1 :
イラストに騙された名無しさん:
微妙にやる気だしてはじめたが、放り出した自作小説を晒すスレ。
あるだろ?あるだろ?
2 :
イラストに騙された名無しさん:2007/02/28(水) 17:39:23 ID:ofonHXx8
2
3 :
イラストに騙された名無しさん:2007/02/28(水) 17:44:53 ID:vBb8C1oK
あるある
4 :
イラストに騙された名無しさん:2007/02/28(水) 17:56:33 ID:wtUAP2wr
大
5 :
名無しさん@公民館でLR変更検討中:2007/02/28(水) 18:03:22 ID:3pROTop2
めっさあるわ
2次創作だけど
ちゃんと書き終えとる。
7 :
イラストに騙された名無しさん:2007/02/28(水) 18:15:05 ID:LYb9AQCX
むしろそんなんしかないわ
出そうと思った雑誌が潰れたorz
10 :
イラストに騙された名無しさん:2007/02/28(水) 19:33:27 ID:xB0AncEp
蕨を採るには少し早くはないかぬ?自治厨君。
晒していいですか?
12 :
イラストに騙された名無しさん:2007/02/28(水) 19:49:01 ID:FvTh6Itf
よかと
よかと
残念俺の脳内でしたw・・・orz
はぁ〜妄想が止まらない
でも語彙と文章力がねぇよ
俺が三十路あたりになってこのスレがあったら晒すよw
あー、あるある。
設定とか妙に凝るんだけど、いざ書きだそうとすると…。
設定作りだけで満足しちゃうんだな…。
>>14 そうそう、設定だけならね
でもその設定だけさらしたってしょうがないだろうし、
かといってこんな妄想いつまでしていてもしょうがないとも思うし、
どっかで晒して楽になりたいけど文章に出来ない自分の能力の不甲斐なさ…
うー早く大人になりたい(´;ω;`)ブワッ
>>14 あ、俺がいる…。
設定だけは長時間かけて作るんだけど、いざ中身を書こうとすると速攻で詰まるorz
18 :
イラストに騙された名無しさん:2007/02/28(水) 21:31:16 ID:aoVZ66BC
宇宙海賊キャプテン 母ロック
とかってのを書いた
19 :
イラストに騙された名無しさん:2007/02/28(水) 21:34:48 ID:FvTh6Itf
挫折した人のスレだから、応募出来るくらい才能溢れるひと用じゃない。
はやく醜文をさらせ
あるよ。
ケンカ自慢の女子小学生に、どうやって巨漢の高校生を倒させたらいいのか迷って…一年経過。
一行目でストップしてばっかり
設定考える方がめんどくさい
その場の思いつきでなんとなく書き始めて、そのうち矛盾が出てきて投げ出す感じ
25 :
イラストに騙された名無しさん:2007/02/28(水) 23:05:33 ID:2QfVnXZv
>>14 ああ、俺だ。
明日から春休みだし書いてみようかなぁ…。
むかし、むかしにょろ。
あるところに、にょろ。おじぃとおばぁがすんでいたにょろ。
おじぃはかわへにょろ。おばぁは…
ここで挫折したにょろ。ところでこんなんでいいにょろか?
厨設定まではあるが、文章までは到達していないなぁ
相手は死ぬ
現在も執筆中。かれこれ1年がかりで
文庫本2冊分くらいにはなっただろうか?
>>26 お前はもう二度と鶴屋語(もどき)は使うな
めがっさ♥ にょろにょろ♥
めがっさ♥ にょろにょろ♥
昔バキの丸パクリ小説を書いて死刑囚が脱獄して主人公と出会った所で投げた。
なんでバキやねん
36 :
イラストに騙された名無しさん:2007/03/03(土) 21:15:56 ID:kaKqnRF7
ラノベばっか読んでる人間にラノベのアイデアは打ち出せない
RPGツクールで先にキャラやアイテムとかMAPとか先に作って
結局会話、ストーリーを作るのが面倒になって放置する俺が
>>14 に同意
>>14だけど皆似たような感じなんだW
ちなみにキャラの絵も描いてたから手間も二倍になってた…。
まぁいつかきちんと終わらせたいと思うよ。
あるな。受験が忙しくて一区切りしたところで頓挫しちまってるなあ。
引越し第一号?
41 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/30(金) 11:52:51 ID:AntxeX0X
俺の場合、自作小説を知人友人に見せまくってたもんで、ここで投げ出すとちょっと洒落にならん…
ということで、一日に一行ずつでも書いている。
ミステリっぽいのがどうにもまとまり悪くて放置してあるな。
久しぶりに見てみるか
ワードで書いてるが、浮かんでくるイメージの断片を簡単な名前付けて
文書ファイルとして作品のタイトル付けたフォルダに詰め込む。そしてある程度たまったら
繋ぎ目の不自然さを無視って繋ぐ。
予めプロット作るより書きなぐった方がよほどいい。
ぶっちゃけ、無茶苦茶酷い書きかけがある。
20行くらいしか書いてねぇw
46 :
BE ◆nEdVj9pCpw :2007/04/15(日) 14:23:14 ID:3aobsBtw
少しだけ俺が手伝いしてやるから、お前らの妄想を話してごらん。
47 :
この名無しがすごい!:2007/04/15(日) 20:29:57 ID:/EMFQ7D4
>>46 魔女っ娘ものでお母さんが魔法でもっと大人に変身して大人に変身した魔女っ娘の娘に介護してもらうお話。
おばあさんも変身して昇天しちゃうんだけど魔法が解けるとよみがえったりする。
>>47 それはドタバタチック、或いは魔女っ子萌えが核になるのかな?
49 :
この名無しがすごい!:2007/04/15(日) 20:39:36 ID:/EMFQ7D4
>>48 ドタバタチックで魔女っ子萌えで家族愛がテーマな話。
魔女と聞いて飛んできました。勿論箒で
>>49 じゃあ、魔女っ子萌えをドタバタチックに描いて、かつ家族愛の世界観で包括すればいいんだよね。了解。
これイメージでは三人称なの? それとも一人称? 或いは語り部がいる感じ?
>>50 最近、あんたをよく見るんだが
どこの板のコテなんだい?
ここ専属なら面白いが
53 :
47:2007/04/15(日) 23:12:44 ID:vtBOh8xh
>>53 おお、三人称ですか。
良いですねえ。
具体的なイメージはありますか?
映画とか漫画でも構いません。
こんな雰囲気が好きだ、イメージはこれに近い、みたいな作品があれば教えてください。
>>52 私なら一応この板の専属です。
ところで魔女っ娘の作品はどうなるのでしょうか
56 :
47:2007/04/16(月) 20:05:25 ID:24RtM8Ga
>>56 きついな。これはきつい。魔女の宅急便ぐらいを予想していたんだけど、きついな。俺は世の中の広さを舐めていたのかも知れんな。
47さん、これは俺では力になれないな。
こういうのは同じ趣味の人でないとどうにもならないと思う。
たぶんアニメ板関連がお薦めだと思うよ。
59 :
47 ◆666CYDyzoY :2007/04/16(月) 23:47:40 ID:Td0DkPVQ
60 :
47 ◆666CYDyzoY :2007/04/16(月) 23:49:27 ID:Td0DkPVQ
>>55 あとシュガー魔女さんの本名は佐藤だと思う。
どうも佐藤です
このスレが放置されているという現実
63 :
この名無しがすごい!:2007/05/14(月) 10:09:55 ID:BtKwGvVO
精霊が出てきたりするウンモな小説書いて電撃に応募しようと
思ったが途中でつまらないんじゃないかという恐怖に襲われ
放置。
64 :
書いてみた:2007/05/31(木) 20:36:26 ID:s61WdMSe
−ファインダー越しの君へ−
こんな写真を撮れるようになったのは、君に出会えたから。
そう思えるんだ。
眠る街、吐く息は白く、肌に触れる空気は冷たい。
まだ昇ろうとはしない太陽を背に、僕は歩き出した。
誰も居ない、この世界にたった一人なんじゃないか、そう思えるこの時間が僕は好きだった。
普段なら素通りするような道端の花、味気なく立つ電柱や街灯、自販機。そんな無機質な物にすら、妖艶でどこか神秘的な魅力に包まれている気がするのだ。
だから僕は、夢中でシャッターを切る。
湧き上がる感情を押し殺すように。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
-第42回人物写真コンテスト最優秀作品 桐沢 真一-
大きく雑誌の書面を飾る見出し。
”綺麗”という言葉では語れないであろう魅力がその写真にはあった。
黄金色に輝く針葉樹の並木の下で、一人の女性が微笑んでいる。
黒く長い髪は風に揺れ、白いワンピースが一面の黄金色に映える。
その微笑にはある意味人間らしさや愛嬌とはまったく無縁の、一つの絵画の様な印象さえ受けた。
夕方の大学内、学生の姿はほとんど見当たらない。
営業はとうに終わり、学生の歓談場所となったカフェテラスに二人の女学生がいた。
「ねぇ真紀、ほんとに綺麗だよね、この写真」
頭の中で写真の人物を自らに置き換えているのだろうか、頬杖をつき、ぼんやりとして女は言った。
「ロケーションも抜群だけど、やっぱりモデルさんがいいんでしょ。ほんとに綺麗だもん、みどり先輩。」
向かいに座る、真紀と呼ばれた女が落ち着いた様子で返す。
「ていうか、その雑誌どこから引っ張りだしてきたのよ。あたしなんか、見ないようにしてたのに。」
「あれ?奈緒子じゃないの?部室の机の上にあったよ。倉庫にしまっておいたのに、誰が見たんだろう。」
彼女達はT大学の3年生、小川奈緒子と相川真紀。
同じ写真部に所属する彼女達は、人の少なくなった学内のカフェで写真談義をするのが日課だった。
「真一先輩、じゃないかしら。」
何かを気にするような口調で、奈緒子は言った。
そのなんとも言えない奈緒子の雰囲気に真紀も少し調子が下がった。
「真一先輩、大学来てたの?今フリーで頑張ってるんだよね。」
「来てたかどうかはわからないわよ。先輩じゃないかもしれないし。」
そう、と言いながら真紀はまた雑誌に目を落とした。
肌に当たる冷たい風がページをぱらぱらと泳がせたが、彼女はあまり気にしていないようだった。
「先輩、あれから人物写真撮らなくなったんだってね。」
ぼうっと下を向いたままの真紀がつぶやいた。
「うん、先輩の人物写真好きだったのにな。」
二人共物悲しそうな顔つきになり、何も話さなくなった。
真紀と奈緒子、そして静けさだけがそこに居た。
放課後歓談に耽る女子学生、というカテゴリーにはおおよそ当てはまらない様子で二人は学校を後にしたのだった。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
65 :
書いてみた:2007/05/31(木) 20:38:50 ID:s61WdMSe
思い切り途中。構想はあるけど時間なくて書いてないやつ。どうだろうか。
ちょっとでも続き気になるって人いたら頑張ってみようかな。
ごめんね、いい話なんだけどタイトルのせいで某エロ漫画思い出しちゃったんだ
67 :
書いてみた:2007/06/01(金) 01:56:40 ID:Yv5879gj
あらら。ならタイトル変えようかな。続き書いても読む人いるかな(´・д・`)
68 :
この名無しがすごい!:2007/06/10(日) 14:43:44 ID:etxnKNTh
ふぉう
7つほどありますが、何か?
