【盗作猿】ランディの日記を先取り予想だ!【パクルなよ】
520 :
無名草子さん:
『コーリング』予想
森真司という男の中には、「ビリーミリガン」のアーサーに相当する人格も、一応は存在
していた。同じ肉体の中の他の人格の存在を認識することができるし、「ビリーミリガン」
で言われる“スポット”に誰を立たせるか――すなわち、どの人格に身体を制御させる
か――の決定権も、かつては持っていた。しかし、「彼」の弱体化により、ビリーミリガン
で言うところの「好ましくない人格」も表面に出てくるようになってしまった。
そのため森真司は、会社を無断欠勤したり、若い女性にナイフで重傷を追わせるなど、
破滅的な行動をとるようになったのだ。
弱体化した「彼=他の人格の存在を知る者」は、しかし、完全に消滅してしまったわけでは
なかった。彼は真司の心の奥底で、あれこれと考えを巡らせていた。
「真司」は「川上さん」の「真司、いっしょに、カンボジアに行こう」という呼び掛けに
すっかり舞い上がっている。「僕は、呼ばれたのだ」とまで言っている。
地雷撤去視察ツアーに参加するという案に、賛成票を投じるべきかどうか?――6年前に
震災のボランティアに行った頃とは違って、「真司」の人格はランダムに切り替わるように
なってしまっている。地雷が数多く埋まっているカンボジアに行って、果たして無事生還
できるかどうかは疑問だ。他のスタッフに多大な迷惑をかけて強制送還されるか、地雷を
踏んで大怪我をするのがオチではないか?
だが、日本に留まっていたらいたで、「柴田」が「真司」を破滅させる可能性が高い。
「柴田」はすでに、由美という少女を刺している。彼女が死んだら、殺人犯として追われる
立場になる。日本の警察は「柴田」のように凶暴で頭の悪い犯人を逮捕できないほど無能では
ないだろう。「柴田」が犯行を繰り返したら、さらに捕まる可能性が高くなる。
その意味では、むしろ地雷だらけの「カンボジア」に行く方が安全とも言える。しばらくの
間は当局の追求もかわせるだろうし、「柴田」を始めとする「好ましくない人格」の多くは、
過酷な環境ではあまり出て来たがらない。平和と言われる日本という国の中で、弱い者を
攻撃し虐待するのが彼らの好みなのだ。
「彼」はパソコンのキーボードを叩き、川上さんへのメールの文章を書いた。
誘ってくれたことに対してお礼を言って、自分なりにカンボジアについて調べたこと、
ぜひいっしょにカンボジアに行きたいと思っていること、可能ならば視察ツアー終了後も
彼の地に留まり、ボランティアに従事したいと考えていることなどを綴った。
そろそろ意識の表面に「真司」が出てきて「彼」と交替する。
メールの送信ボタンを押すかどうか、決めるのは「真司」だ。
521 :
無名草子さん:02/05/25 18:58
『コーリング』予想 (
>>520続き、真司モード)
カンボジア行きの仕度をしながら、僕は久しぶりに心が弾むのを感じていた。
川上さんは、僕が出したメールの文章をえらく気に入ってくれた。
こういうことは時々あるのだ。トランス状態のようになって無我夢中で書き進めていって、
ふと我にかえると、本当に自分が書いたとは思えないくらい出来のいい文章が書き上がって
いることが。
僕がホームページにアップしている日記にも、そういう日が何日かあった。そんな日は、
自分の文章の最初の読者は他ならぬ僕自身だという不思議な感覚がある。そして、「今日の
日記は面白かった」といろんな人からメールをもらえることが多い。
そう言えば、小学校のときの先生に作文を褒められたことがある。僕は昔から文章を書くの
だけは得意だった。
できることなら、カンボジアに行っている間でも、日記は毎日更新しよう――僕はそう決心
した。カンボジアの大地を踏みしめて、僕が思ったこと、僕が感じたことを日々書きとめて
いくのだ。そうすることが、僕をこの世界につなぎとめてくれるような気がする。
僕にとって書くことは、僕が消えてしまわないための最後の防衛戦であり、真剣な祈りで
あるのかもしれない。
だから誰にも邪魔はさせない。
僕がカンボジアに行くと聞くと、職場の者たちは喜んで送りだしてくれた。退職届けも、
問題なく受理された。
僕の妹はブツブツとうるさかった。
「お兄ちゃんは何を考えているのよ。入院したお母さんを放っぽりだして、カンボジアに
逃げてハイおしまいってつもり? どこまで逃げ続ければ気がすむの」
うるさい、うるさい、うるさい。母親そっくりの声で、ガミガミまくしたてやがって。
カンボジアに行くことが決まってから、僕はあまり薬の世話にならないですむようになって
いたけど、こいつの話を聞いているとズキズキと頭痛がしていて、ついつい薬に手を伸ばし
たくなる。
でも僕はだいぶ元気になっていて、電話してきた妹に言い返すことができた。
僕がカンボジアに行けば、おまえも僕の部屋に通って世話を焼く必要がなくなって、かなり
楽になるだろうって。
妹は何も言い返してこなかった。
数秒だか数分だかの沈黙の後に、がちゃんと乱暴に受話器を叩きつける音が聞こえてきた。
522 :
無名草子さん:02/05/25 23:14
『コーリング』予想 (
>>521続き)
(
>>521 の「頭痛がしていて、」は「頭痛がしてきて、」の間違い)。
飛行機から見たカンボジアの国は、とても美しかった。
「カンボジアって、どこもかしこもびしょ濡れで、水の都って感じですよね」
僕は感動して、カンボジア地雷撤去ツアーの他の参加者たちに話し掛けた。
「まあ、カンボジアは一つの国だから、『水の都』というより『水の国』というべきかな」
いつもそうだ。僕が勇気を振り絞って何かを言っても、返ってくるのはがっかりするような
返事だけだ。
川上さんはさすがに言うことが違って、アンコール・ワットに祀られているという水の神
ナーガについて話してくれた。すべての命の源は水。その水の神がそこにいる。
僕はなんとなく、僕をカンボジアに呼んだのは、そのナーガという神様ではないかという
気がしてきた。そういうことを言うと変に思われるだろうから口には出さなかったけど。
「いいなあ。アンコールワットにも行って、その神様を見てみたいなあ」
「真司は僕あてのメールの中でも、ナーガについて熱心に語っていたものね」
川上さんの何気ない言葉にぎくりとする。僕はメールにそんなことを書いたのか?
