
その後、殺し屋は事件の背後には、謎の死を遂げた刑事の姉にも
深い関わりのある巨悪が隠されていてることを告げる。
しかも手錠の鍵は運悪く本物の悪者たちが持っていた。
そこで途中から女刑事も一緒に協力することを決意する。
次々と明るみになる真実と姉の死の謎。
そして殺し屋のもうひとつの目的とは。
どんでんがえし。
女刑事はしだいに殺し屋に惹かれていき……

映画みたい。漏れに本格小説なんて書けるわけないかw。
>>169
とりあえずナオミ・ワッツ(刑事)とA・ジョリー(殺し屋)で映画化希望
殺し屋は、刑事の姉と元レズ関係。
姉そっくりな妹を好きになってしまったのは計算外。
実は、命を狙われていたのは妹(刑事)の方で
彼女を守るのが目的だったという落ち。
.
             
百合はソフトなイメージがある。
レズビアンはハードなイメージがある。
エスは中間か?
 海岸の町に越してきた梨衣芙(りいふ)が、中学校が終わるとすぐその浜に向かうのに
は訳があった。
 そこは若者たちが波乗りに興じる浜であったが、幾重にも押し寄せるビーチブレークの
波にひときわ美しいマニューバを刻むその女の子を、砂浜に腰掛けて遠くから見ているの
が好きだったからだ。
「いつも来ているのね。でもどうしてあなたは入らないの……」
 1ラウンドを終え、浜にあがってきた彼女に優しくほほ笑みかけられたとき、梨衣芙は
はじめてま近に見た彼女の形容のしがたい美しさに胸を燃え上がらせた。
「あ、あの、そのぉ……ファンだったから……」
 まだあどけなさの残る顔立ちを真っ赤にさせながら、しどろもどろに答える梨衣芙をク
スッと笑い、彼女……汐緒美(しおみ)は梨衣芙を妹みたいに可愛い娘だなと思った。
 それがきっかけとなり、運動音痴でスポーツなどしたことのない梨衣芙が波乗りを始め
たのが3ヵ月前のことだった。
 春先の水はまだ冷たかったが、今年で18になる汐緒美が、梨衣芙と同い年のときオーダ
ーしたフルスーツはほどよく縮んで、14歳でもこがらな梨衣芙にはぴったりだった。
 板だけはいいものをと、汐緒美が知り合いのシェーパーに頼みこんで、格安で手に入れ
たものである。
 初日の梨衣芙の成果は、たらふく海の水を飲んだことだった。
 でも、憧れの女性といれると思うと友達を作るのが下手くそで、ずっと淋しい想いをし
てきた女の子は胸を弾ませていた。
 海からの帰り道、ふたりならんで板を脇に抱え、裸足でアスファルトを歩きながら、こ
れからはいっしょに海に入ろうねと汐緒美が約束してくれたからである。
 歩道に映るふたりの影が長かった。
「いやぁぁんっ……た、助けてーっ」
 おんぼろアパートの自分の部屋からなさけない悲鳴がして、ウェットのまま外で一服を
していた汐緒美は、何事かと風呂場に駆け込んだ。
「ど、どうしたのっ……」
 戸を開けた汐緒美は、一瞬浴室の床に転がるそのぶざまな物体に言葉を失った。
「な、何やってんの、梨衣芙ちゃん……」
「ごめんなさいっ……脱げなくなっちゃったんですぅ、助けてっ……」
 おだんごみたいにぐるぐる巻きになったウェットの袖や足に、両手と両足の自由を奪わ
れて、半べそ状態で裸体を丸めている女の子が申し訳なさそうに言った。
 しばらくしてアパートの外にまで爆笑がとどろいた。
「んもう……いい、こうやって脱ぐのよ……」
 ようやく発作がおさまると、汐緒美は足元の梨衣芙を見おろして背中のチャックに手を
かけた。
 身体にぴったりと貼りついたまっ黒なウェットが、つるつると魔法のように剥かれてい
くのを、ただぽかーんと眺めていた梨衣芙だったが、その下から現れた裸体の美女には息
を飲んだ。
 汐緒美が自信に満ちたほこらしい肉体を隠そうとすらしないのを盗み見て、まだ薄毛に
も飾られてもいない梨衣芙のさくら貝は、わずかだがねっとりとした恥蜜を吐いていた。
「もう……普通は手からなんだけど、これじゃあ無理だわ……まず足からね」
「お願いします……あんっ……あっ……」
 小さな身体は、あおむけになり、裏返され、四つんばいされて、けっきょく梨衣芙は、
可愛らしい割れ目はおろか、お尻の穴まで憧れのお姉さまに見られ、14歳のオールヌード
をさらすはめになる。
 汐緒美の均整のとれた身体に、いまだに残る去年の日焼けあとが少女から見てもエロチ
ックだった。
 もともと汐緒美は東京に住む高校生だった。海と波乗りをこよなく愛する彼女は、二年
前、裕福な家庭を捨て、名門の女子校も辞めてこの町に引っ越してきたのである。
 地元の製パン工場の仕事は、安月給だったが、早朝と夕方、海に入る時間を最優先にで
きるのが何よりも都合がよかった。
 汐緒美が波を乗りこなすセンスは格別だった。地元のローカルたちからも一目おかれ、
女の子サーファーたちからまで情景のまなざしを注がれていた。彼女たちのなかから想い
を告白されたことも珍しくない。それに活発な性格の持ち主だったから友だちもたくさん
いた。
 でも汐緒美は、波乗りが恋人だと言って、どんなに言い寄られても特別の関係を作ろう
とはしない。
 今度となりの県で催される大会に優勝すれば、スポンサーがつく念願の‘ライダー’に
仲間入りできることになっている。憧れのプロサーファーへの登竜門。
 朝晩の練習にはいちだんと熱がはいったが、新しくできたおっちょこちょいの妹の存在
には心が癒された。
「同じ美容院で、お姉さまと同じ髪型にしてもらったんですよ……似合うかな……」
 二日目にはみかみながら待ち合わせ場所の、砂浜に陸揚げされた漁船の前に現れたとき
の、あの人なつっこい笑顔を見ると、ギュッと抱きしめたくなるぐらいだった。
 その次の日から、梨衣芙が自分の分といっしょに作って毎朝、差し入れてくれるお弁当
は、おせじにも上手とは言えなかったが、愛情だけはありあまるほど詰まっていた。
×二日目にはみかみながら
○二日目にはにかみながら
 梨衣芙は寂しがり屋だった。ドジで間抜けで引っ込み思案。両親の都合で繰り返す転校
はもうこれで最後にして欲しい。
 でもお姉さまができてからは、少しだが性格が明るくなったと自分では思っている。だ
が臆病なのだけはどうにも治らない。
 後ろからやってくる三角波。
「ほらっ、そこでフルパドルっ……ゴー、ゴー、ゴーっ……」
「はいっ…………ああっん」
 海底に立つ汐緒美に板を押してもらって、後ろから盛り上がってくる水面を走らせ始め
たものの、スタンドアップが遅れた梨衣芙の身体は、せり立ったカールに飲み込まれ、上
か下かもわからなくなるほど水のなかを回転していた。
 波に置いていかれるときはまだいいのだが、タイミングが間に合わず切り立った波の頂
点から真下に見おろす水面は、二階の屋根から見る景色にも見えた。怖くてとても立てな
い。
「ご、ごめんなさいっ……」
「ううーん……始めのうちは怖いのはわかるんだけど、ここいちばんっていう大事なとき
には、勇気をださなくっちゃ……ほら、腹ばいっ」
 つぎの波に果敢にチャージする小さな身体は、またしても水中に没していた。
「あちゃ……」
 残された板だけがロケットのように空中に発射されるのを見て、汐緒美はため息をつい
た。
 何日たっても梨衣芙のテイクオフはままならなかったが、大好きなお姉さまと水の中で
過ごす時間は、何よりも幸せだった。
 波乗り授業料は、うるさい父親との約束で週一度実家に帰らなければならない汐緒美の
代わりに彼女のアパートに泊り、飼いネコのタマと熱帯魚たちにエサをやることだった。
 独り寝はさみしかったが、シーツにたっぷりとしみ込んだお姉さまの甘い匂いに包まれ
てするオナニーはいつもよりイキかたが激しかった。
 この日もいろんなポーズを取っては独りっきりのお楽しみにいそしんだ。
「あんっ……あっ……いやっん、いいっ……オナニー、いいっ……」
 少女は、シーツのうえで下肢を深く折り曲げて、M字の中心部に指を遊ばせる。全裸の
大胆なポーズ。
 片手で花びらを割り、小さな小さな真珠を指のなかでいつまでも転げまわした。
「あっ……お姉さまっ、そんなとこっ、ぬるぬるにされたら梨衣芙、恥ずかしいっ……う
うんっ……」
 梨衣芙は、顔をまっ赤にさせ、目をきつくつむっている。
 小さいころから空想好きの少女は、妄想のなか、尊敬するお姉さまに犯されていた。
 ベッドのへりにかけた汐緒美のひざに前向きに乗り、小さなつぼみを弄ばれている。
『うふふっ……そんなに恥ずかしいんだ……じゃあ、恥ずかしいのも忘れさせてあげるね
……ほらっ、ここで……』
 したたり始めた恥水がお尻の穴にまで到達すると、お姉さまのものと見立てたもう一方
の手指で愛らしいすぼまりに塗り込めにかかる。
 知り尽くした自分の肉体。前の突起や入り口だけでなく、ここをいっしょにいじると気
持ちがいいことは、小学生のころから知っていた。
 細長いなか指を愛くるしいおちょぼ口がつるりと飲み込んだ。
「んあっ……いいっ……お尻、いいっ……お姉さまっ、両方いたずらされたら、梨衣芙は
おかしくなっちゃうよぅ……」
 前をいじりまわすリズムに合わせて、後ろの粘膜を出し入れすると14歳の蒼い肉体を官
能の炎がくるんだ。まるまっちいお尻が勝手にうねりだす。
『ねえ、梨衣芙ちゃんのアソコ、見てもいい……前からどんな可愛らしいのがついてるの
か見てみたかったの……うふふ』
 汐緒美がベッドに梨衣芙をねそべらせた。上からぐいとひざを小さな乳房のほうに曲げ
る。
 まんぐりポーズに固められた少女が首をいやいやする。
「いやっ……お姉さまは見たらだめっ……」
「まあっ……顔も子供だと思ったら、アソコも子供なんだぁ……中2にもなって、まだ毛
も生えてないなんて……ほんとに可愛いんだから……」
 汐緒美は笑いながら貝と顔とを見比べている。
「ひ、ひどいっ……お姉さまなんか嫌いっ……」
 恥ずかしさのあまり梨衣芙は泣き出してしまった。はやく大人になりたい。
「ご、ごめんね……梨衣芙ちゃん……お姉さんが悪かった。だってあんまりにも可愛いん
だもん……」
 やりすぎたことを反省した汐緒美は、抱き起こすと泣きじゃくる梨衣芙を胸にくるんだ。
「ほんとに泣き虫なんだから……じゃあ、いっしょに気持ち良くなろうか、あれで……」
「う、うん……」
 汐緒美は、梨衣芙を組み敷くとほほの涙を舌でぬぐった。秘貝を秘貝に合わせていく。
 梨衣芙は、女の子のいちばん気持ちいい部分を、世界でいちばん好きなひとの同じ部分
に摺り立てられる甘美を想像した。以前、少女向けの雑誌でこっそりと読みふけった知識
である。
「梨衣芙ちゃんも合わせてっ……ほらっ……ほらっ……」
「はいっ……お姉さまっ……素敵っ……ああっ……ああっ……」
 現実の梨衣芙は、性器の縦割れに手のひらでふたをして擦りたてていた。快感に眉根を
ひそめた幼い顔が、いっそう赤くなる。
 小さな身体が強ばった。
「ああっ……イクっ」
 歓びの絶頂の刹那。
 梨衣芙は、洗濯かごから失敬していた汐緒美のパンティを股間に当てると、どぷっと吐
き出したものをそれで受けていた。
「おっはよー。今日の波はひざ腰だからちょうどいいかもよ……」
 アパートに戻る前に波のコンディションを見てきた汐緒美は、あいかわらず明るかった。
 このひとの部屋でオナニーしたんだと思うとドキドキする。
 でも、べとべとに汚してしまったお姉さまの下着は、彼女が帰ってくるまでには、他の
洗濯物といっしょに乾いていたから気づかれてはいないはず。
「ご飯いっぱい食べて今日も頑張るんだよ……」
 ふたりでこしらえた味朝食の噌汁をすする汐緒美の美しい横顔を見ていると、梨衣芙の
胸の想いは募るばかり。
×味朝食の噌汁を
○朝食の味噌汁を
隠語の古くささにちょっと笑ってしまいましたが、
非常に良いと思います。続き期待しています。
>>184さま。
う、うれしぃっ。読んでくださりありがdですぅ〜。
深く考え込まずに、自分の気持ちを素直に書いてみましたっ。
隠語。古くさいですよね。「貝」とか「秘貝」ですよね。あはは……。
ただ、海にまつわる恋物語りなので、「(恥)水」とか「真珠」とか、わざと
海っぽい言葉にしようかな……と考えてみたわけなんです。
も1〜2回ぐらいエッチなシーン(リアル)と、ラストはエッチなしになりそう
なんですが、せっかくいつもよりましに書けそうなので、少し時間をくださいませませ。
 五月に入いった。陽気は少しづつ暖かくなっていたが、潮風はまだ冷たい。
 それまでひとつのものに打ち込んだことのない梨衣芙だが、この頃になるともう、波乗
りの楽しさにすっかり心を奪われていた。立ち乗りでならときどきだが立てるようになっ
てきたからである。
 だが、この日もさんざんパーリングをくらって鼻の痛い梨衣芙は、波のトップに派手な
スプレーを飛ばす汐緒美をうっとりと見つめながら、砂のうえでひざを抱えていた。
 どうしたら大好きなお姉さまにもっと気に入ってもらえるだろう。
 波待ちで板に座りながら男の子と親しそうに話している汐緒美を見て、梨衣芙はその足
で美容院に向かった。男の子みたいな髪型にしてもらおう。
 だが美容師のお姉さんは、鏡のなかの不満そうな少女に「今のままの女の子らしい梨衣
芙ちゃんが一番素敵よ」と言って、なけなしの小遣いを積んでも潮に焼けはじめた梨衣芙
の髪に、はさみを入れようとはしなかった。
 何かプレゼントしようとも思ったが、半年先までのお小遣いは、新しくしつらえた半そ
でシーガルに消えていた。
「お姉さま……梨衣芙のこと、妹だとか教え娘とかじゃなく、ひとりの女の子として見て
欲しいの……す、好きだから……」
 さんざん悩んだあげく梨衣芙は、想いを直接汐緒美にぶつけてみた。これからもずっと
ついていきたい。守って欲しいと。まったく波のない日、ふたりきりで湖のような水面を
眺めて腰かけていた夕方のことである。
「うーん……」
 汐緒美は遠くの夕日を見つめながらしばらく考え込んでいたが、言った。
「じゃあ八月の誕生日までにちゃんとうねりからテイクオフできるようになれたら、一人
前の女の子として見てあげる。それから梨衣芙ちゃんのこと考えてみるわ……」
 いい返事はもらえなかったが、梨衣芙の顔はパッと明るくなった。
「はいっ……頑張りますっ」
 梨衣芙に自信を持たせてやりたかったというのは言い訳で、汐緒美は、そばで犬を散歩
させている男の子がいなければ、小さなくちびるを奪いたくなる寸前だったのを、鈍感な
梨衣芙は気がつかなかった。
 目の前の砂地を、さざ波がおだやかに洗っていた。
 六月。汐緒美がハンドルを握る10年落ちのワゴン車は、開校記念日で学校がお休みの梨
衣芙を乗せ、国道をひた走っていた。
 いつまでたっても上達しない梨衣芙に、気分転換にと別の浜の波を乗らせてやろうと思
いついたのである。
 道路わきの駐車場に車を停め、半そでウェットに着替えたふたりは、板を抱えてどこま
でも続く林のなかを歩いていた。
「ほんとにこんなところに海があるんですかぁ……」
「いいから、いいから。こっちこっち……」
 数分後。梨衣芙の大きな瞳には、ここが日本かと見まごう白砂の美しいビーチが映って
いた。
 誰ひとりいない平日のシークレットビーチで、ふたりは思いっきりオフショアのマシン
ウェーブを楽しんだ。と言っても、汐緒美の華麗なカットバックを尻目に、一本も乗れな
い梨衣芙は、あいかわらず深いため息をつくばかりである。
(いつになったらあたしもあんなふうになれるのかなぁ……)
 だが梨衣芙は、自分が将来コンペティションで汐緒美をおびやかす存在になることをま
だ知らない。
 するとしばらくして汐緒美は、梨衣芙が絶好の波にも乗ろうともせず、赤くなってもじ
もじしているのに気がついた。すぐそばでプルアウトする。
「おしっこ?しちゃいなさいってば、そのままで……」
「ち、ちがうの………な、なんだか、痒いんです………」
「えっ……どこが?」
「…………あ、あそこが……」
 梨衣芙はまっ赤になってうつむいてしまった。
 エビやカニの幼生のようなものが、海流にのってやってくることがある。それがウェッ
トスーツに入りこみ、腋の下や陰部に付着して痒くなることがあるのだ。
「もしかして‘チンクイ’かもよ……それ」
 サーファーたちがそう呼ぶ現象は都会育ちの梨衣芙には初耳だった。
 不安がる梨衣芙に面白くなり、汐緒美はわざと大げさに言っておどかした。
「どうするっ、あれにやられたらアソコがただれて、もうお嫁に行けなくなるんだよっ」
「ええええっ……そ、そんなぁっ。こ、困りますっ。いゃぁぁんっ……」
 真に受けた梨衣芙は泣きだしそうになる。
 いつか好きになる人に捧げるため、ずっと大切に可愛がってきた女の子の宝物。
「はやく治療しなきゃ」と汐緒美に言われて、岸に直行する梨衣芙のパドリングは、汐緒
美がいままでに見たこともない速さだった。
「どれどれ……見せてごらん」
 丸裸で砂浜に寝そべった梨衣芙の両足を、窮屈に折り曲げて汐緒美は覗きこんだ。
 汐緒美が梨衣芙のここを見るのは、はじめてではない。
 あのときウェットを脱がしてやりながら、マシュマロみたいな愛らしさのあまり悪戯し
たくなり、わざと指を当ててやると、何度目かでジュッと潮を吐いたあの割れ目だ。
 相変わらず食べてしまいたくなるような可愛らしいアソコ。まるで白桃のよう。
 汐緒美は誰にも見せたくないと思った。
「ど、どうなってますかぁ……」
「ううん……確かに全体に腫れてる……それに白っぽく膿んでるみたい」
「えええっ……!?」
 慌てふためく梨衣芙は、そこが恋しい女性の視線でそう変化したのだと知らない。
 だが熱を帯びたことでますます募るチクチクを、腰のむずかりが訴えるの見て、
汐緒美は敏感な粘膜を傷つけないよう舌で清めてやることにした。甘ったるい匂いを放ち、
ほころび始めている花弁にそっと唇を寄せていく。


(えっ……!?)
 はじめ梨衣芙は何が起こったのかわからなかった。
 女の子のいのちとも言える部分を、生温かい感触で逆撫でにされているのを感じて、
ビクンと震えた。
 ここ数ヵ月、一日も欠かすことなくお姉さまを想いながらいじってきた場所。
 だが、心から敬愛するそのお姉さまが、自分のそこに顔を埋めているのを見たときには、
すでに梨衣芙は目も眩むようなうねりに飲み込まれていた。
「はうっ……くっ……」
 アソコが熱い。ここが自分のアソコだとは信じられないぐらいに燃えあがっている。
「痒いところ、言ってごらん……」と言われ、ここもお願い…とむず痒い部分を自分から
舌に擦りつけていく。
 梨衣芙が真っ赤になってブルブル震えだしたのは、いちばん痒い場所が女の子の真珠
だったからだ。
 汐緒美は、小さな割れ目を大きく割り、上端に埋まる愛らしい肉の粒を舌の先で転げま
わしていた。
「うんっ……はうっ……くっ」
 気持ちいいのを必死に我慢している顔が愛らしかった。
 だがピンクの真珠貝は、吐き出した粘液でたちまち汐緒美の舌と下あごをねっとり汚し
ていく。
「もうふこひだよ……がんばへっ」
「う、うんっ……」
 汐緒美は、恥ずかしさに砂をかきむしる梨衣芙の指に指を絡めてやった。
 アソコと口でつながりあった女の子同士の手が、上と下からぎゅっと握りあう。
 しだいに濃くなっていく少女の匂いに、すっかり心を奪われた汐緒美が、丹念すぎるほ
ど幼な貝に舌をなじませていったから、掻痒感が消えたころには、梨衣芙は放出する寸前
になっていた。はあはあと肩で息をつぐ少女。
「よかったね……治ったみたいで」
 いまや根まで飛びだした真珠に、舌先でちょん…とおまけをくれてやると、熱いほとび
りを吐き出して、幼い性感はいっきに爆発した。


 お腹をふいごのように痙攣させ、梨衣芙は恍惚の余波が退潮していくのを待っていた。
 だが、チクチクした痒みは何故かまだ治まらない。
「ど、どうしよう、まだ食われてるみたいなの……」
「どこ……?」
 汐緒美の問いに、火の出るほどまっ赤になった梨衣芙が
「……お、お尻の穴」と答えるまでに30秒かかった。

「い、くっ……」
 お姉さまの温かい舌が、性器より恥ずかしい穴に突き立てられるのを感じたとき、梨衣
芙は二度めのアクメの津波にさらわれていた。
 帰り道。車の窓からふきこんでくる潮風が、ほんのり日焼けした汐緒美のほほに心地い
い。
「お姉さまぁ……いつかお嫁さんにしてね……むにゃむにゃ……」
 おやっと汐緒美が横に見てほほ笑んだのは、疲れ果ててぐっすり寝息を立てている天使だった。
‘チンクイ’がお風呂に入れば簡単に治るものだと知り、梨衣芙がまっ赤になって口惜し
い思いをしたのは、その半年後であった。
 海の水も少しづつ温まっていた。
>>186-191
直接的。(^^;
現役高校生には刺激が強いかも……。
でも可愛らしくてナイスですよ。
ついでに一つHっぽいのを書くべ。

・・・

美のメデューサ

 私は彼女が、その顔を黒く覆うベールを、漆黒の手袋によって剥がしたときに……。全身がすべて、黒を
すべて取り除いたときに。すべてが静止して。それから動き出す。息を呑み、瞳の奥底が震え、見てはなら
ぬものを見たという苦しみ、後悔、そして歓喜。狂気。狂うほどに酔いしれる。
 それは美しく。美しさの異端。恐ろしいほどの。たとえば世界の押し潰される夢。あるいは自分が泥の膣
に溶けていく夢。一度世界は色彩を失い、飢餓と絶望の叫びと共に再び世界は現れる、けれどそれは歪んだ
混沌の姿による。何もかもが絡みついた毒の蛇。
 彼女を――人知超越の化け物を醜いと呼べるのなら、それ以上の天国などあるまいに。美しいと呼べばこそ、
世界は恐ろしい業火灼熱の地獄と化す。金色の髪が虚空を舞い踊り、白と蒼の眼球が、宇宙すら包み込む宝
石のように私を覗く。頬は孔雀の羽すら凌駕し、額は雛鳥の生きる殻よりも美味しそう。誰が耳について語る
ことができよう、それを記す言の葉などこの世にない。瞼に挟まれた中央の膨らみすら、その突起に子宮を
捧げたいと願うほどのもの。
 私の瞳は殺された。その姿形を前にして、その機能はただ彼女を見つめるためにあるもの。閉じようとし
ても言うことを聞かず、そして地獄が私の元へと迫るその入口となってますます見開いていく。熱はそこか
ら侵食しはじめた、私の身体を貪り喰らいはじめた。彼女の姿は何万ものペニスとなって私を蹂躙する。熱
く長い、どこまでも果てのない塊が、目玉へと迫り一瞬のうちに燃やし焦がした。そのまま骨と血液を蕩け
させながら、柔らかく、まだ誰の手も触れたことのない脳へと駆け上る。犯される。私の脳は彼女という蛇
によってこの上なく汚されて、ただ刹那のうちに全身が彼女の支配下となる。そのまま蛇、龍に等しい残酷
なものは重力加速を伴い私の肉体の下へと降下、喉の脊髄を神経と肉と骨とに繋げ、心臓については獣が小
魚を食い散らかすように消化して、もはや私の胸は空洞。そこに糞を撒き散らかすと、さらにその下、臍へ
と迫り、生みの母の繋がりすら忘れさせる乱暴な歯軋りと共に、私は上半身のすべてを彼女のものにされる。
 それから――子宮は粉々に打ち砕かれた。私はもう、男性と交わることも、子供を生むこともできない。
生んだとすれば、その肉を喰らうことを悦ぶ鬼となったとき。そして子宮を犯すのは蛇、蛇、彼女の髪から
その仕草。メデューサとは、まさしくこのこと。私の体は彼女の姿を目にしたとき石となり、瞳に映した姿
ゆえの狂気と歓喜に陶酔し、蛇が我が肉体を食らっているのを黙って、悦んで見ていたのだ。

・・・
終了〜〜。
>>192さま
あ、直接的なのはいけないんですね、ここは。「大人の時間」じゃなかった(汗)。
出来が悪かったのに、お気遣いレス感謝します。続きをうまく書けたらまた挑戦して
みます。

しかし素晴らしい作品ですね。ふだんからろくに読書もしない人間なので、すべては
理解できませんでしたが、文芸板にふさわしい、ものすごい文章力と表現力ということが
わかりました。勉強になりますので、機会があったらぜひまた読ませてください。
196名無し物書き@推敲中?:03/12/17 00:38
HOSYUage 百合的状況が必然である小説もどきを書いたよ。 打ち込めないけど。
197シーチキン:03/12/17 01:13
>>193の一休さん、「黒い百合」スレでも何か良作書いてくれ。
   現在201氏がリレーをおっ始めた。
   書き出しは結構イイ出来だったぞ。
>>197
しかし「黒い百合」スレ、すごい書き手が揃ってますね。
漏れも気になって見守りながらずっと読んでます。
って、スレ違いソマソ。
「黒い百合」スレってどこにあるの?
検索かけたけどそれらしいの見つからない・・・
どうかURL教えて!
201199:03/12/23 02:39
THX!
早速いってみるよ!
202名無し物書き@推敲中?:03/12/28 06:19
百合小説のオリジナルサイト探してます。非エロで。
>>16の百合サイトリンクも見たんですけど、エロ多くて不発。
マリみてとは言わないけど、ああいう綺麗な百合扱ってるトコないんですかね。
需要がないのか・・・?
お薦めサイトあったら教えてください。スレ違いだったらすみません。
・|)Nobody is here.投下するならイマノウチ……。
「セルフェリア」という書きかけ小説を発掘、その一節。

***
「それではセルファリア」
 と、私は目の前にいる尊く美しいセルファリアに語りかける。
 日差しは風を暖めて、風は人の身体を包み抱く。木々は風に木の葉を揺らし、離れた二枚の木の葉は鳥の
ように空を舞う。日の光まで舞い上がれば、私とセルファリアの髪へと落ちてきた。私はセルファリアの髪
からその葉を取り語りかければ、セルファリアも私の髪を愛撫しつつ、それに応じた。
「あなたは病にかかっていて、それが人にうつらないか心配している、と?」
「それがあなた様に。麗しいキュラー」
 ものものしくため息をついて、尊いセルファリアは口元を手でおさえた。言葉から、息から漏れるその病
というものを私にうつさないために。しかしああ、セルファリア。その病は私のほうが重いのです。今にも
あなたに寄りかかってしまいそう。
「どのような医学書にも、私のような症例は見られません。どのような薬が私を癒してくれるのでしょう。
人の身体には自らを治す力があるといいますが、しかしますます、心の乱れは自分の知らぬものになるばか
り。きっとこれはひどく重い病なのでしょう、大きな傷は医師なくして癒せません、特に火傷は放っておけ
ば息がつまって死んでしまいます。身体を切ることなく腫瘍を除くことはできないでしょう」
「私のせいでしょうか」
「いいえ! キュラー、あなた様の麗しい顔が浮かぶのは、きっとあなた様だけがこの病を癒せるから……」
「そのようなことは――」
「あなたのおっしゃりたいことはわかります、キュラー。きっとあなたは愚かな女だとお思いになっていら
っしゃる。迷惑とも思うのでしょう。それでも私は」
「セルファリア。その口から、かわいらしい舌が見えていますよ」
 雄弁はときおりその人の美を損ねてしまう。私は尊いセルファリアの右の頬に触れると、そのまま上の唇
を。左の頬までたどって、下の唇を人差し指でなぞってみせる。そうしてセルファリアの口を閉ざせば、そ
れ以上セルファリアにからは何も言わせない。私は自らの主人をこうして落ち着かせて、言葉を選びながら
彼女に囁いた。
「いつかはあなたを治して差し上げられるかもしれません。しかしセルファリア、できることならば自分の
病のわけに気づいてください。そうすれば薮にかからずとも、名医があなたを最も優しい方法で癒してくれ
るでしょうから」
「キュラー」
「お顔を曇らせないでくださいませ。ほら、面白い技をお見せします」
 私はセルファリアに片手の手の甲を見せて、五本の指をまっすぐに伸ばす。自分の側にはもう片方の手を
つけてから、その手のひら同士が重ねあうようにした。祈りをささげるときのように。それから人差し指を
同時に内側に折り曲げて、親指をその両手の人差し指のなかにしまいこむように折ると自分の側に向けた手
の甲の親指をセルファリアの側に向けた手の、折り曲げた人差し指と伸ばしたままの中指の間に挟んだ。
 セルファリアは何をするのだろうと首を傾げている。
「親指を伸ばします」
 挟んだ親指をスライドさせる。それは蛇のように小刻みに震わせながら。セルファリアの顔が日差しを浴
びた雪ウサギのように輝いた。
「まあっ」
「喜んでいただけましたか?」
「はい。まるで魔法のようです、キュラー」
「これはおまじないですよ。美しいセルファリア」
「おまじない? それは、はて、どのような」
「あなたの笑顔を見るためのおまじないです。どうやら効いたようですね。あなたは本当に楽しそうに笑っ
ていらっしゃる」
「ふふふ。そうですね。ありがとうございます」
 こうしてその場が明るく笑い声に包まれると、私とセルファリアはお互いの手を取り合って、丘の花々を
見に歩き出した。
お互いが両想いなのにせつない感じですね。
でも劇的にではないけれど、心がしっとり潤っていく雰囲気を感じました。
エロではないですがこういうのも好きです。
GJありがとうございました。
序章 女主人公キュリー、語り部セルファリア

