1 :
名無し物書き@推敲中?:
即興の魅力!
創造力を駆使して、書いて書いて書きまくれ!
お約束
1:前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。
2:小説・評論・雑文・通告・??系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
3:文章は5行以上15行以下を目安に。
4:最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。
5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
6:感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。
前スレ:この三語で書け! 即興文ものスレ 第五夜
http://cheese.2ch.net/test/read.cgi/bun/1013361259/l50
2 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/10 11:30
前スレから「精神犯罪」「帝国」「約束」
全くどうかしている。なにが国民の為だ。自由国家が聞いて呆れる。
精神犯罪を取り締まる法案だかなんだか知らないが、あんなもの帝国の圧力に屈しただけ
じゃないか。
読んでいた新聞を放ると、男は黒いドアの前に立ち「開けてくれ」と伝えた。
音もなく灰色のドアが横にスライドする。
ん……灰色だったか? 男はそう思ったが、その思考もすぐに消された。
国民管理センターの所長は、その様子をモニターで見ながら、被験者がお約束のように新
聞を投げ、同じようにドアの前で首をひねるのを見て、満足げに頷いた。
実際、国民総同意識法は上手く機能している。
所長は同じように新聞を放り投げたことを知らない――。
次は「脇道」「ミモザ」「砂漠」でお願いします。
南フランスの明るい陽射しの中、ミモザの花束を抱えた女たちがカーニバルを率いて
広場に入ってきた。
脇道から町の小さな楽隊がぱらぱらと合流し、いちばん後ろでは白衣の「冬の王様」が
ぐらつきなが紙ふぶきを浴びてけだるそうにしている。
ひとつ山脈を隔てた南スペインからもこのカーニバルにやってくる人たちがいるほどの
割とにぎやかな祭り。とはいえ、近年の砂漠化の問題などはお互いの国にとっても深刻だ。
緑地化運動のためにミモザなどの低木を植えようという運動も各地で起きている。
女たちが手にしているミモザの花束もそんな願いを込めたものだ。
日も落ちてカーニバルもフィナーレを迎えると、冬の大様は花火とともに海辺で焼かれ、
暗くて寒い悪魔の季節が幕を閉じる。
山向こうのスペインの赤茶けた土地にもアーモンドの花が咲き、そしてミモザが黄色く地面
から湧いて、オレンジとともに春の絨毯を敷き詰める
次のお題は、
「地図」「結婚」「映画」
にしてみました♪
「地図」「結婚」「映画」
先月は彼女と行くはずだった映画のチケットを紛失した。
先々週は友達の結婚式の招待状を間違って捨てた。
そして今日は、面接先の会社の地図を忘れて来てしまった。
しかも履歴書に誤字を3つも発見してしまった。
「長所…几帳面な性格です」
金融向けに作った履歴書の文句が、明らかに浮いている。
次は「ベッド」「灰」「携帯」でどうぞ。
真っ白な銀世界。街は白い粉に包まれていた。
その中を僕は、レインコートを着て、傘をさし、マスクをして歩いていた。
この粉は、雪ではない。果てしなく冷たい、死の灰なのだ。
辺りの人々はもうほとんど走って逃げ去ってしまった。けど僕は、もうこの街
の人達は誰も助からないことが分かっていた。いくら早く逃げたって、これだ
けの量の灰を浴びてしまっているのだ。
しばらく歩くと、マスクもせず路傍に座って絵を書いている男が目に入った。
「逃げないのか?」僕は尋ねた。
「こいつを、仕上げておきたいんだ」彼はそう言って、にっこりと笑った。
僕はそいつの脇に腰を下ろした。
その途端、目が覚めた。僕はベッドの上にむっくりと起き上がると、脇の机
に置いてあった携帯に手を伸ばし、メールを打った。
「前から好きだった。付き合って欲しい」
僕は迷いなく送信ボタンを押した。ずっと煮え切らなかった僕だが、
この僕に死の灰が降り積もる前に、やっておきたいと思ったのだ。
続きましては、「公園」「テニスボール」「短歌」行って下さいまし。
6 :
「公園」「テニスボール」「短歌」:02/04/11 01:29
私は公園のベンチに腰掛けたまま、ため息を付いた。
前の広場では母親と娘らしき5、6歳ぐらいの女の子がテニスをしていた。
元はと言えば、前の歌会で私の短歌が一等を取ったことだった。
「次の歌会、楽しみにしていますよ」
歌の先生のその一言が、私に重くのしかかっていた。
「公園の……だめだ、桜咲く、まだか。うーん」
思いつかない。こんな調子で1週間が過ぎた。次の歌会は明日だった。
公園で練ろうとしているのも、前の歌を公園で作ったからだった。
公園の 梅の木芽吹く 寒空に 子らの声あり 春は真近か
駄歌だ。
今にして思うと、吉田さんや前崎さんの歌の出来がよくなかったからだろう。
テニスをしていた母親が私のいるベンチの方に近付いてきていた。
私の足元にテニスボールがあった。私はボールを彼女に手渡した。
「すいません」
「お子さんですか?」
「ええ。私、屈託なく遊べるのって今のうちだけかなって思うんです。
夏が来て、すぐ秋が来て冬が来て、そしたらほらもう、小学校でしょ?」
「そうですねえ。
女の子は、知らない間に大きくなって、あっと言う間に結婚式。
そんな感じですよ。この年になると、淋しい限りです」
私は歌を創るのに戻った。ため息ばかりだ。
まあどちらにしても、歌を創らねばならない。恥かしくない歌を。
うわ、すいません、
次のお題は
「猿」「ペットボトル」「骨」でお願いします。
8 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/11 03:14
いつかの秋。療養のため、私はある寂れた村に滞在していた。
あれは釣りの帰りの事だった。私は宿の娘と村を歩いていた。
宿への帰り道。偶然出会ったのだ。
挨拶を交わした後。私たちは、何を話す訳でもなく無言で歩いていた。
沈黙の長さが少々苦痛になってきた私は、彼女に質問をしてみた。
「あれはいったいなんなのですか?」
この村へ来てからというもの、民家の軒先に吊るされた骨の存在が気になっていた。
「あれは猿除けなのです」
「猿除け?」
「はい。この時期は、山から下りてきた猿が悪さをするのです」
なるほど。都会で猫除けのペットボトルを置くようなものか。
「お客さんは病を患っていらっしゃるようですから、良い猿除けにはなれないでしょうね」
さも残念そうな表情で、少女は言った。
「私のようなものは猿にも嫌がられるでしょうから、案外お役に立てるかもしれませんよ?」
少女はクスリと笑った。つられて私も笑った。
私は笑いながら、この娘は笑ったほうが美しいのだなと思った。
次は「宮殿」「墓碑銘」「インテリ」でお願いします。
9 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/11 04:56
ダ・ヴィンチの「受胎告知」を象ったステンドグラスは、朝の光が抜けるのを
許していた。祭壇の横にあるパイプオルガンで、賛美歌の320番を演奏し終え
た私は、その光が眼鏡に当たって反射しているのを見ていた。
反射された光は、少女の顔を照らしていた。彼女の顔は、何度か見ている。先
月のミサでは見なかったから、最近通い始めたのだろう。宮殿住まいの令嬢だけ
が纏うことを許されたインテリジェンスを、読むことができる。
「アーメン」
礼拝の終わりを告げるエイル牧師様の声に気付き、自分の聖職者としての未熟
さを不甲斐なく思った。
次の日の礼拝も、少女はやってきた。私は、少女の顔を見れなくするために、
老眼鏡をかけることにした。まだ若い目を持つ私には、オルガンの3段手鍵盤と
足鍵盤は虫眼鏡よろしく、はっきりと見える。当然、遠いところはノイズがか
かったように見えない。少女の姿は、もう、見えない。
少女の死を知ったのは、私の目に老眼鏡が似合う年になってからだった。
今、私は彼女の墓と思われる墓石の前にいる。墓碑銘は、石が欠けて、
「クレ…・ナ……」としか分からない。少女を想い、私は祈った。
16行じゃん。鬱。
次は、じゃあね、「レベル」「襞」と「唐草模様」で。
10 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/11 08:17
あげ
11 :
かどけん ◆ken9NETs :02/04/11 16:32
ある建物の前に来て立ち止まった。
もう汗びっしょりで、夕方になっていたので、
時々、砂漠からの熱風が吹くものの、かなり寒い。
目の前にドアがあってやや、赤い8といった記号。その横に小さく、
LEVEL4・・レベル4。
どうやらここは軍事施設のようだ。
長いこと後ろの兵士の二人にM16ライフルで突っつかれながら
歩いてきたので、
アロハの襞に汗が溜まって、気に入ってた日本の唐草模様が水分で滲んでしまっていた。
あの古着屋、一年で店をたたんだが、やっぱり偽物か。と腹を立てた。
苛立ちを感じるのも無理はない。
まわりは枯れたような草木と岩盤しか見えない砂漠で、ひどく喉が渇いていた。
「いいかげん休ませてくれ、あと、水をくれ」
それを受けて、男が兵士に命じて水筒を渡してくれたので、意外だった。
「いったい何の用で私を連れてきたのだね?しかも日課の海沿いの散歩
で、偶然を装って、「ちょっとメシでもどうか」って周到な誘いで。」
そう言って水筒から一気にがぶ飲みする。
他板の住人だけど、小説、4946(よく読む)し、面白いスレだったので、
ちょっと物まねカキコさせていただきました。
次に3つかぁ・・
「兎」「氷」「雪駄」で。
12 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/11 17:18
私はある大きな公園に立っている。
既に氷のようになってしまった雪の表面を削るように、一掴み、手に取った。
にい、にいと舌足らずな声で私を呼びながら、妹は両手一杯に持った雪の塊を見せに来る。
しかし途中で転び、私は雪に捕られた雪駄も気にせず慌てて妹に駆け寄る。
妹は顔や半纏を雪だらけにしながら呆けた表情で顔を上げる。
私は笑いながら、妹が落とした雪の塊をもう一度拾う。
妹の雪は他の雪と混じってしまい、本当はどれが妹の雪なのかは分からない。
私は集めた雪と、雪の下から拾った土と枯れた芝生で不細工な雪兎を拵えた。
妹は私の兎を見ながら、自分も兎を作る。
出来上がったものは目と耳の位置がずれた、私のものよりも不細工な雪兎だった。
だが、それは私にとって、ナンテンの赤い目をつけたお手本の雪兎よりもよっぽど可愛らしいものに思えたのだった。
その記憶は、最期の瞬間よりも鮮明な妹との思い出だ。
私は雪が手の中で融け出す前に、あの頃と同じように雪兎を拵えた。
墓までは保たないだろう。だから私は、その不細工な兎を、両手で空に差し出す。
愛する、愛した妹に、この兎を捧げる。
次は「コンプレックス」「コーヒ」「敗北」で
13 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/12 00:53
「コンプレックス」「コーヒー」「敗北」
(「コーヒ」ってなってるけど、「コーヒー」でいいんかな? 「コーヒ」って物があったらスマソ)
喫茶店に入り、コーヒーを頼む。ウェーターは不味いコーヒーを持ってくる。
時計を見る。きっかり十時。勝負の決着がつくまであと三十分。俺はタバコに火をつけた。
携帯をいじりながら俺は思った。どうせ俺の負けだと。あいつに俺が勝てるわけがない。
俺は敗北することをあらかじめ知ったうえで勝負をふっかけたのだ。
あいつの存在そのものが俺のコンプレックスだ。出来の良い双児の弟。
昔からあいつは俺より何でもできていた。
あいつに勝てるものと言えば喧嘩慣れした拳ぐらいか?
そんなもの何の役にもたたない。
プルルル、プルルル、プルルル……
携帯がなる、真衣子が結果を知らせてくれるのだろう。
そして明日にでも俺は、この街から消えている。
次は「深夜番組」「劇団」「障子」で。
14 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/12 01:21
真っ暗な部屋。何気なく付けたテレビのスイッチ。
水着姿の若い女達が笑っている。
「今日も元気そうだな」
数年前まで所属していた劇団の女優。俺の憧れだった。
今は深夜番組で、猥褻な会話に媚びた笑みを浮かべている。
障子の向こうの喘ぎ声で、俺が劇団を辞めたことを彼女は知らない。
「下らねぇ」
俺はテレビのスイッチをオフにした。
次は、「未練」「天才」「京都」でお願いします。
15 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/12 02:48
尾張一宮パーキングで軽い休憩をとると、私は名神高速に乗り直した。
一宮、岐阜羽島、大垣インターを抜け、養老サービスエリアを素通りする。
想いを踏みつぶす力をアクセルに伝え、私のクラウンが前に動く。100キロ
を超える速度を出すとうるさく鳴り始める警告音を無視して、踏みつづけた。
120、130、140キロ。周りの車を追い越す優越感だけが、私の気分を
柔らげてくれた。タイヤの回転数が増えるごとに、視界は狭くなっていってい
る。前を走るソアラしか、もう見えない。
あの車は私だ。天才と言われた私。これ以上伸びないと言われた私。
クラウンの中に響くエンジンのボリュームが上がり、速度はさらに速くなる。
ソアラのスピードは変わらない。抜いてやる。
気がつくと、眼前には、京都の嵐山が見えた。なぜか涙が流れた。
ふ〜。一本書くのも大変だぁ。
次は、「目」「鼻」「口」で。
「未練」が入ってなーい!
最後に入れようと思ったのに忘れてた。
みなさんごめんなさい。
「目」「鼻」「口」「未練」「天才」「京都」六語でやってみりゅ。
京都に天才あり。
その情報を得たでぶ達一行は一路京都へ向かった。
京都に着くと調査隊隊長、でぶが隊員たちに運動会の始まりの校長のスピーチの様に
演説をぶち始めた。隊員たちのは露骨に嫌悪感丸出しの引き攣った顔で聞く。
「天才を探すのは容易ではない!手段は選ぶな!女子供であろうと容赦するな!」
京都駅前に右翼の演説の如き騒音をが響きわたる。
「とりあえず寺でも見に行く?」「なげーんだよ、あいつの話」「ねみー」
「腹減ったな」「大体、たかが天才如きにこんなに人数集めてなにすんだよ」
「汚ねーなあ、鼻糞喰うなよ」「隊長ー、山田が口から緑色の汁出して倒れましたー」
「ぶぶづけ喰いてー」「隊長ー、村田がバナナをおやつに持ってきてまーす」
でぶの話はまだ続いている。収拾がつかなくなってきた。隊員はまとまりを欠き、
それぞれがでぶに反抗的な目を向け始めた。
「貴様らー!いい加減にしろと言っているのが聞こえんの、か、なに」
その時、副隊長の井上がでぶから拡声器を奪い取り静かに言った。
「作戦は失敗に終わりましたね、豚野郎」でぶは目を見開き口元を歪め井上を見る。
「もうあんたはお終いだ、未練もありますまいね」井上がそう言うと数名の隊員達が
一斉に銃を抜き、でぶに向けて構える。
「これが終わったらこいつの金で芸者遊びでもしよ」井上の言葉を遮り銃声が響いた。
唯一の外国人隊員サムが撃ったのだ。
「ゲイシャハラキリフジヤマ〜」甲高いサムの声が駅前の広場に響き渡った。
お次は「猫背」「接吻」「ヲタク」
18 :
「猫背」「接吻」「ヲタク」 :02/04/12 08:53
地ベタニ接吻ヲ求メルゴトク
ツネニ猫背ノ姿ニテウツムキ、
ヒロイ集メタ小銭ヲ、米ニカヘ、
粗末ナ釜ニテ、僅カナ飯ヲタク。
コウシテ今日ヲ長ラエル。
次のお題は「めへ」「がねべい」「もて」でお願いします
19 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/12 08:56
ちなみにがねべいとは「鐘瞑」といって、お寺の鐘の音を聞いて極楽浄土を瞑想するみたいなことです
20 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/12 14:10
「めへ」「がねべい」「もて」
黒曜石の碑に刻まれた文は、中学生の私達にはさっぱり意味が解らないものだった。
「とつぐひの むすめへおくる たからもの えやのがねべい わごもてまかづ」
「『嫁ぐ日の 娘へ送る 宝物』上の句はこう読んでいいのかな?」
「うん、たぶんそうだと思う。わかんないのは後ろの半分だよね」
「えやのが寝べい? えやの、がねべい?」
「穢屋のがねべい、だと思います。ちなみに『がねべい』とは『鐘瞑』といって、
お寺の鐘の音を聞いて極楽浄土を瞑想するみたいなことです」
「ほんとかよ? おまえ、みょーなこと知ってるよな。ふだんどういう生活してんの?」
宏司の問いに、直樹は恥ずかしそうに下を向いてしまった。
止める間もなく、今日子がすかさず反撃に出た。
「宏司は知らないことが多すぎるよね。ふだんどういう生活をしてんの?」
「なんだブス? おまえよりは知ってるけどな!」
「あっそーう。なんたって頼朝は平家ですもんねー。あっはっはーだ」
「けっ、ブスで粘着かよ。救いようがないね」
睨みあうふたりは、まるで縄張りを死守しようと対峙する二匹の猫だ。
宏司にしてみれば、ふと疑問に感じたことを口にしただけだったのが、
今日子には皮肉に聞こえたのだろう。もう謎ときどころではない。
「……今日子さんって宏司が好きなのかなぁ?」
止めに入ろうとした瞬間、直樹が小声でつぶやいた。
(今日子が好きなのはあんただよ! いいかげん気がつかないかなぁ?)
私は呆れて心の中でつっこんだ。この学者バカ君は鈍感すぎる。
「××魔王」「○○神」「普通の人」で。××と○○には好きな言葉をどうぞ。
「××魔王」「○○神」「普通の人」
春休み子供アニメ大会の、ハクション大魔王という懐かしいアニメを
ぼんやりと観ている時だった。誰もいないはずのキッチンから、
「ふぅ〜」と溜め息のような声がした。
疑問に思って見に行くと、何故か掌ほどの大きさの奇妙な老人が、
流し台で孝雄の食い残しのカップ麺をすすっていた。
「…あんた、だれ?」
「わしか?わしは貧乏神じゃ」
「……あっそう」
普通の人なら、もっと驚いたり怖がったり色々な反応をする
ところだろう。だが孝雄はその小さい老人に背を向けると、
またテレビの前に戻って膝を抱えた。
親は事業に失敗し、2人揃って心中した。
孝雄は会社をリストラされ、再就職もままならない。
夜には奴らがやってきて、ドアを激しく叩いては大声で怒鳴るし、
昼間は大家の中年女が、やっぱりドアを叩いてがなりたててくる。
…貧乏神のせいだったのか。
錠剤の入った瓶を陽に翳しながら、孝雄は何となくうっすらと笑った。
意識はやがて泥に呑み込まれるように、ゆっくりと沈んでいった。
次は「持て余す」「足の裏」「ゴミ箱」でお願いします。
22 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/12 19:23
目が覚める。
けれど、俺にとっては意識が覚醒したというだけで何の意味もない。
何故ならベッドから降りる気すら起きないから。
どうせ降りた瞬間に足の裏に何か付く。それは自分の鼻水を包んだ
ティッシュペーパーだったり、遠い昔に食べたカップラーメンの汁だったり、
時によってばらばらだが足が汚れることだけは間違いない。
だったらこのままベッドに横たわっていた方がマシというものだ。
このゴミだらけの部屋。とっくの昔にゴミ箱など埋もれている。
毎日毎日目が覚めては部屋の惨状にうんざりし、自分の空腹に気がつく。
そしてそれを持て余したあげくに、またまどろみの世界に入るだけの生活。
もう自分を蔑む感情すら持ち合わせていない。
今はただ、この無限ループを誰かが壊してくれないかと願うばかりだ。
次は「カーテン」「未来」「挨拶」でよろしくです。
23 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/12 19:31
また会社をサボってしまった。
別に仕事をしたくない訳ではなく、
かといって休んでまでやりたい事が有る訳でもない。
結局時間を持て余すことになるのはわかっているのだが、
ただ、何となく外に出る気がしないのだ。
遅めの朝食をとろうとキッチンへ向かうと、
足の裏に小さな痛みを感じた。
何か刺さったらしい。
見てみると、それは一枚の羽根だった。
布団からはみ出してここまで飛ばされたようだ。
刺さったときの衝撃で無残に折れ曲がっていたが、
それでも真っ白で、可愛らしかった。
何故か涙が出た。
今日はスリッパと履歴書を買いに行こう。
私はゴミ箱から昨夜書いた遺書をひっぱり出して、
さらに細かく破って捨てた。
ごめんなさいかぶりました…(泣
お題は前の方の「カーテン」「未来」「挨拶」でよろしくです。スマソ
25 :
カーテン・未来・挨拶 :02/04/12 20:02
カーテンの陰に隠れて僕を監視している奴がいた。
誰だろうと訝ってみたがよくよく見てみると、そいつは僕だった。――いや、僕に似た奴だと云ったほうがいいか。
急に親近感を憶え、僕はそいつに軽く会釈をし、「どうも」とうわずった声で挨拶してみた。
「君は誰なの?」と、僕は問いかけた。
するとそいつは「まあ、しいて云えば『未来』かな・・・」なんてキザな言い回しをした。
ふざけた奴だとおもったが、この道化師をからかうのも悪かないなんて考えた。
「そこで何やっているんだい?」
「ふ、ふ。ここに来ればよく分かるよ。凄く面白いよ・・・」
「そっちに行ってもいい?」
「うーん…、本当はいやなんだけれど、まあ、どうしてもって云うのなら来てもいいかな」
『未来』はしぶしぶ僕の頼みを承諾してくれた。
僕がカーテンの陰に隠れると、もう『未来』の姿はなかった。
そんな事はどうでもいい。
それよりも、僕はあいつが何を眺めていたのかを確かめたいのだ。
次は「無用心」「メランコリック」「蚊」で御願いします。
26 :
「カーテン」「未来」「挨拶」:02/04/12 20:19
わたしには一つだけ使える魔法があって、
それは、カーテンをめくることできっかり一日先の未来の映像を窓ガラスに映す魔法だった。
大体はわたしのカーテンをめくるわたしの姿が映る。
「おはよう」
そうして、一日先の自分に挨拶するのが日課だった。
音は聞こえないんだけど、大体向こうのわたしも挨拶を返してくれる。
うまく会話出来たりすると、なんとなく嬉しい。
だからわたしは結構早起きだ。
でもその土曜日はだれもガラスに映ってなかった。
寝ている筈のわたしの姿もなく、綺麗に畳まれたシーツが乗っているだけだった。
わたしは不安になった。
こんなときは、おじいちゃんが死んじゃったとか、
そんなつらいことが多かったからだ。
わたしは何度もカーテンをめくってみた。
お昼が過ぎても、掃除が終わっても、やっぱり誰も映らなかった。
夜になって、私が不安で押し潰されそうになったとき、
付き合って3年ぐらいになる彼から電話がかかってきた。
「おれだけどさ。休日出勤、やっと終わったんだ。これから会えない?」
そのとき、窓ガラスに、幸せそうな顔をしたわたしが映った。
一日先のわたしは泣きそうなほど不安なわたしに微笑みかけながら、ゆっくりと唇を動かした。
結婚、おめでとう。
遅れちゃいました。
次は「無用心」「メランコリック」「蚊」で
27 :
「無用心」「メランコリック」「蚊」:02/04/13 11:43
ぷぃーーーーーーむ・ぷいぃーーーーーーーーむ。
あの音が聞こえてくる。
安心と安寧の象徴のようなシルクカバーのかかった超高級羽毛布団のなかで、私は肩をすぼめる。
洗い立てのシーツの感触を楽しみたくて今夜は無用心にもキャミとショーツだけなのだ。
やっと暖まってきた足の先を冷たいフロアに下ろすのは考えただけでもぞっとする。
嫌な音が聞こえないように頭の上まで布団を引っ張り上げる。
久しぶりに入っていけそうだった眠りの国から引き離されてメランコリックな気分だ。
ぷいーーーーーーーーーーんぷいーーん!ぶぶぶぶぶん!不機嫌そうな音はますます大きくなる。
私はあきらめて布団から起き上がる。
「わかったわかった。分かったからおとなしくして。」
ため息交じりで床に下りる。私をうれしそうに見上げている蚊は羽を広げると1.2メートル。
嘴・・・というか口吻は鉛筆ほどの太さをしている。
冷蔵庫に並んだ保存用血液パックの封を切る。バケツに入ったスポンジにしみこませる。
冷たい部屋の中に金気を含んだあの匂いが立ち込める。こぼれた血液で指先が汚れた。
開けっ放しの冷蔵庫の白い光で彼女のうずくまる姿が見える。
ボウフラの頃はかわいかったのに。
そろそろ彼女ともお別れすべきか。
二杯目のお替りは特製にしようかな。
次は「看板」「カラーチャート」「ねこまんま」でお願いします。
28 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/13 12:49
「オレンジで。」
白に囲われた部屋で、私は言った。目の前には白衣の人。眼鏡の中には冷徹な眼差し。
「オレンジですか。・・・最近、何か良いことでもありましたか?」
「いえ・・・特には。」
「そうなんですか。色としては気分は上向き気味とでてますが、どうでしょう」
マニュアルではそうなんでしょうね、と言いそうになるのを堪え、先ほどと同じ返事をする。
それから幾つかの質問に答え、いつもの薬をもらって病院をでた。
夕方にはまだ早い、中途半端な時間帯。人混みの中を、ふらふらと、当てもなく流されていたら
またここに来てしまった。看板には『パブ ねこまんま』の文字。
路地裏にある小さな木製のドアを押す。チリリン、とベルが鳴り暗い室内が目に飛び込んできた。
「・・またあんたかい。なんでいつも開店前に来るんだい。」
とくに責める様子もない、いつものセリフ。
「オレンジ。」
カウンターに座ってぼそりと呟く。程なくオレンジリキュールがでてきた。
「・・・へたな薬なんかより、よっぽど効くよ。」
「ありがと、マスター。」
私はゆっくり大事に飲み干した。外は夕闇が迫ってきている。この時間との別れの声がした。
「さぁ、そろそろ開店だよ」
次、「チャイム」「スカート」「一本道」で。
29 :
manami ◆tA9nehDo :02/04/13 16:03
すみこのやつ、大晦日だというのにヒステリーを起こしてさんざん文句をたれて、
「あんたなんか犬小屋で寝ればいいのよ」
そういってオレを無一物で追い出しやがった。そりゃ、このオレにねこまんま
みたいなものを食わせるなんて手抜きもいいとこだろ。オレが反抗するのも
当然だ。しばらく玄関先で様子を見ていたが、チャイムが鳴っておばあちゃん
たちが帰ってきたときでさえオレのことはわざと無視してる。ふん。
駅まで続く一本道、オレは師走の喧騒が過ぎ去ろうとしている町をほっつき
歩いた。見覚えのある看板を探したがすっかり街の灯かりも落ち、ビルも
店もぴしゃりと入り口を閉ざしている。うーっ、寒くてたまらん。
何気に見渡すとかなり大ぶりの犬小屋があった。主は不在のようだ。
結局、すみこのいうとおりになってしまうというのか。あいつはオレが
もっと小さいときはスカートまで穿かせて、「かわいい、かわいい」と
頬ずりしたくせに、女ってやつはなんて身勝手なんだ。
オレはとりあえずほんの少しでもやすもうと思い、「ジョンの家」と
書かれた小屋に入ってみた。なんだ、案外ひろいじゃないか。
そして元旦の朝。「ぎゃぁあ、あなたジョンの小屋にイタチが寝てるわよ」
30 :
manami ◆tA9nehDo :02/04/13 16:06
↑
次の3語をいれる前に送信してしまいました。すみません。
「躊躇」「冷凍食品」「パトカー」
でお願いします。
31 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/13 16:42
まず家の玄関から踏み出す一歩目から躊躇した。
果してこの一歩を踏み出すべきなのか、否か。
僕はたっぷりと時間をかけて考え、友人との約束という義務をとった。
遠くに見える倉庫が冷たく真夏の夜に佇んでいた。僕らが待ち合わせをしたのは、
その倉庫から程なく離れたところにある、川の堤防だった(そこからはその倉庫が見えた)。
「遅かったじゃないか」彼は言い、僕は、いまさらなんなんだけど、と前置きしてから返した。
「本当にこの計画に意味はあるの?」
「夕涼みみたいなもんだ」
僕は改めて、ここに来てしまったことと、彼と関係を持ったことを後悔した。
「やっぱり止めにしないか?」
「ここまで来てそんな意味がない。やってもやらなくてもいっしょだ」
僕は、夕方すれ違った(僕となんの関係もない)パトカーを思い出し、不安になり、
「捕まったらどうするの?」と尋ねた。
「なんだいまさら? いいじゃないか、捕まらなけりゃ」
彼を止めることは、既にかなわないとわかった。ほとほととついていく僕は、たぶんなにも考えていなかった。
倉庫の傍の事務所の窓を割って入り、カギを盗みだした。
僕らは果して、倉庫を開けた。中には冷気と、氷菓や、冷凍食品の段ボール箱が詰まっていた。
「ほら? 簡単だろ」彼は言い、僕は頷いた。そして、割れたガラスを思い出した。
「これはもちろん初めてだよね?」彼はすぐ様言った、もちろん。
僕らは、氷菓のダンボールを持ち出し、
そのあと、真夏の夜の罪に、果てしなく溺れた。
次は、「プールサイド」「ビデオテープ」「裏通り」でお願いします。
32 :
「プールサイド」「ビデオテープ」「裏通り」:02/04/13 17:48
透過光と反射光の違い。分かりやすくたとえていうとなんになるのだろうか。
ステンドグラス越しの光とフィルムを貼り付けたスポットライト?違う。
肌を透けて見える血の色と化粧でほんのり色づけられた「健康そうな血色」?少し違う。
最近ではデジタル化の波とかで録画される個人的な画像までもが実にコンパクトにに収納され
人に送りつけたり見せびらかしたり簡単に出来るようだ。もはやあの「ビデオテープ」でさえもが
昔日のものとなりつつある。お手軽でしかも高度な技術も誰もが簡単に使いこなせる便利なもの。
だが私の目はそこに何かぽっかりと抜け落ちたものを感じずにはいられないのだ。
今夜も私はプロジェクターをセットする。壁に張ったスクリーンは古いシーツだ。
四角い光に一枚一枚のスライドが命を持って生き返る。「確かにそこにあった光」が見える。
プールサイドでまぶしそうに目を細める若い妻。彼女の美しい肌を流れるしずく。揺れた麦藁帽子。
小さな私の息子。走り寄りながら開いてこちらに差し出した手。
裏通りをよろめきながら歩く老いた犬。ひまわりの作る影。
かしゃん かしゃん かしゃん かしゃん
スライドを落とす音だけが広い誰もいない部屋に響く。
もう二度とない、でも確かにそこにあった者達を私はここに閉じ込めた。
自分が光の中には入れなかった事と引き換えに。
次は「赤犬」「雑炊」「シャングリラ」でお願いします。
33 :
「プールサイド」「ビデオテープ」「裏通り」:02/04/13 17:58
「ま、なんつかーこの、ビデオテープっつーのも味気ないもんだな。やっぱりカメラよ」
田尾さんとおれはプールサイドで女の子が遊んでいる映像を見ていた。
ここからは裏通りを越えて、小学校のプールが見える。
絶景だった。おれたちは共同でここを借り、定点観賞スポットにしていた。
「田尾さん、親父だよ。動いてなきゃつまんねーだろ」
「おめーな。おれの若いときにもあったんよ。8ミリってのが。嫌いだったねえ」
「なんで?」
「やっぱさーこう、少女の瑞々しさってのかね? 動いてると間延びしちまうんだよな」
田尾さんは自慢のプロ用のデジカメのファインダを確かめるように覗いていた。
「おれはどっちかっていうとデジタルは嫌いだな」
「ばーか。フィルムだと劣化しちまうだろ。……おい、通りに先公いんぞ」
通りにはこちらを窺う女教師がいた。
「なあ田尾さん、ここいつまで持つか賭けねえ?」
「……良い場所だったんだけどねえ」
おれは発泡酒のタブを開けた。
次は「高原」「美少女」「フリル」で
すいません、次は
>>32の「赤犬」「雑炊」「シャングリラ」でおねがいします。
暇だ。何かしたいな。
楽しいことしたいな。みんなが腰を抜かすほど破天荒なことをしたいな。
そうだ、犬を食おう。隣の犬を雑炊に入れて食おう。赤犬だから美味しいはず
だ。毎日毎日、犬のくせに猫みたいな撫で声で吠えやがるから、しつけがなって
ない飼い主に、制裁の意も込めて食ってやろう。
でも、犬を食うことなんか何処かの国では日常的なことらしい。あまり面白く
ないな。それに、黴菌だか寄生虫だかが入ってるか解からん、汚らしい獣などグ
ルメな俺が食えるか。
ならば、飼い主の娘を食ってやろう。美少女だから気迷いなく食える。美少女
だから、雰囲気作りも大切だ。欧州の、人の手や足跡が乱雑してない、愛を司る
女神が天上界から微笑みながら見守っているシャングリラのような高原がいいな。
そこで、風の悪戯にとってフリルの付いたスカートが舞い上がって、参ってい
る美少女無理矢理犯してやろう。美味しい風と靡く草花に囲まれながら、処女(か
どうか解からぬが)を奪ってやろう。嗚呼、非常に美味しそうだ。
でも、隣の親父は三国時代の豪傑のような男だから、告げられたらまず殺される
だろうな。それに、無垢な女の子を襲うのは人道から脱しているから止めておこう。
それから、色々な誇大妄想に更けていたら、すでに日が沈んでいたんだな。
嗚呼、俺って哀れなくらい暇なんだな。
次のお題は「約款」「羸廃」「午睡」
>>35 次のお題は「約款」「羸廃」「午睡」
羸廃 ← この読み方と意味を教えてくださいますか。
37 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/13 19:38
「羸廃」って、なんて読むのですか?どんな意味?
約款(やっかん):法令・条約・契約などに定められた一々の条項。
羸廃(るいはい):衰え疲れること。
午睡(ごすい):昼に眠ること。昼寝。
「約款」「羸廃」「午睡」
「約款は?」
「はい、教官。パスしております。魚屋の許可を得ています」
「柄は?」
「はい、教官。花柄を考えています」
「理由を」
「はい、教官。これは自分が先日午睡の後にフと思いついたことでありまして…」
「理由を、簡潔に述べよ」
「はい、教官。失礼いたしました。」
「簡潔に、と言っているのだ。謝罪は羸廃を伴う。私が欲しいのは情報なのだ」
「私が欲しいのは安定なんですがね」
「それで良い、貴様は死んで良い」
#次は「液体」「改宗」「バームクーヘン」でよろしく願います。
40 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/14 00:32
東京出板「大学べの数学」編集部御中
東都大学理工学部前期試験(数学)の受験報告.センター730点で安全圏のはずが,前日の英語
のせいでこの数学に合否を懸けることになってしまった(−1日).そのため気合を入れて臨んだ
はずが,間違えて去年受けた時の試験場に行こうとしてしまい,結局時間ぎりぎりで教室に入るこ
とになる(−9分).スカシ読みをするも何も見えず(−5分),おとなしく開始を待つ.
チャイムの音で開始(0分).全体を見渡して,[1]から順に解くことにする.[1]は計算だけ,手
の運動で完了だが思ったより手間取る(20分).つづいて[2]に移り,与えられたベクトルを文字
で置いていろいろいじってみるが解けないのでとりあえずあきらめる(35分).[3]は図を逆から
見ると2000年度の[5]とよく似た問題で,前日過去問をやり直した甲斐があったとほくそえむ
(40分).過去問の時と同じようにバウムクーヘン積分を使って一丁上がり,これで2完に気を
よくするが、実はもうあまり時間が無い.急いで[4]へ(55分).これは容器にたまった液体の体
積を時間微分して未知量についての方程式を作るという定番だということは分かったのだがうまく
いかない.できるはずなのにと粘った結果,なんとかそれらしい答えが出た(80分).しかしあ
と10分しかない.しょうがないから見直しもせずに[5]をできるところまでやることにする.xと
yの関係を式で表したところで時間終了(90分).結局,[1]○○[2]α[3]○[4]○○[5]○×で3完
半,1年間の宅浪はむだじゃなかったみたいです. (乙会からの改宗者)
次は「左」「避暑地」「飛行船」で。
41 :
「左」「避暑地」「飛行船」:02/04/14 02:16
「左だよ」
地図を覗き込みながら彼女が言う。俺は黙ってハンドルを切る。
彼女は黙って缶のプルを引く。グレープフルーツの香りがぱぁっと車の中に満ちる。
新緑のさわさわ音を立てるような心地よい避暑地へのドライブの筈だったのに。
“地図の読めないオンナ”とか少し流行った本があったっけ。読んでないけど。
俺の愛車はちょっと違うんじゃないかと言うような山道に紛れ込んでいる。最悪のナビのせいで。
彼女は時々指示を出すだけで黙ったままだ。
「そこを右ね。」
こうなったら俺も意地でも話さない。どこに行こうが知ったことか。
トンネルに入った。オレンジ色のあの照明の中はなぜかすべてがモノトーンになる。
そっと彼女を盗み見る。黙ってピアスを触っている。やっぱりこいつも後悔してるのかな。
長すぎた付き合いは腐れ縁というが、俺たちの間柄はなんなのだろう。あのピアスをあげたのはいつだったっけ。
「ありがとう」と弾んだあの時の声が耳の中で聞こえたような気がした。
冷たい横顔。いつからこんな風になったっけ。こんな風になるなんて思いもしなかったな。
トンネルの出口がやっと見えた。光が増してくる。抜けた。
突然目の前に開けたのはもっとまぶしい海だった。銀色の飛行船が浮かんでいる。
「わーーぉ」
思わず同時に歓声を上げた。顔を見合わせてお互い思わず噴き出した。
次は「バニシングポイント」「レタリング」「スクリーントーン」でお願いします。
42 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/14 16:02
「バニシングポイント」「レタリング」「スクリーントーン」
「先輩、アメリカに行っちゃうって、本当ですか?」
尋ねた僕に優美先輩は、自分で描いた一枚のモノクロのイラストを見せてくれた。
「こんな景色を実際にこの目で見たくて。アメリカに行こうと思ったの」
透視法で描かれた道路は、画面の中央の一点を目指してまっすぐに延びていた。
丁寧に描かれた遠くの山並。道ばたのガソリンスタンド。二階の窓にカーテンが揺れている。
「この道の先に、ずーっとどこまでも走って行きたくなりますね」
「バニシングポイントから延びてきているって言う人もいるのよ。振り返ると
そこには今まで歩いてきた道が、まっすぐに延びているんですって」
優美先輩は楽しそうに微笑んだ。
誰が言ったのか聞こうとして、僕は躊躇い、言葉を飲み込んだ。
「この店の細かい模様なんかは自分で描いたんですか?」
「ううん、スクリーントーン。模様を印刷したシールのようなものを切って貼るの」
左下には英文のレタリング文字が書き込まれていたっけ。詩の一節のような言葉だった。
どんな言葉だったのか、なぜか思い出せずにいる。
優美先輩は、まだあの絵を持っているのだろうか。
僕はこの夏、バッグをしょって、ひとりアメリカに旅立つ。
「シャボン玉」「ピンクのネクタイ」「ホットケーキ」でお願いします。
43 :
「シャボン玉」「ピンクのネクタイ」「ホットケーキ」:02/04/14 17:57
焼ける焼けるよホットケーキが♪
ピンクのネクタイ締めながら
浮かれているのは梶原一騎。
優しい匂いに包まれて。
虹色の大きなシャボン玉に
映し出された歪んだ景色がはじけた。
次は「石蹴り」「空き缶」「カバラ公爵」でお願いします。
空が憂鬱色に染まり始めるころ。
あたしはマンションのベランダに腰をおろし、街を見下ろしている。プラスチック
容器に注がれたシャボンの液にストローを浸し、空に向けて息を吹き込む。小さな
シャボン玉が一つ、ストローの先から飛び出して、すぐに弾けて消えた。今度は割
れないように、そっと息を吹き込んでみる。赤紫色の光を屈折させながら、少し大
き目のシャボン玉が膨張し、ストローの先から千切れて宙を舞う。油膜に包まれた
あたしの息が、優柔不断に迷いながら、ゆっくりとマンションの階下へ降りていく。
歩道を行く背広姿の男が、空から舞い降りる光の玉に足を止め、こちらを見上げた。
あたしは慌てて部屋に身を隠した。
食卓に置かれた皿の上で、ホットケーキがしなびている。その上を一匹の蝿が楕円
を描きながら飛んでいる。朝からまるで、食欲が沸かない。あの男が仕事から帰って
くるまでに、片付けなければ。
母があの男と再婚してから、もうすぐ二年になる。
「あゆみちゃん、今日から僕がお父さんだよ。よろしくね」
銀歯を光らせながら、右頬の筋肉だけ吊り上げる独特の笑い方。母からあの男を
紹介された時、彼が身につけていた趣味の悪いピンクのネクタイは、あとで、母から
のプレゼントだということを知った。彼女の趣味の悪さにはつくづく辟易されられる。
「鼻毛」「オレンジ色」「サイレン」
あ、すみません、かぶっちゃいました。(汗
「石蹴り」「空き缶」「カバラ公爵」か「鼻毛」「オレンジ色」「サイレン」のどちらかで。
あ、先のお題が優先でしたね。(汗
うげ、行数越えてた。(汗
49 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/15 00:18
あげ。
「石蹴り」「空き缶」「鼻毛」「オレンジ色」「サイレン」
六時のサイレンが、町中に鳴り響く。
オレンジ色に染まる空の下、子供達が笑い声と共に帰路につく頃、
石蹴りや缶蹴りに使われていた遊び道具はただの石と空き缶に戻る。
人前で鼻毛を抜くのさえ平気な中年オヤジになった今、
あの頃はありふれた日常だった日々がいやに美しく思えて来るから不思議だ。
人は年老いて子供に戻ると言うが、この身体が昔と同じように軽やかに
跳ねる日は、もう二度とやっては来ない。
だからこそ、余計に美しく思えてしまうのだろう。
平らに整備されたグランドで夕暮れにさえ気付かずサッカーボールを
蹴り続ける少年達を少しだけ羨みながら、私は帰路についた。
※「カバラ公爵」は固有名詞っぽいので使いませんでした。
次は「ある日」「森」「熊」で。
「ある日」「森」「熊」
「なんたる失態だ」学長の手紙が届く。
これはいけない、なんとかせねば。
教授は徹夜実験の末、画期的な薬品を開発した。
熊から抽出された「熊酸」を基に合成された「熊酸第二銅」。
これを飲んだ熊は、ある日数が経過すると死に至る。
これを貯水池に投げ込む教授、名付けて「熊の目計画」。
1週間後、教授は嬉々として学長に報告した
「キャンパスを御覧下さい。熊の死体がてんこ森です」
学長の返事。
「私は失態と言ったのだ!可哀想な熊さん・・・全く以って、何たる失熊だ」
しかし学長も、もう一つの誤字を見逃していた。
※フォント読みにくい(^^;L
次のお題は:「寄宿舎」「水車小屋」「ハンバーガー」でお願いします。
52 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/15 08:20
「ヨハン」
うながされて、ヨハンは静かに二段ベットの梯子を下りた。他の者を起こさない
ように、静かに戸を開けると、灯りの消えた廊下には人の気配は無かった。
部屋には携帯用の灯明が置いてあるのだが、それを使うわけにはいかない。ヨハ
ンは月に照らされる級友の後ろ姿を追って、足元を確かめながら歩いた。いつも
農場から帰ってきて手足の泥を落とす水場の脇から、壁伝いに寄宿舎の裏手の納
屋のところまで来ると、級友は小さく口笛を吹いた。戸が開いて、級友はあたり
を見回しながらその中へ滑り込んだ。ヨハンも続いた。
もう十人近く集まっていた。納屋の奥の一段高いところに女の子がいた。ヨハン
らが名乗ると、女の子は自分は粉引きのアンナで、先月で十三になったと言った。
アンナは先週、親父さんの手伝いで乗合馬車に乗って町へ行ってきたのだ。ヨハ
ンらは、アンナが町で見たものの話を、一句ももらさぬようにして聞いた。
ヨハンは今でも忘れない。町には蒸気機関っていうものがあるんだよ、水車小屋
の水車よりもずっと強くてそれで粉なんか一月分を一日で引いちゃうんだよと語
るアンナの、月明かりに輝いていたあの目。群がるようにして食べた、アンナの
持ってきた一つだけのハンバーガーのピクルスの酸っぱさと一緒に――
53 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/15 20:58
52さんつぎのお題は?
忘れてた^^; 忘れると自動的にお題継続だったような気もしますけど、じゃ
「竜」「ヒール」「PC」でお願いします。
55 :
「竜」「ヒール」「PC」:02/04/16 01:31
プレイヤーA「じゃあおれ竜!」
プレイヤーB「おいおい。PCに竜は反則だろ」
プレイヤーC「まあいんでねーの? 初心者だし」
プレイヤーB「おいよ、竜が街中歩いてる姿想像してみろよ。どうよ?」
マスター 「うーん、そういう国なんじゃないかな」
プレイヤーB「マスター。あんたなー。いっとくけどこのTRPG、竜強すぎだぞ? ルールブックには一応PCにもなれるって書いてるけど、基本的にはNPC用だぞ」
プレイヤーC「じゃあおれ死霊使い、っと」
プレイヤーB「おーまーえーわー」
プレイヤーC「まあまてよ。いつもいつも正義の味方じゃいい加減飽きるんだよ」
プレイヤーB「なあ、マスター、シナリオ大丈夫なのか? 竜連れた死霊使いなんざ、思いっ切りヒールだぞ」
マスター 「シナリオはちょっと強めにするわ。おれもさ、実言うと神とか出したかったんだよね」
プレイヤーB「ちょ、ちょっとよく考えろよ。(ひそひそ声)……話、どんなの?」
マスター 「(普通の声)姫救出だけど。逆にしようぜ。姫奪取!」
プレイヤAC「おお、萌える!」
マスター 「つーわけでお前(Bに向かって)姫ね。うまく逃げろよ」
プレイヤーB「どんなTRPGだよ!」
お次は「じいや」「メガネ」「コルセット」で。
56 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/16 02:00
メガネの女は美しく、天使のような笑顔を誰にでも平等にふりまいた。
そもそもメガネの女で美しい女はあまり見たことがなかったのだが、
このメガネの女だけは別物だった。
そしてこのような女が、雨上がりの虹のような透き通った素敵な笑顔を見せるなんて……。
(75年間生きていて、はじめて知った美しさである)
腰をコルセットで包んだじいやは思った。
ちなみにじいやは至って真面目な教師生活を定年まで続けてきて、
その厳格さからくる表情の頑固さと、教養の深さからくる眉間の皺が特徴的な人だった。
そのじいやがコルセットをつけて妄想していた。
御歳75歳である。
あのメガネを外したら、あの女は何も見えなくなり、美しい肌に触り放題だなー、でへへ。
うひひひひひひひ。
でへへへへへへへ。
Aをこうしてああして、それからBを上へあれして、
腰をあれして、あれして、あれして、あれして、
Bをもんで、Aを突き上げて、
それからCに口をつけて、Aをはめたまま、Bの先をこすって。
……煎ってきます。
「障害」「ラーメン」「ナンセンス」
57 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/16 03:07
「障害」「ラーメン」「ナンセンス」
お前らよう。そんなんでいいのかよ。
いい歳してんだから働けよ。
唯一の楽しみがラーメンの食べ歩き? っぷぷ
恥かしいぜ。
この世に生をうけておきながら、楽しみがラーメンかよ!
ナンセンスな生き方だぜ。
収入はあんの? ぷぷぷ。親の年金が頼りかよ。
さっさと県道に寝転んで、一気に車に惹かれちまえよ。
障害者になりゃ金も入るし。
それっきゃねえだろ、お前にとっての一発逆転は。
おまえもなー?
悪いけど俺はハイクラスな生き方してんのよ。仕事も車も家も
もってんの。お前らからみりゃ、上流? 雲の上?
ま、人生いろいろだよ。落ち込むなって。な。
お次は「松下電器」「ボルシチ」「天皇」
58 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/16 03:18
おれはテレビの修理をしているオヤジと天皇が食べる食事について話していた。
「天皇というのはたまにはボルシチとかいうのもくうのかね〜。へ〜そんなものかね」
「そうらしいよ」
「しかし俺のところの飯なんかくったら、まず間違いなく腹をこわすな、がはは」
「そりゃそうさ。何せうちは<まずしい>からね、父ちゃん」
おれは鼻水を袖でふきあげながら言った。
「ばっかもん。何てことを言いやがる」
「ゴン」頭を殴られた。
「それよりか松下電器にいってこの部品を買ってこい。急げ! コノヤロー」
おれは松下電器に行った。
といっても、あの天下の松下電器ではなく、近所の松下権助がほそぼぞと営んでいる電気屋だった。
(何もかもが天皇とは違うよな)
おれは泣きそうになった。
(なして、こげなところに生まれてきたのだろうか!)
「芸術」「小説」「創作」
リロードしてみたら時代はもう二歩先を行ってた(鬱
「ヒア! ヒア!」「ナンセンス! ナンセンス!」
候補が何か言うごとに、両陣営から野次が飛ぶ。代替わりの時期を控えて、今日の生徒総会は会
長選挙の立会演説会だ。聴衆が興奮すると、マイク越しのはずの演説も、野次にかき消される。
「静かにしてください!」
ショートボブの選挙管理委員長がそのたびに大きな声を出して、制止する。制止されてもやめな
いと、進行の障害として退場させられるから、講堂に満ちていた野次はぴたりとやむ。
そのくり返しだ。両氏の持ち時間が終われば、今度は延々と質疑応答が続く。
「投票は明日午前九時からこの場所で行います! 有権者の皆さんは学生証を持ってご来場くだ
さい! 結果は即日開票のうえ昇降口に掲示されます! 以上!」
委員長が閉会を宣言した時にはもう午後十時を過ぎていた。
「先輩、おつかれさまです」
委員会室に戻ると、留守番していた後輩たちが迎える。背後では、二台の印刷機がフル稼働だ。
「これからが一仕事よ。明日の朝までに投票用紙を二千二百枚刷って、それから…」
委員長は目で人数を数えた。印刷に五人、投票所の準備に十人回すと…
そうだ、カップラーメンの買い置きは、今夜のうちに無くなっちゃうな。明日手の空いた人に、
もう二箱くらい買ってきてもらわなきゃ。
委員長は思い出していた。一年生のとき初めてここに泊まりこんだ日、夜食の買い出しに行って
チンピラに絡まれそうになった時のこと――あれからあたしは、選管にはまり込むようになった
んだ。もう引退したあのセンパイの後を、ひたすら追って――
――明日はあたしの、最後の仕事。
書いちゃったから顕示しちゃった。お題は58ので。
「芸術」「小説」「創作」
約40年前のアメリカ。11月、秋。
ある財産家が殺された。一見過労死だが、明かな毒殺!
被害者な名は Layton Lie。現場には一文字「│」と書かれた紙だけが残された。
「ううむ、まさに推理小説の模倣犯。これは<123殺人事件>だぁ!」
唸る探偵。至急、「2」「Two」がつく住民が警備された。
しかし翌週、それを嘲笑うかの様に第二の犠牲者・・・Micky Jonesが発見された。
「おわわ、これこそ犯罪の芸術。あれは「1」ではなく「l」だったとは」
<lmn殺人事件>だったのか。今度は「n」がつく住民を警護せよ!
何たる下手な推理。単なる探偵の捜索ではないか。
しかし、事件は起きてしまった。その来週、11月22日。
「K」の男・・・ケネディ大統領暗殺事件が起こった。
思えば下手な字がいけなかった。
あれは「1」でも「l」でもない、「I」のつもりだった。
が、幽霊の身では何も言えない。真相を伝える前夜に暗殺された身では。
生前の我が名はLayton。冒頭に登場した死体、それが私(I)だ。
※こんなのアリ?
次のお題は:「湖」「春の調べ」「納豆」でお願いします。
あ、御変換を発見しました。
「捜索」じゃなくて「創作」です、スマソ
(誰も見てないってばー、そんなの^^;)
漫画および小説は芸術ではなく、ただの心情の排泄物であり、社会と人間の害毒である。
創作などと言いながら漫画および小説なるものを書き散らしたところで、
心情を現実的な比喩で薄めてしまうことにしかならない。
また漫画および小説は、現実に対する比喩であるが故に、その心情が危険なものであったとしても、
その危険な心情を現実で実現しうる方法を潜在分子に教える教科書となり、
その危険な心情が現実にも存在しうる、(決っしてあってはならないことだが)
現実に存在することを肯定するものである、という悪の啓蒙書となりうる。
故に、漫画および小説は規制されねばならない。
みんな、嫌な世の中を忘れるための、いじめの対象を捜していたんだと思う。
それがストーリーのあるものに向けられたってことだ。
今本屋に行っても、並んでいるのは詩集とかノンフィクションばかり。
お話しか書けないぼくは自分の心情をショートショートにして名も知らない人に送り付けている。
デタラメな住所とデタラメな人名。
それがぼくの読者だった。
そして宛先人不明で返送されてくる。
今までは。
それは結構ぶ厚い封筒で、ぼくがいつも送ってきたやつとは違っていた。
それは長篇だった。男の子と女の子が出逢って愛しあい、別れる、そんな話だった。
あまり面白い話ではなかったし、破綻もしていたけれど、ぼくは嬉しくなってしまって、
その話を読んだ感想を送り主に送りつけた。
そして一枚の手紙が来て、ぼくは刑務所の中にいる。
その手紙は要約すると、”批判なんて欲しくなかった。あなたは私の何もわかっていない”というものだった。
長いけどごめんなさい。
次は「下駄箱」「マンガ」「スカート」で。
うわ。すいません、
お題は「湖」「春の調べ」「納豆」でお願いします。
65 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/18 04:37
森を抜けると絵に描いたような湖が目の前に現れた。
空を写したような透き通った青。
その向こうの緑の山々と青い空。
私は感無量だった。
そして耳をすますと春の調べが……。
い、いや、待てよ、今オヤジの唸り声が聞こえたような。
えっ、何だ? 今の何だ?
オヤジの欠伸かな、今の。
私は声のした方角に歩いていった。
すると、「よお、姉ちゃん」と気さくな声を後ろからかけられた。
そこには毛むくじゃらの男がいてご飯を食べていた。
上半身裸で薄汚く、それも立ち食い。
全く、行儀が悪い。
それでも、
「あのう、何をしているのでしょうか?」と声をかけてみた。
「決まってるじゃねえか、朝飯よ。裏手の小屋に住んでいるんだ。
おっ、そうだ納豆くうか? 姉ちゃん。
で、遊んでけよー俺と」
私は額の手の平をあてた。激しく立ちくらみがした。
……折角の気分が最悪。
「う・つ・だ・し・の・う」
「願望」「小説家」「一流」
66 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/18 04:39
額の→額に
67 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/18 05:44
「願望」「小説家」「一流」
「僕の夢を聞いてくれるかい?」
「話してみて」
「僕はね。小説家になりたいんだ。」
「本気なの?」
「ああ。一流の小説家になる。」
「それは願望なの? 目標なの?」
「・・・目標だ」
「無理よ。あなたには」
「なぜ?」
「なぜって。こんな時間に2chにいる暇人じゃない。」
「そうだね。やっぱ、やめるよ。」
「それが良いわよ」
お次は「モスクワ」「731部隊」「浜崎あゆみ」
私は浜崎あゆみ、過去を捨てた女。
ここはモスクワ、何もかもが冷たい街。
私は、ある任務のため一人でこの街を訪れている。
でも、私はその任務の詳細を知らない。知らされていない。
上官には、知る必要がない、と言われた。
赤の広場の一角で、灰色の空を眺めていた。
ふと肩を叩かれる。振り返ると、コートを着込んだ赤ら顔のロシア男が立っていた。
ロシア男は、無言で私に二つ折りの紙片を手渡し、そのまま踵を返した。
紙片にさっと目を通す。数行の暗号に、今回の任務内容が記されている。
私はライターで紙を燃やし、再び空を眺めた。
いつの間にか、風の冷たさが気にならなくなっていた。
夜。月は、雲の中でその姿を隠している。
私はフードで顔を覆い、闇に紛れて路地裏に足を運んだ。
寂れた一角の、薄暗い街灯の下に目的の男はいた。
そっとその肩を叩く。男は長身の体をびくりとさせ、こちらを振り返った。
私は合言葉を呟いた。
男も合言葉を返すと、懐から分厚い包みを取り出して私に寄越した。
それを受け取ると、私はバッグからピストルを取り出し、引き金を引いた。
銃声。目を見開いて倒れる男の顔が、薄明かりの中で醜く歪んでいた。
かつて愛した男の顔が。私を捨て、731部隊に身を投じた男の顔が。
「智也……」
私は踵を返し、闇の中へと走り去った。
任務完了。宿に戻り、上官に伝える。
与えられる次なる任務。その遂行のため、私は夜のうちにモスクワを後にした。
私は浜崎あゆみ、過去を捨てた女。
次は「ダイナミック」「虹」「形容詞」で。
あ、改行しすぎた……鬱だ。申し訳ない、逝ってきます。
僕と君は激しく愛してあっていった。
その証拠に昔は僕の口から君の口へと虹がかかることがあったのだ。
それをなんだよ。
これが僕の小説家的形容詞だと?
むむ。勘弁しておくれよ。くだらない。
何、余りにちんけで安っぽい発想。
何をこのくそ。これほどダイナミックでアカデミックな発想はないだろう。
て、てめえ、笑っているのか、呆れるぜ。
たっくよー。
何、アカデミックはこういう時に使わない。
知っているさそんなことは。
……。
……。
えっ、やっぱり知らないのって?
知ってるよ。
トナカイの鼻が赤くて大きいことだろう。ふん。
あっ、また笑ってやがる。
「地球」「土」「丘」
71 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/20 09:01
あげえ
72 :
「地球」「土」「丘」:02/04/20 09:27
冬でありました。
凍てつく寒さ。終わらない夜。
すべてのものは息を潜めただただその時間をやり過ごすのです。
人々は肩を寄せ合い失われた神々の国の話を語り継ぎ優しい春を待ち望んでおりました。
戦いが終わりません。
厳しい環境は他人を排除することで自分を生かすという方向を選んでいるのでした。
「春になる」「この戦いが終われば我々の春が訪れる」指導者達の言葉を胸に繰り返しながら
少年は自分の古い武器に念入りに油を差していました。昔昔本で読んだ「地球の裏側」の事を
ぼんやりと思いながら、いつものように服を着たまま少年は浅い眠りにつきました。
まどろみの中で彼は見ました。
若草色一色に染まった春の丘でありました。
そよ吹く風に草木もなびいているのでありました。
太陽は優しく慈しみの光を投げかけているのでありました。
土は豊かに命をはぐくみものみな喜びにあふれるように息づいておりました。
次は「白兎」「ワニ」「嘘」でお願いします。
73 :
「白兎」「ワニ」「嘘」:02/04/20 18:43
「このバッグ、誰の?」
「お母さんのよ」
「すごいなあ。これってワニ皮っていうんでしょう」
「そうよ。それも、最高級のワニ皮だって」
「どうして最高級なの」
「分からない。お母さんは、ワニが赤ちゃんワニだった頃から白兎の毛だけを
食べさせたワニが脱皮した皮だから最高級なのよって言っていたけれど」
「それって嘘だよ。毛がなくなった兎がかわいそうじゃない」
「そうだよね。きっとニンジンを食べられるワニが最高級なんだよ」
「大人って感じだしね」
次は「黄金」「遊戯」「極道」で。
74 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/20 21:50
「黄金」「遊戯」「極道」
族長から手渡された薬を飲むと、私の視界は歪み始めた。
極彩色に染まり、左回りに回転し始める。形は液体のように溶け、粘りつい
て歪んでいく。全てが混ぜ合わされて白くなると、むかしみたアートフィルム
のように、意味のないシーンが意味なくつながれ、目の前を移ろっていった。
部屋、廊下、教室。恩師、友達、両親。そして見知らぬ人。
女。老人。子供。子供の私。女の私。老人になった私。
砂浜でお遊戯をしている。打楽器だけの音楽に合わせて踊る。
たんたんととったん、たんたんととったん。
突然、光景がうしろに流れ、急な加速を感じて身体が硬直する。全てが柔ら
かく歪み、私は粘膜の暗い洞窟を進んでいく。至極道行きの定まらない旅だ。
しかし不安はない。むしろ満たされている。
光が見え、そこに吸い込まれると、一面黄金色の何かをみた。何か。何かを。
波打つ何か。
−−そこで私は目覚め、激しく嘔吐した。
族長は何を見たと私に云い。私は見たままを答えた。族長は、お前は戻って
きた、だからもう大丈夫だ、と私に告げ、右手をそっと挙げた。
#次は「機械工学」「サイクル」「ポップミュージック」
#簡素スレが落ちてるけれど、一体何があったの?
75 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/21 01:36
「機械工学」「サイクル」「ポップミュージック」
フロベール:『紋切型辞典』
Flaubert: Dictionnaire des Idées reçues
より抜粋
機械工学
ロボットは、必ずこれの粋を集めて作られねばならない。
これの専門家はいるがファンはあまりいない。
この学問を修める者は、白髪に白ひげを蓄え、職業の区別をつけるため、
市街地でも白い服の着用が義務付けられる。
サイクル
ホームページの更新と地球の自転のこれは、最近遅くなってきている。
浜崎あゆみとGLAYのアルバム作成のこれはコンスタントである。
木梨憲武の父親の業種だということを知らなくても、それほど致命的ではない。
ポップミュージック
これの文法に対しては忠実であるか完全にはみ出すかのいずれかであることが必要。
佐野元春のために作られた用語。
カヒミ・カリィに対してはこの言葉を用いねばならない。
長渕剛ファンに対しては、絶対にこの言葉を用いてはならない。
次は「水車」「補正」「眼中」
76 :
「水車」「補正」「眼中」 :02/04/21 03:53
その人の目は水車のように、クルクル回っていた。まるで、精密に描かれた幾
重の同心円を見るときに、それぞれの円が回転しているかのように見えてしまう、
そんな円形の目だった。一点の曇りも濁りも無い目。完璧にプログラムされた目。
目が回る速度は、時空を支配した。その人の目が回っているのではなくて、眼
中の外の空間が回り、目の回転数は、時を刻むモーターであった。
その人の目は、目蓋(まぶた)に閉められ、開く。その人にとって、目蓋を閉
じることは、時空を否定することであった。暗黒世界に己を漂わせることであっ
た。だから、その人は出来るだけ目叩き(またたき)をしなかった。
私は、その人の目を守ろうと思った。濁りという錆びは、目の回転を遅くし、
時の回転を止めてしまうからだ。ある時点で止まった時は、空間を圧縮してしま
い、補正は出来ない。
もう寝よっと。
次は「指」「前」「下」で。
「指」「前」「下」
犯人は、律儀に犯行時間まで指定してきた。
=== 犯行予告状 ==================
明日、日曜午後1時。展示中の「雪舟山水画一式」貰い請け候。
じっちゃんの名に賭けても、きっと雪舟を盗んでやる。
かしこ。
怪人二十面少年
封筒には、自分の住所まで書いてあった。
「なかなか真面目な少年ですな」
「前売券、送ってやりましたよ」
しかし、当日1時になっても少年は現れない。
「一体、何をしとるのだ」
「時間に遅れる様な子ではないのですがねえ」
そんな事はなかった。
少年は、ちゃんと余裕をもって1時間前には美術館下まで来ていた。
ただ、行列が75分待ちだった。
※なんか安直だけど
次のお題は:「時計」「計量カップ」「温度計」でお願いします。
|:3ミ (←顔真似)などの漫画で有名な*****さんが危篤だそうだ。
ガンとわかっていても自分の好きなお酒を軽量カップについでまで飲む、煙草は
やめないという主義を通してきた**さんの生き方には賛否両論があるだろうが、
私はけっこうそういう「自分の時計を生きる人生」もいいなと思ってきた。
ICUの壁の温度計は24.0℃
**さんのご無事をお祈りしたい。
※なんか安直だけど
次のお題は: 「排他的」「私刑」「おちけつ」でよろちく♪
>>78 解説です。
「おちけつ」とは、ここでは「お尻の垂れ下がったようなくたびれた
中年のいじけた文章」というイメージです。
誰ですかこのひと。
81 :
「排他的」「私刑」「おちけつ」:02/04/21 17:10
辞書で調べてみたけれど、おちけつ、なんて言葉はなかった。
あたしはもう一度仕様書を読み直してみた。
ボタンBを押すと、内部状態が変化し、おちけつが生成されます。
「山下さーん、これどういう意味なんですか?」
「しらね」
主任の山下さんは面倒臭そうに答えた。
「そんなあ。生成されるものがわかんないと作りようがないですよぅ」
「そこら辺の仕様切った元請けのSEが辞めたらしくてさ、誰も知らねーんだとさ」
「じゃあ、新しく仕様切ってもらって」
「無理。金がない。元請けの会社飛ぶ。おまえ考えろ。おまえ作れ。いじょ」
山下さんはそこで話を切って、難しい顔をして仕様書読みに戻った。
あたしはとりあえず、前後の状態から生成されるものを類推することにした。
どうも排他的な状態制御をやっているみたい。
で、その状態は……状態ホゲ1、状態ホゲ2。一体どんな状態なのよ。
「もう、このくされSE、ぶっ殺してやりたい」
「おう、おれも参加するぞ。私刑だ私刑。私刑で死刑、なんつってな」
あたしは山下さんのおやじギャグに反応する気力もなかった。
次は「システム」「制御」「腹芸」で
82 :
「システム」「制御」「腹芸」:02/04/21 17:54
蓬莱ダム信夫ダム一括停止・・・リレーのHOLD復帰・・と。
[手動・無モード P97 ハード]
[一括停止 ハード P97通り
ソフト調査中・・・](薮神ハードなし←モード関係なし・・・と。
↑
手動モードのみ受付)各ゲートの停止を出力
●制御停止(自動制御時)→cpu→hdc→各ゲートに対し動作中の停止出力(制御受付)
目標+停止
・・・システムダウンは俺の腹芸ひとつなのじゃ。
次は「堪忍袋」「信玄袋」「神棚]でお願いします。
83 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/21 21:18
「堪忍袋」「信玄袋」「神棚]
初めてのデートに30分の遅刻。当然彼女の機嫌は最悪。
張りつめ、居たたまれない空気に我慢できず、僕は夢中でしゃべり出す。
「あ、あそこの雷門の左右にでっかい木像があるでしょ。
それぞれ『堪』『忍』って云って、持ってる袋が『堪忍袋』。
袋の口が開くと嵐が吹き荒れると云われてるんだ」
「堪忍袋の緒が切れそうなのはこっちなんだけど……
もしかしてケンカ売ってる?」
「……イヤ、そんなことは……ゴニョゴニョモゴモゴ」
「…………」
「そ、それから信玄袋ってのもあって、武田信玄の軍配についてる袋でさ。
戦の前にそこにヒマワリの種を詰めて神棚に祀ったんだってさ」
「それ……ホントの話?」
「……ウソです……」
堪らない。突き刺すような視線。ドスの利いたハスキーボイス。
そう、僕はマゾなのだった。もっと叱って、女王様。
#次は「粘土」「ハイビジョン」「三段腹」
「粘土」「ハイビジョン」「三段腹」
どんな人間にも青春がある、振り返ると愛しい生涯が。
死の床についた三段腹の中年の脳裏に、若き頃の想い出が走馬灯の
様に映しだされた、ハイビジョンの様な鮮やかさで。
自分の誕生を喜ぶ母と父。
大事に育てた小鳥の死。
そして一番大切な・・・
不意に、一つの言葉が浮かんだ。
「1番、岩石オープン」
それは、幼い頃に見た他愛もない漫画番組の一齣。
粘土で造った様な自動車と二人の原始人が回顧される。
「2番、ヒュードロクーペ。3番、マジック3。4番・・・」
や、やめてくれー!
「9番、ハンサムV9。10番、10番は・・・?」
愛おしき生涯に、世界一下らない疑問が!
彼は、まだ死ねない。
※たしか「クマゴロー・トロッコスペシャル」だったと
次のお題は:「めくるめく」「カレンダー」「俺んだ」でお願いします。
85 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/21 23:54
「俺、きれいなお姉さんって好きなんだよな」
「ん? 誰でもそうじゃないの?」
「だから、そういう意味じゃなくて、『お姉さん』が好きなんだよ」
カツミの言いたいことを、僕はつかみかねていた。彼に姉はいない。
「レイナさんって、つきあっている相手いるのかなぁ……」
「ン、ンンン? レイナさんて、そのぉ……」
「ダメか? お前、おれのこと義兄さんと呼べないか?」
――つまり、友人の「きれいなお姉さん」が好き、と言いたかったらしい。
めったなことは言えない。僕は返事につまってうつむくだけだった。
「く、苦労はさせないぞ。絶対幸せにする」
るるるるーーと古めかしいスキャットが、店内のBGMとして流れる。
めったなことは言えない。でも、ずっと沈黙したままでもいられない。
「くだらないこと聞くようだけど、タツミって駄洒落好き?」
「どっちでもないけど……それが何か」
「つまり、付き合っている相手が、『このカレンダー誰んだ?』『俺んだ』
とか、そういうことしょっちゅう言ってても許せるか、ってこと」
「それって、まさか」
「まだあるぞ。日めくりのカレンダーあるだろう。『あれをめくるのが快感、
めくるめく快感』と歌いだしたり、だな。それから縦書きというのがあって……」
僕はそれ以上言葉を続けられなかった。タツミは、疲れきった顔をしていた。
僕がこれまでの人生で見た中で一番、悲しそうな男の顔だった。
運悪く人事部の御眼鏡にかなってしまった俺は
七階の小さな部署に配属替えされることとなった。
そこは真っ白な部屋で椅子と本があった。
この本に印刷されてある誤植をチェックしてほしいというのだ。
深く呼吸をして、本を手にとって見た。
厚さは15cmぐらいだろうか。
ペーパーバックのその本の表紙は真っ白だった。
めくってみると西暦1年1月のカレンダーが小さく印刷されている。
次のページには
西暦1年の2月のカレンダーがやはり小さく、
ただし少し右側に印刷されていた。
俺は背中に走る悪寒を感じながらもう一枚めくってみた。
そこには西暦1年3月のカレンダーがやはり小さく、
今度は左端に印刷されているのだった。
めくるめくるめくるめくるめくるめくる
めくるめくるめくるめくるめくるめくる…
西暦50年までのカレンダーをチェックしたところで昼になった。
誤植なんて1箇所もなかった。
天井を見上げてみれば、そこにも数字の羅列が見える。
勿論、網膜に焼き付いているだけだ。
昼食を食べようと街に出た。
弁当を買うために財布を出そうとしたら小銭がこぼれた
「俺んだよ!