下手糞でも何でもいいから、とにかく書き上げることは大切だね。
書いている途中にネタ詰まりで放置した作品がいくつかあるな。
今にして思えば、設定の練り込みが足りなかったのが原因だろうな。
かといって練り込みすぎると
>>14のようなことになることもあるし……難しいな。
書き終えた作品と書き掛けて放置の作品は同数くらいかな。
72 :
暴露:2007/09/26(水) 01:35:09 ID:kpTsHpzX
てか放置されてるヤツは殆どプロットの状態ですでにお粗末な作品が多いな
今書いてるのも最後まで書けるか不安だ…俺のやる気的な意味合いで
74 :
この名無しがすごい!:2008/02/02(土) 19:12:25 ID:UEFGVcVl
パソコンはダメだったね。
あ
で、全てが消去された。15年前のことだよ。
75 :
この名無しがすごい!:2008/06/25(水) 03:17:50 ID:4E+ry2DT
第一章
暗い朝
眠い。
とにかく眠い。
毎日毎日どうしてこんなに眠いんだ。
僕はうぅんと情けない声と共に、寝返りをうつ。
目を開けてみようとも思ったが、枕元に置いてある時計を見るのが怖くてやめた。
布団の外はきっと寒いのだろう、布団の隙間から入る風が冷たかった。
僕の“日付感覚”が正しければ今日は火曜日のはず。
大事な(普通の大学生にしてみればだが)講義のある日だ。
今日さぼればきっとまた単位がレッドゾーンに突入するだろう。
それでも僕は、時計の隣でうるさく震えている携帯をボタン一つで静かにさせ、
今はこの睡魔に身を委ねた。
76 :
この名無しがすごい!:2008/06/25(水) 06:57:38 ID:4E+ry2DT
次に目を覚ました頃には、カーテンの外は真っ暗だった。
暫くぼーっとした後、ベッドの上であぐらをかいて座る。
何をするでもなく、ただ座ったままだ。
傍にあった漫画に手を伸ばし、ぱらぱらとめくる。
相変わらず「こち亀」は面白い。
その時不意に廊下から足音が聞こえて、僕の部屋のドアが開いた。
ドアを開けたのは母だった。
僕と目が合う。
漫画を開いたまま「おはよう」と寝起きのかすれた声で遅い朝の挨拶をすると、
母ははぁと一つため息をつき、後ろ手で部屋のドアを閉じた。
もう随分母の口から“おはよう”を聞いた覚えがない。
もちろんそれは僕のせいだとわかっていた。
大学5年生の今、自分が嫌になるほど、僕は堕落していた。
さっきから携帯電話が鳴り続けている。
僕は何故鳴っているかより、早くそのやかましい雑音を消したくて携帯を手に取った。
77 :
この名無しがすごい!:2008/06/26(木) 04:55:43 ID:RZo2OQa4
携帯のサイドについているボタンを押すと携帯がぱかっと開いた。
僕の携帯はそういう便利な機能がついている。
一度この“ワンプッシュオープン”の携帯を使ってしまうと他の携帯なんか使えない。
「誰かなー・・・」
電池節約のためにバックライトを切った薄暗い画面に、
着信6件、メール8通の表示がある。
着信もメールも、大半は女の子だった。
『遊?生きてる?』
『なんで返事くれないの?嫌われた?』
『こないだ楽しかったね!またドライブ連れてって!』
『浮気してたみたいだね、最低、さよなら』
78 :
この名無しがすごい!:2008/06/26(木) 21:41:55 ID:NeENbrvr
主人公の女の子がめっちゃ年上の男性に恋をするのだけれど、その年上の男性は実は昔、主人公の女の子の母親を無理矢理犯した人だったて話をかこうとおもったけれど、途中でやめました。
79 :
この名無しがすごい!:2008/06/27(金) 04:12:33 ID:tEqm93AC
どのメールにも絵文字がたくさん散りばめられ、きらびやかだ。
罵倒のメールにまで絵文字を入れる女の子のズレ具合に、内容に反して笑ってしまった。
中には出会い系の広告らしいメールもあったが、中身はあまり他の子からのメールと変わらない気がした。
又、大学の男友達からも着信があった。
どうせ内容は学校に来いよ、という誘いだろう。
だが僕が男からの電話をかけなおすことは、まずない。
僕はメールの1通1通に返事を返す。
『ごめんごめん寝てたよ。また電話するね。』
という全く同じ文面の返事を。
もちろんきらびやかな絵文字をつけて。
80 :
この名無しがすごい!:2008/06/27(金) 21:19:51 ID:WYR6qpug
そういえば、春だった。箱の外で優雅に舞い散る桜を見てそう思った俺は、日本人失格なのかもしれない。否、文字の羅列を写すだけの作業をしているなど、青春の浪費以外の何物でもない!…と、思う。
あるある
あるな。
確か、突然パラレルワールドの世界にぶち込まれて何故か堂々と女子校に通うことになった男子の話。
ちゃんと主人公が女子から「男子」として認識されてるっていう点で
設定が似ている花男と決定的に違っているのだが………
如何せん、続ける気がなくなったので放棄した
83 :
この名無しがすごい!:2009/10/02(金) 19:18:04 ID:OOTohgve
ここがエターナラーの巣窟か……
懐かしいスレを見つけたな
未だに放置してるぜ……
小説描き始めて初期のころの作品はほぼ永久放置状態だな。
勢いで書き進めたせいか展開が制御不能に……。
バトルファンタジーで家買うってどんな展開だよ。
面白そうなタイトルだけを並べてうっとりしてる俺きめぇwwwwww
87 :
この名無しがすごい!:2009/10/29(木) 11:39:48 ID:M0mBUJLg
岡田外務大臣キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
http://qb5.2ch.net/test/read.cgi/saku2ch/1256630318/1
早く記念カキコしないと埋まっちゃうwww
>>86 面白そうなタイトルのテキスト文書見つけて、どんな内容だっけと開いたら
一文字も書いてなかったってことならままある
ここが醜文の墓場と聞いてきました。
晒していいですか?
いいですね?