 花の香りを知るひとは、世にどれだけいるだろう。花の繊細な姿形を知る人は、世にどれだけいるの
だろうか。目の見えぬ人に美しさの意味を問うとき、舌つまるひとがいるだろうか。匂いを知らぬ人に
美しさを知るかと訊ねる人のなんと愚かしいこと。たとえ見ることが、話すことが、嗅ぐことが、聞く
ことが、ものに触れぬことができぬ人であったとしても、愛することを知らぬ人はいないだろう。これは
つまり身体とは関係なしに、人が心というものを、その宝石箱へとしまいこみ、ときおりその蓋を開
いて魅了されるからである。
 美しさというものがときおり形を持つことを、私たちは知っている。私にとってもそうであった。花
の咲く姿は美しく、木々のそよぐ声はとても楽しいもの。その木々を流れる水は澄んだ色をしていて、
土よりつながれた小川の風には草木の香りが包まれている。夏の暑い日に大気を感じれば、その涼やか
な冷たさ、ほんのりと心を癒してくれたのだ。しかしもし私が何か感じるものをこの身体に知らなくと
も、私は美しさが形を持つことを知っただろう、それは一人の少女、その人に感じる思いでもって。そ
の少女の名は、聞きたまえ、多くの人よ、聖なる彼女の名を聞きたまえ。彼女は名をセルファリアと
いった。
 セルファリアは遠くの人、いや。私が遠い底なるもので、彼女が天にも優る女神であったのか。尊き
セルフィリアを取りまくものは、すべて彼女の聖なる息吹に触れ、彼らは祝福のように美しいその人を
飾った。それはあるいは乙女に花の冠が授けられるようであり、あるいは清らかな水に果実、桃や
黄色実(マンゴー)の熟れた、匂いたつ安息香が落ちるようであり、また鳥か蝶かが羽を広げるよう。
つまりセリフェリアその人自身の美しさを前に、すべては犯されざる神聖な宝石にこそ従ったのである。
 私はそのセルファリアを知る人だった。出会いを語るとすれば、はじめの名乗りをここに明らかにするならば。
それは花や木々や小川や風が住まう場所、結び手なる緑の丘よ、人の名づけた名をヒュリッセルムの丘という
ところである。私とセルファリアとは、互いにそこで偽りなくして自らの名を語るはじまりの交わりである
儀式を行なったのだ。
 鳥の鳴き声に目を覚ませば、日差しは木々の合間から覗き、鳥の羽が空を舞う音を聞いた。青の空を、
あの鳥はどのように飛ぶのだろうか。私に興味がなければ目を閉じて、そして思いがけない出会いを与え
られなかっただろうが、しかし気まぐれは時に身を守り、心の飢えを充たし、運命を愛するものである。
私は飛ぶ鳥の姿を追いかけるべきだと身を立て起き上がった、そのときに。そのときに。私はその気まぐれと
は破滅を呼ぶとしても、愛するべきものであると知ったのだ。
 もしも女神がいるのなら。愛の紡ぎ手、アフロディテやユーノー、デメーテル……、偽りならざる神々は
一つの姿をしているのだろう。もしもかの方々がこの世にある最上の美であるというのなら。私はそのことを
悟った、その一つの姿形をこの瞳で捕らえたときに。月夜の瞳。秋に咲くススキのような長く細いまつげ。
羊のミルク、白い肌は光に映えて。ラ・フランスのターヘル・アナトミア、桃色の花とは上下の唇のこと。
私よりは背が低く、古きキューピットにも似ている。その神は愛を司る神である。私が頭を下げているの
なら、その人は誇り高く胸を張り。髪はモイライの紡ぐ糸。それは世界をも支配する。それは神話の偽りでは
ない、長く光を帯びた金色の髪は揺れ、今まさに私自身の心を支配している。首まわり、肩のなんと上品な
ことよ。虹のように美しいアーチ。その小さな肩が背負うものは重い荷物でも青銅の肩当てでもない、神聖なる
愛の弓なのだ。
その姿形を心に掴んだ瞬間、成熟早し林檎の蔓は巻きつき私を包んだ。全身は御酒を口に含んだときのように
肉体はかっと熱くなり、足元はおぼつかないものへとかわった、考える力は青空を鳥のように泳いでいる。
それも熟練したそれではなく、川へと迷い込んだ哀れな猫のように。何度も目を瞬いた、それは高貴な光を
覗き込んだためか、それとも現をしかと定められなかったためだろうか。そして私が心を捕らわれたときに。
私は人が、あの尊いセルファリアが微笑みを見せていることを知る、その後にその微笑があろうことかこの
私へと向けられていることを知り、そしてますます頭はのぼせて、私の顔は酒の祝福を受けたように赤らんだ。
 セルファリアの気高く優しい声は春になびく風のように穏やかな音色で、私の耳へと届いた。
「こんにちは、麗しい方」
 ああ。その唇が私をなんと呼んだか。その美しい声がこの私になんと囁いたか。それは悪意も嘲笑もなく、
ただ愛らしい無邪気と親切、礼儀でもってそのように声をかけたのだ。そのときの私の心境は心に大きな翼が
生えたよう、もし人の魂がハデスならぬ彼方へ飛べるというのなら、私は果てなるオリンポスまでも飛べた
だろう。西方の地までも飛べるというなら、神をも住まうエデンへと。幸福の至る心を知った私は、その充足が
もたらす自然な微笑をもって彼女に応えたのだ。
「美しい方」
 私は自らの唇がその人を示す言葉に開いたことに驚きを隠せなかった。なぜって、このあらゆる詭弁や言い訳、
無知なる言葉を積み重ねてきた口が彼女のことを語ろうとすれば、天罰が晴天に鳴る雷が唇を爛れさせてそれを
発することが出来ないようにさせるだろうと思っていて、それは確信であったから。しかし彼女の姿について
話すことが真実であることが、どうやら神の怒りをまぬがれたらしい。私は再び唇を動かした。
「ここへは、美しい方、はじめてこられたのですか? 私はいまだかつてあなたのような、花も木々も草木も
ひれ伏す、姿形は神に等しい人を見たことがありません。よもや神ではあらせられまい、そのつつしみ深さは。
お聞かせください、あなたがなぜここへ来たのか。美しい方よ、あなたの名はなんとおっしゃるのですか」
 いささか傲慢にも聞こえる私の問いに、彼女は宝石の瞳をまたたいて私の言葉を頭でたどっているよう
だった。それはあまりにも愚かな問いであったのか。私がたずねたことは、大樹に兎が水の意味をたずねる
ようなもの、取るに足らないものである。しかしはたしてその大樹は彼女とは比べることができないのだと、
私はその後に悟った。
 尊いセルファリア、あなたはこうおっしゃった。
「美しい方、というものがよもや私のことならばあなたの問いにも答えられましょう。そのような優しさ
あふれる慰めには心癒されたものですから、あなたに答えることはその喜びです。さあ、ここへとたどり
着いたわけは、さて。ここがどこであるのかも私にはわからないのです。というのも幾多もの道のりについて、
あるときは知るところとおぼしき道を、あるときは知らぬ道を知らぬままに、このように迷い歩いてきたの
ですから。愚かしく恥ずかしいことです。やがて疲れ休もうとしたときに、ここの清らかな緑に惹かれたの
でした」
 そういうと彼女は息を吐いた。偽りならざるその愛らしい理由を小鳥の口より聞けば、私はまず透きとおる
彼女の手を取ると、自らの大気に汚れた外の服を一枚脱ぎ、内に着た衣服の一枚を取れば、それを地面へと
敷いて、そこに彼女を招いた。この衣が、虫どものすむ、雨に濡れれば泥となる、土の汚れを守ってくれる
ものであればこそ。しかし私はかの服をその後憎んだ、それはつまり彼女が躊躇いながらも腰掛けたときに。
その身体が服へと預けられたときに、なにゆえそれが主たる私ではないのだろうと。ところが彼女は私を
見上げたのだ、その衣ではなく。そして感謝の意味、顔を下げて頭を私へと向けた。たちまち心は喜びに
包まれる。
 三度目の言葉ならば、それは一言一句違うことなく覚えている。まぎれもなく。彼女の小さな頬はわずかに
染まった、桃の色に。桜の色へと。青い果実が熟した真紅へと変わるように。それはより、甘くなること。
「そのような人に誇れぬ女の名は、セルフェリアというのです、麗しい方。これはまこと、たとえあなたが、私を
恥晒しつつも名乗る愚か者ではないと思われ信じなくとも、私を知る人の皆が私をそう呼ぶのです」
 私はこう申した、
「いいえ美しい方、セルフェリア。誓って私はあなたを、蔑まず罵らず、ましてや不信などとはとんでもないこと
この上ない。それゆえに美しい方よ、私の前では己のつつしみ深さ、たしかにそれは美徳ではあるけれど、あなたが
自らを貶めることはお控えくださいませ。そんなあなたの言葉をそれだけは信じるわけにはいきませんからね。
……さて、すべて私は信じました。理解しました。あなたがここへとたどりついた理由、あなたの名を。しかし
あなたは私のことを聞きたいと願いますか。私の助けを必要とされているのでしょうか」
 私の言葉は尊きセルフェリアへと少し抗議のような、――これは私自身の愚かさ、すぐに後悔したのであるが
――ものであって、それは清きセルフェリアにどのように届いたのだろう。それはまず、ものもいわず私の手の
ひらを求めて、私がそれを断る所以もなく、またそれが何をしようとしているか、不遜の仕返しにつねろうとして
いるのか、爪を立てようとしているのか。セルフェリアの唇が近寄ればそのとき私は噛みつかれるのか、などと
思っていたのだ。
しかしセルフェリア、あなたがそんな乱暴を働くなどと邪推していた私をお許しください。あなたは私に触れた。
触れたのは神にも勝るその花です。二つの花びら、声紡ぐ唇よ。あなたは何ということ、触れたところは私の肉体の
一部である。野に咲く名も持たぬ草、地を這う獣にも触れたことのある、この右手の掌へ押し当て、そしてすべての
汚れを吸い取るがごとく、そこで息を吸い、飲み込んだ後、私の心を焼き尽くす熱い息を吐いたのだ。手先はアグニに
焼かれたよう、まさしく聖なる炎よ。なお激しく燃え上がりたまえ。
 そうして清められた手に、二度彼女は接吻する、そしておっしゃることは、このとおり。
「麗しい方。私はその親切な言葉こそ今、心に染み入り、そしてあなたという心を、信じる
ことにいたします。ではあなた様、麗しい方。名誉をあえて私に教えてくださるというのなら、
そのお名前を教えてくださいますか、こうして結んだ親愛の証として。私がけして忘れられぬ
ように。あなた様の親切を、愚かしい私が、その心に刻まれた名前で、忘れないように」
「セルフェリア。美しい人よ。生涯の仕合せとはこのようなことをいうのでしょうか、あなたが
私に親愛を囁くとは。そして今まさに私が自らの名を告げれば、あなたはそれを心にとめて、
忘れぬとおっしゃっている」
 それならば私が名乗ることを抑えられるはずもない。セルフェリア、あなたが欲するのみならず、
私はあなたにこの名を捧げたいと切に願っているのだ。私の名が、尊きセルフェリア、あなたの心に
ほんのかすかな欠片でも残れば、そう願っているから。さあ今こそこの開いた魚を二つに裂いて。
「美しい人よ。私の名はキュラーと申します」
 自らを名乗れば、そのときにセルフェリアは私の名をその花。つまり私の手に重ねた唇でなぞり、
キュラー≠ニその小鳥の声が紡いだとき、私の背中には甘美なる痺れが走った。胸の奥は疼くような
痛みが、そしてはじめて私はこれが現実であることを悟り、また彼女が目の前にいつの間と知らず
立っていることを理解したならば、私はセルフェリアのために膝をついて深く頭を垂れたのだった。
美しい主なる姫にするように、穏やかな泉の妖精たちに祈りを捧げるように。
 己の愛する少女にすることはまぎれもなく。
未完というか執筆中止(三章の途中まで書いて終った;)のセルフェリア。
でも投稿したのは、途中まででもそれなりに読めるのと、作品のムードが、
いわゆる非エロの、「綺麗な百合」かな? と思ったので。
道に迷った女の子と出会い、それをきっかけにすこしづつ関係を深めていく、
というストーリーはわりと王道でもあるし。

長文苦手な人はごめんなさい。これはデフォルトです;
213名無し物書き@推敲中?:04/01/06 20:11
http://www3.diary.ne.jp/user/348161/
この辺とか妙にリアル
>>213
うんうん、たぶんちんぽ握りしめて書いてるねw
>>202
http://glycine.zero-yen.com/
エロじゃない百合。ちとしょぼいけどw
>>212
重厚な文章が少々、学のない自分には読みづらいスタイルですが、
恋するふたりの胸に迫る想いが伝わってきます。
続きがあるのでしたら書いたぶんだけでも拝見したいです。
>>215
ざあーっと見わたしてみたけど、良さげな話がいっぱいですね。サンクス!
217202:04/01/11 23:04
>>212
ありがとうございます。読ませてもらいました。
百合だけでもしっかり綺麗なのに、表現としても綺麗な言葉が多くてイイですね。
神聖な雰囲気っぽくて好きです。続きがあったら是非読ませていただきたいです。

>>215
結構良さげ!まだ少ししか見てないんですが・・・。
女の子が書いてるみたいですね。真性の百合なのかな?(笑)
じっくり見せてもらおうと思います。ありがとうございました。
その一の巻 主人公と語り部(2)、アルケミスト、ヒュリッセルムの話

 ヒュリッセルムの丘の意味をご存知であろうか、ここにたどり着いた人々よ。休息に身を委ねる人よ。
自然を愛する人よ。ほんの気まぐれに――足で歩くことは少なからず疲労を与えるのだから、おそらく
ユピテルによるもの――ここへと導かれた人よ。昼には日差しが草木花々を愛でる、夜には月明かりが
川上の泳ぐ魚たちの灯火となる、この丘の名前の意味をご存知だろうか。知らぬ人こそ多いだろう、な
にせここに住む人はいないのだから。自然の揃う姿こそヒュリッセルムの丘である。しかしその名前は
人の名なのだ。
 ヒュリッセルム。その人は名だたる錬金術師。さあ錬金術師の意味を歴史書より紐解くがいい、その
歴史は半ば偽りに満ちていると書かれている。弁論によって金と名声を得る人であると。ではヒュリッ
セルムも詭弁の人であったのだろうか。この丘は偽りの丘なのであろうか。なんたること、美しいこの
丘に人が手を加えれば、たちまち無知と貪欲が取りつきその美徳を汚すとは!
 その者について語ることは私の仕事ではない。誰であれ詐欺師の武勇譚など聞きたくはないだろう。
さて、美しい娘セルファリアと主人公キュラー、このヒュリッセルムの丘で出会った二人はその後どう
なったのだろうか。
白い雲が空を覆い、世界を七色に彩る光を持つ太陽が空高くのぼる時に、彼女らは話をやめてキュラー
はセルファリアの導き手となったのだ。迷子であった彼女のために、一度キュラーは愛する丘に別れを
告げてセルファリアの進む道へと正しく連れ立った、その人は優しい人である。キュラー、君のこと。
君の歩いた道はそのとき花が一つ咲いていた。そして君はセルファリアに指輪というすてきな贈り物を
したのだ。彼女の微笑みはその優しさに相応しいものであっただろう。大きな石があったとき、キュラー
よ。君はセルファリアのためにその石を拾い上げ、それを道の傍らへ思い切り投げ飛ばした。忌わしい敵、
よもや君の尊い娘を傷つけようと立ちはだかるとは。やがてオレンジ果実の皮が空に広がったとき、君は
その道を到達した。
 そうして彼女を愛し、守りきった君よ、何故彼女との別れを悲しむのか。涙こそ浮かばれないが、心
には嵐が吹き荒れている。まさかこれが今生の別れというわけでもあるまい、それとも礼を忘れるほど
冷たい女というのか、君の愛した人は。心配しなくともよい、ほら夜が来て朝が来た、優しい人よ、彼
女を信じるならばヒュリッセルムの丘へと足を進めたまえ。尊い人は出会いの場所と時を忘れないものだ。
 こうしてキュラーが夕方まで彼女を送り届け、次の日の朝、ヒュリッセルムの丘へと向かえば、セル
ファリアは先に来ていた。つまりこの尊い娘はキュラーを待っていたのである。キュラーはしかしその
ことをセルファリアの言葉なくして知ることはできず、昨日と同じ問いを繰り返した、どうしてここへ?
「ここへは、あなたに会いに来たのです。麗しい人キュラー、昨日の親切に何のお礼もできず、よもや
夢でなければと思いまして。現実であっても、ここへ麗しいキュリー、あなたが来ることはないことも
あるのだと、今に気がついたのですが」
 なごり雪と咲き誇る桜を舞い上げさせて、尊いセルファリアはそのような愛らしい言葉を、その唇よ
り紡いで見せた。キュラーはその言葉をたどり、そして手元の時計を覗きこむ、水晶に守護を受ける二
つの針はくるくると回っていて。そしてキュラーは首をかしげてセルファリアに訊ねる。はて、と思い
ながら。
「ここへは、尊いセルファリア、車でいらっしゃったのですか?」
 セルファリアはほんの虚のあとにうなずく。
「その通りです、麗しいキュラー。どのようにそれを悟ったのですか。それともあなたは困り人を助け
るためにここへ降りてきた、高き天に住まう神の方であったのでしょうか」
「いいえ美しい人セルファリア。なにゆえにそれを想定したのか。先日のとき、あなたを送り届けるた
めにここを出たのは昼ごろでした。そしてたどり着いたときには夕方だったのです。今が朝の時刻であ
れば、よもや夜にここへと向かわれたわけではありますまい」
「なるほど。それにしても知識深きご見察、感嘆するばかりです。おっしゃるとおり、私はあのところ
より車で送り届けていただきました。目覚めが朝であれば、お知りになっていると思いますが、あの乗
り物は自分の足よりも速いのです、ここへの道のり、景色はあっという間に通りすぎました。誰かの家
も通りすがる人も植えられた木々や草木も、驚くほどに。すぐに麗しいキュラー、あなたに会いたけれ
ばこそ、あなたは私との出会いを不快というものでなければ、それを使ったことをお許しください」
「いいえ美しい人セルファリア。私はけして車を使ったことを責めるつもりはありません。あれは文明
の利器ですから。ところでセルファリア、あなたはこの丘の名前をご存知でしょうか」
 果たして尊いセルファリア、その言葉は麗しいキュラーにとって大きな喜びだった。キュラーの問い
かけにセルファリアはこのように答えたのだ。それは信頼するに確かな確証と共に。思わずキュラーは
たずねた。
 「麗しいキュラー。私とあなたとの出会いの場所を、いったい何故知らぬままに放っておくのでしょ
うか。私はこの地で出会ったときに、その神々は何者か、祈るべきは誰であろうかと思い、この地につ
いて調べました。そして数多くの文献によれば、この地は古代の人、錬金術師のヒュリッセルムより名
づけられたところだと知ったのです」
「ヒュリッセルムの丘の物語については?」
「存じ上げています」
 そういうと、セルファリアの清らかな声がその物語を古より呼び起こす。たしかな韻律と美しい情音が、
その公園へと響き渡り、キュラーの耳を楽しませた。

 どのような秘儀、秘法。秘術であろうとも。それは人の手によって、知りうる技術と知恵を駆使して
なされるもの。それを真理と訊ねれば、あのヒュリッセルムについて答えるだろう、彼女は奇跡をおこ
した。否、それが奇跡であることを証明する術は無い。世界には当たり前のことが当たり前に起きる。
我々はいつでも偶然より成り立つから。そして不可逆の真理。ヒュリッセルムは息絶え、二度と生き返
ることはなかった。白い髪のヒュリッセルム、彼女は何を成し遂げたのか。
 白い髪のヒュリッセルム、君は古代の人を否定する。
 青い瞳のヒュリッセルム、君は多くのことを学び、多くを教えるもの。
 君は、何故人が空を飛べないか知っているだろうか。鳥は空を飛べるのに。鳥ですら空を飛べるのに!
「私たちは彼らがけして雲より軽くないことを知っている、彼らがそれゆえ雲ほどは長く飛べないことを
知っている。だが私たちが飛べない理由とはなんだろうか」

 重い荷物を背負わせれば、鳥が空を飛ぶことはない。しかし軽い荷物なら飛ぶことができる。その場
合に鳥は荷物を運ぶときより運ばないときのほうが長く飛ぶ。
 つまり鳥が空を飛ぶのは、重量か、体積(もしくは密度)とが関係していることになる。では重さとは
何だろうか。私たちが重さというものを確信しうるときは地面に対してその物体の質量が乗っているとき、
つまり空を飛んでいるものの重さを測ることはできない。空を飛ぶときに、その重さはどうなっているか。
 空を飛ぶものはより軽いものである。つまり空へと上がる時、その重さは0もしくはマイナスへと移
行しているのではないだろうか。そのときには別のエネルギーが重量を0へと変えるのである、つまり
火が水を沸かすときのように。火というエネルギーの分、水は温められて水蒸気となるのだ。そして
そのエネルギーが尽きたときに、鳥は空を飛ぶことができなくなる。空を飛ぶことが出来るのは、鳥の
なかにあるエネルギーであることは疑うべくもない。植物のように土から補給するわけではないはずだ、
それというのもレンガの上に植物は芽をつけないが、鳥はどのような地面であっても休息の場とできる
から。
 と、いうような内容のことを同じ職業、私たちは錬金術師――に話したところ、彼らは飽きることな
く笑い、時折咳き込むほどに。彼らはどうやら私の言葉を面白いものと受け取ったらしい。やがて笑い
がその喉を痛めたのか、ようやく皆が静まりかえるとある人は言った。
「ヒュリッセルム、君の言葉はなんともばかばかしい。鳥が空を飛ぶことができるのは鳥にその力があ
るからだ、いわゆる神様が授けたもの。人間にはない、それだけのことじゃないか。そして僕の見たと
ころ、その力とは羽根だ。なぜって、人間に鳥に似た羽根はないし、鳥から羽根を取ってしまえば空を
飛べなくなるから。さあ、何かいいたいことはあるかい?」
「しかし鳥の羽根を奪っても、人間にそれを使うことはできないだろう」
「魚のエラを取れば人間が水中で呼吸できるというのかね。それこそ子供の笑い話! いいかいヒュリ
ッセルム、神は人間に空を飛ぶことは出来ないように創られた。どのような仕掛け、君が家をあんなも
のに変えたところで空を飛ぶことはできないさ」 
 ヒュリッセルムは考えた。
「……鳥と人とが違うものだなんて」
 その呟きは、これからきっと多くの人を楽しませる、冗談として使われるのだろう。
 あまりにそれは滑稽、間違った言葉。子供ですらも否定するような。しかしヒュリッセルムにとって
は、その言葉こそ真。けして変えることのできないもの。
「鳥と人とが、違うものだなんて、誰が決めただろう?」
 
 小鳥のラフィルは彼女の友達だった。その小鳥と共に生きることが、ヒュリッセルムの願いだった。
ヒュリッセルムはラフィルを鳥であると知っていたが、それは自分と何ら変わることのないものだと
思っていた。彼女とその雌鳥は木造の家に住んでいた。
 呼吸も。餌によって生きることも。目でものを見ることも、音を聞き分けることも、自分と変わること
のないものだと思っていた。そしてラフィルが死んだときに、ヒュリッセルムはそれをはっきりと意識
した。小鳥も人間も、本質的に変わることはない。もしも神々よ、そのどちらかが違うものだとすれば、
何が違うか言って見ろ。
 教会の神はこういった。鳥には翼が生えている。空を飛ぶことができる。なるほど、ヒュリッセルム
にそれはない。だが鳥に翼がある、そのことは既に詭弁となった。なぜなら翼のない鳥を、鳥と呼ぶこ
とができるから。ではもう一つを偽りへとするために、さあ、空を飛ぶべきだ。
 ラフィル。死んでしまった小鳥。人間が、私が空を飛ぶことは君の願いでもある。けして君は私の前
では空を飛ばなかった。私と同じように地をその二つの小さな足で歩いていた。そのとき君は何を思っ
ていたか、きっと私のために空を飛ぶことを控えていたのだろう、私と同じ食事しか取らなかった君。
私と同じ住まいにいた君。私と同じ寝床を持っていた君は、けして私と君との違いを認めなかった。
 だから、ラフィル。君のために、私は空を飛ぶ。他の仲間は金などというものを作り上げることに精
を出しているようだから、協力の手は期待できないだろう。昨日は笑われただけだった。私がまがりな
りにも名の知れた錬金術師であれば、非難の手もあるだろう。蔑まれることもあるだろう。これは明白
他ならない。だが、ラフィル。私はきっと空を、この手で飛んでみせる。君のように綺麗なものでなく
ても、不恰好なものであっても。大切なのは君と同じ位置に立つことなのだから。
  人が鳥に劣るわけではない。鳥が人に劣るわけではない。けして鳥と人に、明確な違いはないのだ
と。私はそれをあまたの神々に教えてやる。
 愛しい小鳥よ。私と君とは、尊く清い、誇れる友情で結ばれていたと。
 
 ヒュリッセルムの家は形を変えた。風を確かめる一つの測定器。ヒュリッセルムにはある考えがあっ
た、風の力である。空を飛ぶために、あらゆるところに吹く風を動力として使おうというのだ。これは
木の葉が踊るとき、ときおり空へと向かうからである。そもそも空とは何故浮かんでいるのだろうか。
と考える時、たとえば風は水の深いなかには吹かない。空は水のなかにはない。つまり風があるから空
はあるのであり、もしくはその逆であるかもしれないが、少なくとも風か空には飛ぶための条件を備え
ているのではないか。
 そのときに気がついた、空を飛ぶために風を調べる必要があるのだと。そのために家を大きく変えて、
さながら大きな闘技場(コロッセオ)。球の形は風を受け止めるに適し、高い、丘の上であるから(高
い土地はラフィルのお気に入りであった)よく風を蓄えるには適したものになっていた。
 さて、こうして風について調べたわけであるが、私はなかなか面白い発見をしたので、ここに記述す
る。一つはたとえば風のないところでは炎が燃えないのだが、これは風の特性ではない。どちらかとい
うと水というか、つまり水を熱し水蒸気としたときに炎はそのなかで燃えたのである。とすれば風には
水との共通点もあるわけだ。そして風というものが、数多くの性質を持つ。たとえは形変えやすく非常
に加工しやすいのが風なのであるが、その性質は均等系。つまり金属や氷というものは砕かれたとき、
それを修復しようと自ら形を変えて治すことはない。壊れたところは壊れたままであるが、しかし風は
とりあえず広がる性質を持つ。なるほど、空に金属が広がらず風が広がるわけはこういうことであった
のか。そしてこの性質は水を燃やしたものや、命の水から立ちのぼる煙にも見うけられた。それらに共
通することは捉えることのできないものであるということ。そしてそれらは均等であると同時に可逆で
あった、取り除いた風を戻せばまた元通りだったのだ。水に似ているが、これは金属の性質ではない。
氷の性質でもない。
 風は水に似ているが金属にほど遠い。では炎とはどうだろうか。炎に関して記述されることは少ないが、―
―測定が難しいので。ただ見た目としては風に似ている気がした。というのも、風と同様に炎を握ることはで
きなかったのである。どれだけ熱に我慢していても。また、炎は何か触媒として生まれるのであるが、それを
見る限り炎には上へと昇る習性があるのだ。どれだけ傾けようと炎は下に落ちない。一度私は風でなく、炎を
調べてみる必要があるのではないかと思ったが、やめた。鳥が炎を使うことはないから。
 ということで風についてその後調べてみたところ、一夜、二夜と過ごし七夜の、今にも朝になろうというと
き私は風が軽いから、力がかかりにくいのだと思い立った。つまりそれまでの研究で下に落ちるには何らかの
力が関わっているからではないか、と仮定していたから。重いものを落としたときに、より重いものが力を持
つ。バベルの塔から小石を落としたときと鉛を落としたとき、果たしてどちらが地面に深くめり込むだろうか。
答えは鉛である。つまり重いものは強く、逆に軽いものは弱く、下に力がかかるのだと確信したのだ。ここま
で考えた後、私は眠った。
 空を飛ぶということは、人間でなくなるということなのだろうか。いや、そんなはずはない。鳥と人間とが
同じものであれば。もしかすると、鳥の住みかは人間のものになるかもしれない。しかしそれは特別なことで
はない、我々は原住民を奴隷として、ときに滅ぼして、この土地を手に入れた。だから鳥も弱ければ追い出さ
れる、しかたのないことかもしれない。
 けれど。そのときは。人間が、鳥と変わらなくなったその時には。人間と鳥の間に子供が生まれるということも
……あるのだろう。おかしなことをいうようだけれど、空を飛ぶことができるようになったとき、人が空を住みか
とできるようになったとき。そんな技術も可能になっているのではないか。
 知恵あれ、これより先の人々よ。滅びは皆に等しく訪れるように。発展は皆に等しく訪れるように。鳥よ、人よ、
多くの生物よ。けして私たちは何かが特出して、このようなことになったのではないのだ。ただ、なるべくして。
なるべくして。
 
 一度きり。それがこの飛行条件。それから風よ、強く吹け。それが条件のもう一つ。私は大きな力を手に入れた、
それは空を飛ぶための力。丘には少し冷たい風が吹く。そうだ、私の名前をこの土に大きく刻んでおくか。てごろ
な尖った石もある。空から見えるように。……できた。「ヒュリッセルムの丘」。ラフィル、愛しい小鳥よ。君が
この文字を見ることはないけれど。しかし後、ここを通りすがる鳥が見ることもあるだろう。人がこれを調べるか
もしれない、地面に何か削られた跡を見て。ではそろそろ行くか。ラフィル、君のいたところに。風よ。もっと
激しく。
 見物客は、いない。おかしな錬金術師のことなどすでに覚えている人はいるのだろうか。白い髪はますます白く
なっている。そういえば、私は結局、錬金術師でありながら水銀に触れたことはなかった。まして金を望んだこと
も。そう、私はただ。ラフィルと一緒に、何かをしたかった、それだけなのかもしれない。彼女と共に。
 さあ。それではラフィル。はじめようか。
 球形のアーチを開けば、吹き荒れる風はたちまち取り込まれた。だがエネルギーとしてはまだまだ
足りない。私は氷で一気に風を冷やすと圧縮ハンドルを回した、押し込められた空気とまだ入ってくる
空気。それらをすべて冷やし、圧縮し、押し込める。空気はある管を通り、ますます狭いものへとなる。
 まず家全体が揺れた。再び揺れると、風を取り込んだ家は大きく身震いし、みしみしと木が音を立
てた。やがて屋根が吹き飛び。そして螺旋状の風が家を包む、辺り一体を取り囲む。私の身はその中央
にあった。中央であれば、それに吹き飛ばされることはない。私の試みとは意図的に竜巻の、より強力
なものを発生させることだった。氷と炎。結局炎に頼ることになってしまったのが心残りだ。心残りだ。
 私は一歩踏み出して。風に。吹き荒れる風に。木造の家をも、崩壊させた風に。足元の、空虚なるを
感じた。身体が浮き上がることを感じた。一度きり。それがこの、飛行条件。
 ラフィル。ラフィル。何度も彼女の名前を呼んで。
 愛する人の、名前を呼んで。ラフィル。君と出会えて。けして後悔していない。
 ただ、一緒に死にたかった。君が死んで悲しかった。無性に。まるで。
 追うことは、愛するものにとって幸福である。

 ――生涯の愛を持つものにとって。
 その二の巻 女主人公と語り部(3)

 何故人は美しいものに惹かれるのでしょう。美しいものを大切にするのでしょうか。そして何故。いままで
そのように美しいものを意識して人は生きてきたというのに、本当の美というものを定義づけることができな
いのでしょうか。これはとても重要な問題に他ならず。科学の世界でいうなら統一力学、数学でいうならラプ
ラスの方程式。この美しい、というものが定義としてあれば芸術家は苦労することはないし、このアルカディ
ア住民も苦心して文をひねりだす必要がないのです。ちなみにここは表情を和らげて目を細めるところ。どう
か笑ってくださいまし。
 愛しい娘キュラーについて語りましょう。血の繋がらぬ私の娘は、同じく私の娘を愛し、そして日々をその
青豊かな丘で過ごしていました。花の咲く時期ならば、ときおりキュラーはセルファリアのために咲いた花を
折り、輪を作ります。輪を作れば大きいものはセルファリアの首に、小さなものはセルファリアの手首に、中
くらいのものはセルファリアの髪の上へと、美しい人をなお美しく彩りかざることが、キュラーを楽しませる
ことでした。キュラーはセルファリアを愛していました。セルファリア、あなたはキュラーを愛するでしょう。
今愛していないとすれば、すぐにあなたは愛するでしょう。それはあなたに愛をささやくキュラーの思いを心
から受け止めているから……。
 一言も。偽りであってもキュラーを「嫌い」とはいわないセルファリア。そして幾度となく誓い、誓って
くれたお互いの好きという言葉。それは心から思い、思われているものですから二人の絆をより高めてくれ
るのでしょう、誕生日の贈り物のように。クリスマスの夜に行なう清く深い接吻のように。キュラー、セル
ファリア、あなたたちは、なおも相手への思いを募らせるのでしょう。夜ごと昼ごと朝ごとに、一人でいる
ことを寂しいと感じてしまいます。目を閉じれば暗闇にその人だけ。お風呂に入れば、湯気という霧のなか
にも相手の姿を求めずにいられません。ではキュラー。あなたの様子をここに語ってみましょう。
 キュラーはセルファリアとの二日目を、かくして日暮れと共に終えたときには、赤く燃える火はセルファ
リアを求めてやまず、その手をなかなか離そうとはしませんでした。その理由を述べるときは子供のように
無邪気なもの。触れた指先が温かいため、とかこの指に似合う花輪をつくって差し上げたいから、とか。微
笑ましい理由を訴えた末、とうとうキュラーはセルファリアに明日の出会を取りつけました。時と場所とを
定めたもので――破られることのない正式な約束です――そしてやはり場所はこの丘でした。これに応じた
セルファリアにも、やはり別れを拒む気持ちはあったと見えて、その場所こそキュラーの案によるものでし
たが、時はセルファリアの気持ちになりました。できるだけはやく。その時とは、午前の木々が黄緑色に映
えて、鳥が明るく鳴く時刻。時計の形で申すならば、会話のお終いにつける符号に似たものですけれど。
二人にそのようなことは関係ないのでしょう。そうして安堵と共に二人は家路へつきました。
 夕方食卓につくときも、いつもの柔らかなベッドに身を横たえるときでさえ、思いに熱く焦がれてしまい、
幾度となくセルファリアの姿としぐさを忘れぬ記憶にたどります。胸の焔はいよいよ赤く燃えて、夢のなか
でセルファリアの幻を追いかける。目が覚めれば胸を大きく高鳴らせ、深いため息をつくのです。やがて
苦しく長い夜が明ければ、まっさきにキュラーはヒュリッセルムの丘へと向かいました。
 同じようにセルファリアも、キュラーとの約束に待ち望んでいました。ただしセルファリアはこれほどに
人を好きになったことが、今までかつて一度もなかったものですから、その胸の熱情は何かの病か、それと
も夕食の胸焼けかなどと思っていたのです。しかしその一方で美しいキュラーの顔を思い浮かべて、自分の
言い知れぬ高揚感をいっそう強いものにしていました。さながら恋する乙女のように頬を赤らめ、自然と口
元より漏れる微笑。そんな風に鏡に映った自分の顔が恥ずかしくて両手で覆うのですが、なかなか赤みと笑
みは顔から離れません。明日キュラーに会ったときにこのような、風船みたいな顔だったらどうしましょう、
などと一人で悩みながらベッドに入りました。やがて朝が来たときに頬の「はれ」と口元の「ひきつけ」が
消えたのを寝床に置かれた手鏡で見て、再発しないうちにと大急ぎでヒュリッセルムの丘へ走り出したのです。
 約束の時刻にはまだ早かったのですが、こうして二人は三度ヒュリッセルムの丘で顔を見合いました。で
はキャラー、あとの語り道具はあなたの心へと渡しましょう。