おい拾うなよなお前ら」
会社の課した徒労に苛立っているとはいえ
こんな反応をした自分にいささか驚くのだった。
テーマ「がびょう」「既刊」「電源」
87 :
「がびょう」「既刊」「電源」:02/04/22 01:38
「これで本当に電気通るの?」
美雪はがびょうの針をコードに半田付けしただけの、
簡単な電源コードを疑わしそうに摘み上げた。
「通るよ。危ないから触るんじゃないぞ」
裕幸は即席の電源コードをコンセントに差した。
サーモスタットが働く音が聞こえ、水槽のヒーターが動き出した。
「な?」
裕幸が得意そうに美雪を見た。
「なにが、な? よ。あなたがリストラされなきゃ、電源コードぐらい買えたわよ」
「しょうがないだろ」
裕幸は熱帯魚マニアだった。それが嵩じて、自費出版で熱帯魚の本も出している。
会社をリストラされたとき、裕幸はその趣味で食べていくことを決心した。
「飼育レポートだったっけ? 仕事が取れてよかったわね。でも不安だらけよ」
それは、自分の既刊本を手に、熱帯魚の雑誌に売り込みをかけた成果だった。
「まあね。でもなんかさ、おれ会社辞めてから、結構充実してるんだよね」
裕幸は金色にキラキラ光る淡水魚を目を輝かせて見入っていた。
次は「なまこ」「酢の物」「本だな」で
「なまこ」「酢の物」「本だな」
彼女は偏食が激しい。
今日夕飯にきゅうりの酢の物を作ったら、「あたし酸っぱいの嫌いって言
ったでしょ」怒ったようにそう言って、きゅうりの酢の物を俺の前に押し
やった。俺は黙って2人分の酢の物を平らげた。これだから太るんだ。
…そして2時間後、やっぱり彼女は腹が減る。
「何か食べるものないの〜?」
冷蔵庫をかき回しながらも、ぶつぶつと文句を言い続ける。
「げ、キモイ。なまこなんて買うのやめてよ」
「好きなんだよ」
「気色悪いよ。よくこんなの食えるよね」
罵倒と共に、冷蔵庫のドアを足で閉める。食後にきっちり食べたくせに、
俺の分のプリンに平然とスプーンを突っ込む彼女。今日のはプッチンプ
リンじゃなくて、ちょっとだけ高い焼きプリンなのに。
この女、人が黙ってたら調子に乗りやがって。
俺は怒りに思わず拳を握りしめた。だが、次の瞬間。
ガツン。
本だなを滑り落ちた雑誌が、プリンを喰らう彼女の脳天を直撃した。
「痛っ!ちょっとタカシ、ちゃんと整理しときなさいよ」
「はいはい。それ君の本なんだけどね」
次の就職さえ決まったら、もっと強気に出られるんだけどな。
密かな復讐を果たしてくれた雑誌に感謝しながら、
俺は黙って雑誌を拾い集めた。
次は「冬」「門扉」「扇風機」で。
「よし、器はこれで、と」
俺は酒のつまみとして作ったなまこの酢の物を
端が少し欠けた、乳白色の小皿へと丁寧に盛っていた。
「さてと、今日も一人寂しくちびちびやるか」
冷蔵庫に冷やしておいた缶ビールとつまみを盆にのせ
狭すぎる六畳の居間へと運んだ。
座椅子に腰を沈め、とりあえずビールをぐいっとあおった。
なんとはなしに俺は、部屋の隅で埃をかぶっていじけているように見える本だなへと
視線をあずけた。
「三島、太宰、芥川、か。俺ってなんていうか、わかりやすい奴だよなぁ。」
十代の頃、俺が読みふけっていた小説たちが几帳面に五十音順で本だなに並んでいる。
四,五年前に掃除して以来、この小説たちはずっとここにいる。
ぼやけた映像が頭の中でうずまいていた。それがはっきりと輪郭を持ち始めたとき
このアパートの前を走り抜ける救急車の気狂いのようなサイレンで我に返った。
「何か思い出しそうな気がしたんだよな。んー」
思案に耽りながら、なまこをひょい、と口に放り込んだ。
「ゴリッ」
「いててててててててっ!」
鈍い音と激痛が走った。
「おい、嘘だろ。なまこがこんなに固いなんて・・・。大学の頃はバリバリ食べてたのに」
少し歯も欠けてしまったようだ。じわり、と涙腺がゆるんだ。
涙が歯の痛みのせいだけではないことはわかっていた。
そんな私は三十八歳。
遅れました。お題は88さんのでどうぞ。
ビールの入ったビニール袋を持った左手で
門扉に立てかけてある回覧板を器用に掴んで帰宅。
「えー、っと、納涼すいか割り大会か…」
蒸し暑い夏の夜はビールと扇風機と枝豆。
開け放った窓から時折きこえてくる風鈴の音が心を和ませる。
そして、ビール片手に窓辺に寄りかかった
その姿勢のままで寝てしまった。
朝は猛烈な寒気で目がさめた。
恐ろしく寒かった。
吐く息が白い。
窓の外には雪が降り積もっている。
テレビをつけてビックリした。
コートを着込んだそのお天気レポーターは
今日が1月の冬だと言うのだ。
俺はTシャツにトランクス一枚という格好で、
今何が起こっているのかを必死に考えていた。
テーマ「発券」「出荷」「人力」
91 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/23 00:04
「発券」「出荷」「人力」
僕の同僚は、耳が悪い上、訛りがきつい。
「あ、ベルギー人なんですけどね、出国の許可が欲しいんだそうです」
「んぁ? ベンジンを出荷スンのけ?」
「いや、出国証を発券して欲しいんです」
「あー。スイカを発見すた? 冷蔵庫はこっちだぁ」
「じゃあなくて、シュッ・コ・ク・キョ・カ・ショ・ウです」
「んぁ……」
「税関の検疫は関係ありませんよ」
「わがった。わがった。じゃあ、すんぐそっちよこスベ」
ああ疲れる。
そして30分後。人力車の運転手吹田さんが派遣されてきた。
客を乗せてスイカとベンジンを買いにベルリンまで行くらしい。
#次のお題は「白」「耳」「義」で。
92 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/23 01:53
高倉の森を源流とするその川は、清冽な響きを保ったまま、一方は暗門の滝を伝い、もう一方はクマゲ
ラの森の乾きを潤す。
日本の天然記念物に指定されるクマゲラは、ここ白神山地のシンボルになっている。
私はクマゲラの森で、百年に一度見られるという白いクマゲラを探していた。もちろん、天然記念物で
あるから獲ることはしない。文献によれば、「死者ノ着ル白絹ノゴトク光リ輝ク」ものらしい。叶えられ
ることならば、白いクマゲラの姿を目に収め、声を耳にしたい。
晩秋のクマゲラの森は、静穏な雰囲気を黄土色の枯葉の中に閉じ込め、ひっそりと立つ木々が、迎える
冬の白さを避けるかのように立っていた。北には櫛石山、南には摩須賀岳が見える。
赤石川のそばで一呼吸ついていると、川面の乱反射が寒々とした空気をやすやすと透写し、クヌギに複
雑で留まることのないラインを描いている。そこに、いた。
白いクマゲラは、シャングリラに住む妖精だった。光陵に浮き彫りにされた体色は白というより赤でも、
黄色でもあった。あえて言うならば、太陽の色だった。
発光する鳥は、侵入しようとする外敵を追い払おうとしていた。それを見たとき、私の中で、何かが吐
き出るのがわかった。
一匹の鳥の恣意的な正義の行為が、あたかも宇宙の正義であるかのように思われ、私はいつの間にか白
いクマゲラに向かって大股で向かっていった。
クマゲラを守れ。クマゲラを守れ。
長いなぁ。すいません。
次は、「食餌」「跛行」「狢」で。
93 :
「食餌」「跛行」「狢」:02/04/23 09:13
狢が跛行した跡だった。
おれは顔がにやつくのを抑えられなかった。
ここしばらくワナの方には何も掛っておらず、下手をすれば虫でも掘って飢えを凌ぐほかなかったからだ。まるで鳥の食餌だ。
いた。3匹の子連れだった。足を引きずっているのは親だった。
おれは銃を構えて、打った。弾が親のムジナに当たった。
子供は一匹を逃したが、2匹は捕まえ、さっさと殺した。
おれは家に帰って、ムジナをさばくことにした。
皮を剥ぎ、腹を裂いて臓物を取り出した。
臓物はよく洗って血と喰ったものを取り除き、鍋に放り込んだ。
肛門に近い臭い匂いを出すところは切って捨て、それ以外の肉は燻製にすることにした。
おれが肉を切り分けていると、野犬の遠吠えが聞こえてきた。近い。
おれはそっちの方向に向かってぶっ放した。
野犬の遠吠えは少し遠くになった。おれは少し不気味に感じ、火を強くした。
鍋の臓物が煮えた。洗いが不十分だったのか、それは臭かった。
次は「犬」「フローリング」「蛍光灯」で
94 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/23 12:41
俺は犬だ。イヌとは書かないで欲しいくらいの、誇り高き犬だ。
ところがそんな俺が、やってはいけない失敗をしてしまった。
お漏らしだ。
飼い主であり、友であるサチさんが、今朝は忙しくて散歩に行けなかったのだ。
おまけに今日は、塩辛いものをつまみ食いしすぎてがぶがぶ水を飲んでしまったのだ。
そういうわけで、俺は今猛烈に困っている。
幸い床はフローリングで、すぐシミになることはないが……。
そんなことを考えているうちに、……眠ってしまった! もう時間がない。
「がちゃがちゃ。……今帰ったよ」
蛍光灯の明かりがつく。俺は焦る。もし顔に毛が生えていなければ、今蛍光灯の
白い光の下で、あおざめた俺の顔を見ることができるだろう。何とかごまかさなければ。
「わんっ、わん」
「あら、お漏らししちゃったの。いけない子ね」
優しそうな友の声にほっとしたのもつかの間、思い切りのよいパンチが飛び込んできた。
次は、「芸者」「ピアノ」「サラリーマン」でお願いします。
95 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/23 13:59
平凡なサラリーマンを続けてもう10年か・・・
僕は昼休みに会社近くの喫茶店で、湿ったサンドイッチをかじりながら
店内に流れるエマニュエル・パルのピアノに耳を傾けていた。
働く事に何の興味も持てないまま10年が過ぎた。
「場所がここじゃない。」
ふと、おかしな言葉をつぶやいてしまった。
しかし、僕はその言葉が気にいった。
去年の夏、京都に出掛けた事を思い出した。
あの時、僕は芸者さんに恋をしたのだ。30分だけの恋。
彼女に会いに行きたい。そう思った。
携帯電話をカバンから取り出し、会社に電話した。
「親戚に不幸があり、帰ります。」
ありきたりの嘘だ。電源を容赦なくオフにした。
京都に向かう新幹線の中で呟いた。
ばしょがここじゃない。
次は「眼鏡」「子供」「つまようじ」でお願いします。
私がベンチに座って溢れ出る汗を拭っていると、幼稚園年長組くらいの子供達が
駆け寄ってきた。
「わぁー パンダー パンダさんがすわってるー」
3人の子供達が物珍しそうに私を環視した。動物園の檻の中を覗くと、公園いっ
ぱいに響く声ではしゃいだ。丸々とした瞳が、無垢な心をそのまま結晶化したかの
ように輝いていた。
無邪気だな、私も昔はこんな小さかったんだな、懐古な情が私の頭を反芻した。
「パンダァ、可愛い顔してオオカミよりこわいパンダァ」
「病原菌をまきちらすパンダー」
子供達が蟻を虐殺する心を表し、それを相好に反映させたのを、私は明確に捉えた。
「わるいパンダをやっつけろー」
子供達がそれぞれのポケットからつまようじを取り出すと、問答無用、私の黒ぶち
眼鏡を突き破り、疲労した両眼を抉った。
次は「(゚∀゚)」「(-_-)」「(;´Д`)」
「眼鏡」「子供」「つまようじ」
------------
訴状
〒一二三―四五六七 富川県撒布台町頃気阿九九〇
原告 是 洋子
原告訴訟代理人 別紙代理人目録記載の通り
〒八九〇―一二三四 秋野県鯛釣市大漁町三丁目一五番六号
被告 佐々木 天五
撒布台付きまとい事件
一、被告は富川県撒布台町頃気阿地区に入ってはならない。
二、被告は原告に近づいてはならない。
三、訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決を求める。
請求の原因
一、被告佐々木天五は秋野県鯛釣に本社を置く鯛釣木材加工株式会社に
勤務する事務員である。
二、原告は昭和六〇年五月三日午後九時頃を始めとして別紙目録一掲載
の時期、計約四〇回にわたり帰宅の為自宅付近を歩行している際にレンズ
の内側に渦巻き模様を描いた紙を貼り付けた眼鏡を着用した被告が原告の
自宅付近に直立不動で居るのを目撃した。
三、原告は昭和六〇年六月三日から別紙目録二掲載の時期に計四〇通の
郵送の封書を受け取った。この封書はいずれもつまようじ三本だけが含まれ
ていた。封書の差出人名は原告であった。
------------
つかれた・・。ごめん、未完成。
なんか、ヘタレな小説志望の試作品まがいのやつが多かった気がしたので、
ちょっと変わった種類の文章を書いてみたかった。
「眼鏡」「子供」「つまようじ」。
98 :
新聞の地域欄風味に:02/04/23 20:09
目指せ億万長者?
街の小さな発明屋さん
「やったぞ」町田市の会社員、佐
々木修さん(35)とその家族は歓声
をあげた。
眼鏡の縁からつまようじが飛び
出してくる――――佐々木さんが
子供の頃から暖めてきたアイデア
だ。きっかけは小学生の頃の遠足
の時にある。
弁当を食べた佐々木さんが、い
つものようにつまようじを取り出
すと、友人達は嫌な顔をした。「
家では当然の事なのでショックで
した」
どうしたら、人に気付かれない
でつまようじが使えるか。たどり
ついた結論がつまようじを眼鏡の
縁に携帯するというアイデアだっ
た。
「いつも真面目なお父さんだから
きっと完成させてくれると思って
ました」妻の加代子さんは言う。
―――――――――――――――
「ダイス」「速読」「捕縛」
99 :
がぼ ◆46xcYpg. :02/04/23 20:16
ダイスを転がした。
「さあ、これを速読しなさい」
彼の言葉に私は捕縛されてしまった。速読しなきゃ、速読しなきゃ!
100 :
がぼ ◆46xcYpg. :02/04/23 20:17
次は「北爆」「オスマントルコ帝国」「アンガージュマン」で。
102 :
夕刊の論説風に:02/04/23 20:43
社会の視点−屯田兵に見る明治時代のダイナミズム
国際大学名誉教授 大和田満
黒船襲来により否応なしに開国することとなった
日本は西洋との乖離に衝撃を受け、しかし彼らの優
れた思想を貪欲に吸収していった。福沢諭吉は西洋
の合理的精神を積極的に享受し、脱亜論を説いた。
指導者達はおそるおそる、しかし大胆に西洋化を推
し量り、そのさなかに起こった日本の軍国主義化は
まさに千年以上も遅れたオスマントルコ帝国の再現
のそれであった。(中略)追い詰められた日本が行っ
た東北爆撃はとても賞賛できるものではない。しか
し、どこまでも西洋の思想を追い続けることで日本
はまさに国際社会におけるアンガージュマンであろ
うとしたのだ。そして日本は輝かしい真の文明開花
の道を歩むことになる。
―――――――――――――――
「地軸」「性別」「特番」
103 :
「地軸」「性別」「特番」:02/04/24 03:14
新聞のテレビ欄に変な番組があった。
”金曜特番;衝撃! 地球の性別は女だった!”
「ああ、そんな感じするわね」
亜希子はおれの後から新聞を覗きこみながらいった。
「どんな感じだよ。じゃああれか、地球が子供生むのか? 相手は誰なんだよ」
おれは馬鹿な番組も嫌いだが、馬鹿な女も嫌いだ。
「うーん、月かなあ。でも年下っぽいし、浮気相手かも」
おれはイライラしてきた。
「浮気? 年下? 亜希子、おまえな、星に性別なんかないんだよ。それぐらい解るだろ? おれはな、言っておくけど、馬鹿な冗談は嫌いなんだよ」
「本気よ。わたし」
「本気だ? おまえ、本気で地球が女だって言ってるのか?」
「大体わたしたちがいる辺りは、おへそぐらいかなあ?」
「じゃ、じゃあ、おおお前、ここがヘソだなんて言うんならな、尻はどこだ? 胸はどこだ? 言ってみろよ」
亜希子は部屋に飾ってある年代物の地球儀に近付いた。
「うーん、そうねえ。胸はここね」
亜希子はシベリアの中央部と、インドの上のあたりを指さした。
「そしてこうくびれてて」
亜希子の指は中東スエズのあたりを撫でた。
「それからお尻はこのあたり」
そしてアフリカ西海岸で止まった。
「話にならない。もういい。会社に行く」
おれは新聞を置き、椅子から立ち上がった。
鞄を取るとき、ふとさっきの地球儀が目に止まった。地軸を曲げて天球儀に寄り添うそれが、妙に艶かしく思えて仕方がなかった。
次は「天然」「ビル」「えんぴつ」で。
104 :
「天然」「ビル」「えんぴつ」:02/04/25 03:07
人の死ってドラマになるよなあ・・・
ビルの屋上に佇みながら、私はぼんやりそう考えていた。
テレビドラマでも、出産や結婚といった幸せなシーンよりは、
誰かが死んでしまうシーンで涙することが、私には多い。
もし私が死んだら、ドラマみたいに誰かが泣いてくれるかなあ・・・
あたりはすっかり夕暮れ、小学生の私ならば赤えんぴつで真っ赤に
塗ってしまっいそうなぐらいの茜空だ。
天然水の緑茶?だったかな?
大好きな彼のそばには、もう他の誰かがいるっていうCM。
あのCMの彼女は、どこか緑に包まれた場所に行き着いたけど、
今の私はこんな赤い空に囲まれて、これから赤い血に包まれるんだろうなあ。
仕方ないよね・・・、
人間に流れている血は緑色ではないんだもの。
次は「チューリップ」「開通」「飴玉」で。
(;´Д`)「おいおい
>>96のお題は完全無視かいな」
(-_-)「
>>101さんも注意を促してるじゃん」
(;´Д`)「
>>1にもお題が複数でた場合は先の投稿を優先。』って書いてあるし」
(゚∀゚)「そこらへんどうなんだよ」
(-_-)「それにしても、
>>101さんキリレス逃しちゃったね」
(;´Д`)「残念だったね
>>101さん。慰めに今度エロ画像うpしてあげるよ」
(゚∀゚)「
>>101さん
>>101さんって連呼してるが、実際
>>96と
>>101は自作自演なんだよな
そしてこのレスも自作自演……」
(;´Д`)&(-_-)「 え? 」
(゚∀゚)「……」
(;´Д`)「………」
(-_-)「……………………」
(゚∀゚)「アヒャヒャヒャヒャ」
(;´Д`)「(゚∀゚)タンハァハァハァハァ」
(゚∀゚)「アヒャハハハハハアヒャハヤヒャヒャヒャヒャヒャヒャアヒャハアヒャチューリップ」
(;´Д`)「ハァハァハァハァ開通ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァ」
(゚∀゚)「アイイイハアヒャヒャヒャヒヒヒヒアヒャハヤヒャハウヒャヒャヒャヒャヒャウヒャアヒャウヒャアヒャアアヒャハハハヒャヒャハアヒャヒヒヒヒヒ」
(;´Д`)「飴玉ハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハァハハァハァ…ウッ」
(-_-)「……ウツダシノウ」
次のお題は「齷齪」「齟齬」「デスマスク」
106 :
「齷齪(あくせく)」「齟齬(そご)」「デスマスク」:02/04/26 01:50
おれたちは壊れたデスマスクを前に沈黙した。
「谷さん、これ」
「ばか、黙れ」
谷さんはこんな(-_-)顔のお客の方をちらっと見た。
お客は引越しの細々とした荷物を確認していて、こっちを見ていなかった。
谷さんは、おもむろにクラフトテープを取り出して、もう一度封をし、そのまま納戸に押しこんだ。
結局それはお客にはバレず、おれたちは空になったトラックに乗りこんだ。
「やばかったな」
「どうすんですか、あれ」
「知らねーよ」
谷さんは車を出した。
暫く走って幹線道路に出たとき、会社から電話がかかってきた。
「はい、谷です。はい。はい、あ、はい。ええ。いやあれはですね、確認して貰えればわかるんですが、
取扱注意やこわれ物注意なんて張り紙がなかったんですよ。はい。ええ、確認してます。ええ、デジカメもあります。
いや、そういう確認は見積りの方でやるでしょ? ええ。そこは見積りとお客との間で齟齬があったってことで。
はい。はい。いや、そう言われましてもね、ええ。はい。すいません。はい。保険ってことで。
はい。じゃあ宜しくおねがいします。
はい。すいません……点数引くってよ。ま、齷齪してもしかたねーよ」
おれたちはまた、黙ってしまった。
「……恋人のなんだとさ」
幹線道路に出て3つめの信号のところで谷さんは急に口を開いた。
「ああ。あのデスマスク」
谷さんはこっちを振り向いた。こんな(;´Д`)顔で。
「気持ち悪いよな。な、あいつ、あれ見て抜いたりすんのかな。へへ、へ……はーあ」
谷さんは笑うのに飽きたように、一つ欠伸をした。
ちなみにデスマスクはこんな(゜∀゜)顔をしていた。
次は「勇者」「忘却」「懇願」で
107 :
「勇者」「忘却」「懇願」:02/04/26 02:38
勇者は憂鬱だった。
なぜ気分が沈んでしまうのか、彼にはわかっていた。
町のひとたちの忘却の早さのせいだ。
彼が凱旋した時の、町の人たちの熱狂はすさまじかった。
一時は、彼の銅像が建ちそうなほど、彼は尊敬されていた。
しかし、今は違っていた。彼は町の人たちにとって必要な
存在ではなくなっていた。
町の人々にとって、今の彼は昼間から働かずにぷらぷらしている
厄介者であった。
町の人の厳しい視線に気づかない勇者ではなかった。
ある日の朝、彼は冒険の旅に出発した。
表向きには、町長からの懇願により、西の谷に現われる怪物を退治するというのが
彼の旅の目的であった。
実際には、町長から懇願されてもいなければ、西の谷の怪物など存在しない。
しかし、こんな彼の最後の虚栄心も全くの無駄であった。町の人々は誰も
彼の旅立ちなどに関心は持たなかった。
勇者は誰一人として見送る者のいない中を、勇ましく旅立っていった。
次は、「アクアリウム」「シティ」「ハウス」で。
108 :
「アクアリウム」「シティ」「ハウス」:02/04/26 05:08
「あのさ」
自分の家の庭先で、机を挟んで少女と向かい合っている少年が口を開いた。
少女はカップに注がれた紅茶を飲みながら、上目遣いに「ん」と返事をする。
「ほら、隣町に新しい水族館が出来たよね?」
「あの安直な名前のとこ? たしかアクアリウム……ウオシティだっけ」
少女はカップを手で回しながら、首を傾げて少年を見る。その何気ない仕草に赤くなり、思わず少年は俯いた。
「う、うん。そう。それでさ、父さんが会社の人からチケットをもらって、その、今度の日曜なんだけど……僕と一緒に……」
「……あ! 上、空見て!」
急に叫んだかとおもうと、少女は立ち上がって空を指差す。顔を上げ、少年は目でそれを追った。
彼女の白い指が示すその先には、オレンジ色がふわりと浮かんでいた。青空に映える鮮やかな色も、今の彼には憎らしく感じられる。
それは、気球だった。「○×ホーム モデルハウス公開中」と書かれた垂れ幕を吊るしている。
「……珍しいね。普通、飛行船かなんかだと思うんだけどな」
そう言いつつ、少女の顔を盗み見る。案の定、呆けたような笑みでじっと気球を見つめていた。
少年は溜め息を吐きながら再び気球に目をやった。もう諦めていた。
「気球……好きだもんね」
そして十分ほどして気球が見えなくなると二人はまた椅子に座った。少年は冷めた紅茶を情けなく啜った。
それを見て少女は悪戯っぽく笑う。
「日曜、晴れるといいね」
次は「残飯」「野良犬」「眼光」で。
109 :
「残飯」「野良犬」「眼光」:02/04/26 11:26
少し風が弱まってきたためか、辺りをまた静寂が包み込み始めた。
既に舞竹通りには人一人いなかった。
やはり情報が漏れていたのだろう、これほど早く逃げられるとは。
自分の意見を聞こうともせず、ただ待機を命じた武宮のにやけた顔を思い出しながら、
川島はギザ棒を地面に叩きつけた。
とその時、ガタンと何かが倒れる音がした。
トロン銃を素早く構えながら音のした方向を見ていると、
何か黒い塊がビルの隙間から出てきた。
ちっ、軽く舌打ちをしながら川島は銃をおろした。
出て来たのは残飯をあさっていた野良犬だった。
今のいらいらした気分を払拭するために、撃ってしまおうかと思ったが、
痩せこけているその体に似合わぬ、鋭い眼光が、撃つ気を失くさせた。
(仕方ない、一度戻って榎田達と合流するか。)
また強くなってきた風の中、川島はもときた瓦礫道を引き返した。
次は、「世界」「りんご」「願い」で。
110 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/26 21:23
「世界」「りんご」「願い」
若い頃、地球をリンゴのようにナイフでむいてしまう夢を見た事
がある。クルクルと薄く本体から引き剥がされて、世界は一本の帯
になった。
そして僕はその帯を西に進んで行く。砂漠を渡り、山脈を越え。
ただひたすらに西へ向かい、ガリシアの海岸で海に身を投げると、
そこで目が覚めた。
今でも、時折思い出し、いつも考える。
その世界の端に何があったのか?
世界の端に何を求めていたのか?
そして想うのだ。
僕はその頃何を夢みて、何になりたかったのか?
願わくば、タイムマシンに乗って若い僕に問うてみたい。
今の僕は同じところをクルクルと回っているように思えるからだ。
#次のお題は「パス」「ビール」「地図」で。
げげ、ミス多し。
訂正:リンゴ→りんご
願わくば→願いが叶うなら
目が覚めたら周りは果実の海だった。
四方八方見渡しても、そこにあるのは地平線をも埋め尽くす、りんご。
とりあえず俺はりんごの海の上を歩いた。裸足から直接伝わるゴリゴリとした感触が
俺の不安を促した。俺の体重に堪えきれず、赤いりんごが潰れてしまうことがあった。
そのたび、蛭のように果汁が素足に粘りついた。
何百歩、何千歩と歩いたが、人影が見当たらない。動物や植物もない。あるのは
りんごという悪魔の果実だけだ。
転ばないように注意しながら上を見上げたが、薄赤色の、りんごの虚空が広がっ
ているだけだった。もしかしたらずっとこの世界の中をさ迷うのかもしれない。
神よお願いだ、この不気味な夢から醒まさせてくれ。しかし、願いも虚しく、何も変
わらなかった。この嘆願は虚空に吸い込まれているような気がした。
咽喉が渇き、空腹感に見舞われた。俺は足元の、無間大数の同一の形をしたりんごを
拾い、無心に齧った。
歯に磨り潰された果実は、俺の胃へと落ちていく。実はこのりんごは生命を宿してい
て、時間が経つにつれ芽を生やし、子葉が萌し、体内で成長した枝が俺の体を突き破り、
いつしか俺はりんごの木そのものになってこの世界の中で永遠にりんごを生産し続けな
ければならないのだ、そんな幻想をミンチ状になった果肉に込めた。
水も花も草も家も時間も太陽も月も友人も女も嫌いな奴も存在しない、悪魔の実だけ
が存在する世界。ここは需要が多過ぎる。
俺は、歯槽膿漏の血が附着した削れたりんごを凝視するだけだった。
お題は「パス」「ビール」「地図」で。
113 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/26 22:27
112 名前:「パス」「ビール」「地図」 :02/04/26 22:25
丸めた地図を広げるように、簡素スレを何度も読み返した。
……ない、幾ら探しても、オレが投稿した即興文の感想が見当たらない!
ショックだった。30分あまり8分の時間を費やし、苦心の末、完成させ
た文に、パスが通らなかったのだ!
たしかに
>>105のような電波文は認められなくても仕方がないにせよ、
>>95の文は貴重な感想を貰いたくて(脱字や乱文が目立ってしまったが)
キーボードを叩いたんだ!
俺は真意を確かめる為、俺は一心不乱にレスを返した、
「俺の文章は完全無視ですか?」って。で、返ってきたレスは
『うぜーんだよ』
『悪いけれど、きみの行動・言動は怪しすぎる。
また、個人的に他の参加者に迷惑をかけるようなお題の出し方はキライ。
よって、放置させてもらった。』
くそったれがあ!!!ションベン蟻め!!!
オレの文章はお題流し以下か!?明らかな電波文以下か!?!?
「つまらん」や「無評価」以下の評価か!!感想を付けられないってことが、
どんなに屈辱的で悲惨なことか解かってるのか!!!!!!
もういい!!名誉毀損で訴えてやる!!!いや、それだけでは怒りは収まらない!!
多量のビールを煽って急性アルコール中毒を患って死んでやる!!!!!
そしておまえは『哀れな男を自殺させた者』と云う自責を背負わせてやる!!!
わははは!!!!ざまあみrがばがばgばがばがbごぼごぼごっげばあ!!!
--------------------------------------------------------------------------
衝撃的だった。まさか↑のような人が存在するなんて。
世界ってひろいんだなぁ。
114 :
「パス」「ビール」「地図」:02/04/26 22:34
僕はアルバイトをして貯めたお金で電動自転車を買った。
ヤマハの「パス」という自転車である。坂道に差し掛かると電気の力で
補助してくれるものだ。
僕は20歳で、まわりの友人たちは車やバイクの免許を取りに行っている。
しかし、僕にはそれができない。なぜなら、視覚に問題があり、適性試験
に通らないのである。普通に生活する分にはそれほど不自由はないのだが、
免許は諦めるしかないのだ。
その時はまだ、自分にとって、それがたいして大きな事とは感じなかった。
成人式がやってきた。外は恐ろしく寒く、道路は雪で隠れ、アイスバーン
状態になっていた。同級生たちは、みな車でやってきていた。
式場へ、僕は「パス」で向かった。その途中に、車に煽られた。昔、僕を
いじめた奴らが、これでもかといわんばかりに改造されたワゴン車に大勢
で乗り込んでいた。僕を執拗に煽った。
「何やってんの?OO?」
「自転車かよ!ははは。このクソ寒いのにな。」
窓から顔を出し、僕に向かって大声で叫ぶ。
その後、クラクションを鳴らされた。その音に驚いた僕は、道路脇の水路
に転げ落ちた。激しい痛みが全身を包んだ。「パス」は壊れた。
「ははは、ざまー!マヌケ!」
血だらけの僕を指差し、奴らは笑った。そして行ってしまった。
僕は、その後、徒歩で成人式会場についた。みんなすでに集まっていた。
血だらけの僕を見て、みんなが静まりかえった。
式場のテーブルにはお酒や見たこともない豪華な食べ物が並べられている。
僕はビール瓶の口のほうを掴み、テーブルにたたきつけた。
これで武器ができあがった。映画で見たことがある。それを思い出した。
目指すは、僕の「パス」を壊した奴らだ。
次は「コップ」「肩」「予感」でお願いします。
116 :
「コップ」「肩」「予感」:02/04/26 22:50
ウィスキーの入ったコップをつき合わせてから、僕らの時間が始まる。
時間の軸が狂ったようにゆっくりと流れ始める。
僕の目には彼女以外に何も入らないし、無論彼女もそうだ。
この異様に遅い時間を引き止めたいとも思うが、しかしそう思うたび、
これはどこかで自身に許容できぬ時間ではないかという気がする。
その時間の終わりは唐突で、しかし決まりきっている。
あるとき不意に、肩を越して流れてくる蛍光灯の光が妙にまぶしくなる。
ちら、と一瞬。それで僕と彼女の時間は終わる。
そして僕は予感する、いや、確信する。
明日も必ず同じように、いくぶんかの時間を彼女とのコミュニケーションにあてる、と。
それは義務であり、権利であり、僕と彼女の意思。
僕は電気を落とすと、わずかな廊下の光を頼りに、彼女に笑いかける。
彼女はいつものようにだらだらと笑顔を晒している。
僕は決まってもう一杯のウィスキーを飲まねば眠れない。
次は、「一球」「クッション」「クラッカー」でお願いします
117 :
「一球」「クッション」「クラッカー」:02/04/27 00:21
「一球」「クッション」「クラッカー」
ラヂオは、巨人軍の江川が投じた運命の一球に関して延々と語り続けている。
俺はというと、座りの悪いクッションを敷き直し愛美の関心がTVから離れる
のを待っていた。
試合の趨勢が決まり緊張の糸が切れた愛美の精神状態を十分確かめ、ふいに
隠し持っていたクラッカーを鳴らした。
「誕生日、おめでとう。ようこそ三十代へ」
軽い冗談のつもりだったのに、愛美の返事は平手の往復ビンタだった。
思いがけない自損事故で、俺が彼女にプロポーズを果たしたのは、それから
十二時間後の事である。
次は「トリック」「探偵」「双子」でヨロシコ
118 :
Yosshies:02/04/27 01:18
推理小説作家である古畑は、家族の寝静まった深夜、書斎にこもり、プロットを
考えている。
犯人が実は双子だった、というトリックを使った完全犯罪を、探偵が少しずつ解明
していくという話にしようか、それとももうこんな古典的なトリックははやらない
のだろうか。
机の片隅、左手においてある灰皿の奥においてある写真立て、そしてそこに飾られて
いる写真が古畑の目にとまった。
双子か。俺にも双子の兄貴がいたっけ。そういえば兄貴から最近連絡がこないが、
ちょうど同じ頃、古畑の兄はミカン畑でたばこを吹かしながら考えている。
弟が死んで十一年か。変な写真を突然一枚送ってきたのが最後だったが。あの写真は、
そういえば今この場所の風景とそっくり同じだったんじゃないか。
ミカン畑に漂う煙の向こうに、誰かのはにかんだ笑顔が見えた気がした。
119 :
Yosshies:02/04/27 01:19
ごめんなさい。次のお題です。
「夏目漱石」「ネットワーク」「クラシック」
120 :
「トリック」「探偵」「双子」:02/04/27 01:30
気が付くと縄で縛られていた。どうやらあの黒服の中には色々とものを隠し持っているらしい。
畜生と罵りを浴びせかけたところで、中山は振り向いた双子の姉の方に蹴りをもらった。
細い足から繰り出されるそれは確実に腹の急所を捉えており、中山は身体を折って痛みに耐えた。
頭を上げて恨みがましく睨むも、今度は顔を足刀で打たれて床に転がされた。うつ伏せのまま、彼は呟く。
「クソッタレ……なんだッてんだよ……」
「トリック、オア、トリート!」
雑居ビルの一室、探偵事務所「三毛猫」の安っぽい扉を叩いたのは、まだ年端もいかぬ少女達だった。
二人ともハロウィンの仮装のつもりなのか、黒いマントにとんがり帽子で魔女の風を装っていた。
彼女等は全く同じ顔の作りをしていたために、中山は一瞬本当の魔女なのかと思ったが、すぐに、ああ双子なのだと納得した。
「なんだお前等は? 今はハロウィンじゃねぇし、ここは日本だぞ? 遊ぶなら余所に行ってやってくれ」
久しぶりの客かと思って喜んだのも束の間、こんなガキの遊びに付き合っていられるかと中山が二人を追い出そうとしたその瞬間、
「これは遊びじゃないの、中山さん」
左側にいた少女の右手に、二十二口径のリボルバーが握られているのが見えた。
それなりに修羅場を潜ってきている中山は、無言で少女に手を伸ばしたところで動きを止めた。
右こめかみに死を招く鉄筒が押し当てられている。もし下手に動けば鉛玉が頭の中身をかき回すに違いない。
「お姉ちゃんに触ったら容赦なく撃ちますから」
「……りょーかい」
後ろからの警告に中山がゆっくりと手を挙げようとした時、目の前の少女の腕がぶれた。
見事なテンプルパンチだった。ぐらりと揺さぶられた脳は意識を繋ぎ止めるには力不足だった。
意識が混濁する。姉と呼ばれた少女が「なめるな、バカ」と呟く言葉を子守歌に中山は眠った。
次は「インド」「埋葬」「ザック」で。
悪い。お題は119ので。
122 :
「夏目漱石」「ネットワーク」「クラシック」:02/04/27 13:48
財布の中には夏目漱石が一枚。
月初めにこれじゃ、とてもじゃないがやっていけない。
それでヤケになって、駅前で売っていた980円のクラシックを一枚買った。
ゼロだ。空の財布はある意味気持ちがいい。
米は、2ヶ月前に買ったのがある。
定期はまだ残っている。
会社の食堂は前の月のが自動的に精算される。
ま、なんとかやっていけるさ。
おれはさっき買ったパソコンの領収書とその他ネットワーク関係のパーツを眺めた。
これでおれもインターネットデビューか。
おれはにやにやしながら駅の券売機に向かった。
その時、帰りの電車賃がないことに気が付いた。
アキバから大井町までは遠い。が、歩くしかなかった。
それは泣ける距離だった。
半分実話。
次は120の「インド」「埋葬」「ザック」で。
123 :
「インド」「埋葬」「ザック」:02/04/27 22:21
日曜日の昼過ぎ、井上がスコップを持って家にやってきた。
「おい、山田!今すぐ用意をしろ!出かけるぞ!」
「出かけるってどこへ?それにそのスコップはなんだよ?」
俺がそう問いかけると、井上は得意そうにポケットから妙な紙切れを取り出し、俺に見せた。
「宝の地図だ、昨日の学校帰りに変なオヤジが200円で売ってくれたんだよ、
そこでな山田、お前もまぜてやるからちょっと手伝えよ。大判小判がザックザクだぞ」
俺はあきれた。以前から馬鹿だと思っていたが、ここまで馬鹿とは・・・
しかし、俺は結局井上についていくことにした。どうせ退屈していたからだ。
しかし、地図どおりに宝はあっけなく見つかった、インド人もビックリだ。
「な、山田、俺についてきてよかったろう、大判小判じゃなかったけど、
こんなキレイな宝石がいっぱいだぜ、俺たち億万長者だぜ!」
「ああ、でもなんかあっけなさすぎで、信じられないな」
「いいって、いいって、宝は見つけたもん勝ちだぜ、約束どおり半分こな」
その日俺たちはたくさんの宝石をもって家に帰った。
それから数日間いろいろと大変だった。俺たちが宝を掘り出した場所、
そこはあるサラ金会社社長の私有地であり、その社長の死後、遺言に従って遺体を埋葬した
場所らしかった。故人の信念らしく墓石や墓標は建てられなかったみたいだが。
社長は極度の人間不信であり、全財産を宝石にして体に埋め込んでたということが後でわかった。
俺たちはきっと宝石に夢中で、骸骨には気づかなかったのだろう。
たいした罪には問われなかったが、俺たちはとんだ墓荒らしとなってしまった。
井上に地図を売りつけたオヤジは、きっとその社長にひどい目にあわされたに違いない。
次は、「りんご飴」「ミサイル」「片思い」で
124 :
りんご飴、ミサイル、片思い:02/04/28 00:50
夏祭りなどというたいして好きでもない場所に来ているのは健二に誘われたからだ。
クールな瞳。細い指。シャイな笑顔。
そのひとつひとつどれを取っても自分好みで、私はあっという間に恋をした。
残念ながら片思いだけれど。
だけど、今夜は間違いなくチャンスだ。片思いをとっとと終わらせよう。
私はりんご飴を嘗めながらしなを作って、かれに寄りかかった。
「彼女とか、いるの? 」
「え? なんで? 」
「ん? いやなんで今夜私を誘ってくれたのかなって思って」
「……そのことなんだけど、実はね」
「ん? 」
「キミの親友のさゆりちゃん、仲良くしたいなぁと思ってお願いしようと」
私の恋は弾道ミサイルのように、あっという間に燃え上がっては落ちるだけ。
私はりんご飴を思い切り囓った。
チックショウ!
実体験とかじゃ無いですよー(w
次のお題は、コンパクトディスク、英和辞典、歯ブラシで
125 :
「りんご飴」「ミサイル」「片思い」:02/04/28 01:07
ああ、投稿しようと思ったら先客がいらっしゃるようで。
でも折角書きましたので、書き込ませて頂きます。お許しください。
行き交う人々は皆、胸の内に古代のリズムを打つ。
雑踏が各々のバチを強く握り締め、鬼のように太鼓を叩く。
次々と湧き出てくる炎を誰も止めることが出来ない。躁病の嵐。そう、祭りだ。
高校生の俺は風船屋をやっていた。ボランティアだ。親父の友人の手伝い。
買っていく人こそ少ないが、子どもの笑顔の量は周りの夜店の中で一番だ。
球形のオーソドックスなものからスペースシャトルのような手の込んだものまで、
あらゆるものを揃えている。彼女にいい所を見せる絶好の機会でもあるからな。
隣の出店でりんご飴を売っている。色白で髪の長い女性だ。
現在彼女に片思い中。彼女もボランティアだ。実は親父の友人の娘。
仕事の合間に彼女に近づこうという魂胆だった。
「ふう、なかなか風船って売れないんだよ。俺色々工夫しているんだけどなぁ」
彼女は俺の述懐を聞いて愛想の良い笑顔を作った。
と、その時だった。人ごみの中からミサイルが飛んできて俺の目の前を横切った。
ミサイルは彼女の手首に命中し、力の抜けた彼女の手からりんご飴が離れた。
しばらくの間、りんご飴は空中アクロバットを見せた。
それは飴特有の透明感を武器に俺を圧倒した。りんご飴はかくも夜空を舞うのか。
だが、驚くべきはそんなことではなかった。
着地点はなんと彼女の美しい黒髪だった。可哀想に。髪を切るしかない。
温まったりんご飴は溶け出していた。傍らには役目を終え、しおれてしまったミサイルがそっと横たわっていた。
空気を噴出することによって進む風船。
俺の作った「俺様ミサイル弐式」だった。りんご飴のように溶けてしまいたかった。
お題はもちろん、124さんのコンパクトディスク、英和辞典、歯ブラシで。
板汚しすみませんでした。
このスレのお約束
1:前の投稿者が決めた3つの語(句)を全て使って文章を書く。
2:小説・評論・雑文・通告・??系、ジャンルは自由。官能系はしらけるので自粛。
3:文章は5行以上15行以下を目安に。
4:最後の行に次の投稿者のために3つの語(句)を示す。ただし、固有名詞は避けること。
5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
6:感想のいらない人は、本文もしくはメール欄にその旨を記入のこと。
特に3番「文章は5行以上15行以下を目安に」は忘れやすい。注意されたし。
127 :
みかんうんこ:02/04/28 01:56
ぼくが気づかなかったからいけなかったんだね。
彼女から帰ってきたコンパクトディスクのケースを、どうしてすぐに開いてみなかったんだろう。そこに挟まれた英和辞典から破り取ったページは「help」だった。
彼女がいなくなってがらんとした部屋に、残された二本の歯ブラシを眺めながら、ぼくはいつまでも立ち尽くしていた。遠くで、バイクの走り抜ける排気音が響いていた。音は、乾いて、夢のようだった。寂しい、夢のようだった。
静かなワンシーンを書いてみました。批評お願いします。
次の方、犬、パーソナリティー、熱気球でお願いします
128 :
「犬」「パーソナリティー」「熱気球」:02/04/28 03:35
なにも俺は自分の企画が通らなかったからって怒ってんじゃないよ
あの課長の言い方が許せないっての!
どうせ課長は会社の犬だからよ、俺の出す斬新なアイデアを
受け入れられないってのは解ってたわけ、ただまあ俺は課長が
どれだけ俺の考えについてこれるかってのをのを確かめたわけよ
それなのに、奴の言い草ときたら、もうなってないの
もう俺のパーソナリティーってのを完全に無視!
やってらんないよ、まったく・・・
おい、お前!ちゃんと聞いてんのかよ!
激しい憤りのせいか、ただでさえ太りすぎで暑苦しい先輩が
発する熱気はヒートアップしていた。
はっきり言って僕は先輩の愚痴など途中から聞いていなかった
ビールを飲みながら、僕は別のことを考えていた
この先輩と一緒に熱気球に乗ったら、その怒りによる熱気で少しは燃料代が浮くかなあ、と
しかし、僕はその考えをすぐに改めた。なんたって先輩はあの体重だもの。
次は、「匂い」「勾玉」「飴玉」でお願いします
129 :
Yosshies:02/04/28 04:51
考古学ゼミでの一場面。出し抜けにオーバードクターのメッサが言う、
「それにしてもさ、みんな古代の人が、どうして勾玉なんて作ったんだと思う。
まあそりゃさ、みんなだってあれが何の目的で作られたかは、抗議とかで聞いて
ると思うし、文献だって読んだことがあると思うんだけど、ああいうのって、結
局憶測でしかないわけじゃん。みんなああいうの、本気で信じてるの」
一番元気のよい女子学生の、マインが言う。
「先輩はどう考えてるんですか」
「俺は、まあ専門でもないからあんまり考えたことないんだけど、宗教的儀式の
ためのものって言うのはなんか納得がいかないんだよね。なんか宗教的儀式のた
めのものって言うのは、よくわからないからそうしておく的な便宜的役割でしか
ないような気がするし。だから、とりあえず貨幣的なものだったらおもしろいな、
くらいに僕は考えているよ。」
メッサは何となく、そう答えた。実はメッサだって、後輩をからかってみただけ
なのだ。ところがそれと同時にあちこちで電話が鳴った。
「勾玉は古代の貨幣だったのですね。」
「勾玉が古代の貨幣であることを発見したメッサさんをお願いします」
「どうやって勾玉が古代の貨幣であることを発見したのですか」
「勾玉についての後援会をお願いします」
メッサにはこの間から、うそを言うとそれが本当になると言う能力が身について
いる。おまけにそれがあっという間に世間に知られてしまうのだ。今回が初めて
というわけではないので、さすがに驚きはしなくなったが、これでいいのか疑問
には感じている。
せっかくだから、今度はどこかで、飴玉は本当は神聖な場を作り出すための道具
だと話そうかな。それとも匂いこそがカウンセリングの絶対条件なのだ、とか。
次のお代は「ノスタルジー」、「クリスタル」、「カバン」で。
130 :
「ノスタルジー」「クリスタル」「カバン」:02/04/28 08:04
このカバンどうしよう。
ぼくは家へ帰るなり、おやつも食べずに自分の部屋へ向かった。
学校帰り友達と別れて、もうすぐで家へ着くという時、夏なのに黒い
コートを着た男と出会った。
「タカハシナオト君だね。」「そうだけど。」
「このカバンを受け取ってくれ。」
そう言うといきなり男はカバンを押し付けてきた。
「何でぼくにこのカバンを?」
男は何も答えずに去っていった。
とりあえず開けてみようか。ぼくはさまざまな疑問をそのままにし
開けてみることにした。中からでてきたのは一枚の紙切れとゲーム
でよく見るクリスタルだった。紙切れを読んでみると、
「私は20年後の君だ。このクリスタルは私がつらい時、苦しい時
困った時に、これを見ると不思議と力が湧いてきた。きっと君も
同じ気持ちになるはずだ。誰にも言わず受け取ってくれ。」
あるビルの屋上に黒いコートを着た男が立っていた。
(もう思い残すことは無い。身寄りの無い俺にとってサチコお前が
全てだった。今、お前と初めて会ったこの場所、この格好、この時
間で全てを終わらせる。お前から貰ったクリスタル、息子に渡した
のはちょっとしたノスタルジーということで許してくれ。さようなら俺
が唯一愛した人)
男は夏深き青空へ飛び立った。
次は「水」「家」「事件」で
131 :
「水」「家」「事件」:02/04/28 11:40
男は噴水を眺めながら、コーヒーを飲む。
傍らには、幾重にも花を重ねる雪のような色をしたサクラ。
ウグイスの慎ましい鳴き声。
朝の光が優しく世界を包んでいた。
この雄大な大地に男はただ一人。
悠久の自然を満喫する。
ふと、誰かの声が聞こえる。
「そう、家の子殺害事件だ。お前は佐渡へ流罪だ」
何の話だ? っていうかいつの時代だ? お門違いなのだが。
男は目を開いた。なんの変哲もない、いつものベッドの上だった。
……夢だったのか。……あ、失敗したな。
枕の横には、色あせた歴史書と観光のパンフレットが置いてあった。
途中までは良かったのだ。和洋折衷の美しい世界。
が、やはり男は一日本人でしかなかったようだ。
次は「蛍」「過ち」「蒸気」で。
132 :
「蛍」「過ち」「蒸気」:02/04/28 12:45
私が露天風呂から宿に帰って来て随分経った。
窓を開けて涼みながらビールを飲んでいたのが、
さすがに少し肌寒く感じるほどになった。
それにしても妻の帰りが遅い。
そもそもこんなに長湯の奴ではなかったのだが。
窓の外に幾つもの点が見えた。蛍だろうか。
しかし、はっきりと人のざわめきが聞き取れたはじめると、
自分の過ちに気づいた。懐中電灯を手にした人々が何やら
集まって騒いでいるのだ。
私は妙な胸騒ぎを覚えた。部屋を出て、サンダルを引っ掛けて
ざわめきのする方へかけて行った。何が起きているのかすぐに分かった。
露天風呂で誰か女性が死んでいるらしい。私は人ごみを押し分けて
その露天風呂へ向かった。そこに着くと、電灯の光と蒸気のもやの中に
私の妻が横たわっているのが見えた・・・
次は「モーツァルト」、「石鹸」、「墓銘」で。
↑
固有名詞避けるべしの、掟を破っていました。
修正いたします。
次は「作曲家」、「石鹸」、「墓銘」でお願いいたします。
134 :
「作曲家」「石鹸」「墓銘」:02/04/28 15:24
ある石鹸会社が石鹸のイメージアップのために、
ある作曲家にイメージソングをつくらせた。
しかし、この曲は世間に受け入れられず、逆に
世の奥様たちの総スカンをくらい、石鹸会社の売上は
みるみる落ちていった。
この出来事を機に、その作曲家には曲の注文が全く入らなくなり、
石鹸のイメージソングは、彼が最後に作った曲となった。
ちなみに、彼の墓銘碑となったその曲のタイトルは『ソープ天国』という。
次は、「艦隊」「明星」「スーパーマーケット」でお願いします。
135 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/28 22:18
「艦隊」「明星」「スーパーマーケット」
昔、ウチの町内にあった「スーパー スズキ」は不思議な店だった。
スーパーマーケットとは名ばかりの個人商店みたいな店だったが、妙に品揃
えが良く、となりのヒロシ兄ちゃんが何とか艦隊のプラモデル一揃いそろえた
のもそこだったし、向かいの恭子姉ちゃんが「明星」を毎月買っていたのもそ
こだった。やんちゃしてた僕がこっそり煙草を買っていたのもまたそこだった。
そこのオヤジさんは人当たり良く、いつも目尻に笑い皺がよっていた。どこ
そこ構わず顔を出し、町内の名物オヤジになっていた。今考えると情報収集を
欠かさずピンポイントで町の人の欲しい商品を仕入れていたのだろう。
だからオヤジさんが議員になったときも、あんな目配せの効く人が政治家に
はむいているのだろうと思っていた。それだけに汚職で党を追われたと聞いて
何を間違ってそうなったのか、不思議だった。
しかし、そのマメマメしい”仕事ぶり”を聞くにつれ、いかにもオヤジさん
らしいと納得させられた。
オヤジさんが仕入れたモノを一体誰が使っていたのだろう?
それが今僕の抱く素朴な疑問だ。
#次のお題は「経済」「教材」「殺人罪」で。
136 :
「経済」「教材」「殺人罪」:02/04/28 22:48
「社長は確か、開発一筋でしたよね。」
「あぁ。確かそうだったな。」
春雨の降る日曜日、私達は白いテントの下弔問客の応対に借り出されていた。
製薬会社社長、自殺。その文字を経済誌に見つけたとき、私はそれがまさか自分の会社の社長の事だ
とは思いも寄らなかった。ひっそりとした裏路地の寺院。弔問客もほとんどいない。
「社長は、常々・・・俺は、教科書に載る様な、そんな薬を作りたいと仰ってた。」
バブルの頃、当社は御多分に漏れず株と土地に手を出した。そして、バブルがはじけた。会社に残った
損失、そして、薬害訴訟。
「あの損失さえなければ、わが社はあんな薬とっとと撤退できたんだ。結局、社長を殺したのは経済だ
ったんだろうな。」
原告団が聞いたら、怒鳴り込んできそうな言い分ではあった。が、それには一抹の事実もあるだろう。
「そういえば、社長の遺体は?」
「あぁ、医学発展の為・・・献体にな。医学生の教材に提供されたそうだ。」
運び出される遺体のない棺。見送るのはカメラの砲列だけだった。
14行です。次は「太陽」「手品師」「猫」でいかがでしょうか?
137 :
「経済」「教材」「殺人罪」:02/04/28 22:51
あ、ごめんなさい、お題が一つ抜けてる!!
「社長は確か、開発一筋でしたよね。」
「あぁ。確かそうだったな。」
春雨の降る日曜日、私達は白いテントの下弔問客の応対に借り出されていた。
製薬会社社長、自殺。その文字を経済誌に見つけたとき、私はそれがまさか自分の会社の社長の事だ
とは思いも寄らなかった。ひっそりとした裏路地の寺院。弔問客もほとんどいない。
「社長は、常々・・・俺は、教科書に載る様な、そんな薬を作りたいと仰ってた。それが殺人罪で起訴
されるなんてな。」
バブルの頃、当社は御多分に漏れず株と土地に手を出した。そして、バブルがはじけた。会社に残った
損失、そして、薬害訴訟。
「あの損失さえなければ、わが社はあんな薬とっとと撤退できたんだ。結局、社長を殺したのは経済だ
ったんだろうな。」
原告団が聞いたら、怒鳴り込んできそうな言い分ではあった。が、それには一抹の事実もあるだろう。
「そういえば、社長の遺体は?」
「あぁ、医学発展の為・・・献体にな。医学生の教材に提供されたそうだ。」
運び出される遺体のない棺。見送るのはカメラの砲列だけだった。
15行です。まったくもって申し訳ないです。
次は「太陽」「手品師」「猫」でいかがでしょうか?
138 :
「太陽」「手品師」「猫」:02/04/29 01:34
わたしの彼は、プロの手品師を目指して修行中。
彼が目標としている手品師はハリー・フーディーニ。
フーディーニのように命がけの脱出劇をやって、
観客にハラハラドキドキさせるんだって。
わたしとしては、そんな手品よりも、
マスクマジシャンのような大掛かりな手品が好きなんだけどな。
彼が得意げな顔して、
「フジテレビや東京タワーのような小物では無く、太陽を消します!」
って言ったらおもしろいんだけどな。
これから彼は、わたしの猫をつかって、
水中脱出劇のリハーサルをやるんだって。
ほんとは、わたしの猫にも彼にも危ない目にはあわせたくないんどな・・・
次は「月光」「キス」「ブルーベリー」でお願いします
139 :
「月光」「キス」「ブルーベリー」:02/04/29 02:11
ブルーベリージャムを作るのは久しぶりだった。
ブルーベリーにしようって思ったのは、郁くんがプログラマだからだ。
目にいいものがいいかなって、そんな感じで決めた。
ジャムが出来たらブルーベリージャムパンを焼こう。
明日、日曜はそれを持って、郁くんのところに行こう。
で、日曜日。郁くんは留守だった。
わたしは郁くんの部屋の前でずっと待つことにした。
昼が過ぎて、夜になって、お腹が空いたからパンを食べてた時に郁くんが帰ってきた。
「美枝、どうしたの? おれ約束忘れてた?」
「んん。逢いたかったから。待ってたのは、わたしの勝手。ごめんね。迷惑だった?」
「ううん。結構嬉しい。ありがとう」
わたしたちは月光の下、キスをした。
「なんか、甘酸っぱい」
「あ、それね、多分ジャムの味」
わたしはぺろっと舌を出した。
次は「天然素材」「うま味」「心」で。
140 :
天然素材 うま味 心:02/04/29 03:31
「ひとつどうだいこの味噌汁。チューブで食べるとまた格別だぜ?」
ボビーは船内でゆっくりとトルネードしながら、濃縮食料のチューブを薦めて来た。
「いらないよ。どうも日本食のチューブだけは好きになれない」
と、私は英語で答えた。
「乗組員でジャパニーズはお前だけなのにな」
「濃縮チューブでどんな味でも再現できるようになったけど、やっぱり本物の天然
素材で作ったものにはかなわないよ」
私は窓からビー玉みたいな地球を眺めた。ガガーリンはこれを見て、「地球は青か
った」と言ったのだ。確かに今も青いが、中身は、随分変わった。
「うま味の成分は完璧に再現してあるのにな。やっぱりサムライはそういうこだわり
を持ち続けるのかい?」とボビー。
私はそのからかいに応じて、こう答えた。
「おう。たとえ放射能まみれだとしても、本物にかわるものはないよ。地球だってそう
だろう? 大切なのはこだわる心、最後までしがみつくことさ…」
「エンジェル」「風船」「垢」
141 :
「エンジェル」「風船」「垢」:02/04/29 05:08
エンジェルブローって知ってます?
それはとてもきまぐれなつむじ風。
こどもたちの風船をとばしてしまうこともあれば、
桜を散らしてしまうこともある、
ちょっといたずらが過ぎることもある困った風。
でも、怒らないでくださいね、
天に召される人たちの、この世でついた垢を吹き飛ばすために、
神様がお吹かしになっている大事な風なのです。
ほら、あなたもこの風に吹かれて感じません?
ちょっと心が洗われるような心地よさを。
次は、「バイオテクノロジー」「バイオレンス」「バイオレット」でお願いします。
「バイオテクノロジー」「バイオレンス」「バイオレット」
スミレ色の袴を目印として始まった宝塚歌劇も「バイオレット・レビュー」
という様に洗練されたものになっていた。
歌劇女優を養成する音楽学校も、競争率が倍々ゲームで上がってゆく。
「あした手術かー」
「ん、でもそんなに痛くないって・・・応援にきてね」
バイオで宿題をうつ腕と脇には、既に完璧な脱毛処理がなされていた。
バイオテクノロジーを用いた筋強化手術!
既に新世紀宝塚歌劇は、美形と共に過激なバイオレンスシーンも要求する。
減肥茶をすする彼女の腕と脇には、既に完璧な脱毛処理がなされていた。
もう一生腋毛が生える事はないのか。と思うと急に哀しくなってきた。
「なんなら、僕が一年位代わろーか。黙ってればわからないし」
というのが10年前の話だ・・・まさか本当にそうなるとは(^ ^)
そして今、俺は性別を隠しながら、いまだ舞台に立っている。
彼女もそれなりに喜んでいる。名目だけでも、自分が舞台に立っているのだ。
そして俺は・・・俺は誰だろう(笑)
※三題に固執したらこんなの;
次のお題は:「不死鳥」「ウンコ」「生命」でお願いします。
143 :
不死鳥、ウンコ、生命:02/04/29 10:31
全存在をかけた命がけの大博打。
しげるは覚悟を決めていた。究極の状況で、自分自身の存在を確かめること、それ以外に、自分にとってのレーゾンデートルなんて見つかるわけがない。
思い詰めて、砂塵の黄色く乾いたアフガニスタンの大地へとたどり着き、国連軍による「不死鳥掃討作戦」に参戦するフランス軍外人部隊の門を叩いたしげるにとって、だから、それは思いもかけない状況だった。
「ボンジュール、ジャップのお方、今担当官はウンコに行っております。しばらくそこいら辺に座ってお待ち下さい」
生命の存続そのものを問いかける戦場にあって、むしろその究極の問いかけこそが精神を麻痺させるのか。
あまりにも外人部隊はのんきだった。
まるで、昼寝から覚めたあとの幼稚園児が読む、絵本のように。
添削、批評(辛口)歓迎です。お願いします。
次の作家の方は、「いいわけ」「トリビュート」「邂逅」でお願いします。
144 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/29 10:32
あ、行編集ミス発見。恥かしい^^;
あと1行削れたのか・・・損したYO-
145 :
名無し物書き@推敲中? :02/04/29 10:45
>>144 どの書き込みのこと言ってるの? 削れたって何?
「いいわけ」「トリビュート」「邂逅」
幾多の死線をくぐり抜けてきた将軍にも、最後の時がやってきた。
「戦友と逢ってくるよ」と言い残して息をひきとる。
もしもあの世があるのなら、敵兵とも邂逅できるかもしれない。
「さあ、いよいよ期待の大型新人!」
あの世は、沸きに湧いていた。
全冥界、1兆1千億人の前で公開される、将軍の前世の記録。
17マイル型テレビに、将軍のいわばトリビュートが再生される。
「鼻くそをしげしげと観察する将軍」「初めてHな写真を見る将軍」
「回転寿司の皿数をこっそりごまかす将軍」「トイレで紙がない将軍」
抱腹絶倒!何億のトマトやら卵やらが、拘束椅子の将軍に投げつけられる。
「待ってくれ!もっと有意義な業績があるはずだろう」
「いいわけするなー」観客が喚く。
「そんな歴史ドキュメンタリーなんて、TVでいやほど見てるんだよ」
そう、観客が求めているのはそんなものではなかった。
「将軍の恥かしい画像」は延々と続いた。時間はたっぷりある。
死にたいほど恥かしい将軍。だけどもう死んでる。
※GWにパソコンで三題・・・恥かしい(笑)
>>145 >>どの書き込みのこと言ってるの? 削れたって何?
あ、
>>142のことです、1個とんでます。
これでも行数削減に懸命で。
でも探さないで(笑)
次のお題は:「珊瑚礁」「水着」「休日出勤」でお願いします。
148 :
「珊瑚礁」「水着」「休日出勤」:02/04/29 13:38
呼び出され休日出勤したらオフィスに誰もいないのである。
驚いて向かいのビーチを見ると、社員がみんな水着で波と戯れているのである。
あわててビーチに行くと、珊瑚礁に白い日射しが射して美しいのである。
事務の女の子たちの水着がまぶしいのである。
若ハゲの課長代理の頭もまぶしいのである。
まぶしさに思わず目を細めると、そこに大鶴義丹が仁王立ち!
かくして、ぶちこわしの休日出勤となったのである。
次は「忍術」「レバーペースト」「尻ぬぐい」でヨロシク!
149 :
「忍術」「レバーペースト」「尻ぬぐい」:02/04/29 14:17
今年から、小学校の授業で忍術を教えることになった。
火遁の術などを教えているのではない。
甘やかされて育ち、ガマンすることをしらないこどもだちに、
耐え忍ぶ術を教えているのだ。
今日の忍術の授業は「好き嫌いを無くそう」。
こどもたちがそれぞれ嫌いな食べ物を、ガマンして食べさせる内容だ。
教師はこどもたちの見本とならなければならない
俺の目の前には、大嫌いなレバーペーストが運ばれてきた。
俺は目をつぶって、いっきにそれを口に含み、飲み込んだ。
どんなに味を感じようとしなくても、生くさい味が口中に広がる。
俺がこんなに頑張ったのに、こどもたちはなかなか食べようとしない。
俺はこどもたちに食べ物の大事さを教えながら、なんとか食べさせなければならない。
バカ親どもが、なんで家庭教育の尻ぬぐいを学校に押しつけてくるんだよ。
次は、「核」「磁気」「共鳴」でお願いします。
150 :
、「核」「磁気」「共鳴」:02/04/29 17:39
「さあ、どうぞ御覧になって」
医者は、そういって白黒の画面を愛美に向ける。そこに映って
いたのは、まだ人の形に成りきらない胎児の姿で、まるで蜥蜴の子供が
うずくまっているようだった。
母性がそうさせるのであろうか、不思議と嫌悪感等は沸いてこず、寧ろ
ピクリとも動かないのが心配になって愛美は医者に尋ねる。
「先生、その機械。その、大丈夫なんですか? 子供に何か、影響が
あるとか無いですか?」
医師は、その質問は毎度のことなのであろう、慣れた口調で説明を始めた。
「ああ、これですね。この機械は磁器を共鳴させて形を判別するのです。
御心配されますような放射線を使う物では無いので安心ですよ」
そう言われて愛美は、安堵半分、気恥ずかしさ半分が入り混じり、その日
の診察を終えると、そそくさと家路を急ぐ。
通りに出てタクシーを待ちながら空を仰ぐと、朝方からの雨は漸く上がり
初夏の日差しが雲間から差し込んできた。
次は「忌み神」「古井戸」「祭り」で、おながいします。
お題未消化の為、再投稿です。スマソ
-------
「さあ、どうぞ御覧になって」
医者は、そういって白黒の画面を愛美に向ける。そこに映って
いたのは、まだ人の形に成りきらない胎児の姿で、まるで蜥蜴の子供が
うずくまっているようだった。
母性がそうさせるのであろうか、不思議と嫌悪感等は沸いてこず、寧ろ
ピクリとも動かないのが心配になって愛美は医者に尋ねる。
「先生、その機械。その、大丈夫なんですか? 子供に何か、影響が
あるとか無いですか?」
医師は、その質問は毎度のことなのであろう、慣れた口調で説明を始めた。
「ああ、これですね。この機械は磁器を共鳴させて形を判別するのです。
御心配されますような放射線を使う物では無いので胎児の細胞核には影響
が殆どありません。どうぞ安心なさって結構ですよ」
そう言われて愛美は、安堵半分、気恥ずかしさ半分が入り混じり、その日
の診察を終えると、そそくさと家路を急ぐ。
通りに出てタクシーを待ちながら空を仰ぐと、朝方からの雨は漸く上がり
初夏の日差しが雲間から差し込んできた。
次は「忌み神」「古井戸」「祭り」で、おながいします。
152 :
「忌み神」「古井戸」「祭り」:02/04/29 18:59
驚くなってんだ、古井戸ってえやつをのぞいたわけよ、
おおとも、お堀端のあのしだれ柳の土手沿いのな。
あたりはおまえ、もうすっかり夜のとばりが降りて、
漆黒の闇ってえやつが空を塗り込んだように暗かったな。
で、何かに誘われるように、ふらーっと、古井戸に近づいて、
のぞき込んだわけだ。
するとな。
祭り囃子が、トントトン、トントトン、とわき上がってくる。
いやあ、驚いたのなんのってえ、腰抜かして走って逃げたよ。
あとで聞いたら、それが忌み神様の古井戸ってえんだ。
祭りの山車に轢かれたおいらのご先祖様だっつうんだから、
そりゃあお呼びもかかるってなあ。
はじめに教えてくれてりゃあ、のぞかねえっつうの。
さて、次の方は「ジャンボ機」「トップ下」「紹興酒」でお願いします。
153 :
「忌み神」「古井戸」「祭り」:02/04/29 19:43
僕は20年ぶりに故郷の村を訪れた。暑い夏の日差し、道端に咲く草花の香り、
喧しく栄華を誇るセミの声……。全てが懐かしく、僕の記憶を揺さぶる。
何も予定が入っていない久しぶりの休暇。ドライブでもしてのんびり過ごそうと
思っていたのに、気がつけば故郷に足が向いていた。たまにはこんな休日もいいかも
しれない。
田舎の空気を胸一杯に吸い込む僕の横を、2人の老人が通っていった。
「……今宵は祭りじゃ……」
「忌み神様を奉るけえ……ゆう坊も呼ばれたんじゃ……」
ゆう坊。聞き覚えがあるその名前に僕は思わず振り返る。だが、そこにはむっと
する熱気だけが揺らめいていた。何処かで見たような老人達だった。記憶から彼らを
引っ張りだそうとした、その時。
『その古井戸には近づいたらいけない』『ゆう坊が、ゆう坊がぁ!』『忌み神様……
お許しください……』『大丈夫か! 返事しろ!』『祟りだ……』
喧騒。子供の叫び声。男の怒鳴り声。頭の中で突然広がるざわめきに、僕は耳を塞いで
うずくまった。暗くて、冷たい。怖い。寂しい。痛い。
僕は……僕は……? 頭が、イタイ。……空が真っ暗に染まっていく……。
重なってしまいました。私の書く遅さ、どうにかならんか(;´д`)
お題は上の「ジャンボ機」「トップ下」「紹興酒」でどうぞ。
154 :
「ジャンボ機」「トップ下」「紹興酒」:02/04/29 23:55
「いやぁ、一度でいいからビジネスクラス。乗ってみたかったんだぁ。」
そう言って、副社長は案内された席に深々と腰掛けた。
「スーパーシートとは違うね、君。」
創業時、奉公人として叩き上げで来られた副社長は確か国内線のジャンボ機にすら乗った事は無いはずだ。
副社長は遠方への出張でもJRの自由席に並んでおられた。でも、若社長は生まれた頃からスーパーシート、
ファーストクラスだ。なんだろう、この感覚は。私は軽い立ち眩みのような感覚を覚えた。
「今回の中国進出は絶対に成功させなきゃならん。それには君のような若いトップ下が必要だったんだよ。」
副社長は、そして笑って見せた。穏やかだが、寂しげな笑い。
「わかっているんだ。今回の出張が私の最後の花道だってな。私だって、自分がお飾りだって事ぐらいわかって
いるさ。だからね、帰ったら隠居だ。あとは君達に頼むことにしよう。」
私は何もいえなかった。何も言える筈もなかった。副社長は、私の大恩人だった。悔しかった。何も出来ない
自分がただ悔しかった。
「そういえば、本場では紹興酒はボトルのままお燗されて出てくるそうじゃないか。楽しみだなぁ。」
社長のシナリオは、中国進出の白紙撤回だった。副社長はその責任を被らされて社を追われる事になる。副社長は
すべて承知でここにいる。涙が出た。ただ、涙が出た。
15行という事で。
次のお題は「神話」「宝塚」「蟻」でいかがでしょうか?