晒します。
高校二年の夏。気がつけば僕の周りにはおかしな奴等で溢れかえっていた。
これと云って僕自身には関係無い、言い変えれば興味の無い種類の奴等ばかりで、
損も特も無い、いわゆる普通の友達と云うやつだ。無害と云えば無害。パッと見、僕と何
らかわりない高校生達(一部社会人・幼女)なのだが、奴等が一度事を起こせば必ず僕
に何某かの厄災が降り懸かる仕組みになっているらしい。
……そう、僕にとっては無害どころか迷惑極まり無い連中なのだ。そんな、ある種変人
達に囲まれた僕の自分語りを是非聴いてもらいたい。
そうだな、トップバッターはやはり、迷惑指数が断トツトップの彼女からが良いだろう。
そんな彼女との騒動はいつもこんなやりとりから始まる。
「……は? 今何て言った?」
『だからね、あのしつっこいセクハラオヤジを殺して来ました、って言ったの!』
自室にて、明日からの学期末テストに備え珍しく、感心にも机に向かって頭を抱えて
いた僕に、携帯電話がちょっと休めと呼び掛けた。ペンを置くにやぶさかでない僕はしか
し、着信を視てがっかり。相手は、話すだけで偏差値が下がりそうなクラスメートだったか
らだ。
「あ〜……、セクハラオヤジってあのカイゼル髭の店長か?」
彼女、羽馬カイナはアルバイトをしている。いや、もうしていた、と云うべきか。話はその
アルバイト先の店長を誅したと云う事らしい。そのバイト先ってのも問題有るんだが。とに
かくここで勘違いをしてはいけない。別に彼女は「人を殺しちゃった! どうしよう!」なん
て後悔して、僕に告解している訳ではない。厭くまで彼女、カイナは普段通りの雑談気分
で僕に電話をしてきたのだ。どっちかと云うと自慢話に近いかな。
『そーよ、他に誰がいるってのよっ!!』
「……」
逆ギレされた。僕も切っていいか? 携帯電話を。うん、良いだろ、別に。今聞かなきゃ
いけない訳でもあるまいし。何より明日は大事なテストだ。何せ進級が懸かっている。こん
ないつもの話題は明日、テストが終わったら存分に聞いてやろう。そう思い、通話終了ボタ
ンに指を掛けたその時、戦慄の殺害動気が告げられた。
『だってさっ! アイツさ! アタシの髪に触ったのよ?』
「……えっ!? それだけ?」
『充分よ! 万死に価するわ!」
「お、お前、それはいくら何でも……」
『ついでに言うとあのイヤらしい髭を剃り落してから殺してやったわ!』
それは要らない情報だな。あまり意味があるとも思えない。
「……待てよカイナ、今何処にいる?」
カイナは心底不思議そうに、
『ん〜? 何で? 店の前のファミレスだけど……』
「――バカ! 早くそこを離れろ!」
『は?』
別に警察関係が今にも追ってくるとは、微塵も心配していない。カイナの事だ、きっと
悲鳴の一つも許さなかったろう事は、想像に易い。懸念材料は彼女のバイト先、その事
を手短に説明しようと言葉を選んでいるうちに受話器の向こう側が俄かに騒がしくなった。
かなり鮮明な会話が聴きたくもない僕の耳に入ってきた。
『何よアンタ達、ワタシに何か用?』
『絵音魅ぃ嬢、ちぃと帰る前に事務所寄ってってくれへんか。解るやろ、お嬢のその手
頃なおっぱいちゃんに手を 当てりゃあワシ等の言いたい事が思い浮かぶ筈や』
――あうちっ! やっぱな、そりゃバレるわなあ。無理もない、あの店で、と限定すれば
誰が考えても店長を殺したのはカイナしかいない。その犯人が現場付近でくだ巻いてた
らいかんわなあ。
『イヤよ! ワタシもう帰るんだもん、あとバイト今夜で辞めるから、よろ!』
『じゃかましいっ!! えーから来いや、腐れ売女!!』
――いかん、いかんぞ! このままだと……。
「カイナ、今すぐ行くから穏便に話をしとけよ! くれぐれも、くれぐれも軽挙妄動な振
る舞いはしないように!」
『あ、来るの? おっけーおっけー! テンさん来るまでには片を付けるわ!』
と、僕の話をまるで無視した返答を寄越し、電話を切ってしまうカイナ。
「だぁ〜〜!! あのバカ、どう云う耳してんだ!? これだから主人公気質はっ!!」
我ながら意味不明な言葉を叫びながら、上下揃いのスウェットのまま、アパートを飛び
出る。
が、すぐに舞い戻り、携帯と自転車の鍵を手に再び出発。部屋に鍵は掛けない。
こんな時間だ、いつアイツが戻るか分からないしな。
夜中の一時半、最近購入したママチャリに跨がり、一路市街へ。
片道五キロ程だ、飛ばせばすぐに着く。厄介な友人の為、仮令進級を危険に晒して
でも、行かなきゃ!
*
全力でペダルを漕ぐ。立ち漕ぎなんてしない主義の僕がもう必死だ。僕は努力は隠れ
てするモノだと常々考えてrいる。
なので道中暇だろうからここらで彼女、カイナの性質について説明しておこう。まあ説
明も何も先刻の通話内容から簡単に察せるとは思うが、始めに告げておくと彼女、カイ
ナは殺人鬼である。それも、何の目的も無く他人を殺せる、そう云う類いのだ。彼女には
いつも問う。
―――他人を、殺して、今、どうだ?
と。そんな時、決まって彼女は、
―――どう、とは?
質問の意味を理解できない愚者ではない。意味を解した上で、分かって無いのだ。常識
として、他者の命を奪うのは良くない……いけない事。それを踏まえて、彼女は殺す。殺
しまくる。殺しつくす。何故、そこまで徹底するのか。 それは、人殺し以上に侵してはなら
ない、彼女の決めた一つのルールがあるらしい。
それが何かは、未だ僕には教えてはくれない。
……まったく、転ばぬ先の杖じゃないが教えておいて欲しいものだ。僕は自分をそれな
りに器用だと思ってはいる。しかしいつ踏むかも知れない地雷が側に有るなら、撤去は無
理でも位置くらいは把握しておきたいと思うのが人間と云うモノだろう? それに元来、僕
はとても臆病者なのだ。そんな危険人物が近くにいるとなると、自衛の手段は用意してお
きたい。
例え、その手段が違法だろうが構わない。自分さえ無 傷ですむなら、親だって売るに躊
躇しない。僕はそう云う人間だ。だからこの後、カイナの行動次第で、僕はどんな汚い事
をしてでも、予てからの計画を遂行しようと思う。
そしてカイナのバイト先。
高校生の分際で在りながら彼女は、バーのホステスなんてしてやがる。しかもヤクザ
絡みのぼったくりバーだ。 となると、そこの店長だって当然、カタギではないだろう。しか
もそのヤクザは、高校生の僕でも知る処の武闘派で有名な指定広域暴力団、左渡会系
梁墨組の構成員だったりする。それに対してあっさり手を出してしまうカイナが恐ろしくて
堪らない。武闘派で成らした極道者と、常識皆無の殺人鬼。そんな物が僕んちの近所で
ぶつかり合うのはご遠慮願いたい。
*
そんな訳で到着。
「――カイナ! 無、事、か―――?」
蹴破る気持ちでガラス戸を開け、唖然愕然。
――誰も、生きてない。
唯一人を除いて。辺り一面血だらけだ。何人居たのかは数えるのも億劫だ、皆一様に
体の一部が欠損している。欠けてる部分は頭、毎度お馴染み、カイナ特有の手口だ。そ
んな中、唯一の生存者は冷めたパスタを頬張っていた。ミートソーススパゲティだ。信
じられない神経をしている。
「あ、速かったねぇ、テンさん!」
ニコ、と微笑む。
「……バカ、血だらけで笑うな。怖すぎる」
血液で真紅に染まったパーティードレスに身を包み、嬉しげにゆらゆらと後頭部で一つ
に括った髪を揺らす彼女こそ、羽馬カイナその人である。
「その格好はなんだ」
「あれ? あ、そう云えば着替えるの忘れちゃったわね」
照れたように笑いながら自分の服装をすがめるカイナ。別に照れる場面でもない。
「訊くが、何で関係無い店の従業員や他の客まで殺してんだよ」
「ん〜、しょーがないよねー、今回は運が無かったとしか言い様がないわぁ」
「……てめ、この畜生働きを運の一言で片付けるつもりか」
先述のルールとは、関係無いのだろうか。いまいち判断に困るが――それにしても、殺
りも殺ったり、ザッと見た感じ二○人てところか? 件の極道者も足下で首から上が爆散
してるし、(服装にて判断)取り敢えず急場は凌いだようだな。これで懸念していた血で血
を洗う異種暴力戦争は回避出来そうだな。
「あ〜あ、肝心のちんぴらには逃げられるし、フラストレーション溜まりまくりよ」
「――え?」
今、何て言った?
「だからさ、奴等のうちの一人に逃げられちゃったのよ。ったく、こっちは目撃者を始末し
なきゃいけないってのに! これだからノンポリのちんぴらを相手にするのは嫌なのよ」
あ、あ、あ、あ、あ―――
「え? えぇ? な、何? テンさん……」
怯えるカイナを余所に大きく、ゆっくり振りかぶって――
「阿呆かお前はーっ!!」
「ぎゃい〜んっ!!」
カイナの脳天目掛け、振り下ろされる拳骨。良い音がした。
「たたた、何すんのよテンさん」
「煩い! とにかく移動するぞ!」
頭を撫で撫で僕を見据えたままカイナが言う。
「……何でさ」
「お前な、相手は極道者だぞ? 只で殺られる奴等だと、本気で思ってんのか?」
ブス、と頬を膨らませ、そっぽを向いてしまうカイナ。
……やれやれ、面倒くさい、今こいつと揉めてる暇は無いんだよ。
「とにかく、サッサと立つ! もたもたしてるとまた不必要な血が流れるかもしれないだろ」
主に僕の血がな。お前絡みで流れた僕の血液だけで献血車が喜んで店閉まいをする
だろうよ。
「そんなの知らないもん!」
「もん、じゃねーよ!」
良いから! 要らない意地とか突っ込みとか良いから! 早く此処を離れたい!