カンボジア行きが決定してから、記憶が飛ぶことはほとんどなくなって安心していたのに。
「どのみちアンコール・ワットにも寄る予定だし、その蛇神様の像も見れるさ」
「蛇ですか?」
「像を見るとコブラの姿をしているので、やっぱり蛇の神様って感じかな。頭が七つという
のはヤマタノオロチを連想させて、真司のように竜神と呼ぶ人も多いのも納得だけど」
僕はどう返答していいかわからなくなって、曖昧に笑ってうなずくしかなかった。
蛇の神様はあまり好きになれそうもない。爬虫類特有の生臭い匂いをぷんぷんさせている
ような気がしてならないからだ。
同時に、そんなことを考えてしまう自分がひどく罰当たりな人間のようにも思えて、怒った
神様にひねりつぶされるのではないかと、恐ろしくもなった。
ごめんなさい、ごめんなさい。神様、どうか怒らないで。僕を許してください。
僕はうつむいて目を閉じ、必死になって祈った。
その日の日記には、祈りのことには触れず、飛行機から見たカンボジアの美しさを主に書く
ことにした。
だけど、うっかり「ぜんぶ水びだし」と打ち間違いをしてしまったら、翌日にはそれを笑う
メールが届いた。
僕は泣きたくなった。どうして世の中には、人の揚げ足取りばかりする人が多いんだろう。
僕にとって日記を書き続けることが、どんな重要な意味を持っているか、他の人たちには
なかなかわかってもらえないんだ。それがとても悲しかった。
参考文献:
http://www.peace2001.org/inpaku/randy_rupo/randy_0712.html http://www.hotwired.co.jp/opendiary/randy/19991005.html
523 :
無名草子さん:02/05/26 17:37
『コーリング』予想 (
>>522続き)
「起きなさいよ、真司くん」
妹の声かと思ったら違った。同じツアーの中年のおばさんが、僕を起こしに来たのだ。
今日は、地雷についてヘイローというNGOのスタッフからレクチャーを受ける日だった。
まだまだ眠りたかったけど、僕はあわてて起きた。
ヘイローのスタッフは忙しい中、時間を割いてくれる。英語がよくわからなくてもとにかく
真面目に聞かなければいけないと、前日のミーティングできつく言われていた。
服装も白か黒の無地のTシャツでなければいけない。僕は別にかまわなかったけど、今僕を
起こしにきたおばさんは、だいぶ文句を言っていた。若い女の人ならまだしも、こんな年に
なっても着る物にこだわるのが女の人ってものなのかな。僕にはよくわからない。
このおばさんと、「和尚」というあだ名の坊主頭の人といっしょに、昨晩は遅くまで話し
込んでしまった。だから、まだ眠くてしょうがない。
そこにもってきて、ヘイローではビデオを見せられた。
僕は説明用のビデオを見るのは好きじゃない。
それでも画面に集中しようと思っていたのに、緊張のあまり軽い乖離症状が起きる。
魂が身体からふわふわと抜けていくような頼りない感じがして、意識が遠のいていくような
感覚がする。次の瞬間、ふと我に返って、どうしようもなく不安になる。自分がとんでも
ないことを口走ったり、椅子から転げ落ちたりするんじゃないかと、心配になるのだ。
どうにも息苦しくてたまらない、早く終わってくれないか――そんなことばかり考えていた
ので、ビデオの内容はほとんど頭に入らなかった。
おばさんには、
「真司くぅん、居眠りしていたでしょ」
と、からかわれる。そんなんじゃないのに。でも、意識が飛ぶことが多いとばれるよりは、
まだ居眠りと誤解される方がましかもしれない。
「そんなことないですよ。でも内容はあまりよくわからなかったです」
「やっぱりぃ。あたしもなのよ。アメリカは民主主義だけど、カンボジアもベトナムも
社会主義なのに、どうして地雷を埋めたりするのかしらん」
「だから男ってバカなのよ。殺し合いが好きなんだから」
「おいおい、真司くん。君までおばさん口調になってどうする」
和尚さんが会話に加わった。
「まあ、ワシも昨日は笑いをとったるとか言っといて、うまくできんかったが、君が笑い
をとろうと頑張ってくれるとはな。がはははは」
このおっさん、テンションが高すぎて、彼の側にいるとどっと疲れるわ。
それにあの田口とかいうおばさん。しきりに「真司」に色目を使うのが気持ち悪い。
くねくねとしなをつくってまとわりつく様子がなんだか蛇っぽや。
まっ、いっか。「真司」がぼうっとしている分、あたしがしっかりしてればいいのだわ。
それに、あれだけバカなおばさんのそばにいれば、あたしや「真司」のバカも目立たない
だろうしね。バカがうつって困るかもしれないけど。ぎゃはははは。
参考文献:
http://www.peace2001.org/inpaku/randy_rupo/randy_0714.html http://www.peace2001.org/inpaku/randy_rupo/randy_0716.html http://www.melma.com/mag/26/m00001926/a00000087.html
ここまでくるとキモいね。なんだか薄ら寒い。
525 :
無名草子さん:02/05/27 02:38
ランディ先生も、これを書いた人の爪の垢でも煎じて飲んで、
『コーリング』の続きを書けばいいのに。無理か。(藁
526 :
無名草子さん:02/05/27 03:50
爪の垢を煎じて飲んだりせずに、
指ごとちぎってきて「これはアタシの爪だよ、キレイでしょ」と人さまに見せびらかすのが万引き猿の手口。
だから、
>>525さんのアドバイスは猿には通用しないと思う。
>>524 うん、なかなか汚猿っぽいぞ。
次は長文にチャレンジ!
アレレ、サゲチャッタヨ。
『コーリング』予想屋さん、うますぎ。
527さんの真似をして下げたが、間違いだったんですか(苦笑。
あげときます。
531 :
無名草子さん:02/05/29 07:03
age
532 :
無名草子さん:02/05/29 10:25
*仕事の
オファーと
業
あたしは最近、よく仕事をしてると思う。ちょっとした売れっ子気分だ。
エッセイ、屋久島、バリ小説、と縦横無尽の活躍だ。自画自賛だ、わはは。
それに咥えて、「コーリング」を書き下ろしで出さないかと講談社から
お話が来ている。
毎日電話でその件について話しているけど、担当の方がお忙しくて
なかなか電話がつながらなかったり、つながっても切れたりと
思うように打ち合わせが出来ない。
でも、生意気な子供の落書きとは違う、大人向けの美しい物語になると思う。
仕事のオファーも沢山着てるんだけど、あまり忙しいのでお断りさせて
いただくことが多い。たま出版や徳間書店は時間がなくて断った。
いちばんびっくりしたのは日本版ニューズウィーク。
日本における著作権のナントカがテーマとか言ってたけど、
あたしはバカでわかんないから、これもことワった。
アメリカの雑誌が興味持つぐらい、あたしは有名人なんだ。うひー。
それから、村瀬ナントカさん、清水ちなみさんと鼎談の話があって、
これは他のお二人の都合がつけばお引き受けしようと思っている。
こうしてみると、あたしみたいなバカでへたくそな物書きでも、
必要としてくれる人がいることに改めてきづく。
よくわかんないけど、それが書くことを業としている人間の運命なんだと思う。
その運命に逆らわず、たくさん読んでたくさん書くことにしよう。
それが、あたしの使命だから。
533 :
無名草子さん:02/05/29 10:32
>大人向けの美しい物語になると思う。
うっ、ま〜い!
朝から大笑い。
お猿の自画自賛ウトーリぶりがよく出てますわ。
534 :
無名草子さん:02/05/29 11:16
>>532 >それから、村瀬ナントカさん、清水ちなみさんと鼎談の話があって、
>これは他のお二人の都合がつけばお引き受けしようと思っている。
すばらしい!
マツダのノータリンエンジンで走らせているドコぞの斜陽出版社
の、ボケ老人をつかったコネ編集者ツルみ対談企画よりも、
1000倍も斬新だし時代性がある!
だーけど、村瀬とランディと清水の惨ババ鼎談を行なうなら
スカトロライターばかり扱ってきた幻吐瀉がお似合いだね。
535 :
無名草子さん:02/05/29 11:20
>スカトロライター
これを見てハッと気付いた。
>カタストロフィー
>ではなくカタルシス。
カタルシスよりカタストロフィーに執着(wがあるのは、
この語句のなかに「ス」と「カ」と「ト」と「ロ」が全部
入っているからなのね。
536 :
無名草子さん:02/05/29 12:08
>>534 >マツダのノータリンエンジンで走らせているドコぞの斜陽出版社
ウマイ!!