155 :
「神話」「宝塚」「蟻」:02/04/30 01:43
「貴方に神話を伝えましょう」女王は言った。
「それは空から突然降ってきた、巨大で透明な物体です」
子供は、うんうんと頷きながら話を聞いていた。
何度も聞いた話だった。
それでも、また聞きたくなる。
日々の仕事の過酷さと、僅かな収穫の事を思うと。
「それは夢の様に甘くって、何度行っても巣に入りきれないほど!
それはまさに宝物の塚、宝塚と言っていいほどの・・・」
丁度その頃。
「あ!」彼女が叫んだ時はもう遅かった。
地面に落ちたアイスキャンデー・・・
「あわわわ、うぇぇ」
「ほらほら、また買ってあげるから泣かないで」
蟻たちは「神話の再来」に驚嘆の意を隠せなかった。
古の言い伝えは真実であったのだ。
※そんなの・・・アリ?
次のお題は:「発電所」「ハッタリ」「発露」でお願いします。
156 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/30 08:49
発電所の夜は空気が張り詰めていた。
藤島と二人の男は互いの仕事に没頭するふりをしながら
実は互いの様子をうかがっている。
(この中のだれかが?)
藤島はそう考えると背中に嫌な汗が流れるような気がした。
今日のミーティングには所長が来た。
所員は一人ずつあの日の様子を所長に報告させられた。
そのうちのどれかがハッタリであるのは間違いない。
やったのは誰だ?
あの事件以来シフトは変わり、夜間でも3人以上での勤務が決められた。
所長も疑っているのだ。だったらなぜもっと大掛かりな捜索をしない?
3人にしたところで他の2人の目を盗むのは簡単だ。
発露するとまずいことがあるのは実は所長なのではないか。
藤島はふとそんなことを思った。
157 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/30 09:01
しまった、初めて書いたので3語忘れた。
なんでもいいの?
「蛍光灯」「津波」「素朴」
158 :
「蛍光灯」「津波」「素朴」:02/04/30 09:36
「先生。私、もうお家に帰れません」
滝の様な豪雨と雷鳴。安下宿はぎしぎしと軋み、古い蛍光灯が幾度も揺れた。
急病見舞いの夕暮に降りしきる雨。そう、雨がいけなかったのだ。
「お家において下さい!」
「うんうん、もちろんいいよ。嬉しいなあ、わーい。」
・・・と言いたい気分が津波の様に押し寄せる。でも口が開かない。
その時!ラジオニュース速報の無機質な声が響いた。
「運転を見合わせていた鉄道は、次々と運転を再開云々」
鉄道が動く。お家に帰れる。雨いけなくない。鉄道王国日本万歳。
素朴な問題の解決に、拍子抜けした様に彼女は呟く。
「私、お家に帰れます」
雨上がりの下町の角を曲がると、爺やがリムジンで待っていた。
「すみません、お嬢様。ペンタゴン気象兵器もこれが限界なのです」
「次回は、大停電でお願いします」
恥かしがり屋さんの、彼女であった。
※急ぐとこんなの
次のお題は:「台風」「台付き」「台無し」でお願いします。
159 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/30 10:26
身を切るような寒さと風だった。加世子はうちにたどり着くと、
それまでの顔を切るような寒さとうってかわったその暖かさに
ふわっと緊張が解けた。
その暖かさに開放されたように涙が流れてきた。
「どうした?」
母は娘の様子がおかしいのに気づいた。
「ほんとに寒かったの。なんかあったかい所に帰ったらほっとしちゃった。」
加世子はそれだけ言った。
「そんなに寒いの?風は強そうにみえるけどねえ。」
母は窓から外をみた。
「寒い日に台風なんてねえ。」
自室に入って台付きの鏡の前に座った。
途端にがまんができなくなって泣き出した。
鏡に写るみじめな自分を見て、さらに悲しくなった。
みじめだ。こんなことになるなら、あんなことを言い出すのではなかった。
全部台無しになった。もう二度と学校には行けない。行きたくない。
誰とも会いたくない。こんな仕打ちを受けるのなら。
160 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/30 10:28
「向上心」「巷(ちまた)」「絵」
161 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/30 12:29
巷のわけえモンは、向上心ってのをなくしちまったのかい?
ヘタな文章や絵をインターネットで発表して、ちょいと誉め
られればそれで満足しちまって。
え? オマエもその一人だろうって?
そりゃあすんませんこって。
「向上心」「巷」「絵」
これは巷で売っている類似品のような、ただのお手伝いロボットではありません。
命令されたことだけをやるのではなく、常に向上心を持って、あなたの期待に
200%応えようとするでしょう。
たとえばあなたが朝、「今晩の深津絵里が出てるドラマ録っておいて」と命令して
仕事に出たとしましょう。するとこのロボットは“あなたは深津絵里が好きらしい”
と新たに学習するのです。あなたが夜遅く帰ってくると、その夜のドラマだけで
はなく、深津絵里の出ているドラマの再放送も録画しておいてくれるという訳です。
お値段は、定価5600万円のところが、今なら『ロボット助手1号』と
『ミニミニお手伝いくん』のセットで、税込み5000万円の大特価です。
家一軒分は高い、ですって?けれどあなたの代わりに家事はおろか、仕事まで
やってくれる高性能ロボットですよ。『ミニミニお手伝いくん』に家事を任せて
おいて、『ロボット助手1号』を仕事に連れて行けば、あなたは時々命令する以外、
何もしなくていいのです。
え?女性型はないのか、ですって?もちろん女性型ご希望の方には、こちらの
『ロボット第一秘書』もご用意しています。
お題がなかったので、一応ルールに従って継続で。
では次は「遅刻」「あの人」「鼻血」でお願いします。
163 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/30 18:46
まだ来ない・・。
そういえば初めのデートのときもあの人は遅刻をした。
あのときのいいわけはなんだったか、
「途中で鼻血がでて・・」
とかいいながら苦笑いをしていた。
でも今日はあの日とは違う。
あの人はもう待っても来ないのだ。
その事実を受け入れることができない。
あの人はもういない。待ち合わせ場所に現れることなんてない。
何度そう自分に言い聞かせても、その場を離れることができなかった。
平凡だ・・。
「憂い」「理由」「泥」
164 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/30 19:19
−−−彼女の最後の日記にはこう書いてあった−−−
4月28日 火曜
今日の気分は憂い気味・・・・。
その理由はまっさらの靴に泥がついちゃったからだ。
お父さんに昨日誕生祝いにと買ってもらったばっかりなのに。
* * *
なぜ彼女がこんな酷い目に会わないといけなかったのだろうか。
彼女は純粋な家族思いのいい子だった。友人もたくさんいて毎日幸せな日々を送っていた。
生徒自治会などにも積極的に参加し、周囲の人望もあつかった。
彼女は輝いていた。あの惨劇が起こるまでは・・・。
165 :
戸惑ってしまったので書きました:02/04/30 22:34
>>164 はどうして次の人のためにお題をつくってくれないんでしょうか。
これは、荒らしの一種ですか?
全てが無駄に終わってしまったとしても
それで後悔するようなことはないはずであった。
誰にも見られぬような夢をみて、
誰にも辿り着けぬような場所へ辿り着くことができたのだから。
今は全ての憂いを忘れて、泥のように眠ってはならない理由もないはずだ。
これでOKか?
次のお題は
「しとど」「懐古」「切羽詰って」で。
167 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/30 22:40
>>166 何が23だよ・・・。関係ないので忘れて。
168 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/30 22:55
>166
最期の一文だけでもかっこよかったかも。
>>168 ありがと。
俺もそう思ったんだけど、一応五行以上という規定が
1を見るとあるようだったので。
170 :
名無し物書き@推敲中?:02/04/30 23:35
すいません……ししど、って何ですか?
教えてください(;´д`)
>>170 辞書でひけばいいのでは・・・。
手元の辞書によると、
1、ひどく、はなはだしく
2、ひどく濡れたさま
おれは2の意味で挙げたんだけど。
使い方のわからぬことばを無理して使うのも勉強のうち。
っていうかスマソ。
「ししど」→「しとど」だからわからなかったのでは。
174 :
「しとど」「懐古」「切羽詰って」:02/05/01 00:55
しとど濡れた石道路は、思いのほか足が滑る。どれぐらい走ったのだろうか?闇は
時間感覚を失わせる。・・・いや、それだけじゃない。娘は思う。肩の傷が痛む。息
が切れる。背後にはまだ男の気配がある。娘はただひたすらに走った。
「!」行き止まり。私は恐る恐る振り返った。・・・男は、微笑を浮かべながら
そこに立っていた。「おや、もういいんですかい?ぼっちゃん。」
体の震えが止まらない。懐の短刀がカタカタなる。娘はそしてそれを抜き放った。
「おや、この大正の時代に懐刀とは。よほど御家は懐古趣味でいらっしゃる。」
「あなた、私が何処の誰だか知ってのことですか!」娘が言うと男は声を立てて笑った。
「えぇ、よく存じておりますよ。何しろ私めは御家の分家様からのご依頼でございます
から。いかんせん、お嬢様が実は男とあっては・・・事業に失敗し切羽詰まった分家さま
はさぞやお困りの事でしょう。・・・お恨みなさるなら分家様をお恨みくださいますよう。
あなたを殺して本家の財産を一手にしようと目論む分家を!」
サーベルが光を受けて輝いた。もうだめか、娘は意を決して男の懐に飛び込んだ。小さな
うめき声、そしてドッと崩れる男。娘は淡いガス灯の光を呆然と見上げていた。娘の黒髪が
春雨にしとど濡れていった。
15行、我ながらお題をこなしきれていないので「お約束 5」を適応、お題継続で
お願いします。
いつも聞く彼女のピアノが、不意に途切れて半日。
「お嬢様、何かあったのですか?」
執事が何度聞いても、ドアは固く閉ざされたままだった。
いまや、懐古趣味と言われても仕方無いこの洋館には、合鍵さえ無かった。
しとど濡れた屋根を伝って、書生は様子を見に行く。
「だめです!カーテンがかかっていて何も見えません」
切羽詰った父。
「よし、君達。こうなったら皆でドアに体当たりだ!」
ドーン! ドアはびくともしない。
「それ、もう一度」 ドーン!
「まだまだ、力が足りない」 ドーン!
翌日の新聞。
「洋館の惨劇! 謎の強度打撲で三人死亡。
最初の発見者は、肉饅を買いに行った帰りの長女で・・・」
※なぜこの系統の話は皆ドアに体当たりするのか。好きなのか。ドアが。
次のお題は:「藍色」「青色」「せんべい」でお願いします。
176 :
「藍色」「青色」「せんべい」:02/05/01 08:45
今月分の原稿を書き終えた私は、いつものようにせんべいを袋から取り出して、
ひとかじりした。「痛たたたたたたた」うっかり虫歯のある左の奥歯で噛んでしまった。
「明日にでも歯医者に行くとするか」といつもの癖で独り言をいった。
今度は気をつけながらひと噛みし、窓の外を見下ろした。
仕事場の2階からは公園が一望できた。公園には、よく手入れされた花壇があり、
色とりどりの花が春風に揺れていた。
「あの青色の花はなんて名前だったかな、いやむしろ藍色か」
植物図鑑を取り出し調べてみると、アシュガという花だと判った。
誰かが持ってきて、新しく植えたのだろうか。顔をあげもう一度見てみると、
通りの向こうから視界に何かが入ってきた。
「おおっ!」
ミニスカートをはいた女性が、突然の強風に煽られ、手でスカートを抑えながら
走ってきた。
「あっ、いたったたたたぁ」またせんべいを虫歯で噛んでしまった。
私は、誰もいなくなった窓のしたを見ながら、歯医者へ行く用意を始めた。
次は、「制度」「感動」「マイナス」でお願いします。
177 :
「制度」「感動」「マイナス」:02/05/01 10:13
感受性に恵まれているのか、すぐ感極まってしまう男がいた。
「おれは今、猛烈に感動している!」
などと、わざわざみんなに宣言する。
そして、光り在る処、陰がある。
猛烈な感動があるならば、猛烈な「マイナス感動」もあるはず。
「マイナス感動」、それは「感動」と完全に逆の性質をもつ要素だ。
しかし、人間、「プラス」はよくても、なぜか「マイナス」は描写し難い。
どうすれば「マイナスの感動」を描けるか?
「わ、わしは全然感動してないぞー!」 これは「無感動」で違うと思う。
「ぼーーー」 これは主観の不在では?
「感動」の描写はいくらでもあるのに、「マイナス感動」はこんなに難かしい。
プラスとマイナスの非対称性。
自分が立つ位置が、偏っているのか。
人間は「感動せねばならぬ」という見えない制度に縛られているのかもしれない。
なんだか・・・ちっとも感動的でなくてゴメン。完。
※疲れてるなあ^^;
次のお題は:「ラーメン」「写真」「車検」でお願いします
178 :
顔も名前も出さずに毎月100万円:02/05/01 10:14
Future-Web(フューチャーウェブ)登場
なんと10,000円単位の収入
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「その『魂をゆるがす感動作!』ていうキャッチコピーがマイナスポイントなんだよな」
私が街角に張られた洋画のポスターを指差したとき、彼はため息をつくようにいった。
「えー、どうして?」
「だってさ、なんでもかんでも泣ければいい映画だとおもわせているところがあるじゃん。
別に泣けなくても優れた作品あるのにさ。
もっと的確にその映画のよさを伝えろっていうんだよ。宣伝会社の怠慢だよ。
大体、映画なんかで泣く奴は映画で泣けない奴を見下すんだよな。
『えー、あなたって心が寂しい』とかいっちゃって。
別に全国民感動化政策なんて云う制度があるわけでもないのにさ。
映画観て涙流している奴は自分に酔っているだけの癖にえらそうにしやがって」
「そんなに酷いこといわなくてもいいじゃない」
「本当の事だよ。涙を流して喜んでいるだけなんだよ、観客は。
悔しかったら、激しく揺れ動いた心で、人の役に立つ事でもやってみろっていうんだ。
その感動を、慈悲と博愛と利他的な精神で、苦しんでいる人に還元すればいいんだ」
彼からの手紙が届いたのはそれから3日後のことだった。
自衛隊に入隊するから別れよう、そんな内容だった。
次は177のお題で。
180 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/01 10:17
インスタント
181 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/01 12:24
「よかったら一緒に写真に写ってくれませんか?」
彼の趣味はラーメン食べ歩きだ。ラーメンを食べる時しか生きがいを感じられない。
今日はたまたま車を車検に出していてタクシーでこの秘境地にあるラーメン屋を訪ねた。
ところで、上のせりふは店の主人に向かって言っているのではない。
ラーメンに向けて言っているのだ。
これを理解するには彼の信じている宗教について知っておかないといけない。
彼は全国統一ラーメン教会の熱心な信者である。全国統一ラーメン教会とは、
すべてのラーメンには魂が宿っていて、ラーメンを食べる前には一礼二拍手記念撮影を
行なわないと天罰が下るという教義をしらしめている団体である。
これでお分かりになったと思う。彼はその儀式の最後の記念撮影を行おうとしているのである。
彼は周囲からの冷めた視線を気にも留めずに ハイ、チーズ とシャッターを押した。
駄文すみません。次は「地対空ミサイル」「有事法制」「わいせつ電話」でお願いします
182 :
「地対空ミサイル」「有事法制」「わいせつ電話」:02/05/01 13:30
代議士A:「わいせつ電話に対する厳罰を法文化したいと?」
法務官僚B:「ええ、現状の刑法の適用では甘すぎると思います」
A:「厳罰というと?」
B:「今私どもが考慮中なのは、20年以下の懲役です」
A:「それは厳しすぎる、まるで今度の有事法制を楯に地対空ミサイルを
日本国内に設置するようなものだ。本当の狙いはなんだ?」
B:「・・・先生にはかないませんな。要は何をもってわいせつとするか
です。その為には電話を傍受して内容を吟味しなければなりません。
我々としては通信傍受の組織に食い込みたいのです。」
A:「ふん、まぁいい、後押ししてやる。マスコミ連中に妙な詮索を
されないようにしろよ」
B:「ええ、ですから”わいせつ電話”に目をつけたのです、ものが
センセーショナルですから、こちらの真意には気づかないでしょう」
駄文御免、難しかった・・・
次は「三択」「歌劇」「納豆」でお願いいたします。
183 :
「三択」「歌劇」「納豆」:02/05/01 15:11
「あのね、三択がね」
よ、幼児の言うことはわからん!
「うんうん、サンタクロースね」
な、なんでわかるんだ?
「のり納豆なの」
「ホーリーナイトね」
「ワンワン手手シャンシャンシャンも」
「『忘れんぼうのサンタクロース』を歌ったのね」
「みみちゃんはうららでファイブして、ななちゃんはサクラで定刻団で、過激なんだよ」
「???」
「わかった! みみちゃんがスペースチャンネル5のウララになって、ななちゃんがサクラ大戦帝国華劇団のサクラになって、歌劇遊びをしたんだな」
「わー、すごい! パパって頭いい!」
よーし、女房に一本勝ったぞ! こら、そんなにゲームばっかりするなって顔で、睨むなよ!
次はこれで
「ここそこ」「そこそこ」「そちらこそ」
184 :
彩子(156/159/163) :02/05/01 19:54
「そこそこの学校入って、そこそこの会社入って、そこそこの人生送ってんのや。
私はそこそこの塊みたいな人間なんよ。」
「そんな人間はここそこにいますよ。私だって人に自慢できるような人生でも
ありません。」
「少なくともあんたは自分のやりたいことをやっとるわ。おまけに
あんなかわいい奥さんかているやんか。」
「そちらこそ、優しそうな彼がいるじゃないですか。」
「あんなんどこにでもおんねん。そこそこの女にはそこそこの男ってことや」
「なぜあなたは自分の人生をそんなに卑下するのです?」
「今日中学んときの友達に会ったわ。デザイナーやて。
かっこええ服着てかっこええ彼氏連れて、かっこええ人生やわ。
私とは大違いや・・。」
名前あったほうが作風とか癖とか分かって面白いかなあ、と思って。
みなさまもいかが?
「暗闇」「刺」「ビル」
185 :
無理(152) 「暗闇」「刺」「ビル」 :02/05/01 22:31
「先生の設計されるビルは、まさしく現代建築の粋、トランスモダンの規範ですな。
ミラーガラスによるミーススタイルで、ビルの谷間がきらきらと太陽のように輝く。
これこそ21世紀にふさわしい、いやいや、脱帽しました」
にこにこと笑いながら話しかけてくる身なりのいい紳士。
竣工記念パーティーでの一コマだ。
その褒め言葉を、須藤は複雑な思いで聞いていた。
「ビルの陰に住まねばならぬ人の気持ちをご存じか? あなたが造り続けるビルが、
我々に昼間も暗闇を与えるのですぞ」
そう言って抗議に首を吊った、高層ビル反対運動の指導的老人。あれからもう10年
の月日が流れた。新進気鋭の建築家だった須藤も、首まわりに肉が付き、教授の肩書
きもすっかりなじんでいる。
それでも、心に刺さったあの言葉は、消えない。
消えないからこそ、須藤は建て続ける。輝くガラス張りのビルを。暗闇が少しでも
減るようにと、祈りながら。
次は、「音像」「パフェ」「妹」でお願いします。
186 :
「音像」「パフェ」「妹」:02/05/02 00:41
「ふーん、ここの音響って音像定位システムなんだって。」
「なにそれ?」少女は不機嫌そうに青年に言った。青年はやや怯えていた。
「音がね、音が聞こえてくるべきとこから聞こえてくるんだよ。」
「へ?」これが漫画であれば少女の頭の上に特大の疑問符が浮かんでいるの
だろう。青年はそんなことを妄想して、吹き出した。
「なによっ、いきなり笑うことないでしょ。」
少女が一段と不機嫌になる。青年はしまったぁ、と思いつつも解説を続けた。
「だからね、右の人物が話すセリフは右から、左の人物のセリフは左から聞
こえてくるんだよ。」
「そんなの当たり前じゃない。」少女は素気無く言い放った。青年はしばらく
沈黙した挙句、観念したように呟いた。
「ごめん、帰りにパフェおごるから・・・。」
途端に少女がはしゃぎだす。そんな少女を見ながら青年は思った。『妹を欲し
がる奴の気が知れない。』と。
187 :
「音像」「パフェ」「妹」:02/05/02 00:58
「不明艦の音像定位、一時方向、距離2000。速度・進路変わらず。」
ソナー員からの報告はまだ不明艦が本艦の存在を察知していないことを示
していた。演習中だった本艦・潜水艦”あましお”が不明艦の追尾を命ぜら
れてから早5日になる。確か副長の妹さんは今日が結婚式だったはずだ。
「すまんな、大事な日に。」
「いや、任務ですから。」副長は日ごろから言葉少ない。私はそして海図
に目を落とした。
「まだ小さかった頃なら、あいつは機嫌が悪ければ近所のファミリーレス
トランでパフェの一つも食わせてやればケロッと笑ってくれたのですが、今回
は正直、自信がありません。」
多分、副長はそのとき苦笑いをしていたのだろう。だが、心中はきっと違っ
ただろう。副長は歳の離れた妹を誰より可愛がっていた。
「しかし、任務ですから。」そう締めくくる副長に、私は微笑みで答える
ぐらいしか出来なかった。
14行です。次のお題は「あした」「晴れたら」「大渋滞」で。
「ここの喫茶店はねぇ、このデラックスジャンボパフェが大人気なんだよぉ。これ
目当てで行列も出来るぐらい」
スプーンを口に加えて目を細める妹は、本当に幸せそうに見える。
「……あれ? お兄ちゃんは食べないの? おいしいのに〜」
ほらっ、とばかりに私の前にパフェを押し出してきた。一口、舌に乗せる。
「ね、おいしいでしょ?」
胸を反らして、まるで自分が作ったかのように自慢している――
「どうかしましたか、諸星様。当社のバーチャル映像・音像空間に何か問題でも」
急にヘッドセットを外した私に揉み手をしながら男が擦り寄ってきた。
「下らんな。こんなことのために金を使う気にはなれんよ」
装置をいささか乱暴に男に投げ渡す。少しだけ期待していた自分に腹を立てながら。
味も再現できない世界に仮想の妹がいて何になる? 妹はもう帰ってきやしないのだ。
>>188 ぐあ……まただ。出遅れすぎです。3語を題名に入れるのも忘れた……。
お題は上の「あした」「晴れたら」「大渋滞」でお願いします。
ごめんなさい、修正です。
>1889行目
×どうかしましたか⇒○どうかなさいましたか
です。
その帰り道、大渋滞に掴まった。なかなか車の群れが動かない
ので、無意識に妹のことを考えてしまう。
私には、妹だけが自分の生をこの世に結び付けているものだった。
小さい頃に両親を亡くし、病弱で病院からほとんど出たことのない妹。
その妹に満足な生活をさせる為だけに、必死になって働いた。
極度の鬱病の私は、両親が死ぬまでは、社会不適合者と言って差し支え
ないような人間であった。
妹を幸せにしてやらなければいけない、その思いだけで生き続けていた。
しかし、妹は死んだ。
病気が快方に向かい、あしたは一緒に海を見に行く予定だった。
「晴れたらいいね」
微笑む妹の顔が浮かぶ。視界がぼやけた。涙が止まらなかった。
しかし、今は他に考えなければいけないことがある。
後部座席に乗った妹の死体をどうやって処理するかだ。
お目汚しすみみません。
次のお題は「雨」「すべる」「エレキギター」でおながいします。
「雨」「すべる」「エレキギター」
その日、祇園は雨だった。
せっかく着て来た浴衣も、雨を吸って重くなり、ベタベタと肌にはりついている。
どこもかしこも空気は生温かく湿っぽく、苛々するほどに人だらけだ。
「だから、明日にしようって言ったのに」
「…今更言ってもしゃーないやろ」
明日は宵山だから、烏丸にあるケンゴのバイト先は忙しい。それは、わかる。
けど、何も他の人が祇園祭見に行きたいからって、ケンゴがバイト代わって
あげる必要なんてないのに。
雨のおかげで、アーケード下から出て脇道の夜店を覗く気にすらなれない。
裸足の足の裏は雨に濡れてベタベタし、ひどく不快だった。
おまけに真新しい下駄の鼻緒が食い込んで、足がギリギリと痛み始めている。
「…すごい足痛くなってきた。もう帰ろう」
私が不満顔でケンゴの手を振りほどいた時だった。
BGMのように流されているお囃子をかき消して、突然力強い三味線の音が私の耳を打った。
人垣の真ん中に、青い作務衣を着た金髪の青年が立っていた。
まるでエレキギターでも弾いているかのように、激しく弦の上をすべる指。
青年は降りしきる雨を物ともせず、楽しくて仕方がないとでも言うような笑顔を浮かべて、
名も知らぬ人々と美しい旋律を共有していた。
「ナオミ、浴衣濡れるの嫌やったら、綿菓子でも風船でも、俺が買って来たるから。
それか、足痛いんやったらうちの店行って休憩するか?」
「……大丈夫。行こ」
なんとなく、ただ何となく気分が変わって、私は再びケンゴの手を握った。
「綿菓子とたこやき食べたい」
雨を嫌うのも、雨を楽しむのも、自分の気持ち次第なんだろう。
浴衣を濡らす雨も、蒸し暑い夏の夜には、案外気持ちいいのかもしれない。
長過ぎるんだけど、どうやって削っていいかがわからないです。
次のお題は「瓦礫」「土埃」「船」でお願いします。
193 :
「瓦礫」「土埃」「船」:02/05/02 12:20
土埃を被って現場に入った警部は、思わず目を覆った。
3本のナイフで同時に刺された死体。おそらくは即死だったろう。
そして、死体の背に血で刻まれた、3羽の赤いカラスの紋章!
「・・・これは!」
警部の脳裏には、或る記憶が蘇りつつあった。
それは30年前、刑事になって間も無い頃の記憶だった。
初めてみる死体に嘔吐をこらえきれない彼に、古株刑事が放ったあの言葉・・・
今と同じ、3匹の赤いカラスの紋章!
「まさか・・・これは・・・」
瓦礫から引きずり出される死体を後にする警部。
彼は、30年前の記憶を手繰り始めていた。
そしてその夜、がらんとした仮眠部屋で、彼は突如として目を見開いた。
間違い無い。あれだ!
彼は思い出してしまった。30年前のあの言葉を。
「これは・・・「殺人事件」だ!」 完
※「紋章」は?(^^;
次のお題は:「存在理由」「ごみ箱」「湖」
194 :
「瓦礫」「土埃」「船」:02/05/02 12:24
失礼しました、「船」が抜けてます m(_ _)m
15行も書くかいちゃったからというか、乗りかかった船というか・・・
見逃してやってください(笑)
軽い気持ちで始めた事だったのに、何時の間にかそれが生活の一部となっている。
大型廃棄物輸送船は、この巨大な湖の真ん中に差し掛かっていた。
聞く所によれば、この湖は、三十年前の戦争で空いた穴だったらしい。
水深3000メートルを超える、尋常ではない深さのこの湖。
放射能汚染とかで、まともな生物さえいないこの死の湖。
だがそんな所でさえ、人間は利用価値を見つけてしまった。
戦争の残骸や、使えなくなったロボットの廃棄場所……世界のごみ箱として。
轟音とともに、船から鉄の塊や、ロボットが水の中に捨てられていく。
最近は、使用年数の半分も待たずに捨てる人間も多いとか。
沈みゆく残骸の中に、私と同じ型のロボットの上半身が見えたが、それもすぐに消えていった。
仲間であるロボットの残骸を湖の真中に運び、捨てるのが私の存在理由。
それ以上でもそれ以下でもない、私の役目。
今日も船は、順調に工場へと引き返していく。
変わりのない毎日、変化のない世界。
いつか私が壊れ、この湖に沈められる日が来るまでの、仮初の日常。
それが私の全て。
長くてすいません。次のお題は……
「猫」「潜水艦」「うちわ」で。
改めて見たら、別に長くないし!
自爆……
197 :
「猫」「潜水艦」「うちわ」:02/05/02 21:24
「潜水艦長、この蒸し暑さはどーにかならんですか。これじゃあ
仕事にならんですよ」
私は、ばたばたと団扇を扇ぎながら振り向き様に罵声を浴びせた。
そもそも発端は、テニアンに入植していた邦人が残して行った飼い猫どもを
艦内に詰め込んだのが原因なのだ。
この辺りは敵潜が跳梁跋扈する危険水域だというのに、皆どこぞの病気が
伝染ったのか、すっかり骨抜きになって猫を撫でておる。
卑しくも帝国海軍の禄を戴く者が、憤りを激しく覚える。
「にゃあ、にゃぁにゃあにゃあにゃあ」
心情を悟ったのか、シロはしきりに裾に爪を立て私を誘った。
誘われた先はいつもの配置場、友軍の支配地域であるので不寝番は解除されて
いるが、件のシロがしきりに背を伸ばしてレシーバを咥えるので耳に当てる。
ワシャワシャとブンブンというスクルウ音が二ないし三、距離は近い。
恐らくは五分を経ずに直上だろう。
その後は無我夢中だった。総員起こしのベルを押すと、兵隊達に従うように
猫どもも其々の持ち場で耳を澄まし一言も発しなかった。
終戦の年……
南方よりの復員船で私は十匹の猫を従え郷里に戻った。
類縁一同はいぶかしんだのだが。
どうにも、こればかりは、仕方が無かったのである。
ちと行数長すぎですが、勘弁してつかーさい。
次は、「金塊」「漁港」「血筋」で。
198 :
「金塊」「漁港」「血筋」:02/05/03 00:02
彼はいつもの独特の口調で訊く。「どうかね?」
僕がきて、いくらか話して一段落すると、彼は必ずこう言う。
僕はきょとんと答える。いつものように。「どうって?」
「相変わらず街を眺めて暮らしてるのか?」
「街を眺めて暮らしてるわけじゃないよ。仕事しながら暮らしてるんだよ」
彼は僕の台詞にまったく構わず続ける。「で? 最近面白いものはなんだ?」
僕はちょっと口を尖らせてから答える。「町役場と漁港」
これもこのあいだとどれほども変わらない。「楽しいか?」
「金塊や札束を見てるよりはよっぽど」
彼は大きく笑う。そして、一呼吸置いてまた口を開く。
「血筋かね。おまえの親父もそうだったよ。街を見るのが楽しいと言っていた」
僕は返事を必ず、返さない。
彼は息子をどう思ってるんだろう、とただそう思うだけ。
「ほら、行きなさい」
彼はちょっと冷めた空気が気に入らないのか、いつもこんなふうにこの話の後は僕を追い返す。
そしてそれから、静かな建物をゆっくり後にする。彼をバルコニーのすぐ傍の暖かい場所に残して。
次は「ロケット」「遊園地」「エンターティナー」で。
199 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/03 00:02
夫を出迎えた保子の小脇には、今朝一番にホクロ漁港で水揚げされたサンマが抱えられていた。
時刻は4時を回り、部屋には西日が差し込んでいる。
奥の部屋で、息子の邦弘がルパム三世の再放送を見ている音が聞こえる。
銭型警部「ルパ〜ム、逮捕だぁ〜!!」
ルパム 「とっつぁ〜ん、勘弁してくれよ〜!」
ルパムが都銀の金庫から、金塊を盗み出したようだ。
ただいまの抱擁をしていた夫の腕を振り払い、保子は奥の部屋へ走っていき
邦弘と一緒にテレビを見始めた。血筋は争われない。
夫は二人を横目に、食卓の上に用意された冷え切った筑前煮を食べることにした。
次は「長曽我部泰親」「外形標準課税」「関東ローム層」で。
202 :
「ロケット」「遊園地」「エンターティナー」:02/05/03 00:53
「…今朝、検察から連絡があった」
口調こそハッキリとはしているものの、その表情はいつもテレビの前で見せる
ものとは程遠い、弱々しいものだった。心なしか白髪も増えたような気がする。
「あの件は、どうにかして揉み消してくれるのではなかったのか…?…くっ…
…私の政治生命は…これで…終わりだ…」
「これから、ヒマになりますねえ…どうです?娘さんと一緒に遊園地にでも行っては」
「!…貴様、なぜその事を…」
「隠し子…というには、あまりにもあなたに似すぎです」
私の手の中で、古びたロケットがチャラチャラと音を立てる。
「それは、私の…返せっ!」
「大事な物なら官邸の机に入れたりせず、自分で持っていたらどうです」
「くっ…貴様ら、私を利用するだけ利用しておいて…」
「…あなたはエンターティナーとしては超一流でした。しかし…政治家と
しては三流以下です。もっと身の程を知るべきでしたね…今までご苦労様
でした、内閣総理大臣どの。」
初心者ゆえ、コツが掴めませんでした…酷評は覚悟の上です。
次は「狙撃手」「雑学」「メリケン粉」で。
203 :
999 ◆D0999.o. :02/05/03 00:54
「ロケット」「遊園地」「エンターティナー」
ロケットペンダントをそっと開いて中の写真を確認した。
銀色の小さな楕円のなかで、父は確かに笑っていた。
都内の遊園地を中心にアミューズメントスポットの経営者
だった父は、生まれたときからエンターティナーであり、
死ぬまでそうあり続けた。
わたしの胸の奥に、ペンダントに、父の笑顔が光る。カメラを
向けられた彼の、いつもの癖の笑顔が光る。「あい〜ん」
次「ベルトコンベア」「橋」「孔雀」
204 :
999 ◆D0999.o. :02/05/03 00:55
かぶった。スマソ。 「狙撃手」「雑学」「メリケン粉」で。
あの、何で199はムシされなきゃいけないんですか?
>>203 お前はどういうつもりなんですか?
206 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/03 01:07
>>205 島田雅彦も、京極夏彦も、金田一春彦も、高田信彦も
みんなお前のこと嫌いだって。
208 :
狙撃手雑学メリケン粉長曽我部泰親外形標準課税関東ローム層:02/05/03 01:33
外形標準課税の導入を巡って、国会では、熱い戦いが繰り広げられていた。
強行採決の斬り込み隊長は、長曽我部泰親の子孫と呼ばれる保守派であった。
しかし、数百人もいる議員相手では、名刀も刃こぼれする様だ。
対する野党も負けてはいられない。
雑賀孫市の末裔が、狙撃手として雇われる。
柳生一族の残党による暗殺も注意しなければならない。
封筒からこぼれ出るメリケン粉状の白い粉に、一時討議は中断された。
「やれやれ」と休憩にゆく議員達を迎え撃つ、織田直伝の鉄砲隊!
答申に立つ大臣の額に、平将門の後裔の矢が放たれる。
混乱の中、関東ローム層の様に動かない、武田家の血を引く議長がいた。
雑学豊富で知られる彼は、全ての事情を察していた。
・・・が、彼はおもむろにこう宣言した。
「江戸時代以前は退場!二世議員までにして下さい」
※なんかNHK大河ドラマの総集編みたい(^^;L
次のお題は:「ベルトコンベア」「橋」「孔雀」でお願いします
今夜は夏の納涼祭り。私は健一と連れ立って花火を見に出かけた。付き合い始めて
まだ1ヶ月。私はこれに誘うのだって緊張したのに、こいつときたらそんな感情には
無縁のよう。さっきから1人で喋りまくっている。
「知ってるかい? 熟練した狙撃手は自分の汗で狙いがずれるのを防ぐために、
メリケン粉で滑り止めをするんだって」
少し黙ったと思ったら、縁日の射撃ゲームを見てまた得意げに雑学を話し出す。私は
うんざりして夜空を見上げた。小憎らしいことに星がこれでもかとばかりに瞬いている。
首を振って視線を地上に戻すと、健一の手が目に入った。一瞬どういうことだか
分からなくなり、すぐに笑いがこみ上げてきた。
「ね、メリケン粉買ってきてあげようか?」
そう健一の耳に囁く。熱弁を振るっていた健一は言葉に詰まって私の顔を見た。その
情けない表情が可笑しくて、本格的に私は笑い出した。
次のお題は「ベルトコンベア」「橋」「孔雀」でよろ。
また遅かったんかい!?……本格的に鬱ぃ。
211 :
「ベルトコンベア」「橋」「孔雀」:02/05/03 02:15
ベルトコンベアに乗って運ばれていくコロッケを見つめながら芳雄はつぶやいた。
「明日橋由紀夫のコンサートには、孔雀王持って行こうかな・・」
コンサート当日、芳雄は手提げ袋の中に孔雀王がないことに気づいた。
「うそ?!」
次のお題は「刑法39条」「ドラゴンスクリュー」「飽和状態」
212 :
「刑法39条」「ドラゴンスクリュー」「飽和状態」:02/05/03 02:36
憲法はもう頭に入っている。民法もなんとかなるだろう。商法と刑法をあと少し
なんとかしたいところだった。俺の頭は飽和状態で、めくる六法全書が重かった。
下宿で一緒の佐方のほうも同じような状況らしく、コーヒーを飲むために台所に
立っている時間やのほうが机に向かっている時間より明らかに長くなっていた。
「あきらめようぜ」唐突に、佐方が言った。
「そういうわけにいくか。刑法、どこまで覚えた」
「刑法か、34だな」
勝った、と俺は思った。「俺は39を覚えたぞ」
佐方は、ち、と舌打ちしたと思ったら「このやろう。俺はもう錯乱しているんだ」
と冗談混じりにドラゴンスクリューを掛けてきた。意外に痛い。
「やめろよ、傷害罪だ」
「知るか、俺はおかしいんだよ」
佐方の奴、34なんてうそじゃないか。刑法39条まで覚えてやがる。
「討伐」「猫かぶり」「メイプル」
213 :
◆4RxB688c :02/05/03 03:03
このままでは私の家は崩壊してしまう。
柱や壁を食い荒らす鼠や白蟻。奴等を討伐しなくてはならない。
私は東急ハンズで買ってきた猫の縫いぐるみを被り、駆除剤を携え床下に乗り込む。
この猫の毛は何故かメイプルだ。暗い床下には不似合い。これが本当の猫かぶりか。
そうこうしているうちに鼠の群れを発見。
奴らも私に気付いたらしく、勢いよく襲い掛かってくる。
襲い掛かってくる…? 何故だ? 私は猫をかぶっているのだぞ?
私の身体を食い荒らす鼠たち。
薄れていく意識の中で私は思った。
そうか、猫は鼠に対して本性を剥き出しにするものだ。猫をかぶっていてはいけなかったのだ。
214 :
213 ◆4RxB688c :02/05/03 03:03
「酒」「ブラウン」「鍼」でお願いします。
215 :
「酒」「ブラウン」「鍼」:02/05/03 03:50
「酒」「ブラウン」「鍼」
高校最後のひな祭りも終わった。迷信ながらも、即座に片付けられるひな人形。
「どうしたんだい。白酒の飲みすぎかな?」と、家庭教師が微笑む。
そうではない。テストが不出来だったのは、気が沈んでいるだけだった。
不意打ちの様な「お見合い」。
「売れ残っちゃいけないしね」という義母の微笑が、彼女には鍼の様だった。
ブラウン運動の粒子の様に、意味無く迷走し、限定されてゆく自分の人生・・・
「今日は・・・お部屋に行くんですか?」
先生は無言で頷く。
思えば、テストが不出来だったあの日、最初にあの部屋を使ったのは5年前だった。
最初は何気ない「遊び」のつもりが、今では頬染める「秘密」になっていた。
何年も何年も繰り返されてきた、二人だけの歴史・・・決して他言はできない。
全てが堅苦しい今となっては、この小部屋だけが、彼女の「遊び場」だった。
そして、ここが女中達に「おしおき部屋」と呼ばれている事も、彼女は知っていた。
「さあ、私は用意ができたぞ」
夕暮の窓を背にした、タキシード姿の先生が眩しい。
彼女は、馴れた仕草で背を伸ばし、目を伏せてこう言った。
「ムーンクレスタ・メイクアーップ!月に代わって(以下略)」
・・・恥かしくて言えない、こんなこと。
※「ブラウン」がすごーく難かしい(^^;
次のお題は:「電光石火」「磁石」「力うどん」でお願いします
216 :
「電光石火」「磁石」「力うどん」:02/05/03 07:16
プロヂューサー
『今度のフードバトルのお題は「力うどん」
チャンピオン城太が電光石火の勢いで、皿の上に大盛りになっているうどんを
次から次へと平らげていき、他者の追随を許さない。その迫力に参加者や観客
が磁石のように釘づけになってしまう。これで行こう!』
次のお題は「活版印刷術」「空気投げ」「箱式昇降機」
217 :
「活版印刷術」「空気投げ」「箱式昇降機」:02/05/03 12:36
端末の応答が遅くなった、接続者数が増えたのかもしれない。
「春なのかもしれないんだなあ・・・」
春って、予算が新しくなったり、新人がどっと入る期日の事だよね。
地下設備の生活しか知らない彼には、「春」の本来の意味がわからない。
20世紀比35倍速の学習スケジュールでは、そんな余裕なぞある筈もない。
今日も、端末が彼に語り掛ける。甘く、それでいて明瞭な言葉で。
「活版印刷術は****年(←わ、忘れたー!)、この時活字が初めて云々」
彼の中で、「活字」を持つ忍者が「活版印刷術」で敵をなぎ倒す。「ぐわぁ!」
一切支障はない。憶えやすくて上首尾。
「意味の接続」以外に何の使い道もない知識なのだ。彼にとっては。
敵は「空気投げ」で忍者に立ち向かう。
圧搾空気で部屋の隅に投げられる忍者・・・よって隅投げ。これで2語接続。
彼の仕事は「意味の接続」だけ。それ以外、人間が入れる仕事がどこにある?
部屋を出たことがない彼には「箱式昇降機」すら「移動手段」以外の意味を持たない。
それでもいいか、と彼は思う。自分を「かわいそう」とは思わない。
第一、彼は「かわいそう」という意味をいまだ学習していなかった。
※ありきたりなねたネタで35倍速を実現(←ウソ(^^;)
次のお題は:「金色の星」「銀色の髪」「黒い瞳」でお願いします。
218 :
「金色の星」「銀色の髪」「黒い瞳」:02/05/03 13:12
「きっと王子さまは私を迎えに来てくれるはずだわ」
少女は窓の外に向かって祈りを捧げるように、そう呟いた。
ひらめくカーテンの間から垣間見えるのは、眩いばかりに煌めく
金色の星。涙に濡れた少女の黒い瞳は、その星の輝きを
悲しげに映していた。
狭苦しい、殺風景な部屋。少女はどれだけ長い間
ここから出れることを願っただろうか。
少女は、一輪の花をそっと頭に載せ、心の中で言い聞かせた。
「そう、その王子さまは銀色の髪をなびかせ、
白馬の馬にまたがってくるのよ」
そのときである、少女の背後のドアが突然開けはなれた。
はっと振り向く少女。
「ごはんよ。あんた頭に花びらなんか乗せてなにやってんの?」
次は「滝」「メリケン粉」「自己嫌悪」でお願いします。
219 :
「滝」「メリケン粉」「自己嫌悪」:02/05/03 13:48
僕の大好きな滝さんが、ケーキ作りの途中メリケン粉を顔につけてしまい
自己嫌悪に陥ってしまった。僕はそっと彼女の肩を抱いてやる。
次は「琵琶法師」「懐中電灯」「コギャル」でオネガイします。
220 :
「琵琶法師」「懐中電灯」「コギャル」:02/05/03 17:58
田舎から出てきたばかりの僕が渋谷をぶらりと歩いていると不意に肩を叩かれた。
「お兄さ〜ん、いいとこ紹介するからさぁ。いっしょに行かない?」
わ、本物のコギャルだ。田舎とは違って垢抜けてるな。僕が妙な所に感動している
とコギャルは僕の手を引っ張り、裏通りの雑居ビルへと誘った。
「ここ、ここ。ここの2階なのぉ。」
はうっ、ボクオカネナイデス。引っ張られるままに僕は怪しげな店へと連れ込まれた。
「それじゃ、バイバ〜イ。」
去っていくコギャル。怪しげな黒服が僕に懐中電灯を手渡し奥のドアを指差した。
「あそこです。前金3000円ね。」
屈強な黒服に、僕は恐る恐る3000円を手渡した。ドアをあけると、そこは真っ暗
だった。もう一つ、ドアがある。その向こうも闇だった。あぁ、これか。僕が懐中電灯
を灯すと、突然、個室に琵琶の音が鳴り響いた。
「祇園精舎の鐘の音ぉぉぉぉ、諸行無常の響きありぃぃぃぃぃ。」
渋谷に琵琶法師、何でやねん。
14行です。が、長すぎたかなぁ。
次は「連休」「サンキュー」「剛速球」で。辛いかなぁ。
今日から3連休。日頃仕事で疲れているだけに、こういう時はのんびりしたいが……。
「ねぇパパ。わたし、牧場に行ってお馬さんに乗りたいな」
ほら来た。まずは一番下の娘か。かわいい盛りである。遠い牧場に行くぐらいならと、
一頻り、背中に乗せて遊んでやると満足したようだった。自分の部屋に戻っていく。
直後、入れ違いに真ん中の娘が居間に入ってきた。
「お父さん。私、映画を見に行きたいんだけど……」
むむ。少し困ったが、思いついてお金を2人分渡す。これで友達と行ってきなさい。
そう言うと、頷いて出て行った。この幸せな余暇が潰れることを思えばこの程度の
お金は惜しくない。さあ、だらだら過ごそう。
長椅子に寝転がると、目の前に写真が差し出された。ああ、これは俺とキャシーの
写真じゃないか。彼女は良かったなぁ。そういや、ナニが終わった後にもサンキュー、
なんて言ってキスしてきたっけ。……って、え? 恐る恐る写真から視線をずらす。
「買い物。送って。それと荷物持ち。後、金も」
長女だった。この剛速球はさすがに打ち返せなくて、俺は泣く泣く午後いっぱい
デパートでお供をしたのだった。
ぎりぎり15行(汗
次は「炒飯」「希望」「微分」でよろ。
222 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/03 19:53
常連の大学生と会話をしていた炒飯店店主の森沢は声を荒げた。
「最近のガキは簡単な微分積分やベクトルさえできんのか!!」
「そうなんです。時給が高い家庭教師のバイトを選んだのは、楽そうだからという
不純な動機なんですが・・考えが甘かった。こんなに辛いものとは思いもしませんでしたよ。」
「これは最近国がやってるゆとり教育のせいなのか?ゆとりという名の下に国民を馬鹿化にするという・・」
「多分そうだと思います。最近学校が五日制になってから授業の単位数が必然的に減って、そして第一に数学が
必修科目から外されていってるんですよ・・・。」
森沢はため息をついた。かつて高校で数学を教えていた森沢は、数学の現状がそこまで悲惨になっているとは知らなかった。
「もうこの国には希望が見えんな・・・」
森沢は悲しげに言った。
次は「カメムシ」「踏切」「温泉」で。
223 :
無理(152,185):02/05/03 21:02
踏切で列車が過ぎるのを待ちながら、修司は李の最後の言葉を思い返していた。
「裏切り者。あんたがその気になったけ、わしが全部お膳立てしたったんやで。全部あんたのためにやったった、
その報酬がこれか。あんたも焼きがまわったな。歳やな」
本当にその土地に温泉が出ると、李は信じていたのだろうか。それとも、会社を我々が乗っ取った時のように、
それもまた巧妙に張り巡らされた罠だったのだろうか。
規則的な警報音がふっと止み、遮断機が上がる。修司はゆっくりとサイドブレーキを戻す。
びちっ。
開け放たれた窓から突然何かが飛び込んで、頬に当たった。とたんに、異臭が車内に立ちこめる。頬に潰れた
ものは、緑色のカメムシだった。
頬から剥ぎ取った、まだ手足をばたつかせる潰れた虫を見ながら、李は気づいていたのだ、とふと思った。
だまされているのは自分なのだと、李は最初から気づいていたのだ。
そうでなかったら、あんなによどみなく最後の言葉を浴びせて、あんなに無抵抗に死んだりしないだろう。あんたの
ためにお膳立てをした、その最後のご奉公が、あの死だったか。
修司の頬を涙が流れて、へばりついたカメムシの液体を洗い流していく。
そうだったか…すまない、すまない、すまない…。
後ろに詰まっている車がクラクションを鳴らしても、修司は嗚咽にむせんで車を動かすことが出来ない。
次の方は「禅寺」「グラデーション」「北斗七星」でお願いします。
お題書き忘れたのです。すみません。222参照してください。とほほ。
225 :
「滝」「メリケン粉」「自己嫌悪」:02/05/03 21:41
美咲から暑中見舞いの絵葉書が届いた。
裏には禅寺の軒下から見える北斗七星が、グラデーション鮮やかにプリントされている。
思わず口元がほころんでしまった。
次は「千日手」「ムー大陸」「確定申告」でお願いします。
「ムー大陸」
「空洞化」
「確定申告」
「くだらん」
「んも〜!!ちゃんと参加してよねっ」
「っつーか続いてるし」
「し……し……」
「…………」
「……千日手」
「???????????」
「!!!!!!!!!!!」
「♪」
次は「役不足」「真空」「旅立ち」でお願いします。
「役不足だ」
男は一言で斬って捨てた。
「ICどころか、真空管しかない状態で、どうやってPCを作れと?」
「それを言うなら役者不足」
助手は淡々とした口調で指摘したが、男は少しも動じなかった。
「日本語は流動的なのだ。で、もう一度聞くぞ。真空管でどうしろってんだ?」
博物館から運び込まれたばかりの、山と詰まれた真空管。
SLSIを超えるバイオチップの登場により、骨董品以上の用途は無いと思われていた真空管。
その真空管で、計算機を作らなければならないのだ。
「別に、スーパーコンピューターを作れって言われてるんじゃないんですよ?」
助手はさっきから、黙々と真空管を計器に繋いでいた。
「25桁程度の計算が可能な、PCができればいいんです」
「そりゃ、俺は確かにエンジニアだが、真空管なんて触った事もないんだよ!」
「僕だってそれほど詳しいわけじゃないですよ」
助手は相変わらず、手を休めようとはしない。
「しょうがないじゃないですか。敵さんの電磁波妨害が、予想より強力だったんだから」
「納得いかーんっ!! いくら真空管が、電磁波に強いからって……」
男の愚痴を無視し、助手は都合1145個目の真空管を接続した。
傍らに置かれたTVからは、例の戦争報道が映っていた。
「神民の皆さん、こんにちは。本日も我が国は、多大なる戦果をあげました。
旅立ちの日はもうすぐそこです。頑張りましょう」
……地球は後少しで滅亡する。
各国は争って惑星間宇宙船を建造し、出来ない国は戦争を仕掛けて他国から奪いあう。
「まったく、人類ときたら、絶滅も素直に受け容れられないのかねぇ」
最後の真空管が音を立ててはまり、助手はにやりと笑った。
次は、「海胆丼」「魔法少女」「味王様」でお願いします。
228 :
「役不足」「真空」「旅立ち」:02/05/03 23:00
「ま、この世界のことはオレにとっては全部役不足だったのよ。このオレが目指すは宇宙征覇よ」
つっておれのダチはふらっと行方不明になった。
奴の旅立ちから3年。
高校を卒業し、運送屋の仕事も慣れてきて、子供も生まれるし結婚するかな、などと考えていたところに、奴が帰ってきた。
ところどころ破れた長ランとバサバサな学生帽が妙に似合っていた。
よお、久しぶりだな。
おれの頭の中に奴の声が響いた。
「お、おまえ一体何やってたんだ? それにこりゃなんだ? テレパシー?」
ははは、これぐらいの能力ねえととても宇宙じゃやっていけねーぞ。
奴は笑っていた。
おれは奴と近くの食堂で酒を飲むことにした。
「どうよ、宇宙は」
宇宙人なんてもんはしょせん気合いよ。対したやつらじゃねえ。
まあ、そういうわけでな、おれに言わせりゃ、一番の強敵は真空。これだな。
最初、奴にはおれのこの熱い魂は通じなかった。
でもな、何度か戦ううちに、解りあえるようになってよ。今じゃすっかりおれのマブダチよ。
食堂のテレビは宇宙の温度が測定の結果、三年前よりも上がっているというニュースを流していた。
次は「超人」「オレンジ」「お茶」で。
229 :
「海胆丼」「魔法少女」「味王様」:02/05/03 23:06
海胆丼とかけて味王様ととく。
そのこころは?
(゚д゚)ウマー
魔法少女とかけて味王様ととく。
そのこころは?
(゚д゚)ウマー
謎掛けになってないけど、アリだよね?
次は「七つ毛」「召集」「感涙」でお願いします
230 :
「超人」「オレンジ」「お茶」:02/05/03 23:14
日がどっぷり沈んでしまったので、僕は急いで家に帰ろうと思って、畑のあぜ道を走っていた。
すると、突然僕の目の前にオレンジ色の眩い閃光が!!
「な、なにが起こったんだ?!」
光の中から現れたのは、まぎれもなく悪魔超人だった。
僕は驚きのあまり、思わず尻餅をついてその場にヘタレこんでしまった。
慌てる僕に構わず、悪魔超人はズンズンとこちらに歩み寄ってくる。
その歩調はゆっくりだが、確実に歩みを進めている。
ズンズン
「お茶どうぞ」
「おう、サンキュ!」
次は、「海胆丼」「魔法少女」「味王様」でお願いします。
231 :
「うに丼」「魔法少女」「味王様」:02/05/03 23:41
「さあ、これを食ってみろ!」湯気の立ち上るドンブリがドン!と置かれた。
「これは・・・・」
「これはな・・」板前は唇を少しだけゆがめて笑う。
「日本海肝丼だ!」
「にほんかいきもどん・・」意味がわからない。
とにかく食べてみよう。うっ!何だこの味は!生臭くてそれでいてシツコイ!
「はっはっは、これが新宿は竈で修行して手に入れた味玉様よ。」
あじたまさま・・味王様ではないのか?
魔法少女はゲンナリして丼を置いた・・
次は「競争」「床下」「観光」でお願いします。
232 :
「競争」「床下」「観光」:02/05/04 00:58
どうもここ数日騒がしい。建てられてから数十年はゆうに経つぼろアパートだ、
鼠が住み着いていることなどは入居する前からわかっていたし、やつらの薄汚い死骸を見るのも珍しくは無い。
あの小さな体に似つかわしくない大きな足音をたてるのも承知している。
だがそれにしたってこの騒がしさは尋常ではない。壁を蹴っても、天井を突ついても、腐りかけた畳を思いきり
踏み鳴らしても一向にやまないのだ。
そのおかげでろくすっぽ眠れないでいた私はやつらに一言文句を言うことにした。
厚手の皮コートをきっちり着込み軍手を数枚重ねて装着して、おぞましい雑菌だらけの牙への守りとする。
饐えた匂いのする畳を一息に持ち上げ、懐中電灯で床下を照らす。果たしてそこには。
いるはいるは、数十匹の丸々とした鼠が走り回っている。まるで競争でもしているかのように慌てふためき
どこかへ消えていく。
そのさまは話に聞く沈みゆく船から我先に逃げ出す鼠を思い起こさせた。
「おい貴様ら、一体なにをそんなに騒いでいるのだ!」
怒鳴りつけてみるものの答えるものなど当然無く、私はとてつもない薄気味悪さを覚えた。
急いで畳をもとに戻し上にかぶせるようにして布団を敷く。
コートを脱ぐことも忘れ頭から布団をかぶると、嗅ぎ慣れた汗の匂いにすこしだけ安心した。
この狂躁が去ったあとになにが待っているのか、それが気がかりだったが私は呟いた。
「仲良くみんなで観光にでも行くんだ、そうに決まってる。何せゴールデンウィークだからな」
次は「ミニカー」「ケーブルテレビ」「シャコタン」でお願いします
競争といえば僕が想像するのはパン食い競争ですが、
実際はやったことも見たこともありません。でも「ぱんくいきょうそう」って
なんか響きがイイなと思うんです。いつかはやってみたいですね。
やってみたいといえば、僕は暗くて狭いところが好きなんですけど、
観光バスの客席の床下って、荷物積めるようになってますよね。
あそこに入ってみたいなと。高さは無いけど面積はそれなりにありそうなので、
ふとんなんか敷いて寝てみたいですね。そういう深夜バスって無いもんでしょうか?
次は「カーディガン」「競泳」「ニセモノ」でお願いします。
ぐおん…ぐおおん…
勢い良くヒールアンドトゥで減速するエンジン音は、奴のアルファか?
シャコタンだから駐車場に入るのに時間かかってる。奴に違いない。
入り口のすりガラスがダークブルーに染まった。やはり奴だ。
僕の経営するミニカーショップの常連である奴は、
毎週水曜日、この時間になるとやってくる。
奴は、店のケーブルテレビでアイドル番組を見るためにやって来るのだ。
1時間もすれば、申し訳程度に300円のホットホイールを買って帰っていくだろう。
「やっ、悪いけど今日もテレビ見せてね」
奴は慣れた手つきでスツールを引っ張ってきて、テレビの前に陣取った。
「悪いなんてことないよ、いつでも来てくれていいって」
売れ行きも思わしくない昨今、実際、店内に自分以外の人間が滞在してるのも悪くない。
今日は棚のほこり払いも一段落してる事だし、一緒にこの番組でも見る事にしよう。
お題は233で。
235 :
「カーディガン」「競泳」「ニセモノ」:02/05/04 13:19
年のせいか、プールサイドで冷え込む。
カーディガンの下に水着という服装で、彼女はスタートを待っていた。
30を越えてなお、現役トップ。常勝一位の名選手である。
プールサイドでは、若手選手がカメラマンに愛嬌を振りまく。
水着姿でポーズ・・・寒くないのだろうか、冬の大会なのに。
新聞記者に自己紹介する娘。
スタート台で歌を披露する娘・・・
しかし、彼女は負けない。
彼女達には悪いが、ああいうのはニセモノだと思う。
ここは競泳だ。スポーツなのだ。
スタートの合図!無心のクロールで最初にゴールイン!
「一着、タイム、5分9秒63・・・」
平然と場内アナウンスを聞き流す彼女。いつもの事なのだ、一着は。
「・・・好感度0.05 ルックス0.18、可愛指数0.02・・・総合15位」
気にしない、これもいつもの事なのだ。
※昼ご飯ずらしてまで書いてこれ・・・(^^;L
次のお題は:「あと戻り」「はじける」「草花」でお願いします。
236 :
180,177:02/05/04 13:39
蛇足な説明(^^;
「インスタント」って、177のお題の茶化しです(笑)
(↑誰も読んでないよー、そんなところ)
インスタント「ラーメン」 インスタント「写真」 インスタント「車検」
雑談失礼しましたm(_ _)m
粘り続ける春は醜態を晒し、もはや草花は夏を望んでいた。
自身が年を取っていく悲しみ、老いてゆく春に対する同情……
この時期の草花がそんな悲しみを抱えているように見えるのは僕だけなのだろうか。
「僕だけなの?」僕は静かに尋ね、彼女は鬱陶しそうに答える。「なにが?」
「だから、晩春は悲しいね、ってこと」
「さあ?」彼女は首を傾げてから、続けた。「そんな女々しい植物ばかりだとすると、
さぞ晩春の野は雰囲気が悪いでしょうね」
「そうかもしれないよ」
「それじゃあ、そうなのかもね」言葉同士があたってはじける。
まるで2人ともすぐ前になにを言ったかすら、覚えていないような雰囲気さえある。
「なんだよ、それ」
「なんでしょう?」
面白そうに彼女が笑って、僕は思った。そして彼女を誘った。
「出掛けようか?」
「花でも見る気?」
「そうだよ。決してあと戻りしない前向きな季節の、ね」
ゴメソ、ミスった。
237は「あと戻り」「草花」「はじける」です。
次は、「ステップ」「メガネ」「ショートバウンド」で。
239 :
ステップメガネショートバウンド:02/05/04 18:10
女の顔が上気するのが、メガネを通じてもありありと見てとれた。
ダンスホール。バンドの演奏も熱を帯びはじめる。
女が美しく見えるようにリードする。
駒沢のダンススクールで覚えたステップ。
こんな出会いがあるならば、半年で十万円の授業料など安いものだ。
いま我々は、このダンスホールの主役となっている。
高鳴る心のリズムの、その刻みに割り込むかのように、
女の吐息がショートバウンドで首筋にかかった。
次は「表徴」「発売日」「ねっとり」でお願いします
240 :
「ステップ」「メガネ」「ショートバウンド」:02/05/04 18:18
悲劇は突如起こるものである。
少年野球チームでショートを守っていた金沢孝太は今日もごく普通に試合に出て、
そしていつものようにショートを守っていた。
視力が弱い金沢は試合中はいつも眼鏡を着用していた。その眼鏡が今回の惨事につながるとは
誰が考ええれただろうか。
二回の裏、金沢のチームは一死満塁のピンチを迎えていた。
打者はピッチャー、あまり強打者ではない。
金沢は気負っていた。俺が併殺にとってやればチームは大きな流れをつかめる、と。
案の定、ピッチャーは平凡なゴロを打った。
よし、いける。守備には自信を持っていた金沢は華麗なステップでゴロをショートバウンドで取ろうとした。
だが、悲劇はそこで起こってしまった。
ゴロがイレギュラーして、金沢の顔面に飛び込んできた。
ボールは金沢のメガネを粉砕した。
その眼鏡の破片は金沢の左眼から光を奪ったのであった。
試合会場は転々とボールが転がったまま日没を迎えた。
次は「ロープウェー」「新緑」「風船」でお願いします・・・。
緩やかな放物線をえがき、打球が彼のとこへ飛んできた。
低く腰を落とした姿勢から、白球に向かって軽やかにステップを踏む。
ショートバウンドにあわせて掬い上げるように柔らかく捕球し、反射的に送球する。
往年の長嶋のように真っ直ぐに伸びた利き腕が美しかった。
彼は特注のメガネをはずし、流れ落ちる汗をアンダーシャツでぬぐった。
手にしたメガネは形状記憶合金を使用し、最先端の人間工学を駆使して作られたものだった。
そこまでして己の能力を最大限に上げる努力をした。
ボールを捌く。彼はその事だけで給料を貰っているようなものだった。
そのため、メガネやスパイクその他ありとあらゆる物まで最良の製品を追求し、
最高のパフォーマンスをする事に神経を注いだ。
球を捌く事が野球界における彼の存在意義だった。
「おい、そっちに球いったぞ!」汚い野次が飛んだ。
彼はしぶしぶ球を拾いに行く。
――あのボールボーイ、なんかボケっとしてるな・・・・・・。
そんな声が観客席から聞こえてきた。
つい出来心でかぶっていると分かりながら送信しました。
次のお題は239の「表徴」「発売日」「ねっとり」でお願いします 。
243 :
「表徴」「発売日」「ねっとり」:02/05/04 18:27
>239
野球の話にしないところがすてきです。
今日は大好きなバンドの新譜の発売日。
でも玄関の前には昨晩からストーカー。
わたしはそんなねっとりした男は嫌い。
やっぱりサッカー部の○○君が大好き。
だって彼がいい男の表徴なんだもん?。
次は「集団疎開」「フランチャイズ」「角質層」で!
244 :
「集団疎開」「フランチャイズ」「角質層」:02/05/04 19:36
突如として、東京湾沖に出現した大怪獣が上陸してから一週間。自衛隊の対策
本部が有効な手を打てぬまま、都内の重要施設は次々に破壊されていった。
〜対策本部〜
「しかしアレですな。どうして怪獣は東京が好きなのでしょうな。」
「そうですなあ。東京タワーといい議事堂といい、必ず狙われますな」
「東京都とフランチャイズ契約でもしておるんでしょうな」
「それでも、なぜか皇居だけは絶対に狙われないのが不思議ですなあ」
「それは大人の事情というものでしょうなあ」
「次は青森あたりに上陸してほしいものですな」
「それは困りますな。あそこには息子達が集団疎開しておりますゆえ」
「それはさておき、怪獣の倒し方を考えねばなりませんな」
「この際、先人にならって竹ヤリでも持って特攻しますか」
「おそらく、角質層を突破することもできますまい」
「さてさて、どうしたものでしょうなあ」
こうして、今日も怪獣は大暴れするのであった。
あ、次は「プラズマ」「横着」「ヒッチハイカー」で。
246 :
「プラズマ」「横着」「ヒッチハイカー」:02/05/05 00:32
「おらよ。ここまでだ。じゃあな」
ここはマゼラン。星が薄い。思えば遠くにきたもんだ。
そんなことを考えながら、おれは気のいい運ちゃんと別れた。
銀河を渡り歩くボロトラックは
プラズマの排気炎(重力制御でさえねーんだな)を上げて消えていった。
さてと。
おれはボロボロの銀河系ヒッチハイカーの友を開いた。
そこには”ステーションのうどんはいける”とだけ書いてあった。
星に降りてもねーのかよ。横着してんな。
まあ、地球化された星もねーんじゃ、そんなもんか。
おれはヒッチハイカーの友をしまって、うどん屋に向かった。
うどんはぼよぼよで、コシもなにもなかった。
おれはうどん屋のおばちゃんの目を盗んで店を出て、
どこに行くともしれないトラックの荷台に潜りこみ、目立たないところにエアテントをセットした。
おれはヒッチハイカー。銀河を食い逃げる男。
次は「ジュース」「米」「無謀」で。
247 :
「プラズマ」「横着」「ヒッチハイカー」 :02/05/05 00:44
俺は、急いでいた。夕方から降り出した雨は夜半にかけ勢いを増していた。
さすがにこの時間ともなると車は少ない。だが、アクセルを踏み込む足に躊躇する。
ワイパーは最高速にしてある、だが、視界が確保できない。対向車のヘッドライトが
水の膜に歪む。ちくしょう、俺が横着して再計算しなかったばかりに。あせりだけが
先走っていく。
トカマク型核融合炉・原型炉「ようこう」は初の臨界に向けて稼動中だった。
久しぶりの休暇、俺は街に借りたアパートでぼんやりと図面を眺めていた。そして、
致命的なミスに気がついた。・・・それは初歩的な、本当に初歩的なミスだった。だが
それは融合炉に致命的な欠陥を与えるだけの影響度を持っていた。下手をするとプラズマ
がコイルからもれて・・・。とにかく、ようこうへ急がなければならない。
「!」突然、俺は人影を見た。それはゆらゆらと車道に立ちはだかった。人影・・・
男はそして運転席側のドアへやってくると窓ガラスをコンコンとノックした。
「スイマセン、小浜まで乗っけてってくれませんか?」
ヒッチハイカーだった。俺は窓を開けて怒鳴った。
「てめぇ、俺は急いでるんだ。ノコノコ車道に出てくるんじゃねぇ!」
そして俺は車を急発進させた。男が何か罵声のような事を叫んでいたがどうでもいい。
とにかく、俺は急いでいた。
あう、17行。おまけに出遅れ。一応アップしますね。お題はもちろん246の 方ので。
248 :
「ジュース」「米」「無謀」:02/05/05 01:06
「無謀だったのかな、やっぱり。テレビみたいには行かないよな。」
店の軒先から雨雲の立ち込めた夜空を見上げる。大学最後の夏休みは裏日本を無銭旅行!
企画は悪くなかったつもりだった、が、彼女をつれてくるのは間違っていたと思う。
持ってきていた米も無くなり飲まず食わずの1週間、やっとの思いで兵庫・京都を
抜けた僕達は福井県に入った。車通りが少ない。いや、それでも海水浴客はそれなりに
いるのだが皆舞鶴へと向かっていく。ここは何処なんだろう。バス停の看板は潮風か錆
がきていて読みづらい。
「大丈夫か?」
「・・・うん。」
彼女の額に手を置いてみる。熱い。ポケットを探ってみる。なけなしの120円、
それでジュースを一本買った。
「ほら、飲みな。」
「・・・あ、ありがとう。」
彼女は、まるで赤ん坊が母乳を飲むようにチュパチュパと、ジュースをなめるように
飲んだ。ちくしょう、それにしてもさっきの車の野郎、なにをそんなに急いでやがった
んだ。もうちょっと情ってもんがあってもよいものを。俺はそんなことを思い、彼女を
抱いていた。
また17行かぁ。悔しいので書いてみました。お題はお約束その5を適応で
継続でお願いします。
249 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/05 01:19
>>248 は?意味がわかんないんだけど。
次のキーワードは何よ?余計なことしないでね、紛らわしいから。
>>250 荒らすな。猿。
現在のお題は「ジュース」「米」「無謀」。
251 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/05 01:40
プルトニウムを積んだトラックを運転できるなんて、俺はなんて
ラッキーなんだ。そう思わなければやってられない。
ったく。隣にはもう干涸びきってる爺さんのオマケつきだ。
シーシーと音を立てながら、つまようじで歯をほじくっているが、
食事を取ったのは何時間前だと思っているんだ、このボケ。
米屋で売っているジュースが飲みたい? いっぺん死んどけ。
やはりこれは無謀な賭けではなかったか。
資源が不足、人材も不足、時間も不足、不足だらけとくらあ。
「着きました。博士」俺はナントカ大学名誉特別教授の爺さんが、
上手くトラックから降りられるように手を貸す。
戦局はこっちにめちゃくちゃ不利だ。あちこちの発電所が工場が爆破され、
若い奴は前線で死に、この国には年寄りしか残っていない。
それでもって、一発大逆転を狙う新兵器がどうのこうの。
「お足元にお気をつけください」80過ぎの爺さんに何を期待しろと?
60になったばかりの俺は、そう思った。
次の題は、
>>240さんの使って「ロープウェー」「新緑」「風船」
252 :
名無し物書き@修行中(247・248):02/05/05 01:47
>>249 申し訳ないです。連続書き込みはルール違反だとわかってはいながら続き物を
書いてしまいまして。
5:お題が複数でた場合は先の投稿を優先。前投稿にお題がないときはお題継続。
最後の文章は上記お約束を適応してください、という意味のつもりでしたが
以後こういう事はやらないようにしますのでご容赦ください。
>>250 フォローありがとうございました。面目ないです。
253 :
名無し物書き@推敲中? :02/05/05 02:33
私は今、ロープウェイに乗っている。
どうも最近ツキが良くない。私は少し気晴らしをする事にした。
ただ、観光地のこの山に背広の私はさぞ目立つことだろう。
ロープウェイが頂上に着く、そんなに高い山ではないから頂上の木々は既に芽吹き、
心地よい新緑の香りが鼻をくすぐる。
少し歩いて、私は展望台に着いた。
そこには家族連れと老夫婦がちらほらと見うけられる。
私は展望台の手すりに寄りかかり山頂からの展望を楽しむ。
やはり奇異に映るのだろうか。家族連れが怪訝そうな顔でこちらを見ている。
私は溜息をついた。
奇異の視線で見られるのにも笑われるのにも慣れた。
展望台の下はちょっとした崖だ。このままもう少し体重を前に出せば転落できるだろう。
あと、数センチで重心が手すりの外へ移る。これで楽になれるかもいれない。
その時、突然子供の泣き声が聞こえた。私は思わず振りかえりその声の主を見てしまった。
気が着くと脚は展望台のたたきにしっかり着いている。
子供は空を指差して泣いている。
私は何気なくその指先を追った。そこにはどんどん小さくなっていく紅い風船があった。
何で風船なんか持っていたんだ? なんで放したりするんだ?