「それではセルファリア」
 と、私は目の前にいる尊く美しいセルファリアに語りかける。
 日差しは風を暖めて、風は人の身体を包み抱く。木々は風に木の葉を揺らし、離れた二枚の木の葉は鳥の
ように空を舞う。日の光まで舞い上がれば、私とセルファリアの髪へと落ちてきた。私はセルファリアの髪
からその葉を取り語りかければ、セルファリアも私の髪を愛撫しつつ、それに応じた。
「あなたは病にかかっていて、それが人にうつらないか心配している、と?」
「それがあなた様に。麗しいキュラー」
 ものものしくため息をついて、尊いセルファリアは口元を手でおさえた。言葉から、息から漏れるその病
というものを私にうつさないために。しかしああ、セルファリア。その病は私のほうが重いのです。今にも
あなたに寄りかかってしまいそう。
「どのような医学書にも、私のような症例は見られません。どのような薬が私を癒してくれるのでしょう。
人の身体には自らを治す力があるといいますが、しかしますます、心の乱れは自分の知らぬものになるばか
り。きっとこれはひどく重い病なのでしょう、大きな傷は医師なくして癒せません、特に火傷は放っておけ
ば息がつまって死んでしまいます。身体を切ることなく腫瘍を除くことはできないでしょう」
「私のせいでしょうか」
「いいえ! キュラー、あなた様の麗しい顔が浮かぶのは、きっとあなた様だけがこの病を癒せるから……」
「そのようなことは――」
「あなたのおっしゃりたいことはわかります、キュラー。きっとあなたは愚かな女だとお思いになって
いらっしゃる。迷惑とも思うのでしょう。それでも私は」
「セルファリア。その口から、かわいらしい舌が見えていますよ」
 雄弁はときおりその人の美を損ねてしまう。私は尊いセルファリアの右の頬に触れると、そのまま上の唇
を。左の頬までたどって、下の唇を人差し指でなぞってみせる。そうしてセルファリアの口を閉ざせば、
それ以上セルファリアからは何も言わせない。私は自らの主人をこうして落ち着かせて、言葉を選びながら
彼女に囁いた。
「いつかはあなたを治して差し上げられるかもしれません。しかしセルファリア、できることならば自分の
病のわけに気づいてください。そうすれば薮にかからずとも、名医があなたを最も優しい方法で癒してくれ
るでしょうから」
「キュラー」
「お顔を曇らせないでくださいませ。ほら、面白い技をお見せします」
 私はセルファリアに片手の手の甲を見せて、五本の指をまっすぐに伸ばす。自分の側にはもう片方の手を
つけてから、その手のひら同士が重ねあうようにした。祈りをささげるときのように。それから人差し指を
同時に内側に折り曲げて、親指をその両手の人差し指のなかにしまいこむように折ると自分の側に向けた手
の甲の親指をセルファリアの側に向けた手の、折り曲げた人差し指と伸ばしたままの中指の間に挟んだ。
 セルファリアは何をするのだろうと首を傾げている。
「親指を伸ばします」
 挟んだ親指をスライドさせる。それは蛇のように小刻みに震わせながら。セルファリアの顔が日差しを
浴びた雪ウサギのように輝いた。
「まあっ」
「喜んでいただけましたか?」
「はい。まるで魔法のようです、キュラー」
「これはおまじないですよ。美しいセルファリア」
「おまじない? それは、はて、どのような」
「あなたの笑顔を見るためのおまじないです。どうやら効いたようですね。あなたは本当に楽しそうに笑っ
ていらっしゃる」
「ふふふ。そうですね。ありがとうございます」
 こうしてその場が明るく笑い声に包まれると、私とセルファリアはお互いの手を取り合って、丘の花々を
見に歩き出した。

「もうすぐ、この花の季節も終わりですね」
 セルファリアが指さしたものは、一つの花びらを紅に、二つの花びらを紫色に染めた彩り美しいもので名
をトライ・フローベルという。四季のどれかに花を咲かせ、三年周期に咲く時期を変えることからこの名前
がついたといわれていた。この不思議な花についてはこの地にある逸話が残っている。
「かつて名をパリテーという、美しい娘がいました。それは美しい娘だったのですが、パリテーには朝には
小鹿、昼には人間、夜には植物に姿を変えるという呪いが、生まれたときから神によってその身に刻まれて
いました。彼女の母は獣と人と花を夫に持っていたからです。そのためにパリテーは美しく、また醜いもの
でもありました。パリテーに関しては生まれたときに老婆から告げられたある予言があり、それは次のよう
なものでした。
 
三つの姿をもつもの
 そのすべてを愛させることはないだろう
誰もが 何もが 多くのものが お前に 自分と違うものを見る
 けれどもし お前のすべてを知るものが
 言葉知らずして お前を知るもの その証を見つけたならば
 そのときお前はその人のため その人はお前のため 姿と声は 望むものへと

このパリテーは、獣なのか人なのか植物なのか、はてさて、どれであるともいえないもので予言の前半通り
誰にも愛されなかったのですが、ある朝にパリテーは森で一人の乙女に出会いました。乙女の名前はファウロ。
人間の娘で、人間以外の他の獣と話すことのできる人でした。そして彼女は人間と話すことのできない人
でもありました。
 小鹿として出会ったパリテーは、この乙女ファウロと友情を結びたいと思い、朝に姿は違うけれど話すこ
とのできる小鹿で、昼に話すことはできないけれど姿の同じ人間で、さかんに彼女と交流をはかりました。
やがてファウロもパリテーを友人と思い、二人の距離はますます近づいていきました。
e しかしこのように仲良くなっても、パリテーとファウロには悩みがありました。それは夜の姿、すなわち
植物のときだけは、二人はすれ違ってしまうのです。人の、植物の言葉を聞くことはできないし、姿もまる
で違います。そのため夜のパリテーは、ファウロの知らないものだったのです。それを除いてはパリテーと
ファウロは仲良い友人で、たとえばお互いの赤いリボンを交わしあったりしていました。
これに憤慨したのはパリテーに呪いをかけた神です。神は二人が仲良くなり、パリテーが愛されているのに
怒って、それからパリテーが植物のときだけファウロに愛されないのに気づくと悪巧みをはじめて、パリテ
ーを植物の姿にしてしまいました。朝目覚めるとパリテーは花になっていたのです。一つの姿にはなったの
ですが、パリテーはファウロと会えなくなる悲しみにさめざめと泣きました。
 そこへファウロが森へと、パリテーに会いに来ました。ファウロは、小鹿のパリテーがいないのに気づく
とパリテーの名前を呼びました。パリテーは答えようとしますが、植物の姿では伝えることができません。
ファウロはその言葉が届かず、パリテーの名をなおも呼びます。
 昼頃になりファウロはとうとう疲れて森の土に座り込みました。おりしもパリテーの近くだったのですが
ファウロは気づかないまま。パリテーは悲しい気持ちでいっぱいでした。
 そのときにふとファウロはパリテーの花を見つめました。それからファウロは、パリテーの花びら、
――それは一枚が赤く色づいたものでした――それに触れると、そっとなぞってそれから優しく口づけしま
した。そしてこう呟いたのです」
「パリテー」
「名を呼ばれて。その瞬間にパリテーの姿は人へと変わりました。ファウロの腕がパリテーの首の後ろに
回り、そして少し強く抱かれた感触が、パリテーにこれが現実であるのだと悟らせました。
 赤い花びらが、あなたのリボンと同じ色をしていたと。
ファウロはそう言いました。人間のパリテーの耳にその声が聞こえました。人間であるパリテーに。そして
夜になっても朝になっても、もうパリテーの姿は別のものに転じることはなく、ファウロはパリテーと話す
ことができるようになりました。神も、もうこの二人に呪いをかけることはできなくなったのです。
 その後二人は、この地で仲良く暮らしたということです」
  
 話終えてから私は訊ねた。
「トライ・フローベルは好きですか、セルファリア」
「そうですね。美しいと思います」
「その美しさとは何か?」
 するとセルファリアは何か考える仕草をして。人差し指を唇に添えて、視線を宙に泳がせる。しばらくし
てから、花びらの唇を開いた。
「たとえば逸話の友情など」
「それは花の美しさでしょうか?」
「違いなく。美しさとは、姿形のみならず、心や積み重ねられた美徳、誰かに愛されるものがあるのなら、それは美しさだと思います」
「なるほど。たとえば逸話というものも、その花の歴史であり、美徳というわけですね」
「そのとおりです」
「ならば老いた私は美しいと呼べるようになるのでしょうか」
「もちろんです。とはいえ、あえて言わせていただくと、キュリーは今も美しいのです」
 美しい人はいともたやすく言葉を紡いで、私に天使の微笑を見せた。美しいとはあなたのことに他ならない、
尊いセルファリア。そしてセルファリア、あなたの美しさは姿形だけではない、もしもそのものだけが魅力
ならば、絵画一枚で事足りる。だからきっとあなたはどれだけの歳月を過ごしても、美しいままなのでしょう。
 私もパリテーとファウロのように、あなたと親しくなりたい。神にも抗うほどの親愛を、あなたと交わし
たいのです、尊く美しいセルファリア。
 こんなにも。私はあなたに惹かれているのです。そして明日の約束を取りつければ、また日が暮れて、
朝に会いに行き、また次の日も同じように。いつしか会えば、夜に抑え切れぬ熱情が筆となった手紙をした
ためてお互いに交わすようになり、そうすることで夜会えなくとも二人は共なれば、思いはますます募る
ばかり。あやめもつかずお互いを求める日々。
そうして私は自分のなかの気持ちが、セルファリアの色に染まるのを感じていた。毎日を、毎週を、毎月を。
気がつけば季節の変わり目。やがてトライ・フローベルの花が散ったときに、私はセルファリアへの思いを
また一つ変えざるをえないところまで、高めていたのであった。
その3の巻 女主人公と語り部(4) 手紙

 キュラーからセルファリアへ

 はじめて筆を取ります――セルファリア。夜ごとに別れることは、あなたと離れることは私にとって、
けして安らぐことではありません。胸の思いはますます強くなるばかり。どうして私はあなたの心臓として
生まれなかったのでしょう。どうして私はあなたの子宮として生まれなかったのでしょうか。あなたと最も
近いところにいる――それ以上の幸福などありますまいに! しかし愚かな私は、あなたと出会う前の私は
このように自らの肉体を持って生まれたのです。
 夜の闇にあなたの幻を見ます。夢の狭間にあなたの姿を見ます。風が鳴った、と思えばあなたの声かとも
思います。けれど月が幻をかき消してしまう。震える窓を大きく開いても、薄い白地のカーテンが揺れる
ばかり。私は深く息を漏らして失望に胸を痛めます。思わずその場でうずくまり、地面にこぼれそうになる
涙を、かろうじて止めるのです。しかしそのことは、この夜、一度だけではありません。あなたの姿を私は
眠りが心を閉ざすまで、ずっと追いかけているのです。……。
 あなたはどのような気持ちでいるのでしょうか。少なくとも私、夜は不仕合わせです。セルファリアとの
別れ以上に私を悲しませるものがあるでしょうか。いいえ、私はどんな災いも、それに比べればずっとやさ
しいものだと確信しています。
 セルファリアからキュラーへ。

 今までに数多くの手紙を。今まで数多くの人に。私は、この筆は、この心を伝えたものです。それゆえに
ここには熟練者しかいないはずなのですが……どういうことでしょう。私は一言ごとに胸を押し殺し、少し
心を他へと移せば、ここにいないあなたへの恨み言になってしまう忌わしい手紙を抑えているのです。筆は
脅えた子兎のよう、紙をそろそろとなぞります。なんて臆病なものでしょう、文字は震えて、これが心優し
いあなたに届くことを祈るばかり。愛しいキュラー、あなたはこれを読み取ってくださるでしょうか。
 今、私はあなたのことを――ああ、お許しください! 身勝手にも、あなたの姿を思い浮かべ、あなたと
交わした言葉を思いながら、一人楽しんでいるのです。胸が激しく高鳴ったときを、私の心があなたを求め
て喉元などを揺り動かしたときを、別れることの切ない痛みなどを思い出しては、恥ずかしくも頬を弛緩させ、
また口づけの甘さを思い浮かべ指先でなぞり、その指先を唇で含み、また涙を浮かべて、苦しみに胸を痛め、
どうしようもなく床に伏して――なんてことを! ああ、これはあなたのせいではありません、愛しい
キュラー。どうか許してくださいませ。
 これはきっとあなたを身勝手に思うことの罰なのです、何故って、誰だって人の心のなかで何度も何度も
見境なく呼び出されては嫌ですもの。下賎な者が、高貴の方をこのように思いながら、好き勝手にするなんて。
なんて失礼なことを。
 キュラー、許してください。私が片時も、あなたを忘れられぬことを。
ここでストップしました。
いろいろな無知と不備。思うに、小説というものは、キャラクターへの愛は必要で
あるけれど、それだけでは書けないものかと。
特に錬金術師の話は汚点とも呼ぶべきもの。百合ではない、これはビアンに近い。

「百合的雰囲気」はかなり難しい。ただ男×女の性別が変わったようなのは、青き
炎に投じる朝顔の露のように意味がなく、つまり女×女の必然がなくてはならない
わけだから……。無論、男×男でもいけない、けれど、恋愛と呼べる程度にまでは
お互いの感情を高めなくてはならない。それは主従関係でも、友情でもいけない。

キュラーはひどく男性的で、パリテーはほとんど友人。それは人物そのものという
よりその心の動き方で、つまり……、既定の恋愛に捕らわれているようでは、純粋
な百合を書くことは難しく。それはようするにビアンとは違うということで。
うーむファンタジア・ミステリック。
>>241さん
ふた組の意味深なお話の後、さてキュラーとセルファリアの場合は……
と思ったら、ますますふたりの感情が高まってきて、おっ、ここから
というところで終わってしまいました。読む方としては残念w。
でもおっしゃるように、ふたりが強く惹かれあうのをエロではなく
心の中の動きので表現しているところが百合的ですね。
240の手紙なんかかなりぐっと胸に迫ってきました。
うまく言い表せませんが、美しいものが美しいものに激しく恋する感じ?
が良かったですし、文章もすごく美しかったです。
もしいつかこの先ができあがったときはぜひ読ませてください。
まとめサイト作りました。
http://lilych.fairy.ne.jp/
保管庫がわりに投稿小説コーナー用意してますんで、
需要ありましたらよろしく。
>243さん
保管庫、乙……というよりありがとうございます。
これからも百合作品が増えていくといいですね。


 幾度となく。

 私の記憶は二人を映す。

 二人を映す、さながら幼児のような二人を。

 泣いている。 

 泣いている……子供が、一人だけ。

 どうして……泣いているの?

 可愛い……女の子。

 

 真紅が一面。埃のなか。

 ひび割れ引きちぎられ、ぐちゃぐちゃに壊れて血を噴き出す人形が、コロコロと転がる。

 人形は笑っている

 ああ、血塗れでニコニコ笑っている。

 ――うれしそうに、たのしそうに。

 (だって嬉しいから)(だって愉しいから)


 

 壊れた人形は、壊れた笑顔で、三度笑う。

 くす、くす、くす。くす、くす、くす。

 一度目は狂気。二度目は絶望、だった。

 ――ふふふ?

 はは、あはははは。

 ははは、うふふ、くすくすくす、けらけらけら。

 三度目は。 

 だから、さんどめはね、そう、うふふふふ。

 ふふ?

 ……わからないの? ……ちゃん。

 じゃあ、おしえてあげるね。

 いつもみたいに。

 

 

 それは

 アイ

 あなたへの……深い、暗い、沈んで、落ちて、死ぬくらいの。

 かぎりないかぎりない……愛。




 目が覚めた。
 意識が冷める。私の自我は、深い、深い夢から現実へと浮かぶ。
 水泡。
 消える、弾ける。飛んで、跳ねて。
 嗚呼、私の手。私の足。私の顔。私の身体。私の感情(ココロ)。
「ふ……ぅ……」
 声を紡ぐ。我ながら呆れるくらい貧弱な声。
 重い溜息をつき、ゆっくり辺りを見回す。首が重い。ひどく億劫な動作。
 そして前日と変わることのない、白い自室だということは、なおさら精神を疲れさせた。
 ――なんというのだろうこの感情……。
 ――ああ。
 ――いらいらする、とでもいえばいいのか……?
 苛立ち。燻る、滞る、胸の蟲。 
 だがそんなくだらない感情に振り回されている自分が卑しく思える。

 私はあえて、その考えを無視した。

「……」

 起きているだけで面倒だ。
 ベッドに寝転がる。だがそのとき、時計が自然と目に入った。時針、八時寸前。
 嘆息。
 そろそろ時間……頃合か。
 意識を走らせる。ドアの向こう、廊下からスリッパのパタパタという音がする。
 軽い足取りは、幼い少女のもの。小刻みに速く。パタパタパタパタパタパタパタパタパタ……。
 音は大きく、鮮明に。近づく音。スリッパ。少女。
 少女は……。 
「お姉ちゃん、朝だよー!!」

 私の、妹。 

「起こさなくていいって……いっているじゃない……」
「もぅ、そんなこといって。お姉ちゃんが自分から起きたことなんて一度もないじゃない」
「……悪いわね。気が向かないのよ」
 パサ、パサ、と妹の手から投げられた服を手繰り、着る。
「お姉ちゃんはいつもそうなんだから……」
「……」
 別に、昔からこうだったわけではないのだけれど。
 少なくとも……今の妹と同じ年齢のときはこんな風に朝早く起きて、家族を起こしていたはず。
 だからどうだ、ということでもないのだけれど。
「それで……? 他の皆は?」
「もうみんな起きているよ。お姉ちゃんで最後」
「そう……」
 制服の袖に手を通す。アイロンがかかった制服の感触。
(ん……何?)
 一瞬鼻にかかる、竜涎、麝香、薫香。
 それは妹の愛用する香水をたとえて。
「……」
 嫌ではない。
 嫌な匂いではないの……だが。
「臭い」
「え? あ、ごめん!!」
「いや、……別に」
 少々くすぐったい。
 羞恥。
 全身を包む、この感触が。
 まるでこの香りが、目の前の妹であるような。
 妹の手、脚、胸、肌。肢体が絡みつくような。 
 それは紛れもない錯覚、幻、嘘偽り。
 無駄と無益と無意味の思考。
「……我ながら……愚の骨頂……」
「?」
 クッ、と。自嘲の笑み。
 まさに私は道化そのもの。
「……行くわよ」
「あ、お姉ちゃんボタン締めてない」
「ん……っ」
 つ、と伸びた妹の指。思わず動きが停まる。
 制服に、妹の指がかかる。ボタン一つ、その指は取る。一番上。首が少し締まり、窮屈なつがいに息苦しさを感じる。
 開放望むは私の身体。
 停滞希むは私の精神(ココロ)。
 ただ、そこで、動かず。妹の小さな身体が背伸びしてボタンをかけていく姿を見つめる。
 ほんの少し動かせば届く、妹の髪。背中。
 時計が見える。時間はただ、ゆっくりと流れる。一秒……二秒……三秒……と。
 ただ、流れていく。自然のまま。
 ごく自然。自然な仕草、自然な自分。
 それが何故、こんなにも。
 窮屈。狭い狭い、鋼鉄の牢獄に思えるのだろう。
 身体を動かす余裕も……胸で騒ぐ動悸も抑えることが出来ない。
 ゆっくり、指が離れる。身体が遠ざかる。妹の瞳が私を見上げる。
 呪縛の開放。
「……終った?」
「うん。でもお姉ちゃん、たまには自分でやってよ」
「……必要ないわ」
 生死に関わることでもなければ、後遺症を残すことでもない。
 だがそんな私に、妹は不満気に頬を膨らませる。
「そんなこといってっ。私、お姉ちゃんのメイドじゃないんだからね?」
「……誰もそんなこといっていないし思っていない」
 むしろ、そんな言葉が出ること自体、私には理解できない。
 それとも、私があえて貴女の足枷になることを望んでいるとでもいうのか。
「……貴女に命令したこともないし……ああ、報酬を払ったこともない」
「むっ」
 否定する私の思惑とは反対に、妹の表情は悪くなっていく。
 何か変なことをいっているだろうか。
「……」
 沈黙。妹の肩が、ふるふると震えている。
 後悔。
 地雷を間違えて踏んでしまい、動くことも出来ず敵兵に狙い撃ちされる気分とはこのことだろうか。
 限りない、悔恨と恐怖が、私の心を支配する。
「お姉ちゃんの、馬鹿!!」
「……ぐう」
 いたた。よりによって馬鹿、ときた。
 自覚ある欠点というのは、指摘されるとかなり辛い。それが直しようのないものなら尚更だ。
「……だったらどうなの?」
「むっか!」
「……ごめん」
「おねーちゃんの」  あ、痛そうな正拳
「ど畜生ーー!!!」  

 

「それで? それがそのたんこぶなわけ?」
「……」
 学校。女狐の問いに、黙って頷く。
「あーっはっは」
 笑う女狐。
「……」
「馬鹿だねえ瀬理」
「……お前に言われる筋合いはない」
 そもそも私より愚かなものが私を馬鹿と罵ることこそあり得ない事。
 まあそれは口にしなくてもいいことだ。 
 それにしても。
「……最近、悪い夢を見る」
「ん?」
「……ただの独り言よ」



 モノクロの夢。
 躊躇。躊躇。
 身動ぎ一つせず、躊躇。
 沈黙。
 沈黙。
 無言と静寂、音はない。
 痛いぐらいに音はない。
 近づく。少女は近づく。一歩近づく。 
 その娘の身体に近づく。
『……ちゃん……?』
『……』
 抱いた。 
 ――その娘は動かない。
 
 ちゅ、と触れる唇。
 唾で濡れて、潤いを含んだその娘の唇。
 赤い、赤い。桜のように、桃のように、ハスの花のように。
 ――抵抗はない。
 ――いともたやすく、少女は奪えた。
 汚れなき、……の純潔。
 どす黒く変色した、醜い私の欲望(ココロ)で。
 ……を、汚した。
『……』
『……ちゃん……』 
 無言で、その細い背中に手を回す。
 その娘の無知が。無知ゆえの残酷さ、冷酷さが、痛いくらい心に響いた。
 ――けして、責められたからとて、私の罪ぞ消えるはずもないが。
『……ちゃん……泣いて……るの……?』
『……』
『……どうして……?』
『……』

 カツ、カツ。
 何の音だカツカツカツカツ。
 カツ。
「……」
 目を覚ました。

「ここは……教室」
 カツ、カツ、と黒板に眩しいぐらい白いチョークが引かれる音がする。
 耳がうるさい。目は眩しい。うっとおしいぐらいにまとわりつく二感。
 白。一面の白い教室。牢獄を思わせるほどに。
 硬い。硬い材木。机。この春新調された机だ。37個。だがそんなことはどうでもいい。
 近寄るな。光も音も感覚にうったえるものすべて。
 必要ない。意味はない。
 世界は、退屈で無意味なものに、構成されている。
 誰も何も、妹の足元にすら及ばない。
「……」
 人生とは……永い命の暇つぶし。
 だが暇つぶしがこんなにも苦しいものなら、初めから人生など捨てればよかった。
 汚毒の人生。
 私はこれからも、この罪深い心を引き摺っていくのだろう。
 愚かしくも、それを至福と感じて。
 

 妹に劣情を抱いたのは、いつの頃だっただろう。
 気がついたときには、既に取り返しのつかないくらいに膨張していた、気持ち。
 そこに理性の付け入る隙間はなかった。

 実の妹への、留まることを知らない恋慕という獣。



 私は狂っている。いつのまにか感情が壊れていた。
 壊れて、それでも廻る時計の歯車だ。狂いは徐々に徐々に浸透し、もはや取り返しのつかないところまで来ている。
 ――時を刻まなくなった時計はもう時計ではない。ただの我裸躯多(junk)。
 この、「私」という狂った人形もまた。
 キリキリ。胸が痛い。
 叶わぬ想いの炎が胸で暴れる。熱い。爛れ剥がれるほど、熱い。
 耐えがたい嘔吐感。毒だこれは毒だ毒ああ毒だ。
 だが、それを吐き出すことはない。吐き出せない。内臓のすべてを吐瀉しても、けして吐き出せない。
 毒。これは毒。何が毒? さあ。

 私が毒。
  
 
 夕方。
 全身を焦がし、窒息しそうなほど赤い夕日が身体を染める。
 教室で、ただ一人目が覚めた、
 サワサワと木々の葉擦れの音と、運動部の声と音が遠くに聞こえる。
 時計は4時39分をさしていた。
「……」
 寝ていたようだ。おそらく熟睡。
 白紙のノートも私の学力に影響するわけではないが、少し無視された教師が哀れだったかもしれない。
 所詮、どうでもいいことだが。 
「……そうだ。妹を迎えに行かなきゃ……」
 立ち上がり、鞄を持つ。
 部活には入っていない。そんなものに、興味はない。
 私は教室を出ると、下駄箱に向かった。


 血の色に染まった空。
 炎に包まれた空。
 それは、アスファルトに紅の河を垂れ流す夕焼けの空。
 そして二つ。長、小。黒い影が伸びている。
 私の隣りにいる妹の躯は夕日に染まっていた。
「……かわいい」
「え? お姉ちゃん?」
 うっ。つい本音が。
「い、いや……革がね。その制服の革がいい、と……」
「革……? ううん、これ革じゃなくて絹だよ。見た目よりも薄いの」
「絹……そ、そう。高そうね」
「えへへ」
 くるっとその場でまわる。髪が夕日を弾き、赤い妖精が踊る。絹がめくれあがり、そのラインをより一層際立たせた。
 見とれて、しまう。

「似合う?」
「……」
 私は、僅かに目を伏せた、 
 口を出る呟き。
「……似合って……、いるわ」
「なによぉ今の間は!!」
「……」
 一歩歩き。私は頬を膨らませて怒る妹を振り向いた。
 影が私の顔を隠す。表情を妹に見られることはない。
 この、羞恥に染まる表情を。
 私は言った。
「とても……似合っているわよ、……なずな」



 
 ホワイトボードの切れ端。
 それくらい、珍しいものを見た。
「……これはなに?」
 コレハ、ナニ。
 思わず呟いた、その言葉の原因は目の前に置かれた奇妙な物体のせい。
 黒と茶に変色した物質。それそのものはああ硬そうだという程度のもの。
 だが何故。ああ何故。
 それが、我が家の食卓にあるというのか――。
「……料理」
 妹、私の正直ななずなちゃんは。
 そういった。

 コレハ、リョウリ……。
 料理:タベル、タメノ、モノ
「……」 
 しばしの沈黙の後、そのあまりに恐ろしい答えを理解した。
 さながら、世界の終末を予言された信者の様に。
「料理?」
 冷静を保ち、なんとか返すが頭は真っ白。
 ただ胸のなかに、ふつふつと酸が波打っている。
 しずかに、しずかに、溢れだす……。
「この黒い塊が」
 ――災いがくる。
「貴女は」
 ――災いがくる。
「……」
 肩が、自然と震えてくる。
「お、お姉ちゃん………」

「貴女は私に食べさせるものだというのかぁッッーー!!」

 どかーんガラガラ。爆弾が密封された室内で爆発し、妹の身体が吹き飛ぶ。
「抱きつかれた……溺死寸前の妹に……!」
「うう、わけわからないよぉ……」
「一食即解(食えばわかる)!!」
 とても食えたものではないが。
「ていっ」
「あ、お姉ちゃん?!」
 がり。
「くはっ」
 一口入れただけで、全身に耐えがたい痺れと苦痛が走る。
 グラグラと眩暈がし、思わず膝をつく自分が遠くに見えた。
 ――ああ、眠い。
 ――冷たく……孤独だけが支配して……。
 ――これが……『死』というものか……。

 ひどい目だ。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「う、うーん」
 いや、どうやらひどい目にあった……と過去形でいいらしい。
 意識が戻った瞬間、私を見下ろす妹の顔が大きく映り、慌てて起き上がった。
「おーぅおーぅ(ゾンビ声)」
「ご、ごめんね」
 辺りを見渡す。先ほどと変わらぬ光景。
 どうやら、今の今まで見ていた天使達の引き連れる馬車は幻だったようだ。
 チラリ、と食卓を見る。
「……しかしとんでもないものを作った」
「怪物をこの世に送り出したフランケンシュタインの心境です……」
「まあ過ぎたことは悔やんでも仕方ないわ。それより事の元凶、貴女を台所に立たせた父と母は?」
「え? 今日から父さんが出張で、母さんがそれについていって……聞いてない?」
「あ」
 そういえば何かいっていたような。
 だが寝ていて、聞いていなかったような。
「ふう」
 妹は呆れたような溜息をつく。
「えっとね。お父さんが急に下総の国へ三ヶ月くらい出張することになってね。すごく遠くて、電話も使えない田舎だからっていうことで、お母さんもついていくって言い出して。それで私たち二人は一週間お留守番。ああ、お金は置いてあるって」
「……」
 億劫なことになった。
 徒然にまかせてもいいのだが……その結果がこの料理というのはあまりに酷。
「しょうがない……家事を手伝うわ」
「うん。お願い」
 妹の哀しそうな言葉に頷き、――エプロンを後ろで蝶結びにしながら――ふと気付いた。
「どうして、初めから『手伝って』といわなかったの? 料理が失敗するのは見えていたのに」
「……出来ると思ったんだもん」
 ぷう、と頬を膨らませる妹。
「……それに……食べてほしかったから……」
「――む?」
「……」
 ――桃色咲きの春。
 緋姿、妹の表情が揺らぎ……朧に溶け込む。
 代わりに浮かぶ、その顔容。
 ――(その心いかなもの?)
「……お姉ちゃんに」
 彼女の呟き、囁き。
 甘露。まるで蜜。私を狂わし引き込む、美酒。
「食べてもらいたかったから……」
「なずな……?」
 動悸が、止まらない。
 ――抑えなくては。
 欲望が、心を満たす。溢れだす。(抑えなくては)
 抑えなくては。抑えなくては。理性で本能を抑えなくては否違う。
 ――本能で、理性を、抑えなくては。
 だってこれが私の本性(まとも)。
 私は狂っているのだから。

「ふ……」
 息を吐く。
「お姉ちゃん……?」
「ふふふ」    
 息を吸う。天井を見上げる。
「ふふ。食べてもらいたかった? この黒い怪物(モンスター)を?」
「う……」
「するとひょっとして、これは計画殺人だったのね」
 おー、まいがっと! とわざとらしく肩をすくめてみせる。
「う。なにもそこまでいわなくても」
「ふっ。じゃあ貴女が食べてみる?」
「う…」
 じり、と後ずさりするなずな。 
「ほらほらどうしたの」
「ひぃん……ごめんなさい」
 ペこ、と頭をさげる。しょうがない、許すとしよう。
「ありがとう」
「さて……何か食べたいものはある?」
「うーんとね……」

 タンタンタンタンタン……。
 まな板を包丁で叩く音が、台所に響く。
 幸い、肉は消費されていなかった。簡単にカレーを作る。
「……」
「?」
 おとなしく椅子に腰掛けるなずなが、じっと私を見ている。
「すぐにはできないわ」
「うん。何か用意するものある?」
「じゃあ皿でも出しといて」
 私の言葉に頷き、食器棚に向かうなずな。
 カチャカチャ、背後から皿を出す音が聞こえる。
「何枚?」
「二枚。あとサラダ用の器も出しておいて」
「うん」
 返事を返し、……とまる。
 じっと、私を見つめる視線。
「どうしたの?」
 私が問い掛けると、笑った。 
「こうしていると、お姉ちゃんって可愛いお嫁さんだ」
「――え?」
 思わず、振り返る。
 そんな私の様子に、クスッと微笑む。
 なずなの表情が、一瞬微艶を含んだ――ような気がした。
 すぐにいつもの表情に戻った、が。
「いま、なんて……」
「ううん。なんでもない」
「……」
 一瞬の表情。
 宵の神楽、名月の灼々もうつろうほどの、小姫よ。