537 :
無名草子さん:02/05/29 14:22
>>532 栗本薫もいれて欲しい。設定、内容どころか差別用語まで
パクってしまったため、全面改定・絶版になった小説を
いまだに書き続けています。
スカトロライターの資格も十分あります。
538 :
無名草子さん:02/05/29 14:41
>>537 栗本薫の件は知らなかったので、事情がわかるサイトがあったら
教えてください。おながいします。
539 :
無名草子さん:02/05/30 04:37
>>538 2ちゃんの難民板からのリンクが一番わかりやすいと思う。
でも、ここで書いちゃった方が早いから書いちゃう。
「グインサーガ」の1巻が、国枝史郎の「神州纐纈城」の全くのパクリだった。
内容が似ているなら「オマージュ」と言い逃れできるが、よりにもよって
ハンセン氏病(とは書いてないけど「業病」って書いちゃってる)の描写を
そのまま持って来ちゃった。
それでクレーム(盗作云々じゃなくて、病気の描写のほう)ついて、
1巻は書き直し、絶版。
でも、そのシリーズは今も続いていて、青年の肛門に指突っ込んで
「お前の味だ」ってことを展開されております。
スカトロライターの資質もあると思います。
540 :
無名草子さん:02/05/31 06:29
栗本薫、そんな盗作の過去があったのか。へえ。
この人、えらそーに文学論とか語ってるけど資格ないじゃん。
541 :
無名草子さん:02/05/31 09:53
国枝史郎の「神州纐纈城」は読んだけど、「グインサーガ」を
読んでいなかったから、知らなかったよ。
はー、栗本薫がねー。あの人筆も速いし、量もすごいから
そんなことしないと思っていた・・・・・
542 :
無名草子さん:02/05/31 10:14
栗本薫って、最近、毎日新聞で時事問題のエッセイをときどき
見かけるが、自分が盗作していた“ならず者”なら、そういう
発言は慎めばいいのにね。
543 :
無名草子さん:02/05/31 10:36
鈴木宗男さんが、連日ニュースをにぎわせている。
あたしはバカだからよくわかんないけど、この人のやってることは
政治家としてやっちゃいけないことだったんだと思う。
それなのに、まわり中から辞めろと言われてるのに、
議員の椅子にしがみついて離れようとしない。
醜い。汚い。
政治家として、いや、人間として失格なことをやっておいて、
責任を取る気がないなんて、あたしには考えられない。
バカでいい加減なあたしでも、これぐらいはわかる。
人間は、自分のやったことに責任を取らないといけないんだ。
そうでないと、魂が死ぬんだ。実際、鈴木さんの顔は以前とは
くらべられないぐらい、ゆがんでいる。
あたしが作家として、いや、人間としてやってはいけないことをしたら、
あたしはどうするだろう。
きっと、あたしは筆を折ると思う。
性格には、キーボードを叩き壊す、だけど。わはは。
そして、印税を全部返したい。読者一人一人の家を回って、返したい。
鈴木さんにはこういうことを考えられないのだろう。
それは、彼が男だから。
子宮のない男には、反省なんて出来ないんだ。
あたしは幸いにもまだ、こういう事態に直面しないでいられた。
ずっとこのままでいられるように、美しい魂のままでいられるように、
時々鈴木さんの顔を思い出すことにしよう。
544 :
無名草子さん:02/06/01 01:19
新作期待age
545 :
無名草子さん:02/06/01 01:25
こわいよ〜。
憑依してるよお。
自動書記だよう。
仮面とれなくなったらどおすんのお。
予想書く時は,お祓いもしたほうがいいよお。
546 :
無名草子さん:02/06/01 15:27
『コーリング』予想 (
>>523続き)
ツアーの一環として、僕らは地雷撤去作業の見学に来ていた。
「地雷を踏むような気がしてしょうがない」「平気なはずよ、あたし。親父や兄貴に、いつ
ぶっ叩かれるかわかったもんじゃない、地雷原のような家に育ったんだから」
来る途中、そんなことばかりブツブツ言っていたおばさんは、ここに着いてから十分もしない
うちに。「もう慣れた、大丈夫」と、けろっとした表情になった。
彼女は自分の不安をそっくりそのまま、僕の心の中に移してしまったのかもしれない。
日ざしは明るく、遠くから聞こえる牛の鳴き声や鳥のさえずり、そして子どもの笑い声が、
のどかな雰囲気を醸し出している。
それでもなお、圧倒的な気配としての死の恐怖が、地面から立ち上ってくるようだ。
考えてみれば、いかにも平和そうな風景なんて、いつだってカタストロフィーの前兆だ。
だけど、あんまり暑すぎて、僕はぼうっとしながら棒立ちになる。
地雷撤去の専門家は超人だ。
さっき防弾チョッキと顔面の保護バイザーを試しに付けさせてもらったが、立っているだけで
暑くてたまらなかった。彼らはそれをつけたまま、金属探知機を慎重に動かしていく。Tシャツ
だけ来ている僕が、暑さでいつ意識を失うかわからないのに。
隣のツアー客の男性も感心していた。
「ダイアナさんって偉かったよな」
「そうか、彼女も、チョッキとバイザーを着けてテレビに出ていましたよね」
「俺がこういう所に来ているのは、結局彼女の姿をテレビで見たのがきっかけみたいなもん
なんだ。惜しい人を亡くしたよなぁ」
あれ、ダイアナさんって亡くなったんだっけ。震災以後の僕の記憶はあてにならない。
彼女は死んで、僕や田口のおばさんは生き残っている。えらく理不尽なような気がするし、
ごく当然のことのような気もする。世界は自分を美しく保とうなんて思っちゃいないんだ。
僕の意識はそこで途切れた。
その日、「なまけものの呟き」にアップされた日記
いやあ、文字通り「地雷を踏む」ことになりそうで、地雷撤去作業を静観しながらビクビクもん
でしたが、森真司、無事生還いたしましたっ。心なしか精悍な顔立ちになったと思います。
地雷を見つけるために、こう、金属探知機をゆーっくり動かすんですが、それがジジッと音を
立てたときにはどうなることかと思いましたよ。金属ったって地雷とは限らないんですけどね。
どうせなら指輪でも埋まっていたらウマーなんですが。これが本当の地雷オクチュールマキ。
参考文献:
http://www.peace2001.org/inpaku/randy_rupo/randy_0718.html http://www.peace2001.org/inpaku/how2.html
547 :
無名草子さん:02/06/01 15:33
『コーリング』予想 (
>>546続き)
他の人格の存在を知る者は、事態の収集に大わらわだった。
「真司」は日記をつけることに執着しているようだが、他の人格がちょっかいを出すために、
どんどん厄介の種が増えてきている。
駄洒落好きの人格がアップした日記を読んで、「真司」はがく然としていた。
幸か不幸か、ツアーに同行した客に「お前が犯人だろう」と詰め寄ったりするだけの度胸は
なかったようだが。
もっと厄介なのは、「馬場けいこ」という名前のオバさんの人格だ。
彼女は「真司」を守るという名目で、日記に批判的なメールをすべてゴミ箱行きにしている。
それだけでは気がすまないらしく、相手に白紙メールを送り返したり、相手の文章をそのまま
返送したりしている。彼女の理屈では「自分がどんな文章をメールに書いたか、よっく読み直して
みればいいのよっ」ということらしいのだが……。
さらに悪いことに、「馬場けいこ」は、船戸与一氏が「本の話」に書いた文章を稚拙にリライト
した文章を「真司」の日記にアップしていた。引用の要件など、もちろん満たしていない。
訪問者が少ない個人の日記だからまだよいが、この無神経さは後々トラブルを引き起こしかねない。
かと言って著作権の概念を彼女に理解させるのは絶望的と思われる。
「他の人格の存在を知る者=彼」は、正当な批判のメールには丁寧なメールを返し、日記にアップ
された文章を一部修正したりもした。
ところが「馬場けいこ」には彼女なりに、自分の文章に対する執着があるらしく、訂正した箇所を