私はその子供を腹の中で罵った。
どうも、最近ツキが良くない……
なんだか支離滅裂……
次のお題は「携帯電話」「公衆電話」「CD」でよろしくお願いします。
254 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/05 02:37
長すぎましたね。ゴメソ
255 :
「携帯電話」「公衆電話」「CD:02/05/05 02:53
私は公衆電話から、彼に電話をかけていた。
公衆電話を使うのは数年ぶりのことだったから、
まずはコンビニで、テレフォンカードを買うことから始めなければならなかった。
なぜ私が公衆電話を使うのか。
それは、私の携帯電話からでは、彼は電話を取ってくれないからだ。
あの時の私はそう考えていた。
今になって考えれば、携帯の設定をちょっと変えれば、
番号非通知にすることは簡単だった。
それでも、あの時の私は取り乱していて、深く考えずに
公衆電話を探しに飛び出していた。
今、私は彼の部屋で、彼と一緒にCDを聴いている。
あの時の彼は、私のことが嫌で電話を取らなかったのではない。
すぐに感情的になってしまう私のことをわかってくれていて、
気持ちを落ち着かせる時間を、私にくれていたのだ。
ありがとう、あの時の怒りなど忘れて、私は彼に寄り添った。
次は、「支援」「イオン」「香水」でお願いします
曲が途切れた。私はバッグの中からMDを取り出し、ディスクを取り替える。
プレイヤーもデイスクも手のひらにすっぽり収まる。昔、CDなんていう物が出た時には、その軽さ、小ささ、携帯性の良さに感激したものだ、とふと思い出す。新し物好きの私は飛びついて買った。
バッグの中を見渡せば、そんな私が買った新しくて便利な物が溢れている。
たとえば、携帯電話。今、私が待ち合わせ場所に向かって歩いている場所は大通りだけれど、昔は公衆電話がたくさんあった。でも今は、携帯電話のせいか見かける数は減った。
ま、なくても困らないからいいけど。世の中、便利になるのはいいこと。むつかしいテクノロジーなんか分からなくっても、売り出されれば飛びつくだけ。
「あっ、ヤバ……」
携帯の時刻表示を見て、足を速める。待ち合わせ時間に遅れそうだ。今の彼氏は時間にうるさい。
あーあ、恋人もこんなに小さく簡単に携帯できたら楽なのに。誰か作ってくれないかなぁ。
次のお題は「母の日」「雨」「海」でよろしくお願いします。
あっ、遅かったですね。すみません。>256のお題は無視してください。
258 :
◆4RxB688c :02/05/05 05:18
【経済】武田薬品、媚薬を発売
製薬大手の武田薬品は、このほど香水の市場にも参入することを発表した。
参入第1弾の商品は、「ホーホレチャッタノヨランラランラランシリーズ」。この香水には、特殊なメンデレビウムイオンが配合されており、男性の脳に中毒症状を起こす効果があるという。
同社広報課は「この香水で、世のシングル女性の多くが恋人をみつけられることだろう。ゆくゆくは結婚年齢の低下という変化が現れるはずだ」と自信のほどを語っている。
この香水シリーズは、出生率低下に悩む厚生労働省の全面的支援のもとに、連休明け7日から全国の化粧品店・結婚相談所で一斉に発売される。予価10000円(100ml)。
259 :
◆4RxB688c :02/05/05 05:20
「禁煙車」「珈琲牛乳」「治安維持法」でお願いします。
260 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/05 05:57
禁煙車を珈琲牛乳に治安維持法。
261 :
「禁煙車」「珈琲牛乳」「治安維持法」:02/05/05 06:19
その知らせを聞いた時、俺は列車に乗っていた。
俺は気分を落ち着けるために煙草を吸おうとしたが、
そこが禁煙車であることを思い出してデッキへと移動した。
まさか21世紀になって、治安維持法が復活するとはな・・・
実際にはその法案は、
予測不能犯罪を未然に阻止するための関連法、だとかなんとかの
もっともらしい名前がついてるが、内容は戦前の治安維持法とほぼ同じだ。
この法案を推進している与党の大物は、極端な純粋思想の持ち主だ。
珈琲牛乳ですら、彼の美意識にあわないらしく、その名前は変更された。
この法律を最大限に利用して、彼は移民及び混血児を一掃する気に違いない。
もちろん俺はそんなことは許すわけにはいかない。
反治安維持法のキャンペーンを展開するのだ。
俺は旅行の予定を取り消し、帰路についた。
次は、「レーザー」「肩越し」「気づいて」でお願いします
262 :
「レーザー」「肩越し」「気づいて」:02/05/05 09:33
「綺麗な鏡でしょう?」
アンティーク風の凝った細工に、ぴかぴかに磨きあげられた鏡面。何百年前も前に職人が
丹誠を込めて作り、ずっと大切に手入れされながら受け継がれてきたような、そんな鏡だ。
「で、この鏡の前で写真を撮ると、後ろに人の顔が映るんだって?」
「別に恐ろしい幽霊が映るわけではないのよ。その人と将来結ばれる相手、その人の顔が
映ることが、たまにあるだけ。肩越しの恋人というわけね」
お互いの思いを伝えることができないまま若くして亡くなった恋人たちが、この鏡に不思議な
現象を起こすという話らしい。片方が彼女のご先祖とか。
彼が鏡の前で写真を撮ってもらったのは、特に将来の結婚相手を知りたかったからではなく、
そんな少女趣味な話をする彼女が、ふだんの印象とだいぶ異なり、新鮮で面白かったからだ。
ところが、なぜか彼の右肩の後ろに映ったのは彼女の顔で、映り込みにしては髪型も服も違う。
いくら調べてみても原因は不明で――そうこうしているうちに彼と彼女は結婚した。
人は一生に一度くらいは、不思議な出来事に出くわすものだと彼は思っている。彼女の方は、
レーザーホログラムってなんて素敵、人の気持ちに気づいてくれない鈍感な彼に強引な手を
打ったのは正解だった、と思っているのだが。
次は「ゴリラ」「白日夢」「エポック」でお願いします。
263 :
「ゴリラ」「白日夢」「エポック」:02/05/05 09:47
ゴリラが白日夢を見ている。エポック到来
次のお題は「精液」「ヴァギナ」「新聞紙」でどうぞ
264 :
「精液」「ヴァギナ」「新聞紙」:02/05/05 10:42
しかしまぁ、またどうしたもんだろうね。新聞紙をひき、俺はつめを切り始める。
春の縁側は猫にとっても天国らしく、あくび一つと小さな伸びをした。たぶん発情期
なのだろう。バァギナが少し自己主張の度合いを強めている。
パチンパチンと、爪がはじける。
昨日、俺は精液バンクに行って来たのだった。はてさて、それが良かった事なのか
悪かったことなのか?自然の摂理にはまぁ、反しているわな。そうぼんやりしながら、
爪を切る。そして、職員の言葉をふと思い出す。
「いや、まぁ、皆さん高学歴や高収入の方の精液を求められるケースが多いですよね。」
つまりそれは俺の精液にはお呼びがかからないだろう、という事を遠まわしに言って
いるようなものだった。嫌なら断ればいいのに、とも思ったがまぁ金をくれる相手に
わざわざ萎える様なことを言う必要もない。
ただ、一つ気がかりなのは俺の精子があの会社の保存容器の中でこの先半永久的に保存
されるということだった。彼らは、液体窒素に浸りながら多分目覚めることはない。俺の
死後も多分、生と死のあいまいなところを漂い続けるんだろう。
そこまで考えて、俺は嫌な薄ら寒さを感じた。まぁいい。あの会社もそんなに永く持ち
そうも無い。なんせ、俺の精液を買うぐらいなのだから。
16行です。
次は256さんのお題より、「母の日」「雨」「海」でお願いします。
265 :
、「母の日」「雨」「海」:02/05/05 17:06
わたしは母の日にはお母さんを海に連れて行こうと思っています。
しかし天気予報を見ると雨の予報が出ていてとても心配です。
次は「バスガイド」「旅館」「出刃包丁」でお願いします。
266 :
ゴリラ/白日夢/エポック/精液/ヴァギナ/新聞紙/母の日/雨/海:02/05/05 20:49
私は母の日にお母さんを海沿いの旅館に連れて行こうと思っています。
しかしバスガイドの仕事を休めない上、新聞紙の予報では雨のようで心配しています。
そんな心配を、レイプされながらしている自分が可笑しいです。
精液の滴るヴァギナを拭いていると、白日夢の中にいるようです。
エポック社の出刃包丁の形をしたおもちゃが欲しくて泣いていた子供の頃を思い出しながら、それでもやっぱり親孝行したいと思うのです。
次は「深紅」「桜」「シンコペーション」でおながいします。
「ゴリラ」「白日夢」「エポック」「精液」「ヴァギナ」「新聞紙」「母の日」「雨」「海」「深紅」「桜」「シンコペーション」
夕暮れの海、落ちている新聞紙をふと拾った。
社会面には、母の日だからであろうか、賑わいを見せる花屋の写真がある。
花など意識的に見たのはいつだろう。
そう、今年の春先に桜を眺めてから。
そんなゆとりのある生活ではなくなってしまった。
ゴリラが壁にしがみついている建物で働いていたことも何もかも、今の私には白日夢としか思えない。
突然、指先に何かがまとわりついた。
ヴァギナに入ってから流出したとしか思えぬ精液が、深紅の血とともに新聞紙に付着していた。
反射的に手を離す。シンコペーションが鳴り響く。ああ、まただ。
雨が落ちてきた。エポックになればいい、と思った。
次は「京都議定書」「ルクス」「党活動」でお願いします
268 :
バスガイド/旅館/出刃包丁/京都議定書/ルクス/党活動:02/05/05 23:14
お題が混乱しているようで。
いえ、ちょっと待ってください。そんなことなら私バスガイド辞めても構いません。
私は党活動が第一です。何よりも。嘘ではありません。
さあ、こんな薄暗い、何ルクスだか分からない照明の旅館を出ましょう!
あ、それは何ですか。出刃包丁!
残念でなりません。まさか私を疑っていようとは。
京都議定書は、私の失敗です。でも、もう一度チャンスをください、お願いです。
つぎは「零度」「取り組み」「郵便為替」で。
269 :
名無し物書き@推敲中? :02/05/05 23:22
「ゴリラ」「白日夢」「エポック」「精液」「ヴァギナ」「新聞紙」
「母の日」「雨」「海」「深紅」「桜」「シンコペーション」
「京都議定書」「ルクス」「党活動」「零度」「取り組み」「郵便為替」
ゴリラのような顔に生んだ母を、百合は憎んでいた。
にもかかわらず、こうして母の日には必ず花を持って実家を訪れる。
雨に濡れそぼった海岸の町。気温は零度、もうじき雪になるだろう。
このさびしい漁村で百合は育ったのだ。
いつも白日夢にまどろんだ堤防。初めてヴァギナの奥深く精液を受け止めた漁協の倉庫。
父の乗った外洋船の遭難を伝える新聞紙を握りしめて一人涙を流した桜の木陰。
結局は百合を愛人にしたかっただけで、郵便為替で手切れ金を送りつけた山崎の、
「エポックメイキングな革命を起こす取り組みなのだ、同志になろう」
という熱い言葉に流されて、党活動に身を投じたのも、この町の町会所での出会いがきっかけだった。
母の嫌いなカーネーションではなく、深紅のバラの花束を手にして、百合は雨の海を眺めている。
京都議定書で環境保護規制が強まり、この町の多くの船は基準を満たせず廃業した。
イカ釣りの誘漁灯のルクスを落として、細々と食いつなぐ漁民も多い。
寄せては返す波のシンコペーションを聞きながら、百合は、改めて自分の人生を思う。
「失うものが多すぎて、何を失ったかもうわからないよ」
そうつぶやいて、百合はバラの花束を冷たい海へと投げた。
母が死んで、7回目の母の日。
次の方は「珍走団」「べらぼう」「てんこもり」でお願いします。
実、立ち上がり「では、そろそろ決めたいと思います」
直実、顔をキッと実に向け「どうして? まだまだべらぼうでてんこもりよ」
実、直実に向き直る「3時までに京都議定書を速達で、代金を郵便為替で送らなければならないので」
直実、頬を桜色に染めて立ち上がり、実の胸ぐらをつかむ。
ーシンコペーションが響くー
直実「あなたそんなんじゃこれまでの党活動の取り組みはどうなるの? ただの珍走団じゃない!」
実「うるせえ精液収集ヴァギナ! 新聞紙の1面に被害者で顔出してやろうか?」
直実、深紅の唇をゆがめ「うるさいわねゴリラ!」
ー舞台のルクス落ちる。海の波音が響くー
実、小さな声で「我々のやっていることなど、大衆にとっては白日夢なのだ」
直実、すすり泣きながら「でも、エポックメイキングになるって、あなたは……」
ー舞台暗転ー
実の足音だけが響く。実「零なんだ。凡ては零度のことばなのだ」
次は「タイムサービス3枚1000円」「欅」「精神分析的否定」でお願いします。
上のは「ゴリラ」「白日夢」「エポック」「精液」「ヴァギナ」「新聞紙」
「海」「深紅」「桜」「シンコペーション」「京都議定書」「ルクス」
「党活動」「零度」「取り組み」「郵便為替」「珍走団」「べらぼう」「てんこもり」
でした。「母の日」がありません。
272 :
◆4RxB688c :02/05/06 03:32
「タイムサービス3枚1000円」「欅」「精神分析的否定」
あの公園に彼が来るようになってからもう何ヶ月になるだろうか。
彼は、いつもぼろぼろの服をまとってやって来る。時間は概ね正確で、午前9時には来て、午後5時には去っていく。
公園の欅の木の下が彼の定位置だ。彼は藁ゴザを広げてそこに座り、懐から数枚のメモ用紙のようなものを出し、それをゴザの上に並べる。その横に、ボール紙で作った札を掲げる。それには「タイムサービス3枚1000円」と記されている。
一見するとただの紙切れでしかないように見えるその“商品”。誰かが買ったという話は聞かない。
彼に商品について尋ねても、ただ「今なら3枚で1000円だよ」との答えしか返ってこない。
近所の子供が、不思議そうに「おじちゃんは何して遊んでるの?」と訊いたら、延々と自分の身の上話のようなことを聞かされた上で、これも仕事のうちだ、というようなことを言ったらしい。精神分析的否定、というやつか。
ある日、どうしても気になった私は、彼に1000円札を示し、「それ、ください」と言ってみた。
「はいよ、1000円ね。毎度ありがとう。じゃ、そこにあるやつ好きなの3枚持っていきな」
さっそく適当に3枚の紙を手にとり、日にかざしてよく観察してみる。と、どうやら「あぶり出し」のようになっていたらしく、なにやら文字が浮かんできた。
「ジェットフォイル」「憲法記念日」「嘔吐」…何だこれは? 訝しく思う私に、彼は言った。
「それは、創作力を引き出す魔法の紙さ。その3語で何か話を作ってみな。あんたの創作力は飛躍的に向上する。」
途端に、なんだか彼が今までに無い神々しさを帯びたように見えた。
-----
「ジェットフォイル」「憲法記念日」「嘔吐」でお願いします。
「ジェットフォイル」「憲法記念日」「嘔吐」
@ 連休を締めくくる祝日、憲法記念日。
空港に向かうジェットフォイル上、船酔いで吐きそうな女がいた。
A 憲法制定記念祭典の式場。
右翼系の出席者は「吐きそうだ」と言いなれた台詞を吐く。すると本当に・・・
B 目的語を持たぬ、主語と述語だけでできた、文章という生物がいた。
(・・・まあ・・・文章は生きてるという言葉もあるから(笑))
不具を嘆く彼は、「嘔吐」の対象物を求めた。
そして彼は文章触手を同時空に伸ばし、@とAを取り違えてしまう・・・
C Aの出席者は、自分の嘔吐物を見て首をひねった。
「オレ、スパゲティなんて食べたっけ?」
D @の女は、病室にいた。
いまにも吐きそうな彼女の口を開けて驚く看護婦。
彼女の開いた口からは、ジェットホイルの舳先が覗いていた。
※論理が飛躍、というか脱線的(笑)
次のお題は:「幻」「連休」「復活」でお願いしまふ。
Pト尺物@
引き込んでしまった。
当てたという
274 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/06 23:15
陽も傾き始め、このドライブをまだ終わらせたくない僕は喉の乾きを
口実に車をドライブインの駐車場に乗り入れた。特になんということ
のない、街道沿いのドライブイン。油染みたテーブルと椅子は、それ
でも大きな窓越しの春の夕陽に照らされて、蜜色の光を放っていた。
客は僕ら二人だけで、メーカーのロゴ入りのグラスで氷入りのコーラ
をさしてうまくでもなく飲んだ。
連休も明日で終わりだね、日曜が祝日だと一日得した気になるよね。
どうしてこう気の利かない話題しか提供できないんだろうなあ、とこ
っそりため息をつく僕をよそに、彼女が呟いた。
ヴァスクリセーニィエ。
……なに?と訊く目になった僕に向かって、彼女は妙に真面目ぶった
顔で、何語だか忘れたけど、日曜日と復活を意味する言葉が同じなん
だって、と説明する。音がきれいじゃない?と微笑み、もう一度ちい
さく呟いた。ヴァスクリセーニィエ。
彼女の頬を夕陽が輝かせていて、幻を見るような気持ちで僕はそれを
見ていた。この瞬間のことはこの先何年も忘れないだろう、と思いな
がら。
次は「レコード」「割り箸」「御影石」でお願いします。
275 :
「レコード」「割り箸」「御影石」:02/05/07 00:11
「うちの主人は音楽が好きで、それもLPばかりきいてました。
CDよりいいんだって言って。特にこの曲が好きだったんですよ」
おかみさんが店のプレーヤーでレコードをかけてくれた。
流れてきたのはラフマニノフの交響曲第2番。
僕は少し意表を衝かれた。長年通っていたこの店の主人が、
実は自分と同じ趣味を持っていたなんて。
鯖味噌煮定食が出てきた。割り箸を手に、いつものように
鯖の身の中ほどをつつき始めた。
ラフマニノフの曲が静かにうねっていく。
今はもう名前が御影石に刻まれている店の主人に、
『この演奏いいですね』と言いたかったな、と思ったとたん
思いがけず目に涙がにじんだ―
次は「紅茶」「傭兵」「三毛猫」でお願いします。
カーテンを揺らして、五月の心地よい微風が入ってくる。
休日のブランチは、一人暮らしを始めてからの私の習慣となっている。時にはひとり、
また多くは恋人と一緒に。
だけどここしばらくは、恋人がいてもひとりの方が多かった。それは彼の職業のせいだ。
彼の仕事、それは外人部隊。つまりは傭兵だ。
戦争がどうだとか、人殺しがどうとか、そんなことはあまり考えない。私の日常とは
かけ離れ過ぎている。
ただ、久しぶりの恋人との楽しい夜と翌朝のブランチを楽しむだけ。
締めくくりは彼の好きな紅茶をいれる。アールグレイだ。
ゆったりと寛いで座る彼の前に差し出せば、私以上に彼のことを気に入っている三毛猫の
トロワが、すかさず彼の膝を占領しているのを見つける。
とんだ占領軍だ。追い払って、私がその後に座った。
次は「夜明け」「牛乳」「トウガラシ」でお願いします。
277 :
「夜明け」「牛乳」「トウガラシ」:02/05/07 01:24
気がつくと、窓の外は白みはじめていた。
もうすぐ夜明けだ。
そろそろ寝ようかな、
いいかげん徹夜勉強に疲れた僕は机の上を片付け始めた。
机の上には、ほとんど中身に手をつけていないマグカップがある。
僕のために、彼女がホットミルクを作ってくれていたのだ。
ほとんど手をつけていないのには理由がある。
彼女は、牛乳にたっぷりトウガラシを加えているのだ。
「今日テレビでね、トウガラシが頭にいいってやってたんだ。
それにね、トウガラシってホカホカするでしょ。」
ニコニコしながら言う彼女に、僕は何も言うことはできなかった。
僕は彼女にバレないようにマグカップの中身を捨てると、
彼女が寝ている布団にもぐりこんだ。
次は、「DNA」「桜」「微熱」でお願いします
278 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/07 03:34
あの桜の下には死体が埋まっているらしい。何日か前からそんな噂が流れる様になった。
僕の好きなクラスメートの中沢さんが失踪したのも、そんな事が囁かれる数日前だった。
僕は、それが気になって気になって仕方がなかった。
「中沢さんの死体が欲しい」
僕はそればっかりを考えるようになってしまった。二、三日悩んだが、悩みすぎて腐って
も面白くないので、結局その桜の下を掘り起こすことにした。
家族が寝静まり、まだ夜が明けないうちに僕は家を出た。ちょうどその桜は満開で、満月
の光を浴びて怪しく輝いている。 僕は早速用意したスコップで土を掘り返し始めた。
中沢さんは、存外早く見つかった。黒いビニール袋に包まれていた彼女は、動いていた
時と殆ど変わらない姿であった。その体には、まだ微熱が篭っているかのようだった。
僕は彼女を自分の部屋に招待し、夜が明けるまでその動かない体にDNAを注入し続け
た。
279 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/07 03:36
お題忘れました、すみません。
次は「喜怒哀楽」「瞬間」「バネ仕掛け」でお願いします。
280 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/07 05:25
僕はゆっくりと引き金を引いた。
バネ仕掛けで弾き飛ばされた玩具のように女の身体は吹っ飛んだ。
これまで喜怒哀楽を見せた事の無い彼女だったが
その瞬間、呪われた人生から解放される喜びに彼女は微笑んだ。
次は「口紅」「明後日」「米粒」で。
281 :
「喜怒哀楽」「瞬間」「バネ仕掛け」:02/05/07 06:56
それは、少なくともこの荒んだ町では、別に珍しくも何ともない、ごくごくありふれた
光景だった。向かい合う大小二人の男。大きい方は、この界隈で幅を利かせる暴力団
「銀星会」の組員。その素性を知らない者でも、ダブルのスーツを着た2メートルの
大男に睨まれて、萎縮しない者は少ない。そしてこの男は、道ですれ違う者に因縁を
つけ、財布の中身を毟り取る…それがこの男の日課であり、この町の日常だった。
しかし、この時だけはいつもと事情が違っていた。大男が因縁をつけた相手…20代
半ばほどの小柄な青年は、まるで人形のようだった。大男のどんな恫喝にも、彼は眉
一つ動かさない。それどころか、彼の表情には、理不尽な暴力に対する怒りも、悲しみ
もありはしない…まるで、喜怒哀楽など最初から存在しない、能面のように。
痺れを切らした大男は、実力行使に出ることにした。面倒なので、手早く済ませたい。
頬をはるか、腹を殴るか…彼の思考が、ちょうどその辺りに差し掛かった次の瞬間、
青年の体はバネ仕掛けの玩具のように前方に跳ね、大男の体と密着していた。大男は、
微動だにしなかった。青年の拳が、大男の鳩尾に深々と、めり込んでいたにも関わらず。
青年は立ち尽くす大男に背を向け、悠然と歩き出した。ついに最後まで、無表情のままに。
大男が大量の血を吐いて倒れたのは、青年が立ち去ってからきっかり30秒後のこと
だった。正確には、それよりももう少し早い段階で、大男は事切れていたのだが。
お題は>280で。
282 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/07 09:33
彼女はいつも、真っ赤な口紅をつけている。
つけていない所など、見た事が無い。
今日も彼女は真っ赤な口紅をつけている。
家で食事をする時くらい、拭き取ればいいのに。
米粒を一つ一つ箸で掴み、口に運ぶ。
そして、味噌汁などを胃の中に押しこむと、ニヤリと微笑んで帰っていく。
「じゃ、明後日、また来るから」
食事目当てかと怒鳴りたくなるほど早急な去り方に、僕は怒りを覚えた。
次のお題は『電卓』『教室』『ネズミ』で。
283 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :02/05/07 09:59
明後日の大会のために、どれだけ練習しただろうか。
カリスマブームに便乗して、というより頭が悪いことの言い訳のように
して選んだヘアデザイナー。いや、それはただの美容師。入学金を振り
込むだけで入った学校。もちろん専門などではない無認可校。だが俺は
頑張った。アルバイトも神宮前の店で、時給580円も貰えるだけでありが
たいと思えとの言葉を額面通りに受け取って働いた。
卒業を前にカリスマブームは終わっていた。飽和状態のサロンに人材の
受け入れ口は、ない。しかし俺はこれまでの隠れた努力が報われ、見事
に内定を勝ち取った。それが今の店だ。埼玉県飯能市。
だが俺は安住しない。ブームが去ったあとなら、コンテストの競争率も
低いはずだ。いける。そう思った俺が甘かった。参加者は史上最高とな
る24万8千人。まずい。俺は考えた。そこで俺に閃いた。メイクも自分で
手がければ、より完成度が上がるはずだと。俺は特訓した。米粒に、これも皮肉なことだがカリスマと呼ばれる人気
女性歌手の顔を再現できるまでに。だが理想の口紅が見つからない。
……って言ってきてるんですけど、どうします店長?
つぎは「自家撞着」「紋切型」「体言止め」で、そうでないのを。
284 :
名無しさん@お腹いっぱい。 :02/05/07 10:24
第一部:「自家撞着」「紋切型」「体言止め」
「そんな紋切りで片づけないで」彼女は、ちゃんと怒っていた。
「いや、紋切型ってのがどんなのか分かんないけどさ、ごめん。ほんと
に気持ちが消えちゃったんだ。自分でも不思議さ」涙を流しているのは、
俺の瞼だった。
「その体言止めの自家撞着も、あたし嫌いだったの」お互いの欠点を指
摘しあう場にかわっていた。しかも彼女は間違っている。
第二部「電卓」「教室」「ネズミ」
「ねえ、今月ちょっとお金足りないんだけど」妻となった彼女が電卓と
格闘している。俺はとうの前に返事することをやめていた。妻が何か正
しい意見を続けている。子供を英会話教室に入れないと近所の目がどう
のこうのということだ。私は新聞をあきらめて台所へ行き、缶ビールを
冷蔵庫からとり出す。食器棚と冷蔵庫の隙間にいるネズミと目があった。
涙が流れているのは、俺の瞼だった。
次は「踏切事故」「父」「葬儀」で、そうでないものを。
285 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/07 10:32
「踏切事故」「父」「葬儀」
体育の時間の跳び箱で踏切板を踏みそこなった鈴木先生は、
「おわっ」という間抜けな叫び声一つを残して、
次の瞬間には首の折れ曲がった無気味な屍体になっていた。
葬儀では、先生の死因が踏切事故だったという噂が広まっていたけど、
先生のお父さんは曖昧な笑みを浮かべて肯定も否定もしなかった。
まあ、ある意味間違ってないもんな。
「そうでないもの」の定義が難しい。
次は「裸電球」「刺々しい」「そらまめ」でお願いします。
気楽な独身貴族。
安アパートに一部屋借りて、そこで思う存分一人身の幸福を味わおうとしていた矢先だった。
「のような自堕落な生活をしていては、せっかくの青春がまったくの無駄だ。
そもそも君には何かを成し遂げようという気力、もしくは」
100円ショップで買った電灯の光が、うんざりした俺の顔と、“そいつ”を照らしていた。
裸電球の光は、寝不足の目に突き刺ささり、わずかな痛みさえ感じる。
「だから、精神修行の場としては……聞いておるのかっ!?」
「あー、聞いてる聞いてる」
刺々しい態度で、“そいつ”は俺を睨み付けてきやがる。
「まったく、近頃の若いものときたら……」
再び、“そいつ”のくだらない説教が始まった。
ちらり、と時計を見てみれば、すでに夜中の3時を回ったところだった。
俺は必死で睡魔と戦いながら、“そいつ”に焦点を合わせる。
………そらまめ。
酒のつまみで買ったそらまめに、何故俺は説教などされているのだろうか?
そんな俺の苦悩を他所に、そらまめは声を張り上げ、力説する。
「しこうして、現代の日本の若者の生活習慣の乱れは、実に嘆かわしい。だがそれには」
食べてしまえばいい。そうすれば、このくだらない茶番劇ともおさらばでき、晴れて俺は眠りにつける。
何度もそう思い、そのつどその悪魔の考えを追い払ってきた。
………なぁ、あんたに聞きたい。
去年死んだ祖父が、そらまめに化けて自分の前に化けて出てきたら、あんた……どうする?
そらまめに張り付いた、頑固そうなヒゲ、つりあがった白い眉毛、どれもこれも祖父そのものだ。
俺は朦朧とする意識の中、ふと思った。
そういえば、じいさんもそらまめ好きだったよな、と。
次は、「くらげ」「あんぱん」「うさぎ」でお願いします。
288 :
(152,185,269) 「くらげ」「あんぱん」「うさぎ」:02/05/07 16:57
少し早めに着くつもりでいたのが、事故があって間に合わなかった。
葬儀会場に着いた時には、もう焼香が一巡した後だった。
「あらあら、結城さん、結城さんでしょ? 来てくれたのねえ、ありがとうねえ」
母親がすぐに俺を見つけて、ウサギの目のように腫らした目元にまた新しい涙を浮かべながら、近づいてくる。
「途中の電車が事故で遅れまして…ほんと、すいません」
「いいのよ、来てくれただけで。スグルも喜ぶわ、ささ、お線香を上げてやってくださいな」
着慣れない喪服の襟元を気にしながら、真新しい棺桶へと近づく。
黒いリボンのかけられたにこやかな笑顔の写真はアンパンのような丸顔で、ずいぶん穏やかそうに見える。さて、こんな顔だったろうか。
今となっては、確かめるすべもない。
くねくねとクラゲのようにすべって手になじまない数珠を、ポケットから出して、手を合わせようとした瞬間だった。
「ああ、スグル、スグルがそこに、ほら」
「違う、妙子、取り乱すな、あれはスグルの友達の結城君だろ。しっかりしなさい」
父親と違って、母親というのは、奇妙な勘のようなものを持っているのだろうか。
これだけ完璧に整形したのに、我が子を見分けられるとはねえ。
俺は平静を装って、ゆっくりと手を合わせた。結城の死体の入った、棺桶に。
次の方は「シングルハンド」「交響曲」「実用」でお願いします。
289 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/07 19:26
彼が奇跡のシングルハンドと呼ばれるようになってからもう何年がたつだろう。
片腕の天才ボクサー。いつもの交響曲にのって彼が入場してくる。
その天才的な動きはまるでボクシングは両手より片手で戦ったほうがつよいのだ
という様な錯覚すらおこさせる。そのシングルハンドはボクシングをするためだけに
付いているようだった。鞭の様にしなり、変幻自在な角度から相手を打ちまくる。
普段の生活では実用的でない彼の腕もこの時だけは水を得た魚のようだった。
その奇跡の腕で彼は今日も健常者への怒りを爆発させていた。健常者への怒りだけが
彼に奇跡の強さを与えていた。それが奇跡のシングルハンドの強さの秘密だった。
次は「罰」、「宇宙」、「モニター」でよろしく。
290 :
「罰」、「宇宙」、「モニター」:02/05/07 23:09
ブラウン・ネイビー。我々はそう、国では言われている。
実際、モニターに乗り陸式のジャケットに身を包まれていると僕はとても海軍に
いる気はしなかった。はるか南の洋上には同じ海兵団を出た奴らがセーラー服で
任務に勤しんでいる。別にそれが羨ましいわけではないが、少なくともあいつらは
ゲリラのロケット弾に怯える必要もない。
「これは何の罰なんでしょうね?」誰ともなしに呟いてみる。艇長がめんど
くさそうに言う。
「そりゃあ、お前。原罪って奴だよ。アダムとイブが禁断の果実を喰っちまった
からさ。」
夜空には、今日もまた数え切れないほどの星が瞬いている。機銃が、宙を睨む。
「人が宇宙に行く時代だってのに、俺達ゃ何やってんだろうな。」
艇長は、そして吸いかけのラッキーストライクをメコンの流れに放りこんだ。
ベトナム戦争の情景、ということで。
次のお題は「月」「直球」「リンゴ」でお願いします。
291 :
「月」「直球」「リンゴ」:02/05/07 23:24
月が出ていた。満月だった。
潮が満ちていた。満潮だった。
まるで何かに引かれるかのように。
月光に照らされたリンゴの樹から熟れた実がひとつ
落ちた。
天啓を得た、と思った。
直球勝負の論文を書いた。
292 :
「月」「直球」「リンゴ」:02/05/07 23:25
お題忘れ。「謳歌」「帳簿」「福耳」
293 :
「謳歌」「帳簿」「福耳」:02/05/08 23:33
きっかけは、今にして思うと些細な事だった。
社内ですれ違った、年下の上司が見せたあの目。まるで、虫けらでもみるような、
あからさまな侮蔑の眼差しを向けられた途端、私の中の悪魔が目覚めた。
何をためらうことがある。お前は他の連中が青春を謳歌している時でさえ、一生
懸命働いていたじゃないか。この位の役得はあって当然だろう。悪魔が私に囁いた。
そうだ、不公平じゃないか。会社の金を管理するという仕事。それは会社の金を
横領できる仕事でもある。そして、私はそれをやってのける事ができる。なあに、
バレはしまい。あんな無能な上司よりも、私はずっと長い間この仕事をやってきた
のだ。ここは私の領分。私が何をやろうと、私の自由だ!
帳簿の山を運んでゆく刑事達を眺めながら、私はふと、そんなことを思い出して
いた。別に後悔はしていない。自分の軽率さを恨む気も、これからの将来を悲観す
る気もない。ただ、私のこの極端に耳たぶの大きな耳は、福耳ではなかったのだな
……そう思いながら、私は刑事に連れられパトカーに乗り込んだ。
次は、「隠蔽工作」「ロードローラー」「女心」で。
「隠蔽工作」「ロードローラー」「女心」
転校生の彼女は、さっそく井戸端会議に引っ張り出される。
見渡す限り農場だらけ、お隣さんとの間は1キロ以上のこの村で
耕運機やトラクターは必需品だった。
「ケィティーのお父さんは、この間、芝狩機で隣の州まで行ったのよ」
「うちの父さんはトラクター・・・いつも乗せてもらっってる」
「クリスティー、貴方は?」
こんな事を訊かれるとは、思わなかった。
しかし、他愛も無い雑談にも、つい見栄をはってしまうのが女心だ。
「うちのお父様はね、ロードローラーで働きにゆくの」
それは本当か、という話になった。ぜひ見せてほしいと。
彼女は困った。
今までの隠蔽工作も無駄骨か。
いまさら、本当の事は言えない、どんなイジメにあうことか。
自分の父は大会社の社長で、運転手付きのリムジンで通勤などとは・・・
※なんか陰湿だ(^^;
次のお題は:「青空」「青アザ」「アオザイ」でお願いします。
「青空」「青アザ」「アオザイ」
「ねぇ、決まった?」
ベッドの上でガイドブックを見ている俺に、洗顔から戻って来た春美が問い掛けた。
俺たちは新婚旅行でベトナムに来ていた。残す日程は明日1日。今までメジャーな所ばかり行っていた二人は、最後の日ぐらいローカルな所に足を踏み入れようと話していた。そんな所をガイドブックで探す事自体間違っているのだが、俺には心当たりが有った。
-------○○○村・観光客が少ない。生活雑貨が安い。*注・窃盗多し---------
「春美、ここ行こうぜ」
ガイドブックを差し出すと春美が覗き込んだ。
「えーっ、ここ危なくない!?」
そう、それが今までそこへ行かなかった理由だった。だが、そんな事を気にしていたら部屋でテレビでも見てるしかない。
「大丈夫だって。俺が守ってやるし、窃盗なんて隙を見せなければ出来っこないんだから。それに俺たちまだ土産買って無かったろ」
「やだよぅ、ガラ悪そうじゃん。あたし絶対行かないからね!」
そこは買い物客で賑わっていた。
「うわぁ綺麗!ねぇねぇ、これイイと思う?」
薄紫のアオザイを手にした春美が笑顔で言う。
結局、俺に押し切られる形で頷いた春美だったが、来て見ると俺よりもはしゃいでいた。雲ひとつ無い青空が心を開放的にしているのかもしれない。
「おい、それよりもうちょっと警戒心って物を持てよ。さっきから見てるけど観光客丸出しだぜ」
「だって観光客じゃん」
「ばか、観光客が一番カモにされやすいんだよ」
「分かったわよ。で、これ買おうかな」
「ああ、買いなよ・・・あっ、財布出すときは気をつけろよ」
「しつこいなぁ、分かってるって」
そう言いながらバッグの中に手を入れたその時だった。
「キャッ!」
男が走ってきて春美を突き飛ばしたと思うと、もうバッグが無くなっていた。よれよれのTシャツをなびかせて男が逃げてゆく。
「あのヤロー!」
一目散に逃げる男を俺は必死で追いかけた。奴も必死だったが俺も必死だった。あの中には大事な物がいっぱい入っている。パスポート、全財産、、、絶対に逃がすもんか!
そして俺の執念は奴に勝った。手が届きそうな位まで追いつくと、思いっきりタックルしてやった。
奴と俺は格闘になった。2、3発くらったが武術の心得がある俺の敵ではなかった。
そうして無事バッグを取り返した俺は、男を逃がしてやった。警察に引っ張っていって、面倒な手続きに俺たちの貴重な時間を潰されるのが嫌だったのだ。
青あざを土産に俺が戻って来ると、アオザイの店のオヤジがこっちに向かって何やら叫んでいる。
どうやら「持っていかれた」と言っているらしい。
俺は辺りを見回したが、行き交う人たちの中に春美の姿は無かった。
*次のお題は「みみず」「宇宙」「フライパン」でお願いします。
「俺の胃袋は、宇宙だ」
ふざけて言うとツレは笑った。
「スゲエな、五十個全部食っちまったのか」
「まだいけるぜ」
「次、いくか?」
「おう」
ツレは台所でフライパンをあたためた。テイクアウトした半額ハンバーガーを百個
持ち帰るときはそりゃすこし恥ずかしかった。けどこうして半分以上食えるのがわか
ると、なぜだか達成感にひたってしまう。
肉がフライパンに乗ったいい音がする。
「そういえばさあ、昔、このハンバーガーの肉はミミズを使ってまーす♪ なんてデ
マ流れたよな」
俺は飲んでいたぬるいシェイクをふき出した。
「食ってる最中に!」
「ごめんごめん。でもアレって都市伝説のはしりだったのかと思ってなあ。でもよく考
えりゃみみずを養殖するのも大変だし、コストも高くつきそうなのに、よく信じた人が
いたよなあ」
言いながらツレはあたためなおしたハンバーガーを持ってきた。
「ビーフ100%ってCMで言いはじめたのも、そのせいらしいしさあ」
俺はテーブルを見た。食欲を刺激するハズの、いいにおいをたてるハンバーガーの山。
・・すこし食欲がなくなってきた。
最後改行ミス鬱。
次のお題は「薬」「猫」「節約術」でお願いします。
「みみず」「宇宙」「フライパン」
遅くおきて、朝食にハンバーグ・サンドウィッチを作った。
自動調理機ならスイッチひとつで出てくるにもかかわらず電気
コンロとフライパンを使ったのは、主として郷愁のためだ。
地球を離れて2年、軌道ステーションから月に移って6ヶ月が
経つ。月面ではさらに多くの人々をこちらに移住させるために
居住地建設が進められている。私は作業員のひとりだ。
人類はこれまでも、常に新しい場所を開拓し我が物にしてきた。
森を拓き、海原に漕ぎ出し、大空へと飛び立ち……
宇宙が、それに続いてならない理由はないはずだ。
しかし私は実際にステーションや月で暮らしていて、どうしても
拭えない違和感を抱いている。本来いるべき領域からはみ出し
てしまったような感覚。逃げも隠れもできないような心許なさ。
そしていつも、雨の日にアスファルトの道路に這い出したまま
土に戻れなくなったみみずが、からからに干からびて死んで
いる、そんなイメージが頭に浮かぶのだ。
我々はみみずとどう違うのだ?
お題は297の「薬」「猫」「節約術」。
「だから〜! これを飲めば節約が簡単に出来るんだってばぁ!」
僕の前でミッチーが必死にセールストークをしている。何でも、あいつが持っている物は
節約術が身につく薬らしい。ちょっと眉唾ものだ。だいたい、そんな薬があったらもっと
有名になっているはずである。その辺の疑問をミッチーにぶつけてみた。
「そ〜んなの当たり前じゃない! 私がさっき開発したばかりの薬なんだから」
……ますます怪しい。そういえば、前にミッチーから『ダイエットが出来る!』っていう
触れ込みで買った薬は、僕のお腹を一週間ぐらい悩ませた。
今度こそ騙されるまい。僕はこそこそと背中を丸めてミッチーの前から立ち去った。
そもそも、猫が節約をして何になるんだろう?と、思いながら。
お題は「亡命」「サッカー」「テロ」でどうぞ。
300 :
「亡命」「サッカー」「テロ」:02/05/09 19:51
計画は順調に進んでいた。山奥のダムを占拠し、仲間の釈放と50億円を要求。その後、
ヘリで港へ向かい、北に亡命するというのが、今回のシナリオだ。そして今、仲間の解放
とスイス銀行への入金を確認し、俺達はヘリに乗り込んだ。
……そうやすやすと事が進むわけがない。それは経験上、誰もがわかっていたことだ。
しかし、今回の落とし穴は、あまりにも意外なところにありすぎた。
『……俺の親父は、平凡なサラリーマンでした』
無線機の向こうでそう呟いたのは、今港で船を準備しているメンバーの一人だ。この
組織に入ってから2年と経験は浅いが、どんな汚い仕事も黙々とこなす男だった。
『……家族思いの、優しい親父でした。休日にはどんなに疲れてても、俺にサッカーを
教えてくれました……でも、俺が12歳の時……親父は死にました』
こいつは何を言ってるのだろう……とてつもなく嫌な予感がした。
『……テメエらが殺したンだよッ!!革命だ何だとほざいて起こしたテロに巻き込まれ
てなっ!!……俺は決めたよ。警察に突き出すんじゃ飽きたらねエ……俺の手でテメエ
ら全員、虫ケラのようにブッ殺してやるってな!!』
そういえば、このヘリを調達したのはこいつだった。こいつ、ヘリに何か仕掛けを…
――次の瞬間、俺達の乗ったヘリは――――爆発した。
次のお題は、「大判焼き」「姉御肌」「くるみ割り人形」で。
「大判焼き」「姉御肌」「くるみ割り人形」
天国のお母さまは言いました。
「娘の10歳の誕生日のお祝いに、そっと3つの願いを叶えてあげよう。
どんなお願いなのだろう。どんなに喜んでくれるだろう。楽しみだわ。」
そして10歳の誕生日の朝。
ピポピポピポ!「わーい、当たった」
それは、ラッキーチャンスであと1本、の自動販売機でした。
「ああ!」天の母さまのため息。1つのお願いが120円とは。
昼。「あんこたくさんお願いっ」「はい、お嬢ちゃん」
姉御肌の店員さんが、大判焼きのあんこ大サービス。
お母さんは泣いても泣ききれません。
夜。娘はそっと呟きました。
「昔聞いた、あの、くるみ割り人形の音楽の・・・」
ああ、やっと、やっと、少しはまともなお願いが。
と思ったその矢先、娘の目前にレコード屋の大安売りワゴンが!
「豪華オーケストラによる名演CDどれも980円。チャイコフスキーの・・・」
デフレ弊害。ここにも!
※なんかありがちだ。
次のお題は:「プリーズ」「プリン」「プリマ」でお願いします。
この町では機械人形の見世物小屋が昔から賑わっていた。当然古くなった物は
現場(舞台)から離れ捨てられる。
「プリーズ・・・・ヘルプ・・・・・ミィー・・・」
「だから御前はもう使えないんだよ、何度言えばわかるんだ。だいたい
足が壊れてスプリングが無くなったプリマ人形なんて誰が・・・・」
「プ・・・プリー・・ズ」
「何度言えば分かるんだ。もういい鉄屑は鉄屑らしく叩き壊してやる」
「ガンッ・・・・ガンッ・・・ガキーン」
空に2〜3度虚しい金属音がこだました。男は踵を返して向こうに行った。
誰もこの人形の破壊を笑う物も悲しむ者もこの町には居ない。
※新参者です。稚拙文章スマソ
次の題は:「ゴマ」「ライト」「ホース」でお願いします。
304 :
「ゴマ」「ライト」「ホース」:02/05/10 15:34
今年で3歳になるポチはゴマ塩頭の変な犬。僕の大親友さ。
そんなポチはホースが大好き。勢い良く水を掛けてやると
わんわん吼えながら水に噛み付こうとするんだ。
北国の冬ってとても寒いんだけど、そんな事はお構いなし。
もちろん僕が躾けたのさ。
ある日、僕が学校から帰るとポチがいないんだ。
どうやら紐が外れてしまったみたい。
僕は泣きながらずいぶん探したよ。夜遅くなっても
ライトを持って雪の中を走り回ったんだ。
そして国道に出たときポチを見つけたんだ。
凍結防止用のスプリンクラーが水を撒くそのすぐ横で
車に轢かれて死んでいたのさ。
次も「ゴマ」「ライト」「ホース」で
305 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/10 16:59
ゴマアザラシを追ってカリフォルニアの湾までやって来た
海洋学者のティム・ブラウンは、ヨット・ハーバーの入り口にあるダイナーで昼食を取ることにした。
取りあえずクアーズ・ライトとアボガドのサンドイッチを注文すると、車に戻り、
「ライフ・オブ・シーホース」と書かれた本を取り出し店内に戻った。
先月の誕生日に妻のダイアンが買ってくれたものだが、何とほかの友人2人からも偶然同じ本をもらっていた。
本を読みながら昼食を終え、店を出ようとすると、キャッシャーの女性が、店の一周年記念の粗品をくれた。
お礼を言い、車に乗ってエンジンを暖めながら粗品の包みを開けると、中には本が入っていた。
タイトルは「ライフ・オブ・シーホース」。
なんてこった!と笑いながら、ティムはそこを後にした。
次は「恐竜」「教会」「カフェ」!
306 :
「恐竜」「教会」「カフェ」:02/05/10 18:17
友人に呼び出され、待ち合わせ先として指定されたカフェに入ると、奴は奥の席に陣取っていた。
「――おまえさ……恐竜信仰協会って知ってるか」
「恐竜信仰協会?」
「違う。協会じゃなくて教会。教える会と書く」
「はぁ。最近だよな、恐竜が復活したの」
近年、発達したバイオテクノロジーによって復活した恐竜達は、一般への公開は禁じられ、厳重に保護されている。らしい。
「んなもん信仰してどうすんだ? 恐竜が私達を救って下さいます、ってか」
「うん、まぁ信仰つってもな、強大なる存在への畏怖を込めつつ、その尊厳を守りましょうってことらしいんだわ」
「……意味わかんないな。どういうことだよ」
「だからさ、復活したのはいいけど、保護と称して檻ん中入れられて隔離されて観察されてデータ取られて、っていう自然あるまじき状態が気に入らないってこと」
「それを言うなら復活させたこと事態、自然の倫理に反してるよなぁ」
「まあな。さらに反駁して、いや我々人類という種も自然の中の一つとして考えるならば、我々が行った行動もまた自然の一部と見なすべきである――
とかな。でもそこらの論争は決着なんて付かないんだよ結局。やりたい奴はやるし、やりたくない奴はやらない。禁止されようと許可されようと同じなんだわ」
「ううむ。で、何が言いたい?」
「この店、裏メニューで恐竜の肉食えるらしいんだけど、食いたくねえ?」
初挑戦。ちと長いですね……次は「ジンクス」「模造品」「案内」で。
307 :
「恐竜」「教会」「カフェ」:02/05/10 18:28
「恐竜」「教会」「カフェ」
私は神父だ。今日もこの教会で信者の懺悔を聞いている。
「神父様、私はとんでもない罪を犯してしまいました。
実は・・・恐竜を蘇らせてしまったのです」
神父は辛い。こんな馬鹿な話も真面目に聞いてやらねば
ならないのだから。
「その恐竜が私の事を親と思っているらしくて。それに
すごく嫉妬深いんです」
「その恐竜が何かしたのですか?」
「はい、この間カフェで友達と話していたら、恐竜が
友達に噛み付いてしまったんです。どうやら他の人と
話すのが気に入らないみたいで・・・」
まったく、いいかげんにしろよ!とは立場上言えない。
「懺悔するのです。そしてその恐竜にもっと愛を与えなさい。
そうすればイエス様もあなたをお許しくださるでしょう」
遠くのほうから何かが近づいてくる音がする。
ドシンッ!ドシンッ!
とてつもなく大きな生き物の足音が・・・
次は「ビリヤード」「般若心経」「スパイ」で
失礼。お題は「ジンクス」「模造品」「案内」で
309 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/10 19:57
僕の通っていた高校には、『いわくつきの品』があった。美術準備室の壁に飾られていた、水彩画がそれだ。
『海の中の風景』と題されているが、何故かピンク色のウサギや緑の鳥が描かれている。
だが、一見ミスマッチなそれらは、一つの完成された、幻想的な世界を作り出していた。
美しい絵だった。 ……だから、そんな話が流れたのかもしれない。
『この絵を捨てようとすると、不幸が起こる』
それから高校・大学と無事に卒業した僕は、それを報告するため、久しぶりに母校を訪れた。
担任だった先生と他愛の無い話をしたあと、当時の美術部の顧問に案内されて、今の部員や部室を見せてもらった。
僕達の代から4年も経っているが、全体としての雰囲気は変わっていない。
だが、僕と一緒に来ていた友人は、部室の『変化』に気がついた。
『海の中の風景』がなくなり、代わりに、稚拙な模造品の風景画が飾られていたことに。
僕は、どうして絵を変えたのか聞いた。
「だって……『不幸になる』とかいう、変なジンクスがあるそうじゃないですか、あの絵。
あの絵を外そうとした人が怪我したりもしてるし、気味が悪いから先生に頼んで捨ててしまったんです」
絵が無くなってしまった今、あのジンクスがどこまで本当だったのかはわからない。
ただ、わかっているのは……絵を捨てに行った先生には、不幸といえる出来事は起こっていない、ということだ。
初挑戦です。駄文で長文スマソ
次は「ゴーグル」「猫」「手帳」で
『4日前から何も食べていない・・・。何か食べ物は・・・?』
薄暗い店内を見回してそいつが私に尋ねた。
『悪いわね、こないだ軍に徴収されたばかりでね。何も置いていないの』
商品棚に残る数少ない物品を整理しながら、私はそう答えた。
事実そうなのだ。最近は戦火がこのような田舎にも移り始めているらしく、
付近に陣営を築いた陸軍が食糧などを徴収しにやって来る。
連中ときたら、店の物をタダで持っていくものだから、
こちらとしては商売あがったりなのだ。
『頼む・・・。何か食べ物を・・・』
私はちらとそいつの身なりを見た。
そいつは真っ黒な若い雄猫だった。がりがりに痩せている。
おそらく4日前に何か食べたとしても、それはほんの少ししか
食べていないということが一目で分かるくらいに痩せていた。
私は深くため息をついた。
『全く、目の前で餓死でもされたら溜まったものじゃないわ。待ってて、なんか持ってくる』
そういって私は店の奥からニボシの詰まった袋を持ってきてそいつに渡した。
『すまない・・・』
そういって彼はニボシをガツガツと食い漁った。
私はその様子を暫く眺め、そして何処から来たのかと尋ねた。
『西だ。ここから数百キロ離れた所を1ヶ月かけてここへ』
ニボシを頬張りながらの回答だったので少し聞き取りにくく感じた。
『西って、あっちはもう駄目って噂で聞いたわ』
彼は悲しそうに頷いた。
『ちょうどあっちを出発した時、軍が向こうの連中に大敗して・・・。沢山死んでいった』
『そう。・・・それは?』
私は彼の首にぶら下がっているものを指差した。
彼の首には2つの物がぶら下がっていた。一つは人間用の(ぶら下げている彼にとっては)
大きなゴーグル。もう一つは紐のついている、土埃ですっかり汚れてしまったメモ帳だった。
だいぶ元気そうになった彼は、その質問に答えた。
『ああ、これかい。これは相棒から預かった物だよ』
『相棒?』
『ある人に渡して欲しいってね、シンシア・ラフィンって人だ、知らないかい?』
『・・・・・・・・・・・』
『知らないのならいいんだけれど』
『それ・・・、私です』
ひと時の沈黙が訪れた。
その黒猫は名前をビクタと名乗った。ビクタはこの戦争の最中、一人で旅をしていたらしい。
彼があるとき町に降りた時、ちょうどそこが戦場になっていた。まだそのころは、
両軍とも小競り合い程度しか行わなかったのでビクタは気付くことなく町に降りてしまった。
無論両軍共に狙われる羽目になってしまった。運良く一人の軍人がビクタを保護してくれたが、
両軍の今までの危うい均衡は既に崩れてしまい、大規模な戦闘にまで発展した。
そのためビクタを保護してくれた軍は大敗を喫し、数万人に及ぶ犠牲が出た。
ビクタはそれまで自分を保護してくれた軍人にずっとついていた。彼が死ぬまで。
彼は死ぬ直前にビクタを相棒と呼び、自分のつけていたゴーグルとポケットから紐のついた
メモ帳を取り出して、こう言った。
「彼女に、タルシアに住んでいるシンシア・ラフィンに、これを渡して欲しい」
と。そして彼は少しの間、ビクタに彼女の話をして、自分はわがままな人間だね、そういって息絶えた。
私はビクタからそれを受け取った。その軍人とは私の友人だった。
メモ帳は彼が私へ宛てた長い手紙となっていた。それは明らかに、彼の字体だった。
暫くそれを眺めていた。
だんだん視界がぼやけてきて自分が泣いているのが分かった。悲しいという感情ではなかった
気がする。兎に角、泣いていた。
ずっと泣いていたような気がした。
泣き腫らした目を擦りあたりを見回すと、ビクタは、あのがりがりにやせた真っ黒な若い雄猫は
どこかへと消えていた。ニボシの袋ごと。
初でした。長レススマソ。
次は「柏餅」「ビデオテープ」「金網」で。
川辺の午後の風は、決して心地よいものではなかった。
いつもなら愛でるその風の中を、僕は面倒くさそうに突っ切った。
横目に見る対岸に、海パンにゴーグルで揃えた少年グループが見える。
風が余計に鬱陶しくなった。なぜ彼らはこんなにも若いのだろう。
僕はいつの間にか年を取ってしまった。気付かないあいだに。
このあいだ、ポストに高校時代の友人の結婚式招待状が入っていた。
そんなくだらないことで僕は、自分の年齢を数える羽目になった。
陰気な雰囲気の2階建ての家。いつも見るはずの、パチンコ屋の近くの家。
こんなところに家があるだけで不愉快だというのに、わざわざインテリの風さえある。
2階の窓辺には、お高い雰囲気の猫が注文どおり。この家の主も、この猫も、年は考えていないのだろうか。
僕はずいぶん年を取った。そう言えば昨日なにをしただろうか。
明日はなにをするだろうか……。なにをするというのか!
そう言えば、予定なんてしばらく確認したことも、気にしたこともなかった。
帰ったら、手帳を探してみよう。そう考えて、僕はパチンコ屋の自動ドアの前に立った。
ゴメソ。確信犯です。せっかく書いたんで……のせちゃった。
お題は当然310ので。
312 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/11 00:10
Google.
「グーグル」か、「ゴーグル」か?
それで親友のツトムと大喧嘩になった。ツトムは「ゴーグル」説を譲らず
俺の顔面を殴打し、検索をかけたままのパソコンの液晶を割り俺の部屋を後にした。
3日前のことだ。
そして俺は今病院の受付にいる。
俺じゃなく、あのとき飛び散ったパソコンの破片でうちの飼い猫が怪我をしたから。
「どうぶつ手帳」を受付のお姉さんに渡して、待合室に座る。
あいつとはもう絶交だ。
殴られたからじゃなく、パソコンを壊されたこともペットの怪我も
獣医は保険がきかないからとんだ出費なことも理由じゃなく、
「グーグル」なんだ。絶対譲れないぞ……
なんだこれは?次は「日焼け止め」「怠慢」「レンタル」で
313 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/11 00:11
うわっかぶりまくり
スマソ 310の御題で…
314 :
「罰」、「宇宙」、「モニター」:02/05/11 02:05
外は青空だった。五月晴れとはまさにこの事なのだろう。徹夜明けのアパート。4畳半は
死屍累々の有様だった。編集途中のビデオテープ、砂の嵐のモニター。上映会はあさってだった。
「おーい、2階の!」部屋の外からの声に答える。
「なんすか?大家さん。」窓を開けると、庭には年代物の七輪に火を起こしかけた大家さんの姿が
あった。
「徹夜かい。自主制作って奴も大変だね。」俺は苦笑いで答えた。
「はは、ご迷惑おかけします。で、御用は?」大家さんはそして手にした皿を捧げ持つようにして
言った。
「柏餅、固くなっちゃったんでね。焼いて食べようかと思うのよ。金網、持って
なかったっけ?うちのは魚臭くて。」
「お安い御用です。ちょっと待っててください。」
数体の、いびきを上げる屍を越えて台所へ。吊ってあった真新しいままの金網を
持って俺は部屋のドアをあけた。・・・確かあの柏餅は、お孫さんが遊びに来る
ときに出すと言ってた物のはずだった。・・・来なかったんだろうか?娘さんは。
そんなことを考えながら、俺は階段を下りた。
むりむり15行です。
お題は312さんの「日焼け止め」「怠慢」「レンタル」でお願いします。
昼下がりのキャンプ場。暑くもなく寒くもなく、とても気持ちの良い時期のはずだが、
俺達はなぜか、くやしいようなかなしいような顔をして、見つめ合っていた。
「このコンビニダメだわ、柏餅売ってるくせにビデオテープ売ってねえし。怠慢な品揃えだな!」
怠慢なのはビデオテープを忘れてきたお前だろうが!と言いたいところだが、
俺は人の事を言える立場では無かった。
「あのレンタル屋、キャンプ場だってのに金網もねえんでやんの。何も考えてねえな!」
何も考えてなかったのは俺です。すいません。
今日は自主映画の撮影、しかもバーベキューのシーンを撮りに来たはずなのだが、
モノが無くてはどうにもならず、単なるピクニックに予定を変更するほか無かった。
俺達は、しつこいくらいヒロインのユカリさんに謝った。彼女は笑って許してくれた。
それから彼女のノースリーヴの、白い二の腕から漂ってくる日焼け止めのニオイをかぎながら、
芝生の上で暗くなるまで無駄話をした。結構いい一日だったと思った。反省はしてるけど。
#よく見ると314さん、310さんのお題で書いてますね?
#名前の部分は前のがcookieで残っちゃったのかな?
#お題は「突起」「本場」「ホワイト」でお願いします。
316 :
「突起」「本場」「ホワイト」:02/05/11 03:50
突起物をホワイトで消していく作業ってのも、地味なもんだ。
「ザツには隠すなよ。形は残しとけ」
社長は人の仕事にうるさい。おれはこいつが働いてんのを見たことがないけどな。
まあ、本場ものが無修正で飽きるほど見られるバイト、なんぞにノったおれが馬鹿だった。
「こら、ここはみ出てんだろうが」
社長はおれの仕事にケチを付けると、シンナで慎重にホワイトを削った。
仕事が終わったとき、もはや、おれの突起物はうんともすんとも言わなかった。
ただ、充実感はあった。とくに女のなんぞ、おれが修正した方がエロいぐらいだ。
しばらくたって、おれが修正した雑誌がそれ系の本屋に並んだ。
おれが手に取って自分の仕事を確認していると、
高校生ぐらいのガキが二人、おれの修正した雑誌を手にとった。
「なんだよこれ修正してんじゃん」
「ああ、心配すんなよ。これ、シンナで消せんだよ」
「うお、マジ?」
おれはエロガキにエロの道について、小一時間ほど問い詰めたくなる衝動にかられた。
次は「ホットミルク」「ピアス」「キャンディ」で。
317 :
(152,185,223,269,288)「突起」「本場」「ホワイト」:02/05/11 04:18
ホワイトアウト!
わかっていながら、操縦桿を倒すことが出来ない。
背面急旋回からぐんぐん加速するコクピットの中で、章一の青空は白くかすんでいく。
「引き起こしすぎだ、倒して、アフターバーナカット!」
編隊長のかすれた声が、遠い記憶のこだまのようにレシーバーの奥から漏れてくる。
章一はアフターバーナスイッチの突起から指を離そうとしながら、そのわずかな指の動きがままならない。
意識が遠のく。
ジュラルミンの翼がGを受けてしなり、高度計の針が恐ろしいスピードで下がっていく。
磨き込まれた棺桶のように輝きながら、銀色の機体が、雲を切って地上へと背面ループを描く。
「そのうち、本場のジンギスカンを食わしてやろう」
それきり会っていない高梨の懐かしい声が耳の底から湧くように聞こえて、その瞬間章一は小さな笑みを浮かべた。
「高梨…ごめんな、一人で食ってくれ」
世界の全てが白くなって、そして、途切れた。
多国籍軍にPKO参加した空自の、それが最初の殉職機となった。
2004年の、寒い冬の日のことである。
次の方は「たらふく」「ブレーン」「斜滑降」でお願いします
318 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/11 05:06
「ホットミルク」「ピアス」「キャンディ」
路地裏にひっそりと佇む私の店には、少々変わった常連客もいたりする。
「お客さん、今度のヤマはどうですか?」
「……ピアスだ」
「ピアス?」
「そう、現場に落ちていたピアス。コイツの持ち主は被害者の恋人だ」
「でも、彼女は犯人じゃない」
「そう、その通り。彼女を陥れようとするヤツ。彼女のピアスを
持ち出すことが出来、しかも彼女を憎んでいる。それが真犯人の条件だ
……実は、彼女の姉が被害者と秘かに付き合っていたという情報がある」
「なるほど、見えてきましたね。『さすが』と云わせていただきます」
「ありがとう、マスター……それでは、例のヤツ」
「ホットミルクですね。もう出来てますよ」
向かいのマンションのツトム君は、探偵小説にはまっている。
まだ小学生だから、帰り際にはキャンディをサービスすることにしている。
#次のお題は
>>317の「たらふく」「ブレーン」「斜滑降」で。
319 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/11 06:35
たらふく、ブレーン、斜滑降
6/21
今、生ウォッカ片手にこの日記を書いてる。
安いカマンベール・チーズを1ダース買ってきたんだ。
たらふく食べて、私はきっと満足げな顔でディスプレイをにらんでる。
口の中は酒と煙草の匂いで一杯だけど、こんな晩はキーボードの快音が鳴り止まない。
斜滑降する私の精神と共に、アルゴリズムが次々とスクリプトになっていく。
研究室のメインプロジェクトのブレーンである私にとって、グリア細胞が悲鳴をあげる
寸前の、こんな晩が一番の作業時間だ。
夜明けまで後5時間、明日の3限に提出であるこのスクリプトを書き上げて、今日は、寝よう。
6/13
昨晩ベロベロになったお陰で本日の2限と3限と4限と5限を欠席した。
//次は「遺伝子工学」、「時限爆弾」、「カレイドスコープ」でお願いします。
6/21 => 6/12
スマソ。
「遺伝子工学」「時限爆弾」「カレイドスコープ」
カツオの卒業式も終り、ハイキングから帰ってきたサザエさん。
「イクラちゃんは何歳になりましたか?」と聞いた。
「イクラ?・・・ですか。やだぁ、そんな子いませんよー」
「ハイハイ、親戚にもイクラなんてのは、いないっすねぇ」
そんな筈は・・・ない!
「そ、そんな親戚いたっけなぁ・・・へへへ」と目をそらすカツオ君。
ワカメが、こっそり小さなメモを無言で渡す。
「イクラの事は聞かないで。遺伝子工学によって創り出された私達には
時限爆弾とマイクが埋め込まれ、終始チェックされています。
イクラはキャラクターとして存在感が薄かった・・・明日公園でお話します」
翌朝、ワカメはこなかった。
家を訪ねると、カツオのたまった宿題をやらされてる。
「カツオお兄ちゃんも来年は卒業だね」
・・・そうか、1年がない事になったのか。カレイドスコープが一回転したのだ。
まだ3月末なのに、磯野家の庭の桜は異様なまでに色濃く咲きほこっていた。
※遺伝子工学といえば、やっぱりコレ・・・
次のお題は:「ロボット」「夜行列車」「スキヤキ」でお願いします。
322 :
「ロボット」「夜行列車」「スキヤキ」(309):02/05/11 12:02
窓辺に置いた空き缶が、かたんと揺れた。
風景が少しづつ後ろへ流れていく。列車が出発したのだ。
「寝ててもいいんだよね?」
僕は隣に座っていたパスカルに聞いた。
「ああ。夜行列車だからな」
少し低い、男の声。外見に似合っていないと思うのは、僕だけではないはずだ。
「それより、良かったのか? 誰にも、一言も言わないで来ちまったが……」
「大丈夫だよ。おばあちゃんちへ行くだけだし、お前もいるじゃないか」
そう言って、僕は白いビニール袋の中から、丸い箱を取り出した。先ほど買ったお弁当だ。
開けると、そこには茶色い牛肉と玉ねぎが、ご飯の上に乗っていた。
「スキヤキ弁当か」「牛丼だよ」
パスカルが羨ましそうに、弁当を覗きこんだ。彼はどうでも良いところばかりが、本物そっくりに造られている
「だいたい、君は食べたくたって食べられないだろう。機械なんだから」
「けっ」
金属の身体を持つ犬型ロボットは、悔しそうに鼻を鳴らした。
次のお題は「時計」「雨」「鈴」でお願いします。
323 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/11 13:09
「時計」「雨」「鈴」
いいかげんにこだわりを捨てたらどうだ。
亜熱帯特有の雨が照葉樹林を叩きつづける。
島には時計がないので、自分のリズムで体を動かす。
こんな日が何日もつづいている。
僕は君がくるのを待っている。
遠くで鈴の鳴る音がしたような気がして眼を開けた。
長い夢を見たらしい。
現実に引き戻された僕の前には、一面に荒野が広がっている。
こんなことが何年つづくのだろうか。
次、「パンツ」「キウイ」「決心」で
「パンツ」「キウイ」「決心」
「全てのキウイバードにパンツをはかせる運動、世界に広がる」
国際紙を眺める大臣は、憂鬱だ。
「こんな風潮が日本にまで広がるのか・・・」
インタビューに応えるキウパン運動代表の外人。
そのマイクには、当然の様にパンツがはかせてある。
一緒に写ってる女性インタビュアーも白いパンツをはいている。
彼女が握る万年筆も、パンツをはいている。
もちろん、声明文も青いパンツをはいていて、TVモニターも・・・
「なんたることだ!」
今回はキウイバードだからまだいい。日本にはいないから。
しかし、これがニワトリや、スズメや、国産米、国鳥トキにまで広がると・・・
「総理大臣に話さねばなるまい」
大臣は決心を固めた。官邸に電話し、新聞をカバンに入れる。
もちろん、受話器にも、カバンにも、新聞にも、ふんどしが締めてある。
ここは日本だ、日本はふんどしだ。
大臣は気勢を上げて、赤ふんどしをしめたドアから出ていった。
※なんとなく納得できる展開(?)
次のお題は:「日の丸」「赤玉」「パンツ」で御願いします。
325 :
:「日の丸」「赤玉」「パンツ」:02/05/11 15:12
雲ひとつない青空に日の丸がはためいている。私は日本の国旗は好きである。
だからと言って別に私が右翼だという訳ではない、が、世間様はそう見てくれ
ないようでもある。雑居ビルの谷間、私は3人の女子高生に囲まれていた。
「だからさぁ、私達の革命遂行の為に少しだけ協力してくれればいいのよ。」
女子高生が革命なんて単語を発することもあるんだな。私は意外に思った。
「日の丸なんかボーっと見上げてるあなた達みたいな洗脳された人々を救うのが
私達の目的なの。」
そのために私の所持金を差し出せってか?それでは話がおかしいだろうが。
「人はパンのみに生きるにあらずよ。労働者は、闘争を支援して然るべきなの。」
んー、本気なのかギャグなのか。私にはいいかげんわからなくなってきた。
「そんなに金が欲しくばそこらでパンツの一つも売ってくればいいだろう。」
そんな私の発言に、女子高生の一人が落ちていた赤玉スィートワインの空き瓶を
拾い上げた。うわっ、まだあるんか、そんなもん。正直、私はそちらの方に驚いた。
「資本主義に毒された狗め、思い知るがいい。」
だから、ネタなのか?本気なのかはっきりしてくれ。私はやむなく彼女達にタッ
クルをかまし、一目散に逃げ出した。都会ってのは怖いよ、カーちゃん。そんなある
晴れた午後のことだった。
17行・・・。
>315さん
#よく見ると314さん、310さんのお題で書いてますね?
#名前の部分は前のがcookieで残っちゃったのかな?
あぁ、私ってば厨。その通りです、面目ないです。
次のお題は「不法侵入」「休日出勤」「クッキー」でお願いします。
326 :
「不法侵入」「休日出勤」「クッキー」:02/05/11 23:05
「不法侵入」「休日出勤」「クッキー」
ある刑務所にで、ある老人が、一本の「朝日」を大事に吸っていた。
彼は、時折、気が向いた様に昔話をする。
「メリケンの高えビルに不法侵入した話はしたっけな?」
皆が「まだだ」と首を振る。聞かせてくれ!その話を・・・
「所長、爺っさんが話を始めました」
「おお!そうか、そうか」
顔馴染の留置所長は、頬を緩めて鉄格子の前に陣取る。
「吸盤両手に、200階建てビルに休日出勤。我ながら大儀な事だった」
あれだ、あの会社だ!