 夕食を食べ終わった。
 献立はカレーライス、サラダ、オレンジジュースと普通のもの。
 カレーは中辛が一番いい。私は辛いほうがいいのだが、あまりに辛いと妹が食べられない。
 小さな頃は家事をやっていたため、家族全員の味の好みは熟知しているのだ。
「おいしかった?」
「うん」
 口元を拭きながら、妹はニコッ、と笑う。
「とてもおいしかった。ありがとう」
「……どういたしまして」
 二人分の食器を台所にもっていき、洗い始める。その間にバスのスイッチを上げる。
「お風呂先に入っていていいわ」
「ん」
 妹は頷き、風呂に向かう。
 それを見送りながら、私は洗物を続けた。
 キュ、キュ、キュ、キュ、キュ。
 キュ、キュ、キュ、キュ、キュ。
 洗剤のついたスポンジで、妹の使った食器を洗う。
 汚れ、あるいは温もりが落ちていく。
 哀しいこと。
 それを見ながら、私は水道の蛇口を捻った。
 ジャー、と水が流れ、泡が落ちて、水道管に吸い込まれていく。
 後に残ったキレイなお皿。私は頷くと、食器棚に戻しにいき。
 そこでふと、バスタオルに身を包む妹の姿が目にとまった。
「……どうしたの?」
「うん……」
 私を見ながら、首を僅かに傾げている。
「?」
「あのね……一緒にお風呂、入ってくれない?」
 洗い物をしている手がとまった。
「……何?」
「だ、だからあの……一人だと怖くて……」
 ゆっくり、妹の言葉を頭のなかで反復する。
 水道の水が流れ続ける音が聞こえて、慌てて蛇口を締めた。
「駄目?」
「いえ……」
 ――駄目ではない。
 されどこの、あまりに貧弱な身体を見られるのは……少々気が引ける。
 ましてそれが、この少女ならば。
「ふぅ……」
「?」
 とりあえず一度呼吸をし、風呂へと向かう。
「いいの?」
「まあ……いいわよ」
 パッ、と妹の表情がほころんだ。
「よかった」
「……」
 私はそんな妹の表情に心癒され。
 つい、一言。
「……ところで貴女、何歳になったの?」
「う〜〜」
 余計なことをいってしまった。


 水の跳ねる音がする。
 飛沫が上がり、落ちる。目の前でユラユラ揺れる電灯の光。
 まるで蛍。真冬の蛍。儚い蛍。
 靄(モヤ)の立ち込める一室の、そんな些細な光景。
 すぐ傍らの少女が、生まれたままの姿で私に微笑む。
「お姉ちゃんと入るの、久しぶりだね」
「……そう?」
 そういえば妹の裸体を見なくなってから久しく経った。
 最後に見たときと比べると、……やはり大きくなっておる。
 何が、とは考えない。私にもプライドがあるから。
 そう全体的全体的。上下と中の比率はともかく。
「お姉ちゃん、けっこう太った?」
「……ぐわ」
 あまりに残酷すぎる無邪気。私の精神は著しく損傷し、湯船に沈没した。
「あ、あなたね……」
「へ? 健康な証でしょう?」
「……」
 ぷくぷくぷく。泡がのぼる。
 ぐうの音もでない、とはこのことだ。
「お姉ちゃん?」
「なんでもない。……若いっていいわね」
「や、やだなー、お姉ちゃんだって若いよ」
 ふぅ、と自嘲する私に、ススッと妹が寄ってくる。
「まだ胸だって私より大きいし」
「気休めはよして。その『まだ』が私には何より痛いのよ」
 顔を背ける。あまりに哀しく、無残に砕かれたプライド。
 ふぅ、と妹は溜息をついた。
「ごめん。気にしているなんて知らなかった」
「……」 
「でも本当に……お姉ちゃんの身体って、綺麗だよ」
 手が、伸ばされる。肩に触れる。
 体温。そこだけ違う、彼女の体温。なずなの手のひら。
 熱い。身体のなかが。心の奥が。
 頭の芯で、音が鳴る。鈴のような声が響く。
 ――綺麗。
 ――お姉ちゃんの身体、綺麗。
 囁かれた言葉の余韻。それは、熱に浮かされるくらい。
 嬉しくて。 
「……」
 顔を向けた。困ったように私を見つめる、なずなの顔がある。
 ――熱。微熱。
 はぁ、と零れた吐息が、顔にかかる。熱い、熱い、蕩けそうなくらい熱い息。
 波が揺れた。

 ――ふと。なずなに触れてみた
 ――柔らかい、小さくて可愛い身体だった

  
「お姉ちゃん……?」
「……触れて、いい?」
 小さく呟く。なずなの身体を抱きしめて。
 戸惑ったような、なずなの目。すがるような、なずなの目。
 でもまだ、拒否はされていない。
 私は今一度聞いた。
「なずなの身体を、もっと触っていい……?」
「……それは……」
 きゅ、と下唇を噛んで、うつむく。
「……」
 それきり、黙る。私は待つ。
「……何?」
「……」
 おずおずと、妹は口を開く。恥ずかしそうに、上目づかいに私を見ながら。
「……Hなこと……?」
「……」
 私は少しの間、沈黙して、
「……ちょっとだけ」
 と云った。
「……」
 はぁ、となずなは息を零す。
 視線を逸らしながら、なずなは何度も呼吸する。胸が上下し、波紋が浮かぶ。
 抱きしめていた私の手を、きゅっ、と握った。
 震えている。
「……ちょっとだけ?」
「……ちょっとだけ」
 はぁ、となずなは息を吐く。波紋が広がる。目を逸らしたまま、なずなはもう一度訊ねる。
「……ほんとうに、ちょっとだけ?」
「……うん」
 握り締められていた手の震えが、少しだけ和らいだ。
「……ちょっとだけ、だよね」
「……うん。絶対」
「だったら……」
 つ、と私を向くなずなの表情。恥ずかしさで、桜色に染まっている。
 胸が締めつけられる、愛しさ。
「なずな……」
「だったら……ちょっとだけなら……いいよ……」
 目を逸らし、なずなはそれきり黙る。
「……いいの?」
「……何度も、いわせないで……」
 年頃だし、興味あるし、ともごもご口を動かすなずなに微笑みかけ、私は頷く。
「あ」
「……?」
「ちょっとって……どのくらい?」
「っ、下は駄目!!」
 やっぱり。嘆息し、私はゆっくり。なずなの肌に指を這わす。

 お腹から上へ。ゆっくり、ゆっくり。弾力ある、柔らかな身体を指が滑る。
 なずなの肢体がピク、と震えた。
「どう?」
「どうって……」
「嫌な感覚とか……する?」
「ん……」
 首を横に振る。
「よかった」
「でも……少し……くすぐったい……」
「うん。そうだろうね」
 ツツ、と鎖骨の辺りに指を這わす。ひゃ、と声をあげ、なずなの身体が跳ねた。
 波が立つ。チャパ、チャパ、と音が部屋に響く。
「あ……ごめん」
「いいから。二人だけだし、少しぐらい騒がしくても……ね」
 首筋を触りながら、もう片方の手の指で背中を伝わせる。
 何度も何度も。強く押さず、それなりに速く。広い範囲を、円をえがくように。
 むずがゆそうに身を竦ませていたなずなも、徐々にゆっくりと身体の強ばりを解いていく。
「もうちょっと力抜いて……落ち着いて、ね?」
「う、うん……」
 そうはいっているものの、戸惑い、不安はそう簡単に拭えない。
 私は少しの間思案し、
「ふー……」
「!……ひんっ」
 耳元で、息を吹きかける。そのまま耳朶を舌でつつく。
「や、やん!」
「じゃあこっち……」
 頬をペロリとなめる。そのままペロペロと。猫のように、頬をなめる。
 なずなが怒ったようにこっちを向いた。やむなく離す。
「何しているの」
「洗顔」
 一言言い放つと、首筋を愛撫していた指を胸へと持っていく。
「あ、こら!」
「お姉ちゃんにまかせて」
「……知らない」
 ぷいっと顔を背ける。苦笑しながら、私は豊かに膨らんだ胸を周りから少しずつ撫で回す。
「……どう?」
「……知らないもん」
 そっぽを向いたままだが、恥ずかしそうに頬を桃色に染めている。
 そんないじらしい様子に、自然と笑みがこぼれた。
「……気持ちよくない?」
「……わかんないもん」
「そう……」
 クルクル、胸の上で指を踊らせる。 
 何度も何度も繰り返すうち、少しづつなずなから力が抜けていった。
「いい感じ……」
「ん……」
 なずなの唇から、熱のこもった吐息が漏れる。
 次第、次第に震えはじめる肢体を押さえ、執拗に繰り返す。
 その度なずなは甘い声を鳴らした。
「ふぁ……ゃ……ん……」
「かわいいわ。なずな」
 いつも言えない言葉が、自然と口をついて出た。
「おね……ちゃ……」
「だからもうちょっとだけ……」
 桜色に染まる乳首に指を当て、そっと摘んだ。
 優しく、微かに力を込めて。クニクニと二本の指で回す。
「ふにゃん……っ!」
「ふふ?」
「や、やだよぉこんなの……」
「嫌?」
 首筋を舌でたどりながら、私は首を傾げた。
「痛い?」
「そ、そうじゃなくて……なんか変な感じ……」
 ふぅん……。
 私は内心高笑いをしながら、妹の胸から指を離す。
「じゃ、やめていい?」
「う……」
 もじもじとなずなは身体をくねらせ、
 首を横に振る。
「止めちゃ……イヤ」
「よしよし」
 くる、となずなの身体をこちらに向ける。全身の裸体が、私の正面を向いた。    
「やっ……!」
「って、こら隠さない」
 慌てて胸を覆いそうになるなずなの手を両腕で抑え、開かせる。
「や、やだ! お姉ちゃんの馬鹿ぁっ!」
「馬鹿馬鹿いう子にはお仕置き」
 なずなの胸に顔を近づける。近くで見ると、さらに大きな胸だった。確か巨乳っていうんだっけ。
 ペロ。
 乳首に舌を這わし、全体を丹念に舐め上げる。
 チュ……チュル……チュパ……。
 湯船のお湯を舐め取り、代わりに私の唾液でなずなの肌を染めていく。
「だめだよぉ……」
「駄目じゃないでしょ? ほら」
 弱々しい拒絶。力が抜けていくなずなの手を私の背中に回し、なずなの身体をぎゅっと抱きしめる。
「もう少しだけ……」
「う、うん……」
 なずなから零れる息。私は深く息をつき、そして。
 キス。
 私となずなの唇を、一瞬だけ重ねた。
「え……?」
「……こういうときは、ね」
「……お姉ちゃん……」
 ほんの一瞬のキス。
 甘くて、切なくて、柔らかくて。
 火傷しそうなくらい、爛れそうなくらい、蕩けそうなくらい、それは熱い。
 熱くて、心の情炎のように私を満たす――昔と同じ、変わらぬなずなとの接吻だった。
 

「いと暑し」
「おねーちゃん、床に寝転がるのやめなよーー」
 ぐてー。お風呂から上がり、ただの屍のようにフローリングで寝転がる私に、妹の叱咤が飛ぶ。
「日本茶とジンジャーエール、どっち飲む?」
「胡椒プリーズ」
「日本語と英語が反対になってる……」
 ペットボトルから二つあるコップに移し、ジュースが手渡される。
 そのまま蓋をしめ、ジンジャーエールは冷蔵庫にしまわれた。
 私はコップを取り、ゴクゴクと飲みながら、
「そういえば貴女、ファーストキスって覚えている?」
「え? ううん、多分さっきのが初めてじゃないかな……」
「そう……」
 無理もない。あの頃は、何も知らない少女だった。
 わかってはいたけれど。少し哀しく、空のコップを指で倒した。
「……」
「なんてね」
 微かに、妹は微笑む。
「初めてじゃないよ、多分」
「え――?」
 妹は、何か思い出すように天井を見上げる。
「覚えてないけど、昔とても好きだった人とした記憶あるんだ。もう、忘れちゃったけど」
「……」
「好きだったけど……傷つけちゃった……だから……忘れたんだと思う……」
「覚えては、いないの……?」
「うん」
 妹は、寂しげに笑い、うつむく。
「きっと覚えているのは……その人のためにならないから」
「……」
 そっと起き上がり、妹の髪を撫でる。
「そうね……。……そうかも、しれないわね……」
 不思議そうに見上げる妹に、笑いかけた。
「じゃあ貴女が大きくなって結婚するまでは……せいぜい護ってあげるわよ、なずな」
「……」
 妹は、なずなは私の言葉に微笑み、
「うん、お姉ちゃん!!」
 
 大きく頷いた。
設定。(これがないとサッパリ……)
主人公は昔、妹(なずな)によって廃屋に閉じ込められ、錆びた五寸釘で
犯された過去がある。そこで一度発狂し、そのときの記憶を失った。妹は
そのことを覚えているが、主人公に嫌われたくないため言わない。主人公のことが
好きだが、そういった負い目から近づけず、また、主人公にいつ真実を知られるか
わからないという恐れから、主人公の気持ちも気づいていない。
すごく良かったです!
設定がわからなくても、やりとりが可愛らしくて
お風呂場のシーンもドキドキでした。と、
読むのがもったいないぐらい良かったんですが、
そんな物々しい過去があるなんて……
>271
乙。読んだよ。
家に2人だけになる展開とか、風呂場のシーンとかエロくてイイね。
主人公がクールに見えて、意外と軽いというかノリがいいのも面白かった。

設定だけど、記憶を失っているのはなずなではなく主人公なの?
その割には、主人公は昔になずなとキスしたことを覚えているみたいだけど。
主人公はその「廃屋に閉じ込められ〜」という記憶だけ失っているってことかな?

しかし、主人公の名前が瀬理で、妹の名前がなずなか……
すずなって名前のキャラも登場キボン(w
ハコベと御形もキボン。苗字は鈴代で!
せりが変な奴でいい。続ききぼん!
276春風の指輪:04/02/16 01:33

 その夏の空は、いつにもまして照り輝いていた。
 私の頬もチリチリと、日差しが焼いていく。
 8月30日。
 夏休みも、もう終わりだった。
「長いようで短い……か」


『ザアアアアアア……』
 止むことのない雨。
 私は空を見上げ、止むのを待っていた……かもしれない。
「……」
 雨が止む気配は無い。
 雨が止む気配は無い。
「……」
 体が、冷えていく。
 寒い。
 凍えるように、寒い。
 心の芯に、染み込んでくるように。
 まるで。
 私の身体が、雨にとけていく ように――。

 いつまで待つのだろう。
 いつまで待てばいいのだろう。

 まるで世界に 一人しか いない ような。
 孤独感。
 そう……寂しいって
 言っているのに――。
277春風の指輪:04/02/16 01:35
・・・

 ふと。
 私は、振り向いた。
 滑らかな音色。春風。
 そこに立つ、少女、一人。
 蒼黒の髪に、降りつる雨が伝い、流れる。
「……大丈夫……ですか?」
「……」
 差し出される、手。小さな手。
 ポツ、ポツと雫がその甲に落ちて、叩いていく。
 少女は。
 自分の小さな傘を、私に差して。
 自分が濡れていくのにも構わず、微笑み。
 手を、差し伸べる。
「……」
 温かい、手のひら。
「ありがとう……」
 自然と、口を出る、呟き。
 少女は少し驚いた顔をして。
「どういたしまして」

 温かな、部屋だった。
「今日は……両親は、出かけています」
「そう……」
 タオルを借り、頭を拭く。
 それでもポタポタと幾滴、水がカーペットに染み込む。
「あ」
「いいですよ、それより」
 ベッドに腰掛け、少女は不思議そうに尋ねた。
「どうしてあんなところに? 由葵先輩」
278春風の指輪:04/02/16 01:36
「私のこと……」
「知っていますよ。中等部の、クールでスポーツ万能の生徒会長。でもあんなところでクールになる必要がありますか?」
「……」
 少女は困ったように頭をかく。
「あの……」
「哀しいことが、あった……と思う」
 一言だけ。私は呟いた。
 それが限界だった。
「……」
「ごめん……変なこといって」
「いいえ……いいえ」
 少女は、静かに、私の言葉を聞いて。
 優しく、まだ拭き取られていない目尻の雫を指先でぬぐった。

・・・

『先輩』
『……どうしたの、朱姫』
 おずおずと声をかけてきた後輩の頭を、そっと撫でる。
『先輩……私のこと……好きですか?』
『……』
 呆れたように、溜息をつく自分。
『何度言わせるの?』
『……』
『嫌いよ。大嫌い。いつも私を苛立たせて、焦らせる子なんか……ね』
『……すいません』
『そこ! 謝るところじゃない!!』
『はいぃぃぃ……』
279春風の指輪:04/02/16 01:37
「……」
 夢を見ていた。
 それが過去であることは、私が夢から覚めたことを意味している。
「朱姫……?」
 それが誰であるのか。
 このときの私はまだ、知らない。  

 朝。
「おはようございます……昨日は眠れましたか?」
「う、うん……」
 ベッドから身を起こすと、すでに少女は朝食の準備をしていた。
 エプロン。三角頭巾。
 この上なく家庭的な格好だ。色々な意味で。
「それで? 何を作るの?」
「いえ……照り焼きとムニエル、どっちがいいですか?」
「……照り焼き」
「はい。じゃあ後はー、豚汁とサラダと……」
 レシピは家庭科の本。
 いまどきこんな子、珍しいと思う。
「えーと分量は……」
 適当でいいのに。
 それが料理に込める『愛情』なのだろうか。
「……」
 どうでもいいけど。
 お腹空いた。
「もうすぐ、出来ますから」
「本当?」
「本当ですよ、えーと……」
 ぱらぱら。家庭科の教科書を見る。
 時間確認。
280春風の指輪:04/02/16 01:38
「あとよんじゅう……」
 何故か言いよどむ。
 私はもう一度聞いた。
「本当?」
 少女の笑顔が引きつる。
「多分……」
「……」

「いっぱい食べてくださいね」
 五人前の料理が並ぶ。
 ものの見事にレシピ通りの四十五分後。
「食べるけど……悪いね。泊めてもらった上、ご飯まで……」
「いいですよ、それに」
 うつむいて、顔を赤らめる少女。
「こうやって……私の手料理食べてもらえるの……夢でしたから……」
「……」
 なんだか妙に気恥ずかしい。
 私は黙ってご飯をかきこんだ。
「……」
 見れば、少女はじっと私を見ている。
「?」
「おいしいですか?」
「う、うん」
「よかった……」
 パッと顔を輝かせる少女。
 どき。
 これは……かなり可愛い。私のど真ん中、ストライクゾーンだ。
「な、名前……聞いてなかった」
 せめて名前だけでも聞いておこう。
281春風の指輪:04/02/16 01:43
 だが、予想に反して少女は首をかしげた。
「名前……知りませんか?」
「え?」
「おかしいな〜〜確か一度いったはずだけど……」
「ええ?!」
 初耳だ。確かに私だって初等部まで、全員覚えているわけではないが、それでもこんな可愛い子を忘れるはずないけど……。
「う〜ん」
 少女は少し考え込み、
「じゃあ思い出してください。そうしたら、私も大事なこといいます」
「う、うん」
 少女の言葉に、すこしだけ期待したのは……。
 しょうがないことだよね。

・・・

「やっぱり、夏休みは気が楽でいいですねーー」
「うん」
 二人連れ立って、街まで出る。
「先輩? 浮かない顔してますね」
「暑いからかな……雨が上がったせいか、凄く暑い」
「……そうですか?」
 ミンミンと、どこからかセミの声。
 頭に熱がこもり、足元がおぼつかない。
「……」
 それとも。
 この、足元が陽炎なのか。
 ふらふら、ふらふら。
 揺れている。
282春風の指輪:04/02/16 01:44
「……」
 少女は私の顔を覗き込み、
「そうですね……少し休みますか……?」
 暑い。熱い。
「うん……ごめん……朱……」
「え?」
 クラ、と少しだけ倒れ掛かった……気がした。
 だけど身体は止まらず。そのまま、地面に倒れ込む――。
(……あれ?)
 柔らかな手が、私を支えた。
(この感触……どこかで……)
 安心したせいか、一瞬のデジャヴュを追いかける間もなく私の意識は薄れた……。

『先輩、ほら掴まって』
『元気ね……あなたは』
 私は朱姫の肩に、そっと手をまわす。
 そのまま背中に朱姫の手がまわり、私を担ぎ上げる。
『よっと』
『……重い?』
『え? いやいやそんなことはありませんよ、はい』
『……』
 嘘だ。私は直感した。
『重いなら、降ろしてくださっても結構ですことよ。王子様』
『もう……先輩』
 呆れたように溜息をつく朱姫。
 子供みたいに意地をはる私。
 夏の1ページ……。
283春風の指輪:04/02/16 01:45

「!」
「あ、起きましたか?」 
 私の顔を覗き込む逆さの少女。いや、むしろこの体勢は……。
「ひ、膝枕……」
「はい。先輩の寝顔、拝見させていただきました」
「……」
 情けない。
 年下の女の子の前で倒れて膝枕。その上寝顔まで見られているとは。
「どうですか? 調子は」
「ええ、とっても会長」
「……」
 ただのダジャレ。
 そんなに固まらなくてもいいと思うのですが?
「ごほん。気を取り直しまして、先輩。本当に大丈夫ですか?」
「ええ……暑さには弱くてね……」
「……」
 それでも、ここまで弱くはなかったと思うのだけれど。
「疲れているみたいですね、先輩」
「?」
「きっと……何か、あったのでしょう」
「何か?」
「思い出したくない……思い出せない、辛くて哀しいこと」
 辛くて……哀しいこと?
 覚えていない……それとも、思い出せないのだろうか。
「じゃあ、今日は……」
「ええ……」
 でも。
 どうして、あなたまで、哀しそうな表情をするの? 
「……」
284春風の指輪:04/02/16 01:47
「先輩?」
「もう少しだけ、一緒にいましょう」
「え……」
「駄目……かしら」
「いいえ……いいの……ですか?」
 私は、うなずいた。
「せっかくの天気だし……映画見て……ショッピングして……お昼一緒に食べて……」
 まるで約束をしていたように、自然と言葉が出る。
「一緒にお話して……日が暮れても……あなたの家でお話して……」
「せん……ぱい」
 私は、すこしだけうつむいた。
「明日もまた……一緒にいようって約束して……」
 それは。
 ただ一つの、願い。
「付き合って……くれないかしら……」
「……」
 少女は。
 コクン……とうなずいた。
 
・・・

 夜。
「ん……」

 夏休みが始まる。
 通信簿を受け取り、私と朱姫は二人、並んで帰っていた。
『先輩。夏休み、空いていますか?』
『……空いていないわ』
『そう……ですか』
285春風の指輪:04/02/16 01:48
『なに残念そうな顔しているの』
『だって……』
 不安に顔を曇らせる朱姫。
 私は肩をすくめた。
『あなたがどれだけ嫌がっても、夏休み中、私はあなたと一緒にいるからね』
『あ……』
 顔を赤らめる朱姫。
『はい! 先輩、大好きです!!』
『……私は大嫌いよ』

 帰り道。
『夏休みぐらい、私の手料理食べてくださいね?』
『……どうしようかしら……』
『腕によりをかけて作りますから! 前、先輩倒れていたし……ちゃんと魚食べてます?』
『……』
 先日、抱きかかえられて家まで運ばれたことを思い出し、顔を赤らめる。
『せ、せいぜい豚汁でも作ってみなさい!』
『はーい』
 クスクス、クスクス。
 朱姫は笑う。
『でも明日は、雨だそうですよ?』  
『そうなの?』
 夏休みの初日が雨、というのも少し不吉。
 そんな不安を振り切るように、笑う私たち。
『でも……今日から、一緒にいられますよね?』
『そうね……』
286春風の指輪:04/02/16 01:52
 
 つい、と。
 ふと、曲がり角を曲がった瞬間。
『?!』
 不注意だった。
 前から、巨大で黒い影。
 動けない。
 迫る恐怖に、ただ、動けない。
『先輩ッ?!』
 朱姫の声に我にかえる。
 でも――もう遅い。
 その車は、逃げようとする私の身体をまるで蟻のように轢き飛ばそうと――。
(逃げられない……!)
 私は、そう悟り、目を瞑る――。
 一瞬。
 蒼黒の髪が踊った。
『ッ!』

 そして 身体が 一度 大きく 震え。
 まるで 人形の ように 崩れ 落ちる。

『え……?』
『せんぱ……い』
 鮮血が散った。
 まるで華が、咲き乱れるように。
 朱姫という名の華が。
 まる で 消えて しまう かの ように。
 キシキシと、トラックに触れたまま朱姫の身体が、音を立てる。
 きゃあ、という誰かの叫びが遠くに聞こえた。
287春風の指輪:04/02/16 01:53
『なに……?』
 首をかしげる。こんなことが、あっていいはずがない。
『先輩……』
『ね……どうしたの……? あなた身体が……変……』
 ああ、こんな。
 両腕がなくて、身体が捻じ曲げられて。
 言葉を紡ぐたび、コホ、コホと紅の霧沫が散り。
『ごめんなさい……両手で止めようしたけど……無理で……』
『なにをいって……?』
 わからない。
 わからない。
 こんなの、わからない……!!
『先輩……ごめんなさい……』
『謝るところじゃない!』
 認めさせないで。
 これが現実だと、認めさせないで…っ…!
『ごめん……なさい……』
 でも。
 それでも、謝る朱姫。
『一緒に……いられない……』
『そんな、そんな……!』
 そんな言葉。
 私は、聞きたくないのに。
『ずっと……一緒だって……いったじゃない!!』
『先輩……』
『嘘つき! 嘘つき! 嘘つき! 嘘つき!!』
『そう……ですね……』
 朱姫の首が、僅かに傾いだ。
288春風の指輪:04/02/16 01:55
『明日は……雨だけど……その次の日は晴れだから……』
『……?』
『……二人で……映画見て……二人で……ショッピングして……私の作った……おいしいお昼食べて……』
 ああ。
 こんなときでも笑う、朱姫。
『一緒にお話して……日が暮れても……私の家でお話して……明日もまた……一緒にいようって約束して……』
『朱姫……!』
『もう……叶わない…夢に……なってしまいました……』
 朱姫の膝が、力なく崩れる。
 その潤んだ瞳を、私に向けたまま。
『ごめんなさい……先輩……』
 カシャン。
 まるで硝子の割れるような音と共に、身体が、崩れる。
 瞳が、光を失っていく。
『朱姫……ッ!!』
『私……先輩のこと……好きだった……』
 最後の、言葉。
 最後の、意志。
 最後の、心。
 最後の、朱姫。

 私が告げられなかった、言葉があった。

・・・

「……」
 そうか。
 やっと、気がついた。
289春風の指輪:04/02/16 01:56
「先輩……」
 少女――朱姫が、月明かりの下。
 はかない微笑みを浮かべて、立っている。
「それで、どうします?」
「……」
 どうする。
 望みは一つ、けれど。
「選択……出来ないでしょう……?」
「……」
 少女は困った表情を浮かべる。
「それでも……ああ、十分贅沢したわね。一日だけど、二人一緒にいて」
 確かに、幸せだった。
 それは夢の時間。
 いつか覚める、忘却のなかでの時間。
「先輩……」
「……」
 気づいてしまったから、もう時間がない。
 時間がない。
「ねえ……あなたは、どうだった?」
「……?」
「これまでの時間……私と一緒にいた時間」
 その「これまで」が、この一日だけではないことは明らかだった。
 少女の表情が、ほんの少しほころぶ。
「……幸せでした。大好きな人と一緒にいて、自分の作った料理食べてくれて、同じ部屋で寝て……」
 小さな、この静寂の中でなければ聞き取れない声。
「……まるで……夫婦みたいに」
 風が揺らぎ。少女の蒼髪を撫でる。
「そして……好きな人を護れた……」
 微笑。
「これを幸せといわずして、なにを幸せというのでしょう?」
290春風の指輪:04/02/16 01:56
「そう……」
 煌々と輝く月明りの中、微笑む少女は、誰より何より綺麗だった。
 私は。
「朱姫」
 その名を、呼んで。
 その小さく、細い背中に手を回して。
 温かい手のひらに、自分の手のひらを重ねて。
「……」
 風が吹く。
 季節外れの、春の風。
 二人を取り巻く、穏やかな風。
「……」
「っ……」
 抱擁。
 触れるだけの、キス。
「あっ……」
「ねえ、朱姫……」
 告げる言葉。
 告げなくては、ならない言葉。

「私……朱姫のこと、ずっと愛しているから……」
「先輩……」
 それは、誓い。
 いままでもこれからも。
 ただ一つ、ただ一人のための――想い。
 朱姫の瞳から、雫が一滴。
 その唇から、一言。
「……はい」
291春風の指輪:04/02/16 01:59
 かすれるような声。
「私も……由葵を……永遠に……愛しています……」
 誓い。
 誰に誓うでもない、それは一つの想い。
 たった一つの――、二人だけの。
 結婚の誓い。

 やがて。
 抱きしめている、身体の感触が、消えていく。
 不思議と、恐れはなかった。
 ずっと二人だと。そう、知っていた。
「……」
 沈黙。
 静寂。
 ただ、風が、風だけが動くもの。
「……」
 指先に。
 触れる、風。
 象る。
「……」
「……」
 対なる、指輪。
 刻まれた言葉は、永遠 絆。
 最後の風が去った。

 後に残されたのは。
 私。
 指輪。
 消えない、想い。
292春風の指輪:04/02/16 01:59
・・・
 
 8月30日。
 夏休みも、もう終わりだった。
「長いようで短い……か」
 また、明日から学校が始まる。
 朱姫のいない学校。
 それは限りなく違和感があり、あるときは哀しくなるときがあるかもしれない。
 でも。
 つながった、二人の想いは切れることはない。
 もう、忘れることはない。
 だから。
「……いこうか。朱姫」
 私は、笑顔で。 
 一陣の風と共に歩いていこう。
うわ、大事なところで欠落あり。
・・・
 安心したせいか、一瞬のデジャヴュを追いかける間もなく私の意識は薄れた……。

『……先輩……」
 ――……朱姫。
『夏ですね……せっかくの日曜日ですし、どこか行きます?』
『そうね。朱姫はどこかに行きたいの?』
『いえ、特には』
『じゃあ買い物に出かけましょうか……欲しいものがあったらいいなさいね』
『え? いや、そんな、悪いですよ』
『いいの。私があげたいだけだから』
『でも……』
『いいの!!』
 
 セミの声。
『ふう。少し暑いですね』
『そうね……』
 ひょい、と日陰に入る。
 夏休み前だというのにこの暑さ。猛暑はどのくらい暑いのだろう。
 気が滅入る。
『……ん?』
 ガラスのショーケースを見ている朱姫。
 私が覗き込むと、いくつか宝石の指輪が並んでいた。
『ジューンブライトの売れ残りですね』
『でもやっぱり高いわね……』
 七つ横並びの数字に目を見張る。
『……』
『欲しいの?』
『え、ええとその……』
 困惑して、小さく嘆息する。
『……そのうち』
『そうね……』
 私は軽く、笑った。
『結婚指輪かな?』
『え?』
『なんてね』
 私は呟き、呆気にとられる朱姫の前を歩く。
『せん……ぱい』
『ほら、別のところいくわよ』
『は、はい!』

 夕暮れ。
>>282の途中に入ります。

けっこう古い作品で、私の記憶が確かならば中古屋で「人形師の夜」の一巻を
買って読んだときに真似して書いたもの。時代的には2年前でしょうか。
ヒロインの名前なんと読むのかも忘れました(爆)。
>295
乙です。面白かった。
主人公は失恋でもしたのかなと思ったら、そういうことでしたか。
中盤からの展開がなかなか。ラストも綺麗にまとまってますな。
ハッピーエンドではないかもしれないけれど、こういう話も好きです。

>ヒロインの名前なんと読むのかも忘れました(爆)。
な、なんだってー(AA略
朱姫はあけ…み? 由葵は……ゆあおい?だと変だしなぁ。
ちょっと気になるので頑張って思い出してください(w
うわあ…
久しぶりに見たら、なんか、やたら高レベルな作品が二つもアップされてる。
七草のほう、既出の通り、瀬理のキャラが面白いし、そのキャラの一人称だからト書きまでダレずに読めました。
せりふ回しもいちいちツボで、私が少しダークなのが好みってことを差し引いても、文句のつけようが。
あえていえば、設定見て更に面白いって思っちゃったので、やっぱり本文中で、もちと分かり易かったらよかったかも。
でも、何となく想像はつく感じですが…

「春風の指輪」。せ、切ない。でも読後感さわやかで、ちと救われたかも。
短い短編なのに起承転結しっかりしてるし…。
残された指輪とか、風と共に歩くとかってあたりが、表現として好きだなぁ。
あと、指輪に関する小さなエピソードを入れてたり、せりふの反復の使い方もすき。

よかったら、また書いてくださいー。続きでも新作でも。
299名無し物書き@推敲中?:04/02/29 22:01
保守
300名無し物書き@推敲中?:04/02/29 22:03
保守