元に戻してしまうことがある。
誤字脱字の訂正に対しても元に戻したり戻さなかったりだが、後者の場合も、修正されたことを
理解し受け入れるというより、単に修正に気がつかないだけのことが多いらしく、同じような
入力ミスや変換ミスを飽きず繰り返すのだ。
たとえば、「内臓」のことを「内蔵」であると何度も間違えるし、「初めて」と「始めて」の
区別をつけることも無理なようだ。
参考文献:
http://jove.prohosting.com/~oliinkai/randay-a.shtml#honnohanasi http://www.hotwired.co.jp/opendiary/randy/20000627.html
548 :
無名草子さん:02/06/01 18:46
代筆屋さんにお願い。
スラックスを穿いた若いお嬢さんを活躍させてあげて下さい。
549 :
無名草子さん:02/06/01 20:54
*大嫌いのそばには大好き
言葉はいつだって
曲がって届く
しばらく長編の執筆に夢中になっていたので、届いて来たメールを読む暇があまり
なかった。これではいかんと、山ほどたまった未読のメールをまとめて読んでいたら、
久しぶりにメールあたりをしてしまった。
いただくメールの中には、役に立つ情報を提供してくれるものももちろん多いのだ
けど、正直言って、私にこんなメールを送りつけてくるのはどういうつもりなのか、
理解に苦しむメールも、とても多い。
いちばん困るのは、私の本の批判を、わざわざ作者に贈りつけてくる人の存在だ。
以前日記にも書いたのだが、「つまらなかったから金返せ」と言われても、お代は
お返しできません。私の文章は、メルマガ他ネット上のあちこちで読むことができる。
合う会わないを事前に調べることがいくらでもできるのに、下調べを怠ったその人の
責任でしかない。
それに、すでに発表された作品について、ごちゃごちゃ言われても困る。売られて
いる本はすでに作者の手を離れて、作品として独立した生命を生きているのだ。だから
私にどうこうできるものではなくなっているのが、どうしてわからないのだろうか。
また批判してくる人というのは、実に細かく私の文章を読み込んでいる。素直に
私の作品を褒めてくれる人の比ではない。そもそも私の小説は、穿った味方をしない
素直な読者にこそ受けるものであって、校正者を気取る読者向きではないのだ。
「田口さんは、ベストセラー作家だからしょうがないですよ」
編集者の方はそうおっしゃる。
「話題になったからというだけで買う読者が多いからこそ、そういう現象が起きる
のです。売れっ子の証明とでも思ってデンと構えているのがいいです」
なるほど。そういう考え方もあるかもしれない。
だけど、たまたま買った本がつまらなかったら、さっさと投げ捨てて忘れてしまえば
いいじゃないか。どうして私に悪口のメールを送るために、何度も私の本を読み返し、
好き好んで不快な思いを増幅させるのだろうか。
たぶん、メールに綴られている「大嫌い」は、大好きのそばにある大嫌いなのだ。
そうでなければ、私の文章など、あっさり無視できるはずだからだ。そして自分の
本当に好きな本だけ読み込んでいればいい。
大好きのそばにある大嫌い。大嫌いのそばにある大好き。そんな感情を持ち続けて
いたら、さぞかし生きづらいだろうと思うのだが、その感情をもろぶつけられる私は
正直言ってもっとつらい。
だが、仕方のないことかもしれない。それでもなお私はこうして書き続けていて、
それもまたきっと「業」というものかもしれない。
言葉はいつも曲がって届く。本当のことを書いたはずが嘘になったりする。だから
嘘を書くことが、真実を相手にまっすぐに伝える手段になり得るのだ。
私は嘘つきだ。これからも私は嘘を書き続けるのだろう。
もしかしたら、それこそが、私を大嫌いで大好きな人たちに与えることができる
最大級の贈り物だ。何とはなしに、そう思った。
550 :
無名草子さん:02/06/01 22:57
>>549 本スレでの猿の言いがかりをそっくりそのまま活かすとは。
素晴らしい!
お笑い猿が駄スレをageたか
552 :
無名草子さん:02/06/01 23:28
>>549 うまいなぁ。田口っぽさ全開の名作ですね。
ラストが「何とはなしに、そう思った」ってのお約束でうれしいし(藁
553 :
無名草子さん:02/06/01 23:44
>349
ここで ランディさんの新作をいちはやく読む事が出来ると
きいてきました。
今回の「言葉はいつだって曲がって届く」も
すごく良かったです。
ちかごろスランプと聞いていましたが
2chに来てから好調なご様子。
出版化が楽しみです。
554 :
無名草子さん:02/06/02 15:17
『コーリング』予想 (
>>547続き)
(
>>546の「うちに。」は「うちに、」の、「Tシャツだけ来ている」は「Tシャツだけ着ている」
の間違い)
夢を見ていた。これは夢だと思いながら見る夢だ。
長くて少し赤い髪、薄いグリーンにベージュのスラックスの女の子が、
「だいじょうぶ?」
と僕に話しかけて、ハンカチを差し出す。
この女の子が僕の夢に登場するのは、これで何度目だろう。夢の中でだけの知り合いの子だ。
僕はビルの谷間のようなじめじめした場所で、怪我をしてうずくまっている。
彼女は僕の手を引いて、光のあふれている世界へと連れ出そうとする。
僕はなぜか「やめてくれ」と叫ぶ。光の中に連れ出されると、たくさんの人に取り憑かれて、
自分が自分でなくなってしまうような気がするからだ。夢の中だから、僕も変なことを考える。
「どうして外に出るのがイヤなの? 柴田くん」
と女の子が僕に聞く。僕は、彼女の名前が「由美」であることを思い出す。
「うるせえなあ。ほっといてくれって言っているだろ。このおせっかい女」
僕は怒鳴る。由美は笑いながら元気にしゃべる。よかった、いつもの柴田くんになってくれて。
だいぶ元気が出てきたみたいじゃない。さっきまでは息も絶え絶えという感じで、別人みたいに
大人しかったから、どうしようかと思っちゃった。さあ行こうよ外に出よう外に外に外に……。
うるせえ。誰かこの女のスイッチを切ってくれ。ああ、そうだ。俺、ナイフを持っていたっけ。
夢の中の僕は、ナイフを取り出して、彼女のわき腹を刺した。
これといった手応えもなかった。豆腐に包丁を入れるのと大して変わらない。
刺した犯人の僕は、これでゆっくり眠れる、せいせいしたぜと思っている。
それでいて、Tシャツを染めるどす黒い血にうろたえ、これは夢でありますようにと祈っている。
そのうち雨が降り始めた。雨さえ降ってくれれば僕も外に出れる。僕は家に帰ろうと立ち上がる。
そこで目が醒めた。あたりは闇だ。ぼんやりした頭で僕は考える。どうしてこんな時間に起きて
しまったのだろう。ああ、喉が乾いているからだ。水が飲みたい。水はどこだ。
それにしても由美さんはどうなったんだろう。誰かが救急車を呼んでくれたのならいいけど。いや、
あれは夢の話じゃないか。
……本当に単なる夢なんだろうか? やけに鮮明で、生々しい触感を持つ夢だった。
僕の記憶はよく飛ぶから、その間自分が何をしているかはよくわからない。
どこかの病院のベッドで僕が刺した由美という女の子が、柴田の名前を呼んでいるような気がする。
でも僕は柴田という男じゃないから、どうしてあげることもできないんだ。
いけない、僕は病気だ。そうだ、水を飲むついでに薬も飲もう。ずっと薬を飲むのをさぼっていた
から、こんな夢を見たり、日記に変な文章を書いたりしちゃうんだ。きっと、そうだ。
参考文献:
http://www.chikumashobo.co.jp/web/calling/calling01.html
555 :
無名草子さん:02/06/02 15:53
代書屋さんの方が全然文章の盛り上げ方が上手なのですが・・。
556 :
無名草子さん:02/06/02 17:27
『コーリング』予想 (
>>554続き)
「由美、だいじょうぶか?」