何て考えてる時間が有るならそれこそ急いで、カイナを引き摺ってでも逃げれば良かっ
たんだ。
「居ました、アイツです兄貴!」
「ほぅ、まだおったんかいな、どらどら。てキミ、随分派手にやってくれとるのお、今時こん
な光景なかなか拝めへんでぇ? ――ン? 二人おるやんけ。どっちゃあねん!」
「や、せやから女の方ですって」
「ほぅほぅ、えらいべっぴんさんやね」
……間に合わなかったか。クソ、如何にもな極道者が二人、いやそれ以外にも後から後
から店の中に入って来やがる!
「おうおうおうおう! 絵音魅ぃちゃんよう、さっきはよくもやってくれたやんけ! けど今度
は! 今度はそうはいけへんぞ!! ここにおわす方が誰か分かるか? 分からへんやろ
! ザマーミロ、この方こそウチの組きっての喧嘩屋、須藤の――」
「もうえーがな! 早よ行きさらせや、ボンクラ!」
延々と長口上を垂れているチンピラの尻を蹴飛ばし、兄貴分らしき男は苛立ちを撒き散ら
した。大物ぶっている割に気が短いな。長生はできないタイプだ。
そんな僕の現実逃避を余所に、チンピラ共は開戦の狼煙とばかりに怒号を張り上げた。
聞くに耐えないモノばかりなので耳を塞ぎたい衝動に駆られる。
「おっとと、へっへっへ」
足を縺らせながら、眼前に躍り出たチンピラ。兄貴分に蹴飛ばされても懲りることなく能書
を垂れるのは、最早あの世行き一番手の役回り故の役得だろう。精目立つと良い。
「もう終わりやな! 可哀相に、若い身空で早々と人生終えるんや! でも安心せえ、あ
の世への道行きには隣りの僕ちゃんも同行させたる!」
匕首を抜いた。定番だなあ。
「もう終わりやあ、逃がさへんでえぇえっへっへっへ」
匕首を腰の高さで構え、突進してくるザ・チンピラ!
「死に晒せぼけァァぁーーーー!」
どん。
あれ?
「へーーっへっへっへ、盗ったでぇ〜」
「…………」
――って僕かよ!あの世行き一番手は僕なのかよ!
「いっっってぇぇぇぇぇーーー!!」
腹に深々と刃物を刺されるようなハイスクールライフを送ってきたつもりは更々無い。どん
なヤンキー漫画だって今時こんな描写は少なかろう。
「まぁずはー、僕ちゃんからでしたー! 今楽にしたるからなぁ」
匕首を握るチンピラの手に力が入る。
やべぇ! 捩じられたらマジ終わる!
「――お前、ワタシに したな?」
「「え?」」
ハモった。
瞬間、室内でありながら突風が吹いた。
「―――っ!!」
――その突風は、螺旋を描きチンピラだけを巻き込んで行く。旋風、と云うより竜巻。それ
に巻き込まれたら最期。竜に丸飲みされたのと同義である。後は竜の口腔内でぐちゃぐち
ゃに咀嚼され、不味ければ吐き出されて終わる――
と云うのは些か表現が凝り過ぎだろうか? 隠喩過多な感じ。
いずれにせよ、何度か見た光景だ、こうなったカイナを止める手段を僕は持たない。大体
動きが速過ぎて何も視えないってんだから出鱈目だ。これじゃあ実況中継のしようが無い。
こうなるともう、風が止むまで待つしかないのだ。
――それに、もうこの重い瞼を支えられそうに、ない……。
ああ、まだ夏になったばかりだってのに――今夜はやけに……冷えるなあ――
*
「……、呆れるでほんま」
この場に集まったヤクザ達の中で、おそらく一番格があるだろう男、須藤理壱が一人ごち
る。
「まさか聞いたままとはのう、例えあの若い頃は喧嘩千遍と謳われたオヤジかてこげなバ
ケモンと殺り合ったことはあれへんやろ」
白いスーツを身に纏い、蓄えた顎髭を擦りながらけしかけた組員達の殺られ様を遠目に
観察する須藤理壱。
「おーおー、ありゃまるで独楽やんけ。視界に入った者全員弾くまで止まらへんぞ」
須藤の見解はおおよそ正しい。カイナ自身、独楽をイメージし,拳を硬く握り、両腕を肩の高
さで水平に保つ。後は高速で回転すれば、殺人独楽の完成。ただ、独楽と云ってもその場
でくるくる回っているわけではない。標的を定め、そこに向かって跳んでは弾き、跳んでは
弾き、繰り返し繰り返し、立っている者がいなくなるまで続けられる。
首狩りの独楽。
至近距離では判りづらいが、須藤のように遠目で見ればその大まかな動作は認識出来
る。それを理解し、打つ手が無いと気付いた須藤は店外に出て、ウィンドウ越しに様子を
伺っている。
殺人独楽の独壇場、その様を見ながら黙考に耽る須藤。不意にある考えが頭を過ぎる。
「ふん? こりゃひょっとすると――チャンスなんちゃうんかな?」
ヤクザ者らしく、胸焼けしそうなニヤけ面を残して、ファミレスから離れて行った。
自漫のベンツに乗り込み、発進間際に一枚の紙切れを懐から摘み出し、そっと車外に落
としていった
*
…………、あたたかいなあ。
むずむず。
「――、ぅえっきしっ! ――いっ!!」
鼻先を何かがくすぐり、堪えきれずくしゃみ一発。空かさず刺された創口に電流が走っ
た。
「あ、目ぇ覚めた? 心配したよぅテンさん」
鼻を悪戯していたのはカイナの頭に生えたしっぽだった。
「……、そうだ、確かに寝てる場合ではないわなあ。そんじゃあ、この状況を簡潔に説明
してくれ。何故僕がお前に背負われてる。そしてこんなに息苦しいのはお前のやたら高い
体温と噎返るような汗の匂いに中てられたってコトなのか?」
「む、噎返るってなによ! それじゃまるでワタシの体臭がキツいみたいじゃない! 止し
てよ、誤解を招く言い方するのは!」
必死だなあ。
「簡単に頼むぞ」「言い直せ〜!! そして謝れ〜!!」
確かに同級生の女子に向かって使う言葉ではないだろう。でもコイツ、羽馬カイナは殺人
鬼だ。返り血と汗が混じればそれなりの匂いにはなる。例えカイナが我が校指折りの美人
だとしても、僕はカイナの友達として、言い直さない。謝らないのだ。だから敢えてこんな冗
談を言うのも友達同士の会話としては、普通の流れと云えるだろう。
「バカだなあ、僕に言わせれば雨の日の下駄箱よりはマシなんだし、気にするなよ」
情け無くも背負われた身分のクセに減らない口だとは自分でも思う。
「そんな物を引き合いに出すなー!!」
「う!」
マジギレしたカイナが思わず僕を落としてしまった処までで、また僕は気を失った。後で
聞いたら頭をコンクリートにしたたか打ったからだそうだ。
リテイク。
「いつつ――そんでどうなったんだ?」
歩道の縁石に腰を落ち着かせ、目の前に立つカイナに問い掛けた。
「うん、気付いたらテンさん、血ぃぴゅーぴゅー吹いて倒れてたからさー。慌てたよー、い
つの間にか刺されてんだもん」
「……まあ気付かなくても無理ないか、お前あの時もうキレてたもんな」
「ん? そうなの? とにかく急いで止血してさ、おぶって病院連れて行こうと思ったわけ
よ」
なるほど、息苦しいわけだ。上着を捲って見ると何処で手にいれたのか分からないが、真
新しい包帯を力任せに、サラシを締め上げるように巻いてあった。触るとカチカチなのが良
く分かる。明らかにやり過ぎだ。
「したら、一人だけ逃げられてた事に気付いてさ」
「またかよ! 気付くのが多いのは良い事だが、お前、わりかし打ち漏らしも多いよな!」
「むー、否定出来ないだけに悔しいわー」
「たく、そんで? それに気付いたお前は目的地の病院を何処に変更したんだ? 僕の知
る限りこの先には病院は無い筈だぞ」
あのファミレスを基点に考え、今いる位置と病院の位置は正反対になる。コッチに何があ
るかは分かっているが、本人の口から直接訊いておく方が確実だ。
「うん、お察しの通りその打ち漏らしを狩りに、ね」
ぶち。と、きたね。
「ね、じゃねーよ!」
「だってさ、アイツ等さ、許せないんだもん……」
拗ねた風に言ってもお前に正当性は無い。
「――それで、また皆殺しか。いい加減呆れたよ、お前には」
「な、何よぅ、そんなに本気で怒ること無いじゃん。ワタシだって別に喧嘩がしたい訳じゃな
いのよ、これはほら、前に言ったでしょ? ワタシにだって譲れないモノが或るのよ!」
う、きったね! 目に涙なんか浮かべやがって! 泣きてえのはコッチだってのに……。
喧嘩だぁ? 不戯けろ、殺し合いを喧嘩とは云えない、いや、これはもう只の殺戮だ!