 片田舎の街角で。
 馬車のいななき声が、耳に聞こえていました。
「元気でいてください。それから――」
 私は、見送り人の隣に坐る子犬を見ます。
 その子犬はあどけない顔をしていました。私がこれから、遠いところへ行くということが分かっていない
ように。その顔を見ていると、胸がツキンと痛みます。
 子犬の名前は、ペルチッセ。私の大事な子犬です。ふさふさの毛をした雌犬で、この土地で拾ってから、
一年近くも一緒に生活してきたのです。ペルチッセは大型犬で白い毛の種ですが、少し身体が弱く、いつも
見ていないと危ないところがありました。ですから私もこの子犬に対してはとても愛着があり、こうして
別れることは、他の誰との別れよりも哀しいのです。
 私は一年前、道で倒れていたこのペルチッセを拾いあげて、自分の部屋へと運び迎えました。
 部屋を上げて、餌を食べさせるとペルチッセはその後、私に懐くようになりました。それからずっと一緒
にいたのですが、この度私が遠くの都会に行くこととなり、身体の弱いペルチッセをこの地に置いていくこ
とになったのです。面倒は、隣に住む初老のお婆さんに任せることになりました。
「――がんばって」
 私がペルチッセの頭を撫でると、彼女は分かったのか分かっていないのか。いつもと同じように首を小さ
く上げて、くぅんと鳴き声を鳴らします。馬のいななき声よりも、それは私の耳に大きく聞こえました。
 私は馬車に乗り込みました。
 馬車は、すぐに車輪を回して、がらがらと、走り始めます。景色があっという間に通り過ぎていく、私は
今日、この街を出て行くのです。一度馬車の窓から振り返ると、ペルチッセの姿が小さく見えました。次第
にペルチッセの姿は離れていきます。私はペルチッセの姿が見えなくなるまで、見えなくなっても、ずっと
後ろを見ていました。



 私の都会での生活は、あっという間に過ぎていきました。
 その間ずっと忙しく、田舎から手紙が来ても読む暇すらなかったのですが、しかしペルチッセを預けてい
るお婆さんの手紙だけはいつも読み、返信していました。送られてくるほとんど内容は田舎の状況や変化で
したが、たまにペルチッセのことが書かれていると、私の心はとても弾んだのです。
 けれどペルチッセがまだ私を探して街中を歩いている、ということが書かれていると、とても悲しくなり、
今すぐにでも田舎に飛んで帰りたくなる気持ちでした。つらい気持ちを堪えて、私は都会の鶏肉を買い、
ペルチッセに食べさせてあげて、と田舎へ送ったりなどしました。とはいえ時が経つにつれて、そういった
内容はなくなっていき、それがほっとする内面、少し残念にも思いました。
 私が都会に来てから、一年が過ぎました。

 ある日初老のお婆さんから手紙が届きました。その内容とは、「自分の目が老いて見えなくなったが犬の
ペルチッセが安全に手を引いてくれる。とても賢い犬だ」というものです。私は人の助けになるペルチッセ
のことを誇らしく思う反面、何故か胸が痛みました。そのときの手紙の返信に、何故かペルチッセのことを
書くことができませんでした。
 やがてさらに時も過ぎると、お婆さんからの手紙にペルチッセのことが書かれていることは、次第に少な
くなっていきました。私も、お婆さんからの手紙をあまり読まなくなりました。どうしてか知らないけれど、
私はペルチッセがお婆さんに懐いていることに、少し怒っていたようなのです。
 私はペルチッセのことを思わなくなっていきました。



 都会の用事が人段落したときには既に三年が経過していました。
 田舎からの手紙を読むたび、日進月歩の様子に驚かされます。今あそこはどうなっていることでしょう。
ふいに私はペルチッセのことを思い出して、今の彼女に会いにいこう、と思い立ちました。荷物を軽くまと
めると馬車に乗り、私は田舎へと懐かしい思いにとらわれながら、都会を出て、田舎へ戻っていきます。
 ガタンゴトンという車輪の回る音は出かけたときと同じでした。私は馬車の中で夕焼けを向かえ、夜を
迎えて、いつしか眠っていました。そのとき夢を見たのかもしれません。
 目を覚ますと、すでに田舎の街の近隣にいました。馬車に揺れながら田舎の街につくと、街並みはだいぶ
変わっていました。私の馬車だけでなく、いくつもの馬車が走り、停場もたくさんあります。
 私はもとの家の近くで馬車を降りました。

 家の様子は変わっていませんでした。懐かしい家の前に立っていると、様々な音が聞こえてきます。子供
のはしゃぐ声や若者たちの声。鳥の鳴き声など、さまざまな音の喧騒が耳に飛び込んできます。そのとき、
静かに戸が開く音が聞こえました。
 私は、大きな犬と、犬に手を引かれているお婆さんの姿が目に止まりました。
 ――ペルチッセ。私がそう思ったとき、犬は一声大きくほえて、お婆さんを見上げました。お婆さんは
小さな声でペルチッセになにやら囁いたようです。ペルチッセは、お婆さんの手を離れて、トコトコと四足
で私の元へとやってきました。
「ペルチッセ」
 私が呼ぶと、ペルチッセは私の足元にすりより、何事か窺っているようでした。しかし私が誰だか分かっ
たのでしょう。嬉しそうにしっぽを振って、私の足をペロペロと舐めます。私がくすぐったさと心地よさで
笑っていると、お婆さんが私を呼びました。私がお婆さんのところへ向かうと、ペルチッセもお婆さんの
ところへ向かい、お婆さんの隣にちょこんと坐ります。なんとなく寂しさを感じましたが、別れて三年も
経過しているのだから仕方ないと思いました。

4 

 お婆さんは私を喜んで迎え入れてくれました。
 スープやパン、野菜など懐かしい料理に囲まれながら、私はお婆さんに都会の話を聞かせます。お婆さん
は嬉しそうに聞いていました。私が話している間、ペルチッセはお婆さんの足元でスープを飲んでいました。
私がペルチッセのこれまでの様子をお婆さんに聞くと、大分ペルチッセは身体が強くなり、お婆さんにも懐
いたようです。私を探しに街へ出かけることもなくなり、いつもここでこうして一緒にいると聞きました。
 私はその晩、元の家で泊まりました。
 さて朝になり。私はせっかく戻ってきたのだから、田舎の人々にあいさつをしようと思い、お婆さんとペ
ルチッセと、三人で街へ出かけました。街は大分変わっていて、入り組んだ道に迷ってしまいそうでしたが
お婆さんに案内されつつ、いろいろな家を回っていきます。何件もあいさつをしていくうちにお昼になり
ました。お婆さんは何か食べよう、と市場へ向かいます。市場には大衆食堂がたくさん作られているのだそ
うです。私もそれについていきました。

 馬車が道をとても早く走っていました。私は慎重に、気をつけながら歩きます。轢かれたらひとたまりも
ありません。道端の小石なども飛んできて、危ないところでよけました。
 そのとき私はあっと息を呑みました。遊んでいたらしい小さな幼い女の子が、馬車道に入り込んでいた
からです。女の子は、馬車の目の前にいました。女の子がいることに気づかず、馬車は女の子に迫ります。
私はあまりのおそろしさに目を閉じて。そのとき、そして犬の吼える声が聞こえました。
 ペルチッセです。
 私が目を開けると、ペルチッセが猛然と女の子へ向かっていくのが見えました。そして、なんて鮮やかに
ペルチッセは女の子を助けたのでしょうか。女の子は馬車道の外へと押し出されて、ペタンと座りこみます。
ペルチッセは女の子が歩いていたところにいて――そして。
 馬の鳴き声と犬の鳴き声がしました。
「ペルチッセ!」
 私とお婆さんはペルチッセの元へ急ぎます。ペルチッセは吹き飛ばされ、馬車道から少し外れたところに
うずくまっていました。そのふさふさの白い毛からは血が流れています。見れば肉が裂けています。
お婆さんはペルチッセの元へと近づき、その傷口に触れようとしました。そのとき、ペルチッセはよほど
痛いのでしょうか、唸り声を上げて、お婆さんを近づけません。あげくにお婆さんに噛みつこうとさえ
するのです。
「ペルチッセ」
 私は痛々しい姿のペルチッセに近寄ります。
 ペルチッセの唸り声が止みました。
「がんばって。ね、ペルチッセ」
 私はペルチッセの身体を抱え上げます。ペルチッセは哀れな、か弱い声で鳴きました。ペルチッセは、
私の腕を自分の歯に挟みました。けれど、噛み付こうとはしませんでした。私はペルチッセを抱えあげた
まま、病院に向かって走ります。
 ペルチッセは、私の手のなかで大人しくしていました。

 さて、その後ペルチッセの傷は次第よくなり、また元気になりました。
 さて、私はやがてまた、都会に行きました。もちろんペルチッセを連れて。
 ペルチッセは今、私の部屋にいます。そして、私が頭を撫でると小さく首をあげて、くうんと愛らしい
鳴き声を鳴らすのでした。
牝犬もの……かな。
ペルチッセが実は人間の少女とか? ……違うか。
ベルチッセはきっと
‘私’が大好きなんだね
すごく好きなんだよ
保守
age
311ある建築技師の話:04/03/12 14:40
 虹は七色というけれど、私は無限の色彩を見たことがあります。
 無限の色彩、それはあまたに鏤められた宝石の玉座。あなたの細い腰、赤石の唇に香油髪ふくよかな胸、
あなたは白の光に抱擁される世界の女王。孔雀の安楽椅子に腰掛けるときの美しい姿。無限の色彩、それは
あなたのいと尊い肉体。私はあなたと繋がっていたことを思い返し、どのような熱情であなたを愛したこと
でしょう。
 私は広大な大陸に住む中国人の中であなたほど美しい人を知りません。

 そして。
 シーフォーは詩を書きながら、列車の外を見たのです。窓の外を眺めたとき、彼女は故郷の思い人のことを
思い出しました。それは窓の外の茜色に、自分があの人を見つめる頬を想起したために。そして今もシーフォ
ーの頬は夕日に染まります。
 そのとき列車は音を鳴らしながら北の故郷へと向かっていました。今日中には着くでしょう。シーフォーは
再び筆を見つめ、藁の紙に薄黒色の墨をなぞります。シーフォーは中国人ですが、漢詩ではなく英語の詩を
書く人間でした。そして彼女は詩人ではなく、建築技師の職人でした。シーフォーの詩は一人の人間について
思う故に書かれるものであり、それはその人間への手紙に他なりません。けれど手紙に宛て名は書かれて
いませんでした。
 列車はシーフォーの身を揺らし、その度に文字も震えます。シーフォーは詩を書き続けました。けれど詩に
ある名前は、美しい名と書かれているだけであり、詩に語られるそれが何者かは分かりません。
 故郷に列車は着きました。シーフォーは降ります。

 最初に出迎えたのは、シーフォーの恩師であるチョンヤンでした。
 彼は北の地方の訛りを披露しながら、シーフォーのことを迎え入れます。随分会っていないため、彼の
黒髪には白髪が交ざりそのことが少し驚きとなりました。縞馬の髪の毛は、けれど賢人の頭に似合っている
気もします。
312ある建築技師の話:04/03/12 14:42
「元気かな」
「ええ、おかげさまで。こちらでは何か変わりがありましたか」
「いいや。田舎ではとくに目新しいことも起きんさ。皆相変わらず、だ。ところでシーフォー、何を持って
いるのかね。お土産にしてはずいぶん小さいのだが」
「見ますか?」
 シーフォーは恩師チョンヤンに自分の書いた詩を見せました。恩師チョンヤンが英語を読むと、次のような
一文が記されていることが分かります。

 我が愛しい人、人生の教師であり、お茶汲みの美味しい人。

「これは私のことではないね」
「はい。別の人のことを表しています」
 するとチョンヤンは笑い、シーフォーの肩を叩きます。シーフォーは詩を返してもらってから、恩師に尋ね
ました。
「ところでここにはあなたしか、いらっしゃいませんか?」
「ああ」
 それでは、とシーフォーは恩師と別れ、自分の家へと向かいました。

 道中、見かけたのは野菜畑です。黄金の作物が実り広がっていました。雨もほどよく降ったのでしょう、
水は穴に溜まり小鳥の囀りのように小さな音を鳴らしながら、田んぼへと流れています。シーフォーは
野菜畑の畦を踏み、靴を土で濡らしても自分の家へと歩いていきました。
 その野菜畑を抜けた時。牛飼いのモジュンがシーフォーに声をかけます。彼はシーフォーの家の二つ隣に
住む、村一番の大男でした。力自慢であり今も牛を従えています。昔の凄まじく荒れた目はこの数年で消え
失せ、代わりに大岩のような静かな光を瞳に湛えていました。
「シーフォー、帰ってきていたのかい」
313ある建築技師の話:04/03/12 14:43
「ええ。今日に列車で」
「そうか。ところで何を持っているのかな。俺へのお土産だと嬉しいのだが」
「では見てみますか」
 モジュンはシーフォーに手紙を受け取り、その英語に頭を悩ませながらも読みます。彼はかろうじて次の
ような一文を読み上げることができました。

 あなたは牛を脅かす、それほどに怖い人。けれど優しい。
 
「これは俺のことではないな」
「はい。残念ながら、あなたへの土産ではありません」
 すると彼は笑ってシーフォーの背中を叩き、彼女に詩を返します。
 やがてシーフォーは牛飼いと別れ、自分の家へと急ぎました。

 古いシーフォーの家は昔に彼女が設計したそのままになっています。戸は木造、屋根は藁。形は硬い材質の
円筒に柔らかな円錐が乗っているというものです。風の抵抗が少なく丈夫、窓はないけれど、光を屋根から
取り入れる特殊な構造をしていました。
 これはシーフォーが建築技師として最初に手がけた家の建築であり、外国の建築技法を真似た思い出深い
造りです。家具も円形のものに変えましたが、それは自分と思い人が力を合わせて造ったのでした。
 シーフォーは自分の家の前で一人の乙女に出会います。
 それは美しい人でした。艶やかな背筋。すらりとした清水のような黒髪。瞳は黒曜石の光を湛え、白絹の
頬を夕暮れに染め、どこか明るく光を身に纏う姿、まるで仙女が人へと転じたよう。
 そのどこか遠くを見ている瞳は、誰か人を待っているようです。シーフォーは誰だったのかを、その瞬間に
悟れませんでした。やがて乙女はシーフォーを認めると小走りに駆けてきます。
「シーフォー!」
 その声に始めて彼女が何者かを悟りました。
 幼なじみのシンレイです。シーフォーは駆けてくる彼女を抱きとめました。
「ただいまシンレイ」
「お帰りなさい、シーフォー。待っていたのよ」
314ある建築技師の話:04/03/12 14:44
 そういって、シンレイはシーフォーの肉体を抱きしめ返します。シーフォーはシンレイの美しい腰を引き
寄せ、互いの鼓動を伝え合いました。静かな心臓の動きを。吐息のほのかな温かさと薫。やがて二人は離れ
て、シンレイは瞳に浮かぶ雫を拭い、シーフォーを家の中へと誘います。
 シーフォーは誘われるまま、自分の家へと入りました。

「シーフォー、それは?」
 と、シンレイはお茶を煎れながら尋ねます。シンレイのお茶はシーフォーの母直伝の美味しいお茶であり、
それを味わいながら椅子に座って彼女は手に持っていた詩をシンレイに渡しました。それを一目見ると、
シンレイはわずかに瞳を開いて驚きます。
「詩かしら」
「シンレイ、英語を読めるの?」
「ええ。勉強したから。ええと……」
 シンレイは詩をすべて読みます。そして次の一文を歌いました。

 私はあなたを愛するがゆえに、彷徨っている。

「これは――」
「シンレイのことよ」
 と、シーフォーは言いました。するとシンレイは鈴の鳴るような声で笑います。
「うそつき」
「ええ? それはどうして」
「だって私は分かっているから」
 シーフォーはシンレイの言葉に、黙ってお茶を啜りました。


 夜は深く。シンレイも自分の家へと帰った頃、家の戸が静かに開きます。それからその戸を開いた人影は
椅子に座るシーフォーの顔に、少し驚いた様子を見せて。シーフォーは彼女に語りかけます。
315ある建築技師の話:04/03/12 14:46
「……お帰りなさい、お母さん」
「帰っていたの」
 白く美しい月明かりに照らされる人は、若さを失った白髪の老婆。彼女はシーフォーの母でした。母は
戸を閉めて、老いた足を床に滑らせながら、シーフォーの元へと近寄ります。それから彼女の頭を撫でると、
頬染めるシーフォーにそれきり興味を無くしたように寝室へと向かい。シーフォーは母を追いかけるとその
隣に並び、自分の書いた詩を渡しました。宛て名のない手紙は本人に渡されて。
 そして母はシーフォーを見上げます。
「これは?」
「お土産。一応ね」
「何が書かれているかを知ることはできないわね。英国の文字など、読めないわ」
 そういってため息をつく母はシーフォーの詩を懐にしまい込むと、寝床へと去り行き。シーフォーは母の
後ろ姿を見つめていました。母はそれから一度だけシーフォーを振り返り。
「……懲りないのね、あなたは。この数年離れていたのに、まだそのままなのかしら」
「うん。ごめんね」
 シーフォーは母の言葉に頷きます。
 母はそれきり。黙ったまま、夜の深い闇の中へと。

 建築技師は夜の風に歌います。
 金色の月。あなたの白雪肌、木造の部屋に余韻を残します。この私とあなたの家に。
 あなたの瞼が閉じようとも、私の瞳はあなたを見つめるために開き、真夜中の暗闇を見つめています、
また聞きながら。そして私はこの暗闇に酔うのでしょう。葡萄の酒よりも遥かに。
 あなたの寝息に胸を焦がす熱情を思いながら。

 それから。
 シーフォーは空に浮かぶ月を見上げて、今日は三日月なのだと知りました。
 大きいその弓は、美しい色をしていたのです。
シーフォーが好きなのはどっち〜!?
気になるーぅ
せりとなずなの話の続きが読みたいなぁ、と言いつつ保守。
――食べられた?女貴族な夜食――


 金貨のベッドに身を横たえ 最上級のワインを飲めば 快いヒュプノスの眠りなど 瞼の上へと
 降りかかり 心地よい眠気に 夜の音なきそよ風を 細くか弱い身に感じ
 私は夜の眠りへと落つ。
 
 夢に現れた 美しき方 私の亡くなった母にも似て 魅力的な麗しい方
 それは意図せぬ来訪者 私の傍にある金の輝きを見ることなく 不安に曇る私に
 春の小川の揺れるような まなざしをむけ 織り糸のようにゆるゆると 指先をはためかせ
 私をよぶ
 誘われるがままに力強い抱擁を 美しき人へと委ねると 眠りよりも安らかな
 没薬の香り、ミルテの唇。首元を歯が撫でて 喉元を唾が伝い
 そして女同士の優しい口づけが 私の戸惑いを快楽に変えた

 恋の口づけは甘いけれど 融けた鉄の液体のように熱く 鳥の羽のように軽い 胸当てを
隠す黒のローブをはだけて 彼女は誘う 小ウサギを そのウサギは 柔らかな乳を揉みしだく
乳首すらも柔らかい 桃色と白のふわりとした感触は まるですぐにも消えてしまいそうにか弱くて
心細い
 彼女は微笑んだ 微笑み、それから私を抱いた 胸の薫が鼻をくすぐる 大きな胸から
立ち上る しっとりとした汗と 彼女の薫。

『愛しきを この抱擁に任せれば ほんの弁えさえもぬぐい捨て 私に立ち向かうこそ
娘らしい甘えというに 口元も 尊き竪琴を忘れ ただ沈黙に結ばれた その硬紐は何事か。
いかに愚かな女といえど 金の輝きがそれほどに恋しく 心奪われるものでもなかろうに』
『麗しい人よ 誇らしい乳房は柔らかい 唇はあなたの唇を求めている 素肌は糸に覆われ窮屈。
弄びたまえ、私の全身を 臆病な飼い犬の胸は 私の愛する人の手を望んでいる』
 牝鹿の 乳の味はどれほどのものか 閉じた蝶の羽に接吻すると どのような味がするだろうか
けして愛らしい人との口づけに 代えられるものはなかった そよ風の愛撫 樫の木を愛でて
葉を裏返す 猫の毛皮をくすぐり 森の空気を清める それはかの美しき方より紡がれた指先。
 胸は牡丹のように大きく開き 子供が母の優しさをねだる如く 私は熱情を求め 薔薇の
微笑みに感謝した ああウグイスよ いつに鳴く もしも夜が明けなければ とこしえに世界は
輝いていたというのに

 目が覚めて 歓びが朝の薄い光に消えうせる
 ベッドの金は既になく ただ胸の切なさと 誰のものとも知れぬ
 崩れた人の骸骨が 虚しく朝日に翳されて 首元に 夢の証か ただの奇病か
 二本の不思議な牙の跡 未だこの血を滴らす
>>317
最近は小説を書く暇がないので……(汗
お目汚しですが。
保守
 ――あいや待たれい おぜうさん
 私から差し上げる あなたの大事な落し物

 光満ち溢れる昼の日差しが、さんさんと、
 噴水の涼やかな公園を照らしていた。公園には、何人もの男女たちがいて、
 またある時には小鳥のさえずり、ある時には友人の談笑、ある時には、 
路上音楽家の奏でる音など、春の野原のように豊かな音が、光の公園に満ちていた。
 まず少女は、右足でコンクリートの地面を踏むと、公園の、音ひしめく広場、
人の笑顔も明るい大きな広場にある、白く聳え立つ自販機へ、娘のまだ柔らかな足
をはためかせ、とたとたとてくてくと、歩いていく。娘の黒い前髪は大人しく、
娘の後ろ髪は暖かい風になびいている。右の瞳は栗鼠のように明るく開き、左の瞳は
愛らしい。まるで春の園に踊る妖精のよう。
右の足は柔らかく、左の足は軽い。子供のようにかろやかな足取りで、白く聳える
自販機を目指す黒い髪の娘。額には一滴の汗が流れ、然も暑そうに、篭った息を風に流す。
天使の羽のような白の生地と向日葵の刺繍が施された、可愛らしい私服には、
一枚のハンカチがあるけれど、黒い髪の娘は、あの機械の中にある、冷たい飲み物に
どうにもあしにも夢中のよう。向日葵を太陽の光に当てながら、少しだけ盛り上がっておる
その胸を、躍らせ、昼の公園を歩く娘。
 またふいに、ほんのりとした暖かい、ひとそよぎの風が吹き、娘の愛らしい、私服の
ポケットに滑り込むと、娘の小さなハンカチは、するりと抜けて、花の蜜求める蝶のように
ひらひら踊り。人多い公園の、硬い地面にポトリと落ちる、暖かい太陽ばかりは気づくけれど、
冷たい飲み物にご執心な娘は気づかずあゆあゆ、あわれやあわれ、ハンカチは迷子の子どもの
様に、ぽつんと取り残される。

 さてゝ娘は財布より、取り出しましたる三枚の硬貨、ぽんぽんぽん、と放りまして、
手に入れたる飲料水に、口つけて、こっくこっくと飲み始めませば、たちまち天国の
心地よさ、浮かれた気分に頬も赤らみ、また少し離れたところにある、木のベンチへと
腰掛けまして、浮かれ浮かれにジュースをこくんと飲みまする。
 さすれば汗もさっと引き、はて、ハンカチはどこにあったものだろうと、娘はようやく
はたと気づき、自分のポケット探るけれど、ああかなし。ああはかなし。あのハンカチや、
今何処に?
 娘、慌てて服探り、ポケット探り、財布さえも探るけれど、あのハンカチは見つからず。
風に流れた小さなハンカチや、今は何処にいらっしゃるのか?
また浮かれ心をがっかりと、うなだれて、柔らかな頬をすぼめつつ、ちょびちょびと、
甘い飲み物を飲むけれど、ハンカチはそれでも戻ってこない。
 
 ――小さなハンカチ、今何処に? 娘、探しにいく、緑の豊かな公園を。
 緑の豊かな公園、たとえば木々の多く茂るところに。――小さなハンカチ、今何処に?
 ――小さなハンカチ、今何処に? 緑の豊かな公園、人通りもない森のなか。
 何や人影? 一人の影が娘を追う。 ――小さなハンカチ、今何処に?

 一人の影、娘の小さな肩叩く。娘驚き、きゃっと小さな悲鳴上げ、走れや走れの
獅子奮迅、あれと思う間に森の奥。人影小さなため息をつき、長い足で娘を追う。
 人影、長い髪を靡かせ、滑らかな足を滑らせて。その手に握られている、それは何ぞや?
 それは小さなハンカチの姿! 元気なるハンカチ、おお無事なるか!
 けれど主は気づかず。娘、森の奥の、そのまた奥へ。
 やがては木々の根に躓き、人影娘の前に立つ。森の奥なら影深く、長い人影は恐ろしい。
娘、震えてふるふると、声も出せずに脅えるばかり。
 長い人影、そっとかがめば、娘、あっと声漏らす。見ればそれは美しき女(ひと)、
枯れたすすきの幽霊に、娘はようやく気づいたよう。
 頬赤らんで、娘は見る、女の方は穏やかな顔。コートはためく、少し寒がりな人のよう。
その美しさは春の温かみといえども。
女の方は綺麗な、手差し伸べて、ハンカチ差し出すと、娘、はっと気づいてそれを受け取る。
 また、汚れ服の、汚れた頬を、リンゴのように真っ赤に染めて、「ありがとう」などと申し上げ。
 女の方は、汚れた娘の向日葵脱がせ、薔薇の香する自らの下着、娘のために差し出すと、
躓いた足の中を持ち、娘の背中をそっと抱いて、娘の柔らかな身体を抱き上げながら、
森の外へと赴いた。
森のくまさんの歌詞……。
不思議だわさ。
326名無し物書き@推敲中?:04/05/01 13:31
どうしてなの?
だって、・・。
美香は百合から目を逸らした。
百合は美香の手にそっと自分の手を重ねた。
柔らかな薄衣に包まれた氷が解けるのを待つように。
冷たい。
美香は膝の上の手を引っ込めた。
あなたとは反対なの。中は熱いの。
百合の言葉の真意を悟ったように、
諦めて、と美香は言った。
ベンチの前を見知らぬ青年が通り過ぎて行った。
枯葉を踏みしめる乾いた音を残して。
異物、と百合は言った。
美香の視線は青年の後ろ姿を追っていた。
わたしだけを見て、と百合は美香に言った。
美香は目を閉じた。
百合は美香の薫りに近づいた。美香の髪に鼻先が触れた。
かきやりしその黒髪の筋ごとに
うちふすほどは面影ぞたつ
だめ、と美香は言った。
百合の唇が頬の側にあった。
あなたの中に異物が入るのは堪えられない。わたしの舌は優しい。
だめ、と美香は繰り返した。
明日もここに来て、百合は言った。
わからない。
美香はベンチから立ち上がった。
あなたは来るわ、百合は言った。
黄昏の迫った公園から去っていく美香の後ろ姿を見つめながら、
百合は呟いた。
夏はきっと来る。甘い氷水。また明日。
327桜教室:04/05/05 05:29

 一羽きりの、
 ニつ、青い翼によって広大な青い空を飛び舞う鳥の姿が、
 透明な窓硝子の枠縁から見えた。
 桜の花びらは鳥を取り囲むように、ひらゝと、踊り、風
を泳ぎ、また空気の色を桜の色と薫に染め上げて――。春
の木、桜の若葉が震えること、風が木々を揺らすたびに。
白雪のように桜はくるゝとくるゝと吹き上がり、またはら
はら・はらと、切ない霧雨のように舞い降りる。

 透明な窓硝子の中、私の息も聞こえる教室の床にも、
一つ、二つ、三つ、まだまだ――いくつかの花びらが迷い
子となって居て、春風、窓より吹き込めばその身は空気に
浮かぶ。花は風と共に去り行くこともある。
 私は教室にいた。教室には私と、私の幼なじみという、
 翠雨 あさくも(すいう あさくも)が居て、私は翠雨
のために教室を動かなかった。翠雨の机は窓側にあって、
春の穏やかな温もりに包まれ、彼女は眠っていた。
 放課後の時。授業の終わり、帰宅すべき時。
 彼女の鞄は彼女の机にかけられて。他の机には何もかけ
られていない。私の鞄は、私がこの手に持っていた。
彼女と私を除いた、他の皆は既に自分たちの家へと帰って
いる。だから、この教室には私と彼女しかいない。彼女が
机と椅子に眠るならば、私はその傍らに立っていた。
 帰るべき人は――私と、彼女の二人きり。
 けれど翠雨は眠っていた。かわゆいらしい頬を机に、
ぺたりと触れさせて。眠り・安らかな息を漏らしていた。
「眠り」という幸福の中にあって、翠雨は容易く起きそう
になかった。そしてまた、容易くはない。
328桜教室:04/05/05 05:30
 起こすことに躊躇いがある、私の心。何故と問われれば。
かわゆいらしい頬を机に、二つの瞳をその対とも瞼の幕に
よって隠し、安息を、大気の広がり・隅々に漏らして、
 桜と同じ色の唇を無防備に晒す姿は、稀有な期待を私の
胸に抱かせていたのだから。
 
 はるさくら ひとよはかなひ はなおもふ

 期待は、翠雨の桜色の唇を、青い鳥がさくらんぼを摘む
ように、私の唇によって摘みたい、ということ。私による、
愛情も大空なる広大のような接吻によって。
 接吻は一つの唇の上と下を、もう一つの唇に、同じよう
に重ねる行為。言葉も視線も必要としない、愛情の確認。
それはあるいは一人の意思によって為され、あるいは二人
の変わらぬ意思によって行なわれる。
 私は接吻をしたことがない。
 けれど望んだことはある。接吻が、好き合う者同士の
行為と聞いた時に。それは大分幼い頃の、まだ私を少女と
呼べた頃の思い出ではあるけれど。
 幼い頃からの。思い出と、いうのだけれど。

 翠雨。彼女との接吻を望んだこと。
 それは翠のため、春雨の滴るように、私の息に濡れた、
湿りのある唇が、彼女の熱い吐息に濡れる私の二つ唇に、
そっと優しく重なる口づけの行為を。
 私は望んでいた。それが女同士の、自然美とは呼べぬ
行いと云われるまでは。また彼女がそのことについて、
無知ではないと知っていたから――。
 愛する心をタルタロスよりも頑丈な牢獄に閉じ込めて。
冬に燃え盛る薪の炎が恋心となるとき、倫理の白雪が私
の胸の大地を覆い隠した。
329桜教室:04/05/05 05:31
 それは精一杯の抑制。「大人」の――がまん。

 私は彼女の、机に隠されたほうではない、素肌の頬に
人さし指を触れて、そっとなぞる。暖かく、柔らかい、
翠雨のかわゆいらしい頬。指を揺らすと、頬もふわゝと
揺れた。雲が風に流れるさまを思わせる。
 翠雨は起きるけはいを見せない。仕合せの善い夢を、
見ているのだろうか。春の花薫る空気を吸い込んで。
暖かな大気に身を包まれながら。
 指先を、その小さな口元に近づけると、翠雨の呼吸が
私の指先に触れた。吸うこと。吐くこと。翠雨は安息を
繰り返している。安らかにして静かな安息を。
 光の植物でさえこうあるまい、と思うほどに清らかな
喉元を持っている翠雨のこと、彼女の息から分かった。

 いきのはて いきいきいさふ いきかほり

 その時、硝子の窓が震えて。風が吹いてきた。
 桜の花びらが、翠雨に降りかかった。そして翠雨の、
眠る息が吸った空気に誘われて、花びらはひらゝとやっ
てきた。
 私の指先に触れると、桜の花びらはそこで止まり、
翠雨の吐く息と共にまた流れる。ふっと私は安堵する。
ほんの少し違えば、花びらこそ翠雨の接吻を手にしてい
ただろう。私の指先に、柔らかく・軟らかな花の感触が
残っていた。
330桜教室:04/05/05 05:32
 眠る人はそれでも目を覚まさない。私はその瞬間、
はっと不安にこの身を包まれた。悲しみが、つま先から
頭の芯まで、剣の形となって貫くようだった。先の道が
見えぬ「未来」の暗黒に目の前が包まれ、感情は巨大で
恐ろしい百足の脚に力一杯蹂躙されるような、酷い激痛
を味わった。五体は引き裂かれる。
 花びらの他、誰か・何かだったことを思ったとき。
私以外のもの。男女、人獣、魚虫、鳥植物、生きたもの、
死んだもの達。それら私ではないものたち。それらが、
翠雨の口づけに届くこと。
 誰彼、清い彼女の唇に愛の雫をもたらすものは?
 私の心は、このとき死んでしまったのかもしれない。

 青い鳥が桜の実を摘む姿は、消えた。
 私はこの身をかがめると、翠雨の安らかな寝顔に自ら
の顔を近づけた。その唇を――獣に向けた狩人の銃口の
ように、確かに狙って。ほらここに。
 私の二つある瞳は、彼女の閉じた瞼と息穏やかな口元
を、じつと見ていた。私の目には間近な翠雨の、綺麗な
素顔が映っていることだろう。もし翠雨が眠る瞼を開け
ば、それははっきり、分かると思う。
 けれど、その理解は罪の発覚。私は自らの瞳を瞼に
よってきつく塞いだ。目を閉じたとき、罪人に相応しい
暗闇・暗黒の窟を視覚する。
 あらゆる罪の形を、知っているけれど。許される罪、
許されざる罪があることも。取り返せる罪、取り返せぬ
罪があることも。この世に溢れるあらゆる罪を、私の知
識は知っているけれど。無差別な人殺し、誘拐、親の肉
を食らうこと。破壊・支配・掠奪……。
331桜教室:04/05/05 05:34