所長は確信した。世界中の富が集まるといわれる、あの。
「ビッグよりも手強いてぇクッキーは、許諾書は5貫目もあって・・・」
著作権収入が全てとなった22世紀。厳格な権利監視の中で、○ッキーマウス
の著作権をパクった現存する唯一の人間。それが彼だった。
モゴモゴと話は続いた。実はすごく聞きづらい、でも聞きたい。
なにしろ、あのセサミのクッキーモンスターの著作権の話だ。
※露骨に元ネタありのパクリです(^^;L
次のお題は:「幽玄」「有限」「有言」で御願いします。
有言不実行で有名な、有限会社2ちゃんねるの西村博之。
彼の座右の銘は「現状維持」であり、当然、彼の行動には幽玄さなど微塵も無い。
-----
すいません。単なる思い付きです(藁
お題は続行で。
328 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/12 18:52
桜の花びらが、風に乗って舞い散る。
そのわずかな間だけは幽玄的な美しさを見せるが、地面に落ちて土に返りかけた姿は、無残なだけだ。
輝いているのはほんの一瞬だけ。万物が有限であるように、美も有限なのだろう。
「だけどさ、世界に1つくらい、輝き続けるものがあったっていいじゃないか」
ベッドの上にいる理緒は、虚ろな表情で僕の言葉を聞いていた。いや、本当に聞こえているのだろうか?
1ヶ月前、交通事故にあい、もう2度と走れないだろうということを聞かされてから、ずっとこの調子だ。
生気に満ち溢れ、有言実行の陸上部部長といわれた姿を知るだけに、余計に辛くなってくる。
「ずっと綺麗なままでい続ける……例え幻想に過ぎなくても、そんな存在があったって」
理緒は、綺麗だった。翼が生えているかのように、軽やかに駆ける姿は、天使を思わせた。
そんな彼女が、こうやって朽ちていくのは、見たくなかった。
僕は、ネクタイをそっと彼女の首に回した。
最初は軽く、だんだん強くそれを引く。 ……やがて、彼女の身体から力が抜けた。
扉を開けて入ってきた看護婦が、目を見開いて大声で叫んだ。
――これで良かったんだ。
瞼を閉じると、理緒の姿が見えた。
生き生きとグランドを駆ける、永遠に美しいままの理緒が。
次のお題は「花」「剣」「夢」でお願いします。
「花」「剣」「夢」
「すまない。だが俺の肩には、200万人の命が乗っているんだ……」
幹久はそう言いながら、ゆっくりと真帆の胴に後ろから刺さった剣を引き抜いた。
真帆は静かに少しだけ血を吐き出し、紐を切られた操り人形の様に膝から
地面にがくりと崩れ落ちる。
「わかっ て たよ。最初 から、こういう つもり だったって……」
何度も言葉を詰まらせながら、真帆は血と共にそれらの言葉を吐き出した。
ゆっくり後ろに倒れようとする真帆を、慌てて幹久が支える。
「夢 を 見てただけ だったんだよね。ひ ょっと したら……」
この後の真帆の言葉は一度も途切れなかった。
「私を本当に愛してるかもしれないって」
そう言って、真帆は手元に生えていた小さな背の低い花をちぎって、力なく
草むらの方へ投げ捨てた。
「本当に愛していた。いや、愛している。けど……」
「いいの もう 終わっ た ことだから」
真帆を後ろから抱きしめた幹久の手が、生暖かい液体で濡れていた。
しかしそれ以上に幹久の頬が濡れているのを、真帆はついに知ることはなかった。
幹久はそれから長い間ずっと、真帆の体を抱きしめていた。真帆の血液と
幹久の涙は尽きることなく流れつづけ、二人をとりまく風は悲痛な叫びを
あげながら通り過ぎていった。
次は「取っ手」「手っ取り早く」「手取り」お願いします。
330 :
「取っ手」「手っ取り早く」「手取り」:02/05/12 21:42
ホールには、黒服の音楽隊が奏でるジャズと、皿や口などで奏でられる欲望が充満
している。
「一緒に踊って頂けませんか?」と言い寄ってきたのは、円形古墳の集合体のような
吹き出物を添えた女だった。
さも自信ありげな、ある種の欲求を張り詰めた奇形な笑みが俺の食欲を削いだ。
「それ以上近寄るな。顔面をこのナイフで整形されたいか」
俺は右手のナイフを不細工の目前でちらかすと、奴は黙って俺から遠ざかった。
そうだ。そして二度と俺の視界に入るな。俺は字の通り、厚顔無恥な女は大嫌い
だ。顔だけではなく、性格さえも醜悪な女を世の男は望んでいない。
俺が望む女は、整った顔とスタイルと聡明な知識を携えている者だ。丁度、いま
俺が手をつけている、陳腐な料理が置いてあるテーブルを横切った女のように。
給仕が俺に近寄ってきた。いかにも不味そうな料理を、いかに美味しそうに見せ
るために、颯爽と取っ手を持ち上げて「お肉のおわかりはどういたしましょうか?」
と無神経さを追撃してきたので、手っ取り早く「きえろ」と追い払った。
俺は席を立ち、さっきテーブルを横切った女に寄る。他の男と会話をしていたが、
それを押しやって、彼女にポーズをかける。
「一緒にダンスして頂けませんか。僕が手取り足取り教えてあげるよ」
大抵な女は顔とスタイルとこの言葉で釣れた。しかし、この女は
「いいえ、あなたとは踊れません。あなたの後ろめいた考えが気に触ります」
と憤怒にも狂気にも似た言葉の唾を俺に吐きかけてきたのだ。
俺は冷静を装ったまま、拳で彼女の脇腹を抉った。老朽化したビルのように
崩れる彼女の体を受けとめ「大変だ!俺の女が倒れた。彼女は貧血を伴う病気
を患っているんだ。人の声が届かなくて安静できる部屋はあるか。案内してく
れ」とありもしないことを咄嗟に言い放った。
不意をつかれた係員が出入り口の扉を空けると、喧騒なパーティー会場とは
うって変わった廊下が広がっている。
俺は彼女の体を抱えたまま、夜空の下で欲望と苦痛が輝く街に飛び出し、タ
クシーを呼びとめ、血生臭い自宅への帰路についた。
次のお題は「月に叢雲花に風」「寄席」「換骨奪胎」
331 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/12 22:51
「うわーん、ちっともわかんないよ〜」
「泣かないの。ママも手伝ってあげてるんだし、早く終わらせましょう」
「だって、こんなの出来ないよ!」
泣き騒ぐ我が子をなだめすかしながら、私はため息をついた。
しかし、確かにこれは難しすぎる。辞典で探すのも一苦労だ。
「ああ、早くしないと寄席が始まっちゃうのにぃ」
娘は落語が大好きだ。年齢の割に渋い趣味だと思う。
「『月に叢雲花に風』とは、良く言ったものね」
「難しいこと言われてもわかんないよー」
こんな宿題を出す割に、ことわざは教えてないんだろうか?
「今は気にしなくていいわ。それより宿題に集中しましょう」
『克己復礼』『換骨奪胎』『呉越同舟』『万能一心』『質実剛健』etc……
上の四字熟語を10回書き取って意味を調べろだなんて、小3に出す問題じゃないと思うんだけどねぇ。
次のお題は「電気」「朝」「風」でお願いします。
「月に叢雲花に風」「寄席」「換骨奪胎」
・・・ではなく「電気」「朝」「風」
ホールには、黒服の音楽隊が奏でるジャズと、皿や口などで奏でられる欲望が充満
していた。
私は友人と談笑していた。彼は自分を飾らぬ人で、素朴な彼の前ではいつも自然な私でいることができた。
そこへ男が割り込んできたのだった。今どき奇席でも見られないような安っぽい派手なスーツ。ねっとりと絡みつくようないやらしい目つき。厚顔無恥で性格さえ醜悪な男。
月に叢雲花に風とはよく言ったものだ。
「一緒にダンスして頂けませんか。僕が手取り足取り教えてあげるよ」
さも自信ありげな、ある種の欲求を張り詰めた奇形な笑みが私の興を削いだ。
趣味の悪さは服装のみならずその一挙手一投足に至るまで徹底されていた。
大抵の女はこの程度の顔とスタイルと言葉で釣れのかもしれない。しかし、
「いいえ、あなたとは踊れません。あなたの後ろめいた考えが気に触ります」
こんな男の申し出を断るのに正論は無意味だと知りながらも思わず口をついて出た。
できれば唾のひとつも吐きかけてやりたいところだ。
このセリフに彼はかなり衝撃を受けたようだった。口の端を奇妙なへの字に曲げる。
これだけはっきり言えば諦めただろうと一瞬油断してしまったのが失敗だった。
わき腹に刺すような痛みが走る。
思わずその場に崩れ落ちたのはまさに一生の不覚だった。
彼は私の体を抱えたまま、夜空の下で欲望と苦痛が輝く街に飛び出し、タ
クシーを呼びとめ、血なまぐさい彼の自宅へと向かった。
が、私がこのままおとなしくしているとでも思ったのだろうか?
掌拳の一撃で伸びた男を後に、私は家の前に止まる友人の車に乗り込んだ。
「どうせ、ほんとのピンチになるまで助ける気はなかったんでしょう?」
窓の風に髪をなびかせる私に彼は微笑んだ。
「君がピンチになるなんて考えられなかったからね。」
そろそろ夜が明ける。彼の車は電気の消えた街を疾走した。
・・・換骨奪胎でスマソ>330(藁
次は「僻地」「簪」「混淆」で。
333 :
「電気」「朝」「風」:02/05/12 23:16
「水は止まりました。が、電気がこなきゃ、まぁ、排水ポンプは動かせませんな。」
曹長は事も無げにそう言い放った。浸水は既に復元限界を超えかけていた。
「こうなったら右舷に注水するしかないですね。」
そうだねぇ。いや、右舷の電路は生きているのかな?まぁ、いいか。私は資材を抱え傍らを駆け
抜けていく水兵を捕まえ、叫んだ。
「伝令!左舷排水不能、応急処置により浸水は食い止めた。右舷注水の要ありと認む。」
「はっ、伝令!左舷応急処置完了、排水不能、右舷注水の要あり!!」
少年兵だった。真っ暗な通路を元来た道へと駆けていく。
「前後逆になってましたよ。」
「まぁ、それぐらいはいいでしょう。」
駆逐艦「島風」は、インドネシアから東京へと原油を運ぶ輸送船団の護衛の任務に
就いていた。あと少しで東京という今朝、船団は所属不明の潜水艦による魚雷攻撃を
受けた。ここはもう本土だと言うのに。
「負けますね。間違いなく。」
「そうだね。まったく。」
せめて帰り着ければ、浅草で一杯やりたいな。・・・いや、もう燃えてしまったか。
無意識にまさぐったポケットからはぐっしょり濡れたマッチ箱が一つ出てきただけだった。
17行です(苦
お題継続でお願いします。
334 :
名無し物書き@修行中(333):02/05/12 23:19
かぶりました。お題は332みずしさんのお題、
「僻地」「簪」「混淆」で。
335 :
「僻地」「簪」「混淆」:02/05/13 00:03
「だぁー。」
穏やかな春の昼下がり。何事もない一日。退屈、退屈、退屈。
「まぁ、そう腐らないで下さい。何もないってのはいいことじゃないですか?」
確かに、警察が暇だと言うのは良いことだ。だが、ものには限度がある。俺は
逃げ出した牛や馬の捜索をする為に警察に入ったんじゃない。こんな簪の似合う
綺麗どころ一人いるわけではない枯れた温泉場、警部交番なんかいらん。駐在所で
充分だ。
「俺はこんな僻地に派遣される為に警視庁蹴って地方に来た訳じゃないんですよ。」
「はいはい。警部さんの気持ちはよくわかります。温泉まんじゅう、召し上がります?」
「・・・いただきます。」
どうも調子が狂う。彰子さんは向かいの旅館の女将だった。が、ひがな一日こうして交番に
来てはお茶を入れてくれる。最初は公私の混淆だと出入りを禁じたのだがいつのまにかまた
ここにいる。というか、交番の風景に溶け込んでいる。
「彰子さん、いつも思うんですが旅館のほうは大丈夫なんですか?」
「大丈夫ですよ。皆さんのほうがベテランなんですもの。・・・私、居場所が無いくらい。」
しまったな。確か若旦那は結婚まもなく亡くなったのだと聞いていた。軋轢もあるのだろう。
「おまんじゅう、美味しいですね。」
「はい。」
彰子さんの明るい声が交番に響く。まぁ、こんな場所もあっていいのかな?最近はそう思う
ようになっていた。
あう、20行。
次のお題は「温泉」「雨雲」「帰り道」でお願いします。
336 :
「温泉」「雨雲」「帰り道」 ◆4RxB688c :02/05/13 00:31
自殺の名所として有名な東尋坊へやって来たのは一昨日のこと。勿論自殺をするためだ。首を吊る、手首を切るなど色々方法はあるが、やはり飛び降り自殺が最も楽に死ねるのではないかと思ったのだ。
しかし、いざ飛び降りようとしてみると、断崖の高さと、遥か下方の海面までの距離に怯えてしまい、足が竦んでしまい、それ以上先へ進めなくなってしまう。
これは、晴れていて海面が見えるからいけないのだ。雨や霧で煙っていて、下方が見えなければ、恐怖を感じることもなく飛び込めるだろう。よし、雨の日を待とう。
そう思い、東尋坊温泉に泊まって2日目、ようやく雨に見舞われた。
雨雲に覆われた空の下、昨日のうちに下見をして決めておいた場所に向かう。遺書は旅館に置いてきたから、夜になって私が戻らなければ誰かが見つけてくれるだろう。
断崖に立つと、果たして思惑通り、雨で煙っていて、数m下は霧の中である。高さに対する恐怖は感じない。
よし、これで忌まわしいこの世ともおさらばだ。私は更に足を踏み出した。
旅館への帰り道、私は考えた。結局足がそれ以上前に進まず、飛び降りることはできなかった。何故だろう。
結局のところ、意気地が無いんだなあ私は。もっと思い切ってあと数歩進めば済んだことなのに。これが駄目なら、どうやって自殺しようか。
………やっぱり、私はまだ人生に未練があるのかなあ…。
-----
「果物ナイフ」「高速バス」「四分音符」でお願いします。
337 :
「果物ナイフ」「高速バス」「四分音符」:02/05/13 01:53
===== 専門医のアドバイスで正しい処置を =====
果物ナイフで瀕死の重傷のA子さんは、高速バスにひかれて重体のB君・・・
こういう場合の為に、我々、専門医がいるわけです。
東尋坊? 阿蘇山?
とんでもない!
自殺の事ならお任せ下さい。
目前に広がる、100haのコスモス畑。
モーツァルトをバックに、軽やかな四分音符を打ち続ける心拍器。
太陽の光を宿す点滴チューブ。
専門の病院で、痛みのない快適な旅立ちをお約束します。
自殺5回以上の経験者が揃った当院で、さあ、次の人生に旅立たちませう。
※
>>336さんのネタを引いてしまった。恐縮です(^^;
次のお題は:「エプロン」「飛行場」「補導」でお願いします。
TWNv8YWc
大阪 31
339 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/13 02:06
340 :
「エプロン」「飛行場」「補導」:02/05/13 02:39
その当時、僕はある飛行場で弁当搬入のバイトをしてたんだ。
そこで僕は、ある女の子に出会ったんだ。
どんな女の子かって?うーん、小学生くらいの結構かわいい娘だったな。
僕と僕のバイト仲間は、彼女のことを”エプロンの少女”と呼んでいたんだ。
小学生なのにエプロンを着てたのかって?
いやいや、飛行場で飛行機が待機する場所をエプロンというんだよ。
彼女はよくそこにいたんだ。雨の日も風の日も。
小学生ならば補導されてもおかしくない、そんな深夜でもね。
彼女はいつも悲しそうな顔をして、飛行機を見上げてるんだ。
え?その娘は幽霊じゃないかって?
僕たちもそれは考えたさ。物好きなやつは、彼女がいつの航空機事故で
亡くなったかまで調べたやつもいるけどね。新聞の縮刷版とか引っ張り出してきてさ。
でも、そこまでさ。誰も彼女にそれを指摘できるようなヤツもいなかったし、
どのようにすれば彼女の心を満たしてあげれるのかもわからなかった。
今でも見えるんじゃないかな。
なんともいえない悲しげな顔をしながら、飛行機が飛び立つのを見上げる少女の姿が。
次は、「チェリー」「渚」「ほうき星」でお願いします
341 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/13 02:52
今ラジコン飛行機の飛行場にいる。6歳になる娘と一緒に遊びに来たん
だ。ただ、俺はなんだかおかしいと感じている。こういう人生を送ってい
ることに。
ことの発端は池袋のサンシャインシティ。東急ハンズだ。ラジコン飛行
機を観てたらついふらっと万引きしてしまった。十年以上前であまり詳し
くは覚えていない。だが、まあ、そのときは何となく高そうに見えたし、
脅して誰かに売りつけようと思っていただけなんだが。
でも、いざ店から出てラジコンの箱を観ていたら、一つ思い出したんだ。
テレビの中ではスネ夫があんなに自慢げにラジコン飛行機を飛ばしていた
こと。そしてそれをみんながすごくうらやましそうに観ていたこと。
ラジコン飛行機って、それほどおもしろいのか。
そうして、家に帰り、組み立てた。親はびっくりしていた。これまでそん
な地味なことに取り組んだことがなかったから。そうして空き地に行き、飛
ばしてみた。
おもしろかったんだね。結構。そしてその経験を兄貴に話したんだ。兄貴
は出版社につとめていて、それを友達に話したらしい。なんか書けといわれ
て書いた文章が雑誌に載った。評判がよかったらしいな。
そうして暴走族から急に足を洗い、部屋にこもり、ラジコンを作り、雑誌
に文章を書いて生活している。みんなは驚いていたな。俺も驚いているもん
な。
でも、こうなることはきっと正解だったんだ。族にいた頃つきあいがあっ
た女の子たちよりも、ラジコンで知り合った女の子の方が何となく気が合う。
今のかみさんもそうさ。
まあ、平たくいえば、丸くなったってことだな。
次は「サルサ」「電波」「ミント」でお願いします。
ごめんなさい。いろいろ無視しちゃって。
次は340さんのでお願いします。
343 :
「チェリー」「渚」「ほうき星」:02/05/13 10:45
戦争が始まる一年前、あたしは上海でチェリー・ブロッサムという名前を与えられた。
渚が見える別荘で暮らす有閑夫人──現地の人々にはそのように見られていただろう。
あたしは、ある人を待っていた。いつの日か、彼が特別な任務を帯びて、この地に来てくれるのではないかと夢想した。
そもそも、あたしが諜報員なんかになったのは、彼を愛してしまったからだ。
そして、その日がやって来た。
あたしは二階の窓から海を眺めていた。
満天の星空の下、ボートから陸地に上がろうとする彼の姿が見えた。
その時、あたしは上空に小型飛行機が飛んでいるのに気づいた。来ちゃいけない! あたしはあの人に叫ぼうとした。
ほうき星が一つ、流れた。
小さな爆音が、あの人を包み込んでいた。
次のお題は
>>341の「サルサ」「電波」「ミント」で。
344 :
「サルサ」「電波」「ミント」:02/05/13 13:29
暇を持て余した俺と連れは、2chでも見るかとパソコンの電源を入れた。
”ワールド音楽板・オメーら!俺のサルサは世界一です”
連れの好きな板に新しいのが立っている。冷ややかに笑う連れ。
「何が世界一だよ、この電波が!」
電波!電波だと?お前はいつからそうなったんだ。
「寒いぜ、2ch用語なんか使うなよ」
連れは露骨に不愉快な顔をして俺を見る。なんだ、なんだよ、その顔は。2chなんて
社会に適合できない奴らの掃き溜めじゃないか。
「・・・毒されてるよ。やりすぎだぜ」
そう言う俺に対し、連れは無言でパソコンの電源を切った。明らかに怒っていた。
部屋が気まずい空気にあふれ俺は息苦しくなる。言い過ぎたか。メンソールの
タバコに火を点け場を取り繕う事にする。息深く吸うとミントの爽快感が幾らか
気分を楽にしてくれる様に感じた。だが連れの怒気に気おされている。何とかしないと。
「メンソールウマー」
気勢を張って口にしたその言葉を聞いて連れは笑い出した。
俺には何故なのかは分からなかった。
次は「ステレオ」「タンク」「休日」で。
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346 :
「ステレオ」「タンク」「休日」:02/05/13 19:45
梅雨時の昼下がりであった。
A子は着古したスラックスとタンクトップを着てテレビを見ていた。
傍らにはスナック菓子やリモコンが常備されており、
そしてそれは彼女の息抜きに関する異常なまでの執念の賜物だった。
息抜きとは努力の末に築かれる怠惰だ、と彼女は考えていた。従って休日に外へ出ることは
全く無意義であり、友人の考える所の息抜きに付き合うなどもっての他であった。
さて、そんな彼女であったが一つ気になることがあった。
仕事が多忙なために忘れていたが、庭の山桃がそろそろ熟す時期だった。
今直ぐに採って洗って食べたかった。しかし、それでは信条を崩すことになる。
稚拙な事に思えるが、本人にとっては自己を否定し兼ねない、重大なジレンマであった。
A子は窓の外を覗き、赤茶色の山桃がなっているのを確認した。
スナック菓子を口に含みつつもよだれが出てきた。
苦痛だった。我慢せざるをえない。しかし明日は月曜だ。明日調理して来週末に食べればいい。
苦肉の策だった。
今はただ、漠然と新しい菓子の袋を開けて、ステレオタイプのドラマを見るしかなかった。
次のお題は「老い」「大げさ」「フィルム」でお願いします。
347 :
「老い」「大げさ」「フィルム」:02/05/13 22:52
大げさとも思えるくらい、わざとらしく笑ってみた。
堅くこわばった、醜悪な表情だったろう。
そこには将来の自分、老いた自分、が写っていた。
信じられなかった。
フィルムだ、フィルムに何か細工がしてあるんだ、ととっさに思い、
狂ったように駆けだした。
こんなこと、ありえない、絶対トリックをあばいてやる、などと、
あたかも、逆さに覆った天地を直さんばかりの、
自分としては、もう、必死の行動だった。
その時は、それ以外、思いつかなかった。
というよりはむしろ、そう、信じたかった。
次は「眼筋」「ヒマラヤ」「指導者」でお願いします。
348 :
「眼筋」「ヒマラヤ」「指導者」:02/05/14 02:06
桜がみたい。それが彼女の願いだった。
しかし、その願いをかなえることは難しかった。
今は11月だし、何よりも彼女の命はもってあと数ヶ月とのことだった。
彼女と俺との関係は、指導者と教え子でもあり、恋人どうしでもあった。
ある日の練習中、彼女は気分が悪いと言い出した。
その時の俺は、大会前ということもあり、とりあえず隅のほうで休ませていた。
それがまずかった。彼女は頭を強打しており、脳に障害を受けていたのだ。
病院に連れて行ったときには、もう手遅れだった。
彼女の願いをかなえるために、俺は八方手を尽くした。
ある冬の日、俺は彼女を病院の外へと連れ出し、ある場所へと向かった。
そして、約束どおり彼女に桜をみせた。
「こんなに寒いのに満開で咲いてる・・・、キレイ・・ありがとう・・・」
彼女はそう言ってくれた。それからほどなくして、彼女は亡くなった。
彼女にみせた花は正確にいうと桜ではない、ヒマラヤザクラという冬に咲く、桜に似た花だ。
ソメイヨシノとは少し形が違うが、脳の障害のために眼筋の衰えた彼女には、
本物の桜にみえたことだろう。
彼女の願いはかなえることができた。
しかし、最後に彼女をだましたことを俺は少し後悔している。
次は、「そばかす」「クラシック」「くじら」でお願いします。
349 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/14 04:33
直子のことを考えて少し憂鬱になりながら裕一は空をみあげる。
高原のペンションから見上げた冬空は驚くほどすんでいて、ぽっかり
と浮かんだクジラ雲がのんきそうに漂っているのがみえる。ここだけ見ている
とまるでもう春のようだ。
雲が風の流されていくのをみながら これも2年前に彼女に教えてもらった
ことだったな。と裕一思った。
彼女におしえられるまで、裕一は目でみえる速さで雲がながれることを
知らなかった。
ペンションの隣にあるスキー場から流れてくる音楽とスキー客の嬌声が
まるで幸せの固まりのようで、すこし煩わしい。しかしそれは何故か彼を
たまらない気持ちにさせる。それは子供のころ独り残された小学校で誰か
の弾くクラシックピアノを聴いた時と同じせつなさであり、直子のことを
考えると決まって感じるせつなさである。
頬にあたる日の光が、余りにも眩しく彼は窓辺をはなれ部屋の奥にはいる。
昨日みた彼女の泣き顔を、そしてそばかすの上を流れた涙をおもいだす。
次は 詐欺師 闇市 ランプ でお願いします。
350 :
詐欺師が闇市でランプ:02/05/14 04:55
「詐欺師が闇市やってるんだってよ」
「どこでだい、そいつは」
「そいつが駅前の屋台だってんだ」
「へぇ、堂々としてるじゃねえか。そりゃ気付かねえな」
「ランプは外して行こうぜ、巡査」
次は「偽善者」「フリーマーケット」「行灯」でおながいします。
351 :
「偽善者」「フリーマーケット」「行灯」:02/05/14 17:25
ぎぜんしゃ。ああ、なんて不快感な響きなのだろうか。
今テレビに映っているボランティアの老体どもはまさに偽善者の塊だ。金品を貰わ
ずして、ゴミを拾って何が楽しいのだろう。「わたしはこんなにも良いことをしてい
るのです。あなたら自己中心主義者と違うのよ」と思っているのだろうか。
近所の広い公園に行くと、たまにフリーマーケットと云うものが開催している。
不必要なものを他人に押しつけて「珍しい一品だよ!他では絶対手には入らないよ!」
と威勢の良い商人の真似をして、使いまわされた子供服やボロボロな器具を売りつけ
るのだ。買う側も、使いもしないのに「ご近所さんだから」と云う理由でガラクタを
購入する。ホームレスのようにガラクタを並べ、自己満足の正義を振り翳す、人の醜
い部分が喚起するフリーマーケット。自分の中では「自己満足市場」と呼んでいる。
隣の川では、毎年の盆末に燈籠流しという行事がおこなわれる。火のついた行灯を
川に流すだけだが、何故、こんな報酬も意味もないことを畏まった相好を呈するのか、
子供の頃からの疑問だった。死んだ人の為?まさに偽善の骨頂だ。意思も姿もない死
体に、手を合わせて何になるのだろうか?「自分はこんなにもいい人なんだ」。そん
なメッセージしか、感じ取れない。灯火の数だけ、偽善が螺旋状に昇華されているの
ではないのか。
次のお題は「情けは人の為ならず」「落款」「夫唱婦随」
352 :
「情けは人の為ならず」「落款」「夫唱婦随」:02/05/15 02:09
日本のチップス先生といわれる、皆に好かれる校長だった。
その校長も定年・・・何かしてあげたい。校長が、心から喜ぶ何かを。
「さあ先生、思い切って、何でも欲しいものを言ってください。」
「・・・これは在職中には言えなかった。堕落教師の落款を押されてしまうから」
校長は意を決した様に言った、赤面しながら。
「私は、女子の身体検査がしたかった・・・教師として、あるまじき事だが」
翌月、体育館でこれまでに類を見ない、女子限定の大身体検査が始まった。
夫唱婦随と言おうか、校長の奥さんも参加。
30年前に卒業した女子生徒、沖縄からきた者、俺も是非という男子生徒・・・
皆が喜んで参加し、校長はたしかに楽しそうだった。
これだけ準備してくれた皆に、感謝と喜びで答えなければ!
だが・・・校長は、心中落胆していたのだ。
やってみると、意外となんにも面白くなかった。泣きたい心境だった。
幻影を失って、これから何十年どうやって生きてゆくのか。
こんなものなら、幻影のままの方がよかった。
「情けは人の為ならず」
妻がぽつんと呟いた。なんだか全然間違った用法・・・さすが若い。
※なんか寅さんにありそうな展開・・・ないか;
次のお題は:「砂」「定例」「チェック」でお願いします。
353 :
「砂」「定例」「チェック」:02/05/15 04:03
いつも通りの定例報告会が終わって、私は会議室を出ると少女の元へ向かった。
エレベーターがかすかなGを身体にかける。地下二階から地上百階の最上階へ、数瞬で
辿り着く間に感じるのはそれだけだ。ゆっくりと考え事をする余裕もありはしない。
そうして私はいつも、何を語るかを決める前に少女の元に辿り着いてしまう。
開いたドアの向こうは既に少女の部屋で、強化ガラスのドームになった天井から降り注ぐ
星々の光で青白く染められていた。空気までもが、ちらちらと瞬くように発光しているよう
な気がする。百人の人間が一堂に会せる大会議場よりもさらに広いその空間には、しかし家
具と呼べる物は華奢なフレームのベッドがあるだけだった。
そして少女はそのベッドの上に、砂浜に打ち上げられた死んだ魚のように、今日も横たわっ
ていた。
私の仕事はそんな少女を日に一度、砂を噛むような思いでチェックすることだった。
次のお題は「サンダル」「嘔吐」「老人」でお願いします。
354 :
サンダル・嘔吐・老人 :02/05/15 15:47
それは康子が買い物へ出かける途中の出来事だった。
老人は回教徒がメッカに向かって礼拝をするように、アスファルトに手をついていた。
老人の背中は恐怖に耐えるかのように小刻みに震え、
口からは苦しそうなうめき声を発していた。
嘔吐しているのかとも、咽んでいるかともおもえた。
年のころは80前後であろうか。
綺麗に禿げ上がった頭部や色褪せた洋服が、哀愁を漂わせていた。
――もしかしたら、病気で苦しんでいるのかも・・・・・・
悲観的な想像が浮かんだ。
サンダルを少し耳障りに鳴らせ、その老人のもとへ走りよった。
康子は老人の右肩にそっと手を置いた。
「あの・・・・・・」
肩に手が置かれたと同時に、老人は野生動物が威嚇しているかのような声をあげ、
何かを吐き出した――それは入れ歯だった。
「いやー、はめようとしたら、勢いで飲みこんでしまってね。ところでお姉さん、なんの用?」
次は「花びら」「脱臭」「おおらかさ」でおねがいします。
355 :
「花びら」「脱臭」「おおらかさ」:02/05/15 17:20
生ゴミやら便器やらの悪臭よりも脱臭剤の芳香が鼻に突くように、春の風に吹かれ舞う
花びらが嫌いだった。
雪が解け、草花が芽生え、薄く白い雲に包まれるようにして咲く桜は、枝をくぐり抜け
る人々を楽しませ、枝を折ろうとする子供が親に叱られて、社会人は酒盛りとも懇親会と
もつかない騒ぎに赴き、老耄の夫婦は残りの人生を花に託すかのように祈りを奉げられる
花も、時期が過ぎれば朽ちて枯れ、風に煽られ、人々に踏みじられながら、最期に土に帰
して次の世代への糧となるであろう花には、心底から嫌悪感を感じている。
私は決められたように生まれ、動き、学び、遊び、奉仕し、奉仕され、何事もなかっ
たように死ぬことに、茫漠なる恐怖を持っている。だが、風に舞う花のようなおおらかさ
は持ち合わせていない。
春の使者のタクトにあわせて踊る花びらに意思はないように、世の人は森羅万象に畏怖
し脅かされ、振り回されている。
それを"かけがえのない幸福"と扇動する者もいるが、どちらかというと、私はあらゆる
万物に対して、自らの人生が崩壊するほど、タクトを振りまわし、世を扇動したいのだ。
次のお題は「孟母三遷の教え」「罷弊」「気宇壮大」
↑訂正。2行目の"った"を削除。
3行目頭〜7行目末までの全文を削除。
ダメ?
357 :
「孟母三遷の教え」「罷弊」「気宇壮大」:02/05/15 23:56
「そりゃ、『孟母三遷の教え』も結構だが・・・ものには限度と言うものがあるだろう。」
母がここへの引越しを決意したとき父はそう反対したそうだ。
「私はね、あなたを気宇壮大な人物に育ってもらいたかったのよ。」
母はいつもそう言って私を抱き上げてくれた。確かにここから見上げる景色は今地上で
繰り広げられている物事が些細な、ちっぽけなもののように思えてくるのは事実だ。
空には、ぽっかりと地球が浮かんでいた。
ムーンベース、それは大昔からの人類の夢だったのだろう。数十年前、人類はもう一つの
夢、地球統一国家を樹立した。そしてそれが人類の月移住の夢を果たす原動力ともなった。
だが、それは結果として地球統一国家の財政を大きく罷弊させた。
ひとつの夢がもうひとつの夢を食い破る・・・それは良くある話だが当事者にしてみれば
面白くもなんともない。今、地球統一国家は激しい内乱状態に陥っている。
「第3宇宙艦隊より通信。エウロパ州に帰順せよ。さもなくば攻撃する。」
オペレーターの悲鳴にも似た声が管制室に響く。私は基地指令として命令を発する。
「我々は宇宙に出た人類として諸君らに当基地への参加を求めるものである、と返答しろ。」
月並みだけれど、仕方ない。母さんはどう思って私を見るのだろう。ふと、そんなことを思った。
SFは板違いでしょうか?とりあえずの15行です。
次のお題は「おぼろ月」「新緑」「そよ風」でお願いします。
358 :
「おぼろ月」「新緑」「そよ風」:02/05/16 00:28
おぼろ月が出ている夜だった。
ナイフに付いた血が紅い。感触としては軟らかいというより、結構抵抗が
あったというべきだろう。。
数年連れ添っただけあって、体温もわたしとほぼ同じだったんだろう。生
暖かいと言われる血は、それを浴びている事に気づかないほど私の体温
と同じだった。
新緑へ飛び散った鮮血が静かに変色してゆく。紅から腐ったような色へ。
草の中で、ソイツは小さく痙攣した。とりあえず、肉に埋まっているナイフ
を捻じる。最後の悲鳴が聞こえる。肉を絡め取るように、引き抜く。
こうして私の飼い犬の生涯は閉じた。
これで明日は、気持ちいい気分でそよ風を浴びられるだろう。
そして、しばらくは我慢できるだろう。同じ事を人間にしたいという衝動を。
次は、「列車」「野望」「桜」で。
359 :
「列車」「野望」「桜」:02/05/16 02:57
桜の木が、もうすっかり葉桜になってしまった頃、
わたしは勤めていた会社を辞め、東京行きの列車へと飛び乗った。
別に、今の会社にこれといった不満があったわけじゃない。
東京に行って一旗あげてやろうという野望もない。
でも、なにかもどかしいのだ。
都会で暮らしている、わたしと同い年の女性たちは、
わたしよりも刺激的で、楽しい暮らしを送っているに違いない。
テレビや雑誌で見る限り、わたしはそう感じている。
わたしは桜の花というよりは、葉桜といったほうが
当てはまる年齢に近づいている。
東京に出たからといって、テレビで見るような楽しい生活を送れるか自信はない。
それでもいいのだ。
わたしは、わたしが枯れてしまわないうちにたくさんの栄養をとっておきたいのだ。
たとえ枯れ果てても、次の世代への栄養となるような、そういう経験が欲しいのだ。
次は、「紙ひこうき」「テーマソング」「たんぽぽ」でお願いします。
360 :
「紙ひこうき」「テーマソング」「たんぽぽ」:02/05/16 16:52
小さいとき、算数のノートを切りとって紙ひこうきを作ったことがある。それを二階の
窓から軽く投げると、滑るようにして落下する。そのまま落ちていくと思ったら、今度は
太陽を突き刺すように上昇するのだ。ときには、空中にループを描くという芸を見せてく
れる。力いっぱいふんばって、最後には裏のたんぽぽ畑に着陸するのだ。
またノートを切り、さっきと同じような紙ひこうきを作って、今度は小人になった自分
を紙ひこうきに乗せてることを想像して、飛ばす。また虚空に円を描くようにして滑空し
ている紙ひこうきを見ながら、ふと考えるのだ。アニメのテーマソングを思い出して唄う
ように、将来の自分のことを思い浮かべるのだ。将来、人間の体に"翼"を生やす薬を開発
して、みんなでイカロスのように空を飛んでみよう。子供ながらにして、そう思ったのだ。
今が紙ひこうきを作ると、とんでもない歪な形に出来上がった。投げてみれば、それは
しつこく曲がることもなく、滞ることもなく、直線に飛んで、壁にぶつかって墜落してし
まった。この紙ひこうきには、小人の自分が乗っていないのだ。
次のお題は「窮鼠、猫を噛」「功徳」「秋霜烈日」
「窮鼠、猫を噛」「功徳」「秋霜烈日」
仏の功徳なんぞ信じられぬ。
男はただひたすらキーボードを叩きつけた。
思えば神や仏から見放されっぱなしの人生だった。
(中略)
ところが、見つけたのだ。自分の鬱屈した精神のはけ口を。
〜2ちゃんねる〜窮鼠、猫を噛むがごとく小難しいお題を
出すことが新たな、そして唯一の生きがいとなった。
(中略)
罪は重かった。秋霜烈日をきわめる厳しい刑罰のごとき辛らつな感想。
そして男を揶揄する皮肉な書き込み。
・・・その後この男が再びお題スレに現れたかどうか定かではない。
ほんの冗談だから気を悪くしないでね。
次は「水曜日」「鯨雲」「赤白帽」
362 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/17 00:17
「窮鼠、猫を噛」「功徳」「秋霜烈日」
日曜日、デートは近所の公園に行くことにした。彼女は最初から機嫌が悪い。
結構静かで良いところだから、ボートにでも乗れば機嫌が直るだろう。
ボートに乗っていると、こんにちわー、と声をかけられた。教え子のお姉さ
んだ。どうもー、と返しておく。振り向くと彼女の顔が般若の形相。
「今のは何?」と異様に低い声。「え、○○君のお姉さんだけど…」「教え子
の兄弟まで手をだしてんの!」「そ、そんなわけないだろ」「いーえっ!あな
た嘘つくと鼻がヒクヒクする癖気づいてないの? それで別れ話するためにこ
んなとこ連れてきたのね!」
理不尽な追求に一方的に押し込まれ、窮鼠猫を噛む、僕はついに逆ギレした。
「あー分かったよ。ぶっちゃけてやるよ。彼女とはもう3ヶ月だよ」嘘だけど。
次の瞬間には、彼女に池に突き落とされ、僕は水の中にいた。秋霜烈日。そ
れから一ヶ月しても、彼女は電話にもでてくれない。公園の守り神が功徳天、
女の神様だからデートすると嫉妬されて別れる伝説なんて、知らなかったんだ
って。
#かぶりスマソ。
#次のお題は「水曜日」「鯨雲」「赤白帽」で継続。
月曜日は憂鬱。火曜日は普通。水曜日は呑気。木曜日は陽気。金曜日はヤル気。土曜日は
元気。日曜日は愉快。 一週間の気分を言葉にしたら、そんな感じ。
今日は水曜日だから呑気。週休二日制のごく普通な公立小学校に通う六年生としては、
まぁ平均的な気分だと思う。週の半ばまで来たんだし、学校に着いちゃえば友達もいるから
楽しいし、あと二日したらまた休みだし。熱くも寒くもない日に校庭の芝生の上に座って、
空にぽっかりと浮かんだ鯨雲を見てる時の気分に似ている。色にしたら水色かな。
とにかく水曜日はそんな真ん中の、ちょっとのんびりした雰囲気の日だとボクは思う。
だけど、今日はそれだけじゃない。ちょっと特別なんだ。金曜日じゃないけど、かなり
ヤル気満々さ。
「行進始め!」
笛が鳴って、ボクたちは軽快な音楽に合わせて行進する。通り抜けたポンポンの花飾りの
ついたアーチには、「第三十回運動会」と大きく書かれている。あれは教頭先生の字かな。
あんまりうまくない。
六年生の次の演目は騎馬戦だ。奇数と偶数の組がそれぞれに赤組と白組に分かれて帽子を
取り合う。
五分後、青空を背景に歓声と赤白帽が宙を舞った。
次のお題は「冷や飯」「秒針」「紙バッグ」でお願いします。
「差し入れだ」
仏頂面の熊男が、俺の前に紙バックを投げ出した。
熊男と言っても、本物の熊ってわけじゃない。単なるあだ名だ。
俺は形ばかりの礼を言い、紙バックの中を漁る。
「なぁ、それを持って来た女は誰なんだ? 物凄い美人だったが……」
「んぁ?」
紙バックの中からは、俺の嫌いなアンパンとメロンパンが出てきた。
俺はそれを見て、舌打ちする。
「くそ、あいつ自分の好きなもん入れやがったな」
「おい、聞いてるのかよ? あの女、お前とどんな関係なんだよ!」
しつこい熊男を無視し、俺は紙バッグを置いて立ち上がった。
確か、冷蔵庫に冷や飯が入ってたはずだ。
二三日前からあったような気がするが、電子レンジに入れれば何とか食えるだろう。
少なくとも、アンパンを食うよりましだ。
「おい!! てめぇ、まさか一人だけいい思いをしてるんじゃ……」
「弟だ」
熊男の動きが止まった。
その表情は、熊と言うよりも河豚かマンボウだ。
「……何?」
「オカマなんだよ……2年前に性転換手術を受けた」
カチカチカチ、と秒針が無機質に時間を切り刻んでいる。
熊男は何も言わなかった。
俺も何も言わなかった。
冷蔵庫の中の冷や飯は、カビが生えていた。
俺はその場に立ち尽くす熊男を置いて、外に食いに行くことにした。
「そのアンパン、食っていいぞ」
アスファルトの焼ける嫌な臭いに顔をしかめながら、俺はラーメンでも食うか、と考えをめぐらせていた。
次のお題は、「シュウマイ」「おばあさん」「触覚」でお願いします。
365 :
「シュウマイ」「おばあさん」「触覚」:02/05/17 23:10
一日の労働を終え、俺は街へ向かった。
街は、俺と同じように港湾で働く男達や地方からの観光客でごった返していた。
人ごみの中、俺は行き着けの店へ入るとまずは軒先で蒸気を上げているシュウマイと
ビールを注文して席に座った。今日の日当もいつもどおり飲みきってしまうつもりだ。
程なく熱々のシュウマイとビールが運ばれてきた。店員の娘は俺の好みだった。この店
に来る奴の目当ては、この娘かおばあさんが作るシュウマイかのどちらかだった。皿に
しょうゆを垂らし、芥子を少し溶く。そこにシュウマイをほんの少しだけ浸す。ビールを
注ぎ、シュウマイをほうばる。熱い。かみ締めると肉汁が口内一杯に広がる。そこに
すかさずビールを一気に流し込む。喉の奥から鼻腔にかけてホップの苦味が染み渡る。
旨い。コップを下ろすと、そこへあの娘がやってきて酌をしてくれた。周囲の視線が
痛い。
「あ、ありがとう。」
「いいえぇ。でも、いつもたくさん飲んでくださって・・・大丈夫ですか?お金とか。」
「あぁ、大丈夫。俺たちは日当で暮らしてるから。明日も働けば何とかなるのさ。」
娘は、それでも・・・無理はしないで下さいね、と言って店の奥へと入っていった。
俺は、コップを握っていた右手の偶然触れた彼女のやわらかい肌を感じた触覚だけが
やたらと自己主張を強めているのを感じてなんとなく戸惑いを覚えた。
17行です。
次のお題は「春雨」「自転車」「高校」でお願いします。
366 :
春雨、自転車、高校:02/05/18 03:25
わたしが高校生になった記念すべきあの日は、雨が降っていた。
確実だといわれていた有名進学校への受験を失敗したわたしに
とっては、希望通りの高校だったわけではなかった。
春雨が新しい制服に寒かった。
帰り道、駅を出ると雨脚はますます強まり、わたしは鞄から折り
たたみ傘を出そうと、立ち止まった。すると、進学校の制服を着た
中学時代の同級生が片手で自転車を運転しながら、もう片方の手で
傘をさしているのをみた。
当時のわたしは子供だったのだから、子供らしい表現で書こう。
――わたしはとても悔しかった。
わたしは、出しかけた傘をしまい、濡れながら歩いた。勉強を
しなければ、と思った。そして、勝たなければ、と。
次は、「レクイエム」「麦」「貴金属」で。
367 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/18 03:28
368 :
レクイエム 麦 貴金属:02/05/18 04:58
ある音楽家が死んだ。B級記事にもならない死に方だった。
彼は言っていた。「俺は派手に死ぬ。全てのメディアが俺の死を悔やむ
だろう」
でも彼の死は夕方のニュースにもならなかった。
彼には妹がいた。唯一の聴き手だった。
彼が死んだ日、妹はアクセサリーを売った。それは兄が誕生日に贈って
くれた物だった。
妹はそのお金でハーモニカを買った。
親族たちが悲しむ家を出て、家の前でハーモニカを吹いた。生前の彼と
同じように。
妹は泣かなかった。涙を一杯にためながらも、最後まで兄のために、兄が
教えてくれた曲を吹き、レクイエムとして贈った。
すでに日は落ち、光らない月が麦畑を照らしていた。
369 :
レクイエム 麦 貴金属:02/05/18 05:01
あ、お題を書き忘れました。
次は、「水」「空」「空気」で。
私は行きつけのラーメン屋でいつものとおり坦々麺をすすっていた。
別に激辛というわけでもないのだが、水に満たされていたコップがすぐに
空になってしまった。だが、我慢して食べつづけた。
5人組の客が店に入って来た。服装から察するに、工事現場で働いて
いるのだろう。そのうちの1人が私と相席になった。
その男はタバコを吸い始めた。私はあまり鼻が利かないのだが、その煙を
見たことと私の煙草に関する知識が、空気が悪くなった事を感じさせた。
「相席になった人間に一言断ってから吸うのが常識だろう」と私は思った。
だが、口には出さなかった。おそらく昔経験した事が影響していたのだろう。
坦々麺を食べ終わり、レジへ向かった。私はレジの表示を見て違和感を覚えた。
この店では消費税を取らないはずなのに、下一桁が「7」になっていたのだ。
レジが乗っている台に、紙が張られていた。私はそれを読み、5月から消費税が
導入された事を知った。そしていつもより30円多く出費し、学校へ向かった。
…駄文ですんません。次は「依存」「模倣」「重力」で。
371 :
「依存」「模倣」「重力」:02/05/18 11:57
「・・・この作品の構図は背景の草むらの色彩的な表現と、重力に
逆らって空中を舞っている猿や虎、加えて右下角に配された頭蓋骨
で特徴付けられる。・・・・シュールレアリズムの器用なオマージュ
とも思えるが、しかし意外にも日本画家の○○画伯の絵を私に想起さ
せた。無論あらゆる絵画が全て先人の業績に依存している事は当然だが
云々・・」
僕はこの批評を読んだとき、腰を抜かさんばかりに驚いた。この絵は
確かに○○画伯の絵にインスパイアされたものだった。しかし模倣の跡
が絶対に分からない様に描いたつもりだった。この慧眼な批評家の目に
適う絵を描こう!そう思うとかつて無いほどのファイトが沸き起こった。
次は「幻滅」「水死体」「乾電池」でお願いします。
372 :
「幻滅」「水死体」「乾電池」:02/05/18 19:22
「みんなで乾電池ゴッコしよう。」
タカシ君の一声で、みんなは一斉に自転車を漕ぎ続けた。
自転車の後輪から黒いケーブルが延びており、その先はバッテリーに繋がれていた。
「ねぇねぇタカシ君。」
クラスで一番頭が良いヤスオ君が云った。
「乾電池は科学反応によって放電するものであって、運動によって得るものじゃないよ。」
その言葉を聞くと、みんなはペダルを止めた。幻滅の目でヤスオ君を凝視する。
「ヤスオ、みんながこーやって楽しんでるときに、萎えるこというなよ。」
ヤスオ君は多勢からブーイングを浴びせられ、四面楚歌の危機に陥った。
そのとき、批判とは違う声でヤスオ君を庇ったのはタカシ君だった。
「みんなやめなよ、ヤスオは悪気があっていったんじゃないぞ。不満なら、もっと
他の遊びをしよう。」
タカシ君は眉間のしわを寄せて、低い唸りを上げて黙考してるふりをした。
「じゃあ、みんなでドザエモンゴッコをしよう。」
翌日、岸辺に数人の男児の水死体が上がった。
次のお題は「清濁併せ呑む 」「弔電」「鼓腹撃壌」
友人が死んだ。通り魔殺人の被害者となってしまったのだ。
彼はまさに「清濁併せ呑む」という言葉がぴったりの心の広い人間だった。
私の下らない愚痴も、利己的なボヤキもすべて穏やかな表情で聞いてくれた。
陳腐な表現で言えば、私の一番の理解者であった。
そんな彼の死を知らされた私は、弔電も打たずに1週間ほど自室に閉じこもっていた。
そしてその間に、様々な心が私の意識に浮かび上がっていった。
犯人への憎悪。そのような人間がいて、「鼓腹撃壌」という言葉からは程遠い社会への
失望。彼よりずっと劣っているのに、彼より長く生きている自分への嫌悪。
かといって死ぬ勇気も持たぬ己への更なる憤怒。それら暗き意志が渦を巻き、
私を廃人寸前まで追い込んだ。
…駄目だ、これも駄文。次は「封印」「命」「経験」でお願いします。
「封印」「命」「経験」
経験から言わせて貰うと、君の文章にはオチがないんだよ、オチが。
では訊くが、君が書きたいのは英作文の例題かね?
あるいは小学生の国語の宿題か?
お題スレに書き込むからにはただ読めたらいいというのではない。
(もちろん読むに耐えない低レヴェルな輩は論外だよ。)
短いながらも最後になにかしらオチを用意しなければならない。
それはもう2ちゃんねらーたるもの命がけだよ。まさに刺すか刺されるか、だ。
とはいえ今回はこの意見を心の奥底に封印するとしよう。
なぜならこの文にもオチがないから。(^_^;)
次は「垂直加速度」「ゴーグル」「たぶらかすから」
375 :
「垂直加速度」「ゴーグル」「たぶらかすから」:02/05/19 00:57
貴方って、ほんとに不器用な人ね。
そう呟きながら、あたしは上空を見上げた。頬をかすめる突風。目を細めつつ、ゴーグル越しに、貴方の姿を探した。
遥か上空で優雅に待っている、あの影が貴方なの?
とっくにわかってた。あたしをたぶらかすつもりだったんでしょ。
でも、あたしはわざと騙されてあげた。貴方の、そんな不器用なところが好きだったから。
けれど、どうしてこんな形でしか別れを告げられなかったの?
ふいに恐怖感が湧き上がってきた。あたしは無駄だと知りつつ、背中の金具に手を伸ばした。パラシュートは開かない。
光の輪に包まれた貴方の影が遠ざかる。垂直加速度が増してゆく。
次のお題は「地獄絵図」「八百長」「演技指導」
376 :
「地獄絵図」「八百長」「演技指導」:02/05/19 01:38
アポロがロッキーに、八百長試合のタメの演技指導をしていました。
それはもう地獄絵図を見るような激しい指導でした。
次は「借景」「首都機能移転」「員面調書」でお願いします。
「借景」「首都機能移転」「員面調書」
首都機能移転詐欺事件の員面調書をとりました。
それはもう「天保山を借景」無茶な詐欺でした。何が無茶って大阪に(以下略)
こんな短いのはやっぱ良くない?
次は「馬」「シャボン玉」「緑」
378 :
「馬」「シャボン玉」「緑」:02/05/19 03:22
シャボン玉が、ふわりと空へ飛んでいく。
緑の芝生に寝転んで、私はぼんやりとそのシャボン玉の軌跡を眺めていた。
どこの幼稚園なのか今日は父兄遠足らしく、若いお母さん達がレジャーシートを
ひいてお弁当を広げている。・・・多分、私たちにも『あった』風景なのだろうな、
と、私は自販機のお茶を一口含んだ。
妻が、出て行ったのはほんの2週間前のことだ。
『あなたと一緒にいる寂しさに私はもう耐えられそうにありません。』彼女からの
久しぶりの手紙は今回の理由をそう示していた。私はその一文を読んで愕然とした。
確かに、私は家を空けることが多かった。帰りも遅く、休日出勤もざらだった。
だが、それはすべて彼女の為だった。病気がちな彼女の為、私はそれこそ馬車馬の
の様に働くしかなかったのだ。・・・私は彼女もわかってくれているものと思い込んで
いた。
不意に、泣き声が響いた。目をやると、そこには転んでシャボン玉液をひっくり返して
しまった子供の姿があった。うん、失ったものに泣けるのは子供の特権だ。私は残って
いたお茶を飲み干して立ち上がった。さて、仕事に戻ろう。もう、何のために働くのか
わからないけれど。
16行です。そういえばお約束には「5行以上」のルールもあったと思いますが。
次は「噴水」「青空」「お弁当」でお願いします。
「噴水」「青空」「お弁当」
タタタッ、タタタタタッ!!!
サブマシンガンの咆哮が至る所から聞こえる。
敵味方のボディに刻まれる、小気味よいと言うにはあまりに冷酷なリズム。
抜けるような青空は、戦闘開始から少なくとも17時間以上経過したことを物語っている。
「左、弾幕薄いよ。なにやってんの!?」とチームリーダーから檄が飛ぶ。
その刹那、迫撃砲の爆風が俺たちを襲い、リーダーの胸に深々と破片が突き刺さった。
辺りを真っ赤に染める血の噴水。
「ジョルジュ、右だ!」すかさず同僚のジョルジュに反撃を指示する。
いかつい男が無駄のない動作でごついロケットランチャーをぶっ放した。
「命中。」表情一つ変えずに、いつもながら的確な射撃だ。
その時、「ブーッ、ブーッ、ブーッ!」
敵の砲撃が静かになったと思ったのも束の間、突然アラームが鳴リ出した。
ジョルジュが一分の隙もない動作で背嚢から何か取り出す。
「お弁当かよ!」
あ〜腹減った。
次は「大河」「いるか」「斜め」
380 :
「大河」「いるか」「斜め」:02/05/19 14:14
私は大河ドラマをいつもと変わらず見ていた。
食事を終え、ごろ寝でドラマを見る。私の一番至福のときである。
外からは雨音のみが聞こえ、粛然とした雰囲気である。
しかし、その静粛は怒号によって突然打ち破られた。
「オイ、誰かいるか。人が刺された!!救急車を呼んでくれ!!!」
突然の叫び声。私は耳をうたがった。だが確かに人が刺されたと叫んでいる。
私は玄関のドアを開けて様子を見てみることにした。
ドアを開いた。すると斜め前方に人が槍を突き刺されて倒れていた。
「あんた、早く救急車を!!!」
私は動転した。人が刺された光景を見るのは初めてだった。
だが、そんなことを考えてる暇はない。救急車だ!!
私は急いで家に戻り、119番をしようとした時であった。
グサッ…鈍い音がした。玄関の方である。もしかして・・・・
次は「商店街」「プロパンガス」「駐輪場」で
381 :
「商店街」「プロパンガス」「駐輪場」:02/05/19 15:51
あまりにも天気が良過ぎたのだ。俺はもっと暗い天気を想像していたのに。
どしゃ降りの駐輪場はすてきなんだ。ああいう景色の、ああいう街の片隅で
俺の生活が取り戻される。子供の頃の様に世の中がきらきらしてくるから。
日曜日の、ちょっとした坂道の、脇のクロワッサンを並べたガラスケース。
洋服屋に、石垣に、軽快に生きている若者たち。カラフルな町並み。
誰でも頭の中の世界と、現実の世界のつじつまを合わせようとしているは
ずだ。ただ生きていく為に、どちらかを犠牲にしてそれを正しい生活と考え
るようになる。もっと俺の、生活の、食ったり、飲んだり、街なかをぶらつ
いたり、走ったり、木陰に隠れたり、に、いちいち震えるような楽しさを感
じたい。それは可能なはずだ。
だから、あのトラックからボンベ缶が(プロパンガスと書かれていた)倒
れて、ゴロゴロ地面を転がって、その動きに見とれていたら、ボンベ缶はも
う突き当たりの、八百屋の前にコロコロと止まって、商店街の景色も、若者
たちも、何も変わった様子も無くて、俺はボンベ缶を追いかけたりできなか
った。
次、「水着」「男」「正解」
382 :
「水着」「男」「正解」 :02/05/19 16:50
水着を着た男が僕を追いかけてくる。しかもここは海などない幹線道路沿いなのに。
僕が何をしたって言うんだ。なんで僕が追いかけられないといけないんだ。
とにかく振り切らないとヤバイ。僕の命にかかわる問題だ。
僕は懸命に走った。全速力で走った。
だが、水着男も追いかけてくる。全速力で追いかけてくる。
あっちのほうが僕より走りが速い。このままでは追いつかれる。
偶然前方にバス停があった。しかもバスが止まっている。
バスに乗れば振り切れる。さすがのあいつも追ってこれないはず。
ラストスパートだ、と僕は全精力を使い切るつもりで猛ダッシュを開始した。
あと少しでバスに乗れる。その気の緩みのせいだろうか・・、僕はつまずいて転倒してしまった。
バスは無情にも発車してしまった。ああ・・、僕の前には絶望が広がった。
僕はもう死ぬんだ、あんな変人に殺されてしまうんだ、僕は何のために生きてきたんだ!!
水着男はとうとう僕に追いついた。転倒している僕の上に馬乗りになった。そして、いきなり
「俺の水着の中には何が入ってるか答えろ。もし正解したらお前の命は助けてやる。もし間違えたら覚悟を決めろ。」
僕は頭が混乱して訳が分からなくなった。なんなんだ、こいつは。僕はもうどうでも良くなった。
僕はハムスターと答えた。すると水着男は突然水着を脱ぎだした。中からはハムスターが・・・。
僕の答えは正解だったのだ。
次は「塩」「銭湯」「漢字検定」
383 :
「塩」「銭湯」「漢字検定」 :02/05/20 02:59
お母さん、ひさしぶりに手紙を書きます。
まずは近境から。最近、ぼくたちは漢字検定合格を目ざして
がんばっています。合格するぞ! と、みんなで毎日さけんでいます。
僕たちは、この塾で生まれかわりました。最所は、お父さんとお母さんの
ことをうらんだけど、今はこの塾に来てほんとによかったと思います。
昨日は、みんなで銭湯に行きました。みんなで、ふざけて塾長先生の
体を洗ったら、塾長先生は、わらって、へんな声を出しました。
でも、塾長先生にさからう悪い子もいます。先習、かずひろくんが
塾長先生の悪口を言うので、ばつとしてみんなで塩水をたくさん飲ませました。
そうすれば、あくまが出て行くと塾長先生が言ったからです。
最後には、ようやくあくまがしにました。でも、かずひろくんもしんだのでかわいそうでした。
明日は、いよいよ塾長先生と二人だけでねれる日なので薬しみです。
友だちのはなしだと、何か、ためになることを教えてくれるみたいです。
それではさようなら。
次は「怪獣退治」「摩擦」「毒入り」
384 :
「怪獣退治」「摩擦」「毒入り」:02/05/21 01:53
『怪獣退治』
ついに我らが部隊にその命令が下った。
命令を受け取る以前に、我々はその予感を感じていたので
準備は万全であった。
我々の作戦行動は、慎重に慎重を重ねて行われた。
特に注意したのは、マスコミの動きだ。
今は、この作戦についてついてマスコミに知られるのは
いたずらに国民の混乱を招くだけだ。
余計な摩擦は避けなければならない。
このような苦労を重ねながら、我々は徐々に作戦を進行させていた。
『怪獣は毒入りの餌を食べた・・・、次の作戦へと移行する』
作戦本部に通信が入った。作戦は成功したのだ。
国民に人気があるが、実は危険思想を持つ
ある政治家に、我々が仕組んだ女を抱かせることに成功したのだ。
我々は作戦の第2段階、このスキャンダルをネタに
彼の人気を急落させる作戦へと移行した。
次は、「抹茶」「トレンド」「感謝」でお願いします。
385 :
「抹茶」「トレンド」「感謝」:02/05/22 00:03
シスターが、薬局の前で俯いている。
ランドセル背負ってこの道を通る自分は、彼女の顔見知りだった。
「どーしたの?」
「あのね・・・やっぱし抹茶の方が効くかしら?」
薬局の古い張り紙を一心に見上げる彼女。
そこには誇らしげな文字でこう書いてある。
<うんこどっさり。1週間で5キロ痩せる!>
「・・・効かなかったんだね」
「まだ5日目だから、わからないけど」
5月の空はこんなに青いのに、シスターの表情は曇っていた。
「トレンドだからって抹茶に乗りかえると、神様ががっかりすると思うよ」
「せめて、前半の効き目だけでも実現してくれればねえ」
「感謝の気持ちをこめて、神様にお願いしてみたら!?」
という自分に、彼女は決然とこう言った。
「そんなこと、できない!そんな恥かしいお願いなんて。」
シスターって・・・つらい。
※意味無しれす^^;
次のお題は:「宝物」「無精者」「賜りもの」でお願いします。
386 :
「宝物」「無精者」「賜りもの」:02/05/22 22:59
大好きだった祖父が、死んだ。
それはいつもと変わらぬ朝のことだった。祖父は、そんないつもと変わらない風景の中
布団の中で冷たくなっていたのだった。おじいちゃん・・・。僕はぼんやりと昇る線香の
煙を見ながら祖父の在りし日のことを思い出していた。隣の部屋では疎遠だったおじたちが
なにか怒鳴りあいをしていた。
「だから、この家屋敷は全部お前にやるからこの掛け軸は俺によこせ!」
「いや、家屋敷はみんなのもんだ。うっぱらって正当に遺産分与してもらわんことには
納得がいかんぞ!」
うちは名家という訳ではなかったがご先祖様は武士だったらしくお殿様からの賜りもの
やそういったものが結構あった。これは遺産争いか。誰もおじいちゃんの死は悲しくない
んだ。僕はそう思うと涙が出た。
「はん、なにが掛け軸だ。下手糞な字で『果報は寝て待て』って書いてあるだけじゃね
ーか。武将が無精者じゃあ駄洒落にもなりやしねぇ。兄貴、あんたのへぼ骨董趣味で俺達の
遺産分与までチャラにすんのか!」
隣の部屋では罵り合いが続いていた。おじいちゃんはよく『仲良き事。それが一番の宝物』
と呟いていた。伯父たちは結局何もわかっちゃいなかったんだな。線香の煙が一筋、まっすぐ
天に昇っていく。おじいちゃんはどんな思いでこの光景を見ているのだろうか?僕はなんだか
悲しくなって、誰にも言わずに家を出た。
すいません、18行です。
次のお題は「通販」「フレーム」「テスト中」でお願いします。
重ねて申し訳ないです。訂正です。
1行目>先頭に空白一つ、
9行目>『これは遺産争いか。』を『これが遺産争いか。』に。
まったく持って申し訳ないです。
388 :
「通販」「フレーム」「テスト中」:02/05/23 14:07
テスト中に通販するのもなんだが、俺はいま男としての道を一歩あゆもうといている。
……そう、エロ本だ。肉欲願望を見る男は一度は通ると云う、幾らかの法典すら優
れぬ悦楽の聖書だ。
段ボールのパッケージを破ると、滑るようにモデルのスタイル写真が露出した。
水着姿のそれは、陳腐な例えだが、俺を未知の世界へと誘ってくれる、天使のよう
に思えた。
さあ、森羅万象で確かに存在する色魔よ、その可憐とは紙一重なる淫靡な肢体で、俺
を大の男にしてくれ!
「テメエ試験中になにハァハァ臭い鼻息漏らしながらセンズリここうとしてんだよ。キモ
イんだよ、この畜生にすら劣る社会のゴミクズ野郎が。テメェのイカ臭え恥垢の塊が
紙越しからプンプン漂ってくるぜ(笑) とりあえずお前は一生勉強も女も出来っこね
ぇぇんだし、家庭の為にもさっさと自殺しちゃってくれよ? 勉強する気ないみたい
だし、誰もお前の価値観なんか見出そうともしないから、さっさと富士の樹海の土に
でも魚の餌にでもなってくれや? 動物園のゴリラにFackされるのも面白いかもな、
女経験がありえないお前にはピッタシかんかんだぜ。少なくとも電車とかに飛び込む
なよ、掃除とか大変だし、テメエ如きに他人様の労力をつかうなんざ……」
俺は顔面を横から殴られたような、恐怖を感じた。白地に滅茶苦茶に書き綴られた
醜悪なる文章は、僕を倒錯的世界に引きずり込もうとしていた。
挙動不審気味に振り向くと、メガネのフレームの淵から、ドアの隙間から母の嘲笑
が覗いていた。
長すぎた。
次のお題は「あつものに懲りてなますを吹く」「一瞥」「唯々諾々」
ageますよ
390 :
「あつものに懲りてなますを吹く」「一瞥」「唯々諾々」:02/05/24 01:28
NYテロからこっち、彼は飛行機に乗れない。
「あつものに懲りてなますを吹くとはこの事だ、情けねぇ」
親父が呆れても、彼には通じない。
親孝行な彼は、父の言うことなら何でも唯々諾々と従う。
早速、ナマスを5kg購入。
1時間吹き続けてみたが、意味は分からない。
「そうだ!」彼は、はたと手を打った。
「きっと、吹き方が足りなかったんだ」
航空学研究室も協力してくれた。
「やってみましょう。史上最大の風圧を、ナマスにかけてみましょう」
秒速80m。過酷な風洞テストにも、ナマスは耐えた。
人はそんな彼を一瞥して、国語音痴と言う。
既に国語の問題ではなかった。ライフワークだった。
「よし、今度は、私がスペースシャトルで宇宙から・・・」
それでも、やっぱり飛行機には乗れない彼だった。
※わーい、意味が無い(^^)
次のお題は:「存在」「木材」「自由自在」でお願いします
391 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/24 01:54
毎日毎日、家でTVゲームばかりしている我が子を見て思う。
時代は変わったものだと。
昔は、遊びと言ったら友人と共に野山を駆け回り
木の枝なんかを材木に、色々と作ったものである。
仲良しの友達だけの秘密基地なんかもつくったりした。
私は、少々子供にTVゲームを買い与えたことを後悔している。
TVゲームの存在は、子供たちに何をもたらすのだろうか。
人とのコミュニケーションを捨て、黙々と画面と対峙する
その姿勢を見ていると、なんとも言い知れぬものがある。
最近の子供は、無愛想だとよく聞くが、
人との接し方を知らないのではないかと思う。
少なくとも、我が子の現状を見ているとそう思わずにはいられない。
昔のような遊びが良いとも断言は出来ないが、
我が子には、TVゲームではなく、外に出て人と接し、
もっと自由自在な発想を持って欲しいものである。
適当に綴ってしまいましたが、いやはや失礼。(苦笑
次のお題目は、「ノスタルジック」「楽聖」「エニグマ」でお願いします。
392 :
「ノスタルジック」「楽聖」「エニグマ」:02/05/24 02:49
「俺達の熱いナンバーを聞いてくれー!」
22世紀の楽聖、と呼ばれる超有名バンドだった。
テープレコーダもカメラも、もちろん筆記用具も厳禁。
ノスタルジックなアナログを超えて、デジタルなコンサートが、今始まる。
「5555-5858777 2323-4545777.....」
熱いナンバーが流れ始めた。熱狂する観客の中で必死に俯く俺。
「今度は優しいナンバーを。2424-3030-111 1212-3333-244...」
「ちょっと、君」警備員の声がした。
「暗記しているね?こっちに来てくれませんか」
俺は観念した。せっかく「最高なナンバー」を暗記できるチャンスを。
白衣に身を包んだ「忘却係」がやってきた。「残念でしたねえ」
彼女は俺の耳に乱数を囁く。何分も、何十分も、優しい声で規定通りに。
「45897654534758756854674865476786796558767954635423...」
あああ。せっかく憶えたナンバーの記憶が!
結局、高いCD解読用エニグマを買わされる。まあ、いいか。
※なんであの系統の曲って「ナンバー」って言うのか、謎。
次のお題は:「旅行」「銀行」「流行」でお願いしまふ。
393 :
名無し物書き@推敲中?:02/05/24 15:14
ゴールデンウィーク。
この時期、日本はちょっとした旅行ブームとなる。
言うなれば、流行である。
普段、仕事で忙しい私も、
この時ばかりは、世間の流行に乗っかって。
一泊二日の旅行に出かけた。
大して貯蓄されてもいない通帳を片手に、銀行へ行き
1万円札を3枚ほどおろしてきた。
仲の良い友人二人を誘っての旅行。
気分はうきうきだった。
しかし、いざ出発すると同じように
目的を持った旅行客にもまれ、渋滞のさなか。
うんざりだった。
そして、楽しい2日を終え、帰路をたどる。
今度は、帰りの旅行客の波にもまれ渋滞のさなか。
車はまったく進まず、先行く自転車見ながらため息をつき。
渋滞を予想して旅行に出たにも拘らず、イライラしている自分に気付き嘲笑した。
2行オーバーで申し訳ない。
さて、次のお題は「名誉」「衰退」「大器晩成」でよろしく!