由美は、平気よと言いながら笑っている。寂し気な笑顔に胸が締めつけられる思いがする。
病院のベッドに座って化粧っ気のない顔だから、というせいだけではない。よくしゃべる
明るい子で、年も20才になったばかりというのに、普段から陰のある雰囲気なのだ。
「今日はどういうことを訊かれたんだ?」
「柴田くんと私の愛情のもつれについて。そんなんじゃないです、って言ったんだけど、
なかなか信用してもらえなかった」
「今度はそれかよ。ったく」
警察は最初、ドラッグについて根掘り葉掘り由美に尋ねた。俺や由美が柴田と知り合った
のがインターネットの掲示板、それもメンタルヘルス系と知ったからだ。
確かに薬についての情報交換は活発にやっていた。ただし、病院に行けばもらえる薬に
ついてだけだったけど。
「柴田くんと愛情のもつれがあったら、警察には絶対協力しなかったはずなんだけどね。
ほら、アキラくんも言っていたじゃない。私はキョーイゾンで、愛し過ぎる女なんだって」
「由美がやさしい子なのはわかっている。でも、とにかくあいつに情をかけてはだめだ。
俺は電話で『由美がお前の名前を呼んでいる』って言ったのに、あいつは何も感じてない
ようだった。そりゃノコノコと病院には来れないだろうよ。自分が刺した相手のところに
はな。でも、あいつは、うろたえた様子さえ見せなかった。人間じゃねえ」
「あの人に必要なのは、入院して治療を受けること。そう思ったから警察に協力しようと
決めたの」
「ああ、精神鑑定に持ち込まれて入院ってオチだろうな。俺としては、何年か刑務所に
ブチ込まれるのがいいと思うけど」
刑事は由美に言ったそうだ。柴田は今はカンボジアに行っているが、家も顔もわかって
いるし、帰国したらすぐに身柄を拘束されるだろうと。
俺は由美を通して、柴田の本名は「森真司」だということも聞いている。
しかし、なぜ偽名など使っていたのか。ネットで知り合った者相手に身元を隠すつもりと
いうならわかるが、皆に自宅の電話番号を教えてしまっているのでは意味がないだろうに。
携帯ではなく自宅の電話番号を教えることで、ある種の信用を得ていたとも言えるが、
それだけで引き合うものとも思えない。
会社での「森真司」は、大人しい男だったそうだ。
「柴田」のような粗暴で図々しい男とは正反対で、オドオドして声も小さく、しょっちゅう
カモにされているようなヤツ。
ネットで知り合った人間を前にしたときだけは、別の自分でいたかったんだろうか。
そして、別の名前を名乗りさえすれば、別の自分になれるとでも信じていたんだろうか。
もし、そんなお手軽に「別の自分」になれるものなら――あいつはこんな事件を起こしたり
しないですんだはずだ。
557 :
無名草子さん:02/06/03 10:29
田口先生の新作が読めるのは2ちゃんねるだけ!
スラックスギャルの活躍を期待して田口先生に励ましのメールを送ろう!
疲れている時、ここに来て大笑いし、そして癒される私。
でも、ランディのお陰で、こんな癒し系(/お笑い系)
のスレが出来たのね。ありがとう、ランディ。
このスレって、ランディが誤字脱字のない正しい日本語を書けるようになれば
廃れてしまうんだろね。
そんな心配は全く必要ないでしょうが(w
560 :
無名草子さん:02/06/05 14:36
>コーリング予想屋さま
いつも楽しく拝読しております。
が、活字育ちの私には、ぎっしりと詰まったモニタ上のテキストは
少々読みにくいのです。
なので、話が途切れない程度に一行アキを入れたり、
一行に入れる文字を30〜35ワードほどに減らしてもらえると
とても読みやすくなると思うのですが、如何でしょうか?
「タダで書いてやってんだから、ゴタゴタ言わずに有り難く嫁!」
なんて、ラソ泥のようなことは言わずに、ご検討おねがいします。
わがままな読者でスマソ。
561 :
無名草子さん:02/06/06 02:19
>>560 挑戦してみたです。
『コーリング』予想 (
>>556続き)
「巨大タコ怪獣の足だっ」
田口のオバさんの言葉には、誰も答えようとしなかった。それでなくたって、この
景観の前では言葉なんか虚しいし、声は虚しく空に消える。
ここタ・ブロームの遺跡は、アンコール・ワットが発見された当時の様子を残すため
に、樹木で覆われたまんまにしておいてあるそうだ。遺跡にぐにゃぐにゃと、大蛇の
ように木の根が絡みついている。
僕は、自分がああして大蛇に巻きつけられたらどんな気分になるもんだろうか考えた。
身動きもできないくらいきつく縛られながら木に同化していくのは、意外と気持ちの
いいものかもしれない。だって僕のチャクラが開いたら、クンダリーニはもう眠れる
大蛇じゃなくなるんだ。思考は迷走し、昔読んだ瞑想の本の内容が浮かんで消える。
橋の欄干には水の神ナーガもいた。コブラの頭が七つ、扇のように開いていた。
この神様が僕を呼んだのかな。この過剰なくらい圧倒的な、この地の生命力のほとば
しりを、僕に見せつけるために。
きっと人類が滅んだ後には、ここみたいに樹木が廃虚を覆いつくして、ヒトという
種の存在した跡を、やさしく隠してくれるんだろう。それはとても好ましい未来の
ように、僕には思える。
「真司、君は日本に帰ったほうがいい」
川上さん、どうしてそんなことを言うんですか? いっしょにカンボジアに行こう
って、あなたが僕を誘ったのに。
「君の健康が心配なんだよ。ここの暑さや砂ぼこりで、ずいぶんまいっているよう
じゃないか」
心配してくださっているんですね。でもだいじょうぶです。僕は東京にいたときより
カンボジアに来てからのほうが、体調がいいくらいなんです。薬を飲む回数だって、
だいぶ減りました。
「暑さに疲れて、ぼうっとしがちになるのは君だけじゃない。でも君は、ちょっと
前に自分が言ったことを忘れたり、今日は一日誰とも口をきかなかったと思えば、
蛇の像に向かって長いこと独り言をしゃべっていたりしていたんだよ。
真司……君はおそらく、自分で思っているよりずっとずっと疲れているんだ」
参考文献:
http://www.peace2001.org/inpaku/randy_rupo/randy_084.html
562 :
無名草子さん:02/06/06 02:57
563 :
無名草子さん:02/06/06 10:09
*サッカーの神様が
罰をあてる
悪魔と天使の瞬間
日本中がワールドカップで盛り上がっている。挨拶変わりにサッカーの話題を
振られることも多いので、こっちも抜け目なくテレビにかじりついたりして
いる。
とはいっても、ルールとか難しいことはよくわかんないので、ネットにアップ
されている村上龍さんのコラムを見ては、なるほどあの試合はこういうこと
だったんだあ、と感心することが多い。同じものを見ていても、龍さんのように
サッカー命って感じの人の書いた感想は、やっぱり違う。
龍さんによると、サッカーの試合は、まばたきもしないで、ひたすら集中して
見なければいけないそうだ。ちょっとでも目を放すと何が怒るかわからない
からだろう。
だから試合中に食事なんてもっての他なのに、試合中にローストビーフサンド
イッチにかぶりついたら、とたんにベルギーの選手にゴールを決められてしま
ったそうだ。
龍さんは、サッカーの神様が怒ったのだろうかと、一口だけかじったサンド
イッチを手にしながらあぜんとしていたんだって。あはははは。そんときの
龍さんの顔が目に浮かぶようだ。最近、龍さんにお会いしていないけれど、
お元気かなあ。久しぶりに、また対談でもやりたいな。
日本が逆転してスタジアムが湧きかえっているとき、龍さんは不安になった
そうだ。すごい幸運の後は、とんでもないリバウンドが心配だと。わかるなあ、
その気持。そして、いざ同点に追いつかれると、自分が余計なことを考えた
せいではないかと自己嫌悪に陥るのも、めっちゃよくわかる。
思いは現実化するから、いいことの後には悪い事が起こるなんて思ってしまっ
たら、本当にそうなってしまうんだ。
幸運は神様からの贈り物なんだから、ただただありがたがって、ありのままに