 私の罪は、唇の掠奪――。
 けれど私以上の忌むべき罪人を、私は知らない。
ゲーム・テキスト用に作った和風文章でござる候。
ひろいんの名前は結局一回こっきりのようで……(爆
まあ無意味というわけではないのですが。
333名無し物書き@推敲中?:04/05/10 00:13
あげ
334名無し物書き@推敲中?:04/05/18 23:23
春四温女子学院物語
age

               / ̄ ̄ ̄\
    / ̄ ̄ ̄ ̄\ ( ((((((^))))))
   (  人____) |ミ/ _=_|
    |ミ/  ー◎-◎-)(6ー[¬]-[¬]   百合萌え男が2getだ!!
   (6     (_ _) )|    、」 |\
  _|/ ∴ ノ  3 ノノ\   (ー) /   ヽ
 (__/\_____ノ    \__/  |_|
 / (__))     )))ノ| マリミテ    | |
[]__| | 百合命 ヽ  .| マンセー   | |
|]   | |______) |三|□|三三(_)
>>3 マリみては女の子のためのものだ!
>>4 女の子同士っていつも手をつないでいて仲いいね…ハァハァ
>>5 まぁ、801女よりはマシなわけで
>>6 男同士じゃ絶対ありえんがな
>>7 腐女子必死だな
>>8 つーか、女同士のほうが抵抗がないのは事実だろ
>>9 お前には信頼できる女友達がいないんだね。可哀想に
>>336
百合萌え女バージョンも欲しいな
338某スレ911:04/07/15 00:16
投下してみます。
なにぶん急ごしらえですので、誤字脱字などあったらごめんなさい。

 むかしむかし、あるところで粉屋が亡くなり、3人の娘たちはそれぞれ財産を相続しました。
長女は水車小屋、次女は一頭のろば、そして三女は一匹の雌猫でした。猫一匹しかもらえず、
これからどうしていいのかわからない粉屋の娘が途方にくれているとなんと猫が口をきくではありませんか。
「お姉さまのロザリオを私にください。そうすればきっとお姉様のお役に立って見せますわ」
 粉屋の娘は非常に驚いたものの、「お父様お母様が私に残してくださったこの子を信じよう」と心に決め、
猫の首にロザリオをかけてやりました。
すると、猫は大変可愛らしい女の子の姿(ネコミミネコしっぽ首輪(ロザリオ)付)になり、
「きっとお姉様を幸せにしてみせますわ」と言って出かけてゆきました。
 ところで、その国の王女様はきれいな鳥を飼うのが大変好きでしたが、ただでさえ狩りにくい鳥を
傷つけずに生け捕るのはとても難しく、狩人たちもほとほと困り果てていました。
 そこで猫は大きな袋を持って森の中に入り、きれいな鳥を見つけると「ねえ、わたしと遊ばない?」
と可愛らしく誘い、猫の魅力に心を溶かされてふらふらと近づいてきたその鳥を、
袋でがばっと捕まえてしまいました。
そしてお城にゆき、「あるじ、野茨姫(ロサ・ムルティフロラ)から王女様への贈り物です」
と言ってその鳥を献上しました。王女様は「なんと優雅で美しい鳥でしょう」と、たいそう喜んで
猫が自由にお城に入れるように取り計らってくれました。
 そうしてお城に出入りしていると、あるとき猫の鋭い耳に、これから王女様が湖の近くへ出かける、
という話が入ってきました。猫は大急ぎで粉屋の娘のところに戻り、娘に「今から湖に行って水浴びをしてください」
と言って娘が湖に入っている間に、その服を隠してしまいました。
 やがて王女様が湖にやってくると見慣れた猫がやってきてこう言います
「野茨姫が水浴びをしていたところ、悪人に服を取られてしまって大変困っております。
どうかお助け願えないでしょうか」
339某スレ911:04/07/15 00:21
 王女様がみてみると、なるほど確かに裸の女の子が湖の中にひとり。
王女様はその姿に思わずどきりとしてしまいます。
そしてすぐにお城から自分の服を取ってこさせ、粉屋の娘に着せてやりました。
きれいな衣装を着てみると、娘はとても美しく、王女様は粉屋の娘、いえ、野茨姫のことを
本当に好きになってしまいました。
 猫は「助けていただいたお礼に、王女様をわが君の住まいにお招きしたく存じます」と言って
王女様をお城に呼ぶ約束を取り付けると、一足先に進んで行きました。
 さて、当時その辺りには悪い魔女がいたのですが、
猫は今度、その魔女の住むお城に行き、魔女にこうたずねました。
「偉大な業と力をお持ちの方、あなた様は何にでも姿を変えられて、大きくたくましいライオンにも
なれると伺いましたが、それは本当でしょうか」 魔女は、「もちろん。わたしは何にでもなれる」と答えると
たちまちライオンに姿を変え、ガオー、と大きく吼えましたので、猫は目をまんまるくして毛を逆立て、
戸棚の上に飛び上がってしまいました。
そしておずおずと「でも、小さくて可愛らしい、女の子にはなれないでしょう?」とたずねました。
すると魔女は、「そういうなら見てみればいいさ」と言って小さな女の子に姿を変えましたので
猫すばやく戸棚から飛び降り、魔女をおいしく「たべて」しまいました。
 やがて王女様の馬車がやってくると猫は「ようこそ野茨姫のお城へ」といってお姫様たちをお城に案内しました。
お城にはいった王女様は思わず「あっ」と驚いてしまいました。
いまやもう猫にめろめろになった魔女が魔法でお城を花でいっぱいにしたので、それはすばらしくきれいだったのです。
 すっかり野茨姫のことを気に入った王女様と野茨姫はそのお城で、末永く幸せに暮しましたとさ。
めでたしめでたし。


教訓:猫はとても可愛いので大切にしましょう。



……へたれでごめんなさい_| ̄|○
340某スレ911:04/07/15 00:24
生まれて始めて完結させた話がこれな自分って…
ユリム童話キター
マリみてのパロっぽいのも入ってて楽しかったっす。
でも、その後魔女はどうしてるんですかね。
ていうか、猫はロリコンですか?オリジナル魔女では満足できなかったんですか?
オリジナル魔女だと→百戦錬磨なため猫の方が「食べられて」しまう。
その後の魔女→毎日のように猫とくんずほぐれつ。
ちなみに末娘→王女とくんずほぐれつ。たまに魔女や猫と4P。

百合で童話パロは珍しいね。うん、この方向性は好きだ。
>>342
ごめん
『うんこ』の方向性は好きだって読んじゃった
>338-339
文章がシンプルだけど面白かった。ナイスパロディ。
反応があると嬉しいです。
ありがとうございます。
もう少し文章力が欲しいです。

>341さん
くんずほぐれつかどうかはともかく、基本的には>342さんの解釈の通りです。
でも、きっと猫の趣味もあるに違いありません。
小さい女の子は可愛いです。(危
346山姥の昔話:04/07/27 23:36

 あんなあ、大きな山は昔から、おっそろしいところでナ。
 狼や熊や大蛇どもが、山に入ってきた人間たちをムシャムシャ
食べるんじゃ。
 そういった山には山姥もおってナ。
 人やウサギたちを捕まえては、頭からボリボリ齧ってしまう。
 山を通る旅人たちは、山姥に出くわさぬよういつも山芋を担いで
いたもんじゃ。山姥たちは山芋が大嫌いだったんでナ。
 人を食わない山姥もおったでナ。そういった山姥は、何か霊薬を
飲んでいたり、不思議な品物を持っていたりしたものじゃ。

 昔むかしのことじゃった。遠い高い山梨の白髪山にゃ、
嵐みたいに速い足の山姥がおってナ、名をフジのヤツモといった。
この山姥、とても足がはようて、千里まで見通すギラギラした目を
持っていたもんだから、白髪山は旅人たちにとても恐れられて
いたんじゃ。
 この山姥が虎みたいに凶暴な腕で頭を掴むとナ、髪を引っ張って、
株みたいにひっこぬいてしまう。そんで、まんまるな相手の頭を
ガリガリ食べてしまうんじゃ。骨まで食べられてしまうとナ、
葬式にも出してやれんで、魂までぜんぶ山姥の腹の中に入ってしまうとさ。
 山姥が山の中で知らぬところはないから、隠れるところもない。
見つかった旅人はどんなに強い人間でも、二度と山を下りられなくなって
しまうんじゃ。ぶるぶる、おお、おそろしや。

 「私の心は遠く離れた昔へと旅立とう、私の目よ、
 私の耳よ、遥かな昔を辿り、私の口にそのことを語る力を与えよ」
347山姥の昔話:04/07/27 23:37
 白髪山に山姥一人、深い夜の闇雲の下を駆け回っていたそうな。
瞼から髪の先までも恐ろしい山姥が、山にいる獲物を求めていたそうな。
 熊や狼も口の中。虎や大蛇も腹の中。真っ赤に光る歯に挟まれたら、
どんな生き物も生きてはいけぬ。

 そのとき山姥は、人間の娘を見つけたそうな。
 山の中にいる、やわらかい肉の幼子を、鋭い目で見つけたそうな。 
 山姥は幼子のところへ向かったそうな。食らってしまおうぞと
思いながら。
「小娘、いったいぜんたい何をしているのじゃ」
「やあお姉さん、オラはここで花が咲くのを待ってるだ」
 娘の小さな指の先、蕾のつかぬ草ばかり。
 山姥は娘にこういった。 
 娘はカラカラ笑って答えたそうな。

「この山は恐ろしいぞ、四足で口から涎を垂らす、
人食いのすばしっこい狼が住んでいるのじゃ」
「狼なんか、こわないやい」
「この山は恐ろしいぞ、獰猛な牙で鉄も引き裂く、
人殺しの凶暴な獅子が住んでいるのじゃ」
「獅子なんか、こわないやい」
「この山は恐ろしいぞ、どんなにかわいい者も尖った爪で
うち壊す、人を腐らせる無慈悲な熊が住んでおるのじゃ」
「熊なんか、こわないやい」
348山姥の昔話:04/07/27 23:39

 そこで山姥は言った、
「この山は恐ろしいぞ、狼も獅子も熊もガリガリ食べて、
その悪徳を腹の中に飲み込んだ、暗い闇の山姥がおるのじゃ。
山姥はお前をとって食ってしまうぞ。頭から激しい痛みを
与えてしまうぞ」
 すると娘はこう答えた、
「お姉さん、お姉さん、山姥なんかこわないやい。
お姉さんなんかこわないやい。山姥の牙もオラには痛くない、
山姥の足もオラには速くない、オラは山姥になんの危害も
食らうことはない。
 オラは幽霊。産まれたばかりの頃、おっかあに山に捨てられ、
死んでから七年経つ一週間後の八月十五日にあの世に行くんだ」

 山姥、これにはたいそうびっくりした。
 とり殺されては大変と、すぐに娘から逃げ出したそうな。
 
「山姥は娘から逃げたのですか?
山姥は娘が去る八月十五日まで逃げ続けたのですか?」
「いいえ、山姥は娘から逃げ切れませんでした。
娘の身体は風のようです。山姥がどれだけ遠くに逃げても、
すぐに追いつきました。山姥が朝方に住みかの洞窟で目を覚ますと、
自分の横たわるその隣に娘が眠っていました。
 山姥は一日が明けるまでしか娘から逃げられませんでした」
349備考:04/07/27 23:44
山梨県の昔話

 昔ある山に山姥がいた。
 山姥はいつも飢えて、山に来る人間を好んで食べていたが、
 あるとき幼い娘の幽霊に出会った。
 その幽霊は人として産まれたばかりの頃、
 家が貧しく食べるものがなかったため、
 産みの母親に捨てられ死んだ子だった。

 山姥はこの子に同情し丁寧に供養した。
 それ以来山姥は飢えることがなくなり、
 山に来る人間を襲うこともなくなったんだとさ。
ツヅク(ノシ ~~|_|_|~~)
続きに期待!
352約束:04/08/04 06:04
アニメ「MADLAX」ネタです。
スレ違いだったらすいません、スルーしてください;
353約束:04/08/04 06:04
パン パン   パン パン
日が沈む前から、一人でずっと銃を撃ち続けている。
マドラックスに渡された弾薬の箱はもう大半が空になっていた。
パン パン   パン パン
時間が経つにつれて、全身の筋肉に疲労がたまってきたのがわか

ったが、
それでもヴァネッサは数十メートル先に小さく見える標的に向か

って撃ち続けた。
パン パン   パン
354約束:04/08/04 06:07
先日の戦いでヴァネッサは、
撃たれそうになったマドラックスを守るため、王国軍親衛隊長である男を撃っていた。
ヴァネッサは敵ではあるといえ、人を撃ったこと後悔していた。
ナフレスの平和な環境で育ったヴァネッサは、
生き延びるために人を傷つけるという行為を正当化できなかった。
―――でも
ヴァネッサは自分の甘さを思い知ったのだ。
355約束:04/08/04 06:08
王国軍に道路を封鎖され、車から転げるように脱出したあの夜、
ヴァネッサは受身を取れずに兵士に捕まり、人質に取られた。
それを見たマドラックスは王国軍の兵士に取り囲まれ、銃を捨てた。
そして言ったのだ。
―――こめん・・・失敗、しちゃった
と。
「生きることに失敗すると、人は死ぬのよ」
それはマドラックス自身が口にした言葉だ。
マドラックスはあの時、死を覚悟していた。
銃を手放すのと同時に、生きることも諦めたのだ。
―――私がいたから
356約束:04/08/04 06:09
私は一瞬後に撃ち抜かれるであろう
マドラックスと自分自身への痛みを感じないよう、地面に顔を伏せた。
―――銃声がした。痛みは訪れず、恐る恐る開けた目に映るのは両手に銃を持ったマドラックス。
―――ヴァネッサとマドラックスを救ったのは王国軍親衛隊の将校だった。
自分の手でマドラックスを撃ちたかった将校は、マドラックスに向かって銃を投げ放ったのだ。
虚を衝かれた兵士たちはマドラックスによって全滅させられたのだった。
マドラックスと対峙した将校はヴァネッサに銃を向けて言った。
―――こんな足枷、似合わないのよ・・・あなたに
ヴァネッサは何も言い返すことも、這いつくばった姿勢から立つことさえもできなかった。
その通りだった。マドラックスは自分のせいで命を落とすところだったのだから。
357約束:04/08/04 06:10
パン パン  パン パン    パン パン
ヴァネッサは撃ち続ける。
日はとっくに暮れて、まとう空気も冷たいものになってきている。
立ちっぱなしの膝が痛かった。上げっぱなしの肘が痛かった。
もう、心にあるものはただ一つだけであった。
―――死なないで・・・
死なないで、マドラックス。死なないで・・・
マドラックスというまだ17歳の少女は、
いつの間にかヴァネッサ自身が思っていた以上に大切な存在になっていたようだ。
マドラックスを守りたい。マドラックスの負担になりたくない。
―――そのためなら、人だって撃てる
―――カァン
鈍い音がして、数十メートル先の空き缶が跳ねた。
「当たった・・・」
まぐれかもしれない。下手な鉄砲も数撃てば云々というし。しかし。
ヴァネッサの心はとても晴れていた。
迷いは、無かった。
マドラックスと二人で、強大な敵に立ち向かう覚悟はできていた。
「マドラックス・・・」
深夜にまで及ぶ猛特訓を終えたヴァネッサは、
妙な安堵感と達成感を感じながらつぶやいた。
本の切れ端の文字のことを調べに行ったままなかなか戻らない
マドラックスの安否が気にならないわけではない。
359約束:04/08/04 06:56
しかし、ヴァネッサには確信があった。
マドラックスは絶対に戻ってくる、という。
私の元に生きて戻ってきてくれる、という。

それは、甘い約束。
―――死なないで。死なないで、ヴァネッサ・レネ。お願い。
―――ええ、だから。あなたも死なないで。
窓キター
まあ原作は見れないんですが、雰囲気で萌えた。
エロなしの百合パロはここしか張るトコないし、いんじゃないですか?
361山姥の昔話:04/08/08 20:03
 朝方に隣で眠る娘に山姥はびっくりして、たいそう呆れたそうな。
娘を揺り起こすと娘の愛らしい瞼がパッチリ開いた。そんで、山姥に
ニッコリと微笑んだんだ。

「山姥どん、オラは山姥どんのところへすぐに行ける。
 山姥どんの足は亀みたいで、オラの足は北風のようだ。
山姥どんの目は真っ黒の霧に包まれているけれど、オラの目は
お日様でピッカピッカに照らされているだ。
 山姥どんが寝ているとき、オラは山を吹きかよう風の中で山姥どんの
寝息を聞いた。遠くに居る山姥どんの寝息を、やさしい風が運んできた。
獣の寝息は荒いけれど山姥どんの寝息は優しい。
 山姥どんの寝顔は綺麗で、まるで月のように透き通っていた。オラは
思わず手を伸ばした。オラが山姥どんの手に触ると、そのやわらかい肌の
手の平は夏の夜が濡らした寝汗を滴らせとても温かかったんだ」

 こりゃ、ええいこ憎らしい、と山姥は思ったでナ。娘に思いっきり
噛み付いたんじゃが、幽霊の娘にゃちっとも効きやしない。熊も倒す山姥
の牙も、娘の肌には立たんのじゃ。山姥は本当に怒ったんでナ、娘の周り
をぐるぐる回り、えいやと飛び掛るんじゃが、娘はするりとよけてもうた。
ますます山姥は腹が立ってナ、でも何もできんもんだから、娘にこう怒鳴り
つけたんじゃ。
「えい、にくらしいやつめ。いったい何が望みじゃ。言うてみい」
「山姥どん、山をよく知る山姥どんには、オラの願いを三つだけ
かなえてほしいんじゃ。そうすれば、山姥どんには取りつかん。
 一つは山姥どんの速い足が叶えてくれる、
 一つは山姥どんの鋭い牙が叶えてくれる、
 一つは山姥どんのココロが叶えてくれる。どうじゃ」

 そこで山姥は安心してナ、
「わしに取りつかんのなら、願いごとを叶えてやろう」
 と、幽霊の娘にこう言ったんじゃ。
362山姥の昔話:04/08/08 20:05

「一週間の期限に、山姥に何を願ったのでしょう、幽霊の娘は」
「幽霊の娘は最初の二日目に次のような願いごとをしました。
三、四、五日目には別の願いごとをしました。これは最初の一日目
よりも大きな願いごとでした。六日目にはそのどちらでもない
願いごとをしました。これは前の二つよりも大切な願いごとでした。
そして七日目に幽霊の娘はあの世へ去りました」

 さあ、娘の願いごとはなんだったのか、
 一つ目はこんなものだったそうな。

「山姥どん、オラの死体を捜しておくれ。
山芋の生える草むらの奥、そのまた奥には、不毛の土が広がっている。
その灰色の土には小さな小さな頭蓋骨が埋まっていて、その頭蓋骨の
ポッカリあいた目の玉にイモリが卵を産んでいる。その右のてっぺんに、
山の虫たちが食べた後の穴がある。それがオラの死体だ」
「やい娘、わしは山芋が大嫌いなんじゃ。そんなところへいけるかい」
「さあ山の衆大変だ、山姥が幽霊に取りつかれるぞ」
「わかったわかった。行けばいいんじゃろ」
 というわけで、山姥は山芋の草むらへ出かけたそうな。それは遥か
遥か遠くの険しい岩肌を登ったところ、山姥の足でないと行けない
難道じゃった。
 山芋に触れるとかゆうてかゆうて、山姥の鋭い目から涙がポロポロ
出てきた。その様子、まるで幼子が泣くみたいでナ、幽霊の娘には
いとかわいらしゅう見える。そんで幽霊の娘は山姥をはげましながら、
山芋の奥へと向かったんじゃ。山姥はとても恥ずかしかった。
 さて。ようよう山姥がたどり着いたところは植物動物まるでおらぬ、
灰色の土の不毛の地じゃった。山姥がそこを掘り返すと、小さな赤子の
頭蓋骨が出てきてな、その目玉のところにイモリが卵を産んでいた。
頭の右のてっぺんには、虫に齧られて穴が開いていてナ、間違いない、
これが幽霊の娘の頭蓋骨と気づいたんじゃ。
363山姥の昔話:04/08/08 20:05
「山姥どん、その頭を燃やしておくれ。その燃えかすを、
灰色の土に撒いておくれ。そうしたらオラの願いごとは一つ叶えられる」
 山姥は娘のいうとおりにした。

 すると娘は、次の願いごとを言い出したんじゃ
 さてはてそれはどのようなものだったのか?
ツヅク ホネ
続きを待ちつつ保守
366廃園恋歌:04/08/26 05:44
「来て」
 返事を待たずに手を取って歩き出す。彼女の顔がまともに見られない。怖い。
振り返って確かめたいけど、恐れと罪悪感で歪んだ今の私の顔は見せられな
い。今の私の顔をみれば、きっと言い出す前に気付かれる。そうすれば、彼女
は驚いて逃げ出すかもしれない。それだけは駄目だ。せめて一言謝らなけれ
ば。…こんな時ですら、私は自分のことばかり考えている。Y...の言うとおりだ。
そう、私はずるい。ずるくなければ、こんなに長い間彼女をだまし続けられるわ
けが無いのだ。自嘲から逃れるように少し足を速める。
367廃園恋歌:04/08/26 05:47
 彼女はされるがままに付いて来る。この一ヶ月、幸運にも慣れ親しんだあの華奢
な手の感触と温もりに痛切な愛惜を覚える。できることならば、こうして彼女の手を
握ったまま、いつまでもどこまでも歩いていたい。でも、ああ、目指す場所はすぐそ
こだ。もう傾いた鉄骨が見える。W...植物園。あの時と同じ夕暮れ。間違った仕方で
始められた物語を終わらせられるのは、その始められた場所をおいて他にない。
368廃園恋歌:04/08/26 05:50
 錆びた鉄扉を押して中に入る。廃棄された温室の方から腐りかかった花々の甘っ
たるい香りがする。それは私たちの匂い、裏切られた幸福の匂いでもある。まったく
どこまでもおあつらえ向きなんだろう。まるでこの時のために誰かが用意していたか
のようだ。運命の悪意を呪いながら、温室への道を示す庭石を避けて歩き続ける。
誰かの意思に従うのはたくさんだ。
 温室の中ほどで足を止め、惜しみながらも手を離す。ここは私と彼女が出会った
場所。今、そこにわざわざ連れて来たからには、私が何か重要なことを伝えようと
しているのだということに、彼女はもう気付いているはずだ。目眩がする。何も考
えられない。考えたくない。でも時間がない。終わりにしなければ。彼女の方に振
り返ることが出来ないまま、怯懦を振り払って、ようやく私は口を開く。
「あのね、」早くも気が挫ける、逃げ出したい。
370庭園恋歌:04/08/26 06:11
最後で名前ミスった…orz

唐突に始まって唐突に終わってスマソ。一応弁明させてもらうと、
>>366-369は、
百合漫画スレ(http://comic6.2ch.net/test/read.cgi/comic/1089898585/)の
846の発言にカチンと来たので、同スレの844に至る過程を書いてみたものです。
逆に言えば、その844がこの話のオチになるわけだけど、
ここまでの文脈で少しでも良いと感じたならむしろオチはお読みにならないことをお勧めします。
あまり上手に繋がっていませんので。

お目汚し失礼しました。
久しぶりにここ見たらすげぇ良いのがキテル━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
と思ったのに百合漫画スレが過去ログ逝ってて続きが見れない・・・
ヽ(`Д´)ノウワァァン
「すげぇ良い」は言い過ぎだと思うが文体は禿しく好みだな。
続きも気になるが色々暗示してある過去の話を読みたい。
これ書いた人はもうここ見てないのか?
373名無し物書き@推敲中?:04/09/12 02:48:09
三年目突入おめ!!





_| ̄|○
374アサシン:04/09/16 05:30:00
バロール
「……それは」
主人公
「だって普通隠さないでしょう? 顔なんて隠すものではないし。
顔を晒すのに、下半身を剥き出しにするほどの羞恥心を覚えると
でも言うの?」
バロール
「……私の素顔に刻まれた醜い傷跡には……それ以上の意味が
あるのです。この醜い顔を、一体誰に見せろというのでしょう。
女として恥ずべき傷を……」
主人公
「自分は女性としての資格がない、とでも?」
バロール
「……あるいは人間として」
主人公
「ぷっ、莫迦ね。女が顔の生き物とでも思っているの」
バロール
「何をおっしゃるのです。まさか、心、とでも?」
バロール
「だとしたら……相当に綺麗好きですね、あなたは」
主人公
「……そうね。心もかしら」
主人公
「女の魅力は顔が10%。心が10%。そして、残りは――」
375アサシン:04/09/16 05:31:14
バロール
「……まだ何か?」
主人公
「……くびれ」
バロール
「                    はっ?」
主人公
「この腰のくびれ……最高だ……」
主人公
「くびれ〜〜〜ぇ」
バロール
「うわっ、突然しなだれかからないでください!」
(ぐら……どさ)

【「あっ……」】
【 気がつくと、私はバロールの胸の上に寝転がっていた。】
【 柔らかな肌とささやかな胸元。鼓動すらも感じられそうな
 華奢な体つきは、間違いなく女の子のもの。あいらしい、
 若木の芽吹く娘のもの。】
【 そして弓のようにしなやかなくびれ。獣のようにスマート
なその輪郭は、もしも私が男性であれば、欲情し理性すらも
打ち捨てて陵辱したであろう、素晴らしいほどの美しさ。】
【「ん……いたっ……」】
【「っと。ごめん、すぐに退くからっ」】
【「っ……熱い……です……」】
【「ちょっと待ってて。よっと」】
【 私は立ち上がる。立ち上がりかけた――そのとき。】
376アサシン:04/09/16 05:33:06
【「あ、私も……」】
【 美しい腰がふわっと跳ね上がり、私のお腹に当たった。
 バロールが身を起こそうとしたのだ。あまりに唐突に
 不意をつかれ、私は驚愕を感じる間もなく固まり、
 そしてまた――。】
【「あっ……」】
【「きゃ……」】
【 そしてまた。私は再び倒れ、そのままの勢いでバランスを
崩しつつ、バロールの胸元に顔をうずめる。よける間もなく。
女らしいふくよかな胸へと。そして顔が止める間もなく、唇は
震えて――】
【「あっ……」】
【 ふるり、とバロールの全身が震えたのを感じた。】
【 ……私は。】
【 ……キスを、してしまった。】
【 不可抗力のファーストキス……を。】
【 服ごしに……彼女の乳房へ――。】
【 甘くはないけれど。よい香に包まれた、気がした。】
377名無し物書き@推敲中?:04/09/16 05:34:23
ちょっとお借りします。
378名無し物書き@推敲中?:04/09/19 22:28:19

・・・

訓練所〜〜

主人公
「ふぅ……。まあそこそこの成果かな」

 訓練が終了し、私は水のエリアから上へと上がった。
 他の訓練生たちも皆終わったらしい。いつものロビーは
休憩する少女たちの談笑や論議でなかなかに騒がしいようだ。

主人公
「私も喉が砂漠だし、メッコールでも飲むかな……ん?」

 不意に目の前に見知らぬ少女が立つ。少し怯えたような
瞳は、単純に誰かと話したい、というわけでもなさそうだ。
 でも私に何の用があるというのだろう。
少女
「あ、あの……」
主人公
「どうしたの? かわいらしいお嬢さん」
少女
「お、お金……持っていませんか……?」
主人公
「ふむ。少しなら持っているけれど、何かに要り用?」
少女
「……実は……」
 その少女の話によると、彼女には病気の弟がいるらしい。
 組織に拉致されてから数ヶ月。さすがにお金を送らない
ことにはいけなくなり、それ自体は組織にも容認されたの
だが……。
379名無し物書き@推敲中?:04/09/19 22:29:13
主人公
「肝心のお金がないと……。
でも毎月給料は出ているでしょう?」
少女
「強化剤にも使わないと……訓練についていけなくて……」
主人公
「うーん。いくら必要?」
少女
「10000ドル……1000Aあればなんとか……」

お金をあげる(1000A)
お金をあげない

380名無し物書き@推敲中?:04/09/19 22:29:58
あげないを選択した場合

主人公
「ごめんね、私もお金に困っていて……」
少女
「そうですか……」
少女
「いえ、私のほうこそ差し出がましい真似をして……」
少女
「……では」
主人公
「うん。もし、また機会があれば……」
 少女は去った。

アナローグ
「上手くかわしたね」
主人公
「え?」
アナローグ
「あれさ、あの子の手口なんだ。
何も知らないお人よしは騙されてしまうけれど……」
主人公
「嘘……ってこと?」
アナローグ
「そ。ま、気をつけないとね」
主人公
「そっか……ん。分かった」
381名無し物書き@推敲中?:04/09/19 22:31:42
お金をあげるを選択した場合

主人公
「わかった。少ないけど、使って」
少女
「ほ、ほんとうですか! ありがとうございます!!」
主人公
「いいって困ったときはお互い様」
少女
「ありがとうございます!」
主人公
「じゃ。またいつか」
 私は少女と別れ、そのままロビーを抜ける。
 メッコールは……まあいっか。

オウル
「ホーーーホッホ。クリーム・エゼのように
激! 甘いですねぇ!」
主人公
「うわ、先輩。突然に外国語使って颯爽と登場しないでよ」
オウル
「ホホホ……なんて迂闊な者でしょう。
あなた、自分のお金を簡単にダストボックスへお捨てになるのね」
主人公
「うーん? さっきの見てたの?」
オウル
「ええ。まんまと欺かれて」
主人公
「え?」
382名無し物書き@推敲中?:04/09/19 22:33:09
オウル
「あの子、病気の弟がいるなんていっていたでしょう」
オウル
「あんなの、オ・オ・ウ・ソ」
オウル
「病気の弟なんて、いらっしゃらないのよ」
オウル
「ホホホ……莫迦なお人」
主人公
「………………………そう、なんだ」
主人公
「…………」
オウル
「どう? すごく惨めな気持ちで……」
主人公
「……よかった」
オウル
「っ?!」
主人公
「病気の弟は……」
主人公
「……病気の弟は、いないんだ……」
383名無し物書き@推敲中?:04/09/19 22:34:16
オウル
「………………………」
オウル
「…………ふう」
オウル
「お人よし」
主人公
「そうかな?」
オウル
「でも……」
主人公
「???」
オウル
「いいえ。暗殺者には命取りよ、その愚かさは」
主人公
「心配してくれているの?」
オウル
「し、心配?! まさか!!」
主人公
「何を唐突にあたふたしているの。今、何かあった?」
オウル
「何もありません!」
384名無し物書き@推敲中?:04/09/19 22:34:49
オウル
「も、もう私は行きますから! 忙しいのですっ」
主人公
「あ、ごめんね。じゃあまた」
オウル
「また……?!」
オウル
「…………」
オウル
「また…………ですわ」
 オウルはどこかへ行ってしまった。
主人公
「さ、私は自分の部屋へ帰るか……」
主人公
「♪〜」
385名無し物書き@推敲中?:04/09/19 22:48:33
お笑い系だけど少しほのぼのと……。

キャラ説明:
オウル
主人公の先輩。訓練生の教官。
梟のお面をつけている。自他の暗殺者を嫌っており、
順応している主人公には妙に嫌味ったらしい。武器は自動式拳銃。
アナローグ
銃や車を使わない暗殺者。主人公の同期(つまりまだ訓練生)
異様なまでの身体能力と、三匹の僕こと自ら命名したロデム(黒豹)、ポセイドン(月の輪熊)ロプルス(鷹)を
用い、暗殺者として100%の成功率を見せる。武器は十世紀以前のあらゆる物。
かつて「ゴースト」と呼ばれた最初の脱走者と共にいた、組織に殺された裏切り者の妹。
ゲームの後半で組織の真実を知り、脱走する。
386名無し物書き@推敲中?:04/09/23 20:45:28
おいこ
387名無し物書き@推敲中?:04/09/23 20:45:48
おいこのスレは18禁OKなの?
388名無し物書き@推敲中?:04/09/23 21:15:37
おいこって誰だ。
389名無し物書き@推敲中?:04/10/15 23:35:35
保守
390名無し物書き@推敲中?:04/10/27 17:00:39
おいこ16歳
391名無し物書き@推敲中?:04/12/07 14:54:14
保守
392名無し物書き@推敲中?:05/01/04 05:52:27
レズは肉体関係、百合は精神関係(肉体関係NG)だとおもっていたのだが・・・
393名無し物書き@推敲中?:05/01/04 10:22:30
必ずしもそうじゃないな。

レズが肉体関係を指すというのは、その言葉がヘテロ主義者達による
いわれもない中傷として使われてきた歴史があり、そのためレズビアンの
ことはビアンと訳すのが通例であるという事実のためであるが、かといって
使い所にも色々あるわけだから一概にこの意味とは言えない。
インディアンだって「インドの人」だしな。NIとも呼ばれているが。

あと百合について。
まず百合という言葉が「薔薇族」の百合族からと考えるなら、もともとの
「ビアン同士の交流」的な意味合いが出るだろうし、それとは別に
「マリア様がみてる」のリリアン女学園からと考えるなら
「プラトニックな恋愛、友情」の意味合いがでるわけだ。