394 :
「名誉」「衰退」「大器晩成」:02/05/25 03:53
わたしは若くして成功した。飛び級を重ねて10代で名誉ある某大学の
Ph.Dを取得した。わたしの人生は輝いていた。
ほんの一瞬だけ。
わたしの隣人は、若くして成功した、とは言いがたかった。わたしたちは
同い年だったが、彼は大学を一浪一留で卒業し、わたしが顧問を勤める会社に
8年遅れで入ってきた。
わたしが悶々と自分の能力の限界を感じている間、彼は悶々と自分の
凡庸さを自覚していただろうか。20年以上の間、彼はあまりに普通であり、
わたしは本当は衰退を自覚し、それを取り繕ってディスクに向かっていた。
大器晩成、という言葉あるのなら、それだろう。彼は退社直前でわたしに
追いつき、追い抜いた。
退社後のある日、彼とわたしとで、お互いの人生について話し合った。人生で、
もっとも輝かしい瞬間についての話題になり、わたしは10代の頃だった
と言った。そして、彼は退社直前のあの頃のことを言うだろう、と予測した。
しかし、彼は言った。
「これからさ」
わたしは打ちのめされた気分になった。
「マイルド」「もらい物」「囚人」
395 :
「マイルド」「もらい物」「囚人」:02/05/25 12:44
「差し入れだ、2課からのもらい物だけどな」
と俺の目の前に無造作にほうられた勢いで、
コンビニの袋からはマイルドセブンが数個転がりでた。
「職場は禁煙じゃないのか?」
俺の問いかけに相手は少し笑って自分の分を一つ取ると
真新しい封をきって、タバコを取り出した。
囚人のようにこの部屋に閉じこもってどれぐらいたつだろう、
いや囚人はいい、己の罪を悔いながら時には休み、眠る事さえできるのだ。
「ここのプログラムにバグがあったんだ」
煙をため息とともにはきだしながら、画面を指差す。
いくつめのバグだしだろう。
職場に置かれたTVをつけるのさえもう嫌になっていた。
声高にシステム管理ができてないだの、上層部の対応がおくれただの、
キーボードすら満足にうてない奴らが言うのだ。
「さて、もうひとがんばりするか」
同僚は吸っていたタバコを灰皿代わりの空き缶に落とし込むと、腰をあげた。
仕事はまだ、終わらない。
「カシミヤ」「気温」「男」でどうぞ
396 :
2ちゃんねるで超 〜有名サイトだよ:02/05/25 12:53
397 :
「カシミヤ」「気温」「男」:02/05/25 22:50
夏真っ盛りだというのに、在宅業務は溜まっていた。
宿題を溜めた妹も一緒だ。
扇風機が熱風をかき回す。
クーラーが壊れたこの部屋に、気温低下要素は一切ない・・・
「い・・・いくら脱いでも涼しくないよー」
妹が音を上げる。そりゃそうだ、空気が熱いのだから。
仕事と宿題で外にも出れない。TVでは沖縄旅行のCMが・・・
「そうだ!」
暑さで温くなった脳が、思わぬ解答を弾き出した。
「沖縄だって暑いんだ。厚着をしよう。沖縄音頭を踊ろう!」
暑さで朦朧とした妹は、カシミアのセーターに着替える。
私も男、負けるわけにはいかない。
スキーウエアを引きずり出し、二人でふらふら踊りだした。
「踊り踊るなら、ほれ、沖縄音頭〜」
セーターとスキーウエアの下は摂氏50度・・・沖縄温度となっていた。
※駄洒落でも恐くないぞー(^-^;l
次のお題は:「地球」「遊園地」「次元」でお願いしまう。
398 :
2ちゃんねるで超 〜有名サイトだよ:02/05/25 22:56
399 :
「地球」「遊園地」「次元」:02/05/25 23:11
春が訪れるということは、夏が来るということで、夏が来るということは、
秋が来るということで、それを繰り返していくうちに、
なんとなく時間なんて経ってしまうものだ。平気で。
いつもと違うことがしたくて、そんな思考を巡らせた。
「本読む?」考え事をしている僕は、そんなに退屈に見えたのだろうか。
「いや、大丈夫。そんなに退屈はしてない」
彼女はそれを聞くと、そう、とだけ言ってまた本に目を戻してしまった。
窓の外は、雨に煙っていて、遠くの遊園地の真っ赤な観覧車がぼやけている。
「こういう雨だとさ、地球全部が雲に覆われてる気がしない?」
「なに? 急に」次元の違うものを見ているような、不思議そうな目がこっちを向いている。
「そんなに変なこと言ったか、俺?」
「その台詞がなにより変よ」僕は、そうか、とだけ言って目を外に戻した。
彼女は足をソファの肘たての上に投げ出し、左手で頭を支え、
そして右手で本をめくるという、いい加減な時間を過ごしている。
アパートの朝と、ホテルの最上階の朝に、あまりに差がないのはなぜだろう。
次は、「スパイス」「森」「オレンジ」で。
400 :
「スパイス」「森」「オレンジ」:02/05/25 23:57
・・・いくら思い返してみても思い出せないんだ。
確かに12年前に僕はこの校舎で幾つかのカケラを蒔いていたんだ。
そして、そのころはやけにムキになってソレラのカケラを繋ぎ合わせて
たんだ。
それはその時の僕にとって命懸けとも思える時間だった筈なんだ。
深く、暗い森のなかで、なにか大事な何かが生まれる瞬間に立ち会っていて、
そしてそれが僕そのものであるかのような、確かにリアルな、あの日の記憶。
オレンジ色に広がった空の、午後4時35分を指した時計の向こう側に、僕は
確かに溶けていった筈なのに。
今、僕はその懐かしいスパイスの香りを不意に嗅ぎ、そしてあの日の事を、
確かなあの日のカケラの事を、何か、とても大事だったあの瞬間の事を、
・・・・・・いくら思い返してみても、思い出せないんだ。
次は、「傷」「悔い」「駅」で。
みんな上手いね。
401 :
エヴァっ子:02/05/26 00:15
指を金網で傷付けた。
紅い血が流れ、口に含むと鉄の味がした。
風が吹いて、髪がなびく。
もう、電車の走ることの無くなったレールは茶色い錆が疎らに生えていた。
――アイツが死んで、大分たつな。
レールの上に、花束を投げつける。
男はしばらく目を閉じた後、その場を去っていった。
空は淡いオレンジ色だった。
次は『死』『天使』『雨』で。
『死』『天使』『雨』
雨だった。まるで世界が透明な水のカーテンに包まれたようだった。
僕はただ世界の真ん中に佇んでいた。
雨は全てを、僕を含めて世界の全てを洗い清めようとしていた。
いや、むしろ僕から世のしがらみを洗い落とそうとしているのかもしれなかった。
僕の下は土だった。でも違うかもしれない。もういずれにせよもう流れてしまった。
僕は僕が誰であったかを思い出し、厚い雲に覆われた空を見上げた。
さあ、僕は僕自身の手を引いて空へ昇ろう。
なぜなら死をつかさどるのも天使の仕事だから。
死ンダ天使ハ何ニナル?
次は「猶予」「無地」「高処」で
403 :
「猶予」「無地」「高処」:02/05/26 01:01
わたしは軍人として、常に自らに試練を課し、自分を鍛えてきた。
より高処を目指すために。わたしは優秀な軍人であり、それを自覚していた。
嫌味なやつと思わないで欲しい、自らの能力を冷静に把握することもまた、
必要なのだ。
しかし、おごりがあったことは事実で、わたしの失敗からひとつの戦場を
失った。わたしの直属の上司である太った中将は、無地の白い包帯に血をに
じませ、ベッドに横たわるわたしを見舞ったあと、厳かに、言った。
「許しはしない」
と。わたしは首を垂れ、無言のままだった。屈辱だったが、それを請うことは
できなかった。
小刻みに震えたわたしのこぶしを見たのだろうか、中将はこう付け加えた。
「わが軍は、許しを与えたことはないのだ。わが軍の軍人に、失敗はありえない。
許しは与えないが、猶予は与えよう。失敗を贖う方法を考えたまえ」
肥大した中将の背中を見ながら、わたしは彼の言葉の意味について考えた。
そして、サイドボードの銃を取り、こめかみにあてて、引き金をひいた。
「欠片」「靴底」「トレーディングカード」
「おや?」
靴底になんかくっついてた。
さっきガムふんずけたからなぁ。
そう思って靴をみると、なんと!
「トレーディングカード、しかもかなりのレアカードじゃあないか!!」
そういえばさっき通りがかった公園で子供達がデュエルしてたからなぁ。
風に飛ばされたのをたまたま足にくっつけて来たのかもしれない。
・・・とか適当な言い訳を考えながら良心の呵責を欠片も感じることなく
時価1万2千円相当のカードをポケットに仕舞った。
「糧」「太陽」「めざましい」
405 :
「糧」「太陽」「めざましい」:02/05/26 01:28
私は毎日のように母に連れられて神殿に通った。太陽神を祀った神殿で、
母は毎朝仕事の前のひとときと、仕事のあとのひとときを祈りと奉仕で
過ごした。加えて、一日に七回、太陽の方向に向かって大仰な礼をする。
感謝しなさい、今日の糧に。感謝しなさい、今日の健康に。
感謝しなさい、すべてを、すべてを神に。
母は私にそう教えた。若い私がこんな母と母の教えを、いったいどうやったら
好きになれるだろうか?歳を経れば世間でカルト宗教というものが騒がれ
ていることを知るし、何より感謝なんてものをするのが嫌いになる年頃になる。
それがたとえ直接的に私に益した相手であってもだ。況や太陽神を?
家で同然で村を出て、アルバイトから始め、仲間と会社を興した。昼もなく
夜もなく、がむしゃらに働き、会社はめざましい成長を遂げた。さらに、歳を
重ね、老年になれば弱気になるし、あるいは神に頼りたくなるのだろうか。
そうなったとき、すでに昼も夜もなく、太陽も月もない私は、何をあがめれば
いいのだろう。感謝しなさい、母の声が響く。嫌だ、嫌だ、私は叫ぶ。心で叫ぶ。
昼もなく夜もない、太陽も月もない。その自分の生き方にだけ、縋って行こうと思った。
「ドン」「結婚」「絹」
「ドン」「結婚」「絹」
神よ、感謝します。
結婚するには歳を経すぎたのではないかと危惧してまいりました。
家出同然で村を出て、アルバイトから始め、仲間と組織を起こした。
表家業も裏家業も、がむしゃらに働き、組織はめざましい成長を遂げた。
ついには他の組織をおさえ、手下からはドンと呼ばれるようになった。
でもある日気づいたのです。いったい何をあがめればいいのだろう。
そんな時あの人に出会ったのです。もう、組織はいらない。
あの人と共に、自分の行き方にだけ、縋って行こうと思った。
そして今日、式を挙げます。
ドンとして君臨したこの身に絹を纏う日が来ようとは。
神よ、見てください。私のこの花嫁姿を!
次は「見越し」「異質」「竜巻」
「欠片」「靴底」「トレーディングカード」
トレーディングカード、というと何やらいかにも今風の趣味と云
う感じがするが、特定のコレクターがいて、交換・流通するカード
のことをいう。昔で云えばメンコもそうだったりするわけだ。
押入の奥から、偶然にでてきたメンコ。紙片をピシャリと叩きつ
ける音。パタパタ靴底を鳴らす音。いつも負けると暴れていたガキ
大将。小狡く立ち回っていた小判鮫。一枚一枚見つめていると、不
思議なほど鮮やかに友達の顔が浮かんできた。
大人が介入し、色んなルートで流通しているトレーディングカー
ド。オモチャ会社が次から次へと新商品を発売するトレーディング
カード。取引のまねごとのようなトレーディングカード。
株式市場の掲示板が人の活動の全てと見なされる時代にはその方
がふさわしいのかも知れない。それでも僕はぼろぼろのボール紙の
欠片を捨てる気にはならない。
今の子供達はポケモンのカードをいつまで取っておくのだろう。
#かぶりスマソ。
#次は「見越し」「異質」「竜巻」で継続。
408 :
「見越し」「異質」「竜巻」:02/05/26 05:27
「竜巻旋風脚!」
まさか渋谷のハチ公前でこんな声が聞けるとは思ってもみなかった。
「波動拳!」
カッとあたりが青白く光り、見物人が何人か巻き添えを食った。
見ると、ハチ公前のいつも人がいっぱいいる広場は20メートルぐらい人がおらず、二人だけのバトルフィールドになっていた。
本物のストリートファイトだ。
赤い空手着をつけた金髪のにいちゃんと、空手着を着たおっさんが闘っていた。
おっさんの方は目がいってる。人間と言うにはあまりにも異質だった。
おっさんは赤いにいちゃんの攻撃をまるで幽鬼のように避け、まて、今突き抜けなかったか?
おっさんはにいちゃんの後に回った。
「ふん!」
おっさんは強烈なアッパーを見舞う。が、にいちゃんの方はそれを見越して受けとめる。
そして。炎を上げて唸りを上げるアッパーがおっさんを襲う。
「昇龍裂破!」
戦いは終わった。赤いにいちゃんはさっさと消え、おっさんは警察に引きずられていったのだった。
完。
次は「サイコ」「パワー」「殺意」で。
409 :
「サイコ」「パワー」「殺意」:02/05/26 08:46
ウチの三毛のサイコはデブです。
でもウチの家の外には出ません。食っちゃね食っちゃねしてます。
殺意丸出しの顔の野良が庭の前を通り過ぎるときはソファの後ろに隠れてます。
チビの豆柴のドイルが遊び相手。デカイ体で圧し掛かります。
でも、ノーパワーだからドイルに軽くいなされてブニュッと潰されてます。
あたしはこんなサイコが大好きです。
次は「醤油」「灯油」「優香」で。
そんなサイコのことを、つい文章のネタに使ってしまうのも愛おしさ故でした。
でもそのせいで、純文学志望だったはずのあたしはいつの間にかコメディー作家に。
…しかし、今にして思えばそのほうが向いていたのかも知れません。
あたし自身、知人からは面白いエピソードに事欠かないと言われます。
まあ作家なら大抵、調子良く執筆しているときに他のことがおろそかになってしまう
ことは珍しくないと思うのですが、醤油を灯油と間違えてストーブに入れて点火したり、
しかもそれが電気ストーブだったり…いうのは確かにちょっと珍しいかも知れません。
そんなあたしでも物書きのはしくれ、最近の日本語の乱れについては憂いを感じています。
先日も雑誌で「優香」なる言葉を見つけました。
これ、どうも「有価」の当て字らしいです。有価証券などというやつですね。
どうも芸能界の業界用語が広まったようなのですが…なんかもうぱっと見には元の意味さえ
判りません。困ったものです。
…次は「囲碁・将棋」「トーナメント」「投票」で継続。
「囲碁・将棋」「トーナメント」「投票」
インタラクティヴ、という言葉が流行っている。
最近はテレビもただ眺めるだけのものではなく、視聴者参加番組という
新しい概念が世間にも根付いてきた。
とはいえ、番組内で視聴者にできることはまだまだ限られている。
視聴者は手元の、以前に比べ多少ボタンの種類が増えたリモコンを操作して
番組に対して何らかの意思表明をする。その結果が番組に反映されるのだ。
某国の放送協会が永年手がけてきた囲碁・将棋番組もその例外ではなかった。
日曜日の午前、将棋トーナメントの決勝戦である。
・・・6一歩成、12,704票。2八竜、7,645票。よって先手第97手は6一歩成に決定しました。・・・
紋付袴姿のロボットが正確に駒を進める。
第一手から終盤どちらかが詰むまで、全て視聴者の投票によって決定される。
嗚呼、素晴らしき哉、インタラクティヴ!
次は「きざはし」「流浪」「責務」
412 :
「きざはし」「流浪」「責務」:02/05/26 13:17
プロ野球選手、スターへのきざはしへとさしかかった5番打者である。
7人の弟妹を養う責務、親の家を取戻す夢のため、彼は人の何倍も努力する。
今日彼等は古いアパートを引き払い、新築2DKへと引っ越す。
「また一歩、家を取戻す野望へと近づいたね、あんちゃん。」「ん。」
・・・といったやり取りを聞く妹は、ふと一つの疑問を感じた。
(お兄ちゃんの夢は、家を取戻す事だったの?)
「さあ、行きましょうたい!今までの部屋に最後のあいさつじゃ」
(子供の頃親を失って、流浪の生活に苦しむ前は、どんなあんちゃんだったの?)
・・・とても聞けない疑問だった。これは胸の奥に永遠にしまっておこう。
一家が去り、引越屋が後始末を始める。
彼等は、小さく丸まった古い画用紙を、悪態をつきながら焼却場に投げ込む。
画用紙は、彼の幼い頃の絵だった。そこにはこうあった。
「わしのゆめ。わしは大きくなったら**ちゃんと一緒に科学者になって大発明・・・」
誰も見ぬ焼却場。絵は一気に燃え上がり、後は何も残らなかった。
※なんかこの漫画のパクリが多い・・・某映画もパクってるし
次のお題は:「市民」「第一」「痩せ馬」でお願いします。
「市民」「第一」「痩せ馬」
男は痩せ馬を引いて町に来た。
馬と同じく男も痩せていた。
町の広場のまん中の、石造りの台の上で
男は行き交う人々に語りかけた。
実は2ちゃんねる市民の皆様に、投票依頼に来たんです。
市民と呼ばれた者たちはさしたる興味を示さなかった。
2ちゃんねるが市の定義に当てはまるというのだろうか?
第一、何の投票かもわからないではないか・・・
>>410に捧げてみたりして。
次は「おぼろ」「みちなり」「くしくも」
おぼろ月夜に誘われて、散歩に出かけた。
家の前の通りをみちなりに歩いていると、くしくも天敵のサイコに出会った。
サイコは近所に住む天然ボケの一家、佐藤さん宅の飼い猫だ。
怠け者で臆病者のデブ猫サイコは、オレの家の庭に糞をする。
佐藤さんに文句を言おうかとも思ったが、証拠がないのだ。
しかし、あんなに巨大な糞をする猫はサイコ以外に考えられない。
オレは周囲に人がいないのを確認し、サイコに向かってダッシュした。
別に何もするつもりはなかった。
少し脅かせばうちの庭には来なくなるかもしれないと思っただけだ。
サイコはオレの勢いに驚いて飛び跳ね、情けない声で鳴いた。
サイコは怯えていたが、逃げ出さなかった。
オレの目をじっと見て震えていた。
オレは何だか可哀想になり、散歩なんかしなければ良かったと思った。
>次 「宝」「鯉」「噂」
415 :
◆4RxB688c :02/05/27 05:55
隣家のご主人が宝くじで大金を当てたらしい、という噂を妻が聞きつけてきた。
そういえば確かに、先日から隣家では庭を大掛かりに作り変えている。見ていると、どうやら池を掘り、日本庭園のようにするらしい。
日曜日、隣家のご主人が庭に出ているのを見つけた。よし、噂の真偽を問うてみるか。
こういうことは、いきなり核心をつくのが肝要である。「●●さん、宝くじ当てたんですって?」
「や、もうご存知でしたか。これはお耳が早い。」
「で、どれくらい当てたんですか? かなりの額で、それで庭の工事もしてるのだとか…」
「いやあ、どれくらいと言われても言葉に困りますなあ……。よし、あなたには特別にお見せしましょう。」
そう言ってご主人は家の中に私を促した。金庫にでも大金が仕舞ってあるのだろうか…? と思う間に、目的の部屋についたらしい。
「これです。どうですか? 素晴らしい模様でしょう?」
「??」彼が示したのは、かなり大きめの水槽の中にいる2匹の鯉。
「…鯉、ですか。買ったんですか?」
「いや、ですからこれを、日本養鯉愛好者連盟主催の宝くじで当てたんですよ。値段をつけるなら、1匹1億はしますよ」
「………」
「で、せっかく我が家に来て、狭い水槽の中じゃ可哀相だから、いっそ庭に池でも作って放してやろうかと思いましてね。」
趣味の世界は、他人にはわからないものである。
-----
「猫」「虐殺」「中継」で、あの事件とは無関係なものを。
ついに決行の日が来たんだよ。
ほらこの地図を見てごらん。
これは2週間前に樽の中で見つけた宝の地図さ。
ぼくは今日これから宝探しにいくんだよ。
え?この地図がにせものだって?
おまえは若いね。近づいてよく見てごらん。
ここにむずかしい文字が書いてあるだろ?
これは宝の居場所を隠してある暗号なのさ。
「.ad...i..j...n」
あー、わかったよ実はぼくはあんまり字が読めなんだ。
でもそんな細かいことどうだっていいだろ?
ぼくはおまえより1歳も年上なんだ。心配しなくていいよ。
それに今日のためにいままで練習してきたんだ。おまえも知ってるだろ?
宝さがしに行くにはまずはあそこを越えなきゃいけない。
大丈夫きっとうまくいくさ。兄ちゃんをしんじてろよ。
おまえはそこでみてな。いくぞ〜!はぁ〜〜、えいっ!!
数日後
砂利道を並んで歩く若い男女の姿が見える。
「ねぇ、あれなにかしら?」女性の方が立ち止まってきいた。
「あれは…魚……鯉だな。鯉が死んでるんだ。かわいそうに、跳ねて池から
飛び出してしまったんだね」男が答える。
「この池、樽が沈めてあるわね。一体なんのためかしら」女性が不思議そうにきいた。
「片方の蓋が外してある。隠れ家のつもりで入れてあるんだろう。
ほら、樽から顔を出しているのがいる。あの赤と黒のまだら模様は大正三色の若いのだね」
男は池の奥を見ながら答える。
「変な池、それよりあなた今日の宿のことだけど」
次「毛づくろい」「最頻値」「英英辞典」
ぎゃ〜〜。遅かった。
しかもお題1個間違えてるし。。。
ごめんなさい。
418 :
「猫」「虐殺」「中継」:02/05/27 07:31
「×日のサッカー中継を中止にしなければ、おまえらの系列局のビルを全て爆破する」
そんな内容の脅迫状が、テレビ局に多数届いた。消印は、どれも××県のものだった。
その日が近づくにつれて、脅迫状の文面は過激さを増していった。
「中止しないと、××県の市民を虐殺する」という手紙もあった。
サッカー中継の枠は、本来なら「猫ミミLOVE」というアニメ番組が放映されることになっていた。
数日後、脅迫者はあっさり逮捕された。大方の予想通り、彼の部屋は「猫ミミLOVE」のグッズで埋め尽くされていた。
次は
>>416より「毛づくろい」「最頻値」「英英辞典」
419 :
一 五明@410:02/05/27 08:44
「猫」「虐殺」「中継」「毛づくろい」「最頻値」「英英辞典」
ふと電器屋の店頭に目をやると、TVに臨時ニュースの字幕が横切っていた。
[一手預市 御前茂名町の民家で爆発騒ぎ]
何、すぐ近所じゃないか?
幸い被害は少なく、住人一人が手に軽い火傷を負い、飼い猫の尻尾が少々こげたのみ、
だそうだが、やはり気になる。
数分後、現場からの中継に切り替わった画面に驚き。
それは知り合いの作家で、しかもさっき道で会って世間話したばかりの佐藤さんの家だった。
彼女は猫を飼っているので、ずいぶんノミに食われるそうだ。
さらに不精な猫でろくに毛づくろいもしないために、普通よりノミが多いらしい。
で、あまりに食われるので、食われた回数の統計を取りたくなり、
3ヶ月分の結果は、一日平均57.4回。最頻値は56とのことだった。
…まあ昔から少々天然ボケの入った人ではある。
学生時代、英英辞典をイギリス英語の辞典だと思い込んでいたこともある。
まあ統計取るのも飽きたので、ノミの虐殺を計るべくバルサンを買ってきた、とさっき
言っていたのだが。
…………爆発を起こすとは、一体バルサンと何を間違えたのであろうか。
>413
やっぱし説明不足でしたね…説明し過ぎてもうざがられるけど(^^;
次は「晩餐」「伴奏」「バルタン星人」
あ、書いてる間に418が(^^;;
ある日、仕事から帰ると女は消えていた。
その代わりに一匹の黒猫が俺のベッドで眠っている。
「あの馬鹿女、こんなもの置いて行きやがって・・・」タバコに火を付けながら思った。
黒猫なんて疎ましいが、俺の中で苛々という感情は消滅してしまったのか、柄にもなく俺はそいつと生活する事にした。
女が消えて一ヶ月が過ぎたある雨の日曜日・・・朝。
台所の白黒テレビにはバルタン星人が戦っている。俺は猫の缶詰を自分用に半分皿に取り、残りを黒猫にやった。
すると、黒猫が何か小さな封筒を咥えている。
俺は無表情にその封を開けると・・・
『晩餐会のお知らせ
今宵、金星がアカシアの葉に覆われます時を同じくして、
晩餐会を催したく、慎ましくお誘いもうしあげます。
会場には、どうぞ礼服でお越しくださいませ。
きっと、すばらしい会になりますわ。
chere babette(おばかさん)』
きっとあの馬鹿女の仕業だな・・・と思い、こちらも慎ましく無視することにした。
その日は本を読んでもテレビを見ても憂鬱な時間が流れ、夕方何気なく近くのマーケットに出かけてみた。
雑誌と牛乳を買い帰路に向かう。途中でポケットに手を入れると、さっきの封筒が入っていた。
と、その時遠くの方でワルツの伴奏が聴こえてきた。辺りを見回すと、公園の奥にあるアカシアの林でなにやら人が集まってるようだ。
「祭り?」と思い、そこに向かうと、林の入り口で礼服を着た口髭の男に招待状の提示を求められた。俺はとっさにさっきの封筒を見せると、その男はすんなりと通してくれた。
そこはなんとも訳の分からない空間で、男も女も皆礼服をまとっているものの、その集まりは社交界そのものだった。俺はスエットのままだったので少し恥ずかしくなったが、黒だったのが少しもの救いだ。
続く・・・
完結しませんでした。次は「プラネタリウム」「地下鉄」「炭酸水」
=完結しませんでした。次は『地下鉄』『陽炎』『プラネタリウム』
地下鉄を降りた彼女は、努めてゆっくりと階段を上った。
三年前に別れた彼に会うのは、いかに楽観的な彼女であっても、憂鬱な出来事である。
それが、今も愛しているのならなおさらだ。
戦争で壊れた街並みは、どこもかしこも憂鬱な倦怠感に満ちていた。
彼女は顔を巡らせ、所々ひび割れたアスファルトの上を歩く。
真夏の日光を浴びせられ続けた地面は、陽炎を立ち昇らせるほどの熱を発していた。
「………久しぶりだな」
日差しを避け、壊れたビルの庇に隠れながら、彼が手を上げる。
彼女はしばし躊躇ってから、歩き出した彼の後ろを追いかけた。
「今、どこに住んでいるの?」
「2年前に爆撃された、プラネタリウム跡にな。日陰になってて、結構居心地がいい」
その場所は、彼女も知っていた。
彼と何度も通った場所。星が好きだった彼女の為に、デートスポットに選んでくれた彼。
いつもそのプラネタリウムは、二人の貸切だった。
「で、俺に何の用件なんだ?」
プラネタリウムで出迎えてくれたのは、大柄な髭を生やした男性と、絶世の美女だった。
彼は、熊男と俺の弟、と二人を簡単に彼女に紹介した。
その美女の中に、やんちゃな子供だった彼の弟の面影を見て、彼女は苦笑する。
時の流れは、残酷なものだ。
熊男に差し出された炭酸水を飲みほすと、熱気を帯びた全身がすうっと冷えるのがわかる。
三人の見つめる中、彼女はようやく口を開いた。
「総理を暗殺してほしいの……これはレジスタンスからの正式な依頼よ」
次のお題は、「ジェット」「隕石」「クルマエビ」で。
423 :
ジェット・隕石・クルマエビ:02/05/27 16:50
始めはジェット機だとおもった。
真っ直ぐに伸びたその航跡をみつめていると、次第に先端の光る物質がこちらに近づいてきた。
物質は遊園地の垂直落下する乗り物のように物凄い勢いで落ちて――そのまま地面に衝突した。
が、不思議と音はしなかった。
その物質――隕石と呼ぶべきなのか――は、地表すれすれで浮かんでいたのだ。
恐る恐る近づいてみた。
その表面からは鶯色したアメーバ―状の流動体がにじみ出ていた。
アメーバ―はぽとりと地面に落ち、ヒルみたいな形態になり、
いくらか経つと、クルマエビのようにくるっとまるまった。
「君は何?」僕は訊ねてみた。
「いやー…、地球は食糧難らしいので、私を食べてもらおうと思い立ったのですが…」
「でも、君みたいな得体の知れない生物を食べる人間なんていないよ」
「そうですか…、困りましたな…」
そいつは何度も「困りましたな…」と、発した。
そんなこと云われても僕のほうが困る――なんて云えなかったから、
暫くそのアメーバ―君に付き合って、僕も困り果ててみた。
次は「まごころ」「夕焼け」「味噌汁」で御願いします。
424 :
エヴァっ子:02/05/27 23:12
「不味い……」
ある意味儀式化されたような言葉を吐いて、俺は味噌汁を口に含んだ。
やはりあいつに日本食を作らせようとしたのは間違いだったか?
「アルジャーノン、何度いえば分かるんだ味噌汁に牛乳はいれん」
白く濁った液体は、俺の口の中でほのかな甘みを……醸し出してはくれない。
一気に味噌汁を飲み干す。
「今度こそはうまく作ってくれ」
……窓の向こうに、傾いた太陽の映る日のことだった。
まごころ……だれか分かってくれる?
次は「電波」「海」「深夜」でお願いします。
425 :
「電波」「海」「深夜」 ◆4RxB688c :02/05/30 06:10
426 :
「電波」「海」「深夜」:02/05/30 06:44
あたしはね、夜になると電波を受信するのよ。
素敵よ。神様があたしに『精神病になっちゃえー』って怒るの。
とりあえず、腹が減ったから何か食べる。
頭から溢れ出した電波エネルギーは、陰毛で縁取られたきったねー女性器から垂れ流しになっちゃった。
食べる。吐く。食べる。吐く。ゲーロゲロ。
女性器、指で交ぜる、グチャグャ、ああ、嬌声。
イク。潮吹き。
「同性愛」「美少年」「レイプ」
427 :
「同性愛」「美少年」「レイプ」:02/05/30 20:05
同性愛に目覚めた
とある美少年は
急ぎ足の雑踏の中で
赤い糸に導かれたかのように
>>426と遭遇して
近くの公衆便所に連れこんでレイプした。
次のお題は「衆寡敵せず」「強健」「合従連衡」
428 :
「衆寡敵せず」「強健」「合従連衡」:02/06/01 05:09
強健を競う大会、”宇宙強健マン大会”会場は暑苦しい熱気に包まれていた。
それはそうだ。全宇宙の強健な男がそのはちきれんばかりの肉体を競う大会なのだから。
また、その審査方法は強健なものが勝つ、勝ったものが強健である、わたしは誰の挑戦も受ける、というものだ。
こういう大会は得てしてそうなんだが、衆寡敵せず、合従連衡、取り引き賄賂が乱れとぶことになる。
が。
強健である、その絶対的価値のもとにひれ伏さないものがあろうか?
いやない。勝負は相対峙した一瞬で決まるのだ。
こうして、今大会も一人の強健オブ強健な漢が決まった。
そしてその漢は、アドンとサムソンという二柱の強健な肉体を持つ兄弟神の元、
彼らを超兄貴と呼ぶ権利を与えられ、
その強健な肉体を1UPとして捧げるのであった。
完。ドイツ、ドイツ、ドイツドイツ(ジャーマン)
次は「フジヤマ」「ギャル」「パニック」
429 :
「フジヤマ」「ギャル」「パニック」:02/06/01 23:22
娘にどこに行きたいと問うと彼女は即座に『富士急ハイランド!』と答えた。
「富士急ハイランドって・・・あの山梨のか?」
「うん、そう。」
彼女は、屈託の無い笑顔でそういった。時計を見ると午後12時15分。とても
約束の時間までに戻って来れるようなところではない。
「後楽園ゆうえんちじゃあだめかな?」
「だめ!フジヤマに乗るの!!」
幼い彼女は、そして駄々をこねる。そんな私たちをコギャルが胡散臭そうな目
で眺めていった。・・・確かに、父親には見えないかも知れんな。俺は。そう、
この娘の今の父親は俺ではない。だが、俺は間違いなくこの娘の父親だ。あいつと
別れた今でもそれだけは揺るぎ無い事実。だが、この娘は俺のことを叔父さんだと
育てられている。気がつくと、彼女は泣き出さんばかりのかおで俺を見上げていた。
「おにいちゃん・・・ねぇ、怒ったの?私がわがまま言うから?」
「ん〜ん、怒ってないよ。そんなんじゃないよ。」
途端にはじける屈託の無い笑顔、俺はつられて笑った。・・・未来、彼女が真実を
知った時、彼女はどんな顔で俺を見るのだろう。
「後楽園ゆうえんちでジオパニックに乗るのぉ!」
「そうか、じゃあ行こう!」
はしゃぐ彼女を肩車し、俺はふと思った。この娘は、総てを知っているんじゃあ
ないのか?そんな希望にも似た疑問を胸に俺は改札をくぐった。
20行。面目ないです。
次は「花束」「ネズミ」「音楽」でお願いします。
430 :
エヴァっ子:02/06/02 00:34
「僕達はお家に帰れないの?」
少年は笛吹きに尋ねました。
「ああ、そうだよ」
笛吹きは少しだけ、笛を吹くのをやめて答えました。
「君達はお医者さんになるんだ………病気の人たちを助けなきゃいけないんだ」
笛吹きは、淡々とそう言います。
「お医者様かぁ………、ねぇ、そしたら皆楽しくなるの?」
「ああ、そうだよ」
そう言うと、笛吹きはまた、笛を吹き始めました。
「そっか、じゃあお母さんとしばらくお別れだね」
少年は、少し寂しそうな眼をして目の前のお墓に目を向けました。
「きっと帰ってくるからね、お母さん」
少年は、花束をお墓に添え、涙を拭いてにっこりと笑いました。
そうして二人は旅立ちました。
何処か遠くの国へと。誰かが待っている所へと。
――いつまでもお墓では、枯れた花が少年達の帰りを待っていました。
いつか帰ってくる少年を信じながら………。
分かるかな?黒死病ねたです。
次のお題は「大木」「動物」「水」でお願いします。
「大木」「動物」「水」
不思議な動物のレリーフが施された旧い壁に辿り着いた時、俺は
そこが長い間捜し求めた目的の地であることを確信した。
この神殿の奥に、かつてこの砂漠の大陸を統べたという民の残した
伝説の宝物があるはずだ。
神殿の最奥の部屋を目指し注意深く進む。
数々のライヴァルを出し抜き強欲な商人相手にうまく取引し
妙な黒服の連中から命からがら逃れた、長い旅の道中が頭に浮かぶ。
ここまでいろいろあったが、ようやく努力が報われる時がきたのだ。
そして今、最後の部屋の前に立つ。
「宝の間」なんとわかりやすい名前だ。俺はゆっくりと石造りの扉を開いた。
・・・そこは吹き抜けになっており、部屋のまんなかに一本の大木と井戸があるのみだった。
井戸?そうか、砂漠に生きる者にとってかけがえのない宝だよな・・・
急になにもかもが可笑しく思え、俺は井戸の水を一口飲んだ。
うまかった。
次は「銀河」「時代」「サラダ」
432 :
「銀河」「時代」「サラダ」:02/06/03 03:07
時代が進歩すれば、鉄道も進化する。
あの、銀河鉄道も例外ではなかった。
極超光速化。銀河SUICAによる清算。二階建て車両・・・などなど。
それは「日帰りアンドロメダ出張」さえも可能にした。
男は、疲れ果てた体で、アンドロメダ駅から帰りの銀河鉄道に乗り込む。
帰って夜10時、それから出張報告・・・
窓に流れる無限の星々も、彼には何の感慨も与えない。
夕飯は、アルコール抜きビールと低カロリーサラダ。もちろん車内禁煙。
彼はぼんやりした表情で、週刊誌の小さな旅行広告を眺める。
<銀河鈍行鉄道!地球から各星停車でアルファ・ケンタウリまで8泊9日>
「いいなあ」と彼は呟く。
会社ときたら、ウラシマ効果まで計算に入れてスケジュールを組むし・・・
銀河の外側には、一体何があるのだろう。
※蟻が血・・・
次のお題は:「タイムスリップ」「洗濯」「学校」でお願いします。
「銀河の外には何があるのだろう」もんであんっても:列車オフ
木星会議、
433 :
「銀河」「時代」「サラダ」:02/06/03 03:08
・・・失礼しました^^; ゴミがくっついたままです
434 :
「タイムスリップ」「洗濯」「学校」:02/06/03 11:37
「今まで俺は何をしてきたんだ!限りある青春の時間を何もせずに過ごしてしまった俺とはいったい…」
俺は今、途方も無い悔いの念でうなだれている。
自分自身が情けない。今まで本当に愚かな事ばかりしてきた。
限りある高校生活をただ流されるままに過ごし、そして卒業まで至ってしまう。
友人たちは部活、アルバイト、バンド活動その他いろいろな事をして青春を謳歌していたというのに・・・。
朝食を食べ、学校に行き、帰宅して、テレビを見て、寝る・・・。俺は毎日これの繰り返しだった。
俺は望んでこんなことをしていたのではない。ただ、俺の臆病で羞恥心溢れる心のせいでこうなったのである。
高校生になったばかりの俺は燃えていた。熱い日々を送ってやるぞ・・と。
早速俺は行動をとろうとした。まずは部活だ・俺は部の顧問に入部を請おうとした。だが、突然俺の背後から囁きが聞こえたのだった。
「やっていける自信はあるのか?入ったらいじめられるぞ。現状維持ほどいいのは無いぞ・・」 ――と。
そして現在まで至っているのである。
もし時間が戻せるのならもう一度あの時に戻りたい・・・。俺は今そう思うばかりである。
俺は真剣にその方法をパソコンで探していた。そして…なんとそれらしいものを発見した!
「わが社の超高速洗濯機のドラムに入り高速で回転し続けると時間空間に歪みができ、そして過去へと行けるのであります。」
俺はそれを信じた。それなら自宅の洗濯機でも可能ではないか・・。そして俺は早速実行したのだった。だが、俺が馬鹿だった。
翌日、俺は変死体となって発見されるのである。
次は「殺虫剤」「蛍光灯」「ハイビジョン放送」で
タイムスリップが抜けてました。
15行目を「わが社の〜時間空間に歪みができ、そしてタイムスリップができるのです。」
に訂正します。スイマセン
436 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/03 15:08
437 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/03 15:51
ハイビジョン放送の光だけが室内に木霊していた。その光を縫うように飛ぶ蛾いっぴき。
打った。叫び。歓声。そして白球はスタンドに吸い込まれていった。蛾は音の洪水に驚きもせず
私の体の周りを踊るようにぐるぐる舞った。光の中を舞うその生物を、私は美しいと思った。
それを殺すつもりで殺虫剤を手にしていた自分が、急に理不尽なものに思えてきた。
だからだろう、私は大きく口を開け、殺虫剤を己の口中に噴霧する…そんな妄想を頭に描いた。
毒にやられて崩れ落ちる私と、我が物顔で、素知らぬ顔でこの部屋を蹂躙する蛾。
そんなイメージにしばし恍惚としていたが、ダブルプレーとともに私は我に返り、蛍光灯を
灯して蛾を始末した。
次は「手紙」「赤外線」「西洋」でお願いします…お題考えるのむずかしい
438 :
「手紙」「赤外線」「西洋」:02/06/04 07:13
オゾンホールの拡大。
降り注ぐ紫外線。
西洋から放たれた警告も、学生ボロ下宿では無意味だった。
紫外線より、まず暑さを凌がねば。
親にはとても見せられない格好で、彼女は手紙を書いている。
気分だけは南仏、コートダジュール・・・
それでいて、部屋にはコタツが出したままになっている。
昼寝時間の拡大。
降り注ぐ赤外線。
コタツの中では、一匹の猫が健康の心配をしていた。
冬からこっち、生活はほとんどコタツの中。
それでいて生活のリズムは改善できない・・・
「ああ、これではいけないわ!」
猫の方はそう思っていた。
でも、何もしないことには変わりない。
※20分で書いたー;
次のお題は:「プリンタ」「ババロア」「アッパー」でお願いします。
「アッパーカバーが開いています。再度カバーが閉まっていることを確認してください。」
無個性な女性の声が響く。最近のプリンタは(無用な)付加価値をつけないと売れないのだろうか?
なんでもかんでも"音声ガイド機能"がここ数ヶ月で流行っているらしい。
昔からしゃべる目覚まし時計や貯金箱なんてのはあったが、最近はパソコンやプリンタやデジカメといった
OA機器をはじめお風呂やポット、ひどいものでは机に椅子までありとあらゆるものがしゃべるようになった。
おかげでこのいまいましい声を聞かない日がないくらいだ。
もちろん家の中だけではない。外に出たら出たで信号や歩道も何事かしゃべっている。
動く歩道ならぬしゃべる歩道と言う訳だ。あんなにうるさいにも関わらず通行人は気にも留めていないようだが。
道のまん中で耳を塞いだからとて全く聞こえなくなるものでもなし、せめて家の中くらい静かに
ならないものかと思案するも束の間、食卓のババロアから例の声が頭に響いた。
「腐敗が進行しています。風味が落ちるのでお早く召し上がりください。」
まったく、最近のババロアときたら少しは黙ってられないのだろうか・・・
今回はシュールな一品。すこし判りにくい?
次は「味噌」「禊ぎ」「大晦日」
440 :
「味噌」「禊ぎ」「大晦日」:02/06/05 15:47
大晦日に「ご飯を食べに来て」と呼び出されたので、何事かと思いつつ呼び鈴を
鳴らす。扉が開いた途端、挨拶をするのも忘れて、口を開きっぱなしに
してしまった。彼女は髪の根元から足の指まで濡れていて、体はバスタオルで
隠しているだけという格好だったのだ。
「いらっしゃい。準備は出来ているから、どうぞ上がって」
そう動いた唇は青く、肌の色もいつもより白い。
「水を被っていたのか。今、冬だぞ?」
「知らないの。そこの神社の横に、禊ぎのための清水があるのよ」
もらってきたその水を今、頭から被っていたところだという。あまりの話に
服をかき合わせていると、
「待ってて。今、料理を並べるから。味噌のものでそろえたの」
そういって彼女は奥に消えた。
当然、並べられた料理はうまいけれど、とても冷たかった。味噌汁でさえも。
そういえば、僕は彼女の名前も知らない。
次は「ホームラン」「山岳部」「オパール」で。
441 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/05 16:10
いわゆるふたまたをかけていた。
わたしはたったの17だったけど、髪も黒いままで学級委員なんか務めてる
女子だったけど、どちらも選べなくて二人の男子と付き合っていた。
ひとりは野球部員。甲子園を目指していた。
もうひとりは山岳部員。彼らはどちらともよく陽に灼けていた。
「県大会、絶対ホームラン打つよ」
おまえのために、と野球部の彼は付け足した。どっかの漫画みたいだなと
思いながらも嬉しかった。
山岳部員の彼は芝居がかったことばは使わないたちだった。
野球の県大会の日、山岳部員の彼は北の方の山で遭難した。彼の弟から携帯
電話で報せを受けたわたしは、スタジアムで野球部員の彼を応援していた。
野球部員の彼がバットから快音を放ったその時、わたしは駆け出していた。
「うわぁ、綺麗な石・・・。オパールみたい」
山岳部員の彼が山で拾ってきてくれた石。ぶっきらぼうに差し出されたときの
ごつごつした手のひらを思い出して、走りながらわたしは泣いていた。
ポケットの中であの石が揺れている。あれからいつもいつも持っていた。
彼が助かるなら何もいらない、と思ったときに、誰が好きだったのか初めてわかった。
次は「鯖」「コスタリカ」「プリン」で。
442 :
「鯖」「コスタリカ」「プリン」:02/06/05 18:15
「コスタリカってどこにある国だったっけ?」
と、姉さんが聞いてきた。僕はテレビの料理番組を寝そべってみながら答える。
「オーストラリアだっけ?」
「違う。なんかもっと別のとこにあったと思う」
そんな確信を引っ張り出すくらいなら、自分で地図でも見て調べろよ、
僕はそう言いかけて、姉さんを振り返った。
姉さんは、片手にプリンを持っていた。僕の好きな、カスタードプリン。
スプーンですくうと、僕の口元に持っていきかけて止める。
「答えられたら、食べさせてあげるよ」
なんだよ、赤ん坊じゃあるまいし、と、僕はちょっとむっとして、目を泳がせた。
料理番組では、鯖の味噌煮なんてものを紹介している。参考にならない。
外もいい天気だけど、それは別に何のヒントにもならない。
「わからないんだったら、プリンはみんなあたしのものよ」
姉さんは白い歯を見せて笑う。弾みで、スプーンの上のプリンが姉さんの胸元に落ちた。
あ、そうだ。
突然思い出して、僕は姉さんの胸元についたプリンを舐め取った。
何すんのよ、という声を無視して、僕は姉さんの首に舌を這わせて、言った。
「コスタ-リカ。中央アメリカの小さい国だった。今思い出したよ」
プリンカップが床に落ちる。姉さんが小さく吐息を漏らした。
お次は、「夢」「ギンガム」「掃除機」で。
443 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/05 20:20
木綿子は戦っていた。14年に及ぶ長き生涯で最大の敵と。悪夢のような出来事と。
愛用の白iMacの画面に映る木綿子の個人ウェブサイト。その掲示板が戦場だった。
ギンガムチェックの「ほのぼの掲示板」で木綿子がお気に入りのうさぎアイコン
が卑猥語を連発して発言ログを流している。木綿子にはとても口にできないような
恥ずかしい言葉で掲示板は埋め尽くされている。変な、にやけた顔文字が木綿子の
神経をさらに逆なでする。木綿子は顔を真っ赤にしてキーボードを叩きつけるように
「うさぎさん」に出ていくように言い続けていた。
姉に頼めばなんとかしてもらえるだろうが、姉が帰ってくるまでまだ2時間はかかる。
自分の身は自分で守らないといけない、木綿子は妙な高揚感を感じつつ、そう決意した。
「ゆうこ〜!?買い物行ってくれない?」
後ろで呑気にも掃除機をかけている母親が殺気だった木綿子に声をかける。
丁度その瞬間うさぎが放った言葉は恐るべきものだった。木綿子を噴火させるに十分なほど。
だから木綿子は、つい母親に…
「死ね、なんて言ったのね?」
数時間後、呆れた顔の姉を前に木綿子は泣きはらした目で正座していた。結局こうなった…
木綿子は言いしれない敗北感にうなだれた。
ちょっと長くなりました。すみません。
次は「サファリ」「貨物」「誘拐」でお願いします。
「サファリ」「貨物」「誘拐」
近所の神社で祭りがある。帰宅後、5歳の娘を連れて出かけた。
普段人のあつまらないところに人が来る祭りは、高揚した気分にさせる。
娘はぴょんぴょん飛び跳ねながら、私についてくる。可愛い。
娘は金魚すくいがお気に召したようだ。立ち止まって、見つめている。
300円を出そうとしたら、小銭の持ち合わせがない。
射的、30発500円の看板が合った。二人で1000円。
嫌がる娘をなだめながら、千円札を渡した。嫌がっていた娘も、
鉄砲を持った途端まんざらではないらしかった。可愛い。
「お父さん、サファリって何?」
縞馬の模型だった。商品名はサファリ。他にも象とかライオンとかある。
「ほら、かもつれっしゃがあるよー」
「それ、きらい。サファリがいい」
自分の娘なのに、誘拐したくなるほど、可愛かった。
次は「ペットボトル」「くつした」「犬」でお願いします。
445 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/05 20:55
名前で誰かばれそうだ…。うつ。
446 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/06 14:07
「あのくつしたあんよのがいいな」
そのとき、ぼくはアユちゃんがなんでぼくを指さすのかわかんないくらいこどもだったんだ。
ぼくらきょうだい5匹はみんなよく似てたけど、ぼくだけ脚先の方の毛が人間が靴下はいた
ときみたいに白い『くつしたあんよ』だったから、きっと目立ったんだと思う。
アユちゃんはそれからずっと、ぼくをうんと可愛がってくれた。怒ると怖かったけどね。
でも信じられる? ぼくはおとなになったのに、アユちゃんはまだ結婚できない年なんだって。
でも好きなやつはいるみたい。ぼくの知るかぎりアユちゃん2度目の恋だ。
アユちゃんの初恋はとなりの家のお兄さんだったけど、アユちゃんは好きな奴の前だと必要
以上におちゃらけてしまうらしくて、気持ちも伝えないままシツレンしちゃったらしい。
今度のやつは同級生で・・・おっとちょうど前から歩いてきた。リードを通じてアユちゃんの
緊張が伝わってくる。アユちゃん、がんばれ。
おっ、おまえの犬? ってきかれて、アユちゃん、うん、なんて可愛く微笑んでる。
ふと、奴がアユちゃんが手に持ってるペットボトルと水入れに気づいた。
「その水、おまえが飲むの? それとも犬の?」
い、犬の、と答えた後にアユちゃんが再び口を開いた。嫌な予感がぼくをおそった。
「こ、これがほんとの『ペット』ボトル〜!・・・なーんて」
・・・・・・ダミだこりゃ。
次は「産婆」「紅茶」「眉毛」でおねがいします。
447 :
「産婆」「紅茶」「眉毛」:02/06/07 16:52
目の前に晒されている表情に、彼女のいつものような雰囲気はなかった。
ずっと電話のほうを睨んでいて、眉毛や目がいつもより厳しい形をしていた。
テーブルに置かれている紅茶は、ずっと前から湯気なんか出していなかった。
「そんなにピリピリするなら、お義母さんと一緒に病院行けばよかったのに……」
「だって、わたしにお産の経験があるでもないし、旦那も私が行ったら気を使う相手が増えるでしょ?」
「旦那さんはともかく、お義姉さんは喜びはしても、邪魔にはしないと思うけどなあ」
「いいの。それにほら、あなただって、妹さんのとき行かなかったじゃない?」
「ほら、俺は男だし……。それに俺は、産婆さんが来て家で生むんならまだしも、
わざわざ病院まで行って他人のうちの出産まで見たくないよ」
「あら、薄情なのね」彼女はいくらかさっきよりスッとした目で言った。
「それにほら、俺は妹の出産で君に当たったわけじゃないしね」
「わたしの気分がもし悪いと思うんだったら、しばらく話し掛けないで」
彼女はそう言ったきり、また黙り込んで電話を睨んだ。
僕はあきらめて静かに視線を添えた。電話は少なくともしばらくは鳴りそうになかった。
次は「処女作」「ゲート」「いたずら」で。
448 :
エヴァっ子:02/06/08 20:51
見上げるとそこには巨大で、赤茶色に錆付いたゲートがあった。
赤い夕陽、赤茶色のゲート………私の処女作の小説に出てきた風景だ。
思い出してきた。
そうだ、私達はここでよく遊んでいたんだ。
誰と?近所の男の子と。
今思えば、6年前プロになってからは全然会っていなかった。
目の前に今朝ポストに入っていた稚拙で折れ曲がった字で書かれた手紙が浮かび上がった。
そうだ、あの字は………アイツの文字だった。
どうして忘れていたんだろう、眼から涙が溢れてきた。
あんなにも大好きだったのに、6年間も会わなかった。
時の流れに流されて、そんなことまで忘れていたんだ。
錆付いたゲートを見上げて、私は泣いた。
そして叫んだ。
タチの悪いいたずらよ………、と。
次は『石』『雲』『都会』で。
450 :
「石」「雲」「都会」:02/06/08 22:48
きれいに並んだ石畳を慎重に歩きながら、私は遮るものもない天蓋を見上げた。
東京では見ることのできない真っ青な空を、白い雲がゆっくりと行き過ぎる。山肌を流れるように移動する、雲の影はやがて私と遺跡の上にもやってきた。
「すごいわね… こんなにきれいな状態で発見されるなんて」
先行していたスタッフが声を掛けた。
「作業、始めますよ」
ここは土に眠る石の都。十数世紀も昔の、街の死骸。 死骸… それを最初に言ったのは彼だった。
日本を出発する前、新宿の高層ビルにあるレストランで食事をしたときのことを思い出した。
「君が掘り出しているものは、こんな都会の死骸なのかな」
私は、大路から遺跡を振り返った。四角に切り出され、几帳面に積み上げられた石の建築物。その後ろから、雲がせり上がってくる。
「いいわ、始めて」
いつか、東京も土に埋もれ、誰かに掘り起こされることもあるのかもしれない。私のような誰かによって。
次は、「花束」「火星」「ハムスター」で。
「もしもし、桜井です。」
「おぅ、俺だ。」
「良太…久し振りだね。」
「どうした?元気ないな。」
「あのね、ピノが死んじゃったの。」
「…そっか。でも、彼はハムスターなりに幸せだったんじゃないかな?」
「どうして?」
「だって、美晴のそばにいられたんだからさぁ。」
「あはは…ありがと。ちょっと元気でたよ。」
「いぇいぇ。―そういえば、友達の結婚式だったって?」
「うん、ウェディングドレス、すっごく綺麗だったよ。」
「そっか…いつかは美晴にも着せてやるからなっ。」
「…結婚式の時、ブーケ取っちゃったんだ。」
「え…」
「そしたら、お母さんに『幸せの花束だね』って言われてさ。」
「うんうん。」
「そうなったらいいな、って…思った。」
「ん、そっか。」
「うん…」
「…」
「…」
「あ、空見てみて。」
「え?」
「ほら…南東の方。妙に輪郭のある、明るい星が見えるだろ?」
「えぇ?―あ、あった。すごい、クッキリ見える…」
「あはは、美晴は目ェいいもんな。」
「すごいねー…星なのに、あんなに…」
「実はアレ、星じゃないんだ。」
「えっ?」
「アレはね…火星なんだよ。」
「火星って…あの?」
「そう。星よりも近くにあるから、クッキリ光って見えるんだ。」
「へぇ、そうなんだぁ。」
「そう…星は、遠くても輝いて見えるんだよ。自分で光ってるからね。」
「火星はたしか、太陽を反射してるんだよね?」
「そう。…ちょっとマジメに聞いてくれ。」
「ん、どうしたの?」
「地球に届くほど明るく綺麗に光った星がさ…」
「うん。」
「俺のそばでずっと輝いてたら、嬉しいよな。」
「うん、そうだね。」
「だから…俺のそばに、来てくれないか?」
「え…」
「つまり、俺と結婚して。」
「…ん、分かった。」
「あー、よかった。断られたらどうしようかと思った。」
「あはは、断らないよ。好きだもん。」
「もう指輪も買っちゃったしさ。」
「相変わらず、気が早いね。」
「まぁ、それ以上に理由があるんだけどね。」
「え、何…?」
ピンポーン…
---
カギカッコ進行に挑戦。そして失敗。
むずかしぃYo!駄作でスマソ。
次のお題は…「生温い」「光る」「沈黙」(動詞は活用OK)
452 :
「生温い」「光る」「沈黙」:02/06/09 01:45
彼は生温い空気を感じて顔を上げた。空気の流れは、ワンルームと小さなキッチンをつなぐ狭い通路からやってきていた。ユニットバスの扉が少し開いている。
「いつ開けたんだろう」
彼は換気のために、いつもユニットバスの出窓を半分開けている。生温い空気は雨の前兆かもしれない。面倒だが閉めておくか、と彼は立ち上がった。
そのとき、ユニットバスの扉の隙間に、鈍く光るものを発見した。液体だ。それも石油のような重い色の液体。だが、そちら側は電気を消しているため、よくは見えない。わずか光を反射するのがわかる程度だ。
「そんなもの持っていったっけ?」
自問自答しながら、彼はキッチンとユニットバスの灯をつけ、扉を勢いよく開けた。
鉄の錆に似た臭いが、部屋に向かって流れ込む。ぐにゃりと曲がった女の身体がそこにあった。腹部に深々と刺された包丁の柄から、ぽたぽたと血が滴り落ちて、バスの床に広がっている。
「ああ。そうか。そうだっけ」
別れ話を持ち出した彼女を脅すだけのつもりだった。しかし、過剰に反応した彼女ともみ合って… この数十分の出来事が、彼の脳裏にゆっくりと浮かんだ。
玄関の外で複数の靴音が響いた。チャイムが鳴る。隣人が警官を呼んだようだ。
「こいつ、結構でかい声出したからなあ」
彼はゆっくりと包丁を引き抜いた。そして…… 沈黙。
次は「香水」「アスファルト」「森林」で。
453 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/09 09:16
計画は完璧に進行した。
輸送車は工場を午前2時に出発する。港への到着は午前4時だ。途中で一度休憩
を取り、運転手が車から離れる。
俺は闇に隠れるように輸送車に近づき、ロックを外し、慎重にバルブを回転させ
る。ポタリと、最初の一滴が地面にこぼれ落ちる。一瞬、夜になっても熱をおびて
いるアスファルトから、強烈な芳香が拡散する。香水の原液だ。
俺は、排出口に詰め物をして、しばらくの間、漏れるのをふさぎ止めるようにす
る。そしてバルブを大きく開く。詰め物は数分のあいだ、こいつが再びしたたるの
を防ぐ。それからあとは、原液はとめどもなく垂れ続けるはずだ。
運転手が戻ってきた。俺は背をかがめて暗闇に身をひそめる。輸送車のエンジンが
始動し、ライトが光る。光芒が、森林の中へと続く白っぽい道路を浮き上がらせる。
あの森の道で、輸送車は香水をさかんにふり撒きながら、疾走するだろう。森林を、
空間を、村や街を、港までつづく道路を、目がくらむような香りで充満させてゆく
はずだ。会社を解雇された調香師としての、俺の復讐だ。
輸送車は走り去って行った。計画では、そのまま空港へ向かい、この国を立ち去
るつもりだった。
しかし、なぜだかわからない。俺は、真っ暗なその道を、輸送車のあとを、とぼ
とぼと歩きはじめていた。香りを求めて。
次は「きれい」「きたない」「池」で。
454 :
「きれい」「きたない」「池」:02/06/09 12:55
そいつを見たのは家の近くにある、道路に面した用水池だった。
まだ幼かった私が、友達だったユウキ君と一緒にザリガニを捕りに行ったとき、
二人はその存在を認めたのだ。細かな泡や水滴一粒一粒を帯びるように湧いて出た
そいつは、蛞蝓のように這った声で問いかけてくるのだ。
「わたし きれい?」
その容貌は、あまりに醜悪であり、褐色に爛れたきたない皮膚を曝け出していた。
私とユウキ君はほんの間、膠着していた。恐怖に震え、返答に迷い、未知の体験
に体が動かなかった。
先に動いたのはユウキ君だった。ユウキ君はその恐怖を顔で動作で露にし、私を
置いてその場を駆け離れようとした。
だが、池のほとりを抜け出るよる先に、そいつは恐怖に歪んだユウキ君の顔を鋭
い牙で噛み千切った。まさに刹那の出来事だった。そいつの醜い口はユウキ君の肉
片をまるでウエルダンステーキを噛むかのように蠢き、鮮血を滴らせた。縦半分に
なった顔は脳漿を池に零し、崩れた脳髄が頭蓋から零れていた。
そのとき、私は張り詰めた恐怖を破裂させた。無我夢中で家に逃げ込もうとした。
ユウキ君と戯れていたそいつも私に気付き、狩りを楽しむような目で追ってきた。
そこで気付いたことは、私がその内容を見たのは夢の中だったということだ。そ
いつに追いつかれ、頭を食い千切られそうになったとき、割れた虚空に吸い込まれ
たように目が醒めたのだ。結局、私には何の害もなかった。
しかし、ユウキ君が死んだのには変わりが無かった。トラックに撥ねられ、池に
落ちたと報道されたユウキ君の顔は、夢と何の変わりも無く、顔半分が消えて喪失
していた。
そいつ、所謂口避け女は、予知夢、それも悪夢の使者だと、私は今でもそう感じている。
やっぱ長くなるな。次は「山紫水明」「白砂青松」「柳暗花明」
455 :
「山紫水明」「白砂青松」「柳暗花明」:02/06/09 14:34
龍は風と化して漂っていた。千年の昔、都で暴れた龍はこの頃はめったに己の躯の在りかすら意識せず、鱗を透けるそれに変えて、風と共に流れていた。日に映じて山は紫、澄んだ水が谷を伝っている。谷は風を斜めに落とし、開けた野へ吹き抜ける。
森のはずれの春の野に、女たちが遊びに来ていた。花びら舞う渦の中、上気した肩を露に晒して、女たちだけで酌み交わしている。港の色町から来た女たちであった。さざめく笑いは花びらより甘く、龍の鬚をかすめた。
一人の女は背に松のほりものをしょっている。明るい光の下で、薄い着物を透かして見えるのは、雄松雌松が並ぶ海岸の風景である。将来を誓った男が海に出て帰らないのだとも、だまされていたのだとも、ほんとうの事は酒を呑んでいる誰も知らない。
龍はその女の横顔になにか惹かれた。もしや前世で縁でもあったか、それとも山に厭いて白砂青松のその景の中に行きたいのだろうか。己の心を試すかのように、龍は白い肌の上にふと休んでみた。ひとりで風に流れているよりも、人の町に行ってみるのもよかろう。
雄松雌松の上に龍が舞う白砂青松の景をしょって、女は色町へ帰っていく。
念為、参照:
さんし‐すいめい【山紫水明】
日に映じて山は紫に、澄んだ水ははっきりと見えること。山水の美しい景色の形容。「―の地」
はくしゃ‐せいしょう【白砂青松】
白い砂と青い松。海岸などの美しい風景にいう。
りゅうあん‐かめい【柳暗花明】リウ‥クワ‥
柳は繁って暗く、花は咲いて明るいこと。春の野の美しいながめ。
転じて、花柳街。色町。色里。
次は、「鬚」「香り」「島」で。
456 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/09 14:42
『わたしたちの学校紹介』
5年一組 藤代裕紀
私たちは今、京都市の北区にある紫明小学校という所に通っています。
皆さんはなぜ紫明というのだろうかと疑問に思われる事だからその由来を説明します。
紫明というのは四字熟語の山紫水明からとったものなのです。
山紫水明とは山は美しく紫に映え、川は清く澄んでいるという意味です。
私たちの学校はその熟語にふさわしく、比叡山という美しい山に面して、そして鴨川という川が近くを
流れているという素晴らしい環境の中にあります。
春には桜がらんまんに咲き、秋には・・・・・・
※ ※ ※
私はこの文章を読むたびに胸が痛くなります。
裕紀は学校の児童会役員に選ばれて、そして他校に向けて自分達の学校を自慢するという仕事を背負ったのです。
裕紀は友達や学校の先生達と一生懸命になってこの文章を書いてました。
そしてついに完成。裕紀はとてもうれしそうでした。素敵な笑顔でした。それが私が見る最後の笑顔だったとは
全く想像できませんでした。
その翌日、裕紀は無謀なトラックにはねられてしまい無残な姿へと変わり果ててしまったのです。
― ― ―
この話を口述筆記した私は今、白砂青松の地「天橋立」にたっている。なぜならこの裕紀君は名景を見るのが大好きだったそうだ。
せめてもの報いになるだろうかと思い、私は彼の遺影と共に旅をしている。
「次は柳暗花明の地だぞ・・」 私は遺影に語り掛けた。
ローカルネタすいません。 次は「落石」「海岸」「ペットボトル」で
わーおうしまった、非常に申し訳ない。三語をそのまんま入れなきゃいけなかったですね。すいません差替えです。
龍は風と化して漂っていた。千年の昔、都で暴れた龍はこの頃はめったに己の躯の在りかすら意識せず、鱗を透けるそれに変えて、風と共に流れていた。日に映じて山は紫、澄んだ水が谷を伝っている。谷は風を斜めに落とし、開けた野へ吹き送る。
森のはずれの春の野に、女たちが遊びに来ていた。花びら舞う渦の中、上気した肩を露に晒して、女たちだけで酌み交わしている。港の色町から来た女たちであった。柳暗花明のさざめく笑いは花びらより甘く、龍の鬚をかすめた。
一人の女は背に松のほりものをしょっている。明るい光の下で、薄い着物を透かして見えるのは、雄松雌松が並ぶ海岸の風景である。将来を誓った男が海に出て帰らないのだとも、だまされていたのだとも、ほんとうの事は酒を呑んでいる誰も知らない。
龍はその女の横顔になにか惹かれた。もしや前世で縁でもあったか、それとも山紫水明に厭いて白砂青松のその景の中に行きたいのだろうか。己の心を試すかのように、龍は白い肌の上にふと休んでみた。ひとりで風に流れているよりも、人の町に行ってみるのもよかろう。
雄松雌松の上に龍が舞う海の景をしょって、女は色町に帰っていく。
次は、「鬚」「香り」「島」で。
458 :
「落石」「海岸」「ペットボトル」:02/06/09 15:33
「だから、キミはね」
シオがユウキの頬を飲みかけのペットボトルで軽く叩きながら云う。
いつだってシオはユウキのことを生意気に唇をとがらせて「キミ」と呼ぶし、年上のいとこだろうがおかまいなしに頬を叩いたりするのだ。
いつものようなじゃれあい。海岸での。
「キミはさあ、いくら明日死ぬからって、だからってボクに何もかも求めるのはね。駄目だよ」
テトラポットから身軽に飛び下りたシオのスニーカーの下で、荒い砂利が小さく崩れて、その下に咲いている浜昼顔を埋めた。シオは片手にペットボトルを握り締めたまま、立ち止まる。花への落石。人の足下で砂利が転がっただけで、花は死ぬ。
そして、神の足下で砂利が転がったような、そんな些細な隕石が、明日この星と衝突する。
あと、二十三時間ある。
シオはテトラポットに残したユウキを振り返る。
潮風が髪を乱している。
次は、「鬚」「香り」「島」でよろしくお願いします。
459 :
「鬚」「香り」「島」:02/06/10 00:37
波の向こうに、陸地が見えてきた。
あの島に次の敵が待っているのかと思うと、徐凡は不安でたまらなかった。しかし、勝たなければ食事にありつけない。それが、この「一波闘武」での決まりだった。
浜辺に辿り着いて、徐凡は憂鬱な心境になった。敵は、白鬚を胸までたなびかせた老人だったのだ。
「いい体つきをしておるな。かなり内功の修業を積んだのじゃろう」
老人は満面の笑みを浮かべて言った。
「御老体に勝っても嬉しくありません。貴方が楊貴妃のような美女ならよかったのに」
徐凡は正直にそう告げた。
「いい香りだ!」
闘いのあと、老人はほどよく焼けた徐凡の臀の肉を、上機嫌で口に入れた。
次のお題は「銀河鉄道」「料理店」「税務署長」
460 :
「銀河鉄道」「料理店」「税務署長」:02/06/10 02:21
税務署長は"給仕募集"と書かれた仏蘭西料理店の前で立ち止まった。
「いらっしゃいませ」
彼は給仕長の、その慇懃な応対にたじたじになっていた。
「あ、いや、うへん、私は○○町の税務署長であるのだが、店長はご在宅ですかな」
「少々お待ち願いますか」
まもなくして店長が現れた。店長は若い、女性だった。それは、彼をさらに困惑させた。
「私が店長でございますが。税理上なにか問題がございましたでしょうか?」
「いや、問題というほどではないのですが。この、○○駅の領収証に記載されている、列車代というものについて、お窺いしたいのです」
店長の顔はほころんだ。それは税務署長を、わけもわからず不機嫌にさせるものだった。
「まあそれは。記載漏れですわね。給仕長を呼びますわ」
仏頂面の給仕長は、夏祭の屋台にて、給仕一人、石炭庫まで、と記した銀河鉄道当ての支払証を発行した。
「確かに。これで記載全て合います」
税務署長も不機嫌に答えた。
仏蘭西料理店長ののにこやから微笑みに見送られながら、税務署長は店を出た。
店構えは立派だった。署員が気遅れしたのも無理はない、と彼は思った。
つぎは「遊女」「たぬき」「酒」で。
461 :
「遊女」「たぬき」「酒」:02/06/10 04:15
人を斬った。胸がざわざわする。
背後の闇がわさわさと迫ってくるようで、とっても恐い。ううう。
「なんだかムラムラしてきた。遊郭へいこう」
空元気を出してそんなことを言ってみたら、ほんとにムラムラしてきたような気がしてきた。
遊郭へ向かった。ちょっと駆け足で。
遊郭の明かりを見つけてほっとする。いざ。
女の顔をまともに見もせずにことをすました。酒も飲まなかった。
やってるときにさっき殺したやつの顔が浮かんだ。おええ。
女とやるとちょっと落ち着いた。出て行こうとする女の顔を初めてまともに見て驚いく。
美人。
やる前にちゃんと見ておけばよかったとちょっと後悔。
女は出て行って襖を閉めるときに、こんなことを言う。
「おまえさん、人を斬ったね。」
ざわざわ。
わさわさ。
ざわざわ。
わさわさ。
発作的に刀を取って襖ごと女を斬る。
斬る。
斬る。
息切れしながら斬りすてた女をみてまった驚く。
遊女はたぬきだった。
俺は草原にたっていた。 (了)
次は「月」「こたつ」「東京」で。
東京って固有名詞か。すまん。
変更します。
次は「月」「こたつ」「空想」で。
463 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/11 10:44
age
こぽこぽ、とお猪口にお酒が注がれる。
「あ、こりゃどーも」
「いえいえ」
庭の雪の中に埋めておいた為に、きぃん、と脳まで冷える。
「くっは〜、やっぱ最高ですね、真冬の風呂上りに、こたつの中で冷酒飲むのって」
「親父くさいですねぇ」
苦笑しながらも、彼女の目は温かい。
彼女は開け放した窓を見上げ、楽しそうに目を細めた。
私は彼女の視線を追って、中空に輝く月を見詰める。
「おや、満月ですねぇ」
「風流ですね」
彼女はうっとりと月を眺めながら、そのふっくらした唇を開いた。
「時々、空想するんです。私も、あなたの傍にいられたら、と」
「いけません」
私は……半ば予想した答えとはいえ……頑固に首を振った。
「……そろそろ、おいとましますよ」
「次は、いつ頃に?」
何かを必死で訴えるような彼女のひとみから目を逸らし、私は嘆息する。
「あなたは生きなければならないのですよ……死神の私が次に来るのは……あなたが死んだ時です」
「楽しみに……待ってます」
私はもう何も言わずに、彼女の部屋を後にした。
えっと、次は「冬」「カスミソウ」「歯車」でお願いします。
466 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/11 20:18
age
「冬」「カスミソウ」「歯車」
「ねぇ、かすみ草って、いつ花が咲くの?」
「え?えーっと、あ、夏、夏だよたぶん。」
「ほんとに?」
「あ、いや、冬かな?冬かもしれない。」
怪訝そうな私の顔に彼はあわてて
「咲きたいときに咲くんだよ、きっと。」
もう、テキトーなこと言うんだから。
こんな奴が私の彼氏だなんて、どこでどう人生の
歯車が狂っちゃったのかしら。
まったく、私の将来こそカスミソウ・・・
次は「扉」「高嶺の花」「潮騒」
468 :
「扉」「高嶺の花」「潮騒」:02/06/12 18:05
「扉」「高嶺の花」「潮騒」
扉を開けると潮騒が迫ってくる。
かつては高嶺の花と囁かれた女が戸の影から歩み出て、木の間を滑るように伝う。老いた顔は仮面で覆われている。
小さな島には幾人かの使用人のほかに訪れる者もない。
けれど女には仮面が必要だ……一歩ずつの歩みの中で、彼女は大事な人と会っている。緑葉の中に神がいる。神は美しい若い女を好むと信じられている。
木の神を祀ったこの島に、十五の時に地主の父の手自らで捧げられてから、彼女は一周二十分ほどの小島を朝夕に歩いて耳をすませる。己を呼ぶ声が、ついに召す声が聞こえるかと。
しかし、今日、彼女の日々に異変が起きた。彼女は浜で瓶を拾った。中には手紙らしきものが入っている。
神に捧げられた身で、誰からとも知れない手紙を開けていいものかどうか。
次は、「鬚」「露」「柱」でよろしくどうぞ。
469 :
「扉」「高嶺の花」「潮騒」 :02/06/12 18:21
私はいま悩んでいる。
この一つの扉を開けようか、それとも開けまいかと迷っているだけなのだが、褐色に
錆びついた鉄製のノブが私の不安を促した。
水墨で『ロマンティックな部屋』と塗りたくられたプレートを提げた扉の向こうには、
一体なにが存在しているのだろう。
……単なる飲み屋かもしれないし、或いは、妖しいクラブかもしれない。この都会の中
で、何時でも目に付く雑居ビルからはそのような想像しか浮かばない。
いや、もしかしたら、この扉を越えれば、静かな潮騒と悠久の蒼海を一面に見渡せれる、
白い砂浜が待っているかもしれないし、妖精が戯れる森と草原が織りなす、アルプスの山々
に立っているかもしれない。そんなはずないのだと分かっていても、私のファンタジー的
思考は高嶺の花でさえ摘み取れそうな自由と壮大さを練り上げた。
この扉の先には何があるのだろう。……開けよう、この扉を。もしかしたら、本当に
この喧騒とした都会から逃げ出せるのかもしれないから。私の我慢は琴線のように切れた。
私は、寂寥とした感触のノブを回し、固く重い扉を押し開けた。
「アヒャーッ!!死ね死ねぇーっ!!!」
扉を開けた先には、快感と享楽の笑みと頑強な肉体を張りつけた男が待っていた。
きりきりと響く叫喚を上げる男は、赤黒く変色した斧を振り上げ、電光石火の一撃を
私の頭に叩きつけた。脳の片が混ざった鮮血が噴水のように湧き出てるのを感じた。
私を出迎えたファンタジーは、脳漿と血漿がぶち撒かれた壁と臓腑と肉片がばら撒かれ
た、異形の殺人鬼が住む阿鼻叫喚の部屋だった。
遅かった。次のお題は「鬚」「露」「柱」で。
470 :
髭・露・柱:02/06/12 22:39
柱は随分長い時間、同じ場所に立ち続けていた。
その周辺を覆うように数百メートル四方のオアシスが広がっている。
柱から少し離れた水場には、柱の民が生活する小さな部落があった。
柱には高さがあった。柱の民たちはそれを「鳥よりも高い」と形容した。
昼には照り返す光で、その先端を見る事は出来なかったし
夜には闇に紛れて、やはり先端は見えなかった。
ただ、遠く砂漠まで続く影だけが、柱に終わりがあるということを伝えた。
近くに寄って触れてみると、ひやりと冷たく硬い。
それでいて、力を入れると押し返してくるような強さを持っていた。
柱は無口だった。
柱の民の祖父達の時代には、草原は今よりも広がりを持っていた。
その頃には自給自足の生活を送れたが、今は草原は縮小し、
生活には外貨が必要だった。
部落に訪れた商人達は、口々にこの柱が珍しい鉱物で出来ていることと、
それが富を生むことを語った。
柱の民達は儀式を行い、出来るだけ高くまで登り柱を削り落とすと、
それを売って外貨を獲得した。
月が出ると柱には夜露が降りた。
ひとりの青年が柱に触れ、その冷たさを確かめていた。
青年は、黒い髪と髭を生やしており、その表情には自信が溢れている。
傍らには長い髪の少女が立って青年を見つめていた。
青年は少女に、自分が村を出ようとしていることを告げた。
少女は黙ってそれを聞いていた。自分もついて行くとは言わなかった。
青年はナイフを取り出すと、柱をグイとえぐった。
握り拳程の大きさの柱の欠片を少年は大切そうに布に包むと、
腰に下げた袋の中に収めた。
それは、ただの旅費としてなのか、自分の存在を証明するための手段なのか、
あるいは、柱の加護を得ようとしてのことなのか、少女には分からなかった。
月の光は柱の影を真っ直ぐに砂漠へと延ばしていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
即興文ってことで草稿ですが・・・。
次のお題は「ハンバーグ」「金星」「南京錠」で。
471 :
エヴァっ子:02/06/12 23:12
小生は天体観測が大好きである。
ついで、ハンバーグが大好きだ。
今日もベランダに出て、高い金を出して買った天体望遠鏡を覗き込んだ。
「やぁ、今日は金星がきれいだねぇ」
思わず独り言をもらしてしまうほどだ。
冷たい空気が、澄んだ夜空を小生に見せてくれる。
何とすばらしいことか。
すっかり冷えてしまったハンバーグを食べて、また天体望遠鏡を覗き込んだ。
真っ暗な中に、一つ浮かぶ金星。
その輝きは他の星なんかと比べ物にならないほどすばらしい。
小生の天体観測という趣味を馬鹿にする我が母にも見せてみたいものだ。
ふととあることを思い出し天体望遠鏡から目を離し、後ろを振り返ってみた。
そこにはまだそいつがいた。
業を煮やした我が母が、ベランダの戸につけた南京錠が。
………困ったことにそいつの口はしっかりと閉まっていた。
また、だんだん白く染まってきた空を天体望遠鏡で覗き込んだ。
「やぁ、今日は金星がきれいだねぇ」
―――一体何時になったら、入れてもらえるのだ?