受け取っていればいいはずだ。だけど、そんなに幸運で順調な人生を贈って
いない私には、平常心を保ち続けるのは難しい。
午後、コラムを読んだ読者からのメールを読む。ううむ、なんだかやたら心配
されているようだ私。つらいことも多いでしょうが、頑張ってくださいという
励ましのメールが多い。
落ち込んでいるとか辛いとか、コラムに書いてしまっているせいだな。なるべく
弱音を吐かないようにしているつもりなんだけど、私の文章は私を写す鏡なもん
だから、心の揺らぎがどうしても文章に反映されてしまう。
新作の小説を楽しみにしていますというお便りも多い。この前の日記には、忙し
すぎて小説を書く暇もないと書いたので、これも心配されている。うう、確かに
おっしゃるとおり、集中しないといけないよなあ。でないと、小説の神様に
そっぽを向かれてしまうかもしれない。サッカーの神様も厳しいけど、小説の
神様だって厳しいのだ。
参考資料:
http://www.yomiuri.co.jp/hochi/wc2002/jun/o20020604_5.htm
565 :
無名草子さん:02/06/07 00:02
『コーリング』予想 (
>>561続き)
「真司、どうして黙っているんだ?」
何か言えって言われてもなあ……東京にいた頃は、今日は日曜日だと思ったら
水曜日になってたりしたから、それに比べて病状はずっと回復しているんだけど
そんなことは言えないし、警察に追われる身だとも言えない。
警察に追われる? 違う、あれは夢の話だ。
「僕がバカで、間抜けなミスばかりしているから、皆さんにご迷惑をかけて
しまっているんですね。こんな奴、嫌われて当然なんだ……」
「違う。本当に心配なんだよ。真司が一生懸命頑張っていることは知っている」
「いいんです。田口のオバさんとも喧嘩しちゃったし。そりゃ、カンボジアの
子どもの笑顔は明るくて、とてもいい表情しますよ。でも、日本の子どもより
彼らは幸せだ、文明によって失ったものがあるのだと演説されたら、ちょっと
違うんじゃないかと反発したくなるんです」
「あのオバさんもなあ」
うまいぞ。「真司」よりはるかに強烈なトラブルメーカーがツアー客にいるのは、
ある意味幸運だ。
「本当だったらいっしょになって笑っていられたはずなのに、地雷で命を落とし
たり、人身売買されたりしている子どもたちだってたくさんいるんだ、なのに
よくそんなことが言えるなって。僕がムキになったら、あちらも怒り出して……」
いっそ不法滞在者になって、カンボジアのガキを売り飛ばして生活するか。
バカ言ってる。あんたにそんな真似ができるわけないじゃん。コネもないくせに。
うるさい。考えがまとまらないじゃないか。
「お願いします。せめて小学校や日本語学校の見学がすむまでは、ツアーに
参加させてくれませんか?」
川上さんはうなずいた。言った言葉に嘘はない。なのに、自分がまるで、口先
三寸でうまいとこ危機を切り抜けた、嘘つき野郎であるかのような気がした。
僕の自己弁護は、さらに冴えわたった。
蛇の像の前でぶつぶつ独り言というのも、タ・ブロームの奇観に感情を揺さぶら
れたせいにした。人は遺跡や廃虚、博物館に陳列された品々などを見て、通常とは
異なる心理状態になることも珍しくない――ということで相手を納得させたのだ。
参考文献:
http://www.peace2001.org/inpaku/randy_rupo/randy_085.html
566 :
無名草子さん:02/06/08 08:48
*書いて書いて
書き倒す
それが修行
今月号のダ・ヴィンチが届いたので、昼ご飯を食べながら、つらつらと
ページをめくっていた。
私の連載は終了しているのだが、丹治くんが毎月送ってくださっているのだ。
読んでいて魅かれたのは、バーバラけいこさんという方が書いていらっしゃる
「叫ぶ女、黙る男」というエッセイだ。
とてもお若い方なんだろう。文章全体が若々しくて初々しい。
すっごく元気がよくて、ピチピチはじけ飛ぶような感じがいい。
他人の評価なんて気にしちゃいないで、のびのびと書いている様子が楽しそうだ。
著者紹介文に書いてある「編集部にまるで日記のように原稿を送り倒し
デビューした押し掛けエッセイスト」ってのもいい。
そうなのだ。大切なのは原稿を書いて書いて書き倒すことなんだ。
それはきっと、文章修行中のあいだだけではなく、文章のプロとして
活躍するようになってからも、肝に銘じておくべきことかもしれない。
修行ってやつは、デビューした後も、たぶん一生ずっと続いていくんだ。
ということで、日記も毎日書くようにしよう、メルマガも週一回は
必ず出すようにしよう、「コーリング」も再開しようと、無謀な目的を立てる。
去年の今頃は、『アンテナ』や『モザイク』の執筆と閉口して、日記は書く、
メルマガも出す、おまけにショートストーリーの連載もかかえていた。
だから、目的達成もきっとできるはずだ。……できるんじゃないかな。
ま、ちょっと覚悟はしておこう。ぎゃはははは。
http://book.2ch.net/test/read.cgi/books/1022343093/673
567 :
無名草子さん:02/06/08 09:20
>>563 サルの自己顕示欲と、お仕事ちょーだい根性と、誤字が
非常に巧みに模写できていて感心しますた。
>>566 敬語のオマヌケな使い方が秀逸。とてもよくサルの生態を
研究していますね。
568 :
無名草子さん:02/06/08 12:41
*私は
なんにも
悪くない
最近、冗談抜きでメール恐怖症にかかりそうだ。
バリの小説を書くのにうんうんうなっているところに嫌なメールが届くと、
一日仕事にならなくなってしまうこともある。
この前来たメールなんてすごかった。
「パクりがばれたら盗作、ばれなけりゃ創作と思っているんでしょう?」と、
えんえんと皮肉が書かれている。
でも私は、そんなことを書いたこともないし、思ったことすらない。
問題の文章は、物書きをやっているHさんのホームページに書いてあると言う。
なんで他人の言ったことで、私がこんな攻められなきゃいけないんだ!?。
あまりの理不尽さにクラクラして、悔しいやら悲しいやらで、どーんと
落ち込ませていただいた。
だけど、まあHさんとはまんざら知らない仲ではなし、真相を確かめに
おそるおそる彼のホームページに行ってみた。
本当にそう書いてある……。あんまりじゃないか、檜垣さん。
あんたは遊びで書いているのかもしれないが、怖い人たちにネチっこく
いじめられるのは私なんだよ。えんえんえんえーん……。
Hさんには、これっぽっちも悪気がなかったのかもしれない。
『くねくね日記』を好意的に紹介してくださっているし、嫌な仕事も
しっかり気持ち良く断る方法があるはずだとか、なかなかいいことも書いている。
でも一言多いんだよなあ。
その後で人のことを、有名な説教女だなんて書いている。
やめてくれえ。これじゃあたかも私が、誰彼かまわず説教しまくるのが生き甲斐な
嫌味な説教おばさんみたいではないか。
さて、私は『くねくね日記』の後書きに、昨年は私の中心線が定まらず、
ふらふらしていた一年であったと書いた。
正直言って、それは今も続いている。
私はいまだにHさんへの態度を決めかねている。
書かれてナンボとあっさり忘れるのがいいのか。それとも、本人ととことん
話し合ったほうがいいのか。
答えはまだ出ていない。
569 :
無名草子さん:02/06/08 13:05
>>568 筑摩からコピペしてきたのかと思うほどうまい(藁
>やめてくれえ。これじゃあたかも私が、誰彼かまわず説教しまくるのが生き甲斐な
>嫌味な説教おばさんみたいではないか。
やめてくれぇがウケた。ランディよく使ってるよね。
>コーリング予想屋さま
ありがとうございます。
とても読みやすくなりました。
571 :
無名草子さん:02/06/09 02:00
572 :
無名草子さん:02/06/09 13:39
『コーリング』予想 (
>>565続き)
昼間はあんなに暑いのに、カンボジアの夜は、涼しいを通り越して肌寒い。