海外などでは「性的な要素を含む女同士の恋愛」みたいな解釈もあるらしい。
参考
ttp://www.shoujoai.com/forum/forum_show.pl
394名無し物書き@推敲中?:05/01/11 20:35:03
>393
マリみてを百合のベースと考えるのは幾らなんでも無理がありすぎ。
395名無し物書き@推敲中?:05/01/12 21:37:03
「お姉様」といえばレズ(肉体関係)という一般的な見識が最近に
なって失われつつある背景に、マリみての影響がないとはいい切れない。
百合の基盤にマリみてを置くのはあながち外れていないと思うよ。
レズ=百合(?)的な見解は1993~2001年くらいの間に広まった感じがする。
396名無し物書き@推敲中?:05/01/13 09:44:24
>393が語っているのは百合全般についてであって「お姉様」という単語から想起
される感情を「マリみて」が一般的に(一般的に?それも随分な解釈だとは思うが)
>395が言う解釈にしていったかとは全く無縁の話だろうよ

いずれにせよ百合の文芸を語るのにフリーネをすっとばしにして語る>395もどう
かと思うけどさ。自分が知っている知識や情報を「一般的」と言うのはやめたほう
がいいぞ。恥ずかしいだけだから。
397名無し物書き@推敲中?:05/01/27 22:14:42
hosyu
398名無し物書き@推敲中?:05/02/11 10:50:13
保守代わりに駄文投下しやす〜
399名無し物書き@推敲中?:05/02/11 10:54:36

『釣りをする人』
 家の近所にはわりと大きな公園があって。
 そこにはそこそこの大きさの沼があった。
 サイコロ(雑種・オス二歳)の散歩コースに重宝な、沼の遊歩道からは
釣り人の姿が必ず見えて。
 それは見慣れたいつもの風景のはずだった。

 その女の人は、はっきり言って浮いていた。
(なんでスーツ? なんで釣竿?)
 ちょっと郊外の、わりと整備された自然公園。
 例えば東屋とか。例えばアスレチック遊具とか。
 でもそこにいるには不似合いな、女性。
 例えば、一分の隙もなく着こなされたグレーのスーツとか。アイロン掛け
にどのくらい時間がかけられているか、想像したくもない。
 なのに目の前の人は、そんなこと知りません、なんて顔で芝生に座って
いる。
 その手には立派な釣竿が握られていて、もちろんそこから伸びる糸は水
面へとつながっている。
 何をしてるのかって、そりゃあ釣りに決まっているわけだけど。
 その女の人は、はっきり言って浮いていた。
 やってることは、場所に見合ったものなだけに。
 なまじ、顔立ちのきれいな人なだけに。
 へんなの。
 ふと、手の中でリードがくねった。足元に目をやると、待ちぼうけをくったサ
イコロの、不満気な眉間。
「あはは、ごめんごめん」
 ご機嫌取りに頭を一つ撫でてから、これまでの行為を再開させる。
 やっと桜のつぼみがほころび始めた、四月のある日のことだった。
400名無し物書き@推敲中?:05/02/11 10:59:17
 これが、一日目。
 そして次の日も。そのまた次の日も。そのまた次の次の日も。
 風のにおいが変わって、若葉が芽吹き、制服が重たい冬服から中間服に
衣替えされても。
 そこでその美人は太公望を気取っていた。
 スーツ姿で。
 すっかり私はその風景を受け入れてしまい。
 毎日女性が見せる着こなしが楽しみになり。
 逆に姿が見えないと心配になるほどだった。
 どうしたんだろ。
 用事があって来れないのかな。
 病気とか怪我してなきゃいいんだけど。
 なんて。

 一学期の第一関門、中間テストも済んで、心も足取りも軽くサイコロとお散
歩。
 テスト期間中はお父さんにまかせっぱなしだったから、久々に沼へ行けるの
が楽しみでしょうがない。
 ぐるりと遊歩道を進む。
 ここで手抜きをするとサイコロがすねるし、それに、私の目的はあくまで散歩
であって、あの太公望さんを見ることじゃないのだから。そう、散歩散歩。けして、
お近づきになれたらいいのになあ、なんて考えてないよ?
401名無し物書き@推敲中?:05/02/11 11:00:19
 すっかり葉が生い茂って、見通しの悪くなったカーブを進む。自然と一歩一歩
の歩幅が大きくなって、足の動きが速くなる。
 伸び放題のからたちの植え込みが途切れた。

 いた。

 いつもの定位置に、いつもどおりスーツで。
 今日のスーツは、合わせた小物やシャツなんかは違ったけど、初めて彼女を
見かけた時のものと一緒だった。
 これは前々から思っていたことだけど、なんというか、すごい、オトナのオンナ、
ってかんじがする。
 こう、着こなし方とか、居住まいとか、化粧の感じとか。
 ……服の上からもわかるスタイルの良さとか。
 自らを省みて、年の割にはいささか発育の足りない身体や、それにベストマッチ
な童顔とは大違い。
 あこがれの、理想的な、いつかああなれたらいいなあ、なんて。
 まあぶっちゃければ。
 きれいな人だなあ、って。
 なんて油断してたら。
「わ、ちょ、サイコロ?」
 サイコロにリードを取られた。ぎゅいぎゅいとすごい力で一目散に駆けてゆく。
 私に出来るのは、転んだり引きずられたりしないよう、必死に足を動かすことと。
「あわわわわ」
 目的地になるであろう釣り人に、一刻も早く危機を知らせること。
「あ、あぶなーい! 逃げてー!」
「え?」
402名無し物書き@推敲中?:05/02/11 11:05:21
 衝突による人身事故は、不幸中の幸い、水難事故には至らず、最小限の
被害で済んだ。

 グレーのスーツにべったりとついた足跡。
 一分の隙も無かったそれに汚点をつけた元凶を、一つたたいて反省を促
すけども、素知らぬ顔でわふん、と鳴いてみせるだけ。それどころか、自分
が叱られてることもわからずに、構ってもらえたことを喜んでいる体たらく。
ペットは飼い主に似る? 断固否定させてください。
「ほんっっとうに、すみませんでした!」
「いいのいいの。こんな格好で釣りしてる私が悪いんだから」
「でも、せめてクリーニング代だけでもっ」
「いいのよ」
 パーカーのポケットに入れようとする手が、やんわり掴まれた。鼻先をかす
める、フレグランスのいい香りと、手のひらにあたる、手入れの行き届いた爪。
心臓がひとつ、強く脈打つ。
「学生さんが、そんなこと気にしなくてもいいの。ね?」
 極至近でのぞき込んでくる、瞳。またひとつ不整脈。
「これがうちの上司みたいな脂ぎったオヤジだったら、いくらでもふんだくって
やるとこだけどねー?」
 きれいな顔いっぱいに愛嬌ある笑顔を浮かべて、ぽんぽんと私の頭をたた
く。座ってるときはよくわからなかったけど、この人背が高い。モデルさんみた
い。……いーなあ。私ももうちょい身長欲しいなあ。160センチ、なんてぜーた
くは言わない。せめて155センチ欲しい。
 いやいやそうじゃなく。
「で、でも、それじゃいくらなんでも。きちんとおわびさせてください」
「んー……じゃあ……」
403名無し物書き@推敲中?:05/02/11 11:06:06
 私の頭に乗せた手はそのままに、腰を折って目線を合わせると、とろけるよ
うな笑みを浮かべて。
「じゃあ、これクリーニングしてる間、時間つぶしにつきあって?」
「へ?」
 きょとん、としてると。
「お茶でもしませんか? ってこと。片づけるから少し待っててね」
 さっさと話を切り上げて、とっととこの場を離れる準備に取りかかる女性。
 いやいやいやなんなんだろこの展開。嬉しいけど、でもなんかこれって。
 ……いいの?
「いやあのちょっと待ってくださいその」
「おわび、してくれるんでしょ?」
「う」
 釣竿をしまって準備万端。番犬には向かない人なつこさを発揮して、早速じゃれ
つくサイコロの頭を撫でながら、
「さ、行きましょう」
「……はい」
 いきなりのことで、まだいまいち状況が把握できないんだけど。でも、なんか、
ラッキーかもしんない。
 あれ?
「あの、バケツとか、釣った魚を入れる道具は無いんですか?」
 見れば、女性の荷物は釣竿とOLさんらしいバッグだけ。
「キャッチアンドリリース」
「きゃっちあんどりりーす?」
 専門用語がわからないでいる私の頭を撫でて、太公望さんはまた微笑んだ。
「今日は、無理っぽいけどね」
「?」
「大物も釣れたことだし」
「??」
 お互いにお互いのことが気になっていたことを知るのは、アールグレイの香り
漂う喫茶店にて、三十分後のこと。
 【FIN】
404名無し物書き@推敲中?:05/02/11 11:12:38
…萌えって難しいね、母さん(遠い目)
それではお目汚し失礼しやした〜(シモテハケ)
405名無し物書き@推敲中?:05/02/12 00:04:38
>>404
(・∀・)イイヨイヨ〜

次はエロパロ板にでもおいでよ。
406名無し物書き@推敲中?:05/02/12 14:55:23
のほほんとした感じがなんかよかったな。
タイトルは「釣りをする女(ひと)」でもいいかとオモタけど。
また投下よろしくです。
407名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:12:07
リハビリがてら書いたのがいきなりSFチックでトホホな作品に。
しかも色々すっ飛ばし。それでもいってみよー、おー(なげやり)

・・・概要

 遙か未来の話…………。
突如勃発した第六百六十六次世界大戦は、かつて地球全土に繁殖していた
ヒトという種を滅ぼし、大地の80%を焦土に変えた。
 失われた地球上の質量はおよそ半分。万有引力の乱れを取り戻すため、
宇宙は地球に対してかつてない、大きく未知のエネルギーを秘めた隕石を
衝突させた。
 進化石ギャロッグの衝突である。これを期にほぼ全ての生命が知性を会得、
また先の第六百六十六次世界大戦を切り抜けたマシン・ロボットたちの手によって、
地球には瞬く間に文明が栄えた。
 国家。宗教。科学。ヒトという種がかつて手に入れ、失ったものの復興。
 多種族による文明の発展は、また彼らの体質をも変えていった。
 そしてそれは「生命」のあやふやな定義を浮き彫りにする。
 「種の保存」とは何か。「本能」とは何か。「生物」とは何か。
 融合……変異……自己増殖……不母生命……概念のみの存在……。
 生命の定義を探求しながら、今日も生命体、非生命体は地球で生活している。
 
 弐奔(ニホン)。
 正四角形の人工大地の中央に、円形の丸く赤い中央都市「塔恐」を
設置した、地球上のあらゆる国家の中でも、比較的小さな国家。
 そして物語はこの「塔恐」で始まる……。
408名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:26:08
・・・種族

 スライム:宇宙空間においても生きる生命の最高峰(省略)
 エクス・ドラゴン:肉体の強度と腕力において最強の生命体(省略)
 寄生生物:
 「塔恐」に住む生命体の中でも、とりわけ知性の高い生命体。
 本体は小さく弱いため、自分たちの体質に合わせて疑似生命体(ユニット)を製造し、
そこに本体が寄生することで安全に生活する。腕力などはユニット依存。寄生能力の
高い寄生生物は、エクス・ドラゴン並のユニットをも使いこなすことができる。
【ユニットについて】
 バイオプラントで製造された寄生のための疑似生命体。大きなユニット、強度の高い
ユニットほど寄生・制御をしにくくなる。このユニットは元来意志を持つことはないが、
稀に外的な何らかの接触によって別の意志が発現し、元々住んでいた寄生生物を
滅ぼすことがある。
(この意志に目覚めた肉体は別の寄生生物たちによって排除されることがほとんど。
強靱なユニットには発現せず、非戦闘用の肉体のみに発現する)

・・・登場人物
ヴェルファ:
寄生生物の青年でバイオプラントの開発者。自分の作ったユニットに不備があるか
確かめようとしたところ、ユニットの別意志「ベラドンナ」によって肉体を乗っ取られ死ぬ。
ベラドンナ:
ヴェルファの第8番ユニット。非戦闘型でほ乳類ヒト科の成人女性の姿をしている。
人格はヴェルファの良い人柄とは似ても似つかぬ、悪女の性格。得意なものは
嘘と早撃ち。しばらくは追っ手の寄生生物たちから逃げていたが、彼女の嘘の能力に
感嘆したエクスドラゴンの王の一人ファフニルから拳銃を貰い受ける。
それ以後は追っ手と闘うように。
シルク:
ベラドンナを追う寄生生物の将軍。その能力は高く、様々な大型戦闘系ユニットを
一人で制御できる。ただし寄生生物には珍しく、さほど知的ではない。ヴェルファには
個人的に「マジ○ガーZ」の製造を頼んでいたため、ベラドンナに恨みを持っている。
409名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:27:01
silk scene1「深夜・雨横商店街」

?「ガロンが倒れたというのなら、私の番か。では行くとしよう。
夜の雲よ、風よ、幾百メートルの距離よ。よもや私を阻もうとは
思っていないだろうな。さあ、堅い大地よ。私をめり込ませながら
受け止めよ」
b.「止めだ、ガロン! ん?! 何者か来たぞ」
?「同胞よ。この小娘を見くびったな」
g.「う、うう。シルク様。あなた様がよもや、お出でになるとは……」
?「離れろ。今、この肉体はたとえ相手が子鼠のような相手とはいえ、
手加減がきかない。ヴェルファの肉体は私の一撃に砕け散るが、周囲にも
被害が及ぶかもしれん」
g.「はっ……」
b.「寄生生物の兵士、ガロンは消えた。しかし殺気は先ほどよりも強く
なっている。数が増えたのか、それとも、あのガロンよりも強い相手が
出てきたのか。目の前には深く大きな闇が立ち籠める」
?「私はここだ、お前の目の前にいる。とくと見よ!」

b.「誰だ! 月影に大きな獣の姿が浮かぶ。夜の影に包まれ、外見は
詳しく分からないが、恐ろしい気を纏うものよ。お前も寄生生物なのか。
私の敵であり私の命を狙う者なのか」
?「いかにも。私は寄生生物の将軍シルク。ヴェルファの肉体よ、
非戦闘体のお前ごときが私に勝てると思うな。戦うなどと考えることは
滑稽な傲慢だ。子鼠が嵐と海の津波に立ち向かう愚かしさだ。
b.「寄生生物の将軍こそ、思い上がるな。私には偉大なエクス・ドラゴンの王、
ファフニルの拳銃がある。どんなに強靱な肉体も、この鋭い牙によって
貫かれる。お前こそ私の強さに恐れおののくがいい。借り物の肉体を
持たなくては生きていけぬ寄生生物は、それがお似合いだ」
410名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:27:34
s.「傲慢なるヴェルファの肉体め。よもやヴェルファ以外の名を名乗ろうなど
とは考えてないだろうな。お前こそ借り物の存在ではないか。ヴェルファなく
しては存在すらできなかったものを、傲慢に暴走し、彼を殺すとは。
 創造主の殺め手よ、くたばってしまえ。口から夥しい血を大地に吐き散らし、
あの世でヴェルファに跪くがいい。私の爪はお前の命を容易く奪うぞ。お前の
胸を開き、心臓を握りつぶすことなど瞳を閉じていてもできる」
b.「試してみるがいい。そしてその下らん眼でとくと見よ。鋭い銃を握る
私が、どれほど簡単にお前を滅ぼすのかを」
s.「無知なる者よ。次の話を聞くがいい。
 昔昔、蜜蜂がまだ小さく、社会形成もそれほど差がなかった頃。
偉大なる創造主は彼らに鋭い針を与えた。その針はヒトなどを二撃で滅ぼし、
熊の厚い毛皮をも貫いた。蜂たちはこぞってこの針を振るい、多くの敵を
討ち滅ぼしたものだが、やがて自分たちで争い始めたとき逆にその針が
鬱陶しく感じ始めた。しかし針を捨てるわけにはいかなかった。
 これがないと彼らは自分の身を守ることができず、衰退の一途を辿ると
知っていたのだ。様々な葛藤の末、彼らはその針を使うと、自らが死ぬと
いう制約を己自身に科した。これによって蜜蜂の間に争いはなくなり、
蜜蜂の間に安寧がもたらされたのだ。
 ヴェルファの肉体よ、弱い身体に似合わない鋭い牙を誇るな。それを
誇るお前はかつての弱々しい蜜蜂にも劣る。そんなお前に私は全力を
出す必要すらない」
b.「ふっ。名乗ってやろう。私の名はベラドンナ。鋭い牙を持つ、
お前らが肉体の王!」

(戦闘。ベラドンナの勝利。シルクはベラドンナを認め、退却)
411名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:35:47
欠:(scene2「深夜・忍魚超」scene3「昼間・餓能動物園」scene4「深夜・壱牙矢」)
silk scene5「深夜・寒堕〜塔恐へ行く途中のトンネル」

b.「…………」
b.「ほう、私が寝ころぶ相手に気付かぬとは」
?「………暗闇だからな。気にするな」
b.「誰だ?」
s.「私は寄生生物の将シルク。お前こそ誰だ」
b.「なんだ。寄生生物の将か。私が誰かは声で分かるだろう?」
s.「? ああ」

s.「ヴェルファの肉体、か」
b.「傷ついているようだな。どうした?」
s.「お前の相手ばかりしているわけにはいかないのでな。エクスドラゴンの将
メドスは思ったよりも強力だった。もちろん私が勝利したが」
b.「この場で私に殺されるのに、勝利もなにもないだろう」
s.「あるさ。戦いの結末は生死であって勝敗ではない。進退であって
勝敗ではない。勝敗はそれ単体では何の形も持たないもの。
では勝敗とは何か。それを決めるのは、常に自分自身だけだ」
b.「なら、私はここでお前を殺すわけにはいかないな、寄生生物の将。
私はお前に敗北するつもりはない。そしてここで傷ついたお前を殺すことは、
私にとって敗北だ」
s.「小娘が。生意気を言うもの……」
b.「ほら、身体を貸せ。背負ってみたが、重いな。少しダイエットしろ」
s.「本体は十分小さいぞ。この肉体から出ることはできないけれど」
b.「何をむきになって反論しているんだ。ほら、血を吐くくらいなら何も喋るな」
s.「仕方ないだろう。私だって女だからな、そういう言葉には神経質なんだ」
b.「何? 急に空耳が」
s.「おい、大丈夫か。私を投げ出すなよ」
b.「いや、どこからか自分を女という声がして。どこだろうな」
412名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:36:26
s.「お前の背中からだな。私がそう言ったのだから。ほら、きょろきょろ見回すな。
私とお前以外この辺りには誰もいないだろう」
b.「かわいそうに。自分の性別が分からなくなるほど衰弱しているのか」
s.「ちょっと待て。お前は今まで私が何者だと思っていたんだ」
b.「ごつい男以外にありえないだろう」
s.「さすがだ。ヴェルファの肉体は時折とんでもないことを考えるな」
b.「いや、視聴者の皆さんだってそう思っているぞ」
s.「視聴者って誰だ」

b.「では本当に女なのか」
s.「それで二百六十回目だな。いい加減しつこいぞ」
b.「口調とか」
s.「お前に言われたくはない」
b.「外見とか」
s.「あくまでも寄生生物のユニットということを忘れてないか?」
b.「だが私は認めん! 女というのは、もっとこう、お淑やかで清楚で、
大きな瞳の中にキラキラ光る星があってだな、睫毛がぴんぴんしてて、
不思議なカーブをした顎を持っている生物でだな。学校行く時に下げた
両手の前でバッグを持っていたりなんかするんだよ。違うか!」
s.「……どこから突っ込んだらいいのか分からんな」
b.「よし、では女の子テストだ」
s.「何をいきなり」
b.「初の少女漫画原作の特撮番組『好き!すき!!魔女先生』と」
s.「しかも石森原作とは」
b.「同年(1971)に放送を開始した人気番組は次のうちどれ?
1.ジェットマン 2.仮面ライダー 3.ウルトラマン 4.アイアンキング」
s.「2番。……なんで私答えているんだろう」
b.「な、なにー、正解だと?! ばかな。するとお前は確かに女の子。なんという
ことだ、私の女の子観が揺らいでしまうー」
413名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:37:14
s.「安心しろ。とっくにお前の女の子観は歪みすぎている。大体前世界の話を
持ち出す時点で大半の生物には理解できないぞ」
b.「いやそれもそうなのだが。ほら、私が女の子じゃないか。だから私の好きな
話題なら、普通の女の子も分かるんじゃないかと」
s.「……普通?」
b.「なんだ」
s.「いや、何でもない」
b.「笑ってないか? まあどうでもいいか。ほら、お前らのアジトが
見えてきたぞ。そろそろ降ろしていいかな。何なら、自宅まで運ぶが」
s.「いや、ここでいい。変に同胞に見つかっても――」
?「あ、あれはヴェルファどのの肉体! こんなところにいるとは――!」
b.「速攻で見つかった」
s.「よっこいせ、ざくざく」
?「ぎゃー。な、なぜシルクどのがー」
s.「さらば同胞ハイエル。君のあの笑顔は忘れない」
b.「イニシャルが出るまでもなかったな」
s.「……とまあ、こうなるわけだ。面倒は嫌だろう?」
b.「確かに。ではお前をここに置いて去るとしよう」
s.「ヴェルファ……いや、……」
b.「ベラドンナか?」
s.「ああ、ベラドンナ。今日はありがとう」
b.「ふっ」
s.「何がおかしい?」
b.「まるで、少女漫画のヒロインが仇敵の男にいうセリフだと思ってね」
s.「それでそのヒロインと男はどうなるのだ?」
b.「………………」
s.「顔を真っ赤にして何を考えているのかね。何もおかしなことを
聞いたわけではあるまい」
b.「いや、そう、服従するんだよ。ヒロインが男に、こう、純情に、
お淑やかな、可愛らしいところを見せて」
414名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:44:20
s.「はいはい。そりゃようござんした」
b.「そ、それじゃ。今度は万全の状態で会いたいものだな」
s.「ああ。また、な」

(ベラドンナ去る)

欠:(scene6「深夜・衰堂端」scene7「深夜・忍魚超」scene8「深夜・那形血妖」
scene9「深夜・那形血妖〜光巨」scene10「早朝・塔恐」)
415名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:45:30
silk scene11「昼間・秋薔薇の電気街」

b.「さあ買い物は済ませた。忘れ物もない。財布や拳銃は、
私の胸元のポケットに入っている。あとは自宅へ帰るだけだ。
 おや、あれは私の敵である寄生生物の将。シルクとかいっただろうか、
なぜこの秋薔薇にいるのだろう。私をねらって来たのだろうか。
だが少女の非戦闘系な肉体で、その企みがあるとは思えないが。
 罠だろうか。そうでないにしても、下手に無視するのはどうにも
後味が悪いだろうな。ならばとりあえず呼びかけてみよう。
 おおい、こんなところで何をしている」
s.「あら。ベラドンナ……いいえ、ヴェルファでしょうか。
ベラドンナとお呼びした方が良いのですが、あなたは私の同胞から
ヴェルファと呼ばれているならそっちの方がわかりやすくも
あるのでしょう」
b.「ヴェルファはかつて宿主だったあなたたちの仲間。そっちの
名前の方が好きなのだろう。別にヴェルファで構わない」
s.「そうとは限りませんよ。でもヴェルファとお呼びしましょう、
あなたがそちらを好むなら」
b.「そんなことはどうでもいい。それで、あなたはこんなところで
何をしているのだ。しきりにあたりを見回し何かを探しているようだが」
s.「秋薔薇はあらゆる種族の総合電化製品市場です。なら、自分のとこの
バイオプラントを探しに来る寄生生物がいても不思議はないでしょう。
 ほら、他にもたくさんの寄生生物たちがうろついてますよ」
b.「それもそうだな。全体的にマシン系の種族が多く、生物系は少ないから
小型の五匹や六匹混じっていたところでまるで気づかなかった」
s.「そうですね。むしろこの機械音とマシン群れの中で私を見つけたことの
方が不思議です」
b.「同じ哺乳類ヒト系の肉体だからな。それでかもしれない」
416名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:46:08
s.「あら、気づきました? 実はおにゅーのユニット(疑似生命体)なのですよ。
今まで、戦闘系の大型獣や大型昆虫、キマイラ系くらいしか見せたことなかった
でしょう。日常では非戦闘系に寄生する方が多いのですが」
b.「私を襲うときもその可憐な格好でいて貰いたいものだな。そうしたら
一瞬のうちに殺してやる。この胸元の拳銃で」
s.「スカートの裾を上げ、丁重にお断りさせていただきます。ところで
あなたは何故ここへ。何か入り用のものでもあったのでしょうか」
b.「それを聞いてどうするつもりだ。私の弱点になるとでも思っているのか」
s.「いえ、ただ、今は十二月」
b.「ん。言っておくが、この程度の寒さに弱いわけではないぞ」
s.「……何でもありません」

b.「さて、帰るか。考えてみれば、別にあなたと長く話す理由などない」
s.「それは残念です。本当に」
b.「虚言を」
s.「私の心がわかりませんか?」
b.「借り物の目で物を見、借り物の耳で物を聞く。借り物の鼻で匂いを嗅ぎ、
借り物の舌で物を味わう。そんな借り物の感触で得た心など、なぜ分かると
いうのだ」
s.「心は私のものです。寄生生物、シルクのものです。たとえ寄生しても、
私の意思と命令はその肉体にとって本当のものです」
b.「違う。本当の意思は肉体に追従すべきもの。私のように」
s.「意思は肉体と切り離されて然るべきです。若さがあろうとも、
牙があろうとも、……誰かを愛する気持ちに変わりはないのなら」
b.「愛を語るか。貧相な本体を持つ寄生生物でありながら、誰かとの愛を!」
s.「語ります。本体は貧相で醜悪なものであっても、愛を感じる私の心は
黄金よりも輝いているから」
b.「ならば愛し続けるがいい、その相手を……私には関係のないことだ」
417名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:46:59

s.「ヴェルファ……ベラドンナ。一つだけ言わせてください」
b.「必要のない言葉なら聞くつもりはない。私だって忙しい。
寄生生物の下らない発言のために、自宅へ帰る二本の足を止めるつもりはない」
s.「そう急かないで下さい。私の宿主の小さな足ではあなたに追いつけない。
長い髪の後ろ姿が、次第に遠ざかっています。振り返って下さい。あなたの鋭い
まなざしで、私の唇の震えを捉えてくれないのですか?」
b.「その唇とてあなたの物ではないのだろう」
s.「私の作った肉体です」
b.「それは知っている。元々存在し、ある程度の成長を重ねた肉体では、
あなた方寄生生物の生存環境にはあまり適さない。ゆえにバイオプラントの
機械によって、擬似的な理想的生命体を作り、そこに寄生する……だが」
s.「そのユニットが外的な接触によってもう一つの自我に
目覚めることもある。ベラドンナ、あなたのように」
b.「それこそが肉体の本質だ。おっと」
s.「どうでしょう。
 あ。足下の石に躓き、危うく全身を打ち付けるところ。本当に危なっかしい」
b.「うるさい。むむ、近寄られたか。借り物の手などいらん。体勢ぐらい
自分の意思で立ち直す」
s.「では差し伸べた手を引っ込めましょう。
 ベラドンナ、新しくもった自我は、我々寄生生物の意思を破壊し、元来
住んでいた寄生生物の生命すらも亡いものに変える。……ヴェルファは
もはやこの世にいない。そしてその意思は肉体によって依存する。
 けれどその意思は肉体の本質でしょうか。そのような意思は肉体が成熟し、
寄生生物が住めない環境になって始めて発現する。つまり肉体がある程度、
寄生生物を受け入れた後で……」
b.「肉体の抵抗だ。寄生生物を排除するためのな」
s.「ですが肉体の外的干渉により生まれた意思は結果的に肉体の破壊を早める。
――老化、病気などのコントロールが効かない。また、意思の破壊によって
生命活動が停止する……肉体を脆くするのが肉体の本質ですか?」
418名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:47:45
b.「肉体が元々脆いものであればそうだろう」
s.「寄生生物はより制御しやすい肉体を製造する。その強度は問題外です。
肉体が脆いのは、ただそれだけのこと。元来の目的を離れ、半ば暴走したように
肉体が自己を破壊するようになるのは……」
b.「…………」
s.「すみません。別にベラドンナを見下げているわけでは」
b.「私は自分こそが正しい『意思』であると確信する。この肉体のな。だから
あなたたちの『意思』を否定し、見下している。
 あなたが反する意見を持っているなら、私を見下すのが普通だろう」
s.「本気でそうお考えですか? 美しい瞼を伏せる人よ」
b.「どういう意味だ。少女の姿を借り物にする寄生生物め」
s.「私はあなたが好きです」
b.「なに?」
s.「驚き、細長く切れた瞳を大きく広くするほどのことでしょうか。
あなたほどの人なら誰に好かれても不思議はないでしょう」
b.「……知らない。それに寄生生物は寄生生物とのみ生殖を可能とし、
肉体とは生殖することはできない。この部分、寄生生物は肉体に
行動を依存されないけれど。
 むろん、そのような借り物の身体なら可能かもしれない」
s.「その肉体……哺乳類ヒト系の場合、女と女では生殖できませんよ。
知りませんでした?」
b.「笑うな」
s.「自分では止めませんよ、肉体に悪影響ですし。残念ですね」
b.「なら顎が外れるまで笑うがいい。日が暮れ、夜の月が昇るまで。私は
さっさと自宅へ帰る。ついてくるな」
s.「好きです。本気で――。どんな甘い果実も、あなたの微笑みほどには
甘くない。どんな薫の花も、あなたの吐息と言葉に及ばない。鋭い瞳持つ、
創造主の殺め手よ。か弱い肉体を誰かに抱かせましたか?
 あなたの強い心にふれる時、私の情熱は燃え上がる。欲望の火は真夜中、
ベッドの縁にあなたが微笑む幻を見せ、一人の寂しい寝所に悲しみを呼ぶ。
夢の中でベラドンナの名を呼び、その温もりを求めるのです」
419名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:48:30
b.「私に嫌悪の返事を期待するの。なんて無益な」
s.「なぜですか。あなたは私を好きなのでしょう。さもなくば、
始めて出会ったユニットに、どうして私を知ることができたのですか?
 瞳の奥が揺れています。あなたの心は乱れ、まるで小石に打たれた
水面のよう。その心は困惑に満ちています。いとしい人よ、何のための
拳銃を取り出すのですか。私を打って、その混乱から覚めるはずもないのに」
b.「黙って。そして拳銃の弾に本体を打ち抜かれ、死ねばいい」
s.「けれど」
b.「ならばなんだというの? あなたが私を愛そうとも……それが
あなたのすべてではないのに。あなたの敵である私が変わるわけではない、
違う?」
s.「違いません。そのことは、何も変わらないでしょう」
b.「だったら何のためにそんな言葉を私に伝えるのか。そんな借り物の姿で、
借り物の声で、借り物の吐息でそのようなことを……」
s.「好きだからです。私の心が掻き乱されているからです。こうして拳銃を
向けられる恐ろしさより、私はあなたの瞳の奥に、私への好意を見いだした
喜びを強く抱いているのです。この意味がお分かりですか、ベラドンナ」
b.「わからない。私には何も。どうして引き金を引けないのか。どうして
拳銃を降ろし、あなたが私に近づくのにも、離れようとしなのか」
s.「ベラドンナ、あなたの家はすぐ近くです。あなたとの別れは近い。
もうすぐ、私とあなたは争い、どちらかが倒れるでしょう。けれど
その前に、接吻を許して下さい。最上級の口紅を塗ったわけでも、甘い果実を
味わったわけでもない、ただの唇ですが」
b.「没薬の香油はあなたの肌より美しく香る。薔薇の花びらはあなたの
唇よりも紅い。ダフネの枝は、あなたの髪より艶めかしい。
 けれど不思議。そんなものはまるで気晴らしにならない。私はあなたを
強く抱きしめ、犬がバターにたかるように、あなたの唇を求めている。
心が炎に沸き立ち、目をとじても胸にあなたとの思い出が浮かぶ。
姿ではなく、あなたの心が……」
420名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:49:22
s.「艶めかしく瞳を閉じるベラドンナ。申し訳ないのですが、膝を曲げて
下さい。この背が足りず、つま先立ちで突っ張ってもあなたの口元に
届きません。私は餌を目の前に吊された鳥のようです」
b.「では下げる。それにしても可笑しいこと。そんな現実問題が
あるなんて、やんちゃな娘さんに」
s.「もうっ、笑わないで下さい」
b.「自分では止められませんよ、肉体に悪影響ですし」
s.「まあ。私の顔に火をつけるおつもりですか」
b.「さ、跪いた。まるで神様にお祈りを捧げるように。ベラドンナは
あなたの足下に跪き、今度は下から、髪を左手でかき上げ、あなたを
見つめている。あなたの瞳に私が見える。この目は潤み揺れていて、
欲情が炎となり瞳に宿っているかのよう。
 恥ずかしくて、私は頬を赤く染める」
s.「美しい人よ。私の心は燃え盛り、あなたに優しくできません。
どうか許して下さい。隼が空から舞い降りるように、あるいは山の頂から
谷間の底へと風が吹き降りるように、激しい勢いであなたの唇を
奪います」