「じゃあそれが何かくらいは、言えるだろう。言えるよな? 他人をあっさり殺す理屈だ、全
面的にお前が正しいと、証明してみせろよ!」
一瞬だけカイナは顔から表情を消し、すぐに困ったよな微笑を浮かべた。
「うぅ〜ん、それについてはテンさんに関係無い事だから、言いたくないよ」
――まただ。肝心な処は必ずはぐらかす。普段のカイナは誰に対しても笑顔なんて向け
ない。それ処か口さえも開かない。それが何故か僕に対してだけはお喋りで、無垢な子供
みたいに笑顔を見せる。
その原因が何かなんてどうでも良い。
そんなカイナが、唯一心を開いているであろう相手、その僕に対してもはぐらかし続けて
来た彼女のルール。
拒絶、されている。
――良いさ、それなら、話題を変えてやる。
「カイナ、いつもの問答をしよう」 「――え?」
「あれだけの人数を殺して、殺し尽くして、お前は今、苦しくないか?」
「ま、またそれ、苦しいって何が? あの程度の運動で息が上がるワタシじゃないわ。
……そ、そりゃ汗くらい掻くけど、臭うほどじゃないし……」
――徹頭徹尾、噛み合わない。
「……そうかい、そうですか。なら行きなよ、そうやってお前は一人でオタオタと丁寧に、
手際良く不器用に一生殺しを続ければ良い。僕はもう付き合いきれないから此処に置い
ていって下さいよ!」
感情のまま、言葉を紡ぐ。
カイナはただ、黙っていた。寂しそうに俯いて、何かに対して耐えるように下唇を強く噛み
締め。
僕等の間を沈黙が包む。
僕はただ、ひたすら居心地が悪いのに、感情とは別に顔だけは表情を出さないように努
めていた。やがて、カイナが躊躇しながら口を開く。
「――あ、あの……」
「行けよ!」
びくっ! とカイナの肩が震えた。「行けって」
「あ、――」
「行け」
しっしっと手で追い払う仕草。それを泣きそうな目で見つめ、終に諦めたのか重い取りで
去るカイナ。ゆっくりと遠ざかるカイナの姿。それが漸く視えなくなって、僕は誰に聞かせる
でも無く呟いた。
「……カイナ、お前が悪いんだぞ。僕に近付いて来たお前が」
さて、僕は僕で命がピンチだ。急いで病院に行かなきゃかなり不味い事になるだろう。そ
う思い、よっこらせと立上がり、もう一度腹部に痛みが走った。
痛烈、とは実際の痛みにも使える言葉だと改めて知る。
「―――ふっ!」
――別に不敵に笑ったわけではない。少し呼吸が難しくなっただけ―― あれだけ出血
したんだ、貧血にもなる。僕は力無く背後の植え込みに倒れた。意識はある。反ってはっ
きりしているくらいだ。植え込みに凭れかかりながら夜空を見上げる。こんな地方都市の
くせになんて空の狭い事か。 星一つ視えない。
曇天は、殺人鬼が跋扈するには持ってこいの雰囲気。しばらくそんな風に空を見ていて
、ふと思い至る。
「あいつ、事務所が何処か知ってたんだ」
「んな訳ゃあらへんやろ、にーさん」
いつの間にか、目の前には一人の男が立っていた。
「あんた、確かあのヤクザ達の――」
「さっきはどーもー、自分須藤理壱いーますー」
――カイナの打ち漏らしっ!
「突然ですまんが、にーさん今っから人質や」
*
と ある雑居ビル、その最上階。七階に看板を掲げる梁墨商会。その実体は、広域指定
暴力団、関西左渡会系梁墨組の組事務所だった。過去にマンションだったそのビルは、老
朽化と造りの悪さ、それに周囲に乱立する近代的なビル群がそのみすぼらしさを一層際立
たせ、住民を次々と離れさせて行った。終いには管理もままならず、二束三文で売りに出
されたところを、関東に地盤を築きたいと目論む左渡会が梁墨組に買い取らせたと云う訳
だ。しかしそんな背景は、今となっては意味を成さない。七階、並ぶ鉄扉の一室で、一人の
女子高生が部屋をミキサーに変えた。
――きぃ、きぃ、きぃ――
風に鳴く鉄扉。室内はもう、何処かのファミレス同様に動く者はいない。その原因たる少
女を除いて。
「ひ――ぐす。すん、すん」
血のスプリンクラーを作動させた少女は、一人泣きじゃくる。友人の少年に言わせれば
今、手にかけた者達を悼んで泣いている訳ではない、と云うところだろう。嗚咽塗れで一見
被害者に視えなくもない。だが彼女こそ、羽馬カイナだからこそこんな事が出来てしまう。
「うええええええぇぇぇぇぇ――」
血染めのドレス、その裾をギュッと両手で握りながらただ、慟哭するカイナ。まるで迷子
のように、やはりただ泣き続けるのであった。
「……なによぅ、テンさんにワタシの気持ちが分かる訳ないじゃない」
一仕切り泣いて落ち着いたのか、拗ねたように片膝を抱え独り言を漏らすカイナ。本革
張りの立派な椅子に腰掛け、落ち着き無く左右に揺れながらブツブツと続ける。
「そもそもワタシがこんな事してるのは誰のせいだと思ってんのかな」
意味在りげな言葉を吐き出すが、そこに意味はやはり無い。彼女が人を殺す理由なん
て、彼女にしか分からない理屈。他の誰のせいでもない。 所詮、異端者の理屈でしかなく
、真面に取り合えば馬鹿をみるだけ。しかし彼女は踏み止どまる。ギリギリ、あと半歩で奈
落に墜ちかねない危うさを纏いながら、その人格を保っている。
それこそが、誰のせいかは、カイナにも解っていた。
「あ〜あ、本当、まいったな〜……まいっちゃってんだなあ」
誰にも聞かれてはいけない本音が零れたのと同時に、目の前の電話が鳴った。
当然無視。数コール後、あっさり音が止む。が、次に鳴った音は聞き慣れた物だった。
カイナの携帯、着信は先刻別れた友人から。
――おかしい、あそこまで怒ったテンさんがこんな舌の根も乾かないうちに連絡を寄越
すだろうか――
そんな思考が過ぎる。過ぎるが頭のしっぽは大きく揺れる。嬉しくて、気まずくて、複雑で
ありながら堪らなく顔がニヤけてしまう。
んんっと咳払いし、着信相手を焦らす様に緩慢な動作で通話ボタンに指を伸ばす。
「はいはいカイナだけどテンさんどうしたのかな? さっきの事謝りたいってんなら許して
あげるよ! いーのいーのワタシ達友達じゃない! それともどうしてもお詫びがしたいって
云うならそうねせっかくだし千倉屋の大福十個で手を打とうじゃないか」
焦れていたのは自分だった。
『落ち着け、句読点くらい入れるんだカイナ。それに僕はお前に対して悪いなんて思って
無いから安心しろ。それより話を聞きなさい』
その声を聞いて一層、嬉しげにしっぽが跳ねる。
「あいあい、了解しました。んで、話って?」
『ああ、それじゃ手始めに二・三質問するが、良いか?』
「ほーい!」
『よし、じゃあまずお前、そこに生きてる人間はいるか?』
「いませーん!」
『……楽しそうに言うな、バカ。次、お前その場所どうやって知った?』
「んとね、ファミレスの前に名刺が落ちてたのよ。それを頼りにしたんだわぁ」
『あー、そう云う事か……。それで、その名刺は誰の名前が刷ってある? あ、いけね!
来た!』
首を捻るカイナ。
「はい? 来たって何が?」
『コッチの事! んで誰だ?』
「? 誰って……、えとね、ちょい待ち」
『急いでくれよ!』
カイナの知る少年らしくもない焦燥ぶりにもう一度首を傾げ、ドレスの胸元から一枚の紙
片を摘み出した。
「そうそう、須藤、リ・イチ? って読むんだと思うわ」
『誰だその中国人は! じゃなくて! それで間違いないな?』
「どしたの? テンさん、全然らしくないよ? てか、走ってんの? ダメだよ、お腹に穴穿
いてんだから」
『うっさい! とにかく須藤理壱で間違いないな!』
「うん」
『よしわかった、最後にもう一つ訊く、そこに――その事務所にはお前の打ち漏らしは居
たか?』
「……あれ?」
『やっぱな! だろうな! これで一応の裏は取れた、頭の整理がつきました!』
「テンさん?」
『カイナ、今僕は追われている! 誰にか判るか? そうだよ、勿体ぶるまでも無く、』
「あ!」
『――お前の打ち漏らしにだよ!』
*
ガチダッシュのままの会話は正直キツい! なので簡潔に用件を伝え、通話を切る。
「――く、――はぁ!」
腹に穿たれた孔が未体験の痛みを僕に教える。刺された脇腹は熱を帯び、内から外に向
かって波打つ感じで痛みを拡げる。何て事無い、鼓動に乗った激痛の迸りだ。
「――き、傷が開いた――」
出血再開。開くも何も始めから閉じちゃいない。カイナの馬鹿力で強引に押さえていただ
け。弛んだサラシは、やはり包帯でしかない。
「――何て考えている場合じゃない!」
すぐ真後ろ、十メートルくらい後方には須藤が迫っている。あいつはヤクザ、人でなしの
代名詞。捕まったら最期、利用されるだけされて殺されるだけだ。
「何より――」
――カイナに借りは作りたくない!
ぱん。
乾いた破裂音が響く。
野郎、撃ってきやがった!走りながらだから狙いも何もあったもんじゃないが、非現実が
牙を剥いた。
――冗談じゃない! あと少しでアイツとの合流ポイントだってのに、あんな反則に中って
たまるか! そりゃ持ってるだろうなとは思っていたよ? だけどソレを抜くのは僕相手じゃな
いだろう!