眠れなかったし月も見たかったので、僕は宿舎を抜け出した。
感電したようにこめかみがちりちりするのは、薬を飲むのをさぼっているせいだ。
側頭葉てんかんの薬は、幻覚や妄想といった症状を押さえてくれる。だけど地上に
降りそそぐ月の光の粒子をひと粒ひと粒確認するには、薬はときどき邪魔になる。
今夜の月は満月で、信じられないくらい綺麗だ。
こんな巨大な衛星をもつ地球は、すごく珍しい惑星なんだと誰かが言ってた。
月の中身は空洞であり、もとは遠い宇宙から飛来した巨大な宇宙船だったという話も
ある。科学信奉者にはバカにされる説だけど、空虚な僕は空洞の月に親しみを感じる。
僕は空虚だから、いろんな人の思いが僕に流れ込み、すぐに自分がなくなってしまう。
月のかかえる空洞には何が注ぎ込まれて、ああも美しく輝くようになったんだろう。
気がつくと、白い影が僕の前に立っていた。
女の子と言っていい年頃の少女だ。なぜか手には白い花束をもっている。
結晶化された月光が、きらきらと彼女の周囲で光る。青白い月の光の下でも、彼女の
亜麻色の髪は暖かい色合いで、長い髪を揺らす風はやさしく彼女を包んでいた。
僕は彼女が誰であるか、とてもよくわかった。
「母さん……」
「真司、もうだいじょうぶだよ。おいで。いっしょに行こう」
時空を超えて僕に会いにきてくれた若い頃の母は、あのオフクロとは別人のようだった。
生前はこんなやさしくほほえみながら、「おいで」なんて僕に言う人じゃなかった。
口では「おいで」と言いながら、内心「うっとうしいわね、あっちに行きなさい」と
思っているんじゃないかと、漠然とした不安を僕に感じさせるような人だった。
うん、いっしょに行こう。ずっと僕を呼んでいてくれてたんだね。気がつかないでいて
ごめんなさい。母さんは僕を無理に、怖い光の世界にひっぱっていったりしないよね。
「行ってはダメ!」――背後で叫び声がした。
反射的に振り向くと、別の女の子が僕をじっと見つめながら、首を横に振っている。
これも見覚えのある顔だ。名前は確か……ああ、由美さんという人だっけ。
夢の中ではいつもベージュのスラックスをはいているけど、今日はジーパンだ。
573 :
無名草子さん:02/06/09 14:51
『コーリング』予想 (
>>572続き)
行ってはダメと言われてもなあ……だって、母さんが僕を呼んでいるんだよ。
ほら、母さんも困った顔をしている。
そりゃ君のようなすらりと長い手足をもった可愛い女の子から見ると、多少は見劣りが
するかもしれない。でも、僕の母さんなんだよ。
「柴田くん、あなたは私をナイフで刺したよね。傷は浅くなかったし、今でも痛いよ。
お医者さんには跡が残るって言われた」
僕は柴田じゃないんだけど……でも代わりに謝ります。ごめんなさい。
次の瞬間、僕はぎくりとした。彼女がここに現れたということは、つまり彼女は……?
「ううん、私は生きている。身体の傷と心の傷をかかえて、これからも生きていく」
心の傷?
「そうよ。私は毎晩のように夢にうなされる。友達だと思っていた柴田くんにいきなり
ナイフで刺される夢。ビルの影にうずくまっていた森さん、あなたが通り魔に変身して
私に切りかかる夢。起きているときも、記憶のフラッシュバックに苦しむことがある」
ごめんなさい、本当にごめんなさい……。僕は母さんといっしょに行って、永遠に君の
前から姿を消します。それが君への償いになるかわからないけど、どうかそれで許して
ください。
「いいえ、許さない。私にすまないと思っているのが本当なら、償う気持ちが少しでも
あるなら、あなたはここで死んじゃいけない。つらくても生きて。どうか生き続けて」
「真司!」「真司くん!」
ああ、今度は川上さんと「和尚」さんが僕を呼んでいる。女の子は二人とも消えてしまった。
「捜したよ、部屋にいないから。いいか、落ち着いて聞いてくれ。君のお母さんが――」
「死んだんでしょう?」
「いや、危篤だって連絡が妹さんから――でも、まだ亡くなっては」
「そうだよ、縁起でもない」
「いずれにせよ魂はもう身体から離れてしまってますよ。だから、若い頃の姿で僕に
会いにこれたんです。ついさっきまで、ここにいました」
大急ぎで走ってきた彼らは息切れしているようだ。苦し気な顔はそれだけが原因では
ないかもしれないけど。
「夜中に走り回らせてしまってごめんなさい。ご迷惑ばかりおかけして――」
お詫びもちゃんと言い終わらないうちに僕は思い出してしまった。
「だいじょうぶだよ」と僕に話しかけた母さんのやさしい声とあのほほえみ。
あれはずっと昔、犬のシロに向けられた声と表情にそっくりだ。
シロは汚らしい野良犬だった。僕はシロを可愛がって、なでたりエサをやったりしてたけど、
母さんはシロのことを好きじゃなかった。
だけど、死ぬまぎわのシロを相手に母さんは、すごくやさしい声で、「可哀想にねぇ。もう
だいじょうぶだよ、だいじょうぶ。もうすぐ、つらくなくなるよ」って。
僕はシロになったのか? 雌犬とつがっている最中に、近所の悪ガキに殴り殺されたシロに?
混乱がカオスとなって押し寄せ、嗚咽が込み上げてきた。
ついでに吐き気も込み上げてきて、僕は涙を拭うこともできず、胃と口元を押さえながら
身体を丸め、「うっ、うっ」とうなり続けた。
ダメだ、立っていられない。
574 :
無名草子さん:02/06/09 15:37
>>572 >亜麻色の髪は暖かい色合いで、長い髪を揺らす風はやさしく彼女を包んでいた。
これを見て、ランディが歌謡曲からの劣化コピーを思いつきそうな予感。
575 :
無名草子さん:02/06/09 16:03
すでにユーミンの曲の題名とかパクっていますからねー。
>>574 「恋人はサンタクロース」に「昨晩お会いしましょう」。
著作権うんぬんは別にしても、ランディは広告屋出身なのに、
自力でキャッチーな題名をつけることすらできないのが情けない。(藁
576 :
無名草子さん:02/06/09 18:29
もしや『ブレイン・バレー』もパクられ可能性ありなんですか?
>>572
577 :
無名草子さん:02/06/09 19:30
う、参考文献として『BRAIN VALLEY』と、文献でなくて歌だけど
「亜麻色の髪の乙女」を明記しとくべきでした。……すみません。
『BRAIN VALLEY』は手元にないから、うまく似せられたかどうか
不安だったですが、似ているのならよかった(?)です。
『BRAIN VALLEY』は、『モザイク』でパクられている説があるのです。
http://mentai.2ch.net/book/kako/993/993469828.html >529 名前: 吾輩は名無しである 投稿日: 2001/07/14(土) 12:44
>ところで『モザイク』の元ネタとしては、瀬名秀明の
>『BRAIN VALLEY』もアリかな。
>「臨死体験」「幽体離脱」だけなら立花隆その他も考えられるけど
>「カオス」に「光の柱」だからさー。最後の方に人工知能の研究所
>まで出てくるし。
>『BRAIN VALLEY』の売り出した年かその翌年に、ランディが
>エッセイで「臨死体験」「幽体離脱」を取り上げたりしていて、
>未読とは考えにくい。
(やまがた先生によれば、あんな高度な本、田口に読みこなせるわけ
ないだろーってことですが)。
そして『コーリング』の第一回目にはこんな記述が。
―――引用開始
急に呼吸が苦しくなってきた。記憶が消えたことに気がつくと、僕はいつもひどい
呼吸困難に陥るのだ。なにかもどかしくて息苦しくて胸をかきむしりたくなる。
そして頭の中でチカチカと白い強烈な光が点滅し、僕の意識はストロボをたかれた
みたいに細切れになってしまう。
僕は机の抽き出しから、先生がくれる薬を取りだした。そして慌てて飲み込んだ。
本当は二錠なんだけど、怖くていつもたくさん飲んでしまう。癲癇の薬なのだと
先生は言っていた。この薬で死ぬことは絶対にないから安心だと言っていた。
―――引用終了
こりゃ露骨にパクっているなと思ったのですが、どうでしょう?