小生の目に、涙が少しにじみ出た。
電波チックに逝ってみました。
次のお題は『地震』『ナイフ』『ロッカー』で。
男の家には代々つたわる開かずの扉があった。
扉は屋敷の北東に荘厳に普請されており、特殊な南京錠でその開閉を封じられていた。
金銀財宝が眠っているのではないかという噂から、その部屋は金の部屋――金星と呼ばれていた。
男の父親も幾度となく金星への侵入を試みたものの、錠を解くには至らなかった。
その世界では一目置かれる凄腕の鍵師を雇ってみたものの、
その鍵師ですら南京錠をあけるには力不足であった。
男自身も権謀術数を尽くし、ありとあらゆる手段を弄した。
大学の工学部に入り、そこで材料工学を学んだ。
大企業の研究室に頭を下げて加わらせてもらい、己の研究にいそしんだ。
鍵師の世界でも一から学んだ。
そして、苦節数十年。ついにその南京錠を破ることができた。
さて、男が金星に入るとそこは薄ら広いだけのかび臭い、君の悪い部屋だった。
金銀財宝などはどこにもなく、只、埃の積もった床に、
皿に乗った石のようなものと一枚の紙切れがおいてあるのみであった。
「あなたの好きなハンバーグ、子供たちに取られぬようここに置いておきます――母より」
ごめんなさい。書いたので…・。次のお題は471の『地震』『ナイフ』『ロッカー』で。。
『地震』『ナイフ』『ロッカー』
文章比較
DQN:「地震でロッカーが揺れてナイフが落ちた。」(5行未満で)
厨房:「ロッカーにナイフを置いた。その時地震が揺れました。」(30行くらいで)
みずし:「それはナイフのようにトガッたロッカーでした。人呼んで”さすらいのロッカー”」
え?みずしの文で「地震」はどこにいったかって?
そりゃもう、2ちゃんねる作家としてのみずしを根底からぐらぐらと・・・
次は「こぶし」「モンブラン」「ひきこもごも」
474 :
「こぶし」「モンブラン」「ひきこもごも」 :02/06/13 10:12
拳を壁に打ちつける音が続いている。
「また403号室のあの男だな」と夕子は思った。
1時間程前に彼とエレベーターホールですれ違った時の、
彼が自分を見る悲しそうな目を思い出して夕子は少し暗い気持ちになった。
夕子はベッドから起き上がると部屋の明かりをつけキッチンへ向かった。
軽く手を洗ってからゆっくりとタオルで手を拭くと、小さな冷蔵庫を開けモンブランの入った紙箱を取り出す。
左手に紙箱を持ったまま、右手で食器棚から皿とフォークを用意し、それらを持って夕子はベッドルームに戻った。
「躁鬱的というのか、悲喜交々至るというのか・・・・・・」
夕子はそう呟くと、モンブランにフォークを入れた。
403号室の男はいつもエレベーターホールに居た。少なくとも、夕子がエレベーターを利用する
午前7時30分と午後10時には、いつもその場所に立っていた。
男は、夕子が幸福な気持ちで帰った日には、階段の踊り場でダンスを踊った。
「なるほど、踊り場というだけあって、踊るには困らないスペースがあるものだな」
夕子はすれ違いざまにそれを見る度、いつも少し感心した。
今日のように夕子が疲れ切って暗い気持ちで帰宅すると、男は顔を伏せたまま拳を壁で叩き続けた。
拳が壁を叩く音は大きな振動となって夕子の部屋まで届き、彼女の気持ちが落ち着いて、
眠りにつけるようになるまで、いつも続く。
夕子はベッドの中でその音が聞こえると、一度起き上がって気持ちを落ち着けるのが習慣になっていた。
夕子は皿とフォークを流しに運ぶと、冷蔵庫から水の入ったペットボトルを出して一口飲んだ。
流しに戻り、洗剤を使って皿とフォークを洗う。泡が皿とフォークと夕子の指を覆っていく。
「明日も会社だ」
夕子はそう独り言を言うと、軽快に蛇口から水を出し食器についた泡を濯いだ。
もう壁を叩く音は消えていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
次は「3257円」「常緑樹」「習字」
475 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/13 12:03
「3257円はねぇだろう。」
足元見やがってよ。買った時5万もしたんだぜ、このブルゾン。
なんで買取に消費税かけんだよ。ふざけんのは顔だけにしろよ。
マッカッカのモヒカン刈りの、目つきの悪い、黄色いTシャツに
ダボダボの汚ネェGパンの大男のバイトが、いかにもウザそうに
ゴミでも見る見てぇに俺のブルゾンを買い取り篭に放り込みやがり、
それからさも「お前にクレテヤルには分不相応だ」てな顔しながら
ムンズとつかみ取りしてヨコシヤガッテくださりました3257円を
それでも大事そうに今ポケットに仕舞い込んで、2度ほど確認して、
常緑樹が輝く花屋の前を横切り、習字のおばちゃんに挨拶して、
テレビ屋の前の定食屋に入った。
ああ、明日からガッコ行かなくていいんだよなぁ。
-----------------------------------------------------------------
次は「蟹缶」「合宿」「太陽」
476 :
「蟹缶」「合宿」「太陽」 :02/06/13 12:24
今日で合宿も10日目。連日の練習と照りつける太陽、うだるような暑さで皆の
疲労もピークに達している。朝食の時ふと誰かが漏らした「俺ここに来てから
ずっと蟹缶が食べたくてしょうがないんだよね」の一言に皆が俺も俺もと同意
した。不思議だが俺も含めたメンバーの全員がそう思っていたのだ。
その夜、翌日はオフにするということで遅くまで起きていると階下の世話人
の老夫婦の部屋から声が漏れ聞こえてきた。
「カニカーン・・・カニカーン、そう・そこが快感なの・・・」
------------------------------------------------------------------
次は「黄色いTシャツ」「無職」「ADSL」
477 :
「蟹缶」「合宿」「太陽」 :02/06/13 12:45
さすがに魚屋が多いな。首を突っ込んで店の中をを覗くと
恥ずかしがり屋の蟹が、蟹缶(はにかん)でいる。
それにしても、なんて大きな蟹なんだろう。
「今日の夕飯、蟹ってことは無いよな?」
「無い無い。一泊3000円の宿で蟹が食えるわけが無い」
今夏の水泳部の合宿は、伊豆の××町で行われている。
伊豆と言っても、一応伊豆半島にあるというだけで、
伊豆の片隅にも置けないような、風情も何も無いさびれた田舎町である。
ただ、飯はうまい。新鮮な魚介類が山のように出る。
合宿は腹が減るので、皆、合宿(がっつく)ように食べる。
朝は5時に起きて体操をする。それから海沿いを8キロ走って、
やっと朝飯が食える。午前中は学習時間ということになっているが、
実際は自由時間のようになっている。午後からは海で泳ぐ。
こんな生活が、あと5日も続く。
太陽に虐められた背中が、早くもい太陽(痛いよう)と泣き言を言っている。
次は「黄色いTシャツ」「無職」「ADSL」で
478 :
「黄色いTシャツ」「無職」「ADSL」:02/06/13 19:29
連続するとボディブローのように効いてくる。チアキは歯をくいしばって踏み留まろうとした。
しかし、姿の見えない怪人は攻撃の手を緩めない。
疲れを知らないのか、よっぽどエネルギーが有り余っているのか。
いったいこの怪人は誰なんだ。こんなにオヤジギャグを繰り出すとは。しかもネット上である。しかも小説の即興三題話だ。きっと黄色いTシャツを着て無職で、しかしADSLにはつながっているような男だろう。
落ちるべきか、堕ちざるべきか。チアキの額に汗が浮んでいる。
次のお題、「鬚」「ターコイズ」「柔らかな」でよろしくどうぞ。
479 :
「鬚」「ターコイズ」「柔らかな」:02/06/14 11:18
「君の誕生石は何かな?何でも好きな石をあげよう」
鬚のおじさんは、ニコニコ顔を崩さずに、じっとモモコを見ています。
(子供にタダで宝石をくれるなんて、なんだかおかしいわ)
いぶかるような目でおじさんを観察しながら、慎重にモモコは答えました。
「ターコイズです」
「ほほぅ!」
モモコの答えを聞いて、おじさんは満足げに頷きました。
きっとモモコがアメジストと答えてもトルマリンと答えても、
彼は満足げに頷いたことでしょう。
「ふむふむ。約束は守らねばならんからな」
おじさんは上着のポケットに手を入れると、柔らかな布にくるまれた
水色の小さな丸い石を取り出しました。思わずモモコも覗き込みます。
「これがターコイズなの?」
モモコは自分の誕生石がターコイズという名前なのは知っていましたが、
それがどんな色をしていて、どんな形なのかは知らなかったのです。
「どうだい?きれいだろう?」
モモコは、うっとりとしながら頷きます。
「おじさんの家に来れば、もっと沢山の石があるんだがなぁ。
君にも少し分けてあげられるよ」
モモコは石の持つ魔力に、すっかり取り付かれてしまっていました。
後の警察の聞き込み捜査で判ったことなのですが、
モモコと同い年くらいの女の子が、中年の男性と手を繋いだまま
森の方へ歩いていったのを、学校を早退した病弱な女子中学生が
目撃していたということでした。
こうしてモモコは失踪し、誰にも行方が分からないまま、七年たち、
民法第三十条によって、けっきょく死亡の認定をうけることになったのです。
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次は「セックス」「嘘」「ビデオテープ」
ジリジリと音を立てて、青白い画面が再生した。
あたしは煙草を燻らせながら、暗い部屋の中であたしを見てる。
幽かな電子音をかき消す喘ぎ声は、確かにあたしのものだった。
情けない声をあげ続けている自分を、何処かであたしは否定した。
あたしの体をまさぐる手は本物だっただろうか。
あのめくるめく官能は真実だっただろうか。
嘘に塗り込められた恋をまた繰り返してしまった。
単純なビデオデッキみたいに。
涙なんて流すほどには弱くなれない自分を、軽蔑して、好きになった。
彼との愛を逐一記憶した気分の悪いそれを、あたしは乱暴に取り出して。
開いた口から、真っ黒な証拠を引きずり出す。
死んでしまった過去を足元に見下げ、やっぱりあたしは哀しんだ。
人並みでいられる確認みたいな後悔じゃあ、明日の朝には無くなっている。
ふと、振りかえって思うのだ。
砂嵐を映し続ける、小さなテレビに。
さっきまで映っていたあたし。
セックスをしていたあたしったら、なんて綺麗なんだろうと。
次のお題「少年」「飛行機」「入道雲」
481 :
「少年」「飛行機」「入道雲」:02/06/15 14:45
「夕立、来そうだね」
少女は黒々と濁った入道雲を見つめながら云った。
少年は黙ってハワイアンブルーミックス風味のかき氷を頬張っていた。
「このかき氷、やっぱりイチゴ味にすれば良かったね」
少女の手にも少年と同じ味のかき氷があったが、その味を不満に思った。少女は少年に
好意をよせている。二人ともイチゴ味が好きだったが、少女が冒険したいと云い、二人は
見かけないこの味を注文したのだ。苦い味がするが、二人の間に流れる空気も同じであった。
二人は川沿いの土手に座って、飛行機が入道雲をつき抜けて飛行しているさまを眺めて
いた。かき氷はまだ半分くらいも残っている。いよいよ雨が振って来そうだとみた二人は、
何処か避難できそうな場所を探そうと立ちあがった。そのとき、入道雲から白い緒を引い
て飛んでいるセスナ機から、何かが飛び出したのに気付いた。
その物体は徐々に大きくフェードインしていくと、それは人間だと二人は認識できた。
人間は凄い速さでこちらのほうに向かって落下している。
「グッドダァァァイヴ!!!!カモン!マイザッアァァァァァァァァァスッ!!!」
その人間は気持ちの悪い音を大きく立てて地面に激突し、ぐしゃぐしゃに潰れた。周辺
にぶち撒けられた血は、少年と少女の全身を赤く染め、かき氷にも降り注いだ。
「これでイチゴ味が食べられるね」
呆然と立ち尽くす少年を余所に、少女は美味しそうにイチゴ味のかき氷を口にした。
次のお題は「森羅万象」「有象無象」「色即是空」
482 :
「森羅万象」「有象無象」「色即是空」:02/06/15 16:49
都会の人間には信じられないかも知れないが、
京都の田舎辺りの中学では、坊主が住職の仕事と掛け持ちで、
教師ヅラをしている事も珍しいことでは無い。
実際、俺の担任をしていた“木魚”というアダ名の国語教師も坊主だった。
木魚は罰を与えることが好きな教師だった。
教科書や宿題を忘れたり、テストで赤点を取る生徒がいると、
いつも嬉しそうな顔で漢字の書き取りを命じた。
書かされる文字は、諸行無常、森羅万象、有象無象、色即是空といった
仏教の匂いがするものばかりで、漢字練習の名を借りた写経のようにしか思えなかった。
頭を短く刈り込んで簡素な格好はしていたものの、木魚は生臭坊主だった。
給食に出たものは肉や魚でも残さずに食べたし、
蝿や蚊などが飛んでいれば、当たり前のように打ち殺した。
実際に俺が見たわけではないが、女子を淫らな目で眺めていたこともあったという。
一度プリント用紙の裏に、墨で「なまぐさ」と大きく書いて
教卓の中に入れて置いたのだが、これは特に反応が無くガッカリさせられた。
先日クラス会があって、木魚と久しぶりに顔を合わせた。
数えてみてから8年間も会っていない事に驚いたのだが、
昔から坊主頭なので年をとった感じがしない。坊主の役得だと思うと可笑しくなった。
二次会では、木魚は当然のように酒を飲み、上機嫌で俺達を叱った。
今では出世して教頭になっているらしいのだが、
それでも、頼まれればお経をあげに遠くまで出かけて行くのだという。
そうして金も酒も、貰えるだけを喜んで貰ってくるのだそうだ。
教師らしくも坊主らしくもないが、底抜けな人間らしさに開いた口が塞がらなかった。
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エッセイ風だけど全部ウソ。
次は「小石」「綿棒」「ハムサンド」
483 :
「小石」「綿棒」「ハムサンド」:02/06/15 17:47
山の端は朱色(あけいろ)に染め上げられ、夜の帳が滲み出る空の果ては涼しげだ。
名も知らない小さな白い花が、堤防の斜面を埋め尽くしていたが、もう見えない。
その白い花を見て綿棒のようだねと言った、君の言葉が忘れられない。
二人で通ったあの店はもう跡形もない。
二人で食べたハムサンドの味、今でも覚えていますか?
十数年振りに郷里は、まるで私を拒絶するかのように、無言だった。見知った顔は身内しかいない。だからだろうか、葉月の日差しにも負けずに賢明に生きている桜並木、その葉桜の木陰で君の幻を見てしまったのは。
互いの視線だけが行き交い、すっかり陽は落ちてしまった。いや、言葉はいらなかったのかもしれない。そう、言葉は入らなかったのだ。
「故郷は変わり行くもの。でも、きっと新しい何かが芽生えるはず。一緒に探してみませんか?」
君の幻が言った。私は返事の変わりに、子供の頃のように小石を蹴り上げた。
次は「W杯」「市町村合併」「待ちガイル」
484 :
小石、綿棒、ハムサンド:02/06/15 17:51
もし、あたしがあの時泣いていなかったら
この綺麗な小石はあの人の手にあったと思う。
爪からはみ出した、空みたいな色のマニキュアを、白い綿棒でぬぐいながらふと思う。
あの日、あたし達が川原を歩いていたら、なんだか綺麗な小石を見つけた。
そのシチュエーションがあまりにも切なくて、夕焼け具合があまりにも切なくて
あたしは泣いてしまったんだ。
あの人は困ってこの小石を渡し、一生懸命あたしをなだめたのをよく覚えている。
・・・会いたいなあ。あたし、伝えてないのに。伝えたかったのに。
せっかく空色のマニキュアを塗ったんだから、あの人に会いに行こう。
あの人の大好きだった、セブンのハムサンドを買って、会いにいこう。
あの人がいなくなって、もう3年が経つ。
そろそろケリをつけなきゃ・・・。
次は「お菓子」「サンダル」「紫陽花」
485 :
ごめんなさい!:02/06/15 17:53
次は483さんのでお願いします。
486 :
次は「W杯」「市町村合併」「待ちガイル」:02/06/15 19:41
その日、日本はW杯に熱狂していた。
すくなくとも、その辺鄙なふたつ田舎町を除いて。
そこはあまりにも田舎で、サッカーのさの字さえ知らなかったし、それ以前に、いまここで、2つの田舎町の命運を決する戦いがひそやかに行われようとしていたからだ。
もちろん、種目はサッカーではない。
格闘技だ。
それぞれの田舎町が1名の代表者を立てて争い、負けたほうが勝ったほうに市町村合併されてしまう。
辺鄙なド田舎のくせしやがって、両方の町もそりゃあプライドだけはタカダッカーで(縄文時代から続く由緒ある町です。ほんとかね)、しかも、まあ、ここに書けないようなつまんない閉鎖的ないざこざで憎みあっていた。
つまり、政治的な理由で吸収されるのはしかたないにしても、主導権はこっちの町が握るぞと両方譲らず、こんな代理バトルを開催することになったのだ。
いやはや、田舎モノのリクツはよくわかんないね。
H町の代表者は、ダレあろう、ガイルくんだった。得意技は「待ちガイル」。
そんなわけで、相手が猪突してくるのを、いつものように待ってたんだけど、待っていた場所が悪かった。
なんか地面が振動するなと、ふと見てみたら、なんと線路の上だったんだね。
赤字路線だったけど、このときはまだ廃止されていなかった。
それが振動してるってことは、そう、電車がすごいいきおいでやってくるってことだよ。
さあ、大変だ、ガイルくん。このままじゃあ轢かれちゃう。
だけど、待ちガイルの戦術を解いたら、あっという間にガイルくんやられちゃうよね。
なんたって相手は天敵野生児ブランカくんだもの。ローリングサンダーで一撃昇天、やっぱり死んじゃう。これは困った。
焦るガイルくん。もう顔はまっつぁお。汗がだくだく吹き出てきたけど、どうするかまだ決めかねているみたいだ。
そうこうしているうちに、だんだん振動は激しくなって、驀進してくる電車の姿さえ見えてきた。
さあ、どうするガイルくん!
以下次号!!!
487 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/15 19:41
次は「お菓子」「サンダル」「紫陽花」 で。
488 :
「お菓子」「サンダル」「紫陽花」 :02/06/15 21:00
窓辺では、紫陽花が雨に濡れているのが見える。彼女は台所で夕飯を作っている。
僕はただ紫陽花と彼女を交互に眺めているだけだ。
傍のテーブルの上に転がっているのは、数種類のお菓子と、CD、それから食べかけのパン。
「ねえ、ちょっと味みてよ」僕はその声が僕にかけられていることを一瞬理解できなかった。
「……俺? いいよ、任せる」
「任せるって……、いい加減ね」彼女は台所からちょっと拗ねたような声をだす。
「いい加減なのは性分なので」「もういいわ、じゃあ、適当に作るわよ?」
僕は、ああ、と曖昧な声をだしてから、ポケットをまさぐって、立ち上がった。
「どこ行くの?」台所のライトは彼女のうつむき加減の顔を映し出している。
「ああ、タバコきれちゃったから……」彼女は料理を見続けている。
「そう。あと15分くらいでできると思うから」
「OK。それまでには余裕で間に合うね」
台所の横を抜けて玄関を出るとき、彼女が後ろを向いて、いってらっしゃい、と言った。
僕は手を挙げて、サンダルを履くと、雨に濡れきっている街を、傘とともに歩きはじめた。
次は、「ファンデーション」「かぼちゃ」「ダイレクトメール」で。
489 :
「ファンデーション」「かぼちゃ」「ダイレクトメール」:02/06/15 23:14
郵便受けにはダイレクトメールが溢れていた。どこで、住所を知られたのか。
どんなに引っ越しても、この種のどうでもいい郵便からは逃げられず、そのくせ
大事な手紙は届かない。屑のような紙束から化粧品の試供品だけを除いてあとは
本当の屑にした。
買い物の袋が肩に重い。スーパーのビニル袋から野菜がはみ出る自分が嫌いだ
った。かぼちゃとミネラルウォータが重い。苦労して運んだかぼちゃは馬車には
化けず、裏ごししてスープに化かした。
食事の後、試供品のファンデーションをつけて、再び郵便受けを覗きに行ったが、
手紙は届いていなかった。
「組み合わせ」「山」「スピード」
「組み合わせ」「山」「スピード」
こういうものはスピードが大切だとぼくは思います。
いや、ほんとに、時間は貴重ですからね。
つまりなんというか、ぼくには他がないだけかもしんない。
らしくないけど、たまにはぼくだって自分の立場にあせっちゃうんです。
だから今日はとても考えました。山のような組み合わせを考えた末に
めぼしいところを塗りつぶしました。
だーっ!とひと通り塗り終わると、模様がとてもきれいんです。
マークシートのこういうのって、キカガク的っていうのかな?
ジマンじゃないけどよく当たるんですよ。ぼくってテストの神サマ!えっへん!
でもこの日はだめだったみたい。おかげで大学落ちちゃいました!!
!
つぎは「感謝」「感想」「あつかん」
かぶったけど勿体無いから書き込みました
次のお題は490さんの「感謝」「感想」「あつかん」で
僕は、山を登っていました。学校の遠足という事で仕方なく山を
登っているのですが、本当に辛い……。周りのみんなが口々に
「水筒の水は、喉が渇いたからといって一度に沢山飲み過ぎると
すぐに無くなってしまい、後々辛くなるのでなるべく節約しよう!」
と言うので水が飲めない。何だか悲しくて泣きそうになってしまうのを
ぐっとこらえました。
そしてやっと頂上に着いたので同じ班の人達と昼食を食べる事になりましたが、
僕と同じ班の山野君は物凄い肥満児で、肥満児が発する悪臭を嗅ぎながらの
昼食に違和感を感じた。そこで、班の皆に
「山野君は悪臭がひどいので、一人だけで
昼食を取ってもらうというのはどうか?」と提案したら突然、山野君が
立ちあがりました……無言で突進してくる山野君の醜い顔面に
鋭いスピードのパンチをお見舞いした。山野君が悪いのではありません。
ただ、物事の組み合わせと言うべきものが、たまたま上手くいかなかった
というだけの事なのです。
物事には、様々に良い組み合わせ、悪い組み合わせというものが存在し、
我々は自分自身の力で<良い組み合わせ>を
勝ち取ってゆかねばならないだろう。
492 :
「感謝」「感想」「熱燗」:02/06/16 01:32
「あんたの働きには感謝するよ。なあ、帰ったら熱燗で一杯やろうや」
同僚がべろんべろんの体たらくで私に微笑みかける。
まだ飲むのか、この無頼漢。私は投げやりに賛同する。
「ああ、そうしようか。幸い俺は一人暮らしだ。俺んちで飲もうか」
「アハハ、帰るのはそこじゃないって」上ずった声が夜道に響く。
「すると君の家か。しかし君の家には家族が……」
「ちがう」
「じゃあ、どこなんだ」酔っぱらい相手に段々といらついてきた私は同僚を睨んだ。
そのとき同僚のどす黒い瞳がわずかに光ったように見えた。
沈黙。月が雲に隠れた。野良猫の鳴き声が聞こえる。女のすすり泣く……。
嫌だ。こんな空間。早く! 早くこの静寂を……。
「どこなんだ!」
「アハハ」不意に同僚の顔色が変わる。「……土の中だ!」
背筋が凍りついた。突然、暗闇から腕が伸びてきて……。
ポン、と私の肩を叩いた。「アハハ。感想は?」同僚の白い歯が闇夜に浮かんでいた。
次のお題は「停滞」「威勢」「言い得て妙」でお願いします。
493 :
「停滞」「威勢」「言い得て妙」:02/06/16 04:27
大抵の教師にはシャドーネーム、つまり、決して本人の前では口に出来ない
あだ名がついていたりする。生活指導にうるさく、エネルギッシュで暑苦しく、
威勢の良い体育教師は、ジョナサンというシャドーネームがつけられていた。
なんのことはない、眉毛がカモメだから付けられたのだが、カモメのジョナサンとは
なんとも言い得て妙ではないか。
そんなジョナサンは、先月、生活指導に燃えるあまり、一人の生徒を殴ってしまい、
懲戒免職となってしまった。ちょうど世間は、景気が停滞中、手痛い失業であろう。
次のお題は、「地図」、「代数」、「売春」で。
494 :
「地図」「代数」「売春」:02/06/16 10:41
−地図があっても道に迷う者はいる。
アキオは何時間も同じ場所をぐるぐると回っていた。
赤レンガの建物の前に立っているロシア人の売春婦も、
最初の2、3度は、アキオが通りかかる度にしつこく声をかけてきたのだが、
さすがに5分ごとに同じ場所を通るアキオを不気味に思ったのか、
今では、アキオと目を合わさぬように努めているのが明らかであった。
頭の上をハゲタカが飛んでいる。死肉を食らう嫌悪すべき鳥である。
鳥の視線で見下ろせば−アキオは思った−俺は阿呆のようだろう。
鳥のやつは、なんだって俺が同じ場所を離れないのか、不思議に思うに違いない。
しかし実際は、立ちんぼうの売春婦から見ても、アキオは阿呆に見えた。
迷子などというものは真剣なのは当人だけで、道をよく知った人間からすれば、
その真剣さがかえって滑稽に見えるものだ。
アキオはぼんやりとした頭で中学時代の出来事を思い出していた。
彼は代数が解からず、数人の級友達と共に教室に残されていた。
「ええ?どうして解からんのかね、君たちは。解法は全て、教科書に出ているのですよ」
大声で怒鳴る教師は教える事に疲れきっていた。生徒達も教わる事に疲れていた。
教室に幸福な人間は、一人も存在しなかった。
「また、赤レンガの建物だ・・・・・・」
これで何度目だろうか。何故地図があるのに迷うのだろう。
アキオは力無く道の隅に座り込んだ。
いっそあの売春婦を買ってしまおうか・・・・・・しかし、断られるかも知れない・・・・・・
目も合わせてくれないのだ・・・・・・きっと声を掛けても無下にされて終わるだけだろう・・・・・・。
頭の上をハゲタカが弧を描いて飛んでいる。一羽、二羽、三羽・・・・・・随分増えたな。
アキオには、全てがどうでもいいことのように思えた。
眠ろう。
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ごめん、長いね。
次は「バター」「ライオン」「クイズ」
495 :
「バター」「ライオン」「クイズ」:02/06/16 14:19
「あれは絶版になったんだよ」私はいった。
「ええー。うまそうだったんだよな。あのバター。なんでだよ」
「サベツモンダイとかやらに発展したからな。まあいいじゃねーか。
せっかく動物園にきたんだから、ドーブツ見ろ」
私がそうはいっても、まだ考えてるのかライオンの檻の前で「虎のバター」
とかうめいてる。
「私は、あれよりもグリム童話の「おいしいおかゆ」のおかゆのが食べたかったよ」
つーと「何それ」とか答えやがった。くそ、死ね。クイズしてんじゃねーんだぞ。
町ん中をおかゆ食べながら掘り進んでいくんだよ! うまそーなんだよ!
ふと、目があった。恨めしそうな顔であいつが見てる。なんだ、話を仕掛けたのは
お前だろうが。
「あのさ、今日はデートなんだよ、判ってる」
「おう!」と勢いよく答えたら、私はいきなりキスされた。
次のお題は「夕焼け」「腹案」「アンデルセン童話」
496 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/16 15:00
「アンデルセンの童話って読んだことある?」
「赤頭巾とかだろ、知ってるよ」
「あははは、違うよそれグリムだよー」
「同じだろ」
「だって違うもん。それにちゃんと本で読んだことがあるかってことなんだけど」
「本? 本ねえ。絵本じゃなくてだろ? 売ってるのか童話の本なんて」
「売ってるよ。読んだことないんでしょ?」
「まあ、ないな。そう言われると。で、それがどうしたの」
「マッチ売りの少女とか話は知ってるけど、文章で読んだことないなあと思って」
「それだけ?」
「そうそれだけ。でも気にならない? 読んだことない本ってきっといっぱいあるんだよ」
「全然気にならない」
「ふふふ……」
「なんだよ、急に。ダイジョーブか?(アタマが)」
「そんなあなたにわたしは一つのフクアンを持ってきたのです!」
「フクアン?」
「そうフクアン」
「ああ、腹案ね。ムズかしい言葉使うなよ」
「じゃーん! これなんだ?」
「お、すげえ。なにこれどうしたの」
「ご家庭で楽しく読書の練習ができる6〜12歳対象の童話文学セット!
全26巻でお安く配布しております。今ならなんと14万8千円!!」
「は!? 高けぇよ!! おまえコレ買ったの?」
「ううん。親戚のオジサンちで買ったんだけど、いらなくなったからって貰った」
「はー。こんなんが15万するんだ。馬鹿みてえだな」
「ねえ?」
「ん?」
「これをあなたにプレゼントします」
「あ? いらねーよ。本好きじゃねーもん」
「そういうあなたの前回の国語の点数はー?」
「あ、まあな」
「ちょっとでも文章読む練習しなさいよ」
「いらね」
「せっかく貰ってきたのにい」
「ご苦労」
「うー」
「あー、じゃ、ま、もらっとくよ」
「オッケ! ね、今日はなーんか夕焼けキレイじゃない?」
「まあな。いつも見てるけどな」
次は「腹痛」「望遠レンズ」「カルピスウォーター」で。
固有名詞だったので、「腹痛」「望遠レンズ」「乳製品」に訂正。
498 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/16 15:55
ひどく寒いおおみそかの夕暮れでした。こんこんと降りつづいた雪はやんで、
あたりは夕焼けの色にそまっていました。
みすぼらしい姿をした一人の少女が重たいかごをかかえて歩いていました。
少女はふと道端に盛り上がった雪のかたまりを見つけました。金色にちらちら
と輝くものが、白い雪の下に見えていました。不思議に思って両手で雪をかき
のけると、金の王冠をかぶった裸の老人が倒れて埋まっていました。老人は寒
さのために全身が真っ青です。
「暖めてあげなければ死んでしまうわ」
少女はかごからマッチを取り出して火をつけました。マッチはしゅっと音を
たてて燃え、やがて消えてしまいます。少女はすぐにもう一本のマッチに火を
つけ、老人の冷え切った体を暖めようとしました。少女の仕事はマッチ売りで
したから、かごの中には沢山のマッチがありました。けれども、マッチの弱い
火で一人の死にかけた老人を暖めるのは難しいことでした。
「もっと燃えるものはないかしら」
まわりを見渡すと、どこまでもつづく雪野原で、燃やせそうなものはありま
せんでした。少女は老人にぴったりとだきついて、自分の体温であたためてみ
ようと思いました。少女はするすると自分の着物を脱ぎました。そして、老人
の体を抱いた少女はびっくりしました。裸だと思っていた老人が、何かを着て
いる感触がするのです。目に見えない服を着ているようなのです。手ざわりで
さぐると、とても上等なガウンのような感じでした。少女は見えない服を老人
から脱がせると、まるめて火をつけました。見えない服は、はげしい炎をあげ
ると、勢いよく燃えました。いつまでもいつまでもさかんに燃え続けました。
おかげで、すっかり冷たかった老人の体はじょじょに温かくなり、肌もあかく
なって、意識ももどってきました。
少女はまずしいわが家に連れかえって、老人の介抱をつづけました。1ヶ月ほ
どで、老人はすっかり良くなりました。なんと驚いたことに、老人はとある国
の王様だったのです。少女はその国のお城に電報を打ちました。
裸ノ王様ヲ雪ノ下ニ発見
お城からはすぐに返事がきました。
命ニ別状ナイカ 栄養状態ハ良イカ スグ救援ニ向カウ
少女は返事を出しました。
王様元気イツモ満腹案ズルナ
お城から迎えの家来たちがやってきて、王様は少女を連れて国に帰りました。
二人は末永く幸せにくらしたそうです。
アンデルセン童話補遺より「はだかのマッチ売りの少女」
499 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/16 16:41
稟議14-006
大ニッポン納豆株式会社宣伝部
新製品「J納豆」CM企画案
納豆は国民食(一部地方を除く)である。日本食文化の清華である。
今回のCMでは、食品として安全面での、納豆の乳製品に対する優位性を強調したい。
夏の広い草原に100名の人を立たせる。
半数の50名には、新製品J納豆を食べていただく。
残りの50名には、牛乳をはじめ乳製品を食わせる。
そのまま時間が経過する。何時間でも待つ。
日本人には乳製品に対する耐性が弱い人が多い。
大草原であり、さえぎるものもない。トイレもない。
乳製品を食べた人の多くが、お腹をこわしてくる。腹痛がはじまる。
表情がこわばる。脂汗が流れる。腰をおろす人もいる。
納豆を食べた方々は涼しげに微笑している。
納豆の乳製品に対する完全勝利!
カメラの望遠レンズが、その差を冷徹に記録する。
稟議結果 却下 給料もらいたかったら、もう少し考えるように。
500 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/16 16:48
499でした。「相続財産」「引きあげ」「スケッチ」
501 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/16 21:27
「もうっ、王様ったらエッチ・スケッチ・ワンタッチなんだからぁ。」
高級娼婦のエリスは、子供のような飛び切り可愛らしい声でじゃれあっていた。
エリスが国王に近寄ったのは、相続財産目当て以外になのものでもない。
一国の王ともなれば、目もくらむばかりの財産を集めているに違いない。
相続は直系の子孫にのみ行われるが、王の妻は不妊症で皇室はどうしたものかと
頭を悩ませているともっぱらの噂だ。
王様の子を何が何でも身篭って、子供を認知させちゃえば、薔薇色の人生が待っている。
エリスはそう信じて、国王と愛し合った。
事が済んでも、エリスは王様に媚を売りながらおしゃべりをしていた。
「ねぇ、王様は最近、何か嬉しいこととかありました?」
「そういえば、最近、正妻が妊娠したらしくってなぁ・・・」
こりゃ引きあげだ。
次は「爆竹」「苔」「理解」。
「嗚呼、太鼓が聞こえ出したねェ」
と母が言った。
耳を澄ませば幽かに、遠くの神社から夏祭りの太鼓の音が響いてくる。
浴衣の裾を払っていった夜風。其れに混じる日暮の声が、更に心地よさを増長した。
僕は忙しく動く母の姿を見送って、また夕闇に紛れた赤黒い空を見る。
久々の帰省。懐かしさの余韻に浸っていると、姪っ子のカナが転がる様に僕の傍へ走ってきた。
「佐々木ん兄ちゃん。祭に行かん?」
まだ6歳の幼い手が、僕の新品の浴衣を引っ張る。
皺になってもいけないので、カナを連れて祭に行った。
村の小さな氏神を祭る神社は、恐らく普段では考えられない賑わいだった。
何処其処で派手な爆竹が鳴り、人々の笑い声が聞こえる。
神社の世話役に引っ張り出された親父が、へべれけになって笑っているのが見えた。
カナは夜店の金魚掬いに躍起になっている。
僕はカナに行く先を伝えて、その場を離れた。
村の全員が親戚のようなこの土地じゃあ、カナを攫う悪い奴らもそうそう入り込めないだろう。
さて、カナを手を離れ暇になった僕に、子供の頃良く遊んだ竹やぶが目に飛び込んできた。
神社のちょっと裏手に密生している竹林。苔むした実にじめじめした場所だった気がする。
そういえば、子供の頃。
僕は思い出していた。子供の頃、あの竹薮でふらふら光る何か、を見たことがある。
其れは暫く空を泳ぎ、ふらっと消えてしまった。
消えていた記憶が呼び戻されて、僕は竹林に足を運ぼうとした。
アレが何か確かめてやろうと、今、思った。
足を踏み出したその時。
「いかんよ。」
カナの声がした。振り向けば。
「いかんよ。兄ちゃん。お狐さんに怒らるうよ。」
カナがじっと見ていた方向を僕も省みた。しかし、其処には何もなく。
カナの手が僕の袖をそっと引いたのがわかった。
カナを振りきる事も、其れを確かめる事も諦めて、僕はカナの手を取った。
そして、僕は背を向ける。
理解し得ない暗い影の刺さるような視線だけ感じながら。
長くなっちゃった・・・・。
次のお題。「薔薇」「憂鬱」「午後の雨」
503 :
「薔薇」「憂鬱」「午後の雨」:02/06/17 00:56
雨というのは、なんて素敵なんだろうと思う。
雨が降って憂鬱?お出かけできない?洗濯物が乾かない?
私ならまさかーって感じ。だって雨ほど楽しいものはないのだから。
特に夏の夕立。突き刺すような午後の雨。
嫌な事も、うるさいお母さんの怒鳴り声も、全て洗い流してくれる。
どんな事にも負けない、強い強い、雨が好き。
でももっと好きなのは、その雨をまるで惹きたて役のように背景にして、私の部屋の
窓際に咲いている、青い薔薇を眺める事。
高貴だと思う。そして有無を言わせない美しさだと思う。彼女の棘は、さながら大女優の品格の表れのよう・・・。
全てを消し去る豪雨を背に、一輪だけ咲き誇る青い薔薇を見るのが好きなのだ。
私もこうありたいと、思えるのだ。
次のお題は、「刹那」「闇」「綺麗」で・・・。
504 :
「爆竹」「苔」「理解」:02/06/17 01:15
300台の車が停められる巨大デパートの屋外駐車場
その中央に一晩のうちに新円を描くようにビッシリと生えた苔
いくら綺麗に掃除しても一晩で再生するという謎
再生する度、円周が巨大化していくという事実
勢いを増しながら外部へと侵食していく苔
慌てて事件を報じ出すメディアと理解に苦しむ植物学者達
苔によって覆い尽くされた町と覆い尽くされようとしている隣の町
交通機関は麻痺し移動手段は徒歩、さまざまに飛び交う苔に関する仮説
宇宙人の攻撃又は自然からの報復?終末の予感に怯える人々
暴徒によって破壊された町、鳴り響く爆竹と女の悲鳴、割れたガラス
船や航空機によって海外に運ばれる胞子
驚くべき速度で苔によって覆われていく地球
化学薬品による駆除の失敗により生み出された苔の変種
人体への苔の寄生による死亡例の報告
全身を苔に覆われた死体の山、滅び行く人類と巻き添えをくった動物達
壊れかけたラジカセから流れる、人類最期のラジオ放送、田園交響曲
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被っちゃったんで、次は「薔薇」「憂鬱」「午後の雨」
ソーリー。次のお題は、「刹那」「闇」「綺麗」で・・・。
506 :
「刹那」「闇」「綺麗」:02/06/17 03:49
かくして、かの摩利信乃法師は虚空に出現した黒機兵に乗り込んだのでございます。
堀川の若殿様はさほど驚いた容子もなく、懐より扇子を取り出しなさると、
「成る程、三千世界は広大無辺じゃ。摩利支天の妖術、確かにこの眼で見せて貰った」
と、仰有いました。
その刹那、あたかも周囲の闇を切り分けるように、八方より飛来した光の群れが御庭の一点をとらえたと思いますと、瞬く間に牛車ほどの大きさにまで膨れ上がり、黒機兵と同じく、人の形に姿を変えたのでございます。
「じゃが、わしが、その方と同じ法術を修めたと聴けば驚くかな?」
若殿様は、恐ろしいほどの笑顔を、沙門の乗った黒機兵に向けて仰有いました。
その綺麗なことと申しますと、桟敷や御簾際にいた女房たちが、一斉によろめき倒れたほどでございます。
「雅平よ。姫君は渡さぬ」
若殿様は、そう仰有いながら、白機兵の中に乗り込みました。
えーと、芥川龍之介がロボットヲタクだったら、という設定で書いてみました。
次は「サボテン」「聖櫃」「町奉行」。
507 :
「サボテン」「聖櫃」「町奉行」:02/06/17 16:23
町奉行の狩野は多忙である。日々、町人の訴えに耳を傾け、采配を下す。新
緑の美しさに目をやる閑もない。気づけば汗ばむ季節になっていた。にじみ出
す額の汗をぬぐいつつ、親不孝をしたという道楽息子の件をなんとか裁き、密
通をしたのしないのと犬も喰わぬ夫婦喧嘩を調停した。その次に狩野の前に現
れたのは、一人のバテレンであった。
「いかがいたした」
毛唐老人は目をしばたいて訴える、----聖櫃を取られました。私にとっては
大事な物です。信仰のない者には、ただのガラクタ箱にしか見えますまい。
「泥棒の心当たりはあるのか」
毛唐老人は首を横に振る。与力の一人が狩野の耳もとで囁く、「御館様とバ
テレンは近頃、仲悪しくあらせられます。狩野様、この件には深入なさいませ
ぬよう」
狩野はしょぼくれた老人の青い眼を覗き込んだ、「探させよう。落胆めさる
な」
慣れない言葉で礼を云い、暑そうな黒服の裾をひきずるようにして老人は
帰っていった。
町奉行の狩野は多忙である。日々、悩みごと苦しみごとを抱えた町人たちの
訴えを聞き、倫理に照らして采配を下す。いつしか緑が濃く茂り、蝉が姦しく
騒ぐ頃となった。ある朝、狩野の前に現れたのは、いつかのバテレンである。
いまだに暑そうな黒の長袖に萎びた躯を包んでいる。
「いかがいたした」
毛唐老人の目は輝いている、----聖櫃が戻ってきました。本当にありがとう
ございます。どうぞこれを、気持ちばかりの。
「そうか、見つかったか」
与力の一人が狩野の耳もとで囁く、「狩野様がお命じになったとおり、何人
かで聞き込みいたしました。たいした事件でもありませんでした」
満面の笑みを浮かべて、老人はかれの目と同じように光る棘だらけのものを
差し出した、----サボテンです。何の役にもたたぬ植物ですが、育てれば少し
ずつ大きくなりましょう。私共の友情と感謝の証に、どうぞ、庭の片隅にでも
置いてやって下さい。
「そうか。珍しいものだな。ありがたく頂戴いたす」
町奉行の狩野は多忙である。庭の隅にサボテンを植えてそのまま忘れた。老
人はほどなくこの異国の地で死んだ。バテレン禁止令がお上から回ってきて、
町には一人の毛唐も見なくなった。やがて狩野も死に、狩野の息子も死に、そ
の息子も死に、町のようすはずいぶん変った。かつての大きな屋敷は庭ごと公
園になり、今、その公園の片隅にサボテンがある。棘がきらきら木漏れ日に
光っている。椅子ほどにも大きく育っているが、いまだ何の役にも立っていな
い。
次は、「鬚」「模様」「花の種」でよろしくどうぞ。
508 :
「鬚」「模様」「花の種」:02/06/18 00:21
その老人はアモーゾフといった。
彼の朝は6時前に始まり、畑で昼を迎え、驢馬の荷馬車の上で夕日を眺め、
火酒を片手に月の満ち欠けを赤ら顔で数え、丁度彼の家の厚いガラス窓から
見える丘の上の大樹に月が掛かる頃に床に就いた。
息子3人と娘2に恵まれたが、娘は二人とも嫁いだ先の街が戦禍にまかれ、
ミーシャは消息を絶ち、ゾーヤは彼の家に姿無く戻って来ていた。
アモーゾフは事の他,この出来事を思い出しては悲しんでいたものだった。
長男ピョートルの末子のシニシヤは、アモーゾフに良くなついていた。
そんなシニシアが大病で片足を失った時は、暫らく教会にも通わなくなった。
しかし、そのシニシアが絵画展の大賞を取って奨学金付で美大に進学できる事
になったその日にだけは、いつもの畑には行かず教会で一日を過ごした。
昨日、アモーゾフの興した広大な開拓地で、これからこそは、肥やされた大地から
芽吹く作物が多くの人々を潤すようになるであろう、美しい畑の中で。
小さな葬式があった。
顎を鬚で覆い、飾る事無く皺を刻んだ男の顔に、初夏の昼の光が光の模様を
まばらに注ぐ棺には、彼の愛した花と、花の種、だけが添えられていた。
すまん。次のお題忘れた。
「帽子」「蜂蜜」「時計」でどうぞお願いします。
「帽子」「蜂蜜」「時計」
公園のトイレや、時計台の陰は短くなっていた。太陽の高度が上がっただけだ。
午後から、陽射しはやや強くなっていた。
朝から雲も出ていなく、快晴ではあったが、午前は少し陽が弱かった。
無理やりかぶせられた帽子も、少しは役に立つことになった。
1度太陽を見上げてから、ぼくは傍の時計を見上げる。
太陽の光が反射して、ここでも少し帽子は役に立った。
2時半。約束までにはまだ30分ほど時間がある。
このままここで過ごすには、少々時間がもったいないような気がした。
クルッと見回しても、とりあえずなにもない。そんないい加減な公園だった。
ぼくはとりあえず地べたに胡座をかいてから、時計台にもたれかかった。
金色のメッキがされた時計台は、光を浴びて透明な風をしていて、
ちょうど蜂蜜のような色になっていた。
ぼくは帽子を脱いで、服の袖で汗を拭ってから、もう1度同じようにかぶりなおした。
蜂蜜色の時計を眺め上げても、いくらも時間は経っていない。
ぼくはうんざりとして目の前の景色をただ見つめた。
次は「鉛筆」「肩叩き」「信号待ち」で。
511 :
「鬚」「模様」「花の種」:02/06/18 00:59
朝起きたら体中に変な模様が浮かびあがっていた。言いにくいのだがタンポポの模様である。
アールヌーボー調の黄色い花模様が、体中をビッシリと覆い尽くしているのだ。
顔や手といった、人目に触れる部位だけには、浮かんでいないことだけが助けだった。
医者は前例の無い症状に首を傾げたが、一種のアレルギーでは無いかと言った。
タンポポの種を吸い込んだのが原因かも知れないという。
そんな馬鹿な話があるものか、木や花の種を吸い込んだだけで花の模様が
体に出るのなら、まず大豆やトウモロコシの花の模様が先に出るはずだろう。
こちらは真剣に悩んでいるのに「綺麗でいいではないですか」などと無責任なことを言われ、
俺は机の上のカルテを空中にばら撒くと、医者の髭をひきむしって怒って家に帰った。
出された薬は隣の犬にやってしまった。
日常生活には支障が無いが、これでは人前で肌を露出することが出来ない。
銭湯にも行けないし、海にも行けない。半袖のTシャツすら着れないのだ。
事情を知らない人は刺青だと誤解するだろうし、誤解されるのは許せても
タンポポの刺青を入れるだなんて、神経を疑われそうではないか。
しかしその問題を試される機会は、思っていたよりも早く来た。
俺は居酒屋で出会った女の子と意気投合し、ベロンベロンになりながらも、
アパートに連れ帰ることに成功した。
万年床に倒れこみ、酔いに任せてナニにかかろうとした途端、
俺は自分の体のタンポポ模様を思い出した。
彼女は布団の上で身をくねらせて、恥ずかしいから脱がせないでなどと言っているが、
恥ずかしいから脱ぎたくないのは俺の方だ。
ここはなんとか、服を着たままで済ませてしまうしか無いだろう。
そんな事を思いながら隙を見て彼女のTシャツを下着ごと捲り上げる。
するとそこには、白いモンシロチョウで覆われた、大きな乳房があった。
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次は「鉛筆」「肩叩き」「信号待ち」で。
この場所は人を待つには実に向いていないと思う。
渡るのかと勘違いしてクラクションを鳴らす車は現れるし、
人の行き交いの激しく昼どきには何度か肩をぶつけられた。
何より信号待ちで渡らない人間がいるというのは周りに非常に奇妙に写るものだ。
地面からの放射熱で視界が歪む。場所は確かにここのはずだ。
『この樫の木の下で会おうね』
そう約束したのは、十年前と同じ日付の同じように蒸し暑い日だった。
当時は、今よりはずっと緑が多く潤いがあったと思う。
団地住まいだった僕たちは、いつも一緒に泣いて一緒に笑った
川にザリガニを取りに行き、山にクワガタを取りに行った。それにしょっちゅう彼女に宿題を写させてもらったりもした。
近所の悪ガキどもに、女の子と一緒に遊んでいることをよく馬鹿にされたが、僕はいちいち気にしたりはしなかった。
引っ越して離ればなれにならなければならないと知らされたときには、
僕たちは樫の木の上の秘密基地で二人して泣いたものだ。
当時は良く分からなかったが、大人の事情というやつで、親の勤めていた会社が潰れたのだ。
それで餞別代わりに、
僕は一番大好きな野球選手のポテトチップスのカードを、彼女は番号が各面に彫り込まれた鉛筆を、お互いプレゼントしあった。
彼女にとって野球なんてちっとも興味がなかったけれど、
僕がこのカードをすごく大事にしていると知っていたから、切れ長の目を赤く腫らして喜んでくれた。
彼女の鉛筆は転がすとよく当たるのが自慢だったので、テストの点の悪かった僕は単純に嬉しかった。
時の流れとは残酷なものだ。
大きな樫の木があったあの空き地は蝉のはい出る隙間もないほどに念入りに舗装され
今じゃ樫の木がどこにあったなんて分かりはしない。
でも、二人で埋めたビー玉やクワガタの死体、カエルのおもちゃは、今でもきっとこのアスファルトの下にあるはずだ。
日は暮れ、交差点を横切って延びる影法師もだいぶ長くなった。
僕はしゃがんで、ちびた鉛筆をそっと地面に転がす。
高校や大学の試験で彼女の鉛筆を何度か試してみたけど、ちっとも当たった覚えがない。
からからと空虚な音がアスファルトの上を流れた。
そのとき、交差点を横切る影が二本になった。ぽんと肩叩きするかのように僕の肩に両手が添えられる。
「ね?よく当たるって言ったでしょ?」
以前よりずっと髪が長く大人びてはいたが、切れ長の目を赤く腫らした彼女だった
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初めて文章書きこみました。激しく不安です
次は、「箱船」、「モルモット」、「脇差し」で
炎天下、雑木林では捕虫網、野原では木刀を脇差しに、清流では釣り竿を。
今時これは、誰にとっても贅沢な望みかもしれない。
僕においては尚更だ。しかし、もう恋焦がれることもなくなった。
環境汚染が原因で、僕の体は生来弱い。他人が罹らないような
聞いたこともない病気に冒されては、モルモットとして血やら尿やら
採取され、新薬や得体の知れない機械にもかけられた。
この先、いつまで生きるかは分からない。
ただ、人類の積悪の余殃を僕が受けていることだけは分かる。
洪水が再び地球を浄化するときには、箱船には決して人を乗せないで。
次は、「忸怩」「辟易」「老獪」。
514 :
「忸怩」「辟易」「老獪」:02/06/18 18:02
林太郎君は聡明である。
さらぬ付け加えるのなら、彼は寡黙である。必要以上のことは何一つとて口を出すこ
とは無い。しかし、女性を引き付ける魅力を十分に、並々ならず発揮していた。或ると
きは、留学し陸軍軍医を務めていた独逸から、わざわざ女が彼を求めて後を追って来た
こともあつたらしい。内心、女性との性的関係をもつたことの無い私は彼との程度に嫉
妬心、或いは忸怩にも似た情状をしていた。
或る日、私は彼に、巷で今日日唱えられている「フヱミニズム」について問うた。いや、
事実は私の女性に対するcomplexを、不甲斐のなさをば、彼を懊悩の対象にし八つ当た
りをしたのである。すかさず彼は「男の嫌な仕事を女が引き受けるのが、女の仕事であ
る。睦まじ合うのも、又然り」と謂ってみせた。その次には「女の寄らぬ男は、よもや
あらゆる仕事を成せる男かもしれぬ」と謂うのだ。余りにさらりと発つしてしまうのだ
から、思はず辟易してしまつた。彼は聡明なだけではなく、人間味のある疎さが女性の
性を醸し出してしまふのだろう。
今日、私は彼と関わつて思ふことは、単なる知識と文学への探求心だけではなく、人
間誰しもがあるその情や、その滑稽さや、その老獪さや、その魅力さこそが、彼が人々
から秀才と称えられる証明かもしれぬ。
馴れない明治文学を真似するのは、あまりに難しく疲れる。
次のお題は「隔靴掻痒」「内憂外患」「遺憾千万」
↑なんていじわるな三語だ
「忸怩」「辟易」「老獪」
逞しい体躯の白銀の狼。たった一目見ただけで激しい恋に叩き落とされた。
これは完膚無きまでの恋だ。だから老体に鞭を打ち、猟銃片手にこの思いを告げることにしよう。
風下からそっと近づき、雪の中に身を潜めてじっと機会を窺う。一瞬たりとも目を離してはならない。
銀狼の姿は容易く雪の中に紛れてしまうことだろう。一切音を立てるな。体の力を抜き自然の一部となれ。
さもないと、射程圏外から悠然と現したその姿を忸怩たる思いで見つめるはめになる。
手足が凍えても、ひもじくても、じっと耐えろ。奴だって胸が苦しいはずだ。
どんなに奴が辟易しようとも決して求愛をやめるつもりはない。ああ、老獪なこの儂を許しておくれ
「ごふっ」
突如、老いた狩人は咳き込んだ。真っ白な雪の上に鮮烈な血の赤が広がっていく。手足が痺れ、視界が霞む。
もう猟銃を持ち上げる力も残ってはいない。楽しかった追かけっこも今日でお終いだ。
孤独に力尽きようとする老人の前に銀狼が姿を見せた。
――さあ、この老いぼれた肉体に牙をかけ己が命を満たせ
太古から連綿と続く命の繋がり、それは自然が育んだ友愛なのだろう。
-------------------------------------------------------------
引き続き、「隔靴掻痒」「内憂外患」「遺憾千万」
517 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/18 19:29
閣下はいつも食後に、妾(わらわ)に天下国家のお話をなさいます。
閣下「我国の時下の内外情勢は危急存亡とも形容すべきじゃが、当局の打つ手は
どれも皆、隔靴掻痒の感がある。」
妾「そうよね、閣下。そうよう。本当だわ。」
閣下「報道機関は他人事のように国家の大事を嘲笑う。内憂外患まさに極まれりじゃ。」
妾「報道に腹が立つことがありますわ。内容がいかんと感じますわ。」
閣下「権力を授かる者どもが続々と不正腐敗失政を暴かれるのも遺憾千万じゃよ。」
妾「嗚呼、この国をいかんせん、万策つきたのでしょうかと問いたくなります。」
閣下「その通りじゃ!・・・・・・まあよい。おまえ、もっうちょっとこっちにおいで。」
お次は「胸ポケット」「真空ポンプ」「植木」で。
518 :
「胸ポケット」「真空ポンプ」「植木」:02/06/18 22:26
僕の家の庭には植木が植えてあって、中々美しい景色だ。
人の心を豊かにしてくれる植物という存在に対して、いくら
感謝しても足りる事は無い。僕は、様々な植物に対して感謝する
事を忘れない、それは真面目過ぎるくらいに真面目な両親達の、
熱心な教育の賜物である。
僕は胸ポケットに植物の種を常に携帯する。そしていろんな
土地に、次々とその種を植えて行くのだ、僕がこの世界に
存在した証として……。
……何てことだ! あいつ、俺が植えたはずのとても綺麗な紫陽花を
グチャグチャに踏み潰してやがる……! あいつめ! あいつめ!
今すぐに俺が真空ポンプであいつの体内を真空にしてやる!
そして、植物が吐き出す酸素のおかげで今、我々が生きていられるのだ
という逃れられぬ現実をあいつに教えてやるんだ……。
それが俺に与えられた唯一の使命……。
次は「消しゴム」「墓石」「情」で。
ある日、少年は植木鉢の陰でもじもじと恥ずかしがっている妖精を発見した。
「僕妖精を見つけたよ」と見せてまわったが、大人達は一笑に付した。
厳格な科学者である父親にいたっては「妖精なんているはずがない」と叱りとばしたが、頑迷にも少年は聞き入れなかった。
手のひらを指さしてここに妖精がいるよと言って譲らないのだ――そこには芥子粒しか乗っていないのに。
少年はいつもその芥子粒に話しかけ一緒に遊んだ。さしもの芥子粒にも言霊が宿ったのかもしれない。
物置でいつものように胸ポケットに隠した妖精とお話しをしていたら、
突然父親がそこにやってきた。少年は慌てて物置にあった瓶の中に妖精を隠した。
それが失敗だった。よりにもよって父親はその瓶を引つかみ何やら実験をはじめた。
心配だったが黙っていた。バレたら妖精が追い出されると思ったからだ。
妖精に危険が迫ったら何を犠牲にしても止めるつもりだった。
――だって、僕は妖精とお話ができるんだもん。苦しければ僕に助けをもとめるはずだよ
だが、少年は知らなかったのだ。その瓶が真空ポンプであり、真空中では音が伝わらないことを。
妖精は必死の悲鳴をあげたが、少年はそれに気づいてやることができなかった。
そこにあったのは、乾涸らびて干物のようになった妖精の亡骸だった。
変わり果てた妖精の姿を見て、少年は深く嘆き悲しんだ。
少年の様子を見て、ようやくにして、父親も妖精の存在に気づいたのだ。
ルーペで少年の手の平を覗きながら父親はこう言った
――もう泣くのはおやめ、心配しなくても妖精は何度でも蘇るよ。
少年の涙が妖精の亡骸に降りかかったその時、奇跡は起きた!
妖精はむくむくと元の姿を取り戻し、以前にもまして元気にはしゃぎ始めたのだ!
妖精の生物学的名称をクマムシと言う。
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「消しゴム」「墓石」「情」
「消しゴム」「墓石」「情」
「そうね、あなたには情がないのよ、情」
「情?」見返した彼女の顔は疲れと、諦めとに満ちていた。
「そう。言葉はいくらでもかけてくれる。だけどね、それだけなの」
「わかるような気がするよ」ぼくは、首を僅かに斜にして、そう言った。
「わかってもらえて嬉しいわ」
そこに、ぼくと彼女の日々の終わりがあった。形のない遺骸は、ぼくを辟易とさせた。
「じゃあね」とぼくは言った。言ってみて変な気はしたが、無理やり笑んだ。
「うん、じゃあね」
例えばこの見えない遺骸を、墓石に仕舞い込んで供養できたら、
もしくは遺骸を消しゴムできれいさっぱり消すことができたら……。
ぼくはそんなことを累々と考え上げたが、らちがあかないから途中で止した。
この日々の遺骸に、なにかしら救いがあったとしたら、ぼくもいくらか楽になるのに、
とりあえず記憶を探る限り、そういったものは全然見当たらなかった。
次は「米」「スライス」「キャラクター」で。
「消しゴム」「墓石」「情」
小学校で飼っていた蛙のゴンタが死んでしまった
ゴンタといっぱい遊んだから、いっぱい情けはかけてあげないといけない
墓石を作ってやることが自分の義務だと思った。
お祖母ちゃんのお骨を安置したときのような立派な墓石は自分には用意できない。
だから、墓石に一番近いもの――四角くて表面がつるつるしているものを探した
精一杯頭を絞って、二つの消しゴムをボンドで張り合わせた墓石を立ててやった
隣のカブトムシのタロウの割り箸のお墓よりは良くできていると思う。
卒業して、僕はゴンタの事を忘れてしまった。
しかし、そのときの人の思いというものは意外なほど形として残るものだ。
ムサシの墓石は、今でも無事に落とし物箱の中に安置されている
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「米」「スライス」「キャラクター」
うげ!?
ムサシの墓石 → ゴンタの墓石
いっそ文章ごと忘れてください
523 :
「米」「スライス」「キャラクター」 :02/06/19 01:19
昔、ある博士が遺伝子を少しいじって面白い野菜を作った。
どれだけ薄くスライスしても切断面に同じ模様が出る金太郎野菜だ。
最初は大根から始めたが、芋やキノコにまで技術の応用が可能で
最終的には米に小さな模様を写し出すことに成功した。
始めのうちは、家に遊びに来た客を驚かして喜んでいたのだが、
そのうちに評判を聞いたキャラクタービジネスの会社と農業関係の会社から
同時に技術の商用利用のオファーが来た。
互いに提携して、野菜の断面に人気のあるキャラクターの絵柄を写し出して、
全国的に売り出そうというのだ。
このアイデアは野菜嫌いの子供達を持つ主婦に大当たりし、
会社は共に大儲けをして博士にもかなりの大金が転がり込んだ。
安全性を危惧する声も上がったが、新しい市場を守ろうとする企業によって
その声は掻き消された。
博士は実験を続け、この技術が牛や豚などの肉にも応用が可能な事を発見した。
この技術は野菜の時と違い、実用的な面で成果をあげた。
肉に浮かび上がっている番号を調べれば、それがどこで育ったものなのかが、
一目瞭然になるというわけだ。
ここで話は変わるが、最近は身元不明者の遺体の確認が、随分と
簡単に行われるようになったのだそうだ。
白骨化さえしていなければ、必ず身元の確認ができるといってもいい。
こんなことは数年前までは無かったことなんだ。
これに関しては警察は何も言わないのだけど、鼻がいいマスコミ関係の人間は
勘付いて不信に思っている。
ところで君、自分の切断面を見たことがあるかい?
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次は、「巨峰」「仮面」「リモコン」
524 :
「巨峰」「仮面」「リモコン」 :02/06/19 03:26
幼いことからずっと画家になりたかった。
四角いキャンバスに完璧な世界を構築したかった。
俺は現実的に生きるにはあまりに惰弱だった。失敗することが怖かった、自分の弱さを嫌悪した。
キャンパスに描かれた葡萄畑は虫食いだらけであまりにも貧相で、出品する度に寒々しいと笑われたものだ。
もっと完璧な現実があれば、もっと完璧な絵筆があれば、
折り合いを付けるために、俺は己の中に自らの代わりを務める仮面を作り上げた。
この仮面は俺が予期したよりも遙かに強靱だった。
現実というキャンバスを縦横無尽に暴れ回った。大胆不敵に、冷酷無比に
民衆を扇動し、軍部を掌握し、クーデターまで成功してのけた。
何のためなのか、誰のためなのかも今の俺には分からない。
分かっているのは、この暴走を止めるためのリモコンが俺の手にはないということだ。
俺は掻き集めた富と権力をこのアトリエに集約させた。
今ここに、寸分の狂いもないデッサンで描かれた葡萄畑の絵がある。
キャンバスの巨峰の身は黄金律からわずかな狂いもなくたわわに実っている
自分にとって理想的な世界の中で行う理想的な創造活動、
だが、この虚しさは一体何だろう?