ぱん。
「――!」
再度銃声が響く。ただ真っ直ぐ走ってちゃいい的だ!
慌てて右折、サラリーマンの憩いの場、中央公園に逃げ込む。
「げ――!」
意外に遮蔽物が無いじゃないか!
「どどどどうしよう!」
オタオタと左右を見渡し、隠れられそうな場所を探す。が――
ぱぁん。
「ぐあっ!」
弾丸が太腿を貫く。
「ふう、やっと中ったわ」
「――! ――っ! ――っっ!!」
痛みのあまり言葉にならない。追いついた須藤が僕の頭を踏み付ける。
「ちょこまかちょこまかよう走らせてくれたのう、なあにーさん!」
駄目押しに鼻っ面を爪先で蹴り上げられ、やっと僕は気を失えた。
*
「――う」
次に目を覚ました時、僕の上には須藤が、少し離れた場所にカイナがいた。出血のせい
か目が霞んで良く見えないが、俯いて仁王立ちしている。
「……あ、テンさん生きてた。良かった〜」
「せやからそう言うてるやないか、ほんま人の話を聞かんねーさんやな」
「…てか、重い、どいて」
「やかましい! 黙っとれ!」
拳骨がこめかみに落ちる。
……痛すぎる。
「……テンさん殴るなよ」
カイナにしては割とまともな科白だ。僕等の関係を今のやりとりで確信したのか、須藤は
余裕たっぷりに言う。
両手を拡げ、首を左右にゆっくり振る様は、さも僕等を小馬鹿にしているようだ。
――馬鹿はどっちだ。
「解ってへんな、つくづく解ってへん。ねーさん……絵音魅ぃちゃん云ーたか、この状況
視えとるけ? せや、わし、君の大事なお友達を人質にしとるねん。これで解ったやろ、アン
タが滅法腕利きやー云ーても手が出せへん」
「……」
カイナは、黙っている。黙って、やはり俯いている。
「つまり、わしの勝ちや」
静かに勝利宣言し、堪えきれなくなったのか高笑いを始めた。
「ぎゃははははははははははははははははハハハハハハハハハハハハハハハ――」
「……五月蠅いよ」
感情の無い、平坦な口調でカイナは呟く。俯いたままなのは変わらない。
「はははははは、あんま強がるなや! 何、絵音魅ぃちゃんには感謝もしとるしの、殺しは
せーへんよ!」
「……あのね、その絵音魅ってさ、源氏名だから外でそう呼ぶのは止めてちょーだい。そ
れと、感謝だっけ? なんで? ワタシはアンタを喜ばす事はしていないよ」
「んーんーんーんんー、そんな事あらへんよ、アンタ、わしの役に立ったんや。聞きたい?
聞きたいやろ、えーで、教えたる」
「興味無いよ」
厭くまで、平らに応えるカイナ。
「連れないなー、ま、そう言わず聞きや。このわしの智略を!」
ぐり。
僕のこめかみに銃口を突き付け、カイナを威嚇する。
――無駄な事を、カイナに人質が有効かなんて考えるまでもないさ。
「わしな、随分前っから阿嘉野会から誘われててのう、阿嘉野会て分かるか? せや、関
東に広く顔が利く最大手や。んで、その阿嘉野の会長がわしに都内をまとめて欲しいっちゅ
うねん。ただ、その為には組を裏切るのが条件での、頭ぁ悩ましとったのよ」
阿嘉野会。やばいな、この流れは……。
「実際、わしにしてみりゃ両手を上げて阿嘉野に付きたいやん? しゃーけど組裏切るて、
わしかて西に身内の一人も居るがな。裏切ったのがバレてみぃ、……冗談やあらへん!」
「……」
カイナどうした、何故動かない?
「あれやこれやしてる間にウチの関東進出が決まっての、そうなると左渡の先槍と謳われ
たおやじがコッチに突っ込まれたっちゅうわけや。わしにしてみりゃ大迷惑やで、ほんま。板
挟みもえーとこや」
――カイナ、まさかお前、本当に僕の事を気遣って……?
「そんな時にねーさん、アンタを見つけたんや! ウチのおやじは喧嘩となると見境いなく
てのう、後は簡単! 事務所にカチ込みが入るでーて電話で教えたったんよ。そしたらおや
じ、こんな真夜中に非常召集かけはった! 後は――ねーさん、アンタが一網打尽にしてく
れた、ちゅーわけや」
「……」
カイナはまだ、動かない。
「おかげさんで、後顧の憂いも無くなった。晴れてわし、関東阿嘉野会の幹部様や!」
「……説明、乙。ま、興味無いから聞き流したけど」
……嘘を吐いたな。お前が阿嘉野に興味が無いとは思えないぞ。
顔を上げたカイナ。
「――!?」
その顔色に、正直驚きを隠せなかった。
「――カイナお前!」
はっきり云って土気色、顔面蒼白とはこの事か!
「たはは〜、今夜はちょっと燥ぎ過ぎちゃったかな? 少し身体がダルいかも〜」
「かはは! こりゃ良ーわ! いよいよわしに運が向いてきおった!」
「おま、その顔色、どうしたんだ!?」
「や、今顔色の悪さでテンさんに勝てる奴はそうはいないよ〜」
……そうだった、僕の方が重傷だったっけ。
「うんうん、心配しあうのは良ー事や。友達っちゅうのはかくあるべき、やなあ」
鼻を啜り、一人頷きを繰り返す須藤。本気で感じ入っているらしい。目には涙が浮いてい
る。
「ほんでなあ、ボチボチ忌んでもらいたいんやけど、どーやろ?」
銃口を、僕からカイナに切り換える。その辺は流石、荒事に慣れたヤクザらしい。順番は
絶対に間違えない
「ちゃはー、カイナちゃん大ぴんち〜。とうとう年貢の納め時ってやつね、……ねえヤクザ
屋さん、ワタシは良い、ただテンさん……その人は助けて。……お願い」
「ふむ、まあ良ーやろ。こがいなにーさんにわしを脅かす行動が執れるとも思えへんし、
放かしても勝手に死んでしまいよるわ」
――このバカ! 諦めやがった! 不戯けろ、お前のしてきた事を考えたら安くは死なせら
れない! 何か、何か打開策は……!
「無駄やでにーさん、何か考えとるみたいやけど、こっからミラクルは起きひん」
「……ちぇー、ワタシって以外に体力無いのねー……、こんな事なら部活でもやっとけば
良かったわー」
……駄目か、結局迷ってる場合でもなさそうだ。実はこいつの逆鱗はもう知っている。
打開策は、有るんだ。あの時カイナは、こう言って、そしてキレた。
――お前、ワタシに××したな?
伏せ字なんて、意味が無い。
「ハハハハハハハハハハハハ――」
当然、カイナも須藤も面喰らう。面喰らい、そして憐れむ。無理もない、この中で一番無力
な僕、一男子高校生でしかない僕が唐突に嗤いだせば誰でも、疑う。
「……何や、イカれてもーたんかいな。案外脆いのう、今時の若いモンは」
「……ごめん、テンさん」
「謝るなよカイナ、僕にだけ謝罪したってお前はもう赦されない。あ、おっさん。イカれてね
ーから心配すんな」
「――何やと、誰がおっさんじゃボケ!」
銃口を再び僕に向けた。バカが、アンタは立派な荒事師だ。始末する順番は絶対に間違
えないだろう?
「語るに落ちてんだよ! 今時の若いモンとか言っといて自分がまだ若いつもりか?」
「――っ!! 黙れ糞餓鬼!」
こめかみに銃口が喰い込む。それを無視し、バテバテの殺人鬼に話を振る。
「なあカイナ、お前の得意な独楽踊りを観せてくれよ! 出来るだろ? 出来るよなあ、お前
にはそれしか無いからなあ! それが独楽の踊り手《トップダンサー》たるお前の在り方だも
んよ!」
「――違う、もう無理なのよ。ワタシは――」
「――可哀想に、お前はいつでも孤独なんだな!!」
風が吹いた。
土気色だった顔色は、マグマの様に紅く燃える。
「――取り消して、早く」
「やだね」
「取り消せ!」
「断る」
カイナの身体がわななく。自分を抱いて今にも跳び出しそうな脚を必死に抑える。今迄見
せた事の無い殺意を僕に浴びせながら。
――そう、お前のスイッチは、同情だ!
「……もう我慢するな」
「……ち、がう」「お前は前から僕を、殺したかったんだろう?」
カイナは、涙を流している。顔をクシャクシャにしてついには鼻汁と唾液すら垂れ流し、必
死に否定する。
「そうじゃない……」
「お前は人を殺す事をためらわない」
「……」
「お前は人を殺しても何も感じない」
「……」
「お前は人が死んでもどうとも思わない」
「……っ」
「そんなお前にも友達ができた」
「――!」
「そして試したくなった。そんな友達としての僕を殺したら――自分はどうなるだろう、と」
「――あ、あ、あ! あ!! あ!!!――」
――嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼――!!!