『BRAIN VALLEY』の最後のほうの、床が溶けたり神様が出現したりして
大騒ぎの場面とかも、かなり有力なパクられ候補だと思っています。
>>577-578 丁寧な解説ありがとうございます。
なるほど、そういう経緯でしたか。
猿本は読んでいなかったので、衝撃です。
間違いなくパクリ劣化コピーですね。
本当に許せない。
それを踏まえての予想小説ということで、
あらためて
>>572さんの職人芸に感服しました。
580 :
無名草子さん:02/06/09 23:27
>>571 をを、このスレより先に、日記を書いていたという。
ちょっと山形氏ふうの文体模写だから、きっと頭がよい人なんですな。
*アタシのモノは
アタシのモノ
アンタのもアタシのノモ
ここ暫く、何かと忙しくて、配信出来ていなかったので、こまごまと。
最近は、家に籠もって小説の執筆と言うのがほとんどで、講演の仕事がたまにあるくらいで、
ほぼ、家で缶詰状態である。
そんな状態なので、アタシの心の友はテレビだ。
ワイドショーで、歌手の宇多田ヒカルが緊急入院したと聞いたときも、小説のネタに困っていて、
リモコンでチャンネルをあちこち変えていた時だった。
その時の感想は、
「これで死んだら、伝説になるなぁ。あははは」
俳優の伊藤ナントカさんが亡くなった時も、
「誰だっけ?」
と言うのが最初に頭に浮かんだ。
伊藤、伊藤、伊藤…
ぜんぜん顔が浮かばない。
そんなに、大騒ぎするような役者さんなのだろうか?
有名なんだろうか?
と思った。
テレビに出た、生前の伊藤ナントカさんの映像を見て、
「脇役じゃん、シラネーヨ!!あははは」
世の中では、ワールドカップで大変らしい。
フーリガン対策に追われる警察とか、チケット問題とか。
しかし、日本人がこれほどサッカーが好きだとは思わなかった。
日本がロシアに勝ったときは、祭り状態だったようだ。
道路を占拠して暴れ回る若者達。
感激のあまり泣き出す、少年。
最高視聴率は80%を超えたそうだ。
「オマエラ、普段はサッカーに興味ない癖に、こんな時だけ暴れてんじゃないよ!!」
と思った。
基本的に、アタシはサッカーには興味がないし、面白いとも思わない。
ただの玉蹴りじゃん。
あはは。
age
583 :
無名草子さん:02/06/12 07:28
お猿はウェブ日記できっとワールドカップのことも書くのだろうな。
文体模写作家さん、ワールドカップ関係の先取り日記、バンバン
書いて、ランディの糞駄文を先回りして封じ込めてください。
584 :
無名草子さん:02/06/12 23:10
『コーリング』予想 (
>>573続き)
へたりこんでうつむいている僕を、由美さんが見下ろしている。
彼女は弓をつがえ、天空に放つ。
狩りの女神は月の女神だ。
だからだろう、僕をじっと見つめるのがプリンセス・ダイアナに変わった。
身につけているのはダイアあるいは月の光の結晶。これまで僕が過ごしてきた時間の
記憶は、予感とともにそこに封印される。
――ウマクイエナイケレド、タカラモノダヨ
「ダイアモンド」だね。いい曲を流してくれてるんだけど、エフェクトをかけすぎで、
うわんうわんとうねりがきつい。
突然、どーんという衝撃がして地面が揺れ、大穴があく。
奈落へとすべり落ちそうになり、僕は手足をじたばた動かして必死に這い上がる。
でも、やっと這い上がったそばから地面がぼろぼろと崩れ落ちていく。
天上から喇叭の音が響きわたるなか、僕は走って、走って、走って逃げた。
すぐに肺が痛くなる。もうだめだ。いや何とか逃げ切れそうだ。
再びどーんという振動があたりを揺るがした。
今度は地から火が噴き出して、僕の目の前に大きな火の柱が立つ。
血のように紅い巨大な火の大蛇が身をくねらし、一人の男の顔を浮かびあがらせる。
火柱のなかに浮かぶ顔、目を血走らせたあの顔には見覚えがある。
あいつはロクに家に寄りつかなかった。たまに家にいるときは、僕を怒鳴り、そして
殴りつけた。そうやって僕を壊していったんだ。
真司はいつもそうなんだから。人を許すってことを知らないの? だからダメなのよ。
びびってんじゃねえよ。あいつはもう年寄りだ。今の俺たちなら勝てる。殺れる。
黙れ。おやじそっくりの粗暴なサディストも、そんなやつらが好きでしょうがない
知恵遅れおばさんも、お願いだから消えてくれ。
なるほど僕はひ弱で、生命力に欠けているのかもしれない。
でも他人を虐めたおして、生きる力を吸いとる化け物の仲間になるくらいなら……。
僕は背後の奈落に、ジャックナイフの体勢でダイブした。
――そして世界は爆発した。
参考歌(?): 「ダイアモンド」byプリンセス・プリンセス
585 :
無名草子さん:02/06/13 00:42
『コーリング』予想 (
>>584続き)
「わからないんだ。気分が悪そうにうずくまっていたのに、急にすごい勢いで
走り出して……あちらは危険だと怒鳴ったけど、たぶん本人には聞こえてないよ。
『うわあああ』と叫びっぱなしで走っていたから」
「追いかけたけど、とても追いつける速さじゃなかった。どこにあんな力が……
そしたら急に立ち止まって、後ずさりして……そして、こう後ろ向きに倒れたと
思ったら、どーんと……」
地雷は殺傷目的の兵器ではない。しかし、傷が内臓に達したら死ぬ可能性もある。
身体の小さな子どもの死ぬ確率が高いのはそのせいだ。
僕は身長は低くないけど、妙な体勢で倒れ込んだし、体力も落ちているから感染症で
やられるかもしれない。
ごめん、由美さん。生きて罪を償うなんてことは、僕にはもう無理かもしれない。
「由美さんって誰なんだろう。恋人だったら呼んであげたいけど……」
「あのおばさんを何とかしてくださいよ。『なあんだ恋人がいたのか、がっかり』
とかホザいて……ああ、腹が立つ。正直で不器用? そうやって性質の悪いバカを
甘やかすから……真司のように弱っている者は、ああいう無神経なやつに真っ先に
やられるんです。ええ、つきまとわれて困っていましたよ」
地上でかわされる会話を聞きながらも、僕は同時にどんどん上昇していった。
成層圏を突き抜け、青い地球を見た。涙がこぼれそうになるくらいこの星は美しい。
物質は光速を超えられない。思いだけの存在になった僕は、軽々と光速を超える。
僕は星の誕生に立ち会った。
銀河の中心、星が密集するところにも行った。
さらに遠く離れて、銀河同士がもつれあうようにぶつかる様子も見た。
永遠と思われる一瞬の旅の果てに、僕は宇宙の寿命がつきるところ、エントロピーが
最大に達した時空間にきた。
ここには自分の尾をくわえるウロボロスの蛇がいるけれど、巨大な蛇は輪の形のまま
凍りついたように動かない。
そして僕はすべてを理解した。
「呼び出し」とか「神のお召し」という意味だと思っていたけど、コーリングとは
この凍るリングのことだったのだな、と。
以上