それを芸術にまで昇華させることができず、心まで完璧な仮面となった。
お次は、「レイピア」「騎馬」「大砲」
525 :
エヴァっ子:02/06/19 16:47
「隊長」
不意に声がかかったので、振り返った。
そこにはぼろぼろな甲冑を着込んだ部下がいた。
「なんだ?」
「今度の戦いで、城に戻れるという噂は本当でしょうか?」
初耳な話だったが、五ヶ月以上も戦いを続けていたら当然流れる噂だろう。
私は少し考えて、ああ本当だ、とだけ言った。
「本当ですか!?」
甲冑の中から、驚きと喜びが混じった声が飛び出した。
「ああ、だが皆には言うなよ。まだ戦いは終わってないんだからな」
それだけ聞くと、部下は嬉しそうに兵舎に戻っていった。
それが私にできる、最良の嘘だったとその時は思っていた。
しばらくして、戦いが始まった。
私の騎馬部隊は果敢にレイピアを振り上げて戦った。
だが………、敵軍は強かった。
その時はまだ新しかった大砲を、何発も私の部隊に撃ち込んできたのだ。
初めて見る爆炎と爆風は驚異だった。
大勢の部下は焼け死に、紙屑のように吹き飛ばされ、死んでしまった。
だが私はこの通り生きている。
ほんの少し、功績のある騎馬隊隊長だから、という粗末な理由で援軍に助けられたのだ。
私の部下に、その時生き残った奴はいなかった。
その時の部下達が、いまでもこの土の下に眠っているかと思うと涙が溢れ出てくる。
私は、もう二度とこのレイピアを握れぬだろう。
墓標代わりに大地に突き刺したレイピアは、すこしだけ焼け焦げていた。
レイピアに向かって黙祷を捧げながら、嘘をついてしまった部下にすまない、とあやまった。
お次は、「死神」「夜景」「武士」で
526 :
、「死神」「夜景」「武士」:02/06/19 19:56
とある田舎町には、鬼火が現れるという噂がある。しかも、
鬼火に魅入られると、人は記憶の一部を失うとの話もある。
フリーライターである私は、この噂を確認しに、一人車を北に走らせた。
目的の町がガードレール下のずっと向こうに見えてきた頃には、
既に日は沈み、月が明るく輝いていた。
ポツリポツリと並ぶ民家の明かりが、漆黒の闇の中に浮かび上がる。
眼下に広がる夜景は、昼間ののどかな田園風景とは一変し、
美しくも妖しい様相を呈していた。
五百年以上も昔のことだが、ここで大きな合戦があった。
その後の歴史に大きな影響を与えた重要な合戦であった。
多くの武士達が命を賭けて戦い、そして死神に召されていった。
そんな事実が、この田舎の風景を優艶なものにするのかもしれない。
私は、都会の喧騒から逃れるためにこんなところまで来たのではない。
いつまでも、田舎の情景に浸るっているわけにはいかない。
しかし、何をしに来たんだろうか。さっぱり、思い出せない。
次は、「ジャンク」「テクノ」「時間」
527 :
「ジャンク」「テクノ」「時間」 :02/06/20 00:54
ここは忘れ去られた小島。
流木、缶詰、酒樽、西洋人形、貝殻、etc、etc……
いろんなものがこの島に流れ着く
だが、不思議なことに少しでもテクノロジーの香りのするジャンクはこの島に寄りつかなかった。
まるでこの島だけが時代から隔絶されているかのように
少年は、この島の最後の住人だった。
彼の両親は、物心つく前に他界していた。少年の記憶に両親の姿はない。
だが、少年にとってはその方が幸せなのかもしれない。
まだ見ぬ同胞を夢見て大海に漕ぎ出す必要はない。
彼は――汚染された惑星のたった一人の生き残りなのだから。
少年はいつものように缶詰を探してぐるりと海岸線を歩いた。
ちょっとの時間で一回りできる小さな島だ。
今日の収穫は陽の光の中できらきら光る綺麗な小瓶だけだった。
小瓶の中には、茶色く変色した紙切れが入っており、
そこには何かメッセージが書かれていたが、少年は字が読むことができなかった。
『SOS――船ガ難破シ遭難ス。救助ヲ求ム――SOS』
それは、時を流れを越えて漂着した両親の記憶だった。
次は、「コールドスリープ」「残滓」「燎原」
ゲームセンター“UFO”のカウンターの中で、
香織は退屈そうにハンバーガーをかじっていた。
ビデオゲームが20台程置かれているだけの狭い店内には、
テクノ風にアレンジされたゲームのサントラCDが流れている。
ゲームセンター、ジャンクフード、テクノミュージック。
まるで80年代のようだと香織は思う。
筐体の上に硬貨を積み上げて脱衣麻雀をやっていたサラリーマンが、
女の子を脱がすことをあきらめたのかダラダラとした歩調で出口へ向かう。
それと入れ替わるように、背の低い客が数人、騒ぎながら店内に入ってきた。
学校帰りの小学生達だ。
90年代に生まれた子供達……。
いつの頃からか、香織は小さな子供を見るとそんなことを思うようになっていた。
90年代に生まれた子供たちが、まだ居場所の見つからない80年代生まれの自分達を
後ろから押していく恐怖。
新陳代謝によって不必要となった古い細胞は、垢となってボロボロと崩れ落ちるしかない。
我等の時代とは、一体いつのことなのだろう。
それはこれから来るのか、それとも既に過ぎ去った時間なのか。
古い船を今動かせるのは古い水夫ではない。そんな唄を父が歌うのを香織は何度か耳にした。
香織は思う。父はこの歌を、どちらの水夫の立場で歌ったのだろう。
子供たちは、来た時と同じように、ふざけあいながら店を後にする。
香織はカウンターの中で、置いていかれたような錯覚を覚えたまま、
バイトから開放される時刻を待ちつづける。
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長いのにイマイチで申し訳ない。次は「コールドスリープ」「残滓」「燎原」で。
529 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/20 04:01
「コールドスリープ」「残滓」「燎原」
まさに燎原の火だった。乾燥した死体はよく燃えた。
私の操船ミスにより放たれた火は、直に手がつけられない状態になっていた。
過去、この星の人々がなぜ、未来にたどり着くためにコールドスリープという
当時の彼らにとって不完全な技術を使って眠りつづけたのか、私にはよくわからない。
それは実際のところ緩慢な死であっただろうし、たとえ蘇生に成功したとしても、
寛恕し得ないほどの副作用があったであろうことは、容易に推測できる。
ただ、現在ではなく、未来に希望があったのは確かなのだろう。彼らの過去に何があったのか。
星間宣教師である私としては、時空柱の使用許可さえ出れば今直にでも飛んで過去の彼らを救いたい気分であった。
宇宙にはこのような場所がたくさんあった。いびつに歪んだ文明と、その残滓。
多くの、発音も理解もされない言葉、文化、文明。人類はとうの昔にその死亡リスト作りに飽きていた。
そのような場所をおとづれるのは、私のような宣教師ぐらいのものだ。
私は望んで就いた自らの職業に悔いていた。
それは、両軍ともに全滅した凄惨な戦場で生者を探し求めるような作業だった。
「救いを……」
私は手をあわせた。
つぎは「暴風雨」「ダンボール」「神殿」で
530 :
「暴風雨」「ダンボール」「神殿」:02/06/20 06:15
厳かに進行する儀式で姿を現した巫女を見たとき、人生に全てを薙ぎ払う程の衝動が訪れた。
俺には彼女の恐怖と不安が見えた。孤独が見えたのだ。だから、迷うことなく彼女を連れ去った。
このあまりの不遜な出来事に、正門を出るその瞬間まで神殿の空気は完全に固まっていた。
後日聞いた話だが、
一度己が身に神を降臨させた巫女は、生涯人と接することを禁じられる。
食事さえも間接的に渡される。身も心も神の供物として捧げ尽くさねばならぬ。
彼女との逃亡生活は思った以上に悲惨だった。ドブネズミのように逃げ回らねばならなかった。
だが、考え得る限りの最低ランクの衣食住にも関わらず、
彼女は出会った当初よりずっとよく笑うようになった。年々彼女は人として魅力的になった。
刹那を噛みしめるように、ダンボールの中でお互い身を寄せ合って寒さを凌いだ。
暴風雨の中での彼女の体温は俺の全てを癒してくれた。
俺は十分に幸せだと思う。だが、彼女に対して申し訳なさばかりが募る。
彼女が捕まれば凄惨の結末が用意されていることだろう。
もう全てが時間の問題だった。絶望的なくらい逃げ場は閉ざされている。
選択肢は限られており、その中でも俺たちは心中することを決めた。
――二人して毒杯を呷った。だが、彼女は俺のグラスに毒を入れなかった
「……あなただけなら逃げ切れる、私は、私は、幸せでした……」
こんな裏切りが許されてはならない。おまえはもう巫女ではない。人間なのだ。
人生は美しいことばかりが全てではない。だから、最後まで泥臭い生を全うしろ。
そして、俺は彼女が口にした毒杯をそのまま呷った。
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ああ、イマイチっすねえ
次は、「残存意識」「ヒエラルキー」「想起」
531 :
「残存意識」「ヒエラルキー」「想起」:02/06/20 11:51
吉田の腸の中で、糞はじっと堪えていた。
残存意識が、自分はハンバーグだったことを伝えている。
「できれば永遠に、ハンバーグのままで居たかった」
白い皿の上に、甘く煮たニンジンとエンドウと共に並べられていた、
美しく凛々しかった自分の姿を想起し、糞は虚しさに襲われた。
「何をそんなに悩んでいるんだい?」
心配した別の糞が話しかけてきたが、ハンバーグの糞はそれを無視した。
糞にもヒエラルキーが存在すべきである。彼は思った。
アジの焼いたのや野菜炒めなどと共に扱われるのでは、
元はハンバーグだったものとして、あまりに惨めではないか。
腸の内壁が、そろそろ出番が近いことを糞達へ告げた。
これから彼らは、隣り合った糞とスクラムを組み、
肛門を目指して一斉に突撃をかけるのだ。
ハンバーグだった糞は他の糞達に揉まれ、彼らと同化しつつも叫び声をあげる
「俺だけは、別の糞達とは違うんだ!一緒にしないでくれ!!」
しかし、そんなことに耳を傾ける者は無く、一つの大きな固まりとなった糞達は
じりじりと肛門の方へと流されていった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
次は「嫌悪」「誕生日」「子馬」
532 :
「嫌悪」「誕生日」「子馬」:02/06/20 12:19
寒い大地に育った子馬。
今日で満2歳になるお祝いに、家族だけでなく村人も来る。
今までの苦労を振り返り、子馬を愛撫する父と母。
祖父が入植時の話をはじめる。
聞き入る村人達・・・
「イヴァンや、ウォッカをもう一瓶お願い」
「うん、ママ」と、気前よく答える息子。
微かな嫌悪感を押し隠して、明るい顔でお祝いの準備をしている。
別に、子馬が嫌いなわけじゃない。
むしろ一番可愛がって育てたのは彼だ。
彼の複雑な心境の原因は、もっと他にあった。
(今日、僕の誕生日なんだけどな・・・)
※久々に書かせていただきました。睡眠不足です。
次のお題は:「アスパラガス」「プロパンガス」「探す人々」でお願いしまふ。
533 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/20 19:00
僕は風呂でアスパラガスをかじっている時にだけ幸福を感じることができる。
理由は解からないけど心がそういうんだ。巷じゃホントの自分探しだかなん
だか、幸せを探す人々がたくさんいるけど、探せば探すほど、遠のいていく
んじゃないかなあ。僕は気付いたら幸せだったよ。プロパンガスのガスを
もらして死ぬ人もいるけど、僕は幸せさ。でも、僕はちょっと変かな。
トラウマ、芸術、カクテル、でお願いいたします。
534 :
「アスパラガス」「プロパンガス」「探す人々」:02/06/20 19:03
「石油が枯渇するまであと20年」と危惧されたその時から20年後、今度は
「石油が枯渇するまであと40年」と心配されたが、さらに40年経った時には、
「石油が枯渇するまであと80年」と物笑いの種にされた。
見積もりがずさんだった訳ではない。幸運なことに、次から次と新しい油田が
見つかり、その度にタイムリミットが延長されてきたのだ。
しかし、さらに80年たった現在、世界中のほとんどの油田が打ち止めになっていた。
重油・軽油・プロパンガスなどが一気に高騰し、自動車の姿は街中から消えた。
石油だけではない。天然ガスも枯渇し、原子力発電でさえも
ウランの枯渇により炉は停止している。代替エネルギーを探す人々の努力も空しく、
核融合は実現されず、風力、水力、太陽光、潮力を使った発電は、もはや
文明を支えられるほど効率のよいものではなかった。
エネルギーが枯渇するのと並行して、ほとんど全ての交通手段が麻痺した。
当然、食料の運送さえも行われず、高度な文明に囲まれた生活を
送っている人ほど、早々に命を落としていった。
ほどなく、人口の9割以上が地球上から消え、アフリカや南米の奥地の、
文明とは切り離された地域で生活をしている人たちだけが残った。
彼らは、山野でイノシシや鹿を狩り、畑でトマトやアスパラガスを収穫し、
エネルギー枯渇など全く知らずいつも通りの生活を続けている。
次は、「萌え」「萎え」「ぷに」
次、「トラウマ」「芸術」「カクテル」でお願いします。(T^T)
536 :
「トラウマ」「芸術」「カクテル」:02/06/20 20:57
カクテルを飲みつつ私は絶望していた。先の全く見えぬ人生……。
そんな人生に対して一体どのような希望を持てというのか?
私は若い頃に特殊な訓練を積んだ。そしてある程度は自らの感情を
コントロールする事ができる能力を身に付けたのだ。しかし
最早、限界だろう。私の唯一の長所である特殊技能ですら……。
もう、どうする事もできない程状況は悪化している。
こんな気取った安酒を飲んでいる場合ではない……。
「どうなさいましたか? 顔色がよろしくありませんね……」
突然私に話し掛けてきた男は、どこか不気味な雰囲気を醸し出す男。
私のような生きている価値の無い人間を心配してくれている!
あまりの嬉しさに私は、私のこれまでの人生、哀しみのストーリーを
穏やかに語り始めた……。
「私の人生は、まさにトラウマそのものであった……」
私が語り終えた頃には、すっかり夜も更けてしまう程長い話だったが、
不気味な雰囲気の男は、私の話を熱心に聞いた。
「成る程……そんな事があったのか、しかし君は特殊技能を身に
付けているんだろう? その特殊技能を世界平和の為に役立ててみないか!
世界のあらゆる場所で行われる戦争、醜い殺し合いを回避したり、
芸術的な創作活動に役立ててみたり、
アフリカの飢えた子供達に食料を与えてみたりなど、様々な
良い行いをしてみよう!」
次は「剃刀」「ピアノ」「午後」で。
「剃刀」「ピアノ」「午後」
雨はしきりに降り続いていた。怠惰と、慢性を伴って日曜の地面を打っていた。
2、3度手の中に水をため、そのまま水を顔にかけると、シェービングクリームをつけ、
剃刀できれいにそれを取りきると、そのまま顔を洗った。
水は、わりに冷たかったが、気温との兼ね合いもあり、満足はできかねる状態だった。
隣のアパートからは、世辞にも上手くないピアノの音が、雨音に紛れながら延々と耳に届いていた。
不快とは言い切れないが、決して爽快ではない。
暇と言うにはあんまりだったが、充実は決してしていなかった。
ぼくはもう1度掌に水をため、顔をその中に突っ込んだ。
やはり、あまりよいものではなかった。
Tシャツとトランクスだけの格好だったが、Tシャツの下にはじっとりと汗をかいていた。
ぼくはそれを脱ぎ捨てると、冷たいシャワーを全身に浴びた。
シャワーを浴び終えて、既に午後であると言うことに気付いた。
多くても半日しかぼくに休日はのこされていなかった。
次は「飛沫」「敗北」「北」で。
538 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/20 22:53
佐竹老人は、近頃新しい趣味をはじめた。
俳句である。
小学校の同級だった三丁目の福永ちえの従姉が俳句の熱心な実践者で、いつか
偶然に隣り合わせたときに誘われたのだ。
最初はほんの気まぐれで句作するうちに、五七五のリズムに次第に魅せられる
ようになり、今ではすべてのものを、この伝統のリズムに表現したいと思う佐竹
になっていた。本人みずから認めるように、句を作るのは早いし、たくさんの句
を作る。しかし、たいていは駄句で、句会で良い点をもらえることはまずない。
本人が作っては、ひとりリズムを口の中で繰り返しては悦に入っているという、
たわいもない趣味なのである。それでも佐竹老人は俳句をはじめるようになって
から、いくぶん元気を取り戻し、若返ったような気にもなっていたのである。
ある日のことである。例によって佐竹老人は家の周辺を徘徊しながら着想の浮
かぶままに句作にふけっていた。
ひまわりの 咲く塀の上 猫あゆむ
毛虫見て 顎を撫でたり 無精ひげ
いずこより 妙なる調べ 雲の峰
鍵盤に 指走るらむ 日の盛り
楽音の 絶えることなき 夏の道
ハンカチの 滞ったり 無精ひげ
汗ぬぐふ ハンカチ止める 無精ひげ
炎天下 涼みに入る 理髪店
白服の 職人ひとり 理髪店
日なたでも 日陰も同じ 蒸し暑さ
一瞬の 風も動かず 油照り
不機嫌は 伝染するや 夏盛り
不愉快な 客あしらいや 汗しとど
楽音も 騒音となる 暑さかな
夏服や 襟をつかみて 叫びあふ
なんとかに 刃物持たすな 汗ながる
香水や 必死で逃げる 店の中
ピアノ鳴り 剃刀の舞う 夏の午後
夏の血や うなじ触れば なま臭き
とにかくに 逃れて来たり 蟻地獄
次は「寒け」「最後に」「一致」
次は「飛沫」「敗北」「北」で。
540 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/20 23:10
「飛沫」「敗北」「北」
勝敗が決まった。
二人の男が永く想っていた清純な乙女は、今は青騎士に花冠を捧げ、
赤騎士の彼は砂を噛みながら地に横たわった。
彼女のなんと魅力的なことだったか。気品ある緩やかな栗色の巻き毛、
白磁の肌、優しく愛らしい桃色の唇、そして常に憂いを含んだ紫の瞳。
そんな彼女は、勝利を手にした青騎士に手を取られたのだ。そして惨めな敗北を喫した自分は
この寒々とした北の大地に叩きつけられたのだ。ああ、なんと苦しいことか。
トーナメントの判定は覆らず、彼女は戻らない。
赤騎士は森の精霊にすら泣き顔を見られまいと、痺れるほどに冷たい泉の水で何度も顔を洗った。
飛沫が彼の埃に塗れた鎧に撥ね、点々と黒い染みを作った。
お次は「時刻設定」「結婚指輪」「コマドリ」で。
コマドリのように、とは働き者のことを指して言う言葉だ。
この女はまさにコマドリのようによく働く。
それはまるで結婚指輪をはめた家政婦、いや、むしろ俺の忠実な奴隷のようだ。
たしかに、こいつが俺のもとへきたのは愛ゆえでなかったことは否めない。
「あいつは妻をカネで買ったのさ」と言う輩もいるが、まんざら嘘でもない。
だが、出会いはどうあれ一緒に住めば愛着も湧こうというものではないか。
こいつは俺のために毎日文句ひとつ言わず掃除、洗濯、裁縫、料理をそつなく
こなし、俺のどんな勝手なわがままにも素直に従う。
そんな愛すべき俺の妻だが、唯一の欠点は時刻設定がすぐ狂うことだ。
夜中の三時、熟睡中の俺を妻が起こしに来る。
・・・お夕食ができました・・・
俺は眠い目をこすり食卓に着くが、夜明け前から焼肉など食えるわけもない。
しかも2時間前に「朝ご飯」を食べたばかりなのだ。
「真夜中からこんなもの食えるか!」
俺は妻の尻を蹴飛ばす。
シリコンゴム製の人工皮膚は、本物より少し硬く感じた。
次は「猫」「屋根」「あくま」
542 :
「時刻設定」「結婚指輪」「コマドリ」:02/06/21 01:10
「この写真、何時のだったっけ?」
Yが独り言のように呟く。
私は荷造りを終え、整理の手を止めて小さなアルバムに見入っていたYの背後から、
そっとその写真を除きこむ。
リビングの窓の前。ウララカな暖かい日差し。その光に抱かれる様に
アルバムを覗き込むYと私。
写真の日付は92年6月7日、と刻印されている。二人はまだ会ってもいない。
ああ、この時、電池交換して、時刻設定してなかったんだよな、確か。あのカメラ。
「7年前のさ、サークルの合コンツアーの時だよ、それ。」
「あん時ねぇ。コマドリの民芸品なんか買ったんだ。あなた。ダッセぇー。」
「いやぁ、酔っ払ってて覚えてねぇんだよナ、その置物の事。電車に忘れちゃったし、ソレ。」
「この時はまだKと付き合ってたのよね、アナタ。」
「そうそう。お前がスクーバ始めたばっかで、俺らが皆でバイトで金持ち寄ってファラオに行くぞ!
って燃えてる時。」
「B君よね、この横で馬鹿ヤッテル子。」
「盛り上がってるよなぁ。何の話してたっけなぁ、この時・・・。」
アルバムを覗き込む私とYの、丁度目の前のテーブルの上に、そのアルバムの
入っていた小箱に収められていたのであろう、結婚指輪が置かれていた。
(指のサイズが合わなかったんだよな、あれ。プロポーズで出した時、焦ったよ。
それにしても、渡されたプレゼント、いきなり箱から出して嵌めようとするかぁ?)
私の口元は、その、つい昨日のような出来事に緩む。Yも、同じ気持ちでいるみたいだ。
私は彼女の肩にソッと顎をのせて寄りかかった。そして彼女はそんな私をいつもの
ようにヤンワリと受け入れる。そう、いつもと何も変わらず。
明日の昼、二人は別々の人生を歩み始めるため、この家を後にするのだけれど。
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次は、「リップスティック」「ソックタッチ」「マユズミ」でどうぞ。
AMが午前のことだったか、午後のことだったかが思い出せない。
田中は、プラスチックで出来たデジタルの目覚ましを手に持ったまま、
しばし虚空を睨み続けた。
この目覚ましは、朝が来ると鳥の囀りで起こしてくれるという優れ物だった。
つがいのコマドリの飾りがついている。
毎朝、同じ時刻に起きる田中には、就寝前にアラームの時刻設定を改める習慣はない。
設定はいつもそのままで、タイマーだけをセットすれば、そのままで寝られるのだ。
昼飯のラーメンを作った際に、アラームを適当な時刻に合わせた事が悔やまれた。
鳥の囀りを合図にチキンラーメンを茹で上げるという思いつきに、田中は夢中だったのだ。
「こんな時、由子がいたらな」
一人呟く田中の左手の薬指には、シルバーの結婚指輪がはめられている。
しかし元妻とは、1年も前に離婚が成立していた。
指輪は義理ではめているのでは無く、単に太って抜けなくなっただけなのだ。
決して悪い男では無いのだが、夫としては少し頼りなかった。
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なんか、長くなりそうなので、ここまでで。
次は542の「リップスティック」「ソックタッチ」「マユズミ」でどうぞ。
−−ゲルマン百科事典第12巻134貢−−
<悪魔猫>
厳密には、それは猫ではない。
客間の虎にしては少々欲が深く、裏切り者の愛玩にしては饒舌にすぎる。
歩く様はなるほど官能的だが、時には老婆のようでもあり、奇妙な三足歩行を得意とする。
ありふれた同胞たちと変わらず高所を好み、例えば日中は
教会の屋根上で太陽を拝んで過ごすが、どこか役者を気取っているような、
そんなしたたかさがギリシア人−−悲しみを知らぬ者たち!−−を常に不安に陥れる。
フランク王国の霊媒師学団の語るところによれば、それはかつて月の魔女の不実な僕であったそうだが、
高名な数学者アルバッキオの反論−−その歩幅は完全な円周率の二乗feetに等しい−−によって、
今ではむしろ双子の神の不出来な片割れとして認知されている。
失礼。「猫」「屋根」「あくま」への回答です。
次のお題は542に同じく
「リップスティック」「ソックタッチ」「マユズミ」で。
546 :
「リップスティック」「ソックタッチ」「マユズミ」:02/06/21 02:11
怪獣は、いまや横浜スタジアムをも破壊しようとしていた。
「いけない、決勝戦が危いわ」
少女は、鞄からソックタッチを取り出し、空にかざす。
先生の目を盗み、苦心して持ち歩く一本のソックタッチを。
「変身!」まばゆい光に包まれて、巨大化する彼女。
仮面で正体を隠す彼女には、二つの武器があった。
常人の1万倍のパワーを発揮させるソックタッチ。
ごく淡い口紅は、口喧嘩能力は町内会おばさんの91倍に加速させる。
かくして地球は守られた・・・
「お父さま、ただいま」疲れた体を引きずって帰宅する彼女。
父の置手紙と、不揃いなおにぎりが食卓で待っていた。
<仕事で遅くなる、すまん! 父>
マユズミで怪獣化した父は、次の獲物を求め大阪湾を潜行してる最中だった。
※窪田まり子の漫画みたい
547 :
あ、お題忘れた!:02/06/21 02:13
次のお題は:「もしも」「だから」「くるぶし」でお願いしまふm(_ _)m
548 :
「リップスティック」「ソックタッチ」「マユズミ」:02/06/21 03:19
時代とは変化するものだ。
私の向かいに座っている女子高生が電車の中でリップスティックを塗り、マスカラを使って睫毛を整える
その間に、肩をぶつけた主婦が、同じように吊革にぶら下がっていたサラリーマンに短く謝罪する。
あんなにも揺れる空間で、よくもあれほど繊細な作業を完遂しきれるものだ。
わずかな時間で、ビデオテープでも早送りしているかのように、
良家のお嬢さん(あくまで想像に過ぎないのだが)は、夜の蝶のような蠱惑的な容姿に変貌を遂げていた
ほんのりとした上品な色の口紅に、うっすらと描かれたマユズミ、
そして淡いアイシャドーまでのせられては年齢が想像できない――制服さえ着ていなければ
古着でも脱ぎ捨てるかのように脱皮する彼女達に対し、私は拭い去り難い違和感に襲われる。
頑なに思い続けてきた。
社会に対する処世術とは、時代に揉まれ磨り減らされ否応なしに染みついていくものではないか?
だが、今では我々の世代はそれを声高に非難する頑迷さも、自らの一部として包含する柔軟さも持たない。
新しい息吹とは新旧の血生臭い闘争によって生み出されないといけないはずなのに
同時に、我々は――少なくとも私は怖れている。共に時代を謳歌しようとしたが故に時代から爪弾きにされることを
いつまでたっても時代に馴染めない魂、それが我々だ。
隣を見ると、ずり落ち過ぎたルーズソックスと格闘すべく、ソックタッチを鞄から取り出している少女がいた
以前娘に、ソックタッチとは何かと問うて、博物館のショーケースに収められた化石のように扱われた覚えがある。
保護指定を受けた私には今の最新の流行が皆目見当もつかない。
ルーズソックスの少女は、ソックタッチの粘着力が弱いのか、なかなか目的のフォルムを獲得できないでいた
――案外、強がっている彼女たちも時代に取り残されないよう必死なのかもしれない
そんなこんなと考えているうちに私は目的の駅を乗り過ごしてしまった。
-------------------------
若い身空でこんな話を書いてしまった。これでも二十代。鬱だ氏のう
続いて、「もしも」「だから」「くるぶし」
549 :
「もしも」「だから」「くるぶし」 :02/06/21 19:30
我々は気の遠くなるような長い年月をかけて復興への道程を歩んでいる
人類の科学技術は、それなりに進歩したといっていいだろう。
それはそれは――人の時間軸からはずれた歳月に形成された天然資源を使い果たし、
分厚い光化学スモッグで地球の大気を覆い尽くすほどだ。
結局、世界的な食料危機を回避する解決方法は見いだせなかった
星々を光速で自由に駆けめぐるための推進器も開発できなかった
次世代エネルギーの開発プラントに至っては、
ぐるりと数千キロ、周辺に人の立ち入れない夢の残滓として放棄されている
だから、人類は少しだけ現実的になった。
無尽蔵のエネルギー源への試みは凍結され、宇宙開発に至っては法的にまで禁止された。
遺伝子工学だけはまだ細々と続けられているが――まあそのことは、これからの話とはあまり関連がない
ご先祖たちは残念がるかもしれない。輝かしい科学文明の終焉を
でも、誤解しないでほしい。僕たちは限られた世界の中で精一杯生きている。
今の事態の打開への夢のような解決方法がないことは、過去の歴史が悲しいほど証明している
このことに父は反対しているが、現実に目を向けさせるために宇宙開発を禁じた統合政府のやり方は正しい
それでも――
もしも、空がもっと青ければ人々は星々の語らいに耳を傾けたかもしれない
さて、ここで舞台は急展開する。
時代遅れの――ほとんどジャンクと言い切って差し障りのない、水素ロケットで宙を目指すドンキホーテがいる。
恥ずかしながら私の父だ。人類には夢が必要だ。そう言い続けて既に二十年が経過している。
――爆煙を上げて一筋の光が上空に伸びていく!
まさか、エンジンに火がともるとは思わなかった。そもそもろくな軌道計算もせずにどこに行こうというのか?
だからこそ、この変人は宇宙を夢見ることができたのだろう。
祖母は卒倒し、母は、ここにはいない――機上の父を激しく罵倒した。
私も愚かなことだと思う。私は銀月の騎士になるべきだったのだろう。だが、だが、この胸にこみ上げるものはなんだ?
張りぼてのロケット――ロシナンテは、まだ目視しうる範囲、ほんの重力井戸のくるぶしのあたりで――あっけなく飛散した。
――九十六年
人類が星の見えない夜空に彗星を見たのは実に九十六年ぶりだった
-------------------------
ああ、連続書き込みしてしまった。暇人だと笑ってくれい
お次は、「多聞」「外聞」「内聞」
550 :
「多聞」「外聞」「内聞」:02/06/22 00:15
連日の深夜残業。恥も外聞も無く公園にへたり込む。
「あー・・・」しんど、と言おうとした矢先、黒服の男が現れた。
「ちょっと待った。私が代わりに疲れてあげます」
ベンチに横たわり、男はうめき出した。
「ああ疲れた、しんど、もう歩けない、ここで野宿だー」
・・・代わりに疲れられて釈然としない。幾多聞く幽霊噺にも、こんなのはない。
そこに、また一人の娘が現れた。
「私が代わりに釈然としないでいてあげる!」
やにわにうなだれて、ぽつんと呟く娘。
「あーあ、なんだか釈然としない、どうしてだろう、あーあ・・・」
疲労も釈然としないもやってもらって、何をしていいのかわからない彼。
とりあえず家に帰ろう。「ありがとう、ではまた」
「他のサービスのご案内聞いていきませんか?」という声を振り切って
・・・家に帰ると、既に一人の少年が代わりに帰ってくれていた。
何もなくなってしまった彼。でも、不思議と寂しくはなかった。
傍らで一人のお爺さんが、代わりに寂しがってくれていたから。
※谷川俊太郎のパクリ・・・なわけないけど(笑)
次のお題は:「チョコレート」「スリップ」「夏」でお願いします。
551 :
「チョコレート」「スリップ」「夏(失敗)」:02/06/22 04:01
「チョコレートの原料となるカカオは元々南米の自生植物で、
大航海時代には被征服民族の間で通貨として流通していたの。」
耀子は夜中の十一時半(試験明けで眠い!)に僕を叩き起こし、そんなことをとうとうと語り続ける
「当時は潰したカカオを砂糖を加えないまま飲料――チョコラートとして、王族の間に嗜好されていたというわ」
彼女が世界史に造詣が深いことは良く知っている。僕はこうして我慢強く聞いてあげないといけない。
決して我が儘な女性ではないけれども、時折こういうどうにもならない時もあるものだ。
「うん、それで?」
「と、当時は、それはヨーロッパ人の嗜好に合わなかったら、
チョコラートがチョコレートになるまでは様々な努力・試行錯誤がなされてきたの」
正座した姿でスリットから覗く太股が色っぽい。それと、趣味は分かれるところだが、僕は日本人形のような耀子の顔を気に入っている
「うん、君の言っていることはよく分かるよ」
「カ、カカオは栄養学的見知からも効能が優れているの」
「へえ、それは意外だね。食べ過ぎると良くないと思っていたよ。うん?」
「た、たまには異文化に触れてみるのも悪くないと思うの!」
彼女はタッパに入れた(可哀想だがお世辞にも形は良くない)チョコレートをぽんと僕の目の前に置いて、
そのまま踵を返しててすたすたと帰ってしまった。
どうせなら、泊まっていってくれた方が嬉しかったのに。
帰り際、耀子は恥ずかしそうに呟いた――ありがとう
-------------------------
ってか、お題は「夏」じゃん。ええ、良いお題だと思います。
長いのは嫌われますので、ここで諦めます。
というわけで、引き続き「チョコレート」「スリップ」「夏」
552 :
「チョコレート」「スリップ」「夏」:02/06/22 10:26
「ほら、チョコレートで地べたに絵がかけるんだぞ」
トシユキは黒いアスファルトの上に茶色い線を引いた。
「もったいないよ」
アキエが咎めるのだが、トシユキは気にせず線を延ばし続けている。
「もう売り物にならないからって、沢山くれたんだ。食べ飽きたよ」
トシユキの家の駄菓子屋に、トラックが突っ込んだのは先月のことだった。
雨で滑りやすくなった路面で、擦り減ったタイヤがスリップしたらしい。
「最初は地上げ屋かと思いましたよ」
事故について語る時、トシユキの祖母は決まってそう切り出した。
1枚の板チョコは1本の長い線になった。
トシユキは汚れた指先をTシャツで拭って、自分の引いた線を満足そうに
眺めていたが、突然思い出したように、
「俺、夏休みが終わったら、いなくなるかも」
と言った。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
次は「カナブン」「鉛筆」「故障」
553 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/22 10:44
「よっぽど気をつけて走らねえと危ねえぞ兄ちゃん」
ガソリンスタンドの店長が俺の車のタイヤを蹴った。
おかしなことだがとても慣れた足つきに見えた。
「これ、スタッドレスでねえべ」
「ノーマルですが、やっぱり危ないですか」
「危ねえよう。金あんだったらここで履いてけ。スリップすんぞ」
言われた通り、ここまで来る途中でも何度か危ないところがあった。
道路に積もった雪は踏み固められて氷のようになっている。
「去年の夏もここに来たことがあるんですが、全然違いますね」
「そりゃそうさ雪国だもの。雪降ったらもうダメさ」
だけどここでタイヤを買う金など無かった。準備もなしに飛び出してきたのだ。
「どうすんのや。履いてかねのが」
「はい。お金が、ちょっと足りないので」
「しゃあねえな」
店長はスタンドの建物の中に入り、何かを手にして帰ってきた。
近づいてきてそれが分かった。タイヤチェーンとチョコレートだ。
「貸してけっから。危ないとき自分で履いてけよ」
「あの、そのチョコは」
店長はにやっと笑った。
「立ち往生したらカロリーが必要になんべや」
----
書いちゃったので投稿。
続くお題は552氏の「カナブン」「鉛筆」「故障」で。
554 :
「カナブン」「鉛筆」「故障」:02/06/22 11:40
小学校のとき夏休みの研究で提出した標本はどうなったのだろう?
カブトムシとクワガタが全然捕まえられず、カナブンばかり並べた覚えがある。
札に鉛筆で『カナブン』と同じ名前ばかり書きこみながら泣きそうになったものだ。
子供のころだから、昆虫学者がやるようにきちんと防腐処理が施せるわけがないし、やった覚えもない。
図鑑で昔、はらわたをちゃんと取り出さないといけないと読んだ覚えがあるが、そのとおりだと思う。
とりとめもない思索にふけっているとき、若い青年の声が耳に響いた。
「あ〜これ、エンジンまでいっちゃってますわ。うちじゃあ無理っすねえ」
レッカー車が来るまで、私のフォルクスワーゲンはそこに磔になっていることだろう。
――標本のように
ガソリンスタンドにはビートルズの『ヘルプ』が流れていた。
----
おお、かなり即興で書けたぞ。嬉しい。
次は、「遺伝子」「改悛」「エリート」
うげ!?
故障を入れ忘れた。阿保か俺は
556 :
「遺伝子」「改悛」「エリート」 :02/06/23 04:07
「おまえ知ってるか?
受精能力のある精子は全体のほんの一割ほどで、残りは他の男の遺伝子を殺すための文字通り
――キラー精子として機能するんだよ。これはエリートほどより多くの子孫を残す仕組みを……」
左手が一閃する。依然として交戦相手の士気は高く戦力も強大である。だが、戦略的重要拠点は死守せねばなるまい。
「では、同じ哺乳類であるオットセイの雄雌比については?
たった一割の雄が、実に残り九割の雌を獲得すべく闘争するのだよ。これは何よりも自然が一夫一妻を否……」
汝、右の頬を打たるれば左の頬を差し出せ。痛そうな音が辺りを響き渡る。
指輪を嵌めたままひっぱたかれたため、皮膚を切ってしまった。
俺と彼女は同じ言葉で語りあえない。俺は理屈をこね回すが彼女は両手を振り回す。現代が文明社会なんて嘘っぱちだ。
彼女は俺の頬の手当しながら呟く
――ホント、馬鹿なんだから。浮気してないならそう一言言えば済むじゃない。
お互い興奮していたが、冷静になるといつも改悛の情に駆られる。こんな傷は、まあどうでもいい。
馬鹿馬鹿しくなってふとお互いに微笑みあう。
使用しているハードウェアもプロトコルも全く違うのによくもこんなにも通じ合えるものだ。
彼女にとって、(俺が専門にしている)生命の成り立ちやその行く末についてなんて、興味どころか意識の範疇にすらないらしい。
妻が今気にしているのは、俺の頬傷の具合と、今晩の料理(自信作らしい)の評判だ。
だから、だからこそ、子供の頃から――僕たちはずっと一緒にいる。
---
「遺伝子」「改悛」「エリート」 なんてお題目だと(ストーリーが限られるし)小難しそうで萎えますかねえ。
忍びなくて自分でスルーさせてしまいました。
お次はわりと作りやすそうなお題目を、「モンタージュ」「パンツスーツ」「BGM」
557 :
「モンタージュ」「パンツスーツ」「BGM」:02/06/23 08:22
目撃者の証言により、犯人はパンツスーツの若い女性と判明した。
警部は張り切る「よし、みんなで探すのだ。パンツスーツの女を!」
鑑識課員は頭をひねりながら警部に相談。
「えー、モンタージュ写真とDNA鑑識結果によりますと、犯人は」
「そんなのはどうでもいい!パンツスーツだ。パンツスーツの・・・」
他署から続々応援もやってきた
「我々も捜査に加えさせて下さい!」「僕達も」「俺達も!」
既に百人を超えた彼らの頭には「太陽にほえる」のBGMが流れ続けていた。
「あのですね、だから、鑑識によるとですね・・・」
誰も聞いていなかった。パンツスーツ。それだけで十分だった。
・・・が、2ケ月にわたる懸命の捜査にも関わらず、犯人は見つからなかった。
パンツ一丁に上半身スーツ姿の女性は、ついに現れなかった。
コンビニ万引き事件は、未解決に終わったのである。
※実は「パンツスーツ」の意味知らない^^;
次のお題は:「記憶」「レバー」「遊園地」でお願いします。
558 :
「記憶」「レバー」「遊園地」:02/06/23 10:25
『鶏レバーの味を文章で表わしましょう』
教卓の後ろに置かれたホワイトボードに、右肩下がりの文字でこう書かれている。
これは、白川が受講しているシナリオライター養成所の課題である。
課題が発表された後、受講者の間から軽い笑いがこぼれた。
白川も笑ったが、すぐにこれは難しいぞと思い直した。
おぼろげながら味の印象は掴めるのだが、それを文章にするとなると容易では無い。
しかし、記憶というのは面白いもので、レバーの事を思い出そうとすると、
それを食べた場所や、その時一緒に居た人の顔まで浮かんでくるものだ。
「レバー、レバー、レバー・・・・・・」
お経のように繰り返していると突然、白川の目の前に赤い観覧車が浮かび上がった。
突如沸いたイメージのあまりの鮮やかさに、白川は驚いて「あっ」と声をあげた。
あれは小学校の2年生の時だった。
白川は両親に連れられて、S県の遊園地に遊びに行った。
そこで両親の目を盗んで観覧車の裏側に回り込んだ白川は、
それと知らずに緊急停止用のレバーを引いて、観覧車を止めてしまった。
観覧車は30分間以上もの間止まり続け、ゴンドラに閉じ込められてパニックになった婦人が、
30メートルの高さから窓を破って地面に飛び降り、遊園地は大混乱となったのだった。
どうしてこんな大事を忘れていたんだろう。
白川の口内には、嫌な味のする唾液が溜まっていた。
レバーの味と、嫌な思い出と、酸っぱい唾液が混ざり合い、白川は吐いた。
次は、「部屋」「シャツ」「象」
560 :
「部屋」「シャツ」「象」:02/06/23 12:19
「象ってアフリカとかインドにいるんだよね、寒くないのかな」
「そりゃ寒いさ」と適当に相槌をうつ。
学校さぼって二人で来たのはいいが、平日の動物園は寂しすぎる。
「このホッカイロ投げたら集まってくるかな? 『あったかいよー』っていって」
「止めろ止めろ。それに本当に寒くなったら厩舎に入れるだろう」
「そっかー。だから冬は動物園閉まっちゃうんだ」
なんで学校さぼったんだろうかと、さっきから考えている。
別に二人きりになりたかったわけじゃない。
じゃあなんで学校さぼったんだろう。
さっきからずっと答えは出てる。
隣にいるデート気分の彼女には悪いが、俺はその答えを引き延ばしたいだけだ。
制服のブレザーもYシャツもすり抜けて、秋の終わりの風が肌に触れる。
もうじき冬が来る。
アフリカにもインドにもいない。今おまえは日本にいる。
象はその大きい体を自分の部屋に押し込めればいい。
「なあ今から学校に帰んね?」
学校帰って勉強して先生と相談して進路決めて願書書いて……。
----
次は「雑誌」「灯台」「層」で。
561 :
「雑誌」「灯台」「層」:02/06/23 15:07
ザーザーザーザー
深夜3時。デスクの上にある電源がはいったままの14インチの小型TVでは、すでに番組がやっていない。
私は打開作を練っていた。我らが編集部の1週間の結晶である、「週刊2ch」
読者層はもちろん2chがなくては生きていけないような、「2ch依存症」の人間なわけだが、
そういういわゆる引きこもり体質の多い人間は、表紙にギコ猫がびっしり書かれた「いかにも」な
この雑誌を買う勇気がないらしく、立ち読みされて終わる部類の雑誌という不名誉な位置についてしまっている。
ようするに需要はあるわけなのだから、買う側の負担、つまりこの場合は「買うときの羞恥心」
を軽減してやればいいわけだ。つまり表紙デザインの改変である。
今までは2chのシンボルともいうべきギコ猫を、様々な形で登場させ、あくまでも2ch然とした雰囲気を目指していた。
それならば、2chという言葉と関連性のないものを表紙として使っていけばいい。
だが、あまりにかけ離れていても、私はどうかと思うのだ。
雑誌の表紙はその内容を簡潔にまとめた、いわゆる目次のようなものであり、
そこで興味を惹かれない限り、いくら2ch依存者達にとって買いやすい物だろうが、なかなか購買意欲自体が沸いてこないだろう。
なにか打開作は・・・。悩む私にの目が、ふと目の前のTVにとまる。相変わらず番組はやってない。
そういえば消すのを忘れていた。電源ボタンに指をのばそうとして、私は愕然とした。
そこにはまさに私の目指していたものがあったのだ。
「まさに灯台下暗しだったわけね・・・」
目処はたった。これで週刊2chの未来は安泰だろう。
私の指がTVのリモコンのチャンネルボタン、「2」にふれた。画面の内容は変わらなかった。
次は「夏」「うちわ」「パチスロ」で。
俺はただいつものようにパチスロに行きたかっただけなのだ。
それなのに・・・
梅雨時だというのに今日は太陽がぎらぎらと照りつけ、これから到来する夏の予行演習であるかのように蒸し暑かった。
さすがにうちわしかない6畳一間の部屋でこの暑さに耐えられるわけもなく、空調の利いた近所のパチンコ屋に行こうと思い立った。
ポケットの中のなけなしの金―――幸い給料は日払いで貰える―――を確認し、俺の腕をもってすれば3時間は涼めるだろうと踏んだ。
その後は、と俺は自嘲した。財布だけでも涼しくなりゃそれでいいってことさ。
ところが、である。
俺は運悪く大通りの交差点で信号に引っかかってしまった。
仕方なく俺はうちわ(部屋から持って来たのだ)を頭にかざした。
その時だった。道の向こうから苦悶の表情を浮かべつつ必死に走り寄る女性の姿が視界に飛び込んで来た。
凛としたつぶらな瞳、荒い息を吐くふくよかな唇、上気してほんのりと紅い顔、それはまさに戦いの女神のように生命感に溢れ美しかった。
ふと、彼女の手に偶然にも俺のと全く同じ絵柄のうちわが握られている事に気づいた。
彼女も俺のうちわに気づいたらしい。そのまま彼女は俺の許へと駆け込み、耳元に暖かい吐息を感じるほど唇を寄せこう言った。
「3枚目のうちわ。」
そして何のことかわからず困惑する俺の頬に一瞬唇を押し付けた後、女性はまるで追っ手を恐れるかのように走り去ってしまった・・・
俺はこの後、「3枚目のうちわ」の謎を解くべく3年の歳月と6ヶ国にわたる旅をすることになる。
「夏」「うちわ」「パチスロ」のお題でした。
次は「水」「魔」「瞬く間」で。
564 :
「水」「魔」「瞬く間」:02/06/24 13:28
僕は学校のプールの授業を見学していた。なぜなら水着を忘れてしまったからだ。
ほかに見学してる人は誰もいなかった。僕は一人プールサイドのベンチに腰掛け、ぼんやり眺めていた。
みんな楽しそうだな・・、僕はみんなに羨望の眼差しを送っていた。
一人はバタ足をして、そこから水しぶきが太陽に照らされまぶしく跳ね上がっている。ある一人は潜水を長く楽しそうにやっている・・。
たまには眺めるのも悪くないか・・、温和な気分だった僕はうとうとしていた。その時、一声の悲鳴が上がった。
「キャー!!プールの底になにかがいる!!」
その声に僕ははっとして目を覚ました。そして悲鳴の上がったほうを見てみた。僕は凄まじい光景を目の当たりにしてしまった・・
僕が見てすぐにプールの中央付近に渦ができ、そして瞬く間にその渦は勢いを増してすさまじい渦潮の如くと化した。
そしてその渦潮の中心からは凄まじい形相をした「魔人」らしき物が顔をあらわした。
いつの間にか空には暗雲が立ち込めている。僕はこんな事がこの世にあっていいのかと錯乱してしまった。
だが実際に起こっている。僕は息をのんでその光景を見届けることにした。
プールに現れた魔人はまず巨大な腕を伸ばし、近くにいた引率教師をさらっていった。そして次の瞬間、あたりには激しい血飛沫が舞った。
魔人は引率教師を捻り潰し、その生き血を啜ったのである。プールは鮮血で赤く染まっていった。
キーンコーン・・、校舎から授業終了のチャイムが悲しく鳴り響いた。惨事をあざ笑うかのように・・
魔人が次の獲物めがけ腕を伸ばしたその時だった。空から、もう授業は終わったぞ、起きろ。と場違いの声が上がった。
だが次の瞬間、僕は陽光の下にいたのだった。僕は夢を見ていたのである。僕は胸をなでおろした。
それにしても恐ろしい夢だったな・・。僕は体に怯えを残しながらプールを後にした。
次は「横断幕」「サポーター」「稲妻」で
565 :
「横断幕」「サポーター」「稲妻」:02/06/25 01:50
横断幕の用意という命令が下った。
俺はコンソールを操作し、所定のプロトコルに従って、
エネルギーの放出量をプログラミングした。
肉眼で観察はできないが、宇宙空間に横断幕が掲げられる。
俺の乗っている巡航艦随伴護衛艦、通称サポーターと呼ばれているが、
それ自身にはたいした火力も持たず、主に母艦たる巡航艦の補給や修理
など補助的な役割を担っている艦である。
ほぼ唯一と言ってよい攻撃手段として、横断幕の形成がある。
母艦に対して指向性のあるエネルギーを放出することにより、
特殊な力場を形成させ、そこに敵艦が接触することにより、ダメージを与える。
このような技術が開発された頃は、【横断弾幕】などと呼ばれていたが、
いつのまにか【横断幕】という通称が一般的になっていた。
眼の端に稲妻のような閃光が走った。敵はいきなり撃ってきたらしい。衝撃が走る。
人が死ぬ前には、走馬灯のように今までの思い出が浮かび上がってくると言う。
しかしその瞬間に、俺は地上で見た花火のことが思い浮かんだ。
どうやら、俺たちの艦は死神の鎌の一振りを逃れたらしい。
俺は帽子を拾い、被りなおすと、コンソールの前に座り、次に予想される指示に沿った
プログラミングを開始した。
次は、「あじさい」「発光」「酸素」でお願いします
566 :
「あじさい」「発光」「酸素」:02/06/25 06:22
私は小学校の教員に向いていないのかもしれない。先日も、
「どうしてあじさいは色が変わるの?」
そう聞かれてその場で答えることができなかった。
たしか梅雨時になると色が変化すると記憶しているが、詳しい理由までは分からない。
――先生、大人のくせにそんなことも分からないんだ
全くもって面目ない。深夜、ぽつんと発光する蛍光灯の下でひとり調べ物をしている。
何々?――土壌の酸性アルカリ性の具合によって青から赤へ変化します
酸性……ええっと、酸化能力、つまり酸素を付加する能力であって……
ああもう!こんなこと子供達にどうやって納得してもらえば良いのだろう。
自分は真面目すぎるという。
そんな質問に対し、同僚が「その方が綺麗でしょ」と答えていたのを思い出す。
無難な答え方だとは思う。でも、小学生とはいろんな事に興味を抱く多感な時期でもある。
質問には自分のできる範囲で真摯に答えてあげるべきだと思う。
――私を悩ませる難題は続く。
空はどうして青いの?
どうして僕だけお父さんがいないの?
どうしてサンタさんの乗ってるソリは浮いているの?
分数のわり算なんて納得できないよ
私をあっと驚かす質問や、素朴な疑問、答えようがない難題、様々だ。
私が教えているのか、それとも子供達から教わっているのか。
あくまで生真面目に答えようとする自分は、しばしば、からかわれているとも思う。
ただ、子供達の質問の回数だけは増えていった。
---------------
殺伐とした昨今、こんな先生に巡り会えるといいねとか思って書きました。
次は、「波止場」「板挟み」「原動力」
567 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/25 08:41
「波止場」「板挟み」「原動力」
源蔵は今日も労働していた。
石炭を放り込み、弁を開け、缶のテンパアチュアを調節するのである。
源蔵は汗を拭かぬ。
右手は円匙の端を握り、左手は円匙の柄を握って居るのだ。
炉扉のリズムが彼に不断の労働を要求する為、源蔵は額を拭うことすら侭ならぬのだ。
源蔵は「波止場」と呼ばれる出張りに足を掛け石炭山の奥のほうに円匙を伸ばす。
黒く輝くダイアモンド、このエネルギイの塊が缶に入って炎となりこの大工場を動かすのである。
大工場から産生された工業品は渦潮のように市中へ流れ、やがて国土の隅々にまで行き渡る筈だ。
即ち源蔵がそれらの原動力なのである。
源蔵こそが原動力なのである。
石炭滓と煤煙で真黒に染まった顔、これが労働者源蔵の顔だ。
貧窮と多産に板挟みされる苦悩が滲み出て来るのだ。
己の両手以外何ひとつ持たぬ源蔵である。
働く事でしか解決できぬ問題なのだ。
だから源蔵は労働するのだ。
今日も源蔵は労働するのだ。
次回お題「焚き火」「船」「視線」
568 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/25 09:43
15行以上書くんじゃねぇゴルア
もしかして16行書いた俺に言ってますかバーン
>>568 >15行以上書くんじゃねぇゴルア
16行以上とか正してみてさらに事態の混乱を招いてみるテスト
読み手に優しく改行したら15行越えるケースが大方だがどうする?
と発言して周りの視線を窺う試行錯誤
当面は15行(1行40文字くらい)を目安にしてみたらと提案して
渡りに船をつけ、護摩を焚き火のないところに煙を立てず、
スレの繁栄を模索する祈祷
こんな煽りでお題が流されてしまったこの事実――
出題された方に『禿』しくお『詫び』して文章を『結ぶ』次第であります。
571 :
「焚き火」「船」「視線」:02/06/25 16:34
俗世から離れる冒険の一日目。
私がこの無人島に上陸して初めて過ごす夜。
夜営には火が欠かせない、そう思い私は近くの朽木を集め焚き火の準備をしていた。
火をつけようとした時、ふとどこかから視線を感じた。私はその視線の方向を振り返った。
そこには海上に浮かぶ一隻の漁船があった。船上の誰かがこちらを振向いたのだろうか。
いや、気のせいさ。この暗闇から人を識別できるはずが無い。
私はひとときの安堵を感じた。そして安堵と共に眠気もやってきた。
もう寝るか。
私は漆黒の海原の一点の燈を見ながら安らかな眠りについた。
こうして私の一日目の夜は更けていった。
次は「積乱雲」「コップ」「アンテナ」で
130じゃ天才とは言えんな。
180くらいないと天才とは呼びたくない。
573 :
「積乱雲」「コップ」「アンテナ」:02/06/25 20:03
翌朝、空が白みだすと同時に、私は夢の世界から引き戻された。
体をゆっくりと起こし、目を瞑り、潮騒の心地よい音に耳を傾けた。
ここには、醜悪な人の世は存在しない。昨日、ほとんど思いつきで
無人島まで来てしまったが、後悔はしていなかった。残りの一生を
すべてここで費やしてもいいとすら思った。
目をあけて、砂浜に目をやると、波打ち際にはガラスのコップや空き瓶
なんかがポツリポツリと打ち上げられている。人間社会の切れ端が
こんなところにも迷い込んでいる。そう考えると、まるで自分のようで
滑稽に感じられ、口の端が自然とほころんできた。
さざめきたつ海原は、朝焼けの紅い光をかき乱しながら輝き、まるで
宝石が一面にちりばめられたような光景を描き出していた。水平線の上に
乗っかっている積乱雲も立体的に薄赤く染め上げられ、私の心をときめかせた。
ところで、そろそろテレビ放送が始まる時間だ。私は暇つぶしのため、
テレビを一台持ち込んでいた。あ、しまった。アンテナを忘れた。
ていうか、電波とどいてるのか? あぁ、やばいっ。
今日はウルトラマンコスモスが最終回だ。
私は、水平線に向かって船を走らせた。現実逃避は明日からにしよう。
テレビ、間に合うかな・・・。
次のお題は、「鉱物」「化石」「層」
574 :
「鉱物」「化石」「層」:02/06/25 22:27
ヒリチェイはカモレ湾に面する小国である。
主要な産業はバナナなどの熱帯農業と観光業。
国民のうちヒリチュ人が68%、ハラ人が17%を占め、
その他にウロウ人、ナワシ人、レッキバ人などが居住している。
公用語はフランス語だが、実際に使用される言語はエレユイ語である。
エレユイ語はナワシ語を基層言語としてヒリチュ語やフランス語の影響のもとに形成された
一種のピジンフレンチであり、カモレ湾一帯の商業言語となっている。
宗教はカルメル会由来のローマカトリックが多数を占めるが、
レッキバ人の火山信仰やウロウ人の鉱物についての習俗は
フランス人勢力浸透以前のヒリチェイの宗教の一様相を今に伝える。
最近米国の石油会社によってカモレ湾口での石油資源採掘が行われ、
従来ベネズエラからの輸入に頼っていたヒリチェイの化石燃料事情に
大きな変革をもたらすものと期待されている。
次回は「期待」「フレンチ」「公用語」
「期待」「フレンチ」「公用語」
ヒリチェイはカモレ湾に面する小国である。
主要な産業はバナナなどの熱帯農業と観光業。
国民のうちヒリチュ人が68%、ハラ人が17%を占め、
その他にウロウ人、ナワシ人、レッキバ人などが居住している。
公用語はフランス語だが、実際に使用される言語はエレユイ語である。
エレユイ語はナワシ語を基層言語としてヒリチュ語やフランス語の影響のもとに形成された
一種のピジンフレンチであり、カモレ湾一帯の商業言語となっている。
宗教はカルメル会由来のローマカトリックが多数を占めるが、
レッキバ人の火山信仰やウロウ人の鉱物についての習俗は
フランス人勢力浸透以前のヒリチェイの宗教の一様相を今に伝える。
最近米国の石油会社によってカモレ湾口での石油資源採掘が行われ、
従来ベネズエラからの輸入に頼っていたヒリチェイの化石燃料事情に
大きな変革をもたらすものと期待されている。
次は「コピペ」「マジレス」「アイデア」
577 :
「コピペ」「マジレス」「アイデア」 :02/06/26 00:47
時は既に丑三つ時、満月が霞んだ雲の向こうに朦朧と浮かび上がる。
びゅうと吹く風も、体にまとわりついてくるように重苦しい湿気を帯びている。
校庭に六星芒形の魔法陣を描き終わった僕は、魔法陣の前に座り込み、
地面に『The Servant』という本を広げ、ペンライトの明かりで、ある行をなぞった。
『The Servant』は、天使や悪魔を召還するためのアイデアが羅列されており、
僕が目を通した行には、天使・セラフィムの召還方法がかかれていた。
僕はしっかりと呪文を頭に叩き込み、やおら立ち上がり、両手を広げて叫んだ。
「ナトタビシコピペチーチッサー」
刹那、風がぴたりとやみ辺りを沈黙が包み込んだ。そして次の瞬間、
魔法陣から眩いほどの光が噴き上げ、ゆっくりと押し出されるように一匹の竜が
姿を現した。『The Servant』で見たことのある姿だ。
こいつは、悪魔・レヴァイアサンだ。
マントルが対流するように、濃厚な恐怖が全身へ拡がっていくのが分かった。
ジットリと手にかいた汗が、それが錯覚でないことを物語っている。
レヴァイアサンは、硬直したまま身動きが取れない僕に向き直り、次の瞬間、
ストロボ光線のように、その大きく裂けた口から勢いよく火炎を吹きだした。
次の瞬間、僕の頭は吹き飛んでいた。
次のお題は「小春日和」「初恋」「縁側」
578 :
「小春日和」「初恋」「縁側」 :02/06/26 05:11
「これこれ、裕太も愛ちゃんも、喧嘩しちゃあいかんよ」
小さな頭をつーんと反らし合ってお互い口を利かない。けれど離れるわけでもない。
やんちゃな年頃で目に入れてもいい。どれだけ寿命が延びたことやら。
「聞いて!桑原のおじいちゃん!裕太、ワタシとケッコンしないなんて言うのよ!」
「ばーか!ばーか!健司おじさんも言ってたよ。ケッコンなんてメンドウだって!」
もう二言三言掛け合った後に、愛ちゃんはぐずぐずと泣いて走り去ってしまった。
「裕太や、お前さんから謝ってやんなさい」
「……僕悪くない」
駄々をこねるように、ほんのりと鼻を湿らしている。まあ、そのとおりなんだが。
「男の子はね、それはそれは広おい心を持っておるものじゃよ。
儂はてっきり裕太もそんな強い子とばかり思っておったのじゃが……」
しばしの幼い逡巡の後、結果的に私はひとり縁側に取り残されることになる。
初恋もまだ知らない二人だけど、案外ずっとうまく行くのかもしれない。
ふいに、先に待っている妻のことが思い出される――私は幸せでした
では自分もそんな風に旅立とう。安らかな小春日和の最期のひとときであった。
---
とりあえず、次のお題は無難に無難に
「似顔絵」「小麦畑」「藤色」
久しぶりやね。みゆきちゃん。
手紙ありがとう。ホントうれしかったとよ。
わざわざ出してくれたのに、返事遅れてすまんかったね。
今年の正月に会って以来だけん、もう半年以上連絡
しよらんかったとねぇ。相変わらず元気でやっとるようで、
安心したばい。
おれも相変わらず東京でがんばっとうよ。やけど、ちょっとだけ
自信なくしとったとよ。
おれって、似顔絵とか得意だったけん、美大に入る前は
結構自信あっとうたい。やけど、周りの連中はもっと凄かったと。
小麦畑継ぐのいやだったけん、画家になるばいゆうて、
親と喧嘩して上京した手前、なかなか親には弱音吐けんと。
これからどげんしようかとか、悩んどったけど、
みゆきちゃんのこととか、ふるさとのこと思い出してたら、
なんか元気でてきたばい。
今年も正月しか帰られんのやけど、正月に会ったらまた話そうや。
そしたら、また手紙かくけん、元気でな。
斎藤色哉
次のお題は、「姫」「城」「不死」
方言はかなり適当です。
580 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/26 20:44
>斎藤色哉
な、なんかエロそうな名前・・・
581 :
名無し物書き@推敲中?:02/06/27 00:36
私は目を疑った。もう30年も前にお世話をしていた姫が、この明治の街をあ
の頃と変わらぬ姿で通りの片隅で泣いているのだ。38歳になっているはずの
姫が8歳だったあの頃と変わらぬ姿で。もう80歳を過ぎた私が幻を見ている
のか?私は思わず近ずいた。
やはり姫だ。
私に気付いた姫は呟いた。
「どうして城をでたの?わたしはずっと待っていたのよ。」
「・・・・、どんなにあなたのそばにいたかったか。どんなにあなたの成長を
見守りたかったか。」
私は思わず言った。戦にかりだされ、戦乱の世が私と姫をひき裂いた。
もし、許されるのなら、この先の短い私を不死にして姫と共にまた日々を送り
たい。
もう一歩、近ずくと姫は煙の様に消えてしまった。
その後、風のたよりで姫は私が城を出たすぐ後に病で亡くなっていたことを
知った。
「リモートコントロール」「バリア」「コピー」で夜露死苦
582 :
「リモートコントロール」「バリア」「コピー」:02/06/27 01:49
「リモートコントロールって怖いなぁ。」
ワケの分からないことをいきなり呟いたのは、アタシの父だ。ボケーっと
居間のテレビでニュースを眺め、顔中の筋肉をたるませ無防備な表情をしている。
普通の家庭風景といえば、そうかもしれないが、アタシは内心ギョッとしていた。
というのも、死ぬ間際まで痴呆で家族みんなに迷惑をかけた祖父の姿が
ぱっと頭に浮かんで、それがまるで今の父のコピーのように一致したからだ。
祖父は、生前、リモコンを異常に怖がっていて、冗談でリモコンを
向けようものなら一目散に逃げていったものだ。なかなか可愛い反応だが、
今思えばこれも痴呆の症状だったんだろうと思う。
父は、今年で51だ。ボケるにはまだ早過ぎる歳だし、大黒柱にボケてもらっては
洒落にならない。それでもアタシは、恐る恐る父にリモコンを向けてみた。
父は怪訝な顔をして、アタシを見つめている。アタシは、そのまま2CHのボタンを押してみた。
「バリアー!」
父は、顔の前で両腕をクロスさせ、大きな声で叫んだ。このヤバめの反応は・・・。
アタシの脳裏によぎったのは、祖父の痴呆と付き合ってきた長い日々と、
これから訪れるであろう暗い我が家の行く末であった。
人知れず絶望に打ちひしがれていたアタシに、父が笑いながら言った。
「リモコンじゃ無理だって。さっき、父さんがマインドコントロールが怖いって言ったから、
そのつもりでやったんだろうけど。」
・・・お父さん、いい間違えかい?
お次は、「思い出」「国境」「手紙」
583 :
「リモートコントロール」「バリア」「コピー」:02/06/27 02:09
当世髄一とよばれた大奇術師だった。でも客は少ない。
科学万能の22世紀、不思議は不思議でなくなっていた。
「杖がひとりでに空間を浮遊します!」と言いながらも奇術師は思う。
(でも、これって杖をリモートコントロールすれば誰でも・・・)
もちろん彼はそんな事はしない。客もそれは信じてる。ただ・・・
「鎖で縛られ、箱に閉じ込められた愛しき助手が、一瞬でニューヨークに!」
(クローン培養のコピー人間がいれば簡単だよねえ、こんなの。トホホ)
そんな事はおくびにも出さず、彼は最後の「空中ブランコ」に挑戦する。
「さあ、安全ネット一切なし!高度100mの空中ブランコでーす」
これだって、目に見えない電磁バリアがあるだろうと言われれば・・・
気の緩みからか、ブランコから滑り落ち、地面に叩き付けられる奇術師!
・・・観客が密かに望んでいた最高の見世物である。
薄れゆく意識の中で、奇術師はこう思った。
「大丈夫さ。高度クローン技術で培養された俺のコピー人間がきっと・・・ぐふ」
※なんかくらい
次ぽお題は:「浴衣」「豊か」「味方」でお願いします。
584 :
ごーぱっさん:02/06/27 02:11
ごめん、遅れました^^;
次のお題は>582さんの:「思い出」「国境」「手紙」でお願いします。
585 :
「思い出」「国境」「手紙」 :02/06/27 04:36
世界にはどうして境い目があるのだろう。
ケーキでも切り分けるかのように国境に我が身を切り裂かれた人間にとって
なおさらそれが強く感じられる。内紛のおりに、
私の家族は、トルキア共和国と私の住むグルジニ自治州に色分けされた。
言葉も宗教も変わらないグルジニ自治州に、実は独立すべき明確な理由はない。
だが石油資本がそれを許さなかった。強引に議会を抱き込み独立を強要したのだ。
まだ、さすがに国際社会の承認は得られないものの、自治州としては
考えられないほど既に資本が入り込み、生活そのものは豊かと言えよう。
トルキア共和国の戦争の傷跡はまだ全然癒されないというのに――
風の噂で、私の家族は(腹違いの)妹を残して全員戦死したと聞いた。
それで私は、残された妹にいくらかの紙幣を同封して手紙を送り続ける。
私は昔の思い出を、妹は明日の暮らしを手紙に吹き込むことが多い。これが、
過去のみ糧に生かされている人間と、明日の糧が必要な人間の違いなのだろうか。
……
「なあジョン、あの未亡人の好きな花ってなんだっけ?」
「情報部の調査によるとたしか――ベルフラワー、押し花に使っていたらしいぞ」
「ああ、前の分の手紙に入っていたな。思い出話に付き合うのって実にキツイのだが」
「クビになりたくなければ黙って働け」
「それと、送られた分の紙幣は手当として支給されるらしいぞ」「確実に嫌がらせだな」
---
お題から悲しい話しか思いつかんかった。それと、改行の仕方が鬱陶しいの少し反省。
お次は(萎えないこと期待)、「群像」「レーゾンデートル」「ギャロップ」
586 :
「群像」「レーゾンデートル」「ギャロップ」 :02/06/27 22:51
鬼野校長が卒業の祝辞に立った。壇上には何やら妙な段ボール箱もある。
え〜
君たちは高校を卒業と同時にこれから様々な岐路に歩み出すことだろう。
ある者は大学に進学し、ある者は社会に飛び出していく。例えるならば、
君たちは競馬場で遙かなるゴールを目指して一列に並んだ駿馬達だ!
――こほん
百合恵女史が軽く咳払いをする。空気が引き締まる。
教師ではなく女史と呼ばれているのはこのような理由からだ。
だが、今日の校長はひと味違った。
これから校門というゲートを飛び出して旅立とう!
君たちが青春の群像を謳歌するのはこれからだ!
幸い、世間の君たちへの注目はまだ高くない。
だがらこそ私は君たちのオッズはかなり高いと見ている!
私はみなに一点買いするぞ〜!
校長は段ボール箱を生徒達に向かってぶちまけた。紙吹雪が宙を舞う。
中身は大量の千円札だった。うお〜!という生徒の狂乱が広がる。
――それって一点買いなんかじゃない!
女史は見当はずれな悲鳴を挙げるが、幸か不幸か誰一人として聞いちゃいない。
体育館はお札を奪い合う生徒達で悲喜こもごもの修羅場と成り果てている。
いいか!現実は平坦な馬場ではない!山あり谷ありの障害物レースだ!
だが案ずるな!君たちには共にギャロップしてくれる友人がいるのだ!
そのことをこの話のレーゾンデーテルとして締めくくりたい!
……
「なあ、クビになった校長、卒業式前日、競馬で馬鹿勝ちしてたらしいよ」
「ふーん、それで、演説に出てきたレーゾンデーテルってどういう意味なんだ?」
「分からなかったのか?」「ああ、さっぱり」
「ならそれがあの話のレーゾンデーテルなんだろう」
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好き嫌いが分かれそうでコワイ
お次は「青空」「駐車場」「擬餌針」
ギリシアで、新たに発掘された神殿から、無造作に並べられた人の像が多数発見された。
怒りの形相を浮かべ、今にも襲い掛からんとばかりの迫力を持った石像。
恐怖におののき、尻餅をついているへたりこんでいる石像。
「闘う群像」と名づけられた、これら一群の石像は、どれもこれも本物の人間と
見まごうほどの美しい造形を持っていた。
作られたのは少なくともルネッサンス以降。ほとんど全ての学者がそう思い込んでいたが、
放射性物質の半減期を利用した年代測定では、
石像が作られたのは紀元前1500年頃、という結果がはじき出された。
学者達はこの意外な結果をどうにも消化しきれず、百家争鳴の議論が
連日繰り広げられた。
「高度な技術を持った文明が昔にもあったんじゃないのか?」
「捏造だろう?」「宇宙人が作ったんだよ」「プラズマで説明できます」
どの学説も全く要領を得ず、議論は進まないうちにまた新たな発見がなされた。
MRIで石像の断面を解析したところ、石像の中に内臓などの輪郭が見つかったのだ。
こんな芸当は、科学技術が進歩した現在ですら不可能だ。
外面だけでなく、内面をも人間を忠実に模倣された石像。一体これらの石像の
レーゾンデートルとはなんなのだろう。誰が何のためにどうやって作ったのか。
学者が一層頭を抱えている中、今度は神殿の奥から新たに玉座が発掘された。
玉座に腰をかけていたのは、首の切り落とされた白骨だった。
そして、玉座のそばには馬がギャロップした蹄の跡も確認された。
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先越されちゃった。
もちろん次のお題は、「青空」「駐車場」「擬餌針」 のままで。
レーゾンデーテル → レーゾンデートル
スマソ
[(フランス) raison d'etre]
外来語ということで堪忍してーな
590 :
、「青空」「駐車場」「擬餌針」 :02/06/27 23:41
青空というでかいキャンパスの上を、浮雲がすいすい泳いでゆく。
涼風は肌を軽くなでる。春の陽気はなんとも心地のよいものだ。
こんな天気のいい日曜日は、遠くまでドライブしたくなってしまう。
祐一は浮かれ気分で、駐車場まで歩いていった。
そして、車のそばに一万円札が落ちているのを見つけた。
いい日には、いいことが重なるもんだ。
笑みを浮かべながら、祐一は一万円札を拾い上げた。
そうして財布に入れようと思ったら、手からお札が離れない。
祐一は自分の目を疑った。しかも、お札はだんだんと上に上がっていき、
終いには祐一の足は地面から離れてしまった。
一方、浮雲の上では、雷様の親子が釣りをしていた。
「パパ、擬餌針になんかかかったよ。」
「本当かぁ。今日は大量だなぁ。うちに帰ったら天ぷらにして食べような。」
次のお題は、「蘭学」「化け猫」「命」
591 :
「蘭学」「化け猫」「命」 :
あたしと化け猫さんは大の仲良しだ。
お父さんやお母さんは化け猫さんのことを怖いって言うけど、
なんで怖いんだろう?あんなに優しいのに・・・
でもこんなことお父さんたちに言ったら、叱られるんだろうなあ。
「もう外に遊びに行ってはいけません!食べられたらどうするの!」なんてね。
今日もあたしはこっそり化け猫さんのところに遊びに行った。
化け猫さんはとっても勉強やさんだ。
あたしんちから持ってきた蘭学の本を面白そうに読んでいる。
あたしにはチンプンカンプンなんだけど、本の中身を
あたしにもわかるように教えてくれる。
「妙ちゃんは命ってどこにあるとおもう?」
「んー、ここかなあ?」そう言ってあたしは胸に手をあてた。
「うん、そこにも大事なものが詰まってるけど、本当はここにあるんだ」
そう言いながら、化け猫さんはあたしの頭を軽く撫でた。
化け猫さんの手は爪が伸びていて、ちょっと痛かったけど、
暖かくて、あたしは少しうれしくなった。
次は、「飛行機」「陰陽師」「オムライス」でお願いします