「――――――良いの? じゃあ殺るわ」
膨張しきった風船は、やっと弾けた。グシャグシャだったカイナの顔は、穏やかな無表情
に取って代わり――我慢しないと宣言した。
「――動くなボケェ――」
忘れていた第三者、須藤理壱が声を発し――
ぱぁん。
――きる前に一つの破裂音が鳴り響く。 銃声じゃ、ない。背後の噴水より高く、その血を
噴き上げ退場した。
――目の前に、速度を緩めた独楽が回っている。
「――テンさん。ワタシの友達。たった一人の、大切な友達」
完全に止まり、僕の上の肉塊を蹴り飛ばす。
僕は仰向けになりカイナを強く見据える。
「――いよいよ、だね?」
カイナはそう言い、僕の上に馬乗りになる。
「……」
何も言わず、ただ穏やかなカイナの顔を見つめる。
「――いくよ」
拳を振り上げ――
――そしてそのまま倒れた。
「……やれやれ、危なかったな」
やっとの思いで上半身を起こし、僕の上で眠るカイナを見遣る。
「お疲れさん。今夜の事、大事にしろよ。今日って云う日はお前にとって忘れちゃいけな
い記念日になったんだぜ?」
ゆっくり、硝子細工の置物を扱うように、カイナを脇に寝かせ、立ち上がる。
「――う、ん!」
身体を伸ばしつつ、夜空を見上げると、あれ程厚かった雲が千切れ千切れの叢雲にな
、隙間から星を覗かせていた。
うん、これなら今日は晴れそうだ! ――あの程度の雲、朝日が全て溶してくれる――
「さあ、行くか」僕の用事を済ませよう。
「……う〜ん」
「あ、起きたか」
「あれ、テンさん。……アレ? テンさん!?」
「二回も確認するな、耳元で喧しいなあ」
「え、だって。エッ? だって!」
「だから何で二回言うかな」
「うぇ〜!?」
今、こいつの顔を見ればきっと、さぞかし味のある表情をしている事だろう。視認できない
のが残念だ。
――そう、僕等はもう憩いの中央公園にはいない。先刻とは逆に、僕がカイナを背負って
歩いているからだ。
「どうした、黙っちまって。何か無いのかよ、言いたい事は」
やや遅れて、
「――え、あ、うん。そっか、そうだね。つまりワタシは――」
クスリ、と小さく笑うカイナ。
「――殺せなかったんだね――」
「ああ、そうだ」
「――良かった」
意外な言葉を、優しい声音に乗せて言うカイナ。僕としてはこいつにそんな情緒的な事を
言われては心が揺らぐ。
――自然、足が止まる。
「――残念じゃあ、ないのか?」
「何で? テンさんはワタシの大切な友達だよ」
「僕はお前の、踏み込んではいけない部分に土足で入ったんだぞ?」
「……そうね」
「体力が尽きただけ――お前にはまだ、僕を殺す理由がある、だろう?」
「……そうね」
「簡単だぞ、僕なんて」
「……そうね」
「なら、」
そう言い掛けた時、遮られた。強い、意思の籠った声で。
「誓う、テンさんには何もしない」 「……お」
「うん、そもそも大前提から間違ってたのよ、ワタシ」
「……間違ってた、とは?」
「だってそうでしょ? どうでも良い奴等におざなりな同情をされるのは真っ平だけど、そこ
は絶対変わらないけど、本当の友達が心から、ワタシに同情してくれるのは――有り難い
と、受け取らないと」
――友達、か。
「そうか、そうだな」
「うん!」
弾む様に嬉しげなカイナ。目を覚ましてからは遠慮がちに肩に手を置いていただけだった
彼女が突然、僕の首ったまにガッチリ両腕を廻してきた。
――傍目に見れば抱き付いている様にしか見えない。
「ね、テンさん」
「ああ」
了解、少しばかりお前に付き合うよ。
それからしばらく、雑談をしながら夜明けの街を意味も無く練り歩いた。内容は今日この
後のテストの事だったり、二年生の中途半端な時期から入っても楽しめそうな部活の事だ
ったり――
*
――じきに疲れ果てていたカイナは、再び深い眠りに墜ちた。こいつにとって、僕がどう諱
う存在か判って、改めて気を引き締める。
そして僕は、カイナを警察に引き渡し、アパートへと帰った。今日は進級の懸かった大事
なテストだ。寝不足や血液不足くらいじゃ休めない。
――おしまい。
そうそう、↑のタイトルは[ポニーテイルの殺人鬼]です。
続きは一応書いてますが・・・・・・進んでませんねえ。
105 :
tomorrow you:2010/02/21(日) 10:04:36 ID:jD4v8U+2
在米歴 人生半分 くらいの高校生です。日本の大学への進学が決まり、
卒業までの暇を埋めるため、日本語力を取り戻すためにも
小説を書いてみようと思い立ち、イントロ(ワード4ページほど)を
勢いで2時間ほど書いてみました。
今後どういう展開にしていくか、がまだ分からないのにイントロを書いた
というのはストーリーの展開性に振り幅を持たせるにも致命的な欠陥
かと思いますが、自分の日本語力に自信がないのと、想像力がいまいちない
とで、とにかく勢いで書いてしまおうと思い、出だしを書いてしましました。
ここで皆様に判断して頂きたいのですが、僕の日本語はどうですか?
今後も書き続ける意味がある内容(文)だと思いますか?
それとも駄文書いてないでちゃんと勉強しろって感じですか?
元々自信のある文ではないのでどのような厳しい批評も聞きたいです。
皆様の貴重な御時間を少し僕にください。宜しくお願いします。
106 :
tomorrow you:2010/02/21(日) 10:06:32 ID:jD4v8U+2
すべては車内で始り、車内で終わった。
そう、夕方の通り雨が過ぎ湿気となった水蒸気を空気中に映し出す様に雲の合間から現れた太陽が西側の窓から差し込むラッシュ前の東海道線。
夕日に背を向けて座る人々の影が淡いオレンジに染まった床に暗く浮き上がる車内。そこですべては始まったのだ。
塾に向かう僕はいつもの様にカナル型のイヤホンを耳の奥に捩り込み、心地よく響く重低音とはるか上のオクターブを流れるメロディーラインに
載ったsoweluの甘い歌声を感覚器に直接流し込んでいた。僕の前には、制服を着崩し 下着が露わになるほど短いスカートを穿いた女子高生らしき2人が
不必要までに光る安っぽいプラスチックダイヤにデコレーションされた携帯を握りしめながら彼氏に買ってもらったという数万円のエルメスの財布に
ついて話している以外は、周囲の音はなにも聞こえなかった。高度なノイズキャンセラ機能があると勧められて買ったイヤホンも、
どうやらギャル系女子高生の話声はシャットアウト出来ないらしい。
2人分のスペースを空けて彼女達の横に座っている少し禿かかった50代くらいの男は、くしゃくしゃになったスポーツ紙のヘルス宣伝ページを見つめていたが、
時折隣の彼女達のスカートから伸びる太ももにちらちらと目をやり、特に持っているスポーツ紙には興味がないようだった。
車内を見回すと、後方にキャリアウーマン風の女性が2人、小型のノートパソコンとクリップで纏められた分厚い紙を照らし合わしながら何か小声で相談していた。
重要な資料らしく、クリップに留った紙の束を持つ手には使い捨てゴム手袋が嵌められていた。
車両の奥には身障者でも使える大型のトイレがある。比較的長距離を走る路線には必ずトイレが設置されているらしく、以前塾帰りに車内で強い尿意を感じたが
最終電車で途中下車出来ない時に非常に助かった覚えがある。今日の車両はどうやら新しく製造されて間もない車両らしく、
トイレのドアは汚れた車両が多いが今日のは珍しく染み一つなかった。使用中を表すランプは点灯しておらず、トイレには誰もいない事を告げていた。
107 :
tomorrow you:2010/02/21(日) 10:07:33 ID:jD4v8U+2
僕は土日を省き毎日この路線に乗っているので、この路線から見える景色、建物の形、標識、
看板はほとんど熟知していたが、ふと窓から見るとそれらがいつもより遅く過ぎ去っている事に気付いた。
どうやら徐行運行している様だった。塾に遅れるのではないかと少し嫌な予感がした。今月はもう5回も遅刻していて、
これ以上続けると先生から特別に目を付けられる可能性が高かく、遅刻などの小さな事は特に気にしていない僕も、
5回目となると少し焦り、後ろめたささえ感じるようになっていた。
果して予感は的中した。突然駅でもないのにスピードを落とし始め、しばらくの間のろのろと進んでいるかと思うと、
またゆっくりとブレーキがかかり、静かに停車した。
「御客様にご案内いたします。本日、大雨の影響で線路が滑りやすくなっているため前方の車両が徐行運転をしています。この電車も、ダイヤ調整の為にしばらくここで停車します。」
「ちっ、またか遅刻か。」と小さく呟いた。小さく呟いたつもりだったが、カナル型のイヤホンをしながら話すと自分の声が耳に反響して聞こえるためか、周囲に聞こえるほど
大きな声で呟いた様な気がして慌てて周囲を見回した。しかし僕を見ている者や僕の呟きを聞いた者はいないようだった。代わりにさっきまで手元の資料とパソコンの画面ばかり
見ていたキャリアウーマン風の女性二人が天井の空調機の奥に隠された車内スピーカーの正確な位置を探るように目線を頭上に彷徨わせているのが見えた。その2人の表情は少し緊迫さを帯びており、
どうやら2人も僕と同じ様にある目的地にある一定の時間内に到着する必要があるようだった。