b.「柔らかな感触が強く押しつけられ、まるで葡萄酒のような薫が
唇という名の赤い肌から立ち上り、私を陶酔させる。それにしても
なんという暴れ牛が私をほしがったこと。初めてのキスだというのに、
舌まで入れるなんて。
 シルク、手慣れのあなたに羞恥心はないの。すごい勢いで私を
蹂躙するあなた、私は戸惑い、圧倒される自分が何だかみじめに思える」
421名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:49:57
s.「ベラドンナよ、私の性急を見逃して下さい。私はこれがファースト
キスです。おそらく手慣れのあなたは、私の我が儘な振る舞いを
受け止めてくれているようですが。
 あなたの唇を私の唇で挟みながら、ゆっくりあなたの舌を私の口内へ
誘います。濡れた舌の先を甘噛みしますが、これは気持ちよいですか。
痛くはないですか。蕩けた表情をそのまま、私に向けて下さい。
 あなたの唇をさらに深く吸い込み、開いた喉に私の息を吹きかけながら、
唾をあなたの口元へ届けます。けれど舌の伸びた状態ではあなたは唾を
受け止めることができず、唇の隙間から零れました。なぜ残念そうな
瞳を震わせるのです。私の性急に呆れないで下さい」
b.「技巧に優れたシルク、あなたの唾は砂糖菓子よりもおいしい。なのに
いじわるして、私からこぼさせるだなんて。その心にどんな小悪魔が
潜んでいるというの。それとも私の羞恥と躊躇を子供のようだと、内心に
笑っているのかな。
 口元で唾が触れ合い、貪欲な心の音楽が流れる。その音は私の理性を
失わせる。私の心と振る舞いは、飢えた獣が餌を差し出されたかのよう。
外貌がどう見えようとあなたに喰いつき、舌という柔らかな牙であなたの
口内を余すところなく噛む」
s.「赤い花のベラドンナ。あなたはなんて激しいのでしょう。まるで龍の炎が
私の口元を駆け回るよう。私の舌はあなたに焼かれ、心は翻弄されるままです。
どうしてこんな力強い口づけを隠していたのですか。
 私の心は蕩け、足下がおぼつかない。まるで人形のように、あなたの
胸元に支えられている。私の頬がこれほど熱くなったことはあったでしょうか。
心が本当に熱を持つのなら、私の情炎は世界を焦土に沈めるほどです」
b.「愛しいシルク。どうして力強く私を押し倒すの。その小さな肉体に跨られ、
積極的な仕草で唇を絡められてしまっては、私には何もできない。
 手首を首に巻かれ、地面に散らばる髪をあなたに優しく撫でられている私は
囚人にも似ている」
422名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:50:38
s.「ベラドンナ、大地に寝そべるあなたの大きな体は地母神のよう。私はあなたに
跨り、あなたの身体に受け止められています。木から飛び立った雀が、再び木に
戻るように、私はあなたの肉体に吸い込まれていきます。心も体も……」
b.「うっとりとしたあなたの瞳がひどく大人びていて、
 私は魅了に溺れる。
 シルクという名の海に投げ出されたように、
 私はあなたに捕らわれて。
 この心を奪われていきながら、
 けれどどこにも逃げることはできない。
 喜びが太陽の光のように私を包む。
 全身から力が抜ける。少女の姿をした方よ、私の支配者。
 このまま口づけを離さないで。
 うねり荒れ、渦潮の渦巻くあなたの舌を止めないで。
 たとえ心が死のうとも、このまま私を蹂躙して欲しい」
s.「燃え上がる炎の人、
 私のすべてを焼き尽くすのですね。
 熱い霧が私を包む。私を溶け込ますように。
 心も肉も、あなたのために打ち震え、
 喜びは思考を占めていく。
 千匹の豹よりなお速く、一万の獅子よりなお強い、
 あなたの強奪が私を掠っていきました。
 口づけを退かないでください。
 激しい大火と、稲妻の吼える吐息を私に与えて。
 たとえ私のすべてを焼き殺そうとも、
 私を支えるのはあなただけなのです」
423名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:51:26

b.「瞼が開く。気を失っていたよう。空には月が昇り、私と、胸の上に
眠る少女を銀の光で照らしている。シルク、起きろ。こんなところに
眠ってはいけない。ただでさえあなたの本体は弱いのだから」
s.「ベラドンナ、私は起きました。夢の時間から覚めてしまいました。
創造主の殺め手よ、夜の月が昇っています。今日という日が終わって
しまったのですね。これからまた、争わなくてはならないのですね。
私の恋人。口づけを交わした人よ」
b.「そうかもしれない。私は寄生生物たちの敵だから。再び相見える時は
敵同士として、互いの命を奪い合うだろう」
s.「なら今ここで殺して下さい。あなたの拳銃で。どうせ死ぬのであれば、
仕合せのなかで死にたい。月の光の下、あなたの胸元で息絶えたい……」
b.「揺れた瞳を見せるな、シルク。叶わない望みを訴えないで。
私にできようはずもないことを……」
s.「知っていたのです。私は、この悲しみが訪れることを。喜びの後には、
深い悲しみが必ず来るのだということを。ベラドンナ、悲しまないで下さい。
424名無し物書き@推敲中?:05/02/20 21:59:29
こんな話を知っていますか?
 狙公というヒトがかつてこの地上いたそうです。その人は猿をたくさん
飼っていました。しかしある時、猿たちの食費が足りなくなり、猿たちに
次のようなことを相談しました。
 曰く。今は朝に四つ、夕べに四つだが、これを朝に三つ、夕べに四つの
餌に変えようと思うがいいか。さて、猿たちは狙公の言葉に抗議しました。
餌が減るのはいやだ、というのです。そこで狙公はまた、次のような提案を
しました。朝に四つ、夕べに三つならどうだろうか、と。
 狙公は猿を見ました。猿は喜んでいるようです。しかし猿の瞳にわずかな
寂しさがよぎるのを見、はっと気がつきました。彼らは自分たちが、もうすぐ
完全に餌を貰えなくなるのを知っていたのです。それゆえ猿たちは、擬似的な
繁栄で心を和ませるより、衰退の姿を望んだのでした。
 私もこの猿たちと同じです。どうせあなたに殺されるのであれば、喜びの後の
悲しみで死にたい。悲しみの後の喜びの中で死ぬよりも。残酷な生の後、幸福な
死を迎えるより、幸福な生の後に残酷な死を迎えたい。こんな風に考えて、
あなたを巻き込む私は、やはりただの寄生生物なのかも知れません」
b.「そう。ただの寄生生物。だけど、私の大切なシルク」
s.「ベラドンナ」
b.「別れる前に言い残すことはないか? 私にはある」
s.「あります。きっとあなたと同じ言葉を」
b.「そうか。では私から先に言わせて貰うとしよう――」
s.「否、私が先です――」

sb.「「いつまでもあなたを、愛している」」

(ベラドンナ、自宅へ帰りシルクと別れる)

欠:(scene12「早朝・逝怪梟」scene13「昼間・善意打破死」scene15「深夜・陣墓兆」
scene16「早朝・寒堕」scene17「昼間・塔恐」scene18(final)「深夜・光巨」)
425名無しさん@ピンキー:05/02/23 01:10:51
職人さんいらっしゃったー!(・∀・)
以前書いていた方ですよね?おかえりなさい待ってたよ!
426名無し物書き@推敲中?:05/02/25 22:45:34
転載しときます。

515 名前:名無し物書き@推敲中?[sage] 投稿日:05/02/16(水) 00:28:05
朝、学校に行こうとしたらいつも使っている道が工事中のため通行禁止に
なっていた。仕様がないので、迂回路となるガードレール下を通ることにした。
薄暗いし人通りも余りないので正直そこは通りたくないのだが仕方ない。
やはり、人は少ない件のガードレール下。
私は自然と足早に歩いていた。
「そこのあなた!そうボブカットの眼鏡かけたそこの君!」
すると、何やら妖しげな辻占いに声をかけられた。ておうか名指しされた。
「すいません、急いでますので」
無視すればいのに、私は丁寧に詫びを入れて歩き去ろうとした。
すると、その辻占いの人――怪しさ極まりない紫色のフードを目深に被って
はいるがまだ若い女性のようだ。は大声で
「貴女!300円で操失うことになるわよ!分かった!?」
などと大声を張り上げた。うわー周りの人こっち見てるよ恥ずかしい!
私は恥ずかしさの余り駆け足で学校へと向かうことになった。
余計、恥ずかしい行為だというのは分かっているが、こればかりは自分で
もどうしようもない性質なのだ。

昼休みになって、私は財布を忘れてたことに気が付いた。
その事を仲の良い友達に話したら、彼女は満面の笑みで
「いいよ。いいよ。内藤ちゃんは良い子だからねぇ。今日は
あたしがおごっちゃる!」
と気前の良いことを言ってくれた。それで、私が喜んでいると
「た・だ・し・昼食は私と二人っきりで屋上で摂ること〜♪」
と、条件を付けてきたが私は気にしないことにした。
300円でサンドイッチと飲み物を買ってもらった私は・・・・・・
誰もいない屋上で友達の突然の愛の告白と共に・・・・・・
操奪われました・・・・・・私も彼女もことが好きだったから
別にいんだけど、私の操は300円かと思うと・・・悲しくなりました。
427名無し物書き@推敲中?:05/02/26 00:44:34
>悲しくなりました。
気にすることないよ。
428名無し物書き@推敲中?:2005/04/21(木) 22:57:02
おだてられたので、書いてみました。

rev. 1/2
突然ベッドに押し倒された。
彼女は上目遣いで私を見つめてくる。
私も彼女を見つめ返す。
彼女は微笑む・・・

時折思う。
何でこの娘はこんな自分を好いてくれるのだろうと。
なんでこんな笑顔を向けてくれるのだろうと。
この微笑に、彼女の言葉に、私はとても救われている。幸福感を与えてくれる。
この前彼女に聞いてみたことがある。彼女は少し困った顔をして、
それからはにかみ微笑むだけだった。

ゆっくり顔を近づけてくる。
そっと唇を重ねてくる。
耳元でささやいてくる。「好き。」
顔を胸にうずめてくる。
私は彼女を抱きしめる。儚いものに触れるように。
私は髪を、背中をなでる。恋人同士が、するように。

429名無し物書き@推敲中?:2005/04/21(木) 22:57:40
つづき

寝息が聞こえてくる。
起こさないようにそっとベッドに寝かせる。
自分も添い寝する。制服に皺ができちゃうな。
彼女の無防備な寝顔がすぐ側にある。
彼女の頬に手を触れた。
温かくて、柔らかい。
彼女が身じろぎする。手から伝わる温かさを感じるたびに、幸せがこみ上げてくる。
伝わる温度が、感触が、この気持ちは真実なのだと教えてくれる。
彼女の頬に、手を触れたまま、
私はそっと、目を閉じる。
温かさと幸せが、逃げないように。
彼女がずっと、好いていてくれるように。
願いながら。

bgm."HAPPY DAYS?" Garnet Crow
430名無し物書き@推敲中?:2005/04/21(木) 22:58:36
nor. 2/2
頬に温かい感触がした。これはきっと彼女の手。
やさしく大事に触れてくれる、私の大好きな人の手。
目が覚めたけど、目は開けない。まだこのままで、いたいから。

彼女は私に良く触れてくる。
髪や頬や背中や手に。
何かを感じ取るように。
その度私の中に暖かいものがこみ上げる。
ちょっとだけむずがゆく、とってもあったかい幸せな感じ。

彼女と出会ったのはひと月前。
私はそのとき周囲から孤立していた。
両親やクラスメイトとすれ違い、私は彼氏も突き撥ねた。
何もかもが嫌になり、憂鬱に思いながらも学校に向かっていたそんなとき。
私は彼女とぶつかった。
彼女は平謝り。私もびっくりして頭が真っ白になっていて、たどたどしく謝った。
よく見ると彼女も同じ学校の制服。しかも同じ学年。隣の隣の隣のクラスだと後で知る。
その日は彼女と駅のホームで、校門で、たびたび会った。
教室前の廊下で会ったとき、さすがに吹いた。大笑いした。
それ以来一緒にいる時間が増えていった。
私は彼女に惹かれていった。彼女と話していると暖かかった。
何かが溶けてく感じがした。
それ以来だんだんと両親やクラスメイトとうまくいくようになり、彼とは完璧に別れたけど、良い友人になれている。
431名無し物書き@推敲中?:2005/04/21(木) 23:00:40
つづき

彼女は前に聞いてきた。何で自分を好いてくれるのかと。
答えに困った。ただ助けてくれただけじゃないから。

目を開けてみると、彼女が寝息を立てていた。
私も彼女に手を伸ばす。頬にそっと触れてみる。
あの時感じた暖かさが伝わるように。
私の想いが伝わるように。
願いながら。

bgm."Close to me…" I`ve sound vo.KOTOKO

お目汚し済みませんでした。
もうしません。
百合小説スレpart3 133でした。
432名無し物書き@推敲中?:2005/05/30(月) 23:59:24
キュン、としますた
433名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 00:17:58
投下します。タイトルは『夏の日』
434名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 00:21:08
 祖母の家の縁側が好きだった。
 ひろびろとしたそこで、スケッチブックを広げて絵を描くのが好きだった。
 私が当時住んでいた家は、典型的な公団住宅で。縁側と最も類似しているはずの我が家のベランダは、エアコンの室外機や物干し台に占領されていた。とてもじゃないけれど、人が長いこといられる場所じゃなかった。
 だから、夏休みや冬休みに祖母の家を訪れるのがとても楽しみだったのだが、この年は違っていた。
 家族三人で行くはずの帰省は、その年は一人だけで行くことになった。
 理由はありきたりで、両親が離婚について話し合うため。私は蚊帳の外。子供なのに。子供だから。
 私はそのことに薄々気付いていて、ひどくすさんだ気持ちを抱えて。……だから、あんなことをした。
435名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 00:23:21

 七月のうちに宿題をほとんど済ませていた私は、やることもやる気も無くて。ただぼうっとスケッチブックに向き合っていた。
 おじさんもおばさんも畑に出ていて、昼過ぎにならないと帰ってこない。
 祖母は大正琴の集いとかで、昨日から二泊三日の旅行に出ている。
 年上のいとこたちは皆、それぞれ部活とか夏期講習とかで出かけている。
 皆、一人でやって来た私にどこか気を遣っていて、それはありがたい反面気詰まりで。
 今こうやって一人でいられるのは、楽だった。

 蝉の鳴き声が止み、風が縁側を通り抜けて風鈴を揺らす。
 刺すような日光はここまでは届くこともなく。届いたとしても、庭先の樹に遮られオリーブグリーンに染まった光の欠片だけ。
 大好きな縁側で、穏やかじゃないのは、私の心だけ。
 画材箱から適当に引っ張りだしたソフトパステル。これまた適当に一本取って、見もせずに線を引く。落書きにもならない、ただの線。一本。二本。三本。四本。
 線が何かを形作りはじめて、それが何であるのか見極めようとしたその時。肌色の線の集合体に影が射した。見上げれば、細い腕。腕が下げているのは竹竿とバケツ。さらにその上にはよく日に焼けた顔。
436名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 00:24:57
「アイちゃん、アメザリ釣り行こー!」

 マコト。一つ年下の、いとこ。たしか今年中学校に入ったはずなのに、やたら子供っぽい、いとこ。
 子供っぽいくせして、何か家族から聞いているのか、やはり彼女もどこかいつもと違って。
 イライラする。
 イライラが、そのまま口をついて出た。

「行かない」

「じゃ、明日。明日一緒に行こ。すっごい穴場見っけたんだよ。でっかいのがわさわさたくさんでさあ」
「一人で行けば」

「アイちゃんを連れてったげたいんだよう」

 可愛らしく口を尖らせるのは、本気で拗ねてないときのマコトの癖だ。こちらの気を引こうとする声、仕草が、ささくれた神経を逆なでする。
 別にマコトのことは嫌いじゃないし、何度も一緒に遊んでる。ザリガニ釣りも嫌いじゃないし、蝉取りも、フナ釣りも。こっちでしか出来ない遊びはどれも新鮮で面白くて好きだ。
 けど、今日は、違った。
 トゲトゲした何かが私の中にずっと溜まっていて。それは、私を傷つけ、また他にも獲物を欲しがっていた。
 傷つける相手を、欲しがっていた。

「いいからほっといてよ」
437名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 00:26:18
 吐き捨てるように言ってやっても、マコトは離れようとしない。それどころか私の隣であぐらをかいて、てこでも動かない、という風にしてみせる。
 こういうところが、いつもと違う。
 私が行かないと言えば、マコトはそれにおとなしく従った。たとえば一人で遊びに行ったり、もしくは絵を描く私の隣で、マンガを読んだり宿題をしたり。特に、私が一人になりたいサインを出しているときは、近寄ろうともしなかった。
 なのに。
 このサインがわからないほどバカでも鈍いわけでもないはずなのに。
 マコトはなおも言い募る。

「アイちゃんが家ん中好きなのは知ってるけどさあ、ウチ来てからずっと外出てないじゃん。たまには外で遊ぼうよー。なんつーのほら、キブンテンカンってやつ?」
「私はいそがしいの」

「なんもしてないじゃんかー」

 うるさい。
 不満気な声を聞き流しながら、手元に目を落とす。
 スケッチブックに曳かれた、いくつもの線。肌色の、線。
 私が握っていたパステルの色は、318番。ここのメーカーのパステルには色ごとの名前はついていなくて数字だけなんだけど、あえて絵の具の分類に当てはめて名付けるなら、パステルエナメル。いわゆる、象牙色。
 どうしてこんなことを思いついたのかわからない。
 でもたぶん、それは。
 マコトの着ていたタンクトップ。
 肩口からのぞく、パステルエナメルのせい。
438名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 00:29:04
「じゃあ手伝って」
「え、なになに」
「モデルになって。絵の」

 おおモデル、と妙に感心した口調のマコト。バカ。すごいバカ。今から何をされるのかも知らないで。

「ね、ね、ポーズとかとるの? グラビアみたいな? あたし胸あんま無いよー?」

 ふざけて薄い胸を強調する格好をしてみせて、笑う。そんな軽口、すぐに言えなくなる。

「脱いで」
「へ?」
「脱いで。ヌード描くから」

 ただでさえ丸い目をますます丸くさせてマコトは絶句する。そりゃそうだろう。
 いくらマコトでも、これが嫌がらせだってことくらいわかるはず。
 脱げっこない。そう、私は高をくくっていた。
 なのに。

「わかった。脱ぐ」

 マコトは立ち上がり、タンクトップの裾に指をかける。

「それでアイちゃんが……なら、脱ぐよ」

 マコトが何を言おうとしたのか、声が小さくてきちんと聞き取れなかった。
 聞き取れたのは私の名前と、脱ぐという宣言。
 白地にオレンジのロゴの入った服がめくられてゆく。ブラどころか、スポーツブラだってまだの上半身にはタンクトップ以外身に付けていないから、息を飲む私の目の前で、あっと言う間にパステルエナメルが露わになった。
 まさか、本当に、脱ぐなんて。
439名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 00:30:49
 命令したのは私なのに、その結果に唖然とした。こうやってマコトの裸を見る事なんて、別にお風呂では珍しくもないのに。なんでか目が離せない。
 裸の上半身を晒して立つマコト。恥ずかしいのだろうけど、両手は下ろしたままどこも隠そうとしない。たぶんそれはマコトの覚悟。

「あのっアイちゃん」

 か細い声に私は放心を解き、マコトを構成する色たちを一つ一つ目で追ってゆく。
 短い髪は烏の濡れ羽。日に焼けた腕や肩、顔は琥珀色。日に晒されない胸や腹はパステルエナメル。胸の先や膝の治りたての傷跡は桜色。
 ざっと手持ちの画材を確認した。だいじょうぶ足りる。もっと他の色も使いたいくらいだ。
 視線をマコトに戻す。
 日に焼けた頬でもわかるくらい赤面してるマコトは、動こうとしなくなっていた。
 だから私は続きを命令する。

「下も」

 声にマコトの肩が震える。何をすればいいのかわかってるマコトは、目を合わせないまま、ハーフパンツを一気に引き下ろした。
 ハーフパンツと一緒に下着も脱いだのか、もうマコトの肌を隠すものは何一つとして存在しない。
 まだふくらみかけてもいない、肉付きの薄い、子供の身体。まだ八月に入ったばかりなのに、くっきりと水着の跡が焼き付いて、肩口と足のつけねの境目がよくわかる。足と足の間。マコトのそこはつるつるで、やわらかそうで、触ったら壊れてしまいそう。
 パステルを握る手に不自然な力がこもる。蝉の声は聞こえない。風鈴の音も、まったく。
440名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 00:32:31
 軽口で沈黙を破る。

「マコトのつるつる」

 私の言葉を受けて、これ以上赤くならないと思っていた顔がさらに赤くなって、

「あ、アイちゃんだって、正月一緒にオフロ入った時生えてなかったじゃんかっ」
「お正月からどれだけたったと思ってるの。ちゃんと生えました」

 嘘だけど。
 緊張でがちがちに強ばったマコトに声をかける。

「楽な姿勢でいいから。緊張しないで」

 裸になれ、なんて言ったくせに。我ながらずいぶん勝手な言いぐさ。喉の奥で笑いを、胸の中で興奮をそれぞれ圧し殺しながら、さっきの線にどんどん描き足してゆく。
 目的を持たずに描かれたはずの線たちは、あつらえたようにマコトの身体にぴったり合った。
 力を入れてひいた鋭角的な線は固そうな肘に。
 ただまっすぐな線は向こう臑に。
 緩やかに微妙なカーブを描く曲線は小さな胸に。
 一枚。また一枚と描き上がり。
 生まれたままの姿のマコトでスケッチブックの空白が埋められて。
 最後のページをめくったところで、私はようやっと筆を止めた。
441名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 00:34:44
「ぁ……」

 心臓の音が、うるさい。体育でマラソンした後みたいに息が荒い。

「は……はは」

 思えば。
 ずいぶん久しぶりに、筆をとった。
 もうずっと絵を描いてなかった。
 毎日バカみたいに絵を描いてたのに。
 夏休みに入ってから、暇は売るほどあるのに。
 両親の不仲に気づいた頃からずっと。
 描いてなかった。
 まだ、心臓がおさまらない。
 もっと、って言ってる。
 もっと描きたい。まだ描きたい。たくさん描きたい。描きたい。描きたい、描きたい、描きたい!

「ぁは、はは、」
「あ、アイちゃんどうしたの?」

 硬直の解けたマコトが、恥ずかしさも忘れておろおろと私を窺う。笑いが止まらない。なんて――なんて絵描きバカなんだろう私は!
 わめきたくなる熱さとは逆に、こんなにも、心は軽い。
 全部描いてしまって。私の中のもやもやを全部出してしまえば。
 きっともっと軽くなる。
 でもスケッチブックに余白はもう無い。いや、ある。まっさらな白じゃないけど。余白が。そこに。

「ね、マコト」

 しみ一つない、パステルエナメル。

「そこに、今度は横になって」
442名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 00:36:47
 私の今度の命令に、またマコトは応えてくれた。

「……うん」

 従順な応えに嬉しくなりながら、私は画材の詰まった箱をひっかき回して水性絵の具を取り出す。マコトに似合う色を選んでいると、

「それでアイちゃんが笑ってくれるんなら、なんだってするよ」

 さっきは聞こえなかった言葉に似た言葉が、きちんと耳に届いた。え? と顔を上げると、困ったような笑っているような、泣いているような顔のマコト。

「ウチに遊びに来てからさ、ずうっとムッとした顔のままだったんだよアイちゃん」

 ぺたぺたと畳の上を進んだ裸足が投げ出される。無防備に横たわる身体。木漏れ日がすべすべしたお腹に複雑な模様を映す。

「遊びに誘っても、おっきいスイカあげても、何してもダメだからさ。どうすればいいのかわかんなくなって。あたしバカだし。だから、アイちゃんがしてほしいことしたげたらいいのかなって」

 寝そべった姿勢で私を見据える瞳。ヘイゼルが強い光を伴って。さっきまでの絵に、瞳を描き入れてないことに気づいた。

「だから、いいよ。それでアイちゃんが笑ってくれるんなら、なんだってするよ」

 嬉しい。でいいんだと思う。今私の心を占める感情は。

「マコト……私、私……」

 私は。
 この高ぶる感情を思い切り。
 マコトの身体にぶつけた。
443名無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 00:38:02

 強者共が夢の跡。所行無常の鐘が鳴る。……授業でやったのとなんか違う気がする。
 まあ、ともかく。下に何にも敷かないで水性絵の具なんて使ったら、こうなるに決まってる。
 飛び散る色。色。色。
 マゼンタ、ミントグリーン、牡丹、プルッシャンブルー、山吹色。
 畳の若草色を隠すいきおいで茶の間にぶちまけられた色彩の暴力。
 全身ボディペインティングされたマコトと二人、顔を合わせて共犯者の笑みを交わし合う。
 誰かが帰ってくる前に、きれいにしなきゃ。
 せめておじさんおばさんが帰ってくる前に。
 雑巾で隅から隅まで拭いて茶の間をきれいにしたら、一緒にお風呂に入ろう。嘘がばれるけど、まあいいや。
 お風呂から上がったら……ザリガニ釣りにでも、行こうか。

 【FIN】

444無し物書き@推敲中?:2005/07/05(火) 00:41:38
季節的にちと早いですが、保全代わりにどぞ。
感想、批評等々お待ちしとります。…ヒトいねくてさびしっすけど。
それではお目汚し失礼しやした〜(シモテハケ)

445名無し物書き@推敲中?:2005/07/06(水) 20:37:45
>433-444
読んだ。
アイが自分より1つ年下のマコトに、ちゃん付けで呼ばれてるのは何かいいかも。
入浴シーンがなかったのは残念。

この後、夏休みが終わるまで毎日2人はヌード描き・ボディペインティング・入浴を
繰り返していた、ということでいいのかな?(w
446名無し物書き@推敲中?:2005/07/07(木) 00:29:39
読んだよー
あやういけどさらっとしてて、いいね
447名無し物書き@推敲中?:2005/07/28(木) 00:15:15
ども、444です。感想ありがとうございます。
>445氏
申し訳。>入浴シーンがなかったのは残念。
でも書きたかったのはあくまで視姦(違)シーンなので、やると蛇足になるかのうと。
だいち自分、エロ書いてもエロくないんだ…orz
>446氏
せんきゅうです。あやうい、なんてステキな言葉で文評価されたの初めてっす。

また何か書いたら投下するので、その時はよろしくどうぞ。
448名無し物書き@推敲中?:2005/08/07(日) 14:01:32
氏ね

までヨンだ。
449名無し物書き@推敲中?:2005/09/28(水) 01:10:11
保全代わりに投下します。
タイトルは「秋の夜長に」
450名無し物書き@推敲中?:2005/09/28(水) 01:13:40
 映画見たい、と言ったのはいずみで。
 ケータイの電光表示を確かめて私はため息をついた。

「いずみ、もう11時」
「えー、レイトショーとかないの? 昭子そういうのくわしーでしょ」
「だから、ない」

 そう。無いことを私は知っている。近々大作の発表を控えたシネマ界は、そのためだけのための準備に余念が無い。

「だから今日はやってない」
「え〜。みーたーいー」
「頭悪そうな喋り方やめて」
「つまーんなーい」
 そう、つまらない。

 そんな夜、無聊を慰めてくれるのは。
451名無し物書き@推敲中:2005/09/28(水) 01:14:45
「ビデオでもデーブイデーでもいーからさー。ないのー?」

 やれやれ。
 ついさっき火をつけたばかりの煙草を灰皿に押しつけて、私は立ち上がる。

「じゃ、行きましょ」
「え、どこに?」
「つたや」

 さすがにそろそろやばいけど、まだギリギリ開いている時間だ。近所のレンタルショップの名を上げた私に、いずみは。

「じゃ、おねがい。わたしフランス映画がいーな」
「……何、行かないの」

 我ながら頬がひきつるのを自覚しつつ問うと、

「ん、昭子オススメのやつ待ってる」
 とりあえず一発殴ってやって、私はアパートを出た。
452名無し物書き@推敲中:2005/09/28(水) 01:17:46
 暗い。
 ぽつぽつと点る街頭を頼りに原付を飛ばす。
 さすがに若くてきれいな(誇大広告)女子大生が出歩くには、不向きな時間帯であるが。この速度では不埒な真似をする前
に行き過ぎてしまう。
 それでも店の明かりが見えたときは安堵した。
 適当にいずみが好きそうなアクション物と、自分の趣味の恋愛物をレジへ持ってゆく。顔なじみの店員が苦笑しながらレジ
を打ってくれた。いつものことだということを彼も知っているのだ。

「いずみさんですか?」
「まあね」

 交わす言葉はこれだけ。軽く手を振って挨拶し、店を出る。
 外では、まだ時期には早い虫の声が天然の風鈴のように鳴り響く。
 元通りの帰り道を辿って部屋へ帰ると、殊勝にもいずみが飲み物やらつまみやらを用意して待っていた。青いパッケージを
投げてやると、ありがとうも言わずにいそいそとDVDデッキ代わりの家庭用ゲーム機を起動させ、さっそくセットしだす。その
他の雑酒をプシリと開けて、床に座ったままソファーにもたれた。

「何、それから観るの?」
453名無し物書き@推敲中:2005/09/28(水) 01:21:53
 テレビに映し出されたのはキッチュでポップな、と何かの雑誌で評されていた恋愛映画。んー、と返事なんだかなんなんだかわからない声をあげて、いずみはベストポジションに納まった。
 テレビの真ん前、ソファー独り占め。あぐらをかくと、ブルーのペディキュアが良く目立つ。もっと色気のある椅子だといいのに。たとえばエマニエル椅子みたいな。あれに横座りして。でもそれじゃあペディキュアが見れない。
 流れる沈黙。いや、異国の言葉で囁かれる愛の言葉と、いずみがポテチを食べる音が、六畳間に響く。

 しばらくして。
 私は字幕版の選択が失敗だったのを思い知る。細かい字を目で追う、大変神経を使う行為に目頭が疲れを訴えてくるので眼鏡を外した。ぼやけた視界の端で、いずみがこちらを見ているのに気付く。

「何?」

 問うても何も返らない。その代わり生暖かい身体がずるりとのしかかってきた。

「だから、何」

 これが猫だったら、喉でも鳴らしているんだろうか。床に押し倒されながら思う。顔は逆光で見えない。

「昭子、さ。なんでいっつも字幕借りてくるの? 字幕読むのつらいくせに」

 俳優自身の声が聞きたい。そう答えたのはこれで何度目だろう。

「……私もあんたに聞きたいことがある。なんでいつも途中で飽きるくせに、ビデオなんて観たがるの」

 ビデオ観るよりビデオ観てる真剣な顔の昭子見る方が好き。と、答えられたのはこれで何度目だろう。
454名無し物書き@推敲中:2005/09/28(水) 01:25:14
 キスされながら、思う。
 いずみの映画見たい、は。
 セックスしたい、とほぼ同義だ。
 わかっていて私はビデオを借りてくる。
 過去に観たことのある、字幕版のものばかり。

「タバコの味きらい」
「うるさい」

 フランス語が聞こえる。こういう時習ってなくて良かったとしみじみ思う。台詞の意味なんてどうでもいい。歌にしか聞こえない。歌にしか聞こえない。

 【FIN】
455名無し物書き@推敲中:2005/09/28(水) 01:29:01
映画好きなのに字幕版観れないって不憫だと思う。

…さておき。1レス改行間違え申し訳ない。感想、批評お待ち申し上げる。
それではシモテハケ〜。

456名無し物書き@推敲中?:2005/10/10(月) 21:18:37
待ってくれ、話を聞いてくれ。
感想マンドクセってワケでは断じてなく、最後にこのスレ見たのが
一ヶ月以上前だったってだけなんだ。
こんな感じで、カップルの日常をまったり切り取っただけ、
そんな作品が、百合分野でももっと増えてくれないかなぁ。
457名無し物書き@推敲中?:2005/12/14(水) 05:30:37
保守
458名無し物書き@推敲中?:2006/01/24(火) 15:27:04
保守
459名無し物書き@推敲中?:2006/02/06(月) 10:41:33
あげ
460名無し物書き@推敲中?:2006/02/26(日) 21:13:13
すんません。どなたか「黒い百合」スレ保存しておられる方
アプしていただけないでしょうか?
29チャンネルでもみつからなかったもので
461名無し物書き@推敲中?:2006/03/10(金) 21:35:04
それにしても、無名草子さんたちとは、さぞやすごい作家先生の匿名書き込みなんでしょうね。
作家なんて才能が全てだから、津井ついみたいに、いくら努力したって駄目なものは駄目ですよ。
私なんか、早々に見切りをつけて趣味の世界で細々ですから。
          小説現代ショートショート・コンテスト優秀賞受賞 阿部敦良
462名無し物書き@推敲中?
>>460
ははーんさてはテメー百合スレ住人じゃないな?
百合スレ住人はYchを重宝する。
ttp://lilych.fairy.ne.jp/lilylog/test/read.php/bun/1071499128/