前に座った男と女子高生2人は相変わらず、スポーツ紙を擬視したり、無意識に携帯のデコレーションを撫でながらジャニーズから新しくデビューしたユニットについて語ったりし、
列車が止まった事に対する不安や焦りの感情は一切伺えず、特に時間は今の時点では重要な問題でないようだった。
108 :
tomorrow you:2010/02/21(日) 10:09:07 ID:jD4v8U+2
もう一度窓の外を見ると、太い国道が見下ろせた。
錆びかけた自転車を優雅に漕ぎながら帰路につく町工場の職人、
路肩に停まった軽トラの焼き芋屋の排気口から吹きあがる黒い煙、
水たまりがまだ残る交差点を黄色いゴム長靴を履いた幼児の手を
引いてゆっくりと渡る幼稚園帰りらしい若い母親、赤信号で停車中
の長距離トラック運転手が濡れたアスファルトの道路捨てた未だ
先端に火の気配を残す煙草。
僕はそのなんでもない平凡で、時間という概念に取り残されたような
日常の一景に篭る温かみを、窓を通して僕の額を照らす太陽の熱と
交えて物理的に感じた気がして急に切ない気持になった。日常とは
なんの束縛もない時間の中に生まれるある一定の共通性と共感性を
持った日々繰り返しもたらされる不思議な時空。なんの変哲もない
平凡の日常の一景がなぜその時僕を切ない気持にさせたのか全く
理解できなかった。僕が日常とはかけ離れた生活をしている事から
来る「平凡な日常」への懐かしさなのか。そもそも僕の日常って
なんだ?と自問した。
僕は藍沢直人、現在高校3年生。受験を控え毎日塾に通う所謂受験生。
親や塾からのプレッシャーや自らの力の限界との葛藤の時期。
すべては1月のセンター試験の為に、すべては4月に笑顔で
どこかの大学に入学出来るように、僕はこの1年、勉強と真剣に
向き合い、親や塾の期待に応える為に様々な自由や娯楽を犠牲に
してきた。そう、それが僕の日常。勤務医の父と元看護士の母を
持つ僕は所謂ハイソ家庭に生まれ大切に育てられた一人息子だ。
特に金銭面では比較的余裕がある自分の家庭を羨ましがる友人
(特に女子)はとても多かったが、僕自身が好きな物を好きな様に
買う事はまずなく、父親が趣味で乗っているBMW Z-4以外に
特別一般他家とうちを違ったものにする要素はなかったし、
一家の大黒柱が医者という事に少なからず誇りを持っている
母親が時折唐突に僕に聞く「うちに生まれて良かったでしょ?」
という質問に対しても、いつも「もちろん」と威勢よく
答えるものの、本心は普通のサラリーマン家庭に生まれていたら
生まれてたで普通に今と特に変わらない生活を送っていただろう、
と冷静に思えるほど一般的”じみた”家庭だった。
しかし、かと言って親や家庭が嫌いなわけではなく、家は落ち着ける
場所であったし、親は僕が比較的自分の本来の姿を露わに出来る相手
(少なくともこの時の時点では一番信頼出来る相手)で、
親はちゃんと僕が学生生活を心地よく過ごせるように精神的、
金銭的面で工面し、一人息子として大事に育ててくれていた。
109 :
tomorrow you:2010/02/21(日) 10:10:04 ID:jD4v8U+2
六本木にある在学生ほぼ全員が一流大学への進学出来る高校に
入学する事で有名な一流セレブ系私学中学校からエスカレーター
式の一流私学大学付属校への受験に失敗した僕は止むを得ず
中上級レベルの私立高校に入学した。中学の時はエスカレーター式
の高校への入学どころか受験という行為そのものの意味が理解
出来ず嫌々真剣に受験に向きあい始めたのも既に遅く、
その一流私大付属を受けるまでもなく結果は明らかだったが、
元々頭脳自体はそこまで悪くないらしく、ほぼ受験勉強なしで
中上級レベルの高校に入れたのは自分としても意外だったし、
重要なのは大学だ、と一番落胆していたであろう、親が
言ってくれた事は、結果的に少なからず落ち込んだ僕の
気持ちを上手く次のモチベーションに繋げる助け舟になった。
しかしその苦い経験もあってか、親の大学受験への
プレッシャーは普通より少し強いような気がしたが、
受験に関して親はどれくらい言ってくる?と突っ込んだ質問を
出来る塾友(じゅくゆう)も居なかったので、そもそも一般
という概念が僕にはなく比較にならなかった。
大学受験の頃には自分の家が所謂ハイソ家庭で、社会は
その様な家庭の子は頭も良く運動も出来る、という根拠のない
概念に囚われている事は十分に承知だったので、自分の
親がそれに関して気にし、うるさく言う気持ちも理解出来たし、
実際に母親の休日の日課であるハイソ仲間とのゴルフ会では
誰のご子息が一番良い大学に行くだろうか、という話題が
コース途中でのランチの席で主な話題となり、それぞれが
他の子の長所を褒め称え、将来の有望性について推して
おきながらも誰もが最終的には我が子が、という考えを
持っているという事を母親から聞かされていたので受験という
大きな山は自分の将来の為だけの話しでは決してないという事を
十分に自覚していた。
110 :
tomorrow you:2010/02/21(日) 10:11:20 ID:jD4v8U+2
自分は特に将来のビジョンもなく、幼稚園の頃に消防署を見学した時に
見た大きな消防車から伸びる太いホースを操り火の魔と戦う消防士が
格好良いと一時的に感じた以外これまでに特に大きな夢を持った事は
なかったが、高校受験で失敗した因縁もあり、一流は東都大学のみ、
と謳われる今のハイソ社会で「一流は東都大学のみ」と信じる親の
期待に添えるためにもこの1年間、僕は失敗からの脱却、一流への
復活を遂げるべく、自分を殺してノートから溢れ出る方程式や英単語
と向かい合ってきた。
しかしそれは果して僕の日常なのだろうか。もし受験という山がなく、
只の高校生活という平野が続くのであれば僕は代りになにをして
いただろう。
私学トップとされる上明大学に付属の上明高校に通う“高校受験
に成功した組”の旧友は特別苦労もせずに既にエスカレーター式の
甘い入試を既にこなし、悠々とハイスクールライフを送っている。
2000年代から学生や若者の間で人気なSNS(ショーシャルネットワーキングサービス)
"friendbook"に登録している僕は、息抜きでたまたま開いた上明
高校の友人がページに載せている彼女らしき女とのプリクラや
飲酒喫煙等の非行行為をしている写真を見て、なんとも言えない
憧れと羨ましさを感じる反面、学生のくせに親の金で遊び廻り
やがって、と自分の現状を肯定する心情に成らざる得なかった。
そう、僕には彼女が出来た事がない。女性に興味が無いわけ
ではもちろんなく、人生の中でもこれまでに好きになった人も
何人かいたが、毎度気持ちを伝える勇気が無かったか、勇気を
持って伝えようとした直後に相手には既に付き合っている人が
いる事が判明する等、色恋物にはほとんど言って良いほど縁がなく、
バレンタイン・デーやクリスマス等の恋愛を象徴する様な日は
決まって憂鬱な一日を過ごすのが慣例になりつつあった。
111 :
tomorrow you:2010/02/21(日) 10:12:21 ID:jD4v8U+2
僕は元々派手に遊ぶタイプではなく、クラスの中でも勉強意外の面で
特に目立った部分もなく、友人の数は少なかったが僕と同じ様に
一流私学を落ちた経験を持つ仲間でこぢんまりと集まり、居心地は
決して悪くなく、自分たちなりに平凡で落ち着いた高校生活を送って
いる事に多少の幸せを感じていた。中学の頃から薄々思っていたが、
友達の数イコール幸せ、は間違っている、と高校に入ってから強く
思うようになった。実際、人に好かれようとして酷い目に遭って
いる人は数多く見てきたし、中には使い者にされるパシリになる事
を選びながらもクラスで権力を持つ悪グループに居続ける者も
いれば、イジメに遭い最終的には逆上してグループの頭的存在の男
を椅子で殴り付け警察沙汰になり退学処分になった者もいた。
こうして悪グループに加わろうとする数多くの人間を見ていると、
人間はどうしても悪に惹かれる質らしい、とつくづく感じた。
そういう意味では僕の高校は中々荒れていた、と捉えられる
かもしれないがさすが中上級レベルの高校だけあって見た目が
悪だろうがパシリだろうが比較的良く出来る人が多かった。
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112 :
tomorrow you:2010/02/21(日) 10:14:37 ID:jD4v8U+2
以上です。御付き合い本当にありがとうございました。
最後の辺り少し気が抜けて本筋からかなり逸れて
いってしまいました。
自分の文章には本当に自信がありませんし、特に漢字も
中学生レベルのものしか書くことが出来ないレベルです
ので本当に恥ずかしい限りですが、率直な意見を頂けるのは
やはり2chと思い、タイトル通り、書き掛けを晒させて
頂く事にしました。 何卒よろしくお願い申し上げます。
113 :
この名無しがすごい!:2010/02/21(日) 13:26:03 ID:TlMdEXe+
____
/__.))ノヽ
.|ミ.l _ノ 、_i.)
(^'ミ/.´・ .〈・ リ /
.しi r、_) | 芥川賞が狙えるな
| (ニニ' / \
ノ `ー―i´